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1984-07-04 第101回国会 衆議院 文教委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年七月四日(水曜日)     午後零時四十四分開議 出席委員   委員長 愛野興一郎君    理事 石橋 一弥君 理事 大塚 雄司君    理事 白川 勝彦君 理事 船田  元君    理事 佐藤  誼君 理事 馬場  昇君    理事 有島 重武君       青木 正久君    臼井日出男君       榎本 和平君    北川 正恭君       小杉  隆君    坂田 道太君       田中 直紀君    高橋 辰夫君       葉梨 信行君    町村 信孝君       松田 九郎君    松永  光君       木島喜兵衛君    佐藤 徳雄君       田中 克彦君    中西 績介君       池田 克也君    伏屋 修治君       田中 慶秋君    滝沢 幸助君       藤木 洋子君    山原健二郎君       江田 五月君  出席国務大臣         文 部 大 臣 森  喜朗君  出席政府委員         文部政務次官  中村  靖君         文部大臣官房長 西崎 清久君         文部省高等教育         局長      宮地 貫一君  委員外出席者         文教委員会調査         室長      中嶋 米夫君     ――――――――――――― 委員の異動 七月三日  辞任         補欠選任   江田 五月君     菅  直人君 同日  辞任         補欠選任   菅 直人君      江田 五月君 同月四日  辞任         補欠選任   稻葉  修君     松永  光君   臼井日出男君     松田 九郎君   河野 洋平君     小杉  隆君   二階 俊博君     田中 直紀君   渡辺 栄一君     高橋 辰夫君   中野 寛成君     田中 慶秋君 同日  辞任         補欠選任   小杉  隆君     河野 洋平君   田中 直紀君     二階 俊博君   高橋 辰夫君     渡辺 栄一君   松田 九郎君     臼井日出男君   松永  光君     稻葉  修君   田中 慶秋君     中野 寛成君     ――――――――――――― 七月二日  育英奨学金即時支給学生寮充実等に関す  る請願小川仁一紹介)(第七〇三五号)  同(馬場昇紹介)(第七〇八四号)  私学助成の増額に関する請願外三十九件(村田  敬次郎君紹介)(第七〇三六号)  同(横江金夫紹介)(第七〇三七号)  同外二件(佐藤観樹紹介)(第七一二六号)  教育職員免許法等の一部を改正する法律案反対  等に関する請願梅田勝紹介)(第七〇三八  号)  同(岡崎万寿秀紹介)(第七〇三九号)  同(工藤晃紹介)(第七〇四〇号)  同(佐藤祐弘紹介)(第七〇四一号)  同(柴田睦夫紹介)(第七〇四二号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第七〇四三号)  同(田中美智子紹介)(第七〇四四号)  同(津川武一紹介)(第七〇四五号)  同(中川利三郎紹介)(第七〇四六号)  同(中島武敏紹介)(第七〇四七号)  同(林百郎君紹介)(第七〇四八号)  同(東中光雄紹介)(第七〇四九号)  同(不破哲三紹介)(第七〇五〇号)  同(藤田スミ紹介)(第七〇五一号)  同(正森成二君紹介)(第七〇五二号)  同(松本善明紹介)(第七〇五三号)  同(三浦久紹介)(第七〇五四号)  同(蓑輪幸代紹介)(第七〇五五号)  同外五件(木島喜兵衛紹介)(第七一二七号  )  同外一件(経塚幸夫紹介)(第七一二八号)  同(辻第一君紹介)(第七一二九号)  同(林百郎君紹介)(第七一三〇号)  教育職員免許法等の一部を改正する法律案等反  対に関する請願津川武一紹介)(第七一二  三号)  同(中川利三郎紹介)(第七一二四号)  同(中林佳子紹介)(第七一二五号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 七月三日  私学助成充実強化に関する陳情書  (第三三四  号)  国立沖縄国際海洋総合大学創立に関する陳情書  (第三三五号)  教職員定数等改善計画早期実現に関する陳情  書(第三三六号)  教育施設整備充実に関する陳情書  (第三  三七号)  社会教育施設整備に関する陳情書  (第三三八  号)  校舎の大規模改修に関する陳情書  (第三三九  号)  埋蔵文化財調査費国庫補助対象基準の拡大に関  する陳情書  (第三四〇号)  教育職員免許法改正反対に関する陳情書  (第三四一号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  日本育英会法案内閣提出第二五号)      ――――◇―――――
  2. 愛野興一郎

    愛野委員長 これより会議を開きます。  内閣提出日本育英会法案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。馬場昇君。
  3. 馬場昇

    馬場委員 奨学事業は、文教行政の中で最も重要な柱であることは当然のことでございますが、この育英奨学事業昭和十九年に設立されましてから四十年間、あの戦争中や戦後の苦しい時代にもこの奨学資金利子をつけるというようなことはなかったわけでございます。今回提案されております法律改正利子をつけるということが初めて出てきたわけでございまして、私は今これを法律改正と言いましたけれども改正という言葉は使えなくて、育英奨学制度の変質だ、こう言っても言い過ぎではない、私はこういうぐあいに思います。  多くの問題点があるわけでございますので、同僚の各委員がいろいろ問題点について質問をしたわけでございますが、私は、質問を聞いておりまして、疑問が解消したというよりもますます心配が多くなった、こういう気持ちでございます。  それで、いよいよ大詰めになっておりますけれども、重複する部分もたくさんあると思いますが、さらに問題を明らかにするために質問をさせていただきたいと思います。  その前に、一つ確認しておきたいことがございます。それは、私の同僚佐藤徳雄議員田中克彦議員中西績介議員等が本委員会質問をいたしまして、質問を留保しておる事項についてでございます。  今日の情勢は、いろいろありましても本日採決の段階に行くのではないか。そして、この法案参議院に移るという段階になっております今日においてもなお、五十九年度に入学いたしました学生生徒奨学金をもらえずに非常に苦しい立場、憂慮すべき状態が今続いておるわけでございます。  私どもがこの法律衆議院審議します過程におきまして、報道機関等報道もございまして、学生が困っておる、憂慮すべき状態というのは国会審議がおくれておるからだ、こういうような風潮が出たわけでございまして、これにつきまして私どもがこの衆議院で議論いたします場合に、審議を大変拘束したというような遺憾な状態が実は出てきたわけでございまして、言うならば、人質を取って審議を急がされたというような気持ちもしないわけではなかったわけでございます。  こういう状態でございましたので、少なくとも、国権の最高機関であります参議院審議が、そういうことでもって自由な慎重な自主的な審議が束縛されてはならないと私は思います。  そういう意味におきまして、実は確認を求めるわけでございますけれども、まず、その第一点は、採用事務がおくれたのは、国会責任ではなくて文部省募集事務のおくれである、これが事実でございます。そういう点について文部省責任を明らかにしながら、困っております学生に対してこの際遺憾の意を表明していただきたい、私はこういうぐあいに思います。大臣、どうですか。
  4. 宮地貫一

    宮地政府委員 この制度改正に当たりまして、私どもとしましても、五十九年度当初から新制度実施されますように関係予算案及び法案提出をいたしたわけでございますけれども、種々の要因が重なりまして、現実問題として、奨学金の交付を期待しております多くの学生生徒に事実上、募集事務がおくれますことによりまして学生生活上いろいろ支障が出るような事態になりましたことについては、私どもとしてもまことに遺憾に存じております。
  5. 馬場昇

    馬場委員 大学局長じゃなかったですね。今度何と変わったのですかな。——高等教育局長と変わったのですか。宮地さん、募集事務のおくれは私どもの方の責任とは今おっしゃらなかったようですね。しかし、最初は予約生も全然やらなかった。そして在学生ももちろんやらなかった。国会でやりなさいと言ったらそれをやり始める。それで在学生もやった。やればできることをやらなかったわけですから、そういう点についてはやはり文部省責任が非常に多い。このことについてははっきりしておるわけでございます。  そこで、大臣にお聞きいたしますが、この間この文教委員会で、各党一致する意見として、大臣に対して、在学生奨学採用予定者を緊急に救済するため、現行法に基づき、可及的速やかに募集事務を開始されたい、こういう要望を六月二十九日本委員会から文部大臣にしたところでございます。  これについて、国会各党一致の要請を受けまして可及的速やかにこのことについて実行していただきたいということについて、文部大臣の御決意のほどをお聞きしたいと思います。
  6. 森喜朗

    森国務大臣 先ほど宮地局長からもお答え申し上げましたように、さまざまな要因もございまして、国会の御審議お願いをいたしております。その過程の中で奨学金を待望いたしております学生生徒が大変困った状態になっておりましたということについては、私も大変心を痛めておりました。お互いに国会仕組み法案提出、あるいはまた予算はやはり予算関連法案というものを前提にして予算を御審議をいただいて御成立をいただいておりますものの、私ども政府立場から言えば、関連法案というもののやはり国会での御判断を得ないと、政府として勝手な動き方といいましょうか、これは政府自身としてはできないと思うのです。そういうことが大変皆様方にも御心配をおかけすることにもなったわけでございますが、幸い各党皆様方に大変御心配をいただきまして、特に文教委員会で、教育の環境を少しでもよくしていこうというお気持ちで御議論をいただいておるということは、私もよく承知をいたしております。そういうお立場で私に対してお申し入れもいただきました。法律の中で判断をするということは極めて難しい問題も幾つかございましたけれども各党皆様方の合意、そしてそれを委員長が代表して院のお考えであるということで私どもにお申し出をくださいました。私どもとしてもできる限りの措置をとって、学生生徒の御心配をいただいている点を少しでも解決をするようにということで努力をいたしてまいりました。  いろいろとこの審議過程の中でも御注意をいただいたり、また皆様方各党の御意見も私どもも十分踏まえているわけでございまして、そういう点で、局長から申し上げましたとおり、御心配をいただきましたということについては極めて遺憾であるというふうにも考えておりますし、また、いろいろと御心配をいただき、そして少しでも前進するようにお声をかけてくださいました文教委員会、衆参合わせまして関係皆様方に、私としても文部大臣立場で感謝を申し上げたい、こういう気持ちでございます。  どのような方向で進めておるか等々については先生方の方もよく御存じでございます。必要がございましたら事務当局から御説明を申し上げたいと思います。
  7. 馬場昇

    馬場委員 この国会の意思を文部大臣は十分尊重して、全力を挙げて可及的速やかに実行していただくという決意でございますが、これを実行されるに当たりまして、これは事務的な面も多いのですが、局長に、これは私の要求といいますか、こうしてもらいたいという希望を申し上げておきたいと思います。  御存じのとおりに、予約奨学生の三万六千人というのはもう募集事務が始まっておるわけでございます。在学採用予定者の八万二千人のうち、特別貸与相当数の四万七千人につきましても募集事務を開始されたと聞いておるわけでございますが、一般貸与相当数の三万五千人、これについては今検討中だと聞いております。  そこで、私の要求ですけれども、この人々の救済につきましても最大限の努力を可及的速やかにとっていただきますように要望しておきたいと思います。  それから、もう一つの点は、現行法による募集と同時に、改正法による募集作業を開始されると実は聞いておるわけですけれども、これは非常に問題でございまして、現在国会審議中のものは成立するのか成立しないのかわからない。こういうときに、成立するものとして改正法によって募集作業をすることは、国会審議権の侵害になる、こういうぐあいに私は思います。だから、通ってもいない法律改正法に基づいて募集作業は行うべきではない、こういうぐあいに思います。  こういうことにつきまして、行政というのは法律に基づいて仕事をするわけですから、今私の言いました二点については、局長の方でも十分検討されて努力をしていただきたい、この辺について要望をいたしておきます。局長、どうですか。
  8. 宮地貫一

    宮地政府委員 御要望のありました点については十分承りまして対応いたしたいと存じます。
  9. 馬場昇

    馬場委員 次に、この育英奨学金目的というものについてお伺いをいたしたいと思います。  この目的は、当然今、日本国教育というものは憲法教育基本法に基づいて行われておるわけでございますけれども、実はあの敗戦という悲惨なとうとい経験の中から、戦後私どもは、旧憲法教育勅語による教育から、新憲法教育基本法による教育をやっていこうということを決定したわけでございます。  実は、個人的なことを申し上げて恐縮ですけれども、私はこの憲法教育基本法が施行されますときに教員になりました。言うならば、私はこの憲法教育基本法と同級生だと思っております。  そういう同じ年というのじゃなしに、あの戦争中、国のため天皇のためには国民は喜んで死ぬべきだというような教育体制から、戦後の教育というものは、「個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間育成」、そういう教育に変わったわけでございまして、人間が主人公で、教育行政、国というものはその人格完成のための教育の条件を整備するためにあるんだ、こういうぐあいに変わったわけでございます。  こういうことにつきまして、戦時の教育を受けた者といたしまして、こういう教育、こういう国にしなければならないと、実は戦争の反省の中から、身震いをするほどうれしく感動したのを覚えているわけです。  そういう立場から質問をするわけでございますが、原則的なことを申し上げて失礼ですけれども憲法教育基本法理念に従いまして、その理念実現のためにこの育英奨学事業はあるんだ、私はこう思うのですけれども、いかがですか。
  10. 森喜朗

    森国務大臣 ただいま馬場先生、御自分がちょうど教員におなりになりましたときの思い出を含めまして、育英奨学制度についての先生のお考え方を述べられました。基本的には先生のお考えどおりであろうというふうに私も思います。  憲法そして教育基本法理念に基づく民主的、文化的そして平和的な国家をつくる。その国家構成者としての人間形成を目指す、それが教育の基本的な理念だと私ども考えております。そういう中で、日本の将来の国家を構築するその形成者としての人間完成を目指すための教育機会均等ということを国が大きく打ち出した制度でございますので、私どもとしては、そのことをさらにできるだけ改善をし、そしてまた、その対象が少しでも多くなるように事業として充実していきますように、私どもは念願として取り組んでおるわけでございます。
  11. 馬場昇

    馬場委員 これは局長にお尋ねしますけれども、この育英会法の第一条の目的の中に「優れた学生及び生徒であって」という言葉が入っております。この「優れた学生及び生徒であって」云々ということは、これは憲法教育基本法のどこから来ているのですか、お尋ねします。
  12. 宮地貫一

    宮地政府委員 御指摘のように、今回の育英会法改正案目的では、「優れた学生及び生徒であって経済的理由により修学に困難があるものに対し、学資貸与等を行うことにより、」云々という目的規定になっておるわけでございまして、御指摘の「優れた学生及び生徒」という事柄については、憲法及び教育基本法では文言として直接出ておりません。ただ、国の予算制約の中で学資貸与事業実施いたします際に、学業成績がよりすぐれた者を対象とすること自体は、これは私どもとしては予算制約というものがある以上はその点はやむを得ない点であろうかと思っておりまして、学業成績の要素を加味して採用選考を行うということ自体教育機会均等趣旨に反するものでないというぐあいにども理解をいたしておるところでございます。
  13. 馬場昇

    馬場委員 今局長は、すぐれた学生生徒というものに対する機会均等、これは憲法教育基本法にはどこにも書いてないとおっしゃいました。そのとおりです。ところが、限られた予算行政という立場でやるのだと。しかし、いかに限られた予算であろうとも、行政であろうとも、憲法教育基本法に違反するようなことはできないはずでございます。そうでしょう。  そこで、すぐれた学生生徒、そういうものに対する機会均等というのは、すべての国民に対してという教育基本法憲法理念に反するのですよ。そういう規定になると私は思うのです、これは先ほど言いましたように。そうなりませんか。
  14. 宮地貫一

    宮地政府委員 そのこと自身は先ほど御説明をしたことに尽きるわけでございますけれども、私ども、この育英会法の今回お願いをしております改正案でもそういう規定お願いをしておるわけでございますけれども憲法二十六条では、「すべて国民は、法律定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。」という規定があるわけでございまして、御指摘憲法なり教育基本法定めております事柄現実的に実現されることが、私どもとしても目標として持っている事柄としてはそのとおりであろうかと思いますが、現実施策として今日ただいま対応できる政府対応といたしましては、現在御提案を申し上げておりますような育英会法目的のような形にならざるを得ないのが現実である。そして、理想としては御指摘のような方向を志向するということはもちろん持っていなければならないかと思いますけれども、そういう法律定め方をすること自身、そのこと自身憲法なり教育基本法定めております事柄に違背するものだというぐあいにはども理解をしないわけでございます。望むべき理想としてはそうあらねばならないと思っておりますけれども現実の今日ただいまでとり得る方策としては、こういう「優れた学生及び生徒」を対象とする考え方をとるというのが、今回御提案を申し上げております規定趣旨でございます。
  15. 馬場昇

    馬場委員 理解をしておらぬ、自分たち考えることが正しいんだというような言い方でございますけれども、では、具体的に聞きますと、「すべて国民は、ひとしく、」ということが教育基本法三条にありますね。それから憲法二十六条にも、「その能力に応じて、ひとしく教育を受ける」、この「すべて国民は、ひとしく、」というのと、育英会法目的に出ておりますところの「優れた学生及び生徒」、これは違うんじゃないですか。一致しますか。どうですか。
  16. 宮地貫一

    宮地政府委員 その点は先ほども申し上げたわけでございますけれども教育基本法教育基本方針定めておるわけでございまして、具体的な事柄定めといたしましては、学校教育法以下個別にそれぞれ法律規定定めまして、今日の教育行政全般の執行が行われているわけでございます。  教育基本法において能力ある者という抽象的な表現になっておりますけれども、それに基づきまして具体的に事業実施をいたします法律定めとして、従来から御説明しておりますように、日本育英会は、教育機会均等に加えまして人材育成ということも目的に掲げておる。そのことの理由としては、先ほど来御説明したことに尽きるわけでございますけれども、そういう学業成績にすぐれていることと経済的困難性を要件として目的規定にこういう表現規定をしているわけでございます。  また、憲法二十六条も、もちろん規定にございますように「法律定めるところにより、」という規定があるわけでございまして、個別のそれぞれの実施に当たりましては、それぞれ実施するための個々の法律定められるというのが全体の仕組みというぐあいにども理解をしているわけでございます。  そこで、この日本育英会法規定にいたしましても、現在政府としてとり得る施策としては、こういう人材育成という観点も含めた考え方ということになるわけでございまして、その点では、御指摘のように、憲法なり教育基本法が目指している事柄を全面的に実現していないではないかというおしかりは、確かに私どもその点は御指摘のとおりかと思うのでございますけれども、ただいま御提案申し上げられる政府のとるべき具体的な施策としての日本育英会育英事業というものについて申し上げれば、この目的規定に沿った対応が今日とり得る事柄であって、したがって、そういう対応すること自身が、そのこと自身が直ちに憲法規定なりあるいは教育基本法定めていることから違背をしているんだというぐあいには私は考えないわけでございまして、御指摘の点は、将来の努力目標として私ども考えなければならない点であることは重々承知をしているわけでございますけれども……(馬場委員「何を言っているかさっぱりわからぬから、やめていいよ」と呼ぶ)現実施策としてとっております育英会育英奨学事業としては、こういう目的を持って執行するという考え方でこの法案を御提案申し上げているわけでございます。
  17. 馬場昇

    馬場委員 質問したことに答えてください。時間が余りないんですからね。  だから、端的に聞きますと、「優れた学生及び生徒であって」というのは、憲法二十六条で言う「その能力に応じて、」ここから出てきているんだ、さっき「能力に応じて、」と憲法にもあるとおっしゃいましたけれども、ここから出てきているんだ、こういう御説明をされたと聞いていいですか。
  18. 宮地貫一

    宮地政府委員 そのことを具体的に決める決め方といたしまして、人材育成という観点を加味した育英会法目的規定ということになっていると理解しております。
  19. 馬場昇

    馬場委員 御承知のとおりに、憲法に違反する法律は無効ということが憲法九十八条に書いてあるわけでございますが、そこで、いろいろ押し問答してもなかなか、ですから具体的に言いますけれども、私は、あなたの今の答弁は全然理解もできません。もちろん納得もできないわけでございますが、私がおもんぱかるに、この前の昭和十九年にできました旧法に「優秀ナル学徒」とありますね。これをちょっと言葉を「優れた学生及び生徒であって」、こういうことに移したわけじやありませんか。これは旧憲法教育勅語時代目的ですよ。「優秀ナル学徒ニシテ」、これを片仮名を漢字、平仮名に直して移しかえたわけじやありませんか。これが新しい憲法教育基本法体制の中に溶け込んでおるはずはない。そして法律法律とおっしゃいますけれども憲法に違反する法律は無効でしょう。そして、今聞きましたところが、「能力に応じて、」ということがあるとおっしゃいました。確かに「能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利」とありますが、ちょっとここで聞きますけれども、この憲法教育基本法に言う「能力に応じて、」というのは、あなた方が具体的に行政をなさる場合に、これは学業成績を意味するのですか、この「能力に応じて、」というのは。どうですか。
  20. 宮地貫一

    宮地政府委員 具体的には、それぞれの学校に入りまして学業を修得する能力がある者というぐあいに理解をいたしております。
  21. 馬場昇

    馬場委員 そうしたら、この育英会法では、「能力に応じて、」というのがその学業ということで答弁があったわけですけれども、ここで一般貸与は三・二という平均がありますね。特別貸与は三・五。能力というのはこういうことで判断していいのですか。三・二とか三・五、この平均で、それで能力を判定していいのですか。
  22. 宮地貫一

    宮地政府委員 判定の仕方は、具体的に育英奨学事業でだれを奨学生にするかの採用決定に当たりましては、もちろん総合的に判断をすべきものと考えておりますけれども先生指摘の、能力があるということが三・一とか三・五ということかというお尋ねでございますと、奨学生を採用する際の一つの学力基準として、採用する際の公平その他いろいろな要素から、「優れた学生及び生徒」という事柄を判定する一つの目安といいますか、基準といたしまして三・二、現行の育英会法で申し上げれば、一般貸与については三・二以上というようなとらえ方をしているわけでございまして、能力があるということ自身が、それでは三・二以下は能力がないかというぐあいにお尋ねがあると、その点は大変申し上げにくいのでございますけれども、すぐれたという一つの学力的な判定を見る目安として、現行の一般貸与で言えば三・二というような基準を用いているわけでございまして、その点は、学業成績を加味した場合の判定の基準というぐあいに理解をいただければと思います。
  23. 馬場昇

    馬場委員 具体的にお尋ねしますと、そうしたら、例えばある生徒がおりまして、この人は非常に芸術的にすぐれておる。学校の相対評価は、評価にならぬと私は思いますけれども、皆さん方が使っている三・二というものを割り出す基礎になっておりますが、その人が例えば芸術部面が五であったとする。あるいは理数の方は余り、五点評価でいって二とか一とかであったとする。そういう例はたくさんあるわけでございます。そうした場合に、この人は、平均してみたところ三・二にならなかった。この人はすぐれた学生ではないのですか。そうして、「能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利」というのはこの人にはないのですか、どうですか。
  24. 宮地貫一

    宮地政府委員 一般的に学力基準を考えております理由でございますけれども、出願者を学校長が育英会に推薦する場合、あるいはその者が育英会の選考を受ける資格要件を備えているかどうかを判定する場合、また育英会学校長の推薦を受けた者について奨学生を選考する場合に用いておるわけでございます。これは例えば大学に入りました際に、高等学校の成績について見ておるわけでございまして、先生指摘のような、例えば芸術的な分野で非常にすぐれた才能を持っておるけれども、高等学校成績で言えば平均的には三・二に入らないような者はどうなるのかというお尋ねでございますが、ただいまの基準で申し上げますと、一応三・二以上を一般貸与の対象としているという点からすれば、採用の基準には該当しないということになるわけでございます。
  25. 馬場昇

    馬場委員 そうしたならば、この「能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。」そして、経済的理由によってその教育機会均等が失われてはならないとする憲法教育基本法の精神からしますと、例えばこの人は芸術にすぐれた能力を持っているわけです。ところがこの人は奨学生にはなれない。これはこの人から見ますと憲法教育基本法違反ではありませんか。能力というのは、各人の持っておるところの個性だとか特性を含めて、ほかの者との比較ではなしに、その人の能力、それに基づいてひとしく教育を受ける権利があるわけでございます。これこそ憲法教育基本法に言う基本的人権ではありませんか。今言った例の人が奨学金を受けられないということ、これこそ基本的人権の侵害だし、憲法教育基本法に違反している。こういうやり方を今あなた方は、育英会ではやっておられるわけです。そしてまた、ペーパーテストで時間を区切って書かせて点数をとっている。あるいは人間を見た場合に、わせの人もおればおくての人もおる。それをある年齢のところで区切って、十八歳だ十五歳だというところでそれをやっておる。どこから見ても、今のような学業判定の方法——能力と今のような判定による学業成績というのは一致しない。これは事実現在そうなっておるわけでございます。  そういうことから考えてみますと、先ほど言いましたように、育英会のすぐれた者という目的にある考え方というのは、大日本育英会法、旧憲法教育勅語のあの目的をそのまま移しかえたものであって一あの思想というのは英才教育ですよ。そういうものを貫く目的がここに現存しておる、私はこういうことが言えるのじゃないかと思うのです。  これは文部大臣質問いたしますけれども、今、教育改革、臨教審、そういう中で、文部大臣はこの委員会でも答弁なさった、あるいは本会議予算委員会、内閣委員会でも、今日の教育の荒廃というものの原因として、学歴社会があるし受験地獄があるし、そして共通一次テスト、偏差値による輪切りの教育、こういうものが非常に問題だ、教育の荒廃になっている、この臨教審の中において、教育改革の中において、共通一次テストであるとか偏差値による輪切りとか、十八歳でその人の一生が決まってしまう、あるいは十五歳のペーパーテストによってその人の一生が決まってしまう、そこに教育荒廃の原因があるのだ、こういうことは改めなければならぬということを、文部大臣はしょっちゅう言っておられるわけです。私もそれには賛成です。ところが、育英会法の今提案されているのを見ますと、森さんが一番心配しているようなことが現実として行われるという状況になっているのです。これについて文部大臣、どうですか。
  26. 森喜朗

    森国務大臣 お答え申し上げますのに正直申し上げて大変適当室言葉が出てこないのですが、基本的には、馬場さんが今おっしゃっておられるように、旧憲法のそういう精神の中での当時の「優秀ナル学徒ニシテ云々ということをそのまま置きかえたということではないと思います。  いろいろと議論の分かれるところでありますが、いろいろ議論した結果、やはり国の税金をある意味では財源として、勉強しようという意欲のある人に貸してあげるわけですね。ですから、勉強してくれなければ困るわけで、遊んでいる人に貸すのでは国民理解をしてくれないと思うのです。では、勉強する人に差し上げますよ、遊ぶ人には貸しませんよということはなかなか法律の中には書きにくいと思うのですね。もちろん能力に応じてですから、勉強しても勉強できない子もいると思います。  それから、今先生も例として取り上げられたように、特定の一つの、例えば芸術分野、音楽とか絵とかそういうものに対して大変なひらめき、才能がある。しかしほかの数学や英語も悪かった。したがってそれが三・二より下になる。この人たち、かわいそうじゃないか。それはおっしゃるとおりだと思うのですね。しかし、まじめに勉強する人たちに対して国民の皆さんが税金として納めてくださった財源をお貸しするんですから、やはりまじめにやってくださったかどうかということの判断は、結果的にはある程度の成績をおさめてくださることによって判断するしかない。これは無数にありますから、特定の分け方をして、例えばほかのものが悪くても芸術部門やこの部門だけはすばらしい成績があれば結構ですよというふうに書ければいいですけれども、そんなことは現実法律の中にはなじまないと思うのです。努力して一生懸命に学んでくれたという学生を結果的に総合的に表現するということになれば、「優れた学生及び生徒」と書かざるを得ないことになるのじゃないでしょうか。そのことによって選別をしているという、昔の「優秀ナル学徒ニシテ」ということをそのまま現代文に置きかえたというふうにお考えいただくというのは、ちょっとつらいところだなと思うのです。  ただ、現実の問題としては、三・五や三・二というのは、希望者を募る、そのときに、あらかじめこの程度の学力を取っておいてくださいよということになるその一つの目安だろうと思うのですね。初めからこっちは三・五、こっちは三・二がだめだよということではなく、一応この目安で考えてください。そして、それは具体的にどういう進め方をするのか私は承知しておりませんけれども、高等学校である程度総合的な調査をしたり、勘案をするのだろうと思います。当然、先生がさっきおっしゃったようなことなどもある程度加味して、最終的には校長が判断をされるんだろう、こう思うのです。ですから、その一つの目安の数字として三・二、三・五というのが決められているわけでございますから、現実的にはかなり弾力的な総合的な判断をそれぞれ推薦する学校としてはされるのではないか。これは先生の方がよく御存じだと思います。  したがいまして、努力を一生懸命にしてくださる——さっき馬場さん昔のことを思い出しておられましたけれども、私もこの間どなたかの答弁に申し上げたのですが、私の学生時代昭和三十一年から三十五年まで大学におりましたが、奨学資金なんというのは私はもう全く借りられないものだと思い込んでいました。なぜかといえば、成績が悪いからです、余り勉強もしませんし。ですから、私なんかには奨学資金なんというものは当たるものだと考えてもみなかった。家庭だって、私のおやじは、今でもそうですが、昔は田舎の町長をやっていまして、給料は非常に安かったですから、一万二千円を分けて送ってくれたのです。ですから、私なんかは本当は奨学資金をもらえる資格があったかもしれませんが、奨学金を借りようなんという気持ちはこれっぽっちも出てこなかった。それはなぜかといったら、勉強していないから。しかし、今は違うと思います。現実の問題として、私の事務所なんかにも学生諸君がたくさん来ますが、見ておりますと、随分奨学資金をもらっている人がいます。量的に大変拡大をされてきている。私はいいことだと思うのです。  そういう意味で、かなり今と音とは違っておりますし、優秀な学徒というものは能力だけで区別するということではなくて、国の税金を使わしていただくことですから、努力をするかしないかというその結果としての判断として「優れた学生」という言葉になったのであって、決して旧憲法理念というものをそのまま採用したものでないということは、ぜひひとつ先生にも御理解をいただきたい、こう思うわけであります。
  27. 馬場昇

    馬場委員 税金でやるのが公教育ですから、義務教育も無償ということが憲法にもありますし、後期中等教育でも大学、高等教育でも、そういう人権規約なんかもあるわけですから、やはり税金で公教育として無償で教育をするというのは当然の方向でございます。だから、税金をやるからといって変な憲法違反みたいなことはできないわけでございます。  また、今、森さん言われました、「優れた」と書かなくても「能力に応じてこと書けば、これが一番いいわけです、憲法にも教育基本法にもあるわけですから。何で「能力に応じてこと書かなくて、「優れた」と書くところがおかしいと思います。大体、森さんのような政治的に非常に能力のあるような人が何もちゅうちょなく育英資金を借りられるようにならなければいかぬですよ。あなた、ほかの成績がよかったか悪かったか知りませんけれども、そんなあなたのような人がないように、あなたにそこで貸せるような制度をつくらなければいかぬと思う。  それから、大臣教育の荒廃について、偏差値の問題とか輪切りの問題とか、そして点数で三・五、三・二でやっているのですから、これと「優れた」というのはやはり通ずるものがありますよ。これは法の施行に当たっては、教育改革の中でそれを言っておられるのですから、その辺の観点というのも、この三・五、三・二のところにもぜひ当てはめて、大臣もひとつ研究して改善のために努力をしていただきたいと思うのです。  次に、もう一つ目的の中にありますのに、「国家及び社会に有為な人材の育成に資する」とあるのです。この言葉憲法教育基本法のどこから来ているのですか、局長
  28. 宮地貫一

    宮地政府委員 これは、「国家及び社会に有為な人材の育成」という規定でございますけれども、基本的には、憲法教育基本法理念に基づきました民主的、文化的かつ平和的な国家及び社会の形成者としての国民育成するという考え方でございます。先般にもお尋ねがあって、その点は、学校教育法上の高等学校目的に掲げられている点についてお答えした点でもございますけれども、これを育英奨学制度目的として掲げること自身は、私どもとしては憲法教育基本法理念に反するものではないというぐあいに理解をいたしております。
  29. 馬場昇

    馬場委員 理念に反するか反しないかと言うが、これは理念に反しますよ。しかし、具体的にどこから来たか、憲法のこの辺、この条項、教育基本法のこの条項、これを達成するために育英会法のこういう目的をここからやっているんです、そうきちっと答えられなければへ理屈ですよ。これはちゃんとはっきりしているじゃありませんか、どこから来たかというのは。憲法教育基本法から来ておりませんよ。これは先ほども言いましたように、旧憲法教育勅語、戦時体制下の大日本育英会法、その目的の中にこれと同じようなのがあるでしょう。「国家有用ノ人材ヲ育成」、それを引き移しただけじゃないですか。  結局、教育目的というのは、教育基本法の前文にあるでしょう。「個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間育成を期する」、教育目的というのはここでしょう。これ自体国家目的として定めておるわけですよ。個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間育成ですよ。これが憲法教育基本法に示す教育国家目的でしょう。それを、こんな戦争中の目的、有用な国家の人材を育成するなんて、それを引き移しただけの目的になっておるわけでございます。  こういう点は、私はきちんと整理をして、今から私が言いますから、いわゆる「優れた学生及び生徒」そして「国家及び社会に有為な人材の育成」、これを削っても、削った方が立派な育英会法目的ができますよ、第一条が。  例えば、こう変えたらどうですか。「日本育英会」という言葉を「日本奨学会」と変えた方がいいですよ。「日本奨学会は、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する国民の中でこれは憲法二十六条ですよ。その次に、教育基本法三条を持ってくればいいのですよ。「経済的理由により修学に困難があるものに対して、学資貸与等により教育機会均等に寄与することを目的とする。」こういたしますと、完全に憲法教育基本法に基づいた日本奨学会法というのができるじゃありませんか。  今私が言いましたのとあなた方が書いているのとどっちがいいですか。私の馬場私案で出したこの第一条とあなた方が提案している第一条、これはどちらがいいですか、局長
  30. 森喜朗

    森国務大臣 局長に答えると言えば、やはり馬場さんに敬意を表しなければならぬ、そういう立場……(馬場委員「余り長くやらぬでください、あとの質問があるんだから」と呼ぶ)  現行の育英会法は、「国家有用ノ人材ヲ育成スルコトヲ目的トス」、そこを「国家及び社会に」というふうにいたしておるわけです。この「社会」というのは、今の憲法あるいは教育基本法の中のいろんな理念をこれに反映をしておるというふうに私は解釈をいたします。そして、先ほど先生から御指摘ございましたけれども教育基本法の第一条の中には、「教育は、人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者として、」云々と書いてあるわけでございますから、そういう「社会の形成者」としての人材を育成するというふうに私どもは解釈をいたしておるわけでございます。そういう意味で、「国家及び社会に」と入れて「有為な人材の育成に資する」、こういうことでございますから、これはまさに、今の憲法あるいは教育基本法理念に全く合っているというふうな判断を私どもはいたしております。先生の今例文としてお述べになりましたのも私は非常によくわかります。わかりますが、「経済的」だけを前に出してしまいますとまた先ほど一答えると長くなりますから、先ほど申し上げたようなことになってしまいます。  要は、先生、私は運用の問題であろうと思います。ですから、先ほど先生がおっしゃったようなことで、これをいろんな意味で幅広く解釈をして、本当に法律の精神をそれぞれの立場の人たちがよく理解をして運用をしていくということが大事だと思いますし、先生から御注意をなされましたことも、私ども十分そのことを外し、また国会の論議というものを踏まえて、育英会あるいはまたそれぞれ学校の推薦についても十分な配慮をしながら、これを有為に運用していくということが大事だというふうに思います。
  31. 馬場昇

    馬場委員 そちらが提案しておる法律の条文とこちらが提案したのとどっちがいいかというと、なかなか答えにくいと思うのですけれども大臣も、教育改革を今からやられるわけですから、ぜひ心していただきたいと思うのは、中曽根さんが言う戦後政治の総決算というのは、やはり戦後政治というのは平和主義、民主主義、人権主義ですよ。総決算とあの人が言うのは、何か戦前体制に戻そうという気がどうしてもあるような気がして私はしようがないのです。これはそうじゃないと本人は言うでしょう。文部大臣もそう言うでしょう。しかし、私はそういう危険性を感じております。そうした場合に、この育英会法の第一条の目的というのは、私から言わせますと、まさに戦前体制目的です。  今、例えば「国家及び社会に有為な」と、「社会に」と書くところに基本的な——今大臣が言われましたように、「社会の形成者として、」ということが教育基本法についているのです。「形成者として、」というのと、「国家及び社会に」というのは大分違いますよ。そういうところにも違いがあります。  そこで、これは大臣には注意していただきたいと思うのですが、私から言いますと、いわゆる戦後政治の総決算は、戦前体制に戻す、そういう中で戦前体制日本育英会法目的というのが出てきて、ここで今通るとすれば、いわば先取りしたような感じがするんです。本当に、憲法教育基本法に基づいて今度の教育改革をやろうとおっしゃるのですが、それならば、私が言ったように、誤解を受けないような目的というのをつくっていただいた方がいいんじゃないか、こういうことを強く申し上げておきたいと思います。  その次に移りますけれども、一にかかって内容にあるということを今大臣も言われましたが、内容についてちょっと質問をいたします。  まず、有利子制が初めて今度導入されたわけでございますが、私は、奨学制度に対して非常に危ないというものをこの有利子制度導入について考えざるを得ないわけでございます。世界の大勢は給付制でしょう。局長、世界の奨学資金は給付制が大勢じゃないかと思います。日本も給付制に近づけるべきであって、今貸与制をやっているわけですけれども、少なくともここでとめておくべきであって、利子を入れる、これは拡充強化するのだとおっしゃいますけれども、私はそうは思いません。  一九七九年に批准されました国際人権規約第十三条二項の(b)、(c)は、中等教育及び高等教育、これにはちゃんと「高等教育は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、能力に応じ、すべての者に対して均等に機会が与えられるものとする」と出ておるわけでございまして、そういう意味で、給付制が世界の大勢であると私は思います。しかし、この国際人権規約の条項は今留保されておるわけでございます。私はこの留保を解除すべきであると思うのですが、いかがですか。
  32. 宮地貫一

    宮地政府委員 国際人権規約第十三条第二項(c)の規定でございますが、御指摘のように留保いたしておるわけでございます。  内容として、締約国が無償化を漸進的に実現することを求めているわけでございますが、我が国の場合、高等教育について私立学校の占める割合が大変大きいということ、したがって、その私立学校を含めて無償化を図ることは我が国の高等教育のあり方の根本にかかわる問題でございまして、現時点で従来の方針を変更して漸進的にいたしましても無償化の方針をとるということは適当でないので、留保をいたしておるわけでございます。  我が国では、この規定趣旨としております高等教育の機会の確保のためには、従来から実施しております施策で申し上げれば、私学助成でございますとか、育英奨学事業ももちろんその一つでございますが、そういうような事業を通じまして高等教育の機会の確保をやってきておるわけでございます。その点については、従来から申し上げている点は以上のようなことでございまして、事柄としては、留保について解除できるような条件が将来来るならば、もちろんそういうことが実現されることが望ましいかと思いますけれども、現時点では、ただいま申し上げたような状況を受けて、そして私ども文教施策としてやっております事柄としては、私学助成育英奨学事業というような形で対応するというのが現在とっている施策でございます。
  33. 馬場昇

    馬場委員 この条約が批准されますときに、昭和五十四年に時の園田外務大臣、この間亡くなられましたが、私と同じ選挙区ですけれども、園田外務大臣はこういうぐあいに答弁しておられます。将来この留保を解除するように努力するというぐあいに園田外務大臣は答弁なさっておるわけでございます。さらに、この問題につきましては、この条約を批准するときに附帯決議が国会でついておるわけでございまして、この附帯決議も、将来解除するような方向努力する旨の附帯決議がついておるわけです。  この前、本委員会同僚議員が質問したときに、文部大臣の答弁を聞いておりまして、この園田さんの答弁、そして国会の附帯決議に及ばない、非常に消極的に私には聞こえてならなかったわけでございますが、だからさらに聞くのですけれども、これがもう公式に国会で附帯決議にもなっているし、外務大臣も答弁しているのですから、文部大臣の答弁と非常に食い違うならば、政府の統一見解をもらわなければ議論できなくなるわけでございます。  そういう意味におきまして、ここで大臣、この問題については、今局長も最後の部分でつけ足しみたいに言ったのですが、基本的には情勢の動向を見ながらこの留保を解除する方向で検討しなければならぬ問題だと私は思います。これについて大臣どうですか。
  34. 森喜朗

    森国務大臣 今御指摘の国際人権規約、そして留保事項、あるいはまた附帯決議も、今私も読み返しております。私の答弁が先生のお考えに当たって御不満のようでございますが、日本の高等教育は私学の占める割合が大変大きい、これはもう先生も御承知のとおりでございます。そしてまた、私立学校を含めて無償にしていくことを図ることは、これも根本的に我が国の高等教育全体を見直していかなければならぬことにもなるわけでございます。先ほど局長が申し上げましたように、育英資金あるいはまた私学助成等々、もちろんその二つにつきましても先生から見ればおしかりをいただく面もたくさんございますが、今日の日本の財政状況、国内の現状等いろいろな面で考えまして、留保の撤回は考慮いたしておりませんけれども、今後諸般の動向を十分注意して検討していかなければならないと思うわけでございます。そして、人権規約の中に述べられておりますように、「無償教育の漸進的な導入」、これは高等教育におきましても中等教育におきましても、そうした方向に導いていくことが大切なことだと私は思います。  ただ、現時点におきまして、今日の私学の占める比率のことも考慮いたしますと、今すぐにこのことについての撤回を考慮することはなかなかできない状況でございまして、先ほど申し上げましたように、私学助成、あるいはただいま申し上げておしかりをいただいておりますものの奨学資金のでき得る限りの量的な拡大、質の改善等々を図りながら、今後の動向を十分に注視しながら検討していきたいと考えております。
  35. 馬場昇

    馬場委員 園田外務大臣は、今直ちにと言っていないわけで、将来留保を解除するよう努力すると言っておられるわけですから、今の文部大臣の答弁をこの答弁よりも後退していないというぐあいに受けとめればそれはそれでいいと思うのですが、ぜひそのようにやっていただきたいと思うのです。  そこで、教育改革を森さんは今一生懸命やっておられますが、改革をどういう方向でというところはあなた方と大分違いますけれども、改革しなければならぬというのはまさに一致しておるわけでございます。  私は、教育改革の中で、教育費の負担というのは非常に大きいと思うのです。このことが機会均等をなくしておるし、本当に教育の阻害になっているので、教育費の負担をどう軽減するか、あるいは無償に近づけていくかということが、今度の教育改革の一番大きな柱にならなければならぬ問題だと思います。  そういう中で、特に今、日本は経済大国でGNP世界二位だとかなんとか言っております。そういう国が、世界のどこもずっと無償化、人権規約を批准しておるのに、日本だけ給付の方向、無償化を留保しておるのは、これまた世界の物笑いの種になると私は思います。また、世界もそうだけれども日本の国にとってみて、将来二十一世紀を展望した場合に、今のような経済大国が果たして続くのか、下手すると中曽根さんの言う軍事大国になってしまうのではないか、私はこれも続かぬと思う。  それじゃ、どういう日本の国の立国にすればいいのかというと、私は教育立国、文化立国だと思うのです。そういう基盤というのは、教育費の負担を軽くする、そして、エネルギーもない資源もない日本の国が、教育立国でもって世界にずっと貢献していくという方向に行かなければならぬと私は思うのです。時間はもう長くはありませんけれども、そういう点について大臣の御見解を、御決意を聞いておきたいと思います。
  36. 森喜朗

    森国務大臣 基本的には、今馬場さんのお述べになりましたようなそうした気持ちで私ども教育の改革に当たっていきたいと考えております。この委員会でも、本案を御審議をいただいておるときにたびたび申し上げましたけれども日本教育の公の負担する費用、そしてまた個人が負担をする費用、これがどの程度が一つの目安になるのか、こうしたことなども、ぜひ幅広く、教育全体を御議論をいただくためにはどうしても避けて通れないところであろうというふうに考えますので、私が今こうした問題を臨時教育審議会で御審議をいただくということを申し上げるということは越権でございますが、こうした事柄ども御論議が十分高まっていくのではないかということを期待をいたしております。  教育改革の中のもう一つの大きな柱はやはり高等教育にあるだろう、私はこう考えます。大臣としてこういう発言を申し上げることはどうも適当でないのかもしれませんけれども、高等教育に進む者、必ずしも学問をしたいという意欲から出てきているものなのか、それとも、今日的な社会の現象から考えて、大学を出ることによって資格を得、そしてよりよき就職をし、将来への足がかりとしたい、あるいは女性の場合は縁談を求めたいというようなことがもし本質的にそこにあるとするならば、高等教育のあり方の目的というものは全く異なってくるのではないか。これは、学生生徒を責めるのではなくて、そういう社会の仕組みにしていった私どもが反省をしなければならぬ、こういうふうに考えます。  同時にまた、今日、高等教育の国にかかわる経費を考えてまいりましても、国立大学にかかわる経費と、そして全体の八〇%を負担をする私立大学がかかわる経費とは、こういうバランスで果たしていいものだろうか。これは私は個人としても、前々から党の文教政策をやっておりまして、そこのところをいつも悩んでおる一人でございまして、また、高等教育の学問の領域というのがやはり今日的なこのままでいいのかどうか、こうしたことも、将来の二十一世紀の少なくとも中ほどぐらいに視点を置いて考えておかなければならぬ問題であろうというふうに考えます。  いずれにいたしましても、馬場先生おっしゃったとおり、我が国は平和憲法を掲げた世界の中でただ一つのまさに希有な平和国家でありますから、この平和国家がこれからなすことと言えば、御指摘がありましたように、やはり教育日本の国を大きく育て、そしてまた文化を大きく伸ばしていくということであろうと思いますし、そういう中で日本教育が、日本人だけの教育ではなくて、世界全体、国際社会の中における日本教育の役割、あるいは日本教育の中で学んだものが国際社会の中でどのように貢献をしていくのか、こうしたことを私どもはこの教育改革の大きな一つの視点にしていかなければならぬ、こういうふうに考えているわけであります。
  37. 馬場昇

    馬場委員 今大臣もちょっと疑問を差し挟まれたわけでございますが、学問とか教育というのは真理を探求することであるし、人格の育成に資するべきものであって、いやしくも教育というのを利殖の手段とかあるいは投資と利益だとか、そんな考えではもう教育は成り立たないと私は思います。そういう点につきまして、やはりそういうことは学歴社会とかなんとかいろいろあるものですから、そこをよくしなければならぬ面もありますけれども、少なくともこの教育費の負担というものについては、教育改革の中では大変ですから、政府のつくる臨時教育審議会の中ではなしに、私ども提案します国民教育審議会の中でそういうことをやった方がいいのではないかと思うのですけれども、それはそれとして、今内閣委員会でやっておるわけでございますから。  そこで、次の問題に移りますが、これは局長、無利子奨学金と有利子奨学金はどちらが原則かということは前々から言われまして、あなた方の答弁では、無利子が根幹でありますということをおっしゃっているのですけれども法律のどこを見たって無利子が根幹と書いてないんですよ。だから、私はどこかでこの根幹が崩れやしないかということをまずもって大変心配しておるわけです。何もこれは私が杞憂で心配しているのではない。具体的にもう今度の実施に出ておるわけですから、無利子が現在よりも九千人少なくなっておるわけですから、そういう点、こういう状況でいきますと、この無利子の根幹というものを法律に明定していなければ、だんだん根幹が、幹が細くなって、枝葉ばかり大きくなってその木は死んじゃった、こういう格好になる可能性もあるわけですから。このことは法律には書いてないわけですけれども、無利子制度の縮小とか、こういうことは、根幹ですから、幹ですから、絶対に行いませんということをやはりこの答弁で約束してもらわなければ困る。これが第一でございます。  もう一つは、この有利子というのは、やはり世界の動きにも逆行しますし、大変問題があると私は思いますので、有利子の問題は財政が好転したらやめるべきだ、そしてこれをやめて、貸与じゃなくて給付の方に持っていくべきだ、こういうぐあいに思います。  それから、もう一つ、今、大学と短大にこの有利子を導入するのですが、まさか高等学校にはこの有利子は導入しないでしょうね。その辺について心配しておりますから、答えてもらいたいと思います。
  38. 宮地貫一

    宮地政府委員 お尋ねの第一点の、無利子貸与制度が全体の育英会育英奨学事業の根幹という考え方については、従来から何度がお尋ねがありましてお答えしておるとおりでございまして、この無利子貸与制度育英会育英奨学事業対象となるすべての学校対象としておりますのに対しまして、有利子貸与は具体的には大学と短期大学に限定をして取り上げていくという考え方をとっておるわけでございます。また、具体的な全体の人数から申しましても、無利子貸与制度の新規採用人員が約十二万人に対しまして、有利子貸与制度の新規採用人員が約二万人というように、量的な面でもその点ははっきり示されているかと思います。  それから、お尋ねの第二点の、財政状況が好転すれば有利子貸与制度は廃止をすべきではないかというお尋ねでございますが、その点は一つの考え方でございまして、将来その時期がいつになるかは、この点は財政全体の動きを見なければならぬわけでございますが、制度として起こしております以上、この制度自体の意味は私どもも持っておろうかと思いますので、これは今後この制度を運用してまいりまして、これからの実態を十分見きわめまして検討すべき課題ではないかなというぐあいに考えます。  それから、第三点の、むしろ将来給付制度というものも考えるべきではないかという御指摘でございますが、その点はさきの調査会等においても議論はいたした点でございまして、将来の検討課題としては私どももその点は十分意識はしておるところでございます。  それから、お尋ねの第四点の、高等学校に有利子貸与を考えるというようなことはしないという考え方かというお尋ねでございますが、先ほども申しましたように、当面、育英会の行います育英奨学事業といたしましては、量的拡充が特に望まれております大学、短期大学について取り上げておるわけでございまして、私どもとしては、当面高等学校について広げるという考え方は持っておりません。
  39. 馬場昇

    馬場委員 少なくとも、無利子奨学金が根幹であるということで、それが法定されていないものですから、心配をさっき申し上げたのですが、今答弁もなかったのですけれども、無利子の方を今度九千人縮小されているのですから、非常に心配なんですよ。だから、この無利子の方を今後縮小はしないということぐらいは答弁してもらっておかぬと、全部有利子に打っちゃうのじゃないかという気がしますので、それをもう一度念を押します。  それと、もう一つ、利率の問題でございます。この利率もこの法律定めてないわけですよ。住宅金融公庫なんかの利率は、今はないようでございますけれども、法が制定されましたときには五・五%と法定されておりましたね。ところが、やはりこれは法定しておかぬと、三%と今言うけれども、だんだん利子補給が非常に多くなって、大蔵省にこれはおかしい、利率を上げなさいと言われたら、いつもあなた方は大蔵省に負けるのですから、そのときまた押し切られてしまう、こういうこともありまして、閣議の決定一つで、大蔵省が強ければ、今回は三%ですけれども、次は財投の利率の七・二%にやろうじゃないか、この教育市場は非常にもうけるから、次は銀行ローン並みに一〇%にしようかとか、閣議決定一つで上がっていく可能性がある、この利率も。だから、この三%というのは、利子付き反対ですけれども、少なくともこれ以上はしませんよというようなことを法定するのか、あるいはここで答弁としてはっきりさせておくのか、こういうことはぜひ聞いておきたいところでございます。  それから、もう一つは、これは思想が甚だけしからぬ。やり方を見てみますと、成績がよい者は無利子、成績の悪い者は有利子。これは教育目的からいって、人格の育成でしょう。機会均等でしょう。こういうことの中で、成績のいい者はあなたは無利子ですよ、悪い者はあなたは有利子ですよ、これは育英思想じゃないですか、奨学思想じゃないですね。これは憲法教育基本法に違反しておると私は思います。この点についてもひとつ解明をしていただきたいと思います。  さらに、返還免除制度、これはぜひ存続し拡大していくべきだ、給付に近づけるためにも、教育機会均等経済的理由によって教育が受けられないということがないようにする、この法の趣旨もあるわけですから、こういう点について返還免除制度は絶対に堅持していくべきだと思います。実は、この返還免除をなくしていきますと、有利子利子補給の金なんかをここでまた浮かそうという魂胆で免除をやめるというようなことが心配されますので、この維持について申し上げておきたいと思います。  それから、この法律に見てみますと、四十条に、政府育英会に対して無利子で「貸しつけることができる。」と書いてあります。しかし、これはなぜ「貸し付ける」としなかったのですか、その意味をお伺いいたしておきます。
  40. 宮地貫一

    宮地政府委員 お尋ねの点で、一つは、無利子貸与についての人員の減というようなことを今後考えないということについてどうかというお尋ねでございまして、本年度の予算について無利子貸与について人員削減を行いましたのは、それぞれ理由立てがあるわけでございますが、私どもとしては、それの学年進行ということ以上に無利子貸与を、人口といいますか、新規採用人員の規模で減らすということは考えておりません。  それから、第二点の、利率について今後法定をすべきではないかという御指摘を含めてのお尋ねでございますが、私どもといたしましても、この有利子貸与制度を創設するにつきましては、今後、学年進行で現在の規模でいけば将来の利子負担分がどうなるかということも、十分将来のことも見通しまして、財政当局とも折衝をいたして、結論として、今日御提案を申し上げているような内容で貸与をいたすわけでございます。  先ほど、有利子貸与制度については将来は縮減すべしというような御指摘もございましたが、私どもとしても、現在御提案申し上げておりますものが二万人の新規採用の規模でございますが、私どもとしては学年進行でそれを進めていくという形で考えておるわけでございまして、全体の量的な規模の拡大を将来の事情でどうするか、その点はなお議論はあろうかと思いますが、当面私どもとしてはこの規模で貸与をしてまいりたいと思っておりますし、その際の利率について引き上げるというようなことなどは、もちろん学年進行完成時点まで考えていない事柄でございまして、それは先般のお尋ねにもありましたように、将来の利子負担が学年進行が完成する時点で相当の額に上るということも、財政当局ともそれらも十分踏まえて検討した結論として私ども提案を申し上げておるわけでございます。  それから、無利子と有利子貸与とでの学力基準の差についてのお尋ねでございますけれども、この点は、従来が一般貸与と特別貸与というような形で学力基準の差を設けていた点がございますものですから、より優遇されております無利子貸与について、学業成績、家計収入とも有利子貸与に比べてより厳しい基準で貸与をするという対応をいたしておるわけでございます。なお、経済的に大変厳しい方々に対しては、この両者を併用するというような道も開いておるわけでございまして、それは特に経済的に厳しい、経済的に家計収入その他から見て両者の併用がぜひとも必要であるというような方々については併用するというような考え方も取り入れている点からも、御理解をいただける点ではないかと思います。  それから、お尋ねの第四点かと思いますが、返還免除措置、教育職、研究職の返還免除についてのお尋ねであったかと思いますが、返還免除については、特に臨調その他でいろいろな御指摘がございまして、今日まで調査会でも検討いたした結論といたしまして、一つには、無利子貸与を一本化して、従来特別貸与についての返還免除という仕組みがございましたものが、その点では返還免除の仕組みとしては一つ縮減されることになるわけでございますが、私ども人材確保の観点から、教育職、研究職の返還免除という制度はなお存続させるべきものという結論を得て、今日御提案を申し上げておるわけでございまして、その点については制度として私どももその意味を十分考えながら運用してまいりたい、かように考えております。
  41. 馬場昇

    馬場委員 次に、奨学生の選考基準についてお伺いいたしたいと思いますけれども、先ほどから何回も申し上げておりますけれども経済的理由によって機会均等を失してはならないという憲法教育基本法趣旨に従いましてこの育英会法ができておるわけでございますけれども、今学力基準と経済的基準で選考しておるわけでありますが、これは憲法教育基本法趣旨によりますと、経済的基準だけでいいのではないでしょうか。何か予算の都合とかなんとかということで学力基準でいきますと、憲法教育基本法に抵触しますし、育英思想になりますよ。やはり機会均等の思想というのは貫かなければならぬと思いますし、そういう意味で、学力基準と経済基準というものについて、学力基準をなくして経済基準だけでいいのではないか。それで、経済基準の中で、やはり経済的状況によっては、給貸与とかの額を幾分変えてもいいのではないかとさえ私は考えるわけですが、その辺についての御意見というのをお伺いしたいと思いますし、それから次に、これは直接この法律に書いてないのですけれども、やはり入学一時金というものの貸与も考えていいのじゃないかと思いますし、さらに、高等教育は、本当に最近の東京都の調査でも、きょうのある新聞の社説なんかにも、教育費地獄と言われるように家計に占める教育費の比率が二割だとか三割だとかずっと上がってきておるわけですから、そういう意味で、この奨学金だけでなしに、授業料の免除措置の拡大だとか、あるいは所得税に対して教育費控除をつくるとかという税制の優遇策を講ずるとか、教育費負担の地獄と言われるところを解消していくべきだと思うのです。そういう点についての考え方。さらに、公私の差が非常に多いわけですね。公立の三倍くらい私立は学費負担をしておるわけです。やはりこの解消のためには、私学の助成という点についても、今後退しておるのですけれどもさらに前進させるべきではないかというぐあいに思いますが、そういう点についてお答えください。
  42. 宮地貫一

    宮地政府委員 まず、学力基準はやめるべきではないかという御指摘の御意見でございますけれども、その点は、基本的には物差し、考え方としてそういうものをもって対応するということは、従来からの仕組みから考えましても、今直ちにそのことをやめるということについては、私どもこの場でそういうことを今御答弁申し上げられないわけでございます。いろいろ御指摘のありました点は十分留意はして検討をさせていただきたいと思います。  それから、先ほどのお尋ねで、貸付金を貸し付けることができるという規定はおかしいではないかという御指摘でございますが、これは現行法上も「貸付ヲ為スコトヲ得」という規定で、それを受けた趣旨改正法でも「貸し付けることができる。」というぐあいに規定をしておるものでございます。  それから、全体的に教育費の負担の問題が大きいという御指摘の点は、確かに私どもも一つの問題点という意識は十分持っておりまして、例えば授業料免除制度につきましても、その枠の拡充というようなことについても従来努力もしてきております。教育費、特に高等教育教育費の父兄負担の軽減という観点から、そういう授業料免除というような仕組みとあわせまして全体的に今後とも対応しなければならない課題ということは、私ども十分認識をいたしております。  ほかに、教育減税というような観点での対応ということも御指摘がございましたが、税制上の問題は、いろいろな面で一般税制と個別の対応をどうするかという基本的な相当大きい問題があるわけでございまして、こういう育英奨学事業の拡充というような観点から対応をしてきたというのが従来の文部省がとってきております施策の進め方でございまして、御指摘のありましたような点などについても、今後の課題という意味では私どもも意識をしておる点でございますけれども、全体的に教育費の、特に高等教育における費用負担の問題、確かに御指摘のように大きい問題だと私どもも認識をしております。それらの取り組みについてはいろいろな施策を通じて対応しなければなりませんが、さらに教育費全体の中での高等教育のあり方その他の面でも十分検討をさせていただきたい、かように考えます。
  43. 馬場昇

    馬場委員 時間がほとんどありませんけれども、最後に、文部大臣にお聞きいたしたいと思います。  私は、この奨学事業について二つの面から非常に危機感を抱いております。またこの法律を加えますと三つの面になるわけでございますけれども、まず、この有利子化の問題については、当初文部省は反対であった、こういうぐあいに私は聞いておるわけでございます。  さらに、育英会の前の理事長の村山さんもこういうことを言っておられます。「有利子制や免除範囲の軽減など、学生の負担増になることは、奨学事業担当者としては遺憾なことであり、我国の奨学事業は先進諸国に比べて現在も遜色があり、財政的に一時有利子を導入しても、出来るだけ早く無利子に戻し、拡充するよう努力すべきである。」こういうぐあいに文部省も有利子化についてはもともと反対、それで事務担当しておる育英会ももともと反対。そういう状況の中でどこから出てきたかといいますと、この有利子化構想というのは、臨調や大蔵省の主計局に文部省が押し切られた産物ではないか、私はこういうぐあいにも思います。この文部省の主体の侵害という点に非常に危険なものを感じます。  いま一つは、一九七八年、昭和五十二年に日本の金融機関が教育ローンを一斉に発足させました。そして、第二臨調の委員の中とか専門委員、参与の中に、あるいはこの育英奨学事業に関する調査研究会の委員の中に、金融関係者、銀行の役員の方がたくさん顔を出しておられるわけでございます。そういう点から、私は、教育の場というものを銀行の有望な投資市場にしたいという気があるのじゃないか。こういうことを考えますときに、現在学校に無利子の貸与制度があるということは、教育の場を銀行の投資市場、教育ローンにしたいというときに、これは目の上のこぶになるわけですから、そういう意味で、有利子をだんだん導入していって、将来は無利子をなくして有利子にしていこう。文部省は今までの質問でそういうことは考えていないんだとおっしゃいますけれども、こういういわゆる教育ローンを拡大しようという金融資本の戦略というものがこの後ろに隠されておるのじゃないか、こういう心配を私はするのです。こういう点について一つです。  それから、もう一つ、そういう点がありますが、この法律の第四十三条につきまして、文部大臣と大蔵大臣が協議をするということになって、たくさんの協議をすることになっておりますが、この協議の中で、大蔵大臣から文部大臣の方がやはり圧力を受けるのじゃないかということについての心配をいたします。  この三つの心配につきまして申し上げたいのですが、ひとつさらに答えていただきたいのは、育英会職員の給与のことについて……(発言する者あり)ちょっと待ってください、すぐ終わりますから。育英会の職員の給与について、これは会長と職員の団体交渉、労働三権で決めるわけですから、それを文部大臣と大蔵大臣が協議しなければならぬということは労働三権の侵害じゃないか、こういうことについて心配をしておるわけでございますが、こういうことにつきまして文部大臣の見解をお聞きしておきたいと思います。
  44. 森喜朗

    森国務大臣 いろいろ御指摘をいただきましたが、基本的に、たびたびの各党の皆さんの御質問に対しましてもお答えを申し上げておりますように、私どもとしては、育英奨学資金制度は基本的にこの制度を充実していかなければならぬ、これが大前提でございます。したがいまして、質的な改善をしていきたいということで単価アップ等も考えたわけでありますが、財政的な全体的なシーリングの枠の中にございますと事業の拡大は極めて難しい、こういう中ででき得る限り量的な拡大を図るという一つの大きなねらいからこうした考え方を併用して踏み切ったわけでございまして、私どもは、すべてこの考え方、こういう方向が正しいという方向で納得をして進めておるということではないわけでございます。あくまでも基本的には、奨学資金を受ける学生たちができるだけ多くあってほしい、そしてまた、今先生からも御指摘がございましたように、でき得る限りその範囲は拡大をしてあげたい、こういう基本的な理念に立っておるものであるということをぜひ御理解をいただきたいと思うわけでございます。  そしてまた、臨調等から押しつけられたものではないか、あるいはこれは若干、馬場先生におしかりをいただくかもしれませんが、そのメンバーの中には財界や金融関係の人がおられて、そのことにということの御心配もあるようでありますが、臨調は、端的に申し上げて、御指摘がありましても、私どもといたしましては、調査研究会というのがいろんな指摘を受けながら研究を進めてきた中で、その調査研究会の報告の中で、教育機会均等の確保という観点から育英奨学事業の拡充が必要である、そのためには外部資金の導入をして低利の有利子貸与制度を創設しよう、こういうふうに提言を受けて、この制度に踏み切ったわけでございますので、今先生から御指摘をいただきましたような、財界主導あるいは金融主導という形でいわゆる教育ローン、その一つの延長線で考えたものでないということは、この際明確に申し上げておきます。  なお、特殊法人の財務、会計に関しました重要事項は、大蔵大臣と密接な連絡が必要でございまして、そのために大蔵大臣と協議をしていくということは重要なことでございます。現行の日本育英会法には大蔵大臣との協議の規定はございませんでしたので、今回の改正に際しまして、最近の立法例がこうした方向になっておりますので、この規定に合わせて整備を行ったものでございまして、文部省が主体性が損なわれるものではないということをこの委員会ではっきりと明言をいたしておきたいと思います。  残余の、給与の問題につきましては、政府委員から答弁をさせたいと思います。
  45. 宮地貫一

    宮地政府委員 役職員の給与等につきまして、公共的性格から見まして、他の同種の法人の給与等との均衡等も考慮して決定するということが必要でございますので、他の特殊法人の例にならいまして、文部大臣の承認を必要とし、さらに、その支給基準の制度そのものは財務、会計に関する重要事項の一つでございますので、大蔵大臣との密接な連絡を保つために協議をすることとなっておるわけでございまして、他の特殊法人の場合にも同様でございますので、特に日本育英会に対して大蔵省の監督が強まるというぐあいにはども理解しておりません。
  46. 馬場昇

    馬場委員 時間が経過しましたので、終わります。
  47. 愛野興一郎

    愛野委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  48. 愛野興一郎

    愛野委員長 この際、本案に対し、船田元君から自由民主党・新自由国民連合提案による修正案が提出されております。  提出者から趣旨説明を求めます。船田元君。     —————————————  日本育英会法案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  49. 船田元

    ○船田委員 ただいま議題となりました修正案につきまして御説明申し上げます。  案文は、既にお手元に配付されておりますので、朗読は省略させていただきます。  修正案の趣旨は、本法の施行期日、昭和五十九年四月一日は既に経過いたしておりますので、これを公布の日から施行することとし、これに伴い、昭和五十九年度入学者及び大学院生については、本法の学資の貸与に関する規定昭和五十九年四月一日から遡及適用する等の措置を講じようとするものであります。  何とぞ委員各位の御賛成をお願いいたします。
  50. 愛野興一郎

    愛野委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     —————————————
  51. 愛野興一郎

    愛野委員長 これより原案及びこれに対する修正案を一括して討論に入ります。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。中西績介君。
  52. 中西績介

    中西(績)委員 私は、日本社会党・護憲共同を代表して、日本育英会法案の採決に当たり反対討論を行います。  日本育英会奨学事業は、一九四四年に創設され、今日まで四十年間にわたり約三百四十万人の学資に恵まれない学生生徒奨学金を貸与し、その修学を支えてまいりました。この事業教育の振興に大きく寄与してきたことは高く評価されるところであります。  本法案は、その意味で、四十年間の奨学事業を総括し、今後の事業のあり方を決定する重要な法案でありますだけに、慎重な審議を行う必要があったわけであります。しかし、政府並びに文部省は、奨学金に期待する学生生徒を人質として法案の早期成立を図り、本年度入学者に対する予約採用並びに在学採用の支給、募集を大幅に遅延させました。改正法が成立するまでは現行法が適用されるべきで、奨学事業のように恒常的で継続性が必要な事業が中断されたことは大変遺憾であります。この責任はすべて政府文部省にあると言わなければなりません。  さて、本法案には次のような問題点があることを指摘しなければなりません。  第一に、第一条の目的でありますが、すぐれた学生及び生徒であって経済的に修学困難な者に奨学金を貸与するという趣旨ですが、奨学金貸与を一部のすぐれた学生生徒だけを対象にする英才主義をとるものであり、教育を受ける権利を保障する憲法第二十六条並びに教育機会均等実現目標とした教育基本法第三条にも明らかに反するもので、到底賛成はできません。  第二に、第二十二条の中に規定されています利息付きの学資金、つまり有利子奨学金についてであります。まず、欧米先進諸国では、返還義務のない給与制を基本とし、貸与制並びに有利子制は補完的に存在するにすぎません。我が国の現行貸与制は、これらに比べて大きくおくれており、先進諸国の中で最も劣悪であることは文部省も本委員会で認めたところであります。今回、財政上の問題を理由に有利子を新設することは、本制度をさらに後退させ、奨学金のローン化に道を開くものと言わなければなりません。参考人の稲葉東大教授は、有利子制は教育の論理が資本の論理に屈服していくことであり、ひいては教育の変質につながると指摘されましたが、私が最も心配し危惧する点はまさにこの点であります。  次に、利率と採用枠についてでありますが、利率は三%と政令で定められるわけでありますが、この有利子制の財源は財投に求めるということですから、将来三%が五%、七%に徐々に引き上げられないという保障がない点であります。採用枠についても無利子貸与を根幹とすると言っていますが、法案の中に何ら保障する規定がなく、将来、行政改革に追随して有利子制が拡大され、逆に無利子制が縮小される心配を払拭することはできません。  さらに、学力基準については、特にすぐれた学生生徒、例えば大学の場合、高校成績平均三・五以上の者は無利子貸与、すぐれた学生生徒、つまり三・二以上の者は有利子貸与と差別した点であります。現在、教育界は、偏差値教育の是正に向けてあらゆる努力を試みようとしておりますが、奨学金貸与に偏差値原理を持ち込み、卒業後も長期にわたり負担の差別を強いることは、教育軽視も甚だしいと言わざるを得ません。本来、奨学金貸与に学力基準による制限が不要であることはさきに第一条目的条項でも指摘したとおりであり、経済的条件のみで選考すべきであります。  第三に、特別貸与と一般貸与の一本化については、現行特別貸与は、一部返還免除制をとり、一歩給与制に近づいた制度でありますが、この返還免除制度を全廃して一本化するわけであります。このことは明らかに後退であり、受益者負担を大きく強いるものであると言わなければなりません。  以上の理由から、政府提出原案に強く反対します。  最後に、家計に占める教育費負担が異常に高騰している現在、奨学事業の真の拡充は多くの国民の待望する施策であり、教育の高適な理想も、学生生徒教育を受ける機会が均等に与えられなければ実現は困難であり、奨学事業はまさに教育の根幹であると言えます。教育改革を唱える政府文部省は、本法案に見られるような姑息な手段を改め、国民要求に沿った教育大国と呼べる真の奨学制度の確立を図るため、抜本的改革を行うべきであります。  以上、本法案に対する反対討論を終わります。(拍手)
  53. 愛野興一郎

    愛野委員長 次に、榎本和平君。
  54. 榎本和平

    ○榎本委員 私は、自由民主党・新自由国民連合を代表いたしまして、政府提出日本育英会法案及び我が党提出の修正案について、賛成の意見を申し述べます。  近年における高等教育等の普及は目覚ましいものがございまして、その学生数も著しく増加している反面、学生生活費の上昇等により、子弟の教育費に苦しんでいる家庭が少なくございません。  このような社会経済情勢に対応いたしまして、高等教育等の機会均等を確保していくためには、育英奨学事業は、貸与人員においても、貸与月額におきましても、その改善充実を行うことが急務となっております。  しかしながら、現下の国の財政事情は極めて厳しいものがありまして、従来のように一般会計にのみ依存する方法では、育英奨学事業の拡充は困難となっているのが現状でございます。  今回の制度改正は、このような状況にかんがみ、日本育英会育英奨学事業に関し、無利子貸与制度事業の根幹として存続させ、貸与月額の引き上げなどの整備改善を行うとともに、育英奨学事業の量的拡充を図るため、財政投融資資金の導入による低利の有利子貸与制度を創設するものでありまして、まさに時代の要請にこたえるものと確信するものでございます。  また、有利子貸与制度と申しましても、学生に全額を負担させるものではないのでございまして、学生利子負担をできるだけ軽減するため、国が利子補給を行い、貸与利率を在学中は無利子とし、卒業後も年三%に抑えているわけであります。市中金利や物価上昇を勘案すれば、年三%という利率は決して高いものではないはずでありまして、学生のために配慮された制度であると評価できるものであります。  さらに、現行の日本育英会法は、昭和十九年に制定されたものでありまして、今日から見れば規定の整備を必要とする点が少なくございません。例えば、片仮名書き文語体の法文は一般に理解しにくいものとなっております。このような点にかんがみ、憲法及び教育基本法規定を考慮して教育機会均等に寄与することを目的規定に掲げるなど、制度全般にわたる規定の整備を行うとともに、平仮名書き口語体に改めて法文の平明化を図ることは、まことに時宜にかなった適切なものと言わなければなりません。  この制度改正によって、今後、育英奨学事業が特段に改善充実されることを確信いたし、政府提出原案及び我が党提出の修正案に賛成する次第でございます。  以上であります。(拍手)
  55. 愛野興一郎

    愛野委員長 次に、池田克也君。
  56. 池田克也

    ○池田(克)委員 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりました日本育英会法の採決に当たり、反対の討論を行うものであります。  反対の理由の第一は、教育にかかわる国の予算のあり方について、私ども考え方と開きがあるということであります。  先ごろ新聞各紙が報じましたように、家計支出に占める教育費の支出が二割を超え、父母は重い教育費の負担に苦しんでいるのが実情であります。資源の乏しい我が国にあって、人材の育成は最も重要な仕事であります。国民の各界各層もひとしくこの認識に立ち、涙ぐましい努力をしつつ、子弟を教育しようとしているのであります。高校進学九四%、大学進学三五%という数字はこれを物語っております。  臨時教育審議会の設置法も提出され、国民教育改革に大きな期待を抱いております。その国民が抱いている教育改革への期待の中に、この教育費の家計負担について軽減を望む声が強いことは事実であります。不況が長引いて、税収は見込みを下回り、赤字国債の発行によって苦しい財政運営が続けられてまいりました。  税収の落ち込みについて、景気の一日も早い回復が叫ばれ、公共事業の前倒し発注等が行われましたが、それでもなお思わしい結果となっておりません。大衆消費は低迷しております。私は、こうした状況を生み出した要因の一つに、家計を圧迫する教育費の負担があると考えます。  私は、予算委員会でも、大蔵大臣に対し、文教予算に対し一律シーリングを課すことのないよう、それによって父母の負担がふえることはかえって不況の要因となる旨主張したのであります。  今回提案されました日本育英会法改正も、厳しい財政事情という言葉がいつも本委員会で語られました。だれもが給付制を理想とし、諸外国から著しくおくれた我が国の育英施策を認識しながら、理想とは逆の有利子制へと根本的な制度改革に踏み出そうというのであります。  私は、臨時教育審議会設置法が国会にかけられている今、つまり教育改革を進めようというとき、育英会法が有利子で立法されるということは不思議な時の一致であり、まことに皮肉なめぐり合わせだと感ぜざるを得ないのであります。大蔵当局の厳しい予算措置の中で、財投の資金の導入によってようやく対象学生の枠を広げようという発想、ここに政府教育観を見る思いがするのであります。こんなことでは、臨教審で何が決められても、財源難ということで何もできないのではないかという心配すらしたくなるのであります。法案の採決に当たり慎重に考えましたが、どう考えても改善とは認めがたく、ここに反対を表明する次第であります。  第二の理由として、利子が将来にわたって三%と低利を維持できるか。利子補給が十年後に百五億となるとき、これも大きな心配であります。また、有利子、無利子のそれぞれ貸与を受ける学生の選ばれ方も、平均の成績が三・五で無利子、三・二で有利子と、わずか〇・三の差が将来にわたって利子を支払うか否かの責任学生に課すことに抵抗を感ずるのであります。  第三に、私は、育英という事業は必要であると考えます。育英会事業は、貸与後も学生の成績を細かくチェックし、学業に専念してもらうように督励をしております。国家、人類のため役立つ人材に育ってほしいという願いがこれに込められております。学生もそうした国民からの期待を背に学業にいそしんでおられると信じます。使命感を与え、その勉励が青春をより実りあるものにしていくでありましょう。そうした育英事業のあり方を考えるとき、一般会計の予算を用うべきであり、財投を用いて有利子とするのには首をかしげざるを得ないのであります。  私は、この立法とは別に、所得制限や学業成績による審査を排除し、低利の教育ローンについて道を開くことは大いに賛成であります。特に入学一時金につきましては、昨今百万円にも及ぶ高額な現状にかんがみ、教育界と金融機関との協議による何らかの対応はぜひ進められたい、このように望むものであります。  なお、国公立と私大間の格差の是正も改めて強く主張したいのであります。経済事情で枠をはめる場合、自営業、サラリーマン間で所得の捕捉が異なることから、不公平が生じやすい点も指摘をしておきたいのであります。  以上、幾つかの点を申し述べましたが、本案に反対する理由として後世に記録をしておきたいと思う次第であります。  以上です。(拍手)
  57. 愛野興一郎

    愛野委員長 次に、山原健二郎君。
  58. 山原健二郎

    ○山原委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、日本育英会法案に対する反対討論を行います。  言うまでもなく、育英奨学事業は、教育機会均等という戦後教育の根本精神を実現するための極めて重要な施策であります。その施策の根本にかかわる法改正をしようとする場合、国会での慎重な審議が保障されるよう、かつまた、実際の業務にそこを来さぬよう十分の配慮を踏まえた形で法案提出がなされるべきであることは言うまでもありません。しかるに、本法案に関する政府の姿勢は、こうした諸点を無視したものであるばかりか、奨学金支給を期待する学生生徒の窮状をいわば逆手にとる形で法案の早期成立を図ったとも受け取れるものであり、法的にも道義的にも全く理不尽きわまるものと言わなければなりません。  こうした姿勢を政府が直ちに改めるよう、反対討論の冒頭をかりまして、重ねて強く求めるものであります。  さて、最近の教育費に関するもろもろの家計調査結果が端的に示すように、多くの家庭は増大する教育費の重圧のもとでまさに悲鳴を上げているというのが実態です。こうした事態の中で、国の行う奨学事業が量的にも質的にも本来的役割を十分果たし得ない現状にあることはまことに遺憾であります。  国際的に見ても、先進諸外国の公的奨学事業が給与制を基本としているのに対し、我が国は貸与制であるなど、極めて低劣な状況にあることは政府も認めているところであります。また、国際人権規約A規約が批准国に義務づけている適正な奨学金制度の概念は、給与制と解釈されるものであって、少なくとも奨学金とも呼べない有利子制などを想定したものでないことは明らかであります。  こうした諸点を考慮すれば、憲法教育基本法定め教育機会均等実現に向かって政府が今なすべきことは、現行無利子貸与制度の抜本的拡充であり、さらに給与制への発展という展望を指し示すことにあるはずであって、有利子制度の導入など言語道断と言わなければなりません。教育ローンともいうべき有利子制度の導入は、教育の見返りを個人の金銭的利益に求めようとする憂うべき風潮に国みずからが拍車をかけることにもなりかねないものであって、奨学制度の変質にとどまらず、教育全体にゆがみをもたらすものではないかと憂慮せざるを得ないのであります。  しかも、本法案では、有利子奨学金の利率は政令にゆだねられており、当初予定されている三%の利率が今後とも堅持される保障は、本日の文部省答弁でも確固としたものとは言えません。さらに、文部省は利率を法定することは法制度上なじまない旨の答弁をしておりますが、住宅金融公庫法では利率の上限を法定しており、法技術上の問題でないことは明らかであります。利率をすべて政令にゆだねたこと自体の中に財政当局との妥協の痕跡があらわに示されていると言って過言ではないはずであります。  また、無利子貸与が奨学制度の根幹として今後とも高い比重を占めていけるかどうかという極めて大事な点での歯どめもないのであります。歯どめがないところか、この有利子制度について、文部大臣は、補完的なものではなく無利子制度と並立するものと御答弁をなさったのでありますが、この疑念は解消していません。いわば無利子、有利子、いずれも根幹ともいうべき地位を与えられた有利子制度が、臨調路線や財政当局などの強力な後ろ盾のもとで、無利子を押しのけて肥大化していく可能性があると見るのは、決して杞憂ではないと思うのであります。  加えて、有利子奨学金の財源となる財政投融資そのものが、効率的運用の観点から厳しく見直しを迫られているものであり、一般会計からの多額の利子補給が将来にわたって担保されると見るのは、極めて甘い見方と言わざるを得ません。したがって、有利子制導入を決めることは、必ずや後世に悔いを残すことになると声を大にして言わざるを得ないのであります。  同時に、育英奨学事業の基本理念を示した目的規定にも重大な問題が含まれています。法案第一条では、「教育機会均等に寄与すること」とともに、「国家及び社会に有為な人材の育成に資する」ことを依然として目的の主要な柱に据えています。これは、戦時中の昭和十九年に制定された現行法の「国家有用ノ人材ヲ育成」という国家主義的教育観を今日に引き継ぐものと言わなければなりません。また、同条で、育英奨学金の支給対象を「優れた学生及び生徒」に限定していることも、教育基本法第三条が規定する奨学の理念から明確に逸脱するものであります。  以上、本法案は、主要な改正点において、憲法教育基本法が指し示す奨学事業のあり方と相入れないものであると断ぜざるを得ません。中曽根内閣が本気で教育基本法の精神にのっとる教育改革を目指すというならば、本法案は撤回されるべきであることを申し述べまして、私の反対討論を終わります。(拍手)
  59. 愛野興一郎

    愛野委員長 次に、江田五月君。
  60. 江田五月

    江田委員 私は、社会民主連合を代表して、日本育英会法案に対し、一言反対の意見を申し上げます。  我が国の財政事情が極めて困難な事態にある中で、文部省の皆さんが育英事業の拡充のために努力されていることにまず感謝いたします。  また、臨時行政調査会による有利子制度への転換の提案に対し、文部省があくまで無利子制度を根幹として堅持される方針で臨まれていることに敬意を表します。  しかし、法案への賛否は、担当の皆さんへのねぎらいの言葉とはおのずから異なるのは当然です。  私は、本法案には、次の一点でどうしても賛成することができません。  それは、言うまでもなく、安易な有利子制度の導入であります。ある社会が未来を持っているかどうかは、その社会が教育をどれほど大切にし、これに愛情を持っているかによって決まると思います。奨学金利子をつけるというやり方は、どう考えても教育を愛し、大切にした方法ではありません。しかも、その有利子制度が将来無利子制度にとってかわることがないようにするための工夫は本法案の中に何ら見当たりません。  本法案が施行されても、安易に無利子制度によりかかるのでなく、日本育英会を初めとして地方公共団体や民間によるものも含め、心の通った奨学制度を我が国に大きく育てていくことを文部省要望し、我々もまたそのためにあらゆる努力を傾けることをお誓いし、さらに、本法案審議中であることを理由現行法に基づく奨学生の採用手続を遅延させたことは誤りであることを付言して、私の反対討論といたします。(拍手)
  61. 愛野興一郎

    愛野委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  62. 愛野興一郎

    愛野委員長 これより採決に入ります。  日本育英会法案及びこれに対する修正案について採決いたします。  まず、船田元君提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  63. 愛野興一郎

    愛野委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいま可決いたしました修正部分を除いて、原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  64. 愛野興一郎

    愛野委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。     —————————————
  65. 愛野興一郎

    愛野委員長 ただいま修正議決いたしました本案に対し、船田元君外四名から、自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合及び社会民主連合の五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨説明を求めます。馬場昇君。
  66. 馬場昇

    馬場委員 私は、提案者を代表いたしまして、ただいまの法律案に対する附帯決議案について御説明を申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     日本育英会法案に対する附帯決議(案)   政府は、育英奨学事業の重要性にかんがみ、左記事項の実現に適切な措置を講ずるべきである。  一 憲法教育基本法の精神にのっとり、教育機会均等実現のため、育英奨学制度の拡充に努めること。  二 育英奨学事業予算の増額を確保し、貸与人員、貸与月額の拡充に努めること。  三 育英奨学事業は、無利子貸与制を根幹としてその充実改善に努めるとともに、有利子貸与制度は、補完措置とし財政が好転した場合には検討すること。  四 有利子貸与の利率は、長期低利を将来にわたっても維持し、奨学生の返還負担が過重にならないようにすること。  五 奨学生の選考については、主として経済的基準を重視し、その収入限度額を大幅に引き上げるよう努めること。  六 日本育英会奨学金受給者数の国公立と私主との格差の是正に努めること。また私学助成の拡充に努めること。  七 国の補助や税制上の措置の活用等により、地方公共団体の行う育英奨学事業及び育英奨学法人の育成に努めること。  八 返還免除制度は堅持するよう努めること。  九 国際人権規約第十三条2(b)及び(c)については、諸般の動向をみて留保の解除を検討すること。   右決議する。 以上でございます。  その趣旨につきましては、本案の質疑応答を通じて明らかであると存じますので、案文の朗読をもって趣旨説明にかえさせていただきます。  何とぞ御賛同くださいますようお願い申し上げます。  以上であります。(拍手)
  67. 愛野興一郎

    愛野委員長 これにて趣旨説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  68. 愛野興一郎

    愛野委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、本附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。森文部大臣
  69. 森喜朗

    森国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その御趣旨について十分検討してまいりたいと存じます。
  70. 愛野興一郎

    愛野委員長 なお、ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  71. 愛野興一郎

    愛野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  72. 愛野興一郎

    愛野委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後二時五十三分散会      ————◇—————