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1984-08-02 第101回国会 衆議院 農林水産委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年八月二日(木曜日)     午前九時三十三分開議 出席委員   委員長 阿部 文男君    理事 上草 義輝君 理事 衛藤征士郎君    理事 田名部匡省君 理事 玉沢徳一郎君    理事 小川 国彦君 理事 日野 市朗君    理事 吉浦 忠治君 理事 稲富 稜人君       小里 貞利君    太田 誠一君       佐藤  隆君    鈴木 宗男君       高橋 辰夫君    月原 茂皓君       中村正三郎君    羽田  孜君       三池  信君   三ッ林弥太郎君       山崎平八郎君    上西 和郎君       串原 義直君    新村 源雄君       田中 恒利君    細谷 昭雄君       松沢 俊昭君    安井 吉典君       駒谷  明君    斎藤  実君       武田 一夫君    水谷  弘君       神田  厚君    菅原喜重郎君       中林 佳子君    藤木 洋子君  出席国務大臣         農林水産大臣  山村新治郎君  出席政府委員         農林水産大臣官         房長      田中 宏尚君         農林水産省経済         局長      後藤 康夫君         農林水産省構造         改善局長    井上 喜一君         農林水産省農蚕         園芸局長    関谷 俊作君         農林水産省畜産         局長      野明 宏至君         農林水産省食品         流通局長    塚田  実君         農林水産技術会         議事務局長   櫛渕 欽也君         食糧庁長官   石川  弘君         林野庁長官   角道 謙一君         水産庁長官   佐野 宏哉君  委員外出席者         外務省アジア局         北東アジア課長 高島 有終君         外務省アジア局         南東アジア第二         課長      橋本  宏君         外務省経済協力         局開発協力課長 浅見  真君         大蔵省主計局主         計官      秋山 昌広君         大蔵省主税局税         制第二課長   小川  是君         厚生省生活衛生         局食品保険課長 玉木  武君         厚生省生活衛生         局食品化学課長 市川 和孝君         運輸省港湾局管         理課長     小池 公隆君         参  考  人         (海外経済協力         基金総裁)   細見  卓君         農林水産委員会         調査室長    矢崎 市朗君     ――――――――――――― 委員の異動 七月二十七日  辞任         補欠選任   水谷  弘君     西中  清君 同日  辞任         補欠選任   西中  清君     水谷  弘君 八月一日  辞任         補欠選任   上西 和郎君     網岡  雄君 同日  辞任         補欠選任   網岡  雄君     上西 和郎君 同月二日  辞任         補欠選任   津川 武一君     藤木 洋子君 同日  辞任         補欠選任   藤木 洋子君     津川 武一君     ――――――――――――― 七月二十六日  食糧自給力維持強化に関する請願志賀節紹介)(第八九三六号)  外米輸入反対昭和五十九年産米価等に関する請願小沢貞孝紹介)(第九〇〇二号) 同月二十七日  外米輸入反対昭和五十九年産米価等に関する請願串原義直紹介)(第九一一九号)  同(清水勇紹介)(第九一二〇号)  同(中村茂紹介)(第九一二一号)  同(林百郎君紹介)(第九一二二号)  同(小沢貞孝紹介)(第九一六三号)  長野営林局存置に関する請願(林百郎君紹介)(第九一四三号)  同(小沢貞孝紹介)(第九一七五号)  昭和五十九年産生産者米価引き上げに関する請願(林百郎君紹介)(第九一四四号)  同(小沢貞孝紹介)(第九一七六号)  畜産養蚕経営安定強化に関する請願(林百郎君紹介)(第九一四五号)  同(小沢貞孝紹介)(第九一七七号)  外米輸入反対等に関する請願(林百郎君紹介)(第九一四六号)  同(小沢貞孝紹介)(第九一七八号)  同月三十日  韓国米輸入反対等に関する請願井上泉紹介)(第九二〇九号)  同(村山富市紹介)(第九二一〇号)  同(八木昇紹介)(第九二一一号)  同外一件(吉原米治紹介)(第九二一二号)  米の輸入反対生産者米価引き上げ等に関する  請願外二件(串原義直紹介)(第九二一三号)  外米輸入反対昭和五十九年産米価等に関する請願井出一太郎紹介)(第九二一四号)  同(小沢貞孝紹介)(第九二一五号)  同(唐沢俊二郎紹介)(第九二一六号)  同外一件(田中秀征紹介)(第九二一七号)  同(若林正俊紹介)(第九二一八号)  同(塩島大君紹介)(第九二九一号)  同(中島衛紹介)(第九二九二号)  同(宮下創平紹介)(第九二九三号)  長野営林局存置に関する請願串原義直紹介)(第九二四〇号)  同(清水勇紹介)(第九二四一号)  同(中村茂紹介)(第九二四二号)  昭和五十九年産生産者米価引き上げに関する請願串原義直紹介)(第九二四三号)  同(清水勇紹介)(第九二四四号)  同(中村茂紹介)(第九二四五号)  同(井出一太郎紹介)(第九三二〇号)  同(唐沢俊二郎紹介)(第九三二一号)  同(塩島大君紹介)(第九三二二号)  同(田中秀征紹介)(第九三二三号)  同(中島衛紹介)(第九三二四号)  同(羽田孜紹介)(第九三二五号)  同(宮下創平紹介)(第九三二六号)  同(若林正俊紹介)(第九三二七号)  畜産養蚕経営安定強化に関する請願串原義直紹介)(第九二四六号)  同(清水勇紹介)(第九二四七号)  同(中村茂紹介)(第九二四八号)  同(井出一太郎紹介)(第九三二八号)  同(唐沢俊二郎紹介)(第九三二九号)  同(塩島大君紹介)(第九三三〇号)  同(田中秀征紹介)(第九三三一号)  同(中島衛紹介)(第九三三二号)  同(羽田孜紹介)(第九三三三号)  同(宮下創平紹介)(第九三三四号)  同(若林正俊紹介)(第九三三五号)  外米輸入反対等に関する請願串原義直紹介)(第九二四九号)  同(清水勇紹介)(第九二五〇号)  同(中村茂紹介)(第九二五一号)  同(井出一太郎紹介)(第九三三六号)  同(唐沢俊二郎紹介)(第九三三七号)  同(塩島大君紹介)(第九三三八号)  同(田中秀征紹介)(第九三三九号)  同(中島衛紹介)(第九三四〇号)  同(羽田孜紹介)(第九三四一号)  同(宮下創平紹介)(第九三四二号)  同(若林正俊紹介)(第九三四三号)  昭和五十九年産米政府買い入れ価格等に関する請願赤城宗徳紹介)(第九二八九号)  米の安定供給確保等に関する請願外二件(小川仁一紹介)(第九二九〇号) 八月一日  能代地区国営総合農地開発事業計画変更等に関する請願中川利三郎紹介)(第九四三五号)同月二日  食管制度拡充等に関する請願外一件(佐藤誼紹介)(第九五三四号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 八月二日  外米輸入反対等に関する陳情書外百二十八件(第四六三号)  農業振興対策充実強化に関する陳情書外二件(第四六四号)  寒冷地稲作農業施策充実に関する陳情書(第四六五号)  農畜産物輸入枠拡大対応策に関する陳情書外二件(第四六六号)  肉用子牛価格安定基金制度充実強化に関する陳情書(第四六七号)  畜産酪農経営改善強化等に関する陳情書外一件(第四六八号)  全国植樹祭誘致に関する陳情書(第四六九号)  林業の振興に関する陳情書外四件(第四七〇号)  韓国漁船操業規制に関する陳情書(第四七一号)  竹島周辺漁業安全操業確立に関する陳情書(第四七二号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  農林水産業振興に関する件      ――――◇―――――
  2. 阿部文男

    阿部委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上西和郎君。
  3. 上西和郎

    上西委員 私は、昨今全国の耳目を集めていると言っても過言ではない鹿児島桜島の異常な爆発降灰に基づく大変な被害を受けている同地域に対します防災営農問題について、大臣以下関係皆様方見解を問いただし、かつ、お願いを申し上げたいと思います。  質問の前提として、私事を申し上げて恐縮でありますが、私は縁あって鹿児島鹿児島桜島出身の女性をめとりました。八年九カ月間当地に居住をし、身をもって降灰を体験してきた数少ない国会議員の一人だと自負をいたしております。したがいまして、当時おりまして私大変心に残っておりますのは、大正三年一月十二日、あの大爆発桜島大隅半島につながった、大変な爆発でありました。役場が埋まり、学校が埋没をし、町の三役が官を信ずるなかれとのろいながら殉職をしていった。あの異常な降灰の結果一たんは無人の島となったところが、敬神崇祖といいましょうか、祖先を大切にする、そして桜島をひたむきに愛する方々がおいおい戻ってまいりまして、一万五千名ほどの人口が定着をしておったのであります。墓参りその他についても鹿児島県の他の地域に比べて大変そうしたことに心厚い地域住民桜島の特色、しかもそうした苦難を乗り越えて世に有名な桜島大根を、ビワを、ミカンを送り出してきたこの当地で、大変残念なことに、先月二十一日十五時三分、異常な爆発により、人畜の被害こそございませんでしたが、鹿児島市東桜島有村地区では集団移動を希望するといったような状態さえ発生しているのであります。  私は、現地に行って見てまいりました。一抱えもあるような岩石が、噴石でありますが、これが飛び出してきて高圧配電線直撃、それこそ直径十センチ近い大きな電線が一撃のもとに断線、多いところでは三時間近く停電が続く。こういった状況で、一部火災が発生したけれども、常設消防にも地域消防分団にも通信連絡の方法すら途絶する。幸いそこに一部土建の方々が見えておって慌てて作業を中止して消火に当たる、こういうことで大事の前の小事で食いとめましたが、こうしたことが現に桜島で起きている。このことを山村農林水産大臣以下農水省皆さん方にきちっと御理解をしておいていただきたい。その中における防災営農対策だ、このことがなければ、とかく法律、規則、運用、通達、こういうことを極めて高くお守りなさろうとする我が国国家公務員の通弊がございますので、まずそのことを前置きをし、以下、順次具体的なお尋ねをしてまいりたいと思うのであります。  第一点は、ビニールハウスではとても追いつかない、だからトンネルハウスに切りかえていこう、こういう地域農業実態があるのでありますが、いかんせんこれは個人的なものが主なのでなかなか助成対象にしにくいということがあります。もちろん、現在農水省中心トンネルハウスも何とか助成対象にしようという前向きの意欲的な動きはよくわかるのでありますが、ひとつトンネルハウスを今後助成対象にしていくお考えありや否や、少しく具体的なお答えがいただけるならば大変ありがたいと思うのでありますが、まずこの点についてお尋ねをいたします。
  4. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 お答えいたします。  先生ただいま御指摘になりましたように、ことしの四月二十日で承認されました桜島の第四次防災営農施設整備計画におきましては、関係農家共同で行います降灰防止等に必要な施設整備については補助対象にしておりますけれども、トンネルハウス個人施設になじむものである、こういうことで補助対象にはなってないわけでございます。しかし、桜島火山関係いたします降灰による農作物被害防止軽減を図る目的で共同施設として設置される場合におきましては、鹿児島県ともよく相談いたしまして、全体計画とのバランスにも配慮いたしまして、一定の基準に適合するものについては五十九年度から補助対象とすることについて現在検討をしているところでございます。
  5. 上西和郎

    上西委員 大変ありがたいお答えをいただきましたが、何しろ事は急を要します。収穫ゼロ、しかしかつ農業を守り抜こうとするひたむきな農業に従事している方々の意欲を思うときに、その適用が一日も早からんことを心から希望してまず第一点の質問を終わり、次はビニールハウスの問題であります。  既にこれは助成されているのでありますが、官房長は当時審議官として私たちの災害対策特別委員会調査団にも御参加をいただいたのでありますけれども、ビニールハウスは今大変な惨状です。ところが、一回助成したものは云々という国の方針もあるようでありまして、災害対策特別委員会では硬質ビニールあるいは新種研究開発等が進み、それが実現をしたならば助成対象にしたい、こういうお答え国土庁関係を含めてあったのでありますが、硬質ビニール、そうした新種研究開発進捗状況いかん見通しはどうか、このことについてお答えをいただきたいと思います。
  6. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 今年度は御指摘のような状況にございますために、調査研究を行うべく検討を進めておりますが、その中身につきましては、第一点は、被覆資材破損等の具体的な被害状況がどうなっているかということを把握すること、それから破損等の原因の調査究明、それから最後に、各種の被覆資材によります農作物被害状況現地での比較試験、この三点を中心にいたしまして調査研究を進める予定でございまして、なるべく早くそういった調査研究に着手したいということで準備をいたしておるわけでございます。  なお、これに関連いたしまして新資材開発の問題がございますけれども、これについても業界の方と十分連絡をとりまして、なるべく早い時期に新しい資材開発されますように努力をしてまいりたいと思います。
  7. 上西和郎

    上西委員 そういたしますと、今から着手をするわけですね。それじゃ、今文字どおり塗炭の苦しみにあえいでいる農家はどうなるのですか。  私は、先般災害対策特別委員会調査団の一員として参加をいたし、現地をつぶさに見てまいりました。ビニールハウスが辛うじて守られていたところの収穫と、ぼろぼろになってしまって直撃を受けてもう見る形もない、こうなっているところでは収穫ゼロ、歴然たるものがあるのであります。その収穫ゼロのところでひたすらに農業を守っていこうとするならば、再び三たび張りかえをやらなければならない。そのお金、一回分については決して多額のものではないかもしれません。二万円そこそこと聞きましたけれども、これを繰り返しやらなければならない農家方々にとっては大変な負担になっていくわけです。収入の道はぷっつり断ち切られている。しかし、やはりやっていかなければならぬ。もちろんそれ以外に、農業資材、機械、肥料、労賃その他日に見えないものがいっぱい出ていく。その中で、目に見えるビニールハウス張りかえくらいはせめてやってほしい、それが国の農政ではないか、こう思うのでありますが、この点について重ねてお尋ねいたします。
  8. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 先生の御指摘になりました状況、よくわかるのでございますけれども、現在使用されておりますビニールにつきましては、通常の農業経営上の必要な消耗品であるというふうに理解をしておりまして、こういうような性格資材につきましては補助対象にすることはどうしても難しい現況でございます。
  9. 上西和郎

    上西委員 それじゃ、ここで大臣に私はずばりお尋ねをしたいのであります。  確かに、従来の補助金支給要綱その他から見れば局長お答えどおりでありましょう。しかし、私が冒頭申し上げたように、あれだけ桜島を愛し祖先を大事にする方々がいや応なく集団移住というのは、初めてですよ。大正三年一月十二日のときには、県の指示、国の指示で、もう住むにたえない、農耕不能ということで強制移住をやられた、種子島に、大隅半島にあるいは薩摩半島の方に。だから桜町とか桜原とかという町名が、部落名鹿児島県内至るところに残っているわけです。その方々いや応なしに強制的に移住を命ぜられた。それ以来今日まで、桜島出身方々桜島を守り育て、ずっと永住してきた。  その方々いや応なしに、ここまでやられればもう集団移転以外ないという気持ちにまでなるように追い込められている惨状の中で、農林水産省は依然として従来の方針を堅持して、その現実は知っているけれどもできない、これじゃ行政や農政は一体どこにいくのでありますか。そうした意味合いで、大臣、あなたは少なくともそういった窮状がわかり、あなた自身、心温かい大臣だ、すばらしい政治家だということはっとに定評のあるところであります。ひとつ大臣の御決断ビニール張りかえをぜひ助成対象にしていただくようにツルの一声を賜りたい、こう思うのであります。
  10. 山村新治郎

    山村国務大臣 最近の桜島火山の活動は、さらに活発化してきておるということは聞いております。火山噴出物、特に降灰、また火山ガスによる農作物及び農業用施設、特にこのビニールハウスでございますか、これらに多大の被害が発生し、農作物被害防止軽減を図るための耐久性の強い被覆資材が待望されているということは十分衆知しております。このために、今年度検討を進めております調査研究の結果を踏まえまして、優良な資材実用化見通しがついた段階におきまして、共同施設として設置された降灰防止施設について新資材が用いられる場合は補助対象とすることを検討いたしております。
  11. 上西和郎

    上西委員 そのお答えは、局長がおっしゃったことと実質は一緒でしょう。それを乗り越えてこそ政治家、すばらしい農林水産大臣山村新治郎の真価が発揮できる、そのことを私は期待をして今御質問をしておるのです。  私がいつも申し上げるように、農林水産省と言いません、国家公務員皆さん方が、日本のために国民のためにお仕事をなさっていることはかたく信じております。昼夜を分かたず御精励をいただいている。米価のときなどは一睡もせずに頑張った。高く評価しております。もちろん特定省庁では最近もいろいろありますけれども、事農林水産省はそういうことは絶対にない。ひたむきにお仕事をなさっている。だからそのことは百も承知で、しかし、その開発研究がこれから着手しようとしている現状であれば、連日降灰に苦しめられている農家皆さんはどうすればいいのか。そこをあと一つ乗り越えて、異例中の異例であるが、そうした実情にあるならば大臣決断でこのことについてはやってやろう、そこにこそ真の農政があるのじゃないでしょうか。重ねて御決断を促したいと思います。
  12. 山村新治郎

    山村国務大臣 ただいま申しましたように、補助対象とすることを検討しておるということですが、できるだけ早くやらせるように、促進させるようにしたいと思います。
  13. 上西和郎

    上西委員 これ以上無理でしょうから、大臣の今おっしゃった、できるだけ早く促進をさせる、このことを信じまして、次の質問に移らせていただきます。  それは降灰除去費の問題であります。私も今度当選してからいろいろ調べてみたのですが、国県市町村道、これの降灰除去については、それぞれ国の負担なりあるいは助成が、比率はいろいろ意見がありますけれども、行われている。ところが、どういうことか、農道降灰除去についてはこの助成対象にされていない、こういうことでございますが、その辺の事情について御説明いただきたいと思います。
  14. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 市町村道につきましては、市町村民生活影響があるということで降灰対策について補助対象になっておるわけでございますけれども、農道に降ります降灰につきましては、それらの粉じんが農作物に与える影響という点につきましては、市町村道に降りました降灰と若干性格が違う、こういうことで、農道に降ります降灰については災害復旧対象にならないというのが実態でございます。そういう点、確かに性格の差異があるのではないかと私も考えているわけでございます。
  15. 上西和郎

    上西委員 ただいまの局長お答えは、四月十二日の災害対策特別委員会における農水省の答弁よりか後退している印象を私は受けるのであります。鹿児島県は農道のほとんどを舗装していますよ。そして、生活道路になっておる。ただ、それがたまたま市町村道であるか農道であるかという、ちょっと名前が違うだけで、道路自体むしろ農道の方が立派なところが随所にある。大人も子供も、もちろん農作業のためにも、通学道路であり通勤道路でもある。完全に生活道路ですよ。しかも、面積は一番広い。  それじゃ、局長、私はあえてお尋ねしますが、桜島降灰は、あっ、ここは農道だから助成がないからよけてやろう、国県道に降り分けてやろう、そんな器用なことをしてくれる降灰じゃないでしょう。明らかに自然災害だ。その降灰国県道市町村道と同じように一様に農道に降り注いでいる。そして、生活のために大変な障害を与えている。やむを得ないから除去をすると、あそこは農道だからだめだ。それじゃ農林水産省は何しているのだ、こう言われても返す言葉がないじゃありませんか。農道除去費対象にするように、あと一歩具体的なお答えがいただけませんか。
  16. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 農道としての機能が確保できなくなった場合に災害復旧事業対象になるわけでございますが、農道としての機能でございます以上、確かにいろいろな農道があろうかと思いますが、建前上どうしても農道であります場合には、基本的に農道としての機能が確保できなくなった場合にしか対象にできないわけでございまして、一般の市町村道と同じような形で災害復旧対象にすることはなかなか困難と思うわけでございます。  今回の一連の桜島異常噴火によります農道被害につきましては、鹿児島県からの報告によりますと、降灰によります被害状況というのは局部的なものでございまして、被災状況を勘案いたしまして、県の単独の桜島降灰除去事業で対応する、こういうような報告を得ている次第でございます。
  17. 上西和郎

    上西委員 局長現地をことしになってからごらんになったかどうかつまびらかにしませんけれども、私は今のお答えで少し不満なんですよ。災害障害が起きれば云々とおっしゃるけれども、国県道市町村道降灰除去費助成は、どれだけ降ったかでしょう。何ミリ、何グラム、基準はこれでしょう。それをなぜ農道に適用しないのですかと私は言いたいのです。一平米にどれだけ積もったときにどうだということが、いわゆる活火山特別措置法でありましょう。その基準からなぜ農道を外しておるのかという素朴な疑問が私はあるのですよ。地域住民も同じなんです。そのことについて、今のお答えでは納得できません。あと一歩突っ込んだ見解をお示しいただきたい。それが不可能ならば大臣からいただきたいと思うのです。
  18. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 農道に降りました降灰市町村道に降りました降灰影響が、農道の場合には農作物に対する影響ということでございますし、市町村道の場合には市町村民生活に対する影響、こういうことでございます。したがいまして、農道に降ります降灰影響市町村道に降ります降灰影響はどうしても基本的な性格が違う、こういうことで、現在農道の場合には市町村道の場合の降灰と若干扱いが異なっているわけでございまして、先生の言われるようなこともあろうかと思いますが、どうも農道として使われている以上このような取り扱いにならざるを得ないのじゃないか、このように考える次第でございます。
  19. 上西和郎

    上西委員 それじゃ、大臣、私お尋ねしたいのです。  四月十二日に災害対策特別委員会で私が質問したら、そのときの農水省の担当の方は、第一次から第三次までの計画のときに農道に関しては要請がなかったので現実助成対象にしておりません、しかし、あなたがおっしゃるような事実があるとすれば鹿児島県とも十二分に協議をし、対象にするように取り組みたいというお答えをいただいているわけです、言葉の表現はちょっと違いますけれども。今の局長お答えでいくとそれからずっと後退ですよ。まさか山村さん、あなたがやっちゃいかぬと命令されたのじゃないでしょう。あなたが私に約束されたことをここでとやかく申し上げようとは思いませんが、少なくともこの異常な降灰の現実の中で、一般生活道の機能を十二分に発揮している農道降灰除去費について、建設省所管の方は助成していく、農水省関係農道は今局長お答えになったような基準があるからこれを乗り越えては不可能だというのじゃ、一体本当に行政というのは何をすればいいのですか。  そうした意味合いで、私、何も局長の答弁をどうこうじゃありません、やはり今局長の言うことはあれだが、大臣の判断で、その基準はあるが何とか対象にするように、それこそ先はどのようにぴしっとお答えをいただきたいと思うのです。そうでなければ、桜島周辺は桜島町だけじゃありません。鹿児島、垂水、福山、輝北、私の居住地鹿屋市、まだまだ広いところにいっぱい降っているのでありますから、そのことにやはりぴしっと大臣お答えいただきたいのであります。
  20. 山村新治郎

    山村国務大臣 おっしゃるのはよくわかります。農道がただ単に農業、営農のための道路だけではなくて、今生活道にもなっているということでもございますので、今の制度的に言うとなかなか難しい問題かもしれません。しかし、そのようなぐあいに農道生活道に変わってきているというような実態もございますので、これらをあわせて検討してまいりたいと思います。
  21. 上西和郎

    上西委員 大変ありがとうございました。大臣のそうしたお答えが実際行政の運用面で生かされることを心から御期待を申し上げておきたいと思います。  以上のトンネル、ビニールあるいは農道の問題等を含めて、事業費枠の拡大というのが関係市町村、あそこは村はちょっと関係ありませんけれども、関係市町からは強く出されておりますので、このことは私質問じゃなくて、率直な要望として、事業費枠を拡大し、これは何年計画じゃないのですね、降灰が今異常に続いておるこの現実の事態に対処するために思い切った事業費枠拡大で、総体的な問題、きょう私取り上げた以外の問題がございますので、ぜひそうしたことを善処をお願いしたい。  引き続きまして、軽石対策について水産庁にお尋ねをしたいと思うのであります。  錦江港、とりわけ桜島の奥の方ですね。今小里先生もお見えでありますが、姶良郡の方に向けて相当大量の軽石が噴火の都度あるいはその後の雨の関係等で大量に流出をし、そのことが漁船、漁具、漁網あるいはハマチの養殖その他に多大な被害を与えていることは篤と御承知のことと思いますが、この軽石の除去対策、これらについて水産庁は具体的にどのようなお取り組みをお考えか、まず見解をお示しいただきたいと思います。
  22. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  桜島の黒神川流域の軽石が周辺海域に流出をして養殖漁業等に障害を及ぼしておるという事情はよく承知しております。この被害に対処するため、鹿児島県庁は、最近、浮遊ごみを含む軽石の清掃事業について助成をしてもらいたいという要望を私どものところへ持ってこられております。  水産庁といたしましては、鹿児島県に対し、軽石の清掃事業の計画づくりについて指導をいたしまして、現在鹿児島県庁で具体的な事業計画を作成中でございます。私どもは事業計画が提出された段階で精査さしていただきまして、助成事業として実施できるものについて前向きに対処したいと思っております。
  23. 上西和郎

    上西委員 大変前向きのお答えをいただいてありがたいのでありますが、長官、大体その計画の提出時期の見通し等はいかがなものでしょうか。おわかりでしたらお答えいただきたいと思います。
  24. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  これは実は経過がございまして、当初鹿児島県は軽石の拡散防止施設を設置してもらいたいという御要望を持ってこられまして、そのうちいろいろ検討なさった結果、施設が大がかりになり過ぎるというような問題もあるので清掃事業の助成をしてもらいたいということで、御要望を切りかえられました。そういう事情がございますので若干おくれておりますが、私ども現在県庁から伺っておるところでは、あと一カ月以内ぐらいに事業計画書を持ってこられるであろうというお話を伺っております。
  25. 上西和郎

    上西委員 大変ありがとうございます。もし事業計画が出された時点で、いろいろと庁内での審議その他がおありと思いますが、事業計画が提出されたら一日も早くその助成が行われることを心から希望し、次に、赤水の漁港の問題について、これはお願いを込めてお尋ねしておきたいと思うのであります。  桜島町区で一番鹿児島市寄り、言うならばちょっと離れている赤水という部落があるのでありますが、錦江湾、鹿児島市の方に対面しております。ここの赤水漁港は避難港に指定をされているのでありますけれども、相次ぐ土石流、野尻川、持木川、いろいろ土石流が流れできますが、ちょうど赤水漁港にその土石流が一番流入するという現実がありまして、その土石流の流入のために避難港としての役割が非常に機能を阻害されている、漁船の出入りが難しくなって漁港としての機能も喪失している、こういう現実があるように仄聞をいたしております。  これは念のため申し上げますが、三十日の夜、私、鹿児島から帰るときに、桜島フェリーの中で赤水出身皆さん方から、たまたま、ああいいところへ来た、ぜひ赤水のあそこのことをやってほしい、もし万が一大爆発でもあってあそこから避難をすることになれば、赤水部落の方々は船が利用できない、恐らくそのときは国道二百二十四号線も途絶するであろう、こういう非常に不安感を持っておられましたので、この辺について、もし事情御判明であれば、長官、御見解をお示しいただきたいと思います。
  26. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  赤水漁港につきましては、昭和五十年度と五十一年度の二年間にわたりまして、漁港局部改良事業によりまして緊急避難施設の整備を行ったところでございます。これは緊急避難用の桟橋の整備をしたわけでございます。しかしながら、先生今御懸念のように、赤水漁港の避難港としての機能について問題があるやに伺いますので、至急調査をいたしまして、もし避難機能について十分でない点があるといたしますれば、県とも協議の上至急対応を検討したいと思っております。
  27. 上西和郎

    上西委員 長官にその善処方の早急な対応を重ねてお願いを申し上げておきたいと思います。  以上で私は桜島降灰に関する防災、軽石対策等についての質問を終わらしていただきますが、少なくとも大臣以下農林水産省の各関係皆さん方が、かつてない異常の降灰である。確かに大正三年や終戦直後の大爆発のことと内容を異にしまして、連日のように噴き上がる噴煙、その結果大変周辺住民は困っている。私、その中でもきょう農業、漁業関係を主として取り上げたのでありますが、こうした実態を改めて御認識と御理解の上、そうした御要望にこたえて、農林水産省、さらには水産庁あたりが俊敏にしてかつ迅速、その上的確な措置をそれぞれ関係方面においてお取り計らいいただきますことを心から希望し、以上で桜島降灰関係質問を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。  引き続きまして、志布志湾国家石油備蓄基地の問題について少しくお尋ねをしたいのであります。  まず最初、林野庁の方に、本計画に関する取りつけ道路の問題についてお尋ねをしたいと思います。  既に御承知のように、この国家石油備蓄基地、これはもともとは今参議院議員をなさっている金丸さんが鹿児島県知事のころ、昭和四十六年十二月の初め、志布志湾石油コンビナート、日産百万バレルをつくるということで新大隅開発計画としてこれが世に発表され、そのとき、この志布志湾、とりわけ柏原海岸を埋め立てる、こういう問題をめぐり、既に十二年有余にわたって大変な紆余曲折を経てきていることは御承知のことと思います。余りのひどい地元の反対の声などに押された結果、鹿児島県当局は第一次案を撤回し、日産三十万バレルの第二次計画に切りかえた。しかし、これも不可能だ、こういうことで最終的に新大隅開発計画という名前のもとに中身が変わって、衣こそ一緒でありますが、中身が国家石油備蓄基地になってきたこともまた御承知のことと思います。  そうしたことで、心ある関係住民の中には、率直に申し上げて、第一次案、第二次案、さらには国家石油備蓄基地の中身がどのように変わろうとも、今日本政府は柏原海岸を埋め立てることだけを目的としているのじゃないか、そういう根強い不信感があることをまず冒頭指摘をしておきたいと思います。私自身、不肖の身でありますが、この関係地域に居住しておりますので、十二年有余にわたり、ともに運動に挺身をしてきた長い体験を踏まえ、以下、まず取りつけ道路のことについてお尋ねをしたいと思うのであります。  既に環境委員会等で我が党の村山喜一代議士が質問しておりますので、余り重複はいたしませんが、まず簡潔に、この保安林の解除の問題、現に取りつけ道路のことについて林野庁には申請が来ているかどうか。申請に当たってのその許可条件、そうしたことに関する林野庁としての見解、こうしたことについて冒頭明らかにしていただきたいと思います。
  28. 角道謙一

    角道政府委員 御指摘の志布志湾の波見には、国有の防風保安林が約百七十五ヘクタールございます。これにつきましては、志布志湾の開発関係でいろいろ非公式な話はございますけれども、私どもにはまだ正式に保安林解除の申請等は来ておりませんので、具体的に参りました段階でよく実態等を精査いたしまして適正に対処したいと考えております。
  29. 上西和郎

    上西委員 それでは、長官、重ねてお尋ねしますが、環境委員会で村山代議士から代替案を含めての質問をされておりますね。これについてお答えがあった。そうしたことを含めて、もし仮にそうした申請が来たときにはその代替案を含めて慎重に御検討なさるお考えかどうか、明らかにしていただきたいと思います。
  30. 角道謙一

    角道政府委員 保安林の解除には一定の要件がございますので、仮に案が出ました場合にも、それ以外に、例えば保安林を通過しない代替道路があるかどうか、そういうことも含めてやはり適正に判定をする必要があるというふうに考えております。
  31. 上西和郎

    上西委員 ここで長官、念を押しておきたいのです。  私は何も鹿児島だから島津藩を褒めたたえるということじゃありませんけれども、少なくとも幕末における歴代の島津藩主はそれぞれの配慮をし、あの波見海岸の国有林、ごく一部民有林がございますが、クロマツ林は、私たちが伝え聞くところでは国際的に学術的にも高い評価を受けている極めてまれなクロマツ林だ。樹齢は、長いのは百三十年を超えておりますね。そうしたものを、もし仮に柏原海岸を埋め立てるという大きな目的は何かわかりませんが、そのことのためにあそこを犠牲にされては困る。とりわけあそこの柏原地区では、地元で、地域で組合をつくりまして清掃に当たり、そのクロマツ林の防護といいますか、そういうことにずっと努力を続けてきているのですね。ひとしおの愛着を持たれている。国有林でありますが、地域方々には、おれたちのクロマツ林だ、こういう極めて強い感情が残っている。しかも、台風の常襲地帯でございますから、あのクロマツ林のおかげで相当大きな防風林あるいは防潮林、文字どおり保安林の役割を果たしておる。こういう現実を思いますときに、今のところでは保安林のことについて申請もない、出てきたら改めて代替案その他を含めて大所高所から基本的に検討したい、こういうことでございますが、念を押してよろしゅうございますか。
  32. 角道謙一

    角道政府委員 御指摘の松林につきましては、私の承知しておりますのは、五十九年から百十四年くらいの林齢だというように伺っております。蓄積も約一ヘクタール二百立米というふうに相当高いものであることも承知いたしておりますので、そういうことも踏まえまして、また公共目的等もございましょうし、そういう石油備蓄基地に伴います道路がこの保安林にどのような影響を与えるかということは、大所高所からよく判定したいと考えております。
  33. 上西和郎

    上西委員 わかりました。  それでは、運輸省がお見えだと思いますので、港湾局の方にここでちょっとお尋ねしておきたいのです。  ただいま長官からお話があったように、まだ取りつけ道路に関する申請すら出ていない、出された段階で保安林の問題を含めて幅広く検討したい、今こういうお答えが林野庁からあったのでありますが、この取りつけ道路を含めての埋め立てに関する工事の施行区域が設定されているのではないか、そういうことで環境庁にはアセスの審査要請が出ているのではないか、このように考えますが、取りつけ道路に関する状況が今林野庁からお話があったような現状であっても、なおかつ運輸省としてはこの埋め立ての問題について大臣に免許をされる、許認可をきれるというお考えなのかどうか、その辺についてちょっとお尋ねをしたいと思います。
  34. 小池公隆

    ○小池説明員 お答えいたします。  ただいま私どもの方で、御指摘の志布志湾関係、埋立法に基づきます認可手続を進めております。環境庁への意見照会等もその一部でございます。そういう中で、先生指摘のように保安林の解除の問題、これが一つございます。一応これは法体系は別でございまして、別のものと言えば別のものでございます。現在地元の方で営林署その他と、正式の申請はしておりませんが、事前の打ち合わせばしていると聞いております。運輸省といたしましては、その見通しなりそういった諸情勢を見きわめまして、そして運輸省として判断をする、こういうことになろうかと存じます。
  35. 上西和郎

    上西委員 それじゃ、課長、念を押しておきますが、取りつけ道路に関する明確な見通しが立たない以上、埋め立ての許可ということについては結論は出しがたい、出せない、こういう運輸省の見解と受けとめて構いませんね。
  36. 小池公隆

    ○小池説明員 お答えいたします。  先ほどちょっと申し上げましたように、一応法体系は別、こういうことになっております。それからまた、私、正確には存じませんが、保安林の解除の方の手続といたしまして、免許が前提、こういうぐあいにもお聞きしております。そういう中でございますから、仮定の問題で解除の見通しが立つ立たないということはちょっとあれですが、そういう情勢を見きわめまして、そしてその中で判断させていただきたい、こう存ずるものでございます。
  37. 上西和郎

    上西委員 鶏が先か卵が先か、こういうことになるかと思いますが、私たちのようにあの大隅半島に住み、とりわけ波見の海岸でとれたちりめんじゃこその他を常用食としてやってきた人間としては、ひとしおの愛着はそこに持っておりますから、私たちは基本的に埋め立てばしていただきたくないという強い願望があることはここで率直に申し上げておきたいと思う。そうした観点で、しかも国際的な評価も高いと伝え聞くあのクロマツ林を無残にも切り刻んでいただきたくない。そしてそのことは、一歩誤れば台風その他のときに多大の被害を地元に及ぼすでありましょう。  先般、熊本県のあの五木の大災害も、調査団方々は林道その他じゃないとおっしゃっているようでありますが、だれが見たってむやみやたらに林道を開発したから異常な災害になったのじゃないかと思うのが国民的常識じゃないでしょうか。自然は破壊をすれば取り返しがつきません。このことはもちろん賢明な皆さん方、よくおわかりと思いますが、そうした地元民の気持ちがあり、かつ百年以上の長きにわたって守ってきているこの事実を踏まえて、林野庁も慎重に対応していただきたい、そしてそうした取りつけ道路の問題について明確な結論が出るまでは、法体系がどうであろうと運輸省もやはり慎重に対応していただきたい、このことを重ねてお願い申し上げておきたいと思います。  以上で取りつけ道路の問題は終わります。  次は、水産庁関係になりますが、東串良漁協と具体的に申し上げますけれども、ここの問題について少しくお尋ねをしたいのであります。  これは、長官、あなたの方では既に御承知と思いますが、鹿島県議会で相当の議論をやっているわけですね。いわゆる志布志湾波見港の公有水面埋め立てに関連しての東串良町漁協総会の有効性いかん、こういうことでありますが、この県議会等での議論、県当局のとっている態度、これらを含めて水産庁としてはいかなる見解をお持ちか、まずそのことについて承りたいと思います。
  38. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  まず、本年六月開催の鹿児島県議会におきまして、東串良漁協において、水協法に定める所定の資格を有しない者が多数正組合員として認められており、これら無資格者が参加して行われた昨年十月の漁業権放棄の総会決議は無効ではないかという御議論が行われたということについては、私どもも承知をいたしております。  それで、私どもとして鹿児島県からも早速事情聴取をいたしました。その事情聴取をいたしましたところによりますと、東串良漁協におきましては、県の指導に基づいて組合員の代表二十名から成る資格審査委員会を設け、昭和五十六年度以降毎年一回審査委員会を開催してきておりまして、五十八年度については四月二十三日に資格審査委員会、五月十九日に理事会を開いて各組合員の資格審査を行う、そういう手順を踏んでおりますので、県としては同漁協の組合員資格について特に問題になるようなことはないというふうに判断をしている、そういう説明を受けております。私どもといたしましては、今のところ県のそういう説明を信用しておるわけでございます。
  39. 上西和郎

    上西委員 各省庁が地方自治体を信用せずして行政は成立し得ないと思いますから、長官の今の御見解はそれなりに理解できるのです。私、この場で余り細かいことは申し上げたくありません。ただ少なくとも、先ほどから申し上げますように、十二年間に第一次試案、第二次試案、かつ現在の国家石油備蓄基地と計画の中身が大きく変貌を遂げつつも、終始一貫変わらないのは、あの白砂青松の地とあえて申し上げますが、志布志湾の中の柏原海岸を埋め立てる、これだけは不動の方針なんです。あとは全部変わっている。そこに地元住民を含めて大隅半島関係地域方々のいわゆる根強い不信感と申し上げましょうか、そういうものが残っているわけです。  しかも、鹿児島県当局のやっていることを私はここでとやかく申し上げませんが、巨額と言ってよい補償金の金額が提示をされ、漁協はそれを多数決で承認をし漁業権の放棄をやった。そうすると、やはり現ナマが動くわけですから、現実にはまだ渡っておりませんけれども、人間、札束には弱い。これはいろいろと出てまいります。先ほど申し上げました他の省で動いたのも、結果的にはお金でしょう。国公立大学で教授の地位をめぐって巨額の金が動く社会ですよ。そうした中で、漁民の皆さん方が生まれてからまだ見たこともないような巨額の金を積まれたら、やはりそのお金が欲しい。どうも補償金が出るぞというのは、実は四十六年の案の発表のときからあったのです。ざっくばらんに言って、一人当たり四千万だとか一戸当たり四千万だとかという金額が乱れ飛んだのです。それで、私たちがこれはやはり反対せねばいかぬと言うと、まじめな漁業の方々が、漁業のお先は真っ暗だ、私は今夫婦でやっているからうちは八千万円もらえるんだからやぼな反対してくれるなということを、随分と面と向かって言われたものであります。  そうしてお金が十二年間ついて回っていよいよ具体的に各漁協にその金額が明示される、こういうのが現実の姿でありますが、これらの漁業補償金の受給の可能性をめぐって、やはり一部の方々がこの際おれにも資格をと動かれたであろうということは想像にかたくないと私は思っております。それは何も悪いことだとかなんとかじゃなくて、人間の心理の必然性ではないでしょうか。そういう結果が、今長官がおっしゃったように、確かに二十名から成る資格審査委員会をつくっておやりになっているかもしれません。しかし、中には、出漁日数ゼロという方が、奥さん方がほとんどでありますが、入っているとか、あるいは明らかにイワシの煮干しと同じようにちりめんじゃこの加工業に従事している方々も入っているではないか、こういう素朴な疑問が鹿児島県議会で議論されるのもまたむべなるかなと思っております。  そうした意味合いで、確かに長官は県から出てきたそうしたことについて信頼するとおっしゃるのはわかりますけれども、あなたのことです、また、優秀な水産庁の方々が十二分にその内容は御把握と思いますので、若干のおか回りの問題、煮干しの加工の問題、出漁日数ゼロ、こうした問題等についてあと一歩突っ込んで水産庁としての見解をお示しいただきたいと思うのです。
  40. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  先生ただいま御指摘のおか回りの問題でございますが、水協法上定められております漁業協同組合の正組合員資格そのものは、法律をそのまま読みますと、漁業を営む者及び漁業を営む者のために水産動植物の採捕もしくは養殖の事業に従事する者ということになっておるわけでありまして、あと住所、漁業日数の要件を満たすということでございます。これにつきましては、漁業者に雇われ、あるいは漁業者の家族で漁獲物の荷揚げあるいは漁獲物の処理、漁労作業の準備たる網の仕立てとか後始末など漁労作業と直接くっついて密接不可分の陸工作業に従事する者は漁業従事日数としてカウントするということにつきましては、従来から水産庁としてもそういう方針で指導してまいってきております。余談でございますが、海区漁業調整委員会委員の選挙のときなどもそういうことでやっておるわけでございまして、おか回りの者が組合員資格が認められておるということ自体は元来当然あってしかるべきことで、現実に何の太郎兵衛さんがそれに該当するかどうかということについて私がお答えする立場にはございませんが、一般論として申しますれば、そういう者が組合員の中に含まれ得るということは、水産庁はかねてからそういう解釈で水協法の指導に当たっておりましたので、その点自体は異とするに足りないことではないかと思っております。
  41. 上西和郎

    上西委員 長官のお答え、就任直後で大変御勉強なさっていることには敬服いたしますが、改めて私はちょっと整理をして、二つほど念を押しておきたいのであります。  それは、あの地区、柏原ではございませんが、その隣の大崎町の方なんかには、明治の末、四国からバッチ網という漁法を持ち込んで新しくおいでになって、あそこに永住されている方もたくさんいらっしゃるのですが、漁労部門に従事をしていない主婦、今ちょっとお話がありましたが、いわゆるしらす干しなんかを専門に、そうした方々が正組合員になっていいのかという素朴な疑問が県議会でやられている。そうした方々は、水協法第十八条第一項第一号に言ういわゆる漁民と言えるのかどうかという問題ですね。それからもう一つは、東串良町のそういった定款その他で、もちろん水協法に準拠しているのでありますが、九十日に定りない者までを正組合員としていいのかどうか、こういうことがあるわけです。  なぜ私がこのことを念を押すかと申し上げますと、漁業補償の額が明示された。もちろんこれはまだ予算も計上されておりませんし、具体的に支給されたわけでもありません。この漁業補償金が明示されたと同時に、柏原地区にはパチンコ屋だけでも四軒できた。そして、お金が入るからという形でみんな暇なときにはパチンコ屋に入り浸る。四六時中と言えばオーバーですけれども、一日じゅう入っている。あるいは、去年の暮れあたりは地元の銀行の支店長さんあたりが率先して、やめた方々は補償金が入るからお金が要るならお貸ししましようとどんどん貸してしまった。そしてみんなが、悪い表現で言いますとあぶく銭的な一獲千金的な感覚で、結果としてまだ補償金も出ませんから逆に生活苦にあえぐ。補償金のために生活を破綻させているという現実の面が今続発をしているのです。  これは何も柏原だけではありません。かつて鹿島コンビナートがそうでした。むつ小川原でも同じようなことが起きている。金が人間をむしばんでいる。こういう現実を思うときに、こうした資格問題についても、確かに今おっしゃったこともあるでしょうが、あと一歩突っ込んで、水産庁としては厳正な線引きをやり、そのことによっていたずらなる漁業補償金の悲劇を最小限に食いとめていくということも一つの任務ではないか、このように考えますので、以上二つのことについて改めてまた御見解をいただきたいと思います。
  42. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 まず、先ほど一般論としてお答えいたしましたように、漁業者に雇われたりあるいは漁業者の家族で漁労作業と密接不可分の陸工作業に従事する者は漁業従事者であるというふうに解釈をして指導しておったということは、一般論としてさようでございます。  それで、今先生指摘のバッチ網漁業の実態でございますが、私どもの承知しておりますところでは、この形態の漁業の実態といたしまして、湯通し、乾燥処理、出荷という段階が漁業者によって行われておる。これに従事する者がそのほかに漁獲物の荷揚げとか網の手入れということもやつている。そういう実態の中から、そういう作業に従事する方も先ほど申し上げました一般論を当てはめて漁業従事者に該当するというふうに県としては判断しておられると伺っておるわけであります。私どもとしては、かねてからおか回りについて水協法上の解釈問題として一般論として行っておりました指導を、鹿児島県庁がバッチ網漁業の実態についてそういうふうに当てはめて漁業従事者として御判断なさっておるということについては、それ自体としては別におかしいことではないと思っておるわけでございます。  それで、ただいま先生指摘のように金が飛び回っておるために漁民の心がすさんでということは、確かに私どもとしても心配すべきことでございます。ですから、漁協の組合員になりたいと思うに至った動機が何であるかということについて、先生の御懸念について私ども全然争っているわけではないわけでございますが、動機はさておいて、漁協の組合員になったことが水協法上の解釈問題として妥当なことであるかどうかという点につきましては、県庁の御判断というのは、私ども水産庁がかねてよりお示ししておりました一般論の個別具体的ケースヘの適用であるという意味でおかしくはないと私どもは思っておるということを申し上げておるわけでございます。
  43. 上西和郎

    上西委員 では、一つだけ具体的にお尋ねしますが、実は東串良町は組合員の資格審査基準で九十日以上ということを明記しているのです。しかし、九十日未満であっても一定の漁業所得があれば資格と認める、こういうことが実はこの資格審査基準の中にありまして、これらが県議会で若干議論されているわけですが、問題は、それを百歩譲って認めたと仮定しましても、この漁業所得の、所得のとり方について、ちりめんじゃこの生の値段なのか、しらす干しにしてしまってからの価格なのかということは若干議論の余地があるのでございまして、その辺について水産庁としての見解がお示し得るならばぜひお示しをいただきたい、こういうことであります。
  44. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 私ども、従来から日数の計算の仕方につきまして、ある特定の一年間なら一年間をとりましてその日数で機械的にこの人はアウト、この人はセーフというふうに判断をするというのが、それでやってよろしい場合が大部分だと思いますが、そうとばかりはいきにくいケースがあるだろうということを考えておりまして、具体的に私どもがどういう言い回し方をしておるかということをちょっと読ましていただきますと、これはあるところからの照会に対する当時の漁政部長の回答でございますが、「貴照会に示されているように単に機械的にその審査時点からいつまでの期間について審査した結果を判断の唯一の基準とするというものではなく、現在及び将来におけるその意思及び能力、その他客観的状況をも勘案し、その者が何日程度漁業を営み又はこれに従事するような者であるかを総合的に判断すべきものと解する。」これはもう今から二十年以上も前に漁政部長名で出した回答でございますけれども、従来からそういう指導をしておったわけでございまして、そういう意味では、ここに申しております。その他客観的状況をも勘案して総合的に判断する、その際の勘案すべき客観的状況、総合的判断の仕方というのは、これは現地現地によってそれぞれの地域の漁業実態によるものでございましょうから、私どもとしては、その中に今先生指摘のような要素が勘案要素として入っておっても、それが勘案要素として入っておるのはおかしいというふうに申し上げるべきものではないと思っております。
  45. 上西和郎

    上西委員 その見解はそれなりに受けとめます。  ただ、私は申し上げたいのは、その東串良町漁協が今やっていることが是か非かじゃなくて、十二年前からお金の話がもう最初から話題になっている。そうすると、先ほど質問の冒頭申し上げたように、人間の心理として、おれも私も、おれも漁船を持っているからこの際漁協の、となるのが、これはとどめることはできないと思います。ただ、そのことを生かしていこう、そして少しでもみんなで分けていこう、補償金を余計取ろうなんということで、資格審査基準を曲げたり、漁協の本当の運営を、水協法などをねじ曲げてでも解釈をする、そういうようなことが実態として起こり得ることはやはり私たちの立場では食いとめていくのが至当ではなかろうか。法が正しく運営される、このことは行政の根幹だと思います。  そうした意味合いで、私、少しく具体的な質問を申し上げましたが、今後とも水産庁が県当局あたりと十二分に連携をとられながら、仮にこの環境アセスなんかが認められてこれが実用に移ったときに、全く思いもよらぬところで不祥事が発生することがないように、監督官庁としても十二分の御配慮、厳正な指導、そうしたことを重ねてお願いを申し上げておきたいと思います。
  46. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  私どもといたしましては、水協法で定められました組合員資格の問題につきましては、従来から一貫した解釈で一貫した指導をしてきたつもりでございまして、今後ともそれが何らか他の事情によって歪曲されることのないように、引き続き従来の指導の路線を継続してまいりたいと思っておりますし、その点は県におかれましてもくれぐれも思い違いのないように重ねてよく指導していただきたいと思っております。
  47. 上西和郎

    上西委員 では、資格問題は以上で終わりまして、最後に、長官、私、三月二十七日の本委員会で渡邉前長官に、この柏原地区海岸の埋め立て問題について、少なくとも私たちの関知する限り、沿岸漁業の数少ない残された宝庫の一つだと理解をしております、とりわけ二百海里問題で日本の漁業が今大変な窮地に立っているときに、この柏原海岸は、むやみやたらに国家石油備蓄基地などのために埋め立てることは忍びない、基本的に水産行政に携わる者としてどうお考えかとお尋ねしましたが、新しく長官に御就任なさった佐野さん、あなたにもこのことについて基本的な見解をお示しいただきたいと思います。
  48. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  先生指摘のように、志布志湾におきましては、アサリの共同漁業権とかまき網によるカタクチイワシとかシラス漁を中心にした漁業が営まれております、大変立派な水域であるということは私もよく説明を受けております。こういう場所でございますから、石油備蓄計画の推進のためとはいえ、犠牲になるということについては私も大変心が痛むわけでございます。殊に、先生指摘のように、二百海里体制下において我が国の沿岸漁場の重要性というのは非常に高まっておるわけでございます。私自身、三年前まで海洋漁業部長として諸外国との漁業交渉に当たりまして、我が国の主権下にある水域がいかに大事であるかということを痛感しておることについては人後に落ちないつもりでございます。  翻って、我が国のように石油資源のない国では、何と申しましても油に大きく依存をしております漁業の立場から見て、石油の備蓄という問題も軽々に取り扱えない大変重要な課題であるということもまた否めない事実でございまして、私どもとしては、その二つの対立する事情の中でどうやって適宜適切な調和点を見出していくべきかということであろうというふうに思っております。  私どもは、現在、鹿児島県当局と関係の漁協との間でこの湾内の漁業振興をどのように図っていくかということについてせっかく御相談中であるというふうに伺っておりますので、水産庁といたしましても、沿岸漁場の生産力の増大を図るために、魚礁の設置とか養殖場の整備とか、いろいろな事業を行っておりますので、そういう事業を使いまして、県と漁協との間で御相談になった湾内の漁業の振興のプログラムについてできるだけ前向きに対応させていただきたいというふうに思っておる次第でございます。
  49. 上西和郎

    上西委員 最後に、私、大臣に一言お願いを申し上げて、質問を終わらせていただきます。  ただいま長官がおっしゃったように、胸痛む思いがするような、大変大事な沿岸漁業の宝庫です。今日本政府は、石油を百日分備蓄しようと一生懸命だ。お米はどうですか。本委員会の所管事項であるお米は、三日分、四日分で論争でしょう。私、いつも言うのですが、石油を飲んでは命は長らえません。だから、米が三、四日分しか備蓄がない、こういう中で、ごり押しの百日の国家石油備蓄基地建設のためにかけがえのない沿岸漁業の宝庫をむざむざとつぶすことのないように、国家百年の計を十二分に御配慮をいただきましてこの問題に対処されますよう心から希望を申し上げ、終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  50. 阿部文男

    阿部委員長 新村源雄君。
  51. 新村源雄

    ○新村(源)委員 きょうは、主として北海道の農業問題を中心にして質問をしてまいりたいと思います。  御案内のように、北海道は総耕地面積が百十五万七千ヘクタール、日本の総農耕地面積の実に二〇%を占めている、そういう地帯でございます。しかも積雪寒冷地という気象的な条件、そういうものを持ちながら農業経営を行っておりますだけに、農政の方向によって非常に手痛い打撃を受ける、こういう体質を持っておるわけでございます。  きょうは主として畑作問題について御質問をしていきたいと思いますが、畑作の面積を見ましても、飼料面積を含めて八十九万二千九百ヘクタール、飼料面積を除くと四十一万四千九百ヘクタール、全国の畑作面積から見ますと、これも実に三分の一を占めておるわけでございます。また農家戸数の状態を見ましても、総戸数で十一万四千八百戸、そのうち専業農家が四万七千三百八十戸で、全体の四一・二七%を占めております。一種兼業は三万九千三百七十戸で三四・二九%、二種兼業は二万八千五十戸で二四・四三%、全国的に見ますと二種兼業が八〇%近いという中で、こういうように北海道は、それとは逆に、専業、一種兼業を含めて七五%の比率を持っておるわけでございます。  そういう中でございますから、今日のいわゆる水田の減反にいたしましても、二十四万ヘクタールのうち十万ヘクタールも転作をしなければならぬ。その転作が直ちに畑作のいろいろな面に影響してくる。そういうように、農業内部でもいろいろな相関関係を持っておるわけでございます。こういう点について、畑作振興等を進めていく上において、水田の十万ヘクタールもの面積の動きというのはどういう影響をもたらしているかということを、農林水産省ではどういうようにお考えになっておりますか。
  52. 関谷俊作

    ○関谷(俊)政府委員 御質問にございましたように、北海道の場合、転作目標率で四四形ぐらいという非常に高い転作をお願いしている関係で、そういう転作によってつくられます畑作物が、従来の畑作地帯でつくられます畑作物との関係で確かに大変問題を生じるわけでございます。例えばてん菜でございますとか雑豆類その他の畑作物につきましては、需給動向に応じて、また転作も含めた新しい作付体系、そういうものを定着させる、こういう観点に立ちまして、転作分も含めた畑作物あるいは畑作経営のいわば安定、計画的な生産を指導していきたい、かように考えております。
  53. 新村源雄

    ○新村(源)委員 畑作というのは水田と違いまして、何といいましても適正な輪作体系の上に初めて畑作経営というのは成り立つわけでございまして、飼料畑それから野菜等を除いて見ましても、大体輪作体系というのは四分割にして四年で循環していく、こういうことを一つの基本としておるわけでございます。  昭和五十八年度の状況を見てまいりますと、てん菜、バレイショそれから豆類、麦類、こういう四大作物が大体二五%、これを中心にしてほぼ転作に好ましいような状況がつくり上げられておるわけです。ところが、残念ながら、昭和五十九年度においては、豆類の面積、小豆とか大正金時とかというのは、麦類の雪腐れといいますけれども、これ等によりまして若干反別が伸びてきている、こういう現況に今年置かれておるわけでございます。  そこで、麦、バレイショ、てん菜、これはそれぞれの価格支持制度をもって一応の安定の方向が見出せるわけですが、豆類の場合は過去の歴史から見ましても非常に大きな振れがある。いわゆる豊作貧乏といいますか、とれ過ぎると暴落をするということで、豆類に限ってはまさに豊作貧乏を地でいくような、そういう歴史を繰り返してきております。これに対応して、北海道の農業団体等ではかつては共同計算販売という制度をみずから、もちろん道や国のそれぞれの指導を仰ぎながらやっているわけですが、そういうことで豆類の価格の安定のためにいろいろな施策を講じながら努力をしてきておるわけです。現在も豆類の基金協会というものをつくって、価格的に、基金によって生産者に価格の補てんをしよう、こういう機能等も持っておりますけれども、しかしこれとても到底今日の価格の上下落に対応できない、こういう状況にございます。  その中で一番問題になるのは、いわゆる穀物商品取引所に小豆とかが上場されているわけです。この穀物取引所の価格というのはまさに生産者も消費者もそういうものとは関係なく、そのときの、今在庫がどうである、ことしの作況はどうだということで、生産や消費のことを度外視をしていわゆる人気でもって乱高下をする。こういうことが豆類の価格の維持の上で非常に大きな問題になっておるわけですが、この点について農林水産省としてはどうお考えになりますか。
  54. 関谷俊作

    ○関谷(俊)政府委員 まず、お尋ねの畑作の動向の中の豆類等の位置づけでございますが、今お尋ねの中にございました、五十八年で豆類、てん菜、バレイショ、小麦、この四大作物で四分の一ずつぐらいという一種の均衡が実現しているわけでございますが、実はこの形になったのはこの二、三年来のことでございまして、従来もう少し豆類の比率が高くて小麦の方の比率が低いということで、現状は作付体系で見ますと、四分の一すっというのはだんだん安定の方向に向かってきている、かように考えております。  なお、今年五十九年産の豆類作付面積につきましては、一部にはお尋ねのございましたような作付の伸びているものもございますが、北海道トータルとしては前年と同じぐらいの約七万九百ヘクタールぐらいという水準でございます。ただ、米も同じでございますが、非常に天候等に恵まれまして大変作柄がいいのではないかということで、この需給安定、価格安定の問題等につきましては、私どもこれから十分注意してまいりたい、かように考えております。  なお、お尋ねのございました商品取引所等の機能につきましては、御承知のように、商品取引所という組織の中で需要面、生産面各般の要因がそこで集中的に取引をされますので、そういう意味で、システムとしては安定した、あるいは将来も見込んだ価格形成が行われるようになっているわけでございまして、お尋ねがございましたような価格の不当な変動、そういう点については従来からも行政当局としましても十分指導を行っているということで、御指摘のございましたような弊害のないような、むしろ取引所のいい意味での機能を発揮する、こういう指導を行っている次第でございます。
  55. 新村源雄

    ○新村(源)委員 農林水産省の立場として、今局長がおっしゃったような価格安定のために御努力をされているということはわかるわけですが、しかし最近、例えば小豆が六月には三万九千円だったわけです。ところが、今日では二万二、三千円、いわゆる大暴落をしておるわけです。この現象が一体どうなのかという疑問を持つわけですよ。  そこで、私は、こういう穀物取引所というのは、今局長おっしゃったように長期にわたって一つの役割を果たしているのだということがあると思います。あると思いますけれども、私の長い体験から見ましても、そういう利益の部分よりも、消費者の立場にとっても生産者の立場にとってももっともっと不利益を与えることの方が多い、このように思っておりますし、それからまた、食糧が投機の材料になるということについては、物価の安定という見地から見て、こういうことを近代国家としていつまでも認めておいていいのかどうなのか。私は、こういう食糧というのは穀物商品取引所に上場しない、やはりこういう措置をとるべきだと思うのですが、この点についてはどうですか。
  56. 関谷俊作

    ○関谷(俊)政府委員 お尋ねございましたように、小豆の相場は今当限で二万二千円くらいになっておりまして、確かにこのしばらくの間に急速な下落をしたわけでございます。これも、下落の足取りの問題はございますけれども、全体として見ますと、やはりことしの作柄等を反映してのいわば先を見込んだ取引というふうに考えられますが、一般論としてのこういう穀物類も含めた農産物の先物の取引につきましては、そういう意味でいわば先も含めました需要、供給両方の要因を関係の専門的な業者がよく見込みました上で集中的に取引をするということでございます。  これは戦前の米等の例を引くまでもなく、農産物のいわば価格形成の場合あるいは取引の場合にはどうしてもこういうことが自然発生的にも出てまいりますので、それを取引所というシステムの中で、御指摘のありましたような弊害のないように、取引としても安定し、また相場が不当に需給実勢を離れて変動する場合には、それなりの抑制策というか、市場の安定策を講じる、こういうことでやっておる次第でございまして、一般論としまして、農産物を商品取引というか先物取引の対象にすることが悪いということはないわけで、むしろこういうことで、弊害のないようないい意味での先物取引の機能発揮ということを我々としては行うべきではなかろうかと考えております。
  57. 新村源雄

    ○新村(源)委員 これがもし食管法がなければ、米麦も当然こういう方向をたどるわけです。また、かつてはそういうことだったわけです。ですから、ことしのようにもしも米が足りなくなってきたということになったら、米が大暴騰をしたと思うのですよ。そして、恐らくそのことによって米騒動に類するようなことが起きるような情勢だつたわけです。それが食管法という法律によってぴたっとこれを抑えた。みんな安心をしてそういう買い急ぎをしない。主食と主食でない一般食料品という差はありますけれども、私はやはりそれと同じような性格を持っている、こういうように見ざるを得ないわけです。  それから、僕は生産農民ですから一番身にこたえてわかっているのは、例えば私の生産した小豆が一俵一万円ぐらいにしか売れないときに、それでは一体店頭に並んでいる小豆の値段はどうかということで計算をしますと、三万五千円も四万円もしているわけですね。そうなんですよ。ですから、いわゆる投機によって動いてくる建て値というのは全く生産者と消費者というのを無視した価格を形成している。全体であるとは言いませんよ。全体であるとは言いませんけれども、そういう価格が形成されているように思えてならないのですが、私はこれは今即座にということは言いませんが、長期にわたってこういう食料品を投機の材料にするということについては真剣に取り組んでもらって、近代国家としてのそういうスタイルをこの点から確立をしてもらいたい、私はこういうように思うのですが、大臣、どうでございますか。
  58. 山村新治郎

    山村国務大臣 商品取引は今先生言われるような弊害もあるかもしれませんが、また一方におきましては、例えば製あん業者にしますと大きな保険にもなるわけでございます。ここらの弊害等はできるだけ出さないようにしながら一ひとついい面でこれを指導してまいりたいというぐあいに考えます。
  59. 新村源雄

    ○新村(源)委員 この問題はかなり大きな問題でございますから、今直ちにここで結論というわけにまいりませんが、しかし、大臣、そんなことでいろいろ功罪をざっと分析していただいて、どうあるべきかという方向を御検討いただきたい、こういうように要請を申し上げておきます。  次に、今まで国内で足りない場合には雑豆はIQ制度、いわゆる輸入割り当て制度によって豆類の輸入を認めておったわけです。そして、大体国内の需給のバランスをとってくる、こういうことだったわけですが、これは去年ですか、いわゆる日米貿易摩擦解消の一環として、年間十二万トン、五千五百万ドル、これを最低として、もう国内で余ろうが何しようが入れる、こういう措置をとられたわけですね。これが国内で幸いにして豊作等でかなりの量が出回ってきたときに、これは既にもう過剰在庫としてそこに位置づけされる、こういう性格を持っておりますから、これの影響についてどうお考えになりますか。
  60. 関谷俊作

    ○関谷(俊)政府委員 ただいま挙げられました日米交渉の結果、四月二十七日の経済対策閣僚会議で決定いたしました五十九、六十年度十二万トンまたは五千五百万ドルを低位輸入枠にする、一番最低輸入枠にする、こういうことでございますが、これにつきましては、過去の実績等を見ますと、確かに五十七年産のような非常にできのいい国内生産量の多いとき、あるいはその前二年間のいわばその半分ぐらいになりますような生産量、これは変動がございまして、従来の輸入割り当てのやり方というのは、そういう国内の生産状況も見ながら全体として雑豆類の需給安定を図っていく等でやってまいりまして、そのいわば従来の運用結果を見まして、言ってみればこの程度の最低のラインは全体の需給の中で見込むことが可能であるし、また国内物の価格安定の上でも弊害を生じることはない。需給安定、価格安定の両面から考えて、この程度は最低として十分可能なラインであるというものを設定いたしておりまして、当面その第一年度であります今年度につきましても、このラインの中でことしの作柄あるいはことしの生産量の状況などを見ながら慎重な運用をしてまいる考えでございまして、この現在の割り当ての方針というものは、国内の需給あるいは全体として見ました豆類の価格安定から見ればある意味では最低限度必要なものであろう、かように考えております。
  61. 新村源雄

    ○新村(源)委員 そういうお答えよりできないと思うのですが、しかし、私どもの過去の経験から見れば非常に重荷になる、どうも明らかにそういうように思えてならないのですよ。  それで、今局長さん、慎重な方向で対処する、こうおつしゃったのですが、慎重な方向というのは、まだ作況は決まっておりませんけれども、仮に決まって、需給推算というのは大体こういう方向になる、こういうようなめどが出た場合に、この十二万トンというものを抑制することができますか。
  62. 関谷俊作

    ○関谷(俊)政府委員 今年度の上期に既に金額にして三千六百八十万ドルの割り当てをしておりまして、これが数字的にどのくらい入ってくるか、こういう状況、それからことしの作況というものも見ながら、最終的にもう一回、五十九年度下期の割り当ての段階でお尋ねがございましたような価格安定の面でも心配な事態が起きないように対処してまいりたいというふうに考えております。
  63. 新村源雄

    ○新村(源)委員 そうすると、局長さん、上期で三千六百八十万ドルの割り当てを一遍してしまったということだが、五千五百万ドルの枠に対して残っている分については、これは考慮できる余地がある、こういうように理解してよろしゅうございますか。
  64. 関谷俊作

    ○関谷(俊)政府委員 経済対策閣僚会議で決めましたラインは、五千五百万ドルまたは十二万トンという数量の言ってみればいずれかを満足するというのが最低輸入枠の考え方でございます。今まで割り当てておりますのは、三千六百八十万ドルが上期の割り当てでございますが、これに見合う数量がどのくらい出てまいりますかということで、数量、金額の両方を見ながらやりますので、単純に五千五百万ドルまで必ずやるというものでもございません。いずれかのラインを満たすということが最低のラインでありますので、これからの生産の状況にもよるわけでございますが、この最低輸入ラインを満たしつつ、かつ弊害のないような数量で下期の割り当てをするということを考えております。
  65. 新村源雄

    ○新村(源)委員 局長さん上手におっしゃっていますから、なんですが、端的に言えば五千五百ドルか十二万トンは入れなければならない、こういうことでしょう。どうですか。
  66. 関谷俊作

    ○関谷(俊)政府委員 この前の経済対策閣僚会議で決めました趣旨はそういうことでございます。
  67. 新村源雄

    ○新村(源)委員 そこで、これはもう対外的にそういう方向で決定されたことだと思うのですが、しかし、対内的な問題は、これはやはり農林水産省中心になって価格安定の方向をいろいろな方法を講じながらやっていただかなければならぬと思うのですよ。それはそれとしてもうやむを得ないんだということであれば、それがもしできるということであればそれで調整できますが、どうしてもできないんだということであれば、これはそういう決定に対するいわゆる政府の責任というものは、私は国内の生産者に対して責任を持たなければならぬと思うのですが、そういう点についてはどうですか。
  68. 関谷俊作

    ○関谷(俊)政府委員 この十二万トンまたは五千五百万ドルという線、これが先ほど申し上げましたように、従来の傾向から見ますとこのラインは十分こなし得るし、また国内需給、価格安定上、むしろこの最低ラインは必要であるということで設定しておりますので、これによりまして生産者方面にいわば大変な御迷惑をかけるということはないというふうに我々は考えております。そういう意味で、もちろん具体的な下期契約の設定につきましては、どの辺の幅で設定するかということについて十分ことしの生産状況も考えながら、心配のないようにやっていきたいというのが今現在の考えでございます。
  69. 新村源雄

    ○新村(源)委員 冒頭に申し上げましたように、後でも簡単に触れようと思っておりますが、畑作農家の負債の出てくる一番の原因は、麦の価格は一応安定している、てん菜も安定している、ビートも安定している、しかし豆類だけはそういうことで物すごい乱高下をするわけですね。とれないときはまさに凶作、とれたときでもいわゆる豊作貧乏ということで、しわ寄せが一番そこにいっているわけですよ。  ですから、この問題についても、今年もまだ八月に入ったばかりでわかりませんが、もし非常に異常な過剰在庫ができるというような見通し等が立ったならば、これは当然北海道の農業団体は今までもこの問題にはまさに——僕も農協の組合長を二十年ほどやっていましたから、これに対して苦労した思い出が今でもしみ込んでおるのですよ。だから、これに対して、ひとつ大臣、長官も含めて、農業団体等の要望について十分相談に乗ってやっていただいて、価格安定の方策に全力を挙げて取り組んでいただきたい、こういうように大臣にお願いしたいのですが、どうですか。
  70. 山村新治郎

    山村国務大臣 農林水産省としては我が国の農業を守っていくというのが基本姿勢でございますので、各方面とも十分相談いたしまして、農林水産省としてできることはできるだけ手を打っていきたいというぐあいに考えます。
  71. 新村源雄

    ○新村(源)委員 それから、これに付随しまして、先ほども申し上げましたが、北海道の減反面積が約十万ヘクタール、こういうものがありまして、北海道の水稲、米というのはまずいというふうなことが定評的に言われておりますが、しかし、私どもが消費者団体等を回ると必ずしもそうおっしゃらないのですよ。保管の状態がよければ決してまずくない、こういうように言われているので、やはり専業水田農業として十分安定した経営ができる、いわゆる北海道の水田が大幅に耕作ができるように、そういう安定した方向をぜひ見出してもらいたい。そのことが即畑作経営の安定にもつながっていく、北海道の農業全体につながっていく、こういうことで、明年度以降の水田減反については十分な配慮をいただきたいというように強く要請を申し上げて、次に移っていきたいと思います。  次に、バレイショあるいはてん菜に関連をしてでございますが、北海道のバレイショは御案内のように約七万ヘクタール前後の作付が行われております。これの主たる流通というのは、食用それからでん粉でございます。北海道の寒冷地畑作農業から、バレイショやてん菜というものは、先ほども申し上げましたように、輪作体系の中からこれを除くわけにいかないわけです。安定作物として、あるいは輪作体系の作物として除くわけにいかないわけですね。そういうことでずっと位置づけされてきておりましたが、いわゆるコーンスターチの輸入によって北海道あるいはカンショでん粉ともに大きな打撃を受けて、この対策に政府みずからも買い上げ等の措置によって苦慮されてきたわけでございます。ところが、大体昭和五十年ごろからですか、異性化糖の製造あるいはこれの消費、こういうものが出てまいりまして、異性化糖に加工するというものが出て、一応安定をしてきておるわけです。北海道のバレイショでん粉の生産高は、年によって若干違いますが、約二十五万トンを中心にして上下動いておるわけですね。それで、大体バレイショでん粉の固有用途としては約十五万トンが見込まれる。あとの十万トン前後、これは動くわけですが、十万トン前後というのは異性化糖の、いわゆるコンスとの抱き合わせによって今まで安定的に消費がされてきて、バレイショでん粉については、先ほど申し上げましたようにコンスの影響を受けて政府の買い上げまでしなければならぬという異常事態は脱却したわけでございますが、こういう措置については、もうずっとこういう方向でやっていかれるということで理解をしておいてよろしいですか。
  72. 塚田実

    ○塚田政府委員 お答えいたします。  制度の仕組みにつきましてはただいま先生からお話があったとおりでございまして、関税割り当て制度のもとで国際でん粉価格の安定というのを図っているわけであります。ですから、関税割り当て制度の中で一次税率の部分は抱き合わせによりまして、それ以外は二次税率、これはキロ当たり十五円、関税率に直しますと四〇%に相当する非常に高い税率をかけて、それで国産のでん粉の保護を図っておるわけでございます。  そこで、この制度の運用上の問題といたしましては、国産の価格と輸入物との間の価格差が開けば開くほど抱き合わせの比率が上がっていくという関係にありますのと、二次税率で入ってくるものとの価格の関係というものがあります。ですから、行政上は、ここ数年価格差が開く方向にありまして、抱き合わせについて行政当局としてはいろいろ苦労をしているわけでございますけれども、私どもは、何はともあれ現在の制度を基本にしまして価格の安定を図ってまいりたい、このように考えておるわけであります。
  73. 新村源雄

    ○新村(源)委員 いろいろ各方面から御意見をお伺いして、現在の抱き合わせのパーセントはいろいろ動いておりますけれども、これは国内のいわゆるバレイショでん粉あるいはカンショでん粉、こういうもの等の在庫によって、その処理といいますか、加工のために全量確保する、そういう立場に立って抱き合わせの率をお決めになっておるわけですね。そういうことでございますか。     〔委員長退席、玉沢委員長代理着席〕
  74. 塚田実

    ○塚田政府委員 ただいまの抱き合わせの比率でございますが、現在一対六・三程度であります。数年前は五・三ぐらいですから、だんだん上がってきております。国産のでん粉の価格は、トン当たり大体十八万円いたします。輸入物になりますと、トン当たり八万円程度であります。ですから、国産農家の保護という立場からこの差を抱き合わせによって縮めていくということでございまして、なおかつ、先ほど申しましたように二次税率で入ってくるよりも高くならないように、こういうことでございますから、私どもの運用といたしましては、国産価格が上がれば抱き合わせ比率をふやしていく。しかし、おのずから限度がありまして、そういう意味で行政上はなかなか苦労があるということでございます。
  75. 新村源雄

    ○新村(源)委員 これは国内でん粉を安定的に消費する、こういう立場から見れば国内産というのは優先的に消費してもらって、足りないものは外国から入れてくる、こういうのが原則でございます。あるいは面積はこれからそんなに過大に動かないと思いますが、豊凶によって、あるいは食用への転用、その量によってでん粉の生産量というのはいつでも十万トンということにはいかないわけですね、そっちに回すカンショでん粉の問題もありましょうし。それで、これが仮に十二万トンなり十三万トンになるという場合でも、二次関税との関連がございますけれども、一次関税といいますか、無税の、そういう中で国内のでん粉というのは優先的にその分だけは消費に確実に向けていく、こういう方向での運用をぜひやってもらいたいと思いますが、もう一度ひとつ。
  76. 塚田実

    ○塚田政府委員 お答えいたします。  先ほど先生指摘のように、バレイショでん粉、カンショでん紛そうでございますが、固有用途以外のものにつきましては関税割り当て制度で国内生産の保護を行っているわけでございます。抱き合わせ比率について、全体の価格差との調整、いろいろ難しい点がありますけれども、私どもは、この制度の趣旨は先生お話しされましたような国産のでん粉の保護また安定ということでございますので、そういう趣旨を踏まえて運用してまいりたい、このように考えております。
  77. 新村源雄

    ○新村(源)委員 大変前向きな御答弁をいただきまして、ぜひそのとおり国内のバイレショあるいはカンショでん粉生産農家のために運用をやっていただきたい。  そこで、きのうも農林水産省皆さんといろいろ話し合って、いや、そんなことはないのだ、こうおっしゃるのですが、こういうようにバレイショが豊作でぐっととれる、あるいはビートも若干面積が伸びたところにさらに収量が伸びる、こういうことになると農林省筋の方から、北海道はこれ以上バレイショをつくってもらっては困る、ビートをつくってもらっては困る、こういう意見が聞こえるというのです。耕作農民の間にバレイショといういわゆる畑作輪作体系の重要な部門として位置づけられているものを減反しなければならぬ、ビートも減反しなければならぬのかという、そういうところまで、農林省というのは農民にとっては神の声ですから、農林省でびっと言われると下までびびっと響いていくわけですよ。そういうことで耕作農民は非常に先行き不安を感ずる。  ところが、バレイショなりてん菜なりの生産というのは、同じ面積であっても、かつては北海道のてん菜も反当二・五トンぐらいであったものが今は五トン三百ぐらいに、倍以上にはね上がってきているわけですね。生産農民というのはやはり単位反収をいかに多く上げていくかということに全力を挙げているわけです。今問題になっておりますし、農林省の方針にも出ておりますようにバイオテクノロジーというのは恐らくそういう方向をねらったものだと思うのですよ。そこで、そういう声を農林省から出してもらいたくない。適正な輪作体系の中の面積の中で処理されているものは、それがどんなに増産されてきても、例えばでん粉にしても砂糖にしても、これはいずれも国内消費から見ればはるかに自給率の少ないものです。ですから、そういう農民の一生懸命な増反努力に水をかけるようなことを言ってもらいたくない、こういうように思うのですが、この輪作体系の中から出てくるバレイショ、ビートの面積については農林水産省としてはそういう考え方は一切持っていない、こういうように表明をしていただきたいのですが、どうなんですか。
  78. 関谷俊作

    ○関谷(俊)政府委員 先ほどのお尋ねにもございましたように、現在の北海道の普通畑の作付の中で豆類、てん菜、バレイショ、小麦、この四つの品目で大体四分の一ずつ、このほかに青刈りトウモロコシもございましてそれが一二%ぐらい、あと四大作物が大体四分しているということで、全体の畑作地帯の作付体系から見ますと、もちろん地域地域によって多少のいずれかへの偏りもございますが、全体の姿としては割合合理的なラインに近いのではないかというふうな考え方が基本にございます。  それから、もちろんこういう農作物の場合には需要との関係での問題というのがあるわけでございまして、てん菜の場合にはお話のございましたような単収の向上によりまして非常に生産量が伸び、バレイショの場合にもまた生産量が伸びてまいりまして、こうなりますと砂糖類なりでん粉の需給の面から見ますと余り過剰な作付はいかがかという考え方はどうしても出てまいるわけでございます。  我々としましては、バランスある作付体系の維持という問題、それから一種の生産物の面から見た需給の安定という問題、この両面を考えますと、畑作物の作付についていわば計画的また安定的な生産を維持していくという考え方にどうしても立たなければならないということでございまして、過剰な作付によりまして一部の品目、バレイショなりてん菜なりに非常に偏っていくということは、そういう面から見ますとどうしても行き過ぎは抑えるというか、そういう指導をしなければならない、こういうような考え方でございまして、畑作全体として見ますと現在の姿がまあまあそう悪い状態ではない、むしろ体系としてはバランスがとれていることから考えましても、余り一つのものに偏っていくということもいかがかということで、そういう意味でいわば計画生産を指導するということは時に応じてやらなければならないと考えております。
  79. 新村源雄

    ○新村(源)委員 適正な輪作体系の中から出てくるそういう農作物については、これは先ほども申し上げましたように量をもって抑えるということではなくて適正な輪作体系の面積を確保する、こういう指導の方向に力を注いでもらいたいと思います。  次に、農家負債の問題でございますが、きょうは細かい数字を挙げて持ってきておりません。しかし、冒頭に申し上げましたように依然として北海道は農業専業地帯である、気象条件に支配されやすい、あるいは兼業の機会に恵まれない、こういうような状況を持っておりまして、農政の展開あるいは経済の動向等によって農家経済そのものが非常に厳しい状況に置かれているわけです。したがって、この問題につきましては、道なり農業団体等からそういう要請があった場合に私どもも一緒にこの問題に取り組んでまいりたい、こういうように思いますから、この点については特に要請を申し上げて、次の問題に移りたいと思います。  次に、これは水産庁でございますが、北海道のアキザケの漁獲の推移を見てまいりますと、大体昭和四十九年ころまで、いわゆる昭和四十年代までは、四十九年の数量が出ておりますが、九百六十二万匹であったわけです。ところが昭和五十二、三年ころから年々増加をしてきまして、昭和五十六年においては二千百九十二万匹、そしてことしの漁獲目標も二千二百五十万匹。こういうようにかつての北海道のアキザケの漁獲量の二倍以上にとれてきている。これはもちろん農林水産省の資源保護法に基づくサケのふ化放流事業が適切に、そして積極的に行われたことの果実だ、こういうように思いまして、まことに喜びにたえない次第でございます。そして今年は親魚が大体百四十三万匹、採卵目標が十六億粒、こういうように目標が立っておるわけでございます。  ところが、こういうようにサケが二倍以上も恒常的にとれるということになりましたら、かつて見られない現象が出てきておるわけです。例えば根室管内の西別川という川では、水の量よりもサケの量が多いというくらい背びれが重なって上ってくる。あるいは私の管内の十勝川では、十勝ダムでもってせきとめてここで親魚を捕獲しているわけです。ところが、そこに上り切れないでそれよりももっと下流の猿別川という川に、本流に上っていけないものですから支流へ入ってきて、橋の上から見ると真っ黒になってサケが重なっておるわけですよ。そのことによってサケが酸欠になって死んで浮かんで流れている、こういう現況まで出てきておるわけです。ですから、もう本当に、時によっては今までサケの顔も見たことのなかったような小さい川にサケの大群が押し寄せてくるなどということが北海道の至るところに現出しておるわけです。  こういう状況を踏まえて、北海道では、サケのいわゆる一本釣りといいますか、こういうものをぜひ許可してもらいたいという声が、帯広市議会では帯広の釣りの会の関係方々が市議会に要請をされて、それが採択をされております。各町村ともサケを一生懸命放流して目の前まで群をなして来ているのだけれども、それは一般住民にとっては全く無縁のもので、それに手をかけると密漁ということになるわけですよ。そういうことでなくて、ひとつ健康にサケの一本釣りを何とかやらせてくれぬかという声がほうはいとして起きているわけです。この点について水産庁長官はどういう御見解をお持ちですか。
  80. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  我が国のサケ・マス資源の安定的増勢を図るため、計画的にサケ.マス人工ふ化放流事業を推進してきたところでございますが、このためにまず再生産用の親魚を確保する必要があるということで、海面におきましてはサケ・マスを漁獲している定置漁業等に対し法令により漁獲規制を実施しておりますし、河川におきましては水産資源保護法の規定によりましてサケの採捕を禁止している。これは今先生も御指摘のとおりでございます。  最近、北海道などでサケ資源の増大した地域において遊漁者の皆さん方から河川でのサケの採捕を認めるべきであるという御意見が強く出てきておるということは私どもも承知をしております。それで、この問題について仮にそういうことができるかどうかということを考えてみますと、以下に申し述べますような条件がなければならないのではないかと思っているわけです。  まず一つは、全国的な見地から見て種卵の確保に支障がないかどうか、それから第二に、定置漁業者、ふ化放流事業実施者と関係者との間の調整がついているかどうか、それから遊漁者の皆さんが一定のルール、時期とか区域などの規制、それからしかるべき経済的負担等を守っていただけるかどうか、こういうことについてそれぞれイエスという答えが出るということでないとどうもまずいのではないかというふうに思っておるわけでございます。  現状におきましては、御希望が高まってきておるということは承知をしておりますが、今申し上げましたような判定基準に照らしまして、その条件を充足しておるとは思えないというふうに思っておるわけでございます。
  81. 新村源雄

    ○新村(源)委員 長官、一番目の条件をちょっと聞き漏らしたのですが、一番目は。
  82. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 全国的な見地から種卵の確保に支障がないということでございます。
  83. 新村源雄

    ○新村(源)委員 当然水産庁としてはこういう条件が具備されなければならぬということは私どもも理解できるわけです。そしてまた、水産庁としてそういう方針が出されれば、全国的な問題につきましては北海道だけで考えるわけにいきませんが、二番目、三番目の問題につきましては現地で十分具体的に検討をする価値のある問題だ、こういうように思っております。  それで、今それぞれ要請のあるのは、全部の川をそうしてくれとは言わない。先ほどおっしゃったように何といっても資源を確保するということが大前提でございますから、その資源を確保しながら、そして国民的なレジャーといいますか、中には今日本から五十万も六十万も金をかけてアラスカ、カナダヘアキアジ釣りに行っているではないか、北海道でこんなにサケがとれて、しかもサケが上り切れないぐらい多く入ってくるのに一般の地域住民なり国民というのはそれに全く手を触れることもできない、こういう矛盾については何とかしてもらいたい、こういう声が非常に高まっておるわけです。  そういうことで、今申し上げましたように特定の河川、そこに限って釣りを認める。あるいはもう一つは、先ほども申しましたように昭和五十九年の採卵目標は十六億粒でございますが、その十六億粒というものが全道的に確保されたならば、いわゆる堰堤の魚道等を上げて上流に遡上させるべきじゃないか。これは新聞等で御案内のように、札幌の町のちょうど中央を流れている豊平川では、河川の汚染によってサケが幻の魚になっておったわけです。しかし、とにかく河川をきれいにしよう、豊平川にもう一度サケを上らせようという市民の運動が実を結んで、今豊平川にサケが遡上してくるようになり、ことしは何匹上ってきた、ことしは何匹上ってきたと、みんな橋の上や川のふちに戯れてサケが帰ってきたことを市民挙げて喜んでいるわけですね。  こういうふうに、河川というのはその地域住民の意識の中、生活の中にぜひとも溶け込ませるべきであります。いろいろ意見はあります。もし魚道を開放して上流に行った場合に、今の河川改修等から見てサケが一体産卵をし、生存できるだろうか。もちろん産卵し終わったら生存しないわけですが。国民の川として河川をきれいにするということはすなわち自分の川をきれいにすることなんだという意識が開発されるように、この点についてこれから具体的に長官にいろいろ御相談に参りまして、ぜひともそういう母なる川といいますか、自分たちの川だ、自分たちの郷土だという国民の意識の啓発のためにも、大臣、ひとつ新しい方向を開いていただきたい、こういうように要請を申し上げまして、私の質問を終わります。
  84. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員長代理 松沢俊昭君。
  85. 松沢俊昭

    ○松沢委員 昭和五十九年産の米価が七月の二十七日に閣議決定が行われて決まったわけでありますが、昨年と対比いたしまして二・二%アップ。これのカバー率ですね、五十八年までのものはもらっておりますけれども、五十九年になりますと生産費のカバー率の状況というのはどうなるのですか。
  86. 石川弘

    ○石川政府委員 生産費のカバー率でございますが、五十八年で試算をいたしますと、第一次生産費で戸数のカバー率が四七%、それから販売数量のカバー率が六八%でございます。それから第二次生産費で見ますと戸数のカバー率が一六%、販売数量のカバー率が二九%でございます。
  87. 松沢俊昭

    ○松沢委員 五十二年が出ておりますけれども、五十二年の場合におきましては第一次で戸数が七八、それから販売数量では九一、それから二次生産費で計算しても五八の七七、こうなっているのですが、年々低下してきているわけですね。ですから、実質的には米をつくっても採算のとれない農家が年々ふえておるというふうに理解して差し支えないでしょうか。
  88. 石川弘

    ○石川政府委員 御承知のように、米作の大変多くの部分が第二種兼業のようなところでまだ行われておるわけでございまして、そういう意味では、そういう農家にとりましては面積の拡大等がございませんで生産性向上がなかなか難しい。その中で、資材が若干上がってまいりますとカバー率が下がるという状態でございますので、農家全体で見ますれば、カバー率が下がっているということは今の価格水準で生産をカバーできない階層がふえてきているということが言えると思います。
  89. 松沢俊昭

    ○松沢委員 米の値段が二・二%上がることによって三百八億円ですかの財源が必要ということが伝えられているわけですが、これはどういうふうにして捻出されるのですか。
  90. 山村新治郎

    山村国務大臣 今回の生産者米価におきましては二・二%アップ、今おっしゃいました三百八億円、これにつきましては、食管経費の節減、合理化、これを行うことによりまして食管特別会計全体の中で捻出するという方針で対処したいというぐあいに考えております。
  91. 松沢俊昭

    ○松沢委員 合理化、節減という言葉を使っておられるわけでありますが、食管会計の経費の中で、例えば合理化できるというものはどういうところのものが合理化できるのか、あるいはまた節減できるというのはどういうところなのか、その辺ちょっとわからぬわけなんでありまして、わかりやすく説明していただきたいのです。
  92. 石川弘

    ○石川政府委員 御承知のようにいろいろの経費がございますが、一つは自主流通助成というようなものをいたしておりますが、そういう自主流通助成の中で運用をある程度改善いたしますことによって節減できる分もあろうかと思います。良質米奨励金については御承知のように現行水準を据え置いておりますので、ここでは削減の余地はございませんが、その他の奨励措置等の中である程度の合理化措置は可能かと思っております。  それから、御承知のように米の管理の総数量自身はかなり少なくなってきておりますので、そういう意味で御承知のような倉敷なり金利、それから運搬その他の経費等、そういう通常的な管理運営経費につきましては節減の余地があろうかと考えております。
  93. 松沢俊昭

    ○松沢委員 確かに言われるように米の需給というのが非常に逼迫しておりますから、したがって在庫期間というのが短くなる、その分は倉敷料がかからぬということになると思いますけれども、しかし、その他の今言われましたそういうものだけで三百八億の金が浮くかどうかということになりますと、なかなかこれは難しいのじゃないか、こう思うわけです。そうすれば、必然的に消費者米価の引き上げというものをやれば金は浮いてくるわけなんでありますが、年度内におきまして消費者米価の引き上げというのは考えられるのですか、それとも考えないで進んでいく、こういうことなんでしょうか。
  94. 石川弘

    ○石川政府委員 消費者米価につきましては、先生よく御承知のように、これは生産者米価とは別の原理で、家計の安定を旨として定めるということになっておりまして、私ども現時点におきまして、消費者米価の価格引き上げをどうするかというようなことについては一切決めておりません。  それから、今お尋ねのような食管財源自身、これは先生も御承知のように、期首からどれだけの資金を持ち越して次の年にどのように渡していくかという資金全体の大きな流れのことでございますので、私ども今の段階ですべてを予定をいたしましてこの資金でこれだけをと言うことができない状態でございますので、私どもとしては食管の資金全体の動きを見まして、先ほど申しましたような節減要素は確かにあるわけでございますので、そういうものの絡みの中からうまく食管としてこなしていけるかどうかをさらに詰めさせていただきたいと思っております。
  95. 松沢俊昭

    ○松沢委員 合理化、削減ができることはやって浮かせることも結構だと思いますけれども、私はやはりそれだけではなかなか難しい話だと思います。  これは大臣に聞きますけれども、今いろいろ計算しておられると思いますが、三百八億という金がそう簡単に浮くわけではありませんから、どうしてもよその方からこれを求めなければならないということになると思うのです。その場合、食管の枠の中で適当にやればいいじゃないか、こう言われた場合、消費者米価を上げざるを得ないのじゃないか、こう思うのですが、そういうのは年度内にあるのですか、ないのですか。
  96. 山村新治郎

    山村国務大臣 ただいま食糧庁長官から御説明申し上げましたとおり、消費者米価の取り扱いということについては今のところ何も考えておりません。やはりこれは食管法の規定に従った家計費、物価、そのほかの経済事情のもとに、いわゆる家計の安定を旨としてということでございますので、これに従ってやっていきたいというぐあいに考えます。
  97. 松沢俊昭

    ○松沢委員 もちろん、食管法がございますからね。だから、家計の安定、それから生産者の場合は再生産確保ということで決められているわけでありますから。しかし、そうは言うものの、それは見よう見方なんでありまして、今までも生産者米価なんというのは再生産が確保されない状態の中でずっと決められてきているわけでありますが、それでも政府の方としては再生産確保の第三条の法律を守ってやってきておる、こういうことを言っておられるわけですから、見よう見方だと思うのです。  問題は、これははっきり今言えないということなんですか、消費者米価の値上げということをやるやらないということは今は言えないということなんですか、あるいはまた、やらないということなんですか、どっちなんですか。
  98. 山村新治郎

    山村国務大臣 ただいま御答弁申し上げましたとおり、まだ何も決めておりません。
  99. 松沢俊昭

    ○松沢委員 では、決めておらぬわけなんでありますから、やるということもあり得る、やらぬということもあり得る、この二つの意味があるわけですね。どうでしょうか。
  100. 山村新治郎

    山村国務大臣 おっしゃるとおり、どっちとも決めておりません。
  101. 松沢俊昭

    ○松沢委員 わかりました。  それから、大臣の談話のところで他用途米の取り扱いについて触れておられるのですが、農協の方では他用途米を主食用に買い上げてくれ、こういう強い希望がございますね。それからもう一つは、需給が逼迫しておりますから、青刈り稲というものを他用途米として生かしたらどうか、こういう議論も御指導もしてこられたと思うのですが、その辺の経過、これは事務的で結構でございますが、お聞かせ願いたいと思うのです。
  102. 関谷俊作

    ○関谷(俊)政府委員 青刈り稲と他用途米との関係でございますが、青刈り稲については、これは先生御承知のとおりもともと土地利用の面から非常に問題があるということでございまして、従来から、第三期対策の場合には他用途利用米等に向ける、そちらに移行するということで指導してきておりまして、そういう意味で県も市町村も同様の指導を行っておるようなわけでございます。  この辺の動きにつきましては、現段階では、一体どういうふうに青刈り稲の解消が図られたかということがまだよく把握されておりませんけれども、趣旨としては、青刈り稲をやるのならば他用途利用米に持っていけ、あるいは中には、青刈り稲をやることによって超過達成をしているというような、政策の趣旨から見ますと非常に矛盾したような状態のところがありますので、こういうところは青刈り稲よりはこれを主食用の稲作ということにしまして、むしろ青刈り稲による超過達成を避ける、こういうようなことが必要なところもあろうかと思っておりますが、指導としてはそういう指導をやってきております。
  103. 松沢俊昭

    ○松沢委員 そうしますと、青刈り稲もこれは転作の一種だ、そういう取り扱いを今までやってまいりましたですね。そういう趣旨でやってきたものを、今度は青刈り稲を他用途米の方に回すように指導するということになりますと、末端の方では、もともと米作農家は米をつくるというのが希望なんでありますから、したがって青刈り稲の人が今度は他用途米の方に行かされるということになりますと、そこにはいろいろと農民間において公平、不公平という問題が起きてくると思うわけであります。  しかし、国の需給事情というのが非常に逼迫している、こういう状況でございますから、この際は何とかして、大臣も言っておられるようなゆとりのあるところの状況をつくり出すためにはそれもまたやむを得ないじゃないか、こういう考え方で御指導になっておられるのか、それとも、いやそういうことであるならそういうものは認めない方がいいじゃないか、不公平だということなら認めない方がいいじゃないかというようなことで今までどおりの方針でやっていくのか、その辺、末端では解釈をするのに非常に難しい状況になっているし、取り扱いには大変苦慮しているという面があるわけですね。だから、今回はしょうがないのだから、その辺はできる限り理解をしてもらって他用途の方に向けてもらわなければならない、こういう考え方でおられるのかどうか、お伺いしたいのです。
  104. 関谷俊作

    ○関谷(俊)政府委員 他用途米を主食用に向けるということに伴う問題は、先生お尋ねの中にございましたように、確かに水田利用再編対策の推進の経過から見ますと、他用途米として予定したものが主食用にかわる道が開かれるということ自身、その指導に当たりました県や市町村、農業団体等にとりましては、その限りでは、水田利用再編対策上は大変問題を持っていることは事実でございます。  ただ、こういうことで全体の方針が決まりまして道が開かれた以上は、それに応じた適正な処理の仕方をするということが我々の考え方でございまして、全体として見ますと、当初から他用途米あるいは青刈り稲から他用途米ということにも考えられますが、要するに他用途米ということで予定された方々の中から主食用に回りました場合には、それを転作の政策上はやはり何らかの形で従来どおり他用途米が転作カウントになるということでございますから、転作上は転作をしたという扱いになるようなこの筋道をどうやってつけるかという方向で現在は検討しておる次第でございます。
  105. 松沢俊昭

    ○松沢委員 長官に聞きますけれども、他用途米を主食用に回すということになることは、政府米ないしは自主流通米に回す、こういうことですね。政府米ということになれば一万八千六百六十八円というふうに平均して決まったわけですから、それで買い上げる、こういうことですね。そうすると、他用途米五万六千ヘクタールですか、予定しておったのですが、それが全部主食用に回るということになると他用途米が足りなくなる、それは一体どうするんだということで、農業団体と皆さん御相談されたということを聞いているわけであります。その場合、他用途米というのは新しい制度でありまして、トン十二万円で契約をしてもらって、そして農家に対しては七万円の助成を政府の方では出すということでありますが、今度、農協の方では十五万トンぐらいは何とか加工用原料米を奮発してみたい、こういう話があったということを聞いております。それはどうなっているのですか。
  106. 石川弘

    ○石川政府委員 農業団体は、こういう主食転用についていろいろお話をしたときにおきましては、団体の方としては主食用に転用したことによって不足する加工原料については農業団体の自助努力によってこれを埋めるということをおっしゃっていただいておりまして、私どももそういう方向でやっていただけるということを前提にいたしまして、主食転用を本人が御希望であれば、これはこちらがやるということでございませんで、出される方がそれを御希望なさるということであれば主食に転用する道を開こうということで、今条件の整備を考えております。
  107. 松沢俊昭

    ○松沢委員 その際、不足するであろう他用途米を農協の方で出すという場合、主食用になるようなものが出た場合においては、いわゆる七万円の助成はされるのですか。     〔玉沢委員長代理退席、田名部委員長代理着席〕
  108. 石川弘

    ○石川政府委員 私ども、交渉の席上と申しますか、お話し合いの中で何度も申し上げておりますが、かわるべき主食を出していただくのであれば、その主食を主食として政府が買わせていただきまして、むしろ他用途米をそのまま出していただく方が私どもは論理上説明しやすいわけでございます。そういうこともいろいろ申し上げた上で、系統全体としては、一つは他用途米を他用途米という姿では現実的にはなかなか集めがたいという御判断があったものと思いますが、そういうことでそれの主食転用をぜひ政府として認めるようにというお話がありまして、その際、それにかわるべきものとして出されるものにつきましては、いわば他用途米という性格を逸するものでごいますので、私どもとしてはいわゆる助成の道を開くわけにいかないということも申し上げた上で、自助努力によって出すというお話でございますから、私どもとすればいわば他用途米として交付すべき資金を出すことはできないということを申し上げた上でこういうお話し合いになっているわけでございます。
  109. 松沢俊昭

    ○松沢委員 そうすると、逆に言うならば、いわゆる加工用原料米が不足になった部分は自助努力で協力します、こういうことを言っておるわけですから、したがって、政府の方としても助成をやらぬわけだから、くず米でも差し支えない、そういう考え方があるわけですね。
  110. 石川弘

    ○石川政府委員 このことは私どもよくお話をいたしておるわけでございますけれども、この米は政府が買うという米ではございません。そもそも生産者団体と実需者でございます、例えばおせんべい屋さんの組合なりみその組合なりしようちゅうの組合なり、そういうものとの間で、こうこうこういう規格の他用途米を政府の助成も得て流すということの原契約といいますか、そういう基本的認識が双方の間でついているわけでございます。それを外しまして、政府に主食として転用を認めよというお話でございますので、まず第一に実需者でございますおみそ屋さんなりおせんべい屋さんの組合の方とそういう話をつけた上でなければ政府が乗り出すわけにいかない性質のものでございます。  今おっしゃいましたお米の性質も、今まで供給すると言っていたお米と同等のものとして、実需者がそういうもので結構だというお話であれば結構でございますが、実需者の方が、今先生指摘のようにくず米でいいというふうなことは現段階では一切言っておりません。そういうこともこれから詰めるべき諸条件でございますので、そういうことを詰めました上で判断すべきものと考えますが、私は、他用途米として実需者が要求していたと同じ性質のものが供給さるべきものと考えております。
  111. 松沢俊昭

    ○松沢委員 これは供給する方とそれを受ける方の関係なんであって、直接的に政府の方の関係することではないんだ、こういうお話でありますけれども、しかし、食糧管理という大きな枠の中においてはやはり政府は供給責任というのがあると思うのです。せんべい屋とかみそ、しょうゆに対するところの加工用原料米の供給責任というのはあるのでしょう。あるから、韓国から買わなければならぬという問題が起きてきているわけでしょう。ところが、今のお話からすると、それはあくまでも供給する者と供給を受ける方との関係なんだから、そこのところは政府が余り関与をする筋合いのものじゃないじゃないかという御趣旨のお話のようでありますけれども、そして、最終的には、今まで主食用に回されるものを加工用原料米に回すということでお話し合いが行われてきたんだから、当然主食用に回されるものが加工用に回るということになるんじゃないか、そういう意味合いの御答弁もありましたが、そういうことになると、末端の農家からすると、政府も農協も末端の農民をペテンにかけているじゃないか。  加工用米を主食用に回してくれというのが農家の要望であった。農家としては一物二価の価格政策は反対だという立場で頑張ってきたんだ。ところが、確かに他用途米は主食に回ったけれども、今度他用途米に回すところの米がないから主食用の米を外してやった場合においては七万円の助成すら出さないというやり方になれば、今まで以上に悪い二段米価ということになるんじゃないか。やはりこういう憤りが出てくると私は思います。その辺、一体どうお考えになっているのですか。
  112. 石川弘

    ○石川政府委員 これは、長い間と申しますか、時間的に何度も何度も私たちの考え方を生産者団体にもお話をし、生産者団体の中でも何度も何度も議論を繰り返された上でこういう選択が望ましいという結論でございます。先生指摘のように、例えば主食は買う、そのかわりほかのものはほかに手当てをしろという論法もあろうかと思いますが、生産者団体としての全県の会長さんがお集まりの上でこういう選択が生産者全体のために望ましい選択であるということで最終的に我々に決断を求められたことでございまして、私どもは今申し上げたような諸条件はすべてお話をした上で生産者団体がなおかつ自助努力でそういう形にした方が望ましいという結論をお選びになったと思っておりますので、私どもはそういう形がなるべくスムーズにいくようにいろいろと努力はしたいと思っております。  こういう選択自身は、いろいろな形での解決策を模索した中で、どうしても主食買い上げということはしてもらいたいというお話と、それから、それにかわるものは自助努力で出すというお話の中で決まったことでございますので、私たち、決まりますときに、それにいたしましてもいろいろ条件を整備しなければいかぬので、その条件整備を今からやっていきまして、なるべくこれがうまく解決に結びつくようにやっていくつもりでございます。
  113. 松沢俊昭

    ○松沢委員 長官、米が足りなくなって、そして韓国から輸入しなければならない、早食いをやらなければならないというのは、何も農業団体が責任を負わなければならぬという問題ではないと思うのですよ。今までの減反政策とかその他の農政から来たところの一つの結果なんでありまして、この責任というのは政府が負わなければならないのじゃないですか。それを要するに今度は生産者団体を逆手にとって、そしていろいろと相談をした結果そうなったんだということで今までの方針よりももっと悪い政策を押しつけるということは、余りにもひきょうと言った方がいいかな、権力を持たざる者が権力を持っている者にねじ伏せられたと言った方がいいか、そういう印象を私は強く受けるわけでありますが、どうですか。
  114. 石川弘

    ○石川政府委員 何度も申し上げますが、私どもいろいろな考え方を申し上げて、今先生は例えば総量で不足しているからこういうことが起こったんじゃないかという御指摘でございますが、もしそうでございますれば、私どもが主食に買い上げましたそれにかわるべきものを主食の中から出すということでございますと、総量は変化がないわけでございます。そういうことも含めて、私ども何度も何度も農業団体とのお話し合いを続けたわけでございますが、農業団体としてはこういう道を選びたい、そうでなければ農業団体としての集荷、販売その他の活動が大変乱れるという、大変強い御要請がございました。  私どもがねじ伏せたと申しますよりも、私ども決定の際にいろいろとマスコミの方から、むしろそういう団体の要求に屈したかというおしかりもあったわけでございますが、これはどっちが屈したとかそういうことではなくて、やはり今米を集めてうまく運用するという、これが私どもと生産者組織とが本当に手をとり合ってやっていかなければいけない事態でございますから、そういう無用な混乱を避けるためにはこういう方法もやむを得ないのではないかという形で選択をいたしたわけでございまして、私どもが何かこういうことを強要したということは全くございません。
  115. 松沢俊昭

    ○松沢委員 これは議論をやっていても切りがない話でありますから、なおまた別な場でやりたいと思います。  二番目の問題としましては、韓国米の輸入の問題であります。  きのう、名古屋と神戸の方に十日の日に入ってくるということをお聞きいたしました。しかし、これは全体の総量からいたしますとほんの十五分の一程度でありまして、これからもどんどん十五万トン入ってくるわけでありますが、この入ってくる港は、大体二船はどこ、三船はどこというふうにして、加工用原料米に使うわけでありますから当然場所の指定等も双方で協議して決めていかれると思うのですが、その場所はどこなのか。  それからもう一つは、時期は第二船はいつごろになるのか、最終的には完了するのはいつごろになるのか。  それから、その韓国の米の十五万トン全体の年産別はどうなっているのか、それをお聞かせ願いたいと思います。
  116. 石川弘

    ○石川政府委員 第一船につきましては、八月十日に名古屋とそれから神戸に入港することは決まっております。二船以下、第三船以降につきましては、向こうの国の方で輸送の準備が整い次第ということで、まだ決めてはおりません。大体、数量としても相当なものでございますし、それから加工をなさいます需要の多いところに着けてまいりますので、この二つの港のほかにやはり十数港のところに配船をして入れていかなければいかぬと思っております。順番その他については、まだ向こうから話し合いがございまぜんので、決まり次第決めていきたい。  それから、全体の計画としましては、十月中旬までには入れていきたいと思っております。  それから、年産で申しますと、一九八一年産が九万八千トン、八二年産が三万三千トン、八三年産が一万九千トンでございます。
  117. 松沢俊昭

    ○松沢委員 厚生省はお見えになっていますね。この前、食糧庁長官にこの米のいわゆる毒性検査はどうするのだということでお聞きをいたしましたら、サルプルをもらって国内でやる、そして、その種目といいますか、数は十六種類と聞いておりますが、今度は厚生省は、港に入ってきた場合、どういう検査をおやりになるのですか。
  118. 玉木武

    ○玉木説明員 お答えいたします。  韓国産米の輸入検査は、御存じのように輸入港の港頭倉庫におきまして必要なサンプリングを行いまして、国立衛生試験所で残留農薬とか重金属等の検査を行うことにいたしておるわけでございますが、具体的な検査実施項目としましては、従来から申し上げておりますように、食品衛生法に基づき基準が定められております十二農薬とカドミウム、それに薫蒸剤でございます臭素、臭化メチル、燐化水素の十六項目が主体でございますが、さらに必要に応じまして重金属関係、それから韓国におきましての米への農薬の使用状況を踏まえて検査を行いたい、このように考えております。そのほか、カビとか異物に関しても検査を実施することにいたしております。
  119. 松沢俊昭

    ○松沢委員 私のいただいた資料の中に、韓国の原子力研究所環境部の盧博士が一九八〇年に、韓国の「環境保全」という雑誌があるのですが、そこに発表された論文を見ますと、「ソウル市の重金属汚染」という表が出ておりまして、それで土壌汚染の場合におきましては、カドミウム、銅、マンガン、クロム、亜鉛、鉛、水銀、こういうものが非常にたくさん検出されるということで、カドミウムにつきましては、基準から計算しまして六十二倍、銅が千五百二十二倍、亜鉛が百五十七倍、鉛が十八・六倍、水銀は三・二倍、こういうぐあいに発表されているわけです。  私は、この前、長官に重金属汚染というものは大変ひどいということを聞いているのだが、それは一体検査されるのかどうかと聞きましたところが、カドミウムというお話はありましたけれども、今のような重金属のものについては確たるところの答えは得ていない、厚生省と相談して決めていこうというお話でございましたが、厚生省は相談されましてどうなさるのですか。
  120. 玉木武

    ○玉木説明員 お答えいたします。  農水省の方からの情報をいただきましてどのような重金属についてチェックをするかを決めております。したがいまして、一応我々としましては万全を尽くしたチェック体制で臨むことができる、このように考えております。     〔田名部委員長代理退席、上草委員長代理着席〕
  121. 松沢俊昭

    ○松沢委員 それじゃ、今私が申し上げましたような重金属についても検査をやる、こういうふうな理解でいいですね。  それから、立ったついでに答弁してもらいたいと思いますが、これは農林省の方としては十六の種類にわたっての検査を実はやられたけれども、水銀剤だとかそういうものの検査というのはおやりになっていないのですね。したがって、それがどうなっているかまだわからぬわけですね。その場合、厚生省の方としては、今度は荷が着いてから検査されるわけですから、検査が完了してから米の供給をやってもらわないと国民に非常に不安を与えるということになるわけでありますが、この辺は一体どうなるのか、御答弁願いたいと思います。
  122. 玉木武

    ○玉木説明員 お答えいたします。  先ほど御指摘のありました漢江流域の汚染の状況でございますが、我々も先生のお持ちの論文を持っております。もちろん農水の方でもお持ちになっておりまして、漢江流域で生産されましたものは自主流通に回されておりますために今回はこちらの方の対象米には入ってないというような情報をいただいております。したがいまして、一般的な重金属検査、水銀を含めた重金属検査ということになろうかと考えております。  また、先ほど御指摘のございました検査結果が判明するまでは流通、販売されることがないようにというご意向でございますが、もちろんそうでございます。検査結果が判明するまでは市場に流通されて食用に供されることは許されないことでございまして、検査中の米の保管を行います食糧庁に責任を持って保管、管理を行うという約束をいただいております。  以上でございます。
  123. 松沢俊昭

    ○松沢委員 それは大体それで終わります。  それから三番目としては、農薬の問題をめぐりまして最近いろいろ問題が出てきているわけであります。これは国内の市民団体だけでありませんで、やはり世界的に農薬の安全性を求めるところの声というものが高まってきておりまして、お話によりますと世界的にも一つの団体ができ上がったりなんかしているわけであります。これはやはり先進国が、後進国といいますか、第三世界等に自分の国に禁止したものでも輸出をするというようなことで、第三世界の人々の健康を害するというような問題等もあるということから世界的な運動に発展していくのじゃないか、こう言われているわけであります。  政府の方といたしましては「農薬要覧」というのを出しておられますね。これは日本植物防疫協会が出したということになっていますけれども、農林省の農蚕園芸局植物防疫課監修ということでずっと一九七〇年代から出ているわけなんでありますが、最近、去年の十月ですか、八三年の「農薬要覧」が発表されまして、そして見ましたところが、この中から今まで入っていた資料が相当抜かれてしまっているということがわかったわけです。  それで、抜いたのは一体どういうことなのだということで市民団体で追及いたしましたところが、まだそのデータというものが出てきてないのだということで言いわけされておりましたけれども、その当時既に業界に対しましては「資料」という、こういうものが流されておったわけです。それを農林省の方では隠しに隠しておったのですね。それで、これが発行されているということを市民団体の方が確認して追及されたら、まだそろわなかったから出さなかったのだということで、今度はこの「資料」と同じ内容のものを「農薬要覧」の別冊ということでつくって、そして発行されたという経過があるわけです。  しかし、その別冊の中でもまだ抜き取られておりまして、主要農薬の原体生産数量表となっているのはまだ別冊の中にも入ってないのです。それから、輸出の国別の金額表なんかもあるわけでありますが、これは全部抹殺されてしまっているわけです。それから輸出の数量も抹殺されている。そういうぐあいにして、ずっとこれだけ全部今まであったものが別冊の中にも入っておらぬし、「農薬要覧」の中にも入っておらない、こういうことになっておりますので、これは明らかに改ざんじゃないかと思いますね。問題が起きるたびにそういうのを消していく。農林水産省というのは生命産業を守っていくところの機関なんでありまするから、問題が起きれば起きるほどそういうデータを公開して、そして安全性を国民とともに追及していくところの姿勢がなければならぬのじゃないか、こういうぐあいに考えますが、その点はいかがにお考えになっておりますか。
  124. 関谷俊作

    ○関谷(俊)政府委員 農薬に関係します資料の公開というか、刊行につきまして、「農薬要覧」の問題でございます。この資料は、先生お尋ねにもございましたように、大変関係者からいろいろ要望が強い。そういう要望もよく考えながら、植物防疫協会におきまして編集をしておるわけでございますが,昨年は実は刊行時期が七月二十日であったと思いますが、事情を聞いてみますと、早く出してくれということで二、三年前より大分早く出すようになりまして、そんな関係で、今お尋ねのありました部分も含めまして資料のとりまとめがなかなか難しかったというような状況で、前の年までのものに比べますと、輸出関係等につきまして、全く欠けているというわけではございませんけれども一資料としてはかなり、いわば国別のものが主要国になっておりましたりというようなことで、資料が従来のようには、少し詳しくなくなっております。  この点につきましては、これは植物防疫協会が関係の業界から資料を集めてやっておりまして、私どもの植物防疫課が監修しておりますので、今御質問の趣旨は私どもとしても十分理解しておるつもりでございますので、八三年版につきましてはそういうことで時期が過ぎましたので、八四年版の編集がちょうど今最終時期に来ておりますが、この点、御質問のありましたような趣旨も十分考えまして、植物防疫協会を十分指導してまいりたい、かように考えております。
  125. 松沢俊昭

    ○松沢委員 では確認をしておきますけれども、八四年版につきましては、今私が申し上げました八三年の別冊と、それからそのほかに削減されておりますところの、もうおわかりですね、この部分ですね、これを全部入れてもとどおりにして、八四年の「農薬要覧」というものをおつくりになるのですね。
  126. 関谷俊作

    ○関谷(俊)政府委員 これは御指摘の趣旨に沿いまして、私ども十分指導しているわけでございますが、何分にもやはり出版の時期、それから資料がこの時点でどのくらいまでまとまっているかということもございますが、できる限り御指摘の方向に沿って努力してまいりたいと思っております。
  127. 松沢俊昭

    ○松沢委員 時間がありませんからもう一つ。これはちょっと変わった質問なんでありますけれども、私の関係しておりますところの全日本農民組合連合会は、昔からどぶろぐの自家用は認めてもらわなければならぬじゃないかという運動を実はやってまいったのです。  最近、どぶろく裁判なんというのが起きているようでありますが、それとは別に私なりに考えるわけでありますけれども、農家は米一俵売っても一万八千六百六十八円という、そういう価格でありまして、私もどぶろくをつくったことがありますが、大体米一升から一升以上のどぶろくができるわけなんです。だから、どぶろくをつくるところの楽しみというものを農家に与えても差し支えないじゃないか、そういう自由を与えるべきじゃないか、私はそう思っておりますし、それから経済的な面からいたしましても、一升、大した値段ではありません。酒屋さんから清酒を買うということになりますと大変高い値段で買わなければならぬ、こういう面もありますから、この辺、農林省の方としては生産者の楽しみも保障してやるという立場で自家用のどぶろくは認めるような御努力をなさる意思がありますかどうか。
  128. 石川弘

    ○石川政府委員 たしか岐阜の白鳥かどこかで、どぶろくを町じゆうでやるというのは私も知っておりますけれども、やはり酒造という、何と申しますか、国税確保とか、いろいろな観点で今までも問題になっておることでございますので、私どもの方でそれを進めるという立場にはございません。
  129. 松沢俊昭

    ○松沢委員 大蔵省国税庁、お見えになっておりますね。——サミット参加国の中で、自家用のアルコール飲料の製造禁止をやったりあるいはまた税金をかけたりしているところの国というのは何カ国ありますか。
  130. 小川是

    小川説明員 お答え申し上げます。  サミット参加国全部について調べておるわけではございませんが、各国それぞれ酒の制度、沿革がございまして、その中におきましてアメリカ、イギリス、西ドイツ等におきましては、特定の酒の類につきまして、自家用で醸造する場合に一定の限度を設けて免税にしているあるいはそれを認めている例があるというのを承知いたしております。
  131. 松沢俊昭

    ○松沢委員 大臣、国際的な視野に立った場合においては、アメリカもイギリスも西ドイツもこれは認めているのですよ。日本だけが何で認められないのかということですね。だから、大臣、これは検討に値するところの問題だと私は思います。ですから、今ここで即答してくれとは言いませんけれども、ひとつ農林省の方でも十分検討していただきまして、これは今度大蔵省に、こっちの方でも議論を展開していきたいと思いますが、農林省の方でも検討をされまして、どぶろくの製造の自由というものを農民に保障するという方向で進んでもらいたい、こう思いますが、それはどうでしょうか。
  132. 山村新治郎

    山村国務大臣 大蔵大臣とは友人関係でもございますので、特にきょうの発言はよく伝えておきます。
  133. 松沢俊昭

    ○松沢委員 もう本会議の予鈴が鳴りましたので、これで終わります。
  134. 上草義輝

    上草委員長代理 午後一時三十分から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二十八分休憩      ————◇—————     午後一時三十一分開議
  135. 阿部文男

    阿部委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  農林水産業振興に関する件について、本日、参考人として海外経済協力基金総裁細見卓君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  136. 阿部文男

    阿部委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  137. 阿部文男

    阿部委員長 質疑を続行いたします。小川国彦君。
  138. 小川国彦

    小川(国)委員 私は、最近日本の高まりつつある経済援助、その中で、インドネシアにおける日本政府と三つの商社が経済協力の形で行った事業が失敗に帰しているわけでありますが、その責任問題を明らかにするという中で、今後の日本の経済協力のあり方というものを模索してまいりたい、こういうふうに考えるわけであります。  日本の経済協力の予算は年々増加してまいりまして、昭和五十六年度が四千二百五十三億円、五十七年度四千七百十一億円、五十八年度五千四十三億円、五十九年度は五千四百三十九億円と非常に伸びてきているわけでありますが、これは国際的な動向ともにらんで、日本として当然果たさなければならない任務である、こういうふうに考えておりますが、最初に、この援助に取り組む政府当局の考え方をひとつ伺いたいと思います。
  139. 橋本宏

    ○橋本説明員 先生の御質問の御趣旨は、インドネシアに限ったものであるか全般的なものであるか、必ずしもよく理解できなかったところがあるわけでございますけれども、いずれにいたしましても、政府としましては社会経済開発に対する協力という精神のもとで経済協力を実施しているものでございまして、今後ともこの方針に変更はないと考えております。
  140. 秋山昌広

    ○秋山説明員 お答えいたします。  ODA予算につきましては、御承知のとおり、この厳しい財政状況のもとで大変重点的に予算が配分されてきたわけでございます。しかしながら、ODA予算の執行につきまして、予算の財源が税金で賄われているということから考えますと、それが効果的かつ効率的になされていなければならないということは当然でございまして、これは実は臨調の答申でも同様の報告がなされているわけでございます。  そういう観点に立ちまして、私ども財政当局といたしまして、大変苦しい中ではございますが、ODA予算につきましては十分これまでも配慮してまいったわけでございますけれども、その執行面につきまして今後とも各省庁とよく相談した上で、効果的ないし効率的な運用がなされるよう努力してまいりたい、かように考えております。
  141. 小川国彦

    小川(国)委員 農林水産大臣に。  日本がこれから世界の各国と交流を深めていく上に海外経済協力というものについて大臣はどういうふうにお考えになっているか、ごく一般的な御意見で結構でございますが……。
  142. 山村新治郎

    山村国務大臣 農林水産省といたしましては、特にいわゆる農業関係の協力ということで、これが両国間の仲がますます緊密になっていくというようなこと、特に日本の場合はいろいろな技術面でのいわゆる先を走っておるというようなところもございますので、やはり現地の実情等を見きわめた上で、それらに即したところの協力ということをやっていきたいというぐあいに考えます。
  143. 小川国彦

    小川(国)委員 具体的な問題について伺いたいと思うのですが、インドネシアにおける三井物産、三菱商事それから伊藤忠、この三社によりますところの日本の代表的な農業プロジェクトが行われたわけでありますが、この三社によってインドネシア・スマトラ島ランポン州につくられました三井物産によるミツゴロ農場、三菱商事によるパゴ三菱、それから伊藤忠商事によるダヤ・イトー、それぞれの投資総額について、政府当局としてはその数字を把握しておりますか。
  144. 橋本宏

    ○橋本説明員 お答えいたします。  本件は、先生十分御承知のことであると思うのでございますけれども、あくまでも日本の民間の三社とインドネシア側がやった問題でございまして、基本的に民間の事業のわけでございます。我々も情報といたしまして、どのような規模であるかというようなことは聞いておるわけでございますけれども、政府の立場から、民間各会社がどの程度のことでやったというようなことをこの場でお答えするのもなにかと思うわけでございます。政府の関与の部分は別にしまして、民間直接のことにつきましては、ちょっとお答えを差し控えさせていただければと存じ上げる次第でございます。
  145. 小川国彦

    小川(国)委員 きょうは海外経済協力基金の総裁もお見えになっていただいておりますので、本来ならばこれは外務省が当然把握していなければならない数字でございますが、海外経済協力基金の方が主として資金を出しておりますので、海外経済協力基金としては、この三社に出した投資総額をひとつお述べになっていただきたい。
  146. 細見卓

    ○細見参考人 お答え申し上げます。  これは外務省の方からもお話がありましたように、伊藤忠、三井物産、三菱商事という我が国の代表的な商社が、スマトラの地で農業開発を行うために政府の海外経済協力基金の資金の供与を要請してみえたものでありまして、今までに実行いたしました金額は、伊藤忠の農業開発につきましては五億七千八百万円、それからランポンメーズ、三井物産の案件につきましては十七億七千五百万円。なお、この期間、例の外貨減らしというようなことでドル建ての融資が一般的に行われたときでありまして、九十万ドルの外貨貸しもそれに加わっております。それから三菱商事が行いましたキャッサバのパダンラトー農業開発というのでありますが、これは七億二千二百万円、これにもやはり九十万ドルほどの外貨融資が加わっております。しかしこれはトータルでありまして、最終的に残高として残っておりましたのは、伊藤忠について二億二千四百万円ほど、それから三井物産につきまして十億九千六百万円ほど、それに外貨建ての約六十万ドル、それから三菱商事につきましては二億三千八百万円、外貨の約四十万ドルというのが事業閉鎖のときの残高でございます。
  147. 小川国彦

    小川(国)委員 これら三社にこういう金額が貸されるに当たっては、外務省、大蔵省、農水省の各省庁は、これは海外経済協力基金が単独で民間に貸し付けたものであってこれには全くタッチされない、こういうことでありますか。政策的な指導なり御相談というのにはあずかっていないのですか。
  148. 細見卓

    ○細見参考人 なお、申しおくれましたけれども、これにはJICA、国際協力事業団が関与しておりまして、全体としてインドネシアに関する有力な援助案件であるという評価がいわば政府部内で確立しておったものだと思います。
  149. 小川国彦

    小川(国)委員 ちょっと答弁がよくわからないのですが、有力な何案件でございますか。
  150. 細見卓

    ○細見参考人 有力な援助案件でございます。
  151. 小川国彦

    小川(国)委員 今、総裁がそういうふうに政府部内で有力な案件だと言われていることが、外務省も大蔵省もタッチせずに一基金の金が出されているというふうに私は考えないわけなんです。少なくともスマトラの平野の中で数千ヘクタール、三井物産のミツゴロで言えば五千五百ヘクタール、それからダヤ・イトーで言えば四千七百ヘクタール、パゴ三菱で言えば八千ヘクタール、こういうスマトラ島ランポン州の広大な面積をこの日本の民間企業が借り受けてそこに大農場開発をやろうというわけでありますし、それから投入された資金も三社合わせますと約四十九億円、五十億になんなんとする巨大な投資であり、しかも今総裁のお答えの中で、貸付残高が最高のときにはこの事業費の過半数を超えているわけでありまして、政府が全くノータッチでこういう事業がスタートしたとは思えないわけなんですが、その点、外務省、大蔵省、当然この事業の決定に当たっては関与されたというふうに私ども理解しているのですが、いかがでございますか。
  152. 秋山昌広

    ○秋山説明員 御承知のように海外経済協力基金の経済協力の内容は、例えば円借款、一般案件、こういうふうに大きく分かれているわけでありますが、一般案件につきましてすべて合い議を受けているというわけではございません。主要なものについては合い議を受けたりあるいは事実上話を聞いたりということはございますが、まことに恐縮でございますけれども、この案件について当時どういう合い議を受けたのかあるいは話し合いがあったのか、今承知はしておりませんが、それは調べてみたいと思います。  一般的に申しまして、円借款につきまして重要案件についてはよく話を聞く、一般案件につきましてはどちらかと言えば経済協力基金ないしは実施官庁の方にお任せするという感じが我々にはございます。
  153. 橋本宏

    ○橋本説明員 お答えします。  残念ながら今手元に資料がございませんで、果たして当時外務省がどの程度まで本件について相談を受けていたか、お答えできませんので、後刻調べまして改めて御返事申し上げたいと思います。
  154. 小川国彦

    小川(国)委員 農林水産省はいかがでございますか。
  155. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 ランポンの農業開発事業につきましては、事業発足に当たりましての資金協力は海外経済協力基金と海外貿易開発協会によって行われたというふうに承知をいたしておりますが、私ども農林水産省との関係で申しますと、ちょうど満十年になりますが、昭和四十九年に国際協力事業団が発足をいたしまして、その際、農林水産大臣も主務大臣の一人となるという形になりました。この国際協力事業団ができましてから、ここを通じまして総額約一億二千三百万円の資金協力を昭和五十二年から五十三年にかけて実施をいたしております。この国際協力事業団がやっております資金協力につきましては、私ども農林水産省農林水産業担当の省庁といたしまして御相談を受けているものと承知をしております。
  156. 小川国彦

    小川(国)委員 外務省、大蔵省、農水省、画期的だと言われたインドネシアにおける開発輸入計画、いわゆる日本の畜産のえさがアメリカに七割依存している、こういう状況の中から、十四、五年前、開発輸入ということでインドネシアに農場開発をしてそこでメーズ、トウモロコシをつくって、そしてそれを日本に輸入するならばえさの多角的な輸入ができるということで、当時、開発輸入の先兵ということでインドネシアのスマトラ島ランポン州における農場開発というものがこの商社によって開始された。しかもそれには当時、スハルト大統領までが開場式に出席をするというような状況で、その調査には農水省のメンバーも加わったということでスタートしているわけですね。  そういうふうにしてスタートしたこの事業が今どういう状態になりつつあるかということについては、これは外務省その他各省庁は掌握されておりますか。
  157. 橋本宏

    ○橋本説明員 お答えいたします。  一九六九年以降、先ほど先生指摘の三井物産、三菱商事、伊藤忠の各社がインドネシアの農業開発を目的といたしましてランポン州に合弁会社を設立しておったわけでございますが、トウモロコシ病害虫発生等の理由によりまして赤字が累積したため経営困難となりました。その後、これら三つの会社とインドネシアの移住省との間で、三社がそれまで使用しておりました農場を移住用地として利用するという方向で話し合いが行われまして、昨年の三月及び一月にィンドネシア移住省とこれら三社の間で農場引き渡し契約が取り交わされたと承知しております。  この契約に基づきまして、これら三社の開墾費用とインフラ整備費がインドネシア政府より三社に補償金として支払われまして、昨年五月から十一月にかけて農場の引き渡しが行われました。これをもって、三社によるこれら合弁事業は終了したものと承知しております。
  158. 小川国彦

    小川(国)委員 そういう経過をたどって、この三社のインドネシアの荒野で行われた広大な農場建設の実験というのは十五年目を迎えて敗退に終わった、三社が撤退した、今こういう結果に終わったということなんですが、その結果を省みて、もちろん民間も資金を出したでありましょうが、その過半数を超えるものは海外経済協力基金であり、あるいは国際協力事業団の資金が投入されたわけです。しかも、これは一般の国内の金融と違いまして、海外経済協力という名のもとに、海外経済協力基金の場合は三年据え置き十五年償還で年利が四・五%から五%、国際協力事業団の場合は五年据え置きで二十年償還、年利〇・七五%、こういう非常に破格の貸し付け条件、日本の国内の産業あるいは農業から見れば想像もつかないような低利長期の資金を商社に貸し付けて、スマトラ島における農業開発に取り組んだわけですが、昨年三月ですか、三社一斉にインドネシア政府と協定を結んで、そして本年までかけて撤退作業が行われたということです。  この結果を省みて、経済協力を指導する立場でやってきた各省庁なり協力基金としては、このまとめを今どういうふうに考えていらっしゃるか、それを伺いたいと思います。
  159. 細見卓

    ○細見参考人 多少の誤解もございますようですから、私からまず事実関係を申し上げておきます。  確かに低利有利な金を融資したことは事実でございますが、撤退に当たりましては、御承知のように全部期限内といいますか、期限前弁済を受けておるわけでございまして、日本国としてはそういう意味での、このごろの累積債務のような、元本に傷がつくというようなことにはなっておりません。  それから、先ほど先生がいみじくもおっしゃいましたように、このプロジェクトができましたときには、スカルノ大統領がみずからやってきて日本の協力を非常に高らかにたたえたということでもおわかり願えますように、先生もインドネシアの事情は随分お詳しいと思いますが、とにかくジャワ島に日本の総人口に匹敵するような大量の人口がおりまして、人口密度が非常に低いスマトラを何とかしてインドネシア共和国という名のもとにほぼ人口密度が見合うようなところに持っていこうというのがインドネシア政府の最大の政策でありまして、先ほども広い意味で日本政府が協力について理解を示しておられただろうと申し上げましたのは、そういうインドネシアの基本国是というものに沿って日本はできるだけお手伝いをしようということをやったわけであります。  また、ただ単に日本だけでございませんで、スマトラの縦貫鉄道というものをつくりまして、あるいはスマトラとジャワ島との間に、今までは非常にスピードの遅いフェリーがはるか遠方から遠方へという格好で、非常に通勤が不便であったわけですけれども、日本の援助その他によりまして、あるいは西独、世銀あるいはアジア開銀というようなところが全部援助をいたしまして、スマトラ島に非常に交通便利な道路網を完成し、しかもそこにジャワからの多くの移民を受け入れるということをやったわけであります。  確かに私企業としてスタートされました日本の商社の事業は残念ながら失敗をいたされましたけれども、その間に、例えばこの事業のありましたランポンというところだけを見てみましても、一九七一年から八〇年の間に、ほかのところに比べまして人口が非常にふえておる。つまり、七一年に二百七十万ぐらいの人口が四百六十万にふえておる。ランポンというのはまさにこのプロジェクトのあったあたりでございます。しかも、先ほどの政府の御答弁にもありましたように、この土地が移住省に受け継がれたということから見ましても、私企業としてメーズその他の多角的輸入を図ろうとした、農業の事業として日本に対する代替供給地としての事業は失敗されましたけれども、全体としてはスマトラの開発にかなり役立っておるのではないかというふうに考えております。
  160. 小川国彦

    小川(国)委員 今総裁は結果において物を言われているわけでありますが、それでは貸し付けを行った当初は、この事業に対する海外経済協力基金の貸し付けば日本のために貸し付けたのか、インドネシアのために貸し付けたのか、そこの根本の出発点ほどこにあったのですか。
  161. 細見卓

    ○細見参考人 まさに両方のためでございます。それが経済協力だと思います。
  162. 小川国彦

    小川(国)委員 私は、両方であったということは結果において言わんとしていることではないかというふうに思うのですね。この出発点が何であったかというのは、当時の関係のいろいろな文書をひもといてみますと、これはいずれも開発輸入という言葉を掲げておるわけです。いろいろなマスコミの評論も報道もみんな開発輸入という考え方。開発輸入というのはやはり日本を視点に考えて、インドネシアを視点に考えたものではない。ですから、この事業がスタートした以後において、結局今お話しのようないろいろな災害があった。日本の商社のもくろみに外務省もあるいは大蔵省も農水省も十分タッチしていなかったということですが、いずれにしても政府機関がインドネシアの国情、自然条件、気象条件、立地条件、そういうことの研究が不十分なまま、開発輸入ということで安易にインドネシアでトウモロコシをつくって日本に輸入できると考えた。  しかし、現地状況は、今においても変わりませんが、食糧事情が極めて逼迫している。インドネシアにおいては、米のほかにトウモロコシも主食になって、そして米を三食食べられるのは恵まれた家庭であって、一般の農民においてはトウモロコシと米をまぜたものを主食としている。そういうふうに考えてみると、食糧の逼迫している国からその主食に匹敵するトウモロコシを日本に持ってこようという考え方自体が経済協力の出発点において間違っていたのではないか。  それからさらに、あの熱帯の地域において、大自然を開発して、いきなり数千ヘクタール、少ないところで二千、大きいところでは三千、五千ヘクタールという、いずれも大規模な農場開発をした。これは周辺が原始林でありますから、結局開発されたところのトウモロコシを目指してネズミの大群がやってくる、あるいはイナゴの大群がやってくる、そういう自然的な条件に対して何ら対抗する手段を持ち得なかった。結局失敗に終わった。  ですから、まずインドネシアの主食であるトウモロコシ、それから自然条件、そういうことの状況判断というものが極めて甘いままに、経済協力という名のもとに出発した。そういう経済協力に対する基本的な認識の誤りがあった。ここのところは、基金だけではなくて、外務省も大蔵省も率直に認めなければならない問題点だと私は思うのですが、そういう反省がなされているのかどうか、そこをきちんと伺いたいわけです。
  163. 秋山昌広

    ○秋山説明員 ただいま先生のお話を、私、大変興味深く聞かしていただいたわけでございます。しかし、インドネシアに対する我が国の経済協力はいろいろな案件がございまして、例えば円借款について見ますと約一割が治水あるいはかんがいということで、インドネシアの農業開発のためということに使われておりますし、それから無償資金協力について見ましても、この中には食糧援助も含まれておりますが、約四分の三が農業部門に対して協力されている。今お話しの点につきまして、私、この案件限りについて見ますと確かに失敗したのではないか。先ほど総裁の方からお話があった点についても留意する必要があると思いますけれども、案件自体はこの三つの商社にとっても失敗であったのだろうと思います。  しかし、本来的に経済協力につきましては大変リスクの伴うものが多い。したがって、経済協力基金のみならず国際協力事業団といったようなところから低利あるいは無償といった、これは外務省の方からもございますが、そういった形で援助がなされる。結果としてリスクが大きかったがために失敗をした案件だろうと思います。こういう案件を一つの反省材料といたしまして、今後の経済協力の進め方、その執行のあり方に十分我々注意してまいらなければならないと思っております。
  164. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 食糧輸入と開発協力の関係についてお答えを申し上げますが、私ども農林水産省といたしましては、食糧の安定供給確保ということを政策の大きな柱にいたしております。基本的には国内生産の確保を図るということでございますが、輸入に依存せざるを得ない農産物につきましては、安定した輸入を確保しますために、備蓄でございますとか輸入取り決めといったようなものとあわせまして、長期的な観点から輸入源の多角化を図るということも一つの手段なり考え方というふうに理解をいたしておりまして、この面からも農業協力を進めることが重要だと考えております。  この場合、鉱産物の場合のようないわゆる開発輸入という方式ではございませんで、我が国の資金なり技術を活用しまして相手国の農業生産力を向上させる、そして現地の食糧需要を満たしてその輸出余力を我が国に対する安定した輸入源として結びつけるというふうな考え方で、いわゆる開発協力を推進するという考え方でやっておるわけでございます。
  165. 浅見真

    ○浅見説明員 お答え申し上げます。  私どもといたしましても、この事業は当初予想されませんでした病虫害でございますとかあるいはキャッサバの栽培につきましては市況の予期せぬ変動等あったようでございまして、そういう当初予想し得なかった問題のため結果的に撤退せざるを得なかったという点につきましては、非常に残念に思っておる次第でございます。今後こういう経験を生かしまして、一層効率的あるいは効果的な経済協力を行うよう、一層の努力をしたいと考えている次第でございます。  ただ、一点申し上げさせていただきたい点がございまして、それは国際協力事業団の融資の点でございますが、先ほど既に御説明がございましたように、本件事業に対しまして国際協力事業団から約二億二千万円程度の融資がなされております。その融資額の半分以上、一億数千万だったと思いますが、この事業のいわゆる関連インフラ部門に融資がなされております。具体的に申し上げますと、道路でございますとか橋ですとかあるいは学校等の建設にも融資がなされておりまして、そういうものは当然、事業自体は失敗に終わりまして日本側として撤退せざるを得ない事情にあるわけでございますけれども、この融資によってつくり上げられた施設等は残っておりまして、地域住民あるいは地域開発の点から今後も有効に利用していただけるものではないかと考えております。
  166. 小川国彦

    小川(国)委員 基金の総裁に伺いたいのですが、全体で約五十億、そのうちの三十億円余りが基金の金でこの三社に貸されてきた、この資金は全額返されたわけでございますか。
  167. 細見卓

    ○細見参考人 全額返済になっておりますし、貸し出しに当たりましては銀行の保証とかあるいは有価証券の担保とかいうのがついておりまして、一文の貸し倒れもございません。
  168. 小川国彦

    小川(国)委員 その次に、十五年間ですね、こういう長期低利、しかも据え置きを含めて金を貸してきたという事業が全く水泡に帰した。少なくも基金としては海外経済協力という名のもとにこの資金を貸し出したわけで、その十五年たった資金効果がまさにゼロに等しい状態で返ってきた。このことについては、少なくとも国の資金運用部の資金、これを使っている皆さんとしては、もしこの金がもっと適切な検討のなされた、もっと適切な事業に使われていたなら経済協力の資金として生きたであろう、今この状態においてはこの金は大変な国家的な損失になってしまったというふうにお考えになりませんか。
  169. 細見卓

    ○細見参考人 お金を貸しましたときに、貸した先の事業が失敗したときに、おまえは初めからわかっておったかと言われれば、実はわかっておらなかったわけでございまして、我々はよかろうと思ってやったわけですが、結果は必ずしも意にそぐわなかった。農業というのはそういう意味で大変難しい案件だということは身にしみてこたえております。
  170. 小川国彦

    小川(国)委員 もう一つ、やはり基金の総裁として厳しく考えなければならないのは、これは日本の国民の税金を投資したということと同じだと私は思うのですね。やはり日本の国民の税金を投資したからには、その投資したものは生きなければならない。生きなければならないんだけれども、いわば死に金として戻ってきた。しかもその間、これは非常に低利な資金で貸してきたわけですから、その面は日本の国の財政がそれを負担してきたわけですね。その点については、総裁としては、これは本当に申しわけなかったということをやはりおわびするというぐらいの考え方がなければならぬと思いますが……。
  171. 細見卓

    ○細見参考人 金が生きて使われなかったということにつきましては確かに大いに反省しなければならぬと思いますけれども、しかし、先ほども申し上げましたように、別にインドネシアのスカルノ大統領が特にどうだったというわけじゃございませんが、インドネシアの国を挙げての大事業、つまりジャワ島とスマトラとの間の経済格差というものをなくしよう、そのことに呼応して日本の商社の方々がいわばかなり思い切った事業をなさって、それが失敗に終わったということは、私どもとしては、まさに政府の金を思うように使えなかった、有効に使えなかったという意味で大いに反省はいたしておりますが、同時に、日本のいわば先端に立ってインドネシアの開発のために努力された方々の努力は、それが失敗に終わったことについてはもっと挫折感を持っておられるだろうと思います。  その意味で、私も反省いたしますし、これは先ほども申し上げましたように、経済案件というのは大変難しい案件だ。つまり、熱帯のエコロジーといいますか、そういうものまで踏まえて開発案件を考えなければならぬ。それじゃ、もう何もかも危ないから何もしないのかということになりますと、日本としてはいろいろ、先ほどもお話がございましたように、日本の畜産業を担うために開発輸入を大いにやらなければいかぬのだ。その点について、ひもじい国から開発輸入するのは何事かというおしかりもございましたけれども、にかかわらず、やはり日本としては安定供給先を探していかなければならない、また相手国の開発を考えていかなければならないという面がございますので、この件はまさに失敗でございましたけれども、こいねがわくは、失敗に懲りず大いに開発のために努力しろとお言葉をいただきたいところでございます。
  172. 小川国彦

    小川(国)委員 私、どうも総裁の答弁に海外援助の根本をもう少しょうかり持ってもらわなければならぬというふうに思うのですね。あなたの答弁では、スハルト、スカルノは死んでおりましたからスハルトです。スハルトが出てきた国を挙げての事業だったと言うのですが、これはそうではないのですね。これはあくまでも日本の商社の目新しい事業という位置づけでしかなかった。ジャワ、スマトラの格差是正がこういうようなわずか三農場の事業でできるなんというのは大それた考えで、そういうことを考えているとしたら、そこにまずこの経済協力事業のスタートの過ちがあったと私は思うのですよ。  それならばもう一歩進めて、今この三農場の現状はどうなっているのか、その点を把握されておりますか。
  173. 細見卓

    ○細見参考人 現在は多数のジャワ人も移住いたしまして、移住局の仕事としてどんどん農業に、小規模農業ですが、農業に従事しておると承知しております。
  174. 小川国彦

    小川(国)委員 それでは、具体的にこの三農場にどのくらいの移住者が移住して、どういう形態をなしているかということを伺いたいと思います。
  175. 細見卓

    ○細見参考人 その点は実は承知いたしておりません。統計の不備なところでもございますし、その点はよくはわかりませんが、先ほども申し上げましたように、ランポンというこの辺を中心とした地域に、インドネシア全体は人口が大体二%くらいの割合で伸びておるわけなんですが、ここは年率五%、つまり二百万人の人が移り住んで、とにもかくにも生計をなしておることは間違いないと思います。
  176. 小川国彦

    小川(国)委員 あなたから一般的な事情を聞かなくても、私も十年前、それから二年前に現地をつぶさに数カ月かけて見てきているのですから、あなたより私の方が詳しいと思うのですね。そのあなたが三農場が立派に移住が行われて成功していると言うので、大変情報も詳しい、立派に調査されていると思うので、じゃ、それぞれのミツゴロなりダヤ・イトーなりパゴ三菱なり、三農場にどれだけの移住が行われているかということをきちっと示してほしいと言っているのです。
  177. 細見卓

    ○細見参考人 その点は、先ほども申し上げましたように詳しくは承知いたしておりません。全体の人口を申し上げておるわけです。
  178. 小川国彦

    小川(国)委員 わからないことを言っちゃだめなんですよ。それは、ランポン州はスマトラでもジャワ島に一番近いところなんです。だから人口がふえるのは当然だし、それからもう一つ、先ほど総裁の答弁の中でしたね、あなたはフェリーもできたあるいは道路もできたと言うのですけれども、このフェリーをつくったり道路をつくったのは何のためであったか、政府の借款で。これは全部三農場のトウモロコシを積み出ししたいためにやったんですよ。私が第一回目に行ったときには、まだフェリーはなかった、道路もなかった。現地に行くのにもう大変な時間をかけて、十二時間かけなければ現地の農場へ行けなかった。そのために、できたトウモロコシを港へ出せないために、これも政府借款で、私ちょっと手元に数字を持っておりませんが、大変な金額をかけて政府借款で道路をつくった。それからフェリーも日本の借款でやった。言うならば、この三商社の三農場のために政府の借款も使われてきた、私はこう思うのですよ。それだけのことをやりながら肝心の農場が失敗に終わったということは、政府の借款事業も、形は残ったから役には立っているでしょうけれども、私は、これはやはり事業の失敗の中の一つの計画の挫折と見なければならないと思うのです。  それからもう一つ、あなたは、三農場が最初は立派に移民に引き継がれているということなんですが、私はその問題をもう少し突っ込んでいく前に、日本の三商社はここを引き揚げるに当たって、撤退に当たってインドネシア政府からそれぞれ補償金を得ているのですが、これについては外務省なり大蔵省は掌握されていますか。
  179. 橋本宏

    ○橋本説明員 お答えいたします。  昨年三月及び十一月にこれら三商社とインドネシアの移住省との間で契約が取り交わされておりまして、この契約に基づきまして三社の開墾費用並びにインフラ整備費がインドネシア政府より三社に補償金として支払われた、そのように承知しております。
  180. 小川国彦

    小川(国)委員 その三社に払われた補償金の金額と内訳は御存じですか。
  181. 橋本宏

    ○橋本説明員 三社に対する補償金につきましては、相応の額が払われたということを承知しておりますけれども、これはインドネシア政府と三社との関係でございますので、その具体的な額についてここで触れさせていただくのは御遠慮させていただきたいと思います。
  182. 小川国彦

    小川(国)委員 その金はどういう性格の金だというふうにお考えになっておりますか。
  183. 橋本宏

    ○橋本説明員 お答えいたします。  先ほど来答弁の中で触れられておるかと思いますけれども、本件当該事業が失敗したということは一方であるかもしれませんが、ともかくインドネシア移住省におきまして、それら当該用地を使いまして今後とも移民者用の農地として使っていきたいということでございまして、そのために既に三社が投下いたしました開墾費用だとかインフラ整備費につきましては、これを今後ともインドネシアとして活用していきたいという観点から補償金として還元した、そのように理解しております。
  184. 小川国彦

    小川(国)委員 あなたの方から数字が出ないので、私どもで調査した数字を申し上げたいと思うのですが、三井、三菱、伊藤忠三社は、三井物産がミツゴロ農場からの補償金として一億三千五百万、それから三菱商事がパゴ三菱の撤退費として一億九千万、ダヤ・イトーが同じく一億四百万、この中にはそれぞれ開墾費が七〇%から九〇%、それから道路、橋梁のインフラに対する補償として一〇%から三〇%、こういう金額が支払われているのです。  この数字を、外務省も大蔵省も基金も、あるいは農水省でも結構なんですが、日本がこういう援助をした、そして事業が失敗に終わって総引き揚げをした、その補償を、土地を置いて帰ってくるのだから開墾費用と橋代、道路代は払えということで、三億を超える補償金を取った、こういうことについては政府の各省庁は、こういう実態や数字を把握しておりましたか。これはいかがですか。
  185. 橋本宏

    ○橋本説明員 お答えいたします。  今の段階でその補償の額の内容等、詳しいことにつきましてはそれなりに我々は関係者から話は聞いておりますけれども、具体的な詳細のところまでは把握しておりません。
  186. 秋山昌広

    ○秋山説明員 ただいまの件についての補償金の問題でございますが、我々、特に話は聞いておりません。
  187. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 私どもも、詳細は承知をいたしておりません。
  188. 細見卓

    ○細見参考人 先ほど外務省の方からお答えになったようなことは承知いたしております。  ただ、私どもとその貸出先との関係は、先ほども申し上げましたように、必要な担保をいただいておって、その担保を換金していただいた、あるいは貸付保証をしておられた銀行に保証していただいたというような格好になっておりますので、具体的なことにまでは立ち至っておりません。
  189. 小川国彦

    小川(国)委員 これは、外務省それから大蔵省、農水省、いずれも海外経済協力ということで日本がインドネシアに農場をつくった。しかし、結局においてはトウモロコシづくりに失敗して撤退した。そして引き揚げてくるに当たって、またその政府から開墾料をよこせということで三社が金を取ってきたということについては、何というのか、日本の商社のしりぬぐいをインドネシア政府にやらせたのじゃないか。それからまた、もう一つ言うならば、インドネシア政府のそのしりぬぐいは、また日本政府が借款でやっているのじゃないか。  こういうことをやっていたのでは、日本の国民、国家のためにもならないし、インドネシアの国民のためにもならない経済援助だと私は思うのですよ。五十億の金をかけた。そのうち国の金が半分以上入ってやった。そして、数千ヘクタールの農場を開墾した。しかし、みんな四、五年で失敗したわけですよね。トウモロコシをつくったら、先ほど申し上げたように、ネズミに食われるかあるいはイナゴの大群がやってくるか、そして失敗して、今度は芋のようなタピオカをつくった、しかしこれも、つくったものを家畜のえさにヨーロッパ方面に売り出したけれども、値段が引き合わなくてだめだ。トウモロコシをやってもだめ、タピオカをやってもだめ。結局、行き詰まったあげくが、三商社は自分たちも損害をしょったでしょう。五十億のうち三十億ぐらいは、あるいは四十九億自分たちも損害をしょったかもしれません。けれども、長い間それだけの安い金利の金を貸しておいたのは日本の政府なんです。貸しておいた責任というのは、基金としてはやはり重大な責任があると私は思うのです。  しかも、引き揚げてくるのに、開墾してやったのだからその費用をよこせと言ってインドネシア政府から取ってきた。取ってきたことの具体的な数字も経過も日本の政府が承知していないというのは、外務省の方、よく聞いてもらいたいのですが、日本の商社のあり方というものは常々エコノミックアニマルだと言われている。日本の世界各国における外交官よりも、商社の支店長の方がそれぞれのところで力を持っている。インドネシアで言えば、日本の大使よりも、自動車会社の支店長の方が大統領選挙に何十台もジープや自動車を貸すから、何々大臣に会いたいというのは、大使に頼むよりも自動車会社の支店長に頼んだ方がいいと言われるぐらい、そのくらい商社が力を持っているのです。  その商社がやりほうだいのことをやって、失敗したからと言って、引き揚げてくるときに、あなた方のところへ何千ヘクタールという開墾した土地を置いてくるのだから開墾料をよこせ、橋もつくってやったのだから橋代もよこせ、自動車代もよこせということを言って取ってきていたのでは、日本が本当にその国のために援助としてやったのか協力としてやったのかという意味はなくなってしまうのではないかと思うのですよ。少なくとも、第一義的には外務省が経済協力を指導しているわけですから、その点を把握して、そのことがいいのか悪いのかということをやはりきちっと把握してなければならぬと思うのですが、その点はいかがなんですか。
  190. 橋本宏

    ○橋本説明員 本件プロジェクトにつきまして、今まで政府側から御答弁申し上げましたけれども、我々もその反省に立ちまして、今後ともより効果的な経済協力をしていかなければいけないということにつきましては、先生まさに御指摘のとおりであると考えております。  ただ、この問題につきまして、これは解釈の問題というふうに先生は言われるのかもしれませんけれども、我々といたしましては、インドネシア政府側がこれらの土地を移民者用の農地として利用していきたいという考えを持っておると承知しておりますし、それ以外にも、当該地域の一部につきまして、今後とも、木炭を使ったモデル製鉄工場用の木炭原料生産のための植林地として使っていく計画もあるようでございますし、また農業高校建設用地としても利用していくということのようでございます。そのために、事業自身が失敗したことは甚だ残念なことではございますけれども、その中にありましても、インドネシア政府側といたしましてこれらの利用を考えていきたいということはそれなりに評価しなければいけないのではないかと思っております。
  191. 小川国彦

    小川(国)委員 それから、国際協力事業団によって社会的な費用を負担した、道路や橋もつくってやったということなんですが、そうすると、国際協力事業団が金を出してつくってやった道路や橋の補償金を今度は商社がもらってくるということになりますね。この点はいかがなんですか。
  192. 浅見真

    ○浅見説明員 お答え申し上げます。  私、ここに詳細な数字は持ち合わせてないのでございますが、先ほど申し上げましたように、橋でございますとか道路に対しまして、国際協力事業団はこの事業に対しまして約一億二千万円の資金を融資したわけでございますが、この橋でございますとか道路につきましては、恐らくそれ以上のかなりの金がかかっているのだろうと思います。それで、国際協力事業団が融資しました対象はすべてのコスト、経費をカバーしたものではございませんで、三井物産あるいは三菱商事等、本件の関連の商社がみずからの資金も持ち寄りまして、このような橋でございますとか道路、あるいは学校もあったと思いますが、こういうものを建設した次第でございます。
  193. 小川国彦

    小川(国)委員 これは問題として残ることですね。日本の事業団が金を貸してつくってやった道路や橋を、商社が引き揚げてぐるときに、今度は補償金で取るというのはどうしても問題として残る。私は、今後そういう点も正されるべき問題だと思います。  いずれにしても、こういう経済協力、今皆さんは、最終的に農業高校になるとかモデル製鉄所の植林地になると言うのですが、インドネシアというのは、カヤの一種であるアランアランという物すごくとがった雑草が繁殖していくわけですよ。日本の農家は畑の草取りとの戦いなんですけれども、インドネシアはもっと強烈な、強靱なアランアランという草が瞬く間にふえていくわけです。この三農場が引き揚げた土地は、またアランアランの荒野に返ってしまうのだ。恐らく二、三年したら戻ってしまうのじゃないかと思うのですね。日本は、五十億も金をかけてつくって引き揚げた、そして引き揚げるときに、開墾した土地を渡したんだからといって、商社がまた三億の金をもらってきた。だけれども、残した土地はもう数カ月でアランアランの荒野に化して、この間も東南アジア・ジャーナリスト協会で来たインドネシアの新聞記者に聞いたら、あのアランアランを何とかする方法を日本の熱帯農研なり筑波の研究所で、考えてくれということでした。しかし“私は、ああいう強力な草をなくすという方法は簡単にできないだろうと言いましたが、そういう草が出てしまったら日本の経済協力は-さっき基金の総裁はインドネシアの開発に足跡を残したと言うのですが、実際聞いたら、総裁は現実に移民がどれだけ進んだかも知ってないし、外務省自体もわかってないでしょう。移民が何戸行われてどういうふうになっているか、わかりますか。
  194. 橋本宏

    ○橋本説明員 今の三当該地に具体的に何人移動しているというところまでは、恐縮でございますけれども、把握しておりません。
  195. 小川国彦

    小川(国)委員 結局、今は後は野となれ式の状態だと私は思うのです。そういう意味では、日本の政府は責任があるので、外務省も大蔵省も農水省も政府として現地実態調査をする、そうして、日本が農場をつくることに失敗したけれども、その土地は、今度はインドネシアの農民が移民をして立派な農地に生きたというふうにしなければ、日本がインドネシアに経済協力をしたという歴史は残らないと思うのです。  最後に、そういう意味で農水大臣、今まで経過をお聞きになったと思いますが、日本の経済協力が本当に生きたものになるような、そういう各省庁の連携と指導を大臣にお願いしたいと思います。
  196. 山村新治郎

    山村国務大臣 ランポン農業開発事業の教訓を生かしまして、農業開発協力事業の実施に当たりましては、相手国の自然条件、農民の状況等実情に即したものを進めていくということを今後ともきめ細かくやっていきたいと思います。  また、これが教訓となりまして、せんだってブラジル大統領がおいでになりましたときにセラードの開発の御協力方の要請がございました。今までだれも手がつけられなかった強酸性の土地だったそうですが、これを五万ヘクタールばかり日本の農業開発協力事業ということでやりましたところ、これがブラジル内の普通の農地よりもコーヒー豆等に関しては収入が三倍も四倍もあるというようなことで、今回ブラジル大統領から五十万ヘクタールの要請があったのですが、十五万ヘクタール、金額にして約七百億になりますが、日本とブラジルと半々持ちというようなことで、こういうような喜んでいただいていることもございますので、今後とも実情に即した開発計画をやっていきたい、そういうぐあいに考えます。
  197. 小川国彦

    小川(国)委員 では、終わります。
  198. 阿部文男

    阿部委員長 武田一夫君。
  199. 武田一夫

    ○武田委員 きょうは、水産庁と食糧庁に若干御質問いたします。最初に水産庁に、それから外務省も来ておりますから、一緒に関係の部門についての御答弁をいただきたいと思います。  先月の末に、北朝鮮、いわゆる朝鮮民主主義人民共和国の警備艇に石川県のイカ釣り漁船が銃撃を受けて、負傷した船員が死亡するという事件がございました。この問題についてお尋ねいたします。  非常に不幸な事件でございまして、船長さんも亡くなられた、御家族の皆さんには、心からお悔やみを申し上げる次第でございます。最近ある新聞に「丸腰とわかっている乗組員たちをなぜ銃撃? 北の海の緊張の犠牲者は、いつも漁民。」こういう短い記事が載っておりました。まことに私もそのとおりだと思います。最近、こうした事件を含めて漁業を取り巻く環境は非常に厳しい。特にことしは異常気象の関係が海にもあるようでございまして、とれるべきところでとれない、不漁であったというような環境のあったことも事実でありますけれども、しかしながら、私は、こうした不幸な事件が起こっている背景には、やはり当局がもっと心を砕いてしかとした対応をしなければならなかった問題があるように感ずるわけでございまして、以下、その点についてお尋ねをしたいと思います。  まず第一番目に、こうした事態がどうして発生したのか、当時の経過、実情を詳しく聞かしていただきたいと思います。そして、この事件の発生後、どういうふうな対応措置を講じてきたものか、その点もあわせて御答弁をいただきたいと思います。
  200. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  私どもは、事件の発生を知りました直後、直ちに日本赤十字社を通じて朝鮮赤十字会に対し安否の確認と負傷者の保護を要請いたしました。これに対しまして、八月一日午前一時、朝鮮赤十字会から日本赤十字社あてに電報が入りました。電報は、次のような内容でございました。  七月二十八日午前零時十分ごろ、北朝鮮海上警備艇が、北緯四十一度三十三分五秒、東経百三十一度二十一分の軍事境界線内で正体不明の船舶を発見した。これが三十六八千代丸でございます。同船は警備艇の取り調べ要求に応ぜず、警備艇に衝突、損傷を与え、逃亡を試み、その後、再三の停船命令をも無視し逃亡しようとしたので、北朝鮮の警備艇は威嚇射撃を行った後、同船を拿捕した。同船の行泊貢船長は、海上警備艇からの射撃により死亡した。同船は現在清津港に停泊中で、他の乗組員四名は元気である、こういう電報が入りました。  八月一日午前六時、日本赤十字社を通じて北朝鮮の赤十字会に対し、遺体及び乗組員の早期帰国を含めて適切な人道的措置をとるように要請をしたところであります。  今後とも関係省庁と連絡をとりまして、事実関係の究明に努めるとともに、適切な対応をしてまいりたいと考えておりますが、現在のところ、事件のてんまつにつきましては以上のことしかわかっておらないというような実情でございます。
  201. 武田一夫

    ○武田委員 その場所あるいはまたそうした事態に至る北朝鮮側と日本側の推定でちょっと違うわけですね。片方は軍事境界線内に侵入して云々、片一方では、いやその外側の沖の方であった。この事実関係は、しかと正確に掌握をしておかないと、また掌握することが今後の再発防止への一つの手がかりともなるのじゃないかと私思うのですが、この点はまたしかとした状況はつかんでない、こういうことですか。
  202. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  第三十六八千代丸が北朝鮮警備艇に拿捕された場所は、僚船が傍受した無線によると四十一度四十分ノース、百三十一度三十五分イーストでございまして、これは北朝鮮側が主張しておる位置とは食い違っております。それで、現在までのところ、何しろ第三十六八千代丸の乗組員自体がまだ帰国するに至っておりませんので、どちらのあれが正しいか、あるいは本当の場所は別のどこかであるかということについて、私どもとしてまだ確かめ得る状態にはございませんが、再発防止のためからもそこら辺の事実関係調査することは必要であると思っておりまして、そういう意味でも一日も早く乗組員が帰国することを望んでおる次第でございます。
  203. 武田一夫

    ○武田委員 この問題のあった海域周辺は、これまでも何回かそういう銃撃、拿捕等があったと聞いておるわけでありますが、ここ一、二年の状況というのはどうなっているか、ひとつ実態を聞かしていただきたい。
  204. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  昭和五十七年には拿捕漁船が三隻ございました。五十八年には同じく拿捕漁船三隻でございます。それで、五十八年までに拿捕された漁船はすべて釈放されております。昭和五十九年に入りましてからは今回の第三十六八千代丸も含めて五隻拿捕されておりまして、そのうち一番最初に拿捕されました第七十七心祐丸は釈放されておりますが、第三十六八千代丸を含む四隻がまだ釈放を見るに至っておらないという状況でございます。
  205. 武田一夫

    ○武田委員 ニュースによれば、こうした事件の背景には、北朝鮮との民間漁業協定が失効してから北朝鮮当局によるそういう拿捕、銃撃等がちょっとふえているというのは、日本漁船の取り締まりの強化を決定した、そのことの一つのあらわれではないのか。だから、そういうことが一つの空気として、特に五十九年などは五隻とふえているわけでありまして、それが今回の銃撃死亡事件にもつながっているという事態を考えるときに、向こうの方のそういう一つの方向としての取り締まり強化の中で、やはり相当警戒しなければならなかったのではないか。そういう実情を政府当局がしかとつかんでおれば-漁場がその辺は非常にいいところのようでありますけれども、そういう一つの民間協定が失効している、その間の対応について、私はやはり関係漁船あるいは組合等々にしかるべききちっとした指導やあるいはまた監督、警戒の態勢を十分にやっておくべきでなかったのかなという気がしてならない。  漁が少なかった、その分を取り返さなくちゃいけないとなると、どうしてもやはり無理をしがちであるということは私もわかります。そういうことを考えると、乗組員の話にも、危険を覚悟で出かけていっているのだ、こういうことを言っていたということも聞いております。ですから、不慮の災難、そういう危険があるかもわからぬということも覚悟しながらも生活のためにイカその他の漁に出かけていかなければならない、そういう厳しい環境にあるわけでありますが、こういう事件が起こりますとそれ以上に大変な問題でありますので、私はこういうことに対する関係漁協あるいはそういう乗組員への指導というか、そういうものをもっとしかとやって、また、そちらの方に越境するようなことのないように監視船等が警戒をするというようなことも必要でなかったのかという、そういう点の配慮はどうなんでしょうか。
  206. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  先生指摘のとおり、日朝民間漁業暫定合意が五十七年の六月三十日をもって期限切れになりました。私どもといたしましても、期限切れになりまして以降、北朝鮮側が二百海里の管轄権を主張しております水域に入ると不測の事態が生じかねない、危険であるということで、機会あるごとに関係業界を通じて当該水域での操業を差し控えるように指導を重ねてきたところでございます。また、水産庁の監視船で日本海に派遣している監視船は、定時通信の機会をとらえて直接イカ釣り漁船に対する指導も行ってきたところでございます。  先生指摘のように、ことしに入りましてからまたこういうことでございましたので、七月に改めてまた関係都道府県及びイカ釣りの協会に対して特段の操業指導を行うように通達をしたところでございます。私どもとしては、従来から、こういうことのないように繰り返し指導してまいったつもりでおりますが、今後とも引き続き、繰り返し強い指導をしてまいりたいと思っております。
  207. 武田一夫

    ○武田委員 そこでもう一つ、今回のこうした不幸な事件を引き起こした大きな原因は、やはり外交上の問題があったと思うのです。ですから私は外務省にお尋ねしたいのですが、一昨年の六月末に日朝漁業協定の有効期限切れ、その後三度目の期限延長は、日本の漁業関係者は非常に要望しておりながら政治問題が絡んだために進展しない、非常に困ったものだ、地元の漁協の皆さん等は頭を悩ましていた、こういうわけであります。ですから、この問題について、どういう事情で今日までこうなってきたのか、これから要するに漁協の皆さん等が安全操業ができるように、しかとそういう方向への対応というものをやっていってほしいし、やらなければならないが、そういうことへの対応はどうなっているのか、この問題についての御答弁をひとつ外務省からいただきたいと思います。
  208. 高島有終

    ○高島説明員 お答えいたします。  先生指摘のとおり、一昨年の六月末日までは民間レベルでの漁業暫定取り決めがあったわけでございますが、それが失効して今日に至っておるわけでございます。  御承知のとおり、もともと北朝鮮とは外交関係がないという事情のために、漁業問題につきましてもこのように民間レベルでの合意に基づいて操業が行われてきたわけでございますが、それが不幸にいたしまして一昨年の六月末日でもって失効して、その失効した状態が今日まで続いているということは、外務省といたしましても非常に残念なことであると思っております。また外務省といたしましても、この日朝間の漁業問題が我が国の漁民の方々の生計にもかかわる問題であるということで、その重要性は十分認識いたしておるところでございます。しかし、外交関係がないという事情のために政府ベースでの話し合いはできないわけでございますので、今後とも外務省といたしましても、民間レベルでの漁業取り決めの再開に向けまして日朝の民間当事者間の話し合いが進展することを期待している、こういう状況でございます。
  209. 武田一夫

    ○武田委員 聞くところによると、向こうは民間レベルでなくてもいい、日本が望むならば政府筋の話し合いでも構わぬというようなことも言っているようです。近隣諸国に行き来するあるいはその近くでの漁業の操業、そういうものの安全性をきちんと守ってあげなければならない責任は外交の中における一つの大きな仕事です。そういうことを考えると、こういうふうに長い間放置しておくなどということはやはり努力が足らないと思うのです。ですからこれは水産庁にも要望しておきたい。  いずれにしても、民間でできなかったらそのままではいけない、我々としてもできるだけのことをやろうという努力がどれほどあったかということですね。ですから、外務省と農林水産省がしっかり連携をとって、生活の一番の糧となる非常に重要な場所においてこういう不安な状況があれば大変なことだ、二度とこういう不幸な事件がないような対応を早急にしかとしてほしい。事件というのは一度あると二度あるのですね。ヘリコプタ}を見てみなさい。向こうで落ちるとこっちでまた落ちるという連鎖反応があるのです、不思議なことに。ですから、この死亡事件を大きな戒めにして対策をしかとやってほしい、そして安心して操業ができるように漁民の方々を守ってほしい、こういうことを思うのです。  大臣からその点についての御見解と決意のほどを聞きましてこの問題を終わらせてもらいますが、最後にもう一つ、亡くなられた方、遺族の方々に対するしかとした処遇を考えてあげなければならぬと思うのです。  これは、漁協等でいろいろ考えると思います。しかし、私はこの間、宮城県沖の事故で荒波にもまれて亡くなった十何人かの方々の人から話を聞いたけれども、補償の問題で、やると言うがなかなかまとまらないんですね。恐らくいまだに決まってなくて、私にも何とかしてもらえないかという電話が来たこともあるのです。これはこの事件とまた別ですけれども、いずれにしてもこういう事件がありますと被害を受けた方々の遺族というのは大変苦労している。この点もよく実態を調べて、万全の対応をしてほしいということを重ねてお願いしたい。大臣からひとつ御答弁いただきたい。
  210. 山村新治郎

    山村国務大臣 おっしゃられたとおりに、確かに事故というのは連鎖的に起こってまいります。飛行機事故などというのも、本当に大きな事故というのはそれこそその年にまとめてというような感じもございます。このようなことがないように、日朝友好促進議員連盟、日朝漁業協議会、これら関係者によりまして暫定合意復活のための最善の努力が重ねられてきておりますものの、いまだ実現をいたしておりません。政府といたしましては、国交のない国との関係でもございますし、直接交渉を行うことはできませんが、今後とも暫定合意早期復活が図られるように、関係者と密接な連絡をとりながら鋭意努力してまいりたいと思います。
  211. 武田一夫

    ○武田委員 ひとつきちっとお願いしたいと思います。  次に、捕鯨問題について、水産庁としましては我が国捕鯨産業を今後どういうふうにしていこうと考えているのかお聞きしたいと思おのです。  最近の新聞記事でありますが、これは水産庁長官の私的諮問機関だそうでありますが、捕鯨問題検討会が、日本としても南極海での商業捕鯨をやめ、資源調査のための捕鯨活動を存続すべきだ、こういう報告をされた。これを受けて、従来IWC決定、いわゆる国際捕鯨委員会の決定に拘束されずに商業捕鯨を続けると表明してきたその姿勢を転換する方針に傾いているようだという内容の記事が載っていたわけでありますが、この点の記事も気にかかりますので、その点も含めて御見解を伺いたいと思います。
  212. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  我が国の捕鯨を取り巻く国際情勢は、一昨年のIWCの年次会議におきまして商業捕鯨モラトリアムが決定をされまして、本年のIWC会議でさらに捕鯨枠の大幅削減等極めて厳しい決定が行われている実情でございます。私どもといたしましてはこのような情勢の中で、このような情勢を十分踏まえて先般御報告をいただきました捕鯨問題検討会の貴重な御意見も参考にさせていただき、米国を初めとする主要関係国との協議を通じて我が国の捕鯨が何らかの形で存続し得るよう、今後とも最善の努力を尽くしていきたいというふうに思っておるわけでございます。  それで、お尋ねでございますので、この捕鯨問題検討会の報告がいかなるものであるかということについて一言御説明させていただきます。簡潔に申しますと、捕鯨問題検討会の報告の骨子というのは四つに集約できると思います。  一つは、IWCが行った商業捕鯨モラトリアムの決定というのは、鯨種別、系群別の資源状態を無視して行われた科学的根拠を有しないものである、鯨資源の有効利用という国際捕鯨取締条約の基本精神から見ても不合理なものであるという御判断をお示しになっていることでございます。  第二は、しかしながら捕鯨を取り巻く情勢というのは、商業捕鯨の全面禁止に賛成する反捕鯨国というのが国際捕鯨委員会の中でもう既に四分の三を上回る多数を占めているという状況にあり、かつ米国政府は、我が国に対する北洋における米国二百海里内の漁獲割り当てと捕鯨問題をリンクさせて、我が国の異議申し立ての取り下げを強硬に迫っている、こういう非常に厳しい客観情勢下にあろという御認識、それが第二のポイントであります。  そういう二つの要素を考えまして、その中でモラトリアム発効後の我が国の捕鯨のあり方ということを考えると、その捕鯨を存続させていく行き方というのは、南氷洋捕鯨については科学的な調査捕鯨活動という位置づけ、それから沿岸捕鯨につきましては社会的、経済的、文化的な意味で地域住民生活のための必要不可決な捕鯨であるという位置づけ、そういう点に立脚をして、関係国の理解を求めながら捕鯨の存続を図っていくべきであるというのが第三点。  第四番目といたしまして、我が国の捕鯨の今後の存続のためには、米国を初めとする諸外国の理解を得ること、さらにIWCの持つ機能が正常な形で発揮されるようにすること、こういう面についての外交的な努力を一層傾注すべきであるということでございます。大ざっぱに取りまとめますと以上のような骨子になります報告をちょうだいしたわけであります。  私どもとしては、こういう考え方を参考にさせていただきながら、今後の我が国の捕鯨の存続のさせ方について検討をしてまいりたいと思っておるわけでございます。
  213. 武田一夫

    ○武田委員 今の報告書の中でも、IWCの商業捕鯨の全面禁止は科学的根拠を欠き、正当性を欠いている、不合理なものであるということははっきり指摘しているわけです。いろいろと実情を聞いてみますと、現在南氷洋には少なくとも四十万頭が生息している。年間六千頭ぐらいは資源の枯渇云々という問題からはほど遠い議論であるということなども日本側は主張しているわけであります。しかも、その上に日本は資源の調査に当たっても多額の金を出して非常に協力的である。しかしながら、アメリカ等の非常な反対、特にアメリカの反対が強い、こういうことで、さっきもあったように、もし全面禁止の異議申し立てを取り下げなければ、漁獲割り当てを削減あるいは今後二年間でゼロとか、いろいろ報復措置みたいなことも考えている。穏やかでないと思う。もし商業捕鯨というのが全面禁止などにされたら相当影響があると思うのですね。  そういう点で、現在地域によっては、わずかな地域であるけれども、和歌山県や宮城県などの地域における基幹産業として、それだけでずっと生きてきた、それ以外に生きる道はないという方々がたくさんいる。大体人口にすると関係者は一万五千人ぐらい。そういうふうな方々の雇用と生活、またはその辺にある捕鯨業者が持っているいろいろな土地、施設などの管理等、いろいろと下請の皆さん方のことを考えると、この方向への転換というものは私は水産庁に十分に考えてもらいたい、こう思うのですが、その点どうですか。
  214. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  ただいま先生がお挙げになりました論点は私どもも十分肝に銘じてよく認識をしておるところでございまして、今後我が国の捕鯨の将来を検討するに当たっては十分心を配っていくべき点であると考えております。
  215. 武田一夫

    ○武田委員 一日の衆議院の外務委員会で安倍外務大臣がこの問題についての質問に答えていますね。そこで、IWCが六月の総会で決定したこの八四−八五年漁期の捕獲枠については、我が国の捕鯨産業を危うくするものであり、異議申し立ての可能性も含めて対応を検討していきたいということを言っています。アメリカは異議申し立てを取り下げなければそういう報復措置。しかしながら、外務大臣の言う捕鯨産業の日本における重要性、そういう関係者のことを思えば、こうした答弁は私は当然のことと思っているわけです。水産庁としても、今後場合によって異議申し立てをするというときに、ともに力を合わせて頑張ってもらわなければいかぬときが来るのではないか、こういうふうに思うのですが、その場合の水産庁としての決意はちゃんと持っていてもらいたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  216. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  私どもといたしましては、アメリカと折衝をする場合の我が省の態度が外務省より軟弱であるということは決してあり得ないことでございますから、その点は外務大臣の御答弁と同じようなラインで対処するつもりでおります。
  217. 武田一夫

    ○武田委員 大臣、この問題は非常に深刻ですよ。ですから、海員組合の皆さん方が各地において、もう本当に伝統的な日本の産業として、しかもそれはその地域を非常によく支えてきた。ところが、こういうふうな状況なものですから、一生懸命努力しながら寂れていっている。しかしながら、何としてもそれを残しながらそこで生きていこうという方々の大変な努力というものを考えたときに、小さなものであるかもしらぬけれども、大変大事な日本の伝統的な海の中の一つの大きな産業の占める位置を私はもう一度重要視をしてほしいと思います。そして、これまで大変な御苦労の中で今日を支えてきた方々を干ぼしにしてはいかぬ。  私は大手の会社のもとに一生懸命その下で働いてきた方々をたくさん知っていますが、もうそれ以外に生きる道がないのです。年も大体四十五、六、五十近い方々が五〇%以上ですね。これから後ほかに仕事を求めるといっても、とてもできないという方々が今中核ですよ。そういう意味で、伝統の灯は大臣の力でひとつしかと守ってほしい、このことも重ねてお願いしておきます。大臣の決意を聞かせていただきたい。
  218. 山村新治郎

    山村国務大臣 我が国の捕鯨を取り巻く国際情勢は、一昨年の商業捕鯨モラトリアムの決定、本年の捕獲枠の大幅削減等、極めて厳しいものとなっております。実はきのうもこの捕鯨関係皆さん、海員組合の皆さんも一緒でございましたが、陳情にもおいでになりました。私といたしましては、外務大臣、そしてまた今水産庁長官から述べましたとおり、今後とも何らかの形で存続するというようなことで最善の努力を尽くしてまいりたいというぐあいに考えます。
  219. 武田一夫

    ○武田委員 しかとお願い申し上げまして、次に移ります。  私もあちこち歩きますと、最近一ついろいろなところで気になることがあるのですが、日本の文化、まあ農業という一つの産業の中に文化があるわけですね。古いよき伝統が失われてきているし、古い歴史がもう忘れられている反面、それを今度は大切に保存しようという運動も起こっているわけですが、私はきょうは水産関係の資料館とか博物館、展示館みたいなものがどうなっているかということをちょっと聞きたい。  というのは、日本は世界に冠たる水産王国ですね。ですから、そういうことを考えますと、先祖伝来のいろいろな漁業のあり方、あるいはまた器具、器物、いろんなものが残っているわけでありますが、それをどういうふうに後代に残そうという努力をしているかということをいろいろ勉強したのです。県や市町村はそれなりにその地域のことでやっているのですが、どうも国全体として一つの大きな規模の中に、日本のすべての漁業の歴史というものがわかって、そこにみんなが来て、日本のそういう漁業というもの、水産業というものをしかと学びながら理解するというものが少し欠けているのではないかなという気がするのです。この点どうでしょうか。
  220. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  ただいま先生おっしゃいましたように、地方公共団体がつくっております。その種の施設の中には大変ユニークなものがございまして、先生の地元の宮城県で申しますと、例えば牡鹿町の町立鯨博物館というのがございますし、鯨について申しますと、和歌山県の太地町にも町立のくじらの博物館というようなものがございます。それで、地方でのこの種の施設については、場合によりましては私どものやっております沿岸漁業構造改善事業の中でつくっております漁村センターなどが、そういう漁業に関する文化的な資料の展示の場として利用されているというようなこともございまして、私どもとしても今後こういう形でお手伝いできるのであれば、喜んでお手伝いをさせていただきたいというふうに思っております。  ただ、先生今提起なさいましたような全国的な雄大な規模のものということになりますと、現在あるものでややそれに近いかと思われますのは、例えば北海道大学の水産学部の水産資料館とか東京水産大学の水産資料館というのがやや先生のお考えに近いものではないかというふうに思われますので、そういう意味では、先生のお考えのような方向のものをさらにもっと雄大なスケールで考えてみるというようなことになりますと、そういうものが現に大学関係の施設としてあるというような実績から見ましても、文部省とかその他ほかの役所ともいろいろ相談をしてみなければいけないというふうに存じますので、大変魅力的な御示唆であるというふうに思いますけれども、それじゃこうしましようというふうにまではお答えいたしにくいと思いますが、検討させていただきたいと存じます。
  221. 武田一夫

    ○武田委員 みんな抵抗なぐ入っていけるものが必要です。確かにそういうものが大学にあります。けれども家族そろってあらゆる方々が非常に楽しみながら勉強でき、歴史もわかり、それで水産に対する理解、海に対する理解、こういうものが必要だ。米の消費拡大なんかも随分一生懸命やっているようだけれども、正直言うとなかなかうまくいっていないのです。それはある特定のところでごちゃごちゃとやっているからです。宣伝も下手だし、日本人というのは一般的に宣伝下手ですね。  ですから、今日本にとって大事なのは、農業と漁業の国民的な関心の度合いをどれほど持たせて、どれだけ心の中にそういう一つの歴史、重要性というものを植えつけていくかという教育的な立場での資料館、しかもそれは、そこに行けば結構楽しめるし、その地域の発展にも貢献するというような、これから国際化時代と言われて、海外からたくさんの方々が来たときに、日本のそういうものが彼らにとって観光の一つの目玉にもなるような、多角的な問題を内蔵したものを水産庁、私は林野庁にも山の問題については後でいろいろと要望しようと思っているのですが、新しい二十一世紀と中曽根さんが言っていますが、そういう一つの画期的なものを目指しての、斬新的でしかも規模のしかと大きいものを考えて、これは先ほど文部省のことがありましたが、文部省との連携も必要です。そういうことで連携をとりながら、一つの課題として全国に二、三カ所くらいは置かれたらいかがかという提案をしておきますので、お聞き取りいただきたい、こういうふうに思います。  それでは、次に食糧庁にお願いしたい。米の問題は、米価が決定したから終わったと言いたいのでありますが、続きがありまして、これはずっと続いていくわけでございまして、長官にはまた一層頑張ってもらわなくてはいけない問題がございます。正直言っていろいろ大変な御苦労があって、私はその御苦労に敬意を表するのでありますが、農家皆さんにとっては、今回の米価決定等々はふんまんやる方なく各地に散っていった、私はそういうふうに思います。やはり一国の基幹産業そして主食である米をしかと安心して誇りを持ってつくれるような、生産意欲を持てるような対応を、次の機会でも結構ですから、十分にこれから考えておいてほしいと私は思います。  その米価の決定の際、大臣の談話の発表がありました。そこでちょっと気になることが一つございます。それは自主流通助成についての奨励金の問題。この中では「奨励金は現行どおりとするが、自主流通米制度の健全な発展を図る立場を堅持しつつ、来年度においてその流通実態等を踏まえその縮減合理化につき検討を行う。」こういう一項目があるわけであります。  私は当委員会で随分時間を使って、良質米の存在意義と貢献度、それと生産する苦労、大変な経費がかかっているぐあい等々、いろいろ御説明申し上げたのであります。こういう一項目があるということは、来年度どうなるのだ、今つくっている人に、ことしはやらなかったけれども来年またこれに食い込むのかと心配させながら仕事をさせる、これが一番いけない。体の疲れよりも精神的な心配が一番いけないのでありまして、これはどういうことを言っているのか。要するに来年度の奨励金削減のための作業を今からやっていって、来年はその方向への一つの足がかりを検討するということなのか、いやそうじゃないのだ、良質米を守るための努力をもっとするための一項目なのかということを、私は大臣にしかと聞いておきたいと思うのです。O山村国務大臣 良質米の奨励金につきましては、自主流通米の流通量が年々増大して、また生産者手取り額も増加してきたところから、臨調等から厳しい指摘が行われたところでございました。しかし、本年の取り扱いにつきましては現行どおりということにしたわけでございます。来年度自主流通助成につきましては、本制度の健全な発展を図る立場を堅持しつ2自主流通米の流通実態を踏まえましてその縮減合理化検討を行ってまいりたいというぐあいに考えております。
  222. 武田一夫

    ○武田委員 それは今大臣が言う前に私言ったわけです。要するに奨励金を削減するような事態に当面していると理解しているのかどうか。良質米が消費者の皆さん方には大変喜ばれて、良質米志向の消費者の好みにまことによくこたえているわけです。大都会、東京などに対しては大変な貢献度があるわけでしょう。八割ぐらいはそれでお世話になっている。ますます消費が減って、都会では五十キロ台切っているわけですから、そういうことを考えるときに、懸命な努力をして提供している生産者のことはさっぱりここに書いてないわけです。     〔委員長退席、衛藤委員長代理着席〕 一言あればいいのです。ここの中に生産者の苦労やいろいろ大変なことはよく認識しているということが一つもないのだ。これはいかぬと思うのです。さっき大臣からくしくも臨調さんという話が出てきましたね。臨調はいいですよ。私は、臨調の方々に余り気兼ねしなくたっていいと思うのです。大事なこういう米をつくっている方々は、もし切られたら私は間違いなく後戻りすると思う。現実に現場を歩いてみてもらいたい。大臣、国会終わったら各県を長官と一緒に回ってみてください。良質米の生産者の実態をよく聞いてください。臨調さんにも、偉い人にも一緒に行ってもらったらわかると思うのです。それをすぐ、何かあると臨調と言うからいけないのです。そういうのはタブーにしてほしい。これは並み大抵ではない心その点もう一度重ねてお聞きしたいと思うのです。
  223. 山村新治郎

    山村国務大臣 今御答弁申しましたように、臨調から厳しい指摘が行われましたが、本年度は現行どおりということにいたしましたし、また来年の自主流通助成につきましても健全な発展を図る立場を堅持しつつ検討してまいるということでございますので、この点、臨調の言うとおりでしたら本年度は手を加えなければならないところを、現行どおりとして頑張ってきたところでございますので、これもおわかりいただきたいと思います。
  224. 武田一夫

    ○武田委員 私は頑張ったのを認めているわけです。大変に御苦労さんでした。ありがとうございました。そういうことを心に踏まえてお願いをしているわけでありますから、頑張ってほしいと思うのです。これはよく実態を調べて、知らない人たちにいろいろなことを言わせることはいけないと思うのです。私は全部否定はしません。ただ、わからぬで言っている方々に現場をよく見てほしいと思うのです。状況を知った上でそうであるならば、農家の方だってこんな大変なときだと知っているのですから、それをやけにごり押しはいたしません。私はそのことは信じてほしいと思うのです。  次に、他用途利用米についてもまた大変御苦労なことでございました。そこで、私も米価が終わった後またあちこち農村を歩っていたときに、元食糧庁の検査員をやって長いこと農業仕事に携わっている方にたまたまお会いしました。そのときに、やはり他用途米というのは、一般論としてこれはあくまでも他用途米として利用するのであって、主食用として使うというのはことし限りの、要するに特別の措置なのかどうか、あるいはまた、今後も他用途米として名前は出しているけれども食用に回す、心の中ではそう思いつつそういうものをつくらせていくものかどうか、これはちょっとそういう中身を知りたいんだ、こういう話を聞いて、私はなるほどなと思いました。ですから、かわってちょっと質問したいのですが、その点どうですか。
  225. 石川弘

    ○石川政府委員 他用途米はあくまで加工原料を目的としてつくっていただいているわけでございます。本年におきましてもそういう考え方でやったわけでございますし、来年度以降の問題としても当然加工原料ということを目的にやっていただくつもりでございます。
  226. 武田一夫

    ○武田委員 そうしますと、例えば整粒四〇ないし四五%のものを他用途米のかわりとして使用するということも検討すれば、これは結構な数が集まる、経験上からその人の言うのには。間違いなく十分需要に応じられるものは出てくるはずである、また、〇・九ミリ以下の米を他用途米として使うこともやはり考えれば、そう他用途米の加工用原料としての米に悩むことはないはずなんだが、これはどうなんだろうか、こういうことなんですが、この点はいかがですか。
  227. 石川弘

    ○石川政府委員 今回のこの他用途米の扱いにつきまして論議されました中で、先生指摘の規格というものをどう考えるか、現在は主食としての規格は三等以上ということでございますけれども、これ以外の形でできないかということはいろいろ論議になっております。  端的に申し上げますと、その規格を新たに設定して行うということは、主食の世界に入り込んでくれば本来主食として認められたものを他用途に回すことになりますし、逆に他用途のものをすべて現在で言います特定米穀、いわば等外とか規格外のもので充てるということになりますと、この特定米穀の世界自身が現在それなりの需要があるわけでございます。したがいまして、その特定米穀の世界でこれを求めるということになりますと、従来それによって満たされておりました需要の部分がその分いわば食われるということになりまして、そういう規格の設定につきましては農業団体の中でもいろいろ論議があったわけでございますが、直ちにそういう新たな規格を設定することによって他用途米を生み出すことは困難だ、農業団体自身そういう考え方で対応していくということになった経緯がございます。  今先生指摘のように、特定米穀の一部について、比較的品質の高い部分がそういう用途に向けられてしかるべきではないかという議論がありますこと、私どもも十分承知をいたしております。  ただ、今回の取り扱いの中では、そういうことをすれば何か相当量のものが浮き出してくるというようなことにはなかなか位置づけられませんで、例えばその規格の設定いかんによっては、本来主食の世界で扱われているものが逆に主食以下になる。これは例えば新四等とかいろいろな議論があったわけでございますが、そういう地域地域においても非常に複雑な問題を持っているということが論議の中で明らかになってまいりましたので、こういう議論を今後一切しないということではございませんで、論議はすべきだと思いますが、何か新しいものを生み出すために特にことしの措置として何らかの規格を設けるということは大変困難だという形になっておりますので、先生指摘のようなお考えは今後の問題としていろいろと論議としても考えていくべきところがあろうかと思いますが、ことしの措置として何か新しい規格をつくってそこで生み出すということは困難かと思っております。
  228. 武田一夫

    ○武田委員 私は今後の問題として提起したわけであります。地域的な問題はあると思うのです。ですから私は今後の課題として、地域的な対応として、例えばある地域で何らかの条件をつけて他用途米を受け持つ、それで間に合わせるというようなことも検討の中で考えられないかということも、あわせて一つの研究課題として今後取り組んでほしいということをお願いしておきます。  もう時間が来まして、最後に一つだけ。  減反の緩和の問題をお約束していただきました。ただ、これは作業の行程から考えますと、やはり早目にお願いしたいというのが率直な農家皆さん方の御意見でございますから、いつごろまでにしていただけるのかということになると、やはり作業に差し支えない範囲のぎりぎりの線までには御決定いただきたい。  そこで、六十四万近くの転作をやりましたね。その中で田んぼに復元できないというものも相当あると思うのですね。ですから、現在このくらいは田んぼに復元して田植えができる条件をそろえているものがあるんだという、一つの実態というものをちゃんとつかんでいるかどうか。それで、減反緩和をしてあげようと言っても、場所によってはそれに応じられない地域が出てこないかという心配もあるわけです。現実に私は宮城県なんかを歩きますと、今減反緩和だと言われても、私の田んぼではとても無理だからそれはちょっと応じられないというところもある、私の小さな地域だけれども。  ですから、そういう田んぼの実態、それから、どのくらいの規模をいつごろまでにするのかということをきちっと、やはり農家方々に不安のないように、作業に滞りのないようにしてほしい。この二点御答弁いただいて、質問を終わりたいと思います。
  229. 山村新治郎

    山村国務大臣 水田利用再編第三期対策につきましては、ゆとりある米管理が可能となるような計画的な在庫積み増しを行うため、転作等目標面積の見直しを行うことといたしております。その具体的な取り扱いにつきましては、本年の作柄等を慎重に見きわめた上で、転作の円滑な実施を図る観点に立って決定してまいりたいと思います。  決定の時期につきましては、作柄が明らかになる秋以降となるものと思われますが、できるだけ早くこれを決めてまいりたいというぐあいに考えます。
  230. 武田一夫

    ○武田委員 それでは、時間が残っていますが、懸命に御努力いただける大臣以下食糧庁の誠意を感じまして、早目に終わらせていただきます。ありがとうございました。
  231. 衛藤征士郎

    ○衛藤委員長代理 吉浦忠治君。
  232. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 私は、地元の問題で少しばかり時間をちょうだいしてお尋ねをいたしたいと思います。  最初に、サバのたもすくい漁業について、時期はもう終わりましたけれども、ことし大変な不漁でございましたものですから、さかのぼってお尋ねをいたしておきたいと思うわけでございます。  不漁の原因でございますけれども、長官も新しくおなりになって、経済局長でアメリカ等まで広い範囲で御活躍をなさって、大変広い範囲から地域の狭い範囲の話を伺っては当を得ませんけれども、どうか造詣の深いところで明快な答弁をひとつお願いしたいと思うわけでございます。  太平洋のサバ漁業というものは、五十三年、五十四年をピークにいたしまして漁獲量が年々減少している現状でございます。今年、特にたもすくい漁業のサバの水揚げ量がわずかに三百五十トンといって、平年から比べてもゼロに近いぐらい不漁でございます。空前の不漁でございまして、この原因は一体何なのかという点をお尋ねをいたしたいわけでございます。  また、漁業者の中には、まき網漁業が未成魚までとってしまう、乱獲をしてしまう、それで翌年の産卵群が減ってしまって、しかも資源が枯渇してしまっているのではないか、こういう声も聞かれるわけでございます。どのようにお考えなのか。  また、そうしますと、今後資源というのは回復する見通しがあるのかどうか。  最後に、サバの太平洋系群というものに対する現在の漁獲の努力量というものを減らすならばどうなるのかという点で、この四つの点をまずお答えをいただきたいと思います。
  233. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えをいたします。  まず第一に、資源の話でございますが、先生指摘のように、太平洋系のサバの資源量は五十四年ごろから減少傾向に推移いたしまして、現在のストックの水準は、最高水準時に比べますと約三分の一程度ではないかというふうに言われております。  それで、このような資源減少の直接的な要因として考えられますのは、産卵量の低下、魚体の小型化、産卵期、産卵場の縮小、親魚量の不足、初期生残率の低下による加入率の経年的な低下等が要因として考えられるわけです。  さらに、中長期的に見た場合には、いわゆる魚種の交代現象ということがあるというふうに考えられております。これはどういうことかと申しますと、多獲性の浮き魚類につきましては、過去四十年間を取り上げてみただけでも、まず最初にニシンからマイワシ、マイワシからサンマ、サンマからマアジ、マアジからマサバ、そしてマサバからマイワシというふうに、多獲される魚種の栄枯盛衰があるわけでございます。中長期的に見ますと、そういう多獲性浮き魚類の魚種の交代現象の一つの局面であるというふうにも見ることができるというふうに言われております。  したがいまして、現在マサバの資源とマイワシの資源が競合関係にあろというふうに見られますので、マイワシの資源が現在のような高い水準で推移しております限り、マサバの資源が急速に回復するということはちょっと考えにくい、回復にはまだかなり期間を要するのではないかというふうに思っております。  それから、お尋ねの第二点でございますが、ことしのたもすくい漁業の漁獲不振の原因をどう考えるかということでございます。確かに今申し上げましたように、マサバの資源状態というのは最高水準時に比べるとかなり低下しておるわけでございますが、例えば去年と比べて、おととしと比べてということで、ことしのたもすくい漁業の漁獲不振を純資源論的に説明することができるかということになると、これはどうも、ちょっとそういうふうに考えることには難があるようでございまして、ことしのたもすくい漁業の漁獲不振の原因について、その資源問題ということは確かにあるということはあるわけでございますが、それに加えて、産卵親魚群の分布域に当たる房総から伊豆諸島にかけての水域の水温が本年の場合非常に低位である、そういう事情もございまして、そのためにサバの魚群が分散して希薄になる、あるいはマサバの浮上が抑えられる、そういう事態がございまして、そのためにまとまった浮上群の形成がなされない、そういうことがたもすくい漁業の漁獲不振の原因として指摘されております。  こういう状態でございますので、今後の資源の見通しといたしましては、先ほども申し上げましたように、資源の急激な回復というのは望めないわけでございますが、他方、来年親魚になります五十七年生まれのマサバが比較的多く出現をしておるということもございますし、それから太平洋の資源群に他の系統群からの資源補充の可能性も出てきているというふうなこともございますので、ここ一、二年は資源水準が近年に見られた程度の水準で推移するであろうというふうに考えております。  したがいまして、そういう中で資源保護の観点から見て漁獲努力を減らすべきではないかという御指摘でございますが、これは今申し上げましたように、何もマサバに限ったことではございませんが、多獲性浮き魚類の資源というのは自然環境の変化による変動要因に支配されることが極めて大きいということは一般論としてございます。そういう中で、漁獲努力量を滅らせば、それをどの程度減らすことによってどの程度急速な資源回復につながっていくかということについて、必ずしも十分な科学的知見が得られているという状態ではございませんので、今直ちに漁獲努力量を削減すべしというふうに行政の立場で言うということもちょっと難しい状態でございます。  したがいまして、私どもとしては、今後太平洋系のマサバの資源動向について十分留意をしつつ、国の水産研究所が中心になりまして資源量と漁獲努力量との関連についてさらに検討を深めていくべきであるというふうに考えているところでございます。
  234. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 続いて保護水面の設置についてお尋ねをいたします。  サバ漁の歴史を見てまいりますと、昭和三十八年の漁業法改正によって、大型、中型等のまき網漁業が大臣許可漁業、こうなっているわけでありまして、大幅に操業区域が拡大されたわけでございます。昭和四十年には、サバ釣り漁業はまき網との競合によりまして襟裳岬周辺から釧路沖というふうに漁場が撤退をしてまいりました。また昭和四十一年には同様の理由で、八戸沖から銚子沖というふうにサバ釣りの漁業が消滅をしてきておるわけであります。この結果、犬吠崎以北のサパ釣り漁業は全く失われて、今長官おっしゃっておりますように、現在では伊豆沖とか房州沖だけがその漁場になっておるわけです。しかしながら、この漁場も、まき網漁業の影響でもう瀕死の現状でございます。  サバたもすくい漁業者たちは、未成魚が滞留する銚子沖漁場をまき網禁止区域にしてもらいたい、自分たちもその水域では操業を自粛するという考えを持っておるわけであります。これによって資源の回復を図ろうという考え方もあるわけでありますが、水産庁としてこの水域に水産資源保護法に基づいて保護水面を設定する考えはないのかどうか、また県等からその申請をされてきた場合にどういうふうな対応をお考えなのか、この二点をお尋ねをいたしたいと思います。
  235. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  先生指摘の水産資源保護法に規定する保護水面は、法律を見ますと「水産動物が産卵し、稚魚が生育し、又は水産動植物の種苗が発生するのに適している水面であって、その保護培養のために必要な措置を講ずべき水面として農林水産大臣が指定する区域」であるということになっております。これまでこの制度を使いまして保護水面を指定して保護対象としております水産動植物としては、藻場とか貝類とかアユ、そういうものがございます。要するにこの制度は「水産動物が産卵し、稚魚が生育し、」そういうことが行われる場所が特定される、そういうものを対象にしてできておる。  しかるところ、サバのような回遊性魚類につきましては、産卵とか稚魚育成の場所が特定水域になかなか限定しにくいというのがまさに回遊性の回遊性たるゆえんでございまして、千葉県が現実問題としてそういうことを提起していらっしゃった場合にどう対応するか、まだ私ども十分考えてみたわけではございませんが、制度そのものはどうも回遊性魚類の保護のためには使いにくい制度であると今のところ思っております。
  236. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 長官、資源管理型漁業というのを今水産庁では進めておられる、必要だということを認めていらっしゃるわけですけれども、そういう時代に、我々の目の前で、適切な資源管理をすれば一つの漁業が救われる、生き残れるけれども、このまま放置しておけばこの漁業がなくなってしまうという、この問題に対する適切な措置がない限りこの資源管理型漁業というものはお題目に終わると私は思うのです。水産庁の毅然たる態度を示してもらわないと、口には資源管理型漁業と言いながら、もう目の前ではこういう漁法はなくなってしまうのですね。こういうときにこそ水産庁の態度が問題だと思っているのです。  というのは、たもすくい釣り漁業の人たちが漁場を開拓してそこを好漁場にすると、後でぱくっとまき網の者たちが全部とり尽くす、また次のところに行って釣りの人たちが新しい漁場を開拓すると、その後まき網が全部とって、またそこも消滅してしまう。いよいよこのところしか残っていないところがこれで終わるのじゃないか、こういう事態に来ているときにどういうふうな対処をするおつもりなのか、お尋ねいたします。
  237. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  先ほどから繰り返し申し上げておりますように、マサバのような多獲性の浮き魚というのは、元来自然環境の変化によって資源水準が変動するという要素が非常に大きいわけでございまして、資源水準を漁獲努力の水準と結びつけて資源のアバンダンスの水準を論ずるということが難しい魚種であるというのが、そもそも多獲性浮き魚の一般的な特徴でございます。  そういう中でも私どもとしては、漁獲努力量の水準と資源の水準との間の関係、したがって資源を管理するという観点から見て漁獲努力量についていかなる規制が加えられるべきであるかということについて科学的知見を蓄積していくべきであると考えて、私ども水研に努力してもらっておるところでございますが、現状におきましては、正直に申し上げてまだそういうことを論拠にして規制措置を論ずるという域に達していないのが実情でございます。  そこで、先生御高承の利根川尻協定ということで、まき網対たもすくい釣りとの間の漁場競合の問題は、両方の漁法を代表する漁業者の団体相互間の問題として調整がされておるわけでありまして、現状におきましては、この利根川尻協定が遵守されることによって漁場利用秩序が維持されていく、そういう状態でいくことが適当であると思っておるわけでございます。
  238. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 その利根川尻協定についてお尋ねをいたしますけれども、犬吠埼の一の島九十度から太東崎九十度の間が、利根川尻漁業協定によってまき網漁業とたもすくい漁業との漁場の使い分けがされている地域でございます。  この協定は、五十六年に関係者が苦労を重ねてつくられたものでありますけれども、結果的には漁業者間の力関係によって決着したものであろうと思うのです。少なくとも科学的な資源論なりがリードしてつくられたものではないのじゃないかと思うのです。話し合いというのは大体そういうものでございますけれども、このことは一つの協定に限ったことではございませんで、昔と違って今はエレクトロニクス等の大変な日進月歩の時代でありますから、水産試験場等の科学的な見解を優先させるべきじゃないか、こういうふうに思うわけです。  そういうものも考えて漁業調整に当たっていくべきじゃないかと考えるわけでありますけれども、この協定について当面の間、いわゆる資源が回復するまでの間、協定を凍結して資源回復を最優先させるべきじゃないかというのが第一点で、またこのことがたもすくいはもちろん、まき網漁業のためにもなると私は考えますけれども、どういうふうなお考えなのかお尋ねをいたしたい。
  239. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  私どもとしても、漁業調整というのは関係者の間が円満にいきさえずればいいというものだと思っているわけでは決してございませんので、漁業調整に当たっても、資源の動向にも十分注意を払いながら漁業調整が行われるべきものであると考えております点につきましては、先生指摘のとおり、私どももそう心得ておるわけでございます。  しかしながら、先ほど来申し上げておりますように、太平洋系群のマサバ資源については、現在の段階におきましては、資源論から出発して漁獲努力のあり方を決めるという議論を展開するところまで私どもの科学的知見の蓄積が進んでおらないということは残念なことでございますが、現状を率直に眺めればそういうことであるということを申し上げておるわけでございまして、そういう状況においては、漁業調整に当たっては漁業者相互間の漁場利用秩序の確立という方の側面が先行すると見られるような結果になるのは、残念ながら避けられないことでございます。もちろん、私どもといたしましても、資源問題の解明のために今後一層努力をして、ただいま先生からおしかりを受けておるような問題がないようにしていくべきものであると考えております。  そういう状況でございますので、先ほど利根川尻協定を凍結して操業を見合わせるということが先生から提起されたわけでございますが、少なくとも現在の段階では、私どもとして当該水域における漁獲努力のサバ資源に与える影響から立論してそういうふうにすべきであるということを言って説得し得る、そういうところまでの自信がございません。それだけの材料を私どもも現在持ち合わせているわけではございませんので、現状におきましては双方の合意で物事が処理されていくということにならざるを得ないのではないかと思っておるわけでございます。
  240. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 たもすくい漁業というのは、恐らく長官も地元に行かれて勉強なさっておられると私は思います。この資源管理型漁法というものは日本古来の漁法でして、考え方によってはこんな原始的なことをやっているようではだめなんだと言われるかもしれませんけれども、やはり昔から続いているものには一理あるのですね。これに今手をかさないとなくなってしまうのです。ですから私は、今聡明な水産庁長官におなりになったばかりのときにひとつこれに真剣に取り組んでもらいたい。  というのは、私調べてみましたら、このたもすくいの漁法のときに、魚が上に上がってきたところをすくうのですね。すくうときに、一番先に上がってくるのが四年生の魚なんです。四年生が一番先に泳いでくるのです。それを先にすくう。その次にちゃんと、リズムも狂わずに三年生がその後についてくるのですね。その後二年生、その後一年生と順序よく来るのですよ。ですから、四年生をちゃんとすくい、三年生をすくえば、あとはもう少したってというふうな感覚で、それが人間の知恵なり、そこに対する対応の仕方なりというものは実によく自然を理解してできるのです。ところが、まき網というのは一網打尽に稚魚から何から全部とってしまって、根絶するほどとってしまって根絶えてしまう。長官はまき網のことについてはただの一つもどうだとおっしゃらないけれども、立場は私はよくわかるけれども、今の管理型漁法の行き方からして、たもすくいをここで全部消滅させてしまうかどうかという大事な瀬戸際だけにひとつ考えていただきたい。よろしいですか。  次に、構造対策等についてお尋ねをいたしたいと思います。  今のたもすくい漁業の窮状対策については、今後この漁業をどう方向づけるかということが大きな問題だろうと思うわけです。すなわち存続させるのか、または消滅させるのか、いずれの考えをとるにしてもこの対応が違ってくると思うわけですが、この漁法は知事が許可するという漁法でありますけれども、水産庁としてこれをどう考えるかということでは先ほど私はお尋ねをいたしているわけです。まき網というのは大臣許可漁業であるのですが、関連して重大な影響を受けるこの漁法に対しても水産庁は責任があると私は思っている。  このままでは全部のたもすくい漁業が壊滅すると考えるわけですけれども、減船することも一つの方法だろうし、またこの場合でも残った船、いわゆる共補償能力はないのが現状ですが、共補償する場合でも自分たちだけの減船では不可能だということだろうと思うのです。  ところが、伝え聞くところによりますと、漁業構造再編整備資金というのがあるわけですね。これは五十八年度の負債整理資金というのでありますが、これは二割以上の共補償減船を行ったものでなければ借り入れができないという方針のようであります。さらに不要漁船の処理に要する経費等に助成する特定漁業生産構造再編推進事業というものもありますが、どちらにいたしましても沿岸漁業の場合、多かれ少なかれ同じような状況にあると考えるわけですが、沿岸漁業構造再編対策に対してどういうお考えをお持ちなのか、特にこの漁業に対してどのように対処されるおづもりなのか、この点をお尋ねいたしたい。
  241. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 特定漁業生産構造再編推進事業でございますが、これは漁業経営が悪化している特定の業種について漁業者の団体が自主的に減船を行い、残存漁業者の経営の維持改善を図る場合に国が助成を行うという趣旨のものでございます。これは従来大臣許可漁業をその対象としてきたわけでございますが、地域的な業種である知事許可漁業につきましても、地域により漁業種類によっては生産構造の再編が必要なものがあるという認識に立ちまして、知事許可漁業につきましても本年度から適用を拡大することにしたところでございます。  この事業は、減船により残存漁業者の経営の維持改善を図ることをねらいとするものでございますから、減船によりこれらの効果が十分に期待できるものであるということが必要であります。このような観点から、減船計画の内容が適切なものとなるよう、これまでも関係業界を指導してきたところでございます。  知事許可漁業に係る本事業の運用につきまして、基本的にはこのような考え方のもとにやるわけでございますが、実施要領を現在検討中でございます。八月上旬、もう近いうちに実施要領を施行できる見込みでございます。その実施に当たっては、関係の都道府県とも十分協議を行って、事業の円滑な推進が図られるようにしてまいりたいと思っております。
  242. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 緊急対策についてお願いをいたしておきます。  千葉県では、たもすくい漁業者の船四十五隻に対して、一隻一千万円の緊急融資をいたしたわけです。この漁業者は、漁業近代化資金など既に借入資金の償還期限の延長を望んでいるわけですけれども、期限の最高の十二年まで延ばすように指導するお考えはないのかどうか、これが第一点。  また、新造船の建設の際の負債一隻当たり約二億円でございますけれども、これは固定化するおそれがありますけれども、漁業経営維持安定資金の融通についてはどういうふうに対処なさるおつもりなのか。  三番目といたしまして、さらに新しい資金を借りようにも、たもすくい漁業の現在の経営状況では漁協転貸しがふえることが考えられる。万一焦げついた場合には漁協が負担することになりまして、その漁協基盤の強化対策が必要であろうと思うわけです。この問題だけではないわけですけれども、漁協の基盤の強化のための方策をどのようにお考えなのか。こういう点で、いわゆる漁業構造再編整備資金のうち漁協協力資金について、漁協が債権を完全に放棄することなどの条件がついておるわけでありますけれども、非常に使いにくい制度となっているようでありますが、沿岸の漁業の実態に合わせて見直す考えはないのかどうか、この点をお尋ねをいたします。     〔衛藤委員長代理退席、委員長着席〕
  243. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えをいたします。  まず第一点の制度上認められておる償還期限ぎりぎりいっぱいまで、ゆとりがあれば延ばすようにさせればいいではないか、この点は私どもも全く同感でございまして、都道府県なり融資機関に対してそういう指導を行っておるところでございます。現に幾つかの県ではそういうふうに措置をされております。  ただ、若干のところでは、制度上の償還期限が十二年で約定の償還期限が現在十一年、一年延ばすくらいだつたら経営維持安定資金で手当てをすればいいからということで、残っているのにやらないというケースがあるようでもございますが、私どもとしては、制度上認められております償還期限を目いっぱい使うということについては全く異存はございませんし、都道府県なり関係の融資機関なりについては、できるだけ借り受け者の御希望に沿うように指導している次第でございます。  それから、第二点の経営維持安定資金でございますが、これは私どもも融資をするつもりでおりまして、各県で融資希望額の取りまとめをお願いしているところでございまして、出てまいりますればそれなりに迅速に融資をしたいというふうに思っております。  それから最後に、転貸で結局漁協のところにリスクがたまってくるので、それを何とかしてやらなければいけないではないかというお話でございますが、この点につきましては確かに御指摘のとおりだと私どもも思います。それで、今回サバたもすくい漁の不漁で影響を受けた県の中で、一部の県におかれましては漁協に対する特別の資金を融通する制度をおつくりになったというふうに伺っておりまして、私どもとしては大変結構なことで、県なり上部系統機関の支援のもとに、こういう仕掛けで不振漁協の再建が図られるように私どもとしても側面からお手伝いしていきたいというふうに考えておるところでございます。
  244. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 ちょっと視点を変えまして西日本海域の韓国漁船の操業問題についてお尋ねをいたしますが、きょう外務省お見えでございますか。——お待ち願って時間があれば質問したいと思っておりましたけれども、時間がないようでございますから、どうも申しわけございません。次の機会にまた……。  西日本海域における韓国漁船の操業問題についてお尋ねいたしたいのですが、西日本海域における日韓両国の漁業操業について、昭和四十年に締結されました日韓漁業協定に基づいて長年操業調整が図られてきているわけでございます。  近年韓国の底びき網漁船等が我が国の周辺で無秩序な操業を繰り返しておりまして、我が国の領海内あるいは沖合底びき禁止区域内まで入ってきて操業している現状でございまして、特に固定的な漁具等に対して、底びき網等に被害を与えております。また資源にも大きな影響を与えているわけでありまして、日韓漁業協定の合意事項第八項によりますと、国内漁業禁止水域等の相互尊重に関して、日韓両国が設定をしている底びき網漁業禁止区域等について、両国政府は、それぞれ相手国のこれらの水域においては当該漁業に自国の漁船が従事しないようにするための必要な措置をとるというふうに合意をしているわけでありますが、この合意が守られていない理由、また、水産庁の対応はどのようにお考えなのか。  次に、先月の十七、十八の両日にソウルで日韓政府間協議が行われておりまして、この問題が話し合われておると考えるわけでありますが、問題解決のための進展があったのかどうか、この二点をお尋ねいたしたい。なるべく簡略にお答えいただきたい。
  245. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えをいたします。  昭和四十年に締結をされました日韓漁業協定の合意議事録第八項に基づきまして、両国がそれぞれ相手側の国内規制措置を遵守するということになっておりますのは先生の御指摘のとおりでございます。  しかるところ、昭和五十年ごろから韓国の底びき漁船が日本の底びき禁止区域内で操業するという事態が起こるようになりました。このため私どもといたしましては、外交ルートを通じ韓国政府にたびたび適正操業に向けての善処方を申し入れる一方、韓国の漁業指導船の派遣等、適切な措置をとるように要請をしてきたところでございます。  特に、昨年八月の日韓定期閣僚会議の際は、金子大臣からこの問題を提起されました。また、十月の日韓水産庁庁長長官会談におきましても、韓国漁船の違反根絶を強く申し入れるというようなことをいたしまして、一時違反操業は減少をいたしました。その後再び違反が増加してまいりましたので、本年三月の第十八回日韓漁業共同委員会において、我が方から抜本的な違反防止対策の実施を強く申し入れ、韓国側も違反防止について一層努力をするというふうに約束をいたしました。  このこともございまして、五月中旬以降韓国漁船の違反操業は減少してきておりますが、我が国としては、違反操業の根絶を図るため、前述の共同委員会、すなわち十八回の日韓の共同委員会で我が方が提案をした日韓の部長局長レベルの取り締まり会議をやろうということで、それが先月十八、十九両日ソウルで行われたわけでございます。  それで、ソウルでやった模様がどうであったかということでございますが、我が方からは従来どおり引き続き合意議事録第八項の規定の遵守を申し入れ、その中でいろいろなことを提案したわけです。例えば部長局長会談をやるとか、そういうことにつきまして今回協議をいたしました。先方といたしましては、四月以降韓国側は真剣に指導取り締まりを行って、その結果違反はずっと減ってきておるはずであるということを韓国側からもるる説明がございました。これは我が方で掌握しておるデータとも一致をしております。そういう意味では、先方の努力はそれなりに評価されるべきものであるというふうに思っております。  今後の問題でございますが、違反漁船が減少しつつありますので、当面は韓国側の指導取り締まり状況を見守り、今後また違反が増加するようなことがあればまたそのときにきつく申し入れる、そういうことで対処していきたいというふうに思っております。
  246. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 長官、韓国漁船の船名と登録番号を大きくすることを日本側は要求なさったり、あるいは政府間の定期協議の開催を要求なさったり、また日本の取り締まり船へ韓国の公務員の乗船を求めたりなさったわけでしょう。そういう具体的な点で一歩前進をする形の協議をやっていただいて、違反操業をぜひ皆無にしていただくような方法にしないといけない。もう少し積極的に進めていただきたいと思うわけです。先ほど同僚の武田議員からの日本と北朝鮮、いわゆる朝鮮民主主義人民共和国の問題等についての拿捕なりあるいは傷害事件等が起こっている問題は、やはり政治的な背景もあったのではないか、私、時間がございませんのでこれは割愛をいたしますが、そういう面の心配もいたしているわけですので、もう少し強腰でやっていただかないといけないんじゃないかというふうに要望いたしておきたいと思います。  最後の問題でございますけれども、日韓漁業協定では漁業に関する水域を十二海里としているわけでありますが、両国が領海を十二海里として、我が国の漁業水域法に基づきますと対馬海峡等の特定海域がございます。これは領海は三海里となっておりますが、この十二海里を漁業禁止区域としている現在では漁業に関する水域は全く無意味となっているのではないかというふうに思うわけです。そこで、以上述べてまいりましたような漁具等の被害が多発していること等から見まして、漁業に関する水域の幅を拡大して実効あるものとするのも一つの考え方であるというふうに思うわけですけれども、こういうことについて韓国側と交渉するお考えはあるのかどうか、簡単で結構ですから。
  247. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 私どもといたしましては、現在の段階では取り締まりの強化というのが当面の課題でございまして、線の引き方について議論するというのは、私どもとしては現実的な日程にはならないというふうに思っております。
  248. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 どうもありがとうございました。  それでは養鶏問題で、短い残りの時間ですけれどもお願いをいたしたいと思いますが、昨年の十月に私、質問をいたしまして、その後養鶏問題をいたしておりませんので、かなり時間があれば十分な論議をさせていただきたいところでございますけれども、新しい局長にかわられましたので、なるべく先ほどの問題と同じような形で、まじめに取り組んでいる養鶏農家を守るために、清新な局長ひとつ、従来も取り組まれたでありましょうけれども、なお一層の真剣な取り組みをお願いしたいと思うわけでございます。  農水省の養鶏政策に対する基本姿勢というものを先にお願いをしたいわけですが、今養鶏農家は、異常な長期の低卵価で極めて深刻な状況に立たされているのが現状だろうと思うのです。しかも累積の負債等がもう積もり積もっておりまして、生活が破壊される寸前でございますし、既に弱小の農家では養鶏をやめて、何とか生き残っている養鶏農家も借金を重ねて、しかもその支払いに目安は立っていないということで、がけっ縁に立っている状態じゃないかというふうに思うわけでございます。  こうした養鶏農家の危機は、国がこれまで推進してきた鶏卵の計画生産が壊滅的状況になっておる、それは需要を上回る生産の過剰が引き続き行われていることからきていると思うわけでございますけれども、これに対して農水省当局は、いわゆる慢性的な生産過剰に対し、効果ある対策をいまだ出していない点にあるだろうと思うわけです。計画生産の推進に対して農水省当局の基本姿勢が今問われてきているときでありまして、養鶏農家が滅びていけば、これは理の当然であろうと思うぐらい、今最大の危機を迎えているわけでありますが、この鶏卵価格の見通しと今後の基本的な対策をどのようにお考えなのかどうか、最初にお尋ねをいたしたい。
  249. 野明宏至

    ○野明政府委員 養鶏政策の基本につきましては先生もう御案内のとおりでございますが、養鶏産業は、いずれにいたしましても良質のたんぱくを安定的に供給していくという大事な役割を担っております。そういう中で我が国の養鶏業、これはかなり規模の大きい形で、また技術的にもそういった技術が可能な技術の進展というものと相まちまして、安定的に発展を遂げてきておるわけでございます。  そういう中にありまして、最近の最も大きな課題といたしましては、いかにして需要に見合った計画的な生産を進めていくかという点にあろうかと思います。この点につきましては、全国段階、県段階、さらには市町村段階ということで生産者も入っていただきまして、需給調整協議会というふうなものを通じてその計画的な生産が行われるようにこれまでもやってまいっておるわけでございますが、これからもさらにそういった点を徹底させてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  それから同時に、卵の場合には、生産コストに占めるいわゆる購入飼料の割合が非常に高うございます。したがいまして、そういった面でえさの価格を安定させていく、さらには、先ほど先生からお話がございました卵価につきましてもその安定を図っていく、また、その低落時には補てんをしていくというふうな、各種の施策を組み合わせまして養鶏業の安定的な発展を図ってまいりたいと考えておるわけでございます。  それから卵価の動向がどうかという点について先ほどさらにお尋ねがございましたので、その点についてもあわせてお答えさせていただきますが、卵のお値段につきましては、五十五年、五十六年はかなり高い水準で推移したわけでございますが、その後、五十七年から昨年のいわば前半にかけまして、こういった高卵価の中で生産がふえるというふうなことのためにお値段が大分安くなってまいったわけでございます。ただ、昨年の後半からはやや回復を見せておりまして、その後も安定的に推移してまいっておるわけでございます。最近は季節的な不需要期ということもありまして、若干低下しておるわけでございますが、ことしの一月から七月の平均で、前年同期に比べますと二十円程度上回っておるというふうな状況でございます。  これからの動向につきましては、夏場を越えてこれから秋に向けて上昇に向かっていく。幸い八月に入りまして卵価につきましてもやや上向きに転じてまいりまして、明るさが見えてきたのじゃないかと思っておるわけでございますが、これからの動向につきましては、昨年来のひなのえつけ動向というふうなものから見ましても、年間全体では、前年に比較してやや上回っていくのではないか。これからもその点については十分注視をしていきたいというふうに思っております。
  250. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 局長は甘いですよ。そういう感覚でおられるので、今大変まじめな養鶏農家がばたばたと倒れている現状ですから、そういうペーパーの上だけで判断をなさると、大変甘い。  次に、私は、行政指導の面でなまぬるいというふうなことを常々申し上げているわけですけれども、特に国会決議を無視した大規模なやみ増羽等が現在まだ後を絶たない。これはやはり常に言い続けていかなければならない問題だと思うんですね。計画的な生産が崩壊的状況になってきた一つの理由は、今申し上げているように大規模やみ増羽の結果でございまして、これを許してきた最大の原因というものが今日こういう状態を招いておりますが、昭和五十三年にこの農水の委員会委員会決議を行ってまいりました。農水省当局はこのときに、厳重に指導していくということを約束した経過があるわけですね。  例えば、私が昨年問題にいたしました秋田県の八竜の、いわゆる育成農場というふうに偽って、三十万羽余りの成鶏農場を建設した業者に対して、前の石川局長の時代に、立入検査を拒否しているじゃないか、これをやりなさいということで、今食糧庁長官になっておりますのでそのことはできませんが、いまだにこれが守られていない。それは現状がどういうふうになっているのか御報告願いたいのと、生産者団体は、これまでのようなこういう行政指導なりあるいは民間団体による指導だけでは、大資本のいわゆる養鶏業者のやみ増羽を抑えることは到底不可能だろう、こういうふうにも言われているわけです。あるいは生産者同士の自主的な話し合いで解決できない大規模かつ悪質なやみ増羽に対しても法的措置を講じてほしいという意見があるわけです。生産者の方々同士がこういう問題を大変心配をして、そして現場を摘発して、それを農水省畜産局にお願いをするという形で皆さん方が先に手を打っている。生産者との話し合いをしているという段階じゃない、逆でありました。私は、食肉鶏卵課というふうに課まできちんとあるのだから、別に文句をつけるわけじゃありませんけれども、鶏卵課の役割を果たすような働きをしてもらわなければ困ると常々思っておるわけです。  農水省当局は問題の大規模なやみ増羽を今後も今までのようなやり方で解決し得ると考えておるのかどうか、決意のほどを新しい局長ひとつ述べてください。
  251. 野明宏至

    ○野明政府委員 いわゆるやみ増羽の問題につきましては、これからの卵の生産について、需要に見合った安定的な供給体制を整備していくということで五十六年の九月に通達を出しまして、県あるいは関係団体を指導しているところでございます。  無断増羽者に対しましては、行政と民間がタイアップした形で鶏卵の需給調整協議会を通じまして是正指導を行っていく、違反者に対しましては卵価安定基金あるいは配合飼料価格安定基金から排除していく、さらには融資とか補助事業といったものも場合によっては停止していくというふうな措置を組み合わせまして、行政指導の徹底を図っていくというふうなことでやってまいっておるわけでございます。  その結果、この通達を出す前提になりました五十三年当時の違反者、これは百一企業体あったわけでございますが、それがことしの二月下旬の調査では三十七ということになっておるわけでございます。その中にはただいまお話がありました八竜というものもまだ含まれておるわけでございます。したがいまして、これからも行政指導の徹底をさらに図るとともに、生産者の自主的な調整活動、さらには各種施策を組み合わせるということで、強力な行政指導を進めてまいりたいというふうに考えております。
  252. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 局長、行政指導と言うからには、行政指導した結果が出るような指導をしないと、言葉の上だけ、この委員会のときだけ行政指導をやりますと言っても、私が十月に要望したものも具体的に何もやってないじゃないか、そのままじゃないかということを指摘しているわけですよ。まじめな養鶏農家の救済措置を政府は早急にとってもらわないと、先ほど、卵価は少しは上向いてきているみたいなことをおっしゃっているけれども、もう負債に追われて夜逃げ同然の現状で、やめれば負債の返済もできなければ何もできない、やればやるほど負債がふえていくという現状です。今の現状をよくごらんになってください。一部養鶏業者のいわゆる大規模やみ増羽が発端となりまして、また指導が不十分だったためにこのような長期低卵価になっている。私は農水省にも重大な責任があると思っております。  したがいまして、これまでの国の指導に従って増羽を我慢してきた養鶏農家生活を破壊されていることに対しては、計画生産を立て直して、当面の養鶏農家が生き残れるような何らかの救済対策を講じる必要があるというふうに考えているわけです。私ども五十三年の国会決議の場合には、農業の一部門ということで、農家養鶏を守ることが主体の国会決議であったわけですよ。ですから、純粋なまじめな方々農家養鶏を政府はいまどのようにして救っていこうというふうにお考えなのか、お答えをいただきたい。
  253. 野明宏至

    ○野明政府委員 養鶏農家の経営対策といたしましては、もちろんえさ価格の安定とか、卵の値段が下がった場合にはその補てんを行うというふうなことをきちんとやっていくということはもとよりでございますが、経営それ自体が非常に苦しいという中で、その経営を立て直していくということが同時に必要でございます。  農家経済調査によりましてその実態を見てみますと、五十七年度末の状態というものが調査に出ております。それによりますと、資産もふえておるわけでございますが、負債も前年に比べてかなりふえておるというふうな状況になっております。そこで、計画生産を誠実に実施しておる養鶏農家にその負債対策を講じていかなくてはいかぬということで、自作農維持資金というものがございますが、その中に再建整備資金というものがあるわけでございます。金利が五%で二十年間で償還をしていただくというふうな長期低利の資金がございます。そういったものを活用して経営の再建を図っていくということで、五十八年度、昨年度につきましては、卵の値段が低迷していることもございまして、再建整備資金の貸付件数あるいは貸付額もふえておるわけでございます。これからもそういった農家に対しましては、本資金の貸し付けを通じましてその経営の安定というものに努めていきたいというふうに考えております。
  254. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 だんだん局長歯切れが悪くなってまいりましたけれども、私、時間が参りましたものですから最後に、今後の鶏卵計画生産の進め方等について、前々から提案をいたしておりました点でお尋ねをいたしたいのです。  需要に見合った鶏卵の計画生産を進めて養鶏の安定を図るためには、今後どうしても養鶏農家あるいは養鶏生産者の自主的努力が非常に重要であることは間違いないわけですが、既に自主的努力だけではもう解決できない大規模なやみ増羽に法的措置を講ずる、そういう点も含めまして、いわゆる養鶏安定法の制定が生産者団体から要望されておるわけでございます。あるいは生産者の中央団体であります日本養鶏協会も、法制化について特別な検討をしていこう、こういう方針を立てて協議を始めておられるようでありますが、この計画生産の進め方については、これまでの経緯から見てまいりますと抜本的改善が必要であるというふうに思うわけでございます。法制化についても十分検討していく必要があるというふうに思うわけでございますが、最初に局長、どういうお考えなのか、お尋ねをいたしたい。
  255. 野明宏至

    ○野明政府委員 ただいまの問題につきましては、日本養鶏協会におきましても近く初会合を開きまして、これからの卵の需給安定についてどうしたらいいか、あるいは養鶏の長期展望はどうなっているか、そういった中で各般の問題が検討されるというふうに聞いております。  養鶏の計画生産につきまして、養鶏安定法というふうな立法措置についてどうかというふうな意見もござ一まず。また、その内容につきましてもいろいろな考え方の違いというものもあるようでございますが、仮にその内容が、例えば新規参入を抑えていくあるいは新しく鶏を飼うことを抑えるとか、一定羽数以上飼うことを制限するといったような、いわば競争制限的なことを法制度のもとに行うということになりますと、これはやはり独占禁止法あるいはその他の法令との調整が必要となるといったような種々の問題があるわけでございます。  我が国の養鶏業につきましては、先生御案内のように生産者の自助努力というものが中心になりまして大きく発展してきておる。そういう中で、その経営をどうやって安定させていくか、またそういった実態を踏まえながら計画生産を進めていくわけでございますが、そういう中でも各種の助成制度というものを組み合わせながら計画生産を進めていくというふうなこともできるわけでございますので、法制度を設けるというよりは、むしろ行政指導の徹底を一層図りながら、かつまた生産者による自主的な調整活動というものも進めていくというふうなことでやってまいるということが、これからの養鶏産業の活力ある発展というふうな方向を考えましても現実的ではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
  256. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 最後に大臣、各県ごとに需給調整協議会というのがありまして、大臣も千葉県、私も千葉県でございますので、千葉県のことを言っていたんじゃちょいとぐあいが悪いところもありますけれども、千葉県は大変この協議会がうまくいって、全国まれに見る厳しい制限をして守っている県なんです。ほかの県が悪いから養鶏安定法をつくれという意味じゃございませんけれども、まじめな養鶏農家を守るという点で、これは大臣も私と同じ考え方だろうと思うのです。大臣という立場で大所高所から、こういう安定法というものの政策について、今検討の段階に入っているときでございますけれども、大臣のこれに対する所信を伺って私の質問を終わりたいと思います。お願いします。
  257. 山村新治郎

    山村国務大臣 我が国の養鶏産業、これが生産者の自助努力を中心として大きく発展してきております。現在、農産物の中では米、続きまして豚、生乳そして鶏卵でございます。その次に食用牛、その次がブロイラーというような順にもなっておりまして、養鶏農家の経営の安定を図るため、特に鶏卵の計画生産につきましてはさらに行政指導を強化して、生産者の自主的な調整活動を基本に、需要に見合った安定的、計画的な生産が行われるようにしていきたいと思っております。  今いろいろ御指摘の点は十分承りました。その御意見も踏まえながら、今後とも養鶏農家が意欲を持って生産に取り組めるよう、この卵価の安定を初めといたしまして、各般の施策をきめ細かく実施するようにしてまいりたいというぐあいに考えます。
  258. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 終わります。ありがとうございました。
  259. 阿部文男

  260. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 まず大臣にお伺いします。  政府は、去る三十一日の閣議で六十年度予算の概算要求基準を決め、原則として今年度予算の経常経費一〇%減、投資経費五%減が提示されています。この中で農林予算は六百億円の大幅減額となります。これに来年度の省内自然増経費約七百億円を合算しますと、約一千三百億円のしわ寄せが他予算に削減となって作用することは必至であります。  今や価格政策が限界に来ている現在、農業の近代化、また研究開発集約型産業としての農業自立のために、基盤整備等の構造政策、品種、栽培等の技術改良、開発に重点を置いて予算編成をすべきでないかと思うわけでございますが、政府の予算編成に対する基本的考え方をお尋ねいたします。
  261. 山村新治郎

    山村国務大臣 国民生活にとって最も基礎的な物資であります食糧の安定供給を図るためには、農業構造の改善、そしてまた農業生産基盤の整備、先端技術の開発等を通じまして農業の生産性の向上を推進するなどと一緒に、また需要の動向等に即したところの農業生産体制の再編整備、価格政策の適切な運用による需給及び価格の安定等を図ることが極めて重要なことであると考えております。  昭和六十年度予算につきましては、このような基本的考え方のもとで、今後重点的かつ効率的な予算の編成に努めてまいる所存でございます。今先生言われましたこの厳しい財政事情でございます。その基本姿勢がせんだっての閣議で出た次第でございますが、支障を来さないように重点的、効率的にこれを編成してまいりたいというぐあいに考えます。
  262. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 何せ、日本農業は大変な窮地に追い込まれてきております。今までの政策の延長では将来が全く危ぶまれるわけでございますので、ひとつスクラップ・アンド・ビルドといったような政策の転換を要求するものでございます。  次に、土地改良事業、かんがい排水事業のかん排水路は、公共的性格を持っているために市町村がこれを負担している、また負担を余儀なくされているのが現在地方の一般的な現実となっているわけでございます。この市町村負担の償還金が年々自治財政を圧迫しておりまして、私の選挙区の小さな村でも、ことし五十九年度で償還金が約一千万円にもなってきております。このことは、自主財源からの支出となっておりますので、小さい自治体ほど大変な圧迫でございます。自治省に対して地方交付税の算入措置を要望する所存ではございますが、同時に、今後このような公共的性格を持っているものに対して、事業費における国の負担を拡大すべきであると私は思っておりますが、この点に対して農林省の考えをお伺いいたします。
  263. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 同様の質問が前回にも先生から提起された問題でございますが、かん排事業等、土地改良事業につきましては、国土の保全とかあるいは農地の改良という公共的な性格の非常に強い事業でございます。したがいまして、事業種類によりまして若干違いますけれども、全体といたしましては国は相当の負担をいたしまして事業を実施をしているような現況でございます。  ただ、土地改良事業は、農家自身の発意に基づきまして、つまり地元の要望によりまして地域社会の共同事業として実施をしている、こういうような性格もございます。かつまた、特定の土地の改良を通じまして個別農家にも利益が還元されていく、こういう性格を持っております。したがいまして、私どもといたしましては、市町村、農家等、いわゆる地元の応分の負担もお願いしなくてはいけない、そういう状況でございます。現下の財政事情は非常に厳しいわけでございまして、そういった点も十分御考慮いただきたい、このように考える次第でございます。
  264. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 公共性のゆえに、土地改良事業に当たって住民の要望もありまして、結局市町村がやみ負担的な負担を余儀なくされている面がありますので、この点を何とか、制度化の中できちっと今後市町村負担をさせ得るような対策ができないか、こういう点を私は要望するものでございますので、ひとつ研究課題にしていただきたいと思います。  次に、質問に入ります前に、国内総水田の稲作栽培のうち、何%ぐらいの面積がポンプアップによる作付を行っているか、資料がありますなら教えていただきたいと思います。この前、このことについては質問しておりますが、まだ正確な資料が手元になかったようでございますので、お願いいたします。
  265. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 それではお答えいたします。  資料といたしましては若干古うございます。昭和四十七年に農業用水実態調査というものを実施をいたしておりますが、それによりますと、農業用水の取水の実態といいますのは、河川等からの自然取水が圧倒的に多うございます。全かんがい面積、これは畑も含みますけれども、その中では大体九〇%が河川等からの自然取水に依存をしている、こういう状況でございます。  それから、揚水ポンプによります取水でございますが、これは立地条件上やむを得ない場合あるいは渇水時の補助水源といたしまして、地下水でありますとかため池、あるいは場合によりましては河川からも取水をいたしておりますが、大体かんがい面積の一割程度になっております。
  266. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 一〇%程度の揚水による作付がなされているということでございますが、やみ揚水を入れますと、この比率は若干それ以上に上回っていくのじゃないか、私はこう思っております。何せ今、揚水機械も優秀なものが出ておりますので、一〇%ではなく、これを超えているのじゃないか、私はこう思うわけでございます。  質問する趣旨は、日本型農業の確立のためにはどうしても自然流下水によるところの水の利用、これが一番大切であると私は考えております。また、島国である祖国の食糧確保という安全保障上からも、水資源の保全、確保は国の緊急課題でありまして、このかん水利用は、水田に対してはあくまでも等高線条による自然流下方式で利水させるべきだと考えています。このことは農家の経常経費からの支出の負担を軽くすると同時に、石油輸入の緊急不慮的ストップ状態にも対応できる重要な問題であるからでございます。  かような関係で、本当の有効的な国土利用はやはり自然流下方式を中心として今後工事の設計を心がけるべきだ、こう思っております。この考えにつきまして政府はどのようにお考えですか、お伺いいたします。
  267. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 御指摘のとおりだと思います。用水の供給方式につきましては、水源の状況なりあるいは水源と圃場との標高差の問題あるいは地形等を考慮いたしまして、また畑地かんがいにおきましては、圃場におきます散水装置を作動させる必要がございます。そういう必要な水圧の確保の可能性も考慮いたしまして、現地に最も適しました方式を選定することにいたしておりまして、先生指摘のとおり、できるだけ自然流下方式を採用する、そういう方針でございます。  それから、ポンプ揚水方式をどうしても採用せざるを得ない場合もございますけれども、そういう場合には、水源と圃場との標高差あるいは距離あるいは圃場の分散状況等によりまして供給方式を比較検討の上、最も経済的な方式で実施をしていく、設計をしていく、こういうことを考えております。
  268. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 農業も一面経済行為でございますから、効率的な対応が必要でございます。しかしその前に、農業は国民の主食を確保しなければならぬという責務も持っているわけでございますので、一たん緩急の場合を考慮した対応が必要であるというのが私の持論でございます。  こういう点から、国営かん排の東磐井地区の現状はどうなっているか、一応お知らせいただきたいと思います。
  269. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 御指摘の地区でございますが、岩手県の東磐井郡の大東町、東山町等四町二村の水田、畑、約五千九百ヘクタールを対象にいたしまして、用水補給、畑地かんがい等を行って農業の近代化、農業経営の安定を図る、こういうことが目的の地区でございます。  この地区につきましては、昭和五十二年から五十五年度に調査を行っております。その後昭和五十六年度から全体実施設計に入っておりまして、現在、調査、設計を行って計画の精度の向上を目指しているところでございます。  それで、現況でございますが、ダムの建設を予定しております上流の大東町では、自然環境の保全と、それからもう一つは下流の他町村へ水を分けてやるわけでございます。そういうことに対する反対がございまして、一部住民によります水源開発に対する反対がございます。これに対しましては、関係町村、岩手県、それに国も中に入りまして、ダムの水没関係者を初め地域住民に対しまして事業内容の説明等を行いまして、理解を得るように現在努めているところでございます。  次に、計画でございますが、あくまでこれは現状での計画でございますが、砂鉄川上流の小黒滝と砂渕という地点にダムを築造いたしまして用水源を確保いたしますとともに、調整池が一カ所、頭首工が三カ所、揚水機場が七カ所、用水路が百三十三キロを建設する、こういう内容でございます。受益地によりましては標高の高い地点への用水供給も必要となります。したがいまして、地域によりましてはやむを得ずポンプによって揚水する場合も出てくるわけでございますけれども、現在実施しております全体実施計画におきまして調査検討を加えまして、維持管理費の節減等の観点から、できるだけ自然流下方式を活用、採用していく、そういう考え方で取り組んでいきたい、このように考えております。
  270. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 この事業計画の中の幹線水路によるところの箇所で、揚水機による導水箇所は何カ所くらいになっておりますか。
  271. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 揚水機場の設置箇所は七カ所の予定でございます。
  272. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 それらの高低差、どのくらいになっておりますか。わかりませんか。
  273. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 今手元に持ちませんけれども、さらに詳しい内容につきましては後刻御報告さしていただきたいと思います。
  274. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 実はこの地域は私の出身地の地域でございますが、私の持論からいたしまして、幹線水路だけは何とか自然流下水路の工事施工ができないか、そのように考えるものでございます。この地域は今まで大変な干害にも時々見舞われたことがある地域でございますが、それにも増しまして、やはり維持、運営管理に係るところの揚水の費用というものもばかにならないわけでございます。ですから、先ほど申し上げました国家安全保障の一たん緩急の場合も考慮して、今の段階で自然流下方式にできるだけ設計変更ができないかどうか、このことをお聞きいたします。
  275. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 受益地の自然的な条件もあろうかと思いますが、先生の御意思を体しましてそういった方向が生かせるように検討してまいりたい、こういうように考えます。
  276. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 では、次に移ります。  戦後全国各地に入植した開拓地の現状についてお尋ねしますが、入植者数二十一万戸に及んだ開拓地も、現在では九万戸に減少していると聞いております。またほとんどの開拓組合も解散している実情でございますが、開拓地整備事業の実施状況はどのようになっているのか伺います。
  277. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 開拓地整備事業につきましては、自然的、社会的ないろいろな条件による制約から、営農技術あるいは生産物の運搬等がスムーズにいかないというような開拓地におきまして、生産出荷活動に不可欠な施設であります道路あるいは飲雑用水等の施設を整備する事業で、都道府県営事業として実施していることは御案内のとおりでございます。  この事業は、第一次計画昭和四十六年以来実施しております。続いて第二次計画、それに引き続きまして五十四年度から第三次計画ということで推進を図っているところでございまして、現在の進捗状況を申し上げますと、第一次計画、これは四十六年から五十年に採択いたしました事業でございますが、五十九年度までには九九・一%の進捗率でございます。第二次計画、これは五十年から五十四年までに採択いたしました地域でございますが、これが八五・四%の進度でございます。五十四年から発足いたしました第三次計画は、地区の採択は七〇%近い採択でございますけれども、事業費という点から見ますと二五・三%、約四分の一の進捗状況ということでございます。  ちなみに昭和五十九年度におきましてどのようになっているかと申しますと、全国で五百地区におきまして事業を実施いたしておりまして、予算といたしましては八十二億九千万円を計上いたしております。
  278. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 実は開拓地というところは大半がへんぴなところでございます。そして、一応国の整備事業の恩恵には浴しているものの、今なお冬になると道路関係で交通が遮断される、また緊急患者なんかが出たとき、これを医者に運ぶのに人道問題も起こしている、そういう箇所がまだ残っておるわけでございますので、ひとつ予算の配分が均一的にならないように、そういう緊急を要するような、人道主義の立場から道路を早く、整備していないところはそこに予算を回して整備するように、特段の御配慮、現場に合った御配慮を要求する次第でございます。そういう箇所を何カ所か私も見ておりますが、個々の名前を挙げることは差し控えます。ひとつ要望に沿うた調査、配慮をお願いする次第でございます。  次に、蚕糸の価格安定事業団による繭糸の放出が続いているようでございまして、価格の低迷、最近また度合いを増大しております。今養蚕農家は夏蚕の飼育に入っているわけでございますが、繭糸価格安定制度はあるものの、蚕糸に対する見通しに不安を考えているわけでございます。この点、国の将来への対策、また見通し等をお聞かせいただきたいと思います。
  279. 関谷俊作

    ○関谷(俊)政府委員 当面の蚕糸業をめぐる事情でございますが、御質問の中にございましたように大変厳しゅうございまして、基本的には絹の需要が低下しましたものですから需給の大変な不均衡が生じまして、糸価も現在一キロ一万三千三百円くらいということで、また一方事業団在庫は国内生産のほぼ一年分に近いところまで増加しまして、需給規模全体としてこのところかなり急テンポに縮小する、こういうような情勢になっております。  私ども当面の対策としましては、かねてから実施しております需要の維持拡大対策、それから輸入につきましては二国間協議によりまして生糸、絹織物等の輸入をできるだけ縮減していただく、それから今年度は約四分の一の繭の減産、さらに製糸業の設備の廃棄、こういうようなことをやっておるわけでございますが、お尋ねにもございましたように、基本的にはやはり少し中長期的な観点に立って、我が国の蚕糸業あるいは蚕糸政策をどう持っていくかということについて考えなければいけない、そういう事態に来ているのではないかと考えておりまして、現在農林水産省の中で学識経験者による研究会も開催しております。  いずれにしましても、こういう需給の状況から申しますと、相当思い切った制度的措置も考えなければいけないのではないかということで、現在、鋭意検討いたしておる次第でございます。
  280. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 農家にとりましては、生糸の消費が将来どうなるのか、やはり化学繊維には勝てないのか、本当に勝てないなら勝てないなりに対応を考えなければならぬ、そういう気持ちまで生むほど追い詰められておるわけでございます。私たちといたしましては、急激な変動を与えないで救済できていくなら救済できる策を講じなければならぬと考えておるわけでございますので、ひとつ長期的展望の中で、養蚕農家に急激な変動を与えないような指導をお願いしたいと思うわけでございます。  次に、水源涵養の造林が先細り傾向にあります。国土保全の面から水源涵養造林に重点的に予算を確保すべきじゃないかと考えているわけでございますが、来年度の見通しはどのようなものでございましょうか。
  281. 角道謙一

    角道政府委員 お答え申し上げます。  水源涵養のための造林につきまして、私ども従来から予算の中でも非常に重視してきております。  明年度予算についてのお尋ねでございますが、一昨日、閣議におきまして、投資関係費用につきましては概算要求基準ということで一応前年度の五%減というものが設けられております。したがいまして、公共事業全般につきましても非常に厳しいような状況になろうかと思いますけれども、やはり治山治水、特に水源涵養林の造成といいますのは国土保全上非常に重要だということもございますので、従来におきましても私ども、森林開発公団におきます例えば水源林造成のように、奥地の水源涵養林造成には重点的に予算を配分してきております。今後につきましてもできる限りの努力をしたいと思っておりますが、今申し上げましたように予算全体、国家財政が非常に厳しい中でございますので、その中でも最善の努力はしたいと考えております。
  282. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 水源涵養造林は、保安林に指定されていながらも水源涵養林としての機能の劣っている雑木林を杉、アカマツ等の針葉樹に植えかえているものでありますから、永年樹相としての大口径木が育つように植樹のときから対処することが望ましいと思っております。そのためには、植樹についてポット植林の技術導入が必至であると私は考えております。この技術導入をいたしますと、現在のような密植方法も改良できるわけであります。また、現在のような密植方法では百年、二百年以上に育ち得る森林相が形成されるか、私は疑問を持つものでございますから、こういう点、健苗疎植の対策がポット造林でありますと採用できるわけでございます。ついては、このポット造林についての試験結果等、あるいはこれを導入した際の成績表等がありますならばひとつお知らせ願いたい、こう思います。
  283. 角道謙一

    角道政府委員 ポット植林につきましては、ノルウェーで開発されて昭和四十年ごろから日本に入っている、またその普及にいろいろ当たってきたわけでございますが、例えば植えつけ後の活着がいい。これは、例えば北海道の帯広地方で、エゾ、トド、これは十月上旬までに植栽をしなきゃいかぬものが、実際にはポット造林ですと十一月でも活着率が約一〇〇%近いというような効果も上げているようでございますし、また、道東地方での、昭和四十年代初めの雪の少ない年でございましたけれども、この寒風害の中でも、ポット植林につきましては非常に寒風害が少なかったというような効果も上げられております。しかし反面、このポットにつきましては、ポット代であるとか運搬費等が非常に高いということもございまして、林業全体、造林自体が今非常に厳しい状況にございますので、ポット造林がなかなか伸び悩んでいるというような状況かと思っております。五十三年ごろからの状況を見ましても横ばいないし減少ぎみ、五十五、五十六と見ますと大体横ばいというのが現状だと考えております。
  284. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 実は、ポット造林につきまして私も一かどの実施をしてきている人間でございます。結局ポット代あるいは運搬費の難点があるわけでございますが、しかし、これから林道もどんどん開設されてきている現状でございますし、機械植林もできる、それから植林後の成長も、大変な下草刈りの手間も何回か省けるんじゃないか、こう考えておりますので、ひとつ試験区、これは小さくて、小面積でよろしゅうございますから、試験の続行だけはお願いしたい、こう思います。  それから、ポット代の経費につきましては、私実は、ある消費の数量さえまとまると大きくコストダウンさせ得るんじゃないか、これは自信を持っていますので、小面積でもよろしゅうございますから試験を継続するようにお願いする次第でございます。このことはひとつ大臣にも御記憶いただきたいと思います。  それではまた次の質問に移ります。  今日の林産業を取り巻く情勢は非常に厳しいものがありまして、国内の製材業者の倒産も後を絶たないわけでございます。我が国林業全体の不振の要因として外材輸入も一つの原因でありますが、この外材輸入のあり方、それから木材産業の将来について政府としての考えをお伺いしたいと思います。
  285. 角道謙一

    角道政府委員 お答えを申し上げます。  我が国の木材需要そのものは昭和四十八年ごろまで一貫して増加をしてきたわけでございますが、その後木材需要の大宗を占めます住宅建設につきましても、昭和四十八年あるいは五十四年ごろをピークにいたしまして現在は減少の一途をたどっているような状況でございますし、また木造家屋につきましても建設戸数が現在では若干低下をしているという状況でございまして、昭和五十八年には約九千万立米というような状況になってきております。  現状で見ますと、伐採活動も現在非常に停滞をしておりますので、どうしても国内需要を賄うためには外材に依存せざるを得ない部分は相当ございます。しかしながら、現状におきましては外材はピーク時に比べますと依存率も若干減ってきておりまして、輸入量は約五千八百八十万立米程度というような状況でございまして、最盛期の五十四年の外材輸入量は七千六百万立米でございますので、約二三%程度の減。反面、国産材につきましては、五十四年当時の三千四百万立米が大体三千二百万立米ということで、減少程度が五%程度というようになってきております。  しかしながら、御承知のように、私どもとしては国産材をできるだけ使ってもらうという方向で考えたいと思っておりますけれども、残念ながら昭和三十年代の後半に木材につきましては自由化をした、したがって外材の輸入につきまして制度的に規制することは非常に困難でございます。したがいまして私どもとしては、国内需要に見合ってまず国産材を使っていただく、その不足分をできるだけ輸入で賄う、またそのためには外材輸入が秩序があるように適正に行われることが必要だと考えておりますので、五十三年だったかと思いますけれども、木材需給対策協議会をつくりまして、関係業界、需要者、官公庁が入りまして需給見通しをつくり、またそれに従って業界の中でもできるだけ秩序ある輸入をやるという方向で国内の業界を指導しております。また、産地国につきましても、できるだけ対話を行うということで、流通状況につきましても隔意のない意見交換を行うことをやっておるわけでございます。  ただ、将来の木材業界を考えました場合、現状のように放置をしておきます場合には木材需要は私どもが期待しておるように伸びないではないかというような心配もございますので、最近の予算におきましては、木材の需要拡大あるいは利用用途の開発というようなことに主力を置いております。また、関係業界は割に零細で散在しておりますので、これにつきましてもできるだけ情報交換等をやりながら需要と供給がうまくミートする、安定的に必要な木材を供給できるというような体制をつくるということで努力をいたしておりますし、明年度予算編成におきましても、こういう木材需要の開発あるいは流通ルートの整備を重点的に考えたいというように考えております。
  286. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 木材需要が今後そう伸びが期待されないとするなら、今国産材、主伐期に達する森林が増加してくるわけでございます。こうなりますと、主伐期に達した森林に一体どのように対応していったらいいのかということが問題になるわけでございますが、将来木材需要が伸びないなら、現在の主伐期に達する森林の植生旺盛な地域は、大口径木の複層林形成を目標とした森林造成を行わせていくべきではないかと私は考えるわけでございます。そうなりますと、今のうちからこの地域に対する、植生の盛んな林相を持っている地域に対する地域選定をなし、その間伐、除伐等の対策をとっていかないと手おくれになる、いわゆる主伐期まで延ばしておきますと百年、二百年と伸びない木になりますから、そのことを心配しておりますので、この点について政府の考え方をお聞かせいただきたいと思います。
  287. 角道謙一

    角道政府委員 木材需要の見通しにつきましては、政府は昭和五十五年に「重要な林産物の需要及び供給に関する長期の見通し」というものを立てておりまして、六十一年におきましては一億一千八百万立米、七十一年には一億三千三百万立米というように見通しております。私どもとしてはこの目標に向かいましてできるだけ木材需要の開発、拡大に努力していくということでございまして、需要は落ちていくということでは必ずしもございませんので、私どもはできるだけ現状の苦境を乗り越えていきたい、またそういう目標のために全力を尽くしているということがまず第一でごいます。  それから、今御指摘の長伐期か短伐期かというのはいつもよく議論になる問題でございまして、四十年代におきましては私ども短伐期というものがある程度頭にございましたけれども、それではまいりませんので、できるだけ長伐期志向という方向に現在向かっております。林業自体も一つの産業でございますので需要に見合って適正に、また産業として成り立つような適正な伐期というものがございます。必ずしも長伐期がいいかどうかということについてはいろいろ議論もございますし、その需給を見ながら、ただ林業につきましては先生指摘のとおり非常に長い産業でございますから、今からそういうことも頭に置きながら、先ほど申し上げました需要動向というものを頭に置いて対処していきたいと考えておるわけでございます。
  288. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 森林行政も経済行為を度外視しては経営できないわけなんですが、しかし、経済行為の中にも皆伐でいわゆる経済収支を補うということに対して私はいつも批判的なものでございますから、大口径木が残れるような複層林を形成しながら経済行為を考えていく方向で、ぜひひとつ日本の森林、山を守っていただきたいと要望するものでございます。  次に、農林省の中で大量の合理化、人員整理案がなされたわけでございますが、その中で林野関係で千七百人を縮減することが発表されております。国有林野事業は国土保全、水資源の涵養、山村地域振興への寄与と重要な使命を持っている、この分野にこういう縮減をするということは大変な影響を与えるのではないかと心配しておるわけでございますが、しかし、現在の林野事業の経営状況を見まして、この改革は必要であることも当然でございます。つきましては、その中で国有林関係職員の年齢構成を是正することも、また職務運営上効率をあらわすためにも必要ではないかと考えるわけでございますが、こういう点はどのようになっているのか、お聞かせいただきたいと思います。
  289. 角道謙一

    角道政府委員 御指摘のように国有林につきましては、現在、業務収入で人件費を賄い得ないというように非常に極度に悪い経営状況にございます。そのため、残念ながら五十三年来国有林の経営改善特別措置法によりまして経営改善を進め、特にその中におきましては要員規模の適正化というのは避けて通れない状況でございます。そのために、今御指摘のように、相当の離職を見込まざるを得ない状況でございます。  ただ問題は、私どもとしては今御指摘のような年齢構成を適正にすることが望ましいわけでございますが、現状におきましては、まず要員規模の適正化という観点から見ますと、離職者に伴います新規採用、これによります補充を完全に行うということは非常に難しい現状でございます。現在におきましてはまず要員規模の適正化が先決問題でありまして、これに伴いまして経営上また改善効果が上がってくるという状況になれば、新規採用につきましてもできるだけ若齢者を入れていくという格好によりまして年齢構成の適正化を図るということは必要かと思っておりますが、現状におきましては新規採用自体非常に抑制をせざるを得ないような状況でございますので、今後の問題として私どもは、経営の基幹でございますので十分念頭に置いて対処したいと考えております。
  290. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 現在林業高校に在籍する者が九千人にも上っており、その中で新規採用が林野庁においては百四十四名ぐらいの予定でございますので、非常に林業に志している青少年に夢がないわけでございますが、この点の御配慮も私の方からお願いしておく次第でございます。  次に、畜産振興関係で、霜降り肉が日本では極上肉として価格が高いわけでございますが、霜降り肉をつくるには、どうしても穀類を食わせなければならないわけでございます。しかし、肉を常食としているところでは、やはり赤肉の脂肪のついていないやわらかい肉が上肉でございまして、日本では病気肉が上肉である。こういうことは粗飼料生産に対する日本の畜産農家の情熱を失わせていく、畜産阻害の大きな原因にもなっている、私はこう考えております。この点で日本の嗜好性というもの、また現在の市場のこういう流通体系というものに対して私は大変な疑問を持っているわけでございます。こういう点で、ひとつ農林省といたしましても、牧草、いわゆる草の粗飼料で十分に育つところの、そしてまた赤いやわらかい脂肪の入らない肉が上肉であるというような、そういう一つの流れをつくっていくことに努力していただきたいな、こう考えるわけでございます。  時間も参っておりますので、これは要望いたしまして次の質問に移りますが、農業も、政策いかんでは研究開発集約型産業の花形となり得るものだと私は考えております。とりわけバイオテクノロジーの活用も大切でございます。新品種の開発も進めるべきではございますが、どうも今の農業指導の中で、消費型資源生産の方向に指導されている分野がたくさんございます。結局外国からの安い原料、また粗飼料を購入して、そこで安い製品をつくる、こういうことが消費型資源生産の形でございます。しかし、本来農業というのは循環型資源生産の方向で農業を確立しなければならないわけでございますので、こういうバイオテクノロジー等も循環型資源生産の方向で今後開発を進めるべきではないかと考えております。この点についての政府の所信をお伺いしたいと思います。
  291. 櫛渕欽也

    櫛渕政府委員 先生指摘のとおりでございまして、私どもこの五十九年から特にバイオテクノロジー先端技術開発につきましては、国と大学、民間、この官産学の連携に基づきます組織的な研究に取り組んでございますし、そういったバイオテクノロジーの研究のねらいといたしましても、ただいま御指摘のありましたような一つは新品種の開発、これを従来の交雑による育種法から飛躍的に新しいバイオテクノロジーの手法を応用いたしまして、そして非常に縁の遠い植物の間で遺伝子の導入を図り新しい生物資源を開発する、そういう方向で一つの力点を入れておりまして、昨年の十二月に新設されました農業生物資源研究所を中心といたしまして、このような例えば遺伝子組みかえあるいは細胞融合といったテクノロジーの基礎的な開発に現在取り組んでおるわけでございます。  さらには、ただいまリサイクル農業というお話がありましたけれども、同時に、昨年十二月に農業環境技術研究所を新設いたしまして、こういった農業の生産の発展と同時に、やはり農業それ自体が環境の自然生態系を維持する機能を持っておりますので、そういった生態系の機能をより十分活用する、生物の持っている機能を活用しながら食糧の生産を一層図る。そういう中で最も重要なかぎを握るのが微生物等で、そういったバイオテクノロジーによる土壌微生物を初めとする微生物の改良、その他バイオリアクターの開発とか、そういう方向も含めて大いに力を入れようとしておるわけでございます。
  292. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 それでは時間もなくなってまいりましたので大臣質問いたします。  我が国の風土、地形等の特性からして、日本農業は大陸型農業経営ではなく複合経営型、資源再生産型の農業経営が望ましいと思うわけでございます。今も、自然リサイクルの生態系を破らない、むしろこれを強化する方向で今後農政の指導あるいは研究開発をお願いしたところでございますが、この点に対して大臣の所見をお伺いしたいと思います。
  293. 山村新治郎

    山村国務大臣 我が国の農業の基本的な方向は、我が国の国土資源を有効に活用しながら生産性の高い農業経営の実現に努めていくべきものであるというぐあいに考えております。このために地域農業の組織化を通ずる生産規模の拡大、耕種部門と畜産部門との有機的な結合、適切な作目の組み合わせなど、地域の実情に応じ地域全体として複合経営の利点を生かし得るような合理的な営農を進めていくことが重要な方策と考えております。農林水産省といたしましても、農業生産基盤の整備、そしてまた技術の開発、普及等の施策を積極的に推進しながら、このような方向を助長してまいる考えでございます。
  294. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 終わります。
  295. 阿部文男

    阿部委員長 中林佳子君。
  296. 中林佳子

    ○中林委員 生産者米価が七月二十七日に決まりましたが、この二・二%アップというのは、農民、農業団体が要求していた七・七%アップという米作農民のぎりぎりの切実な願いから全くかけ離れたものであると言わなければなりません。昭和五十二年以来七年連続の実質据え置きということになったわけで、今でさえ赤字生産を強いられている大部分の米作農家の経営を一層悪化させるものです。  まず最初に、大臣にお伺いしますが、このわずか二・二%の引き上げで生産費を償う、再生産を保障する米価であると胸を張って言うことができますか。
  297. 山村新治郎

    山村国務大臣 本年の生産者米価、これにつきましては、当面の米の需給事情、これは四年連続不作ということで決してゆとりのある状況と言えないものでございます。しかし、依然といたしまして生産調整を行わなければ需給の均衡が図れないという状況、また御存じのとおりの厳しい財政事情、近年の稲作経営の実情等を踏まえながら、農家経済を取り巻く最近の厳しい諸情勢のもとで稲作の生産性の向上に取り組む農家の意欲にも配慮して、生産費及び所得補償方式により適正に決定したところでございます。     〔委員長退席、上草委員長代理着席〕 この価格によりまして、国民に必要な米穀の再生産は確保できたものと考えております。いろいろな厳しい財政事情、委員御存じのとおりの中でございますので、二・二%、一万八千六百六十八円、御理解いただきたいと思います。
  298. 中林佳子

    ○中林委員 大臣は適正だとおっしゃるわけですけれども、大臣もごらんになったと思いますけれども、先月の二十四日、二十五日のあの米審会場での炎天下での全国から駆けつけた農家皆さん方、私もあの現場におりましたけれども、今度はどんなことがあっても本当に七・七%以上かち取らなければ帰れない、このような声をたくさん聞きました。特に宮城の婦人の方々は、普通ならば、深夜に及ぶあの答申が出るまでの間、婦人は先に帰るんだけれども、今回は帰るわけにいかない、こういうことで最後まで、深夜に及びながらあそこにいらっしゃった。本当に切実なそういう農民の声を受けとめていたら、こんな二・二%というような実質据え置きの決定はできなかったはずだと言わなければなりません。これは行革審、財界の意向、生産者米価抑制に沿ったものだと言わざるを得ないわけです。  確かに、財政危機でこういう事態になったのだとおっしゃるわけですけれども、そうであるならば、来年度予算案に対して軍事費は七%台で合意をしているということでは、全くお話にならないわけです。ですから、今回のような農民に背を向けた米価決定では私どもは納得できない、この点を指摘して、次に進みたいと思います。  今回の二・二%の引き上げによって三百八億円の財源が必要だ、こういうふうに言われておるわけです。この財源を食管会計の中で賄うと言われているわけですが、それならば具体的にどういうところを財源にするのか、できるだけ具体的に簡潔にお答えいただきたいと思います。
  299. 石川弘

    ○石川政府委員 御承知のように、食管の特別会計、かなり大きな資金がございます。その中で、期首にどれだけの金を用い、期末にどのようにその金でやっていくかという大きな財源の中での扱いでございます。  具体的にというお話でございますので、節約を考えております財源の一つとしましては、自主流通に対する助成の一部、これは良質米につきましては現状維持しますので、これをカットはできませんが、自主流通に使っております財源の一部について合理化が考えられるのではないか。それから管理経費の中で、御承知のように、金利、倉敷あるいは輸送費、いろいろございますが、これらのものにつきましては、管理いたしております数量が減少することに伴いまして一部の節減ができるかと思います。全体の姿として、どれをどう充てて最終的にどうするかということはもう少し詰めてまいらなければならないと思っておりますけれども、そういう縮減財源等を頭に置きまして、全体の中でこれを整理をしていくという考えでございます。
  300. 中林佳子

    ○中林委員 食管会計の節減や合理化で賄うその具体的な例を出されましたけれども、これらはいずれもひいては農家に返ってくるものであるということで、私どもは認めるわけにいかないし、こういうものは当然一般会計で出すべきだというふうに思います。  しかも、こういうことで売買逆ざやが拡大したことを口実に、早くも竹下大蔵大臣が、消費者米価引き上げを検討する、こういう発言もされて、消費者米価引き上げを示唆したと伝えられているわけなんです。大臣にこの消費者米価の問題でお伺いするわけですけれども、売買逆ざやの解消ということで消費者米価引き上げを考えていらっしゃるのか。それとも、ことし末の消費者米価決定に際しては、どんな名目であれ引き上げはしない、こういうふうに言明できるのかどうか、お答えください。
  301. 山村新治郎

    山村国務大臣 大蔵大臣が何と言われたか知りませんが、米価の問題は私が担当でございます。今のところ、消費者米価の取り扱いについては何も考えておりません。決めておりません。しかし、少なくとも食管法の規定に基づいたところの、家計費及び物価その他の経済事情に十分配慮して、消費者の家計の安定を旨として、決める場合は適正に決めてまいります。
  302. 中林佳子

    ○中林委員 いつもそういう大臣の答弁が繰り返されながら今年度も引き上げがされたし、今までの経緯を見ると、必ず消費者米価に連動されてきているというのがこれまでの歴史的な事実なんですよ。ですから、今の言明を本当にお忘れなく、今年末の消費者米価決定に当たっては、消費者の家計を圧迫しないということを厳重に守っていただきたいと思います。  次に、先ほどもおっしゃっておりましたが、今回の米価決定に際して、良質米の奨励金については現行どおりやる、しかし来年度はその縮減や合理化の検討をする、こういうふうにおっしゃっているわけですが、良質米奨励金を来年は削減する、こういうことなのですか。
  303. 石川弘

    ○石川政府委員 良質米につきましては、御承知のような役割を果たしながら今まできたわけでございます。したがいまして、私どもは良質米奨励金の持ちます必要性あるいはその意味というものは十分理解をいたしておりますが、実はその水準だとかあるいは格差というものは、昭和五十五年に定められて以来動かしていないわけでございます。したがいまして私どもは、その良質米奨励というこの制度の健全な発展を図るという立場、これははっきりさせておりますけれども、流通実態、その後いろいろ変わっておりますので、そういう実態を見詰めながら再検討すべきことと考えておりますので、どこをどうするということを今申し上げる段階ではございませんが、これから時間をかげながら、そういう良質米奨励金の持っております大事さということは堅持をいたしますけれども、これを全く動かさないということではなくて、その本質をとらえながら、かつ合理的にすべきものは合理的にすべきものと考えておりますので、そういう線に沿って検討を進めるつもりでございます。
  304. 中林佳子

    ○中林委員 検討するということは、削減の方向で検討するということだと思うのですね。そうすると、実質的には米価引き下げにつながるということで、私は反対です。  次に、他用途米の問題についてお伺いするわけですが、政府が農業団体に、他用途米を主食用として買い上げるかわりに輸入を認めよと迫ったのは、新たな外国からの米の輸入の常態化に道を開くものであり、国会決議にも反して非常に問題だというふうに思います。この場で改めて米について、今後は加工用であれ全量自給を貫く、輸入は二度としないとはっきり言明できるわけですか、大臣
  305. 山村新治郎

    山村国務大臣 今回のこの他用途利用米を主食用に転用したということで不足することになる加工原材料用の手当てについて、輸入するのかということでございますが、農業団体といろいろ長官以下話し合いをしていただきまして、農業団体が自助努力により農家保有米等を集荷してその確保に努めていくということでございますので、これらの確保は何とかお願いできるものじゃないかと思っております。(中林委員「輸入はしないのか、それは答えていない」と呼ぶ)農業団体の代表の方が自助努力により農家保有米等を集荷してその確保に努めていくということでございますので、これは確保されるものと信頼いたしております。
  306. 中林佳子

    ○中林委員 これまでの農水委員会での大臣の答弁から大変後退しているわけですよ。自助努力で集まらなければ輸入する、こういうことですか。
  307. 石川弘

    ○石川政府委員 これはこういうようにお考えいただきたいと思うわけでございます。  私どもは、主食用に転用いたします際に、これはいろいろ事情がありまして、農業団体としては他用途米という姿ではもはや集荷することが大変困難だというような実情を何度もお話がございまして、そういう中で、主食に転用いたします場合にはそれによって不足を生ずるおそれがあるわけでございますので、そういう不足が生じました加工用原料米についてどのように対処したらいいか。これは御承知のように、他用途米の契約といいますか、供給を予定をされておりましたおみそ屋さんなりせんべい屋さんはそういうものを当てにして生産をやっていらっしゃるわけでございますから、これが足らなくなった場合に、それを足らないままで放置していいということにはならないわけでございます。その手段として、農業団体としては自助努力によってこれを集めて、そういう方々に心配をさせないという強い意思表示がございまして、今回のこのような決定になったわけでございます。  したがいまして私どもは、現段階において生産者団体がそのような形で集めていただくということを信頼して主食用の転用をすることを考えておりますので、これから先のことは農業団体がどの程度実行できるかというような話にだんだん入ってまいりますけれども、私どもはそういうことも含めて何度も生産者団体の意向を確かめた上でやっているわけでございますから、その実行を見ないうちに、もしどうしたらどうするかというような御議論は慎んでおるわけでございます。
  308. 中林佳子

    ○中林委員 もしもというような話はこれまでやっておりませんよ。この委員会ではもう二度と輸入はしないということを大臣も言明されたし、それに基づいた国会決議がされているわけでしょう。これはみんな含めて、全会一致で国会決議しているわけですから、大臣、二度と輸入はしない、こういうことをもう一度言明していただきたいと思います。
  309. 山村新治郎

    山村国務大臣 農業団体が自助努力でその確保に努めるからと言っておりまして、私はそれを信頼しておりますので、そうでなくて輸入しろ、輸入しないというようなことをはっきり言えというのは、それはもしもということになりますので、私は信頼しております。
  310. 中林佳子

    ○中林委員 大変問題だというふうに思います。これまでは、委員会大臣の答弁は輸入はしないとはっきりとおっしゃっているにもかかわらず、輸入しないと言えないということは、輸入への道を開く含みを持っていると指摘をして、本当に心から怒りをあらわして漁業問題に移らしていただきます。  我が国の漁業は、燃油の高騰によるコスト高、水産物価格の低迷、二百海里の定着化による国際的な漁業規制の強まりに見られるように、三つの病気に侵された重病人といった状態にあります。今漁業全体が借金づけとなって、漁業経営の悪化は深刻な状況になっております。これまでどおりの安易な資金対策だけでなく、漁業、漁民を襲うこの三重苦の根源にメスを入れて、この危機を打開することが強く求められております。先般も私どものところに、西日本都市漁業対策協議会の方から経営危機打開を含めた幾つかの要望が来ました。  そういう意味で、大臣、水産日本の再建ということも含めて、このような危機的な状況をどのように打開していくのか、お知らせください。
  311. 山村新治郎

    山村国務大臣 漁業は動物性たんぱく質の約半分、これを供給する産業として国民生活にとって大きな役割を果たしており、その振興を図ることは極めて重要であるというぐあいに考えます。このような認識に立ちまして、今後、沿岸漁業等我が国周辺水域の漁業の振興、また、粘り強い漁業外交による海外漁場の確保と新資源、新漁場の開発、漁業生産基盤の再整備、省エネ、合理化の推進等による経営の合理化、水産物の流通、加工の合理化と水産物消費の拡大等、これら各般の施策を総合的、積極的に展開していく、これが基本姿勢でございます。
  312. 中林佳子

    ○中林委員 そこで、漁業振興のための具体的な問題で二、三お伺いしたいと思います。  私は三月の当委員会において、特に山陰沖における韓国漁船の無謀操業についての具体的な例を出しながら取り締まり強化を要求してまいりました。その後、水産庁も運輸省などと協議をされていろいろと手を打ってこられたことは存じているわけですが、七月十八日、十九日にも日韓部長局長会議が開かれたと伺っております。その会議の中で韓国漁船の領海侵犯や違反操業について水産庁としてはどのように対応されたのか。  特に、日韓漁業協定の八項の取り決めによって日本側が規制している漁法、禁漁期など、韓国側も遵守することになっているわけですけれども、例えば山陰沖の場合は六月から八月まで底びき禁止期間になっておりますが、こういうときに韓国側に操業しないようにということも含めてそのときの話し合いが行われたのかどうか、具体的にお答えいただきたいと思います。
  313. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  まず、本年三月の第十八回日韓漁業共同委員会で我が国から、御指摘がございました合意議事録第八項に定められております規制措置の遵守について強く申し入れを行ったところでございます。また、その中の一つとして取り締まり等に関する部長局長級の会議を提案をいたしました。韓国側もこれを受け入れ、その結果開かれたのがただいまお尋ねの七月十八、十九両日の会議でございます。  このような経緯にかんがみまして、七月十八、十九両日の会議におきましても、再度韓国底びき漁船の我が国国内規制遵守及びそのための指導取り締まりの徹底を強く申し入れたところでございます。また、あわせて、本年に入り急増しております山陰沖の韓国のアナゴかご漁船の領海侵犯につきましても、実情を説明して、先方の指導方を申し入れたところでございます。
  314. 中林佳子

    ○中林委員 少しは減っているけれども、なおかつ領海侵犯もあるし無謀な操業もあると漁民の方から強く要望を受けておりますので、一層の韓国側への、今言われたような無謀操業などが起きないような政府としての努力をしていただきたいと思います。  次に、昨年八月二十九日に、日本海沿岸十七道県漁連と全底連で構成される日本海漁業協議会韓国漁船対策委員会が開かれて、韓国漁船の無謀操業について、韓国についても二百海里を適用しないと解決しない、早期設定をと、こういう決議がされております。また、ことしの七月二日には二百海里設定緊急島根県漁民大会も開かれました。漁民の方々は資源の枯渇を非常に心配して、韓国への二百海里適用をせよと、こういう声がだんだん広がって、今圧倒的になっているわけですが、政府としてどのような対応をしていかれるのか。  特に昨年三月四日の予算委員会の第五分科会で「韓国漁船に対しても二百海里法適用ということに踏み切るべきだ、」こういう質問に対して、当時の金子農水大臣が「ほうはいとして二百海里を日本の沿岸漁民が期待しておる、希望しておるという声、よく承知いたしております。これからひとつ慎重に検討をしていきたいと思います。」こういう答弁をされているわけですね。ですから、政府としてはその後どのような検討をされたのか、あわせてお答えいただきたいと思います。
  315. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 先生指摘のような、例えば本年七月の島根県漁民大会の決議、私どももよく承知をしております。それで、金子大臣の御答弁もございまして、私どももいろいろ検討はしておるわけでございます。いろいろ検討いたしてみまするに、韓国周辺水域へ出漁しておる漁業者の皆さんのお立場からすれば、対韓二百海里の適用ということは韓国側の対日二百海里適用を誘発する、そういうことが当然予想されるわけでございまして、そういう心配をなさる向きからは必ずしも賛成できないというふうな御主張もあるということでございます。したがいまして、対韓二百海里適用の問題は、私どもの検討結果によりますれば、我が国漁業者全体のコンセンサスであるとはどうも言えないというふうに認識をいたしております。  そういう中で、それでは政府としてどうするかということでございますが、韓国周辺水域に出漁しております我が国漁業への影響、あるいは現存の日韓の漁業秩序との関連、さらには日韓関係全体に与える影響等にも問題がございますので、今後ともさらに検討していくということにいたしておるところでございます。
  316. 中林佳子

    ○中林委員 検討する、検討すると言って、コンセンサスが得られてないということですが、本当に沿岸漁業を守るという立場で、漁民の声をしっかりと聞いて、ぜひ前向きな検討をお願いしたいと思います。  七月二十八日に、石川県のイカ釣り漁船が操業中に、朝鮮民主主義人民共和国の警備艇の銃撃によって船長が死亡するという痛ましい事件が起こりました。このことは、漁民はもとより国民に大変な衝撃を与えたわけです。無防備な者に銃が向けられ、殺されるということは、まだ事実関係がわからないとしても、また、その背後にいろいろ事情があったとしても、決して許されるものではないと思います。政府にあっては、事実関係を早急に明らかにするために全力を挙げられるよう、強く要求しておきます。  さて、この事件を初めとして、五十七年に三隻、五十八年に三隻、ことしに入ってから五隻、日本漁船が拿捕されております。これはそもそも、日朝民間漁業協定が昭和五十七年六月で期限切れになって北朝鮮水域に行けなくなった、そのために漁民は協定締結の復活を強く求めてきたにもかかわらず、この二年以上、一向にその再締結のための進展はなく、漁民にとって大変な損失を与えているわけです。島根県のカニかご漁業者は、ベニズワイガニを七隻でとっているけれども、北朝鮮水域に行けなくなったために年間十億円は違う、こういうふうな訴えもされております。日朝漁業協定が再締結されない状態では漁業に大変大きな影響を与えておりますし、協定の復活そのものは、漁業だけじゃなくて漁民の安全操業、今回のような事態が起こらないためにも非常に強い要望となっておるわけですが、水産庁としてはこれを今後どのような対策でやっていかれるおつもりでしょうか。
  317. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  五十七年六月に日朝漁業民間暫定合意が失効いたしましてから、その後、日朝友好促進議員連盟あるいは日朝漁業協議会等、関係団体の御尽力によりまして、日朝漁業民間暫定合意を復活させるための努力が積み重ねられてきたわけでございますが、残念ながら、現在まで実現を見るに至っておりません。私どもといたしましては、国交のない国が相手なものでございますから、私どもが直接交渉に当たるというわけにはまいりませんが、今後とも暫定合意の可及的速やかな復活が図られるよう関係団体の御尽力をお願いし、私ども側面的にお手伝いできることはお手伝いをするということで、暫定合意の復活の一日も早からんことを念じておる次第でございます。
  318. 中林佳子

    ○中林委員 水産庁はそのようなお考えでしょうけれども、政府としては、私はこれは何かネックになる政治的な背景があるように思えてならないわけです。  日朝議連が七月上旬に朝日友好促進親善協会に対して、東京会談を開催するので代表団の訪日を要請しました。ところがその後、外務省の高官が一般紙の質問に対して、ハイレベルの人物の入国は難しいと語って、これが新聞報道されて、この発言が問題視され、朝日友好促進親善協会側は、日本政府が我が国に対して非友好的な態度をとり続ける間は代表団を派遣するわけにはいかない、こういうことで代表団の派遣が実現できなかったわけです。漁民の間でも今度こそ協定が再締結されるのではないかと大変な期待をしていたのに、裏切られたわけです。  日朝民間漁業協定の締結は一向に見通しが立たない、こういう事態になっております。このような事態になっている責任は、国交樹立をやっておりませんし、また政府間の漁業協定を結ぶという漁民の要求にも全くこたえていない政府に責任があると私は思うのです。ですから、その点で外務省は、国交樹立だとかあるいは政府間の漁業協定を結ぶことについてどのようにお考えなのか。  また、国交回復といってもなかなかすぐにできるものではないということは私もわかるわけで、当面、こういった事態が起きた場合日赤しか窓口がないというのは、漁民にとっても大変不安だと思うわけです。ですから、政府としては最低限交渉ができる窓口をつくるべきだというふうに思うわけですけれども、外務省としてはそのお気持ちがおありなのでしょうか。
  319. 高島有終

    ○高島説明員 お答えいたします。  私どもとしましては、朝鮮半島の平和と緊張緩和のためには、南北のバランスを基礎といたしました国際的な枠組みを維持していくことが極めて重要なことであるというふうに認識いたしております。したがいまして、こういう観点から、このようなバランス及び国際的な枠組みを崩すおそれのある行動は避けていかなければならないというふうに考えております。したがいまして、当面、北朝鮮との間で外交関係を樹立する考えは持っておりません。  他方、先ほど御指摘ございましたように、日朝間の漁業問題が我が国の漁民の生計にかかわる重要な問題であるということは私どもも十分認識しているところでございます。そこで、北朝鮮からの入国の問題の御指摘がございましたが、私どもとしましては、北朝鮮からの入国につきましては、入国の申請が行われた段階でケース・バイ・ケースに審査いたしまして、その可否を決定するという方針をとっております。漁業問題等についての話し合いで入国がある場合にもこの方針は適用されるわけでございますが、しかし、このような方針は従来からの一貫した方針でございまして、先ほど御指摘がございましたように、今回、漁業問題についての話し合いの話がございましたけれども、私どもとしては、その際にも、入国に対して新たな条件を付したというふうには考えておりませんで、一貫した方針で臨むということであったわけでございます。  なお、最後に、先ほど冒頭申しましたように、北朝鮮とは外交関係を有しておりませんので、政府ベースでの交渉の窓口を設けることは、これは遺憾ながらできないというふうに考えております。
  320. 中林佳子

    ○中林委員 ここで政府の外交関係で論議するだけの時間がございませんので、質問は繰り返しませんけれども、こういうことでは漁民にとっては本当に極めて不安でならない。大臣もぜひ外務省ともよく連絡をとっていただいて、日本海での安全操業ができるよう努力をしていただきたいと要望しておきます。  次に、食品添加物の問題でお伺いします。  特に、合成酸化防止剤のBHAについてお伺いするわけですが、BHAについては食品衛生調査会が五十七年五月に使用禁止を決め、それを受けて五十七年八月に厚生省が食品添加物として使用できない規制告示をし、半年間の猶予期間を設けて、五十八年二月一日から禁止することになっていたわけですが、五十八年一月三十一日、実施の直前に突然延期したのはなぜですか。
  321. 市川和孝

    ○市川説明員 お答え申し上げます。  BHAは、日本で行われました動物実験でラットの前胃というところにがんの発生が認められたものでございますが、この報告をもとにいたしまして、五十七年の七月から五十八年の一月にかけまして、日本、アメリカ、イギリス、カナダの四カ国の専門家による会議が開かれました。その場におきまして、その安全性の評価をめぐりまして国際的になかなか評価の意見が一致しないという事情がございましたために、五十八年の四月に開催が予定されておりましたFAO、WHOの食品添加物専門家会議における多数国の学者による科学的論議の結論を待つということにいたしまして、その規制の施行を一時延期したものでございます。
  322. 中林佳子

    ○中林委員 それは表向きの厚生省の見解だと思うわけですが、当時の新聞報道を見れば、アメリカからの圧力があったということは明らかになっております。  BHAについてのアメリカの対応は非常に素早くて、五十七年の六月末に食品薬品局のミラー局長が来日して発がん性を明らかにした学者に会い、詳しいデータを要求しただけでなく、BHAの安全性を討議する四カ国専門家会議を提案しました。五十八年の一月に開かれた四カ国会議では、アメリカを中心にイギリス、カナダから、より詳しい評価が行われるまでは規制しなくても危険は少ないという意見が表明されました。これは、何らのデータを示さずこういうことが表明されたわけです。一月の末に政府はこういう圧力に屈してBHAの使用禁止措置を延期することを決めた、これは厚生省はお認めにならないと思いますけれども、そういう事実関係から明らかにそうなっていると言わざるを得ないわけです。  五十八年五月に食品衛生調査会常任委員会で、大臣の定める日まで禁止時期を延期することが承認されました。つまり、これまで二転、三転、政府の方針が変わっております。FAO、WHOの専門家会議を経て、動物実験を行うことになって、日本は犬を引き受けたわけですが、その動物実験について次にお伺いします。  ビーグル犬などに対するえさの投与はことしの二月で終わっていると思うわけですが、その後どこまで実験が進展しているのか。また、アメリカやカナダやイギリスの実験はどこまで進んでいるのか。この実験の結果が出た場合、FAO、WHOの評価を得てから判断するというのか、その点お伺いします。
  323. 市川和孝

    ○市川説明員 ビーグル犬を用いました実験は、先生指摘のとおり昨年八月から開始したわけでございます。犬の屠殺はすでに終わっているわけでございますが、現在病理検索が行われている段階でございます。なお、今後一、二カ月で中間報告が取りまとめられるものと考えております。  それから、外国での状況でございますが、私ども知る限りにおきまして、米国におきましては日本と同様、犬を用いた実験を行っている、それからカナダにおきましては猿を用いた実験が行われているというふうに聞いておりますが、実際の進捗状況という点については私ども把握しておりません。  なお、我が国におきますこのビーグル犬の実験結果が出ました場合には、当然食品衛生調査会に報告することになるわけでございますが、あわせまして、FAO、WHOの食品添加物専門家会議にも提供することとしておりますので、ここにおきます評価も参考として結論を得てまいりたい、このように考えております。
  324. 中林佳子

    ○中林委員 FAOやWHOの定例の会議は来年の四月になるわけですね。ですから、えきの投与はもう二月に終わっている、大体もう中間報告が出てもいいというふうに私どもは思うわけですけれども、それが明らかにされていない。こういうことで、本来は去年の二月一日から禁止がはっきりされるはずだったのに、それからいかにも何か、ひょっとして安全なのかもわからないという感じで今日まで来ているということで、実は業界に混乱が起きているわけです。  五十七年五月十日に厚生省の禁止通達は出ているわけですけれども、煮干しの業界では、イワシの漁期を迎えてBHAをめぐる問題が再燃化しております。全国煮干商業組合はことしの三月に、今後の新漁ものの煮干しについてBHAが添加してあるものは一切取り扱わないという声明を発表しております。しかし、一部の加工業者がBHAを使用し始めているわけです。厚生省が昨年一月末に禁止措置を延期して、一年半近くも態度を明らかにしないために、生産者の中で緊張感が薄れてきて、このBHAを使用した煮干しの在庫は現在二万トンぐらいあると言われているわけです。ですから、生産者と消費者の信頼を保っためにも、厚生省、農水省がきちんとした行政指導をしなければ、業界も大変だし、また消費者にとっても、私どもは危険だと思うわけですけれども、危険かもわからないそういうものを食べざるを得ないというふうに思うわけです。通達は生きていると思いますので、農水省、厚生省、それぞれ行政指導を強めていただきたいと思うわけですけれども、それぞれにお答えいただきたいと思います。
  325. 市川和孝

    ○市川説明員 BHAにつきましては、五十七年五月以来、パーム原料油及びパーム加工原料油以外の食品には使用しないようにということで指導を行ってまいったところでございます。現在油脂性の食品にはBHAはほとんど使用されていない状況でございまして、指導はかなり徹底していると考えております。しかしながら、御指摘のとおり一部の煮干しにつきましてはなおBHAを使用しているという報告等もございますので、私どもといたしましては、この夏の夏季食品一斉取り締まりの機会をとらえまして、特に煮干しの製造施設に対する指導の徹底ということを都道府県に対しまして指示したところでございます。なお、今後とも関係省庁とも十分連絡をとりつつ、指導の徹底に努めてまいりたいと思います。
  326. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  五十七年に厚生省がBHAの使用を自粛するように通達をお出しになって以来、水産庁でも煮干し業界に対してBHAの使用を自粛するよう行政指導を行ってきておるところでございますが、今後とも一層その周知徹底を図ってまいりたいと思っております。
  327. 中林佳子

    ○中林委員 厚生省の方にもう一点だけ食品添加物の問題でお聞きしたいのですが、食品添加物全面表示の問題です。  これは昭和五十六年六月四日の衆議院物価特別委員会で、当時の大石厚生省政務次官が「食品添加物を使用する食品に食品添加物の名称をすべて表示させるということを可能な限りこれからやっていきたい。」こういう答弁をされているわけで、それ以来作業が進み始めて、消費者の期待も非常に大きいものがありました。  これに対して、日本食品添加物協会が、ことしの五月二十九日の理事会で「食品添加物全面表示問題に関する要望」を決めました。これを見ますと、「表示すべき添加物の範囲」として「別表第三の添加物に限定して」として、天然添加物を除外すべきとし、さらに別表第三の添加物についても「最終食品に効果を及ぼさないもの」「最終食品では技術的効果を持たないもの」などを除外すべきとしているわけです。さらに、表示を要する食品の範囲も別表第三に限定すべきとしております。もしこのような内容になるのであれば、現行の表示と大して変わりのないものになり、厚生省のお約束の全面表示とは非常に遠いものにならざるを得ないわけです。  ですから、厚生省はこの要望を受け入れるおつもりなのか、それとも全面表示という点を守っていかれるおつもりなのか、その点お伺いします。
  328. 市川和孝

    ○市川説明員 食品添加物の表示につきましては、本年二月以来、食品添加物の表示の検討会というものを設けまして検討を進めてきていただいておるところでございます。現在までのところで、具体的に表示すべき添加物の範囲について結論を得るというところには至っていない状況でごいます。  なお、先生指摘のとおり、業界からは現行表示義務添加物の範囲にとどめてほしいという要望が一部寄せられておりますが、他方、消費者団体等からは全面的に表示することが望ましいという御要望もいただいておるわけでございまして、私どもといたしましては、この食品添加物の表示につきまして、公衆衛生の観点から、原則として個別名表示での表示を行うという方向で御検討をいただいておるわけでございまして、そこでの御検討の結果というものを尊重してまいりたいと考えております。
  329. 中林佳子

    ○中林委員 ぜひ全面表示という消費者の期待にこたえていただきたいと思います。  最後に、中海干拓淡水化事業の問題で一点だけ質問させてください。  宍道湖、中海淡水湖化に伴う水管理、生態系変化研究委員会の中間報告の問題ですけれども、これはことしの三月の農水委員会でも私は質問いたしましたが、中間報告の公表が非常におくれていて、早く早くということがあるわけですが、朝日新聞にもその要旨が報道されましたし、これは一日も早い公表の方がいいのではないかと思うわけで、その公表の時期、それから今後のこの問題の段取り、それをお聞きして質問を終わりたいと思います。
  330. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 お答えいたします。  御指摘研究会のいわゆる中間報告の公表でございますけれども、かなりおくれましてまことに申しわけないわけですけれども、県の水質管理計画というのが昨年の十二月に公表されております。その計画をもとにいたしまして中海を淡水化いたしました場合の将来の水質予測を明らかにするということで、明らかにした上で中間報告と一緒に発表するということにしていたところでございます。現在この水質の予測作業がおおむね完了のめどが立ってきておりますので、近々公表いたしたい、このように準備を進めているところでございます。  今後の段取りでございますけれども、中間報告の公表、これはただいま申し上げましたように、水質の将来予測とあわせまして公表するわけでございますが、その後鳥取、島根の両県あるいは関係町村の了解をとる必要がございます。また、河川法の使用の手続がございますし、環境庁等の関係機関との調整の仕事も残っておりますので、順次これらのことについて了解ないしは調整、許可等をとってまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  331. 中林佳子

    ○中林委員 終わります。
  332. 上草義輝

    上草委員長代理 関連して、藤木洋子君。
  333. 藤木洋子

    藤木委員 私は、稲の生育と病害虫、特にイネミズゾウムシの発生と加害状況についてお伺いをいたします。  私は七月三日、宝塚市の西谷地域状況を見てまいりました。成虫による葉の食害、幼虫による根の加害で分けつが悪く、株が少なくやせていて、葉の色も薄く、一見してそれとわかる状況が谷合いの水田で多く見受けられました。七月三十一日農業改良普及所に問い合わせたところ、生育はかなり持ち直っているということですが、それでも分けつがいま一つと心配される面積は大きいといいます。全体に多少軟弱で、いもち病、秋冷えなど、今後の天候が気にかかると言っておられます。農水省では、全国的に見てこのイネミズゾウムシ発生地域の稲の生育についてどのようにお考えでしょうか。
  334. 関谷俊作

    ○関谷(俊)政府委員 イネミズゾウムシでございますが、これは日本には五十一年に愛知県下に最初に出ましてから非常に蔓延しまして、ことしは北海道、沖縄を除く四十五都府県に発生を見ておるわけでございまして、県からの報告によりますと、大体五十万ヘクタールぐらいの被害が一応あるのではないかということでございます。ただ、この虫の被害は、これによります生育のいわば阻害というところまでは必ずしもいかないものが多うございまして、そういう意味で、お尋ねのございました水稲の生育状況に直に大きな影響を与えるということではないようでございます。  このことはまた別にしまして、全体的にことしの水稲の生育状況につきましては、七月十五日現在の作柄概況が先般統計情報部から出ましたが、これでごらんのように、北海道、東北、北陸方面では、平年並みかやや良、北海道は良というような生育状況でございまして、ただ、お尋ねの中にもございましたが、これからの気象状況あるいは病害虫の発生の見込みとしましては、例えばいもち病でありますとか、これからの日照不足あるいは低温、そういうようないろいろな面での障害については十分注意をしてまいらなければならない。このまままいりますればことしの作柄は非常によいということになるわけでございますが、私どももそういういもち病等の病害虫に対する対策、あるいは施肥の面、それから稲の管理の面、こういう面に十分注意をしてまいりたい、かように考えております。
  335. 藤木洋子

    藤木委員 それでは、国はイネミズゾウムシの有効な防除対策はもう確立をしたというふうに考えておいでですか。
  336. 関谷俊作

    ○関谷(俊)政府委員 イネミズゾウムシでございますが、これはなかなか虫としてはちょっと厄介な虫でございまして、これは雄がありませんで雌だけでふえるという単為生殖の虫でありまして、冬の間は成虫で林の下の草むらなどに越冬しまして、それから本田に入りまして卵を産み、その年に成虫になってまた越冬する、こういうことでございます。  防除法につきましては今まで技術的な研究等もされまして、やはり今直接用いますのは薬剤による防除が一番効果的であろうということで、育苗箱に施業をする、それから水面に施用をする、その他成虫防除、この辺のところを中心に私ども病害虫防除対策として取り上げておるわけでございます。なお若干耕種的な防除法としましても、初めの田植えの仕方、稲の植え方等によりまして被害を未然に防止できる、こういうような研究もなされておりますが、現状はやはり薬剤防除が一番効果的であるというふうに考えております。
  337. 藤木洋子

    藤木委員 私がお伺いしたのは、その方法で果たして確立したと言えるかどうかという点をお伺いしたわけですが、お答えになっていらっしゃいません。イネミズゾウムシが全国的に蔓延をしていることから見ましても、到底防除対策が確立したとは言えないのじゃないでしょうか。愛知県農業総合試験場研究報告によっても、薬剤による抑制の効果、これは確かに認められるものの、耐虫性品種の育成や天敵の研究もこれからというところです。この大事なときに農水省補助金を打ち切ってしまいました。  そこで、異常発生地域での対応はどうかということです。宝塚市西谷地域農業改良普及所の方の案内で視察させていただきました。現地では農家の方が「薬をまきに行くところやけども、今どきまいてほんまに効きますかいな。」と、事もあろうに私に尋ねられるのです。またある方からは「水の深い田はイネミズにやられる、水を干せと言われて干したら、干割れしてさっぱりや。走り水させたらよいちゅうけど、うちの田は水が走らんと、はうようにたまる田や、七十年この方農業をやってきているけれども、ああせいこうせいと振り回されるばかりや、かなわん。」こんなふうに苦情を言われました。確かに農業普及員の皆さん方の献身的な御努力には頭が下がります。にもかかわらず指導が徹底し切れないのは、臨調行革による人員削減によるものと言わなければなりません。  また、兵庫県のイネミズゾウムシ対策は、密度が低ければ稲の回復により実害はほとんど出ないものと考えられるとして、密度の抑制に努めているにすぎないのです。これらのことから言えることは、現状は不徹底な指導と個人任せになっているということです。  一方、氷上部柏原町では、農業委員会でこの問題を重視し、視察をされまして、全国的に広がった経緯、その生態、また防除対策について研修、協議した結果、従来のイネゾウやドロムシと違って甲羅をかぶっており、水陸両用で移動性に富んでいるので、相当量の薬剤を一斉に広範囲に散布しなければならないこと、半強制的な全域防除でなければ効果がないこと、そのためには公費による薬剤助成が求められるとの結論に達して、六月十八日町長にあてて要望書を提出しておられます。  そこで、野菜やあるいは転作作物に運用していらっしゃいます病害虫防除総合対策事業というのがございますけれども、イネミズゾウムシの防除にも組織的防除体制の育成をすべきではないか、このように私は思うのです。このようにいたしますと、一斉共同防除を行ってまいりますから、より効果のある防除ができるだろうというふうに考えられますし、さらに近年も起こっている農薬による死亡事故あるいは中毒者、こういった方たちを出すようなことも防ぎとめることができるのではないかというふうに考えるわけです。どのようにお考えでしょうか。
  338. 関谷俊作

    ○関谷(俊)政府委員 イネミズゾウムシに関係します防除対策につきましては、現在、先ほど申し上げました方法の中では、育苗段階でいわゆる箱施業ということで箱に施業をいたしますると、これはかなりというか、ほぼ発生防止の効果が出るわけでございます。ただ、これは発生をしました後では間に合わないわけで、結局二年目以降にこういう方法を用いるということになるわけでございます。  私どもの防除に対する補助のあり方でございますが、当初、一番初めに発生しましたときは、特殊病害虫の緊急防除事業ということで、発生しました県を重点に実施をしたわけでございますが、それから五十四年以降現在に至るまで、イネミズゾウムシ特別防除事業ということで、最近では全体で約三億円弱でございますが、その規模の補助事業の対象にはいたしておるわけでございます。  ただ、この全体の考え方は、やはり防除技術を定着させるということがねらいでございますから、例えば発生後五年以上経過しました県は除外するというようなこともいたしておりまして、そういう意味で我々の考え方は、あくまでも発生当初から重点的に対策を講じまして一般的な防除へ移行するというのがこの対策の方向でございます。そういうことで、お尋ねの中にございましたような水稲関係の防除組織の確立ということで対処するのが長期的な意味では一番大事なことと存じておりまして、これは現在、発生予察の職員あるいは発生予察組織も置いておりますし、それから村段階等におきましては、防除の組合それから病害虫防除員の設置、こういうようなことを通じまして全体的な組織を確立して、このイネミズゾウムシも含みます水稲の病害虫の防除の効果を上げるというようなことで対処いたしておるわけでございます。
  339. 藤木洋子

    藤木委員 イネミズゾウムシも含めた共同防除、そういった体制を強化するというお話でございましたが、その御指導を徹底していただくと申しますか、促進していただくようにお力添えをお願いいたします。  今御説明がございました国のイネミズゾウムシ特別防除事業につきまして、私、幾つかの問題を指摘したいというふうに思うのです。  一つは、今もおっしゃいましたけれども、被害の少ないところは補助対象から除いていらっしゃるわけですね。これでは根本的駆除の立場に立っているとは考えられません。少なくとも発生田、発生地域対象にすることが基本でなければならないと思います。  二つ目に、その地域にあって防除方法が確立するまでの期間として、かつての三年間を二年にさらに縮められましたけれども、被害の激甚地などの実態からいいますと、期間の延長がどうしても必要です。激甚地では、防除方法が確立されていないのに補助だけ一方的に打ち切られるという実情を訴えているわけでございます。  三つ目に、薬剤補助単価が実情に全く合っていないということですね。昭和五十四年に決めた農水省補助単価は、最も安いカルタップ粒剤の二分の一にしか当たりません。兵庫県ではことしカルタップ粒剤以外に五種類の薬剤を使用しておりまして、カルタップの二倍、三倍の価格のものの量が随分多く使われております。負担が極めて重くなっておりますので、補助単価の見直しを検討すべきだというふうに思うわけです。  私は、農水省がお出しになりましたパンフレット、これも拝見したのですね。これをお出しになっていらっしゃるのが実は五十八年ですから、基準を決められましてから四年たっているわけですね。このパンフレットを拝見いたしますと、私が先ほど言いました、カルタップ粒剤だけではなくて、箱施用と同時に水田にも繰り返しまくのが大切だ。これはこんなふうに書いております。田植え前の育苗箱施業を実施し、さらに成虫密度の高い地域では粒剤による水面施用を組み合わせること——水面施用の薬の価格を私、あなたの方の資料で拝見させていただきましたけれども、このカルタップと同等の安い薬はないわけです。ですから、その補助が二分の一だとおっしゃっているけれども、あなたたちが御指導していることから見ても、これは二分の一にはなってないということを私は指摘させていただきたいというふうに思います。  以上、三点についての御見解を伺わせていただきます。  そして、続いて大臣にお願いをしたいというふうに思うのですけれども、イネミズゾウムシの防除に使われました薬剤は、兵庫県のデータによりまして試算いたしますと、ざっと一億三千万円を超えておりますね。ですから、全国的に使われた量のお金というのは数十億に上るというふうに考えられます。今行革審だとか大蔵当局の補助金見直しの強い圧力がかかっていると聞きますし、そのような時期ではございますけれども、イネミズゾウムシの加害が全国的に広がる一方の今日におきまして、病害虫防除のための予算獲得のためにありったけの力を注いでいただきたい、そのことを強く要望させていただく次第でございます。  そしてさらには、兵庫県の農協七団体からこの七月に国に提出されております要請書、大臣ごらんになったかと思いますけれども、生産資材価格の抑制のための行政指導を強化してくれ、このように述べておられるわけです。農水省は、農用資材、農機具だとか肥料だとか農薬、こういったものの独占価格の引き下げによって農家の実質所得の向上に努めるべきだというふうに考えるのですが、その点もあわせてお答えをいただきたいと思います。
  340. 関谷俊作

    ○関谷(俊)政府委員 お尋ねのございました補助内容につきましては、これはまことに先生の御意向に反するのでございますが、五十九年度から補助期間を二年間にする、あるいは補助単位は市町村単位にする、それから発生後五年以上経過した県は除外する、こういうような措置が講じられておるわけでございます。これは全体的には補助金のいわば効率的使用という問題もございますが、同時に、イネミズゾウムシがこういうようになってまいる段階では、やはり建前としていわゆる緊急防除、新しく出た虫を緊急に防除するということよりは、既に使われている技術を使っていく、それを定着し、我々の言葉で申します一般防除の方に持っていくという考え方がここに出ているわけでございます。  したがいまして、薬剤の補助単価等もお尋ねのとおりでございますが、全体としては限られた補助金枠を有効に使いまして、一般的な防除の方へだんだん切りかえていくということで、先ほど申し上げましたような水稲の全体の防除組織の中でイネミズゾウムシも含めまして防除対策を講じていくという考え方で対処してまいりたい、かように考えております。
  341. 山村新治郎

    山村国務大臣 今、植物防疫対策につきましては局長から答弁したようでございますが、この対策の円滑な実施に努めてまいりますし、この予算の獲得に努力してまいります。  そしてまた、いわゆる生産資材につきましては、御存じのとおりに、これは全農とメーカーが交渉して決めた価格が基準となって、商系も含めた小売価格が形成されているところでございますが、農村物価賃金調査によりますと、農業生産資材の価格は落ちついた動きを持っておる。五十七年度には前年度比〇・三%、五十八年度には〇・五%低下しているということでございますが、今後とも適正な価格設定がなされるよう、ひとつ努力してまいりたいというぐあいに考えます。
  342. 藤木洋子

    藤木委員 ありがとうございました。  今、大臣がおっしゃいました最後の農用資材の価格ですが、それは平均をとっていらっしゃるのだと思いますが、その中でも一段と値段が上がっておりますのが農薬なんです。ですから、ここのところにメスを入れまして、ひとつ御尽力をいただきたいということを最後に要望して、質問を終わらせていただきます。
  343. 上草義輝

    上草委員長代理 次回は、来る七日火曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時三十五分散会