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1984-04-24 第101回国会 衆議院 内閣委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年四月二十四日(火曜日)     午前十時三十分開議 出席委員   委員長 片岡 清一君    理事 池田 行彦君 理事 戸塚 進也君    理事 深谷 隆司君 理事 宮下 創平君    理事 小川 仁一君 理事 松浦 利尚君    理事 市川 雄一君 理事 和田 一仁君       石原健太郎君    内海 英男君       大島 理森君    奥田 幹生君       鍵田忠三郎君    菊池福治郎君       塩川正十郎君    田中 直紀君       月原 茂皓君    二階 俊博君       林  大幹君    山本 幸雄君       上原 康助君    角屋堅次郎君       元信  堯君    渡部 行雄君       鈴切 康雄君    山田 英介君       田中 慶秋君    柴田 睦夫君       三浦  久君  出席国務大臣         国 務 大 臣 藤波 孝生君         (内閣官房長官)         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      中西 一郎君         (沖縄開発庁長         官)  出席政府委員         内閣官房内閣審         議室長         兼内閣総理大臣 禿河 徹映君         官房審議室長         内閣法制局長官 茂串  俊君         人事院総裁   内海  倫君         人事院事務総局         管理局長    服部 健三君         人事院事務総局         任用局長    鹿兒島重治君         人事院事務総局         給与局長    斧 誠之助君         人事院事務総局         職員局長    叶野 七郎君         総理府総務副長         官       堀内 光雄君         内閣総理大臣官         房管理室長   菊池 貞二君         総理府恩給局長 和田 善一君         北方対策本部審         議官         兼内閣総理大臣 橋本  豊君         官房総務審議官         外務大臣官房外         務参事官    有馬 龍夫君         外務大臣官房外         務参事官    斉藤 邦彦君         外務省欧亜局長 西山 健彦君  委員外出席者         大蔵省主計局共         済課長     坂本 導聰君         厚生省医務局管         理課長     羽毛田信吾君         厚生省年金局年         金課長     山口 剛彦君         厚生省援護局庶         務課長     加藤 栄一君         厚生省援護局業         務第二課長   石井  清君         郵政省貯金局第         二業務課長   神岡 篤司君         労働省婦人少年         局婦人労働課長 佐藤ギン子君         労働省職業安定         局庶務課長   岡山  茂君         参  考  人         (日本貿易会会         長)      水上 達三君         内閣委員会調査         室長      緒方 良光君     ————————————— 委員の異動 四月二十四日  辞任         補欠選任   内海 英男君     田中 直紀君 同日  辞任         補欠選任   田中 直紀君     内海 英男君     ————————————— 四月二十日  非核三原則法制化に関する請願浦井洋紹介  )(第三〇五三号)  同(経塚幸夫紹介)(第三〇五四号)  同(柴田睦夫紹介)(第三〇五五号)  同(田中美智子紹介)(第三〇五六号)  同(辻第一君紹介)(第三〇五七号)  同(野間友一紹介)(第三〇五八号)  同(林百郎君紹介)(第三〇五九号)  同(藤木洋子紹介)(第三〇六〇号)  同(三浦久紹介)(第三〇六一号)  旧軍人恩給改定等に関する請願(稻葉修君紹介  )(第三〇六二号)  同(上草義輝紹介)(第三〇六三号)  同(大島理森紹介)(第三一四〇号)  元従軍看護婦処遇に関する請願外一件(有馬  元治君紹介)(第三〇六四号) 同月二十三日  引揚者在外財産の補償に関する請願澁谷直藏  君紹介)(第三一九二号)  元従軍看護婦処遇に関する請願久間章生君  紹介)(第三一九三号)  同外一件(塩川正十郎紹介)(第三一九四号  )  同外一件(澁谷直藏紹介)(第三一九五号)  同(中島武敏紹介)(第三一九六号)  同(角屋堅次郎紹介)(第三二八七号)  同(左近正男紹介)(第三二八八号)  同外一件(武藤山治紹介)(第三二八九号)  同外一件(矢山有作紹介)(第二二九〇号) 同月二十四日  元従軍看護婦処遇に関する請願外二件(伊藤  昌弘君紹介)(第三三四四号)  同(海部俊樹紹介)(第三三四五号)  同(野中広務紹介)(第三三四六号)  同(浜野剛紹介)(第三三四七号)  同(村田敬次郎紹介)(第三三四八号)  同(衛藤征士郎紹介)(第三五一八号)  同外二件(鍵田忠三郎紹介)(第三五一九号  )  同(柴田睦夫紹介)(第二五二〇号)  同(中島武敏紹介)(第二五二一号)  同(東中光雄紹介)(第二五二二号)  同(元信堯君紹介)(第三五二三号)  旧軍人恩給改定等に関する請願鍵田忠三郎君  紹介)(第三五一七号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  恩給法等の一部を改正する法律案内閣提出第  二〇号)      ————◇—————
  2. 片岡清一

    片岡委員長 これより会議を開きます。  内閣提出恩給法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本案審査のため、本日、参考人として日本貿易会会長水上達三君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 片岡清一

    片岡委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  4. 片岡清一

    片岡委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。  この際、政府当局に申し上げますが、答弁はできるだけ簡潔にするようお願いいたします。  柴田睦夫君。
  5. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 今回の恩給法改正案で、恩給ベースアップは、昨年度人事院勧告の一部実施である約二%の公務員給与改定基礎にして行われることになります。昨年は、一昨年の人事院勧告凍結によって公務員給与改定が行われず、恩給についても現職公務員と連動してベースアップが行われませんでした。どちらの場合も恩給凍結改定公務員給与凍結改定に連動しているわけです。  恩給改定公務員給与改定にだけ連動して行うということは、恩給法第二条ノ二「年金タル恩給額ニ付テハ国民生活水準国家公務員給与物価其ノ他ノ諸事情ニシキ変動ガ生ジタル場合ニ於テハ変動後ノ諸事情総合勘案シ速ニ改定措置ヲ講ズル」、こういう規定になっているわけですけれども、この法第二条ノ二の趣旨に反するのではないかと考えますが、見解を伺います。
  6. 和田善一

    和田政府委員 恩給ベースアップにつきましては、現職公務員給与改善基礎として従来から行っているところでございまして、これは、元公務員に対します年金額調整あり方としてはこの方法が最も妥当である、公務員給与改定の結果と申しますのがいろいろな社会事象の総合された結果としてそこにあらわれ、最終的な指標としてとり得る結論である、かように考えておりますので、公務員給与改定の結果を指標といたしましてベースアップを行っているところでございます。
  7. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 恩給法第二条ノ二の規定について、昨年の四月十九日の内閣委員会恩給局長は、経済情勢変動が生じた場合に年金の実質的な価値維持を図る必要があるという基本的な精神があるのだ、こう述べておられます。また局長は同じ委員会で、年金の実質的な価値維持する方法として、恩給法第二条ノ二の規定にもあるように、いろいろの指標によって行うことが考えられるが、恩給については、元公務員に対する年金実質価値維持する、そのための方法として現職公務員給与改善基礎とすることが最も妥当である、こう述べておられます。  物価も年々上昇してきておりますし、また公務員給与人勧凍結によって民間の労働者賃金水準よりも下がっているときですから、この凍結された公務員給与に連動して恩給凍結したことでどうしてこの実質的な価値維持することになるのか、この点を中心に伺います。
  8. 和田善一

    和田政府委員 恩給法二条ノ二におきましては、「変動後ノ諸事情総合勘案シ速ニ改定措置ヲ講ズル」ということになっておりまして、公務員給与改定結果と申しますものはいろいろな社会の諸事情総合勘案の一つの結果である、元公務員に対する年金額調整あり方としてはこれを用いるのが一番適当である、私どもといたしましてはこのように考えて、公務員給与改定の結果を指標としている次第でございます。
  9. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 その実質価値維持ということを言われているわけですけれども、今回の恩給は約二%上げられるわけですけれども、このアップ実質価値維持を図ったことになるということでしょうか。
  10. 和田善一

    和田政府委員 恩給法二条ノ二の趣旨に従って改定したということでございます。恩給法二条ノ二というのは恩給実質価値維持するための規定だ、かように考えております。
  11. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 恩給法の第二条ノ二の規定昭和四十一年の法改正によって設けられたわけですが、この規定は、経済事情変動に際して恩給年額をどのように調整していくかの原則示したものであるわけです。総理府附属機関として設置されております恩給審議会で検討されて、昭和四十三年三月の答申で、恩給法第二条ノ二の規定運用について「物価とくに消費者物価上昇年金恩給実質的価値を低下させ、恩給受給者生活に直接的な影響を与える」、こう言っております。この答申恩給年額調整については、まず「消費者物価上昇に応じて年額改定を行ない、その実質的価値維持することによって、ほぼその目的を達し得る」、こうしておりますし、さらに「恩給受給者がかつて公務員であった者またはその遺族であることにかんがみ、国家公務員給与上昇を勘案して恩給年額調整を図る」と言ったり、「また、経済の成長に伴い国民生活水準が著しく向上した場合には、ある程度恩給受給者にもこれを反映させ、その生活内容改善を図る」と述べておりまして、恩給実質価値維持指標を明確に消費者物価に置いているわけです。  実質価値維持ということにつきましては、この審議会考え方と別の解釈をとっておられるのかちょっと疑問に思うわけですが、このところをひとつ明確にしていただきたいと思います。
  12. 和田善一

    和田政府委員 恩給ベースアップにつきましては過去にいろいろな指標をとった時代がございます。消費水準の動向をある程度取り入れたというようなこともございましたが、結局公務員ベースアップに準じますのが最も適当であるし、また結果的に最もよかったということで、昭和四十八年以降公務員ベースアップ指標とする、また公務員ベースアップはもろもろの社会事象の総合された指標として考え得るということで、ここ十年以上定着してきたところでございまして、これを今別の考えに立って物価等を取り入れるということは考えておりません。
  13. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 その考え方というのが結局恩給法の第二条ノ二の規定を逸脱するものであるというように見ているわけです。  恩給審議会で言っております実質価値という考え方によりますと、五十八年度消費者物価上昇率、これは実績見込みなんですが、二・〇%アップ、これを一年おくれで恩給に反映させたとすれば、今回の恩給改定は確かに五十八年度恩給実質価値維持しているというふうに見ることができます。しかし、私どもの計算によりますと、最も改定率が高いところになります通し号俸の三十号俸以下の場合、実施時期の一カ月のずれを無視しておりますけれども、五十七年度恩給基準にした場合に、基準年度恩給額物価上昇率に応じて一年おくれで増額した場合の恩給額に対する名目の改定された恩給額の割合を求めますと、五十八年度は五十七年度恩給が二%ほど実質価値が低下しておって、五十九年度についても五十七年度恩給が同じく二%ほど実質価値が低下したままになっているわけです。また、人事院勧告給与改定が完全に実施され、恩給人事院勧告改定率基礎改定された五十六年度基準にしても、五十六年度恩給実質価値が五十七年度で一%アップしたわけですけれども、五十八年度、五十九年度で一%ほど低下したままであるわけです。このことから見ますと、恩給審議会で言っております実質価値維持しているとは言いがたい。現実に計算してそういうふうに出てくるわけですけれども、そういうことではないでしょうか。
  14. 和田善一

    和田政府委員 お示しのような見方があるかもしれませんが、恩給ベースアップにつきましては、指標としてあるときは公務員給与をとりあるときは物価をとりというようなことでは、制度の一貫した運用ができません。国家公務員ベースアップに準拠するというのが今まで一番適当でございました。このことは、特に一時的にことしだけは物価をとるとか、そういったような恣意的な指標のとり方の変更ということは今考えていないところでございます。
  15. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 昭和四十八年度以降から公務員給与改定に対応して恩給ベースアップを行ってきたということを理由にして、人事院給与改善勧告凍結したり値切り実施が行われた際には公務員給与改定に連動させる、こういうことをやりますと、消費者物価上昇にさえも必ずしも対応しておりませんし、恩給実質価値が今言ったように低下していくということになるわけで、法律趣旨、このことももう一遍考えてもらわなければならないと思うのです。私どもは、公務員給与改善基準として恩給年額改善するというやり方が、人事院給与改善勧告が完全に実施されている条件のもとでは国民生活水準国家公務員給与物価などを総合的に反映させることになりまして、恩給法第二条ノ二の規定趣旨にも合致した妥当な方法だと考えるわけですけれども人事院勧告凍結されたりあるいは値切って実施するということで、これを恩給にも連動させて、実際には物価上昇以下の水準恩給を切り下げて恩給生活者生活水準の抑制を強いるという考え方、そしてその考え方に立った政府提案の今回の改正案にはどうしても賛成できないわけであります。  別の問題ですが、今回の改定では三月分より引き上げることにしておりますが、これは内閣委員会附帯決議で、「恩給実施期間については、現職公務員給与との遅れをなくすよう特段の配慮をするとともに各種改善を同時期に一体化して実施するよう努めること。」こう附帯決議をしていることにこたえて政府としても努力したということであるのか、三月実施に至った経過を説明していただきたいということ、それから来年度以降も三月実施を続ける考え方であるかどうか、後退することなくむしろさらに実施時期を早める努力をするべきだと思いますが、この点についてお願いします。
  16. 和田善一

    和田政府委員 本年度ベースアップを三月から実施することにいたしました理由は、前年度恩給ベースアップがなかったという特殊事情を考慮いたしまして、本年度限りの特例といたしまして三月までさかのぼるということをしたわけでございます。したがいまして、この措置附帯決議のあの御趣旨とは別の観点からのものでございまして、直接あの附帯決議に基づいてこういう措置をとったということではございません。今年度限りの特例でございますので、来年もこのまま今年と同じようにやるということは考えてはおりません。
  17. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 附帯決議趣旨を尊重してその方向にやっていくということではないように聞こえますが、この点、長官いかがでしょうか、繰り上げて早くやるようにという国会決議があって、政府の方もこれを実現できるように努力すると今まで答弁されておりますが、そういう方向でやるのか。要するに、三月実施をことし初めてやったわけですけれども、こういう方向をやっていくのかどうか、長官の決意をお伺いしたいと思います。
  18. 中西一郎

    中西国務大臣 五十九年の三月から実施することにしたその理由については今恩給局長から御答弁したとおりでございます。  また、附帯決議がある、それをどうするかというお尋ねでございますが、これは念頭に置いてきておるわけでございますが、今まで、そこまでの実行はできなかったということで御理解をいただきたいと思います。
  19. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 そうすると、これから先については附帯決議趣旨を生かすことが困難であるということになるわけですけれども、非常に遺憾に思います。  この点の最後に、今回の改正で、恩給局が出しております「恩給のしくみ」の「恩給年額最低保障額に達しない人」という欄がどういうふうに変化するのか。特に、五十八年度改正と今回の改正長期在職の旧軍人老齢者などですけれども、その仮定俸給の引き上げを行ったことによりまして、最低保障でカバーするこの状況が今までと変わったものになるのじゃないかと思いますが、その点についてお伺いします。
  20. 和田善一

    和田政府委員 普通恩給普通扶助料最低保障で覆う範囲がどのように変わったかという御質問でございますが、普通恩給につきましては最低保障アップ率ベースアップ率とが同じでございますので、普通恩給につきましてはその点の変化がございません。  普通扶助料につきましては、お示しの「恩給のしくみ」に載せております表で申し上げますと、普通扶助料の部分の一番左の「最短恩給年限以上」の欄の下の方、「大尉」の欄で現在は在職三十六年以下というのが在職三十七年以下と変わります。また、一番右の「六年未満」というところの欄で、准士官の階級の欄でございますが、在職二十一年以下とありますのが在職二十二年以下と変わる、この二点でございます。
  21. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 次に、旧日赤救護看護婦の問題ですけれども、この人たちにつきましては昭和五十四年から、元陸海軍従軍看護婦人たち昭和五十六年から慰労給付金が支給されております。初めての慰労給付金、五十四年四月分から数えますとちょうどことしで五年経過したことになります。この間、国会でたびたび慰労給付金増額が問題になりましたが、政府は一向に増額しようとはしなかったというのが現実であります。去年も我が党議員質問に対して当時の丹羽総務長官が、衆議院では、将来、社会経済情勢の大きな変化があれば慰労給付金の額の改善について前向きに検討すると答弁されております。参議院の方では、国会附帯決議の意思を尊重して、またこうした方々の立場の訴えも肝に銘じて予算要求のときには誠意を持って努力する、こう積極的な答弁をされておりますが、しかし五十九年度概算要求に当たっては要求もされなかったと聞いております。そうだとしますと、これは国会で言ったことと相反する。その事実関係、どうしてそうなったかということについてお伺いします。
  22. 菊池貞二

    菊池(貞)政府委員 旧日赤救護看護婦、また旧陸海軍従軍看護婦に対しまして慰労給付金を支給しているわけでございますが、この慰労給付金は、女性の身でありながら戦時中非常に御苦労されたというその特殊事情を考慮いたしまして支給しているものでございます。そういった意味から申し上げますと、この慰労給付金によりまして所得の保障を図るあるいは生活保障を図る、そういう例えば恩給とか公的年金、そういった性格のものではないのでございます。そういう意味増額は非常に困難であると考えているわけでございますが、今後の扱いにつきましては、ただいまお話がございましたが、社会経済変化、そういったものを見守りつつ引き続き検討させていただきたい、かように考えております。
  23. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 もともと昭和四十二年の引揚者に対する特別措置で戦後処理に関する措置はすべて終了したものとするという政府・自民党の了解事項があったわけですけれども、それにもかかわらずこうした人たちに対し慰労給付金を支給するようになったというのは、それだけの特別の事情があったからで、私たちも兵と同様に恩給の適用を行うことを主張してきたわけです。  対象者には、外地で長期抑留生活を余儀なくされ、婚期を逸しひとりでやっと明け暮れている人や、体を悪くして就職もできないでいる人など、高齢化していく中で老後の生活に対する不安もだんだん大きくなっているわけです。そのために、金額が恩給に比べても不十分であるわけですが、できるだけ早く制度を発足させてこうした人たちの不安にこたえていくというのが政治の責任でもあったと思います。しかし、その後慰労給付金増額は全く行われずそのままにされているということは、制度発足趣旨にも反していると思うわけです。そういう意味で、来年度には必ず増額が実現するようにしていただきたい、このように考えますが、いかがですか。
  24. 菊池貞二

    菊池(貞)政府委員 先生おっしゃいましたように、慰労給付金措置は非常に特殊事情を考慮して考えたものでございますので、私どももその趣旨は十分尊重いたしまして、社会経済変化、そういったものを見つつ引き続き検討させていただきたい、かように考えております。
  25. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 恩給の場合、今言いましたように物価上昇にも対応して、不十分であるわけですがまだ増額されているわけです。五十四年度普通恩給最低保障の額は六十五歳以上実在職年九年未満で三十二万三千五百円にすぎないわけですが、これに対してこの慰労給付金勤務期間が十八年以上でも三十万円、三年以上六年未満では十万円にとどまっているわけです。五十四年度恩給額に比べますと、今回の恩給改正案では実在職年が六年未満で四十万三千四百円で二四・七%上がることになります。また、六年以上九年未満では四十八万四千百円で四九・六%、約五〇%上がることになるわけです。この間の消費者物価上昇は五十八年度までで一七%アップしておりまして、五十九年度上昇率見込みが二・八%ということで、これを考慮しますと約二〇%のアップになります。そうしますと、実質価値が大幅に低下していることが明らかです。五年も据え置くということは、社会経済情勢の大きな変化と同じ結果をもたらしております。  ともかく現状を申し上げましたけれども、そういうものを踏まえてこの問題についてアップを考慮しなければならない、検討しなければならないと思うのですけれども総務長官の御意見を伺います。
  26. 中西一郎

    中西国務大臣 簡単にというお話がございましたので簡単に申し上げますが、全く考えないという趣旨事務当局答弁をいたしておるわけではございません。念頭に置きながら、どうするか。ただ、もとをさかのぼりますと、看護婦皆さん方に対する慰労給付金というのは恩給として考えたのではないという出発点がございます。そういったようなことで、将来にわたって十分意を用いながら対処してまいりたい、かように考えます。
  27. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 それでは、次に治安維持法犠牲者恩給に関連する問題ですが、一九二五年、大正十四年に治安維持法が制定されまして、一九二八年、昭和三年には最高刑が死刑にまで改悪されて、国体の変革や私有財産制度の否認を目的とした結社を取り締まるだけでなく、拡大解釈やほかの弾圧法規と併用して政府の施策や考え方と違う国民の言動はほとんどすべて弾圧されるようになって、国民を戦争へと駆り立てる役割を果たしてきたことは歴史的事実であるわけです。一九四五年十月の連合国軍の指令によって廃止されはしましたけれども、この法施行の間、数十万人と言われる人々が逮捕され、投獄され、わかっているだけでも千六百八十二人が虐殺されております。こうした人たちの中には恩給の受給権が消滅したり、拘置された期間などのために在職期間が不足するため恩給受給権が生じない場合も当然あるわけですが、こうした治安維持法などの政治的な治安立法による犠牲者及び遺族の恩給の受給権について、戦後どのような回復を図ったのか、まずこの点を伺います。
  28. 和田善一

    和田政府委員 治安維持法だけに限りませんで、一般に禁錮以上の刑に処せられまして恩給を受ける権利または資格を失った者につきましては、その処せられた刑が三年以下、昭和二十二年五月二日以前の者にありましては二年以下ということでございますが、三年以下あるいは二年以下の懲役または禁錮の刑でありまして、かつ恩赦または執行猶予期間の経過による刑の言い渡しの効力が失われたとされた者に限りまして、昭和三十七年十月から年金たる恩給を受ける権利または資格を回復させております。
  29. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 二年または三年、時期によって違うわけですけれども、これを超える刑に処せられた治安維持法の犠牲者の受給権、これはそうすると回復されていないわけですか。
  30. 和田善一

    和田政府委員 そのとおりでございます。
  31. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 治安維持法などの政治的な治安立法による犠牲者をほかの刑法犯と同様に扱っているということですが、治安維持法が戦後廃止されまして、そして刑罰を受けた人につきましては、政治犯人の資格回復に関する件で刑の言い渡しがなかったものとみなす、こういうように判決原本に書き込まれるということで扱ってきたと思うのですけれども治安維持法は廃止され、そうした処置がとられたけれども、結局、恩給受給権の消滅した人、二年または三年以上の人、そうした人に対しては消滅したままにしているわけですか。
  32. 和田善一

    和田政府委員 恩給と申しますものは、公務員が長年忠実に勤務したという観点から恩給を差し上げる、専らそういう観点からでございまして、したがいまして、治安維持法で勤務できなくなった、あるいは失権したという方だけを取り上げて恩給法で処置をするということは、制度趣旨から考えられません。一般的に執行猶予がつくような、戦前は二年、戦後は三年以下の刑に処せられまして、執行猶予期間を終わって言い渡しの効力がなくなる、あるいは恩赦を受けるというような方につきましては、軽い刑だということで、その刑の、あるいは適用された罰条の価値を評価するのではなくて、一般的にこれは復権させております。とにかく恩給の本旨というものが、長年忠実に勤務した公務員に支給するという観点からの措置でございます。治安維持法がよかった、悪かったというような価値判断を恩給としてすることが適当であるとは思っておりません。
  33. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 治安維持法というのが戦後廃止されたということ、その廃止に基づいて刑事罰はなかったことにされたということ、しかもそうした扱いをしなければならないような法律、それによって刑事罰を戦前に受けた人、こうした人たちは本当に弾圧であり、最大の犠牲者であったと見なければならないと思うわけです。この復権という形が戦後とられたということにあわせて、例えば大学の教授であるとかあるいは公務員であるとか——もちろん公務員ですけれども、そうした人たちに対して、結局は長年勤務しようと思ったけれども、戦後廃止されなければならないような法律によって在職期間を奪われたという人たちに対しては、この恩給法趣旨局長のような解釈に従うのではなくて、やはり実態を調査して、恩給権が生じるような方向で検討さるべきであると考えますが、いかがですか。
  34. 中西一郎

    中西国務大臣 おわかりいただきたいのですが、恩給局長が言いましたように、恩給法というのは恩給の年限に通算される勤務をしたという結果を尊重してできた制度である、したがって、原因いかんにかかわらず勤務できなかったという分は通算しがたいという制度として出発しておりますので、その分はやむを得ないのではないかと思います。
  35. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 やむを得ないという考え方のようですけれども、戦後の民主主義の原点に立って考えてみた場合に、要するに法律自身は廃止して復権をさせた、そういうことをしなければならないようなものであったということから考えてみれば、恩給権をその分消滅させたということについては、今日、民主主義の観点から本格的に検討しなければならない問題であるということを申し上げておきます。  次に、公務員関係の問題について二、三伺いたいと思います。  来年の三月三十一日施行の定年制ですが、その運用に当たりまして職員団体や公務員労働者から、ぜひ自分たち意見を反映してほしいという要請があります。当委員会でも、九十四国会で定年制導入について論議されております。その中で、当時の鈴木総理は、定年制の運用について、「職員団体の意見等も十分聴取いたしまして、円滑、適正な運営を図ってまいりたい、」あるいは「関係職員団体の意見を十分尊重してまいる所存でございます。」こういう答弁をされております。また附帯決議の方を見てみますと、定年による退職の特例の八十一条の三と定年退職者の再任用の八十一条の四、この運用に当たっては、「勤務実績および関係職員団体の意見を反映する等運用の公正を確保するものとする。」こう明記しております。政府答弁でもまた附帯決議でも、職員団体との関係を重視し強調しておられるわけです。それにもかかわらず、いよいよ実施というこの時期においてなお職員団体が意見の反映を強く求めているということは、当局側に不十分な点があるのではないかと考えざるを得ないのですが、総理答弁からも、また附帯決議からいっても職員団体の意見を反映することは当然であります。こうしたことを踏まえまして、この点での人事院総裁の御見解を求めたいと思います。
  36. 内海倫

    内海政府委員 定年制の実施に際しまして、国家公務員法の一部改正の際にも今御質問にございましたように、その運用等につきまして職員団体の意見を聴取するということも当委員会附帯決議で定められておるところであります。人事院におきましてもそのような附帯決議趣旨に従って関係職員団体の意見を聴取もいたしておりまするし、さらに今後もただいま申し上げましたような附帯決議あるいは法律趣旨にのっとって基本的な姿勢をとりつつ処置をしてまいりたい、このように考えております。
  37. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 次に、定年問題とも関連しますが、行政(二)表の適用職員のいわゆる部下数制限の問題についてお尋ねします。  部下数制限というのは行(二)一等級に昇格する条件に一定数の部下が必要とされていることを言います。ところが、政府の大幅な一律定員削減によって行(二)職員の新規採用というものがほとんどないために部下がいないというのが実態であります。  例えば、これは第一港湾建設局に所属する五十四歳の行(二)職員の実例です。これを見ますと、この人は二等級の枠外の本俸二十二万六千四百円だそうです。民間委託によって二十数年間新規採用がない。そのために一等級に昇格できないというだけではなくて、定昇も一年半とか二年に一回程度だそうです。これは本人の努力が足りないということではなくて、政府の定員削減によって行(二)職員が二重三重の犠牲を強いられるという実態を示すものであると思います。特に最近大幅定員削減があるわけですから、これによってこうした事例は激増しております。この矛盾を解消するには、標準職務表の部下数制限の撤廃が抜本的改善になるわけですが、当面この行(二)職員の実態に即してその運用を弾力的に行うべきだと思いますけれども、この点についてお伺いします。
  38. 斧誠之助

    ○斧政府委員 行政(二)表の上位等級につきましては、今先生言われましたように、部下数というものが格付の一つの基準になっております。これは標準職務でそういう設定をしておりますので、それに従って我が方は格付を行っておるわけでありますが、この標準職務というのは実は官民比較を行います場合の基準となっております。したがいまして、これを変更するということになりますと、官民比較をどういう手法で行うかという新たな問題が発生することになりまして、なかなか困難であろうと考えております。  しかし、今先生がおっしゃいましたように、この行(二)職員はここのところずっと減ってきております。したがって、部下数という基準でいきますとなかなか上位等級に上がれないという現象があるわけですが、我々はそういう場合に、部下数が減ったことによる職務の変化、新しい技能、技術の導入もありましょうし、それから組織の業務に対する対応の仕方もありましょうし、そういうことによる職務の変化というものをずっと見ております。したがいまして、そういう関係で運用上認め得るものというものは現在でも相当な配慮をしておるつもりでございますが、そこら辺の職務の変化ということにつきましては、今後も十分注目しながら運用していきたい、こういうふうに考えております。
  39. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 労働省の方に伺いますが、職業安定所の職業相談員の問題です。職業相談員は全国に千五百八十二人になっておりまして、その業務は常勤の職員と変わらず、職安行政の一端を担っております。相談員がいなくなりますと職安行政は支障を来すという比重を占めているからです。それにもかかわらず、月十五日勤務であって、業務委託だからということで政管健保が適用されておりません。月十五日勤務は予算の関係で一方的に制限されているものであって、業務委託も常勤職員も同じ仕事をしておって、こちらを業務委託だと言うならばむしろ全職員が業務委託ということになってしまうような状況です。これは全く理屈の通らない言い分であります。相談員に出される謝金という日当も一日わずかに三千六百七十円、一時間当たりにすれば四百五十八円、専門的知識を必要とされる職業相談員にしてはこれは余りにも低い水準であるというように思います。私は、職業相談員の健保の適用と謝金の改善に労働省が特別な努力を払うべきだ、現在その必要がある、こういうように考えますが、この見解を伺います。
  40. 岡山茂

    ○岡山説明員 御説明申し上げます。  ただいまお尋ねございました職業相談員の制度につきましては、民間の有識者等に対しまして、安定所におきます各種の職業相談といったような業務をお願いをいたしまして、それに対しまして謝金を支払いをしておる制度でございます。制度的には国と職業相談員との関係につきましては、業務の委託という関係になっておるわけでございます。  先生のお尋ねにございましたように職業相談員を社会保険等に加入させ得るかどうかといった点につきましては、労働省としても検討した経緯はございますけれども、ただいま申し上げましたように、職業相談員と国との関係というのは委託関係であるといったようなことから雇用関係を前提といたします保険の制度になかなかなじみにくいといった難しい問題があるわけでございますので、ひとつ御了解をいただきたいと思っております。  それから、なお相談員の謝金の点につきましては、できるだけ向上を図っていくように努力を引き続き続けさせていただきたいと思っております。
  41. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 これは労働省の方に聞きますと、そういう面についても検討し、要求もしてきたというように聞いているわけですけれども、健保の適用、謝金の引き上げ、これは退職をする人にとってもまた現実に相談にあずかっている人にとっても非常に重大な問題であり、要求の強い問題でありますから、なお積極的に実現ができるような努力をしていただきたいということを申し上げておきます。  それから次に、日本学士院会員を特別職の国家公務員とし、それから日本芸術院会員を一般職の国家公務員としている問題についてお尋ねいたします。  日本学士院は文部省本省の附属機関で、会員には非常勤職員の給与は支給されないのですが、四半期ごとに年金が支給されております。一方、日本芸術院は文部省の外局である文化庁の附属機関で、会員には非常勤職員の給与は支給されていませんが、四半期ごとに年金が支給されております。この点から見ますと、給与年金などの処遇条件について学士院会員と芸術院会員との間には差異がないわけです。それでありながらなぜ学士院会員と芸術院会員を分けているかということを調べてみますと、学士院会員が特別職とされているのは、かつて学士院会員が日本学術会議の一機構とされて、会員に就任するに当たって選挙によるということを必要としていたことによるものであって、芸術院会員の方が一般職とされているのは、その就任について文部大臣の任命行為が伴うためで、両者を特別職と一般職とに区別している理由を強いて挙げるとすれば、就任についての手続が経過的に若干違うということだけだろうと思います。このように考えていますが、これ以外に理由があるでしょうか。
  42. 服部健三

    ○服部政府委員 国家公務員はすべて一般職と特別職とに分けられておりますが、ただいま先生御指摘のように、芸術院会員につきましては一般職、それから学士院会員につきましては特別職となっておるわけでございます。  先生も御承知のように、一般職につきましては、国家公務員法で任用、給与、服務の諸規定を決めておりまして、これを適用されている者を一般職といたしまして、それ以外の者につきましては国家公務員法の二条第三項の各号に列記してそれぞれの官職等を示しているわけでございますが、これらの官職につきましては三つほどグループがございまして、一つは、就任に当たりまして選挙であるとかあるいは国会の御同意もしくは御承認をいただいてその官職につくというグループ、いま一つは、三権分立の建前から、例えば国会職員であるとかあるいは裁判官あるいは裁判所の職員というような方を特別職にしている。それからもう一つ、一般職の職員になじまない、任用、服務あるいは給与の問題等で別扱いをすることが適当であろうと思われる者、つまり防衛庁の職員のような方を特別職としているというようなことで、特別職につきましては一般職以外のすべての方をそういった形で包含しております。  それで、ただいま先生が御指摘になりましたように、芸術院会員につきましては、その任命の手続、つまりそれが一般職と同様であろうかと考えられまして、そして学士院会員とは若干違う、学士院会員につきましては学士院自体がそれを任命するというようなことに着目して、一般職並びに特別職ということで官職が分類されているのではなかろうかというふうに理解いたしております。
  43. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 随分長い答弁ですが、結局は就任手続に違いがあるということだけのようです。就任手続は違っているわけです。ところが実態的にはほとんど差がない。就任手続の違いで両者を特別職と一般職とに区分する合理的理由とすることが今日においても妥当かどうか、国家公務員を特別職と一般職とに区分する権限を持っておられる人事院の見解を伺いたいと思います。今日、それだけのことで学士院会員と芸術院会員を区別することが妥当かどうか、どのように考えておられるか伺います。
  44. 服部健三

    ○服部政府委員 先生御指摘のように、確かに明確に一般職と特別職を分けるということは、なかなかこれだという決め手は確かに余りございません。しかし、この一般職と特別職につきましては、もう国家公務員法が制定されて以来三十年の経過を経ましてそれなりに制度的には定着しているのではなかろうかと思いますので、この人事管理上の観点からの一般職並びに特別職という分類と、それから先ほど先生がおっしゃいました芸術院会員であるとかあるいは学士院会員である、そういった従来の経緯等を踏まえながらそれらの職については一般職、特別職ということで決められておりますので、これらの問題については、そういうことで従来の経緯を踏まえて現在のような状態になったのではなかろうかと思っております。
  45. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 だから、そういうことでなっているけれども、そういう経過があったにしても、この同じような立場の会員を区別する理由が今日あるかどうかということを聞いているわけです。処遇の条件や就任手続が実態的にほとんど同じであるにもかかわらず、服務規律について両者は全く違った扱いを受けております。この差別というのは結局、特別職と一般職に分ける、ここに起因しております。学士院会員の場合は、特別職であるために、国家公務員法の規定が適用せられるまでの官吏その他政府職員の任免等に関する法律、この規定によって、服務は明治二十年の勅令、官吏服務紀律で規律されて、その規制は、政治的活動を制約されない比較的緩やかな規制になっております。これに対して芸術院会員の場合は、一般職であるために、国公法とこれに基づく政治行為に関する人事院規則一四—七などによって各種の政治的行為を禁止されるというような厳しい制約を受けているわけです。こうした規制の差別が出てくる、そういう根源になっているのが就任手続の形式的違いだけを理由としたものであって、これが妥当かどうかということを私は聞いているわけです。だから言いかえれば、結局学士院会員と芸術院会員とを、一方は特別職、一方は一般職とに区別している現状は、今日の時点において見直すべきではないか、戦後三十年たっておりますから、こういう区別をする必要がなおあるのかどうか、改めて検討してみる必要があると思うのですが、再度答弁を求めます。
  46. 内海倫

    内海政府委員 特別職と一般職の関係につきましての御意見、私ども十分承りましたが、ただいま政府委員からも答弁いたしましたように、それなりにいろいろ長い検討を加えて定着してまいっておりますものでございますし、といってまた、個々別々に見ますと、いろいろとおっしゃるような問題もほかの分野にもあるわけでございまして、私どもとしましては、今直ちに御意見のように変更するというふうなことは考えがたいのでございます。しかし、同時に、長い期間の問題ですから、今後も十分勉強はいたしていきたいというふうに考えます。
  47. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 時間が参りましたが、この問題は、私が申し上げましたように、芸術院会員と学士院会員ということに限ってみれば、これを特別職と一般職に分ける合理的な理由は現在見当たらないと思うわけです。そういう意味で、総裁、勉強されるということでありますけれども、これはぜひ検討していただきたい、このことを申し上げます。そして、法律改正ということになれば大変なことになるわけですけれども、この問題は人事院規則の改正ということで、この二つに限って言えば可能であるというように考えますので、十分検討され早急に結論を出されて、ぜひ同じような扱いの方向で、特別職として扱うようにということを申し上げまして、質問を終わります。
  48. 片岡清一

    片岡委員長 月原茂皓君。
  49. 月原茂皓

    ○月原委員 自由民主党の月原でございます。ただいまから恩給の問題について若干政府の見解をお尋ねしたいと思います。初めての質問ですし、余り要領もよくないかもしれませんが、私を通じて国民一人一人にわかるように答えていただきたい、そういう精神でひとつよろしくお願いいたします。  まず、五十九年度恩給改善で特に力を入れた点を御説明願いたいと思います。  さらに具体的に申しますと、三月実施あるいは八月実施の点がある、そういうところについて政策的にどのように配慮したのかということ。それから、五十二年から今までずっと四月実施でございました。五十七年度は五月実施があったようでございますが、今回三月から実施しておる、そういうところの考え方を御説明願いたいと思います。
  50. 和田善一

    和田政府委員 五十九年度改善の基本的なポイントを申し上げます。  まず、経済事情変動に伴いまして年金恩給実質価値維持するためのベースアップを三月から実施いたしました。三月にさかのぼりました理由は、前年度恩給ベースアップが全くございませんでしたので、そういう特殊事情を配慮いたしまして、特に三月という前年度までさかのぼらせて実施したというのが一つのポイントでございます。  次に、戦没者の遺族に支給いたします公務扶助料あるいは傷病者の恩給改善しまして、これらの方々に対する処遇の一層の充実を図る、通常の二%のベースアップ率以上に高い率をもちましてこれらの恩給改定した次第でございます。  次に、普通恩給あるいは普通扶助料最低保障額改善等、経済的に弱い立場にある方々の恩給改善するという点にも力を注ぎました。  以上のような点が改善のポイントでございます。
  51. 月原茂皓

    ○月原委員 今御説明になった中に十分反映されておるとは思いますが、五十八年度予算編成の際に、総務長官と大蔵大臣の了解事項と俗に言われておるものがあります。もちろんこれは表面に出ていることと裏のこともいろいろあるのかもしれませんが、今御説明された中にそういう点がどのように反映されておるのか。また、他にこういう点も反映したという点があったら、御説明願いたいと思います。
  52. 中西一郎

    中西国務大臣 五十八年度予算編成のときの大蔵大臣との了解事項についてでございます。その了解事項趣旨を踏まえまして、五十九年度予算に当たって公務員給与改善二%というのを基礎としてベースアップを行ったということが一点でございます。  それから、その実施時期につきましては、今恩給局長が答えましたが、従来は四月実施でございましたが、五十七年、八年の経過を踏まえて考えると、四月実施を一カ月繰り上げた方がいいのではないかという配慮をしたということでございます。
  53. 月原茂皓

    ○月原委員 三月実施というのは今までから大変大きく前進をしたことだと高く評価するものであります。  そこで附帯決議の問題ですが、「同時期に一体化して実施するよう努めること。」という附帯決議が、衆議院、参議院において五十八年四月及び五月に行われているわけでございますが、この点についてはどのようにお考えでしょうか。
  54. 和田善一

    和田政府委員 昭和五十九年度におきましては、実施時期を、ベースアップにつきましては今申し上げたとおり三月、その他の改善につきましては八月及び十月というふうに分けました。この八月、十月も、同じような時期にすべて一本化すれば事務処理の簡便化というような観点からも望ましいとは思うわけでございます。また、そういうふうに努力いたしているわけでございますが、何分にも極めて厳しい財政事情等種々の制約のもとでできるだけの改善の中身を実現したいということでございますので、これらの点を総合的に勘案いたしまして、実施時期を全部前の方に合わすことはできなかったという次第でございます。
  55. 月原茂皓

    ○月原委員 ここでそもそも恩給問題の原則に返るわけでございますが、今よく地方で聞かれるのは、間違って生活扶助の対象と恩給という問題を一緒にしておるような議論がよく行われておるわけでございますが、この問題に取り組むについて、政府としては、恩給とその他の社会保障、保険、そのようなものとをどのように違うとお考えになっておるでしょうか。
  56. 和田善一

    和田政府委員 恩給の意義ないし性格、本質と申しますものを私どもが考えておりますのは、恩給というものは、公務員が長年忠実に勤務した場合あるいは公務による傷病、代表的なものは戦傷でございますが、公務による傷病のために後遺症が残った、あるいは公務のために亡くなられたというような場合におきまして、国がその公務員との特殊な関係に基づきまして、使用者としてその公務員またはその御遺族のために給付をするというものでございまして、公務員の退職または死亡後における生活の支えとなるものであるというふうに考えております。したがいまして、一般の拠出金で、保険数理の原則に基づきまして支払われる社会保険あるいは公的扶助、資産その他あらゆるものを活用しましてもなお生活に困窮する国民に対しまして最低生活保障するという公的扶助とは、これはその考え方におきまして基本的な相違があるというふうに考えております。  このように、恩給の性格はこれらとは基本的に異なっておりますが、種々の具体的な問題につきましては、基本的な性格の相違は踏まえつつも社会保障的な考え方も随時取り入れていくということは、今までにもしてきておるところでございます。
  57. 月原茂皓

    ○月原委員 今のお話考え方は十分わかりました。要するに、ただ単に生活に困っておるから助けるのだというような精神ではないのだということを強調されたと受けとめております。  次に、いろいろ公的年金制度の一元化が行われておるので、恩給も一緒になるのじゃなかろうかというような不安と申しますか、そういう議論がありますが、それについてはどのようにお考えでしょうか。
  58. 和田善一

    和田政府委員 先生御指摘のように、臨調答申及び行革大綱等に基づきまして公的年金の統合一元化が進められてまいっております。現に、それに関する法案も国会に提出されております。  しかしながら恩給というものは、ただいま先生の御質問によりまして御答弁いたしましたとおりの性格のものでございますので、社会保険である公的年金とは本質的に違うということでございますので、公的年金の一元化の中に恩給も取り込まれて一元化してしまうということはしないという考えでおります。しかしながら、年金と類似の制度でございますので、公的年金の改革との間に余りアンバランスであってはいけない。したがいまして、合理的なバランスを図ることは必要であると考えておりますので、そういう面からの検討はいたすつもりであります。
  59. 月原茂皓

    ○月原委員 今度総務庁に一本化されるということで恩給行政そのものに影響があるのじゃなかろうかというようなことを不安がっておる人も大分出てきているようでございますが、その点についてお答え願いたいと思います。
  60. 中西一郎

    中西国務大臣 そういう御心配が一部にあるかもしれませんが、これは歴史の古い制度でございますし、そのできた経緯などから考えますと、今までやってきた政府の施策はこれからも続けなければならない、総務庁になったからといって予算編成に当たって違った観点で措置するというようなことがあるとこれは大変なことになりますので、そのところは心配がないように対処していかなければならない。また、政府全体としてもそのつもりでおるということは申し上げて間違いではないと思います。
  61. 月原茂皓

    ○月原委員 ひとつその点、不安のないようにお願いいたします。  次に、少し細かい話になります。今までの方々と重複する点があるかとも思いますが、簡単に御答弁願えれば幸いです。中シナで戦時中勤務された方々の戦時加算という問題でいろいろ陳情が出ておるのは御承知のことと思いますが、この点一つだけ、中シナの問題に絞って、戦時加算について現在どういうふうに考えておられるか、お答え願いたいと思います。
  62. 和田善一

    和田政府委員 戦時加算というものは、その枠組みが戦前から恩給法におきましてきめ細かく決められておりました。すなわち、加算の程度でございますとか加算の認められる期間、加算の認められる地域等でございますが、これらはきめ細かく勅裁に定めまして内閣告示で決まっておりました。その内容は、当時の戦時事変の状況を最もよく具体的に把握しております陸海軍省が判断いたしまして、その判断に基づきまして検討の上決めたものでございますので、これを中シナの問題につきましても変えるということは、今申し上げましたような制度の基本等を考えまして、また他との均衡という点から考えましても適当ではないというふうに現在考えている次第でございます。
  63. 月原茂皓

    ○月原委員 次に、厚生年金あるいは国民年金について、公務員共済と同様に軍人の軍歴年数を合算してもらいたいというのがいろいろなところから出ておりますが、それについてはどのようにお考えでしょうか。
  64. 山口剛彦

    ○山口説明員 先生御指摘の御要請がありますことは私どもも十分承知をいたしております。  これにつきましては、先ほども恩給制度社会保険制度の違いという御議論もございましたけれども、厚生年金国民年金は一般的な社会保障制度でございますし、また、社会保険のシステムをとっておりますので、一定の拠出をしていただいてそれに応じた給付をすることを原則にいたしておりますので、軍歴の期間を厚生年金国民年金の中で特別に配慮するということにつきましては、年金制度としては大変困難であると私どもは考えております。また、この問題につきましては、総務長官の委嘱で研究をされました報告書におきましても、私ども考え方とほぼ同様の観点から、厚生年金国民年金に軍歴期間を通算することは適当でないという御報告をいただいておりますので、これは御理解いただきたいと思います。
  65. 月原茂皓

    ○月原委員 政府側の答弁としてはそういうことが一つの有力な答弁だとは思いますし、百点に近い答弁かもしれませんが、現に戦地に行った人にとってみたら、もしそれならばその額は政府が埋めてくれたっていいじゃないか、拠出したことにしてくれてもいいじゃないかという発想もあり得るということは念頭に置いて、今後もいろいろ判断していただきたいと思うわけでございます。これは答弁は要りません。  次に、従軍看護婦の問題は、今いろいろありまして引き続き検討するという答弁がございましたので、私からこれ以上の質問はいたしません。  次に、シベリア抑留者の問題でございます。  おさらいみたいになって恐縮でございますが、抑留者が何人ぐらいおるのだ、死亡者は今までどのくらいおるのだ、また引き揚げの状況はどうだということを、現在の時点で把握されていることを御説明願いたいと思います。
  66. 石井清

    ○石井説明員 お答えいたします。  ソ連本土に抑留された者の概況は次のとおりでございます。  抑留者総数は約五十七万五千名、帰還者数約四十七万三千名、死亡推定者数五万五千名、このほか、一応入ソはいたしましたが病気等のために満州または北朝鮮またはもとに逆送した者が一応四万七千名となっております。
  67. 月原茂皓

    ○月原委員 これは今いろいろ検討されておるところだとは思いますが、抑留されていた方に絞って考えて、この方々について加算と申しますかこういうことは、今の加算のような考え方はわかるのですけれども、特にこれは労働した者に対して政府が、本来ならソ連の方が払わぬといかぬのかもしれません、支給すべきだと思いますが、我が国が放棄した。ドイツの方においては法律までつくってそういう問題について処理したというふうにも聞いておりますが、とにかくそういう者に対して何か報いるということを今お考えでしょうか。
  68. 禿河徹映

    禿河政府委員 戦後、シベリアに強制抑留されました方、現地におきまして強制労働、酷寒の地で強制労働ということで大変お気の毒な立場に立たされたわけでございますが、これに対しましてこれまで政府が講じてまいりました措置といたしましては、恩給法並びに戦傷病者戦没者遺族等援護法によります援護のほかに、恩給法の上におきまして抑留期間を一月について倍にするという加算制度、これをもって対応してきたわけでございます。  一応政府としてはそういうことで、戦後できるだけの措置を講じてきたということでこれまで推移してきたわけでございますが、御承知のとおり、今のシベリア抑留者の問題、さらに在外財産の問題、それからいわゆる恩給の欠格者の問題、この三つの問題を中心といたしまして、やはりなお一部の方から大変強い御要望が出てきておるということを踏まえまして、民間の有識者によりますところの総務長官の私的諮問機関と申しますか、戦後処理問題懇談会というものを一昨年の六月の末から開催をいたしまして、そういう三つの問題を中心に、そもそも基本的に戦後処理問題というものについてどう考えていけばいいのかということについていろいろ今御検討をちょうだいをいたしておるところでございます。恐らくこの夏ごろには御意見がちょうだいできるのではなかろうかと私ども期待いたしております。その御意見が出ました場合に、政府といたしましてはこれにどう対応するかということを検討いたすことに相なろう、かように考えております。
  69. 月原茂皓

    ○月原委員 ちょっと前後して恐縮でございますが、今の、シベリアに抑留された方々については加算、二月というようにされたということでございますが、これは旧陸海軍が決めたわけじゃないと思うのですね。そうすると、考え方として、ここで三月というのが今までほかの加算としては最高ではございますが、非常に多くある。それについてはそこらまでならいいじゃないかというような考え方もあり得ると思うのですが、ここでそうだという答弁をお願いしておるわけではございませんが、そういう点は幅があるのじゃないか、このように思うのですが、どうでしょうか。
  70. 和田善一

    和田政府委員 抑留加算の制度昭和四十年の法律改正で取り入れたものでございます。当時シベリア抑留者の実態、大変お気の毒な実態であったということを踏まえまして、また、シベリア以外のいろいろな外地での抑留、そのような実態も踏まえましてそれらを総合勘案いたしまして、四十年の時点で、新たな加算制度を設けることの是非、設けるとしたらどの程度の加算とすべきかということを種々検討いたしまして、恩給制度上の特例的な措置といたしまして辺陬・不健康地域加算年というのが従前からございまして、一月以内、実際には三分の二月程度の加算でございますが、そういうようなものも勘案いたしまして抑留期間の一月につき一月の割り増し措置を講ずる、これが適当であるという結論に当時達したわけでございます。現時点におきましてその結論を特に変更しなければならないという新たな理由も、今のところないというふうに私どもは考えている次第でございます。
  71. 月原茂皓

    ○月原委員 今戦後処理の問題について答弁していただきましたが、近く結論が出る、この懇談会の性格と申しますか、それと、それから次に、この出た答申について総務長官はどのように対処されようとしておるのか、その点をお伺いしたいと思います。
  72. 禿河徹映

    禿河政府委員 この懇談会の御意見が出ましたときの対応につきましては後ほど総務長官から御答弁があるかと思いますが、その前段のこの懇談会の性格はどういうものかということについてお答えいたしたいと存じます。  この懇談会は、先ほども申し上げましたとおり、総務長官のいわば私的諮問機関ということで、一昨年の六月末に第一回の開催を見たところでございます。法律的なことで大変恐縮でございますが、そういう私的な懇談会ということでございますので、国家行政組織法上の組織、通常審議会等、第八条機関と言っておりますが、そういうものではございませんが、先ほど申し上げましたような経緯を踏まえまして、ここで民間有識者によるところの公正中立な御意見を伺おうということでこの懇談会が開催をされて、現在まで二十二回の開催を見ておる、こういうところでございます。
  73. 月原茂皓

    ○月原委員 ちょっと、総務長官答弁していただく前に、この戦後処理の問題で、非常に大きな問題で今全国的な大変な広がりを持っておるのが軍人軍属の恩給欠格者連盟、これはいろいろな団体があるようですが、結論は、欠格、もうちょっと資格が足らぬという人間、同じように国のためにやったのじゃないか、だから何とかしてくれ、そういう声が非常に大きくなっておるのですが、この問題については、答申がどうなるかということは先の話ですが、現在のところどういうふうに進んでおるのでしょうか。
  74. 禿河徹映

    禿河政府委員 恩給欠格者の問題につきまして、恩給法上のいろいろの問題につきましては恩給局の方からこれまで御答弁もあり、また必要があれば追加的な御答弁があるかと存じますが、戦後処理問題懇談会におきまして、シベリア抑留者の問題と在外財産の問題とあわせましていわゆる恩給欠格者の問題、これを現在いろいろ御検討をいただいておるところでございます。年金の通算とかいう問題もございますから、これは先ほど厚生省の方から御答弁があったとおりでもございます。大変難しい問題でありますだけに、この三つの問題を中心に現在懇談会におきまして自由討議という形で意見の交換が行われておるところでございまして、これにつきましても、シベリア抑留者の問題等々とあわせましてこの夏ぐらいまでには御意見がちょうだいできるのではなかろうかと考えておる次第でございます。
  75. 月原茂皓

    ○月原委員 なかなか内容がわからないわけで、それはまたそういうことかもしれませんが、しかし、何はともあれ、私的諮問機関であるけれども、結論が出る、答申が出る。そしてまた、今言ったように、そのころになると役所の統一もある。こういうところから、その答申について、結論はどういうことであるかは別として、どういう態度で政府は臨むのだということについて長官からお答え願いたいと思います。
  76. 中西一郎

    中西国務大臣 そのことにつきましては、私も総務長官になってほぼ半年でございますが、毎月大変な勉強をしていただいております。その前にも十数回やっていただいている。もうこの作業についての、何といいますか、真剣なお取り組みを見ていますと、また大変な御専門の方々でございまして、これは尊重せざるを得ないし、尊重するのが当然の私の責務ではないか、かように感じております。
  77. 月原茂皓

    ○月原委員 最後に、この種の問題、特に、戦地に行きあるいは戦場でいろいろな経験をされた方々、その遺族の方々に対する私の考え方を述べまして、私のその考え方に対する総務長官のお考えをお伺いして、質問を終わりたいと思います。  私が昔よく読んだ本の中に、「押し入れにふす母一人で歌いおり我が夫を送りしときの軍歌を」という、戦後の非常に苦しいときに母親が、恐らく一人息子さんが戦地に行ったのだと思う。そして戦死されたのだと思う。で、押し入れにしか自分の寝るところがない。そういうところで、母が一番楽しかったとき、息子を送ったその歌を口ずさみながらおるというその歌は、いまだに非常に強く私の胸を打つものがあるわけであります。進駐車の命令によって一時期空白時代が続いて、非常に苦しい生活をした人々が多いわけでございます。私は、大きな意味で言えば、戦後の精神の荒廃、現在いろいろ叫ばれておるのはそこから出てきておるのじゃないかとさえ思っているものでございます。そういうところから、この年金、むしろ恩給の問題については、現在受給しておる人がどうだとか、これから少し広げてどうだとか、そういう問題より以上に大切なことは、このことを通じて、国家、社会に尽くした者に対して国が正当に評価してそれに報いるのだという姿勢で取り組んでいただきたい、このように取り組むのが筋ではないか、このように思っているわけでございます。私のこの考え方に対する総務長官のお考え方をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  78. 中西一郎

    中西国務大臣 一言で言うのは大変難しいのですけれども、確かに、戦争に直面した多くの日本国民がいろいろな犠牲を強いられ、また、いろいろな苦難の道を歩んだ、そのことについては、お話しのような、何といいますか、涙なしには聞けない話もたくさんある。そういった経緯の中での戦後処理でございます。いろいろな検討も今まで行われてきております。結局は、財政でどうするのだというような話に集約されつつある。その答えをどう出すかということ、これは大変難しい。要するに精神的な問題に対する償いということと予算でどうするかということとのつながりもございます。また、戦地でいろいろ苦労された人もたくさんおられますが、内地で大変な爆撃の被害に遭って財産も失った、親兄弟も失ったという方もおられる。そういうことを考えますと、どこでどういうふうに線を引くのだというようなことも、これは私的懇談会ではございますが、委員皆さん方、大変苦慮しておられるところでございます。  いずれにしましても、夏までにはということになっていますが、もう少し推移を見ていただきたい。私が予断をもってどうだということは、とても今ここでは申し上げかねるものでございます。
  79. 月原茂皓

    ○月原委員 終わります。
  80. 片岡清一

    片岡委員長 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時四分休憩      ————◇—————     午後一時十一分開議
  81. 片岡清一

    片岡委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。渡部行雄君。
  82. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 きょうは実は三時間くらいみっちりやろうと思ったのですが、二時間半になりました。それで自分の思ったような順序でやれなくなりましたし、また参考人水上さんも大変お忙しいお体なようで、三十分しか時間はとれないとのことでございましたから、最初に参考人水上さんにお願いを申し上げたいと思います。  また、きょうは大変お忙しい中をわざわざおいでいただきまして本当にありがとうございました。心から感謝申し上げます。  そこで、第一点でございますが、水上参考人の戦後処理問題懇談会の中でどのような役割を担われておられますか、お聞かせ願いたいと思います。  なお、これからは戦後処理懇ということで略させていただきますから、よろしくお願いいたします。
  83. 水上達三

    水上参考人 御質問の戦後処理問題懇談会の中で私がどういうふうな役割を持っているかというお尋ねと理解しておりますが、常識的に言いまして、さきの大戦におきまして戦場で戦って死亡したりあるいは負傷したり病気になったりして、そういう軍人軍属はもちろんでございますが、シベリアに抑留されまして大変過酷な条件の中で強制労働に服せしめられたとか、また長い間そのために日本に帰れなかったとか、あるいはまた外地で長年築き上げた基盤を全く失いまして裸で日本に帰ってきたというふうな非常に惨めな方がたくさんおられたわけであります。しかし、国内におりましても家を焼かれたり、また親兄弟を失ったりして、大変多くの人たちがそれぞれの立場でかなりの犠牲を払っているものと考えておるのが私ども一般の考え方だと思います。  私自身も実は、私事にわたって大変恐縮でございますが、外地におりまして敗戦を迎えて家族を連れて引き揚げてきたということでございまして、たまたま私は一団の団長をしておりましてきたものですから、その中でまたいろいろな人がいろいろな労苦をしょっておられることも体験いたしました。  またさらに、私事にわたって恐縮でございますが、私は当時三井物産におりまして、三井物産は財閥の解体とは別に、三菱商事とともに解散を命ぜられまして、二十二年の七月でございますが、職場も全部失い、本当の裸で街頭にほうり出されたというふうなことでございます。そういうことで、今度の戦争のいろいろな悲惨な憂き目というものはかなりいろいろな立場から経験しておりまして、それに対する認識は十分持っているつもりでございます。  政府におきましても、戦争の損害につきましてはいろいろな立場からいろいろな検討もされ、その措置がそれぞれ講じられてきたところでございますが、また、これらに関しまして一部の関係者からさらにいろいろな要望の出されておることも事実であります。こうしたことから戦後処理問題懇談会が開かれることになりまして、私を含めて七人の委員にこの問題について意見を述べるように御依頼がございまして、私もそれに今せっかく従事しておる、そういうふうに理解しております。  この懇談会に出席している方々、それぞれ大変立派な識見を持っている方ばかりでございまして、御依頼のあった戦後処理問題につきましてはどういうふうに考えていくべきかというふうな問題について自由に意見を述べ合っているところであります。私といたしましてもこの懇談会におきましていわば会議の進行係というふうな役目を果たしていると考えておりまして、そのように努力しているところでございます。
  84. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 戦後処理懇の答申はいつごろお出しになるおつもりですか、お聞かせ願いたいと思います。
  85. 水上達三

    水上参考人 この検討期間につきましては、五十七年の六月、第一回の会合を開いたときに意見を交換した結果、少なくとも二年ぐらいはかかるのじゃないかというふうな大方の委員意見でもありまして、一応ことしの夏ごろをめどに意見交換の結果を御報告したいと考えておるところでございます。できるだけ早く結論を出したいというふうには考えております。それからまた、そういう要望があることも承知しておりますが、そういう点を踏まえながら現在精力的に意見の交換をしておりまして、既に二十二回の会議が重ねられておるところでございます。
  86. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 この答申案をつくるまで、それぞれの関係諸団体から事情を聴取されたものと思いますが、これは関係諸団体全部もう終わられたのでしょうか。
  87. 水上達三

    水上参考人 戦後処理問題を検討するに当たりましては、その問題の内容はもちろん、こうした問題が出てきた社会的な背景も十分理解する必要があるということから、懇談会に寄せられます多数の要望書、意見書、陳情書のようなものを通じまして、そういうものの内容、背景などを努めて把握するようにしておりますが、直接関係の民間団体からも意見を聴取する機会を設ける方がよいだろうということで、関係者の要望を十分把握するためにいろいろな努力を払ってきております。ただ、懇談会に対して要望を行っておる団体は御承知のように大変多うございまして、多数の団体から、それぞれの立場からいろいろな要望、陳情などが行われているわけでございます。私どもの限られた時間内でこういうものを全部対象として取り上げるということはなかなか困難でございます。しかし、その中の幾つかの団体から直接要望をお聞きする方がよいだろうというふうな考え方でヒアリングをすることにいたしました。
  88. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そこで、確かに数多い団体が押し寄せてきていると思いますが、聞くところによりますと、かつて内閣委員会の中に恩給等小委員会を設置してこの種問題を討議したことがあったわけですが、その際、関係諸団体をお呼び申し上げていろいろな事情聴取をしたことがあるわけです。しかし、この戦後処理懇の中では、そこに呼ばれる団体の中でまだ呼ばれていない団体があると承っております。いやしくも正式の政府機関がお呼びする団体くらいは公平に、手落ちのないように取り扱っていただきたいというのが私のお願いであります。こういう利害関係の絡んだ問題というのは、その取り扱い方いかんによっては大変な問題にまで発展する可能性が秘められておりますので、この問題を本当に国民の納得いくような結論として導き出すためには、まずこれらの関係諸団体が、よく私の意見を聞いてくれた、そういう一つの感動というか、そういうものを持ってこの戦後処理懇を迎えられるようにしていただきたいと思います。もとより水上参考人は非常に御理解の深い方だと承っております。もちろん公正無私にやられるものと確信いたします。  そこで、いまだ呼ばれていない団体はそれではどの団体かとお思いでございましょうが、これは会費完納会員が六万二千人、機関誌購読者が十万人を数えるという全国抑留者補償協議会の代表についてであります。大変立派な機関誌活動といろいろ教育活動などをやっておられますので、ぜひひとつお呼びになって、こういう観点からも当時の捕虜の実態、そして今日本におる抑留者の感情というものを正確につかんでいただきたいと思いますが、いかがなものでございましょうか。
  89. 水上達三

    水上参考人 御意見は承りましたけれども、どういう団体を呼ぼうかということにつきましては、私どもも、先ほど申し上げたように限られた時間でどういうふうにやったらば効率的であり、かつ公平中立を守れるかというふうな点もいろいろ配慮いたしましてやったつもりでありますが、おっしゃるのは、シベリア抑留者の団体として二つ団体がございます。そのうちの一つしか呼ばなかったわけでありますが、その点についての御意見だと理解しておりますが、そうだといたしますと、そのうちの一つの団体は問題の解決を訴訟によって図ろう、そういうお考えで行政訴訟をされておるというふうに承知いたしましたので、むしろこの方は避けまして、別の団体の方がよかろうということだったと記憶しております。  もちろん、これは私の意見だけじゃなく委員全体の意見がそういうことであったわけでありますが、ただ、昨年の末まで一応ヒアリングは終えたことにしておるわけでございます。今は、せっかく報告をつくる方向に向かって意見の交換を行っているところでありますが、今いろいろなほかの団体を呼ぼうという予定は持っておりません。おりませんですが、もし意見交換を進める過程でどうしても必要ではないかという大方の委員意見であれば、その場合にどういうふうにするかということは今後の問題だ、こういうふうに考えております。     〔委員長退席、池田(行)委員長代理着席〕
  90. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 一方の団体は訴訟に訴えておるからこれは除外しようというお考えのようでございますが、法治国家において、自分の要求が正しいかどうか、そして現在捕虜の地位が法的にはどうなっているかということを明らかにする上では訴訟しかないわけです。この当然の訴訟をしたからということで、二つに分かれている団体の一方だけを呼ぶということはこの対立にさらに火に油を注ぐようなものであろうと私は思うわけであります。  そういう訴訟は別の問題として、同じシベリアで苦労をした、そしてその過酷な労働に服したそういう人たちが、今一体何を政府に求めているのか、何を社会に訴えていこうとしておるのか、こういうことを私情を抜きにして聞く必要があろうかと私は思うわけです。そうでないと、恐らく水上参考人も若いころ経験したことがあろうかと思いますが、だれかとけんかをしておるときに一方だけに声をかけられたり何かすると、その人に敵意を持たない人までも敵意を持つようなことに発展するわけです。ですから、これほど重大な補償問題でありますので、この訴訟云々は別といたしまして、ぜひ公平に取り扱っていただきたい。これは抑留者団体だけが分裂しておるのではありません。ほかの軍人恩給欠格者の団体もあるいは在外財産の補償問題の団体もそれぞれいろいろな対立があることも事実であります。しかし、そういうものは両方呼んで、この抑留者団体だけを片方しか呼ばないとなると、これはやがて取り返しのつかない片手落ちの処置として残るのじゃなかろうか、私はこういうふうに心配いたしますので、ここで改めて座長さんである水上参考人に、一方の全国抑留者補償協議会の代表をぜひ呼んで事情聴取をしていただきたいと思います。
  91. 水上達三

    水上参考人 御意見のほどはよく承りました。そういうことになるかならないかは今ここで何とも申し上げかねますけれども、私どもといたしましては、よく御理解願いたいのは、そういう行政訴訟ということで補償を要求されている、国に対して償いを要求されているということですから、せっかくそういうことをやっておられるのだから、その結果を見守ろうというふうなこともございまして、むしろそこは遠慮申し上げたということでございます。しかし、今渡部委員のおっしゃるように、この戦後処理懇談会というものを大変重く見ていらっしゃるなら、私もそういう点を委員の方々に御披露いたしまして、あるいはお目にかかる機会をつくることになるかもしれませんが、それは今何とも申し上げられません。
  92. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 この訴訟は、捕虜というものが国際法上当然の請求権を持っているという、自分の権利として主張できる補償問題であるというふうなお気持ちを持っておられる方が訴訟に出たものと私は推察しております。したがって、その方々は裁判の上で決めるのだからこの処理懇とはそれほど深い関係はないだろうと考えられる人もあるかもしれませんが、戦後処理懇が出す答申というものは政治的にはどちらの団体の利益を代表するものでもなく全部に及ぶものでございまして、そういう点で、一方の団体からも強い要請があるとするならば、これにこたえてあげるのが妥当ではなかろうか、私はこんなふうに考えますので、また重ねて、後でしまったというようなことにならないためにもひとつよろしくお願いしたいと思います。どうなるかわからぬというお返事でございましたが、そこを誠意を持って、誠心誠意実現方に御努力願いたいと思います。その御努力はお約束できると思いますけれども、いかがでしょうか。     〔池田(行)委員長代理退席、委員長着席〕
  93. 水上達三

    水上参考人 もちろんいろいろな角度から努力している最中でございますので、当然努力いたします。
  94. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 次に、この戦後処理懇の討議内容は、速記録にとどめられているのでしょうか。
  95. 水上達三

    水上参考人 懇談会で意見交換を進める便宜上、ヒアリングの内容とか懇談会で述べられた意見はもちろん記録しております。
  96. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 水上参考人はかつて軍人として戦争経験がありますか。先ほどいろいろ御苦心談を拝聴いたしましたが、軍人として戦争の御経験がありますかどうか。
  97. 水上達三

    水上参考人 戦争に参加した経験はございません。ただ、戦時中戦地に長くおりましたので、戦地におけるいろいろな実情、また軍人軍属その他戦争に直接携わっている方の御苦労とか、また、私ども民間におきましていろいろな果たすべき役割というものにつきましていろいろな使命を持っておりましたので、いろいろな角度から戦争というものの悲惨さというふうなものについてはよく認識しておることは人後に落ちないものと考えております。
  98. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 一九〇七年十月十八日、ヘーグにおいて署名された陸戦ノ法規慣例ニ関スル条約、つまりヘーグ条約と、捕虜の待遇に関する一九四九年八月十二日のジュネーブ条約、これは一般に第三条約とも言われております。これは人道上の立場から戦争被害を最小限度に食いとめるためにつくられたものと考えますが、あなたはこの条約の成立過程についてどのようにお考えでしょうか。
  99. 水上達三

    水上参考人 御指摘のいろいろな条約は、人道主義の立場から、武力紛争によって生ずるいろいろな惨害というものをできる限り減殺することが主な目的でつくられたものと承知しております。  いずれにいたしましても、懇談会におきましては、シベリア抑留問題に関しましてどう考えるかについて、条約関係についても各般の意見考え方等を参考にしてせっかく討議している段階でございます。
  100. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 したがって、人道上という認識が前提になれば、当然全世界の国々が、締約国であろうとなかろうと、これを遵守する義務が出てくるのではないかと思いますが、その点はどのようにお考えでしょうか。
  101. 水上達三

    水上参考人 一般的に言いまして、ある条約について条約締約国以外の国がこれをどう扱うべきかにつきましては、私自身専門家でもございませんので知識が余りありませんから、ここで申し述べることは差し控えたいと思いますが、シベリア抑留の問題に関しまして言えば、懇談会においては、条約関係についても各般の考え方をいろいろな角度から検討しながら意見交換をしている、そういう段階でございます。
  102. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 私は参考人に専門家としての答えを期待しているのではないわけです。いわゆる人間として常識的に考えた場合、これは人道的立場で守るべきだというものは、たとえそれが法律の中にあろうが、らち外にあろうが、人間である限りみんなそれを尊重して守る責任が出てくるのではないか、こういうふうに考えているわけですが、そのことについてのお考えをお聞きしておるわけです。
  103. 水上達三

    水上参考人 私も一個の人間でございますので、感じといたしましては全く同感でございます。ただ、法律上のいろいろな問題につきましては、先ほど申し上げたとおり、立場立場でいろいろな解釈もあるようでございますが、そういう点について今せっかく検討しているというところでございます。
  104. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そこで、参考人は、昭和四十二年六月二十七日、自由民主党幹事長、同総務会長、同政務調査会長、総理府総務長官、大蔵大臣との間で合意されたいわゆる戦後処理に関する了解事項をどのように受けとめておられますか。また、この了解事項には公権力があると考えておられるのかどうか、お聞かせ願いたいと思います。
  105. 水上達三

    水上参考人 昭和四十二年の、引揚者等に対する特別交付金の支給に関する法律の制定をもちまして、戦後処理に関する措置はすべて終了したとの考え方政府はとってきておりまして、この点につきまして、自民党との了解がなされたことについては承知しております。しかしながら、戦後処理問題については、先ほど来申し上げるように、なお一部に強い要望が出されているところから戦後処理問題懇談会というものが開かれたということで、私どもにこの問題についての意見を述べるようとの依頼がなされたというふうに理解をしているところでございます。  したがいまして、戦後処理問題懇談会の委員を仰せつかった私どもといたしましては、政府がこれまでとってきた措置、関係者の要望の趣旨、この問題に関する各方面の考え方などを中立公正な立場に立っていろいろな角度から検討しながら、これらを踏まえまして戦後処理問題をどのように考えていくかということにつきましてせっかく意見を交換し、その結果を総務長官にお答えするという考え方でやっておる次第でございます。
  106. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 公権力についてはどうお考えですか。
  107. 水上達三

    水上参考人 これについて今私、はっきり申し上げる意見がまとまっておりません。
  108. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そろそろ時間が参りましたので最後にお伺いいたしますが、シベリア抑留者問題は多くの戦後処理問題の中でも質的に違った内容をもっていることを御認識願いたいのであります。その第一点は、捕虜という、国際法上の慣習やジュネーブ条約等の裏づけによる国際法上の一定の地位を占めているという点であります。そしてその第二点は、酷寒零下四十度もある中で、銃口にさらされながら奴隷以上の強制労働に従事させられたという事実であります。  水上参考人におかれましては、先進諸国の例等を十分ごしんしゃくくださいまして、公正妥当な御決断あらんことを心からお願い申し上げ、最後にその御決意をお聞かせ願って、水上参考人に対する私の質問を終わります。
  109. 水上達三

    水上参考人 今、冒頭に申し上げたように、私自身このシベリア抑留問題につきましては相当深い理解を持っているつもりでございます。なお、私どもは特に在外財産問題あるいは恩給欠格問題等、幾つかの課題がございますが、その中でもシベリア抑留の問題というのは、一つの人道上の問題というふうな立場から考えましても非常にひどい目に遭われたということに対して、幾ら同情しても同情し切れないというふうなものであろうということは深く認識しております。したがいまして、そういう立場に立ってこの戦後処理問題懇談会の席でいろいろな委員の方々の意見を交換し合って、できるだけ私ども国民としてもそれにこたえられるようなことが望ましいとは個人的には考えております。
  110. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 どうも大変ありがとうございました。  そこで、今度は総理府総務長官にお伺いいたしますが、この戦後処理問題懇談会からの答申があればこれを完全実施するおつもりかどうか、お聞かせ願いたいのであります。
  111. 中西一郎

    中西国務大臣 ただいま参考人からのお話でもおわかりいただけると思うのですが、大変真摯に長期間にわたって、しかもしばしば懇談会を持っていただいて議論を煮詰めていただいておりまして、私も何回か参加さしていただいてお聞きしておるのですけれども、本当にまじめに、古今東西、法律から、今の人道上のお話から、万般にわたってのお話が出ております。予断をもってするわけにはいきませんが、ああいう御議論が行われておるということを知っておりますだけに、尊重してまいらなければならないという義務感があるところでございます。
  112. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 答申どおりの実施に踏み切る場合は、当然に昭和四十二年の自民党と政府間において合意されたいわゆる了解事項は自然解消されたと解すべきだと思いますが、どうでしょうか。
  113. 中西一郎

    中西国務大臣 まだ結論がよくわかりません現段階でございますし、またいろいろな議論が行われるでございましょう。いずれにしても御結論を待った上のことでございますが、現段階では四十二年の政府・与党の考え方というのは変わってない、現状ではそういうことでございます。推移を見ていただきたいと思います。
  114. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 この了解事項の中で言っている戦後処理とは、具体的に何を指しているのですか。また、それは戦後処理問題懇談会で言っている戦後処理と同じ内容のものであるかどうか、お伺いいたします。
  115. 禿河徹映

    禿河政府委員 戦後処理問題というものをどういうふうにとらえるかということはいろいろ考え方もあろうかと思いますが、昭和四十二年の政府・与党の了解事項におきますところの戦後処理につきましては、当時、国会におきまして時の総務長官が、戦争犠牲に対しまして国がとるべき措置である、こういう御答弁をなさっておるのがございます。私どもはそういう線に沿ってこの戦後処理ということを考えておるわけでございます。  現在、戦後処理問題懇談会を開催して、戦後処理問題をどのように今考えるべきかということについて御検討いただいておるわけでございますが、一般的に申しまして、四十二年当時の戦後処理という問題と現在の戦後処理というのは、基本的に考え方としては変わりはないと私も存じますが、ただ、先ほど申しましたとおり、具体的に戦後処理問題というものをつかまえていくという場合に、そのとらえ方いかんによりましては大変多岐にわたってくることも十分あり得るわけでございます。  それで、あらゆる個別の問題を戦後処理問題懇談会で御検討いただくということは、実際上不可能に近い困難な事柄でもございます。それから、具体的な個々の問題についてそれをこの懇談会で検討をしていただくというのが、その懇談会の性格からもなじみにくい点がございますものですから、ここ数年間特に大きな問題として御要望のございますシベリア抑留者の問題、それから在外財産の問題、それにいわゆる恩給欠格者の問題、この三つの問題を中心にしていろいろ御検討願っておる、こういうことでございます。
  116. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そうすると、了解事項の戦後処理問題と今の戦後処理懇の戦後処理という概念はいささか違う、つまり、非常に限られた範囲に戦後処理問題懇談会の戦後処理というものは考えられる、こういうふうに理解していいのでしょうか。
  117. 禿河徹映

    禿河政府委員 戦後処理という言葉の概念におきましては、私は基本的にそう差があるものではないと考えております。ただ、今戦後処理問題懇談会において御検討いただいておりますのは、具体的なものとしては先ほど申し上げました三つの問題、これを中心にいろいろ御検討いただき、全般的なものといたしましては、そもそも戦後処理問題というものをどういうふうにとらえ、これについて基本的にどう考えるべきか、こういう基本的なことについてもいろいろ議論の中で当然出てまいりますし、それについてのお考えも示していただけるのではないか、かように期待いたしておるわけでございます。
  118. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 この問題はまた後で触れたいと思います。  そこで、シベリア抑留者は天皇陛下の命令に従って整然と軍の規律のもとに捕虜になったものでございます。これは国内的には「生きて虜囚の辱を受けず」というあの戦陣訓の恥辱の虜囚ではないことを明確に、大陸命第千三百八十五号命令をもって、昭和二十年八月十八日、参謀総長梅津美治郎の名において命令されたのでございます。したがって、終戦後以降の抑留者は陸軍の法令が適用されることは当然であります。しかしながら、抑留者は敵の権力内に陥った一方の当事者であることも事実でございます。  そこで、国際法上の捕虜という地位は一体どうなっているのか、また、へーグ条約やジュネーブ条約などの庇護を受ける権利が当然に発生していると思うのでありますが、いかがなものでございましょうか。
  119. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 国際法上の問題といたしましては、敵軍の権力下に入った軍人軍属というものは一般に捕虜として扱われ、捕虜としての待遇を受けることになっております。したがいまして、降伏という形でソ連軍の権力下に入りましたいわゆるシベリア抑留者の方々、これも捕虜であるということは当然でございます。  それから第二点の、ヘーグ条約及びジュネーブ条約に認められている庇護がこれらの捕虜に適用されるべきかどうかという点につきましては、一般論といたしましては、ヘーグ条約につきましてはこれらのシベリア抑留者の方々が捕虜という身分になられました時点で既に効力を有しておりますので、ここに書かれております庇護がこれらの方々に適用になるということは当然であろうと存じます。  もう一つの方のジュネーブ条約につきましては、これはできましたのが一九四九年でございまして、このシベリア抑留者の方々が捕虜になられました時点ではまだできておりませんでしたので、この条約がそのまま適用されるという関係にはないというふうに考えられます。
  120. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 このジュネーブ条約については、これは法理論上の一つの論旨としては今のお答えはわかりますが、先ほども水上参考人が個人としての心情の中で、このジュネーブ条約が人道上に立ったものであるという認識があれば、当然それはその成立の時期の云々にかかわらずすべての者がこれを尊重して実行すべきであると考える、これが普通の人の考え方であるということをまず知っていただきたいと思います。よいことは何も遠慮することはないわけでございますから、ひとつそういう点で日本におけるこの捕虜に対する補償を考えていく必要があるのではなかろうか。しかも、それは、先進諸外国においてはそれらの条約に拘束されず国内法ですべて処理されておるわけでございまして、そういう点も勘案しながら、ぜひ善処をお願いしたいと思います。今の問題についてちょっと御答弁願います。
  121. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 国際法上の問題に限ってお答えいたします。  一般論といたしまして、条約が効力を持ちますのは条約締結国の間だけでございます。しかしながら、条約の中には既に確立しております国際法上の諸事項を法典化したものがございますので、これは、条約の締結国であるかないかを問わずすべての国家に適用があるという形になっております。  ジュネーブ条約に関して申し上げますと、そのうちの一部の規定は、この条約があるかないかにかかわらず一般国際法上の原則として確立していたものが書かれていると考えられます。例えば捕虜には過酷な労働を科してはならないというような規定がこれに該当いたします。他方、このジュネーブ条約の中には必ずしも一般国際法上の原則として確立していないような事項、技術的あるいは手続的な事項も含まれておりますので、これらの諸点に関しましては、この条約の締結国同士の間でのみ効力を有するという関係にあると存じます。
  122. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 シベリア抑留者に対する強制労働は戦争史の中でもまれに見る過酷なものであったということ、これは先日十九日の当委員会での厚生省援護局答弁では、シベリア抑留者数五十七万五千名中ソ連地区引揚者数は四十七万三千名である。未帰還者数は四万七千名となっているわけです。この未帰還者を死亡者とみなして死亡者数五万五千名に加えて死亡率を換算すると、一七・七%という膨大な数字になるわけです。こういうことを見ただけでも、このシベリア抑留というものは普通の戦争以上であったとはっきり言えるわけです。しかも、日露戦争の死亡率は四・六二%、第二次世界大戦の死亡率が五・六三%。そしてこの未帰還者を死亡率に換算すると、シベリア抑留が一七・七%。これを見るだけでも激戦地区以上のすさまじい状態であったということが推定できると思いますが、この事実をお認めになりますか。これは長官にお願いします。
  123. 中西一郎

    中西国務大臣 全般的な情勢を踏まえて、一つの議論としては、おっしゃることはよく理解できます。私もいろいろ各地を回りました。地域によっては大変悲惨な状態が幾つかございます。それぞれ思い合わせるわけでございますが、シベリアについて、特に酷寒の地で大変であったということについては十分理解できるところでございます。
  124. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 外務省の外交文書の中にも、この過酷な労働についての文がありますが、外務省はこの事実を認めますかどうか、ただイエスかノーかで答えてください。
  125. 西山健彦

    ○西山政府委員 私どもは、シベリアに抑留された方々が非常に過酷な、史上にほとんど例のないような境遇に遭われたということを承知いたしております。
  126. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 シベリア抑留者に対する強制労働は、ソ連の国内法、いわゆる労働法とかそういうものに基づいて有償労働と解すべきか、それとも労働の対価を請求することのできない奴隷労働と見るべきか、その辺の御見解を承りたいと思います。
  127. 西山健彦

    ○西山政府委員 ソ連による邦人のシベリア抑留とソ連国内法の関係につきましては、ソ連は、多くの邦人抑留者を裁くに当たりましてソ連邦刑法に根拠を求めたと聞いております。ソ連が、当時の邦人抑留者の強制労働をソ連労働法に基づく労働である、そういうふうに説明しているというふうには承知いたしておりません。
  128. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 刑法の裏づけで強制労働をさせたとなると、それは抑留者にはどういう影響を及ぼすことになりますか。
  129. 西山健彦

    ○西山政府委員 具体的に申し上げますと、その適用されました刑法は、一九二七年のロシア共和国刑法典の第五十八条というものに基づいたものが一番多いわけでございますが、その場合の罪名といたしましては四つございまして、諜報すなわちスパイ行為、二、資本主義援助、それから三、反ソ行為、第四に謀略、こういう項目が罪名として挙げられております。したがいまして、非常に多くの方がこういう国内法である刑法の条項に基づいて処罰されるということになったわけでございます。
  130. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 国際法上明確に捕虜という地位にある者を国内法の刑法で囚人扱いにしたということになると、これはまさに国際法違反と言うべきではないでしょうか。
  131. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 そのとおりでございます。
  132. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 とにかく負けた国ですから、大国に対して、違反を犯したからといって罰することもできないし、ただ、その被害を受けた抑留者自身がなぜそのことを泣き寝入りしなければならないのか、その事実を政府が知っているとするならば、私は、そのことに対する政府の温かい思いやりなりいろいろな対策が出てきてよいのではないかと考えるわけですが、いかがなものでございましょうか。
  133. 中西一郎

    中西国務大臣 今お話を伺って思うのですが、確かに、思い出すだに大変つらい思い出がおありの方々を我々が外から眺めるという立場に立ちますと、お気の毒であるということはもうそのとおりでございます。と言って、それに対してどういったことでお報いするかということになりますと、お気の毒であるということから、答えがすぐには出てこない問題も多いのだろうと思います。そういった意味で、条約の問題あるいは日本の国内法の問題、そういったようなことについて今懇談会で詰めていただいておるというのが現状でございまして、私自身も、ここでどう思うということを申し上げかねるわけでございます。
  134. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 政府は、抑留者の復員に際して、未復員者給与法に基づく給与の支払いを正確に履行したでしょうか。お伺いいたします。
  135. 加藤栄一

    ○加藤説明員 お答え申し上げます。  これらの抑留者の方々がお帰りになりまして、復員の際にお支払いする未支給給与でございますが、初期のうちは在外者給与規程と申すものによりまして、戦前からの大東亜戦争陸軍給与令その他の内容に各種の手当をプラスしたものが支払われていたわけでございます。  二十二年七月から未復員者給与法が適用になっております。これらにつきましては、上陸地におきまして、抑留中の未支給給与について精算をする。それで、給与通報という文書を差し上げまして、落ちつき先の地方世話部で精算する、こういう規定になっておったわけでございます。
  136. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 いや、規定になっているのでなくて、正確にお支払いをしましたかと聞いているのですよ。
  137. 加藤栄一

    ○加藤説明員 外地におられましたときの給与につきまして、それに対応する、もちろん当初の陸軍給与令の金額と完全に一致している金額であった時期もございますし、さらにその後は次第に定額化されてきておりますが、そういう形においてそれぞれ未支給給与として対応する額は支払われているわけでございます。  また、戦前の給与令におきましては、本来の給与あるいは賞与その他手当のほかに、被服、糧食等のいわゆる給養というものがございます。これらについてもし追給するということが御質問趣旨でございますれば、それらに対応するものとして、具体的な費目というものは、ここでは計上されておりません。
  138. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 支払われておったはずでございますと言いますが、これは支払われていないですよ。ちゃんと給与法には、兵隊は幾ら、曹長は幾らと皆決まっているのですね。これで我々の抑留期間を計算すると、少しも払われていないのです。私も復員者なんですから。舞鶴に復員したときは幾ら払われたと思いますか。わずか九百数十円ですよ。それで国は全部ごまかしたのです。どこに払った証拠がありますか。私は県に行っても探したのですが、もうそういう証拠は全然見当らない。日本の政府というのはすべてそういう点で非常にずさんであるということを私はしみじみと感じさせられました。払ったという本当の証拠はありますか。
  139. 加藤栄一

    ○加藤説明員 当時は個別に精算をいたしまして、明細等もできて支払いをする、こういうことになっているわけでございますが、戦後三十九年を経ておりますので、あるいは当時の証拠書類等については既に廃棄されておるというものもあると存じます。
  140. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 だから、もう証拠がなくなっているから後は知らぬ半兵衛ではどうにもならないですよ。この未復員者給与法の中でも「未復員者の俸給は、これを月額百円とする。」この俸給だけでも、三年半月額百円で計算したら幾らになりますか。そこに今度旅費、そういうものが支給されるとなれば、九百数十円で払ったということができるかできないかはっきりすると思うのです。そして、もしそういう証拠がない、しかもこの給与法や給与令に従って支払いがなされていないとするならば、当然国はその責任においてこれらの人を調査すべきだと思うのですよ。これからでもそれを調査する御意思がありますか。
  141. 加藤栄一

    ○加藤説明員 御説明いたします。  二つございまして、今の九百円何がし、これは先生のおいでになりました期間等を伺いまして正確に計算いたしませんと、正しくはお答えできないわけでございますが、二十一年三月分以前の給与、それから二十一年四月から二十二年六月までの給与といいますのは、それぞれ戦前の本俸と申しますか、そういう金額によって階級別に定められているわけでございまして、未復員者給与法が二十二年七月から実施になりまして、それ以降、階級に関係なく一律月額百円になったわけでございまして、そこら辺の計算の仕方もあろうかと存じます。  また、未支給給与、あるいは上陸地におきましてそういう精算等をなさっておられないとおっしゃいます方、今でも時々私どもの方へお申し出がございます。その場合には、私どもも御事情を十分伺いまして調査をいたしたい、かように考えております。
  142. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 これはただ未復員者給与法ばかりではなくて、そのほか陸軍給与令とかあるいは大東亜戦争陸軍給与令、同細則などいろいろあるわけですので、そういうものを総体的に眺めて、それぞれ抑留期間や、あるいはその支給がなされた、あるいは打ち切られた、そういうときから計算してどうなるかというようなことを具体的に調べないと、これ以上ちょっと討論しても結論は出ないと思いますので、前の方に進ませていただきます。  そこで、捕虜はもとより本人の意思でなったものではありません。国が起こした戦争の敗北により生じたものでありまして、その責任はすべて国の戦争政策にあったわけでございます。したがって、国がこれら戦争犠牲者に対する救護、救済に当たることは当然過ぎるほど当然だと思いますが、これについて長官のお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  143. 中西一郎

    中西国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、事情事情として、また懇談会で十分調べておられますし、これから結論に入るという段階でございまして、私自身はその御答申といいますか御意見を伺った上で考えるという立場にございますので、本日のところは将来の問題としてお考えいただきたいと思います。
  144. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 大臣、こういう重大な時期に来て、私が大臣になったのだから私の大臣の時代にこの重大問題にけりをつけよう、それくらいの覚悟はございませんか。そのあたりの煮詰まり方で赤くなったり白くなったりするようでは困るので、おれの信念でこれは何とか対処したいというその確たるものがございませんでしょうか。
  145. 中西一郎

    中西国務大臣 結論は出したいという気持ちは十分に持っております。というのは、おおむね二年ということで発足されまして、もうそろそろ二年も終わりに近づいております。その間、委員皆さん方が非常に真剣に議論していただいておる。私の専門でない条約関係にしろ、法律の問題にしろ、非常に広範多岐にわたり、かつ深く掘り下げての議論をしていただいております。そういった意味皆さん方の結論をお待ちしておるということを御理解いただきたいと思います。
  146. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そこで、帰還された捕虜については、国際法上原状回復が原則で、その損失補償を建前とすると聞いておりますが、これはどうでしょうか。
  147. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 帰還した捕虜に対しまして、これらの捕虜の属する国が原状回復のための損失補償をしなければならないという国際法上の原則があるとは私どもは承知しておりません。
  148. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 それは陸戦法規やジュネーブ条約等から類推して、捕虜が国際法によってそういう加護を受けているとすれば、当然にその受けた損失は原状回復という形で補われるということは考えられるのではないか、こんなふうに思うのですが、その点はどうでしょうか。
  149. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 立法論は別といたしまして、陸戦法規につきましてはそのような原状回復の規定はないというふうに承知しております。
  150. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 原状回復という言葉ではっきりした文言はありませんが、私の言っているのは精神的にそういうものとして受けとめられるのではないか、こういうふうに考えたわけでございますが、これは深追いをしないことにいたします。  そこで、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツなど世界の先進主要国では、第一次大戦以後既に捕虜に対する補償等の援護制度が確立していると言われておりますが、これはそのとおりですか。
  151. 西山健彦

    ○西山政府委員 フランス及び西ドイツにおきましては立法措置がございまして、戦争捕虜に対し年金ないし補償金等を支給する形で一定の補償が行われているというふうに承知いたしております。  ただし、米国及び英国につきましてはこのような特別な制度があるというふうには聞いておりません。
  152. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 これは議論しても仕方のないことですから。  そこで、西ドイツ、フランス、イタリアなどでは国内で激しい戦闘が行われ、爆撃を受けて一般国民も大変な損害を受けたわけであります。それでもこういう国では捕虜に対する政策を明確に区別して対応されていると聞いておりますが、その点についてはどうでしょうか。
  153. 西山健彦

    ○西山政府委員 先生御指摘のとおり、西ドイツ、フランス、イタリアにおきましては、捕虜に対する補償とは別に、一般国民が戦争によりこうむった身体、財産等の損害に対し、年金生活扶助等一定の補償が行われております。すなわち、両者別建てとしてそういう措置が講じられているということでございます。
  154. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そこで、捕虜の給養費は国際法上だれが支払い義務を負うのか、その御説明をお願いしたいと思います。
  155. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 捕虜の待遇に関するジュネーブ条約は、「捕虜を抑留する国は、無償で、捕虜を給養」しなければならないと規定しております。また、一九〇七年の陸戦規則におきましても、それから一九二九年の俘虜の待遇に関する条約におきましても俘虜捕獲国が給養の義務を有すると規定しております。したがいまして、捕虜抑留国の給養の義務というのは国際法上確立しているものと考えております。
  156. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 その給養というのは、その国の軍隊と同様に、例えば日本の上等兵である場合はソ連の上等兵に対比できる階級の待遇をしなければならないと考えますが、その点はいかがでしょうか。
  157. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 食糧の質につきましては一九四九年のジュネーブ条約第二十六条に規定がございます。これには「食糧の基準配給の量、質及び種類は、捕虜を良好な健康状態に維持し、且つ、体重の減少又は栄養不良を防止するのに充分なものでなければならない。捕虜の食習慣も、また、考慮に入れなければならない。」等と規定してございます。  ただいま渡部委員御指摘の、同一の待遇のもの、同じような食糧でなければならないという規則があるかという点につきましては、私は承知しておりません。
  158. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 これは私もいろいろ読んで記憶にはおるのですが、それでは今出してみると言われると余りにも膨大な資料ですぐ出ませんが、これは後でお話し申し上げることにいたします。  次は、台湾人で元日本兵、つまり元日本の軍人軍属に関する問題について若干お伺い申し上げますが、その一つは、これらの軍人軍属の方々の郵便貯金は、現在時点でどのくらいの額になっているでしょうか、またその日数はどのくらいか、明らかにしていただきたいと思います。
  159. 神岡篤司

    ○神岡説明員 お答え申し上げます。  台湾住民の方々が持っておられる軍事郵便貯金は、昭和五十八年の三月末でございますが、現在高一億九千九百万円、口座数にいたしまして六万口座でございます。
  160. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 これは年間どのくらい利息がついていくのでしょうか。
  161. 神岡篤司

    ○神岡説明員 お答え申し上げます。  ただいま利盛りをいたしておりますのは、郵便貯金法に基づきます通常貯金の利子でございますので、二・八八%ということになっております。今までの利子といいますか、それは郵便貯金法に基づきます通常貯金の利子でございますので、一番高いときで四・五六%、低いときで二・四%ぐらい、そういう国内法上の利盛りをいたしておるところでございます。
  162. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 この貯金は現在までにどのくらい払い戻しをされたでしょうか。
  163. 神岡篤司

    ○神岡説明員 台湾住民の持っておられる軍事郵便貯金については、ただいままで払い戻しをいたしたことはございません。
  164. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そうすると、国はいつまでこの払戻人のいない貯金をそのまま保管しておくおつもりですか。
  165. 神岡篤司

    ○神岡説明員 台湾の方々が持っておられる郵便貯金の支払いにつきましては、私どもは債務を履行すべき立場にあるというふうには理解しておるわけでございますが、この問題には日本と台湾間の財産請求権の問題がございまして、これがまだ未解決のまま今日に及んでおりますために保留されておるというところでございますが、私どもとしましてはこれらの問題を、関係省庁間の意見をできるだけ早く調整をいたしまして支払いをしていくようにというふうには考えておるところでございます。
  166. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 これは訴訟になって最高裁判決まで出た問題であるわけですが、この台湾人元日本兵、日本の軍人軍属の方々が今その貯金を法律上の計算に基づいて払い戻しをしても、これは全く問題にならない額であるわけです。しかし、この台湾人の方々が、当時、貯金をしたころのお金の値打ちというものは相当の値打ちがあったと思われます。そこで、最高裁判所は元本と利息さえ払えばそれでいいのだという趣旨の判決を下しましたが、法律上はそういう解釈ができますけれども、しかし法律でなお補てんできない部分は、政治家がそれを政治的に補てんしていくのが私は一番大事な点ではなかろうかと考えるわけであります。しかも、お金というのは額面が大切なのではなくて、物とどういう交換ができるか、つまり交換価値が一番大事なのであります。そういうことを考えていくならば、この台湾の軍人軍属にとっている日本政府の態度というものはまさに冷酷無比、人間の血の通っていない、そういうものとして台湾の方々には映るだろうと思うのであります。そういう点はいかがにお考えですか。
  167. 神岡篤司

    ○神岡説明員 御質問のような事情については承知しているつもりでございますが、先生もおっしゃいましたように軍事郵便貯金の支払いにつきましては、五十七年の十月に最高裁の判決がございまして、「本件軍事郵便貯金の払戻につきわが国の右貯金関係の法令が適用されるものと解する」ということが一点と、また「右貯金の預入後その払戻までに所論のごとき貨幣価値の著しい下落があったとしても、そのことによって右貯金額が当然増額修正されるものとすべき現行法上の根拠はなく、被上告人は右貯金払戻当時の貨幣をもってその債務額を弁済すれば免責されるものと解するのが相当である。」とされているところでございます。私どもとしましては、この判決に基づきまして、郵便貯金法上の利子をつけましてお払いをするということと理解しております。
  168. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 なぜ郵政省は課長が来たのですか、きょうは。課長ではこういう問題は判断できませんね。だから原稿どおり読むしかないんですよ。こういう政治的な問題を含む場合は、少なくとも政府委員クラスの判断力を持っている者を今後答弁に出していただきたいと思います。これは委員長にもよろしくお願い申し上げます。
  169. 片岡清一

    片岡委員長 わかりました。
  170. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 今の答弁の中身は全く事務的な答弁であります。私の言わんとするのは、事務上瑕疵がなくとも現実に相手の国民に迷惑をかけているならば、その迷惑を取り除かなければならないというのが我々政治家の立場であり、また行政府の立場であろうかと思うわけです。特に日本が今後国際的によい環境をつくり、各国の信頼を得て友好関係を維持発展させていく上で、このようなことではどうにもならないと思うわけであります。これは帰られたらぜひひとつ大臣に強く申し上げられて、早急にこの問題の解決の方に向かって努力されたいと思います。お答えをお願いします。
  171. 神岡篤司

    ○神岡説明員 帰りまして上司に申し伝えたいと思いますが、私どもとしましては、先ほどの繰り返しになりまして恐縮でございますが、最高裁の判決あるいは郵便貯金法というものに従ってやっておる、これ以上の問題としては、より高い立場からの御判断でお願いをするということでなかろうかと存ずる次第でございますので、御理解を賜りたいと思います。
  172. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 次に、台湾人で元日本兵として戦争に行き戦死した者あるいは戦傷者というのはどのくらいおったでしょうか。そして、その方々で戦後残った方はどのくらい死亡されたのか、今残っているのはどのくらいになっておるのか、教えていただきたいと思います。
  173. 有馬龍夫

    有馬政府委員 お答え申し上げます。  台湾住民の方で旧日本軍人軍属として召じられた方は二十万七千百八十三名、そのうち戦没者数は三万三百六名、それから戦病傷者の方で今残っておられる方が三百六十九名ということでございます。台湾住民の旧日本軍人軍属数、これは終戦時の数でございまして、現在、そのうち何名残っておられるかについては、ただいま手元に資料を持っておりませんのでお許しいただきたいと思います。
  174. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 これは、この間NHKで特集をやっておりましたが、私は、あのドキュメンタリーというのか、それを見て、本当に涙があふれてきました。台湾人が天皇陛下のために自分の命をささげることを喜んで戦闘に加わって、しかもなおかつ日本という国を信頼し続けてきておる姿がよくあそこに映し出されたのでございます。そしてその人たちは、戦後四十年になろうとするのに日本の軍歌を今なお忘れないで、そして日本にその自分たちのやった行為が認めてもらえるだろうと期待しておるあの姿を見たときに、一体このままこれを捨てておいていいのだろうかと私はつくづく考えさせられました。他国の民族を自分の国の利害のために、しかも戦争という最も残酷な場所に駆り出しておいて、ある人は戦死する、ある人は手がなくなって不具廃疾の状態になっておる、ある人は目が全く見えない、こういうように人生を真っ暗にさせておいてその責任すら感じようとしない今日の日本政府あり方は、これでいいでしょうか。どこが世界第二の金持ち国だと私は憤慨したいのであります。それほど金を持っているならば、まずやるべきことをやってから前に進んだらいいのではないでしょうか。そういう点で、何としてもこの台湾人元日本兵に対する日本政府としての報いをしなければならない。むしろ感謝の形をどういう形でとるか、その責任をどういう形で表現するか、このことに全政治家は全力を注いで結論を早めるべきだと思うのでありますが、大臣、この点についてはいかがにお考えでしょうか。
  175. 有馬龍夫

    有馬政府委員 お答え申し上げます。  さきの大戦で旧日本軍人あるいは軍属として戦死された台湾住民の御遺族あるいは戦傷された台湾住民の方々に関します補償問題につきましては、先生御指摘のとおり、人道上の面から誠意を持って検討しなければならないと考えておりますけれども、その救済のための措置ということになりますと、一つには、日本と台湾との間の全般的な請求の問題がまだ解決されておりません。また、台湾以外の分離地域等との公平あるいは波及の問題、さらに我が国の厳しい財政事情等との問題を考慮してまいる必要がございます。したがいまして、政府としてはかかる措置をとることは大変難しく、慎重に検討をする必要があると思っておりますけれども、先生の御発言の重みを念頭に置きながら、この難しいところを検討さしていただくということかと思います。
  176. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 いつも政府は、御趣旨はわかりますが、財政の困難な状態にかんがみましてとか、何とかすぐにただし書きをつけるわけですね。財政が困っておると言うけれども、それは政府の責任じゃないでしょうか。大体、世界二番目の金持ちの国と言われておって、なぜ日本の財政が百兆円を超す赤字になったのか。これは税金の取り方が悪いからでしょう。金を持っている人は、どうしようもないほど持っているのですよ。今、日本には使いようのないほど金がたまっているのですよ。だから、外国の商社がどんどん日本に入ってきているのじゃありませんか。そういうものを知らぬ半兵衛でほおかぶりして、そして現実にこのように困っておる人たちに対しては目をつぶろうとする。私は、この日本人の根性を改めないと、やがて、それこそ世界から相手にされなくなるのではないかと非常に危惧するものであります。もしこのままこの問題が見送られるようなことになれば、日本は永遠に弁解の余地ない国家的瑕疵を歴史の上に残すのではなかろうかと心配するものであります。大体、海外援助費をどんどん上げていったり、あるいは軍備をどんどん増強したりしておる中で、どうして財政が苦しいという弁解が客観的に承認されるでしょうか。私はそういう点がどうしても理解できないのであります。もし現行法で救済の道がない場合は、新しく立法措置を講ずるなり、また政治的解決を図るなり、何らかの方法社会的、道義的責任を果たすべきであると思うのであります。しかも、この台湾人元日本兵の問題は、各党から超党派で議員連盟をつくって何とかしようと努力しておるわけでございますから、やる気があればできないはずはありません。そういう点で、ひとつ長官の御所信をお聞かせ願いたいと思います。
  177. 中西一郎

    中西国務大臣 財政の問題についての考え方のようなことについて、ここで私から長々申し上げる必要も実はないと思いますし、日本国全体の経済はいいのですけれども、国の財政は大変困っておるというのが現状であることは否定できないと思います。  ただ、特定の問題として台湾の元日本軍人軍属のことについて申し上げますと、そのことが直接財政がどうだからということは、余り大きな声では言えないのではないか。いろいろな財政支出要求というのは国内的にもたくさんございますし、そういった問題もあるわけですから、全体としてどう処理するかというのがとるべき道ではないか、財政上の問題としてはそういうことではないか。  ただ、いろいろなお話がございました。超党派で議員連盟ができておるということも承知いたしております。ただ、先ほど外務省からもお話がございましたが、日台関係の請求権の処理の問題が未解決である。さて気持ちがあれば解決できるではないかという御趣旨なんですけれども、気持ちはあっても、解決できない壁が法制上あってはどうにもならない。そういったことも事務当局としては当然問題にせざるを得ないし、政治家としても解決したいという気持ちだけでは解決できない問題があるわけでございますから、そういう点についての議論をもっともっと詰める必要があるのではないか、かように思う次第でございます。
  178. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 これはかつて議員立法で何とか措置しようというところまで動きはあったわけですが、それが突然そのまま立ち消えになった経過がございます。ただ、今長官のおっしゃられたような法的な障害があるとするならば、その障害というものは何か。これは恐らく最高裁判決の問題を言っておられると思いますが、それは国内法がないからあのような判決が出たのであって、本当にこれにこたえようとするならば、我々の手で国内法をつくったらいいじゃありませんか。あるいは政府がやろうという意思があるならば、閣法を出したらいいじゃありませんか。私はそう言っているのです。大体、この種の問題は戦後の処理すべき問題なのか、何でしょうか。どういう範疇に入りますか、戦後処理問題の一部と考えますか。
  179. 禿河徹映

    禿河政府委員 一般的概念で考えました場合、戦争犠牲ということに対応する問題としてはそれは戦後処理問題とも言えるかと考えますが、懇談会で具体的に現在検討しておるものとは次元も異なりますし、また内容も非常に異なる問題だと存じております。
  180. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 確かに戦後処理問題であると私も考えます。その点では全く同感であります。しかし、こればかりではありません。また後でいろいろ出てまいります幾多の問題があるわけです。  こういうことを知っておいて、そうして四十二年にあのような了解事項をつくって、そしてその責任を逃げようとしたこの姿勢は許されないと私は思うのです。公立学校で、大地震があって校舎の下敷きになって生徒がたくさん死んだ、あるいは負傷した、これに一々補償金を与えると地方自治体がもたなくなるから議会の議決で補償金は一切支払わないことを決議したというものとちっとも変わらないですよ。そんなことで世間体をごまかせますか。実際、あの四十二年の了解事項は全くのごまかしでしかないのです。だから、その後に現実従軍看護婦の問題が出て処理されているじゃありませんか。戦後問題が次から次へとどんどん出て、それが公然とこの国会の中の議題になっているではありませんか。こういう事実を直視してほしいと私は思います。そういう点で、ぜひともこの台湾人元日本兵の問題の解決に向けて最大の努力を払われんことを心からお願い申し上げます。決意のほどをお聞かせ願いたい。
  181. 中西一郎

    中西国務大臣 お気持ちはもう痛いほどよくわかりますし、一人の人間としても、このままほっておいていいのかなという気持ちは幾ら捨てようと思っても捨て切れるものではございません。しかし、だからといって、国と国との関係での問題をどう処理するかということについても、これは知恵を出していかないと処理ができない。そういった意味でせっかく議員連盟もあるのでございまして、私どもも勉強をしないわけではございませんが、そういった諸先生方自身にも、政府に対してこういう知恵があるではないかということを教えていただくようなこともぜひお願いしたい、一緒に勉強をしてまいりたい、かように思います。
  182. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 次に、軍人恩給欠格者の問題についてであります。  旧軍人の軍歴期間を国民年金及び厚生年金に通算すべきものと考えますが、これについてはいかがお考えでしょうか。
  183. 山口剛彦

    ○山口説明員 この問題につきましては、先生からもたびたび御指摘をいただいておりますけれども、私どもの基本的な考え方といたしましては、厚生年金国民年金はあくまでも一般の方々を対象にした社会保障制度でございますし、しかも、一定の拠出をしていただいて給付をするという社会保険のシステムをとっておりますので、御指摘の問題を国民年金と厚生年金の現行制度で対応せよということにつきましては、これは困難であると申し上げざるを得ません。この点はお許しをいただきたいと思います。
  184. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 皆さんは官吏の立場で物を考えるから今のような答弁が出てくるものと思います。法の流れ、体系からいえばそういう理屈も確かに成り立つことは百も承知であります。しかるに私がなぜこの問題をここで取り上げているかというのは、これを国民の側から見た場合、これが公平なやり方であろうか、公正なものであろうかと考えた際に、あなたも、戦争に一緒に行って三年なり四年鉄砲の弾の中を命がけで駆け回って、そして何とか九死に一生を得て隣の戦友と一緒に帰還した、ところが隣の戦友は役場に勤め自分は民間の会社に勤めた、そうしたら隣の戦友はその軍歴期間が年金にみんな通算されているのに、自分は民間の会社に勤めたというだけで通算されない。仕事はともに社会的な仕事をしておるわけです。幾ら働いてその対価として賃金を受け取っていても、つくっているものはみんな社会的生産でございます。そうした場合に、役所に勤めて帳簿をつけるのと民間会社で帳簿をつけるのとで一体どれだけ労働の質が違うだろうか。こう考えた場合、なぜ片一方の官吏の方は通算されて一般国民は通算されないかという疑問がわいてくるのは当然でしょう。  しかも、今や主権在民でございまして、国民が一番偉いのでございます。官僚は、官吏は、公務員国民に奉仕する義務があるのでございます。したがって、国民の意思が那辺にあるやを常に確かめて、その方向で働くのが当然じゃないでしょうか。しかるに、法律の理屈をこね回して、これは何になじまないとかなんとか言っておるわけです。本当の腹はそうじゃない、金を出したくないのです。なじむ、なじまないの話は後からのつけ足し。  それが証拠に、私はここに国会議員として当選してきて間もなく、今の年金制度を全部一元化しなさいと叫んだことがございます。そのとき皆さんは何て答えたか。年金制度というものは、国民年金、厚生年金、共済年金いろいろあって、それはそれぞれの歴史があり、歴史的な一つの体系がございまして、これを統合するなどということはとても日本の法律体系になじまないのでございますと答えているのであります。本当でしょうか。本当になじまないでしょうか。ところが、あの臨調行革によって今や年金は一元化の方向が打ち出されたではありませんか。そして着々と年金の統合が進められているではありませんか。やろうとすればできるのですよ。初めからやる気がないから、どのようにすればこれが法体系になじんでいくかなどということはさらさら研究していない。そうして、ただ口先だけで国民をごまかそうとしている。これは私は重大な問題だと思うのです。  一方、今日のこの戦争から帰ってこられた方々は、少なくとも国のために命をなげうって働いた人たちです。その結果がどうあれ、その兵隊たちの意図というものは決して汚いものではない。むしろ神にも近い清らかな気持ちで、戦地で自分の家族を思い出しながら、それこそ荒野の中で奮戦してきたその人たちの姿を考えるならば、この通算措置くらいできないはずはないと思いますよ。どうですか。
  185. 山口剛彦

    ○山口説明員 先生の御指摘の点は私ども十分理解できますけれども、少なくとも国民年金、厚生年金でそういう措置をしろという御趣旨でありますと、例えば厚生年金を例にとれば、厚生年金は一般的なサラリーマンを対象にした制度ですから、その中でたまたま軍歴の期間を持っている方たちの、しかも保険料拠出をされておられない期間を厚生年金の中で特別に措置をするということにつきましては、これは今の厚生年金の体系では無理だと考えざるを得ないと思います。  また、この点につきましては私どももそう思っておりますけれども、この問題について総務長官の委嘱を受けて研究をされました御報告によりましても、この問題を国民年金、厚生年金制度の中で通算措置を講ずることによって対応するということは適当でないという御指摘もいただいております。たびたびで申しわけございませんけれども、今御指摘の対応を国民年金、厚生年金でせよということについては、これはどうしても困難だということを申し上げざるを得ませんので、この点は御理解をいただきたいと思います。
  186. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 確かに、軍務というのは公務であり、そして皆さんは公務員だから公務に携わっておる、だから公務が連続性を持つということは理論に合いますよ。そして、民間の仕事は公務ではない、だから、軍務という公務と民間で労働したりあるいは農家で働いたりすることは、その勤務の性質上これはつながらないということはわかります。だからできない、そう言わざるを得ないと思いますけれども、しかし、勲章をもらう人もいるのですよ。勲章というのはぽこっともらうのですね。その前提があるわけじゃないのです。だから、私は、勲章をくれたような気持ちでこれを取り込んだらどうかと言うのですよ、戦争に行ってあれだけ苦労したのだから。その人たちだってもう間もなく亡くなっていくのですよ。幾らもいなくなっていくのですから、年々歳々だんだん減っていくのですから、そういう人たちに御苦労さんと言って、理屈抜きでやったらいいじゃないかと私は言っているのです。そういう点はどうでしょうか。
  187. 山口剛彦

    ○山口説明員 御趣旨はよくわかりますけれども、私が所管をしております年金制度の中で対応するということについては難しいということで、これは御勘弁をいただきたいと思います。
  188. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 課長にこれ以上言ってもどうにもなりませんから、やめます。  そこで、旧満州国軍に服務した旧日本軍人恩給法上の処遇はどうなっておりましょうか。
  189. 和田善一

    和田政府委員 日本軍人としての前歴を有する方が現役満期あるいは召集解除等により退職いたしまして、日本政府の要請を受けまして満州国軍人となりまして昭和二十年八月八日まで在職しておりました場合には、その満州国軍人在職期間を軍人恩給基礎在職年に通算する、こういう措置をとっております。
  190. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 旧満州国軍で日本人の方々は、これは関東軍司令官ですか、それの命令によって旧満州軍に所属させられ、そして終戦によって、あなたは満州国軍であって日本国軍ではないというようなことで、何か大分差別を受けておる。そういうことで、これは請願も出ており、その請願は第百回国会で採択されたようでございます。請願が採択されたならば、それを受けて政府措置するのが当然だろうと思うのですが、その点はどうでしょうか。
  191. 和田善一

    和田政府委員 恩給制度は基本的には日本国の公務員として勤めた方に対する制度であるという性格がございますので、満州国の軍人であった方については基本的には対象にできないという、この基本的な制度」から来る取り扱いはこれはどうしようもないと私ども恩給制度としては思っておるわけでございますが、さきに申し上げましたように、恩給制度としても通算すべきが至当、これは制度上も通算して当然と考えられるものにつきましては通算措置をとっている、こういうことでございます。
  192. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 今資料がいっぱいあり過ぎてちょっと出てこないのですが、山田乙三陸軍大将の名において満州軍に属した日本人も日本軍として取り扱うような趣旨の文書があったと私記憶しておるのですが、それはごらんになっておりますか。
  193. 和田善一

    和田政府委員 御陳情の中にそういう文書も含まれているということは私も承知しております。
  194. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 どうも役人の方はかたくて、一つの通り道が決まっているようですが、そういう型から離れて自分も一個の人間だというふうな立場で考えた際に、自分の意思で満州軍に入っていったならこれはやむを得ません。しかし、関東軍の命令でおまえは満州軍に配属するということで配属になって、そうして終戦になってしまった。そこで軍人恩給をもらおうとしたら、おまえは日本軍じゃないから軍人恩給の対象にならない、こんなふうなことはどうでしょう、矛盾していませんか。そういう命令を受けてそういう措置をされた人たちは耐えられないのじゃないでしょうか。同じ日に入隊して、一方は関東軍という一つの軍籍を持っているためにたくさん恩給ももらうし、いろいろな手当をもらう。こっちはそうでないために、同じ戦闘員でありながら全然何もやっていただけない。これは矛盾していませんか。
  195. 和田善一

    和田政府委員 日本国の要請を受けまして満州国軍になりました日本軍人、要するに日本軍人だった方が要請を受けて満州国の軍人になった、そして終戦まで来てしまったという人は、国の要請を受けて満州国の軍人になったわけでございますから、恩給といたしましても通算をしているということでございます。
  196. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そうすると、これは日本の軍人並みに取り扱われておる、いわゆる関東軍の命令で行って、そしてそのまま終戦になって日本に帰ってきたというのは普通の軍人と全然変わりなく取り扱われている、こういうふうに理解していいのですね。
  197. 和田善一

    和田政府委員 恩給の資格年数の通算という点ではさようでございます。
  198. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 時間もそろそろ迫ってきましたが、今は差異は若干あるというようなことでございました。  そこで今度は、日本軍から満州国軍に命令で編入されたのではなくて、満州の義勇隊というのですか、そういうところにいて満州軍に入隊して行った人たちは、救済の措置は講じられていないわけですね。
  199. 和田善一

    和田政府委員 恩給制度が日本の公務員を対象とするという基本的な性格がございますので、満州国軍人になったということでは恩給制度の中に入ってまいりません。
  200. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 同じ人間が同じことをしたら同じ結果が出なくちゃ仕方がないのじゃないか。非常に矛盾を感じるのですが、そういう法律がなければ、何とかこれを別な解釈で、人道上のものとして解決の道はないでしょうか。
  201. 和田善一

    和田政府委員 恩給制度といたしましては今申し上げたような次第でございまして、恩給の方にも通算できると考えられる面につきましては通算をしている、これでどうか御了解いただきたいと思います。
  202. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 今後もまたこの問題は続くと思います。国がそういう考え方でいるのでは私は非常に問題だと思いますよ。しかも請願採択ということになっていれば、国会決議と同じ効力があるものと私は思います。そういうものを政府は尊重する義務があるというふうに考えますが、その点はどういうものでしょうか。
  203. 中西一郎

    中西国務大臣 当然尊重しなければいかぬという立場で受けとめておるのです。しかし、受けとめた上で解決策を探さなければなりません。解決策まで与えられた上での御請願ならば実行できるのですけれども、解決策が与えられてない、そういった非常に難しい課題であるということでございます。また、これは大変難しい問題だという根拠の一つですが、国の立場、立法権の及ぶ範囲とか、そういうことにもかかわりがあるので、そこのところをどう乗り越えるかということについては、請願採択をなさいました皆さん方ともよく知恵を出し合わないと、すぐには知恵が出ないのでございます。
  204. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 こういう、国民が非常に疑問を感じ不満に思っている問題は、国民主権という立場から極力政治の力で解消してやる、そういう立場をひとつ十分堅持していただきたいと存じます。  そこで、この前の国会でもその前の国会でもそうですが、これまた請願採択されました旧満州棉花協会等の機関を外国特殊機関として追加指定をすることができないか、こういう問題でございますけれども、これも一向に進まないわけですね。請願審査をする場合は当局からも意見を聴取しながら審査するわけでございますから、一応審議の内容は政府に通じているものと思うわけでございます。しかるに、採択された請願が一向に現実化してこない、実施されないとなると、憲法で保障されている請願権というものは一体何なのか、こう自問自答したくなるわけですが、その点はいかがなものでしょうか。
  205. 和田善一

    和田政府委員 旧満州棉花協会等を外国特殊機関に指定することについての請願、たびたび受けておりまして、政府としてもその処理意見につきましてはたびたび御答弁申し上げているところでございます。常に検討はしておるわけでございます。しかし、外国特殊機関等満州に数多くございましたうちで、現在指定しておりますものとその他のものということで比べてみますと、組織の性格とか業務の内容あるいは人事交流の態様等、その当該機関の実態を考慮した場合に、これを追加して指定するというところまでには評価できない、判断できないというのが現在の偽らざる政府の対応でございます。
  206. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 実は棉花協会の方々なども、よたよたとして請願に来るわけですよ。もうあと幾ばくこの人がこの世におられるのかなと考えさせられるくらい年をとっておられるのです。そして、私たち請願採択になったとして深々と頭を下げて感謝していかれるのですよ。請願が採択になったということは、請願者の側から見ると、これは確実に実施していただけるものだ、こういうふうに受けとめるのが普通なんです。ところが、それを今度政府の段階に来ると、さっぱりわからない難しい言葉で、何だかどっちに解釈していいかわからぬようなことで結局はどうにもならない、こういう状態というのはいいでしょうか。民主政治としてこういうようなあり方が許されるでしょうか。その辺、大臣はどういうふうにお考えですか。議会制民主主義の中における請願権の重みというものをどういうふうにお考えですか。
  207. 中西一郎

    中西国務大臣 請願が採択されたという重みは十分に理解できます。それを受けて検討を政府の方で行った、その結果について閣議を経て御回答を申し上げたというような経過でございますが、今恩給局長が言いましたような、いろいろたくさんな特殊法人がございます、それらの中で、性格的にこれは年金の対象とする、恩給の対象にするということが適切なグループというのがやはりあるわけでございまして、そこまで入れるかどうかということの認定については、行政機関としては十分な検討を行っていきませんと筋が立たない場合が出てくる。筋が立たないことをしていいかということになると、これはまた、してはいけないということになります。その辺の大変難しい案件の一つであるというふうに御理解賜りたいと思います。
  208. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 長官もバッジをつけておる政治家でございますから、ひとつその点は篤と今後よろしく善処されるようお願いを申し上げまして、この点は終わりたいと思います。  次に、戦地戦務加算の問題についてでございますが、この戦地戦務加算の決定基準というものはどうなっているでしょうか、これを明らかにしていただきたいと存じます。
  209. 和田善一

    和田政府委員 戦務加算に関しましては、昭和二十一年に改正する以前の恩給法第三十二条に規定されておりまして、それには「戦争又ハ戦争ニ準スヘキ事変ニ際シ公務員其ノ職務ヲ以テ戦務ニ服シタルトキハ其ノ期間ノ一月ニ付三月以内ヲ加算ス」という規定がございまして、その加算の程度、加算の認められる期間、加算を認める地域、戦務の範囲等は、勅裁をもってこれを定めるという規定でございまして、この勅裁の中身は、戦時事変の都度、その実態を最もよく承知しておりました当時の陸海軍省が判断いたしまして、内閣告示で公示したということでございます。
  210. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 それが本当に適切なら、何にも問題はないのです。その勅裁という中でどういう方法で決められていったのか、我々は承知しないわけでございますが、今までの議論の中でも明らかなように、激戦地区、つまり激戦地とは何ぞやということになるわけです。ドンドンパチパチ鉄砲がたくさん撃たれるから激戦地だとは限らないわけですよ。つまり、激戦地というのはどれだけの戦死者が出るかということに帰すると思うのです。そういう点では人間の一番死亡するところが一番大変だということになるんじゃないでしょうか。  そういう意味では、先ほども若干申し上げましたが、日露戦争の戦死者は四万六千四百二十三名なんです。その死亡率は四・六二%。第二次世界大戦の戦死者は三十一万人、死亡率が五・六三%。そして、その中でもシベリア抑留、これは五十七万人の抑留者に対して、未帰還者四万七千人を含めた死亡者の比率は一七・七%。こんなひどい場所があるでしょうか。しかも、その労働たるや、先ほども申し上げましたように過酷の極をついている。奴隷以上の残酷な労働に従事していたことは明々白々たる事実でございます。これが一般の抑留者という括弧で包まれて、わずか一年の抑留者加算しかないわけです。一カ月につき一カ月の加算しかないわけですよ。これは不合理と思いませんか。あなた方は、前にそういう一つの法的手続を経てでき上ったのだから、おれたちの責任じゃない、そのとおりやっていることがいいのだと考えておられるかもしれませんが、現実にそういう差があり、そういう事実が今明るみに出てきているのですよ。そうしたら、それに対して政府は誠心誠意こたえてやろうという熱意がなければならぬのではないでしょうか。その点、いかがでしょう。
  211. 和田善一

    和田政府委員 ソ連抑留の加算につきましては、先ほど申し上げました戦務加算の中にはなかった、昭和四十年まではソ連抑留につきましては加算制度がなかったわけでございます。しかし、抑留の実態、非常な御苦労等の事実を十分に勘案しまして、また、ソ連以外の海外の抑留等の実態も勘案いたしまして、昭和四十年の時点で新たに加算制度を設けることがいいか悪いかという検討の結果、恩給制度の加算といたしましては従前からありましたような辺陬・不健康地加算、これらも参考といたしまして抑留期間の一月につき一月という措置を新たに設けたわけでございまして、当時の検討の結果を現在またここで変更するということまでには踏み切っておりませんことをどうか御了承いただきたいと思います。
  212. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 後から抑留者加算をつくってやったのだというようなお答えでございますが、それが納得できないのですよ。つくるときにどういう評価をやったのかということなのです。その評価がどうしてもシベリア抑留者にとっては納得できない。あらゆる本にも、外務省の外交文書の中にもこの状態というものを書いてあるのですよ。シベリア強制労働はまさに戦闘をしのぐ苛烈なものであったというのはだれしも認めておる事実なのです。だから、この抑留者加算を戦地戦務加算並みにしないのか、抑留者の切なる願いであるわけです。だからもう一度この加算措置を見直していただきたい、こういうことでございます。それについてはなかなかはっきりとはお答えできないでしょうが、お帰りになって所管大臣と十分御相談になって、抑留者の期待にこたえていただきたいと思います。いかがでしょうか。
  213. 和田善一

    和田政府委員 加算制度につきましては、今お答え申し上げたような次第でございます。先生の御質問の今までの御趣旨を体しましていろいろ検討は続けてまいりますが、現時点における私どもの考え、今申し上げたような次第でございます。
  214. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 大臣と相談しますか。
  215. 中西一郎

    中西国務大臣 お話ずっと承っておりますので、よく相談をいたします。
  216. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 隣り合わせているのですから、よく御相談の上見直していただきたいと思います。  そこで、いよいよ時間が迫ってまいりましたので、昭和五十九年度恩給改善の基本的な考え方について、長官の御所見をお伺いいたします。
  217. 中西一郎

    中西国務大臣 五十九年度恩給改善についての基本的な考え方ということでございます。  一つは、経済情勢が変わってまいって年金恩給実質価値をできるだけ維持しなければならないということで、先ほど来お話がございました公務員給与改善基礎として二%の恩給年金増額したということが第一点でございます。  それから戦没者の遺族に対しましての公務扶助料、傷病者の恩給改善しなければならないということで処遇の一層の充実を図ったということ、さらに普通恩給普通扶助料最低保障額改善などをいたしまして、言ってみれば、だんだん老齢化しておられますし、そういった方々の立場も考えて措置をしたというのが基本的な柱でございます。  そのほか、既にお話が出ましたが、三月にさかのぼって実施をした。その他の、公務員給与改善に伴う基本的増額以外については、改善措置は八月または十月ということにいたしたのが基本的な考え方でございます。
  218. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 今度のベースアップ実施時期が昭和五十九年三月とされた理由について御説明願いたいと思います。
  219. 和田善一

    和田政府委員 今回のベースアップ実施時期を三月といたしました理由は、前年度恩給ベースアップがなかったという特殊事情を考慮いたしまして、今年度ベースアップは特に前年度の三月までさかのぼるという措置をとった次第でございます。
  220. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 今まで附帯要望の中で実施時期を一般の給与と同じようにしなさい、つまり今度はもう十一カ月繰り上げなさいということになりますね。そういう附帯要望についてはどう処置されるおつもりですか。
  221. 和田善一

    和田政府委員 今回三月にさかのぼりましたのは、ただいま申し上げましたように前年度ベースアップがなかったという特殊事情に基づくものでございますので、附帯決議とは別個の観点から措置したものでございます。
  222. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 去年なかったから一カ月上げた、附帯決議は全然頭の中に入れておかない、こういうことは少しおかしいのじゃないでしょうか。附帯決議を何とか実施に移したいといろいろ考慮して努力したが、財政の都合なりでどうしても十一カ月おくれにせざるを得なかった、そこにまた去年のこともありますからということで出てくるならば話はわかりますが、附帯決議はどこかに吹っ飛んでしまって、全然考慮の対象になってないじゃないですか、それじゃ。
  223. 和田善一

    和田政府委員 附帯決議につきましては、従前から私ども考え方といたしまして、ベースアップ指標としましては前年度公務員給与改定指標として用いるのが一番適当である、指標のとり方を前年度公務員給与というものでとっているのでありまして、それに基づいてここずっとベースアップを行ってきた。確かに去年はベースアップはなかったわけでございますが、原則として公務員給与が上がったときは毎年ベースアップをしてきた。指標としては前年度のをとっておりますけれども、毎年やってまいったということでございますので、恩給年額水準そのものがいわゆる一年おくれになっているとは必ずしも言えないのではないか、このように考えている次第でございます。
  224. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 例えば二・一%とか、そのアップ率については、前年度給与の上がりぐあいあるいはそれに関連する問題等が考慮されても理由になりますけれども実施時期というのは私は決断の問題だと思うのですよ。前年度は四月実施だったわけですからね。それは前年度のことが三月になったということの前提にちっともなっていないと私は思うのですが、どんなつながりがそこにあるのか、ちょっと私は判断に苦しむのですが、三月に実施をしたというその一つの決意をさせた前提は何でしょうか。
  225. 和田善一

    和田政府委員 恩給ベースアップ指標といたしまして、前年度公務員給与改定をとる。したがいまして、昭和五十七年度には公務員給与ベースアップがなかった、要するに公務員は十二カ月丸々ベースアップなしでその年は過ぎました。それをそのまま機械的に前年度指標ということで五十八年度に取り入れますと、恩給も一年間丸々ベースアップがないということになるわけでございますが、恩給受給者につきましては十二カ月丸々ということでなくて、せめて一カ月分はさかのぼりまして五十八年度措置を及ぼしまして、十二カ月丸々のベースアップなしということではなくした、こういう考え方でございます。
  226. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 ちょっと納得しかねますけれども……。私は、前年度給与が上がらなかったからということが上げ率にはね返ってくるなら話はわかるけれども実施の時期で一カ月早めたから、そこでその前年度給与あり方がそれを関連づけての因果関係というのはちょっと理解しにくいわけでございますが、ちょうど時間になりましたので、この程度でやめさせていただきます。  いろいろと大変長い間ありがとうございました。
  227. 片岡清一

    片岡委員長 上原康助君。     〔委員長退席、池田(行)委員長代理着席〕
  228. 上原康助

    ○上原委員 恩給法の一部改正で既にいろいろ審議がなされたようでありまして、これまでおやりになった先生方の御質問なりあるいは御指摘と相当重複する面もあろうかと思うのですが、私なりにまず恩給問題から若干お尋ねをさせていただきたいと存じます。  今も渡部先生のお尋ねにもありましたが、まず最初にお伺いしたいことは、恩給改定に当たって政府として最も重視をしておられる点、配慮をしておられる点は何なのかということ。また、これからも基本は公務員賃金が改定されるとそれにほぼ準じて改定がなされるわけですが、これからの改定改善をするに当たってどういう面に御配慮をしようとしておられるのか。よく恩給とは何ぞやといろいろ議論の分かれるところでもあるのですが、そういう点を含めて長官なり局長の御所見をまずお伺いをさせていただきたいと存じます。
  229. 和田善一

    和田政府委員 恩給改定に際しまして重点と考える事項でございますが、これはまず恩給法二条ノ二の規定に基づきまして、社会経済の諸事情変動いたしましたときには恩給の実質的な価値維持するためにベースアップを行っていく、そのための指標といたしましては公務員給与改定というものを指標にしてやっていくということは、これまでも、またこれからも恩給改定の最重点の一つの事項であろうと思います。  なお、その他のいろいろな個別事項の改善につきましては、これまで老齢者あるいは御遺族等、それからまた戦傷病者というような方々を手厚く処遇するという姿勢でまいっております。こういう姿勢もこれから続けていきたい、かように思っている次第でございます。
  230. 上原康助

    ○上原委員 大筋、今御答弁があったような方向改善されてきていると、私たちもそれなりに評価をしておるところであります。  そこで、先ほどのお尋ねとも関連するわけですが、要するに恩給に限っては実施時期は一年おくれですよね。さっき、五十七年度ベアがなかったから丸々というよりは一カ月上げたんだという、ちょっと歯切れの悪い御答弁ですが、そういう意味で基本的方向としては、附帯決議でも何回かなされておりますように、この改正実施時期についても一年おくれでなくして遡及をしていくということがその方向性として出なければいかぬと思うのですよ。仮に先ほどの御答弁が、その方向も加味して一カ月でも三月に繰り上げたということなら少しは理解できるわけですが、先ほど御答弁があったのでこのことをお尋ねするわけですが、そういう御見解が全くないのかどうかということが一つ。  いま一つは、公務員の賃金改定と同時期に合わすとすると、予算的措置はどのくらいやらなければいかぬのか。そういう点についても、これはいつかもお尋ねしたことがあるのですが、改めて御見解をお聞かせいただきたいと存じます。
  231. 和田善一

    和田政府委員 一カ月繰り上げまして三月実施としました理由は、先ほど申し上げましたように、公務員の方は十二カ月ベースアップがなかった、しかし、恩給受給者につきましては丸々十二カ月というのはいかがなものか、したがいまして、一カ月さかのぼりましたという考え方で行ったものでございます。したがいまして、直接附帯決議に基づいた措置というわけではございません。附帯決議で御指摘の問題につきましては、私どもといたしましても常時検討しているわけでございますが、前年度公務員給与指標といたしまして毎年ベースアップしていくというのが現在最も適当であるという考えをいまだに堅持している次第でございます。  それで、恩給年額がさかのぼれば幾らになるかということでございますが、これはいろいろな場合によりまして額を計算しなければなりませんので、今ここで幾らというふうに直接お答えすることはできませんことをお許しいただきたいと思います。
  232. 上原康助

    ○上原委員 それはおおよそわかるでしょう。それは前に答えたことありますよ。それはやってくださいよ。現に改定されたベースでどのくらいかかるというくらいないと、できないんじゃないですか。何でそれが言えない。
  233. 和田善一

    和田政府委員 今年度改定で申し上げますと、本年度は三百四十億円が改定のために上乗せになるということでございまして、これが平年度になりますと約五百億ということでございます。
  234. 上原康助

    ○上原委員 そこで長官、これは要するに予算の問題でしょう。もちろん今の行革絡みなりあるいは財政窮迫状況の中でわからぬわけでもないわけですが、局長の御答弁は、ベアが凍結されたから丸々というわけにはいかぬので一カ月くらいは何とか工面したという趣旨の御答弁ですが、これは一挙にできないにしましても、公務員ベアだって四月一日に実施というのは相当の期間が経過をしてそういうふうになったわけですよ。そういう面も含めて大いにこの件については政治判断というか高度の決断が必要になる事項だと思いますので、この件について、実施時期の問題について総務長官の決意のほどをお伺いしておきたいと思います。
  235. 中西一郎

    中西国務大臣 実施時期の問題も含めていろいろ御要望があり、附帯決議あるいは請願、いろいろな形でいろいろな御要望が出ています。内閣委員会だけでも大変な金額に実は相なると思うのです。私が聞いたところでは、戦後処理の中の在外財産の補償の問題で、ある団体ですけれども、計算しておられるのは八兆円というようなことでございます。そんなことがたくさんある。大蔵大臣じゃないから気楽がというと、連帯責任でございますし、必ずしもそう気楽にはなれないのが現状でございます。そういうことで、全体を踏まえてやらざるを得ない。またそうでございませんと、大蔵大臣のようなことを言って失礼でございますが、財政が破綻するようなことになると、助けてもらったつもりが助けてもらったことにならない、インフレになっても大変なことになる、福祉の根底も揺らぐというような危ない橋を渡っておるのが現状だと思うのです。その中でどれに重点を置いてどう処理するかという問題でございます。十分検討しなければならない問題であるという認識においては諸先生方と同じ立場でおりますが、今後とも検討させていただきたいと思います。
  236. 上原康助

    ○上原委員 ちょっと長官の御答弁は戦後処理問題を含めてのお答えになって、先ほどこの件についてはかなり御議論があったと思いますので後ほど若干触れますけれども、私は今は恩給実施時期の問題を視点にして申し上げておりますので、いずれにしましても引き続き御検討をなさるということですから、よくバランスを保ちつつも関係者の要望にこたえるように、なお一層の御努力を賜りたいと思います。  そこで、あと具体的な問題について二、三点お尋ねをさせていただきたいのですが、私もこの恩給問題というのは何回やってもなかなか理解しにくい、のみ込めない、御専門の方でなければ容易でないような感じがしているわけですが、そういう意味で素人お尋ねになりますけれども、要するに、公務関係扶助料にしましても普通扶助料にいたしましても最低保障額をどう引き上げていくかということを、先ほど基本的な面でもお答えがありましたが、そのことをぜひ重要視をしていただきたいということを改めて注文をつけておきたいと思うのです。私が過去何回か取り上げてまいりました経緯からしても相当改善されていることは間違いございませんが、ややもするとこういうことについては上原下薄になったりあるいは、傷病面はもちろん、より重点的に改善しなければいかないことではありますが、そういう面との差が出たりしないように、この点は引き続き御検討をいただきたいということを申し上げておきたいと思います。  それと質問として、恩給外所得による普通恩給の停止基準改正問題、これは方針変更をしたような感がしてならないわけですね。たしかこの件は、昭和四十三年ですかの恩給審議会答申ではこのような制度を廃止する方向で検討すべきだということがなされておったと思うのですが、今回はその制限額の停止基準を現行の二割から三割五分に引き上げるわけですね。こうなりますと、やはり相当影響を受けるのじゃなかろうか。先ほど説明も若干聞きましたけれども、どうしてこういう方針変更をなさったのか、あるいはこれによって相当不利益をお受けになる方々がいらっしゃるのじゃないかという感じがするのですが、該当者はどのくらいで、どういう経過措置をおとりになるか、ひとつお聞かせをいただきたいと存じます。
  237. 和田善一

    和田政府委員 多額所得停止制度につきましては、かつて審議会で廃止の方向という意見が出たことは先生御指摘のようにございますが、ただし、これはもう十七年も前のことでございまして、現在、臨時行政調査会の答申にも恩給費の増加抑制とか、また国政全般にわたりまして従来にも増して財政運営の効率化が求められておりますので、現在では恩給給与の本旨にもとらない範囲で多額所得停止を行うのはむしろ国民の世論にも合うんじゃなかろうかということで、二割を三割五分ということに強化した次第でございます。  これがどういう影響を及ぼすかということでございますが、現在、多額所得停止制度の適用を受けている人は三百二十五人という人数でございます。この人たちが今回の改正によりまして手取りが現在よりも減るということは防がなければなりませんので、制度改正になりましても現給は保障するという経過措置をとっております。ベースアップ等によりまして恩給の額が多額になってまいりまして現給保障をしないでもこの改正後の規定が適用していけるという状態になるまでは、手取りが現在よりも減らないように経過措置は講じております。しかし姿勢といたしまして、多額停止の率を二割から三割五分に上げた、こういうことでございます。
  238. 上原康助

    ○上原委員 それも理由というか、今のお答えの趣旨もわからぬわけじゃないのですが、しかし、経過措置で手取りは減らされないとしても、将来希望がなくなってしまう。人間は、もしこういうふうに二割から三割五分にしなければ当然私は幾らもらえると勘定をしますよ。そういう点はもう少し、二割から二・五というならまだ話はわかるが、相当の大幅引き上げになっているという件については、いろいろ臨調の御指摘とかあろうにしても、三百二十五人の方々がその影響を受けるということについてはいま少し緩和措置を講ずるべきじゃないか、こういう意見を申し上げておきたいと思います。  次に、これもしばしば問題になってきたことなんですが、老齢福祉年金増額に伴い、もちろん恩給もそうですが、同年金恩給との併給限度額の問題がいつも指摘をされてきているわけです。老齢福祉年金は無拠出だからとかいうことで制限をつける、併給をしない限度額をつくるということですが、厚生省、この問題は前々から指摘されているように、原則としては取っ払うべきだと私は思うのです。そうであるか、この限度額をもっと大幅に引き上げるべきであると思う。この辺のお考えと、今後の改善措置についてもお聞かせいただきたいと思います。
  239. 山口剛彦

    ○山口説明員 御指摘の福祉年金でございますけれども、これは先生御承知のように、社会保険制度をとっております国民年金制度の発足前に既に高齢でおられる方に、全額国庫負担で年金を支給をするという考え方でございますので、原則として他の公的な年金給付を受給しておられる方については併給をしないという考え方でございます。ただ、恩給関係につきましては種々事情がございますので一定の限度で併給を認めているわけでございますけれども、この限度額につきましては、近年も、福祉年金増額の程度あるいは先ほど御指摘がございました恩給最低保障額の引き上げの限度等を勘案いたしまして引き続き改善措置を講じておりますので、当面は、福祉年金のそういう基本的な性格からしましても今の制度を踏襲しながら今申し上げましたような状況を考慮して限度額を引き上げていくというのが現実的でありますし、また精いっぱいのところではないかと私どもとしては考えております。
  240. 上原康助

    ○上原委員 この件についてはいつも大体同じような御答弁なんですね。  そこで、逐次改善されてきていることは私たちも認めますし、また当然そうあらなければいかぬと思うのですが、併給制限を受けている人数はどのくらいいらっしゃるのですか。おわかりでしたら……。
  241. 池田行彦

    ○池田(行)委員長代理 山口年金課長。——恩給局、わかりますか。(「お休みにしましょうか」と呼ぶ者あり)
  242. 上原康助

    ○上原委員 今お答えできないというか、あれでしたら、後で答えてください。続けますから、その間調べておいてください。やめたいという方もいますから、進めます。  そこで、この点を恩給局総理府に言うと、これは厚生省の管轄だから我々としてはとおっしゃいますが、総務長官、併給制限をやるのはいかがかと思うのです。その点はぜひひとつ御理解をいただいて、これはしばしば関係者から強い要望が出ておりますので、一挙にできないにしましても、もっと充実した方向改善をしていかれるように特にお願いしておきたいと思います。  次に、恩給法とは直接の関係はないかもしれませんが、そして多くの方々から既に御指摘があったと思うのですが、旧日赤看護婦と元陸海軍従軍看護婦慰労給付金改定措置についてであります。これも本委員会で相当長いこと議論がなされ、また日赤関係者の皆さんを初め元陸海軍従軍看護婦の会の代表の方々から陳情や要望書が再三再四出て、旧日赤看護婦については五十四年度から、元陸海軍従軍看護婦については五十六年度から慰労給付金が支給されるようになったことは御承知のとおりであります。しかし、これは最高三十万円です。今、この慰労給付金の支給額は平均で大体どのくらいになっていますか。
  243. 菊池貞二

    菊池(貞)政府委員 十万円から三十万円を実勤務年数に応じて渡しておりますので、大体十二万円が平均だと思っております。
  244. 上原康助

    ○上原委員 支給されている旧日赤、元陸海軍従軍看護婦それぞれの人数は、どのくらいですか。
  245. 菊池貞二

    菊池(貞)政府委員 五十八年度慰労給付金の支給状況で申し上げますと、旧日赤救護看護婦の関係で慰労給付金を支給いたしました人が千百二十九名、旧陸海軍の看護婦慰労給付金を差し上げました人が千百三十七名、合計で二千二百六十六名でございます。
  246. 上原康助

    ○上原委員 私が申し上げたいのは、これは確かに一時金的な恩給のあれじゃなくして、一時金的性格というか性質で支給されている向きも——一時金というのも変ですが、要するに恩給のように年々改定されるのではなくして、固定化した支給になっているわけですね。したがって、この種のことについても、社会事情経済事情変動変化というものがあるし、物価上昇あるいは国民生活のレベルアップ、いろいろあるわけですから、関係者から毎年要望書が出ていることは御承知のとおりです。「在職年十二年未満の者が多くいるので、これらの者に対しても善処して下さい。」これはたしか勤務年数については十二年以上を対象にしておるわけでしょうね。そうすると、これは勤務年数のとり方は恩給と同じ、額は全く固定化しているということは矛盾するわけで、二点目として「外地在職期間を各種公的年金に通算の措置を講じて下さい。」三点目として「年々物価上昇がはげしいなかで、慰労金の目減りを防ぎ、実質価値維持するために改善措置を講じて下さい。」というふうに元陸海軍従軍看護婦の会の方からは出ている。  これは五十四年度あるいは五十六年度実施という、つい最近ということで、まだ改定の時期でないとあるいはお考えかもしれませんが、私は、やはりこのことについても逐次というか、毎年改定をする方向づけというものをぜひお考えになっていただきたい。このことはそれほど多額の予算がかさむということでもないと思うのですね、長官。この方々は、本当にみずからの青春をそこにささげてきたのだ。そういう方たちにこそ、もっと政治の恩典なりこういった恩給法の国の補償というものの光を当てるべきだと私は思う。この点についてはどうでしょう、ぜひ善処をしていただきたいと思うのですが、これは長官からお答えになった方がいいのじゃないですか。
  247. 中西一郎

    中西国務大臣 確かに、日赤あるいは陸海軍看護婦だった方々、だんだんお年も召しまして、いろいろな要望、期待を持っておられるということはよく理解できます。ただ、制度を始めたときには、十万円ないし三十万円でございますか、ということでお払いするのであって、恩給のように公務員給与ベースが上がったから上げるという性格のものではございませんということを御理解願ってつくった制度であるということは、これはまた御理解いただかなければならない。といって、このままほうっておいていいかということになると、やはりある時期には何か措置をしなければお気の毒ではないかという気持ちも捨て切れない、そういった関係の中での対処でございます。いつ、どうできるということは現段階では申し上げかねますが、そういった方々のお気持ちも察しながら対処してまいりたいと思います。
  248. 上原康助

    ○上原委員 せっかくの御答弁でありますので、ぜひこの点についても、一遍決めたからそれっきりというお立場ではないと私も思うのですが、そろそろそういう時期に差しかかっているというか、来ている。むしろ遅過ぎると私は思いますので、次年度あたりには十分な御配慮をいただきたいと思います。  次に、これは今のことよりもなお悪いので、一時恩給の問題。一時恩給の支給というのは、いまだに昭和二十八年のペースで一万五千円から二万円ぽっきり支給をしている。確かに、一時恩給というわけだからそうかもしれませんが、これも余りにも血も涙もない話ですね。もう五十九年だから、三十年余りたっている。三十年余りたって、恩給はその間にどれだけ改定されたですか。賃金ベースはどれだけ上がったですか。生活はどれだけ向上したですか。  だから、こういうものをほうっておくから恩給欠格者の方々が非常に御不満を持つのですね。実年数十二年といっても、満十二年に満たない十一年十一カ月でも適用されない方だっているわけでしょう、線引きの内容によっては。そういう意味で、一時恩給の受給内容も私は検討していただきたいと思うのです。これまで受けた人全体に遡及してやるかどうかの問題、あるいは恐らく亡くなられた方々も相当いらっしゃるでしょう。改善のやり方、対象をどう線引きするかは、長官、非常に難しい問題があると思うのですが、昭和二十八年に決めた額をそのままいりまでも同じようなことで一時恩給をやっているということは、余りにも今の時勢に合わないやり方じゃないでしょうかね。何とかこの問題は善処するべきだと私は思うのです。政府としての御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  249. 和田善一

    和田政府委員 一時恩給につきましては、昭和二十八年の給与ベースで現在まで支給したという事実は先生御指摘のとおりでございます。一時恩給は戦前は下士官以上にしかなかった制度でございますが、戦後、昭和二十八年に軍人恩給が復活いたしますときにこれを兵にも拡大いたしまして、引き続く実在職年七年以上の兵にも一時恩給を差し上げる。さらに昭和五十年には、兵で引き続く実在職年三年以上あれば差し上げる。それから昭和五十三年には、引き続かないで切れ切れであっても三年以上あれば一時金を差し上げるというような措置で、国の御苦労に対する気持ちをあらわしてまいった次第でございまして、国の微意を表するということで、どうか御理解いただきたいと思います。
  250. 上原康助

    ○上原委員 改定してきたのだと言わぬばかりのお答えですが、改定したとは言えませんよ。余計な言い方かもしれませんが、これではやはり関係者は不満を持ちますよ。長官、もしこの種の問題をもっと適時適切に一時恩給をその都度改定をしておれば、今大キャンペーンを張られつつある恩給欠格者のあの合唱は場合によっては出てこなかったかもしれませんよ。だから局長、この点は、国の気持ちをあらわしているのだとおっしゃいますが、やはりもっと検討すべき事項であるということ。そして、恩給欠格者の問題については既にお答えあったと思いますから触れませんが、これも当然やらなければいかぬ問題だと思うのですが、少なくともこの一時恩給の問題についても、長官、今戦後処理問題懇談会でいろいろ御検討いただいているわけでしょう。さっき私がちょっと聞いておったのですが、十九回ぐらい会議を持たれたというのだから、これは在外資産の補償問題あるいはシベリア強制抑留者への補償問題、恩給欠格者の救済措置等々が主なるテーマのように聞こえないでもないのですが、一時恩給の問題についても少し検討してみてくださいよ。いかがでしょう、長官
  251. 中西一郎

    中西国務大臣 一時恩給の問題は恩給制度固有の問題であって、昭和二十八年に今お話しのような対策を講じて、申請がある都度ずっと払っておるということでございます。これは戦後処理懇としての先ほど申し上げた恩欠の問題とは直接のかかわりがないということだと思うのですが、戦後処理懇は議題としては取り上げておられません。ただ、問題の一環としての勉強はなさっております。
  252. 上原康助

    ○上原委員 これもぜひ検討に値する事項だと思いますので、御留意をいただきたいと思います。  厚生省、さっきの人数わかりましたか。
  253. 山口剛彦

    ○山口説明員 先ほどのケースについて調べさしていただきましたけれども、所得制限その他福祉年金についていろいろな制限がございまして、それをすべて含めた数字は何とか出るのですけれども、その中で恩給関係の方がどの程度かという数字は出ておりませんので、申しわけございませんけれども御了解いただきたいと思います。
  254. 上原康助

    ○上原委員 もし調査できたら、後ほどでも教えていただきたいと思います。  次に移りたいと思います。恩給法の直接のことは以上ですが、ぜひさっき申し上げたこと等については引き続いて御検討なり改善をされることを改めて要望しておきたいと思うのです。  そこで、次は復帰時点の沖縄の、かつての琉球政府時代の公務員年金問題なんですが、いささか時期おくれのような感がしないでもないのですが、経過については多くは申し上げません。要するに、この復帰のときに調整をしておけば一番よかったわけですが、それがあのときは給与とかあるいは身分移行をどうするかということが重点で、なかなか公務員共済とか年金ということについて十分に把握していなかったという面もあって今日に至っているようです。問題は、沖縄における公務員年金制度は本土におくれること十八年もブランクがあるわけですね。その後いろいろの経過措置がなされて、復帰時点の四十七年、一九七二年の五月十五日以降は本土の公務員共済組合法に移行していくわけですが、復帰の時点で二級一般事務職相当と三級一般事務職相当が別々の取り扱いを受けたということがあって、今日ではこの当時の二級一般職であった職種と三級一般職の公務員、これは国家公務員もおれば学校関係もおるし県庁関係もいるわけですが、相当の開きが出てきている。仮に二級一般職の方々が一〇〇とすると、三級一般職の方々の年金額、もちろんこれは勤務年数その他給与の中身はいろいろ千差万別ですから画一的には申し上げられませんが、悪いのになると大体七割、よくて七五%、八割近くだというように、相当の格差が生じているということなんです。したがって、この問題についてはぜひ改定をしてもらいたいということを関係者が大蔵省なりあるいは人事院等々にこれまで何回か御要望をしているようでありますが、なかなか、いや琉政時代の法律に基づいてやってきたんだから今さらというようなお立場をとっておられるやに聞いております。  このことについて恐らく御認識をいただいていると思うのですが、実情は今私が概略申し上げたような中身であるのかどうか、実態はどうなのか、ひとつこのことについてどういう御見解を持っていらっしゃるのか、お聞かせをいただきたいと思います。これは担当は大蔵ですか。
  255. 坂本導聰

    ○坂本説明員 お答えいたします。  先生ただいま御指摘のように、復帰前の職員について共済年金を適用する場合に、二級一般事務職と三級一般事務職で取り扱いが異にされているということは御指摘のとおりでございます。  このような取り扱いになりましたのは、先生も既に御指摘になられましたけれども、復帰前におきましては沖縄において昭和四十五年に公務員等共済法が施行されたわけでございます。この施行に当たりまして、沖縄の職員についてどう扱うかということになったわけでございますが、当時、その前にさかのぼる昭和四十一年に公務員退職年金法というのが施行されておりまして、この施行以後の期間については新法共済として扱う、それ以前については恩給公務員期間なりあるいは職員期間として取り扱うという扱いが昭和四十五年になされているわけでございます。私どもの国共済はこれをそのまま引き継いだわけでございますので、今言ったような結果になっているわけでございます。  ただ、各種共済、国共済、地共済おのおの歴史的沿革がございまして、例えば国共済で申し上げますと、昭和三十四年に共済法ができましたときに、やはり恩給公務員期間なりあるいは旧法期間というものをそのまま分けて引き継いでいるという事実がございます。したがって、それとの関係からいえば均衡がとれているものというふうに考えております。
  256. 上原康助

    ○上原委員 いきさつは今おっしゃるような内容かと思うのですが、均衡はとれていないのですよ、あなた。格差はどのくらい生じているかということと、仮に同等の扱いをされておった場合はどうなっているか、それと、対象人員はどのくらいと見ていらっしゃるのですか。
  257. 坂本導聰

    ○坂本説明員 対象人員につきましては、現在現役として働いておられる方もございますし、私どもとしてはその実態について把握はいたしておりません。
  258. 上原康助

    ○上原委員 対象人員も、もちろん現在働いている方もいらっしゃるし、十二年たっているわけですからやめた方もいらっしゃると思うのですが、私が関係者からいろいろ聞いてみますと、全体で約四千人相当いらっしゃると言うのですね。これはさっき申し上げましたように、国家公務員であるのも、県庁職員、教職員関係等を入れてこれだけ多数に上る方々がこの年金の取り扱いで不利益なというか差をつけられている。このことはほっておけない問題だと私は思うのです。確かにいろいろ言い分は大蔵省にもあるかもしれませんが、結局は何らかの形でこれは是正をする御努力をしていただかなければいけない重要な問題だと思うのです。そういう意味で、後ほど大蔵にはもう少しお尋ねしますが、今私が申し上げたようないきさつ、事情があるということは人事院は知っておられるのか、また、開発庁はこの問題については大蔵省任せなのか、そこいらについてもちょっと、それぞれのお立場で御見解をお聞かせいただきたいと存じます。
  259. 斧誠之助

    ○斧政府委員 人事院といたしましても、今御指摘のような経過であったことは承知いたしております。直接の公務員年金の所管は大蔵省で行っておるわけでございますが、四十五年に沖縄の共済法、琉政の共済法ができまして、そのときに、それ以前の沖縄公務員として在職した期間をどういうふうに取り込むかということは一応のけりがそこでつけられたわけでございます。それを戦後、琉政時代の制度をそのまま国共済に引き継いだという関係でございますし、恐らく地方の方はつまびらかにいたしませんが、地方も同様であったろうと思うわけでございます。その時点ではやむを得ない措置であったのではないか。その後余り問題も起こらないまま現在まで経過してきているという実情であろうかと思います。
  260. 上原康助

    ○上原委員 問題はくすぶっておったのです、起こらなかったのじゃない。これは復帰時点でも、琉政と大蔵省と相当この問題の改善については当時の復帰措置をやった方々のやりとりがあった。しかし今になると、記録も大分たってしまって、大蔵にも当時の担当官がいなくなってますますうやむやにされたという経緯もあるわけで、そこはぜひひとつ、そういういきさつもあるということをお含みをいただきたいと思いますし、それと結局は、大蔵省、開発庁来ておられないというから、あした沖特があるから時間があれば沖特で開発庁の見解を聞くとして、要するに大蔵省令の第四二八〇号、昭和四十七年の十二月二十五日の蔵計というのですか、これで決められているわけですね。全部それで何々というふうに職種も決めて、これに準じてなされておるわけで、これを再検討していただけば解決する問題だ、一口に言うとそういうことでしょう。  したがって、きょうはこの問題についてすぐ結論を出すとかあるいは一〇〇%私が期待する答えが大蔵省のことだから出るとは思っていませんが、少なくとも相当の格差がついて問題であるということは、人事院も、経過はともかくとして大蔵省もお認めになっている。そうであるなら、もう少し内部でいろいろ御検討いただいて、逐次改定をするあるいは是正をする、今日的次元に立った調整の仕方はあると私は思う。そういうふうに御検討をいただきたいと思うのですが、この省令を含めて、そこいらはいかがでしょう。
  261. 坂本導聰

    ○坂本説明員 大蔵大臣通達で処理している点は先生御指摘のとおりでございます。しかし、先ほど申しましたように、復帰前の琉球政府時代においての取り扱いをそのまま踏襲しているものでございます。なお、本土におきましても現在の新共済法は、かつての恩給法あるいはかつての旧法共済をそのまま踏襲しております。このかつての旧共済法と琉球の復帰前の職員期間は同様の扱いになっているという点を御理解いただきたいと思います。
  262. 上原康助

    ○上原委員 そのいきさつも私は十分まだ本土での新旧の関係掌握していませんが、そういう例があるからといって、しかし、これは特殊事情の中で生まれたことは間違いないのです。あのときにアジャストしておけばできなかった問題ではないのです。だから、琉球政府時代にそうなっておったから我々はそれを引き継いだだけだということで解決したと見るわけにはいきませんので、そこはひとつ御理解をいただいて、人事院なり関係者でよく御検討いただきたいと思います。総務長官沖縄開発庁長官でもありますから、非常に重要な問題を含んでいるこの点については、官房長官もおいでになりましたので、給与担当の一番の中心ですから、年金の問題で復帰時代に調整すべきものが調整されなかったがゆえに当時の二級一般職の公務員と三級一般職で相当差が出ているのです。この調整をぜひ御検討いただきたいと思うのですが、この点については総務長官、いかがでしょう。
  263. 中西一郎

    中西国務大臣 実情については坂本共済課長からいろいろ申し上げておりまして、そのとおりでございますが、沖縄開発庁としてはいろいろ勉強させていただきます。ともかく実態を踏まえて、必要があれば関係省庁とも打ち合わせをしたい、かように思います。
  264. 上原康助

    ○上原委員 この点についても特段の改善措置を要望しておきたいと思います。  そこで、官房長官せっかくお時間を割いていただいて御出席いただきましたので、若干ほかの質問も、これとのかかわりがあるのですが、お忙しいお立場ですから先に少し靖国問題を聞かしていただきたいと思います。  この件につきましても、既に本委員会でもあるいは参議院の内閣その他でもいろいろやりとりがなされてきて重複するかと思うのですが、非常に重要な問題であると同時に、本来ならばこの靖国問題というのは余りというか政治色を絡まさないというのが今の憲法の規定なりそういう面でよいと思うのだが、最近はどうも大合唱ですね。百五十九人もそろって、赤信号みんなで渡れば怖くないというような状況。これではちょっと中曽根内閣の政治姿勢や靖国問題に対する考え方というのは非常に疑問を持たざるを得ない。  こういう背景というか、見方が国民の中にもあると思いますので、そういうことを前提として少し尋ねさせていただきたいのですが、既にせんだっての本委員会でも御答弁があったような感じがするのですが、政府の統一見解というのは一体何を指しているのか、政府側の統一見解というのはどういうものなのか、この点からまずお聞かせいただきたいと思います。
  265. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 靖国神社に対して閣僚が参拝をいたします問題につきましては、昭和五十三年十月十七日に参議院の内閣委員会におきまして安倍官房長官が発言したもの、そして昭和五十五年十一月十七日に衆議院の議院運営委員会理事会におきまして宮澤官房長官が読み上げたものの二つでございまして、この二つの政府統一見解をもって今日もずっと踏襲してきておるところでございます。現在におきましても政府はその考え方に立って対処しておるところでございますが、読み上げさせていただいてもよろしゅうございますが、時間によりまして……。  安倍当時官房長官がお答えしましたものは、  内閣総理大臣その他の国務大臣の地位にある者であっても、私人として憲法上信教の自由が保障されていることは言うまでもないから、これらの者が、私人の立場で神社、仏閣等に参拝することはもとより自由であって、このような立場で靖国神社に参拝することは、これまでもしばしば行われているところである。閣僚の地位にある者は、その地位の重さから、およそ公人と私人との立場の使い分けは困難であるとの主張があるが、神社、仏閣等への参拝は、宗教心のあらわれとして、すぐれて私的な性格を有するものであり、特に、政府の行事として参拝を実施することが決定されるとか、玉ぐし料等の経費を公費で支出するなどの事情がない限り、それは私人の立場での行動と見るべきものと考えられる。  先般の内閣総理大臣等の靖国神社参拝に関しては、公用車を利用したこと等をもって私人の立場を超えたものとする主張もあるが、閣僚の場合、警備上の都合、緊急時の連絡の必要等から、私人としての行動の際にも、必要に応じて公用車を使用しており、公用車を利用したからといって、私人の立場を離れたものとは言えない。  また、記帳に当たり、その地位を示す肩書きを付すことも、その地位にある個人をあらわす場合に、慣例としてしばしば用いられており、肩書きを付したからといって、私人の立場を離れたものと考えることはできない。  さらに、気持ちを同じくする閣僚が同行したからといって、私人の立場が損なわれるものではない。  なお、先般の参拝に当たっては、私人の立場で参拝するものであることをあらかじめ国民の前に明らかにし、公の立場での参拝であるとの誤解を受けることのないよう配慮したところであり、また、当然のことながら玉ぐし料は私費で支払われている。  以上が内閣総理大臣等の靖国神社参拝についての政府としての統一見解でございます。これが安倍官房長官昭和五十三年にお答えをした内容でございます。  また、昭和五十五年には宮澤官房長官が述べておりますが、議運委員会理事会におきまして申し上げております考え方も、これと同じような中身のものでございます。  以上でございます。
  266. 上原康助

    ○上原委員 安倍官房長官のはいいですよ。宮澤官房長官が議運で述べたのを言ってくださいよ。
  267. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 「国務大臣の靖国神社参拝について」   政府としては、従来から、内閣総理大臣その他の国務大臣が国務大臣としての資格で靖国神社に参拝することは、憲法第二〇条第三項との関係で問題があるとの立場で一貫してきている。  右の問題があるということの意味は、このような参拝が合憲か違憲かということについては、いろいろな考え方があり、政府としては違憲とも合憲とも断定していないが、このような参拝が違憲ではないかとの疑いをなお否定できないということである。  そこで政府としては、従来から事柄の性質上慎重な立場をとり、国務大臣としての資格で靖国神社に参拝することは差し控えることを一貫した方針としてきたところである。という中身でございます。
  268. 上原康助

    ○上原委員 五十三年の安倍官房長官当時の見解よりも、この五十五年の宮澤官房長官の見解というのはよりわかりやすいですね。もちろん我々はこの見解そのものにも十分満足しているわけじゃないですがね。  そこで、時間も余りありませんので、法制局長官にこれとの関連でお尋ねしておきたいのですが、内閣総理大臣という肩書は、国家機関に用いるというか通用する公称だと私は思うのですが、それは一体どうでしょう。
  269. 茂串俊

    ○茂串政府委員 まさに内閣総理大臣という呼称は、憲法にも規定されておりますところの公称であるということは、そのとおりでございます。
  270. 上原康助

    ○上原委員 そうであるとするならば、これはもうだれが聞いたってそうだと思うのですね。中曽根康弘というのはこれは中曽根さんの個人のお名前だと思うのだが、内閣総理大臣たる中曽根康弘とかあるいは内閣総理大臣である中曽根康弘という場合は、これはまさに国務大臣、公称じゃないですか、どうですか。そうでしょう、法制局長官。余り余計なこと言わぬで簡単に答えてくださいよ。
  271. 茂串俊

    ○茂串政府委員 その点につきましては、五十三年当時からもいろいろと議論が国会でもなされておるわけでございますが、その都度政府の方から申し上げておりますとおり、また、先ほどの五十三年十月十七日付の当時の安倍官房長官がお示しになりました政府統一見解にもありますとおり、肩書を付したからといって必ずしもそれが公的な立場をあらわすものではない。いわば私人としての立場でいろいろ行為をされ、または文書に書かれるという場合であっても、内閣総理大臣であるということを示す意味で、その地位をあらわす意味でそういう呼称をつけるということが慣例になっておるということでございまして、その公称をつけたからといって必ず公の立場であるということをあらわしておるとは限らないということでございます。
  272. 上原康助

    ○上原委員 そういうすれ違い、ごまかしはいかぬですよ、法制局長官。私はもちろん法律は詳しくありませんが、かつての法制局長官にも、高辻さんといって、非常に三百代言をお使いになる方がおった、沖縄復帰時代も。まさにあなたのこれも、三百代言もいいところです。  官房長官、これは統一見解が二つもあるというのはおかしいのじゃないですか。一体どっちが本物なんですか。安倍さんの官房長官時代の五十三年の統一見解と宮澤さんの五十五年のと、今ごろになって二つ政府の統一見解ですと言ったって、これは通用しませんよ。一つにまとめてくださいよ。
  273. 茂串俊

    ○茂串政府委員 これらの統一見解は、それぞれ国会の御議論その他いろいろな経緯があって出されているものでございますが、その内容としましては、五十三年の政府統一見解は、当時、公私の別につきましていろいろと御議論がありまして、それを中心にして出された統一見解でございます。  それから五十五年の場合には、これは靖国神社を中心としまして、神社の公式参拝というものが果たして憲法上許されるかどうかという点が直接的に御論議が出てまいりまして、それに対応してこのような統一見解が出されたわけでございまして、両者は決して矛盾するものではございません。
  274. 上原康助

    ○上原委員 公人か私人かという問題は、それは肩書をつければ公人であるのですよ、常識的には。それが日本的常識であり、日本的言葉なんだ。あなた方はそれを、ああでもない、こうでもないと言ってみんなごちゃごちゃするから余計おかしくなる。  しからば、五十三年のは公私の別について述べたもの、五十五年は公式参拝が憲法に抵触するかどうかについての見解だと。しかしこれは、そういうことでは政府の統一見解が両方あるということもおかしいもので、本来ならばこれは官房長官、統一見解だから一つにまとめなければいかぬですよ。どっちが本物か。  そこで、さっきは、内閣総理大臣中曽根康弘ということを使えば、政府機関としての、国家機関としての公称であるということは法制局長官はお認めになった。まさにそれは常識でしょう。そうしますと、この五十五年の中では、「政府としては、従来から事柄の性質上慎重な立場をとり、国務大臣としての資格で靖国神社に参拝することは差し控えることを一貫した方針としてきたところである。」これはおかしくなるんじゃないですか。まさに内閣総理大臣という資格で参拝したわけでしょう。これは公式参拝じゃないのですか、公的参拝じゃないのですか。公的参拝と公式参拝とどう違うのですか、それが一つ。  その前に、法制局長官、今あなたはいろいろおっしゃいましたが、だんだんおかしくなっているのですよ、皆さんの論理というのは。かつて、これも法制局長官が昭和五十二年のころも参議院の内閣委員会でお述べになった。その後にこの五十三年の政府見解は出たと思うのですが、当時の真田法制局長官は、私的であるとするためにいろいろ配慮すべき点を挙げているわけでしょう。私的であるという条件はどういうものがあるのですか。公的参拝という基準なり、あるいはその公的参拝であるという条件はどういうものがあるのか、私的、公的に分けて説明してください。
  275. 茂串俊

    ○茂串政府委員 ただいま委員のお示しのとおり、五十年の前半からこの問題はいろいろと議論がされたわけでございますが、先ほどお述べになりました五十二年の見解と申しますのはちょっと私手元にございませんけれども、当時は真田法制局長官でございます。真田長官が五十三年の八月に参議院の内閣委員会で同じ問題に対しましてお答えをいたしておりまして、その趣旨といたしましては、法制局としてはいまだかつて、先ほどお話のあったような、肩書をつけるとかいうようなことでそれが公的になるというようなことを申し上げたことはありませんと。これはまた委員も御承知だと思いますけれども、いわゆる四要件という言葉がよく使われております。すなわち先ほどの安倍見解にもございましたように、名前に肩書をつけること、公用車を使うこと、それから、いわゆる同行者を従えること、あるいは玉ぐし料を公費で支出すること、これを俗に四要件と言っており、またこういう言葉を使っていらっしゃる方が多いのでございますけれども、その四要件のうち、玉ぐし料を公費で支出することになりますればこれは公的な資格で参拝をしたということになるわけでありまして、これは公的参拝じゃないという言いわけをするわけにはいかぬであろう。ただ残りの三つにつきましては、これは安倍見解も述べておられますように、これはいずれも私人という立場でそのような行為をなされることがある、すなわち公用車をお使いになることもあるし、また肩書を付するということもあるし、また、何人かの閣僚が総理に同行されることもあろう、しかし、それらの事柄からして当然に公的な参拝になる、あるいは公式参拝になるということはないのであって、その三つは、これはいずれも私人の立場ということで行為されることもあるということでございまして、いわば玉ぐし料の公費からの支出、これは非常に問題でございますけれども、それ以外の点につきましては、私人という立場でそのような行動をされることがあるということをたびたびお答え申し上げているところでございます。     〔池田(行)委員長代理退席、委員長着席〕  それから先ほど、中曽根総理大臣というお言葉がございまして、靖国参拝の際に、内閣総理大臣たる中曽根康弘あるいは内閣総理大臣である中曽根康弘というようなお言葉をお使いになったようでございますが、これ自体私からとやかく申し上げる筋合いのものではございませんけれども、これは既に昨年の五月十日に参議院の内閣委員会で野田委員から前任の角田法制局長官が質問を受けまして、それに対しまして答弁をされておりますところでございまして、特にそのようないわば形容詞を名前の上におつけになったからといって、すなわちそれが公的な資格で参拝をしたということにはならないということを御説明申し上げているところでございます。
  276. 上原康助

    ○上原委員 そんなことが通りますか、あなた。そうしますと、ここでさっきも申し上げましたように、「国務大臣としての資格で靖国神社に参拝することは差し控えることを一貫した方針としてきたところである。」というのは何を意味しますか。内閣総理大臣たる中曽根康弘というと、だれが見たって社会的には国務大臣としての資格で行ったわけでしょう。それが通用しないというばかげたことはないですよ。そんなくだらぬ質疑応答をするから、国民もこの問題についておかしいのじゃないかとおっしゃる。それは法制局長官、幾ら詭弁を使おうがそういう論理は通らぬ、幾ら私が法律の素人でも。それはどう考えたっておかしいですよ。  じゃあ逆に聞きますが、春の例大祭とか靖国神社の秋の例大祭、そういうものは、靖国神社にしてみればそれは宗教活動でしょう。これはどういう御認識ですか、官房長官、法制局長官も。
  277. 茂串俊

    ○茂串政府委員 例大祭そのものは靖国神社がとり行われますところの宗教的な活動であると思います。
  278. 上原康助

    ○上原委員 ますますおかしくなるのじゃないですか。宗教活動、宗教的であろうが靖国神社にとっては宗教活動に間違いない。  官房長官、我々がこの問題を議論をする視点というのは、やはり憲法二十条で言う政教分離の原則が守られているかどうかということなんですよね。それは中曽根康弘という総理大臣であろうがあるいは藤波官房長官であろうが、官房長官が個人として靖国に行ってお参りしようが何しようが、私たちはそのことをとやかく申しません。それは信教の自由も憲法においては保障されている。  しかし、今もお認めになったように明らかに靖国神社にとっては宗教活動であるというそのさなかに、内閣総理大臣という肩書をもって靖国神社に参拝をするということが憲法二十条や八十九条で言うこととの関連が出てくるのであって、それを肩書を使ったからといって、いやこれは私人だとか——最初は皆さんも、昭和五十二年度ころまでは、これは本当に公用車を用いず私用車を用いること、二番目に、記帳に肩書をつけず氏名のみを記すること。だから、かつて三木総理大臣は三木武夫とだけお書きになったのだ、総理大臣とお書きにならなかった。そのときまでは、少なくともこの種の原則というものは、やや——ややですよ、尊重するような立場をとっておった。三点目に、公職にある者を随行させないこと、玉ぐし料を公金から支出しないことの四項目を挙げて、これがいわゆる私的参拝であるという四要件なんですよね。これがその後どんどん崩されて、公用車を用いずは、公用車を用いたってと、さっき答弁があったようにだんだん公用車を用いた。肩書記帳はもう崩れましたね。それは三木さんだけ。あと福田さん、大平さん、鈴木前総理、そして中曽根総理と、全部肩書記帳。公職にある随行者、これも、一時どなたか随行していって問題になったから秘書官とSPだけということが、今度は変わってきた。これじゃ統一見解と憲法二十条との——八十九条、玉ぐし料を公的に出すということだけは今歯どめがかかっているけれども、これじゃ納得できないんじゃないですか。官房長官、どうですか。この五十五年の統一見解と今皆さんがやってきたことは、一貫してやってきたと言うが、一貫してなし崩しにしてきたわけですよ。そうであるなら、この統一見解については政府はもう一度きちっと整理をするか、中曽根内閣のこの靖国問題に対する見解というものをどうかはっきりさせてください、ここで。
  279. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 先ほど法制局長官からお答えをいたしましたように、五十三年の安倍官房長官のときの見解というのをお答えをしました中身は、私的か公的かといったようなことについて御論議が大きな問題になりまして、そこで政府考え方示した。そして五十五年の宮澤官房長官の場合には、いわゆる公式参拝が違憲か合憲かという御議論の中で、政府としての考え方をお示しをしたということで、それぞれそのときの問題になっておることに対して政府としてどう対処するかということを政府の統一見解として申し上げてきておるところでございますので、今これらの二つの問題について、例えばこれを一本にするとかあるいは整理して考え方をさらに統一見解を出すかというふうに考えないで、むしろこれらの線に沿って現在の政府もこの方針を踏襲し、政府の統一見解として対処しているというふうに考えておるわけでございます。  先ほど来いろいろ御指摘をいただいております、特に内閣総理大臣である中曽根康弘が参拝をしたということにつきまして、これはもう明らかに公的な意味合いを持つのではないかという御意見でございますが、これはごく一般的に中曽根康弘がお参りをした、その中曽根康弘は現在内閣総理大臣であるということを、これはもう隠しようも消しようもないわけでございまして、そのことを一般的に申しておる、こういうふうに私どもは理解をしておるわけでございます。  例えば上原先生が道を歩いていられる。上原先生が歩いておられると思いますけれども、周りから見れば、衆議院議員上原康助先生が歩いておられるということになるわけで、これは中曽根康弘がお参りをしたといいましても、現在内閣総理大臣である中曽根康弘がお参りしたということが、これはもう明らかなことでございますから、そのことをそのまま申し上げておるというのが総理大臣の表現になっておるのでございます。
  280. 上原康助

    ○上原委員 僕みたいな小物と天下の総理大臣と比較されていささか恐縮ですが、それは藤波官房長官らしい御答弁じゃないですね。人のよいあなたがそういうふうに問題をすりかえたら、これは国民の期待と私らの官房長官に対する信頼感が薄れますよ、そういうふうにごまかされては。中曽根康弘というのは内閣総理大臣、日本の現職の首相、自民党総裁である、これは全部がわかりますよ。そうであるならば、あえて内閣総理大臣である中曽根康弘と書かないで、中曽根康弘と書いていいんじゃないですか。内閣総理大臣である中曽根康弘と書いたから問題だと私は言っているわけですよ。そこに政治的な意図、靖国神社を国家的に利用していきたいという皆さんの腹づもりがある、本音があるんだよ、それが問題なんですよ。そこは幾らすりかえようとしたって、ある程度この問題を理解する方々はそう見ませんね、官房長官。  そこで、この問題はだんだん見解というか、整理されていくと思いますが、さっき申し上げましたように、政教分離の原則が守られているのかどうかがこのことの視点であって、靖国神社をどうこうということでない。しかもこれはだれが考えても、春の例大祭にしても秋の例大祭にしてもあるいはその他の靖国神社がやる行事は宗教活動であることは間違いない。そのときに総理や閣僚が大挙して、赤信号みんなで渡れば怖くない式でいくということに問題があるということを私は指摘をしているのである。そこで統一見解は守るというならそれで結構。逆に、せめてその点だけは忠実に守ってもらいたい。  そこでお尋ねしますが、今度自民党の見解が出ましたね。これは、簡単に言うと、公式参拝もオーケー、玉ぐし料を公費から出したって憲法違反でないんだというふうに言って、政府もできるだけそういうふうにさせるように努力をするということなんでしょうが、これもまた中曽根さん一流のやり方だと思うのですね。まず問題をぶち上げておいて、だんだん党を先行させていって、そして何か世論の操作を図りながら、最終的にその方向が政党内閣だということでやろうということかと思うのです。そうしますと、自民党がお決めになった見解と今の政府の統一見解なりお立場は違うということは、ここで明言できますか。
  281. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 従来、そして現在、政府の統一見解として政府の方で対処をいたしております方針と、今度自民党のいわゆる奥野小委員会でおまとめになりまして、総務会を経て、こういった方向で努力をするようにという御要請のありましたその中身とは、違ったものになっておるというふうに考えております。
  282. 上原康助

    ○上原委員 法制局長官にお尋ねしますが、玉ぐし料を公費から出す、このことは明らかに憲法に違反するというか憲法上疑義がある、この点は間違いないですね、これが一つ。  もう一つは、仮に靖国神社への参拝を閣議でお決めになるとかあるいは国の行事として、国の行為としてやる場合は、これも憲法に抵触すると思うのですが、この二点はぜひ確認していただきたい。
  283. 茂串俊

    ○茂串政府委員 閣僚が靖国神社参拝に際しまして仮に公費から玉ぐし料を支出いたしますと、その参拝が公式参拝であることを否定できないことになるわけでありまして、このように公費から玉ぐし料を支出し、そして参拝を行うといたしますと、これらの行為については憲法第二十条第三項ないし第八十九条との関係で憲法上の問題がある、つまり、違憲ではないかとの疑いをなお否定できないということでございまして、これは先日の当委員会でも申し上げたとおりでございます。  第二点の、仮に閣議で靖国神社参拝を決定いたしまして、そして公的にと申しますか公式に神社を訪れて参拝をするということになりますれば、これはまさに前々から私どもが申し上げておりますように、内閣総理大臣あるいはその他の国務大臣としての資格における参拝でございます。したがいまして、これにつきましては従来の政府統一見解のとおり憲法上問題があるということになるわけでございます。
  284. 上原康助

    ○上原委員 あと若干質疑がありますので、この靖国問題はきょうはこれでとめておきたいのですが、私たちは、冒頭申し上げましたように、靖国神社が戦前の日本の国家体制とどういうかかわりがあったのか、そういう歴史的な背景というものを抜きにしてはこの問題を論ずるわけにはいきません。しかも、さっきからお認めになりましたように、憲法二十条、八十九条とのかかわりでまだまだ疑義があることは法制局長官もこれは何回かお答えになっている。そういうことを十分踏まえて、官房長官なり中曽根内閣はこの問題を慎重に取り扱って、取り扱うというか、この問題については国民のいろいろな意見があるということを踏まえて慎重にやっていただきたいということを強く求めて、この点についてはひとまずおいておきたいと思います。官房長官、どうもありがとうございました。  時間が残り少なくなりましたので質問をちょっと残してしまいますが、せっかく人事院が参りましたので、特殊勤務、さっきのあれとの関連でちょっと指摘をしておきたいわけです。あと、戦後処理の問題についてもちょっと申し上げたかったのですが、時間がなさそうですから……。  給与局長、私はせんだっての委員会でも特地手当の問題とこの異動保障をお尋ねしたのです。これも全国的にそうなっているのじゃないかと思うのですが、例えば沖縄の場合を言いますと、特地手当の異動保障について支給されていないというのですよ。ですから調整手当並みの、三年間にわたってぜひ特地手当の異動保障というものをやってもらいたい、新設してもらいたいという強い要望が出されております。これは、沖縄県内の場合ですと特地勤務手当支給対象の官署は七十一カ所あって、内訳が、六級地が八、四級地が一、三級地が五十八、二級地が二、一級地が二となっておるのですが、これらの官署からそれ以外の官署への異動に伴う特地勤務手当の異動保障がないため異動後の生計に大変支障を来す実情である、こういう問題があるということを御理解いただいて改善措置をお願いしたいということ。  もう一つは、手当に関する件ですが、特殊勤務手当、これは人事院規則のたしか九一三〇ですね。ハブ生息地作業手当というものを新設してもらいたいということ。これはどういう所かといいますと、附属農場とか演習林、熱帯農学研究施設、熱帯海洋科学センター等々で、野外における作業、実習、研究等に従事をしている職員が相当数いらっしゃる。この問題が手落ちになっておるということ。  それといま一つは、特殊勤務手当の方で、その第二条の第八項及び第九条で、種雄牛馬取扱手当というのがあるようですね。だが、最近は御承知のように人工授精作業というものが非常に発展というか、してきておって、雌牛馬及び豚の人工授精作業に従事をする職員に対してはこの特殊勤務手当がないということなんです。これは何も沖縄だけのことじゃないと私は思うのです。だから、このようなことについては今度の人事院勧告のあれでぜひ検討していただいて当然のことじゃないかと私は思うのですが、ひとつ御検討いただきたいし改善をしていただきたい。  それと、病院での勤務者の場合は、手術部とか外来者勤務の方々への調整面ももう少し改善する必要があるのではないか。薬剤を扱う人々あるいはその他の看護助手等の調整についてももう少し見直しをする面があるのじゃないかという指摘がありますので、まとめてひとつお答えをいただきたいと思います。
  285. 斧誠之助

    ○斧政府委員 特地手当につきましては、離島とか僻地とか、そういうところで勤務をしてもらう場合に、非常に生活不便でございます。そこから来る精神的な負担もありますし、それからいろいろの経費もかかるということで手当をつけてございます。そこから離れますとそういう手当をつける条件から解放されるわけでして、調整手当の場合とはいささか勤務に着目しているという点で趣を異にしているところがございます。したがって、そこに異動保障をつけるというのは理屈を見つけるのがなかなか難しいというのが一つでございます。  それから特殊勤務手当につきましては、これは著しく危険、不快、不健康、こういう条件のもとでつけるということでございます。公務の中には危険、不快、不健康というのがいろいろあるわけですが、その中で著しいという程度に達したものということで実は手当を考慮しておるわけでございます。申し出のハブにつきましては、ハブ自身が非常に危険な動物であるということは我々もよく承知しておるのでありますが、その勤務の環境あるいはハブから危害を受ける頻度、可能性、こういうものも考慮しながらこの点は研究していきたいと思っております。  それから種雄牛馬ですが、これは、人工授精の場合は精液採取を必要としますし、自然交配の場合は雌のところに連れていって交配させるわけですが、その場合に非常に大きな体をした馬とか年とかいうものが我々の聞くところによりますとどうも非常に興奮するようでございます。かむとか、けるとかということがありまして、雄の牛馬を扱うのは非常に危険であるということで手当をつけてございます。ところが、雌の場合とか豚は幾らか体格が小さくなりまして、危険の度合いが著しいまでに達しておるかどうかというところの認定がまだ我々の方ではそこまで至っていないということでございますので、御了解を願いたいと思います。  それから、その他今病院関係等ございましたが、それはいろいろ実情を聞かせていただきながらまた勉強したいと思っております。
  286. 上原康助

    ○上原委員 これで終えますが、異動保障の問題にしてもなかなか理屈づけが難しいと言うけれども、やはり検討に値する点だと思います。それと、何も今、雄だけが暴れるんじゃないのです。雌だって暴れますよ、これは。男女平等だ。動物も男女平等だし、その点もひとつ十分御検討をいただきたいと思います。終えます。
  287. 片岡清一

  288. 三浦久

    三浦(久)委員 まず労働省にお尋ねをいたしたいと思います。  労働省は四月十九日にいわゆる男女雇用平等法案要綱をまとめて、労働大臣の諮問機関である婦人少年問題審議会へ諮問をいたしております。これは三月二十六日の同審議会の「雇用における男女の機会の均等及び待遇の平等の確保のための法的整備について」という建議を受けてのものでありますけれども、何よりも婦人に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約の批准に向けての国内法の整備、そういう性格を持っているものであります。ところが、この法案要綱を拝見をしておりますと、差別撤廃条約に言う男女差別の撤廃というものに全く逆行するものとなっていると言わざるを得ないと思うのであります。世論の評判も芳しくありませんね。  例えば毎日新聞は「働く女性の期待裏切る」こういうふうに言っております。また朝日新聞は「「男社会」脱皮できず 「理念」示さぬ折衷案 保護と平等をバーター」こういうふうに酷評をいたしておるわけであります。そして多くの女性からは、努力義務ばかりで人権を保障していない要綱は婦人差別撤廃条約の条件を満たしていないとか、また、採用時から基幹職と補助職に分ける身分制度を導入して、平等法でかえって差別が助長されるのではないか等々の危惧が寄せられているというふうに報道されております。喜んでいるのは財界ぐらいのものです。五島昇という日商会頭臨時代行は、法案要綱について、大体我々の希望が盛り込まれているようだ、こう言っているわけです。大変満足の意を表明しているわけでありますけれども、若干法案の中身を見てみます。  そうすると、まず女子労働者の募集、採用について均等な機会を与えるように努めなければならない、これは禁止規定または強行規定ではなくて、努力義務になっているのです。また、配置、昇進について均等な取り扱いをするように努めなければならない、これも努力義務であります。ですから結局募集、採用、配置、昇進、これについては努力義務ということになっていますね。そして禁止規定、強行規定になっているのは教育訓練の問題、福利厚生の問題、さらに定年で男女差別をしてはならないという問題、また結婚、妊娠、出産等による退職、解雇、こういうものをやってはいけないということ。この定年や退職、解雇という問題はもう判例で確立されている問題ですから当然なことだと思います。こういう規定と引きかえに、女子の時間外労働、休日労働、深夜業についての規制を大幅に緩和しているというのが特徴になっていると思うのです。  そこでお尋ねしたいのですが、婦人少年問題審議会の建議では配置、昇進については禁止規定、強行規定になっていたのに、法案要綱では努力義務に後退しているわけでありますけれども、その理由をお伺いいたしたいと思います。
  289. 佐藤ギン子

    ○佐藤説明員 婦人少年問題審議会の建議では、配置、昇進につきましては強行規定とすべきであるという御意見と、努力義務規定であるという御意見がございます。強行規定とすべきであるという御意見は公益の先生と労働者側の委員の御意見でございまして、努力義務規定とすべき意見は使用者の御意見なのでございますが、労働省といたしましては、この審議会での審議の経過と建議の内容を踏まえながらも、配置、昇進につきましては、終身雇用慣行を前提としております我が国の企業の雇用管理というものの中では勤続年数の平均的な差というのは非常に重要な要素でございまして、これを無視することはなかなかできないということから、我が国の現状を踏まえまして当面は努力義務規定とすることが適当だろうと判断したわけでございます。
  290. 三浦久

    三浦(久)委員 それは私は理屈にならないと思うのです。諸外国の例との関連もありますけれども、なぜ昇進についての差別撤廃を禁止規定にできないのかということです。女子であることを理由に、それだけを理由にして昇進に差別をつけてはならないということは当然なことであって、我が国の慣行とかいろいろ説明をされますが、結局は労働省自体が使用者側の意見に押された結果こういうふうになって後退したのだと私は言わざるを得ないわけです。雇用については、まず入り口から出口まできちっと男女平等というものを実現しなければならないし、私はそれが差別撤廃条約の趣旨だと思うのです。そして、それをまた実効あらしめるためにこのいわゆる男女雇用平等法というものを私は制定をしているのだというふうに思うのです。ですから、こういう大きな後退、いわゆる募集、採用、そして配置、昇進、これを努力義務にしてしまったということ、特にこの配置、昇進については建議よりももっと後退をしている、そういう法案要綱を出してきたということは、私は非常に遺憾であります。本当に労働省が男女差別をなくす、そういう強い意思を持っているのかどうか、このことに私は疑いを持たざるを得ないと思うのですね。  そこで労働省にお尋ねいたしますけれども、現在、就職に際しての差別、初任給に際しての差別、また、その他賃金、昇進について等々の男女差別というのは厳然として存在をしていると思うのですが、その点についての御認識はどうなんですか。
  291. 佐藤ギン子

    ○佐藤説明員 現在、雇用の場では男子と女子ではまだまだ違う取り扱いが行われております面は、募集、採用に始まりまして定年退職まで、いろいろあると思います。ただ、その違う取り扱いの中でどこまでが差別的取り扱いであり、どこまでが合理的理由がということにつきましては、個々に見なければならないと思いますが、先生おっしゃいますように、まだまだ雇用の場で機会と待遇の均等を確保していくためには私どももやらなければいけないことはたくさんあるというふうに考えております。
  292. 三浦久

    三浦(久)委員 それではもう一つお尋ねいたしますが、その現在存在している差別というものを撤廃をする、そのためにいわゆる男女雇用平等法というものを制定するのではないのですか。
  293. 佐藤ギン子

    ○佐藤説明員 現在、企業の中で行われております男女異なる取り扱いの中で、合理的な理由のないものにつきましては私どもとしてはなくしていきたい、そういう考え方から関係法案の御審議をいただいているところでございます。
  294. 三浦久

    三浦(久)委員 そうすると、一番大事な問題は、募集とか採用とか配置とか昇進とか、そういう問題だと思うのですね。これについて努力義務になっているということが私はどうしても理解ができないのですよ。この要綱では両方とも「努めなければならない」となっていますね。「均等な機会を与えるように努めなければならない」、もう一つは「均等な取扱いをするように努めなければならない」。「努めなければならない」ということはどういう意味なのでしょうか。
  295. 佐藤ギン子

    ○佐藤説明員 企業でそのようなことをなくすように努力する努力義務規定法律で定めるということでございます。ただ、この問題につきましては、努力義務規定になりました部分につきましては、大臣が関係審議会の御意見を伺いまして指針をつくりまして、この指針に基づいて企業には指導をしていくという考え方でございます。
  296. 三浦久

    三浦(久)委員 そうしますと、努力をすれば結果的には男女差別になってもやむを得ないということになるのじゃありませんか、努力義務なんですからね。努力しさえすればいいので、結果的には男女差別というものが出てきてもこの法律では何ら規制することができないということになりますね。  今、指針の問題を言われました。労働大臣の指針、この指針の問題についても、それはこういうものが差別になる、こういうものが差別になりますよ、そういうものを具体例を挙げていくのだろうと思いますけれども、そうすると、指針に従って行政指導をしてもその指針を守らない場合にはどうなるのかということが出てきますね。守らなければそれっきりの話になるのじゃありませんか。それは後で婦人少年室長の指導、助言、勧告とか、また調停委員会とか、いろいろな問題が出てきますけれども、それはまた順次お尋ねをしていきますけれども、結局、こういう募集であるとか採用であるとか配置であるとか昇進であるとかという問題は、そもそも禁止規定にしてさえ実効を保つことは難しい問題なんです。だれだって、おまえは女だから採用しませんでしたよなんて言う人はいないのですよ。あなたは女性だったから昇進させなかったのですよということを言う人はいませんよ。だから、禁止規定にしてさえその実効性を保つことは非常に難しい問題なんです、いろいろ言い逃れができる問題ですから。それを禁止規定にもしないで、そして努力義務にまで落とし込むというようなことでは、労働省のいわゆる事業主に対する行政指導というものは本当に貫徹されるのかどうか、その熱意を私は疑わざるを得ないというふうに思うのですね。  それで、見てみますと、この努力義務の問題についても禁止規定の問題についても、これに違反した場合に罰則の規定すらない。そうですね。それではどういうやり方でもって労働省が意図している男女差別の撤廃というものを実効あらしむるようにしようとしているのか、その点をちょっとお伺いしたいというふうに思うのです。
  297. 佐藤ギン子

    ○佐藤説明員 一つは、先ほど申し上げました、大臣が指針をつくりまして指導していくというのが一つでございます。  それからもう一つは、婦人少年室長が指導、勧告等の権限を持つわけでございますので、法律規定をフルに活用いたしまして企業には指導いたしたいというふうに考えております。  それからもう一つは、調停の手続が定められておりまして、紛争が生じました場合には学識経験者の先生にお願いしまして調停をしていただくという方法など、いろいろな形で実効を確保していくように努めてまいりたいと考えております。
  298. 三浦久

    三浦(久)委員 もう一つは、結局企業努力というのも一つあると思いますね。そうしますと、その指針をまず最初につくって、それを守ってもらうようにするのだ、こうおっしゃっていますけれども、その指針の内容についてはどんなことをお考えになっていらっしゃいますか。
  299. 佐藤ギン子

    ○佐藤説明員 指針につきましては、関係の審議会の御意見を伺ってこれから決めるところでございますから、まだこの時点でどういうものということを明確には申し上げられないのでございますが……(三浦(久)委員「例示してください、例えばこんなものがあるとか」と呼ぶ)ところが、ここのところはなかなか、今後御意見を伺いませんと、労使の方々それぞれに御意見がございますので、十分御意見を伺いながらまとめてまいりたいと思います。
  300. 三浦久

    三浦(久)委員 それは、例えば要綱の募集、採用、配置、昇進、この四つの問題について指針を出すというわけでしょう。そうするとこの内容になるわけですね。そうすると、それはやはり、守らなくても、努力すればいい、いわゆる努力義務だけの問題になるのじゃないですか。それでは、守らなかった場合にどういう法的な強制力がありますか。
  301. 佐藤ギン子

    ○佐藤説明員 一つは、こういう指針が世の中に公表されますと、これまで私ども見ておりまして、マスコミが大変に御熱心に報道してくださいますので、こういうものはいけないのだということはマスコミ等を通じて広く世の中の方にわかっていただけるわけでございまして、企業の方たちもそういうものを守っていただくような、守っていただかないとなかなか企業としてもイメージその他の観点から難しいというようなことで、むしろ罰則その他で強制するというよりも、使用者の方で自主的に御自分のところの雇用管理を改善していくという風潮が生まれてくるということを私どもは特に期待をしているところでございます。
  302. 三浦久

    三浦(久)委員 その期待が私は甘いと思うのですね。企業の善意に期待をするというようなことで男女の差別の撤廃が実現するとお思いなんですか。賃金の問題にしても、労働基準法の第四条に、賃金について差別してはいかぬという、そういうのがありますね。これは罰則の規定がある。それだってあなたがさっき答弁されたように、一つも守られていないとは言わないけれども、そういう差別というのがうんと現存しているのですよ。男女で差別してはいけないというのは、もう日本国じゅうの人が知っているでしょう。知っていたってやっているのです。また、企業の中では、不当労働行為をやってはいけないということは知っていますよ。しかし、自分の利潤追求のためには、事業主というのは平気で不当労働行為をやるでしょう。だから労働委員会が非常に繁盛しているじゃありませんか。  ですから、ただ単にそういう企業主の善意に期待をするのですというようなことでは、法律というのは何のためにつくっているのだということになるのじゃありませんか。確かに、こういう法律をつくることによって、あなたたちは行政指導の足がかりというものはできるかもしれない。しかし、一切が事業主の善意に期待をするというだけの話で、何ら強制力がないわけですね。こんなことで本当に男女平等を実現することができるかどうか、私は非常に疑問であります。  それで、あなた先ほど、都道府県の婦人少年室長はそういう紛争があったときには指導、助言、勧告をするということを言われましたね。では、指導、助言、勧告に従わなかったときに、法的拘束力はありますか。
  303. 佐藤ギン子

    ○佐藤説明員 従われなかった場合には、特に法的な拘束力はないわけでございますが、私どもとしては、そういうものに従っていただくように精いっぱい努めたいと思っておりますし、もしそういうものに従っていただけないという場合でも、さっき申し上げましたように、調停その他の手続をフルに活用して効果を上げてまいりたいと考えております。
  304. 三浦久

    三浦(久)委員 調停の話が出ましたから言いますけれども、これに調停、書いてありますが、調停は、募集、採用については除外しておるでしょう。私はそれも非常にけしからぬことだと思っておるのですけれども、除外した理由については、時間が、ちょっとおしりが詰まっていますので聞きませんけれども、それではこれはどういう場合に調停手続が開始されるかというと、双方申請なんです。それからまた、一方の申請であったときには相手の同意が要るのです。同意がないと、申請だけしても調停手続に移行しないのですね。そうすると、調停に乗せるためには、企業主がうんと言わなければ調停が始まらないということですよ。これは一体どういうことなんです。私は、実質的にはこの調停委員会の機能というのは全然働かないというふうににらんでいますけれども、この問題、どういうふうにお考えですか。
  305. 佐藤ギン子

    ○佐藤説明員 労使関係の場合には、一般に調停は原則といたしまして両当事者の合意に基づいてやらないとなかなか実効が上がらないということから、調停につきましては、一方の申請がありました場合に相手方が同意するか、あるいは両方が調停を受諾するという場合に行うことになっているわけでございますが、当初から当事者の一方が全然受けないということでございますと、せっかく調停案をつくりましてもそれが守られないという結果になりやすいわけで、そういうところから、両方の合意に基づいて調停を行い、また、その結果を十分両当事者に守っていただきたいという考え方でこのようになっているわけでございます。
  306. 三浦久

    三浦(久)委員 それは全く、あなたたち、熱意がないですよ。それなら、一方の労働者が調停の申請をしたときには事業主は出頭しなければならないとかなんとか、そのぐらいのことを何で書けないのですか、あなた。そうでしょう。調停というのはすべてその同意を得るものだからというようなことで、みんな雇用平等法みたいになっているかと思ったら大間違いですよ。例えば民事調停、それから家事調停、こういうものがありますね。これは家事審判法、それから民事調停法、ありますよ。ここでは、同じ調停ですけれども、どうなっていますか。そこでは、例えば呼び出しを受けた相手が出頭しない場合には五万円以下の過料を、行政罰ですけれども、科すことになっていますね。こうやって、結局出頭を間接的に強制するという態度をとっておるのですよ。今度の場合には、労働者が調停の申請をした、相手がうんと言わなければ調停に移行しない、これでは労働者は踏んだりけったりじゃありませんか。これで婦人労働者の権利を守っているということが言えるのですか。すべて調停に移行するかどうかというのは事業主の意思にかかっている、こんなばかげた法律ありますか。これこそ、まさにざる法というんですよ。あなた、ざる法という定義、知っていますか、どうですか。(「質問がおかしい」と呼ぶ者あり)では、やめましょう、フェミニストが多いからやめておきましょう。  それでは、今度仮に調停が開かれたとしますね、事業主の同意があって。その場合に、調停案を作成しますね。それは何か拘束力があるのですか。事業主が受諾をしなかった場合に、何か拘束力が発生するでしょうか、どうでしょうか。
  307. 佐藤ギン子

    ○佐藤説明員 受諾を当事者に勧告することができることになっておりますが、それは確かに強制力がございません。  ただ、先ほど来、先生からいろいろございました調停、勧告その他について強制力がないではないかというお話がございましたが、この機会均等法の実効の確保の方法につきましては、諸外国でもいろいろございまして、すぐに裁判に持っていけばいいという形になっているものもあるわけでございます。私どもとしては、ストレートに女子労働者の方が裁判に持っていかれるというのはなかなか難しい問題があるのではないかというところから、先ほど申し上げましたように、都道府県の婦人少年室長の指導、助言、勧告ですとか、調停の手続ですとか、そういうものをいろいろ設けまして、実行を確保しているということでございます。
  308. 三浦久

    三浦(久)委員 外国の例はまた後でお尋ねしますけれども、国内の、例えば家事調停では、調停が不調に終わったときには審判に移行することができますね。そして、審判というものを出せば、それは当事者を拘束するんですね。みんなそういうふうになっているんですよ。それから労働委員会の場合でも、また公共企業体等労働委員会でもそうですね。調停が不調だったら仲裁裁定に移行させて、仲裁裁定で当事者を拘束する、こうなるわけでしょう。みんなそうなっているんですよ。何で雇用機会均等調停委員会だけそういう機能を持たせないのか。私はそういう機能をぴしっと持たせるべきだと思うのですけれども、この点、いかがでしょうか。
  309. 佐藤ギン子

    ○佐藤説明員 今、先生いろいろ事例をお挙げになりましたけれども、家事調停等につきましては労働問題とは違う性格があると思いますし、また家事調停の場合も、その調停の結果を必ず受諾しなければいけないということにはなっておらないと思います。私どもは調停の場合に一番考えておりますのは、両当事者に十分受け入れられるということが一番大事でございますから、出てまいりません者を無理に出頭させて調停を行い結果を出しましても、これが守られないのでは実効が上がらないというようなことから、両当事者の合意を前提といたしておるわけでございます。
  310. 三浦久

    三浦(久)委員 それは法律で、出てこなくてもよろしいですよ、調停をしても従わなくても何の拘束力もありませんよ、そういう法律をつくるからそうなるんですよ。出頭しなければなりませんよと、そしてまた、この調停は不調になった場合にはちゃんと拘束力を持たせるような手続に移行するんですよとか、そういうことをぴちっと決めておけば、実効のあるものになるじゃありませんか。ある程度それは強制力を持たせなければ、事態は円満に解決いたしませんよ。  例えば調停にしても、これはどなたが任命するのでしたか、労働大臣でしたかね。労働大臣が任命するわけでしょう、三人。それで、それが調停委員会をつくるわけですよ。そして、一生懸命何とかやっと説得して調停を開始した。それで、どのくらい時間がかかるかわかりませんけれども、やっとそういう学識経験者たちが調停案を出した。当事者が、ああ、だめです、また事業主が、だめです、受諾しませんと言ったら、それで何の効力もないというわけなんですね。全く調停委員会の仕事というのは、まさにそれこそ徒労に帰しているということになるじゃありませんか。私は本当に何でこんなばかばかしい制度をつくったんだろうかというふうに、ちょっと何て表現したらいいのかわかりませんけれども、腹立たしい気持ちですよ、本当のことを言って。  それではちょっとお尋ねしますけれども、外国の例はどうなっているのか。例えばおたくからもらった資料があります。各国もいろいろやっていますね、男女平等実現のために。そうすると、例えばアメリカ、イギリス、西ドイツ、フランス、カナダ、イタリア、アイルランド、デンマーク、ベルギー、スウェーデン、オーストラリア、一応資料をもらっておりますが、これらの国で例えば雇用に関して、募集、採用、配置転換、こういうものについて差別をしてはならないというふうに、禁止規定ではなくて努力義務にしている国がございますか。
  311. 佐藤ギン子

    ○佐藤説明員 禁止規定にしている国が大部分でございますが、西ドイツでは募集につきまして努力義務規定にいたしております。
  312. 三浦久

    三浦(久)委員 ですから、世界では努力義務にしているなんというところはないのです。ほとんど禁止規定にしているのです。日本だけですよ、こんなことをやっているのは。  では、そういう禁止規定に違反をした場合に、罰則を付している国がありますね。これはどんな国がございますか。
  313. 佐藤ギン子

    ○佐藤説明員 私どもで入手しております資料は限りがございますけれども、フランス、イタリア、ベルギー、デンマークなどは罰則を付しておりまして、アメリカ、イギリス、西ドイツ、カナダ、アイルランド、スウェーデン、オランダというような国は罰則をつけておりません。
  314. 三浦久

    三浦(久)委員 それから、日本の雇用機会均等調停委員会のようなものを各国もつくっていますね。つくってない国もあります。例えばアメリカでは、雇用機会平等委員会というのをつくっていますね。イギリスでは機会均等委員会というのをつくっておりますね。そうすると、これはこの委員会が一定の判断を下した場合に、その判断は拘束力を持つようになっておりますか、どうでしょうか。
  315. 佐藤ギン子

    ○佐藤説明員 委員会の機能は国によってさまざまでございまして、そういう差別かどうかという判断をする機能を持っております国と調整的な機能を持っております国もございますし、それから何が差別かというガイドラインを決める国など、国によって、実態に応じ、さまざまでございます。
  316. 三浦久

    三浦(久)委員 私は今アメリカとイギリスの例をお尋ねしたのですよ。アメリカでは不調のときには委員会が申立人にかわって裁判所に提訴することができるようになっている。こういうふうになっているのじゃございませんか。
  317. 佐藤ギン子

    ○佐藤説明員 おっしゃるとおりでございまして、その前に調整機能を委員会は持っておりますが、この調整機能は、是正措置につきまして両者が合意したときに初めてそのアグリーメントをつくりまして委員会に出して承認を得るということになっておりまして、それが不調の場合に初めて裁判にいく。その場合に、おっしゃいましたように委員会が裁判の提起をするということもございます。
  318. 三浦久

    三浦(久)委員 ですから、アメリカの場合には、不調のときにはやはりそういうふうに強制力を持たせるようなところにちゃんと手続が移行することができるようになっているわけですね。日本の場合とは大違い。調停の出しっ放しで、当事者が従わなければ、拒否すればそれっきり、もう何もなくなってしまうということなのですから。  それからまた、イギリスの場合は、これは差別停止通告というものを当事者に出すことができるようになっておりますね。ちょっとお尋ねします。その差別停止通告というものを出した場合に、それは守る義務が当事者に課せられるものでしょうか。罰則の有無は別として、守らなきゃならないというふうになっているのでしょうか。どうでしょうか。
  319. 佐藤ギン子

    ○佐藤説明員 私ちょっと今十分手元に資料がございませんが、私の理解では、委員会に勧告権がございます。あとは事後に遵守状況の調査をするということになっております。
  320. 三浦久

    三浦(久)委員 やはり勧告なり通告なりは守らなければならないものだという観点があるから、事後に守っておるかどうかを調査したり報告を受けたりするわけでしょう。私はそう思いますね。出しっ放したとか、それに当事者が従わなければ何の効力もないというものとは違いますね。これが果たして拘束力があるというふうに言えるかどうかは別としても、少なくとも日本の今あなたたちがおつくりになった法案要綱での調停委員会の調停案よりも、はるかに法的な効力が付与されておるということは明らかだと思うのです。ですから私は、国内法の関係から見ても、差別撤廃条約を批准するために国内法を整備している諸外国と比べても、日本のやり方というのは著しく労働者に不利であり、そして事業主の横暴を許すという結果になっておるわけです。  私は総理府総務長官にお尋ねしたいと思います。婦人問題も総理府総務長官の所管でございますからお尋ねしますが、こういうようなことで男女差別をなくすということはほとんど不可能に近いというふうに思っておるのです。だけれども、法案が成立しておるわけじゃありません。諮問をしておる段階でございますから、男女雇用平等法をもっと実効のあるものに訂正をする、こういうようにすべきだと私は思うのですけれども総理府総務長官の御見解をお尋ねいたしたいというふうに思います。
  321. 中西一郎

    中西国務大臣 いろいろお話がございまして、承っておりまして、私個人としての見解が若干入りますが、今の労働省でお考えのことでいいと実は思います。というのは、企業家の善意ということになると、善意でなければ悪意かということになるのですが、そういった次元の問題でなしに、優秀な御婦人がだんだん育ってきます。社会全体として考えますと、そういった方を会社に入れるあるいは役所に入れるということは会社のためでもあり役所のためでもあるというような下地ができつつあると思う。そういうふうに考えますと、罰則が好きな国もありますが、我が国の場合には罰則ということではなしに話し合い、そしてその上に立って企業がいろいろな行動をするでしょう。また、婦人の方々もいろいろなことをおっしゃるでしょう。それが世の中を動かしていく。そしていい方へいくという希望と期待を持つものであります。
  322. 三浦久

    三浦(久)委員 総務長官が期待されるのは結構ですけれども現実はあなたが期待したようにはこの法律では動かない、このことを私ははっきり断言をしておきたいと思うのです。まさにこれは抜け道だらけのざる法です。私は、ざる法と引きかえに女子についての時間外労働、休日労働、これを強制し、さらに深夜業についても従来よりもその対象をうんと拡大をしているわけですね、このことは女子についても長時間労働に道を開くことになりまして、日本全体の労働者の長時間労働にますます拍車をかけることになってくるだろうと思うわけであります。現在でも日本の労働者というのは年間一人当たり二千時間を超えておるわけです。ですからアメリカやイギリス、西ドイツ、フランス、こういうところなどよりも男女ともにはるかに長い労働時間であります。こういう今の労働者の実態から見れば、深夜業とか残業、こういうものを規制すべきだというふうに思っているわけですけれども、今回のこの法案要綱の措置というのはこれに逆行しておるというふうに言わざるを得ないと思っております。  特に雇用平等法との関係でいいますと、女性にとって長時間労働とか深夜業というものがいかに女性の健康に大きな否定的な影響を及ぼすかということですね。このことは男に対する影響よりも大きいわけです。今労働省は、女性保護の問題については、母性保護と女性保護とを意識して分けられておりますね。そして、母性保護の方は拡充するけれども、女性保護の方はもうどんどん削減していくんだ、こういう方針をとられておりますけれども、しかし私は、女性保護というものは母性保護とそんなにぴしっと隔離できるようなものではないと思うのですね。私は、やはり依然としていわゆる母性保護も含めた女性保護の機能を存続させる必要性というのは今もあるというふうに思っているわけです。  それで、労働基準法研究会第二小委員会専門委員報告によっても、これはもう労働省もよくおわかりです、ここに本を持ってきておりますが、ここでも、女子の残業とか深夜業というものがその健康をどんなにむしばんでいるかということが指摘されていますね。時間がありませんから、一つ一つ具体的にお話を申し上げることはできません。私はそういう意味で、今この労働基準法の大幅な改悪をやって、長時間労働、休日労働、深夜業、こういうものを女子にもさせようとしておりますけれども、こういうことを現在以上にやれば女性の体に及ぼす影響は非常に大きい、そして、ひいてはそのことが母性機能というものまで阻害していくのだということをここで指摘をし、この労基法の改悪案の撤回というものを強く要求をいたしたいというふうに思います。  それで、人事院来ておりますね。人事院規則の一〇—七は、女子職員及び年少職員の健康、安全及び福祉について定めております。私が危惧するのは、労基法の改悪の方向と同じ内容で人事院規則一〇—七の改悪をするのではないかということなんですね。  なぜそういう疑いを持つかといいますと、今回の労基法の改悪というのは、既に一九七八年の十一月の労働基準法研究会報告が出発点となっておりますが、人事院も、それからちょっとおくれて一九八一年の三月、女子国家公務員の保護規定を見直すために、女子職員の健康・安全管理基準研究会というものを設置をして、その見直し作業を開始して今日に至っているわけです。  研究会の審議内容というのは、これは一切明らかにされていないわけでありますけれども、予算委員会に提出された資料によりますと、五十七年、五十八年度で合計九回会議が行われている。研究会要綱の目的というのは、「女子職員の健康、安全に関する諸制度、諸基準あり方について検討を行う」というものであります。そして調査研究事項は、「危険有害業務、深夜勤務等勤務時間及び母性保護(生理休暇、保育時間を含む)」というものなんですね。明らかに今度の労働基準法の改悪と軌を一にしているのではないかという疑いを私は持たざるを得ないわけであります。そしてこれは私だけではなくて、国家公務員の女子労働者、さらに地方公務員の女子労働者も、人事院がこの人事院規則一〇—七をどういう方向で扱おうとしているのかということに大変大きな関心を持っている問題です。ですから、この一〇—七をどうしようとしているのか、人事院総裁の御見解を承りたいというふうに思います。
  323. 叶野七郎

    叶野政府委員 御承知のように女子職員については、人事院規則の一〇—七で特別措置として規定してございます。何せこの特別措置が設けられましてからは相当の年数が経過しておりますし、また社会諸条件もその間に著しく変化している、さらに男女平等を推進する機運が高まっているということ等の理由から、その改正を急がなければならぬというようなことで、研究会を設置したわけでございます。  研究会の研究の根本は、やはり人事院規則一〇—七も労働者の勤務条件の基準を示すものであるということにおいて労働基準法と軌を一にするということをまず基盤にしているわけでございます。さらに、婦人差別撤廃条約の趣旨を踏まえて改正しなければならぬ、この二点を基盤にしているわけでございます。  ただ、そうは申しましても、公務の場合には、公務の特殊性、さらには公務員の勤務条件というものは国公法なり給与法なりあるいは人事院規則ということによってしっかりと決まっている、そういうような特殊性がございますので、先ほど申し上げました基盤の上に立ってそれらを検討材料にして進めているわけでございます。  それから内容につきましては、繰り返しになりますけれども、やはり労働基準法の内容というものとそれほど違った内容にはならないというふうに考えております。
  324. 三浦久

    三浦(久)委員 大体あなたたちの考えはわかりましたけれども、私は、人事院としても女性労働者の実態というものをよく研究すべきだと思うのですよ。さっきの労働基準法研究会第二小委員会専門委員報告にも出ておりますように、ああいう立派な報告が出ているのだから、それをちゃんと参考にすべきだし、また、あなたたちが所管をしている女子の国家公務員の中にもそれは大変な労働の実態があるでしょう。そういうものを十分に研究して、軽々しく今のように労働基準法の改悪に合わせてそれと同じようにするなどということは私は言ってもらいたくないし、また、そんなことはすべきじゃないというふうに思いますね。  労働者の実態についてたくさん調べてきましたけれども、もう時間がありませんからこれはまた後の機会にしますが、例えば看護婦さんは二・八勤務と言われて、人事院の判定でも看護婦さんの夜勤勤務は八日だと言っているけれども、実際には八日は守られていないでしょう。ですからその後にも厚生省の通達が出て、十日にすべきだと言う。しかしそんなことよりも、今でもまだ九日、十日、十一日、十二日という夜勤勤務が多いのですよ。  では、そういう長時間の夜勤勤務というものが看護婦さんに強制されている結果、どんな事態になっているか。これは私の地元の問題だけちょっと出させていただきますけれども、国立小倉病院というのがあります。ここでは昨年、看護婦さんが十四人、子供を生んでいるのですよ。ところが、正常な分娩は八名だというのですね。あと異常が六名。ですから、正常者は五七%、異常者は四三%ですよ。約半分近い人々が異常分娩なんですね。それは、切迫流産とか切迫早産とか妊娠中毒とかと、こういう病気にかかっているらしいのです。これはほぼ全国的な傾向と言えるだろうというふうに思うのですよ。  ですから、そういう意味で私は、人事院というのはこういう実態もよく調査をした上で、改悪などやるべきではないというふうに思いますけれども、この点もう一回人事院総裁、お願いいたします。
  325. 内海倫

    内海政府委員 考え方につきましては先ほど主管局長から御答弁申し上げたところでございますが、もとより私どもも、国家公務員の婦人勤務員の実態というものには、ますますよくこれを目をつけて、改善すべきものがあればさらに改善措置はとらなければならない、その点はお説の意見とそう変わるものではございません。
  326. 三浦久

    三浦(久)委員 人事院はこれまで、産後の休暇を八週間にするということを国公労連という労働組合やその婦人協議会に対して約束をし、国会でも実施をするというふうに答弁をしてきております。ところが、三年たってもまだこれが実現をしていないわけですね。ところが、今回の雇用平等法案では産後休暇の期間を八週間とするということが打ち出されているわけですね。ですから私は、この法案の成立を待たずに、従来人事院労働者に対して、また国会に対しても約束をしてきていることですから、直ちに産後休暇八週間を実現すべきだ、そのために人事院規則一〇—七の改正をすべきだというふうに私は思いますが、いかがでしょうか。
  327. 内海倫

    内海政府委員 産前産後の休暇の延長の問題につきましては、前の総裁も国会におきまして極めて積極的な答弁もいたしておりますし、またこのこと自体、その考え方あるいはなすべきことというものは私も全く同感でございますし、人事院としましてもこの点は十分考慮いたしておるところでございます。  今お話しのように、これを実施に移す時期を今直ちにやったらどうかということでございますが、それができれば大変いいとは思いますけれども、やはりこういうものはいろいろな関係方面との折衝もございますし、幸い私どもは女子職員の特別措置について多角的、全面的に今見直しを行っているところでありますので、それらの中においてできるだけ早くそういうふうな措置を実現していくということにいたしたい、ここまでがきょう私の答え得る答えでございます。
  328. 三浦久

    三浦(久)委員 厚生省にお尋ねいたしますけれども、国立病院の看護婦さんは産休に入る直前まで深夜業をしているのですね。これが先ほど言ったような母性機能に大きな障害を与えて、さまざまな異常分娩というようなものを発生させる一つの大きな原因になっていると私は思うのです。それで、人事院規則の一〇—七によっても、また労働基準法によりましても、妊娠中の婦人が要求すれば軽作業につかせなければならないということもあります。それとまた、今度の法案要綱でも、妊産婦が請求した場合には、時間外、休日労働、それから深夜業はさせてはならないというふうになっているわけですね。ですから、大体そういう方向へいっているわけです。しかし今法案が成立していませんから、今でも全国の国立病院の看護婦さんたちは産休に入る直前まで深夜業をしているのです。しかし、こういうのはやはり緊急性があるので、法案の成立を待たずにいっときも早く、妊産婦が請求したら深夜業にはつかさない、こういう措置をとる必要があると私は思うのですが、いかがでしょうか。
  329. 羽毛田信吾

    ○羽毛田説明員 お答えをさせていただきます。  今先生御指摘ございましたように、私ども看護婦関係につきましても人事院規則の一〇—七の規定の適用がございますので、妊産婦の請求があれば、業務の軽減あるいは他の軽易な業務につかさなければならないという規定に沿って運用していかなければならないものでございます。したがいまして、その点については今後ともその徹底を図るようにいたしていきたいというふうに思っております。
  330. 三浦久

    三浦(久)委員 そうすると、それはもう準用してやっているということですか。請求があったら深夜業はさせていないということですか。
  331. 羽毛田信吾

    ○羽毛田説明員 看護婦につきましても、今の先生の御指摘のございました人事院規則は適用がございます。したがいまして、請求がありましたらそのような方向にしなければならない。ただ職場の実態が、必ずしもまだ現在看護婦さんの人数等が十分でないという御指摘、それもそのとおりでございます。私どもも努力をいたしておりますけれども、今全体の定員の事情がなかなか厳しい事情もございますので、そういうことの中から職場の中で必ずしも思うとおりそういう形にいかないというようなことはあろうかと思いますけれども、その規則は私どもも、適用を受けておりますので、その徹底を図るように今までも指導してまいりましたが、今後もそういう指導をしてまいりたいというふうに思います。
  332. 三浦久

    三浦(久)委員 そうすると、一〇—七の解釈で、軽易な作業につかせなければならぬということで深夜業は外すことになっている、こういうことですか。
  333. 羽毛田信吾

    ○羽毛田説明員 失礼いたしました。  そこはまだ深夜業という形では規定をしているわけではございませんで、妊産婦の請求があれば「業務を軽減し、又は他の軽易な業務に就かせなければならない。」というこの規定によりまして、この規定の範囲内でやっておるわけでございます。しかし、もともとが……(三浦(久)委員「こっちの質問は深夜業につかせるなということを言っているのだから、時間がないからちゃんと言ってくださいよ」と呼ぶ)その方向での努力をしたいと思っております。
  334. 三浦久

    三浦(久)委員 もう一つ人事院に聞きます。  人事院規則一〇—七は、第八条と第十条で妊娠中の女子職員の通院休暇と通勤緩和措置を定めておりますね。これは労働基準法にはない女子保護規定であります。ですから、これを労基法にも取り入れるべきだというふうに私は考えているわけですが、人事院総裁として労働省にそういう提言をするおつもりはございませんか、どうでしょうか。
  335. 叶野七郎

    叶野政府委員 人事院規則の中にそういう規定があるのは御指摘のとおりでございます。労働者関係の方では、婦人福祉法の関係の中で努力規定がたしかあったはずでございます。
  336. 三浦久

    三浦(久)委員 時間がないからこっちの質問に答えてくださいよ。福祉法というのは努力義務になっているのですよ。だから、基準法できちっとそうさせるようにしたらどうかということを聞いているのだから、ちゃんと答弁しなさいよ。そういうことを労働省に提案したらどうかということを聞いているのです。
  337. 叶野七郎

    叶野政府委員 我々の守備範囲は公務員のところでございます。民間の事情につきましては労働省の方の御指導ということでございます。なお、労働省の方にも国家公務員の方に倣ったらどうかということは、今後我々としても助言してまいるつもりでございます。
  338. 三浦久

    三浦(久)委員 終わります。
  339. 片岡清一

    片岡委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  340. 片岡清一

    片岡委員長 この際、柴田睦夫君外一名から、日本共産党・革新共同提案による修正案が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。柴田睦夫君。     —————————————  恩給法等の一部を改正する法律案に対する修正   案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  341. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 日本共産党・革新共同を代表して、恩給法等の一部を改正する法律案に対する修正案の趣旨を説明いたします。  政府が提出した今回の法案は、恩給年額の計算の基礎となる仮定俸給年額の引き上げ、普通恩給等の最低保障額の引き上げ、公務関係扶助料の最低保障額の引き上げ、傷病恩給年額の引き上げ、傷病者遺族特別年金の引き上げ、扶養加給の引き上げ及び長期在職の旧軍人等の仮定俸給の格付の引き上げを行おうとするものですが、恩給年額及び扶養加給の引き上げについては、人事院勧告の不当な値切り実施による国家公務員給与改定基礎にしたものとなっております。  このように、一九八三年度恩給凍結による恩給受給者の被害を放置し、八四年度についても部分的な引き上げにとどめることは、国民生活水準国家公務員給与物価その他の諸事情変動に対応して恩給額改定すると定めた法の趣旨に反するばかりか、国民生活犠牲の臨調路線を最優先させて、二百三十三万人の恩給受給者に一方的に犠牲を強いる措置と言わなければなりません。  これが本修正案を提出する理由であります。  次に、修正案の概要を説明します。  第一は、恩給年額計算の基礎となっている一般文官及び旧軍人のすべての仮定俸給年額を、八三年度人事院勧告による行政職俸給表(一)の改善傾向を恩給局の従来方式で回帰分析した結果に基づいて引き上げることです。  なお、長期在職の七十歳以上の旧軍人等に係る仮定俸給については、政府提出法案どおり、その格付を一号俸引き上げることとしております。  第二は、普通恩給普通扶助料、公務扶助料、増加非公死扶助料、特例扶助料の最低保障額及び増加恩給と傷病年金特例傷病恩給年額並びに傷病賜金を、恩給局の従来方式により、それぞれ仮定俸給の最高の引き上げ率六・八%と同率の引き上げを行うことであります。  傷病者遺族特別年金についても六・八%の引き上げを行います。  第三は、扶養加給を八三年度人事院勧告による扶養手当増額の例により引き上げることであります。  第四は、高額所得制限に係る改定以外の改定実施期日を政府提出法案どおり、本年三月からとしていることであります。実施期日については、一年おくれの是正を求めてきた従来からの本委員会附帯決議趣旨からいえば、一九八三年四月からとすべきではありますが、恩給局の従来方式による修正を行うとの前提で修正案を取りまとめることとしたため、これをあえて本年三月からとしたのであります。  以上が、本修正案を提出する理由と修正案の内容の概要であります。  なお、本修正に伴う必要経費は、八百九十億円と見込んでおります。  委員各位の御賛同をいただき、恩給年金生活者の切なる願いにこたえて本修正案を可決されることをお願いして、趣旨の説明を終わります。
  342. 片岡清一

    片岡委員長 これにて修正案についての趣旨の説明は終わりました。  この際、本修正案について、国会法第五十七条の三の規定により、内閣の意見を聴取いたします。中西総理府総務長官。
  343. 中西一郎

    中西国務大臣 本修正案については、政府としては反対である。     —————————————
  344. 片岡清一

    片岡委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  まず、柴田睦夫君外一名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  345. 片岡清一

    片岡委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。  次に、原案について採決いたします。  恩給法等の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  346. 片岡清一

    片岡委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  347. 片岡清一

    片岡委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、宮下創平君外四名から、自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合及び日本共産党・革新共同の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。宮下創平君。
  348. 宮下創平

    ○宮下委員 ただいま議題となりました自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合及び日本共産党・革新共同の各派共同提案に係る附帯決議案につきまして、提案者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     恩給法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について速やかに善処すべきである。  一 恩給実施時期については、現職公務員給与との遅れをなくすよう特段の配慮をするとともに各種改善を同時期に一体化して実施するよう努めること。  一 恩給最低保障額については、引き続きその引上げ等を図ること。  一 扶助料については、さらに給付水準の実質的向上を図ること。  一 戦地勤務に服した旧日赤看護婦及び旧陸海軍看護婦に対する慰労給付金増額を検討すること。  一 恩給受給者に対する老齢福祉年金の支給制限を撤廃すること。  一 外国特殊法人及び外国特殊機関の未指定分の件について、速やかに再検討を加え適切な措置を講ずること。  一 現在問題となっているかつて日本国籍を持っていた旧軍人軍属等に関する諸案件(解決済みのものを除く。)について検討を行うこと。  一 旧満洲国軍内の日本人軍官の処遇問題について検討すること。   右決議する。  本案の趣旨につきましては、先般来の当委員会における質疑を通じて既に明らかになっておることと存じます。  よろしく御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  349. 片岡清一

    片岡委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  350. 片岡清一

    片岡委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、総理府総務長官から発言を求められておりますので、これを許します。中西総理府総務長官。
  351. 中西一郎

    中西国務大臣 ただいま御決議になりました事項につきましては、御趣旨を体し十分検討してまいりたいと存じます。     —————————————
  352. 片岡清一

    片岡委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  353. 片岡清一

    片岡委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  354. 片岡清一

    片岡委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時十六分散会      ————◇—————