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1984-04-19 第101回国会 衆議院 内閣委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年四月十九日(木曜日)     午前十時四十分開議 出席委員   委員長 片岡 清一君    理事 池田 行彦君 理事 戸塚 進也君    理事 深谷 隆司君 理事 宮下 創平君    理事 小川 仁一君 理事 松浦 利尚君    理事 市川 雄一君 理事 和田 一仁君       石原健太郎君    内海 英男君       大島 理森君    奥田 幹生君       鍵田忠三郎君    菊池福治郎君       月原 茂皓君    二階 俊博君       林  大幹君    山本 幸雄君       上原 康助君    角屋堅次郎君       元信  堯君    渡部 行雄君       鈴切 康雄君    山田 英介君       田中 慶秋君    柴田 睦夫君       三浦  久君  出席国務大臣         運 輸 大、臣 細田 吉藏君         国 務 大 臣 藤波 孝生君         (内閣官房長官)         国 務 大 臣         (総理府総務長 中西 一郎君         官)  出席政府委員         内閣官房内閣審         議室長     禿河 徹映君         兼内閣総理大臣         官房審議室長         内閣法制局長官 茂串  俊君         内閣法制局第一 前田 正道君         部長         人事院総裁   内海  倫君         人事院事務総局 斧 誠之助君         給与局長         内閣総理大臣官 菊池 貞二君         房管理室長         総理府人事局長 藤井 良二君         総理府恩給局長 和田 善一君         北方対策本部審         議官      橋本  豊君         兼内閣総理大臣         官房総務審議官         運輸大臣官房長 松井 和治君         運輸大臣官房審 丹羽  晟君         議官  委員外出席者         厚生省年金局企 渡辺  修君         画課長         厚生省援護局庶 加藤 栄一君         務課長         厚生省援護局業 森山喜久雄君         務第一課長         内閣委員会調査 緒方 良光君         室長     ————————————— 委員の異動 四月十八日  辞任         補欠選任   上草 義輝君     二階 俊博君     ————————————— 四月十八日 地域社会における公共サービスの向上のための新  社会システムの開発に関する法律案鈴切康雄  君外三名提出衆法第一八号) 同月十九日  元従軍看護婦処遇に関する請願(嶋崎譲君紹  介)(第二九一四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  運輸省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第一五号)  恩給法等の一部を改正する法律案内閣提出第  二〇号)      ————◇—————
  2. 片岡清一

    片岡委員長 これより会議を開きます。  内閣提出運輸省設置法の一部を改正する法律案議題といたします。  本案に対する質疑は、去る十七日終局いたしております。  これより討論に入るのでありますが、討論申し出もありませんので、直ちに採決に入ります。  運輸省設置法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立
  3. 片岡清一

    片岡委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 片岡清一

    片岡委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  5. 片岡清一

    片岡委員長 次に、内閣提出恩給法等の一部を改正する法律案議題といたします。  趣旨説明を求めます。中西総理府総務長官。     —————————————  恩給法等の一部を改正する法律案     〔本号末尾掲載〕     —————————————
  6. 中西一郎

    中西国務大臣 ただいま議題となりました恩給法等の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  この法律案は、最近の経済情勢にかんがみ、恩給年額増額するとともに、戦没者遺族傷病者等処遇改善を図るほか、長期在職老齢軍人等に係る仮定俸給改善等措置を講じ、恩給受給者に対する処遇の一層の充実を図ろうとするものであります。  次に、この法律案概要について御説明申し上げます。  この法律案による措置の第一点は、恩給年額増額であります。  これは、昭和五十八年度における公務員給与改善を基礎として、昭和五十九年三月から恩給年額増額しようとするものであります。また、公務関係扶助料最低保障額傷病恩給基本年額等については、同年八月からさらに増額を行い、公務扶助料については、遺族加算を含み年額百三十七万円を保障することといたしております。  その第二点は、普通恩給等最低保障額増額であります。  これは、長期在職老齢者に係る普通恩給最低保障額昭和五十九年三月から八十万六千八百円に引き上げ、その他の普通恩給及び普通扶助料最低保障額についてもこれに準じて引き上げるほか、さらに、同年八月からは、長期在職者に係る普通扶助料最低保障額を五十三万三千五百円に引き上げ、その他の普通扶助料最低保障額についてもこれに準じて引き上げようとするものであります。  その第三点は、長期在職老齢軍人等に係る仮定俸給改善であります。  これは、長期在職の七十歳以上の旧軍人等に係る仮定俸給の格付を昭和五十九年十月から一号俸引き上げようとするものであります。  以上のほか、扶養加給増額等所要改善を行うことといたしております。  以上がこの法律案提案理由及びその内容概要であります。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。
  7. 片岡清一

    片岡委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     —————————————
  8. 片岡清一

    片岡委員長 これより質疑に入ります。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。角屋堅次郎君。
  9. 角屋堅次郎

    角屋委員 私は、ただいま中西総務長官から提案理由説明がございました恩給法等の一部を改正する法律案、この改正問題、あるいはそれに関係する諸問題について政府お尋ねをいたしたいと思います。  きょうは藤波内閣官房長官にも御出席要請しておりまして、私の承知しておるところでは、十一時十三分から若干時間御出席というふうに承っております。そういうことを前提に置きながら、理事会で認められた所定の時間の範囲内でお尋ねをいたしたいと思います。  各位も御承知のように、恩給法改善にいたしましても、あるいはこれに関連する国家公務員共済あるいは地方公務員共済、その他の関係する年金等の問題にいたしましても、公務員給与引き上げということに基本的にはかかわることが多いわけであります。残念なことに、政府としては諸事情があったと思いますけれども、一昨年は人勧凍結されるという事態がございまして、さらに昨年は、六・四七%の人事院勧告があったにもかかわりませず財政その他のことを理由にして二・〇三%平均ということで、我々から言えば不当な措置で実行されたという経緯になっておることはまことに遺憾であります。そこで、そういった恩給法等の一部を改正するという改善問題一つにしても、人勧にかかわるということが提案理由説明でも触れておりますように重要な前提になりますので、この際、人勧にかかわる問題についてまず冒頭にお尋ねをいたしたいと考えております。  内海人事院総裁は、藤井人事院総裁の後を継いで新たに御就任になられました。我々当初、内海さんの総裁就任につきましては、内閣の手続上の問題にもやはり手落ちがあったというふうに思います。また同時に、内海さんは個人的には立派な方でありますけれども、過去の経歴等から見て果たして人事院総裁として公正にやられるだろうかという、率直な私どもにも懸念がございました。しかし、総裁になられましてからのいろいろな対応を見ておりますと、藤井総裁と同様に、真剣に人事院総裁として公務員労働者期待にこたえるためにこれから誠意を尽くしていこうというそういう熱意については、我々も受けとめるにやぶさかではございません。しかし問題は、これから実績としてどう出るかということが極めて重要であります。  そこで、まず内海人事院総裁にお伺いをいたしたいわけでございますけれども先ほども触れましたように一昨年は人勧凍結事態がございました。昨年は人勧抑制事態がございました。本年度はまさにそういう意味では、八月に予定されております人事院勧告というのは、春闘もおおむね山場を越えまして本格的な作業人事院としては入られることに相なっております。したがって、八月に向けて精力的に作業を進められるわけでありますが、ことしの八月の人勧に対する新総裁としての構えといいますか考えといいますか、そして過去のそういった残念な事態に対する見解も含めて、決意をまずお伺いをいたしたいと考えております。
  10. 内海倫

    内海政府委員 お答えを申し上げます。  既にもう先刻御存じのように、国家公務員というのは労働基本権を大幅に制約をされておりまして、そのもとにおいて国家公務員勤務条件とかその他諸般の人事行政というものをいかように行うかということを検討された結果が、人事院というものを創設して、第三者機関としての機能を営むようにしてあるわけでございます。したがいまして人事院は、いわばそういうふうな制約を受けておる国家公務員勤務条件その他に対する代替機能を営む、またその代替機能の結果として例えば人勧というふうな代替措置をとっておるわけでございます。  その代替措置をとるために、給与につきましては民間給与との比較という長い間の経験を積み重ねて、あるいは時に試行錯誤もあったと思いますが、そういう結果が今日の調査方式あるいは調査考え方、そして人勧というものに対する考え方というものを確立させてきておる、私はこういうふうに考えております。したがいまして、今年の私ども人事院勧告というものもそのような考え方の上に立って、あるいはそのような調査方式によって答えを出していきたい、こういうふうに思っております。  また、残念ながら過去二、三年にわたりまして凍結あるいは厳しい抑制というふうなことが行われまして、確かに人事院勧告というものが完全実施されてないということは極めて残念なことでございまして、今年私どもの行います勧告につきましては、これはやはり国会及び政府において厳しい気持ちで尊重していただき、完全実施へ向けての努力をしていただかなければならないわけであります。私どももそういうふうなことへの大きな期待を込めて今後も勧告作業に当たりたい。私どもとしましては、もしこういうふうな凍結とか厳しい抑制というふうなものが今後も継続するというふうなことになりますと、これは事は楽観できないことでございます。しかも、人事院機能というものは、今日の条件のもとにおいてはほとんど唯一の合理的な組織であり機能であると私は思っておりますので、こういうものがその機能を失うことのないように、国会におかれましても政府におかれましても尊重をしていただかなければならない、これが私の所見でございます。
  11. 角屋堅次郎

    角屋委員 過般の本委員会におきまして、人勧問題については中西総務長官並びに内海人事院総裁に対して我が党の同僚議員である小川さんからも時間をかけて御質問、そして御答弁がそれぞれございましたが、この際、中西総務長官から御答弁をいただきたいと思うのですが、ちょうどジュネーブで列国議会同盟の会議がございまして、私は三月三十日にこちらを出発し、四月二日から七日までIPUの国際会議出席をいたしまして、いわゆる四月上旬が山場の八四春闘というのをジュネーブで東京の空を気にしながら、国際会議で活動しておりました。公務員共闘等公務員労働者との関係においては、中西総務長官あるいは藤波官房長官中心になって、我々の側から言えばいわゆる政労交渉を通じて話を詰められたというふうに理解をしております。そして、公務員労働者関係実力行使という最悪の事態を避けて、公務員共闘関係等から言えば政府側見解期待と信頼をかけて実力行使を中止したというふうに、ジュネーブで報道として聞いておるわけであります。それらを含めて人事院総裁からも、新しい人事院勧告について政府並びに国会に対して従来のような形がないようにぜひ最善の努力をしてもらいたいという要請がございましたが、当然のことでございまして、それを受けてみずから実施の衝に当たる政府側立場において、これらの問題、特に新年度の問題に対して、改めて中西総務長官から見解をお伺いしたいと思います。
  12. 中西一郎

    中西国務大臣 今のお話の経過につきましてはいろいろ私も関与をしてまいりまして、特に今人事院総裁からお話がありました人事院というものの存在意義勧告の重さ、そういったようなことについては、人事院総裁と全く同じ所見を持っておるものでございます。  また、角屋委員が言及されました四月四日の政労交渉、またその前にもいろいろな労働側団体との会談もございました。それが集約されたのが四月四日の政労交渉でございまして、御承知のように政府としては、労働基本権制約代償措置である人事院勧告、それから仲裁にも言及しておりますが、維持尊重しなければならないという基本姿勢は堅持しようではないか。そして、昭和五十九年度人事院勧告、それから仲裁裁定が出ました場合には、この基本姿勢に立ちまして完全実施に向けて誠意をもって取り組むということも申し上げました。なお、従来どおりでございますが、関係労働団体とも誠意をもって話し合いしましょうということを当日お答えをいたしました。その政府回答に御期待をいただいて、そして不幸なストは、これは四月六日予定だったと思いますが、回避されました。  我々は今後の問題として、そういった経緯を踏まえて誠意をもって対応してまいりたい、かように考えておるところでございます。
  13. 角屋堅次郎

    角屋委員 御承知のとおり、労働側から本年の場合も三月の時点で、昨年の人勧抑制という政府の不当な措置に対してILOへの提訴が行われております。昨年の時点では、一昨年の人勧凍結に対してILOへの提訴が行われまして、一昨年の事態に対しては、千百六十五号事件について労働者側ILOへの提訴労働者側ILOへの提訴に対する政府見解、それに対してILO結社自由委員会見解、結局、ILO結社自由委員会見解が五十八年の三月の第二百二十二回ILO理事会承認をされる、一昨年の事態についてはそういう形になっておりまして、昨年の抑制に対して労働側がこの三月の時点提訴を行っている。  そういう事態でもありますので、私はこの機会国際会議の時間の合間を利用いたしましてILO本部を訪ねて、ILOテーラー次長ジェフリー担当課長という方々にお会いをいたしまして、一昨年来の政府態度あるいはそれに対する労働側態度あるいは本年の提訴に対する我々の考え方、こういうものを申し述べて、ILO自体としての適切な対応要請してまいったわけでございます。  そこで、この点に触れたいわけでございますが、総務長官にお伺いをいたしたいわけでございますけれども、こういった問題がILO舞台に出される場合は、当然労働者側ILO提訴に対する政府見解というのが求められるわけであります。ILO自身は、言うまでもなく政府使用者側労働側の三者構成ということで成り立っておるわけでございまして、この問題については政府見解を求められるということに当然相なるわけであります。テーラー次長は私どもの話に対して、早晩政府からこの問題に対する見解が表明されることになるだろう、それを受けてILOとして適切なとるべき措置をとりたいというふうに答えておりました。私はその際に、政府ILOから回答を求められたときに政治的に遷延するということはあり得ない、恐らく回答を求められれば政府自身は速やかにILOに対する政府見解というのを表明することに相なるだろうと思うというふうにも答えておきました。  今回のILOへの労働側提訴に対して、政府がこれにどう対応しようとするのか、御見解を承りたいと思います。
  14. 中西一郎

    中西国務大臣 お話の中でもございましたが、角屋先生初めILO接触をされましていろいろ苦労を重ねておられることには、心から敬意を表したいと思います。  ILOからどういうふうに言ってくるかということに関連してでございますが、ともかく五十八年度人事院勧告の扱いにつきましては、いろいろ努力をしてきた経緯政府としての考え方は申し述べてきましたし、これからも同様の態度をとって政府としては対処してまいりたい。先ほど来申し上げました人事院勧告等尊重という基本方針、これを堅持しなければならないと考えておるところでございます。したがって、ILOから政府見解を求められるというようなことがございましたら、それに対して誠意をもってお答えをするということで臨みたい、かように思っておるところでございます。
  15. 角屋堅次郎

    角屋委員 ILO理事会というのは少なくとも年に三回程度ございまして、近い機会というと、五、六月の時点が最も近いILO理事会と私は承知をしておるわけです。既に労働側ILOへの提訴が行われた。そして政府見解を求めたい。恐らく八月の人事院勧告との関連からすれば、通常予想されるこの五月の理事会前に政府見解が出て、それに対して結社自由委員会としてこの問題に対する適正な勧告という段取りになり、それがILO理事会報告承認をされるということが労働側としては最も望んでおるスケジュールだと思うのです。私もそうあるべきだと思うのです。今の総務長官の御答弁では、労働側から提訴された問題についてはILO性格から見て当然政府見解を求められる。それについては、ジュネーブにも国際機関を持っておる、したがって、そういう接触を通じて回答すべきものについては時期を失せず回答するという積極的な姿勢が望ましいのではないかと思うのです。あちらの来るまで待とうというのであってはいけないのではないかと思う。そういうことでは、先ほど人勧に対する本年度実施熱意というもの自身も、今の関連から言えば疑わざるを得ないものを持っていると私は受けとめるわけであります。これは、出先機関国際機関としてちゃんとジュネーブには持っておるし、政府ジュネーブには相当な陣容を備えておる。いかがですか。
  16. 藤井良二

    藤井(良)政府委員 組合側ILO提訴をしたことは我々も十分承知しております。三点にわたって提訴しているわけでございます。  これについての政府見解をというのは、外務省の方にはその文書が恐らく届いておると思いますけれども、私どものところには残念ながらまだ届いておりません。私どもとしては、そういう要請が来れば五月の理事会に間に合うように政府見解を労働省を中心にしてまとめまして提出いたしたいというふうに考えております。
  17. 角屋堅次郎

    角屋委員 私はこの際、内海人事院総裁にもお伺いしたいのですけれども公務員労働者の場合でも民間労働者の場合でも、労使の話し合いを通じて給与労働条件等の問題は解決をするのが基本だと私は思うのです。しかし、必ずしもそういうことばかりにいかないというのが実態であります。したがって、ことしの春闘民間産業を含めて形はストなしに終わったということ自身は、双方の話し合いでまとまったという点で本来は評価すべきものだと私は理解をしておるわけです。しかし公務員労働者人勧の問題については、一昨年の事態があり昨年の事態があれば結局ILOという機関公務員労働者側としては持ち出さざるを得ないという形で昨年も提訴が行われ、本年も提訴が行われたという事態になっております。問題の基本は、いわゆる人勧の問題であり、場合によると、古い時代には公労協関係の問題で提訴があったこともございます。この際人事院としては、人勧に基づく提訴が行われておるという一昨年来の事態にかんがみて、人事院自身もみずから勧告権限を持って勧告しておるわけでありますから、ILOという舞台日本ばかりでなしに百五十カ国が加盟しておっていろいろな問題がILOに持ち出されるということでありますから、日本公務員労働者賃金制度勧告問題といった点については、人事院自身も積極的にジュネーブに出かけてILO関係幹部と会って話し合う、理解を深める、こういうことが私は必要だと思うわけでありますが、総裁の御見解を承りたい。
  18. 内海倫

    内海政府委員 ILOその他国際問題に関しましては、内閣が統一していろいろ処置をとり対応しておるところでございますから、人事院が今ILOに関して意見を述べるということにつきましては、その前に、国内問題としていろいろ考えなければならない点もあろうと思います。もし政府として人事院も何か対応する方法をとったらどうだということであれば、それなりの対応をしなければならないと思いますが、私どもが今まずなさなければならないことは、やはり国内において政府国会で、そういう提訴等に及ぶことのないような事態を実現していただくということにまず力を尽くすことが私どもの大事な任務ではなかろうか。ただいまの角屋委員の御意見も私どもも十分勉強してはみたいと思いますけれども、今申し上げ得ることは大体申し上げたようなことではなかろうか、こういうふうに思います。
  19. 角屋堅次郎

    角屋委員 人事院総裁から非常に慎重な御答弁がございました。私は、問題が人勧にかかわってILO舞台で起こっているからで、そういうことでないのにILOに特別に出かけるということで今お尋ねしているわけではない。面接権限を持ってやっておられるのは人事院である。その点で、ILO結社自由委員会勧告内容をどうこうしてくれという意味人事院ジュネーブに行ってもらいたいと言うのではない。要するに、実態がこういうふうになっておるということで、実情を十分承知してもらうという必要は人事院権限においても可能である。またそれを本来ならやるべきであろうと私は思うのであります。だから、第三者機関としての人事院権限というのはやはり認められておる、それを侵さない範囲内において人事院としてやるべき機能については、国内だけではなしにやはり国際的にも努力することは当然のことだと思うのであります。  人事院総裁は、公務員共闘会議が新しい総裁就任に当たって出した八項目公開質問状の第五項目のところで、一九八二年の人勧実施がされなかったことに対してILO結社自由委員会からの日本政府に対する勧告理事会承認ということについて、「人事院勧告制度は、公務員について憲法の保障する労働基本権制約されていることに対する代償措置として設けられている重要な制度であり、その趣旨から、勧告は十分に尊重されるべきものと考える。ILO勧告もこの趣旨に立って人事院勧告が完全かつ迅速に実施されることを強く要請しているものと理解している。」と回答を示されております。これは客観的にそういうふうに言われたわけであります。  私は先ほど来言っておるように、これは基本的には人事院自身が御判断をされる性格のものであろうと思いますけれども、私の立場から言えば、ILOにしばしばこの種の問題が出されること自身が適当かどうかという意見ジュネーブに行くとある。その意見は別として、やむにやまれずILO提訴したという事態である。公務員労働者の本来の生活や権利やいろいろな問題について擁護の立場にある人事院が、こういった直接の問題についてジュネーブに出ていくことについて政府がこれを制止することはあり得ないと私は判断をする。人事院権限において積極的にやるべきことはやるべきだというのが私の見解である。  今もよく勉強してと言われておるが、こういった点については、人事院というのは国際機関とか外国に出かけていろいろな実態調査するというようなことについてはなかなかできがたい点があるのだろうと思うのです。私はむしろ諸外国の公務員労働者実態とか賃金決定方式とか、あるいは今言ったようなILOへの提訴が行われるというようなときには、積極的に幹部職員を派遣をする。公務員労働者のいろいろな問題については諸外国の事情も精査する。御承知のように、これから本格的な公務員制度の検討もやろうとしているわけでしょう。そういう問題も含めて、これから人事院が国際的な活動というのを一体どういう姿勢でやろうとするのか。それは国内にとどまるのであって、国際的な活動というものは慎重にしなければならぬという姿勢をそのまま堅持されるのか。その点ちょっとお伺いしておきたい。
  20. 内海倫

    内海政府委員 ただいまお示しになりました御見解につきましては、私も十分に勉強をいたしたいと思いますが、先ほど申しましたように、そうはいいながらこれは政府全体の問題もございますので、今直ちにここで何をどうするというふうなお答えをすることは御遠慮させていただきますが、先ほども申しましたように、今後大いに勉強をいたしたい。なお、あわせて国際的にいろいろ勉強する、調査する、資料を集める、これはもう当然私どももやらなければならない問題でありますので、一層その点の努力はいたしたいと思っております。
  21. 角屋堅次郎

    角屋委員 藤波官房長官、こちらからも出席要請してまいりましたが、お忙しいところ御出席をありがとうございました。  先ほど来私が官房長官お見えになる前に取り上げました問題は、一昨年の人勧凍結、昨年の人勧抑制、そして本年度人事院内海総裁のもとにおける八月の人事院勧告の準備、それらに対して本年度に臨む中西総務長官あるいは人事院総裁の決意、姿勢というものについてお伺いをし、同時に私、IPU、列国議会同盟の会議に四月二日から四月七日までジュネーブに参りました際に、ことしの三月に去年の政府人勧凍結、それの実施に対して労働側からILOへの提訴をしておる問題、また、昨年も結社自由委員会勧告に基づいてILO理事会承認されて政府勧告された事態がございますが、そういう問題に触れて質問をしておるときに、官房長官がお見えになったわけでございます。  そこで、私がちょうどジュネーブに行っておるときに、公務員労働者との関係では官房長官が中心になり総務長官が加わって政労交渉、我々の立場で言えばそう言うわけですが、要するに四月六日のストライキを回避する形の中で、労働側としては政府誠意期待をしてストライキを中止するという事態で、問題が最悪の事態は避けられたということになっております。私は、そのこと自身は、労使の問題は労使の問題で解決をするという基本点から見て好ましいことだと受けとめておるわけであります。そこで、ちょうど直接の衝に当たられた立場もありますので、本年度人勧に向けてのあるいは政労交渉の直接の責任者であった官房長官から、人勧の問題での一昨年の凍結、昨年の抑制、そして新年度への決意ということを含めてまず御答弁をいただきたい。
  22. 藤波孝生

    藤波国務大臣 御指摘のように四月四日に労働界の方々とお目にかかりまして、前々から人勧完全実施または仲裁裁定についても最大限の配慮をするようにというお申し入れがございまして、それについての政府考え方回答せよというお話でございましたので、お目にかからせていただきまして政府考え方を申し上げたところでございます。  既にお答えをしたと思いますが、そのときに政府は、従来から申し上げておりますように、労働基本権制約代償措置である人事院勧告制度及び仲裁裁定制度を維持尊重するとの基本姿勢を堅持する。昭和五十九年度人事院勧告及び仲裁裁定が出された場合には、この基本姿勢に立って完全実施に向けて誠意をもって取り組む。なお、関係労働団体とは従来どおり誠意をもって話し合うという基本的な考え方を御説明を申し上げまして御理解を得たところでございます。  今先生から御指摘がございましたように、一昨年人事院勧告を見送り、そして昨年は抑制をするという態度をとってきております。しかし制度の建前からいきましてこれは非常に異例のことである、一連の財政危機の中で政府は一つ一つの方針を決めてきたわけでございますけれども、まず隗より始めよという各方面の御意見もございまして、公務員の方々あるいは公企体職員の方々に非常につらい思いをさせて今日に至っている、そういう認識を持っている次第でございます。このことは、政府内におきましても総務長官や労働大臣からたびたび指摘をされて、労使の正しい関係を維持していくという立場から考えても、あるいは公務員や公企体職員の生活水準や勤労意欲あるいは人材の確保などという点から考えても非常に厳しい状況になっている、制度尊重して進むという政府態度をさらに前進をさせなければいかぬ、こういう寄り寄りの発言等もございまして、今日に至っておるところでございます。  五十九年度につきましては、いずれ勧告が出ました段階あるいは仲裁裁定が出されました段階で政府としての態度を決定することになると思いますが、今申し上げてまいりましたようなことを念頭に置きまして、誠心誠意態度を決めていくために関係閣僚の論議を深めていくようにいたしたい、その上に立って態度を決定をしていくようにいたしたい、このように考えておる次第でございます。
  23. 角屋堅次郎

    角屋委員 今官房長官から御答弁にございましたように、さしあたって三公社四現の公労協関係のいわゆる賃金引き上げ問題というのがすぐ来る。その場合に公労協関係等が絶えず懸念するのは、それぞれの企業体の財政事情というのが必ずしも一様ではない、そこで、国鉄の関係であるとかあるいは林野の関係であるとかに該当する組合の関係に、それが期末手当等で差別を受けるというようなことで及ぶ、これが賃金の引き上げに同様に差別として及んではいけない。  政府は、少なくとも基本給の問題については、それぞれの企業といいますか公共企業体のそれぞれの状況によって差別はつけない、公正な取り扱いをするというふうに考え方として私ども承知しておるわけですが、そういう形で公労協関係、今言った三公社四現等の問題については対応されると理解していいのか、それをお伺いしたい。
  24. 藤波孝生

    藤波国務大臣 御指摘の点につきましては、本日夕刻、給与関係閣僚会議を開く予定にいたしておりまして、今時間的な日程の調整を進めておるところでございますが、その会議の論議を踏まえまして方針が決まっていくというふうに思います。  しかし、従来政府部内でいろいろ情報交換し合ってきておりますところでは、先生から今お話がございましたように、企業体によりまして赤字、黒字いろいろあるわけでございますから、成績の上がっておるところ、あるいは経営の非常に厳しい状況になっているところ、手当の面につきましてはいろいろと考えていかなければならぬ面はあるかと思うのでございますけれども基本給につきましてはできるだけ格差をつけない、公企体によって区別するというようなことのないという方向でいったらどうかというような情報交換が進んできておりまして、関係閣僚会議の議を経ませんと結論的なことは申し上げられませんけれども、今のところそんな方向で進むか、こんなふうに考えておる次第でございます。
  25. 角屋堅次郎

    角屋委員 今の点はぜひ私が申した立場で、当面三公社四現の問題については基本給等の給与の問題について差別をつけないという態度実施に移してもらいたいということを強く要請しておきます。  そこで、官房長官へのもう一点の質問というのは、靖国神社の公式参拝問題であります。  実は、不謹慎と言っていいのかあるいは不用意と言っていいのか、恩給法等の一部改正を控えて中西総務長官が一昨日参議院の内閣委員会でこの問題で答弁しておる点は、極めて重大な答弁をしておられるというふうに私は受けとめておるわけであります。事と次第によっては、これは恩給法審議にも支障のくる重大な発言をされておるのではないかというふうにも受けとめるわけであります。  なぜかならば、政府の統一見解というものから従来変えられたということなしに——いわゆる閣僚等を含む靖国神社への公式参拝については疑義があるという上に立って慎重な姿勢政府が統一見解としてとってきておる、それは今日も変わっていないと私は理解しておるのであります。変わったとすれば、自民党側から靖国神社公式参拝について見解が対外的にも出ておるという点が、いわゆる情勢の中では一つの変わった要素といえば要素であろう。しかし、これは行政の責任ある内閣直接の問題からいえば、内閣自身国会に対しても国民に対しても司法に対しても十分たえ得る態度というものがこういった憲法上の重要な問題についてはとられて当然だし、また、とられてきたというふうに私は理解をするのであります。  きのうは、同じ閣僚でありますけれども法務大臣は、衆議院の法務委員会での御質問に対して、もちろん内閣法制局の前田第一部長からの従来方針に基づく内閣法制局としての答弁もございましたが、法務大臣自身はその見解に私も従うというふうに答えておるのであります。いわばそういう意味では総務長官と法務大臣とは見解において内閣不統一の事態が出てきておると至言えるわけであります。  私は多くの質問すべき問題を持っておりますから、藤波官房長官から私が理解できる答弁があればそれをもって次の質問に入っていきたい、あえて中西総務長官には改めてこの問題で聞くということをしなくて、内閣の責任においてという立場藤波官房長官からの答弁で私が納得できる、納得というのは、要するに従来の方針ということに基本を置いた態度に変わりはないという趣旨の御答弁があれば次に進みたいというふうに考えておるわけでありますけれども、これは政府・自民党としては事重大な問題かと思いますが、ひとつ責任ある御答弁を承りたいと思います。
  26. 藤波孝生

    藤波国務大臣 靖国神社の公式参拝の問題は、長い間国民の間にもいろいろな御論議があり、国会舞台でもいろいろと論ぜられてきたところでございます。自民党の方で、奥野誠亮先生が小委員長になられまして小委員会作業を進めてこられまして、その結果、公式参拝についての意見の取りまとめが行われまして、先般自民党の考え方としてまとめたので政府としてもよく検討をして、ぜひ自民党の考えておるような方向に向かって努力をするように、こういう附せんつきで総務会長から政府に対しての要請があったところでございます。  政府といたしましては、十分勉強をさせていただきたい、このようにお答えを申し上げておりまして、従来の経緯もございますし、当然、憲法のもとでどのように考えていったらいいかということ、あらゆる角度からの論議にたえ得るような政府態度を決めるようにしなければならぬ、こんなふうに思いまして、よく勉強をいたしてまいりたい、こう考えておる次第でございます。  中西総務長官の御発言につきまして御質疑がございましたので、その点については総務長官に直接伺っていただきたいと思うのでございますが、いろいろな角度からいろいろな考え方や論議があるかと思うのでございますけれども政府といたしましては、今後勉強をいたしました結果どういうふうになるかは別といたしまして、今日のところでは、従来安倍官房長官が国会で御答弁申し上げ、宮澤官房長官が読み上げてまいりました政府の統一見解は変わっていない、その線で今後とも政府態度として進んでまいりたい、このように考えております。同時に、いろいろな角度から勉強もしていくようにいたしたい、こう考えておりますので、どうぞ御理解をいただきますようにお願いを申し上げたいと存じます。
  27. 角屋堅次郎

    角屋委員 官房長官からは、中西総務長官の点については中西総務長官にというお話がございましたけれども、こういう重要な問題について——かつて奥野さんが法務大臣とか閣僚のときに、憲法問題でいろいろ質問に答える形で答弁をされました。言論の自由といえば言論の自由ではありましょうけれども内閣一体性から見ると極めて問題の多い発言が閣僚の立場において自由に行われること自身にも、これは国会が国権の最高機関としていろいろ議論する場合に問題があるというふうに私は思うのです。今も言いましたように、靖国神社の公式参拝という点であれば、中西総務長官中西総務長官で答える、住法務大臣は住法務大臣で答える、見解は玉ぐし料等についてはまるきり違うといったようなことがそのままずっと継続していくこと自体は、国会立場からすると極めて問題があるというふうに私は理解をするわけであります。内閣の統一性という問題から見て、やはり一つの内閣としての方針が出るまでは、閣僚の発言については重要な問題についての自由自在な発言は慎重にするという姿勢が本来内閣の一体性から見て望ましいことだと私は思うのです。だから私はそういう意味で、藤波官房長官質問する前にわざわざ改めて中西総務長官に御質問答弁を求めることをしない。また、おとつい答弁したのをきょうまるきり変えるようなことも総務長官として言いにくいし、それを言うことになると私は次の質問にはなかなか入れないという事態にもなるということもあって、政治的にそこのところは、内閣全体は総理がまとめられ、その番頭役は藤波官房長官自身がやっておるから、従来方針に変わりがないということであればきょうの時点はそういうことで法案審議に入ろうというのが私の真意である。  ただ、私も言いましたように、この重要な問題について閣僚がそれぞれの関係委員会で自由自在に政治家個人としての発言あるいは自分自身が考えておることを大臣の名においてやるということ自身については、閣議でも慎重な対応というのが、総理であればそういうふうにとるのが筋道だろうと私は思うのです。その点についてひとつ。
  28. 藤波孝生

    藤波国務大臣 政府としての考え方は、今申し上げましたように統一見解を持っておりますので、その線で参りますことを御理解をいただきたいと存じます。  なお、いろいろな角度からみんなで勉強しよう、こう言っておりますので、勉強いたしております中で少しいろいろな角度からの意見が出るかとも思うのでございますが、御指摘のことを十分踏まえさせていただきまして、政府部内で矛盾をしたりそごを来したりすることのないようによく調整をして進んでまいりたい、このように存じておる次第でございます。
  29. 角屋堅次郎

    角屋委員 官房長官、結構です。  総務長官には、先ほど言った私のこの問題に対する本日の時点立場で、いずれ同僚議員からこの問題については当然総務長官に対する御質疑等もなされると思いますけれども、きょうは第一番目のバッターとしてせっかく出された改正案等の問題に触れて御質問するのが本意であろうかと思いますので、質問に入りたいと思います。  今回の恩給法等の一部改正の問題ではお尋ねすべきことが多いし、同時に、中西総務長官の私設の諮問機関として御承知の戦後処理問題懇談会というのが既に発足をし検討を進めておるという問題、あるいはそういう戦後処理の問題に関連して、いろいろ重点的に幾つかのお尋ねしたい点を逐次御質問申し上げていきたいと考えております。  まず冒頭にお伺いしたいわけでございますが、現行の恩給法自体は、大正十二年から当時の軍の関係公務員関係を含めたいわゆる恩給法ということでスタートして、随分長くなるわけであります。戦後、この恩給法の中から国家公務員共済が新しく分家として出て行くあるいは地方公務員関係共済が分家として出ていくということで、今日の恩給法というのは、これから孫や子を持たない、従来おった家族で生きていかなければならぬというふうな実感もするわけであります。  しかし、それにしても、今日恩給に関係しておる一般の受給者、あるいは軍の関係で受給しておる、軍人軍属を含みますが、そういう人も含めて考えてまいりますと、資料によれば二百二十八万二千というのですか、こういう人たちが受給者として関係をしているというふうに理解をいたしております。仮定俸給引き上げということになれば、これは約四十数万の者に直接関係がございましょうし、あるいは普通恩給等最低保障額引き上げがあるということになれば、該当する対象者としては百十八万にも及ぶということでありましょうし、また、公務関係扶助料の最低保障の引き上げということになりますれば、五十二万近くの者が対象として出てくる。あるいは傷病恩給年額引き上げということになれば、十二万近くの人がやはり対象として出てくるというようなことで、恩給法の改正問題というのは、従来の軍関係であると公務員関係であるとを問わず、相当な対象の人たちがこの改善を望んでおるということは厳然たる事実であります。  今回の改正は、冒頭に取り上げましたように、残念なことに一昨年の人勧凍結あるいは昨年の人勧抑制ということで、仮定俸給引き上げも二・一%とかあるいは一・九%プラスアルファというふうな形で引き上げざるを得ない事態にございまして、これに老後の生活を託するという関係の受給者から見れば期待に十分沿えない事態だとも言えるわけであります。だから我々の方では、恩給法の改正は従来、改善がなされる内容は必ずしも十分でなくても、改善されていくという事態を受けて賛成で処理をしてくるということでございましたが、本年の場合は、数日来の内閣部会で議論をしますと、一昨年は凍結、昨年は抑制、こういう事態の中でわずかばかり上がる恩給法の改正については反対すべきだという意見も出ておるわけであります。気持ちの上ではまさに私もそういう点を理解するのでありますが、それをどうするかということを内閣部会長として御相談を皆さんにしていただいておるという事態がございます。これはやはり基礎になる人勧がそういう異常事態にある。去年はILO提訴するという事態も出る。ことしもILO提訴する事態が出るということが相関連をしておるわけであります。  まず今度の改正点で、仮定俸給引き上げを三段階で増額指標を設けてやっておるわけですが、これについてひとつ簡単に説明を願いたい。
  30. 和田善一

    和田政府委員 恩給年額のベースアップにつきましては、昭和四十八年度以降、前年度の現職公務員給与の平均改善率を指標としてまいったところでございますけれども、このときはまだ単純に平均のアップ率を恩給の仮定俸給にも掛けたやり方でやってまいりましたが、昭和五十一年度からは、公務員給与の水準だけでなくて、その改善傾向、アップ率を上の方に薄く下の方に厚いというような改善傾向をも反映させる方式によりまして増額するということで参っております。この方式によりまして、昭和五十九年度におきましても、昭和五十八年度公務員給与改善傾向を回帰分析いたしました結果、一・九%プラス二千四百円という算式を基本的な増額指標といたしましてベースアップをしようとするものでございます。公務員給与の行政職俸給表(一)の改善傾向といたしまして、最高引き上げ率が二・一%である、それからまたこの最高引き上げ率というのは下の方の最高引き上げ率が二・一%を超えない、それからまた上の方の最高引き上げ額も、年額でございますが九万八千四百円を超えて増額することはないという傾向が行(一)俸給表にございますので、結局一・九%プラス二千四百円という算式を基本といたしまして二・一%と九万八千四百円というのを引き上げの上限とすることが適当であるという結論で、これを三段階の指標といたしまして改善いたした次節でございます。
  31. 角屋堅次郎

    角屋委員 この仮定俸給表の引き上げというのを例えば五十七年改正というので我々が当委員会で議論する段階では、今の二・一%、あるいは一・九%プラス二千四百円、あるいは上限を九万八千四百円といった形のものが、たしか百二十八万以上四・五%プラス一万二千八百円、これは三十四号該当だと思います。それから百二十五万円以下五・五%、これは三十三号該当だと思います、この当時は人勧引き上げが正常に行われておりましたから。そして引き上げ額の上限が二十二、万八百円という形だったと思います。  これは、まあ数学の方程式理論に基づいて当てはめながら、今言ったような形で今度の場合は二・一%、一・九%プラス二千四百円、そして上限は五十七年の場合には二十二万八百円というのを今回の場合は九万八千四百円、こういうふうにして仮定俸給をつくられたということであろうかと思います。これはしたがって、五十七年改正を見てもそのときの平均としての引き上げ率を何ぼにするか、それをどういうふうに上位ランクと下位ランクにアロケートするかということで、今回もそういう措置をとられた。これからもこういう考え方仮定俸給表の仕分けはしていくということでありましょうか。
  32. 和田善一

    和田政府委員 先生御指摘のとおりでございます。
  33. 角屋堅次郎

    角屋委員 そこで、これは軍人軍属を含むわけでありますので、軍人の仮定俸給の場合の階層別、階層別と言うよりも昔で言えば階級別になりますが、引き上げ率というのはどうなりますか。
  34. 和田善一

    和田政府委員 軍人の階級で申し上げますと、少尉以下の階級につきましては二・一%、中尉から少将までの階級では二・〇%、中将が一・九%、大将一・八%ということになっております。仮定俸給の号俸で申し上げますと、三十九号俸以下は二・一%、四十号俸から七十号俸までは二・〇%、七十一号俸から七十七号俸までは一・九%、七十八号俸と七十九号俸は一・八%、八十号俸から八十二号俸までは一・七%ということになっております。
  35. 角屋堅次郎

    角屋委員 今回の改正の中で、長期在職老齢軍人等仮定俸給は一号俸上げることにいたしております。この引き上げによってどの程度改善になるかということもございますが、この長期在職の旧軍人老齢者等の仮定号俸の引き上げというのは、御案内のとおり五十六年に二号俸引き上げを行った。五十八年に一号俸の引き上げを行った。今回同様の趣旨で一号俸の引き上げを行われたものだと思うのですけれども、これは長期在職老齢軍人等に対して、御苦労の意味と高齢になられたという意味を兼ねてトータルすれば四号俸の引き上げを行ってきたということであろうかと思うのです。これは今後ともそういう形で引き上げのケースがあるのか、あるいは今回の四号俸の引き上げでもってこのこと自身は終わったという解釈に立っておられるのか、お答え願いたいと思います。
  36. 和田善一

    和田政府委員 今回一号俸を引き上げました理由は、文官との均衡ということで行ったわけでございます。  もう少し詳しく申し上げますと、昭和四十八年に一般文官の仮定俸給改善措置四号俸引き上げというものが老齢者等を優遇するために行われました。この措置との均衡が悪いということで軍人につきましても引き上げる。したがいまして、文官と四号俸の格差があったのを、先生御指摘のとおり昭和五十六年度で二号俸、五十八年度で一号俸それぞれ引き上げまして、五十九年度残りの一号俸を引き上げるということでございますので、この措置は文官との均衡が回復したということで、今回をもって完結したというふうに考えております。
  37. 角屋堅次郎

    角屋委員 もう一点お伺いをいたしたいと思うわけでありますけれども、軍人の仮定俸給表を別表第一で見ますと、今回の場合、兵の場合は九十三万一千八百円、大将の仮定俸給表の場合は五百六十一万九千二百円、この格差というのは大体約六倍。私はかねてから、こういう恩給法仮定俸給表の改正のときには、背の古い戦前戦中の時代ならともかく、新しい時代を迎え、新憲法体制の中でこういう問題を考える場合の国民感覚あるいは我々の感覚から見ても、できるだけ赤紙一枚で出征をした兵、下士官のような場合を厚くして、この道ということで進まれたいわゆる佐官、将官という形の方々はこの格差をなるべく圧縮をするようにすべきものだと言ってきたわけであります。これらの点についてひとつお答えを願いたい。
  38. 和田善一

    和田政府委員 恩給は公務員の退職当時の俸給を基礎として算定するということにされておりまして、旧軍人の場合は従来から仮定俸給を階級ごとに設けて恩給年額計算の基礎としてまいっております。  この階級差を縮めていくということにつきましては、これまでの恩給法の改正におきましても、まず軍人恩給の再出発時点昭和二十八年に兵の階級の仮定俸給を兵長の階級に一本化したとか、あるいはその後の仮定俸給の格付の是正等におきましてもできるだけ下の方を厚く改善してきている、それからまた、ベースアップにおける先ほど答弁申し上げました回帰分析方式を導入するというようなことで、終戦直後十六倍の大将と真との格差があったわけでございますが、こういう努力を続けまして、現在では六倍に縮まった。さらに、最低保障制度というものを導入してまいりましたので、現実には最低保障の適用を受けてさらに大部分の方が六倍よりももっと縮んできているということでございます。
  39. 角屋堅次郎

    角屋委員 人事院総裁、お仕事がありますれば退席していただいて結構でございます。  中西総務長官答弁せずという気持ちではありませんので、これからひとつお尋ねをいたしていきたいと思います。  総務長官の私的諮問機関として、先ほどもちょっと触れましたけれども戦後処理問題懇談会、これは会長といいますか座長といいますか、水上達三さん、日本貿易会会長をやっておられる方だと承知しておりますが、五十六年十二月時点で、今なお一部に強い要望のある戦後処理の諸問題に関して公正な検討の場を設けることが必要であると判断をして、そこで総務長官の私的諮問機関として戦後処理問題懇談会というのが設けられたというふうに私は受けとめておるわけであります。  中西総務長官になられてからいろいろマスコミの報道で出ておるのを聞きますと、そういうことで今検討中でありまして、いよいよ本格的に答申に入ろう、場合によってはといいますか、従来のプログラムからいけば六月中にも答申を出したいということで努力しておられるかと思うのでありますけれども中西総務長官は、この場合に発言として報道されるのは、一口に戦後処理は終わった、解決済みだと突き放すのはいかがなものかとも言われているかと思えば、あちらを立てればこちらが立たず、両方立てれば国が立たずというふうに言っておるとも伝えられておるわけであります。せっかく総務長官の私的諮問機関として戦後処理問題懇談会を設けられて、いよいよ答申に入ろうという段階でお尋ねしておる総務長官自身がぐらついたようなことを言っておると、当面答申を出す方が一生懸命やってきて、いずれにせよ答申をまとめようという段階にいかがかというふうな感じもするわけであります。  それはそれとして、戦後処理問題懇談会を設けた趣旨、そして今までの討議、そして答申はいつごろ出すという作業の日程であるのか、そしてそこで中心テーマにしておるのは一体何かといった点について、簡潔にお答えを願いたい。
  40. 禿河徹映

    禿河政府委員 今戦後処理問題懇談会につきまして先生からお話がございましたが、政府といたしましては、戦後処理の問題につきましてはいろいろ措置を講じてまいりました。しかし、昭和四十二年の引揚者に対しますところの特別交付金の支給措置、これをもちまして戦後処理に関する一切の措置は終了したものというふうに考え、そのように表明をしてきたわけでございます。  しかし、特にここ数年、シベリアの強制抑留者の問題、恩給欠格者の問題、さらに在外財産の問題、この三つの問題を中心といたしまして、一部になお強い御要望というものが出てまいったわけでございます。そういう状況を踏まえまして、先ほどお話がございましたとおり五十六年の暮れに、その三つの問題を中心に戦後処理問題というものをそもそもどういうふうに考えるべきかということにつきまして、民間有識者によりますところの公正な検討の場を設けて御検討をお願いしよう、それが適切であろうということになりまして、一昨年の六月末から第一回の参集を求めまして戦後処理問題懇談会の開催が行われた、こういうことでございます。  その後のこの懇談会の状況は、昨年の末までは、これまで関係各省庁が講じてまいりました各般の措置につきましての勉強と申しますか、その施策内容のヒアリング等を行い、さらには関係団体の方々の御要望のヒアリングを行うということで参りまして、この一月に入りましてからは、そういうヒアリングの結果を踏まえながら、いろいろと自由討議の形で、そういう諸措置がどういう背景でどういう必要性のもとにとられてきたのか、その措置内容を現時点でどのように評価していくべきかとか、さらに全般的な戦後処理問題についてどのように考えるべきか、こういうふうなことについての意見の交換が行われておる、こういう状態でございます。  その結論と申しますか取りまとめがいつ行われるかということは、この懇談会の先生方の御意見によるところでございますけれども、一昨年の六月末に第一回の開催をいたしました時点でも、大変難しい問題でもありますのでやはり二年くらいの期間は必要ではないか、こういうふうな状態でございましたので、それを踏まえますと、大体この夏ぐらいまでには御意見の取りまとめができ、それをちょうだいできるのではないか、かように考えておる次第でございます。     〔委員長退席、深谷委員長代理着席〕
  41. 角屋堅次郎

    角屋委員 総務長官お尋ねいたしますが、大体夏ごろまでに戦後処理問題懇談会として、シベリア抑留者への補償問題あるいは在外財産の補償問題の見直し、恩給欠格者の救済といったようなものを中心テーマにした諸問題ということで答申が出てきた場合、総務長官はこれをどういう形で実現への努力をされようとするのか、それらを含めて、これからのこの問題の御見解を聞きたい。先ほど御指摘の点についてもあわせてお答えを願いたい。
  42. 中西一郎

    中西国務大臣 今せっかく議論をしていただいておりまして、個別の御意見が出始めておるというのが現状でございます。したがって、これから五月、六月、いろいろと新しい御意見も出てくるだろうと思います。それをいつ集約していただくかということ、これもお集まりの懇談会のメンバーの皆さん方のお気持ちに従わなければいけませんし、そういったことで、今、いつ結論が出るであろうというような予断はしかねるところでございます。そんなことで、もうしばらく懇談会で御議論をしていただく、その上で御議論を集約していただければ大変幸いであると思っておりますが、できるだけ早くという期待は持っておるわけでございます。
  43. 角屋堅次郎

    角屋委員 戦後処理問題というのは、政府は当初、昭和四十二年段階で終わったと言っていた。ところが、山中総務長官時代に、後ほど触れますけれども、実際は恩給法にかかわって満州とか中国方面の行政機関に準ずるというようなところを加えるとかいろいろなことをやってきたし、その後、その問題は本委員会においても続いておる。簡単に戦後処理はすべて終わったという事態にはない。私自身もそういう認識に立っておることを申し上げておきます。  そこで、シベリア抑留者の問題というのが出て、これは後ほどの質問で、シベリアに抑留された我が党の渡部行雄議員が自分みずから体験をした実感に基づいてまたこの問題に触れられるというふうに思いますが、私自身も、学校を卒業してから昔の満州、今の東北に仕事を持っておった関係関係者も多く、いろいろ要請等を受ける機会が多いわけでありますが、まず冒頭に、厚生省からシベリアに抑留された総数、あるいは引揚者、あるいは亡くなられた状況、こういうことについてひとつ実態お答え願いたいと思います。
  44. 森山喜久雄

    ○森山説明員 ソ連本土に抑留されました方々の数でございますが、厚生省の調査によるわけでございますが、抑留者の総数は五十七万五千人でございます。このうち帰還された方が四十七万三千でございます。それから、死亡された方が五万五千でございます。それから、一たん入ソはしたわけでございますけれども、病弱という理由でまた旧満州とか北朝鮮に送り返されたという方が四万七千名ございます。
  45. 角屋堅次郎

    角屋委員 ソ連本土に抑留された者の概況については今厚生省からお答えになりましたが、このうち病弱等のため入ソ後満州等に送られた者が約四万七千ということになっております。私は、当時、ソ連参戦、満州にソ連軍が入ってくるという状況のもとでは、ノーマルな形でソ連に送り込まれた抑留者等が満州等に送られるケースというのは、南満まで含まれて送られるというケースは少なくて、恐らくこれは北満あるいは北朝鮮というふうな国境地帯の関係、図們、綏芬河、こういう国境地帯の関係で送られてきたのが四万七千ということであろうかと思いますが、実態はそういうことではないのですか。
  46. 森山喜久雄

    ○森山説明員 その辺の状況は必ずしもつまびらかではございませんが、恐らく先生のおっしゃるような事態ではないかというふうに考えております。
  47. 角屋堅次郎

    角屋委員 こういった問題については全体的には我が党の渡部委員に譲りたいと思いますが、私自身立場で考えてまいりましても、シベリアの抑留という事態は、あの冬場極寒の地で大変な労働をやっていかなければならぬ、それを強いられるというふうなこと等から、栄養失調で亡くなるのもあれば傷つくのもあれば病気になるのもあるという事態が現実に相当数出たと思うのであります。だとするならば、やはり戦争が終わった後軍務にあった者が帰るまでの期間、通常これを抑留として一カ月プラスという形をとっているわけでありますけれども、シベリアのような状態は、私ども自身説明を体験した者から聞くまでもなく大変なことだったんだな、他の中国や南方方面というところから帰ってくる以上に大変な悪条件にあったというふうなことは、これは日本国国民全体にも理解のできることだと私は思うのであります。そういう点で、例えば戦務加算として戦務甲とか戦務乙とか通常の場合とかというふうなことで、抑留の場合は一カ月プラスと言っておるのを引き上げて考えるというようなことは、そのシベリア抑留者の補償問題の実現の上で検討すれば可能な一つの手法であるというふうに私自身も考えておるわけであります。それらの点についてはどういう見解を持っておられるかお答えをいただきたい。
  48. 和田善一

    和田政府委員 シベリアに抑留された方々が大変な御苦労をなさったということは私どももよく承知しております。戦後の抑留状態は、地域によりまして、また占領国それぞれの考え方もありまして、いろいろであったと思います。南方諸地域あるいは中国大陸におきましても、場所によっては大変な御苦労をされた方があるということもまた承っているところでございます。  この抑留加算の制度は、旧軍人について昭和四十年に導入したものでございますが、このような抑留の実態を踏まえまして、戦後、昭和四十年の時点で新たな加算制度を設けるということの是非を含めて種々検討いたしました結果、抑留期間というものは公務員としての勤務期間そのものではございませんが、その勤務の延長とも見られる特殊な期間であること、それからその間非常に御苦労されたということもありますので、恩給制度上の特例的な措置といたしまして、辺陬・不健康地加算年の加算率等を考慮しながら、抑留期間一月につき一月の割り増しという結論をこのとき出したわけでございます。したがいまして、抑留中のいろいろな地域の実態に応じましてその割り増し率等に差をつけるということは適当でございませんし、またこの割り増し率を余地域一律に引き上げるということも他の加算年との均衡及び一般抑留者に対する処遇の均衡等から見て適当でないと現在考えている次第でございます。
  49. 角屋堅次郎

    角屋委員 今極めて役人的なといいますか、全く機械的なといいますか、そういう答弁だと私は率直に思うのです。なぜなら、恩給法で物を考える場合でも、これから私が取り上げたいと思う戦時中の戦務加算の一カ月を二カ月にするとか二カ月を三カ月にするというのは、当時軍が現に存在して決めたもので、戦後もう相当たったこの時期に直してくれという問題を取り上げる場合は、前に大本営を含めて取り扱った問題の物指しがあって、それを変えるというのは非常に難しい点が私はあると思う。ところが、戦争が終わって、そしてとにかく日本に帰ってくる前にいろいろな条件のもとで抑留されて苦労しながら帰ってくるという問題は、その状況が国によっては千差万別である。戦務甲があり戦務乙があると同じように、抑留の深刻さの度合いによって一カ月にするのか、一カ月にプラスをする地域をつくるかというのは、これは我々自身の時代が考えていいことなんだ。決してそれば固定したものではない。そういう点で今の答弁というのは官僚的な答弁であって、これはひとつそのことを含めた検討を積極的にやってもらいたいというふうにとどめます。    〔深谷委員長代理退席、戸塚委員長代理着席〕  これから私が取り上げるのは、それとは違って戦時中の問題で、取り上げる点では困難な条件を含んでおります。軍人恩給改定に関する請願というのはたくさん来ておりますけれども、一つは中支方面から、従来の戦務加算の乙を戦務加算の甲にしてもらいたいということで来ておる問題がございます。  陳情の代表的なものとしては、元中支那関係第一線部隊全国連盟代表者片山聞造さんで来ておるものと、同じ趣旨で、私どもの地元の関係で私がよく承知をしておる関係では、元中支那関係第一線部隊全国連盟の元歩兵第三十三連隊伊勢市地区代表者として玉田正蔵さんといったような関係者からも「軍人恩給改訂に関する請願書」というのが来ております。  私は、学校を上がってから旧満州におりまして役人をやっておった関係がございますし、また、今取り上げました中支那の関係は、大東亜戦争の初期は将校、小隊長として当時フィリピンに行っておったわけですが、戦争が終わる十九年から二十年にかけては中支で中隊長をしておったという関係で、こういった元中支那関係第一線部隊全国連盟から出ておる戦務加算の引き上げの問題は、実感としてわかるのであります。私はフィリピンにもおった、それから中国にも戦線でおった。戦いの様相については、幹部でありますからいずれの状態もよく承知をしておる。そういう点から見て、中支那から出されておる関係の要望は、詳細には時間の関係上触れませんけれども、これは引き上げて当然の実態にあったと私は思っておるわけです。  ただ、先ほどのシベリアの抑留というのは、一カ月にするか二カ月にするかということは、我々自身が考えればいいフリーハンドがある。しかし、戦時中の戦務甲とか戦務乙とかいろいろな点は、当時大本営が、陸、海それぞれ仕分けをして、事細かに時期的に区分してやってきたという経緯がある。これを今の時代になって変えるということは、極めて困難な障害条件が私は率直に言ってあると思う。  しかし私は、あの例の戦務加算甲、乙の一覧表をずっと時期的に見ておりまして、これは私の受けとめ方ですが、大本営の物差しは、南方方面というのは状態が非常にシビアな場合も島によっては平静な場合もすべてこれは三月で埋め尽くされておる。私がおったフィリピンも同様である。ところがだんだん本土に近づくに従って、玉砕した地域もあるにもかかわらずそこは三カ月ということにはなっていない。北の千島の方面に及んでも同様なことが言える。中国も同様である。本土に近づくに従って、いわゆる本土がどんどんやられてくる、激戦が起こる、玉砕をするという事態のところでも三カ月と取り扱っておらぬ。大本営は本土に近いところでやられたとは言われたくない、そこを三カ月にするとかいうようなことは、激戦を認め、場合によっては玉砕を認めるということにならざるを得ないというような感じを私は今日持つものであります。  もっと公平な立場で考えれば、本土に近いところといわず、あるいは中国、満州といわず、あるいは南方といわず北の島といわず、だれが見てもこれは当時の戦務加算で二カ月である、三カ月であるという客観性の物差しは可能であるというふうに私は思うのです。そういう点から見て、ここに出てきておる元中支那関係第一線部隊全国連盟の片山さんから出ておる問題というのは十分検討するべき問題である、また改定をする要素を含んだ問題であるというふうに私は受けとめておる。私はフィリピンにもおったし、同時に中支にもおった、戦線の実態については両方とも承知しておる、そういう立場で私は申し上げる。当時の大本営の物差しは、そういう点で本土に近いものについては非常に認めがたい、そういう姿勢にあったのではないかとさえ考える。そういう立場から見れば、これは我々の時代に変えていいことであるというふうにも思うのであります。  そういう点について関係者からのいろいろな意見が出ておりますけれどもお答えを願いたい。これは総務長官から答えてもらいたい。もう事務官僚ではだめです。
  50. 和田善一

    和田政府委員 大臣がお答え申し上げます前に、事務的にお答え申し上げます。  加算制度の枠組みにつきましては、今先生からるる御指摘がございましたように、戦前から恩給法においてきめ細かく決められておりまして、戦務加算等の加算の程度、加算の認められる期間、その地域等は勅裁で定めるということで、戦時または事変の都度、内閣告示で公示されたものでございます。  その内容は、実質的には、先生御指摘のとおり戦時、事変の状況を把握していた旧陸海軍省を中心に加算事由の生じた当時において種々検討の上決定されているというものでございますので、これを今日の時点において改めて再検討するということは、このような加算制度前提としている恩給制度基本に触れる問題となってまいります。また制度内部の均衡という問題もありますので、非常に困難であるというふうに考えております。
  51. 中西一郎

    中西国務大臣 角屋委員御指摘の問題、私、着任してからも随分勉強いたしました。そして事務当局から過去の経緯についても十分聞いておるところであります。  私もあっちこっち転戦しましたので、先生の言っておられる意味合いはよくわかります。しかし制度として、大本営云々の話がございましたが、いろいろなことを検討して決定された経緯もあるわけでございまして、今日の時点でこれを改めて再検討したらいいじゃないかという御主張でございますが、ここはすれ違いになるようではなはだ恐縮でございます。しかし、過去のそういった加算制度前提になっておる恩給制度というものの基本にかかわる問題であるということで、今すぐこれを先生御主張のようにできるかということとなりますと、その点は大変難しいと御答弁せざるを得ないのでございます。
  52. 角屋堅次郎

    角屋委員 これは政府・自民党とかあるいは社会党を初め野党とかいう問題を超えて、何も該当者の方々の要望があったとかなかったとかいうことを超えて戦後処理問題という問題を我々が考える場合に、シベリア抑留の問題もありましょうし、在外財産の問題もありましょうし、また同時に恩給欠格者の強い要望の問題もありましょう。そのほかに、単に外ばかりじゃなしに、日本の本土でどうであったのかということになれば、原爆の投下でやられたいわゆる原爆患者の問題もあろうし、あるいは戦災でやられた問題もあろうし、いろいろな問題があることは我々政治家として承知しておる。しかし具体的に出てきておる問題について、機械的に戦後処理が終わったというだけで片づけるわけにいかぬ政治家の我々としての心情がある。それは政党を超えた問題である。そういう点でただいまの問題については、場合によれば内閣委員会にそういう問題の小委員会をつくっていろいろ検討するのも一つの方法であろうし、片づけるべき問題については我々の政治の責任において片づけていくという姿勢を私は望みたいと思う。そういう点で、大体担当の局長あたりから答えるのは事務的なことにならざるを得ないかと思うのだけれども、率直に言ってこれは前向きに考えてもらう必要があるし、我々も必要なものについては前向きに検討しなければならぬという姿勢であるということを申し上げておきたいと思うのです。  昨年の法案が通ったときの第九十八国会の附帯決議で、例えば「戦地勤務に服した旧日赤看護婦及び旧陸海軍看護婦に対する慰労給付金の増額を検討すること。」ということが附帯決議でついておる。これは五十四年以来据え置きのままであるという事態もございまして、経済状況、物価その他の考え方を検討してみますとやはり二割くらいは少なくとも上げなければならぬというふうにも思うわけであります。これは国会の与野党を通じた附帯決議で注文をつけた問題でありますから、どれだけ上げるかという検討はあるにしても、これは実施をしてもらわなければならぬ問題である、これが一つです。  それから「外国特殊法人及び外国特殊機関の未指定分の件について、速やかに再検討を加え適切な措置を講ずること。」ということまで含めて第九十八国会において附帯決議が成り立っておる。私は従来から、この問題に関連して、旧満州棉花協会、旧華中棉産改進会、旧華北棉産改進会、これを恩給法による外国特殊機関として指定をしてもらいたいということで熱心な要請を受けてまいりました。私も先ほど来申しておりますように満州にもおりましたし、中支の方にもおりまして実感があるわけでありまして、この華満棉友会の会長をやっておられる中川さんというのは相当高齢な農学博士でございますが、それを初め私の地元からも関係者がそれぞれございまして、強い要請を受けておって、恩給局の方にも言っておるわけであります。こういった国会の法案を処理するに当たっての附帯決議というのは、今言った後者の問題については数回にわたって附帯決議がなされており、国会の採択も十二回やられておるという事態の問題でありまして、これらについては早急に、この旧日赤看護婦及び旧陸海軍の看護婦の慰労給付金の増額問題というのを含めて実現をしてもらいたいと思うのです。これに対する答弁をお願いいたします。
  53. 和田善一

    和田政府委員 旧陸海軍の問題につきましては管理室の担当でございますので、後ほど管理室長から答弁してもらいますが、満州棉花協会等の機関を外国特殊機関として追加指定することにつきまして、国会の附帯決議等もございまして私どもも十分検討しているわけでございますが、旧満州棉花協会等を外国特殊機関に指定しましてその職員としての在職期間を公務員としての在職年に通算するということにつきましては、恩給制度公務員を対象とした年金制度でございまして、現在特定の外国特殊機関についてその職員としての在職期間を一定の条件のもとに通算することとしておりますのは組織の性格とか業務の内容、人事交流の態様等、当該機関実態を考慮した極めて特例的な措置でございまして、現在までの検討の結果、旧満州棉花協会等がこれに該当して追加指定すべきであるという結論には達しておらないという事実を御答弁せざるを得ない次第でございます。
  54. 菊池貞二

    菊池(貞)政府委員 旧日赤従軍看護婦、また旧陸海軍従軍看護婦等の慰労給付金のベースアップのことでございますが、先生御存じのとおりに、慰労給付金は、女性の身でありながら戦時中特段の御苦労があったということで、旧日赤救護看護婦等を慰労するために特別にとられた措置でございますので、恩給あるいはいろいろな年金、そういったものと同じようにベースアップをするというのはその性格から非常に難しい問題ではないかと考えております。  しかし、ただいま先生からお話のございましたように、附帯決議あるいはいろいろ請願等も私どもよく承知しておりますし、その趣旨を十分尊重いたしまして、また社会経済の変化等を見つつ引き続き検討させていただきたい、かように考えております。
  55. 角屋堅次郎

    角屋委員 今の二点の前段の部分については、私、回答に極めて不満であります。内容的な問題について熱心に集められた資料等を私も承知をしておりますし、また、現実にそれらの協会とか関係の組織というのは、私自身満州におりましたから、これは満拓であれ満鉄であれ、あるいは協和会であれ、そういうものは皆わかっておるわけであって、また、こういう請願をしてきておる組織自身が公的にどういう仕事をしておったかというのは、政府機関の現地におけるいろいろなレポートの中、報告、資料の中でも出ておるわけであって、それらを総合的に考えれば当然他のものと同様に入れていいというのが私の信念でありますけれども、時間の関係もありますので、さらにこれらの問題は、国会でも附帯決議が院でつけられておるわけでありますから善処をお願いしたいと強く要請をしておきます。  最後に、これは恩給欠格者の関係で、これを取り扱うという場合はなかなか難しい問題でありますが、出てきておる問題は、御承知の軍歴あるいは加算等も含む軍歴というものが、公務員関係の問題であればそれは恩給とか新しく孫子で出発をしておる共済年金の組織とかいうところにつながるわけでありますけれども、そうでない民間の場合、厚生年金や国民年金というかかわりでということになると、民間で軍歴に行った者というのにはそれはつないでいないというのは厳然たる事実であります。しかし関係者からすれば、官民格差の是正という立場から、こういった該当の人たちを、厚生年金や国民年金の期間に軍人在職期間を通算してやってもらいたいという要請は、これは日赤、陸海軍従軍看護婦要請でも出ておりますし、私が取り上げた中支那関係第一線部隊全国連盟の片山さんあるいは地元の玉田さん等の要請の中でも出ておる。その第二項の問題というのは、「恩給受給年限に満たない者で、一ケ月以上の軍歴を有する旧軍人軍属には、戦時加算を加えた軍歴年数を国民年金或いは厚生年金受給対象年限に合算され度。」ということで陳情が出ておることは御承知のところであります。  これは事柄の歴史的な経過やあるいは制度性格から見て、極めて重要な問題と障害点というのも含んでおるかと思うのであります。しかし、こういった要望に対しても十分な検討を加えて、何ができるかというふうなことはやはり答えを出していくということが必要かと思うのでありまして、この点についてはきょうは厚生省においで願うようにお願いしておきましたから、厚生省からお答えを願いたい。
  56. 渡辺修

    ○渡辺説明員 ただいま先生御指摘ございましたような要望がかねてから出ておるということは、私ども十分承知しているところでございます。  確かに各種の公的年金制度にまたがって加入期間を持っている方々につきまして、通算年金制度というものがございます。しかしながら、これはあくまでもそれぞれの制度に加入をしていたその制度から、その制度に加入をしていた期間につきまして年金を給付するという仕組みになっているものでございます。  先生御指摘のケースにつきまして、短期間の軍歴期間について、厚生年金なり国民年金なりの制度からその期間に係る年金給付をしてはどうかという問題であろうと思いますけれども、厚生年金、国民年金といういわば一般的な社会保障制度のもとで、しかも保険料を拠出していただいてそれに対して給付をするという社会保険システムをとっております関係上、御指摘のような一定の身分関係にあった方だけについて特別な取り扱いをするということは、どうしても一般的な社会保障制度としての国民年金制度、厚生年金制度にはなじまないのではないかというふうに申し上げざるを得ないわけでございます。
  57. 角屋堅次郎

    角屋委員 現段階で踏み込んだ答弁をいただくということは、あるいは厚生省サイドの場合でもあるいは総理府の恩給局サイドの場合でも、先ほども役人答弁と言いましたけれども、それはわかり得る点もございます。そうならば、総理府総務長官が私的諮問機関として戦後処理問題懇談会にシベリア抑留の問題や在外財産やあるいは恩給欠格者問題というのを熱心に議論してもらって、答申を出してこようとするときに、どうも総務長官自身が、あちら立てればこちらが立たず、こちら立てればあちらが立たず、両方立てれば国が立たず、こう言っておったのでは、これは一体何を諮問したのかという疑問と関連をして考えざるを得ない。  それは正直にそう言われたのかということは別にして、先ほど来言っておるように、やはり公務員労働者にかかわることしの人勧実施の問題や、ILO提訴とかかわる人事院のこれからの構えの問題や、さらには今言った恩給法で改正をしていく中身の問題や、戦後処理と関連する今の諸問題、そしていろいろ陳情の出てくる分、無理な点もあれば考えてやらなきゃならぬ点も政治家としてはそれぞれ持っておる。考えてやらなければいかぬ問題については、やはり政治の責任で勘案するように我々としては努力しなければならぬということになる。そういった問題については、大臣も御出席でございますから、戦後処理の問題も含めて、あるいは八月の人事院勧告完全実施というような問題も含めて善処を強く要請をいたしまして、私の質問はこれで終わらせていただきます。ありがとうございました。
  58. 戸塚進也

    ○戸塚委員長代理 この際、暫時休憩いたします。     午後零時三十四分休憩      ————◇—————     午後二時四十四分開議
  59. 片岡清一

    片岡委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。鈴切康雄君。
  60. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 きょうは官房長官お忙しいところ御苦労さまです。  恩給法の一部改正の法案に入る前に、このところ靖国神社の公式参拝ということが大変に話題になっております。私はそういうことをまず初めにお聞きをいたしまして、法案等についての審議をしてまいりたいと思っております。  私は、かつて第二次世界大戦で不幸にして亡くなられた多くのみたまを慰霊することについては、やはり国民のすべてがそういう意味から言うならば追善供養すると同時に、それを一つの反省として平和への誓いと新たに取り組まなければならない問題であると思っております。  そこで、私ども公明党も毎年八月十五日に武道館に天皇皇后両陛下を迎えての政府主催の追悼式典には参加をさしていただいております。また、千鳥ケ淵の戦没者慰霊祭にも出席して追善供養をいたしております。しかし、靖国神社の公式参拝とはおのずと問題を異にしている問題であります。また、この問題については今日まで憲法上いろいろと疑義が唱えられている問題でもございます。  そこで、昭和五十三年の十月十七日参議院の内閣委員会における当時安倍官房長官は、内閣総理大臣等の靖国神社参拝についての政府としての統一見解で、政府の行事として参拝を実施することが決定されるとか玉ぐし料等の経費を公費で支出することなどの事情がない限り、それは私人の立場での行動と見るべきものと考えるとして、四つの具体的な例を挙げて私人の立場を強調されておりますけれども、この政府の統一見解、官房長官、これは現在も変わりがないのか、まずその点についての御確認をしておきます。
  61. 藤波孝生

    藤波国務大臣 従来政府の統一見解としてお示しをしてきたものに変わりはありません。
  62. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうなりますと、将来も変えないというおつもりでしょうか。
  63. 藤波孝生

    藤波国務大臣 この靖国神社に対する公式参拝の問題は、国民の各方面でもいろいろ論議を呼んでおる問題であります。戦争のために命をささげてお亡くなりになって、今日靖国神社にお祭りされております英霊の御遺族の方々などを中心にいたしまして、ぜひ公式参拝を実現すべきであるというような御意見がございますし、また、それに対して、宗教上の問題とか憲法からの法制上の問題とか、いろいろなことを御論議になる向きもあるわけでございます。  そこで、自民党の方でいろいろと靖国神社の公式参拝に関して御勉強が進められてまいりまして、それが奥野小委員会と言われる小委員会でお取りまとめがありまして、自民党の総務会にかけられて、その方向で政府に対して実現方を要請する、こういうことで政府に対して御意見があったところでございます。  それを受けて政府といたしましては、この問題についてさらに勉強をしていくようにいたしたい、こう考えておりますが、勉強をいたしました結果どんなふうなことに考え方がまとまりますか、これからのことでございますので、どれくらい時間のかかることであるか、どういうふうにして勉強するかというようなことをこれから考えていこうと思っておりますが、いずれにいたしましても、新しい政府考え方が決まるということがあればその時点でまた新しい事態になりますけれども、それまでは従来の統一見解ということで統一をして進んでいくようにいたしたい、こう考えておる次第でございます。
  64. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 実はこの問題については戦後ずっといろいろの動きがございまして、自民党から靖国神社法案等が出され、そしてそれがずっと廃案になったという経緯があるわけであります。そういうことから考えまして、政策的な問題であるとするならば、それは政府がその政策の選択によってお変えになるということは当然あるだろうと私は思います。しかし問題は、憲法の解釈で政府見解を覆すとかあるいは変えるということは大変重大な問題を包含をしておる、私はそう思うのですよ。そのたびごとに憲法の解釈が変わるというような、政府の統一見解というものはそういうあいまいな見解ですか。
  65. 藤波孝生

    藤波国務大臣 この問題は、先生が御指摘になられましたように、例えば思想の問題であるとか政策の問題であるというふうには考えておりませんで、そのことよりもむしろ憲法との関係で法律上どうなるかという問題だろうと思うのでございます。したがいまして、そのことの重要な意味合いというものを十分理解をいたしまして、その上に立ってよく勉強をしてまいりたい、こう申し上げておるところでございます。
  66. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 政府の統一見解で、いわゆる公式参拝あるいはまた私的な参拝という問題についてはかねてから四つの例、しかもそれは閣議決定をしてはならないというような厳しい制約のもとにこの憲法解釈というものがなっておるわけですね。ところが今になってから、自民党がそういうふうな見解をまとめたから政府に何とかしてくれないかという話で、それでは私的諮問機関を設けてやる。何を勉強されるのですか。
  67. 藤波孝生

    藤波国務大臣 私的懇談会を設けるかどうかはまだ決まっておりませんが、いろいろ勉強してまいりますということの中にはいろいろな方面の御意見を聞くということが多分に含まれると思いますので、黙ってじっと座って考え込んでいるというよりも、いろいろな方の御意見を聞くことが勉強になるか、こう思っております。そういう意味では、一つの形は私的懇談会。よく八条の審議会との区別を明らかにせよというような御指摘もございますので、十分その辺も考えながら、どういうふうに運んでいくかということを今実は考えておるところでございます。  統一見解としてまとめられて今日に至っておりますので、その態度をこれからも遵守していくということは今変更しておるわけではありません。ただ、どういう考え方でございましても絶えず勉強していくというのはいいことだろうと思いますので、さらにその勉強を広く、かつ深めて検討をしてまいりたい、こう思っておるところでございます。変更するために勉強するのかというような御指摘がよくあるのですけれども、そうではなくて、よくこの問題についての勉強をして、その後どういうことになるかということについては、勉強した結果また考えがまとまれば一つの方針が出る、こういうふうに思っている次第でございます。
  68. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私的諮問機関でこれから勉強するということなんですけれども、行政改革の立場からいいますと、八条機関によってやるのと、それから私的諮問機関でやるのとは、これはおのずと違うわけですね。そして、私的諮問機関をつくりながら、言うならばそれをもとにして今までの方針を変えていこうという意図があるからこそこういうものをやろうとしているわけでしょう。勉強するというなら、何もこんなところで勉強しなくたって幾らだってできるわけですから。そういう意味において、しかも総理の私的諮問機関においてやろうというのに問題があるのじゃないですか。そんなものをやる必要は何にもない。だからお聞きしますけれども、将来これを変える意思があるのじゃないですか。
  69. 藤波孝生

    藤波国務大臣 総理の諮問機関にするかどうかもまだ決まっておるわけではありませんで、いろいろな方の御意見を聞くという場合にいろいろな形があるだろうと思います。その中の一つは、私的懇談会というような形で御意見を聞くという聞き方があるかなと、今のところまだその程度でございまして、どんなふうに進めていくかは総務長官ともよく御相談を申し上げまして、勉強を進めていく形をどうするかを決めていくようにいたしたい、こう思っております。  ただ、従来の統一見解を変更するということをまず頭に置いて、そのために勉強していくとか、あるいは私的懇談会ということで勉強を進めるということになるといたしましたら、それは新しい方向をつくりますためにそういう懇談会をつくってやっていこうとしておるものでは毛頭ありませんでして、あくまでも各方面のこの問題についての御意見をいろいろ聞く。ただ、聞きます場合に、どなたかの御意見を聞きたいといって御案内を申し上げて、来ていただいて一対一でこうやって聞いておりましても、それも一つの聞き方でございますけれども、何人かの方に来ていただいてどなたかに意見を述べてもらう、それをさらに横で聞いておられる方も自分はこう思うと言って意見を述べられるというような形で勉強させていただくと勉強がさらに深まるのかなと、こう思っております。これは形の問題でございますが、決して最初から方向を頭に置いてこういった勉強を進めようと思っているのではないということはどうかひとつ御理解をいただきたいと思うのでございます。
  70. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 官房長官が御理解をと言っても、それは御理解できない問題があるわけです、実際に、は。  四月十八日、きのうでしたか、衆議院の法務委員会で法制局の前田第一部長が、首相や閣僚の靖国神社参拝について、玉ぐし料を公費で支出すると私的参拝とは言えなくなる、こう言っておられますが、公費の支出は金額のいかんを問わず違憲であるということなんでしょうか。
  71. 茂串俊

    ○茂串政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘のございました私ども第一部長の前田の答弁でございますが、それにつきましては、確かに今おっしゃったようなことが新聞に出ておりましたが、第一部長の真意と申しますのは、仮に玉ぐし料を参拝の際に公費で支出するということになれば、これは私人としての参拝でございますよというような言いわけが相立たなくなるんじゃないか、そうしますと、それはいわば公式参拝ということになりますと、それは前々から統一見解にもありますように、なお違憲ではないかとの疑いが否定できないというようなことになりまして、いわば統一見解考え方に触れるということになりますので、そこで問題がある、こういうようなことを申し上げたつもりでございます。
  72. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 結局、同じじゃないですか。今のことでいいんでしょう。結局は私が申し上げたように、玉ぐし料を公費で支出すると私的参拝とは言えなくなると言っている。公費の支出は金額のいかんを問わずやはり違憲であるということについて、何か御異議がありましょうか。そしてまた、国費で支出するということになれば、現状においては憲法を改正しなければできない、こういうことでしょう。
  73. 茂串俊

    ○茂串政府委員 お答え申し上げます。  先ほど申し上げましたように、私どもの考え、したがって政府のただいまの考えは、公的資格における靖国神社参拝というものは憲法第二十条第三項との関係で問題があるという立場を一貫してとっておるわけでございます。ただ、問題があるという意味は、統一見解にもありますように、このような参拝が合憲か違憲かということについては政府としては違憲とも合憲とも断定はしないけれども、このような参拝は違憲ではないかとの疑いをなお否定できない。そこで政府としましては、従来から事柄の性質上慎重な態度をとって、国務大臣としての資格で靖国神社に参拝することを差し控えることを一貫した方針としてとっておるのである、こういうような見解にのっとっておるものでございます。したがいまして先ほど申し上げた私の答弁も、今のようなこの統一見解にのっとって申し上げたつもりでございます。
  74. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 五十三年十月十七日の政府の統一見解について、これは当然法制局がかんでこういう見解を出されたわけですから、やはり法制局としても同様の考え方ですね。
  75. 茂串俊

    ○茂串政府委員 五十三年十月十七日の当時の安倍官房長官がお読み上げになりました統一見解、これは私どもとしても全くそのとおりの考え方でございます。したがいまして、今おっしゃいましたように、仮に玉ぐし料等の経費を公費で支出するということになりますと、公式参拝ではないというエキスキューズは言えなくなるという点はそのとおりでございます。この統一見解と申しますのは、いわば公式参拝と私人としての立場における参拝との区分けを明確にしたものでございまして、その意味ではただいま先生のおっしゃるとおりでございます。
  76. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 五十八年八月十日、四つの例を挙げられまして、警備をするための公用車の使用、地位を示す記帳のあり方あるいは気持ちを同じくする閣僚の同行の問題に触れておりますね。ところが、ここに不思議に玉ぐし料の問題については、故意に外されたんじゃないかというふうな感じがするのですけれども、全然触れられていない。  そこで、玉ぐし料の経費を公費で支出するなどの事情のない限りは私人としての行動である、だから当然のこととして玉ぐし料は私費で支払われているんだ、こういうことなんですね。裏を返せば、経費を公費で支出するということは公人としての行動である、こういうことでよろしゅうございますか。
  77. 茂串俊

    ○茂串政府委員 前提がいろいろあろうかと思いますけれども、靖国神社に参拝をする際に玉ぐし料という形で公費を支出する、こういうことになりました場合には、前々から申し上げておりますように、参拝そのものがもはや私的参拝とは言えない、公的な参拝となる、こういう意味合いにおきまして、その参拝と公費による玉ぐし料の支出というものの関係があるわけでございます。
  78. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 今回、自民党の靖国神社問題小委員会報告を受けて総務会で党の決定をしたその自民党の見解というのは、一つは、公的機関が慰霊の目的で参拝をしても宗教活動には当たらず合憲である、二番目には、その際、玉ぐし料などを公費で負担しても宗教法人に対する財政援助でなく、憲法に違反しないということであります。  これに対して法制局長官は、玉ぐし料を公費で負担をするという問題について、これは憲法に全然抵触をしない、こういうお考えですか。その点どうです。
  79. 茂串俊

    ○茂串政府委員 私は、ただいま御答弁申し上げましたように、その場合に全く憲法に違反しないということは言っておりません。すなわち、再三になりますけれども、公費によって玉ぐし料を支出すればそれは公式参拝という性格を帯びてしまうのではないか、そうなれば、政府統一見解で申し上げておりますように、違憲ではないかとの疑いをなお否定できないという形の参拝になるわけでございます。したがいまして、それは政府としては差し控えるという方針を差し示しておるわけでございます。
  80. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 今ずっと論議されてきましたけれども、玉ぐし料はどれくらい出されるかわかりませんが、もし公金で出されるということになりますと憲法に違反する、こういう明確な御答弁をいただきたいのですが、どうでしょう。
  81. 茂串俊

    ○茂串政府委員 繰り返しの答弁になって申しわけございませんけれども、私どもが申し上げておるのは、公費によって玉ぐし料を支出するようなことにいたしますと、それは公式参拝の性格を帯びてしまって、それはなお違憲の疑いが否定できないということで政府としては差し控える方針をとっておる、こういうことでございます。
  82. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 四月十七日、参議院の内閣委員会中西総務長官が、玉ぐし料の支払いについての発言がございました。報道された内容は実は必ずしも明確ではない。もう一度その点、明確に御答弁していただきたい。
  83. 中西一郎

    中西国務大臣 まだ速記録がきちっとした印刷になってない段階でございますが、私の記憶しておるとおり申し上げますと、今の玉ぐし料について、公の参拝あるいは私的参拝というまくらの言葉は私は使っていません。玉ぐし料一般について申し上げたのです。  そのことはどういうことかといいますと、内藤功議員が津の体育館の起工式の最高裁判決、あの中で、たしか財政的な援助というものが特定の宗教に対する助長、援助または他宗教に対する圧迫、干渉、ということになるというふうに書いてある、そういう御引用がございました。そのことについて私は、玉ぐし料というものがそういった意味での特定の宗教に対する援助、助長、促進あるいは他宗教に対する圧迫、干渉になるとは思えない、さらにそのまくらがございまして、個人的な見解でまだよく煮詰まっておりませんが、そういったふうに思われます、こういうことを申し上げたのでございます。  なお、もう一つは、特定の宗教に対する公的な援助といいますか、そういったものに関連して内藤さんが引用されたお話の中で、判決文の中でこういうことを言っておられます。日本人の宗教観といいますか、大変寛容であるということを私が言ったのですけれども、そのこととかかわりがあるのですが、日本人の宗教観というのは極めて無節操である、神と人との区別がつかない特異な民族であるというようことを引用なさいました。このことについて私は、一神教的な立場からならばそう言えるかもしれないけれども日本人の宗教観からいうといかがなものでございましょうかという、その二点を申し上げたのでございます。
  84. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 法制局長官、私的参拝とか公的参拝というものは別問題といたしまして、一宗教団体に公金支出をするということについては憲法に違反する、こう明確に御答弁ができるのでございますか、その点はどうですか。
  85. 茂串俊

    ○茂串政府委員 いろいろ前提になる要件があろうかと思いますけれども、およそ宗教団体に公金は一円たりとも出してはならぬということではないわけでございます。例えば文化財保護法に基づきまして文化財のための補助金を政府から支出するとか、あるいはまた学校を経営している宗教法人に対しまして私学助成という観点から公金を支出するということは認められており、また現に相当の額が支出されておるわけでございまして、およそ頭から公費は宗教法人には一円なりとも出してはならないということではないわけでございます。  それから第二に、今中西長官が言われましたように、津の地鎮祭判決におきましても、憲法八十九条のいわゆる宗教法人に対する財政援助等にかかわる判断の部分がございまして、そこでいろいろと基準を掲げております。その判断基準にのっとって非常に一般論で申しておるわけでございますが、一般論で申しますと、その判断基準にのっとって公金が出せるか出せないかということが決まるという面もあろうかと思います。
  86. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 文化財の保護のためにとか、あるいは私学振興あるいは学校法人とか、そういうところに金を云々ということではないのであって、要するにその宗教法人が、私的あるいは公的にしてもいわゆる若干の金をもらうと、それ自体はその宗教法人自体、靖国神社自体の運営にかかわる問題ですよね。運営にかかわる問題に関与するということは、それは憲法に抵触をするんじゃないでしょうかとお聞きしているのです。
  87. 茂串俊

    ○茂串政府委員 ただいま御質問のありました点は、これは従来から議論されておりますところのいわゆる宗教法人に対する国家護持の問題であろうかと思います。国家護持というのは、これは定義は特にございませんけれども、一般的に申し上げますれば、国が宗教団体の経営に参与したりあるいはまたこれに財政援助を与えるというような形の、いわば国家的な支援の形でございます。これは、一般的に申しまして憲法の問題に触れるんじゃないかというふうに考えられます。  ただ、先ほど申し上げましたように、公金の支出の条件がいろいろあると思いますけれども、例えば津の地鎮祭判決におきましても、額の多少は問わないわけでございまして、その支出金の性格とか、その他その支出の原因となった行為の目的とか効果というものに照らしまして、あの場合、津地鎮祭判決における公金の支出も合憲というような結論が出ておるわけでございまして、そのようなケースも間々ある、こういうことであろうと思いまして、これはやはりケース・バイ・ケースで判断せざるを得ない問題であろう、かように考えます。
  88. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それでは、靖国神社に玉ぐし料として公金が支出された場合においては憲法に抵触するんじゃないですかということは、どうでしょう。
  89. 茂串俊

    ○茂串政府委員 その点は先ほどから申し上げておりますように、靖国神社に公費による玉ぐし料を支出した場合には、その参拝が公式参拝になってしまうということになるわけでございまして、これは前から申し上げておるところでたびたび申し上げて恐縮でございますが、そのようなふうに我々は考えております。
  90. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 本当に全然あなた、答弁になってませんね。こういうふうな論議を根底にして言うならば、靖国神社の公式参拝に道を開こうというのが、これは要するに政府考え方であり、今の法制局の長官の御答弁ですね。これが意図なんですか。今回いろいろ勉強しようというのは、そういうことを勉強しようというのですか。  それからまた、総務長官先ほどあなた個人的だと言われますけれども、少なくともそこにお座りになって御答弁されるというのは、そんな個人的なそういうことをおっしゃる問題じゃないのですよ。だからそういう問題から考えて、総務長官、この問題については本当に物すごく疑義を残していると私は思うのですよ。各閣僚がそれぞればらばらにこの問題についての見解を述べるということは、好ましいことであるかどうか、お伺いいたします。官房長官、好ましいことかどうか。閣内不統一ですよ。
  91. 藤波孝生

    藤波国務大臣 政府統一見解がございまして、安倍官房長官、宮澤官房長官時代にもその見解に基づいて政府見解をとってきておるところでございます。今日の内閣におきましてもその統一見解に基づきまして内外に態度を表明をしてきておるところでございますので、個人的にいろいろ御意見はあると思いますけれども政府としてはその統一見解に基づいてお答えをする、こういうことでまいっております。もしその辺に矛盾をしたりあるいは行き違いがあるようなところがございましたら、角屋委員の御質問にもお答えをしたところでございますが、よく調整をして進んでいくようにいたしたい、こう考える次第でございます。
  92. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 これはちょっと問題がありますね。玉ぐし料を靖国神社に公金で出した場合において憲法に抵触するかどうかということについて私が御質問申し上げますと、それは私的参拝あるいは公的参拝云々ということで、直接憲法に対してこれは問題があるんだということの御答弁がないということは、私はこれ以上次の恩給法に入ってもちょっと問題があると思うのですがね。その点、ちょっと検討してください。
  93. 茂串俊

    ○茂串政府委員 今まで申し上げました答弁は、従来靖国神社の参拝の際に公費で玉ぐし料を支出したらどうなるかという点が専らの問題点でございまして、従来の政府答弁もそれに関連してお答えを申し上げていたところでございます。  ただ、今の御質問は、玉ぐし料を参拝とはかかわりなしに、そういうのを玉ぐし料と言うかどうか私よく存じないのでございますけれども、お金を、ともかく公金を出したらどうかということであるといたしますれば、それは先ほど中西長官もちょっとお触れになりましたように、これは津の地鎮祭判決の、先ほど申し上げました憲法八十九条の規定の判断にかかわる部分、これにその一般的な考え方と申しますか判断基準が示されておるわけでございます。  その点は、「当該支出金を支出することの目的、効果及び支出金の性質、額等から見て、その支出自体が特定の宗教組織または宗教団体に対する財政援助的な支出であるかどうか、また支出の原因となる行為がわが国の社会的、文化的諸条件に照らして相当とされる限度を超えるものであって、その行為の目的が宗教的意義を持ち、その効果が宗教に対する援助、助長または圧迫、干渉等になるものであるかどうか、そういうものによって合憲か違憲かを定めるべきであるこというのが津の地鎮祭判決の八十九条の見解でございます。  私ども政府でございますから、したがいまして最高裁の判決を遵守し、それに従って行政を行うというふうに心得ておりますので、ただいま申し上げましたような最高裁の判決には私どもも当然に従わなければならない、またそれによって行政は運営されなければならない、かように考えておる次第でございます。(発言する者あり)
  94. 片岡清一

    片岡委員長 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  95. 片岡清一

    片岡委員長 速記を始めて。  法制局長官。
  96. 茂串俊

    ○茂串政府委員 私の答弁が若干足らなかった部分があろうかと思いますので、御答弁を補足させていただきます。  先ほど津の地鎮祭判決の趣旨を申し上げましたが、いわゆる憲法第八十九条に抵触するかどうかということの判断基準はまさに津の地鎮祭判決が述べておるところでございまして、我々といたしましてもこれによって判断をせざるを得ないわけでございますが、先ほど統一見解でも申し上げましたように、公式参拝そのものがなお合憲であるか違憲であるかということについては断定せず、違憲ではないかとの疑いをなお否定できないという統一見解になっておるわけでございまして、このいわゆる玉ぐし料の神社に対する公費による支出、これも全くそれと同じような意味合いにわきまして、違憲ではないかとの疑いをなお否定できないという政府統一見解に帰一するわけでございまして、我々としてはそのような態度を現在とり、またこのような見解を保持しておるわけでございます。
  97. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私は私的だの公的ということはもうわかったので、それはそのままにしておいて、靖国神社に参拝するのに玉ぐし料を公金で支払うということは憲法に抵触するとか抵触しないとかというあいまいなことではなくて、触れるとおっしゃっていただかないとこれはちょっと問題じゃないですか。その点いかがですか。
  98. 茂串俊

    ○茂串政府委員 先ほどからたびたび申し上げておりますように、津地鎮祭判決におきまして憲法第八十九条の解釈についての判断基準が示されておるわけでございまして、この判断基準にのっとってケース・バイ・ケースで判断すべきであろうと思いますけれども、ただ、一般的に申し上げれば、先ほど申し上げましたように政府としては、そのような支出があった場合には、公式参拝についてと同じようにその行為が違憲ではないかとの疑いをなお否定できないという見解に帰一する、したがいまして、そういうことは差し控えるというのが現在の政府態度である、かように御答弁を申し上げます。
  99. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 初めからそのようにお答えになれば先に進むのですけどね。問題はそういうことで一応政府の方の、法制局長官の方の御見解が出たわけですから、先に進ませていただきます。  法制局長官と官房長官の方は、お時間の都合がございましょうから、どうぞ。  今回提案された恩給法等の一部を改正する法律案についてでございますが、昨年度の恩給改善については、一昨年の人勧凍結されたことに大きく影響を受けて、長期在職の旧軍人の格差是正等を行っただけであります。今年度の恩給改善も、昨年度公務員給与実施率にスライドさせて平均約二%の改善にとどまっているようでありますけれども政府の五十九年度の恩給改善について基本的な考え方をお伺いいたします。
  100. 中西一郎

    中西国務大臣 五十九年度の恩給改善、今お話がございましたが、公務員給与改善が基礎となって計算をしておるわけでございます。経済事情も変わりましたし、年金、恩給の実質価値を維持したいということがあって、そのようにいたして約二%を組み込んだということでございます。  なお、そのほかに、戦没者遺族に支給する公務扶助料や傷病者の恩給を改善してこれらの者に対する処遇の一層の充実を図ること、そして普通恩給普通扶助料最低保障額改善など、経済的に弱い立場にある者に対する恩給を改善するということを基本的な柱といたしたわけでございます。
  101. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 恩給改定の方式は、数回の変遷を経て五十一年七月から現在の給与回帰分析方式に切りかえられて定着をしてきたところでありますが、公務員給与の改定が直接恩給や年金にはね返ってくるわけでありますから、二百三十万人の恩給受給者は直接的な大きな影響を受けてしまいます。  そこで、恩給改善と密接な関係にある人事院勧告の取り扱いが重要なポイントとなるわけでありますが、一昨年は凍結、昨年は財政難を理由に六・四%の勧告を値切って平均約二%の実施となっております。恩給の生活者にとっては非常に苦しいことを余儀なくされておりますけれども政府は五十九年度人事院勧告をどういうふうに取り扱う考えでおられますか。きょうはまた給与閣僚会議が持たれるというわけでございますが、恐らくそのときに人事院勧告の取り扱い等についてもお話があるんじゃないかと思いますが、どういうふうに取り扱いますか。
  102. 中西一郎

    中西国務大臣 五十九年度人勧について関連したお話でございます。  私どもは四月の四日、関係労働団体に対しまして人事院勧告制度尊重基本姿勢に立って完全実施に向けて誠意をもって取り組みますというお答えをいたしました経過は、御承知のとおりでございます。そういったことを踏まえてこれから最大限の努力をしてまいりたい、かように考えております。
  103. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 人事院勧告完全実施すべきものであるというように私は考えておりますけれども、五十六年以来の三年間の結果を見ますと、人勧に対する抑制あるいは凍結ということが続いておりまして、公務員は相当の我慢を強いられている状態でございます。この三年間で、完全実施の場合に比べて公務員のこうむった損失額といいましょうか、もらうべき額というものは、大体どれぐらいになりますか。
  104. 斧誠之助

    ○斧政府委員 お答えいたします。  損失額といいますか、もし勧告完全実施された場合と凍結または抑制という結果に終わった場合との差額でございますが、職務段階によっていろいろ異なりますので、最初に三年間合計しまして平均でどれぐらいかということをお答えいたしたいと思います。一人平均にしまして約四十三万円相当ということでございます。これは行(一)職員でございます。  これを職務段階別に見ますというと、課長クラスで、妻、子供二人という三人の扶養家族がいるということを想定いたしますと約百二十三万七千円でございます。課長補佐クラスで、同じく扶養家族を抱えておりまして約五十七万二千円、係長クラスで、同じく扶養家族三人で約四十七万七千円、係員で奥さんのいるクラスで三十万八千円、その程度の差額でございます。
  105. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 今答弁がありましたけれども、大変に厳しい財政事情という環境があったにしても、そう高いとは言えない給与の中からこれだけもらうべきものがもらえなかったわけでございます。そういうことから考えますと、家庭生活にも相当のしわ寄せが来ていることは十分推察できます。このような状況下で大部分の公務員は大変に辛抱して仕事に取り組んでいるわけでありまして、また、一生懸命やることによって行政運営にさほどの支障を生じているとは現在私どもは考えられませんけれども、しかし、やはり公務員も生活をしている。家へ帰れば父親であり、また人の子であります。いつまでも我慢を強いるということになりますと大変に不満がうっせきしまして、これは労使関係にひびが入るばかりでなく、非常に気まずい思い、あるいはまた、どちらかというとやり切れないような思いになってくるんじゃないかと私は思います。  先般実は総務長官に私が、今回の人事院勧告、五十九年度完全実施しませんか、こういうことを御質問申し上げましたところ、長官は、前の総務長官以上に努力をする、こういうふうに御答弁されましたけれども、この人事院勧告完全実施に対しては、総務長官すなわち給与担当大臣としてはどのような決意、そしてまた、完全実施にただ努力すると言うんでは、いつもいつも努力すると言われながら結局は最後は値切られるということなんですが、こういうことが続くということはいわゆる人事院第三者機関としての存立すら危なくなってくる問題である、こう私は思うのですが、その点について大臣はどうお考えでしょうか。
  106. 中西一郎

    中西国務大臣 人事院制度は歴史は古くなりましたが、いろいろな変遷をして、世界に類のない官民給与の比較を正確に出してくださる成熟した制度だと私は思っております。そういった意味で、五十七年、八年あのような経過がございますが、そういったようなことが五十九年また起こるというようなことは何としても避けたい、そのために努力をいたしたい、かような所存でおります。
  107. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 もう三年も不完全実施が続くということについて非常に問題を残しているわけですからね。ことしは、人事院勧告完全実施に向かって担当大臣としては全力を挙げ闘ってまいります、ぐらいのことは少なくとも言えませんかな。
  108. 中西一郎

    中西国務大臣 先般の四月四日、御承知のとおりでございますが、五十九年度人事院勧告仲裁裁定が出された場合には、その制度を維持尊重するとの基本姿勢を堅持してという基本姿勢に立ちまして完全実施に向けて誠意をもって取り組む、これは政府全体でそう決めましたので、そういった方向で進みたい、かように思います。
  109. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 人事院総裁に若干お伺いいたしますけれども人事院勧告というのは政府並びに国会に対して行われているわけであります。これは政府だけでなく国会にまで勧告をするという趣旨をどう受けとめられているか、これについて御所見をお伺いいたします。
  110. 内海倫

    内海政府委員 お答え申し上げます。  たびたび申し上げておりますし、また鈴切先生も十分御存じのように、人事院というものの組織の性格、これはいわば政府に対しても第三者的な立場に立って厳正公平な判断を下していかなければならないという任務を持って、そういう機能を果たしておる上ころでございます。同時にそれは、国家公務員という多数の公務員にかかわる給与その他の勤務条件について、いわば代替機能を果たしておるものでございます。そういうふうな人事院というものの機能あるいは組織的な特性から考えまして、その人事院が行う勧告というものは、単に政府にだけ申し上げて政府の御判断に任せるというだけでもなく、同時に国会にも勧告を申し上げて、国会におきましても十分な審議をしていただいて、願わくは完全な実施ということへの御決定をいただけるように、恐らくそういう観点から政府及び国会に対しての両々の勧告ということが行われておるのが立法の趣旨であり、現在また我々が行っておる意味合いであろう、こういうふうに理解いたしております。
  111. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 五十八年度の恩給費が一兆七千三百五十八億円になりましたが、五十九年度の恩給費は一兆七千二百八十八億円と七十億円も少なくなっているわけであります。これはどういう理由なのか。また、一般会計に占める五十八年度、五十九年度の割合はどうなっていましょうか。
  112. 和田善一

    和田政府委員 昭和五十九年度の恩給費予算が前年度に対しまして七十億円減少しております原因でございますけれども、これは、五十八年度におきまして、公務員給与の改定が見送られたことに伴いまして恩給年額増額措置がなかった、要するにベースアップがなかったということ、それからまた、同毎度の恩給の改善長期在職の旧軍人の仮定俸給改善等の真にやむを得ない懸案事項に限って措置されたということから、五十八年度における改善措置の五十九年度における平年度化増が少なかったということが一つございます。  一方、年金、恩給受給者数につきまして実績を基礎として推計いたしました結果、お亡くなりになる等の失権者の数がありまして、失権に伴います恩給費の減がございます。要するに、平年度化増が少なかった、一方に失権者があるということで七十億円の減ということになった次第でございます。
  113. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 人事院総裁、私もう一問お聞きしまして、それでお帰りになって結構でございます。  いよいよ春闘もたけなわになってまいりまして、ことしは昨年よりも若干いいのじゃないかということでございます。そうなりますと当然、今まで値切られたあるいは凍結をしたという四%近くは上乗せをされるであろう、そして八月に勧告されるであろうということになれば、かなり高い数値が予想されるわけでありますが、人事院総裁としては、これから作業に入られて人事院勧告を出されるという状況になるわけでありますけれども、今年度人事院として出される人勧について、政府並びに国会に対してどのようなお考えで御要望されるのでしょうか。
  114. 内海倫

    内海政府委員 今までもたびたび私の見解を申し上げてきておりますが、今御質問いただきましたように、今年度人事院勧告は間もなく調査に着手いたしたいと思っております。その結果、諸般の精密な調査結果を分析して官民の給与の比校をいたし、そこに較差が出てまいりますれば、それを勧告いたすことと考えております。その較差の中には、恐らくは凍結あるいは抑制というふうなことの結果が反映してくるのは当然だろうと考えております。それはやってみないとまだ数字等をもって申し上げることはできませんけれども、そういうふうに思います。  そういうふうな較差が出ました上は、私どもとしては当然に、これは公務員の重要な給与の問題でございますから何としても政府及び国会において完全実施していただくというふうにお願いをしなければなりませんし、努力をして政府なり国会に御理解をいただくような何かいい方途がもしあれば、さらにそういうことも考えて代償機能期待されておる人事院としての任務を尽くさなければいけない、こういうふうに考えております。
  115. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 結構でございます。御苦労さまです。  恩給受給荷の現在の平均年齢と、将来推計についてはどのように考えておられましょうか。また、文官及び旧軍人の中で、本人に支給されている平均年齢と遺族に支給されている平均年齢はどういうふうに調査になっておられましょうか。
  116. 和田善一

    和田政府委員 まず、恩給受給者数を恩給の種類ごとに申し上げますと、総計二百二十八万人の内訳といたしまして、本人が恩給を受けております普通恩給の受給者が百十六万二千人、傷病恩給の受給者が十二万二千人、御遺族である方が受けておられます扶助料の受給者が九十九万八千人となっております。  金額で申し上げますと、普通恩給は五千九百五十一億円、傷病恩給は千九百六億円、扶助料は九千四百二億円となっております。  それから、平均年齢でございますが、昭和五十八年三月末恩給統計によりますと、受給者全体の総平均年齢は六十九歳でございます。文官、旧軍人に分けますと、文官全体の平均が七十六・七歳、旧軍人全体の平均が六十八・五歳でございます。本人と遺族という観点から見ますと、本人に給される恩給である普通恩給を受けている方の年齢を見ますと文官が七十七・四歳、旧軍人が六十六。四歳、また御遺族を見ますと、これを普通扶助料で見ますと文官が七十六・七歳、旧軍人が六十五・八歳となっております。
  117. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 将来推計についてはどのように考えているかについての御答弁がなかったわけでありますけれども昭和六十五年、昭和七十五年、昭和八十五年というふうに推移していった場合には大体どれくらいの推計になっておるか、その点についてお伺いいたします。
  118. 和田善一

    和田政府委員 将来推計でございますが、恩給受給者の失権による減少等をどのように見込むかという点で推計はなかなか困難な面がございますけれども、仮に昭和五十九年度予算において見込んだ人員等を基礎として推計いたしますと、昭和六十五年度には約百九十九万人、昭和七十五年度には約百二十九万人になるということでございます。この数値は現在の基礎的な条件前提として将来への傾向値を求めたものでございますので、受給者の動向を常に把握して、その時点その時点実態を基礎として今後とも推計を確かなものにしていきたいと考えております。
  119. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 昭和八十五年、二十六年ぐらい先になりますとかなり減ってしまうと私は思うのですけれども、その推計は出ていますか。
  120. 和田善一

    和田政府委員 八十五年度までは出ておりませんが、大体の感じで申し上げますが、約二十年間で半分になるという感じでございます。したがいまして、三十年たちますと、ごく大ざっぱな言い方で言いますと、半分になったのがまた半分ぐらいになるという感じでございます。
  121. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 昨年、総務長官と大蔵大臣との間で「恩給ベアの取り扱いについては、私は、五十八年度人事院勧告が出された場合には、これを尊重して、その取り扱いを検討する立場にあると同時に、恩給を所管しており、その際には、恩給の取り扱いについても人事院勧告の取り扱いとのバランスを考慮しつつ誠意をもって検討する」との了解事項がありますけれども、その了解事項は今年度の恩給にどのように反映されておりますか。
  122. 中西一郎

    中西国務大臣 お話しの了解事項、大蔵大臣と総務長官との間でございました。その趣旨を踏まえまして、昭和五十九年度の恩給改善は、昭和五十八年度公務員給与改善を基礎として約二%のベースアップを実施したという関係にございます。  なお、さらにベースアップの実施時期につきまして、昭和五十七年度公務員給与改善が見送られました関係から昭和五十八年度は恩給のベースアップを見送らざるを得なかったという特殊事情に配慮をいたしまして、昭和五十九年度限りの特例的措置ということで、従来から四月実施でございましたのを一カ月繰り上げて、三月から実施するということにしたわけでございます。
  123. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 ことしは特例措置ということなんですけれども、そうしますと、三月に一カ月引き上げをやったということが必ずしも来年度から適用されないということになるのでしょうか。
  124. 中西一郎

    中西国務大臣 特例措置ということで、さよう御理解いただきたいと思います。
  125. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 仮定俸給引き上げについては、年額百二十万円以上の仮定俸給については一・九%プラス二千四百円、百二十万円未満の仮定俸給については二・一%引き上げるとなっておりますが、百二十万円を基準にしたのはどういう理由かということと、また、恩給の引き上げ額が九万八千四百円を超える場合には九万八千四百円を限度額とすることになっておりますが、その理由についてはどうなんでしょうか。
  126. 和田善一

    和田政府委員 恩給のベースアップにつきましては、昭和四十八年度以降、公務員給与改善率を指標といたしまして、特に昭和五十一年度以降は、公務員給与の水準だけでなくてその改善傾向、上にどの程度改善し下の方にどの程度改善するという改善傾向をも反映させる方式をとってベースアップすることにいたしております。  そこで、昭和五十九年度におきましても、昭和五十八年度公務員給与改善を回帰分析しまして、その傾向から一・九%プラス二千四百円という算式を基本的な増額指標として用いまして、さらに公務員給与の行(一)の俸給表におきます下の方の最高引き上げ率が二・一%、それから上の方の最高引き上げ額が九万八千四百円でそれ以上は引き上げないという行(一)の俸給表の傾向を取り入れまして、ベースアップにおきましてもこの下の方の二・一%、上の方の九万八千四百円という引き上げの上限をとりました。これによりまして、基本指標であります一・九%プラス二千四百円と最高引き上げ率である二・一%との交点を求めますと百二十万円となりますので、百二十万円未満の仮定俸給につきましては一律二・一%引き上げといたしました。また、一・九%プラス二千四百円による増加額が九万八千四百円を超える仮定俸給につきましては一律に九万八千四百円でとめた、こういうことでございます。
  127. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 恩給外所得による普通恩給の停止基準の改正については、昭和五十九年七月から普通恩給の一部停止に関する基準額や停止率を引き上げることになっておりますけれども、改定する意図は何であるのか。また、現状の対象者数及び改定後の対象者数はどういうふうになっていますか。
  128. 和田善一

    和田政府委員 多額停止基準の改正でございますが、現在は普通恩給年額が百五十三万円以上受けておられる方で、その方の恩給外の所得年額が六百六十万円を超えるという方につきましては、その恩給年額と恩給外の所得年額との合算額、今の限度額百五十三万円と六百六十万円を足しました八百十三万円を超える金額につきまして、その超える金額の二割を停止するという措置をとっております。ただしその場合も、恩給の支給年額が百五十三万円を下らず、また停止額が恩給年額の二割を超えないという範囲にとどめることにしております。  今のようなやり方で多額停止をしておるわけでございますが、今回の改正は、この普通恩給の百五十三万円という基準額につきまして、ベースアップによりましてこれまで停止に該当していなかった方が該当することがないように、百五十三万円から百五十六万円に上げたということが一点でございます。それから、恩給外所得六百六十万円という基準が昭和五十三年以来据え置きになっておりましたので、これを七百万円に引き上げるということにいたしますが、停止率につきましては、現在の二割を三割五分に強化する、こういう考えで多額停止基準を改正するというのが今回の考え方でございます。
  129. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 改定されますと、どれくらいの人数の人がそれに該当しますか。
  130. 和田善一

    和田政府委員 現時点では多額停止該当者が三百二十五人でございますが、多額所得年額の基準を六百六十万円から七百万円に上げることになりまして六人減りまして、三百十九人になるというのが一応の今の計算でございます。
  131. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 さて、軍人恩給の戦時加算についてお伺いいたします。  戦務甲とか乙とかいうのはどのようにして決定されたものでしょうか。
  132. 和田善一

    和田政府委員 戦務甲、乙という戦務加算に関しましては、昭和二十一年改正前の恩給法第三十二条に規定されておりましたが、その改正直前の規定を見ますと、「戦争又ハ戦争ニ準スヘキ事変ニ際シ公務員其ノ職務ヲ以テ戦務ニ服シタルトキハ其ノ期間ノ一月ニ付三月以内ヲ加算ス」こういう規定でございます。そして、その加算の程度とか加算の認められる期間、それから認められる地域、戦務の範囲につきましては勅裁をもって定めるということで、この勅裁は戦争や事変の都度内閣告示ということで公示されたわけでございます。その実質的な内容は、戦争、事変の状況を掌握しておりました陸海軍省が中心となりまして決定したものでございます。  そういたしまして、御指摘の甲、乙の区分でございますが、その内閣告示におきまして三月加算とされたものを甲、二月加算とされたものを乙と称していたものでございまして、その基準は、告示の内容から見まして、激戦地にあって戦闘力構成に参加従軍した公務員に対しては甲、それから激戦地以外の戦地にあって戦闘力構成に参加従事した者につきましては乙ということであったと思われます。
  133. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 問題は、その戦務甲とか戦務乙という問題でありますけれども、これは生命の危険度とかあるいは勤務の苦痛度とか、そういうものによって戦務甲とか乙ということが決められるべきではないかと私は思うのです。だからこそ、あそこは非常に大変であったあるいは生命の危険度が高かった、こういうことがいつもいつもこの恩給法の中には出てくるわけでございますから、その点についてはどうお思いなんでしょうか。
  134. 和田善一

    和田政府委員 そのような戦地あるいは職務の実態に応じまして、当時の陸海軍省がその程度を判断しまして甲乙その他の公示をしたもの、かように考えております。
  135. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 戦務乙とされている中支でございますけれども、湘桂作戦等が展開され激戦のなされた地でもありますが、一個師団約一万二千人から一万五千人のうち、熊本の第五十八師団は七千三百六十八名の戦死者を出しております。その他多数の重軽傷者を出しております。作戦参加人員と戦死者の比率を見ると、五〇%前後の戦死者を出しました中支が実は戦務乙であり、満州とかあるいは朝鮮、香港、九竜半島の作戦参加人員と戦死傷者の割合は一・五%から三・五%になっておりますが、戦務甲というふうになっております。極端な差でありますけれども、両者に見られる不公平というものがいつも問題になっておりますが、こういう点は是正されるべきではないでしょうか。
  136. 和田善一

    和田政府委員 加算の程度、地域、期間等につきましては、ただいまも申し上げましたとおり、当時の実態を最もよく掌握しておりました旧陸海軍省を中心に検討の結果決められたものでございまして、湘桂作戦等、シナの作戦が大変に大きな重大な作戦だったということは私どももよく承知しておるわけでございますが、またそれ以外の地におきましてもいろいろな激戦等もございました。それらを全体として当時の陸海軍省が掌握いたしまして決定したもの、かように考えておりまして、これを動かすということは恩給制度基本に触れる、また相互のバランスというものも一つをいじると全体が変わってくるというようなことから、これを変えるのは非常に困難であるというのが現在の偽らざる考えでございます。
  137. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 やはりこういう恩給を支給するについては、公平を旨としなくちゃならないと思います。そういう意味からいいまして、非常に公平さを欠くところに実はいろいろ問題があるわけであります。  午前中にも実はシベリア抑留者に関してそういう御質問がありまして、恩給制度上の特例措置として一カ月につき一カ月の加算がつけられておりますけれども、抑留といっても強制労働であり、生命の危険度とかあるいは勤務の苦痛度はシベリアの抑留者については非常に大きかったわけであります。そういうことから考えまして、恩給法の建前から見てもその実情に応じて、一カ月について今現在一カ月でありますけれども、二カ月、三カ月というようにするのが適切じゃないか、そのように私は思うのですけれども、その点についてどう判断されますか。
  138. 和田善一

    和田政府委員 先生のお気持ちよくわかるわけでございますが、抑留加算を創設いたしました昭和四十年に、抑留の各地の実態、従前の恩給の加算制度との権衡等を考慮いたしました結果、従前の恩給の辺陬・不健康地加算の加算率等を考慮して決めるのが適当であるという結論で、抑留期間の一月につき一月ということにいたしたわけでございまして、ある抑留につきましてはこれをふやすという、抑留の実態に応じて差をつけるということまでは今到底踏み切ることができないというのが偽らざる現在の考え方でございます。
  139. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 シベリア抑留について私の心情がわかるというよりも、シベリアに抑留された人の心情をわかってもらわなくては困るのです。それでなければなかなか公平は期せないわけです。さまざまな戦後問題に対して、政府は、恩給法とか戦傷病者戦没者遺族等援護法とか戦傷病者特別援護法あるいは引揚者等に対する特別交付金の支給に関する法律等により国の処置は終了したと述べております。  引揚者特別交付金法第二条は、その適格条件として終戦時に外地に引き続き一年以上生活の本拠を有していた者に限り、ソ連の抑留者の中にはこの適用を受けた者は非常に少ないわけであります。終戦時に外地に引き続き一年以上生活の本拠を有していた者という根拠はどういうことなんでしょうかね。
  140. 菊池貞二

    菊池(貞)政府委員 引揚者の特別交付金の支給の措置は、引揚者が海外においてその生活を支えていた財産あるいは人間関係、生活利益、そういったもの一切のものを喪失したという点に着目をして講じられました特別な措置でございます。第三次在外財産問題審議会の答申におきましても、「そこに居住すること自体によって長い間につちかわれた人間関係、生活利益、誇り、安らぎ等、人間としての生活の最も基本となる支え」は、一定期間引き続いて安定した生活を営むことによって初めて培われるものであって、審議会の答申が、在外財産が一定年数未満のものを措置の対象から除外すべきであるとしているのもその趣旨によるものと理解しております。しかし、一定年数というものを余り長くしますと、引揚者に対しまして不利益となるということでございますので、最小限ということで一作という年数を要件としたわけでございます。
  141. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 この問題についても問題だと思います。それは指摘をしておくわけであります。  昭和二十二年十二片十五日制定の未復員者給与法というのがありますけれども、この法律制定の趣旨はどこにあるのでしょうか。  また、この法律の第十一条は「昭和二十二年六月分以前の給与でこの法律施行の際まだ支給していない分については、なお従前の例により、これを支給する。但し、昭和二十年九月分から昭和二十二年六月分までの給与のうちまだ支給していない給与は、別表に定める額により、これを払切とすることができる。」となっておりますが、条文の意味はどういうことなんでしょうか。
  142. 加藤栄一

    ○加藤説明員 御説明申し上げます。  未復員者給与法でございますが、昭和二十二年法律第百八十二号ということで制定されまして、昭和二十二年の七月から施行されております。二十八年の八月に未帰還者留守家族等援護法に引き継がれておる法律でございまして、その段階で廃止になっております。  この趣旨といたしましては、終戦によりまして旧陸海軍が解体されまして、その後各地で抑留されておりました方が復員されました際に、未支給、未払いの給与を精算するということになるわけでございます。この法律が二十二年に制定されます前は、大東亜戦争陸軍給与令など各種の勅令でありますとかあるいは通牒に基づきまして旧軍の給与体系で支払われておったわけでございます。その給与体系は、旧軍の階級によりまして給与額に著しい格差がございまして、特に兵につきましては内地に扶養親族を残している場合でありましても扶養手当を受けることができない等の事情がございまして、このような事情を是正いたしまして未復員者の給与を一元化する、こういう意図で制定されましたのが未復員者給与法でございます。この法律によりまして、俸給は階級のいかんにかかわらず一律に当時の額で月額百円ということになりました。また、兵で内地に扶養親族を残している者に対しましても、兵以外のより上級の者と同様に扶養親族一人当たり月額百五十円の扶養手当を支給する、そういう改善と申しますか、取り扱いの変更が行われたわけでございます。  この未復員者給与法の第十一条でございますが、未復員者給与法の施行が二十二年七月でございました。この施行に伴いまして七月分の給与から階級のいかんにかかわらず一律の支給ということになったわけでございますが、それ以前の未払い給与につきましては従前の取り扱いを継承する、こういう経過的な規定がこの十一条でございます。その後段の趣旨は、昭和二十年八月に終戦になっておりますが、九月から二十二年六月のこの法律の施行の前月までの未払いの給与につきましては、本来旧軍の体系ということでそれまでに帰られた方は対応しておるわけでございますが、これ以後復員された方については、表を定めまして、従来の階級差ほどではございませんがやはり階級差を設けて、それぞれの表に定める額を支払うということである程度定型化した精算方式をとっておりまして、この方式によることができる、こういう規定でございまして、これによって渡し切り、これでもって全部精算を完了したものと考えられる、こういう趣旨で規定されております。
  143. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 完了したものということでありましたけれども、この未復員者給与法の制定以前には、陸軍給与令や陸軍戦時給与規則あるいは大東亜戦争給与令などがありますけれども、兵隊でソ連抑留者たちの給与については、どういう法律が適用されて支給されておりましょうか。
  144. 加藤栄一

    ○加藤説明員 ソ連シベリア地区からの引き揚げ開始でございますが、これは昭和二十一年十二月八日から引き揚げ開始になっております。それ以降に復員された方でございますから、これは当時適用されておりました給与規定でございますと、二十一年五月十五日に施行されております在外者給与規程というのがございます。これに基づきまして給与が支給されておりまして、これはその期間によって違いますけれども、本俸、それから二十年の十一月までは戦地増俸というのがその上に支給されております。それから、二十年の八月までの間につきましては、下士官以上でございますが普通賞与というものがついております。これをもって適用されておるわけでございます。それから二十一年四月以後につきましては同じく在外者給与規程によりまして、二十一年四月以降の期間につきまして俸給のほかに臨時物価手当、臨時家族手当、臨時手当というものが支給されるという形になっております。
  145. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 今私が申し上げました陸軍給与令とかあるいは陸軍戦時給与規則とか大東亜戦争給与令というものについて、これは法律があって給与を出されているわけでありますけれども、これはいわゆる兵隊でソ連の抑留者たちには支払われていない、こういうことでしょうか。
  146. 加藤栄一

    ○加藤説明員 その前の段階で、今先生がおっしゃいました勅令でございますが、大東亜戦争陸軍給与令等の制度がございます。これは、その後二十一年五月十五日にただいま申し上げました在外者給与規程ができるまで適用になっておりましたわけでございます。ですからそこまでは、それまでに復員された方は未支給給与については、今申し上げました各種勅令で支払われておりました。  ただ、ソ連に抑留されました方は一番早くソ連からお帰りになった方で二十一年十二月八日でございますので、その段階で未支給給与の精算規定は、直接的には在外者給与規程によるわけでございますが、ただ、これらの方々でも、ソ連に抑留される前には今申し上げましたような勅令に基づいて給与が支払われておったわけでございます。
  147. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 ソ連に抑留されているときには給与は何にも支払われていなかった、こういうことですか。
  148. 加藤栄一

    ○加藤説明員 おっしゃるとおりで、直接お手渡しすることはできないわけでございまして、支払われておりませんで、復員されましたときに精算する。今私申し上げておりましたのは、未支給給与の精算方式について御説明したわけでございます。
  149. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それじゃその給与というものは、ソビエトから帰還したときには全員に全部支払われているのか、あるいは支払われていないという例もあるのか、その点はどうなんでしょう。
  150. 加藤栄一

    ○加藤説明員 制度といたしましては、復員されましたときにそれぞれ上陸地におきまして未支給給与の精算をし、そこから一種の書面等を出しまして、それぞれ住居地に帰りましたときに住居地の民生部局を通じてお金を払う、こういう制度になっておりました。その制度を見る限りにおきましては、帰郷旅費とこう言っておりますが、そういうものと一緒に精算するということになっておりますので、漏れはないものと考えております。ただし、私どもの局の方には時折、未支給給与をまだもらっておらないという方が、ごく少数ではございますが、そういうお話をなさる方が来られることは事実でございます。
  151. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 実はそこに問題があるわけであって、皆さん方の立場から言いますと、帰ってきたときに精算をした、あるいはまた留守居家族に支給をしたということをよく言われるわけですけれども、全然もらっていないという方だって実際にはかなりいるわけです。そういうふうなことは、ほとんどその当時のことなんですけれども、そちらの方ではいわゆる支払いについては当然何らかの証拠とかそういうものはみんなそろえてあると思いますけれども、そういう証拠等についてはもちろん閲覧とか、そういうものはできるようになっているのでしょうか。
  152. 加藤栄一

    ○加藤説明員 そういうケースが参りましたときは、私どもとしまして個別のケースごとに御相談に乗りまして、必要があれば当時の資料も調査をいたしたい、また御本人の方からも当時の御事情を十分に伺いたい、かように考えております。
  153. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 もう戦後非常に長い間だって、今そういう証拠を示せと言われてもなかなか大変である。言うならば、そのためになかなかできないという場合もあるわけでして、実際にまだ支払われていないという声も実は聞くわけです。  そこで、ソ連における日本人捕虜のいわゆる給養費については、日本政府がソ連に対して当時の額で月額四百五十六ルーブル支払うべきものでありますけれども、現状は日本人捕虜の労働賃金より差し引かれておりまして、昭和三十一年、嶋山総理大臣がソ連を訪問した折、日ソともにすべての請求権を放棄したという経緯があるわけでありますけれども日本人捕虜としては当時の労働賃金の支払いを日本政府に要求する権利があると思うし、政府は当然それに対して支払わなければならない義務があるというように思うのですけれども総務長官、その点についてはどう思いますか。
  154. 禿河徹映

    禿河政府委員 一般的に申しまして、さきの大戦に関しましては、戦中戦後にかけましてすべての国民が、程度の差こそあれ、生命とか身体あるいは財産上の犠牲を余儀なくされてきたわけでございまして、大変お気の毒ではございますけれども、こういう戦争損害というものは国民の一人一人に受けとめていただかざるを得ない、こういうふうなものと考えてきておるわけでございまして、政府といたしましては、ソ連の強制抑留者に補償すべき法律上の義務があるとは考えていない、こういうものでございます。  今お話がございました抑留者の給養費、いわば衣食住の経費の件でございますが、たしか明治四十年にできましたヘーグ陸戦法規におきましては、この条約の解釈等につきましては私ども総理府が所管するものではございませんけれども、聞くところによりますと、当時国際慣習法として確立しておりましたこのヘーグ陸戦法規におきましては、俘虜の給養は抑留国が行う、こういうふうにされていたと承知いたしております。したがいまして、日本国がこれを補償するとかというふうな問題は出てこないと存じております。  ただ、ソ連によります強制抑留は、ポツダム宣言の第九項等に違反したものと考えられますけれども、日ソ共同宣言の第六項によりまして、この問題は日ソ両国間におきまして、国の間におきましては既に請求権の相互放棄という形で決着済みになっておる、かように承知いたしております。
  155. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いわゆる請求権を放棄したということによって政府はすべてを片づけているわけでありますけれども、実際にそれじゃソビエトの抑留者の方々は、それによって自分が働いた対価である労働賃金まで言うならば全部放棄をしてしまったということになっている。これは政府自体がそういう処置をとったわけですから、これは政府自体が戦後処理の中において何らか考えてあげなくちゃならない問題じゃないでしょうか。だからこそ、シベリアの抑留者の問題については戦後処理問題においても問題になって、今現在政府としても戦後処理問題懇談会で検討されているのは、そういうふうな不公平が行われているということに問題があるんじゃないですか。
  156. 禿河徹映

    禿河政府委員 私が今申し上げておりますのは、法律ないし条約の解釈に基づく論議でございまして、繰り返して恐縮でございますけれども先ほど申し上げました日ソ共同宣言第六項の規定によります請求権の放棄というものの法的な考え方といたしましては、これは国家自身の請求権を除きますと、いわば外交保護権の放棄ということでございまして、日本国民が個人として有します請求権を放棄したものではないというのが従来からの見解でございます。それはまた、いわゆる戦争損害の一種に属するものであって、法律論といたしましては、これに対する補償は日本国が行うということについては消極的にならざるを得ない、こういう事柄であると存じております。  ただ、今お話がございましたとおり、昭和四十二年の引揚者に対します特別交付金の給付をもちまして政府といたしましては戦後処理問題一切が完結したものと考えてきたわけでございますけれども、シベリア抑留者の問題、さらにそのほかに在外財産の問題、いわゆる恩給欠格者の問題というものが大きく出てまいりまして、それに対します一部の方々の強い御要望というものがございますので、法律論は別といたしましても、この戦後処理問題について一体どう考えたらいいのか、その三つの問題を中心に民間の有識者によるところの懇談会を開催いたしましてその御意見を伺おうということで、現在行っておるところでございます。
  157. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 法律論から言えばそういう形になるかもしれませんけれども、今ソビエトに、そのときの支払いをするのは当然ソビエトなんだと言ってみたってどうしようもないわけでしょう、事実上。それであるならば、これは戦後処理の一環として政府としては何らか、ソビエトで抑留された方々の御労苦というのに報いるというのが政治家としての務めじゃないかと私は思うのですが、これは総務長官、どう思いますか。
  158. 中西一郎

    中西国務大臣 そういった先生の御意見、またソビエトで長期にわたり苦労なさった方々の御要望に根拠がないとは申し上げることはできないと思います。ただ、そういった方々だけのことを考えたらいいのかということになると、ほかにもいろいろな戦争損害を受けた方々もたくさんいらっしゃる。そういった全体のことを含めて、いま戦後処理懇で御相談をいただいておるところでございます。先ほど来触れましたが、若干の御意見も出始めておりまして、そういった方々の御意見をちょうだいした上で我々としては態度を決めてまいりたい、かように考えておるところでございます。
  159. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 年金改革と恩給の関係についてお伺いします。  公的年金制度の改革に伴って年金の一元化が将来に向けて動き始めておりますが、恩給は年々少しずつ減少してきており、将来的に公的年金と恩給は統合され、恩給が減額されて支給される可能性もないとは言えないというふうに感じます。また、その点を懸念する向きも国民の中には非常に多いわけでありますが、政府は軍人恩給と公的年金との関係については、将来の方向性をどのようにお考えになっておりましょうか。
  160. 和田善一

    和田政府委員 公的年金の統合一元化等につきまして、次第に施策が進められつつあるということは先生の御指摘のとおりでございます。  ところで、恩給はこれら公的年金とはその本質を異にするということは、私ども政府の中でそういう見解がとられておりまして、したがいまして、公約年金制度の一元化の中に恩給制度も取り入れて一元化してしまうということは今考えておりません。しかし、恩給も年金制度の一種ではございます。したがいまして、公的年金の改革に伴いましてそれとのバランス上もし検討する必要のある点が出てきますれば、必要な検討は行うというのが政府態度でございますが、年金一元化の中に統一して一緒に一元化してしまう、こういうことはないということでございます。
  161. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 戦後処理問題懇談会の第一回会合が五十七年六月三十日に開かれて以来、ことしの三月十六日で十九回になったわけでありますが、残すところ約二カ月余りとなりまして、その結論に向けての討議が行われているのではないかと思います。シベリア抑留者の問題とか在外財産の問題、そして恩給欠格者の問題について、関係官庁及び関係団体よりヒアリングを行い、自由討議を重ねてきていると聞いておりますが、政府としては、具体的にはいつごろをめどとして意見書なり回答をもらうようにお願いをしているのでしょうか。
  162. 禿河徹映

    禿河政府委員 具体的にいつちょうだいできるかということは、私どもは現段階でまだ申し上げるわけにはまいりませんが、事柄の性格から見て大変難しい問題をこれから議論しなくてはならぬということから、懇談会のメンバーの先生方はおおむね二年ぐらいは必要であろうという感じで出発をいたしております。したがいまして私どもといたしましては、何とか御検討を急いでいただきまして、この夏ぐらいまでにはその御意見を取りまとめてちょうだいできるのではないか、かように期待いたしております。
  163. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 戦後処理問題懇談会は総務長官の私的諮問機関でありまして、行管庁と総理府が統合して発足する総務庁長官の諮問機関ではないわけであります。懇談会として総務長官意見書を出すにしても、夏をめどなんというふうにおっしゃったわけでありますけれども、最大限おくらしても実際には六月三十日以降にはなり得ないと私は思うのです。これは、総理府自体が実際に総務庁に変わっちゃうわけですから、そういう点で六月三十日までには出されるというふうに理解していいでしょうか。
  164. 禿河徹映

    禿河政府委員 現在の総理府と行政管理庁、この二つの組織を統合再編いたしまして、この七月一日から新しく総務庁が発足いたします。なお、スリムな形にはなりますけれども、七月一日以降も新しい総理府は残ります。ただ、総務長官は廃止ということになっておりますので、七月一日以降は現在の行政管埋庁長官と総理府総務長官はなくなりまして、大臣といたしましては新しく総務庁長官お一人ということに相なるわけでございます。ただ、新しい総理府を統括される大臣は官房長官ということになることが決まっておりますので、もしこの六月三十日までに御意見が寄せられないということになりますと、この懇談会の関係は通常、官房長官が御担当になられる、官房長官の私的懇談会という形になろうかと現在考えております。  ただ、いずれにいたしましても、仮に七月一日以降存続ということになりましても、この庶務の関係は引き続き総理府の審議室が担当してまいりますので、その御検討に支障を来さないように私ども十分心がけてまいりたい、かように考えております。
  165. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 実は二年前に戦後処理問題懇談会が発足して、総務長官の私的諮問機関という形でつくられたわけですから、それは当然総務長官にやらないと、これは別な人がお受け取りするということになって、全くあいまいな形になってしまう。だから、一つのめどをつけるという意味においては、本来的には六月三十日までに結論を出すべきが当然だと私は思うのですね。  そこで、総務長官の私的諮問機関が今回の戦後処理問題懇談会でありますけれども、私的諮問機関と公的諮問機関との違いはどこにあるのでしょうか。また、答申なり意見書の取り扱いについては、私的諮問機関と公的諮問機関との対応の仕方でどう違うのでしょうか。
  166. 禿河徹映

    禿河政府委員 いわゆる審議会と懇談会との差ということでございますが、これも御高承のとおり、審議会などと申しますのは国家行政組織法第八条の規定に基づいて設けられるものでございます。これに対しまして、懇談会等と申しますのは、有識者の参集を求めて開催をする行政運営上の会合、こういうものでございますが、その設置の法的な根拠というものがないのが私的懇談会という法制上の区別になるかと思います。  こういう差を受けまして、行組法八条の機関としての審議会等にありましては、それを構成いたしますところの個々の委員の意思とは別の、合議機関という形をとりますので、その合議機関そのものの意思というものが答申等の形で公の権威をもって表明される、こういうものでございます。これに対しまして私的懇談会の場合は、合議機関としての意思が公の権威をもって表明されるというのではなくて、有識者による意見交換あるいは懇談というふうな場にとどまるということに相なります。したがいまして、そこで示されますところの有識者の御意見につきましては、あくまでも行政運営上の参考意見として受けとめ、これを活用するということになろうかと存じます。  戦後処理問題懇談会につきましては、従来からそのような両者の差というものを踏まえながらその運営に当たってきたところでございまして、懇談会において今後取りまとめられますであろう意見につきましても、政府としてはそういう点を踏まえて対処する必要があろうかと考えております。  繰り返すようでございますが、こういうふうに懇談会の運営とか意見の取りまとめに当たりましては、そういう法制上の差異というものを考えながら、意思決定機関と紛らわしいものとならないように留意しているところでございますけれども、その御意見内容につきましては非常に参考となるべき貴重な御意見が寄せられるであろう、かように期待いたしておる次第でございます。
  167. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 意見書の内容が出された場合、従来の政府の方針とは違った内容のものがあったとしても、それはそれとしてお話をお聞きしましたでは済まされない問題ですが、その点では意見書を尊重するという立場を貫いていかれるのでしょうか。その点はどうなのでしょうか。
  168. 禿河徹映

    禿河政府委員 今私が申し上げましたのは、いろいろ各方面でも御議論がありました。公的なと申しますか法律に基づく審議会というものと行政運営上の会合である懇談会というもののその取り扱いの差を政府は十分留意していかなければいかぬということで、主として法制的な立場から御説明申し上げたわけでございますけれども、七名の有識者の方々にこの二年間程度にわたりましていろいろ御検討していただきます御意見には大変貴重なものがあるであろうと考えておりますので、その御意見が出ましたならば、行政府といたしましてはその御意見を十分受けとめながら所要の対応を図っていく必要があるのではないか、それが一番適切ではないか、かように考えておる次第でございます。
  169. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 最後ですが、その御意見をちょうだいするのは貴重な御意見があるだろう、こういうことなのですが、政府は出てきたものに対して尊重というくらいの立場はとれないのでしょうか。
  170. 中西一郎

    中西国務大臣 二年にわたって御議論いただくのでございますから、しかも非常に真摯に取り組んでいただいております、決してこれを軽視するわけにはまいらない背景があるわけでございますので、全部尊重できるかどうか別として、尊重するという基本姿勢は我々として堅持しなければならない、かように思います。
  171. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私の時間が参りましたので、質疑を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
  172. 片岡清一

    片岡委員長 田中慶秋君。
  173. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 五十九年度における恩給の改善等について、受給者の生活を守る立場で次の項目について質問をさせていただきたいと思います。  まず一点目は、受給者の現状ということでございますけれども恩給法の改正案の審議でありますので恩給受給者の現状について御答弁をいただきたいと思います。
  174. 和田善一

    和田政府委員 恩給受給者の現状でございますが、端的に申しまして、恩給受給者が恩給種類別に一体何人いるかというのが一番基本になると思います。これにつきまして、昭和五十九年度予算で考えております年金恩給の受給者は総数約二百二十八万人でございまして、そのうち旧軍人というものが二百十五万人、全体の九四%でございまして、残り六%の約十三万人が文官でございます。  これを恩給種類別に見ますと、御本人が受けておられます普通恩給の受給者が約百十六万人で、全体の約半数の五一%を占めております。御遺族が受けておられます扶助料、これが約百万人で、全体の四四%、その他の五%が傷病恩給を受けておられます約十二万人の方でございます。数から言いますとこういう状態でございます。
  175. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 今、概算二百三十万、こういう形で御説明をいただいたわけですが、今後この推移はどうなっていくのか。当然だんだん減っていくわけですけれども昭和七十五年、二十一世紀ということをよく言われますので、二十一世紀の実態はどうなっていくのだろう、こんなふうに考えますので、もし現況で把握をしていらっしゃるならば、この辺について教えていただきたいと思います。
  176. 和田善一

    和田政府委員 将来におきます恩給受給者数の推計につきましては、恩給受給者の失権、お亡くなりになる等の失権によります減少をどのように見込むかという点でその推計がなかなか難しい面がございますが、仮に昭和五十九年度予算において見込んだ人員等を基礎として推計いたしますと、先生今お尋ね昭和七十五年、二十一世紀初頭には現在の二百二十八万人が百二十八万人ぐらいになるだろう。さらにもう少し内訳を申しますと、普通恩給の受給者が約四十七万人、傷病恩給の受給者が約六万人、普通扶助料の受給者が約六十万人、公務関係扶助料の受給者が約十三万人等でございまして、大体そういうようなことが現在の恩給統計の上から推計されるわけでございます。これはまた年々条件を詳しく調べまして、正確な推計をさらにつくっていきたい、かように考えております。
  177. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 先ほど、軍人と文官それぞれ数字を出させていただきましたけれども、これらの平均年齢はどの程度になっておりますか。
  178. 和田善一

    和田政府委員 年齢で申し上げますと、昭和五十八年三月末の恩給統計によりますと、受給者全部の平均年齢は六十九歳でございます。これを文官と旧軍人に分けてみますと、文官の総平均年齢は七十六・七歳、旧軍人の総平均年齢は六十八・五歳ということになっております。これをもう少し細かく見ますと、御本人が受けておられます普通恩給の受給者で見ますと、文官の方は平均年齢七十七・四歳、旧軍人の方は六十六・四歳ということでございます。それから、御遺族が受けておられます普通扶助料をとってみますと、文官の方は平均年齢七十六・七歳、旧軍人の方は六十五・八歳、かような状態でございます。
  179. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 それぞれの年齢やらあるいは構成されている人員等についてお答えいただいたわけですが、五十九年度恩給改善といいますか、この基本的な考え方について、特徴といいますか、こういう問題について説明を願えたらありがたいのですが。
  180. 中西一郎

    中西国務大臣 お答えいたします。  昭和五十九年度におきましての恩給改善措置でございますが、経済事情の変動に伴って恩給年金の実質価値が落ちるようなことがあっては困ります。できるだけ実質価値を維持したいということで、公務員給与改善約二%を基礎といたしまして恩給年金を増額いたしたことが一点でございます。  それから、戦没者遺族に支給する公務扶助料や傷病者の恩給を改善する、そしてこれらの者に対する処遇の一層の充実を図りたいというのが第二点であります。  第三点は、普通恩給普通扶助料最低保障額改善など、経済的に弱者の恩給を改善しようではないかということを基本的な柱といたしております。
  181. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 基本的な考え方で長官にお伺いしたいわけですけれども、恩給の改定の基本的な問題として、今公務員給与改定の二%云々という問題がございました。確かにそれも経済変動の一つかもわかりません。しかし基本的には、法の精神には物価上昇というものが含まれているような気がするのですけれども、その辺はどうでしょうか。     〔委員長退席、深谷委員長代理着席〕
  182. 和田善一

    和田政府委員 恩給の年額の改定につきましては、恩給法の二条ノ二という規定がございまして、ここで「年金タル恩給ノ額ニ付テハ国民ノ生活水準、国家公務員給与、物価其ノ他ノ諸事情ニ著シキ変動ガ生シタル場合ニ於テハ変動後ノ諸事情ヲ総合勘案シ速ニ改定ノ措置ヲ講スルモノトス」、こういうことが規定されてございまして、経済諸事情を総合勘案ずる。  で、公務員給与改定の結果と申しますのは、結局、民間の賃金水準あるいは物価変動等が底にあります。その他もろもろの諸事情を総合勘案いたしまして公務員給与の決定がなされておりますので、これが指標を総合的に見る最もよい手段であろう。特に恩給は公務員の退職者に対します年金でございますので、国家公務員給与改定の結果を総合的な指標のあらわれとしまして用いるという考え方でここずっとまいっている次第でございます。
  183. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 今の説明でも明らかなように、恩給のベースアップの改定というのは、少なくとも公務員給与改善を基礎として増額をされるというのが基本的な姿勢であるということが明確になったわけであります。  そこで、この実施時期についてでありますけれども、昨年の改正法案の審議の際にも附帯決議がされて、五十八年四月二十六日、七項目にわたって附帯決議がされたわけであります。「現職公務員給与との遅れをなくすよう」、こういう決議もございました。同時に、現時点においてはこのおくれているものが約一年、十一カ月のおくれを来しているわけですけれども、これらについてどのようにお考えになっているのか。
  184. 和田善一

    和田政府委員 附帯決議がございまして、「恩給の実施時期については、現職公務員給与との遅れをなくすよう特段の配慮をするとともに各種改善を同時期に一体化して実施するよう努めること。」という御決議がなされておるわけでございます。  私ども、今申し上げましたように、恩給年額の改定につきましては現職公務員給与改定の結果を指標といたしましてベースアップしておる。その指標といたします現職公務員給与というのは、昭和五十九年で申し上げますと前年の昭和五十八年度公務員給与の改定を指標といたしますので、これが前年度のを用いるから一年おくれであるという御議論があることは確かに承知しているわけでございますが、これは指標をどうとるか、何の指標をとって当年度のベースアップをするかという指標のとり方の問題でございますので、それを前年度公務員給与を指標として恩給のベースアップをずっと続けてやってきた、まあ去年は例外でございますが、やってきたという事実の積み重ねがございますので、恩給年額の水準そのものがいわゆる一年おくれになっているということは必ずしも言えないのではないかというのが私ども考え方でございます。  恩給のベースアップの実施時期につきましては、長年十月実施ということだったわけでございますが、次第に前進いたしまして、昭和五十二年度からは四月実施ということが実現してまいったわけでございます。特に五十九年度は前年度に恩給のベースアップがなかったという特殊事情を勘案いたしまして、特に本年度限りの特例といたしましてさらに三月実施ということで一カ月繰り上げたという措置もとった次第でございます。改定の実施時期のあり方につきましてはいろいろな考え方があろうかと思われますが、他の公的年金制度との関連等も考慮しつつ慎重な検討を要する問題であるというふうに考えております。
  185. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 今の説明でも一年おくれであるということは明らかでありますし、二カ月ほど御苦労されて前倒しにされたということについては評価をしますけれども、ただ、これは長官にお聞きした方がいいかどうか、長官、附帯決議、国会決議、こういうものについてあなたはどういうふうにお考えになるか。少なくとも決議ということについては、それを守らなければいけない、守るように努力をしなければいけない、そのくらい権威のあるものだと私は思うのですけれども、あなたのお考え方を聞かせていただきたいと思います。
  186. 中西一郎

    中西国務大臣 御意見のとおり、附帯決議の重さ、権威ということについては同様に考えます。そういった意味でいろいろ努力をしてまいっておるところでありますが、今後とも附帯決議の考え方につきましてはこれを尊重して真剣に検討しなければならない、かように思います。
  187. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 そうしますと、昨年の四月二十六日に七項目にわたる附帯決議がされたわけでありますけれども、これらについてその後どうなっているのか、検討の結果をお答えいただきたいと思います。
  188. 和田善一

    和田政府委員 附帯決議のうち、私ども恩給局の所管しております事項についての検討結果を御報告申し上げます。  第一点の、恩給の実施時期の問題につきましては、ただいま御答弁申し上げたとおりでございます。  次に、「恩給の最低保障額については、引き続きその引上げ等を図ること。」という御決議になっております。これにつきましては、恩給の最低保障の制度は、他の公的年金制度に倣いまして、公務員として長期間勤務したにもかかわらず恩給年額が低いというものについてそれを改善する趣旨から昭和四十一作度に設けられたものでございまして、最低保障額改善につきましては、厚生年金あるいは共済年金等地の公的年金の給付水準との金額等を考慮し、またさらに恩給制度及び恩給受給者の実情に即した形で、公務員給与の改定等を勘案いたしましてその額を定めてきたところでございます。昭和五十九年度の恩給の改定につきましても、公務扶助料あるいは普通扶助料等の最低保障額につきましては、通常の二%のベースアップ以上に上積みをいたしまして改定を法律案に盛り込んでおる次第でございます。  次に、「扶助料については、さらに給付水準の実質的向上を図ること。」という御決議がございます。扶助料の給付水準の改善につきましては、基礎俸給の格上げとか加算年を金額計算へ導入するとか、寡婦加算制度を取り入れるといったような優遇措置を御決議の趣旨に沿いまして順次講じてまいったところでございまして、また昭和五十二年度以降は特にその最低保障額の改新に努めてまいりまして、現在では、寡婦加算を含めますと普通恩給の八割を上回る水準にまで扶助料の水準が到達しているという状態でございます。扶助料の給付水準改善のためにその支給割合を引き上げることにつきましては、ひとり恩給だけの問題にとどまらず、公的年金制度全般にわたる大きな問題でございますので、今後とも慎重な検討が必要であるというふうに考えておるところでございます。  次に、「外国特殊法人及び外国特殊機関の未指定分の件について、速やかに再検討を加え適切な措置を講ずること。」という御決議がございますが、これにつきましては、恩給法上、特定の外国特殊法人及び外国特殊機関につきましてその職員としての在職期間を一定の条件のもとに通算しておりますのは、その機関の組織の性格とか業務の内容、人事交流の実態等を考慮して、真にやむを得ない場合に限り例外的に認めている措置でございまして、戦前、満州や中国には現在通算が認められている特殊法人等のほか、百以上のいろいろの特殊法人、特殊機関等が存在しましたが、これらにつきましては、組織の沿革、機関性格、人事交流の実態等、総合的に勘案しても、それからまた内地における同様な国策会社等についての通算を認めていないこととの均衡を考慮いたしましても、通算の対象とすることは適当ではないというのが現在の考え方でございます。  恩給局所管の附帯決議関連事項につきましては、以上のとおりでございます。
  189. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 ほかにもこの戦地勤務に服した旧日赤看護婦等の問題について御答弁をいただきたいわけですし、恩給受給者に対する老齢福祉年金等の支給制度の問題についての慣例、あるいはまた現在問題となっている日本の国籍を持っていた旧軍人軍属の諸案件の問題等、これらについてどうなっておりますか。
  190. 菊池貞二

    菊池(貞)政府委員 旧日赤の救護看護婦及び旧陸海軍の看護婦の関係でございますが、この慰労給付金は、先生御承知のように女性の身でありながら戦時中非常に御苦労なさった、その御苦労を少しでも慰労したいということでとられた特別の措置でございます。したがいまして、恩給とか国民年金、そういう年金とは性格が異なっているという問題がございますので、恩給のようにベースアップをするというのは非常に難しい問題である、かように考えております。  しかし、今後の取り扱いでございますが、附帯決議等もいただいております。社会経済の変化等を見ながら、今後とも引き続き検討をさせていただきたいと考えております。
  191. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 ほかの答弁がまだ残余しているわけですけれども、今御答弁をいただきました慰労金問題であります。少なくとも今の制度そのものが、御案内のように年数加算その他のことを含めて区分しながら十万から三十万までという範囲の中で支給されているわけであります。しかし、例えば衛生兵と同じようにそれぞれ戦地でその仕事に従事された人たちあるいはまた従軍看護婦として同様に御苦労された人たちということを考えてまいりますと、現実にこの十万から三十万の範囲内で、これは昭和五十四年に検討された慰労金制度でありますから、それからもう既に五年もたっているわけですね。これだけでも、例えば恩給の問題が今回も検討されているのは、公務員のペースアップの改定とか経済の変動によって、そういう形で見直しをされているわけでしょう。しかも現実にもう既に五年前から考えて物価だけでも二〇%近く上がっているわけです。そうするとこれらに対する見直しもあってしかるべきじゃないかと思う。現実には据え置きされているのが実態ですから、この辺に対する見解を述べていただきたいと思います。
  192. 菊池貞二

    菊池(貞)政府委員 確かに先生お話しのとおりに、旧日赤救護看護婦に対する措置が五十四年に始められまして、陸海軍従軍看護婦が五十六年から始められたわけでございます。  ただ、先ほど申し上げましたように、この従軍看護婦に対する慰労給付金は若干恩給といったものと性格が異なるんではないかという考えを私どもは持っておるわけでございます。  ただ、そうは申しましても、長い間そのままでいいかどうかということは当然話としてあるわけでございますので、社会経済のそういう変動を見つつ引き続き検討をさせていただきたい、かように考えている次第でございます。
  193. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 確かに恩給の関係とは若干異にしても、目的は同じだと思うのです。軍人が病に倒れ、あるいはまた傷害を受けて、その人たちを看護された人たちが国のために働いてきたんでしょう。しかしそれが現実問題として、目的なり働いてきた事実は評価されていても、それが少なくとも現在の慰労金という形の中で処理されていたのでは、そしてそれが見直しをされないということであっては不公平だと思うのです。同時に私は、暮らしをする上においても全く同じだと思うのです。あなた、生活をする上において看護婦だったから、あるいは軍人だったからといって生活の差がありますか。ないと思うのです。そういう点では当然この見直しはされていい。ですからここに附帯決議でも、見直しすべきだ、増額すべきだということで附帯決議されているのでしょう。これは全会一致でされておるわけです。ところが若干性格が違うからということで据え置きをされるというのは納得いかない。そういう点でもう一遍答弁をしていただきたいと思うし、さらにまた、これについて善処をしていただきたい。
  194. 菊池貞二

    菊池(貞)政府委員 確かに、慰労給付金が生活の一部に使われているという面はあろうかと思います。ただ、恩給等は所得あるいは生活の保障をするということで、当初から恩給の対象の人ということで、そういう人たちがそういうことを初めから期待をして兵隊さんになられるなり公務員になられたということだと思っております。しかし、旧日赤の救護看護婦あるいは旧陸海軍の看護婦の場合はそういう点が若干異なるのではないかということで、私は申し上げたわけでございます。  もちろん、先ほど申し上げて繰り返しで非常に恐縮でございますが、いつまでも固定をしていいという考えではございませんので、社会、経済の変化といったものを見つつさらに検討を続けさせていただきたいと考えております。
  195. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 看護婦だから、軍人だから、目的が違う、こんな表現であってはいけないと思うのです。この人たちがいたから安心してそういう目的の仕事ができたと思うし、あるいはまた附帯決議というものが、今長官が言われたようにこれを尊重する、そしてここに上積みをしなさいと書いてあるのです。五年前で、経済変動があった場合においてはこれから検討します——それじゃ、既に五年前で、経済変動をどう思うのですか、物価はどれだけ上がり、ベースアップはどれだけか。ですからこれは見直しされているのでしょう、経済変動があるからこそ、恩給の見直しをされているのじゃないですか。まさしくあなたの答弁ですと、経済変動がないような形で御答弁をされているわけです。経済変動があって初めて恩給の見直しもされ、ベースアップがあって初めて見直しをされている。ですからここに、去年、上積みをしなさいということを決議されているのじゃないですか。この辺についてはっきりしていただきたいと思います。
  196. 中西一郎

    中西国務大臣 お話はよくわかります。ただ、昨年予算編成する時期に、非常に困難な予算編成であったことも御了解いただけると思うのです。そういった中で、この七つ全部について御期待に沿えなかったことは甚だ遺憾でございますが、我々としては将来にわたって御期待に沿えるように一層の努力をいたしたいと思います。
  197. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 それじゃ長官、あるいは当局で結構ですけれども、この該当者は何人いらっしゃるのですか。それで、見直しをされるとすればどれだけの金額が要るのですか。そんなにかからないと思うのです。その辺を答えてください。
  198. 菊池貞二

    菊池(貞)政府委員 五十八年度に実際に慰労給付金を支給いたしました対象者の数と金額を申し上げますと、対象者の数が二千二百六十六人、それから給付いたしました慰労給付金が二億九千四百六十五万八千円ということでございます。
  199. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 長官、これが倍になったって大した金額じゃないでしょう。ですからこういう人を、皆さん方の全会一致で附帯決議をされたものであるから、こういうことを含めて見直しをしていただきたいということを申し上げているわけです。長官もこれらについて今後ということでありますけれども、少なくとも臨調の考え方なりあるいはそれぞれの考え方になりますと——今この看護婦等の問題については、戦後処理問題懇談会という形の中で、長官の私的諮問機関で検討されてきたと思うのです。しかし、これはもう六月末、先ほどの論議の中でも七月一日から改められるということであるならば、私は今の時点でその精神を生かす必要があろうと思うのですけれども、長官いかがですか。
  200. 中西一郎

    中西国務大臣 現段階、今すぐどうということは言いがたいのでございますが、大きな方向としては、ぜひとも附帯決議を尊重する方向で参りたいと思います。
  201. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 そうしますと、先ほど質疑をされておりましたけれども、この慰労金の問題等については戦後処理問題懇談会において検討されてきたと思うのです。ところが、現実問題としてこの機関はなくなってしまう、あるいはまた今後その推移というものがどうなるか明確じゃないような気がするのですけれども、長官、どうなんですか。
  202. 禿河徹映

    禿河政府委員 今お話がございます旧日赤並びに旧陸海軍の従軍看護婦の件につきましては、戦後処理問題懇談会におきまして、その措置がとられるに至りました経緯とかその内容とかいうものを関係の方からヒアリングを行ってきた事実はございます。  ただ、もう先生御高承のとおりだと思いますが、戦後処理問題懇談会は、戦後処理に関する一切の措置政府としては終了したものとしてきたわけでございますけれども、特にシベリア抑留者、在外財産、それからいわゆる恩給欠格者、この三つの問題をめぐりまして各方面からなお大変強い御要望があるという事態を踏まえまして、そもそも戦後処理問題をどう考えるべきかという基本論を踏まえましてその三つの問題を中心に御検討いただいておるところでございます。  この戦後処理問題を一体どの程度までとらえこの懇談会で御議論いただくかということは、大変難しい話でございまして、とらえ方によりましては幅が大変広くなりまして、この懇談会であらゆる問題を御検討いただくというのは事実上不可能でもあろうかと思います。また、この懇談会の性格がそもそも戦後処理問題をどのように考えていくべきかという基本論を中心に御検討いただくということからいきまして、今お話がございましたような問題を含めまして、現在ございます既存の制度とか各種の措置等々に基づきますところの個別具体的な対応上の問題をここで取り上げていくのはこの懇談会の性格上なかなかなじみにくい点がございまして、看護婦さんのお話も、今申しました三つの問題に関連しましてあるいは戦後処理問題一般ということで御報告はいたしてございますけれども、この懇談会におきまして具体的に金額等をどうすべきかという御議論にはなっていないわけでございますので、その辺は御了承願いたいと存じております。
  203. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 そうしますとこの問題について、今の給付金制度というものは将来とも保障されていくかどうか。年金制度というのは一つの法制の中でできているものですから保障されていると思うのですが、ところが給付金制度そのものが将来とも保障されるという法的根拠というのはないのじゃないかと思うのですが、その辺はどうですか。
  204. 菊池貞二

    菊池(貞)政府委員 確かに法的措置でこの慰労給付金を出しているわけではございませんで、いわゆる予算措置でございますが、私どもとしてはこの特別の措置がつくられた経緯等を考えまして、先生が御心配なさるように、こういうことが切られるとかそういうことのないように今までも努力をしてまいりましたし、今後ともそういうことについては全力を挙げて努力してまいりたいと考えております。
  205. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 それじゃ長官にぜひお伺いしたいわけですけれども、今明らかになりましたね。給付金制度というのは法制化されていない問題ですから、そういう点では予算措置で行ってきた、こういう事実ですね。そうしますと、予算の、今一連の財政が厳しいという中で、それぞれ切り捨てがあったりいろいろなことがされていますね。そうしますと当然それらも将来、うがった見方じゃありませんけれども、そんな考え方にも心配をされる向きがあるわけですから、そういう点では逆に、これを法制化をあるいはまた年金とかというこんな形で切りかえておくことによってこの人たちを保障できるのではないか、こんなふうに思うのですけれども、この辺はいかがお考えでしょう。
  206. 中西一郎

    中西国務大臣 先ほど来、附帯決議に関連していろいろお話がございました。私も少し触れましたが、五十九年度予算案をつくるときにはいろいろな苦労があったのでありますが、その中でできたものとできなかったものがあるという経過については御承知のとおりであります。  これからこれを法律にしたらどうかというお話も、これは傾聴に値するとは思うのでございますが、問題がたくさんあるわけでございまして、それぞれについてバランスのとれた結論を見出す必要がある。そういった立場から考えますと、現段階でこれを法制化していい、すべきだというふうにはすぐにはならない事情も御理解いただけるかと思います。予算で十分に措置できる問題でもございますし、他の項目とあわせ考えさしていただきたいと思います。
  207. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 長官、明らかにしておきたいことは、その予算措置前提で、経済変動があれば恩給その他は見直しをされる、しかしこれは給付金だから見直しはされない。もう既に五年もたっているわけだ。こんなことを考えていきますと、法制化がいいか悪いかは別問題として、それに準ずるような形の中で将来とも保障をされていくようなことをぜひ検討していく必要があろうと思うし、それが附帯決議の上積みというこういうことにもなっているのだろう、私はこんなふうに理解しておるわけで、そういう点を含めてぜひ前向きに検討していただきたい。考え方をお聞かせいただきたいと思います。
  208. 中西一郎

    中西国務大臣 重ねてのお話でございます。私どもたくさんの問題を抱えておりますが、それぞれを比較考量しながらできるだけ多くの問題について満足をいただけるような努力をしていきたい、かように考えます。
  209. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 ぜひこれらの問題については前向きに検討していただきたいということを重ねて要望しておきたいと思います。  そこで、今戦後処理問題懇談会等々について、将来ともという、もう既に終点まで来ているような形の中でお話があったわけですけれども、実はいろいろな形で年金問題といいますか恩給問題について陳情を受けているわけですけれども、その一つに官民格差の問題があるわけです。  例えば、戦争に行かれてきてそのまま公務員になってまいりますと、この人たちは年金に加算されますよね。ところが、民間やらあるいはまた農業やら、現実問題として個人的に仕事を持たれた人というものはここに格差が出ている。これらの問題についてどういうふうに考えられているのか、あるいはまた今後これをどんな形で検討されていくのか、不公平ということについてどのように処置をされていくのか。これは厚生省ですか、考え方を聞かしていただきたいと思います。
  210. 渡辺修

    ○渡辺説明員 お答え申し上げます。  先生御指摘のような御要望がこれまで出されているということは十分承知しているところでございますが、何分私どもが所管しております国民年金制度あるいは厚生年金制度は一般的な社会保障制度ということで、しかも保険料を拠出していただいた方に給付を行う社会保険システムをとっているわけでございます。  御指摘のケースにつきましては、国民年金は昭和三十六年創設でございますから当然でございますが、昭和十七年から発足しております厚生年金について見ましても、その加入者であったあるいは厚生年金の保険料を納付されたという事実のない方々でございまして、御指摘のようなケースだけ特別な扱いをするということは、一般的な社会保障制度としての厚生年金、国民年金制度にはなじまないというふうにお答え申し上げざるを得ないわけでございます。
  211. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 拠出があるから、拠出がないから、こういう問題じゃないと思うのです。ということは、この人たちもその加算されている部分についてはまさしく拠出がないと思うのです、はっきり申し上げて。その後年金に併算された時点で、通算ですから、そういう点でその後に拠出金が出ているものだというふうに私は思うのですけれども、その辺どうなんですか。私の考え方、誤っていますか。
  212. 渡辺修

    ○渡辺説明員 確かに公務員共済制度におきましては御指摘のケースは通算をされているわけでございますが、これは公務員共済制度が恩給制度をそのまま引き継いでつくられた、いわば恩給制度の後身たる制度であるということでございます。そういう意味では、厚生年金も昭和十七年に発足して、昭和二十九年に全面的に衣がえをいたしまして新厚生年金になったわけでございますが、この現在の新しい厚生年金制度は二十九年前の旧制度を引き継いでいる、そういう意味では同じような扱いをしているわけでございます。その点は公務員共済制度が恩給制度を引き継いだというのと同じような扱いをしているわけでございまして、事情の違いというものについて御理解をいただきたいと思います。
  213. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 渡辺企画課長さん、今、官民格差を申し上げているのですよ。いいですね。公務員共済年金は恩給制度をスライドされた形でずっと継承されている、ですから加算ができたのだ。しかし片方は、国民年金なり厚生年金というのは後ほどの問題だからその分は加算できない。要するに、この期間というものは、同じような精神だったら、通算といいますか、加算をされてもいいのではないか、そういうところに不公平というものが生じているのではないかということを今言われているので、その辺を明らかにしていただきたいということです。
  214. 渡辺修

    ○渡辺説明員 確かに現在、厚生年金、国民年金、それから共済制度、こういった各種の複数の制度にまたがっておられたという方々につきましての通算年金制度というのはございます。ただこの場合も、それぞれの制度にどれだけ加入をしていたかということで、その加入をしていた制度が加入をしていた期間に応じて年金を給付するという形でつないでいるわけでございます。  ですから、先生御指摘のケースについては、厚生年金に加入していなかった期間について厚生年金が給付をせよという御指摘であろうかと思うのですけれども、それは厚生年金制度の本来の一般的なサラリーマンを対象にした制度で、しかも厚生年金に掛金を掛けたことのある方について年金給付をするという大原則に照らしまして非常に難しい問題ではないか。共済制度なりほかの制度がそれぞれに加入していた期間について年金給付を行うというのが今の仕組みでございまして、先生おっしゃるようなケースについて、厚生年金がこれに給付を行うということは非常に難しいのではないかと思っているわけでございます。
  215. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 そうすると、今問題になっております共済年金あるいはまた国民年金、厚生年金、これが将来一本になったときに大変大きな混乱を来すのではないか、私はそう思うのですけれども、その辺についてはどう思うのですか。では、今の時点から何らかの作業をしていて、これが一元化になって一本になったときはどういうふうにするのですか。仮定で答えてもらうというのは大変失礼かもわかりませんけれども、年金制度が、例えば共済年金も国民年金も厚生年金も一本になったとしますね、そういうときにはこれにどう対応していくのですか。
  216. 渡辺修

    ○渡辺説明員 公的年金制度の一元化というのは政府として強く推進していかなければならない課題だと私ども認識しております。  将来の最終的な一元化の姿はともかくといたしまして、私ども厚生省といたしましてこの国会に御提案申し上げております年金改正法と申しますのは、厚生年金、国民年金、船員保険を通じて基礎的な共通部分をつくろう、これを中心とした改正案を御提出申し上げておるわけでございますけれども、これには引き続いて共済年金制度も御参加をいただきたい。去る二月二十四日には閣議決定でその方向が明らかにされているわけでございますが、この基礎年金につきましても、従来から日本の社会保障制度たる公的年金制度がとってきております社会保険方式というものを維持しているわけでございまして、拠出に応じて給付を行うというその原則は踏襲しているわけでございます。最終的な姿はともかく、当面倒提案申し上げております基礎年金制度に関しましては、あくまでも社会保険方式でいく、こういう考え方でいるわけでございます。
  217. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 今述べられているように、公的年金の考え方すなわち年金制度の一元化、あるいはまた年金の問題で見直し等々について閣議決定をされた、こういうことでありますし、それも承知しております。そういう中で、軍人恩給の受給者の九割を超える人たちがこの問題に関連があることになってくると思うのですね。今受給されている九割ぐらいの人たちがこの制度関連されると思うのです。そういう点では、この恩給制度についてどのような形で一元化、あるいはまた年金制度の改正をされたときどんな形のバランスでこの問題に取り組まれていくのか。
  218. 和田善一

    和田政府委員 お尋ね趣旨は公的年金制度の改正、一元化に際して恩給制度はどういう態度をとるか、どういう検討をするか、そういう御質問だと思います。  恩給制度は、公的年金制度とはその本質を異にするという大前提がございます。公的年金制度とは本来違うものでありますから、将来一元化される公的年金制度の中に取り込まれて一元化されてしまうというものではございません。しかし、年金制度として似ている部分もかなりあるということでございますから、今後、公的年金制度のいろいろな改革の推移を見ておりまして、もしそれとのバランスをとって検討しなければならないという点が出ましたら恩給制度としてそれを検討していく、そういう態度でございまして、現在のところ、具体的にそれではどういう点を検討するというようなことはまだ白紙の状態でございます。
  219. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 いずれにしても一元化を叫ばれているのですから、そういう点では、恩給制度についてもやがてその要望というものが来られると思うのです。そういう点では、それらの推移といいますか、それらに対応できるようにぜひしておく必要があろうと思いますので、そういう点を含めて御検討しておいていただきたいと思います。  そこで、実は高齢者年金の問題といいますか年金問題、国民年金の制度の中で、老齢福祉年金とさらに今の問題との併用というものが、少なくともこの附帯決議の中でも、恩給受給者に対する老齢福祉年金の支給制限の撤廃、こういう問題が去年の四月二十六日決議されていますね。こういう問題で、これらに対する取り組みというものがどうされてきたか、御答弁をいただきたいと思います。
  220. 渡辺修

    ○渡辺説明員 国民年金制度の中に老齢福祉年金制度というのがございますが、この国民年金制度は、恩給を含めまして広い意味の公的年金制度の適用を受けられない方、こういう方々を対象につくられた制度でございます。とりわけ福祉年金は、恩給を含めてほかの公的年金をもらっている方々には併給をしないという性格づけを持った給付でございます。  しかしながら、現実に低い額の公的年金を受けておられる方々があるということを勘案しまして、真に特例的な扱いといたしまして、一定限度額までは併給をしよう、こういうことになっているわけでございます。五十九年度におきましては、五十八年度と同様に普通恩給の短期在職者の最低保障額との差、これは維持しようということで、五十万五千円から一万円引き上げまして五十一万五千円という措置をとっているわけでございまして、この辺御理解を賜りたいと思います。
  221. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 この限度額といいますか支給制限というものが、どこでどれが一番ベターかということになると、お互いに質疑を交わさなければいけない問題だろうと思いますが、五十一万五千円という根拠、これらについてちょっと説明をいただきたいのです。
  222. 渡辺修

    ○渡辺説明員 理論的な根拠というのは大変難しゅうございますけれども、やはり何といっても沿革的なものではないか。五十六年以降は、先ほど私が申し上げましたように普通恩給の短期在職者の最低保障額との差を幾らにするか。それ以降は、その最低保障額が上がった分だけ限度額を引き上げるということにいたしまして、この最低保障額が上がった結果、そのせっかく上がった金額が受け取れないことのないようにという配慮から同額ずつ限度額を上げてきた、こういう経緯でございます。
  223. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 いろいろな沿革があってというお話もありましたけれども老齢福祉年金を受けられている方というのは七十歳以上の高齢の方でしょう。そうすると、老後の生きがいとか老後の福祉とかいろいろなことをよく言われているのですけれども、やはりこういう制限をすることによって私は逆に生きがいとかそういうものをなくするような気がするわけですね。だから、そういう中で上積みとかあるいはまた制限の撤廃という問題も出てこようかと思うのですけれども、撤廃をした場合予算的にはどのぐらいかかるのですか。
  224. 渡辺修

    ○渡辺説明員 私の手元にございますデータでは、他の公的年金を受けているために福祉年金の支給停止を受けているという方々についてのデータでございますが、総数で二十七万件、停止年額にいたしまして八百二十九億ということになっております。
  225. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 いずれにしても、やはり今の日本の繁栄ということを考えてまいりますと、こういう今老齢福祉年金を受けられる方あるいはまた今の恩給を受けられている人たちが活躍をされたから日本の今日があると思うのですね。そういう点で考えてみますと、やはりこういういろいろな形で制限されることについて問題があるような気が私はします。これは撤廃することが一番ベターかもわかりません。しかし、その答えというのは必ず財政が厳しいからということが返ってくるだろうというふうに私は思います。そうしますと、いろいろな問題の中で、五十一万五千円というこの限度額は逆にもっと引き上げる必要があろう、見直しをする必要があろうと私は思うのですけれども、見直しの考え方があるかどうか。
  226. 渡辺修

    ○渡辺説明員 冒頭申し上げましたとおり、この福祉年金の性格というのは、ほかの公的年金を受けられない方のために設けられていることが第一でございますが、この福祉年金制度を含んでおります国民年金制度の中に、十年年金、五年年金といった大変低い額の年金を受けている方々が多くおられます。こういう方々とのバランスという点から見ましても、言いかえますと理論的にも実際上も、先生お話しの方向で併給限度を緩和していくというのはなかなか難しい問題ではないかというふうに私ども認識しております。
  227. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 難しいのではないかという答え自体が私はおかしいと思うのです。ということは、五十一万五千円は根拠がないということをあなたさっき言われたわけでしょう。五十一万五千円の根拠がどこにあるかと聞いたら、その積み立てている根拠がないということであるならば、私はこれを上積みしても何ら支障を来さないような気がするわけです。そして私はこの問題について支給制限を本来ならば撤廃すべきだという主張をしたいわけですけれども、一歩譲って撤廃をしなくても、この限度額の見直しくらいはあってしかるべきではないか。ことしだって一万円しているわけです、はっきり言って。ですから、将来ともこれは当然いろいろな角度で見直しをされてしかるべきだと思うのです。スライドをとるのかどういう方向をとるのか、よく言われております物価の問題等々あるいはまたベアの問題とかいろいろなことが言われて今日その見直しがされてきているわけですから、そういう点ではこの見直しというものは当然あってしかるべきだと思うのですけれども、再度企画課長答弁してください。
  228. 渡辺修

    ○渡辺説明員 おっしゃるとおり、限度額は多分に沿革的なものでございますけれども先ほど私が申し上げました国民年金制度の中の十年年金について申しますと、今御提案申し上げております五十九年度の改正案に含まれております金額が、年金額にして三十六万四千五百円ということでございます。普通恩給短期在職者につきましては私ども年額で四十八万四千百円と承知しておりますけれども、この普通恩給短期在職者の最低保障額引き上げ幅と国民年金の十年年金の毎年の引き上げ幅を見ますと、十年年金の上げ幅の方が低くなっているというのが実情でございまして、年々この差が広がってきている。こういう実情を考えますと、私どもとしては、この普通恩給短期在職者と併給限度額の間差を維持するということでも精いっぱいの配慮をしているという面がございます。ぜひ御理解をいただきたいと思います。
  229. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 五年年金、十年年金の問題もあろうと思いますけれども、いずれにしても、まじめに働く者が損をしないような形で、あるいはまたこの年金の性格というものは、体が使えなくなるという老後の不安が解消できるような形にならなければいかぬのですから、そういう点では、お国のために働いてきた人たちが年をとって老後の生活に不安な材料が特に起こらないようにしなければいけないと思うのです。私は特に七十歳以上の人たちについて今申し上げてまいりました。ですから、これからもぜひそういうことを検討していただきたい。これは強く要望しておきます。  逆に、今度この普通恩給制度の中で、今六十歳に達しない人たち、まだ六十歳未満の人たちがこの金額計算に算入されていないわけですけれども、これらについて早急に対応すべきだと思うのです。これはどうでしょう。
  230. 和田善一

    和田政府委員 戦後の恩給制度におきましては、旧軍人等の加算年につきまして金額計算との関係でいろいろな措置がございまして、最初は加算年の年数は金額計算には反映させない、ただ資格をとみ年数としてのみ認めるということで参っておりました。しかし、こういう加算年の取り扱いは、戦前にはなかった戦後の一つの制限でございます。軍人恩給が復活しましたときに、戦前どおりに戻らずに、いろいろな財政事情等がございまして制限をつけて復活したその一つの制限でございましたので、順次高齢の方からこの制限を撤廃してまいりまして、現在は六十歳以上の方についてはこの加算年も金額計算の基礎としている。しかし、六十歳未満の方につきましては、まだ加算年を金額計算の基礎在職年に算入するまでに至っておりません。     〔深谷委員長代理退席、委員長着席〕  これはその対象が六十歳未満という、比較的恩給受給者の方々の中ではお若い層である、しかも現下の厳しい財政事情がある、それから最近におきます平均寿命の伸長、あるいは他の公的年金制度の動向等を考えますと、直ちに六十歳未満まで及ぼすのは適切ではないというのが現在の考え方でございます。
  231. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 今までの沿革の中でのお話はよくわかります。ただこういう形で、旧軍人としてお務めされてきた人たちがいろいろな形でハンディキャップを持ちながら、そして、今確かに仕事を一生懸命やられている人もいらっしゃると思います、社会で活躍されている人もいらっしゃると思います。しかし逆に、戦争に行った形の中で今大変御苦労されている人たちもいらっしゃるわけです。そういう点では、ただ六十歳未満だからということで金額計算に算入しないということ自体は、やはり根拠がないような気がするのです、今まで順次直してきたし、その沿革の中でそういう形をとってきたのですから。  そういう点では、これらの問題について例えば一般の年金が五十五歳から支給されていますでしょう。厚生年年金一つとってみても、額の問題とかいろいろなことを別にして、そういうことを含めてこういう問題が御検討されていると思うのです。例えば公務員共済年金は幾つで支給されていますか。五十五歳からスタートされていますでしょう。ですから、公務員は五十五歳からそういう形で支給される。いろいろなことを考えてまいりますと、やはり財政だって同じでしょう。そうすると、戦争に行ってきた人たちが六十歳未満は金額計算で算入をされない、これは少し不公平だと私は思うのです。だから、そういう点でこれらについての改善をすべきだという私の見解を持っているのですけれども、再度御答弁をいただきたいと思います。
  232. 和田善一

    和田政府委員 共済年金の支給年齢等につきまして先生御指摘の点がございますが、共済年金におきましても、次第に支給開始年齢を高めていって六十歳にするということの措置はとられておるような現状でございまして、現在は先生のおっしゃるような点がございます。なお、先生のただいまの御質問の御趣旨も外しまして慎重な検討を続けていきたい、かように思っております。
  233. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 大変御協力いただいておりますので、あとわずかで終わらせていただきますが、例えば年金に達していない旧軍人軍属に支払われる一時恩給、一時金の問題でありますけれども昭和二十八年にこの制度ができて、猶予期間も一部あったようですけれども、その後これらについて、当時の金額で三年の場合においては一万五千百五十円というような形でそれぞれの年次でもって御検討されておったようですけれども、諸般のいろいろな関係の中で達してない人たちに対する何らかの処置をする考えがあるかどうか、その辺について御答弁をいただきたいと思うのです。
  234. 和田善一

    和田政府委員 恩給制度といたしましては、恩給の最短恩給年限に達していない方々に対しまして、三年以上の引き続く実在職年がある方につきましては一時恩給、それから、引き続きませんでも三年以上の断続した在職年数がある方につきましては一時金ということで、額といたしましてはあるいは非常に少ないという御批判はあろうかと思いますが、国の気持ちをあらわすということで差し上げた次第でございまして、恩給制度としましてはこれで気持ちをあらわしているということ、さらにこの一時恩給等を一たん支給しましたものをさかのぼりまして増額するということは今のところ非常に困難でございますので、気持ちをお酌み取りいただきたい、かように思っております。
  235. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 恩給といいますか年金の中で、恩給法ぐらい大変非人情的なものはない、こんなふうに思うのです。例えば一時金になるか恩給になるか、極端なことを言えば、業務命令で半日早く来て、上陸するときに日が変わっていると、片方においては年金、片方においては一時金、こういう制度なんですね。アローアンスといいますか、そういうものがない。ばっさばっさと切られているのですね。ですから私は、そういう点で一時金を支給された人たちの中に不満が出ているのだと思うのです。例えば同じ軍隊にいて、命令でたまたま半日早く引き揚げてきてしまった、こういう形の中で、時間差の問題で片方は恩給、片方は一時金、こういう問題が出ていることは事実だと思うのです。そういう点では、アローアソスの問題でやはり何らかの形で処理が必要じゃないか、こんなふうにも思うわけですけれども、十二時間違って片方は年金、片方は気持ちで一時金ですよ。何か納得いかないですよ。その辺、どう思いますか。
  236. 和田善一

    和田政府委員 まことに難しい御指摘でございますが、恩給年金というものが一定の在職年に基づきまして支給されるという、恩給の一番基本的な制度が恩給創設当初から歳としてございますので、ある一定年数でどうしても切らなければならない。この切ることによりまして、その前と後で年金になるかならないかという差が出てきてしまう、これはやむを得ないことだと思います。  しかし、恩給年金に必要な最短年限、兵、下士官で言いますと、十二年というものにつきましては、これが例えば激戦地等でお過ごしの場合は一年を四年として計算する、したがいまして、極端な場合は三年激戦地におられましても、一年を四年としますので十二年の在職期間があるというふうに見まして年金を差し上げているというような措置もとっておりますので、どうかその辺をお酌み取りいただきたいと思います。
  237. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 いずれにしても、加算その他の問題でいろいろな御配慮をされてこういう年金の問題が出てきたと思うのです。ただ、不公平だなと思うのは、同じ場所で同じ時間帯まで働いていて、終戦の中で引き揚げるときに、業務命令の中でわずか半日早く帰ってきて片方は年金をもらえないで一時金、半日おくれて帰ってきた者が年金をもらえる、やってきた仕事は全く同じなんだ、そういう点で私は非常に不公平だと思うし、非情だと思う。ですから、加算とかいろいろな形で、アローアンスを何らかの形でつくって救済も必要じゃないかということで私は申し上げている。当局としてはこれらの問題について大変やりにくい問題だと思うけれども、私は考える必要のあることだと思うのです。そうでしょう。同じところで同じ目的で一生懸命全部働いてきたのですよ。私はそういうことを含めて何らかの形で見直しをすべきだと思うのですけれども、いや年金がそうなっている、加算がこうなっている、だから仕方がないんだ、これではしょうがない。ですから、こういうことを含めて、責任あるこれからの是正といいますか、これからの改善といいますか、やる必要があろうと思うのです。もう一度答弁を願いたい。
  238. 和田善一

    和田政府委員 恩給年額の改正につきましては、先ほど申し上げましたような恩給法二条ノ二の規定に基づきまして毎年やっております。その他個別改善等も今までいろいろ勉強してまいりました。なおいろいろな勉強をこれからも続けていきたいと思っております。
  239. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 私が申し上げたのは、今まで沿革とかそういう形で努力されてきたわけです。はっきり申し上げて、あなたは今私の最後の質問に答えてないのです。私は、今はっきり申し上げて一点に絞っているわけです。その加算を含めて、現実問題として例を申し上げているでしょう。あなたと私が戦地で一緒にいて、一緒にずっと働いてきたわけですよ。たまたま激戦地であっても、いろいろなことを含めて帰ってくるのが半日おくれて、こっちに到着するのが一日違っていた、それだけで違うわけです。ですから、そういうことを含めて、これから今後の対策、見直し、そういうときにこういう人たちに対しても何らかの検討をされるべきじゃないか、長官、ちょっと答弁してください。
  240. 中西一郎

    中西国務大臣 十分には理解できてないのですけれども、よく勉強させていただきたいと思います。
  241. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 時間も参りましたので、いずれにしても、私の趣旨はそれぞれ議事録にとられているでしょうから、長官、熟知して、やはり不公平のないようにこれらの問題について今後善処していただきたいということを要望して、終わります。
  242. 片岡清一

    片岡委員長 次回は、来る二十四日火曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時三分散会      ————◇—————