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1984-06-29 第101回国会 衆議院 文教委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年六月二十九日(金曜日)     午前十時三十一分開議 出席委員   委員長 愛野興一郎君    理事 石橋 一弥君 理事 大塚 雄司君    理事 白川 勝彦君 理事 船田  元君    理事 佐藤  誼君 理事 馬場  昇君    理事 有島 重武君 理事 中野 寛成君       青木 正久君    稻葉  修君       臼井日出男君    榎本 和平君       坂田 道太君    二階 俊博君       葉梨 信行君    町村 信孝君       渡辺 栄一君    木島喜兵衞君       佐藤 徳雄君    田中 克彦君       中西 績介君    池田 克也君       伏屋 修治君    藤木 洋子君       山原健二郎君    江田 五月君  出席国務大臣         文 部 大 臣 森  喜朗君  出席政府委員         文部政務次官  中村  靖君         文部大臣官房長 西崎 清久君         文部大臣官房審         議官      齊藤 尚夫君         文部大臣官房会         計課長     國分 正明君         文部省大学局長 宮地 貫一君  委員外出席者         大蔵省銀行局中         小金融課長   中平 幸典君         自治省財政局財         政課長     小林  実君         文教委員会調査         室長      中嶋 米夫君     ————————————— 委員の異動 六月二十八日  辞任        補欠選任   佐藤 徳雄君    元信  堯君   中西 績介君    嶋崎  譲君 同日  辞任        補欠選任   嶋崎  譲君    中西 績介君   元信  堯君    佐藤 徳雄君     ————————————— 本日の会議に付した案件  日本育英会法案内閣提出第二五号)      ————◇—————
  2. 愛野興一郎

    ○愛野委員長 これより会議を開きます。  内閣提出日本育英会法案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田中克彦君。
  3. 田中克彦

    田中(克)委員 六月二十日に行われました文教委員会において、我が党の佐藤徳雄議員質問に対しまして、文部大臣は、予約学生以外の奨学金を希望する学生に対しましても早急に受け付け開始するよう鋭意努力する旨回答しました。六月二十二日、中西議員あるいはまた山原議員からも、同様趣旨要求が厳しく行われてきたところであります。  きょうは既に二十九日で、六月も終わろうとしているわけでありますが、七月に入りますと、私学等は早々に夏休みに入ります。このタイミングを外すと奨学金支給がさらに大幅におくれて、給付が年末か年明け、こういう大変憂慮されるような事態になることが心配されます。——したがって、昨日の理事懇、けさの理事会、こういうところでこの問題が大変議論をされ、文部省からも一定見解が示されたと聞いておりますけれども、特にその中で、理事会として確認されたことは、「在学採用予定者を緊急に救済するため、現行法に基づき、可及的速やかに募集開始されたい。」このことが確認をされた、こう聞いていうわけであります。  この確認に基づいて、日後、文部省はこの事態を早急に解決するためにどのような態度で臨もうとしているのか、まず最初にその点をお伺いしたいと思います。
  4. 宮地貫一

    宮地政府委員 御指摘のように、「在学採用予定者を緊急に救済するため、現行法に基づき、可及的速やかに募集開始されたい。」という理事会での御議論を受けまして、私どもとしては、既に、予約採用につきまして両院の委員長の御要請を受けまして、可能な限りの救済措置ということで予約採用について募集実施し、奨学金支給事務開始しているわけでございますけれども、ほぼそれと見合います範囲内におきまして、現行法によります募集実施いたすことに決めたわけでございます。  考え方といたしましては、今回改正お願いしておりますこの制度に、改正法に吸収され得る範囲内での措置ということで考えているわけでございますが、基準については、特別貸与相当基準一般貸与として採用をするというような考え方でございます。  なお、全体の数につきましては、五十八年度において特別貸与として実施をしました数相当者を予定しているところでございます。私どもとしましては、夏休み前に各学校において募集事務が実際に開始されますように、それらの点については事務的に育英会とも十分相談をいたしまして、遺憾のないように対応いたしたい、かように考えております。
  5. 田中克彦

    田中(克)委員 そうしますと、確認をするわけでありますが、今回の措置によって新法に吸収し得る態勢で当面募集開始する、この考え方基本に立つと、今説明によりますと、採用予定者は五十八年度特別貸与相当数を当面予定して吸収をしていく、こういう考え方であるということでよろしいですか。
  6. 宮地貫一

    宮地政府委員 基本的にはそのような考え方のもとに実施をいたしたい、かように考えております。
  7. 田中克彦

    田中(克)委員 そうしますと、従来私どもが聞いておりました説明というのは、五十八年度在学採用予定者約八万二千人、このうち、特別貸与相当数というのは約四万七千。こうなりますと、依然としてまだ三万五千人の在学採用予定者が残る、こういうことになります。  現行法に基づいて募集開始するという議論は、佐藤委員がこの委員会審議の冒頭に尽くされております。したがって、理事会確認において、現行法に基づいて募集開始する、こういうことになりますと、法のもとにおいて平等でなければならない在学採用予定者、言いかえれば、貸与請求権あるいは期待権を同じように持っている学生が、特別貸与相当数学生だけがこの現行法に基づく恩恵に浴して、三万五千というこれから外れる学生はこの法の恩恵を受けない、こういう扱いになることは大変大きな矛盾であります。そのことは既に、佐藤議員質問の際にも当局見解としても、現行法に基づいて募集開始しているという点が確認をされておりますので、私は、この三万五千人をも含めて早急に募集開始するという考え方でなければ納得することができません。そのことについて回答を求めます。
  8. 宮地貫一

    宮地政府委員 現行法基準採用する場合に、先ほどもちょっと申し上げたわけでございますが、改正法成立後に無利子採用をいたそうとしても、ただいま御指摘人数募集することにすれば、新たな基準採用可能な人間を採用することができなくなるわけでございます。したがって、先ほども申しましたように、改正法成立後、改正法に吸収し得る範囲内ということで申し上げたわけでございます。もちろん、この募集に当たりましては、各学校夏休み前に募集事務開始し、そのためには所得証明その他の手続をそれぞれとることが必要なわけでございます。  私どもとしましては、新規採用というのは、いわば育英会奨学生との間に契約が成立をいたしまして初めて奨学生となるわけでございまして、その点は従来から御説明している点でもございますけれども、いわゆる予約採用の場合と新規在学採用とは、その点では性格が異なるものというぐあいに基本的には考えているわけでございます。募集事務について、夏休みというような事態を想定して、そのことがおくれることが非常に困るというような、この法案審議が今日の時点にまで来ているという現実の実態を踏まえまして、実際上、採用募集事務夏休み前に開始をできますように対応しようとしているものでございまして、残りの者について採用しないということで申し上げているわけではないわけでございます。その点は何度か御説明をしておるわけでございますけれども、新しい基準によっても吸収できる範囲内での者に救済措置を講ずるという基本的な考え方をとっているわけでございます。  なお、各学校ごと募集人員を割り当てる作業はこれから後になるわけでございまして、それらの点について、私どもとしても十分事務的に対応できる範囲内のことで対応していくつもりでございますけれども、御指摘の点ももちろん十分踏まえまして対応させていただきたい、かように考えます。
  9. 田中克彦

    田中(克)委員 前段答弁と今の答弁と、大変食い違いがございます。前段答弁の中では、当面、改正法に吸収し得る五十八年度特別貸与相当数対象として募集開始するということであったのです。今の答弁は、残る三万五千についてもそのことを排除するということは言っていない、今後この募集についても事務的にできるように努力していくということを言われているわけですね。前段答弁と食い違っていませんか。  私どもが言っているのは、要するに、四万七千人の特別貸与相当数というのは、いわゆる償還額貸与額を下回るので、このことについては一応の経過的措置も必要であろうけれども、残る従前の一般貸与に相当する三万五千の学生についても、募集に対して事務的に何ら支障になるような条件はないじゃないか、強いであるとすれば、いわゆる成績基準である三・二と三・五という差があることだけであって、直ちにこの学生対象とした募集開始するというのは、緊急に救済する必要がある学生すべてである、こういうふうに私どもは言わざるを得ない。もう一度その点を明確にお答えをいただきたいと思います。
  10. 宮地貫一

    宮地政府委員 私どもとしても、御指摘のように緊急に救済するために行うという、いわば一つの緊急避難と申しますか、そういう前提に立ちましてこの仕事に取り組んでいるわけでございます。したがって、その点は従来、予約採用の際に実施した事柄との整合性ということも考えまして、先ほど説明したような考え方に立っておるわけでございます。  ただいま申し上げましたのは、募集事務そのものはそれぞれ各学校において夏休み前に実施に移るわけでございますが、具体的に各学校ごとにどれだけ採用するかという採用人員の割り当てその他は、さらにその後の手続として進められていくわけでございます。先ほど来申し上げておりますように、改正法による基準現行法による基準とり方が異なっておるわけでございますので、改正法に吸収できる範囲内での対応で臨みたいということで御説明をしているわけでございます。  具体の人数とり方等につきましては、もちろん御指摘のようなことも踏まえて、なお検討する点があれば検討いたしたいと考えておりますが、人数についての当面の考え方をただいま申し上げたわけでございます。
  11. 田中克彦

    田中(克)委員 基本は、佐藤質問の際にも出ておりますように、予約生募集についても現行法に基づいて募集開始したわけです。したがって、今回の措置としてとられていこうとしているこの特別貸与相当数学生につきましても、当然現行法対象として募集手続開始されるものと私どもは理解する。しかもそれは、理事会回答を示された際に、理事会の一致した見解としてそのことも確認されている。こういうことであるとすれば、何ゆえ現行法に基づく一般貸与に相当する三万五千人の学生だけがこの問題と切り離されて特別に扱われるのか。現行法のもとにおいて、平等に法に基づいて早急に募集を同じように開始していく、これが原則でなければならないはずですが、そのことについてもう一度お伺いします。
  12. 宮地貫一

    宮地政府委員 その点の御説明は、先ほど来申し上げている点に尽きるわけでございます。今回御審議お願いしておりますこの法律案が一日も早く御成立をいただきまして、新法に基づく事務実施されることを私ども事務当局としては念願をいたしておるわけでございますけれども、それにいたしましても、こういう時期になってきておるという現実問題を踏まえまして、特に、もう夏休み目前にしておるというような現実事態対応するために、夏休み前に在学採用募集することについて踏み切るという考え方をとったわけでございます。その際にどういう範囲内で対応するかということは、予約採用の際に実施いたしましたやり方とほぼ見合う形での在学採用についての対応ということで考えておるわけでございまして、その点は、先ほども申しましたように改正法成立後、改正法に吸収できる範囲内で対応をするという事柄で臨んでおるわけでございます。  私どもとしましては、もちろん残りの者の採用につきましても、当然に改正法の新たな基準で、成立を見ますれば直ちに取りかかれるように諸準備は進めさせていただきたいとは思っておるわけでございますけれども、全体的に、それでは残りの者がと言われますが、具体的にその残りの者は一定基準の中にはまり得る方々採用可能な人たちではございますけれども、実際に奨学生採用するには、もちろんそういう学力基準所得基準というものが基準としてあるわけでございますが、そのほか、具体的に個々にどういう奨学生採用を決定するかということになれば、それぞれの調書その他を見まして優先順位に従って採用していくということになるわけでございます。それでは、基準に該当し得る方々すべてを奨学生として採用し得るかということになると、必ずしもそうはならないわけでございまして、基準に該当する方々の中から限られた人員について採用を決定していくという手続が進められるわけでございます。  私ども、当面緊急措置でやりますことは、夏休み前に現行法に基づく採用について募集事務開始するということでございまして、その際にめどとしてどう考えるかということについては、先ほど説明をしたような形で進めさせていただきたい、かように考えているわけでございます。
  13. 田中克彦

    田中(克)委員 伺っておりますと、いわゆる改正法に吸収できるということを前提文部省としてはお考えのようです。少なくとも理事会確認されているのは、現行法に基づいて募集を早急に開始するという確認でありますから、そうであるとすれば、新法改正法成立することを前提としてそれに吸収できるかできないかは行政の裁量の範囲の問題であって、私が言っているのは、基本的に現行法に基づく募集開始するとすれば、現行法一般貸与に相当する学生三万五千人を特別扱いすることは不当ではないか、こう言っているわけでありますから、そのことについての回答になっていないわけですよ。私は文部省の都合を聞いているわけじゃない。現行法に基づいて募集開始しているという事務について、何ゆえ一般貸与学生だけが特別扱いとして法のもとの平等を侵されるのかということを聞いているわけです。
  14. 宮地貫一

    宮地政府委員 問題は、先ほど来申し上げておりますように、現行制度におきまして、採用基準としては学力基準家計基準が組み合わせられた基準で、一般貸与基準特別貸与基準という二つのものがあるわけでございます。今回の在学貸与についての募集基準を定めるについても、この基準を使用することが適当であり、この組み合わせられた基準と別の基準を定めることは、その点では学校の中で混乱を生ずるから適当でないというぐあいに考えているわけでございます。  そこで御指摘の点は、一般貸与基準による募集採用実施すべしという御主張でございますけれども、それで行いますと、改正法成立後に改正法による無利子貸与に吸収することが困難でございますので、したがって、考え方としては現行特別貸与相当基準募集を行うという考え方をとっているわけでございます。
  15. 田中克彦

    田中(克)委員 回答にならない。納得できない。ちゃんと納得できる答弁をください。——私の質問に答えてください。
  16. 宮地貫一

    宮地政府委員 先ほど来御答弁を申し上げてまいっておるわけでございますけれども在学採用予定者を緊急に救済するために現行法に基づいて可及的速やかに募集事務開始すべしという御意向を受けまして、各党の御意向も十分踏まえまして、私どもとしても具体的に早急に対応をいたしたい、かように考えております。
  17. 田中克彦

    田中(克)委員 佐藤質問の際にも、この問題の経過については態度が留保されておりますし、中西質問の際もそうでありました。私がきょう質問いたしましても、納得のいく回答が得られなかったことはまことに残念でありますけれども、今そういう見解が示されましたが、私といたしましても、前者の質問同様、この問題につきましては態度を留保いたしまして質問を前に進めていきたい、こういうように思います。  質問の角度を変えますけれども、この改正法案では附則の第一条で、「この法律は、昭和五十九年四月一日から施行する。」こうあります。当然、文部省は、この四月より始まる新学期からこれらの学生に対して新法による奨学金制度を適用する考えで提案すると考え法案提出されたものと理解をいたしておりますが、その点をまず最初確認をしておきたいと思います。
  18. 宮地貫一

    宮地政府委員 附則第一条は、「この法律は、昭和五十九年四月一日から施行する。」という条文でございますけれども、今日の時点からいたしますと、この附則については修正をお願いしなければならないもの、かように考えております。
  19. 田中克彦

    田中(克)委員 提案当初は、私の言うそういう考え方に基づいて提出をされたものですね。
  20. 宮地貫一

    宮地政府委員 提出に当たりましては、もちろん新年度、四月一日から施行するという前提に立ちましてお願いをしてきたわけでございます。
  21. 田中克彦

    田中(克)委員 そうなりますと、この文部省のとった一部奨学金の受付を開始した措置に大変大きな問題が残ると私は思うのです。と申しますのは、この改正案が本会議で提案されて趣旨説明が行われましたのは、御承知のように四月十三日のことであります。年度内に大きくずれ込む予想が当初から立てられておりましたために、我が党議員もそうでありますし、また育英会に関係する働く人たちでつくっている組合もそうでありますが、奨学生に不安を与えないような行政上の措置が何らかとれないか、このことは当初から何回か要求し続けてきたことは御承知のとおりであります。しかし、私どもがそういう要求を強く申し上げても、文部省はなかなか重い腰を上げようと当時しなかったことは事実であります。  文教委員会が五月十八日に育英会法審議に入りました。委員会意思を受けて委員長から文部省同様趣旨要求が出されまして、大臣から答弁をいただきました。早急に検討させて、具体的に対応する旨の回答が当時あったわけであります。このことによって予約生受け付けが当面開始をされた。今、育英会法審議は大詰めを迎えて、この現行法に基づく特別貸与学生対象に、今議論されておりますように、受け付けていこう、そして新法に吸収できるような措置をとっていこう、文部省はこういう考え方のようであります。私どもは納得できませんけれども文部省はそういう考え方に立っている。この奨学金貸与にできる限りの方法あるいは可能な方法を検討する、こういうことを私ども要求したときに言ったのは、もう既に二カ月も前のことであります。だとすれば、予約生募集開始、そして今文部省が手をつけようとしている特別貸与相当学生対象受け付け開始するということが行政の配慮の中ででき得るとすれば、なぜ、大幅に審議年度内にずれ込むという状況の中で、奨学生からこれほど問題として指摘をされ、奨学生が困惑している状況の中で、行政が親切に、早急に対応できるような方法を探り出さなかったのか。むしろ今できることがなぜその時点でできなかったのか。そのことに私ども行政対応の仕方として大変問題を感ずるわけです。このことについて、ひとつ明確なお答えをいただきたいと思います。
  22. 宮地貫一

    宮地政府委員 今回、育英会法の全部改正ということで制度改正に着手をいたしましてお願いをしておる点でございますけれども、従来の制度基本としながらも事業の一層の充実発展を図るというような考え方で、できるだけ早期実施に移すことが適当というぐあいに考え、かつ、附則の御議論で、ただいま御指摘のように四月から実施をできるようにということで私どもとしてもお願いをしてきたわけでございます。  そこで、今日の時点に来ているという現実を踏まえまして、私どもとしても、予約採用について既に救済措置という形で対応をいたしてきておりますけれども、私どもといたしましては、制度改正について国会に御審議お願いしているわけでございまして、その国会での御審議結論がまだ得られていない段階においてどう対応するかという問題になるわけでございますけれども、御指摘の点は、国会での結論が出ていないから現行法で直ちにやるべきではないかという御主張で言われておるわけでございますけれども、私どもとしては、本来ならば、この御審議をいただいております新しい制度早期成立をして、その点で実施できることを望んで予算並びに法律改正の御審議お願いしてきているわけでございます。  現実の問題として今日の事態に来ておりますので、政府側対応としては、奨学生採用について改正法との整合性といいますか、そういう点も十分考慮して事務処理をしなければ、現行法実施をして後に事務処理混乱を来すというようなことが起こりますとその点は問題がございますので、国会の御意思も受けて、現行法で早急に対応すべしということについて、行政府側といたしましては、現実事務処理混乱が起こらないような判断で対応せざるを得ないということで実施をしてきておるわけでございます。  この措置対応について非常におくれておって、奨学生夏休み目前というような時期に来ておりますことについては、私どもとしても、事務処理混乱のないように早急に対応すべきものと考えておりますが、もし非常におくれておることについてのおしかりでございましたら、私どもとしても大変遺憾に存じておりますけれども、それらの点については、現実事務処理体制その他のことがございますので今日の事態に立ち至っているということでございます。私どもとしても、現実対応混乱を生じないように最大限の努力を傾けてまいりたい、かように考えておりますで
  23. 田中克彦

    田中(克)委員 局長、よろしいですか、山原先生質問の際に、健保改正案の問題が引例されていますが、健保だって改正案が通らなければ、予算は通っていても差額の分については補正を組まなければならぬというようなことも厚生省は言っているじゃないか、文部省はこのことについてどう考えているんだという質問があったはずです。そのときに、局長はこう答えています。要するに費用の一部負担の問題と、四年間という期間にわたって奨学金を給付するということと本質的に性格が違う、こう言っているわけですよ。私もそうだと思う。だから、そういう奨学金の持っている性格制度の違い、この重要さというものは文部省の方こそ十分に知っているはずなんです。そうだとすれば、そのことが奨学生に迷惑を与えたり混迷を与えたりすることにならない措置年度の切りかえと同時にとるべきであるということを、私ども要求し続けてきたわけです。にもかかわらず、それをやらなかった。これは行政の怠慢と言わざるを得ませんよ。  そういうことになりますと、私は逐一追って申し上げますが、予算案が衆議院で可決されたのは三月十三日、本育英会法案が本会議に上程されたのは四月十三日、文教委員会審議が始まったのが五月の連休明けの十八日です。しかも、百五十日という国会会期は五月二十三日まであったはずなんです。その後、政府・自民党が、御承知のように単独で七十七日間という大幅な会期延長をやった。それで会期は八月八日までさらに延長されています。  私ども議員の立場で言えば、三権分立の原則からしても、国会会期制原則からしても、結局その期間内に、重要法案であればあるほど十分に論議を尽くして審議をする、それが私ども議員の責任でもあります。当然のことではありませんか。だから会期内に法案が上がれば、この皆さんが予想している新法に基づいて行政対応する、極めて当然な話だと思うのです。それを、会期がそこまであるにもかかわらず、この法案審議がおくれているから行政対応できません、こういうことでは、予算成立というものが我々国会審議権を拘束することになりませんか。そうではなくて、実際に奨学生が困っているということであれば、生きている現行法によって行政対応する措置がある、その方法を探りなさい、こう言い続けてきたのですよ。だからこそ、予約生の問題も開始された。特別貸与に相当する学生の問題も開始されたということならば、このことが今できるならば、あの時点だってできないことはなかったはずです。行政が本当に親切に奨学生の面倒を見てやろうとすれば、それはできたはずなんじゃありませんか。きょうまでこうしておくれてきている。しかも、これが衆参両院から強い要求がなければやらない、極めて私は行政、不親切だと思います。そのことについて明確な回答をいただきたいと思うのです。
  24. 宮地貫一

    宮地政府委員 問題は、私どもといたしましては新たな制度としてお願いをしているわけでございますので、新たな基準該当者になる者全体について、奨学生としての適格性の高い者から採用するということを考えておりましたので、募集採用について対応をして、今日までその点については見合わせてきておったわけでございます。  予約採用者につきましては、御存じのとおり、奨学生そのものが特定をされているということなどを受けまして実施をしたわけでございます。今日までおくれていたこと自身については、ただいまの、行政府としての判断が直ちに対応をすべきものをおくらせてきたではないかという御指摘、その点が対応として大変不十分ではないかというおしかりでございますれば、私どもとしてもそのおしかりは率直に受けとめまして、対応としてやるべきことは今後積極的にできるだけのことを努力してまいりたい、かように申し上げる次第でございます。
  25. 田中克彦

    田中(克)委員 ですから、一部新聞などでも報道されておりますように、審議がおくれているから奨学金支給事務開始できない、これは私は逆論だと思います。したがって、そういう点で文部省行政としての責任を明らかにする態度を表明してくれなければ、私どもとしては納得できないわけです。  そこで文部大臣にお伺いしますが、現行法に基づいて予約生あるいは特別貸与相当学生対象受け付け開始する、こういうことになっておりますが、現行法二十二条におきましては、「主務大臣八日本育英会ノ目的達成上必要アリト認ムルトキハ必要ナル業務ノ施行ヲ命ジ又ハ定款ノ変更共ノ他必要ナル事項ヲ命ズルコトヲ得」、こうあるわけですね、文部大臣がやりなさい。「育英会ノ目的達成上必要アリト認ムルトキ」、今の事態ほど私は目的達成上必要な事態であるときはないと思っております。従前、こういう混乱が起こったときはなかったはずなんですよ。改正案が持ち出されてきて初めてこういう行政対応上の混乱が生じて、事態が実際におくれているわけですから、現行法が生きているとすれば、その辺に対応する文部大臣としての強い監督と命令というものが法律の上でもきちっとできているわけですから、それをやるべきじゃなかったですか。私ども、その要求大臣にしたではありませんか。そして、予約生の問題あるいは特別貸与棚当学生の問題がこうして今日できる事態になっている。だとすれば、文部大臣の権限において、この育英会の業務の目的達成上必要ある事態としてそのことがどうしてできなかったのですか。これは大臣にぜひ伺いたいと思います。
  26. 森喜朗

    ○森国務大臣 結果的にはこうした事態になりまして、大変対象となる学生の皆さんに不安あるいはまたいら立ちを生ずることになり、これはまことに遺憾であったというふうに思います。  しかし、これはお互いに政治家ですから、新しい年度予算編成をする、その予算は当然関連法案というものが成立をして、そのことによって予算を使うということを一つの前提として予算案国会お願いをしておるわけであります。そして、新しい制度も組み入れた法案というものを国会成立をちょうだいいたしまして運用をしていくということでございまして、いろんな法律の拡大的な判断とか解釈というのは、それはそれなりにやってやれないことはないんだろうと思いますが、法律国会審議を経ないで勝手に政府が物を動かしたりすれば、これはまた逆のことになる場合もあり得るわけでございまして、やはり私どもとしては国会の御意思というものを一番大事に考えていくということは、これは事務当局も当然のことだろうと思うのです。  しかし、今いろいろと御質問いただきましたように、いろいろな事情がございましたし、各党の皆さんがこのことについて非常に真剣にお考えをいただいて、確かに今お話がございましたように、田中さん初め皆さんが私どものところにもお見えになりまして、そして予約生につきましてぜひ採用ができるように私が事務当局に命じたわけでございます。皆さんがそうしたことを国会で御心配になり、なおまた在校生、在学生に対します措置もできないのかということでございますから、私もあえてこの場で事務当局にその採用を命ずるようにいたしたわけでございます。  今田中さんのお話を例えば、それができるならなぜもっと前にやらなかったのかということになりますが、そこはやはり、先ほど申し上げましたように、国会法律提出させていただいておる、その国会の御決定もちょうだいしない前に、いいことだからやれということは、政府行政の任にある者としては原則としてはやってはいけないことだというふうに私どもは判断をいたしておるわけでございます。  基本的には、この育英会法とは別にいたしましても、国会の運営、法律提出日、そしてそれに伴う審議経過というものを考えますと、確かに田中さんがおっしゃるような矛盾はあるのです。これは、かつて私も文教委員会理事をいたしておりましたときにも問題になりましたが、国立大学設置法などの国会審議がおくれることによって、新しい学生募集できないではないかというような話にもなりまして、このところは、文教委員会の問題というよりも、国会予算法律を出す時期——私も国会対策や議運を長くやってきましたので、おしかりをいただくかもしれませんよ、おしかりをいただくかもしれませんが、予算が上がらなければ実際には関連法案審議はできないわけですね。やってはならぬとは何も国会法には書いてないけれども、そういう国会の運営の慣例になっているわけですね。そこでいつもこうした矛盾が出てくるわけです。したがって、そうなれば、予算関連の法案予算案の前に出せるのか、審議できるのかできないのかという議論にまでなってくるわけでございまして、これは文教委員会議論することではなくて国会全体の問題、あるいは議運の問題であろうというふうに私ども考えますし、議運でもよくこうしたことを議論いたしたことがございます。  今田中さんがおっしゃるとおり、ずっと日にちを言われれば、四月一日から学生が困ることがわかり切っておって出しておるじゃないかということになれば、それならば予算関連の前年度に、そういうことを準備するためにあらかじめ法案を出す、こういうやり方がいいのか、またそれが可能なのか。これは国立大学設置法なんかの場合もよく言われることなんです。そういう準備をあらかじめしていくと、逆に言えば年度が一年おくれていくのか。こういうことも一つの方策にはなる。今度の問題でも、まずこの制度を出して、国会で通して、新しい年度からやっていくというやり方も一つの方途だろうと思います。しかし、私どもとしては、従来の慣例からまいりまして、予算新法お願いをしたわけですから、予算を御審議いただいて、成立をしたら予算の中に含まれている関連法案として御審議お願いしていく。その結果は、四月一日からは間に合わないということはあらかじめ予測できることであります。そこのところは、わかっておるならもっと前に行政として、文部大臣の権限でやったらどうか、今そういうお尋ねでありますけれども、私どもとしては、法律お願いしておるその前にやるということについては、これはいいことだからやっていいが、もし逆のことだったらということにもなるわけで、ここのところは、政治家同士の話ですから、田中さん、ぜひ御理解をいただきたい。おしかりはおしかりとして受けとめます。これは局長も何度も申し上げております。やれなかったのか、怠慢だ——怠慢とまで言われると、私もいささか、怠慢なら怠慢で受けてもいいですが、政治家として、うんというような気持ちになります。しかし、こうして皆さんが大変御心配をいただいて、そして各党の理事委員の皆さんの御発意によって委員長からの申し出もございましたし、また皆さんもそろって大臣室にもたびたびお越しをいただいて、そしていろいろな判断をしろということを言ってくださいましたので、一応の判断をまず最初にいたしました。その結果、その残余についてということにもなりましたので、今法案を御審議いただいておることではございますけれども、このことについても皆さんのお気持ちに、私どもは多とするというよりもむしろ敬意を表したい、こういう気持ちでございましたので、私の判断で事務当局にその作業を命じているわけでございます。したがいまして、確かに国会審議権を拘束するということに結果的になったというのはまことに申しわけないことで遺憾でございますが、そのことをないようにしろということになれば、これは法律を出す方法予算予算関連の法案予算本法そのものの関連、こうしたことなども検討してみなければならぬものでございまして、文部省だけであるいはまた文教委員会だけでこのことの判断をしろということは、これは今後の問題も含めて大変大事な問題でありますが、今の段階としては、その方向を私どもは自分たちの判断で選ぶということはできなかったということでございます。  しかし、いずれにいたしましても、事は重大なことでございますので、超法規的なということを言いますとおしかりをいただくかもしれませんが、私どもは、国会の皆さんの御判断を一番大事に考えなければならぬと考えまして、いろいろな措置を合いたしておるところでございまして、このことにつきましては、先ほど宮地局長から申し上げましたように、なお一層努力をいたします。努力をいたしますが、おしかりはおしかりとしていただきながら、大臣として怠慢であった、それはやらなかったのか、こう言われますと、私どもとしては、非常に難しい立場でありましたというふうに申し上げることしかないわけでございます。いろいろな意味で、こうした対象学生のために先生方から大変建設的な御意見をちょうだいいたしておりますということにつきましては、敬意と感謝を申し上げる次第でございます。
  27. 田中克彦

    田中(克)委員 お互いに政治家であるからその辺の理解があってしかるべきだ、こういう大臣の御指摘ですが、そのことがどういうことを意味しているか、私にもちょっとよくまだわかりません。ただ、答弁の中で、私ども考えておることを大臣も同じように考えたんだなということは一つわかりました。  というのは、この奨学資金の事務的な扱いというのは、早いものは来年のものがことしにスタートするわけですね。結局新学期になったらできるだけ早く支給できるようにしてやるというのが親切な行政だと思うのです。そういう仕組みで動いてきていると思うのです。だとすれば、今回、予算絡みで、しかも四月一日施行だ、こういう法案がこの時点で出てきているということに私は非常に疑問を抱くんです。一年前の国会法案を出して、今回予算措置がされてスムーズに移行するような措置をとるか、そうでなければ、今回は法案を出して来年の四月一日施行ということにして、来年度予算措置するか、そういう方法をとれば今起こっているような問題というのは起こらないはずなんです。ほかの問題と違って奨学資金制度の内容というのは、文部省方々が一番よく御存じのはずなんです。だから、そういう措置をとる方法もあるということを、大臣もくしくもおっしゃったけれども、私ども、この問題が起こってきたときに、なぜそういう方法をとらなかったのかという疑問をまず第一に抱きました。それが今日のこういう混乱を生んでいると思います。だから、現実に動いている情勢の中で、大臣も悩み、また惜しみない努力を尽くしていってくれるであろうということは、私も政治をやる立場ですから、それはそれとして理解をしています。しかし、それにしては、今動いている現実というものは、何か審議がおくれているから奨学生を困らしているというような本末転倒のことにすりかえられて広がっているところに、私ども審議する側の国会議員としての責任からすれば、どうしても納得できない問題が残る。そういう意味で、私は、むしろこれは行政の怠慢じゃないかということを申し上げているわけです。ですから、そういう点で、今日こういう事態を引き起こしてきている原因というものは、文部省当局対応の仕方に基本があったんだという点を言わざるを得ないし、そのことを認めてもらわなければ後の審議ができない、私はこう思っているんです。
  28. 森喜朗

    ○森国務大臣 怠慢を認めなければこの後の審議ができないと言われますと、これは怠慢を認めればいいのかもしれませんが、私は、怠慢だと言われるとやはりこれは問題だと思うのですね。先ほど長々申し上げましたが、そういう仕組みというか慣例みたいになっているわけです。そこまで田中さんおっしゃいますと、去年は選挙が暮れにございました。そして、予算編成がいつもと違いまして年を越しました。もちろん年を越すということはたまたまございますが、そこでやはり日数というのが少し苦しくなってきたということもこれは御理解をいただけると思うのです。そこから国会に御提出を申し上げて、これは先生もよくおわかりのとおり、国会提出して、予算が上がらなければ関連法案審議ができないのだということも国会の仕組みでございますね。しかし、それで始められればまた別問題でございましたけれども現実には、育英会法はやはり議運で——言葉はよくありませんが、議運用語を使うと、余りいい言葉じゃありませんから言いませんが、質疑の要求が出ていて、スケジュール的に本会議の順番がなかなか来なかったということもあるわけですね。私どもは、そのことまで予測して法律というのは出すべきなのかということになると、まことにこれは国会に対して御無礼なことになるわけですね。どうせ法案は議運のところでしばらくとまって本会議は開かれないだろう、その時間のことも考えて出すなんということになったら、これはやはり国会に対して無礼だということにもなりますから、私どもは、国会提出をさせていただければこれはすぐ付託をしていただける、あるいは委員会付託の前に本会議で質疑の要求があるというなら本会議は開いてもらえる、やはりそういうことはスムーズに行くという想定で国会お願いしないと、そこはまたかえって国会軽視や国会に対して初めから変な拘束をしたということになってしまいますから、そこのところは、やはりお互いに政治家ですから、わかっていただきたい。初めから、そうおくれてこうなるんであるということを想定するということは、行政府としてはどうかなあという感じがいたします。  しかし、そうしたことも当然配慮しておかなければならぬというのは先生の御指摘どおりだと思いますから、国会法律を出すという仕組みは一私どもも昔から文教委員をやっておって、事は四月一日ですし、変な話ですが、そんなところはイデオロギーの問題ではなくて、やはりお互いに国会議論して、早くして、学生たちにスムーズに四月一日から学校に入ってもらう、あるいは新しい学部に入ってもらうということができ得るように本来はすべきだろうというような感じは私も持っております、今日までの経験から。  そういう意味でございますので、大変御迷惑をかけて、そして田中さんが一番御指摘をされることは、国会審議がおくれているから奨学生募集ができないのだということに対して非常に憤りを感じておられるということは、私はよくわかりますから、そのことについてこれだけ皆さんが御心配をされて、そして私どもに申し出もいただきました。委員長の御提案で、私どもに対して、できるだけの判断をしろ、そういうお話もございました。こうしたことで皆さんに大変な御苦労をいただいて、学生たちに対しての心配をしておるということは、いろいろな形で国民にも今よく理解をしていただいておるのではないかというふうに私は思うのです。国会審議がおくれておりますので採用募集はできないのでございます、こんなことは政府は一遍も言っておりません。これはマスコミ等でそういう報道の仕方をしておるのかもしれませんが、そのことについて先生は大変遺憾に思っておられることも私どもよくわかりますが、怠慢を認めろ、そうしないと、こう言われますと、私どもとしてもちょっと苦しいところでございまして、ひとつまことに遺憾でございます、仕組み上は大変残念なことでありますということで、どうぞひとつ何とかお許しをいただきたいとお願いを申し上げる次第であります。
  29. 田中克彦

    田中(克)委員 大臣も、おくれている事態を招いていることについては大変遺憾だという意思を表明されましたから、私もこれ以上追及することを差し控えておきたい、こう思っておりますけれども、とにかく今日この事態を招いている状況をつくり出しているその責任をやはり文部省も痛切に感じてほしい、こういうことだけを私は申し上げておきます。  時間が大分なくなってきましたのでほかの質問に移らせていただきますが、中曽根総理が総理大臣就任早々アメリカへ渡りまして、ウィリアムズバーグのサミットヘ出たことは御承知のとおりです。さらに先日、ロンドンのサミットへも参りました。大変力をつけてきている日本の経済力あるいはまたすぐれた工業技術力、こういうものを背景に、世界経済の中で果たしていく日本の役割というものを強調されてきたようです。帰ってからの報告におきましても、総理はそのことをみずから高く成果として評価をしているわけですけれども、私ども、そういう点で日本の経済力が今日こういう状況になったということは大変好ましいことだとは思っております。しかし、総理が持っておられるそういう自負あるいは責任、こういうものの上から、中曽根内閣の組閣要員の一人である文教行政を担当する文部大臣という立場で、この総理のサミット報告というものをどういうふうに受けとめられておりますか。
  30. 森喜朗

    ○森国務大臣 サミットの報告をここに今全文持っておりませんので、それを見ながら申し上げなければかえって御迷惑をかけることになるかもしれませんが、日本の果たすべき役割は極めて大きなものになってきている。どちらかといえば世界は緊張の方向にあるという感じで私どもとして受けとめております。そういう中で、平和憲法を掲げて平和を世界に宣言しているまさに希有な日本の国でありますから、その日本の国が、これから東西の緊張の中に大きな役割を果たして世界じゅうが平和になっていくということの意思を、総理として、日本国民の総意としてこれらの先進諸国に対して提言をしたということでございます。  もう一つは、アジアとアフリカのグループといいましょうか、そうした立場の中でただ一つ日本が出席をいたしておるわけでございます。そういう立場の、いわゆる発展途上国といいましょうか、こういう国々は食糧にも非常に窮屈でありますし、自然のいろいろな条件も悪うございます。そういう中にあって我が日本国は代表的な立場になって、先進諸国に対しましていろいろと重要な発言をしていけるという意味での日本の役割も極めて大きくなったというふうにも考えます。あるいはまた、日本の経済というのは、いろいろな見方はございますけれども、世界の中では経済大国という立場を得るようになりました。しかし、それは見方によれば、まだまだ足らざるものも多くあるわけでございます。こうした日本の国の繁栄というものは、やはり諸外国の援助なくしてはあり得ない。貿易立国としてまた当然の条件になるわけでありまして、そういう意味でなお一層日本の国が繁栄をし充実し、そして二十一世紀を担ってくれるであろう青少年に対しましてもそのことをしっかりと保障してあげなければならぬ。そういう意味で、日本の国はますます世界の国々に対して理解を深めていく、あるいは世界の国々に対していろいろな意味での役割を果たしていく、そういうことを、提言だけではなくて実行していかなければならぬ、いよいよそういう時代に入ってきたな、総理の報告を今全部覚えておりませんけれども、サミットの成果をあえてどのように受けとめておるかということになりますと、私はそのような感想を持っております。  そのためには、日本の子供たちにとってよりよき教育環境の中で、そして日本の文化や伝統をしっかり支えて、二十一世紀はまさに国際社会の中で日本の国の存在あるいは日本の国民の果たす役割は大変大きなものになるのだということを子供たちにも期待をいたしたい、そんなふうに私は感想として持っておるわけでございます。
  31. 田中克彦

    田中(克)委員 大臣も、日本の経済力が世界の先進国並みになってきているという状況については、そのことを率直に評価をし、お認めになっている。それを背景として日本の地位や発言力も高まってきている、こういうことは率直に認めておいでになるようでございます。しかも、その中でいわゆる南北問題あるいは発展途上国の開発、国際的な援助、また日本の果たすべき役割、特に最初に言われた核戦争を起こさないようにしていくための平和外交、こういうものの必要をかなりサミットの成果として受けとめておいでになる。  そういうことになりますと、私が申し上げたいのは、日本のそういう大変誇るべき実情の中で、一体教育政策についてはどうなんだ、こういう欧米先進国と言われる国々と日本の教育制度との比較の問題、こういうものを率直にしなければいけないのではないかと思います。今まで議論されてきておりますように、日本の教育制度も、外国と比べると大変すぐれたものも誇るべきものもあることも確かです。そういう状況の中で、事この奨学資金制度で比較した場合にはどういうことになっているのか、これが一つの問題だと思うのです。  今おっしゃられるように、世界平和に寄与する人材をつくり上げる、二十一世紀を目指して発展途上国の援助や国際連帯も強めていく、そういう国際的視野を持った広い人材を育てていく、そのもとになるものは教育だ。その教育の中で、奨学資金制度は一体どういう実態になっているんだろうか、こういうふうに私どもはとらえてみたいわけです。そうなった場合、実際には欧米先進国と言われる諸国は、圧倒的に給費制度をとっている。無利子貸与どころではなくて、いわば給費をしている、これが奨学資金制度の大方の姿です。しかも採用率で見ても、アメリカの場合に六〇%、イギリスで九〇%、西ドイツで四〇%、こういうように高いのに対して、日本の場合はわずかに一一%、非常に低率で比較にならない実態です。そのほか日本の場合は、自治体や民間等で奨学制度をとっているところがありますから、それを合わせても二一%にしか達していない。こういう比較から見ても非常に低い実態にあります。アメリカ以外ではしかもその授業料も取らない状況であるとすれば、私ども大変残念に思います。  文部省の井上学生課長が欧米の最近の奨学資金制度状況を調査したものを拝見しましても、「イギリスにおいては奨学金は給費制であるが、近年における国家財政困難なため、奨学金への貸与制の導入が、最近二、三年に財政当局から出たり消えたりしているということである。しかし、教育科学省の見解としては、貸与制が導入されれば、生活困窮者に大学入学が経済的に不利になるのではないかという意見が強いこと、また給費制は戦後の制度であるが既に定着しているところであり、近い将来において、貸与制の導入は考えられないとのことであった。」フランスの場合でも同じように有利子化の意見もあったが、現在は消滅したと言われているというように報告されています。西ドイツの場合においても、「連邦教育助成法に基づく奨学制度については、これを維持することになった」というように書いているわけであります。  そういう状況を見ますと、今世界的にこういう状況にある中で、我が国だけが先進国会議に参列をし、経済大国を誇り、世界的に国際連帯を強めていかなければならない二十一世紀を目指す人材を教育していこうという教育制度の中で、この奨学資金制度に有利子化を持ち込まれるという実質後退が今回の制度改正の中に出てきている、このことは世界的な趨勢に非常に逆行していると私どもは思うのです。  今日、私どももヨーロッパ旅行をしてまいりましたけれども、どこの国でも世界的な構造不況だとか財政再建、それから貿易摩擦、安定成長、ヨーロッパ各国を歩いて見ても、こういう基礎的条件というのはみんな同じなんですよ。どこの国だって財政的にはそういう状況にあるわけです。なぜ日本だけが、今言うように非常に低率な奨学資金制度であって、しかもそういう実情の中で有利子化の先行を急ぐのか。これは私、ちょっといただけないと思いますが、大臣、さきのサミットの評価の見解とこの比較とをあわせて見たときにどうお感じになりますか、ひとつお答えいただきたいと思います。
  32. 森喜朗

    ○森国務大臣 今田中さんが御指摘をいただきました点というのは、それなりに御意見として伺っておくに十分値するお話であろうと私は思います。ただ、給付と貸与ということだけで比較すれば、確かにそういうことになると思うのです。それは有利子よりも無利子、無利子よりも返還免除、返還免除よりも給付、それにこしたことはないわけであります。  しかし、日本の国というのは、長い鎖国の時代を解いて西欧の文明が入ってきてわずか百年ちょっとなんですね。制度的にはいろいろなものが急成長した日本の国、そこに戦争というものがあった。そこで完全に一遍打ちひしがれた。そしてまた、一生懸命国民の努力によってここまで繁栄してきた。ですから、確かにそのエネルギーはすばらしいものがありますが、やはり諸制度についてはかなり先進の欧米諸国よりおくれていると私どもは見ざるを得ないと思うのです。例えば今日本の国で、文教とは関係ございませんが、下水道など一生懸命やっておりますが、フランスなどはナポレオンの時代に下水道はやっているわけですね。私の国の石川県は、繊維産業が盛んです。やはりファッションというのはイタリア、フランスから入ってくる。後から見れば何でもないようなファッションなんですが、どうしても勝てないのですね。繊維関係の皆さんに、これだけ日本は繊維王国なのにどうして勝てないのだと言うと、洋服というものに対する取り組み方というのがやはり三百年違いますねと言うのです。それは取り組みもあるし、人間の物の考え方というものであろうと思うのです。  そういう意味で、こうした奨学生制度というものを実際に取り入れたのはたしか昭和十九年ですか、まさに戦時体制の中で、しかし先人の先輩たちはよくぞやられたものだ、本当にすばらしいことだと私は思うのです。記録によれば、たまたま永井柳太郎先生がその提唱の第一線に立たれた。私の郷里の大先輩でありますし、大学の大先輩でありますから、永井先生にあやからなければならないなとつくづく私は思います。そういうときにできた制度でございますだけに、やはり給付制度から入り得なかった、貸与制からスタートした、そういう歴史的なものがございましょう。そういう中で、いろいろ比較をされますと、確かに貸与制というものを採用している日本の国のこの育英奨学については、田中さんが御指摘されるように、本当に世界に冠たる経済大国であるということにおいてはふさわしくないではないかという見方もできると思います。しかし、こうした教育の助成、教育の諸制度については、いろいろな角度から見なければならぬ面もたくさんございます。例えば租税の負担率なんというものも、見る一つの要素にもなってくる。それがすべてではございませんけれども、そういう面でもございましょう。いずれにいたしましても、スタートいたしましたのが戦時体制の一番厳しい時期にこの制度ができ上がったということから、貸与制を中心にして今日まで来たという歴史がございまして、私どもとしては、将来ともに日本の教育のこの制度はこのままでいいとだれも考えている者はございません。まさに世界の経済大国としてのことを誇るならば、教育の諸制度についても、公費、私費の負担の問題もこれからの検討の課題であろうと思います。  私もさらに一層努力していかなければならぬと思いますが、現下の財政状況の中で少しでも機会の均等とそして事業量の拡大というものを考えますと、いわゆる無利子貸与制をもちろん根幹として継続いたしてまいりますが、引き続き量的拡大ということを考えますと、有利子採用していくというこの併用制度採用せざるを得ないわけでございまして、何とぞそういう面で御理解いただきたいと思います。
  33. 田中克彦

    田中(克)委員 大臣も歴史の問題をおっしゃられるし、それから、確かに欧米と直接ストレートに比較することにも問題があろうかと思うのです。しかし、今言われているように、貸与制度よりも給費制度の方がいいに決まっている、授業料も免除の方がいいに決まっているのです。いいことの方を志向して逐次改善されるというなら、私どもが本当に言っている改善だと思うのです。ところが、貸与制度から有利子制度に拡大するというのは、いわば質的な転換、改悪であって改善ではない、こういうふうに言わざるを得ないわけです。だから、大臣だって、貸与よりは給費の方がいいに決まっている、こうおっしゃるのですから、そのことは十分お認めになっていると思うのです。  そこで伺っておきたいのですけれども、いわゆる臨調からも答申がありました。それから調査研究会の結論をも踏まえて今回改正を行った、こういうことでありますが、財政再建期間中ということがよく言われてきているわけです。いわばマイナスシーリングでもそうですし、ほかの制度の中でも、財政が立ち直るまではやむを得ない、耐乏してくれ、こういうことが言われてきているのですが、今大臣がおっしゃられた見解からすれば、有利子制は本来は好ましくない。これは貸与の方がいいに決まっている、貸与よりは給費の方がいいに決まっている、そういう前提に立ては、今の財政事情が好転して、十分にやれるというときまでのいわば一時的な措置、将来はそうあるべきだ、こういうふうに考えていると理解してよろしいですか。
  34. 森喜朗

    ○森国務大臣 そのような考え方ではございません。そして、財政再建中一時的に一部有利子お願いしてこの制度を併用していく、したがって財政が健全化したりあるいは経済情勢が少しでも好転をすればこの制度はなくするのだということにはならないと私は思うのです。  もちろん、先ほど申し上げましたように、基本的には、日本の育英奨学制度というものはできるだけいい方向になるようにまた別の角度で検討するということは、教育をみんなで心配する立場の者としては真剣に考えていかなければならぬことだとは思います。仮に経済情勢あるいは財政が好転をしていくということになれば、やはり無利子貸与制というものを根幹として持っていくわけでございます、継続していくわけでございますから、むしろこの方を広げていく、あるいはこの方にそれこそいい意味での改善策を考えていくべきであって、今一部有利子制度お願いしたこの制度は今後とも残っていくものだと私は思います。  また、学生さんの対象から考えましても、有利子のところでもいいという学生さんだって、いろいろなお立場の中では出てくるだろうと考えますから、これは、制度制度としてこれから残していくべきである。財政状況の好転を私どもは期待しながら、根幹として残す無利子貸与制についてはなお一層の改善を図るように今後とも努力していきたいと考えているわけでございます。
  35. 田中克彦

    田中(克)委員 私どもは、有利子化は逆に制度の改悪であるし後退だととらえておりますが、大臣の方は、有利子化を導入しても枠が拡大されることが拡大発展だと評価をされて、そこはちょっと違うのですけれども、それはそれとして承っておきます。  そこで、今根幹の話が出ましたからお伺いしていきたいと思うのです。  臨調が、外部資金の導入による有利子制への転換、返還免除制度の廃止、育英資金の量的拡充、財政審が、無利子貸与基本とする現行制度の仕組みをそのままにして育英事業の拡充は困難である、後世代の貸与財源確保のために、育英奨学事業に関するためにと、それから調査研究会の報告では、無利子貸与制度の存続、国による育英奨学事業の根幹として存続、改善する、こういうふうにそれぞれ指定をしているわけです。そこで財政審は、無利子貸与基本として、現行制度の仕組みをそのままにして育英会事業の拡充は困難だ、こう言っているわけです。これに対して調査研究会の方は、今大臣言われましたように、無利子貸与制度を存続させて育英奨学事業の根幹として存続、改善をする、こう言っているわけです。一方は、無利子基本とすることでは現行制度が成り立たないと言っているわけです。一方はそれに対して、育英会事業は無利子制度を存続してこれを根幹にしていくのだと言っているのです。財制審の基本というとらえ方、それから調査会の報告の根幹としていくというとらえ方、言葉の意味としてはこれは同じことを指摘していると思うのです。ところが、解釈は真っ向から相対立しているものです。  そこで、私どもが危惧するのは、今大臣が言われている育英奨学事業の根幹というのは一体何を指して根幹と言っているのか、そこをきちっと明らかにしてもらいたいと思うのです。
  36. 宮地貫一

    宮地政府委員 いろいろ臨調なりあるいは財政審での議論について、私ども文部省で調査研究会を設けました際には、それらの議論も十分踏まえまして、文教施策としてどう進めるべきかという観点に立ちまして調査会で御議論をいただいて、その結論として、無利子貸与事業を事業の根幹として残していくという結論をいただいたわけでございます。いわばそれを受けまして今回の育英会法の全部改正お願いしているわけでございますが、その根幹というのはどの点が示されているのかというお尋ねでございます。  具体的な点で申し上げますと、例えば改正法案の第二十二条におきましては、無利子貸与の事業は育英奨学事業の対象となっております学校ではすべて取り上げておる、いわゆる一条学校では高等学校から大学院までのすべての学校、さらに現在は専修学校についても部分的でございますが奨学金対象にいたしておるわけでございます。無利子貸与事業はこれらのすべての学校対象として実施をしておるわけでございます。  それに対しまして有利子貸与は、法律上の規定では「大学その他政令で定める学校」ということで、対象を部分的に絞っておる。そして具体的には五十九年度事業で予定をしておりますものは、大学と短期大学というところに絞っておるわけでございます。その点から見ましても、基本的には無利子貸与制度が事業全体の根幹ということが仕組みの面でもあらわれている一つの事柄ではないかと思っておるわけでございます。  さらにもう一点、それぞれの貸与人員の問題でございますけれども、御案内のとおり貸与人員をどうするかというのは、ちょっとこれは法律上の規定の問題にはならないわけでございますけれども、実際の積算といたしましては、無利子貸与と有利子貸与人員の点で申し上げれば、無利子貸与の方が人数としても全体で新規については約十二万人であり、有利子貸与新規採用としては大学、短期大学で二万人ということで、人員の面から見ましても、私どもとしては、全体の事業の中でごらんいただければ、無利子貸与事業を事業全体の根幹として考えていることは御理解をいただけるのではないかと思っております。
  37. 田中克彦

    田中(克)委員 今おっしゃられたように、現状十二万対二万ということになれば確かにこれは根幹である、こう言い得ると私どもも思うのです。おととい参考人にお伺いしたときも、このことについての質問が出ました。八割ぐらい無利子で二割ぐらい有利子であればこれを根幹と言えるのじゃありませんか、こういう先生の見解も実は述べられました。私どもも、そのくらいだったらそういうふうに、理解が実際にできると思うのです。  ただ問題は、改正案の二十二条の四項、奨学金の資金、第一種と利子つき資金の第二種とに規定をして、さらに利率について政令で定める、こういうことになりますと、閣議決定一つで奨学金の利率は決められることになりますが、この点について一つ伺っておきたいと思うのです。  それから、現状三%の低利が財政投融資の利率七・一%、さらに銀行ローン並みの一〇%に広がる可能性があると私どもは見るわけでありますが、仮に有利子でも、憲法二十六条の定めるところにより創設される制度である以上、利率を低利で法定をしておくということがなければ、今おっしゃるように、現状をとらえて根幹としてという説明をされましても、私どもはちょっと納得することができないわけです。非常に心配があります。というのは、改正法四十条一項、育英会貸与資金を政府から利息つきで導入することを原則として明定をしているわけです。これはどういうことかといいますと、第二種資金すべて利息つきで政府から借り入れ、第一種資金、政府育英会に対して無利息で貸し付けることができる、いわば例外事項として無利息貸し付けが可能であるとつけ加えてあるわけです。無利息でなければならないということであればともかくとして、「貸し付けることができる。」こういう規定になっておりますから、私どもは、そのことについて大変不安を持っています。現に大学生の中でも、医科歯科学生、いわば一般貸与を上回る上乗せの分については財投資金並みの七・一%の利子が、今回の改正案の中でも既に目があけられている現実があるわけです。  そうしますと、財政事情がだんだん逼迫してきて、大蔵当局と常に協議をして決めていかなければならないというこの制度の運用になっているとすれば、将来的にはそういう方向に持っていくことも閣議決定一つで可能であるし、またその危険がある。したがって、そのことについての歯どめをしなければ、利子の問題につきましても、いわば無利子を根幹とするという説明を今受けましても、そのことについて大変不安がある。この点についてはいかがですか。
  38. 宮地貫一

    宮地政府委員 有利子貸与制度貸与利率でございますけれども、私どもとしては、今後ともできるだけ低利ということで奨学生の返還の負担ということも十分考えまして貸与をしていくつもりでございます。  問題は、利率の決め方について法定すべきではないかというお尋ねでございますけれども、やはり制度全体から考えますれば、社会経済情勢の変化ということに対応して改定する必要が生じるということもあり得るわけでございまして、その点については政令で規定をするという今回御提案申し上げているような形にしておるわけでございます。ちなみに、特殊法人で金融業務を行っております例でございますけれども、貸付利率につきましては、通例は業務方法書等の法人の内部規程というもので定めているものが通例でございます。最近の立法例では、貸付利率を法律で定めたりあるいはその上限を法律で定めているものは、私どもとしては、最近の立法例では承知をいたしていないわけでございます。  したがって、私どもとしては、この貸与利率というものが、有利子事業として実施をしていく以上は、やはり奨学生に対する返還の場合の負担能力ということも十分考慮しまして、御案内のとおり、御提案申し上げておりますものは、在学中無利子、卒業後は原則的には無利子貸与と同額のものについては年利三%という利率で、財投の利率との差については一般会計から利子補給をするという仕組みでお願いをしておるわけでございます。  なお、御指摘の私立の医・歯系のいわゆる上乗せ奨学金の利率についてでございますけれども、これは奨学生の希望に応じて、必要な場合にそういう増額貸与ということが可能な制度を設けたわけでございまして、もちろん増額貸与を希望する者については、その本人の希望によって貸与するものでございまして、その際は財投の利率と同一の利率によるという仕組みにいたしてございます。これは、私立の医・歯系については、授業料その他大変高いという事情も考慮してのものでございまして、私ども、有利子貸与についても基本的には無利子貸与と同額の貸与奨学金原則とは考えておるわけでございます。そして、それについては低利という原則は私どもとしても今後とも確保してまいるということでございますが、法律制度の仕組みとしては、先ほど説明をしましたような形で規定をいたしておるものでございます。
  39. 田中克彦

    田中(克)委員 もう一つ質問をしていたはずです。いわゆる第一種学資金、第二種学資金の比率については、第二十二条四項に基づいて閣議決定一つで利率が改められる、こういうことになっております。そういうことは当然この政令で定めるということが可能だ、こう思いますが、そのことについて明らかにしてもらいたいと思いますし、もしそうであるとすれば何らかの歯どめをする必要があるのではないかということと同時に、当面この三%という低利な利子を絶対に引き上げないという見解をこの時点でははっきりいただいておきたい、こういうふうに思いますが、そのことについてはいかがですか。
  40. 宮地貫一

    宮地政府委員 御提案申し上げております有利子貸与事業というもの、二万人の規模でお願いをしておるわけでございますけれども、それについてはもちろん学年進行で、今後貸与人員についてはふやしていくことになるわけでございます。しかしながら、それらについては、私どもとしても、財政当局とも十分将来の見通しも持ちまして議論をいたしておるわけでございまして、私どもとしては、この三%の奨学生の利率負担ということについては、それらの規模については将来引き上げるというようなことは考えておりません。
  41. 田中克彦

    田中(克)委員 奨学資金の有利子化につきましては、私は、やはり教育も金次第、こういう風潮を招来しかねないということで、大変憂慮している一人です。きょうの朝日新聞にも、東京都で調査をしたところ、教育費が家計を大変圧迫している、そういう記事がトップ記事として掲載をされております。  かつて、今盛んに教育改革で議論になっているように、共通一次の制度採用された際に、今日この共通一次がこれほどいろいろな問題、問題というよりも、むしろ弊害をだれも予測をすることができなかったわけです。それと同じように、偏差値教育の弊害、それをめぐって受験産業と言われる教育の企業化、大学間格差、私学の乱脈経営、社会的に非常に大変な問題が起こっている状況の中で、この奨学資金の有利子化というものが、今後国はもちろんのこと、地方公共団体、民間の資金にまでも有利子化を持ち込んでいくというような風潮をつくり上げる、そういう危険があるのではないかというふうに思います。  都道府県や地方公共団体が、この奨学資金制度についても大変積極的な対応を示しております。北海道初め四十六県、ほとんどの府県で、県費による貸与三十六県、給費九県、市町村で貸費が四十六、給費が四十二というように、地方自治体もこれに大変積極的に取り組んでいるわけですが、地方公共団体以外でも、学校、公益法人、営利法人、個人、その他大変な数が設置者として奨学資金制度を持っています。その額は五十四年の数字ですけれども、二百十八億九千六百万円ですか、合計して持っています。多くの地方公共団体あるいは民間も含めて、奨学資金制度を持っている。そういう設置者に対して、文部省が率先をしてこの有利子化を導入してしまえば、結局地方自治体にもそういうものが押しつけられていくのではないかというふうに思います。  というのは、六月二十四日付の新聞なんですけれども行政改革を進めなければ制裁措置をとる、これは行革審の地方行革推進小委員会が近くそういう結論をまとめるという記事であります。結局、国が臨調の答申を受けて今回有利子化を導入した、こういうことになりますと、地方に対して行革審の地方行革推進小委員会がこういう結論を出して締め上げていくということになれば、それに右へ倣え、こういう状況になっていかざるを得ないと思いますが、そのことについて文部省はどうなさるおつもりですか。
  42. 宮地貫一

    宮地政府委員 育英奨学事業は日本育英会以外にも、ただいま御指摘のとおり、地方公共団体あるいは学校法人、公益法人等で実施をしているものもございますが、私ども、ちょっと資料が古いのでございますが、五十四年度の実態調査によりますれば、日本育英会以外に地方公共団体、学校、公益法人等全体で約二千七百余りの事業主体によりまして実施をされており、全体で約二十万人の奨学生に対して二百十九億の奨学金支給をされているわけでございます。それぞれ設立の目的があるわけでございまして、正確ではございませんが、地方公共団体の場合で申せば、高等学校の生徒に対する奨学事業などが主体的には考えられるかと思うわけでございます。それぞれ設立の目的に従いまして、独自の判断で特色のある事業が実施をされているというぐあいに理解をしております。  そこで、今回の育英会の育英奨学事業の改善がそのまま地方公共団体なり公益法人の育英奨学事業のあり方に直ちに影響するというぐあいには私ども理解をしていないわけでございます。例えば今回の有利子貸与事業としては、先ほども申しましたように、大学、短期大学というような非常に量的な拡大、それと全体の無利子貸与事業の単価も引き上げるという観点から、総合的に判断をいたしまして有利子貸与事業を今回取り入れることになったわけでございまして、それぞれの設立居的に従いまして独自の判断で実施をされるものというぐあいに理解をしているわけでございます。
  43. 田中克彦

    田中(克)委員 地方自治体でありますから自主性を持って財政運営をやると思いますが、文部省としても、育英会やったから地方もそれに右へ倣えというようなことをうそにも指導するようなことのないように注文をつけておきたいと思います。  それから、時間がなくて既に催促を受けておりますが、せっかく自治省からもおいでいただいていると思いますので、お伺いしたいと思うのです。  先ほど文部省質問したように、地方行革推進小委員会の報告書のまとめと同時に、行財政改革小委員会が六十年度予算編成に向けて次の四つの点を指摘しています。その一つは、私学助成の縮減、教科書無償の廃止、給食費補助の廃止を含む検討、育英奨学金返還免除の見直し、こういうことで、またしてもここに育英奨学金返還免除の見直しという問題が出てきているわけです。  この地方行革推進小委員会の報告書のまとめといい、行財政改革小委員会のまとめといい、今後地方自治体に押し寄せていくであろうこれらの影響を考えた場合に、地方自治体の大変深刻な状況の中から、地方自治体としても苦境に立たざるを得ない、こういうふうに思います。この奨学資金制度の見直しや地方に行革を迫る機運が高まって、やがて地方公共団体に設置している奨学資金制度にも有利子化が導入されるということになるとすれば、これこそ憂慮すべき事態であります。  自治省は地方に対して、文部省に追随することを要求するようなことは断じてしない、こういう指導をしてほしいと思うのですが、自治省の見解を行革全体に絡めてこの際お伺いをしておきたい、こういうように思います。
  44. 小林実

    ○小林説明員 ただいまの御質問に対してお答えを申し上げます。  御承知のように、国、地方ともに財政状況が大変厳しいものでございますから、双方力を合わせて行政改革を推進しなければいけない状況でございます。そういうことで増税なき財政再建が基本でございますので、私ども、地方団体におきましても、歳出面につきましてはやはり見直しを行っていただいているところでございます。  御質問の点でございますが、今回予定されておりますのは大学、短大であると思います。地方団体の場合は主として高等学校ということになろうかと思うわけでございます。最終的には、地方団体の単独事業というのはその団体の判断にゆだねられる問題でございまして、私ども、それについてとやかく言う考えは今のところ持っておりません。
  45. 愛野興一郎

    ○愛野委員長 午後一時に再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十五分休憩      ————◇—————     午後一時九分開議
  46. 愛野興一郎

    ○愛野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。佐藤誼君。
  47. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 午前中の我が党の田中委員からも質問があったと思いますが、昭和五十九年度育英奨学生新規採用について、文部省現行法で救済すべく努力をしている、その努力を多とするものでありますが、その中にあって、私から言うと特に緊急ではないかなと思われる点について一つだけ質問しておきます。  その内容は、昭和五十九年度大学通信教育奨学生の推薦事務がどうなっているかということでございます。私が見た資料等によりますと、通信教育の学生、つまり夏季スクーリングの学生、それから通年スクーリングの学生、何か推薦の期限が五十九年の六月二十日というふうに聞いておりますし、例年この夏季スクーリング期間というのは七月二十日から八月末ごろまでに実施すると聞いておりますので、これはかなり緊急を要する措置ではないかと考えます。先ほどの全体的な現行法による救済措置との関連でどのようになっているのか、現状をひとつお知らせいただきたいと思います。
  48. 宮地貫一

    宮地政府委員 大学通信教育の学生に対する対応措置についてのお尋ねでございまして、御案内のとおり、七月下旬から面接授業が開始されるというようなこともございまして、可及的速やかに募集を行いたいと考えておるわけでございます。  そこで、募集要項等についての印刷あるいはこん包、学校への発送作業等に一定の日程を要するわけでございますので、七月十日過ぎから募集要項等が到達した学校から順次募集開始され、奨学金の交付は八月下旬になるものと見込んでおります。例年に比べてそれらの点が若干おくれておるわけでございますけれども、七月十日過ぎから募集を行うということにつきまして、学内掲示等によりまして学生に事前に周知徹底を図りますように、育英会から各学校に対し依頼をすることも予定いたしております。御指摘のように、スクーリングを受ける学生対応としては、大体この夏休みでの対応ということになるわけでございます。そのような措置で極力支障が出ないように、私どもとしても、育英会を通じましての事前の周知徹底その他の対応措置をとりたいと考えております。
  49. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 現状と対応についてはわかりましたが、例年からいうとかなりおくれているという感は免れないわけですね。今の答弁等からして、期待している通信教育の奨学生、これはもう夏季のスクーリングが始まるわけですが、支障はないのですね。どうなんですか。
  50. 宮地貫一

    宮地政府委員 御指摘のように、例年に比べますればおくれていることは事実でございまして、私どもとしては、スクーリングを実施している期間中に奨学金支給できるような対応はとりたいと考えておりますので、その点でスクーリングの実施そのものに影響の出ないような対応はいたしたいと考えております。
  51. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 この通信教育奨学生対象になる方々、特に勤労学生だと思うので、このことに対してはかなり期待してきたと思うのです。今最大の努力をするということなんだけれども、私は、もう一度さかのぼってこの問題を議論する気持ちはありませんけれども、こういう事態も予測されますので、私たちは現行法救済措置を早くするべきだということを主張してきたわけなんです。もちろん予約生についてはやりましたのですけれども、今問題になっている在学採用予定者等についても早くこういう措置をしないと、ようやく今緒についているわけですから、このことを私はおもんぱかって今日まで、在学採用予定者についても早くやるべきだということを終始主張してきたのはこの辺にあることを、文部大臣も担当の局長もぜひよく理解していただきたいと思うのです。こういうようなことが今後ないように、まだ渦中でありますから、対象外になっている方々についても今後一層の努力を私はこの場で要望しておきたいと思います。この点は以上で、要望と質問で終わっておきます。  ところで質問いたしますが、改正日本育英会法案、これは憲法、教育基本法に準拠しているものと思いますが、どうですか。
  52. 宮地貫一

    宮地政府委員 もちろん憲法、教育基本法に準拠しているものでございます。
  53. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 憲法、教育基本法に準拠していると言うのですが、そうすると、主として憲法第何条、教育基本法第何条に準拠しているのか、あるいは根拠を持っているのか、どうなんですか。
  54. 宮地貫一

    宮地政府委員 憲法は、第二十六条におきまして、「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。」という規定がございまして、教育の機会均等を規定しているものでございます。教育基本法は、第三条第一項におきまして、この憲法第二十六条の趣旨を踏まえまして、「すべて国民は、ひとしく、その能力に応ずる教育を受ける機会を与えられなければならないものであって、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない。」と定めておるわけでございます。そして教育の機会均等の原則を明示いたしております。なお第二項におきまして、「国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由によって修学困難な者に対して、奨学の方法を講じなければならない。」という規定があるわけでございます。  規定といたしましては、以上の二つの規定が基本的に教育の機会均等に関する事柄を定めた規定と承知しております。
  55. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 それでは、改正法案では第一条の目的になぜ「優れた学生及び生徒であって」という内容と、四行目に「国家及び社会に有為な人材の育成に資するとともにこという二項目が入れてあるのですか。
  56. 宮地貫一

    宮地政府委員 改正法案の規定は、ただいま先生御指摘のとおりでございます。  現行法の目的規定でございますけれども、これは御案内のとおり創設の時期、昭和十九年というようなことも受けまして、国家有用の人材育成という目的のみが掲げられているわけでございます。戦後、先ほど申し上げました憲法ないし教育基本法が教育の機会均等について規定をしているわけでございまして、日本育英会もその教育の機会均等の精神を踏まえまして、戦後の高等教育の普及拡充という事柄対応して、多数の学生生徒を対象とするような事業の拡充を今日まで図ってきておるわけでございます。  今回、全部改正に際しまして、先ほども申し上げました憲法、教育基本法の規定を考慮しまして、育英会の事業運営の実態を踏まえ、今回こういう低利の有利子貸与制度の創設というようなことで量的拡充も図るというようなことを受けまして、人材の育成とともに教育の機会均等に寄与することを目的として掲げたわけでございます。表現としては、もちろん既に御質問もいただいておりますが、「優秀ナル学徒」を「優れた学生及び生徒」に改め、最近の立法例に従いまして、「国家有用ノ人材ヲ育成スル」という規定を「国家及び社会に有為な人材の育成に資する」というような表現に改めておるわけでございまして、これらの点については、この規定そのものはこの憲法、教育基本法の理念に反するものではないというぐあいに私どもも理解をしております。
  57. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 答弁を聞いていると、法案の提案理由を長々述べている感じがするのですけれども、なるべく質問に端的に答えるように要望いたします。  そこで、先ほど憲法二十六条、教育基本法三条を根拠にしているということを言われましたが、憲法二十六条は、御案内のとおり教育を受ける権利ですね。それを受けまして教育基本法は、「すべて国民は、ひとしく、その能力に応ずる教育を受ける機会を与えられなければならないものであって、」以下云々、つまり教育の機会均等の原則を第一項はうたいとげているわけであります。そして第二項で、国及び公共団体の言うなれば措置義務として、「能力があるにもかかわらず、経済的理由によって」云々「奨学の方法を講じなければならない。」こうあるわけですね。つまり、この憲法、教育基本法が言っている流れは何かというと、端的に言えば、教育の機会均等の原則の上に立って、能力があるにもかかわらず経済的理由で修学できない者についてその奨学の措置を講ずる、こうなっているわけです。ですから、流れている基本は、教育の機会均等の原則なんです。これは理解いただけると思うのです。  したがって、改正法の「目的」の中にあるすぐれた学生、生徒、つまりすぐれた能力の学生を選んで奨学の方途を講ずるべきだとは書いてないのです。つまり、この規定は、私から言わせてみれば、すぐれた能力のある者を選んで教育をするという英才教育の考え方だと思うのです。ここで言う「能力があるにもかかわらずこというのは、この能力というのは大学教育であれば大学で修学する能力を持っている、つまり簡単に言えば、大学の受験をパスしたというこのことを言っているのでありまして、その中で特にすぐれた者を選んで奨学の方途を講ずるとは言っていないと思うのです。したがって、ここのところは、私はあえて言うならば、憲法、教育基本法に準拠するならば、なぜ「優れた学生及び生徒であって」ということが出てきたのか。教育の機会均等からいうならば外れていると私は思う。  以上の点についてまずお答えいただきたい。
  58. 宮地貫一

    宮地政府委員 確かに先生御指摘のとおりかと思います。問題は、この人材育成を「目的」として加えて、対象を「優れた学生及び生徒」としているわけでございますけれども基本的には、この育英奨学事業はもとより国の予算の制約の中で実施をするわけでございまして、その中で学資貸与事業を実施しようとします場合に、人材育成の観点から学業成績がよりすぐれた者を対象とするということについては、予算の制約がある現状からいたしますれば、そういう要素を加味すること自身はやむを得ない点でございまして、私ども、このこと自身が教育の機会均等の理念に反するものとは考えないものでございます。  以上が、基本的にこの目的規定で、そういう制約下にあるということを受けまして、「優れた学生及び生徒」を対象としている理由でございます。
  59. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 根拠規定をあなたは憲法二十六条、教育基本塗二条と言ったわけですから、やはりそれに忠実に準拠した法令でなければならぬと思うのです。たまたま今あなたは、「優れた学生及び生徒であって」以下「有為な人材」と、こうつなぐわけでしょうけれども、これは予算の制約があるからやむを得ないというようなことを言われましたが、この憲法二十六条なり教育基本法三条によれば、それに忠実にいくならば、そういうことは出てこないと思うのです。  私はあえて言うならば、簡単に言えば、すぐれた能力のある学生を選んで奨学の方途を講ずるというのは、憲法なりあなたが準拠していると言う教育基本法の第三条の一項、二項に照らした場合、どこから出てくるのですか。
  60. 宮地貫一

    宮地政府委員 もちろん御指摘のように、基本的には、育英奨学事業というものは、教育の機会均等を図るという観点から今後ともその充実を図るということは必要な事柄でございまして、私どもとしてもそのための努力を今後ともしていかなければならない、かように考えております。  しかしながら、今回全部改正改正法お願いしているわけでございますけれども先ほど来御説明をしておりますように、もちろん私どもとしても、基本的には憲法なり教育基本法に定められておる理念がより完全に達成されることが望ましいわけでございますけれども、現状では基本的に制約がある。その制約を受けたものを前提として目的規定を書くとすればこういう表現にならざるを得ないということは御理解を賜りたい、かように考えております。
  61. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 理解できないような答弁をして理解してくれと言ったって、それは無理ですよ。  あなたが言う第三条、教育の機会均等、特に奨学の方途ということですけれども、この「能力があるにもかかわらずここのことをどう理解しますか。
  62. 宮地貫一

    宮地政府委員 御指摘の「能力があるにもかかわらずこの、その能力がある場合の能力を、どの程度の能力を指すかということについてのお尋ねでございますが、もちろんいろいろ議論があろうかと思いますけれども一定のすぐれた能力を持ちながら経済的理由により進学の道を阻まれている者に進学の機会を与えるということも、この条項の趣旨に含まれるものというぐあいに理解をいたします。  したがって、先ほども申し上げましたような現状での予算の制約の中で実施をする対象といたしましては、すぐれた成績を有することを要件とすることも、そういう判断を加えることも、このこと自身はやむを得ないことではないか、かように考えております。したがって、能力そのものについては、やはり一定のすぐれた能力を持ちながら経済的理由により進学の道を阻まれている者を指すものと理解をしております。
  63. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 私は、第三条の「能力があるにもかかわらずこという、このことを質問しているのですが、あなたが何遍も繰り返しているのは、一定のすぐれた能力、すぐれた能力という、このすぐれたという言葉を使いたがるのですね。ここには何もすぐれたとは書いていませんよ。「能力がある」ということですから、能力があるにもかかわらず、しかも進学ということを前提にしておりますから、大学で進学を認められ修学をする能力が存在するということであって、その中で特にすぐれた者とかすぐれていないとか、そんなことを言ってないですよ。このことを忠実に理解するならば、大学に進学して修学する能力があるという一定の枠の中であるならば、その方々が経済的理由だけで修学が困難であるとするならば機会均等を逸するから、その点については修学の方途を講じなければならぬ。つまり、これはどこまでも経済的理由を前提にして修学の方途を講じ、教育の機会均等を全うするという規定なんです。ですから、後に出てきますけれども、選定の場合に、その能力、つまり成績、もちろんこれは家計も加味しているようでありますけれども、こういう点から言うならば、成績が三・五であるとか三・二であるとか、私はこういうのは問うべきじゃないと思うのです。基本になるのはやはり家計だと思うのです。一定の大学生なら大学生に対して、その家計の状態がどうであるかによって、その経済的理由によって不均等な部分を充当させていくというのが奨学の本来の方途だと私は思うのです。この点がこの育英会法案の、また改正法案のまず基本的な出発点の違いだと私は思うのです。この点、文部大臣はどう考えますか。
  64. 森喜朗

    ○森国務大臣 私は、人材育成、教育の機会均等、いずれも重要であるというふうに考えておりますので、今あえてどちらにウエートを置くか云云ということを申し上げますよりも、両方に配慮をしていくということの方がより適切ではないかというふうに私は考えるのです。  確かに能力のすぐれた者にということもあるでしょうし、逆に言えば経済的な理由のみだけで、やはり国の経費を一時的といえども使用しているわけでございますから、まじめに努力し、そしてまた勤勉にやろうとする人でなければ、そういう意味では国民の合意を得られないというふうに感じます。そこをあえて明確にどちらかにウエートを置くということよりも、この際、人材を育成するということ、あるいは教育の機会均等を図るということ、そういう二面的な面、ある意味では多面的な面、そういう面をいずれも配慮をするというふうに考えることが適切ではないかなというふうな感じがいたします。
  65. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 私は、右も大事だが左も大事だ、こういうことをお尋ねしているのではなくて、先ほどから改正法という法を論じているわけです。しかも、その根拠が憲法なり教育基本法の条項まではっきりしているわけですからね。それに照らしたならどうだろうかということをお尋ねしているわけでありまして、それに沿ってきちっとお答えいただきたいと私は思います。  今、文部大臣、答えられましたけれども、私はその答えには納得しかねるのでありますが、このことをずっとやっていきますと、それだけで質問時間がなくなってしまいますから、関連して次のところに進みながら、後にまたこのことについては具体的なところで質問してまいります。  次に、「国家及び社会に有為な人材の育成に資する」、こういうふうに書いてありますね。これはどういうことなんですか。
  66. 宮地貫一

    宮地政府委員 「国家及び社会に有為な人材」と規定しているわけでございまして、これは憲法、教育基本法の理念に基づいた民主的、文化的、平和的国家及び社会の形成者としての国民のことであります。育英会は、学資を貸与することによりまして学校教育への修学を援助し、このような人材の育成に資することを目的としているものでございます。  なお、現行法において「国家有用ノ人材」としておるけれども、それは、人について「有用」という表現は最近の立法例では使用しておりませんので「有為」という表現に改め、また「国家」については「国家及び社会」というふうにより広い表現に改めたものでございます。
  67. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 現行法では「国家有用ノ人材ヲ育成」と、こうありますね。改正法では、今言われたように、「国家及び社会に有為な人材の育成に資する」、こうあるわけです。これは「社会」という言葉が入り、「有為」という言葉に変えたという点は違うと思うのですが、私はこの基底にある考え方は共通だと思うのですよ。  私も辞典で引いてみたのですが、「有用」という言葉は、つまり役に立つ、使い道があるということですね。それから「有為」というのは同じく役に立つということですけれども、才能があり将来役に立つ、こういうような意味合いなんですね。ですから、若干ニュアンスは違いますけれども、役に立つという点については共通しているわけですよ。言葉を変えた、「社会」が入ったと言うけれども、大筋において、現行法律改正案の目的は余り違わないと私は思う。つまり前提をなすのは、国のため、社会のために、役立つ人間をつくるということなんですよね。役立つ人間をつくる、これは共通していると思う。しかし、今答弁の中でいみじくも言われたように、憲法なり教育基本法が言っていることは、国家、社会に役に立つ人間、つまり使い道がある、将来役立つだろうという人間をつくるということを言っているんじゃないと私は思う。  あなたが言われた教育基本法の第一条は、「平和的な国家及び社会の形成者として、」以下云々の国民の育成を期する、こう書いてある。今の条文に対比してみるならば、平和な国家及び社会の形成者を育成する、役立つんじゃないんですよ。「平和」というのがつきますからね。平和な国家、社会をつくり上げる人間をつくるのが教育基本法の目的なんですよ。だから、発想が違うのです。国家、社会に役立つ人間じゃない、平和な国家、社会をつくり上げる人間を育成するのです。どうせ入れるとすればなぜこういう形で入れなかったのですか。どうですか。
  68. 宮地貫一

    宮地政府委員 目的の規定につきまして、規定の書き方としては先ほど説明をした点に尽きるわけでございますけれども、前に御質問をいただいた際にも御答弁申し上げたかと思うのでございますが、「国家及び社会に有為な」という表現については、例えば学校教育法の第四十二条でございますけれども、「高等学校における教育については、前条の目的を実現するために、次の各号に掲げる目標の達成に努めなければならない。」という規定がございまして、その中に第一号で「中学校における教育の成果をさらに発展拡充させて、国家及び社会の有為な形成者として必要な資質を養う」というような規定もあるわけでございまして、私どもとしては、ここに書いておりますのは、先ほども申しましたように、「国家有用ノ人材」という従来の規定からより広い規定にしたということは規定上表現の上でもあらわれておるわけでございますけれども事柄としては、ここに書いてございます「国家及び社会に有為な人材」の内容としては、先ほども御答弁申し上げましたような民主的、文化的、平和的国家及び社会の形成者としての国民ということを考えておるわけでございまして、単に従来言われております「国家有用ノ人材」というような考え方よりもより幅の広い表現、私どもとしては、今回の改正では内容的にそういうことを盛り込んで提案をいたしております。
  69. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 目的、現行法改正法、この趣旨と骨組みを比較してみると、端的に言えば、改正法では「教育の機会均等に寄与する」ということが文言として入っている、これが違いですね。あとその他の部分は、今言われたように、「優秀ナル」を「優れた学生」とか、「有用ノ人材」を「有為な人材」とか、文言は変わっているけれども考え方基本は変わっていないと私は思う。ほとんど同じなんです。とするならば、今改正法案であっても、現行法のこれとほとんど変わらないと私は思いますから、では、現行法の「優秀ナル学徒ニシテ」以下云々「国家有用ノ人材」というのは何か。まさに旧憲法体制下の、すぐれた英才を選んで国のために役立つ人間をつくる、そのために国の金を投じてやる、こういう考え方でしょう。国家に役立つ人間、優秀な人間を選んでつくり上げていくという発想なんですよ。それと改正法のこれは全く一致しているわけだ。だから、なぜ「優れた学生及び生徒であって」というのをつけなければならぬのか、せっかく改正するのに。なぜ「国家及び社会に有為な人材の育成」とするのかということを尋ねたのは、そういうところにあるわけであります。したがって、この第一条の目的は、現行法からいえば、「教育の機会均等に寄与する」という一項は入っているけれども前段の骨組みについては現行法と何ら変わらない。憲法、教育基本法に沿うべきものが旧来の、つまり明治憲法下の発想、育英事業を通じて国のために役立つすぐれた人間をつくるという、そのために国は金を出すんだ、この発想が変わっていないということですよ。私はそこのところを問題にしたい。  現在の憲法、教育基本法はそういうことは言っていないわけです。平和な国家、社会の形成者としての人格の立派な人間をつくるのだというのが基本になっているわけでしょう。やはりそこを基本に置いた奨学生制度でなければならぬと私は思う。そこのところが、出発がこういう目的になっているものですから、後で私は具体的な点で質問をいたしますが、いろいろな問題点が出てくると思う。したがって、この第一条を、現在の憲法、教育基本法に沿ってこの目的を私なりに書きかえるとすれば、私は、「日本奨学会は、経済的理由により修学に困難がある者に対し、学資の貸与を行うことにより、教育の機会均等に寄与し、よって平和な国家及び社会の形成者を育成することを目的とする。」これが本当だと思うのですよ、私に言わせるならば。これが憲法、教育基本法に基づく奨学の趣旨であり、そしてまた、それをねらいにして奨学の制度がつくられなければならぬと思う。  ところが、先ほど言ったような旧来の考え方を踏襲し、英才教育を通じて国家有為の人間をつくるというふうになっているものですから、例えば具体的に選考基準などあってくれば、三・五であるのか、三・二であるのか、改正法などを見れば、一点、二点によって無利子になるし、ちょっと一点違えば有利子になる、それはしょうがないじゃないか、おまえは頭が悪いのだから、簡単に言えばそういうような考え方にずっとつながっていくと思う。したがって、私はそういう形でこの第一条を問題にしているわけであります。  次に移りたいと思いますが、私は今すぐに、この際改正するならば、憲法、教育基本法にのっとってそのように改正すべきだというふうに考えるのですが、森文部大臣はどうですか。
  70. 森喜朗

    ○森国務大臣 佐藤さんの御指摘は、一つの見方としては、確かに今個人のお考えとして、私ならこういうふうにつくってみるという、これは私は一つの見識だろうと思います。教育基本法には人格の形成というふうに書いてございます。それはもちろん目指すことでございますが、その中には、間接的には、民主的で文化的な国家を建設する、その建設をするための、国家形成をするそれぞれの人材を養成するというか、そういうことも教育基本法にあるわけでございまして、国家のために有為な人材、国家のために役に立つ人材というふうに国が求めるということは、やはり国の形成に対してそれぞれの若き学生さんたちに努力していただいて、先生おっしゃるように、それぞれ平和のためにあるいはまた個人の生活、将来に対する設計のために、いろいろあるわけでありますが、要は、それは結果的には国家を形成していく一人一人の国民としての立場をつくり上げていくということになる、国のためになっていただけるということであろうと思うのです。  日本の国民は一人一人それぞれの立場で努力をし、そして就業の場についてまじめに働いて、そしてそのことが結果的に国のためになることだけは間違いないことでございまして、物の考え方というのはいろいろあろうと思いますけれども、この第一条の中の「平和的な国家及び社会の形成者」ということは、やはり国を構成してくれる一人一人という意味もあるわけでございまして、先生のお考えももちろんそれは一つの御見識であるというふうに冒頭申し上げましたけれども、私どもといたしましては、単に国家のために必要な人間をつくり上げるのだというような直接的な表現のものを問うているわけではございません。それぞれ個人個人が、憲法あるいは教育基本法の中で立派に育ってくれて、結果的には国の有為な人材になってほしいという希望を持っておるわけでございまして、その点は、先生のお考えについてはそれなりに私どもは、御見識としてはなるほどというお教えをいただくことになりますが、私どもとしても、先生のおしかりをいただくような、そういう立場でこの法律を変えているものではないということをぜひ御理解いただきたいと思うわけでございます。
  71. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 それでは、今のことに関連して一、二の質問を追加しておきます。  その一つは、結局言葉であらわせば、育英事業か、機会均等を原則にした奨学事業か、私はこの辺だと思うのです。このことについての議論は、この教育基本法ができるときに既に議論されているのですね。昭和二十一年十二月二十九日、教育基本法要綱案、これは教育刷新委員会の要綱案です。これを見ますと、今の教育基本法第三条のところに関連して次のように書いてあります。第三条第二項に関して、この議案はこのようになっているのです。「国及び公共団体は、能力あるに拘らず、経済的理由によって修学困難な者に対し、法律の定めるところにより、育英の方法を講じなければならないこと。」とあるのですよ。これが変えられて、第三条の「国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず」ここは同じですね。「経済的理由によって修学困難な者に対して、」次が違う。「法律の定めるところにより、」が抜けています。そして、今申し上げたように要綱案では「育英の方法を講じなければならない」というのを「奨学の方法を講じなければならない。」つまり、ここで「育英」を「奨学」に変えているのです、教育基本法が制定される過程の中で。ですから、その当時から「育英」か「奨学」かということは議論されているのです。そして議論された結果、育英、つまり英才教育ではないのだ、奨学だ、修学に困難なる者を、そのハンディをなくしていくための奨学なんだということに変えているのですよ。ですから、この考え方を我々は基本に据えなければ、本来の憲法や教育基本法に基づく奨学にはならないということを、我々はこの際、昭和二十一年のころに既にそういう議論になっているということを考えておかなければならぬと思いますので、その点を一つ指摘しておきたいというふうに思います。  次に、育英会で出している「日本育英会奨学生推薦基準昭和五十八年度)」、これを見ますと「家計基準」と「学力基準」がございます。この五十八年度の推薦基準を見ますと、国公立の大学の場合、家計基準で収入四百七十二万以下は特別貸与の推薦に該当することになっております。しかし、学力で見れば高校成績三・五以上の者のみが該当するのだ。三・二以上、つまり三・二から三・五の者については一般貸与ということになっているわけです。先ほどのことに関連しますが、同じ家計の状態でありながら学力でなぜ一般貸与特別貸与、しかも現行法では特別貸与になれば、一定の部分については免除になりますね。さらにこれは、今改正法議論されておりますが、改正法が通過をいたしまして具体的にこの推薦基準議論されていく過程の中では、文部省の案としては、三・五相当の者は無利子、三・二から三・五の間の者は有利子というふうに私たちは聞き及んでいるわけです。  そうなりますと、経済状態は同じだけれども点数によって片一方は無利子、片一方は有利子という決定的な差をつけていくことになるのですね。このことはどうなのか。本来家計を中心にすべきものが、偏差値よりも人格ということが言われていますけれども、まさに偏差値教育、学力というものを大きく助長するような方向にこの改正案も加担をしているのではないかというふうに言わざるを得ないので、その点重ねてどうですか。
  72. 宮地貫一

    宮地政府委員 御指摘学力基準に差を設けている点についてのお尋ねでございますが、日本育英会におきましては、従来から、奨学生の選考を主として学業成績及び家計収入の基準によって行うということで、ただいま先生御指摘のような、現行特別貸与は学業成績及び家計収入のいずれについても、一般貸与に比べより厳しい基準ということで選考を行うことにしておるわけでございます。  そして、今回改正お願いしております無利子貸与制度と有利子貸与制度につきましても、その経過を踏まえまして、より優遇されます無利子貸与について、やはり有利子貸与に比べてより厳しい基準を設定するということで、具体的には今後改正法成立後の議論でございますが、ただいま考えておりますのは先生御指摘のような方向で考えているわけでございます。  なぜそういう基準を設けてやっておるのかというお尋ねなんでございますが、出願者を学校長が育英会に推薦をいたします場合に、育英会の選考を受け得る資格要件を備えておるかどうかを判断する場合、さらに育英会学校長の推薦を受けた者について奨学生を選考する場合に用いるわけでございますけれども、一応数値的な基準ということを決めておかなければ、各学校から推薦されます者の奨学生としての適格性の程度に不均衡が生じ、かえって不公平というようなことが出てくるかと思います。そのため、従来そういう数値的な基準を定めて対応しているわけでございまして、もちろん実際の奨学生採用の決定に当たりましては、それ以外のいろんな要素をそれぞれ加味して最終的には決定をされることになるわけでございますけれども基準を定めて執行しているというのは、そういう各学校における取り扱いの間に不均衡等の生じないような、全体的にやはり統一的な一つの基準というものが必要であるということで、従来の運用としてはそういうことで実施をしているものでございます。
  73. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 私は、基準が不必要だとは言っておりません。これは公のものですから、客観的でなければなりませんから。ただ、先ほどから問題にしているのは、点数によって具体的にそういう形で奨学あるいは金額に差がついてくる、このことを問題にしているのでありまして、これは先ほど目的の中で言いましたように、基本的にそこから発想の違いが出てくると私は思うのですよ。  ですから、これは端的に言えば、現行法あるいは改正法も同じなんですけれども考え方は、すぐれた者を選んで国家のために役立つ人間をつくる、そのために金を出すということですから、どうしても考え方としてすぐれたということが出てきてしまうのですね、その者に手当てをする。私は、発想としては育英だと思うのです。しかし、私は先ほども言ったように、教育の機会均等を前提にして「経済的理由に」云々という、ここのところを差を埋めていくという発想ですから、そのことが今ここに具体的な形で出てくるわけです。ですから、すぐれたとかすぐれていないとか、そこにウエートを置くんではなくて、経済的理由、したがって、教育の機会均等の問題ですから、経済的理由によって差が出てくるということはあり得ると思いますが、本来の奨学、機会均等ということから言えばそういう形でするべきものではないだろう、私はこのことを特にこの際、あわせて主張しておきます。  これは基本的な点で、かなり議論しても、では一致したとか、ではここのところはということになかなかならぬところがあるやに推定されますから、時間の制約がありますから先に進みます。私は、以上の点だけ特に指摘をしておきたいと思っております。  そこで、日本の奨学生の問題ですが、御承知のとおり、日本の場合の奨学制度貸与制です。しかも、貸与の額も少ないし受けている学生も少なく、その受けている学生の比率も低いということは御承知のとおりです。この際、諸外国並みに給費制を導入し、月額支給をふやし、さらに対象となる学生の比率を高めるべきではないか。後段で述べたのが、御案内のとおり奨学についての世界の趨勢であることはどなたも認めているわけです。ところが、日本の現状はかなり立ちおくれていると同時に、むしろ臨調路線の中で国際的な趨勢とは逆の方向に行っている。その一例が、後ほど問題にしたいと思いますが、有利子制の導入などですね。  この際、少なくともGNP世界第二位という日本がそんなに一挙に世界のトップに行かなくても、世界の流れに沿って給費制を導入し、月額を引き上げ、対象となる学生をふやす、こういう努力があってしかるべきだと私は思うのですが、その点はどうですか。
  74. 宮地貫一

    宮地政府委員 基本的に貸与制でなく給費制とすべきではないかという御指摘かと思うのでございますけれども、日本育英会奨学金は、御案内のとおり制度発足以来、貸与制ということにいたしておりまして、奨学生が卒業後返還の義務を果たすことによりまして、できるだけ多くの後進育成の資金として返還されますものを循環運用して事業規模の拡充に資しているというのを基本的な組み立てとして対応しているわけでございます。     〔委員長退席、白川委員長代理着席〕  ちなみに、五十八年度においては、事業費総額の約二二%がこの返還金によって賄われているわけでございまして、今日の大変厳しい財政事情を勘案いたしますと、財源をできるだけ有効に使用するという意味からも、私どもとしてはこの貸与制は、現行制度、今日の現実に置かれている状況を踏まえました政策としては、この政策で対応していくというのが基本ではないかというぐあいに考えております。  もちろん、先生御案内のとおり、特定の、例えば教育、研究職に従事した場合には返還免除という制度が働いているわけでございまして、いわばそこの部分は、見方によれば形を変えた意味での給費制にかわる役割を果たしている部分もあるんではないか、かように考えております。  制度の仕組み全体としては、もちろん給与制というようなことも調査研究会でもいろいろ御議論をいただいたところでございまして、将来の課題としてはそういう方向に持っていくということについても、私どもももちろん議論をし、そして将来の検討課題としてはそういうこともある。例えば大学院の将来の研究者養成というようなことに資する点から申せば、例えば大学院の博士課程とかそういうようなものについて給費制の導入ということなども将来の検討課題としては考えなければならぬことではないか、こういうことなども調査会では議論があったわけでございます。ただ、当面とり得る現実の政策といたしましては、ただいま御提案申し上げておりますような内容で対応せざるを得ないというのが現実の政策判断でございます。
  75. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 今の答弁の中に、我が国としてはとか、こうやってきましたのでとか、これが限界であるとか、こういうようなことがいろいろ端端に出てくるわけですが、少なくとも日本が経済大国、しかもGNP世界第二位というこのことを土台にして考えるなら、他の国々はどうなのか。つまり、サミットに参加する諸国はどうなっているのか、やはりこれを考えないと、我が国は、我が国はではしょうがないと思うのですね。  御承知だと思いますけれども、例えば私が得た資料によりますと、支給形態が給費制というのはアメリカ、イギリス、フランス、西ドイツ。給費制でないのが日本です。貸与制が日本です。今挙げた国は、みんなサミットに出ている国じゃないですか。全部給費制です。例えば年間予算額を見ますと、若干年度は違いますけれども、アメリカの場合、日本の円に直しまして一兆四千九百億円、西ドイツの場合四千五百億円、日本の場合、昭和五十八年で九百八十四億円です。支給年額で見ると、西ドイツの場合には八十九万円、これは給費ですよ。日本の場合には国公立て三十一万円、私立て四十七万円。西ドイツは大体倍の給費制になっていますね。では、学生に対する受給者の割合は、あとは多く言いませんが、アメリカの場合は六割、イギリスの場合九割、日本の場合一割です。余りにも違うんじゃないかということを私は指摘したいわけです。  同時にもう一つは、今申し上げたそういう状況にあって、日本の場合は、授業料は上げるわ、返還免除は縮減するわ、有利子は導入し、まあ今の行革推進審議会などの周辺をめぐる議論などを見ますと、全部有利子にすべきだなどという議論まで飛び出ている状況を見ますと、これはまさに世界主要国の趨勢に逆行するだけではなくて、御承知のとおりの国際人権規約十三条二項にももとるものだと言わなければならぬのです。  一九七九年に批准された国際人権規約十三条二項の(C)項には、「高等教育は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、」以下ずっといきまして「均等に機会が与えられるものとする」とあります。それで、今私が申し上げた。項、つまり無償の漸進的な導入、教育の機会均等、こういう。項を含めて、世界の六十九カ国が批准しております。ただ、今私が申し上げた。項を保留している国が二つあるのです。一つはアフリカのルワンダであります。一つは経済大国日本なんです。これで日本が世界に伍していると言えますか。内容的にも、国際人権規約の点からいっても、けた外れに日本がおくれているんじゃありませんか。にもかかわらず有利子を導入する、しかもそれは場合によっては全部有利子にしたらどうかという。経済大国にふさわしいのかどうか。財政効率優先のような考え方が横行している。これで文化国家日本と言えるかどうか。まさに今申し上げたような世界の趨勢に伍していけるのかどうか。サミットに中曽根さんが大きな顔をして行けるのかどうか。このことを私たちは日本国民として考えなければならぬのではないかということを考えますが、その点文部大臣、どう考えますか。
  76. 森喜朗

    ○森国務大臣 午前中、田中さんからも、今佐藤さん御指摘をいただきました点と同様な御質問をいただきました。  確かに奨学金制度そのものは、日本の場合は諸外国に比べてある意味ではまだ未熟な点もあるんだということは、今お話を伺っておりましただけではなくて、私も常々意識としては持っております。しかし、日本の文明といいましょうか、長い鎖国の時代から新しく西洋に目を向けてわずか百有余年でございます。そういう歴史的な経過の中で、国民全体がそうした学術、文化、教育という面での認識を持つということにどういう時代的な経過があったかということは、私も年齢的には若うございますので定かではございません。ただ、スタートいたしました当時が、先ほども申し上げたのでございますが、戦時体制の中でございましたから、ああいう時期によくできたなあと本当に先人の政治家たちの偉大さを我々は改めてここで認識をするわけでございますが、同時に、そういう時代でございましたから、恐らく、今先生からおしかりをいただきましたような、いわゆる給費制度ではなくて貸与制度でスタートをせざるを得なかったのだろう、こう思います。先ほど局長が申し上げましたように、その制度として今日までずっと続けてまいりましたので、いわゆる貸与制度というものをできるだけ拡充をしていく、条件を整えていくというのが今日までの経過でございます。  したがいまして、今法律改正いたしまして、国民の前に新たなる一つの制度を取り入れることになったということの御了解をいただくわけでございますが、ならば、そのときに、この機会に給費制をなぜ採用しないのか、そういうお尋ねはもっとものことだろうと思いますが、先ほど申し上げましたように、今のこのような財政の状況からまいりましても極めて厳しいときでもございます。もちろん、有利子、無利子、そしてまた給費制、そうしたいろいろな形でよりよきものを求めていくというこの制度の抜本的な改正というのは、また別個の問題として考えていかなければならぬということでございますが、私どもといたしましては、現状のこうした財政状況下の中で、先ほども申し上げましたように、機会の均等、そしてまた、できる限り量的な拡大を図るという両面をある程度満たしていくという立場に立ちましてこの法改正お願いいたしておるわけでございまして、局長が申し上げましたように、その中にいわゆる返還免除という制度も若干でございますが取り入れることによって、少しは変化を持たしたりいたしておるわけでございます。  諸外国との比較だけ見ますと、確かに先生のお尋ねのとおりでございますけれども、そのものだけで見ていいかどうかということになれば、やはりいろいろな議論があると思うのです。いわゆる租税の負担率という面も、それぞれの国によっては違うようでございますし、進学率などを見ますと、アメリカなどはかなり大きな進学者でございます。また、それぞれの国によっては実際の学生総数というものの見方もあろうかと思いますが、いずれにしても、制度としては確かに質的な面で見劣りするということだけは、私自身もそれは率直に認めざるを得ないと思いますが、そういう歴史的な経過等があるということもぜひ御理解をいただきまして、現財政状況下の中で、先ほど申し上げました幾つかのそうした条件を満たすということでこの法案制度お願いをいたしておるわけでございまして、私どもは今後とも十二分にそのことは念頭に置きながら、将来ともに育英奨学というもの——育英奨学と言うとまた先生におしかりをいただきますが、奨学制度の充実ができ得るようになお一層の努力をしていかなければならない、そういうふうに考えまして、現在のところはこうした法改正お願いせざるを得ないのだということをどうぞ御理解いただきたい、こう思う次第でございます。
  77. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 今も大臣の話がありましたが、量的拡大ということを言われておりますね。これは提案理由の中にも言っておるわけでありまして、特に有利子貸与の導入によって量的拡大ということ、そして数字で言えば、結果的には一万一千人ふやすのだ、こういうことを終始言われております。  しかし、私は、中身は別にして、量的拡大ということ、そういう追求の中で有利子を導入した、そのことによって、量の問題もさることながら、逆に今度は質の面で大変異質なものに育英奨学制度が変わっていくのじゃないか、変わりつつあるのじゃないかということを考えざるを得ないわけです。量を拡大するための有利子を導入することによって、その有利子部分に伴う質が変わっていく、私はそう見ざるを得ないのです。  例えば、政府の立場から見ると、公的教育事業を利用して学生に金を貸すわけです。そして利子を取るわけですから、つまり利子を稼ぐことに通ずるような形になっておる。また、父兄の立場からいえば、今次問題にされておる教育投資の発想に拍車をかけるようなことになりはしまいか。どれだけ金をかけて、どれだけ利息をやって、卒業したらどうなっていってという、これだけが先行していくようなことを助長することになるのではないか。また、学生からいえば、先ほど言ったように、成績がちょっとでもよければ無利子になるが、ちょっと外れれば有利子になる。これは将来ともつきまとうわけです。そして、一点でもとる、これはまさに学力偏重といいましょうか、偏差値中心といいましょうか、そういうようなものをさらにそれとの絡みで助長していくことになりはしまいか。つまり、簡単に言えば、教育の商品化、ローン化につながるのじゃないかということです。  これは今までの発想からいうならば、出世払いの英才教育、金を借りてもいずれは出世して金を払えばいいじゃないかというようなことにつながる危険性を持っていないか。今三%と言われておりますけれども、さらに大きく利子負担がのしかかっていったときに、さらにそういうことが助長されていくのじゃないだろうか。これは私一人の危惧ではないと思うのです。  しかも、先ほどから言っておるような、本来の奨学制度のねらいである憲法二十六条、教育基本塗二条で言うところの教育の機会均等や、あるいは教育諸条件の整備、ひいては教育そのものは、あすすぐ役立つという短兵急な目先の問題ではなくて、国家にとれば百年の大計であり、その人にとっては一生の大事業である人格の完成というその目的に沿った奨学金制度から離れていくのじゃないか。言うならば、教育そのものがまさに商品化され、ローン化され、銀行と深いパイプとつながりを持つことに公教育がなっていくのじゃないか。このことは、金の問題のみならず、大きな社会的風潮を生んでいくのじゃないだろうか。ただでさえ今日、教育荒廃の問題、教育に対するいろいろな問題が惹起しているときに、こういう質的な面をこの際十分重視をしていくべきではないかということを私は考えるのでありますが、その点どうですか。
  78. 宮地貫一

    宮地政府委員 先ほどお尋ねのありました際にもお答えをしておるわけでございますけれども、無利子貸与制度というものは、私ども、いろいろ議論をしていただきました結論として、育英奨学事業の根幹として存続させていくということを基本的に考えておるわけでございます、そして、低利の有利子貸与制度を創設して量的拡大を図っていくということで対応しているわけでございまして、御指摘がございますように、育英奨学制度についてそれぞれ、いろいろなところでいろいろな関係者の議論がなされているということは、もちろん私どもも十分承知をしております。そして、無利子貸与制度をすべて有利子貸与制度に切りかえるべきではないかというような議論も既に臨調その他でも行われてきておるわけでございまして、私どもとしては、文教政策の基本としてどう考えていくかという観点に立ちまして、従来の無利子貸与制度というものを育英奨学事業の根幹として考えていく。ただ、今日置かれている財政状況その他から見れば、片や貸与月額も既に数年にわたって据え置かれてきておるというような現状もございます。貸与月額を引き上げ、かつ、量的拡充を図るということは、いずれも育英事業の改善充実のためには必要なわけでございますけれども、ここ一両年はゼロシーリングというような基本的な財政状況を受けて、それらがいずれも改善ができていないというような現状をどう打開していくかという考え方で、今回御提案を申し上げておりますような制度の改革、拡充を図っていくわけでございまして、事柄としては、御指摘のように、将来育英奨学制度そのものが変質をしていくようなことになっていくというぐあいには私どもとしては考えていないものでございます。
  79. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 そこで、有利子貸与の利率三%、その残余の部分は利子補給ということになっているようであります。今まで質問された方も、三%の利率で今後もずっとやっていけるのかどうか、このことを十分質問しておりましたが、私もその点、危惧の念を持つのです。  データによりますと、毎年、利子補給は有利子貸与生がふえるに従ってふえていくのは当然でありまして、昭和六十八年は百五億円と言われます。トータルで五百七十億円ですか、今も答弁の中にありましたような厳しい財政事情の中で年々こういう利子補給がふえていく、それを大蔵省は手放しで認めていくんだろうか、そこに切り込みがかかってこないだろうか、三%を四%、五%に上げるべきだというように来ないかどうか、その保証はないと思うのです。  しかも、現に改正法によりますと、四十三条では、学資の貸与、その他もそうなんですけれども、大蔵大臣との協議が定められているのです。そういう形で大きく綱がかぶさっている。しかも、財政状況は好転どころか、悪化の方向をたどっております。財政云々のことは、きょうはここでは言いませんけれども、私は、どんな角度から見たって先行き見通しが明るいとは言えないと思うのです。そういう状況の中で大蔵省が見過ごして、どんなことがあっても三%だということで果たしていけるかどうか。特に今答弁の中で、無利子貸与を根幹とし云々ということで、有利子になっても奨学制度が変質していくものとは考えられないということを言われました。  しかし、新聞の報ずるところによりますと、行革審が二つの小委員会の報告、これを検討し、出されようとしているわけですけれども、その中に返還免除制度の廃止、もう一つが育英奨学金の全面有利子化ということ、新聞の報道が正しければそういう形で出ておりますね。御承知のとおり、今昭和六十四年の時点で見ますと、無利子が二十万一千百九十一人、有利子が七万六千八百人、こういう状態になっておりますけれども、これが全部有利子になった場合、その利子補給たるや、とてつもない金になってくる。そうなった場合に三%でいけるのかどうか、私は不可能だと思う。ですから、有利子は量的拡大であるとかあるいは三%堅持であるとか、それは副次的なものであって根幹は無利子であるというようなことを今言っておりますけれども、今のような財政状況、臨調の動きから言えば、これは予断を許さないと私は思うのです。そういう意味で、私は、戦後続いた育英制度の非常に重要な質的変換をもたらすであろうし、また分岐点に立っているような気がしてならないわけであります。その点、重ねてどうですか。
  80. 宮地貫一

    宮地政府委員 既に何度がお話が出まして、三%の低利の貸与利率の問題も、将来ともその点の確保はどうかというお尋ねがございまして、私ども今回制度を創設するに当たりましては、もちろん財政当局とも、こういう制度を導入する以上は将来における利子補給がこういう数字になるということも十分議論をいたし、そのことを踏まえて折衝をして、基本的に育英奨学事業そのものは、私どもは非常に大事な文教施策というぐあいに受けとめているわけでございます。もちろん、いろいろな観点からいろいろな議論があるということは十分承知をしておるわけでございますけれども、私ども基本的な文教施策として、非常に重要なものとして受けとめているわけでございます。したがって、こういう財政が非常に厳しい中でも、今回御提案申し上げておりますような形で文教施策として基本的なものとして踏まえて、それを充実させていくという考え方をとっているわけでございます。  重ねて同じ答弁になるわけでございますけれども、無利子貸与事業そのものは、もちろん私どもとしても制度の根幹として存続をさせ、また有利子貸与制度につきましても、学生の将来の負担能力というようなことも十分勘案をいたしまして、御提案申し上げておりますように、在学中無利子、卒業後一般的な貸与額については三%ということで、その点は堅持をいたしておるわけでございます。  御指摘のように、財政状況が直ちに好転をするというぐあいにはもちろん私どもも受けとめておりません。しかしながら、現在の規模で二万人ということで、これは年々人数的には増員をされていくわけでございまして、それだけ有利子貸与人員がふえてまいりますれば、一般会計からの利子補給ということも当然に金額的にはふえていくわけでございます。数字については、もう既に六十八年度までのお尋ねがありましてお答えしたとおりでございますけれども、育英奨学事業全体の規模から申せば、先ほどお話しのありました無利子貸与事業で将来返還金もふえてくるというような、財源の推移がどうなるかということも十分全体の姿を想定しまして、こういう有利子貸与事業についての利子補給を一般会計からお願いするというにとも全体の姿の中で想定をいたしまして、私どもとしてはお願いをしているものでございます。したがって、御指摘のように、この有利子貸与制度を導入することによりまして、直ちにそのことが我が国の育英奨学事業の大きな変質につながるというぐあいには私どもは理解をしていないものでございます。
  81. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 三%を堅持するということでありますし、将来は危ないなどということは答弁としては言えないだろうと思います。ただしかし、質問されるどなたもその点は非常に危惧の念を持っているわけですね。特に政府部内でも、文部省が三%だと頑張っても、今の財政状況、見通しの中で、果たして大蔵省がそのまま見過していくだろうか、これは皆さんが心配し、危惧される点だと思います。それは現時点ではこの程度の質問にしておきます。  次に、少し中身に立ち入った質問をしたいと思います。  改正法案によると、無利子貸与は九千人減であるが、有利子が二万人、したがって差し引き人数としては一万一千人の増である、こういう言い方をしております。中身を子細に見た場合に、果たしてそういう形でとられていいのかどうかということであります。有利子二万人増は財政投融資資金の導入、それに対しては利子補給をするわけですね。利子補給は当然政府の持ち出しになりますし、その年々の金額は先ほど言ったとおりでございまして、五十九年度が一億九千九百万、約二億、六十八年は約百五億になっている、こういう数字は既に御承知のとおりであります。そういう利子補給の金は確かに政府の持ち出しにはなるわけでありますけれども、一方において特別貸与の免除を廃止するわけです。廃止しますと、当然政府の歳出の減になってまいります。  私がここで問題にしたいのは、一般貸与特別貸与がありますね、この差の部分の免除がこの制度改正でなくなるわけです。したがって、その分は政府の持ち出しがなくなるわけでしょう。片一方の利子補給の分は政府が持ち出すことになります。その差し引き、相殺がどうなるかということですね。当然返還の方は、若干タイムのずれはありますけれども、約十年後には出てきます。  私が得た資料によりますと、例えば昭和五十九年は利子補給の方で約二億です、出す方ですね。ところが、返還免除を廃止する部分によって浮く金が、いずれ回り回ってきまして、それに相当する年度は約十五億です。返還の問題ですから年度のずれはありますよ。片一方において利子補給で約二億、そして二万人の対象者をふやした、これは確かです。しかし、免除の制度を廃止することによって浮く金が、年度のずれは出てきますけれども、約十五億。政府としては大変結構な話じゃないでしょうか。しかも、その約十五億を政府が歳出しなくてもいいということは、国民の側、つまり奨学金をもらう皆さんからいえば、免除の制度がなくなることによって出てきた金なんです。そちらの犠牲によって二万人が利子補給という形で出てきたのじゃないか。ですから、国民からいえば、全体として考えたときに、改正前より二万人ふえたということで果たして手放しで喜べるのかどうか、私はそのことに一つの問題があるような気がしてならない。  そういうふうに見ますと、おつりが来るほど政府の歳出は少なくなっていますが、形としては二万人ふえている。しかし、これは国民の側からいえば、一方が犠牲になることによって片一方がふえるわけですから、簡単に言えばこれは帳消しみたいなものです。残ったものは何かといえば、実質的に無利子奨学生が九千人減らされた、そこだけが残るのではないか。この議論は余りされてないようでありますけれども、子細に見ると、国民の側からいうと、そういうことも問題にされなければならないのではないかというふうに私は思うのです。  ちなみに申し上げますと、昭和五十八年の特別貸与返還免除が廃止されることによって、その金を充当した形で計算しますと、六十四年が十五億、七十四年には百五十七億の金が浮くと計算されます。そういう状況になっているのではないか。  二番目の問題は、ちょっと理解がはかばかしくないかもしれませんが、無利子貸与制度の改善として事業費総額一億六千四百万円を増額したというふうに言っております。これは文部省の資料に出ています。しかし、その内訳を見ると、政府資金の方は四十五億五千二百万ですか、これが減額されてむしろ返還充当額の方が、つまり奨学金を受けた方、この方々の方がぐんとふえているのです。ですから、事業費総額はふえたと言うけれども、簡単に言うと、政府の貸付金はむしろ減っておって、奨学金を受けた方の返還でもってこれがふえた形になっているのです何しかも、これはずっと年度を追ってみると、昭和五十五年返還額が百五十二億で、今の事業費総額の中に占める割合が一六・四、その当時政府の貸付金七百七十二億円、全体に占める、つま力事業費総額に占めるのが八三・六%になっているのです。ところが、ずっときまして五十九年を見ますと、返還額が二百九十七億円、その比率はぐんとふえまして二六・五%、政府の貸付金の方は八百二十三億円、比率が七三・五%。つまり、簡単に言えば、年々事業費総額の中で借りた方々の返還額の比率がぐんぐんふえております。一六から二六にふえている。政府の貸付金の方は八三%から七三%に減っているのです。こういうのが実態なのです。そういう推移の中で事業費はふえた、ふえたと言うけれども、実は政府の貸付金はさっぱりふえていないのであって、返還金の方がふえているのだ、こういう事実は正しく指摘をしておかなければならぬと思うの一です。  以上二つの点、ややこしく申し上げましたけれども、その点どうとらえておりますか。
  82. 宮地貫一

    宮地政府委員 数字の御指摘については、先生御指摘のとお力でございます。  問題は、初めの御指摘は、特別貸与返還免除の廃止によりまして、将来、年度は直ちに対応するわけではございませんけれども、そのことによって御指摘のように五十八年度において特別貸与新規採用者に対して、それが修業年限で貸与した場合に返還免除になります金額は、もちろん年数が直ちに対応いたしませんけれども、全体で百五十七億という数字になってくるわけでございます。この点は、今回の制度として、無利子貸与制度制度の根幹として残すということの基本は、一つには、先ほども御説明したわけでございますけれども奨学生の返還されます返還金を将来の無利子貸与事業の必要な財源として確保するという観点からいたしますれば、それがおっしゃいました特別貸与の返還免除が廃止ということになるそのこと自身は、確かに従来ありましたものを廃止をするという形を把握して議論をすれば制度として後退ではないかという御指摘でございますけれども、しかしながら、制度全体で把握をいたしますれば、そのことによって将来の返還金というものがふえていくということは、本来的にいえば無利子貸与制度の財源に充当されることになるわけでございまして、広い観点から見れば、やはりこの無利子貸与制度制度の根幹として将来さらに生かしていくためには、必要な財源の確保が、その面では従来免除になっておりましたものが廃止をされる分だけは加わってくるという意味で、私どもとしては、将来的に安定的に無利子貸与制度実施していくために、財源確保の観点から見れば制度として安定させていくための一つの方策ではないか、かように考えているわけでございます。  それから、御指摘のように返還金充当額が、これは年々育英奨学事業が過去において拡充をされましたものが返還をされてくるわけでございまして、返還金がふえてまいってそれが無利子貸与制度の財源になっていくことは当然でございます。そして、ただいま御指摘の点は、そのために政府貸付金の方の枠が、五十五年と五十九年で比べれば御指摘のようなパーセントになり、そして五十九年度で言えば、確かに政府貸付金の枠そのものは、マイナスシーリングという基本的な全体の制約下にありまして削減せざるを得なかったわけでございますけれども、しかし、いわば今日こういう無利子貸与制度という仕組みで実施しております観点からすれば、返還金充当額をそのために財源として充てて、結果として事業費については若干ではございますけれども伸ばすことができたのは、こういう財政的に厳しい状況下にあっても、財源の確保としては、全体から見ればそういう対応になっているということは言えるわけでございます。  御指摘の点は、政府貸付金の方をちっともふやしていないで奨学生の返還したものだけで事業を拡充しているというのは、政府としてはやるべきことをやっていないではないかというおしかりかと思うわけでございますけれども、その点はもちろん私どもとしても、将来において無利子貸与制度の改善、いろいろな面でまだやっていかなければならぬ点は多々あるわけでございまして、そういうものを目指しながら将来の課題として無利子貸与制産の改善充実を図っていくという観点から、政府貸付金の枠の増大については今後とも努力はいたさなければならぬ、かように考えておりますが、当面置かれております財政状況下から申せば、今申し上げたような形になっている点は事実でございまして、いわば返還金そのものも、広い意味では過去の政府の貸付金の累積の結果が奨学金の返還という形で出てまいっておるわけでございまして、そういう意味では、長期的仁安定した形で無利子貸与制度実施していくという点では、今後この返還金がさらにふえていくことになるわけでございまして、育英奨学事業全体から見れば、必要な財源がそういう面で確保されることは私どもは非常に大事なことではないか、かように考えております。
  83. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 大変具体的で細部にわたる議論になるものですから、これをやりますとかなり突っ込んだことになりますので、その程度にとどめておきたいと思うのです。  最後になりましたから方向をちょっと変えまして、文教予算をめぐる環境はよく言われるような大変厳しい状況にありまして、政府などが特に今の厳しい財政状況、あるいは財政再建のための歳出削減というような形で、臨調からいろいろ文教の予算削減が出てきているわけです、その一面が、今議論されているような育英奨学金の中にもずっときているわけです。  確かに財政全体が厳しい、その再建をどうするか、これは基本的に国の財政のあり方ですから議論しなければならぬし、意見も分かれるところだと思うのですが、ただ歳出の問題を、それじゃ厳しいから文教を削るということが、果たしてそのことをとらえた場合に至当なのかどうか。  よく引き合いに出される軍事費との関係、これは前の委員の方も質問されたり意見を述べられました晴れども、ちなみに教育費と防衛費の関係を見ますと、一九八二年から八四年、この三年間で教育費が二・八%、防衛費が二二・二%ふえているのです。果たしてこれが適切なのかどうか。金がない金がないと文教を剃りながら、このことに対してどうなのか。  それから、同じく一九八二年から八四年の三年間に、一般会計に占める割合を見ますと、例えば教育費の場合に、八二年九二一%が八四年八・八%、〇・四発マイナスの二千九十三億円が減になっておる。防衛費の方は一九八二年五・二%が五、六%、つまりプラス〇・四%です。これが約二千億円。例えば今の一般会計に占めるところの教育費と防衛費を見ますと、ちょうど教育費の減った分が防衛費に回っている、そういう数字の組み合わせになっているわけですね。この辺は予算全体の中の文教予算のあり方ですから、大いに議論してみなければならぬ点ではないかと私は思うのです。全体の国の財政のあり方、予算執行のあり方の関連で、ひとつその点だけを私は指摘をしておきたいと思う。  そこで、最後に私は、これで終わりますけれども先ほどから指摘しているように、育英会法の目的からも明らかなように、教育の機会均等ということを前提にして奨学制度のあり方ということを考えなければならないし、同時に、先ほど指摘したように、日本の今の奨学制度を先途諸国と比べた場合に非常におくれているという、その中においてさらに有利子制、または臨調などは、全体の文教予算減額の中で、返還免除の全面的廃止であるとかあるいはまた今の全面的な有利子制の導入であるとか、世界的な趨勢から言えば逆の方向に進んでいる。このことは文教の政策のあり方としていいのかどうか。まさに今の過ちは将来に響いてくるわけですから、そのことを考えたときに、十分今後検討に値することではないか、私はこういうふうに思うわけです。今までるる述べてきましたから私は申しませんけれども、その点、森文部大臣、あなたはこういう状況の中で今育英奨学金制度を大きく変えようとしておりますが、将来の見通しについてどのように考えられるか。  私は、これを最後にひとつお聞きして、終わりたいと思うのです。
  84. 森喜朗

    ○森国務大臣 いろいろ御指摘をいただきました点は、政府といたしましても十分に拝聴いたしておきたいと存じます。  ただ、こういう財政状況下でございまして、たまたま数字のめぐり合わせから防衛費が突出をする、その分だけ文教費が回されたのではないかという御指摘もございますが、そういう数字の合わせで予算編成をやっているわけではございません。  私どもといたしましては、まず当面は財政を健全化するということが最大のこれは国民に対する責任であるというふうに政府としては考えております。財政を健全化し、行政を簡素化するというのは、単に少なくして身軽にするということだけではなくて、次への飛躍を期そう、そのためのいわゆるオーバーホールであるというふうに私どもは受けとめて、健全な体力をつくって、そして財政も健全にいたして、そしてさらに二十一世紀は躍動的な日本の国にしていきたい、こういう希望に燃えて私どもは今の中で苦労いたしているわけでございます。  とりわけ文教予算につきましては、御指摘をいただきますように、私自身も大変心配する点もたくさんございますが、その中で文教政策推進上必要な予算の確保に最大限の努力をしていきたい、こう考えておりますので、どうぞいろいろな意味でまた御指導を賜りたい、お願いを申し上げて、答弁といたしておきます。
  85. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 以上で質問を終わります。
  86. 白川勝彦

    ○白川委員長代理 木鳥喜兵衞君。
  87. 木島喜兵衞

    ○木島委員 本年入学の学生のことについては、大変御苦心をいただいたことでありますから触れませんけれども基本的に言うならば、この法律をなぜ昨年出しておかなかったのだろうか、あるいはなぜ来年から実施するような法律にしなかったのだろうか、そのことが一番基本的な問題として残るのじゃないのかという気がいたしますが、いかがでございましょうか。
  88. 宮地貫一

    宮地政府委員 こういう非常に重要な制度変更を伴います法律案の振出の仕方として、むしろ本来ならば昨年に法律を出して本年度予算から実行するとか、あるいは本年法律案を出して予算の中身としては明年度からの執行という形で考えるべきではないかという御趣旨のお尋ねかと思うわけでございます。  先ほど大臣からもお答えをしたわけでございますけれども、従来予算を伴います制度改正、これは私どもの所管しております法律で申せば、国立学校設置法が一番内容的にも頻繁に毎国会法律改正で御審議お願いをしております事柄としてあるわけでございます。国立学校設置法の場合に、例えば新しい学部を創設するという予算が内容的に盛り込まれまして、それに伴って新しい学部の創設が、これは大学でございますので四月一日から学生を受け入れる、学期が始まるというような問題がございまして、この点は国立学校設置法の御審議の際にも、従来からも何度がこういうようなケースが出てまいりまして、いろいろ御議論があったことを私どもとしても記憶をしているわけでございます。  学部の改正については基本的にそういう問題がございまして、法律成立しなければ学生募集ができないというような問題で同様の問題があるわけでございますが、国立学校設置法の場合には、新しい大学をつくるというようまケースにつきましてはその議論がございまして、設置法の改正で大学の設置そのものは認めていただきまして、実際の学生受け入れの時期をずらす。例えばつい最近の例で申しますと、国立の高岡短期大学について既に国立学校設置法の改正お願いをして、大学そのものは置かれておるわけでございますが、諸準備を整えるという形で学生募集は、もちろん年度法律に明示をしてあるわけでございますが、学生募集時期は大学の改革時期よりもずらすというような形で、新たな大学の創設というようなことについては、従来文教委員会での御議論等も踏まえましてそういう対応をしているわけでございます。ただし、学部の創設の場合については、既に大学の本体というものが置かれているというような形もございまして、ただいまのところ予算が五十九年度予算でお認めをいただきますれば、それに伴う国立学校設置法の改正を五十九年度の新学期に間に合いますような形で国立学校設置法の御審議お願いするというような形で御審議をいただいているわけでございます。  事柄としては大変基本的な制度改正であるから、もう少し考え方を今回の提出のような形でない形でやるべきではなかったかという御指摘は、確かに私どももそういう点も検討しなければならぬ課題だとは思うわけでございますが、通例の予算の内容を予算関係法案ということで提出をして御審議お願いする形で出しているわけでございます。  もちろん、これが従来制度にないものを新たにつくるということでございますればこういう問題はないわけでございますが、現に日本育英会で奨学事業を実施しておるという前提があるわけでございまして、その点は例えば予約採用という問題につきましても、これは予約でございますから既に昨年から各学校募集をいたしておるわけでございます。もちろん、今回の法律改正ということを前提にした内容をつけて予約をしたわけでございますが、切りかえの措置について、私どもとしては、提案しております法律としては四月からの施行ということを考えて御提案申し上げたわけでございますけれども現実対応としては今日こういう事柄になっておりまして、それの現実的な処理を各党の御提案に基づいて私どもとしても万全の対応をいたしたいということで取り組んでいる次第でございます。
  89. 木島喜兵衞

    ○木島委員 今お話しのとおり、大学の設置に関しましては我々が主張してきたことです。例えば筑波大学のときに、あの法律が通ったのは九月でした。それまで学生は押さえられておりました。同時にあのときに、例えば山形大学の医学部の創設等もあった。あれをなぜ分離しないかと我々は主張したのでありますけれども、その他の大学の場合でも、新設の場合には既に校舎ができておる。何年かかかって校舎ができて、その年もしも大学の申請が否決されたらどうなるのか。確かにおっしゃるとおり、予算の単年度主義というものに基づいてなされたということはわかるけれども、そういう観点から大学の新設の場合には数年前に、何年から大学を設置するという口実を決めて、それによって予算がついてそこで可決されるから余り大きな支障がない。それでも新設の場合でありますから、四月以降でないと募集できません、入試ができませんという事情はありますけれども、そう大きくはない。  ですから、今おっしゃいますように、学部にしてもあるいは大学院の場合にしても、こういうものも含めてでなければどうしても審議がいいかげんになってしまいます。学生に迷惑をかけたくないと思うものでありますから、審議すべきことでも時間を短縮しようとすることになる。ですからそういうことも含めて、なぜ去年のうちに、あるいは今七月からとおっしゃいましたけれども、今回の苦労を考えれば来年度からとするか、去年のうちに出しておくか、今回の法律はそれほど緊急を要しませんね。七月というのを来年の四月からでもいいかもしれない。このことは今結論を出そうと思っておりません。  森大臣、やはり教育予算の場合にそういうこと全体として考えなければならないことなんじゃないだろうか、大学ではそれをやりたのだから。今まで、そうでなくても大学の新設の場合はそれをやったわけですから、そういうことに対する工夫をひとつしてみませんか、いかがでしょうか。
  90. 森喜朗

    ○森国務大臣 筑波大学の法案提出の際に私も与党の理事でございまして、木島さんと随分議論をした記憶がございます。さっきも私は、田中さんの御質問の際にもそのことにちょっと触れました。確かに国会法案提出する時期というのも非常に難しいところでございます。政府の立場から、これは木島さんもベテランですからおわかりをいただけると思うのですが、国会審議がこうなってこういうふうに遅くなるであろうということを予測して法案提出する、対応するということになれば、これまた国会に対する軽視になる、やってみなければわからぬじゃないかということにもなるわけでございまして、ここのところは法案提出の仕方も非常に難しいものでございますが、確かに今の大学局長文部省に言うよりは政府全体、そしてまた国会全体のマターの問題として、こうした予算あるいは予算関連法案提出の時期、提出の仕方というのはいろいろと検討してみるテーマだろうと私は思うのです。」これは木島さんだから甘えて申し上げます、おしかりをいただくかもしれませんが。私は大蔵委員長の経験がございます。ですから、大蔵委員会の場合の日切れ法案、歳入法案というのは、ある意味では与野党合意の上で、予算委員会を開いておりましても継続的に並行してやるという例もございます。私の委員長の際には、予算委員会より先に一日大蔵委員会を開いたという経験も私は持っております。野党の皆さんの御協力をいただいてやりました。こういう法案は、大変御無礼でございますが、大変日が差し迫っているという問題もございますれば、私ども政府の立場から言えば、これは文教委員会のいろいろな慣例も当然ございますから、そのことにも重きを置かなくてはなりませんが、やり方の一つとしては、例えば大蔵委員会におきます歳入法案のような扱い方はいかがなものだろうかな。まことに虫のいいことだとおしかりいただくかもしれませんが、そういうことも全くだめだということにはならないわけでありまして、それは制度上、今までの慣行上やってないということで、大蔵委員会だけは予算委員会と並行して朝とか夜とかというふうに大臣を差し繰ってやっているわけでございます。そういうことも、逆に私の立場から言えば、国会の経験を踏まえて、まことに虫のいいことでございますが、大臣になってみて、こういうこともお考えいただければ入学期に間に合うのではないかなということも感ずるわけでございます。  いずれにいたしましても、先生御指摘なさいましたように、やり方としては一考は要さなければならぬ問題だということは先生のお話のとおりで、私自身もそのことを今後とも、何かいい方策がないものだろうか、検討してみる大変大事な課題だと思います。
  91. 木島喜兵衞

    ○木島委員 検討してみるということでございますから、よろしいです。  しかし、例えば学部なら学部というときに、幾ら早くやっても四月一日以降でなければ入試はできないでしょう。ところが、これを来年からやるという法律をつくっておけば、一緒にやるよということもありますね。ですから、そういうことを含めて御研究をいただきたいと思います。  それから、二番目になりますが、この間も言ったのでありますが、先ほどからお話ございますように、教育の機会均等という問題は近代的な公教育の重点の一つであります。今ヨーロッパの教育改革等は、まさに機会均等を求めての改革の動向だと言ってよいのではないかとすら私は思うのであります。それだけに、先ほどからいろいろと機会均等ということが言われるわけでありますが、そこで、臨教審では、憲法、基本法によって教育改革をする。憲法は「能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。」基本法第三条は、能力にかかわらず、経済的に困難な者に奨学の方法をとあるわけでありますから、臨教審は、憲法、基本法に基づいてなされるとするならば、この奨学の道、教育の機会均等というものも重要なテーマであろう、したがって、奨学の方法も重要なテーマであろう。  とすると、その臨教審の結論は、法律によれば内閣は尊重せねばならぬとある。今回提案されました育英奨学事業に関する調査研究会の報告ですか、あれはまだ臨教審が出る以前の問題であった。だからああいう答申が出たし、それに基づいてこの法律は出ている。しかし、もしも臨教審においてこの報告と異なる結論が出て、そしてそれを内閣は尊重するわけでありますから、尊重することになると、それに伴ったところの法律が出てくるという煩瑣な混乱が起こってくる。そういう意味では、ちょっとここは早く出し過ぎたのじゃないか。もう三年待てばいいのじゃなかったのか。混乱を防ぐためには、この際御撤回なさってはいかがなものかと思うのですが……。
  92. 森喜朗

    ○森国務大臣 臨時教育審議会で奨学制度というものを御議論なさるかどうかということは、私の立場からは今申し上げられないわけでございますが、教育全般を見直していくということで制度のことを考えてまいりますと、これは私はかなり重要な課題だと思います。  したがいまして、先生がお話しのように、育英奨学制度というものはどうあるべきかということを御議論いただくということ、先ほどから田中さんも佐藤さんも給費制云々というお話をされておりました。日本の今日の経済的な国の立場から考えればおかしいではないかという率直な御意見が出ても、私はおかしくないと思います。そういう意味で、制度全体のお話があるのではないかという予想もできるわけでございます。しかし、三年間。そういうものが出るかもしれない。初めから出るということを想定することもいかがなものかというふうに考えますし、ただいまお願いいたしております法案は、御承知のように育英奨学事業調査研究会の約一年にわたります慎重な検討結果で、たびたび政府側から申し上げておりますような趣旨で、量的な拡大ということも大事なことであるから出させていただいた。出させていただいた以上は、やはりこれは一日も停滞を許さず、早急に実現をして学生生徒の修学を援助していくということを図らねばなりませんので、そういう意味では、私ども法案の撤回というものはただいまは考えていないわけでございます。  まあ、三年待てばということでありますが、今度のことではいろいろ御意見はあるにいたしましても、一万一千人の事業量の増でございますから、三年間にいたしますと三万三千人でございます。そういうように考えますと、三年待つと大変大きな影響を学生生徒に与えることになろうかと思います。  なお一方、よりよき……(発言する者あり)今馬場先生の不規則発言——不規則発言と言うといけないのでありますが、にお答えをする必要はないのでありますけれども、やはり臨時教育審議会は、全体的な教育を将来にわたって、また二十一世紀にはこうした制度はどうあるべきかということの御議論があるべきかもしれませんので、これはぜひ必要な審議会であるというふうに考えるわけでございます。  再度申し上げて恐縮でございますが、法案の撤回は考えておりません。一日も早い成立を期待いたしておるわけでございますので、よろしくお願い申し上げる次第でございます。
  93. 木島喜兵衞

    ○木島委員 先ほどからずっと言われておりますのは、まさに「育英」かどうかという問題でありますけれども、そういう意味でこの間も言ったのですが、名は体をあらわすというが、「日本育英会法」というのは私はどうも気に食わぬのですよ、どうしてこれは直さぬのですか。
  94. 宮地貫一

    宮地政府委員 かねて先生より御議論をいただいておる事柄でございます。四十七年に、当時高見文部大臣でございましたが、やはりこの「育英」の名称について御議論をいただいたことを、私どもも速記録で十分拝見はいたしておるわけでございます。  基本的には、法律改正以前におきましても——現行法でございますが、もちろん現行法におきましても、教育の機会均等の精神を踏まえまして従来から事業の拡充等を図ってきているわけでございます。そのこと自身は、従来は教育の機会均等という文言は目的規定にはなくとも、運用としてはそういう精神を踏まえて運用されてきたものと私ども理解をしているわけでございます。  そこで、今回、全文改正であるならば「日本育英会」という名称を改めるべきではないかという御指摘であろうかと思うのでございますけれども、育英という事柄自身はもちろん英才の教育という事柄の略称として言われているかと思うのでございますけれども、固有名詞としての「日本育英会」という名称について申せば、例えば民間の育英奨学法人の名前の場合にも○○育英会あるいは○○奨学会というようなもの、全体の数から申せばその点はほぼ相半ばしているというぐあいに私ども理解をしているわけでございまして、「育英会」という名称そのものが今日では英才育成という意味は薄れまして、より幅広く人材を育成するために学資の貸与を行う団体というような受け取られ方をしているんではないか。したがって、そういう意味では社会的にも定着した名称になっているんではないかと理解をしているわけでございまして、「育英会」という呼称については、私ども、ほぼそういうような社会的な理解になっているんではないかということで従来の名称を踏襲したものでございます。
  95. 木島喜兵衞

    ○木島委員 先ほどおっしゃいましたね。昭和四十七年三月十六日の予算委員会で、私が高見文部大臣に御質問したんであります。それについて高見さんはこう言っているのです。「私は、育英ということばが実は大きらいであります。これは奨学資金とすべき性質のものであります。この法律ができました当時は、むしろ育英ということに重点を置いたでありましょうけれども、今日の段階における高等教育の段階においては、むしろ教育の機会を均等に得させるために、奨学資金という形に変えなければならぬ。奨学法というような法律に変えなければならぬ。」「その御趣旨においては私も全く同感であるということを申し上げておきます。」とおっしゃるものでありますから、私はそれに引き続いて、「御趣旨全く同感ということは、全面的に改定をお考えになるということですね。そして、すぐにその改定に着手なさいますか。」と申し上げたところ、大臣は、「中教審の答申にも、この問題に早急に取っ組め、昭和四十八年に取っ組めという提案がされております。私どもは、ことしからこの問題に取り組みます。」今局長がいかに御答弁なさいましても、大臣がこう答えたのです。以来今日までこの法律改正が何回かなされてまいりました。ことしから取り組むと言った昭和四十七年以来取り組んできて、改正案が何回か出ておる。そのことに私は気がついておったけれども言わないできた。  今回これは大改正であります。しかも第一条の目的、それは問題があるけれども先ほどから議論がありますように、法律論が展開されて、法律からどうかということでもっていくと、育英ということは違うでしょう。根拠法は何ですか。憲法二十六条第一項でしょう。教育基本法第三条でしょう、第二項でしょう。この法律論から来ておる。  そこで第一条は、我々からすれば、後で申し上げますけれども、大変不完全だけれども、しかし育英ではないということを皆様は意識していらっしゃると思うのです。第一条の中における「育英」という言葉が消えておるからです。「育英」という言葉がおかしいとあえてお取りになったこと祖、私は、その意識があったんだろうと思う。そういうことを前提にして、高見大臣がそうおっしゃったことを、ずっと十二年か十三年かかかっている、なぜなんだろうか、私はここがわからないのです。これは局長に聞いても同じ答弁になりますな。大臣、答えますか。
  96. 森喜朗

    ○森国務大臣 四十七年三月十六日の木島先生と高見大臣答弁、私は実はきょうコピーを拝見いたしまして、ちょうどこのころ私も委員をしておりましたのにちょっとその記憶がないのは、きっと国対の方にでも行っておったのではないかと思うのでありますが、大臣がこういうように発言をしても事務当局ではそれをそのとおりしないというのは、大臣というのは極めてか弱いものだな、改めて何か大臣のむなしさみたいなものを感じておるわけでございます。  確かに高見先生がそのようにお答えになっていらっしゃいまして、今では広い意味で、育英というのは単に英才をはぐくみ育てるということよりも、育英会そのものが、今日ではより広い範囲の人材を育成するために学資の貸与等を行う、そういう事業であるというふうにある程度認識ができておるような感じがいたしますし、「日本育英会」というこの会も固有名詞として定着をいたしているわけでございますので、そういう意味でここであえて名称を変更しなくても、意味としてはもう既に幅広く、多くの人たちに対して奨学制度を供するというふうに理解が届いているという判断を恐らく事務当局はいたしたものではないかというふうに考えます。御指摘の点は御指摘の点として、確かに奨学資金制度というものの意味をもう少し明確に出すということについては、高見さんのお考えだけではなくても、「育英」という言葉がいいかなどうかなということについては、確かにいろいろ検討してみる余地があるだろうというふうに私も思います。  ただ、「育英」という言葉、兵庫県に育英高校というのがございまして甲子園によく出ますが、そんなに英才教育をやってないような気が、ふと今思い出しまして、「育英」余り悪い悪いと言うと育英高校の生徒にお気の毒のような気もいたしたわけです。  ただ、今時期がこういうときでございますから、名称を変えるということになりますとかなりの経費も必要になってくる。きょうも多分傍聴席にいらっしゃる方々は、育英会の職員の方々ではないかなというふうに想像いたしておりますが、名前を変える、印刷も変える、いろんなことを変えるとかなりの経費も必要になってくることでございますので、今後の問題として検討課題としていくということはより大事なことだというふうに思いますが、ただいまのところはこういうことで、変更しない方向で法案を山さしていただいたわけでございます。  今の先生の御発言は極めて大事な発言でありましたし、高見大臣答弁も大変大事な答弁でございまして、これをこのままにしておいたということについては、全く無視をしたり検討しなかったということではないわけでございまして、いろいろの角度から事務当局も検討してみた結果でございますが、今後ともこの御提案といいますか御質問に対しましては、文部省としても大事に考えていかなければならぬ課題だというふうにさしていただきたいと思います。     〔白川委員長代理退席、委員長着席〕
  97. 木島喜兵衞

    ○木島委員 高見さんの言葉がそのまま生きておるし、また同感だという意味において、これ以上申しません。  ただ、私がこのことを申し上げますのは、「国家有用ノ人材」という現法律のことにつながると思っておるからです。余り理屈っぼいことを言うのはきざっぽくなるかもしれませんが、要するに明治の初めに黒船によって目覚めて世界を見たときに、一つは近代化をやろう。そのためにエリートが必要だったし、指導者が必要だった。あの当時の教育は人材選別の機能というものと、それから、産業社会がそこから出発したわけでありますから、その産業社会に、おけるところの知識、技術、あるいは兵士のための技術、知識、そういう国民教育機能、この二つがあって、「国家有用ノ人材」というのは、例えば大学なら大学は非常に人数が少ないことも含めて、いわゆる「国家有用ノ人材」とされてきた。それが殊に戦後進学率が上がって、そのために教育が、国民教育機能がややもするとおろそかになって、人材選別機能だけが中心になって学校が受験教育中心になり、そこからいろいろな弊害が生まれてきた。そのことを考えるときに、「育英」という言葉は、ややもすれば学歴社会というものを助長し、そのことによって教育の荒廃が一層進む一助になるおそれがあると私は考えるから、だからあえて——名前は固定しているじゃないか、あるいは今大臣がおっしゃるように、この名前を変えたら金がかかるということもあるかもしれません。あるいは煩瑣な問題が起こるかもしれない。けれども、それよりも日本の教育全体がこのことを通してより荒廃すること——このことがあるからすべて教育が荒廃するなんということを私は言うんじゃありませんけれども、そういうことの一つになりはしないか、そういう物の考え方を今我々は払拭しなければならぬじゃないか、そういう観点があるから申し上げたのであります。  そういう意味では、先ほど佐藤誼君があれしたことも、皆さんのおっしゃることもわからないわけじゃございません。しかし、あれは法律論なんです。根拠法は憲法二十六条の第一項であり、教育基本法第三条二、項であるとすれば、答弁は、法律論でいえば納得できる法律の理論はありませんよ。文部省だって「能力があるにもかかわらずこというのは入学許可を得た場合、合格した場合ということだと今日まで説明したはずでありますから。  先ほども御説明がございましたが、学校教育法四十二条の高等学校の目標の中に「国家及び社会の有為な形成者として」とあり、中学校の三十六条には「国家及び社会の形成者として必要な資質」とあるのですね。高等学校には「国家及び社会の有為な形成者として」とある。ところが、教育基本法第一条の「教育の目的」は「国家及び社会の形成者」である。この場合の第一条は「教育は、人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者」であって、「有為」とはないのです。この場合「義務教育はこと教育基本法第一条にはないのです。「教育は、」なんです。でありますから、むしろこういう条文からいうならば、高等学校の四十二条に入れたことの方がおかしい。そこは義務教育でないということがあるとおっしゃる一でしょう。けれども、それでは教育基本法第一条の教育とは義務教育を言っているのか。そうではないはず。「有為」がない。だから、これを引用することの方が私は誤りだと思う。とすると、法律論からいうとやはり無理があるんですよ。そのことをみんな言っておるのです。  だから、そういう意味でこの際、大臣、素直に、これは衆議院はもうじき採決らしいから、参議院でもいいですよ、ひとつ考えてみる必要があると思うのです。さっき佐藤君は佐藤君で自分の案みたいなことを言っておりましたが、例えば日本育英会なら日本育英会は、能力あるにかかわらず経済的な困難のために修学の道が困難な者については資金の貸与等を通してというような言葉だっていいわけでありますから、そういうように少し条文の整理を考えた方が一私は、実態とすればわからないじゃありません。わからないじゃありませんけれども法律論からすれば、私は筋を通した方がきちっとすると思うということだけを申し上げておきます。これはもう同じことをいろいろとなにですから、答えは要らぬことにします。  それから、さっきから出ております点数、これも気にかかるんだな。どうなんですか、基準というのは家庭の所得と点数だけですね。そうすると、能力のあるにかかわらず経済的に困難な者でしょう。能力というのは合格した者ですから、合格すればあとは経済的なことだけです。先ほどもおっしゃいますように、財政事情があって希望者全部にやれない、人数が少ないのだからどこかでふるわなければ人数が少ないか多いかは別の議論でありますけれども、財政的に人数が少ないのだから。だけれども法律論から言えば、人数が少なければ少ないで、合格してしまえば経済的に困難な者からやっていけばいいわけです、完璧にできないならば。今五十何%、大学生で希望すると言います。全部ができないならば、一〇%なら一〇%。今二%ですか、大学は二%とするなら、同じ人数ならば経済的に困難な者からするというのが教育基本法第三条の趣旨ではないのか。なぜ点数が要るのだろうかという基本がどうしてもわからないのですけれども、どうなんでしょうか。
  98. 宮地貫一

    宮地政府委員 学業成績の基準についての議論でございますが、先生御指摘の点は、大学に入学をしておればあとは経済的理由だけで、数が限られるとすればそっちの方だけの基準考えたらどうかという御指摘でございます。  現行制度の仕組みとしては一般貸与特別貸与がございまして、特別貸与をより優遇するという観点で、一般貸与に比しまして学業成績、家計の収入状況、いずれも厳しい基準を設定してやっておるわけでございます。それが今回、無利子貸与制度と有利子貸与制度ということで切りかわるわけでございますが、従来から一般貸与特別貸与について対応しておりました経緯も考えまして、事柄としてはもちろん無利子貸与制度の方がより優遇をされているわけでございまして、したがって、より適格性の高い者を対象とするという観点では、従来からやっております学業成績と家計の収入状況という両方の基準対応するという考え方をとっておるものでございます。  もちろん、三・一あるいは三・五というような点数だけで判断するのはいかがかという御指摘もあるわけでございますが、先ほど来申し上げておりますように、学校で適格者を判定する際の基準、そしてまた育英会採用する際の基準ということで、全体公平に扱うための基準としてそういう物差しを持っているわけでございます。もちろん、個別に決定するに際しましては、そのことだけの判断ではございませんで、全体的に総合的な判断を個々にいたしておるわけでございますけれども、一つの基準として設けておりますものは、今申し上げたような理由から設けておるわけでございます。  なお、目的規定については、先ほど来御議論をいただいたわけでございますけれども、ちょっと補足して申し上げさせていただきますと、表現の上からは、一条で「之ガ育英上必要ナル業務」という言葉は文言としては落としておるわけでございます。  それから、高見大臣当時に議論されておりました点で一つ補足して申し上げさせていただきますと、四十七、八年当時検討いたしておりましたものは、むしろ奨学事業として大幅に変更を考えるとするならば銀行ローンのようなものを導入して実施するのはどうかということで、事実そのことについて過去に保おいて議論し検討いたしましたが、結論としては、債務の保証の問題その他のところで最終的に銀行側との話し合いがつかなくて見送られたということがございます。  調査研究会の議論といたしましては、日本育英会法というようなものじゃなくて、奨学基本法とかいうような形での奨学制度全体についての基本的な事柄を規定する法律というような考え方もあるのではないかという議論はもちろんされたわけでございますけれども結論として、ただいまのところは育英会が行っております育英奨学事業について規定するという形をとったものでございますから、先ほど来御説明しているような内容に落ちついたというのが経緯でございます。  補足させていただきました。
  99. 木島喜兵衞

    ○木島委員 後の方はいいけれども、高見さんのことは、名称のことだけを言っておるので中身を言っておるのではございません。  それから、その点数のことになりますが、特別貸与一般貸与を一本にしたことを私は大変評価しておるのです。なぜなら、一本にしたということは点数による差がなくなったはず、なくしたはずだから。すなわち、法律で言うならば「優秀ナル学徒」という一般貸与と「特ニ優秀ナル学徒」という特別貸与、これを一本にしたのでありますから、そのことにおいては、「優秀」と「特ニ優秀」というのをなくして一本にしたということにおいて、点数差をなくしたという意味において私は評価しておったのです。  ところが、三・五は無利子、有利子は三・二ということになれば、無利子と有利子において点数差をつけるということなら一体なぜ一本化したのかということが、その意味において、その理念においてわからなくなってしまったのです。これはどう理解したらいいのですか。
  100. 宮地貫一

    宮地政府委員 先ほども御説明しましたように、もちろん無利子貸与制度の方が内容的に優遇されたものであることは、利子負担がないという形でいえばそういう内容になっておるわけでございまして、それについてより厳しい対応といいますか、有利子貸与制度の場合よりも無利子貸与制度については基準としてはより厳しい基準考えざるを得ないということで、先ほど説明しましたような対応でいたしておるわけでございます。  もちろん、一般論から申し上げますと、成績の問題については私ども正確に把握しているわけではございませんが、いずれも三・五ないし三・二というような成績でカバーされております者は相当数の者がそれで含まれるということになっておりまして、その中からさらに経済的な物差しで判断するということを考えましても、拾い方として教育の機会均等と言われております事柄に抵触するとは必ずしも考えていないわけでございまして、それを全部取っ払ったらどうかという御議論基本的にあることはもちろん承知しておるわけでございますけれども、無利子貸与と有利子貸与については、今申し上げましたようなことで対応考えているわけでございます。
  101. 木島喜兵衞

    ○木島委員 無利子十二万人で有利子が二万人ですよね、大ざっぱに言いまして。そして無利子が三・五で、点数が上がるというか高くて、有利子が三・二で成績の悪い方ですね。しかし、十二万人と二万人で人数が全部余計になるわけです。せっかく一般貸与特別貸与を一本にして、そこでもって、私さっき言ったように評価したのですけれども、実はそれが無利子、有利子によって作用されて、しかも十二万人が三・五で二万人が三・二だということは、全部が特別貸与資金になる。言うなれば、やはり育英の思想が中心になっているんだろうか。「国家有用ノ人材」という物の考え方が中心になっているんだろうかという懸念があるわけです。そういう点は何か、なるたけ簡単に御説明いただければありがたいと思います。
  102. 宮地貫一

    宮地政府委員 学力基準につきましては、従来の基準との継続性というようなことも考えまして、採用者数との適正な均衡を保つということが必要でもございますので、定める必要があるわけでございます。最低基準のところは従来と同様にしたわけでございますが、大学生の成績全体から私ども判断をいたしますと、三一五以上と三・二以上の差というものは、実際の数字から申せば、実態としてはそんなに大きな差があるわけではございません。しかしながら、考え方としては、より優遇されている者についてはやはり成績のより高い者の範囲内から、しかも経済的な基準ももちろんございます、その中からとらしていただくという考え方を踏襲しておるわけでございます。
  103. 木島喜兵衞

    ○木島委員 だから、やはり育英の思想があるのかなということになっちゃうのね。まあいいでしょう。  そこで、無利子を根幹とするということが報告等にもあるわけですが、ただ、無利子人たち人数が九千人減りましたね。根幹でありながらなぜ九千人減ったのか。そして二万人が有利子。二万人の有利子も、私学振興財団から私大に貸している五千人が今度なくなりますから、それを引きますと一万五千人になりますけれども。そして、九千人減ったことも含めて無利子予算は四十五億円削られておりますよね。そして臨調答申は、みんな有利子でいけ、こう言う。すると根幹、根幹と言っても、さっきじゃないけれども、例えば高見大臣国会でもって答弁しても今日まで実施されないごとく、答弁というのは——いや、森さん、あなたが答弁したらおれは信用するよ。ただ一般的に、答弁だけではなかなか保証にならぬじゃないかということが、全体の調子からいくとそうでしょう。今回、例えば無利子が今までどおりと同じくて、そしてその上に有利子の二万人が余計になったというのと違うのね。現在の無利子が減っちゃって、そして有利子がついて、予算が全体で削られて、無利子予算が削られて、その上に臨調は臨調でもって有利子でいけ、こう言うんですから、根幹、根幹とかなんとかと言ったところで何の保証があるのだろうか。答弁だけでいいのだろうかと我々思っちゃうわけです。  だから、第一条に、今の法律前提とするならば、例えば「日本育英会は、優れた学生及び生徒であって経済的理由により修学に困難があるものに対し、学資の貸与等を行うことによりこというところに、「原則として」という言葉、あるいは「学資の貸与を無利子を根幹として行うことによりことかということを入れることは、そう困難でもないし、私はむしろ給与ということを考える方でありますけれども、それを前提にするならば、法律の中に、無利子を根幹とすると第一条の目的の中に入れたら、皆さんの御質問の保証はできるのじゃないだろうか。そういうお考えはございませんか。
  104. 宮地貫一

    宮地政府委員 改正法案の第二十二条の説明の際に申し上げたわけでありますけれども、具体的な事業の内容から申せば、無利子貸与事業は、先ほどお話ししましたように、高等学校から大学院まで、さらに専修学校までを対象にしておるということでございます。それに対して有利子貸与の事業は、当面限定的に、大学、短期大学という非常に量的な拡充を望まれておる分野に限定をして実施をするという考え方を示しておるわけでございまして、そのことから見れば、御説明申し上げておりますように、無利子貸与事業がやはり育英奨学事業としては本来行うべき事柄対象学校をすべてカバーしているというようなこと、片一方が限定的にしているというようなこと、そしてまた人員についてはもう既に御説明しておるとおりでございますが、それらから見れば御理解いただける点ではないか、かように考えておるところでございます。  もちろん、従来からも御説明しておりますように、臨調答申等では全面的な有利子化ということが言われたわけでございますけれども、私どもは、文教政策自体の議論ということが必要であるという判断に立って、調査会を設けて慎重に検討していただき、その結論として、基本的には無利子貸与制度を根幹として実施を図っていく、ただ量的な拡充のためには有利子貸与も導入をしたというような姿勢で対応しておるわけでございまして、基本的にはその考え方をとっているわけでございますので、先生御指摘の点は、目的の条項に何らがその点を明記してはどうかという御提言でございますけれども実施の態様をそれぞれ御判断いただければその点は御理解を願えるのではないか、かように考えておるものでございます。
  105. 木島喜兵衞

    ○木島委員 今おっしゃったことではちっとも保証にならないのね。これは有利子の三%においても同じことです。  皆さんおっしゃっていますね。やはりそうなんですよ。例えば二十二条の第四項「第一種学資金の月額並びに第二種学資金の月額及び利率は、学校等の種別その他の事情を考慮して、その学資金の種類ごとに政令で定めるところによる。」とありますが、「その学資金の種類ごとに政令で定めるが、利率については三%を超えない範囲とする。」と入れてはどうか。三%という利率がいいかどうか。しかし、現行法には無利子とするとあるわけですから。無利子というのは利子ゼロですね。だから、三%以内ということでもいいわけでしょう。そういう保証があれば皆さんは安心なさるんですよ。ずっと今まで聞いてきたのは、その保証がない。保証があるのは何か。皆さんが答弁された。しかしその答弁は、政治では一般的に答弁というのは、外国では検討しますというのはやるということだけれども、日本では検討するというのはやらぬということだとよく言われるごとくでありますから、法的にその保証を明確にしてはどうかと思うのですが、いかがですか。
  106. 宮地貫一

    宮地政府委員 利率の規定の仕方については、最近の立法例について先ほどお尋ねがありましたように、現在金融を取り扱っております特殊法人の既存の立法例で申し上げれば、先ほども申し上げましたように、業務方法書等で規定をしているのが多くの場合でございます。しかしながら、私どもは、むしろ奨学生の返還という事柄を踏まえまして、今回の新しい制度を設定するに際してその辺は財政当局とも十分議論を尽くしまして、現在、在学中無利子、そして卒業後の返還に当たっては三%の利率という低利を確保するということに折衝の結果なったわけでございます。  これはもちろん、この奨学事業が文教施策として非常に重要なことであるということを私どもも十分踏まえまして、そういうことで決定を見ているわけでございますが、問題は、それではその三%以内において政令で定めるというような法律の文言にしてはどうかという御指摘があったわけでございますけれども、利率自体を法律で規定することについては、これは制度全体をどう考えていくかという基本的な事柄に、あるいはかかわることかとも思うのでございますが、それはいろいろな事情を勘案して対応しなければならないという事柄も逆にある面ではあるわけでございます。  しかしながら、その点を私どもとしては政令で規定をするという形にいたしておるわけでございますが、もちろん、先ほど来御説明しておりますように、この制度を導入するに当たっては、将来の利子負担がどうなるかということも十分議論を尽くしてこのことを決めておるものでございます。そしてまた、現在の私立大学の奨学事業と申しますか、現在は私学振興財団が融資をいたしております事業も、制度として現在行われておりますものももちろん勘案をいたしまして、それよりもさらに有利な形での、将来の卒業後の利率については三%という形を決めたわけでございまして、このことについて法律で直接表現を出したらどうかという御提言でございますけれども、その点については、私ども、この法案作成の過程で政府部内で十分議論を尽くした点を踏まえて法律お願いしておるわけでございますので、従来の立法例その他から勘案をすればこういう規定でお願いをするのが、法律の条文の形としてはこの形でお願いをせざるを得ないのではないか、かように考えておるわけでございます。
  107. 木島喜兵衞

    ○木島委員 幾ら内部で議論されても、この国会審議の中でもってみんな答弁はちょっとも保証されないじゃないか。そうでしょう。例えば予算委員会でもって各党の代表が集まって、四十人学級は三年間据え置くと言った。それを今また財政が苦しいから延ばせなんて出てきているでしょう。そういうことがあるから、そこの保証を法的にしようということはみんな言っておることです。だめだと言うなら、きっとこれは附帯決議にあるいはなっていくかもしれないけれども、参議院を通しても一度御検討いただいた方がいいと私は思います。  話は違いますが、大臣先ほどから話がありますヨーロッパ、欧米における奨学制度は質、量、ともに違う。日本は大変おくれておりますね。この背景にある思想というのはどこにあるのですかな。局長でもいいです。どうなんですかね。ここのところはちょっと考えなければいかぬですね。
  108. 宮地貫一

    宮地政府委員 それぞれの国で教育というものは非常に固有なものでございますので、国情なりその国の歴史なり、いろいろな要素が絡み合ってそれぞれの国の教育の仕組みができ上がっているということは、木島先生十分御存じのとおりかと思うわけでございます。  そこで、特に高等教育の分野で考えますと、日本の場合には、御案内のとおり、基本的には私立大学が非常に大きな数を占めておる、そして基本的には授業料という形で経費の負担が行われているということがあるわけでございます。  先ほど大臣お答えした中にもあるわけでございますけれども、もちろん、育英奨学事業についても、給費制か貸費制がということを考える場合にも、要するに給費で考えれば、それは支給しっ放しの形になるわけでございますので、当然、それに見合う財源というものが確保されなければならない。一般論で申せば、それはやはり一般的な租税負担をより多くして、財源を租税の形で確保して、それをそれぞれ必要な教育、例えば育英なら奨学金という形で給費制度実施するというようなことが、いずれもこれは全体が絡んでくる問題がそれぞれあるわけでございます。そして、特にヨーロッパ諸国、私も十分は存じないわけでございますけれども、ヨーロッパについて見れば、大学進学率がまだ相当絞られた形になっておる。したがって、それに対して手厚いいろいろな施策が行われているということも見られるわけでございますが、日本の場合には、相当量的な広がりがあって、公的なもので対応するには非常に広がりが大きくて、その点、なかなか難しい点があるというようなことも事情の中にはあろうかと思います。  なお、例えば外国の場合には、個人で相当資産を持っておられるような方が社会的にそれを有益に回すというような形で、例えば奨学金のような形で社会的に還元されるというような風潮もあるように伺っておるわけでございまして、日本の場合にも相当程度、現在、財団法人の形での育英奨学も行われておりますが、やはりどうしても、日本の現在の育英奨学事業で見ますれば、日本育英会実施しております事業に全体の半数以上は依存しておるというような形があるわけでございます。  私、的確に申し上げることはなかなか困難でございますけれども、そんなようないろいろな背景が複雑に重なって、それぞれの国情に応じた態様なり仕組みなりが組み立てられているというぐあいに理解をしております。
  109. 木島喜兵衞

    ○木島委員 私もわからない。それは、ルネッサンスはどうなんだろうか、フランス革命はどうなんだろうかといったら、フランス革命なら自由と平等と博愛、そういうような思想というものが一つの革命としてなされたわけですから、というようなことも考えますけれども、しかし、それを絞って言うと、結局、教育というものの効果はどこに帰結するか。個人なのか、国家、社会なのか。もちろん、それは両方ある。  しかし、例えば義務教育は授業料を取らないと、教育基本法第四条ですか、ありますね。これは第一条の、さっき申しましたように国家、社会の形成者の養成でありますから、したがって授業料を取らないという思想がそこにある。もちろん、義務教育以上になれば個人もある。個人もあるものだから、したがって授業料も払っておる、あるいは終えれば奨学資金を償還もしておる。しかし、社会、国家にも教育の効果の帰結がある。だから、国あるいは社会が学生を教育しよう、経済的困難な者は教育をしよう。それが例えばイギリスで言うならば、九〇%を超える奨学資金を得ることになるわけでしょうね。  ですから、そういう意味でやはりここは新しい政策転換とでもいうのでありましょうか、考え方を変えることが必要だと思う。例えば宮澤喜一さんのこのごろの資産倍増論、これは道だとか港湾だとか河川だとか公園だとか、それも結構、だがもう少し広い意味における、何といいましょうか、いわゆる人的資源あるいは良質な文化的な人間をどうストックするか、そういう意味におけるところの社会的、文化的な社会資本と理解して、福祉とか教育とかそういうもの全体をすること、この国の将来というもの、これからの変化が非常に厳しい中におけるところの、殊に創造性が問われる今日においてそういう政策が思い切って転換されなければならぬじゃないか。先ほど金がない金がないという話があったけれども、金はどこに使うかという問題なのであって、さっきも軍事費の話がありました。軍事費は別として、要は国家の予算の中でどこに重点を置くかというときに、そういう面で社会資本のストックというなら人的資源のストックという面に立って新しい政策というものを検討し直すということがあっていいんじゃないか。そういうことがなされれば、もうちょっとヨーロッパに近づいていくことになるんだろうと私は思います。これはもう時間がありませんから答弁はいいことにしましょう。  そこで、今ちょっと触れましたけれども、欧米では、例えば財界とか金持ちが奨学資金をつくる。そういう点では日本はおくれている。例えば米国はこのごろ、日本の教育を注目していますね。先端技術なら先端技術の研究が非常に進んでおる、けれども生産がおくれておるのはなぜか、労働者の知識、技術がおくれているからだ。日本に見習え、日本の方が進んでいるじゃないか。私は甘く見ません。そんなものに乗っかりません。けれども、そう言われるように、そういう管理者なり労務者を雇って財界は生産を上げておる。しかし、労働者をつくったもの、管理者をつくったもの、研究者をつくったもの、それは資本の金ではない。しかし、それを雇うことによって彼らは生産を拡大して利潤を上げておる。一方、だからそういう面では企業の社会性というのでありましょうか、そういうものが必要であると同時に、その人間を雇うために教育をまた財界は荒廃せしめておる。中曽根さんの文化と教育の懇談会、あれも今日の教育の荒廃というのは学歴社会だ、こう言っておる。学歴社会、これは明治からずっとありますが、もうしゃべりません。しかし、今でも指定校制度ということに象徴されるように、彼らが学歴社会をつくってきたところの元凶でしょう、一つは。一つは官界にある。一つは財界にある。その学歴社会があるがゆえにこそ、今日の教育の荒廃がある。もう理由は言いません。  最後に、例えば高度成長のときに高校は多様化した。この高校の多様化は人間の能力の多様に対する多様ではなしに、高度成長におけるところの産業界の必要によって労働者の多様なものをつくっていった。だから職業課程に多様化はあったけれども、普通科に多様化はなかったわけでしょう。しかし、技術革新が進めば進むほどすぐ使える労働者はすぐ使えなくなったはずだ。そして士農工商と言われるごとく普通科、商業、工業、農業、定時制と格付を定着せしめた。一方においては財界はこういう教育におけるところの恩恵を受ける、それによって利潤を上げ、生産を上げている。一方においてその逆に教育を荒廃せしめているとするなら、今、資金がないというなら、なぜそういうことに財界がやらないのだろうか。  しかし、これは法律で決めることはできませんから、大臣、ひとつそういう点で御指導をしていただけませんか。中曽根さんと一緒になってやりませんか。御意見を……。
  110. 森喜朗

    ○森国務大臣 いろいろと木島さんの御見識を伺いまして、日本の奨学制度のみならず、これからの日本の教育の中に御意見として承らなければならぬ点はたくさんあるというふうに今私も伺わせていただきました。  先ほど田中さんのときにも佐藤誼さんのときにも申し上げましたけれども、スタートいたしましたときの日本の歴史的背景、戦時体制の中でスタートをしたいわゆる貸与制度、それから、私はこれはわからないのですが、むしろ稻葉先生などが御経験深いのでよくそのころのことがおわかりかもしれませんが、日本人というのは物をもらうのが嫌なんだという潔癖性みたいなもの、大和魂というのか、東洋的文化というんでしょうか、借りたものは返すんだ、おれはもらうのじゃないんだ、そういう日本人の意識文化みたいなものが昔からあったのではないか。そういうことも歴史的な中に生み出された一つの考え方だったのかもしれません。  それから、今財界等のというようなお話もございましたが、財界だけが何か悪いということにも受けとめられませんが、しかし、多くの労働者、そして指導者体制、みんなが協力をして、今日の日本ほど平準化した高度な生活水準を持っていっている社会はないと私は考えておりますので、みんながそれぞれの分野で努力して今日の成果をから得たというふうに考えていいんではないかと思うのです。  ただ、欧米のように、どうも金持ちが出してこれを学校に寄附するという考え方が余りないみたいな感じもします。もちろん、松下さんみたいに枯れてしまわれた方は、いろいろな方策でいろいろな中にお金を駆使されておられるのもよく承知をいたしておりますが、日本の場合にはアメリカと違って大財閥がいない。これは戦後の日本の財閥解体ということもある意味では功を奏しているんだろう、私はこう思いますが、アメリカの財界人と日本人の金持ちのスケールの差というのは全く違います。日本の場合なんか、今の税の制度からまいりますと、大体三代くらいで金持ちは金をなくしてしまいます、財産をなくしてしまいますというふうに言われるくらいでございますから、そういう税制の面でも見てみなければならぬという点もあろうかと思います。  いずれにいたしましても、これからもそういう意味では、木島さんからいろいろと御指摘がありましたように、みんなの総意で、日本の将来をしっかり担ってくれる学生生徒に対して、いかなる立場でも、いかなるときにでも学べて、そして勉強の意欲を持つ者が気持ちよく、そうした財政の心配をしなくて勉強でき得るような社会を構築していくことが私たちの務めだというふうに考えておりますので、いろいろと御指摘をいただきました点は十二分に私どもとしては拝聴させていただいて、これからの検討の課題にしていかなければならない。もっとも木島さんに言わせると、日本の検討というのはしないことだということでありますが、検討して採用するということもあり得るわけでございますので、また今後ともいろいろと勉強していきたい、こう思うわけでございます。
  111. 木島喜兵衞

    ○木島委員 もう時間がありませんから、あと一つ二つ。  私学の問題で、この前も言ったように学生数が八対二で、貸与学生数は比率は同じですよね、五対五ですね。だから、人数と同じ比率ならば、四倍ですから五対二十にならなければならぬですね。五対二十というのは、国立を減らさないで私立を余計にするということですから五対二十という言い方をするのです。  ただ、今回の有利子は国立が五千名で私立が一万五千名だ。これは気になりますね。なぜかというと、少ないのだから有利子でも余計にするのだというお気持ちだとは思いますけれども、有利子は三・二、無利子は三・五なのね。成績の悪い方は私立だ。国立は今までどおり比率からいったら非常に高いでしょう、無利子。有利子の方は、三・二の方は、成績の悪い方は国立は五千人で私立は一万五千人。ここに、しょせん私立というのは国家有用の材でないという思想があるのじゃないのか。国立大学は税立大学でありますから、低負担高サービスと一般に言われます。私立は授業料高いですから、一般的に高負担低サービスと言われます。これから私学助成が削られるに従って授業料がふえるでありましょうから、したがって私学はますます高負担になります。ならざるを得ないでしょう。そして、これから昭和六十七年のピークまでずっと学生がふえますので、私学もとらざるを得ないでしょう。しかしその後急激に減るのですから、したがって、その間は例えば非常勤講師だとかその他、きっと授業の中身はますます低サービスになるでしょう。そういう私学というものをこの奨学資金の改正の中でもってどのような位置づけをし、どういう配慮がされたのか、私にはいささかわからない気がいたします。趣旨に相反するのじゃないか。すなわち、趣旨とは、憲法二十六条なり基本法三条のこの根拠法に照らして趣旨に合わないのじゃないのか、そういう努力がなされておらないのじゃないのかという気がするのでありますが、いかがでありましょうか。
  112. 宮地貫一

    宮地政府委員 先生御指摘のように、学生数で申しますと私立が八割、国立が二割ということになっておるわけでございます。問題は、今回の有利子貸与制度について数を私学に一万五千、国公立が五千という配分をいたしたわけでございますが、その点は先生がただいま申されましたような考え方を基礎に配分をしているのでは決してございません。何も国立の方が国家有用というような考え方でやっているものでは毛頭ございません。  問題は、従来、私学振興財団で実施しておりました私大奨学事業を、奨学事業の部分については今回のこの育英会の有利子貸与制度の中に吸収をしていくというような経過的なことも一つございます。それから全般的な観点から申しますと、国立大学と私立大学の学生の家庭の所得実態から申しましても、全般的にはやはり国立大学の方が私立大学に比して所得が低いというような実態もあるわけでございます。もちろん、無利子貸与制度と有利子貸与制度の所得の経済的な基準という観点から申しましても、無利子貸与の方がより厳しい基準になっているわけでございます。従来、高等教育の量的拡充に際しまして私学を中心に学生数の増加があったということもございまして、御指摘のように、従来の無利子貸与事業についても私立大学の貸与人員についての増を図ってまいりましたけれども、全体の量の拡大が非常に大きかったこともございまして、現状から申せば、やはり無利子貸与事業についてはほぼ同数程度の実態になっているわけでございます。  先ほど申しましたように、国立の方がエリートでという考え方は毛頭持っているわけではございませんので、全体の私学の貸与人員を今後ふやしていくという考え方を基礎に持ちまして、有利子の二万人の貸与人員の割り振りについても、先ほども申しましたような私学に重点を置いてふやしていくという考え方をとっておるわけでございまして、例えば学年進行が完成をいたしますと、私立大学の貸与人員については約四万四千人を増加させるという形で、貸与人員の全体の総数からすれば、なるたけ私学の方に重点を置いて配分をしたいという考え方に基づいたものでございます。
  113. 木島喜兵衞

    ○木島委員 大臣、これが昭和十九年にできましたね。おっしゃるとおり敗戦直前の財政事情の中、軍備費が出て大変なときにこの制度をつくったのですね。昭和二十八年の戦後の大改正も、まだ戦後の経済的混乱のときであります。それに比べたら今日の財政事晴は大変楽なのね。しかし、経済的に困難な昭和十九年でもあるいは戦後の昭和二十八年でも、有利子などというものはやらなかった。今から比べればはるかに経済的に苦しかった時代において、有利子まで考えなかった、それは人数が多いか少ないかという問題もあろうけれども。それに比べて今中曽根さんが、教育改革だ、臨調だと言う中でもって有利子を出すということは、教育に対するところの意気込みの違いを感じませんか。このことについてひとつ感想だけ。
  114. 森喜朗

    ○森国務大臣 確かにあの当時の状況の中でこの制度をスタートさせた、これは大変なことだと私は思います。その当時の政府のいわゆる財政状態という見方で、今先生から御指摘をいただきました。先生は今、例の中で、それは数という問題もあるだろう、こういうふうにおっしゃいました。そういう面も確かにございますが、逆に言いまして、またそれを受けるそれぞれの今の日本の国の国民所得、先ほどもちょっと触れましたように、かなり高度に平準化した日本の国民の今の生活環境、そういう面も少し配慮をいたした面もある。そういう意味で、御批判はありますし、私はこのことがいいというふうに言っているわけではございませんが、先ほどから申し上げておりますように、どうしても量の拡大をしたい、事業量をふやしていきたい、それから、しばらく単価アップはやってなかったわけでございますし、そういうところも何とか改善をしたい、こういうところから、やむにやまれぬ一つの方策として、こうした活用の方法でいわゆる有利子という制度を導き出したというふうに御理解をいただきたいわけでございます。  したがいまして、感想をということになれば、それはそれなりに中曽根内閣として教育を大事にしておると言いながら何ぞやというおしかりはわかりますが、逆に言えば、いろいろな知恵を編み出してでもできる限り対象者をふやしていくということも、これはまた教育に対する一つの情熱のあらわれであるというふうにも見ていただきたいなというふうに思うわけでございます。
  115. 木島喜兵衞

    ○木島委員 先ほど申し上げましたように、私、文化的な社会資本の充実という意味では、例えば建設国債の思想です。赤字国債じゃなくて建設国債、同じ思想で金のやりくりという新しい体系は存在し得るんじゃないか、教育に関しては。そういう意味で申し上げているわけであります。  いろいろ申し上げました。もう質問を終わりますが、例えば、国家、社会の有為な人材が三・五とか三・一とか、高校の点数で区別されていく。点数で有利子、無利子という烙印が押される。そのことが、今の点数のよい者が上位であると言われる点数至上主義の教育に加担をすることを一つは恐れるのであります。  同時に、その点数をとった人たちがいい就職をし、いい待遇を受ける、それが学歴社会と言われるゆえんでありますけれども、いい待遇を受けますから文化的な家庭をつくることができる。文化的な家庭をつくることができるから、したがってその子弟は受験準備ができる。したがって、その子供たちがまたよりよき学校と言われるところへ入る。かくして学歴による身分社会になる。封建時代が士農工商という身分社会、それが能力によるという、その能力が学歴によって評定をされるという、能力の近代社会というものに新しくなっていったならば、まさに歴史は逆転する。これだけでなると言うのではありませんけれども、そういうことの一つになるのではないかという懸念から、ずっと一連の御質問を申し上げたわけであります。その点をお含みくださいまして、これからも御検討いただければ幸せであります。答弁は要りません。  終わります。
  116. 愛野興一郎

    ○愛野委員長 藤木洋子君。
  117. 藤木洋子

    ○藤木委員 御質問を申し上げます。  まず最初に、ここは国会の場ですので、そのことに関しまして、日本国憲法は三権分立を原則としておりますけれども、立法府の優位性を認めているというふうに私は思うわけです。そこで、憲法の四十一条には何と述べられているか、ひとつお教えをいただきたいと思います。読み上げていただいても結構でございます。
  118. 宮地貫一

    宮地政府委員 日本国憲法の第四十一条でございますけれども、「国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である。」ということが規定をされているものでございます。
  119. 藤木洋子

    ○藤木委員 国会は、新しい法案につきましては、これを承認するか、あるいは拒否するか、または修正するか、これらの完全な審議権を持っているのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  120. 宮地貫一

    宮地政府委員 そのとおりと理解をいたしております。
  121. 藤木洋子

    ○藤木委員 行政府が、新しい法案審議過程にある場合に、成立、不成立あるいは修正のいずれかをあらかじめ予測して、その予測に基づいて行動することは、これは国会審議権を否定するだけではなくて、国会の最高機関としての役割をも否定するものにはならないでしょうか。
  122. 宮地貫一

    宮地政府委員 もしそのようなことを行うとすれば、御指摘のようなことかと思います。
  123. 藤木洋子

    ○藤木委員 ありがとうございました。  それでは、無利子貸与を根幹とする問題について御質問をさせていただきたいと思います。  今回の法改正に際しまして、大臣は、無利子貸与制度奨学金制度の根幹として維持するということを言明してこられましたけれども、この根幹として維持する理由について大臣からお述べをいただきたい。また、根幹というのはどういうことを指しておっしゃっておられるのか、御説明をいただきたいと思います。
  124. 森喜朗

    ○森国務大臣 奨学制度は、基本的には、先ほどから各党の諸先生方が御質疑を踏まえながらいろいろと御意見を述べられておりますように、いかなる人々がどのような条件においても学べる、学問というものを保障する、そして、特にいわゆる経済的な理由で勉強する機会を得られないということがあってはならないというようなことから、この制度をスタートさせているわけでございますから、そういう意味で、原則として、日本の場合は貸与制度をとっておりますけれども、これは後刻お返しをいただいて、そのお金をまた次の事業に回していくという仕組みをつくっていくわけでございまして、一時的に学問を進める上にお金を借りる、そのことによって学問を身につけてそれぞれ社会へ巣立っていけるような仕組みにしてあるわけでございますので、無利子であるということが原則であろうと思います。  有利子を併用いたしましたのは、先ほどからたびたび申し上げておりますし、これは先生にも、御了承はいただいておりませんが、御理解はいただいていると思いますから、しかしながら、できるだけ事業量の拡大をしたい、こういうことから有利子制度というものを併用させていったわけでございます。あくまでも育英制度というものは無利子基本であるという認識で、これを根幹にしていきたいということでございまして、今後とも、財政的な事情等もいろいろな意味で好転をするというようなことでありますならば、むしろ無利子制度をより拡大していくという姿勢が当然大事だと私は考えておるわけでございますので、そういう意味で根幹であるというふうに申し上げたわけでございます。  法律との間の技術的なことが必要でございましたら、政府委員から答弁をさせていただきたいと思います。
  125. 藤木洋子

    ○藤木委員 そうしますと、ただいまの御回答では、根幹というのは基本ともおっしゃいましたが、そのように認識をしてもよい、こういうことのようでございます。  そうしますと、無利子が根幹、基本であって、有利子貸与というのはあくまでも補完的なものだと考えてよろしいですか。
  126. 森喜朗

    ○森国務大臣 足らざるを補う補完という意味ではなくて、制度として有利子という制度採用させていただいた、そういう意味では、私はこの二つの制度が仕組みとして並立をしていくものであると考えておるわけでございます。ただし、基本的な姿勢といたしましては、無利子貸与というのが事業の中の大きな柱でなければならぬというふうに申し上げておるわけであります。
  127. 藤木洋子

    ○藤木委員 併用という言葉をお使いになりますので、ちょっと理解がしにくいのですけれども、根幹である無利子貸与と有利子貸与との関連はどうなりますか。  それでは、具体的にお聞きをいたします。根幹というのは比率で申しますと大体どのくらいを指しておられるのでしょうか。
  128. 宮地貫一

    宮地政府委員 先ほど来御答弁を申し上げている点でございますが、制度的な仕組みの点で申し上げますと、無利子貸与事業は、育英奨学事業の対象としております学校を、高等学校から大学院まですべて対象として取り上げておる。さらに専修学校学生に対しても無利子貸与事業は実施をしておるわけでございます。それに対しまして、今回創設をお願いをしております有利子貸与事業は、大学と短期大学を当面の対象といたしておるわけでございます。これは特に、大学、短期大学については量的な拡充を図る必要があるというような現実の要請があるわけでございますので、当面それに対応し得る形で大学と短期大学を対象とする、そういう意味で、対象として取り上げている学校について申せば極めて限定的な取り上げ方になっておるわけでございます。繰り返しになりますけれども、無利子貸与事業は、育英奨学事業の対象とする学校ではすべての学校を取り上げておるという点で、無利子貸与制度制度の根幹として据えられているということが事柄として一つ御理解をいただけるかと思います。  それから、もう一つは、量的な面でどうかというお尋ねでございますが、現在の新規採用人員が、無利子貸与制度で申しますと約十二万人、有利子貸与制度新規採用人員が二万人であるというような形から見ましても、量的な面から申しましても、無利子貸与制度が日本育英会の奨学事業としては基本的なものであるということは御理解をいただけるのではないかと思います。
  129. 藤木洋子

    ○藤木委員 今の局長の御答弁ですが、その比率は割合にしてどのぐらいになりますか。
  130. 宮地貫一

    宮地政府委員 ただいまは六対一の割合というぐあいに御理解をいただければよろしいかと思います。
  131. 藤木洋子

    ○藤木委員 では、最低何割ぐらいを維持していれば根幹だというふうにお考えなんですか。その六対一は終生ずっと維持できるというふうにお考えなんでしょうか。
  132. 宮地貫一

    宮地政府委員 ただいま現状の姿について申し上げたわけでございますが、現在見込んでおります事業規模で御説明を申し上げますと、例えば学年進行が完成をする時点で、全体的には無利子貸与が約三十六万人余り、有利子貸与が約七万六千八百人ということでございますので、比率から申しますと、ほぼ五分の一というような比率というぐあいに御理解を賜ればと思います。
  133. 藤木洋子

    ○藤木委員 それでは、五対一ということですか。その五対一を維持していれば根幹、五が根幹で、一は枝葉だ、こんなふうなお考えでしょうか。
  134. 宮地貫一

    宮地政府委員 現在の事業規模の見込みで申し上げますと、そういう数字でございますので、私どもとしては、無利子貸与事業の量的な面で申せばそういう姿を想定をして、今回有利子制度というものを創設し、そして、将来の推計においてもほぼそういうような数字になっているということを踏まえまして、無利子貸与制度が事業の根幹であるということを御説明を申し上げておるわけでございます。
  135. 藤木洋子

    ○藤木委員 私、余り根幹、根幹とおっしゃいますので、広辞苑で調べてみたのですね。そうしますと、「根本」というふうに載っておりまして、それの対句、反対語といいましょうか、対句になっていますのが枝葉ということなんです。根幹とおっしゃる以上は何対何という、幹ですからね、よっぽど考えなければ出てこないというのは、極めてこれはあいまいではないかと思うのですね。それでも幹なんでしょうか。私は、その幹がどんどん細っていって、枝葉の方が大きくなるのではないかという不安を持たないわけにはまいりません。  その根幹の意味ですが、これは今の御説明では極めてあいまいで、はっきりしないわけです。育英資金制度の存否にもかかわる問題だというふうに思うわけですが、法案の提案者として、もう一度根幹の意味について明確にお答えをいただきたいと思います。根幹というのはどういうものであって、絶対何割以下にはならない、これだけ太いからこそ幹なのだというその根拠を数字的にも示していただきたいと思いますが、その辺の御計画はいかがですか。
  136. 愛野興一郎

    ○愛野委員長 簡潔、明確に。
  137. 宮地貫一

    宮地政府委員 事業規模の見込みで、先ほど学年進行完成の時点での数字を申し上げたわけでございまして、その数字で御理解を賜ればと思います。
  138. 藤木洋子

    ○藤木委員 今回の法改正でも、第一種無利子、第二種有利子という二種類の学資貸与を行うことは規定されていますけれども、第一種を根幹とするという規定はどこにも見当りませんが、それはそのとおりですね。いかがでしょうか。
  139. 宮地貫一

    宮地政府委員 そういうことを条文の規定では表現として用いておりません。
  140. 藤木洋子

    ○藤木委員 では、私たちはどこからそれを読み取ればいいのですか。
  141. 宮地貫一

    宮地政府委員 その点は、先ほど実態に即した御説明で申し上げればということで、繰り返しになるわけでございますけれども、無利子貸与事業の対象となる学校は、日本育英会の行っております育英奨学事業として取り扱っておりますものはすべてその対象範囲として取り扱っておる、しかしながら、有利子貸与事業というものは、大学、短期大学というような限定をした、特に量的拡充が望まれる分野について限定をして取り入れておるというような事柄で御理解をいただければと思っております。
  142. 藤木洋子

    ○藤木委員 文部省の言明を信用しろということのようでございますけれども、それでは信用できませんね。根幹の意味も非常にあいまいです。そして明文化もされていない。  では、私は違う観点から、違う角度からこの問題を少しはっきり浮き彫りにしてみたいというふうに思います。奨学金制度の量的拡充、その方策として有利子貸与を導入したと言われますけれども、それならば、なぜこの際、有利子を根幹にするように踏み切られなかったのか。それはなぜですか。
  143. 宮地貫一

    宮地政府委員 いろいろな議論の中には、御指摘のように、例えば臨調の答申等ではそういう議論も行われまして、むしろ今日の経済情勢その他から見れば利子つきの奨学事業にすべきであるという議論も行われておりましたことは事実でございます。しかしながら、私どもとしては、育英奨学事業というものを文教施策の非常に重要な施策というぐあいに受けとめておるわけでございまして、そういう議論がございましたけれども、さらに、従来から御説明しておりますように、文部省に調査会を設けまして、その点について十分議論をいただきまして、やはり制度基本としては無利子貸与制度というものを今後とも育英奨学事業の根本に据えることが大事である、関係者の御議論を通じてそういう結論に達したわけでございます。その結論に従って私ども、今回御提案申し上げておりますような改正の内容でお願いをしているわけでございまして、もちろんその中ではいろいろな議論が行われたわけでございます。例えば、先ほど来御議論をいただいておりますように、給費制度というものをどのように考えるか、給費制度というものを取り入れるとすればどういうことが問題点としてあるかというようなことを含めましていろいろな御議論をいただいて、結論としては、やはり無利子貸与事業というものを制度の根幹として存続をさせていくというような結論をいただきましたので、その結論に従って、今後とも育英奨学事業というものをこういう無利子貸与制度、そして一部奨学生が将来返還をするに際して無理のないような形で返還をでき得る範囲内での利率の負担をお願いする形の有利子貸与制度というものを新たに創設したわけでございます。  大変説明が長くなって恐縮なのでございますが、その点は政府貸付金についても、もちろん財政全般のこういう状況を受けて、マイナスシーリングというような状況下にあるわけでございまして、その中で貸与月額と人員の増と両方達成をするとすれば、やはり従来の一般会計の貸付金の枠以外の資金を導入するということも、また現在の時点ではやむを得ない点ではないかという結論になりましたので、先ほど説明をしておりますような有利子貸与制度をつくったというのが今回御提案を申し上げております中身でございます。
  144. 藤木洋子

    ○藤木委員 そういうお考えでしたら、当然全面的に有利子化をするということに対しては反対のお立場だろうというふうに例えるのですが、そのように理解してよろしいですか。
  145. 宮地貫一

    宮地政府委員 私ども、育英奨学事業というのは文教の施策の中の大変重要な施策というぐあいに受けとめておりまして、考え方基本は先生御指摘のとおりの考え方を持っております。
  146. 藤木洋子

    ○藤木委員 それでは、全面有利子化をする場合一体何が問題になるのか、いかがですか。問題点は何ですか。
  147. 宮地貫一

    宮地政府委員 問題点は何かというお尋ねでございますが、一つは、やはり経済的な負担というような観点から見ますれば、すべてを有利子化にするというような考え方では、経済的な条件によって奨学金を受けるというような観点からすれば負担能力にたえないというような者も出てくることが想定されるわけでございまして、全面的な有利子化という考え方をとられる方も中にはいないわけではございませんけれども、私どもとしては現時点ではそういう考え方はとらないというのを基本として考えております。
  148. 藤木洋子

    ○藤木委員 本当にそんなお考えですか。それはうそじゃありませんか。
  149. 宮地貫一

    宮地政府委員 具体的な御説明として「今後における育英奨学事業の在り方について」という報告をいただきました中で、その点を具体的に述べている箇所を申し上げますと、「育英奨学事業は教育の機会均等を確保するための基本的な教育施策であり、国の施策として育英奨学事業を実施しなければならないものである以上、先進諸外国の公的育英奨学事業が給与制を基本としていることにも留意し、現行の日本育英会の無利子貸与事業を国による育英奨学事業の根幹として存続させる必要がある。」という点が言われております。さらにそれに続けまして、「育英奨学事業の量的拡充を図ろうとする場合、国の財政事情を勘案すると、一般会計からの政府貸付金を資金とするだけでは限度があり、一般会計以外からの資金の調達方法考える必要がある。この場合、国が実施する事業であること、長期安定的な資金の確保が確実であること、比較的低利であることが望ましいこと等の諸条件を勘案して、日本育英会の育英奨学事業の資金を確保することが必要である。その際、財政投融資資金の活用についても検討すべきである。」ということが調査会で十分議論した後にいただいた結論でございまして、私どもとしては、その線に沿いまして、非常に重要な文教施策の一つとして育英奨学事業を把握しているわけでございますが、その考えに変更はございません。
  150. 藤木洋子

    ○藤木委員 いろいろおっしゃいましたけれども、全面的に有利子化をすることはもはや奨学金ではなくなるからではないか、私はそんなふうに思うのですよ。もうこれはローン以外の何物でもないと思います。つまり、奨学金制度の崩壊そのものを示すことだから踏み切れなかったのじゃありませんか。利率の相違はありましても、民間教育ローンと大差がなくなってしまいます。奨学金制度自体の存在意義がなくなってしまいます。だからこそ文部省も全面有利子化を問題視してこられた、このように思うのですけれども、いかがですか。
  151. 宮地貫一

    宮地政府委員 御指摘の点は、民間のローンとの差がそういうことではなくなるのではないかということでございますが、私どもは、民間のローンというものはローンとしてそれぞれ意味もあり、存在をしているものだと考えておるわけでございます。日本育英会が行います育英奨学事業としては、先生が御指摘のように、もし全面有利子化をすれば奨学金でなくなるという判断があってそうしたのではないかというお尋ねでございますが、それはそのように御理解をいただいても結構でございますけれども、私ども考え方基本では、民間ローンとの比較でどうかというようなことで検討をしたことはございません。
  152. 藤木洋子

    ○藤木委員 民間ローンと全く同じようなことになってもそれは奨学金だというふうにお考えなのですか。それはいかがですか。
  153. 宮地貫一

    宮地政府委員 いわゆる教育ローンというものがあるわけでございますが、それはそれなりにそれぞれ私ども、意義はあるものだというぐあいに考えております。しかしながら、これらの銀行等の教育ローンでございますけれども、それはあくまでも金融機関等の営業ベースで実施をされているものでございまして、例えば、その大半は学生の父兄が入学時の一時的な経費を借りて本人の在学中に父兄が返還をするというようなものでございまして、日本育英会の行っておりますこの貸与事業、本人が卒業後返還するこの育英奨学事業とは性格基本的に異なるものというぐあいに考えております。
  154. 藤木洋子

    ○藤木委員 そこで、行革審との関係についてお伺いをしておきたいというふうに思います。  大臣は、行革審は審議中で結論がまだ出ていないのでコメントは差し控えるというふうに答弁をなさいましたけれども、新聞その他の伝えるところによりますと、全面有利子化の方向が打ち出される可能性が高いというふうにされていますが、そのことは御承知であろうと思うのですけれども、いかがでしょうか。
  155. 森喜朗

    ○森国務大臣 行革審は二つの小委員会でいろいろ今協議をしておられるということは承知をいたしておりますが、どういう内容をどういうふうにしていくかというふうなことは、新聞等で漏れ伝えられる程度のことは承知をいたしておりますが、具体的に私どもに対して、議論の中身の説明があったり私どもに報告があったり相談を受けたりということはございません。したがいまして、私どもの立場では、今どういう方向で議論されているかということについては全く承知をいたしておりません。
  156. 藤木洋子

    ○藤木委員 全面有利子化は到底許されるべきではありません。文部省御自身も今その立場だということをおっしゃったわけですが、文部省としては、結論が出るまでは何も対処しない、ただじっと静観をするだけ、全面有利子化が打ち出されてきてもそれから抵抗する、そういうお考えなのでしょうか。
  157. 宮地貫一

    宮地政府委員 私ども、行革審は基本的には臨調答申のフォローアップを目的として設立された審議会というぐあいに承知をしておるわけでございます。したがって、フォローアップは考えられるかと思うわけでございますけれども、御指摘のような事柄について、例えば今お話しのように、全面有利子化の実現というような形で行革審が新たな提案をしてくるものとは、私どもとしては理解をしがたいところというぐあいに考えております。
  158. 藤木洋子

    ○藤木委員 どういうわけか、六月の二十五日に報告を出すという予定だと私は伺っておりましたけれども、まだその報告が延ばされているといいますが出ていないわけです。局長が全面有利子化の方向は打ち出されるというふうには思わないとおっしゃる根拠は何ですか。
  159. 宮地貫一

    宮地政府委員 基本的には大臣先ほどお答えしたことに尽きるわけでございますけれども、私どもの今回の育英制度改正というものは、もともと当初臨調答申で議論をされたことを受けまして、そのことをそのままいわばうのみにして事柄実施するということではなくて、育英奨学事業というものは文教に関する基本的な施策であるから、そのいわば臨調答申が出たものを踏まえまして、それを具体的に対応するとすればどうするかということについて、先ほど読み上げましたような調査会を設けていろんな角度からその点を議論して結論を出して、今回制度改正お願いをして、こういう育英奨学事業について抜本的な改正ということで御審議お願いをしているわけでございます。  私どもが受けとめております審議の中では、そういういわば臨調答申で出されたことを踏まえまして、それも審議の中にそしゃくして、私どもとしては今回の制度改正を御提案申し上げておるわけでございますので、そういう意味から申しますと、今回のいわゆる行革審は、従来臨調答申が出されたもののフォローアップを目的として設置された審議会というぐあいに承知をしているわけでございますので、私どもとしては、臨調答申が出されたものを十分こなした上で、制度としてどういう制度が文教施策としてとるべき策がということを議論した上で御提案を申し上げておるわけでございますから、そのことについて改めて全面有利子化ということについて議論が出されてくるというぐあいには私どもとしては受けとめがたいというぐあいに考えております。
  160. 藤木洋子

    ○藤木委員 結局、結論が出てからということではないかというふうに思うのですけれども、これは非常に大事なことだと私思うのです。もしそうなりますと、法律的にいいましても行革審の答申は尊重義務が課せられていると思うのですが、そうではないですか。
  161. 宮地貫一

    宮地政府委員 具体的などの条文に即したどういうことかという御指摘はございませんで、あるいは受けとめ方を間違えておりましたらお許しをいただきたいと思いますが、私ども、既に出されております臨調答申については、それをどう現実のものとして進めていくかということについては、十分議論を尽くしてこなした結果が、ただいま申し上げでおりますような無利子貸与制度を事業の根幹として存続をさせ、有利子貸与制度を新たに導入をして量的な拡充を図るという対応をしたわけでございますので、私どもとしては、決してこのこと自身が尊重さるべきものということから外れているものとは理解をしておりません。
  162. 藤木洋子

    ○藤木委員 行革審が今後全面有利子化ということを打ち出してきた場合に、それではどうされるのですか。尊重されるのか、無視されるのか、尊重してそしゃくをしてどのようにされるのか、お答えをいただきたいと思います。
  163. 宮地貫一

    宮地政府委員 先ほど来の繰り返しの答弁になるわけでございますけれども、私どもとしては、臨調答申が出ましたものを受けて、それをこなすこなし方としてどうすべきかということを随分議論をして結論を得ましたものがこの仕組みで、ただいま御提案申し上げているようなわけでございますので、このことについて行革審の方がどういう取り上げ方をするか、私ども直接担当しているわけではございませんので、それ以上のことは私どもからは申し上げることは差し控えたいと思いますけれども事柄としては、この育英奨学事業をどう改善するのかということについては論議を尽くされた上でこうして今日国会の御審議お願いをしているということでございますので、それをさらにひっくり返すような議論が出されるというぐあいには理解をしがたいということを先ほど来申し上げているわけでございます。
  164. 藤木洋子

    ○藤木委員 歯切れが大変悪いです。今、新しい法律をつくった後で全面有利子化ということが行革審から打ち出されてきたらどうするのかということを私伺ったのですね。そのことにはお答えになっていらっしゃいません。あるいは答えられないのかもわかりませんけれども、提案者が質問に答えられないというのは重大なことだと思うのです。なぜ確信を持って説明ができないのですか。私の質問がわからなかったのでしょうか。
  165. 宮地貫一

    宮地政府委員 そういう事柄について取り上げられるとすればという、いわば仮定の問題かと思うわけでございます。その点については、先ほど来申し上げておるように、まだ具体の問題として私どもそのことは承知をしていないから、そのことについては答えようがないということで申し上げておるわけであります。(「そんなことじゃ法律にも何にもならぬじゃないか」と呼ぶ者あり)
  166. 藤木洋子

    ○藤木委員 本当にそのとおりです。法案の存否にかかわる問題だというふうに私は思います。出ればという仮定ではないかとおっしゃいますけれども、全面有利子化が出ないという保証はここから先もないじゃありませんか。私はそのことを非常に大きく危惧しております。  きょうの読売新聞を拝見させていただきますと、住宅金融公庫の融資金の利率が引き上げられるということになっておりますけれども、これも私の記憶によりますと、一年か一年半ほど前にたしか法律から政令に変えられたものですけれども、変えた途端に、どうですか、もう利率の引き上げが迫られているじゃありませんか。私はそのことを心配しているわけです。だからこそ伺っているわけで、今の局長答弁は無責任という以外にはありません。仮定の話だと言いますけれども、全くあり得ないことを私は言っておるのじゃありませんよ。現に一方で進行しておる事柄があるからこそお伺いをしておるのです、それでも私の質問は無理でしょうか。無理がどうかについてお答えをいただきたい。
  167. 森喜朗

    ○森国務大臣 御心配をされる点はよく私もわかります。そして、有利子制というものを制度の中に仕組みとして取り入れた、確かに大きな転換でございます。しかし、なぜそうしたかということについては、これまで各党会派の皆さんの御質問に対しまして、私どもとしては、無利子というものをいわゆる奨学資金の根幹にさせていただきまして、そして、有利子という制度は事業量の拡大という面でのメリットもあるということでございますので、どうぞ御理解をいただきたい、こう申し上げてきておるわけでございます。  今審議をされておられます行革審は、たびたび局長から申し上げておりますように、さきの臨調答申に対しましてのフォローアップを、いわゆる六十年度の概算要求の作業が目前でございますから、その予算編成に対します基本的な考え方として議論をいたしておるというふうに私ども承知をいたしております。したがいまして、今度の行革審の今いろいろと検討しております事柄につきましては、制度上のものに触れるというようなことは恐らくないというふうに私ども承知をいたしておりますし——ないという約束はもちろんございませんけれども、私どもも政治家でございますから、私どもは、そういうものを今議論をされる、そういう意味での行革審ではないというふうに承知をいたしております。  局長といたしましては、決して先生の御質問に対して自信がない答弁をしているわけではございませんので、中身については局長としては承知をいたしていないということでございまして、中身についての仮定で、あるとかないとかということは言えない、言えないから、そこのところは自信がないということで、先生は、そこのところを隠しているのだろう、そういうふうに受け取られる面もあるかもしれませんが、大臣として私は明確に申し上げておきますが、そのような恐らく制度上のことの議論をいたしておるというふうに私ども承知いたしておりませんので、あくまでも今の制度をどうぞひとつ、事業量の拡大——まあ改悪だという共産党さんの言い分もございますが、改善のところもあるわけでございまして、何とぞ御審議をいただきまして成立をさせていただきたいというふうに考えておりますし、今後とも私どもといたしましては、無利子貸与制というものを奨学制度の大きな柱として進めてまいりますとたびたび申し上げておりますので、そのことを御信頼いただけないということはまことに悲しいことでございます。
  168. 藤木洋子

    ○藤木委員 本当に私も悲しい思いです。言葉だけなんですよ、幹だとか根幹だとかおっしゃっても。それを保証するものが何一つ私たちの目の前に明らかにされないじゃありませんか。私の方こそ悲しい思いですよ、大臣そうおっしゃいますけれども。  私は、行革審と、そして文部省が行革審の答申待ちというようなことだったら、この法案審議を今したって無意味じゃないかなというふうに思うのですね。そうじゃありませんか。仮に、審議をして新しい法律成立をしたとしましょう。幹だと思うからこそみんながそれでやろうと思って決めたとしましょう。これがもし行革審によって寄り切られるようなことがあったら、どなたが責任をとられるのですか。私たちですか、大臣ですか。どうされるのですか。
  169. 森喜朗

    ○森国務大臣 ですから申し上げているわけです。今度の行革審は、もちろん中身について私ども承知をいたしておりませんが、六十年度の概算要求の作業を間もなく八月末までにいたさねばなりません。そういう予算のあり方といいましょうか、予算上の問題につきまして、さきに臨調が答申をいたしましたことについてのフォローアップをするために設立をいたしたものでございますが、同時に、今議論いたしておりますことは、あくまでも来年度予算編成のことにつきまして議論をしておるというふうに私ども承知をいたしておるわけでございます。したがいまして、そういう制度上にかかわることを今議論しておるのではないというふうに私ども承知をいたしておりますから、私は、今の行革審の中で、今の法律ができ上がって、通していただいて、なおまた今度は無利子制というものを廃棄するというようなことを答申をしてくるということはあり得ないというふうに申し上げているわけでございます。
  170. 藤木洋子

    ○藤木委員 私は、大臣のお考えが大変甘いことを心から心配いたします。全く今のお話を伺っている限りでは、この法案の存否も危ぶまれますし、この根幹というのがいつ揺らぐかわからないという危惧も非常に大きくなった、むしろそれが増したというふうに言わなければならないと思います。無利子貸与を根幹として維持するという前提は崩れてしまいますでしょうし、これは本当に重大問題だというふうに思います。文部省が全面有利子に踏み切られなかったのも、それが奨学金制度ではなくなってしまうということを憂えて、そのような道には進ませないということを考えられたからだというふうに私は理解しておりましたけれども、それも言葉だけに終わるのではないかということが、私は極めて残念です。このような審議をしていて本当にいいのかなという反省を私自身が持たないわけにはまいりません。本当にいいのでしょうか、このまま審議を続けていてよろしゅうございますか。
  171. 森喜朗

    ○森国務大臣 たびたび申し上げておりますように、私どもとしては無利子制というものを大事にしていきたいと何回も申し上げているわけでありまして、どうもあなたは最初から、これを破棄するんだという、そういう立論の上で御質問をなさっておられる。逆に私どもから言えば、そういうふうに決めてかかって御質問されるということになれば、私どもは逆に、守っていきたいということを申し上げているわけでございまして、そのことをやはり御理解をいただかないと、それだけでもって審議ができないとかしないというのは、私は、これは政治家の立場で申し上げるわけで恐縮でございますが、どうもいささかおかしいなという感じがいたします。  私どもとしては、無利子を根幹としますと——幹だの根幹だのという変な言葉を使うなとおっしゃいますけれども、とても大事なことだから申し上げているわけでございまして、これを大事に守っていきたい、こう申し上げているわけでありまして、行革審から出てきたらどうするのですか、こうお尋ねになるから、私ども承知しておりますのは、今の行革審は、制度上のことを議論しないもので、あくまでも来年度予算のことについて議論をしているのだというふうに承知をいたしているから、私は、今度の行革審でまた有利子制度に全部切りかえろというようなことを私どもに持ち出してくるということはあり得ないということを、これは局長の立場では言えないかもしれませんが、私は大臣として自信を持ってそのことは言えると申し上げているわけですから、どうぞこれを御理解をしていただかなければ、これはどうも私自身も本当に悲しい思いです。
  172. 藤木洋子

    ○藤木委員 私が申し上げているのは、例えば、どこからどんな意見が出されたりあるいは報告が行われたとしても、そのことに絶対揺るがないだけの保証を明文化すべきだということを申し上げているのです。例えば法律で定めるとか、これは国会でもう一回審議をし直さなければ改められないとか、そういった確固たるものにしておかなければ不十分ではないか、このままでいいのかということを申し上げているわけでございます。  さて、それでは、ほかの奨学金制度とのかかわりについて御質問を申し上げたいのですけれども、大蔵省はまだお見えになっていませんね。  それでは、返還の問題につきまして少しお伺いをしたいというふうに思います。  今回の法改正で、特別貸与一般貸与、この一本化が有利子化による問題で非常に重大なのは、その返還に伴う負担の増大にあるというふうに思います。  最初に伺いますけれども、特別と一般の一本化に伴って従前の特別貸与の返還免除が廃止されることになるわけですけれども、この一本化の根拠は何でしょうか。
  173. 宮地貫一

    宮地政府委員 御案内のとおり、今回の提案申し上げております育英会法案の内容で申し上げますと、無利子貸与制度と有利子貸与制度という二つの仕組みで考えておるわけでございますけれども、従来、一般貸与特別貸与ということで、無利子貸与についてはその二本立てで行われておったわけでございます。もちろん、特別貸与というものが創設をされました当時においては、相当単価の差があり、一般貸与特別貸与の意味するところはそれぞれ有効に、機能をしておった点でございますけれども、その後、全体に貸与月額の引き上げということが順次行われた結果、現時点では貸与月額についても一般貸与特別貸与というものを別建てに特に設けなければならないというほどの差がなくなってきておるというような現状を踏まえまして、その点については、今回有利子貸与制度をつくる際に無利子貸与制度については一本化を図る。一本化を図るということは、一つには、特別貸与相当額の貸与月額にすべて統一をするということで貸与月額を引き上げることになるわけでございます。今回の改正では、さらにその上にそれぞれ大学については二千円の貸与月額の増を図るというようなことで、一つには貸与月額を引き上げるということで考えたものでございます。  先ほど来御説明をしておりますように、貸与月額の引き上げがこのところ現実問題として大変厳しい状況下で、例えば授業料引き上げが行われた年にも貸与月額が引き上げられていないというようなこともございまして、私どもとしては、基本的には貸与月額の引き上げということがやはり育英奨学事業の内容的な充実という観点からはぜひとも欠かせない点であるというようなことも考えまして、無利子貸与については今回一本化をして貸与月額を引き上げる。もちろん、その反射的な効果といたしまして、従来ございました特別貸与について、一般貸与相当額を返還すれば返還免除の規定がございましたものが今回廃止をされるということは、その内容としては出てくることはもとよりでございます。
  174. 藤木洋子

    ○藤木委員 せんだっても佐藤議員からたしかこのことについては質問があって、資料をお出しいただくようにというお話があったかと思うのですけれども、できましたらその資料に基づいてもっと具体的に御説明をいただきたいのです。
  175. 宮地貫一

    宮地政府委員 先般お尋ねのありました点については佐藤先生にはお届けをしたわけでございますけれども、お尋ねの点は、今回、無利子貸与制度について、一般貸与特別貸与に吸収する形で全体の貸与月額の引き上げを行い、さらに、先ほども申しましたように、大学では二千円、高校は千円でございますが、大学院では五千円の増額を行ったわけでございます。  そこで、返還総額でございますけれども、大学の自宅外通学の場合、国公立にありましては五十八年度の八十六万四千円に対して五十九年度は百三十四万四千円と約五六%の増があり、私立にありましては五十八年度の百二十九万六千円に対しまして五十九年度は百九十六万八千円という約五二%の増になっております。これは返還免除制度についてもいろいろ議論が行われまして、私どもとしては、先ほど来の調査会で議論をいたしました際にもその点も議論をして、教育職、研究職の返還免除制度については制度としてなお存続をするということで、今回も御提案を申し上げておるわけでございますけれども先ほど申しましたように、一般貸与特別貸与を一本化することによりまして、この特別貸与の返還免除制度というものは廃止になる。その意味では返還免除額が縮減されることになるわけでございます。先ほどほかに御質問もありましてお答えしましたように、しかしながら、それは広い意味で御理解をいただければ、無利子貸与制度の返還金の財源を確保するという観点からは、将来にわたってこの無利子貸与制度を安定的に運用するための財源としてさらに活用されるという形で、広い意味での無利子貸与制度を生かしていくという上では活用される形になるわけでございますので、その意味では、その廃止に伴いまして、かっ月額を引き上げるというようなことによりまして、従来の返還免除制度がございました当時と比較をすれば、返還をする率は先ほども申し上げましたような相当大幅な増にはなるわけでございますが、金額的には、毎年の返還額で申し上げますを、返還総額がふえますことに伴いまして返還年数は延びることになるわけでございます。したがって、毎年の返還額で申し上げますと、大学の自宅外通学の場合、国公立にあっては八万円から十万円へ、私立にあっては十万円から十二万円へとそれぞれ毎年の返還額は増額されることになりますけれども、これは卒業奨学生の返還負担能力ということを考えれば、これらの点は負担をいただけるものではないかというぐあいに、考えているものでございます。
  176. 藤木洋子

    ○藤木委員 返還の負担は許容範囲だという御答弁ですか。
  177. 宮地貫一

    宮地政府委員 奨学生が毎年返還をする年額の増額から申せば、先ほど説明したとおりでございまして、それは奨学生の返還能力から見れば私どもとしては無理のない程度のものであるというぐあいに理解をいたしております。
  178. 藤木洋子

    ○藤木委員 もうちょっと具体的にお示しをいただきたいというふうに思うわけです。許容範囲であるとおっしゃるのでしたら、第一種についてはどうなのか、第二種についてはどうなのかということで御説明をいただきたいのです。
  179. 宮地貫一

    宮地政府委員 前回お尋ねがございましたのは、特別貸与返還免除額というものが今回廃止をされるから、従来免除があったものから比べれば五割を上回るような返還ということで大きくなるのではないかという御指摘がありましたものですから、その線に沿った御説明をただいま申し上げたわけでございます。  それから、お尋ねの点は、有利子貸与の場合の返還がどの程度の負担になるのかというお尋ねかと思いますけれども、五十九年度新規採用者について毎年の返還額について御説明を申し上げますと、無利子貸与制度の場合には国公立大学で十万円、私立大学では十二万円ということになります。有利子貸与制度の場合には、国公立大学では約十二万六千円、私立大学では約十五万三千円というような金額になります。ちなみに、民間企業の初任給に占めます割合ということで考えてみますと、それぞれ六・三%、七・六%、八%、九・七%程度ということでございまして、奨学生が給与を得るようなことになりまして返還をする際の率としてはただいま申し上げましたような程度でございまして、その点は負担に対応し得るものではないか、かように考えます。  なお、御説明しました点は初任給との比較ということで申し上げましたけれども、五十九年度新規採用者が返還を開始しますのは、当然のことでございますが、大学学部の場合でございますと四年後になるということでございまして、この間には初任給の上昇等ももちろん見込まれるわけでございまして、そうなればこの割合はさらにある程度低下するということも予想されるわけでございます。
  180. 藤木洋子

    ○藤木委員 今のお話を伺っていますと、本当に大学を卒業された方が、家族ともそれからそういったしがらみとはかけ離れたところで、その給料を全く自分の生活のためにだけ使って暮らしている人を対象にしたようなお話に聞こえて仕方がないのですね。  実を言いますと、私のところに一昨日ですか、青森県の方から相談がございました。それは、今までまじめに奨学金を返還していらっしゃったわけです。毎年滞りなく返していらっしゃったのですけれども、ことしはどうもそれができにくくなった、こう言われるのですね。何か窮余の策はないか、しばらく延ばしてもらうというようなことは可能かという相談まで寄せられました。事情を聞いてみますと、お母さんがサラ金に手を出されて、家族じゅうが挙げてこれを何とか面倒を見なければならないというところに来て、今まで奨学金の返済のためにためていたお金を全部使い果たしてしまうというような事態になっているのだということなんですね。  ですから、そういったしがらみというのは、両親に仕送りをしなきゃならない場合も出てきますでしょうし、病人が出る場合もありますでしょうし、大変な苦しい生活を背負っているわけですよね。そのような中で利息がつくということになりますと、その負担はますますふえることになるわけでして、私が調べさせていただいたところによりましても、現行一般貸与、現在でしたら、毎年年間返さなければならないお金は八万円なんですけれども、しかし、これは総額にしまして利子がつくということになりますと五十三万円ほどアップになるんじゃないでしょうかね。私はそういうことを実は伺いたかったわけです。  今でさえも奨学金を受けたい、受けたいけれども受けるのをやめるというふうに断念される方の理由を聞いてみますと、これはやはり返さなきゃいけない金だからなと、こう言われるわけですよね。それだけを借りて生活をしているということでは今国民はなくなっております。いろいろなローンづけになっております。その点のことも加味していただきまして、実際に有利子になったら、今までよりもどれだけ負担がふえるのか、しかもそれは短い年度の間に返すということになればどんな負担になるのか、そういったところまでのきめの細かい思いやりといいますか、そういう計算が行き届いているかどうか、そこのところをお聞かせいただきたいわけです。
  181. 宮地貫一

    宮地政府委員 前段にお話のございました、具体的ケースについて御相談があったという点でお話がありましたが、この点は、返還猶予の制度が仕組みとしてはございまして、それぞれいろいろな猶予の事由というのは、例えば災害でございますとか、障害とか、あるいは生活保護とか、いろいろな事柄が並べられております。そして、その中に、その他真にやむを得ない事由で返還が困難というようなことについては、それぞれ返還猶予の制度もございまして、これは有利子貸与制度を今回創設するわけでございますけれども、その際にもこの返還猶予の制度は運用として行うというぐあいに私ども考えているところでございます。したがって、その返還猶予の問題については、具体的な御相談がなされれば適切な対応がなされるものというぐあいに私ども理解をするものでございます。  それから、お尋ねの点は、先ほど説明で申し上げた点でございますけれども、無利子貸与制度と有利子貸与制度の場合を比較してみて、具体的に返還金額が有利子貸与の方がどのくらいふえることになるのかということについて、もう少しきめ細かく説明をすべきではないかというお尋ねでございますが、数字で申し上げれば、先ほど申し上げましたように、国公立大学で無利子貸与の場合十万円でありますものが、有利子貸与で申し上げますと約十二万六千円ということで、年額で約二万六千円有利子貸与の方が大きくなるというぐあいに理解をするわけでございます。  私ども、この新しい制度実施するに当たりましては、もちろん事柄を正確に奨学生にも理解をしていただくために、もちろん、そのための必要な一般に理解を得るためのいわゆるPRと申しますか、そういうような事柄については、十分育英会の方においても事柄をそれぞれ学校当局に御理解をいただき、さらにそれを、具体的に奨学生としてこれから志願をしようとする方々に対しても、将来これがどういう影響があるのかということを十分御理解をいただくような資料というものは十分用意を整えまして、正しい理解をしていただくように対応すべきことは当然のことでございまして、その点については十分私どもも意を用いてまいりたい、かように考えます。
  182. 藤木洋子

    ○藤木委員 そういった事態に対しては救済の措置をとるというお考えはわかりましたが、許容範囲だという御答弁は、私はこれは余りにも現実を本当に直視していらっしゃらないのではないかというふうに思うわけですね。ですから、決して許容範囲だということではなくて、本当に、大学を卒業あるいは高校卒業あるいは専門学校などを卒業して働きに出始めた人たちの生活実態というのがどうかというような調査といいますか、裏づけといいますか、そういうこともしっかり把握をしていただきたいということは、重ねて希望を申し上げるところでございます。  さて、他の奨学金制度とのかかわりについて御質問を申し上げたいというふうに思うのです。  育英奨学事業に関する調査研究会、ここの報告で、育英奨学事業の実施体制についていろいろ提言しているわけですけれども、今回の法改正によりましてはかの奨学事業にどんな影響が出るというふうに考えていらっしゃるか。文部省として、その波及効果といいますか、どんな影響を及ぼすかということについて、お考えを述べていただきたいと思います。
  183. 宮地貫一

    宮地政府委員 具体的には、この有利子貸与制度をつくるということによって、そのことが他の奨学事業の団体、例えば地方公共団体とかあるいは公益法人で実施をしておりますものにどういう影響を与えると考えるのかというお尋ねかと思うわけでございますけれども、私ども、ちょっと資料としては古いのでございますが、五十四年度の育英奨学事業に関する実態調査によりますと、日本育英会以外に地方公共団体、学校、公益法人等では、全体で二千七百余りの事業主体によりまして育英奨学事業が実施をされておるわけでございます。全体的には約二十万人の奨学生に対して二百十九億の奨学金支給をされております。  これらはいずれもそれぞれの団体、地方公共団体なり公益法人が設立の目的に従いまして、独自の判断で特色ある事業を行うというものでございますので、これはそれぞれ地方公共団体なら地方公共団体自身が御判断になることでございまして、先ほどもお尋ねのありました際に、そのようなことを強要することのないようにという御質問の趣旨でお尋ねがございましたが、私どもとしても、もちろんそれぞれの団体がそれぞれ独自の判断でこのことは実施するものというぐあいに理解をするわけでございまして、この日本育英会の育英奨学事業で、例えば大学、短期大学について今回新たに有利子貸与制度をつくったということが、そのまま直ちにこれらの団体なり公益法人等の育英奨学事業のあり方に影響するものとは私どもは理解をしておりません。
  184. 藤木洋子

    ○藤木委員 では、全く影響を受けないというふうにお考えですか。
  185. 宮地貫一

    宮地政府委員 その点は、それぞれの団体、地方公共団体なり公益法人側自身がお考えになる事柄であろうかと思います。
  186. 藤木洋子

    ○藤木委員 確かに、独立した事業主体でありますから、一律に右へ倣えをするというようなことは不可能かというふうに私も思います。しかし、これまで育英会に準拠して進めてきているという経緯から見るならば、これはかなり大きな影響を受けるだろうということは予測がつくと思うわけですね。この場合一番問題になりますのは、有利子貸与、これが導入されるのではないかという問題が一つの重要な問題であろうというふうに思います。  そこで、この問題について具体的に質問をさせていただきたいのですけれども、大蔵省にお伺いをいたします。  まず第一に、銀行などの金融機関、それ以外の団体などで新規に利息を取って貸し付けをするというようなことを始める場合、一般的に言いましてどういう要件を備える必要があるでしょうか。また、それにかかわる法律はどんなものがございますでしょうか。
  187. 中平幸典

    ○中平説明員 新たに資金の貸し付けを業として行うというためには、昨年の十一月に施行されました貸金業規制法によりまして、都道府県知事または大蔵大臣に登録をしなければならないということになります。
  188. 藤木洋子

    ○藤木委員 それでは、地方公共団体の場合はどうでしょうか。
  189. 中平幸典

    ○中平説明員 貸金業規制法の第二条におきまして適用除外の規定がございまして、地方公共団体の場合には登録の義務はございません。
  190. 藤木洋子

    ○藤木委員 それではさらに、学校法人または公益法人についてはいかがでしょうか。
  191. 中平幸典

    ○中平説明員 貸金業規制法一条の規定を受けまして貸金業規制法施行令というのがございまして、そこにおきまして、民法法人及び学校法人等特別の法律に基づき設立された法人につきましては、収益を目的としない場合におきましては貸金業規制法の適用を除外するということになっております。
  192. 藤木洋子

    ○藤木委員 それでは、営利法人、個人などについてはどうなりますか。
  193. 中平幸典

    ○中平説明員 営利法人、個人の場合でございますが、業として資金の貸し付けを行うという場合には貸金業規制法の適用を受けることになります。
  194. 藤木洋子

    ○藤木委員 そこで、学校法人、公益法人の場合ですが、収益を目的とするかどうかということが一つの問題になるわけですね。収益を目的とした場合は貸金業となると思うのですけれども、いかがですか。
  195. 中平幸典

    ○中平説明員 おっしゃるとおりでございます。
  196. 藤木洋子

    ○藤木委員 もちろん奨学事業ですので、収益を目的とするとは一般的にいって考えられません。貸金業になじまないことになろうと思いますが、奨学金制度の場合はどうでしょうか。
  197. 中平幸典

    ○中平説明員 先ほど申しましたように、収益を目的とするかどうかという点で判断をすることになります。
  198. 藤木洋子

    ○藤木委員 その場合、利息をつけて貸し付けるという新たな業務を興すことになるので、定款やあるいは寄附行為、これの変更が必要となろうかというふうに思います。  そこで、これは文部省にお伺いしますが、文部省の認可法人が非常に多いわけですね。これらの法人の実態といたしまして、どの程度こうした業務に踏み出すことができるのか、その辺の認識をどう持っていらっしゃるでしょうか。先ほど、それぞれの事業主体で何とも予測ができない、こっちが判断することではないとおっしゃいましたけれども文部省が認可をしているわけですから、その事業能力からごらんになりまして、もしも利息をつけて貸し付けるという新たな業務を興そうというふうにするといたしましたら、それに踏み切れるのはどのぐらいあるだろうかということについての質問ですが、いかがですか。
  199. 宮地貫一

    宮地政府委員 先ほどお答えをしましたように、それぞれの団体、地方公共団体なり公益法人等で実施をすることになるわけでございまして、地方公共団体でございますればそれぞれの条例なり規則等に基づいて行われるわけでございます。したがって、国が関与するものではないわけでございます。公益法人の場合について、育英奨学を目的とする公益法人の寄附行為の変更でございますが、もちろん全国規模の場合には文部大臣認可、都道府県内に事業が限定されておりますものについては都道府県知事の認可が必要でございます。  そして、昭和四十一年の育英奨学法人に対する許認可等に当たっての留意事項というものがございますけれども、それによりますと、奨学金貸与制の場合に、償還については利子を付さないことというのが現在の基準では、基準と申しますか留意事項では、そのような形で取り扱いをしておるわけでございます。したがって、現時点では有利子奨学金を行うことを目的とする寄附行為の変更ということについては、その留意事項からいたしますれば事柄としては認められないということになろうかと思うわけでございます。  しかしながら、考え方として、この日本育英会の事業について、奨学生が返還をする際に奨学生の負担から見て可能な範囲の低利の有利子制度を今回創設をお願いしておるわけでございまして、民間の育英奨学事業が、それを拡充する方策の一方策ということで、これに類するような有利子奨学金の取り扱いを今後行いたいというのが現実に具体的な御相談が出てくることになりますれば、その時点で、ただいま御説明をしました留意事項というものについても具体的な取り扱いについて検討しなければならないというぐあいに私ども考えております。もちろん、その際、有利子の奨学事業を実施するとすれば、奨学金の返還等に際して奨学生の負担というようなことも十分勘案した形でのものをやっていただかなければならないことは当然でございますけれども、そのほかそういうものが具体的に現実に出てくるということになりますれば、その時点で、これらの取り扱いを検討し、対応を検討いたしたい、かように考えます。
  200. 藤木洋子

    ○藤木委員 こうして見てみますと、有利子化はかなり自由にやれることになるわけですね。ですから、この影響は極めて重大だというふうに私は思います。  育英奨学法人がこのように有利子化を行う場合に、無利子貸与を根幹とすると言っていらっしゃる以上、当然これらの法人に対してもそのような立場で臨まれることになるわけですか。その点はいかがでしょうか。
  201. 宮地貫一

    宮地政府委員 それらの点につきましては、それらの育英奨学を目的とする公益法人から具体的に出てまいりました際に検討しなければならぬわけでございますが、先ほど来御説明を申し上げておりますのは、日本育英会の行っております育英奨学事業、つまり言葉をかえて申せば、国が行っております育英奨学事業について制度全般について御説明をしたわけでございまして、公益法人の行います育英奨学事業については、それぞれその公益法人自体の目的なりそういうようなものがそこに存立をしているわけでございますので、基本的にはそれぞれの公益法人がどういう考え方でやるかということを十分伺わなければならないことではないか、かように考えます。
  202. 藤木洋子

    ○藤木委員 そうしますと、他の奨学制度とのかかわりからいえば、無利子貸与というのが根幹をなさなくなるようなことがあってもそれは構わないということなんですか。
  203. 宮地貫一

    宮地政府委員 先ほど来申し上げておりますように、育英奨学法人が公益法人として実施されます際の一つの基本的な留意事項としてどういうぐあいに考えていくかという事柄にかかわる問題でございまして、それらの点については、私どもとしても、公益法人として育英奨学事業を実施するという事柄の内容としてはどういうことが留意されるべきかというようなことの基本については、今後なお十分慎重に検討いたしまして、指導体制に遺憾のないようにしてまいりたい、かように考えます。
  204. 藤木洋子

    ○藤木委員 育英奨学法人が無利子貸与を根幹とするようなそういう立場で文部省が臨まれるかということは、私、質問はしておりますけれども、その団体をいろいろ見せていただきますと、随分小さいところもあるわけですね。十人そこそこに貸与しているというようなものもありまして、到底これはどちらかにしなければ、片方を幹にしろというようなことは無理なことではないかというような実態もあるわけですね。そういったことについてはあなた自身、一つもお触れにならなかったわけですけれども、まだそういった育英奨学法人については何もお考えになっていらっしゃいませんか。
  205. 宮地貫一

    宮地政府委員 数の点も相当多くの数に上っているということは、先ほど五十四年の調査についての御報告を申し上げたわけでございますけれども、御指摘のように、規模も相当、千差万別と申しますか、相当差がございまして、お話のように、非常に規模は小さいけれども、例えば創設者が財産を寄附してその果実で育英奨学事業を実施したいというように、民法法人の場合にはいろいろな事柄が原因になりまして公益法人が実施をされているわけでございます。本質的には、それぞれ公益法人がお考えになっております事柄を最大限に尊重いたしまして、もちろんそこに公益性の確保ということは当然必要なことでございますけれども、そういう観点に立って指導をしなければならないと考えております。  従来は、先ほど申し上げましたように、償還について利子を付さないということを基本原則といたしておりましたけれども、そのことについては十分慎重にこれから私ども検討させていただきたい、かように考えております。
  206. 藤木洋子

    ○藤木委員 他の奨学制度とのかかわりについても、まだ非常に不明確といいますか、不明瞭といいますか、はっきりした対応考えていらっしゃらないということがはっきりしたのではないかというふうに思います。  次に、国際人権規約の関連に移らしていただきたいと思います。大蔵省、どうもありがとうございました。  奨学金制度のあり方について質問をさせていただきますが、国際人権規約A規約、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約、この規約は昭和五十四年九月二十一日に条約として正式に発効いたしました。当然のことですが、留保条項を別といたしまして、日本政府は憲法第九十八条に基づいてこの条約に拘束をされるわけです。  そこで、このA規約の第十三条は教育について定められておりますけれども、この内容が国際的な流れ、方向、このように思っておりますが、どのような御認識でしょうか。
  207. 宮地貫一

    宮地政府委員 国際人権規約の第十三条二項(C)は、「高等教育は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、能力に応じ、すべての者に対して均等に機会が与えられるものとすること。」という規定でございまして、この点は我が国は留保をいたしておるわけでございます。  これは、基本的には我が国の高等教育というもののあり方の根幹といいますか、私立学校の割合が非常に大きいというような時点で、高等教育のあり方の根本にかかわる問題がありますので、その点については、今後のこの条約の趣旨に沿って無償化を漸進的にせよ進めるということについては留保をするという考え方でございます。  他面、高等教育の機会の確保という観点からは、私学助成なり育英奨学事業を充実させるということで対応をしてきておるわけでございまして、この点については、今後とも私どもとしても充実について努力をしてまいりたい、かように考えているところでございます。
  208. 藤木洋子

    ○藤木委員 日本は国際的な流れに反してA規約第十三条二項の(b)と(c)項を留保しましたけれども、その理由は何か、また留保はいつまで続けるつもりか、解除する意向があるのか、これは大臣からお答えをいただきたいと思います。
  209. 宮地貫一

    宮地政府委員 その点については、特に(c)で、高等教育についての規定でございますが、先ほど申しましたように、我が国の高等教育というものが私立学校が占めている割合が大変大きいというようなことで、」私立学校を含めまして無償化を図るということは、我が国の高等教育のあり方の根本にかかわる問題でございますので、現時点では、従来の方針を変更して漸進的にいたしましても無償化の方針をとるということは適当でないという考え方で留保をしているものでございます。そして、我が国の施策といたしましては、私学助成なり育英奨学事業というようなものの充実を図っておりまして、それらを通じて、この規定の趣旨としている点が生かされるような形で対応しているというのが現時点考え方でございます。
  210. 藤木洋子

    ○藤木委員 今の御答弁ですと、昭和五十四年よりも後退をしていると思うわけです。昭和五十四年の衆議院外務委員会では、当時の園田外務大臣が、「留保した事項は、残念ながら留保したわけでありますから、これは当然、将来、法的な解釈その他は別として、解除する方向に努力をし、また、そういう責任があるということで、とりあえずこのような姿で批准、審査をお願いしておる」と答弁しておられるわけで、解除する方向は打ち出されているわけですが、その点、文部省としてはどうなんですか。外務省の方が進んでいるのですか。文部省が責任を持って対処する分野だと思うのですけれども、やはり大臣から御答弁をいただきたいと思います。
  211. 森喜朗

    ○森国務大臣 これは私は直接の任にあるわけではございませんが、この条約締結に際してのそうした希望的な意も当然園田外務大臣としては申しておられるのだろうと思います。  私どもといたしましては、今局長からも申し上げましたように、日本の国は高等教育におきます。私立学校の分野が非常に多いという点、そうした点で、条約の中に触れられておりますようにすべて無償化の方向ということになりますと、高等教育機関そのものの根幹が大きく崩れてしまうことにもなるわけでございます。五十四年に締結いたしましたときと、その後財政の再建あるいは行政改革という問題も招来をしてまいりました。私どもといたしましても、でき得ればそういう方向を願って、私学助成のあり方あるいは育英奨学ということについて、それを充実していくという方策の手段を選んでいたわけでございます。しかしながら、現実には、先生のお立場から見れば、その育英奨学が改悪の方向ではないかというふうに御指摘をいただいているわけでございますが、私どもといたしましては、これは一つの視点のとらえ方にもなるわけでございますけれども、量的な拡大を図るという意味、あるいはまた単価の方についてもしばらくアップという方向ができなかったわけでございますので、そういうところにも努力をするという意味で、私たちの立場から見れば改善をしたという方向でおるわけでございます。  そういう意味で、なお一層充実をしていかなければならぬということは言うまでもないことでございますが、外務省の方が前に進んでいて文部省の方が後退をしておるというような御印象ではございますけれども、外務省は条約締結の担当の役所でございまして、私どもは教育行政を進めていく役所であるという、その問題点のとらまえ方といいましょうか、責任のあり方といいましょうか、そこの違いでそういうふうに受け取られるのかと思いますが、私どもとしてはなお一周努力をしていきたいと申し上げておきたいと思います。
  212. 藤木洋子

    ○藤木委員 しかし、この国際人権規約は文部省が責任を持って対処すべき教育の分野ですから、外務省がどうあろうとも、この留保条項は近いうちに解除するのだというお答えをいただきたかったところでございます。  それから、先ほど局長お答えなんですが、私の質問からはちょっと外れておりました。実は、留保した以外のことには拘束されるのですねというふうに伺ったのですが、そのことにはお答えになりませんでしたけれども、その点はいかがでしょうか。  そして、このA規約第十三条二項(c)の項に、「すべての段階にわたる学校制度の発展を積極的に追求し、適当な奨学金制度を設立し及び教育職員の物質的条件を不断に改善すること。」と定めております。この条項は留保されていませんから日本政府は拘束をされていることに。なるわけで、この奨学金制度というのは条約の英文ではフェローシップというふうにされております。これにつきまして実は外務省の国連局当局説明をいただきましたところ、これは給費制を中心にする奨学金のことを言う、このことが挿入されたのは、国連で条約をもっと具体的に規定する必要があるという論議があって、ルーマニアから提案されたことでこの項ができたというふうに伺いましたが、学生が学業を続けることを援助するために給付される費用として奨学金考えられていることは、もう今では国際的には当然視されているということではないでしょうか。明らかに給費の概念でこれは書かれているというふうに思いますけれども文部省のこの点についての御見解を伺います。
  213. 宮地貫一

    宮地政府委員 先ほど答弁がややずれておりましたことをまずおわび申し上げます。  それで、お尋ねのこの十三条第二項(c)の規定でございますけれども、締約国に適当な奨学金制度を設立することを求めているわけでございまして、私どもが理解をしている点で申し上げますと、論外国では給費制奨学金が多いためにフェローシップという言葉も給費という意味で使われることが多いかと思いますが、この国際人権規約においては特に給費ということで限定をしているものとは私ども理解をいたしておりませんので、したがって、貸与制の奨学金を含む広い意味であるというぐあいに解しているものでございます。もちろん日本育英会奨学金というものは制度発足以来貸与制ということで対応をしてきておりまして、これらの点については、私どもはただいま御説明を申し上げましたような範囲内でこの条文に対応をできるものというぐあいに理解をしております。
  214. 藤木洋子

    ○藤木委員 しかし、フェローシップとローンは同義話ではないというふうに思うわけです。アメリカではローンはスチューデンドローンというふうに別制度として位置づけられておりまして、フェローシップとは全く別な扱いになっております。人権規約に言う「適当な奨学金制度」というのは明らかに給付制度を指している、そのように考えられます。法的義務を負っている国際人権規約に拘束をされなければならない日本が、明らかに違反をしているのではないか。今回の改正案は、それこそその違反の産物ではないか、このように私は思うわけです。  今この法案につきましては審議が行われている真っ最中でありまして、私、この質問にきょう入ります前に憲法についてわざわざお読みをいただいて、私自身も国会議員の一員としてその自覚を改めて持ちましたのは、今審議をされているにもかかわらず、現在在学採用予定者八万二千人、こういった方々を緊急に救済をするための現行法に基づく措置のやり方というのが、既にこれから成立をするであろう新法をも導入して進められようとしていることは、やはりこの法に照らして誤りではないか。そのことを私も含めてこの委員会確認をしたかった、そういうことがあったから、冒頭にそのことを申し上げたわけでございます。  どうか、今後、現行に定められているとおり可及的速やかにすべての学生生徒諸君の皆さん方をお救いくださいますように、誠意を持って当たられますように重ねてお願いをさせていただいて、時間が経過をしたようですので、質問を終わらせていただきます。
  215. 愛野興一郎

    ○愛野委員長 次回は、来る七月四日午前十時理事会、午前十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時四十五分散会