○上原
委員 そういうのは病気だからしょうがないですよ。
そういった特定などか、あるいは非常に矮小化といったら失礼な言い方かもしれませんが、狭めてお
考えになってはいかぬ。社会的にどうそれを理解し、歴史
教育というものを誤らしめないかということを問題にしている。
これは私だけが言っているわけじゃなくして国際的に見ても、「アジアの戦争」という本がある。エドガー・スノーという方は、戦前からの、中国問題に非常に詳しい方です。この人が書いているのには、
日本の軍隊の
教育は殺人
教育だとはっきり言っているわけです。まさに戦前の
教育は殺人
教育ですよ。だから、ああいうことができたわけです。目の前で人を殺すことが何でもない、そう教えたから。これは
教育なんですよ。
ここで、たくさんは引用できませんが、この中にこういうことが書いてある。「いかなる人種も戦争に際しては野蛮性に立ち帰りやすいものであろう。しかし、以上のことは認めることができても、この世界のいずこにおいても
日本の軍隊ほど人間の堕落した姿を念入りに、そして全く組織的に暴露しているものはないということは、否定しようにもすることのできぬ事実なのである。」こういう
指摘をしているわけですよ。
なぜ私たちがこういう二、三の問題を挙げるかといいますと、戦前
教育の
内容、
教育のあり方というものが国家統制、そして天皇のため、国のため死ぬのが男の生きざまなんだ、そういうふうに教え込まれたんですよ。まさに精神訓話ですよね。だから、今までは何とかお互いの良識が働き、あるいは
日本が民主主義国家であるということも
国民の良識とか、そういういろいろなことによって何とか食いとめているわけなんだが、こういう事実
関係が
教科書なり社会的にだんだん規制されていくと、
文部大臣、またこういう
教育に戻らないとも限らないのですよ。それを私たちは
指摘しているわけです。
さっきも言いましたが、あなた方は
教育的配慮からと言いますが、ここに
一つ例を持ってきましたが、高等
学校の「現代社会」、これが白表紙で、これで一応
文部省にお伺いを立てるんでしょうね。結果として、これが正本になったものです。もう時間もたくさんはありませんので、
一つだけ例を挙げますが、それは大変な規制をされてきているわけですよ。
例えば中国、上海占領というところで、この白表紙では、さっきお見せしたようなこういう写真が載っているんですね。日中平和友好条約の写真と両方入れてあるんです。過去はこういうこともあったけれ
ども、いろいろな友好条約を結んで、今はこういうふうに仲よく平和になったと。これは、歴史の対象としては、こういうことをしてはいかぬなということで、この方が
子供さんにしてもわかりよいと私は思う。しかしこれも、こんな写真を入れると
子供の
教育的配慮によくないから、写真を入れかえて、正本ではこういうふうになっている。「シャンハイを占領した
日本軍」、どういうふうにしたのか、どういう行為をやったかは全然書いてない。これが歴史の改ざんでなくて何ですか。
このほかにも、裁判官の問題にしても天皇の問題にしても、「現代社会」の中にたくさんあるのです。
大臣、一事が万事、たくさんあるんです。こういう
状態です。
さらに、こういうことをやりながら、一方においては「これが正しい小・中
学校教科書だ」ということで、私は相当苦労してざあっと目を通してみたのですが、これなんかには「ウソだらけの
教科書記述」とか「南京「大虐殺」のデッチあげ」と書いてある。こういうことが社会的にだんだんまかり通るようになりつつあるのですよ、
大臣。あたかもこれが
教科書検定の基準だというようなことになりつつある。皆さん否定なさるかもしらぬが、これは何も
文部省と書いてない、出版の自由だから、
表現の自由だからというかもしらないけれ
ども、しかし今の
検定をやる調査官の頭の中には、少なくともこういうことを基準にして
教科書を
検定していこうという思想なり
考え方なり、我々流に言うと、政治性というかそういうものが浸透しつつあると見なければならない。それが今日の
検定問題として凝縮した形で、今二、三の例を挙げましたが、出てきていると私は思うのです。
こういうことは何も、あなたが社会党だから、私は与党だからという、
見解の相違として片づけられる問題ではないのですよ、
大臣。だから私たちも真剣になって、
日本の民主
教育というもの、民主主義体制というものをどう確立するか、それは基本的に言っても
教育です。
後で沖縄の問題も言いますが、私なんかも
国民学校三年生から竹やりを持たされて、
学校なんかありはせぬですよ。私たちの
学校というのはみんな
日本軍が入り込んで、我々はどうしたかというと、裏の山へ行って勉強させられた。紙も鉛筆も十分でない。地面の上に字を書いたことさえあります。それは、わからぬ方々はうそと思うかもしらぬが、私たちはそういう体験をしてきたのです、正直申し上げて。
小
学校三年のころから、私は大
日本帝国青少年団の一員なりといって軍隊教練されたのです。私なんか鼻垂れ小僧で、鼻垂れもとれないころだった。体育の
先生としてそのころは
学校にみんな配属将校がおったが、すっ飛んできて、三メートルぐらい足払いで吹っ飛ばしおった。それでも我慢して、鬼畜米英とか言っていた。毎朝
学校に行くと、ちりを拾わされて宮城遥拝、束の
方向に向かって、天皇陛下は向こうに住んでいるから全部最敬礼です。今度教室に行ったら、天皇の写真が飾ってあるから御真影に向かってまた最敬礼、これが戦前の
教育じゃないですか。そういう
教育をしたからこそ、
日本軍隊は中国大陸や朝鮮やアジア諸国でああいう残虐行為をやったんだ。
また同じようなことを繰り返そうとしているのが今の
教科書検定の
内容なんです。まだそこまではいってないにしても、だれかが警鐘を鳴らさぬとそうなりかねない問題があるということを私たちは見抜かざるを得ないのです。
大臣どうですか、このことについて。