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1984-04-11 第101回国会 衆議院 農林水産委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年四月十一日(水曜日)     午前九時三十四分開議  出席委員   委員長 阿部 文男君    理事 上草 義輝君 理事 衛藤征士郎君    理事 田名部匡省君 理事 玉沢徳一郎君    理事 小川 国彦君 理事 日野 市朗君    理事 吉浦 忠治君       小里 貞利君    太田 誠一君       鍵田忠三郎君    鈴木 宗男君       田邉 國男君    高橋 辰夫君       月原 茂晧君    野呂田芳成君       羽田  孜君    保利 耕輔君      三ッ林弥太郎君    山崎平八郎君       上西 和郎君    島田 琢郎君       新村 源雄君    田中 恒利君       細谷 昭雄君    松沢 俊昭君       安井 吉典君    駒谷  明君       斎藤  実君    武田 一夫君       水谷  弘君    神田  厚君       菅原喜重郎君    津川 武一君       中林 佳子君  出席国務大臣         農林水産大臣  山村新治郎君  出席政府委員         農林水産大臣官         房長      角道 謙一君         農林水産省経済         局長      佐野 宏哉君         農林水産省農蚕         園芸局長    小島 和義君         農林水産省畜産         局長      石川  弘君         食糧庁長官   松浦  昭君         林野庁長官   秋山 智英君         林野庁次長   後藤 康夫君 委員外出席者        防衛施設庁施設        部連絡調整官   田中  滋君        沖縄開発庁振興        局振興第二課長  森  隆禧君        外務省北米局安        全保障課長    加藤 良三君        林野庁林政部長  甕   滋君        林野庁指導部長  高野 國夫君        林野庁業務部長  田中 恒寿君        通商産業省貿易        局農水課長   土田 清蔵君        会計検査院事務        総局第四局審議        官        大本 昭夫君        農林水産委員会        調査室長     矢崎 市朗君     ————————————— 委員の異動 四月十一日  辞任         補欠選任   松沢 俊昭君     島田 琢郎君 同日  辞任         補欠選任   島田 琢郎君     松沢 俊昭君     ————————————— 本日の会議に付した案件  保安林整備臨時措置法の一部を改正する法律案  (内閣提出第二六号)  国有林野法の一部を改正する法律案内閣提出  第二八号)  国有林野事業改善特別措置法の一部を改正する  法律案内閣提出第二七号)  農林水産業振興に関する件(日米農産物交渉  問題)      ————◇—————
  2. 阿部文男

    阿部委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  日米農産物交渉の結果について、政府から説明を聴取いたします。山村農林水産大臣
  3. 山村新治郎

    山村国務大臣 今回の交渉に当たり、絶大な御支援と御協力をいただくとともに、国会開会中にもかかわらず私並びに経済局長農蚕園芸局長及び畜産局長の訪米と再度にわたる滞米延期に格別の御配慮をいただきました本委員会皆様方に厚く御礼申し上げます。  過去二年半にわたり日米間の重大な懸案であった牛肉かんきつに関する日米農産物交渉は、四月四日から四月七日まで米国ワシントンにおいて行われました私とブロック通商代表との会談決着を見ました。  本決着内容は、次のとおりでございます。  オレンジ、四年間毎年一万一千トン増しオレンジジュース、四年間毎年五百トン増しグレープフルーツジュース国内需要に即した輸入割り当てを二年間行い、以後は輸入割り当て制度を撤廃。高級牛肉、四年間で二万七千六百トン増し。なお、いわゆる十三品目についても、決着を図るべく今後事務レベルで集中的な協議を行う。  今回の交渉に当たりましては、総理から全権委任を受け、本委員会の一昨年四月の決議及び本年一月の申し入れ趣旨を踏まえ、今後とも我が国農業を着実に発展させていくことを念頭に置き、我が国農業を守り、農業者犠牲にならないように対処するとの決意のもとに、すべて私の最終的な責任のもとに判断を下しました。  最後に、私及び三人の関係局長国会開会中の海外出張に関します本委員会委員各位の御理解に対し、私から再度深い感謝の意を表しまして、私の帰国報告といたします。(拍手)
  4. 阿部文男

    阿部委員長 以上で説明は終わりました。     —————————————
  5. 阿部文男

    阿部委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田中恒利君。
  6. 田中恒利

    田中(恒)委員 大変長い日米農産物交渉最終段階担当大臣として、山村農相大変御苦労でございましたと申し上げたいわけであります。  ただ、私どもは、この交渉決着を今お聞きをいたしまして、当初から心配をしておりました、実質的に自由化の扉を開くことになりはしないかということが現実の問題になったような気がいたしておりますし、党としては、昨日大臣に正式に抗議の申し入れをいたしましたように、この交渉の結果については私どもは納得できないし、これを認めるわけにはいかない、こういう態度を明らかにいたしておりますので、冒頭、この委員会の中で我が党の態度大臣にお伝えをしておきたいと思います。  そこで、今大臣から決着内容について御説明があったわけでありますが、私は、この際改めて、その細部内容と今なお懸案として残されております諸事項につきまして、交渉内容をさらに細かく知りたいという立場で御説明を求めますので、これは一括して申し上げますから、関係局長さんの方からそれぞれ御報告をいただきたいと思います。  一つは、オレンジが一万一千トンの輸入枠を毎年ふやすことになったわけですが、簡単でよろしゅうございますが、その根拠は何か。それから、従来から季節枠一般枠、こういう枠の設定がなされておったわけでありますが、これは今回の交渉の中でどうなったのか、現行どおりの形で進めるのかどうか。  二番目、オレンジジュースブレンドの問題が前交渉の中でも、ハワイなどで話し合われたわけでありますが、このブレンドについてはどういうことになっていくのか。  三番目、グレープフルーツジュース自由化昭和六十一年度から認めるということでございますが、その理由は何か。  四番目、高級牛肉が二万七千六百トン増ということになっているわけでありますが、これは簡単でよろしゅうございますが、その根拠をお示しいただきたいし、この高級牛肉については年次別割り当てが示されておりませんが、これはどういうふうに、いっはっきりしていくのかということであります。  それから五番目、畜産事業団取り扱いで、総取り扱い量の一割までは同時売買方式と新聞などで言われております。従来からの瞬間タッチ方式のようなものだと思いますが、そういうことで処理をするということのようでありますが、その内容は具体的にどうなっていくのか。やはり事業団管理の中でなされていくのか、事業団は名前だけになっていくのか、この点であります。  それから最後に、十三品目であります。この十三品目決着をまだ見ていないわけでありますが、早急に四月中に決着、こういうことで取り決めがなされておるようでありますが、伝え聞くところによると、この十三品目の中で幾つか完全自由化をしていく、こういうことを我々聞くわけであります。この十三品目取り扱いは、そういう完全自由化も含めて決着になる可能性があるのかどうか。  以上六点でありますが、大変多うございますけれども交渉細部について、この委員会報告できる可能な御報告関係局長さんの方から重ねてお尋ねしておきたいと思います。
  7. 小島和義

    小島(和)政府委員 第一に、オレンジ輸入枠の一万一千トン増の根拠ということでございますが、我が国かんきつ農業を取り巻く厳しい現状からいたしますと、枠の拡大は小幅であればあるほど望ましいというふうに私どもも考えておるわけでございますが、御承知のようにアメリカ側の基本的な要求といたしましては、完全に自由化をしろというのが基本的な主張でございます。そういう要求を回避いたしまして新しいパッケージ合意をつくるというふうな観点から、今回の合意内容でやむを得ないというふうに考えたわけでございます。  ちなみに、前回合意は四年間で三万七千トン増加するという内容になっておるわけでございますが、今回の合意が四年間で四万四千トンでございますから、多いと言えば多いわけでございますが、前回合意幅の延長線上の問題として考えた場合、最小限度にとどめ得たものというふうに考えておるわけでございます。  それから季節枠の問題でございますが、これはいわば周辺問題として協定本文を作成いたします作業が残っておるわけでございますが、その段階で正確には詰められるわけでございます。ただ、これまでの話し合いの過程におきましては、アメリカ側におきましてもいわゆる夏場はオレンジにとって出荷最盛期ではないという事情がございますし、また、我が国国内におきましても落葉果樹その他に対する影響というふうな観点から、余り特定のシーズンに集中させるのは好ましくないというふうな御意見もあるわけでございます。それらを考えまして、国内に対する影響最小限度にとどめ得るような季節枠制度の弾力的な運用が可能になりますよう、そういう形で合意に持っていきたいものと考えておりますが、最終的な取り決めはその協定本文作成段階に持ち越される、かように御承知願えれば幸いでございます。季節枠という制度そのものは存続をいたしたいと考えております。  それから果汁ブレンド問題でございますが、かんきつ品目の中で申しますと、オレンジジュースというのが国産品との競合度合いからいえば一番強いというふうに私どもは考えておるわけで、その意味増枠もぎりぎり前回同様の伸びにとどめたわけでございます。今後の果汁消費動向というものを眺めてみますと、多種多様な製品が生産され、販売されて、そのことが果汁全体の消費を伸ばす一つの動機にもなるというふうに考えておりますので、ブレンドという基本的な考え方は残すつもりでございますが、ブレンド割合等についてはできるだけ消費多様化に見合った弾力性が保持されるように考えていったらどうであろうか、ただいまそのように考えておるわけでございます。  それからグレープフルーツジュース自由化の問題でございますが、これは御承知のように前回合意におきまして、五十五年度三千トンの輸入枠から始まりまして、各年一千トンずつ増枠をいたしまして、最終年でありますところの五十八年度は六千トンの割り当てをいたしておるわけでございます。昨今の輸入状況を眺めてみますと、五十六年度、五十七年度、五十八年度、いずれも通関実績は三千トン台にとどまっておりまして、微増の傾向にはございますが、輸入枠との対比で申しますとかなり下回っておるという状況にございます。  今回、協定をつくるに当たりまして、仮に従来テンポの増枠を続けるといたしますと、四年後には一万トンぐらいのものになってしまうわけでございますが、そういう相当数量の大きな枠を設定するよりは、むしろ自由化をいたしましても急激な輸入の増加はあり得ないというふうに判断をいたしたわけでございまして、今回の全体を通ずるパッケージをつくる上においてその方が適切ではないか、かように判断をいたしたわけでございます。  また、御承知のようにグレープフルーツジュースは、かんきつとは申しながらオレンジミカン等とは若干異質な性格を持っておりますので、その意味におきまして、我が国果汁の大宗を占めておりますミカン果汁との競合度合いは先ほど申し上げましたオレンジジュース等に比べますればかなり小さいものである、かような判断もあったわけでございます。
  8. 石川弘

    石川(弘)政府委員 最初の高級牛肉四年二万七千六百トンの根拠ということでございますが、私ども交渉に当たります基本的態度といたしまして、まず牛肉につきましては、総枠を一定のものを想定をいたしまして、その総枠の中でいわゆる高級牛肉がどの程度割合を占めたらいいかということを頭に置きながら交渉したわけでございます。  御承知のように、総枠につきましては、かねがね申しておりますような国内合理的生産というものを基礎といたしまして、需要からその合理的生産を差し引いたものが輸入相当量と考えておるわけでございまして、このことにつきましては今後の日豪交渉で総枠が決められるわけでございますが、最近の動向からいたしますと、その中で高級牛肉伸びが比較的高いということは需要動向から言えるわけでございます。  そういうことを前提にいたしまして、一定のものを想定し、交渉してきたわけでございますが、彼我の間にはやはり相当の開きがございまして、我々としまして望ましい限度というものを頭に置いて交渉しながら、最終的にはぎりぎりの線でこの数量に決めたわけでございます。いずれにいたしましても、総枠の中での話でございますので、今後の総枠の決定によりまして全体としてバランスのいいものにしていきたいと思っております。  次に、四年間の年度別の問題でございますが、交渉で決めておりますのは、四年間で二万七千六百トン増ということが現段階で決められておるわけでございます。したがいまして、年度別の問題についてはさらに事務的折衝にゆだねられておるわけでございます。  それから三番目に、事業団の新しい売買方式でございますが、先生が御指摘になりましたように、あくまでこれは事業団売買の内側でございます。民貿ではございません。事業団売買をいたします際に、どういう品物をというようなことが買い手の方あるいは売り手の方でいろいろと御注文がある。事業団が直接売り買いいたしますものはどうしても規格その他が統一されておりますので、そういういろいろな売り手買い手要望といいますか、品質形態等に対します要望にこたえたことで売買をやりたいというようなことがお互いに話し合いの中で出てまいっておりまして、そういういわば輸入されます肉のいろいろな部位だとかあるいはいろいろな肉の品質だとか、そういうものを実需者とそれから外国の供給者話し合いをする、その話し合いをした結果に基づきまして、それを事業団売買の操作の中で行うということでございます。  ワンタッチ方式と過去に言われておりますものとは違いまして、かつてのワンタッチ方式と申しますのは、随意契約に基づきまして、いわば差益の徴収の方法についていろいろ疑義がございましたので、今度は売りと買いを同時に入札をするという方式をとりまして、そのような問題が起こらないようにということを考えております。具体的な内容についてはさらに詰めまして、協議の中で決めますと同時に、できるだけ早い機会事業団売買の中に導入するつもりでございます。
  9. 佐野宏哉

    佐野政府委員 十三品目関係につきましてお答えいたします。  十三品目につきましては、今回の協議機会山村大臣からブロック通商代表に対して、牛肉かんきつ決着の際、これとあわせて十三品目についても日米間で休戦、撃ち方やめにするということによって農産物貿易分野日米関係緊張状態を取り除きたいという意向を表明されました。ブロック通商代表も、そういう撃ち方やめにすることを正当化するに足り得る日本側からの状況がいただけるのであるかどうかということを吟味してみなければならないけれども、方向としては異存がないということになっておりまして、今月中にそういう協議実務者レベルで行うことにいたしております。  私どもとしては、やれることはやって農産物貿易分野での日米関係緊張状態を取り除きたいというふうに考えておりますが、ただ、私どもは、十三品目分野につきましても、どういうことならやっていいか、どういうことはやっていけないかということにつきましては、当委員会からいただいております御決議が、牛肉かんきつの場合と同様十三品目につきましてもこれがガイドラインになるべきものであるというふうに考えておりますので、当委員会の御決議に従って出処進退判断していきたいというふうに考えております。これが具体的に十三品目の一部の自由化に及ぶかどうかということは、これは先方と協議をしてみなければ、今の段階で何とも申し上げかねるわけでございますが、いずれにいたしましても、当委員会の御決議趣旨を体して十三品目処理をしたいと考えておるわけでございます。
  10. 田中恒利

    田中(恒)委員 いろいろ御報告をいただきましたが、それぞれの課題についてなお詰めていきたいことがたくさんあるわけでありますが、きょうはまず概略お尋ねをいたします。  農林大臣、この問題は、亀岡さん、田澤さん、そして金子さんと、三人の大臣からずっと引き継がれてきたことでありますが、山村農相段階でこういう事態の収拾がなされたわけでありますけれども、しかし、この流れを見てみると、アメリカへ行かれて話をして、だめだということで帰国の発表をせられて、また変わっちゃって、そこで一挙に急転決着、こういうような動きが報道されましたし、事実そういうことであったわけでありますが、これはちょうど東京ラウンドのときの中川ストラウス会談のときも同じような形で決着をしているわけですね。どうもこういう状態を見ると、日米農産物交渉というものには、単なる問題だけでない、いろいろな要素が入っておるということを感じるわけでありますが、大臣は、この最終的な決着をせられた段階心境というか、この決着内容日本農業我が国の将来にとってどういうことになるだろうか、特に農林大臣としては、日本農業にどういう影響をもたらすかというような点についてはどんなお気持ちで最終的な判断をせられたのか、その辺の御心境というか、そういう点をちょっとお尋ねしてみたいと思うのです。
  11. 山村新治郎

    山村国務大臣 私といたしましては、本農産物交渉に当たりまして、一昨年四月の本委員会決議、本年一月の申し入れ農業者犠牲にならないように、我が国農業を着実に発展させていくようにということを念頭に置いて交渉に当たってまいりました。  今先生おっしゃいました中川ストラウス会談のときの決着とは少々違うと思います。というのは、あのときは中川ストラウス会談決裂いたしまして、帰国の直前に、その決裂最終版でいいからということでの決着を見たわけでございます。しかし、今回の場合は、実は途中におきまして両方よく話し合ったのですが、しかし、私としてはこれでは我が国農業を守れないというような大きな幅がありました。そこで、私はこれではとてもだめだというようなことで、ブロック通商代表も一歩も譲りませんし、やりようがないということで、四月中にもう一遍会談をやりましょう、とりあえず私は帰りますということになったわけでございます。  しかし、帰国ということになって、そして本月中にまた交渉をやり直すという段階で少なくとも私が考えましたのは、帰って、そしてもしどうしてもまた妥結をするんだということになった場合は、大きな譲歩をしなければならない。米側も考えましたと思ったことは、これは私の推測でございますが、米側といたしましても、もしこの農産物交渉というものが決裂をいたしますと、日米双方にとってとてつもない大きな損失を招くのではないかというように感じたのじゃないかと思います。今回は、その途中におきまして双方から歩み寄って、これは私がやったことではございませんが、双方から、それじゃできるだけ譲歩してできないだろうかというようなことで、歩み寄りの姿勢がございました。それぞれいろいろ具体的な動きもあったようでございます。これは私は存じません。しかし、それではということで再交渉の場に臨んだわけでございます。そういうようなことで、中川ストラウス会談の場合とは本質的に違う妥結の仕方でございます。  また、先生がおっしゃいましたように、これで我が国農業が守れるかということでございますが、少なくとも今回のこの妥結によりまして我が国農業というものを完全自由化から守り、そしてまたこの妥結の枠によりまして少なくとも我が国農業はこれなら守れる、我々が許容できるぎりぎりの線、私はそう思いましたから、ここで決断を下しまして、最終的に私の責任決着をいたした次第でございます。
  12. 田中恒利

    田中(恒)委員 大臣、非常に素朴に見る人の目が案外正しいので、我々も若干渦中に入りましたし、政治家やお役所は皆その渦巻きの中に入っておったわけですけれども一般の方は、日米農産物交渉というのは、幾ら幾らで話がつくといったような問題は別にして、大体粗筋は決まっておったんじゃないか、例えばレーガン大統領日本に来たときに、中曽根総理との間に、この問題についてはこのころに話をつけましょうぐらいの話はあったんじゃないか、こういう話は案外非常に根強いわけであります。そういうことはなかったのかどうか。  なお、私はここで委員長にもお願いしなければいけませんが、きのう参議院農林水産委員会で、衆議院議員でありますが、自民党の東議員アメリカへ行って、そしていろいろな動きをした。それがアメリカニューヨーク・タイムズに載って、これは中曽根総理の特使だ、こういうふうに報道せられておる。大臣ともいろいろな情報の連絡をとり合ったと。それから、特にきのう参議院農水で問題になったのは、山村農相は何か農林水産委員会の不承不承の支援程度で出かけてくるんだといったようなこと、それから中曽根総理から決着がつくまでは帰るな、こういうように言われている、こういうことも談話として報道されておるわけですね。私もニューヨーク・タイムズをいただいて手元にありますけれども、どうもこういう動きを見ると、何か裏側に仕掛けられておったのじゃないかといううわさが実はあるわけであります。その点についてもここではっきりさせていただきたいし、それから、東議員の問題は参議院農林水産委員会で実情を調査してもらうということになっておるようでありますが、これは衆議院議員でありますから、特に本院に非常に関係のあることでありまして、農林水産委員会の消極的な支持を得ているにすぎないといったことになっていくと、当委員会にとっても非常に大きな問題であります。  これは委員長において、理事会等で御相談をいただいてその実相を明確にして御報告をいただきたい、こう思うわけでありますが、この点について山村農相のお考えをお聞きしておきたい。
  13. 山村新治郎

    山村国務大臣 今先生おっしゃいました、中曽根レーガン会談でもう枠は決まっておった、そしてそれに沿って我々が動いた、全然これは違います。今回は、少なくとも私が全権を一任されました。委任されて、全権委任ということで行ったわけでございまして、時期の問題それからいわゆる数量の問題、これはすべて私の最終決断で決めました。出発に当たりまして、総理からは、すべてお任せする、よろしくお願いしますということでございます。また、渡米中に総理電話連絡をして、確かに電話連絡はいたしましたが、これは私の方からいたしたことでございまして、そして一応総理大臣に対する経過の報告でございます。それに対して、総理大臣から、そうですが、御苦労さますべてをお任せいたします、皆さんによろしくお伝えくださいということだけでございます。これは私がここで断言できることでございます。  それからもう一つ東議員のことでございますが、東議員は我々交渉団とは何らの関係もございません。一切ございません。私は、東議員とは電話でいろいろお話をいたしました。しかし、これは一方的に向こうから、こういうような米国内の情勢がございますという情勢報告でございます。彼が言いましたのは、彼の選挙区は和歌山県ですか、ということで、いわゆるかんきつ、これに対してはできるだけ枠の拡大はしないでもらいたいという気持ちが選挙区ですから恐らくあるでしょう。そういうような意味で、私が感じますのは、個人的に、彼が国会議員になります前の米国内でのいろいろな知人関係、その情報を集めて私に提供してくれたものと思います。  一つの例でございますが、新聞報道が先走りまして、何かきょうおいでの玉沢議員とつかみ合いのけんかをした、どっちが先にネクタイをつかんだというような話もございました。ところが、その時点で玉沢議員と東議員は一遍も面識もないわけでございます。——面識はあるけれどもアメリカでは会っていないわけです。それが、いつの間にかつかみ合いのけんかになったり、特使になったり、はっきり申しまして我々も新聞報道にすっかり振り回されたというような感じがございましたが、しかし、本当のところを言いまして、我々今度の交渉団とは一切関係ありませんし、また、交渉団アメリカ国内において、私には電話はございましたが、他の議員さんには何もございません。会合へ一遍出たわけでもございませんし、食事にも一遍も同席したこともございません。  これが真相でございます。
  14. 田中恒利

    田中(恒)委員 それはよくわかるのですけれども、ただ、和歌山の御出身で、ミカン地帯で、この問題に関心を持っていらっしゃるから向こうへ行っていろいろということですが、実は私も愛媛県でミカン地帯でございますが、私どもの立場から言えば、その情勢は、やはりミカン地帯の農民はこういう状況妥結してもらっちゃ困るということで今怒り狂っておるわけですよ。ですから、ニューヨーク・タイムズ、これはアメリカの一番の新聞で、少なくともこれで見る限りにおいては、何か交渉を裏側でうまく組み立てていくというような、そういう役割をしておるようなことが報ぜられておるわけですね。この交渉を心配して日本農業や農民の立場で動いていくというふうにはどうも受け取れないわけであります。正確に言うと、中曽根首相の特使である東が来てこういうふうに言った、こう書いておりますね。それから、日本は貿易紛争のために米国が報復措置をとることを最も恐れている、こんなことも言っておりますね。あるいは、山村大臣は国会の農林水産委員会の消極的な支持を得ているにすぎない、こんなことを言っていますね。こんなことは一体何をねらっておるのか、我々も常識的には考えられないです。  ですから、お会いもしていないし、いろいろあったでしょうが、客観的にはこの事態は特に本院の我が委員会にとっては一つの大きな問題が示されておるわけでありますから、私はぜひ委員長において善処方を取り計らっていただきたいと思います。委員長、どうですか。
  15. 山村新治郎

    山村国務大臣 先生おっしゃいましたように、実は私の方も、総理大臣東議員が行っているから相談しながらやってくれと言われたことでもございませんし、何が何だか全然わからないわけでございます。これはひとつ真相究明を私の方からもお願いしたいと思います。
  16. 田中恒利

    田中(恒)委員 委員長の方で。
  17. 阿部文男

    阿部委員長 今申し出のありましたことにつきましては、後で理事懇談会において協議いたします。
  18. 田中恒利

    田中(恒)委員 私は、きょうは特に牛肉オレンジ増枠日本農業にどういう影響を与えていくかということを少し数字で議論をいたしたいと思って準備をしてまいったわけでありますが、時間があとわずかしかございません。いずれにせよ、牛肉について見ましても、多分毎年の需要量というか、牛肉消費伸び輸入量の伸びなどから見てみると、この枠の持つ重さというものはこれからの豪州との輸入交渉の問題にもすぐひっかかってまいりますし、それから我が国の豚肉初め鶏肉その他一般の肉類の問題とも連動いたしまして、非常に大きな影響を与えてくると私は思います。大臣はワシントンでの決着の談話の中で、「農家経済の安定に大きな支障を及ぼすものではない」こういうふうに言っていらっしゃるわけですが、やはり農家経済の安定に非常に大きな影響を与える、われわれはこういうふうに見ておる。ここのところの相違が実はあるわけであります。これをはっきりさせたいわけでありますが、きょうは時間がございませんから後日に譲りたいと思います。  しかし、例えばオレンジなどを見ましても、今局長は、前回妥結の枠は三万七千トンですか、今回四万四千トンだからそんなに変わらないとおっしゃるわけですが、前回と今回とで我が国かんきつをめぐる情勢は一変しているわけですね。前回はまだまだ農林水産省自体が、例の六十五年見直しの需給計画を立てたときに、ミカンにいたしましても三百四、五十万トンいく、こんなことを言っておったわけですから、そういう需要伸びを想定して東京ラウンド一定の話も進んできておったと思うのです。しかし、その後の状況は急激に、果樹なんか、ミカンなどは三万ヘクタールも減反をやらなければいけない、そういう状況になっておるわけですから、客観情勢が違っておりますから、今回の伸び率というのは前回に比較されるようなものではないと私は思うのです。少なくともこのオレンジの今回の輸入が今の枠に四万四千トン上乗せをせられますと、十二万何ぼになりますね。これはやはり我が国かんきつ産業にとっては致命的な打撃を与えてくる。完全にオレンジ自由化をしても十五、六万トン程度ではないかと言われておるわけでございますからね。グレープフルーツは今十五、六万程度だと思うのです。四十六年に自由化をして今日に至ってその程度ですからね。だから、オレンジをこれだけ伸ばしますと、これは実質自由化とほとんど変わらないと私どもは見るわけでありまして、その影響は非常に大きいと思うのです。  そこで、これはどういうふうにこれから対応していくかという問題が実は大きな問題として残るわけであります。そういう意味で、大臣はいろんなことをお考えになっておるようでありますが、何か大臣が、この自由化によって受ける農民の犠牲に、不測の場合は十分対策を立てるんだとおっしゃっておるわけですが、その対策の方向というのはどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  19. 山村新治郎

    山村国務大臣 当委員会委員の皆さんの格別の御協力によりまして、国会開会中にもかかわらず三局長を同行させていただきまして交渉に臨んだわけでございます。最初に我々が持っていったいわゆるこれぐらいというような状況が、これは実はアメリカへ参りまして私ども認識が誤っていたというのをしみじみ感じましたことは、アメリカでは、自由化というものを棚上げしてやったということに対してすごく大きな譲歩をしたということが頭にあるようでございます。我々が行きまして、そしておかげさまで、農蚕園芸局長畜産局長がおりましたので、我が国農業影響を及ぼさないぎりぎりの線はどこかということでいろいろ御意見を伺いまして、私が最終的にその判断をいたしましてこの妥結に至ったわけでございます。  先生から今お話がございましたとおり、私は絶対に影響は及ぼさないとは思っておりますが、もし不測の事態が生じた場合、これは実は私が全権委任を受けましたときに、総理に対しまして、我々はぎりぎりの線で交渉するにしても、そうかといって、万が一という不測の事態が生じた場合はということで、それには必ず総理大臣としてそれに対処するものはちゃんとするという約束のもとに出かけたわけでございまして、私としては農蚕園芸局長畜産局長の意見を取り入れて、ここまでということの決断を下したわけでございます。
  20. 田中恒利

    田中(恒)委員 それで、私はこの交渉を振り返って一番強く考えさせられたのは、我が国農業については、一部からは保護農政ということの批判もありますけれども、いずれにせよ政策が相当大きくこれを支えておるという面は否定しがたいと思うのです。ですから、例えば今度の牛肉の問題などについては、畜安法あり畜産事業団あり、そういう国内の諸制度の中で一定の枠ができておりますから、そういうものを外国がいろいろ言ってもはね返していくという条件は多少あったと思うのですね。ただ、オレンジの問題については今その辺がありません。米は食管があるし、畜産は畜安法があるし事業団があるし、蚕糸も事業団があるし、最低、最高、底値保証、中間保証、中間価格、いろんな政策がありますが、果樹についてはそういうものはありません。それがミカンを中心とした果樹類の今日の後退の段階で、この交渉の中ではやはりちょっと我々にとっては厳しかったように思えてなりません。  そういう意味で、この際果樹政策について思い切った一つの制度というものをつくり上げる、そういう気持ちはないかどうか。特に当面この問題のあおりを食うのは中晩かんのいろいろな果樹産品だと思うのです。これはミカンからの転換で今やっと一人前になりかけておる。これ自体がもう生産調整をしなければいけないのじゃないかという状況でありますが、こういうものに対する需給調整の機能を制度化していくような、そういったものを思い切って立てる必要はないか。これが一つ。  それから、これからまた四年先にはこの問題は再燃するわけでありますが、我が国の貿易政策という問題について、この経験の上に立って改めて見詰めなければいけない問題が私は幾つかあると思うのです。一つは、我が国農産物貿易というのは余りにもアメリカに偏重していやしないか。ともかくこのアメリカとの交渉でだんだん量が多くなって、アメリカの農産物の比重が余りにも高過ぎる。本来、食糧の輸入政策は国の安全保障とつながるわけでありますから、多国間貿易形態というのが一番正しいのであって、単一国家に依存していくというやり方は改めなければいけないと思うのです。ここが日米間の、ある意味では深刻な問題だと思いますが、私は今度豪州が言ってくるものもやはり一つの理屈があると思いますから、貿易構造をいわゆる多角貿易に切りかえていく、こういう方向の政策路線をとる考えはないかどうか。  我が国の農産物はいや応なしに国際競争への対応を求められてくるわけでありますが、そういう意味では、我が国の産品は輸出能力がないと一概に言われておるのですけれども、しかし、輸出という政策について、ヨーロッパ、ECがやっておるような思い切ったことを我が国の農政に期待することはできないでしょうが、必要によっては大胆に考えていく、こういうものをこの交渉の中で私どもはこれから大胆に提起をしていかなければいけないと思っております。  時間がございませんで詰め切れませんが、これらの点について御答弁をいただきたいと思うのです。
  21. 山村新治郎

    山村国務大臣 先生おっしゃいましたように、確かに四年後、またこの問題は再燃するわけでございます。そして、牛肉かんきつに関しまして話がつきました直後に、ブロック通商代表からは、四年後はひとつ農産物のいわゆる自由化というものを真剣に考えるような対策をとってもらいたいというようなことも申されております。我々はこれに対しまして、今後の我が国農業というものを体質強化といいますか、足腰の強い農業に持っていかなければならないと思いますし、また、かんきつの問題等につきましても、ミカンの輸出なども考えなければならないし、それらの問題について今後も真剣に検討してまいりたいと思います。  また、専門的なかんきつの問題については局長の方から御説明申し上げます。
  22. 小島和義

    小島(和)政府委員 かんきつについての需給調整の問題でございますけれども牛肉の場合がいわば単品経済であるのに対しまして、果実の場合には、種類、品質、出回り時期、それぞれを異にしながら、多種多様なものが国産でつくられておるわけでございます。したがいまして、牛肉などに見られますような価格安定帯というふうなシステムは果実の場合にはなかなかとり得ないというのが実情ではないかと思うわけでございます。しかしながら、御指摘ございましたように、我が国がいろいろな輸入の果物を受け入れながら、同時に国内産の果実につきましても今後の成長発展を期する、こういう観点からいたしますと、まだまだやらなければならないことが多々あるわけでございまして、その意味におきまして、今後国内果樹農業の体質強化を中心といたしまして、考え得る各種の対策を講じていきたいというふうに考えております。  また、需給調整につきましても価格安定対策というふうなことを、直接的な仕組みにはなかなかなじみにくいとは存じますけれども、現在のさまざまな対策を再度検討いたしまして、もし仮に制度的に整備を要するものがあるとすれば、そういう点も含めまして検討をしていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  23. 田中恒利

    田中(恒)委員 終わります。
  24. 阿部文男

    阿部委員長 小川国彦君。
  25. 小川国彦

    ○小川(国)委員 日米農産物交渉に当たってこられました山村農水大臣、それから関係者の皆さんに、大変な御労苦に対して御苦労さまというふうに申し上げたいと思います。  しかしながら、今回の日米農産物交渉の結果においては、我々が予想したとおり、大幅な牛肉オレンジの枠拡大というような結果をもたらしたわけであります。これについては、先月三十日、社会党の国会議員団大多数の百名近い議員をもって農林水産大臣に訪米中止を要請し、さらにまた今月二日には社会党、公明党、民社党の代表をもって、この時点で山村農水相の訪米は中止すべきではないかという要請をした。こういう要請を振り切って農林大臣が行かれたわけでありますが、私ども結果として厳しく反省しなければならないと思いますのは、今回の交渉というのは終始アメリカが優位の交渉で、アメリカは得るものこそあれ失うものはない、そういう交渉ではなかったのか。そういうことで、アメリカはもう枠拡大は当然のことで、どれだけ枠がふやせるか、こういう攻めのゲームだというふうに考えていたと思うのです。その意味で、自由化という大きなだんびらを切って日本に対し威嚇をし、そういう中で枠拡大をつり上げていくということですから、アメリカの戦略としてみれば、最初から高いレベルでの妥結というものを引き上げていく。最大要求自由化ですから、それをちらつかせることによって枠拡大を引き上げていく、そういうアメリカ一つの戦略というものがつくられていたのではないか。ですから、農水相が訪米に踏み切って、しかも多数の代表団を連れていったという時点では、もう日本は抜き差しならない形で訪米してくる。ですから、まさにアメリカの手中に入ってきたという形でこの交渉の体系が組まれたのではないか、こういうふうに思うわけなんです。  そういう点で、私ども今度の決定された数字を見ると、日本の方は勝った勝ったではないのですが、日本要求としてはぎりぎりに抑えることができたと言っているし、アメリカの方も不満だけれども前進を見た、早く言えば両方損じゃなくて、両方満足しているのですね。私は、こんな交渉はないんじゃないかというふうに思うのです。農業団体の方々の中には、これはガットに提訴を受けてもやはりけって帰ってくるべきじゃなかったのか、あるいはもっと言うならば、我々社会党を初め野党が主張したように行くべきではなかったのではないか、こういう厳しい反省をしなければならぬと思うのですが、今日の結果を見て、農水大臣あるいはそれぞれ牛肉かんきつに当たられた当事者として、この結果についてどういうふうに考えておられるか、簡潔にひとつ御答弁を。
  26. 山村新治郎

    山村国務大臣 今回の日米農産物交渉は、言うなれば牛肉かんきつ、これが日米のすべての貿易摩擦の象徴のようなぐあいに取り上げられております。一般の方ですと、牛肉オレンジさえ解決すれば全部貿易の摩擦というものが解消するんじゃないかというような単純な見方の人もあるようでございます。しかし、それぐらいまた大きく双方で譲れないというような状況に至ったことは事実でございます。  私も、今先生おっしゃいましたように、一時ははっきり申しまして帰国を決意いたしました。しかし、四月中にもう一遍交渉はいたしましようということで、帰国を決意したわけでございますが、決意いたしましてから考えましたことは、もしこれが交渉決裂いたしましてガット提訴というようなことになった場合に、日本アメリカのどちらが大きく傷つくか、私は双方が大きく傷つくと思いました。その間にありまして、同行議員団ともいろいろ相談いたしました。そして、私は最終的に、いろいろ水面下の動きと申しますか、決裂して、もし日本の場合、帰った場合には再度出てこられるだろうか、そういう心配もいたしました。そして、私どもとしては、少なくともアメリカも譲るものだけは譲ってくれた、我々としても農業を守るというぎりぎりの線は守れたというような今回の農産物の決着というぐあいに考えております。決してアメリカペースでどうこうということは、私はなかったと思います。
  27. 小川国彦

    ○小川(国)委員 ガット提訴して日本が傷つくというのは、どういう面で傷つくというふうにお考えになりましたか。
  28. 山村新治郎

    山村国務大臣 これは、ローカルコンテント、また課徴金、これらの問題を含めて日本の国全体を考えた場合に、日本は言うならば貿易で成り立っている国でもございます。その国益というものを考えた場合に、やはり日本農業が守れるということに確信が持てれば、それによって双方話し合いがつくことが日本の国のためだ、私はそういうぐあいに考えました。
  29. 小川国彦

    ○小川(国)委員 ローカルコンテント、課徴金というのは、農林水産大臣の立場で考える問題では、なかったのじゃないですか。
  30. 山村新治郎

    山村国務大臣 確かにそのとおりでございます。しかし、日本の国益というものを考えるのが日本政治家である、私はそういうぐあいに考えております。  そこで、農業を守る農林水産大臣としては、日本の国益を守る、しかし農業はつぶせないという前提で、私は、これならば農業は守れるというぎりぎりの線においてはやはり交渉妥結ということをすべきであるという信念のもとにやってまいりました。
  31. 小川国彦

    ○小川(国)委員 私、昨晩いろいろ在米の関係者から情報を収集したのですが、妥結をする前の晩に、もうアメリカ側日本取り決めた数字を用意できていたというのですね。ですから、山村農水相一行が帰ると言っても本当に帰らないだろう、玄関まで行って、声をかけたら引き返してくるだろう、こういうふうに読んでいたようなんですね。帰る姿が何となく戻りそうなふうに見えたんじゃないか、こういうことなんですね。ですから、その辺のところが、日米交渉の中で農林水産大臣以下二十何名も団をなしていって、しかも総理からは、大臣言われるように一切を任せるというふうにもらっていけば、これは簡単には帰ってこられないですよね。どうしても妥結しなければならぬところに追い込まれていく、そういうところまでやはりアメリカ側に読まれていたんじゃないか。帰る格好をして背中は見せたけれども、声をかければもう一度戻ってくる。そこで最後の案をのませられるというふうに考えていたんじゃないか。  だから、そこのところが、日本農水省の考え方というものが日本政府全体の中に取り込まれた中にあって、本当に日本の農民の立場を主張するという立場は外交交渉の中で乗り切れなかったのじゃないか。その結果がこういうふうなものになってきた。かんきつ農家、牛肉農家にこれから大変苦渋を強いるところになったのではないか。こういう反省はあってしかるべきなんではないかと思うのです。
  32. 山村新治郎

    山村国務大臣 お言葉を返すようですが、私ははっきりと帰ろうと思いました。そのようなお芝居などできる状況ではございません。これは小川先生、私の性格もよくおわかりだろうと思います。私はすべての政治生命をかけてここに参りました。これは本当におわかりいただきたいと思います。  そして、アメリカ側が仕組んだ芝居と申しますが、その間の状況、これは皆この会議に出ているわけです。そんな、仕組んでどうこうと言えるような状況ではございませんでした一まさに緊迫した場面でございました。そして、私は私一存で、本当のところを言って、これはもう小川先生おわかりでしょうけれども、私の性格というのは、そういうようなお芝居だとかできる性格ではございません。それまで読んでおられたと言われれば、これはもう何とも言いようがありませんけれども、しかし、本当に私は帰るということで、これは次の日の何時ということを言っておって、私ははっきり申しまして、向こうのブロック通商代表の方も、恐らくこれは帰るというのであきらめているようでございました。  それは、双方余りにも差がひどかったのです。私はとてものめないということで、決然として帰国を決めたわけでございます。それが、自分の国の利益というものを考えて本当に双方から歩み寄ったのです。これだけはひとつおわかりいただきたいと思います。
  33. 小川国彦

    ○小川(国)委員 これは、山村さん個人の正義感とか熱意とか、そういうこととは別な、かなり高い次元の外交レベルの折衝であるというふうに思うのですね。ですから、そういうところでは、山村農水大臣が当初から主張していたように、まず行くべきじゃなかった。第二番は、行って交渉の中身というのは、向こうは最高の、自由化の次に高い相場を出しているのですから、下げてくるのは楽なわけです。日本は最低の要求から出発しても、引き上げられる以外にないのです。日本交渉するごとに不利益になっていくだけなんです。向こうは、どういう交渉をやっても不利益というのは一切ないのですよ。だから、まず行くべきじゃないし、帰るべきときには帰るべきなんです。ですから、その点で判断の誤りを二回犯している。  とどまってほしいと言われたのは、だれからそういう声がかかったのですか。
  34. 山村新治郎

    山村国務大臣 とどまってほしいというのは、はっきり申しましてどこからでもございません。同行の議員団とも、皆さんにいろいろ相談いたしました。そして、我々は、ここでもし我々の要求が入れられるのならばこれは妥結すべきであるという判断を下しました。  小川先生はそう言われますが、もしアメリカとけんかをしてめちゃくちゃになった場合、日本の国はどうなるかということも我々は考えなければならない立場にございます。これはちょっと考えを異にするかもしれません。
  35. 小川国彦

    ○小川(国)委員 日米外交交渉、経済問題の中でのアメリカの対日赤字は二百五十億ドルともあるいは三百億ドルとも言われる。そういう中で、この問題によってアメリカの得る利益はわずか一億ドル弱。それが、先ほど大臣がはしなくも言われたように、牛肉かんきつに焦点を当てて日本を攻めることによって、日本牛肉かんきつで何か対米輸入制限をしているという印象を深める、そういう意味のいわばターゲットあるいはいけにえにされるという形でこの交渉があったのじゃないか。それが二百万頭の牛を飼っている日本の畜産酪農家あるいはまた三十万のかんきつ農家にとっては極めて重大なことであったということを考えてみれば、農水省はもっと長期的にこの交渉というものを組み立てていく考えがあってもよかったのじゃないか。もう既に二年半前からアメリカ自由化の旗を掲げて交渉を開始している、ハワイ会談決裂させる、そういう形でここへ追い込んできているわけですね。しかも、一遍帰るというところまでいって、私ども伺っているところでは、引きとめ役をやったのは外務省だ。その間のパイプがアメリカ側とつながっていて、農水省はそのパイプで引き戻ってやったというふうにも言われているのですね。  いずれにしても、今度の対米交渉に各局長がずらっと二十何名もそろって行くという交渉団の編成というものが、本当にこういう交渉にじっくり取り組む団の編成であったのかどうか。アメリカは既に、上院の決議によってUSTRの対日通商代表部というものを早くから設置して、閣僚級の人物を常任で置いてこの交渉に当たってきているのです。それに対して、日本は、国会で忙しい農林大臣が、その日の朝まで国会審議をやって対米交渉に乗り込んで、そこで瞬間的にこの問題を判断して解決できるほど生易しいものではなかったのじゃないか。  そういう点から考えるならば、農水省はまた四年後に同じことを繰り返されるわけです。アメリカとすれば、トランプで最高のカードを持っているようなものです。何回でも自由化要求を出してどんどん引き上げていくことができる。それは日本の畜産農家やかんきつ農家にどんどん打撃を与えていくことになるわけで、この辺で農水省自体が、四年後の対米交渉に備えた、また今後の牛肉かんきつ輸入をにらんだ制度をどういうふうに組んでいくのか、その辺の専門機関をきちんと設置するぐらいの考え方を持っていないと、今度のような轍をまた四年後に繰り返すのじゃないか、私はこう思うのですね。
  36. 山村新治郎

    山村国務大臣 言われるとおり、四年後にはまた同じような問題が起きてまいります。私は、農林水産省としても、四年後にこの問題が起きるということを前提にして、ここで毅然とした態度、そしてまた政策等を打ち立てなければならないと思っております。  しかし、先ほど小川先生が言われましたが、外務省ペースでなんというのは、そんなことはあり得ようがございません。外務省を使ったことは事実です。使ったことは事実ですが、私が決断をして、こういうような交渉をやってこい、ああいうような交渉をやってこいということをいろいろやらせました。  小川先生は言われますけれども、もしこれが壊れちゃって、そして牛肉かんきつに焦点を当てた——これは対米黒字の一%というような、本当に微々たる問題です。それが、何でアメリカがこんなに大騒ぎをするのかというのは、これがいわゆる象徴になっちゃっているのです。アメリカが得をしようと思ったら、何も牛肉かんきつに的を当てる必要はないと思うのです。それは、それほどの政治問題になっちゃっているということでございます。  それと、もう一つわかっていただきたいのは、先生はほっとけばいいのだろうと簡単に言いますけれども、これが暗礁に乗り上げた場合の日本の損害というものを考えていただきたいと思うのです。私は、農業を守るということだけは、これは最低線でございますが、しかし、そのぎりぎりを守る範囲は、やはり日本の国の利益というものも考えていかなければならない、これはひとつ御理解いただきたいと思います。
  37. 小川国彦

    ○小川(国)委員 この交渉が不成立に終わっても、日本の農民は一つも打撃も損害も受けないのですよ。だから、山村農水相は、最後判断中曽根さんと同じように、日米貿易の中での財界が主張するような鉄鋼、電気製品から、先ほどローカルコンテントや課徴金のことも言われましたが、これは全部工業製品に関する問題なんですよ。そういう圧力の中で農産物交渉で屈服せざるを得なかった、私はこれが事実だろうと思うのですよ。だから、そういうことをもっと厳しく反省もして、これからのこうした対米農産物交渉日本農業を守ると日ごろ大臣が言われる仕組みというものをどうつくっていくのか。さっき私が質問したのは、これを冷静にもう一度考えていかなければならないのではないか、こういうふうに私は思います。  その点は私は意見として申し上げて、今後農水省がこういう問題に対してもっと厳しく考えていくということと、それから、私は今度の交渉を見て、防衛と同じように、日本農業も、今の大臣の発言の中に見られるように、もうアメリカの傘の中に入れられつつある。はっきり入れられていると言った方がいいかもしれない。しかし、これから日本農業をどう守っていくかという観点に立てば、ECのとっているような課徴金制度、補助金制度、そういった農業制度を日本の中にきちっと取り入れていく。  牛肉については一応畜産振興事業団がありますが、これも肉の流通をめぐってはとかくのうわさが絶えないわけでありまして、この量がふえて一元輸入をしても、消費者のところでは少しも安くなっていない。大変な暴利を得たという話ばかりが巷間伝わっている。それからオレンジについて言えば、輸入業者だけが太って、消費者に安いオレンジが供されるわけでもなくて、かんきつ生産農民には大打撃を与えるということで、農産物の輸入をめぐっては農民のためにもなってないし、消費者のためにもなっていない。農水省はここのところを、農水産物の輸入制度というものをもう一度根本から見直して、考え直す必要があるんじゃないか。  ECはアメリカと熾烈な闘いをやっていますよ。しかし、その中で、やはり課徴金制度をつくって外国農産物には課徴金をかける、そういう中で得たものを国内農産物の価格保証に回すという形で、七割から八割の国内食糧自給の体制というものをつくり上げて守っている。それから見ると、日本は、牛肉輸入の差益でもかんきつ輸入の差益でも、みんなどこかへ流れていってしまって、生産農民のところでも役に立たないし、消費者の役にも立たないという実態がある。ECに学びながら、入ってくる農産物に対する日本の防壁をどう築いていくのか、ここのところを私はしっかりと農水省に考えてもらいたいと思うのですが、その点はいかがですか。
  38. 山村新治郎

    山村国務大臣 先と言われましたように、日本農業を守るということでいろいろな施策を講ずる、確かに私もこれは同感でございます。一部財界等で言われますが、何でも自由化してしまえばいいんだというのには絶対反対でございます。  ただ、小川先生とちょっと違いますのは、恐らくアメリカ国内においても、今度のこの農産物の交渉に関しては、譲るべきものを譲ってしまったというような感じがあろうと思います。しかし、先生方の立場からすれば、我が国としても何でこんなに譲ってしまったのだ、それは確かに言われるでしょう。ただ、我々は先生の立場と違うのは、基本的にアメリカと仲よくして両方が繁栄していかなければならないんだという政策の違いがございます。しかし、私は、我が国農業を守るという意味でいろいろなことをやっていかなければならないというのは先生と同感でございます。
  39. 小川国彦

    ○小川(国)委員 私は、さらにオレンジの問題についてただしていきたいのですが、御承知のように、オレンジが年一万一千トン、四年で四万四千トンという枠が決まる。これがまた既存の業者に割り当てられていくことになるわけですが、これについて通産省の方では、百二十一社の商社に対する、今いろいろ問題が多い利権的な輸入商社を正すという作業をおやりのようでございますが、どういう資料の提供を求められて、作業はどういう段階に立ち至っているか。
  40. 土田清蔵

    ○土田説明員 ただいま先生からの御質問でございますが、IQホルダー百二十一社からそれぞれ各種の書類の提出を求めておりまして、それと同時に、必要なものにつきましては実地調査及びヒヤリングを行っているところでございます。  その結果、企業といたしましての実態を有していない等問題のあるものも含まれているということが判明いたしましたので、五十九年度の上期から割り当て審査方式の改善を行うことといたしました。
  41. 小川国彦

    ○小川(国)委員 書類提出を求めた種類は、どういうような書類提出を求められたか。それから、五十九年度の上期割り当てはいつ行うお考えか。
  42. 土田清蔵

    ○土田説明員 実態調査を行うに当たりまして私どもの方で求めました書類は、例えて言いますと、登記簿の謄本であるとか、あるいは税務申告書の写しであるとか、あるいは場合によりましては源泉徴収票等といったものをとって行っております。  なお、五十九年度の上期の割り当てにつきましては、先週の四月六日に、とりあえず昨年度同期と同じ割り当て量で輸入発表を行っておりまして、四月十二日に割り当て申請を受け付けることといたしております。
  43. 小川国彦

    ○小川(国)委員 その提出を求めている資料の中に、従来百二十一社によって、実質的には自己の目的に使用するのではないという形で輸入されたものが-今皆さんがいろいろやっている調査が中小商社に対して相当いろいろな打撃を与えている。これで生活をしている者が食えなくなる。誤ったことをしている者は正していかなければならない。しかし、中小業者だけに圧迫のような調査をして、そして大手はダミーをつくって、例えば一位の藤井商事だとか二位のスマル貿易とか、これからまた四万四千トンの枠がふえれば一四%とか七%とか、その中の巨額な枠の割り当てを受ける、こういう人たちのダミーを使っている実態ですね、これは、例えば通関を経た荷の荷割証を見るとかあるいは輸入に当たってのLCの保証等を見れば、ダミーをどういうふうに使ってきたかという実態も明らかになると思いますが、そういう御調査はなすっておりますか。
  44. 土田清蔵

    ○土田説明員 個別にはそこまで立ち入った調査は今回行っておりませんが、先ほど申し上げましたように、五十九年度の上期から割り当て審査方式の改善を行うことといたしております。その中には、具体的に申し上げますと、IQ申請者の企業としての実態をより詳細に把握いたしますために、今までは提出を求めておりませんでしたけれども、先ほど申しました納税申告書等を徴求する等によりまして、これらに基づきます厳しい審査を行うことといたしております。  それから第二点目といたしましては、割り当て枠が利権的取引の対象となり実績配分主義に反することを予防いたしますために、例えて言いますと、営業譲渡によりますところの輸入実績の継承を認めないというような措置、あるいはホルダー間の支配関係を排除する、こういったようなことをこれからの割り当て審査方式の改善ということでやっていきたいと考えております。
  45. 小川国彦

    ○小川(国)委員 今おっしゃられたことも当然必要なことと思いますが、私が申し上げたように、百二十一社の中にダミーと思われる商社がかなりある。実質絞っていけば五十数社だ。ダミーがつぶれていっても、五十数社残った大手はそのまま枠がふえていくわけなんだ。何のことはない、中小をつぶしてまた大手を太らせるだけの話だ。ダミーを使っている大手の調査をなぜやらないのか。その大手の調査は、私が言ったように、港に入ってきた、通関を経た荷の荷割証明書、荷の流れ、それから外国に対する取引のLCの保証、そういったものをきちんと見ればダミーの実態がわかるはずなんです。なぜその肝心な調査をやらないのですか。
  46. 土田清蔵

    ○土田説明員 今までの審査の中におきましても、例えて言いますと、IQに基づいて発給されますILがどういうふうに流れているのか等につきましては既に実態等を把握しておるわけでございまして、今後の問題といたしましては、例えて言いますとダミー関係があるのかないのかといったようなところにまで踏み込んで必要な書類等の提出を求めて、それに基づきまして厳正に審査をしていく、こういうふうに対処したいと考えております。
  47. 小川国彦

    ○小川(国)委員 それまでは割り当ては行わない、こういうふうに理解してよろしいですか。
  48. 土田清蔵

    ○土田説明員 私ども、申請に当たりまして出されました書類をもとに厳正に審査いたした上でIQの発券を行いたい、こういうふうに考えております。
  49. 小川国彦

    ○小川(国)委員 ところで、農林水産大臣に、かなりダミーを使っているということで問題になっている藤井治商事の問題について、ここは今割り当てを受けている八万二千トンの中の約一四%前後の枠を持っておるわけですね。そうすると、一カートン千五百円ぐらいの利益があったというときには、利潤だけで十億ぐらい上げられるわけです。今度の四万四千トンの一四%を単純に考えてみても、五億円ぐらいの利益を与えることになるのですね。ここは、農水省の特殊法人の中央競馬会が一億円余の返還訴訟を起こしている相手なんです。私が前回の質問で、こういったものを正せ、農水省の団体が裁判を起こしているところに通産省が割り当てをしているのはおかしい、こういう質問をしましたら、農水大臣は「私の方は、御存じのとおり、競馬会出入り差しとめ、そういう態度でもおわかりいただけるのじゃないか」ということを最後におっしゃられたわけです。出入りを差しとめるということは、私は大臣の発言をそのまま受け取って、農水省は毅然たる態度をとる。しかも、前回大臣はこの問題では通産省にも検討を申し入れるとおっしゃったのですが、その後、藤井治商事は競走馬を持っておりまして、現在登録されているのが五頭、フジノタイヨー、フジノレイメイ、フジノトウリュウ、フジノヤマザクラ、フジノカイウン。このうち、フジノタイヨーはことしに入って一月五日、二月十二日、三月十一日、三月二十四日、四回出まして、最高は八百七十万の賞金から二百六十万、四百二十万、五百六十万、一着、三着、二着、二着、中山、東京、中山、中山でこの賞を取っている。フジノレイメイもことしに入って五回、フジノトウリュウも五回、フジノヤマザクラも二回、賞金だけで六千万円稼いでいるのですね。そうすると、中央競馬会に出入りを差しとめたと大臣は答弁しているのですよ。競馬会に出入りを差しとめさせたところがこういうふうに競走馬を出走させて賞金をもらっている。ですから、やはりこういうところは農水省がきちんとけじめをつけると同時に、通産省に対してもけじめをつけさせる、こういう措置が必要ではないかと思うのですが……。
  50. 山村新治郎

    山村国務大臣 まず一つ違っておりますのは、私が通産省に対して検討を申しつけるということは言ったことはありません。ひとつ速記を調べていただきたいと思います。  それともう一つ、農林水産省に出入りを差しとめると言いましたが、競馬会とは言っておりませんので、これらについてはどういうぐあいかを畜産局長の方からひとつ……。
  51. 石川弘

    石川(弘)政府委員 大臣が出入りを差しとめると申し上げたのは、競馬会の取引の相手として、競走馬の購入とかということについて出入りを差しとめるという御趣旨で御発言なさっていると私は理解をいたしております。  それから、今先生のおっしゃいました競走馬のことでございますが、競走馬の馬主として登録されるかどうかということにつきましては、先生もよく御承知のように、登録に関するいろいろな規則等がございまして、公正な競馬の確保が図られるかどうかとか、準禁治産とか禁治産はだめだとか、あるいは懲役のいろいろな刑に処せられた者はいけないという、いわば登録してはいけない資格というのがございます。これは法令に従いまして登録ができませんが、御承知のように、現在競馬会と藤井治商事との間では民事訴訟上損害賠償請求の訴訟をいたしておりますが、そういうことは今私が申し上げました登録を拒否するとか登録を抹消するといったような条項に適合しておりませんので、馬主としては現在認められておりまして、したがいまして、その馬が発走して賞金をもらっているというのが現状でございます。  かねがね御指摘の競走馬の輸入問題に関する藤井商事との関係につきましては、裁判上私どもは損害賠償をあくまで追及をするつもりでございます。
  52. 小川国彦

    ○小川(国)委員 山村大臣の方の御答弁、三月二十七日の農林水産委員会で、私のこういう矛盾は正すべきではないかということに対して、「通産省の方とよく相談させます。」こういう答弁をされましたね。これが一つ。それから二点目は、「私の方は、御存じのとおり、競馬会出入り差しとめ、」こういうふうに答弁されているのですよ。ですから、この点は、やはり答弁の趣旨に沿った通産省との協議、それから競馬会出入り差しとめという方針を私は全体に一貫するようにしていただきたいと思うのです。  今、畜産局長の答弁は聞きました。大臣も同じことを言われるのじゃないかと思うのですが、競走馬を出走させるには馬主の審議会にかけて、中央競馬会理事長が馬主として登録させる、馬主の登録ができるとその馬主の持っている馬が出走できる、こういうことになるわけです。しかし、その馬主の登録というのは最終的には中央競馬会の理事長が決めているのですよ。その中央競馬会の理事長が一億円返せと裁判を起こしている。話し合いで返さない相手なのですね。内村理事長は、重大な背信行為があった相手だから裁判を起こしている、こういうふうにこの前の国会で答えているのですね。重大な背信行為を犯した相手を裁判で訴えていながら、こっちの方の登録資格の手続では禁治産者、準禁治産者とか、私もその規定を見ましたよ、その規定には該当しないから認めるんだ、こういうのでは、これも世間の常識から考えて通用しないのじゃないか。通産省がこの前答弁していますように、農水省の方の競馬会が告訴していることと通関手続をきちっとやっていることとは別だ、こう言うのです。農水省が、今度その出走馬の問題があったら、登録をする手続とこっちで競走馬の輸入でだましたこととは別だ、こういう言い方になってしまうと、相手は皆一人なのですよ。やっているのは一人。だから、私は、法律の条文が規則がどうこうであるじゃなくて、世間の常識から見れば、訴えている相手にまた利益を与える行為を認めるというのは民間にはあり得ないと思うのですよ、社会常識上。だが、役所というのは法律規則だけしか頭にないから、一般常識がかなり欠けている面が私はあると思うのですよ。  ですから、世間から見るとこういう業者、ダミーを持ってオレンジ業界に君臨して、そして一方では競走馬の輸入で大変国に迷惑をかけている、そういうのを放置しておくということは許されないのじゃないか。ですから、こういう点は、農水大臣としてもこの前後の経過をよく調べていただいて、全体的な視野に立っていただきたい。オレンジ輸入割り当てが行われる際に、そういった人が政治的背景を力として今までの割り当て額の上にまた大きな割り当て権を持っていく、しかもそういうものに対する実態調査をまだやってない、こういう形があるわけですね。私は、オレンジ輸入割り当て制度というものも、この制度自体、農民のためにならない、輸入業者の利権にこそなれ消費者のためにもならない、農民のためにもならない制度だと思うのです。農水省は、割り当ては通産省で、我々は流通行政だけだと言うのだけれども、流通行政から見てもちっとも安くはなっていないのです。こういう点を考えますと、この差益というものを、私がさっき言ったように課徴金でもって農水省が取ってかんきつ農民の価格補償に回すのなら、私は農水省らしいと思うのですよ。目をつぶっているのじゃなくて、そういう利権的な割り当て制度をなくしていく。私は、そのくらいの考え方を農水省に持ってほしい、こういうふうに思うのです。
  53. 山村新治郎

    山村国務大臣 先生の言われるのはよくわかります。ただ、先生は質問上手ですから、質問を聞いていると何だか私が通産省に厳重に抗議をしに行くような、しちゃったというようなことで、私の速記録を見ていただくとおわかりですけれども、そういうことでございまして、ただ、その場合に役所が、役所というよりも我々の方でそういうような裁判になったから他の役所にまで口を出していいのかというと、なかなか難しい問題はあろうと思います。というのは、先生、社会常識的に言うとそうだとおっしゃいますが、何か大臣という肩書きがあると、ほかの省にも何か言っていいのか、そこは常識的にと言われますけれども、どこが限度か、これは率直な私の考えです。もちろんこれはそれなりに、私は私なりに考えていきたいと思っております。
  54. 小川国彦

    ○小川(国)委員 時間が参りましたので、これで終わります。
  55. 阿部文男

    阿部委員長 斎藤実君。
  56. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 最初に、山村農水大臣にお伺いいたします。  今回の日米交渉に当たられまして、この委員会でも日米交渉に当たって農民の立場に立って交渉してくるという決意の表明もありましたし、私どもはこの農水大臣の強い決意に大変期待をしておりました。えらい心痛で大分苦労をしてやせられたという話を聞いております。大変御苦労さまでした。  そこでお尋ねいたしますが、山村農水大臣農林水産大臣として交渉に当たられたのか、また中曽根総理大臣から全権を委任されて国務大臣として日米の友好関係を最優先にして交渉に当たられたのか、これが一つ大事な問題でございます。  率直に申し上げまして、今回の交渉日米関係を重視をした、したがって、日本農業の将来を犠牲にするような妥協をしてきたのではないかというふうに私も思うし、また、日本農業団体あるいは農業者の方もそう考えていらっしゃるわけです。交渉ですから、日米関係を重視するということになれば日本側が譲歩しなければならぬ、しかし、反面に日本農業犠牲にしないというのであれば、これは絶対に譲ってはならないことだ。大臣は相反する立場で交渉に臨まれた、非常に難しい立場に立たされたと私は思うのです。その二つの面、どういう立場で交渉に当たられたのかということが一つ。  それから、四年間年間六千九百トンということが決まったわけですが、交渉に当たられまして、結果はこうなりましたけれども最小限度これまではどうにも譲ってはならぬという腹づもりがあったと思うのですが、それを聞かせていただきたい。
  57. 山村新治郎

    山村国務大臣 私としては、農林水産大臣としてこの日米農産物交渉に当たりました。そして、先生御存じのとおり、二日間交渉をしまして、うまくいくのではないかということで三日目まで一日延ばしました。が、その時点では、これは日本農業を守れない、それくらいの大きな開きがありましたので、拒否いたしました。しかし、水面下の動き等いろいろございまして、これならば守れる、そしてこれを守ることがまた日米関係をよくするものであるというような考えもございまして、妥結をいたしました。農林水産大臣としての立場は貫いてまいったつもりでございます。
  58. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 大臣日本農水大臣として日本農業を守るために一貫した主張を貫いてきたという答弁でございますが、大臣交渉を終えた後に記者会見で、今回の交渉結果が日本農業に大きな支障を及ぼすものではない、そう確信しているというふうに新聞発表にあるわけでございますが、農業団体並びに農業者の方々は、牛肉オレンジで大幅に輸入枠を拡大した、極めて遺憾でふんまんにたえないという声明を出しておるわけであります。高級牛肉を四年間で二万七千六百トン輸入を増大させて、オレンジを四年間毎年一万一千トン輸入を拡大した、これで日本農業に大きな支障はないという根拠は何でしょうか。
  59. 山村新治郎

    山村国務大臣 当委員会の皆さんの御協力もいただきまして、国会開会中にもかかわらず三局長を同行させていただきました。先と言われますように、初めの腹づもりとはかなり違ったものでございました。そして、その間におきまして、畜産局長農蚕園芸局長にいろいろ意見も聞きました。聞きまして、これならばと思って決断をいたしたわけでございます。
  60. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 大臣、最初の腹づもりと大分違うというお話がございましたが、その最初の腹づもりをちょっとここで言っていただけませんか、大事なことですから。
  61. 山村新治郎

    山村国務大臣 最初の腹づもりというのは、日本農業がもっと楽な立場でいけるようにというようなつもりでございました。しかし、その腹づもりという交渉内容は、ブロック通商代表とこの妥結後に経過については公表しないことという約束がございますので、ひとつお許しをいただきたいと思います。
  62. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 大臣、一九八〇年から一九八三年の三年間で高級牛肉は一万トン輸入しておるわけですね。ですから、三年間で一万トンですから、年間三千三百トンですね。ところが、これから四年間二万七千六百トン、年間六千九百トンということになりますと、二倍以上になってくるわけです。そうでしょう。今までは年間三千三百トンであったものが六千九百トンということだと、二倍以上になる。しかも、これはアメリカとのあれですけれども、今度は豪州との交渉がまた残っておる。これだけ大幅にふやして、じゃ豪州の方はどうなるかというのが残っておると思うのです。これで二倍以上に輸入枠を拡大して農家に影響がないということは理解できないのです。これはひとつ根拠を数字で示していただけませんか。これは納得できない。
  63. 石川弘

    石川(弘)政府委員 私どもは、国内への影響ということから考えますと、問題は総枠でございます。総枠をどのようにするかということを頭に置きながら、その総枠の中でいわゆるハイクォリティービーフというものをどれぐらいにするかということで国内への影響度を考えているわけでございます。  私どもが頭に置いておりますものは、総枠についてはこれからの日豪交渉でございますのでお許しをいただきたいわけでございますが、これにつきましてはいろいろな需給の見通しとか現在あります生産の可能性、こういうもので一応の水準を置いておりまして、その水準の中で高級牛肉をある程度伸ばす。私ども当初から、一般の枠の伸ばし方よりも高級牛肉伸び方が高い、これは現実にここ数年もいわば高級牛肉と言われるものの需要伸びておりますから、これの伸ばし方を頭に置いておりまして、その割合は全体の伸びよりもかなり高いものを想定しておったわけでございますが、その想定しておりましたものをある程度上回ったという趣旨でございまして、決してそのことが総枠を著しく上回らせるような決着をつけるつもりではございません。それは総枠の伸びの話がある程度詰めにくくなる、総枠を詰めるときに非常に困難な要素ができるということではございますけれども、全体の枠はこれからまた粘り強く交渉をするつもりでございます。
  64. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 大臣、基本的なことを私はお尋ねをしたいと思うのですが、牛肉国内生産と輸入についての基本的な考えを大臣から承りたいと思います。  酪農振興については、これは何とかしなければならぬということで、十月に「酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針」というのが御承知のように公表されました。そこで「牛乳乳製品及び牛肉の需給については、増大する需要に対応し、国民への安定供給を図るため、合理的な国内生産による供給を基本としつつ、国内生産で不足する部分については需給の動向に十分配慮して輸入を適切に行う」こういうふうに基本方針には述べられておるわけでございます。この趣旨からいきますと、今回の輸入枠の拡大の数字は妥当というものとは大分違うし、どうも基本方針と違うような考えに思えて仕方がないのです。大臣も基本方針の中で、今私が申し上げましたように国内生産で不足する分については輸入を適切に行う、こういうことを言っておる。今回のように、今までと違った二倍以上の輸入枠拡大をするということについては、この趣旨に反するのではないか。いかがですか。
  65. 山村新治郎

    山村国務大臣 牛肉輸入につきましては、総枠という問題もございます。これらにつきまして、実は同行していただいた石川局長といろいろ相談いたしまして御意見を伺いました。そして、最終的に私はこれならばということでやったわけでございますので、詳細は局長の方から説明いたします。
  66. 石川弘

    石川(弘)政府委員 総枠を決めることにつきましては、私ども、基本方針に書いてあるような趣旨が貫徹できるようにこれからも努力するつもりでございます。  それを決めます際に、総枠とハイクォリティービーフの割合ということにつきましては、当初からハイクォリティービーフが少し伸び率が高いという前提でいろいろ組んでおりましたけれども、結論的に言いますと、その伸び率が相当高く出ている。しかしながら、ハイクォリティービーフというのは、御承知のようにこれはアメリカに対する枠ではございませんで、今までもそうでございましたが、グローバルなベースでハイクォリティービーフをつくる、グローバルベースの中でアメリカが比較的シェアが高かったというだけでございます。したがいまして、私どもは、その他枠とハイクォリティービーフの両側について、いずれもグローバルに競争して入れるということを頭に入れておりますので、これはそういう意味で、日米、日豪という国別ではなくて、日米、日豪いずれも協定を結びますが、その中で、ハイクォリティービーフについて日米取り決め、総枠について日豪で取り決めるという今までの基本的態度を崩しておりませんので、この伸びが高いというのは事実でございますが、国別に輸入量がどうなるかということはもう一つ別の問題があるわけでございます。
  67. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 大臣、先ほどもずっと同僚委員の質疑を聞いておりまして、先ほど日本農業を守る立場に立って交渉に当たった、交渉だから、最終決断で六千九百トンというのを決めたという。アメリカ側から強い要請によって押し切られたというふうに私は理解しているのですが、大臣は農民の立場に立って交渉したと言われる。それでは、これだけ高級牛肉が二倍以上入ってくる、畜産農家に対して一体どういう手だて、どういう対策を立てられるのか。今、農民の立場に立って交渉されたという大臣のお話がございましたが、その点についてお尋ねしたい。
  68. 山村新治郎

    山村国務大臣 私としては、今まで畜産局長の意見を伺いながら、この牛肉の問題につきましては私が意見を伺って、そして私が最終的に決めたわけでございます。そしてまた、今回、私は畜産業に対しても努力をすればやっていけるということを思っておりますが、しかし、今回の農産物交渉に当たりましても、実は私が全権委任をされましたときに、総理に対して、私は私なりに一生懸命これならばということでやってくるけれども、不測の事態が生じた場合には特別な計らいをしてもらわなくちゃ困るということの約束をとりまして出かけたわけでございます。私は絶対大丈夫と思っておりますが、もし不測な事態が生じた場合には、それに対応する対策というものは十分考えられると思っております。
  69. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 大臣、不測の事態になった場合には対策を考えるという御答弁がございましたが、具体的に例えばどういう対策をお考えになっているのか。もうここまで二倍以上の枠を拡大したのですから、生産者にとっては大きな影響を与えるということは私は間違いないと思います。では具体的にどういうことをこれから考えておられるのか、お尋ねしたい。
  70. 石川弘

    石川(弘)政府委員 重ねて申し上げますが、ハイクォリティビーフのボリューム自体でございますと、十分今の需給の中でも問題のない数字と私は思っております。  問題は、これを上回るもので総枠を決定することになろうかと思いますが、その総枠の量の決め方においても、私どもは今までに考えております需要伸び方、それから国内生産が合理的に振興されるであろう、その振興されてつくられる数量、この差額を総枠にするという考えでございます。それをやりまして、まず、御承知のように牛肉の場合は価格安定制度を持っておりますから、その価格安定制度の中で運用がされ、したがいまして、例えば、今までそういうことがございませんが、一定の価格以下になるということでございますれば、当然のこととして畜産振興事業団が買い入れをするという形で暴落を防げるわけでございます。  しかし、私どもは今論議をしておりますような数量の範囲でそういう事態が起こるとは考えておりません。当然そういう事態が起こる前に、事業団が持っております牛肉の放出のボリュームをコントロールすることによってそれは可能だと考えております。これは四年間という期間でございますから、四年間の中にはいろいろな需要の変動があろうかと思います。需要の変動に対応する対応の仕方といたしましては、御承知のようにこういう決められますこと自体についても、例えば東京ラウンド交渉の中では不測の事態があります場合には量を変動できるということがございまして、過去の経験におきましても、昭和五十六年度の輸入を前年に比べて減らしたということもございます。逆に昭和五十四年とか五十五年は、当初予想をしておりました数量を上回る輸入をしたということもございます。  したがいまして、私どもは、この価格安定制度を慎重に運用すれば、この慎重に運用すればという前提は今の高級牛肉の枠じゃございませんで、総枠が決まった段階でその総枠の範囲を慎重に運用すれば不測の事態は起こらないと思っておるわけでございますが、しかし、需要伸びるであろうとか国内生産がこうなるであろうというのはあくまでも予測でございます。例えば牛肉についても、需要が大変停滞するということもないとは言えないわけでございまして、そういう事態になりました場合に、価格操作以外にいろいろと生産振興のための施策等につきましては、大臣御発言がございましたように、今までも生産振興等のための施策、例えば過去におきましても生産振興以外にも農家の負債整理の問題とかいろいろございましたが、そういういろいろな事態があって、これを行政的に対応するというのであれば、この価格制度の運用以外にもいろいろと財源も使って諸対策も考えようというのが大臣の御発言でございます。
  71. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 大臣日米交渉は終わりましたが、今後対オーストラリアとの交渉になるわけでございますが、一般牛肉についても大幅な輸入増加になるのではないか。これは生産者が大変懸念をしておるところでございまして、輸入が増大するということになるともう決定的な打撃を与えるわけでございます。  心配していることは、輸入枠の中で、昭和五十八年の輸入割り当て量が十四万一千トンでございますね。今後七年間に一万三千トンから六万二千トン輸入がふえることになって、最大に見ても毎年九千トンしかふやせないという計算になるわけですが、今回高級牛肉で六千九百トン割り当てたということになると、残り一般肉は二千百トンということになる。これはまた交渉の大きなネックになるのではないかと私は心配しておるわけですが、このオーストラリアとの交渉に当たりましてどういう態度で臨むのか、大臣から伺いたいと思います。
  72. 山村新治郎

    山村国務大臣 オーストラリアとは現在協議中でございます。そして、この協議に当たりまして、牛肉輸入国内生産で不足する分について総枠で行うということを基本にしてまいります。
  73. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 時間が参りましたのでこれで終わりますけれども、どうか我が国の畜産農民を守る立場でこれから真剣に取り組んで、打撃を与えないように強く施策を要望申し上げまして、終わらせていただきます。
  74. 阿部文男

    阿部委員長 次に、駒谷明君。
  75. 駒谷明

    ○駒谷委員 先輩の斎藤委員から農産物交渉の問題についてお尋ねがあったわけでございますが、私も、今回の日米農産物交渉に際しまして、山村農水大臣初め三局長、大変御苦労なさって交渉に当たられた点について敬意を表するわけでございます。しかし、先ほどからお尋ねをいたしておりますように、今回の日米農産物交渉協議合意におきます内容については、生産者でございます農業団体、農家の皆さん、大変これを不満と思っておるところでございます。そういう観点から、重複を避けましてお尋ねを二、三いたしたいと思います。  最初に、今回の日米農産物交渉決着に当たりまして、現地の時間で八日、ワシントンにおきまして農水大臣が正式に談話を発表なさっていらっしゃる報道がございます。その中に、この決着の実施により、今後の農政の推進並びに農家経済の安定に大きな支障を及ぼさないと確信をしておる、万一不測の事態が発生するような場合には直ちに必要な措置を講じる方針であるので、生産者各位は、動揺することなく生産活動に努力をしていただきたい、これは全文の中の一部でございますけれども、そのように報ぜられておるわけでございます。  この点につきまして、現在大臣はどのような御心境でいらっしゃいますか、確認をいたしたいと思っております。
  76. 山村新治郎

    山村国務大臣 先生おっしゃいますように、確かに厳しい妥結状況でございます。しかし、私としましては、農林水産大臣といたしまして、我が国農業を守るという立場を堅持して交渉に当たってまいったつもりでございます。最終的には、先ほど申し上げましたように、石川畜産局長小島農蚕園芸局長の意見等もいろいろ聞きながら、これならば農業に大きな支障を起こさないという私の最終決断でこれを行いました。いろいろ厳しい条件ではございますが、我が国アメリカとの間で今後四年間これを安定的に行うということ、そしてまた、これと同時に十三品目の問題もございます。これらを同時解決することによって、農民に安心して農業に励んでいただけるということを考えましてやった次第でございます。
  77. 駒谷明

    ○駒谷委員 そこで、この交渉に当たられる前に、この委員会におきまして交渉に当たる心構えについて答弁があったわけでございます。牛肉輸入量の問題については、国内生産に影響を及ぼさないよう、需要国内生産の間で不足するものを計画的に輸入するという考え方を基本にして交渉に当たる、そのような答弁があったわけでございますが、この日米交渉合意をいたしました現時点におきます考え方、また将来この交渉に当たります今後の問題としてこの考え方は変わりがないのかどうか、お伺いいたします。
  78. 山村新治郎

    山村国務大臣 私は、農産物の輸入に関しましては、国内生産で不足する分を輸入するという基本方針は変わらずにやってまいりたいと思います。
  79. 駒谷明

    ○駒谷委員 もう一点この委員会で御答弁があったわけでございますけれども牛肉の需給計画の中におきまして、大体国内生産が七割程度輸入は三割程度というのが現在の枠でございますが、この枠について現在並びに将来におきます考え方について変わりがないのかどうか、その点もお伺いいたします。
  80. 石川弘

    石川(弘)政府委員 過去の例を引いて御説明するといいと思いますので若干申し上げますが、私どもおおむね七割、三割というバランスでわかりやすく御説明をいたしておりますけれども、実は国内における生産もかなり変動しているわけでございます。そういう意味で申しますと、昭和五十四年度は国内生産が沈滞し、輸入をうんと大幅にふやした年でございますが、その年は六八%でございます。それから逆に最近で高いのは、乳牛の駄牛淘汰を進めました結果、国内生産が伸び輸入をむしろ減らしました年がございます。五十六年度でございますが、このときは七五%でございます。上下相当開くわけでございまして、私ども七、三と言っておりますのは、大体そういうことを頭に置いた数字でございます。  したがいまして、今後におきましても、そういう単年度単年度で見ますと、生産が沈滞いたしますと需給といいますか、国内生産の比率は下がりますし、その逆のこともございますので、こういうことが今後もあり得るということを頭に置いて考えますと、おおむね七、三という関係は、あるいはそれが若干変わるかもしれませんが、例えばけた違いになることはないという意味で、先ほど御質問のありましたような数字に大体落ちつくのではないか。決してこれは何%というような細かいところまで固定されるものではないことは過去においてもそのとおりでございますので、そういう意味で御理解をいただきたいと思います。
  81. 駒谷明

    ○駒谷委員 今二点の問題について確認をいたしましたけれども、そういたしますと、今回の交渉におきます牛肉四年間で二万七千六百トン、そしてかんきつ類一年の増が一万一千トン、四年間で四万四千トン、この問題をとらえてみましても、先ほど大臣が明確にされました、農業経済の安定そして農政の推進に大きな支障を及ぼさないと確信をしている、そのように言われるわけでございますが、先ほど畜産局長からのお話がありましたけれども、今後の日米交渉の総枠の問題等を踏まえていきますと、この合意の問題については米国にかなり押しやられたのではないか、日本農業に対して大変厳しい合意をしたのではないか、そのように思われるわけでございます。その点についてどのように考えておられるか、お伺いいたします。
  82. 山村新治郎

    山村国務大臣 先生おっしゃるように、確かに厳しい数字でございます。ただ、今度の交渉の間に一遍は帰国をするというようなことも決意いたしました。そして、今月中にもう一遍交渉に臨むというようなことも考えたわけでございます。なぜそれを考えたかといいますと、余りにもアメリカ側要求というものが大きくて、これでは、私、農林水産大臣として日本農業を守るという立場はとても貫けないということで、それを帰国をしてと思ったわけでございます。  しかし、アメリカ側日本側も、もしこの農産物交渉決裂した場合に両国に及ぼす影響というものを考えた場合に、決裂という場面は両国に余りにも大きな損失を与えるのではないかということで、いろいろ水面下の動きでございますが、双方からひとりでに歩み寄りがございまして、そして私として、今回のこの二万七千六百、一万一千というもの、これならば我が国農業を守れるという信念のもとに、アメリカ側我が国要求というものを、最終的には、向こう側は大きな数字だったのですが、それが縮まりまして、そして妥結を見たということでございます。
  83. 駒谷明

    ○駒谷委員 そこの点が、やはり農業団体並びに農家の皆さんには大変不満な形として今大きく出ておるところでございます。  そこで、畜産局長にお尋ねをいたしますが、五十九年度以降の需要量の伸び、これは六十五年度長期見通しについて平均どのように伸びていくか、これについての伸び率をどの程度に見込まれておられますか。また、六十五年度の消費量、すなわち需要量はどの程度に見込まれておられるのか、お伺いをいたします。
  84. 石川弘

    石川(弘)政府委員 六十五年見通しといいますのはあくまで見通してございまして、既に公表いたしておりますので公表しました数字を申しますと、六十五年度の需要量は、公表は枝肉で公表いたしておりますので、需要の下限を八十五万トン、需要の上限を九十二万トンというのを想定しております。それから生産につきましては、六十五年の生産量を六十三万トン、これも枝肉でございますが、そういう公表をいたしております。  これは、輸入量はよく部分肉の話が、実は今度の四年間二万七千六百トンも部分肉でございますから、部分肉に直して申し上げますと、需要の下限が五十九万四千トン、上限が六十四万四千トンになりますし、それから生産につきまして六十三万トンと申しましたのは四十四万トン、これは公表しております数字でございます。
  85. 駒谷明

    ○駒谷委員 現在、日豪の交渉の経過で輸入の総枠が決まっておりませんけれども、現段階におきまして、先ほどの消費伸び、そして生産の状況等を踏まえて再度お伺いいたします。  先ほどから申し上げておりますように、国内産は基準として大体七〇%、これは出入りがあるというお話でございます。そして輸入は三〇%枠、この枠の問題について影響が出てこないかどうか、その点についてはどのようにお考えでございますか。
  86. 石川弘

    石川(弘)政府委員 今後の日豪交渉になりますと、これは四年間という、六十二年ぐらいを見通したところでいろいろと論議をするわけでございます。そうなりますと、長期見通しということも一つの参考要件でございますけれども、それ以外に、現実的な日本における現在の生産の頭数、これは少なくとも現在いる牛の数はわかっておるわけでございますから、この牛の数がどう転がっていくかという、もっと具体的な計算方法もございます。したがいまして、先生がおっしゃいました七対三という比率をとめて何か考え方をつくるのではなくて、より具体的な需要とかより具体的な生産ということを予測しまして、その生産と需要との差ということを推算するつもりでございまして、最初から輸入と生産の割合をとめて何かの結論を出すという手法をとるつもりではございません。
  87. 駒谷明

    ○駒谷委員 それでは、もう一点お尋ねをいたします。  現在、我が国牛肉の価格は大変高いと言われておるわけでございますけれども、生産農家におきましては、経営規模の拡大、そして生産性の向上に今大変努力をされておるわけでございます。また、農水省におきましても、EC諸国並みの牛肉価格水準に近づこうということで、これを大きな目標として種々施策が展開をされているところでございます。そういたしますと、そのような両々相まった一つの生産性の向上、そして生産コストの低下という問題等を踏まえながら、六十五年以降、国内におきます牛肉の自給の状況国内の自給率は将来どのようにしていくか、その方向づけについてはどのようにお考えでありますか。
  88. 石川弘

    石川(弘)政府委員 私ども牛肉需要が比較的伸びているというのは、他の諸物価に比べて大変安定をしているとよく言うのでございますが、五十年を一〇〇としました乳用雄牛の価格というのは、五十四年以外は全部一〇〇以下でございます。ということは、卸売物価に関してはその間に一三五の上昇があるわけですが、上がってない、そういう条件の中で、他の食肉の中で牛肉が比較的伸びているという考えをしているわけでございます。  牛肉のいわば需要伸びますためには、先ほど先生もおっしゃいましたように、なるべくその価格を安定させて消費者に買いやすい条件をつくることが必要であると考えておりますので、そういう条件が維持できるのであれば、今ありますような国内生産と輸入関係はそう大きく変わらないだろう。例えば非常に価格を上げていくということになって、その価格を下げるために輸入量をふやすようにするということになりますと、輸入国内生産の比率は変わるといいますか、輸入比率は上がると思いますが、価格を安定させてなるべく国内生産と輸入の比率を大きくは変えない、そのためには国内生産を合理化をして、比較的安定した価格で国内生産をしていただく必要があろうかと私は思います。
  89. 駒谷明

    ○駒谷委員 自給率に対するターゲットは、六十五年の目標はありませんか。
  90. 石川弘

    石川(弘)政府委員 計算だけをすれば一応のことはあるわけでございますが、この自給のときの見通しが、需要量を上限、下限に分けて計算をしております。したがいまして、その上下限までつけて自給率をわざわざ決めるということは余り意味がないのではないかな、大体そういう水準で来ておりますけれども、ここまでを自給しなければならぬという形でつくることにはむしろ問題があるわけでございまして、私が先ほどから申しておりますように、国内の生産がそういう水準に耐えるだけの合理化努力をすれば、逆に言いますと今と余り変わらないだろうということでございます。
  91. 駒谷明

    ○駒谷委員 そこで、日米交渉の問題についてお伺いをいたしますけれども、今回の日米交渉の政治決着の結果、オーストラリアの輸入数量について、オーストラリア政府より輸入シェアの維持を含めた輸入枠の拡大、これを求めてくることは必至であろうと思うわけであります。  実は、九日の参議院の予算委員会締めくくり総括の質疑におきまして、中曽根総理は、オーストラリアのホーク首相にさきに会った際に、オーストラリアを犠牲にしてこの問題の解決は行わない、そのように明言をしたとその委員会で発言があるわけでございます。現在、オーストラリアとアメリカとの輸入の総枠におきますシェアはどのように推移をしておりますか、お伺いしたいと思います。
  92. 石川弘

    石川(弘)政府委員 シェアといいますのは何か初めからあるわけではございませんで、かって少なくともアメリカがハイクォリティービーフを輸出しなかった時代があるわけでございます。そのときは、一〇〇%ではございませんけれども、ほとんどオーストラリアでございます。その後、御承知のように五十八年度枠で申しますと、現在十四万一千トンが総枠でございまして、総枠十四万一千トンに対して三万八百トンが高級牛肉でございますが、この三万八百トンというのは別にアメリカではございませんで、三万八百トンの中のほぼ九割程度アメリカで、あとの一割が豪州その他でございます。  したがいまして、よく御承知のことと思いますが、日本政府として日豪、日米協定をいたしますが、そのことは、豪州の数量割合交渉するとか、アメリカ数量割合交渉しているのではございませんで、アメリカとは、ハイクォリティービーフと言われます、穀物を一定期間食べさせて比較的品質を高めた肉の全体の数量、これは協定上もグローバルでどれだけと約束をしておりますし、豪州との約束の中では、総枠をどうしようか、もちろんハイクォリティーを含めた総枠をどうしようかということを約束しようとしているわけでございます。したがいまして、これは一般枠におきましても高級枠におきましても、アメリカ、豪州、ニュージーランドその他の国々は競争しながらそこでやれるという場があるわけでございますので、私どもはそういうシェア論につきましては、今までも決してシェアを認めたことは一度もございませんし、向こうがかつて伝統的輸出国として日本牛肉供給の大宗を占めたということは私どもは理解をいたしておりますけれども、決して一定の国のシェアを認めたことはございません。
  93. 駒谷明

    ○駒谷委員 こちらの方はそういう考え方であったとしても、豪州の方では、アメリカ輸入枠の拡大が今回二倍近くに伸びたという問題等踏まえて、やはりそういう問題を投げかけてくるのではないか、そのように思うわけでありますけれども、そうなりますと、総枠においてやはり輸入枠を拡大しなければならない。これは、先ほどからたびたび申し上げております国内の生産に大きな割り込みをするのではないか。一番大きな問題は、そういうことによって現在の需給量が大きく過剰の状態になる、一番大きな心配があるわけでございます。  この予算委員会におきまして、オーストラリアについて、国内需要動向等について先方の理解を得たい、このような答弁を官房長がなさっていらっしゃるようでありますが、この理解を得たいという考え方、これは一体どういう考え方になっておりますのか、その点についてお伺いをしたいと思います。
  94. 石川弘

    石川(弘)政府委員 多分こういう御趣旨だと思いますが、要するにこれは協定上の問題でございますから、何かけんか腰でやるということではなくて、お互いに話し合いをつけたいという趣旨だと思います。  豪州との関係を申しますと、総枠に関する輸入協定は既に丸一年以上、昨年の三月末で豪州との間は切れているわけでございます。アメリカとはついこの間切れたわけでございますが、豪州との間では一年以上前に切れているのですが、豪州との間では話し合いによりまして五十八年度の総枠というもので十四万一千トンということを認めているわけでございます。  それからシェア論で申しますならば、十四万一千トンという増加のときにも、六千トンの総枠増加の中で三千三百トンがハイクォリティーでございましたから、そういう意味ではシェアは若干は変わっているわけでございますけれども、そういう意味では豪州政府は総枠について増加を求めることは当然でございますが、何かハイクォリティーをもとにして、だから総枠をどうしようというのは、そういう御議論は、向こうはあるとしても、私どもとすればあり得ない議論でございます。私どもは総枠がどうあるかということを頭に置いて、その中でハイクォリティーはどれくらいか、しかもそのことは、総枠についても競争的でありますと同時に、ハイクォリティーの枠の中でも競争的に入ってくるわけでございますから、私どもは今申し上げたようなことを何度も何度もお話をして、豪州との間でも、これは日本にとっても最大の輸出国でございます、それから伝統的な一番長い間輸出をしていただいている国でもございますので、そういうことを全部頭に置いて交渉するつもりでございます。  念のため申し上げますが、豪州の量としての最大の輸出国はアメリカでございます。アメリカについては、輸出量について大変大幅な変動をいたしております。それから韓国等につきましても輸出量が相当程度動いておりますが、日本の場合は非常に着実にふえているという意味では、数少ない国でございます。そのようなことを十分説明をしながら、日豪の関係話し合いがつくようにしたいと思っております。
  95. 駒谷明

    ○駒谷委員 時間が来たようでございますので、これで質問を終わらしていただきますけれども、後に控えた問題、それからこの日米交渉の後の四年後の問題等、日本農業にとっては大変深刻な問題がこれから来るわけでございます。したがいまして、今回の日豪関係交渉に当たりましても、この農業を守る立場というものを厳しく自分自身の心の中にとめていただいて交渉に当たっていただきたいことを特にお願いをいたしまして、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  96. 阿部文男

    阿部委員長 神田厚君。
  97. 神田厚

    ○神田委員 大臣初め関係の皆さん方、大変御苦労さまでございました。非常に難交渉で、御苦労が多かったわけであります。しかしながら、交渉の結果は大幅譲歩というふうな印象を強く持たされたわけでありまして、今後の日本の畜産行政に対しまして非常に心配な面がたくさん出てきております。  ところで、そういう観点に立ちまして大臣に御質問を申し上げますが、交渉の経過は公表しないというような形になっているようでありますが、主にアメリカ側日本に大幅譲歩を迫った論拠というものはどういうことであったのか、その点をひとつお伺いいたします。
  98. 山村新治郎

    山村国務大臣 アメリカ側といたしましては、我々が行って驚きましたのは、自由化というものを取り下げたということは大きく譲歩をしたんだということが前提でございまして、今度の交渉に一番我々が戸惑いましたのもそれでございます。日本国内で想像していたとは全然違いまして、こんな大きいものを譲ったんだからひとつ枠の拡大を大きくしてくれということでございまして、一番戸惑いましたのはこのことでございました。
  99. 神田厚

    ○神田委員 大臣が行かれる数日前でしょうか、アメリカでこの問題について公聴会が開かれたようでありますが、そのところでの主な意見というのはどういうことであったのでありましょうか。
  100. 佐野宏哉

    佐野政府委員 四月二日に例のダンフォースが委員長をやっております小委員会で公聴会が行われたわけでございますが、一般的に政府側以外の証言を行った人たちの議論の基調は、日本輸入政策というのは不公正なものであり、ことに日本牛肉輸入制度というのはそういう日本の不公正な輸入政策の象徴的なものであるということを指摘いたしまして、そういう不公正な輸入制度を続けている日本がはかばかしい回答をしないのであればアメリカとしては断固たる行動をとるべきである、そういう議論をする向きが基調を占めておったようでございます。  それで、それに対しまして行政府の側はどちらかと申しますとポリシーレベルに達しない低い証言者が証言に立ちまして、日本とは引き続き二国間の協議を続けていくということを基調に据えまして、断固たる行動をとるべきであるという向きに対しては、ガットの紛争処理手続に訴える可能性をも示唆しつつ、なおガットの紛争処理手続に訴える場合でも二国間の協議とそれは両立可能なのであるという、どちらかと申しますと控え目なトーンで応酬をしておったようでございます。
  101. 神田厚

    ○神田委員 大臣に、向こうの譲歩の条件が自由化ということをあきらめたことだというようなことでございましたが、それに対して日本の方の主張というのはどういうふうなことがその主なものになっていたわけですか。
  102. 佐野宏哉

    佐野政府委員 日本側といたしましては、日本側国内農業の実情を踏まえて、その上で衆参両院の農林水産委員会の御決議というのがございまして、その御決議と背馳しない範囲で我が国としては決着を図らざるを得ない。ことに牛肉の場合につきましては、牛肉の価格安定制度、その中で畜産振興事業団の果たす役割、そういう制度的な枠組みがまたきちんとセットされておって、その制度的な枠組みの中で妥結せざるを得ない。  そういう日本側の置かれている実情から、日本側代表団がいかなる制約条件下で交渉に臨まざるを得ないかという点をるる米側説明をいたしました。米側の考えでおりますような自由化要求を棚上げすることの代償と、そういう接近法がおよそ日本代表団にとって受諾しがたいものであるということを基調に据えて議論を行った次第でございます。
  103. 神田厚

    ○神田委員 そういう形で委員会決議というものが交渉の大変大きなウエートを占めていたわけでありますが、報道によりますと、自民党の東議員が訪米をしておりまして、山村農林水産大臣は国会の農林水産委員会の消極的な支持をしか受けていない、こういうふうに言って向こうの関係機関と接触をしたというような報道もあったわけでありますが、そういう事実はあったのでしょうか。
  104. 佐野宏哉

    佐野政府委員 私どももニューヨークの飛行場へ到着いたしましたときに、ただいま先生が言及なさいましたニューヨーク・タイムズの記事を飛行場で読みました。ただ、私どもが先ほど申し上げましたような議論を展開いたしました際に、米側は衆参両院の農林水産委員会決議というのが日本代表団にとって動かしがたいガイドラインであるということについては別に争いませんで、それはそれとして認識をした上で、米側交渉担当者としても、米議会もまた同様に自由化要求決議を行っておるのであって、その点は、米側代表団にとってはまたアメリカの議会のそういう決議というのは動かしがたいガイドラインになっておるということを強調しておりました。  したがいまして、そういう意味では、私どもが当委員会の御決議によって支持されてそのもとで交渉に臨んでおるということは、ニューヨーク・タイムズの記事によって特に影響を受けたようには見受けられませんでした。
  105. 神田厚

    ○神田委員 しかしながら、これは農林水産委員会決議にかかわる問題でもありますし、この委員会の権威にかかわる問題でもありますから、委員長にひとつお願いしたいのでありますが、この東議員の言動について農林水産委員会で何らかの形で調査をし、委員会報告をするように求めておきたいと思います。
  106. 阿部文男

    阿部委員長 先ほど田中委員からもお話ございましたので、理事懇談会において協議したいと思います。
  107. 神田厚

    ○神田委員 それでは、続きまして、そういうふうな形で数字、結果が出たわけでありますが、ここまでこういうふうになってきたという数字の根拠は一体どういうふうに考えればいいのでしょうか。それぞれにつきまして……。
  108. 石川弘

    石川(弘)政府委員 私ども日米交渉をします場合に、ハイクォリティーをどの程度のボリュームにするかということにつきましては、まず総量を一定のものと考えまして、その一定輸入総量を決めます際には、いわゆる国内合理的生産が前提になっておりまして、それと需要伸びがどうなるか、この差額を輸入する、この差額が輸入総量と考えているわけでございます。  その中でハイクォリティーにどの程度配分するかということにつきましては、最近の需給事情等を見ますと、ハイクォリティー、穀物を食べさせたやわらかい肉の需要がその他のものよりも伸びが高いということを頭に置いていたわけでございます。それにつきましてもいろいろな割合がございまして、一定割合を想定しておったわけでございますが、最終的に向こうと詰めます場合に、向こうと私どもの数字にはかなりの隔たりがございまして、大臣が何度も申し上げますとおり、私たちとしてはのみがたい水準であったわけでございますが、最終決着の場面に至りまして、向こうも相当主張を下げてきて、私どもとの間の数字が比較的接近をしてまいりまして、その時点で、この程度であれば他の総枠のことも考えやむを得ない数字ではないかということで判断したわけでございます。
  109. 神田厚

    ○神田委員 そうしますと、全体の枠から考えますれば、高級牛肉アメリカからこれだけふやすことになりますと、オーストラリアから従来少ししか入ってきておりませんが、オーストラリアの高級牛肉についてどういうふうに考えておりますか。
  110. 石川弘

    石川(弘)政府委員 東京ラウンド合意におきましても、高級牛肉を国別にやっているわけではございませんで、グローバルでこれだけという言い方をしております。今後におきます我々の態度も同様でございまして、グローバルでやる。グローバルでやります場合に一定の競争条件があるわけでございますので、その競争条件が整えば豪州も十分参入し得るものと考えております。
  111. 神田厚

    ○神田委員 しかし、農林水産省の考え方では、アメリカからの輸入の場合は、当初、高級牛肉は大体五千五百トンでしょうか、それが需給の限度だというようなことを言っておりましたものが、六千九百トンまで伸びているわけでありますから、そういう意味では、需給問題についての見通しといいますか、そういうものについてどうですか、不安はありませんか。
  112. 石川弘

    石川(弘)政府委員 ハイクォリティービーフ自身につきまして、これならば全く大丈夫とか、そういうような判断の基準は大変難しゅうございまして、むしろ私どもは総枠の考え方に一番いろいろな議論もあり、あるいはそういう意味で重要な関心があるわけでございます。ハイクォリティーというのは御承知のようにいろいろな品質のものがございまして、日本牛肉でいいましても比較的高級なものとぶつかるものもありますし、ハイクォリティーに分類されましても実はそれほどの品質でないものもあるわけでございます。したがいまして、私どもぎりぎりの議論をいたします際に、これならば需給操作上全く不可能だというような感じがする寸前のところまでいろいろ考えたわけでございますが、私ども高級牛肉の枠自身が今度の数字になりましたことで、全体の牛肉需給が決定的に調整不可能になったものとは考えておりません。
  113. 神田厚

    ○神田委員 これはどういう形で入ってくるかでありますから、その経過を見ないとわからないと思いますが、私はかなりいろいろな問題を惹起してくると考えております。  また、対策の問題につきましては後ほどお伺いいたしますが、オレンジにつきましてもかなり譲歩をしたわけであります。  このオレンジ関係では、日本からのミカンの輸出の問題等についてアメリカの制限措置などについての話し合いは同時に進んだのでありましょうか。
  114. 小島和義

    小島(和)政府委員 アメリカ我が国温州ミカンに対する輸入規制措置は、専ら植物防疫上の観点から行われているものでございまして、輸入制度上の扱いとは別個のものでございます。  かつて、日本から輸出いたしました温州ミカンが原因で、アメリカにおきましてかんきつ潰瘍病が蔓延をいたしました。そのことが端緒となりまして、全面的な輸入禁止となったわけでございます。それが我が国の植物防疫陣のさまざまな努力によりまして、昭和四十年代だったと思いますが、若干の州において解禁を見ておるということでございまして、私どもの方としても、この病気を今後アメリカに持ち込まないための努力を重ねるということと相まちまして、米側の解禁州の拡大ということにつきまして植物防疫専門家レベルでかねてから話し合われておるところでございます。  今次の交渉はいわば通商貿易に関する問題でございますから、やや次元を異にする話し合いでございまして、今次交渉で植物防疫問題が話し合われたということでは決してございません。別な機会におきましてさらに努力を積み重ねてまいりたいと思っております。
  115. 神田厚

    ○神田委員 しかし、オレンジでこれだけ譲歩したのですから、同時にこの話し合いの経過の中で日本側の主張をもう少しきちんと強く打ち出していくべきだと私は考えておりまして、そういう点におきましては、交渉が終わった段階ではありますけれども、なお機会をとらえてそういう努力をしてもらいたいと考えております。  さらに果樹の問題でありますが、果樹については、現在、非常に業績悪化といいますか、経営も大変苦しくなっている状況でありますが、ここでこれだけの数量輸入が決まったわけでありますけれども、その点について影響その他はどうでしょうか。
  116. 小島和義

    小島(和)政府委員 果物全体ということで申し上げますと、御承知のように我が国の果物の消費構造は、国産の果実に輸入の果実、さらにスイカ、メロン、イチゴなどのいわゆる果実的野菜、こういうものを加えますと年間で大体八百万トンぐらいのものを消費いたしておるわけでございまして、それぞれの種類によりまして出回り時期も異なっておりますし、またあるものは嗜好の変化に応じて増加し、あるものは減りながら国民の需要を充足している、こういう状況にあるわけでございます。したがいまして、今次交渉によりますところの四万四千トンというのは、全体から見ればそれほど大きなものではないわけでございます。  ただ、特に問題になっております環境の厳しい温州ミカンとの関係ということになりますと、私どもも心情的には増枠をしたくないという気持ちを持っておるわけでございます。ただ、アメリカ側の基本的な要求自由化をすべきであるということでございますから、そういう要求を回避いたしまして新しい合意に達するためにはやむを得ない合意であったというふうに思っておるわけでございます。  ただ、温州ミカンの出回り期におきます輸入オレンジの出回り量は、現状におきまして温州ミカン対比一%ぐらいの量でございますし、今次交渉合意最終年におきましても二%には達しないぐらいの量でございますから、その意味では何とか全体の中で吸収できる量ではないか。また、御承知のように季節枠という制度もございますし、国内生産体制の整備とあわせて運用のよろしきを得れば国内産果実に対する影響最小限度にとどめ得る、かように考えまして妥結いたしたものでございます。
  117. 神田厚

    ○神田委員 同時に、ミカンジュースの問題はどうですか。
  118. 小島和義

    小島(和)政府委員 オレンジジュースの問題につきましては、我が国果汁の大宗を占めております温州ミカンジュースと競合度合いの一番大きい商品であると考えておるわけでございます。その意味におきまして、前回の年五百トン増という水準にとどめるべく最大限の努力をいたしまして、前回同様の妥結ということにとどまっておるわけでございます。  我が国のジュースの消費状況は、最近、冷夏が続いたというふうなこともございまして、やや停滞的ではございますけれども、長期的にはまだ需要伸びが見込める分野でございます。国内産果実につきましてもいろいろ高品質のものをつくる努力をいたしておりますし、そういうものと相まちまして何とかやっていける水準ではないか、かように判断した次第でございます。
  119. 神田厚

    ○神田委員 ところで、これらの枠拡大が決められて、実際に農畜産物の輸入が始まりました段階におきまして、それぞれの関係に対する影響というものが大変強く出てくると懸念をするものでありますが、大臣は過日の参議院農林水産委員会におきまして、これらの問題について日本農業の体質強化を進めるために予算その他の問題で補償措置を検討したい、こういうふうに言明をしておりますけれども、具体的にどういう形でこれをなさるおつもりでありますか。
  120. 山村新治郎

    山村国務大臣 私が今度の農産物交渉に対して総理から一任ということで参りました際に、総理に対しまして、私としては日本農業を守るという立場を堅持してまいります、しかし不測の事態が生じた場合にはそれなりに対処をしていかなければなりませんがということを申しましたら、それは全責任を持って政府としてやるということでございまして、参議院農林水産委員会での御質問に対しましてそのことを答えました。  そして、昨日の農林水産委員会が朝の八時半からでございまして、九時に閣議がございまして、ちょうど総理、大蔵大臣一緒でございまして、総理に、実は今の参議院農林水産委員会でこのような約束をしてきましたからと言いましたら、総理からも、そのとおりである、ひとつ大蔵大臣忘れないようにということで、これの確約もとっております。
  121. 神田厚

    ○神田委員 そうしますと、補償措置をとるという段階は、具体的にはどういうふうな状況の中で、どういう時期に、どういう補償措置をとるおつもりでありますか。
  122. 山村新治郎

    山村国務大臣 それにつきましては、不測の事態が生じた場合ということで、どのような措置をとるかまだ決めてございません。しかし、そのような場合が生じたらそのような措置もとりますし、また四年後にこの期限が切れるわけでございますが、実はこの交渉妥結のときにブロック通商代表から、今回はこれで済んだ、しかし四年後には自由化というものをひとつ頭に置いてやっていただきたいということの申し入れもございましたので、四年後を目指しての我が国農業の体質強化と申しますか、足腰の強い農業、これに向かっていろいろな施策をとってまいりたいというぐあいに考えております。-自由化を認めるということでなく、向こうが自由化要求をしますよということでございまして、我々は自由化というものを決して認めたわけではございません。ただ、向こうから我々は自由化要求をするということでございまして、これを念頭に置いてもらいたいということでございまして、我々は決して自由化を認めたわけではございません。
  123. 神田厚

    ○神田委員 アメリカの方が非常に具体的に、四年後の期間を区切って今回の交渉をまとめ、これから先は自由化ということを念頭に置いた形でさらに問題を進めるということになりますれば、日本にとりましては、四年後の交渉は今回よりもなお厳しいと同時に、その中で果たしてどういう対策がとれるのか。我々としましても、現時点におきまして自由化をさせるというようなことは、結局は日本の畜産をつぶすことになりますから、これはできないことでありますけれども、既にもう日米農産物交渉がこの結果で妥結をしたという報道が流れただけで畜産の取引の価格が下がったというようなことが言われている。さらに子牛の取引価格は依然として低迷をしている、こういう具体的な事例が出ているわけでありますから、私はこれらについての対策はその時期を逃さずに、しかも結果が出てからの手おくれな対策ではまずいわけでありますから、五十九年度の補正予算等々におきまして、場合によりましたらその予算措置がとれるような決断をしていただきたい、こういうふうに思うのでありますが、いかがでありますか。
  124. 石川弘

    石川(弘)政府委員 牛肉の価格そのものは、私ども見ております限りそう大きな動きをしておりませんけれども、これは価格安定制度があるわけでございますので、価格安定制度の適切な運用で十分耐えられると思います。子牛につきまして依然価格が低迷しておりますが、これは御承知のように三月の価格決定の際に、それに必要な措置をとってあるつもりでございます。大臣がおっしゃいますように、もし何らかの施策をさらに追加すべきときがあれば、そのタイミングを見ながら判断すべきことかと考えております。
  125. 神田厚

    ○神田委員 局長からの答弁でありますが、大臣、どうですか。
  126. 山村新治郎

    山村国務大臣 今局長が答弁したとおり、適切な措置をとってまいりたいというぐあいに考えます。
  127. 神田厚

    ○神田委員 最後に、オーストラリアとの交渉になるわけでありますが、全体枠の拡大といいますか、オーストラリアがかなり強硬にそれだけアメリカに対して譲歩したのだからオーストラリアに対しても譲歩せよというふうな交渉になることは、火を見るよりも明らかであります。そこで、オーストラリアとの交渉をどういうふうに日本として進めていくか、その点について御答弁をいただきたいと思います。
  128. 山村新治郎

    山村国務大臣 オーストラリアとは全体枠の交渉になるということになりますが、これにつきましても、当農林水産委員会での一昨年四月の決議、本年一月の申し入れ、この趣旨に沿って交渉してまいるつもりでございます。
  129. 神田厚

    ○神田委員 終わります。
  130. 阿部文男

    阿部委員長 津川武一君。
  131. 津川武一

    ○津川委員 山村農水大臣初め局長たちの今回の日米交渉、大変だったでしょう。私もその苦労というのは心から察して、御苦労さまでしたと申し上げたいのですが、結果からいきますと、日本農業に甚大なる影響も与えましたし、私たちの委員会決議にまで反してグレープフルーツジュース自由化をしてきたということに、国民、わけても農民を代表して抗議しなければならないのではないか。山村農林大臣のことは歴史に残るかと思います、それは日本自由化のことを導入した大臣として。そんなふうに私は考えている次第でございます。  先ほどからの御答弁で、何かあったならば補償措置をとる、総理大臣とも大蔵大臣ともこのことで話し合いがついている、こうおっしゃっております。そうでしょう。補償措置をとらなければならないような妥結を、協定をしてきたところに問題があるわけであります。厳しい妥結だった、それで農業に大きな障害を来さないようにした。大きな障害を来さない、したがって御自分の言葉の中で障害を来すことも認めております。また新聞の報道では、少しぐらいの無理なら我慢してもらえると判断した、こうもおっしゃっております。ところが、農民は大変怒っております。  ちょうど今私のところにメモが入ってきましたが、私の青森県の三上兼城さん、農業委員をやっております。そして肉牛百四十頭、うち七十頭は今子牛から育てる最中。何とかやらなければならぬと思って、ちょうど妥結した次の日、二十六頭新しい子牛を買ってきた。そこへ妥結のニュースが入ってきて、この牛を売るころ、二年ないし三年後にはさらに二万トン輸入枠がふえておる。豪州からのものもあるから、どうなるのだろうと不安でたまらない。思わず帳簿を開いてみたら、系統資金から二千四百万の借金。えさ代で農協から八百万の高い利息の証書借り入れ。非常に困っておりまして、ああ、日本政府は何をやってくれたんだろうな、おれのこの子牛が三年後に売れるときどんな状態になっているんだろうなと考えて、一晩眠れなかったそうでございます。  秘書たちに取り寄せてもらった愛媛の伊予カン専業農家の話を聞いてみましたら、数年かかって伊予カンに転換してきたやさきのオレンジの大幅輸入拡大。このままでは農業を続けられない、今後農業経営をどうしてやっていったらいいかわからない、交渉をもう一度やり直してくれ、これが愛媛県の伊予カンの農民の声でございます。  もう一人の声をお伝えします。弘前市農協の理事をやっておる斎藤博さん、これも今メモが届きました。篤農家です。リンゴ専業農家で、この人は、今スターキングは売れない、このままでいくとスターキングを三十万箱ばかり捨てなければならない、この状態オレンジ輸入枠拡大と、こう書いてある。消費者の腹に入る果物はオレンジもリンゴも違いがない。奥さんが買い物かごに果物を買うお金は、オレンジを買おうがリンゴを買おうが変わりない。このリンゴの状態が非常に心配になってきて、愛媛の伊予カンの農民がオレンジ一個の輸入も困ると言っているが、この農家もオレンジ一トンの輸入でも困るというのがこの人たちの声でございました。  もう一つ、私、いつも寄宿舎の近くの八百屋さんに行ってリンゴの売れ行きなどの状況を聞いて回っておる。非常に親しくリンゴのことを話しておる八百屋さんに昨夜行った。そうしたら、オレンジが今度の交渉消費者の人気を呼んでいるんですって、ひとつオレンジを食べてみましょうかと言ってくる。そして、とうとうおやじさん、今までオレンジを伊予カンとリンゴの後ろに並べておいたのを前に並べている。そして輸入がふえるとイチコロ、伊予カンもリンゴも、果物はやられる。  大臣、これが関係者の声なのです。あなたのおやりになってこられたことに対してみんながこう考えている。この声にやはり耳を傾けていただかなければならない。この声にどうお答えなさるのか、まず伺います。
  132. 山村新治郎

    山村国務大臣 最初にお断りしておきます。総理と大蔵大臣と話して補償措置をとるというようなことは言ったことはございません。施策を講じるということでございますので、それは誤解のないようにしていただきたいと思います。  それと、先生おっしゃいましたが、私は少なくとも我が国農業を守るという当委員会での御決議、本年一月の申し入れに反しているとは思いません。私は私なりにこの委員会での決議申し入れ趣旨に沿って、そして厳しいことではあるけれどもこれを行うことが、日米間に今いろいろ貿易の摩擦がございますが、今後これを解消するためにも、そして最終的な農林水産大臣としての役目を果たすためにも正しいことだと思ってやってきたことでございます。
  133. 津川武一

    ○津川委員 総理と大蔵大臣と補償措置について話したのか、補償体制について話したのか、予算を出してくれと言ったのか、そんなことは問題でないですよ。問題は、そういうことを話さなければならぬというところに今日の状態があるわけであります。  今回の決着国内農業犠牲にしないというあなたの言明にもかかわらず、例えば牛肉を見てみましょう。  子牛価格は二年以上にわたって低迷し、牛肉輸入量増加という先行き不安から、本来ならば母牛用として育てられる雌牛が最近では肉用に売り出されております。ことし二月の和牛の屠殺頭数を見ても、前年二月より四割もふえております。しかも、今回の決着が伝えられた翌日、鹿児島県の子牛市場では子牛相場が急落するとの動きも出ております。こうした現実に目をふさぎ、年間六千九百トン輸入拡大で国内産業が犠牲にされないと言い得るのか。鹿児島での子牛の値段の値下がり、これはあなたたちのやってこられたことの直接の結果でありますが、これに対して応急の処置をするとすれば何をおやりになるのか、見解と対策をお伺いします。
  134. 石川弘

    石川(弘)政府委員 今おっしゃいました中で、特に生産者が不安になって子牛の価格が下がるというお話があるのですが、私ども関係者一同に声を大にして言い続けておりますことは、もし外国の牛肉が入ってくることによって値が下がるというのであれば——外国の牛肉と一番競合しますのは乳牛でございます。乳雄の肉が外国の牛肉と一番競合するわけでございます。それにもかかわらず、ここ数年の動向は、一番競合するはずの乳雄価格がむしろ安定をしていて、和牛の子牛価格が不安定になっている。このことは、御指摘のような農民の心理もあると思いますけれども、やはり和牛を生産しております農家の構造が大変小さい。そういう心理的影響を直ちに受ける。それに比べまして乳雄生産農家というのは、乳雄というのは酪農家から出るわけでございますから、既に相当の規模に達していて、その経営をみずから責任を持ってやっているということでございますので、基本論から言えば、毎年我々がやってきましたような経営規模を安定させるための施策だと思います。  私ども特に関係の報道機関なんかにお願いをしていますのは、例えば農民のための報道機関がこういうことを過大に評価した結果として、逆に言って農民が本来そういう心理的影響を受けなくて済むはずのことが価格の値下がりにつながる。価格が値下がりしましてそれでは牛肉の価格自身が下がっているかというと、下がってないわけでございます。ということは、そういうことを極端に報道することはかえって農民のためにならないのだ。私どもは子牛価格についてちゃんとした法律制度を持っております。したがいまして、下がりましても農家の手取りは下がらないような補てん措置も講じているわけでございます。むしろ事柄の影響を過大視して、農民の所得を下げることが農民に対してマイナスではないかということを言い続けているわけでございます。  私どもは、下がったからといって農民の所得が下がるような制度ではなくて、下がったら補てんする制度を持っているわけでございます。農民の方々が不安に思われること自身は、私は農民心情としてあるかと思いますが、経済の実情からいいますと、そういう形で影響させるべきことではないと思っておりますし、その結果が中間のだれかがポケットに入れるか、あるいは下がれば今度は肥育農家は肥育しやすくなるということになるのか、いずれにしましても事柄がもっと経済原則に沿って正常に行われるように今後精一杯やっていくつもりでございますし、関係者にもそれに協力していただくように考えております。
  135. 津川武一

    ○津川委員 そこで、今の世の中は、農水省の中において机で考えておるようにはいかないのだ。資本主義の世の中なのだ。すぐ影響を受ける。それは鹿児島の子牛、そしてゆうべ私が行った宿舎近くの八百屋さんですよ、オレンジを並べ始めている。こういうことなので、ここで答弁する前に石川局長が新聞社に向かって解説をやっていればいい。我々が追及しなければそんなことを言われないというところに問題がある。苦労されてきたからそうはいかないかもわかりませんが、そのところは強く指摘しながら、要求して進めます。  そこで、オーストラリアからの一般牛肉輸入でございます。  政府は、この二月の日本と豪州との首脳会談で、日本側アメリカの貿易問題の処理に当たりオーストラリアを犠牲にしない、オーストラリア牛肉のシェアは維持する、こう約束しております。しかも、総理がこのこともまた四月九日の参議院予算委員会で同様の答弁をしております。オーストラリアからの一般牛肉輸入がふえてきて、今皆さんが六千九百トンで被害云々と言っておりますが、両方合わせて全体で幾らになります。そして、これに対する被害というものをもう一度国民に解説すべきだと思いますが、いかがでございます。
  136. 石川弘

    石川(弘)政府委員 豪州のホーク首相が来日されましたときのお話かと思いますが、シェアを維持するということ自身、そういうこと自身首相との間の話し合いでは出しておられませんし、それから、もちろん共同声明の中でも第三国との貿易において豪州を犠牲にしないという言葉はございますが、シェアを維持するなどということは、我々ここ数年間豪州と何度も交渉いたしておりますが、一度もシェアなんかに言及して約束した覚えもございませんし、約束すべき事柄でもございません。犠牲にしないという言葉は、例えば他の国との貿易がふえたから片方の国との貿易を減らしたというようなことをもって犠牲にするというならばこれは犠牲だと思いますが、私どもは、今回の交渉において豪州との貿易量が今までの水準から逆に減るというようなことの可能性は頭に置いてはおりません。しかし、シェアを維持するというのであれば、かつて豪州はほぼ一〇〇%のシェアを持っていたわけでございますから、そういうことは今までの牛肉輸入の中でも変わってきていることでございます。  それからもう一つは、アメリカと約束したからといってアメリカの枠を約束したわけではございませんで、ハイクォリティービーフという肉の量について約束をしただけでございます。ハイクォリティービーフについて現在においても豪州がある程度参入していることは御承知のとおりでございます。
  137. 津川武一

    ○津川委員 おとといの議事録を見てからもう一回論議しますが、参議院の予算委員会では、豪州に犠牲を与えない、豪州のシェアを守るということに対して総理から聞かされている。その点は、私も今急いで議事録を見たので、もう一回議事録を見てから論議をするといたしまして、石川さんの今の答弁は受け取るわけにはまいりません。  時間が来ましたのでもう少し進んでいきますが、農林水産委員会決議に反しないというふうに農水大臣は答えておりますが、そんなことになるだろうと思って、農林水産委員会決議をここで読んでみます。「よって政府は、貿易摩擦の処理にあたっては、我が国農業・漁業をとりまく厳しい状況について諸外国の十分な認識を得るよう一層努め、残存輸入制限品目自由化及び輸入枠の拡大等については、農業者・漁業者が犠牲となることのないよう対処すべきである。」  今度、グレープフルーツジュース自由化を決めておいでになったでしょう。この決議とどうなります。このグレープフルーツジュース自由化というものは、小島局長説明で六千トンが入ることになっておる。実際は三千より入ってない。だから自由化しても今の枠より超えない。こんな答弁であった。それもそうかもしれません。だが、皆さんが繰り返しここで発言しておられるように、自由化承知しないことが今度の交渉の眼目だった。これでグレープフルーツジュース自由化をして、大きな突破口を開かれたんじゃありませんか。だから、農民がもう一回交渉をやり直しなさいと言っているわけです。この点についての大臣の所見を伺って、私の質問を終わります。
  138. 小島和義

    小島(和)政府委員 もう既に御承知のように、前回グレープフルーツジュースにつきましての合意は、五十五年の三千トンから始まりまして、五十八年で六千トンということにいたしておるわけでございます。実際の通関状況は多少ふえてはおりますが、この三年間大体三千トン台にとどまっておる。したがいまして、仮にオレンジジュースなどと同じように従来程度増枠ということで合意が得られたといたしましても、四年後におきましては一万トンということになるわけでございます。そういう大きな枠を設定することは、日本にそれだけのグレープフルーツジュース需要があるということをアメリカ人をして錯覚に陥れせしめる結果になる。むしろ、実際の需要に見合った程度輸入をするということの方がかえってそういう混乱に陥れないというメリットもあるわけでございます。また、我が国のジュースの大宗を占めておりますところのミカンジュースとの対比で考えますならば、同じかんきつ果汁とは言いながら、品質的には明らかに違ったものである。  こういう点を総合的に判断をいたしまして、全体を通じての合意に達するためにやむを得ずこういうふうに判断をいたしたわけでございまして、全体の合意は、再々大臣から申し上げておりますように、農民を犠牲にするような内容のものとは考えておりません。
  139. 津川武一

    ○津川委員 自由化したということを指摘して、終わります。
  140. 阿部文男

    阿部委員長 午後一時二十分から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十七分休憩      ————◇—————     午後一時二十九分開議
  141. 阿部文男

    阿部委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出保安林整備臨時措置法の一部を改正する法律案国有林野法の一部を改正する法律案及び国有林野事業改善特別措置法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。安井吉典君。
  142. 安井吉典

    ○安井委員 自民党の諸君も、副総裁問題も大事ですけれども、やはり何といったって今国会での農水委の最大の課題はこの林業法案ですから、ちゃんと出席してくれなければ困ります。  林野関係のいわゆる三法案の質疑に入るに当たって、まず、私は基本的な問題を一つだけ伺っておきたいと思います。  それは、いわゆる緑資源の問題であります。  森林浴という言葉があって、これは林野庁長官の命名だと聞いていますが、そうかどうかわかりませんが、いずれにいたしましても、森林や緑に対する国民的関心が非常に高まっており、森林が果たす国土保全、水資源涵養、保健休養等の公益的機能の維持等への国民的な要請は非常に強まっているわけであります。しかし一方、この間のアメリカの議会技術評価局の報告書によれば、地球上の熱帯林の約千百三十万ヘクタール、実に日本の総面積の三分の一くらいに当たるそうですが、そういう資源が毎年失われて急速な自然破壊が行われている。それは木材の乱伐によるわけで、日本はその最大の輸入国であり、犯人の一人であるということでもあります。あるいは気象庁長官が北半球温暖化による自然破壊あるいは化石燃料から出る炭酸ガスの増大による砂漠化等の指摘をして、これは大変だという思いに駆られざるを得ません。つまり、一方で森林の重要性が指摘されながら、一方で状況はさらに悪くなるという矛盾した実態であるわけです。  こういう中で、農水大臣に伺いたいのは、資源小国の日本政府としては、資源と環境問題は二十一世紀に向けての最大の課題とすべきではないかということであります。一つには安易な外材依存を見直すこと、もう一つ国内森林資源の維持培養により木材の自給率を高め、環境維持を図ること、こういうような方向への政策の大きな転換が必要ではないかと思います。どうでしょうか。
  143. 山村新治郎

    山村国務大臣 先生おっしゃいましたように、森林は単なる木材の生産機能を有するだけではございませんで、国土の保全、水資源の涵養など公益的機能を有しており、国民生活に極めて重要な役割を果たしておるものと考えております。  このため、農林水産省といたしましては、このような森林の重要性を踏まえまして、森林の有する諸機能が高度に発揮できますように、林業生産基盤の整備、そして国土保全対策の充実等各般の施策を積極的に推進してまいる所存でございます。先生おっしゃいました二十一世紀へ向かって、何といっても大事な緑資源でございます。これをもっともっと大事に育てていくというようなぐあいに認識いたしております。
  144. 安井吉典

    ○安井委員 今大臣からお答えがあったような方向でこれからやっていただかなければならぬと思いますが、そこで二、三の問題があります。  一つは、林業を大切なものだというふうに位置づけますと、優秀な林業労働力の安定確保ということが非常に重大な課題になるのではないかと思います。ところが、現状では、林業労働者の地位は極めて低く、低賃金、それから老齢化、何しろ平均年齢は五十歳というのですから、こういう現状をどう考えて、どういう対策を講じようとされるのか、これを伺います。
  145. 秋山智英

    ○秋山政府委員 林業を振興していく上におきまして、その担い手である方々の育成強化は極めて重要な課題でございます。したがいまして、私ども林業労働力を確保するに当たりましては、まず造林事業、林道事業あるいは林業構造改善事業、さらには間伐促進の総合対策事業という各種の林業生産活動を活発化いたしまして、全般的に林業の活性化を図っていくことが極めて重要でございます。それによりましてこの雇用の機会を増大し、安定化させる、こういうことが基本でございます。  それから、林業に従事する方々の住む場所、定住条件を整備することも極めて重要でございますので、定住条件を整備し、さらに就労条件の改善とか若年労働者の育成確保ということを、これまでも強力に推進してまいりましたが、さらに今後とも積極的に推進していかなければならない、かように考えておるところでございます。
  146. 安井吉典

    ○安井委員 林業基本法の第二条には、林業政策の目標として「林業従事者の所得を増大」「経済的社会的地位の向上」という言葉も入っているわけです。しかし、これは基本法の表現だけであって、今林野庁長官が言われたように、これからやることがたくさんあるわけで、現状は非常によくないわけです。  この問題については、さらに私ども九人、質問をだんだんと繰り出してまいりますので、そういう中で詰めてまいりたいと思いますが、こういう林業政策の目標にまで掲げられている、そしてまた現状が非常に劣悪な状況にあるということからすれば、林業労働法を制定してこの問題への対応を図っていくことが大切ではないかと私は考えます。社会党は、既にその成案を得まして前の国会に、これは社会労働委員会の方でありますけれども提案しており、今国会でももう一度出し直して審議をしてもらうことにいたしたいと思っておるわけでありますが、もう少しそういう法制的な基礎まで置いた対応が必要なんじゃないかと私は思うのですが、どうですか。
  147. 秋山智英

    ○秋山政府委員 林業労働法につきましては、先生承知のとおりこれは労働行政にかかわる問題でございますが、私どもこの林業労働を見てまいりますと、非常に季節にかかわるところが大きいし、間断的であるとか非常に地域に分散している問題、その他いろいろと林業労働の特殊事情等がございまして、何と申しましても、先ほどちょっと申し上げましたとおり、基本的には林業の活性化を図り、林業の働く場を整備し、充実強化するということが極めて重要でございますので、私ども、林業生産基盤の整備あるいは林業構造改善事業、さらにはこの五十九年からやろうと考えています林業地域の活性化対策というような各種の基盤整備をまずは強力に整備しながら、さらには、それを整備した上におきましての地域の定住条件の整備という問題をやることが当面の極めて重要な問題だということで理解しております。  林業労働につきましては、そういう問題点がいろいろございますので、私ども、今後また勉強してまいりたいと考えています。
  148. 安井吉典

    ○安井委員 私どもの方の林業労働法案の審議が進む中でももう少し問題点を深めてまいりたいと思いますが、今長官が言われましたようなものを、お題目だけじゃなしに現実にきちっと予算や政策の上にあらわしていただきたいと思います。  そこで、保安林の問題について伺いたいと思います。  今度、保安林整備臨時措置法の延長法案をお出しになっているわけでありますが、この臨時措置が二回の延長を含めて三十年続いているわけです。そしてまた十年の延長、こういうわけであります。三十年かかっても目標が達成できなかったのでまた十年延長というのですけれども、実際は整備のための必要な財源措置が十分に伴わなかった、それでまた延長、こういうようなことになっているのではないかと思います。今度は十年なら完全に達成できる、そうお考えなのかどうかということですね。私は、こんな重要なものは臨時法案じゃなしにむしろ恒久立法にするというくらいな構えでなければ保安林の整備は進まないと思うのですが、どうなんですか、あと十年で達成できる、そういうお考えでの提案なのですか。
  149. 秋山智英

    ○秋山政府委員 この保安林整備臨時措置法は、先生承知のとおり昭和二十八年の大災害の後に、二十九年に制定されたわけでございまして、今御指摘のとおりそれから二回にわたりまして延長なされまして、保安林の配備についてはおおむね目標を達成し得る成果を上げておるわけでございます。しかしながら、細微に検討してまいりますと、この水資源涵養その他の水需要の増大との関係あるいは災害防備との関係から、さらにきめ細かい保安林の指定をする箇所があるということが第一点。  それからもう一つ、最近林業生産活動が停滞しておるために、一部におきまして森林の機能が低下している保安林等がございますので、そういう機能低下している森林につきまして所期の機能を確保するということで今回十年間の延長をお願いしているわけでございまして、私ども、今後十年間におきましてさらにきめ細かい保安林の配備をし、かつまた一部におきまして機能の低下している保安林の内容を質的に向上するということに重点を置いた内容としているわけでございまして、この十年間の措置によりましてそれらの成果を上げてまいりたい、かように考えておるところでございます。
  150. 安井吉典

    ○安井委員 この問題については、さらにまた後でほかの委員からもお尋ねがあるわけでありますけれども、この臨時措置法の改正で有効期限を延長するあるいは特別保安林を指定するなど、保安林整備に対して政府としても意欲を示しておられるわけでありますが、沖縄本島の北部国有林の問題、これは県議会が決議もして、知事やその他からしばしば保安林の指定を願っているわけであります。随分長い間たちますが、いまだにこの処理ができていません。保安林の臨時措置法を延長するというような構えの段階でありますだけに、この問題について国会でも何度も取り上げられておりますけれども、さらに私はこの際伺っておきたいと思います。  沖縄本島は、地形からして雨がたまらないような状況なものですから、夏には恒常的な渇水、断水が続いています。そういう中で、北部の国有林は大事な水源涵養林であります。福地ダムだとか新川ダムだとか安波ダムだとか普久川ダムだとか、そういうダムの建設も進み、いわば沖縄の水がめでもあるわけです。  ところが、これが米軍の北部訓練場になっております。軍事施設はどんどんできるし、山の切りまし、山火事がどんどん起きる、果てはダムの上で水上訓練が行われて水の汚染も進む、こういうような状況にあるわけですね。したがって、県議会の議決、県民全体の強い願いは水源涵養保安林に指定して立派な森林を造成してほしい、こういうことであるわけであります。直接担当しているのは沖縄開発庁、それから林野庁とつながるわけでありますけれども、なぜ今まで保安林という問題が解決しないのか、それぞれお考えを伺います。
  151. 秋山智英

    ○秋山政府委員 沖縄県の方々にとりまして水の問題は大変重要な問題でございまして、特に今お話のございました北部の森林は、全体の水源涵養上からも極めて重要であることは私どもも十分認識しておるところでございますが、北部の森林のほとんどが地位協定に基づきまして米軍に施設、区域として提供されていることから、保安林の指定を行うことにつきましては関係省庁に関連する事項でございまして、関係省庁におきましても慎重に検討しているところでございます。  なお、施設、区域以外の森林につきましては、五十七年五月に国有林百六十八ヘクタール、それからことしの一月には国頭の村有林の百五十ヘクタールにつきまして水源涵養保安林の指定を行ったところでございます。
  152. 森隆禧

    ○森説明員 お答え申し上げます。  沖縄北部の森林が水源涵養上非常に重要であることは、沖縄開発庁といたしましても十分認識いたしております。したがいまして、北部の森林の中で米軍に施設、区域として提供されております森林につきましても水源の涵養の面で適切な管理が行われますように、これまでも関係省庁と非常に密接な連絡を保ってまいりましたけれども、今後ともそのようにいたしていきたいというふうに存じております。
  153. 安井吉典

    ○安井委員 林野庁長官に伺いますけれども、この問題の地域は、もし米軍の演習地でなければ当然保安林に指定すべきような地域ではないか、私はそう思うのですが、どうですか。
  154. 秋山智英

    ○秋山政府委員 北部の森林地域につきましてはただいま申し上げましたような事情がございますが、現在南西諸島と申しますと屋久島から沖縄にかけましてのこの地域を一つの国有林の施業計画区の対象区域にしておりますが、第四次の地域施業計画におきましては、十年間で除伐計画をしまして森林の質的内容を向上するために積極的にいろいろと手を打っておりますし、また一部につきましては、イタジイとかシャリンバイというふうなものが非常に密生しておるところはその成長を高めるような措置を講ずるとか、いろいろの方法を講じながら、その内容については整備充実を図ろうということで現在進めておるところでございます。
  155. 安井吉典

    ○安井委員 私の質問に答えておられないのですね。この地域はダムが四つもあるわけですし、当然大事な地域です。これが本土の普通の地域だったら、当然保安林に編入すべき土地だ。だから、米軍の演習地でなければ当然保安林の指定地域になるべきところではないか、そのことだけお答えください。
  156. 秋山智英

    ○秋山政府委員 保安林に指定いたしますと、国並びに県は、森林施業の規制の問題、土地の形質変更の規制の問題、こういうことを通じまして保安林の維持管理をする責任が当然出てまいるわけでございます。しかしながら、この施設、区域につきましては、原則として国内法の適用はあるが、米軍が地位協定に基づき行使する施設管理権に抵触する場合にはその効力を停止する、または米軍が行う行為については原則として日本の法令の適用はないという趣旨政府見解が出されておるわけでございますので、私どもは現在そういう内容的な整備に努力しているところでございます。
  157. 安井吉典

    ○安井委員 私はイエスかノーかを聞いているわけですよ。つまり、今の御答弁を裏返しにすれば、本当なら保安林にしたいところだが、演習地になっているからその範囲内でいろんなことをやっているんだ、本当はしたいところなんだ、すべきところなんだ、そういうふうに私は理解するのですが、どうですか。
  158. 秋山智英

    ○秋山政府委員 重ねて申し上げてまことに恐縮でございますが、この施設、地域につきましては、先ほど申し上げましたような政府見解がございますので、私どもといたしましては現在保安林の指定がなし得ないわけでございますので、さらにこの問題については研究をさせていただきたいと存じます。
  159. 安井吉典

    ○安井委員 わかりました。保安林の指定ができないような状態に置かれているということではないかと思います。  米軍は沖縄県の中にたくさん住んでいるわけで、県民の約一%ぐらい。しかし、水の消費量は実に一二%だそうですね。大量な生活水の消費をする一方、水源林の破壊をしているという矛盾撞着の中に米軍はあるわけであります。  渇水に悩む県民の中では、下流の人がお金を積み立てて上流の施設をつくろうという財団法人沖縄県水源基金を昭和五十四年に設立した。これまで本当に県民の努力が行われているほど水が大切な沖縄の、その北部演習林であります。この演習林の中で、今基地だから保安林にできないのだということでありますけれども、実際はもう自然破壊がどんどん進んでいるし、水源地の汚染は進行している、山火事が発生する、そういうような状況にあるわけですね。  きょう防衛施設庁や外務省からもおいでをいただいているわけでありますが、地位協定第三条第三項に「合衆国軍隊が使用している施設及び区域における作業は、公共の安全に妥当な考慮を払って行なわなければならない。」こういう規定がありますね。実際はそれと反対な状況が起きているんじゃないですか。それらの問題に対して、地位協定の規定の上に立っても、外務省や防衛施設庁は米側要求することができるのじゃないかと思いますが、どういうような措置をとっていますか。
  160. 加藤良三

    ○加藤説明員 沖縄県の水の問題については、当然外務省といたしましても深い関心を抱いているところでございます。私どもといたしましては、米側とのいろいろな話し合いを通じて、米軍が今御指摘になられました地域において行う訓練に一定の制約が加えられておるようになっておるわけでございます。  例えば貯水池の地域で米軍が訓練を実施いたします場合にも、水中爆破は行わない、恒久建造物の建設はいたしません、それから仮設のものであれば使用後撤去いたします、あるいは汚染防止のために万全の措置を講ずることといたします、こういうようなことが昭和四十九年の合同委合意に定められておるわけでございます。  さらに、昨年の十一月二十一日の三者協議会において、米側は、例えば浮き橋の建設と使用、水域の渡河訓練、いそ波訓練、水陸両用車の使用による訓練、ヘリコプターによる空海救助訓練は行わないということも述べているところであるわけでございます。  確かに、先生も御指摘になられたような水の問題があるわけでございますが、沖縄に多数おります米軍人もまた沖縄県民の方々と同様の水源に飲料水を依存しているわけでございまして、私どもは、米側においても沖縄の水の保全に対する関心というのは非常に強いものがあるのじゃないかというふうに考えておるわけでございます。
  161. 田中滋

    田中(滋)説明員 沖縄の北部訓練場におきましては、米軍にとりましてもこの北部訓練場内におきます森林が水源涵養林としましての実際上の役割を大きく果たしているということを十分承知しており、また隊にも教育しているわけでございます。したがいまして、訓練におきましても自主的に、水源の涵養を図っております森林が十分保全されますように、十分訓練上も計画を立て、またそういう訓練を実施しているというように私ども承知しております。実態上、重要な水源涵養林としましての北部訓練場におきます森林の保全が十分できますように、米軍に今後機会あるごとに繰り返し注意を喚起すると同時に、防衛施設庁としましてもその方向で努めてまいりたいというように考えております。
  162. 安井吉典

    ○安井委員 現実にはさっき私が幾つか指摘いたしましたような事態があるし、これはもう今だけの問題じゃないわけですよ。これから先ずっと、森林がよく育つことによって、将来の水資源確保の問題につながっていくわけですね。そこでドンドンパチパチやられたり、野営が行われて汚物がそこらに埋め立てられたり、そういうような事態に県民はやはり耐えられないということではないかと思います。幾ら地位協定による提供施設だって、そこの運用や処理については、さっき私が申し上げたような規定もあるわけですから、注文をつけられるわけですね。もっと県側の要求を謙虚に受けとめて米側と話し合っていくということが私は必要ではないかと思います。  そして、こういうような問題を根絶するのは、やはりこれを基地から外す、米軍の基地でないような形で純粋の保安林にしていくということが、現在の県民の生活、将来に向けても非常に大事なことだと思うのですが、それは後で申し上げることにいたしまして、この演習場でも森林法の適用がちゃんとあるわけですから、林野庁としての施業計画が進んでいかなければならないわけでありますが、先ほどもちょっとお触れになりましたけれども、どういうような施業が現に行われているわけですか。
  163. 秋山智英

    ○秋山政府委員 先ほど申し上げました南西諸島の第四次地域施業計画におきましては、十カ年間に除伐計画というのを組んでおりまして、除伐計画の、十年生ないし十五年生のリュウキュウマツにつきましては、これは人工林でございますが、除伐八百九十六ヘクタール、それからシャリンバイその他イタジイというふうな天然林につきましても、面積が百七ヘクタール、抜き切りをいたしまして、内容をよくするためのやはり除伐と同じような作業行為をするように予定していますし、また伐採した後の更新につきましても、方法別に、どういう方法でやったら成長がよろしいかというふうなこともこの中で比較試験をしながら現在進めておる実態がございます。
  164. 安井吉典

    ○安井委員 この地域は地位協定による提供軍用地でありますから、林野庁は使用料を受けているはずであります。年間どれぐらいな使用料が払われているのか。
  165. 秋山智英

    ○秋山政府委員 早速調べますので、ちょっとお待ちください。
  166. 安井吉典

    ○安井委員 時間がかかりますか。
  167. 秋山智英

    ○秋山政府委員 急な質問でございまして、わかり次第御報告させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
  168. 安井吉典

    ○安井委員 それを伺わなければ次の質問が出ないのですけれども、同時に私が伺いたいのは、今林野庁長官から、この地域に対して除伐計画をやっているとかシャリンバイについての作業をやっているとか、そういうお話があったわけでありますけれども、基地としてのお金をもらっているわけですね。それとそういう施業に向けているお金とがどんな割合になっているのか、それを聞きたかったわけです。それは後でお聞かせください。  いずれにしても、私はこのことは県民の命と暮らしに関係することでありますから、全面返還を求めていくということが第一でなければならないと思います。あるいは最小限水源涵養の保安林機能に必要な部分を限定して、その他は返還をする。つまり、保安林機能に必要な部分とそうでない部分とに分けられるのではないかと思うのですね。もう少し限定をするというようなことで妥協が図れないのかということですね。その点は、防衛施設庁、それから林野庁ともにお答えをいただきたいと思います。
  169. 加藤良三

    ○加藤説明員 御指摘の北部訓練場は、米軍にとって欠かすことのできない訓練場であるという実態があるわけでございます。そして、水源涵養保安林の指定ということにつきましては、私ども説明を受けているところでは、涵養保安林というのは水系全体にわたって指定されるということになるのだろうと思うのですが、こういう指定が行われました場合には、米軍の施設、区域、訓練場としての使用ということとの関係で調整が難しくなる。その種の実質的な技術的な問題があるというふうに承知いたしております。
  170. 秋山智英

    ○秋山政府委員 私どもといたしましては、先ほども触れましたが、この保安林の指定の有無にかかわらず森林の中身を質的に向上させるという点で、関係省庁並びに米軍の協力を得ながら今後とも積極的に進めてまいりたい、かように考えております。
  171. 安井吉典

    ○安井委員 まだですか。——私の方の調べでは、昭和五十四年度で米軍の北部訓練場の使用料は七千五百ヘクタール余りに対して一億七千八百万円ぐらい、それから五十八年度の場合は七千四百六十一ヘクタールに対して二億八千九百万円余りというふうに私の手元の数字はあるのですけれども、これが正しいのかどうか、それもお聞きしたがったわけです。   ずれにいたしましても、本来こういう形でお金をもらってろくな施業もやれないという実態は、これはもうだれが見てもおかしいわけです。森林という側面から見てもおかしいし、それから沖縄県民の生活を守るという上からいってこんな矛盾した問題はない、私はそう思うわけであります。  今外務省あるいは林野庁からのお答えはありましたけれども、これはもう少し私はやりよう、考えようがあるのじゃなかろうかと思います。今の状態の中でもこの辺の山をもっとよい形で維持、経営していくことができる方法、そういう追求ができないわけでもないし、そういう中で一遍に全部返せと言ったら、これはあるいはむちゃかもしれませんけれども、全体の中のこの部分だけはもう一度検討していいというところが私はあり得ると思うのです。七千ヘクタールものそういう大きな地域ですからね。  そういうところについて、もう少し防衛施設庁は、直接の担当ですから、そういう問題について林野庁と外務省との間に立って問題の解決のために努力をすべきだと思います。その辺についてさらに伺っておきたいと思います。
  172. 田中滋

    田中(滋)説明員 沖縄におきます北部訓練場では、いわゆる沖縄の本土復帰時におきますこの訓練場に関します米軍の使用条件ということが日米間で協定されているわけでありますが、その中におきましては実弾射撃も認められるという形になっているわけでありますが、現実にはこの北部訓練場におきます森林が水源涵養林としまして非常に重要であるという認識のもとに、米軍におきましても現在までの時点におきまして実弾射撃は一切行っていないという状況にございます。  また、その訓練内容につきましても、従来から十分その環境といいますか、森林を保全するということに特段の配慮をした訓練内容あるいは実施のあり方ということになっているわけでございます。  他方におきましては、この北部訓練場は在日米軍にとりまして一般的なといいますか、実弾射撃を伴わない通常の訓練のためには欠かせない訓練場というようにも考えられますので、やはり実態上十分訓練場と森林の保全という面の調整を図りながら、今後とも森林の保全ができるようにという方向で努力していく、またそのようにしてまいりたいというように考えております。
  173. 秋山智英

    ○秋山政府委員 さっきお尋ねの貸付料の件でございますが、北部訓練場と伊江村飛行場の貸付料、五十七年度、最近の実績としまして七千四百九十ヘクタール、二億六千五百万でございます。
  174. 安井吉典

    ○安井委員 後の問題がありますので、これにはちょっと深入りする時間がなくなりましたので伺うだけにとどめておきますが、大臣、やはりこれは当然保安林に編入すべき地域なのですから、それが今の軍用の地位協定の提供地だということにおいて今問題が起きているわけです。それだけに、もう少し県民の生活を守るという立場、今度は保安林のための特別法案をさらに出すわけですから、そういうような段階にもう一度、やはり国有林を守るという立場からこの問題についてもう少しお考えをいただくということをぜひお願いしておきたいと思いますが、どうですか、大臣
  175. 秋山智英

    ○秋山政府委員 私から先に申し上げたいと存じますが、北部訓練場の問題につきましては、先ほど申し上げましたように地位協定に基づきまして施設、区域として提供されているということもございます。したがいまして、これまでも関係省庁と十分相談して今後の方法については研究をしておりますが、さらに今後とも重ねて鋭意研究して、水資源の重要性に十分対処し得るような方法を検討してまいりたいと思います。
  176. 山村新治郎

    山村国務大臣 前にも山火事等の問題、いろいろございまして、農林水産省として、特に林野庁として、大変な問題でございますので、今長官から話がありましたとおり、関係省庁と連絡をとりながらやってまいりたいと思います。
  177. 安井吉典

    ○安井委員 林政審の答申の問題から手始めにいわゆる特措法の問題に入っていきたいと思いますが、土光臨調によって財政難にあえぐ国有林に関する指摘がありました。それを受けて林政審が一月十一日の答申をした、こういう経過になっているわけであります。  その答申を読んでみますと、なるほどと思われる点もかなりあります。例えば、国有林の三大使命を掲げてその達成の方向を示していることや、経営が悪化していることについて、外部要因についてもかなり分析をしているようであります。あるいは改善期間の延長とか、財投資金借り入れ条件の緩和だとか、一般林政の充実強化等も取り上げている点は私どもも評価できると思います。しかし、一方、具体的な施策の提示ということになりますと極めて貧困で、自助努力だけが強調されて、一万五千人の要員削減、三千億円の林野財産の売り払い、担当区を含む組織、機構の縮小、あるいは施業計画の手抜きとでもいうようなこと、こういうような言い方は本来の林野の使命に逆行する、そういうような危険性も持つということになるのではないかと思います。もっともこれは行政改革という観点からスタートした答申ですからそうなるわけで、真っ正面から、日本の林業はどうあるべきか、国有林はどうあるべきか、そういう取り上げ方でないという点に私どもは問題があるのではないかと思って見ているわけであります。  そこで、その答申を受けて政府は今回のいわゆる特別措置法案を提案したわけでありますが、答申そのものもかなり欠陥を持っているのに、その答申をさらに手抜きをして矮小化した法案だ、そう言ってもいいのではないかと思います。  そこで伺いたいのは、国有林の経営悪化の要因でありますが、伐採量の制約を強化されたことだとか、木材価格の下落だとか、生産性の低下だとか、利子の増大だとか、そういうようなものがあるわけであります。その点はそう観点の差はないわけでありますが、資源を保続すること、あるいは生態系を無視した過伐、乱伐、それからもう一つは外材へ過度に依存したということ、こういうようなことが一つの大きな原因になっていると思いますが、その点は長官はどういうふうにとらえておりますか。
  178. 秋山智英

    ○秋山政府委員 国有林野事業につきましては、五十三年以来、経営改善に積極的に取り組んでまいったわけでございますが、ただいま先生から御指摘がございましたように財政上非常に厳しくなっているわけでございますが、内容につきまして私ども分析いたしますと、まず収入面におきましては、やはり自己収入の大宗を占めますのは林産物販売でございますが、最近この伐採量が、いわゆる資源的な制約もございまして縮減せざるを得ない実態にまずございます。  それから、現在の木材価格は自由市場のもとにおきまして価格が形成される、こういうことでありますが、最近、住宅の需要が不振でございまして、材価が低迷下落している、こういうことが収入面で言えると思います。  それから支出面で見てまいりますと、先生からも先ほどございましたが、戦後の、昭和三十六年ごろからの木材需要の増大に対処しまして、木材価格が相当高騰したわけでございますが、その場合におきまして国内の生産で対処しなければならぬという事情等もございまして、伐採量が相当増加したわけでございます。それに伴いまして要員規模も大分ふやしたわけでございますが、その後の伐採量の減少に伴いまして、拡大した要員規模を縮減すべく努力しておりますが、現在まだその調整過程にある。それから事業の実行につきましても、鋭意能率性につきまして努力しておりますが、まだこれも不十分な面もございまして、人件費を初めとします諸経費が過大になっているわけでございます。  それから、これからの森林の内容をよくするために行っております造林、林道等の投資でございますが、自己資金が大変減少してまいっておりますので、借入金に依存する度合いが高まっておりまして、これに伴うところの支払い利子が増高している、こういうことが挙げられるわけでございます。  私ども、このように国有林野事業の財務が非常に悪化していることにつきまして、鋭意経営改善によってこれに努力をしているわけでございますが、林政審におきましてもこの問題については指摘がされているわけでございますが、やはり林産業をめぐる環境条件が悪いという問題もございますが、と同時に、自主的な経営努力の面におきましてさらに一層改善を図っていかなければならぬ面もございますので、私どもは、この財政措置と自主的な改善努力をいたしまして、健全性を確保してまいりたい、かように考えているところでございます。
  179. 安井吉典

    ○安井委員 私は、いろいろな理由はあるが、その中でも過伐、乱伐あるいは外材への過度依存、こういうような問題が原因として大きく位置づけられるのではないか、そういうことを言っているわけです。そこで、自助努力だけで再建ができると思うのかどうか。なるほど、経営の内部的な改善がいろいろと必要であることは間違いありません。しかし、自助努力だけで再建が果たしてできると思うのかどうかということであります。五十九年度以降十カ年で収支の均衡を図るというのですが、間違いなくできるというふうにお考えなのですか。
  180. 秋山智英

    ○秋山政府委員 最近におきます木材価格の動向であるとか、あるいは先ほど申し上げました債務残高の累増というふうな事情もございまして、七十二年度に収支均衡を達成するというのは容易な目標ではないというふうに私どもも理解をしております。しかしながら、世界的な森林資源の長期的な動向というのを見てまいりますと、先ほど先生もお触れになりましたが、資源の減少という問題が中長期的には見通されているわけでございますが、今度は国有林の資源の内容を見てまいりますと、戦後に造林されました人工林が六十年代の後半からようやく伐採時期に到達するという、そういう状況も十分ありまして、生産力の増大が期待できるわけでございます。  そこで、私ども先ほど触れましたように経営改善を積極的に進めまして、業務運営の簡素合理化の問題であるとか、あるいは要員規模の縮小の問題、組織、機構の簡素合理化の問題、販売方法につきましてもさらに合理化し効率化し自己収入を増大、確保していくというふうな徹底した自主的努力をすると同時に、今回御審議いただいておりますように一般会計からの繰り入れ、さらには退職者がこれから急増いたしますが、その資金としまして財投から資金をお借りし、利子補給を一般会計からお願いするというふうなことも含めまして、財政措置等もお願いすることによりまして、私どもは七十二年度までに収支均衡を達成するように努めてまいりたい、かように考えておるわけであります。もちろん、私どもこういう自主的努力を国有林野事業の内部として実施するわけでございますが、同時に、国有林の問題は我が国の林業全体を取り巻く構造的問題もございます。こういう構造的問題も深くかかわりを持っているわけでございますので、林政審の答申等におきましても提起されておりますいろいろの林業政策上の問題についても積極的に取り組み、その施策の充実強化を図ってまいりたいと思っております。
  181. 安井吉典

    ○安井委員 私は、果たして十年後には均衡というようにいくのかどうか、非常に疑問に思うわけであります。しかし、長官はいく、こう言うのでありますが、各年別にどういうふうな財政措置を行う予定なのか、そしてどういうふうにして均衡ができるのかという、ずっと最後の年までの対策とそれから改善の状況、それをひとつ試算していただきたいわけです。毎年一年ずつこうなって最後はごうよくなりますよという、どういう対策があるのか、それからそれによって最後こうなるということをひとつ試算として、十年先のことをだれも言えないことはわかりますから、試算として私どもにお示しをいただきたいと思います。
  182. 後藤康夫

    ○後藤政府委員 若干資料的な点についての御要求と申しますか、お尋ねでございますので、私からお答えさせていただきますが、国有林野事業のこれからの収支の見通しというようなもの、その中には当然財政措置の問題も含まってまいりますが、これにつきましては林政審の場におきましてもいろいろな御議論がございまして、こういう仮定を置いて計算したらどうなるかやってみろというような資料要求の形で作業をいたしたことはございますが、材価の見通しあるいは今後の財政問題につきましてもいろいろ不透明な要素もございますし、要員をどういうふうに考えるか、今後の組織をどう考えるか、非常にたくさんの仮定を置きませんと試算ができない、こういうことでございまして、林政審議会におきましても一本にまとめた試算というようなものをやっておるわけではございません。  ただ、先生お尋ねでございますので、例えばこういう前提条件で計算したらどうなるかというふうなことでございましたら、私ども資料としてそういうふうなものの計算をいたしてみるつもりはございます。
  183. 安井吉典

    ○安井委員 委員長においてもその資料の提出についてよろしくお計らいをいただきたいと思います。
  184. 阿部文男

    阿部委員長 はい、承知しました。
  185. 安井吉典

    ○安井委員 あと、保安林は非採算性なものですから一般会計で見るべきであるとか、木材販売のための積極的な戦略を考えよだとか、そういったようないろいろな提起もしたがったわけですが、時間がありませんので、最後にいわゆる特別措置法案に対する私たちの考え方を申し上げて、政府の検討を願っておきたいと思います。  先ほども申し上げましたように、特別措置法の改正法案というのは七十二年度収支均衡という目標で、改善期間の延長と退職金についての資金対策だけが盛り込まれた改正案であります。しかし、私どもは、これでは長官のお言葉にもかかわらず七十二年度均衡はなかなか難しいのではないかと思います。林政審の方も新たな政策展開なしにはこの均衡の達成は困難である、こう言っていますからね。新たな政策展開をどう政府がやるかということいかんにかかっているのではないかと思います。林政審は九項目の提起をしておりますが、政府はそのうちの二項目だけしか法案化しておりませんので、私たちはその残りの七項目を中心にしてさらにこの法律案を充実するということを要求していきたいと思うわけであります。例えば政府の原案に加えて、一般林政の問題だとか担い手対策だとか林業労働の問題、山村振興、国産材の利用等を加えて内容を充実したものにしていく、そういうことで初めて国有林の再建も可能でないかと思うわけであります。  具体的に社会党として政府原案に対する修正要求として考えておりますのは、第一は法律の趣旨、目的に、答申にも掲げておりますような三大使命、一つは林産物の計画的、持続的な供給、二つ目は国土の保全等の公益的機能の発揮、三つ目は農山村地域振興への寄与、これは林政審も言っているわけですから、これを法律の趣旨のところに書き込むことが必要ではないか。それから第二には、改善期間も政府案は六年ですが、これを十四年くらいまでに延ばすということが必要ではないか。それから三番目は、改善計画の規定の中に森林資源の整備充実に関する事項、資金計画に関する事項、これを加えていく。それから第四番目には、一般会計から特別会計へ繰り入れをする対象となる事業の例示は造林等としかありません。しかし、私どもは、国土の保全だとかその他実際に重要な事業を例示の中に加えて、例示を拡大した規定の仕方をすべきであるという考え方であります。それから第五番目には、特別会計における借り入れの貸付条件の緩和と利子の補給を明確に規定をしていくということであります。  大体こういったような考え方を持っているわけでありますが、きょうこれについて直ちに政府のお考えを聞こうとは思いません。ぜひ我々のこの修正の要求に応じてほしいのであります。そして、まだこれから審議が始まったばかりでありますので、逐次我々の党の委員の質問がありますので、それに誠意を持ってお答えをいただくとともに、最後の、審議の終わりまでに私どものこの考え方に対する政府としての御意見を明確にお示しをいただきたい、御検討をそれまでに十分していただきたい、そのことを最後にお願いしておきたいと思いますが、どうですか。
  186. 山村新治郎

    山村国務大臣 ただいま伺ったばかりでございますので、ひとつ勉強さしていただきたいと思います。
  187. 安井吉典

    ○安井委員 じゃ、終わります。
  188. 阿部文男

  189. 島田琢郎

    島田(琢)委員 林野三法の審議に当たりまして、私は、保安林整備臨時措置法関係でお尋ねをしていきたい、こう思います。  この法律の幾つかの問題点を指摘するに当たりまして、きょうは、大臣林野庁長官がおいででございますから、既に新聞でも報道されておりますから概要御両氏もおわかりのことと思いますが、私は、過日、決算委員会におきまして国有林の交換にかかわります問題点について幾つか指摘をいたしました。当然林野庁あるいは関係の省庁で、ただいま私の要求いたしました資料がまとめられつつあるものと思います。そしてまた、大変古い話なものですから、ここに証人もしくは参考人の招致を委員会にお願いをしておる、こういう経緯もございます。したがいまして、多くの時間は決算委員会で十分討議をする、議論をするということにいたしたい、こう思いますが、きょうは保安林にかかわるところだけ私の疑問に思っております点をただしてまいりたい、こう思っているのですが、指摘をいたしました交換に伴います受け財産と言われております新潟県関川村の山は現在国有林として事業が行われているわけでありますけれども、この山の保安林の指定がいつ行われたのかをまず冒頭にお聞きをしたい。
  190. 秋山智英

    ○秋山政府委員 関川地区の交換受け財産に関連しましての当該の保安林でございますが、これは昭和二十六年六月六日に水源涵養を目的として指定されております。
  191. 島田琢郎

    島田(琢)委員 当然、保安林の指定は森林法の制約のもとに置かれますね。そういたしますと、大事な指定施業要件というのがこの保安林についているわけであります。関川村のこの国有林の保安林は何を目的にした保安林ですか。
  192. 秋山智英

    ○秋山政府委員 先ほど申し上げましたとおり、水源涵養保安林でございます。
  193. 島田琢郎

    島田(琢)委員 そうすると、それに伴います指定施業要件というのが整備されていなくてはなりません。これは整備されていますか。
  194. 秋山智英

    ○秋山政府委員 現在の指定施業要件の立木の伐採の方法と立木の伐採の限度でございますが、これにつきまして申し上げますと、立木の伐採方法につきましては、主伐にかかる伐採の種類、伐採種は定められておりません。それから、主伐として伐採することができる立木は岩船地区の森林計画で定める標準伐期齢以上のものとするということが決められております。  それから立木の伐採の限度でございますが、皆伐により伐採することができる一カ所当たりの面積の限度は十ヘクタールとするということであります。
  195. 島田琢郎

    島田(琢)委員 指定施業要件というのはその二つだけですか。
  196. 秋山智英

    ○秋山政府委員 この地域の施業要件の立木の伐採及び伐採の限度につきまして申し上げたわけでございます。     〔委員長退席、玉沢委員長代理着席〕
  197. 島田琢郎

    島田(琢)委員 森林法に基づきます保安林の指定施業要件というのが幾つありますか。
  198. 高野國夫

    ○高野説明員 指導部長でございますが、お答え申し上げます。  指定施業要件の中には、ただいま長官がお答え申し上げました伐採といたしましてその年に切ることを認めます面積、皆伐面積、これが一つございます。それから、主伐をいたします際に標準伐期齢以上で切るべきである、そういうのが一つございます。それから造林につきましては、新植すべき箇所についてはヘクタール当たり三千本以上植えること、こういったような要件がございます。先ほど長官が御説明申し上げましたのは、そのうちの立木に関します部分でございます。
  199. 島田琢郎

    島田(琢)委員 そうすると、正しく言えば指定施業要件というのは三つあるということになりますね。それは、長官の説明によると、二つしかこの関川村の保安林の指定施業要件としてはっけられていないということになりますが、これはどういう理由に基づくものですか。
  200. 秋山智英

    ○秋山政府委員 先ほど私が申し上げましたのは、伐採方法と伐採の限度につきまして実は申し上げたわけでございまして、植栽の方につきましては落としましたので、おわびいたします。
  201. 島田琢郎

    島田(琢)委員 当該関川村の保安林について、植栽のこの項目もついているのですね。
  202. 高野國夫

    ○高野説明員 まず一般的な場合につきまして先ほど申し上げたわけでございますが、大変恐縮でございますけれども、もう一度申し上げますと、立木の伐採の方法につきましては、伐採種をどのように定めるかというのが一つございます。それから、主伐として伐採いたします場合には標準伐期齢以上のものについて切りなさいといったようなのが一つございます。それから立木の伐採の限度というのがございまして、その流域の中で一年間に切ることを認めることとしている条件が一つございます。それからもう一つ……
  203. 島田琢郎

    島田(琢)委員 私の質問に答えてもらわないと。時間ばかりかかってかなわない。
  204. 高野國夫

    ○高野説明員 はい、わかりました。  それから、一カ所当たりの皆伐面積を規制する部分がございます。以上が伐採でございます。  それからもう一つは植栽でございますが、植えるべき部分がある場合につきましてはヘクタール当たり三千本以上植えるべきこと、こういったようなものがございます。そこで、当該区域につきましては現行の指定施業要件の中では植栽にかかわる指定施業要件は定めていないのでございます。
  205. 島田琢郎

    島田(琢)委員 それはどういう理由なのですか。
  206. 高野國夫

    ○高野説明員 お答えいたします。  当該区域が杉の植栽をいたしまして成長が十分認められるような場所もあります一方、広葉樹林といたしまして将来造成をしていく方がいいような部分もあるわけでございまして、現行の施業要件の中ではそういった広葉樹の造成が比較的容易である、そういったような観点から新植についての施業要件は指定をしていない、こういうことでございます。
  207. 島田琢郎

    島田(琢)委員 そうすると、当該林地は植栽の必要を認めない林分である、こういうことですか、長官。
  208. 秋山智英

    ○秋山政府委員 保安林につきましては伐採したときには植栽の義務づけがされておりますので、植えるべきところは植えるということになっております。
  209. 島田琢郎

    島田(琢)委員 なぜ植えないのですか。
  210. 高野國夫

    ○高野説明員 お答えいたします。  事実上の伐採行為が行われまして、しかも杉などの植栽が可能であります部分につきましては当然植栽をするわけでございますが、植栽によらなくても更新が可能であり、その方が将来、先ほど申し上げました広葉樹の造成などをしていく上では望ましいというような部分につきましては、施業要件の上で植栽の指定をしないということがあるわけでございます。
  211. 島田琢郎

    島田(琢)委員 当該林地はあなたが今説明したような状況だったというのですね。
  212. 高野國夫

    ○高野説明員 お答えいたします。  現在の指定施業要件の中では、そのような判断をいたしまして、新植の部分については要件として定めていないということでございます。
  213. 島田琢郎

    島田(琢)委員 指導部長、いいかげんなことを言って後で困らないだろうな。あなた、見てきて言っていますか。現地を見ているのですか。現地はどういう状況にあるか、詳細に説明してください。
  214. 高野國夫

    ○高野説明員 私自身現地には行っておりませんが、部下職員を派遣いたしましてその報告は聞いておりますけれども。そこの林地全体について申し上げるべきでしょうか。
  215. 島田琢郎

    島田(琢)委員 見てきたのか、見てきてないのか。
  216. 高野國夫

    ○高野説明員 私自身は現地を見ておりません。
  217. 島田琢郎

    島田(琢)委員 この事業図をよく見てみればわかるわけですが、私は現地を見ておりますよ。しっかり見てまいりました。ですから、のみ込んでおりますし、頭にみんなどういう状況なのかを知っていて尋ねているのですよ。この事業図を見たって、あなたが言われるようなことになっていませんよ、これは。  天然下種更新にしたって、自然に山ができ上がるようなことを言っていますが、当然ここは保安林の指定を受けている山なのだから、法第三十四条の二に基づいて、長官が言われるように、直ちにこれは植栽をしなければならない。天然更新でこの山が立派に水源涵養林としての機能を果たしているという認識なんですか。
  218. 高野國夫

    ○高野説明員 お答えいたします。  植栽につきましては、その植栽によらなければ的確な更新が困難と認められる伐採跡地について定められる、このようなことになっておるわけでありまして、当該場所につきましては、先ほど申し上げましたように、天然更新によりまして更新が可能な部分が多く含まれているということから、施業要件の中で新植の部分につきましては指定をしていない、こういうことでございます。
  219. 島田琢郎

    島田(琢)委員 私は、ここで今までの質疑を通して問題点を明確にしておきたい。  先日、甕林政部長と私が決算委員会でこの質疑をやりましたときは、保安林ということを一切言いませんでした。私もその後の調査で保安林に指定されているということがわかったのであります。それで、冒頭お聞きいたしましたように、これはごく最近保安林として指定されたものではなくて、昭和二十六年に既に指定されていた。そして、この保安林整備法は、先ほど長官から安井委員の質問に対しても答えておりますように、二十八年に成案を得、二十九年の国会に提出された。私がこの間指摘をいたしました当該林地は交換の時点で既に保安林だったということであります。  林政部長はこの事実を隠して私に答弁をされたのか。勘ぐりに過ぎると言われるかもしれないが、那須の国有地とこの関川村の民有地との交換に当たっては、不当な坪当たり単価が設定されている。それは那須の方はできるだけ安く評価をし、新潟の関川村の民有地はなるべく高く単価を設定することによって等価交換をやろうとしたのであります。極めて作為的なのであります。だとすれば、保安林には一定の規制がある。今お話に出しておりますように、森林法の規制に基づいて別表の一によって厳しく規制を受けている。当時は今よりもゆるかったとはいっても、保安林に対しては相当制約があるわけです。民間の持っている人にとってみれば、こんな制約のある山はなるべくどこかへ売ってしまいたい、処分したい気持ちがある。だから、そこに小針暦二氏は目をつけたのであります。政治家が裏でサゼスチョンを行った、この事実は明らかであります。ところが、事もあろうに林野庁は当時のその交換に当たって保安林であることを承知でやったとしたら、行政の責任は免れないばかりか、法律上にも問題が出ると私は思う。  というのは、答えてもらおうと思っておりましたが、あなた方の答弁を待っていると時間がかかり過ぎてしまいますから、私の方で一定のあれを出します。わかり切ったことですから。  今度の保安林整備法によりますと、もう三十年経た今日も一つも変わっていないのですが、第四条、保安林というのは買い入れを原則とするとなっているのです。ただし、一定の条件が満たされれば交換もあり得る。しかし、国としては保安林についてはあくまでも買い入れを原則とするとなっているのです。第五条の制約条件が満たされればあるいは交換をするという場合もあり得るが、しかし、今度の事案は明らかに交換という条件には合致しないのです。それを無理やり交換したのです。だから、保安林というのが表に出てくれば評価も安くなるし、不利になるから、保安林を伏せて一般林ということでこの等価交換を切り抜けようとされた形跡が明瞭であります。極めて作為的である。二十年前のことだから、今の皆さんに直接の責任を追及しようという気持ちは私は本当はないのです。しかし、この間の甕林政部長の答弁といい、今日まで二週間を経たこの間において、私に対して約束をした資料の提出に対してさえも二転、三転、うその上にうそを重ねている。これでは私としては、大事な保安林整備法、この法案の審議はできないのであります。  例えば、私は、当時等価交換に当たったときの一件書類を提出するように求めました。それはないと言うのです。だれが考えたってこんなばかな話がありましょうか。それでは、かって民有に帰していた山であったとしても沿革が一つもわからないじゃないですか。民有林時代にこの山のどんな手入れが行われ、どのような状態で推移してきたかという歴史的な沿革というものがわからなければ、国有林に帰属してこれから保安林として、一般林として整備を図っていこうとする場合でも、昔のことがわからなくてどうして整備計画が立てられますか。それを、ないと。だんだん詰めていったら、林野庁にはないけれども出先の前橋営林局にはあるかもしれぬという報告であります。冗談じゃない。地球の上からなくならなかったら、林野庁にはなくたって林野庁の所管するどこかにあるはずだ。明確に前橋営林局が今度の問題になっているわけでありますから、そこになければ村上営林署の出先になくてはならないはずのものであります。それがなかったら施業計画を進めることもできなければ、あの山をどうするかという計画も成り立たないのです。  つまり、今度保安林整備法の延長を皆さん方は提案されているが、先ほど安井委員から十年間の延長で皆さんが考えているような保安林整備ができますかと言ったら、長官はまことに自信なさそうに、成果を上げるよう努力したい、こう言いました。何回こんなものを繰り返したって、皆さん方勝手に自分たちの解釈で別表の正確なる行為もなされないとしたら、これは政令だからあなた方の考え方に何ぼでも直せる。こんなものだったら、保安林の整備法そのものを直したって何の役にも立たぬではないですか。こういういいかげんな保安林の整備をこれからも続けていくというのだったら、この法案は直す必要はないと私は思います。直したって意味がないのであります。そういうことを今度の国有林の等価交換に当たって持っている問題点としてここに明確に指摘しておきたいと私は思うのです。  大臣、今の話を聞いてどう感じますか。
  220. 秋山智英

    ○秋山政府委員 先ほど受け財産につきましての保安林の問題がございましたが、関川地区の国有林は現在四百二十二ヘクタールでございますが、そのうち保安林は百九十九ヘクタールでございます。  それから資料につきましては、二十年前の資料でございますので、やはり倉庫の中を相当探さなければなかなかわからないという実態がございまして、その提出がおくれたことは事実でございますが、そういう過去の非常に遠い段階での資料でございますので、おくれたことはひとつおわびを申し上げたいと思いますが、決してうそを申し上げていることはございません。  それから森林調査につきましては、先生御案内のとおり二十年前の森林調査も差し上げたわけでございますが、あれも実は三日がかりで見つかったというようなケースもございますので、そこは先生ひとつ御理解を賜りたいと思います。
  221. 島田琢郎

    島田(琢)委員 私は、資料の提出がおくれているということを一度も指摘しませんようそをなぜ重ねるのですか。ないと言うのです。ないはずがないだろう、これは永久保存ではないか。持ち出し禁止という場合はあるかもしれない。それなら私の方から出かけていって現物を見せてもらってもいいですよとまで言った。きのうの時点までは、ないと言い張っていたのですよ。そんなばかなことがあるか、それでは規程のどこに基づいてと言って規程を寄せてみたら、東京の林野庁の本庁にはない。だが、そう言われれば前橋営林局にはあるかもしれぬという話でした。こんな不誠意な話がどこにありますか。地球の上から消えてなくならぬ限り、なくなったとは言えないのですよ。そんな不誠意な態度でこの保安林整備法の審議をお願いするなんということ自体、おかしいじゃないですか。私はふらちな態度と言わざるを得ない。誠意がなさ過ぎる。
  222. 山村新治郎

    山村国務大臣 お答え申し上げます。  国有林野は国民の大切な財産でございます。少なくともこの管理、処分をめぐって疑惑を招くようなことは絶対に許されることではございません。二十年前ということで古いことでございますが、誠心誠意、先生要求の資料そのほかにはおこたえしてまいるつもりでございますし、今長官から申し上げましたように、本当に初めはなかったと思ったらしいのです。ひとつそこは御理解していただきたいと思います。
  223. 島田琢郎

    島田(琢)委員 大臣はよう頭を下げるが、済みませんと頭を下げれば済むという話ではないのであります。  それから指導部長、さっき、あなた、現地を見ないで、どこを見て今の山は立派だと言うのですか。施業の必要がないというのは、どこを指して言うのですか。うそを言ってないと言うのだから、改めて聞きたい。本当にうそを言ってないのですか。
  224. 高野國夫

    ○高野説明員 先ほどお答え申し上げました中で、私、当該森林の良否まで立ち入ってお答えをしたとは思ってなかったのでございますが、施業要件の中の新植にかかわる部分につきまして御説明をしたつもりでございます。
  225. 島田琢郎

    島田(琢)委員 当該林分と僕は名指ししているじゃないですか。そんな不親切な答弁がありますか。いたずらに時間だけ稼ごうなんという魂胆では、私はきょうはこれで終わっても、主舞台は決算委員会でございますから、決算委員会には必ず林野庁長官に出てもらってこの問題の究明に当たっていきたい、こう思います。きょうは保安林にかかわる部分で質問をしているのですけれども、保安林という限定された問題で考えても、あの山の等価交換にまつわる私が指摘した今度のこの問題というのは非常に大きな問題点を持っている、こういうことを指摘しているのであります。  ところで、私は会計検査院にもこの際ぜひ伺っておきたい。細かなことは決算委員会の方でやりたいと思いますが、一言だけ伺っておきたいのであります。  当時、会計検査院も現地を調査されて、報告書を出されております。その報告書によりますと、実は肝心なことが指摘されていない。それは、今申し上げました保安林であります。当時、保安林としてこの山の検査に当たったという形跡が全くない。  審議官、お聞きのように保安林に指定されたのは二十六年でございます。保安林整備法もその後できて、問題のこの時期にはこの保安林整備法が既に機能していたときであります。それなのに、一般林としての指摘はされているけれども大事な保安林としての報告になっておらぬというのは、私は理解に苦しむ。しかも、現地を見てきた、こうおっしゃる。おっしゃるというか、報告書にそのように書かれている。現地に行けば、支流の荒川を初めとして、あそこには大変たくさんのダムがつくられています。切り立った山、奥深い山村でありますから、一日して、この川をせきとめているダムに水をいっぱいだめるということがこの山の役割だというのは素人の一人でも気づくはずでありますのに、肝心の会計検査院は保安林としての機能を持っている山という見方をしなかったという点に、私は大変疑問なしとしないのです。同罪とは言いませんけれども、なぜその指摘が欠落したのでしょうか。
  226. 大本昭夫

    ○大本会計検査院説明員 お答えいたします。  二十年前のことではございますけれども、私が、現在残っております会計検査報告、それの審議記録から判断します限りでは、問題のこの受け財産について、特に普通林としての判断だけしたという証拠は何もございません。言いかえますと、私どもが会計検査報告をまとめます途中に、約一年間にわたりまして現地での調査、現地での質問、それから受検庁に文書を出しまして、その後また会計検査院内におきまして数多くの議論をいたしますけれども最後に検査報告に載せます事項は会計検査院全体といたしましての結論を載せますので、その途中いかなる議論がございましても全部が載るということではございませんので、この検査報告に保安林ということが書いてないということは、会計検査院が保安林ということについて検討しなかったということではないということを御理解いただきたいと思います。
  227. 島田琢郎

    島田(琢)委員 そんな答弁では納得できません。そんなばかな説明がありますか。しかし、その分を除けば大変いい指摘、厳しい指摘をしている。この点は評価する。  例えばこういうくだりがあります。「取得前及び取得後の保育手入れが不十分であったため、雑木が繁茂しており、四十年度に保育手入れを行った二十四ヘクタールを除き、早急にこれを実施する必要があるものと認められる」と言っている。指導部長、山の状態は、いみじくも責任あるあなたのところでは極めてでたらめだったけれども、会計検査院は見事にこれを指摘しているのです。しかも「地上立木三千四百立方メートルは広葉樹の天然林であって今後林相改良を必要とする。しかも、そのためには造林費が相当かかる」こういうふうにも言っているのです。つまり、林相改良とは何かと言えば、植栽をせよということではないですか。天然林のままに放置しておけという指摘ではないはずであります。  これほどでたらめなことで、私はこの保安林整備法の審議を進めるわけにはいかない。私の今の指摘の中で、責任ある答弁はできますか。資料も的確なものが出せるという自信もない、やろうともしない、こんな無責任な国会審議に、私どもはどうやって審議をすればいいというのでしょうか。
  228. 秋山智英

    ○秋山政府委員 資料の提出がおくれましたことは先ほどおわび申し上げましたが、当初ないというふうに申し上げましたのは、たしか林野庁になくて、できるだけあらゆるところを八方手を尽くして、前橋営林局の倉庫から見出した、そういう経緯がございますので、そこはぜひとも御理解いただきたいと思います。  それから、私も現地は見ておりません。ですから、報告に基づいてお答えするしかございませんが、御案内のように、あの地域におきましてはかつては災害等もございまして伐採を控えたという経緯があるようであります。それからもう一つは、あの地域の稼ぎ用の資材としてあそこの広葉樹林を売り払う予定をしておりますが、地域の皆さんが希望を出したけれども、いろいろな事情によって結果的にこれを買わないということでこれまで参ったというふうな経緯もあるようであります。  したがいまして、現在の林相につきましては、人工林のところもありますが、広葉樹林となっているところもございまして、これらの森林についてはこれから現地をよく見まして、もちろん人工林のところは人工で仕立てますが、針広混交林として仕立てた方がよろしいところはそういう形で仕立てるとか、土地そのものは森林褐色土壌のふドライというのですか、割に杉の適地に合うようなところだというふうな森林調査簿がございます。したがいまして、そこについては一部杉の造林地も実施しておりますが、それ以外のところについては、地域で立木の売り払いにつきましての買い手がなかったという経緯もございまして、実行しておらぬところもあります。先ほど先生御指摘のありましたように、あそこには堰堤も入れておるわけでございますが、堰堤の打設の時期等も、またその地盤の安定性ということも踏まえながら施業方法をやっていくというようなことでございまして、従来植えられた面積というのはそう大きくございませんが、今後におきましては、そういうふうな林相を踏まえた形での総合的ないい山をつくるようにこれから進めてまいりたい、かように考えております。
  229. 島田琢郎

    島田(琢)委員 この交換の状態は、私が先ほど指摘しましたように法五条の交換は成り立たない、あくまでも四条の事案である、私はそういうふうに断定します。それをなぜ交換に持っていったかの明確なる御説明が欲しいのです。
  230. 秋山智英

    ○秋山政府委員 実は、残念ながら現在私ども記録によって判断する以外にございません。したがいまして、記録で申し上げるわけでございますが、受け財産でございます新潟の民有林につきましては、奥地に存在いたしておりますが、先ほど触れましたように造林の適地でもある。これは土壌的な条件は別ドライでございますから杉の適地でございますが、造林の適地でもあり、既存の国有林野とあわせ経営することが可能で、これを取得することが適当であると考えられ、また、渡し財産である那須の国有林につきましては、これは馬産限定地であったようでありますが、林地としましては生産性の低いこともあり、国有林としても管理経営する必要が乏しいと考えられ、交換が行われたものと私どもは記録から承知いたしております。
  231. 島田琢郎

    島田(琢)委員 私の資料要求がおくれているというだけではなくて、あなた方は正確にその事実について、当時の経過について事実を承知するという責任があるはずです。当時の記録によればという、その記録はどこの記録ですか。
  232. 秋山智英

    ○秋山政府委員 前橋営林局の記録でございます。
  233. 島田琢郎

    島田(琢)委員 あなた方の手元に入っていて、どうして僕の手元に来ないのですか。一番大事なのは、一件書類の中でも、なぜ交換が行われたのか、その辺の事由を明らかにしてほしいと僕は今まで言い続けてきた。前橋営林局から取り寄せた資料によればと言うが、私のところには届いておりません。前橋営林局にあるかもしれない、二週間たった今もそんな程度の資料の探査でしかない、探している状況でしかない。一体国会の論議を何と心得ているのですか。この問題を甘く見ているのですか。  きょうは保安林の問題だけしか言っておりませんが、これは調べれば調べるほど疑惑は深まるばかり。二十年間放置されてきたというそもそもの原点にも非常に強い疑問を持っている。皆さん方は問題の認識が全く欠落しているのか、薄いのか。そんなことでどうしてこの法案の審議ができますか。今、大事な保安林の審議をやっているのです。そんな態度でこれからも保安林の整備ができると自信を持って答えられるのですか。こんなに不備な面、やらなければならぬことを一つもやっていない、それを国会で聞けば、うそは言っていないと言うけれども、うその上積みじゃないですか。うそにうそを重ねて何とかこの場を切り抜けてやろう、ごまかしてやろうという姿勢でしかないのじゃないですか。言葉が過ぎるかもしれませんが、私は納得できないのです。
  234. 秋山智英

    ○秋山政府委員 私が先ほど申し上げました資料としましては、交換理由ということで先生の手元に差し上げておりますし、資料要求といたしまして交換面積、立木数量、評価額等につきましても提出をしております。私ども、あの国有林につきまして放置をしていると今御指摘をいただいたわけでございますが、施業計画に基づきましてその後造林地を造成もしておりますし、保育、下刈り等もやっておりますし、また先ほども申しましたが、羽越災害等の被害がありましてその後伐採ができなくなったという経緯、さらには木材の不況等もございまして地元稼ぎ用としての広葉樹の伐採ができないというような、もろもろの条件がございましてこれが実施し得なかった面がございますが、決して私ども放置しているわけではございませんので……
  235. 島田琢郎

    島田(琢)委員 これは決算委員会の答弁と全く違うし、それからなぜ五条になったのかという理由が幾ら聞いても明らかになってきません。これ以上本題の質問に入ることができませんので、私は委員長においてしかるべき政府側のいわゆる統一見解を示してもらうまで質問を保留したいと思う。これでは質疑ができません。
  236. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員長代理 じゃ、答弁を許します。後藤林野庁次長
  237. 後藤康夫

    ○後藤政府委員 先生のお尋ねの中の法律の四条、五条の関係でございますが、四条で書いてございますのは、国は保安林整備計画に基づきまして保安林を計画的に買い入れていく、計画的に買い入れていくというところに四条のあれがあるわけでございます。第五条の交換につきましては、交換の差額について、交換のできます場合に渡し財産と受け財産との間の価額の差について一定の限定がありますが、それを特例を設けたという趣旨でございます。本件の交換につきましては、国有財産法によりまして土地の交換をやったものでございまして、このような事例、保安林につきまして交換をしておる事例はほかにもあるわけでございます。
  238. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員長代理 ちょっと速記をとめてください。     〔速記中止〕     〔玉沢委員長代理退席、委員長着席〕
  239. 阿部文男

    阿部委員長 速記を始めてください。  暫時休憩いたします。     午後三時五十六分休憩      ————◇—————     午後四時十四分開議
  240. 阿部文男

    阿部委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。吉浦忠治君。
  241. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 保安林整備臨時措置法の一部を改正する法律案国有林野法の一部を改正する法律案及び国有林野事業改善特別措置法の一部を改正する法律案について、私は、主に保安林整備臨時措置法の一部を改正する法律案についてお尋ねをいたしたいと思うわけでございます。  本法案には、保安林の機能強化を図るという見地から、保安林に対して造林、保育、伐採等も行われるようにするとした積極的な側面が盛り込まれております。このことについては、規制措置一辺倒の従来までの考え方から一歩前進しているというふうに一応は評価するものでございますけれども、元来森林は健全な経営が施されてこそ公益的機能が果たせると思うわけであります。その役割を担わされている保安林の機能は、もとより経済的機能ということについても十分機能を発揮できるようになるものと考えるからであります。これまでの林野行政においては、ややもするとこれが逆転して、公益的機能や経済的機能の追求を二者択一的にとらえがちとなりまして、この二つの機能を発揮させるための健全な林業経営の育成という視点が見失われていたのではないかと私は思っているわけです。  確かにこの二つの機能低下の要因としては、我が国の林業を取り巻く外的、構造的要因という、いわゆる林業全体が沈滞をしておるわけです。このことが及ぼす影響があることは否定するものではありません。したがって、沈滞の状況を打開するために真剣な取り組みをしていかなければいけないと考えているわけです。私、今申し上げたような、ややもすると二者択一的にとりがちな発想が我が国のこれまでの林野行政というものをゆがめてきたのではないかと考えたわけです。  この点について、まず長官、どういうふうにお考えなのか。
  242. 秋山智英

    ○秋山政府委員 森林の機能につきましては、今先生のお話ございましたように、木材生産機能それから公益的機能、両面があるわけでございます。したがいまして、私どもも森林、林業政策を進めるに当たりましては、いろいろ持っておりますいわゆる多面的な機能を総合的に高度に発揮できるような森林づくりということがやはり基本問題だと考えております。私ども現在全国森林計画さらに地域の森林計画、国有林につきましては国有林の施業計画をつくりまして、森林の維持培養に努力するとともに、保安林につきましては保安林制度の適切な運用を通じまして、今申し上げましたような多面的な機能を高度に発揮し得る森林の育成をやってまいりましたが、さらに今後ともこういう認識に立ちまして、特に緑資源の確保という問題が大変国民的要請にもなっておりますので、そういう考え方から森林資源の整備、林業生産基盤の整備あるいは生産活動の活性化に努力してまいりたいと考えているところでございます。
  243. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 繰り返すようでありますけれども、この法案においては、保安林の機能強化を図るということで積極的な側面は出ておりますけれども、このような積極的な意味を持つ措置について、本来ならば臨時措置法というのではなくて恒久法として位置づけてよい性格のものと私は思うわけでありまして、臨時措置法として位置づけられるを得なかった理由はどこにあったのか。
  244. 秋山智英

    ○秋山政府委員 現在の保安林の指定目的に沿いまして機能を発揮させるということは今申し上げたように大変大事なことでございますが、これは、現在の森林法に規定されております現行保安林制度で内容を充実していくという考え方に立っているわけでございますが、現在の保安林制度の中におきましては、保安林の伐採の制限それから施業要件が決められておりますが、これは伐採の方法それから伐採の面積、そういう規定、さらには伐採跡地の造林に対しまして義務づけをする、こういうふうな考え方に立ちまして、どちらかと申しますと、現在持っている機能を低下させない、そういう角度から恒久制度としてこれが設けられております。  私どもは、この制度におきまして国並びに各都道府県等が指導し、その機能の確保を図ってまいっているわけでございますが、最近林業生産活動が停滞をしておるということもございまして、機能の低下を来している保安林というのが実は生じてまいっておるわけでございますので、現在の措置だけではなかなか対応し得ない保安林が出てまいったわけでございます。私ども、今後十年間におきまして、機能の低下した森林につきまして、臨時的な措置といたしまして、まず地域森林計画によりまして施業方法、場所、時期を特定しまして、具体的に造林等を行うべき事業につきまして示すと同時に、さらに森林法の施業勧告を行い、さらにはこの保安林の新しい御検討いただきます制度におきまして権利の移転等につきましての勧告の措置を設ける、こういうふうにしたわけでございます。私どもは、現在機能が低下した保安林につきまして、今後十年間におきまして機能回復を図る必要のあるものにつきまして措置をして、しかる後に、今度は恒久法で措置をしてまいりたい、こういう考え方でございます。
  245. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 保安林整備臨時措置法を見ても、その根拠となっているものは森林法であろうというふうに思うのですね。現行の森林法は規制法的性格を持っているために、森林法のみでは保安林に積極的意味を持つ施業は講じられないという隘路を持っているわけでありまして、そうであるならば、私は思いますのに、森林への適切な施業を加えるという、いわば森林にとっては当然の措置を恒久法として仕組んだ方がいいのではないかというふうに思っているわけです。まず現行法の森林法の中へこれを織り込むなど、我が国森林行政の法体系を徹底して再検討してみるべきではないかというふうに考えるわけですけれども、ただし、これは大がかりな作業となるわけでありますから、一朝一夕でなし得るものではないというふうに私も承知をいたしておるわけであります。  そこで、本日は要望するところにとめておきたいというふうに思いますけれども、お伺いいたしたいのは、前回、四十九年の保安林整備臨時措置法の改正に当たって審議された際に、保安林については森林法本法の改正をもって対応すべきであるという質疑がなされているわけです。これに対して前向きに対処すべきである旨の答弁がなされているのでありますが、林野庁ではその後検討されたのかどうか、もし検討されておるならば、その内容及び結論というのはどうであったか、この点をお聞かせ願いたい。
  246. 秋山智英

    ○秋山政府委員 今先生御指摘のとおり、保安林制度のあり方につきましては、前回の延長に際しまして附帯決議がなされましたことも十分了知しておりますし、また国会での論議もございまして、保安林のこれからの配備の仕方、機能の維持向上についての方策、あるいは受益者負担のあり方など、いろいろ問題がございまして、これはその後林野庁におきまして鋭意検討し、調査をしてまいってきております。  そこで、その調査検討をし、しかる後に五十七年からは保安林問題検討会というのを学識経験者を中心にして設けまして、これからの保安林のあり方につきまして全般的検討を現地調査を含めまして実は実施してまいったという経緯がございます。その過程におきましていろいろと論議が出ましたが、現行法におきますところの保安林の計画的配備の問題、買い入れ制度の問題、さらには新たに必要とされる機能の回復のための措置という問題につきまして、実は大分議論がございました。  その中で特に要点を申し上げますと、保安林の配備の問題につきましては、相当の数字には達しておる、しかしながら最近における水資源の需要の問題あるいは災害の発生との絡みで、もう少し保安林を地域的に配備したらどうか、そういう意味でさらにきめの細かい配備を図っていくべきであるという意見が出てまいりました。また、最近の林業不振等から機能低下した保安林が相当ございますので、当面、そういう状態の森林を解消するために機能回復の措置をとる必要があり、まずは保安林整備臨時措置法におきまして所要の措置を講ずることが必要である、こういう御議論があったわけでございます。  私どもといたしましては、このような検討会におきますところの議論をもとにいたしまして、保安林の配備と機能回復につきまして当面緊急に進めていくべきであるということで、今回の臨時措置法の改正延長によりましてこれらの措置を内容に盛り込んだ次第でございます。
  247. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 その点については、また逐次細かく質問をいたします。  続きまして、私どもの党で検討してまいりました点でございますけれども、先ほど、私は健全な林業経営がなされることこそ森林の持つ公益的機能も経済的機能も十分に発揮されるということを申し上げたわけでありますが、そのような意味で、次に、公明党が主張してまいっております政策というものを二、三出させていただきながら御意見をいただきたいと思うわけでございます。  つまり、公明党では、林業経営育成のための施策として、まず、地域に即した技術指導を基軸とした林野行政の重要性というものを述べているわけであります。そのためには、実物教育が可能となるような行政システムを確立しなければならない、そして、その実物教育による技術指導のもとに林業生産の集約化と流通の高度化を図るべきであるということを強調しているわけであります。  また、この場合、林業生産については短伐期志向と人工造林一辺倒となっている生産方式の現状を見直し、生産の集約化を進める見地から、多様で高度な施業が行われるべきであるというふうにしているわけであります。  また、流通のあり方等については、生産地において市場情報が的確に把握でき、需要に即応した造材、加工を機動的に行うとともに、生産の集約化に伴って重要性を増す集積、配給機能も十分発揮されるよう流通の高度化を推進すべきである、こうしているわけであります。  以上が我が党の政策の一端でありますが、これについて林野庁としてはどういう御見解をお持ちなのか、この点をまずお答えいただきたい。
  248. 秋山智英

    ○秋山政府委員 地域の特性に即しました林業を展開するということでございますが、これはやはり林業の普及指導の中で私は最も大事なことだ。特に、戦後一千万ヘクタールの人工林を造成した対象の方々の中には、初めて薪炭林を人工林に変えていったという方が幾人かおるわけでございます。そういう意味では、やはり現地に即した、特性を生かした林業生産活動を推進しなければならぬということで、私どももきめ細かくこれからの普及指導をしていかなければならぬと思っておるわけでございますが、特に私ども五十九年から考えておりますのは、非常に大事な林業後継者に対しまして、技術定着させるための指導が特に必要でございますので、そういう意味で実地におきまして林業技術の研修を進めるというような事業を新たに進めることにしております。これからは地域林業の特性を生かした形で林業従事者が技術を錬磨することが必要でございますので、国、県、市町村と一緒になりましてそういう普及指導体制の整備は進めてまいりたい、かように考えているところでございます。  それから、もう一つお話ございました人工林一辺倒ではないか、こういうことでございますが、森林の持っています立地条件に合った森林を造成することが基本でございますので、あくまでも自然的条件あるいは経済的条件と申しますか、地域林業としてどういうふうな林業地帯を造成するか、そういう地域の条件に即した森林の施業を採用しなければなりませんし、各地の特性に合った形での伐期齢の選択ということも必要だと思います。  そこで、私どもの現在の森林施業の基本になっておりますのは、御承知のとおり、森林資源に関する基本計画というのがございますが、これでは人工林も造成しますが、同時に天然林につきましても、これは地方を生かして造成することが大事でございますので、現在の長期計画ですと人工林と天然生林、これを大体半々の将来目標を設けまして現在指導しているわけでございますが、先ほど先生から御指摘ございました森林の持っています多面的な機能を最高度に発揮するための森林施業という形で指導していかなければならぬと思っています。したがいまして、最近は森林所有者の方々に対しましても地域の特性に合った杉、ヒノキの造林等も推奨すると同時に、最近の山村地域の活性化という面から見てまいりますとシイタケ等の生産も極めて重要でございますので、クヌギ造林等も積極的に指導しておりますし、さらには将来に向けまして森林の持っています各種の機能を高度に発揮するためには複層林の施業方法というのも必要でございますので、昨年の例の水源林地帯への複層林の造成から始めまして、ことしも複層林の造成についてさらに意を用いてまいりたい、かように考えているところでございます。
  249. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 以上のような我が党の考え方を前提とした上で、その具体化の一つとして森林法に基づく森林計画制度のあり方についてお尋ねをいたしたいのですが、それは、現行の森林計画制度は二段階の計画制度にすべきではないかということでありまして、これは前にも委員会等でも、参議院の方でも同僚議員が質問いたした点でございます。つまり、現行のいわゆる国、県が定める全国森林計画や地域森林計画は、末端の個別の民有林の施業計画とは大きな乖離があるというのが現状ではないかと私どもは思っております。  そこで、個別の民有林経営に活力を持たせつつ、実効性のある森林計画制度とするために、国や県の計画はこれを誘導目標的なものとして、他方、個別の民有林計画については指導職員の技術指導あるいは助言を受けながらしっかりした施業計画を策定してこれを積み上げていって、そして市町村計画としていく、これが国や県の計画とできるだけすり合わせられるような行政努力がなされるべきである、こういう考え方を持っているわけでありまして、今後はこのような方向へ森林計画制度のあり方を改めるべく検討してみてはどうかという考え方を持っております。  この点、大事な点でございますが、いかがでございましょうか。
  250. 高野國夫

    ○高野説明員 制度的な内容につきまして御説明申し上げたいと存じます。  ただいまお話がございましたように、我が国の森林計画制度におきましては、まず農林水産大臣が立てます全国森林計画がございまして、これに即して都道府県知事が森林計画ごとに地域森林計画を立てる、そういうことになっているわけであります。  この地域森林計画におきましては、地域におきます森林所有者のとるべき森林の取り扱いの規範を示しますとともに、その取り扱いを特定する必要のある場合につきましては具体的にそれを明らかにしている、こういう仕掛けになっております。さらに、この地域森林計画の実効を確保し補完する制度といたしまして、先生先ほどお触れになりました森林所有者がその所有する森林について自主的に計画いたします森林施業計画制度が設けられておりまして、また五十八年度からは市町村の行政機能に着目いたしました森林整備計画制度が創設された、こういうような仕組みになっているところでございます。  先生の今のお話は、ガイドライン的な計画と個別森林所有者が立てます計画とをもっと密着させるように、こういう御趣旨かと存じますけれども、この点につきましては、地域森林計画に適合する場合についてその森林施業計画を認定する、こういうような仕組みになっておりまして、国の方針と森林所有者の個別的な計画との間にそごが生じないように十分調整を図ってやるというようなことで運用しているところでございます。  以上、制度の内容につきまして申し上げたところでございますが、今後ともこういった制度全般を効果的に運用する中で森林計画制度の実効を期してまいりたい、このように考えているところでございます。
  251. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 長官、どうですか。
  252. 秋山智英

    ○秋山政府委員 ただいま指導部長が申し上げましたが、特にこの計画に基づいて実施するということが極めて重要でございまして、当面の命題としましては間伐を中心とした計画的施業ということが極めて重要でございますので、昨年ここで御審議いただきました森林法の改正によりまして、市町村が間伐についての計画を立てましてそれでその地域の林業振興の中心になって動くということを具体的に実施させて、昨年の十月からこれが具体的に来ておりますが、そういうような形で、これからの計画については地域の林業をまとめた形で特徴ある生産地帯をつくるような形で指導していきたいと思っております。
  253. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 私、今提案じみたことを申し上げておりますけれども、これは大事な問題でございますので、真剣に取り組んでいただきたいと思うわけであります。  次に、細かな点で、保安林の問題等について時間の許す限り触れさせていただきますが、社会の発展に即応した森林の充実という点でその機能が高度に発揮されるように整備することが大きな課題であると考えるわけでありますが、保安林の整備についてその整備の目標に対する達成状況はどういうふうにつかんでいらっしゃるか、この点をまずお尋ねいたしたい。
  254. 秋山智英

    ○秋山政府委員 保安林につきましては、先ほど申し上げましたように、今後の森林の持っています多面的機能を高度に発揮する、特に公益的な側面での機能をより高めるために進めているわけでございますが、特に二十一世紀に向けまして国民の要請にこたえた森林の内容にしていくということが極めて重要でございまして、これが我々の基本課題になっているわけでございます。  そこで、保安林の整備でございますが、昭和二十九年に本法が制定されましてから計画的に保安林を配備してまいったわけでございますが、昭和二十八年の末には二百五十二万ヘクタールでございました保安林の面積が、五十七年の末には森林面積の約三割に当たります七百六十六万ヘクタールに達しておりまして、全体的にはほぼ当初の目的を達成する面積まで得まして成果もそれなりに得たと思っているわけでございますが、先ほどもちょっと触れましたが、今度やはり内容的に機能を回復させる森林がございますので、きめ細かい配備を進めると同時に、機能を回復するということにも今後積極的に取り組んでまいりたい、かように考えているところでございます。
  255. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 保安林は国土の安全や快適な国民生活の保持などの公共的な目的を達成するために必要な森林を指定しているものでありますが、これらの保安林で指定の目的に即して十分機能を発揮していないものもかなりあるわけです。これが全国に広く存在していることはゆゆしき問題であります。これを可及的速やかにその回復を図ると今長官おっしゃっておりますけれども、緊急的かつ必要なことだと私も思いますが、このような事態に立ち至ったその背景、原因をどういうふうに長官はとらえていらっしゃるか。
  256. 秋山智英

    ○秋山政府委員 保安林におきまして機能が低下している森林が最近ふえてまいりましたというのは、やはり最近におきます林業生産の停滞、具体的には木材需要の減少あるいは木材価格の低迷ということが背景にありまして、森林所有者の施業意欲の減退というようなことが出てまいっておりますが、もう一つは、経営意欲の乏しい不在村の森林所有者と申しましょうか、四十六、七年以降に不在村の森林所有者の方がふえておりますが、そういう方の森林におきまして林業活動が停滞しましてその管理が十分でないというふうなものも出てきておると思います。  それからもう一つは、山村地域におきましてかつては森林の生産地域というのがいわば働く場に直結しておったわけでございますが、住民の生活に直接森林が結びつくということが最近弱まってきている。特に燃料革命以降そういう形で出てまいっていることも、機能が低下した森林がふえておる原因になっておるかと思います。
  257. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 今回の措置は、森林所有者等が実施することが可能な造林等の施業の積極的推進を図る、これがねらいのようですけれども、この措置によって整備を図られることを期待するその森林面積はどの程度のものを見込んでいらっしゃるか。
  258. 秋山智英

    ○秋山政府委員 私ども今回の制度を決めるに当たりまして、森林計画におきまして全国からスポット調査をいたしまして、森林が疎林の状態でどのくらいあるかということであります。この疎林の状態の中身につきましては、今先生から御指摘のございました機能が低下している森林もございますれば、あるいは亜高山地帯、高山地帯におきまして森林限界に近いところも含めてでございますが、そういうところにつきましては伐採、造林は厳しい自然条件の中で非常に難しいところでございますが、そういうところにおいても疎林状態の地域がございますが、それを含めまして民有保安林について機能の低い森林というのが約五十五万ヘクタールほどございます。  そこで、今申しましたように亜高山地帯にある森林でむしろ施業は見合わせてそのままで維持していった方がいいような森林、あるいは保安林の中に小面積で点在していることによりまして保安林全体としての機能の発揮にはそう大きな支障はないというふうなものを除外しますと、大体三十五万ヘクタールほど民有林にあると推計しております。この三十五万ヘクタールの中で私ども治山事業によりまして対処して機能を回復する方がよりベターであると申しますか、それが望ましいところとか、あるいは水源林地帯の造林で森林開発公団の水源林造成によってやっていった方がいいというような森林がございますが、これらを除きますと、森林所有者の造林等の森林の施業を通じまして内容を整備していくという、いわゆる整備をしようとする森林、私ども要整備森林と呼んでおりますが、これにつきましては大体十五万ヘクタール程度というふうに推定をしているわけでございます。これはあくまでも推定でございますので、具体的には今後地域森林計画の改定等を通じましてさらにこれを確定してまいりたい、かように考えておるところであります。
  259. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 森林の存する山村の多くが過疎化の波に洗われておりまして、加えて木材価格の長期低迷、森林、林業をめぐる情勢が極めて深刻な状態でありますが、これが林業活動が停滞化している大きな実情であろうというふうに思います。しかし、森林所有者等に必要な施業を行わしめ、あるいは保安林が適切に維持管理されるためには、保安林を含む地域の森林、林業全般について育成振興するための施策の充実強化を図ることが必要であるというふうに思うわけですが、この点について林野庁のお考えは。
  260. 秋山智英

    ○秋山政府委員 先生の御指摘にもありましたが、やはり林業生産活動の活性化ということが極めて重要でございまして、林業を振興させることが保安林につきましても的確な森林施業ができる、こういうことに相なるわけでございまして、特に林業地域の活性化の問題というのが極めて重要でございますし、またその担い手の確保の問題も重要でございます。それから、活性化を図るに当たりましては、やはり造林、林道というふうな林業生産基盤の整備充実ということが大事でございますので、それにも力を入れていかなければいかぬと思っております。  さらに、先ほど先生からお話ございましたが、川上と川下と申しますか、森林所有者と木材生産の方が一緒になりまして地域の特性を生かした形で木材の供給体制を整備していくということが活性化につながる道でございますので、そういう体制整備とそれから木材需要の拡大というようなことが当然必要でございます。私ども、今申し上げましたことを五十九年度以降においても積極的に進めてまいるつもりでございますが、特に林業地域の活性化ということが大事でございますので、農業と林業を複合経営というような形で地域の定住条件整備をこの事業を通じてさらに進めてまいりたいと考えておるところでございます。
  261. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 今回の措置が有効に機能し、保安林が早急に整備されるためには、その整備が必要な保安林の所有者に対しての各種助成が必要であろうというふうに思うわけです。この優先的な実施等を行おうというふうにお考えなのかどうか、どのような措置をしていこうというふうにお考えでいらっしゃるか、この点をお伺いいたします。
  262. 秋山智英

    ○秋山政府委員 今回、保安林の機能を維持増進するためには、やはり各種の助成措置を優先的に進めてまいらなければならぬ、かように考えているわけでございまして、特に特定保安林と申しますか、機能を回復するために必要な特定保安林につきましては、森林総合整備事業等の造林補助事業の優先採択の問題、実施の問題、それからやはり林業を活性化するためには林道が重要でございますので、林道の優先採択の問題、それから造林資金の活用、特に農林漁業金融公庫等の資金の活用、いろいろなそういう意味での助成措置につきましては、特にこの事業実施につきまして優先的に実施してまいりたい、かように考えております。
  263. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 きのうも参考人の意見開陳の中でありましたけれども、林業後継者の育成の問題がこれから大変大きな悩みの種でありますが、この育成確保対策についてどのような措置と、今後どのような対処をしようというふうになさっておるかどうか、簡略で結構ですから……。
  264. 秋山智英

    ○秋山政府委員 やはり、まずは林業を魅力あるものにしていくということが一番大事だと思います。最近の緑資源の確保という問題が国民的要請になっておりますが、要は、やはり森林を維持造成する担い手の人が最も重要でございますし、そのためには魅力ある林業地域の形成ということが大事でございますので、先ほどいろいろと触れました各種の林業生産基盤の整備充実の問題であるとか、あるいは定住条件を整備するための措置であるとか、各種の施策を推進していかなければならぬわけでございます。これらと同時並行的に、やはり林業後継者のグループの実践活動あるいは学習活動、また活動の拠点になる施設の整備だとか、それから教育指導体制を整備するとか、さらには林業後継者の研修、それから共同経営をする場合のいろいろな林業改善資金の無利子の貸し付けだとか、いろいろの方法を講じていこうと思っておりますが、特にまた、先ほどもちょっと触れましたが、五十九年からはこういう林業後継者に対する技術を定着させる、技術移転をさせるという面から、現地におきまして林業技術を研修する事業も進めてまいりたい、かように考えております。
  265. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 きょうは文部省をお呼びしておりませんけれども、きのうの参考人の御意見の中にも、社会科の教科書から林業という活字が消えているということを参考人がおっしゃっておりました。私はまだそこまで調べておりませんが、大臣、今教育問題が盛んに、臨時教育制度審議会等も総理がおつくりになってこれから検討に入られるわけですけれども、社会科の教科書から林業問題等が消えていて、これもやはり私は後継者の問題につながる大きな問題ですから、どうかこういうことも含めまして要望しておきたいと思うのですが、大臣いかがですか。
  266. 山村新治郎

    山村国務大臣 農林水産省といたしましては、農業、水産業、林業、三位一体としてなすものでございますので、文部省の方ともよく相談をいたしまして、適切に対処してまいりたい、かように考えております。
  267. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 森林、林業の担い手を確保し、また森林の適正な管理等が永続的に行われるためには、安定した定住基盤がそこに構築されることが必要であると思うわけでございます。山村振興発展のための施策の充実強化を図ることが極めて重要であるというふうに考えますが、山村地域での地場産業の中核をなすものは農林業でありますから、とりわけ地域的特色に富んだ特用林産の導入、それから振興を図ることが必要かつ効果的であるというふうに考えるわけでありますけれども、これについて今後どのように推進しようというふうにお考えなのかどうか、お尋ねをいたしたいと思います。
  268. 秋山智英

    ○秋山政府委員 私ども山村を活性化するに当たりまして、やはりすぐ収入につながりますところの特用林産、特にシイタケ、ナメコその他の産業は、これは最近では約三千億産業に相なっております。これがやはり地域の活性化に極めて大きな役割を占めておりますので、私ども、これを特用林産村づくり事業ということで進めておりますが、大変効果がございます。私どもは、これについてはさらに積極的に進めてまいりたいと思っておりますと同時に、やはり原木等につきましても当然造成していかなければならぬものですから、クヌギ造林等についても積極的に進めてまいるように指導しているところでございます。  さらには、今後山村地域におきましては、農業と林業を複合的に進めていくことが非常に大事でございますので、そういう面からも混牧林の問題、農・林業の複合経営の問題も積極的に取り組んでまいりたい、かように考えております。
  269. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 我が国は四万を海に囲まれておりますので、これの沿岸地域には古くから、飛砂あるいは津波あるいは潮風等の被害から人畜や農地等を守るため、地域住民等が血のにじむような努力を積み重ねて今日まで来て.いるわけでありまして、海岸線を造成し、また維持してきたというその結果、我が国の代表的な風景としての白砂青松が人々に親しみを持って迎えられ、あるいは保安林として守られてきているわけです。これらの保安林で、近年特に、前々から臨時措置法等で行ってまいりました松くい虫の被害、これが多く見られておりますけれども、これらの松くい虫の被害の状況というものは、現在どのような対策、あるいはどのように現状はなっているかどうか、お尋ねをいたしたい。
  270. 秋山智英

    ○秋山政府委員 松くい虫の防除の法律を、一昨年、新しく内容を改善させていただきまして、鋭意この防除に努力してまいっているところでございますが、五十七年度の松くい虫の被害につきましては、特別防除あるいは特別伐倒駆除とかあるいは薬剤防除、さらには治山関係の措置であるとか、あるいは造林関係の措置であるとか、あらゆる総合措置をとってまいったこともありますし、また、五十七年の夏の気象が低温で多雨だったということもございまして、五十七年度の被害は、五十六年度に比べまして約三割の減少でございまして、百四十七万立方メートルになっております。さらに、五十八年度につきましては、現在最後の取りまとめ中でございますが、五十七年度よりもさらに減少するというふうな見込みでございます。  被害区域につきましては、秋田県に若干、山形・県境のところに入ったあれもございまして、現在被害のない県と申しますと、北海道と青森の二県になっております。
  271. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 何か新聞の発表によりますと、林野庁は、猛威を振るい続ける松くい虫の防除対策として、松くい虫前線として空中作戦を東北地方を中心に実施されたように報道されておりますが、この結果はどうでありましたか、お尋ねをいたしたい。
  272. 秋山智英

    ○秋山政府委員 この空中査察というのは、早期発見早期防除、それから予防のためにも極めて重要でございまして、これが具体的な特別防除、薬剤の散布の問題、それから特別伐倒駆除の早期実施というようなことに、これは大変大きな効果を得ているわけでございますが、さらに、ことしからはこれに加えまして、空中から被害木をいわゆる探査し、しかも特定の森林にジェットのように噴射して単木の防除ができるというような技術もでき上がりましたので、それらも進めてまいろう。それからもう一つは、いわゆる林業的な松林と庭園あるいは社寺というふうなところの両者が一体に防除できるようなことができますと、さらに効果的に相なりますので、そういう一体的な防除対策というようなものもことしから進めてまいりたい、かように考えております。
  273. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 松くい虫だけでお尋ねする時間は持ち合わせておりませんが、被害木の広域伐採と樹木の転換ということが取り上げられているようですけれども、西日本はほとんど松くい虫にやられておりますが、東日本の中で特に被害の大きくなりました静岡県、茨城県は被害木の広域伐採と樹木の転換を実施したいという方針を持っていらっしゃるようでございますけれども、具体策はありますか。
  274. 秋山智英

    ○秋山政府委員 私ども松くい虫の防除に当たりましては、まず先端地域の徹底的防除と同時に、もう既に相当の被害が入りまして、このままでは現存する森林、松林が復元できないようなところについては樹種の転換をしてもらうように指導しておるわけでございますが、先生の地元千葉県等におきましては、松の下木に杉とかヒノキを植えるというような形もございますし、また比較的地方の低いところについては、清悪林地でございますので、特殊土壌に対応する豆科の植物その他を植え、しかる後にヒノキ等を植えるような手だてを講じながら林種転換を図っていこうと思っております。  と同時に、そういう地域についてはやはり治山施設もしていかなければならぬものですから、エロージョン防止の施設をしながらそういう転換も考えておるところであります。
  275. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 次に進まさせていただきますが、森林は一たん破壊されるとそれを復旧するのに長年月を要するわけでございまして、また多額の経費と並み並みならぬ努力を必要とするものでございます。昨年の東北地方での大火、最近では宮島での山火災等で、長年守り育ててきた森林が大面積にわたって一度に焼失するという被害が発生しているわけです。  これらの山火事は国民の経済上最も大きな損失をもたらすものでありますが、林野庁としてはこれらの現状に対してどのように対処しようとなさっているのか。災害の問題。
  276. 秋山智英

    ○秋山政府委員 林野の災害の防止に当たりましては、私どもは何と申しましても予防体制と消火体制を有機的に連携づけてやっていかなくてはならないと思うわけであります。国有林、民有林はもちろんでありますが、消防庁その他関係機関とも連携をとりながら予防対策を特に進めておるところでありますが、ことしになりましても先生御指摘の宮島等で被害がございまして、昨年は東北地方で非常に大きな火災が出たわけで、長年にわたりまして造成してまいりました森林が一朝にして灰じんに帰すというようなことがあっては大変なことでございますので、私ども従来の予防対策に加えましてことしから特にフェーン現象その他によりまして危険度の高いところ、また都会の方々の入り込みの多い地域に対しまして空中から広報し、危ないときには危険を警報するとか、さらには山に入る人たちに山火事の恐ろしさ、森林を守る重要さ等についていろいろと御理解をいただく。今までの火災の現場を見てまいりますと、尾根筋に防火帯の道をつくることが防火線になると同時に、一朝の場合においてはそれが防除のための消防車その他が入れる道にもなるものですから、こういうふうなものをこれからつくっていこうということで指導したいと思います。  いずれにしても、非常に森林資源を消耗する山火事の重大性ということについては、国民全般のさらに一層御理解をいただく、これからまた都会の人が山に入るのが多くなりますので、さらに一層そういう面については徹底したPRも展開してまいりたい、かように考えています。
  277. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 テレビ等で被害の広がっていく状況等を見まして、手の打ちようがないというのが実情じゃないかなと思うわけで、ヘリコプター等から消火剤を幾らまいてもとても消えるような状態ではないし、自然鎮火を待つ以外にないという状況ですが、そういう現状です。また森林の病虫害、それからそういう山火事等から保安林を守っていくための管理体制というものは、国民すべてこれに当たらなければいかぬのじゃないかというふうに思っているわけですけれども、林野庁としては、当面こういう問題に対する、病虫害や山火事に対する管理体制はどういうふうになさっておられるのか。
  278. 秋山智英

    ○秋山政府委員 私ども森林を被害から守るあるいは火災から守るということで、従来から実は保安林に対しましては保安林巡視という事業がございまして、こういう方々に重要なまた危険度の高いところについては特に頻繁に巡視を指導しながら、火災予防に一般の方の御理解をいただくようなPRをしているわけでございます。  さらにまた、松くい虫その他の森林病害虫の被害対策としましては、森林病害虫防除員というのを各県に設置して早期発見と早期防除をするような指導をしているわけでございますが、せっかくの森林をこういう災害被害から守るためには、さらに一層こういう面での監視体制、指導体制を整備していかなければならない、かように考えているところでございます。
  279. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 貴重な緑資源を確保し、良好な環境を保持していくためには、林業の関係者のみならず、広く国民の理解と協力なくしては困難なことは当然でございます。ややもすると、それらの緑資源を守り育てている山村あるいは林業の実態が一般国民に熟知されていないというふうに私は感じている者の一人であります。  林野庁は、このことについてはどのように考えられておられるのか、またどのような対処をされようとなさるのか、この点。
  280. 秋山智英

    ○秋山政府委員 緑資源は、我々人間の生活には欠くことのできない貴重な資源でございまして、緑資源の確保の問題というのは国民的要請に相なっているわけでございますが、従来どちらかと申しますと農山村の方々の御努力によって森林が維持され、造成されてまいったわけでございますが、これからはさらに広く国民の皆さんに御理解と御協力をいただかなければならない、かように思っております。特に森林の重要性というのは、みずから木を植え育てることによって体得することが極めて大きな効果があるわけでございます。  そこで、従来私どもはどちらかと申しますと国土緑化推進委員会を中心とした国民的な緑化運動であるとか、あるいはグリーンのキャンペーン等によりまして緑化愛林思想の普及をしてまいったわけでございます。さらに、五十八年からは政府が緑化推進運動の実施方針というのを決められましたので、それに即しまして私どもいろいろと林野庁でも対策をとっておるわけでございます。  まず、国有林におきましての部分林の制度あるいは民有林におきますところの育林分収、昨年ここで御審議いただきました分収育林の制度等を活用しまして触れ合いの森づくりというのを考えております。これは都会の人と山村の人が一緒になりまして山づくりをしていただく、こういうことを通じて緑の重要性、長い年月をかけて緑を育てるというふうな重要性を御理解いただくということで進めておりますが、さらに本年からはこれをさらに一層促進する意味から、触れ合いの森の整備対策などを進めてまいりたいと思っております。  また、今回御審議いただいております国有林におきましても分収育林等を御審議いただいて、一般の皆さんがこの制度を通じまして国有林の育林に参画していただきながら御理解を深めていくことが非常に大事だろうと思っています。
  281. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 最近全国各地で県民の森でありますとかあるいは市民の森など、森林と親しむことができる場所が設けられ、あるいは整備されつつあるようでありますが、保安林でも保健保安林、私余りよく知らなかったのですけれども、ほかに保健保安林など、その指定の目的からして単に行為等を規制するだけではなくて、必要に応じて積極的に整備し、あるいは地域の住民等にとって憩いの場となるというふうに考えるわけです。この保健保安林というふうなものがどういうふうに一般の人に知られ、また利用されているかという点で、私の選挙区にもあるということで実はびっくりしたわけですけれども、余り利用されていないのじゃないかなと思って尋ねましたら、それは観光課か何かの管理、管理というよりも掌握していますからそちらの方で聞いてくださいなんて出先機関で言われてしまいました。  私ども先月の二十二、二十三日と林野庁のお手数を煩わしまして、また二十六日と、愛知、岐阜、群馬というふうな地域を林野三法についての取り組みに対して調べてまいりましたが、また細かい点については各委員、五人とも質問に立ってその質疑をしていきたいという希望を持っているわけで、私はきょうはアウトラインだけをざっと流してしまいましたけれども、こういう保健保安林について、簡単で結構でございますので、糸口だけちょっと教えていただきたい。
  282. 秋山智英

    ○秋山政府委員 保健保安林につきましては、私はただそれを維持するということよりも、内容を要請に合った形で形成をしていく、それで森林レクリエーションの場に提供するということが必要でございますので、むしろそういう森林を整備するという形からこれを取り扱うと同時に、それを活用するに当たりましての道の問題であるとかあるいは施設等も整備していかなければならないということで、実はこれは私どもの仕事といたしまして生活環境保全林の整備事業であるとか保健保安林の施設整備事業というのを実施してまいっておりまして、これは各県で非常に要請が強うございます。  そこで、現在、その要請に対応しまして、その内容の整備ということと同時に、また都道府県が保健保安林の買い入れをする場合にはこれを補助をする、こういうことでやってまいっておりますが、五十九年で今考えておりますのをちょっと申し上げますと、生活環境保全林の整備には、これは治山事業でございますけれども、継続として六十カ所、それから新規は三十カ所くらいを考えていますし、それからこの保健保安林の施設整備事業につきましては、三十五カ所くらい考えています。それから生活環境保全林の買い入れにつきましては、これは継続で四地域ほど考えていますが、今後、やはりこういう保健保安林等に対する要請が非常に高うございますので、積極的に取り組んでまいりたい、かように考えているところであります。
  283. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 最後に、大臣に決意のほどをお伺いして終わりにいたしますが、我が国の森林、林業をめぐる厳しい情勢のもとで今後保安林の整備を進めていくことは大変困難な点も多かろうと思うわけでありますけれども、保安林の果たすべき役割もますます大きくなっておりますので、安全で快適な居住環境を維持していくために必要不可欠のものであるわけです。今後、保安林の整備が早急に図られるよう林野庁の格別の努力を求めたいわけであります。  最後に、大臣、どういう決意をお持ちなのかどうか。
  284. 山村新治郎

    山村国務大臣 保安林、この機能の高度発揮に対する国民的要請はますます強まっておる状況でございます。このため、昭和二十九年以来保安林整備臨時措置法に基づきまして保安林の整備を計画的に推進してきたところでございますが、近年の社会経済情勢の変化によりまして、新たに保安林の配備を必要とする箇所も何カ所か出てきております。そしてまた一方におきましては、機能の低下した保安林もございますし、この保安林の早急な整備というものが要請されておる状況でございます。  このような状況に対処するために、今回保安林整備臨時措置法の改正延長をお願いしておるところでございます。これによりまして、保安林が真に国民の要請にこたえつつその機能を十分に発揮していくように十分努めてまいりたいと思っております。
  285. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 時間になりました。  ありがとうございました。
  286. 阿部文男

  287. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 林野三法の保安林関係から御質問をいたしたいと思います。これまで保安林の配備された実績も昭和五十八年で約七百九十万ヘクタールを超えておりまして、いろいろ当局の努力には敬意を表してはおりますが、ただ、機能が低下している、質的向上を図らなければならない保安林の現状も広がっているように聞いているわけでございます。  それで、これまで保安林で監督処分の実施状況はどうなっているか、こういうことをなしたことがあるかどうか、そのことをまずお聞きいたしたいと思います。
  288. 後藤康夫

    ○後藤政府委員 監督処分の実施状況でございますが、五十七年の実績で申しますと、中止命令四十六件、造林命令七件、復旧命令二十七件、植栽命令三件というような状況になっております。  お話ございましたように、保安林は国土の保全なり水源の涵養等の機能発揮を通じまして非常に重要な役割を果たしておりますので、私ども標識の設置でありますとかあるいは巡視等を適切に行うことによりまして違反行為の防止に努めておるところでございますが、最近の傾向を見ますと、違反行為は最近減少傾向にございます。  立木の無許可伐採等の違反行為につきましては、これも保安林の機能に重大な影響を及ぼすものでございますので、違反行為が行われました場合には中止命令とか復旧命令を出すというふうなことで対処いたしておりますが、今後とも違反行為に対しましては厳正に対処いたしますと同時に、違反が起きないように未然の防止の努力をするということも行政的に非常に大事じゃないか、こういうふうに思っております。
  289. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 保安林の機能回復あるいは先ほど申し上げましたように保全の万全を期するために、今回この法律で要整備森林についての勧告制度も盛られているわけでございます。ただ、勧告制度の法的強制力というものについてお伺いするわけでございますが、罰則等を見ましても、強制力は余り強くないようになっておるわけでございます。  こういう点で、要整備森林の急速な整備を図るために今のような制度でいいのかどうかということをお聞きいたします。
  290. 秋山智英

    ○秋山政府委員 私ども、今度御審議いただきますこの制度の中で、いわゆる要整備森林として考えている森林についての森林の施業方法でございますが、これは普通の森林所有者の方々でしたならば行い得る程度のものでございます。被害木を伐採して植えつけをするとか、あるいは粗悪林のところに植えつけをするとか、そういうものでございますので、森林法に基づく施業の勧告と、さらには本法に基づく要整備森林に対しての権利の設定、移転の協議というような勧告でその実施が確保されるものと私は考えております。  特に、要整備森林が入っております特定保安林の整備につきましては、造林の事業の助成措置であるとかあるいは林道の助成措置等については優先的にこれを実施するように配慮をしますと同時に、やはり技術指導等については積極的に行いながら特定森林の整備を進めてまいりたい、かように考えておるところであります。
  291. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 今、要整備森林に対していろいろ助成措置等もとられるわけなんでございますが、今年度は大体どのくらいの予算でどのくらいの面積を計画されているわけでございますか。
  292. 秋山智英

    ○秋山政府委員 この要整備森林につきましては、まず保安林の整備計画というのを各都道府県知事に策定していただくわけでございます。そこで特定保安林を定めまして、しかる後に要整備森林ということでございます。したがいまして、現在五十九年度どのぐらいかということは相なりませんが、五十七年度の森林計画策定段階におきまして、空中写真からでございますが、森林の疎林状態にあるところを推計いたしますと、民有林で約五十五万ヘクタールございますが、その中で、特定保安林として指定、実施するもの、あるいは治山事業でやるもの、あるいは水源林造成、いろいろございますが、これは逐次保安林整備計画で特定してから実施してまいるという形になると思うわけでございます。
  293. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 それで、保安林の整備なんでございますが、やはり保安林の種類に応じた機能の高い樹種の選択や天然力を活用した整備を図っていく必要があることは当然でございます。こういう点について、試験研究の成果あるいはまた成績のデータがあるなら教えていただきたいと思うわけでございます。
  294. 高野國夫

    ○高野説明員 研究の成果などにつきまして御説明を申し上げたいと思います。  保安林の機能をより一層発揮いたしますために、今まで国の林業試験場を中心にいたしまして、全国各地で試験地を設けましていろいろな調査研究を進めてきたところでございます。  例えば水源涵養保安林につきましては、量水試験といいまして、一定の区域を区切って、その中で森林があるなしによりまして降った雨がどのような状態で出てくるかといったような試験でございますとか、あるいは土砂崩壊防備保安林につきましては、樹木の根が土壌を縛る程度、固める程度、そういったようなものにつきましての研究でございますとか、さらには、各地で起こっております災害につきまして現地で調査をしたようなことを総合した結果から、例えば杉の壮齢林や、それから針葉樹や広葉樹がまじっております混交林、こういうものは他の森林よりは公益的な機能を発揮する上で有効である、こういったような結果が得られておるわけでありまして、こういった結果を私ども複層林の造成といったような政策的なものとして最近取り入れているところでございます。  今後とも、森林の持っておりますこのような公益的な機能につきまして、一層試験研究を積極的に進めまして、その結果を踏まえて保安林の機能のさらに一層の発揮についての施策を講じてまいりたい、このように考えておるところでございます。
  295. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 このことについて、実は技術的に私疑問を感じますのは、針葉樹の植栽が密植栽培された場合とむしろ天然下種の樹木を育てた場合と比較して、保安林の中では天然下種の方がまさるのではないかというような、そういう実態も見ておりますので御質問するわけでございます。  例えばアカマツの場合は、天然下種だったら直根が出るわけなんですが、植林しますとなかなか直立根が出ないわけですね。ですから、保安林を守っていく、機能の高いものに守っていくのにはいろいろな面での配慮とそれからデータ、そういう研究に対する費用をかけて手厚い国土保全あるいは水源涵養、いろいろな意味で、保安林の種類はたくさんありますが、その種類に従った機能が守れるように、また増進できるように要望する次第でございます。  次に、保安林について、現在水源涵養保安林あるいは防風保安林その他には皆伐を認めているわけでございます。もちろん、指定施業要件のもとで皆伐を認めているわけなんでございますが、私は、保安林内は皆伐は絶対にさしてはいかぬ、そのかわり、施業要件の中で択伐あるいは間伐につきましての条件をつけているわけでございますから、この条件緩和の方で一応救済するといたしましても、法令の中から皆伐は除外しまして択伐の方に入れるべきではないか、こう考えるわけなんでございますが、この点について長官の意見を聞きたいと思います。
  296. 秋山智英

    ○秋山政府委員 保安林におきましての機能低下を来さないようにするためには、森林法におきましては施業要件というのを定めておるわけでございますが、これの指定の際におきましては、立木の伐採の方法あるいは限度につきましてこれを定め、また、必要によりましては造林についてもこれを定めておるわけでございますが、この施業要件を指定するというのは、森林法の規定によりまして、指定の目的を達成するために最小限のものとなるように定めることをいたします。やはり森林所有者の林業経営という問題がございますので、そういうことを十分配慮して考えておるわけでございます。  そこで、森林の機能は、先生承知のとおり森林の取り扱い方を適切に行いまして活力ある状態で整備されて高度発揮されるわけでございますので、機能維持を図る上におきまして伐採あるいは造林というのは極めて重要であることは申すまでもございません。  そこで、水源涵養保安林につきまして申し上げますと、これは一つの流域全体としまして水源涵養機能の効果を果たすということにあるわけでこございます。したがいまして、流域全体が一つの法正状態と申しますか、各齢級の配置が適正に分配されているような状態のときにおきましては、おおむね均等に伐採し均等に更新をしていくということによりまして、洪水緩和であるとかあるいは渇水の防止というふうな流域保全効果ができるわけでございますので、私どもはそういう点から考えますと、皆伐を全面的に禁止するというのは若干問題があるのではなかろうかというふうな感じがいたします。特に流域保全というふうな水源涵養等の機能を期待する場合におきましては、一定の制限のもとに伐採された後は必ず植栽をする、それから植栽が困難な場合には今お話しのように択伐というような形をとることが望ましいだろうと思います。したがいまして、皆伐施業によりまして跡地を更新し、流域におきまして大体齢級配置から見ても適正であるような場合には皆伐でやって、択伐まで持っていくということは必要以上に森林所有者に過重の負担をかけることになりますし、そういう面から見ましても適切ではないのではないかというふうに私は考えております。
  297. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 実は私、所有者の施業権を否定する主張をしているのではありませんで、今損失補償等も森林法第三十五条で出しているわけでございます。しかし、保安林の機能を本当に守っていく、また恒久的な保存と質的な向上も図っていくという立場からは、皆伐は好ましくないんじゃないか。ある程度皆伐を条項から除いて択伐の項に入れるに当たっては、それにふさわしい損失補償等の対応も求めていきたい。皆伐いたしますとどうしても急激に、表土流出が五、六年進むこともデータで明らかでございますから、こういう点で皆伐は択伐の方向に全部まとめていくべきじゃないか。そして、今までの施業に対する権利は権利として、損失補償関係あるいは今後の施業要件の緩和の中で考えていくのがよいのではないか、こういうところから質問しているわけでございますので、この点、今後御検討いただきたいと思うわけでございます。
  298. 秋山智英

    ○秋山政府委員 保安林にも先生承知のとおりいろいろの種類の保安林があるわけでございますが、土砂崩壊防備林というふうなものについては、崩壊のおそれ等もあることもございまして、どちらかと申しますと択伐の施業方針をとられておるところが多いわけでございますが、水源涵養保安林のような流域全体で流量調整し、洪水を防止し、あるいは渇水を防止するということになりますと、重ねて申し上げますけれども、流域の中の齢級配置が適当に配備されているような形の方が全体としては森林の活性化がなされ、健康な状態で森林が管理され水源涵養されるわけで.ございますので、そういうところについてはやはり私は皆伐施業で進める方がよろしかろうと思います。  先生御心配の土砂崩壊のおそれのあるところ、急傾斜地であるとかそういうところについてはやはり択伐の施業方針をとる、さらに禁伐した方がいいというところについては禁伐ということもあり得ますが、すべて一概に択伐という形はなかなか、むしろ流域全体で考えていく場合には地域の実態に即して皆伐方式、択伐方式というふうにやっていった方が、全体としての森林の状態はいい状態に管理できるというふうに考えております。
  299. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 私の今の質問は一つの価値観的なものも入っておりますので、私自身は少なくとも国有林あるいは保安林は百年、二百年、三百年というような林相を残していくべきだ、こういうような一つの価値観を持っておるものですから、それで話しているわけでございます。結局、水源涵養林の立場で、全体流域から十分に効率的に水源の涵養機能は果たされている、そういうデータに基づく皆伐の認可も与えているのかとは思うわけでございますが、しかし、山は年々荒れているわけでございますから、どこかでいわゆる国の勲章ともなれるような、また地域の誇れる古木の林相を残すことを今から頑張らなければ、我々の時代にみんな古い林相はなくしてしまったというそしりを後世に残すのじゃないか、こういう考えで質問しているわけでございますので、林野庁におきましてもこういう価値観からの保安林、国有林の整備保存ということを研究していただきたい、考慮していただきたい、こう思うわけでございます。  それで、保安林について買い入れの予算措置でございますが、一応二億八百万円ほどの経費を見られているようでございますが、今年度はどのくらいの面積をこれで購入されようとしているわけでございますか。
  300. 秋山智英

    ○秋山政府委員 先ほどの件について、ちょっと私も補足して申し上げたい点がございます。  それは、私ども実は複層林施業というのを取り入れておりますのは、保安林におきまして一斉造林地を間伐を繰り返していきましてそれが三、四十年、四、五十年の森林になった場合に、今度はその間にまた樹種を植えまして、二段林、三段林というふうな森林をつくっていきまして水源涵養機能を高めるというようなことも、昨年から水土保全強化モデル事業とか、さらにことしから重要水源地域の保安林整備事業であるとか、それから造林事業におきましてもそういうモデルをつくってまいろう、したがいまして、地域の実態に即しましていろいろの施業方法をとってまいろうということでやっておりますので、御了承を賜りたいと思います。  それから、この保安林の買い入れの予算でございますが、五十九年度の予算措置といたしましては二億一千万円を計上しておりますが、面積と申しますと、これは地域の実態によりまして非常に幅がございますので、予算的には二億一千万を計上しておりますことを申し上げて御理解を賜りたいと思います。
  301. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 保安林の買い入れの緊急度というのは、どういう尺度で緊急度を決めておりますか。
  302. 秋山智英

    ○秋山政府委員 これは脊梁山脈に近いような地域が主として対象になりますが、奥地にございまして民有林として維持管理が困難でございますが、一方におきまして国土保全上国が直接管理する方がベターであるというような地域について実施してきておるわけでございます。最近は、民有林におきましても治山事業、保安林制度等が拡充強化されてまいっておりますので、その対象地域は減少してまいっておりますが、ただいま申し上げましたような考え方で今後とも進めてまいりたいと考えております。
  303. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 一応第一期保安林の整備計画で五十万ヘクタールの買い入れ予定が実績十九万七千ヘクタールほど、第二期、第三期で二十五万五千ヘクタールほどが買い入れされているようでございます。しかし、計画から見ますとまだまだ五十万ヘクタール以上も残っているわけでございます。これは今後どのような計画で買い入れを実現していくのか、お知らせいただきたいと思います。
  304. 秋山智英

    ○秋山政府委員 先ほど触れましたように、三期の保安林整備計画で見てまいりましても、重要水源地帯の整備治山事業であるとか保安林改良事業であるとか、さらには造林におきましての森林総合整備事業というふうな各種の助成措置を積極的に進めてまいってきておりますし、また、そういうことで民有のままでも保安林の機能を維持することが可能だと判断されるものが比較的ふえてまいってきております。これは非常に望ましいことだと私は思います。  そこで、第四期におきましては、先ほど申し上げましたように国が直接管理した方がよりよいということで厳選をして、約一万ヘクタールほどを考えておるところでございます。
  305. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 実はこの質問をいたします根拠なんですが、もうあと何十年たっても今のような進捗状態では、当初の計画を達成することができないような比率でございます。しかし、保安林というのは、これはもう国が本来これの機能を確保して国土を守り、各種の保安林の種類に従った効果を上げなければならぬわけなんでございますが、一体これは林野庁だけの現在の予算措置の中で任せておいていいのかどうかということについて、いわゆる予算の確保についてでございますが、今の赤字の累積している林野庁の特別会計から買い入れの経費を出していたのでは、いつになったらこの目標が達成されるか非常に疑問でございますので、この財源の出し方を、ひとつ国の責任として、林野庁だけじゃない立場から財源の取得ができないものかどうか、そのことをお聞きするわけでございます。
  306. 秋山智英

    ○秋山政府委員 民有林の保安林につきましては、いろいろの助成政策を講ずることによってできるだけ民有のままで適切な維持管理がされることが望ましいと私は思うわけでございまして、そういう意味で、最近の公共事業といたしましての治山事業の内容の整備充実によりましてその対象が少なくなってきたということは、むしろよかったのではないかというふうな判断を私はしているわけでございます。  今御指摘ございましたように、国有林野事業特別会計の財政悪化のために買い入れの対象地を厳選するということはもちろんございますが、私どもは、やはりできるだけ現行の民有のままで適切に維持管理できるものはそういう助成措置でやっていく、どうしても一括管理した方がよろしいものだけを購入していくということで今後進めてまいるのがよろしいのではないかというような考え方でございます。
  307. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 民有のままで保安林の機能を発揮させるとなりますと、どうしても保安林整備計画を樹立させるためのいろいろな助成措置等が必要だと思うわけでございます。それならば、今回の整備計画、一億四千三百万ぐらいの予算でございますか、こちらの方の予算も果たしてこのままでいいのか。苦しい財政事情のことは万々わかりますが、国全体の国土を保全する大切な役目でございますから、こういう予算措置については林野庁サイドだけではない、ひとつ国全体の責務というような立場から大蔵省に何らかの予算増を求めるような努力をしていただきたい、これは一応要望だけにとどめておきます。  次に、国有林の天然林は、秋田杉におきましても木曽のヒノキにおきましても随分伐採されて、秋田杉などはほとんど壊滅に瀕するぐらいに昔から比べますと面積が減っているわけでございます。それで、国有林について、六十年以上のような高齢級の森林は今どのくらいになっているのか。これは天然林も含めまして御質問いたします。
  308. 秋山智英

    ○秋山政府委員 国有林の齢級別面積でございますが、一齢級といいますと五年刻みでございますので、一ないし四齢級と申しますと二十年生以下、こういうことに相なりますが、九齢級から十二齢級と申しますと四十五年生以上になりましょうか、十二齢級までは四十六万四千ヘクタールございます。それから十三齢級以上になりますと三百三十一万五千ヘクタール。全体的に見ますと、十三齢級以上の面積が全体の五三%を占めているという実態でございます。
  309. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 四十五年生以上の森林が四十六万ヘクタールと言いましたか。
  310. 秋山智英

    ○秋山政府委員 四十六万四千ヘクタールでございます。
  311. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 今、国有林が七百九十一万ヘクタールぐらいあるわけでございますが、そのうちの四十六万四千ヘクタールでございますね。
  312. 秋山智英

    ○秋山政府委員 国有林面積は約七百七十五万ヘクタールございますが、今私が申しましたのは林野庁所管の国有林でございます。林業対象外になっているいわゆる除地とかその他、そういうものがございますので、私どもが林業の対象として考えておりますのは、今申しました七百七十五万のうち六百一二十一万ヘクタールでございます。その中におきまして、今申し上げましたように、九齢級ないし十二齢級というのは四十六万四千、十三齢級以上が三百三十一万五千、こういうふうになっているわけでございます。
  313. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 実は今、六十年以上の林相というのは一応大正時代までに植林され、あるいは天然カシその他で形成されてきている林相でございます。それから昭和に入りまして、他のいわゆる十三齢級以上が三百三十一万ヘクタールもあるというわけなんでございますので、この際、ぜひ四十五年生以上でも、これは全国有林から見ますと一割にも満たない面積でございますので、この森林を全部何らかの保安林の種類に指定して、ことしからでもこの古い林相を守っていく、そういう政策をとり得ないかどうか。  大臣、実は切な願いを今質問しているわけなんでございます。というのは、非常に荒れてきている林相を守るために、また日本の民族、国家のいわゆる勲章ともなり得るような森林をぜひつくっていくためにも、今林野庁長官から答弁をいただきましたところが、四十五年生以上の森林が四十六万四千ヘクタールぐらいあるわけでございます。しかし、実際の国有林の植林あるいは天然林で構成されております面積が六百三十一万ヘクタールあります。ここから見ると、ごくわずかな面積でございますから、これをいわゆる風致保安、保健保安、何らかの保安林の指定をして森林を守っていく、そういう配慮ができないかどうか、これを要望しながらも、大臣の御意見をお聞きしたいと思うわけで.ございます。
  314. 秋山智英

    ○秋山政府委員 ただいま私が齢級別面積につきまして申し上げましたが、若干細部につきまして、人工林と天然林で申し上げたいと存じます。  人工林におきましては、十三齢級以上は十万三千ヘクタールでございまして、天然林が三百二十一万二千ヘクタールということであります。  国有林の経営につきましては、先生御案内のとおり、木材の持続的、計画的供給あるいは国土保全、水資源涵養等公益的機能の整備充実、さらには地域の農山村の経済振興というふうな、それぞれの目的があるわけでございます。  それで、私ども、国有林につきましては森林施業計画に基づきまして、その地域の特性に応じた形で施業を行っているわけでございます。  お話に出てまいります保安林というのも、全体の地域の五〇%は保安林の対象地域になっておりますし、また、国立公園の特別地域に指定されている面積も二百五十万ヘクタールを超えるような状態にございます。そういう中にありまして、普通の林業経営のできるところについては林業生産をしていくということでございますし、今先生から御要望のありましたような大径木につきましては、経常の林業経営でも大径材生産林分というのもつくっておりますし、また、保護林、特別保護地域あるいは保安林等にも残っておりますので、一斉に六十五年以上は切らないという話は林業経営としては問題があると思います。やはり地域の森林の置かれている状況、それに合理的な森林施業計画に基づきまして、それぞれ目的に合った形で経営していくことが国有林野事業の目的でございますので、そういう考え方で森林施業計画を立て、実施しているわけでございますので、そこは御理解をいただきたいと存じます。
  315. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 実は大径木というのは有形無形の資産になっているわけでございます。これはもう皆伐の施業の対象からは除外していくべきだ、そのかわり択伐その他でも十分に皆伐にかわるところの、皆伐同等の一次収入はないかもしれませんが、計画的に択伐を進めていってもある程度の収入は得られるわけなのでございます。殊に私のじいさんなんかは、古い木がある山はちゃんと山の神様が古い木に宿って山を守るのだという素朴な信仰に生きていた、そういうことを背景にしての私の価値観からの要望でございますので、ひとつ大径木のある森林は今後なるたけ、なるたけじゃない、皆伐の施業対象からは除外していっていただきたいということをまず要望しておきます。  次に、国有林野法の分収育林制度についてお伺いするわけでございますが、いろいろこの法律の御説明もいただいているわけでございます。  そこで、分収育林制度の趣旨につきまして、私は、あくまでも緑の資源を守り、それから国民的な緑資源の確保への要請にこたえるためであり、また国土を守っていくためだということで受けとめているわけでございまして、林野庁が赤字になっているから、赤字対策で分収育林制度ができたのじゃない、このように理解しているわけでございます。しかし、現実に本当にこのまま撫育をしないと林相が守られるかどうか。植林した木そのものが今施業を受けないと、大切な時期を迎えているところがたくさんあるわけでございます。そこで、この分収育林制度について、税制上の優遇措置というものをどう考えているのか、また考えたことがあるのか、お伺いするわけでございます。
  316. 後藤康夫

    ○後藤政府委員 昨年の国会におきまして分収造林特別措置法の改正をやっていただきまして、民有林につきまして分収育林の制度を導入をいたしたわけでございますが、その御審議の際にも、やはり分収育林に参加する人たちの税制上の優遇措置についての御議論もあったところでございます。  そこで、この分収育林計画に基づきます山林の伐採によりまして分収金が入ったという場合の税法上の取り扱いにつきまして、本年度の税制改正におきまして、これを山林所得にかかる収入金額とするように措置をいたしております。山林所得にかかる収入金額とするというのはどういう意味があるかと申しますと、山林所得につきましては五十万円の特別控除が認められます。それともう一つは、大規模な法人経営によります林業などの場合には毎年毎年伐採するということがございますが、通常の個人の山林経営でございますと、毎年ではなくて間断的な伐採になる。そういたしますと、特定の年に収入がたくさんまとまって入りますと、累進税率で高い方の税率が適用されるというようなことになりますことを避けますために、分離五分五乗方式ということで、五分の一いたしまして税率を適用して、その税額を五倍にして課税をするという方式がとられておりますが、そういう特例措置の適用対象になるようにいたしたわけでございます。国有林の分収育林制度発足の暁には、この国有林の分収育林にかかる分収金もこのような制度の対象となることになっております。
  317. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 山林所得にかかわる収入控除の税優遇は、一応分収林が伐採されて収入の入るときにかかるわけでございますね。こういう税措置を対象に入れて大体一口五十万円というような分収育林制度を今進めようとしているわけでございますが、その伐採期に何%くらいの利回りになりそうなのか、現在の物価、成長率その他から考えて、試算しておりますならお知らせいただきたいと思います。
  318. 秋山智英

    ○秋山政府委員 極めて長期にわたる計算に相なりますので、物価上昇その他の問題を捨象いたしまして申し上げますと、杉、ヒノキによって違いますけれども、二・七ないし三%前後になるというふうにモデル計算ではなっております。
  319. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 この分収育林制度は、杉、ヒノキで一応モデル計算で二・七%から三%の利回りの国債を結局買わされたと同じような意識も持てるわけなんですが、一応これは現在のモデル計算でありまして、物価指数その他、あるいは経済の動向によってはこれ以上入るかもしれません。そういう点では、いわゆる夢を買う分収育林制度であるとも思うわけでございますが、こういうことで果たして本当に金を持っている人たちからお金が集まるのかどうか。むしろ庶民の自然を愛好する、そういう中産階級的な、まじめな、いわゆる国土愛に根差す、あるいは自然愛に根差すような方々の浄財的な金しか集まらないのではないか、こう私は思うわけでございます。むしろ私は、先ほどの税制度は出口で、いわゆる山林所得にかかわる控除は売ったとき入るのですが、入るときに入り口で税控除ができないものか、そういうことを皆さん方が考えたかどうか、お聞きするわけでございます。  といいますのは、何と言っても今山を守るためには金が必要でございます。しかし、山を守るその金の行使は、これは一応林野庁がやるわけでございます。国が行使するわけでございます。実際、今山を見ますと、緊急避難的な対応だと私は思っております。そうするならば、今入り口で、枠を決めてもいいけれども、いわゆる経費で落とせるような金にするとか、そうしなかったら、果たして金が集まりますかね。それからさらに、まじめな方々、自然愛護をした方々が今試算したモデルケースのままで結局分収解除になったとき、木を売って所得になったとき、たったの二、三%だったら、これは緑の夢を売ってその夢が実現しないような、そういう結果になるのではないのですかね。本当に森林を思う立場からの私の質問でございますので、この点のお考えをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  320. 秋山智英

    ○秋山政府委員 私ども、分収育林制度を導入するに当たりましては、昭和五十一年から実は公有林を対象といたしまして、実験と言うと変でございますが、実証的な調査をずっとやってまいった経緯がございますが、最近の緑資源に対する国民の要請の高まり、あるいはみずから森林を造成し、管理して、緑資源を造成していこうという要請も高うございまして、この要望につきまして見てまいりますと、低いところで二倍、多いところで十数倍から、さらに多い要請も実は出てまいっております。  そこで、私ども、やはり国有林野事業におきましても国民参加の森づくりということで広く都市の皆さんにも御理解いただくことが森林資源の確保の上におきましては極めて意味のあることでありますし、国有林を理解していただくという意味におきましても大変重要なことだろうと思っておりまして、そこで今度国有林にもこれを導入することとしたわけでございます。今後、実行するに当たりましては、まず五十九年度各営林局で一ないしニカ所ぐらい実験的に選定して実施してまいって、それから将来についての計画を立てていこう。特に今度は、地域の皆さん、都市の皆さんが参画していただくことになりますと、その地域、立地条件等も十分配慮しながらやってまいらなければいかぬと思いますので、そういう中で進めてまいることとしております。そういう中で、私はやはり国民の山である国有林に国民の皆さんが参画していただくという面から非常に重要でございますので、これらを進めてまいり、かつは国有林野事業の収入の一助にしたい、こういう両面から考えておるわけでございます。  今先生も御指摘の入り口におきましての税制問題というのは、私ども実は考えておりません。あくまでもやはり山林税制として進めるに当たりまして五分五乗という特例を設けるには、やはり伐採収入段階での対応ということで進めてまいりたいということで現在検討しております。
  321. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 林野庁長官の話を聞いていると、夢、緑に対するところの国民の理解を深めさせる、非常にいいことなんですが、しかし、実際の実収入の面から見ますと、今回の分収育林収入も一億一千五百万ぐらいの予算でございます。何とか現在の、先ほど言いましたように大径木の林相も守る、あるいは現在の国有林の山もいわゆる皆伐をしないで、択伐あるいは複層林や何かで国土を守っていく、そういうような切実な対応が今迫られているとき、この緑の夢や何かを売ることはいいんですが、もうちょっと収入が上がるような対応を考えてもよかったんじゃないか、こう思うわけでございます。  また、今本当に水の問題にいたしましても、これは結局は山を守ることが水資源の確保にもなっていくわけでございまして、こういう点で、私は現在のような分収育林制度の利回りでは、結局善良な人たちに夢を買わせて現実には二・七%か三%の利回りにしかならないとなると、何か切実なものを感ずるわけなんでございます。ですから、これはもう大臣、何としてでも、この法律は通しても、施行する前に大蔵省と話し合って、ある程度の枠を決めて経費で落とせるようにする。そのかわり分収林が売り払われたとき表に出た金に対しては、いわゆる税制優遇措置を外しても、当たり前の税金をかけてもできるわけなんでございますから、何かこういう点、考えられませんかね。そうじやなかったら、本当に善良な人たちの投資を三%ぐらいで今集めるとなったら大変なことでございます。
  322. 秋山智英

    ○秋山政府委員 今の利回りの問題ですが、これは先ほど申し上げましたとおり、材価のアップの問題をゼロとしておりますので、中長期で見ますと、私は世界の森林資源の状況から見てまいりますと、やはり木材は不足物資であるというふうにも見られる人は大分多うございますし、そういう目で見てまいりますと、私は、従来ほどの木材価格の上昇は期待できなくても、ある程度の期待はできると思いますので、先生三%と決めつけられますのは、私はいささかちょっと、あくまで前提条件としては木材価格のアップがなしということを前提で申し上げたわけでございます。そこは御理解賜りたいと思います。  それから税制問題については、これは大変難しい問題だろうと思いますが、私どもひとつ今後はこれは研究課題として勉強してみますが、実行につきましては、大変これは難しい問題だと申し上げますが、少し勉強させていただきたいと存じます。
  323. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 時間もなくなってきましたので、それでは改善措置法の問題は一応抜きまして、実は桜島降灰地域の現地視察をしてきた際、強く要望を受けてきているわけでございます。国有林に従事している職員の対応も、大変な状態の中にあるなということを承知してきました。  そこで、今後の対策につきまして要望も出ているわけでございますが、ぜひ特段の御配慮をいただきたいと思います。このことについて一言。
  324. 秋山智英

    ○秋山政府委員 桜島の灰の問題につきまして、私どもやはり国有林事業を推進していく上におきましても対応策に追われているわけでございますが、ただいま降灰の対策としましてとってまいりましたことを申し上げますと、現地の実態に応じまして臨時の健康診断を行うとか、あるいは降灰の状況を見まして作業の箇所を変更するとか、あるいはアノラック、安全地下足袋、マスクというふうなものを備えつけるとか、また、庁舎の冷房化あるいは公務員宿舎の窓枠のサッシ化というようなことを鋭意やってきているわけでございますが、今後も、灰の降る状況に応じましていろいろと対処してまいりたい、かように考えているところでございます。
  325. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 終わります。
  326. 阿部文男

    阿部委員長 中林佳子君。
  327. 中林佳子

    ○中林委員 質問に入る前に、一言大臣を初め農水省の方に御要望しておきたいのは、先ほど社会党の議員の方から資料要求があったわけですが、私もかつて資料要求した際に、非常に苦い経験を持っているわけです。そういう意味で、共産党としても、こういう当然出すべき資料は速やかに出していただくよう強く要望いたしまして、質問に移らしていただきます。  法案審議に入る前に、非常に緊急性のある問題で少しばかり質問さしていただくわけですが、先月末航空貨物で輸入された南米コロンビア産のマンゴーから、果物の大敵でありますミナミアメリカミバエが成田空港で大量に発見されています。今までメキシコ産のマンゴーなどからミナミアメリカミバエが発見されたことはあるわけですが、今回のようにコロンビア産からの発見は初めてだと言われているわけです。  そこで、農水省にお伺いしますけれども、このことについてはどういう対策を講じられたのか、簡単にお答えください。
  328. 小島和義

    小島(和)政府委員 お話のありましたミナミアメリカミバエでございますが、これは実は三月十四日に検査いたしました九十カートン、四百五十キロのマンゴーの中から幼虫が発見されたものでございます。この検査によりまして、ミナミアメリカミバエが我が国に侵入することを未然に防止し得たわけでございます。  かねてこの種の貨物につきましては厳重なチェック体制をとるとともに、植物防疫官に対しましても、そういう虫を見分ける技術研修などを行って検査の水準向上に努めてきたわけでありますが、今回の発見を機といたしまして、各植物防疫所に対してはなお一層厳重な検疫体制をとるように指示いたしますとともに、輸出国の植物防疫機関に対しましては、発見状況を通報いたしまして、注意を喚起いたしておるところでございます。  本件以降、同国からのマンゴーの輸入は事実上とまっておる、こういう状況になっております。
  329. 中林佳子

    ○中林委員 植物防疫法の第七条に定められている輸入禁止品にコロンビア産の生果実は入っていないわけです。それだけに、空港などでの先ほどおっしゃいましたように検査をしっかりやるということが非常に大切だと思います。特に近年、成田などの空港での貨物の量も非常にふえているというふうに伺っております。植物防疫官の仕事も非常に大変だと思うわけです。それで、その防疫体制を強化する意味で、成田などの各地の植物防疫官を増員することが非常に重要だと思うわけですが、今年度以降増員をする計画になっているのかどうなのか、その点をお伺いします。
  330. 小島和義

    小島(和)政府委員 行政関係の職員につきましては、政府全体の方針によりまして定員の削減を実施中なわけでございますが、植物防疫関係につきましては御承知のような状況で、輸入の植物類が大変ふえてきておりますし、特にまた航空機を利用した輸入の貨物がふえておるという状況でございます。  したがいまして、定員環境が非常に厳しい中におきまして、昭和五十八年度におきましては対前年六人増ということを認めていただいておりまして、そのうち空港関係が三人認められております。五十九年度におきましては対前年五人の増加が認められておりまして、うち空港関係が二名認められておるわけでございます。今後も貨物の輸入動向に応じまして、大変環境の厳しい中ではございますけれども、必要な人員は確保するように関係方面と精力的に折衝をいたしたいと考えております。
  331. 中林佳子

    ○中林委員 今後も一層強化をされるよう強く要望いたしまして、今度出されました法案の審議に移らしていただきます。  国有林野事業の運営についての基本方針において、国有林野事業の使命として、一つ、林産物の計画的、持続的な供給、二つ目に国土の保全、水資源の涵養、自然環境の保全形成、保健休養の場の提供等の森林の有する公益的機能の発揮、三番目に国有林野の活用、国有林野事業の諸活動と、これに関連する地域の産業活動等を通じた農山村地域振興への寄与等、こういうふうにあるわけですが、大臣にお伺いしますが、国有林野の役割、使命についてはどのようにお考えでしょうか。
  332. 山村新治郎

    山村国務大臣 今先生おっしゃいましたように、国有林野事業は国民経済及び国民生活の上で重要な使命を担っております。  しかしながら、最近における国有林野事業の経営は、人工林の約八割が三十年生以下といった資源的制約のもとで伐採量に限界があること、また木材の需給構造の変化等による材価が低迷していること、また一方、事業運営の能率化や要員規模の縮減が必ずしも十分ではなく、人件費を初めとする諸経費が事業規模に比較いたしまして過大となっていること、これらから悪化傾向をたどっておるというのが現状ではないかと思っております。  国有林野事業が今後とも課せられた使命を果たしていくためには、その経営の健全性を確立することが緊要であり、先般の臨時行政調査会及び林政審議会、この答申を踏まえ、経営の改善を一層促進していかなければならないというぐあいに考えております。
  333. 中林佳子

    ○中林委員 今回の法の改正と、それから国有林野事業の使命との関係についてお伺いするわけですが、三つ挙げられている使命、非常に重要だと私も思います。その重要性から考えまして、国有林野事業の改善を図るためにということで、これまで六年間の改善計画が進められてきたわけですが、ここで新たに法改正を出される段階において、これまでの改善計画についてどのように評価をされているのか、お伺いします。できれば大臣に。
  334. 秋山智英

    ○秋山政府委員 国有林野事業につきましては、五十三年に国有林野事業改善特別措置法を成立させていただきまして以来、国有林野事業の改善に関する計画に即しまして各種事業の各般にわたります改善努力をしてまいりまして、私ども一定の成果を上げたというふうに理解をしておりますが、林政審答申でも述べられていますが、五十五年後半以降木材価格の下落、低迷あるいは伐採量の制約の強まりと、さらには能率向上の不十分さというようなことから、財務事情が逐年悪化の度を深めておるわけでございます。そこで、私ども、先ほど大臣から申し上げました国有林野事業の使命を達成するためには、やはり健全性を確保しなければならぬわけでございます。  そこで、今後この国有林野事業をめぐる情勢はどうかと見てまいりますと、林産物の収入の伸び悩みの問題もございますし、退職者の急増による退職金等の経費の増とか、あるいは累増する長期借入金にかかりますところの支払い利子、償還金の増大というようなことから、これからも大変厳しい見通しを持っておるところでございます。  そういう中で、今後の国有林野事業の健全性を回復いたしまして、この国有林野事業の使命を達成するためには、現行の改善計画の抜本的見直しをし、また新たな政策展開をし、七十二年度までにこの国有林野事業の収支均衡を回復するというようなことで健全性を確立してまいりたいということでございます。
  335. 中林佳子

    ○中林委員 木材価格の低迷は予測できた状況だというふうに私は思うわけです。ですから、これまでの改善計画は私どもは改善計画にはならないという立場をとってまいりました。実際、現状はお認めになったように赤字が非常にかさんで破綻状態になっているわけですね。今回の改善の中身といえば、期間の延長と、それから職員の退職手当の財源措置が新たに加えられるだけになっているわけですね。こういうことで果たして七十二年度までの収支均衡の回復、これが目標になっているわけですが、達成できるとお考えになっているのでしょうか。
  336. 秋山智英

    ○秋山政府委員 私ども自主的な経営改善に鋭意努力すると同時に、やはり今申し上げましたように新しい政策展開も必要でございます。財政措置も一般会計からの繰り入れ、あるいは財政資金の借り入れ、さらにはただいま先生お話のございました退職の急増に伴いますところの退職金の借り入れ並びに利子補給をお願いするというようなことで、自主的努力と財政措置をお願いしながら、この七十二年に収支均衡を図り、健全性の回復を図ってまいろうということで努力をしてまいりたいと考えております。
  337. 中林佳子

    ○中林委員 これまでも赤字をずっと続けてきているわけですが、なぜこんなになっているのかという根本原因をもう少し深く考えなければ、本当の改善計画にはならないのではないかと私は思うわけです。  我が党は、昭和五十三年の法案審議のときに、国有林野事業の赤字の原因は、一つには昭和二十二年に国有林野事業として引き継ぐ前の戦時中の乱伐、そして昭和三十年代の高度成長政策下の乱伐、これが一点だと思います。それから二点目は、その後の外材主導型の木材政策が原因であるということを指摘してまいりました。  労働者を犠性にして森林の手入れを放置したままでの改善は本末転倒であるとそのときも言っていたわけですが、だからこそ一般会計からの繰り入れを森林の公益的部分にまで広げるよう、その当時も主張してまいりました。にもかかわらず、政府は、現行法で改善が可能だ、このようにおっしってやってこられた結果が一向に改善されないで、政府の言われる改善の結果は、労働者を一万人減らして、それから営林署を地域の反対を押し切って廃止されて、労働者にはランクづけまでして労働強化を行い、生産性を向上させてこられた。こういうことをやられたけれども、少しも赤は減っていない、拡大するばかりだという状況です。  今回の改正案はさらに大幅な合理化を進めようとしているわけですが、国有林野事業の先ほど言つた重要な使命からしても、一般会計からの繰り入れを退職財源の借入の支払い利子だけにとどめることなく、森林の公益的機能の維持増進の分野にまで財政措置を広げるべきだというふうに思うわけですが、その点いかがでしょうか。
  338. 秋山智英

    ○秋山政府委員 五十三年から経営改善に取り組んでいるわけでございますが、その間におきまして、造林、林道等の施設についての一般会計の導入も図ってまいっておりますし、さらに林道の災害につきましても五十八年からは一般会計の対象としておりますし、さらには、治山事業につきましてはすべて一般会計で実施するというふうに、それぞれ私ども一般会計からの導入につきましては鋭意努力をしてまいっておるわけでございますが、さらに今回の法改正によりまして、この改善期間の延長とただいまお話に出てまいりました退職者の急増に伴うところの財投資金の借り入れ、利子補給ということをお願いしているわけでございまして、自主的な努力とあわせ、財政措置をお願いしながら、七十二年度までに健全性を確保したい、こういうことでございます。
  339. 中林佳子

    ○中林委員 少しはふえていることは、私も数字で押さえてわかるわけですけれども一般会計からの繰り入れば非常に少ないというふうに思います。具体的に言いますけれども、今回の法改正案のもととなっている林政審の答申でさえ、財投資金の借入条件の改善を指摘しているわけです。ですから、そういう意味では、財投資金からの借入の償還期間の延長であるとか、あるいは利子の引き下げなどを要求されるお考えはないのでしょうか。
  340. 秋山智英

    ○秋山政府委員 私どもも、償還期限の延長につきましてはここ数年検討してまいってきているところでございますが、他の財投対象事業との均衡その他、いろいろな情勢でまだ実現を見ておりません。  それから運用部資金の貸付利率でございますが、これは先生承知のとおり統一的に定められておりまして、国有林野事業のみが引き下げるのは実は困難な事情にあるわけでございます。  借入条件の改善につきましては、今お話にもございましたが、林政審答申におきましても検討する必要がある旨の指摘がなされておりますので、私どもも今後引き続き検討しなければならない課題であるというふうに考えておるところでございます。
  341. 中林佳子

    ○中林委員 私は、今度のこういう改善措置では、とても七十二年の収支均衡というのは達成不可能ではないか。つまり、国有林野事業の使命を維持するということを本当に守っていこうと思えば、それは非常に不可能だというふうに思います。林政審の答申の背後に臨調の最終答申というのがあるわけですが、それが背景にあるだけに、もしも七十二年度収支均衡が困難だという見通しに立ったときに、要員規模において、六十三年以降、臨調答申の言う、要員を管理部門だけにされていくのではないか、こういう懸念を持っているわけですが、その点はいかがでしょうか。
  342. 秋山智英

    ○秋山政府委員 私ども、林政審の答申を踏まえましてこれから鋭意改善努力をしたいと考えておるわけでございまして、当然その中におきましては要員規模の縮小の問題、あるいは組織の簡素化、合理化の問題等は避けて通れない問題であると考えておりますので、これは、私ども臨調答申に掲げてございますようなことを鋭意努力しながら、健全性の確保を図ってまいりたいと考えております。
  343. 中林佳子

    ○中林委員 今までも人員を整理されて、それが結果的には国有林野事業の使命を果たしていない一つの大きな要因になっているということを私は指摘せざるを得ないわけですが、林政審答申の指摘に、検討項目としてこういうことがあるわけです。水資源の涵養等公益機能の林分に対する受益者負担の導入について検討するというようなことがあるのですが、これは検討されていくおつもりでしょうか。
  344. 秋山智英

    ○秋山政府委員 水資源の涵養と受益者との関係につきましては、私どもも以前から、基本的にはそういうことを検討しなければならぬということで鋭意努力しておるところでございますが、その受益の対象をどこに限定するか、あるいは受益の量の問題その他、やはり今後解決していかなければならぬ問題が多々ございますので、さらにこの問題については引き続き検討をしてまいりたいと考えております。
  345. 中林佳子

    ○中林委員 森林、国有林野が水を供給するとか酸素を供給するとか、いろいろ公益的な機能を果たしているわけですね。では、だれがそれを受益するのかという区割りは非常に難しい。例えば酸素の問題などは、森林だけではない。田んぼももちろんありますし、草地もあるわけですね。だから、そういう問題などを含めれば、この受益者負担を導入していわば国民にそういうものまで負担させていくのだということになりますと、これは国有林野事業の使命そのものの放棄につながるのではないかということで、非常に私は懸念をしております。そういう意味では、この林政審の言う検討項目を検討していただきたくないというふうに要求いたしまして、次の具体的な問題について質問さしていただきたいと思います。  国有林野事業の使命の一つに地域の産業振興に寄与するということがあるわけで、これは非常に大切なことだと思うわけです。  島根県に鹿足郡柿木村というところがございます。この村の九五%が山林なんです。しかも、森林の中で国有林が三七・四%を占めています。ここは、水田なども少しありますけれども、一番大きい農産物の生産高を上げているのがシイタケ栽培です。このシイタケ栽培で原木供給というのが非常に強い要望としてありまして、国有林に対してぜひ原木を供給してほしいということで、昨年日原営林署にクヌギの分収造林を要望しているわけですが、具体的に検討されていますでしょうか。
  346. 後藤康夫

    ○後藤政府委員 部分林の設定につきましては、国有林野の所在いたします地域の林業、林産業の振興あるいは住民の福祉の向上に資するために積極的に行っているところでございます。特に、今お話の出ましたように最近シイタケ原木が不足をいたしております関係で、部分林の設定についての御要望が出るケースがふえておりますけれども、特用林産物の生産振興を図ります見地から、いろいろその地域の立地条件というようなものもございますので、そういうものを勘案しながら、基本的な姿勢として、これは私ども積極的に行ってまいる考えでございます。
  347. 中林佳子

    ○中林委員 具体的にこの村からの御要望として、実際にそこにある国有林には非常に適地があるというふうにおっしゃっているわけです。この柿木村では、現在量が年間六十八ヘクタール必要であって、将来を見通す場合、あと五年分三百六十ヘクタールの不足が生ずるというようなことなんです。そういう意味で、クヌギの造林地の造成が非常に急がれているという要望が強く出ておりますので、ぜひこの問題に積極的に対応していただきたいと思いますが、もう一度お願いします。
  348. 後藤康夫

    ○後藤政府委員 現地の実態を踏まえましてよく営林署と地元でお話し合いをするように、私どもの方からも指示をいたしたいと思います。
  349. 中林佳子

    ○中林委員 昨年山陰豪雨災害で、島根県の山林は大変な被害を受けたわけです。ほとんどが山腹崩壊というようなことで、それが原因で百七名に及ぶ人命が奪われたという状況になっておりまして、治山対策というのが非常に求められている状況になっています。そこで、その前の年の長崎の豪雨災害、そして昨年の山陰豪雨災害というふうに、いずれも山腹崩壊、山が崩れるということからの人命損失やその他の大きな被害が出ているわけですが、国として、こうした災害から、特に長崎災害、山陰災害から何を教訓としておられるのか。そして、その教訓をもとに今後どのような対策をおとりになろうとしているのか、その点をお伺いします。
  350. 秋山智英

    ○秋山政府委員 昨年は島根県で山地災害が発生いたしまして、私どもも、急速緊急治山でまずは二次災害が起きないような対策をとり、さらに五十九年度以降におきましても、逐次計画的に治山事業を実施してまいることとして、現在鋭意努力中でございます。  そこで、私どもこの災害跡地を調査し、その結果教訓と申しますか、今後の対策で参考にといいますか、勉強になりましたことは、森林がよい場合でも災害、崩壊地が出ていますけれども、全体的に見ますと、森林のよい状態のところは崩壊地が少ない。また、発生しましても規模が非常に小さい、こういうふうな結果が出ております。  それから、森林の齢級が四ないし六齢級の林地が多いわけですが、こういう森林を健全に管理することによりまして防災効果が高められるというふうに理解しておりますので、今後そういう面からいろいろと森林施業に取り組んでまいりたいと考えております。
  351. 中林佳子

    ○中林委員 前の委員会のときに災害問題を質問させていただいたのですが、そういう木の果たす役割も非常に大切なのですが、もう一度、島根県だけでも結構でございますけれども、非常によく育った木のところも崩れているというような状況もあるわけですね。比較的そういうところは少ないというようなお話があったのですけれども、それをもう少し林野庁として研究していく、これからそれを教訓として生かすという体制をするおつもりはないのでしょうか。
  352. 秋山智英

    ○秋山政府委員 昨年の島根県の災害は、最大日雨量を見てまいりますと、過去九十年において最大の値を出している。また、連続雨量が五百五十ミリを超えるというふうな記録的災害があったことと、やはりあの地域は、先生御出身の地域、非常に風化を受けた特殊の土壌地帯であったことが原因となっているわけでございまして、私ども今後この対策をとるに当たりましては、先ほどの教訓、さらには、既に治山事業等がやられたところについては災害が出ていないということもございますので、これらのことを踏まえまして、第六次の治山五カ年計画に基づきまして、荒廃山地あるいは地すべり地等の復旧ということにこれからも鋭意努力してまいりたい、かように考えているところであります。     〔委員長退席、衛藤委員長代理着席〕
  353. 中林佳子

    ○中林委員 二年連続してそういう山崩れといいますか、山腹崩壊というような状況が起きての大きな災害ですので、国としても十分な対応を、防止する意味ということからして、今後ぜひやっていただきたいと思うわけですが、具体的に国有林の被害もあるわけです。  これは、島根県の場合は川本営林署管内が国有林として一番大きな災害を受けているわけですが、二次災害の防止という点で非常に復旧事業が急がれているわけですが、その復旧事業の見通しですね、これはどのようにお進めになるのか、お答えください。
  354. 田中恒寿

    田中(恒)説明員 一般に災害の後の復旧につきましては、その後の降雨等によりまして二次災害が出るのをまずは緊急に防がなければならない、これが鉄則でございまして、この川本営林署管内の場合におきましても、まず再度災害を防止するために、谷どめ工を中心といたします緊急治山を早急に実施いたしたところでございます。  その後、今度は計画的に五十九年度から、また恒久的な対策を継続してまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  355. 中林佳子

    ○中林委員 災害復旧は三年で終わるということですが、それはできるのでしょうか。
  356. 田中恒寿

    田中(恒)説明員 国有林のこういう復旧につきましては、一応三年をめどといたしましても、やはりその復旧のぐあいによりまして、その後のことも十分考えてまいることといたしております。
  357. 中林佳子

    ○中林委員 国有林が河川に与える影響ども非常に大きいわけですので、地元からは早く復旧をやってほしいという要望がありますので、その点よろしくお願いいたします。  次に林道と作業道についてちょっとお伺いするわけですが、五十七年度の林業白書で、林道については、林道は合理的な林業経営及び森林の集約的管理を推進するため最も重要な基盤であり、また、山村地域の振興と住民の福祉の向上を図る上からも欠くことのできないものである。作業道については、作業道は造林、伐採、搬出等の作業に付随して臨時的に作設されるものであるが、合理的な林業経営を行うに当たって重要性が高まり、その作業量は増加している。また、健全な林業経営の展開と森林の適正な管理を推進し、森林の持つ多面的な機能を発揮させるため、集約的な森業施業を可能とする路網の配置が今後の課題となっている。このようにその重要性を述べているわけです。  作業道は、行政上林道と区別されているわけですけれども、実態は林道的な効用を果たしているというふうに思うわけですが、その点いかがお考えでしょうか。
  358. 秋山智英

    ○秋山政府委員 作業道は、造林あるいは保育あるいは間伐といういわゆる森林施業に付随して臨時的に作設されるものでございますが、これは林道を補完しまして、森林施業の適正な効率的な実行の一翼を担っておると思います。これは、そういう意味でこれからの森林施業を進める上におきましては非常に重要な役割を果たしておるものと理解しております。
  359. 中林佳子

    ○中林委員 現実に作業道の実績を見てみますと、昭和五十五年度は三千八十九キロメートル、五十六年度は二千七百九十七キロメートル、五十七年度は二千六百三十二キロメートルと、三年間で実に八千五百十八キロメートル開設されているわけです。このほかに県単などでもやっているので、その延長キロメートルというのは相当な量であろうというふうに思われます。  ただ、作業道は実際にはどうなっているかといえば、造林だとかそれからその他の仕事が終わっても、その後、保育だとか間伐だとか搬出だとか、そういうのに使用されているのが実態だと思うのですね。大体その仕事が終わったらその役割は終わって作業道ではなくなるというふうにお考えかもわかりませんけれども、実際はその後も作業道として使われている。私は、これは同じお金をかけているわけですから、非常に効率的にその後々も役割を果たすということは非常にいいことだというふうに思うわけです。そういう意味で、この作業道の持つ意味を林道と同じように扱えないのかというふうに思うわけですが、その点はいかがでしょうか。
  360. 秋山智英

    ○秋山政府委員 作業道の性格につきましては、ただいま申し上げましたとおり、一時的にこれを利用する、林道の補助的、補佐的な役割を果たしておるものでございますので、私はそういう形でやはりこれは対処しなければならないと思っております。  今先生お話しのように、もし作業道作設後さらに長期にわたりまして使用が継続される、そういったものにつきましては、一定の規格、構造を満たすように所要の改正を加えまして、林道として整備することが、やはり林業の安全性からも、安全性と申しますか、長期にわたりまして林道として維持していく上からも大事だろうと思っておりますので、そういうふうな方法で措置していきたいと考えております。
  361. 中林佳子

    ○中林委員 実際、林道に格上げすれば問題は解決するのでしょうけれども、それの維持管理というのは相当金もかかるし、そういう意味では市町村に負担がかかると思うわけですね。実際は作業道がこのように延長距離数もたくさんある。実際には林道と同じような役割を果たしているということはお認めになっておりますね。
  362. 秋山智英

    ○秋山政府委員 先ほど触れましたように、作業道は文字どおりその地域の作業をするために一時的、臨時的にこれを作設するものでございまして、恒久施設ではございません。したがいまして、もしこれを長期的に利用するということになりますと、ただいま申し上げましたように、これを林道として、中身を林道の規格に合うように改修をして利用するというのが望ましい姿だろうと思っております。
  363. 中林佳子

    ○中林委員 実際は市町村道、林道、作業道というふうにつながっていて、その役割は林道と同じような働きをしているし、地元でもそれはその役割は終わってもなおかつその後に使っているというのが本当は実態です。実態をもう少し調べてもいただきたいと思うわけですけれども、そういうふうに私は考えております。  ただ、そういう意味で非常に林道と作業道ということが区別されているために、災害などが起きた場合救済されないという不便な状況が起きているわけですね。昨年の七月豪雨災害の島根県の例で見ましても、作業道で九十カ所、二千八百メートル、これは国の補助対象にならないものがこれだけの被害を受けております。したがって、県は五十九年度に林業用作業道災害復旧事業として単独事業で復旧を進めております。単価が一メートル当たり五千九百円で、総額千六百五十二万円、これは県が二分の一、あとは市町村及び受益者が二分の一ということになっているわけですが、災害を受けた上にこういうのも県単でやらなければならないという状況で、地方自治体や森林組合などは作業道を災害復旧の中に組み込んでもらえないかというのが非常に強い要望としてあるわけですね。  先ほど林道に格上げすればそれでいいのだというふうにおっしゃいますけれども、国の、一年間に大体どのくらい林道に格上げされているのかというのを見ると、せいぜい三十キロから四十キロですね。ですから、そういう意味ではとても対応し切れない状況があるのではないかというふうに思いますし、林道に格上げすればさらにその分を災害復旧して受益者負担が幾らかかかるということになれば、かなりの負担が今度は受益者にかえってかかってくるのじゃないかというようなこともあるわけです。ですから、そういう意味で、実際県ではこういう独自の措置もしているわけですから、そういう実態をよくお調べいただいて、実際作業道は後々どういうふうになっているのかということもよくお調べいただいて、何とか今後の検討課題に入れていただけないものでしょうか。
  364. 秋山智英

    ○秋山政府委員 国庫補助で作設されました作業道のうちの大半は、これは造林と間伐の作業道でございまして、これにつきましては、現在、造林事業等を実施中に被災を受けた場合には作業道の機能が確保できるように復旧を行っておりますが、原則としましては作業道と申しますのは、先ほど申し上げて恐縮でございますけれども一般には各種事業に付随して一時的、臨時的に作設されるものでございますので、国庫補助による災害復旧の対象にすることは困難でございます。  それで、この作業道については実態も実は千差万別でございまして、いろいろと難しい問題がございますが、被害の実態等については今後ひとつ調査してみたいと思っております。
  365. 中林佳子

    ○中林委員 災害を受けたところでは、それなりに地元と密着しているので、どうしても地元の要求を聞かなければならないというので、自治体は努力をしておりますので、その点をよく調査していただいて、できれば前向きの検討をいただきたいというふうに思います。  次に、分収育林制度の導入についてお伺いしたいと思うわけですが、昨年、分収林特別措置法が制定されました。これは民有林において分収育林が始まったわけですが、それについて伺ってみたいと思うわけです。  三井農林が岐阜県郡上八幡の明方村というところで分収育林を始めておりますが、第一次が百二十一・四七ヘクタール、第二次が百二十一・四七ヘクタールと、計二百四十二・九四ヘクタールの分収育林契約を完了したようです。三十年後の伐期が来たとき、数年間で皆伐することになるというふうに思われるわけですが、国土の保全、公益的機能の上で、これが適当と思われるのかどうか、その点について伺います。
  366. 秋山智英

    ○秋山政府委員 三井農林の育林分収の対象地域につきましては、突然の御質問でございますので、私ども現地を実は見ておらぬわけでございます。それで、普通林地だと思いますので、普通林地の場合においては普通の皆伐作業で適正伐期齢級以上になれば収穫伐採をされるというのが林業経営でございますので、そういう形でなされるものと推察しておりますが、細部につきましては調べていきたいと思います。
  367. 中林佳子

    ○中林委員 これは、私調べて、三井農林の方からも聞きましたので、事実なんです。  それでは、具体的に、先ほど言いましたように二百四十二・九四ヘクタールあるわけですね、契約されたものが。三十年後にはそれが皆伐される。この二百四十ヘクタールぐらいのものが皆伐されることについて、どのようにお考えでしょうか。
  368. 秋山智英

    ○秋山政府委員 普通林地におきましては、これは森林計画に定める施業基準で実施されておる場合におきましては、伐採をされることは、それは林業経営の一環として理解をしてよろしいかと存じます。
  369. 中林佳子

    ○中林委員 国有林については、林野庁が昭和四十七年十月に「国有林野における新たな森林施業について」で、一カ所の伐採面積の上限をおおむね二十ヘクタールというふうに、その面積を努めて小さくするようにというふうに、国土の保全などのことから考えてこういうものをお出しになっているわけですね。だから、そういうことから考えれば、二百四十ヘクタールということになりますと、おおむね二十ヘクタールということから考えれば十二倍、かなりの開きがあるわけですね。だから、そういう意味で、一方で緑の触れ合いということをうたって昨年もこういう制度を制定された。だけれども、三十年後になれば二百四十ヘクタールのものが皆伐されていくということになれば、非常に矛盾するのではないかというふうに思えてならないのですが、いかがでしょうか。
  370. 秋山智英

    ○秋山政府委員 現実の地域につきまして私ども現在資料を持ち合わせておりませんのでまことに恐縮でございますが、先生御指摘のとおり、各県におきましては森林計画ごとに地域の森林計画というものを策定しております。そこで森林施業の規範が定められておるわけでございますし、さらに森林所有者が森林施業計画というものを立てまして、林業経営を持続的にするための伐採造林計画を立て、これを各都道府県知事に提出しましてその認可を得るというのが普通の建前になっておりますので、その中でされている限りにおきましては私は施業計画に基づいた施業というふうに理解をいたしますが、現実に今の二百数十ヘクタールというものにつきましては、私ここに資料を持ち合わせておりませんので、後ほど調べてみたいと思っております。
  371. 中林佳子

    ○中林委員 図面の上では、一面にというか、百二十一ヘクタールずつが、これが分収育林になっているのだという地図になっているのですよ。ですから、実際にお調べになってまた御見解は御報告いだだきたいと思いますけれども、そういう意味で、緑の触れ合いというようなキャッチフレーズで始まったけれども、実際は三十年後には丸裸になるところが出てくるのではないかというふうに思うわけですね。しかも、三井農林の方は、分収育林が事業として成立するのは三千口くらいでないと本当はしないんだというふうにおっしゃって、本当はもっともっと広い範囲が必要だというふうなことまでおっしゃっているわけですね。だから、そういう意味で、昨年始まった民有林においてこういう事態になっているということを一点指摘して、今回の法案の問題について質問をしたいと思います。  政府は、国民の緑資源の確保に対する要請の高まりだとか、都市住民の森林造成に対する関心の高まりなどもあって、今回の法の改正で国有林野に分収育林制度を導入して森林資源整備への国民参加を促進するとともに、国有林野事業の経営の改善に資するため、こういうことを理由に挙げて今回の法改正をやろうとされているわけですが、五十九年度は、各営林局一、ニカ所、一口五十万円で二百四十口を予定しているというふうに伺っているわけですが、この投資者へのサービス、それから将来の規模拡大は大体どの程度まで行われるのか、その点について伺います。
  372. 秋山智英

    ○秋山政府委員 今回の国有林におきますところの分収育林制度の導入は、やはり緑資源の造成に対しまして一般国民の方々に参加いただく、こういうことを通じまして、緑資源の重要性、造成への苦労の御理解、さらには森林経営の重要性を知っていただくということでございます。そこで、やはりそういう要請にこたえて、これを実施するに当たりましては費用負担をなされる方々に定期的に契約対象地を見ていただく、あるいは対象地周辺のレクリエーションの森等を活用した森林浴を実施するというようなことを実は考えておるわけでございますが、やはり地域の皆さんとの触れ合いの場を設けながら森づくりの理解を深めていくことが大事であろうと思うわけでありますし、また、みずから下刈りもしくはつる切りをなされる、体験学習をおやりになられるというふうな御希望の方にはそういう場所も提供してまいりたい、かように実は考えておるところでございます。  そこで、今後の私どもの分収育林の見通しでございますが、この分収育林を進めるに当たりましては、やはり対象とする林分が国民の皆さんの森づくりへの参加に適している立地条件にあるかというようなことをまず検討しなければなりませんし、やはり長期的に見ましても、国有林野事業としましては自分の収入の平準化、安定化ということも考えながら検討をするということで範囲、対象等も考えていこうと思っておるわけでございます。私どもといたしましては、五十九年におきまして応募の状況、事業実施に当たりましてのいろいろの課題等も勉強しながら進めてまいりたいと思いまして、まずは杉、ヒノキの中齢林を対象としまして、本州、四国、九州の営林局におきまして一ないしニカ所ぐらいますことし実施してまいりまして、今後の事業実施への各種の指針をまずつかんでまいりたい、かように考えているところであります。
  373. 中林佳子

    ○中林委員 幾らぐらいまでという見通しはないのですか。
  374. 秋山智英

    ○秋山政府委員 一ないしニカ所でございますが、一地域については五ないし十ヘクタールの団地でやってまいりたいと考えております。
  375. 中林佳子

    ○中林委員 それはわかっているのですが、将来国有林野で大体何ヘクタールぐらいまでのことをお考えになっているのですか。
  376. 秋山智英

    ○秋山政府委員 これにつきましては、五十九年の実施状況を踏まえ、さらに今後の対象地域の選定等、これはやはりこの対象となる皆さんの要請、ニーズ等もありますので、それを踏まえて検討してまいりたいと考えております。
  377. 中林佳子

    ○中林委員 それでは契約上の問題で伺うわけですけれども、一人の投資者の口数に制限は設けられるのですか、どうですか。
  378. 秋山智英

    ○秋山政府委員 これを実施するに当たりましては、私ども広く国民の皆さんに御理解をいただくという目的、また広く参加者を得ようということから、公募抽せん方式で相手方を選定していきたいと思っているわけでございます。
  379. 中林佳子

    ○中林委員 では、口数の制限は設けられないということですね。
  380. 秋山智英

    ○秋山政府委員 特定の人が多数というふうなことは私どもとしては現在考えておりませんが、もしそういうふうなことが懸念されるような場合には、募集なり契約なりで、これは国が責任を持って行うわけでございますので、適切に対処してまいりたいと思っております。
  381. 中林佳子

    ○中林委員 民有林で分収育林を実施している業者のお話を聞きますと、民有林では投資者の平等を図るために一人の応募口数を二、三口に制限しているというふうにおっしゃっているわけですね。国有林の場合は特にその点は求められるのではないか。そうしないと、将来、小口の投資者はわずかで団体だとか企業だとか、そういう投機的な投資者が大部分を占めてくるのじゃないかということが懸念されるわけですけれども、その点はいかがでしょう。
  382. 山村新治郎

    山村国務大臣 分収育林の実施に当たりましては、国が適切な保育管理を行ってまいりますし、今御懸念のようないわゆる買い占め、こういうようなことによる弊害が生じないよう、十分配慮して適正に対処してまいりたいと思っております。
  383. 中林佳子

    ○中林委員 ただ、口数に制限などを設けないということになりますと、適切に配慮するといっても何ら歯どめ策がないわけですよ。その点は具体的にはどのような策をお考えなんでしょうか。
  384. 秋山智英

    ○秋山政府委員 大臣から申し上げましたとおり、そういうことの弊害が起きない方法をいろいろと考えてまいるつもりでございます。
  385. 中林佳子

    ○中林委員 弊害を受けない方法というのがわからないのですよ。口数に制限を設ければ当然弊害を受けないわけですから、そういう意味ではこれはお考えにならないのですか。
  386. 秋山智英

    ○秋山政府委員 分収育林をやる場合におきましては、やはり地域の皆さんの御要請ということもございます。そういうことも考えなければいかぬと思いますし、特定の人に集中するということがあってはならないことも考えなければいかぬと思います。また、地域によりましていろいろ事情の異なることもございますので、いろいろそういうことを含めて適切に対処したいということでございまして、口数を特定の人に集中させないというだけのそういう適切ではなく、いろいろなものを適切にしてまいりたいということでございます。
  387. 中林佳子

    ○中林委員 では、くれぐれもそういう投機的な投資者に占められることのないような適切な措置、これがわかるように、なるべく早いうちに明らかにしていただきたいというふうに御要望しておきます。  小口の投資者に対する保全の問題ですけれども、三十年後に投資されたものが必ず保証されるという見通しもないわけですね。全国に先駆けて分収育林を導入した島根県の隠岐島の布施村、ここでは火災などに遭った場合は代替の山林まで用意しているわけですよ。そして、投資者に対しては年間に投資額の大体二%ぐらいはサービスを行っているわけですね。  ここに布施村のサービスの要綱があるわけですけれども、例えば会員への特典として当地特産物の配付だとか、御来村における優遇あっせんだとか、その中には民宿だとか貸し別荘の使用については割引をいたしますよとか、工芸品などは優先的に取り計らいますとか、土産品の割引なども行いますというようなことで、かなり至れり尽くせりのサービスをやっているわけですね。  国が行うことに対して、先ほどサービスをお伺いしましたけれども、なかなかこういうところまではお考えになっていないということです。そうすると、三十年後に投資された分が一〇〇%保証されなくても、みんなに納得してもらう努力が必要なのではないか。火災が起きたときなどは保険によって一定の補償はするというふうには言っていらっしゃるわけですけれども、代替の山もないということになりますと、このふれ込みが緑資源の確保、森林との触れ合いだということで夢を売ることだとおっしゃるのですけれども、実際はそれとは少しほど遠いように思えるのですけれども、いかがでしょうか。
  388. 秋山智英

    ○秋山政府委員 これを契約するに当たりましては、森林火災、気象災等の保険には必ず入るということを義務づけるわけでございます。また、森林の管理につきましては、これは国有林でございますので、先ほど大臣も申し上げましたが、やはり適正に管理するのが国有林の役割でございますので、適正に管理し、十分夢が与えられ得るように、事業を責任を持って国が管理することにしてまいるわけでございますし、サービスの問題につきましては、先ほど触れましたように、国の場合には限界がございますので、その中で国有林の周辺地域の森林浴その他あるいは地域の皆さんとの交流、民宿等の問題についてもまた今後ひとつ検討をさせていただきたいと存じます。
  389. 中林佳子

    ○中林委員 投資者へのサービスを考え、そしてその分収育林が立派に育つように管理するということになりますと、これは私は人手がもっと要るようになるというふうに思うわけですね。布施村の場合でも、役場の職員、この森林を担当している職員は、一時期はかかり切りになる、大変人不足で困るというふうにおっしゃっているわけですね。そういう意味では、今度の改善計画の改正案といいますか、それでは、一方では人を減らし、一方ではこういう分収育林を導入してくるということでは、非常に矛盾しているのではないかというふうに思えるわけです。ですから、今回のこの分収育林の導入というのは、結局森林の触れ合いなどというのではなくて、投資が目的で、赤字の穴埋めにだけ目的がされるのではないか、このように思えてならないわけですけれども、その点いかがでしょうか。
  390. 秋山智英

    ○秋山政府委員 先ほど申し上げましたとおり、やはり国民の皆さんに緑資源の重要性につきまして、共同で森林づくりを通じて御理解いただくということが主たるねらいでございます。私ども国有林野事業の経営管理を進めるわけでございますが、営林署内におきますところの事務機械の合理化、事務の能率化等は十分やりながら、現地での指導は十分できるようにしてまいります。同時にまた、地域には森林組合その他林業事業団の方々がおられますので、その方々の雇用の場合にもこれは考えていきますので、管理には万全を期してまいりたいと考えております。
  391. 中林佳子

    ○中林委員 最後に、大臣にお伺いしたいと思うわけですけれども、土地の売却だとか労働者の首切りだとか営林署の廃止だとか、——こういうことでこの六年間やってきたけれども、実際は改善されていない。仮に今後も人減らしをやったり土地の売却などをやって若干の赤字は減ったとしても、大臣が一番最初におっしゃったように、国有林野事業の使命を果たしていくということとは非常にほど遠いのではないかと思えてならないわけですね。ですから、今回の計画というのは、私は国有林野事業の使命の放棄につながるのではないかと指摘をせざるを得ないわけです。  そうではなくて、林政審でも実は言っているわけですが、これを林野庁だけの問題で考えるのではなくて、公益的な機能という面を十分考えれば、政府として国有林野をどうしていくのか、この点を十分考えていかなければならないのじゃないかというふうに思うわけですけれども大臣の御所見をお伺いします。
  392. 山村新治郎

    山村国務大臣 林野というものは、国土の保全、水資源の涵養など公益的な機能を果たす、そういう大きな意味もございますし、単に林野庁だけということではなくて、国全体のこととして考えていきたいと思っております。
  393. 中林佳子

    ○中林委員 終わります。
  394. 衛藤征士郎

    ○衛藤委員長代理 この際、暫時休憩いたします。     午後七時十八分休憩      ————◇—————     午後七時三十一分開議
  395. 阿部文男

    阿部委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  次回は、明十二日木曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時三十二分散会