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1984-05-08 第101回国会 衆議院 農林水産委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年五月八日(火曜日)     午前十時十三分開議  出席委員   委員長 阿部 文男君    理事 上草 義輝君 理事 衛藤征士郎君    理事 田名部匡省君 理事 玉沢徳一郎君    理事 小川 国彦君 理事 日野 市朗君    理事 吉浦 忠治君 理事 稲富 稜人君       小里 貞利君    太田 誠一君       鍵田忠三郎君    佐藤  隆君       鈴木 宗男君    田邉 國男君       高橋 辰夫君    月原 茂皓君       中村正三郎君    野呂田芳成君       羽田  孜君    保利 耕輔君       三池  信君   三ッ林弥太郎君       山崎平八郎君    串原 義直君       新村 源雄君    田中 恒利君       安井 吉典君    駒谷  明君       斎藤  実君    武田 一夫君       水谷  弘君    菅原喜重郎君       津川 武一君    中林 佳子君  出席国務大臣        農林水産大臣   山村新治郎君  出席政府委員        農林水産大臣官        房長       角道 謙一君        農林水産省構造        改善局長     森実 孝郎君        農林水産省畜産        局長       石川  弘君        林野庁長官    秋山 智英君  委員外出席者        運輸省鉄道監督        局国有鉄道部地        方交通線対策室        長        岩田 貞男君        建設省計画局民        間宅地指導室長  深沢日出男君        農林水産委員会        調査室長     矢崎 市朗君     ――――――――――――― 委員の異動 四月二十七日  辞任         補欠選任   細谷 昭雄君     中西 績介君 同日  辞任         補欠選任   中西 績介君     細谷 昭雄君 五月八日  辞任         補欠選任   田澤 吉郎君     中村正三郎君   斎藤  実君     玉城 栄一君 同日  辞任         補欠選任   玉城 栄一君     斎藤  実君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  農業振興地域整備に関する法律の一部を改正  する法律案内閣提出第六四号)  土地改良法の一部を改正する法律案内閣提出  第六五号)      ――――◇―――――
  2. 玉沢徳一郎

    玉沢委員長代理 これより会議を開きます。  委員長が所用のためおくれますので、出席されるまで、委員長の指名により、私が委員長の職務を行います。  内閣提出農業振興地域整備に関する法律の一部を改正する法律案及び土地改良法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題とし、審査を進めます。  これより質疑に入ります。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。太田誠一君。
  3. 太田誠一

    太田委員 農業振興地域整備に関する法律改正案及び土地改良法改正につきまして、若干御質問をいたしたいと思います。  まず、農業振興地域整備に関する法律改正の方から参ります。  我が国農業を取り巻く情勢は極めて厳しいものがあり、このような状況のもとで農業体質強化を図るためには、構造政策推進が極めて重要と考える。この面から、今回の法改正構造政策の前進に大きく寄与するものと考えるわけですけれども政府我が国農業の将来展望をどのようにとらえ、今後における農業政策の一層の強化についてどのようなお考えをお持ちなのか、農林水産大臣の御意見を伺いたいと思います。
  4. 山村新治郎

    山村国務大臣 先生御指摘のように、我が国農業を取り巻く内外の情勢というのはまことに厳しいものがございます。  今後の農政推進に当たりましては、構造政策、この積極的な推進によりまして土地利用型農業生産性向上、これを図ってまいりますと同時に、農業生産の再編成、これを進めながら、我が国農業体質強化、これを目指してまいりたいと思っております。  特に最近におきましては、経営規模別生産性格差拡大、また跡取りのない高齢農業の増加、これらが、いわゆる構造政策を進めるための条件が成熟してきたものというぐあいに見ておりまして、今後、農用地流動化とその中核農家への利用集積等を進めることによりまして、農政審の報告にございましたように土地利用型農業において規模拡大が進み、生産性の高い経営により農業生産相当割合が担われるような農業構造を実現してまいりたいと考えております。  また、このための具体的な施策等につきましては、兼業農家も幅広く包摂した地域農業集団を広範囲に育成して、この集団による農用地利用調整活動を通じて、中核農家規模拡大等を進めながら、地域全体としての生産性の高い営農の実現を図ることが重要と考えております。  また、第三次土地改良長期計画に基づきまして、土地改良事業を積極的かつ計画的に推進することといたしております。そして新農業構造改善事業そのほかの施策におきましても、土地利用型農業生産性向上、これを重要視して推進してまいることといたしております。
  5. 太田誠一

    太田委員 大臣は豊かな村づくりを提唱しておられますけれども、二十一世紀の我が国を展望すれば、大臣の言う豊かな村づくりを進め、活力ある農村社会を形成することは極めて重要であると考えられます。今回の両法の改正もその一環と考えますけれども、そのほかの施策もあわせて、今後活力ある農村社会の形成をどのように進めていくのか、大臣の御所見を伺いたいと思います。
  6. 山村新治郎

    山村国務大臣 農村社会と申しますのは、単に農業生産活動の場だけではございませんで、地域住民生活の場でもあるわけでございます。また国土保全、それからまた水資源の涵養、緑豊かな景観と自然環境、これを維持していくということで、いわゆる都市住民に対する安らぎの場の提供など、多くの公的な面も有しております。  今日の社会情勢のもとで、農村社会兼業化、そしてまた混住化、高齢化、これらの様相を強めておりますが、このような現実に立ちまして、産業として自立し得る農業の確立、そしてまた、すべての住民の生きがいとの調和や、農家と非農家協力の上に立った活力ある農村社会の建設に努めてまいる必要があると考えております。  これが、私が提唱いたしました豊かな村づくりの基本的な考えでございます。今回提案いたしましたこの法改正も、そのような考え方に基づくものでございます。
  7. 太田誠一

    太田委員 都市に比べて農村における生活環境整備というのは著しく立ちおくれており、このことが後継者確保あるいは嫁不足解消などを図る上での課題となってきているわけであります。また、農村地域定住の場として整備をしていくという観点からも、今後農村地域生活環境整備を一層積極的に進めていく必要があると思います。今後、農村における生活環境整備をどのように進めていくのかをお伺いしたいと思います。
  8. 森実孝郎

    森実政府委員 御指摘のように、農村生活環境整備というものは、現代生活の基本という視点から見ますと、やはり都市に比べて立ちおくれている。特に農業地域の多い町村とか小都市等では、そういう事情が自治体の財政力関係もあって制約があるということは事実でございます。  それからもう一つは、私どもは、やはり構造政策推進を図っていく意味においても、農村地域の空間や気象条件等を考慮した場合においても、農村地域であるがゆえに条件整備の必要な施設、例えば集落排水とか集会施設とか農村広場、そういったものも数は多くあるわけでございます。このため、今までも農村総合整備モデル事業あるいは土地改良事業の一部、さらに農業構造改善事業等総合助成事業等を通じまして、農道とか集落排水施設とかあるいは集会施設とか、そういった生活環境整備を進めてきたわけでございますが、今回の法改正を通じまして、集落排水とか集会施設維持運営に係る協定制度の創設、あるいは生活環境施設用地を生み出すための換地交換分合制度拡充等を行うことにより、法制措置予算措置とが一体となって効果的な実施が図られるように意図しているものでございます。  やはり私ども構造政策を進める意味においても、農村地域が将来にも定住の場としてふさわしいような条件整備されるためにも、こういった関係施策充実が必要であり、我が農林水産省事業強化を図ると同時に、関係省庁にも諸施策推進を強くお願いしてまいりたいと思っているわけでございます。
  9. 太田誠一

    太田委員 農村においては、地域コミュニティー機能というのが、これは都市ももちろんそうでありますけれども、弱まりつつあるわけでございます。これに伴い、構造政策を進める上で不可欠である話し合いの基盤が失われるとともに、水路集会施設維持管理農業用施設の適正な配置などの諸問題が生じている。これらの諸問題を適切かつ効率的に解決していくためには、地域農業者などがその創意と工夫を生かして自主的に解決していく形が望ましいやり方と考えている。今回の法改正により協定制度が設けられたが、その趣旨が十分に生かされるためには、こうした考え方が、地域実情に応じ、地域住民自主性を生かしながら幅広く活用される必要があると考える。協定制度の今後の運用方針はいかがでしょうか。  もう少し具体的に言いますと、協定制度というものでもって今後これを例えば予算一つの受け皿にするとか、そういうふうな強い政策的な配慮をこの協定制度に求めるのかどうかということをお伺いしたいと思います。
  10. 森実孝郎

    森実政府委員 ただいま委員指摘のように、地域営農上や生活環境上のさまざまな問題について、過去の部落機能にかわってやはり自主的に地権者なり利用者が話し合って解決の方策を発見していくということは、今日の農村コミュニティーづくりとして重要なことだろうと思ってこの協定制度法制化ということをお願いしているわけでございます。  そこで、その運用の問題でございますが、法案自体では、農業用施設配置に関する協定と、それからもう一つ集会施設等維持運営に関する協定を設けております。しかしながら、何と申しますか、こういった協定というものは、特別の法律効果の付与を予定しない限りは、やはり基本的には民法上の契約で処理できるわけでございまして、今回法律で予定しました協定以外にも、地域実情に応じた自主的な合意を基礎とした各種の協定というものを指導していく必要があるのではないだろうかと思っております。例えば、議論されております畜舎だとか堆厩肥舎だとか、そういった農業用施設配置以外にも、ハウスとか農機具舎とか、そういった各般農業施設配置や、それと裏腹の関係にある土地利用についての申し合わせ、あるいは集会施設とか小水路以外に集落道とか樹木の維持管理等についての申し合わせ等が今後必要になってくるのではないだろうか。私ども法律の施行とあわせてそういう指導が必要だろうと思います。  問題は、やはりその協定内容が適切妥当かということが問題になるわけでございまして、こういった法律に基づかない協定についても、公正妥当な内容維持できるよう行政指導考えていかなければならぬと思っております。  そこで問題は、これをこれからの農林省の各般施策とどう結びつけるかという問題でございますが、率直に申し上げまして、それぞれの具体的な地域課題に応じて地域住民が自主的につくっていくべき制度であって、これをいわゆる予算制度その他を通じて一律に強制していくことは、私、不適当ではないかと思っているわけでございます。  ただ、例えば集会施設助成を行うような際において、建前としては現在は市町村営になっているが、部落のものはやはり部落が管理している実態があるわけで、そういう事実関係をしっかり法律的に整理するという意味において、そういうための助成としては、集会施設に関する協定等を活用することを指導するあるいは条件づけるというようなことは要ると思いますが、一律に協定制度各般施策に義務づけるというふうな考えをとるべきではなく、むしろこういった住民の自主的な話し合いによる協定を育てながら施策充実していく、十分な効果を発揮していくということを期待すべきものと思っております。
  11. 太田誠一

    太田委員 今回の法改正目的たるいわゆる安定的な就業促進ということでありますけれども、これはまさに今後の重要課題であるわけでして、いわゆる規模拡大というふうなことを進める上においても、兼業農家の方々の安定的な就業機会というものを確保しなければいけないわけですから、ここはまさに焦眉の問題であります。しかし、この法律が一体安定的な就業促進についてどのような役割を持っているのかということがいま一つわからないわけであります。特に、かつて農村地域工業導入という施策があったわけでありますけれども、この農村地域工業導入による雇用者の数というのは、先般資料を見せていただきましたけれども、一計画市町村当たり七十人にしかなっていないというふうに聞くわけでありまして、そうであれば、就業機会確保というのは大変難しい問題だ、こういうことですら、もうわかるわけであります。  この施策について、農林水産省は、今の農村地域への工業導入ということの評価も含めて今後どのように進めていかれようとするのか、そこをお伺いしたいわけであります。
  12. 森実孝郎

    森実政府委員 安定的な就業促進という問題は、私が申すまでもなく、構造政策推進を図る意味においても、地域社会定住条件整備する意味においても、重要な課題だろうと思います。端的に申し上げるなら、日雇い、出稼ぎの解消に総合的にどういう努力をしていくかということだろうと思います。各地域において、やはり就業機会の安定ということに努力している町村があるわけでございまして、そういった事例を見ますと、市町村長さんが中心になって、地域住民協力関係団体協力を得ながら、地域実情を踏まえた処理ということがやはりその成果を上げていると見ざるを得ないと思います。そういう意味で、今回の農振法の改正の中でも、安定的な就業機会確保ということを市町村長が取り組むべき課題として明示したわけでございます。具体的な対策としては、やはり企業導入地場産業振興、さらには、現に行われている日雇い等解消への総合的な努力等各般努力が要るだろうと思います。  御指摘のように、過去に実施いたしました農村工業導入について申し上げますと、委員ただいま御指摘のように、計画市町村で言えば一町村当たり約七十人、導入が実施された市町村単位で言うと一町村当たり約九十人の雇用確保されている実績がございます。これを少ないと見るか多いと見るかは、いろいろな見方があるだろうと思いますが、もちろん私ども、これだけで解決する問題ではないと思っております。労働省、通産省との連携を密にして、その協力を得ていく必要がある。  そういうスタンスのもとに、一つは広域的な観点からの工業導入ということにこれから取り組んでまいりたい。それからさらに、テクノポリス等の新しい工業導入制度企業導入制度の活用も十分に図ってまいりたい。もう一つは、地元の安定雇用機会確保という点では、東北とか南九州などの遠隔地域に重点を置いた工業導入ということを積極的に働きかけていく必要があるだろう。大都市周辺は、この問題はある意味では大方片づいているという実態もあるわけでございます。さらに、労働省地域別雇用調整政策が最近段階的に充実されてきておりまして、私どもも、これとの連携を重視しながら、またいろいろ施策強化をお願いしていかなければならないと思います。  単純に農村工業導入ではなく、各般施策を、それも具体的に市町村長が取り組んだ帰結としての、そういった帰結を受けとめて、段階的に施策充実を図り、また、それを各省にお願いしていくという努力をいたしてまいりたいと思っているわけでございます。
  13. 太田誠一

    太田委員 今の点でありますけれども、一市町村ごと工業導入を図るというふうなことはやはり限界があるというよりも、それがいわゆる農業以外の工業の方から見て最適な立地になるかどうかということはわからないわけであります。一つは、広域的に考えて、雇用機会というのは必ずしも自分の住んでいる市町村内になければいけないということはないわけでありまして、十分に交通機関整備されれば近隣のいわゆる地方中核都市などに通勤をすることはできるわけでありますから、むしろそういう広域的なことに配慮されることが現実的な対応ではないかというふうに考える次第であります。  それと、今度の法改正で、林地などの農業用用地として適した地域開発あるいは生活環境施設用地生み出しなどについて、従来の法制度上では十分ではない、どこかにネックがあったからこれは法改正をされるのだと思いますけれども、従来の法体系の上で林地などの開発あるいは生活環境施設用地生み出しについてどういうネックが、隘路があったのですか。
  14. 森実孝郎

    森実政府委員 お答えを申し上げます。  林地開発の問題と生活環境施設用地生み出しの問題はそれぞれ別の問題だろうと思いますので、分けてお答えさしていただきたいと思います。  林地をどうやって農用地開発を進めるかということを考えた場合に、現行の農振法の交換分合制度では、一つは農振計画作成変更の場合でなければできないということ、それからもう一つは、農用地区域内の農地が他の用途に転用される、その場合に、見返りと言うのは適当かどうかはわかりませんが、いわゆる見返りといたしまして農用地区域内に新しく開発すべき土地確保する、そういう場合でなければできないことになっておりますし、また、土地改良法上の農用地開発を行うためには、地権者全員の同意がなければならないという問題があるわけでございます。やはり林地を、特に里山等開発していく場合においては、それが部落有林になっていてみんなの合意を得やすい条件をつくっていくということが、現実に大規模農用地開発を進める上で非常に重要ではないだろうかと経験的にも思っているわけでございます。  そこで、今回のように農用地開発を前提といたしまして林地林地交換分合を認め、それによっていわば開発適地開発を希望する者に所有される条件をつくっていくというふうな予備的な段階の整備を図ろうとしたものでございます。今までの法制はそこまで踏み込んでなかったために、どうもなかなか稼働しなかったということは事実だろうと思います。そういう意味で、かなりの効果を期待していいのではなかろうかと思っているわけでございます。  次に、生活環境施設用地生み出してございますが、問題はやはり必要な用地をどうやって計画的にロケーションしていくか。無用な対価の支払いなしに部落なり何なりの集落のために事業を実施できるようにするかどうかということにねらいがあるだろうと思います。現在の農振法の交換分合制度はいわゆる不交換の、要するに申し出農家申し出に基づきます不交換の中で処理することは一定範囲でできますけれども、やはり集落全体として生み出すというふうな体制はないわけでございます。端的に申しますと、単に生活環境施設用地を取得するだけの市町村等参加というのは交換分合の中に認められていないわけでございます。また、土地改良法上の換地処分においても必要な非農用地換地制度の中で生み出すことは一定範囲で可能でございますが、これは圃場整備等面的工事に伴う場合に限られることにより、円滑な確保を図ることが十分できないという実態があるわけでございます。端的に言うと、いわゆる農地所有者でない市町村参加できないというふうなことがあるわけでございます。  そういう意味で、私どもできるだけ合理的なロケーションをできるようにする、また、用地確保地域住民全体のために、特定の、何と申しますか、移転的支出を少なくして実施できるようにする、こういう条件整備するために今回の換地処分とそれから交換分合拡大措置を講じたわけでございます。
  15. 太田誠一

    太田委員 細かい問題になりますけれども協定制度導入されたわけでありますが、協定有効期間を十年を超えてはならないというふうに第十八条の二第六項で規定されているわけでありますけれども協定参加者承継人に対する適用を定めるということもまた一つの重要な、今度の新たな協定制度の追加としてここに定められているわけであります。そうしますと、これは十年間しか有効期間がないのにそこまで細かく定める必要があるのかどうかということをお伺いしたい。
  16. 森実孝郎

    森実政府委員 お答え申し上げます。  ただいまの御指摘の点は、実は私ども立法過程でいろいろ思案をした点でございます。しかし、やはり一種の農村計画のようなものを考える場合、大事なことは、社会経済情勢変化、人間の意識の変化というものが今日の状況で極めて著しい、そういう変化を受けとめる内容のものにしなければならないということが、少なくとも今の状況では重要な課題ではないだろうかと思っております。  一方、例えば一号の協定等につきましては、承継人に対する承継法を認めている、あるいは当初反対した人が後から単独行為参加する道を開いていく等の、特定法律効果も付与しているわけでございます。そういう意味において、一定期間を区切って協定内容を見直すことが適当ではないかと判断したわけでございます。  しかし、逆に、十年ということでありましても、土地所有者等の交代があることはかなり予想しなければなりません。老齢社会日本でございますし、また、地域によっては土地所有権がかなり移転するということもあるわけでございます。そこで、一定期間内だけは少なくとも継続的、安定的に適切な施設配置確保していきたいという関係で、一号協定についてこういった期間を設けたものでございます。
  17. 太田誠一

    太田委員 この法改正の中で特に農振地域整備計画内容として一つの大きな柱は、再三大臣の御答弁にもありましたように、新たに農用地の効率的な利用促進ということをうたっているわけであります。これは具体的にはどういう内容を盛り込んでおられるのかどうか、お伺いしたいと思います。
  18. 森実孝郎

    森実政府委員 この点は、いろいろな見方があるだろうと思います。最終的には、中核農家規模拡大なりあるいは利用面積面的集積による大型機械効率的利用を実現するということがねらいであることは事実でございます。しかし、作目によって、地域によって事情は千差万別でございます。  そこで、具体的には、まず一つ規模拡大考える。ただし、この規模拡大についても、利用権の設定による規模拡大以外に、平場の稲作等で今日普遍的ないわゆる作業の受委託というものも重視していく。それから二番目は、例えば稲作転換対策等ブロックローテーション等も実現しておりますが、こういった機械共同利用等を背景にしました農作業効率化という点も考えていく。それからもう一つは、やはり今日日本農業でかなり普遍的な課題であり、特に重量野菜生産地域とかあるいはまたナス科植物を栽培している地域とかで絶えず問題になっている地力の維持のための土地利用交換ということも考えていく必要があるのじゃないか。さらに裏作の導入、不作付地解消、さらに里山開発等による広い意味での農用地利用度向上ということもあっていいのじゃないか。  そういう大体四つの内容のものを頭に置きましていわゆる地域農業集団の育成を進め、この地域農業集団による集団的な利用調整を基軸としてそういった目的を達成していきたい。そういった作目なり地域実情に応じた問題処理が、最終的にはやはり中核農家規模拡大による作業面的集積ということにつながってくる実態を段階的に生み出していくのではなかろうかと存念しているわけでございます。
  19. 太田誠一

    太田委員 今おっしゃったように、裏作契約とか作業委託などを今後整備計画の中に盛り込んでいくということでありますけれども、これは私など全く直観的に考えて、こういうことはどちらかといいますと当事者間の契約でありますし、また、その契約というのは土地の賃貸借のようにお互いにリスクを負うというふうな関係にないわけでありますから、結びつきというのは割に希薄なわけですね。そういうものをこの計画内容に盛り込んでいくということですけれども、実際にそれでその計画がなされたとおりに実施されるということは、契約そのものが極めて安定性が弱いという面で整備計画になじまないのではないかというふうな気もするのですけれども、そこら辺はいかがでしょう。     〔玉沢委員長代理退席、委員長着席〕
  20. 森実孝郎

    森実政府委員 確かに委員指摘のように、農振法の計画だけにそのことをのせることによって動くものではないだろうと私は思っております。ただ、この種のいわゆる土地利用調整、特に効率的な利用促進についての問題につきましては、実は行政といたしましては、先ほども申し上げましたように地域農業集団を全国的な規模で育成する、その過程で先ほど申し上げました四つのアイテムを頭に置いて集団的な土地利用調整を進める。とりあえず三年がかりで現在の農振地域の半分の集落地域農業集団の育成を図るということの必要な予算措置を講じ、現在実施に移しつつあるわけでございます。やはりそういった地域農業集団の育成によります集団土地利用調整という行政指導なり、またそれに対応した実態の成熟をとらえて、それぞれの地域に応じてこの計画を仕組んでいただくことが重要だろうと思います。  なお、御指摘の問題でもう一つの側面があると思います。はっきり申し上げますと、借りた方の安定性の問題といわゆる貸し主が円滑に供給していくという側面をどういうふうに矛盾なく調和させていくかという問題だろうと思います。ぎりぎり議論をしていきますなら、ある意味でそれはトレードオフの関係にあると申しますか、矛盾する側面を持っておることは私も否定いたしません。ただ、問題は、先ほど大臣の御答弁にもございましたように、流動化が進み得る条件がようやく成熟しつつあるという今日の時代認識からいうならば、やはり作目地域実態に応じて段階的にこれを進めていく必要がある。特に資産として重要な土地の貸し借りなり利用の問題でございますから、地域指導者に対する信頼あるいは借り手に対する信頼、集落における連帯感というものがなければなかなかうまくいかない。そういう意味においては、利用権の設定に一挙にいけない場合は作業受委託から入っていくんだ、あるいは作業受委託や利用権の設定までいけないところは機械の共同利用による面的集積生産性向上のメリットを上げて、それから作業受委託に入っていくんだという、段階を追って進めていくことが今日の状況では必要ではなかろうかと思っておるわけでございます。
  21. 太田誠一

    太田委員 言われるところのいわゆる面的集積規模拡大について、言ってみれば今お答えのように土地の賃貸借というふうなところに進むまでの前段階としての作業委託や裏作契約などの推進について、これまではどういう奨励策をとってこられたのでしょうか。  それからまた、こういうものが何かあるのなら、今後計画内容にこれを盛り込むことによってどのように実行推進を担保されるのでしょうか。
  22. 森実孝郎

    森実政府委員 構造政策を進める場合、いろいろな側面がございますが、土地利用調整が最も難しい問題であることは私も事実だろうと思います。そこで、実は五十四年から賃貸奨励措置を講じて流動化を直接推進する方途を講ずるとともに、農地利用増進法の制定、農地法の改正等を行いまして、実は農地法に構造政策進展のためのバイパスづくりをやったわけでございます。  第二ラウンドといたしましては、昨年から、先ほども申し上げました地域農業集団の育成という形で、一挙に利用権の設定による規模拡大によらない、いわば中間過程も重視して幅広く利用調整を進めるという措置を講じたわけでございます。しかし、こういった構造政策を進める場合において、兼業農家と専業農家中核農家を中心にした集落農業者の集団の中における総合の集団的連帯がなければ、地域全体として広がりを持って構造政策効果を上げていくことはできない。そういうことで、連帯を確保する意味においても豊かな村づくりという問題と取り組まなければならないということで、いわば構造政策土地利用調整に関する第三ラウンドの施策という側面も持って今回の農振法、土地改良法改正案を提案させていただいているわけでございます。  しかし、老齢農家が増加したこと、跡取りのない農家がかなり増加したこと、それから一方においては農業の新規労働力、これは新規学卒者と若年層のuターンと両方ございますが、その補充も割合順調に進みつつある。また、全体として申し上げますならば、そういった各般施策の積み上げを通じまして流動化というものに対する関心も高まってきたし、またそれぞれの地域で稲作を初めとして規模格差、規模による生産性向上格差というものが農家自体に顕著に認識されてきたということで、ある程度進んできております。  仮に流動化の面積で申し上げるならば、今日の時点では、五十八年十二月末でございますが、十三万三千ヘクタールの水準まで利用権の設定も進みましたし、また、いわばその前駆的段階にございます作業の全面受委託も大体六万五千ヘクタールぐらいまで来ておる。大体二十万ヘクタールに近い水準が四年間で実現されたわけでございまして、私ども、将来のこういった事業推進には希望を持っていいのではなかろうかと存念しております。
  23. 太田誠一

    太田委員 農用地利用増進事業の成果について、今農林省の方はまずまずのできだというふうに評価をしておられるのだと思いますが、それは後でもう一回確認をさせていただきたいのですけれども、私は、農用地利用増進事業の成果というものはまだまだ不十分であるというふうに考えております。例えば、非常に印象的な出来事でありますけれども、先般農林大臣が渡米されまして農産物の自由化交渉を随分御苦労されてまとめられたわけでありますが、幾ら大臣や経済局長が御苦労をされましても、ああした外圧というのは依然として客観的にあるわけでありまして、そして四年間で牛肉の輸入枠が一挙に二倍に拡大をされるというふうな事態が起こってくる。  そうしますと、そのようなことを別にこちらが選択をしなくてもそういうふうに強いられていくという環境の中では、言うところの足腰の強い農業でありますとか、いわゆる規模拡大生産性向上といったことはそんなにのんびりやっていっていい問題ではなくて、差し迫った、焦眉の問題ではないかというふうに思うわけであります。利用増進事業の進捗度合いというものについても、もっともっと強いインパクトをここで与えなければいけないのではないかというふうに基本的に私は考えております。それはもっと大きな政策課題でありまして、今後この法改正を皮切りにしてどんどんほかの面にも踏み込んでいっていただけるものだと期待をしております。  ただ、一部で、利用権設定のようなことを中心といたしまして、この利用増進事業の中でこの手続が非常に面倒だということがネックになっているというふうに言う現地の声もあるわけでございまして、この辺についても少し御配慮をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  24. 森実孝郎

    森実政府委員 私、ちょっと舌足らずだったならばおわび申し上げなければなりませんが、希望が持てる状況になったということを申し上げましたので、まだ十分とは思っておりません。利用権の設定面積、作業の全面受委託の面積が約二十万ヘクタールで、今後十年間に流動化を図ろうとしている面積が四十万ヘクタールでありまして、まだその半分です。四年間で半分ですから、その意味ではある程度いったということかもしれませんが、まだ半分でございますし、それから、実は過去のやみ小作が表に出てきて追認された側面も率直に言ってございますので、まだまだ不備である。  それからもう一つは、大体出し手は一町歩未満の階層に、三分の二に集中し、受け手は一町歩以上の階層に集中しておりますし、また個別の調査をやってみますと、中核農家に大体七八%借り入れが集中していることは事実でございます。必ず、も土地利用型農業の三町歩以上の階層に集中しているどころまではいっていないという点は、不備な点があります。そういった地域農業集団の育成、村づくり等を通じましてそれをどう加速させるか、全国的にどのぐらい持たせるかということが私ども課題だろうと思っているわけでございます。  それから、問題は、今後の対策としてこれをどういうふうに強化していくかということでございます。二つの面がありまして、一つは、こういった指導奨励措置の強化であり、法制整備であると思いますが、確かにもう一つの面では、委員指摘のように手続の簡素化という問題が重要な課題になっていると思います。  特に手続の簡素化を考える場合、集団土地利用調整の場合、確かに貸し借りが行われる土地というのは地片ごとに固定し、貸し主も借り主も固定し、それから貸付条件も決まっている、それが不動産取引の基本だ、土地取引の基本だ、だから増進法で公告されたものについては農地法の適用除外があるということになるわけでございますが、その法制の理屈だけでは集団的な土地利用調整、特に調整が進みつつある段階のものはうまくいかないと私は思います。そこで、実は昨年通達を出しまして、集団土地利用調整にかかわるものについては、毎年毎年の地片や借り主を特定しないで、出し手と受け手と流動化の対象になる土地を全体として公示するならば、その範囲で動くことについては毎年毎年こういう手続をやらないという指導、改善措置を講じたわけでございます。  なお、この点については、法制の制約もありますが、その指導が徹定していない点は私は否定いたしません。実は私もそれを知らなかった地域がある事例を知っております。そういう意味で、そういった点の指導徹底はさらに図ってまいりたいと思っております。
  25. 太田誠一

    太田委員 今の点で、少し余計なことをまた申し上げておきます。  稲作日本一とか、そういう稲作の規模拡大について大変意欲的にやっておられた農家がやめたとか、そういうふうな話があるわけでして、どこにそれがあるのかといろいろ調べてみますと、うまく人の土地を借りて、あるいは委託作業でもそうでありますけれども、点々とばらばらにかなり広範囲にわたって借りてやったって、これは規模の利益などはないわけでありまして、それを一カ所に集中して限られた地域にまとめることが必要なわけであります。かつて転作の奨励金の場合に、団地化加算とか計画加算とか、つまり一カ所に集めるという知恵を絞られたわけでありますから、何か利用増進事業のような事柄についても一カ所に集中をして、規模の利益を本当に上げてもらうということを考えるべきではないかというふうに、私見ながら思っております。  今の農振地域整備に関する法改正の方はそれぐらいにいたしまして、次に土地改良法改正関係の質問に移らせていただきます。  農村部においては、生活水準の向上などを背景として水洗化などの生活環境の改善への要望が高まっているわけでありますけれども、このような要請にこたえつつ、農業用用排水の水質保全を図っていくため、農業集落排水事業を積極的に推進していく必要があると考えるわけであります。  これまでの農業集落排水事業というのはどのくらい普及をしておるのか、その普及の度合いというものを教えていただきたいと思います。
  26. 森実孝郎

    森実政府委員 自治省の「公共施設状況調」によりますと、町村部における下水道の普及率は約一・五%でございます。それから非人口集中地域、これを農村部とみなしてみますと、実は普及率はわずか〇・一%にすぎないという状況でございます。そういった視点から、私どもも五十八年度予算からは集落排水事業を独立した事業として位置づけ、また、今回は集落排水事業土地改良法の中にうたうことによって積極的な姿勢を示しているところでございますが、今後とも積極的な推進が必要と思っております。
  27. 太田誠一

    太田委員 もう少し詰めたお答えをいただきたいのですが、今後農業集落排水事業というものを推進していく上において、今〇・一%くらいであれば、これを一〇〇%普及させることはまことに難しい、至難のわざであります。しかし、何か目標を定めて、こういうふうにしてこの程度まではいくのだという指標みたいなものは要ると思いますが、その推進の方向というか、そういったことについて、もう少し突っ込んでお答えをいただきたいと思います。
  28. 森実孝郎

    森実政府委員 実は我が国の下水道の普及率は、各委員御案内のようにそう高いものではございません。大都市でも六八%、中都市では三二%、小都市で九・五%、町村が一・五%という形でございます。建設省が実施しておられます下水道というのは、いわばそういった中心地域から逐次外縁部に及んでいくという普及パターンをとっている。しかし、農村社会の現状を考えるとき、平たい言葉で申しますと、これからの農村におけるお嫁さんの来手を確保していくという意味においても、それからお年寄りの家庭の生活環境という意味からいっても、下水道に対する要請は強いわけでございまして、私ども農村地域を対象といたしまして、農業用用排水の水質保全という点も重視しながらこの事業に乗り出しているところでございます。  私ども、これからも、この事業の積極的な予算確保なり実施等については努力していきたいと思っておりますが、はっきり申し上げますと、いわば試験的に十年やって、ようやく五十八年から農業集落排水事業として創設された段階でございますので、御指摘のお気持ちはよくわかりますけれども、これからの課題として受けとめさせていただいて、積極的に取り組みさせていただきたいと思います。
  29. 太田誠一

    太田委員 この農業集落排水事業は、農業基盤整備事業費の一費目として挙げられているわけであります。農村総合整備という費目の中に含められていると思うわけでありますけれども農業基盤整備事業の中へ新しく施策として盛り込む以上は、これはどう考えても今後もっともっと重大な費目となっていくわけでありますが、将来どういうふうに位置づけたらいいのでしょう。その中でかなりの、十指のうちの一つだとか、それくらいのウエートを持つようになるものなのか。
  30. 森実孝郎

    森実政府委員 いわゆる第三次土地改良長期計画におきましては、生産基盤の整備と並びまして農村生活基盤の整備も織り込んでいるわけでございます。集落排水事業はこの中の中心事業たることは事実でございまして、この第三次の土地改良長期計画においては’排水路総延長約七千キロメートル、処理施設整備する集落四千八百集落という計画を織り込んで計画を立てております。まず、とにかくこの予算確保し、事業を消化していくことを当面の課題として進めてまいりたいと考えております。
  31. 太田誠一

    太田委員 農業生産の基幹施設であります農業用用排水路のほとんどすべては、古来から地域の排水路としても役立っているばかりではなく、さらには防火用水、融雪用水などとしても機能しているわけであります。ところが、近年、農村社会の変貌の中で、農業用用排水路については、工場や団地からの排水の排出による管理費用の増高や水質の汚濁化などの問題が多く発生をしているわけであります。これは、この法律に定められた土地改良区と市町村との間の、土地改良区の管理水路市町村間でのトラブルということのほかに、市町村市町村との間のトラブルもあるわけであります。  これはちょっと関連した質問になりますけれども、こういう市町村間のトラブルについては、これは必ずしも土地改良区の問題ではなくて農村も絡む問題でありますから、そのような場合に、何か対応する手段というものはあるのでしょうか。
  32. 森実孝郎

    森実政府委員 土地改良法制度は、土地改良区と他のものとの利用調整を図るための法制ということが基本にございますし、また現実にも、土地改良区がその財政基盤の制約ということから管理費等の増高の問題に対応できないという点があって、そういう意味土地改良区と市町村の協議制度を設け、さらに今回はその解決を担保する意味において知事裁定制度導入ということをお願いしたわけでございます。  しかし、ただいま委員指摘のように、農業用水路市町村自体が管理している場合があるわけでございまして、また、その農業用水路が広域にわたる場合は当然管理が分化してきておりまして、市町村同士の対立というふうな問題もあるわけでございますし、また、土地改良区の利害を代表して市町村同士にトラブルを生ずるという場合もあるわけでございます。これはいわば行政主体同士の問題だろうと思います。  私ども、今回の法律改正には先ほど申し上げた法制上の制約もあってこのことまでは含んでおりませんけれども、やはり県を中心にして市町村同士で十分に話し合って問題を解決していただくような土俵づくりは行政上必要と思っております。このための必要な指導も、御指摘を頭に置きまして今後考えてまいりたいと思っております。
  33. 太田誠一

    太田委員 今回法定化しようとする都道府県知事の裁定制度導入については、現実にこの制度が有効に機能するためには、その運用方針などを十分に明確にする必要があると考えるわけであります。現状でも、土地改良区あるいはその市町村長に対して、ほうっておいても知事の発言力があると言えばあるわけだし、ないと言えばないわけでありますから、そこはもう少し詰めて、知事の裁定制度導入したことに実効あらしめなければいけないと考えるわけですが、いかがでしょうか。
  34. 森実孝郎

    森実政府委員 全く御指摘のとおりだろうと思います。私ども、実は統一的な一つ指導方針をいろいろ検討してみた、その過程でいわば担保措置として知事裁定制度が必要だというふうに、物の思考過程としては考えたわけでございます。しかし、御指摘のように、制度として見るならば、知事裁定制度は統一的な運用方針によって初めて動いてくる、あるいは知事裁定まで至らなくても、それを担保として事態が早目に解決していくということだろうと思います。  そこで、本法が成立をしました場合においては、それを軌を一にいたしまして、運用指針というものを定めて広く全国各県を指導してまいりたいと思っております。この問題は手続事項、あるいは内容事項、実質事項、両面にわたると思いますが、要するに、それぞれの立場を尊重すること、学識経験者の意見を聞くこと、それから当事者間の話し合いを進めること等を手続事項として予定するほか、実質的な留意事項といたしましては、問題の発生する原因者が特定される場合と特定されない場合に分けてその裁定の対象の相手方を決めていくとか、下水道等の用に兼ねて供することというふうな認定について具体的な基準を決めていくとか、それから公平な分担を図るための調整機構としまして、管理方法と管理費用の両面にわたって、特に差異がない場合においては一つでもいいと思いますけれども、そのルールを決めていくとか、分担割合については排水量の指標とか利用割合の指標とか地積の指標等を基準にして決めていくとか、そういった実質的な内容を持った指導を統一指針としてできるだけ早く出してまいりたいと思っております。
  35. 太田誠一

    太田委員 都道府県土地改良事業団体連合会の会員に対して技術的な援助をするということが今まで会員に対する一つの役割としてあったわけでありますけれども、これを今度「技術的な指導その他の援助」というふうに改めることになったわけであります。  これは、ちょっと見るとただ援助が指導になっただけで、気分の問題だけじゃないかというふうにもとれるわけでありますが、こういうふうな字句の改正をする以上、今後の連合会の役割と組織基盤の強化策について何かお考えがあると思いますけれども、そこはいかがでしょうか。
  36. 森実孝郎

    森実政府委員 今回お願いしております法制度改正は、そういった実態が成熟してきて強い要望が団体側から出てきているという側面と、それからまさに委員の御指摘のように、団体に積極的な取り組みを促すという側面と、二つの側面があることは事実だろうと思います。  問題は、やはりこういった指導事業の明確化とあわせて、御指摘のように実質的な能力をどう付与していくかということだろうと思います。地方連合会の行う技術援助の充実を図るための指導とか助成といった措置なり研修等の強化が必要だろうと思っております。現在も技術的援助に関する補助といたしまして、換地センター、管理指導センターに対する助成等を行っておりますが、こういった施策以外に、土地改良区の技術職員のレベルアップを図るための報酬なりあるいは情報の提供ということは、全国団体とも協力して相当強力に進めてまいりたいと思っております。
  37. 太田誠一

    太田委員 土地改良全体の事業費が非常に増高しておる。そして財政事情がまことに逼迫化をしていて、これまた厳しいものがあるわけであります。  このような状況の中で、我が国農業の確立のため農業生産基盤の整備を積極的に推進していかなければならないのでありますけれども、ここ数年間ゼロまたはマイナスシーリングの状態にあるわけでして、かんがい排水、圃場整備などいわゆる直接農業生産向上に資する予算費目というもの自体が大幅におくれているわけでありまして、ここでより工期を短縮して土地改良事業の効率的推進を図るための対応策が必要になっているわけであります。ということは、土地改良予算そのものがゼロまたはマイナスシーリングであるということ自体に問題の本当の根源があるわけであります。  いずれにしても、この予算は、国全体の予算が逼迫をしておるわけでありますから、農業基盤整備についても依然として厳しい情勢にある。その中で、実を言いますと私が非常に気になっておりますのは、この法改正によって、同じ農業基盤整備の中で、農業集落排水事業の方が非常に大きく伸びできますと、そのことによって直接農業生産基盤に役立つような予算費目は、今既にかなりおくれていて社会問題化をしておるわけでありますけれども、さらにまたそういうことでもって圧迫をされて、もっと延びるんじゃないかという心配をいたすわけであります。  これは余り詳しくお聞きしようとは思いませんけれども地域的に言いますと、そういう直接的な生産の向上に役立つような圃場整備とかかんがい排水については、ほぼ完了しておるところもあるやに聞いておるわけでありますが、例えば私のところ、福岡県などは遅滞をしたまま残念な情勢に今入っておりまして、全く進まない。片方は大人になって成長してしまった。片方はまだ赤ん坊で、これから育とうとしているのに、今食べ盛りなのに栄養がないという状態がずっと続いているわけでありまして、今回の法改正によって集落排水事業予算費目の方が既に大人になったところでもって伸びていって、そのために子供であるそのほかのおくれている地域の方がまだやせたままである、よく育たない、未熟児であるというふうなことになるのではないかということを実は正直言って恐れているわけであります。  これについては直接お答えをいただかなぐてもよろしいわけでありますけれども土地改良事業のいわば直接農業生産向上に役に立つかんがい排水、圃場整備などについてもっともっと力を入れていくんだという決意を表明していただきたいことと、それから、確かに集落排水事業というのは、日本全体が都市化が進んでいるわけでありますが、その中ではどんな事業をやってもこれが一緒に行われなければ意味をなさないという密接不可分の状態にありますけれども日本の国内には純農村地帯もあるわけでありまして、そういうところが圧迫をされないようにひとつ格段の御配慮をお願いいたしたいと思います。
  38. 森実孝郎

    森実政府委員 お答え申し上げます。  まことに頭の痛い問題でございます。やはり基本的には農業基盤整備費を確保し、第三次の土地改良長期計画確保していくということが非常に重要であろうと思います。  それから二番目は、やはり事業の効率的実施ということで、新規採択をある程度抑制していく問題、それから部分効果の発生する地区への予算の優先配慮の問題、それからもう一つは、やはり地域の自然・経済条件に応じた施行基準の弾力化、構造物の設計等における技術者の創意工夫の活用、そういった地域実態に合った効率的な施行を図ることが第二の課題であろうと思います。  三番目に地域別の問題でございますが、私、実は先般も本委員会で申し上げたことがございますが、やはり整備水準には差がございます。そういう意味においては、第二次土地改良長期計画における地域別配分と第三次土地改良長期計画における地域別配分はおのずから結果として異なってくることになることは事実であろうと思います。そういう意味においては、西日本などはこれからそういった圃場整備等事業はかなりウエートがふえてくるということは事実であろうと思います。  そこで、最後に集落排水事業との関係でございますが、実はお恥ずかしいことでございますが、集落排水事業の費用はふやしましてやっとことして六十億でございます。基盤整備約九千億の中のまだ一%にも満たない現状でございます。実は集落排水事業都市周辺ではなくて純農村から入ってきている、むしろ千人以下の集落のところから入ってきているという経過がございます。そういった点から見まして、今集落排水予算と圃場整備予算がいわば配分で角突き合う関係にはならないとは思っておりますけれども、何といっても予算確保が重要な課題でございますので、そういった意味では省を挙げての努力をこれからも続けてまいりたいと思っておるわけでございます。
  39. 太田誠一

    太田委員 どうもありがとうございました。
  40. 阿部文男

    ○阿部委員長 小川国彦君。
  41. 小川国彦

    ○小川(国)委員 私は、農振法の一部改正土地改良法の一部改正の問題点、それからこの際に、農政全体の問題にわたって農林大臣あるいはまた農水省の見解をただしておきたいと考えます。  最初に、農振法の一部改正の中におきまして、農業施策推進という意味からいろいろな法的な補強というか、そういうことを考えられた中には、従来よりも一歩前進であるというふうに評価できるところもあるわけでありますが、また反面、この改正の中でさまざまな問題点が想定されるわけであります。したがって、そういう問題点につきまして、この際、農水省の見解を明らかにしていただきたいと思うわけであります。  まず農振法の改正の中で協定制度の創設についてでありますが、従来、農村というのは、集落でそこに住む人たちが話し合いでいろいろな物事を決めていく。集落単位の冠婚葬祭を初めとするしきたりは、いわば話し合いの中でお互いの相互扶助といいますか、相互援助といいますか、そういう中で地域集落をつくり、それが大きくなって自治体、国というふうに発展をしてきているわけでありますが、その根源は地域集落にある。その地域集落維持というものは、地域住民の良識の中で、長い人間の社会生活の習慣の中から良識を持って生まれてきているものであって、それが一つの社会秩序を維持していく最善のものとなってきているのではないかと思うわけですが、今回、農振法の中で、部落単位に協定制度をつくって結束を固めていこうということであり、あるいはまた部落の活性化、集落の活性化を意図しているのであろうと思うのですけれども住民の自治に関する事柄までもあえてこの法律の中に織り込んできたというのは、一体どういう障害や問題があってこういう考え方に立ち至ったのか、その発想の原点をまず伺いたいと思います。
  42. 森実孝郎

    森実政府委員 二つの側面があるだろうと思います。  はっきり申し上げますならば、農村地域の混住化が非常に進んできた、農家兼業化が進んできた、そういう意味においては、農村地域といっても農家と非農家が両存している地域もたくさんある。その非農家の中には、住宅団地等ができて新しく都市から移ってくる方もあるわけでございます。それからもう一つは、兼業化が進んでまいりまして、やはり兼業農家と中核になる専業的な農家との間にも差が出てきている。こういうふうな状況のもとで、住民意識の多様化と個人意識の変化ということは、従来の農村社会を支えてまいりました住民の共同活動機能だけに依拠できなくなってきている。いわばそういう事実をどう受けとめるかという問題があると思います。  それからもう一つの側面は、果たして今までの集落という機能を復元することができるのだろうか、これを強化することができるのだろうかという物の見方もあるわけでございます。やはり日本集落、特に農村社会における集落は社会学的にもいろいろな議論がございますが、一つの特殊な総有的な性格を持っている側面があるわけでございますが、そういったものが今日の時代に住民の意識にふさわしいものになっているかどうかという問題があるわけでございます。  そこで、私ども現実の行政にそれを投影してみますと、例えば集会施設一つをつくる場合においても、市町村でやりますという建前になっているけれども、実際は建設の費用の一部も集落が負担しなければいかぬし、それから管理も集落に任せられているケースがある。どうもそういったところがきちんと行われてないで、今言った人間の意識の多様化、生活体系の多様化が進んでくるとなかなかうまくいかないという事例がある。それから、例えば水路一つを例にとりましても、土地改良区が管理するところまではいいが、小水路の管理等は従来のように賦役の負担で、慣行でやれといってもなかなか言うことを聞かない人がたくさん出てくる。そういう行政が体験しております現実の壁というものもあるわけでございます。  そういった問題を頭に置きまして、今日の状況にふさわしいようにやはり地権者なり施設利用者が対等の立場で十分話し合って一つの枠組みをつくり、その枠組みを約束として尊重していくということを考えることが必要であり、また、それが今日の時代にふさわしいのではないかというふうに判断したわけでございます。
  43. 小川国彦

    ○小川(国)委員 農村には冠婚葬祭を本当に助け合うという、地域社会を構成する上で長い歴史を持った、それは地域集落を支えてきた助け合いの一つのすぐれた特徴があります。しかしまた、それが極端になりますと、村の人たちと自分は考えが違う、ある一つ事業、あることを行うのに自分は考えが違うのだからそっとしておいてほしいというような場合に、村八分というような形でこれに協力しない者はあくまでも排除していくというような弊害が地域社会農村社会の中で往々にして見られるわけですね。  そうすると、今回の法律で、農村集落である事業を行おうとするときにそれに賛同できなかった、そうするとこの契約から除外される。しかし、その契約がさらに進んで法律的な契約まで持っていこうという考え方のときに、これを最後までその共同事業に参画し得なかった人を除外していくということになると、法律的な村八分まで行ったというような結果も招来しかねない、そういう危険性を持っているというふうに思うのですが、その点への配慮はどういうふうに考えられておりますか。
  44. 森実孝郎

    森実政府委員 ただいま御指摘がございました点は、私どももこの制度考える場合非常に重要な点だろうと思います。  先ほど、私、御質問に答える際に申し上げましたように、昔の部落というものの団体的強制を再現する努力をすることは現実的ではないし、また適当ではないと申し上げたのも、まさにそこにあるわけでございます。  今回の協定はあくまでも住民の自主的な一種の契約でございます。それに一定範囲で特別の効果を付与しているというものでございますが、しかし、やはり委員指摘の点は十分配慮しなければならないと思っております。その意味で、協定制度におきましては協定への参加参加の決定はあくまでも自由の意思のもとに行われるということの制度の本質になっておりますし、また市町村長の認可や認定を受ける場合においては、その要件としまして土地利用に不当な制限を加えるものでないこと等、その内容が妥当適切なものである旨の条項を設けることにしております。こういった点については、この法律の条項を生かして十分御指摘の点を頭に置きました配慮ある行政指導も行いまして、いわゆる村八分のような事態を少数者に対して生ずることのないよう、運用面でも十分に努力してまいりたいと思っております。
  45. 小川国彦

    ○小川(国)委員 戦後、市町村合併が行われまして、中には一つの村が分村してAという町、Bという町に行った、あるいは一緒になってAという町に行こう、一緒になってBという町に行こう、そういう場合にそういう集落の中での大変な意見対立がありまして、現在は全国的に市町村の再編というのは終わっております。既に三十年を経過しているわけですが、依然としてその当時行われた分村運動とかあるいは分町運動とかの中のしこりは大変根強いものとなって残っておりまして、とても一代でも恨みとか感情とか残ったものは消し切れないぐらいの根深いものになっているわけですね。  そういうぐあいで、地域社会の問題というのは、住民自治の中で行っていく上では、非常に、慎重の上にも慎重に配慮していかなければならない。そういう意味で、今回の法制化の中では、そういう中での少数者の立場、少数者の意見、そういうものをやはり尊重していくということが法制度一つの背景の中にもなければいけないのじゃないか。そういう配慮は、この法律の施行令なり施行規則なり政令なり、そういうものをつくっていく過程の中でのそういう配慮のお考えはございますか。
  46. 森実孝郎

    森実政府委員 委員指摘のように、過去の部落が冠婚葬祭を初め土地利用から水利用から施設の管理から、一切のことを仕切ってきた実態があるわけでございます。私ども今回考えております住民協定制度は、いわば今日の状況にふさわしいように具体的な問題一つ一つについて順番に協定を結んでいこう、こういう考え方でございまして、いわば包括的な、総合的な、一つのトータルとしての協定ではなくて、やはりそういう個々の必要に応じた協定一つ一つ積み重ねていくというふうなことが要るだろうと思っております。  しかし、いずれにいたしましても、個々の問題であっても、私、小川委員指摘の点は十分行政として頭に置かなければならない点であろうと思っております。先ほど申し上げましたように、法律にもその思想をうたっておりますが、今後行政の運営指導に当たって十分配慮してまいりたい、このように思っております。
  47. 小川国彦

    ○小川(国)委員 一つ一つ目的に応じてつくられていくということは理解できるわけですが、その際、やはりその協定地権者全員の同意のもとにつくられて、市町村長に提出して効力を発する、こういうふうな理解をしているわけですが、そうすると、この場合に地権者全員というのは、例えば一つ事業計画された、それに関係する地権者ということなのか、あるいは集落全体の地権者なのか。それから、その中でそれに同意できない者があった場合にはどういうふうに考えるのか。
  48. 森実孝郎

    森実政府委員 今回の法律でお願いしております事項につきましては、実は全員同意が必要であるということでございますが、関係した地権者全員の同意というものがなければ協定が成立しないということでございまして、関係する人全員の同意がなければ成立しないというふうには考えておりません。その意味においては、反対の方が当然あって、その方が協定参加しないことがあるということを予定しております。ただ、後ろから反対した人が参加しようというとき、それをむしろ排除することがよくないということで、一号協定等においては、後刻申し出によって最初反対した方も参加できるということにしているわけでございます。  いずれにいたしましても、この協定はそういったように個々の事項について同意した人の中の協定でございますが、しかし、同意する人の範囲が余りに狭いと目的を達成できない場合が生ずるわけでございます。むしろそういう場合は必要なあっせん等を市町村長が行うし、また逆に、そういうふうな必要な人間が集まってこられない場合はやはりその協定は認可できない、認定できない、こういうふうな形で考えているわけでございます。
  49. 小川国彦

    ○小川(国)委員 この点は、今後非常に問題を残す点であろうというふうに思われます。したがって、その点についてはさらに同僚の議員によってこの問題点をただしていっていただきたいと思いますが、いずれにしても、民主主義の時代における少数者の意見の尊重ということがこの協定を進めていく中で常に配慮されなければならないというふうに思いますが、この点、大臣、いかがでございますか。
  50. 山村新治郎

    山村国務大臣 おっしゃること、もっともであろうと思います。特に今の農村地域兼業化、そしてまた混住化、これが進んでおる中で、今までのいわゆる慣行上のしきたりというものをそのままやるというのはなかなか難しい問題であると思います。それを今回新しく、いわゆるみずからが話し合いを通じて地域の将来についていろいろ話し合っていただくということでございますが、やはりこれは住民みずからの意思、これによって申し合わせ協定、これが行われるべきであろうと思いますし、また、画一的なものとしてやるべきではないと思います。これは、その地域地域状況に応じて適切な協定がなされるべきであるというぐあいに基本的に考えております。
  51. 小川国彦

    ○小川(国)委員 その大臣が答弁された住民みずからの意思というところを、ひとつ大切に考えていっていただきたいと思います。  それから第二点目に、日本は国土全体の中で耕地が二二、三%、山林地帯がかなりなウエートを占めているわけで、その中で、山林の中でも里山というものの利用というのはかねてからもっと活用できないものかというふうに我々も考えてきたところで、その点では、新しい一つの方向を示したものだというふうに思いますが、この交換分合制度は、里山交換については山林と山林の交換のみを考えているわけですか。
  52. 森実孝郎

    森実政府委員 実は法律改正案なので、山林と山林の、つまり林地林地交換分合によって開発適地である林地開発を是認する人に所有される条件をつくることによって、いわばそういう予備的段階を経ることによって農用地開発、つまり里山開発が進むようにしたいという法制をお願いしているわけでございます。  ただ、実は農地林地との交換につきましては、十三条の二の第二項第一号の交換分合において農地と山林の交換は当然現在も可能でございますし、これからもそれは活用していかなければならぬ。むしろ今回お願いしておりますのは、林地林地交換分合までいかないとそれから先が進まなくなるという認識からこの改正をお願いしているわけでございます。
  53. 小川国彦

    ○小川(国)委員 次に、土地改良法の一部改正の中で、農業集落の排水施設事業それから農業用の用排水路の適切な管理を行うということも、私どもはかねてからこれは要請されていた問題であるというふうに理解をしているわけです。  ただ、私ども現行の土地改良区の実態を見ますと、いろいろな工場用地あるいは住宅団地の開発が行われます。そういう開発に当たっての同意というのが行われるわけですが、新規事業開発者というのはいずれもこの土地改良区に同意を求めていくわけですね。その同意に当たって、数十万から数百万あるいは数千万、億に達する単位のもあったかどうかわかりませんけれども、そういう土地改良区が新規開発事業主から同意料を取るという風潮があるわけですね。そのことによって土地改良区の運営を考えていくような少し誤った傾向もあるというふうに私どもは理解しているわけでして、こういった傾向というものはやはり正していかなければならない。土地改良区は、やはり用排水の水を大切に守っていくという考え方も根本の原則としてこれはしっかり守っていかなければならないのじゃないかと思うのですね。それが、どうも安易に同意料に財政的な頼りをしていくというような傾向があります。  そういう点で、河川になりますと河川法で水質基準というものは定められていると思うのですが、私ども通称みよといいますか、その河川の最も上流、水源地から流れてくる、両側の水田あるいは畑の間を流れている、一般的に水田の間を流れているみよ、こういうところが今度の事業の対象になってくるのじゃないかと思うのですが、こういうところの水質管理、この基準をどういうふうに定めていくというお考えがあるか、その辺をひとつ簡潔に御答弁願います。
  54. 森実孝郎

    森実政府委員 まず第一の点でございますが、私も小川委員指摘のとおりだろうと思います。都市計画法に基づく開発許可を行う際、御指摘のように土地改良区の同意を得ている、その際に同意料を取っている。いろいろ調べてみますと、同意料の中には、管理経費の増高等を賄うためあるいは特定の補修工事の費用を負担するための明確な根拠のあるものもございますが、ただ漠然と取っているというケースもないわけではございません。  そこで、実は一昨年、かなり巌格な通達を出しまして、一方においては開発者が必ず都市計画法に基づく同意をとるようにその徹底を図ると同時に、土地改良区についても同意を与える際において筋道の通った費用なりあるいは負担を求めることはいいが、単なる名義料等の負担を取ることについては自粛することを強く指導している点でございます。今後ともその点の指導については十分留意してまいりたいと思っております。  次に、農業用の排水路の水質基準の問題でございます。これはまさに小川委員指摘のように二つの場合があるわけでございまして、一つはいわゆる被害者になってくる場合と、それからもう一つは、加害者という言葉は不適当ではございましょうが、例えば集落排水事業を今御指摘のようにやりまして、その排水をやることによって農業用水路の水質が落ちないかというような場合、この二つの側面があるわけでございます。  そこで、全体的には関係法令の規制値というものを前提に置きまして、それぞれ施設の種類によって指導をやっている。例えば集落排水をつくって農業用水路に排出する場合は、BODで二〇ppm以下とかSSで七〇ppm以下というような行政指導をやっておるわけでございますし、また、県が上乗せ基準を決めている場合においてはそれに基づいて指導もしているという実態があるわけでございます。  逆に、農業用水路工業排水とか生活排水によって汚濁された場合にどうするかという問題でございます。  これにつきましては、いわば従来正常であったものが新しく悪い状態が生まれてくるわけでございまして、これについては実は方々でも紛争を起こしておりまして、統一的な基準による調査を指導しておりますし、また制度的には、その目的を達成するために現在土地改良法にございますように管理規程を設けて、いわゆる工場排水等に対する差しとめ請求等の規定を設けているわけでございます。  ただ、実は現実の問題として一番難しい問題は、生活雑排水の排水をどうするかという問題でございます。これは、必ずしも受益者が特定してないというところに問題を求めることはできない。そこで、水質を浄化していく、あるいは適正な管理を行っていく、そのための補修も行うというためには、一定の支出なり負担が必要になってくるわけでございます。それを現在、土地改良区が市町村に協議して市町村と解決する道をつくったわけでございますが、遺憾ながらなかなかうまく作動しない。市町村の立場でも、開発の立場もあるでしょうし、新しい都市住民に対する気兼ね等もありますし、なかなか問題が片づかない。そこで、実は今回知事裁定の制度を設けまして、管理問題についていわゆる問題解決の担保措置を講ずると同時に、それに対応いたしまして実は統一的な指導基準を出しまして、運用の改善を図っていきたいというふうに考えているわけでございます。  特に御指摘の点は、生活雑排水については難しい問題がありまして、今までもいわゆる改良工事等でそれをやっているケースもありますが、私、それだけで問題は解決できないだろうと思います。今回お願いしました法制を基礎といたしました行政指導強化は十分考えなければならないし、その場合に特に水質の管理の問題が大都市近郊では大きな課題になることはしっかり受けとめて、水質の基準の確保ということに努力してまいりたいと思っております。
  55. 小川国彦

    ○小川(国)委員 これはまた今後の推移を十分見守っていきたいと思います。  次に、換地制度によりまして非農用地の創出手法の改善が行われる、都市の区画整理事業と同じように共同減歩方式を行って生活環境施設用地をつくるということでありますけれども、その中に例えば次三男の住宅用地というものを確保するというようなことが一つ考えられないかどうか、あるいはまた農産物のいろいろな生産販売の施設用地を創出することができないか、そういうようなことも考えられると思うのですが、そうした多目的な利用というものについての考え方はおありになるかどうか。
  56. 森実孝郎

    森実政府委員 共同減歩の対象施設用地は、やはり共同減歩という換地手法からいいましても農業者が共同して利用する施設という思想に立っております。そういう意味におきまして、従来から土地改良施設用地農業経営合理化施設用地に限定して実施してきたわけでございます。ただいま委員指摘のいわゆる出荷施設とか等は、経営合理化施設として十分従来も読めましたし、今後も問題はないだろうと思います。必要なものについては個別によく判断してまいりたいと思っております。  今回の改正では、さらに、農業者の生活上または農業経営上必要な施設農業構造の改善を図ることを目的とするもののうち、例えば市町村とか農協等の公的団体が行うものについて、それが公的計画市町村計画で定められたものについては生み出すことができるということにしたわけでございます。そういう意味におきましては、一歩前進させることがこの法律改正によって可能になると思います。  ただ、御指摘の次三男の住宅用地というのは、これは個人の用に供せられるものという性格もございまして、ちょっと共同減歩の対象として生み出すということはなじまない問題があるだろうと思います。前々から低平地の次三男の住宅用地の問題は農地転用の問題その他を通じていろいろ問題になっておりますので、法制とは別にその手法についてはこれを機会にまたいろいろ勉強させていただきたい、検討させていただきたいと思います。
  57. 小川国彦

    ○小川(国)委員 建設省の方、おいでになりますか。
  58. 阿部文男

    ○阿部委員長 見えております。
  59. 小川国彦

    ○小川(国)委員 建設省の方にちょっと伺いたいのですが、今いわゆる市街化区域と調整区域というものをつくった、そして農村地域は大きな意味で調整区域の中に取り込まれているということになりますと、今局長が答弁したように農用地の中で宅地を生み出すなんということは全く不可能なんです。それからもう一つは、今まで農村の調整区域の中で宅地とかあるいは工業用地とか商業用地とか、いろいろな形で一応認めた、そういう土地が残されているわけですね。しかし、それが、申請した所有者が住宅地としてあるいは商業用地として工業用地として使うのは許されるけれども、第三者には譲れない。自分自身に資金がないし、その利用計画が立たないということになりますと、それがそのまま放置されているという土地が全国で大変な数に上っているわけですね。その辺の土地利用のあり方について、これを活用せしむるという方途は建設省としてお考えになっているのかどうか。
  60. 深沢日出男

    ○深沢説明員 お答え申し上げます。  都市計画法につきましては、御案内のように線引きがなされまして、市街化区域ですと一定の技術基準に合うと開発が許可される。調整区域ですと技術基準だけではございませんで、さらに一定の立地上の基準が満たされないと許可されない。例えば農業用のものについては、すべてではございませんが、一定の要件のもとに開発許可の適用除外になるというような配慮をしているところでございます。  先生、市街化調整区域内にはしかるべき土地がいろいろあるじゃないだろうか、こういう御質問だと思いますけれども、市街化調整区域と申しますのはそもそも原則として市街化を抑制しようじゃないかという趣旨で設けられた制度でございますから、市街化ということは、一定計画的な開発あるいは日常生活等にやむを得ない開発等々、一定の制限を設けて開発を抑制しているところでございます。したがいまして、いろんな土地があるということではございますけれども、やはり今申し上げましたような市街化調整区域という制度の趣旨からまいりますと、一定の制限はやむを得ないんじゃないだろうかなというふうに我々は考えているところでございます。  ただ、例えば既に線引きが行われまして、その時点ではもう宅地になっているというようなところについては建築を認めていく。あるいは先ほど御質問ございましたような農家の次三男等々につきましては、できるだけ弾力的に運用を認めていくというような制度運用を図っているところでございますので、その範囲内でしかるべく対応ができるのではないだろうかというふうに我々は考えているところでございます。
  61. 小川国彦

    ○小川(国)委員 時間がないのであれなんですが、具体的な事例で、例えば農村の中で今まで自転車の修理屋さんをやっていた。その自転車の修理屋さんが今度耕運機の修理もやる。それから、だんだん農村も自動車がふえてきて、今度は自動車修理工場をやりたい。そして、自転車屋さんが自転車修理をやっていた用地で自動車修理工場をやりたいと言っても、調整区域だと許可にならないのですね。建てるなら市街化区域に行きなさい、こういうことなんですね。しかし、現実には、農村集落の中にあって、今は農家でも農業用のトラックやなんかはもとより、乗用車もほとんどのうちで持っている。そうすると、農村集落の中に自動車整備工場があってもいいわけですね。ところが、そういうものは市街化区域の中でおつくりなさいということです。現実農村集落の中でも、耕運機の修理あるいは自動車の修理工場も必要なんですが、そういうものがほとんど許可になってないのですね。これは、農村生活する人に対しての大変なマイナスじゃないかというふうに思うのです。  これは一つの問題提起なんですが、こういう点、建設省としても、そこで自転車屋さんをやっていた人に永久に自転車屋をやっていろ、こういうことになりかねないのですよ、自動車工場の許可をしませんからね。自動車工場用地は認めないのです。こういうことの改善は、この一点ですが、ぜひ図っていただきたいと思うのです。いかがですか。
  62. 深沢日出男

    ○深沢説明員 お答え申し上げます。  今具体の問題が提起されたわけでございますが、いわゆる建築等をする場合には一定目的に従ってなされる。それについて開発許可、建築許可等がなされるということになっているわけでございまして、それがむやみやたらに用途変更されてしまうということになりますと、都市計画で想定しております町づくりというものができるのかどうかという疑問もあるわけでございます。したがいまして、いわゆる違法といいますか、勝手に用途変更されてしまうということについては甚だ問題があるわけでございますけれども、前々からしかるべき事業あるいは営業をされておられるという方々がどうしても調整区域内で必要な事業等をまたやりたいというようなケースの場合ですと、いろいろケース・バイ・ケースによって違うかと思いますが、しかるべく判断を許可権者の方でしていただいて、対応できるものであれば弾力的に対応したいというふうには考えております。
  63. 小川国彦

    ○小川(国)委員 この点は、私ども農村社会に近いところに住んでおりまして、そういった実態、いろいろの事例を見ておりますので、そういった総体的な面でも改善の方向を今後ぜひひとつお考えいただきたいと思います。  次に、今度のこの法律によって創出された農地の取り扱いでございますけれども、こういう集落の共有地、部落の共有地、所によっては通称総地などと呼ばれているところもあるわけなんですが、共有地としての法的な取り扱いは一体どういうふうになるのか。これを市町村市町村用地にする場合もあるわけですし、あるいは共有地だと登記するのは簡単にできるわけなんですが、今度は何十人もの人が共有登記をする共有登記をした土地が子孫に伝わってまいりますと大変な数に広がっていって、拠出された土地の管理をめぐって今度は非常に困難なことも予想されるわけですね。この法的な取り扱いというものは一体どういうふうに考えていらっしゃるか。
  64. 森実孝郎

    森実政府委員 実は今回の共同減歩の対象施設用地拡大によりまして、非農用地生み出しの手法の利点が活用されまして、問題の解消にはかなり役立つと思います。  ただ、今御指摘の点は、委員先刻も御案内のように非常に難しい問題があります。集落というものに法人同様の一定の法的な性格を認めるかどうかという問題でございますが、率直に申しまして、集落団体の法人格については、法律上むしろそう割り切れない点がある。法人格なき社団としてもやはりなかなか割り切れない点がある。むしろ現実の社会は、先ほどの協定制度を必要とするように、混住化や兼業化の進展によって非常に意識の多様化なり経済生活活動の多様化が進んでおりまして、そういったものをかなり緩める方向に動いているということも事実でございます。  実は今回の法律改正においても、これは従来と同じでございますが、そういった非農用地生み出しに当たっては、取得者を市町村、農協とか土地改良区とか農事組合法人等に限定いたしまして、権利関係所有権の移転と清算金により明確に区分して、後々、先ほど委員も御指摘がありましたように、相続に際して権利関係の争いを起こすというふうなことを避けるという手法をとっているわけでございます。  この問題は、集落というものに法人格なき社団性をどこまで認めていくか、それをまた法的な主体と同じように扱えるかどうか、なかなか難しい問題であり、いろいろ議論があることは私どもも承知しておりますが、今日の状況を見るとき、なかなかそこまでは踏み切れないし、法制化は無理だというのが実情であることを御理解を賜りたいと思うわけでございます。
  65. 小川国彦

    ○小川(国)委員 これは農水省だけで解決する問題ではなくて、法務省あたりとも今後協議をしなければならない問題だと思うのですが、例えば土地改良によって相互に拠出された土地が、今お話しのように市町村とか農協とか法人が持ちいい場合はいいのですけれども、農協がそれを持つといってもなかなか難しい、それから生産法人が持つといっても難しい。結局、最後は市町村に持っていく。市町村としても、市が直接管理する市有地がある。そこへまたそういう部落共有のものをもう一つ市有地に加えていくということにはかなり無理な面があるわけです。  ですから、今後の問題としては、小字でもって集落地という名称の財産区を持てないかどうか。やはり農水省がこういうことを考えるとなったら、そこまで踏み込んで、集落地というものを一つの財産区として新しい法制度の中でそれを設定していくというような積極的なお考えも必要なのじゃないかと思うのですが、いかがでございますか。
  66. 森実孝郎

    森実政府委員 御指摘の点は、私どももよくわかる問題でございます。問題は、法人格なき社団、そういった総有的団体を一定の権利義務の主体として認めるかどうかという法制の沿革は、例えば過去の部落の総有的な財産がございますね。そういったものについては学説、判例上も認められておりますが、新しい事業についてはむしろ否定的である。過去に持っている総有的な性格を持った財産の管理なり使用収益処分の範囲のことに限定されているのが従来の法制的な通例だろうと思います。それからもう一つは、集落自体の機能が大きく崩壊をしてきているということを事実として受けとめて今回の法制もお願いしているわけでございまして、そのことも頭に置かなければならないと思います。  ただ、現実の運営としましては、一応市町村有地にしておく、みんなで共同減歩で土地生み出し市町村有地にしておく。それで、その上にある施設土地はむしろ市町村住民協定等をベースに置いて管理委託をしっかり行う。つまり、住民協定とその上に立った管理委託を行う。さらに、最終的な財産の帰属については、つまり目的を達成してその土地を処分する場合にどうするかということについては、従来拠出した人に権原を認めることを契約上明らかにするというような形でかなり処理できる面もあるだろうと思います。そういう点は、ただいまの御指摘を頭に置きまして、具体的な処理の方策については少し勉強させていただきたいし、またその成果を御報告し、必要な指導を加えてまいりたいと思っているわけでございます。
  67. 小川国彦

    ○小川(国)委員 これは、そういった任務を与えられる市町村、自治体にとっても大変な一つの仕事がまたふえてくるわけですから、今後の研究課題としてぜひお取り組みを願いたいと思います。  それから、私はこの際、日本農業全体の問題に立ち戻ってひとつお話を伺ってみたいと思うわけなんです。  農水省がこの二法を行う、そしてまたこの二法を中心として日本農業生産の基盤強化に向けていろいろな仕事をしているわけですが、その中で、大きく分けて農地、田んぼなり畑なり、そういうものの生産基盤を強化していく、土地改良あるいは農業構造改善によって生産基盤を強化していく、こういう仕事が一つある。それからもう一つ、その上にいろいろな施設をつくっていく、そういう仕事もまたある。それから、施設をつくって、さらに集落なり市町村なり農協単位なり、そこにいろいろな機械導入していく、そういう近代化の仕事もあると思うわけですが、私は、今後農林省が志向していく方向としては、やはり日本農業の生産基盤、土地の生産基盤を強化していくということが何よりも大切だというふうに考えるわけなんです。  しかし、最近では、生産基盤の強化といいましても、土地改良事業を行うあるいはまた農業構造改善事業を行うといいましても、全体的な意向を取りまとめることについては非常に困難がある。なぜ困難かというと、結局、今までに圃場整備が行われてきたところはいいのですが、これから行うというところは、構造改善事業などによって暗渠をしたり、大きな田んぼに、一反歩を三反歩区画に大きくしていく。すると、それなりの土地改良の負担がかかってくる。農業一本で食えない現行の生活の中で、それだけの負担金を払ってまでさらに土地改良なり構造改善事業をやる必要があるだろうか、私はこういう疑問がかなり出てきているように思うのです。あるいは、農民の中には意欲を持って、ぜひ自分の圃場をもっと生産力の上がる圃場にしたい、そういう人たちももちろんいるわけですが、兼業化がこれだけ激しく進んでいる状況の中では、農地の生産基盤を強化することに対する関心は、むしろかなり低下してきていると見なければならない。  そういう面でいけば、今後農政の柱としては、土地改良、農業生産基盤の強化については、農水省の中でも、政策の面でも予算の面でも、全額国庫負担でやるというくらいの思い切った方向が考えられてもいいんじゃないか。ですから、現行の補助制度の中での補助割合というものをむしろ重点的に高めていく。もちろん、行政改革の中で、農水省の予算がここ数年頭打ちに置かれているという厳しい状況はわかるわけですが、政策的にはやはり生産基盤の強化土地改良事業、そこに重点を置いていかなければならないのじゃないかということを方向として強く感ずるわけですが、その点、農水省として今どういうふうにお考えになっているか。
  68. 森実孝郎

    森実政府委員 御指摘のように兼業化が進んできた、混住化が進んできた、あるいは一部の地域で跡取りのない農家がかなり出てきた、そういったことが農業生産の基礎になる基盤整備を妨げていることは事実でございます。私どもといたしましては、基盤整備事業、特に面的な整備を必要とする事業については、やはり土地改良事業は十分その受益者の負担ということを考えて、関係者の同意を得てやっていくという基本を厳守していかなければならぬ。特に今申し上げた面的整備を伴う事業については、やはり原則として全員が同意しているという形でやらなければならないということで、慎重な実施を図っているところでございます。  予算の問題でございますが、二つあると思います。一つは、枠の確保ということだろうと思います。先生おっしゃったいわゆる基盤の整備と上物の整備と二つあると思いますが、私どもは、やはり今後の予算の重点は、つまり補助の重点は基盤の整備に置くべきであり、上物の整備というものはできるだけ融資を中心に考えるのが今日の状況として適切だろうと思っております。予算確保には、そういった点も含めながら努力をしてまいりたいと思います。  補助率の問題でございます。確かに補助率をどう手直ししていくかということは、今日の非常に厳しい財政状況のもとでは難しいことは否めません。特に、土地改良事業自体は、農業生産基盤を整備するという公共的側面も持っておりますが、やはり私有財産の利用価値を高めていくという問題があるわけでございまして、現に法制でも、事業実施後短期に転用をされるような場合においては、そういったこともあって、補助金の還付の規定を定めているような実態もあるわけでございます。  私ども、やはり農家負担の軽減には総合的な努力は必要と思いますし、また、御指摘の点も頭に置いてこれからいろいろ努力しなければなりませんが、当面、補助率自体のかさ上げという問題については、今日の状況のもとでは難しい。まず予算確保から取り組んでいかなければいけないという事情にあることを御高察いただければ幸いだろうと思います。御指摘の点は古くて新しい問題でございますし、今日の状況では加速されている事情もあることも、私、否定できないところだろうと思います。十分勉強させていただきたいと思います。
  69. 小川国彦

    ○小川(国)委員 この際、私ちょっと補助金の問題にも触れてお伺いしたいと思うのですが、農水省の予算の中で補助金の占めるウエートは相当なものに上っていると思いますが、これは、今、金額的に、それからパーセンテージでどのくらいの補助金になっているか。  それからもう一つは、その補助金の中で、土地改良とか生産基盤に向けられている補助金と、それから今局長答弁の施設機械の方に向けられている補助金、これはどの程度の金額割合になっているか。
  70. 森実孝郎

    森実政府委員 御案内のように、実は私ども農林省が実施しております事業は、公共事業でも直轄事業なり公団営事業の比率は極めて低いわけでございまして、二十数%でございます。したがって、それ以外の事業は県営事業、団体営事業として、あるいは市町村営事業としていずれも補助事業の体系で仕組まれております。それから一般の奨励施策は、私が申すまでもなくそれぞれ補助事業の体系として、自治体とか農業に関する法人とか、あるいは共同の農業者の実施ということを前提として仕組んでおりますので、今補助金の全体の予算の中のシェアということの御指摘がございましたが、ちょっと急に出てまいりませんけれども、いわゆる建設的な、投資的な予算のうちの圧倒的部分が補助金であることは事実でございます。
  71. 小川国彦

    ○小川(国)委員 私は、具体的な問題に入って伺いたいというふうに思うわけなんです。  補助金制度の中で、土地改良とか構造改善事業で生産基盤を強化する面というのは、具体的にその成果というものがある程度見られるわけなんですが、いろいろな機械施設に向けての補助金というものは、農水省が確かに今までの補助金をメニュー方式に変えたということで一歩前進したようには思うわけなんです。  しかし、これを食事に例えますと、今までは農水省の補助金というのはフルコースの洋食を食べるようなもので、嫌いなものがあろうとなかろうとフルコース全部食べなければいけない。機械も、十種類だけではなくて十五種類も二十種類も、この一通りのセットをそろえなければ補助金は交付できませんよ。おなかがいっぱいであっても、おなかがそんなにすいていなくてもフルコース食べさせる。それがメニュー方式になって、極端な話が、どんぶり一つ、おしんこ一つ、みそ汁だけでもいいですよというふうに農民の選択に任せてきた。これは一歩前進だと思うのですが、ただしかし、今の補助金の実態を見ると、例えば同じ天どんを食べるにしても、お年寄りの食べる天どんと、子供の食べる天どんと、御婦人の食べる天どんと量の大小があるわけですね。ところが、補助金というのは農林省が全国一律の規格でやっていますから、余り食べたくない年寄り、子供にも一人前持っていく。私は、こういう形の補助金がやはり多いと思うのです。  畑作地帯の例えば野菜振興事業の最近の一例で見たら、これは農協主体でやっているところなんですが、トラクター、フォークリフト、土壌消毒機、こういうのをセットで申し込んだ。大体国が六分の一、県、市町村が六分の二、農協が六分の三というような負担割合なんですが、土壌消毒機一台買うのに、例えば四十万円のを五台最初希望した。しかし、消毒機というのは、自走式で引っ張る機械がついたものなら四十万円だけれども農家が持っているトラクターの後ろにつける部品としての消毒機なら半分の二十万円で買える。だから、四十万円のを五台買うよりも二十万円のを十台買うのに変えてもらえないかという話をしたところが、やはり農水省の方では、いや機械だけ与えたって機械がひとり歩きするわけじゃない、引っ張る機械とセットでなければだめだということなんだそうです。ところが、土壌消毒というのは、地中に打ち込んでいくのは、個々の農家が持っている機械で引っ張って、分散して、時期もずらしてやった方がよかったんだ。しかし、農水省の補助の形でいくと、やはり既定のものを買えということになっている。  あるいは水田地帯の方で、今土地改良に対して、コンバイン、トラクター、田植え機、こういうようなものをセットで協業組合をつくったところに補助していく。あるいは大きいところでは、トラクター、コンバイン、それから畝立て機、ライムソワー、ロータリー、格納庫、砕土すき、いろいろセットでいくわけなんですが、最近の傾向は、農業専業の人たちが協業体をつくってそこに補助金をやるのじゃなくて、大半が兼業の人たち。それからまた、自分の持っている農機具が償却年限が来てしまった、ここで買いかえようと思ったところへ、農水省の指導で協業体をつくればこれだけのセットの機械補助があるというのでそれに飛びついていく。しかし、現実に兼業でほとんど固定的な職業を持った人が七、八割を占めているところに、トラクターやコンバインを協業体に与えていっても果たしてだれがオペレーターになるのか、そういう問題が今の補助形態の中にかなりあるように私は思うのです。ですから、こういうのは長期低利なものに変えていく必要があるのじゃないだろうか。融資に切りかえていく必要があるのじゃないか。こういうものの補助のあり方というものをもう一つ考える必要があるのじゃないか。  それから、農家で言えば農地の取得資金、これが今非常に困難な時代に来ていると思うのですね。私ども、かつて、米作日本一と言われた石川県の竹本平一さんに来ていただいて、いろいろ国会議員の仲間でお話を伺った。最近も私現地に行ってきましたけれども、息子の敏晴さんという方が大変努力をして後継者として頑張っておられる。この人の農業実例なんかを見ますと、昭和四十年に二・八ヘクタールだった。五十九年の現在は六・一ヘクタールと、三・三ヘクタール耕地を拡大しているのですね。それから請負耕作と言って、四十一戸から借りた田んぼが十ヘクタール、それから作業請負をしているのが十戸から三・五ヘクタール、全部で十九・六ヘクタールやっているわけですね。だから、農水省や朝日新聞が日本一にされた、水田農業のいわばともしびのような、灯台のような存在の農家だと私は思うのです。  ここが規模拡大をやる一番のポイントは、やはり農用地を買うことなんですね。自分の農用地を買う。私も現場に行ってみたのですが、借りている人の田んぼは、土を入れて土を豊かにすることができる、土壌の改善ができる、堆肥をつくって入れていくこともできる。しかし、畝を崩したり、外形的な形状を壊すわけにはいかないのですね。今あの辺は日本水田の発祥の地とかで、大体石川県の平野は二百坪単位の一区画になっているのですね。そうすると、構造改善でいけば、今はそれが九百坪ぐらいの水田にできるわけです。しかし、借りている田んぼや作業を請け負っている田んぼの畝を壊したり変えることはできない。そうすると、やはり土地は自分のものでなければ自分のやりいい農地にはならないのですね。こう考えると、農地規模拡大というのは、買える力があれば、やる意欲のある人にはできるだけ農地を買えるというふうにしていかなければならない。  ところが、その資金が五年据え置きで二十五年償還ということですが、利子が五年据え置きの期間は四・五%、それから二十五年の償還期間では五%なんですね。せめてこれをヨーロッパ並みに、五十年の期間で二%ぐらいの金利にならないかというのが竹本さんの持論だったわけですよ。私はこれに共鳴しているのです。そして外国の農用地開発、三菱とか三井とか、例えばスマトラの原野にトウモロコシをつくる農場をつくった。このときに農水省が、国際振興事業団でしたか、ああいうところから貸している利息というのは大変安いのですよ。海外事業団なんかが貸している利息は〇・何%ですね。そういうように、商社が海外で農地をつくるのには五年据え置き十五年償還の〇・〇何%というような金を貸しているのです。  日本農家は、今何百万とする農地を一代で返すのは無理な時代だ。やはり二代、三代くらいのことを考えてやって、五十年二%ぐらいの農地取得資金というものを考える、そのくらいの目標に向けての努力をひとつやるべきじゃないか。ですから、兼業の農家に無理無理セットで買わせていくような補助金があるならば、そういうところに振り向けるべきじゃないかと私は思うのですが、これは大臣局長あわせて、それぞれ御見解を承りたいと思います。
  72. 森実孝郎

    森実政府委員 私から前座の答弁をさせていただきます。  第一は、機械の補助をどう考えているかという問題でございます。  率直に申し上げますと、委員指摘の方向で、実は今機械に対する助成は逐次抑えてきております。  例えば、数字的に申し上げますと、一次構、二次構では補助金のうちの実に一五%ぐらいが機械の補助に使われてきたわけでございますが、現在では四%、特に五十七年の実績では二・七%というところまで下がってきております。結局、その分が小規模土地改良とか生活基盤整備に回ってきているという形があるわけでございます。  私どもは既に通達もしているところでございますが、一つは、トラクターとかコンバイン等の汎用的な機械で個人経営になじむものについてはまず補助対象にしない。それから温室とか畜舎とかサイロとか果樹棚等の個別経営になじむものも、これは補助対象にしないということを原則といたしまして、地域によって、事業によって若干の例外を設けて、実験的なもの、パイロット的なもの、あるいは沖縄だとか活動火山対策とかという特殊なものに限定して実施をしているわけでございます。もちろん例外もかなりあるわけでございまして、ただいま御指摘がありました点は、具体的な事案につきましては、きょう来ておりませんが、関係部局にも私から十分伝えておきますし、私どもといたしましては、各種の総合助成事業を通じて上物や機械に対する助成はできるだけ長期低利の融資に切りかえていきたいと思います。  構造改善事業の例で申し上げますと、実はそうやって補助金を逆に切りました結果、融資事業の方では事業費がこの五年間に約八倍に伸びております。私は、これはやはり一つの成果が上がっていると思います。やはり財政資金の効率的な運用並びに農家の自発性を尊重するという意味で、できるだけこういったものは融資に切りかえて実施してまいりたいと思います。  それから第二の、農地取得資金の問題でございます。  私どもも実は竹本さんにはいろいろお教えを請うた一人でございますが、やはり段階的に規模拡大は進んでいく。作業受委託があって、それから利用権の設定なり、さらに可能であれば個人の土地に持ってくるという発展過程をたどることは事実であります。実はある時期、土地が、交換価値だけに着目して非常に騰貴して、なかなか土地を取得することは現実的でないということで、農地の取得資金につきましてもむしろ需要がずっと落ち込んできた経過がございますが、世の中も大分落ちつき、北東北等においてはむしろ農地の取得資金に対する需要がかなり出てきております。そういう意味で、私どもも、農地の取得資金というのを、今日の状況で、構造政策の仕上げの手段として十分これから重視していかなければならないと思っております。  ただ、三・五%、二十五年以内というのは、実は日本制度金融では最も優遇いたしました制度金融でございまして、補助にかわる無利子制度があと若干あるだけでございまして、そういった意味では、最大限の優遇を図っておるわけでございます。土地取得資金というものを思い切って低利長期にする、そこで利子補給のために財政資金を使っていく、むしろ一般の補助金を切っていくという政策の選択は、確かに先生がおっしゃるようにあるとは思いますけれども、今申し上げたような全体の長期低利の融資体系としては限度のところまで措置をしているという実態があること、それからやはり農地取得というのは我が国現実では重要な資産の取得であり、また交換価値に着目した側面が非常に強いこと等を考えると、これを緩和することはなかなか難しいと思いますけれども、我々もやはり構造政策の一番最後に到達する手段としては重視しなければならないという評価を今日でも持っておりますので、これからも枠の確保その他運営の改善には十分努力してまいりたいと思います。
  73. 山村新治郎

    山村国務大臣 農業近代化施設に対する補助につきましては、五十七年度から、先ほど局長から申し上げてありますように補助事業の重点化、農業者の自発性の重視等の観点から整理合理化を行ったところでございまして、トラクターそのほか汎用作業機械等、また温室、畜舎、サイロ、果樹棚等、いわゆる個別経営になじむ機械施設は原則として対象から除外してございます。こういった問題から考えましても、先ほど小川さんから言われましたように、今後は機械類についてはいわゆる融資を原則としてやってまいりたいと思います。  そしてまた、今おっしゃいましたいわゆる農地確保に対する融資、そして低利の資金ということでございますが、拡大する農地ということで、いわゆる日本の足腰の強い農業ということへ転換を図っていくわけでございますし、また、農地そのものがいわゆる国土の保全、水資源の涵養など公的な部分もこれはかなり有しておるわけでございますから、私も、今小川さんが言われましたその趣旨に沿ってひとつ勉強して、努力してまいりたいというぐあいに考えます。
  74. 小川国彦

    ○小川(国)委員 もう一度竹本さんの例に触れるのですが、あそこの石川県の寺井町の字牛島というところで七十数戸ありまして、若い農業後継者が三人いた。それが、専業でやっている人は今度竹本さん一人になってしまったということを伺ったわけですね。しかし、石川県全体で見ると、そういうふうに十ヘクタールなり二十ヘクタールの水田を持って農業を専業でやっていこうという人たちがかなりなグループ、メンバーがいる。そういうものは、日本全国の中で農業専業で生きていこうという人たちがいるということは貴重な存在だし、日本農業を守っていくのにはあらゆる手法を使っていかなければならない。先ほど大臣局長もおっしゃったように、農地を取得できるというような道を優遇策でやっておられるそうですけれども、さらにこれを強化して、さらにそれが普遍化されていく、こういう御努力をひとつお願いしたい、そういうことで私の質問を終わりたいと思います。
  75. 阿部文男

    ○阿部委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時二十七分休憩      ――――◇―――――     午後二時三十八分開議
  76. 阿部文男

    ○阿部委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。日野市朗君。
  77. 日野市朗

    ○日野委員 主として農振法について質疑をいたしたいと思います。  私、実は農振法の提案理由の説明を伺って、それから念のためにまた読んで、それから条文に目を通させていただいて、ちょっと驚いたのであります。  従来の農振法というのは、農業振興地域、これにおける農業、これを守っていく。そして、ここからできるだけ高い生産力を上げるという方向で今までこの法律というものは整備されて、そしてそういう法律であるというふうに我々は理解をしてまいりました。中には、この土地流動化促進するというような観点ども含まれたわけでありますが、しかし、今度の条文の改正案を読ませていただいたら、農業振興地域整備基本方針のところに、余り堂々とではなく、さりげなく第四号のロのところに「農業経営規模拡大」ということがうたってございます。  どうもこれを読んでおりまして、私、今までの農振法とこれは大分趣を異にしてしまったのではないかというような感じがいたします。農水省は、規模拡大のことについては一生懸命やってまいりました。農用地利用増進ということについてはしきりと旗を振ってきたわけでありますが、農振法の中にも農業経営規模拡大ということが、今までは使われなかった文言が堂々と入り込んできたということについて、私は奇異の感じを持つのであります。農振法も規模拡大のための一つの大きな手段としてどうも使われるのではあるまいか、そういうことが予定されているのではあるまいか、このように思いますが、いかがなものでしょう。
  78. 森実孝郎

    森実政府委員 立法技術的な問題で、非常に詳しくなりますが、少し御説明をさせていただきます。  御案内のように、現行の農振法では、第一条で「その地域整備に関し必要な施策計画的に推進するための措置を講ずること」というのを目的に掲げまして、第二条で「農業の近代化のための必要な条件をそなえた農業地域を保全し及び形成すること」を整備の原則に掲げております。そのもとで第四条と第八条にわたるわけでございますが、いわゆる農振の整備計画におきまして、農地保有の合理化のための農用地等に関する権利の取得の円滑化に関する事項を規定しているわけでございます。正確に言うと、それが簡潔な形で書いてありますのは八条二項三号ということになるわけでございます。  そこで、問題は農地保有の合理化の内容でございます。これは、従来の農業基本法の第二条の第一項第三号あるいは農地法の第三条第二項にも示されておりますように、農業経営規模拡大農地集団化と解されているわけでございます。そこで、今回地域農業集団による農用地集団的な利用調整を農振計画に盛り込むに当たりまして、農作業の受委託とか機械の共同利用による作業規模拡大とか地力の維持増進、農用地利用度向上などは従来の農地保有の合理化という観念に含まれないものでございますから、「土地農業上の効率的かつ総合的な利用の促進」というふうに規定したわけでございます。ところが逆に、「土地農業上の効率的かつ総合的な利用の促進」と規定いたしますと、先ほど申し上げました農地保有の合理化の中の一つの概念である経営規模拡大の要素だけはどうも含みがたいのじゃないかという点が出てくるわけでございます。そこで農業経営規模拡大を特記し、さらにその上に立って「土地農業上の効率的かつ総合的な利用の促進」ということを規定したわけでございます。  そういう意味におきましては、規模拡大という思想は改正前の法律では農地保有の合理化の中に含まれて考えられ、今回の改正ではそれをその以下の部分の書き方の変化に伴って特掲して書いた、こういう形になっているわけでございます。
  79. 日野市朗

    ○日野委員 よくわからなかったのですけれども、保有の合理化ということからこのような文言に発展をしていったというようなことでありますが、実は、今局長は本法の目的についてお述べになりましたけれども目的等から見てこれが現在農水省が積極的に進めようとしておられる規模拡大という方向に明瞭に奉仕するものとして位置づけられるということは、私は大臣の提案理由説明を読んだ範囲ではなかなかわかりにくかったのであります。  そういう方向でやるならやるときちんと、規模拡大政策は何も農水省は今に始まったことでありませんで、ずっと前から方針として持っていたわけでありますから、ちゃんと法案を出す当初から法案の要約などを皆に示す、要綱を示す、それから提案理由を説明する、こういう中にやはりきちんと書いておくべきものである。そして、大臣がそこで読み上げられるべきものであるというふうに思うのですね。これは、大臣いかがですか。事務方が書いたものを実はおれはただ読んだだけさということでは済まないので、これからは法案の持つ、改正案だったら特に改正点の持つ特徴を鮮明に提案理由で述べる必要もあるだろうし、事前に要綱等で説明する必要もあるだろうと思うのです。大臣、いかがですか。
  80. 森実孝郎

    森実政府委員 提案理由説明に触れました点がございますので、その点についてまずちょっと私から事務的に御説明させていただきます。  提案理由説明の中では「農用地等の効率的かつ総合的な利用の促進、」という事項を新たに追加するというふうに申し上げたわけでございます。先ほど申し上げましたように、いわゆる農地保有の合理化という観念の中に規模拡大という思想は従来も入っていたという前提でそう申し上げたわけでございます。しかし補足説明におきましては、これをコンプリートな形、全体の形で「農業経営規模拡大及び農用地等の農業上の効率的かつ総合的な利用の促進、」というふうに、追加した部分でなくてもとの部分も含めて御説明させていただいたわけでございます。  提案理由の説明の書き方が少し簡略に過ぎた点については、私ども事務当局としてこの際におわび申し上げておきます。
  81. 日野市朗

    ○日野委員 もう少し嫌みを言わしていただければ、やはり提案理由の説明の中できちんとその思想というものが表現されていなければならず、補足説明というのはそれをさらに補足してよりわかりやすくし、詳しくするものでなければならない。そうでなければ、これは補足説明じゃなくて蛇足説明ですよね。これは、これからのこういったものの処理についての考え方として、ここで一つ念を押しておきたいと思います。これからはもっと改正の特徴点などははっきりさせる必要があろうかというふうに思います。  この法案は、いろいろなことはありますが、結局、従来からさらに一歩踏み出して農業経営規模拡大の方向に向けて積極的にこの法律を活用していこうという意図を持つ、これは間違いありませんね。
  82. 森実孝郎

    森実政府委員 規模拡大を中心にしました構造政策の深化につきましては、各般施策を複合して実施していくことによって目標に到達すべきものと思っております。特に、昨年来地域農業集団の育成による農用地集団利用調整を軸として構造政策の進展を図っていく。そういう意味で、まず農振法の世界におきましてもこういった集団土地利用調整の思想を地域農業振興計画の樹立に当たって明確にするということにしたわけでございます。  同時に、こういった構造政策の進展というものは兼業農家と専業農家をあわせた連帯の確保、場合によっては農家と非農家の連帯の確保を前提にしなければなかなか進むものではない、そういう認識のもとに、豊かな村づくりというものも同時に構造政策帰結として必要だ、このような認識から今回の法案を提出させていただいたわけでございます。その意味におきましては、構造政策のいわば第三ラウンドと申しますか、そういう政策展開を念頭に置いたことは御指摘のとおりでございます。
  83. 日野市朗

    ○日野委員 そこで、私も農水省からいただいた資料に基づいて条文を読ませていただいているわけなんでありますが、第四条それから第八条ですか、ここに「農業経営規模拡大」という言葉が出てまいります。そこで、私常々考えているわけでありますが、農業経営規模拡大するという考え方でございますね、これが、実は経営規模拡大ということについてはみんなのコンセンサスを得ているかのごとくに語られる場合が多いわけであります。しかし、いろいろな論者の説くところをいろいろ検討してみますと、経営規模拡大ということの意味がそれぞれにみんな違います。この法案にこの文言が出てきた場合どういう効果を持つのかということはまた別にいたしまして、少なくとも法律上の文言となった以上、いろいろな評価が各方面から寄せられる、つまり各人によって読み方が皆違うでは、これは困ったことになるのです。  実際上、農業経営規模拡大ということを言っている文書はいっぱいございます。いわゆる農政審答申、「八〇年代の農政の基本方向」ですか、ここで説かれている農業経営規模拡大と、それからあとは有名なものではNIRAが出した報告書における経営規模拡大というのは全く違いますね。その間に農水省の担当者がこの委員会で公式に述べたところ、また農業白書などにおいてもそれぞれ微妙な違いが見られる。一体この農業経営規模拡大という言葉をどのように読んだらいいのかということについて、私は非常な疑問を感ぜざるを得ないのです。  ここで、農振法における農業経営規模拡大というのはどういうものをイメージとして描くものか、ひとつ端的な御説明をいただきたい、こう思います。
  84. 森実孝郎

    森実政府委員 日野委員指摘のように、規模拡大の言葉が多義的にいろいろ使われている、また、それにはそれなりの実質的な根拠があってのことだろうと思います。  農振法の世界で申します場合は、規模拡大というのはやはり所有権なり利用権を取得して経営耕地面積を拡大することを言っているわけでございます。しからばそれ以外の態様は規模拡大関係がないかというと、これはまた別問題でございまして、例えば作業の受委託等を通じましていわゆる実質的な経営面積を広げていくという形も規模拡大一つの態様として経済的にはとらえていかなければなりませんし、それから高能率生産組織の育成等を通じて規模の大きい経営を育てていくことも、いわゆる家族個別経営とは別の世界でございますが、やはり規模拡大のジャンルとしてとらえていかなければならないと思います。  そこで、農振法のいわゆる計画上の概念としましては、先ほど申し上げましたように狭義の概念として使わしていただいておりますが、トータルといたしましては規模拡大と並べて農業上の土地の利用の調整ということをうたっているわけでございまして、一体をなしたものを計画なり何なりに盛り込むということだろうと思っております。
  85. 日野市朗

    ○日野委員 狭い方の概念を使う、こういうことでございますね。  それでは、規模拡大ということに関連して伺いますが、これから農業振興地域において営まれる農業というものを頭に置いて議論をしていくわけでありますが、経営規模拡大する、面積を拡大するということを考えた場合、大体どの程度まで面積を拡大するということになれば規模拡大なのか。これは一つの目標を設定しての話でしょうか、それともとにかく経営面積を拡大していく、それから生産のいろいろな方法、それも通して規模拡大していく、つまりある程度の目標の設定があるのかないのか、そこはいかがですか。
  86. 森実孝郎

    森実政府委員 構造政策を進める場合におきまして、先ほども申し上げましたように所有権の移転も含めて、利用権の集積が中心になると思いますが、土地利用型農業のいわゆる経営面積を広げていく。ただ、先ほどちょっと申し上げましたように、中間の過程でその中には利用権の設定に至らない作業受委託のものも含むことはあり得ると思いますが、そういったことを前提にいたしまして考えた場合、農政審の報告にも示されましたように、例えば稲作主業の場合においては都府県では五ヘクタール程度、北海道では十ヘクタール程度ということを当面我々としては施策のゴールとして考えるべきであろうと思っております。
  87. 日野市朗

    ○日野委員 稲作を一応例にとられて、北海道を除いて五ヘクタールくらいというようなお話がございました。私、これを今伺って、これが多いと言っていいのか少ないと言っていいのか、ちょっと判断に困るわけでございます。内地という言葉を使わしていただきますが、内地で五ヘクタール、北海道で十ヘクタール、これが出てきた根拠は一体どういうところにあるのですか。
  88. 森実孝郎

    森実政府委員 これは、長期見通しの作業に当たっていろいろな要因を頭に置きまして、実現可能であり、かつ、いわゆる生産性の高さというものが確保できる規模、そういうことでトータルとしてとらえたものでございます。そういう意味におきましては、特に構造政策の目標ということで従来の長期見通しと変わった数字をつくっているわけではございません。
  89. 日野市朗

    ○日野委員 では、ちょっと観点を変えて伺いたいと思いますが、これから農業というものを考える場合、農業経営の主体となるものをどのようなものとしてイメージとして描いておられるのだろうかというようなことを、私は今この五ヘクタール、十ヘクタールという数字を伺うにつけ、ますます深刻に思い悩まざるを得ません。一体、日本農業経営の主体、これはどのようにお考えになりますか。
  90. 森実孝郎

    森実政府委員 問題は二つあると思います。一つは家族経営と申しますか、個別経営を中心に考え見方と、それからもう一つは共同組織というものを中心にする見方と、二つあるだろうと思います。私どもの長期展望というのは、個別経営を中心にする見方に立っているわけでございます。  その考え方は、いろいろなアプローチの仕方がございますが、先ほど申し上げましたように、過去の生産費の動向等を見た場合の生産性格差という問題を頭に置いて、より少ない労働時間でよりコストの安い稲作なり酪農を実現していくという視点が一つと、それからもう一つは、中核農家への土地の集積が一つの見通しとして可能であるかどうかという現実的検証と、そういった二点から主として考えているというふうに御理解を賜りたいと思います。  協業的な組織、共同部な組織というのはいろいろな態様があるわけでございますが、これについては広い意味で我々は高能率生産組織として把握しているわけでございますが、いわば補完的な役割を果たすものとして評価するかあるいは中間的な形態のものとして評価するかということが主体になると思います。
  91. 日野市朗

    ○日野委員 今の局長のお答えによりますと、個別経営農家が中心だ。そうすると、内地の個別経営農家としては五ヘクタールくらいの面積が望ましいということでございましょうか。
  92. 森実孝郎

    森実政府委員 六十五年の長期見通しては、都府県では稲作地帯のものは五ヘクタール程度、北海道では十ヘクタール程度の経営規模考えております。
  93. 日野市朗

    ○日野委員 現在の個別農家の稲作の平均面積はどのくらいになっておりますか。一・二くらいになっておりますか。
  94. 森実孝郎

    森実政府委員 平均的な数字は、御指摘のとおり、大体近い数字でございます。  ただ、私ども出発点に考えました五十五年の数字は、いわゆる稲作主業の農家の専業的農家で高い農業所得を実現している農家ということを頭に置いて見たわけでございまして、その場合の出発点になる数字は三・四ヘクタール程度というものを頭に置いております。
  95. 日野市朗

    ○日野委員 農政審の議論では、いろいろな議論があったやに聞いております。特に経営規模拡大については、もっとラジカルな議論が非常に盛んに勢いを得て述べられたやに私なんかも仄聞しているわけですが、そういうもっとラジカルに規模拡大をすべきだという考え方、これに対して農水省、局長なんかどのようにお考えになっておられますか。
  96. 森実孝郎

    森実政府委員 作目によって事情が非常に違うのですが、稲作の場合を例にとった場合において、ラジカルな議論と申しますか、委員指摘のラジカルな議論の一つの例として、十五ヘクタール規模という議論が内地等についても相当あったことは事実でございます。私どもは、やはり規模拡大というのは農用地流動化の上に立って実現するものである、しかもそれは段階的に進められていかなければならない、現実に創設的にそういう経営をつくるわけではないという認識で、やはり段階的に達成可能な限度という視点でむしろ手がたく見たというのが、農政審の場所における非常に急進的と申しますか、ラジカルな御議論と役所側の議論の食い違いだろうと思います。  個人的な意見で言わしていただくならば、私は、やはり六十五年で中核農家で稲作主業農家規模としては、自分の自作地とそれから利用権を設定した土地、場合によっては一部作業受委託を受けている土地を含めて、平均的な中核農家規模としては五ヘクタールを考えるのが今でも現実的だと思っております。しかし、地域によっては十ヘクタールないし十五ヘクタールの経営は個別には十分生まれ得るし、また、そこでは相当高い生産性を上げることも事実であるというふうに考えておるわけでございます。
  97. 日野市朗

    ○日野委員 私、農水省の考え方というのは、さらに将来どのように考え方が動いていくかという問題は別にして、現在のところではまさに着実な一つ考え方ではあろうかというふうな評価をするのですよ。ただし、この法文からはそれが必ずしも正確には読み取れない。むしろこれは世論といいますか、この問題をめぐっての声の大きいものにどんどん引っ張られていってしまうというような感じがいたします。  ですから、現在農水省側で内地で五ヘクタール、北海道で十ヘクタールという考え方、これでこれからいろいろ指導していかれるつもりでありましょうけれども、もっと急速な規模拡大に踏み切るべきであるという意見も、これは現在もございますね。これに対する歯どめはどこにかかりますか。
  98. 森実孝郎

    森実政府委員 私ども、今御指摘がございました中核農家規模拡大の実現ということは、各種の法制予算措置等を通じて総合的にやってまいらなければなりませんし、また、はっきり申し上げますならば、一挙に目標に持っていくのじゃなくて、段階的にいく発想が要るだろうと思っております。  今回お願いしております農振法の改正では、市町村長さんが中心になって、村ぐるみで地域農業集団活動等を通じて、何かモデル的な個別経営をつくるのじゃなくて、村ぐるみで中核農家に利用を集積する、作業の受委託をするという体制をつくって、通勤兼業農家が安心してその持っておられる土地の利用提供を段階的にしていただくということに村ぐるみで取り組んでいただきたい、地域ぐるみで取り組んでいただきたい、また、それがためにそれにふさわしいような応援体制なり問題解決のための手法を整備しようということで考えているわけでございまして、実は先ほどから御議論を賜っております長期見通しの数字に計量的に直結して考えているわけではないということは御理解をいただきたいと思います。  そこで、一体歯どめがあるのかどうかという問題につきましては、私は今日の状況では歯どめを特に懸念する状況ではなくて、むしろ全体的にそれが加速される状況をつくることの方がまず先決ではないか。ただ、ここで、実は日野委員指摘の点にも触れるわけでございますが、どちらかというと従来非常に数少ない大規模経営をつくることに助成を集中し、あるいは行政運営を考えていたという面もあるわけですが、むしろこれからの構造政策はごく一握りの優等生をつくることではなくて、相当の数の人をレベルアップしていく、中核農家を平均して水準として高めていくということが必要なのじゃないか。それがトータルとして我が国土地利用型農業生産性向上にも役立つし、農業体質強化にも役立つという認識で取り組んでおるわけでございまして、その意味では、歯どめは考えておりませんが、こういう集団土地利用調整等を頭に置いた段階的規模拡大というのは、むしろ平均的な意味での中核農家のレベルアップに重点を置くべき時期に来たという認識で施策を進めているわけでございます。
  99. 日野市朗

    ○日野委員 今局長さんのお話を聞きまして、私も若干心を休ませているところがあるのですよ。というのは、きょうの午前中の論議でもちょっと聞かれましたけれども、一部の優等生、あれが日本農家の模範なのだと思われたら大変な話でございまして、そんなことには到底なり得るはずもない。しかし、それを裏づけるようなエコノミストの意見だと称するものは余り日本農村状況を知らないのではないか、そういう感じのするエコノミストの意見なるものが高く評価をされるというようなことが間々あるものでありますから、私、そういう方向に無理をして農業構造を変えていこうというようなことになったら大変だというふうに実は非常に危惧しているのです。  そこで、私、今局長さんがおっしゃったことについてはおおむね賛成であるということをも含めながら、ここでちょっと幾つかの点ではっきりさせておきたいことについてまず伺っておきたいと思います。  まず、この法律に言う規模拡大というものは、日本における本当の一握りというか、ごく少数の優等生というか、非常に企業性が勝った農業、それを目標にするものではないということはよくわかりました。それはそれで結構でございます。  ただ、私ここで専業農家兼業農家の問題について若干触れざるを得ないのでございます。もちろん、これは専業農家だけを中心に規模拡大考えていくというものではございませんね。そんなことはできるはずもないのだろうというふうに思いますが、いかがでしょう。
  100. 森実孝郎

    森実政府委員 やはり従来の伝統的な専業農家、第一種兼業農家、第二種兼業農家という分類だけで実質が判断できる時代ではだんだんなくなりつつあるという認識を、私は率直に言って持っております。と申しますのは、いわゆる専業農家というのは所得の高さに関係なくもっぱら農業に従事し、その所得の大部分を農業に依存しているということで、跡取りのない老齢化した専業農家というものもかなりあって、その分のリタイアという現実もあるわけでございます。それから、やはり農業にとって農業経営者の意欲なり技術水準が非常に問題になる世の中でございまして、昔のように跡取りが農業高校を出てすぐ就農するよりは、一回都市に就職して若い時期にUターンしてくる人の方がかえって積極的な意欲もあるし、その数の方がむしろ安定してきているという大数的な観察もございます。  そこで、やはり専業農家兼業農家という感じではなくて、男子の基幹労働力があって主として農業に従事している、そういう意欲を持った農家、これもあるいは概念が少し不明確だというおしかりを受けることもしぱしばございますが、これを我々中核農家と称しておりますが、そういう例えば男子基幹労働力が百五十日以上従事しているという抽象的な概念規定以外に、やはり農業自体に積極的な意欲を持った人、こういった農家を中心にして考えていくということで、従来のいわゆる専業、兼業の区分で物を考えるのはちょっと難しいのじゃないか、そういうふうに思っております。
  101. 日野市朗

    ○日野委員 中核農家についても概念が不明だというのは、私も同感であります。  この問題には後で触れることにして、専業農家といった場合も、老人夫婦がやっているような専業農家がございますね。これは、その方々がまさにリタイアされれば、土地は恐らく何か利用権を設定するなり、売るなり、こういうことは一応期待はできるわけでございますね。それから専業農家としては、先ほどから問題になった、日本では非常に少数の企業的な優等生専業農家、それもあるでありましょうし、そのほかに、耕作反別や何かがそれほど多くはないけれども、一生懸命農業で食っていこうという専業農家もあるわけでございますね。本当は我々一番注目をし、大事にしなければならないのは、今最後に挙げた専業農家であろうというふうに私は思っております。  ただ、ここでもう一つ兼業農家に対する評価、これは局長がおっしゃったこと、一兼、二兼という区別は今はちょっとどうかと思うよというお話だったと思うのですが、私も実際そう思うのですね。これは大体、一兼、二兼というのを、どっちに収入のウエートがかかるか、農外収入なのか農業収入なのかで区別するというのは、余り科学的根拠はないと私は思いますね。収入をどこでどうやって上げてくるかというのは、その個人の能力、才能、努力の問題であります。ですから、自分はそっちの方で仕事をして、そこから上がった金をさらに農業に資本投下したいんだよという農家はいっぱいいるわけであります。それから日本の場合は、一家族のうちの一人ぐらいが仕事に出ても兼業農家というレッテルを張られてしまう。それから、第二種と言われるところなんかも、第二種兼業だから農業経営に一生懸命でないなどということを言ったら、これは大間違いだ。第二種兼業にもいろいろあると思います。まさにこれは農家から見れば、惰農と言ってはちょっと言葉は悪いですけれども、惰農と言われる第二種兼業農家もいれば、そのほかのことでどんどん収入を上げるために、農外収入の方が多いという第二種兼業農家だってあるわけです。これをもっときめ細かく一応見ていく必要があるのではないかというふうに思います。  これから、この第一種、第二種という兼業のレッテル張りは少し控えた方がいいのではないか。こういうことを発想の原点に置いてこれから物事を考えていったら大きな間違いになるだろうというふうに私は思うのですが、いかがでしょうかね。
  102. 森実孝郎

    森実政府委員 私自身の思っておりますことと農林省の公式統計で処理しておりますことが必ずしも一致する場合ばかりではございませんが、だんだん私ども全体が、組織全体がそういう気持ちになっていることは事実でございます。やはり労働に従事する長さと、その継続性と、これに対する意欲という要素を頭に置いて分析していかなければならない。それで、特に第一種兼業農家と第二種兼業農家の境目というのは、一般景気の動向で統計上非常に動いてきたりする側面があるわけでございまして、統計上の処理というのはどうしても一つの約束でやらないと統計処理ができませんから、それはそれなりに一つの約束で考えなければなりませんけれども、統計処理やその分析に当たっても、ただいま御指摘の点を十分頭に置いていろいろ調査に当たるよう、私どもの部局はもちろん、省全体にも私から伝えてまいりたいと思います。また同時に、具体的な施策については、中核農家というむしろ生きた概念を、労働力の配分と意欲というものに着目して、そこに業務の集積を図っていくことが重要ではないだろうかと思っております。  実は非常におもしろい数字がございまして、今利用権の設定が集中しているのは全部一ヘクタール以上の階層でございますが、まだ今の段階は三ヘクタール以上の階層が必ずしもそう大きくはないのです。一からニヘクタールの階層で中核農家と言われる人の利用権の設定を求めている動きがかなり大きいのです。この方々は、アンケート調査なんかをやりますと、自分たちも中核農家と思っているし、それが八割を占めているという形になっているわけです。ここら辺は、具体的なインパクトがどうであるかということによるのだと思います。例えば、連作障害を野菜作農家が回避するためにどうしても規模拡大をやらなければならぬとか、あるいはまた西日本の畜産経営等では、どうしても飼料作物をとにかくできるだけつくりたいということで、低利用地利用権を設定する。しかし、それは決して理想的なところまではいかないけども、今までの購入飼料オンリーよりははるかに改善されている。そういう過渡的な段階も重視していかなければならないと思います。  御指摘の点をいろいろな角度で頭に置きまして、これからの調査、分析に当たると同時に、施策の実施に努めたいと思います。
  103. 日野市朗

    ○日野委員 もう一つ中核農家という概念でございますね、これについても私は非常に不満があるのですよ。男子の中核的な働き手がいるから中核農家であって、これは伸ばしていこうということをよく言われるわけですけれども、女子だってちゃんと働く人は働くわけでございますしね。それから、やはり農家経営は家族がみんな一緒になってやるものでございまして、そういうところもちゃんと見ておかないと間違うという感じがするのですが、いかがでしょう。
  104. 森実孝郎

    森実政府委員 これはなかなか実は難しい問題でございまして、御主人が農業にほとんど従事しないで奥さんが中核農家として育っている例がどれだけあるだろうかという現実の分析にも触れてくるわけでございます。また逆に、御主人と奥さんがお互いに補完し合って、所得自体は何とかインカムコンプレックスの上に立っておられますけれども農業自体を熱心にやっておられるという形がありまして、そういう面から言うと、日野委員指摘のように女性労働の重さというものもとらえていかなければならないと思います。  いわば概念がひとり歩きするところに恐ろしさがあるわけでございますが、いろいろの調査をしたり分析するときの約束といたしまして決めている問題で、もとより絶対的なものではございませんが、ただいま御指摘がありました点も、現実に即したようにこれからの調査、解析が行われることは私も必要だと思います。少し時間をいただきまして、その点は勉強させていただきたいと思います。
  105. 日野市朗

    ○日野委員 概念の話ばかりやっていて、肝心のところに入らないで終わっちゃつまりませんから、別の議論を進めますけれども、現在の経営規模拡大という実績、これをどうごらんになっておられますか。進んだという見方もできるだろうし、進まないという見方もできるだろうと思う点ですが、これはどのようにごらんになっているか。
  106. 森実孝郎

    森実政府委員 一言で申し上げますと、私は、進みつつあるがまだ十分ではないという認識を持っております。  その理由を申し上げますと、計量的に申せば、農用地利用増進法制定以来、利用権の設定が約十三万三千ヘクタール行われております。それから水稲作を中心にした作業の全面受委託が約六万五千ヘクタールあって、全体で二十万ヘクタールあります。それからもう一つは、それがどういう階層からどういう階層に移動して行われているかを調べてみますと、七八%はいわゆる中核農家が借りております。逆に、七割ぐらいのものは一ヘクタール以下の階層から利用提供されております。その限りにおいては、私、かなり進んできたという認識を持っております。  しかし、内容的に解析してみますと、先ほども申し上げましたように、利用権を何とか設定して規模拡大をしたいという焦眉の急に迫られている中核農家中心のために、必ずしも三ヘクタール以上の階層のところまでは大きく来てない。まだ一、ニヘクタールの階層での利用権の設定がかなりある。それからもう一つは、従来のいわゆるやみ小作が追認された形での利用権の設定も、その中には三割とか三分の一程度ある。これはいろいろ推計があるので私もわからない点がありますが、見ざるを得ないという実態がある。そういう意味では、まだ不十分だと思います。ただ、私は、根が楽観論者のせいなのかもしれませんけれども、この種の農地流動化というのは全国的な規模でみんなが異和感がなくなって動き出すとき、やはりおのずから加速がついてくると思っておりまして、必ずしも将来に対して悲観的には考えておりません。問題は、これをどう広がりを持って加速させるか、その努力が大事だろうと思っております。
  107. 日野市朗

    ○日野委員 今度は私の方の考え方をちょっと言わせていただきますが、実は私はそれほど楽観的にはなれないのです。日本農家戸数というのを戦前からずっと調べてみますと、実は余り動かないのですね。これは戦後で見ますと、食糧難の時代に一番ふえて高度経済成長を迎える、そしてこれからはもう農家、特に兼業農家は激減するだろうという予測をみんな立てたわけであります。しかし、農家は減ったでしょうか。確かに減りつつあります。しかし、その当時予想されたような減り方ではない。いいですよ。私は今ここで数字を伺おうとは思いません。そういう農家の減りぐあいというのは、決して顕著には進まなかった。一進一退を続けながら、緩やかに減ってきたわけでございます。  最近になってこの減りぐあいが、農林白書なんかを見ますとどうも思わしくない。思わしくないという表現を使ってはいけませんけれども、農林省あたりが期待するような減り方にはなっておりませんですね。特にここで注目しなければならないのは、第二種兼業農家はふえております。かなり急速にふえていると言っていいのではないかと思いますね。私は、第二種兼業農家がふえているということでまゆをひそのるつもりは全然ないのです。日本農業構造の中で第二種兼業農家というのは七五%の土地を保有して、それなりの生産力を持って日本農業構造の中に携わってきている。それだけの役割を果たしているわけですね。そうすると、こうやって若干農家は減ってはきたけれども、今度は第二種兼業がどんどんふえてきている。今までだったら第二種兼業農家の中の小規模な人たちとかなんかが出し手になって、受け手の方に土地を集積し得たという状況がありましたけれども、これからはその見通しというのはかなり暗いものになってくるのではないかというような感じがするのですが、いかがでしょうか。
  108. 森実孝郎

    森実政府委員 ただいま御指摘の点でございますが、御案内のように昭和三十五年の総農家戸数六百五万戸が昭和五十八年では四百五十二万戸まで減ってきていることは事実でございます。しかし、逆に第二種兼業農家はふえまして、専業農家と第一種兼業農家が減少してきたということは事実でございます。  私ども農林水産省といたしましては、農家戸数全体が減るということに農政の大きな展開の契機を求めていることはございません。農家戸数自体が減ることに新しい農政の展開の基盤があるとは思っておりません。大事なことは、やはり先ほどから議論が出ております中核農家が合理的な戸数を確保できるかどうか、その人たちの水準なり能力が十分高いものであり得るかどうか、またその人たちが耕作する面積というものが、あるいは生産する産物というものが我が国農業生産の中で支配的たり得るかどうかという視点から構造政策を進めなければならないだろうと思っております。  ただ、私ども最近の動きを見ておりますと、実は老齢化して跡取りのない農家というものがかなり出てきておることは事実でございます。それからもう一つは、稲作や酪農等土地利用型農業において、規模の格差と申しますか、コストの格差というものが農家自体にかなり明確に受け取られてきている。それから三番目に農業を不愉快労働と考えないで愉快労働と考えながら、それを自分の生業とは考えない、むしろホビーなり何なりとする考え方というものも価値観の多様化、豊かな社会の中で生まれつつあるわけでございます。そういう意味におきましては、いわば、この言葉は語弊もありますが、いわゆる第二種兼業農家を中心にした土地所有というものはそう大きく変わらないが、その利用に関しては中核農家に広範に利用提供が行われる、その機運ははっきり生まれてきたし、それは増幅していけるのではないかという意味で申し上げているわけでございます。
  109. 日野市朗

    ○日野委員 私も、概念の問題は別にして、中核農家に伸びていただきたいものだというふうに思いますが、現実を見ると、専業農家、それから第一種兼業がかなり減ってきておるわけでございますね。伸びているのは第二種兼業です。こういう趨勢は実は日本一国だけのものではございません。外国においても兼業農家の伸びというものは非常に強い数字を示しているわけですね。私はびっくりしたのですが、アメリカのようなところでさえも兼業農家がどんどんふえている。ECにおいてもしかりであります。こういう兼業農家の動向を見ると、時代の移り変わりに従って、少し大きく言えば、歴史の移り変わりに従ってこういう兼業農家というものがしつかりした地位を農業の構造の中に占めてきているのではないかというふうに思います。  そういうことを見てみますと、これからの農村構造政策に取り組むに当たって、第二種兼業農家というのは今まであたかも諸悪の根源のように言ったことすらあるわけですね。随分ぼろくそに言われたりもしたものですが、それにもかかわらず第二種兼業はこうやって伸びてきている。そういうものをきちんと構造政策の中に取り込まなければどうにもしようがないのではないかというふうに私は思うのですが、いかがですか。
  110. 森実孝郎

    森実政府委員 ただいま日野委員指摘のように、ある意味では兼業農家日本だけではなくて外国でもふえてきているというのは事実でございます。その場合、非常に注目すべきことは、農地の所有なり地代の水準の問題とのかかわり合いがかなり出てきていることは事実でございます。はっきり申し上げるならば、世界じゅうどこへ行っても、いわゆる交換価値に平均利子率を掛けた地代を保障できる農業というのはもはや実現できなくなってきている。逆に言うと、土地農地といえども独立した交換価値で、日本だけではなくて外国も値上がりしてきている事実は、今日の資源と人間との関係から見れば避けられないことだろうと思います。  そういう中でどういう対応が出てきているかということを申し上げますと、日本の場合に似ている例がたくさんあるわけでございまして、一つは、農地所有者であるけれども、自分は生きがい論として農業一定の部分でやっている、あとは請負に出したりあるいは利用権を設定している方。それからもう一つは、高年齢層の方がある程度ほかの産業活動からはリタイアされるけれども農業を、端的な言い方をしますと農業プラス年金で生活を営んでおられる方。こういう形がかなりヨーロッパ社会でもアメリカの社会でも生まれてきていることは事実だろうと思います。その点は日野委員の御指摘のとおりだろうと思います。  これからの第二種兼業農家のあり方というものは、むしろ端的な言葉で言いますと、八反歩持っている土地を全部利用提供してくれということを求めるべきではない。三反歩なり五反歩は利用提供してくれ、残った土地農村定住する人として、それが産業としてそろばんが合うかどうかは別として、農業生産参加してもらいたい、あるいはほかの人の農業生産を手助けしてもらいたいということ。この地域農業集団活動に当たっても、特に留意すべき事項として指導している点はそういう点にあるわけでございます。  やはりこれからの第二種兼業農家はどういう社会経済的基盤の上に立った方であるかということを、時代の変化をにらみながら十分見据えまして、その方々が農村の社会において定住できる条件考えていくということが非常に大事ではないだろうか。一部農業生産に従事するということを相当積極的に評価していい、このように思っているわけでございます。今回審議をお願いしております法案もそういった発想を一つの判断の基準にしていることは事実であるということは、この際に申し述べさせていただきたいと思うわけでございます。
  111. 日野市朗

    ○日野委員 日本の場合、第二種兼業ですね。それから世界的に見れば、世界的にもやはり第二種兼業というのは伸びています。特に欧米あたりではいわゆるルーラルライフですね、田園生活に対するあこがれというようなものが非常に強いということなども指摘されています。そういったホビー的なあり方もありますけれども、やはり片方に、安心できるための一つの自分の生活の核として農業というものを据えておくという経済原則から来るものが非常に強く作用しているだろうと思います。日本でも、私はそれは言えるだろうと思います。特に日本の場合は、社会保障制度も未発達な部分が非常に多いし、これは安心できない、自分は農業に帰れるところを残しておこう、そういった経済的な発想からも非常に大きなインパクトを受けているわけです。  私、今こういうことを申し上げる前に、第二種兼業の定義とか概念というものについてちょっとうるさいくらいお話をしたのは、これからのこの法案における兼業の位置というものをちゃんとしなければならないというふうに考えるからこそ、私、このことを少し概念について面倒くさく話をしたわけなんです。これから農業振興地域整備基本方針を作成する、それから市町村において農業振興地域整備計画を作成する、このような際に、あなたは第二種兼業なんだから土地の出し手になりなさい、こういう言い方というのは私はすべきではないと思うのですよ。私の話していること、おわかりいただけると思うのですが。しかし、ややもすればそういう方向に動いていくのではなかろうかというふうに思います。そして、特に今度は協定制度強化される、協定が結ばれるということになります。そうすると、そういう圧力が非常に強く作用するのではないかということを私非常に心配をいたします。いかがでしょう。
  112. 森実孝郎

    森実政府委員 ただいまの日野委員の御指摘なり御指摘の表現というのは、私もよく理解できます。要するに、第二種兼業農家の皆さんが安定した所得機会を持てる、その結果として今までの八反歩や一町歩の経営は、自分でやるよりもかなりの部分は中核農家の人に貸した方がいいというふうに自分で判断されるということが大事でしょうし、あるいはまたリタイアされた老齢者の方が自分の命までの経営面積を縮小して、自分が別に生きがいを見つけていく。労働の質の問題もあるでしょうし、採算の問題もあるでしょう。そういう帰結として出てくる条件をつくり出すことが必要だということです。  私ども、実は昨年、地域農業集団の育成という形で集団土地利用調整を組織的に進める場合、やはり地権者話し合いで出し手を確保していくということが非常に重要であるという認識に至ったわけでございますが、それを出し手の確保という視点だけで問題をとらえることは、やはり政策なり行政のあり方として片手落ちなんじゃないだろうか。むしろそういった第二種兼業農家中核農家を含めた農家間の連帯を確保していく、場合によっては非農家農家の連帯を確保していく。そういう村づくりに取り組んで、その中でお互いに参加感覚を持ちながら構造政策も進めていく、こういうことがどうしても必要なんじゃないだろうかというふうな判断を持ったわけでございます。  そういう意味におきましては、実は今回の法律改正でいろんな問題を取り上げておりますが、やはり安定就業機会確保という形では、いわゆる出稼ぎ、日雇い解消して、安定した通勤兼業農家になっていただくための地場産業の育成なり企業誘致を図っていく。あるいは、年配の方がむしろ生きがいを持ってその地域に住めるような新しい地場産業、観光資源を活用したり農産資源を活用したり、地場産業を育成していく、それに参加していただく、そういう意味での就業機会確保を図っていくということに取り組もうじゃないか。あるいはまた、居住者すべてに共通な生活環境整備を一体的に考えていこうじゃないか。  さらに、協定制度も実はそういうものではございませんで、むしろ農業用施設配置の問題とかあるいは自分たちの共益施設である集会施設だとか用水路の管理の問題等について、農業者という限定ではなくて、前者については地権者が、後者については利用者が、専業農家兼業農家という境を超えて、あるいは農家、非農家という境を超えて参加していただいて、具体的な問題をいわゆる地域社会の連帯の中に話し合いをしていただこう、こういう意味制度化を図っているわけでございまして、決してそういうふうな形で考えているわけではないことはひとつ御高察を賜りたいと思うわけでございます。
  113. 日野市朗

    ○日野委員 どうも聞きたいことの三分の一も聞かないうちに時間が来てしまったのですが、私はここで、私の意見としてぜひとも聞いておいていただきたいことがあるのです。  部落というのは本当に今までの生産の基盤であって、そこからいろんな部落における一つの取り決めがあり、そこで共通の意識が生まれ、いわゆる村構造という、経済的な物差してははかり切れないものが生まれてきたのですね。それにこの農振法、私あえて苦言じみたことを言えば、本当は言うなればゲマインシャフトリツヒなものであったわけですよ。そこに法律を振りかざして一歩踏み込んできたような感じがしてならないのです。そこいらが違和感なく部落の意識の中でこういった協定や何かというものは受け入れられるだろうかということを考えてみますと、私は非常に大きな危惧を残さざるを得ないというふうに思います。そういう今までの部落構造、村構造の中に培われてきた意識というものは、いいところもある、悪いところもあります。しかし、それに法律を振りかざして入り込むべきものであろうかというと、私はかなり大きな疑問符を打たざるを得ないわけですね。そういうことを十分に認識をしながら、私がこういうようなことを言っていたということを認識しながら今後の運営をやっていただきたいものだと思います。  どうも三分の一も聞かないうちに時間が来てしまいましたので、また別の機会に、この問題は大きい問題でいろいろ議論しなければならない問題ですから、またいろいろ議論をしたいと思いますが、残念ながらもう時間でありますから、きょうのところは終わります。
  114. 阿部文男

    ○阿部委員長 新村源雄君。
  115. 新村源雄

    ○新村(源)委員 私は、今提案されております農振法あるいは土地改良法の一部改正に関連をしく農政上の諸問題を含めて質問をしていきたいと思います。  今回の農振法の一部改正内容は、主として農村地域内におけるいわゆる過密現象から派生をしてきた、そういう問題を解決していこうというように見られるわけです。そこで、今過密農村といいますか、そういうところに住んでおられる方々は、いわゆる専業農家であり、一種兼業であり、二種兼業である、こういうことになっているわけですね。さらにそのほかに、これから全く外れた、農業関係のない通勤者、こういう方々が住んでおられる。そこで主として問題になってくるのは、専業農家であれ、一種兼業、二種兼業であれ、これは農業という職業を通じてコミュニケーションを図れる場所が当然あるわけです。ところが、通勤者という方々は農業とは全く関係がない、ここに地域づくりといいますか、地域のいろいろな発展計画なりその他の問題についてそこが出てくる、こういうことになっていると思うのです。  こういうように思いをいたしてくるときに、新たに挙家移住をしてきた方々は――私は先般、富山県の私の生まれた村へ行きました。昔はこの村は百戸だった。ところが、今は三百戸にふくれたというのです。三百戸にふくれたということは、二百戸が農業関係のない通勤者である、こういうことが言えると思うのです。これは一つの例であって、いろいろなその地域地域実情によって違いますが、押しなべて言えることは、今の過密現象をつくってきたのは、経営ができなくなって農村から挙家離農をしてきてそこに住みついたというところに問題点が派生をしてきている。ということから考えますと、過去の農業政策なり林業政策が今の経済成長といいますか、経済の変転の過程についていけなかった、適切な対策が講じてこられなかった、こういうことが今日の現象を引き起こしているのではないかと考えるのですが、この点についてはどういうようにお考えになっていますか。
  116. 山村新治郎

    山村国務大臣 先生おっしゃいますとおり、過疎過密が進んで農村に悪影響を与えた。しかし、農家経済の所得というものを考えた場合には、高度経済成長の過程で勤労者のそれに比肩し得るような水準は持っておるわけでございます。しかし、それは農外所得を含めたものでございまして、農業面だけを見てみますと、西欧諸国と比肩し得るような労働生産性向上を実現してきたものの、経済成長が余り急速だったというようなことでテンポに追いつかなかったということで、特に土地の資産的保有傾向の拡大を背景に土地利用型農業部門の規模拡大が思うように進まない、そういうような実情にあることは事実でございます。  このような現実を踏まえて、生産性向上を基本とした地域における話し合いを基礎として、粘り強い生産構造政策推進を図って、産業として自立し得るようにやってまいりたいと思っております。こうした政策を通じまして、何とか農家経済の農業面における収入も向上させていきたいというぐあいに考えます。
  117. 新村源雄

    ○新村(源)委員 ただいまの大臣の御答弁に対しましては、後ほどまた関連をしてお伺いをしたいと思います。  そこで、一般的に言えることは、昔から優良な農地というのは都市周辺にあるわけです。ところが、こういうような現象が続いていきますと、優良な農地がどんどん少なくなっていく、そして農業を行う地帯というのは山ろくに向かって伸びていかなければいかぬということになっておるわけです。その反面、今大臣もちょっと言及されましたように、その地域農地所有者は、農地というのは本来は農業生産のためにあるべきものですけれども、そうではなくて資産的な価値、資産を保有するという考え方農地を保有されている。こういうところに農地の効率利用といいますか、農業生産のために農地が使われるという利用の面から非常に障害が出てきている、こういうように思えてならないのですが、この点についてはどうですか。
  118. 森実孝郎

    森実政府委員 まず第一の優良農地の壊廃と新しい農地の造成の動向でございますが、御存じのように、我が国産業的にあるいは通常の生活に利用できる国土面積というのは、林野を除けば約十一万平方キロでございます。この半分が農地になり、残った土地が住宅地になり工業用地になっているという実態がある。そこで、人口の増加と経済の発展の中で新しい都市的な需要が生じてきた場合、それを受けとめるとすれば、いわば農村の中で都市近郊のところから逐次壊廃が進むということは避けられない現実だろうと私は思います。反面、私どもやはり生産基盤としての農地を保全するために、中山間部あるいは里山等のいわゆる農用地造成を進めるという施策をとってきたことも事実でございます。  問題は、この体制の中で仕組みとして、また行政の運用としてどうやってトータルとして優良農地の保全確保を図っていくかということが重要な課題だろうと思っております。私ども農用地開発事業計画推進ということを、いろいろ議論がありながらも積極的に取り組んでいるのはまさにそこにあるわけでございますし、また農振法とか都計法等の土地利用調整という問題、農地法による転用規制という問題も、いわば土地利用、水利用のスプロールを防止し、集団的な優良農地確保する、そういう壊廃が進む場合でも優先順位をつけていくという発想に基づくところなわけでございます。私どもといたしましては、そういった外延的な確保と並びまして、さらにきめ細かい手が必要であろうと考えておりまして、そういう意味において、まず地域農業集団の活用等を通じて農用地の有効利用を進めていく問題、さらに今回の法改正を通じまして、協定制度の創設や交換分合換地処分の規定の拡充、そういったことを通じて、いわゆるスプロールの防止と里山等農業利用の推進を図ることにしているのもそういう点にあるわけでございます。  さて問題は、壊廃が進みつつある平場の、それも都市周辺の農地の資産的保有傾向の高まりでございます。先ほども申し上げましたように、我が国だけでなく世界的に見て、地代と交換価値の平均的利回りとの間にはかなり大きなギャップがあることは否めない地球的現実だろうとは思います。しかし、これが同時に、何といっても農業構造政策の阻害要因に働いていることは事実でございまして、そのことが今まで農地保護の厳しい規制もあって流動化を阻害していたことは事実でございます。しかし、農用地利用増進法の制定等を通じまして、そういったいわば法制度上のタブーについても、構造政策推進に必要なものについてはバイパスをつくることによって取り除いてきたわけでございますし、さらに最近では規模の格差という問題、跡取りのいない高齢農家の増加等の、流動化促進する積極的な誘因もあるわけでございまして、これに着目しながら、地域農業集団活動を通じて中核農家規模拡大を進めていきたいと思っております。  その場合、やはり都市近郊の場合は、何と申しましても、まさに委員指摘のように資産的保有傾向が高いだけに、直ちに利用権の設定に直結しないという点があることは、私、否みがたいだろうと思います。そういう意味においては、大型機械の共同利用で利用の面的集積を図るとか、あるいは作業受委託という過程を十分重視いたしまして流動化を進め、相互の信頼関係が生まれたところで逐次それが利用権の設定につながってくるという努力をする必要があるのではなかろうかと思っているわけでございます。
  119. 新村源雄

    ○新村(源)委員 これはなかなか大変な問題だと思いますが、しかし、やはり何といっても日本のような狭小な農地の中ではそれが積極的に農業生産に利用できる、こういう方向で諸般の施策を強力に進めてもらいたいと考えるわけです。  そこで、ちょっと資料を見せていただいておりますと、振興地域は面積で五百四十二万ヘクタールなんですね。いわゆる地域振興町村というのは、全市町村が三千二百五十五市町村に対して三千六十二。百九十三市町村がこの計画から抜けておるわけですね。そうしますと、この百九十三市町村の持っているそこは全く農業がないのか、あるいは農業があってもその地域指定を受けていないのか。この中にどのくらいの農地があって、その農地は今申し上げましたような資産的価値等、そういうものの最も高い地域ではないのかと思うのですが、この面積をちょっと知らせてもらいたいのです。
  120. 森実孝郎

    森実政府委員 指定を受けておりません市町村農地というのは、大体大都市並びに中都市が大部分でございます。その中で主要部分は、いわゆる都市計画法上の市街化区域に指定されている地域でございます。現在、市街化区域の中に約二十万ヘクタールの農地がございます。これ以外に、市街化区域に指定されていない部分でなお何万へクタールかの農地が含まれていると思います。
  121. 新村源雄

    ○新村(源)委員 そうすれば、今局長おっしゃいました二十万ヘクタール、あとちょっと聞き落としましたが、この分については今回のこの法律が及ばない、いわゆる農業振興地域としてはもう外れてしまって、市街化区域だからこの法律が及ばない地域だ、こういうことに理解しなければならないわけですか。
  122. 森実孝郎

    森実政府委員 都市計画制度のもとで市街化区域に指定されました地域、その中には農地だけでも約二十万ヘクタールございますが、これについては、今後十年間に市街化を図るべき地域としての性格づけが法律上行われているわけでございます。しかし、実態はまさに御指摘のように、そう一挙に農地が壊廃されて宅地になるわけのものではないことも事実でございます。  私ども、実は農業施策は二段構えで考えておりまして、いわゆる農振地域に対しては土地改良事業を初め基盤整備もやるし、総合的な助成事業を実施いたしますが、いわゆる農振地域以外の部分については、そういった制度の性格づけの一応枠内においても必要な事業は実施しております。例えば土地改良事業につきましても、点と点を結ぶ線の事業を含めることは認めておりますし、災害復旧や防災的な事業は認めております。それからまた、こういった地域は、農業生産の面からいいますと野菜とか花卉とか一部中小家畜の主要な産地になっております。そういう意味においては、野菜とか花卉に関する振興施策は講じておるところでございます。  そこで最後に、農振法の適用をどう考えるかでございますが、極めて形式的に申し上げるならば、実は農振法の適用はないわけでございます。しかし、土地の利用調査による規模拡大の問題であるとか、あるいはまた必要な生産振興の問題等は、それぞれの地域の持つ重要性に応じて個別に講じておりますし、これに準じた施策なり行政運営は今後とも必要に応じて考えていく必要があると思っております。
  123. 新村源雄

    ○新村(源)委員 そういたしますと、日本の現在の農地は、今市街化区域の中に含まれているものもありますけれども、将来的には五百四十二万ヘクタール、こういうことになるわけですね。
  124. 森実孝郎

    森実政府委員 長期見通しで五百五十万ヘクタールの農用地確保を前提としておりますのも、それが基礎となっております。
  125. 新村源雄

    ○新村(源)委員 今回の法律内容を見ておりまして、これは先ほど申し上げましたように、いわゆる過密農村といいますか、混住化の農村を対象にして法律改正が行われるものでございますが、冒頭に申し上げましたように、こういう状態を引き起こしてきたものは、もちろん日本の経済の高度化という大きなうねりの中でこうなってきたのでございます。しかし、何と言っても日本の国民食糧を供給していくという極めて重要な意義を持つ農業でございますから、やはりそういう時代であっても農業にいささかの影響も与えない、こういう政策が望ましいわけです。したがって、現在改正される法律以外に、先般この委員会で決定をいたしました林野三法によるいわゆる山村の安定発展、さらには過疎地帯の農業政策、いわゆる山振法とか、それらの法律を重厚に駆使しながら、農業の生産の発展にぜひとも遺漏のないようにやってもらわなければいかぬ、こういうように考えるのですが、この点について。
  126. 森実孝郎

    森実政府委員 御指摘のとおりだろうと思います。山村地域が過疎化の進行と林業の低迷の中で難しい局面にあることは事実でございますし、さきに御審議をいただきました林野三法によって、今後、森林資源の整備、国土の保全、水資源の涵養などの事業を高度に発揮するための運用に努めていく必要があると思います。特に林業地域の活性化と林業の担い手の確保、林業生産基盤の整備、木材産業の体制整備、木材需要の確保増大等は、やはり重要な施策考えております。しかし、もちろんこの林業施策だけではいけないわけでございまして、御指摘のように山村振興対策等を通じまして農林漁業の振興を図っていく、地場の観光資源や地場の産品を生かした地場産業の育成を進めていく、さらに生活環境整備を進める、こういった山村にふさわしい定住条件整備努力が要ると思っております。  また、一般の土地改良事業の中でも既に各般の優遇措置を講じておりますが、今後とも採択基準の緩和を通じて公共事業の的確な実施に努めると同時に、構造改善、農業農村整備事業等の総合助成施策も、これら過疎山村にも積極的に活用していく必要があると思います。さらに、今回の立法におきましては、こういった地域を頭に置いた場合、農業振興と林業の振興の関連を重視する必要があるという政策的視点に立ちまして、いわば農業と林業の補完協力関係を明らかにするという意味で、調整規定を計画事項に追加したわけでございます。  今後とも私どもの局、林野庁、農林省の中でお互いに協力すると同時に、関係省庁との連絡も密にいたしまして、活力ある山村社会の建設ということには総合的な努力を重ねてまいりたいと思っております。
  127. 新村源雄

    ○新村(源)委員 今日、都市農村との社会資本の投下というのは、農村が著しく立ちおくれておるわけですね。したがって、私が先ほど申し上げましたように、近隣の山村から都市周辺のいわゆる農業地帯に移転をしてくるということも、こういう山村地域あるいは過疎化地域に対する資本の投下、こういうものが極めて立ちおくれをしておる。したがって、農村生活環境整備あるいは交通機関、さらには文化施設、こういうものに対して積極的な取り組みをお願いしたい。  と同時に、きょうは運輸省に来てもらうようになっていますが、日本の非常に狭い国土の中に今一億一千万の人間が住んでいる。そして、ここで提起されているように、過疎と過密というものは、明らかに相反する両面の問題が起きてきている。したがって、これから国土の充実した発展を図るにはどうしても過疎地帯の対策というものを重点的に行っていかなければならない。特に農村都市との交流、これはいわゆる民族の心のふるさとと言いますが、こういう過疎対策というものを積極的に進めていかなければならないのに、残念ながら、今国家的な政策の基本を置いていかなければならぬところに国鉄のローカル線の廃止という問題が出ております。  それから、これは既に決定されましたが、運賃の格差の問題、国の総合的な発展から見ればまさに相反する、ブレーキをかけるような政策が行われようとしておるのですが、この点についてどう考えていますか。
  128. 岩田貞男

    ○岩田説明員 お答え申し上げます。  先生御案内のように、国有鉄道につきましては経営的に大変な危機に見舞われているわけでございます。そのような中で国鉄が運営しております地方交通線は、モータリゼーションの進展とかいろいろな理由がございますけれども、非常に輸送量が減少しておりまして、国鉄が努力をいたしましても既に鉄道特性が失われたという形で、国鉄の経営上赤字に占める割合が非常に大きくなっているし、かつ、大きな負担となっておるわけでございます。このような中で、私どもといたしましては、輸送量が激減して一定数量以下になりました線区につきましては、バスで賄えるということで廃止をしようという対策をとっておるわけでございます。  ただ、御理解賜りたいのは、これは廃止をしてしまうというわけではございませんで、地域実情や輸送量等に即した代替の輸送機関を整備することによって地域の交通を維持しようということでございますので、必ずしも過疎の足を引っ張るということにはならないものであると考えております。  それから、二点目に御指摘のありました地方交通線の特別運賃でございますけれども、国鉄の地方交通線については大変大きな負担となっておるわけでございまして、これにつきましては、それらの負担の軽減を少しでも図るという観点から、今回地域別運賃ということで法律あるいは監理委員会の緊急措置提言に基づきまして実施させていただいたわけでございまして、ひとつよろしく御理解をお願いしたいと思っております。
  129. 新村源雄

    ○新村(源)委員 国鉄の五十七年度の損失の内容を見てまいりますと、一兆三千七百七十八億円ということになっていますね。これは国鉄が発表しているものです。この内容を見ますと、幹線においては二千五百八十七億円、地方交通線あるいはバス路線において三千二百九十五億円、特定人件費において五千六百八十一億円、東北・上越新幹線において二千二百十五億円。こういうように見てまいりますと、過疎地と言われるところの地方交通線全部を含めても四分の一にも満たないわけですね。四分の一にも満たないのに、そういうところだけにしわ寄せをする。バスにかわるとおっしゃるけれども住民の意識というものはバスが走るからいいんだということにはならぬわけです。こういう点についてはどうなんですか。
  130. 岩田貞男

    ○岩田説明員 お答え申し上げます。  先生のおっしゃったように、五十七年度実績で一兆円を上回る国鉄の赤字でございます。こういった赤字をどう少なくするかということで、経営改善計画に基づきまして国鉄としてもあるいは役所としてもいろいろ努力をしておるわけでございます。  おっしゃるように、確かに幹線部分の赤字が大きいわけでございますけれども、その中で特定人件費、これは戦後の混乱期に職員を大量に採用しまして職員の構成にゆがみがあるということで、国鉄の努力によってもいかんともしがたいということで外して議論をしておるわけでございます。それを除きますと、幹線と地方交通線に分けるわけでございますけれども、地方交通線につきましては五十七年度実績で四千七十三億の赤字でございます。それは補助金が千二百五十億入っておりますから、五千億を上回る赤字でございます。一方、幹線もそれ以上の赤字でございますけれども、これにつきましては、所定の、六十年度を目標とする経営改善計画で、営業損益で収支均衡がとれるようにということで今努力中でございまして、かなり見通しも明るいというような状態でございます。  一方、国鉄の地方交通線につきましては、合理化あるいは要員の縮減とか、非常に努力をしているのでございますけれども、なかなか改善がしにくいということで、先ほど来申し上げておりますようにお客さんが非常に減っているところにつきましては地元の足の確保を配慮しつつバスへ転換をする、その他の地方交通線につきましても、国鉄の地方交通線の赤字の負担を軽減するという観点から割り増し運賃をいただいているということでございまして、ぜひともよろしく御理解をお願いしたいと思っております。
  131. 新村源雄

    ○新村(源)委員 理解をしてくれと言っても、これは断固理解ができる問題ではないわけです。国鉄サイドだけでこの問題を考えるというところにやはり問題点があるのであって、先ほど申し上げましたように、日本の国土全体が均衡のとれた、いわゆる生活環境整備なりあるいは文化施設充実なり道路交通網の整備、こういうものが総合的に行われていかなければならないのに、国鉄の収支の面だけからのローカル線の廃止という問題については断固容認しがたいのです。  特に住民の意識というものは、今は車に乗って通える、だけれども、――自分で車が運転できなくなったときにはやはり公共の機関に頼らなければならない、そうすれば、現在はいいけれども将来年をとったらどうなるんだという意識というのは、恐らく皆さんの意識の中にあると思うのです。そういうときに、国鉄も外される、あるいは運賃も高くなる。これでは、辺地におるということについてはどうしても不安を感ぜざるを得ないわけですね。ですから、こういう公的な交通機関というのはむしろ積極的にきちっと位置づけをしなければ、住民のその土地に対する定着といいますか、そういう意識をそういう面からも崩されていくのではないか、私はこういうように考えるのですが、もう一度御答弁いただきたい。
  132. 岩田貞男

    ○岩田説明員 お答え申し上げます。  今先生おっしゃったように、要するに国鉄がしっかりとして地域の足を確保しないと僻地においては大変なことになる、こういう御質問だと思いますけれども、実際、先ほど来申し上げておりますように、一方的に国鉄線を廃止してしまうわけではなくて、これにかわる輸送手段は整備をするということが前提の対策であるわけでございます。  具体的に申し上げますと、もう既に地元でいろいろな協議が始まっている一次選定路線につきましては、我々も参加しておりますけれども、いろいろ地元の皆様方が知恵を絞りましてある場所では今の国鉄線よりもより多いフリクエンシーのある地方鉄道への転換、あるいはバスにいたしましても今の国鉄よりもフリクエンシーの多い、あるいは停留所の多い、乗りやすいバス輸送体系を整備しまして、これによって国鉄のかわりをするというようなことになっております。具体的に申し上げますと、国鉄が運営主体でフリクエンシーが多いわけですからお客さんも多いし、あるいは停留所も画一的じゃなくて非常に地元の実情に合った形で設けているということでございまして、かなり見込みよりもお客さんの数が多いというところが例として見られます。     〔委員長退席、上草委員長代理着席〕  このように、私どもとしましては、具体的な転換を図るに当たりましても、地元の皆様方と地元の対策協議会におきましていろいろ知恵を出し合いまして、地域における最も望ましい、あるいは効率的な輸送手段を配備するということでやっておりますので、必ずしも過疎の、あるいは先生おっしゃいましたように僻地の方々が逆に御不便になるということにならないように知恵を出し合ってやっておりますので、その辺も御理解を賜りたいと思います。
  133. 新村源雄

    ○新村(源)委員 この問題につきましては、時間がございませんので、反対であるという意思表明をいたしておきます。  次に、これも先般本委員会において審議されました地力増進法に関連をして、農業振興上の問題点をお伺いしたいと思います。  古来、農業というのは、自然の循環の中で収穫がされたものについて新たなものが補てんをされて、いわゆる循環的な生産がなされてきておるわけです。そのために、地力維持のためには何といっても有機質肥料が絶対的に不可欠であるということは、今日においてもいささかも変わっていないわけですね。そこで、近年の化学肥料の発達によりましては、私は北海道の畑作地帯の現況をよく見ておるわけですが、前年度の収穫を維持していこうと思うと、今年度は大体一割ぐらい肥料を多くやらないと前年度の収穫が維持できない、こういうことで毎年毎年肥料代が増高してきているのが現況なんです。それはどうしてかというと、以前は農業には役畜というのがつきものであって、役畜から出るいわゆる有機質肥料が田畑に還元をされる、そういうことで農業生産が循環的に行われておったわけですが、役畜が機械化によってなくなってきた。そこで無畜農家ができ、さらに畜産と耕種と明らかに専業化をしてきたわけですね。  しかし、その後においても、近年の動向を見てまいりますと、これは主として肉牛の飼育頭数を調べてみたものですが、飼育戸数が昭和五十一年度以降大体毎年二万戸規模で減少をしてきておるわけです。しかし、反面、飼育頭数においては増大をしてきております。しかし、これは先ほど言ったように専業的な方向に志向しておるので、飼えるところにはうんと飼っているけれども、いないところにはだんだんいなくなってきている、こういう状態が起きてきておる。こういうことで本当に有機的な農業というのは経営できるのかどうなのか。昔は、耕種農業でもって不足をする所得はいわゆる畜産で補てんをしていく、あるいは冬季間の余剰労働力はそこに利用する、こういう健全な農業のスタイルであったのですが、今日ではこういう状態になっているのです。この点について、現在の農業情勢から見て将来の展望を含めた御答弁をいただきたい。
  134. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 御指摘ございましたように、五十一年あたりから五十八年にかけての流れを見ますと、戸数では毎年二万戸ぐらい肉用牛生産農家が減っておりますが、牛の数は、肉用牛でいいますと五十一年が百九十一万頭ぐらいで、五十八年になりますと二百四十九万頭とかなりふえているわけでございます。御指摘の減ってまいりましたものは、どちらかといいますと肉用牛生産でも一、二頭飼いの方々。これはもちろん他の耕種と一緒にやられておるわけでございますが、一、二頭ということでございますと、それは畜産経営としてはなかなか思わしくないわけでございまして、これらの牛が三、四頭階層あるいは五頭以上階層に移りまして、戸当たりの飼養頭数としましては、五十一年が四・二頭平均でございましたのが七・六頭まで上がってきたわけでございます。  したがいまして、問題は、牛の数自身は逆にふえているわけでございますが、これがうまく耕種農家と結びついて土地に還元されるということが必要かと思います。私ども、大家畜以外の中小家畜等も調べておりますが、いずれも九十数%の高い率で土地還元がなされているわけでございます。これが地域的な偏りとか、そういうことがあるといろいろ問題がございますが、野菜生産地帯とか畑作地帯のように、どうしてもこういう家畜の排せつ物を土地に戻すことが耕種農業の面から必要なところにつきましては、私どもそういう地域としての複合ということを進めております。今御指摘がありましたように、これは畜産経営の上からも、いわばそういうふん尿処理ということからも非常に必要でございますし、耕種農業の面から見ても望ましいことでございますので、こういう傾向がさらに助長されるように今後も考えていくつもりでございます。
  135. 新村源雄

    ○新村(源)委員 今畜産局長おっしゃいましたように、最近ようやく、地域で畑作農家と酪農家話し合いによって、敷きわらを供給するから堆肥を還元してくれ、こういう機運が徐々に出かかっておるわけです。したがって、これは振興地域市町村等できめ細かくそういうことを進めていかれると思うのです。しかし、制度の上でも農林省がそういうことを積極的に推進できるように、そういう方途を考えていっていただきたい。  それと、今度は農振法の中でいわゆる圃場の整備あるいは交換分合等の機会に、畜舎だとか堆肥場だとか、こういうものをいわゆる公益的な施設ということでどこかに集めるのだ、そういう用地確保するのだ、こういうようにおっしゃっておりますね。その内容についてちょっと……。
  136. 森実孝郎

    森実政府委員 畜舎や堆厩肥舎等のいわゆる農業施設用地につきましては、五十年の農振法の改正の際に農用地区域として設定することはできております。それで長期的な農業上の利用の確保ということを図る基本的な筋道をつくったわけでございます。農用地区域を設定する場合につきましては、その土地の位置とか地形とか自然条件、それから地域生活環境確保等に配慮して、農業者の意見を十分聞いて定めるように運営しているところでございます。  これはしかし入れ物の話でございまして、どう運用するかということは、先ほども畜産局長からお答え申し上げましたように、耕種農家と畜産農家との社会的連携をどうとっていくかということがございます。今回の農振法の改正で実は農業用施設配置に関する協定制度導入しましたし、また、その中では畜舎や堆厩肥舎も頭に置いておりますが、これはいわば地域社会において畜産農家と耕種農家との連携強化するというふうなことを考えた場合においてその合理的な配置というふうなことを地域社会全体で考えてほしい、その受け入れのための仕組みとして準備したものでございます。  基本は、何と申しましても、できればその地域内において、地域内において困難な場合においては広域においても、いわば家畜のふん尿等の物流条件整備いたしまして、堆厩肥舎を通じてそれが地力収奪的な傾向の出ている農地に還元されるような仕組みをそれぞれの耕種と畜産の特徴に応じてつくっていくことだろうと思っております。
  137. 新村源雄

    ○新村(源)委員 まだまだ意見はありますけれども、時間の関係で先に進みますが、我が国農業を、特に高度成長経済以降の推移を見ておりますと、農業の内部から問題が出てくるのではなくて、いわゆる外部から、日本の経済の全体的な流れから農業にいろいろな提言なり、そしていろいろな大きな影響を与えてきておるわけです。そのことによって日本農業というのは総体的に縮小生産の方向に押し込まれてきている、こう断ぜざるを得ないと思うわけです。  近年の例なんかとってみましても、これは石川畜産局長さんの時代ではないですが、昭和五十五年当時、乳製品が外国の主として疑似乳製品の輸入によって、振興事業団もかなり買い込んだのではありますけれども、国内的には過剰在庫があるということで乳価ももう四年も五年も据え置かれる、おまけに米と同じように生産調整される。そのことによって農業が非常に大きな痛手を受けておるわけです。さらにまた、この前大臣御苦労されたアメリカとの牛肉、オレンジの協定についても、農林省の長期計画から見ますと、私どもの見た中では年間に大体四千トンないし五千トンより輸入枠が増大しないという試算があるわけですね。そういう中で六千九百トン決められたわけですから、これはあのとおり国内で需要と生産が行われたならばあの分だけ余ってくる、こういう計算にならざるを得ないわけです。  したがって、外国の農畜産物に日本農業がいつでも押しつぶされてきておる。何とかこの対策を講じておかなければ日本の農民が安心して農業経営ができない、そういうように過去の歴史が物語っておるわけです。  そこで、大臣、今年度の予算の突出した中で、防衛費と外国の経済援助費、この内容を見ますと、対外経済協力資金で贈与が七千三百二十七億円、借款が六千八百二十八億円。借款はさておくとして、贈与の分でその内容を見ますと、経済開発援助として一千六十五億円、食糧増産援助として五百三十億円、こういうように具体的な金額が載っておるわけですよ。したがって、国内でそういう余剰農産物が出てきた、そして日本の国内に平常在庫以上のものがかなり、一年二年にわたって続くなと思うときに、この対外経済協力資金の中にその分を外国に贈与する、こういう政策をぜひとってもらいたいと思うのですが、それはどうですか。
  138. 山村新治郎

    山村国務大臣 先生おっしゃいましたように、今の我が国農業を取り巻く諸情勢、まことに厳しいものがございます。農産物の需給の緩和、そしてまた諸外国からは農産物市場開放要求、また行財政改革に伴う農業の効率的な推進等、いろいろございます。  そこで、いろいろな余ってきたものを外国へという先生のお話でございますが、農林水産省とすれば、これは一番効率的でいいわけでございます。ただ、一つございますのは、せんだっての米を諸外国へ援助という場合でも、例えばタイからは強烈な抗議が来る。結局、お得意さんが減ってしまうわけでございます。そんなようなぐあいで、恐らく牛肉そのほかの問題についてもいろいろな問題はあろうかと思いますが、我々として先生今おっしゃいましたことを勉強させていただいて、できるものはそういうぐあいに、これはいろいろ相手国もあることでございますし、輸出国もあることでございますので、ひとつ勉強させていただきたいと思います。
  139. 新村源雄

    ○新村(源)委員 大臣、勉強させてもらいたいということですが、本当にそういうことでなければ、日本農業というのは、その間農民に減産とかそういうことを押しつけていくわけですよ。農民というのは、生産をする、そして去年よりことしがさらに増産できたというところに生産の喜びというものがあるのですよ。それがむしろ生産したくても前年の実績以上はだめだ、こういうように言われたら農業者が農業そのものに希望を抱かなくなってくる。こういう日本農政全体の極めて重大な問題でございますので、大臣、農林省総がかりになってもらってぜひこういう道を開いてもらいたい、そして日本農業の活路を開いてもらいたい。アメリカと日本ということになりますと、工業製品なりいろいろなものが兼ね合いになってなかなか難しいと思いますが、援助をするということについては努力次第によっては必ず道が開ける、私はこういうように思いますので、大臣初め農林省の皆さんの特段の御努力をお願いしておきます。
  140. 山村新治郎

    山村国務大臣 前向きに検討してまいります。
  141. 新村源雄

    ○新村(源)委員 次に土地改良の問題でお伺いしたいのですが、実は北海道の去年の冷災害の影響の中に、もう既に土地改良をやったのだけれども、ああいう異常な雨が降ったために排水が悪くて、私もそういう実情をずっと調査して回ったのですが、土地改良の成果というのははっきり出てきておるわけですけれども、そういうことで、今、道でもいわゆる土地改良を行ったところの水の流れを全部総点検しよう、こういう運動を起こそうとしておるわけです。  そこで、一つお伺いしたいのは、今度の農振法の中ではこういう排水等をみんなでどうやって協力をして保っていくかということがありますが、北海道の場合は一戸当たりの面積が大きいので、そういう明渠排水等についても、数百メートルあるいは長いのは一キロにわたって土地改良をやった後の明渠があるわけですね。こういうのは、農家が一戸か二戸ですから、わずかであればやれるのですが、土砂崩れや何かで埋まった場合に個人じゃとてもやれないわけです。そういう問題が一つあるのですが、これについてどういう対策がありますか。
  142. 森実孝郎

    森実政府委員 北海道におきます土地改良事業につきましては、歴史的経過と地形の特徴から、ただいま委員指摘のように、例えば直轄明渠に代表されるような特別な事業も実施しておりますし、また、補助率等についても内地と明確な格差をつけて運営しておるわけでございます。  問題は、どうやって水田の排水状態をさらに追加的に改良していくか、あるいは小災害等が起きた場合においてそれにどういうふうに対応していくかという問題だろうと思います。  一般的には県営、道営とか団体営のため池整備事業による追加的な排水施設整備等を適用することも可能でございますし、また道営、団体営のかんがい排水事業によって処理することも可能でございますし、さらに昭和五十四年度から創設されました小規模排水対策におきましても、五ヘクタール以上の受益面積を対象にする場合には追加投資の道を開き、本年度からはその二期対策にも着手しているところでございます。  こういった事業の実施につきましては、事業完了後は土地改良区が管理しておりますし、また、これとの関連において一定の負担区分が設けられていることは事実でございますが、これにつきましてはそれぞれの事業の種類に応じて国庫補助率も決まっており、また自治体の負担区分も極めて優遇された形で決めておる現実にありますので、そのこと自体が特に支障になるとは思っておりません。ただ、小規模事業の問題をどう考えるかという御指摘があります。これにつきましては、いわゆる非補助の土地改良資金がございまして、金利三・五%、二十五年という最も優遇した条件がございますので、これを積極的に活用していただきたいと思うわけでございます。  なお、災害に関連して起きましたものにつきましては災害復旧事業処理いたしますが、小災害につきましては、市町村で実施する場合については起債の特例あるいは元利償還金の特例もございますし、さらに、個人で実施するものについては、これは公庫資金も適用されますので、その御活用を願う必要があると思います。  いろいろ御不満な点もあろうかと思いますが、比較的整備された制度を持っておりますので、具体的な事情に応じて弾力的な運用を図れるよう、御要望に応じて対処してまいりたいと思います。
  143. 新村源雄

    ○新村(源)委員 先ほども申し上げましたように、長い何百メートルという明渠があるわけです。いつもそこが水が流れておるわけじゃないですね。他の比較的雨の降らないときというのは、それは渇いているわけですから、そこに土がたまって、いざ必要なときにそれが十分働きがしなかった、こういうことがあるわけですよ。  ですから、そういうものについては、何百メートル以上とかいうものは、例えば土地改良区なりあるいはこれにかわる市町村なり農協なりが個人の申し出があればそういうものについて補修をしていく、こういうような制度ができないものですか。
  144. 森実孝郎

    森実政府委員 直轄明渠事業は、歴史的沿革や事業の性格から申しますと河川工事に準じた性格を持っておると思います。自治体がどう対応していただくかということが基本だろうと思います。  土地改良施設という点から申しますと、これはやはり受益者である農家申し出によってどう土地改良区が対応していただくかという問題だと思います。恐らく機動的な運営が図れないというのは、特に直轄明渠につきましては地盤の関係や地形の関係からいって実はかなり変化が激しいものでございますから、その都度なかなか後追いができないという現実があるということもあると思いますし、また、市町村や道の財政力との関係等から来る制約等もあると思いますが、具体的な問題といたしましてはそのいずれかの方法で処理できるわけでございますので、具体的なお話はまた別に伺わせていただきたいと思います。
  145. 新村源雄

    ○新村(源)委員 最後にもう一点。  実は北海道の酪農家等は施設資金が非常に大きい。先ほど日野委員の方からも提言がありましたが、自分でどんどん投資をやってきた、しかしいよいよここで息子に譲るときに借金がこれだけあるんだということで、そういうことを考えるとどうしても投資をためらうと言うのですね。そこで経営移譲資金、これは申し出があった場合には、例えばおやじさんのなにを息子が、先ほど日野委員がおっしゃったように、二分、五十年ぐらいの資金で経営を買い取る、おやじさんはそれで全部借金を払ってしまう、その中で残ったものがあればいわゆる老後の生活資金にしていきたい、こういう経営移譲資金というものの制度をぜひつくってくれ、こういう要望があるのですが、こういう点についてどうですか。
  146. 森実孝郎

    森実政府委員 北海道の大規模酪農につきましては、戦後約四十年の間に急速に創設された実態があります。特に最近この十年間ぐらいに大規模に投資されてつくられた畜産基地につきましては、完成後における乳価の低迷とかあるいは生産調整の事情もあって、それぞれの地域で一部の経営については不良な経営が生じていることは事実でございます。こういう意味で、これに対処するために畜産経営安定資金等、特別の資金制度で負債整理を行うと同時に、自作農維持資金につきましても、その再建整備資金につきましては特認枠を活用すると同時に、融資枠に特段の配慮を払ってきていることは事実でございます。  さて、その中で特に重要な局面にあるごく限られた一部の経営に対して経営移譲資金をつくるのがいいのかどうか、これは私は制度論としてもあるいは農業全体の中で農民の感情論としても、なかなか難しい問題があるのではないだろうかと思います。特に、御指摘のように父親から息子に移譲する場合、それをどう考えるかということはなかなか難しい問題があると私は思います。当面の問題としましては、やはり酪農の経営安定資金なりあるいは自創資金の活用という形を通じて個別に解決をしていく、また、場合によっては新しい優良な経営の方にそれを引き継いでいただく、あるいは新規参入者に引き継いでいただくというふうな方途を考え、その中で問題を処理していく方が現実的ではなかろうかと思っておるわけでございますが、せっかくのお申し越しもございますので、さらに従来の施策等について点検を加え、勉強してみたいと思います。
  147. 新村源雄

    ○新村(源)委員 以上で終わります。
  148. 上草義輝

    上草委員長代理 水谷弘君。
  149. 水谷弘

    ○水谷委員 大変長時間にわたって御苦労さまでございます。私の質疑できょうは終わりになっておりますので、もうしばらく頑張ってください。  農業振興地域整備に関する法律の一部を改正する法律案土地改良法の一部を改正する法律案について質疑をいたしますが、具体的な質疑に入ります前に、総括的な事項について何点か農林水産大臣にお尋ねをいたします。  御承知のとおり、昭和三十六年に農業基本法が制定をされまして、農政の重点目標として、一、農業と他産業との生産性、所得格差を是正する、二として、国民所得の増大に伴い農業生産の選択的拡大を図る、三として、生産性の高い農家の育成等農業構造の改善を図ること等が掲げられて既に二十二年を経過しております。この間、構造政策推進を中心に各種の施策が講じられてきたわけであります。  最近、二度にわたるオイルショックによる国際経済の低迷によりまして、我が国の経済も安定成長への移行の中で、他産業は、完全とは言えませんが、見事にその対応によって産業の構造の転換をなし遂げ、それなりの成果を上げてきているところでございます。しかし、農業農村はどうかと見てまいりますと、高度経済成長過程で生じたひずみをそのまま持ち越して、現在直面する諸問題が山積している実情であります。そこで、産業としての農林業が停滞をしたことによって当然農村社会も低迷を続けているわけであります。  このような中で、国民食糧の安定供給、また国土保全水資源確保、エネルギー再生産力、自然保護など今後農業農村が果たしていかなければならない役割、またその機能をより一層高度に発揮することが今最も重要な問題になっているわけであります。そこで、後退の一途を余儀なくされている我が国農政の現状をここで基本的に問い直してみなければならないのではないか、この声は農業者及び国民全体から起きている声であります。大臣が大変御苦労されて日米農産物交渉で頑張ってこられましたが、四年後にはまたこのような問題がはっきりと待っているわけであります。  こういう状況の中で、政府我が国農業農村が抱える緊急課題をどのようにとらえておられるか、またそれに対してどう対処をされるのか、大臣にお答えをいただきたい。
  150. 山村新治郎

    山村国務大臣 現在の我が国農業を取り巻く諸情勢、まことに厳しいものがございます。  詳しく申し上げますと、まず我が国農業生産、これが国内の需要動向に十分対応し得ず、農産物の需給が緩和しておるということが一つございます。また、制約された国土条件のもとで土地利用型農業部門の経営規模拡大が停滞をしておるという点もございます。また、行財政改革の観点から農業が効率的に推進するようにという要請もございます。そして諸外国からの市場の開放要求、これが強く求められておるというような状況でございます。  このような厳しい状況に対処するために、まず需要の動向に応じた農業生産の再編成、これを行わなければならないと思います。そして、農地流動化推進等による土地利用型農業経営規模拡大、また技術と経営能力にすぐれた中核農家の育成確保、そして農業生産基盤の整備、技術開発の普及等による生産性向上も図ってまいらなければなりません。そしてまた、就業と生きがいの場を提供する豊かな村づくり推進、これをあわせ行いながら今後の諸施策を積極的に推進して、我が国農業生産性向上、そしてまた農村の発展に努めてまいらなければならないと考えております。
  151. 水谷弘

    ○水谷委員 この際、農林水産省の見解を承っておきたいのでありますが、昭和五十五年に農地三法、農用地利用増進法の制定、それから農地法及び農業委員会法の一部改正を制定されました。この農地三法が制定、施行されて果たしてきた役割、これを今日の時点でどう評価しておられるか、農林水産大臣にお尋ねをいたします。
  152. 山村新治郎

    山村国務大臣 昭和五十五年に制定されました農地三法、これによりまして地域実情に応じた農地流動化、有効利用を促進する等構造政策推進において重要な立法であったというぐあいに考えております。昭和五十五年以来、農地流動化は、農用地利用増進事業による利用権の設定を中心にいたしまして着実に進んできており、利用権設定面積は、昭和五十五年の十二月末の四万七千五百ヘクタール、これが昭和五十八年十二月末には十三万三千五百ヘクタールと大きく増加しております。その八割近くが中核農家に集積されるなど、経営規模拡大に寄与しているところでございます。  現在、このような制度的基礎の上で、土地利用型農業を中心とする構造政策を一層推進するため、集落等を単位にいたしまして兼業農家等を幅広く包摂した地域農業集団を広範に育成して、この集団による農用地利用調整活動により地域実情に応じた形で地域全体として生産性の高い営農の実現を図っているところでございます。しかしながら、このような地域農業集団活動を円滑に進めていくためには、中核農家とそれ以外の兼業農家の連帯感を醸成することを図るなど農村地域全体が抱える諸問題にこたえていくことが重要であり、今回この法改正をお願いいたしまして、農業体質強化、豊かな村づくり等総合的に推進することが必要であるというぐあいに考えております。
  153. 水谷弘

    ○水谷委員 今大臣の答弁の中にございましたが、現実農地流動化中核農家の育成に直結していないというデータが出ているわけでございますが、制度が発足してまだ日も浅い、それからまたがっての農地改革の当時のいろいろな急激なる社会の変化を経験をされた中高年齢者の皆さん方の、理屈ではなく農地流動化を阻害しているそういう問題等、これらをきめ細かく分析をしながら、優良な農業集団、優良な農用地確保、これらに対して積極的に取り組んでいきませんと、せっかくの農地三法が制定されて今日までその運用が行われていてもまだまだ実効があらわれていない。  このことについてもっと積極的な対応を望むものでありますが、このことについてお答えをいただきたいと思います。
  154. 森実孝郎

    森実政府委員 先ほど大臣からも御答弁申し上げましたように、五十八年末の時点では十三万三千ヘクタールの利用権の設定が行われた。これ以外に作業の全面受委託が約六万五千ヘクタールありまして、合わせると二十万ヘクタール前後の流動化が進んでおります。長期見通しに沿った線での流動化という点で見るならば、量的には四年間としてはある程度の実績を上げてきたと思います。それからまた、どういう階層からどういう階層に流動化が進んできているかということを分析してみますと、出し手はほとんど全部一町未満の階層でございますし、受け手は全部一町以上の階層でございます。アンケートで調べてみますと、約七八%がいわゆる中核農家という範疇に属する方々でございます。  ただ、率直に申しまして土地利用型農業として一つの目安にしている三町歩以上の階層への集中というところに来ると、まだそこまで来ていないという側面もある。恐らく、いろいろ分析をしてみますと、例えば連作障害を回避するために野菜作農家土地を借りていく、あるいはまた有畜農家で極端に飼料作物の自給ができない農家が休閑地等に利用権を設定していく、こういう動きが先行しての結果だろうと思います。  それはそれなりに発展過程として受けとめなければなりませんけれども、御指摘のようにこれからそれをどういうふうに組織的に発足させていくかということが重要だろうと思います。その意味で、いわば個別経営の問題ではなくて地域全体の広がりを持った問題としてとらえ、かつ、特定地域だけの問題ではなくて全国的な視点の問題でとらえるという点で、昨年来地域農業集団の育成によるこの運動の積極的推進を図っているわけでございますし、また、その問題を片づけるためにも農業者あるいは中核農家兼業農家の連帯を確保する意味で豊かな村づくりという問題に取り組まなければならないという意味で、今回の法律改正をお願いしているわけでございます。
  155. 水谷弘

    ○水谷委員 農振法は、昭和四十三年の新都市計画法の制定に引き続いていわゆる農業サイドからの領域宣言法として制定されたものであるわけですが、今日まで二度にわたって、昭和五十年と五十五年に法改正が行われてきております。この過去二度の法改正による成果も含めて、農振法が果たしてきた役割をどのように評価をされておられるか、大臣にお尋ねをいたします。
  156. 森実孝郎

    森実政府委員 農振法の改正は、制定以来二回にわたって行われました。一回目はいわゆる農用地区域確保という視点に重点を置きまして、また、その開発利用を促進するための諸措置を加えたものでございます。それから同時に、農用地利用増進事業を農振地域で実施することを決めた制度改正をやったわけでございます。二回目の改正は、農用地利用増進法の制定に伴い、いわば農用地利用増進事業を農振地域に限定しないで、全国的にすべての地域で適用する制度にするための改正でございまして、これはいわば農用地利用増進事業が農振法の世界から一般法の世界ヘレベルアップしたという、それに伴なう改正だったわけでございます。私ども過去の農振法の施行状況を見ますと、農振法に基づく線引きというものが優良農用地確保というものに歯どめをかけた、特に土地に対する投資が集中した四十年代の後半あるいは五十年代の前半において無用な投資を抑制し、また、転用のエネルギーを事前に抑えてきたという効果はあったものと思います。  問題は、低成長へ移行し構造政策の深化が叫ばれている今日の状況において、これにどういう中身を与えていくかということが非常に重要な課題だろうと存念しているわけでございます。  そのような意味におきまして、一つは、計画事項といたしまして土地集団利用調整による構造政策の進展という問題をうたうと同時に、就業問題、生活問題等農村地域社会が当面している問題を計画事項に追加して、市町村ぐるみで取り組む体制の整備を図ったわけでございます。また同時に、それぞれの地域社会がいろいろな問題に逢着しておりまして、これを解決するための手法についていろいろな議論が行われているわけです。こういった問題をフィードバックいたしまして、いわば現実的に要請がある手法の整備法制化を図ろうとしたものが今回の改正でございます。一言で申し上げるならば、優良農用地を線引きの仕組みを通じて確保するという、いわば枠組みに具体的な農業振興なり農村振興の中身を与えていくというふうに発展させたいということが私どもの願望であるわけでございます。
  157. 水谷弘

    ○水谷委員 ただいまのお答えで、線引きによって優良農地を保全し確保するという、それなりの成果があったということでございます。私もそれについては同感でございますが、農振法において農用地区域内の農用地等に対して転用の制限と開発行為の許可制がとられているわけでございます。しかし、国や地方公共団体にかかわる行為については適用が除外をされております。このために、一部地域においては地方公共団体等による農地の転用とその開発計画者みずからその計画の秩序を乱すという批判を受け、農地のスプロール化とまたその周辺の農地価格の高騰等をもたらして、農業の環境としては非常に悪い環境をつくり上げている、このように指摘をされる問題があるわけです。こうした事態をどのように受けとめ、また今後どう対処をされていかれるのか、お伺いをしたいと思います。  各地にこのような例が相当あるわけであります。確かにその地方公共団体またはその地域において線引きの時点で長期に想定できなかったいろいろな要因が発生してきて、ほかの土地利用としてどうしても必要であるという条件が出てきたということも考えられるわけでありますが、こういうことを地方公共団体が行うということは法の精神そのものを大きく踏みにじる、このように考えるわけでありますので、この点についてお尋ねをいたします。
  158. 森実孝郎

    森実政府委員 開発行為の抑制の問題と転用の問題と、二点あるわけでございます。  それぞれ制度として独立しておりまして、開発行為の制限につきましては、市町村なり県というものは農振の線引き計画のいわば策定主体ないしは認可権者であることを考慮して除外しているわけでございます。また同時に、法律では「農用地利用計画を尊重して、農用地区域内にある土地農業上の利用が確保されるように努めなければならない。」ということが自治体の責務として明記されているわけでございます。こういう意味で、法制は例外の扱いをして許可を不要としております。  しかし、問題はそれだけでは解決しない。やはり見通しの問題あるいはそれぞれの地域の個別的な具体的事情等がありまして、いろいろ御批判を受けるような事例が生じていることも中にはあることは私は否定できないだろうと思います。私どもといたしましては、公用とか公共用施設用地として利用する場合でも、農用地区域内の土地を充てる場合においては、まず位置としてやむを得ないものであるかどうか、それから国の農業投資にかかわる土地でないかどうか、それから土地利用、水利用についてスプロール化をもたらさないかどうか、この三点が非常に重要だろうと思います。そういう意味で、従来からもこの視点に沿って除外の問題を指導してきましたが、今後もその点には十分留意してまいりたいと思うわけでございます。  転用の問題につきましては若干制度の性格が違いまして、国、都道府県が許可権者でございますから、市町村が行う場合はいわゆる特定の公益性が高いもの以外は許可が必要になるわけでございます。やはりこの場合においても集団的な農地を避けていく、それからもう一つは公共投資が行われた農地を避けていく、それから転用の結果として水の利用体系なり、土地の利用体系にスプロールを生じないようにすることが基本原則であり、その点の指導に努めてきたわけでございますが、御指摘の点は一、二、私どもにも思い当たる点もありますので、十分事情を把握した上、必要な指導は今後ともただいま申し上げましたような原則の上に立って強化してまいりたいと思います。
  159. 水谷弘

    ○水谷委員 次に、今回の改正において、農業従事者の安定的な就業促進に関する事項として、非農業部門への就業目標、就業意向の把握と就業相談活動強化等を農振計画に加えることとしておられるわけであります。農村地域工業導入法は、工業サイドからの要請とはいえ、兼業農家の所得の安定的確保とか出稼ぎの解消農地流動化による農業構造の改善にもこたえるために昭和四十六年に制定されたものであり、企業の円滑な導入が図られるよう、各種の措置が講ぜられることになっておるわけです。この農村地域工業導入法に基づく工業導入の実績を昭和五十七年度末で見ると、全国の九百六十一市町村農村地域工業導入実施計画が策定されており、うち導入市町村数は七百三十三、未導入市町村数は二百二十八、二千二百八十の企業が操業し、その雇用総従事者数は十六万四千人、そのうち農家世帯からの雇用者が六万七千人、このように実績が上がっているわけであります。  しかし、こうした実績は法制定当初に想定された数字よりもかなり低いものではないかと思われるわけであります。その原因はどの辺にあるのか、明らかにしていかなければならないと思いますが、その辺をお答えいただきたいと思います。  また、今回のこの農振法の改正によって、今後の見通しと、過疎地域、単作地域等における中高年齢層の雇用促進についてどのように取り組んでいかれるか、具体的にお示しをいただきたいと思います。  また、今回の法改正で言うところの農業従事者の安定的な就業促進という中身と従来の農村地域工業導入法のねらいや制度の仕組みとの絡み、これをどういうふうに効果を発揮させていけるか、その点についてお尋ねいたしたいと思います。
  160. 森実孝郎

    森実政府委員 農村地域への工業工場導入制度は、四十六年の制度発足以来十三年目を迎えております。御指摘のように、九百六十一の市町村で実施計画を策定し、七百三十三の町村導入が行われた、一町村当たり雇用した数は平均して大体九十人くらいという形でございます。この種のいわゆる工場導入計画としましては、そう高い達成率でもないし、そう低い達成率でもないというのが現実の姿ではないかと思います。  経過をたどってみますと、昭和四十八年までは非常に順調だったわけでございますが、第一次オイルショックを契機といたしまして企業の設備投資意欲が減退いたしまして、五十二年には四十八年に比べますと立地件数で四分の一まで落ち込んでいるという経過がございます。五十七年におきましては、かなり回復はしてきておりますが、四十八年に比べると三七%程度ということでございます。そういった意味で、一般の景気動向の中における企業の設備投資意欲なり動向というものが基本的にこういった問題を規定していることは否みがたいだろうと思うわけでございます。  そこで、今後の問題といたしましてこれをどう進めていくか、また、この今回の法律改正でうたっております農業者の安定的な就業機会確保という目標とこれらの仕組みをどうつなげていくかという問題についてお答え申し上げたいと思うわけでございます。  端的に申しますと、これからの農村工業導入につきましては新しい観点が要るだろう。そういう意味で、五十六年八月に策定しました第三次の基本方針では、広域的な観点から導入を進めること、もう一つは、雇用情勢地域差が非常にございますので、地元での就業機会の少ない東北とか南九州などの遠隔地域に重点を置いた導入計画を進めるということを計画的に進めているわけでございます。私ども、これからの農村地域における就業の改善を図っていくためには、こういった農村工業導入促進法等に基づく工場の導入を、今日的な時点において地域の必要度を十分考慮して推進を図っていくことが必要だと思いますし、また、ただいま御指摘がございましたように、高齢者等の円滑な就業に必要な相談活動や職業紹介、職業訓練等の強化ということもあわせて実施する必要があると思います。  しかし、農振法で予定しております就業確保、ということは、そういった工業導入による安定雇用機会確保だけではございませんで、地元における産品を利用した地場産業の育成なり観光資源の活用による観光事業の創設といった、地場における産業なり企業活動を育成することも並行して重視していかなければならないと思っております。特に、このことは地元に定住している方々、さらには高齢者層の就業雇用機会確保に十分結びついてくるだろうと思っております。その意味で、従来から予算として計上しております山村振興対策とか定住圏の促進対策以外に、五十九年度には新しく新農村地域定住促進対策事業を発足させて、こういった地元における就業機会確保という問題に取り組んでいるわけでございます。  さらに、労働省が実施しておられます地域別雇用調整政策も年々強化されてきている実態がございます。こういった安定雇用機会の少ない、出稼ぎや日雇いが多い地域雇用調整政策については、労働省にもお願いしてその強化を図るとともに、運用について我々もまたいろいろ勉強してその活用を図るよう指導してまいりたいと思っておるわけでございます。
  161. 水谷弘

    ○水谷委員 せっかくの改正措置でありますので、ぜひ実効が上がりますようにお取り組みをいただきたいと思います。  次に、農振法に基づく計画では、農業構造の改善を図ることを目的とする、主として農業従事者の良好な生活環境確保するための施設整備に関する事項を定めるとしております。  今後、農村生活環境整備に当たっては、道路や上下水道、医療施設、教養施設、コミュニティー施設等々の整備とあわせて、緑豊かな自然景観の保全等幅広い施策の実施が要請されており、農振計画に規定して実施する事業市町村全体の総合的な生活環境整備の中でその一部をなすものと思われるわけでございますが、この場合、農振計画に記載する事項とその他の生活環境整備事業との調整や他省庁予算で実施する事業との調整はどのようになりますか、お尋ねいたします。
  162. 森実孝郎

    森実政府委員 農振法の生活環境に関する計画事項といたしましては、現在農林省が実施しております農村総合整備モデル事業等の生活基盤整備事業、あるいは農道等にわたります各種土地改良事業、さらには構造改善事業等の地域総合振興事業等に予定されます生活環境施設整備が中心になることは事実でございます。農道の問題、集会施設の問題、集落排水の問題等は重要な意味を持っていると思います。  しかし、ただいま委員指摘のように、各省庁の所管に属する事項について、生活環境施設整備について地元から強い要望が当然提起されてくるわけでございまして、私どもとしては、農林水産省施策だけで足らない点につきましては、関係省庁への協力を求めながら、農村地域計画に盛り込まれた具体的な要望をフィードバックしまして、関係各省の協力を求めながら事業の拡充というものに努めてまいりたい。そういった計画の策定なり実施の仕組みは、そういう意味では二段構えで考えていく、そういう姿勢が必要ではなかろうかと思っているわけでございます。
  163. 水谷弘

    ○水谷委員 次に、今回の法改正によって創設される予定になっております協定制度についてお伺いをいたします。  近年、混住化、兼業化の進展によりまして、農村では旧来の共同体的慣習が弱まってきております。大切な地域資源を共同で利用し管理するという農村社会機能が低下しつつあることは事実であります。この結果、農業生産生活に直結する集落段階における農業用施設の適正な配置、また水路維持管理集会施設維持運営等、具体的な課題への対応に支障を生じているのが現状であります。そこで今回この協定制度を盛り込まれたわけでありますが、このような農業用水路の管理の粗放化やまた農産廃棄物処理施設等の配置の適正化など、地域営農環境に影響を及ぼすさまざまな問題に適切に対処するためのものであると思います。この協定制度は、地域土地所有者等申し合わせを締結するというものであり、農村地域といっても地域によってその実情実態はさまざまであります。そこで、本協定制度運用に当たってはそれらの地域実情に沿ったものとする必要が出てくるわけであります。  ところで、確認をしておきたいわけでありますが、まず第一に、本来集落住民の自治に属する事柄を法律の中に取り込むこの協定制度の法的性格、これをどうとらえておられるか。それから第二番目として、協定効果土地権利者がかわっても及ぶこととなっております。このようにしたことの妥当性。それから三番目に、協定に違反した場合の措置はどのようにお考えになっていらっしゃるか。さらに四番目としては、非参加者に対する取り扱いについてどういうふうに対応されるか。それから五番目として、この協定制度が実効あるものになるためには、国及び地方公共団体の必要な助言や指導、これが大切になるわけでありますが、具体的にどのようなことを予定されているのか。それぞれについてお答えを願いたいと思います。
  164. 森実孝郎

    森実政府委員 この協定の実施に当たりましては、委員指摘のように、あくまでも具体的な実需に応じて地域の固有課題を解決するための手法として準備をしておく、それを活用していただきたい、こういう意味でございます。法的な性格は、民法上の一種の無名契約と御理解いただく必要があると思います。  ただ、今回の法改正によりまして、若干の特別の効果をそれ以外に付与しております。それは、施設の適切な配置に関する協定につきましては、その安定性、継続性を確保する観点から承継効を与えるとするとともに、もう一つは、協定成立時には反対で参加しなかった方々に、後日参加できるように単独の意思表示、単独行為によって協定参加するという特定の法的効果を認めております。それから施設維持運営に関する協定については、これは法律効果ということではございませんが、やはり合理性を確保し適切な運営を図る観点から、市町村長の認定にかからしめることとしております。  それから二番目に、しからば今申し上げました承継効を認めることの妥当性という問題でございます。  協定制度自体は、いわば民法上の一種の無名契約という本質を持って、合意した人を拘束する本質を持つわけでございますが、施設配置に関する協定のうち、いわゆる不作為義務、一種の受忍義務を課するものについては承継効を認めております。これは、私どももこういったものについては慎重な前提が必要であろうということで、全員の同意が前提である以外に、市町村の認可の際においては「土地の利用を不当に制限するものでないこと」という認可要件を定めると同時に、権利関係の後日における争いを避けるために公告、縦覧の手続も予定しておりますし、また、妥当性がなくなった場合には市町村長がそれを取り消せるということになっております。そういう意味で、私人の権利を不当に制限することのないよう制度上の手当てについては配慮したつもりでございます。  次に、協定違反の効果でございます。  これは本質的に申しますと、民法上の債務不履行という性格のものであろうと思います。協定内容に即して差しとめ請求なり違約金の支払い等を、違反者に対して他の履行者が単独で、または共同して求めることができる。この認定にかかわる協定にある者については、その限りでは原告に挙証責任が恐らく免責されることになるだろうと思います。  それから、非参加者に対する取り扱い方針でございますが、この協定につきましては、やはり非参加者の独自の立場、少数者の立場というものも尊重していかなければならない思想に立っておるわけでございまして、まず施設維持運営という点から申しますと、いわゆる相当部分が協定参加されて実効性を上げられるということを一つの前提とし、また維持運営の方法が適切なものであることを前提とし、さらに後刻の参加あるいは脱退等の手続がオープンであり、妥当なものであるかどうかということを配慮して仕組みを予定しておりますし、また、その線に沿って運用を図りたいと思っております。  それから施設配置の問題につきましては、これは事柄の性格上、営農環境への影響の及ぶ範囲を超えない土地土地所有者だけの範囲協定にとどめておる。また、要件につきましては、先ほど申し上げましたように、内容が適切妥当である旨の条項を設けるようにしております。ここら辺は、従来、部落の総有的と申しますか、ゲマインシャフトリッヒな規制の中で、暗黙の了解の中で行われていたことが、やはり個人の意識の変革と経済社会情勢変化の中で維持できなくなってきている。また、それを復元することは、今日の個人の権利意識を基礎として考える場合に妥当ではないのではないか。むしろ利用者とかあるいは非地権者という個人の立場において、対等平等の関係で話し合って、起きてきた問題を個別に解決をするという方策をとることが適切妥当であろうとしてこの種の法制考えたわけでございますが、しかし、前々の御議論にもございますように、これが反対者に一つの不当な強制を加えることのないように法文上も手当てを考慮したつもりでございますし、運用に当たっても十分配慮してまいりたいと思っております。
  165. 水谷弘

    ○水谷委員 次に、市町村の定める農業振興地域整備計画について定めた第八条二項の三号、すなわち農用地の効率的かつ総合的な利用の促進という課題を具体的に進めるに当たっては、昨年発足された地域農業集団にその役割を担ってもらうようになると思うわけでありますが、この地域農業集団集落段階に設立される自主的な集団であり、集団による農用地等の利用調整活動を通じて、中核農家等の規模拡大、農作業効率化、稲作転換等に関連した作付地集団化等を推進することとされております。  そこで、今後こうした地域農業集団の健全な育成を図るためには、制度体制は整っても、この集団をリードする地域リーダーの育成、すなわち人の育成、人づくりということが大事になってくると考えるわけであります。それと同時に、現場でいろいろな形で指導したり助言をする立場にある市町村の取り組みがますます重要になってくると考えるわけでありますけれども、この点についてどのように指導していかれるか、お考えをお聞かせいただきたいと思います。
  166. 森実孝郎

    森実政府委員 昨年、地域農業集団の育成に関する基本方針を決めました折、委員指摘の点はまことに我々としても最も意を用いた点であり、腐心した点でございます。  一つは、この地域農業集団の育成による集団土地利用調整という問題を市町村長の重要な責務として明らかにしていくことが必要だろうと思います。それは通達だけでは処理できないわけでございまして、今回の農振法の改正ということで、市町村のいわば一種の責務と申しますか、一つの目標、ターゲットとして定めることにしたわけでございます。  そこで、具体的な指導という問題は、何といってもそういうターゲットを掲げて市町村長さんが先頭に立って号令をかけることが基本だろうと思いますけれども、具体的にリードする方々はやはり地域社会農業者の信頼がある方、土地問題に通暁した方であることが必要だろうと思います。従来、この種の指導員をだれにするかについては、団体の機能別な役割とかあるいは団体の行為能力等からいろいろ権限調整をやって指導者を決めておりましたが、むしろ実態は、農協の営農指導員が中心になっているところもあるし、農業委員会の書記や農業委員の方が中心になっているところもあるという事実に着目しまして、市町村の職員、農業委員会の委員や書記、農協の営農指導員等の中から、その資格に関係なく、地域住民の信頼を得られる指導者を市町村長が選定して活動を支援するということを方針として決めております。さらに、内部的なリーダーをどう育成するかということが重要な問題だろうと思います。そういう意味で、市町村指導者と集団内部のリーダーの研修活動等は特に重視しておりまして、このために必要な予算措置等も講じているわけでございまして、御指摘の点は十分頭に置きましてこの強化に努めてまいりたいと思います。     〔上草委員長代理退席、委員長着席〕
  167. 水谷弘

    ○水谷委員 それでは、土地改良法の一部を改正する法律案について何点かお伺いをいたします。  我が国農業を確立し、国民に対し安定的に食糧を供給していくために、農業生産基盤の整備を積極的に推進していくことは非常に肝要であります。しかし、厳しい財政事情のもとで、土地改良事業などの農業基盤整備予算もことしは前年度比で〇・九と初めてマイナスに落ち込み、総投資規模三十二兆八千億円で発足したばかりの第三次土地改良長期計画も、その計画のおくれを余儀なくされるのではないかと心配するわけであります。それによって水田の整備率も伸び悩み、また工期延長などのために生産性向上を目指す営農推進にブレーキがかかってきているわけでありますが、政府はこのような状況下でこの改良事業の工期の縮減、また事業の早期完了を図るためどのように対策を講じられようとしておられるか、第三次土地改良長期計画の実現の見通しとあわせてお伺いをしたいと思います。
  168. 山村新治郎

    山村国務大臣 第三次土地改良長期計画、これは先生おっしゃいましたように、三十二兆八千億円を、昭和五十八年度を初年度としてこの事業量を十年間で実施するということが基本でございます。現下の厳しい財政事情のもとで、この五十八年、五十九年の二年間における進捗率は一一%とおくれぎみでございます。しかし、農業基盤整備事業構造政策の基礎という部分でもございますし、今後とも計画の達成に向けて努力してまいる所存でございます。  また、限られた予算の中でございますので、この予算の中での工期の縮減と事業の早期完成を図るために、五十七年度以降、新規着工地区の採択を抑制しております。そしてまた、部分効果があらわれる地区に対しましては予算の優先的配分、これらの効率的な実施に努めてまいってきておるところでございます。  さらに、事業計画の樹立及び事業の実施に当たっては、地域の自然、そしてまた経済条件に応じた基準の弾力的運用を図り、構造物の設計に際しましては、技術者の創意と工夫のもとに設計基準の適切な運用等によりまして事業費の軽減に努めております。  工事実施に当たりましても、地域の実施実態を勘案いたしまして施行を合理化いたし、今後もより一層工期の短縮を図るように指導してまいるつもりでございます。
  169. 水谷弘

    ○水谷委員 それでは、土地改良事業の技術体制についてお伺いをいたします。  土地改良事業を実施するに当たっては、あくまでも農業生産に資するための土地改良事業という特殊な技術についての十分な理解がなければならないと考えるわけであります。従来の土地改良事業の中には、ややもすると、単なる一般の建設サイドの土木事業的な発想で実施されてきている嫌いがあったように思われますし、これもかなりの指摘がございます。この点について、農林水産省も気がついておいでになると思いますけれども、どのように感じておられるか、お伺いをいたします。
  170. 森実孝郎

    森実政府委員 土地改良事業については、施行基準、施行方法、技術的側面において一般の河川工事等と異なる基準を持っておりますし、また同時に、いわゆる受益者負担を伴う事業として、関係者との、受益農家との間においてどうやってそれを納得させていかなければならないかというふうな面もありますし、さらに換地処分等の面的な権利関係の調整という特殊な業務を持っております。そういう意味においては、広い意味で技術者を確保し、これを養成することが非常に重要な課題となっております。  現在、全国の土改連が実施しております団体職員の技術研修等に対して国は必要な助成を行うとともに、また、都道府県の土改連におきましても、その会員である市町村雇用の技術者の養成確保を図るために研修会、講習会等を実施しております。研修会、講習会に当たりましては、特に技術的な側面では農業土木試験場による研修あるいは国の調査事務所による研修等を実施すると同時に、先ほど申し上げましたような、特に管理面とか換地問題の特殊性ということに着目いたしまして、県連に換地センター、管理指導センターを設置いたしまして指導に当たっているわけでございます。
  171. 水谷弘

    ○水谷委員 今の御答弁、技術者の養成についてのお話でございますが、私が申し上げておりますのは、いわゆる農業の生産に資するために優良な耕地をつくり上げるという、例えば在来の表土を大切に取り扱い、土地改良事業完成後も地力がますます増進をするという、そういう生産に資する観点を非常に大切にしながら、もちろん先ほどお話のございました線、点の整備と違う面的整備のこの事業については、さらにまた数々の問題点があるわけでありますが、そういう意味で私はお尋ねをしたわけであります。御答弁は結構でございます。  それから次に、技術者の不足の問題については今局長の答弁で了といたしますけれども、この土地改良事業は、その地域においては大変歴史的な事業にもなり、また、個別の農家にとっても一世一代の仕事になるわけであります。地域社会においても、また農家の方々にとっても重要なこれらの事業に対して、積極的に受益者が土地改良事業計画や施行に参加できる、そういう道を開いていくべきであり、それによって地域の力を農地基盤整備事業に結集をさせていく。さらにまた、みずからが参加することによって、優良な工事を施行させていくという責任感もわいてまいります。また、受益者、いわゆる農家の方々の地元における就労の場としても非常に大きな意味を持ってくるわけであります。農村整備全体の中で占めるこの土地改良事業というものが、多くの住民の皆さんの参加の上にその目的を達成できるような組織づくりといいますか、そういう道を積極的に開いていくべきであると私は考えておりますが、その点について政府はどのような対応をされておりますか、お尋ねをいたします。
  172. 森実孝郎

    森実政府委員 委員指摘のように、土地改良事業は受益者負担を伴う制度であり、受益者の営農に直結した事業でございます。また、多くの場合、小規模の圃場事業等におきましては、地域農業者の農閑期における雇用機会確保にも連なっているという、いろいろな側面を持っているわけでございます。どうやって関係農業者との接触を密にしていくかということが、まず一つ課題だろうと思います。  そこで、御案内のように、実は事業計画を樹立し、公告、縦覧手続を経て同意をとるという場合におきましても、いわゆる事業計画だけにとどまらないで、営農計画、完了後の管理の問題等についてきめ細かく指導に当たっておりますが、事業施行後、従来ややもするとコミュニケーションが悪くなってくるという側面がありまして、十分戒心しなければならない点だろうと思っております。その意味において、地元の関係者に施行過程におきましても積極的に参加していただけるよう、特段の指導を払っているわけでございます。具体的に事業の種類とか内容によっていろいろ違いますが、設計変更の問題あるいは事業費の変更の問題、それからまた事業実施途中におきまして営農の問題等農業を取り巻く状況変化もございますので、いろいろ機会をとらえて、県が中心になって土地改良区の協力も得て、地元農業者に対する説明の実施あるいは意見を伺う機会を持つということについてはこれからも積極的に指導してまいりたいと思っております。
  173. 水谷弘

    ○水谷委員 土地改良事業換地処分が大変おくれがちになるという問題、換地に対する異議の申し立てが発生したり、また登記事務のおくれというようなことで、そういう問題が多く見受けられておりますが、このような問題に対してどう対処されておられるか、伺います。  あわせて、この事業推進に当たって三分の二同意で事業がスタートいたします。換地計画が発表されます。そこで、この換地計画に対する異議紛争、これが土地改良事業の重大問題点になっているわけであります。場合によっては途中でおりてしまう、こういうことで、現場の仕事を進める上においては大変な問題が起きている実情でありますが、このような異議紛争を解決するための具体的な対応が今非常に大事になっております。異議を申し立てる。申し立てる相手が、公平な判断を下して自分が不利益をこうむらないという安心感の持てるようなしっかりした機関というものがどうしても必要なのではないか、私はこのように考えるわけでありますが、その点とあわせて最後にお尋ねをいたします。
  174. 森実孝郎

    森実政府委員 圃場整備事業を採択いたしますとき、どの程度の合意のもとに採択するか。確かに法律上は委員指摘のように三分の二の合意ということでございますが、実は私ども慎重の上にも慎重を期する観点から、面的整備については一〇〇%の合意ということを標榜いたしまして、事業の採択時の慎重を期しております。  そこで、換地手続の問題でございますが、同じ事業地区でやっても、農業上の利用はともかくとして、交換価値に着目すると価格が違ってくるということから、なかなか進まない地区があることは事実でございます。農用地の利用ということ自体については特に問題を起こしているとは思いませんけれども、相続とか処分というふうな新しい権利の得喪変更を生ずるとき、必ず紛糾をいたします。そういう意味で、土地改良事業団体連合会による指導、業務調整、講習等の事業をこれからも強化してまいりたいと同時に、遅延解消のための具体的な計画づくりということを今各地区に指導しているところでございます。実はことしの予算におきましても、先ほど御指摘がございました異議紛争をどう解決するかが重要だろうと思っておりますので、特にこれを計画的に推進するための予算措置を講じたわけでございます。  こういったいろいろな総合的な努力を通じまして、また、先ほども申し上げました換地に関する専門的な技術者の養成を通じまして、問題の総合的な解決を図ってまいりたい。今回の土地改良法改正の中で県の土改連に技術指導の業務を付与したということも、一つの理由としてはこの問題があることは御理解を賜りたいと思います。  それから先ほど答弁漏れで御指摘を受けましたが、大臣の答弁の中にもございましたように、施工技術の問題については、自然的、経済的条件に応じて施行基準の弾力化を図るということが非常に重要だろうと思っております。それからもう一つは、工法について、やはり末端の技術者なり経験者の創意を生かすことが非常に重要ではないかと思っております。この点につきましては、実は一昨年当委員会でも御議論のあった点を踏まえまして通達を出して、留意しているところでございますが、今後とも特にその点については留意してまいりたいと思っております。
  175. 水谷弘

    ○水谷委員 ありがとうございました。  以上で終わります。
  176. 阿部文男

    ○阿部委員長 次回は、明九日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十八分散会