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1984-05-18 第101回国会 衆議院 文教委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年五月十八日(金曜日)     午前十時七分開議 出席委員   委員長 愛野興一郎君    理事 石橋 一弥君 理事 大塚 雄司君    理事 白川 勝彦君 理事 船田  元君    理事 佐藤  誼君 理事 馬場  昇君    理事 有島 重武君 理事 中野 寛成君       青木 正久君    稻葉  修君       臼井日出男君    榎本 和平君       北川 正恭君    河野 洋平君       坂田 道太君    二階 俊博君       葉梨 信行君    町村 信孝君       木島喜兵衞君    佐藤 徳雄君       田中 克彦君    中西 績介君       湯山  勇君    池田 克也君       伏屋 修治君    藤木 洋子君       山原健二郎君    江田 五月君  出席国務大臣         文 部 大 臣 森  喜朗君  出席政府委員         内閣法制局第二         部長      関   守君         文部政務次官  中村  靖君         文部大臣官房長 西崎 清久君         文部省初等中等         教育局長    高石 邦男君         文部省大学局長 宮地 貫一君         文部省社会教育         局長      宮野 禮一君         文部省管理局長 阿部 充夫君  委員外出席者         議     員 馬場  昇君         議     員 中西 績介君         議     員 佐藤 徳雄君         人事院事務総局         給与局次長   藤野 典三君         労働省労働基準         局監督課長   野崎 和昭君         文教委員会調査         室長      中嶋 米夫君     ――――――――――――― 委員の異動 五月十五日  辞任        補欠選任   佐藤 徳雄君    上原 康助君 同日  辞任        補欠選任   上原 康助君    佐藤 徳雄君 同月十八日  辞任        補欠選任   木島喜兵衞君    湯山  勇君 同日  辞任        補欠選任   湯山  勇君    木島喜兵衞君     ――――――――――――― 五月十六日  学校教育法及び教育職員免許法の一部を改正す  る法律案久保亘君外二名提出参法第一一号  )(予) 同月十八日  児童生徒急増地域に係る公立の小学校、中学校  及び高等学校施設の整備に関する特別措置法  案(木島喜兵衞君外二名提出衆法第三四号)  義務教育学校施設費国庫負担法の一部を改正  する法律案木島喜兵衞君外二名提出衆法第  三五号) 同月十二日  身体障害児者に対する学校教育改善に関する請  願(佐藤誼紹介)(第四八一〇号)  同(田邊誠紹介)(第四八一一号)  同(松沢俊昭紹介)(第四八一二号)  同(山中末治紹介)(第四八一三号)  病虚弱児童生徒教育等に関する請願戸塚進  也君紹介)(第四九三五号)  私学助成増額に関する請願外七件(岡田利春  君紹介)(第四九三六号) 同月十四日  私学助成大幅増額に関する請願西田八郎君紹  介)(第五〇三一号)  身体障害児者に対する学校教育改善に関する請  願(工藤巖紹介)(第五一二〇号)  同(多賀谷眞稔紹介)(第五一二一号)  同(池端清一紹介)(第五三〇一号)  同(福家俊一紹介)(第五三〇二号) 同月十五日  身体障害児者に対する学校教育改善に関する請  願(瓦力紹介)(第五四二七号)  同(野間友一紹介)(第五四二八号)  公立幼稚園学級編制及び教職員定数標準等  に関する法律制定に関する請願中村正男君紹  介)(第五六一五号)  養護教諭配置等に関する請願阿部昭吾君紹  介)(第五六八四号) 同月十六日  高校増設費国庫補助増額等に関する請願(中  村巖紹介)(第五九七五号)  養護教諭配置等に関する請願伊藤昌弘君紹  介)(第五九七六号)  同外一件(佐藤誼紹介)(第五九七七号)  同(柴田睦夫紹介)(第五九七八号)  同(鳥居一雄紹介)(第五九七九号)  同(中島武敏紹介)(第五九八〇号)  同(吉浦忠治紹介)(第五九八一号)  身体障害児者に対する学校教育改善に関する請  願(福岡康夫紹介)(第六二二九号) 同月十七日  私学助成等に関する請願山原健二郎紹介)  (第六二九〇号)  私学助成大幅増額に関する請願藤木洋子君  紹介)(第六二九一号)  育英奨学金制度改悪反対等に関する請願江田  五月君紹介)(第六二九二号)  同(山原健二郎紹介)(第六二九三号)  養護教諭配置等に関する請願外三件(阿部未  喜男君紹介)(第六二九四号)  同(網岡雄紹介)(第六二九五号)  同外二件(五十嵐広三紹介)(第六二九六号  )  同外三件(池端清一紹介)(第六二九七号)  同(上田哲紹介)(第六二九八号)  同(上野健一紹介)(第六二九九号)  同(小川国彦紹介)(第六三〇〇号)  同外二件(小川仁一紹介)(第六三〇一号)  同外一件(加藤万吉紹介)(第六三〇二号)  同(角屋堅次郎紹介)(第六三〇三号)  同(上西和郎紹介)(第六三〇四号)  同外三件(川崎寛治紹介)(第六三〇五号)  同(河野正紹介)(第六三〇六号)  同外四件(木島喜兵衞紹介)(第六三〇七号  )  同(木問章紹介)(第六三〇八号)  同(串原義直紹介)(第六三〇九号)  同外二件(佐藤誼紹介)(第六三一〇号)  同(清水勇紹介)(第六三一一号)  同(渋沢利久紹介)(第六三一二号)  同(新村勝雄紹介)(第六三一三号)  同(鈴木強紹介)(第六三一四号)  同外一件(田中克彦紹介)(第六三一五号)  同外二件(竹村泰子紹介)(第六三一六号)  同外三件(中村重光紹介)(第六三一七号)  同(馬場昇紹介)(第六三一八号)  同(堀昌雄紹介)(第六三一九号)  同(松前仰君紹介)(第六三二〇号)  同(水田稔紹介)(第六三二一号)  同(村山喜一紹介)(第六三二二号)  同(元信堯君紹介)(第六三二三号)  同(安井吉典紹介)(第六三二四号)  同(山口鶴男紹介)(第六三二五号)  同(山下八洲夫君紹介)(第六三二六号)  同(横江金夫紹介)(第六三二七号)  同外一件(横山利秋紹介)(第六三二八号)  同(和田貞夫紹介)(第六三二九号)  同(渡辺三郎紹介)(第六三三〇号)  同(小沢貞孝紹介)(第六三三一号)  同(菅原喜重郎紹介)(第六三三二号)  同外一件(田中美智子紹介)(第六三三三号)  同(藤田スミ紹介)(第六三三四号)  同(渡辺朗紹介)(第六三三五号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 五月十四日  教育基本法改正に関する陳情書  (第二三二号)  私学助成充実強化に関する陳情書  (第二三三号)  過疎県私立高等学校に対する特別補助制度の  延長に関する陳情書  (第二三四号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  公立障害児教育学校学級編制及び教職員  定数標準等に関する法律案馬場昇君外二名  提出衆法第八号)  公立幼稚園学級編制及び教職員定数標準に  関する法律案中西績介君外二名提出衆法第  七号)  日本育英会法案内閣提出第二五号)      ――――◇―――――
  2. 愛野興一郎

    愛野委員長 これより会議を開きます。  馬場昇君外二名提出公立障害児教育学校学級編制及び教職員定数標準等に関する法律案議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伏屋修治君。
  3. 伏屋修治

    伏屋委員 質問に先立ちまして、社会党皆さんがこの法律案提出されましたことに対しまして、衷心より敬意を表する次第でございます。  ただいま議題になりました法律案について、以下数点お尋ねをしてまいりたいと思います。  昨年の本委員会における審議においても問題になったと聞いておるわけでございますが、従来、盲・聾・養護学校は「特殊教育学校」と称せられておったわけでございますけれども、この法案では「障害児教育学校」と改めることにしてあると、この趣旨説明の中にも明示してあるわけでございます。昨年もこの問題について論議されておるようでございますが、再度このように提出された理由をお尋ねしたいと思います。
  4. 馬場昇

    馬場議員 答弁に先立ちまして、私どもが提案いたしました障害児教育学校標準定数法につきまして審議を進めていただきます委員長並びに委員皆さん方に心から感謝を申し上げたいと思います。  伏屋委員の御質問にお答えいたします。  特殊教育学校標準定数法障害児教育学校標準定数法名称を変えた理由は何か、こういうことでございますが、もともと特殊教育というのは、心身障害のある児童生徒教育する、こういうことでございまして、そのものずばり「心身障害児教育」と言えばいいものを、わざわざわけのわからないような「特殊教育」と今まで呼んでおったことに私は問題があると思いますし、さらに全国現場を見てみますと、「特殊教育」と呼んでおるところはほとんどございません。今どこでも「心身障害児教育」、こういうぐあいに呼んでおる実態もございます。  しかし、基本的に名称を変えました理由の一番大きいのは、何といいましても障害者に対する差別意識をなくしよう、こういう考えが主でございます。もう先生御承知のとおりでございまして、我が国におきましては、歴史的に、伝統的に偏見を持って、あるいは医学的知識がないために障害者に対する差別意識がまだ今でもあるわけでございます。そういうことにつきまして、これを一日も早く解消しなければならない。そういう意味で、教育の場における名称もそういう差別をなくするという意味で変えた方がいいんじゃないか、こう考えておるわけでございまして、あくまでも特殊というのは普通と異なるという意味ですから、本当に差別そのものでございますので、これを変えたいと思います。  さらに、この名称を変えるというのは国民の意思でもあると私は思います。御存じのとおりに五十六年は国際障害者年でございまして、そのときに国会におきましても「障害者の「完全参加と平等」」ということに基づきまして国会決議もやっておるわけでございます。「社会発展への「完全参加」と、他の市民の享受する生活条件との「平等」」を決議しておるわけでございまして、国会意思でもあると私は思います。そして当文教委員会でも十年ぐらい、このことが議論されておるわけでございまして、そのときに政府の方でも名称変更を積極的に検討するという答弁も受けておるわけでございます。こういう意味におきまして、今全国に四百万人くらいの障害者がおられますけれども、そういう人たちの願いでもあるわけでございまして、それにこたえるためにこういう変更をしたところでございます。
  5. 伏屋修治

    伏屋委員 昭和五十五年の第九十一国会定数法改正法案が成立しておるわけでございますけれども、それ以後二回本法案が提案され、今回が三回目と聞いておるわけでございますが、その五十五年に成立しました定数法改正法案とどのように違うのか、またこの法案要点というのは一体どの点にあるのか、お尋ねしたいと思います。
  6. 馬場昇

    馬場議員 政府法律とこの法律の違い、またこの法律内容要点についての御質問でございますが、先ほど答弁いたしましたように、まず第一に、名称政府法律と変わっておるところでございます。  それからいま一つは、障害児教育というのは、本当に早期に教育をする、訓練をするというのが一番大切でございます。そういう意味におきまして、現在も幼稚部というのがあるわけですけれども、この幼稚部につきまして標準定数法がないわけでございます。これに定数法をつけるということが第二に変わっておるところでございます。  それから、現在の定数法は、小学部中学部義務教育学校定数法高等部公立高等学校定数法、その中に含まれておるわけでございますが、今どこの学校でも幼稚部から高等部まで併設しておるというのが普通でございますし、私どものこの法律では、幼稚部から小学部中学部高等部、これを現在の法律の中から取り出して一貫した一つ定数法につくり上げる、これが第三の問題でございます。  それからいま一つは、最近、養護学校義務制になりましてから、重度とか重複障害児の入学が非常にふえておるわけでございまして、これに対するきめ細かい教育配慮というのが政府の案では十分でございませんので、これに配慮を加えた、こういう点もございますし、それにかかわりまして、重度重複障害児が入ってまいりますと物すごく教職員労働が過重になってくるわけでございまして、健康被害というのがたくさん出ておるわけでございます。こういうことのないようにこれを解消したいというきめ細かい配慮を加えておるわけでございます。  いま一つの特徴は、寄宿舎という場所を、私どもこの法律では教育の場として考えて、それに対する教員配置をつくるとか、こういうことをしておるわけでございまして、こういう点につきまして六カ年計画で完全に実施をしたい、こういう内容になっておるわけでございます。
  7. 伏屋修治

    伏屋委員 大体要点をお尋ねいたしましたけれども、これから以降、この法律案の各条項に従いまして逐条的に尋ねてまいりたい、こういうように考えております。  最初に、第三条の学級編制の問題でございますが、小学部中学部が六人、それから高等部が八人、幼稚部五人、そして重複障害児に対する場合は三人、こういうふうに学級編制考えられておるようですけれども、この根拠についてお尋ねしたいと思います。
  8. 馬場昇

    馬場議員 答弁をいたします。  その根拠というのは、基本的に言いますと、障害児教育水準維持向上というところに視点を置いておるわけでございますが、最近の状況は、盲学校聾学校生徒がだんだん減っておるわけです。それに引きかえまして、先ほど言いましたように重度とか重複障害児は非常にふえておるという傾向でございまして、こういうものに対応させるというような意味でそういう定数考えておるわけでございます。  しかし、学級定数というのは少なければ少ないほどいいというものでもございませんし、ある意味において集団的な教育を必要とするためにある人数が要る、こういう考え方もあるわけでございまして、そういうものを勘案いたしまして、この辺が一番教育効果が上がるだろうというようなところで、私たちの長い間の経験、現場の報告から考えましてそういうことにしたわけでございまして、小中学部でいいますと、現在七名ですけれども六名、一名減らした方が適当だろう、それから高等部は九名ですけれども八名、専門学科は八名ですけれどもこれを七名、そして特に重度重複障害児学級編制をつくりまして、これは三名にする、こういうぐあいにいたしておるところでございまして、要は、こういうことをいたしまして教育水準維持向上をさらに図っていこう、こういう考えでございます。
  9. 伏屋修治

    伏屋委員 次に、第六条、第九条の七及び第十一条で寄宿舎について定めてあるわけでございますけれども、その考え方内容について詳しくお聞かせいただきたいと思います。
  10. 馬場昇

    馬場議員 先ほどもちょっと申し上げましたけれども寄宿舎というものを教育の場と考えて、そして寄宿舎教育的機能を増進しよう、こういう考え方で対策を立てておるわけでございまして、一舎室当たりにつきまして幼稚部小学部中学部は五名、高等部は体が大きいわけですから三名、そして重度重複障害児は一人を三名、こういうぐあいに計算をいたしておるところでございます。  それからいま一つは、寄宿舎教育の場と考えるわけでございますので、現在寮母さんがおられるわけでございますけれども、この寮母さんを私ども寄宿舎教諭という位置づけをいたしまして、これは名称変更するだけではなしに法的にも身分確立をいたしたい、こういう考え方を持っておるわけでございまして、学校教育法及び教育職員免許法の一部を改正する法律案というのを私ども社会党は今参議院の方に提出をいたしまして、寮母寄宿舎教諭にするという名称変更身分確立の手だてをとっておるところでございます。そういう意味で、寮母さんを寄宿舎教諭にする、そしてその定数考えておるわけでございます。  さらに、現在寄宿舎には舎監がおられるわけでございますけれども、この舎監の方も寄宿舎教諭とするという位置づけをいたしておりまして、その定員配置考えておるところでございます。  それからさらに、寄宿舎におきまして、先ほど言いましたように、寝たきりの児童生徒とか重度重複障害児もたくさんおるわけでございますし、病人もおるわけでございまして、医学的な行為が必要になってまいりますので、看護婦配置考えておる、こういう形にいたしまして、寄宿舎舎室編制というものを、その他の職員ももちろんおりますけれども、つけ加えまして十分に措置したところでございます。
  11. 伏屋修治

    伏屋委員 次に、第三章で「教職員定数標準」というものが提案されておるわけでございます。その九条の一、二で教員の数が、小学部で一・八四人ですか、それから中学部で二人、高等部で二・八三人というふうに決めてあるわけですが、これはどういう根拠からこういう数を出されたのか、お尋ねしたいと思います。
  12. 馬場昇

    馬場議員 教職員定数標準でございますが、「教諭等」というようにあらわしておりますところの教頭、教諭、助教諭講師の数でございますが、小学部は今おっしゃいましたとおりに学級数に一・八四を掛けております。それから重度重複障害児学級には二を掛けております。それに小学部におきましては十二学級以下では一人、十三学級以上では二人を加える、こうして教諭等定数算定いたしております。  中学部におきましては、学級数に掛ける二人、それから一学級、二学級のときは五名にする、三学級のときは八名にする、こういうぐあいにいたしておりますし、小学部と同じように十二学級以下のところは一名、十三学級以上のところには二名加える、こういうぐあいにいたしております。  それから高等部につきましては、学級数に対しまして二・八三を掛ける。  そして、専門教育を主とする学科には学科数掛ける六人、こういうぐあいにいたしております。  幼稚部は、学級数掛ける三人でございます。  ここに小学部一・八四、中学部二人、高等部二・八三人、幼稚部三人、そういうのを学級数に掛けておるわけでございますが、この数字をどうやって出したかということについてでございます。  先ほどちょっと申し忘れましたけれども、具体的に今回の私ども標準法では、教職員健康被害というのが最近非常に出ておるものですから、教職員の持ち時間というものを減少さしておるわけでございまして、小中学校を週十五時間にいたしておるわけです。それから高等部を週十二時間に実はいたしておるわけでございます。それで、学習指導要領に定められた時間を小中週十二時間とか十五時間、高校十二時間、そういうもので割りましてこういうような数字を出して定数をはじいた、こういうような格好になっておるわけでございます。  それから、寄宿舎教諭につきましては、舎員が八十人以下のところは二人、八十一人から二百人までは三名、二百一人以上は四名にいたしておるわけでございます。  そのほかにまた、派遣教員の数も算定をいたして加えております。  そして、雑則の第二十三条によりまして、分校についてこれはやはり一つ学校としてみなす、こういうようなことをいたしておるわけでございます。  以上でございます。
  13. 伏屋修治

    伏屋委員 次に、第九条の三ですけれども高等部専門学科等学科数に六を乗じた数の教員配置となっておるわけでございます。これはどういう意味なんでしょうか。
  14. 馬場昇

    馬場議員 これは職業訓練等、こういう職業専門学科をやる学級でございますので実習助手というものが現在おるわけでございますけれども、それを実習教諭にいたしまして、実習教諭の数をそこで計算をして出しておる、こういうことでございます。
  15. 伏屋修治

    伏屋委員 先ほどのお答えの中にも派遣教員について申された点がございましたけれども派遣教員実態というのは一体どういう実態なのか、お聞きします。
  16. 馬場昇

    馬場議員 お答えいたします。  養護学校が義務化されたわけでございまして、これは教育機会均等からも当然のことでございます。そういたしますと、体がほとんど動かないとか学校に来れない、自宅で寝たきりとか外に出れないというような障害者もおるわけでございますが、こういう人たちにも教育機会均等という立場から当然教育を施さなければなりませんし、そういう人たちにも教育を受ける権利が実はあるわけでございますので、そういう人たち教育を受ける権利教育機会均等という立場から訪問教育ということを現在やっておるわけでございます。  現行はどうなっておるかといいますと、訪問教育対象の子供五人は、現在の十二カ年計画が達成いたしますと三人になる計画に今の文部省のでもなっておるわけでございますけれども、現在は五人でございまして、この五人を一学級といたしまして派遣教員教員配置を現在やっております。しかし、私どものこの法律案では法第九条の八によりまして、いわゆる派遣教員というものをその生徒独自のものとして定数配置をしております。児童生徒五人までに対しまして先生を三人配置する、あと三人ふえるごとに一人を追加する、こうして派遣教員定数算定をいたしておるわけでございます。  現状は、訪問教育する学級小学部で千三百四十九学級ありまして、生徒数が四千九百十五名おります。中学部で九百七十二学級ありまして、三千百九十六名の生徒数がおるわけでございますが、訪問教育実態は、週二回現在行われておるというのが平均的な実態でございます。そして、一回行きましたら二時間ずつ授業をする、教育をするということになっておりますので、週四時間しか実は教育を受けられない、これが今日の状態になっておるわけでございます。さらに実態を言いますと、訪問教師の三割ぐらいが教諭ではなしに講師とか非常勤講師になっておるわけでございまして、これは不十分な実態でございます。そして、本当に最近父母の中から、訪問の回数をふやしてくれという物すごい強い要求もあるわけでございます。そして、できれば正規の教諭に来てもらいたい、こういう父母要求も実はあるわけでございますので、私どもの法では、最低週に七時間から八時間は訪問教育を実施できるようにして教員定数考えておる、こういうことでございます。
  17. 伏屋修治

    伏屋委員 大分時間も経過いたしましたので、次に、第十条の「養護教諭等の数」、十二条「事務職員の数」、十三条に「寄宿舎看護婦の数」、十四条に「学校栄養職員の数」、十六条「学校給食調理員の数」、十九条では「学校警備員の数」、二十条では「学校用務員の数」、これらが出されておるわけでございますが、一つ一つやっておりますと時間が経過いたしますので、今申し上げましたこと一括まとめて、どのような理由でこういう定数を決められたのか、お尋ねしたいと思います。
  18. 馬場昇

    馬場議員 障害児教育というところにおきましては、例えば寄宿舎関係とか、大変な職員も要るわけでございます。それから、例えば自宅から通学するというときには、やはり送り迎えするバスなんか要るわけでございます。そういうところは運転手さんだけでは足らないわけでございまして、やはり介添えをする添乗員というものも要るわけでございますし、さらに寄宿舎等におきましては、医療の補助的な行為をしなければならぬ看護婦さんも要るわけでございます。さらに、寄宿舎がないところでも昼の給食、寄宿舎のあるところは三食つくるわけでございますから、そういうところには栄養職員とか調理員とか要るわけでございまして、きめ細かい障害者教育を施すためには本当にたくさんのこういう職員の人が要るわけでございます。これを実態に照らして、少なくとも、例えばこういう栄養職員は何名、あるいは調理員さんは何名とか、あるいは学校警備員なんかも定数に入っておるわけですけれども、これも普通の学校の警備員なんかと大分違うわけでございまして、夜の先生との連絡とか家庭との連絡とか、たくさんあるわけでございますし、救急医療関係の処置すべきこともあるわけでございます。そういう点につきまして、実態に照らして定数算定しておる、こういうことでございまして、一々申し上げますと長くなるものですから、抽象的にお答えいたしたいと思います。
  19. 伏屋修治

    伏屋委員 先ほどの答弁の中にもちょっと触れておられたわけでございますが、分校の問題でございます。分校の定数配置についてもう一度お尋ねしたいと思います。
  20. 馬場昇

    馬場議員 これは結論だけ申し上げますと、分校も一つ学校として、一つ学校計算基準によりまして教職員その他の職員配置する、こういう原則でやっております。
  21. 伏屋修治

    伏屋委員 障害児学校の日々の教育、またその運営というものは非常に厳しいということを私も痛切に感じておるわけでございますが、できるのならば今のような定数配置というものを実現したいものだと私も念願いたしておるわけでございます。とりわけ、その現場の中で障害児者に対する教育をつかさどっておられる先生方の御苦労というものは、大変なものがあるのではないかと思うわけでございますが、そういう先生方の勤務の実態というものが、教育活動に定着するというところまでいかない。ほんのわずかな期間で結局体を壊して普通学級の方へかわらざるを得ない、こういうのが実態ではないかと思うわけでございますが、その辺の実態について、おわかりの点、明らかにしていただきたいと思います。
  22. 馬場昇

    馬場議員 先ほどから何回も言っておるのですけれども、最近重度重複障害児の入学がだんだんふえてきておるものですから、そういう児童生徒について、教育の場におきましても、あるいは訓練の場におきましても、さらには寄宿舎におきましても、あるいは食事をするときでも、例えば体の非常に大きい子供なんかを扱うと大変な労働も要るわけでございますし、また、もちろん正規の教育をする場でも非常に困難をきわめるわけでございまして、そういう意味でこの障害児学校先生方の最近の健康被害というのは大変なものでございます。その被害もだんだんふえてきておりますし、特に女子職員の出産等に対する障害なんかも非常に顕著にあらわれてきておりまして、大変な労働をされておるわけでございます。そういうこともございまして、従来からある盲・聾の学校では、長い先生も案外たくさんおられるのです。  ところが、ここにちょっと統計がございますけれども養護学校では本当に五割ぐらいの先生が一年から四年ぐらいまで、短い先生が非常に多い。そして、大体三カ年ぐらいして体を壊されて普通の学校に転校を希望して出ていかれるということで、行きたがらない、行った人は健康を壊して転勤する、こういうような実態があるわけでございます。こういうものを解消するためにも勤務条件をよくしてやらなければ、障害児教育に大変な支障を来すわけでございますので、こういう点も解消するために、先生方が長く定着して使命を感じて一生懸命やられるようにということで、この法律によって勤務条件をよくしたい、そういう考え方を持っておるところでございます。
  23. 伏屋修治

    伏屋委員 時間が参りましたので、最後に大臣にお尋ねしたいと思います。  九十一国会定数法改正法案が成立しまして以後、きょうでこの法案は本委員会に三度目の提案と聞いておるわけでございます。今、逐条的にお尋ねをいたしてまいったわけでございますが、福祉国家の教育行政というものを考えていくならば財政的な裏づけも必要であろう、これは認めるわけでございますが、何としましてもこういう弱者、教育的弱者に対する手厚い教育というものが施されていかなければいけないのじゃないか、このように考えるわけでございます。今まで私がお尋ねしましたことに対して大臣はどういうふうにお考えになっておられるのか、お尋ねしたいと思います。
  24. 森喜朗

    ○森国務大臣 養護学校等に対します教育に手厚く措置をするようにということ、基本的には文部省としても伏屋さんと同じ考え方をいたしておるわけでございます。  そういう意味で盲・聾・養護学校、小中高等部教諭、あるいはまた、今お話に出ておりましたような寮母等その他の教職員定数は、御承知のように、五十五年から十二年計画でただいま改善中でございます。その配置率につきましては、毎年毎年予算折衝の中でいろいろと工夫をいたし、伏屋先生のお気持ちのように、そうした中にできるだけ配慮をいたしながら今日進めてきておるわけでございます。  今御提案をいただきましたこの法律案につきましては、ただいま進めております十二年計画の改善を大幅に上回ることになります。私ども計画を上回る増員を六年計画でやろうということでありますから、残念ながら現時点では、政府としてはこのような計画につきましては変更は困難である、こういうふうに考えておるところでございます。
  25. 伏屋修治

    伏屋委員 今、変更は困難であるという大臣の御答弁でございます。それは予算的な措置というものを勘案されての御答弁だと私は思うわけでございます。たしか五カ年計画で改善計画が出されておるわけでございますが、教育というものは一般のほかの行政と違う、生きた子供を相手にする大事な行政でございます。それだけに、毎年の財政的な変動によって変更されざるを得ないというような場に追い込まれることは、極めて遺憾であると私は考えるわけでございます。そういう面においての予算的な裏づけというものも、どのような経済変動があろうとも何としても貫いていっていただきたい、私はそういうように希望をいたすわけでございます。今ここで提案されたような定数配置あるいは学級編制の数、そういうものから考えていけば、私の大体の予算的な考え方でいきましても百二十億ぐらい要るのではないか、このように私は考えるわけですけれども、大臣も前向きに、毎年度の予算要求においては、福祉国家の教育行政はかくあるべきだという積極的な姿勢を予算措置の中にやはりあらわしていただいて、この定数が一日も早く実現できるように御努力をお願いしたい、こういうふうに考えるわけでございます。  事務当局としては、そういう問題に対して具体的にどういう手順で今のような定数増を図っていこうと考えておられるのか、それは改善計画の中で明らかでございますけれども、それ以上にもう少し突っ込んでお答えをいただきたい。
  26. 高石邦男

    ○高石政府委員 先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、五十五年から六十六年の十二カ年の改善計画で、例えば学級編制、一般の場合、重複の場合、こういうような点とか、養護、訓練担当教員の増、寄宿舎舎監の定員の増、寮母定数の増、研修等の確保という、それなりに前向きの対応で今進めようとしているわけでございます。  再三大臣も答弁しておりますように、この十二カ年計画の最終目標は変更しないということでございますので、その線に従って来年度以降の定数要求をしていかなきゃならないというふうに考えているところでございます。
  27. 伏屋修治

    伏屋委員 馬場議員外二名の方が担当されたこの法案というのは、その裏づけとしては、現場先生方の声を非常に重視してみえるわけでございまして、今臨教審の法案もかかっておるわけでございますが、やはり現場の声というものを本当に重視する中で教育行政の骨組みを立てていかないと、いわゆる臨教審が通っても現場は変わらないというようなことになる、そういうことを私は強く感ずるわけでございます。  いずれにしましても、そういう現場の方々のあるいは現場障害児者の実態というものに即してこの法案が提案されておるとするならば、大臣も事務当局におきましても、何としましてもこの法案が成立するように積極的な姿勢で臨んでいただきたい、このことを強く要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  28. 愛野興一郎

  29. 山原健二郎

    ○山原委員 現在、盲・聾・養護学校におきまして重度・重複児が増加する傾向にあります。そのために教職員の負担増、特に婦人教職員の妊娠障害などが大変訴えられておりまして、こういう時期にこれを何とか解決しなければならぬということは、どなたも当然考えておるところだと思いますが、そういう現象の中で今度この法案を出されたということは大変時宜に適した解決方法だと思いまして、その点、感謝をいたしております。  そこで、最初に重度・重複児の増加傾向の状況あるいは教職員の負担増による健康破壊の問題、特に寮母さんの健康障害が大変問題になっておりますが、それらの点について実態を把握しておられましたら、数字を挙げてまでおっしゃらなくても結構ですが、大体どういう状況にあるか伺いたいのですが、いかがでしょうか。
  30. 馬場昇

    馬場議員 山原委員にお答えをいたします。  先ほどから申し上げておりますが、義務制養護学校がなりましてから、特に重度重複障害児の入学者がどんどんふえておるわけでございまして、ここに東京都の障害児学校関係者が調査になりました重度重複障害児生徒のふえる推移というものがございますが、その中の一部を申し上げますと、これは肢体不自由児養護学校についてでございますけれども重度で全面介助が必要だ、こういう児童生徒昭和四十九年には全生徒の三八・九%であったのが、昭和五十四年には半数を超えまして五五・四%になっておりますし、昭和五十六年には何と五八・九%とふえておるわけでございます。さらに、知恵おくれの養護学校でございますけれども昭和四十九年に全面介助が必要という児童生徒が二六%ぐらいありましたが、昭和五十四年には四六・五%にふえておる、こういうように年々重度重複障害児の入学がふえておるという実態にございます。  こういう実態で非常に厳しい教育をやっておられます教職員健康被害の状況ですけれども、これまた去年の東京都の障害児学校関係者の調査によりますと、一番多い健康被害はやはり腰痛症でございます。これが圧倒的に多く、大体四人に一人ぐらいの先生は治療を受けたという経験のある方でございますし、この調査時点でも、二十人に一人は現在通院中だ、治療中だ、こういうようなことになっておりまして、これは児童生徒の体も大きくなっておりますし、そういう者を抱え上げたりあるいは食事の世話、入浴の世話、いろいろあるわけでございますので、腰痛が非常に多くなっております。  二番目は、胃腸障害が非常に多くなっておりまして、五人に一人ぐらいが胃腸障害になっておるわけでございます。これは、息つく暇もない忙しさとよくあらわされておられるのですけれども、そういう疲れやあるいはストレスの蓄積、こういうものが胃腸病障害としてあらわれてきておるのじゃないかと思います。  それから、三番目に多いのが産婦人科系統の障害で、女子職員の五人に一人ぐらいはこの産婦人科系統の疾患になっておられるわけでございまして、これは調査によりますと、二十代、三十代に非常に集中しておるようでございます。  そこで、今時に御質問がございました寮母さんの場合でございますけれども、実際、今宿直があるわけでございまして、調べてみましたところが、全国平均大体月に六回か七回宿直をなさっておるようでございます。  そして、出産に当たりましての調査をしておるわけですけれども、産前の異常を訴えた人が三八%ございます。それから出産異常が三七%、そして産後の異常が一五%、こういう数字が出ておるわけでございまして、障害児学校に勤めておられます教職員の方々にものすごい健康被害、破壊が進んでおる状態でございます。  以上です。
  31. 山原健二郎

    ○山原委員 今のような大変深刻な実態というのはしばしば現場でもお聞きしますし、また私ども、各党ともそうだと思いますが、要請に来られる現場先生方からその実態を伺いまして、これは何とかしなければならぬというのは皆さん一致しておるところだと思います。  それで、今までの学級編制あるいは定数改善の問題についてはいろいろ経過がありまして、ちょうど去年もお尋ねしたのですが、六年前に社会党、共産党の共同提案で、公立障害児学校における学級編制基準あるいは教職員定数標準に関する法律案を出しました。それと今度の場合は、また前進した立場での違った側面を持っておると思います。  それからもう一つは、今文部省の方から伏屋さんに対してお答えがありましたように、前進的な前向きの改善をやっておるというお話がありましたが、その一つは、四年前の第九十一国会で成立しました現在の教職員定数法だと思います。それでは一定の改善がなされております。また同時に、現行の教職員定数法に基づいて四年前の四月から実施されております例の教職員定数改善十二カ年計画があるわけですが、これでは障害児学校には五千百二十四名の増員という計画でございまして、八〇年度から八十四年度まで五年間毎年度百五十名、計七百五十名の改善が行われているわけです。  このように教職員増が一定程度図られているという現状について、これは本当に前向きなのかどうか、御見解がありましたら提案者に伺いたいのです。
  32. 馬場昇

    馬場議員 まず第一点でございますけれども、今から六年前、一九七八年、昭和五十三年に、日本社会党と日本共産党が共同でこの障害児教育学校標準定数法というのを出しましてから、これで三回目になっておるわけでございますが、今度も私たち社会党が出しましたのは、昭和五十二年に社・共で共同で出しましたのとどういう違いがあるかということでございますが、基本的な性格、内容はほとんど変わっておりません。性格と内容は大体同じ趣旨です。しかし、先ほどから言っておりますように、最近の盲・聾学校生徒児童の減少、さらに重度・重複障害者の入学者がふえてきた、教職員健康被害が非常に増大しておる、こういうこともありまして、その障害別の実態とその現場からの要求などによりまして、六年前に出しました法律をさらによりきめ細かく配慮をして定数配置をしておるというのが今度の法律と六年前の法律との、違いじゃありませんが、拡充強化した点でございます。  それから、一九八〇年の九十一国会で成立いたしました定数法の改善、これについての意見でございますけれども、先ほど申し上げましたように、あれには幼稚部標準定数法がないんですよ。やはり私たちは、基本的にこれは致命的な欠陥だと思っております。それから、小中高一貫性がなくて、小中高総合的に一貫して特殊障害児教育をやらなければならぬということでございますが、その一貫性が欠けておるという批判を持っておるわけでございまして、全く実情に沿っていない、こういうぐあいに考えておるわけでございます。  いま一つは、やはり寄宿舎教育的機能教育の場としての考え方が今の標準法政府がやっておりますものにはない、こういうぐあいに考えておるわけでございます。  そこで、今もおっしゃいました、しかし一定の前進はあっているんじゃないかという話もあるのですが、確かに私どもも、教員寮母合わせまして五千百二十四名ふやすということですから、この点はやはり前進しておる、こういうぐあいに私は思いますけれども、例えば寄宿舎教育の機能を尊重していないというのは、寮母さんなんかは、小規模のところにはちょっと増員があっているんですけれども、普通のところには一名もこの十二年間にわたって寮母の増員がない、こういうところは致命的な欠陥でございますし、さらに重度重複障害児だとかあるいは健康被害、これに十分対応できていない、こういうことでございますし、さらに基本的には、教職員の週担当時間数を減らすという意図が全然入っていない、こういうところが非常に問題であろう、こう考えております。
  33. 山原健二郎

    ○山原委員 提出されました法案が非常に多項目にわたっておりまして、一々お伺いするのに時間もかかりますし、中身の大変濃いものですから、今お話の出ました寄宿舎の問題についてのみ、ちょっと二、三点伺いたいのです。  第六条で「寄宿舎舎室編制標準」が定められております。この舎室編制というのはどういう内容のものなのか。第十一条には「寮母の数」の規定がなされていますが、これにも関係いたしますので、この舎室編制という考え方内容及び寮母の数がどういうふうになるのかという点について伺いたいと思います。
  34. 馬場昇

    馬場議員 舎室につきましては、幼稚部小学部中学部、これを一部屋五名にいたしております。高等部は、体も大きいわけですから、一部屋三名にいたしておるわけでございます。これに対しまして寮母さんの数は、寄宿舎教育ということになるわけですけれども、この舎室に対しまして、小学部は舎室掛ける二、中学部も舎室掛ける二、高等部は舎室掛ける一、幼稚部は舎室掛ける三、これで寮母さんの定数を出しておるわけでございます。今言いました舎室掛ける係数にしましても、十人に満たないところは最低十名とする、こういうぐあいにいたしておるわけでございます。  以上です。
  35. 山原健二郎

    ○山原委員 引き続いて寄宿舎に関連しまして、寄宿舎看護婦の規定が第十三条に出ておりますが、寄宿舎では、病弱児あるいは肢体不自由児等が夜中にてんかんとか引きつけなどを起こす場合がございまして、その場合に、看護婦さんが寄宿舎に勤務している場合に、それに対する対応は随分適切なものがなされると思います。この点についてこの法案はどうなっているでしょうか。看護婦の問題です。  引き続いて寄宿舎の給食の問題ですが、学校で給食をやっている場合、学校では給食とそれから寄宿舎生のための給食を一緒の給食室で同じ栄養職員と給食調理員の方とがやっているというのが実情だと思います。学校だけの給食をやっている場合は一食分だけつくればいいわけですけれども寄宿舎を持っている場合は三食になるわけです。当然、栄養職員さんあるいは給食調理員さんの労働時間も過重になって、そのために腰痛やあるいは頸腕症あるいは神経痛などが発生していると伺うのでございますが、こういう点を考慮してこれを改善するような職員配置が必要と思いますが、この法案ではその点はどうなっておるでしょうか。  それから三点目に、給食に関連しまして、肢体不自由養護学校では、給食献立をつくる上で特別食あるいは病人食が必要であって、そういう意味では仕事が複雑で多くなるわけでございます。この点を配慮して加配する必要もあると思いますが、この点について提案者の方は何かお考えを持っているでしょうか。
  36. 馬場昇

    馬場議員 寄宿舎看護婦定数についてでございますけれども、今山原さんおっしゃいましたように、非常に必要性があるわけでございまして、重度重複障害児がふえておるものですから、非常に虚弱児もおりますし、それから薬を常時飲ませなければならないというような子供も実はおるわけでございますし、それに近いような子供もたくさんおるわけでございます。そういうことで、特に免許を持ったところの看護婦さんがぜひ必要だ。その看護婦さんがやはり病気療養上の世話をするとかあるいは治療上の補助をするとか、こういうことは今の重度・重複児のふえた中では絶対に必要なことでございますので、そういう看護婦さんの定員を配置しておるということでございます。  人員はどうしておるかといいますと、肢体不自由者または病弱者を教育する養護学校寄宿舎のあるところに配置することにいたしておりまして、大体一つ寄宿舎看護婦さんを十名、これは寮母さんの数と大体同じでございます。この方々は宿直もしなければならぬわけでございますので、十名にしておるわけでございます。そして、十九室以上部屋があるところはさらにそれに加算をする、こういうような方法を考えておるところでございます。  それから、今おっしゃいました給食の問題についてでございますけれども、おっしゃったとおりな現状であるわけでございますので、私どもといたしましては、栄養職員寄宿舎のないところは一人、寄宿舎のあるところには二人配置することにいたしております。  それから給食については、今寄宿舎のあるところ、ないところと御質問者がおっしゃいましたが、まさにそういう状況があるわけでございますので、私どもは、学校給食だけをやっているところ、それから寄宿舎の給食をやるところ、この二つに分けて実は考えておるわけでございまして、学校給食調理員は三名、そして二百一人以上のところは三人にプラスすること、児童数から二百人を引いたのを百で割って、こういう実態に合わせて算出をいたしております。寄宿舎の給食調理員はこれを六名、それで、百一人以上のところにはまた加算をする、こういう方法をとっておるわけでございます。  その中で、特に最後に御質問がございましたところの特別食、病人食というのが実は非常に必要になってくるわけでございまして、魚なんかの号とかその他、普通食を食べさせて死亡した、こういう例さえも実はあるわけでございますし、そしてまた、非常に不自由でございますし、病弱でございますから、例えば一つの物をやるにもそれを小さく切り刻んでやらなければならないとか、そういう特別食、病人食、こういうのが非常に必要になっておるわけでございますので、そういうものの多いところには、特に肢体不自由の養護学校ですけれども、そういうところには例えば学校給食調理員を一名ふやす、その定数三名を四名にする、あるいは寄宿舎につきましては六名であるのを八名にする、そういう特別食、病人食をたくさんつくる肢体不自由養護学校につきましてはさらに給食調理員等の加算を考えておる、これがこの法案内容になっておるわけでございます。  以上でございます。
  37. 山原健二郎

    ○山原委員 子供の学習権を本当に保障するという立場で、子供には最高のものを与えよという、この国家の任務を書いた国際規定もあるわけですが、そういう意味で、そういう細かいところにも気を使っていくというのがこの法案の趣旨だと思います。  そこで、これからちょっと文部省の方にお伺いしたいのですが、昨年、九十八国会でございますが、この問題が審議をされまして、そのときに、私の方の栗田委員がおいでになってお尋ねした経過がございますので、この点についてその後の状況を伺いたいと思います。  というのは、例の十二カ年計画終了時点を一〇〇としてみますと、全国平均九八%になり、五十七年五月一日現在で八〇%台の県が六県ある、それが秋田、宮城、群馬、静岡、山梨、福井の六県であると当時の初中局長の鈴木さんがお答えになっております。あれから年月が経過しております今日、これらの六県はどうなっているでし。ようか、ちょっと伺いたいのですが、どうでしょう。
  38. 高石邦男

    ○高石政府委員 昨年、定数の充足率が低い県として宮城、秋田、群馬、福井、山梨、静岡県が指摘されたわけでございますが、五十八年五月一日現在では、秋田県を除いてそれぞれ充足率を高める努力が行われまして、充足率の改善が図られてきているわけでございます、
  39. 山原健二郎

    ○山原委員 これに対しては指導もなされたと思いますが、大体各県ごとに、五十九年度予算で何名不足分を充足したか、あるいは今後何年計画で充足されようとしているか、そういう報告は文部省に各県からございますか。細かくはいいのですが、そういう報告はあるのでしょうか。
  40. 高石邦男

    ○高石政府委員 御指摘のありました県の実態について、五十八年五月一日現在の状況がどうなっているかという報告を受けております。その報告を受けた結果、昨年よりそれぞれの県で改善のための努力が払われているという結果が出ているわけでございます。
  41. 山原健二郎

    ○山原委員 その後、八〇%台ではないけれども、例えば一割近くの教員定数が不足している県があるのじゃないかと思うのです。私は一県だけ数字を調べてみますと、大体九〇%程度のところがございますし、それから九〇%から九五%程度の充足率の県も数県あるのではないかと思いますが、その辺は把握されておりますか。
  42. 高石邦男

    ○高石政府委員 一〇%台の未充足率の県が一県ございます。それから五%台の未充足率の県が十県ございます。
  43. 山原健二郎

    ○山原委員 やはりこれに対しては文部省として適切な指導をぜひお願いいたしたいと思います。  それから、国立大学附属養護学校教職員定数が、旧定数法計算をしましても不足している問題を私は三回ほどこの場所で指摘をいたしまして、一定の改善がなされたわけですけれども、新教職員定数法が発足して五年目を迎えるわけですが、現在どこまで充足されておりますか、また今後の増員計画をお持ちでしょうか、伺います。
  44. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 かねて附属養護学校教諭の問題について御指摘をいただいているわけでございますけれども、四十九年度以前に設置をいたしました附属養護学校定数格差が生じておるわけでございます。そこで、五十六年度から特に重点的に附属養護学校教諭の定員の増員を図ってきております。五十八年度までに七十四人の増員措置を行ったわけでございますが、五十九年度予算におきましても、定員は全体に大変厳しい状況でございますけれども、十六人の増員を行うことにいたしておりまして、改善を図ってきております。  そこで現状でございますけれども、附属養護学校教諭定数の九八・一%まで充足されてきておるわけでございます。今後もこの改善については私どもとしても努力を重ねてまいりたい、かように考えております。
  45. 山原健二郎

    ○山原委員 改善のために努力をされておることは数字になってあらわれておりますから、その点は私は大変いいことだと思いますし、あのとき随分私も激しいことを言いまして、これは全く文部省の怠慢だということを申し上げたわけですが、なおこの問題については改善すべき余地が残っておりますから、今大学局長がおっしゃったように、ぜひ今後ともの努力をお願いいたしたいと思います。  次に、最近、障害児学校に新採用される教員のうちで、正規の教諭の資格で採用されないで講師という資格で採用されるケースがふえていると聞いております。これでは、せっかく教員増になってもやはり教職員の士気にかかわってまいりますし、また身分も不安定ということでは、これは実を上げることができないと思うわけです。  それで実態を調べてみますと、もう時間がございませんので詳しく申し上げることはできませんが、盲学校聾学校養護学校の例が、昭和五十年から五十六年までの推移で出ておりまして、講師の数は、とりわけ講師が急増をしておりますのが養護学校の場合です。特に養護学校の各県段階を調べてみますと、例えば昭和五十五年で愛知県で二百三名、講師の方がいらっしゃいます。大阪で百五名、これは両方とも三けたになっているわけですが、大阪の場合、五十七年度、府立の盲・聾・養護学校に新採用をされた方が二百五名、そのうち百三十名が講師なんです。それから五十八年を見てみますと、大阪の場合ですが、二百七名の新採用のうち百二十五名が講師でございまして、これも異常にふえております。大阪府立学校の約十倍の講師率ということになっておりまして、せっかく大学で免許状を取得して若い方が情熱を燃やしてこういう仕事におつきになる場合に、講師という身分不安定、給料も三等級、こういう状態では、これは決して正常な姿ではないと思います。やはり正規の教諭として採用することが必要だと思いますが、このような実態文部省、つかんでおられるでしょうか、また、改善する意思がございますでしょうか。
  46. 高石邦男

    ○高石政府委員 御指摘のありました大阪等一部の県で、お話のありましたような傾向がございます。  各県にその背景を尋ねましたところ、各県は大体教員採用の需給計画というのを、教員採用試験をやります八月から十月にかけて一応の推計を出すわけです。ところが、お話のありましたように、生徒が三月になりまして異常に多くなってきたというような状況の変化があって、当初見込みました教員採用をはるかに超える教師が必要になるというようなことから、その対応として講師という方法で採用をしてきたというような背景があるようでございます。したがいまして、今後はそれぞれの府県で、そういう需給計画を十分見きわめて、教員採用についてそこのずれをできるだけ少なくしていくということが大切であるという指導をしたいと思っております。  それから、やはり講師を、全部講師採用をなくするということは現実の時点で非常に無理かと思いますけれども、できるだけそういう方向での努力をしていただくよう指導してまいりたいと思います。
  47. 山原健二郎

    ○山原委員 次に、これも去年随分問題になったことですが、盲・聾・養護学校幼稚部学級編制基準が、学校教育法施行規則では八名となっています。しかし、自治省の地方交付税積算単価表では五名になっています。この点について文部省も、昭和五十八年度に発行されております「特殊教育必携」、これは三百七十二ページに書いておりますが、五名で編制することが望ましい、こう記しております。現実には、かなりの県で五名で編制をしているのが実情でございます。ですから、定数法の上でも五名と改めるべきだと考えます。今度、馬場先生外が提案されました法案ではこれは五名になっていますが、この点、文部省としてはどうお考えでしょうか。幼児期における教育の重要性から考えまして、この点は改善される意思はございませんでしょうか。
  48. 高石邦男

    ○高石政府委員 ただいま御指摘のありますように、学校教育法施行規則によりますと、「幼稚部において、教諭一人の保育する幼児数は、八人以下を標準とする。」こういう規定にしているわけでございます。この規定は、公立、私立を通じての一応の最高限度を示す内容になっているわけでございます。したがいまして、現在直ちにこの内容を——この八人までやらなければならないという義務規定ではないということで、一応の財政措置を講ずる交付税の観点では五人という財源措置を講じて対応している。そういうところから、大部分の実態は五人程度で編制されているというのが実情である、こういう関係でございます。  そこで、この内容を改めることについては、私学の経営の問題というのもありますので、そういう私学側の十分な実態を踏まえていかないと、ただ形式的に八人を五人にするということで、非常に園児数が少なくなりかけて、私学の幼稚園教育が非常に難しい状況を控えている状況でもございますので、そういう方々の意見も十分聞いた上で検討していかなければならない問題であろうというふうに考えております。
  49. 山原健二郎

    ○山原委員 この問題は、今後論議していいところだと思いますので、おきます。  次に、現在、全国の盲・聾・養護学校児童生徒は、年々重度・重複化の傾向にあります。それは、先ほど馬場先生から御説明があったとおりでございますが、現場の実情を聞きますと、重度・重複児のための重複学級学校長や教育委員会がなかなか認めようとしない傾向があるということを耳にするわけでございます。どういう基準で学級設置を認可するのでございましょうか。  例えば、精神薄弱養護学校の場合、視覚障害、聴覚障害をあわせ持つ場合は重複障害児でございますが、情緒障害や自閉症をあわせ持つ子供の場合も重複障害児考え学級編制をしてもいいのではないかと私は思うのでございます。本年度より東京都教育委員会はこのような実態を受けまして、精神薄弱養護学校高等部にも重度・重複学級設置に踏み切ったと聞きますが、文部省としましてもこういう例示しましたようなケースにつきましては、小学部中学部高等部、とりわけ高等部重複障害児学級を設置するような方向で各都道府県を指導する必要があるのではないかと思いますが、この点についての御見解を伺いたいと思います。
  50. 高石邦男

    ○高石政府委員 重複障害児学級編制の具体的な認定を行うのは、例えば県立養護学校でございますと県の教育委員会が行うわけでございます。したがいまして、その認定を客観的にやってもらえば、当然自分のところで重複障害学級と認定するということで足りるわけでございまして、そこの判定を適正にやってもらいたいとまず思うわけでございます。  それから、御指摘のありました自閉症等の障害、情緒障害を有する者についての対応でございますが、これについては、情緒障害児の客観的な認定というのが非常に難しいというふうに言われておりまして、なかなかこういう子供を情緒障害児の自閉症の部類に入れるということが、まだ客観的、医学的に非常に難しいというふうに言われておりますので、そのことを直ちに基準化するということは非常に困難かと思うのです。ただ、運用に当たりましては、精神薄弱児ないしは病弱者等の運用の中でやってもらえれば当然運用上解決する問題でございますので、自閉症等の問題についてはもう少し客観的、合理的に認定の内容が固まった段階でこの問題については対処することとし、それまでの段階では運用上の問題として解決していきたいというふうに思うわけでございます。
  51. 山原健二郎

    ○山原委員 今の問題について提案者の方で御意見がありましたら、後で伺いたいと思います。  最後になりますが、現在の十二カ年計画で、盲・聾・養護学校の増員分、五千百二十四名と文部省はしておりますが、そこで、八〇年度から八四年度までに、先ほど言いましたように、小中学部合わせて百五十名ずつ増員され、計七百五十名配置されました。残る四千三百七十四名の増員計画はどうなっておるでしょうか。今後の年次計画がございましたらお聞かせをいただきたいと思います。  私は、仮に五千百二十四名を配置しても、現在の盲・聾・養護学校実態から見まして、障害児学校教職員定数を抜本的に改正する必要があると考えております。この点について、先ほども少しお伺いしましたが、提案者にもお考えを伺いたいと思います。  それから最後に、この十二カ年計画では、肢体不自由養護学校寄宿舎寮母及び最低保障の対象となる小規模の寄宿舎を除いては、盲学校聾学校、精神薄弱及び病・虚弱養護学校寮母増は一名もないことになります。寄宿舎では、重度・重複児の舎生がふえまして、寮母の健康破壊、妊娠障害が深刻になっていることは先ほど指摘されたとおりでございますが、このような寄宿舎実態から見ますならば、寮母の増員を、十二カ年計画にこだわらず緊急に行うべきだと思いますが、文部省並びに提案者の御意見をお伺いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  52. 高石邦男

    ○高石政府委員 まず、十二カ年計画につきましては御指摘のような状況でございますが、今後、六十六年度の第五次の最終目標は変えないということをしばしば文部大臣も答弁しておりますし、我々としてもそういう方向で作業をしていかなければならないということで、来年度以降の概算要求に当たりましては、基本的にそういう姿勢で対応していきたいと思っております。  なお、具体的な年次計画等につきましては、現在、児童生徒数の実態把握に努めておりまして、その上に立って来年度以降の定数問題についての具体的な作業を進めている段階でございます。  それから、寄宿舎等における寮母定数改善も、十二年計画で全く改善していないわけではございませんので、例えば肢体不自由の子供を持つ寄宿舎におきましては、従来の四人というところを三人に一人というような形にしておりますし、それから最低保障が現在八人であるのを十人に改善するというような形で改善を図ってきているわけでござます。したがいまして、とりあえず十二カ年計画考えている内容の達成を、最大の努力を傾けて実現していくというのが現在文部省のとっている対応でございますし、そういう努力を続けてまいりたいと思っております。
  53. 馬場昇

    馬場議員 重度重複障害児が非常にふえておるわけでございますので、こういう学級の設置の方法とかそういうものにつきましては、私たち標準法では十分きめ細かく配慮しておるところでございますので、行き届いた教育をするために、今質問者が質問されたような同じ趣旨で私たち法律も出ておりますが、文部省も行政指導をするところがあればぜひしていただきたい、こう考えておるところでございます。  寮母等の改善がないわけでございますが、今の十二カ年計画でもやらなければならないとおっしゃいましたのはそのとおりでございまして、私どもとしてはぜひこの法律を、言われましたように五十四年から出して、三回出しているわけで、きょうで三回審議しているわけでございますから、ぜひ今度の国会でこれは成立させていただきたい。そして、これに盛り込んでおります行き届いた教育ができるように一日も早くしてもらいたいと考えておるわけですが、先ほどの文部大臣の答弁を聞いておりますと、全くもって——今九万人の障害児の子供が学校で学んでおりますし、さらに五万人の教職員が非常に健康破壊を受けながら苦しんでおりますし、四百万人の障害者というものが期待しておるわけでございますので、さっきのような答弁は絶対いただけません。本当に今の内閣は軍事費だけを突出させて、教育や福祉を後退させておる、弱い者いじめの行政をやっておると私たち常日ごろ思っておるのですが、今の答弁を聞きますと全くそのとおりでございまして、文部省もぜひ姿勢を変えて、私たちが出しておりますこの法律を実現できるように頑張っていただきたいと私も考えております。
  54. 山原健二郎

    ○山原委員 どうもありがとうございました。
  55. 愛野興一郎

    愛野委員長 湯山勇君。
  56. 湯山勇

    湯山委員 提案者にお聞きする前に、たまたまきょうは五月十八日で、一年前の今月今日ですか、同じ議題のもとに、質問に関連して文部省に、特殊教育という言葉を変えるのが至当ではないかという質問をいたしました。全く偶然でございますけれども、ちょうど丸一年目になります。そこで、このことにつきましてなお関連がございますので、お尋ねいたしたいと思います。  その際のやりとり、一々細かいことは申しませんけれども、大筋からいえば、特殊教育という言葉に、政府文部省としては固執はしない、適当な言葉があれば、コンセンサスを得られる適当な用語があれば変えることにやぶさかでないということをはっきりおっしゃいましたし、また特殊教育という言葉が差別というようにとられる向きもあるというふうに肯定されております。その際、瀬戸山文部大臣は、局長が苦しい答弁をしていると思う、私に対してで恐縮ですが、貴重な、真剣な意見を承って、かといって、今変えましょうというわけにはいかないが、真剣に研究いたしたいという答弁をなさったこと、これは提案者馬場議員は御記憶でしょうか、大筋は。
  57. 馬場昇

    馬場議員 昨年のちょうどきょうですから同じ日でございますし、今湯山委員おっしゃいましたが、十分そのことは記憶をいたしておりまして、十分検討して、もう変えてくれるのだろうというような期待を持ったことも覚えております。
  58. 湯山勇

    湯山委員 高石局長、あなたは記憶はないかもしれませんけれども、ごらんになって、今のをお認めになりますか。
  59. 高石邦男

    ○高石政府委員 当時、鈴木初中局長湯山先生の御質問にお答えしております国会答弁の議事録を読ませていただいております。また、瀬戸山大臣の答弁内容も読ませていただいておりますので、承知をしております。
  60. 湯山勇

    湯山委員 たまたま坂田先生いらっしゃいますが、この問題が取り上げられた記録で見ますと、昭和四十四年、坂田文部大臣のときでございまして、当時の坂田文部大臣も、この私が申し上げたような趣旨には賛成だということで思い出していただけるとありがたいのですが、ヘレン・ケラーのお話もお出しになって、母校のパーキンズ盲学校の卒業生のミスター・スミスダスの例もお挙げになりながらこの質問の趣旨に御賛同の御発言があったこと、こっちに来ていただくといいのですけれども、やむを得ません、うなずいていただいたので……。それ以後、何回国会で取り上げられたか、どういう党から同趣旨の質問があったか、局長わかりますか。
  61. 高石邦男

    ○高石政府委員 四十四年以来、社会党先生、自民党の先生、公明党の先生等からこの問題についての御意見が出されていることを承知しております。
  62. 湯山勇

    湯山委員 それで結構でございます。  さて、その中で、当時坂田文部大臣には、今申し上げましたように大変いい御答弁をいただいておりますし、また、その他の大臣もほとんど同じような趣旨の御答弁をなさっておりますし、五十年には永井文部大臣は、特殊教育という用語が適当かどうか疑問があるということもおっしゃっておりますし、また四十七年、初中局長は、理論で割り切れないものがある、法改正、用語の改正は機会がないとなかなかできない、そこで、機会がいつ来るかわからないから、一応文部省としての意見はまとめておいてすぐ対応できるようにするという趣旨の答弁を四十七年にしておりますが、これはお認めになりますね。
  63. 高石邦男

    ○高石政府委員 当時、岩間初中局長がいろんな質問に答えて、そういうニュアンスのことを申し上げているようでございます。
  64. 湯山勇

    湯山委員 そこで、文部省としてもできるだけ今のような点で特殊教育とか特殊学級とか、そういう言葉を避けて言うか、なるべく使わないように配慮がなされているという指摘をその際したわけです。例えば障害者年の対策に関する長期計画の中でも、教育施策の充実という中では特殊教育の話は一言も使っていない、これも鈴木局長も認めておったところです。  それから、ことしの予算を見ましても、「特殊教育の振興」という予算の費目の中ですが、新規に心身障害児適正就学推進研究校というのをやっておりまして、千百万ばかりの予算がつくようになっておりますが、これも特殊教育の就学推進研究じゃなくて心身障害児という言葉が使われておるし、同じ予算の中の、「心身障害児の理解認識の推進」というので、そういう言葉は使っておりません。  それから大学のところでも、筑波大学にできる予定の身体障害者高等教育機関、これの創設準備費がついておりますが、これも名称は高等特殊教育機関とは言わないで、やはり身体障害者という言葉を使っております。そういう配慮があるように見受けられますが、しかし、なおかつ定着してないとか、三十年間使われているとか、コンセンサスが得られてないとか、こう言っております。  四十九年の五月七日の答弁で、初中局長はこう言っております。「障害児教育ということばがかなり一般的に普及をしてまいり、私どももたびたび使わしていただいておるというふうなことは、これは事実でございます。」という答弁があります。これらをあわせてみると、文部省も、できるだけそういうニュアンスを持った言葉は避ける方向でいっているということを私も確認したいのですが、局長、どうですか。
  65. 高石邦男

    ○高石政府委員 先生御指摘のような論議が行われておりまして、したがいまして、先ほど御指摘のありましたように、心身障害児理解推進校という、予算の段階ではそういう言葉を使うというような形で対応してきていることは事実でございます。
  66. 湯山勇

    湯山委員 したがって、気持ちの上ではそんなに変わってないと思うのですが、もっと現場について調べてみましても、コンセンサスを得られていないというようなこと、あるいはこれが定着しておるというようなことを言っておられますけれども、現実には、例えば私の出身の愛媛あたりでも、特殊学級が二百六十八あります。その二百六十八ある特殊学級で、特殊学級と内部的に呼んでいるところ、これはありません。全部、例えばひまわり学級とか、担任の先生の名前をつけた学級、例えば馬場教諭が担当であれば馬場学級というような名前をつけて呼んでおって、特殊学級という言葉は、公式な研究会等では出るけれども、まず現場では使われていないということです。東京都も同じような配慮があると聞いておりますが、馬場議員、こういうことについてお調べになったことございますか。
  67. 馬場昇

    馬場議員 私、東京都の障害児教育関係者の団体に問い合わせをしたわけですけれども、今湯山委員がおっしゃったとおりのような状況になっておるわけでございます。  東京都の場合、小学校に六百五十三学級、中学校に二百四十七学級、いわゆる文部省の言う特殊学級というのがございますが、公式にも非公式にも、その学校で特殊学級とはどこも呼んでおらないようでございます。そして、心身障害児学級、こういうぐあいに使っておるわけでございます。ただ、使っておる面がございます。どういうところで使っているのか尋ねましたところが、就学奨励補助金等で、対文部省に関係するときだけ特殊学級という言葉を使うのだ、こういうことを聞かされて実は驚いているわけでございますが、結論的に言いますと、公式にも非公式にも学校で特殊学級とは使っておりません。そして、今湯山委員がおっしゃいましたように、花の名前をとった学級とか担任の先生の名前をとった学級とか、そういうぐあいな名前に学級の名前をしておるようでございます。  私の出身の熊本県でございますけれども、熊本県にも、小学校で百七十四学級六百二十七名、中学校で百三学級四百二十名おります。これは昭和五十八年ですけれども、ここでも全く東京と同じでございまして、公式にも非公式にも特殊学級とは使っておりません。そして、何か複式学級という名前を使っているところもちょっとあるようでございますけれども、特殊学級とは全然使っていない、これが現状でございまして、現実問題として、教育現場では特殊学級は使われていないというのが現状と把握いたしております。
  68. 湯山勇

    湯山委員 これは参議院で粕谷委員が五十三年に取り上げたときにも、以前には教室に特殊学級という札が立っていた例がある、今は全くないということを粕谷委員も指摘しています。文部省の方で、今なお特殊学級ということを内外ともに使っているという例があればお示し願いたい。
  69. 高石邦男

    ○高石政府委員 まず、都道府県の教育委員会での担当課ないしは担当係の名称がどうなっているかというところから申し上げますと、全体の四十七のうち二十九県が特殊教育課ないしは特殊教育係という名称を使っております。それから、九県が心身障害児教育という言葉を使っております。それから、二県が養護教育という言葉を使っております。その他は、指導第一係等の名称で、具体的なものを使っていない。法令上、特殊学級ということで学級編制基準その他で使っているわけでございまして、今先生の御指摘にありましたような、学級の名前を俗称ひまわり学級であるとか何とか教室という形で使う、俗称として一般的にクラスの名前を呼ぶということはかなり多く行われていると思うわけでございます。
  70. 湯山勇

    湯山委員 今お話しのように、東京都はセクションも身体障害児というのを使っているし、東京都の場合で言えば、問題は文部省との関係だけなんです。そういうことですから、私はここでひとつ考えていただきたいと思うのです。それは四十七年、もう十数年前に、確かに改正するということにやぶさかではないが、法改正、用語改正は機会がないとなかなかできない、そこで、機会があれば対応できるように意見をまとめておくという、ここは一貫していると思うのです、そういう姿勢で。今のように予算をつける場合にも、あるいは新たに高等教育機関を設ける場合にもだんだんそうなってきているし、一般的に障害児教育というものが普及してまいっておる、これも事実だと思います。  そこで、私は今がこれを変える機会だと思うのです。と申しますのは、人権宣言の三十五周年ということもあります。この行事計画政府としても進めておることは御存じのとおりです。それから、世界の大きい流れというものは、差別をなくしていくということが大きな課題でございまして、障害者年の設置、これも「参加と平等」というのは明らかに差別をなくしていくことですし、婦人年もまた同様です。雇用における婦人差別を撤廃する。それから人種差別撤廃条約、これもこの間の本会議で問題になりましたが、国内法を整備して速やかにこの条約を批准するということです。それから、少し以前ですけれども、失業保険というのがございました。これは今なくなっているのを御存じと思いますし、ちょうどきのうも本会議で雇用保険の改正法案が成立をいたしました。また文教政策の面から言えば、養護学校義務教育になったことも一つ背景にあります。  それから、一ついい機会だと思いますのは、今日までいろいろ言ってきたときに、それだけ変えるのは帳簿から何から手数が大変だというので、そのことを申し上げたら、鈴木局長は、いや、それは問題にならぬと言われましたけれども、実際にはそうなんです。法改正もしなければならないし、帳簿から何から大変だというのですけれども、今度幸い七月一日には文部省の機構改革が行われます。これ一つじゃなくてずっとたくさん変わるわけですから、まさに絶好の機会である。そこで、前大臣が約束されたこと、これは当然現大臣もお守りになると思うのですが、森文部大臣、いかがでしょうか。
  71. 森喜朗

    ○森国務大臣 私は、正直に申し上げて、湯山先生のお話に、なるほどな、そういう考え方もあるなということ、個人的には確かに感ずるところはたくさんございます。  ただ、特殊教育の用語使用につきましては、国会でも再三御議論があったことも記憶いたしておりますし、今の馬場さんと湯山さんのやりとりの中にあったように、東京都などでも心身障害児教育という用語を用いていることも承知をいたしております。ただ、文部省立場から言えば、学校教育法等で三十年にわたりまして使用されておるということでございますし、心身障害を持つ児童生徒のための特別の手厚い教育という意味に理解をしているということ、そして今先生心身障害児教育という言葉を用いておられますが、これに国民的な合意をどういうふうにして得ていくのかというようなことも残された一つの問題だろう、こう思うのです。  私は、先生のお考え一つのお立場としてよくわかるのですが、特殊教育というのは、一般の教育を受けられない子供に対して特別な教育をしようということで、教育をする立場に対しての特殊教育という言葉、心身障害児と言うと、教育を受ける子供にかぶさってくる言葉ということになります。どちらがいいのかなという感じがいたしますが、かつては、明治、大正にかけては精神薄弱児、こう呼んでいた。あるいはその後、昔の記録を読んでみると、低能児と呼んでいる。それは知恵おくれというような意味があって、非常に差別的なニュアンスが強いということで、だんだんそうした言葉は使われなくなってきた。つまり、できるだけ差別をつけないで、社会全体がみんなでその子供たちに対して本当に心温まる教育をすることは大事なことだと考えますから、そういう立場に立ってみると、心身障害児という子供に対する冠詞というのでしょうか、修飾語というのでしょうか、その言葉にそういうふうに一般の子供と違うのですよとつけることが、子供たちにとって親切なことなのか。親切という言葉がいいかわかりませんが、逆に教育をする方の立場特殊教育という言葉の方がかえって子供たちにそういう意識をさせないことになるのか、私は非常に難しい問題だなと思うのです。湯山先生はそういうお立場で、心身障害児教育と言う方がよりよろしいのだというお考えだろうと思います。  さっき、ひまわり学級とかいろいろおっしゃいましたけれども、私も自分の選挙区の中でいろいろな学校を見ておりますが、いろいろな呼び方をしている学級があります。それは特殊学級だけをひまわり学級だとかちゅうりっぷ学級と言っているのではなくて、全体を「ひまわり」とか花の名前になぞらえるケースもあるのです。そういうケースもある。それは逆に言えば、ほかのクラスとの差がないのですよ、そういうことを子供たちにきちっと理解をさせる意味もあると思うのです。今先生はちょっと手を振られましたけれども、そういう意味もあるのだと思うのです。つまり、それは子供たちにそういう差をつけさせないということであろうと思うのですね。  ですから、個人的には先生のお考えもよくわかりますが、私自身もここは非常に迷うところだと思います。教育をすることに対して特殊教育にした方がいいのか、受ける立場の子供たちに対してそういう表現の言葉を使うことがいいのか、ここは判断の一つの大事なところだ、こう思います。前の瀬戸山大臣の議事録を読んでみましたら、検討するというようなお言葉を述べて議事録にとどまっております。当然そのお言葉を受けて私どもも行政を進めなきゃいけませんので、私としても非常に迷うところでございますが、おしかりをいただくかもしれませんけれども、もう少し検討させてもらいたいなという、そんな気持ちでございます。
  72. 湯山勇

    湯山委員 残念ながら、ひとつ腹を立てなければならなくなりました。  瀬戸山文部大臣は真剣に検討する、今言えないけれどもと、気持ちの上はよくわかるのです。それはなぜかといいますと、大臣はおわかりになってないと思います、地域的に。しかし、部落差別の問題があるのです。これをひとつ頭に入れておかないといけません。今までいろいろ問題になった背景にはそれがあるわけです。東京なんかは同和地区というのはないですよ、法的には。しかし、それでもなおかつ今のような配慮をしなければならない。実態はあるのですけれども、指定された地域はありません。大臣の御郷里にもほとんどないはずです。だからおわかりにならないし、文部省もそういうことには頭がいってない。いいですか。特殊教室という言葉に差別的なニュアンスがあるということを認めておる。身体障害者自体が差別されるというのをなくするのが障害者年なんです。それが平等です。その呼び名を差別につながるような言葉であらわすというのは二重なんです。それは避けるべきなんです。そこがわかっていないのです。一体なぜ特殊教室というような看板をのけるか、呼び方をしないかということも、これも検討が足りません。十何年、一体何を検討したのですか。この一年間にしても、瀬戸山文部大臣はただ漠然と検討すると言ったのではないのです。真剣に検討します、こう言っておるのです。この一年間に一体文部省、何をしたのです。どんな真剣な検討をしたか、いつどういうことをやったというのがあれば言ってください。
  73. 高石邦男

    ○高石政府委員 長い間国会でも論議されてきているわけでございますし、文部省としても一体どういう言葉が国民的な合意と理解が得られるかというようなことで、予算を取る隊とか、そういうことをいろいろ考えてやってきているわけです。ですから、今の時点で特殊教育という言葉を改めてほかの言葉に置きかえるというようなことは、ほかの言葉としてどういう言葉がいいかということについて共通理解がないと、これはまたいろいろの問題を醸し出すというような結論に達しまして、現在の状態では特殊教育という言葉を使わざるを得ないといいますか、使っている、こういうことでございます。
  74. 湯山勇

    湯山委員 十何年間、同じ答弁ですよ。ちっとも変わってないのです。ただ、その間に、予算を取るときの言葉とか、それから今のようなこととか、さきに四十九年の答弁のように、そういう言葉がだんだん一般的に普及した、だから使うようにしておるということがありましたけれども、同じことの繰り返し、私、承知できません。  委員長も同和対策のときのでよくおわかりと思いますけれども、なおかつ文部省はそれを抜けてないのです。ちっとも真剣な研究をしていません。ただ、どう答弁するかだけしか考えてないので、はっきりした答弁をいただきたいと思うのです。次の機会にぜひひとつ、ここではっきりこうだという大臣の答弁をいただきたいと思います。委員長、そのようなお計らいを願いたいのですが、いかがでしょう。
  75. 愛野興一郎

    愛野委員長 委員長より申し上げます。  湯山委員の発言につきましては文部省も真剣に検討をしておられるところと思いますが、この変わった言葉にまた差別等々という言葉が出てきた場合には困るというようなこともこれあり、十分検討しておられると思います。  そこで、委員長といたしましては、次の機会に何らかの御発言ができるように前向きに検討をしていただきたいという要望をいたしておきたいと思います。
  76. 湯山勇

    湯山委員 委員長のそういうお計らいですから、ぜひひとつこの国会で適当な機会に、答弁じゃなくて、もっと真剣に検討した結果を明らかにしていただきたいと思います。  私は、この予算編成段階で、ちょうどいい機会だから、いろいろ機構改革もあることだから文部省にお願いに行こうと思ったのです。しかし、ちょうど選挙の前だったものですから、当選するかしないかわからない者が申し入れをするのも変だと思って遠慮しました。何かもっとまともな、まじめな答弁があると思っていましたけれども、十二年間、ちっとも前へ進んでおりません。むしろある時期よりも後退しております。これでは了解できませんので、せっかく委員長のお計らいですから、ひとつぜひ明確な答弁をいただくように要望して、質問を終わります。
  77. 愛野興一郎

    愛野委員長 田中克彦君。     〔委員長退席、船田委員長代理着席〕
  78. 田中克彦

    田中(克)委員 文部大臣が時間の関係で途中お立ちになるようですから、大臣がおいでになる間に……。  先に大先輩であります湯山先生から福祉に対する、障害児に対する考え方の原点とも言うべき発想の問題についていろいろ御指摘がございましたが、私も今回この問題を取り上げるにつきまして、過去の国会審議の経過あるいは国際障害者年の行事やそれに対する国の対応、そういうようなものもずっと整理をしながら実は読み直してみたわけであります。その中から幾つか、私どももこの問題につきまして思い起こすこと、あるいは新たにまた気がついたことも出てまいりました。  そこで、今回我が党が提案をいたしましたこの問題につきましては、特殊教育というものを障害児教育という呼び方に変えて、名実ともに福祉の原点に返って、そこからやはり教育問題を考えていく、こういう発想に立って取り上げている問題だと思うわけです。したがって、先生おっしゃいましたように、単に呼び方の問題ではなくて、むしろ世界に四億五千万、日本の国内でも四百万を超えると言われる障害者が、人間として我々の社会の中で一緒に生活をしているという状況、これが当然のことであり、普通のことであって、そのことを私どもは基本に考えていかないと、この問題に対する明確な方針や回答が出てこないという点で、私はこの呼び名の問題、大変重要だというふうに思っているわけであります。  そこで、実は五十六年の国際障害者年の際に、国の指導にもよりまして、国を挙げてのこの問題についての発想の転換、このことが議論になりました。当時私、地方の議会におりまして、このときにいろいろな県の条例等の点検もいたしてみました。その際に、職員の給与条例あるいは恩給条例の中に不具廃疾という呼び名も残っておりました。それから、つんぼという呼び名も残っておりました。こういうものをすべて訂正をさせた記憶もございます。いわば福祉の前進とともに、そういうことについては改善すべきものは積極的に改善していくという姿勢こそ追求をさるべきものだというふうに私は考えているわけであります。  そこで、今回私もいろいろ勉強している間に、教育職員免許法施行規則の中に、実は養護教諭の免許状の場合については、「異常児教育、異常児心理、「異常児の病理、異常児の保健」、異常児教育実習」というようなものが免許取得の単位として書かれているわけであります。このことにも私ども、異常な発見としてむしろ大変驚いたわけでありますけれども、このようなものも、言いかえれば、先生が指摘をされた原点の問題から反省すべきだと思いますが、大臣お立ちになるようですから、ちょっと一言だけお聞きしておきます。
  79. 森喜朗

    ○森国務大臣 大変恐縮でございますが、参議院の本会議が十二時でございますので、もうちょっといろいろお話をしますと二、三分過ぎてしまいます。  先ほどから湯山先生にもおしかりをいただきましたが、決してこうした心身障害児皆さんに対する教育に、文部省も私自身もちゅうちょしているわけでも何でもないわけで、いろいろな意味で力を入れて、いろいろな意味で工夫を凝らしながら、改善をしながら、特殊教育といいますか、こう言うとまた怒られるかもしれませんが、障害者に対する教育は一生懸命やってきておるつもりでございますし、これからもさらにそうした環境を整えていくということについての整備充実には一層努力をしていきたい、こう思っております。  私も大臣に就任をいたしまして、国会中でございますのでなかなか視察する機会がございませんが、最初に中野区立の養護学校へ行かしていただきました。雪の降る大変な日でございましたが、生徒たち先生たちの授業をそれぞれの年限に応じまして全部見させていただきまして、大変私も感動いたしました。そして、その子供たちは、文部大臣が何であるか、どういう人が来たのか恐らく知らない子の方が多いと思いますけれども、みんなが玄関まで来て雪の中に立って見送ってくれたことを私は本当に忘れないです。そのときにたくさんお土産をいただきました。そのお土産を私は今でも、帰ってきた日から文部大臣の机の上に全部置いてあるのです。この間、お客さんにその話をしますと、少しずつポケットに入れて帰る人がありますから、持って帰る人はどうぞ持っていってください、そのかわり、こうした子供たちがこんなすばらしいものをつくるんだよ、しかしその一生懸命つくっておられる動作について、どんなものができたのか、何が用いられるか、そんなことわからないでつくっている子もいるんだろう、そういう教育は一生懸命みんなでやっているんだよということを承知してくださいよと言っては皆さんに差し上げるようにしているんです。もう私の机の上にあと数点しか残っておりませんが、秘書にはもう出すな、これは最後まで私は大事にしておきたいと言っておるぐらいであります。  いささか宣伝めいたわけでありますが、私が大変大事な教育だというような心構えてこの文教行政の最初の仕事として養護学校を見させていただいたということに、私の姿勢もぜひお酌み取りをいただきたい、こう思います。今後とも先生の御指摘と、また湯山先生のお話も大事なところでありますので、十分なる議論を踏まえて文部省としての対応に取り組むようになお一層努力したい、こう思っております。  本会議に行きまして、すぐまた帰ってまいりますのでお許しをいただきたいと思います。
  80. 田中克彦

    田中(克)委員 前段で、伏屋委員並びに山原委員からもいろいろ指摘がございまして、既に中身に大変触れられております。時間がございませんので、私は重複を避けてさらにお伺いをしていきたい、こう思っているわけであります。  先ほどからも言われておりましたように、現行の教員定数法というのは、障害児学校小中学部義務制の小中学校定数法高校高校定数法に定めて、幼稚部定数が何らないわけですし、それから、現業職員定数部分もカットされておる。こういう状況の中で、障害児学校の場合、一部に小中学部、幼小学部、中高等部高等部のみの学校もありますけれども、多くの場合、幼小中高、すべて学校を併設して、相互に関連し合った、一貫した総合的な障害児教育を行っている実情があるわけであります。そういう点から見ると、この状況というのは明らかに現状にそぐわない、こういう点から今回の改正案が出されているというふうに私どもは思っているわけであります。政府が十二カ年計画を決めて一定の改善はしている、こういうふうに言われておりますし、現実にそういう中で、山原先生も言われましたけれども、五千百二十四名の増員が行われたことは一定の成果だというふうに私ども自体も考えております。しかし、実態というものの中へ立ち入っていろいろ調査をしてみますと、今のこの状況というものは、まだまだ実態からはほど遠い問題点を数多く抱えているということが実は明らかになってきているわけであります。  特に、寄宿舎寮母の最低保障というものは八名から十名になったとはいいましても、盲・聾・精神薄弱及び病弱・虚弱養護学校寄宿舎寮母の増員計画がありませんので、そういう点は最低保障の小規模の宿舎を除いてほとんどふえていない、こういう状況があることはさっき御指摘があったとおりであります。  そこで資料につきまして、さきに委員部の方からちょっと連絡がございまして、私どもが実際に試算をした表を既に委員部の方にお渡しをしたつもりなんですけれども、この表を見ていただきましてもわかりますように、新旧を対照していきまして、一学級、二学級、三学級とずっと学級ごとに出ておりますけれども小学部についてはほとんど変更がありません。それから中学部について若干、その三、四というところあたりはふえているわけですけれども、五、六、七、八と、一番対象の多いとされるクラスの数字はほとんど横並びであって全然変わらない、こういう実態になっているわけであります。こういう状況がやはり現場に大変問題を残しているということでありますから、この辺を改善していくためには、どうしても今のこの十二カ年の改善計画ではやはり実態にそぐわない、こういう点を現状認識していただかないと、今回提案されておりますこの法案の意図しているところ、ねらいとしているところ、それが明確になってまいりません。  そこで、私は文部省にそのことについてお考えを聞くと同時に、提案者にも、だからこうなんだというところが、大いに主張したいところがきっとあるのだろうというふうに私は思っておりますので、その点をあわせてお答えをいただきたい、こんなふうに思います。
  81. 高石邦男

    ○高石政府委員 いただきました資料の読み方、見方が実はいろいろあろうかと思うのです。したがいまして、ここで学級数と書いてありますが、その前提になります学級をどういう基準で編制するか、その中身が改善されていくわけでございますから、そこの中身を読み取った上で御理解いただきたいと思うわけでございます。  まず、学級編制を八人から七人、それから重複障害児学級については五人から三人という内容に改善しております。それから、これは学級数をもとにした教職員定数をはじかれたと思うのですが、そのほかに養護、訓練担当教員定数増を図ることにしておるわけでございます。また、中学部の免許外担任教員の解消のための定数増ということも考えております。また、小学部の専科教員定数の改善も考えているわけでございまして、小規模学校について、このいただきました資料の表で見るとそういう御指摘になろうかと思うのですが、それを積み上げていく学級編制とか、それから学級をもとにしない他の教職員定数、こういう点については改善計画を持って今進めようとしているわけでございます。
  82. 馬場昇

    馬場議員 田中委員おっしゃいましたように、私どもの案というのは、幼児早期教育を大切にするというところで、幼稚部定数も入れているし、一貫教育をやっている、そういうところに定数を一本にしておるという特徴があるわけでございますが、今の御質問の十二カ年の文部省の改善、確かに五千百二十四名というのはふえるわけですから、この部分については一定の前進であるわけですが、今御指摘のありましたように、このことはもう完全に実態を無視し、実態とかけ離れておると私ども考えてこの定数法を出しておるわけでございまして、私ども定数法によりますと、その実態の上に立って、例えば教員につきましては六カ年間で二万四千七百八十四名ふえることになっているわけです。  それから、特に寮母の点につきましては、最低保障で文部省の十二カ年改善計画によりますと、二百二十四名しかふえないということになっておるわけでございますが、私ども寄宿舎教育の場と考え寄宿舎教育の機能を増すという意味で、抜本的、現実に合わせてやっておるわけでございまして、寮母寄宿舎教諭の数というのも二百二十四人ではなしに、私たちのこの標準法では二千五百九十六名ふやさなければならない、これが実態だ、こういうぐあいに考えておりますし、事務職員につきましても二千三百四十五人増員する、こういうことになっておりまして、このことが実態に即した定員だ、定数だ、こう私ども考えておるわけでございます。
  83. 田中克彦

    田中(克)委員 時間がありませんで、先に問題がちょっと残っておりますので急がしていただきますが、どのような障害を持っている子供にも教育権を保障するという基本に基づいてこの義務制が施行されて、どこの学校あるいは寄宿舎にも重度・重複児の入学、入舎がふえてきている状況は、最近は特に激しくなってきている。こういうことは先ほどからの質疑の中でも明らかになっております。それが障害児教育現場を圧迫する原因になっているし、寮母の負担を増加させている、こういうことであります。  しかし、一面から言えば、最近の障害児教育のあり方からして、教育というのはむしろ生活全体を通して、二十四時間寄宿舎の中にいる状況の中で、生活の習慣とか生活のリズムとか自分の身構えとか、そういうことも身につけさせていくという、みずから生きる力を持たせるという障害児教育のあり方というものの重要性から考えてみれば、むしろ教育の場というのは寮生活にある、こういうふうにさえ言えると思うわけです。そこで、この寮母の果たす役割というのは非常に教育的にも重要だということは、先ほどからの質疑の中でもかなり明らかになってきている、こう思うわけであります。  そこで、学校教育法の施行規則で、寄宿舎舎監寮母を置くということになっておりますが、これは当然校長の監督を受けて寄宿舎の管理及び寄宿舎における児童の教育に当たる、それから寮母寄宿舎における児童の世話及び教育に当たる、こういうふうに規定をされているわけですが、既に九十四国会学校教育法及び教育職員免許法の一部を改正する法律案という形で、寮母寄宿舎免許状を与えろ、与えるべきである、こういう提案がされていて、そのことについては教育職としての位置づけをいわば明確にする、身分、処遇の改善を図る、こういう提案がなされているわけであります。  そこで、今回の提案の中では、この寮母の資格の問題、このことについては一応触れてございませんが、提案者の方はその辺はどういうふうにお考えになっているのか、それから、さっき申し上げましたようないわば寮生活の教育的な位置づけといいますか、そのことについて考え方を聞かしていただきたい、このように思います。
  84. 馬場昇

    馬場議員 これは先ほども答弁いたしましたように、我が党といたしましては、寄宿舎というのを今おっしゃいましたとおりに、特に障害者にとりましては生活指導そのもの教育ですから、そういう意味で、教育の場として寮母さんを寄宿舎教諭というところに位置づける、こういう考えてこの法律を出しているわけです。しかし、その今の寮母寄宿舎教諭とするのに対しましては、学校教育法の一部改正教員免許法の一部改正、このことを我が党は、その法律案を衆議院に提案しますと同時に、参議院にその法律案を提案いたしまして、そして寮母さんの身分確立寄宿舎教諭として図っていこう、こういう対策を立てておるわけでございます。
  85. 田中克彦

    田中(克)委員 それはわかりましたが、同時に、先ほど申し上げましたように、山原先生も触れられました、要するに重複障害を持っている子供をどうしてその重複と認定をするか、このことが大変、今回の改善策をもってしても、この問題を解決しないと本当の問題の解決にはならない、こういうことは言えると思うわけであります。  そこで、学校教育法施行令二十二条の二に「法第七十一条の二の政令で定める盲者、聾者又は精神薄弱者、肢体不自由者若しくは病弱者の心身の故障の程度は、次の表に掲げるとおりとする。」こういうことになっておりまして、盲・聾・精神薄弱・肢体不自由・病弱と、こうそれぞれが決められて、心身の故障の程度というのが規定がございます。さっきも触れられましたように情緒障害とか自閉症というようなものを持っている子供の場合に、この二つ以上の障害を持っている子供が重複児であって、これらは情緒障害や自閉の障害を持っているという、障害をあわせ持っている子供が多い状況の中で、これが現実には重複障害児として認められていない、こういう措置の仕方によって、せっかくこの重複障害児一人を三人と見るという規定になっておりましても、この認定の仕方そのものが大変重要な問題になってまいります。     〔船田委員長代理退席、委員長着席〕  そこで、昭和五十年三月三十一日に文部省初等中等局長安嶋局長あてに、特殊教育の改善に関する調査研究会の会長さんからの報告が出ているわけでありますけれども、その中でも、「本報告でいう「重度重複障害児」には、これまで「公立義務教育学校学級編制及び教職員定数標準に関する法律」等で定められている重複障害児学校教育法施行令第二二条の二に規定する障害を2以上あわせ有する者)のほかに、発達的側面からみて、「精神発達の遅れが著しく、ほとんど言語を持たず、自他の意思の交換及び環境への適応が著しく困難であって、日常生活において常時介護を必要とする程度」の者、行動的側面からみて、「破壊的行動、多動傾向、異常な習慣、自傷行為、自閉性、その他の問題行動が著しく、常時介護を必要とする程度」の者を加えて考えた。」こういうように、やはりそこまで範囲を広げて考えないとならぬじゃないかというふうに、その当時から既に言われているわけであります。  だとすれば、国際障害者年を経て全体の行動計画が立てられて、障害児教育の前進を図るという方針が出されて十二カ年計画も出てきていると思うわけでありますが、問題は、こういうことになってまいりますと、この学校教育法の二十二条の二で決められておりますこの障害の規定を、やはり施行令の範囲を改めていくべきではないかというふうに思いますが、このことについては文部省はどう考えているのでしょうか。
  86. 高石邦男

    ○高石政府委員 先ほども答弁申し上げましたが、具体的に自閉症、情緒障害児というものの判定を客観的に行うということがまず前提にないといけないわけでございます。この問題については、まだ今の状態では、こういう子供は自閉症であるという医学的にも共通な判定、だれが見ても客観的な判定というようなことができにくいという状況にあるというふうに言われております。したがいまして、先ほどお読みいただきましたようなことに留意をしながら、現在の中で考えております精神薄弱とか病弱であるとか、そういう中の運用でそれをカバーしていくということで、現在の時点で対応してもらいたいというふうに思っております。  したがいまして、自閉症や情緒障害児とほかの障害をあわせ持った者が全く救えないというのではなくして、今申し上げましたような項目の運用によって対応できるのではないかというふうに考えておりまして、そういう客観的な物差しができ上がって、だれからもそれで結構だというふうにならないと、これをいきなり自閉症の子供であるというような認定をするのは、非常に慎重でなければならないと思っているわけでございます。
  87. 田中克彦

    田中(克)委員 認定には慎重を期さなければいけないと思いますし、また、そういう今言われますような極めて実態に即した弾力的な運営といいますか、そういうものの中で救っていくということを最大限に生かして、実態に応じた指導をひとつ私どもは大いに期待をしたいわけでございます。  時間が迫っておりまして、若干あと問題がありますのでお伺いしたい、こう思うのですけれども文部省考え方からすれば、盲・聾及び養護学校の事業というのは、これは当然学校教育法の定めた学校の事業に当たるわけでありますけれども労働基準法との関係、これからいいますと、労働基準法の八条の十二号に教育の事業というのがありまして、いわば今申し上げましたように、当然学校教育に関する事業というのはこの十二号に定める教育の事業だ、こういうことになろうかと思うわけです。しかし、これらの学校に設置されている寄宿舎の事業というのは、この場合第十三号の保健衛生の事業に該当する、こういう解釈に文部省はしているようであります。これは労働基準局もそのようでありますけれども、したがって、そういうことになりますと、労基法の六十二条四項の規定によって寮母の深夜における勤務も可能だ、こういう解釈を引き出すためにこうなっているというふうに思います。  私がお伺いしたいのは、十二号の教育の事業でなくて、十三号の保健衛生の事業に該当するという解釈になぜしているのか、これは文部省労働省もおいでになっていると思いますかう、双方にお伺いをしたいわけです。
  88. 野崎和昭

    ○野崎説明員 先生御承知のとおり、労働基準法の適用対象というのは八条各号に分けて適用しているわけでございますけれども、これはそれぞれの事業における労働の態様によりまして労働時間等の規定の適用を異にする必要がございますので、そういう見地から分けているわけでございます。  お尋ねの盲学校聾学校養護学校に設置されております寄宿舎につきましては、そこでの児童生徒の起居等の日常生活の世話であるとか、生活指導等を行うことを主たる業務としているというふうに承知いたしておりますが、そういう場合、労働の態様というのは、二十四時間その業務を継続する必要がある態様でございまして、通常の組織的な意味学校教育とは労働の態様を異にしておりますので、従来からこれにつきましては第十三号の事業、これは「病者又は虚弱者の治療、看護その他保健衛生の事業」というふうに分類されておりまして、病院、社会福祉施設等がこれに当たるわけでありますけれども、そちらの方に分類して労働基準法を適用しているところでございます。
  89. 高石邦男

    ○高石政府委員 寄宿舎における養育というのは、ある意味において教育的な機能も当然持つ。それから、今労働省からお答えいたしましたように、日常の生活の世話とか生活指導、そういうような面を持っているというようなことでございまして、基準法の解釈といたしまして、どちらの事業形態として考えることがより実態に合うかという観点で、基準法で言う八条第十三号の事業に該当するとして解釈をしてきているわけでございます。ですから、そのことと寄宿舎における養育に教育的な中身を持っている、いないということは直接の関係はないと思うわけでございます。
  90. 田中克彦

    田中(克)委員 勤務の実態からしますと、これは当然宿直の状態になっておりまして、調査によりますと、現実に各県とも宿直手当というような形で三千円内外の手当を支給しているわけです。しかし、厳密に今言うような解釈に基づくと、宿直ということではなくて夜間勤務であるという解釈に、この条文からいくとそういうものは成り立っている。また、そうさせなければならないから十三号を適用してそういう解釈にしているのであろうということは想像できるわけであります。  そうなりますと、私はそのことが問題だということではなくて、要するに勤務の実態がそういう実情にあるわけでありますし、中には、私が調べたところでは、この寮母さんの数が小規模なところでは六名というようなところもありまして、一週間のうちに二回宿直をするのではなくて三回も回ってくるという実態のところさえもあるような実情であります。そうなりますと、勤務が非常に重い負担になるという実態が出てまいります。したがって、これを夜間勤務だ、こういうことで、これにこういう勤務の実情を押しつけているということになってきているわけでありますけれども、しかし、一方で宿直手当という形のものを支給してそれが済まされているということになりますと、これは大変矛盾ではないか。その辺の関係が明確にならないから、例えば夜間の勤務であるという解釈に立つとすれば、先ほどから前の質問者の中でもいろいろ指摘されておりますように、夜間子供の見回り、あるいはてんかん発作というようなものもたくさん起こる場合もある。そうなりますと、これはもう通常の宿直ではなくて明らかに勤務の状態になるわけですけれども、そうなった場合に、こういう断続的に勤めさせられる時間というものを勤務時間に入れていくという考え方、こういう措置の仕方も一つはあろうかと思うわけです。厳密に教育の事業だということになれば、宿直ですから一週間に一回、こういうようなことで問題は一気に解決して負担は非常に軽くなるわけですけれども、逆に言えば、それは実態にはそぐわない、それでは寮母さんとして現場で子供を見るわけにいかない、こういう問題になってきますので、私は、そういう点はひとつ十分に労働省と文部省の間で協議をされて、実態に合った対応の仕方というものをどうすべきかということを、もう一度検討し直す必要があるじゃないかというふうに思うわけですけれども、その辺については文部省、いかがでしょうか。
  91. 高石邦男

    ○高石政府委員 寮母の夜間の勤務の形態は、実態が断続的勤務形態だと思うのです。したがいまして、そういう実態に着眼いたしまして宿直勤務という形をとっているわけです。それに対する宿直手当というものを支給するという仕掛けにしておりまして、全く寝ないで昼間と同じような、断続勤務でないというふうにするのがむしろ実態にそぐわないのではないかというふうに思います。ただ、そういう形態について、寮母の勤務条件がいろいろな意味での過酷な負担にならないようにというようなことで、定数の改善とか、そういうものについて努力していかなければならないことは当然と思っております。
  92. 田中克彦

    田中(克)委員 勤務の時間帯を見ますと、八時四十五分から十七時十五分までの八時間勤務、それから十時から十八時までの八時間勤務、十五時から二十二時まで七時間勤務という形で、いわば二十二時から五時までが宿直の時間帯に相当する、こういう勤務の形でいっているようです。したがって、この状況で繰り返されていくということになりますと、大変宿直者にとりましては——二十二時から五時までの宿直で、それが終わってまた後五時から十二時二十分までの勤務が続く、こういうような状況が反復されるわけでありますから、大変寮母さんたちの勤務の実情というのは厳しいというような報告を私受けてきたわけであります。  特に労働省の労働基準監督官の係官の方は、寮母の勤務というのは宿直とみなさない、夜間勤務だ、そして夜間勤務の回数というのは監督の対象外だ、こういうふうに説明をしているようですけれども、そうなると、今さっきお話ししましたように、こういう激しい勤務で、場合によれば、六人なんという編成のところは、実際には一週間の間に三回回る場合も出てくるということになりますが、こうなりますと、いわばこれは監督の対象外という理解でそのまま放置されるわけですけれども労働省はそれでもよろしいと、こういう解釈でしょうか。
  93. 野崎和昭

    ○野崎説明員 寮母の方の夜間勤務でございますけれども、今お話ございましたように、おおむね十時前後から翌日の午前五時前後まででございましょうか、その間は通常の労働というのはほとんどない、見回りとか夜尿の起こしとか、そういうようなごく限られた業務のみであるということでございますので、そういうような実態にございます場合には宿直ということで私どもの方で許可をいたしているわけでございます。  今御指摘のようなケース、私どもの者がどういうふうなお答えをしたかちょっと正確にはわかりませんが、あるいは夜間に急に病気の方が出たというような場合に通常の業務と同じ業務に従事する場合もあろうかと思います。そういう場合には、その部分の時間につきましては宿直ではございませんで通常の労働として処理していただく、そういう扱いにいたしております。  いずれにいたしましても、夜間の勤務全部を含めまして、宿直の場合、あるいは今言ったように通常の労働とみなされる場合、そういった場合全部含めまして私どもは監督指導の対象にさしていただいております。
  94. 田中克彦

    田中(克)委員 今、勤務の実態からして普通の場合と違う、こういう解釈に立って許されるというような御答弁をいただいたわけでありますけれども実態は、先ほどから幾人かの質問者の中で、寮母の生活実態あるいはまた教育的任務の重要性、こういう問題が指摘をされておりますように一夜間そういう障害を持った子供を見ながら宿直をするという状況になれば、それは通常の宿直とは違った勤務の実態というものがいろいろな形で負担として出てくる。その出てきた部分というのを、いわば負担を軽くしていくような形で勤務時間に認めさしていくというような形でこれに対応しないと、今言うような形で、労働省の見解に基づいてそれはそれでよろしいのだということになりますと、その解釈に応じた文部省の対応というものが従前のように許されてしまう、こういう形になりますので、私は、そこのところをもう少しきちっとしてもらいたいと思うのですけれども、そのことについて労働省は前向きに取り組んでいただけますか。
  95. 野崎和昭

    ○野崎説明員 宿直の許可をいたします場合には、まず通常の労働の延長と認められるようなものは許可しない、あるいは夜間に十分な睡眠がとれるということを前提にして許可をいたしているわけでございます。そして、回数につきましても、原則として一週間に一回というのを原則的な基準にいたしております。  先生お話しのように、これはこういった寮母、それから社会福祉施設の保母等の方も同じような問題があるわけでございますけれども、確かに通常の場合に比べまして緊張度が高いということは事実であろうかと思います。そういう意味で、週一回という基準をできるだけ厳しく守っていただくように、私どもの方も文部省の方にお願いしているわけでございます。定員が充足されないというような事情でそれを超える例も間々あるようでございますけれども、そういった点につきましては今後とも監督指導に努めてまいりたいというふうに考えます。
  96. 田中克彦

    田中(克)委員 いろいろ御質問申し上げたいことはたくさんあるわけですが、時間がなくなってしまいまして、すでに通告もいただいております。ただ、今はしょった形で申し上げましたけれども、いろいろな細かい問題点があるがゆえにこの立法をあえて社会党が今国会に提案している、こういうことでありますし、そういう点は浮き彫りにされてきていると思いますので、私は、ぜひ本委員会委員各位の御協力をお願い申し上げて、提案者の答弁を一言いただいて、終わりたいと思います。
  97. 馬場昇

    馬場議員 寮母の勤務の問題ですけれども、確かに労働基準法八条の十三号で、これは矛盾しておると私ども考えております。実際、寮母さんは昼間は教育職に位置づけられておるわけでございまして、給料表も教育職給料表(二)の三等級をもらっているわけです。教育調整手当ももらっているわけでございまして、昼間は教職だ、夜は十三号でもって夜の勤務ができる看護婦とか養護施設と同じだ、これは完全に矛盾しているわけでございまして、私どもとしましては、やはり寄宿舎教諭というところに位置づけて、そういう考えてこの法律を出しておる。そうしてその勤務問題も解決いたしたい、こう考えておるところでございます。  今おっしゃいましたように、この法律は五十四年に最初出しましてから三回出しまして、三回審議もいたしておるわけでございます。憲法、教育基本法によりますと、個人の尊厳が理念ですし、やはり障害者の尊厳というものも、これを保障するような教育というのは当然与えられなければならないわけですし、世界人権宣言、国連障害者年の年に国会決議もやっておるわけでございます。これだけ、五十四年からいいますと五年間、そして三回この委員会審議していただいておるわけでございますので、どうぞ委員の方々、十分審議をしていただきまして、一日も早く——これは先ほど言いましたように九万人の障害児がおりますし、五万の教職員健康被害で悩んでおるわけですし、四百万人の障害者が見守って希望しておるわけですから、一日も早く成立させていただきますように心からお願い申し上げておきたいと思います。
  98. 愛野興一郎

    愛野委員長 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時四十一分休憩      ————◇—————     午後一時三十四分開議
  99. 愛野興一郎

    愛野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  中西績介君外二名提出公立幼稚園学級編制及び教職員定数標準に関する法律案議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。藤木洋子君。
  100. 藤木洋子

    藤木委員 公立幼稚園学級編制及び教職員定数標準に関する法律案の提案をされました提案者の御努力に敬意を表明し、質問させていただきます。  今日、幼稚園、保育所は、ともに幼児の心身の健やかな発達に必要な多様で変化に富んだ活動を保障し、学校へ入学してからの教育の基礎を築く就学前教育施設として重要な役割を担っておりますが、この幼児教育におきまして公立幼稚園が果たしてきた役割はどのようなものであったか、提案者にお尋ねをいたします。
  101. 中西績介

    中西(績)議員 お答えします。  幼児教育は、子供の未来を左右する大切な役割を持っております。特に人格の土台を築くのが幼児期でありまして、重要視されなければなりません。幼児一人一人の発達段階に応じて個人指導やグループ指導、活動内容別指導など、就学前教育は創意を凝らして行われる必要があります。また、非行や自殺が低学年化しておる今日、現に四、五歳の子供でも親子関係のひずみを背負い、これまでにない内向性の子供、情緒不安定の子供、自律できない子供、甘え過ぎの子供などなど、心の病を持った子供が、程度の差こそあれ、多くいるわけであります。これらの子供のカウンセリングの役割も幼児教育で重要であります。  公立幼稚園は、私立に比べ若干数こそ少ないものの、幼児教育に果たしておる役割というものは大変大きなものがあるわけであります。文部省や都道府県、市町村の依頼にこたえての教育研究や幼稚園教員の養成に当たっての教育実習生の受け入れなど、幼児教育の指導的役割を果たしております。  このように、幼児教育内容を向上させるためにも、公立の拡充というものは大いに推進をされなくてはならないと思っています。特に私立幼稚園経営の成り立たない過疎地域などにおきまして、この公立幼稚園の果たす役割というものは大変なものがあるということを申し上げておきたいと思います。
  102. 藤木洋子

    藤木委員 この点、文部省は、公立幼稚園が果たしてきている役割についてどのようにお考えでしょうか。
  103. 高石邦男

    ○高石政府委員 先ほどお話がありましたように、幼児教育の振興に、地域の実態に応じてそれぞれの公立幼稚園が設置されまして、大きな役割を果たしてきたと思います。
  104. 藤木洋子

    藤木委員 幼児教育における公立幼稚園が果たしてきた役割が極めて大きいものであることは、私も全く同感でございます。  文部省はこの幼児教育計画的整備を進めるために、昭和四十七年度から十カ年計画、幼稚園教育振興計画をどのように遂行してこられたのか、具体的に述べていただきたいと思います。当初の到達目標に対してはどうであったか、その辺も含めて御答弁をいただきたいと思います。
  105. 高石邦男

    ○高石政府委員 四十六年につくりました幼稚園教育振興計画では、最終的には四歳児は六八・一%、五歳児については七〇%まで就園率を上昇させたいという計画のもとに年次計画をつくってまいったのでございます。その結果、昭和五十七年度の時点で申し上げますと、五歳児につきましては幼稚園に就園している者が六四%、保育所に入所しておりますのが二九%、合わせますと九三%、それから四歳児で幼稚園に就園しておりますのが五一・五%、保育所に行っておりますのが三〇・四%、合わせますと八一・九%という状況になっているわけでございます。
  106. 藤木洋子

    藤木委員 今のお話でしたら、どれだけ就園させるかという計画だけだったように受け取れるのですが、十カ年計画はそれだけでしたか。それ以外には計画はございませんでしたでしょうか。
  107. 高石邦男

    ○高石政府委員 そういう計画のもとに四十七年度から十カ年計画を立てまして、その幼稚園をつくるに必要な施設に対する助成をするというような対応を講じてきているわけでございます。
  108. 藤木洋子

    藤木委員 その中で、公立幼稚園が実際に整備が進められてきた率というのがわかりますでしょうか。私立幼稚園と双方合わせておっしゃっていられると思うのですが、いかがでしょうか。
  109. 高石邦男

    ○高石政府委員 この十カ年計画で、最終的に公立幼稚園とそれから私立幼稚園とが、どういうような比率でどう伸びていくかというのを厳格に分けることは、非常に難しいというふうに考えてきているわけでございます。したがいまして、公立幼稚園、私立幼稚園全体を含めて、最終的な就園率を高めていくという対応を講じてきているわけでございます。  そこで、実態として、公立幼稚園につきましても、計画では約三百園前後、三百から五百園前後の公立幼稚園施設計画として助成をしていくという計画を持ってきたわけでございますが、実績としては、五十六年度になりますと二百七十園程度というような形で、当初見込みました公立の設置率というのは、当初計画に比べますと実績は下回っている。これは、それぞれの地域の実情、公私立幼稚園の関係、それから保育所の関係、そういうものがかかわり合っておりますので、やむを得ない状況かと理解しているわけでございます。
  110. 藤木洋子

    藤木委員 私が伺いましたところによりますと、この十カ年計画の期限が過ぎましても、なお文部省としてはその目標を目指して努力をしてこられたというふうに伺っておりますが、そうですか。
  111. 高石邦男

    ○高石政府委員 今後も現在も、公立幼稚園施設についての助成というのを予算上、措置しておりますので、それぞれの地域によって、幼稚園をつくりたいというところの公立幼稚園、私立幼稚園がございますれば、助成の措置を講ずるようにしているわけでございます。
  112. 藤木洋子

    藤木委員 ただいまの御答弁を伺っておりましても、入園希望を満足させるための施設を公的に保証する公立幼稚園、これを、どちらかといいますと抑えて、私立に依存をしてきたということじゃないかというふうに思うわけです。  この幼稚園教育の振興計画の、文部省が進めてきた遂行状況について、提案者はどのような見解をお持ちか、述べていただきたいというふうに思います。
  113. 中西績介

    中西(績)議員 今文部省の方からお答えございましたけれども、十カ年の計画を見ましても、その具体的達成状況につきましては不十分であるということは、かつて、昭和五十年の行管庁の勧告の中身を見ましても、大変不備なものがあるということが明らかになっております。  これを見ていただきますとおわかりになると思いますけれども、特に設置基準等について、調査対象百七十五園、そして公立八十七、私立八十八園を調査いたしております。その結果、いろいろたくさんございますけれども、一口で申し上げますと、結局無届け学級がたくさんあるとか、あるいは面積の適合しておるものはこのうち二国のみだとか、さらに私立におきましては、二十七都道府県におきまして認可定員を二・三倍も超えておるというように、指摘をするとたくさんの問題があるわけであります。  これに見受けられますように、国の施策として本当に幼稚園教育を重視しておったならば、必要なところに必要な規模の園を設置できるように、適正規模の園をそこに配置することができたのではないかと思いますけれども、こうしたことが、当時は園の数が少ない、あるいは入園希望者が多いということを理由にいたしまして、無計画にどんどんつくり上げていったという経過があるわけであります。したがって、本来ならば、こうして少なくなってくる時期に、十分な計画の中で立案されておるならば、今こそこうした、私たちが提案申し上げているような園の教員一人当たり二十五名だとか、あるいは三歳児であるならば二十名というように、幾つかのそうした条件に適合させるように整備が進むわけでありますけれども、こうした面の不十分さが今大きく問われ直しておるということが言えるのではないかと思っております。  以上です。
  114. 藤木洋子

    藤木委員 極めて不十分だという御批判はごもっともだと思います。その点で、今重要なことは、振興計画の遂行が、人生の出発点とも言える幼児期、幼稚園期の二度とないこの時期に、より豊かに、より健やかに育てる幼児教育にふさわしいものになり得ていないその要因の一つは、幼稚園設置基準があくまでも基準であって、法的整備がなされていないからではないかというふうに思うわけです。  そこで、定数法についてお伺いをいたします。  法律案の一クラス定数を四、五歳児で二十五人以下としていることは私も当然のことと思いますが、二十五人以下にする根拠と、そしてその意義について、提案者から御説明をいただきたいというふうに思います。
  115. 中西績介

    中西(績)議員 根拠一つというものは、一九六一年の国際教育会議の勧告によるものが一つであります。この中には、二十五人以下が望ましいという、こうした勧告がされています。しかもこれは、日本の場合であれば、文部省も賛成をしておるはずであります。  さらにまた、今の設置基準四十名につきましては、一人の保育者、教員の掌握できる人数ではないということであります。特に諸外国に比べてこの点が大変おくれておるわけでありますけれども、前回のこの場における文部省答弁の中におきましても、フランスであれば三十五人以下、西ドイツ二十人、イギリス三十人以下など、さらにまた、スウェーデンの最大二十二名あるいはデンマークの最高二十二名などなど、すべての先進資本主義諸国と言われるところにおきましては、四十名という基準というものは常識を外れておるとしか言いようがないわけであります。そうした点から、幼児教育というものは人間教育の基礎をなすものであるということを基調にいたしまして、無限の可能性を秘めた幼児に行き届いた保育の充実を重視すべきであろうと考え、こうして二十五名というものを提起をいたした次第です。
  116. 藤木洋子

    藤木委員 二十五人以下にするということは、非常に積極的な意義を持っております。共産党も、一九七四年の七月に「乳幼児の豊かな発達のために」という緊急提案を発表いたしました。四、五歳児についての二十五名以下というこの御提案は私どもの党の考え方に近いものでございまして、同感でございます。  そこで、一クラス四十人というのが、提案者の方は今そのことに対する御批判をなさったわけですけれども、幼児教育として適切な数だと文部省はお考えなのか。四十人規模が就学前教育にとって好ましいのか、好ましくないのか、いかがでしょうか。
  117. 高石邦男

    ○高石政府委員 幼稚園の設置基準では、御指摘のように一クラス四十人以下というのを一応基準に決めているわけでございます。これはどの程度が最も合理的かというのは、いろんな考え方があると思います。ただ、現実的に幼稚園を運営する際に、公立のみならず、私立幼稚園が現在は七〇%以上の比率を持ってきているわけでございます。したがいまして、そういう経営上の観点というのも当然考えていかなければならないということから、三十一年当時、幼稚園設置基準をつくる際に、一体一クラス幾らにしたらいいかということで、四十人ということを目安に置きまして今日まで運用されているのが実態でございます。もちろん、この四十人がベストであるというふうに考えているわけではございませんけれども、いろんな財政状況その他も判断して、改善していくとすればどういう手順、どういう方法でやっていくかということを幅広く、私学の関係者の意見も含めて聞いていく必要があろうと思っております。
  118. 藤木洋子

    藤木委員 今の御答弁ですと、現状がこうだからということでお答えになったわけですけれども、幼児教育にとって四十名規模が果たして好ましいのかどうか。ベストではないというふうに言われましたけれども、好ましいわけですか。ベストではないけれども好ましい、どうなんでしょうか、その点。好ましいのでしょうか、いかがですか。
  119. 高石邦男

    ○高石政府委員 四十人というのが好ましいクラスでないというふうには思っておりません。もちろん、それだからといって四十人がベストでこれが一番いいんだ、そういうふうにも思っていないわけでございます。
  120. 藤木洋子

    藤木委員 それでは回答にならないのですね。じゃあどのように思っていらっしゃるのか。そういうことに対する見解を全く持たずに、四十人という基準をつけているというばかげた答弁をしていただいては困ると私は思うのです。
  121. 高石邦男

    ○高石政府委員 三十一年当時、設置基準をつくる際に、例えば四十人を超えて五十人とかないしは四十五人とか、いろいろなクラスで教育が行われていた実態があるわけです。それで、その当時の背景として四十人でもって編制するという設置基準を、目標を掲げてつくったわけであります。だから、世の中というのは、そういう状況を踏まえて前進させていくという対応でやってきているわけでございまして、その四十人をつくったというのが非常におかしな基準であったというふうには思っていないわけでございます。  しかし、今後新しい幼児教育の展開を図る際に、四十人をもっと適正、いい規模にしていったらどうかという意見があることは十分承知しておりますし、そういう面を検討する際には、いろんな財政状況ないしは私学の経営の状況、そういうことも考えてやっていかなければならないということを答弁しているわけでございます。
  122. 藤木洋子

    藤木委員 ただいまの御答弁では、私の質問の趣旨がおわかりいただいていないんじゃないかというふうにも思うのですが、ここで立ちどまろうとは思いません。しかし、四十人を決めるときには、どういう考え方でその基準を持つかという、それに対する意義とか根拠というのをやはりお持ちになったんじゃないかと思うのですね。それを抜きにして四十名に決めるということはあり得なかったと思うのですよ。私はそのことを間わしていただいたわけです。結構です。  十年計画をお立てになったときは、幼児が増大する中で私立に依存してこの計画を進めてこられました。けれども、今幼児は減少期に入っております。減少期に入ってきていることは、また一クラス幼児数を減らす条件が整ってきたというふうに見るべきじゃないかと思うのですね。その点で、二十五人以下のクラス編制にするために園舎を新増設しなくても、また教員を増員して対応しなくてもいいわけで、チャンスでもあるわけです。最もやりやすいはずですけれども文部省はこれに対してどのように考えておられるのか、お聞きしたいと思うのです。先ほどの四十名の基準といいますのは、お読みいただいたらわかりますように、決して四十名でなければならないとは決めていらっしゃらないでしょう。四十人以下というふうに決めていらっしゃるはずですよ。その辺をちょっと補足させていただいて御質問をする次第です。今の時期に定数を減らすことはできないか、その点どうですか。
  123. 高石邦男

    ○高石政府委員 園児が減少する機会をとらえてその内容の改善を図るということは、一つの基本的に考えていかなければならないことだと思います。そういう意味ではチャンスでございます。  ただ、実態は、幼稚園の教育は七割五分、八割近くが私立幼稚園によって経営されている。公立だけで議論しますと、教室も要らないじゃないか、それから人数もふやさなくていいじゃないかという議論になっていくわけでございます。しかし、私立幼稚園の立場になりますと、クラス編制を二十五人にすればそれだけ保護者の負担を増大しなければならない。理想としてはそういう方向に行くのが望ましいと思っても、そういうものとのバランスを考えて対応していかなければならないということから、そういう私学関係者の意見も十分聴取していかないと、公立だけのことを考えで幼稚園教育に対する学級編制考えるというわけにいかない、そういう意味のことを申し上げているわけでございます。  それで、四十人以下にするというのは一つの最高のリミットとして考えたわけです。したがって、四十人でなければならないということではないんで、実態としては三十人のところもございましょうし、三十五人のところもあるというのが実態であろうと思います。
  124. 藤木洋子

    藤木委員 そうなりますと、文部省はこの減少期に幼児教育をどのようにして充実させようというふうにお考えになっておられるのか、そういった具体的な政策についてお持ちでしたらぜひ御説明をいただきたいと思います。
  125. 高石邦男

    ○高石政府委員 最近、幼児教育教育要領の見直しのための協力者会議を発足さして、今後の幼児教育についてどうあったらいいかということをいろいろ議論をしていただくことになっているわけでございます。そういういろいろな議論を踏まえながら、そういう議論の中から学級編制の問題、それから今後の環境の変化に対応する幼児教育のあり方というのがどうあったらいいかという、望ましい方向というものを出していただけるのではないかと思います。そういう内容を受けまして、文部省としては施策に反映さしていきたいと思っております。
  126. 藤木洋子

    藤木委員 それでは、まだ政策化はされていないわけですね。まるでそれでは政策がないと言わなければならないのじゃないかというふうに思うわけです。減るということは前からわかっているわけですから、文部省の御答弁としては、私、とても残念に思います。本当にいいかげんな話だというふうに思うわけです。財政事情が悪いのは確かにそのとおりです。ですから、今お出しになっていらっしゃる提案が極めて困難ではないかという考え方であるとか、果たしてこの法案が現実的なのかという疑問もあるわけです。  この法案が実施可能あるいは実行可能なのだという点につきまして、提案者から御説明をいただきたいというふうに思います。
  127. 中西績介

    中西(績)議員 幼児教育の重要性は既に申し述べたとおりでありますけれども、単に財政事情を理由にいたしまして否定をするという見解があるようでありますけれども、国民の強い要求にこたえているとは言えないわけであります。これまで幼児数に比べまして因数が少ないために、学級定数の引き下げは幼児を締め出すことにつながるおそれがありましたけれども、現在園児数の減少傾向が続いておるわけでありますから、この心配は少なくなってまいってます。  したがって、一クラス二十五名以下の達成への方法は、提案理由にもありますように、五年間かけて達成をしようと考えておるところです。この年次計画につきましては、幼児人口の減少を考慮いたしまして文部省で行政的に責任のある計画を立てていくべきだろうと思いますが、その際に、先ほども討論ございましたように、何と申しましても、幼児教育を今後どう拡充あるいは充実さしていくかという基本的な考え方がないと、そのときだけの計画になってしまいまして、全くそれらに具体的に対応する中身になり得ないまま終わる可能性があるわけであります。そしてそれは、先ほども言われておりますように、父母の負担が加重していくということを理由にすれば、しなくてもいい論議になる可能性だってあるわけでありますから、少なくともそういうことを言っておる文部省であれば、今ますます教育予算を削減しておるわけですし、そして父母の負担をあるいは受益者負担に切りかえていこうという、こうした考え方があるわけでありますから、私は、そのこと自体をまず第一に反省をしていただくと同時に、今申し上げたように、これが非行問題、若年における非行問題等発生件数が多くなってきておるということ、その原因がどこにあるかということを考え合わせた場合に、私たち、今、幼時期における教育を最大の目標にしていくというくらいの決意がなければ到底こうしたものは実現できないんではないだろうか、こう考えますので、この点はぜひ係数等については文部省の方にお聞きいただければと思っております。
  128. 藤木洋子

    藤木委員 今、幼児教育がいかに大切かということも非常に力を込めておっしゃったわけですが、この五カ年計画では、やれる条件の整ったところから順次行うということで、機械的に合すべてに当てはめて着手するということを求めてはいらっしゃらないわけですから、極めて現実的な配慮が盛り込まれているものであるということが言えるというふうに思います。  そこで、次に公立幼稚園教員の給与の問題についてお尋ねをいたします。  幼稚園教員の給与は、小中学校と同じように教育職第(三)表の適用がされてしかるべきですが、実態的には必ずしもそうなっていない状況がこの間ずっと続いております。提案者はこの点をどのように考えていらっしゃるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  129. 中西績介

    中西(績)議員 御指摘のとおり、幼稚園教諭の賃金につきましては、教育公務員特例法によりまして国立を基準に決められることとされておりますけれども教育職員俸給表(三)表相当の給料表が適用されなければならない、こう私たちは従来から申し上げてきておるところです。文部省もこの趣旨に沿いまして何回か指導をいたしておるようでありますけれども、まだまだ不十分な実態にあるわけであります。その結果は、市町村数におきまして、適用されておるところが一八・二%、それから幼稚園数で三九・二%、教員数で四三・二%であります。しかし、教育職田表相当の給料表が適用されていない、このことからいたしまして残念な実態にあるということが言えるわけであります。  それで、ILOあるいはユネスコの教員の地位に関する勧告も、「給与は、教員の地位に影響を及ぼす諸種の要素中特に重視されるものとする。現在の世界の情勢では、教員に認められる地位又は敬意、その任務の重要性についての評価の程度等の給与以外の要素が、」云々とございまして、教員の置かれている「経済的地位に依存するところが大きいからである。」と指摘しております。したがいまして、適切なこの給与など労働条件が幼稚園の教育にとっても大変重要でありますから、私たちは、幼稚園教員教育職(三)表をすら適用されておらない実態というものを早急に改善をさせなくてはならない。したがいまして、文部省としては、行政的にもそうした点についての指導を強めていただくことが今最も重要ではないか、こう考えています。
  130. 藤木洋子

    藤木委員 文部省はその点、どのようにお考えでしょうか。これまでの国会では、教育職第(三)表の適用の必要があると繰り返しお答えになっておられるわけですが、重ねてお伺いをいたします。
  131. 高石邦男

    ○高石政府委員 この点につきましては中西議員の御答弁がありましたとおりでございまして、文部省としては、教育職俸給表(三)表が適用されることが適当であるということで、各都道府県に対して指導を重ねているところでございます。
  132. 藤木洋子

    藤木委員 きょうは人事院にもお越しをいただいていると思うのですけれども、人事院の方の御見解はいかがでしょうか。
  133. 藤野典三

    ○藤野説明員 国家公務員の場合におきましては、国立大学の附属の幼稚園がございますが、これにつきましては、先生お話しありましたように、小中教員と同じ教育職俸給表(三)表を適用しております。これは、学校教育法におきまして、幼稚園は学校教育の一環といたしました教育活動を行う教育施設であるということ、それから、その教員につきましては教育公務員特例法の適用がありまして教育公務員であるということ、それからさらに、その必要といたします免許資格の面におきまして小学校教員とほぼ同様となっている、こういうことからそういう適用をしているわけでございます。  今先生御指摘のように、そういう意味で、地方公務員につきましては、私ども直接ではございませんが、国におきます幼稚園教員について適用しております理由をよく十分考慮の上、適用していただくのが一番適当と考えております。
  134. 藤木洋子

    藤木委員 文部省にお尋ねいたしますけれども、それでは教育職の俸給表を採用している自治体は、最も新しい資料によるとどのようになっているか、ちょっとお知らせをいただきたいと思うのです。全国で自治体にして幾つぐらいあるのか、その数と、それから職員の数にしたら何名ぐらいになっているか、また(三)表の適用ではないけれども、特別手当など何らかの、第(三)表に相当するところまで近づけるための措置をとっておられるところもあると思うのですが、それが全体に占める割合は大体どうなっているか、それは職員の数ではどのくらいになっているか、ちょっとお知らせをいただきたいと思います。
  135. 高石邦男

    ○高石政府委員 教育職(三)表の適用されている総体の状況は、先ほど中西議員がおっしゃった数字と同じでございます。具体的には、市町村の数では一八・二%の二百八十一、幼稚園の数では三九・二%の二千三百九十二、教員数では四三・二%の一万八百七十七というような状況でございます。  それから、これに準ずるような形という俸給表の実態は詳細につかんでおりませんので、そこまでの分析をしておりません。
  136. 藤木洋子

    藤木委員 これは近年の動向といいますか、ここ数年の間にどんなふうに変化しておりますか。
  137. 高石邦男

    ○高石政府委員 ここ数年の状況ではほとんど変動がない、変わらない……(藤木委員「何年来ですか」と呼ぶ)五十一年以来五十八年までの状況で言いますと、ほとんど変わらない状況でございます。
  138. 藤木洋子

    藤木委員 変わらないのはなぜなんでしょうね。文部省は随分熱心に御指導していらっしゃるように先ほど伺ったんですけれども、ふえないといいますか、変化しないその原因をどのようにごらんになっていらっしゃいますでしょうか。
  139. 高石邦男

    ○高石政府委員 これは俸給表の問題だけでなく、実は保育所との関係というのが末端の市町村では大変な問題でございます。したがって、保育所の職員とどうバランスをとるかということを市町村の段階では非常に重視されるわけでございます。そうしないと人事の交流であるとか、それからいろんな問題というものが錯綜してくるということで、原則的にはそういう指導をしてきているわけでございますけれども、そこが大きなネックになっているということでございまして、それだけに保育所、幼稚園との基本的な問題というのは今後十分検討されていかなければならないと思っております。
  140. 藤木洋子

    藤木委員 一部に、教育公務員特例法の二十五条の五では基準とするというふうになっているが、基準とするというのは同一でなければならないということではないという見解や、その理由として国立の幼稚園の場合の職務内容というものと公立の幼稚園の場合の職務内容というのは違うとか、両者の性格が異なるなどとする意見もあります。文部省としては、この考えに対してどのように思われておられるのか。こういった考え文部省が御指導していることにマイナスに働いてはいないか、その辺の御見解をお聞かせください。
  141. 高石邦男

    ○高石政府委員 国立幼稚園というのは、いわば研究の機関としても置かれるわけでございます。したがいまして、一つの研究的なものを深く分析していくというようなことで、教職員配置につきましても、かなり実質的に質の高い人たち配置して研究していくというようなことをあわせて持っている実態があるわけでございます。それから一方、普通の市町村に置かれている幼稚園は、どちらかというと保育所とのバランスで論じられていくという実態があるわけでございます。  したがいまして、実態公立幼稚園と国立幼稚園は全く同じような形で運営され、教育されていると断定するにはちょっと断定しにくい面がある。しかしながら、本質的に幼児教育に従事する、しかも資格も同じであるというようなことを考えれば、給与表の適用につきましては教育職俸給表の(三)表を適用すべきであるという考え方で指導してきているところでございます。
  142. 藤木洋子

    藤木委員 ちょっと誤解を招いているんじゃないかと思うんですが……。地方公務員法でも第二十四条で「職員の給与は、その職務と責任に応ずるものでなければならない。」とされております。国立てあるとなしとにかかわらず、また幼稚園であると保育所であるとを問わず、幼児教育というのは人間形成の土台、国民教育の基礎となるものです。幼稚園の先生も保育所の保母さんも、ともに幼児教育に責任を負っていることは紛れもない事実です。  本日は公立幼稚園に関する法律案審議しているわけで、保育所問題にまで私、言及いたしませんけれども、幼児教育はどんな自治体にありましても、また都市、農山漁村であろうとも、またいかなる環境においても、すべての幼児に豊かな全面発達を目指して保障されなければならない、それが幼児教育だというふうに私は思うのですね。この崇高な幼児教育に献身的に従事しておられる先生方、この先生方の身分や処遇が高められることこそ、今求められております。  文部省は、幼児教育を重視され、そのことを強調し、力を入れるというふうに言っておられるわけですから、教育(三)表の適用がなされ、教員身分や処遇、これを改善するように最大の努力をされる決意を大臣からぜひ述べていただきたい。それについて提案者の方からも御意見を伺って、私の質問を終わりたいというふうに思います。
  143. 森喜朗

    ○森国務大臣 公立幼稚園は市町村の要望、住民の要望によって設立されているものでございまして、先ほどから御論議がございますように、幼児教育にとって極めて大事な機能を果たしておるというふうに考えております。いろいろ御指摘がありました点もございますが、文部省としても、今後十二分に幼児教育に対して振興、充実するように努力してまいりたいと思います。
  144. 中西績介

    中西(績)議員 先ほど高石局長の方から答弁があっておりましたけれども、給与問題につきましては、国立幼稚園と市町村立幼稚園の場合にあたかも格差があってもよろしいかのような答弁がされておりましたけれども、これは私は大変な誤解を招くものではないかと思っております。  特に、今問題になっておりますように、依然として市町村の数で一八%しか教職を適用しておらないという実態がある中でこういう発言がされますと、これはますます地方自治体におきまして、財政が厳しいということを理由にいたしまして教職適用外のものとして取り扱いをしていくということになり、一般的にはただ単に幼稚園の教諭の賃金低下を招くだけでなくて、他の保育所にもまた、これが国の場合と地方自治体の場合には格差があってよろしいというようなことにまで拡大をするおそれがあるわけですね。  したがいまして、私は、やはりあくまでもこの賃金問題につきましては幼稚園の教員身分というものを明確にした上で、今までどおり教育公務員特例法二十五条の五に規定をされておるというその上に立って、先ほど人事院の方が言われましたように、教職としての位置づけの中での賃金をどうするかという、こうした方向を明確にしておかないと今後混乱をするのではないか、また逆に賃金低下をこれから起こす結果になってくるのではないかということを一番心配するものです。  したがいまして、先ほど御答弁申し上げましたように、あくまでも本法案学級編制及び教職員定数と別に、給与上の措置については、たとえ本法案の期間がかかったといたしましても、この点だけは早急に解決すべく努力をすべきではないか、こう考えておりますので、この点を私も強く文部省に要請をいたしまして、答弁を終わらしていただきます。
  145. 愛野興一郎

    愛野委員長 江田五月君。
  146. 江田五月

    江田委員 公立幼稚園定数法案、こういう形で非常に重要な役割を果たしている幼稚園の、それにもかかわらず抱えている多くの問題について解決の道を開いていこうという提案者の皆さんの御努力に冒頭敬意を表し、同時に、こうした議員立法にきちんと審議の場を提供してくださる委員長に敬意を表します。  文教委員会、こうして議員提案を俎上にのせて議論をやっているわけですが、この台風といいますか、政党で言えば党風、会社で言えば社風、この文教委員会の台風、いろいろ難しい法案を抱えておるわけですが、今後とも大切にしていきたいと思っております。  ところで、幼稚園が大変大切な機能を果たしている、役割を果たしているということは、これ皆、もちろんだれも疑わない、前提にしているわけですが、それにもかかわらず、一体幼稚園は何をやるところなのかな、何が求められているのかな、こうちょっと開き直ってといいますか、もう一遍しっかり反省をしながら考えてみますと、これはなかなか難しいんですね。一体文部省あるいは文部大臣、幼稚園というものをどういうものだとお考えなのか。どういうことを期待していらっしゃるのか。  例えば、今小学校に入る段階で、学校の側からいえば、余り算数とか国語とかその他の余計なことを覚えずに来てもらった方がいいんだ、もう白紙で学校へ来ていただいた方がいいんだということがよく言われますし、私もそうだと思うのです。幼稚園というのはそういうものじゃない、そういう小学校の前段階の教育をする場ではない。それならば、いろいろなしつけなどをきちんと覚えて、小学校へ入って入学式が終わって、その翌日にはもう先生が教壇に立って何か言えば、生徒が皆ぴしっと座ってクラスで授業を受ける、そういう子供になっておいてほしいと学校は思っているのか。どうもそうでもないんだろう、幼稚園というのはそういうことをするところでもないんだろう、それじゃ一体幼稚園というのは何なんだろうかなと考えると、なかなかこれは難しい。教育学の教科書でもひもとけばいろいろ書いてあるのかもしれませんが、文部大臣、どういう基本的な見解をお持ちなんでしょうか。
  147. 森喜朗

    ○森国務大臣 幼稚園はどのような機能と目的を持って存在するか、設置されているか、それは事務当局から必要がございましたらお聞きをいただくといたしまして、政治家という立場で私が感じますのは、子供が世に誕生して最初に接するのは母親、そして本当の幼児期の初歩段階といいましょうか、最初の段階は家庭だろうと思うのです。そして、そこで恐らく人間として一番基本的なことをやり、むしろ本能をある程度助長させる意味で、家庭の中で子供の育つ基本が身についていくんだろうと私は思うのです。  学者によると、何か前頭葉と後頭葉があって、どちらがどうか私もはっきり覚えておりませんし、ソニーの井深さんに言わせると、右と左の脳が違うんだというようなことをおっしゃいますが、いずれにいたしましても、これも井深さんの本に別におべっかを使うわけじゃありませんが、少なくともゼロ歳児から三歳児くらいまでは家庭を中心にして人間としての、何といいましょうか、心身の発達を助長させるということがまず行われる。したがって、その後幼稚園へ出るということは、今江田さんがおっしゃったように、字を覚えたり学問を覚えるということではなくて、やはり豊かな情操や思考力や創造性、自律の態度を養う。そして、それはむしろ家庭という自分の身内の人たちによるはぐくまれ方ではなくて、初めて世間と、先生とか友達、別の人たちと会う、自分の家庭と別の人たちと会う。人間形成の中の諸段階の一番大事なところを最初は家庭で、そしてその後は幼稚園の仲間で、そこが初めての社会生活の一つの初体験だろう、私はこう思うんです。そういう意味で、幼稚園というのは子供たちにとって大変重要な時期である、その中で幼稚園というのは大変大事な教育をしていく機関である、私は政治家の立場でそういうふうに理解をしておるわけでございます。
  148. 江田五月

    江田委員 文部大臣の御答弁が、まさに核心にもうずばり入っちゃったんだと思うんですけれどもね。  教育というのは、一つは、これまでの私たちの歴史の中で築き上げてきたいろいろな知識経験を次の世代に伝達をしていく、これが教育一つ。しかし、これは幼稚園教育に恐らくそんなに求められていない、ほとんど求められていない。もう一つ教育はそういう知識経験の伝達もあるけれども、同時に、社会化といいますか、生まれてきたばかりの子供はもちろん社会人の能力は到底持ってない。次第次第に成長していくに従って人間が社会人として成長していく。これは例えば物の見方も主観的、自己中心的なものから次第に客観化していく、あるいはみんなと一緒に腕が組み合えるようになる、助け合えるようになる、人のことがわかるようになっていく、そういう社会化、ソシアライゼーションと言うんですか、そういうことが一つ教育。人間をコーチしていくといいますか、そういう社会化の過程で一番最初の社会というものの初体験が幼稚園。もちろん家庭も一つの社会でしょうけれども、初体験と言うとちょっと違うのかもしれません。  しかし、母親がいて、その次に父親と出会い、兄弟と出会い、隣近所の人と出会い、だんだん広がっていく。私は、この幼稚園の一クラスの定数というのもそういう面からひとつ見直してみる必要があるんじゃないだろうかと思うんです。今まではどうも、ともすると、幼稚園に限らずクラスの定数というのは、先生がどれだけの生徒を把握できるか、どれだけの生徒先生教育の可能な限度なのかというアプローチが多かったけれども、大きくなればそれもいいのかもしれませんが、小さなときはむしろ、教師がどのくらいな数の生徒を把握できるかということもあるけれども生徒同士が一体どのくらいな数なら自分たちの友達として認識し得るんだろうか。どのくらいな数の友達関係を設定し得るんだろうか、そういう光の当て方があるんじゃないか。  小学校が四十人学級、あるいは現実には四十人以下のところもたくさんあるにはあるんですけれども、しかし超えているところもあって、四十人学級にした方がいい、しなければならぬということが問題になる。その小学校よりもっと社会化が進んでいない幼稚園の年代で四十人というのはいかにもおかしいじゃないか、もっと小さな数でなければ、一人の子供にとって友達関係を設定するというのは無理じゃないだろうか、そういうアプローチでこの定数の問題を考える、これは自分で言うのもなんですが、なかなかおもしろいアプローチじゃないかと思うんですが、どうですか、文部大臣。
  149. 高石邦男

    ○高石政府委員 先生の発想は非常に重要な発想だと思います。ただ、子供の社会性に着眼して、何人であれば子供が最も有機的に動く単位の集団であるかということと、学級編制を何人にするかをすぐに結びつけることはどうかというふうに思います。というのは、子供の発達段階、例えば三歳児、四歳児、五歳児という年齢差にもよるでしょうし、子供の持っている能力というか、適性と申しますか、それによっての差も出てくるであろうと思うのです。  したがって、仮に四十人という学級編制にしていても、学級を分けてグループ指導をやるときに、数名のグループ指導でいろいろな遊びを覚えさせるとか遊ばせるという場合には、まさに先生のおっしゃるように、何人ぐらいの小集団に分けて子供の学習活動を展開したらいいかというか、生活活動を展開したらいいかという場合に、大変貴重な御意見だと思うのです。だから、そういう意味で、やはりクラスをつくる際の今までの基本的な考え方は、一人の先生がどこまで子供に目が届くかというような角度が中心になって、そして、今お話のありましたようなことは、学級の学習活動の際にどういうグループ集団に分けて遊ばせるか、活動させるかという場合に大変貴重な意見だろうと思っております。     〔委員長退席、船田委員長代理着席〕
  150. 江田五月

    江田委員 どうも、それも一つの意見であるけれどもそれだけじゃないと、こういう考え方がどうですかと言うと、それも一つの意見だけれどもそれだけじゃない、それだけですぐに結びつかない、こうなりますと、それじゃ一体文部省は何を基準に考えているのか、そうすると何かわけがわからぬことになってしまう。それでは私はどうも議論にならぬのじゃないかと思うのですが……。  今、グループ指導というようなやり方もありますよというお話でしたが、私も幼稚園、ちょろっと行ったのですけれども、私たちのころには恐らく「チイチイパッパ」とか「むすんでひらいて」とか、とにかくみんな一斉にやらしておればよかった。最近の幼稚園は、どうもそうでもないようですね。一斉に何かをやらせるということではなくて、子供たちがいろいろなことを自主的にというか、自由にやっていく、それを教師が全体としてうまくオーガナイズをしていくという、そんなやり方をやっているんだろうと思うのですが、そういうやり方で幼稚園の授業を組み立てていって、そして先生方、一日の幼稚園の保育時間が四時間程度ということになっているようですが、四時間の間、休みがないというのが実態ですよね。そうじゃないのですか。あっちの方では子供が何か遊具で遊んでいる、こっちの方ではまた別の遊具で遊んでいる、そういういろんなたくさんのグループが、それぞれいろんなことをやっている。それを全体としてうまくオーガナイズをしていく幼稚園の先生というのは、小学校先生のように、はい一時限目、ベルが鳴りました、それではこれから授業を始めます、そして四十分やって十分休んでという、そういう休みがない。それが幼稚園の先生方の実態だと思いますが、これはどうなんですか。そういう認識は違うのですか。
  151. 高石邦男

    ○高石政府委員 実態はまさにそうでございまして、午前中八時、九時から始まったら四時間程度、いわば休み時間というようなものはなくて、全体的に、幼稚園にいるときに先生方が教育をしていくというか、世話をするというような実態でございます。
  152. 江田五月

    江田委員 そうしますと、これは幼稚園の先生にとってみたら——その前にもう一つ確認をしておかなきゃならぬのですが、そういう幼稚園の先生が幼稚園児をどう育てていくことが期待されているのか、全部一斉にまとまって何かをできるような、そういう子供に育っていくことを期待されているのか、それともそうじゃなくて、まだまだ四歳児、五歳児というと、授業を始めます、「起立」と言えばみんな一斉に起立をしておじぎ、こうやるのじゃなくて、いろいろなバラエティーがある子供たち、それぞれ個性というか、まだ個性の芽生えぐらいでしょうけれども、いろんな発達段階はそれはそれでいいんだ。生まれつきも随分違うわけですから、四歳児、五歳児でそう同じようにそろうわけはないので、いろんな発達段階の、もう芋の子を洗うようにごろごろしている。大きいのもある、小さいのもある。やんちゃなのもいる、静かなのもいる。そういうそれぞれの子供がそれぞれにバラエティーを持って存在しておる、そういうものでいいので、むしろそういうそれぞれの子供を一人一人大切に温かく見守って、その発達段階におけるその子の一番いい成長過程に乗せていこう、それが幼稚園の先生に求められていることじゃないかと思いますが、この点はどうなんですか。
  153. 高石邦男

    ○高石政府委員 教育そのものがそうだと思いますが、非常に多様な機能を持っていると思うのです。だから、人間の発達段階に応じてそれぞれ伸ばしていくということになるわけでございます。その際に、個人に着眼して個人の持っている能力を伸ばすような対応もしていかなければなりませんし、それから、社会生活を営むについて基本的に身につけなければならない生活習慣、態度、規律、そういうような教育もしていかなければならないということで、個人に着眼すると同時に、やはり全体の社会性を身につけさせる、そういうような二面から教育が展開されてくる。したがって、子供一人一人が伸び伸びとやれるだけではなくして、場合によったら子供が集団の中で規律ある態度、行動、そして我慢をするというような教育もあわせてやっていかなければならないという、非常に多面性を持っていると思います。
  154. 江田五月

    江田委員 一般論に全部還元してしまいますとわけがわからぬので……。  教育というのはもともと多面的な営みですよ。一面的にすぱっと切ってしまえるようなものじゃないのです。しかし、幼稚園というのは四歳、五歳でしょう。四歳だったら、四月に生まれた子と、くるっと回って三月に生まれた子とでは随分違うわけですよね。そういう違いを前提にしながら大きく受け入れてやっていくわけですから、おのずから程度の違いが、小学校あるいは中学と違った性格があるだろうと思うのですね。そういうまことにバラエティーに富んだたくさんの子供たちをグループに分けながら、しかし、全体として目配り、気配りを欠けないように行っていく。あっちの方じゃけんかが起こった、こっちの方じゃけがした、こっちの方じゃついついお漏らししたなんというのがいっぱい出てくるわけですね。そういう先生たち、休みもなしに四時間、四十人の子供を見ていくということがどのくらい過酷なことであるか、どのくらい大変なことであるか。  例えば、今、一クラスで一つの園になっている幼稚園、これはどのくらいありますか。
  155. 高石邦男

    ○高石政府委員 一クラスの幼稚園が九百五十二、全体が一万五千余りありますから、全体の比率で言いますと六・三%程度でございます。
  156. 江田五月

    江田委員 もう一つ、クラスの数と先生の数とが同じだ、これはどのくらいでしょうか。
  157. 高石邦男

    ○高石政府委員 これは文部省調査ではございませんけれども、国公立幼稚園長会が調べた調査でございます。それによりますと、学級数と同じ教諭の因数というのが全体で言いますと約二千三百程度ございます。
  158. 江田五月

    江田委員 二千三百ですかね。  提案者の方はどういう数字を把握されていますか。
  159. 中西績介

    中西(績)議員 これは的確かどうか知りませんけれども、私たちが調べましたところでは、国公立園の園長会の調べによりますと、国公立だけで申し上げますと、二千三百四十一園がクラス数と同数の教員の数、そして率からいいますと四一・九%になっております。
  160. 江田五月

    江田委員 そうですね、国公立だけで二千三百という数字ですかね。  いずれにしても、四二%ぐらいの数の幼稚園がクラスの数と先生の数が等しい。さらにプラス一、園長が別におる、これを含めると八〇%ぐらいになりますかね、もっとですかね。しかし、その園長さんが専任の園長じゃなくて兼任ということになっておると、これはもうクラス数イコール先生の数ということになってしまうわけです。こういう、つまり余裕が先生の方に全くない幼稚園の場合には、先生は、例えば、きょうはこれこれこういうことでうちの子供が熱を出していますから休ませていただきますというふうな電話が入ってくる、あるいはいろいろな行政上の事務連絡の電話が入ってくるとか、あるいは先生だって四時間トイレにも行かないなんてことは無理なので、トイレにも行かなければならぬ、それも小だけじゃない、あるいはまた子供がけがをした、養護室へ連れていかなきゃならぬ、あるいは病院へ連れていかなきゃならぬ、そういうようなときにはほかの子供たちのことはもう面倒が見れないことになってしまうという、甚だ綱渡りのような幼稚園の現場になっているのじゃないかということが容易に想像できるのです。そういう綱渡りのような現場になっているというふうには、文部省局長はお考えになりませんか。
  161. 高石邦男

    ○高石政府委員 幼稚園の設置基準では、各クラスごとの専任教諭を置く、そして園長が専任でない場合には教諭の数を一人配置するという原則でございます。  したがいまして、そういう意味では、十分な余裕の人数を配置していないという御指摘があればそうかと思いますが、専任の園長があればそれに対応している、そして対応できているというふうに思っておりますので、そういう専任の園長がいないとかプラス一の教諭がいないというところには、ちゃんと置くようにという行政指導を重ねてきているところでございます。
  162. 江田五月

    江田委員 提案者の方は、今のような局長の認識が実態を正しく認識しているというふうにお考えですか。あるいは提案者の方でもっと別の認識があれば、現実はこういうふうになっていますよということをお聞かせ願えますか。
  163. 中西績介

    中西(績)議員 今申し上げましたように、二千三百四十一園がクラス数と同数の教諭しかいないということが明らかになっておりまして、それが四一・九%、そして兼任のものも含めますと大体八〇%を超えるということになるわけですね。そうしますと、兼任ということになれば、小学校の校長だとかこういう人たちが多いわけでありますから、当然幼稚園にはいないということになるわけなんです。そうすると、それも加えますと大体八〇%近くがクラス数と同数の教諭しか配置されておらない、これが実態であろうと思います。  そうなりますと、今江田委員が言われましたように、幼稚園における園の仕事の面、例えば管理運営から会計面からすべての面、全部を教師が見なくてはならぬということになってくるわけですね。そういうことと同時に、先ほど言われておりましたように、もしけがをした場合には、あるいは園児の健康的なものをどうするかという問題等含みますと養護教諭の問題が出てくるでしょう。あるいは園内におけるいろいろな連絡あるいは外部に向けての事務的な連絡等含みますと、これまた、一人でやらなくちゃならぬということになりますと、そうしたものが欠けていくという実態等があるわけですね。  したがいまして、幾つかの例を挙げれば挙げるほど、そうした園におきましては、実際に文部倉が考えておるようにちゃんとプラス一名が配置されておれば別ですけれども、大多数のものが配置されておらないという実態数が出ておるわけですから、その点をもう一度文部省で再調査をしていただいてこの点を明確にしていただく必要があるのではないか、こう考えます。
  164. 江田五月

    江田委員 そうですね。  それから、幼稚園の先生方は、常識的に考えてみても若い女性の先生方が多い。大体二十五ぐらいでそろそろだぞというような感じになってきておるようですよね。しかし、一体それはそれでいいのだろうか。女性の先生方の場合にも、未婚のピチピチギャルの幼稚園の先生というだけじゃなくて、結婚された、子供も育てた、そういうお母さん先生、あるいはもっとお年を召されて、もういろいろな経験を積んで熟達した先生方、そういう先生ももっとたくさんいなければならぬし、それから女の先生ばかりではなくて男の先生も幼稚園にもっとおってもいいのじゃないか。そうやって、幼稚園というところでもう少し先生方の幅広い層ができて、これが育っていかなければ、なかなか幼稚園教諭というものをずっと勤め上げてこられた人が幼稚園の園長になるということができてこないのじゃないだろうか、そういう気がするのですが、これは文部省としてはどうお考えですか。
  165. 高石邦男

    ○高石政府委員 基本的に私も同感のところがございます。というのは、幼稚園教育の果たす役割の中に、子供たちだけではなくしてお母さん方に対する指導、アドバイス、それができることが非常に重要だと思うのです。したがいまして、そうなりますと、自分でそういう子供を育てた経験のある人、そういうことについていろいろな識見を持っている人、そういう者が幼稚園の先生になっていくということが今後やはり大切なことではないかと思うわけでございます。現状はどうしても若い人ばかりになっております。  それから、男性につきましてもやはり同じような考え方を持っておりまして、そういう意味では、今後幼児教育をどう基本的に展開していったらいいか、新しい臨時教育審議会でもいろいろな角度から論議されていくだろうというふうに思っている次第でございます。
  166. 江田五月

    江田委員 そうですね。  そのためには、今の一クラス当たりの定数あるいは先生方の配置の数、クラスの数と先生の数が同じだというようなこと、あるいは先ほどからもお話のありました給与の点、こういうことではなかなか、子供ができたらもうやめなければならぬという感じになってしまって、本当に幼稚園という中ですばらしい先生たちが育っていくということになっていかない。やはりこれは何とか改めていかなければならぬと思うのです。  幼稚園というものを一体どうしていくのか、私たちも勉強させてもらわなければならぬわけですが、恐らく今どこにも確たる指針がおいのじゃないだろうか。保育所と幼稚園とをこれからどうするのだという議論も起こってくるわけですけれども、県によって保育所と幼稚園のバランスはものすごく差があるわけです。  こういう状態になって一体幼稚園をこれからどうするんだ、あるいは今の幼稚園に何を求めるかということにしても、幼稚園教育要領を見直すということでありますけれども、現行の幼稚園教育要領の中にも、例えば数量、図形などについて興味や関心、興味や関心だけでなくてその中には、量の大小を比べるとか簡単な数の範囲で数えたり順番を言ったり、速い遅いなどに興味関心とか、ちょっと学校教育とのつながりがあり過ぎるのじゃないかというものまで入っているような気もするのですが、幼稚園教育というものをひとつ根本からしっかり見直して、はっきりしたものを打ち立てるということを文部大臣にお願いをし、御見解を伺って、質問を終わります。
  167. 森喜朗

    ○森国務大臣 この国会が始まりましでから、予算委員会あるいはまた文教委員会で、幼児教育の問題はかなり議論をされておるわけでございます。  幼稚園教育、幼児教育に対する一つ考え方も、私、大体江田先生と一致していると思っております。それだけに、受ける立場に立ってみますと、どうも幼稚園も保育所もみんな何か一緒になってしまっている。先ほど江田さんは、幼稚園教諭定数の物の考え方、事務当局が答えておったことに対して、もっと園児の立場から考えてみろというようなお話もございました。そういう意味で、幼稚園児は自分の意思は言えませんから、やはりお母さん方の立場になるでしょうから、お母さん方が、今の幼児教育のいろいろな機能を果たしている幼稚園も保育所も、あるいは公私立すべてみんな全く同じものだというふうに考えておられると私は思うのです。そういう中に、やはり不満というものも出てくるのだろうと思いますが、そういう意味で当面、幼稚園の教育内容等につきましては、今文部省が新たにこの問題について検討を加えていこうという段階に入っているわけであります。  同時に、私も前から国会答弁でも申し上げておりますが、機能、目的はそれぞれ違うけれども、受ける立場から見るとみんな同じようなものだと国民全体は考えておるわけでありますし、まして幼児を持つ親としては同じような考え方、認識を持っておりますから、幼児教育全体がどうあるべきであろうかというようなことも、私は新しい臨時教育審議会などで御検討をいただく大変大事な課題ではないだろうか、こういうように御答弁を申し上げてきたわけでございます。  いずれにいたしましても、当面の定数とかこうした問題になりますと、財政を全く考えずに議論はできないわけでありますし、また、仮に財政の判断からできるにいたしましても、幼稚園の場合は私立幼稚園が大変大きい比率を占めておりますから、私立幼稚園の皆さんの経営ということも考えてあげなければならない。当然国の立場として、公の立場でかわってやってくださっている方々もたくさんいらっしゃるわけでありますから、そういうことで公教育だけで、公の立場だけで定数を判断していくということもなかなか難しい面もございます。保育所のような条件が非常にいい——先生方に対する給与等々すべてに対する、幼稚園の財政の立て方、こういうものとは全く違っておるわけでありますから……。そんなことは政府考え直せばいいじゃないかと言えばそれまでの話ですけれどもそういうように多面から考えていかなければならない点もたくさんございます。  文部省としても、事務当局で十分幼稚園の内容等も含めて議論いたしますが、私は幼児教育全般、全体にわたってどのようなことで判断をしていくべきであろうかということも、できれば新しい審議機関で、賢明なそれぞれの識者の立場でぜひお考えをいただいて、国民の前に新しい一つ考え方を提示してもらいたいな、実はこういう希望を持っているわけでございます。
  168. 中西績介

    中西(績)議員 今大臣、答弁ありましたけれども、大臣が一番最初に、幼稚園教育に対して何を期待するか、これに対して答弁されたことを私は支持をいたします。この立場からいたしますと、今こそ、余りにも劣悪な条件に置かれておる幼稚園を何をもって補強し、そしてさらに幼稚園教育を充実していくかという視点をもう一度見直しをしていただくことが今一番大事ではないか、その点が十分語られなかったことを非常に残念に思いますので、私たちが提案をしておるこの中身というのは、そうした意味で、この幼保一元化なりを目指すその一つの過程として今果たさなければならない役割を、わずかではあるけれども果たしていこう、こういうことで提案をしておりますので、この点をひとつ御理解をいただきたいと思います。
  169. 江田五月

    江田委員 ありがとうございました。
  170. 船田元

    ○船田委員長代理 池田克也君。
  171. 池田克也

    ○池田(克)委員 公明党の池田克也でございます。きょうは、幼児教育について議論の場をお与えいただきました。私も三月三日のたしか予算委員会で、大臣に幼保一元の問題をお伺いしたわけでございます。たくさんある教育課題の中で最も大事な問題がこの幼児教育だろう。だろうではない、幼児教育であると断言してはばからないものでございまして、提案者でいらっしゃる中西先生初め、また委員長、同僚の各会派の皆さん方に感謝をしつつ、幾つかの所見を交えながら質問をさせていただきたいと思います。  最初に、きょうは大臣が御出席でいらっしゃいますので、就学前の子供たちが今どういう状態に置かれているか、そしてそれは今後どういう方向で改善、改革をすべきか、大変大ざっぱな聞き方で恐縮でございますけれども、今幾つか臨教審等にこれから検討をゆだねるようなお話がございました。重複する場合もあると思いますが、この就学前の子供たちが抱えている問題について、今大臣の胸中にあるところをお聞かせいただきたいと思うわけでございます。
  172. 森喜朗

    ○森国務大臣 私は、先ほど江田さんの御質問でお答えを申し上げましたけれども、幼児が成長過程にあって、家庭教育と、そして、年齢的にいえば大体三歳から四歳であろうと思いますが、社会的にいろいろなものに大変関心を持ち出す年齢だろうと思うのです。家庭にありますと、やはりある程度親の愛情の中にはぐくまれていますから、社会の中で、例えばやっていいことと悪いこと、いいことといけないことというようなことについても、もちろん親は親の立場で厳しくやりますけれども、これは社会全体の中から出てくるものではない。しかし一方、外へ出てまいりますと、よその子供たちとつき合う、これが、さっきちょっと申し上げましたけれども、初めて対社会的な行動をしていく時期だろうと思います。そういう中で、幼稚園であれ保育所であれ、そういうみんなのグループの中で人間関係をつくり上げていく、そして、人間関係のマナーといいましょうか、そういうことを学んでいく大変大事な時期だ、こういうふうに考えて、まさに教育基本法第一条に示す人間形成の中で最も大事なところが就学前だろう、私はこう思います。  しかし一方、世の中の変化というものはどんどん進んでおりまして、これはこの委員会であったか参議院であったか予算委員会だか、私もちょっと忘れましたけれども、幼稚園の子供たちに字を教えていいのか悪いのか、もっときちっとした教育をすべきではないか、そういう意見のやりとりもあったと思います。現時点では、文部省立場からいえば、教育はきちっと体系的に大体教えないようなことになって、もちろん小学校からということになっておるわけです。しかし一方、社会。ではテレビが出てくる、コマーシャルが出てくる、子供たちはいや応なしに字を覚えざるを得なくなってくる。そういうことに対して幼児教育、幼稚園教育は対応しているのかどうかというのは、当然疑問が出てくる。  さっきもちょっと触れましたけれども、世のお父さん、お母さんはある程度、これは国会での大臣としての言葉では不適切かもしれませんが、やはりわがままなところもある。言葉はよくないが、もうちょっと言えば、過大な要求を幼稚園にしている。何だ、こんなことも幼稚園で教えてくれないのかという印象にどうしてもなる。予算委員会で、たしか厚生省の課長さんだったか、文部省が所管する幼稚園に負けないように保育所の方も教育の改善を進めております、たしかそんな答弁がありまして、保育所自身が幼稚園に負けない機能を果たすために教育をやるんですというようなことを厚生省でも発言をしているのを、ちょっとおやっと思って私は首をかしげた面がございますが、しかし、それもやはり親の要求だろうと思うのです。  だから、そういうことをどう満たしていくか、こういう時点の中で、文部省といたしましては、やはり文部省の大事な幼児教育はどうあるべきか、幼稚園教育内容というのはどうあるべきかということで、昭和五十八年十一月、中教審で教育内容等小委員会から、幼児を取り巻く環境の変化に対応した幼稚園の教育内容を検討しなさいということを報告を受けておるわけでございますので、その報告を受け、そして中教審の会長もあいさつの中で、直ちに実務的検討に着手することが望ましい課題であり、文部省としても適切に対応するようにというような要望もございましたので、この趣旨に沿いまして、幼稚園教育要領に関する調査研究協力者会議を設けることにいたした。これは先生御承知のとおりであります。  そういう意味で、そういうところはそういう方向で進めて、当然文部省固有の責任として、事務としてやっていかなければならぬということであろうと思いますが、それと同時に、私は、先ほども江田さんのお尋ねに対してもちょっと申し上げましたが、いつも言うように、人生五十年からもう八十年近くなってきている。そして、ゼロ歳児教育でありますとか三歳児教育でありますとか、いろんなことがそれぞれの識者から提案をされている。やはり人間として就学する年齢というのは本当は何歳が一番いいんだろうか。かつて四六答申のときの中教審答申でこの幼保の問題が出たときに、何か幼稚園がつぶされるんじゃないかとか、小学校長会が反対するというさまざまな利益代表の団体みたいな意見が闘わされましたけれども、そういうことじゃなくて、本当に就学年齢は幾つなのか、しからば一体何歳まで義務教育をやって、何歳まで学んだ方がいいのか、その前の幼児教育というのはどれくらいやったらいいのか、こういうようなことは私は根本的に一度見直してみる必要がある。これはまさに二十一世紀に向けて、一体どういう教育のプログラムが必要なんだろうかというようなことを御検討いただくという意味で、臨時教育審議会などにおいては私はこれが最大の課題、命題ではないかというような期待もいたしておるわけであります。  したがいまして、そうは言いながらも現時点としての幼稚園教育はおろそかにできませんので、このことは先ほど申し上げた協力者会議で進めてまいります、幼稚園教育内容考えていきますが、当然国全体として、幼児教育も含めながら全体の日本の教育はいかにあるべきか、その一番スタートのところが幼児でございますから、そういう基本に立って、両方の面で、幼稚園教育も含めた日本の教育の全体像を今真剣にみんなが模索しなければならぬ時期だ、こういうふうに私は考えております。  長くなって恐縮でございますが、今何を考えているのかということでございましたので、私の個人的な見解も含めまして、また文部省の対応をいたします課題といたしましてこのように考えておりますということをお答えをさせていただきたいと思います。
  173. 池田克也

    ○池田(克)委員 父兄のいろんな要望というものが過大だというようなお話もございまして、これは子を持つ親の心情で、少しでもいい子に、内容の濃い幼児教育をと念願されると思うのです。そういう大臣のお考えをいろいろ伺っておりますと、それを一つ一つ具体化すれば随分と前進をすると私は思うのです。  今のお話の中で、今提案されておりますこの法案と大変関連が深いところは、現実に幼稚園の先生方の負担が大変重くなりつつある、私は大臣もその点については今回の法案に、財政的裏づけは厳しかろうけれども、趣旨としては相当深い理解を示しているな、こう受けとめましたが、この点いかがでしょうか。     〔船田委員長代理退席、委員長着席〕
  174. 森喜朗

    ○森国務大臣 池田先生御指摘のように、確かにそういう意味での幼児教育に携わる先生方、何としてもやはり社会で、親と別で初めて接する大人という立場から言えば、幼稚園の先生というのは恐らく子供たちにとって最も印象深い対社会の人だろう、こう私は思う。  私どもの年齢は、池田さんも同じで、戦時の混乱時でしたから幼稚園なんというのはなかったし、行きませんでしたけれども、やはり小学校一年生のときの先生というのは生涯忘れない。多くの先生に接してきましたけれども、小学校一年のときの先生というのは、私ども一番思い出深く、大事な人だと思って心にしまっておりますが、そういう意味で、幼稚園の先生の負担が多いというのも問題としては考えていかなければならぬことでございます。そういう意味では、この法案をお出しになった中西先生初め皆さんのお気持ちは、政治家の一人として私は十分理解はいたしておるところでございます。  しかしながら、教育公務員全体の配置計画定数計画は、今着実と言うとちょっとおしかりをいただくかもしれませんが、こうした財政状況の中でいろいろ工夫をしながら進めているんだということもぜひ理解をしていただきたいな、こういうふうに思っておるところであります。
  175. 池田克也

    ○池田(克)委員 提案者にお伺いをするわけでありますが、今大臣も、よく内容はわかる、ただし、現実に一つ一つ詰めているんだけれども。ここに違いがあると思うのですね。いや待てない、いや着実じゃないか、ここに提案者と文部省の間の、決定的と言うと語弊があるかもしれませんけれども、問題はそこだけじゃないか。幼児教育についての認識についてはかなり共通している。提案の趣旨、いろいろ刷り物も拝見いたしましたし、今までの議論で私もあらかた理解をしたつもりでありますが、提案者から、その部分について、今回提案された理由も含めまして、文部省は怠慢であるのか、もう待てないのか、どこかこの問題についてもうちょっと歩み寄って、子供たちのためにこういう方法ならばできるはずじゃないか、こういう御所見を承りたいと思うわけでございます。
  176. 中西績介

    中西(績)議員 先ほど大臣の答弁では、長い間の家庭の中におけるこうした要求があるということの御理解と、そして今出されておるこの内容については一定の理解を示していただきました。  したがいまして、私たち今一番重要視しなくちゃならぬと思いますのは、何と申しましても、学級編制及び教職員定数標準を策定するということの意味は、今までの場合、設置基準なるものは確かにございました。しかし、先ほどの論議でもございますように、幼児の成長発達段階における状況と教師とがどうかかわり合っていくかということになってまいりますと、今まで設置基準はありながらも、それが一歩も前進をしないという悩みが依然としてどうしても解消されておりません。特に明治三十二年以来のこうした問題でありますだけに、私たちはここに一つの法を制定する中から少しでも今まで期待をし、あるいは私たちが願った部分を前進させることができればと。そのためには、やはり法律が今まではなかった、ですから、法律を制定することによって、問題になっております教員定数などで、五年で私たち要求しましたけれども、第五次案が十二年かかっておりますけれども、これと同様に、やはり幼稚園におけるこうした教職員定数なり学級編制につきましても、たとえ一定の期間が私たちの期待するものにならずとも、十年なら十年という一定の期間の中でこれを策定し、そして策定されたものを実行に移していく、こういうことになっていけばある程度、確かに財政的には厳しいとはいいますけれども、幼児教育を重要視するがゆえに、ぜひここに目を当てていただいて実現を図っていただければ、こういうように考えて、文章にしております部分もございますけれども、提案をいたしておるわけであります。
  177. 池田克也

    ○池田(克)委員 私、今回質問に立つに当たって、大変親しくしている幼稚園の先生にいろいろ状況を伺ったわけなんです。その方は私立の幼稚園なんですが、こんなことを話しておりました。  子供たちを見ていると、例えばシャベルが一つある。子供というのは欲望を非常に一直線に表現する。そのシャベルにある子供が手を出す、同時にもう一人の子供が手を出す。二人で、片一方は金の部分、片一方はプラスチックの部分を持って引っ張り合いっこする。そうすると、片一方が力いっぱいいやっと取ると、片一方は取るんですが、向こうは取れなかった。取れなかった子供はわあっと泣く。それを先生はどう処理するか、父兄はどう処理するか、あなたわかりますか、こういうことなんですね。  要するに、しばらくそれは様子を見るしかないんだとこの先生はおっしゃるんです。そうすると、初めての経験として、子供は一つの物を二人で争うという経験をそこで現出する。取られれば泣く、取った方も何とも名状しがたい顔をして、そこで取ったは取ったんだけれども、相手は決して喜んでないんだなということで、立ち往生する。そうしているうちに、取った方もそれをぼんとほうり投げる。ほうり投げることによって、二人でにやっと笑って一つ落着だ。父兄が周りで見ていると、どうして泣いている子供を先生が飛んできてかばってくれないんですか、こういう声が飛んでくるそうです。私は、その話はもっと長い話があるんですが、幼稚園の先生というのは非常に教育者として難しいいろんな問題を抱え、多くの期待、そしてその資質というものは、恐らく教育のいろんな種類の先生のお立場がある中で、最も高い資質が要求されるんじゃないだろうか。  今、大臣と私も意見が一致しますが、お母様方の、あるいは父親もそうでしょうが、かなり大きな期待というものがある。それを背負わされて現場に立っていらっしゃる幼稚園の先生、今小さな子供の現場の、多分そういうことがあるだろうなと思うような話を私持ち出したんですが、小学校でも恐らくそういうことはあるでしょうが、私は、各種の教員の方々の中で最も高い待遇と輝かしい生きがいというものを幼稚園の先生方に与えるべきじゃないか。俸給のいろいろプラスマイナス違いがあると思いますけれども、ある教育の専門家に私聞きましたならば、大学の先生と同じ俸給の人がいてもいいはずですが制度上はそうなってないんですよ、このようなお話を伺いまして、幼児教育というのはそういう点では、今大臣が今後の課題の中でいろいろ改めようという御見解もおありなので私は大変ありがたいことだ、いいことだと思いましたんですけれども、幼稚園の先生をもっと大事にしよう、もっとライトを当てていこう、こういう私の主張——主張というか、これは当たり前のことだと思うんですが、について大臣は共鳴していただけないでしょうか。
  178. 森喜朗

    ○森国務大臣 池田さんが今おっしゃったように、ある意味では高等教育に携わる教員といいますか、教職者よりも確かに幼児教育に携わる方がより難しい問題も多い、子供たちの将来に与える影響も大変大きい。心身の発達状況に応じて、上に行けば行くほど、どちらかというと部分的なものを吸収する、学問だけ吸収するという面もある。今さら人間的な面、もちろん人間的な触れ合いというのは、教える者と教えられる者とで大変大切な約束事だろうと思いますけれども、そういう意味では池田さんのおっしゃるとおり、むしろ幼児教育に携わる皆さんの、お金だけではかるというのはいかがかなと思いますけれども、確かに大事にするという精神は、私は賛成であります。  ただ、そういう意味で、じゃ幼稚園に対してもう少し云々というようなことも、これも一つのやはり方策だろうと思いますが、先ほどもちょっと申し上げたように、幼稚園というものと保育所というものは全く実際的に同じであって、機能と目的が全く違っているというようなこと、あるいは幼稚園だけを考えてみましても、国公私立と違ってきている。特に大事なのは、その地方地方によって実情が全く違っているということなんですね。私の県の石川県などは全く幼稚園がなくて、保育所が多いことにおいては全国でもたしかベストスリーに入っているようです、どうしてそうなったかというのはいろいろ理屈はあるようでありますけれども。  だから、自治体によって全く実情がいろいろ違うだろうという意味で、今中西先生のお出しをいただいている法案もそれに関連することでございまして、それは精神としては大変大事なことでございますけれども、制度上ばらつきがあるということ、地域の実情によってもばらつきがあるということ、そういうことで、いわゆる教員の待遇でありますとかその定数でありますとかというところがもう一つ一本化、なかなか制度上縛り切れないという面があるのだということをぜひ理解をしていただきたい。しかし、心持ちとしては、あなたのおっしゃったとおり一番大事にしていかなければならぬ。そういう意味で、制度上もう少し見直しをして、ばらつきのないようなものにすることの方が結果的にはいい形ができ上がるんじゃないかな、こんなふうに私は今考えているわけでございます。
  179. 池田克也

    ○池田(克)委員 非常に共通する部分が多いんですね。  さあ、それで具体的にどこからどう動かしていこうかとなると、なかなか動かない。要するに、明治の時代から今日に至るまで一クラス四十人ということでずっと来ているそうでございますが、これは提案者にお伺いをしたいのでございますが、クラスの一・五倍ということを提案しておられますけれども、私はもっともだろうと思っております。ただ、その裏づけに財政上いろいろ問題もあろうと私は思います。  現実問題として、幼稚園で先生方がぐあいが悪くなった、あるいは身内に御不幸があった、こんなようなときにどのように対処されているんだろうか、これはいかがでしょうか。
  180. 中西績介

    中西(績)議員 先ほども答弁を申し上げましたけれども全国的に見まして、公立の場合でいいますならば八〇%近くが兼任の園長一名を加えて、園のクラスの数と教員の数が同数である。あるいは全く園長なし、そして兼任の園長もない中でのクラス数と教員の数とが同数だということ、こうしたものを合算しますと約八〇%近くになる。そうなりますと、四十人なら四十人、あるいはそれ以下でも結構なんですけれども、持っておる場合に、同数の場合にはもうどうすることもできなくなるわけです。  したがいまして、私たちが提案いたしておりますこの中身というのは、少なくとも一・五乗ずることによって、そこに余裕ある教諭を一名だけでも確保すべきではないだろうか。そうすることによって、先ほどから出ておりますように、その教諭が自由に、例えば年休行使だって五一%程度しかできておらないという実態、しかもその残りの四九%という中には、一日だって年休行使した者があればということの中での四九%という中身でありますから、私的なものが全く不可能になってくるということになるわけでございますから、こうしたものを考え合わせてまいりますと、まず第一に、例えば一つずつ解決していくとしますならば、園長なら園長をぜひ一名置こうではないか、あるいは園長が置けない場合には、兼任の場合であるならばぜひプラス一名だけは——今文部省が指導しておる分、これを確実に置いていくというような具体的なものが、年次別でも積み重なっていくという方向性すら今出てきてないわけです。したがいまして、こうした点あたりを具体的に積み重ねをしていく、その過程に私、今こうして提案をしておるものがあるといたしますと、より充実したものになってくるわけであります。具体的に今全然それが前進していませんから、進展していませんので、これをどう配置づけていくのかということ。ここいらはやはり文部省が行政的に指導できる面をぜひ、何年計画なら何年計画ということでもって達成をする、それくらいの強い決意を示さないと、またこれを、こうした法律案でありますから、これに反することはできないから無理やりにはやろうけれども、しかし、その中身としてはまた欠けたものが出てくる可能性もあるわけですから、まず、先ほどから申し上げるように、この幼稚園あるいは幼児教育を大事にするというここに基調を置きました上で、どう具体化していくかということをやはり今一番重要視する必要があるのではないか、こう考えています。
  181. 池田克也

    ○池田(克)委員 私も子供を公立幼稚園に出しまして、何度も父母会なんかで実情を見てまいりました。確かに小学校と兼任の園長さんでございまして、大変だなということをしみじみ痛感をしたわけでございます。父母会なんかには出ておられますが、日常は小学校と兼務ですからなかなか難しい、間違いないことでございます。  これはいかがなんでしょうか、初中局長、兼任の園長さんのところだけでもせめて専任の園長さんにする、こういうことは計画的にできないものでしょうか。
  182. 高石邦男

    ○高石政府委員 先ほどもお答え申し上げたのですが、専任園長がいるということが望ましいと思うのです。どうしても地域の事情によっては兼任園長にせざるを得ないということであれば、クラス数に一人の専任の教員を置くというふうにしてもらいたいという指導をしてきているわけでございます。
  183. 池田克也

    ○池田(克)委員 提案者、いかがですか。今そうするということなんですが、そうなってないのですか。
  184. 中西績介

    中西(績)議員 これは昭和五十年の行管庁の勧告等を見ましても、そうしたことが調査されて以降、そのパーセントが余り上がっておらないということになりますと、指導はしておるけれども依然として前進してないということになるわけでありますから、そうなればなるほど私たちは設置基準というものだけで指導するのでなくて、裏づけになるべき法律というものをやはりここでもって明定しないとその効果がなかなかあらわれにくいということが、今までの実態から明らかになったのではないかと思っています。  したがいまして、もしそれが間違っておるということであれば、数的にそのことを示していただければわかると思いますけれども、私たちが調査したその中身というのは、数的にもそれが余り拡大し、あるいは充実されておらないということになっておりますから、したがって私たちは、ここに提示しておりますように、内容的にそれを充足するためにも法を今策定することがより重要であろう、こう言わざるを得ません。
  185. 池田克也

    ○池田(克)委員 伝家の宝刀、法律をつくっていかなければ、指導だけでは全国にわたって具体的に教育条件は変わらない、こういうお話なのですが、別によその国とけんかしているわけじゃないのですね。同じ日本における教育状況を、しかも未来を担う子供たちをどうしようかという話で、私はここの部分はそんなに対立して、にっちもさっちもいかないというような問題ではなかろうと思う。  文部省は指導している。これはデータがあるのじゃないでしょうか、指導して今園長のいないところは幾つだ、だんだんと園長が配置といいましょうか、決まってきて、次第にその方向がうまくいっているとか、あるいは何かその間に障害があってうまくいかないとか。これは初中局長、私はデータをお願いしておりませんけれども、今この場でそういうことについてお尋ねして、何か御答弁いただければ——今の提案者との食い違いの問題だと思うのですけれども
  186. 高石邦男

    ○高石政府委員 専任園長の推移でございますが、公立幼稚園で申し上げますと、昭和四十七年に七百四十八人というのが毎年ずっと上がってきておりまして、五十八年の状況で見ますと千八百九十五人で、園長の専任がふえてきているということは数字的に申し上げることができるわけでございます。  それから、幼稚園の平均的な学級数が現在三・一でございます。それで、本務の教員が四・四ということでございますから三クラスに四・四。要するに一人以上の人数が配置されている。ただ、地域によって非常にばらつきが多いわけです。そういうところで、整備されている市町村とそうでない市町村のばらつきがかなり存在するということでございます。
  187. 池田克也

    ○池田(克)委員 わかりました。この問題は非常に大事な部分だと私は思います。  と同時に、先ほど大臣もおっしゃっておられましたけれども、私立幼稚園に対する依存度が非常に高いことは私も承知をしております。その結果として、偏在状況。公立学校の場合は地域に非常にきちっと配置されておりますので、大体私の地域なんか見ましても、余り電車やバスでもって、何か乗り物に乗って通学する、そんな状況にはないわけですが、幼稚園の場合はかなり乗り物に乗っていかなければならない。幼稚園のバスも回ってくる。これまたそれなりの経費がかかるわけであります。また父兄が、主にお母さんが自転車に乗せて送り迎えをする。一時とか一時半になると幼稚園の前にお母様方がたくさん迎えに来て、自転車がずらっと並んでいる。大変な労力を送り迎えに費やしておる。そうでなければ交通事情が危なくて帰せない。この幼稚園の状況というのは多分に十分な行政の配慮といいましょうか、いろいろな経過があると思います。余り公立をたくさん設置すると私立幼稚園がやっていけない、こういう状況も出てくることを私は承知しております。  そこで、幼保一元のような形で何かお互いに、相互に補い合いながら、子供たちあるいは父兄の便宜に対応しながらやっていけないだろうか、こういう問題も出てくるのだろうと思うのですけれども、そうした点、ひとつ幼保の一元の問題と関連させてこの問題を見詰めていきいと思っておりまして、もう時間もそうたくさんないわけでございますが、この際、幼保一元問題について提案者から、今、この法案の趣旨、そしてこの法案の成立というものが幼保一元のまた一つの大きな歩調と関連があって将来にわたって進んでいくのだ、私もそういうように理解しておりますけれども、幼保一元問題との絡みについて御答弁いただければと思います。
  188. 中西績介

    中西(績)議員 私たちは、幼保一元問題につきましてはあくまでも最終目標であるわけでありまして、この点を具体的に一定の年限を区切ってやれる条件というものは、今の中ではないと私は思っております。したがいまして、こうした提案をいたしまして、こうしたものが具体化する中で一定の今まである矛盾なり問題点を解消しながら、幼稚園教育のあり方というものを環境的にもすべてを整備していく、そうしたことを確認される中からこれから零歳児から三歳児までの保育をどうするのか、それとのかかわりで四、五歳児をどうしていくのか、こうした問題等を具体的に討論の場に上げていかなくてはならぬと思っております。  したがいまして、この提案の中身というのは、あくまでも一つの過程として問題になっておる矛盾の多い部分を埋め合わせていく、こうしたことでもって提案をいたしておるということを御理解いただければと思っております。
  189. 池田克也

    ○池田(克)委員 提案者にまた重ねてお伺いするわけでありますが、養護教諭配置でございます。  養護教諭のいないところも当然あろうと思いますが、子供の健康管理、これは大変大事な問題だと思います。とりわけ父母が仕事を持っているような状況が最近多くなっておりますので、専門の人が子供の健康というものをチェックする必要は十分あろうと思います。  また、だんだんと事務も繁雑になってくる状況でございますので事務職員。あるいは環境をきちっと整備して、けがをしたりすることのないようにするためにも用務員の方々の配置、こうした問題。  三つつ兼ねてというと大変恐縮でございますけれども、時間の関係もありますので、養護教諭事務職員、用務員について、その状況と、どういう改善の方法が望ましいのか、提案者に重ねてお伺いをしたいと思います。
  190. 中西績介

    中西(績)議員 すでに御承知だと思いますけれども養護教諭の仕事というのは、子供のけがの手当てをすることなどと思われがちでありますけれども、実はもっと大きな大切な仕事があるということをここで申し述べたいと存じます。  と申しますのは、園児の健康管理はもとより、健康指導などを行い、健全な園児の育成に大きく寄与しておるし、先ほど大臣でしたか、局長かが言われましたように、ただ単に園児を対象とするだけでなくて、やはり園児を育てておる父母などに対する提言等もある程度行える条件が必要ではないだろうか。そういうことを考え合わせていきますと、養護教諭の仕事というものの中身は大変なものだということが言えると思います。  そこで、今公立て六千百九十七園、ここで養護教諭というのは三百四十三名でありまして、さらにまた、私立の場合が約九千園近くございますけれども、四十六人しか配置されておりません。したがって、私立の場合にはほとんどいないという状況になっています。したがいまして、これでは園児の健康管理なりあるいは健康指導というものが十分行えないわけでありますから、一人一園のクラスあるいは教員数が同じだというところあたりにおきましては、なおさら教諭がすべてのものを負担をするわけでありますから、むしろこういうところこそ、こうした養護教諭などがあればということを痛感するわけであります。したがいまして、いち早く定数法を制定することによりまして、幼稚園における必要な教職員配置の中の一つの重要な課題として養護教諭の問題については配置をすべきではないだろうか、こう考えています。  それから、事務職員もいろいろございますけれども公立の場合におきましては、六千園を超える数の中におきまして、大体養護教諭と同じくらいの数でありまして、三百五十六名しか配置されておりません。配置率は約五%強にしかなっておりません。したがいまして、給与、福利厚生、学校予算執行あるいは施設設備の調査、点検、文書、統計、すべてを教諭が担当しなければならぬわけでありますから、こうしたことを考え合わせてまいりますと、たとえ小規模でありましてもこの点は変わりないわけであります。したがって、今、園児のそうした生活態度あるいは習慣、すべてのものを考えてまいりますと、そこに集中しなくてはならない教諭の仕事を事務によって忙殺をするなどということは到底あるべきではありませんし、私たちは、幼稚園教育を拡充するということの意味で、ぜひ事務職員をと願っておるわけであります。  さらに用務員問題でありますけれども公立幼稚園などにおきましての環境整備を初めとする多くの問題がございます。そうしたときに、用務員の配置状況を見ますと、六千園を超える数の中で二千八百四十二名今配置をされておると言われています。したがって、事務職員あるいは養護教諭よりも配置傘ははるかに高いわけでありますけれども、これまた五〇%弱でありますから、少なくとも園舎における環境、すべての面からいたしましても、あるいは事務連絡などを考えてまいりますと、教員あるいは園長、こうしたものが十分配置されておらないという条件の中におきましては、どうしても小学校の用務員の皆さんとまた兼務をさせられるというような条件等が出てくるわけでありますから、こうしたことにならないようにすることによって、環境整備なりを中心としてやはり充実をしていかなくてはならないだろう。こうすることが大変、定員配置ということになりますと予算を伴う問題でありますけれども、やはり教育を充実するという立場から論議をしてまいりますと、どうしてもこのような予算というのは当然帰結するところでありますから、この点をむしろ積極的にどう配置をしていくかということを行政当局にお考えいただければと念じております。  以上です。
  191. 池田克也

    ○池田(克)委員 大変貴重な議論ができたと思っておりますが、大臣のお話を伺って、また提案者の説明を伺っておりまして、基本的には共通する面はたくさんあると私は思うのです。問題は、それをなぜ早くやらないのか、ここが一番大きな問題だと思うのです。  今初中局長のお話にもありましたように、園児室が減る、あるいはクラスが若干形を変えていったり減ってきたりするような状況の推移と合わせて整備をしていくという、そういう問題もあると思いますが、事は子供たちの健全な発育を願うことでございますので、他に先駆けて、いろいろなことがたくさんあると思いますけれども、子供の問題というのは、やはり先ほどお話がありましたようにとりわけ幼児教育が非常に重要な部分でもありますので、私は、再度重ねてこの幼児教育についての配慮というものを文部省として検討をし、工夫をしていただきたい。今大臣から、就学年齢の問題についても臨教審等に根本的に問うてみると、こうしたお話もございまして、私どもも、五歳入学のような問題をパイロットスクールとして研究しようじゃないかということを提起をしております。  いろいろとある課題の中できょうは幼児問題について議論をしたわけでありますが、最後に大臣から、これからの幼児問題についての御決意を聞かしていただいて、終わりたいと思います。
  192. 森喜朗

    ○森国務大臣 池田さんの幼児教育に対する極めて熱意あふれる御意見をちょうだいをいたしまして、私も基本的には全く同じでございます。また、そういう幼児教育内容を充実させよう、子供たちのことをまず中心に考えようということから、中西さんたちもこうした法案を出していらっしゃるわけでありまして、文部省としても十分その対応には努力はいたしますものの、先ほどから申し上げましたように、現在の定数計画と同様な形で法定でやるということについては、先ほどからいろいろな意見が出ておりましたように、そういう段階になってない。しかし、それはやはり設置主体あるいはその他保育所との問題、そうしたばらつきがあるところに、一つのまとまったものになり得ない大きな原因もあるだろうと私は考えますから、そういう意味で、新たな展開をするためには、もう一遍幼児教育を含めた教育制度全体の改革をすることの方がより建設的な方向に行くのではないか、私はこんなふうに考えております。  決してそういうことで逃げてしまうということではございません。当然幼稚園教育についての内容については、先ほど申し上げましたように検討の会議を設けているわけでございますので、それはそれといたしましても、やはりいかなるものをつくり上げましても、どこから見ても足らざる面は出てくるわけでありますから、制度全体をやっぱり一遍考え直してみるということの方がより適切な方向ではないかな、私はこんなふうに思っておりますが、長期的な問題と短期的な問題と、両方十分に踏まえつつ、文部省としても十分幼児教育に対して適切な処置がとれるように事務当局にも十分促していきたい、こう考えております。
  193. 池田克也

    ○池田(克)委員 終わります。
  194. 愛野興一郎

  195. 木島喜兵衞

    ○木島委員 社会党中西君の提案に社会党の私が質問すると言ったら、自民党の方から、答弁にならぬ答弁をすることによって審議中断に追い込むのではないかという声がありまして、でありますから、なるだけ初中局長に聞きます。その方が……。  まず、就学前教育という話がございましたけれども、幼稚園は三歳から。零歳、一歳、二歳、これは保育所。保育所は保育に欠ける人たちですね。だから逆に言うと、保育に欠けない者は対象にならないわけね、三歳までは。欠ける者は保育所に行ける。欠けない者は家庭でやれというわけですな。そういうように、就学前の子供の教育について、欠けない者は三歳まではうちでやれというように理解していいですか。
  196. 高石邦男

    ○高石政府委員 まず、幼児教育の観点で言いますと、三歳から幼稚園……(木島委員「乳幼児、就学前」と呼ぶ)ちょっと幼稚園のところから説明いたしますが、それで三歳から幼稚園という教育教育をするわけでございます。それから保育所というのは、そういう年齢にかかわりなくゼロ歳からということでございますから、ゼロ歳から就学前でございましたら六歳まで、保育に欠ける幼児を対象として世話をするということになるわけでございます。
  197. 木島喜兵衞

    ○木島委員 何言っているのよ。だから零歳、一歳、二歳で保育に欠けない子供の就学前教育というのはどうなっているかと聞いているんじゃないですか。
  198. 高石邦男

    ○高石政府委員 それは、本来それぞれの家庭において教育をするということになっているわけでございます。
  199. 木島喜兵衞

    ○木島委員 だから家庭になっているんですかと聞いたわけよ。だから家庭でやれということですね、今の就学前の乳幼児教育全体は。そこで、それでいいと考えますか。
  200. 高石邦男

    ○高石政府委員 就学前の子供の教育がどうあったらいいかというのは、いろいろな考え方があると思います。現在の制度では、三歳児から幼稚園をつくって教育をするという形にしているわけでございます。そこで、ゼロ歳から三歳までは本来的に家庭において教育といいますか、子供の教育というよりもっと広い養育、そういう形で適正なしつけ教育が展開されるということが必要であるというふうに思っているわけでございます。
  201. 木島喜兵衞

    ○木島委員 もうちょっとおれの言うことを聞いて答弁せいって。  零歳、一歳、二歳は、保育に欠ける者は保育所へ入るけれども、保育に欠けない者は保育所にも入れないわけでしょう、厳密に言えば。それは家庭教育でやれというわけでしょう。あなたはそうだとおっしゃった。それでいいと思いますかと聞いているだけ。いいか悪いかだけだ。
  202. 高石邦男

    ○高石政府委員 ゼロ歳から三歳までの保育に欠ける子供は保育所に預かるわけでございます。その場合に、その保育所では幼児教育教育ということをやっているわけではなくして、いわば家庭でやる世話、それを代行しているわけで、ゼロ歳から三歳まで入っている子供が保育所で幼児教育を受けているという実態とは理解していないわけでございます。
  203. 木島喜兵衞

    ○木島委員 だから家庭でやれということになっているのでしょう。あなたもそう言ったじゃないの、今。それでいいかどうかと言っているんだよ、おれ聞いているのは。
  204. 森喜朗

    ○森国務大臣 私は、やはり幼稚園教育は三歳ということになっているわけでありますから、乳幼児、ゼロ歳から二歳までは、ゼロ、一、二歳は家庭でやるべきだと思っています。その方が一番いいと私は思います。
  205. 木島喜兵衞

    ○木島委員 家庭が中心だろうと思うのでありますけれども、家庭だけでいいかどうかという問題がやっぱり残るんだろうと思うのです。  森さん、あなたはいつでも私の顔を見ては、馬面、馬面と言いますよね。これは発達心理学から言うと、能力というのは環境か遺伝が、先天的か後天的かということがありまして、例えば肉体的なことになりますと確かに遺伝なんです。私の馬面は、私をいかにあなたが馬面だ、馬面だと言って笑ったところで、私の両親が馬面だからその肉体的遺伝でもって私は馬面なんでありまして、森さんに言われることに私は大変に両親を恨むのであります。ただ、判断力とかそういうものはむしろ後天的だと言われていますね。ところが、このごろ、これは十五年か二十年くらいの間の大脳生理学か何かの発達で、三歳までで六〇%の機構ができる、十歳でもって九五%できるというようになってくると、三歳までというのは非常に重要でしょう。  僕はいつでも言うんですが、我が日本社会党の輝ける元委員長佐々木更三は、八十歳になってもなおずうずう弁であります。彼は生まれたときに言葉を知らなかったのであります。彼は宮城県であります。彼が一歳か二歳でもって言葉を覚えるときにその周囲がすうすう弁であったから、彼は八十歳になるまでなおずうずう弁であります。三つ子の魂まさに百までであります。ところが、例えば外国の学者なら外国の学者が、知能指数が高いと言われるが、それが学者になってから十年間例えば日本におって日本語を覚えても、彼はしょせん外国人的日本語でしかないですね。というのは何か。幼児でなければ得られないものがある。三つ子の魂百までであって、そのときのことが百まで続くと同時に、そのときでなければ得られないものがある。それは単に言葉だけでなしに、すべてそう思うのです、これは私自身も多くの経験をしていることでありますが。すると、家庭だけでいいということになるだろうか。殊に婦人労働者が大変ふえていますね。家庭にということだけでいいんだろうか。三つ子の魂百までと言われる。子供でなければできないところの能力がある。  もう少し言うと、人間ほど親が長い期間保護しなければならない動物はないですね。これは早産なんです、人間は。少なくとも猿程度に生まれるにしても、なお一年くらい胎内におることが必要だと言われている。ところが、それじゃ母体がもたないのです。だから産むのです。だから、そういう意味で専門的には胎外胎児などという言葉で言われているようであります。だから、それが一人前になるまでは完全に周囲からの吸収なんですね。何ですか、第一反抗期、父ちゃん、ばか、とかなんとか言うころ、あれが自我の目覚め、あそこまで本来胎内におるべきじゃないかという学説もある。それはよくわかりません。とすると、これをだからといって家庭だけでいいのかというと、その間においての環境の問題があるでしょう。  さっき森さん、おっしゃったよね。例えば遊びの中でもってお互いに協力しながら社会における共同の規範というものを体験するとおっしゃいましたね。そういうものは集団的なものでしょう。家庭では違いますね。家庭も入りますけれども……。だから、そういう要素というものがなくていいんだろうかと私は大変思うのですが、その点、局長どうですか。
  206. 高石邦男

    ○高石政府委員 私、やや先生と見解を異にいたします。と申しますのは、本来子供の乳幼児期における教育は、家庭においてやっぱり親のもとで教育をするという仕掛けの方が本来望ましいのじやないかと思うのです。ただし、一定の年齢まで達しますと一定の集団を求めて行動するということから、それを、世界の趨勢もそうでありますと同じように、日本でも三歳からそういう学校という形態の中で教育を展開する、こういう仕掛けにしておるのでございますから、ゼロ歳から三歳児までは、保育に欠けない、両親がいる間はその両親のもとでしっかり教育をしてあげるということが大切だと思います。
  207. 木島喜兵衞

    ○木島委員 それじゃ、三歳までの子供たちに対して文部省は何にもしておりませんか。何にもしておりませんか。予算は使っておりませんか、家庭でいいと言うなら。
  208. 宮野禮一

    ○宮野政府委員 今御質問のありましたように、公的な施設としては幼稚園があって、三歳以上の……(木島委員「いいよ、そんなのはわかっている」と呼ぶ)それまでの、ゼロ歳児から三歳児ぐらいまでの間の子供は家庭において親の教育を受けていくという形になるわけでありますが、そういう幼児期を対象といたしました家庭教育につきましては、私どもの方で家庭教育の幼児期相談事業というのを設けまして、これは各都道府県が補助対象事業者でございますが、都道府県に対しまして家庭教育の幼児期相談事業というのを実施している。すなわち御両親が……
  209. 木島喜兵衞

    ○木島委員 それでいいです。文部省、やっているでしょう。  初中局長、あなた、私がさっき言ったのは、家庭は中心だけれども家庭だけでいいだろうかと言って質問したのですよ。あなたは私と考えが違って、家庭が中心だとおっしゃる。では文部省は何にもやらぬかというと、文部省は今言ったようにやっているでしょう。金を出しているでしょう。はがき運動なんかはそうでしょう、はがきによる回答は。  さっき局長の言ったことで、江田さんがああでもない、こうでもない、ああいうこともある、こういうこともあるとおっしゃったが、それはやはり教育というものは多分にそういう要素を持っているのですよ。だから私が、家庭だけでいいのかと言うのに、あなたと私とでは所見が違うとおっしゃるから、私はがたんときてしまうんだ。  私はそういう意味では、余り時間がありませんからあれですけれども、もうちょっと——例えばこのごろの人に私は大変に危険を感じるのです。零歳の子供の教育だとか三歳までの教育だとか、いろいろ本が出ているでしょう。親があれを読むということに、私は非常に危険を感じているのです。書いた本の子供と自分の子供では同じではないんだよ。いや、同じ部分もあるかもしれないけれども、それをこうだと思ってやられたのでは大変心配なんです。  だからそういう意味では、例えば乳幼児教育なら教育という一面を考えて、それは保育と言ってもいいですよ、それは保育ですよね、私はわかっています。なぜなら、幼稚園も第一条の学校ですね。だけれども学校教育法七十七条では幼児の保育と言っているのです。その意味は、私は私なりに理解しているつもりです。けれども、その保育という中においても、殊にそれでは三歳以下の者はそれでいいのかというと、そうはならない。それをどうするのか。親は自分で本を読んでいる。だからあの本は、三歳までの教育というのは随分たくさん出ている。しかし危険性がある。そういうものを含めたところの、例えば国立教育研究所のようなところにそういう乳幼児の、これは新しい学問、大脳生理学というのは、さっき言ったように十五年、二十年のずっと発達したあれでしょう。ですから、そういうことももとにしたセンター的な教育研究機関があっていいのじゃないか。そして、そういうものから、例えばさっき言ったように乳幼児に対するはがきの指導がありますね。だが、そういうものも含めて、例えば妊娠して妊産婦手帳を取りに行ったときに、我が村の公民館ではこういう講座がありますよと言って、そういうセンターで研究された、そういう正しい乳幼児の教育を両親にする機会を与えるというようなことがあってもいいじゃないか。それは直接集団的な教育でなくても、集団というものは大事ですよということを含めて、そういうことにおいて考えることがないだろうか。  そして例えば、森さん、育児休業は、婦人労働者が余計になればなるほど、やはり育児休業というものを全婦人労働者に与えなければいかぬですね。そういう方向でしょう。それで今自民党も考えていますね。答弁はいいですよ。  そういうことも含めて、もう少し総合的に就学前——森さんが、決定的ではないにしても、五歳児の子供たち義務教育の中に編入してもいいではないかという一つのそういうお考えをお持ちだということは、今日の五歳児という就学前の子供たちをどうするかという立場に立って今お考えだと私は受け取るから、とするならば、零歳以下の子供たちを含めてどうあるべきかということを考えるのは当然だと思うのでありますけれども、初中局長はいかがでございますか。
  210. 高石邦男

    ○高石政府委員 ただいまのような質問でございますと全くよくわかりまして、そういう点でございましたら答えは若干変わってくるわけでございます。  乳幼児という子供を産む前から親に対して、的確な子育てについての教育が必要であるということで、社会教育局長を拝命していた当時、私は、あすの親の学級というのを開設すべきだということで予算化をしたわけでございます。それは、子供を産んでからでは子育てについての教育は遅いという発想でございます。したがいまして、親たちに対してそういう的確な教育を社会教育の分野で大いにやる必要があるという意味では、文部省も今までいろいろな施策を講じてきましたし、そういう施設の充実は必要かと思います。ただ、そういう子供たちを集めて、何か直接ストレートに子供に学校で教えるような教育のあり方についての御質問かと、こういうふうに思ったものですから先ほどのような答弁をしたわけでございます。
  211. 木島喜兵衞

    ○木島委員 いずれにしても森さん、僕はそういう意味では、就学前教育というのか、乳幼児の教育の体制、体系というものが整備されなければいかぬと思っているのですよ。全体として未整備です。  それは幼保一元化ももちろんそういう一つの大きなテーマですよ。しかし、それはなかなか簡単にいかぬ要素もわかっておりながら言うのでありますけれども、さっき言いましたように、例えば学校教育法の第一条でありますが、学校であるけれども保育である。保育所は保母さんだけれども、この場合は教諭である。しかし、授業料でなくて保育料であるとか、何かそのことに我々、保育料と授業料はどう違うのかなんて、法律にあるとそれを全部調べなければならぬのだ。これは面倒くさいね。学校教育法の第一条なら別に一つだっていいという問題もあったりしまして。だから、そういうことも含めて大変に不整備なんじゃないか。  だから中西さんが提案されておりますように、明治三十三年の小学校令で七十人以下と定めた際に幼稚園は四十人以下であって、それがなお今日まで続いているということなんでしょう。こういうことはやはり等閑視されてきたと言われてもいたし方ないんじゃないだろうか。  さっき局長が、私学との関係なんておっしゃいました。じゃ中学校が四十人学級になったときに私立はどうなんだろうか。これが終わったときに高等学校の四十人学級に移行する。そのときに私立は三割いる。どうなんだろうか、公立だけは四十人で私立はそうじゃないんだろうか。そういうこと全体を考えると、私立だからというのは言い逃れにしかすぎないと私は思う。  保育所との関係で教育内容、保育内容というものはなるたけ一緒にしようという、教育要領を。そうやってきているのでしょう。だのに、保育所の方が三歳児は二十人、四、五歳児は三十人というなら、やはりそれも含めて整備されねばならない問題ではないかという気がする。この間稻葉さんからも、家庭教育、乳幼児の教育が大事だという質問がございましたね。このごろの非行、暴力などというのも家庭だというのは、家庭のうちのなかんずくむしろあの時期ですよ、私が必要だと思うのは。そういうことも含めて乳幼児教育全体の不整備をどう直すかということが、今臨教審という中でももっと重視されねばならない要素だろうと思うのだけれども、中曽根さんの七つの構想の中にはそんなのないようだったな。むしろ今日、教育というのは学校の専門でなくて、生涯教育なり生涯学習全体の中における部分的なる学校の学歴。生涯とは生まれてから死ぬまでの間であるから、とかく今日、生涯教育などというのはリカレント教育考え方になっておる。そうじゃなくて、教育考えるならば生まれてから死ぬまでということをもう一回、今こそそういう意味で新しく検討し直さにゃならないのではないだろうかと思うのですけれども、森さん、簡単に。あなたは答弁が長いから簡単に。
  212. 森喜朗

    ○森国務大臣 限られた時間でありますから……。  私も、常々申し上げておりますように、全体的なものをもう一度見直してみる必要がある。それは、まさに今木島さんがおっしゃったとおり、ゼロ歳から生涯にわたるまでの教育という見地、もう一つはやはり社会の変化、文化、学術の進展に対応でき得るようにしよう、そういう意味で特に一番大事な幼児期に対してもう一度根本的に見直してみる。私は、先生のお考えどおりだろう、そういう立場に立って教育改革の大きな一つのテーマとして期待をしているわけでございます。
  213. 木島喜兵衞

    ○木島委員 初中局長、幼稚園の先生というのは若い人がばかに多いよね、小学校へ行くと女の人が多いけれども。我々ちゃんと年齢構成がピラミッドになっているのに、何であれば若い人はかり多いと思いますか。
  214. 高石邦男

    ○高石政府委員 一つは、幼稚園教育が小学校のように長い伝統がないし、制度が整備されていないというところから若い先生が多いと思うのです。したがって、その若い先生が幼児教育で子供を扱うのにも大変難しい、そしてまた、親たちに対しても適切な指導助言、アドバイスをしていくという機能をあわせ持つように考えるとすれば、やはりそういう経験のある先生方が幼稚園の先生になるということは望ましいことではないかと思っております。
  215. 木島喜兵衞

    ○木島委員 さっき森さんが池田さんの御質問の中でおっしゃいましたが、私もある意味では、大学、高等学校、中学校、小学校なんて言うけれども、教師にとってはむしろ下の方ほど大事なのね、教員養成はある意味では逆の面がなきゃならぬとすら思うくらい。でありますが、そういう意味では、やはり賃金が不安定だという要素もあるんだろうか。  そこで中西さん、さっき教育職の(三)表が適用されるべきだという議論がありましたな。これどう思いますか。一つぐらいあなたに聞かなければ悪いからな。
  216. 中西績介

    中西(績)議員 教諭の賃金につきましては、幼稚園の場合はあくまでも教育公務員特例法に準じまして、国立の幼稚園教諭を基準として給料表が決められるということになっています。この公立幼稚園教諭の場合におきましても、国立幼稚園の教諭の俸給表である教育職俸給表(三)表を適用することが当然だと思っています。
  217. 木島喜兵衞

    ○木島委員 法制局いらっしゃいますか。  それで、これにくっついて自治省と文部省の見解が少し違うところがありますね。教育公務員特例法の二十五条の五、「国立学校教育公務員の給与の種類及びその額を基準として定めるものとする。」という、それは基準でありますから、一〇〇%イコールでなければならぬということではない。しかし、簡単に言えば教育公務員の給与の表でなければならぬと理解するのがこの二十五条の五のまともな読み方だと思うが、法制局としてはどうお考えですか。
  218. 関守

    ○関(守)政府委員 ただいまのお尋ねは、教育公務員特例法の二十五条の五におきまして、「公立学校教育公務員の給与の種類及びその額は、当分の間、国立学校教育公務員の給与の種類及びその額を基準として定めるものとする。」というふうに書いてあることについてのお尋ねだと思います。そこで、「基準」という言葉でございますけれども、これはしばしば法令においても用いられているわけでございますが、ある事柄を判断したり決定したりするとき尺度にするというような意味合いで用いられているわけでございます。そこで、「基準」と申しますのは、今申しましたようにそういう尺度ということでございますので、先生も今お話しございましたように、一〇〇%これと同一のものでなければならないということではないわけでございます。したがいまして、若干の幅を持って考えていいというものであろうかと思います。ただ、そういう尺度とされるということでございますので、単に考慮するという程度のものではないというふうに考えるわけでございます。そこで、結局はその間に合理的な理由があって、特別のそれを異ならせるような事情があればそれと異なったものが出てきてもやむを得ないと申しますか、この「基準として」に反するということにはならないということにはなろうかと思いますけれども、そこにはやはり合理的な理由がなければならないだろうというふうに思うわけでございます。  お尋ねの一般職公務員か教育公務員の俸給表であるかという問題につきましては、もともと教育公務員の俸給表というのを設けておりますのは国家公務員についてでございまして、それを基準といたしましてどういう形で地方公務員である教員の方々に適用するかというのは、そこにそれぞれの事情があるいはあるのかもしれませんし、ちょっとその点までは私どもとしてはつまびらかにはできにくいのでございますけれども……。
  219. 木島喜兵衞

    ○木島委員 じゃ、勉強不足だということかい。まだ十分勉強してないということ……。
  220. 関守

    ○関(守)政府委員 解釈といたしましては、先ほど申しましたように、「基準」と申しますのはそれを今尺度として判断をするということでございまして、具体的にどういう俸給表を適用してというようなことを、直ちにこの法律でどこまで意味をしているのかということは、ちょっとそこまで決めておるかどうかということは、はっきりは申し上げられないということでございます。
  221. 木島喜兵衞

    ○木島委員 申し上げられないということは、否定することも法的にはあってしかるべきだとでもあなたはおっしゃるのですか。それなら私はもう少し議論します。
  222. 関守

    ○関(守)政府委員 しかるべきかというお話は、ちょっとはっきり理解をしておるかどうかわかりませんけれども、国の学校教員の人の給与についての種類及び額を基準として定めなさいというふうに書いておるわけでございますから、それを理由もなくかけ離れて別のことをするということはいかがかということになろうかと思います。
  223. 木島喜兵衞

    ○木島委員 わかりました。ただ、自治省と文部省の感じは多少食い違いみたいなものを感じますので、ひとつここのところは少しきちっとしておく要があると思いますので、それは後日またやりましょう。  最後、もうあと何分もないのでありますが、一つだけちょっとあれですが、私立学校振興助成法の幼稚園の法人でない方、あれは三年間延ばして、来年の三月で切れるわけですね、切れるところがあるわけ。これは五年間というのに法人にならないものがあって、あのときには、「助成を受けた個人立等の幼稚園は、その翌年度から五年以内に学校法人化の措置をしなければならないこととするよう所要の法律改正が行われたのであります。」これはこの間の改正のときの自民党さんの法改正の立法趣旨です。「これにより個人立等の幼稚園の学校法人化は年々進んできたところでありますが、現在なお私立幼稚園の四二%は個人立等であり、このままで推移すれば、五年の期限の到来により補助を打ち切られざるを得ない幼稚園も数多く出てくることが予想され、幼稚園教育に混乱を招くおそれもあります。」これはもう再び直すことはないことになっている。これは三年たって、来年の三月三十一日になっても延ばすことはない。これを、もしもそのときに法人にならない、法人化しないところの幼稚園があった場合にどうするか。もう言うまでもなく憲法八十七条というものがあり、あるいは学校教育法第二条あるいは教育基本法第六条、法人以外はだめだということ、そして助成法の附則の二条の第五項では、法人化せねばならない法的な義務を補助をもらうものは受けておる、義務を負っておる、そういう中で打ち切ったならば混乱するからといって三年間延ばした。それ以後三年、もうそれ以上は延ばさないぞと決めた。そこで、ならないと思えるような幼稚園があるのだろうか、一園たりともあってはならないと私は思うのでありますが、そのとき間近になって言ったのではだめなの。今からそういうことを示しておかなければだめなの。そういう準備をしておかなければだめなの。  この前のなれなかった園の理由を聞くと、ほとんど初めからなれないような条件の幼稚園が随分あった。五年たって、あのまま切れたとしても、文部省は、それはもう使ったのだから返還させるということは酷だと言う。そういう事情もわかります。けれども、それでは初めからやるつもりがなくて、法人化するつもりがなくて、金だけもらってもうけていいのか、これが教育機関でいいのだろうかという問題もある。だから、もう一年しかないのでありますから、今からその準備というものをやらねばならぬ。  これは、三年間延長したときの附帯決議は、「所轄庁は、補助金の交付を受けた学校法人以外の私立の学校の設置者で学校法人化をなし得なかった者について、なし得なかった理由及び経過についての報告書を提出させること。」そして「所轄庁は、学校法人以外の私立の学校の設置者で今回の期限延長に伴い、引き続き補助金の交付を受けようとする者について、補助金の交付に先だち、学校法人化への計画及び学校法人化への努力を誠実に行う旨の文書を提出させること。」とあるのでありますから、きっとそうやっているだろうと思うし、行政庁はそういう指導をしていると思うけれども、来年になってからできないということになったならば、この教育機関というものが非教育的なる行為をすることは私は許せないと思うので、今から準備をしてもらわなければならないし、今どのような状態にあるかということを局長に聞きたい。
  224. 阿部充夫

    阿部政府委員 お答えいたします。  一昨年、昭和五十七年に議員立法で、いわゆる三年延長法案を御議論いただきました。成立をいたしたわけでございますが、その当時に申し上げておりました数字で、昭和五十一年度から学校法人化の志向園ということで補助金の対象となったものは千九十五園でございますが、五十七年の三月三十一日、つまり当時の法定期限が切れた時点で学校法人化に至っていなかった幼稚園が四百八十園ということであったわけでございます。その後、昭和五十八年、昨年の三月三十一日、つまり三年延長のうちの最初の一年が過ぎた時点でございますけれども、その時点におきましては、この四百八十園のものが三百六十五園まで減少しておるというような状況にあるわけでございます。  現在、ことしの三月末現在の数字、つまり二年目が切れた部分についての実態の調査をしておるところでございまして、まだ的確にその数字をつかんでおらないわけでございますが、その状況等も見ながら、なお法人化の促進についての指導を重ねてまいりたい、かように考えているところでございます。
  225. 木島喜兵衞

    ○木島委員 私の言っていることは、今その数字を聞きたいというのではなくて、現在、あと一年しかないわけでありますから、それに対して適切な指導をしておかないといけないという意味で、どうなっておるかということをお聞きしたわけであります。したがって、もう時間がありませんからいいです。その点は抜かりなくやっていただきたいということの要望にしておきます。  時間がもう少しありますけれども、やめます。どうもありがとうございました。
  226. 中西績介

    中西(績)議員 先ほど内閣法制局の方から答弁がありましたけれども、この問題については質問者、理解が早くて途中で打ち切ったようでありますけれども、少なくともやはりこの問題につきましては、先ほども答弁されておりましたように、あくまでも基準という問題を論議しておりましたけれども、だんだんわからなくなってまいりましたが、いずれにしてもその尺度は若干の幅があるということを言い、そして「国立学校教育公務員の給与の種類及びその額を基準として定める」、これとは別のことをするということではいけないということをはっきり言ったわけでありますから、少なくとも所管する文部省は、「給与制度の基本である給料表について、国立学校教育職員と異なった内容のものを採用することは、教育公務員特例法第二十五条の五の規定の趣旨に反する」と、昭和三十二年七月二十六日付初中局長通知で各県に指導し、その上で、「一般地方職員の給料表が国の行政職俸給表の内容変更を加えて作製される等の場合において、これとの均衡を考慮し、同条に規定する「基準」の範囲を逸脱しない限度において国の教育職俸給表に部分的な変更を加えて公立学校教育職員の給料表を定めることを否認する趣旨のものではない」と同じ昭和三十二年八月十六日付通知によって解釈をしておるわけです。  したがいまして、これにつきましてはあくまでも教育職(三)表を適用するということが前提になって論議されておるということを明定しておかないと、自治省あたりが論議されておるということを内容的に聞いておりますけれども、これは行政職を適用することがあたかも正当なような論議がされておるようでありますけれども、これは大変な誤りであるということを指摘をしておかなくてはならぬと思っております。  これだけ申し添えておきます。
  227. 木島喜兵衞

    ○木島委員 その点はそう理解をしたからこそ、文部省の通達も私はよく知っておりますし、それから、尺度であるから若干の幅があるが合理的な理由がなければならないということでありますから、私はそのように理解したのであります。  ありがとうございました。      ————◇—————
  228. 愛野興一郎

    愛野委員長 内閣提出日本育英会法案議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、これを許します。北川正恭君。
  229. 北川正恭

    ○北川(正)委員 私は、日本育英会法案について御質問をいたしたいと思います。  この法案につきましては、昭和五十九年度の入学者から今回の制度改正が適用されることを予定していることもあり、大学の学生やその父兄からも強い関心を持って見守られているわけでありますので、国民の育英奨学事業に対する強い要請を考え、その速やかな成立をお願いしつつ質問をいたしたいと思います。  我が国の学校教育昭和五十八年度で見ましても、高等学校は九四%、大学は三五%という進学率を見ているわけであります。その間にあって、学校教育の普及拡大の努力の一環として育英奨学事業の充実発展が図られてきたわけでありますが、まず初めに、我が国の育英奨学事業の現状についてお尋ねをいたしたいと思います。
  230. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 我が国の育英奨学事業の現状についてのお尋ねでございますが、国の資金によって事業を行っております日本育英会を中心に地方公共団体、民法法人等全体では二千七百を超える団体等によって行われているわけでございます。  そのうち日本育英会の事業でございますが、奨学生数全体の約六〇%、事業費で約八〇%を占めております。五十八年度では高等学校、大学、大学院、高等専門学校、専修学校の約四十万人の学生、生徒に対し総額千百十八億円の奨学金を無利子で貸与しているわけでございます。このほか、大学を設置する学校法人で、当該大学に在学する学生を対象として奨学金貸与事業及び入学一時金の分割納入事業を実施するものに対しまして、日本私学振興財団を通じて資金を低利で融資するなど、私立大学奨学事業援助を実施をいたしておるわけでございます。なお、五十九年度からは奨学金貸与事業については学年進行で日本育英会の行う有利子事業に取り込むということにいたしておるわけでございます。  現状はただいま御説明申し上げたような状況でございます。
  231. 北川正恭

    ○北川(正)委員 昭和十九年に日本育英会法が施行されてから今日まで四十年にわたって、日本育英会が実施する育英奨学事業は充実発展を遂げてきたわけでありますが、それでは今日までの育英会の事業の実績についてお尋ねをしたいと思います。
  232. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 育英奨学事業の実績でございますが、創立以来五十七年度末までの四十年間に育英会を通じて奨学金の貸与を受けた学生、生徒数は約三百四十万人に達しております。貸与総額は全体で約八千五百億円に及んでおりまして、これらの人材は社会の各分野で活躍し、我が国の今日の発展に多大の寄与をしてきておるわけでございます。  また、卒業後における返還金の回収でございますが、おおむね順調に行われておりまして、五十七年度末までの返還金総額は千四百八十八億円でございます。回収を要する金額千五百二十二億円に対して九七・七%の高い回収率となっております。そうして、これらの返還金は事業資金として効率的に運用をされているわけでございます。  以上が今日までの事業実績でございます。
  233. 北川正恭

    ○北川(正)委員 そういう事業実績もあるわけでございますが、それでは、今回制度改正を行うわけですが、その趣旨について文部大臣にお尋ねをしたいと思います。
  234. 森喜朗

    ○森国務大臣 ただいま大学局長から、育英会の現状、また実績等の報告がございました。  特に最近は高等教育に進む量的普及もありますし、量的に大変な拡充がございます。社会、経済情勢の変化に対応して事業の一層の充実を図るためには、その内容も方法も抜本的に見直す必要があるのではないか。そしてもう一つの面は、臨調の答申もございました。育英奨学事業というものは、スタートしてから今日の社会の変化、経済の大きな成長、そういうものにもかんがみてまいりますと、臨調の答申を受けまして文部省の中の育英奨学事業に関する調査研究会、その報告でも、抜本的な改正をするようなそうした指摘をちょうだいいたしました。  今回の改正をお願いし、国会提出させていただきました法案は、このような要請にこたえまして、現行の無利子貸与制度の整備を図りますとともに事業の量的な拡充にこたえていく、そういう意味で低利の有利子貸与制度を創設する、制度全般にわたりまして整備改善を図ろうということが目的でございます。
  235. 北川正恭

    ○北川(正)委員 それでは、育英会法の第一条の目的規定に、「国家及び社会に有為な人材の育成に資するとともに、教育機会均等に寄与すること」を掲げた理由についてお伺いをいたしたいと存じます。
  236. 森喜朗

    ○森国務大臣 現行の法の目的規定におきましては、ちょうど昭和十九年、戦時下におきます制度創設ということでございましたので、国家有用の人材育成のみが掲げられているわけであります。  戦後、憲法及び教育基本法は、いわゆる教育機会均等について規定をいたしているわけでございますので、育英会も教育機会均等の精神を踏まえて、より多くの学生、生徒を対象とするように事業の拡充を図っていきたい。今回のいわゆる全部改正に際しましては、憲法と教育基本法の規定を考慮するとともに、事業運営の実態を踏まえまして教育機会均等に寄与するということを目的として掲げたものであります。
  237. 北川正恭

    ○北川(正)委員 そこで今度は、私どもの国において育英奨学事業は、制度創設以来無利子で実施をしてきたわけでございますが、それじゃ先進諸外国の育英奨学事業の現状についてお伺いをしたいと思いますし、また、アメリカにおいては有利子貸与奨学金が実施されているとお聞きをしているわけですが、その実情についてお尋ねをいたしたいと思いすます。
  238. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 諸外国の状況についてのお尋ねでございますが、アメリカ、イギリス、西ドイツ等の先進諸外国における公的な育英奨学事業は給費制度が主体でございまして、一部これを補うものとして貸与制度が実施されているわけでございます。そして、全体の事業規模も相当大きいものがございます。もちろん国によりまして、国情なり教育制度、大学進学率等それぞれ異なるわけでございまして一概に比較することは困難かと思いますが、奨学金受給者の割合を大学について見ますと、イギリスで約九割、アメリカが約六割、西ドイツが約四割、フランスが約一割ということでございます。なお、日本の場合には約一割でございます。  それから奨学金の額でございますけれども、それぞれ国によって異なりますが、おおむね学生生活費を考慮して定められているようでございます。  お尋ねのございましたアメリカでございますが、給費制を補完するものとして有利子貸与事業が行われております。具体的には連邦直接貸与奨学金が年利四%で約九十五万人の学生に対して貸与されており、学生貸与金保証制度による貸与奨学金というのが年利七%で約百五十一万人の学生に対して貸与されております。それから父兄貸与金保証制度によります貸与奨学金が、これは一九八一年度に創設されたもののようでございますが、年利九%ということになっておるわけでございます。  近年、国の財政事情が大変悪化したというようなことなどを受けまして、有利子貸与事業の拡充が積極的に行われておりまして、一九七九年度においては学生総数の二五%に当たる約二百五十万人がこれらの有利子貸与奨学金を受けているというぐあいに承知をいたしております。
  239. 北川正恭

    ○北川(正)委員 昭和五十九年度の予算は既に成立をしているわけでございますが、その中でこの日本育英会の育英奨学事業はどのような改善を行っているのか、お伺いをいたします。
  240. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 五十九年度予算の内容についてのお尋ねでございますが、育英奨学事業については、臨調答申あるいは育英奨学事業に関する調査研究会の報告を踏まえまして、五十九年度予算において無利子貸与制度の改善を行うとともに、育英奨学事業の量的拡充を図るために財政投融資資金の導入による低利の有利子貸与制度の創設を行うことにしておるわけでございます。  無利子貸与制度については、一般貸与と特別貸与を一本化し、特別貸与返還免除制度を廃止するとともに教員養成学部の特別枠を廃止をいたしまして、返還免除額は、これは臨調答申でも言われておるわけでございますが、返還免除額の縮減に努力をいたしたわけでございます。  また、有利子貸与制度は、当面は大学、短期大学を対象といたしておりまして、初年度の五十九年度は貸与人員で二万人、事業費六十五億円という内容になっております。貸与利率でございますが、在学中は無利子とし、卒業後の貸与利率は年三%という中身になっております。  以上の結果、無利子貸与事業、有利子貸与事業合わせますと、五十九年度においては、貸与人員において約一万一千人の増、事業費において約六十七億円の増ということになっております。  なお、学年進行完成後の昭和六十四年度で申し上げますと、貸与人員において約四万二千人の増、事業費で約三百四十億円の増を見込むような内容で五十九年度予算をお願いいたしたわけでございます。
  241. 北川正恭

    ○北川(正)委員 そういうわけで有利子貸与制度が出てきたわけですが、当然、これまでの育英奨学事業の量的拡充の必要性はかねてから言われてきておったわけですが、その努力もされてきた。  そして今回、制度改正において量的拡充を図るために有利子貸与制の創設を行うということでございますが、その内容についてお伺いをいたしたいと思います。
  242. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 ただいまもごく概括的に申し上げたわけでございますが、量的な拡充というのは、従来育英会の事業は一般会計からの政府貸付金と先ほど申し上げました奨学生の返還金で事業を行ってきたわけでございます。全体的に教育機会均等を確保し、生活費の上昇や授業料負担に対応して奨学事業の量的拡充を図る必要があるわけでございますけれども、片や現下の財政事情が一般会計の貸付金を資金とするだけでは限度があるというようなことを受けまして、一般会計以外の外部資金として財政投融資資金を導入して低利の有利子貸与制度を創設することにしたわけでございます。  その内容でございますけれども、先ほど人員、貸与月額等については申し上げたわけでございますが、さらに貸与月額については、基本的な貸与額は無利子貸与と同額といたしておりますけれども、私立大学の医・歯系や薬学系統では学生納付金が一般学部に比べ高額であるというようなことも考慮をいたしまして、基本的な額に加えて奨学生の希望に応じて増額貸与月額を受けることができるような内容といたしております。  また、貸与利率でございますが、先ほども申しましたように、在学中は無利子で、卒業後の利率は、基本的な貸与額についてはできるだけ低利とするという観点から年利三%にいたしておるわけでございます。  なお、ただいま申し上げました増額貸与月額については、医・歯系及び薬学系に対する特別の措置であるということから、財政投融資資金と同率の年利七・一%ということにいたしております。国としても、有利子貸与を受ける学生の利子負担をできるだけ軽減するために、在学中の無利子貸与分と卒業後の貸与利率と財政投融資資金の融資利率との差額につきましては、一般会計から利子補給を行うということにいたしておりまして、五十九年度予算では約二億円を計上しているところでございます。  以上が有利子貸与制度の中身でございます。
  243. 北川正恭

    ○北川(正)委員 有利子貸与制度は当然量的拡充を図るためになされたわけですが、しかし、従来から実施されてきている無利子貸与制度は当然事業の根幹として存続させ、今後ともその改善を図るべきであると考えているわけでございますが、両者の関係は一体どうなるかということについてお尋ねをしたいと存じます。
  244. 森喜朗

    ○森国務大臣 先ほどから申し上げましたように、育英奨学事業は教育のまさに機会均等を確保いたします、そういう意味教育施策の基本だろうというふうに私は考えております。  今回の制度改正は、今北川さんがおっしゃいましたように、無利子貸与制度を事業の根幹として存続はさせます。そして、これに加えて新たに有利子貸与制度というものを、いわゆる二本線を引こうと、こういうことでございます。今後ともこの無利子貸与制度は、今回の法改正にもお願いをいたしておりますように単価アップをいたしておるわけでありますから、そういう改善を加えながら事業の根幹にしていきます。一方には、量的な拡充を図ることによって事業の枠をできるだけ広げていきたい、いわゆる対象の学生に対する期待にこたえていきたい、こういうことで有利子貸与制度をしくものであります。
  245. 北川正恭

    ○北川(正)委員 わかりやすい言葉で教えてもらいたいのですが、有利子貸与奨学金を借りた場合に、学生の返還金の負担増は大体どの程度になるか、お伺いをしておきたいと思います。
  246. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 有利子貸与事業の創設に当たりまして、先ほども御説明したわけでございますが、貸与利率は卒業後におきましてもできるだけ低利となるような配慮をいたしたわけでございます。  具体的に申し上げますと、返還総額を見ますと、国公立、私立とも、無利子貸与に比べて二割程度の増になるかと考えるわけでございます。返還額は年額で、国公立大学で約十二万六千円、私立大学で約十五万三千円ということでございまして、これを民間企業の初任給に占める割合で見ますと、国公立大学では八%程度、私立大学では九・七%程度ということでございまして、卒業奨学生の返還負担能力という点から考えれば、この程度の返還負担は無理のないものではないかというぐあいに考えております。もちろん、国としても、有利子貸与を受ける学生の利子負担をできるだけ軽減するために、在学中の無利子貸与分と卒業後の貸与利率と融資利率との差額については、先ほども御説明をいたしましたように、利子補給を行うというようなことで、できるだけ学生の負担のかからないような配慮はいたしておるわけでございます。
  247. 北川正恭

    ○北川(正)委員 そうなると、無利子貸与と有利子貸与の対象となる学生については育英会法案第二十二条に規定がされているわけですが、では具体的にはどう違うのかをお尋ねしておきたいと思います。
  248. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 無利子貸与と有利子貸与の対象となるものの基準についてのお尋ねかと思いますけれども、新しい日本育英会法が成立しました後、法律の趣旨に沿って正式に定められることになるわけでございますが、ただいままでのところ、おおむね次のような考え方で対応をいたしたいというぐあいに考えているわけでございます。  まず、家計収入の限度額についてでございますけれども、給与所得世帯を例にとりますと、大学の無利子貸与にあっては、国公立大学で現行の四百七十二万円から五百六十五万円に、私立大学で現行の五百二万円から五百九十七万円にそれぞれ改定をいたしまして、有利子貸与についてはさらにこれを百万円程度上回るものにしたいというぐあいに考えておるわけでございます。  次に、学業成績の基準でございますけれども、大学の場合、現行の一般貸与が高校成績平均が三・二以上、特別貸与が高校成績平均が三・五以上となっておりますので、これらの事柄を考慮しながら無利子貸与と有利子貸与の基準を定めるというようなことで考えているところでございます。
  249. 北川正恭

    ○北川(正)委員 ややもすると、給与世帯の子弟に比べまして農家やあるいは商店等の個人業種世帯の子弟は奨学生として採用される場合に有利となっているのではないか、こういう場合が想定されるわけですが、今回の制度改正でその是正措置を講じられているのかどうか、お伺いをいたしたいと思います。
  250. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 日本育英会の奨学生の場合、主として学業成績と家計収入の基準によって選考するという考え方でございまして、この二つの基準に該当する者の中から必要度の高い者が採用されているわけでございます。  そこで、家計収入の基準でございますけれども、五十九年度において消費者物価や家計収入の上昇というようなことも考えまして、先ほども御説明を申し上げましたが全般的に改定をするように考えておるわけでございますけれども、特に給与所得世帯については、給与所得世帯の生活実態ということを踏まえまして、給与所得の控除限度額を現行の百六十七万円から二百十七万円と五十万円増額をすることにいたしております。したがいまして、五十九年度においては大学の奨学生を採用する場合の家計収入の限度額は、給与所得世帯を例にとりますと、無利子貸与にあっては国公立大学で現行の四百七十二万円から五百六十五万円、私立大学で現行の五百二万円から五百九十七万円に改定をすることになるわけでございます。今後ともこの基準の設定に当たりましては、給与所得世帯とその他の世帯との均衡ということは十分念頭に置きながら対応をしてまいりたい、かように考えております。
  251. 北川正恭

    ○北川(正)委員 法案の第二十二条第五項によると、無利子貸与にあわせて有利子貸与を行うことができることとなっているが、その理由と対象となる学生についてお伺いをいたしたいと思います。
  252. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 無利子貸与を受けている学生生徒の中には、無利子貸与を受けましてもなお修学を維持することが困難な者がいることも考えられるわけでございまして、そのような生活困窮者に対しまして、無利子貸与にあわせて有利子貸与を受ける道を開くということによってその修学を援助する必要があると考えておるわけでございます。  なお、無利子貸与と有利子貸与の併用でございますけれども、有利子貸与制度の貸与人員の一割程度ということで考えておりまして、五十九年度においては約二千人を予定いたしております。  なお、併用できる者の基準といたしましては、学業成績の基準は無利子貸与と同じといたしておりまして、家計基準の方でございますけれども、総理府の家計調査によるいわゆる五分位階層区分の最も低所得階層であります第一・五分位の収入額、約三百万円でございますが、そういう程度を考えておるところでございます。
  253. 北川正恭

    ○北川(正)委員 次に、返還免除制度について少しお尋ねをいたしていきたいと思いますが、この制度、見方を変えれば事実上の給与制と言うことができると思いますが、今回それについてどのような改正を行ったのか、お尋ねをしたいと思います。  また、教育、研究職返還免除制度は、当然教育、研究分野に優秀な人材を確保するための施策として重要であると考えます。したがって、今後とも存続させるべきだと考えておりますが、御見解を承りたいと思います。
  254. 森喜朗

    ○森国務大臣 お尋ねの返還免除制度でありますが、いわゆる一般貸与と特別貸与を一本化いたしましたので、特別貸与返還免除制度はこれに伴いまして廃止をいたしたいと考えております。ただし、死亡、心身障害返還免除制度は今後とも存続をさせていく。したがいまして、新しく創設をいたします有利子貸与制度はこれに適用をさせていきたい、こう考えております。  なお、第二点のお尋ねでございました教育、研究職に対します返還免除制度は、学校教育分野及び学術研究分野に優秀な人材を確保する、こういう基本的な施策でございます。大変大きな役割を持っておるわけでございますので、今回の改正におきましては返還免除制度はこの部門につきましては存続をさせていきたい、こう考えております。ただ、財政事情が非常に厳しゅうございましたので、当然返還免除額を縮減しなければならぬということが課題になってまいりますので、教員養成学部の特別枠は廃止さしたい、こういうふうに考えております。
  255. 北川正恭

    ○北川(正)委員 ところで、この法案の附則第一条では、この法律の施行期日は昭和五十九年四月一日となっているわけですが、その理由についてお伺いをしておきたいと思います。
  256. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 改正法は、五十九年度入学者から適用するということで施行期日を五十九年四月一日としているわけでございます。なお、既に四月一日を過ぎておりますために、施行期日の規定につきましては何らかの修正が必要となっておるわけでございまして、五十九年度入学者の四月分から新法に基づく奨学金を支給できますように所要の修正をお願いいたしたい、かように考えております。
  257. 北川正恭

    ○北川(正)委員 最後に、資源の少ない我が日本で、次代を担う青少年の育成ということは一番大切なことであることは論をまちません。そういう中にあって、優秀でありながら経済的な理由のために教育が受けられないということはいかにも我が国において特に避けなければいけない、こう思っておりますが、今回の制度改正を機会に育英奨学事業の一層の発展を期待しておるわけでございますけれども、文部大臣のそれに対する御見解をお伺いいたしておき偉いと存じます。
  258. 森喜朗

    ○森国務大臣 北川さん御指摘のように、これからの科学技術あるいは産業の発達、大変大きなものがあるわけでありますので、そういう意味では、御指摘どおり物的な資源に乏しい我が国といたしましては、将来にわたる活力ある国家社会を築いていくためには、何といいましても有為な人材を育成するということは政治的にも極めて大切なことでございます。  今回の育英奨学事業の改善に当たりましては、人材の育成と教育機会均等に寄与する基本的な教育施策であることに留意をいたしまして、無利子貸与制度を事業の根幹として存続させて改善をしていきたい、量的な拡充を図るためには、新たに財政投融資資金を導入いたしまして低利の有利子貸与制度を創設したい、そのように考えているところでございます。  今後ともこの制度を改正の趣旨に沿いまして、育英奨学事業は先ほどからるる申し上げておりますように極めて大事な制度でございますので、充実に努めてまいりたい、このように考えておるところでございます。
  259. 北川正恭

    ○北川(正)委員 それでは、今度は別の角度から少しお尋ねをしていきたいと思いますけれども、今回の制度改正によりまして奨学金の貸与月額の引き上げが行われているわけでございますが、それは実際は学生生活費に対しましてどの程度の割合になっているのか、お伺いをしてまいりたいと思います。
  260. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 今回の改正で、学生生活費に対してどの程度の割合になるかというお尋ねでございますけれども、日本育英会の奨学金の貸与月額につきましては、従来から学生生活の実態なり経済情勢等を総合的に勘案しながら改定をしてきておるわけでございます。  昭和五十九年度におきましては、現行の無利子貸与につきまして一般貸与を特別貸与に吸収する形で全体の貸与月額の引き上げを行いますとともに、さらに高等学校で千円、大学で二千円、大学院で五千円の貸与月額の増を行っておるわけでございます。また、有利子貸与でございますけれども、基本的な貸与月額は無利子貸与と同額としておりますけれども、先ほども御説明しましたように、私立大学の医・歯・薬系については希望に応じて増額貸与を受けることができるということになっておるわけでございます。  そこで、学生生活費に対します奨学金の割合で見ますと、おおむね三割ないし四割程度が見込まれるのではないか、かように考えております。例えば五十九年度の無利子貸与の貸与月額でございますが、国公立大学の自宅外通学者の場合に二万八千円、私立大学の自宅外通学者の場合四万一千円ということになっておりまして、この額は学生生活費に対して二六%ないし二九%程度ではないかというぐあいに見込まれるわけでございます。さらに、有利子貸与の私立大学の医・歯系では六万円の増額貸与月額を受けることができる。これは奨学生の希望に応じてということになるわけでございますけれども、その場合には、学生生活費に対する奨学金の割合としては三七%程度が見込まれるのではないか、かように考えております。
  261. 北川正恭

    ○北川(正)委員 今度の法案の第三十二条に、新たに日本育英会が日本育英会債券を発行することができることとする規定が設けられているわけですが、その理由についてお伺いをしてまいりたいと思いますが、よろしくお願いします。
  262. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 債券発行規定を設けたわけでございますが、その理由についてのお尋ねでございますけれども、日本育英会の学資貸与事業につきましては、先ほど来御説明をいたしておりますように、従来一般会計からの政府貸付金と卒業奨学生の返還金をもって事業を行ってきたわけでございます。  高等教育機会均等を確保するというためには、学生生活費の上昇なりあるいは授業料負担に対応いたしまして、学資貸与事業の量的拡充を図る必要があるわけでございますが、今日の財政状況から申し上げますれば、一般会計の政府貸付金を資金とするだけでは限度があるわけでございまして、量的な拡充を図るために日本育英会が債券を発行することができる旨の規定を設けまして、国の一般会計以外からの資金を導入し得ることにしたわけでございます。  なお、債券発行能力を有する法人になることによりまして、資金運用部資金の貸し付けを受けて、有利子貸与事業に対する貸与資金の原資に充てることができるようにしたいと考えておるわけでございます。  ちなみに、債券発行規定を持っております特殊法人でございますが、約三十法人があるわけでございまして、文部省所管のもので申し上げますと、日本私学振興財団が該当するわけでございます。ほぼ同様の規定を置いております。  なお、資金運用部資金法では、特殊法人について運用対象を債券発行能力を有する法人に限定をしているというのが資金運用部資金法の七条一項第七号及び第八号で規定をされているわけでございます。  以上のような点から、今回この規定を新たに設けることにしたわけでございます。
  263. 北川正恭

    ○北川(正)委員 債券を発行することができるということで、いよいよ債券まで発行するわけでございます。  それでは、そのことについて法案の第四十三条に、文部大臣と大蔵大臣との協議規定が新たに設けられるわけですが、その理由についてお尋ねをしたいと存じます。
  264. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 大蔵大臣との協議規定を新たに設けた点についてのお尋ねでございまして、最近の立法例でございますと、特殊法人の財務・会計に関します重要事項については大蔵大臣と密接な連絡を保つという必要があるわけでございまして、そのため、これらの事項について大蔵大臣と協議をすることとされているわけでございます。  現行の日本育英会法は制定が昭和十九年というようなこともございまして、大蔵大臣との協議の規定はなかったわけでございますけれども、今回の全部改正に際しまして、最近の特殊法人に係る立法例に従いまして規定の整備を行おうとするものでございます。  具体的に大蔵大臣との協議事項について御説明を申し上げますと、認可については規定した業務以外の業務を行うときの認可、これは二十一条第二項でございます。第二点として、業務方法書の作成及び変更の認可でございまして、これは二十五条第一項でございます。第三点として、事業計画、予算及び資金計画の認可、なお、これらの変更の認可でございまして、これは第二十八条でございます。第四点として、借入金及び日本育英会債券の発行の認可、これは第三十二条第一項でございます。第五点として、短期借入金の借りかえの認可でございまして、これは第三十二条第二項ただし書きでございます。第六点といたしまして、日本育英会債券の発行事務の委託の認可でございまして、これは第三十二条第六項でございます。第七点といたしまして、長期借入金及び日本育英会債券の償還計画の認可で、これは第三十四条でございます。  次に、省令の制定につきましては、学資貸与の対象者の認定の基準と方法に関する文部省令の制定、これは第二十二条第二項、第三項、第五項の関係でございます。業務方法書の記載事項を定めます文部省令の制定、これは第二十五条第二項の関係でございます。第三点の、学資金回収業務の方法に関する文部省令の制定で、これは第二十五条第三項でございます。第四点として、育英会の財務及び会計に関する文部省令の制定でございまして、これは第三十七条関係でございます。  次に、承認に係る事柄といたしましては、財務諸表及び決算報告書の承認でございまして、これは第三十条第一項の関係です。第二点として、給与及び退職手当の支給の基準の制定及び変更の承認でございまして、これは第三十六条の関係でございます。  第四に、指定についての協議としては余裕金運用の対象となります有価証券の指定ということで、これは第三十五条第一号の関係でございます。  以上のような点が協議規定として規定をされている点でございます。
  265. 北川正恭

    ○北川(正)委員 常々言われているわけでございますが、育英資金を借りるのは借りた、しかし、その返済はどうなっているかということで、その返済状況についてと、もう一つ、繰り上げ返還をした場合の特典があったと思うんですが、もっとその特典を強化すべきであろうと思っておりますが、そのあたりについてお尋ねをいたしておきたいと思います。
  266. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 返還につきましては、先ほど概括的に全体の御説明を申し上げたわけでございますが、九七%を超える返還ということになっております。  なお、繰り上げ償還の場合の恩典その他の点につきまして現状の御説明を申し上げますが、ちょっと資料を……。繰り上げ返還の場合でございますが、報奨金といたしましては、最終の割賦金の返還期日の四年前までに貸与金の返還未済額の全額を一時に返しました際には、返還により繰り上げ償還したことになります割賦金の一〇%に相当する金額を報奨金として支払うという考え方をとっております。
  267. 北川正恭

    ○北川(正)委員 日本育英会の奨学資金制度はよくわかるわけでございますが、それだけでなしに、民間の育英奨学事業の育成を図るべきであろうとも思っておるわけですけれども、その民間の育英奨学事業について文部省としてはどう対処されているか、あるいは今後の施策について見解を承っておきたいと思います。
  268. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 最初に、奨学事業の全体の概況について御説明をした際に申し上げた点でもあるわけでございますけれども文部省が五十四年度に実施をしました実態調査で申し上げますと、日本育英会を除きまして、地方公共団体、公益法人、学校その他を合わせまして二千七百二十六の事業主体によりまして、約二百万人の奨学生に対して二百十九億の事業が行われているわけでございます。昭和五十年度の調査と比較をいたしますと、事業主体数で五十九、奨学生数で九千人、奨学金の額で百十億円の増加が見られております。このうち育英奨学事業を行っております公益法人でございますけれども、六百七十三法人ございまして、約七万五千人の奨学生に対して奨学金約八十八億円の事業が行われております。  育英奨学事業を行います公益法人についてでございますけれども、寄附金の受け入れ等につきまして税制上の優遇措置が講ぜられておるわけでございます。既設の法人については、これを活用しまして、個人や企業からの寄附を促進し、事業の充実を図るように従来から指導しておるわけでございますが、今後一層民間育英奨学財団等の設立が行われまして、民間の育英奨学事業が十分発展するように、私どもとしても育英奨学事業全体のためにはそういうことが大変望ましいわけでございまして、積極的にそういう方向へ進みますように一層努力をいたしたい、かように考えております。
  269. 北川正恭

    ○北川(正)委員 あっちこっちしますが、今回の育英奨学制度の改正に当たって、文部省に育英奨学事業に関する調査研究会を設けて検討したと聞いているわけですが、その調査研究会の検討経緯とその報告の考え方についてお伺いをいたしたいと思います。     〔委員長退席、白川委員長代理着席〕
  270. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 育英奨学事業に関する調査研究会の調査結果を踏まえて今回の改正を御提案申し上げておるわけでございますけれども、育英奨学事業につきましては、臨調答申においてもいろいろの見直しが提言をされたわけでございます。  しかしながら、やはりこれらの点はいずれも育英奨学制度の大変基本にかかわる問題でもありますので、文部省におきまして、学識経験者等で構成をいたします育英奨学事業に関する調査研究会を設け、今後の育英奨学事業のあり方について五十六年十二月以来、諸外国の実態調査でございますとか、あるいは関係団体からの意見聴取を行うなどいたしまして、慎重な調査研究を行ったわけでございます。そして一年半にわたります検討結果が昨年六月に取りまとめられまして文部省に報告をされたわけでございますが、この報告の主な内容は次のようになっております。  育英奨学事業が教育機会均等の確保と人材の育成を図ります上で基本的な教育施策であるという認識のもとに、現行の日本育英会の無利子貸与制度を国によります育英奨学事業の根幹として存続させるということが第一でございます。なお、一般貸与を特別貸与に吸収をいたしまして、両者の区別を廃止してその改善を図るということが無利子貸与制度の改正としては提言として言われているわけでございます。  第二点といたしまして、高等教育の普及状況に対応いたしまして、育英奨学事業の量的な拡充を図るということで、先ほど来御説明をいたしておるわけでございますけれども、一般会計の資金だけでは限度がございますので、一般会計以外の外部資金の導入を行うことによりまして新たな有利子貸与制度を創設するという点が第二点でございます。  それから第三点でございますけれども教育職に対する返還免除制度でございますが、臨調答申等ではいろいろとそれらの点についても言われておったわけでございますけれども、人材養成等に果たしてきました役割の重要性ということから見まして、この制度そのものは存続させるということに調査会では結論をいただいたわけでございますが、先ほども御説明しましたように、教員養成学部の特別枠の廃止ということによって返還免除額を縮減することに取り組むことになったわけでございます。  なお、一般貸与と特別貸与の一本化に伴い、特別貸与返還免除制度は廃止するということにこの報告では言われております。  以上のような点が育英奨学事業に関する調査研究会の報告の主な点でございます。     〔白川委員長代理退席、委員長着席〕
  271. 北川正恭

    ○北川(正)委員 第三十八条の規定に関連してお尋ねをいたしますが、監督上必要な文部大臣の命令というのは、具体的にはどのようなことを指すのかということについてお伺いをいたしたいと思います。
  272. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 第三十八条の監督上必要な文部大臣の命令として、具体的にどのようなものが考えられるかというお尋ねでございますけれども、日本育英会につきましては、これは文部大臣がその監督を行うわけでございます。監督規定について、最近の立法例に倣って整備を行ったものでございます。  そこで、「監督上必要な命令」として具体的に考えられるものとしては、例えば次のような場合が予想されるわけでございます。  育英会法によりまして文部大臣の認可または承認を受けなければならないときにその認可または承認を受けようとしないというような場合に、それらを受けるべきことを命ずるというようなことで、実際上はそういう事態が起こってくるということは考えられませんけれども、例えばそういうようなことでございますとか、あるいは財務または会計に関する省令に定める諸手続に反する手続をとった場合にその是正を命ずるというようなこと、育英会の役職員の職務執行につきまして、必要に応じて具体的な是正なり改善検討等を命ずるというようなことが考えられるわけでございます。  なお、ちなみに本条は、日本私学振興財団あるいは日本学校健康会の規定の例に倣いまして三十八条を設けた次第でございます。
  273. 北川正恭

    ○北川(正)委員 今まで、今回の制度改正に伴う有利子貸与の意味合いとかを尋ねてきたわけでございますが、確かに量的な拡充を図るためには有利子の制度も万やむを得ないところであろうと思います。しかし、事業の根幹として無利子貸与制度を存続させるということはどうしても必要であろうと思いますし、さらにその改善方を一層進めていただきたいとお願いを申し上げたいと思うわけでございます。  さて、そこで、少し育英資金の話と切り離して、実際、じゃ学生が生活をしていく上で、あるいは機会均等の授業を受けるということにおいて、何に一番困っているかという論議に話を移してまいりたい、こう思います。  事実、例えば国立と私立においては入学金あるいは授業料等、それは確かに違いますが、しかし国公立、私立を問わず、授業料なり入学金なりということよりも、むしろ、例えば地方の学生が修学の機会を得るために大都会へ出てきてそこで生活をし始める、そういたしますと月々授業料以外に十万前後のお金がかかってくる、こういうことになるわけでございます。奨学資金という制度によって教育機会均等が与えられるので、有利子、無利子を問わず拡充はさらにしていただきたいと思いますけれども、それと並行して、教育機会均等を言うならば当然、奨学資金制度だけでなしに学生全体に及ぼす、例えば学生寮の建設であるとか、あるいは学生を本当に有利な体制で勉強ができる状況に置くために奨学金制度以外にお考えになっている部分があればお伺いをしたいし、特に学生寮などについては今後の検討をぜひお願いをしていきたいと思います。そのあたりについてぜひ前向きの御返答をいただければありがたいと思います。お願いいたします。
  274. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 奨学事業のみではなくて、学生生活全体の観点から具体的な施策を進めるべきだという御指摘かと思うわけでございます。  具体的にお話のございました学生寮についてのお尋ねでございますけれども、学寮というものは、基本的に経済的な面での効果とかあるいは教育的な面での効果も期待をされるわけでございますけれども、最近の国民生活の向上なりあるいは学生の意識の多様化というようなこともございまして、学寮に対する学生の志向も今日では変わってきておるという点が言えるかと思います。主として勉学と生活のための良好な居住施設であるということに対する期待が強くなっておるわけでございます。  国立大学の場合で申し上げますと、学寮の収容定員が約四万人、二百二十二寮でございますけれども、学生総数に対する収容率としては全体で約一一%というような状況でございます。入寮者が現在約三万人でございまして、入寮の率としては七六%というような状況でございます。学生総数の約八・五%が入寮しているということになるわけでございます。  そこで、入寮の状況でございますが、いわゆる新規格寮と申しますか、鉄筋で個室制でございますけれども、それの入寮率は九割以上ということで大変高いわけでございます。なお、旧寮として、これはほとんどが木造で相当老朽化しているものもあるわけでございます。あるいは鉄筋でありますけれども個室ではなくて、複数の人数部屋になっております新寮でございますが、それらについてはいずれも六割ないし七割程度でございまして、入寮の率が低いというのが現状でございます。  寮については以上のようなことでございまして、私どもとしても、それらの寮の改築計画については相当積極的に取り組んできておるわけでございまして、木造寮の整備について申し上げましと、五十年九月で百八寮ありましたいわゆる老朽寮でございますが、建てかえが進められまして、現在までに七十八寮が措置済みでございます。今後ともそういう寮の整備については積極的に取り組んでまいるようにいたしたい、かように考えております。
  275. 北川正恭

    ○北川(正)委員 今度で本当に最後の質問になりますが、この奨学資金制度の充実、拡充、確かにこれは必要なことであり、今回の制度改正は大いにやっていただきたいと思っております。  そして、先ほどの質問のとおり、何も奨学資金制度だけでなしに、教育機会均等を与えるために学生たちにしてやれることは、そのほかにいろいろな施策、制度があろうと思います。そのことについてもぜひ前向きにこれからも進めていただきたい、こう思うわけでございます。  最後に大臣に、最近の学生の風潮なり、あるいは例えば学生証を持っていると、通学にはそれは確かにいいのでありますけれども、そのほかでも、社会現象として、文教委員会理事さんなんかに御視察をいただいた新宿の歌舞伎町あたりで、学生のアルバイトと称していろいろなこともされている。そうなってくると、せっかく一生懸命奨学資金制度を充実させたり、あるいはそのほかもろもろ制度を拡充発展をさせて、できるだけ教育機会均等を与えるためということで努力したことが水泡に帰してしまうという場合もあり得る、こう思っていますが、そういったことを含めて、今日の学生に対する大臣としての期待なり希望なり、あるいはゆがんだ方向へ行く学生も、生活苦のためもあるでしょうし、社会風潮もあると思いますがある、そういったことを含めて文部大臣からお考えをお示しをいただいて、質問を終わりたいと思います。大臣よろしくお願いをいたしたいと思います。
  276. 森喜朗

    ○森国務大臣 今、北川さんから学生時代のアルバイトという話、私も学生時代、昭和三十五年に卒業でありますので、その頃のアルバイト、幾らぐらいだったかなと今頭の中で描いております。私は後楽園で、スタンドで牛乳売りをやっておりましたが、あのとき一生懸命汗水流して働いて、たしか三百五十円ぐらいくれたというように記憶しております。そのころの初任給が大体一万三千円ぐらいで、今は初任給が大体十三万円、それでアルバイトの平均的なものが大体五千円だそうですから、率からいえばそう違ってないなという感じがいたします。  ただ、今学生がアルバイトを求めるのが割と楽な時代になった。どんな仕事でも割とある。そういう面ではアルバイトが非常に多くて、そしてアルバイトによる収入が非常に多い。したがって、実際には育英奨学資金というのは学資のプラスになっているのかなという意見は最近、識者などからも非常に強く出ておるということは事実だと思うのです。しかし、最近の学生は、ある意味では非常に賢明健全で、頭がよくて、学資は学資として奨学資金などを上手に使ってそして親の負担を軽くしていく、それで勉強すると同時に生活をエンジョイしていこうという考え方がある。そのエンジョイする分についてはアルバイトで資金を得ていく。そういう点で、わりかし今の学生さんというのは明快に割り切って行動していく、そういう新しい時代なんだな、こう思います。  現在の学生さんたちのいろいろな行状というのは、確かにおもしろおかしく書き立てているマスコミもございます。しかし、やはり大学時代、親からは一円ももらわずに奨学資金をいろいろ駆使しながらアルバイトを重ねて頑張ってきたという女性も、昨年もちょうど私の選挙区に一人おりまして、早稲田大学をことし出ますと言っていましたが、その方が、どんな御縁が、日教組の方の職員の方とこの間結婚されまして、槇枝さんがたしか御媒酌人をされて、私も出てこいということでしたが、どうもうまく日がいませんで出席できませんでした。この間槇枝さんに伺ったら、とても健全な女性だ、こう言って褒めておられました。この学生さんは、一年から四年間早稲田大学に女子として通って、私の部屋に来たときもズックをはいていました。一遍も、親から一円ももらってない、こう言ってまじめにそんな話もしてくれておりましたのも非常に印象的でしたが、そういう意味では、やはり現代の学生はさまざまな、多様的な要素を持っております。  要は、まあ大学とは限りませんけれども、大学に限って言えば、大学生を一人持っている家庭にとってはやはり相当の大きな出費である。そして一方においては、最近のこういう経済情勢から考えまして親の収入というものもある程度限られてきておるわけでありますから、そういう意味からいいますと、やはり親の負担の軽減ということ、そして親の軽減ができないために学問ができないのだということであってはならない。したがって、学生を対象に置くということは育英奨学の本来の意味だろうと思いますが、やはり物の考え方としては、大学生を持つ親の立場というものも十分考えて、そういう形で育英奨学というものはなお一層充実を図っていかなければならぬ。今の現代的風潮に言われておるような学生というものだけを見ながら育英奨学を判断してはならないのじゃないかな、私は感想でありますが、そんなふうに考えます。  北川さんの御質問は、そういうことを含めながらなお一層育英奨学には力を入れろ、こういう御指摘であろうと受けとめさせていただいて、なお一層文部省としても積極的に事業の拡大、でき得る限りの対象の額のプラス、そういう面を十分に考えていきたい、こう思う次第であります。
  277. 北川正恭

    ○北川(正)委員 ありがとうございました。
  278. 愛野興一郎

    愛野委員長 ちょっと速記を中止して。     〔速記中止〕
  279. 愛野興一郎

    愛野委員長 速記を起こして。  この際、理事の協議に基づき、委員長から政府に要望いたしておきます。  すなわち、   日本育英会法案については、現在、本委員会において審議を行っているところであるが、日本育英会の奨学金の受給を期待している学生等の実情は憂慮すべき事態となっている。  従って、これらの学生等について、何らかの救済措置を早急に講ずることにつき政府において検討することを要望する。以上であります。  森文部大臣。
  280. 森喜朗

    ○森国務大臣 ただいまの理事会の御協議、そして委員長の御提案に対しまして、御趣旨を体しまして努力いたしたいと存じます。
  281. 愛野興一郎

    愛野委員長 次回は、来る二十三日午前十時理事会、午前十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十九分散会