運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1984-03-01 第101回国会 衆議院 内閣委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年三月一日(木曜日)委員長の指名で 、次のとおり小委員及び小委員長を選任した。  恩給等に関する小委員       池田 行彦君    上草 義輝君       鍵田忠三郎君    田名部匡省君       林  大幹君    宮下 創平君       小川 仁一君    渡部 行雄君       鈴切 康雄君    田中 慶秋君       柴田 睦夫君  恩給等に関する小委員長    池田 行彦君  在外公館に関する小委員       石原健太郎君    大島 理森君       菊池福治郎君    月原 茂皓君       戸塚 進也君    深谷 隆司君       松浦 利尚君    元信  堯君       市川 雄一君    和田 一仁君       三浦  久君  在外公館に関する小委員長   深谷 隆司君 ――――――――――――――――――――― 昭和五十九年三月一日(木曜日)     午前十一時三十六分開議 出席委員   委員長 片岡 清一君    理事 池田 行彦君 理事 深谷 隆司君    理事 宮下 創平君 理事 小川 仁一君    理事 松浦 利尚君 理事 市川 雄一君    理事 和田 一仁君       石原健太郎君    上草 義輝君       内海 英男君    大島 理森君       鍵田忠三郎君    塩川正十郎君       田名部匡省君    月原 茂皓君       林  大幹君    山本 幸雄君       上原 康助君    角屋堅次郎君       元信  堯君    渡部 行雄君       鈴切 康雄君    山田 英介君       田中 慶秋君    柴田 睦夫君       三浦  久君  出席国務大臣         外 務 大 臣 安倍晋太郎君         国 務 大 臣 栗原 祐幸君         (防衛庁長官)  出席政府委員         内閣法制局第三         部長      大出 峻郎君         人事院総裁   内海  倫君         防衛庁参事官  古川  清君         防衛庁参事官  西廣 整輝君         防衛庁参事官  冨田  泉君         防衛庁長官官房         長       佐々 淳行君         防衛庁防衛局長 矢崎 新二君         防衛庁人事教育         局長      上野 隆史君         防衛庁衛生局長 島田  晋君         防衛庁経理局長 宍倉 宗夫君         防衛庁装備局長 木下 博生君         防衛施設庁次長 小谷  久君         防衛施設庁総務         部長      梅岡  弘君         防衛施設庁施設         部長      千秋  健君         防衛施設庁労務         部長      大内 雄二君         外務大臣官房長 枝村 純郎君         外務大臣官房外         務参事官    有馬 龍夫君         外務大臣官房領         事移住部長   谷田 正躬君         外務省北米局長 北村  汎君         外務省欧亜局長 西山 健彦君         外務省中近東ア         フリカ局長   波多野敬雄君         外務省経済局長 村田 良平君         外務省経済局次         長       恩田  宗君         外務省条約局長 小和田 恒君         外務省国際連合         局長      山田 中正君         資源エネルギー         庁石油部長   松尾 邦彦君  委員外出席者         文部省学術国際         局ユネスコ国際         部国際教育文化         課長      草場 宗春君         通商産業省機械         情報産業局航空         機武器課長   渡辺  修君         資源エネルギー         庁石油部備蓄課         長       岩田 満泰君         自治省行政局選         挙部選挙課長  小笠原臣也君         内閣委員会調査         室長      緒方 良光君     ――――――――――――― 二月二十四日  恩給法等の一部を改正する法律案内閣提出第  二〇号) 同月二十五日  郵政省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第二四号) 同月二十三日  旧軍人恩給改定等に関する請願片岡清一君紹  介)(第三〇三号)  同(戸塚進也紹介)(第四二〇号)  同(吹田愰君紹介)(第四二一号)  元日赤救護看護婦に対する慰労給付金に関する  請願柴田睦夫紹介)(第三七五号)  同外一件(平石磨作太郎紹介)(第三七六号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  小委員会設置に関する件  在外公館名称及び位置並びに在外公館勤務  する外務公務員給与に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出第一三号)  行政機構並びにその運営に関する件(自衛隊員  による小銃発砲事件及びPS-1型機墜落事故)      ――――◇―――――
  2. 片岡清一

    片岡委員長 これより会議を開きます。  この際、人事院総裁から発言を求められておりますので、これを許します。内海倫君。
  3. 内海倫

    内海政府委員 ただいま委員長から御紹介いただきました内海でございます。  このたび、国会の御承認をいただきまして総裁に任命をいたされました。着任いたしましていろいろ勉強いたしますと、ますます人事院の仕事、そしてまた総裁責任の大きいことを痛感いたしております。  それにいたしましても、極めて非才非力でございますので、先生方の特別な御叱責と御指導を得ない限りその任を尽くし得ないということをつくづく感じておりますので、どうか今後特別に御指導いただきまして、どうか大事な任務が尽くせるように努力をいたしたいと決心いたしております。  どうぞよろしくお願いを申し上げまして、ごあいさつにかえます。(拍手)      ――――◇―――――
  4. 片岡清一

    片岡委員長 次に、行政機構並びにその運営に関する件について調査を進めます。  この際、防衛庁長官より、自衛隊員による小銃発砲事件及びPS1型機墜落事故について報告を聴取します。栗原防衛庁長官
  5. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 二月二十七日午前十一時五十分ごろ、山口所在陸上自衛隊第一七普通科連隊所属の兼信雄一等陸士、二十一歳でございますが、駐屯地近傍所在する山口射撃場において射撃訓練を実施中に、突然後方等に向け小銃を発射し、付近にいた自衛隊員四名に負傷させ、そのまま射場外に逃走いたしましたが、十六時四十四分ごろ、捜索中の警察官に逮捕されました。  なお、負傷した隊員一名はその後死亡いたしました。  また、同日午前十一時四十分ごろ、岩国市所在海上自衛隊第三一航空群第三一航空隊所属PS1型対潜哨戒機(〇3号機)が、射爆撃訓練のため日向灘に向け飛行中、瀬戸内海伊予灘青島付近海上に墜落し、乗員三名が殉職し、九名が行方不明になり、目下鋭意行方不明者捜索中であります。  武器を使用する集団として特に規律厳正であるべき自衛隊において、訓練中に隊員小銃を他の隊員に向け発射するという事件を引き起こし、国民皆様に大きな不安を与えましたこと、また昨年四月のPS1型機の事故から一年を経ないうちに再びかかる墜落事故を起こし、貴重な隊員と航空機を失ったことは、まことに申しわけない次第であります。  私は、このような事件が起こった事情や墜落事故原因を徹底して調査した上で、教育訓練あり方等について正すべきものは正すとともに、事故再発防止に努め、国民皆様自衛隊に対する信頼を失うことのないよう努力する所存でございます。      ――――◇―――――
  6. 片岡清一

    片岡委員長 次に、内閣提出在外公館名称及び位置並びに在外公館勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。  趣旨説明を求めます。安倍外務大臣。     ―――――――――――――  在外公館名称及び位置並びに在外公館勤務   する外務公務員給与に関する法律の一部を   改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  7. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ただいま議題となりました在外公館名称及び位置並びに在外公館勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案について御説明いたします。  改正の第一は、在外公館設置関係であります。今回新たに設置しようとするのは、在ブルネイ及び在セント・クリストファー・ネイヴィースの各日本国大使館であります。ブルネイは、本年一月に英国から独立したものでありますが、同国には実際に事務所を開設し、大使を駐在させる実館を開設する予定であります。セント・クリストファー・ネイヴィースは、昨年九月に英国から独立したカリブ海の国でありますが、同国に設置される大使館については、他の国に駐在する我が方大使をして兼轄させる予定であります。  改正の第二は、これら新設の在外公館勤務する在外職員在勤基本手当基準額を定めるものであります。  改正の第三は、現在ジュネーヴにある軍縮委員会日本政府代表部名称軍縮会議日本政府代表部名称変更させるものであります。  以上が、この法律案提案理由及びその概要であります。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。
  8. 片岡清一

    片岡委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     ―――――――――――――
  9. 片岡清一

    片岡委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。渡部行雄君。
  10. 渡部行雄

    渡部(行)委員 防衛庁長官関係で最初にお伺いいたしますが、ただいま御説明のありました、去る二十七日正午前に発生した陸上自衛官による自動小銃乱射事件についてでございます。  この事件の中で、長官はどのような教訓を酌み取ったのでしょうか、その内容をお聞かせ願いたいと思います。この種の事件の根本的な原因は何であったのか、またどういうふうにそれを思われるか、御説明願います。
  11. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 先ほども御報告申し上げましたとおり、武器を持ちました自衛隊、規律厳正であるべき自衛隊でこういう事件が起きまして、まことに残念至極、国民皆さんにまことに申しわけなく考えておりますが、私、この事件、どうして起こったかと今鋭意究明をしております。  私が今考えておりますのは、どうしてこの隊員が、一遍自衛隊に入ったけれども、その後自衛隊を出てまだ採用されたか、採用段階チェックできなかったかどうか、これは非常に大きな問題でございます。それからまた、採用のときに適性検査等いろいろやるのですね。例えば知能指数はどうだとか、あるいは適性検査のいろいろ標準がございますね、その標準等を見ますと、そんなにこの自衛官適性検査だけから見ると問題はないのです。だけれども、適性検査そのものだけで信用していいのかどうか。いわゆる入学試験のときのような適性検査、そういうことに頼ってだけいたんじゃいけないんじゃないか。  もう一つは、隊員になってから、いわゆる内務班長と申しますかあるいは中隊長といいますか、そういう者が、身上調査とかそういうもので入ってからよく再チェックできなかったのかどうか、そこら辺に問題があるんじゃないかという感じがいたします。したがいまして、一応採用のときには表面的には問題がなかったけれども、それをチェックできなかったということについて深い反省をしなければいかぬ、また、入隊してからのチェックについてもやらなければならぬ、特にこういう集団でありますから、班長とか中隊長とかそういう者の身上調査把握というものについてどうだっただろうか、そういうことを今考えております。  それからもう一つ問題点は、国民皆さんの素朴な感じは、どうしてこの男を逃がしちゃったのか、こういう気持ちがあると思うのですよ。私もどうしてこの隊員が逃げたのか、逃がしたのか、そこら辺につきましても今厳正に事実を調べているところでございます。  いずれにいたしましても、この事件国民皆さんに大きな不安を与えたことは事実でございまして、私は言いわけでなしにどうしたらよかったか、もっとやるべきことはなかったか、そういう観点に立ちまして今後の対策を厳正にやってまいりたいと考えております。
  12. 渡部行雄

    渡部(行)委員 ただいま問題は、採用時あるいは入隊後のチェックがうまくいっていなかった、こういう御答弁でございますが、この新聞で見る限り、防衛庁が二十七日午後の記者会見で兼信の自衛隊歴というものを発表した。それによると、入隊の際の知能テストでは、七段階で上から二番目の「6」。という優秀な成績だった、こういうふうに言われております。また性格は。「おとなしい、目立たないヤツ」が隊内の一致した見方で、同連隊人事資料は「長所=温厚、ねばり強い、理性的。短所=孤立的、内向的。」こういうことを発表されましたが、これは後から出てきた事実の問題と大分違うのですが、本当にこのような評価をしておったでしょうか。
  13. 上野隆史

    上野政府委員 お答え申し上げます。  隊員評価には、いろいろな段階でいろいろな人が評価するわけでございますが、当人につきまして今先生がおっしゃられたような評価も確かにございます。ただ、そのほかに、本人営内居住者でございまして、約十名を単位としてその上に班長、これは曹でございますが、この位の者が一緒に営内に起居いたしまして班員身上把握に努めております。そして、これは部隊によってやり方はいろいろでございますが、代表的なものとしては班長手簿というようなもの、あるいは身上把握書とか、いろいろな言い方がありますけれども、隊員個々につきまして班長がその身上を把握する制度をとっております。そして、隊員個々につきましての日常起居動作につきまして気のついた点をそこに記入をし、班員服務指導の資とするというやり方をとっておりまして、そういうような記録を見ますと、本人につきましては、やや内向的である、それから無口であるというような記述もございます。また一方、本人につきましては、たとえばお茶くみは黙ってよくやっておるとか、寒い演習であったけれどもよくやったとかというような、いわば長所的なこともございますが、また、どうも人と協調性がない、一人でふさぎ込んでおるようだ、これについてはよく指導しておるがなかなか直らないといったような記述もございます。
  14. 渡部行雄

    渡部(行)委員 それから、班長の手薄ですか、日記だか何だか知らぬけれども、それの中には、名前を呼んでも全然返事をしなかったりあるいは心神喪失のようなぼうっとしておったというようなことが記載されてあったということを聞いておるのですが、そういう事実の問題、最も身近で生活しておる班長の見た目と、ここに出てきた公式の評価というものがまるっきり違っておるわけですね。そして「長官は「募集難のため素質の悪い隊員採用したのではない。ひと言でいって、いい隊員」と胸を張って答えた。」こういうふうになっているのですよ。これは国民の目から見ると、全く自衛隊というのは何をやっているんだ、大臣にまでうそを報告させなければならないのかというふうに映ってくるわけですよ。まさか大臣本人をいつも見ているわけではないんだから、報告のとおりにお話しされたと思うのです。だとすれば、その報告をした人たちは、一体どういう感覚でそのような報告大臣にしたのか。この違いは一体どういうふうに解釈したらいいでしょうか。  私は、問題は、指揮命令系統が非常にいいかげんじゃないか、こういうふうに思います。少なくともあれだけの事件を起こしている犯人がどういう経歴の持ち主がくらいは詳しく把握した上で、大臣報告するのが当たり前だと思うのです。ところが調べれば調べるほど――一年前に同じ隊にいた者を知らないなどということを言われますか。ほかの隊から来たなら知らないで通るかしりませんよ。同じ隊に一年前までいた者を全然知らないで、その過去の経歴はわからなかったなどということが世の中通りますか。その点をひとつ御説明願いたいと思うのです。
  15. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 今御指摘をいただきまして、大変恐縮しております。私も記者会見の際に、現在まで上がっている報告によるとこれはいい部類だと申し上げたことは事実でございます。ただ、胸を張ってというお言葉でございますが、私は、本当にこれは申しわけないことでございまして、自分自身といたしましては、胸を張ったというようなつもりは毛頭ございません。  ただ、その時点では、この兼信という男に対する資料というのが、現地の方では事件調査でいろいろやっておる、こちらの方では一応、入隊時の資料、そういうものを中心としてとりあえずどういう男だと、すると適性検査いろいろございまするから、まあまあと、こういうふうになったのでございまして、その後事態がこういうふうになりまして、皆さんにも、何をしているんだというようなお気持ちを抱かしたことは大変恐縮でございます。しかし、草々の間、私、第一報といたしましてはそういうことでとりあえず御報告をさせていただいたということを御了承賜りたいと思います。
  16. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そこで、こういうことも新聞では言っているんですよ。「それにしても事件を起こしてから本人経歴調査もせず粟原防衛庁長官にまでウソを言わせる結果になったのは”危機管理”を担当する防衛庁として余りにもお粗末。」これが評価です。こんなことで、隊員管理もろくにできないで、そして事実の報告もそのままできないような体制の中で、どうして国の安全を守ることができますか。これほど重大な任務を持っておるとするならば、問題の取り組み方にもっと緻密さと厳格さがなければならぬと私は思うのです。そういう点について、ひとつこれからの対処の仕方をお伺いしたいと思います。
  17. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 基本的な姿勢につきまして私からお答えをし、あとは政府委員から説明をさせたいと思います。  私は、今度のこの事件が起きましてから、事は重要であるということから、実は直ちに総理大臣のところへ私みずからが掌握している報告をしたのです。それは、内閣総理大臣に対して国務大臣報告するという意味でなしに、私は実動部隊である防衛庁統括責任者であります。内閣総理大臣は、またその上にございますいわゆる最高指揮官であります。したがって、最高指揮官たる内閣総理大臣に事の重要性から実動部隊統括者としての私が報告すべきであるということで参ったわけでございます。そして総理からいろいろ御注意をいただきまして、帰ってまいりましてから幹部の者に対しまして、言いわけは余りするな、こういうわけでございました、ああいうわけでございました、そういう言いわけでなしに、足らざるところがなかったか、そういう観点から事態を究明して、そして正すべきものは正していく、そういう姿勢でいかなければいかぬということを申したわけでございます。  なお、それに続きまして、陸海空の幕僚長、それに統幕議長――空幕長は今出張しておりましておりませんでしたけれども、それから事務次富を呼びまして、それをさらに徹底させ防衛庁として統一ある対策を至急まとめるようにというふうに指示をしてございます。
  18. 上野隆史

    上野政府委員 補足して申し上げます。  今大臣からお話がございましたように、事件がありまして、草々の間にとり得る資料というので地方連絡部本人採用時の資料がまず手元に届いたわけでございます。そして、事件が起こりました際には部隊の者は皆犯人の逮捕あるいは警察への協力等で出払っておりましたので、いわゆる班長手薄にどう書いてあるかとか、そういうような犯人日常起居動作の細部につきましては把握できませんでした。そこで、とりあえず採用時にはこういう人であった、採用時極めて問題があった男かどうかということが国民一般の方のまず御関心でもあろう、とにかくどういう人物であったかということを第一報的に御報告しなければならない。それには、手元にあった資料採用時の資料しかなかったわけでございますが、その内容につきましては、先ほどちょっと申し上げましたが、できる方とできない方と大まかに区別するとすれば、いわゆるできる方に入っておったということでございましたので、そのことをまず第一報的に御報告申し上げたわけでございます。  その後、犯人が逮捕されました後も事態収拾に当たりまして忙しい事態が続いたわけでございますが、班長手簿等を詳細に調べましたところ、同人は一般的に言って大変孤独的な性格の人であったということで、その点につきましては班長あるいは同僚が、何とか皆になじませたいということでいろいろと服務指導をしておったというような事態が出てまいったわけでございます。本人のその後の例えば警察での供述等を見ますと、本人自身も幼少のころから大変内気な性格であった、自分は何とかしてこれを直したいと思っておったというようなことも書かれておりますこともありまして、だんだんと本人の像、性格というようなものが浮かび上がってきたわけでございます。  もちろん、こういう事件を起こしましたわけですから、本人日常起居動作の間からこういう端緒を服務指導に当たる者としては早期につかんで上司報告をする、そして適切な措置をとるべきであったということは、現在私ども深く反省をしておるところでございます。(「もっと簡単に明快に答えなさいよ」と呼ぶ者あり)
  19. 渡部行雄

    渡部(行)委員 本当に、もう少し要領よく簡単に答えてください。  そこで、犯行時はこの人は頭の方は普通だったのですか。異常の状態ではなかったのですか。
  20. 上野隆史

    上野政府委員 そういう顕著な兆候はございませんでした。それでありますので、射撃訓練に参加させたわけでございます。
  21. 渡部行雄

    渡部(行)委員 ところが、この班長見方というのは、おかしいときが二度あったというのですね。そうすると、心神喪失みたいな状態のときがあったということは、やはり精神異常が瞬間時に起こる体質があったのではないかと推定されるわけです。だとすれば、その時点でなぜ医者に見せるなり入院をさせるなり、そういう措置をしなかったのかということになるわけですよ。その点はいかがですか。
  22. 上野隆史

    上野政府委員 同人が入りましてから後の状況を観察しておりますところ、そういう医者に見せなければならないとか、あるいはそういうような大変特異な状況というものは見出せなかったわけでございます。
  23. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そうすると、正常な人間がこういう行動に出たとなると、これは自衛隊あり方について根本的な検討をしないと、いつこのようなことが繰り返されるかわからないということを意味するわけでございますから、そういうことになるとこれは大変な問題だと思うのです。これが病気で、精神異常で、たまたま突発的にそういうふうになったのだというならある程度これはいたし方ないなという感じもしますけれども、正常な人間がそういうふうに出たとなれば、これは自衛隊訓練あり方の中にも問題があったのではないか、こういうふうに考えられるわけですよ。例えば、私も兵隊の経験がありますが、実際あの帝国軍隊の中でも、余りひどい上官は、戦争のときに後ろ弾食って戦死した人もいるそうですよ。そういう雰囲気が隊内になかったかどうかということも非常に重要な問題だと思うのです。そういう点についてはどういうふうに御認識されておりますか。
  24. 上野隆史

    上野政府委員 同僚あるいは上司等から特に大変いじめられたとかあるいは不当な取り扱いを受けておったとかいうような状況は、事件が起こりまして直ちに調べたわけでございますけれども、出ておりません。
  25. 渡部行雄

    渡部(行)委員 この問題は時間がありませんからこの程度にして、これから特に、この基本問題についてしっかりした調査と、今後二度と繰り返さないという一つの方針を打ち立てていただきたいと思います。  それから次は、やはり同じ日に起こった海上岩国航空基地の第三一航空群所属の対潜哨戒飛行艇PS1三号機の墜落事件についてですが、この事故原因は一体何なのか。特に考えられるのは、その性能上の問題なのか、あるいは操縦のミスなのか、あるいは構造上の欠陥なのか、あるいは訓練そのものが非常に限界に挑んでおったために、ちょっとしたことで限界を超えて墜落したのか、大体そのようなことが考えられると思うのです。  ところが、不思議なことに、このPS1というのは一番墜落しておる。もうこれで六機も墜落しておるわけですから、これは相当問題があるのではないか。新聞等にも出ておりますように、「PS1機は、各国で軍用面から見捨てられていた飛行艇を、わが国では対潜水艦作戦の面から見直して開発した機で、荒天時でも着水ができるという耐波性に優れている。」ところが、一方においては、これは非常に横風に弱いという評価もあるわけです。  こういうふうに、いろいろ総合すると、構造上の欠陥があったのではないか、こんなふうに思われます。もちろん構造上の欠陥と訓練の問題とが複雑に絡み合ってできたのではないかと思いますが、その辺の御認識は一体どうなんでしょうか。
  26. 西廣整輝

    西廣政府委員 お答えいたします。  PS1の事故先生御指摘のようにかなり出ておるわけでございますが、現在まで起きた事故は、五十三年に起きました事故、これは夜間に任務につくために、国籍不明の潜水艦を探すために出たものが四国の山中にぶつかったものでございますが、これが一件原因不明でございますが、それ以外の三件はすべて原風が非常にはっきりしておりまして、着水時に海上に流木のようなものがあって、それにぶつかってフロートが折れて転覆した、あるいは操縦上のミスということが大体確認されるものが二件あったということでありまして、比較的事故原因というものが明確になっております。  ただ、今回の事故は、先生御指摘のように操縦上の事故、運用上のあるいは訓練、管理上の問題、機材上の問題、三つの考え方があるわけでございますが、今回の場合は訓練に向かう途中ということで飛行そのものは非常に難しくない状況、極めて普通の状態で起きた事故でありますので、これから原因調査しなければいけませんが、そういう点で我々としても非常に重要な関心を持っております。
  27. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そこで、このPS1というのは今後どういうふうに考えておられますか。隊員はとても気持ち悪くて乗りたがらないと思うのです。そういう心理状態も考えたときに、しかもこれは相当の耐用年数が来ておると言われております。そういうことを考えれば、PS一というのは廃棄処分にするか、欠陥を補強した完全な別なものに改造がえするか、何かそれに対する具体的な処置を加えないと、私は、今のままではとても気持ち悪くて乗れないのじゃないか、乗っても本当に落ちついた状態で操縦できないのじゃないか、あるいは一緒に乗っている隊員もそうですが、そういう問題についてはどういうふうにお考えでしょうか。
  28. 西廣整輝

    西廣政府委員 まずPS1の今後の問題でございますが、今回の事故に関連して当然事故原因を十分究明して、それを完全に改善できなければ飛行再開ということにならないわけでございますが、現在まで、今回の事故が起きるまで考えておりましたPS1の使い方というものは、六十四年までこれを使いたい。ただ、御存じのように、飛行艇というのは潜水艦を探知するためにソーナーで聞かなければいけない。開発された当時は、空中からはそういう操作ができませんでしたので、海上に着水してソーナーオペレーションをやるということが非常に有効だったわけでございますが、その後ソノブイ等が開発されまして、必ずしも飛行艇が必要でないということで現在は生産を打ち切っておりますし、我々としましても、現在現用のものを使い切った後は引き続きは対潜飛行艇は使わないということで進めておりますが、まだ寿命のあるものについては使いたいということで現在まで運用しておったわけでございますが、今回の事故がございましたので、さらに事故原因等十分究明をいたしまして、今後の運用方法等について再検討をいたしたいと考えております。
  29. 渡部行雄

    渡部(行)委員 まだ何か未練がましい御答弁ですが、もっと人間の命を大事にする精神が全体にみなぎっていないと、こういう事故が起こるともう国民からの信頼を失うことが非常に大きいと思うのですよ。だから私は、そういう一つのきっかけをもって思い切った処置というか決断をする必要があると思うのです。そういう点では、使えるものはもっと使いたいなんということでなしに、もうこの種のものはこれから一切使わない、姿を変えて出てくるなら別だけれども、このままでは使わないというそのことが言明できませんか。大臣、どうです。
  30. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 人の命、非常に大切でございまして、当然でございます。同時に、PS1飛行艇でございますが、これも国民の汗とあぶらで購入させていただいておる、この財産も非常に大切でございます。そういう意味合いにおいて考えておるわけでございますが、今度私は、海幕長にはとにかく徹底的に調べて、そして責任を持って私に報告するようにということで言っておりますので、その報告をとりましていろいろ考えてみたい、こう考えております。
  31. 渡部行雄

    渡部(行)委員 この二つの事故についてはできるだけ速やかに調査をして、原因を明らかにした上で、それに対する今後の対策についてきちっとしてこの委員会に御報告を願いたいと思います。  そこで、次に移りますが、最近アメリカからの日本の防衛に対する非常な風圧が強まっておりますが、そういう中で、アメリカの民間研究機関である国防情報センター、ここの所長が有名なラロック元提督でありますが、ここで発行された調査報告「国防モニター」という最新号で、干海里シーレーン防衛について述べておるわけです。  それは、米国が日本に要請しておるジェット戦闘機三百五十機、大部分はF15戦闘機ですが、護衛艦、フリゲート艦計七十隻、攻撃型潜水艦二十五隻、P3C対潜哨戒機百二十五機を整備するように日本に求めてきておる。そして、これは一九八一年のハワイでの日米安保事務レベル協議で提示されておるということなんですが、これと今の日本の防衛大綱の別表にあるものと比べると大分隔たりがあると思うのです。この日本の現実に推し進めておる防衛計画とアメリカから要請されておるものとが余りにも隔たりがあるという事実、これはやはり相当の、予想以上の圧力がかかっているのではないか、こういうふうに思うのですが、その点はいかがでしょうか。
  32. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 我が国の防衛力の整備につきましては、御承知のとおり「防衛計画の大綱」によりまして逐次整備を進めているわけでございまして、我々としては「防衛計画の大綱」に定められている水準をできる限り早期に達成したいということでやっているわけでございます。  その目標が、シーレーン防衛に関連して申し上げますならば、例えば護衛艦でございますと水上艦艇約六十隻、それから作戦用航空機約二百二十機ということを目標にしているわけでございまして、現状はそれからまだかなり低い水準にとどまっているわけでございます。それを着実に達成したいということでございます。  他方、アメリカといたしましては、我が国が有事の場合に日米安保条約に基づきまして日本を守るという義務を負っている関係から、日本の自主的な防衛努力に対しましてそれなりの期待というものを持っていることは事実でございます。しかしながら、アメリカが日本に対しまして、具体的な数字を持って大綱に示す水準以外のものを要求しているというようなことはないわけでございます。  ただいま先生が御指摘になりました第十三回のハワイ事務レベル協議におきます問題は、そのハワイ協議の性格というものから、これは全くの事務レベルでのフリートーキングということで行われている問題でございまして、その際に一部数字を交えた話題が出たということはあるわけでございますけれども、それはこの協議の性格上公表しないということになっておるわけでございまして、そういったものは話題として出たことは事実としても、それはアメリカ政府としての要求といったような性格では全くないわけでございます。その間の事情につきましては、これまでも何回か国会におきまして御説明を申し上げた経緯がございます。  いずれにいたしましても、アメリカの期待は我々としては念頭には置いておりますけれども、しかし、我が国の防衛力整備は、あくまでも「防衛計画の大綱」というものを基本にいたしまして着実な達成を図るべく、自主的な判断によって進めていくということには変わりがございません。
  33. 渡部行雄

    渡部(行)委員 これはきょうの新聞に出ておったのですが、中曽根首相の私的諮問機関である平和問題研究会が「防衛計画の大綱」見直しの作業に取りかかった旨の記事でございます。  そこで長官は、このシーレーン防衛というものを本当に果たせるためには一体どの程度の装備が必要なのか、あるいは軍備といいますか、そういうものは必要なのか、そして今の防衛大綱の中で、いわゆるシーレーン防衛を果たし、かつまた日本の領土と領空、領海の侵犯をさせないための防衛が可能だと思っておられるのですか。その辺をお聞かせ願いたい。
  34. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 シーレーンというのは、御案内のとおり、我が国の国民の生存、これを維持する、それから有事において継戦能力を確保する、そのために護衛とか哨戒とか、あるいは港湾とか海峡、そういったものを防備する、そうした累積効果、そういうものを中心といたしまして海上交通路の安全を確保する、それがシーレーンの防衛の目的でございます。そういう関係で、我が国は我が国として憲法の枠の中で今自主的な作業をしておる。また、安保条約五条に基づきまして日米の共同対処ということもございますので、アメリカ側ともこのシーレーン防衛につきまして研究をしていることは事実でございます。  しかし、先ほど防衛局長からも話をいたしましたとおり、アメリカは同盟国の一員である日本に対して、自分の国は自分で守るということでさらに積極的な防衛努力を要望する、このことは私どもはよくわかるわけであります。しかし同時に、日本は日本としてやっていかなければならぬ。そういう観点から見ますと、とにかく「防衛計画の大綱」の水準にできるだけ早く到達するというのが当面の大きな課題である。それから、シーレーン防衛というのがどこまでやったら可能かというのは相対的な問題でございますから、当面は「防衛計画の大綱」にできるだけ早く到達するということを考えておりますので、この線で対処してまいりたい、こう考えております。
  35. 渡部行雄

    渡部(行)委員 時間がありませんから、ひとつ簡単にお願いします。  そこで、ソ連の脅威というものが非常に大きく叫ばれておるのですが、現実には、CIAの調査によっても、ここ四年間はソ連は軍備の増強がないというようなことが言われておりますし、またソ連の公表国防費を見ましても、一九七九年、八〇年とだんだん金額が下がってきて、一九八一年から八四年までが百七十億五千万ルーブルですか、こういう一つの予算が示されておって、パーセントはどんどんと下がってきているのです。そうすると脅威はむしろ前よりも減ってきているのじゃないか。それは日本の軍備を増強するための一つの手段として、このソ連脅威論を振りまいているようにしか思えないのです。  しかし現実には、今、ソ連とアメリカの鋭い対立の中にあって日本は何をすべきか。ソ連やその他の北朝鮮などの国々を余り刺激するようなことはやはり表現としても慎むべきだと私は思います。そういう点についてひとつ大臣のこれからの、ソビエトとアメリカのはざまにある日本の防衛について所信のほどをお伺いして、一応防衛庁関係については終わりたいと思います。
  36. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 東西間に非常な不信感がある、これが世界の各地で紛争を巻き起こしておるということにもつながってくるわけでございます。私は率直に申し上げまして、ソビエトの方はむしろ控えているのじゃないかという御議論に対しましては、私自体は有権的な断定をする立場に今ございませんから申し上げませんが、少なくとも我が国の周辺を見ますと、現実に極東のソ連軍が増強している、ノボロシスクがウラジオの方に入ってきておる。こういうことを見ますと、これは我が国は我が国としてしっかり自衛力、防衛力の整備をしなければならぬな、こういう認識でございます。
  37. 渡部行雄

    渡部(行)委員 それでは、今度は外務省関係にお伺いいたします。  今度、在外公館の設置法が出まして、新しく大使館の設置等がなされるわけでございますが、実は今まで、外務省の関係在外公館の充実ということは何回もここで議論されてきたわけでございます。しかし、現実には遅々としてそれが進んでいない。そしてまた、外務省自身が六カ年計画を立てて、そうして外務省の充実をうたってきたわけですが、それすらほとんど実現されていないというのが実態でございます。  そういうことを考えてみますと、今度つくられるブルネイ大使館というのは、新しく建物から土地から日本の財産として取得されていくものか、その辺についてひとつ御説明願いたいと思います。
  38. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 ただいまブルネイに設置される大使館の施設について御質問がございました。  私どもといたしましては、当面は恐らく借家でスタートせざるを得ないかと思っております。しかし、適当な物件があれば、あそこは英国系の法体系でございますのでリース権ということになると思いますが、無休財産権という形で適当な物件があれば購入することも考えたいと思いますし、その場合には、我が国の在外公館にふさわしい公邸なり事務所なりにするように配慮いたしたいと思っております。
  39. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そこで、在外公館というのは、私はいつも考えているのですが、これは外国における日本の品格と申しますか、権威を象徴するものだと思うのです。そういう点で今の公館というものを総点検をして、やはり余り貧弱なところはこれを直していく。そして、フランスや、せめても西ドイツクラスに日本がなっていかなければならないんじゃないか。世界第二の金持ちだと言っていながら、実際はインド以下である、イタリー以下である。こういう現実を見ますと、今のような状態でそういう口幅ったい、世界で最も金持ちだなどということは言わない方がむしろいいんじゃないかと思いますが、そういうことについて大臣はこれからどう取り組んでいくおつもりなのか。フランスや西ドイツ並みの、それに恥ずかしくない、そういう土地、建物ばかりでなく人員の配置にいたしましても、十分大使館活動なりができるためにこれからやっていくとすれば、あと何年くらいかかるおつもりなのか、その辺をひとつ御答弁をお願いしたいと思います。
  40. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本の外交の実施体制、外務省の定員にいたしましてもあるいは在外公館の今御指摘の状況にいたしましても、先進諸外国に比べますと大変おくれておると言わざるを得ないと思っておるわけであります。  在外公館につきましても、いろいろと当委員会でも御配慮いただいておるわけでありますが、大使公邸なんかは比較約何とか諸外国に比べて比肩できると思いますが、それ以下の外務省の職員の海外の住宅関係は非常におくれておるということははっきり言えるわけでありますし、あるいはまた人員にいたしましても、五千人定員ということで努力をしておりますが、政府全体も外務省の定員増につきましてはいろいろと配慮していただいてはおりまして、定員を削減する厳しい状況の中で多少の伸びはありますけれども、五千人体制になるまでには当分気の遠くなるような時間がかかるのじゃないかと思わざるを得ないのです。しかし我々は、その目的は捨てるわけではなくて、これからも財政の状況が好転する可能性もあると思いますし、そういうことも踏まえて努力を重ねていきたい、こういうふうに思っております。  いずれにしても、当委員会でも決議していただいて大変激励をいただいておるわけですが、外務省の外交実施体制、これからの世界の中で、今日日本の発言権が強大になっておりますし存在も重くなっておりますが、あるいはまたGNPなんかも自由世界第二位という大国ですけれども、そういう状況に比べるとまだまだ足らざるところが多いということを私も外務大臣として痛感をいたしております。できるだけこれからも努力を重ねていかなければならぬ、こういうふうに考えておるわけでございます。
  41. 渡部行雄

    渡部(行)委員 それからもう一つは、在外公館の中に勤めておられるいわゆる外務職員の方々の住宅でございますが、これも転勤なんかになると、自分の金を百万なり二百万なり、ひどいのはそれ以上つぎ込まないと引っ越しができない、こういう状況であるということが明らかにされております。そういうことでは非常に困るわけですから、最小限度、家具や什器は備品としてこれを備えてやる、そういうことくらいはできるのじゃないかと思います。そういう点をひとつ改善していただきたい。  それから、外務省の職員が出張すると、最近特にホテル代が高くなって帰りの旅費がなくなってしまうという話を私聞いているのです。今外務省の方が海外に出張すると、自分の金をほとんど皆ぶち出して、そして帰ってこなくちゃならぬという話なんですが、こんなことで本当の外交、身の入った外交ができますか。軍備の方で一つの飛行機を節約しても、人殺し兵器を節約しても、こっちの方を充実することが平和外交の根本じゃないでしょうか。その辺についての御答弁をお願いします。
  42. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 まず最初の移転料の点でございます。これはまさに多年にわたって据え置かれておりましたために、転勤などのときにかなりの持ち出しになっているという実情でございました。今回旅費関係法律改正されます機会に、移転料についてもおかげさまで二五%のアップということになるように聞いております。主管は大蔵省でございますが、私どもも協力して調査した結果、そういうことにしております。  他方、家具を備品として備えつけてはどうかということでございますが、この点につきましては、在外公館職員の宿舎につきましてもやはり国家公務員宿舎法の適用を受けます。それとの関係もございまして、これを備品にして無償で貸与するということは困難でございます。ただ、勤務環境が非常に厳しく、家具の調達、処分その他が非常に難しいという地域につきましては、特に官費で買い上げた家具を有料で貸与するという制度をやっておりまして、現在十三公館には適用されているわけでございまして、今後この制度をさらに充実していきたいというふうに考えております。  また、ただいま旅費の問題につきまして大変御理解のある御質問をいただいたわけでございまして、この委員会その他の場でかねて御指摘をいただいておりましたので、私どもも鋭意査定当局と折衝いたしてまいりまして、先ほど申し上げましたように、国家公務員等の旅費に関する法律改正が考えられておりまして、海外旅費の日当、宿泊料につきましてはかなり大幅の改定、大体四〇%ぐらい伸ばしていただけるのじゃないかと思っておりますが、改正をしていただくように近く改正案が本国会に提出されるように承知いたしております。  以上でございます。
  43. 渡部行雄

    渡部(行)委員 私の持ち時間があと少ししかありませんからはしょって言いますが、大臣、今日本の外交で一番大事なのは何でしょうか。私は、世界というものは、ソビエトを中心とした勢力とアメリカを中心とした自由主義陣営と申しますか、この対立が一番象徴的になっていると思います。  そこで、日本がその中で平和憲法を持っていながらどういう役割を果たすべきかという点でございますが、具体的に言うならば、日本は本来世界じゅうに敵国をつくらないというのが憲法の精神であるわけです。ところが現実には、今ソ連と日本の関係というのは今までにかつてないほど冷え切っておる、一番悪い状況にある。それからまた、お隣の朝鮮民主主義人民共和国との関係においてもこれまた非常に嘆かざるを得ない状態にある。これはどっちに責任があるというよりは、私は日本が積極的にこの問題に取り組んでやっていくことが国益に合致すると思います。日本の外交というのは、私は、アメリカの外交に追随するだけであって、ちょうど客車が機関車に引っ張られていくみたいに、自分の意思を持たないでただ引っ張られているような感じがしてならないのです。そういう点で、ソ連との外交をもっと積極的に展開するおつもりはないか。  なぜ私がそういうことを言うかと申しますと、この間ソ連の代表団がコワレンコを団長として来られたときに私ども会談をやったのですが、まず日本に対していろいろソ連は有益な利益を提供する用意がある、こうはっきりと言われております。しかるに、日本は貿易の制限をやり、そして科学技術の援助を廃止して、今は全くゼロ状態になっておる、また昨年までは飛行機の乗り入れまで禁止されてきた、こういうことは両国にとって決してよくないから、こういう問題を早く除去していただければ、私たちはいろいろな点で、人事、文化の交流あるいはその他日ソの友好関係がさらに進むように対処する用意がある、こういうことが言われました。  また、今まで日本の対ソ制裁のためにどのくらい日本が損をしているかというと、まず南ヤクート炭田開発についても、日本も入れたかったのだが、そういう状態なのでこれはカナダの商社を入れることにした。あるいはサハリンの天然ガス開発も、日本がやることになっていたものを今度はフランスがやることになった。また、アムール地区にパルプコンビナートをつくることにぜひ日本が参加してほしい、こういう提案をしたが拒否された、そのために今フランスがやっている。あるいはブラーツク、これがスウェーデン。イルクーツクのホテル、これもスウェーデンが入札しておる。ウトカン銅山、これは現在西ドイツ、イギリス、フランスと話し合いが進められている。そうすると日本は隣にあれだけの豊富な資源国を持ちながら指をくわえて眺めているだけという、こんなばかな外交政策はないと思うのですよ。  私たちは、この二つの超大国に挟まれている中で、両方とどういうふうに接近し、両方の対立をどういうふうに緩和させるかということが日本の平和外交の最も肝心なところだと思いますが、その点についての大臣の御意見をお伺いしたいと思います。
  44. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本の外交の基本方針は、日本自身の平和と安全を守るとともに、世界の平和と安全に貢献をしていくということであろうと思います。そういう中で日本の外交の基本的なスタンスは、日米を基軸としたいわゆる西側の一員としての立場を堅持しながら世界に貢献していく、同時にまた、日本がアジアの一国であるというその立場はこれを貫いていかなければならぬ。そういう中で、日本は積極的に多くの体制の違う国々とも平和外交という立場で外交を進めていくということを中心にして、今日まで来ておるわけでございます。  日本全体の今の外交の中で、確かにおっしゃるようにほとんどの国とは大体うまくいっているのじゃないかと私は思いますが、残念ながらソ連との間は非常に冷たい関係にあります。特に最近は、大韓航空機撃墜事件がありまして以来、極端に両国の関係が冷え込んでおるということでございます。しかし、何といいましても、ソ連は日本の隣国でありますし、あるいはまた超大国でもあるわけでございます。したがって、日本としてはこのソ連との間の関係を何とか改善していく、そして真の友好関係が樹立されることを心から期待するわけですが、それにはやはり日ソ間に横たわっている懸案を解決しなければならぬ。  その懸案といいますれば、申し上げるまでもなく北方四島の問題でございます。この固有の領土を日本に返還していただく、それによって初めて日ソ平和条約が締結される、そこに真の日ソ友好関係が樹立されるわけでございまして、日ソ関係を考えてみますと一番大きな問題はこの領土問題である。残念ながらソ連は、この領土問題に対しましては、もう解決済みであるというふうな姿勢でこれに対応しようとしない。今度もグロムイコ外相とも会ったわけでありますが、領土問題についてはソ連の態度が変わらないということで、我々は非常に残念であるわけでございます。  同時にまた、私たちが非常に心配をしておりますのは、最近のソ連の極東における大変な軍事力の強化であります。先ほどもお話がありましたが、ノボロシスクが今北上中だ。これがミンスクと一緒になって極東艦隊を形成することになりますれば、日本に対する潜在威力はますます大きくなっていきますし、同時にまた、今極東に展開しているSS20も、百八あったのが百三十六と配備が進んでおります。そして、さらにこれが百四十四にまで進もうという状況にあります。何のためにソ連がこのように極東における軍事力を強大にしなければならぬか、我々は理解に苦しむわけでございますが、こうした情勢が結局日ソ間の友好関係を阻害しているわけでございます。  我々は、ソ連に対して、そのことについて強く自制を求めておるわけでございます。しかし、そうした基本的な領土問題あるいはまた軍備の問題、極東における軍事情勢、軍事力の強化といったような問題、あるいはまたアフガニスタンに対する介入は依然として続いておる、こういう状況は変わっておらないわけです。しかし、そういう中にあっても、外交関係があるわけですし、何とか対話の道は開いておく必要があるのではないか、そして、できるならばこれを進めていくことが大事じゃないか、そのことがまた領土問題をテーブルにのせる一つの道筋にもつながっていくのじゃないか、こういうふうに考えております。したがって、ちょうどソ連の政権が交代したこういうチャンスをとらえて、私もモスクワに参りましたときにグロムイコ外相との間で意見の交換をいたしました。幸いにしてソ連も、日本との間に基本的に対立的な問題点があるとしましてもやはり対話を開いていこう、これは日本がそれだけ世界の中で大きな存在になってきた。だから、対話を開いていこう、そういう姿勢はグロムイコ外相も見せておりますし、我々はこれを非常に評価しております。そういう中で我々は、三月十二日、十三日に両国で高級事務レベル会談を行うということも合意をしたわけでございます。  あるいはまた経済の問題につきましても、これは主として日本の民間とソ連との間で行われておりますが、この交流も、できるならばこれを拡大していくということについては日本政府としては異存はない、こういうことでございますし、また人的な交流あるいは文化の交流、そういう点もこれから話し合って進めてまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。  しかし、残念ながら日ソ間を取り巻く環境あるいは東西を取り巻くいろいろの枠組みというのが大きく変わっていないというところに問題があるわけでございまして、我々としては、やはり東西の対立、緊張というものが緩和される、それにはINF交渉が再開されるとかSTARTが再開されるということが必要であろうと思うし、あるいは米ソの対話が進むということも大事じゃないか、またソ連はソ連なりにアフガニスタンから兵を引くということも、世界の緊張緩和のためには非常に大事な局面の展開につながっていくのじゃないか、私はそういうふうに考えておるわけでございます。
  45. 渡部行雄

    渡部(行)委員 最後でございますが、北方領土が解決しなければ前に出れないような外交では、現実対応はできないと私は思います。だから、まずやれることからどんどん進めていって、そしてそれが日本のためにもなり、また向こうのためにもなる、こういうような考え方で外交は進めるべきだと思います。  そういう私の意見をこの際申し上げて、次に松浦委員が関連質問があるということでございますから、ここで交代をしたいと思います。どうもありがとうございました。
  46. 片岡清一

    片岡委員長 関連して、松浦利尚君。
  47. 松浦利尚

    松浦委員 今の問題に関連をして……。  御承知のように、今イラク、イラン両国の紛争が非常に厳しくなってきております。積み出し港であるカーグ島の爆撃があったかなかったかということの真相は定かではありませんが、幸い積み出しには支障がないという情報のようであります。しかし、紛争がさらに激化をしてまいりますと、イランが言うように海峡封鎖ということが起こり得る可能性もある。  そうなってまいりますと、幸い我が国は両国と友好関係を持っておる唯一の先進国でもあります。先般、外務大臣は両国に行かれて意見の交換をし、調整等もなさったそうでありますが、こういう状況を踏まえて、ペルシャ湾が封鎖されるということ、日本にとっても六割の油が通るわけでありますから大変なことであります。これに対して直ちに外交チャンネルを通じていろいろの工作はしておられると思うのでありますが、外相自身、これに対して動かれるお考え方があるのかどうか、その点をまずお聞きいたしたいと思います。
  48. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 イラン、イラク両国は日本とは外交的にもつながりがありますし、また最近では相当深くなってきておるわけで、我々は、外交チャンネルを通じましてイラン、イラク両国に対しまして戦争拡大をしないように自制を強く求めております。それはそれなりに効果も出てきておるのじゃないか、私はこういうふうに思っておるわけで、最近は御承知のようにカーグ島が爆撃されたということで私たちも心配をしたわけでございますが、いろいろと調査をしてみました結果、今お話しのように積み出しには支障はないというふうなことでございまして、その間の事情につきましては、いち早くいつもイランあるいはイラク両国から日本に対して連絡があるわけで、その点は私どもはイラン、イラクと日本とのつながり、またイラン、イラクがやはり日本に一つの期待を持っておるということを感ずるわけでございます。それだけにやはり日本として、イラン、イラクの戦争拡大を防ぐための何らかの役割をこれからも果たしていかなければならぬ、調停とか仲介はできないとしても、戦争の拡大を防ぐための役割あるいはまた平和環境をつくるための役割を果たしていかなければならぬと思いますし、そのための努力は続けていく決意であります。  同時にまた、イラン、イラク両国には、日本は絶えず戦争の拡大防止というものについて働きかけを今日も依然として強力にいたしておるわけでございます。今のところではホルムズ海峡封鎖というような最悪な事態には一気に行くということは我々の情勢判断ではない、こういうふうに見ておるわけでございますが、しかし戦争のことでございますから、そういうことが全く起こらない、皆無だとは言い切れないわけでございまして、そういうことがあったら大変なことですから、万一の場合でもそういうことがないように我々はこれからもやっていく覚悟でございます。
  49. 松浦利尚

    松浦委員 一時半から予算委員会に出席だそうですから、簡潔にひとつ御答弁いただきたいのですが、米英両国は、封鎖されないように海軍力を使う、派遣をしておるという状況ですが、平和外交を通じてやれる国としては我が国が唯一の国なんですね。今動くべきときだと思うのです、調停とか仲裁とかいう意味ではなくて、戦争不拡大のために。ニューリーダーと言われるあなた自身が積極的にイニシアチブをとってそういうことをやる御意思があるかどうか、その点をひとつ聞かしてください。
  50. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはいろいろ国の利害が絡んでおりますが、しかし日本がイラン、イラク両国からは比較的信頼をされている、特にイランは、国際的にもどちらかというと支援国が少ないということで、日本に対して非常に期待が大きいのではないか、こういうふうに思っております。そういう日本の外交的な立場というものをここに踏まえて活用して、今我々としてはあらゆる関係、ルートを通じながら積極的にイラン、イラク両国に対しましてとにかく紛争の拡大防止を訴え続けてきておる、こういうことでございます。これは今後とも精力的にやってまいりたいと存じております。
  51. 松浦利尚

    松浦委員 あなた自身は動く意思はないですか、直接行くとか。この前は行ってこられたのですが、再度行って不拡大についての話し合いをするとかなんとかというお考えは今ないですか。そういうことは全く考えていませんか、外務省は。
  52. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 先般も私、外務大臣に再任された直後、中島外務審議官をイランに派遣をいたしまして、いろいろと打ち合わせ、話し合いはさせたわけでございます。現在私が行くことによって拡大の防止にストレートに結びつくというふうな情勢なら、いつでも行くことはやぶさかでございませんが、やはり両国のこういう状況を見ると、そういうことが果たしてプラスになるのかマイナスになるのかということも考えなければならぬわけでございますし、我々としては、せっかくのでき上がった外交ルートというものを通じましてこれが拡大防止のための努力を今やっておるわけで、情勢をしばらく見たいと思います。  それから、イランやイラクの外務大臣は日本に来たいというようなことも言っておりますから、その辺のところも今実はいろいろと打診を続けておるところでございます。
  53. 松浦利尚

    松浦委員 そういうチャンスがあったらぜひ行動を起こしていただきたい。それは日本の死活に関する問題にもなるからです。そういうチャンスがあったら、ぜひ大臣の手腕を発揮していただきたいということを希望として申し上げておきたいと存じます。  そういうことはあってはならないのですが、昨年の十二月でしたか、仮定の問題としてホルムズ海峡が封鎖された場合、我が国への六〇%が通過するホルムズ海峡が封鎖されても我が国のエネルギー源である原油の確保は十分であるというデータを経済局の資源課が出しておりますね。もう時間がありませんから簡単に申し上げますが、「ホルムズ海峡が封鎖された場合の日本の対応可能日数」、備蓄のみで対応した場合は二百十五日、一〇%節約した場合は二百七十二日、IEAスキーム発動の場合、世界エネルギー機構が、我が国に緊急備蓄取り崩しで供給した場合は七百十六日の原油確保が可能だ。もう一つの例は、ホルムズ海峡以外の国々、例えばメキシコとかそういった国々から五百万バレル・デーの追加供給があったら、備蓄で三百七十八日、一〇%節約して六百日の対応が可能だ、こういう資料を発表しておられますが、これは間違いありませんですね。現在でもそのとおりですね。
  54. 恩田宗

    ○恩田政府委員 先生手元資料は、十二月十二日の資源一課の資料かと存じますが、これは当時手に入れました資料に基づいて、さまざまの仮定のもとに試算した数字でございます。したがって、そのような数字であるということでおよそのめどとして計算したものでございますので、この仮定自体についてはいろいろ問題がございますが、この計算自体としてはそういうことになるということで間違いないと思います。
  55. 松浦利尚

    松浦委員 ホルムズ海峡が封鎖されても最高七百十六日間我が国のエネルギーを確保することは可能だ、こういう状況だ、こういう資料だと思うのですが、そこでお尋ねをしたいのは、今度は通産省のエネ庁から部長来ておいでになっておるでしょうかね、エネ庁の部長さんは。――まだ来ておられないですか。  それでは大臣、余り御存じないでしょうから、大臣にこの資料を……。(「通産大臣もやったからわかっているよ」と呼ぶ者あり)もう何でも知っておられるそうですから、余り資料を差し上げなくてもよかったかもしれませんが……。  ここに通産省が発表いたしました「備蓄日数、石油製品月末在庫量」というのがあるのですが、五十八年の十二月、ここに民間の備蓄が九十七。七日というふうに書いてあります。おわかりですか。     〔委員長退席、池田(行)委員長代理着席〕 それで、これは法律で定められた備蓄日数九十日分をもう既に超えておるわけです、九十七・七日というのは。一番右側に「前暦年の一日当りの内需量」というのがあって、昭和五十三年から一日当たりの内需量がずっと書いてありますけれども、六十八万七千キロリットル必要であった内需量が、今日では五十四万一千キロリットルにダウンしてきておるんですね、省エネその他によって。ですから民間備蓄の場合は、法律で前暦年の一日当たりの内需量の五十四万一千キロリットルを満たす分だけ備蓄すればいいということになっておるのです、それで九十日分を満たすということになるわけです。ところが、我が国の通産省の場合はどうなっておるかといいますと、国家備蓄は三十日備蓄せよということになっておるわけです。ところが、その三十日備蓄をせよという基準は、昭和五十二年度に決められました一日当たり百万キロリットル消費するということで備蓄をせよという計算になっておるわけです。  ですから、民間設備の方は今日の消費量に見合って備蓄をすればいいということになっておるにかかわらず、政府が備蓄する分については、一日百万キロリットルを使うということを前提にして三十日分備蓄をしなさい、こうなっておるのです。しかもそのために、ことしは一・二%の石油税を引き上げまして、一日百万キロリットル必要だということを前提にして三十日備蓄するために、国民の税金を取り上げて支出をする。五十九年度に二百五十万キロリットルの積み増しを行うために、一千七百七十九億円というお金を使って積み増しをする。しかもその基準は、一日当たり百万キロリットルを使うということを前提にして積み増すのです。これは、民間の備蓄と同じように今日の一日当たりの内需量による備蓄をすれば、五十四万一千キロリットルを単位にして備蓄をすれば、一・二%の石油税というのは必要ないのです。備蓄の積み増し二百五十万キロリットルというのは必要ないんですよ。しかも、ホルムズ海峡が封鎖されたとしても、外務省の方針でいくと七百十六日の長期需要が可能だ。まさしくこれは国民にツケを回して、一・二%の税金を取って、そして極端な言い方をすると、それはたくさんあったにこしたことはないが、財布が小さくなっておるにかかわらず、石油の備蓄については大きな需要見込みを立てて積み増しをしていこうという考え方、これはやはり通産省の所管で、部長がおらなかったですから今直接お話ししたのですが、これこそまさしく国民に対する、税のむだ遣いという言葉は悪いのですが、厳しいしわ寄せになっていくのじゃないでしょうか。大臣、どう思いますか。
  56. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今お話を承りましたが、まさにこれはエネ庁の守備範囲だと思います。正確に御答弁するために、通産省から来ているようですから、通産省から答弁させていただきます。
  57. 松浦利尚

    松浦委員 外務大臣が予算委員会に出席されるから、私は今外務大臣にお聞きをしておるのです。今申し上げたことに対して、あなたはどう思われますか。通産省自体がどうのこうのじゃないのです。外務省自身が既に、ホルムズ海峡が封鎖されても七百十六日は大丈夫だという資料をここに出しておる。しかも、今資料で差し上げたように、民間で九十日、国で三十日の備蓄をするということが定められておる。その基準が、民間の方は今日の内需量であって、通産省の方は百万キロリットルで計算をされておる。しかも、その備蓄のために一・二%の石油税の値上げを国民に押しつけられる。この点について、所管大臣が、通産省がどうのこうのじゃなくて、そういう状況にあるということについて大臣はどう思われますか、こう聞いておるのです。
  58. 池田行彦

    池田(行)委員長代理 簡単に説明してください。
  59. 松浦利尚

    松浦委員 あなた、もう予算委員会に行かれるから、それでは後回しにしましょう。先にもう一つ、これは大臣がおらぬと困りますので、いまのはちょっと保留させてください。  もう一つの問題は、この前、レーガン大統領が日本に来ました。日の出山荘で、外務大臣もおられないところでロン、ヤスでお話し合いをやった。その内容が何だったかということは、我々は蚊帳の外で、発表されておりませんからわかりません。しかし、少なくとも外務大臣は外交をつかさどる中心でありますから御存じだろうと思うのですが、実はその中心が日本の電電関係の開放問題と金融市場開放が中心の話し合いだったという点について、大臣、事実ですか。
  60. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日の出山荘での話し合いは、二人だけで余人を交えずやられたようですが、特に我々がこれに対して注意しなければならぬというふうな特別な話題というものはなかったように私は承知をいたしております。  ただいまお話しの電電の開放の問題あるいはまた日本の資本市場の自由化の問題、これについては、首脳間の話というよりは政府間の話し合いで既に始まっておりましたし、また進んでおる状況にあります。電電につきましては、御存じのようにもう日米間で協定が再びできまして、これは円満に解決した、こういうふうに承知をしております。
  61. 松浦利尚

    松浦委員 レーガン大統領からは、大統領選挙を前にして非常に急がされた。そのために、これは大蔵省の管轄でありますが、円ドル委員会が現実に発足をした。ところが、現在の実質的なドル高ですね、外務大臣はアメリカとお話しになったときに、これは野村総研の資料ですが、アメリカの実質金利とドル高というのが連動しておるという資料をアメリカに見せて、円が安い安いと言うけれども、ドルが高い原因はあなたの方にもあるのじゃないかということを厳しく言われたというように聞いておりますが、間違いないですか。
  62. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはまさに首脳会談のとき、私も参加した首脳会談ですが、そのときに中曽根総理から、グラフを見せて大統領に対して、面接TBレートと連動しているじゃないかということを指摘をされたわけであります。
  63. 松浦利尚

    松浦委員 アメリカ自身の国内事情によってドルが高い。現実に、これは経済企画庁が発表した二月号のESPでありますが、この内容を見ましても、あるいはその他の野村総研の資料を見ましても、対ドルに関しては、ほかの先進諸国の通貨に比べて円は非常に安定しておるわけですね。  それでは大臣は、現状のままで、アメリカはレーガン大統領の手元でドル高が是正されるというふうに思っておられますか。
  64. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 やはり、円ドルの問題が今論議されておりますが、おっしゃるように今は欧州の通貨に比べて円は堅実なんですが、ドルに比べるとまだまだ日本のファンダメンタルズを反映してない、こういうふうに言われるわけです。これは、今の日本の円を国際化するとかあるいは日本の金融関係を自由化するとか、そういうことだけではなくて、やはり基本的にはアメリカの高金利政策というのが今の円ドルのバランスを崩しておるのではないか、これは私もそういうふうに思います。そしてその点は、私はアメリカにも指摘をしておりますし、中曽根総理もレーガン大統領にも指摘をしておられるところであります。
  65. 松浦利尚

    松浦委員 八五年度の予算教書を見ましても、財政赤字が一千八百億ドルと、史上空前の財政赤字を計上しておる。しかもこのESPを見ましても、八五年の前半の経常収支が一千億ドル、大変な状況ですね。しかもマネーサプライを抑えておりますから、これを緩めますと当然のようにインフレが起こる。ですから通貨の膨張を抑えておる。抑えておる中でのこれほどの赤字でありますから、アメリカの景気が回復をしてきますと、民需に必要な資金の調達が不足する。そういったことで高金利政策というのをレーガンのもとではとらざるを得ない、そういう状況だと私は思うのです。  そういう状況を背景にして、我が国に貿易摩擦だ、ああ金融市場の開放だ、こういったことを盛んに言ってきておるわけですね。それに唯々諾々とではありませんけれども、どういう形で円ドル委員会が決まるかわかりませんが、仮に日本の金融市場を開放したとすれば、巨大なアメリカの資本が上陸したらひとたまりもない。極端に言うと、アメリカが求めておるのはあくまでも相互主義であって、しかも、きょうの新聞を見ますと、月別では対日貿易赤字は新記録を計上したということも報道をされておるわけであります。そういった意味で、アメリカの方に対してこうした経済問題については要求をする、そういった姿勢国民の目に映らない。何かすべて、アメリカが言ってきたらもう大変だ大変だということで対応に追われる。農畜産物がどうだこうだと言えば、三月までに解決しようじゃないか、そういうふうにアメリカの要求に対しては全部受け入れている。しかし、現実的に今言ったアメリカのバックグラウンドというものに対しては具体的に我が国から要求が出ない。これは私は明らかに片手落ちだと思うのです。日本の外交として私は恥だと思う。そういう意味で私は、毅然たる態度でアメリカに要求するものは要求していく、ドル高については是正を求めていく、そういう姿勢が貫かれるべきだ、こう思うのですが、安倍外務大臣、期待をしたいから私は質問をしておるのです。
  66. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは、アメリカに対してこれまでもしばしば、今おっしゃるように毅然として日本の主張は述べてきております。高金利についても是正を強く要請してきておるわけでありまして、日本のそうした主張は新聞等にも出ておりますが、しかし向こうの要求と比べると、新聞等の取り扱いが比較的落ち込んでおりますから、大きく取り上げてないですから、日本の主張がいかにも弱いように思われるかもしれませんが、しかし日本政府としては、首脳会談におきましても我々の会談におきましても、アメリカに対して言うことはきちっと言っておるわけでございます。  それから円ドルの問題につきましては、高金利の問題、これはもう我々としては是正を求めておりますが、一面においては、自由貿易体制というものをこれから堅持していくために、日本自身がもっと資本の自由化とかあるいは円の国際化というものはやはり取り組んでいく時代に入ったのではないか、こういうふうに我々も認識しておりますために、この問題についてもアメリカと積極的に今協議をしておる、こういうことであります。
  67. 松浦利尚

    松浦委員 アメリカの要求が強いからだと思うのですが、国民の目には映らないですね。アメリカの要求ばかりが映る。  それでは具体的に大臣にお尋ねをいたしますが、アメリカの高金利政策を改めるために、アメリカはどういう手を打っているのですか。レーガン大統領は、八五年教書で何をしようとしておりますか。
  68. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはもちろんアメリカ自身の問題でして、我々がこのことを強く言いますと、アメリカは、先般もリーガン財務長官に会ってその話をしたのですが、今お話しのような、要するにアメリカの財政のあれだけの膨大な赤字、これが結局続いておる限りは金利についてなかなか弾力的な政策を進めることができない、アメリカの今の財政の状況からそういう大変苦しい思いを吐露しておったわけでございます。しかし、これは先進国だけじゃなくて世界全体の一つの声になっておるわけでございますから、我々は今度のサミットでも取り上げられる課題ではないだろうかと思うわけであります。アメリカは、金利を下げればそれなりにインフレというおそれもあるものですからなかなか踏み切れないということではありますけれども、しかし、金利問題が円ドル関係その他の通貨の問題でも非常に大きな原因であるということ、貿易赤字の一つの大きな原因であるということは十分承知しておりますから、それなりにアメリカ自身も考えるところはあるのじゃないか、こういうふうに思います。  ただ、それじゃ右から左に手を打つかというと、今の客観情勢からそういう事態は今のところはないということを言っておるわけですが、しかし、いろいろと考えておるというふうに私は見ておるわけです。
  69. 松浦利尚

    松浦委員 先ほど同僚渡部委員も質問をしましたけれども、それはいろいろな外交があります。少なくとも今の政府は西欧陣営の一員として行動しておるのだと先ほど言われた。西欧陣営の一員として活動しておるとするなら、アメリカも当然西欧の一員としての義務は負うべきだ。アメリカの高金利政策というのが改められなければ、貿易の赤字というのは今の状況であればますます累積されていくのです。ですから、原因が日本にあるのじゃなくて向こう側にあるということを日本の国民にも知らしむべきであり、アメリカに対してももっと強く主張すべきである、そのことを要望として申し上げたいと思いますが、ぜひひとつ外務省、そのことをやってください。よろしいですね。PRが不足なら、新聞記者の皆さんにPRしてください。
  70. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本も言うべきことは言っておりますし、これは今後も、二国間だけじゃなくて国際場裏においても主張しなければならぬと考えております。ただ、自由貿易という体制から、日本自身もいろいろと市場開放のための努力をしていかなければならぬ、そういう時代に入ったということもさらに認識しておるわけであります。     〔池田(行)委員長代理退席、委員長着席〕
  71. 松浦利尚

    松浦委員 大蔵大臣がおられないが、金融市場の開放問題なんかは、相互主義を認めたら大変なことになりますよ。やはり当面、内国民待遇でやるべきだと思いますよ。それぐらいの主張をする腹構えがなければ、迷惑するのは政府ではなくて、国民なんですから、私は大蔵大臣が来ておられたらまた意見を聞きたいと思いますけれども、きょうは外務大臣ですから、そういう点については、今言われたように日本の立場をもっと強く主張してもらいたいということを申し上げたいと思います。  それでは元に戻りますが、予算委員会の方が重要ですから、大臣、時間が来ましたからどうぞ向こうの方に行っていただいて結構ですが、通産省の石油部長、簡単に説明してください。  石油の備蓄について先ほど質問をしたのですが、民間は九十日、政府は三十日備蓄するということになっておりますね。そうすると、民間が備蓄する九十日分については前暦年の一日当たりの内需量で換算をする。ですから、当初見込みが、昭和五十二年が六十八万七千キロリットル使っておったのですが、五十八年の十二月では五十四万一千キロリットルと需要量がダウンしておるわけですよ。その量で九十日分の備蓄が構成されておるのです。ところが政府の側は、現実に一日当たりの消費量が五十四万一千キロリットルになっておるにかかわらず、依然として昭和五十二年の基準である一日当たりの消費量百万キロリットルを前提として三十日の備蓄をする、そしてその予算として今年度に一・二%の石油税の値上げをして二百五十万キロリットルの積み増しをいたします、そのお金が一千七百七十九億三千二百万円です。現実に民間が備蓄する量と同じように計算をして五十四万一千キロリットルに直せば、一・二%の税率値上げをしてまで備蓄をする必要はない。しかも、外務省の資料によると、あっではならないことだけれども、ホルムズ海峡が封鎖されても七百十六日間の原油の確保は可能だという資料が出ておるのです。  だから先ほど私が大臣にお尋ねしたのは、金がないからといって行政改革だ、金がないから公共料金の値上げだ、こういう厳しい予算の中で、なぜ依然として昭和五十二年度の一日当たりの消費量にこだわって備蓄をしなければならないのか。その根拠について、今大臣の見解を承りましたが、所管がおたくだ、こういうことですから、簡単にひとつ答弁してください。
  72. 松尾邦彦

    ○松尾政府委員 ただいま御指摘のございました国家備蓄でございますけれども、先生御指摘のように、昭和五十三年以降三千万キロリットルを備蓄しようという目標を設定して、今日その途上にあるわけでございます。  その際、御指摘のとおり、五十三年時点でのIEA加盟諸国の平均の備蓄保有日数というのは、約百二十日でございました。我が国が三千万キロリットルの国家備蓄を推進しようと考えました背景には、民間備蓄九十日分と合わせまして欧米諸国並みの水準を何とか確保したい、こういうことから始まったわけでございます。当時の一日当たりの消費量から申せば、御指摘のとおり三千万キロリットルはおおむね三十日分ということですから、おおむねIEA加盟諸国並みのレベルであるということを目標にしたわけでございます。  しかし、その後IEA諸国におきましても相当備蓄の積み増しをいたしておりまして、例えば、現在で見ますとIEA加盟諸国の平均は百六十七日になっております。他方、我が国の場合はその後需要の減退がございまして、御指摘のように現在の需要水準から考えますと、三千万キロリットルを日数換算いたしますと多分五十二日分ぐらいになると思います。そういう意味で、私どもといたしましては、九十日の民間備蓄に三千万キロリットルの国家備蓄を合計いたしましても百四十日強のレベル、これはまたIEAの方式というのが別途ございますけれども、仮にそれでやりますともう少し低い水準になるのでありますけれども、いずれにいたしましてもまだIEAのレベルにも達さないということで、我が国は石油輸入の供給源が大変中東に偏っておるということで供給面で非常に脆弱性がございますことにかんがみますれば、五十三年当時IEA諸国並みにしたいと思っていた目標からしますと、目標としていたIEA諸国が備蓄水準を上げたということもございまして、この三千万キロリットルはぜひとも達成しなければならない目標と考えておるわけでございます。  しかし、最近のような財源の厳しい折でもございますし、昨年の八月に総合エネルギー調査会で備蓄政策の見直しをしていただきましたけれども、そのときにも、効率的な推進が必要だ、歳出は極力節減に努めで、しかし必要な三千万キロリットルは引き続き推進するというのを答申としていただいておるわけでございます。
  73. 松浦利尚

    松浦委員 大臣もぜひ知っておいていただきたいのですが、日米欧の石油消費料をGNPの原単位に直すのですね。そうしますと、一九七三年を一〇〇といたしまして日本のGNPは一・四六倍になっておるのです。一九七三年を一〇〇といたしますと今日一・四六倍にGNPが膨れ上がってきておるのですね。そうすると、GNPを原単位にして石油の消費量に換算をして調べてみますと、当初一九七三年を一〇〇にいたしますと五六・一二と半分に減ってきているのですよ。GNPは膨らんだけれども、石油の消費量は半分近くにずっと下がっているのです。それだけ代替エネルギーとかエネルギーの消費が節約されてきておるということなんですよ。だから、今言われたように、どうしても必要だというなら三千万キロリットルが五千万キロリットルになるかもしれない。しかし、各国のデータとか統計数字は正直なんですね。日本の場合は、だんだんとGNPが膨らんでいっても石油の消費量は逆に下がっていきますよという数字が出ているのですよ。  そういう条件の中で、あくまでも三千万キロリットルの備蓄を確保したい、そのことだけを焦点にして、そのことだけをただひたすら目標にして石油税を一・二%値上げをする。二百五十万キロリットルの積み増しをしている。これは私は政府の姿勢としては間違いだと思いますよ、外務省がホルムズ海峡が封鎖されてもこれだけは大丈夫だということを言っておられるのだから。どうしてもしたければ、仮に目標年次を二年、三年延ばしてもいいはずです。そのこだわる理由がわからない。国民が裕福であれば別です。せっかく外務省がこんな立派な資料を出して、この外務省の資料が生かされておらない。いろいろなデータが全然生かされておらない。ただ昭和五十三年度に決めたことそのことだけに固執して、ずっと一直線に進んでいる、その犠牲は我々国民がかぶらなければならぬ、これが問題だと私は申し上げておるのです。  ですから、外務省が出された資料というのは、ただ単に外務省の外交上の資料ですよという問題だけじゃなくて、日本の石油エネルギーについても重要な影響を与える資料であるべきなんです。大臣、もう閣議で決まったことですから今さらどうのこうのということは言えないかもしれません。私の言っておることはおわかりいただけますでしょう。わからぬですか。わかっておられますか。それだけで結構です。わかったらわかったでいいです。
  74. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 おっしゃっている言葉はよくわかります。これは松浦議員の一つの見識だろうと思います。しかしただ、政府としては御承知のような、先ほど説明をしたような事情で一つの方針を確立して、これに向かって進んでおるわけでございますし、内閣は一体としてこれを進めておるわけでございます。また、石油に関して言えば、これはホルムズ海峡の問題も確かにありますけれども、全体的に石油資源というものが低下をし続けてきておるわけでございますし、中東の情勢はイラン・イラクだけではなくてこれから何が起こるかわからないという非常に危険な状況もあるわけですから、備蓄といった面はこれからの日本のエネルギー政策を考える上においても必要ではないか、私はこういうふうに考えております。
  75. 松浦利尚

    松浦委員 私は備蓄が必要でないとは言っておりません。必要なことは認めます。しかし、今言った状況であるということはわかっていただいたのですから、野党四党共同修正案の中に、ぜひ石油税は改めてもらいたい、削除してもらいたいという要求が出ております。政府としての外務大臣の見識ある御協力をお願いを申し上げておきたいと思います。  最後に、在外公館の法案の関係です。  官房長がおいでですから、先ほどの渡部委員の質問に関連をしてお話しをさせていただきますが、御承知のようにレバノンは大変な状況で、大使館の館員の皆さん大使を含めて大分頑張られたようでありますけれども、ちょっとお尋ねをしておきたいのは、戦乱地等における補償制度というのが昭和五十一年六月五日に制度化されております。この戦乱地等における補償制度が発動される時期は、レバノンの大使が外務省に打電をして、今から大使館を閉鎖しますというときをもってこの戦乱地等の補償制度の適用を受けるというふうに御報告を受けておりますが、間違いありませんか。
  76. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 ただいまの御質問の点でございますけれども、法律上の建前は、外務大臣が指定した場合に一五%の在勤手当に対する加算が行われる。ただいま御指摘のような、レバノンでございますとか、そういうふうな戦争という特別の事態において戦時加算を行う場合の規定といたしましては、外務大臣が指定した場合、こういうことになっております。  その場合に、内規といいますか、それでは大体どういう場合に外務大臣が指定するかということでございますが、とれは大使館の閉鎖を決めたときではございませんで、一般的には、そこの地に在留しておられる邦人の方々に退避を勧告しないといけないような事態に立ち至った場合、これが一つの目安になっておることは事実でございます。
  77. 松浦利尚

    松浦委員 四十九年以降の主な戦乱についての戦乱地指定のデータを私の手元にいただいておりますが、相手の国があることで大変失礼なことになりますけれども、こういう状況では、紛争が起こりやすいようなところの任地に向かう人は非常に大変だと思うのです。行きたがらないと思うのです。そういう状況だということを考えますと、あってはならないことですが現実にあることは否定できないわけですから、戦乱地加算手当等の見直しは当然あってしかるべきだ。特に、平和外交は我が国の基本であるということが言われておる。先ほど渡部委員も指摘したとおりです。だとするならば、私たちは第一線の外交官が不安のない外交活動ができるようにしてあげなければいかぬ。それが今言ったような状況で、実際にぼんぼん弾が飛び出して、飛び出しても邦人に避難命令を出さずにじっとこらえておる、大使大使館に直撃弾が当たって初めて避難をするという状況ですね。  これは非常に悪い例かもしれませんが、私は自衛隊資料を取り寄せでみたのです。現実に法律で定められていることですから、これが悪いと言うのではないですよ。パイロットの皆さん、航空自衛隊関係の人の手当というのは、ジェット機に乗る人は俸給月額の百分の七十五支給されるのです。ジェット機以外の皆さんは百分の六十なんです。陸地から離れるから墜落する危険があることは事実。しかし、外交官といえども、そういう中近東という火種のあるところに行くというときは、私は自衛隊のパイロットと同じだと思うのです。あるいはそれ以上だ。ということを考えると、こういう航空手当というものから見ると戦乱地等に対する外交官の補償は余りにも安過ぎる。我が国を代表する外交官の待遇というのはもっともっとよくしてやらなければいかぬ。そういう意味で、こういう問題については法の改正をぜひしていただきたい。私は自衛隊のパイロットの問題を一つの例として申し上げたのですが、そういう例もあるということを頭に置いて、ぜひ要求していただきたいというふうに私は思います。どうですか。
  78. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 御指摘のとおり、最近のこういう複雑な国際情勢のもとにおきまして、各地において戦乱その他危険な状態が起こる。その中で、私ども今まで人事を預かっておりまして、特に嫌がるとかそういうことを見たことはございません。みんな使命感に燃えて新しく赴任もしてくれますし、また現地でも非常に活躍をして、例えばレバノンの場合におきましても最後まで、一部の例えば現地の人と結婚しているような人を除いて、退避すべき人はみんな退避するということを見届けた上で大使館を閉鎖する、こういうことでございます。  そういう人たちに対して十分な手当てをすべきじゃないか、これはもう大変ありがたい御激励でございまして、その意を体して今後ともやっていきたいと思っております。  ただいま例に出されました自衛隊のパイロットの場合には、いろいろな技能に対する手当だとか、あるいは危険に伴う補償という考え方に基づいております。ただいまの一五%の戦乱地加算というものは、どちらかといいますと、在勤手当の体系自身が衣食住の用を弁ずるためということに基づいて考えておりまして、そういう戦乱地ではいろいろまた余分な費用が要るだろう、こういうことに伴う加算の制度でございますので、そのパイロットの場合の危険手当とはやや違う考えだと思いますが、そのほか、いろいろそういうふうに対比しますと、家具、自動車なども放棄して行かなければならぬとか、そういったふうな問題もございますし、また本当に生命、身体に危険の及ぶ場合もございます。そのために、例えば外務省の相互扶助、親睦の機関であります精励会で、今度の場合もそういたしましたけれども、すぐ戦時保険を掛けるとか、そういうふうな手当てだとか、広く考えまして、そういう危険なところで働いております同僚がなるべく安んじて活動できるように、今後とも手当てをしていきたいと思います。  大変ありがたいお言葉をありがとうございました。
  79. 松浦利尚

    松浦委員 在外公館委員会を設けることも将来考えようということの理事会でのお話し合いもありました。ぜひ本問題については本委員会でも、先ほどの渡部委員の質問と同じように、十分議論を尽くすよう委員長としての御配慮をお願いして、私の質問を終わります。
  80. 片岡清一

    片岡委員長 理事会でよく相談して決めたいと思います。  午後三時三十分から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時四十二分休憩      ――――◇―――――     午後三時四十一分開議
  81. 片岡清一

    片岡委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。鈴切康雄君。
  82. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私は、公明党・国民会議を代表いたしまして、在勤法の質疑をさせていただきますが、その前に、防衛庁長官に若干御質問を申し上げたいと思います。  けさ方、防衛庁長官から、今回去る二月二十七日、自衛隊員訓練中に他の隊員に向けて小銃を乱射した、そのことによって一名はとうとい命をなくしてしまった、そういう御報告があり、それからまた、岩国所在海上自衛隊所属のPS1対潜哨戒機の射爆撃訓練中の墜落事故報告がなされましたけれども、これはいずれもとうとい人命を失っております。かかる事故並びに不祥事という問題については、これはまさしく国民防衛庁に対する不信感につながってくる問題であろうか、このように私は思います。  そういうことであるとするならば、事は決して安易に考えるべき問題ではない。そういうことから考えまして、防衛庁長官はこの問題についての責任をどのようにお感じになっておられるか、その点について伺います。
  83. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 今いろいろとお話がございましたが、非常にこれは重大な問題である、私自体も大変な責任感じております。  私が今感じておる責任は何かといいますと、まずもって、事態はどうして起こったか、その原因を徹底して調べて、今後こういう事態が起こらないようにどうするか、そういう対策を立てることが一番大切である、それが今私に課せられた最大の使命である、そういうふうに考えているわけでございます。
  84. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 小銃乱射がもし善良な国民に向けられたとするならば、これは武装集団を預かる防衛庁長官としては責任を問われるという、そんな生易しいものではない、それぐらい重大な問題です。  私は、今回防衛庁隊員が何人かこの中にあって亡くなられたということについては本当に弔意を改めて表明したいと思いますけれども、やはり隊員の充足率を満たすために、安易な採用とかあるいは教育訓練あり方とか、そういうものに少し問題があるのではないか。また、PS1の航空機事故は、実は一年もたたないうちに今回で二機が墜落している。そういう問題、これに対しては全く何ら反省がない。反省がないということがこういう事故につながるわけでございまして、しかもF15戦闘機、これも墜落しておりますね。F15戦闘機も墜落している。あるいはまたC1輸送機も二機、つい最近といいますか、あなたが防衛庁長官になる前に二機、これまた衝突をして墜落している。こういうふうな相次ぐ事故が起きているわけです。  そう考えてまいりますと、問題は、ただ単に事故調査とかあるいは原因を探求するとかそういうものでなくして、本当にこれはもう防衛庁長官、あなた自身の責任と同時に関係者の責任所在というものを明確にしなければならない、私はそういうふうに思っております。  しかも、内閣においては責任継承の原理というのがありますから、あなたは確かに防衛庁長官になられてから閥がないわけでございますけれども、少なくとも内閣委員長もおやりになっておられる、そういうふうなことから考えて、防衛の問題についてはかなりベテランであるはずです。そういう中にあって、いろいろな問題が次から次へと起きているという問題について、ただ謝ればそれでいいというものではないと私は思うのですが、いかがですか。
  85. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 お言葉の中のあれを取るわけではございませんが、私は内閣委員長はやっておりません。予算委員長です。  それで、防衛庁長官、おまえが責任をとる、この責任はどういうことを意味されるか知りませんけれども、おまえが責任をとる、そこまで含めてそれなりの処置をしろ、こういうような御意味でございますれば、私の問題につきましては、私の上の方がおりますからその方の指示に従うのはこれは当然であります。  しかし、私の段階でこの事件について申し上げられますことはどういうことかというと、やはり調査を徹底的にして、そしてその方策を講ずる、それが当面の大きな私の責任だと思っておりますが、その間に、今度の事件で果たして最善を尽くしたかどうか、こういうふうなことをしたならばこうならなかったのじゃないか、ああすればこうなったのじゃないかというようなことまで含めまして、そこら辺を検討して処理すべきものはきちりと処理していく、そういうつもりでございます。
  86. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 防衛庁責任者は、少なくともあなたは第一義的には責任者です。確かに内閣総理大臣は国防会議の議長である。ですから、そのことについてお伺いを立てるということはある程度筋かもわかりませんけれども、しかし、少なくとも武装集団を抱えている長はあなたなんですから、そういうものに対してもう少し責任というものを感じていただかなければ、こういうふうな問題はなかなか解決できない。  そこで、こういうふうな問題が起こったということは、しかも一日に二回もこういうような事故並びに不祥事が起こった、これは考えてみると、いつ何ときまた起こるかわからない、そういう状況下にあると私は思うのですよ。ですから、あなたが言うように、事故が起きた事情やあるいは墜落事故原因調査するというのは、これは当たり前のことなんです。これをやるのは防衛庁長官として当たり前のことなんですね。  それよりも何よりも、まず、少し自衛隊自体の綱紀が弛緩しているのじゃないか。また、防衛庁長官はこのところ予算のことで頭がいっぱいで、なかなか自衛隊隊員のことまで思いがいたし得なかったのではないか。あるいは自衛隊の教育のあり方に問題があったのじゃないか。あるいはまた、訓練あり方に問題があったのじゃないか。あるいはまた、隊員の生活の相談等にも本来乗ってあげなくちゃならないはずだ。今、聞くところによりますと、隊員の中に随分サラ金を借りたりなんかして苦しんでいる状況だってあるのです。あるいは自衛隊員がエスケープしてしまっている問題だってあるのです。あるいはまた、蒸発してしまっている、そういう事故だってあるのです。  まあ防衛庁長官はその報告を聞いているかどうかは知りませんけれども、私の調査から言いますとそういうふうないろいろな問題がある。だから私は、この際、やはり装備の点検並びにいろいろと危険が予想されるものに対してすべて防衛庁としては陸海空あわせて総点検をしてみる必要がある、そしてチェックをしてみる必要があるのじゃないか。それくらいやらなければ、一日に二回の事故並びに不祥事件が起きているということは、これは本当にいつ何とき起こるかわからないという、そういうような状況下に置かれているということを私は心配するからなんです。その点についてはどう思うのですか。
  87. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 先ほど来のお話の中で、ひとつもう一回申し上げておきますが、私は自分自身責任を回避するつもりは毛頭ございません。私がとるべき責任というものについては、私自体よく承知をしております。ですから、先ほど来申し上げておるとおり、自分としては、原因を究明し、徹底的な対策を立てるということでございます。  その際、それではいままでとちっとも変わらないじゃないか、こう言っておりまするけれども、私は、少なくとも言っていることはこういうことであります。それは、言いわけをするな、言いわけをして、こういうわけだからこうでございますというよりも、どうしてこう起きたんだという皆さん方の御批判を率直に心の中にとめて、そしてやるべきだ、そういう意味合いで、私は非常に強く、しかも敏速に対応策をいま命じておるところでございます。  それからもう一つは、これはたまたま陸上自衛隊海上自衛隊の問題でございますが、これは航空の方にも出てくる、そういう全般的な問題として、防衛庁自体として今後事故の起こらないようにいろいろの問題についてしっかりやらなければいかぬ。ただ単にこの事件だけというのじゃなくて、いま鈴切さんは総点検という言葉がございましたが、気持ちといたしましては、この事件にかんがみて防衛庁全体として、実動部隊についてあるいは内局についても反省すべきことはなかったか、そういうことでやらせておりますので、私どもの気持ちはお酌み取りをいただければ大変幸せだと思います。
  88. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 大体、防衛庁長官に対して御質問申し上げたのは、もう二度とこういう問題が起こってはいけない、そういう警告のもとに御質問を申し上げたわけです。防衛庁長官責任感じているとおっしゃっているわけでございますし、責任感じているとするならば、私が申し上げましたようにいつ何とき事故というものが起きるかわからない状況下にあって、やはり危険につながるような問題についてはすべて総点検をしてチェックをしていただきたいということをお願いをいたしまして、防衛庁長官の方はどうぞお引き取りになって結構でございます。  それでは、在勤法でございますので、外務大臣を中心にいろいろとお話を伺ってまいります。  ことし八四年の国際情勢というものについては、外務省は年頭に当たって非公式の見解を実は明らかにされました。その内容というのは、やはり東西の対立を背景に不安定な状況が増すであろう、その可能性が強い、こういうふうな内容で、四項目から五項目にわたってその説明をされております。  ところが、御存じのとおり今回アンドロポフ書記長が亡くなられまして、チェルネンコ書記長が就任をされました。少なくとも外務省が年初の見解を明らかにした状況から何らか変化が出てきているのか、あるいは全く変わっていないのか、あるいはまた今後どのような推移をたどっていくかということについての外務大臣の御見解をお伺いします。
  89. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 世界情勢は、今お話しのように全体的に非常に厳しいものがあると思います。米ソ関係一つをとってみましても、INF交渉が中断をいたしております。STARTの交渉も中断をしている、こういう状況にありますし、さらにまた地域におきましても、イラン・イラクの紛争であるとかあるいはレバノンの紛争であるとか、さらに中米の紛争等、地域紛争も各所でこれが縮小するというよりはむしろ拡大の方向にすら動いている。こういうことで全体的に大変厳しい。こういう状況にあるわけですが、そういう中でチェルネンコ新体制ができ上がりまして、私どもは、この新体制によって、中断をされた米ソの核軍縮に関する交渉が再開される、同時にまた米ソの対話あるいは東西の融和が進むことを期待をしておるわけでございますが、しかし今の状況から見ますと、チェルネンコ新体制ができましたけれども、ソ連に大きな変化が起こるとも今のところは思われないわけであります。  したがって私は、大きな基本的な世界の枠組み、特に東西間の枠組みは変わらないでいくのじゃないか。特にソ連はアメリカの大統領選挙等を見ておると思いますし、今アメリカは選挙でいっぱいという状況でございますから、そういうことを考えますと、今早急にここで何か新しい動き、東西が融和するような動きが急激に高まる、こういうふうには思えないわけでございます。
  90. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 今回、アンドロポフ書記長が亡くなられたときに、安倍外務大臣は国を代表してソビエトヘ行かれました。そのときに、言うならば弔問外交をやってこられてグロムイコ外務大臣とお会いをされたわけでありますが、グロムイコ外務大臣と話をされた中で、認識が一致した問題と、認識が違ったというか、すれ違ったというような問題と立て分けをすると、どういうようなお話をされてきたのでしょうか。
  91. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 四十分ばかりグロムイコ外相と話をしたわけでございますが、認識が完全に対立したのは、何といいましても北方四島の問題が第一であります。私の主張に対してグロムイコ外相は、領土問題に関してはソ連の態度は変わらない、こういうことでありましたし、それからまた、ソ連の極東における軍事力の増強問題を取り上げたわけでございますが、この点については、むしろソ連としてはアメリカの極東における軍事力の展開ということを主張するわけでございますから、この辺も意見が対立したと言えるわけであります。  一致したと言えることは、二国間の対話を進めていこうということでございまして、私から、ソ連は世界の超大国である、同時にまた、日本も最近では世界の中で非常に経済力も充実し、また発言力も、政治、経済の面において強くなってきた、ですから、その隣国同士が国際情勢についてあるいは二国間の問題について話し合うということは、根本的に対立する問題があるとしても非常に大事なことじゃないか、世界のために両国のために大事じゃないかということを強調いたしました。それに対してグロムイコ外相も、まさにそのとおりである、こういうことでございました。  その認識の一致を踏まえて両国の高級事務レベルの会談を開くことを決定したわけでございますが、基本的には、これまでの日ソ間の対立している基本路線がここで一致するという面はなかったわけですが、しかし対話を一歩進める状況になったということは、それなりの成果はあったのじゃないか、こういうように思います。
  92. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そのいわゆる日ソ事務レベル協議が三月の十二日から三月の十三日、開かれるわけでありますが、私はこれは非常に重大な問題を話し合わなければならない問題だと思います。当然二国間の問題とか、あるいはイラン・イラクの問題とか、あるいは文化交流の問題、経済交流の問題、いろいろな問題があると思いますけれども、少なくとも日ソ事務レベル協議については大体どういうことが話し合われる素材になるのでしょうか。
  93. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 大体、日ソ高級事務レベル会議での議題としては、国際情勢と二国間の問題、こういうことになっております。したがって、現在の国際情勢、特に米ソの問題であるとか東西関係であるとか、あるいは中東の問題であるとか朝鮮半島の問題であるとか、そうした山界情勢全般につきまして話し合いが行われる。  同時にまた、二国間の問題については領土問題は避けて通ることはできませんし、あるいはまた極東におけるソ連の軍事力増強、最近ではノボロシスク等が果たしてウラジオストクに極東艦隊の一員として配備されるかどうかということも日本としては聞きたいところでありますし、あるいは大韓航空機撃墜事件も我々がしなければならぬ議題一つだ、こういうふうに思っております。  二国間の問題は、そういう今申し上げましたような問題、同時にまた、積極的な対話の推進の問題としての文化交流であるとか人的交流であるとか、あるいはまた経済の交流の問題等についても幅広く意見の交換をしたらいいんじゃないか、こういうふうに考えておるわけであります。
  94. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 何か日ソの関係というのは底をついたような感じの中にあって、これからどう対話を進めていくかということが非常に大きな問題になっておるわけでありますけれども、そこで、一部新聞に伝えられたことでございますけれども、六月に開かれるロンドンの主要先進国首脳会議、いわゆるサミットで、日本を含めた西側各国が続けている対ソ経済制裁措置の緩和の方針を何らか打ち出すんじゃないだろうかというようなことが一部伝えられております。  今お話を聞きますと、非常に東西関係においても進展がない中にあって、こういう問題が直ちに議題に上り得るものであるか、また、西側というふうな全体の中にあってこれはとらえていかなければならない問題でありますけれども、新聞にはたしかそういうふうな問題が載っておったわけでございますから、その点についてはどういうふうにお考えですか。
  95. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ロンドンのサミットの議題につきましては、今、各国首脳の個人代表が時々会合をいたしまして議題の整理をしておるわけでございまして、これは表に出さないということになっております。しかし、現在の世界経済の問題あるいは自由貿易をいかにして確保していくかという問題等、さらにまた政治の面においてもやはり東西問題が出てくることは、これはもう当然ではないか、こういうふうに思うわけでございます。     〔委員長退席、池田(行)委員長代理着席〕 これは、ウィリアムズバーグ・サミットのことを考えても、政治の問題がやはり出てくるであろう、こういうふうに思います。  そういう中で、果たしてこの対ソ制裁措置議題になるかどうか、今から即断はできないわけでございます。そして、これは今おっしゃるように西側全体でとらえなければならない課題であります。これは全体の今の東西間の枠組みとか世界の状況というものが変化してないわけですから、私はこの問題が大きな議題になって登場するというふうにはちょっと思えないわけでございます。しかし、これを強化するというふうなそういう空気には全くないわけでございます。
  96. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 対話を進めていくということになりますと、窓口は何といっても外務大臣とソビエトの場合においてはグロムイコ外務大臣だと私は思うのですけれども、それについて外務大臣は、対話を続けるという以上は何らかの形でそのお二人の接点を求めなくてはならないわけですが、その点についてはどうお考えになっていましょうか。
  97. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 この前やっとグロムイコ外相と会うことができたわけです。去年の九月の国連総会では何とかこの会談が実現できるというふうに思っておったわけですが、大韓航空機事件でついに流れてしまったということでございますが、この前会ったときの話し合いの中で、これからも対話は続けていこう、必要じゃないかということに合意したわけでございますので、これから機会を見てこの対話を、特に高級レベルの対話というものは進めていかなければならぬと思うわけであります。  ただ、外相会談の場合は、日本の立場としては、今度はソ連に来てもらう番でございますから、グロムイコ外相にはあなたの番ですということを言ったわけでございますが、まだ時期が十分熟してないというようなことで非常に消極的でございました。その点は、重ねて我々はこれを強く求めていきたいと思っております。しかし、九月には少なくとも国連でグロムイコ外相と会う機会を持つことができる、こういうふうに考えておるわけであります。
  98. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 これは防衛庁の方ですが、ベトナムのカムラン湾のソ連の基地化が進んでいるというような報道がもたらされているわけでありますけれども、そのいわゆる基地化という問題についてはどの程度の情報をおつかみになっているのか。  もう一つは、極東ソ連基地はその後どういうふうな変化がなされていましょうか。
  99. 古川清

    ○古川政府委員 お答え申し上げます。  まず、ソ連の極東におきますところの軍備状況の方を先にお答えしたいと思います。  総論的に申し上げますと、二十年ぐらい前まではソ連の軍事力の一割ないし二割程度が極東配備ということになっておりましたけれども、最近、特にこの数年間、言ってみますならば極東シフトという感じでございまして、現在はソ連全体の軍事力、海軍も陸軍も空軍も含めまして、おおむね二割五分ないし三割、したがいまして四分の一ないしは三分の一程度が極東に配備されておるという状況でございます。  総論的に申し上げますと、例えばバック・ファイアという非常に足の長い爆撃機がございます。片道四千二百キロぐらい飛ぶ。そうなりますと、アジア全体がその中にすっぽりと入ってしまうわけでございますし、しかも核弾頭を持つミサイルを持っておるということで大変強力な爆撃機でございますが、私どもが把握しているところでは、現在これは極東全般で約八十機配置されておる。したがいまして、かなりふえておるということでございます。  また中距離ミサイルにつきましては、例のSS20でございますけれども、世界全体で三百六十から三百七十八基にふえたというふうに私どもは把握しておるわけでございますが、ふえましたものが全部極東に配備されておる。したがいまして、現在極東におきますところのSS20の配備のトータルな数は百三十五基と私どもは考えておるわけでございます。  さらには、新鋭の戦闘機ミグ23でありますとかあるいはスホーイ24でありますとか、これは私ども第三世代の航空機、つまり足も長くなっておる、それからペイロード、積める爆弾も非常にふえておる、こういうふうに考えておりますけれども、こういったものの配置もふえておるということでございまして、全体といたしまして非常に極東におけるソ連軍の増強が著しいわけでございます。  さらに、陸軍の方について申し上げますと、これは極東全体といたしましては四十個師団、三十七万ということでございます。  さらに、海軍の方について申し上げますならば、現在極東に配備されておりますものは八百二十隻おりまして、トータルな数が百六十二万トンというふうに我々は考えております。さらに、潜水艦の数は百三十五、そのうち六十五隻が原子力というぐあいでございます。ノボロシスクが空母としてテレビ、新聞等にも報道されました。お供の船と一緒にウラジオに入ったと我々は見ておりますけれども、これがずっと今後配備されるのかどうか、これは私どもまだ確たることは承知しておりません。  次いで最初の御質問でございますベトナムのカムラン湾、あそこにはカムラン湾とダナン、両方に実は基地があるわけでございまして、最近ここをソ連が非常に使っておる、軍事的に利用しておるという兆候が顕著でございます。私どもの把握では、現在少なくとも二十数隻のソ連の軍艦が、ダナン及びカムラン、この両方の軍港を利用してあの辺のプレゼンスをやっておるという感じがいたしております。  さらに、カムラン湾、ここには空軍、飛行場もあるわけでございますけれども、四機のベア、これは非常に足の長いターボプロップの爆撃機でございますが、これが四機どうも常駐しておるという感じでございます。これが南シナ海の偵察行動をやっておる。ところが、昨年の十一月の中旬から十二月の初めにかけまして合計九機のTU16、バジャーと我々呼んでおりますけれども、これは先ほど申し上げましたベアよりははるかに足が短いけれども、約五千キロ近い、かなりの行動力を持っておりますが、これが合計九機ほど対馬海峡を渡りまして南下したわけでございます。これがどうやら現在カムラン湾の空港におるようでございまして、常駐されるかどうかという点は私どもはまだ最終的な結論には至っておりませんけれども、このベアと、加えましてバジャーが加わっておる。さらに、常時二十数隻のソ連の船がこのダナンとカムランを利用して南シナ海のところに軍事のプレゼンスを保有しておるというような状況と私ども考えております。
  100. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 きょう午前中にも同僚議員の方からいろいろお話しありましたけれども、二月二十七日にイラク空軍のジェット戦闘機が、ペルシャ湾のイラン石油基地、いわゆるカーグ島周辺の油基地にいたところの石油タンカーに攻撃をしたというような発表がなされたわけであります。これについて、イランの報復、ホルムズ海峡の封鎖の可能性が出てくるんじゃないかというような心配なんかも実はあったわけでありますが、外務大臣はこのイラン・イラク紛争が拡大の方向、傾向にあるということについても非常に関心を持っておられることだろうと私は思います。なかんずく日本の国はイラン、イラクともにそれぞれ外交チャンネルを持っているわけですが、そういう中から、外務省としてはこの方の情報というものはどのようにおつかみになっておるのでしょうか。
  101. 波多野敬雄

    ○波多野政府委員 カーグ島を攻撃したというイラク政府の発表に対しまして、翌二十八日、イラン政府は攻撃の事実を否定する発表を行いまして、攻撃を果たして行ったか否かについての事実確認は今のところ完了しておりません。ただし、その後調査をしましたところ、攻撃を受けた形跡は残っていない、少なくとも大きな損害はいかなる形でも認められないという調査結果を得ております。それから、イラクが攻撃したという二十七日の翌日、二十八日からカーグ島における石油の積み出しは平常どおり行われているという事実も確認しております。
  102. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 きのうでしたか、イラク側が、日本の船舶のホルムズ海峡並びにカーグ島の石油積み出しについては非常に危険であるから船舶は近寄らないようにというような、副首相か何かのそういう記者会見があったように伝えられているのですけれども、これは事実でしょうか。
  103. 波多野敬雄

    ○波多野政府委員 現在パリを訪問中のイラクのラマダン副首相がパリにおいて記者会見を開きまして、その席上記者団の質問に答えまして、カーグ島は攻撃対象地域であるから、ここに立ち寄る船は日本の船であってもどこの船であっても攻撃対象になるということを申したと了解しております。
  104. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そのような状況の中にあって、まだ実際に確たる情報といいますか、外務省の情報は新聞情報とは大分違うわけですわね。ともあれ、いわゆるイラク・イラン紛争というものは大変にエスカレートしてきているような状況なんですけれども、それに対して日本が直接に果たし得る役割、あるいはアメリカを通じてイラン・イラク戦争の言うならば話し合い、終結という問題についても、外務大臣、これは日本の経済の根底を揺るがす問題であるだけに、日本としては何か働きをおかけになるという考えはないでしょうか。
  105. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私はかねてからイラン・イラク紛争に大変関心を持っておりました。この戦争が長引いて、そしてこれが拡大をしてホルムズ海峡が封鎖される、破壊をされるということになれば、世界はまたさらに第三次石油ショックにもなり得るということで、大変心配し、関心も持っておったわけであります。いろいろと調停、仲介者もありましたけれども、これも成功しない。一方、そういう中で西側の諸国は、アメリカ初めイギリスにしてもあるいはフランスにしても、イラクにはパイプは持っておりますがイランとはパイプがない、こういうことでいかんともしがたい。ソ連も、イラクとは関係があるけれどもイランとは絶縁状況である。こういう中で日本のみがイラン、イラクとは両方親しい関係にある。やはりこの際日本がイラン、イラクに対して積極的に働きかけて、仲介とか調停ということでなくても戦争の拡大を防ぐというための努力はしていくことが日本の国際社会における責任一つじゃないだろうか、こういうことを考えておりまして、そういうことから実は昨年イラン、イラクを同時に訪問をいたしまして訴えたわけでございます。その結果として、イラン、イラクと日本との政治的な一つのパイプというものはできてまいって、今日に至っておるわけでございます。  その中で、イラン・イラクの状況は必ずしも好転してないわけでございまして、依然として紛争が続いておる。そしてまた拡大をするおそれすらある。カーグ島の爆撃というのは、情勢を見てみますと、外務省が収集した状況ではどうも少しイラクが一方的に宣伝といいますか、そういう具に供したと思われる節もあります。しかし、これはまだある意味においては警告かもしれない。この次の階段のための一つの警告かもしれない。決して油断はできない。いまの状況から見ますと、そう両国ともこれを大きくしよう、拡大しようという状況にはないと私は思いますけれども、しかし戦争のことですから決して油断ができない、こういうことにあるわけです。その中にあって、せっかく日本は両国との間にパイプがあるわけでございますから、これまでも努力しましたが、今後ともこのパイプを通じて、少なくとも紛争の拡大を防ぐための、あるいは平和的な環境をつくっていくためのこれからの外交活動は積極的にやっていかなければならない。そうしてまた、そういう中で日本が大きな役割を果たすときが来るのではなかろうかというふうに私は思っております。こういう問題は、一時的に一喜一憂しないで、腰を据えて取り組んでいく必要があるというふうに感じております。
  106. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いろいろ御努力を願っておることなのでございますけれども、今の状況においては原油の価格の値上がりということはまずない、そのように考えてよろしゅうございましょうか。
  107. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今の状況では、カーグ島からの積み出しは順調にいっておるということでありますし、ホルムズ海峡が封鎖されるというふうな状況にもないわけでございますから、原油価格が高騰するということは考えられないわけであります。しかし万一ということがあるわけで、これはいつもみんな心の底では不安を持って見ておるわけでございます。
  108. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 在勤法の改正案の中で、四十カ国で構成されている軍縮交渉機関であるジュネーブの軍縮委員会が軍縮会議という名称変更になったのに伴い、軍縮会議日本政府代表となったわけでありますけれども、軍縮委員会会議となることについて、何らか内容的に変更されるのか。それについては何か意図があるのでしょうか。
  109. 山田中正

    山田(中)政府委員 お答え申し上げます。  ジュネーブで行っております軍縮交渉、これは国連と関係のございます非常に重要な交渉でございます。国際機関でのいろいろな交渉の名称といたしましては、委員会よりも会議の方が格が上であるということがございまして、一昨年の第二回の国連軍縮特別総会においてこの名称変更の示唆がございました。それに引き続きました国連総会におきましてもそれを認めまして、昨年軍縮委員会自体で協議した結果、本年の会議から軍縮会議というふうに名称変更しようということになったものでございます。  名称変更に伴って内容的に特に変わるということはございませんが、この交渉は国連の事務局が会議のいろいろな指示をいたしておりますので、その場合に、先ほど申しましたように格が上がりますと、優先度を置いた会議の便宜が図られるという利点があると思います。
  110. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 軍縮関係では、国際機関ではニューヨークの国連総会第一委員会、それとジュネーブの軍縮会議が大きな柱となっているわけでありますが、軍縮会議議題として五つの作業部会が持たれているわけですね。一つは核実験の全面禁止、二番目には化学兵器の禁止、三番目には放射性兵器の禁止、四番目には包括的軍縮プログラム、五番目には非核兵器国の安全保障というものが設けられているわけでありますけれども、この会議で新しい作業部会を設置しようという動きがあるのですが、その議題はどういうふうなものでしょうか。
  111. 山田中正

    山田(中)政府委員 お答え申し上げます。  今先生御指摘ございました五つの作業部会は、昨年の軍縮委員会において設けられておったものでございます。  本年の軍縮会議におきましては、一昨日三つの作業部会、先ほど先生がお挙げになりました中の化学兵器の禁止の作業部会と非核兵器国の安全保障に関する作業部会、それから包括的軍縮プログラムに関する作業部会、この三つが設定されました。ほかの点につきましてはまだ決まっておらないわけでございますが、核の分野で日本が非常に努力いたしております、先生も御指摘ございました核実験全面禁止の作業部会、放射性兵器の作業部会、こういうものはぜひ実現するようにいたしたいと思っております。  そのほかの問題といたしまして、作業部会ができるかどうかまだ確定いたしておりませんが、例えば宇宙の軍備競争を防止する審議、こういうことを進めていきたいと考えております。
  112. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 二月二十一日、ジュネーブの軍縮会議でソ連が化学兵器の検証を受け入れるということを明らかにいたしておりますけれども、そのソ連の意図するところはどういうところにあるのか。また、これに対してアメリカはどう対処しようとしておるのでしょうか。
  113. 山田中正

    山田(中)政府委員 先生御指摘のように、ソ連は軍縮会議の一般演説におきまして、今先生御指摘のような方針を述べました。化学兵器の禁止につきましては、従来非核分野で日本が非常に力を入れておる部分でございます。従来私ども、化学兵器の禁止を実効的にするためには、やはり検証が非常に重要であるということを主張しておったわけでございますが、ソ連は一般的には恒常的な、継続的な検証を否定する立場をとっておりました。ところが、先ほど先生御指摘ございました演説におきまして、廃棄する段階で廃棄場所での継続的な現地査察を認めるということでございますので、この点につきましては非常に明るい展望が開けてきたと思います。アメリカもこの点は評価いたしております。  ただ、問題なのは、廃棄の過程だけではなくて、生産の過程、それから貯蔵がされておるのかどうか、この辺についての検証が非常に重要でございますので、私どもとしましては、ソ連がこの点についても前向きな姿勢で臨んでくるのを期待しておるわけでございます。
  114. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 今お話がありましたように、廃棄施設の検証についてソ連が今回受け入れたというわけでありますけれども、それについて、化学兵器そのものの定義が実際には余り明確になっていないということと、それから先ほどお話がありましたように、化学兵器の貯蔵庫に対する検証、廃棄施設に対する検証あるいはまた生産に対する検証、こういうものが検証の中でどう詰められるかということが検証の中においては一番大切な問題だというふうに思うのです。だから、一歩前進ではあろうかと思いますけれども、しかし、検証するという以上はこういうふうな問題についても格段の努力をしていかなくちゃならぬと思うのですが、その点についてはどうお考えでしょうか。
  115. 山田中正

    山田(中)政府委員 今先生御指摘になりましたとおりであろうと思います。何を禁止の対象とするか、これは化学剤の範囲がまだ合意ができておりません。それから、化学剤は平和産業で使われるものもたくさんございますので、その辺の兼ね合いの問題もございます。それから、検証の点につきましては先生おっしゃったとおりでございます。私どもそのラインで努力してまいりたいと思います。
  116. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それは現在のものに対しての廃棄なのか、あるいは将来にわたっても含まれるのか、そういう点については何らか感触がございますか。
  117. 山田中正

    山田(中)政府委員 お答え申し上げます。  この条約がこのような取り決めができまして実施になります場合には、既存のものの廃棄、貯蔵をなくするということも含めると同時に、将来の問題といたしましても、生産が行われていないということを確実に検証する必要がございますし、また何らかの形で隠れて保存が行われておるということをも防止する検証が必要であろうかと考えております。
  118. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 国家間の相互信頼を促進することが私は軍縮の大きな柱というふうに思います。それには二大超大国である米ソの話し合いが根幹になることは当然ですが、現在INF交渉にしてもSTARTにしても次回のめどがつかないという状況の中にあって、交渉が再開される見通しというものはもう全くないのか。ないとするならば、どういう理由でそういう形になってしまっているのか、また、日本はいわゆる非核三原則、核を持たない、そういう平和国家としての立場から言うならば一番言いやすい立場なんですが、その点について外務大臣としては、この大きな世界の潮流の中にあって日本の果たし得る役割をどうお考えでしょうか。
  119. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 やはり世界の平和にとって一番大事なことは、米ソの和解といいますか東西関係の緊張緩和だろうと思うわけでありますが、残念ながら、御承知のように米ソ関係が行き詰まっております。そういう中でINF交渉、STARTの交渉も中断しておるという状況でございます。我々としては、このままの状況が続いて中断じゃなくて決裂というようなことになりましたら、また核軍拡競争に入って世界は大変緊張の状況になってくると心配をいたしておるわけで、INF交渉が一日も早く再開されること、STARTの交渉が再開されることを念願をしております。  そのために、日本としてのできるだけの外交的な努力を米ソ両方に対してやらなければならぬと思うわけでありますが、しかし情勢を見ると、ソ連は新しいチェルネンコ体制ができまして、アメリカとしても対話を模索をしておる。何とか開きたい、レーガン大統領を初めとして努力をしておるというふうにも受けとめるわけでございますが、しかし、グロムイコ外相等の演説等を見ますとこれはなかなか容易でない。チェルネンコ新書記長も対話については非常に弾力的な姿勢があるようですが、全体の動きはなかなか動くような状況に今ない。これは、ソ連も新しい体制はできたけれども、まだ権力体制が確立してないという点もあるんじゃないか。反面において、アメリカにおける大統領選挙があるものですから、大統領選挙をソ連としては横目で見ながらこの問題をいろいろと検討しているんじゃないか。全体の状況から見ると、今ここで一段ぽっと進むというふうには我々は思えないというふうに判断をいたしておるわけです。しかし、これが悪化することだけは避けるために努力をしていかなければならぬ。その点は、今の新政権もアメリカもそういう方向には動いてないと考えておるわけであります。
  120. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 核の問題についてちょっとお聞きしますけれども、非核三原則については、核をつくらず、持たず、持ち込ませないということでありますけれども、御存じのとおりラロック発言とかライシャワー元駐日大使の発言等、あるいは米海軍の事典に記載されている米海軍省高官とか、我々、党がいろいろと核の持ち込みについて今日まで何回か疑惑を持ち、疑惑についてはそれなりにこの場所で追及をしてきた問題でございますけれども、それについては、アメリカとの間に事前協議制があり、アメリカから一度も協議がなされてきていないから核は持ち込まれていない、それはアメリカを信用する以外にない、政府はそのように言っているわけでありますけれども、政府としては非核三原則を今後も堅持する、それを変更する意図は全くない、こういうことなんでしょうか。
  121. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 非核三原則は、御承知のように歴代内閣の総理大臣もこれはいわば国是である、こういうことも言ってきておるわけでございます。日本が平和国家として平和外交を進めていく上においても、これは何としても守っていかなければならない大原則であると私は信じております。したがって、今日までもこれを守ってまいりましたが、今後ともこれは守っていく決意であります。
  122. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 政府は、非核三原則は国是であると言われている以上、これを単なる政策上の問題として政府限りの裁量で変更したりあるいは廃止することは許されないと思いますけれども、外務大臣はどうお考えでしょうか。
  123. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはこれまで自民党内閣がずっと一つの基本的な方針、いわば国是として打ち出してきておる大原則でございまして、これについては国民の圧倒的な支持も得ておる、こういうことでございますから、我々としては今の状況の中でこれを変更するなどということは毛頭考えておりませんで、これは守っていかなければならない原則である、こういうふうに存じておるわけであります。
  124. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 御存じのとおり、非核三原則は国会決議というだけでなく、これは実は重大な経緯があった問題であります。それは沖縄施政権の返還協定に際して我が党を含めて提案した問題であり、非核三原則の問題は本会議においても公式に承認をされたということであります。そこで私は、非核三原則は単なる政策の問題でなく、政府の国会及び国民に対する最高の約束にほかならないというふうに思うのですけれども、その点についての御認識はどうでしょう。
  125. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 この原則は、今私も申し上げましたが、国会でも決議がされておりますし、国民も広くこれを支持しておる原則である。政府もしばしば内外に対して言明をしておる原則でありますので、それなりの非常に大きな重みがある、こういうふうに考えておりまして、これは日本として当然守っていかなければならない大原則である、こういうふうに信じております。
  126. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 核を持たず、つくらず、持ち込ませないということは、我が国の国是であるというふうに先ほど外務大臣は言われたわけでありますけれども、それはさておいて、日米安保条約並びに地位協定は、核の使用を含めてアメリカは日本を守る義務的協定になっているかどうか、この点についてはどうでしょうか。
  127. 北村汎

    ○北村政府委員 御指摘の点につきましては、日本に対する武力攻撃が通常兵器であれあるいは核兵器であれ行われた場合には、アメリカは日本を防衛するという安保条約第五条の条約上の義務を持っております。
  128. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 核を持たず、つくらずは、もう御存じのとおり、原子力基本法あるいは平和憲法の上においても私はこれはできるものではないだろうというように思うわけでありますけれども、核を持ち込ませないというのは、我が国の政策上の問題であり、憲法上の問題ではないんじゃないかというように思うのですが、その核を持たず、つくらず、持ち込ませずというものは、国是であると同時に憲法上においてはどういうふうな取り扱いになるのでしょうか。
  129. 小和田恒

    ○小和田政府委員 お答えいたします。  非核三原則と憲法の関係につきましては、昭和五十三年に法制局長官が御答弁申し上げておりますように、委員御指摘のように持たず、つくらず、持ち込ませずという三つの原則の一つ一つと憲法との関係については、若干の違いがございます。  つくらず、持たずという点に関しましては、政府は、憲法第九条の解釈との関係におきまして、憲法上許される必要最小限度の自衛力との関係において、憲法上許される種類のものとそうでないものとある。しかしながら、そのことは別といたしまして、つくらず、持たずということは日本の基本的な政策方針である、国是であるということを申し上げているわけでございます。  他方、持ち込ませずというものは、一般的な問題といたしましては日本の政府が基本的な政策として採用しておるということでございます。ただし、アメリカとの関係におきましては、御承知のとおり条約上の関係があるということでございます。
  130. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、憲法九条から見た場合において、つくらず、持たずというものについては、自衛である場合においては許されるという解釈になるのですか。自衛のためであるならばそれは許されるのだというふうな解釈なんでしょうか。
  131. 小和田恒

    ○小和田政府委員 政府がかねてから申しておりますことは、わが国には個別の固有の自衛権というものがございまして、自衛のための必要最小限度の実力を保有するということは憲法第九条第二項によっても禁止されてはおらないというのが政府の立場であるということでございます。したがいまして、理論的に申し上げれば、核兵器であっても、そのような限度にとどまるものであればこれを保有することは憲法自体が禁止しているわけではない。他方、右の限度を超える核兵器の保有は憲法上許されないというのが政府の考え方でございます。
  132. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 外務大臣、国是で、つくらず、持たず、持ち込ませないという非核三原則があるわけですね。一方憲法では、自衛の範囲において最小限の自衛能力を持つということは許されている問題であり、言うならば、もしそういうふうなことであれば核は憲法で制約外になるんだ、自衛のためであるというならば制約外になるんだということなんですが、このいわゆる非核三原則と、それからもう一つは憲法の解釈との間のそういう問題についてはどうなんでしょう。
  133. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは、今条約局長が申し述べましたように、憲法九条の解釈で、理論的には、自衛のための核の持ち込みあるいはまた核を製造するということは、自衛の範囲内においては否定しているものではない、私もそういうふうに憲法解釈として認識しておるわけでございます。しかし、日本の平和憲法という精神から見まして、そしてまた、日本が最初の原爆の洗礼を受けたという国民感情、さらに戦争はしないという日本の強い国民の意思、そういうもの等から踏まえて、核につきましては非核三原則というものを国是として日本政府は打ち出しておる、そしてこれが国民の中に定着してきておる、国民の支持を得ておるということでございます。したがって、憲法、そして非核三原則というものによって、日本の平和国家としての地位というものが世界の中で明確に打ち出されておるというふうに認識をするわけであります。
  134. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 先ほども話がありましたように、いわゆる義務的協定になっているとすれば、アメリカは日本の国の寄港とか通過については当然必要のときは認めてもよいのではないか、また義務を果たすためには寄港とか通過は当然の権利であると主張しているのじゃないかというように思うのですけれども、その点については全く主張されていませんか。
  135. 小和田恒

    ○小和田政府委員 お答えいたします。  先ほど北米局長が答弁申し上げましたように、日米安保条約のもとにおきましては、第五条の規定によりまして、日本に対する武力攻撃があった場合には日米共同対処をするという形でアメリカが日本の防衛に参加する義務を負っているわけでございます。他方この義務は、第六条の実施に関する交換公文という条約と一体をなしております国際約束が司時にございまして、この中で、核の持ち込みにつきましては事前協議の対象とする、日本の同意がなければ持ち込ませないということがこれもまた同じ国際的な義務としてアメリカが日本に対して負っているわけでございます。  したがいまして、今委員御指摘の問題につきましては、アメリカが日本を防衛する義務を負っていると局時に、核の持ち込みを認めないという日本の政策を尊重する義務というものをアフリカが同時に負っているわけでございまして、そのことによってこの問題は国際的なレベルにおいて確保されているということでございます。
  136. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 義務を負っているから当然の権利として、核兵器を積んだ艦船とかあるいは航空機の寄港とか通過というものについては、これはアメリカとしても当然私は今日までいろいろと話の中にはあったのじゃないかと思うのですけれども、そういう話は一度もなかったということなんでしょうか。それは論議になっていなかったということなんでしょうか。
  137. 北村汎

    ○北村政府委員 先ほど条約局長が申しましたように、アメリカは安保条約第六条の実施に関して事前協議の義務を持っております。その事前協議の対象には三つございまして、一つは配置に関する重要な変更、もう一つは、いま御指摘の、装備に関する重要な変更、もう一つは直接戦闘作戦行動を起こす場合のものでございますが、この核の持ち込みということ、すなわち装備における重要な変更ということにつきましては、日米間に何らの意見の違い、認識の違いというものほかってございません。
  138. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、アメリカとの解釈上の違いというものは全くない、これは心配ない、こういうことなんですね。有事のときも平時のときも事前協議については分け隔てなく行われる、こういうふうに見てよいですか。
  139. 北村汎

    ○北村政府委員 アメリカが条約上持っております事前協議の義務と申しますのは、これはいかなる場合にも果たされるものであると考えております。     〔池田(行)委員長代理退席、委員長着席〕
  140. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 事前協議については、有事については今までイエスもあり、ノーもあり、こういうふうな御答弁であったわけでありますが、平和時においてはすべてノー、こういうふうになるわけですね。
  141. 北村汎

    ○北村政府委員 ただいま委員が、有事の場合には事前協議に対して日本政府はイエスもありノーもあるという返答をするという御指摘があったように思いますが、この点につきましては、もう少し詳しく申しますと、先ほども申し上げましたように、事前協議には三つの対象がございます。配置における変更、それから装備における変更、それから日本の基地を使用して戦闘作戦行動を行う場合の事前協議、この場合は、第五条の事態すなわち日本が武力攻撃を受けている事態は含まれません。すなわち日本に対する武力攻撃がない場合に米軍が日本における基地を使用して戦闘作戦行動を行う場合でございますが、この第一の場合、すなわち配置における重要な変更、それから第三の場合、戦闘作戦行動を行う場合の事前協議につきましては、これは日本政府の回答はイエスもあり、またノーもあるということでございます。しかし、第二番目の装備における重大なる変更、すなわち核兵器の装備に対する重要な変更につきましては、日本政府は常に核の持ち込みに対してはノーと言うということを国会でも申し上げておるわけでございます。
  142. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 これは武器の技術供与の問題でございますけれども、一九八三年一月十四日、中曽根総理大臣が初めて米国訪問に行かれる直前ですが、閣議了解事項として、日米安保体制の重要性にかんがみ対米武器技術供与は武器輸出三原則の例外として、その実施は日米相互防衛援助協定に基づく枠組みの中で行うという方針が打ち出されたわけでありますけれども、実はこれについてはかねてから、佐藤総理のときに武器輸出三原則があり、あるいはまた三木内閣においては武器輸出に関する統一見解等が出されたわけであります。また、昭和五十六年の三月の武器輸出問題等に関する国会決議に違反するのではないか、そういう問題が明らかになったわけでありますけれども、少なくとも国権の最高機関である国会の各院において議決した国会決議は行政府を事実上拘束するものであって、行政府はその行政においてこれが指示する内容を忠実に履行するべきであるにもかかわらず、実は行政府が恣意的にこの問題に対して枠を外したということは許されるかという問題について、随分論議がなされました。そして、その当時は自民党安定多数であったために押し切られたような形に実はなっているわけであって、いまだに私はこの問題については納得いかない問題であります。  そこで、対米武器技術供与取り決めが五十八年十一月八日に安倍外務大臣とマンスフィールド駐日大使のもとにおいて合意をされ、そして日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協議機関として武器技術共同委員会、JMTCが設置されたわけであります。  そこでこのJMTCについては、実は「東京において、毎年一回会合し、また、いずれか一方の委員部の要請によって会合する。」こういうふうに規定されておりますけれども、これについて会合が持たれたのかどうか、そしてまた、JMTCに具体的な問題が提起されたのかどうか、あるいはことしの定期協議はいつ開かれる予定であるのかどうか、こういう点についてはどうなのでしょうか。
  143. 北村汎

    ○北村政府委員 ただいま委員御指摘の武器技術共同委員会、JMTCでございますが、これを設置するということが昨年十一月に締結されました武器技術の対米供与に関する取り決めで決められたわけでございますが、このJMTCそのものはまだ設置されるに至っておりません。なるべく早い機会にJMTCを設置することを考えておりますけれども、まだ、いつまでにこれをつくるということは決めておりません。したがいまして、定期的な会合をいつ開くかということもまだ決まっておりませんし、また、アメリカの方からどういう技術が欲しいというような話はまだ一切ございません。
  144. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 このJMTCの構成メンバーというのは、どういうふうになりますか。
  145. 北村汎

    ○北村政府委員 JMTCは日米おのおのの国別委員部から成るわけでございますが、日本側の委員部は防衛庁、外務省、通産省の三省庁の代表者から構成されることになっております。またアメリカ側の委員部は、在日米国大使館、それから在日米国相互防衛援助事務所の代表者で構成されることになっております。
  146. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 宇宙開発技術は、日本の場合は宇宙開発の利用は平和目的に限るとしておりますし、宇宙開発事業団法においても宇宙開発は平和利用としているわけでありますけれども、このところアメリカは、御存じのとおり既に宇宙兵器の開発に取り組むというふうな姿勢に出ておるわけであります。たしかこの間外務大臣は、ICBM要撃ミサイルというのは防御兵器だから、そういうことについて軍事技術を提供しても問題はない、こういうふうな答弁をされたということですが、もう一度その点を明らかにしてください。
  147. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 御存じのように現在まで、宇宙技術あるいはそれ以外にも、武器技術に関してのアメリカからの我が国に対する供与についての具体的な要請は一切ないわけでございます。我が国としましては、いかなる技術が米国の防衛政策における宇宙研究に用いられ得るかは承知していないわけでございますが、いずれにいたしましても、対米供与する武器技術につきましては、我が方が具体的な例に即して自主的に判断して慎重に決定をする考えでございます。  二十一日の衆議院の予算委員会における答弁でも明らかにしたとおり、御指摘の二十日の私の答弁は、対米武器技術供与は米国の防衛能力の向上に寄与することにより日米安保体制の効果的運用に資するとの観点から行われた政府の決定であって、また政府としては、米国の国防政策は宇宙に関するものも含めて抑止を旨とする防衛的なものであると承知をしているということであります。仮に、米国の国防政策に関連して武器技術供与の要請があった場合には、上記の観点を踏まえまして具体的な事例に即して慎重に決定する考えでございます。これはあくまでも日本が自主的に決定をしていくことでございます。
  148. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 言うならば、アメリカの宇宙兵器については、抑止を目的としているから、いわゆる防御型の兵器であるから一応問題がないような御答弁でありますけれども、宇宙開発の利用は平和目的に限るという我が国の一つの基本政策があるわけでございますから、そういう中にあって、宇宙兵器についてこれの技術を、たとえそれが防御的であっても利用することに対してこちらが協力をするということは、日本の姿勢を問われることになるでしょう。それからまた、防御的兵器であるとはいいながらも、兵器はどんどん日進月歩していくわけでございますから、それがいつ何どき攻撃的兵器にも変わらないとは限らないわけですから、そういう点について私は、宇宙兵器の軍事技術については慎重の上にも慎重を期さなければならない問題であり、むしろそういう問題については、我が国は平和憲法の立場からアメリカに対してそういう協力まではできません、こういう姿勢をとるのが本来の外務大臣の考えではないかと思うのですが、その点はどうなんでしょう。
  149. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 アメリカで宇宙兵器がいろいろと開発されておる、その中の一つで例えば迎撃ミサイルシステム、これなんかはアメリカのまさに純粋な防御用の宇宙兵器とも言えるわけでございますが、それに関しての質問であったと思うわけでございます。  我々は、アメリカのそうした宇宙兵器というものはあくまでも戦争の抑止、さらに防衛というものがその主眼である、こういうふうに認識もいたしておりますけれども、もちろん日本が仮に将来の問題として武器技術をそういう関係に供与するという場合におきましても、日本の憲法がありますしあるいはまた日本のこれまでの法律的な建前というものもあるわけでございますから、そういう立場は十分踏まえて、今お話しのように慎重の上にも慎重に判断してまいる考えでございます。
  150. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 十月二十九日から十一月六日までに実は米国の巨大兵器メーカーのヒューズ。エアクラフト社の副社長マルコム・R・カリー氏を団長として大手兵器メーカーの首脳が来日をしているわけでありますけれども、何を目的として来日をしたのでしょうか。また、どういうところと接触をしてきたのでしょうか。
  151. 木下博生

    ○木下政府委員 昨年、今おっしゃいましたヒューズ・エアクラフトの副社長を団長としますミッションが日本に参りましたが、これは米国防省に防衛技術審議会、英語で申しますとディフェンス・サイエンス・ボードというのがございまして、国防省の諮問機関でございますが、その諮問機関のタスクフォースのメンバーが日米の防衛技術協力をどういうふうに進めたらいいかという点の基礎的な調査をするということでやってきたわけでございまして、アメリカのそういう兵器メーカーの代表が兵器メーカーの代表として日本にやってきたわけではなくて、あくまでも国防省の諮問機関の人たちがやってきて、今後の日米間の武器技術の協力はどうしたらいいかということの研究をしていったわけでございます。
  152. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 伝えられるところによりますと、日本が独自で開発したエレクトロニクス及び新素材などの先端技術を、単なる汎用レベルにとどめずに軍事転用可能なものにする、そういうことでいろいろと模索に来たのだというようなことが一部伝えられているわけですけれども、どことどことどこへ言うならば米政府派遣の米国国防省の軍事技術審議会のメンバーが行ったのでしょうか。目的はどういうことなんでしょうか。
  153. 木下博生

    ○木下政府委員 その審議会のメンバーが参りましたときには、防衛庁、通産省にも来ておりますし、それから経団連の代表とも協議をしております。そのほか個別に三菱重工とか日本電気とか幾つかの企業を回りまして話し合いを行っておりますが、いずれも日本からそういう技術をもらう場合にどういうような形でもらうことができ得るかという基礎的な調査でございまして、具体的にこの技術を欲しい、あの技術を欲しいというようなことで言ってきたわけではございません。  それから、そのメンバーの人たち調査しましたのも、今おっしゃいましたように単に狭い意味での、交換公文に書いてありますような武器技術だけではなくて、広く日本の産業技術全般を調べていったわけでございます。
  154. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 アメリカにおいて日本の軍事技術を利用してできた兵器が、アメリカの軍事的重要性からいわゆる機密扱いになったときは、アメリカとしては日本の先端技術に対して何らか制限を加えてくるのではないかというような心配があるのですが、その点はどうなんでしょう。
  155. 木下博生

    ○木下政府委員 日本の武器技術がアメリカへ供与される場合に、それが防衛庁の技術でありまして防衛庁としてそれを秘密にしておりますときには、今度の交換公文によりまして日本の秘密の保護の程度と同じ程度のものをアメリカが秘密の保護をしてくれるということになっております。  ただ、今おっしゃいましたのは、日本から供与された技術が向こうで開発されて、発展されて、向こうで秘密扱いされた場合というようなことでございますが、まだそういう具体的な例がありませんのでよくわかりませんが、それはあくまでもアメリカの国内における措置の問題でありまして、日本の企業が供与した技術について、日本の企業が日本においてそれを使いあるいはそれを第三国に出すことについて制限が行われるようなことになってくるというふうには考えておりません。
  156. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 今の問題については、要するに民間の先端技術が言うならばJMTCによってアメリカに提供されたという場合、その先端技術を使ってアメリカはどんどん武器をつくっていくわけです。そうした場合、今度はこれがアメリカの軍事機密ということになった場合、せっかくこちらから提供した技術自体まで、アメリカから、それはちょっと困るんだ、機密に類しているものだからということで何らか制限が行われるのじゃないかという心配があるわけなんですが、その点はどうなんでしょうかと聞いているわけです。
  157. 木下博生

    ○木下政府委員 今御質問の趣旨は、日本から供与された一般的な、どちらかといえば汎用と言える先端技術がアメリカに供与されて、それでアメリカがその供与された技術を使ってそれを発展させて具体的な武器をつくった場合というようなことではないかと思いますが、その場合には、向こうで発展して具体的な武器となった技術については、それはアメリカはアメリカとしていろいろな措置は講ずるかもしれませんが、そのもととなりました日本の技術につきまして、だからといって何か制限が起こってくるというふうには私どもは考えていないわけでございます。
  158. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 日進月歩の先端技術にあって、日本からの技術提供によって改良されたとかあるいは先端技術から新しいものが生み出されたというときには、日本の技術提供の細目取り決めとの関係はどういうふうになるのでしょうか。
  159. 木下博生

    ○木下政府委員 交換公文で規定されておりますのは、通産省の方で武器輸出三原則に基づきまして規制しておられます狭い意味でのいわゆる武器技術が対象となっております。したがいまして、いわゆる一般的な先端技術をアメリカに供与するという点は、交換公文にも書いてございますように原則として自由でございますから、そういうものについてはそういう細目取り決めの中に載せてどうのこうのというようなことにはなってこないのではないかというように考えております。
  160. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 MDAの場合は、装備とかあるいは資材とか役務とか、いわゆる双務的に援助しようとするものでありますけれども、アメリカ合衆国に対する武器技術の供与に関する交換公文となっている以上、アメリカにある先端技術を日本側が提供してもらいたいということについては、このJMTCの場所においてはこちらからは言えないというふうな関係になっているのですか。
  161. 北村汎

    ○北村政府委員 JMTCと申しますのは、武器技術を我が国から米国に対して供与する場合の取り決めを実施する際、日米間の協議をここで行う、こういう場でございますから、米国から我が国に対する技術などの供与を目的としてこのJMTCで議論を行うということは考えておりません。
  162. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 MDAの場合においては双務的な援助ということになっているわけですけれども、そうしますと、結局このJMTCは日本の国からアメリカの方に武器の技術を供与するというわけであって、日本からはアメリカの方に、例えば先端技術のそういうものを提供してもらいたいということについではここでは何ら取り扱わないのだ、日本からはそういう形でアメリカに先端技術を日本にも提供してくださいということは考えていないのですか。
  163. 北村汎

    ○北村政府委員 アメリカから日本が特定の技術を提供してもらいたいという場合には、これは今までアメリカからいろいろな武器あるいは武器技術を提供された場合の例にありますと同様の手続あるいはその順序に従って行われるものだと私は了解いたしますが、具体的なものについては関係当局の方から御説明いただけると思います。
  164. 木下博生

    ○木下政府委員 防衛庁が装備しております武器、航空機等につきましてアメリカから技術をもらいますときには、すべての場合でございませんが、アメリカが非常に重要と思っております技術につきましては、日米相互防衛援助協定に基づきまして、取り決めを結んでその技術をもらっておるわけでございます。  ただ、一般的にアメリカから先端技術をもらうというのは、アメリカの場合でもそういう一般民生用に使われるような先端技術を日本に供与するという場合は、通常商業ベースで契約が結ばれて日本に供与されているというふうに了解しております。
  165. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、日本の国からアメリカにいわゆる先端技術を提供するという形でJMTCでいろいろと検討されるということなんですけれども、そうすると日本の国においては、確かに先ほどお話がありましたように、MDAにおいては装備とか資材とか役務とかというふうな関係においてアメリカからは供与されておりますけれども、この種のものは、これからもし日本の国がアメリカの方に提供してもらいたいということになれば、これについてはやはり細目取り決めということをしなければだめだ、こういうことですね。
  166. 木下博生

    ○木下政府委員 例えばアメリカから新しい戦闘機をつくる技術を供与してもらって日本でそれをライセンス生産するという場合には、おっしゃいましたように取り決めを結んでやるわけでございます。その取り決めを結んでやった場合に、具体的にはいろいろな種類の技術がアメリカのメーカーから日本のメーカーに供与されてくる、もちろん防衛庁を通じてでございますけれども。そういうような形で供与されてまいりますので、その中にはおっしゃいますようにアメリカで開発された先端的な技術も入っておるわけでございます。ただ、日本から今度供与します場合には、今度の交換公文に基づきまして個々の具体的な案件が出ましたときに、それをこの委員会で話し合って、日本として供与してよろしいということになったらその供与の対象としていくということになってくるかと思います。
  167. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 民間企業が日本とアメリカの武器技術協定によって先端技術の提供を求められた場合、民間企業の自主性に任せるというふうにありますけれども、自主性という概念は、実際には企業が独自に決めるものであって拘束されるものではないというふうに判断されるのですけれども、その点についてはどういうお考えでしょうか。
  168. 渡辺修

    ○渡辺説明員 お答え申し上げます。  今先生御指摘のとおり、民間企業の保有する武器技術を供与いたしますときには、民間企業は当然商業的判断で供与するかしないかということを自主的に決めるということでございまして、当省といたしましては、供与をMDAで供与するかどうかというときにはかかる民間の自主性を十分に尊重していきたい、こういうことでございます。
  169. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 ところが、日本の国の場合においては、例えば技術研究開発なんというのは相当国から援助をもらっている、そういう場合がありますね。国から援助をもらっているということになると、これはあなたがおっしゃるように企業が自主的に判断する問題だといいながらも、国から援助されているということになればそれは必ずしも断れないという事情にはなりませんか。
  170. 渡辺修

    ○渡辺説明員 通常の民間企業に補助金等を供与して国がお金を出す場合というのはもちろんあるわけでございますが、それに伴います一連の特許その他は、民間企業が持っておるわけでございます。民間企業がそういう要請を受けまして、外国企業から話があってコマーシャルベースにのっとって供与するかどうかというのは民間企業の判断でございますので、先ほど申し上げましたように、国としてはその判断を尊重していきたい、かように考えております。
  171. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 今後の日米間の共同研究開発に当たって新しい取り決めを結ぶ必要性があると思いますけれども、取り決め細則の内容について、例えば研究開発の費用の分担とか共同開発の資料の取り扱いというのはどんなふうになるんでしょうか。
  172. 木下博生

    ○木下政府委員 まだ具体的な話が起こっておりませんのでよくわかりませんが、日本から武器技術を供与します場合に、これは必ず今おっしゃいましたような共同研究開発みたいな形になるかどうかはまだわからないわけでございます。ただ、もしそのようなことが起こりました場合に、しかも防衛庁がその日本の技術開発について費用を出して開発したようなものであれば、当然その場合には防衛庁も民間と一緒に絡んでくるということになりまして、防衛庁としてその技術を供与していいかどうかをみずから判断するということはございますし、またそのために防衛庁として出した費用を分担するというようなことが起こってくれば、それは将来の問題としてどういうふうにやっていくかを考えてアメリカ側と話し合っていかなくちゃいかぬというようなことになるのじゃないかと思います。
  173. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 共同研究開発である以上、双方に武器技術のいわゆる所有権的なものが発生するというふうに思いますけれども、その武器技術によって双方で武器を共同に開発するというところまで実際に進むのか、あるいは共同研究開発は武器技術の研究開発であって、武器そのものまでにはいかないというふうに判断されているのか、その点はどうなんでしょう。
  174. 木下博生

    ○木下政府委員 アメリカと日本とで共同で開発します場合に、その共同開発事業自身が直ちに技術の供与に至らない場合もあると思います。お互いに研究し合うという段階があると思いますので、その結果といたしまして日本で開発した技術が日本からアメリカへ行くということになりますれば、そのときにその技術に対して対価をもらっていくというようなことになってくるだろうと思います。それで、その対価をもらうに当たりましては、もし日本の企業がそれに関与しているものであれば日本の企業がアメリカの企業との間で話し合いを行うわけでございますし、それから日本の防衛庁がそれに絡んでおれば、その場合の分担の問題は当然起こってくるかと思います。  ただ、いずれにしてもそれは将来の問題でございますので、具体的にどのような方式でやるかということは、今のところまだはっきり考えておるわけではございません。
  175. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 海外子女の問題について御質問申し上げます。  憲法第二十六条は、教育を受ける権利及び教育の義務というものを明確にしているわけでありますが、憲法第二十六条の規定は、海外子女に対してどのような適用がなされるというふうに政府はお考えになっておられましょうか。
  176. 大出峻郎

    ○大出政府委員 ただいま憲法第二十六条の規定についての御質問でございましたけれども、在外邦人の子弟に対する憲法二十六条の関係でございますが、この二十六条の規定はやはり外国の土地においては適用がないというふうに考えるべきではないかと思います。  ただ、前にも真田元法制局長官が答弁したことがございますけれども、憲法第二十六条の教育を受ける権利あるいは教育を受けさせる義務、そういうことについての規定の精神は大いに生かされるべきであるというふうな答弁をいたしておりますが、法律的にはそういう関係にあるというふうに理解をいたしております。
  177. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 今御答弁がありましたけれども、外国にある子弟に直接適用はない。しかし、直接適用がないからといってほっておいていいものではもちろんないわけである。しかも、この真田法制局長官の答弁は、それは政策の問題であるという答弁でありましたけれども、憲法第二十六条には、教育を受ける権利とか教育の義務というものはすべての国民に対しての教育を受ける権利と義務を明確にしているわけですね。この点は決して政策的なものではないんじゃないでしょうか。
  178. 大出峻郎

    ○大出政府委員 ただいま御引用になりましたように、真田元法制局長官が当時、政策的な問題としてというふうな形で御答弁をいたしておるわけでございますが、考えてみますと、我が国が子供たちに対して教育を行うということにつきましては、大きく言いますと我が国の統治権の作用の一つだというふうに考えられるわけであります。そういう観点に立って考えますと、例えば我が国が直接外国において学校をつくるというようなことになりますと、その国の主権との関係でいろいろな問題が生ずる余地があるというようなことであろうかと思います。そういう意味合いにおきまして、やはり二十六条の規定の適用関係というのは属地的なものとして理解されるべきではないかということであろうかと思います。ただ、先ほど申し上げましたように、二十六条のもたらすところの憲法の精神というものは、大いに生かされてしかるべきであるというふうに理解をいたしております。
  179. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 じゃ、海外における子女に対する教育というものは、憲法第二十六条の解釈からいって温情的なものであるのか、あるいは義務的なものなんでしょうか。どっちなんですか。
  180. 大出峻郎

    ○大出政府委員 単なる温情的なものであるかどうかということでございますが、やはり憲法二十六条の精神というものに沿うということが極めて望ましい、こういうことであろうかと思います。そういう意味合いからいたしますと、憲法の精神に沿うような政策を国としてとるということは大いに望ましい姿であるというふうに考えるわけであります。
  181. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それは望ましいというのですかね。それとも、憲法第二十六条においては御存じのとおりすべての国民に義務教育ということを言っているわけですから、そういうことになってきますとあなたの考え方は、海外にある場合においては別なんだ、それは海外の各国におけるところの政策もあるだろうし、いわゆる統治権という問題があるからこれは切り離すべき問題である、ということなんですか。  海外においても教育について十分に理解を示されるところもあるわけです。あなたがおっしゃるように、海外において非常に難しいところもある。しかし基本的には、義務教育とかそういうものについては、教育基本法の精神からいうならば、あらゆる国民、あらゆる場所において、こうなっているわけじゃないですか。ちょっとあなたの考え方は違うのじゃないですか。あなたの考え方は、基本的には分離するんだ、その精神はついているけれども、しかし実際にはいろいろあるんだから教育にいろいろの格差があってもよろしい、差別があってもよろしい、こういうことですか。
  182. 大出峻郎

    ○大出政府委員 憲法第二十六条の規定が外国の地において直接適用があるかどうかという法律論的な観点から申し上げますと、先ほども申し上げましたようにそれぞれの国の統治権との関係もございますので、二十六条の規定が直接適用されるというふうには言えないのではないかということでございます。  ただ、先ほど来申し上げておりますように、憲法第二十六条で規定しております教育を受ける権利というものは大いに尊重をしていくべきであるわけでありますから、そういう意味合いにおきまして、それに教育を受けさせるような措置を国の政策としてとっていくということは、これは憲法の精神に沿うものであるというふうに理解をいたしておるわけであります。
  183. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 教育基本法には、憲法第二十六条を受けて、第一条には教育の目的が書かれておるわけですね。それから第二条には「教育の目的は、あらゆる機会に、あらゆる場所において実現されなければならない。」となっているわけでしょう。そういうふうなことからいうと、あらゆる機会、あらゆる場所を限定して、海外の子女だけは別なんだというふうにこれを狭義に解すということは、ちょっと憲法の解釈としておかしいのじゃないですか。あらゆる機会、あらゆる場所においてということであるならば、海外にある子女もこの憲法第二十六条の恩恵を受けて、まあその中にあって各国々においてもそれぞれに立場があるでしょうから、できないところもあればできるところもある、できるところはそのとおりやればいいし、できないところについてはむしろそれを補完するような教育のやり方をすればいいわけであって、海外子女の方だけは別なんだという形は、憲法第二十六条の解釈としては問題があるのじゃないですか。
  184. 大出峻郎

    ○大出政府委員 憲法第二十六条の規定が地域的にどういうところに適用されていくかという観点から考えてまいりますと、外国の土地について憲法二十六条の規定が直接適用されるというふうな考え方をとることは難しいのではないかというふうに考えられるわけであります。  ただ、先ほど来たびたび申し上げておりますように、憲法二十六条の精神というもの、それはやはり政策としても大いに生かされていくべきであるということであろうかというふうに思います。したがいまして、外国におる日本人の子弟、子供方に対してどういう取り扱いをするかということは、憲法二十六条の精神に則して政策としていろいろな措置というものがとられることが極めて望ましい、こういうことは言えようかと思います。
  185. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それは解釈がおかしいですね。教育基本法第三条には「すべて国民は、ひとしく、その能力に応ずる教育を受ける機会を与えられなければならない」となっています。またそれから、教育上差別されてはならないというふうになっているのですよ。それは差別じゃないですか。海外の子女は日本人の子供じゃないのですか。日本国民の子女じゃないのですか。あなた、差別しているんじゃないですか。そんな狭義な憲法の解釈をやっているから、いまだに海外子女教育というものは大変な問題を抱えているんじゃないですか。差別してはならないと書いてあるのですよ。あなたの言っているのは差別じゃないですか。
  186. 大出峻郎

    ○大出政府委員 先ほど来たびたび申し上げておりますが、憲法二十六条の規定が直接海外の地に適用されるかという側面から考えてみますと、直接適用されるというふうには言えないのではないかということであります。  ただ、海外の子女に対して一切国は教育的な措置というものを講じなくてもいいかどうかということにつきましては、私もそういうふうには考えておらない次第でありまして、ただ規定そのものが法律的に働くかどうかという問題と、海外の日本人の子女に対してどういう教育的ないろいろな配慮、措置というものがとられるべきかということは、一応別の問題であろうというふうに理解をいたしておるわけであります。
  187. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 法制局の考え方に私は納得しません。昭和五十一年あるいは五十三年のころは、わずか一万五千人程度の子女しかいなかった。ところが、今や海外には三万五千人以上の子女がいるんですよ。こういうふうな、いわゆるあなたのおっしゃるような狭義の物の考え方をしているから、だから海外子女の人たちあるいはまた父兄というものは並み並みならない苦労をしているわけですよ。毎月子供に教育を受けさせるために大変なお金を払っているわけです。あなたは、その精神だけはそういうふうなことはやらなければならないと言っているわけですけれども、その物の考え方によってすべて、文部省だって結局は海外子女については大変な実は苦労もしているし、外務省においても大変に苦労しているのです。この問題が解決されなくて、どうして国際化なんですか。教育の国際化というのはどういうことなんですか。
  188. 草場宗春

    ○草場説明員 お答え申し上げます。  文部省では、憲法二十六条の教育を受ける権利、教育を受ける義務の精神に沿いまして、海外に在留する三万六千名に及ぶ義務教育段階の児童生徒に対して、在留地域の実態等に応じまして諸施策を進めております。  一つは、日本人学校を現在、全世界七十四校設置しております。先進国等におきましては補習授業校を設置いたしまして、日本語を中心とした補充的な教育の充実に努めております。  また、全く補習校、日本人学校のない、現地校だけに通っている人たち等につきましては、日本から主要教科を中心とした通信教育を実施する等のことを行いまして、できるだけ海外にいる日本人の子女についても日本国民にふさわしい教育の機会を提供するよう努力いたしているところでございます。
  189. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 百一回国会の文部大臣の所信表明の中で、海外子女教育については、「日本人学校の増設、児童生徒数の増加に対応し、派遣教員の増員を行うとともに、帰国子女教育研究協力校の指定を行うなど、帰国子女受入れ体制の整備を図る」というふうに言っております。また中曽根総理は、教育改革の大きな柱として国際化ということをその一つに挙げているわけですが、口では国際化というふうに言うわけでありますけれども、実際に中身はどんなものなんですか。
  190. 草場宗春

    ○草場説明員 教育の国際化という意味につきましては、いろいろな観点から議論ができるかと思いますが、現在、文部省で教育の国際化という観点で、一つは海外との教育の交流、例えば留学生の招致とかあるいはユネスコ等を通じた教育協力とか、そういった海外との教育面における交流も一つだろうと思います。  また、もう一つの大きな課題としては、日本の国内の教育そのものを国際化するというのも一つの大きな課題ではないかと思います。大学等におきまして国際的な共同研究を進めるとか、そういったことも含まれるかと思われますが、非常に多様な面での国際交流が必要であろうかと思われます。
  191. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 今、海外の子女の方々は平均一カ月どれくらいの負担をされているのですか。中身はどういうものですか。
  192. 草場宗春

    ○草場説明員 海外の日本人学校に在学している子供たちの授業料でございますが、月額二万円弱というのが五十八年度の数字でございます。今のは授業料だけでございます。  そのほかに入学金等を含めまして、父兄負担額全体で申しますと大体三万円弱、これが月額の負担の平均額でございます。
  193. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 あなた、義務教育で三万円もかかるなんて、実際にそれで精神を受け継いで海外子女の教育に当たっているというふうに言えますか。そのほか、例えば今言われました授業料とか教材費、あるいは事務職員の給与の一部の負担とか現地教員の雇い入れのための負担、スクールバス、一般管理費、こういうものは全部現地の負担になっているのじゃないですか。外務省はこれをどうつかんでいますか。
  194. 谷田正躬

    ○谷田政府委員 外務省といたしましては、現地採用される教員、本邦から派遣される教員が不足しておる場合に、現地で採用される教員に対して補助を行っております。それが今外務省のやっているところでございます。
  195. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 日本国内の義務教育諸学校及び教員定数基準と海外における日本人学校との間には、どれくらい差がありますか。
  196. 草場宗春

    ○草場説明員 現在、海外の日本人学校につきましても、日本の小中学校の教員定数に準じて教員の派遣を考えておりますが、五十八年度現在、国内基準に比べますと八三・一%の充足率になっております。しかしながら、海外の日本人学校の場合は、現地の言葉であるとか、そういったものについては必ずしも日本人の教員が望ましいということもなかろうかと思われますので、一〇〇%国内と同じ基準にならなければならないということではなかろうと考えております。  ただ、現在の八三・一%は必ずしも十分ではないということで、今後ともその充足率の改善に努力してまいりたいと思っております。
  197. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 あなた、義務教育の精神を何も受け継いでいないじゃないですか。結局予算が足りないからこうならざるを得ないということでしょう。  最後になりましたが、一問だけ聞いておきます。  最近、海外の日本人学校で、中学二年生とか三年生が高校受験のために日本に帰ってしまって、生徒がいなくなるというような傾向が出ております。これは、国内の受験戦争の話が現地にも広がり、父兄の間に不安が生じ、そのために帰国させて塾に通わせるとか環境になじませるといった、受験戦争の影響が大きく出ている現象なのですが、帰国した海外子女の受け入れについてはどのような対策が講じられているのでしょうか。またこれに対して、内地の方で十分に協力校あるいはまた協力をするという体制ができているのかどうか。それについて最後にお伺いをいたしまして、質問を終わります。
  198. 草場宗春

    ○草場説明員 帰国子女教育の対策は、海外子女教育の対策と車の両輪の関係にあるというふうに考えておりまして、帰国子女教育対策についても従来から努力をしてきたところでございます。  一つは、国立大学の附属小学校、中学校に帰国子女だけを受け入れる学級を設置しております。また、公立の小、中、高等学校、私立の小、中、高等学校で帰国子女を積極的に受け入れるための帰国子女教育研究協力校というものを設置して、積極的な受け入れをお願いしている次第でございます。また、帰国子女は地域的に首都圏とか近畿圏に集中している傾向がございますので、そういった地域ぐるみの帰国子女の受け入れをお願いするような帰国子女受け入れ推進地域といったものを指定して、協力をお願いしているところでございます。
  199. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 時間になりましたので、以上をもって終了いたします。どうもありがとうございました。
  200. 片岡清一

  201. 和田一仁

    和田(一)委員 私は、本委員会の冒頭に栗原防衛庁長官から自衛隊員による小銃発砲事件及びPS1型機墜落事故についての報告がございましたけれども、まずこの点について御質問をしたいと思います。  けさの御発言によりますと、この事件事故につきまして、大変国民皆様に大きな不安を与えた、そして貴重な隊員と航空機を失ったことはまことに申しわけない次第でありますと、報告と同時に所感も述べられておるわけでございますけれども、国民皆様にどのような不安を与えたとお思いか、言いかえれば、国民はこの二つの事故事件を通してどんな不安を感じているというふうにとらえておられるか、その点、長官の御認識のほどをお伺いしたいと思うのです。  ちょっと抽象的な言い方で、お答えしにくいかと思いますけれども、たとえば事件の方では、自衛隊員というものは大変な人がいるんだな、そして、その自衛隊隊員の人事管理というものは余り徹底して管理されていないなというような不安であるとか、あるいは事故の方は、たまたまよう同じ飛行機ばかりが事故を起こすな、欠陥があるのではないかな、そんなような不安も国民が持った不安だと思いますが、不安を与えたというその不安の中身を長官自身はどのように御認識された上、国民にまことに申しわけないとおっしゃったのかをお聞きしたいと思うのです。
  202. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 今申し述べられたような不安、これは当然入ります。そのほかに、国民の不安というのは、あの兼信という人物が表に出たわけですね。ですから、これが何をしてかすかわからない。現にテレビ、新聞等で承りますと、学校の生徒の諸君が俗に言う戦々恐々として帰っていった。そういう意味で、あれが幸いにして早く逮捕できましたからいいのでございますが、逮捕できなかったあるいは小銃でまたほかの箇所で乱射をしたというようなことになりますとえらいことだと思う。早くつかまったからいいわけでございますが、早くつかまらない場合には、そういう不安が当然出ると思いますね。  それからもう一つPS1の方から言いますと、同じ飛行機がというのももちろんございますが、同時に、あそこで墜落したときに、漁船とかその他の船舶が航行しておった、そこへ落ちてきたら一体どうなるのだ、そういう意味合いでもろもろの不安を国民皆さんに与えたと思うのです。現実にはそういうことはなかったけれども、与え得る要素というものはあったと思うのです。そういう意味で、これは国民皆さんに対して不安を与えてまことに申しわけない。また貴重な人命と貴重な資材を失ったこと、これも防衛費というのは国民の税金で賄われるわけでございまして、大変申しわけない、こういう認識でございます。
  203. 和田一仁

    和田(一)委員 報告事件事故と一緒でございますけれども、私はまずこの自衛隊員による小銃発砲事件の方からお尋ねしたいと思いますけれども、今長官のお話の中にも、犯人小銃を持ったまま出てしまった、これはえらいことだ、そういう不安が与えられたと思う、こういう御答弁でございました。  きょうの報告では余り具体的なことが出ておりませんので、この発砲事件について、現場がわかるような具体的な説明をひとつお願いしたいと思うのです。
  204. 上野隆史

    上野政府委員 お答え申し上げます。  まず、現場は山口市外にあります山口射場という、これは射撃訓練を専門に行うコンクリート製のドーム、覆いのある射場でございます。その距離は、的から撃つところまでは約二百メートルというふうに承知しておりますが、そこで当日の射撃訓練は、検定と称しておりますが、一人の隊員が二十五発の弾を持ちまして、伏せて撃つとか、立てひざで撃つとか、立って撃つとか、そういういろいろな姿勢によって射撃をする、いわばテストと申しますか、そういうことをやるものでございました。  そして、第一ドーム、第二ドームと二つのドームが並んでございまして、両方とも同じような格好でございますが、当日使いましたのは第二ドームの方でございます。そのドームの先にテストを受ける五人の隊員が立ちまして、その射撃姿勢の変化に応じて例えば五発、次の姿勢では六発というふうに分けて、テストの項目ごとに撃つ弾を分けてもらって射撃をする。その場合に、その後ろの方にはいわば検定官と申しますか、おりまして、射撃に取りかかる動作、姿勢等をチェックをするということをやっておったわけでございます。  ドームの中には、その検定を受ける五人の隊員、これが何組かございまして、後ろの方には幹部及び弾を渡す係あるいは安全係といったようなもの、これは暴発事故とかそういうものの安全でございますけれども、そういうような者が後ろに何人かおるということで、当時ドームの中には二十八名の者がおったわけでございます。したがって、二十二名の者は全く丸腰でおった。それで、テストを受ける五名の者が銃を持ち、弾を持っておったといいますか、弾を渡されておったという状況でございます。  そして、これは第十二回目の班と申しますか、テストを受ける班員がそこへ入った。それがおおむね十一時半ごろ。その中に、今回の事件を起こしました兼信二士という者がおりました。これはドームの入り口に一番近いところにおったわけでございます。そして、既にいろいろ御報告申し上げましたような形で、銃を後方あるいは横に向けて三発撃って、結果的に一名が死亡、こういう事故を起こしたわけでございます。  その際、ドームの中におりました一番の責任者、射場指揮官、これは三佐でございますが、これが、兼信が積とか後ろとかに撃ちまくったときに、落ちつけ落ちつけと言った。また伏せろと言った。伏せろというのはそこにおりました丸腰の隊員たちに向かってでございますが、伏せろ、落ちつけ落ちつけと言ったのでございますが、この兼信は銃を擬しつつその入り口から出ていった。  当時、その入り口にはもう一人おりまして、これがそういう事故状況を見まして、いち早く入り口から出まして近くの電話に飛びつきまして、その異常事態を近くの駐屯地、弾薬庫等にまず第一報を入れた。そこで、これはまだ現在そこまではわかっておりませんけれども、恐らくそれは急いで出たわけでございますから出入り口はあいておったと思いますが、そのあいておった出入り口から兼信二士が銃を擬して出ていった。たまたまそのそばに、ちょうど昼近くでございますので二分の一トンのジープに乗って中隊長を迎えに来ておった者がおったわけでございますが、その者も異状に気がつきまして車から離れたわけでございます。キーは入れておった。入れておりますが、エンジンはかけておらなかったと言っております。この点は今後の捜査状況によってあるいは変わるかもしれませんけれども、いまのところは、キーは入れておったが、エンジンは切っておった。異状に気がついて車を離れた。そのときに兼信が銃を擬しつつ車に乗って、そして入り口から逃走した。その入り口には警備員が一人おりましたが、これも銃は持っておりません。そういう状況でございました。
  205. 和田一仁

    和田(一)委員 五人のテスト者が検定を受けるために、第二ドームの中でまさにそのテストをやろうとした瞬間にこういう事故が起こったというふうに伺いました。テストは恐らく一人一人でなく五人同時にやろうと思えばやれる場所だろうと思います。  いま伺っておって、私、もう一つお聞きしたいのは、突然そういうことが起きたので、防衛庁皆さん新聞記者会見でも、あり得べからざる事態が起きたんだ、これは前代未聞だ、こういう言葉を使っておられました。まさに、だれも予想しない大変な事件が起きたと思うのです。しかし、この犯人は上官の指揮下にあったと思うのですね。そして、その上官が指揮、引率した上で検定を受けていたと思うわけですが、そのときに、その指揮官がどなたか三佐が、落ちつけ落ちつけ、伏せろと。落ちつけ落ちつけというのは犯人に向かって言ったんだろうと思うのですね。伏せるというのは、危害を受けるほかの隊員に向かって、危ないから伏せると大声叱咤したか、とにかく号令か何かかけたと私は思うのです。長官、これは号令なんでしょうか、命令なんでしょうか。
  206. 上野隆史

    上野政府委員 伏せろ、こう申しましたのは、周りの隊員に対して言ったわけでございますが、これは、先生のおっしゃるように二つに区分すれば命令、隊員の危急事態に対して隊員の安全を守るための命令というふうに解してよろしいかと存じます。落ちつけ落ちつけ、これもやはり皆その指揮下に入っておるわけでございますから、命令であると解してよろしいかと存じます。
  207. 和田一仁

    和田(一)委員 さっきも長官は、この犯人がここで取り押さえられていたらまだ事態は大分違った、国民の不安の度合いは違ったというような御発言でした。逃げてしまったのですね。  いま伺うと、これは射撃場だけの場所のようですね。二百メーターの射程距離の中でドームができていて、その周りにどういうふうな敷地があるのかよくわかりませんけれども、ジープが入ってくる。ドーム以外にも若干敷地があると思いますが、当然囲いがしてあって、使わないときにはだれも入れぬように管理されていると思うのです。こういう射撃訓練あるいは検定を行う、実弾を撃つ、そういう場に、外から入ってくる危険は相当予想されていたと思うのですね。まさか前代未聞のこんな事件が起きるということは考えてもいなかったとは当然私も思います。しかし、警備員とさっきおっしゃったそれが一人入り口におった。この警備員は、この危ない地域に外部から人が入らぬようにという意味で警戒をしている警備員だろうと思うのですね。そういう意味では、丸腰であるのも、これは人さえ入れなければいいという意味で丸腰であったのかもしれません。ほかの四人は犯人と同じように弾薬を渡されて、自分も撃とうと思えば撃てる態勢にあった。事実関係を聞いていると、この辺が大変私には引っかかるものがあるのです。  長官は何とも思いませんか、これ。この犯人がここでこうやって、そのまま出ていった状態をお聞きになっていて、いかがでしょう。
  208. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 まさに御指摘のとおりでございまして、私はその点について詳しい説明を求めておるのです。ここら辺、どうしてほかの四人が撃たなかったのか、それに対して反応しなかったのか、それからどういうふうな格好で門を出ていったのか、そこら辺が非常に重要でございますので、詳細に、的確に説明するように今求めているところでございます。これはまさに非常に重要だと思っています。
  209. 和田一仁

    和田(一)委員 この事件が起きて、巷間で国民がこの事件に対して感じている声として、私はいろんな声を聞きました。しかし、その中で、一体はかの連中は何をやっていたんだ、どうして外に逃がしてしまったんだ。これが逃げて、さっき長官が言われたようにたまたま心神喪失か何かでその銃を行使することなく、五時間後に逮捕されました。これは大変、不幸中でもそういう程度で済んだことは私はよかったと思うのですが、これがもし一発でも付近国民に向かって発射されていたら、この事件はこんな世論では済みませんよ。だからこそ、これはもう絶対に外へ出すべきでなかった。なぜここで制圧できなかったか。これがただ単に射撃の訓練、当てる技量をやるための検定だけで終わっている、ここに本当は、射撃コンクールをやっているんじゃないんだから、実弾を持たされているんですから、もっと対応の仕方があったんじゃないか。この男を外へ逃がして、ましてや、ほかの弾倉も持って逃げたんでしょう。自分が与えられたのは五発、三発撃っちゃった、被害者が出た。二発残っているほかに六発の弾倉を持って、計八発持って逃げたと、私は新聞で見ております。ですから、そういうときの対応がされないというのは、私はちょっとやはりここら辺は考えていただかないといかぬと思うんですね。  防衛白書の中に、「陸上防衛力における「人」は重要な意味を持っており、一人一人が防衛力としての役割を果たさなければならない。このため、陸上自衛隊では、防衛力たる人としての資質を養い、各職務に応じた知識と技能を身につけることを重視した基本教育を行っている。」と明記してありますね。まさに私は、陸上自衛隊は人がきちっと教育され、訓練され、一人一人が防衛力になって初めて総合的な力を発揮できる、こう考えておる一人なんですが、そういう意味で、一人のそういった犯人、暴漢をほかの四人が何で制圧できないんです、対応できないんですか。伏せろというのはこれは緊急避難です。しかし、正当防衛というものはあっていいですよ。避難して自分の身に振りかからなければいい、これは人間の本能としてまず避けたいという思いが起こるでしょう。しかし、指揮官たる者は、この男を銃を持たして外へ出してしまったら大変だという意識が働いてしかるべきだと思う。現に外へ逃げちゃったんです。だからこそ国民は不安を感じた。その不安の中で、自衛隊って何をやっているんだ、そして外へ出てお巡りさんに捕まえてもらう。国民は素朴にそう感じているんですよ、こんな自衛隊、頼りになるのかいなと。大変な金をかけて大変な装備をかけて、安全安全、弾薬の管理だとか規定だとか安全を余りにも重視した結果、あつものに懲りてなますを吹くようなことになっちゃっているんですよ。私はこの事件は大変な事件だと思いますけれども、こうした中に潜む自衛隊訓練あり方とか、その人事管理や指導の方針に非常に危惧を感じ始めたんです。いかがでしょう、この辺をはっきりお答えいただかないと、国民の不安は解消しませんね。長官のお答えをいただきたいと思います。
  210. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 和田さんのおっしゃる、あるいは和田さんの問題にしていることは、私みずからも大変問題にしているのです。したがいまして、これが究明と今後の対策につきましては、先ほど来申し上げているとおり私としては徹底してやりたい、こう考えております。
  211. 和田一仁

    和田(一)委員 私、この間防衛庁の方から送っていただいたパンフレットを見ておりましたら、「たまに撃つ弾がないのが玉にきず」という自衛隊員の川柳、これは何かのコンクールで一等をもらったという川柳のようです。これは端的に日本の自衛隊の実態をあらわしていると思うのですね。隊員の中から出てきた川柳だと書いてありました。「たまに撃つ弾がないのが玉にきず」、これは確かに国会全体で考えなければいかぬ問題です。自衛隊員がこういう悩みを持って訓練に従事している。本当にこれでいいのかなという感じもいたします。  しかしながら、私はもう一つお尋ねしたいのは、人事管理の中で、隊員の思想信条あるいは組織へのロイヤリティー、こういうようなものの把握はどんなふうにやっておられるか、これをひとつお聞きしたいと思います。
  212. 上野隆史

    上野政府委員 隊員身上把握、これは人事管理上最も大事なことであるというふうに思って、それについては最大限工夫を凝らしやっておるつもりでございます。  今回の事件を起こしましたこの二士、これは営内居住の隊員でございます。特に営内居住の隊員につきましては、平素から身上を把握し、そしてやはり団結心を養うということに努めておるわけでございまして、具体的な事例を申し上げますと、営内居住の隊員は、おおむね十名程度、これはほとんど十名以下の班をつくりまして、その上に班長を置きます。この班長も営内居住でございまして、起居をともにするわけでございます。  この班長は、曹、昔のあれでいいますれば下士官の階級にあるものでございます。そういう若い隊員身上把握に、いわば熟達をした者を充てるようにしております。そしてこれが日常、常住座臥、その挙措動作の面におきまして隊員の個人の悩みとかあるいは家庭の悩み、そういうようなものも含めまして全人格的に隊員を掌握いたしまして、そして適材適所に配置することを心がけておるということをやっております。  そして、その指導がまちまちにならないように、幕僚監部におきましては、服務指導に関する手引きというようなものを、それぞれ陸海空違いますけれども、工夫を凝らして、あるいは色刷りの物、今はやりと申しますか、やや戯画的な物を入れたりした、要するに見てわかりやすい物を配りまして、その中には大変事細かく書いてございます、それから各国の事例等もそこに挙げてございます、そういうような物をその班長たる者が見て、把握をする。そして隊員一人一人につきまして、これは名前はいろいろございますけれども、中身はほとんど同じでございますが、手薄と称するものを一人一人につきましてつくっております。そこでもって、何月何日彼らはどういうことであった、自分はこういう指導をした、それについて効果があった、なかったというようなことをずっと書き連ねまして、そしてその班長がかわりましても次の班長がそれを引き継ぐ。そして隊員が転勤になりますれば、その隊員についてその書類が回っていくというようなことで、身上把握には最大限の努力を払っておるつもりでございます。  しかしながら、今回のこういう事件が起こったということにつきましては、やはりそういう面で抜かりがなかったかどうかというようなことにつきましても反省を合しておるところでございます。
  213. 和田一仁

    和田(一)委員 相当厳密にそういう点は管理をしているようなお話ですが、にもかかわらずこういうケースが出てしまったわけです。まあいいです、日本は。平時でこういう事件が起きて大騒ぎをやっているわけですけれども、もし何かのときに隊員の把握、管理が不完全だったら、一部新聞が言うように、武力集団の中でもしそれがうまくいかなかったら、それは本当におっかないことになります。これは暴徒の巣になるおそれがあるというような論調が出てきたって無理ない。ですから、その点だけは厳重にやっていただきたいと私は思います。同時に自衛隊の持つ使命、国を守るんだ、国民の生命、財産を守るんだという崇高な使命を隊員一人一人が持てるような指導をすべきだと思うのです。そうでしょう、長官。  でしたら、私提言いたしますが、弾薬の管理に厳しいのは結構です。がしかし、いま長官のいらっしゃる防衛庁の玄関に衛兵がおりますね。あれは衛兵というのか警備員というのかよく知りませんけれども、あの持っている銃には実弾が入っているとお思いですか、長官。――これは入ってないのです、長官。空なんです。自衛隊は軍隊ではないと言うかもしれませんが、同じような使命を持って衛兵として立っているその兵士に弾を持たせないなんという国は、世界でどこもないですよ。  六本木にある防衛庁、あの周辺は、あのように赤いにぎやかなネオンの輝く夜の町ですよ。夜酔っぱらいがあの前で衛兵に、撃てるなら撃ってみろとからかう。万が一にも撃つわけがないと思うからこそ、そういう侮辱したことをやってもあの人たちはこらえていかなければいけないのです。何もかも国民にばかにされているのです。こういうことではいけないと私は思うのです。やはり厳然とした姿勢と、そういう意味では国民から、御苦労さん、いよいよというときには大変な立場にある人だということをきちっと認識してもらえるような指導をしていかなければいかぬ。私は、そこに弾を込めさせたらすぐ酔っぱらいが来なくなるとは思いませんよ。すぐそれがなくなるとは思わないけれども、しかし、姿勢として余りにもおもちゃの兵隊のような、鉛の兵隊のようなことをさせておくと、何もかもが精神的にもおかしくなってしまう、こういうことすら私は感じわけなんです。ここの射撃場の入り口にいた警備員も丸腰だった、これはもうしょうがないと思いますけれども、しかし、同じようなこんなことをやればすぐ制圧されるんだというぐらいの毅然たる姿勢が隊内にも満ち満ちてなければならぬ、こんなふうに思いますので、一言申し添えておきます。  それから、PS1ですけれども、これは徹底的に事故究明をしていただきたいと思うのです。何でこんなに同一機種が落ちるのか。これは操縦ミスがあったり、あるいはフロートにぶつかってひっくり返ったとか、あるいは山にぶつかったとか、それぞれ原因が究明されて、原因不明は一件だけだ、こういうことですが、今度の場合もぜひ徹底究明していただきたいと思いますが、おやりになりますか。
  214. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 これも海幕の方で調査班を出すときに、今までの例を見ているといろいろ巷間伝えられているごとく事故が多いという感じを素人ではあるけれども私もそう思う、したがってこれは今までも徹底しておったんだろうけれども、さらに私から徹底して調査をしてもらいたいということで指示をしておきました。それだけ申し上げておきます。
  215. 和田一仁

    和田(一)委員 そうすると、やはり一番いいのは徹底的に機体を捜していただく、引き揚げていただくことじゃないかと思うのですね。あの辺はどれぐらいの水深ですか、私は不可能な深さではないと思うのですけれども、機体をサルベージで揚げられますか。
  216. 西廣整輝

    西廣政府委員 先生申されたとおり、事故現場は大体五十メートルないし六十メートルの水深でございまして、十分サルベージ可能だと考えておりまして、現在、艦艇二十数隻を出しまして、ソーナーを使う等で捜索をいたしております。そしてなお、何かそういう端緒のありましたものについて水中作業員を滞らせるあるいは水中作業船を入れるということで、鋭意機体を捜すということに全力を尽くしております。
  217. 和田一仁

    和田(一)委員 ぜひ原因の徹底究明のためにも機体を揚げていただきたいし、また、まだ行方不明になっておられる隊員皆様に対しても、これはどうしてもやっていただきたいなと思いますので、お願いをいたしておきます。  それじゃ、次に移りますので、防衛庁関係の方ありがとうございました。  在外公館の問題でございますけれども、在外公館を今度また置かれるわけですけれども、在外公館に必要な人員というのは、最低どんなものなんでしょうか。大体七名、八名というふうに伺っておるのですが、今度の場合はどうなんでしょうか。  それで、だんだんと国際的に交流のふえていく国際情勢の中で、我が国の外交の出先実施体制はまだまだ非常に脆弱なような感じがいたします。大臣、今度新しい設置を契機に我が国の外交実施体制、これは私はまだ弱体なような気がいたしますが、いかがでしょうか。
  218. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 外交実施体制はしばしば訴えておるわけでございますし、また当委員会も大変関心を持っていただいて決議等もいただいておりますが、先進諸外国等に比べますと非常におくれておる。職員の数からいいましても、五千人体制にはまだまだ遠いという状況でありますし、また職員の待遇であるとかあるいは在外公館の予算といった面等も非常に貧弱である、こういう状況でございますが、精いっぱい努力はしておるわけでございます。もっと本格的な外交を展開して、日本の地位が国際的にこれだけ高まってきた、それだけの役割を果たす上においては、もっといろいろな面で充実していかなければならないということを痛感しております。しかし財政がこういう状況ですから非常に難しいわけですが、そういう中で理解を訴えてこれを進めてまいりたい、こういうことで努力も重ねておるわけであります。
  219. 和田一仁

    和田(一)委員 内閣委員会に前回も在外公館のための小委員会を設けたわけですが、今回もそういう方向で設ける予定でございますけれども、ここまで参りました日本の国のあり方からいっても、これはぜひ充実していくべきであると考えるわけです。  まだ公館の中には自分のものでなく、借り家で高い家賃を払っているというようなケースが大分多いように伺うのですね。これを長い目で見て自前のものにしていくべきだと思うのですけれども、これはどんな計画でおやりになるおつもりか、ちょっとお伺いしたいと思います。
  220. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 ただいま御指摘のとおり、我が国の在外公館といたしましては、やはり国の威信あるいは事務能率、さらには警備の必要から申しましても、自前の国有化された施設に入っておるということが望ましいわけでございます。この点は、財政逼迫の中ではございますけれども私ども鋭意努力をしてきたわけでございまして、例えば十年前でございますと、全在外公館の公邸の中で国有化されておるものが五〇%でございました。今日六二%まで来ております。それから事務所につきましては、将来の人員増その他を考えますと、むしろ弾力的に運用する、ある特定のものをつくってしまうよりも、将来のことも考えますと軽々には国有化といいますか、自己の所有にするということが逆効果になることもございますので慎重に考えないといけないわけでございますけれども、これも十年前の二二%から今日は二八%まで上がってきております。  今後の計画というものは、単年度予算という建前からいたしまして必ずしも申し上げられるようなわけにはまいりませんが、私ども現在まで十年間をとりますとそういうペースで進んできておりますし、今後ともさらに一層このペースを速めるように努力いたしたい、これだけ申し上げて、お答えにさせていただきます。
  221. 和田一仁

    和田(一)委員 施設も人員もそういう意味ではぜひひとつ拡充していただいて、在外公館本来の任務が十分達成できるようにしていただきたいと思うのですね。やはり出先からの情報というものは本国にとっても非常に大事なことでございますので、そういう意味での活動が阻害されないように、置いた以上は十分な情報収集が可能なような体制をつくっていただきたいと思います。  そういう意味で、大臣、最近新聞に大きく出ておりますのがイラン・イラク戦争の緊張化でございます。毎日のようにイラク軍がカーグ島を攻撃したと言い、片やイランは、いややられてないよというようなさまざまな情報があるわけでございますけれども、そうした在外の公館からの情報を総合して、大臣は、今のイラン・イラク紛争の拡大を、先ほども御質問がありましたようですが、そんなに懸念されてないように私は受け取ったのですね。果たしてそういう御認識がどうか、もう一回伺いたいと思うのです。
  222. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 懸念していないわけではございませんが、イラン・イラクの戦争が今一気に爆発して、ホルムズ海峡封鎖というふうな状況にはいかないのじゃないか、こういうふうに情勢分析をいたしておるわけであります。  カーグ島をイラクが爆撃したということで随分心配して、日本としてはあらゆる情報をとったわけであります。テヘランにも直接大使館もありますし連絡をとったわけでございますが、いろいろと現地の情報等を収集しました結果、カーグ島の積み出しも支障なく行われておる。ですから、果たして被害があったかどうかすらまだ確認ができないような状況でございまして、イラクが言っているほどの被害というものはないように思うわけでございます。私は今のイラン・イラクの戦争の状況から見ると、両国とも一気に戦争を拡大して決着をつけよう、こういうふうな構えではないように思っておるわけでございますし、相当まだ自制がきいておる。そして各国からの呼びかけも相当イラン、イラクの自制には結びついておる。日本ももちろんその中で精力的にイラン、イラクに対して、紛争拡大を自制するように強く要請しているわけですが、そうした点も相当響いてきておるのじゃないかと思うわけでございます。  しかし、戦争のことでございますから全く懸念がないわけではありませんで、こういうことがじりじり続いていくと、いつ本格的な状況になるかもしれない、こういうことはやはり心配していることは事実でありますが、今すぐ破局的な状況になっていくんだという情勢分析は、今の日本が集めておる情報からすればそういう状況ではないんだろう。日本の情報が、イラン、イラクについては世界の中で最も集まっておる、すぐれた情報を持っておると私は思っておるわけでございますが、私たちはそういう立場から、今申し上げたことを情勢分析として申し上げたわけであります。
  223. 和田一仁

    和田(一)委員 私の手元に、二月十八日の予算委員会大臣が私の同僚委員の質問に御答弁なさっている中で、両国の大使をしょっちゅう呼んで、そして戦争拡大に対する自制を求めております、この数週間というものが山場じゃないか、そういう中で何としても全面衝突、一挙に戦闘が拡大していくということを避けるべく努力していかなければならない、こういうような御答弁がありました。  この数週間が山場ではないかという表現ですけれども、何かそういった気配がありますか。
  224. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 イランの軍隊が相当国境を越えてイラクに進撃をしておるということですが、しかしこれもどの程度進撃したかということについては、多少情報にむらがあって確実な情報の掌握ができないわけでありますが、少なくともイラン、イラクの国境で動きが出ておる。これはやはりイランがイラクに対して一つの攻撃を加えて、フセイン体制というものを揺すぶってみておるのじゃないかということであります。しかし、さらに戦闘を拡大して、この際あくまでもフセイン体制を壊滅するところまで持っていこうというような動きだとは思われない。あるいはまたイラクも、そうした動きと対応して都市攻撃等をミサイルによって始めておるし、あるいはまたカーグ島に対しても警告をし、さらに最近では攻撃もした、こういうことで、イラクはイラクなりにまた反撃といいますか攻勢をかけておるわけですが、これもやはり決定的な攻撃ということではないように思うわけです。  ですから、両方が揺さぶりはかけておりますけれども、まだ決定的な両軍の衝突とかあるいはまた決定的な戦闘とか戦争とか、そういうところまで至ってないというのは、やはり両国にまだ相当自制がきいておるのではないかというふうに私は判断しておるわけでございますが、そういう中でやはりいろいろと動きが出てくるわけですから、そういう動きが間違って非常に大きい戦闘へ発展するということになるとこれは大変なことになるわけで、戦争は心理が非常に左右するわけでありますし、今の状況から見ると、両国はやはり自制をしてそこまでいかないと思いますが、しかし全然油断はできない。ですから、今のそうした両軍の動きというものを見詰めていく、そしてある程度数週間というものはそういう中で我々が判断ができるのじゃないだろうか、こういうふうに思うわけであります。
  225. 和田一仁

    和田(一)委員 大臣の御見解だとどうも本格的にはまだなっていないようだし、そうなりますと、ここはとにかくホルムズ海峡を通ってもう我が国の油の大供給地ですけれども、日本のタンカーが陸続とつながって出入りする場所ですけれども、ラマダン第一副首相の警告というのが新聞に出ておりましたね。これは二十九日ですか、二十八日の晩パリでの記者会見の中で、イラクのラマダン第一副首相が日本船に警告を発しておりますね。これは大丈夫ですか。これは本当大したことない、おどかしだ、その程度にお考えで、そうとってよろしいですか。
  226. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 おどかしと言ったらこれはまた外交的にもいろいろと問題があるわけですから、そういうふうに申し上げるわけにはいきませんし、やはりイラクのそうした警告に対しては、日本もこれに対して十分に慎重に対応しなければならぬと思うわけであります。しばしばIJPCも攻撃する攻撃すると言われて、我々はそれなりに対応してきたわけでございますが、今のところは大きな被害というところまで至っておりません。しかし、日本人の技術者等は一時避難していることは事実でございます。また、日本の船舶等に対するそうした警告もあるわけですから、これはそれなりにやはり現地の日本の船舶あるいは日本の関係者は注意をして慎重に対応していくことを我々は忠告もいたしておりますし、そういう態勢を大使館としてもとっておるわけでございます。  それはそれなりに用心深く、念には念を押してやらなければならぬと思いますが、全体の戦争の動きというものは、先ほど申し上げましたように、今ここで一気に爆発するというような状況ではどうもないように私は思っておるわけでございます。この点につきましては、近ア局長も両大使館としょっちゅう連絡して、現地とも連絡をとって情報は毎日のように集めておりますから、局長からも説明をいたさせます。
  227. 波多野敬雄

    ○波多野政府委員 我々が当初最も心配しておりましたのはホルムズ海峡が閉鎖される事態が過早に起こるのではないかということでございまして、この点につきましては、安倍大臣、昨年のイラン、イラク訪問以来、イランに対して、ホルムズ海峡の封鎖は第三国の介入を招き大変なことになるからこういうことは過早にやるべきでないということを説得に説得を続けまして、日本が説得したからと申し上げるのもちょっとなんでございますけれども、日本の説得も幾分かの効果はあったと思いますけれども、最近はイランも、イランのペルシャ湾を通ずる石油輸出が決定的な打撃を受けない限りホルムズ海峡は封鎖しないつもりだということを我々の方にも申してきております。  あとは、イラクに対して余り大きなエスカレーションはこの際避けるようにという説得を続けておるわけでございますけれども、イラクは数百機の飛行機を持っておりますけれども、現在云々されておりますイラクの攻撃というのは数機の飛行機による攻撃でございまして、こういう意味で現在のところはイラクも白制を持って事態に対処している。イラクとしましては、やはり国際的な支持を得続けるということが重要だと思っていると思います。そして、もしも過度のエスカレーションを行う場合には国際的な支持を失う結果になると思いますので、イラン、イラク側としても自制をもって現在までのところ対処しているし、今後もこういうことが期待されるという我々の判断でございます。
  228. 和田一仁

    和田(一)委員 さっき大臣のお口からも、イラン、イラクに対しては我が国の外交ルートというものは相当きちんとついておる。先般も訪問されまして、いろいろ拡大を防止するためにお骨折りをいただいておる。私は今御答弁を聞いておったりして、時期が来ているのではないかな、そろそろ何とかおさめたい時期にあるから、やはり時の氏神があらわれるという期待がそろそろ強くなってきているような感じがするのです。そのタイミングや何かを外しますと、いよいよこれは追い込まれていって、これはカーグ島の攻撃であろうがホルムズ海峡の封鎖であろうが、やれる力がありながらやらない、自制している両国が、これはいよいよ追い込まれると何をしてかすかわからぬような感じもするわけなんです。その辺について大臣の出番が、この数週間という言葉の中に私は非常に濃くあるような感じがしてならないのです。  いま一つお聞きしたいのは、これはソ連、イランが極秘に軍事協議をやったというニュースですね。これは私も新聞で知っているだけでございますが、こういったニュース。そして、それに対してアメリカの反応として、レーガン大統領はインド洋にあるミッドウエー、この機動部隊に対してホルムズ海峡の近くに行け、こういう命令を出しておる。また一方では、米政府の高官筋がもう従来のアメリカの立場、いわゆるニュートラルな立場を放棄して、ひそかに、しかし明確にイラク支援に動き出しているというようなニュースも入っているわけですが、こういうような動きが何か非常に出てきているような感じがするわけですけれども、こういう情報等に対して大臣はどんな判断をされておりますか、ちょっとお聞かせいただきたい。
  229. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 果たしてソ連とイランがそういう極秘会談をやったということが事実かどうか、まだ全く承知する限りでないのですが、イランはツデー党という共産分子を弾圧しているといいますか、処刑をずっと続けてやっております。そして、これからも続けようということでしょうが、そういう中で何かの動きがあったということも言われるわけですけれども、どうもイランとソ連との関係から、我々は素直に認めがたいような感じがするわけでございます。何といってもイランは宗教国家でありますし、ソ連との間には相当決定的なイデオロギーの差というものがあることは私も行きまして痛感したわけでありますし、それからソ連はイラクをずっと強力に支援しておりますから、そういうことでそう簡単にイランとソ連との間の修復とか会談とかいうものが行われることはないのじゃないかという感じを率直に持っておるわけであります。  また、アメリカも、イランとはこれはもう何らのパイプを持っていないわけでございます。イラクとはパイプもあるわけですが、アメリカがイラクに対してそう積極的な支持といいますか、そのためのいろいろな援助をしているという段階になっておるとも我々は承知しておらないわけでございます。しかし、どちらかというとイラクに対しては、イランと悪いだけに、イラク支持というふうにも受けとられておるわけでございますが、しかし、この辺は私はアメリカは冷静に対応していると思います。  ただ、ホルムズ海峡については、これはレーガン大統領もはっきり言っているように、ホルムズ海峡が制圧される、封鎖されるということになればアメリカは黙ってはおらない、アメリカは必ずこれに介入してホルムズ海峡の自由航行を確保するのだということははっきりと明言をしておりますから、それはアメリカの強い意思であろう、私はこういうふうに思っているわけでございます。  いろいろの動きが出ておりますけれども、基本的にはイラン、イラク両国とも、今のところはそうした戦線の動きはあることはあるにしても、決定的な衝突というところまではいかないのではないだろうか。また、いかしてはならないというのが我々の立場でありまして、そのためにこれからもひとつ外交的な努力を続けてまいらなければならぬ。  日本は幸いにして、先ほど申し上げましたようにイラン、イラクともに大きなパイプを持っておる。特にイランとの間では、これはアメリカもソ連もフランスもパイプがない、そういう中で日本のみが持っておる。こういう立場を生かして、やはり今こそ日本は外交的にその役割を果たしていく時期だと思います。しかし、イランはそういう我々が仲介するとか調停するということは大変嫌がっておりまして、そういうことよりは日本とイランの関係をもっとよくしていこう、二国間の問題だけについて話そうという姿勢ですが、しかし私たちは、やはり二国間の問題以上に、どうしてもイランと接触する上においてはそうしたイラン・イラク戦争の拡大防止といった面から努力を重ねるのが日本外交の筋だと考えて努力をしておるわけでございます。今後ともやっていく決意であります。
  230. 和田一仁

    和田(一)委員 ぜひ大臣、そういう意味ではこれは世界の火種みたいなところですけれども、その危険な火種を消し得るのは、広しといえどもこれはやはり日本のあなたしかいないというぐらいの強い自負心を持って、これからも何とかここの紛争が拡大せずにおさまるように御努力を願いたいと思います。これは本当に日本のためだけでなしに、世界のために一肌も二肌も脱いでいただかなければならぬと思うのです。  万が一に何か事があったら、ここにいる邦人はイランでも九百人近く、イラクには三千名近い邦人がおりますので、こういう人たちの生命、財産に対する責任も、外務省としては何としてもこれは守らなければならぬ立場ですね。そういう意味では私は、もちろん現地にいる邦人のことだけではないのですが、今現地にいる人たちに、もし本当に拡大していったときに外務省はどういう手だてがあるのか、ちょっとお聞きしておきたいと思うのです。というのは、今日本の自衛隊では、この救出作業にすらなかなか思うように自衛隊員を派遣できないというような姿勢ですから、一体どうすればいいのか。在外邦人の生命を保護する外務省としての責任ある立場から、どういうふうなお考えがあるのか、一言お聞かせいただきたいと思います。
  231. 谷田正躬

    ○谷田政府委員 御指摘のとおり、イランの方には現在千三百名ぐらい、それからイラクの方には三千名の邦人がいるというのは、最近在外公館の手を通じまして、それからまた企業関係につきましては在京の本社を通じまして、我々としてはまず邦人の動向の把握に努めておるわけでございます。  それから、状況の変化に応じましては、在京の大使館、本省からも情報を流す、それを在外公館を通じましてそれぞれの各地におられます在留邦人に情報を通知しておるということでございます。それで、IJPCの方に関しましても、そういうことで大使館からの情報を得て適宜措置をとっているというふうに、連絡はうまくいっております。  また、これが将来どのようになりますかにつきましては、我々の方でも常に緊急避難の体制につきまして研究いたしておりまして、退避のルート、そのための手段の確保ということは、日ごろから在外公館と在留邦人の団体、それぞれの出先と詳細に打ち合わせをして、備えを怠らないというふうに努めております。
  232. 和田一仁

    和田(一)委員 この問題は、また機会を改めてもう少し深く、海外における邦人の保護のためにはもっと適切な手段を講じていただくように御相談したいと思います。  最後に、一つだけお許しをいただきたいのですが、毎回在勤法の附帯決議の中に、海外邦人の選挙権行便ができるように早急に措置しろというのをつけておりますけれども、在外邦人の選挙ができるような手だてが具体的になってきたかどうか、法案提出の用意があるのかどうかをお聞きしたいと思うのです。
  233. 谷田正躬

    ○谷田政府委員 在外選挙の件につきましては、附帯決議を受けまして自治省と外務省との間で鋭憲法案の作成準備をやっております。
  234. 和田一仁

    和田(一)委員 今国会に提出の予定ですか。
  235. 谷田正躬

    ○谷田政府委員 提出の準備ということでやっております。
  236. 和田一仁

    和田(一)委員 在外公館の人にはまた一つ仕事がふえて大変だと思いますが、実現した暁にはぜひひとつ御努力を願うようにお願いをいたしまして、質問を終わります。ありがとうございました。
  237. 片岡清一

  238. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 在外公館法の質疑ですが、その前に、きょう報告されました事故の問題に関連して、皆さんから質疑がありましたので、一つだけ私伺っておきます。  というのは、二十七日に海上自衛隊PS1が墜落して、乗員の一人でありました愛媛県出身の岡上勝利三曹、この方の遺族であります兄さん二人が、事故の直後に岩国に駆けつけました。続いて、兄さん二人がまだ若いものですから、おじさんやおばさんなど五人、親戚の方が駆けつけてきました。ところが、これに対して自衛隊の方では、遺族二人に限って、それも二日間だけしか宿舎の面倒を見られない、こう言われたということで私のところに訴えがあったのですが、このやり方というのは余りにも冷たい対応ではないかと思います。そういうことを指導しているのか、また、こういうことについてどう考えているのか、この点をお伺いします。
  239. 西廣整輝

    西廣政府委員 お答えいたします。  今回の事故につきまして犠牲者が出たわけでございますが、現地の隊員一同、自分のことと全く同じように大変悲しみ、かつ衝撃を受けておるわけであります。したがいまして、遺族の方々に対してはまことに申しわけなく、あるいはお気の毒に存じて、万々そういう事態はないと私どもは信じておりますけれども、今先生の御指摘のような事実はそういうことで私どもの方に上がっておりませんが、実態をよく調べまして善処いたしたいと思っております。
  240. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 そこで、ちょっと確認しておきたいのですけれども、今のような事実、二人に限って二日間だけしか世話しない、こういうことというのはいいことだとお考えですか。そういうことであれば直しますか。
  241. 西廣整輝

    西廣政府委員 何人に限るというようなことは、こういう事情が事情でございますので、しゃくし定規にやるというようなものではないと私どもは考えておりますし、限度というものはあるかもしれませんけれども、できる限りのことをするというのが自衛隊の立場でございます。
  242. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 それでは法律問題ですが、去年の本法の改正では、在勤基本手当基準額が、五十七年度が人事院勧告の凍結によって公務員給与が凍結された、そういうことから痛みを分かち合うということで、基準となりますワシントンでの物価上昇率から日本国内での物価上昇率を差し引いて計算するという措置をとって、在外職員に対しても国内の公務員と同様に給与の抑制が行われました。五十八年度の給与改正人事院勧告の値切りであるわけで、極めて不当なものであると私は考えておりますが、今回、在勤基本手当基準額について、既設のものについては改正が行われておりません。諸外国での物価上昇や為替の変動などに対して、法十条の規定による基準額のプラス・マイナス二五%、この範囲ですべての在外公館についてカバーできるかどうか、その見通しについてお伺いしたいと思います。
  243. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 今回の予算折衝におきまして、本在外手当の問題につきましてもその対象として検討したわけでございますけれども、その結果といたしまして、まず物価と為替の変動あるいは現地の生活水準、そういったことを考慮いたしましたところ、大部分の公館につきましては、その変動が昨年に比して非常に小さいという結果でございました。かなり幅の大きなものでございましても、先ほど御指摘の上下二五%の範囲内にとどめ得るということでございましたので、この点につきましては、国会を煩わして法律改正するまでもない、法律によって授権されております政令によって手当てできる、こういう見通しで、政令による支給額の改正を考えておる次第でございます。
  244. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 もう一つは、去年の十月に外務人事審議会の勧告が出されて、この中で、子女教育手当について世界的に教育費が高騰している、このことが認めてあるわけです。子女教育手当の改善につきましては、引き続いて指摘されていながら今回も見送られているわけです。  そこで、外務人事審議会の勧告に基づいて政府として検討が進められていると思うのですけれども、今日の検討内容と、いつごろ結論が出されるか、その点についてお伺いします。
  245. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 ただいま御指摘のとおり外務人事審議会からの勧告の中に、子女教育手当についてもさらに改善を図るようにというのが含まれておるわけでございまして、私どもも、その実態を見ますと、現在の一万八千円の定額の支給、特定の公館につきましてはさらに百分の百の増額が認められておるわけでございますけれども、その範囲では必ずしも十分に対応できない公館も出てきておるというのが実態でございまして、鋭意検討を続けておるわけでございますが、現在の財政状況その他の点も勘案いたしまして、来年度に泣きましては当面現在までの体制でいかざるを得ないであろうというふうに考えております。しかしこの問題は大変切実な問題でございますので、今後とも、当委員会の御理解、御支援なども得まして、改善に努力してまいりたい、このように考えております。
  246. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 次に、防衛施設庁の関係になると思いますが、空母ミッドウェー艦載機の訓練基地の代替施設問題について二、三お聞きしたいと思います。  さきの予算委員会で、施設庁長官が関東周辺基地の名前を数カ所挙げました。その中に今私が住んでおります千葉県の下総基地や、それから木更津、館山というところが含まれておりました。あのタッチ・アンド・ゴーの訓練というのは騒音基準をはかるに超えたものであって、基地周辺住民の被害は非常にひどいものがあるわけです。この騒音だけではありません。まだいろいろと被害があるわけです。その基地を関東周辺に求めるということはもともと無理があると私は考えております。私は、日本にはこういうものは要らないという立場なんですけれども、そのことは別といたしましても、施設庁としてはどうしても米軍の要請にこたえて関東周辺に代替施設を求めようとされているのか、それを変える、これは変えなくちゃならないというふうに考えられないのか、この点をお伺いします。
  247. 千秋健

    ○千秋政府委員 お答え申し上げます。  現在、厚木飛行場におきましてミッドウエー艦載機のパイロットの着陸訓練を行っておりますが、これは米軍パイロットの練度維持の上において必要欠くべからざる訓練だと我々は考えております。  他方、この厚木飛行場周辺の市街化が非常に過密になっておりまして、その騒音の被害状況、そういうこと等ありましてこの緩和を図らなければならないという面から、関東周辺におきましてこれにかわるべき飛行場が見出せないかということで私ども検討を続けているわけでございます。  そのため、今年度におきましては、関東周辺におきます既存の飛行場につきまして所要の訓練ができるかどうかの調査、また、新設飛行場について適地の調査、浮体飛行場についての資料の収集、こういうもの等を行っておりまして、現在行っております厚木飛行場の代替という面から、関東周辺におきましてこれらの訓練が円滑にできるような施策、方策、こういうものを見出したいというふうに考えております。
  248. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 今年度に調査をしたいということを言われましたけれども、今まで代替基地を目的にして滑走路の状況なんかを調査した、そういうことがこの前施設庁長官が挙げられました基地の中にあるかどうか、それとも全く行っていないのか、その点を確認したいと思います。
  249. 千秋健

    ○千秋政府委員 ただいま申し上げましたように、今年度におきまして関東周辺にあります既存の飛行場の調査ということを行っております。これらの飛行場は、大体におきまして我々自衛隊の飛行場でございまして、自衛隊の飛行場に関します滑走路の長さとか厚さ、所要の施設の規模、そういうものにつきましては、いろいろデータ等もございますので、我々内部においてそういう検討は行っております。
  250. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 それは施設庁の内部で、いわゆる机の上でやっている、こういうことで、現実に飛行機を飛ばしてみるとか現場に行ってみるとか、そういうことは今まではないわけですか。
  251. 千秋健

    ○千秋政府委員 現段階におきます調査としましては、あくまで我々の内部におきますデスクワークといいますか、机上の検討でございます。
  252. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 施設庁の方も十分御承知だと思うのですけれども、千葉県では代替基地に対して強い反対がありますし、県知事なども議会において体を張ってでもやめさせるということも言明しておられるわけです。代替施設ということになりますと、騒音問題を初めといたしまして周辺住民には重大な影響を及ぼすことになります。ですから、予定された関東地方、こういうところでは恐らくみんな反対されるであろうと思うのです。周辺住民、地方公共団体の意向を十分尊重するということも言っておられますし、またこれは当然の前提だと思うのですけれども、住民の意向という問題についてはどのように考えられていますか。
  253. 千秋健

    ○千秋政府委員 これは今回の問題に限りませんが、米軍に提供しております施設、区域、また自衛隊の基地等につきましては、周辺住民の理解と御協力というものは我々はぜひ必要なものと考えております。今回の訓練飛行場の問題につきましても、当然、代替施設を見つけるに当たりましでそういう地元住民の御意向というものも十分念頭に置きまして検討してまいりたいと思っております。
  254. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 その点はもう今までの経過からも明らかなように、地元での強い反対、単に千葉県だけではなくて、関東地方にタッチ・アンド・ゴーの訓練基地を新たに設けるとか今までの飛行場を使う、こういうことについてはみんなが反対であるというように見ております。そういう意味で、そういう計画はもうやめたがいいということを私は申し上げたいと思います。  それでは次に、これは先ほど同僚議員からも質問がありましたが、アメリカに対する武器技術の供与問題について若干お尋ねしたいと思います。  去年の一月十四日に対米武器技術供与について官房長官談話が出されて、この中でアメリカヘの武器技術供与が武器輸出三原則によらないということを決定したということになっております。この立場から去年の十一月八日には、日本国とアメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定に基づくアメリカ合衆国に対する武器技術の供与に関する交換公文、これが取り交わされております。  まず外務大臣に伺いたいと思うのですが、外務大臣は二月二十日の衆議院の予算委員会で、宇宙弾道ミサイル防衛システムについての質問の中で、弾道ミサイル計画はアメリカにとってはアメリカの安全保障、防御的な兵器だから、将来武器技術の供与ということがあっても、防御的なものであって安保条約のいわゆる効果的運用ということで理解されれば供与されるものであろうと思う、こういう趣旨を答えられております。  この答弁の趣旨からいいますと、アメリカのための防御的兵器という要件を満たすのであれば、日本はアメリカに武器技術の供与を行ってよいという考えを持っておられるようですが、その点を確認したいと思います。
  255. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私が発言をいたしましたのは、要するにアメリカのそうした武器、例えば宇宙弾道ミサイルといった武器、我々の知り得た知識ではこれはあくまでも迎撃用のものである、ですからこれはアメリカにとってはあくまでも防御的なものである、こういうような認識を持っております。また、元来アメリカの武器につきましても、いわゆる戦争の抑止あるいはまた国連憲章を守るという立場におけるあくまでもアメリカの防衛といったものがその中心であるというふうにも理解をいたしておるわけでございます。  そういう中で今回の武器技術供与がいよいよ実行される段階になったわけでありますが、私たちは、この武器技術の供与に当たっては、そうした基本的な認識とともにやはり日米安保条約の効果的な運用を図るというのが最大の目的でございますから、その目的に沿ってこの武器技術は供与されるわけでありますし、同時にまた、それを供与するに当たってはもちろん日本の憲法あるいはまた日本の法律的な立場が貫かれなければならない、そういう中で自主的に判断さるべきものである、こういうふうに理解をいたしております。したがって、これからの武器技術、どういう武器技術が欲しいということはアメリカはまだ何も言ってきておりませんが、今申し上げましたような立場に立って慎重に判断をして自主的に決めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  256. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 交換公文の中には「アメリカ合衆国の防衛能力を向上させるために必要な武器技術」という表現があるわけですけれども、この表現は外務大臣の今のお考えと同じでありましょうか。
  257. 北村汎

    ○北村政府委員 昨年一月に政府が対米武器技術供与の方針を決定いたしましたのは、米国の防衛力の向上に資することによって日米安保体制の効果的な運用を図ることが重要であるという観点からでございます。先ほど外務大臣が答弁されたのもその趣旨の一環であろうと思います。
  258. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 交換公文では、武器技術共同委員会をつくって、そこで供与されるべき武器技術を識別する、そのための協議機関であるということが書いてある。すなわち個別審査をするということを決めていると解されるわけですが、この協議の中で、アメリカから要求があったときに日本はこれを拒否するということもあり得るわけでしょうか。
  259. 北村汎

    ○北村政府委員 武器技術の対米供与につきましては、アメリカから要請があった技術はすべて供与を認めるということではございませんので、あくまでも日本が自主的に判断をいたしまして、先ほども申しましたように、それが日米安保体制の効果的な運用に役立つ、重要であると認められるものについてのみ供与をするということでございます。
  260. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 北米局長は二月十六日の衆議院の予算委員会では、特に日米安保体制を運用する上において効果的であるかどうかというような国益の観点から判断をして、個別的に審査をして決める、こういうように答弁されております。ここでは国益という観点が入っておりますが、これも判断の材料にしようというわけですが、この国益ということはどこが判断するのでしょうか。
  261. 北村汎

    ○北村政府委員 そこで言う国益とは、要するに対米供与の要請があった時点において、政府がその要請に応じて技術をアメリカ側に提供することが日米安保体制の効果的な運用に役立つ、それが国益であるということで、日本側が自主的に判断をして決めるわけでございます。
  262. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 そうすると、それは端的に言えば共同委員会が決めるのか、政府が決めるのか。  ついでに、私は、交換公文の中では結局判断の基準が具体的には示されていないというふうに解しているのです。そこでもう一つ、外務大臣が答弁されております防御的兵器であるかどうか、こういうことは判断の基準に入るのでしょうか。あわせてお伺いします。
  263. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私が防御的兵器と言ったのは、今の弾道ミサイルですか、その質問が出たとき、弾道ミサイルというのは要するに攻撃してくるミサイルを迎撃するための防御的兵器だ、こういうふうに理解している、こういうことで申し上げたわけであります。
  264. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 では、先ほどの国益という問題ですね。これは共同委員会で判断するのですか、政府の判断になるわけでしょうか。
  265. 北村汎

    ○北村政府委員 これはあくまでも日本政府の自主的な判断でございますので、決してJMTCと呼ばれる武器技術共同委員会で決定するということではございません。
  266. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 今までの政府の国会答弁なんかをずっと調べてみますと、ナイキとかホークとか、これは純粋に国土を守る防御用の兵器であろうと思うというふうに言っておられますし、一方ではICBMやIRBM、中距離弾道弾あるいはB52のような長距離爆撃機、こういったものは攻撃的兵器というように考えているというように分けておられると思うのですが、こういう中での攻撃的兵器については技術供与はできるのかできないのか、お伺いします。
  267. 北村汎

    ○北村政府委員 まず基準といいますか政府の判断の基本になりますのは、それが安保条約の効果的な運用を図る上に重要であるかどうかということでございまして、具体的な事例に即して判断するわけでございます。何分とも技術の問題はまさに千差万別でございまして、それが実際どういうようなものに利用されるかというのは具体的な事例を見なければわからないことでございますので、そういうことで具体的な事例が起きたときに諸般の事情を判断して、そしてそれが安保体制の効果的な運用に役立つかどうかということを基準にして自主的に判断して決めるわけでございます。
  268. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 そうすると、安保条約の効果的運用というのが基準になるようですが、それでは今の防御的兵器あるいは攻撃的兵器、こうした問題についてもそのときに判断すると言うだけで、この安保条約の効果的な運用という面から見ると何でもできる、基準がないといってもいいようなものだというように考えるわけです。条約や法律の上では供与ができるということであっても、日本政府の政策としてできない、やらないというようなことも当然あるわけです。政府が今まで言ってきた論法によりますと、アメリカの兵器は核トマホークでも防衛のための武器である、こういうことにもなりかねないわけですから、何でもアメリカには供与できるということになってしまうのではないかと思うのです。先ほどから出ておりますこの恒久平和主義をうたった日本国憲法あるいは武器輸出三原則、非核三原則、この立場から、アメリカに対する武器技術の供与についてもこういうものを逸脱しない、そういう判断基準がもっと具体的に示されるべきじゃないかというように考えますが、外務大臣の所見をお伺いしたいと思います。
  269. 北村汎

    ○北村政府委員 先ほども御答弁いたしましたように、技術の問題はまさに千差万別でございまして、具体的な事例に即して判断をいたしませんとなかなか抽象的な議論はできないと思います。  さっき非核三原則という問題をおっしゃいました。我が国は、核兵器を持たず、つくらず、持ち込ませずでございます。したがいまして、我が国に核兵器をつくるような技術があるわけはないわけでございまして、そういうような技術がアメリカに対して供与されるということはあり得ないと思います。
  270. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 ただ、武器技術ということになればいろいろなところに発展していく、そういう状況があると思うのです。そういう意味で、日本の国是あるいは日本国がよって立つゆえん、こうしたものを考えて、この武器技術を供与するという問題についても、幾らアメリカであっても日本の立場を明確にして政府として自制する、この点についてはそういう歯どめが必要だということを言っておきたいと思います。  次に、武器技術の提供手続の問題ですけれども、交換公文では、共同委員会で個別的に審査をするということはわかりますけれども、それ以上のことがちょっと私のみ込めない。ここで対米武器技術の供与ということですから、まず一般的にはアメリカから要求があって、そこでどうするか判断するということになるのだと思うのですけれども、アメリカと我が国の企業とが共同開発したもの、これを共同委員会に持ち出す、これをアメリカに持っていっていいかどうか、こういうことで持ち出すということになるのでしょうか。
  271. 北村汎

    ○北村政府委員 その対米武器技術供与について、昨年十一月の取り決めで次のような供与実施手順というものの大枠が決められておりますので、まずそれから説明をさせていただきたいと思います。  まず第一に、アメリカ側から武器技術の供与についての要請に関するいろいろな関連した情報が外交チャネルを通じて武器技術共同委員会、JMTCの日本側委員部に伝達されることが、まず最初であろうかと思います。二番目に、それを受けた日本側委員部は、米側から受領した情報及び武器技術共同委員会においてアメリカ側とも討議したことに基づいて、政府が供与の承認を行うことが適当である武器技術というものを決定いたしまして、その結果を外交チャネルを通じて米側の委員部に通知をいたす、これが第二段階であろうと思います。それから次には、両国の権限のある当局間で実施細目取り決めが締結されることになります。これが三番目であろうと思います。そうして、その武器技術を持っておる当事者、ある場合には日本の政府であり、ある場合には民間であると思いますが、その当事者から外為法に基づく輸出許可の申請があった場合に、通産大臣は外為法に従って承認することになるわけでございます。  具体的な実施手続の方法がまだ具体的な問題が出ておりませんから、大枠を申し上げたわけでございますが、ここで委員に明白に御説明しておかなければなりませんのは、当事者の自主的な判断というものは十分尊重されるというのが政府の基本的な立場でございます。すなわち、例えば民間の会社がその武器技術を持っておる場合、その民間当事者の持っておる武器技術の移転、それを提供するという場合に当たりましては、その民間当事者の同意というもの、これが前提になっておるということでございます。
  272. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 それから、軍事利用の可能性は極めて高いが、まだ武器技術とまで言えないいわゆる汎用技術、こういうものは、共同委員会で審査することはあるのですか、ないのですか。
  273. 北村汎

    ○北村政府委員 武器技術でない防衛分野における技術、今委員は汎用技術とおっしゃいましたが、汎用技術の提供というものはこれは従来から自由でございます。したがいまして、このJMTCという協議の場はあくまでも対米武器技術の供与に関する協議の場でございますので、汎用技術そのものの提供についてそれが協議の対象になるということはないと思います。  しかし、先ほども申し上げましたけれども、JMTCというのは、この対米武器技術供与の取り決めを実施するに当たって両国がいろいろ協議をする場でございますから、アメリカの方からこういう技術が欲しいと言ってまいりました場合に、その技術が果たして武器技術であるのかあるいは汎用技術であるのか、そういう識別は当然いたすわけでございますから、そういう場において汎用技術というものが話題になることはあろうかと思いますけれども、しかしそれは決して対米武器技術供与の対象ということではないわけでございます。
  274. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 企業の自主性を尊重するということでありましたが、日本の企業とアメリカの企業の間で共同開発を合意して、そして共同委員会武器技術供与の申し出があった、こういうような場合に、共同委員会の方でそれは出しちゃまずいということでやめさせることはあるわけですか。
  275. 北村汎

    ○北村政府委員 御質問の趣旨を十分わきまえておるかどうか自信がございませんが、JMTCの日本委員部が先ほども申し上げましたように自主的に判断をいたして、そうしてこれが安保体制の効果的運用を図る上に重要であると認めた武器技術を対米供与するわけでございます。その場合に、その技術の所有者が民間である場合には民間の同意が必要であることは、これは申すまでもございません。
  276. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 その反対の場合で、民間の技術を出したいというような場合に、共同委員会チェックするとか、そういうことがあり得るかということです。
  277. 北村汎

    ○北村政府委員 この対米技術供与と申しますのは、アメリカの方からこういう武器技術を供与してほしいという要請に基づいて、日本側が自主的に判断して決めるわけでございます。日本の民間からこういう技術を出したいと言ってくることではなくて、アメリカからこういう技術を欲しいと言ってきたことに対して日本政府が決定するわけでございます。
  278. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 じゃ防衛庁の方に聞きますが、ことしの二月三日に第五回の日米装備技術定期協議が開かれたというように報じられておりますが、この協議というのはどういうことが合意されたかお伺いします。
  279. 木下博生

    ○木下政府委員 日米装備技術定期協議といいますのは、昭和五十五年から開かれておりまして、二月に開きましたのが五回目でございます。  これは防衛庁とそれからアメリカの国防省の装備技術担当の者同士の意見交換の場でございまして、それで具体的に今回の会議で意見交換いたしましたのは、アメリカからのライセンス生産をいかにしてスムーズに進めるかというような問題とか、それから資料交換取り決めをいかにスムーズに進めていくかというような問題、これは非常にルーチンな話でございますが、それ以外に従来三回目、四回目で議論しておりました防空構想に係る装備技術についての意見交換をやりまして、それで、その防空構想につきましては専門家レベルの会合を持とうじゃないかということを決めたわけでございます。それから、戦車及び対戦車武器に関する装備技術については今後意見交換をしようというようなことになりまして、それについての話し合いも行っております。それで、これは年に二回ずつ会議をそれぞれ日本とアメリカで開くことになっておりまして、そういうような形で日米防衛当局間の協議を行っております。  そういう場でございますから、当然防衛庁関係しております武器技術の開発の問題も話しておりますので、この対米武器技術供与の問題も話題になりましたが、これは十一月に交換公文が結ばれたというようなこと、あるいはアメリカから国防省の審議会のメンバーが秋にやってまいりましたので、その人たちのやってきたことについてのお互いの評価というような意見交換等も行ったわけでございます。
  280. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 制服組の間で武器輸出に関する共同研究あるいは開発、そういうことはやるのですか、やらないのですか。
  281. 木下博生

    ○木下政府委員 その防空構想に関する装備技術につきまして、三回目と四回目に、装備技術定期協議の場でお互いにそれぞれの機関がどういうことをやっているかということの意見交換をやっておりますので、それに基づきまして、今後もう少し専門的なレベルでの意見交換をやったらどうかということで実務者レベルの会合を持とうじゃないかということになったわけでございます。それで、その実務者レベルの中には幕僚監部のいわゆる制服レベルの人たちも入りますし、それから技術研究本部の人たちも入るというようなことで、ここでやりますのも、具体的な武器をこういうふうにつくっていこうというようないわゆる共同研究みたいなものじゃなくて、むしろ国防省と防衛庁との間でそういう研究開発に関する協力を今後進めるについて、どんな分野でどんなことがやれるかということの議論をやろうということでございます。
  282. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 共同研究まででとどまれば共同委員会との関係が出てこないのですが、それはそう伺っておきまして、日本の武器技術の第三国への移転、この問題です。  アメリカに対しては紛争当事国であっても武器技術を提供するということを決めたわけですけれども、その場合に、アメリカに渡ったものがほかの紛争当事国に移転する、こういうことのチェックはできるのでしょうか。要するに、日本の武器輸出三原則の関係で、紛争の当事国あるいは当事国となろうとする、そういうところに日本は武器を輸出しない、技術も輸出しないということになっているわけですから、そういう第三国へのアメリカからの移転を防ぐのは当然だと思うのですが、その点のチェックはどういうふうにしてやるわけですか。
  283. 北村汎

    ○北村政府委員 対米武器技術供与の方針を政府が決定をいたしました際、大きな原則は、これはあくまでもMDA協定の枠の中でやるということでございます。そこで、委員御承知のようにMDA協定の中には歯どめがかかっておりまして、第三国移転というものについては供与国の、すなわちこの場合は日本でございますが、日本国の事前の同意を得なければならないということがはっきりと書かれております。それを受けまして今回の取り決めができたわけでありますが、念を押すためにこの取り決めの中でも、第三国への移転には我が国の事前の同意なくしては行えないということが書かれてございます。したがいまして、米国が勝手に第三国政府に移転するという、そういう懸念はないと考えております。
  284. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 同意という問題が、核の持ち込みに対する同意というようなこともありますので非常に危惧するわけです。  アメリカでは、共産主義国家に対する輸出、特に軍事的な輸出については、非常に厳格に禁止の政策を貫いているわけです。F15とかあるいはP3Cなどの技術援助に当たっては、共産主義国への技術の移転をしないということを強く義務づけているというように聞いております。ところが、アメリカは共産主義諸国に対する輸出という問題には制限があっても、紛争当事国への輸出は制限されていないわけです。日本はアメリカを除く紛争当事国への輸出、供与を禁止しているわけですから、この両方の違いから見てみますと、日本は日本独自の立場で、日本が供与した技術をアメリカが紛争当事国へ移転を行わない、行わせないというのを原則にしなければならないと思うのです。単に個々の同意ということより先に、はっきりと日本の武器技術については紛争当事国にはやってはいけないのだということを言明すべきであると思うのですが、これはひとつ大臣の見解を伺いたいと思います。
  285. 北村汎

    ○北村政府委員 日本が対米供与いたしました武器技術について、仮に米国からそれを第三国に移転したいというような事前の同意を求めることが行われました場合には、政府といたしましては、その技術を対米供与いたしましたそもそもの趣旨、すなわち安保体制の効果的な運用を図るということと、それから厳然として存在いたします武器輸出三原則というものを踏まえて対処するつもりでございます。
  286. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 その点についてはっきりと内外に声明するということ、そして基準をはっきりするということが必要だというように私は言いたいのです。  次に、これはニュージャージーの寄港に関連しての質問ですが、外務大臣がニュージャージーの母港化問題に関連する答弁で、これは去年の四月一日、参議院予算委員会ですが、「家族居住地とかそういう面については、これは将来において考えられないことはない」と思うというように答えられております。これは、アメリカ側の要求があれば家族居住地などは認める、こういう方針を持っておられるということでありましょうか。
  287. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 政府としましては、米国政府がこのニュージャージーの乗組員の家族を我が国に居住せしめる計画を有しているというようなことは全く承知をしておりません。そのような状況のもとで、仮定の問題でございますから御答弁申し上げることは差し控えたいと存じます。
  288. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 去年の四月一日に、家族居住地ならば考えられないことはないということを言っておられるわけです。  佐世保について言いますと、去年の四月に補給艦のセントルイスの母港となっております。佐世保港の入り口に当たります佐世保市崎辺地区、ここでは米軍が崎辺地区を再度使用するということが今問題になっておりますが、米軍は何の目的で何に使うと言っているのか、お伺いします。
  289. 千秋健

    ○千秋政府委員 お答え申し上げます。  旧崎辺地区につきましては、これは昭和四十九年に返還された施設でございますが、たまたまその返還をされる際に、ここに地元の佐世保重工の方から百万トンドックを建設したいという要望がありましてこの返還が実現したわけでございます。その隠そういうことで返還されるということでございましたので、米側の方からも百万トンドックを建設するということが条件といいますか、そういう約束になっておりまして、それでその後、経済情勢の変化等がございましていまだにこのドックの建設が実現しておりません。こういう経過の後におきまして、昨年でございますが、米側の方から、ここに百万トンドックをつくらないならば、米側の方で現在不足している施設、こういうものの建設のための用地として提供してほしいという要望があったわけでございます。
  290. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 何に使うというのですか。
  291. 千秋健

    ○千秋政府委員 現在、米側としましては、不足しておる住宅その他関連施設をつくりたい、こういう要望でございます。
  292. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 これは報道なのですけれども、アメリカ軍は崎辺の二分の一を再度使用して、これを兵たん施設として使うという最終案を提示して、住宅は針尾の工業団地につくるという計画であるというように言われているのですが、これは事実でしょうか。
  293. 千秋健

    ○千秋政府委員 ただいまの、旧崎辺地区につきまして、実は先ほどちょっと御説明申し上げました百万トンドック建設に絡みまして、これが現在実現に至らないために、昨年からでございますが、長崎県の方からこの条件を緩和または撤廃してほしいという要望が出てきております。ということは、長崎県の方でその土地に対する所要があるわけでございますが、それと米側との所要とを調整するということで現在動いているわけでございます。  その間におきまして米側といろいろ交渉を行っておるわけでございまして、この内容につきましては、具体的な交渉事でございますのでこの場で申し上げるのは差し控えさせていただきたいと思います。その辺をいろいろ新聞等で書かれておりますが、私どもとしては、そういうことで具体的な内容を申し上げるのはひとつ差し控えさせていただきたいということでございます。
  294. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 新聞に書かれているわけですから、それが正しいか正しくないかということは当然明らかにしなければいけないと思うのです。  それから、先ほどの条件の問題ですが、この崎辺地区は、米軍から返還の際に、百万トンドックができないときはまた米軍に再使用させる、こういうような約束があったということをてこにして現地でもいつも話が進められるというようなことですけれども、このようなやり方は、極東有事などの場合に米軍が再使用権を留保するという考え方と同じことではないのでしょうか。
  295. 千秋健

    ○千秋政府委員 先ほどちょっと申し上げましたように、返還に当たりまして、百万トンドックを建設したいという地元の強い要望によりまして当時米軍がそこに持っておりました施設等を移設する、そういういろいろなことをやりまして返還が実現したわけでございます。そういうことで米側の方としては、周辺が防衛施設等に囲まれておりますし、そこの中に、日本側に返還した後の利用としましてそういう百万トンドックなら適当といいますか、そういういろいろな判断から、百万トンドックの建設ということを確認するという意味でそういう条件が入っております。それはあくまで、百万トンドックを建設しない場合には地位協定第二条第一項に基づきまして再使用させてほしいという条件でございますので、私どもとしましては、今回米側から地位協定第二条第一項に基づきます施設の提供要求と申しますか、そういう要望が出ておるので、これは地位協定に基づきまして米側と協議してまいるということでございます。
  296. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 そうすると、それは再使用権を留保したということなのか、一たんきれいに返したんだけれども、もう一遍あいているからそこのところを使わしてくれということなのか、どちらなのでしょうか。
  297. 千秋健

    ○千秋政府委員 私どもとしましては、地位協定第二条第一項側に基づきまして施設の提供協議を行っておるというふうに考えております。
  298. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 そうすると、返還の条件についてはもう一切それは考慮外にして、新しく決める、こういうことになるわけですか。
  299. 千秋健

    ○千秋政府委員 これは返還のときの経過でございますので、やはりそういうことも念頭に置いて協議は行われるということであります。
  300. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 時間がなくなりましたのでこれ以上はやめますが、ニュージャージーについて言いますと、現在アメリカ海軍が戦略上の母港化構想、この研究を行っていると言われております。これは、新しい核装備艦をどのように配備するかということの研究でありまして、去年のアメリカ議会の証言の中には、八三年後半には結論が出る、こういうような証言もあるくらいであるわけです。  そういうようにして核装備艦の配備問題について全面的な研究がなされているというような背景を考えてみますと、崎辺の米軍使用、これはニュージャージーの根拠地、母港化、こういうことにつながっていくという懸念を非常に強く感じわけです。佐世保をニュージャージーの母港にしない、そういうことが今言明できるかどうか、お伺いします。
  301. 北村汎

    ○北村政府委員 先ほど外務大臣から答弁されましたとおり、ニュージャージーの母港化の問題については一切米国から話もございません。そういう仮定の問題についてここで議論するのは差し控えさせていただきたいと思います。
  302. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 先ほど言いましたアメリカ海軍の研究、それからもろもろの状況から考えてみまして、この崎辺の再使用という問題がニュージャージーの母港化につながる、そういう危険性が強く感じられるわけであります。そういう意味で私は、この母港化を認めるべきではないということ、そしてそのためにも崎辺の再使用を認めるべきではないということを申し上げて、質問を終わります。      ――――◇―――――
  303. 片岡清一

    片岡委員長 この際、小委員会設置の件についてお諮りいたします。  恩給等調査のため小委員十一名からなる恩給等に関する小委員会及び在外公館にかかわる諸問題を調査するため小委員十一名からなる在外公館に関する小委員会を、それぞれ設置いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  304. 片岡清一

    片岡委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、小委員及び小委員長の選任につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  305. 片岡清一

    片岡委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  小委員及び小委員長は、追って指名の上、公報をもってお知らせいたします。  また、小委員及び小委員長の辞任の許可及び補欠選任並びに委員の辞任に伴う補欠選任につきましては、あらかじめ委員長に御一任願っておきたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  306. 片岡清一

    片岡委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次回は、来る六日火曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時四十八分散会      ――――◇―――――