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1984-04-05 第101回国会 衆議院 内閣委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年四月五日(木曜日)     午後二時七分開議 出席委員   委員長 片岡 清一君    理事 池田 行彦君 理事 戸塚 進也君    理事 深谷 隆司君 理事 宮下 創平君    理事 小川 仁一君 理事 松浦 利尚君    理事 市川 雄一君 理事 和田 一仁君       石原健太郎君    内海 英男君       大島 理森君    鍵田忠三郎君       菊池福治郎君    塩川正十郎君       鈴木 宗男君    田名部匡省君       月原 茂晧君    山本 幸雄君       元信  堯君    渡部 行雄君       鈴切 康雄君    山田 英介君       藤原哲太郎君    柴田 睦夫君       辻  第一君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 細田 吉藏君         国 務 大 臣         (総理府総務長 中西 一郎君         官)  出席政府委員         内閣法制局総務         主幹      大森 政輔君         内閣法制局第一         部長      前田 正道君         人事院総裁   内海  倫君         人事院事務総局         給与局長    斧 誠之助君         総理府人事局長 藤井 良二君         北方対策本部審         議官         兼内閣総理大臣 橋本  豊君         官房総務審議官         宮内庁次長   山本  悟君         皇室経済主管  勝山  亮君         運輸大臣官房長 松井 和治君         運輸大臣官房総         務審議官    西村 康雄君         運輸省港湾局長 小野寺駿一君         運輸省鉄道監督         局長      永光 洋一君         運輸省自動車局         長       角田 達郎君         運輸省航空局長 山本  長君  委員外出席者         宮内庁書陵部長 宮尾  盤君         厚生大臣官房統         計情報部管理課         長       菊池 貞夫君         労働大臣官房統         計情報部情報解         析課長     甘粕 啓介君         自治省行政局公         務員部公務員第         一課長     柳  克樹君         日本国有鉄道常         務理事     岡田  宏君         内閣委員会調査         室長      緒方 良光君     ————————————— 委員の異動 四月五日  辞任         補欠選任   林  大幹君     鈴木 宗男君   田中 慶秋君     藤原哲太郎君   三浦  久君     辻  第一君 同日  辞任         補欠選任   鈴木 宗男君     林  大幹君   藤原哲太郎君     田中 慶秋君   辻  第一君     三浦  久君     ————————————— 四月四日  旧満州棉花協会等恩給法による外国特殊機関  として指定に関する請願(山本幸雄君紹介)(  第一九八九号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  皇室経済法施行法の一部を改正する法律案(内  閣提出第一四号)  運輸省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第一五号)      ————◇—————
  2. 片岡清一

    片岡委員長 これより会議を開きます。  内閣提出皇室経済法施行法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。柴田睦夫君。
  3. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 本法案改正点は、天皇及び内廷皇族と他の皇族の賜与と譲り受けの限度価額引き上げようとすることと、二点目は内廷費及び皇族費引き上げであるわけです。この法案に沿って質問しますが、まず初めに、賜与及び譲り受けのことです。  皇室経済法の第二条四号に該当する賜与、譲り受け、これにはどういうものがあるのか、具体的な事例と、その内訳はどうなっているのか、示していただきたいと思います。
  4. 山本悟

    山本(悟)政府委員 賜与及び譲り受けにどういうものが該当するのかという御質問と存じます。  憲法ないしこの法律趣旨から申し上げまして、こういうものにつきまして一定の限度というものを設けておるその趣旨と申しますのは、言うまでもなく、賜与につきましては、非常に多額のものを、特定のところに財産的の価値のあるものを皇室が与えることによりまして皇室特定の者との間に特別な関係を結ぶ、こういうことを避けるべきである、それからまた譲り受けの方におきましては、国民方々から非常に財産的の価値のあるものを皇室献上というようなことをすることによりまして皇室特定の非常に大きな財産が集まる、こういうことを避ける趣旨と存ずるわけであります。  そういう意味でのことから賜与と申しますものについて考えれば、内廷ないし皇族の方からいろいろと財産的の価値のあるものを国民の方に与えるという中身になろうと思います。実際の運営といたしましてそれじゃどんなものがあるのかということになってまいりますと、典型的な例を申せば、大雨災害といったようないろいろな天災等のときに、人災の場合もございますが、そういった災害等のときに陛下あるいは両陛下がいろいろな角度からお見舞い金をお出しになる、こういうふうなことは内廷として行われております賜与の最も典型的な例であろうと思います。そのほか、社会福祉関係団体に賜ります下賜金、そういったものの中には、例えば赤い羽根の中央募金会あるいは国土緑化推進委員会といったようないろいろな各種団体があるわけでありますが、そういったようなところに賜りますもの、あるいは芸術あるいは学問、文化といったような関係で、日本学士院あるいは日本芸術院といったようなところの受賞者に対しまして金銭ではなく銀花瓶を下賜しておりますが、恩賜賞でございますが、こういったものもこの内廷からのものに該当いたすというように思っております。  また譲り受けにつきましては、この限度額を設けた趣旨から考えまして金銭的な、財産的な価値のあるものととらえているわけでありますが、実際の運営といたしまして内廷の方で考えますと、両陛下地方行幸啓の際に、地方特産のということで県知事を通じまして献上のある、その場合には、特産でございますから生鮮食料品といったようなものは除きましても例えばお皿でございますとか、そういった多少の財産的価値のあるものがあるわけでありますが、そういったものがこの譲り受けの典型的な例として申し上げることができるのではないかというように考えているわけであります。  いずれにいたしましてもこの限度額が設けられました立法趣旨というのは、皇室から特定のところにひものつくような大きな金額のものが行くことはいかがかというようなこと、あるいは皇室多額財産が集まるということはいかがかというような趣旨からでございますので、そういったことに該当するような皇室からの支出あるいは皇室への受け入れというようなものは、ただいま申し上げましたようなのが典型的な例であると存じます。
  5. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 内訳の方についてもお聞きしたのですが、内訳の方については言われません。限度価額引き上げを求めていらっしゃるのですから、現状は要するに限度価額いっぱいに使われているというように思うのが当然だと思うのです。内訳を示さないで額だけ引き上げてくれという要求をするというのはちょっと話の筋が違う、言いかえれば国会に対しての態度としてもよろしくないというように私は考えております。  そこで、賜与、譲り受けの金額がどうなっているか、その中身を今までおっしゃらないようですけれども、比率では例えば内廷費内訳について答えられたことがあるわけです。そういう意味で、この比率ぐらいでは言えるんじゃないか。もう一遍、賜与と譲り受けの内訳を明らかにするように求めたいと思います。
  6. 山本悟

    山本(悟)政府委員 内廷の方の賜与の限度額は現在九百九十万でございますが、実績の額で申し上げますと、やはり五十七年度あたりは九百九十万に非常に近くなっているという数字でございます。また五十八年度の実績におきましても、集計中でございますが、ほぼ同様な結果になろうと思います。五十六年度はこの結果は七百九十万、五十五年度は九百四十万というようなことで、比較的最近では、何しろ十数年間改定をいたしていないわけでありますから、非常に限度に近くなっているということは事実でございます。  ただ、賜与の方をただいま申し上げたわけでありまして、譲り受けの方は、先ほど申し上げましたようにこちらは譲り受けをお受けする方でございますから、お受けすること自体を非常に厳格といいますか制限するような格好で、一般に何か献上したいというようなことがございましても原則としてお断りをするというような運営をいたしておりますので、これは三百三十万の限度額に対しまして五十六年は百八十万、五十七年は百七十万というような金額になっております。  ただ、それではなぜ今回これも引き上げお願いしておるかというと、従来からのやり方でございますが、賜与の方との関連で譲り受けを大体三分の一というような考え庁でもって限度を置いているわけであります。これはあくまで限度でございますから、それまで支出するあるいはそれまでもらうということではございませんで、そういったような一対三というような程度の運用をさせていただいておりますので、その辺を勘案をいたしまして今回もその原則に従っての改定お願いをいたした、こういうことでございます。
  7. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 賜与と譲り受けの限度価額についての基本的な考え方は、先ほど山本次長がおっしゃいましたけれども、要するに「皇室財産を譲り渡し、又は皇室が、財産を譲り受け、若しくは賜与することは、国会議決に基かなければならない。」という憲法の八条があるわけで、本来は皇室財産流出入については国会議決が必要なわけです。しかし、それでは煩瑣に過ぎるので、細かいものについては国会議決を除外する規定を設けたということになります。今質問しております限度価額もこの一つでありまして、いわばこのような例外規定を必要以上に拡大するというのは憲法八条の趣旨に沿わないということになると思います。前の宇佐美宮内庁長官も、これを非常に大きくしていくということは憲法趣旨でもないのではないかと考えていると、参議院内閣委員会で前に答弁されております。限度価額を必要以上に拡大することは、憲法趣旨ではないというように思うのです。  そこで、今まで九百九十万円、大体この範囲で賄ってこられた。それを今度八百十万円上げられて千八百万円にするということは、不必要な拡大になりはしないかというように思うのですが、私の言った憲法に基づく考え方と、今の点についてのお答えお願いします。
  8. 山本悟

    山本(悟)政府委員 この規定立法趣旨は御指摘のとおりであるわけでございまして、いたずらにこの金額限度額というのが大きければいい、もちろんそのような考え方は持っていないわけでありますが、やはり賜与にいたしましても譲り受けにいたしましても、社会活動の一環としてそういうことはあるわけでございますので、社会通念的な意味での額というものはおのずと出てまいるであろうと思います。  四十七年に改定をして現在の限度額にしていただいたわけでありますが、それから後の現在までの物価上昇率というのをとりますと約二・四倍というようなことでございまして、やはりそれだけに世の中経済活動範囲というのは広がっているし、物価も上がっている。こういうようなことになっているわけでございますから、それに対応いたしまして、同じ程度の規模の活動をなさるにいたしましてもそういうようなものが必要になってくる。今回お願いいたしましたのは、物価上昇率そのものの二・四倍ではございませんで一・八倍というところにとどめているわけでありますが、言うまでもなく、これは先ほど来申し上げておりますように限度の額でございまして、一気にそこまでどうするこうするというようなものではございませんで、物価上昇率よりも今回は低くお願いをいたしているというような事情でございますので、その辺の実際上の活動としての必要というものを御勘案を賜りたいと存じます。
  9. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 結局、限度価額引き上げる必要があるというのであれば、その実態に基づく引き上げ根拠が明らかにされなければならないと考えております。これを明らかにしないで、要するに物価実態物価が上がったからだということだけではちょっと納得できないと思うのです。  というのは、今までのこの限度価額で、まあ本年度はいっぱいいっぱいという程度まで来ているわけですけれども、その前はそこまでも行っていない。憲法八条でなぜ皇室財産流出入について国会議決を求めているかということになりますと、要するに、戦前、国民の目から隠され莫大な皇室財産を得さしてきたことの反省から、戦後の憲法で、皇室財産国会を通して国民に公開し、その是非を問う、そのために制定されたものであるわけです。したがって、この引き上げ必要性があるなら、国民が納得する実態、その根拠を明らかにすることが必要であって、憲法趣旨に沿うゆえんだというように思うわけです。これが限度価額であるということで現在賜与の到底到達し得ないようなところまで上げるという必要はないのではないか。社会通念上、今大体一千万円程度で済むものなら、それに従った、まあ足りなくなる場合も予想したものとしてそれに幾らかの上積みをすればいいのではないかと思いますが、いかがですか。
  10. 山本悟

    山本(悟)政府委員 先ほど典型的な例ということで二、三申し上げたわけでありますが、ああいう事例考えてみましても、やはり十数年前の物価における社会通念としての金額というものと、十数年後におきます現在の物価における社会通念上の金額、これは皇室の場合であろうと個々人の場合であろうと違ってきているのではないかと存じます。もとの時からそれだけの物価上昇があるというようなことであれば、そこのところはそれを踏まえた金額にしなければ世の中から見て非常におかしな金額ではないかというようなことにもなり得るのではなかろうか。  それから、皇室に非常にべらぼうに財産が集まる、あるいは皇室から非常に特定のところにひもがつくというような社会的な影響力を行使できるような金額であればもちろん別でございますけれども、これは内廷といたしましての非常に幅広い御活動の中の全体としての制限額ということであれば、さような御意見を賜りますほどの金額限度額を設定いたしたいと申し上げているのではないのではないかというふうにも存ずる次第でございます。
  11. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 物価上昇ということから考えますと、この法律が施行された昭和二十二年当時からの上昇率との関係で計算しますと、これは一千八百万円には及ばないわけです。だからその点、昭和二十二年からやれば物価上昇率よりも多くなっているということを言っておきたいと思います。  次に、内廷費皇族費引き上げの問題ですが、内廷費皇族費内訳費目ごとに答弁していただきたいと思います。
  12. 山本悟

    山本(悟)政府委員 内廷費及び皇族費内訳の問題でございますが、御案内のとおり、この点は宮廷費と違いまして、支出された限りは内廷費あるいは皇族費といたしまして国の公金ではない問題でございまして、いわゆる御内帯金の問題でございますので、個別の項目、何に幾らという個別の金額公表は差し控えさせていただきたいと思います。
  13. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 公表を差し控えたいということですが、これは昭和五十二年のもので一度比率で言っておられるのがあります。これによりますと、交際費内廷費の一〇%、これは余り変わりないと思いますので、今の現行金額で試算しますと二千九万一千円、二千万円程度になるわけでありますが、内廷費交際費は二千万円ぐらいだと考えでいいのかどうか。そして、この交際費の使い道、この内廷費交際費使途はどういうものかということをお伺いしたいと思います。
  14. 勝山亮

    勝山政府委員 お答えいたします。  内廷費のうちの交際費が約一〇%ということで、前回の国会のときに宮内庁から申し上げた事実はございます。そこで、その一〇%ということでございますと、現在二億二千百万円の内廷費でございますので、二千万円をちょっと上回る、そういう金額になろうかと思います。  その使途の問題でございますが、一応そのときにも申し上げておりますが、交際費というよりも、これはグループとして六つの項目に分けてお答えをしておりますが、その項目としては、奨励金、それから災害見舞い金、その他私的な御交際経費ということで一〇%程度、こういうふうに申し上げております。
  15. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 そうすると、この内廷費交際費二千万円余りの支出というのは、それはやはり賜与に当たるのではないかというように思います。そうしますと、賜与の限度価額現行で九百九十万円しかない。交際費の残り一千万円以上というのは、これはどうなっているか。結局、一千万円以上のものについては使われないで残っているのか、あるいは賜与限度額を超えて使われているのか、どういうことになっているのかということをお伺いします。
  16. 山本悟

    山本(悟)政府委員 ただいま経済主管からお答えいたしましたように、幾つかのグループに分けて経費の割合を申し上げたわけでございまして、そこの中に約一〇%ということで分類してありましたところのものが、すべてここの法律に言うところの限度額に該当いたしますようなものというような中身では実はないわけでございます。早い話が、皇族間あるいは御親戚間における御交際、通常の家庭におきます交際と全く同じようなことがいろいろあるわけでございますが、そういったもの、いわゆる金銭的なあるいは価値のある賜与として特定するものと考えられないようなものもございますし、いわゆる全くのお小遣い、内廷で申せばお子様方まで含めての全部のあれでございますが、そういったようなものも全部含められておりますし、それから場合によっては外国皇族との間の私的な御交際、いろいろなものが入っておるわけでございまして、ここにまとめられました金額がすべてそういうような賜与の限度額に該当するというようなぐあいには理解をしていないわけでございます。この法律限度額というものにカウントする必要のあるものといたしましては、先ほど来申し上げておりますような金額で厳重に管理をいたしておるというように存じます。
  17. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 結局、内訳が示されないからわけがわからなくなってくると思うわけです。要するに、内廷交際費ということで使われる中身を聞いていますと結局は賜与だというように見られますから、そういう中身が示されていないのでどうなのか、そこのところがわからないままになっていると思います。  それから交際費については、宮廷費の中にも五十九年度予算で二千八百十万円計上されているわけです。宮廷費は公的な支出内廷費は私的な支出となっていますが、この点がやはりあいまいになっております。この点はこれまでも国会で論議されてきたところでありますが、神社新報の記事によりますと、去年の五月十一日に山本宮内庁次長らが自民党の堀江参議院議員と会った際に、宮内庁側では「私事といふよりも公費でできないものを内廷費でやること答えたと堀江議員が昨年の六月六日付の神社新報で語っておられるわけです。宮内庁としては内廷費宮廷費区別をこのような基準でやっておられるのか。これが事実ならちょっと問題があると思いますが、いかがですか。
  18. 山本悟

    山本(悟)政府委員 内廷費及び宮廷費の性格上の区分でございますけれども、御案内のとおり、内廷費は、皇室経済法におきまして、天皇及び内廷にある皇族日常費用その他内廷諸費に充てるものということになっておるわけであります。それに対しまして、宮廷費の方は、これは毎年予算でもってお決めいただき、かつ、これは国の公金でございまして、当然のことながら国の会計法規に従い、かつ会計検査も受けるというような経費になっているわけであります。この辺の違いがございます。皇族日常費用その他内廷諸費ということでございますから、実際問題といたしまして、これでお渡しいただきました金額をどういうぐあいなものにお使いになっていくか、これは内廷としてのお考え方でやっていらっしゃる、こういうことになろうかと思います。  したがいまして、宮廷費の方は、内廷のいわゆるお身の回り的な意味での内廷じゃない、公の象徴たる陛下としての御行動あるいはそれに伴う御行動、あるいは皇室用財産、これはその金額が非常に多いわけでありますが、宮殿初め陵墓その他皇室用財産維持管理あるいは修繕、災害の復旧というようなことは全部宮廷費でやっているわけであります。そういうような格好になっているわけでございます。人件費は除きますけれども、その他のものはすべて宮廷費でやっておる、皇室関係の一切の公のものは宮廷費ということでございますので、その間にはおのずからはっきりした使い方、考え方の違いというものは出ているわけであります。例えば、行幸啓というものを考えましても、公的なお立場でいらっしゃる行幸啓における考え方と、それから純粋の私的御旅行としていらっしゃる場合の考え方と、これはやはりそれぞれの経費区分といたしまして区別をいたして経理をいたしているわけでありまして、先ほども申し上げましたように、宮廷費は国の公金といたしまして当然に国の会計法規に従った経理をいたしている、この点は明確に申し上げられるところであります。
  19. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 結局は中身が出されないためにあいまいのまま疑問が生じるし、先ほどの神社新報のような解釈をされるということになると思います。  内廷費皇族費引き上げ理由になっております物価上昇率の問題ですけれども、この物価上昇率というのは、東京都の区部昭和二十二年の指数を一とした場合、五十八年では一四になります。これを内廷費で見ますと五十八年は二八になっておって、ちょうど東京都区部消費者物価上昇率の二倍になる伸びを示しております。こうして見ますと、物価上昇率から見ても引き上げることが本当に必要かどうか、疑問があると思いますが、この点いかがですか。
  20. 山本悟

    山本(悟)政府委員 物価上昇率及び公務員給与改定率勘案をいたしまして内廷費の変更をお願いする、こういうような考え方をとりましたのは昭和四十二年以来でございます。昭和四十三年に皇室経済会議懇談会というのをお開きいただきまして、その際の御決定によりましてこういう方針でやったらどうだというような方針がそこの会議で出されまして、四十三年以来既に七回はかりでございますかの改定を以上のような方針でやらしていただいている、こういうことになるわけであります。  当然のことながら、内廷費といたしましては、内廷日常費用その他の諸費でございますから、これは構成員方々の変動あるいは、例えば戦後を考えましても皇太子様の御成婚あるいは皇孫方の御誕生と、いろいろな要素でもってそういう必要性の変わってくる場合がもちろんございます。そういうようなこともございますが、四十三年からはただいま申し上げましたように物価公務員給与アップ率というものを勘案していこうということでございまして、それ以来の改定お願いをいたします方針といたしましては、一〇%を超したというようなときにもその他の事情勘案して延期をしていただいたことがございますけれども、基本的には変えていないところでございます。
  21. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 じゃ、別な問題で……。  最近、京都で即位の礼をやるようにということが京都の財界や自民党の京都府連などから言われております。即位の礼及び大嘗祭は京都で行うということが旧皇室典範第十一条にはありましたが、今日の主権在民、政教分離を規定した現憲法のもとでは廃止されております。これを事実上復活しようとするもので、これは重大な問題を含んでいると思います。また、即位の礼を京都で行うことで、これは地盤沈下の関西経済の立て直しの契機にしようという財界の思惑もあるようです。  ところで、宮内庁は皇位継承の儀式、これは儀式をやられると思いますけれども、どこでどのような形で行うように計画されているのか、お伺いします。
  22. 山本悟

    山本(悟)政府委員 即位の礼につきましては、御案内のとおり皇室典範に規定があるわけでございますが、具体の内容は何ら決められていないところでございます。また、御指摘のとおりに、旧皇室典範では「即位ノ禮及大嘗祭ハ京都ニ於テ之ヲ行フ」という規定があったことも事実でございます。そして、現在ないことも事実でございます。ということは、これをどこでというようなことを具体の問題としてまだ考えられていないということを申し上げるのが一番しかるべきじゃなかろうかと思います。  もちろん現在の皇室典範の解釈におきましても、「即位の礼」と規定されておりますことは、これは国事行為であろうと存じます。したがいまして、それは内閣の助言と承認によって行える事項でございまして、現在の段階においてどうこうということは、私どもとしては一切聞いておりません。
  23. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 そうしますと、それはやはり即位の礼を行う時期になって、そのときに初めてどこでどういう形でということを内閣の助言と承認でやられる、皇位継承が始まった段階でということになるわけでしょうか。
  24. 山本悟

    山本(悟)政府委員 具体の問題としてはそのとおりであろうと存じますが、準備等云々というような意味におきましても、現在のところ一切そういう論議はされていないと存じます。
  25. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 法制局の方にお伺いしますが、天皇の皇位継承があれば一連の儀式が行われるわけです。一般的には私的な行為と公的な行為があると言われております。そうした中の一つに、大嘗祭は旧皇室典範に規定されていましたけれども、今日ではその規定はなくなっております。皇位継承の際にこれは公的に行える儀式ではないと考えております。  以前、当委員会の質疑で当時の真田法制局長官が、「従来の大嘗祭の儀式の中身を見ますと、どうも神式でおやりになっているようなので、それは憲法二十条第三項の規定がございますので、そういう神式のもとにおいて国が大嘗祭という儀式を行うことは許されないというふうに考えております。」と、こう言っておられます。法制局では今でもこの見解は変わりがないわけでしょうか。
  26. 前田正道

    ○前田(正)政府委員 ただいまお尋ねの大嘗祭は、従来皇位の継承がございましたときにそれに伴って行われてまいりました神式の儀式であるように承知をしておりますけれども、そのような儀式でございますれば、これを国事行為として行うことは許されないのではないかというふうに考えております。その点で、ただいま御引用にありました真田元長官の答弁どおりに考えております。  もっともそのような儀式が、国事行為としてではございませんで、皇室の行事として行われるというのでございますれば、そのことにつきましては特に憲法上の問題は生じないというふうに考えております。
  27. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 じゃ、宮内庁の方に聞きますが、大嘗祭と新嘗祭の関係ですが、大嘗祭は天皇が即位の後に初めて行われる新嘗祭のことをいって、その後毎年行われるのが新嘗祭と理解しておりますが、これでよろしいのかどうか。  それから、毎年十一月二十三日に行われます新嘗祭は、宮内庁要覧によりますと、「天皇陛下が、神嘉殿において、新穀を皇祖始め神々にお供えになって、神恩を感謝された後陛下自らもお召上がりになる神事である。宮中恒例祭典の中の最も重要なもの」というふうに書いてあります。宮中祭祀の中でこの新嘗祭はどのような位置づけを持っているのか、この宮内庁要覧に書いてあります今引用しましたような位置づけになるのか、そこらあたりについてお伺いします。
  28. 山本悟

    山本(悟)政府委員 現在皇室の行っていらっしゃいます祭事というのはいろいろな種類の行事が随分ございますが、ただいま御指摘のございました新嘗祭というものにつきましては、皇室といたしましては極めて重要な祭儀であるというように私ども存じております。
  29. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 新嘗祭は宮内庁要覧でも神事と明記してあります。これは明らかな神道行事であって、宗教行為であるというように考えます。また、これは先ほどの大嘗祭と新嘗祭の関係からいってもこのことが明らかであると思いますが、法制局の方もやはりそういう考えであるかどうか、確認しておきます。
  30. 前田正道

    ○前田(正)政府委員 新嘗祭につきましてはその実態を十分承知しておりませんので、ただいま宮内庁が御説明ありましたので、そのとおりだろうかと存じます。
  31. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 これは神道行事だということで見なければなりませんが、この新嘗祭に協力を求めて、毎年、掌典長名で都道府県知事あてに通知が出されております。掌典職というのは皇室の祭祀をつかさどる職で、掌典長はその責任者であります。そしてこれは、言葉をかえれば、天皇の私的使用人の立場でありまして、公務員ではないわけです。戦前は皇室祭祀も公的行事で、掌典職も宮内庁の一部局であったわけですが、戦後は政教分離の憲法原理から廃止されております。皇室祭祀をつかさどる掌典長が、公の機関である地方公共団体の長に対して新嘗祭に協力を要請する内容の通知を出すということは、これは当然私的行為でなければできないことであるわけですが、たとえ私的行為であっても皇室の方が地方公共団体に対して宗教行為の一端を担ってもらうようにするということは、これは憲法二十条の趣旨からして間違っていると言われるべきものであると思うのですが、宮内庁の見解はいかがでしょうか。
  32. 山本悟

    山本(悟)政府委員 御指摘のとおりに、毎年新嘗祭において用いられます米及びアワの献納につきまして、各県知事に献納を希望される篤農家のあっせんをお願い申し上げております。しかしながら、この献納をしていただくことのあっせんというようなことは、直接に新嘗祭の祭事そのもの、お祭りするそのもののこととは私どもは理解をいたしていないわけでありまして、直接参加するものでもないし、そういうお立場で県の方の知事さんが受け取られて非常にお困りになったというぐあいには私は存じておりません。
  33. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 事実関係を見ますと、掌典長の通知というのは毎年二月ごろに一度、知事に、「本年度の新嘗祭献穀について」という表題のもので、八月三十一日までに献穀者を報告するように求めているわけです。そして九月中旬に、「新嘗祭献穀受納について」というもので、何月何日どこに来るようにという趣旨が書かれております。  そこで問題になるのは、献穀を持ってくるときに県の職員を一名加えることを指示しているわけです。単に献穀希望者の取り計らいや、あくまで自主的にというのでおるならば、県の職員がついてくることを指示する必要はないわけです。しかも、県の職員は地方公務員でありまして、地方公務員を宗教行事についてくることを掌典長が指示するのは、これは憲法違反の行為ではないか。どういう法的な根拠で行っているのかお伺いします。
  34. 山本悟

    山本(悟)政府委員 たびたび申し上げますように、そういったことは掌典長という、ちょっと公務員と、私どもと違った立場でいたしておりまして、いかなる文章が出ているか、ちょっと私もきょう持っておりませんのでつまびらかにいたしておりませんが、郵送される場合もあるしというようなことは聞いたことがございまして、いろいろなやり方なり何なりがあるのではなかろうかと思います。あるいは篤農家の献穀者の方がいらっしゃる際に、御案内その他については県の方の方がよりわかりやすいというようなことでお願いをしていることがあるかとも存じますけれども、そのことが直ちに宗教祭事に参加をさせるということをお願いしておるというぐあいには存じないところでございます。
  35. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 先ほど言いました九月に出された通知「新嘗祭献穀受納について」、これは日時が書いてあります。それから参入人員として「献穀者とその家族一名宛 四名」「献穀関係者四名 合わせて八名まで(県一名入れる事)」こういうふうに書いてあるわけです。  新嘗祭の献穀祭行事、各県ではどういうふうにやっているかといいますと、献穀奉賛会を設立しまして、ここが献穀する形をとっているわけです。しかし、その奉賛会の構成は、国や県、市町村と農協の役員などが中心となっているものであります。奉賛会をつくっているところはどこでも同じ形態ですが、例えば一昨年の滋賀県の栗太郡新穀献納奉賛会の場合には、会員に栗東町長、町議会議長、農協組合長、参与に滋賀県農政課長や農林省の滋賀食糧事務所守山支所長など、事務局は栗東町建設部長、産業経済課長などが参加しておられます。国家公務員、地方公務員がこのように多数加わっているわけです。  自治省にお伺いしますが、地方公務員がこうした宗教行事に職務を通じて、これは要するに市長とかあるいは事務所所長として参加するわけですから、参加していいのかどうかお伺いします。
  36. 山本悟

    山本(悟)政府委員 先ほど、通知文その他何もこちらに持っていないと御答弁申し上げましたことで、ただいま私は初めて見たわけであります。今ございましたので、これを見てみますると、おっしゃいましたように参入人員といたしまして「献穀者とその家族一名宛 四名」「献穀関係者四名 合わせて八名まで」ということで、私が今入手しました文には県の同行ということは書いてございません。
  37. 柳克樹

    ○柳説明員 御指摘の点につきまして細かい実態を把握しておりませんが、具体的な事例に関しまして職員がある業務に従事する場合、それが憲法二十条三項に違反するかどうかということにつきましては、昭和五十二年七月十三日の最高裁判決に照らしまして、個々の事例に即して各地方公共団体が自主的に判断すべきものというふうに考えております。
  38. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 これは滋賀県知事あての通知なのですが、それに「八名まで(県一名入れる事)」、次長が持っておられるのには書いてないそうですけれども、滋賀県に行ったのにはちゃんと書いてあるわけです。コピーですけれども、ちょっと委員長、見せることを……。
  39. 片岡清一

    片岡委員長 どうぞ。
  40. 山本悟

    山本(悟)政府委員 ただいま滋賀県あてのものを拝見いたしまして、ここには、このコピーでは括弧して「県一名入れる事」というのがあることは確認いたしました。
  41. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 では、実際に出されているものが、県を入れることということをちゃんと書いてあるのかどうか、そういう点はこれから調べていただけますか。そして、そういうことを入れることは違法ではないか、その点についての御見解をお伺いします。
  42. 山本悟

    山本(悟)政府委員 確認はしてみたいと存じます。  ただ、先ほど来申し上げましたように、この献穀そのものは、県にお願いしているのは献穀者の篤農家のあっせんということを中心といたしていることでございまして、そのこと自体はまさに祭儀そのものというぐあいには私どもは存じておりませんことは重ねて申し上げておきたいと思います。
  43. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 この献穀祭行事をやる上で、地方公共団体及び地方公務員がどういう役割をして、またどういう神事を行っているか、その具体例をちょっと五十四年度の大津市の例で言いますと、五十四年度ですが五十三年から始まるわけで、五十三年の三月二十四日「説明会 概要説明を受ける(滋賀県農政課長来庁)」ということになっております。それから八月十六日「打合せ会滋賀県農政課長来庁、市長に正式依頼」、十一月十四日「設立総会 昭和五十四年度大津市新穀献納奉賛会設立総会(市役所会議室)」ということになります。それから十二月十五日「報告 滋賀県知事宛奉耕者の決定報告」、それから五十四年の一月二十二日にはまた「奉告祭。牧町八幡神社で種子引継奉告祭を斎行」それから次は、四月二十三日「小祭 地鎮祭、播種祭を斎行」、それから五月二十六日「大祭 お田植祭を斎行」、九月二十日「中祭 抜穂祭を斎行」、それから十月二十二日「検分式 知事(代副知事一の検分一県庁貴賓室)」、それから十月二十五日「新穀献上、献納 宮中賢所へ献上」、それから「靖国神社、明治神宮へ献納」、それから新穀献納が神社庁あるいは神社などにずっとやられるわけです。こういう経過を経るわけですけれども、この行事を見ますと、まさに献穀祭行事が政教一致でとり行われている姿が見られるわけです。  法制局に伺いますけれども、このようなことは憲法上許されるのかどうか、お伺いします。
  44. 前田正道

    ○前田(正)政府委員 献穀のあっせん依頼を受けました地方公共団体が、その依頼に対しましてどのような対応をされておられるのか、あるいは献穀に至るまでどのような行為が行われているかということにつきましては実態を承知しておりませんので、断定的な意見を申し上げることは差し控えさせていただきたいと存じますが、あえて一般論として申し上げるといたしますれば、御承知のように津の地鎮祭に対します最高裁の判決は、直接には地鎮祭そのものと憲法二十条三項との関係を論じたものではございますけれども、同時に憲法八十九条に関連する部分についても一つの判断基準を示しております。  同判決によりますと、当該支出金を支出することの目的、効果及び支出金の性質、額等から見まして、その支出自体が特定の宗教組織または宗教団体に対する財政援助的な支出であるかどうか、また、支出の原因となります行為が我が国の社会的、文化的諸条件に照らしまして相当とされる限度を超えるものであって、その行為の目的が宗教的意義を持ち、その効果が宗教に対する援助、助長または圧迫、干渉等になるものであるかどうかということによって合憲、違憲を定めるべきであるとされております。  そうしまして、この基準によりまして合憲とされるか否かということにつきましては、地方公共団体の場合でございますれば、先ほど自治省からも御答弁がございましたように、事柄の性格上、地方公共団体が個別の状況に応じられまして自主的に判断されるものであるというふうに考えております。このような考え方につきましては、例えば昭和五十七年の四月六日の本委員会においてもお答えしているところでございます。
  45. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 ちょっと法制局に伺いますけれども、今の津の地鎮祭のときの公金支出は幾らですか。
  46. 前田正道

    ○前田(正)政府委員 神職に対します報償金四千円、それから供物料の額が三千六百六十三円だったと承知しております。
  47. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 実はこの献穀祭の神事についても地方公共団体が県の奉賛会に予算を計上して公金支出しているわけです。  一昨年の五十六年度、滋賀県の栗東町の場合を見ますと、奉賛会の総予算五百十六万円のうち、栗東町予算から実は四百三十万円補助しております。県から六十万円の祝い金という助成金が出ているわけです。ですから、今の影響のない四千円とか三千円とかいうこの判決自体も非常に問題のある判決だったと私は思っておりますけれども、その金額の面から見ても全然けたが違っているわけです。それから五十七年の守山市は、総予算六百八十八万円のうち守山市から五百八十八万円。五十八年は中主町が四百三十六万円、野洲町が百六十三万円を支出しております。滋賀県のほかにも福岡県の飯塚市や筑紫野市で公金支出しているわけです。  金額だけで判断するわけにいかないとあるいはおっしゃるかもしれませんけれども、この判決の形、それを一応前提にしても、全然けたの違う公的な支出がなされている。こういう場合に、憲法二十条及び八十九条などの違反問題、これが生じてくるのではないか、当然生じてくる、私はこれは憲法違反だと思うわけですけれども、法制局の見解を伺います。
  48. 前田正道

    ○前田(正)政府委員 確かに、金額の大きさそれ自体が問題になることはそのとおりでございますけれども、問題は、その金額支出される目的なりあるいはその支出された中身の内容というものを関連づけて考えなければならないと思います。そうしました場合に、先ほど申し上げましたように、私、地方公共団体でどのようなことが行われているのか実態を十分承知しておりませんので、その点についての答弁は差し控えさせていただきます。
  49. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 そのような答弁でありますけれども、事実関係は、私がずっと言いました、公務員ではない掌典長から通知を出される、そして献穀奉賛会、そうしたところでずっと一年間にわたって計画を立てて神事としての行事が行われる、それに対して県なり市町村な力の自治体が多額支出をする、こういう関係であるわけです。ですから、単に実態を知らないから判断できないということではなくて、それだけの資料があれば、目的はわからないと言われたけれども、目的はその神事を行うについて必要な資金であるわけですから、そのために使われるわけですから、そういう点から当然判断できる問題だと思いますが、宮内庁と法制局の見解をもう一度お伺いします。
  50. 山本悟

    山本(悟)政府委員 たびたび申し上げますように、篤農家のあっせんをお願いすることそれ自体は、神事である、直接のものである、祭儀であるというぐあいには私は感じておりません。そうしてまた、どういうような格好であっせんをしてくださっているかというところにつきまして、宮内庁としてあるいは掌典職といたしましても一々お願いを具体にいたしているわけでございません。  なお、先ほどの文書につきましての括弧の一名の問題、今電話で掌典職に確かめましたところ、やはり各県にお願いする際に括弧を入れている事実はないように私は報告を受けました。
  51. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 法制局の方は。
  52. 前田正道

    ○前田(正)政府委員 ただいま宮内庁から御答弁がございましたように、新嘗祭のための献穀希望者による献穀それ自体は、儀式のための素材を提供する行為にとどまりまして、宗教的活動に当たるとまでは言えないように考えられます。そういたしますと、地方公共団体が献穀希望者のあっせんをされたとしましても、そのこと自体が直ちに憲法に違反するというものではないと思います。  ただ、全体がよくわかりませんので、その内容との関係につきましては、先ほども申し上げましたように、事柄の性格上、地方公共団体が個別の状況に応じましてあくまでも自主的に御判断になるべきものと考えます。
  53. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 極めて官僚的な答弁でありますので、ちょっと大臣に最後に見解を伺っておきますが、事実関係は、要するに新嘗祭に当たって掌典長が各県の知事あてに献穀者を募集する、そのあっせんを依頼する。それを受けた自治体では、それは全部やっているわけではないわけですけれども、この献穀のための奉賛会があって、そこでずっと一連の儀式が行われて、その奉賛会に対して自治体が百万単位の支出をそのためにしている。そして、この一連の行事はみんな神式にのっとって行っている。こういう事実関係の上に立ってそのようなことが行われていることについて、総務長官の御所見を最後にお伺いしたいと思います。
  54. 中西一郎

    ○中西国務大臣 お話をずっと聞いておりまして、素材を提供するということ自身は文字どおり神事そのものではないと私も思います。市あるいは県があっせんするについてお金を使っておるというお話でございますが、これも神事そのものでない、素材を提供するという事前の事柄についての費用である、したがって神事そのものではない。  官僚の答弁だというお話がございましたが、日本の官僚は極めて正確なことを申し上げることになっておりますので、間違いないと思います。
  55. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 時間が参りましたけれども、この問題につきましては事実関係を確認していないというようなことですれ違った答弁をされておりますけれども、この事実関係をひとつよく調べていただきたいということと、そのことを踏まえてまた改めて機会を見てただしていきたいということを申し上げて、終わります。
  56. 片岡清一

    片岡委員長 松浦利尚君。
  57. 松浦利尚

    ○松浦委員 それでは、総務長官が参議院予算委員会に呼ばれるまで質疑を続けさせていただきます。  まず第一は、先般も百一国会天皇のおいでをいただいたわけでありますが、大変に御高齢であります。しかも天皇のお仕事というのは大変激務だというふうに聞いておるわけでありますが、実際的に天皇のお仕事というのは、どういうものがどれくらい年間あるのか。特に憲法第七条に定められております国事行為、そして天皇御自身の私的行為というのがあると思うのでありますが、それ以外にどういうものがあるのかも含めて、年間どれくらいの日にちになるのかをお聞かせいただきたいと思います。
  58. 山本悟

    山本(悟)政府委員 陛下の御活動の状況でございますが、毎日宮殿の表御座所におきまして、内閣なりあるいは宮内庁からの提出書類をごらんになり、御署名または御捺印をなさるというのが日常的に繰り返されているわけでございますが、この関係の書類の数にいたしますと、昨年昭和五十八年の一月から十二月までの御決済等の件数では、内閣関係の書類が一千三十三件、宮内庁関係の書類が千六百二十九件、合わせまして二千六百六十二件というのが御決済をいただきました書類の数でございます。  その中で、中身をもう少し分けてお話しさせていただきますと、いわゆる御裁可書類、内閣総理大臣の任命、栄典の授与、外国大使の接受といったような関係の書類が二百三十七件、御認証にかかる書類、国務大臣その他の認証官の任免とか、全権委任状、信任状、認可状等の認証、大赦、特赦の認証、批准書の認証、こういったようなものが百四十一件ございました。  それから御署名になりました書類としては、国会召集、衆議院の解散、総選挙の詔書といったようなものが五十八年は七件、条約の公布が十七件、法律の公布が八十一件、政令の公布が二百七十四件、そのほか勲章官記その他といったようなことが二百七十六件といったようなことで、これらグループが六百五十五件、合わせまして一千三十三件、こういうような内閣関係の書類になっていたわけでございます。  そういったような書類以外の点で申し上げますと、宮殿で行われる儀式、行事等について考えますと、新年祝賀の儀、これは御案内のとおり、憲法によるところの国事行為としての儀式でございますが、そのほか親任式、信任状奉呈式、認証官任命式等、国事行為及びこれに関連した儀式というのが昨年は五十三回行われております。     〔委員長退席、宮下委員長代理着席〕  また、象徴としてのお立場から催される儀式、例えば国公賓の接遇あるいは歌会始、いろいろな方との御会見、御引見といったようなものが百六十三回、そのほか、それほど多くはございませんが、御日常的な御会釈というのが八十六回というようなことで宮殿にお出ましになっているということでございます。  国あるいは公的団体の催します式典等への御臨席のための都内または地方への御旅行は二十四回というようなことが、五十八年の実績でございます。
  59. 松浦利尚

    ○松浦委員 今お話を聞きましても大変な激務であります。ですから、むしろ私たちが考えますと余りにも激務過ぎますから、少しでも天皇のお仕事を、象徴天皇としての激務を軽減をしてさしあげたい、こう願うのは国民としてひとしく考えておるところだと思うのですが、そういった意味で、皇室典範十六条、これの拡大解釈をいたしまして国事行為の臨時代行に関する法律の適用ということは、政府としてあるいは宮内庁としては全く考慮の範疇にないのか、あるいは考慮する余地があるのかどうか、現在の法律に照らして、軽減するということは考えられないのか、どちらでございましょうか。
  60. 山本悟

    山本(悟)政府委員 年間を通じての御活動は非常に多岐にわたって数多く、非常に御多忙なことは御指摘のとおりでございますが、やはり象徴としての陛下のお立場あるいはお考えというようなものを拝察すれば、やはり公務優先ということでやっていきたいということをお考えであることはいろいろな意味からいって間違いないところであろうと存じます。  また、皇室典範で摂政の要件あるいは国事代行法によりまして代行の委任が行われる場合の要件といったようなことがそれぞれ規定をされておりますのは、やはりできる限り象徴たる天皇御自身で国事行為その他のことをおやりいただくというのが最もいい道であるということのもとに、そういったような制度というのが、摂政を置く場合あるいは代行ができる場合というようなものを取り出しての考え方というのが法に規定をされているのであると存じます。  摂政を置く場合の「重大な事故」といったようなことでございますと、それが代行になれば「重大」というのが抜けて「事故」になる。しかし、やはり事故がなければそれは該当しないという考え方は、一つの考え方として整合性のとれた考え方というようにも存じておりますし、また、現実に陛下が大変ではございますにしてもお元気にそれをおこなしになっているという状況から判断いたしますと、今その法の解釈を拡大するといったようなことで処理するのはいかがなものか、かように存じているところでございます。
  61. 松浦利尚

    ○松浦委員 やはり象徴天皇としてのお仕事は、今我々普通考えてみましても大変な激務だし、しかも御高齢であることは事実なんです。ですからここで総理府総務長官にお尋ねをしたいのですが、天皇の行為というのは、憲法で定められた国事行為、それと私的行為という二つが大体考えられるのですが、それ以外に象徴天皇としての公的行為というのがあるのですね、法律によらざる公的行為というのが。例えば植樹祭に参加をするとかといったことがあるんだそうですが、もし今言われたように法律の定めに従ってお仕事の軽減ができないということであれば、その公的行為についてできるだけ御負担がかからないように制約を加える、そのことは当然私は、総理府としても考え宮内庁としても考えてさしあげるべきだ、こう思うのですね。  ところが最近の風潮としては、こう言えば大変失礼ですけれども、天皇を利用しようとするグループが存在をしておるのですね。これは本委員会でも再三議論されたそうですが、例えば商売をするときに宮内庁御用達と、こう書くのですね。それは宮内庁の許可をもらっておるかどうか私は定かではありませんが、たまたま商品名に宮内庁御用達とか、こう書くことなんですけれども、問題は要するに、天皇を何か自分の立場を有利にするために利用するとか、そういう動きが私は現実に存在をしておると思うのです。さらにもう一方では、天皇というものをさらに強大なものに仕上げようとするグループが、公的行事を利用して具体的に象徴天皇からさらに国家元首的な天皇に持っていこうとする動きがあるんですね。  そういった公的行為というものが際限なく広がっておる、その判断の基準がない。私は、宮内庁の方でコントロールはしておられると思うのですが、いずれにいたしましてもそういう事態が天皇の激務というもの、負担というものを逆に非常に増大をしている、増幅をしているということになれば、この際、この公的行為というものは明確にしておく必要がある、やはり一定の規制を加えていく必要があると思う。公的行為というものはこういうものをもって公的行為と言うんだ、それがなければ象徴天皇というものが利用され、いつの間にか国家元首的なものに持っていこうとする現在の憲法に抵触するようなことも公然と行われる、そういう状況になりかねないと私は思いますね。我が党はそのことに今非常に危惧を感じておるのです。この際、天皇の公的行為の範囲について、政府として明確なお答えをいただきたいと思うのです。
  62. 中西一郎

    ○中西国務大臣 天皇の行為には、国家機関として行われる国事行為、私人としての私的行為のほかに、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であるというお立場からの公的な性質を有する行為があります。天皇陛下国会の開会式に御臨席になりお言葉を述べられる行為や、陛下が公的に外国を訪問される行為、認証官任命式等の宮中儀式、行事への御臨席、植樹祭、国民体育大会への御臨席などがそれでありまして、天皇の公的行為と呼ばれております。  これら公的行為の限界としましては三つのことがございます。第一は、国事行為におけると同様、公的行為においても国政に関する機能がその中に含まれてはいけないということであります。すなわち、政治的な意味を持つものとか政治的な影響を持つものがそこに含まれてはならないということであります。第二は、その天皇の御行為について内閣が責任をとるという行為でなければならないということであります。第三は、その行為が象徴天皇としての性格に反するものであってはならないということであります。  政府といたしましては、天皇の公的行為に係るこれら限界について常々念頭に置き御行動願っているところでありますが、今後とも象徴天皇の性格にもとることのないよう十分配慮してまいりたいと考えております。
  63. 松浦利尚

    ○松浦委員 今、天皇の公的行為の範囲について長官から御答弁がありましたが、これはあくまでも言葉上の原則でありまして、個々のケースについてはいろいろなケースが出てくると思うのです。ぜひ総理府においても政府の立場で、公的行為という名の行き過ぎた行為あるいは天皇に対する負担の激化、こういったことはないようにチェックをしていただきたい。宮内庁に対しても、御高齢の天皇という立場も配慮すれば、当然、行為というものについてはぜひ制限、抑制をするということでお考えをいただきたいというふうに思います。この際、宮内庁の次長からもお答えをいただいておきたいと思います。
  64. 山本悟

    山本(悟)政府委員 基本的には、ただいま総務長官から御答弁がございましたようなことが天皇の御行為というものの基本であろうと存じます。その趣旨と、それからただいま先生の御指摘になりましたお考え、この辺は十分心得まして、その御行動というものにつきましてお助けを申し上げてまいりたい、かように存じます。
  65. 松浦利尚

    ○松浦委員 これもよく言われることですが、最近どうも敗戦直後の象徴天皇のお姿から、竹のカーテンの奥にだんだんお入りになってしまっておるような姿が見られる。例えば外国の王室の方たちは気楽に国民と接触をなさり、気楽に言葉を交わされておられます。ところが我が国の天皇は、御承知のように警備が極めて厳重である。むしろ国民天皇との間に、警備という形で離反をさせる、距離を置く、そういうことが行われておるような気がするのです。英国に留学しておられる浩宮さんは、旅先で日本の記者団や外国の記者たちと気楽に生で話をされておる。ところが日本においては記者の皆さんともなかなかそういう接触がない。定例の記者会見か何かで時々ある程度ですね。そういう意味で私たちは、やはり天皇というものを竹のカーテンの奥にしまい込むのではなくて、もっと前面に、国民の皆さん方に接触をしていただく、そして本当に憲法で言われておる象徴天皇としてのお姿を国民の前に見せるし、国民もまたそのことで天皇との親しみを増幅していく。  これは本委員会でも議論をされておるようですが、イギリスの王室が来られたときはオープンカーですね。オープンカーに乗ってさっと手を振って、大変華やかな歓迎陣がしかれた。ところが我が国の天皇は、防弾ガラスのついた四角い、何もスマートでないごっつい車に乗られてお通りになる。むしろ外国から来られた王室の方がそうであるなら別ですけれども、警護の関係もあるいはあるでしょうけれども、行き過ぎた警護というのはどんなものでしょう。もっと親しみやすい象徴天皇というものを——こんなことを言っては大変失礼ですが、宮内庁自身が竹のカーテンをしておるんだ、あれは天皇自身のお気持ちではないんだというお話もよく聞くのですけれども、官僚やら警備陣が垣根をしてしまうんだというお話です。そういう点についてどうお考えになりますか。
  66. 山本悟

    山本(悟)政府委員 開かれた皇室なり王室というものがより望ましいではないか、この基本的な考え方はもとより異存のあるところではございません。ただ、やはり日本の場合あるいはヨーロッパの場合、イギリスの場合、中近東の場合と、いろいろなことがあるわけでございまして、それぞれに対応した警備も必要でございましょうし、そのうちで、そういう意味からいって最も指弾を受けないような、やたらに警備が強いだけというような印象にならないようなことでお守りをしながら、かつ国民と接していただく場面を広くするというような知恵と工夫とを凝らさなければならないことと存ずるわけであります。  それぞれの地域の事情、国柄あるいは社会の状況といったようなことによりましてもときどきに変化をしていくことでございますので、いつの時代がこうであったから現在がそうじゃないことは非常に残念だ、残念ではございますけれども、それが必要ないんだというふうにも言い切れない場合もございます。しかしそういったようなこともいろいろ考えながら、でも基本的な方向としてはより親しみの持てる、より開かれたというものがベターであるという考え方に立って考えていかなければいけない、その気持ちは常に持っているわけでございまして、これからもその気持ちを失わないで努力をしてまいりたいと思います。
  67. 松浦利尚

    ○松浦委員 きょうは時間がありませんから、関連質問で立たれる方の質問も私が御質問いたしますが、例えば天皇が御旅行なさるときに、お泊まりになる宿泊先が決まりますね。それは衛生的でなければならぬし、御病気になってもいけませんから、ちゃんとすることは大切なことです。しかし、それが余りにも行き過ぎておる。  天皇がお泊まりになるということは旅館の人たちにとっては非常に名誉なことだと思っておられるけれども、そこの従業員にとっては大変な苦痛が伴う。例えば、私は知りませんが、事前にいろいろな検査があるのだそうですね、身体検査か何かがあるとかないとか。それは象徴天皇ですから、御病気になられると困るという配慮もあるでしょうけれども、しかし通常我々が泊まって病気にならない旅館で、そんなに極端なことをしなくてもお迎えできるのじゃないか。そういうところにむしろ垣根というのができ上がっていくのですよ。  お迎えする側で苦痛を感ずる、そういう問題について、これは宮内庁の次長さんでは非常にお答えしにくい内容ですから、総理府総務長官、政府の立場でどうですか。
  68. 中西一郎

    ○中西国務大臣 お話しの点につきましては、一つの大きな課題であろうと思います。国民の多くの方々にそういった御意見なり御希望があることもわからないではございません。むしろ宮内庁自身はできるだけ開かれたスタイルの方を望んでおられるのじゃないかと思います。しかし、警備の方を担当するのは宮内庁というよりはむしろ警察の方だと思いますが、そちらはまた神経を使うというようなこともなくはないことだと思います。  しかし、いずれにいたしましても、先生御指摘の点は、我々としては国民の大勢の方々に、もちろん御迷惑をかけてはいけませんが、開かれて親しみの持てる御皇室ということを目指すべきだと思いますので、よく相談をさせていただきたいと思います。
  69. 松浦利尚

    ○松浦委員 イギリスの王室あるいはヨーロッパの王室の内容等についていろいろ調べてみましたけれども、ヨーロッパ諸国の王室のようにもっと——今総務長官が言われたように、宮内庁はむしろ一生懸命そういうふうに御努力なさっておられるなら、垣根、竹のカーテンをするのは警察当局であり地方自治体というようなことになるのでしょうから、ぜひひとつ総理府総務長官がそういったことについては配慮をしていただきたい。今のお言葉でわかりましたので、ぜひこれからそういうことでお願いしたいと思うのであります。  今度の法律は、御承知のように内廷費皇族費の算出基礎額を引き上げるという内容の法律であります。ただ、ここでお尋ねをいたしますけれども、内廷費というのは天皇御自身の生活その他にお使いなさるものですが、人件費が三三で、物件費が六六、こういうふうに承っておるのですが、この文献によりますと、内廷費の一部を宮内庁職員の名義で貯金しておられる。あるいは公債、社債、株も持っておられる。それを幾ら持っておられますかというのを聞くとプライバシーにかかわる、天皇家の問題でしょうからなかなかお尋ねはしにくいのですが、いずれにいたしましても所得税、相続税、それから関税定率法、こういったもので非課税措置が行われておるわけでありますが、地方税は納めておられると聞いているのであります。地方税は天皇は千代田区に納めておられるのでありますか。
  70. 山本悟

    山本(悟)政府委員 御指摘のとおりに、内廷費あるいは皇族費等につきましては所得税は非課税ということがございますし、それから皇位とともに皇嗣が受ける由緒ある物といったようなものは相続税は非課税であるという規定はございますが、一般的にはそういうもののないものにつきましては税法の適用はあるわけでございます。  ただいま御指摘のございました、内廷といたしましてある程度の蓄積を持っているのかということでございます。金額につきましては、先生もおっしゃいましたように内廷のことでございますから御勘弁をいただきたいわけでございますが、経過から申し上げますと、昭和二十二年に憲法が施行されました際に、従来皇室の持っておりました財産というものは全部国に入ったわけであります。したがいまして、現在内廷におきましては、例えば不動産は国有財産としての皇室用財産として御提供いただいているもの以外一切持っていない、こういうような体制でございます。これは戦前とはまるきり変わってしまった体制であるわけでございます。  その際に、やはり不時の用に充てるためにある程度の蓄えというものは要るだろう、これは全部国費主義でございますが、国費の宮廷費で賄い切れない、あるいは内廷費でも不時の場合にはどうするかということがございまして、当時のGHQの承認もございまして、当時の金でございますが千五百万という基金ができたわけでございます。それを、その後いろいろな際に支出もございますし、それから場合によっては年度で決算上剰余を生じたときにためるというような操作をいたしてまいりまして、一種の運用をいたしてまいりました。そういう意味で、ただいま御指摘のございましたある程度の株も持っておりますし、あるいは債券も持っているというような格好になっております。  したがって、そういうものから生じました果実というものは当然税法の適用はあるわけでございまして、ただいま地方税についてお話があったわけでございますが、国税の場合には源泉分離課税ということになるようなものでありましても地方税についてはその制度がないという場合には、その部分を計算をいたしまして、内廷として、これは宮内庁の職員とおっしゃいましたが、内廷会計主管という名前でもって納税をいたしておるということでございます。  内廷で持っておりますものというのは、結局内廷全体でございますから、場所といたしましては皇居のあります千代田区、それから東宮御所のあります港区、この二つに振り分けをいたしまして納税をいたしておるということでございます。
  71. 松浦利尚

    ○松浦委員 地方税を納めておられるそうですが、幾らくらい納めておられるかもちょっと答えにくいから、お答えにならぬと思いますので、そこまではお尋ねをいたしません。ただ、憲法ができた当初一千五百万でしたから、現在は相当だと思うのですね。  そこで総理府総務長官にお尋ねいたします。  内廷費というのはあくまでも税金でありますが、今度のように増額してさしあげるわけですね。その中から御節約なさったり何かしていろいろ御蓄積をなさっていかれるのは、私的行為でやられることですからそこまでいろいろ言いませんが、それが余りにも大きな金額にだんだんなっていきますと——しかも、この法案を審議するときに私たちはそういうことを知る余地がないのです。合いみじくも次長さんが言われたように、私たちも聞いていいものなのか、お答えになる方もなかなか難しいことになって答えにくいと思うのですね。私は、そのために皇室経済会議というものがあると思うのです。そういう中でそういうものについてもチェックはちゃんとされておるだろうと私は信じておるわけでありますが、そのように理解してよろしいですか。
  72. 中西一郎

    ○中西国務大臣 皇室経済会議には私は入ってないのでございまして、会議の中の模様についてまでは十分は了知しておりません。しかし、その御議論を踏まえて宮内庁でいろいろなことを御議論なさりながら、今御提案申し上げておるような法律改正案を出しているということでございますので、皇室経済会議の皆さん方が松浦先生おっしゃるようなことについても十分配慮してくださっておるだろう、かように考えるわけでございます。
  73. 松浦利尚

    ○松浦委員 この皇室経済に関する懇談会というのは、総務長官は御出席になるのですか。
  74. 山本悟

    山本(悟)政府委員 皇室経済会議の構成メンバーは、内閣関係といたしましては総理大臣と大蔵大臣、それに宮内庁長官は入っているわけでございます。そのほかは衆参両院の正副議長、それから会計検査院長、こういうような構成でございます。  先ほど申し上げました四十三年に開かれました皇室経済会議懇談会は、四十三年にいたしたのみでございまして、その際には、宮内庁の主管省庁の長である総務長官にもお入りいただくということもございまして、これは懇談会という形式をとったわけでございます。今回改定お願いする基準となりました四十三年以来とっております改定の際の基本原則を御審議いただきました際には、当時の総務長官に御参加を賜っております。
  75. 松浦利尚

    ○松浦委員 そうしたら、今度の総理府総務長官は入らぬでよろしい、長官、ちょっと問題じゃないですか。
  76. 山本悟

    山本(悟)政府委員 法律の構成要件としての皇室経済会議には入ってないということでございまして、御説明その他は、もちろん主管の国務大臣でございますから、十分知らされなければならない立場でございます。
  77. 松浦利尚

    ○松浦委員 四十三年には床次総理府総務長官がお入りになっておりますから、それで私はそう申し上げたので、ぜひ長官、消極的に物を言われずに積極的に、私たちはわからないわけですから、そういう意味総理府総務長官がぜひチェックをしていただきたい、そう申し上げておるのです。御理解いただきたいと思います。
  78. 中西一郎

    ○中西国務大臣 よく理解いたしました。宮内庁は私どもの役所の管轄所管になっておるわけでございます。予算その他についても話は十分伺っておりますし、御趣旨の点も踏まえて仕事をしてまいりたいと思います。
  79. 松浦利尚

    ○松浦委員 もう時間もだんだん経過しましたから、宮内庁関係についてはあと少しお尋ねをして質問を終わります。  その一つは、今御承知のように、自然成立前に恐らく参議院で採決になるでしょうが、来年度予算の審議に入っておるわけですけれども、行政改革等で国民は今大変厳しい状況に置かれておるわけであります。     〔宮下委員長代理退席、委員長着席〕  今回はこうして皇室内廷費皇族費の基礎額の引き上げ国民が理解を示してはおりますけれども、やはり厳しい状況であるということは、私は天皇家においても御理解をいただかなければならぬと思うのです。ですから、将来に向かってどんどん内廷費やら皇族費も上がっていくのですよ、宮廷費も上がるのですよ、こういうふうに理解をすることはもう非常に難しい。節約してもらうところは節約してもらわなければいかぬ、こう思うのです。  この中でいろいろ調べてみましたら、宮廷費の中で一番大きな負担をしておるのが実は皇室用財産なんです。この皇室用財産維持管理宮内庁は大変な負担がかかっておるのですね。この中で何が一番大きいかというのを調べてまいりますと、陵墓関係が六百五十二万四千六十六平米あるわけで、大変な広さですね。もう時間がありませんから具体的にどうなっているかというお話は省略をいたしますが、いずれにいたしましても、これは天皇さんのお墓だということで、徳川時代以前から次々にそれぞれ天皇の御陵として指定をしてきておりますね。  ところが、この前の高松塚古墳のように、全然天皇の参考御陵でもないところから皇族関係のあるような立派な内装品を持ったお墓が出てきた。逆に言うと、天皇とはっきりわかっておるところは別でありますけれども、それ以外に、参考御陵といって四十六カ所も持っておられるのですね、伝承ということで、神話などを中心にして持っておられる。この際こういったものは、私は何も宮内庁が押さえておく必要はないのではないか。  むしろそういうのは、天皇家の財産であると同時に国民財産でもあるわけですよ。しかも古代史を知る上で非常に大切な、我々国民にとっても重要な財産だ。ですから、はっきり天皇家のものだということがわかっておるものについては、これを宮内庁管理から外せなどということを私は言うつもりはありません。少なくとも伝承に従っておる四十六の中で、宮内庁でなくて例えば文化庁なら文化庁で維持管理をするというようなことを今お考えになっておかないと、こんなに莫大な御陵を抱え込んでおるために宮内庁予算というのは非常に窮屈になる。行政改革というのは宮廷であろうと宮内庁であろうといくわけですから、そういうことを考えたらこの際思い切って今宮内庁が持っておられるものを、これは我がエリアだ、宮内庁管理をしなければならない皇室財産だ、こういうふうに頑張っておられずに、国が管理することにはひとつも変わりないわけであります、思い切って文化庁等に移管をして、そこで管理を、運営をしてもらうというようなお考えはできませんか。でなければ、これは将来大変な重荷になりますよ。国鉄みたいになりますよ。その点についてお答えいただきたいと思うのです。
  80. 山本悟

    山本(悟)政府委員 陵墓関係皇室用財産のための経費、確かにある程度金額になっております。大体申し上げますと、例年二億余ぐらいのものを陵墓の管理のための工事費等、その他修繕費といったようなもので使用させていただいているところでございます。確かに皇室経費宮廷費等につきましても財政再建のためのシーリングというようなものほかかっているわけでございまして、そのために、やはり総額といたしましては今回の予算お願いいたしました金額も前年に比べれば減少になっているというようなことは、御指摘のとおりであると思います。  ただ同時に、陵墓参考地と申しましても、やはり相当に御指摘のありました徳川の中期あたりからいろいろと調査がされ、文献あるいは地方の伝承あるいはその地域の人たちの考え方というようなものが積み重なった格好で、どなたということで特定はできないけれどもどうも皇室関連だということで参考地というものが指定されている。確かに、高松塚のように全然参考地でも何でもないところから、もとをただせばどうも皇族の墓らしいというようなことが出てまいるわけであります。やはりそれぞれに相当に地域的な意味での伝承その他、地域の人たちの気持ちというようなものがあった上で指定をされてきたわけでありまして、これは明確にそうでないという反証も実を言うと私どもとしても持ち得ない、そういったような、なかなか難しい立場と状況になっているわけであります。  先生のお考え、将来の皇室費というようなものを見込んでいったときにどうなんだというようなお考えで御質問を受けますと、非常に私ども苦慮をいたすわけでありますが、ただいまのところではまだそこまで踏み切るのは困難ではないか。やはりそれぞれの相当な年月での積み重ねがあって現在に引き継がれているわけでありまして、これから新たにというようなことはもちろん、全くの新しい実証されたものが出てきたような場合にはどうするかという問題が起こりますが、そうでない限りそういうことは起こらないと思います。現状のものを今の段階で他に移すという方向で踏み切れとおっしゃられましても、いささかお答えしにくいわけでございまして、御了承を賜りたいと思います。
  81. 松浦利尚

    ○松浦委員 総務長官、直接歴代天皇陵として決定されておるものについてはこれは別でありますけれども、やはり学術的に見ましてももっと考古学的に、日本の研究者というか学者グループというのは古代史を研究する上で貴重な財産として研究もしたいと思っておられると思うのです。ところが宮内庁でこう確保しておられるために、国の財産であると同時に天皇家の財産でありますから、そう簡単に学者だからといって研究の対象にすることもできない。  ところが中国とか韓国というところは、もう既に相当古代史の解明が進んでおるわけですね、壁がありませんから。だから私は、何も発掘せよというようなことを言っておるつもりはありません。少なくともそういったものに対して、余り宮内庁のエリアだからということで垣根を張ることは、その分だけ学者の研究そのものも足踏みをするわけですから、むしろ国の財産として文化庁なら文化庁が管理をして、学者の皆さん方の研究に供するということはあっていいと思うのですよ。しかも、そのことの方が将来経済的に宮内庁に負担をかけないということであれば、私は一遍ぜひ総理府でも検討を加えていただきたい。宮内庁、おまえのところだからおまえのところでやれではなくて、宮内庁がやろうと文化庁がやろうと国で管理することに変わりはない。そういう点も含めて、ぜひ総理府総務長官、宮内庁のお考え方はよくわかりました、これから非常に苦しい経営をされなければいかぬと思うのですが、どうですか。
  82. 中西一郎

    ○中西国務大臣 松浦委員の意図しておられる御趣旨、よく理解できるところであります。また、宮内庁次長の答えていることもごもっともなお答えである。しかし、これは将来長い目で見ますと、先ほど来いろんな御示唆いただきましたが、ただいまの陵墓についての御意見も我々十分検討させていただく必要がある、かように思います。
  83. 松浦利尚

    ○松浦委員 私は宮内庁の次長もぜひ御理解いただきたいと思うのですが、やはりそうすることの方が宮内庁は将来身軽になるのです。これからはそんなにお金を差し上げられませんよ。だからそういう意味で将来の台所のことも考えて、国民財産として一番大切なものを管理していくのですから、国民のために余りこうだこうだと自分のエリアだけを主張なさらない方がいいと思いますので、ぜひその点は、今総理府総務長官のお考えを子とされて宮内庁でも御検討いただきたいと思います。  それと同時に、これはもう余り質問をしないことにしたのですが、盗掘やら何かあったら——宮崎県の盗掘が一番多くてこれは申しわけないのですが、もうそのことは質問をいたしません。問題は、書陵部でやはり天皇家にかかわるいろんな古文書やらそういったものが保管されていると思うのです。あるいは列国の国々から天皇家に贈答品があると思うのですよ。それはやはり私は、天皇家の財産であると同時に国民財産だと思うのです。ですから、書陵部には古い重要文化財的なものがたくさんあるんだそうですが、そういったものは逐一、正倉院御物が国民に公開されておると同じように、あちらこちらで公開なさったらどうですか。その点をひとつお尋ねをしておきたいと思うのです。
  84. 山本悟

    山本(悟)政府委員 国公賓と御交歓になるような場合での贈答品といったようなものは、どういうものが来たかというようなことはその都度公表もいたしているわけであります。ただ内容的に申し上げますと、国によっていろいろなものがあるわけでございまして、非常に属人的な意味での贈り物もあるし、いろんなものがございます。そういうものは決して散逸しないように、現在の段階では厳重に、御利用になるものは御利用になるし、保管するものは保管するというようなやり方でやってきているわけでありまして、決して内容を明らかにしないというつもりはございません。ただ、今の皇室のあれといたしまして、特に展示をしてというところまでは具体の問題としてまだ考えてはございませんが、例えば民族資料といったようなものであればこれを民族博物館に寄託したものもございますし、いろいろなやり方もそのときどきではやっていっているというようなこともございますので、その辺は御理解を賜りたいと存じます。  それから、宮内庁の書陵部が保管いたしております古文書等につきましての公開といいますか、どういう公表の仕方をしているか、これにつきましては書陵部長から御答弁をさせていただきます。
  85. 宮尾盤

    ○宮尾説明員 書陵部では、今御質問の中にございましたように、非常に文化的な価値の高いいろいろな書物等をたくさん保管をいたしておるわけでございますが、これにつきましては、今御指摘のありましたように、私どもといたしましてももちろん保存を十分していかなければなりませんが、同時に、それが死蔵にならないようにできるだけ活用していただく、利用していただくということについては配慮をいたしておるわけでございます。  具体的には、例えば閲覧についてでございますけれども、これは非常に歴史あるいは文学というような関係での専門的な面で価値の高いものが多いわけでございますので、そういう意味で、閲覧につきましては、大学院の学生程度以上の専門学術研究者を主体といたしまして、それと同程度以上のいろいろな調査研究者等に対しては、保存管理の面で特段の支障がない限り閲覧をしていただく、こういうふうにいたしております。  さらに、閲覧の関係で、貴重な古文書でございますので、その古文書をマイクロ化いたしましたりあるいは写真を撮りまして、これをいわゆる紙焼き写真と我々言っておりますが、そういうことを進めてコピーで見ていただくとか、いろいろ利用の便宜を図っておりますし、必要がありましてどうしても原本を閲覧したい、こういう方には閲覧をしていただく、こういうふうにいたしております。それから、いろいろな古文書等につきましていわゆる紙焼き写真をもらいたい、こういう要請があれば、そういう方には紙焼き写真を頒布する、こういうこともいたしております。  それから、貸し出してございますけれども、これは千年以上も経過したような非常に古いものもありますので、個人に対して貸し出しをするということはできませんけれども、国公私立の博物館とか美術館等で展示会を行いたい、ぜひ私どもが持っておる古文書を貸し出してくれ、こういう御要請があれば、管理上支障がない限り喜んで私ども貸し出しをする、こういうようなことをいたしております。  そのほか展示会とか、あるいは出版事業といたしまして書陵部が発行しております書陵部紀要というようなものにいろいろなものを掲載するとか、さらには、古文書についてのコロタイプ等をつくりまして大学、研究機関等に無償で配付するというようなこともいたして、できるだけ御利用、御活用願うように努力をいたしております。
  86. 松浦利尚

    ○松浦委員 今全然しておらないということを言っておるんじゃない。私が申し上げるのは、宮内庁が率先して書陵部にこういうものがありますよということで公開をすることによって、国民と象徴天皇との親しみがふえていくんじゃないか。そういう意味で、余り古い殻に閉じこもらずに、オープンにしてお見せしたらどうか、こういうことを申し上げておるのです。だから、今まで学者や何かにお貸しになったり、必要なところには貸し出しておるということはよく知っておる上で申し上げておりますから、その点はひとつ書陵部長も将来の問題としてぜひ研究してみてください。また改めてお聞きをいたします。  それでは、もう時間がなくなったのですが、それぞれ労働省、厚生省、人事院等からたくさんの方においでいただいておって、質問の時間がなくてお待たせしたことをおわびをしながら一つ、二つお尋ねをします。  まず、労働省の統計情報部から甘粕情報解析課長が来ておられますけれども、これは労働省からいただいた数字ですが、一時間当たりの賃金の国際比較であります。一九八二年日本を一〇〇として、アメリカは一九一、西ドイツは一二一、フランスは九一・六であります。それから第二表で、過当なりの実労働時間、日本は一九八二年で四十一・一時間、アメリカは三十五・六時間、西ドイツは三十二・三時間、イギリスは三十六・三時間、フランスは三十二・三時間、この数字は正確な数字ですね。そのことだけお答えいただきたいと思うのです。
  87. 甘粕啓介

    ○甘粕説明員 ただいま先生のおっしゃいました数字につきましては、そのとおりでございます。  ただ、これにつきましては、各国政府の公表値ということではありませんで、それぞれ定義等違いますので、私どもの方はできるだけ近づくような格好で推計加工した数字だということを御理解いただきたいと思います。
  88. 松浦利尚

    ○松浦委員 今言われたように、数値を推計した数字だ、こういうことです。  そこで総理府総務長官、ぜひ御理解をいただきたいのですが、GNPは世界で二番目の日本でありますが、一九八二年に日本を一〇〇とした場合に、一時間当たりの賃金の国際比較では、アメリカは一九一、西ドイツは一二一、過当なりの労働時間で見ますと、日本は四十一・一時間、アメリカは三十五・六時間、西ドイツは三十二・三時間、労働時間も日本に比べて非常に少ない。逆に賃金は、アメリカのごときは倍高い。これは労働省の統計数字であります。  続いて、厚生省の統計情報部の菊池管理課長がおいでになっておりますが、五十八年度国民生活実態調査の概況を五十八年九月一日に発表なさいましたが、これについて、妻の労働時間等について簡単にお答えをいただきたいと思います。
  89. 菊池貞夫

    菊池説明員 お答えいたします。  五十八年の国民生活実態調査で、世帯主の妻が五十七年の一年間に常雇ないしパートとして働いた世帯がどの程度あるかということを調べましたところ、全体の三四・三%ということになっております。  それで、妻の勤めの目的について複数回答で求めたところ、その内容といたしましては、家計の補助が五四・六%、蓄えが三一・八%、家計の維持が二八・九%、あとは、小遣い、外へ出て働きたい、技能、資格を生かす、余暇を生かすというようなものが続いておるわけでございます。
  90. 松浦利尚

    ○松浦委員 それから、生活の実態についてはどういう結果が出ておりますか。
  91. 菊池貞夫

    菊池説明員 五十七年一年間の一世帯の平均所得が四百四十四万四千円ということで、前年に比べまして三・四%の伸びになっております。伸び自体としては最近五カ年間で最も低いわけですが、消費者物価も二・七%というような形で抑えられておりまして、現在の暮らしについての意識を見ますと、苦しいとする世帯が三八・六%、前年の四二%より減少しておりますし、また、ゆとりがあるとする世帯は八・六%で、前年の六%よりも増加しているというような状態になっておるわけでございます。
  92. 松浦利尚

    ○松浦委員 総理府総務長官、今厚生省からもお話がありましたように、家計を補うために妻の共稼ぎというのが非常にふえておるのが厚生省の実態調査で明らかになっておるわけです。  そこで、人事院総裁にお尋ねをいたしますが、どうも公務員の賃金は民間に比べて高い、行き過ぎだ、こういう批判があるのでありますが、この批判について人事院総裁はどう思われますか。簡潔にお答えいただきたいと思います。
  93. 斧誠之助

    ○斧政府委員 給与の高い低いを論じます場合に、どういう比較をしたか、これが問題でございます。給与の決定の要素はいろいろあるのですが、その主なものを挙げてみますと、仕事の種類、それから職務の段階、年齢、学歴、地域、勤続年数、そういうものが給与を決定いたします場合に非常に大きな要素を占めておるということは、大体日本の賃金を見ていただくとよくおわかりかと思います。  そういうことでございますので人事院といたしましては、毎年大体春闘がずっと定着しておりまして日本の賃金事情というのは四月で非常に変動が起こる、こういうことでございますので四月時点をとらえまして、しかも公務員の代表職種であります事務、技術、技能、労務、それからこういう職種は民間のどこの会社へ行きましても大体存在するわけでして、そういう意味でこれも民間従業員の代表的な職種であるということで、これを職種別、それから職務の段階別、年齢別、学歴別、地域別、それぞれ条件を同じくする者同士を比較いたしまして、それぞれの出ました較差を総合しまして、総合較差として人事院は毎年これを勧告の基礎としておるわけでございます。  年齢とかあるいは職務の段階とかあるいは職種とか、そういうものを全部捨象しまして単純な給与比較ということになりますと、これはなかなか議論が多岐にわたりまして、これでもって高い安いということを論ずるのは適当ではないのではないか。ただいま申し上げましたような厳密な条件を同じくする者の比較、これによってやるのが給与比較としては一番妥当な方法ではないか、こういうふうに人事院は考えておるわけでございます。
  94. 松浦利尚

    ○松浦委員 人事院総裁、これはぜひお聞かせをいただきたいのですが、きのう総理府総務長官も御出席になって、一応政府と労働者代表との間に話がつきました。恐らく参議院予算委員会でも御質問があったと思うのですが、先ほど申し上げましたように、労働省あるいは厚生省の統計を見ましても日本の賃金は先進諸国に比べて非常に低い、しかも労働時間は長い、そういう条件にあるわけですね。  そうすると、今給与局長が御説明になりましたように、横並びでラスパイレスと言うのですか、同じ経歴、そういったものを横比較でこうした場合に、当然較差があったればこそ人事院勧告というのが去年出されたと思うのですね。これは間違いない事実です。そうすると、公務員の賃金の方が民間に比べて低いのだから勧告をした、ところが、その勧告が四・四四%積み残されたということは、民間と公務員との賃金較差は埋まらなかった。極端に言うと、いろいろこの統計のとり方、統計主体が違いますから単純に比較はできませんけれども、少なくともこういう苦しい統計結果が出ておるより以上に去年は公務員の皆さん方は生活に苦しみがあった、苦労をなさった、そういうふうに理解するのが非常に常識的であり、素直だと私は思うのですが、人事院総裁はどうお考えになりますか。
  95. 内海倫

    内海政府委員 二年にわたりまして見送りあるいは抑制というものが行われたわけでございまして、その結果生じておる公務員と民間の給与の差というものは、今御意見いただきましたとおりであると思います。  そういう意味から私どもは繰り返し、人事院の行う勧告を国会そして内閣において尊重していただきたい、さらに完全実施ということに全力を挙げて努めていただきたいということをお願いをしておるわけでございまして、何とかそういう面で公務員の給与というものが改善されることを心から私ども切望しておるわけでございます。
  96. 松浦利尚

    ○松浦委員 総理府の統計による家計調査、こういったものを見ましても、非常に厳しい状況になっておることは数字が示しておると思うのです。総理府総務長官、きのう御回答なさって、労働者側代表も了解をしたそうでありますが、少なくとも今度の人事院勧告は完全実施ということを大前提にして、総理府総務長官としてはぜひ御協力いただきたい。それが総務長官のお務めだと思う。この前小川委員が指摘をしたように、政府が給与表を改定して国会に出す、こんなことは絶対あってはならないことだと思う。お金がないから給与表を改定して出したということになると、今度はお金があるときでも、政策的に労働者の賃金を上げないために給与表を変えて出すということだって裏返しとしてはあり得ることを示唆するわけですから、こういうことは絶対にしてもらっては困る。そういう意味も含めて、最後に総理府総務長官の御答弁をいただいて終わります。
  97. 中西一郎

    ○中西国務大臣 お話ございましたように、昨日政労交渉を行いまして、新聞にも出ておりますが、ああいったようなことでの締めくくりでストが回避できたという関係にございます。  今、人事院総裁からもお話がありましたが、八月になると勧告が出るわけでございます。私どもとしては、この良好な労使関係というのにひびが入ってはならないと思いますし、士気が損なわれるというようなことがあってはならない、かように考えます。昨日回答をされておりますように、勧告制度の尊重という基本姿勢に立ちまして、完全実施に向けて誠意を持って取り組みたい、かように考えておるところであります。
  98. 松浦利尚

    ○松浦委員 労働省、人事院、それから厚生省の皆さんには本当に長い間お待たせしまして、時間がなくなったために質問をはしょりましたが、以上で私の質問を終わります。
  99. 片岡清一

    片岡委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  100. 片岡清一

    片岡委員長 この際、宮下創平君外一名から本案に対する修正案が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。宮下創平君。     —————————————  皇室経済法施行法の一部を改正する法律案に対   する修正案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  101. 宮下創平

    ○宮下委員 ただいま議題となりました皇室経済法施行法の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。  案文はお手元に配付いたしておりますので、朗読は省略させていただき、その趣旨を申し上げますと、原案では施行期日を昭和五十九年四月一日といたしておるのでございますが、既にその日が経過しておりますので、これを公布の日に改め、本年四月一日から適用しようとするものであります。  よろしく御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  102. 片岡清一

    片岡委員長 これにて修正案についての趣旨の説明は終わりました。     —————————————
  103. 片岡清一

    片岡委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  まず、宮下創平君外一名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  104. 片岡清一

    片岡委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。  次に、ただいま可決されました修正部分を除いた原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  105. 片岡清一

    片岡委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  106. 片岡清一

    片岡委員長 御異議なしと認めます。よってさよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  107. 片岡清一

    片岡委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後四時十分休憩      ————◇—————     午後四時四十七分開議
  108. 片岡清一

    片岡委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出運輸省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  趣旨の説明を聴取いたします。細田運輸大臣。     —————————————  運輸省設置法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  109. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 ただいま議題となりました運輸省設置法の一部を改正する法律案の提案理由につきまして御説明申し上げます。  最近の運輸を取り巻く諸情勢を概観してみますと、我が国経済の安定成長への移行、国際化及び経済のソフト化の進展等により、輸送構造は大きく変化するとともに、輸送サービスの質的向上への要請が強まってきております。  中でも、国際的な相互依存関係の深化等に伴う国際関係に十分配慮した運輸政策の推進、高度化、多様化する利用者ニーズに対応した地域交通の確保、貨物流通の効率化及び合理化を図るための総合的な貨物流通体系の形成等の要請が強くなってきておりますが、これらの要請に適切に対応するためには、本省においては、従来の輸送機関別に問題に対処する縦割り組織を改めて、運輸行政の総合的運営の確保を図り、また、国際運輸、地域交通、貨物流通等の各分野ごとに政策を総合的かつ効率的に推進し得るよう組織を再編するとともに、地方においても地域交通、貨物流通等の運輸行政を総合的に推進するため、海運局と陸運局を統合し、地方運輸行政の中核となる地方運輸局を新設する必要があります。  これらの問題につきましては、昭和五十八年三月の臨時行政調査会の最終答申においても指摘を受けており、また、政府といたしましても本年一月の「行政改革に関する当面の実施方針について」の閣議決定において方針を決定しております。  本法律案は、これらの組織改革の一環として、地方に係る部分の改正をその内容とするものであり、具体的には地方運輸局という名称及び従来の海運、陸運両局の所掌事務を総合した地方運輸局の所掌事務を規定するとともに、これらに関連する所要の規定の整備を図ることといたしております。  なお、この法律案は本年七月一日から施行することといたしております。  以上がこの法律案の提案理由であります。  何とぞ、意のあるところを御賢察いただき、慎重御審議の上、御賛同くださいますようよろしくお願い申し上げます。(拍手)
  110. 片岡清一

    片岡委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。     —————————————
  111. 片岡清一

    片岡委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大島理森君。
  112. 大島理森

    ○大島委員 ただいま大臣からこのたびの提案の趣旨説明をお伺いしたわけでありますが、まず最初に、ただいまの運輸省設置法の一部を改正する法律案に関連いたしましてお伺いしたいと思います。  大臣の趣旨説明をお伺いしたように、臨調答申、さらにまたいろいろな運輸行政を取り巻く環境がかなりいろいろと構造的に変化をしてきた、そういうことに伴って運輸省内の抜本的な改革をされたというふうなことを承っておるわけでありますが、まずそこで、その運輸省の機構改革に伴う基本的な理由、また考え方方針などをお伺いをしたいと思うのであります。
  113. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 運輸省は、昭和二十四年に日本国有鉄道が公共企業体として分かれました際に、現在の形で発足したものでございます。その以前からの、戦前からの形態をそのままとっておりまして、海、陸、空の輸送機関別な行政組織を持っておったわけでございます。いわゆる縦割り行政をやっておったわけでございます。  これは戦前のことを申し上げますると、陸は鉄道省、海と空は逓信省というものでやっておったものが、戦時中、運輸通信省として一本になり、その後国有鉄道が離れる、こういうことになったわけでございますが、形としてはその昔のままの形を合わさった状況で推移してまいったわけでございます。でありまするから、例えば運賃の問題一つとりましても、あるいは総合交通対策というようなものを考えるにいたしましても、これは個々ばらばらの縦割りの行政でございますので、いろいろな点で不都合が生じておる。省が一本になりましてからも相当な年月もたちましたし、また一般社会の必要性から考えましても縦割り行政ではどうもいろいろな点で矛盾撞着が多い、したがって、これを一度解体して横断的にやることが必要だ。  特に、運輸省につきましてよく言われることは、許認可行政が非常に多い。この許認可行政というのは、やはり縦割り行政と関係がないものではございません。やはり縦割りの関係で以前からの許認可がずっと続いてきているわけでございます。この許認可行政本位と言っては、そのようなことではないつもりではいますが、そういうものも改めて、政策官庁としてひとつ運輸省を再出発させたい、こういうところに重点を置いて考えたというものでございまして、今回の改正は中央の改正が主眼点なのでございますが、御案内のように国家行政組織法の改正があったものでございますから、こちらへ今提案をいたしました法案は地方を中心に出させていただいておる、こういうことでございます。
  114. 大島理森

    ○大島委員 大変ありがとうございました。  簡単に言いますと、輸送機関の縦割りの行政から、運ぶ物を中心にして機構改革をしていく、いろいろなマスコミやその他が、管理行政から政策行政にダイナミックに変わるのだというふうな表現をしておられる方があるわけでありますが、そういう意味ではまことに今日の運輸を取り巻く環境がいろいろと変わってきている中で大変そのことを多とするわけであります。  そこで具体的にお伺いしますけれども、そういう改革をすることによってどういうふうなメリットといいましょうか、そういうふうなものがあるのか。また、海運区と陸運区との統合をされることによって、経常経費であるとかあるいはまたその他においてどういうメリットがあるのか。  またもう一つお伺いしたいのでありますが、秋田県と山形県を新潟運輸局の管轄区域にするということなわけでございますが、その合理的な理由は一体那辺にあるのか、その辺をお伺いをしたいと思います。
  115. 松井和治

    ○松井政府委員 御質問、二つに分けてお答えをさせていただきたいと思います。  まず第一点の、改革に伴うメリット、こういうお話でございます。  先ほど提案理由で申し上げましたとおり、今回の改革は今後の運輸行政の総合化、効率化をねらいといたしたものでございますので、私どもといたしましては、今後の大きな変革期に当たりまして国民の多様なニーズに対応した行政が機動的に行えるようになるということに最大のメリットがあると考えております。  ただ、ただいま御指摘の、それではお金の面でどうかというような御質問でございますが、来年度、私どもといたしましては定員の面では運輸省で九十七名の純減を立てております。また、お金の面では補助金六百三十億円の減というような予算の減を立てておるわけでございますが、ただ、陸、海運局を統合いたしましても、直ちに庁舎を一つのものにあわせるというようなことは現実の問題として困難でございますので、当分の間は庁舎も現状の庁舎をそのまま使うという状態になろうかと思います。そういう面で経常経費について大幅な減を立てるというわけにはまいりませんが、ただいま申し上げましたような定員の面とかあるいは補助金の面等々におきまして、先ほど御答弁申し上げましたような数字で減を立てるというようなことにさせていただいたわけでございます。  それから第二点の、秋田、山形の問題でございますが、御案内のように秋田県と山形県は、従来陸運の面では新潟陸運局の管轄でございます。また、海運の面では東北海運局の管轄ということで、管轄区域が異なった局に属しておったわけでございまして、今回の統合に際しましてこれをどうするかというのは一つの問題点でございました。  これを、結論といたしまして新潟運輸局に統合することにいたしたわけでございますが、まずその一つの理由は、御案内のように陸運の面におきましては羽越本線あるいは国道七号線というようなことで秋田県、山形県、新潟県のつながりが大変密接でございます。また、本州のいわゆる豪雪地帯と言われるような地帯の三分の二に当たる地域がこの新潟運輸局四県に含まれておるわけでございまして、そういう豪雪地帯に対応した適切な行政を一元的に行う必要があるというのが第二の理由でございます。また海運の面につきまして、第三の理由といたしまして、海運関係の物流を考えてみますと、秋田県の秋田港あるいは山形県の酒田港と東北あるいは新潟との結びつきはどうかということを見ますと、非常に新潟との結びつきが強うございます。そういう観点から今般日本海側に一つのブロック機関を設けますに当たりまして、海事行政につきましても従来と異なって新潟運輸局の管轄に属する方がより現実的であろう、こういう結論に達しまして、今般新潟運輸局に所属をさせるということにいたした次第でございます。
  116. 大島理森

    ○大島委員 今の改革に伴うメリットの問題について、お答えできなければ結構でございますが、先ほど大臣くしくもおっしやられましたように、まさに我々地方におったときもそう感じたわけでありますが、運輸省の行政というのはまことに許認可が多うございまして、一つ一つ見てもこれまで許認可しなくてもいいのではないかというふうなものもあるわけでありますが、その辺に対しても今後、数字はともかくといたしまして、見直しに対する姿勢をちょっとお伺いをさしていただければありがたいと思うのであります。
  117. 松井和治

    ○松井政府委員 ただいまの御答弁で許認可の点を落としました点、まことに申しわけございません。  昭和五十五年に許認可の整理を行う閣議決定が行われました。その際、運輸省では二百五十件の整理をするということにいたしました。現在までにそのうち二百四十四件を実施をいたしました。またさらに、その後、臨調答申の中で二十件の許認可整理の御指摘をいただきました。現在までにそのうち十五件を整理をいたしております。  先ほども申し上げましたように、今度の新しい機構改革のねらいは許認可行政から政策中心の行政官庁への脱皮を図るという点にございますので、許認可の問題につきましては、今後も引き続きその内容を十分吟味いたしました上で、整理できるものにつきましては整理するという方向で検討していきたいというふうに考えております。現在省内で、許認可だけではございませんけれども、今後いかなる行政手法を用いて行政を行っていったらいいかということにつきましての研究会を設けまして、鋭意勉強をしておるという段階でございます。
  118. 大島理森

    ○大島委員 今までのお話を総合的に伺いますと、先ほども申し上げたわけでありますが、運ぶ手段ではなくて、運ぶ物によっていろいろと機構改革をしながら総合的に対策を立てていこうという姿勢だと思うわけであります。そこで、まず物を運ぶ、貨物流通に関して二、三お伺いしたいわけであります。  今日の物流に関して、需要の多様化、さらに経済構造がどんどん変わってきている、さらにまた大変な情報化時代になってきている、大きく分ければこの三点が国内的に見ますといわば物流の環境を取り巻く大きな変化ではないか、このように私は思うわけであります、もちろん国際化ということもあるわけでありますが、国内的に。そこで、こういう経済状況あるいは需要の変化あるいはまた情報化時代、そういうものに対してこれから機構改革をされようとしている中での、貨物流通局というのでございましょうか、そういう中での基本的な政策、あるいはもしそういう中で具体的にこういうことをやってみたいあるいはこういうふうな方向にいわゆる政策を誘導してみたい、そういうふうなものがございましたらお聞かせ願いたいと思うのであります。
  119. 西村康雄

    ○西村(康)政府委員 新しくできます貨物流通局の今後の政策の方向でございますが、ただいまの物流を取り巻くいろいろな条件の変化という点につきましては、先生から御指摘のあったことがやはり私どもは基本的な問題点だろうというふうに思っております。そこで今後、貨物流通局といたしますと、先ほどから官房長もいろいろ御説明しておりましたが、従来の個別の事業ごとに許認可という手法による運送事業の保護育成ということからさらに進みまして、物流全体を見通しました意味で今後どういう方向に物流が進んでいくかというまず方向づけをし、そしてその上でこういうビジョンを立てていくという方法によりまして、各事業者の自主的な意欲をそちらに向けて伸ばしていくということが私どもの行政の基本になろうかと思っているわけでございます。  そこで、具体的にどんなことがあるかといいますと、先ほど先生から御指摘のように、いろいろな意味で需要が多様化しておりますし、また経済構造が大きく変化している。これは、いわゆる軽薄短小と言われるような貨物の種類の変化に出てきているわけでございます。そういう意味での新しい産業界のニーズというものにきめ細かく対応していく必要がある。例えばそういう需要がどういうものかといいますと、非常に定時性あるいは速達性を要求するということ、さらには在庫を圧縮するということ、あるいは計画的な生産、販売が可能なような、そういうことを支えるような物流というもののあり方を要求する、こんなことが実際に出てきているわけで、こういうことが可能なようなサービスはどういうふうにしていったらいいか。例えば在庫管理、仕入れあるいは流通加工といったような分野まで含めました一貫した物流サービスというようなこと、これは非常に付加価値の高いものでございますが、いわゆるトータル物流業というようなものを育成する、あるいは最適の交通機関を組み合わせて定時にそして速達をするような輸送サービスを編み出していく、そういう意味での総合物流業というようなものを育成していくということが一つの基本的な今後の行政の行き方ではないだろうかということを考えるわけですし、また一方、消費者の新しいいろいろなニーズ、これが宅配便とかトランクルームとかで出てきているわけですが、こういうものの健全な発展を促進していくということもまた必要だろうと思っております。それからさらに、こういうものを実際に可能といたしますのは、先ほど御指摘があった情報化というシステムを使うことによって、今までできなかったサービスが可能になるということをまた考えているわけでございます。  このように、いろいろな新しい創意工夫に基づく物流というものが将来考えられるわけですが、一方、こういう物流化が進みますと、これに追いついていけない中小企業、あるいは、現在産業構造がどんどん変わっていますので、素材産業に依存している物流業、こういうものの育成あるいは維持というのはどうやったらいいかということもまた問題になってくるわけで、そういった意味での中小企業対策等をやはり一層重視していく必要があるというふうにも考えるわけでございます。  これらの施策と相まちまして、物流全体の効率化を図るためにいろいろな施設の整備を促進する、あるいは貨物の流通技術を開発するということで、全体の効率化を図っていくという施策もあわせてやっていくことが重要だろう、こんなふうに考えている次第でございます。
  120. 大島理森

    ○大島委員 大変ありがとうございました。  今のは基本的な施策、政策の基本だと思うのであります。そういうふうな政策をこれからかなり強力に推進していただきたいと思うのでありますが、どういうふうな経済状況になろうとしても、今日自動車輸送の占める比重はやはりかなり高いものがある、むしろ高まっていくのではないかという気がするわけであります。  自動車の運送事業者は約三万四、五千あるのでございましょうか、トン数で約九〇%を占めていると思っておりますし、またトンキロ数で四〇%、その中で、いわゆる自家自動車で運ぶ者以外に業として許認可をいただいてやっている中で、特に、先ほど中小企業というお言葉が出たわけでありますが、六ないし二十両の車両しか持ってないものがかなりの高い比率を占めている。六割までいかないのでしょうか、五割五分ぐらいでありましょうか、そういうふうに、まことに経営基盤が弱い業界であるという実態を見ますと、先ほど申し上げたようないろいろな社会情勢についていけないところがあるであろう。だから、そういう意味昭和四十年に中小企業近代化促進法の指定業種となったわけでありますが、それでもなおかつ非常に激しい経済情勢、経済構造の変化についていけない中小の業者が相当あるのではないか。そういう意味で、今後ともそれらに対しては本当に気配り、心配りをしていただきたいと思うのであります。  実際問題といたしまして、そういう中小の業者の中でいつも一番大きく頭を悩ましている問題は、運賃の問題ではないかと私は思うのです。道路運送法あるいは道路運送車両法、通運事業法、大きく分ければこの三法によって自動車運送業がいろいろと保護されあるいは育成されているわけでありますが、そういう中で一番頭を悩ましているのは何かというと、構造改善もしなければならないあるいはまたいろいろなことをしなければならないけれども、実際は実勢運賃とそれから許可運賃のギャップを何とかしてもらわないといけない。また、片方から見ると、ダンピングの問題でありましょうし、見方によってその問題はいろいろ議論されると思うのでありますが、まず実勢価格と許可運賃価格の格差についてどのように把握され、さらにそれらに対してどのように対処しようとされておるのか、その点が第一点であります。  それからさらに、今日国鉄貨物の合理化等に伴いまして、通運事業者、日本には約一千近く、一千までいかないかもしれないが、あるわけでございまして、それらの業者、これまた大中小いろいろあるわけでございますが、最も多いのはむしろ小中、この辺の業者が多いわけであります。その合理化に伴って、まさに構造転換、仕事の内容を変えていこうとしてもなかなか厳しい、そういうふうなものに対してどのように対処されているのか。その二つの点を現実の問題としてお伺いしたいと思います。
  121. 角田達郎

    ○角田政府委員 まず第一点のトラック運送事業者の運賃の問題でございますが、先生からただいま御指摘いただきましたように、確かにトラック運送事業者というのは中小が大部分でございます。したがいまして、荷主に対する事業者の経済的な地位がどうしても弱いということが、運賃がなかなか認可運賃までいただけないという原因になっているわけでございまして、私どもといたしましては、中小企業近代化促進法に基づく総合改善、構造改善事業を積極的に推進していく、こういうようなことが一応基本でございますけれども、荷主の理解と協力を事業者の方自身もよく得られるような努力をしていただかなければならぬわけでございます。  私どもといたしましてもそれだけでは足らないわけで、行政の側としても何とかこれをバックアップしようということで、荷主の所管の官庁、農林省であるとか通産省であるとか、そういうところに対しましても、認可運賃が取れるように、これは何とかしてそういうようなことになるようにということでいろいろと要請をしております。それから、それぞれの地方の現場におきまして、トラック協会なりあるいはトラックの業界の方々が荷主と懇談会を持つ、それでその場に陸運局なりあるいは陸運事務所の職員が参加しまして、それぞれの関係者が寄り集まって認可運賃を収受できるような方策をとっていく、こういうような努力も重ねているわけでございます。  そのほか、この認可運賃につきましてはいろいろと最近も話題になっておりまして、私どもが調査しましたところによりますと、五十七年の数字でございますが、認可運賃を一〇〇にいたしますと、実際に取っている運賃が七五%というような数字がございます。そういうようなことで、私どもとしてはこの辺の数字をもっと認可運賃に近づけるように今後ともいろいろな努力を重ねていきたい、かように考えております。  それから、第二点の通運事業対策でございますが、国鉄貨物の合理化によりまして通運事業というものは相当大きな影響を受けておるわけでございます。このために私どもとしては、まず、通運事業者の方々が事業を縮小し抱えておる職員をどうするかというようなことに対しまして、雇用の安定を図らなければいかぬわけでございまして、そのための雇用対策、これは雇用保険法に基づきます雇用調整助成金でございますが、この助成金の対象業種に通運事業をするというようなことが第一点。それから、国鉄の駅が八百五十駅体制から四百六十駅体制になりまして、非常に駅数が減る。そうしますと、自分が免許を持っておる駅がなくなってしまうというようなことで商売ができませんので、駅の免許のつけかえ、これも迅速的確に処理する、そういうようなこと。それからもう一つは、いろいろな転業なり何なりで資金が要るわけでございますので、所要資金の低利融資の確保とか、こういうような対策を講じまして、いわゆる五九・二と言われる国鉄の貨物の合理化に通運業者が対応できるような態勢を、一応我々行政側としてはそういう指導、措置をとってまいったわけでございます。
  122. 大島理森

    ○大島委員 もちろん事業者それぞれの自助努力、さらにまた経営努力、万般にわたってしなければならない点もたくさんある業界だと思うわけであります。その点は十二分に私も理解をしているわけでございますが、しかし、通運事業者というのは、かなり歴史と伝統を持ちながらも小さい業者が非常に多うございまして、そういう意味では小さいながらも慣行がかなりきついものがある。そういう意味で、事業の転換をしたりするにもえらい苦労をされて苦しんでおられる方々があるわけでございますので、ひとつ細かく事情を見ていただきながら、総合的な対策、今おっしゃっていただきましたようなことを強力に進めていただきたいと思うわけであります。  この貨物輸送を取り巻く環境は、おかだけではなくてやはり海上輸送にもかなりいろいろと影響をしてきているのではないか。そういう意味で一言だけ海上輸送に関連してちょっとお伺いするわけでありますが、軽小短薄、さらにまた素材型の工業が云々という時代において、港の必要性というものはさらに高まるだろうと私は思うのであります。また、その必要性を強く感ずるものでありますが、とかくそういうふうな形で、海上輸送の将来性というものが一体どうなるだろうか、そういうふうなことを非常に疑問視する方もおるわけでございます。  実際問題として、これからの海上輸送業の展望と将来というのでしょうか、そういうふうなものと、それに対応してこれからの日本の港湾整備、どういうところに力点を置かれて進めようとされているのか、その辺をひとつお伺いしたいと思います。
  123. 小野寺駿一

    ○小野寺政府委員 我が国は、御承知のように、原材料の輸入また工業製品の輸出というふうな面で海外に大きく依存いたしておるわけでありますし、また、四面を海に囲まれておりますので、省エネルギーの面あるいは省労働力あるいは環境保全という面ですぐれておりますところの海上輸送が、外国貿易だけでなくて、国内の物資輸送の分野におきましても重要な役割を果たしてまいりましたし、増加率は従来とは違って鈍化してくるというふうには考えられますけれども、その輸送量は我が国の今後の発展とともに今後とも着実に増加していくのではないかというふうに私どもは考えておるわけでございます。  このような、鈍化はいたしますけれども輸送量が増加するという状況に対処するということが重要でございますが、それとともに、やはり船舶の大型化というものが着実に進んでおります。また、貨物のコンテナ化といったような貨物輸送の合理化も進んでおります。そういう事柄に対する対処、あるいはエネルギー情勢が順次変化していっておりますので、そのような情勢の変化への対応あるいは船舶航行の安全確保というふうないろいろな要請がございまして、それらにこたえるための対策が港湾で必要になってくるわけでございます。  したがいまして、それらの要請を踏まえた外国貿易港湾の整備あるいは国内の流通拠点港湾の整備、エネルギー港湾の整備あるいは開発保全航路の整備というふうな諸対策を第六次港湾整備五カ年計画に基づきまして引き続き計画的に実施してまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  124. 大島理森

    ○大島委員 それでは、次に人を運ぶ問題に移らしていただきますが、内外ともに空輸の重要性というのは大変高まっておるわけであります。その観点から、全体的に空港整備に関しての積極的な運輸省の姿勢に対しては敬意を表するわけであります。  特に、この際でございますので、私どもの青森空港、三沢空港に対しても大変適宜な処置をしていただいて、心から感謝をするわけであります。ところが、一つだけ我が県のことについてちょっと御質問といいましょうか、見通しをお聞かせ願いたいのでありますが、我が県は御案内のようにまだ新幹線も参りません。したがって、陸の孤島というまではいかないわけでありますが、頼るのはかなり空輸に頼っている面があるわけであります。ところが、そういう中で、本県の二空港の運用時間が隣接県の空港と比べて非常に短うございまして、例えば花巻が十一・五時間、さらに山形空港が十一・五時間、秋田が十一・五時間、これは運用時間であります。ところが青森空港の場合はわずか八時間、さらに三沢は十時間、こういうふうな運用時間でございますとダイヤが非常に窮屈であるわけであります。  青森県民、何回も御陳情も申し上げ、お願いをしているわけであります。今日の行政改革の中で職員増というのは大変厳しいんだ、こういう事情もよく承知しております。しかしながら、先ほど申し上げましたように新幹線いまだ来ず、そういう中で私どもも全国民並みの利便を確保したい、こういうふうな熱い要望、希望があるわけでございまして、そういう意味で運用時間の延長というその見通しについて、運用時間延長をしてもらいたいという願いを込めて御質問しているわけでございますので、その辺の御答弁をひとついただきたい、こう思います。
  125. 山本長

    山本(長)政府委員 室港の運用時間の延長問題、各地から非常に強い要望がございます。これは先生も御質問の中で御存じのとおりでございまして、特に航空機の運航というものが、飛行機の整備でございますとかパイロット等の人繰りの関係上、東京あるいは大阪を基地として運航するものでございますから、これを地方の立場から見れば、初便は、東京から飛んでいった飛行機が今度は東京へ帰ってくる便が初便になるし、それから最終便は、東京から出る便が最終便になる。そのときの時間差をとれば短い、日帰りができない、こういうふうな事情があるわけでございます。私たち、この間の事情というものを、地元の改善についての御要望が非常に強いということも十分承知いたしておりまして、それを受けまして、逐次空港の運用時間の延長を実施してきておるわけでございます。  ただ、これも御質問にございましたけれども、定員事情が非常に厳しゅうございまして、御要望どおり、また私たちが考えますとおりにはなかなかまいらない事情がございます。運輸省全体は、先ほど官房長から御答弁いたしましたけれども、定員は減っておるわけでございますけれども、航空関係につきましては、航空についてのニーズが非常に高いというところから、定員は毎年ふやしていただいておるのでございます。その中に運用時間の延長に伴う増員も入っておるわけでございます。  先生御指摘の空港につきましても、これは運用時間に伴う地元の不便さ、それがやはり非常にたくさんニーズがございますものですから、便数あるいは利用者数というものも考えつつ、やはり私たちといたしましては、運用時間の延長につきまして今後、これはまだ予算段階で政府全体の御審議、御同意を得なければならないわけでございますけれども、その中で努力をしてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  126. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 空港の運用時間と特に管制関係、気象関係もありましょうが、管制関係の要員の問題について航空局長から今お答えがありました。これは一般論でございます。  私は、管制の要員だけが何人か、本当の数人、三人とかなんとかが足りないために非常に大きな不便があるという際には、政府全体の中から、もちろん場合によっては運輸省の中からでも、とにかくその定員だけが問題であればそんなものは出せないはずはないではないか、それは最優先に出すべきではないかということを実はこの間から提唱しておるのです。ですから、今まで以上に一生懸命やってくれております。定員に関しましてはそういうことでございます。  ただ、今山本航空局長から申し上げたように、一番困っておりますのが、私どもも田舎でございましてやはりそういう問題があるのでございますが、東京と大阪の能力がないということがもう決定的な隆路になっているということなんでございます。便数をふやしたくても、東京と大阪が受けられない。そういうことで、きょうも実は本会議できょうから関西新空港をお願いするようなわけですが、東京についても羽田、それから成田の二期、これが実を言いますと一番急がなければならない問題。  定員の問題についてはそのように考えておりますので、できるだけの努力はいたすはずでございます。私から厳重に言っております。最優先に、プライオリティーをとにかく持たせて充てるべきではないか、運輸省の定員の中から割いてでもやるべきだ、こういうふうに考えております。
  127. 大島理森

    ○大島委員 大臣、大変ありがとうございました。後でまたゆっくりお願いも兼ねてお礼に参らなければならぬと思うわけであります。便数をふやすこともさることながら、時間延長をしていただくことがまず最大の私どもの地方の願いだと思いますので、今の大臣の御答弁をいただきながら、さらにこれからも運動をさしていただきたいと思います。  それでは次に、大変失礼な質問になろうかと思うのでありますが、私は、細田大臣は政治家として私どもの大先輩でございますし、私も入ってきてまだ三カ月でございますが、ある方に伺いましたら、清廉の士で、政策の達人だというふうに伺っておるわけであります。また、運輸行政のエースでもある、このように伺っておるわけであります。  そこで、一つだけお伺いしたいのですが、大臣の政治哲学について、政治の公平というのは一体何だろうか、こういうことについて所見をちょっとお伺いしたいと思うのであります。
  128. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 大変大きな話でございまして、政治全般につきましては私は申し上げたいこともございますが、誠心誠意やっておりますので、政治は信頼がなくてはこれは成り立たない、このことだけ申し上げて、運輸行政を今はお預かりしておりますので、運輸行政は一体どうするかということについて、むしろ運輸大臣でございますので申し上げたいと思います。  運輸行政をお預かりしておる中で一番大事なものは何だと言ったら、安全の確保でございます。安全が損なわれると大騒ぎになるんでございます。羽田で日航機が落ちた、これは大変な騒ぎになります。新幹線は幸いにして事故はございませんが、自動車はしょっちゅう、あっちでもこっちでも事故が起こっております。この安全というのは忘れられがちなんでございますが、一番基本にあるのは安全だと思うんでございます。  ところが、平素何にもないと当たり前のことにされてしまう。例えば毎日、私はよく言うんですが、NHKで交通情報というのを朝何回かやっております。国有鉄道さんどうですか、いや国有鉄道は、電車、近郊から参っておる通勤列車、新幹線、いずれも平常どおり動いております、大抵の場合こう言っております。毎朝、何回かそう言っております。同じことならもう言わんでもいいじゃないかと思われるくらい、このごろ言っております。私はこれは非常に大事なことだと思っておるんです。国有鉄道は大変怠け者が集まっておって、大変けしからぬことであるというふうに世間から随分非難を受けるのですけれども、やはり安全の確保という点につきましては、油断しちゃいけませんけれども、これはよくやっておると褒めていただかなければならぬのじゃないかと思うのです。ばかや怠け者ばかり寄っておって、そんな安全に一日何十万キロという、地球を何周する汽車が動くわけがない、こう思っております。  次に大事なことは何だといいますと、私ども運輸省としましては、今度の機構改正もそれを基準に考えておるのでございますけれども、公共性の確保ということでございます。個々の業者はそれ。それ一生懸命、私企業でございますからいろいろやるわけでございますが、運輸行政としては、これは公共性をあくまでも重んずるという立場でその私的な利益を追求しておるものとどう調和させていくかということが、一番大きな問題であろうと思っております。  そのほか申し上げたいこともありますけれども、その二点だけは特に運輸行政の一番もととして考えていかなければならぬ、このように思っておるわけでございます。御質問が非常に大幅なものでございますから、私もおしゃべりでございますので、余り一般的なお話をすることはここで遠慮させていただいた方がよろしいかと思いますので、どうも。
  129. 大島理森

    ○大島委員 実は、そこで私が期待しておった答弁は、その利便性を全国津々浦々に公平にやらなければいかぬという期待をしておったんですが、安全性、さらに公共性と、まことにそのとおりだと思うのであります。  そこで、最後の質問に移らさしていただきます。  新橋−神戸間に鉄道が敷かれ、開通したのが一八八九年七月一日と伺っております。明治二十二年。上野−青森間の鉄道の開通が一八九一年九月一日、明治二十四年と伺っております。その間にはわずか二年の差があるだけであります。これは明治時代であります。新幹線はといいますと、東京−大阪、一九六四年十月一日、昭和三十九年であります。上野−青森間といいますと、残念ながらまだ今のところ見通しは立っておりません。  私が今、何を申し上げようとしているのか、おわかりいただけるだろうと思います。整備新幹線の関係者あるいは地元、国民、まさに政治の光を本当に今熱望していると言ってよろしいんじゃないかと思うのであります。特に盛岡以北、北海道も入れますと八百万人の国民が、先ほど申し上げましたようにもう運輸行政の最高のオーソリティーである細田先生に期待するところは大でありまして、新幹線を取り巻くいろいろな、国鉄の再建問題、財源問題あるいはそれらの諸情勢は十二分に理解をしているわけでありますが、しかし、何とか六十年度の着工に進んでいただきたいものだ、こういう切々たる願いが今日ほど盛り上がっているときは私はないと思っております。そういう意味でも大臣に期待するところが非常に大きいわけでございまして、そういう願いを込めて、ひとつ六十年度の着工見通し、そういうふうなものを大臣からお答え願えればありがたいと思います。  以上でございます。
  130. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 お答え申し上げます。  新幹線上野−盛岡間、そのうち大宮−盛岡間が開通しまして、来年の四月から上野まで開通することになっております。しかし、上野−盛岡間で切るという合理的な理由は何もない。これはもう初めから上野−青森間であってしかるべきだったと私ども思っておるのでございます。まあ一遍にはできないから、一応盛岡で切って、後できれば続けてやるという考え方であの工事は始まったものであることは、私はもう長い間交通関係やっておりますから、よく承知しておるのでございます。  その間に、国有鉄道の財政状態が非常に悪くなってきた。これは主として航空並びにモータリーゼーション、こういうものによるコンペティションに国鉄が負けるというようなことが一番大きな理由だと思いますが、国鉄の財政が不如意になってきたというようなことで、当然続けてやられるべき盛岡−青森間が延び延びになってまいっておる。いろいろ努力をしておるけれども、いまだ本格的な着工に入っていない、こういうのが実情だと思います。私は、日本の大型プロジェクトの中で、言うならば公共事業費的なものの中で優先度から見ますと、鉄道だけということでなしに広い意味での公共的なプロジェクトの中の優先度を考えてみると、かなり高いところに優先度があるというふうに考えるんでございます。たしか百六、七十キロくらいしかないかと思うんでございまして、画竜点睛を欠いておるわけでございます。  そこで、何とかして工事を本格的に始めて続けてやっていくようにしたい。実は私いろいろ苦心をしておりまして、昭和六十年度予算というもの、概算要求も出さなければいかぬような時期がもう間もなく来るわけでございますので、何とかここに工夫がないものだろうかということで、いろいろ実は今苦心をいたしておるところでございます。  要するに、今国有鉄道が困っておりますというのも、一番困っておりますのは実は借金で困っておる、サラ金のような格好になって困っておるのでございます。したがって、これから先新幹線をつくるとすれば、国鉄の借金において利息のつく金でつくるということは、もうそれ以上にだんだん借金が大きくなるので、これは臨調も非常に渋っておるところでございますし、何とかここのところに工夫が要るわけでございます。利息のつかない金で何とかならないか、あるいは利息をとこか、だれかが持つということでできないか。要するに、国有鉄道の自前の負担でやるということになりますと、これはとても今の状態では監理委員会の方でも許してもらえない、こういうジレンマにあるわけでございまして、その間に私、先ほど申し上げました公共性ということのためにこれはどうしても考えていかなければならぬのじゃないか、何とか知恵を出したいというふうに考えておる次第でございます。必要性その他につきましてはおっしゃるとおりでよくわかっておりますし、地元の御要望もよくわかっております。今私が申し上げましたのは、ほかの線区のことではなくて青森−盛岡間のことだけについて申し上げたわけでございます。
  131. 大島理森

    ○大島委員 大臣、本当にありがとうございました。  上野−盛岡間が開通しますと約二時間十五分ぐらいでございましょうか。盛岡から今度は青森がやはり同じくらいの時間がかかるという状況の中で、本当に私どもが何とかして早く新幹線が欲しいものだという要望は、これはもう悲願と言っていい今の情勢ではないかと思うわけであります。今の大臣の御答弁、大変ありがたく思うわけでございますが、私どももいろいろと努力をさしていただきますので、何とか六十年度着工に向けての大臣らしい知恵と行政を、政治を心からお願いを申し上げたいと思います。  まだ時間があるわけでありますが、あとは関連質問で戸塚先生にお譲りしたいと思いますので、大変御答弁ありがとうございました。
  132. 片岡清一

    片岡委員長 戸塚進也君。
  133. 戸塚進也

    ○戸塚委員 ただいまの大島委員の質問に関連いたしまして、大きな問題で二つお尋ねをいたします。  最初に、東海道山陽新幹線の新しい駅の建設問題でお伺いいたしたいと思います。  国鉄では、六十年中にもひかり、こだまの編成がえ、あるいはひかりのスピードアップあるいはまたひかりの停車駅の増加等を検討中だと承っております。また東北新幹線におきましても、これは大臣が議員連盟の会長として大変な御努力をなさって、水沢、花巻の新駅が現在建設中であります。そこで、数年前から東海道あるいは山陽の新幹線の新駅を望む地域の住民あるいは関係の都道府県等の声、そうしたようなことから国鉄も真剣にこの建設を検討中と承知いたしております。  たまたま私の住む地元の掛川の新駅というものも、かなり一生懸命運動中でございまして、私どもは六十二年の夏の開業ということを目指して今一生懸命に準備をいたしているところでございますが、この方は法律に基づきまして地元の負担ということになっておりますので、その方の準備もほぼ完了いたしております。あるいはまた国鉄の収入、先ほど大臣から赤字のお話がございましたが、この駅をつくっていただけば国鉄の収入がふえて借金が減っていく、それからまた静岡、浜松という大きな駅にひかりを余計に停車できる、こういう大きな国鉄のメリットもあると私どもは承知しているわけでございます。また、県知事等の全面的なバックアップもございます。なお、静岡県には富士駅もございますから、これもあわせて推進をしなければならぬと思っておりますが、掛川はかなり先行的な準備が進んでいると承知いたしているわけでございます。  そこで、掛川のみならず東海道山陽新幹線の新しい駅の問題について、国鉄当局あるいは運輸省がどのように取り組んでいらっしゃるか、あるいはまた、この掛川駅の設置の見通し等についてお尋ねいたしたいと思います。
  134. 岡田宏

    ○岡田説明員 国鉄の方から最初に答弁をさせていただきます。  既設の新幹線に新駅を設置いたします場合に、幾つかの条件を満たす必要があるわけでございます。すなわち、曲線でございますとか勾配あるいは地形等から見て設置が技術的に可能であること、列車ダイヤに大きな影響を及ぼさないということ、国鉄の経営収支を悪化させるものでないということ、それから地元の御協力が得られる。この御協力が得られるという意味は、工事費の御負担あるいはその周辺地域の道路でございますとか広場でございますとか、そういった公共施設の整備について地元が確たる確信を持っておられるというような事柄でございます。  東海道の区間につきましては、現在、先生お話しございました掛川を含めまして五カ所の区間について地元から新駅設置の御要望が出されているわけでございます。  特に御質問のございました掛川駅につきましては、私ども、今地元でこの位置でどうだというお話のございます場所については、承知をいたしております。そこにつきまして技術的な問題はない、技術的に設置不可能ということはないというふうに承知をいたしております。  また、今先生からもお話がございましたように、駅周辺の町づくりにつきましても具体的な青写真を持っておられるというふうにも承知をいたしておりますし、費用の負担の点につきましても十分その御用意があるというふうに聞き及んでおります。そういった意味では、先ほど申し上げました幾つかの条件はクリアをしているわけでございます。  ただ、特に東海道東京−新大阪間につきましては、一日、往復でいたしますと約二百二十本という非常に高密度の列車を運行いたしておりますので、新駅を設置することによりまして新幹線の特性でございます速達性を損なうことがないよう、新幹線移送システム全体の中で列車ダイヤの問題並びに先ほど申し上げましたように国鉄の収支に与える影響の問題ということにつきまして慎重な検討を鋭意進めているところでございまして、これらの検討につきましてはなお若干の日時が必要かというふうに存じております。
  135. 戸塚進也

    ○戸塚委員 十分理解いたしました。  大臣、お聞きのとおりでございますが、大臣は、先ほど大島委員からもお話がございましたが、また新幹線の問題等についてはもうナンバーワンの政治家というふうに私どもは尊敬いたしております。そういう意味でひとつ大臣、この問題について積極的にお取り組みいただきたいと思いますが、いかがでございましょう。
  136. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 具体的にどこへ駅をつくるという話については、きょうは私ここで今申し上げることは遠慮させていただきます。  先ほど御質問の中にもございましたように、私は運輸大臣になります前は新幹線駅設置の議員連盟の会長をいたしておったわけでございまして、基本的な考え方について申し上げたいと思います。  私は、新幹線についてもっともっと利用が強化されなければならぬと思っております。まだすいております。もっともっとお客をいろいろな方法で、運賃の問題やらいろいろな問題を考えてお客さんに乗ってもらわなければならぬ、こう思っております。  今、国有鉄道で一番大事なことは営業活動を活発にして増収することなんです。運賃値上げの前にむしろ増収を図って、一割ぐらい何とかならないかと私は総裁にも言っておるわけなんです。その増収の面から考えますると、今回田君が言いましたいろいろ技術的な点やらいろいろな点がありますから、どこでもかしこでもというわけにはいきませんが、そういう問題等の調和点を見つけて、駅をつくることが増収につながるということを私は確信をいたしております。したがって、今回田君の言われたようないろいろな条件が満たされればこれを促進するという方向で基本的に考えておるということだけを申し上げる次第であります。
  137. 戸塚進也

    ○戸塚委員 ありがとうございました。そこで大きな二番目の問題に移るわけでございますが、先ほど来非常に御声援をいただいておりましてありがたいことでございます。時間の関係がありますので、強く掛川駅の早期実現を御要望して、大きな二番目の問題に移りたいと思います。  大きな二番目の問題は、先ほども大島委員お話してございましたローカル空港問題でございます。大臣がお話しのとおり、そのもとをつくる受け入れ皿であるところの東京や大阪の空港が整備されなければなかなか問題がある、よく承知いたしております。しかし、最近におきましても青森空港あるいは富山の空港等がオープンされまして非常に喜ばれておるばかりでなく、近々はまた福島県郡山周辺でもそのような計画があると聞いております。  そこで、実は私どもの静岡県は、このたびテクノポリスの指定を受けたわけでございますが、テクノポリスというものは空港という問題と切っても切れない緑もある、こういうことであります。そこで、まだ具体的に我が県でこの運動が起こっているわけではございませんけれども、やはり遠い将来のことを考えますと、ローカル空港として静岡県の位置というのは適切ではないか、少なくとも最低一つの空港は必要じゃなかろうか、このように思っているわけでございますけれども、ローカル空港の整備計画、現在、当面どんなところが計画されているか、あるいは静岡県でも、将来本格的に検討をしていく場合に、その可能性についてどのように考えていらっしゃるか、お尋ねいたしたいと思います。
  138. 山本長

    山本(長)政府委員 空港整備計画につきましては、その年その年の予算でどうこうするということではございませんで、これは政府の投資全体との調整をとって五カ年計画をつくりまして、その中でこの期間中においては継続空港としてどこどこを整備していく、新規採択としてどういう空港を考えていくということを航空審議会にお諮りいたしまして、そして計画をつくり、毎年毎年の予算でその計画に沿って実施をしている、こういう状態でございます。  現在、ローカル空港と申しますか、東京、大阪以外の空港として、滑走路の延長をするとかあるいは新規の空港をつくるというふうなことで工事をやっておりますのが二十二空港であったと思います。今第四次の五カ年計画が進行中でございまして、ローカル空港につきましては相当整備が進んできたというふうに思っておりますけれども、なお未整備の空港、さらにまた空港空白地帯と申しますか、がございますことも事実でございます。先ほど申し上げましたような計画でやっておるものでございまして、六十年度までが現在の計画でございます。  今後どういうふうな空港をどうしていくかということにつきましては、先ほど申し上げましたが、まだ整備の要望が強い空白地帯があるということもあり、また大臣が申されましたような拠点空港の整備というものもあるわけでございますけれども、六十一年度からというふうになろうかと思いますけれども、新規の五カ年計画の中でローカル空港整備の方向づけということをしてまいりたいというふうに現在考えておる次第でございます。
  139. 戸塚進也

    ○戸塚委員 わかりましたが、私、静岡県の可能性についてお伺いしたわけでございます。もちろん今すぐにというわけではございませんが、先ほどの未整備、全然空白地帯というような形の中での検討の余地はある、そう考えてよろしゅうございますね。
  140. 山本長

    山本(長)政府委員 答弁漏れでございまして、失礼いたしました。  静岡県につきましては、空港の利用という観点から見れば、東京へ出てくるか名古屋へ出るかという地帯でございまして、空港の利用面から不便なところであるというふうに私たち理解をいたしております。公式な意見ではなく、空港をつくりたいんだというふうな意見を承ったこともございますが、今後、県当局などの御意見も聞きながら検討してまいりたいというふうに考えております。
  141. 戸塚進也

    ○戸塚委員 ありがとうございました。
  142. 片岡清一

    片岡委員長 次回は、来る十二日木曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時五十四分散会      ————◇—————