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1984-06-20 第101回国会 衆議院 文教委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年六月二十日(水曜日)     午後一時四分開議 出席委員   委員長 愛野興一郎君    理事 石橋 一弥君 理事 大塚 雄司君    理事 白川 勝彦君 理事 船田  元君    理事 佐藤  誼君 理事 馬場  昇君    理事 有島 重武君 理事 中野 寛成君       青木 正久君    榎本 和平君       北川 正恭君    河野 洋平君       坂田 道太君    長野 祐也君       二階 俊博君    葉梨 信行君       町村 信孝君    渡辺 栄一君       木島喜兵衛君    佐藤 徳雄君       中西 績介君    池田 克也君       伏屋 修治君    滝沢 幸助君       藤木 洋子君    山原健二郎君       江田 五月君  出席国務大臣         文 部 大 臣 森  喜朗君  出席政府委員         文部政務次官  中村  靖君         文部大臣官房長 西崎 清久君         文部省大学局長 宮地 貫一君  委員外出席者        参  考  人        (日本育英会理事        長)       三角 哲生君        文教委員会調査        室長       中嶋 米夫君     ————————————— 委員の異動 六月二十日  辞任        補欠選任   稻葉  修君    長野 祐也君 同日  辞任        補欠選任   長野 祐也君    稻葉  修君     ————————————— 六月十五日  学校図書館法の一部改正に関する請願山花貞  夫君紹介)(第六五一九号)  養護教諭配置等に関する請願小川仁一君紹  介)(第六五七二号)  同(佐藤観樹紹介)(第六六四二号) 同月十九日  教育職員免許法等の一部を改正する法律案反  対等に関する請願浦井洋紹介)(第六七一  四号)  同(小沢和秋紹介)(第六七一五号)  同(経塚幸夫君紹介)(第六七一六号)  同外四件(佐藤誼紹介)(第六七一七号)  同(瀬崎博義紹介)(第六七一八号)  同(辻第一君紹介)(第六七一九号)  同(中林佳子紹介)(第六七二〇号)  同(野間友一紹介)(第六七二一号)  同外十件(馬場昇紹介)(第六七二二号)  同(不破哲三紹介)(第六七二三号)  同(藤木洋子紹介)(第六七二四号)  同(山原健二郎紹介)(第六七二五号)  同(山原健二郎紹介)(第六八一五号)  教育職員免許法改正反対教育条件改善に関  する請願藤木洋子紹介)(第六七二六号)  四十人学級の早期実現マンモス校解消等に  関する請願蓑輪幸代紹介)(第六七二七号  )  養護教諭配置等に関する請願外一件(阿部未  喜男君紹介)(第六七二八号)  同(田中克彦紹介)(第六七二九号) は本委員会に付託された。 六月十六日  育英奨学金制度改悪反対等に関する請願(第一  三四五号)は「湯山勇紹介」を「山口鶴男君  外一名紹介」に訂正された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  日本育英会法案内閣提出第二五号)      ————◇—————
  2. 愛野興一郎

    愛野委員長 これより会議を開きます。  議事に先立ち、謹んで御報告申し上げます。  長らく本委員会委員として御活躍になりました湯山勇君が、去る十六日、逝去されました。まことに哀悼痛惜の念にたえません。  ここに、委員各位とともに湯山勇君の御冥福をお祈りし、黙祷をささげたいと存じます。  御起立を願います。——黙祷。     〔総員起立黙祷
  3. 愛野興一郎

    愛野委員長 黙祷を終わります。御着席下さい。      ————◇—————
  4. 愛野興一郎

    愛野委員長 内閣提出日本育英会法案を議題といたします。この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本案審査のため、本日、参考人として日本育英会理事長三角哲生君の御出席を願い、御意見を聴取することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 愛野興一郎

    愛野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  6. 愛野興一郎

    愛野委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐藤徳雄君。
  7. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 私は、まず冒頭に、ただいま我が党の湯山勇議員逝去に伴いまして、委員会黙祷をささげていただきましたことに対し、そしてまた文教委員長の御配慮に対しまして、心から御礼と感謝を申し上げたいと存じます。ありがとうございました。  さて、私は、幾つかの点について質問をしたいと思いますが、まず最初に、午前中理事会が長時間にわたって開かれましたけれども現行法適用をめぐってなかなか結論が出なかったようであります。したがいまして、私は、それに関連をし、冒頭この問題について触れて、お答えをいただきたいと思っているわけであります。  まず最初に、日本育英会法第十六条について御説明をいただきます。
  8. 宮地貫一

    宮地政府委員 育英会法の第十六条についてのお尋ねでございますが、第十六条は「代理人選任」の規定でございます。「会長及び理事長は、理事又は育英会職員のうちから、育英会の従たる事務所の業務に関し一切の裁判上又は裁判外行為をする権限を有する代理人選任することができる。」旨の規定でございます。  これは……(佐藤(徳)委員「それは違うよ」と呼ぶ)御質問法案の第十六条の規定ですか。(佐藤(徳)委員現行法第十六条だよ」と呼ぶ)  現行法第十六条の規定は、「育英会ハ左業務行フ」といたしまして、「学資貸与」「学資貸与受クル学徒ノ輔導」「修学上必要ナル施設設置及経営」「前各号ノ業務附帯スル業務」を規定しているわけでございます。  なお、第二項で「主務大臣ノ認可ヲ受ケ前項ニ掲グル業務外其目的達成必要ナル業務行フコトヲ得」という規定があるわけでございます。  これは、学資貸与あるいは貸与を受けた学生の補導ということで、育英会の本来の業務規定したものでございます。
  9. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 改正法は現在審議中でありますから、十分ひとつ心してお答えをいただきたいと思います。  次に、同法第十八条を御説明ください。
  10. 宮地貫一

    宮地政府委員 現行育英会法第十八条は会計年度に関する規定でございまして、「育英会事業年度ハ毎年四月ヨリ翌年三月迄」とする規定でございまして、事業年度を定めた規定でございます。
  11. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 それではその次に、同法第十一条第一項、第二項を御説明ください。
  12. 宮地貫一

    宮地政府委員 育英会法第十一条第一項は、「会長ハ日本育英会代表シ其業務ヲ総理」するという規定でございます。  同じく第二項は、「理事長ハ定款ノ定ムル所ニ依リ日本育英会代表シ会長輔佐シテ日本育英会業務ヲ掌理」するという規定でございまして、育英会役員について規定をしたものでございます。
  13. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 それでは引き続きまして、同法第十五条を説明願います。
  14. 宮地貫一

    宮地政府委員 第十五条の規定でございますが、「日本育英会役員其ノ他ノ職員ハ罰則適用ニ付テハ之ヲ法令ニ依リ公務ニ従事スル職員ト看做ス規定でございまして、これは役員ないしその他の職員が公務員たる性質を持っているということを規定した条文でございます。
  15. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 今幾つかの条文について説明をいただきましたが、明確に、現在の日本育英会法説明があったとおり規定をされているわけであります。  そのことに関連いたしましては後ほどさらにお尋ねをいたしますが、育英奨学金は、定められた制限範囲内でそれに該当する生徒及び学生貸与を求める権利を有すると思いますけれども、そう解してよろしゅうございますか。
  16. 宮地貫一

    宮地政府委員 お尋ねの点は、基本的にはそのように理解をいたします。
  17. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 それでは、特別貸与奨学生選考及び採用に関する規程が第八条にあるはずでありますが、第八条を御説明ください。
  18. 宮地貫一

    宮地政府委員 お尋ねの点は、第八条と申しますのは「特別貸与奨学生選考および採用に関する規程」についてのお尋ねであろうかと思います。  その第八条でございますが、日本育英会が「高等学校特別貸与奨学生または高等専門学校特別貸与奨学生採用候補者高等学校または高等専門学校に、大学特別奨学生採用候補者大学に、教育特別奨学生採用候補者教員養成学部にそれぞれの候補者となった年の翌年の四月三十日までに入学したときは、これをそれぞれの特別貸与奨学生採用するものとする。」ということが定められているわけでございます。そしてこの場合、以下後段の規定は、教育特別奨学生についての規定があるわけでございます。  第八条は、基本的には以上のような規定を受けまして、採用決定についての手続規定をいたしておるものでございます。
  19. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 第十六条、第十八条並びに第十一条第一項、第二項、そして第十五条、そしてただいまの規程第八条の説明を受けたわけでありますが、これはいずれも現行法であります。したがって、改正法案につきましては現在審議中であることは先ほど私が申し上げたとおりでありますけれども日本育英会法現行法で運営をされていると解釈してよろしゅうございますか。
  20. 宮地貫一

    宮地政府委員 現在、国会法案審議お願いしているわけでございまして、この法案成立までは現行法が生きていることは御指摘のとおりであろうかと思います。  ただ、この育英会法に基づきます育英奨学制度改正につきましては、今国会に五十九年度予算として改正を盛り込みました内容予算を提案をいたしたわけでございまして、現在、予算成立を見ているわけでございます。その予算に伴います制度改正について育英会法案として御審議お願いしているのが現時点状況であるわけでございます。したがって、私どもとしては、五十九年度予算に必要な制度改正を現在国会で御審議お願いをしているという段階にあるわけでございまして、したがって、私どもとしては、現在の育英会法実施につきましては、この法案帰趨を待ちまして考えなければならないものだ、かように理解をいたしております。
  21. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 私の質問に対して、そのまま答えてもらえばよろしいのです。聞かないことまで答弁を求めません。  ですから、改正法成立するまでは現行法で運営されているということだけは今のお答えで明確になりました。  それでは、予算法律はそれぞれ独立しているものですか、そうでありませんか、どう理解をしてよろしいのか、お答えをいただきます。
  22. 宮地貫一

    宮地政府委員 予算につきましては、それぞれ政府の施策を盛り込みました予算が既に議決をされているわけでございまして、その予算執行に必要な法律制度改正をそれぞれ国会には御審議お願いしているわけでございます。したがいまして、もちろん新しい制度執行につきましては、その法律成立を待ちましてから執行されるべきものと考えておりますが、実態的な点で申し上げれば、もちろん予算に伴う制度改正ということで、それはいわば事柄の表裏と申しますか、表裏一体をなすべきものと私ども理解をしているわけでございまして、もちろん執行につきましては、法律改正を要するものについては法律改正を経ましてから執行に移されるべきものだ、かように理解をいたしております。
  23. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 そういたしますと、かなり明確になったわけでありますが、予算予算法律法律、それぞれ独立しているものである、こういう御説明であったと理解をいたします。  そこで、私はちょっと委員長お尋ねいたしますが、五月の十八日に本委員会におきまして、理事会審議経過を踏まえて、この委員会委員長より提起がありました。これは、御承知のとおり救済措置の問題であります。  それから今日まで経過をしてきているわけでありますが、この経過措置についてどのように把握をされておりますのか、委員長の責任で提案されたわけでありますから、委員長からひとつお答えをいただきます。
  24. 愛野興一郎

    愛野委員長 ただいまの質問お答えをいたします。  理事会決定に基づき、文部省に対しまして、できるだけひとつ現行状況の中で学生の諸君に措置をしていただきたいという申し入れをいたしましたが、その結果が本日、理事会報告をされたわけであります。  委員長としては、その要請に基づいて文部省文部省としてできる精いっぱいのことをやったと思っておりますが、なお理事会の結果に基づきまして文部省と折衝をいたしました結果、これ以上は文部省としても限界である、こういうことであったわけであります。  ありのままを委員長としては御報告を申し上げておきます。
  25. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 精いっぱいやったかどうかの評価は私どもがするのでありまして、勝手な評価をしてもらっては困るのであります。  それで、先ほど説明をいただきました規程第八条に基づいて、今委員長の見解が表明されたわけでありますが、予約制に対してはどういう措置をとられましたか、文部省お尋ねします。
  26. 宮地貫一

    宮地政府委員 既に理事会に御報告申し上げたわけでございますけれども、先般、それぞれ衆議院及び参議院の文教委員会委員長から、何らかの救済措置を講ずることについて要望をいただきまして、それを受けまして、五十九年度入学者にかかわる奨学生採用事務について検討したわけでございますけれども、その結果、貸与を期待している学生事態というようなものを考慮いたしまして、次のような救済措置を講ずることにしたわけでございます。  第一点は、日本育英会による無利子貸与予約採用候補者、三万六千人でございますが、これについては進学届提出の後、奨学生として採用決定を行う。この場合、とりあえず留保条件を付しまして、一般貸与奨学生として採用し、五十九年四月分からの一般貸与貸与月額を交付し、改正法成立後、改正法による無利子貸与奨学生に切りかえて、四月に遡及して、改正法による無利子貸与貸与月額との差額を追加して交付するという、いわばこれは緊急避難的な措置として、私どもとしては現状の事態を受けまして、いわば特別貸与という予約者で特定をされているものについてそういう措置を講ずることにいたしたわけでございます。もちろんこれは、先ほど申しましたように、育英会法審議お願いをいたしております国会文教委員長からの御要望を受けまして、政府としてそういう措置に踏み切ったということでございます。  なお、改正法による無利子貸与在学採用者、八万二千人になるわけでございますが、これは改正法成立後速やかに奨学生募集採用を行うことができますように、募集要項願書等印刷等の諸準備は進めるということで対応をいたしているところでございます。
  27. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 緊急避難かどうかについては、これは問題があるだろうと私は思うのです。  しかし、冒頭からお答えをいただきましたとおり、現行法が明確に生きておりまして、そしてさらに現行法に違反するような行為をすれば、第十五条で説明がありましたとおり、実は罰則規定に抵触をするわけであります。したがいまして、今の説明では納得できませんけれども、つまり、経過措置としてやられましたことは規程第八条に基づくものである、こういう理解をしてよろしいですか。
  28. 宮地貫一

    宮地政府委員 規程の第八条は特別奨学生採用決定手続を書いてあるわけでございまして、事柄としては、先ほど申しましたように特別貸与としての予約採用をいたしておるわけでございますけれども現行法では一般貸与特別貸与規定がございまして、今回の改正法ではそれが無利子貸与ということで一本化されているわけでございます。手続的な問題があるものですから、私どもとしては、一般貸与額について奨学生として貸与金を出すというようなことをいたしておるわけでございまして、その点は八条そのものと申すことにはならないかと思いますけれども、いわばそれに準じた緊急避難措置としてそういう措置をとったものというぐあいに理解をしております。
  29. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 それはおかしいじゃありませんか。現行法が生きておって現行法適用しないという、そんなばかなことはできないはずなんであります。  そうだとすれば、一体どの法律に基づいて緊急避難体制をとったのですか。お答えください。
  30. 宮地貫一

    宮地政府委員 いろいろ御要望をいただきまして、私どもも事務的に検討をいたしたわけでございます。  救済措置を講ずる問題につきまして、先ほども御説明しましたように改正法が現在国会で御審議をいただいているわけでございまして、改正法に吸収できる範囲内で行うということが前提になるわけでございますが、現行法採用するとすれば、特別貸与については特別貸与返還免除制度というものがあるわけでございます。ところが、これを改正法に吸収することは、現在の規定の仕組みからいたしますとそのことは困難でありまして、特別貸与返還免除制度改正法の中に吸収するという事柄自体は、規定を変えておりますのでできないわけでございます。したがいまして、一般貸与採用を行うということにいたしまして、改正法成立すれば貸与月額差額を追加して支給するというような、いわばそういう緊急避難的な措置対応をするということにいたしたわけでございます。
  31. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 私は端的に答えていただきたいと思いますが、いろいろな説明ではなくて、現行法が生きている限り——先ほどから生きているとおっしゃっているのですから、生きている限り、少なくとも緊急避難であろうがなかろうが、この実施に踏み切った、それは明らかに法律に基づいて執行しなければいけないはずなんであります。だから、何法の第何条のどこに基づいて緊急避難体制をとられたのですか。これは簡単に答えてください。
  32. 宮地貫一

    宮地政府委員 予約奨学生につきましては、すでに予約募集をいたします際にもその点を触れておったわけでございますけれども、私どもとしては、現行法はもちろん存在をしているわけでございます。  しかしながら、国会で御審議を願っている新たな制度改正については、やはり法律改正を予定しております予算中身予算審議お願いしているわけでございまして、五十九年度に入りました時点でその点は問題点としては出てきておったわけでございまして、先般の理事会でも御議論がありましたように、それらの点について何らかの救済措置を講じるという国会のいわば公的な御意思を受けまして、政府として対応する措置を講じたわけでございます。それはいわば一つ緊急措置でございまして、現行規定に準じた措置を講じたものでございます。
  33. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 現行法があるのに現行法に準ずるという答弁そのものが私は納得できない。だから、簡単に答えてください、第何条第何項に基づいて行われたのか。(「委員長、きちんと答弁させなければ」と呼ぶ者あり)
  34. 愛野興一郎

    愛野委員長 答弁は明確にお願いいたします。
  35. 宮地貫一

    宮地政府委員 その点は先ほど来御答弁申し上げているとおりでございまして、私どもとしては、本来ならば実施が困難であることでございましたけれども、しかし、やはり国会の御要請を受けて政府として対応できる最大限のところを検討いたして、特別貸与予約採用生について事実上一般貸与相当額のものを交付するという手続をとらしていただいたわけでございます。
  36. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 それは、私の質問に対して答えていません。第何条第何項に基づいて実施したのか、それを聞いているのです。その答えができない限り審議できませんよ。
  37. 宮地貫一

    宮地政府委員 現行法規定で申し上げれば、現行法第十六条ノ二に、「学資貸与ハ一般貸与及特別貸与ノ二種トス」という規定がございますので、その規定に基づいて実施をしているわけでございますけれども事柄として制度切りかえの時期でございまして、予算成立をし、かつ制度改正についてはなお国会において御審議中というような異例の事態を受けまして、その点をどのような救済措置として対応するかということを検討いたしまして、私どもとしては、先ほど来申し上げておりますようないわば現行法規定として申せば十六条ノ二でございますけれども、実際の運用としては、事柄としては改正法に吸収できる範囲内での施行というような考え方で、そこについてはこういう緊急事態対応する一つ措置を講じて、今回の予約採用について一般貸与相当額貸与することに踏み切ったものでございます。
  38. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 文部省考え方を正当化したら困るのですよ。——明確になりました。第十六条ノ二、現行法です。  引き続いてお尋ねいたします。そういたしますと、在学採用を希望している者に対する今日の措置は、御承知のように停止もしくは凍結をしているわけですね。おかしいじゃありませんか。既に予約生は十六条ノ二に基づいて、緊急避難であろうがなかろうが、とにかく事務的手続をとらしている。在学生にはこれを適用しない。こういうことは明らかに矛盾じゃありませんか。  同時に、私は、停止もしくは凍結をしている在学採用希望者に対する文部省法的根拠をひとつ明らかにしていただきたいと思います。何に基づいて停止もしくは凍結しているのですか、どの法律に基づいて。明確にお答えください。
  39. 宮地貫一

    宮地政府委員 無利子貸与在学採用につきまして救済措置を講ずることとしなかった点でございますけれども先ほど予約採用の際に申しましたように、救済措置を講ずる場合も、制度改正を盛り込んでおります予算が今国会成立し、かつそのための改正法案が現に審議中であるわけでございますので、現行法に抵触せず、かつ改正法成立後、改正法に吸収できる範囲内でしか行うことができないわけでございます。  そこで問題は、現行法一般貸与特別貸与というものと改正法の無利子貸与とでは採用基準が異なるわけでございまして、在学採用について現行法により採用を行った場合には、改正法成立後、改正法による無利子貸与基準に該当しない者が出てくることにもなるわけでございまして、かつ新たに改正法による無利子貸与基準に該当することとなる者の採用の機会を閉ざすことになるというようなことでも、改正法の適正な執行という観点から問題が出てくるわけでございます。  そういうことで、採用候補者として既に個別の対象が決定をされております予約採用者の場合とは異なりまして、在学採用について現行法によって採用した場合に、改正法成立後に改正法による無利子貸与に吸収することが困難であるというような事情があるわけでございますので、この点は私どもとしては、今国会でのこの法案帰趨が決められなければ政府側としては対応することができないというぐあいに考えているものでございます。
  40. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 改正法案は現在審議中なんであります。したがいまして、先ほどお答えいただきましたように、現在は現行法だけが生きている、現行法で運用している、こういうことはお答えの中で明確になっているわけですよ。改正後であればまた話は別です。しかし、現在審議中である。答弁の端々に改正後の話が随分述べられましたけれども、そうだとすれば、まさに審議権を拘束するものだと解釈せざるを得ません。  私は端的に聞いているわけであります。つまり、停止もしくは凍結をしている法律的根拠は何ですか、どの法律の第何条の第何項にあるのか、これを説明してくださいと言っているわけであります。余計なお答えは要りませんから、簡単に答えてください。
  41. 宮地貫一

    宮地政府委員 その点は先ほども申し上げた点でございますけれども育英会制度について制度改正国会に御審議お願いしているわけでございます。かつ、それの予算中身としては、既に予算成立をしているという状況にあるわけでございます。私どもといたしましては、現時点、もちろん現行法存在はしているわけでございますけれども国会で御審議をいただいている改正法に基づく内容現行法に基づく内容と、在学採用については採用基準が異なるという点で御説明を申し上げているわけでございまして、予約採用についてはいろいろな点で事務的な問題点は検討いたしまして、予約として決定をされている者に対して一般貸与相当額を出すというようなことで対応したわけでございます。  ですから、在学採用について救済措置を講ずることができないというのは、この点は改正法案の御審議お願いしている現時点の段階では、政府としては、現行法対応することについては先ほど来御説明している点で困難であるというぐあいに申し上げているわけです。
  42. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 私は、文部省の願望を聞いているのじゃないのです。停止もしくは凍結をしている法律的根拠は何か、どこにあるかと聞いているんです。簡単に答えてください。何遍言わせるんですか、同じことを。
  43. 宮地貫一

    宮地政府委員 その点は、先ほど来申し上げておりますように、制度改正改正法案が現在国会審議中であるという事態でございまして、その法案についての帰趨決定しなければそれらの点について、改正法内容に基づく予算内容でございますので、それを現行法執行した場合に改正法に吸収されない部分が出てくるというようなことでは、これはむしろ逆に国会の御審議を尊重する立場からその点は執行を差し控えるというのが、私どもとしては政府としてとるべき態度である、かように理解をしております。
  44. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 国会を尊重していると言いますけれども、尊重してないのは皆さんなんですよ。そうじゃありませんか。局長、あなたの答弁に矛盾があることを私は幾つでも指摘できるんです。だから簡単に答えてくださいと言っているんですよ。  予算成立をした、しかし、それはこの現在審議されている改正法が通らない限り執行できない、こうおっしゃったでしょう、先ほど。だから予算法律は別じゃありませんか。そうだとすれば、審議中は現行法が生きているというのは建前じゃなくて当たり前ですよ。だから、ここで停止もしくは凍結をしている——しているわけでしょう。停止もしくは凍結していることによって多くの学生が大変な状況に実は陥れられているんですよ。救済するのは当たり前じゃありませんか。だから、文部省がそういうふうに言い張るなら、停止もしくは凍結しているその法律的根拠を明らかにしてください、こう言っているのです。この答えが出ない限り審議できませんよ。
  45. 宮地貫一

    宮地政府委員 その点は先ほどお答えしているとおりでございまして、私どもとしては、改正法内容についての予算成立をし、かつ、その法案の御審議お願いしているわけでございまして、在学採用については採用基準が、新しい無利子貸与制度と現在の一般貸与特別貸与の二本立ての現行法との間では採用基準が異なるわけでございます。したがって、予算内容としては制度改正お願いしました内容お願いをしているわけでございますので、それを現行制度で動かすということになれば、改正法成立後、その点では基準が異なるものが出てくるということでは吸収できないということになりますと、その点が問題として出てまいりますので、私どもとしては、まことに残念でございますけれども現時点ではそういう対応をするしかないということでございます。
  46. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 納得できない。納得できません。そんな答弁じゃ納得できない。(発言する者あり)
  47. 愛野興一郎

    愛野委員長 暫時休憩しますが、その場でお待ちください。     午後一時五十一分休憩      ————◇—————     午後二時五十二分開議
  48. 愛野興一郎

    愛野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  森文部大臣。
  49. 森喜朗

    ○森国務大臣 昭和五十九年度にかかわる在学生の新規募集現行法に基づき実施することについて、早急に検討を行うことといたしたい。
  50. 愛野興一郎

  51. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 ただいまの大臣の見解につきましては、結論が出たわけでありませんから、その検討を十分見守りたいと思います。したがいまして、次期委員会で恐らくはその答えが出るであろうと思いますけれども中身によっては再度この質問に関連をして発言をいたしますから、留保させていただきたい、こう思います。よろしゅうございますか。
  52. 愛野興一郎

    愛野委員長 はい。——質疑続行。
  53. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 それでは質問を続けます。  我が国における育英奨学の制度は、御承知のとおり明治以後においては国家の手に成るものとして、明治三年に大学規則が制定されたことから始まったわけであります。そしてまた、太政官から各藩に命じまして、特に各藩の負担において一カ月十両以上の学資を支給したと文献に書いてあるわけでありますが、しかし、それが翌明治四年、廃藩置県に伴い廃止をされているわけであります。そしてまた、明治十年ごろ、旧藩士の子弟教育のための旧藩主出資のものを初めとし、学校、個人、その他民間の育英事業がようやく盛んとなり、多くの青少年に学資を給与し、あるいは貸与して、高等教育を受けさせた歴史が残っているわけであります。そして昭和十七年三月、国民教育振興議員連盟の議員でありました、我が党の大先輩であります、今は故人となられました三宅正一先生の手のもとで、育英制度の具体案が約十カ月の日を費やしましてまとめ上げられたわけであります。そして同年二月十二日、建議案が衆議院本会議に上程をされ、連盟会長であり、初代の会長になられた永井柳太郎氏が提案趣旨の説明に立って、堂々と大演説を行い、そして満場一致をもってこれを可決した経緯があるわけであります。このことは、日本育英会二十年記念誌に掲載された中身であります。  したがいまして、この永井演説を私は読みましたが、この演説で特に重要な点として、記念誌は次のように述べています。すなわち、「明治新政以来のわが国教育の基本的指導理念の一つであった教育の機会均等の精神を強調するとともに、これを政治の正義の理念と結びつけ、国家的育英制度の基底として強くこれを主張していることであろう」、こう述べているわけであります。そして、御承知のように昭和十八年の十月十八日、財団法人大日本育英会が発足をして、教育は国家百年の大計として歩みを始めたわけであります。  こういう歴史的経緯に立ちまして、私は次のことをお尋ねしたいわけであります。  その第一は、日本育英会法と教育の機会均等との関係、さらに憲法と教育基本法との関係について、大臣の見解をお伺いをいたします。
  54. 森喜朗

    ○森国務大臣 憲法第二十六条におきまして、「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。」このように教育の機会均等を規定をいたしております。  今、佐藤さんの御質問の中にもございましたように、教育基本法は第三条第一項におきまして、ただいま申し上げました憲法第二十六条の趣旨を踏まえまして、「すべて国民は、ひとしく、その能力に応ずる教育を受ける機会を与えられなければならないものであって、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない。」と定めて、教育の機会均等の原則を明示をいたしております。また、第二項におきましては、「国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由によって修学困難な者に対して、奨学の方法を講じなければならない。」このように規定をいたしております。先生も御承知のとおりだと思います。  日本育英会法は、憲法第二十六条及び教育基本法第三条第二項の、教育の機会均等の趣旨を実現するものの一つでありまして、日本育英会におきましては、戦後の著しい高等教育等の規模の拡大に対応いたしまして、教育の機会均等の精神を踏まえまして、従来から事業の拡充を図っているわけでありますが、今回の改正におきましては、有利子貸与制度の創設によって事業の量的な拡充を図り、教育の機会均等の確保に寄与いたしたいと考えているところでありまして、現行育英会法第一条「国家有用ノ人材ヲ育成スルコトヲ目的トス」というところを、新たに今御審議をいただいております法律案におきましては、「国家及び社会に有為な人材の育成に資するとともに、教育の機会均等に寄与することを目的とする。」新たにこのように改めさせていただいたわけでありまして、今佐藤さんから御指摘いただきました、私も今ここに持っておりますが、永井柳太郎大先輩の当時の提案理由説明等を十分私ども踏まえまして、教育の機会均等と同時に、新たにそのことを法律の中にしっかりと明記をしていきたい、こういうのがこのたび法律を改めた趣旨であり、また憲法と教育基本法、この育英会法との関係について、このような考え方をいたしておるところであります。
  55. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 教育基本法第三条第二項は、今大臣がお答えになられたとおりでありますけれども、この条項には「国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由によって修学困難な者に対して、奨学の方法を講じなければならない。」とうたっているわけであります。同時に、改正案の目的の項には、とりわけ学資貸与の対象者として「優れた学生及び生徒であって経済的理由により修学に困難があるものに対し、」云々と限定しているわけでありますが、前段私が述べました教育基本法第三条第二項にある表現とは若干違う部分があるわけであります。その点について説明お願いいたします。
  56. 宮地貫一

    宮地政府委員 お尋ねのように、教育基本法第三条第二項の規定は、「国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由によって修学困難な者に対して、奨学の方法を講じなければならない。」と定められているわけでございます。  そこで問題は、日本育英会でございますけれども、教育の機会均等に加えまして、人材育成を目的として、対象をすぐれたものとしておるわけでございますけれども、これは基本的には、国の予算の制約の中で学資貸与事業を実施しようとします場合に、学業成績がよりすぐれたものを優先的に採用するということは、これは予算の制約上やむを得ない点ではないかというぐあいに考えておるわけでございます。  今回の改正では、有利子貸与制度の創設を図ることによりまして事業の量的拡充を図るということを考えておるわけでございまして、そういう点からは、教育の機会均等の一層の確保に寄与するということを考えておるわけでございます。したがって、その点は、基本的には教育基本法の第三条第二項の趣旨に即しているというぐあいに理解をいたしておりますけれども、御指摘のように、表現上は「優れた学生生徒」というような規定をいたしておるのは、ただいま御説明を申し上げたような趣旨によるわけでございます。
  57. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 文部大臣は、本法案提案理由の中で次のことを述べているのであります。すなわち、「文部省に置かれた育英奨学事業に関する調査研究会の報告でも指摘されたところであります。」と述べています。  私は、本会議におきましてこの点に触れて質問をいたしました。すなわち、調査研究会の報告の中では次のように述べています。「育英奨学事業は教育の機会均等を確保するための基本的な教育施策であり、国の施策として育英奨学事業を実施しなければならないものである以上、先進諸外国の公的育英奨学事業が給与制を基本としていることにも留意し、現行日本育英会の無利子貸与事業を国による育英奨学事業の根幹として存続させる必要がある。」こう報告をしています。これに触れまして、文部大臣の答弁は、そのことを認めて、「無利子貸与制度を根幹として存続させ、改善を行いますとともに、その量的拡充を図るために、」云々と答弁をいたしました。しかし、本法案の中には「根幹」という一番大切な表現が欠落しているのではないかと思います。そして、改正理由の中には「無利子貸与制度を整備しことか、あるいは「学資貸与制度を整備改善するほか、」など、いわゆる整備とか整備改善という表現に置きかえているのではないかと思うわけでありますが、そのように理解をしてよろしいのかどうか、お答えをいただきます。
  58. 宮地貫一

    宮地政府委員 御指摘のように、「無利子貸与制度を整備しこという表現で申しておるわけでございますが、これは現行の無利子貸与事業におきまして、貸与月額の改善を図るために一般貸与特別貸与とを一本化している点を指しておるわけでございます。  そしてまた、「学資貸与制度を整備改善する」というような表現で申しておるわけでございますけれども、これは一般貸与特別貸与の一本化に伴いまして特別貸与返還免除制度は廃止するとともに、他方、量的な拡充を図るという観点で、新たに低利の有利子貸与制度を創設していることなどが含まれているわけでございます。  基本的には、最近の高等教育等の普及状況を踏まえまして、社会経済情勢の変化に対応して、育英会学資貸与事業の一層の充実を図るということは基本的に必要な施策だと考えておるわけでございますが、他面、内容、方法等についても抜本的な見直しを行うことが必要でありまして、今回の改正法案は、このような要請にこたえまして、現行の無利子貸与制度の改善も図り、また量的拡充を図るために財政投融資資金を導入して低利の有利子貸与制度を創設するということなど、制度全般にわたる整備改善を行っているわけでございまして、一応表現で申しております「整備」なりあるいは「整備改善」ということは、ただいま申し上げたような内容を含んでいるというぐあいに御理解を賜ればと思います。
  59. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 文部大臣の本会議における提案理由の説明の中にも、また本会議における私の質問に対する答弁の中でも、総理、文部、大蔵の各大臣とも「量的拡充を図ってできるだけ多くの学生に」云々と、同じ表現を使って答弁をしているわけであります。  それでは、具体的にどのように量的拡充が図られるのか、明らかにしていただきたいと思います。
  60. 宮地貫一

    宮地政府委員 御指摘の量的拡充の具体策についてのお尋ねでございますけれども、御案内のとおり、日本育英会の育英奨学事業は、従来は一般会計からの政府貸付金と卒業奨学生の返還金をもって事業を行ってきたわけでございます。他方、高等教育の機会均等を確保するためには、学生生活費の上昇あるいは授業料負担等に対応いたしまして、育英奨学事業の量的拡充が必要であるわけでございますが、ただいまの国の財政事情を勘案いたしますと、一般会計の政府貸付金を資金とするだけでは限度がありますので、財政投融資資金を導入いたしまして、低利の有利子貸与制度を新たに創設することにして、今回、育英会法案国会提出しているわけでございます。  それで、具体的な量的拡充の内容でございますが、有利子貸与事業は、当面、大学、短期大学学生を対象としまして、初年度の昭和五十九年度においては、貸与人員二万人、事業費六十五億を予定しておるわけでございます。  この結果、無利子貸与事業、有利子貸与事業全体を合わせますと、五十九年度においては貸与人員について一万一千人の増、事業費については約六十七億円の増でございまして、学年進行完成後の昭和六十四年度について見ますと、貸与人員について約四万二千人の増、事業費について約三百四十億の増が見込まれるというような内容になっているわけでございまして、私どもとしては、現状の財政状況を踏まえまして、かつ育英奨学事業の量的拡充ということを具体的に実現していくためには、ただいま御提案申し上げているような内容対応をしてまいりたい、かように考えております。
  61. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 それでは、具体的にお尋ねをいたします。  五十八年度の新規採用の数は何人ですか。
  62. 宮地貫一

    宮地政府委員 お尋ねの五十八年度の新規採用人員でございますが、高校、大学大学院、高等専門学校、専修学校、合わせて十二万七千七百八十八人という数字になっております。
  63. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 五十九年度の無利子分の予定人員は何名ですか。
  64. 宮地貫一

    宮地政府委員 五十九年度の無利子貸与の予定の人員は十一万八千七百八十八名でございます。
  65. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 そういたしますと、有利子分が二万人、合わせて十三万八千七百八十八人ですね。したがって、プラス・マイナスをいたしますとプラス一万一千人である、こういうお答えに間違いありませんか。
  66. 宮地貫一

    宮地政府委員 そのとおりでございます。
  67. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 私学振興財団を通じて受けた貸与学生の人数は何人でしょうか。
  68. 宮地貫一

    宮地政府委員 お尋ねの、日本私学振興財団を通じて行っております私立大学奨学事業援助によります貸与学生の人数でございますが、五十八年度は、奨学金貸与事業については五十一大学に対し約十九億を融資いたしまして、これにより奨学金を受けた奨学生総数は約四千八百人でございます。
  69. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 四千八百人というのは累計だと思いますけれども、新規の人数は何人でしょうか。
  70. 宮地貫一

    宮地政府委員 新規の学生数のお尋ねでございますが、学生数で千五百五十七名でございます。
  71. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 その財源はすべて政府の財投資金から貸し出されていると思いますけれども、いかがでしょうか。
  72. 宮地貫一

    宮地政府委員 さようでございます。
  73. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 そうしますと、その貸与のシステムはどういうシステムになっておりますか。
  74. 宮地貫一

    宮地政府委員 私立大学奨学事業についてのお尋ねでございますが、大学を設置しております学校法人が当該大学学生を対象として奨学金を貸与する場合、なおほかに入学時の学費負担の軽減を図りますために入学一時金の分割納入事業を行う場合も同様でございますけれども、その資金を国が財投資金を利用しまして、日本私学振興財団を通じて学校法人に対して長期低利で融資をするものでございます。この事業は発足以来順次伸びてきておるわけでございまして、数字は先ほど申し上げたとおりでございます。具体的には、在学中の利子あるいは卒業後の利子につきまして、それぞれ低利の融資をする規定になっておるわけでございます。  なお、先ほど入学一時金分割納入事業については申し上げなかったのですが、現在二十大学に対し約十二億円を融資いたしておりまして、入学一時金の分割納入を認められている学生数は約三百名ということになっております。
  75. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 そういたしますと、国から私学振興財団にお金が行き、そして各学校に行き、そして貸与学生に行く、こういう流れですね。  そういたしますと、現在の財投の利率は七・一%だと思いますけれども、学校に行った場合の年利は幾らになるのですか。
  76. 宮地貫一

    宮地政府委員 私立大学奨学事業の融資の利率についてのお尋ねでございますけれども、融資利率は五・五%でございます。  なお、償還方法は、学生の在学中は据え置き、卒業後十年間の割賦返還ということになっておりまして、利子負担軽減等のための補助といたしましては、学校法人に対しまして、学校法人が奨学金として貸与した金額のうち、在学生にかかわるものについては年利五・五%の利子相当額、卒業生にかかわるものについては、償還開始前期五年間については年利二・五%の利子相当額を負担軽減のために補助をするというような制度になっております。
  77. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 そういたしますと、学校が年利五・五、当然利子補給をしなければなりません。その利子補給の経費はどこから支出されますか。
  78. 宮地貫一

    宮地政府委員 利子負担軽減等のための補助といたしましては、私立大学等経常費補助で実施をいたしております。
  79. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 そういたしますと、新法の予算によりますと、従来までの私学振興財団による貸与事業は育英会に吸収されることに理解をしてよろしいですか。
  80. 宮地貫一

    宮地政府委員 私立大学奨学事業については育英会の方へ吸収されることになるわけでございます。
  81. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 それでは関連してお尋ねいたしますが、政府案による有利子対象人員を二万人といたしましたその根拠は何ですか。
  82. 宮地貫一

    宮地政府委員 有利子貸与の対象人員の二万人の根拠についてのお尋ねでございますけれども、有利子貸与事業につきましては、現在の私立大学奨学事業援助の対象が大学、短期大学であるというようなことなども勘案をいたしまして、当面最も必要性の高いと考えられる大学、短期大学学生を対象とすることにしたわけでございます。  また、貸与人員でございますけれども、創設当初、初年度は五十九年度でございますけれども、二万人でございますが、学年進行完成年度の六十四年度で申せば七万六千八百人になる予定でございます。  そこで、この新規貸与人員でございますが、これは無利子貸与事業の新規貸与人員でございますとか、あるいは財政投融資の資金状況等も勘案をいたしまして、財源その他全体的に、総合的に判断をいたしまして五十九年度二万人といたしたものでございます。
  83. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 そういたしますと、先ほどお答えいただきました私学振興財団を通じて貸与を受けている学生は一千五百五十七名、これが新たに育英会に吸収されるというお答えでありましたから、二万人の中にこの一千五百五十七人が含まれている、こういう理解をしてよろしいでしょうか。
  84. 宮地貫一

    宮地政府委員 その点はそのように御理解をいただいて結構でございます。
  85. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 そういたしますと、現行の数は先ほどお答えいただきましたとおり十二万七千七百八十八人でありましたから、現行と比べますと九千人が減少されている、こういうふうに数字上はなるわけでありますが、間違いありませんか。
  86. 宮地貫一

    宮地政府委員 九千人の減は御指摘のとおりでございます。
  87. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 さらに、有利子分は二万人、先ほどお答えをいただいたとおりでありますけれども、私学振興財団分を吸収するわけでありますから、そうすると理解の仕方として、事実上二万人から一千五百五十七人を差し引かなければならない、こういう計算になるわけでありますが、そういう理解をしてよろしいですか。
  88. 宮地貫一

    宮地政府委員 予算の積算といたしましては、育英会の事業としては二万人を有利子貸与事業の対象として積算をいたしておるわけでございます。その私大奨学事業の御指摘の千五百人というのは、それは事実上の問題でございまして、育英会が新たに有利子貸与事業として実施する人員と。しては二万人として御理解をいただいて結構だと思います。
  89. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 ですから、一千五百五十七名というのは吸収されている、こういうお答えですから、二万人という数字は出しておりますけれども、実際には無利子分が九千人減員になっている。そしてまた、千五百五十七人が吸収されて含まれているとすれば、政府原案のプラス一万一千からは、一万一千という増分については事実上崩れることになるのでありますが、そういうふうに理解してよろしいですか。     〔委員長退席、白川委員長代理着席〕
  90. 宮地貫一

    宮地政府委員 御指摘の点は、事実上の問題と形の問題と二つになるかと思います。  従来、私大奨学事業として実施しておりましたのは、実施主体はそれぞれの学校法人、大学を設置しております学校法人が実施をしておったものでございまして、今回、有利子貸与事業として日本育英会実施いたしますものの人員としては、二万人を積算をしているということでございます。
  91. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 そうしますと、それぞれの置かれている条件が違いますけれども、いわば、今お答えいただきましたように、事実上は一万一千人ではなくて、私が先ほどから申し上げている数字を計算すれば、明らかにその数字が出てくるわけであります。したがって、量的拡充の論理というのは、大臣が答弁の中でお答えをしているわけでありますけれども、若干この論理は崩れていることになるわけであります。私から言わせれば、あくまでもこれは有利子導入のためのこじつけにすぎないのではないか、こんな気がしてなりません。大臣の見解をお尋ねいたします。
  92. 宮地貫一

    宮地政府委員 数字のことは、先ほど来御説明しているとおりでございまして、日本育英会実施いたします奨学事業としての全体の数字で申せば、先ほど来御説明しているとおり、一万一千人の増ということで御説明を申し上げておるわけでございます。  個々の学校法人の実施しております私大奨学事業の人員がその中に事実上含まれているということについて、事実上その分は引かれることになるのではないかという先生のお尋ねのように伺っておるわけでございますけれども、その点をどう理解するかという問題になりますと、これは実態の判断が立とうかと思いますが、日本育英会の奨学事業の全体像で申し上げれば、先ほど来申し上げているような数字の増減ということで御理解を賜りたいと思います。
  93. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 それでは、関連いたしまして次に進めさせていただきます。どうもなかなかわかりにくい答弁なんであります。  改正案は、一般貸与特別貸与を一本化しているわけであります。政府の言う量的拡充に加えまして、貸与内容について具体的にお尋ねをしたいと思いますが、貸与内容についてはどうなっておりますか。
  94. 宮地貫一

    宮地政府委員 貸与内容についてのお尋ねでございますが、育英会の奨学金の貸与月額でございますが、現在、大学の場合が、国公立一般貸与一万八千円、特別貸与は自宅が二万円、特別貸与の自宅外が二万六千円となっております。なお、私立は一般貸与二万七千円、特別貸与、自宅二万九千円、特別貸与の自宅外三万九千円というような内容になっております。これを五十九年度におきましては、現行の無利子貸与については一般貸与特別貸与に吸収する形で、全体の貸与月額の引き上げを行うとともに、それに加えまして、大学の場合二千円の増額を行うこととしております。したがって、貸与月額で申しますと、国公立が自宅二万二千円、自宅外二万八千円。私立、自宅が三万一千円、自宅外四万一千円というような内容になっております。
  95. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 それでは、貸与月数はどうなっていますか。
  96. 宮地貫一

    宮地政府委員 特別貸与については、新規は十二カ月の積算でございます。一般貸与については、九カ月分を積算内容といたしております。
  97. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 それでは、ちょっと具体的にお尋ねをいたします。  貸与総額が現行八十一万円の場合、新法では幾らになりますか。
  98. 宮地貫一

    宮地政府委員 事業費の総額についてのお尋ねかと思いますが、大学の場合、昭和五十八年度においては七百五十七億でございますが、五十九年度は無利子貸与事業、有利子貸与事業、合わせまして八百一億円でございます。設置者別に分けますと、国公立約三百七億、私立四百五十億でございますが、五十九年度においては、国公立約三百九億、私立約四百九十二億というような内容になっております。
  99. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 さらに具体的にお答えいただきたいと思いますけれども一般貸与の場合、国公立は現行貸与総額が八十一万ですね。自宅予約の場合百五万六千円、そして在学の場合は九十九万円、こういう数字が出てくると思いますが、間違いありませんか。
  100. 宮地貫一

    宮地政府委員 五十九年度の新規採用者の貸与年額でお尋ねがあったと思いますが、大学の国公立て、自宅は在学が九十九万、自宅外の在学が百二十六万という数字になっております。
  101. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 そのアップ率は何%ですか。
  102. 宮地貫一

    宮地政府委員 アップ率は、おおよそ一〇%ということになっております。
  103. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 一〇%ではきかないはずであります。後で十分計算をしてお答えください。  それで、返還総額はそのままスライドされますね。だから、返還負担も増大してくるわけなのであります。そうしますと、本会議における大臣答弁とは、事実上数字を出してまいりますと、若干意味合いが違ってくるわけでありますが、どういうふうに理解すればよろしいですか。
  104. 宮地貫一

    宮地政府委員 貸与総額が増額されることに伴いまして返還総額がふえることは事実でございますけれども、しかしながら、その返還総額について、もちろん貸与総額に応じまして返還の年賦額がそれぞれ異なるわけでございますけれども、返還を要する額の増額分については、奨学生が卒業後返還については実際上支障のない程度の範囲内におさまっている額と私ども承知をしております。
  105. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 そうであるかどうかは十分判断をさせていただきます。しかし、私どもの試算によりますと、残念ながらそのようなお答えのとおりにはなっていないようであります。  つまり、確かに単価アップがあります。貸与されているときは単価アップによってお答えのとおり金額は確かに増大するでありましょう。しかし、そういう喜びの反面、卒業をして就職をする、そして返還をするということになりますと、返還総額がかなり増大するということになるのでありますが、それについてどうお考えですか。
  106. 宮地貫一

    宮地政府委員 返還総額の増大が負担増につながるのではないかという御指摘でございますけれども、その点は、先ほど答弁申しましたように、私どもとしては、奨学生が卒業後負担をするに当たりまして、その負担の年賦額についてもそれぞれ所得に見合う返還額になりますように配慮はいたしておるつもりでございまして、その点は従来の額よりも確かに増額になることは御指摘のとおりでございますけれども、それは奨学生としては負担可能な範囲内のものであると私ども理解をしております。
  107. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 ところが、私は今のお答えで満足はできません。例えば予約採用の場合は返還の負担増が五十三万四千円になるはずであります。そうなりますと、アップ率は六六%。在学採用の場合は返還負担増は四十五万円、アップ率は五六%になるわけであります。これじゃ現行法よりもはるかに悪いと言わざるを得ないわけでありますが、どういうお考えですか。
  108. 宮地貫一

    宮地政府委員 お尋ねの返還負担額についてでございますけれども、私ども利子貸与の場合で申しますと、無利子貸与に比べて約二割程度の増になるというぐあいに試算をいたしております。  率の高い返還総額になるのではないかという先生の御指摘は、あるいは特別貸与についての自宅外の総額の場合かと思われますが、資料に基づいて計算した数字でございませんのでちょっと正確には申し上げかねるわけでございますけれども、いずれにいたしましても、全体の貸与総額に応じまして返還の年賦額というものを決めておるわけでございまして、それは最長二十年という形で決められることになっておるわけでございます。卒業後の返還については十分負担に耐えられるような金額ということを私どもとしても勘案いたしまして設定をしているわけでございまして、もちろん在学中の貸与月額を増額することが必要でございますけれども、御指摘のように、卒業後の返還の負担という問題についての配慮ということも当然に考えなければならない点である、かように理解します。その点については、返還総額に対する年賦額の設定の仕方その他、なお検討を要する点があるとすれば検討しなければなりませんけれども、私どもは、現在の仕組みでその点は奨学生が卒業後返還をするについては十分耐えられる範囲内のものではないか、かように理解をしております。
  109. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 時間がございませんので、もっと具体的に質問したいわけでありますが、十分ひとつ勉強していただいて、数字を整理して資料を後ほど提示していただきたいと思いますが、よろしゅうございますか。
  110. 宮地貫一

    宮地政府委員 それぞれ御指摘の数字については、なお後ほど提出をさしていただきたいと思います。
  111. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 それでは、次の問題に移ります。  大学学生総数の五一%が奨学金を希望しているという数字が出ています。これは昭和五十七年度学生生活調査報告に基づくものでありますが、日本育英奨学金の受給率は約一二%となっていると言われています。その他都道府県を含む奨学団体を合わせましても約二一%にしかすぎません。そうなりますと、三〇%が残るわけであります。この三〇%の学生に対する将来的な対応、展望、どのようにお考えになっておりますか。
  112. 宮地貫一

    宮地政府委員 奨学金を希望する学生の数に対して実際に支給されております奨学生の数がなお必ずしも十分でないという点は、御指摘のような点があると私どもも考えております。したがって、奨学事業の拡充については、先ほど来御説明申し上げておりますように、今後の課題として私どもも取り組まなければならない課題と考えておるわけでございます。  ただ、現行の一般会計からの貸付金による増額ということは、現行の財政事情から考えればなかなか難しい点でございまして、先ほど来御説明しておりますように、有利子貸与事業で量的拡充を図るという対応をいたしたわけでございます。  なお、それらの充実の点については今後の課題であるというぐあいに理解をしております。
  113. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 政治は国民のためのものでなければならないと言われております。まさにそのとおりであります。そうだとすれば、なぜ今有利子の奨学金の導入が必要なんでしょうか。これは大臣からお答えをいただきます。
  114. 森喜朗

    ○森国務大臣 先ほどから佐藤さんの御質問に対しまして局長からもお答えを申し上げておりますように、佐藤さんのお話の中にもありましたように、やはり奨学金を希望しておる学生が年々ふえておることは事実でございます。その希望する学生に対して奨学金をできるだけ多く貸与でき得るように措置することが政治的な判断である、私ども、こう考えておるわけであります。  したがいまして、先ほど答弁をいたしましたように、高等教育の機会均等を確保する、そして学生生活費の上昇、授業料負担に対応してどうしても育英奨学事業の量的拡充は必要でありますが、当然財政あっての国の措置でございまして、現在のやり方でやってまいりますと、どうしても財政に限度というものがございます。したがいまして、一般会計以外の外部資金として財政投融資資金を導入する、そして低利の有利子をお願いしたい、新しい方策を見出して量的な拡充を図る一つの試みを今年度からスタートさしたい、こういう考え方を取り入れたわけでございます。     〔白川委員長代理退席、委員長着席〕
  115. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 もうほとんど時間がありません。本当はもっと突っ込んだお答えをいただきたいわけでありますが、つまり、行革との関連なしにはこの問題を論ずることは私はできないと思います。これは後ほど私どもの同僚議員がこの問題について多分質問をされるでありましょうから、それに譲りたいと思います。  それで、次年度から年度ごとに六十八年度まで利子補給金は幾らになりますか、年度ごとに数字を出してください。
  116. 宮地貫一

    宮地政府委員 利子補給金の額の年度ごとの数字というお尋ねでございますが、先ほど申し上げましたような条件で有利子貸与事業を実施することにしておるわけでございますが、五十九年度が一億九千九百万、六十年度が九億八千八百万、六十一年度が二十三億二千四百万、六十二年度が四十一億九千八百万、六十三年度が五十六億五千二百万、六十四年度は六十八億六千三百万、六十五年度が七十九億二千四百万、六十六年度は八十八億八千二百万、六十七年度は九十七億五千七百万、六十八年度が百五億四千八百万と、現在想定をしております事業規模によりまして見込んだ数字を申し上げれば、以上申し上げたような数字でございます。
  117. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 今お答えをいただきましたとおり、十年後は利子補給金が百億を超すわけであります。そうしますと、果たして有利子の導入が大臣が答えられているような状況に判断できるかどうかということになりますと、私は大変疑問に思うわけであります。こんなに、十年後に百億を超すような利子補給金を補てんをしなければいけない、こういう状況を考えましたときに、そんなことをするよりも、現行を維持しながら無利子貸与を拡大していく、保証していく、そういう方向をとった方がむしろ国民のためであり、これからの若い世代の人たちに対する温かい政治のあり方だと私は考えるわけであります。  時間がありませんから、申しわけありませんが、最後に大臣にお尋ねをいたします。  二、三日前の新聞にも掲載されておりましたけれども、六十年度行財政改革小委員会が素案として出されましたその中身を見てみますと、もちろんこれは文教関係だけではありませんが、とりわけ文教関係だけを拾いますと、私学助成の縮減、教科書無償制度の廃止の方向、学校給食施設に対する国庫補助の廃止、育英奨学金返還免除制度の見直しあるいは有利子、全面有利子などが素案として出されてきているわけであります。まさに大変な事態になると判断をされておりますが、今日教育が非常に重要視されており、国民が注目しているだけに、財政面で大きく拘束をしていくということについてはまさに逆行する一つのやり方ではないかと思うわけであります。ひとつ大臣に頑張っていただきたいと思いますけれども、これに対して大臣の考え方と今後の方向性についてお尋ねをしたいと思います。
  118. 森喜朗

    ○森国務大臣 佐藤さん御指摘のように、臨時行政改革推進審議会は、昭和六十年度行財政改革小委員会とそして地方行革推進小委員会を設けて、当面の行政改革推進の課題の審議を行っているということは承知をいたしております。しかし、今佐藤さんのお尋ねでございますが、現在これらの小委員会では審議中であるというふうに承知をいたしておりますので、詳細は、結論も出ておりませんし、私の立場では今の段階ではこれにつきまして見解を申し上げるということは差し控えたいと考えております。  ただ、この国会が始まりまして、予算委員会あるいは文教委員会、また昨日は臨時教育審議会設置の御審議をいただく内閣委員会等でもこれらに関します御質疑も出ておりますが、私といたしましては、教科書問題あるいは私学の問題、また四十人学級につきましては、文部省としては鋭意この方向に努力していきたい、こういうふうに大臣としては願っておるところでございますし、今後ともいろいろな角度から懸命な努力をしながら、私どもは、当面打ち立てております計画は推進をしていきたい、こういうふうに考えておるところでございます。
  119. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 間もなく概算要求の段階にも入りますので、どうぞひとつ、こういうけしからぬ内容を受け入れるような状態にならないように大臣も頑張っていただくことをお願いいたしまして、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  120. 愛野興一郎

    愛野委員長 池田克也君。
  121. 池田克也

    ○池田(克)委員 公明党の池田克也でございます。  育英会の問題については、私、非常に関心を持って今日まで推移を見ておりましたし、また、先ほど大臣からも答弁がありましたが、当面五十九年の学生募集について、早急にこの法案の成否、またそれは審議中ではありますけれども、これはともかくとして、今の学生生活に、言うならば、死活問題と言うと大変大げさなように聞こえるかもしれませんが、不安を与えないようにという気持ちでおりますので、早急に結論を出していただきたい、冒頭そのことを要望いたしまして、質問に入りたいと思います。  教育の改革が進められようとしている状況の中で、大枠として、この育英奨学という問題はどういうふうに位置づけられているのか、大臣の胸中をお伺いをしたいわけであります。  大学のあるいは高校のあるいは専修学校の制度の改善がこれからも議論をされるでありましょうが、今問われている国民全体の教育にかかわる関心事の中で、父母のあるいは学生自身の負担しなければならない経済的な重みというのは次第次第に重くのしかかってきている。これに対して何らかの改善の手を打っていく。これは子供たちにいい教育をさせるために親がパートで働いているという実態も、私たちしばしば耳にしております。この問題、お話をしていけば大変に根の深い問題でございますが、この問題を審議するに当たりまして、私は文教行政を所管される文部大臣として、この育英奨学問題というのは、いろいろな制度の改善や教育の手直し、共通一次試験の問題だとかあるいは高校、大学制度の問題もありますが、これとまた一段とすそ野の広い、国民経済にかかわる問題として非常に大きな意味を持ってくるのじゃないか。冒頭、この位置づけについてお聞かせいただきたいと思うわけでございます。
  122. 森喜朗

    ○森国務大臣 先ほど佐藤議員からの最後の御質問にもございましたけれども、教育にかかわる経費というのは、今さまざまな論議のあるところでございます。できるだけ教育基本法あるいは日本国の定めております憲法、この精神にのっとりまして、教育をできる限りすそ野が幅広く、だれでもがどのような状況の中においても学べるようにしてあげたい、これが当然政治のまた大きな判断でもなければならぬ、こういうふうに私も考えております。  しかし、最近では、この教育の公的経費というものについてはいろいろな意見がございまして、例えば教科書の有償、無償論も近時非常にさまざまな意見があるところでありまして、物の見方によっては、三千円から五千円程度のものは今日の経済状況の中では御負担をいただいてもいいのではないかという御意見もある。それにかかります経費の五百億程度はむしろほかの方に回したらいいではないかという御意見もございますし、あるいは、本当に困った皆さんにはこのことを国が無償でお願いをして、ある程度の収入のある方には御負担いただいたらどうかという御意見もございますが、これにつきましては、やはり子供たちに対して、親の収入によって差別をつけるというのは教育上いかがなものかという意見もございます。給食の問題にしても同様な意見がありまして、やはりこうした制度が設けられてきたそれなりの経緯、歴史があるわけでございますが、今日の日本の国民の総力、その大きなエネルギーによって、これらの制度がスタートいたしました時期とはかなり違った状況にもなっていることは事実でございます。そういう意味で、私、文部大臣といたしましては、こうした従来とっておりました措置はこれからも継続していきたい、なお一層充実をしていきたいという気持ちは持っておりますが、先ほど佐藤さんのときにちょっと触れましたように、やはりこれもすべて国の財政ということを考えずに政治の諸施策はでき得るはずがないというふうに、政治家の判断として考えていかなければならぬというふうにも考えるわけでございます。  したがいまして、この育英奨学につきましてもさまざまな議論はございますが、やはり機会均等をできるだけ幅広く、すそ野を広げていくということも一つございましょうし、そういう意味では量的な拡大をやっていかなければならぬということもございます。一方においては、最近の学生生活は、私や池田さんが学んでおりました当時とはやはり経済環境が、学生生活の中においてもかなり違っているというふうに思うのです。私たちが学生時代にアルバイトをしておって毎日得る収入と今の学生さんたちがアルバイトをして得る収入というのは、かなり当時の状況とは違っていると感じておりますから、育英奨学金以上にある意味ではアルバイトというものの収入が多いという学生さんも、現実の調査では出てきておるわけでございます。  ですから、そういう意味で、もちろんできるだけの高等教育は、これだけ多く量的に広がりを見せておるわけでありますから、当然学生に対してはそれに対応していくこともこれは政治の大きな役割でございます。したがいまして、このところまでまいりまして量的の拡大も図っていくということになれば、やはり一部は有利子をお願いをして、学生生活の間はこれは当然利子は無利子と同じような形はとりますけれども、卒業して社会人となって、そして給与を取られることによって返還をしていくときには、若干の利子はその上に上乗せをしていただいてもそう大きな支障がないという範囲の中で、むしろ有利子制度というものをつくることによって量的な拡大をしていこう、こういう考え方をことしの予算からとったわけでございまして、財政的な理由も当然ございますし、またある意味では、別の面から見れば、育英奨学制度というものをさらになお大きく拡大をしていきたい、こういうことのねらいもあるわけでございます。視点を置きかえればいろいろな御批判もあろうかと思いますが、今日の日本におきます経済状況、あるいは日本の今日の国民の大きなエネルギーというようなことも考えてまいりますと、こういう方向をとることがむしろこれからの学問を進めていこうという学生たちにとってプラスである、こういう判断を政府としてはいたしたわけでございます。
  123. 池田克也

    ○池田(克)委員 大臣のお話を伺っておりまして、有利子制について積極的に推進をしていらっしゃるというふうに、私ちょっと意外なように受けとめたんですが、これは財政の状況の中からどうしてもやむを得ない、どっちをとるか。本来ならば育英奨学というものは、言うならば返還を求めることも、世界的ないろんな例から見るならばどうだろうか。本当にそうした、次の国家をと言うとまた大げさになりますけれども、次の社会を担っていくべき人たちにしっかり勉強してもらおう、あるいはしっかり研究していただくというためにむしろ給費制というのが本来の姿だろう。しかし、今日まで日本の制度は返還を求めておりましたが、さらに今度はそれに利子を加えていく。これは当面小さいように思いますけれども、年数がたつにつれてこの利子は実に大きな効果を持ってくる、これはもう皆さん方御承知のとおりだと思います。  私は、当初大臣は、大蔵省とのいろいろなやりとりの中で渋々この有利子化を提案されているんじゃないかな、本来の奨学というものはそういうものじゃないけれども、国家の状況にかんがみて何とかこれは、この三%ぎりぎりは堅持していくけれども認めてほしいという、かなりこの点については抑えた格好の提案じゃないかというふうに受けとめておりましたのですが、そういうふうに受けとめている私の理解が正しいかどうか。今のお話を伺うと、学生もアルバイトで相当収入を得ているし、時代は変わってきているんだ、そろそろ有利子もいいんじゃないかというふうに私、受けとめたんですが、もう一遍そのところの。状況、お気持ちをお聞かせいただきたいと思います。
  124. 森喜朗

    ○森国務大臣 学生も量的に拡大をしてまいりますと、幅広くそれぞれの個人の事情というものもあると思います。私は、アルバイトで苦労をしておる学生さんのことも最初に例としてちょっと申し上げました。だから、そのアルバイトの量が大きいから有利子でも構わないのではないか、そういう意味ではございません。やはり最近の経済情勢、国民所得、あるいはまた今日の学生かたぎ、そういういろいろなこと、さまざまな条件というのは勘案をしなければならぬだろうということでございます。  もちろん、有利子制度を私は喜んでお願いしているわけではございませんが、先ほど申し上げたように、育英奨学事業の根幹をなすものは無利子貸与制、これは引き続き堅持もしていきたいし、でき得る限り改善もしていきたい、こういうふうに考えておるわけでありますが、量的な拡大ということを考えますと、新たに有利子貸与制という制度も設けてもらって、これはやはり学生さんの選択の問題にもなってくるわけでありますから、こういう制度もございますよ、それについては、先ほど申し上げたように、利子等々についてはまあこの程度ならある程度甘受していただけるのではないだろうかということで、ある意味では選択の幅みたいなものがあるわけでございます。決して喜んでお願いをしておるわけではございませんが、やはりこういう制度を設けてそして国会お願いをしておる限りは、文部大臣という立場では、国会でぜひ御審議をいただき、御成立をいただきたいという立場でございますから、そういう意味では、私どもはこういう方向をお願いをしたんだ、やはりこう胸を張って、この制度学生たちのためになるんだという考え方お願いをしなければ、先生方の方もまた御了承をいただけるとは考えられないわけでございまして、個人の胸のうちと、そしてこの制度お願いして量的拡大をしていこうということの政治的判断というものをどうぞ池田先生も御理解をいただきたい、こう思うわけでございます。
  125. 池田克也

    ○池田(克)委員 少しずつ大臣の気持ちがわかるところまで来たのですけれども、私、さっき一番最初にこういう育英奨学の問題の位置づけということをお尋ねしたのですが、減税という問題を予算委員会でも随分と議論をいたしました。財政が厳しいからまたいろいろの税収を確保しなければならない。その税収を確保するためにはやはり庶民の懐からいろいろな形でちょうだいをしていかなければならない。そうすると、庶民大衆の方はその分だけ購買力というものを減らして暮らしていかなければならない。景気はその分だけだんだん冷える方向になっていくのじゃないだろうか。  そういうことを繰り返していったときに、とりわけ子供たちを学校に送り出している家庭というのは、非常に経済的に物入りの世代だと私は思うのです。例えば、長男あるいは長女が大学、いわゆる高等教育にちょうど差しかかる年代は、下の子供は場合によっては高校や中学であろうし、末っ子は幼稚園や小学校かもしれません。そうした家計の中から塾にもかかるし、あるいはまたその他の諸経費、スポーツも最近随分振興されまして、運動靴だとか運動着なども何種類も親としては買ってやらなければならない、子供の出費は待ったなしだ、こういう声が私ども、地域を歩きまして頻繁に聞こえてくるわけでございます。そういう状況の中で、東京に行っている長男の学資、これは後に本人が卒業してから返していくんだということではありますけれども、本人も社会に出てからそう悠々たる給料がもらえていけるというような状態ではないわけでございまして、むしろ学校を終えて社会人になってからも仕送りしているような家庭もあるわけです。  そういう状況を考えてみますと、いろいろな社会の現象の中で子供たちを教育しながら懸命に家庭を支えている夫婦あるいはそれを取り巻く幾つかの環境というものについて、これ以上の出費というものはなるべく避けて、先般予算委員会でも私、大臣にそのことを申し上げたわけでございますが、私学の助成についていわゆるシーリングでカットされた、私学の方々からも、これ以上だと授業料や納付金を上げなければならない、こういうふうな大変厳しい話を受けまして、私は日本の経済というもの、そう振りかぶって申し上げるつもりはありませんけれども、この子供たちを教育している世代について、何とか出費というものを食いとめ、むしろそうした温かい援助、助成の道というものを多面的に用意していくことが、国の経済全体に対しても非常に大きな効果を持つんじゃないか。私は、この臨時教育審議会等の問題も、これからいろいろな議論が出てくる中で学資という問題、教育にかかわる経費という問題からこの教育というものをもう一遍改めてライトを当てて見直してみるべきじゃないか。それがつまり、労働省との絡みやあるいはまた産業界との絡み、いろいろな意味で、就職の場で指定校制度の問題なんかもつい最近も新聞をにぎわしておりました。つまり、文部省だけでこの教育の問題を議論するのではなく、非常に多面的な形で議論していくことが必要になってきている。だからこそこの臨時教育審議会は必要なんだと、私は心の中でいろいろな理解をして今日まで発言もしましたし、党内でも皆さん方と話し合っているわけなんです。  そういう位置づけの中で、私はこの場で育英会法案審議するに当たって、大臣から、この学資の問題を何とかするのにひとつこれから文教行政の責任者として他の大臣とも渡り合って、とりわけ大蔵大臣と渡り合って、何とか父母の側に立ってこれを守る、そういう方向についての御決意を聞かしていただきたいし、それが一つの大きな効果になって国民に教育改革の希望というものがまた出てくるんじゃないか、こういう気がしてならないのですけれども、私のこの意見について御感想をお聞かせいただければと思うわけでございます。
  126. 森喜朗

    ○森国務大臣 池田さんの今の御意見を踏まえての御質問というよりは、私に対する激励の辞であるというふうに私は受けとめて、大変光栄に思っております。  今さら生意気なことを言うようでございますが、私も文部大臣になります前は、自由民主党の文教部会の政策を進めてまいります責任者の仕事もいたしてまいりました。四十人学級も、私が部会長時代にいろいろと野党の皆さんの御意見もちょうだいをしながら六十六年という、十二年というとても気の長いような、夢のような計画でございましたが、これを打ち立てさせていただきました。私立学校振興助成法も、当時といたしましては厳しい中で、むしろかなり与党の中にもいろいろな意見もございましたし、政府部内にもいろいろ意見がございましたが、私どもはこれを議員立法として提案をさせていただいた経緯もございます。教科書問題につきましても、これもさまざまな意見があります中で、何とかこれを無償継続ということで持ちこたえるために努力をしてきたつもりでございます。大臣になりましてから、昨年末の改造を終えましてからのことしの予算編成に際しましても、初めての予算折衝でございましたけれども、最大限の努力を従来の経緯にかんがみて私なりに進めてきたつもりでございます。  したがいまして、これからも文教行政の文教予算につきましては、私にとりましても、いよいよ概算要求を目前にいたしておりますだけに、従来のことを踏まえつつ、また国会の御論議、与野党間を通じての政治家としての多くの御発言を私どももちょうだいをしながら、なお最大の努力をしていきたいと考えております。これは改めて池田さんに、こうして私も一生懸命やりますと、こうお答えを申し上げておくところでございます。  ただ、先ほどもちょっと触れましたように、教育にかかわる公費というものはどの程度がいいのか。そして、教育はその国の将来の命運をまさに分けるわけでありますから、教育にぜいたくなし、まさに教育にどれだけの経費をかけてもいいんだという意見ももちろんあるわけでございますが、しかし、財政というものがあってのやはり国家の運営でございますから、教育にかけてはすべて聖域であり、すべて論外であるという考え方がとれるかどうか、これもまた非常に議論の分かれるところだと考えております。  今お話の中にございましたように、臨時教育審議会でこうした教育の公費にかかわることを御論議をいただくような、そういう試みであるかどうかは別といたしまして、しかし臨時教育審議会がこの国会成立をさせていただいて、そして教育全般にわたる諸制度の検討を始めれば、国が教育に関してどの程度の経費をかけることなのか、どこまで負担をしていくべきことなのか、従来の制度についてはどうあるべきなのか、なお一層どう改善をしていくのか、あるいは充実をさせていくのか、当然私はそういう御論議もあるのではないかということを予想もいたしますし、また文部大臣の立場から言えば期待もしたいな、そんな気持ちでもあるわけでございます。  これからいろいろな意味で日本の財政、行政全体にも一つの行政改革を進めていく、これは行政改革ということはまさにすべて切ってしまうということではないので、やはりぜい肉を取って、そして今までもう用のなくなったものはある程度整理をして、そして二十一世紀に向けて躍動的に日本がさらに前進をしていこうということの行政改革であり、財政再建であるわけでございますから、当然教育問題につきましても多くの御議論をいただきながら、なお一層日本の国が教育を大事にする国であるということをやはり制度の中に取り入れるように、そうしたことも臨時教育審議会などで十分に御検討いただきたいものだなということを私は期待をいたしておるところでございます。  常々申し上げておりますように、内閣の政策の最大課題に教育問題を持ってきております中曽根内閣でございますので、教育を大事にしたい、そして二十一世紀はまさに日本を担う青少年のためにすばらしい教育環境の中で世界の国をリードしていく、そういう国家になってもらいたい、そういうことを私どもは期待して、今日政治の中でできるだけ多くの国民の期待にこたえられるような方向を見出すようになお一層努力をしていきたい。また私なりに、微力でありますが、そういう角度でなお一層の努力を重ねていきたい、こう、池田先生からの激励という言葉と受けとめさせていただいて、私の考えておりますことを申し上げさせていただいた次第でございます。
  127. 池田克也

    ○池田(克)委員 この法律の若干細かい問題にわたってお伺いをしたいと思います。  まず最初は、第下条の中身なんですが、若干の文言の違いはあるとはいえ、戦前に成立をいたしました旧法と新法とは、ほぼ同じ表現がなされているわけでございます。最後の方に「教育の機会均等に寄与することを目的とする。」というのが加わっておりますが、前段はほぼ同じ表現でございます。先ほども他の議員からこの問題に触れられておりましたが、かれこれ四十年の歴史を経ておりまして、今大臣からお話がありましたように学生の置かれている環境も変わってきている、国も変わってきている、同じというのは、新しく法律をお書きになったわけでございますので、当然これは部内でも議論があったろうと思うんですね。あるいは議論がなかったならば、この辺について余り真剣な討議がなかったのじゃないかなと思うんです。例えば「優れた学生」という問題、片っ方では「優秀ナル学徒ニシテ経済的理由」云々とございますけれども、この辺なども若干ひっかかるところでございますが、この第一条の経過、旧法と新法との間でこういう状態で提案をされておりますが、これについて経過がありましたらお聞かせをいただきたいと思います。
  128. 宮地貫一

    宮地政府委員 第一条については、先ほどお尋ねもあったわけでございますが、一つは、御指摘のように現行育英会法の目的規定は、制度としては大変古い制度でございまして、先ほど御指摘のような戦時下の制度創設というようなことで、国家有用の人材育成ということだけが目的として掲げられておったわけでございますけれども、もちろんその対象としましては、学生及び生徒の優秀性とともに、経済的理由で修学困難なことを要件としているということに見られますように、人材の育成とともに教育の機会均等ということが創設当初から内容的には含まれていたものと私ども理解をしておるわけでございます。  ただ、戦後、先ほども御説明しましたような憲法の規定あるいは教育基本法の規定を受けまして、奨学の方法を積極的に講じていくというような考え方を取り入れて、目的規定においても「教育の機会均等」を加えることにいたしたわけでございます。その際、「優秀ナル学徒」というような表現から、今回、「優れた学生及び生徒」というような表現に改めたわけでございますけれども、学業成績がすぐれているということを従来と同様に要件とはしておりますが、全体的に、従来の片仮名書きの条文から平仮名で、法文の平明化を図るというような観点で、同じ内容を持っております「優れた学生及び生徒」というような表現にいたしたわけでございます。  それらの点で、先ほど質問の点でお答えをしましたが、経済的理由により進学の阻まれている者についての進学の機会を与えるという教育の機会均等の観点ももちろん含まれておりますが、対象をすぐれた者といたしておる点は、これは先ほども御説明をした点でございますけれども、一応、全体的にこの学資貸与事業を実施するということになりますと、どうしても予算上の制約がございまして、学業成績がよりすぐれた者を優先的に採用するという対応は、これはまあやむを得ない点ではないかというぐあいに考えておるわけでございまして、以上申し上げましたような議論を踏まえまして、御提案申し上げておりますような第一条の規定といたしたものでございます。
  129. 池田克也

    ○池田(克)委員 割と新しいデータなんですけれども、ことしの三月に国立教育研究所で「奨学政策の転換」という、こういうレポートを出しておられるのです。これを拝見しておりますと、こういうことを記しているのですね。これは冒頭に書いてあるのですけれども、「高等教育の大衆化に伴い、学力や財力によって入学制限を行うことの妥当性が失われ、学力による進学障害を低くし、財力は社会的に補強することが必要とされるに至っている。かつては貧しい家庭出身の英才に対する措置として奨学金が与えられたが、今日では育英奨学の思想は後退し、平等な進学機会をできるだけ広く国民に与えることを目的とする経済援助思想の方が優勢になりつつある。」こういうことで、私もそのとおりだと思うのですね。  したがって、この法律の一番冒頭に掲げられた部分なんですが、「優れた」という、ここがやはり、どの時点ですぐれたのか、また、これから伸びる芽、今までの審査の中ですぐれていたのか、これはわからないと思うのですね、私は。ですから、どちらかといえば「機会均等」という部分にやはり力点を置いて、そして運用していくべきじゃないか。奨学生選考に当たって経済的困窮度と言うと、なかなかこれはまた表現が少しかたくなるのですけれども、どっちかといえば経済的な部分に重きを置いて、そして選考していく。これはさっき大臣もおっしゃっておりましたが、財源に限度がある。しからばそういう中でどういう順序でそれを選んでいくかということになりますと、今偏差値時代だと言われているように、どうしても数字で成績というものを見ている、しかも数量化されやすい科目や学生生活の内容が固定化された成績になっている、ここにやはり問題があるわけでして、これを何とかしたいといっていろいろ議論しているのが今の教育改革の一つの道筋だと思うのですね。  そういう意味で、この法案がこれから動いていくのに当たりましては、機会均等という方に力点を置いて運用すべきだ、私はそう思うのですけれども、これについて、大臣でも局長でも結構ですけれども、この法案の提案者として現在の御所見を承りたいと思います。
  130. 宮地貫一

    宮地政府委員 教育の機会均等ということは、もちろん教育基本法にも述べられている点でございまして、私どもはそれを目的とはいたしておるわけでございます。問題は、「国家及び社会に有為な人材の育成」という観点でございますけれども、やはりもちろん財源に限りがなければ、それらの点について積極的に学びたい人たちに対して積極的に奨励をするということももちろん考えられるわけでございますけれども先ほども申しましたような現行の財政上の制約を受けて実施をするとすれば、やはり学業成績のすぐれた者にその才能を伸ばす機会を与えるということで人材育成に資するということがどうしても加味されることはやむを得ない点ではないかというぐあいに理解をしております。そしてまた、学業成績の要素を加味するということを、教育の機会均等といいましてもそれを排除しているわけではないわけでございまして、また、人材育成といいましても経済的な困難性の要素を排除するものでもないというぐあいに理解をしております。要するに、人材育成と教育の機会均等という二つの目的を同時に果たしているというぐあいに理解をしておるわけでございます。  御指摘の教育研究所の研究成果について、そういうことが言われているということはもちろん一つ考え方を示唆しているものでございまして、終局の目的としてそういう方向が言われることも確かに一つの点ではあろうかと思います。  しかしながら、現時点で、こういう財政下で一般会計の金並びにもちろん財投の金を投入するにいたしましても、それは利子補給その他でもちろん相当の経費を要する事柄でございます。したがって、学業成績のすぐれた者を対象として考えるという点もまた、現行制度としては、私どもとしてはそういう制約下においてこの育英奨学事業というものを実施せざるを得ないという点も御理解を賜りたい、かように考えているわけでございます。
  131. 池田克也

    ○池田(克)委員 この問題だけでもいろいろ議論が分かれるのですけれども、外国の事情がいろいろ伝えられております。特に今申し上げたような成績でのふるい分けとか、あるいは経済的な事情とか、これもいろいろと私も調べましたけれども、非常に込み入っております。大学の置かれている状況も、また進学状況も、欧米と一口に言ってもアメリカとヨーロッパではまた違うわけでございますが、現在私どもがこの法案理解する、あるいはこれからこの運用について判断の材料とするに足る欧米諸国との比較、大ざっぱなもので結構でございますが、お知らせいただければと思います。
  132. 宮地貫一

    宮地政府委員 欧米諸国との比較でどうかというお尋ねでございますが、アメリカ、イギリス、西ドイツ等のいわゆる先進諸外国の公的な育英奨学事業でございますが、御指摘のように確かに給費制度が主体でございまして、一部これを補完するものとして貸与制度実施されているということであろうかと思います。大勢といたしてはそういうことであろうかと思います。そしてまた、全体的に事業規模も相当大きなものになっているということが言えるかと思います。しかしながら、これは考え方がいろいろあろうかと思いますが、やはり国情なりあるいは教育制度、それぞれの国における大学進学率の問題など、いろんな要素が複雑に絡まり合っているわけでございまして、一概に比較は難しいのではないかというぐあいに考えます。  例えば具体的な例で申し上げますと、アメリカの場合でございますと、基本的に給費の奨学金がございまして、これが全体の受給率で二五%ぐらいになっておる。ほかに、連邦の教育機会給与奨学金というようなものが給費制度でございます。しかしながら、ほかに貸費制度として、連邦直接貸与奨学金でございますとかあるいは学生貸与金保証制度というようなものも新たにつくられておりまして、その両方合わせますと、やはり全体の二五%ぐらいをそれでカバーしているというような状況がございます。  イギリスの場合には、大学の進学率そのものがアメリカとか日本の場合と基本的に違っておりますので、必ずしも的確な対比ということにはならないかと思いますが、イギリスの場合には給費でございまして、それが全体としては、受給率が九割を超えておるというような状況がございます。  フランスの場合にも、給費制度とさらにほかに貸費制度もあるというぐあいに理解をしておるわけでございます。  今回の改正に当たりましても、諸外国の奨学制度の実態ということももちろん留意をいたし、文部省に設けられました育英奨学事業に関する調査研究会におきましても、外国の制度の実態を把握するために委員にも外国へ行っていただいたりして、それらの点も十分検討はさしていただいたわけでございます。  そういうような点を踏まえまして、今回の育英奨学制度改正を御提案申し上げている全体の背景で申しますと、御指摘のように、臨調などでいろいろな御指摘がありまして、いろんな点が言われたわけでございますが、結論から申せば、無利子貸与制度はやはり制度の根幹として残していく必要があるという結論を調査会でいただきまして、私どもとしても、いわばその調査会でいただきました結論をもとにいたしまして、無利子貸与制度を育英奨学事業の制度の根幹として今後も残していくという基本姿勢は十分踏まえて対応しているわけでございます。それに加えて、量的な拡充という観点での低利の有利子貸与制度を創設するというようなことで対応してきておるわけでございまして、大勢から申せば、やはり諸外国の育英奨学制度というものが、より進んだ、しかも量的にも相当大きいということは御指摘のとおりかと思います。それらの点は、私どもとしても、今後の改善に当たってなお十分研究さしていただきたい点だ、かように考えております。
  133. 池田克也

    ○池田(克)委員 率直に局長は、日本はおくれている、諸外国の方が進んでいるというふうにおっしゃっておりますが、アメリカの場合ですけれども、全所得階層の平均で、親の負担は大体二四・七%というようなデータがあるんですね。四分の一という状況なんですが、日本の場合はどうでしょうか。要するに、大学生が負担をする生活費、学資の中で、親がどのくらいの部分をしよっていることになりますか。
  134. 宮地貫一

    宮地政府委員 これは五十七年度でございますけれども、家庭からの仕送り額というような形で、大学生の場合でございますが、国立、公立、私立、若干差がございますけれども、平均で申し上げますと、家庭の年間収入の平均が約六百四十万、仕送り額が約百万弱、九十九万八千円余りでございまして、学生生活費に対する割合が八一%、家庭の年間収入に対する割合としては一五・六%というような数字がございます。
  135. 池田克也

    ○池田(克)委員 ありがとうございます。八〇%近く仕送りなんですね。要するに、日本の場合は、親は子供の学資できりきり舞いしているというのが実態です。そこへ持ってきて、単なる仕送りじゃなくて、新しく子供のうちのだれかが勉強のかいあって大学に合格をした、こうなりますと、一時金というのがある。また、これを出していくのに大変な苦労をするわけですね。大変大ざっぱなデータを使って恐縮ですけれども、アメリカの場合に二四・七%親の負担だというデータがある。日本の場合に八割負担している。率直に言って、どうも景気が上向きにならないでいろいろな施策を政府が打ってくるわけですけれども、なかなか思うようにいかない。これはやはり家計における教育費というものが相当な意味を持っているのじゃないか、私はこういう気がしてならないのですね。ですから、この問題を大きな政策として森文部大臣が振りかざされれば、それこそ総理大臣もねらえるぐらいの極めて重要な、資産倍増論などというよりも非常に大きな国民的関心を持っている部分だと私は思うのです。八割、親が負担している。それでも、みんな周りが大学へ行っているんだ、大学へ行くと行かないとでは違うんだということで、歯を食いしばって子供たちを大学に出している。それについて、いろいろ奨学の道があるわけですけれども、奨学の方は奨学の方でどうしても財源が厳しい。拡大するためには、今度は有利子も導入しなければならない。  やはり今までの議論の道筋よりもっと踏み込んで、大々的にこの問題についてライトを当てて、父兄の教育費負担というものについての改善を打ち出していくべきだ。ひとつ中曽根総理に森文部大臣から、これをやりませんかということを進言をされて、政府として本腰を入れて取り組まれれば景気対策に一番近道じゃないか、こう思うのですが、大臣いかがでしょうか。
  136. 森喜朗

    ○森国務大臣 先ほど答弁の中で申し上げましたように、中曽根内閣といたしまして教育改革を政策の最大のテーマとしてこの国会でもお願いをし、国民の前でも明らかにしているわけであります。私が今、臨時教育審議会でこういうようなことを御論議いただくのだと言うことは越権でございますし、これから国会の御承認をいただいてから審議会の皆さんで幅広くお考えをいただくことでございますが、先ほど申し上げましたように、やはりいろいろな制度の根幹の問題でございますから、当然そういう御論議が出てくるのではないかというふうに考えておりますし、現時点では、池田さんのそうした御意見もすばらしい御意見であるというふうに私なりに受けとめさせていただいて、総理にも、もちろん機会がありましたら、そうしたお考えがあるんだということも申し上げておきたいと思いますが、総理自身も、教育を一番大事にしている内閣である、こういうふうに国民の前に明らかにしておることでもございます。十二分に御参考にさせていただく大変傾聴に値する御意見である、こういうふうに受けとめさせていただいて、答弁にさせていただきたいと思います。
  137. 池田克也

    ○池田(克)委員 本当にこの問題について何らかの社会の変化が出れば、多くの父母あるいは社会全体に光が満ちてくるというふうに私は思うのです。まじめな気持ちで、同じ世代で文部大臣に就任をされた、恐らくまだまだ若いお子さんもおいでになるわけで、共通の気持ちを持つ国民がたくさんいる。そして、今までの大臣と違って、森文部大臣こそはこういう子を持つ親の心境をわかる大臣じゃなかろうか、こういう期待を持っているというふうに私は思うのですね。  そこで、有利子制の導入、さっきからいろいろ議論がなされておりましたのですけれども、無利子を根幹とするというふうに先ほど局長の答弁がございました。当初二万人から出発をするということでございますが、毎年二万人ずつ有利子の方向を向いて予算を組んでいかれることになるわけでしょうか。
  138. 宮地貫一

    宮地政府委員 お尋ねのとおり、毎年二万人ずつ新規採用で、学年進行で貸与していくという考え方でございます。
  139. 池田克也

    ○池田(克)委員 そうしますと、全体の枠というものがその分だけふえるというふうに考えていいですか、毎年毎年二万人ずつ奨学金を受けることのできる学生の数がふえると。
  140. 宮地貫一

    宮地政府委員 二万人ずつふやしてまいるわけでございますが、ただ当面、先ほど説明いたしましたように大学と短期大学貸与しているわけでございまして、四年間で八万人ということにはならないわけでございまして、四年間では七万六千人という数字になるわけでございます。  なお、先ほどちょっと御説明をいたしたわけでございますが、無利子貸与のところについては若干人員の削減ということがございますので、トータルで申しますと、無利子貸与、有利子貸与、全体の貸与人員で申しますとふえておるわけでございますけれども、例えば昭和六十四年度の見込みで申しますと、全体では約四万二千人余りの増ということになるわけでございます。
  141. 池田克也

    ○池田(克)委員 四万二千人増ということになりますと、要するに無利子の方がその分削られてくるわけですね。その点はいかがでしょうか。次第次第に有利子がふえるのですが、その分無利子が削られてくる一これはいかがでしょうか。毎年九千人ぐらいずつ削られてくるのでしょうか。
  142. 宮地貫一

    宮地政府委員 現在の規模で、見込みとして申し上げた数字が以上のようになるということでございます。
  143. 池田克也

    ○池田(克)委員 ちょっとその辺もう一遍、大事な部分だと思うのですが、全体の枠が多少ともふえていくだろうと思いますけれども、有利子化の速度というのは毎年二万人ずつふえていきますと、全体の速度はそれほどじゃないわけですから当然、理屈としてですが、無利子の部分が減ってくる、こういう状態なんです。先ほど無利子の部分は根幹だというふうに答弁されておりましたが、私が今まで伺っていたところによりますと、スピードはいろいろあるだろうと思いますが、やはり無利子の部分を削って有利子へ振りかえていく、こういう方向になっていくんだと思いますが、いかがですか。
  144. 宮地貫一

    宮地政府委員 その点は単価の点で相当大幅な引き上げを行っているということがございまして、事業費で申し上げますと、無利子貸与についてももちろん現在よりも伸びるという形になるわけでございます。有利子貸与については、事業費はもちろん全体として増額の数字になるわけでございます。したがって、事業費ベースで全体を申し上げれば、五十八年度千百十七億余りの事業費でございましたものが、例えば先ほど申しました六十四年度の見込みで申し上げますと千四百五十八億ということで、約三百四十億余りの伸びはあるわけでございます。  無利子貸与についての人員の減についてはいろいろな要素が織り込まれているわけでございますけれども一つは、例えば現在教育学部の奨学生については一般学部の学生よりもより有利な枠で採用枠を設定しておるわけでございますけれども、その点については一般学部並みに合わせるというような形で若干人員の削減をしておる。これは一面では、先ほどもちょっと申し上げたわけでございますが、育英奨学制度について臨調の報告でいろいろな点が指摘をされておったわけでございます。例えば、全体的に奨学事業を有利子事業に転換したらどうかとか、あるいは返還免除制度については廃止をすべきではないかというようないろいろな提言がなされております。私どもとしては、それらの点については、先ほども申し上げましたように、文部省における育英制度についての調査会を発足させまして、そこで十分慎重に議論をしていただきまして、先ほども申しましたように、無利子貸与事業についてはもちろん育英奨学事業の根幹としてそのことを存続させるという考え方で踏み切ったわけでございます。そしてまた、返還免除制度につきましても、例えば教育職あるいは研究職の返還免除制度ということは、そういう分野における人材誘致という観点からやはり存続させる必要があるという考え方で、もちろんこの点も存続をさせる方向で踏み切ってまいったわけでございます。しかしながら、他方、そういう点で指摘をされている点もあるものですから、それを受けまして、例えば今申しましたように、教育学部の奨学生について一般学部よりも有利に扱っていた点についてはほかの学部並みの圧縮を考えるというような事柄が、無利子貸与について人員減になっておりますような要因の一つで挙がっておるわけでございます。  したがって、それらの点は制度全体を総合的に判断をいただきたい、かように考えておるわけでございまして、単価の増額その他についても、私どもとしては措置をいたしているわけでございます。したがって、全体の事業費のトータルで申せば、今申し上げたような充実策ということは図られているというぐあいに私ども理解をしているわけでございます。
  145. 池田克也

    ○池田(克)委員 全体の事業費の問題はわかったのですが、これは一概に言えないかもしれませんけれども、人数の問題で、先ほどお伺いしたように二万人ずつ、正確には二万人じゃないから七万何千人かもしれませんけれども、有利子の貸与がふえていく。それに対応して無利子の方も、今おっしゃった教育学部の云々というのはありますけれども、数の面では若干減る。これは、九千人ぐらいずつふえていくのじゃないかなと私も伺ったのですが、この辺の人数は明確にしていただけませんか、どのくらい変わっていくのかということについて。
  146. 宮地貫一

    宮地政府委員 これは、先ほども申し上げましたように、あくまでも現在の事業規模で、見込みで将来の姿を推計すればという前提があるわけでございますけれども、無利子貸与については人員としては本年度九千人落としておるわけでございます。これも短期大学の場合がございますので、それの四倍というぐあいにはまいらないわけでございますけれども、六十四年度の推計で申しますと、先ほども申しましたように、有利子貸与で七万六千人ふえ、無利子貸与で約三万四千人余りが削減をされることになるわけでございまして、差し引きで申しますと、全体で約四万二千人の人員増ということでございます。
  147. 池田克也

    ○池田(克)委員 わかりました。  今のお話で、そういう根幹を変えない形で少しずつ変化をしていくということであろうと思います。  そこで、先ほどほかの方からも御質問が出ましたが、このやり方をしていきますと、利子補給をしていかなければならないと思うのです。財政投融資を使っていらっしゃるように聞いておりますが、かなりの利子を補給していくとなりますと、かれこれ十年くらいの間に百億近い利子を補給していかなければならない。これは大蔵省といろいろ予算の折衝をなさると思うのですけれども、ずっと見てまいりますと、かなりの負担というものが出てくるわけでして、こんなことなら初めからこのお金を使って無利子をずっと継続してもいいくらいの金額になるんだ、利子というのはだんだんと膨れていく大きな要素を持っているわけですから。そういう意味からいきますと、大蔵省も、これはかなわぬからもっと利子を上げなさいと、当初三%だったものがやがて三・幾つかになり四になりということを私ども心配するわけです。これは小さな数字ですけれども、これが年数を経るに従ってかなりなものになって、学生あるいは父兄を圧迫することになりはしないか。  この年次ごとにかなりの利子負担を背負うことについては試算をされていると思いますけれども、十年で約百億くらいの負担になるというこの辺の数字はそれでいいんでしょうか。
  148. 宮地貫一

    宮地政府委員 利子補給の額については先ほどお尋ねがありまして、将来の姿、年度ごとに申し上げたわけでございます。もちろんこれは現在の事業規模を基礎にしてということで六十八年度までの姿を申し上げたわけでございますが、例えば六十八年度では百五億というような数字になるという点を申し上げました。  なお、その点について学生の負担の基本になる点は、私どもとしてはやはり返還の点も考慮いたしまして、もちろん低利ということで在学中は無利子、卒業後については三%の負担、これは基本的な奨学金額についての利子負担の額として申し上げたわけでございますが、私どもとしては、この点については学生の負担を考えまして、その低利での有利子奨学事業ということについては、これはやはり一つの基本的なベースであるというぐあいに理解をしておりますので、それらの点については今後とも学生の将来の負担がふえることのないように十分確保いたしたい、かように考えております。
  149. 池田克也

    ○池田(克)委員 この利子の額については政令で決められることになっておりまして、恐らく我々が、ああこう言えないところで利子というのは変わる可能性を持っているのじゃないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
  150. 宮地貫一

    宮地政府委員 その点は御指摘のとおり政令で規定をされるわけでございますけれども、もちろん今回の育英会法案国会での御審議、そういうようなことも十分踏まえまして、私どもとしても対応しなければならない事柄だと考えておりますので、その点については基本的に、ただいま御提案申し上げている線を私どもとしては将来とも堅持をしていくということで努力をしてまいりたい、かように考えております。
  151. 池田克也

    ○池田(克)委員 この部分は非常に大事なところだと思うのですわ、三%は。  有利子というのは将来にわたって私は非常に心配な要因だと思っておりますけれども、高校とか高専、大学院、こういうところにも有利子制というのはこれから適用していくというお考えでしょうか。
  152. 宮地貫一

    宮地政府委員 先ほども申し上げましたように、当面一番必要性の高い大学並びに短期大学を対象とするということにいたしておるわけでございます。ただいまのところ、事業規模としては私ども大学、短期大学を考えておりますので、当面それを拡大するということは考えておりません。あるいは将来必要性が出てくるとすれば、例えば大学院というようなところなどが議論の対象になることもあり得るかと思うのでございますけれども大学院の場合には、ただいまのところ無利子貸与事業で相当カバーされているというような現実の問題があるわけでございますので、当面の必要性のある大学、短期大学を対象として考えておりまして、例えば高等学校というようなところへ広げるというのは今のところ考えておりません。
  153. 池田克也

    ○池田(克)委員 この無利子貸与と有利子貸与基準なんですけれども、父兄の所得あるいは学業成績、これは先ほど大臣からは、本人が選べるような御趣旨かと私、承ったんでありますが、無利子貸与、有利子貸与の選択、これはだれも無利子の方を望むだろうと私は思うのです。しかし、それがいろいろと選考の順序の中で得られなくて有利子になっていく。  今度は奨学金を受けるための所得基準の問題ですけれども、給与世帯というのはいろいろな意味で捕捉率が高くて、税制の問題でも言われておりますが、農業やあるいは商業等の個人業種世帯と比べまして不利じゃないか、こう言われているわけでして、給与世帯にとって不利のないような処置もこの際考えていただくべきだ、こう思っておりますが、いかがでしょうか。
  154. 宮地貫一

    宮地政府委員 無利子貸与と有利子貸与基準についてのお尋ねでございます。  それぞれの対象となるものの基準は、ただいま御審議いただいております育英会法成立した後に法律の趣旨に沿いまして正式に決めることになるわけでございますけれども、現在のところ考えられております点を御説明申し上げますと、家計収入の限度額でございますが、給与所得世帯を例にとりますと、大学の無利子貸与にありましては、国公立大学現行の四百七十二万から五百六十五万に、私立大学では現行の五百二万から五百九十七万にそれぞれ改定をする予定にいたしておるわけでございます。有利子貸与にあっては、さらにこれを百万円程度上回るというようなところまで対象として考えることにいたしております。  なお、学業成績の基準でございますけれども大学の場合、現行一般貸与が高校成績平均が三・二以上、特別貸与が高校成績平均が三・五以上となっておりますので、これらを考慮しながら無利子貸与と有利子貸与基準を決めることにいたしたいというぐあいに考えておるわけでございます。  それから、あわせて御指摘のございました給与所得者の場合の所得水準というものがやや不利に扱われているんではないかというような御指摘でございまして、その点も今回の改正では考えることにいたしておりまして、学業成績と家計収入の基準によって選考するわけでございますが、その家計収入の基準について、五十九年度におきましては消費者物価やあるいは家計収入の上昇ということを勘案いたしまして全般的に、先ほど申し上げましたように改定をする予定にいたしておりますが、特に給与所得世帯につきましては、給与所得世帯の生活実態を踏まえまして、給与所得控除の限度額を現行の百六十七万から二百十七万へと五十万増額をすることにいたしております。したがって、先ほども御説明をしましたような基準に改定をされることになるわけでございまして、給与所得世帯に対する配慮も、一応、今回の改正内容としてはそれらを含めて改定を予定いたしているところでございます。
  155. 池田克也

    ○池田(克)委員 この三・二から三・五へという〇・三、これもアップになるわけですか。つまり、審査の基準が難しくなってくるということと理解していいんでしょうか。これ、高校の場合と伺っておりますけれども
  156. 宮地貫一

    宮地政府委員 学業成績の基準について言えば三・二から三・五に、その点は、学業の点は重視をする形になるわけでございます。
  157. 池田克也

    ○池田(克)委員 これは成績なんですが、先ほど来から申し上げておるんですが、何でもかんでも数で、これは一番決めやすいんでしょうけれども、そこに今教育の問題があると言っているわけなんですね。  それで、結局三・二から三・五と〇・三上げるんですが、これは相当大きな問題だと思うんですね。経済的には苦しい、なかなかそういう家計というのはいろんな意味で条件がそろってないと思うんですね。それで成績が上がる、これはまた大変な努力が要ると思うんです。むしろ一般的に最近言われているのは、国立大学でも一流校と言われるところに在籍する学生の父兄の所得というのは非常に高額である。いろんな条件が、最近は受験技術などもある面では投資がちゃんと実るようになっているようでございまして、そういうことから考えますと、成績基準というのを数字ではかっていくというのはどんなものだろうか。  今回の法律改正の中で、有利子化を導入する。うんと広げて、財源が厳しいからもうやむを得ず有利子化を導入して、多くの人に奨学金がもらえる機会を与えよう、こういう法改正だと思っておりますが、その裏返しに成績の方はぎゅっと絞られてきた。しかも成績も数字であらわれる分の三・二から三・五へというので、これは私はちょっと時代の逆行、つまり教育を今改善していこうとする方向と逆行するんじゃないだろうか、こう思いますが、この部分いかがでしょうか。ちょっと私もこの部分だけ取り上げていろいろまた議論したいところなんですけれども、これは現行を据え置いたらどうかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
  158. 宮地貫一

    宮地政府委員 高校成績平均の三・二という基準でございますが、これは私どもの推計で申し上げますと、この基準に該当する者は、大学生でほぼ八割の者が該当するというぐあいに推計を出しているわけでございます。そしてまた、高校成績三・五以上の基準に該当する者が大学生の六四%いるというような推計をいたしておるわけでございまして、したがいまして、大学生全体の数から見ますと、それらの数字は大学生全体に対する該当の率からすれば、三・五にいたしましても相当、六四%というような数字から申せば半数以上の大学生が該当するということになるわけでございまして、全体に奨学生採用規模から申しますと、それらの者の中から相当さらに選ばれるということになるわけでございまして、もちろん経済的な基準、家計基準その他、その点には、実際に採用される者の場合には必要度というものが加味されて採用されることになるわけでございまして、確かに御指摘のように、あるいは成績を数字だけでつかまえるのはどうかという御批判、確かにそういう御批判があることは私どもも十分わかるわけでございますけれども、しかしながら、やはり現実に学力を見るとするならば、現在やっております基準以外のより適切な物差しがあるかどうか、そこはなお検討せねばならぬ課題ではあろうかと思います。  当面、私どもとしては検討はいたしますが、現在とっておりますこの学業成績についての考え方というものは、一応新制度においては、ただいま申し上げたような形で踏襲をいたしているところでございます。
  159. 池田克也

    ○池田(克)委員 今のお話を伺っておりますと、三・二で約八割、それから三・五で六割、二割該当者が減るんですわ。今六割だから、かなりの人たちが受けられるという話がありますが、この〇・三を上げることによって二割ぐらいの人たちが該当しなくなってくる。これは片方では利子がかかってくる、片方では成績の方でぎゅっと締められてくる。相当狭き門になってくる。これは多くの人たちが、苦しみながら、何とか勉強さしたい。親としては、もう今や美田を買ってやるわけにいかないから、せめて学問をさしてあげたいという願いを持っているわけで、さあ大学へ行って本当に学問をしているかどうか、親の方はわからないのですけれども、いろいろ仕送りをして苦労をしている。そういう状況の中で、確かにしっかり勉強しなさいと言って、育英会は非常によく補導というのでしょうか、チェックをしておられます。出席の問題とか定期試験の成績とか、途中経過をチェックして警告を発したりいろいろやっております。私は、そういう意味では一つの教育の現場に対する別の形のチェックとしていいことだと思っておりますけれども、ともかく指摘するにとどめますけれども、余り門を狭くしないように御配慮をいただきたいと思うわけでございます。  大臣、いかがですか。数字で少し締めて切るというのは、余り大臣の好みに合わないのじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。
  160. 森喜朗

    ○森国務大臣 私も余り勉強を好きな方じゃないものですから、こういう学業成績ですべてをはかるというのは、気持ちとしては余りいい方向じゃないと思います。  しかし、今事務当局にも最近の高校生の成績の実態をちょっと聞いてみますが、大体八割ぐらいが三・二。いわゆる評価が昔のように相対的ではなくて全体評価をしておりますから、三・二というのが八割ぐらいだということですから、大体高校のまあ普通のところではないかということですから。それに、どちらかと言えばやはり親の所得といいましょうか、そういうことの方にむしろ重きを置いて見るということの方が育英奨学の本来の趣旨に合うのではないか、私はそういうふうに考えます。
  161. 池田克也

    ○池田(克)委員 今の大臣のお話、私、非常に重要な部分だと思うんです。要するに、成績もさることながら親の経済的な問題を重視していこう、こういうことだと受けとめました。  時間がございませんのでちょっと先へ進みますけれども、私立大学と国立大学奨学生の問題なんですが、格差があるというふうに私は思うんです。私立大学の方が学資も高い。低所得階層というふうにはちょっと断定できないと思いますけれども、経済的に苦しい家計の方々の進学、こういうものもあるわけでして、高等教育の中で、国公立が二割、私立が八割になっている。しかし、奨学生数は五分五分だというふうに私、理解しております。それぞれ四万五千ずつぐらいだと思っております。これは単純に評価できないと思いますが、それは随分と私立に冷たいんじゃないかなという気がしております。いかがでしょうか。
  162. 宮地貫一

    宮地政府委員 確かに近年におきます高等教育の量的な拡充という面で、私立大学学生数が大変ふえてきておるわけでございます。そういう点で、貸与実態としては、国公立に比べて私立大学の場合が、比率から申せば、私立の場合には採用率その他の点で、非常に国公立に比べれば低くなっているという点は、御指摘のような実態があるわけでございます。  ただ、国立大学と私立大学学生の家庭の所得実態の点で見ますと、全般的に申しますと、国立大学の方が私立大学に比べて所得が低いという実態は片やあるわけでございます。もちろん、一部の国立大学等についてそうではないというような御指摘もあることはあるわけでございますが、全体的に申せばそういう実態にございます。  そこで、私立大学貸与人員について、採用割合などを勘案しながら増員に努めてきておるわけでございますけれども、今回五十九年度の例で申しますと、先ほど申し上げました有利子貸与について二万人をふやしておりますけれども、国公立について五千人、私立大学について一万五千人の貸与人員を措置するというようなことで、増員を措置しております有利子貸与制度のところの数字で申しますと、私立大学に相当ウエートを置いたふやし方を私どもとしても考えておるわけでございます。  そういう点で申しますと、学年進行が完成いたします六十四年度の数字で申し上げますと、私立大学貸与人員について四万四千人増加させるというようなことになっていくわけでございます。御指摘のような今後の私立大学奨学生の数の増員ということについては、十分配慮してまいらなければならない点だと思いますので、それらの点は今後の施策に私どもとしても十分反映させていくような努力をしてまいりたい、かように考えます。
  163. 池田克也

    ○池田(克)委員 この私立大学の問題だけでも随分また議論しなければなりませんけれども、私はこの際指摘をしておきたいのですが、私立大学の経営、これもいろいろと近年問題もあり、この委員会でも取り上げられてまいりました。しかし、これから恐らく数年の間、十八歳人口が大幅にふえていく、こういう実情の中で、私大というものについてそれを受け入れてほしいと文部省要請をしているように私は聞いております。私大としても、学生を受け入れるにはそれだけの設備あるいは教学の体制をつくっていかなければならないだろう。そういう状況の中で私がすぐ思いつくのは、やはり学資とか入学金とか設備に投ずる資金とか、試験は受かったけれどもそこへ親の負担というものが次々に押し寄せてくる、こういうことは想像するにかたくないわけなんですね。  そこで問題は、そういう状況で国として私立大学にかなりの十八歳人口の受け入れを要請しているわけですから、せめてこの期間については入学一時金等について何らかの、育英会だけでは賄い切れないかもしれませんが、銀行ローン等も含めまして一時金についての対応というもの、大学にもそうしたものを余り高額に課さないような要請もしなければなりません。ともあれ、この十八歳人口を受け入れていく高等教育のこれからの数年間というものについて、父兄の負担というものを考慮した何らかの手を打たなければならないのではないか、こういう問題意識を私は持っておりますが、この部分、大臣は、具体的なものはこれから先として、何らかの手を打たなければならないのじゃないか。プランがあればせひお示しをいただきたいのですが、これは国全体として深刻な問題があると思っておりますので、お聞かせいただければと思います。
  164. 森喜朗

    ○森国務大臣 先般、大学設置審、六十七年度におきます十八歳人口の対応、先生方も御承知をいただいておるわけでありますが、数字的にもやはり今日までの私学と国公立との、二対八といいましょうか、八割が私学におぶさっている。その数字もある程度、今後もそういう方向で推移していくという前提で十八歳人口の受け入れというものを考えていかなければならぬ。そういう意味からまいりますと、私学に対します負担あるいは私学に御協力いただくという文部省の立場から見れば、できる限り私学に対する振興策は考えていかなければならぬというふうに思います。  私学助成が財政状況の中で大変厳しい事態でもございますが、また私学自体も私立学校振興助成金というものについてのいわゆる見直しといいましょうか、より効果的な方向、そして、私ども法律をつくりました当時の二分の一助成という一つの精神、非常に難しい中にもその精神を生かして、どのような方向が最も私学助成にマッチしているのか、こんなことも検討しながら進めていきたいというふうに思います。  同時に、今御指摘がございましたように、逆の立場からいえば、いわゆる育英奨学金等は私学についてもう少しある意味では弾力的に考えていくべきではないか。先ほど局長が申しておりましたけれども、私学についてはかなり弾力的な考え方もしておるようでございますし、数字の割り振りもさることながら、実際の募集採用の中ではかなりその点については私学に配慮いたしておるようでございます。局長の答弁にもありましたように、私学に学ばせる親の所得から見るとかなり、国公立に比較してみるとより豊かという言葉はよくありませんが、比較の問題でありますが、そういう状況もあるようでございます。  いずれにしましても、今池田さんが御指摘をいただいた問題は大変大事なところだと思いますので、将来の私学振興策と同時に、育英奨学という面でどういうふうな形で私学のお手伝いをしていくか、そういうことも十分踏まえて、文部省としても今後ともそのような方向で、一つの御意見として承りながら検討さしていただきたい、こんなふうに思うわけでございます。
  165. 池田克也

    ○池田(克)委員 時間がもうなくなってまいりましたが、私、さっきちょっと大臣にもお伺いしたかったのですが、入学一時金について、育英会というのはこの一時金については余り配慮してないのでしょうか。私学振興財団等ではいろいろ貸し付けの方途も講じていらっしゃるようです。月々の生活あるいは学資については育英会対応しているようですが、これは何らかの新しい方途が必要じゃなかろうかと思うのですけれども
  166. 宮地貫一

    宮地政府委員 入学一時金の問題は、現実問題として私立大学で相当父兄の負担になるということは、確かに御指摘のとおりであろうかと思います。  現行制度で御説明を申し上げますと、先ほどの私学奨学事業の中で入学一時金の分割納入事業について、学校法人に対して私学振興財団を通じて融資をするという事業を現在実施しているわけでございます。これは五十二年度からでございますが、五十七年度の業態で申し上げますと、二十大学で約十一億が利用されているというのが現状でございます。  御指摘の育英会の育英奨学事業の中に、この入学一時金を対象とする貸与事業を導入するという点でございますけれども一つの研究課題であるというぐあいには私ども理解をしておるわけでございますが、問題点は、入学の意思を確認する方法として、やはり当該大学でなければ確認がなかなか困難であるというような現実の事務処理としての問題点というようなこともあるわけでございまして、現時点では、私立大学奨学事業援助の充実を図って入学時の学費負担の負担軽減については努めてまいりたい、そのように考えているところでございます。  なお、御指摘の点は、将来の検討課題として私どもも研究さしていただきたい、かように考えます。
  167. 池田克也

    ○池田(克)委員 これは大蔵省にもまた機会があれば要請をしていかなければならないと私は思っておりますが、返還免除制度というのが置かれておりまして、教育とか研究職等については、育英会のお金を使って勉強して、出てからある一定期間そうした仕事に従事した場合には免除される、こういう制度になっていると承知しております。これも、これだけに優遇しているわけですが、いい先生方を確保するということも私は大事だと思いますけれども、世の中にはいろいろ多岐にわたるものもございまして、先ほど行革審なんかでは、これもそろそろいいんじゃないかみたいな話も出ておりますけれども、私は、むしろもっと種類をふやして、いろいろな、今後の社会に有用な人物について免除、つまり給費というものを少しずつでもふやす方向というものにならないものか、こういうふうな問題意識を持っておりますので、この点についてもお伺いをしておきたいと思います。
  168. 宮地貫一

    宮地政府委員 御指摘のように、返還免除制度というのが、形を変えたある意味での給費ということにつながっている点も御指摘のとおりかと思います。したがって、御指摘の点は、育英奨学事業が本来貸与から給費というような方向に考えていくとするならば、よりいろいろな面で返還免除というような仕組みももっと積極的に考えるべきではないかというお尋ねであろうかと思うわけでございます。  先ほども御説明をしたわけでございますが、教育職、研究職についての返還免除制度についていろいろ御議論もあったわけでございますけれども、基本的には、やはり我が国の将来の発展の基本である学校教育の分野とかあるいは学術研究分野に優秀な人材を確保するという、その施策としてはぜひともこれは必要なものであるということで、現行制度と同様の、教育職、研究職については返還免除制度を存続させているわけでございます。  ただ、全体的に非常に厳しい財政状況下において、育英奨学事業の原資を確保するという観点から、返還免除額が相当多額に上っているという現状もございますので、先ほども御説明した点で言いますと、教員養成学部での、一般学部よりも特別優遇されている部分については一般学部並みに縮減をするというようなことで、今回の制度改正に当たりまして指摘をされておる点についての具体的に対応できる範囲内でのことについては対応をするということで、返還免除額の縮減というようなことについても配慮をしてきておる点でございます。  将来、返還免除の職種をより幅広く検討すべきではないかという御指摘は、一つの御提言として私どもも研究はさせていただきたいと思うのでございますけれども、現実問題として、やはり返還免除制度ということになりますと、それが将来のいわば育英資金の原資に循環して回転をしている、その点、それだけ圧迫する要因にもなるわけでございまして、それらの点については、基本的に育英奨学事業についての貸与か給費がという基本問題が別途あるわけでございまして、そういう基本問題の検討という点ではもちろん文部省の調査会でもいろいろ検討はいたしたわけでございます。しかしながら、当面、今日の状況下ではそういうことに踏み切るのはなかなか難しいということで、御説明申し上げておりますような内容でただいまのところ、制度としては対応してまいりたいというぐあいに考えておるわけでございまして、将来の研究課題としてそういうような点についても検討をすべきという点については、私ども真剣に対応いたしたい、かように考えます。
  169. 池田克也

    ○池田(克)委員 時間が最後になってしまいましたけれども、この法案の問題とちょっとずれるかもしれませんけれども、企業が、この学生を将来自分のところに就職をさせたいという意図のもとに、在学中からいろいろな形の資金というものを出す、こういう話を私、しばしば耳にいたします。これは、技術を持った人たち、あるいは文科系の方でもあると思いますけれども、かなりの、これは一流校になってくるのだろうと思うのですけれども、こういうふうな実態をいろいろ見てみますと、先ほどのように、いい成績、そして、次第次第にそういう問題は私としては形を変えてほしいと思っておりますけれども、奨学金ももらえる、企業からもいろいろな配慮がある、すぐれた人はみんなからいろいろな意味でもてはやされるものだと思うのでありますが、企業との関係でこうした機会がある特定のところに集まる、これは企業の行動ですからそれなりに自由であろうと思いますが、しかし、学生がそういう立場に置かれて勉強していくということについて、やっぱりこれは研究していかなければならないのじゃないかと思うのです。  と同時に、就職の場というものは、十月あるいは十一月というふうに決められておりますけれども、もう一歩踏み込んで、かなり早い時期から青田刈りのような状態が出てきている。ある新聞などでは「通産省が”青田買い”東大へ官僚参上、「協定」踏みはずす」という見出しで報道しておりまして、ここにも写真が出ておりますが、先輩が来て後輩に対していろいろとガイダンスをするというふうな事態がございます。片方では、純粋な気持ちで学問を探求し大学で勉強をする学生、そして大変苦しい汗を流している学生、もう片方では、いろいろと手だてを尽くして役所までが、協定というのがあるのだそうですけれども、かなり早手回しのこういうようなことをやってくる。だんだん学生の間には、本当に純粋な気持ちで青春を過ごしてきた中で、卒業間近になってくるとずいぶん違った暮らしぶりに分かれてくる。私は、こういう状態というのは余りいい姿ではないのじゃないか。やはり就職なら就職という問題はある時期以降考えさせることとして、それまでは本当にしっかりと勉強をしてほしい。そのためにいろいろと育英奨学制度を我々はこうして審議して、国の施策としてやっている。やがてどこかに就職をされ、それがまた国家に貢献することになると思うのですけれども、私は、そういう意味で、こういう就職の問題なんかも含めてみまして、育英奨学という問題はかなり底の広い問題だ、就職の問題まで含めてトータルとしていろいろ考えていかなければならない。きょうはそういう問題提起だけにさしていただきたいと思うのですけれども、この育英奨学の問題を研究していきますと、これが結局、小さいころから受験、受験と言ってきたその一番の仕上げの部分の暮らし、そして、どこへどう場を得て勉強したことを社会に生かしていくかという部分につながってくるわけだと思うのですね。  そういう意味で、文部省としても、他の省庁等とも連携をとって、こういう就職の場での余り激しい競り合い、上級職の発表があった、それよりも先駆けて大体だれがどこへ行きそうか見当をつけて、なんかと、こう取り合いのような状態で、ちょっとルールが踏み外されているように私は受けとめているのですけれども、これなども、この育英奨学の問題と全然別のようにも思うのですが、いや、しかし深い関係はあるんだ、そんなふうに私思って、ちょっとオーバーしてしまいましたが、最後に指摘をさしていただいたわけでございます。  いろいろときょうは長時間にわたってこの問題について申し上げたのですけれども、いろいろな施策の中で最も重要な国民的関心の部分だということをぜひ大臣にも御理解をいただいて、この有利子制については私は幾つかの疑問を持っております。今お話伺いますと、根幹が次第次第に揺るぎそうな部分もある。百億を超えるそうした利子補給をしていかなければもっていかない、こういう問題もきょうは出てまいりました。これからもまた、同僚の皆さんからこの問題、審議されていくと思いますけれども、一番重要な部分ではないかと思っておりますので、ぜひこの問題を中心として他の省庁にも働きかけ、まだこれからの教育改革の大きな柱として、父母の経費負担の問題を取り上げていただきたいことを大臣に重ねて要望して、質問を終わりたいと思います。
  170. 愛野興一郎

    愛野委員長 次回は、来る二十二日午前十時理事会、午前十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十一分散会