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1984-07-27 第101回国会 衆議院 大蔵委員会 第36号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年七月二十七日(金曜日)     午前十時三十分開議  出席委員   委員長 瓦   力君    理事 越智 伊平君 理事 熊川 次男君    理事 中西 啓介君 理事 中村正三郎君    理事 伊藤  茂君 理事 米沢  隆君       大島 理森君    熊谷  弘君       田中 秀征君    中川 昭一君       東   力君    平沼 赳夫君       村上 茂利君    山岡 謙蔵君       与謝野 馨君    川崎 寛治君       沢田  広君    渋沢 利久君       柴田  弘君    竹内 勝彦君       宮地 正介君    矢追 秀彦君       簑輪 幸代君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 竹下  登君  出席政府委員         大蔵政務次官  堀之内久男君         大蔵省主計局次         長       的場 順三君         大蔵省主計局次         長       保田  博君         大蔵省主税局長 梅澤 節男君         大蔵省理財局長 宮本 保孝君         大蔵省証券局長 佐藤  徹君         大蔵省銀行局長 吉田 正輝君         大蔵省国際金融         局長      行天 豊雄君         国税庁税部長 冨尾 一郎君         国税庁間税部長 山本 昭市君         資源エネルギー         庁石油部長   松尾 邦彦君         自治大臣官房審         議官      石山  努君  委員外出席者         日本国有鉄道再         建監理委員会事         務局参事官   佐藤 孝志君         警察庁交通局審         議官      八島 幸彦君         大蔵省銀行局保         険部長     加茂 文治君         厚生省保険局保         険課長     伊藤 卓雄君         林野庁管理部管         理課長     黒木 敏郎君         林野庁業務部経         営企画課長   小沢 普照君         通商産業省産業         政策局消費経済         課長      糟谷  晃君         通商産業省機械         情報産業局産業         機械課長    田辺 俊彦君         資源エネルギー         庁石油部流通課         長       広瀬 勝貞君         資源エネルギー         庁石油部備蓄課         長       岩田 満泰君         運輸大臣官房国         有鉄道部財政課         長       秦野  裕君         労働省労働基準         局賃金福祉部企         画課長     逆瀬川 潔君         労働省婦人局婦         人政策課長   松原 亘子君         会計検査院事務         総局第五局審議         官       吉田 知徳君         日本国有鉄道総         裁       仁杉  巖君         日本国有鉄道常         務理事     竹内 哲夫君         参  考  人         (日本銀行総裁前川 春雄君         大蔵委員会調査         室長      矢島錦一郎君     ――――――――――――― 委員の異動 七月二十七日  辞任        補欠選任   坂井 弘一君    竹内 勝彦君 同日  辞任        補欠選任   竹内 勝彦君    坂井 弘一君     ――――――――――――― 七月二十四日  身体障害者使用自動車に対する地方道路税、揮  発油税免除等に関する請願(春田重昭君紹介)  (第八七〇九号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  国の会計税制及び金融に関する件      ――――◇―――――
  2. 瓦力

    瓦委員長 これより会議を開きます。  国の会計税制及び金融に関する件について調査を進めます。  この際、お諮りいたします。  各件につきまして、本日、参考人として日本銀行総裁前川春雄君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 瓦力

    瓦委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――
  4. 瓦力

    瓦委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。沢田広君。
  5. 沢田広

    沢田委員 本日は、大変忙しい中おいでをいただきまして、恐縮に存じます。  単刀直入に二、三お伺いをいたしますが、今日の景気政府の部内においてもあるいは自民党内においても、積極財政だ、いや緊縮財政だというような声もあるくらいでありまして、そういうような状況で、いわゆる先行き不安というものが国民としてもぬぐい切れない。そういう状況にありまして、今日の円安傾向について日銀としても大変御苦労いただいているのだろうと思うのでありますが、果たしてこれをどういうふうに解決をしていくのか、あるいは景気の安定を図ってくれるのか、国民の期待するところは大きいと思うのであります。なお、特にアメリカ高金利によって、ドル高円安により一層拍車がかかる、あるいは、レーガン大統領としてみれば、大統領選挙までは七・五%と言われるこの経済成長率を持続して、赤字は問題じゃないというような形で高金利が続くというふうにも予想されるわけであります。そうしますと、ますます円がドルを買っていくという格好になりますので、円安がさらに加わってくるということになります。  以上のような諸点について、私が質問するというよりも、より多くの国民立場から、日銀がこの金融問題についてどういう判断をしているのか、現在時点における考え方、将来に向けてはなかなか予測しがたいものがあるでしょうが、一応その示唆するものを御回答いただければ幸いだと思う次第でございます。  以上、二点にわたりましたけれども、あと二点ございますけれども、御回答いただければ幸いです。
  6. 前川春雄

    前川参考人 今の経済状況日本経済は非常に順調な発展、景気回復過程にあると思います。物価も安定しておりますので、そういう点では余り大きな問題があるわけではございません。もちろん、業種により非常に跛行性があるという問題は残っておるわけでございますが。ただ、その中にあって今お話のございました国際収支黒字、それと裏腹の面もあるわけでございますけれども円相場が非常に安くなっておるということが一つの大きな問題でございます。  最近の円相場は、この七月になりましてからまた一段と円安になりまして、二百四十円台に入りました。さらに、月末接近とともに円安が進みまして、今週の初めには二百四十七円という相場がニューヨークでついたぐらいでございます。この円相場の円が安いということは、確かに円は安いのでございまするけれども、主としてドルが強いということの反映であって、円ばかりでなくて、ヨーロッパ通貨も一斉に弱くなっているというのが現状でございます。  それでは、ドルがなぜそんなにここへきて急に強くなったのかということでございまするが、幾つかの背景理由がございまするけれども、そのうちの一番大きな理由は、アメリカ金利が先行きさらに上がるのではないかという先高観であるというふうに私どもは見ております。現実アメリカ金利がここへきてそれほど上がっているわけではないわけでございまして、現実金利高というよりも、これからアメリカ金利がもっと上がるのではないかという先高予想といいますか先高観というのが市場を支配いたしまして、それが米ドルを強くしておるということであろうと思います。  そういうふうな先高観が出ておりまする背景は、アメリカ景気回復がここへきてまた非常に力強いものがございまして、予想をはるかに上回るような景気回復が続いておる、そういう指標が発表される、そういうことがございますると、アメリカ民間資金需要がさらに強まるのではないか、民間資金需要がさらに強まれば、アメリカ財政赤字は依然として続いておりまするものでございますから、財政資金需要民間資金需要が競合して金利がさらに上がるであろう、あるいはアメリカ通貨当局引き締めを強化するであろうというような予想から金利先高観が生まれておるわけでございます。  そういうことでございまするので、一昨日アメリカボルカーFRB議長が国会で証言をいたしまして、金融政策は当面そう引き締めを強化しないという意味証言をいたしますると先高観が若干弱まってくる、そういうことで米ドルが若干弱くなるというようなことがございました。そういうことでございまするので、市場が非常に一喜一憂しておる、非常に神経質な相場状況を続けておるというのが今のドル高であり、その結果起こる円相場円安ということであろうというふうに思います。  アメリカが今後どういうふうな政策をとるかというところは、なかなかこれがよくわからないわけでございまするが、御案内のように選挙の年でございまするので、余り強い引き締めはしないのではないかというふうな見方が一般的でございます。ただ、選挙が済んで依然として財政赤字が続くということであると、財政赤字あるいは国際収支上の赤字というものはそういつまでも続くものではないということから、アメリカからの何らか手が打たれるかもしれないという期待がございます。ございまするけれども、当面は、選挙が十一月ということで、まだ三カ月ぐらいございまするので、もっぱら選挙の方に気を奪われて、選挙後にどういうふうな政策がとられるかというところまではまだ議論が進んでおらないということでございまして、そういう点から申しますると、アメリカドルあるいは金利というものが今後どういうふうな動きをいたしまするか、今申し上げたような幾つかの要素がそこにございまするので、必ずしもどういうふうになるということを申し上げる段階ではございませんけれども、私どもといたしましては、そういうふうなアメリカ財政赤字に対する施策がとられ、アメリカ金利が若干下がるということが一番望ましい姿ではないかというふうに思っています。
  7. 沢田広

    沢田委員 アメリカのそのことが日本経済にこれからどう影響を及ぼすかということも触れられましたが、例えば一三%の金利が続くと仮定した場合、さらにドルを買うという人は多くなるのではないかということが一つ。それから、もしこの円安が二百五十円になり、五十円を超えた場合、あるいは二百六十円になった場合、石油を初めその他の輸入品大変影響が強くなる。その場合はまた対応する措置もおのずからつくられるのではないだろうか、簡単に言えば、金利を上げるとか公定歩合を上げるとかという措置は今の時期において適切ではないと思いますが、そういう必要性も出てくる可能性もなくはない、そういう心配があると思うのであります。  総裁の日ごろの御発言あるいは方針としては、そういうことは考えないで、やや自然体アメリカ鎮静化を待つという方向をとられると思うのでありますが、一三%の金利高が続くとしたならば、それからもし円安が二百五十円以上を持続するとしたならば、これは仮定のことですから答えられない点もあるかと思いますが、そういう状態が予測されたときにはどういう対応をなされるのか。これは言えない部分は言えない部分で結構でありますが、御感想を承れれば幸いであります。
  8. 前川春雄

    前川参考人 アメリカ高金利が今のような水準で続くということ、私どもはそういう事態を希望しないわけでございまするが、どういうことでそういう事態が続くかもしれないということば当然考えていかなければならないわけでございます。そういう中で円相場がどういうふうになるか、さらに円安になるのではないかというようなお話がございました。  ただ、相場というのは金利差だけで必ずしも動かない。現にことしの二月から三月にかけまして、円が二百二十円台まで非常に強くなったことがございます。あの当時もアメリカ金利は決して下がっておらなかった。むしろ強い状態が続いておったわけでございまするけれども、そういう中でも日本経済状況に対する評価が世界じゅう、対外的にも強まってきて、いわゆる経済パフォーマンスというものに対する評価が非常に強まってまいりますると、むしろ円買いが起こる。それによって円が強くなるという事態が起きておるわけでございます。冒頭申し上げましたように日本経済パフォーマンスは現在非常にいいわけでございまするので、そういう意味から申しますると、日本経済パフォーマンスに対する評価というものが市場で変わるということは当然考えられる。したがいまして、金利だけではないわけでございまするので、私どもはそういう意味日本経済パフォーマンスを非常によくしておくということが何にも増して必要なことであろうというふうに考えておるわけでございます。  ただ、そういう事態が不幸にして起きたときにどうなるかというような御質問であったと思います。円相場が安い状態になりますると、それは日本輸出産業には若干のいい影響がございまするけれども日本のように原燃料の大部分を輸入しなければならない国にとりましては、円安というのはそういう輸入品コストが上がるわけでございまするので、日本産業全体がコスト増に苦しむということになるわけでございます。コストが上がれば収益が悪くなる、収益が悪くなれば企業の経済活動も自然衰えてくるということになってくるわけでございまするので、円相場が安いということだけで、輸出産業がいいからといって必ずしも安心しておられない。余り輸出が多くなりますれば、またそれが貿易摩擦あるいは保護主義ということになり、日本経済全体にとってはマイナスになるということでございまするので、どうしても円は強い方向で安定させていかなければならないというふうに考えております。  対応といたしまして、今仮に円相場を動かす要因が何かということで、いろいろあると申し上げましたけれども金利ということがどうしても大きな要素であるということであればそれに対する対応も当然考えなければいけない。金融政策はそういう意味機動性ということを尊重いたしまするので、私どもは、そういう事態になればそれに応じた対応をしていかなければならないというふうに考えております。ただ、現在それではそういう事態になっておるかどうかという点になりますると、市場が非常に不安定であるということもあり、また金利差が開いておるということが大きな要素でございまするけれども市場が不安定で、やや市場先高観というような予想で動いているということがございまするので、今すぐ金利政策を発動することがいいのかどうか、金利政策を発動することによる弊害といいますかマイナスの面もございまするので、それとの比較考量をしながら対応をしてまいらなければいけないというふうに考えております。公定歩合を上げるか上げないか、この辺は、私どもいつでも今は考えてないということを申し上げるのでございまするけれども、私どもといたしましては、金融政策機動性という点は十分尊重してまいらなければいけないというふうに考えております。
  9. 沢田広

    沢田委員 まだいろいろ国民としては知りたい問題はあると思いますが、きょうは政策委員会がまだ開催中の中を割いて御出席をいただいたということでありますので、非常に貴重な御意見をいただきまして、厚くお礼を申し上げ、どうぞまた委員会の方にお帰りいただくことで質問を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
  10. 瓦力

    瓦委員長 どうもありがとうございました。
  11. 沢田広

    沢田委員 以上で日銀関係は終わりますが、関連いたしまして、通産省、これは石油だけの問題でありますが、おいでいただいていますね。  通産省で、今の備蓄が九十幾日から百幾日と言われておりました。それで、今のように円安が続く。今は備蓄分を食いつぶしている。それで、今のうちに買った方が後でさらに円安になった場合は得する、そういう見込みと、それからあるいはもっとこれは安くなったら、そのときはそのときのことだと考えている者と両方あると思うのですね、これは予測しがたい条件があるわけですから。  そういうことにおいて、石油価格へのはね返り、前の円高によって得た利益、それからこれから円安によって受ける損失、それを単純な比較計算で結構でありますが、きのう、おとといの価格二百四十七円ぐらいを基準にして、一応その間の、細かい数字はいいですが、観測でいいですから、前に山中通産大臣は、円高国民に返す、こう言ったわけでありますが、大臣がかわったら途端にこれは返さないといってそのまま懐へため込んじゃっているわけですから、今度円安になってもその分は十分に賄い切れるものだ、こういうふうに思いますので、その点の差し引き勘定、あわせてお答えいただきたい。
  12. 松尾邦彦

    松尾政府委員 確かに原油輸入価格は、先生指摘のように為替レート変動で大幅な影響を受けるわけでございまして、これを定量的にバランスを組んでという先生のお述べになりましたようなお答えがきちんとできるかどうか、なかなか難しい面もございますけれども、例えば物差しとして申し上げますと、一ドルにつきまして一円為替レート変動いたしますと、原油の値段にキロリットル当たりで二百円ないし二百二十円ぐらいの影響力を持っているものでございまして、この為替変動幅のいかんによりましては、石油価格の形成の基礎をなすコストに大きな影響があることは御指摘のとおりでございます。  最近の状況では、まだこの円安傾向が出る前、為替は比較的安定しておりまして、三月、四月あたりは二百二十五円前後でございましたものですから、石油の元売会社はことしの五月上旬から中旬にかけましてガソリンの仕切り価格を四千円程度既に引き下げを行ったわけでございまして、その前もずっとたどってまいりますと、御案内のように大変石油業界過当競争体質が強いものですから、為替のメリットはもとより、それ以上にコスト割れのような状態で市況の軟調が続いてきていたのが実情でございます。  なおる油会社収益という面から見ますと、五十六年度は大幅な円安の進行のもとで四千億近い為替差損が生じましたけれども、それから五十七年度は十億円程度差損で済んでおりましたが、五十八年度は千二百七十億円程度差益が生じております。ただいまのところは、先ほど申し上げましたように、その差益の還元が仕切り価格引き下げを通じて行われておりましたところ、ただいま御議論になっておりますように大変円安がまた進行してきたということで、瞬間風速では大変な赤字が発生しつつある、こういうふうに見られているところでございます。
  13. 沢田広

    沢田委員 これはまだもう少し数字的に詰めなければならぬですが、時間の関係がありますので、大蔵大臣、今までの議論を通じて、円安というもののもたらすいろいろな影響、それからアメリカ高金利によって来る日本経済への影響等々を考えて、それを最小限度に食いとめていく、もちろんアメリカ高金利を改めさせる政治力日本にあればこれはまた別なんでありますが、今のところはどうしても、追随とは言わなくとも、やはりややそれに追随せざるを得ないような状況が続いているわけですから、それだけに心して日本財政というものに当たらなければならぬ。大臣として今思いついている配慮すべき事項、たくさんあるでしょうけれども、こういう状況の中で日本経済財政を賄う大蔵大臣として配慮する事項は何と何と何であるか、三つ限って、思いつくままで結構でございますが、ひとつお答えいただきたいと思います。
  14. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる円安の問題を前提に置いて考えますと、これは、円安――現実円安でございますが、総合的に言えばドル独歩高ということでございましょう。そのゆえんは、総裁からもお答えがありましたが、第一は日米あるいは米欧金利差、第二番目は瞬間風速、将来の見通しについてはいろいろな議論がございましょうが、やはりアメリカ景気、それから三番目は中東情勢、こういうようなことであろうと思うわけでありますが、総裁からもお話がありましたように、そうなるといわゆる民間需要公的機関政府需要とが競合して金利が上がるが、もう一方、やはり連銀というのは非常に中立的立場にありますから、インフレを懸念してむしろ引き締め政策をとっていくだろうということになりますと、金利問題というのはこれはただ外から要請するだけで話のつく問題じゃなく、やはり連銀には連銀通貨管理全体からする使命があろうと思いますので、結局、先ほど総裁からもお答えがありましたが、言ってみれば鎮静化を期待し、これを待っておる。しかしながら、これはいつ何ぽやりましたとかあるいはこれから何ほどうしますとかいう問題じゃございませんが、協調介入を含め介入というものは、乱高下に対してはやはり私どもはこれに対応していかなければならぬ問題だ、これは一応大蔵大臣の私に介入等の権限はあって、日銀が一面はこれを代行しておる、こういう感じでございますが、時に応じてそのことは考えていなければならぬ問題だというふうに思っております。  それから二番目は、やはりアメリカ景気がよろしゅうございますが、その景気から生じて、いわゆる貿易赤字が猛烈にアメリカは出ておる。対日についてももちろんそうであります。が、これについては、私はもう一方の見方からして、いわば我が国経常収支黒字が、資本収支の面で、言ってみれば資本の流出という言葉にかえて資本を提供しておるという言葉を使うことにいたすといたしますならば、世界全体に対して今は資本提供国としての立場をとっておるという事実認識も一つはすべき問題ではないかな、こういう考え方でございます。  三番目は、やはり総合してアメリカ景気というものが、日本に昔ほど、アメリカがくしゃみすれば日本は風邪を引くというほどの関係はないにしても、やはり日米というのは経済関係についても偉大なる関係があるわけでございますが、そのアメリカ景気のみを期待しておって、我が国自身がそれにあおられてはならぬ。むしろサミットで合意しておりますように、おのがじしそのところに従ってインフレなき持続的成長というスタンスをやはり堅持していかなければならぬじゃないかというふうに考えております。
  15. 沢田広

    沢田委員 通産省がいる間に大蔵大臣にもあわせて申し上げておきますが、フエルという代替石油が出てきた。今度それにも税金をかけるようにしようという話がぽつぽつ聞こえるのでありますが、本来私が基本的に考えていることは、既存業界に新しい創意工夫が生まれた場合には必ずそこに抵抗が起きるのは当たり前なんです。自由競争をモットーとしている我が国としては、当然なんです。最初出てくる芽というのは、やはり弱小の中から出てくるのだと思うのです、その知恵を絞るのは。どうやってもうけるか、どうやったらもうかるかということで、弱小の業者がやはり知恵を絞ってくる。そこへ既存業界の干渉が強ければ、それで踏みつぶされてしまう。そういうことではせっかく伸びていく創意工夫も育っていかない、こういうことになりますから、それが脱税であるとかないとかは別として、やはり合法であるわけでありますから、その意味においてはある程度競争原理の中に、それこそ自然体において、そして市場の推移、性能、省エネあるいは今日の財政に与える影響等々の各般の条件を勘案しつつ対応すべきであって、せっかちに対応すべきではない、こういうふうに思います。これは回答は要りませんが、通産省も大蔵省も、そう簡単にそういうもので動いて、それも石油税をぶっかけていけば抑え切れるのだといった安易な物の考え方は、今日の段階、脱すべきであるというふうに思います。これは後でもし時間があれば回答をしていただきますが、これは政府提案でない一政府提案もそんなことはしないだろうと思いますから、一応念頭に置いていただきたい。金が欲しさにそういう知恵を縮めてはならない、こういうふうに思いますので、これは念のため申し添えておきたいと思います。以上で、この関係は終わります。  次に、大分時間が過ぎましたが、大臣、少しお聞き及びをいただいて、黙って聞いていていただくという段階でありますが、ひとつ恐縮ですがお許しをいただきます。  国鉄の赤字が今日のように二十二兆にもなってきたということについて、なぜこういうふうな累積赤字を生んだのか、その原因についてであります。――ちょっとこれを配ってください。  もちろん設備投資その他によるものでありますけれども、今お配りをしたのは、昭和二十五年の運賃と給与ベースとの比較表であります。いわゆる運賃がどの程度の水準にあったときに給与ベースはどういうふうに動いてきたかというものをずっと並べてしまったので、一、二等の料金改正、一三%の改訂、これは皆大体運賃関係であります。それ以外に二千九百二十円ベースから三千七百九十一円ベース、これをずっと読んでいると大変でありますから読み上げませんが、昭和五十七年の三・二二プラス二千六百九十円に至るまでの給与ベースとの関係等について、これも三兆円という運賃収入を構成している一つの要因であると思っておりますが、それが一つ考えられます。これは細かいわかりにくい点あったかと思いますが、あとは皆さん賢明でありますから、その点、現在の赤字を構成している要因は何と何であるか、ひとつ簡潔にお答えいただきたい。
  16. 竹内哲夫

    竹内説明員 赤字の原因としては、先生今もちょっとお話が出ましたけれども、かなり各様の原因があったであろうというふうに考えております。もちろん運賃改定のおくれという問題もございました。基本的には、やはり一番大きな原因は、輸送構造が非常に大きく変化してきたということの中で、国鉄自身の対応もこれにおくれていたということもあろうかと思っております。  ただ、財政的に見てみますと、やはり何と申しましても現在の国鉄の運営が、赤字状況の中で借入金に依存しているという運営が行われているということで、この利子負担が非常に重圧となっている、こういうようなことが一番大きな原因ではなかろうかと思っております。
  17. 沢田広

    沢田委員 会計検査院に来ていただいておりますので、過去三カ年ぐらいでありますが、国鉄の経営改善の観点からいろいろ指摘をされた事項がこの会計検査報告にも載っておりますけれども、その主な点だけ指摘をしていただいて、これも簡潔にどの点、どの点と指摘していただきまして、それがまたその後国鉄の内部においてどう改善されたか、その結果については国鉄当局から御回答をいただきたい、こういうふうに思います。お願いします。
  18. 吉田知徳

    吉田会計検査院説明員 お答えいたします。  国鉄の経営改善の観点から既往三カ年間に指摘いたしました事項の主要なものについて概要を説明いたしますと、まず、特に掲記を要すると認めた事項として記述したものが三件ございます。  昭和五十五年度決算検査報告で、貨物部門の営業成績につきまして原価が収入を大幅に上回っておりまして、その収支差損が国鉄赤字の過半を占めておりまして経営の大きな圧迫要因となっておりますので、その原因を究明いたしまして、原価の低減を図ることが緊要であるという見地から問題を提起しております。  引き続きまして五十六年度の決算検査報告で、旅客部門のうちの鉄道荷物の営業成績が著しく悪化しておりますので、その原因を分析いたしますとともに、国鉄が行っております収支改善策の問題点を指摘いたしまして、抜本的な対策を講ずる要があるという見地から問題を提起しております。  さらに五十七年度決算検査報告におきまして、国鉄の収入の大宗を占めておりまして将来にわたる健全な経営の基盤を確立する上で根幹となります旅客営業の収支等につきまして、収支悪化の原因を分析しまして、運賃改定を主体とした施策により大幅な収入の増加を期待することにはおのずから限度がございますので、利用者の需要に適合した、より効果的な営業体制を整備し増収に努めます一方、職員の業務効率の向上などによりまして経費の節減を図ることが緊要であるという見地から問題を提起しております。  次に、是正改善の処置を要求した事項といたしまして、昭和五十七年度決算検査報告で、国鉄が第三者に貸し付けております土地や建物につきまして、その使用料が低額となっていたり、また目的外に使用されていたりしたものがございますので、これに対する是正改善について掲記しております。  また、業務委託駅の営業体制が業務量から見て不経済になっていると認められるものにつきまして、国鉄の見解をただしましたところ、順次見直しを行われまして業務委託費の経費の節減が図られることになりましたので、本院の指摘に基づき改善の処置を講じた事項として昭和五十六年度決算検査報告に掲記いたしております。  以上が概要でございます。
  19. 沢田広

    沢田委員 国鉄当局はこれについて、前の方の貨物はもう終わったことですからいいですから、後の方を簡潔に。
  20. 竹内哲夫

    竹内説明員 今検査院の方から御答弁がございましたように、貨物、荷物、旅客あるいは業務委託、これらの点で御指摘をいただいております。  貨物につきましては省略させていただきますが、荷物につきましても、最近の状況から見ますと大変に大きく取扱量が落ち込んできております。私どもとしましては、今回五十九年二月の時刻改正におきましても、荷物に関しましては徹底的な効率化を図りたいということで、方向としては利用運送の方向に向かって進むべきではないかということで、この荷物営業によります赤字幅がかなり大きいということで非常に危機意識を持ちましてこれに対処をいたしてございます。  それから旅客につきましても、新幹線あるいは大都市通勤輸送、これらの点につきましては、輸送量が横ばいないしは最近の状況は若干微増傾向にございますけれども、その他の分野におきましてかなり輸送量が減少する傾向にあるということで、これに対しましてももちろん効率化を図る必要はあると思いますが、そのほかには、最近の中規模の都市におきますダイヤのフリクエンシーを確保するというようなことで何とか増収に努めたいということで、努力をしているところでございます。  それから業務委託費の関係でございますけれども、国鉄の業務委託費は一般業務委託並びに保守外注ということで、両者を合わせますと約三千数百億に上っておろうかと思っております。業務の非常に大きな部分を占めておりますが、これにつきましても、その適正な単価の見直しというようなこと、あるいは最近余剰人員を生じているような状況の中で、当初業務委託に移すというような計画がありましたものについてこれをむしろ現在直営の姿でやっていくというようなことで、全般として業務委託の経費の支出というものにつきましても厳しい見直しをしてまいりたいというようなことで対処しているところでございます。
  21. 沢田広

    沢田委員 今言われた業務委託の面の見直しというのもこれから、それからガード下みたいなものの、何代人がかわったかわからぬところの管理能力の不的確さ、まさに管理能力が疑われる状況に今日あるわけですね。それはだれが悪いのかと言われれば、前にも言われている、組織がでか過ぎるということも一つあるかもしれませんが、問題は本当にやる気があるかどうかというところに、総裁、僕は基本があるのだろうと思うのです。いい子にばかりなっておって憎まれ口はきかぬ、自分のいる間だけは無難に過ごしたい、こういうようなことが結果的には今言ったような指摘事項になってきたゆえんだと思うのです。  だから総裁、この前も言ったのですが、二十二兆円も累積赤字を持ってこれからどう立て直すかという知恵を監理委員会任せでなしに、やはり総裁が自分で立案をして、こうやりますからこの二十二兆円については国においても考慮してもらうし、国民にも考慮してもらうし、自力でも考慮をする、そういう発想のもとに、再建委員会だとかそういうところに依存しないという姿勢が必要なんじゃないのかというふうな気がいたしますが、その点はいかがですか。
  22. 仁杉巖

    ○仁杉説明員 ただいま先生から、いろいろな部外委託とかそういうような問題点につきまして十分ではないのではないか、それはやる気がないのではないかというような御指摘がまずございました。この点につきましては、確かにそういう面がございますので、今いわゆる親方日の丸という意識を捨てて、どうしたら国鉄の再建にいいかということを各人各人が考えるようにというような指導をいたし、また、いろいろな用地その他につきましても、いろいろな方策を講じまして再検討をするというような方向で処理をしておるわけでございます。  次に、二十二兆という大変な借金を抱えているということ、これが実は、国鉄自体といたしまして今いろいろと作業をいたしておりますが、どうもこういうものを後ろに引きずっておったのでは企業としては非常に難しいという計算がほぼ出てきたというような感じでございます。  それで、これらにつきまして、私も前々から、このままでいくと六十五年に三十兆を超えるというようなこと、あるいは予算編成におきまして今までどおりのライン上でつくりますと、どうも赤字にストップをかけるということは非常に難しくなるというようなことは申しておりますが、今先生から御指摘がございましたいろいろな点、企業としてやっていく場合にはどうなるか、あるいはそのときに、ただ単に過去債務をなくなすといってもそう簡単にいかないとすれば、それはどういうふうにすべきかというようなことにつきまして、監理委員会ももちろん御討論になっておられると思いますけれども、我々としてもいろいろな面から検討いたしまして、なるべく早く運輸省あるいは監理委員会等に御意見を申し上げたいと思いまして、ただいま作業を早急に詰めている段階でございます。
  23. 沢田広

    沢田委員 監理委員会、おいでいただいていますが、もし国鉄当局がみずからの自立の案を提出した場合は、できる限りその自主性を尊重する意思はあるのですか。それともやはり、もうこうなった以上は委員会としては自分で、この夏一部、それからあるいは来年の夏一部というふうに言われておりますが、そういうふうな提出でいくのか。自立に任せる要素はあるのかないのか、その点はどうですか。イエスかノーかで答えてください。
  24. 佐藤孝志

    佐藤説明員 お答えいたします。  当委員会は、先生御承知のとおり、国鉄の事業再建に関する具体的で実効性のある方策を取りまとめるという任務を負わされているわけでございます。そういうことで、昨年以来、国鉄経営の実態とか問題点につきまして詳細な分析、検討を重ねてきております。まだ現在のところ、国鉄経営のあり方とかあるいは先生指摘の長期債務の問題、これについての具体的な考え方をまとめるような段階には至っていないということでございます。  委員会としましては、これからもさらに詳細な検討を進めまして、来年の半ばごろを目途に、国鉄事業再建のための方策全体につきまして総合的な結論を得たいというふうに考えております。その過程の中で、国鉄当局初め関係方面のいろいろな御意見があろうと思いますので、そういう意見は十分参酌しながら検討させていただきたいというふうに考えております。
  25. 沢田広

    沢田委員 時間的に、まとめて言ってしまいます。  昭和四十四年から五十八年度までにおいて、十三兆五千億の設備投資が行われております。東北新幹線が二兆八千億、東海道・山陽が一兆二千億、車両関係が一兆七千億、線路増設一兆二千億、踏切工が一兆五千億、電化四千億、利子が九千億、その他三兆六千億。二十四年から借金が始まったのでありますけれども、特にこれで十三兆。そのほとんどはいわゆる東北新幹線と東海道・山陽新幹線、それによる設備投資。これは大蔵大臣、どう考えてみてもいわゆる国の政策による公共投資であって、これをプラスにすることの必要性はもちろんありますが、当然これは公共負担によってなすべき工事ではなかったのかというふうに思いますが、この点はいかがでしょうか。
  26. 竹下登

    竹下国務大臣 これは日本国有鉄道というものが、昭和三十九年までは赤字じゃございませんが、いろいろな意味でその後累積赤字を重ね、そうして設備投資したというものは、これは基本的にはやはり独立したいわば日本国有鉄道という企業体の責任の中で消化されるべきものであろう。しかし、それが現実問題として今大きな荷物になっておるという問題につきましては、形式的に言えば、今日国鉄再建監理委員会でいろいろ御検討を賜っておるということで、我々といたしましてはその結論を見守っておるということではなかろうかというふうに思います。
  27. 沢田広

    沢田委員 一般会計六十年度試算というので、非常に雑駁なものでありますけれども総裁のところに行っていますね。大臣のところに行っていますね。それから監理委員会は行っていますか。行ってない。それじゃ、これをどうぞ。  この中に、一般会計として、運賃収入三兆三千億。雑収入三千億は従前どおりのものなんでありますが、助成金として、これは大蔵も関係するわけでありますが、学割六百億、これは学割定期分の差額であります。身障者割引の分も、これは臨調答申で指摘されている分で五十億、五十三億ぐらいになっておりますが、アバウトに五十億としたわけです。上越・東北新幹線の四千億、これは現在も行われている分。それから工事補助は、立体交差であるとか地方バス路線の補助金であるとか踏切の問題であるとか、そういうようなことの三千億は従前どおり。関連企業の六条、三条による分は、今七百億ぐらいですが、さらにこれは一千億ぐらいは確保することが可能であろう。その他事業で三百億で、四兆四千九百五十億を一般会計とする。  支出は、人件費一兆六千億に抑える。物件費も八千九百億が前年度予算でありますが、八千百五十億ぐらいに抑える。公団借料は今千四百億ですが、据え置きにして、三十年を四十年なり五十年に貸与年数を延ばしてもらって千四百億と見込む。市町村納付金は、これは土地を全部国有財産に移管するという前提で言っているわけでありますが、二百五十億。減価償却はほぼ現状どおり。退職手当は通常の退職手当。年金も同じ。出資はふやしまして事業拡大を図る、事業部を設置するという考え方で、二百億に大きくする。工事経費は五千四百億で、厳しいけれどもこれで賄ってもらう。工事補助の三千億は、前の工事補助の収入と支出とパーである。災害その他の予備費を八百五十億と見て、合計四兆四千九百五十億で一般会計を賄う。これは、学割と身障者は臨調答申そのままを入れているわけでありますから、当然大蔵省としても容認さるべきものである。  次の公共会計は、北海道、四国、九州の地方ローカル線の赤字分を、これは公共投資として三千九百億、本州の分として三千八百億。整備新幹線は、国民的な輿望があるから、これも整備をしていく方向で八十億。あと東北新幹線の千七百億。特定退職、これは昭和二十二年の満州、北支、南支の帰還者の特定退職。それから、同じくそれの追加費用。一兆三千四百八十億は、国の資金において賄ってもらう。これは当然国鉄が負担すべき性格の分ではないというふうに思われます。  債務会計でありますけれども、現在十八兆である。これは五十八年度でしょう。この中で、国鉄の七兆一千億がいわゆる累積赤字の中の経常赤字だ、こう言われておりますが、さらに調べると、二〇%程度が国鉄の経常収支赤字になって、あとは設備投資である。そうすると四兆四千億ぐらいが国鉄の純粋の債務である。この分は国において賄ってもらうという形で一兆五千六百四十億がここで出てくる。そのかわり、財産は国有財産に移管をして、大蔵省、建設省、通産省等で、いわゆる管財人ではありませんけれども財産処分委員会を設ける。そういう形で直ちに土地を売っていいかどうかということも問題がありますし、長期の国鉄を考えた場合に、果たしてそれでいいのかということもありますから、それはそれなりの時代の変遷を見て考えてもらう。  こういう手法で、これは全く素朴な手法かもわかりません。しかしやれないことはないだろうし、昭和三十年の帳簿の土地価額は六千八百九十九億でありますから、その中の遊休土地とそれからいわゆる行政財産に属する部分を除いて考えてみれば、債権と債務というふうに見れば大体これは見合うものと言える、あるいはそれ以上かもわかりません。そういうようなことで、その部分は市町村納付金が減るわけでありますけれども、大ざっぱに言ってこういう手法で、これはどっちにしても大蔵省が二十二兆の利子を支払う補助を出さなければならないわけですから、そのかわりその分を裸になって国鉄は出直す、土地については発言権はなくなるけれども、それはもう大蔵省や建設省や通産省によってその地域地域の実情に応じて考えてもらう、そしてこういうスタートから出直すということで考えられないだろうかというふうに試案を立ててみました。  いろいろの考え方はあるでしょうけれども、それぞれ大蔵大臣、まず国鉄から、それから運輸省から、それから委員会から、こういうふうな手法で来年、再来年にかけるということは、これじゃできないんだ、業者関係がだめだ、こういう話も聞きます、五千四百億じゃ。一兆三千億も業者に今まで甘い汁を吸わせてきた経緯から見ると五千億に切られたんじゃどうにもならない、関連企業はつぶれてしまう、こういう意見もあります。国鉄が土地に対して発言権がなくなったら大変だ、使用料が大変だ、こういう意見もあります。それぞれどこかに出血なくして再出発するわけにはいかないわけですから、その意味においてこういう試案はたたき台の一つでありますし、いろいろ欠陥があると思います。しかし、総裁、そのくらいの姿勢が必要なんじゃないだろうか。何かの便法でうまくやっていける方法があるかといったら、なかなかないんじゃないか。これで威令が行われるようにしてみてはどうか。そして現行体制を維持しつつ、しかもそれで能率を上げていく、そして四兆四千億の借金は逐次返していきます、やはり国民にそういうふうに言わなければ、まず総裁の姿勢いかんが、国民の税金であと賄ってもらうわけですから、納得してもらう道につながるのではないか、こういうふうに思いますが、これも半熟でありますけれども、それぞれ総裁、それから監督庁としての運輸省からお聞かせをいただきたいと思います。
  28. 仁杉巖

    ○仁杉説明員 この試案もまだ十分検討はいたしておりませんが、先ほどもちょっと触れましたが、今のままの線上に予算を立てるということではとても赤字をとめるというようなことはできないということでございます。こういう試算はいろいろ考え方があろうかと思いますが、一つの貴重な御意見として私どもも十分念頭に置きまして、今後検討の材料にしていきたいと思います。どうぞよろしく御支援を願いたいと思います。
  29. 秦野裕

    ○秦野説明員 先生指摘のとおり、国鉄のこれからの再建問題を考えていく上で長期債務の問題が非常に重要だということは、私どもも痛感しておるわけでございます。したがって、何らかの形で将来にわたってこれを処理していかなければならないわけでございますけれども、いずれにしましても、国民に何らかの形で御負担をお願いするというためには、やはり将来に向けて国鉄が赤字を出さないという体質をつくることが前提条件であると思います。したがいまして、そういう関係から、将来の国鉄の経営形態のあり方と関連してこのような長期債務の処理の問題を検討していくべきだと思いますので、監理委員会と協力しまして、先生の御意見も参考にしながら検討してまいりたいと思っております。
  30. 佐藤孝志

    佐藤説明員 国鉄再建監理委員会といたしましても、先生の御指摘のとおり、国鉄の抱えております多額の長期債務の処理の問題は、これからの国鉄の事業の再建を考える上においてどうしても解決しなければならない重要な課題であるというふうに考えております。ただ、この問題は、先ほど運輸省の方の答弁もありましたように、これだけを単独に処理するのではなくて、国鉄の赤字体質を改めるための抜本的な対策と一体的に取り扱っていくことが必要ではないかというふうに考えておりますので、今後効率的な経営形態の確立などの基本的な問題とあわせまして、総合的に検討の上具体的な方策をまとめることにいたしたいと思っております。その検討の過程で、ただいまの先生の御提言初めて伺ったわけでございますけれども先生の御意見その他いろいろな御意見を十分参考にさせながら検討を進めてまいりたいというふうに考えております。
  31. 沢田広

    沢田委員 大蔵大臣、どうですか。
  32. 竹下登

    竹下国務大臣 抜本策ということになりますと公式答弁になりますが、これは国鉄再建監理委員会の御審議の経過を見守りながら、その結論に沿って可能な限りの努力をしなければならぬ、こういうことであろうと思います。
  33. 沢田広

    沢田委員 これは細かい言い方をすればいろいろあると思うのであります。ですから、総裁がわらじをはいて本社を出ても、東京駅の三階に入ろうと、願わくば率先して国民にその範を示すというところからスタートしてもらえないか、これは切望してやまない点なんであります。上正しからざれば下乱るで、まず総裁自身の今後の活動なり姿勢なりがどこまでこの赤字国民が背負ってくれるかのはかりにかかっていると言っても間違いないと思う。これは総裁個人だけではなくて幹部全部でありますけれども、その姿勢が国民の理解を得られるかどうかにある。さっき言ったように無理してきたことも事実でありますし、設備投資をやってきたことも事実ですから、そのことによってあすへの希望なり期待が生まれてくるという一つの原点へ戻って再出発するということを切望して、私は次の質問に入ります。  警察行政で公安委員会においでいただいておるのは、自賠責保険、それから生命保険問題も含めてでありますが、私はもう時間がありませんから簡潔に申し上げますと、これは意見として述べておきますが、一つは、保険業務の中で集金費が三%、維持費が今三円三十五銭、それから新契約保険金額が千円について二十五円、さらに二%、予定利回りは大体五・五%くらいに見て保険の積算がつくられております。五十六年以降を今言ったわけでありますが、五十一年から五十六年にかけての比率というものは少し過大になり過ぎてやしないかというふうに思います。  大臣、これは通告外の問題でありますが、そういうようなことで、もう一つ見方としては、現在上場している企業のうち生命保険会社が持っておる株式は極めて大きいのであります。あるいは日本経済を動かしている大きな基盤にもなりかねない、こういうことであります。  それとあわせて、公安委員会、警察の取り締まり、現在のような低成長下における自動車の運輸行政の中の価値観の変動に伴う取り締まりをやってほしい、それで公安委員会に来てもらいました。  それは私も本会議でも言いましたが、運が悪いという論理を通さないでほしい、停車であろうと駐車であろうと違反であろうと、運が悪かったという論理を国民の中に蔓延させるということは今日の政治の状況の中において極めて好ましくない。その点は、運が悪いという論理でなく、公正さがなければ野放しの方がまだましだ、私はそう思う。そういう意味において、運が悪い論が発生しないような施策を私は特に求めたい。  それと関連して保険の方も大臣、これはひとつ意見だけ述べておきますが、一分ぐらいでお答えいただければいいのです。事故を起こした場合に、汗を流し自分で働いて、苦労して金を返す、こういう分野を持たないと、保険で全部丸抱えに賄われていくという発想では、本人の反省もなければ、あるいは事故に対する反省もなくなるとこの前も言いましたが、そういう状況をつくる。だから三分の一なり二五%程度は、保険でなく、本人がやはり事故を起こしたことを償うべく汗を流していくということは必要なことである。そのことが保険で全部賄われるから、ある意味においては運転マナーが乱れる、こういうこともあり得るわけでありますから、そういう意味においての変革が必要である、私はこういうふうに考えます。  同時に、今言った運の悪い交通行政は絶対にやめてほしい。運が悪い論理がまかり通るということだけは、それは公安委員会が決めることでありますから、警察が決めることではないと思うのですね。ですから、その意味において、ぜひ運の悪いというこの発表の形式がないようにひとつ期待するわけですが、これもイエスかノーかでお答えをいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  34. 八島幸彦

    ○八島説明員 お答えいたします。  御指摘のように、取り締まりを行います場合に、取り締まりを受ける者に運が悪いというような印象を与えないように、可能な限り努力してまいりたい、かように考えております。
  35. 沢田広

    沢田委員 それでは時間が来ましたが、大臣、聞いておいていただけましたか。じゃ、また改めてお願いすることにして、後の人にバトンタッチいたします。  以上で終わります。どうもありがとうございました。
  36. 瓦力

    瓦委員長 川崎寛治君。
  37. 川崎寛治

    ○川崎委員 先ほども沢田委員から円安の問題について御質問ございました。私は、円安、それから累積債務、またコンチネンタル・イリノイ銀行の経営危機、国家管理に近い経営再建、そういう問題がたくさんあるわけでありますが、きょうはその問題について御質問する時間がございませんので、問題を絞って、石油の国家備蓄の問題、それから国有林の財政の問題についてお尋ねをしていきたい、こういうふうに思います。  そこで、通産省石油部長にまずお尋ねをしておきますが、国家備蓄の問題、衆議院の予算委員会においても随分議論ございました。しかし、去年の三月、四月にかけての参議院における当時の吉田参議院議員の質疑というのは、私は大変中身の濃い、高い質問であった、こういうふうに思います。当然、松尾石油部長、岩田備蓄課長は、当時の吉田君と山中通産大臣、それから豊島エネ庁長官との間の大変諦めた議論、十分議事録を読んできたと思いますが、いかがですか。
  38. 松尾邦彦

    松尾政府委員 御指摘の、吉田正雄先生との質疑につきましては、委員会におきまして私も拝聴しておりました。また、一部お答えをさせていただいたこともございまして、詳細に全部記憶しているわけではございませんが、問題を指摘された点については承知しております。
  39. 川崎寛治

    ○川崎委員 資料を配ってもらいましたか。
  40. 瓦力

    瓦委員長 資料をお配りください。
  41. 川崎寛治

    ○川崎委員 それじゃ、お手元に資料を配ってあると思いますが、なお、山中通産大臣、豊島エネ庁長官というのは、幸か不幸か、私の尊敬をする鹿児島の先輩であり、後輩であります。その議論を中心にして、まず一つ、当時の豊島長官なり松尾部長なりとのやりとりをしたものを土台にして今お手元に表とそれからグラフをお配りしておりますので、これを土台に議論をしますから、委員の皆さん方は、その吉田君と当時の責任者との間の議論というのは時間がありませんから細かに繰り返すわけにまいりませんので、その点はこの資料をごらんいただきながら御理解いただきたいと思います。竹下大蔵大臣も、参議院の予算委員会では昨年吉田君の議論を聞いておったと思いますので、思い起こしていただきたい、こういうふうに思います。  そこで、議論を進めてまいります基礎的なものとして、私の方から確認をしておきたいと思います。  それは石特会計石油及び石油代替エネルギー勘定の五十九年度予算の中身でありますが、歳入は、原重油関税が五十五億、剰余金等三十五億、一般会計よりの受け入れ四千四百億、その四千四百億の内訳は石油税が三千七百三十億円、また大蔵省から返ってきます、つまり未練り入れ分、これが六百七十億、締めて四千四百九十億、こういう中身であるということに間違いありませんね。
  42. 松尾邦彦

    松尾政府委員 おっしゃいましたように、四千四百九十億円の規模で石油及び石油代替エネルギー勘定が計上されております。
  43. 川崎寛治

    ○川崎委員 そこで、国備関係の項目別予算は、公団備蓄事業出資金が八十八億、公団備蓄事業補給金が二百九億、公団備蓄増強対策補給金が五百四十二億、公団備蓄事業費等交付金が九百四十一億、締めて千七百七十九億円に間違いありませんね。イエス、ノーでいいんです。
  44. 松尾邦彦

    松尾政府委員 おっしゃったとおりでございます。     〔委員長退席、越智委員長代理着席〕
  45. 川崎寛治

    ○川崎委員 それらを基礎にしながら進めてまいりますが、ことしは石油税を九月から上げまして、石油税の税率引き上げ額、九月からでございますので半分、六百七十億ですね。まあ平年度にして千三百四十億。そういたしますと六十年度の予算では千三百四十億、こういうことになりますので、未練り入れ分からの繰り入れを考慮しないで五十九年度予算と同額の歳入が期待できる、こういうふうに思いますが、いかがですか。
  46. 松尾邦彦

    松尾政府委員 石油税収につきましては、御案内のように石油輸入価格、それから為替レート、輸入量等によっていろいろな変動要因がございますけれども、それらをすべて捨象いたして申しますれば、六十年度には、五十九年九月一日から石油税の引き上げをお願いいたしておりますので、平年度化することによりまして先生おっしゃったような数字になるという試算が一つ可能だと思います。
  47. 川崎寛治

    ○川崎委員 そこで、お手元に表がございますので、これを見ていただきたいと思いますが、これは三つのケースをあらわしております。つまり、既存の六つのプロジェクトがケースⅠ、それから、それに志布志を入れましたものがケースⅡ、それから三千万キロリットルの国家備蓄というものでまいりますのがケースⅢ、こういうふうになるわけであります。この数字は、先ほど言いましたように、吉田君が山中通産大臣なり豊島長官なりに質疑をし、エネ庁の方から答えてきた数字というものを土台にしてこれをはじき出しております。  そういたしますと、ケースⅠでまいりますと、タンクの容量が三千百四十万キロリットル、実質貯油量が二千三百五十五万キロリットル、建設費が総事業費で一兆一千三百億円、そのうちの銀行借り入れの累計が八千八百億円、そうして原油代の借入累計というのが、計算をして一兆三百二十八億円、公団の備蓄増強対策補給金が八百六十八億円、これは八・四%で、当時の参議院の議論を土台にいたしておりますので八・四%でございますが、これが八百六十八億円。そういたしますと、つまり備蓄経費、タンク利用料の公団備蓄事業費等交付金、これが千三百五十億円、十五年で返還が終わりましたときには七百五十四億円、こういうふうに減ってくるわけであります。  大体こういうふうに、ケースⅠ、ケースⅡ、ケースⅢを大ざっぱに計算してきたわけです。大体これで間違いありませんね。
  48. 松尾邦彦

    松尾政府委員 ただいま、私ども初めて資料を拝見させていただきましたので、個々の項目につきまして全部正しい、正しくないというチェックは、申しわけございませんけれども今すぐできませんが、私どもから見ましてそのとおりだという数字もたくさんございますし、一部確認を要する数字等もございまして、恐縮でございますけれども、もし一つ一つということでございましたら、少し時間の余裕を与えていただきたいと思います。
  49. 川崎寛治

    ○川崎委員 その点は、金利とかその他計算の仕方、いろいろありますから、細かに全部正確だということは私も問うておりません。しかし、大体こういうふうに全体の流れというのがつかめる、こう思います。  そうなりますと、このケースⅠで、グラフをひとつ今度ごらんいただきます。国備関係費の歳入歳出がどのように推移し、不足額がどの程度生じていくか、こういう点を示したのがこのケースⅠのグラフでございます。  そうしますと、タンクの償却が終わる十五年間、これは下のところで見ますと、十五年目に法定耐用年数というのが書いてありますが、ここで不足額の累計が一兆三千百五十五億円、これは金利を入れておりません。金利を入れませんで一兆三千百五十五億円です。そうしますと、これでいきますと十六年目からは百五十七億円の黒字が出てくる。しかし、これでまいりましてもこの償還のためには何と八十四年かかるんです。八十四年、いいですか。ですから、この一兆三千億の不足額に利子を入れますと、八%の利子で計算をしますと二兆七千六百五十億円になるわけです。そのときの不足額の累計に対する金利というのは二千二百十二億円。そうしますとこれはどう返していきますか。国家備蓄というのは返さなくていいんですか。伺いたいと思います。
  50. 松尾邦彦

    松尾政府委員 確かに国家備蓄というのは大変多額の資金を必要とするものでございます。費目につきまして申せば、原油代の利子補給もありますし、建設いたします事業にかかわる資金の利子補給、それから施設の利用料等の歳出費目があるわけでございますけれども、これらのうち基地建設に伴います借入金の利息につきましては、私どもとしては国家備蓄基地の利用料の中の減価償却費相当分をもって返済を行っていくことにいたしたいと考えているわけでございまして、現に五十九年度におきましても、一部返済の時期が参るものにつきまして減価償却費相当分をもって返済原資に充てるように予算を計上さしていただいているところでございます。  今後の見通してございますけれども、なかなか今後の見通しにつきまして明確にこの段階で試算をすることについては、いろいろな制約要因がございます。当然のことながら、基地建設の具体的な進捗テンポあるいは借入金の返済のスケジュール、その他いろいろな変動要因もございますし、また歳入の方につきましても、当然、先ほど来申し上げましたようなエネルギー事情あるいは為替の動向等々変動要因もあるわけでございますので、私どもとしては現時点で明確な見通しをきちんと申すということは難しいわけでございますけれども、先般、石油税の引き上げをしていただきましたので、この財源でできるだけ長い期間、歳出の効率化も図りながら歳出入が見合うように努力いたしてまいるつもりでございます。  今後どれだけの期間この歳出入のバランスを現行税制のもとでとれるか、これは必ずしも明確に申し上げることは困難な面がございますけれども、少なくとも五年間ぐらいの先行きの歳出入を見た上でお願いをいたした経緯があるわけでございますが、さらにそれ以上できるだけ長い期間増税を新たにすることなく、現行の制度の中で歳出入を合わせてまいりたいと思っておりますし、そういういろいろな変動要因がございますけれども、歳出の効率化等を通じて基地の建設費の借入金は逐次返済をされていくものと考えております。
  51. 川崎寛治

    ○川崎委員 全然これは答弁になっていないのですよ。基地の建設費の償却は先ほど触れました。十五年でなるほど返すでしょう。しかし、それから返せるのが百五十七億しかありませんよ、この計算でいつでも。  そこで問題は、十五年目の利子なしで一兆三千百五十五億、金利を入れれば二兆七千六百五十億、こういうふうになるわけですが、大体この数字についてはお認めになりますか。
  52. 松尾邦彦

    松尾政府委員 先生の方で御試算なさいました金利とかその他前提要件につきまして、私どもも子細に検討さしていただきませんと、この段階で私どもとしてこの数字が正しいかどうかについて明確にお答えをする準備がないのをお許しいただきたいと思います。
  53. 川崎寛治

    ○川崎委員 だから最初に、表について、吉田君と当時の責任者との間で議論し合ったことを土台に計算しました、細かに一銭一厘の違いなどは問うておりません、しかしおおよそにおいて間違いありませんかと言ったら、そのとおりですと言った。それを基礎にしてケースⅠで、つまり志布志が入っておりません現在の六国家備蓄基地でずっと計算をしてまいりました場合に、こういうふうに一兆三千百五十五億、そして金利を入れれば二兆七千億という膨大なものになってくるわけであります。今あなたが答えた償還というのは、基地建設費についての部分的な償還だけを言っておるわけですね。しかし、それも法定耐用年数十五年目まで入れて、十六年目からようやく返してまいりますが、それもやはり八十年かかるんですよ、八十年。  そこでまず石油部長、あなたは去年吉田君と山中通産大臣との議論に立ち会っているわけですからここでお聞きしますが、大蔵大臣、ここをよく聞いておってください。去年の四月十二日の参議院の商工委員会でいろいろと吉田君が詰めた。そのときに結論として何と言ったか。これは後でもう少しあれしますが、まず、今あなたが石油税のことを言いましたね、ことし上げてもらったから。これは大蔵省主税局長もお見えでございますが、山中通産大臣はいろいろ答弁をしました中で、石油税のことについてこう言っているんです。彼は、石油税の三・五%というのはおれが自民党の税制調査会長のときに創設をしたんだ、大蔵省と相談をし、通産省と相談をして創設をしたんだ、こういうことを言っておりますね。そこの中で彼はこう言っている。「石油税をすぐに引き上げなくても、来年度予算は私は組めると思います。」「組めると思います。」これが答弁なんです。大蔵大臣、そうしますと、国会で石油税を上げなくても予算は組める、こう当時の通産大臣が責任を持って答弁しているのですね。しかし、上げました。大蔵大臣、いかがですか。
  54. 松尾邦彦

    松尾政府委員 ただいまお述べになりました当時の山中大臣の答弁の議事録が手元にありませんので、正確には私も記憶しておりませんけれども、当時の山中通産大臣がしばしば国会でお述べになっていらっしゃいましたのは、原油価格引き下げられたことに伴って石油税収の大幅な減収が生ずる、他方、我が国のエネルギー政策我が国経済の健全な発展、存立を図っていくためには長期的な観点から地道に進めなければならない、そういう政策的な要請が一方にある、したがいまして、原油価格引き下げられたことに伴う減収とエネルギー政策の地道な、着実な推進、この観点から、いかに五十九年度以降の特別会計の予算を編成していくべきか、財政当局等ともよく相談をして判断をしていかなければならない問題であるとしばしばお述べになっておられたと思います。そういう趣旨で吉田先生との御議論の際にも大臣はお考えになって、御答弁になったのではないかと考えております。
  55. 川崎寛治

    ○川崎委員 それは、国家備蓄全体の基本的な方針についていろいろと述べているところもございます。しかし、石油税そのものに関しては明確に、上げなくても来年度の予算は組めます。しかもそれは、OPECで五ドル引き下げた、そして通産大臣自身がOPECのカルテルは崩壊をした、そういうことを前提に答弁をしているわけです。ですから、今あなたが言われた原油価格がどうのこうの、なにがどうのこうのという議論は抜いて、つまり彼は石油税を上げなくてもよろしい、こういうことを言ったのです。しかし、今これは問うてもしようがないですから……。問題は、私が先ほど指摘しました、十五年目で利子まで入れますと、志布志を入れずに二兆数千億、こうなってきますね。これは今言いましたように、当時の豊島エネ庁長官が、「返済につきましては、形式的には三年で返すとか、部長から御説明いたしましたが、基本的には将来の財政事情を見て返済計画を立てていくということでございます。」こういうふうに答弁しておるのです。  そこで、大蔵省にお尋ねをいたしますが、今の国家備蓄の償還計画について、原因である通産省備蓄計画と財政事情を見ながら返済計画を立てる、つまり長期の計画を立てるということをこのときに彼が約束しているのだ。山中大臣も言っているわけです。ですから、そういう長期の償還計画をどういうふうにお立てになっていこうとしておるのか、大蔵当局としてこれをどういうふうに考えて通産省と話し合っておるのか、両方から御返事伺いたいと思います。
  56. 松尾邦彦

    松尾政府委員 今般石油税の引き上げをお願いするに当たりましては、昭和六十三年度までの歳出の需要、それからその間における石油税収の見通し、さらには一般会計に留保されている石油税収によって生じた金額の合計額、これらの要素を計算いたしまして、必要最小限度の税率引き上げがどの程度であるかというのを大蔵省とも十分御相談をいたしまして、その過程においては歳出も極力削減をする、そういうぎりぎり効率化を図った歳出需要を六十三年度まで見通し、そして今申し上げたような歳入面につきましては、税収と一般会計留保額の繰り入れ、これを前提にいたしまして、ただいま申し上げたような税率の引き上げをお願いしたわけでございます。
  57. 的場順三

    ○的場政府委員 長期的に全体として大体どういう国備の金が要るか、あるいはそれの財源をどうするかという話は、大蔵省は単年度主義でございますし、非常に具体的に詰めて相談したことはございませんけれども、税率引き上げの際に、この税率引き上げによって、歳出の節減合理化を図れば先ほど松尾部長からも答弁がございましたように少なくとも五年程度は何とかやっていけるのではないかという前提に基づいて、話し合いはいたしました。しかし、先ほど先生がお配りになりましたような正確な数字をもとにして議論を諦めたということではございません。
  58. 川崎寛治

    ○川崎委員 大蔵大臣、第二の青函トンネルだと石油業界でも言っているということが最近報道もされているのですよ。じゃんじゃん金をつぎ込んで、財政再建だ、赤字だ、こう言って騒いでおりますときにそういうことを続けていっていいのかということなんですよ。今長期の計画はないのだというんでしょう。長期の計画がないのに、ことしさらに志布志を入れようとしている。さらにまた三千万キロリットルだということでやろうとしておる。しかも石油情勢はがらっと変わってきておる。そういうときにこれでいいんですか。財政の最高の責任者として、このまま続けていいんですか。後でまた言いますけれども、ちょうど中東の石油危機勃発のときに、私は日本の政党としては一番最初に行って、アラブの大義というものについては嫌というほど各国で触れてきました。それだけに後の変化もずっと私は追っておりますけれども、そういう中で、今長期の計画がないまま行ってよろしいのですかと私は問うておるわけです。大臣、いかがでしょう。
  59. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる国家備蓄というもの、まずは民間備蓄、それは、石油ショックの大きな反省からいたしまして、安全保障の観点をも含め、この安全保障というのは生活の安全保障という意味でありますが、この政策需要というものは是認した。そして私どもといたしましては、あのとき山中さんもOPECのカルテルは既に崩壊した、こういう表現でございましたが、しかしながら、石油事情が緩んだからといって、例えば備蓄問題あるいは代替エネルギーの開発意欲、そういうものが衰えてはならぬという政策選択というのは存在しておったと思います。  そこで、今うちの的場次長からもお話ししましたが、大蔵省は予算そのものは単年度主義でございますけれども、中長期的な物の見方の上に立って政策の実行を、原局である通産省との予算協議、調整の中において行わなきゃならぬ。今の時点は、例えば一般会計でよく貸し借りとか北方領土とか、いや沖縄が残っているとか、いろいろな議論がございますが、もとよりあのもの等が全く念頭にないわけではないけれども、中長期的には石油税収の確保を図らなければいかぬということでお願いして通してもらった。  そこで、率直に申しまして、将来の計画については私自身も定かではございません。が、将来の計画というものも、原因におかれてはそれなりの見通しがあってその政策需要の協議に入られたのではないか。私も詳しい事情がわかりませんので、その点は専門的に勉強しておられる川崎さんに対しては私の答弁の能力の限界があると思いますが、原局におかれてそうした中長期的な見通しというのはおよそあるに違いないという考え方で、今私どもはこの問題に臨んでおる。ただ、そうはいっても、これに対して、特別会計とはいえ歳出削減、できるだけ節約してまいるとか、そういう点は強く意識を持ってお願いをしておる、こういうことであります。
  60. 川崎寛治

    ○川崎委員 原局の方は、先ほど来お答えになっているように長期もないのですよ。この二、三年、いわゆる中期の答えしかしていないわけです。  それじゃ部長、石油税を上げずにこれからずっとしばらく、建設をし、備蓄をし、そして返還をしということをやっていけますか。
  61. 松尾邦彦

    松尾政府委員 先ほど来申し上げておりますように、今後五年間程度は少なくとも現行の枠組みの中でやっていけるものと考えておりますし、できましたならばそれをより長く続けさせていただくように最大限の努力をいたしたいと考えておるわけでございますが、何回も申し上げるようでございますけれども、歳出面におきましても、先ほど来申し上げておりますようにいろいろな変動の要因もございます。また歳入面も同様に、国際石油情勢から始まりまして種々の変動要因があるわけでございまして、適切な長期の見通しを画一的につくるということにはなかなか難しい面があるわけでございますけれども、私どもといたしましては、ただいま大蔵大臣お答えにもございましたように、エネルギーというものが持っている国民経済における極めて重要な地位にもかんがみまして、このエネルギー対策を計画的、着実に進める、あわせて歳出の効率化を十分図っていく、こういう観点から処してまいるようにいたしているつもりでございまして、そういう意味では、先ほど申し上げたように当分の間私どもは現行税率のもとで歳出入を賄っていけるものと考えております。
  62. 川崎寛治

    ○川崎委員 くどいようですが、先ほど来申し上げておりますような、あなたがお認めになった最初の表を前提にしながら計算をしたケースⅠ、これでまいりまして十五年目には利子を入れずに一兆三千百五十五億、利子を入れれば二兆七千六百億、こういう不足額の累計になるということについて否定をしますか。もし否定をするなら具体的に出してください。そしてその計算を出した上で議論をしましょう。それでなければ、あなた方が中期、中期と言ってやっているうちに無用の長物をつくってしまう、どうにもならない宝の持ちぐされになる、これでは国民のためにならぬわけです。私は、石油の重要性、エネルギーの重要性というのは十分承知しております。だから、その石油の安全保障、エネルギーをどう確保していくかということについての政治、経済、外交上の問題はその問題としてこれからもう少しいたしますが、まず、国民に負担をかけながらやっていく、その中で本当に返還の見通しがあるんですかと私は聞いているのですから、これは間違いだとなるのか、いや大体数字としてはそういうことだろうとお認めになるのか。それでなければ皆さん方もこういう計算をして出してください。それでなければ全然議論にならぬ。そうでしょう。  そして、山中大臣もこう言っているんです。あなたも立ち会ったわけでありますが、「答弁が大変もたつきましておわびいたします。」こう言っているんですよ。「私自身がだんだんわからなくなってきちゃったわけですよね。したがって、そういうもので私が得心し、国民にも堂々と説明できるような内容のものを検討してみたい。再検討といいますか、まとめてみたいと、そういうふうに思います。」と率直に言っているんです。一年ちょっと前にこう答えております。山中通産大臣の答弁というものに権威があるなら、国会の答弁に権威があるならば、私は原局としてそのことの計算をし、きちっと検討し直したものを国会に出して議論にこたえるものにしていくということが当然だと思いますし、財政当局の大蔵としても、単年度主義だと言われましたが、単年度で毎年毎年を転がしておればいいんだという問題ではありませんから、当然議論にたえるものを出していただきたい。  だから、志布志を入れますとケースⅡになりまして、五枚目ですが、利子なしで一兆九千六百三十五億、八%の金利を入れますと四兆、こうなるんですよ。そして、一年前にこれだけ大臣が答弁をしながら、具体的な議論にたえられるものを国会に出して議論をしようとしない、それで、石油は大事だから国家備蓄はと、こういう抽象論で進めていくことに私は反対です。国民の税金を扱うんですから、そういう意味で私は原局として大変無責任だと思います。返還のめどがあるんですか。私は三年や五年を議論しているんじゃないです。まずこの数字を認めるかどうか、そしてあなた方の方で計算をしてそれを国会の議論に出してもらえるかどうか、そのことをまずはっきりしてください。
  63. 松尾邦彦

    松尾政府委員 ただいまちょうだいいたしました数字の中には、吉田先生との御議論の際等に私どもの方から申し上げたものも入っておりますけれども、そうでないものも入っております。それで、私どもといたしましては早急にこの数字をチェックさせていただきたいとは存じます。ただ、御案内のように、歳出にいたしましても歳入にいたしましても極めて変動要因がたくさんございます問題でございますので、私考えますが、一義的にある数字を一定の前提に置いてつくりまして、それをもって将来の動向を一元的に申すことについては、現実との関係においてなかなか難しい面もあろうと思います。したがいまして、その数字を私どもとして勉強させていただきました上でまた御相談させていただきたいと思います。  山中大臣が昨年お答えになったこととの関連でちょっと一言つけ加えさせていただきますと、あの昨年の春の国会審議の後、総合エネルギー調査会におきまして、今後の原油の五ドル引き下げ後の我が国のエネルギー政策の基本的方向はいかにあるべきか、各界の代表の方から種々御議論をいただいて、その大きな基本的な流れのもとで、先ほど来申し上げておりますような今後五年程度の見通しを踏まえまして今般の石油税率の引き上げをお認めいただくようにお願いした経緯があるわけでございます。したがいまして、山中大臣の答弁の後さような手順は踏んでまいってきているつもりでございます。
  64. 川崎寛治

    ○川崎委員 いや、この数字に大体の展望について間違いがあるというなら、具体的にどこが間違っているということを指摘をしてください。
  65. 松尾邦彦

    松尾政府委員 詳しい積算等を私どもとしてよく検討させていただきました上、御連絡させていただきたいと思います。
  66. 川崎寛治

    ○川崎委員 あなた方はそういう長期のものについての見通しは立てられないというんですか。それともこれに見合うような議論をするために、山中大臣も言っているように六プロジェクト、志布志、三千万、そういうことで財政当局とも御議論いただいてお出しいただけますか。
  67. 松尾邦彦

    松尾政府委員 先ほど来申し上げておりますように、将来の数字につきましては歳入歳出両面にわたる極めて大きな不確定要因がたくさんございまして、ある一定の大胆な前提を置いて試算をすることが仮にできたといたしましても、それの持っている意味については極めて誤解を招く恐れのある場合もあるのではないかと存じます。したがいまして、私どもとして今この段階で先生のおっしゃっていますような長期の見通しについて資料をおつくりすることについて確たるお約束はできませんけれども先生からちょうだいいたしました資料につきましては、持ち帰りまして検討させていただきたいと思います。
  68. 川崎寛治

    ○川崎委員 大蔵省の的場次長は今単年度だと言われた。しかし、転がしておったのでは大変なことになりますよ。それこそ累積債務だ、赤字がどんどんふえるわけですから。単年度主義でずっと転がしていきますか、国家備蓄は大事だということで。それとも、今この財政事情云々という議論もありますが、少なくとも長期の展望については財政当局としても御検討いただけますか。
  69. 的場順三

    ○的場政府委員 単年度主義ということを申し上げたのは事実でございますけれども、その中長期的な視点にわたっておよそどういうふうになるかという道筋については、通産省とよく話をするというのは当然でございます。ただ、先ほど申し上げましたのは、先生の御提出になりましたような、そういう詳細な表を議論したことはないというふうに申し上げたわけでございます。通産省が予算要求に当たってそういう長期的な視点でこういうものをつくっておるということから御相談があれば、財政当局としては、当然その内容について議論するというのが当たり前のことだと思っております。  ただ、つけ加えますと、私が単年度主義であるというふうに申し上げましたのは、先々の見通しは全体の財政状況大変厳しゅうございますので、歳出の増加する場合にそれを約束するわけにはとてもまいりません。そのときどきの政治経済情勢によって歳入等も変わってまいりますので、そういう点を踏まえて検討はいたしますし、にらみながらやりますけれども、約束するわけにはなかなかいかないということを申し上げた次第でございます。
  70. 川崎寛治

    ○川崎委員 そこで、石油の情勢ですけれども大蔵大臣、先ほど来石油が大事だといって議論がありますね。ところが、欧州のスポットが二十七ドルに二十五日下がりましたね。それからOPECの公式バレル二十九ドルが、これもまた基準油種アラビアンライトで二十七ドルに下がりましたね。それからきのうの報道によりますと、ロンドンの原油先物取引が半年で中止、こういうことも報道されておりますね。今回のコンチネンタル・イリノイ銀行も、石油開発にいささかむちゃくちゃなつぎ込みをしてあっぷあっぷになっちゃったわけですね。そうしますと、今日のそういう石油情勢から見て、OPECがカルテルとして再び復活をし、世界の石油情勢をリードをする、世界の石油情勢を支配をする、そういう方向に変わることがあり得る、こういうふうに最高の重要な大臣としてお考えになるのかどうか。これは原局に言ってもらいますか。     〔越智委員長代理退席、委員長着席〕
  71. 松尾邦彦

    松尾政府委員 先生指摘のとおり、ただいまのところ、中東情勢が流動的なもとではございますけれども、アラビアンライト等代表的な油種のスポット価格は大変軟調に推移しておりますけれども、今後のOPECは一体どのような機能になっていくのか、大変難しい質問でございます。  私どもとして見ますと、第一次、第二次オイルショックを経まして、OPEC以外の地域における原油の生産の増大、あるいは先進諸国におきます代替エネルギーの導入、あるいは省エネルギー、このような消費構造の変化、その両面から、自由世界におけるOPECの生産のウエートが、半分以上ございましたのが半分以下になるというような情勢になっているわけでございます。したがいまして、そういう時期におきましては五ドル引き下げというようなことも国際需給関係の中でOPECは余儀なくされたことになったわけでございますけれども、今後の展望といたしましては、例えばIEAの見通しにおきましても、八〇年代末には需給がおおむね均衡するのではないか、そして九〇年代に入りますと需給が逼迫基調になるのではないかというような見通しもかつて発表したこともございます。そして自由世界における石油の開発も大分進んだわけではございますけれども、将来の減衰のことを考えますと、引き続きOPECの力はまだかなり大きなものになっていくのではないかという見通しも十分立てておかなければならないことだろうと思います。  いずれにいたしましても、当面の短期的な需給に惑わされることなく、中長期的な観点から安定供給の確保を図っていくという視点が欠かせないことだろうというふうに存ずる次第でございます。
  72. 川崎寛治

    ○川崎委員 西暦二〇〇〇年にも一九八〇年の水準を下回る見通しという見込みが今出されておるわけですね。現にそうなっておる。そういう方向で今動いておると思います。それから、石油に依存をする産業構造というのが大きく変わりつつある。それは日本だけではなくて、世界も変わってきておる。そして、今IEAのことを言われましたが、アメリカのSPR、戦略備蓄、これは国防省が原油取引をやっておるわけですね。これは国防省なんですよ。備蓄課長は何かわきの方で言っておりますが、これは国防省燃料供給センターが戦略備蓄の中心になっておるわけです。そういうものに合わせた日本の国家備蓄というものであってはならぬと思うのですよ。これは改めて議論します。これをやりますと日本の継戦能力やら何やら、いろいろな防衛問題にも入ってまいりますから、これは機会を改めてやりますけれども、いずれにしても一九八〇年の水準を下回る見込みになってきておるわけです。  そういたしますと、先ほど来、天文学的なお金をつぎ込んできておる国家備蓄というものは、六プロジェクトでさえも今そういう状況に追い込まれておる、でありますから、ことし志布志を入れようと建設許可の云々が今環境庁なり運輸省なりで問題になってきておりますけれども、私は、そういう長期の見通しからいたしますと志布志の建設をゴーすべきではない、こう思います。いかがですか。
  73. 松尾邦彦

    松尾政府委員 先ほど先生がお触れになられましたIEAの数値については、確かに最近お述べになられたような数字も発表されておりますけれども、御高承のとおり、あの数字は加盟各国の今後の見通しを集計したものというふうに承知しておりまして、IEAの専門家の話でも、代替エネルギーの導入について現実よりも非常に意欲的に取り組んだ結果そうなることを期待するという希望値というふうに私どもとしては解説を受けているところでございますので、そういう意欲を持つことは非常に大事なことだと思いますけれども、代替エネルギーの開発導入がそのように進むかどうか、これは今後またさらに検討を要する課題ではないかというふうに思っております。  なお、米国は確かに戦略備蓄というのを、実はこれはエネルギー省が中心になって進めているわけでございますけれども、今後一体どのように我が国が国家備蓄を進めていくべきかにつきましては、かねがねの方針でございます国家備蓄三千万キロリットルをぜひとも達成いたしたいと私ども考えておりますが、そのいわれは、現在ではIEAの加盟各国が百六十日分を超える備蓄を保有しておるのに対しまして、我が国の場合には、まだ民間の九十日備蓄にプラスして現在千五百万キロリットルですと二十六日分、仮にこれを三千万キロリットル加えたといたしましても百四十日強でございまして、IEAの方式で換算すると百三十日にも満たない水準になるわけでございますが、一方、我が国の場合にはホルムズの海峡から輸入する依存度が著しく高いことにもかんがみ、今後ともこれは着実な推進が必要と思っているわけでございます。  さような中で、志布志につきましては地元のお話がまとまり、現在関係省庁で審査をしていただいている段階でございますので、関係省庁の結論が出ました暁には、私どもとしては有力な候補地として進めてまいるようにいたしたいと考えております。
  74. 川崎寛治

    ○川崎委員 OPECの総会の後いろいろ、例えばこれは日経新聞ですが、石油の新しい情勢というものについての連載もしております。じゃんじゃん金をつぎ込む石油の国家備蓄というのは、将来は宝の持ちぐされだ、第二の青函トンネルだ。今ここに青函トンネルの運用についてのものを運輸委員会の諸君からも借りてきておりますけれども、今、使い道がないのですよね。キノコを栽培するとか石油の国家備蓄基地にしたらいいとか、あるいはカートレーンにするとか、いろいろ今この青函トンネルでも議論がなされておるわけでありますが、そういう宝の持ちぐされになるおそれが今国家備蓄基地については言われておる。ですからこれは再検討すべきなんです。しかも財政的にも今返還の展望がないわけでしょう。石油の情勢は変わってきておる、それにどう対応するかというのが政治であり外交である。そうしますと、六基地でさえもこういう今の展望でございますから、新たに志布志を入れることはやるべきでない、このことを私は強く指摘をしておきたい。そして、宝の持ちぐされとしてのこの備蓄基地の問題はこれからさらに議論が進むと思いますが、時間の関係がございますのできょうはこの程度にとめざるを得ませんけれども、国家備蓄という問題、これは石油業界自体でも大変いろいろと議論が出てきております。世界の石油情勢の問題や産業構造の変化、そういう問題については改めてまた議論をいたしますけれども、私は、国家備蓄基地の問題については志布志はやめるべきだということを強く主張をして、一応この備蓄問題については終わりたい、こういうふうに思います。  そこで次に、国有林の問題について少し御質問いたしたいと思います。  緑の問題というのは、空気、水という国民生活の基本として今大変大きく取り上げられております用地球的な規模で緑資源の枯渇ということが問題化しておるわけでありますが、森林を守り育てることが国際的にも緊急切実な課題になっております。行革審の会長であります土光さんもメンバーになっておられます国際化に対応した農業問題懇談会、これは川野重任さんが会長でございますが、我が国森林資源の活性化と森林の公益的機能の強化に関する緊急提言というものをいたしております。しかし、その中で、我が国の森林対策の中核的な役割を担うべき国有林野事業というものを見ますときに、その財政や経営の危機というものについては大変深刻な問題があります。予算委員会においてもしばしば議論をされてきたところでございますが、今日の国有林野事業の危機というものについて少し詰めていきたい、こういうふうに思うのであります。  大蔵大臣、今日の緑の危機の中で、国有林野事業というものについて、この危機的な状況をどう乗り切っていくべきか、林政審の答申もございますが、大蔵大臣の見解を伺いたいと思います。
  75. 竹下登

    竹下国務大臣 今おっしゃいますように、基本的にはこれまた原局からお答えするのが至当かと思いますが、林政審の答申というものは、私どもも正確ではございませんが承知いたしておるところでございます。  国有林というのも、これはまさに木材事情とでも言った方がいいでしょうか、この変化の中から経営が悪化してきた。私どもの青年時代等から見れば、あれはまさに巨大企業の一つだ、そういう印象が実は私もありますので、赤字の問題が出たときにどうしてそうなるのかなという疑問を持ったことがございます。  しかし何分、広大な面積というものがただいわゆる企業採算だけでなく、治山治水、それから今緑の問題等々を考えますときに、なお一層今の国有林経営には苦心が払われていかなきゃならぬ課題だというふうには考えております。したがって、財政投融資資金の導入とかというようなものができたのも、そういう原局のお考えに対して私どももそれに調整権限を持って応じたということではないかというふうに理解をしております。
  76. 川崎寛治

    ○川崎委員 具体的にお尋ねをいたします。  一月の林政審の答申を受け、原局であります林野庁においてもそれぞれ取り組んでまいっておる、こういうふうに思いますが、特にきょうは、林政審答申の中で言われております「財務の改善と財政措置」という問題についてお尋ねしたいと思うのであります。国有林野三法の改正も今進められてきておるわけです。そうしますと、その中で「財務の改善と財政措置」という面について今度措置をされましたのはどういう点でありますか、伺いたいと思います。
  77. 黒木敏郎

    ○黒木説明員 お答え申し上げます。  国有林野事業の経営が悪化しております現状に対応しましての基本的な対応ということでとりあえずお答えを申し上げたい、かように存じます。  先生案内のとおり、国有林野事業の経営の悪化に対応いたします策といたしましては、借入金への依存を厳に抑制できますように、やはり自己収入の確保と効率的な事業運営、こういったことを通じまして支出の縮減を図っていくというのが基本ではないか、かように考えます。  そこで、収入面におきましては、資源量の制約のために伐採量を六十年代の末までは抑制せざるを得ないという状況にあるわけでございますけれども、その中にありましても、やはり林産物の積極的な販売戦略を展開していく、あるいは保有しております資産の活用等によりまして自己収入の確保、増大を図っていくという必要がございますし、また、支出面におきましては、森林施業の合理化と投資の効率化、事業実行形態の見直し等によります事業運営の簡素化、合理化、あるいは新規採用の抑制を通じましての要員規模の縮減、組織の簡素化、合理化、こういったことを進めていくのが基本ではないか、こういうふうに思っている次第でございます。これらの自主的な改善努力に加えまして所要の財政措置を講じますことによりまして経営の健全性を確保していく。  ただいま申し上げましたのが今後の経営改善のための基本的な考え方である、こういうふうに考えている次第でございます。とりあえず御答弁申し上げます。
  78. 川崎寛治

    ○川崎委員 今度の三法で、六十二年までの改善期間を延長することと、退職手当の借り入れ並びに利子補給という措置はなされました。  しかし、この答申にもございます財政投融資資金の借入条件の改善ということと、特に保安林等々の非経済林の経費分担のあり方、この二つは非常に大事な問題でありますが、まだこれが措置されていないわけです。  そこで、この二つの問題に絞って私は次にお尋ねをしていきたい、こういうふうに思うのでありますが、ことし財政資金の借り入れというのは二千二百七十億円借り入れられておると思います。そこで、財政資金の借り入れの問題を見ますときに、ずっと予算委員会なりあるいは農林水産委員会なりで議論されてきておりますのは借入利子の問題ですね。利率の問題です。  そこで、民有林、公有林と比較をいたしてみますと、林野庁は七・一%、償還期間二十五年、据え置きが五年ですね。ところが民有林は、特別の場合ですと四十年、しかも据置期間が二十五年というのもあるわけです。それで、金利は三・五%、それから五%。金利の面でもあるいは償還期間の面でも国有林は民有林と比較いたしますと大変条件が悪い、私はこういうふうに思うのです。  これをどう改善をしていくかということが林政審の中で言われておる「財務の改善と財政措置」の問題の一つの大きなポイントだと思います。ですから、民有林と比較をして格差がございます今日の林野庁の、国の長期借り入れの金利並びに借入条件の改正ということをいたしなさい、こういうふうに林政審も言っておるのでありますから、その点についての林野庁としての改善の方向あるいは財政当局との話し合い、そういうものについてお答えをいただきたいと思います。
  79. 黒木敏郎

    ○黒木説明員 お答えを申し上げます。  財投借入金の利率を民有林並みに引き下げるべきではないかという御指摘かと存じますが、この問題につきましては、確かに、国有林野事業におきまして近年借入金の額が増高しておりまして、その支払い利息が財務事情を一層圧迫している面があるわけでございます。そういうことで、先般の林政審議会の答申におきましても、借入金への依存を厳に戒めること等を挙げまして、あわせて借入条件の改善を検討すべきだ、こういうような指摘がなされているわけでございます。  そこで、金利の問題でございますけれども、国有林野事業が借り入れております財投の金利は、先生案内のところでございますが、統一的に設定されておりまして、国有林野事業についてのみ例外的な扱いをするということは大変に難しいという状況現実にございます。また、御指摘になりました民有林関係につきましては、確かに農林漁業金融公庫等からの融資がございますけれども、これの金利は資金運用部資金のものよりも低利にはなっておりますが、これにつきましては別途一般会計から補給金の交付を受けておるわけでございます。と申しますのは、やはり中小林業者の経営合理化という政策目的、それに応じて一般会計からの補給金を通じまして、これによりまして融資条件が有利になっている、金利が低利になっているということでございまして、国有林野事業の場合と、中小林業経営のために政策的に特段の措置をとっているという点におきましては相互に趣旨が異なったものがございますので、やはり同日に論じていくという点については大きな問題があるのではないだろうか、こういうふうに受けとめている次第でございます。
  80. 川崎寛治

    ○川崎委員 確かに、財投の金利の横並びの問題もございますよ。     〔委員長退席、中西(啓)委員長代理着席〕 ございますが、じゃ、国有林と民有林、今の御答弁のとおりですが、今の国民の生活の一番の基本である空気と水というものを確保し、国民の財産である国土というものを保全していく、そういう面からいった場合に、特にその柱になります国有林の問題については、民有林同様金利については引き下げてほしいという希望が林野庁にあるのですか、ないのですか。
  81. 黒木敏郎

    ○黒木説明員 国有林野も含めまして森林の持ちます多面的な機能、これが十分に発揮されるよういろいろな手だてを講じていく必要がある、こういう点はまさしく私どももそういうふうに考えておるわけでございますが、これに対応します具体的な政策手段を講じていきますときには、やはり政府全体の政策の整合性といいますかバランス、これも見逃せない問題があるのではないか、こういったこと等を総合的に今後考えて検討していくべき問題だ、こういうふうに受けとめている次第でございます。
  82. 川崎寛治

    ○川崎委員 はっきりしませんね。  それじゃ、償還期間は今二十五年ですが、延ばしてもらいたいという希望なのか、延ばしてほしいという交渉はしているのか。その償還期間の問題はいかがですか。
  83. 黒木敏郎

    ○黒木説明員 借入金の償還期間の問題でございますけれども、国有林野事業におきましては、ここ数年、償還期間の延長という問題につきましても検討してきているところでございます。そこでやはり問題になりますのは、他の財投対象事業との均衡といいますか、バランスをどういうふうに考えていくのか、あるいは一たん設定いたしました償還期限を現段階で変更する理由というものをつまびらかに立証することができるかどうか、この辺大変難しい問題ではないかというようなことがございまして、現在実現しないで来ているところでございます。  しかしながら、先生も御指摘になりましたように、国有林野事業の経営改善のためには償還期間の延長を検討する必要がある、こういった点につきましては、先般の林政審議会の答申においても指摘されておるところでございますので、今後引き続きまして検討してまいる必要のある課題である、こういうふうに受けとめている次第でございます。
  84. 川崎寛治

    ○川崎委員 金利の問題は、農林省の予算全体、一般会計との関係もあるわけですが、私はやはり、財投の金利横並びという議論はわかります、わかりますけれども、今日の緑という問題、深刻な緑という問題を考えますときには、また治山、災害防止という予防治山の問題等考えますときには、この国有林野の健全な発展のためには借入金の金利というものは下げる方向になお努力をしなければならぬ、こういうふうに思います。  それから償還期間の問題については、これは大蔵省にお尋ねをしますが、「資金運用部資金及び簡保資金の融通条件」私の手元にあるのはちょっと古い資料でございますけれども、これを見ますと、特定土地改良工事特別会計の三十年償還、据置期間七年というのがありますね。それから住宅・都市整備公団、これは三十年、据え置き五年、それから帝都高速度交通営団、これが三十年、そして据え置き五年、こういうふうにあるわけです。  といたしますと、この山の問題が今日これほど、あの行革審の土光さんまでが山を大事にしなさい、民有林が主でございますが、こういうことをいろいろ言っておりますし、改めて機会を見て御質問もしようと思っておりますが、山林相続税の見直しの問題等も、提言の中では指摘をされておるわけです。そういたしますと、今の特定土地改良工事特別会計なり帝都高速度交通営団なり住宅・都市整備公団なりの三十年あるいは据え置き七年、こういうものから比較をいたしますと、国有林野事業特別会計の償還期間については、これらに少なくとも横並びできるようなものにしてもらっていいのではないか、こういうふうに思うわけです。大蔵当局の見解を伺いたいと思います。
  85. 宮本保孝

    ○宮本政府委員 国有林野事業に対します造林事業の償還期限、今の先生の御指摘のとおりでございます。ただ、これは投資の懐妊期間が長期に及ぶ、そういう造林事業の特殊性を考慮しておる反面、国有林野事業の場合には、二十年以降は間伐収入が期待できるということもございまして、償還期限が二十五年以内、うち据え置き五年というふうに設定されているわけでございます。  今御指摘で、三つほど例を挙げられました。確かに国有林野事業よりも有利な償還期限を設けているところがございますが、林野事業につきましては、今申し上げましたような点を勘案いたしまして現在の条件は設定されているわけでございます。  一方、臨調の答申におきまして、限られた資金を効率的、重点的に配分しまして財投としての機能を適切に発揮していくためには、貸付期間が極めて長期のものについては見直しする必要があるのじゃないかというような御指摘もございましたわけでございます。そういうことを考えますと、いろいろ林野事業の特殊性はございますけれども、現在の償還期限を特に私どもとしては延長すべき理由はないんじゃないかというように考えておるわけでございます。
  86. 川崎寛治

    ○川崎委員 二十年して間伐という御答弁があったわけでありますが、しかし、これは戦争中並びに戦後、大変崩壊をした国土の中で乱伐もあったわけです。だから民有林と比較いたしますと、国有林の方がより樹齢が若いというか、山相といいますか、林相というものはそういうふうになっておるわけです。そういたしますと、やはり国有林を日本の森林政策の柱として進めてまいりますためには、特に今高利の、つまり民有林よりももっと高い高利の資金を借りておるわけでありますが、そういう面からすると、償還期間の問題については当然見直しをしてもらっていいんじゃないか、こういうふうに思うわけです。  今臨調の点の指摘もございました。しかし、私は、国有林の償還期限については、現在の二十五年そして五年据え置き、こういう条件というものを改善をしてしかるべきだ、こういうふうに思います。これは検討の余地ありませんか。少し検討してください。大蔵省いかがですか、理財局長
  87. 宮本保孝

    ○宮本政府委員 検討はいたしますけれども、今申し上げましたいろいろな事情がございまして、私どもといたしましては、この条件を変える必要はないのではないかというふうに考えている次第でございます。
  88. 川崎寛治

    ○川崎委員 大蔵大臣も先ほど御答弁になりました。また予算委員会でも御答弁になっておるわけです。当局はなかなか今の厳しい状況の中で破れないという防衛をされると思うのです。しかし、やはり今日の状況を考えますときに、何とかこれを検討してほしいんですよ。どうですか、財投の借り入れ条件の検討ということについて。これは事務当局が答弁しておるのに、大臣なかなか答えにくいかもわかりませんけれども、ひとつこの点について検討してほしい、こう思いますが、いかがですか。
  89. 竹下登

    竹下国務大臣 たしか造林、林道、それから退職金でございましたか、金利は先ほど来御議論になっておりますように、いわゆる資金運用部資金の七・一%そのままでこの金利が設定されておる、こういうことであると思います。民間の場合は、あれは私の経験で、いわゆる乱伐、過伐をある意味において防止するために伐採調整資金などという制度があり、そして今度は、ますます造林等に力を入れなければいかぬというので、農林漁業金融公庫ができて、それで今度は、補給金として一般会計から利子補給をして政策金融が行われておる、それで比較しますと物すごい規模の違いがございます。そして、かつては民有林側から見れば、国有林というのはまさに巨大企業だ、こういう意識があったと思うのであります。  したがって、いわゆる国有林経営自体に対するある意味における企業的な面からするところの意識転換もまた必要じゃないか。そこに、退職金にお貸しするのも、そういう意識転換からくる、お年寄りでございますか、そういう方々の御退職なさる、要員構成を変えようというようなことから、たしか資金運用部からの金が出るようになったというふうに私は記憶しております。  それで、一般的に造林の場合はいつでも懐妊期間が長くて、そして間伐材が出てくる――ただ、間伐材は川崎先生や僕らの若いころほど今価値がございません。私もそれは承知しておるつもりでございます。むしろ頼まなければ持っていってくれぬような状態、そういうこともございます。それは相当な長期のものでございますので、これを直ちに見直すということによって、また経営に対する厳しさが欠けてくるようなこともあってはならぬなという感じもしないわけではございませんが、原局としてもいろいろな考え方はあろうかと思いますので、大蔵省の方で検討するという表現ができますやらどうですやら、原局等との協議には当然のこととして応ずるだけの勉強はしてみなければならぬとは思います。
  90. 川崎寛治

    ○川崎委員 私は、災害の現場というのを衆議院の災害対策特別委員長をいたしましたときに日本じゅうあちこち見て回りました。伊豆の大地震の跡であるとか、あるいは妙高高原の土砂崩壊であるとか、有珠山であるとか、災害地をずっと見て回ってみて、これはやはり保安林としての国有林の使命というのは大変大きいな、こう思いました。そして第一線で大変苦労している姿も見てきました。  今大臣が言われるように、経営形態としての今日の厳しい情勢の中で対処していかなければならない労使の取り組みのあり方というのは当然あると私は思うし、またそれも要求をされなければならぬ、こういうふうに思います。しかし、国有林が持っております非経済性ということについては、経済的な効率だけではいかない、経済性の追求というのはできない問題があると思うのです。それが、この林政審答申の中でも、経費分担の区分を十分検討しなさい、そういうふうに言っておるわけであります。国有林の奥の方は手のつかぬところがいっぱいあると思うのです、努力をしておりますけれどもね。国有林が荒れているということが川が暴れる一つの原因にもなってくると思うのです。私は、鹿児島の桜島の治山工事で大変お世話になっております。つまり、予防治山として大変御苦労いただいておるものも現に目の当たりにしておるわけです。でありますから、この予防治山に力を入れていくためには出づくりと管理、そういう面から見ますならば、経済性のない非経済林というものについては、林政審の答申も言っておりますような、一般会計で見る、そういう方向もどんどん入っております、そういう入っておる努力は十分に評価をするんでありますが、より一層その点の整理というのが必要だろう、こう思います。  でありますから、林野庁として、今日の厳しい情勢の中で機構の改革もされたわけでありますけれども、そういう中で、非経済林に対する費用分担の区分の整理、そういうものから今後の改善の方向というものについてどうお考えになっているか、伺いたいと思うのです。
  91. 小沢普照

    ○小沢説明員 先生ただいま御指摘されましたように、国有林野事業は、公益性の非常に高い森林、国土の保全を初めといたしまして公益機能の発揮のための森林というのを多く抱えておるわけでございます。災害対応につきましても、治山事業というようなものを通じまして、これは既に全額一般会計措置はされておりますけれども、鋭意治山面等の充実に努めてまいってきているところでございますが、財務というような点から考えますと、こういう公益機能の高い森林は、収入の確保という面から見れば収入に結びつくことがなかなか難しいという面も確かにございます。これはいわゆる非採算林とか非経済林というような言葉で呼ばれているわけでございますけれども、私どもは、これらの森林の適正な管理、経営を行う必要がございまして、国有林野事業としてこのような森林の管理を行っているところでございますが、このような管理系に要する費用ということにつきましては、経費分担のあり方等の問題を今後解明していくということが国有林野事業の経営の改善、財務の改善にとって必要であるというふうに私どもも考えているところでございます。  しかしながら、この問題につきましては、今後この森林の区分をいろいろ検討しなければいけない、このような手法の問題、それから管理の体制の問題あるいは施業方法はどうあるかというような問題、あるいはまた受益者による費用分担の問題等、多く検討しなければならない課題を抱えているわけでございます。私どもは、林政審議会の答申の中での指摘もあることでもございますので、今後早急に調査検討を進めることといたしております。  このため、まず五十九年度におきまして、公益的機能の高い地域におきまして現地調査を行う、こういう地域における森林の課せられている役割でございますとか、あるいはこの役割を果たすための森林の取り扱いをいかにすべきであるかというような問題、それから地域における森林の管理、経営の問題点、こういうものを明らかにしていく、そういうことで、この調査を今後進めるための具体的な内容につきまして、現在、検討を急いでいるところでございます。
  92. 川崎寛治

    ○川崎委員 最後に大蔵大臣、もう一遍お尋ねしますが、六十年度予算編成に今入りつつあるわけですね。そこで、社会党の嶋崎政審会長と自民党の藤尾政調会長がこの四月、国有林三法の問題その他予算の問題で会談をしましたときに、藤尾政調会長は、国有林野事業の重要性については一致するという認識を示すと同時に、借入金の償還期間は六十年度予算で考えたいという前向きの答弁をしておるわけです。これは、いずれにしましてもこれから二段階だとか三段階だとかいろいろな予算編成の仕方が進められるわけでありますけれども、我々もまた今後さらに御相談もしていきたいと思いますけれども、自民党の政調会長もそういうふうに答弁しておりますので、せめても借入金の償還期間の延長という問題についてはひとつぜひ御検討を願いたい、こういうふうに思いますので、最後にもう一度大蔵大臣の御答弁を伺って、終わります。
  93. 竹下登

    竹下国務大臣 予算編成の手順といたしましては、来週の火曜日の閣議でいわゆる概算要求基準の方針を決めまして、それから今川崎委員おっしゃいました二段階とか三段階、概算要求は八月末に出ますので、九月からいわゆるその都度都度協議を行っていって十二月編成作業を行っていく、こういう経過になろうかと思うのであります。  先般も、いわゆる嶋崎政審会長と藤尾政調会長は、四月ではなく、この間も行われた。そういうことに対しては、私どもの方へ整理したメモが下がってきておりますので、当然我々としても関心を持って協議に当たらなければならぬ課題だという認識はございます。
  94. 川崎寛治

    ○川崎委員 終わります。
  95. 中西啓介

    ○中西(啓)委員長代理 この際、暫時休憩いたします。     午後零時五十四分休憩      ――――◇―――――     午後二時十四分開議
  96. 中村正三郎

    ○中村(正三郎)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。竹内勝彦君。
  97. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 まず、物品切手に関してお伺いしたいわけでございます。  この課税についてお伺いいたしますけれども、まず、この物品切手というものは一体どういうものか、説明してください。
  98. 竹下登

    竹下国務大臣 この後の質問はどうも私に専門的な知識がございませんので、今の件にだけ正確にお答えをいたします。  印紙税法別表第一の課税物件表に、物品切手の定義として「物品切手とは、商品券その他名称のいかんを問わず、物品の給付請求権を表彰する証書をいう。」このように書かれてございます。  具体的には、次のいずれにも該当する証書を物品切手として取り扱っております。一つには、物品の引きかえ給付を受けることができるものであること。二、免責証券であること。三、その証書と引きかえに物品の給付を受けたことによって、その物品の代金の支払いを必要としないものであること。  なお、物品切手に該当いたします代表的なものは商品券でございますが、その他にネクタイ等のギフト券、ガソリン券、ビール券等がございます。
  99. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 今、商品券、ネクタイとビール券等、種類も含めて御回答いただきましたが、ほかにまだ、専門的に答えていただければ結構でございますが、どんなような種類のものがあるのか、あるいはまた新たな用途として何か考えられるものがあるのか、そういった面も含めて御答弁ください。
  100. 山本昭市

    ○山本(昭)政府委員 物品切手の執行上の判定に当たりましての区分につきましては、ただいま大臣から三つの要件を御説明いただいたわけでございますが、世の中の変化に応じましていろいろな種類のそういった商品切手等が登場いたします場合には、その基準に従いまして具体的に判定をしていくわけでございます。  しからば、具体的にどのようなものがあるかというような御質問でございますけれども、例えば買い物クーポン券でございますとか、あるいは食券、喫茶券とか、そういう飲食物の提供を内容とするといったようなものもございます。
  101. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 この物品切手に関しまして、印紙税の制度について、簡単で結構でございますが、説明いただけませんでしょうか。
  102. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 物品切手の定義は先ほど大臣から御答弁があったとおりでございますが、これに関しまして印紙税が課せられるわけでございます。その課税標準と税率でございますが、まずその券面金額の記載のあるものと券面金額の記載のないものとに分けまして、まず券面金額の記載のないものは、一通につき二百円ということでございます。それから券面金額の記載のあるものにつきましては、これはつづり合わせ式のものは一枚一枚の券面金額を合計したその合計額と法律には規定されておりますが、その金額が三千円以下のものは二百円、三千円を超えるものは、千円またはその端数ごとに六十円という税率で印紙税が課せられるわけでございます。  なお、券面金額の記載のある物品切手のうち、五十九年度の租税特別措置法の改正によりまして、七百円未満のものは非課税でございます。
  103. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 今、今回の租税特別措置法改正によって、七百円未満、こういう形になったということですね。この物品切手の印紙税を、改正前は非課税物件として「券面金額の記載のある物品切手のうち、当該券面金額が六百円未満」としていたのを、今回の租税特別措置法改正によりまして、第九十三条の二でございますが、「印紙税法別表第一第四号に掲げる物品切手については、同号の規定にかかわらず、同号の課税標準及び税率欄及び非課税物件欄中「六百円」とあるのは、「七百円」とする。」こういうことで七百円未満が非課税になったわけでございますけれども、七百円とした経緯、これはいろいろ理由があると思いますけれども、まずその経過と、なぜ七百円になったのか、根拠を御説明いただきたいと思います。
  104. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 物品切手の免税点の問題でございますが、ただいま仰せになりましたとおり、ことしの法改正以前でございますと免税点が六百円ということになっておったわけでございます。  そこで、この六百円というのは、実は昭和四十二年に大幅に引き上げられて六百円とされまして今日に至っているわけでございますが、先ほど申しましたように免税点を超えますといきなり二百円という税率から課税が始まるものでございますから、一般に免税点をわずか上回るような小額券というのは事実上世の中に発行されていない、物品切手の免税点についてはそういう特異な性格があるわけでございます。  ところで、五十九年の改正前までは六百円未満ということでございましたが、この従来の六百円未満という免税点以下で定型化されたものとして、ピールの二本券というのが大量に発行されておったわけでございます。五十九年の税制改正で酒税の税率の引き上げをお願いいたしましたが、特に酒税のうちピールは税収額の半分を占めるという非常に重要な財政物資でもございますが、ただいま申しましたように、ピールの販売市場ではビールの二本券が非常に大量に利用されております。ところが今回の税率の引き上げによりまして、従来の二本券でございますと六百円未満ということで通用しておったわけでございますが、二本券がその六百円を上回ることになるわけでございます。  そういたしますと、これを一本券にすれば印紙税はかからないという理屈もあるわけでございますけれども、二本券の場合も一本券の場合も商品券をつくるコストは同じでございますから、これをそのまま放置いたしますとピールの流通市場に非常に大きな障害が生じるということでございます。したがいまして私どもは、酒税の引き上げによりまして財政物資としてのビールからの税収を確保するという観点からいたしましても、この免税点を従来の六百円未満のままにしておきますと非常に支障が生じるということでございますので、もっぱらビールの税率の引き上げに着目いたしまして物品切手の免税点の引き上げを検討せざるを得ない状況になったわけでございます。  理屈から言いますと、税率引き上げ後のビールの二本券は免税点を六百三十円未満と設定いたしますと税金がかからないわけでございます。したがいまして、六百三十円未満という免税点の設定の仕方もあるわけでございますけれども、従来印紙税法におきましての免税点というのは百円刻みで設定いたしております。税制の明瞭、簡便化という見地からもやはり従前どおり百円刻みということにいたしますと、六百円を超える直近点といたしまして七百円未満という免税点を設定したわけでございます。  ただ、ビールの物品切手だけにこの免税点を適用するというのは税の公平の見地からも好ましくございませんので、物品切手一般について七百円未満という免税点を設定したわけでございますが、ただいま言いましたような経緯で、いわば緊急避難的な制度の改正ということでございます。印紙税全般についての免税点というのは、やはり総合的にバランスを考慮しながら各文書につきまして見直す必要がございますが、今回はそういう緊急避難的な改正であるということを制度的にもはっきりするという意味で、印紙税本法ではございませんで租税特別措置法で改定をさせていただいた、こういう経緯でございます。
  105. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 前回、四十二年に六百円未満になったわけですが、そうするとその以前というのはどのような経過になっていたわけですか。やはりビール二本というものを念頭に入れながらこのものが改正になってきたのかどうか、その点、四十二年以前の分も御説明ください。
  106. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 四十二年の改正で、それまでの免税点は五十円でございましたが、これを一挙に六百円に引き上げたという経緯でございます。  その経緯は、先ほど印紙税法の物品切手に対する課税の仕組みで御説明申し上げましたように、この四十二年の改正で、一枚一枚の物品切手の体裁のもののほかに、つづり合わせ式のものを一本で券面金額を合わせて券面金額とするということにいたしましたので、むしろ、ビールの二本券というような観点ではございませんで、新たにそういったつづり合わせ式のものに免税点を設定するという経緯もございまして、大幅に引き上げたというのが当時の改正の背景でございます。
  107. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 そうすると、四十二年以前のものはビール二本というような考えは余り入っていないのですね。今回七百円にしたのは、その中でも主には、ピール二本分で六百二十円ですか、そういうものになるために六百三十円でもいいわけですが、ほかのものも考慮に入れて一応七百円にした、こういうことでありますけれども、この七百円というのも私は中途半端に思います。  そこで、こういう物品切手というものは、商品券だとかネクタイのものだとか、あるいは買い物クーポン券だとかいろいろ例を挙げていただきましたが、やはりビール券がそのほとんどだ、そちらではこのように状況をつかんでおるのですか。それとも、もっとほかのものがこの物品切手に関してはよく利用されておるのか。そういったものもどういうように状況を把握されておるのか、御説明いただきたいと思います。
  108. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 税務統計では、物品切手の種類ごとにどれだけ税収が上がっているかという統計はないわけでございますが、別途の統計がございまして、その物品切手の税収の大宗を占めておりますものはやはり商品券だろうと思います。したがいまして、先ほどの説明でも触れさせていただきましたように、今回は印紙税の税収の観点といいますよりは、酒税の相当部分を担っておりますビールという商品の流通に大きな阻害を与えないという観点から免税点を引き上げさせていただいた、こういうことでございます。
  109. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 カード化に代表されるキャッシュレス化など、消費形態が変化している中で、七百円以上の物品切手に印紙税をかけるというのは中途半端である、私はこう考えます。その券面金額が例えば千円なり三千円なりということになってきますと、そのほかのいろいろなところでも非常に利用しやすくなる。  例えば、今商品券でも五百円の券が非常に多いわけですね、今まで六百円未満ということでございますから。五百円の券でいろいろなものを購入してもらう、あるいは贈答なりいろいろなもので考えていく中で、例えば三千円の品物を購入してもらうあるいは三千円の物を贈答するとなりますと、五百円の券ですと六枚というように非常に中途半端なものになるのです。これが今後どういうふうに変わってくるかわかりませんが、六百五十円なり六百円なり、いずれにしても非常に中途半端なものに考えられます。  そこで、物品切手による印紙税収入は一体年間どれくらいあるのですか、これをまず答えてください。
  110. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 先ほどお答えいたしましたように、税務統計できちんとした印紙税の課税文書ごとの税収というものは必ずしも明らかにならないわけでございますけれども、物品切手の大宗を占めますものは商品券でございます。したがって、商品券の統計資料等から、これはあくまで推計でございますが、およそ四、五十億円の印紙税収であろうと推定されます。
  111. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 実際に物品切手をつくるのに、七百円以上の物品切手を何枚もつくって贈答用に販売を行っていかなければならない。七百円以上の物品の切手をつくって収入印紙を張るというような形にやろうという人はまず少ないのじゃないかと思います。したがって、五百円なりあるいは六百円、これで何枚かのものにしていこう、こういうふうになりますね。これは結局、今後千円なりあるいは三千円なりといったものにしたからそれによって影響が出るかというと、私はそういったものは考えられない。むしろ国民のニーズにこたえる意味からも、私のところへもこういう要望が来ておりますが、五百円の券では困る、例えば三千円のものを贈ろうとしても六枚、そんな中途半端なものは贈れない、こういうことから、どうか千円なり、千円になるとまた三枚という形になりますけれども、あるいは三千円なり、こういった形で引き上げを行うべきだ、こういう要望がございます。ギフト券においても引き上げた方が発行する方も便利になり用途も多様化してくると思いますが、大臣、御所見をお伺いしたいと思います。
  112. 竹下登

    竹下国務大臣 国会論議で一度聞いたことがございますが、私自身、その問題で関係者の皆さん方からお尋ねを受けた経験がございません。したがいまして、今委員のおっしゃったことのただ感想を述べるにとどまると思いますので、やはり正確を期する意味において梅澤主税局長からお答えさせた方が適切であろうかと思います。
  113. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 印紙税の免税点の問題につきましては、冒頭にお答え申し上げましたように、各課税文書につきまして総体のバランスを見ながら適当な時期に今までも見直してきているわけでございます。  ただ、物品切手についてもう少し免税点を引き上げたらどうか、その点につきましては私どもなりの一つ考え方があるわけでございます。と申しますのは、御案内のとおり印紙税は課税文書というものが法律で決められておるわけでございますが、実はなぜそれに税金をかけるかと申しますと、課税文書の背後にある取引、それに担税力を求めるという考え方でございます。そういたしますと、物品切手は端的に言いましてほとんどが贈答用に使われるという性格のものでございますから、いわゆる純粋の経済取引以上にその取引には担税力ありとする考え方が伝統的にあるわけでございます。言うまでもなく、免税点というのはそういう担税力を求めない一つの限界点というふうな考え方であるといたしますと、物品税のようなものは典型的になるべく免税点が低い方がいいという考え方で税法は仕組まれておるわけでございます。したがいまして、いろいろな御意見があろうかと存じますけれども、物品税の免税点だけを大幅に引き上げることはなかなかとり得ないと考えますが、従来もやってまいりましたけれども経済あるいは物価の動向等を見ながら、全体としてのバランスを見ながら免税点というものについても絶えず見直していかなければならないことは、御指摘のとおりかと思います。
  114. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 ぜひ見直しなり検討をお願いしたいと思います。  そこで、あと若干、同じことでございますがお伺いしておきます。  この物品切手に対する印紙税のようなものは、アメリカなどその他の外国ではどのような制度になっておりますか。代表例を何点か挙げて御説明いただければありがたいと思います。
  115. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 いわゆるスタンプタックスと言われるものでございますけれども、各国、ほぼ我が国の印紙税に類した税制を持っております。ただ、ドイツは手形税ということになっておりますが、主要諸外国をざっと見ますと、課税文書は我が国の場合と大体似たようなものが課税文書になっております。それから税率の立て方も、定額税率のものもございますけれども我が国の大部分の文書、主要な文書がそうでありますように、券面金額等に応じる階級定額の税率をとっております。印紙税は、間接税の中でも比較的古い歴史を持った税でございます。
  116. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 今まで団体なり消費者なり、そういったところから、この券面金額を何とか千円なりあるいは三千円に引き上げがならないかというような要望が公式、非公式にいろいろあったと思いますけれども、どんなものがございましたか、御説明いただきたいと思います。
  117. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 印紙税に限りませず、物品税も含めまして間接諸税に対します免税点の引き上げの要望は、各種類のものについて絶えず私ども税制当局の方にいただいております。物品切手につきましても、今回六百円から七百円というように引き上げさせていただいたわけでございますけれども、この免税点の引き上げについては従来から随時引き上げの要望がございます。
  118. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 終わります。
  119. 中村正三郎

    ○中村(正三郎)委員長代理 米沢隆君。
  120. 米沢隆

    ○米沢委員 既に六十年度予算編成に向けての作業が着々と進められておりますが、これと並行して重要な問題は、六十年度の税制改正の問題であります。五十九年度税制改正に関する政府税調の最終答申並びに五十八年十一月の中期答申を見ましても、利子配当課税、公益法人課税、交際費課税、広告課税等々、六十年度の税制改正に向けて新たな決着をつけねばならない問題が山積いたしておりますが、私は、この際、その中の一つであります退職給与引当金の問題に絞って政府の見解をただしてみたいと思います。  この問題は、昭和五十五年に現行の期末要支給額の四〇%と改正された以後もほとんど毎年のように税制見直しの俎上に上ってきておりますが、これ以上の引当限度額の引き下げは、企業会計上からも、またこれが設けられた本来の趣旨からいっても問題があるのではないかという立場から質問をいたします。  さて、中期答申を見ますと、   退職給与引当金については、将来支給すべき退職金債務を勤労者の平均予定在職年数を基礎として一定の利好率で割り引いて現在価値に直した金額を引当限度額とするという現価方式の考え方がとられている。  最近における企業の雇用の状況をみると、定年の延長等を反映して勤労者の平均予定在職年数は長期化する傾向があること、また、大規模の企業に雇用されている勤労者については、全体の平均よりも平均予定在職年数が長いと認められること等を勘案し、現行の退職給与引当金の累積限度(期末退職給与の要支給額の四〇%)のあり方について見直しを打っていく必要がある。 と述べられております。  このような考え方の発想の原点といったものを推測いたしますと、退職給与引当金の残高がマクロ的にはかなりの累積額に上っていることや、退職給与引当金の設定法人の割合が大法人に偏っているということから、大企業優遇税制であるといった的外れな議論の上に立って、何とかして現行の退職給与引当金の累積限度を引き下げてうまく増収になる方法は見出せないものかといった税収増対策としての見直しという観点が先行し過ぎているのではないか、退職給与引当金の設定が企業会計に基づく当然の措置であり、この引当金の充実は引き続き重要な課題であるといった観念が完全に欠落しているのではないかと思えてなりません。また、税調が増収策としていつもこの引当金の見直しを提起するものですから、大方の議論の中にはいわゆる租税特別措置で何か特別にこの引当金の損金算入を認めているかのごとき誤解を生み出しているのではないかと私は危惧するものであります。  幾ら財政厳しき折からとはいえ、これに対する対応の仕方が物事の本質を見失ってはならないと考えているわけでありますが、私の所見に対して大蔵大臣はどのような見解を持たれるか、まず御意見を聞かせていただきたいと思います。
  121. 竹下登

    竹下国務大臣 私も、米沢さんといささか税目は違いましてもそうした感じが今日いろいろな場所で議論をされておる、それそのものは国民の税に対する関心の高まり、そういうことからして別に悪いことじゃないと思っておりますが、今おっしゃいます各種引当金、なかんずく退職給与引当金ということになりますと、いわゆる増収策というような観点からの見直しをするような指摘は、現実問題として今おっしゃいました税制調査会の昨年の十一月の中期答申にも行われていない。現行の退職給与引当金の累積限度のあり方について見直しを打っていく必要があるとして、実態に即しての見直しの必要性指摘しているものであろうと認識をいたしております。
  122. 米沢隆

    ○米沢委員 その問題は後でおいおい質問を重ねていきますが、ところで事実関係を確認しておきたいのであります。  現に中期答申が言いますように、五十五年度の圧縮以降、定年制の延長に伴い従業員の勤続予定年数が長期化し、その分原資の運用期間も長くなっているので四〇%以下でよいといった考えでしょうが、そんなに勤続予定年数が顕著に長くなっているのかどうか。  第二に、大企業に雇用されている者の方が平均予定在職年数が長い上に、退職給与引当金は利用が大企業に偏っておるとか、毎年の取り崩し額より累積した引当額の方が大きいので圧縮すべきであるというような議論がありますが、これはこの退職給与引当金が負債性引当金としての性格から見て問題にならない議論だと私は思うのです。全く的外れの議論だと思います。  そもそも、退職給与引当金は、御承知のとおり政策税制ではありません。合理的な会計慣行に基づく制度でありまして、中小企業も同じように利用できますし、従業員のために積極的に利用すべきものでもあります。いわゆる負債性引当金として認めて退職引当金制度を設けたら、やってみたら大企業が多く利用したということでこれはおかしいなどという議論は、本末転倒も甚だしいと思うのですが、いかがなものでしょうか。  同時にまた、累積額の方が取り崩し額より大きいのは、今働いてやがて定年を迎える人の方が毎年やめる人よりも圧倒的に多く、その人たちの退職金が積み立てられているわけでありますから、これは当然のことですね。そういう当然のことのようなものが、あるいは誤解もあって多くの皆さん方がいろいろと退職引当金についての取り崩し等について議論をされておるのかもしれませんけれども、どうも税調の議論から生じてくるこの引当金に対する風当たりというものは誤解が多過ぎるのじゃないか、こう思うのですが、いかがですか。
  123. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 退職給与引当金につきまして、今委員が御指摘になりましたように、世上これを企業優遇税制とか大企業優遇税制という指摘が間々あるわけでございますけれども、私どもそれは間違いであると考えております。現に、先ほど委員が引用なさいました昨年秋の税制調査会の引当金の項のところにもそれは明記されておりまして、引当金制度というのは、退職給与引当金に限りませず、損益をきちんとやるための費用の期間配分の制度である、政策税制ではないということが明記されておるわけでございます。  それからまた、この制度の利用が大きな企業に偏っておる、これは事実問題としてそのとおりでございますけれども、これはそもそも、労働協約とか就業規則とか税務署長にきちんと届けられた退職給与規程、そういうものを持つ企業の会計処理の方法としてこの制度を税法上認めるということでございますから、そういったものを持たない企業とかあるいは中小企業の場合は現在政府の事業としてやっております退職金共済事業の制度がございまして、これは一般会計からの予算補助も行われておるわけでございまして、退職給与引当金制度の利用率が大企業に高いからというただその理由から、これが大企業優遇税制であるという指摘をするのは間違いであります。これは委員のおっしゃるとおりでございます。  ただ、もう一つ事実問題として、先ほどお触れになりましたけれども、従業員の在職年数あるいは退職予定年数、まあ同じでありますけれども、これが高度成長の時期から安定成長の時期に移るに従いまして構造的に長期化しております。これは賃金構造基本調査とか国税庁でやっております民間企業実態調査等で三十年代、四十年代、五十年代と追っていきますと、この長期化の傾向は顕著でございます。だからこそ、昭和五十五年の税制改正で三十年代、四十年代を通じて累積限度五割としておりましたものを四割と圧縮させていただいたわけでございます。その長期化する中で、これも三十年代、四十年代、五十年代を通じて同じ特徴があるわけでございますけれども、例えば資本金百億円以上の大企業は、全産業の平均在職予定年数よりも三年ないし四年長くなっております。これも事実でございます。
  124. 米沢隆

    ○米沢委員 そういうことでまた少し引当金の限度額等、パーセントをさわろうかということになっておるのだと思いますが、先ほどから申しておりますように、退職給与引当金は法的債務としての性格を有する引当金でございます。だから、税法におきましても退職給与引当金に関する規定は法人税法本法に定められておるわけでありまして、このことは、退職給与引当金に関する税法の規定が特別措置ではない、企業会計本来の引当金にかかわるものだということの理解であると思うのでございます。  退職給与引当金がそのような性格を持つものであることを考えますと、元来、その設定の方法や累積限度額などを次から次へと安易に変更するようなことは好ましいことではないのではないか。現に、御承知のとおり昭和三十一年の税法改正によって五〇%になり、その後これが期末要支給額の四〇%相当額に引き下げられるまでの間には相当の期間が経過しております。相当の期間でありますから、この間における雇用情勢の変化等、長期的な視点のもとに前回の見直しが行われたものと考えられますが、前回の五十五年の見直しの後、今日に至るまでわずか四年ちょっとですね。したがって、企業の本当の実態について考えずに、この間における短期的な統計値の変化、平均在職予定年数がちょっと伸びたというようなことをとらえて累積限度額をまたぞろ変更しようという措置は、企業会計における退職金債務の計上というものを誤らせるおそれなしとしないという議論は非常に説得力があると私は思うのでございますが、大蔵大臣、いかがでしょうか。
  125. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 累積限度額が設定されましたのは、ただいま委員がおっしゃいましたように昭和三十一年。当時五〇%でございました。それが五十五年、二十年以上の経過を経て四割に引き下げられたわけでございます。かなり期間を経ておるということも事実でございますけれども、それはそれなりに、我が国産業構造あるいは就業構造が安定成長期を境にいたしまして構造的に非常に変わったという背景があるわけでございます。  言うまでもなく、高度成長期、我が国産業構造が非常に大きな変化を遂げております時期は、従業員の上向運動と申しますか、特に若年労働者を中心にいたしまして職場を非常に激しく移り変わるという傾向、それが全体としての一つの企業に対する在職の平均年数を短くしておったわけでございます。それが安定成長期に入りますと同時に、人口の老齢化というような背景もございまして、企業の定年制の延長というふうなことがだんだん定着してまいりました。そういった背景の変化があるわけでございまして、結果として非常に長い期間を経て五割が四割に下げられたという歴史的背景はあるわけでございますけれども、それはそれなりの事情があったわけでございます。  ただ、委員がおっしゃいますように、そういった背景議論を無視してこの限度額をしょっちゅう動かすということ、これは税制のたてまえからいっても正しいやり方ではないということは御指摘のとおりでございまして、もし今後退職給与引当金の議論がされるとすれば五十五年の当時改正の基礎となりました平均退職予定年数が、その後二、三年の経過を経てあるいは最近時点までの経過を経でどういう傾向をたどっておるのかということでございますが、やはりこれは長期化する傾向にあり、それからまた大きな企業についてその延長の幅がさらに大きくなる傾向にあるということは否定できない事実であろうかと思います。
  126. 米沢隆

    ○米沢委員 企業会計上、退職給与引当金の計上の仕方は大体三つあると聞いています。有税でも引き当てたいというところもあれば、税法で定められておる限度額いっぱいでおさめたいというところもあるというふうに聞いておるのでございますが、実態上は有税で引き当てるということはかなり優良な企業でないとできない。したがって、結果的には税法で定めている引当金の限度額に応じたようなものを引当金として引き当てるというようなところが実際は多いのだというふうに聞いておるわけです。  こういうことを考えますと、企業会計上はいろいろと計上する方式はあっても、それをとったらどうしても有税で引き当てねばならないというところが起こるものだから結果的には税法で言うものでとどめておこうというような傾向があるとするならば、これは税法が引当金を下げておる、こういう結果になってくるんじゃないか。  そういう意味で私は、税制改正等を考えられる場合には、確かにこれを下げたら増収策にはなろうとは思いますが、そういう観点からではなくて、もっと企業会計を尊重する、企業の実態に即するような処理が行われるような配慮を持って税制改正を考えるというような基本方針がこの際明らかにされるべきだと思うのですが、これは大臣に答弁していただきたいと思います。
  127. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 退職給与引当金につきましては、企業会計幾つかの考え方があるということはただいま御指摘になったとおりでありまして、現に昭和四十三年の企業会計審議会の報告にもこの問題が触れられておりまして、退職給与引当金の退職金費用の期間配分については、唯一の基準というのはなかなか設定しにくい。考えられる三つの方法というものを掲げられておりまして、企業会計立場からそれぞれの企業がいろいろな方法をとられるということにされておるわけでございますけれども税制上はその三つの掲げられました方法のうちのいわゆる現価方式というもので三十一年に設定されたということでございます。  税制立場とそれから企業会計原則の立場と、あるいはもう一つ商法の立場があるかと思いますけれども我が国の場合は近年この三つの立場というものが非常に接近してきております。これは全体としては非常に好ましい方向であるわけでございますけれども、しかし基本的に、商法の保護する法益、企業会計が保護するもの、それから税制というものは、おのずからそれぞれ原則的考え方が異なってまいる面が出てくるのはやむを得ないわけでございまして、特に税制の場合は公平という原則、それから画一的で明瞭という原則、これは古典的な租税原則でございますが、それから余り徴税コストがかからない、手間暇のかからない、複雑な制度にしないといったいろいろな要請があるわけでございます。そういった点からいたしまして、現在の退職給与引当金は税制立場からいえばそれなりの合理的な論拠を持っておるわけでございまして、税制立場からいいますと、企業が税法で認められた限度額以上に積み立てるか、あるいはそれの限度内で積み立てをやめてしまうかということについては、基本的には関心は持っていないという立場でございます。
  128. 米沢隆

    ○米沢委員 税法の立場からいったらいまおっしゃったような答弁になろうとは思いますが、しかし企業会計上適正な引き当てをやりたいと思っても、税法がその下にありますとどうしてもそちらの方に収れんするということは、やはり企業会計上は問題ではありませんかと問うておるのでございます。
  129. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 また繰り返しの答弁で恐縮でございますけれども、企業会計立場からいってもこの制度が一の基準ではとり得ないという議論背景があるわけでございます。現に、各企業にとって確定債務であるから、累積限度額ということでこれを現在価格に割り引くという立場は企業会計の本来の考え方から好ましくないという議論が学者、実務家の中にも当時もございましたし、今日でもございます。一方、現在税法がとっております立場、現在価格に引き戻して税法上繰入限度額を設定する、これを支持する立場もあるわけでございまして、企業会計立場から好ましいか好ましくないか、あるいは税法がそういう企業の自由な行動に干渉しているのではないか、そういう御指摘かとも思いますけれども、税法というものは一つの公平の基準に基づきましてそういう繰入限度額を設定しておるわけでございますから、それはそれなりに企業が税法との関連で制約を受けるという場面は生じてくるかもわかりません。しかしそれは、先ほども申し上げましたように、さればといって税法の立場から累積限度額を外してしまうという立場はとり得ないということでございます。     〔中村(正三郎)委員長代理退席、熊川委員長代理着席〕
  130. 米沢隆

    ○米沢委員 現行の税法による引き当て基準の問題について、もう少し突っ込んで質問をしてみたいと思うのであります。  御承知のとおり、我が国におきましては、退職給与というものは基本的には賃金の一部の一括後払いの性格を有するものであるというのが通説でございます。したがって、これを合理的な基準に基づいて従業員の在職中の各期間の費用として配分するとともに、期末現在における累積額を債務として認識し、退職給与引当金として貸借対照表の負債の部に計上すべきことは当然に必要だとされておるのでございます。しかし、先ほどの議論とちょっと重なりますが、現行法では昭和二十七年の制度発足当初とは異なりまして、退職金債務の全額計上が認められずに期末要支給額の四〇%とされているために、有税で積極的に引き当てたくはないというところはこの税法にのっとった引当金で我慢するということを余儀なくされておる。言葉をかえれば、企業は現実的には本来債務であるものを計上できないということから過小計上を余儀なくされておると思うのですね。これはやはり現行税法基準そのものに問題があるのではないか。さっきから答弁をいただきましたが、そのことにちょっとこだわりたいのでございます。  同時にまた、債務の過小計上というものは企業利益の不当な過大表示にもなる。課税所得の計算上退職給与引当金繰入額は損金算入が認められておるわけですが、このことはその繰入額が企業会計上の費用として認識されていることにほかならないと考えるのです。したがって、累積限度額が企業において退職金債務として計上を必要とする額を下回る場合には、これは本来ならばコストの一部なんでございますから、企業活動のコストに相当する部分にまで課税が及ぶ、これは矛盾じゃないかと思うのですが、いかがですか。
  131. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 退職給与引当金につきまして、税法上累積限度額を設定することの可否につきましては、三十一年の制度改正以来今日までずっと同じ議論なり論争の対立があるところであります。一つは、今委員がこだわるとおっしゃいましたけれども、企業の確定債務であるから累積限度額というようなものを設定するのは利益の過大計上あるいは費用の過小計上であるという立場がございます。学者にもありますし、実務家にもあるわけでございますが、一方税制がとっております累積限度額を支持する議論もあるわけでございまして、学者の議論を通観してみますると、いろいろな色合いの議論がありますけれども一つのポイントとして私どもが申し上げなければならないと思いますのは、企業の全従業員があした全部退職してしまうという前提に立つ議論なのか、それとも、これは企業会計原則の公準の一つとされておるわけでございますけれども、ゴーイングコンサーンと申しますか継続企業の原則、公準という観点に立った場合には、税法の立場からその限度額の設定のレベルの是非は別にいたしまして、これを一定の利子率で割り引くという考え方、それは複利現価の考え方であるのか、あるいは保険数理の観点からこれを支持する学説もありますけれども、いずれにしても一定の割引率で現在価値に評価をし直すという税法の立場はあながち不当ではないという説も実はあるわけでございまして、その基本的な考え方一つは、継続企業の観念が一つの参考になるのではないかというふうに考えておるわけであります。
  132. 米沢隆

    ○米沢委員 これは水かけ論になりますからここでは詰まりませんが、少なくとも私は、今後退職引当金の議論をされる場合には、企業会計上の観点からの配慮というものも十分に行ってもらいたいということが私の言わんとする趣旨でございます。  ところで、ちょっと数字を教えてもらいたいのですが、今この退職引当金の制度を取り入れておる企業の中で、累積限度額を超えて引き当てをしておるところがどれくらいのパーセントか、あるいは税法にのっとった基準で引き当てをしておるところは何%ぐらいの割合か、限度額よりも下でしか引き当ててないところは何%か、この数字をちょっと教えてもらいたい。
  133. 冨尾一郎

    ○冨尾政府委員 お答えいたします。  国税庁としては、退職給与引当金につきましては各期末の累積限度額の合計額を税務統計の上で集計したものを持っておりますが、先生指摘のように、その上、限度いっぱい積んでいるのが幾らか、限度に達しないのが幾らか、さらには限度を超えて積んでいるところが幾らかという統計は私どもとっておりませんので、お答えできません。
  134. 米沢隆

    ○米沢委員 しかし、現に税制改正の中で退職金引当金の議論をされつつあるわけですから、そういう基礎的な数字がなくてよく引当金云々という議論ができるものですね、どうなんですか。
  135. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 ただいま国税庁の方から御答弁申し上げましたように、税務統計として悉皆的な計数というものはないわけでございます。ただ、私どもはもちろん個々の税務の資料もございますし、有価証券報告書等もございます。したがいまして、問題になる一定規模以上の企業につきまして、それから業種別の動向につきまして、有税引き当てを行っている企業がそれぞれ企業ごと、業種ごとにいろいろばらつきがございますが、そういうものは一応サンプルではございます。分析の資料といたしまして、それを基礎にして議論をしておるわけでございます。
  136. 米沢隆

    ○米沢委員 私は、今おっしゃったような数字が明らかにされて、初めて企業会計上という観点からの物の見方というものがはっきりしてくるのではないか、こう思います。そういう意味で、でき得ればそのような資料等についても我々にも提供してもらいたいと思うのですが、委員長、よろしいですか。
  137. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 それは、税制上の退職給与引当金の制度とそれから企業会計の実態の乖離の状況を示す資料でございまして、その資料自体が税制上の退職給与引当金の是非を議論する根拠にはなり得ないというのが私ども考え方でございますが、いずれにいたしましても、そういった資料をどういう形で差し上げられるかということについては、しばらく時間の御猶予をいただきたいと思います。
  138. 米沢隆

    ○米沢委員 労働省の方、来ておられますね。今議論しましたように、企業会計上の計算方式あるいは税法による計算方式等、その間にかなりの乖離がある。だから、本当に適正な債務として計上すべきものが税法にのっとる基準引き下げられておるという事実もある。同時にまた、六十年の税制改正に向けてこのパーセントの議論が出てくると思いますが、少なくとも退職給与引当金の引当率の割合は下げられるような議論が進んでおる。こういうことを見て労働省としては、健全な労使関係の育成あるいは労働者の保護、できれば適正な退職金の引き当てぐらいはしてもらいたい、そういう問題から、現在のような状況を一体どういうふうに見ておられますか。
  139. 逆瀬川潔

    ○逆瀬川説明員 退職給与引当金の累積限度額をどの程度にするかにつきましては、直接的には税法上の問題でございます。ただ、退職給与引当金につきましては、これが直ちに退職金の保全につながるものではございませんけれども、この制度によりまして、資金が内部に留保されることで企業経営の安定を通じて退職金の支払いに資していることも事実でございますので、労働省としても関心を持っているところでございます。  労働省としては、退職金の支払いを確保する上から、企業に社外積立型の退職手当制度の採用を従来奨励してまいったところでございますが、なお、主として社内準備型の退職手当制度による企業も少なくない現状にかんがみまして、今後、退職金の支払い確保を図る上で退職給与引当金制度をどのように位置づけていくべきかについて、退職金の支払い確保の問題の一環として、現在労働基準法研究会において御検討を願っているところでございます。
  140. 米沢隆

    ○米沢委員 先ほどから議論しておりますように、税法に規定する退職給与引当金の設定方法と企業会計における退職給与引当金の設定方法、ダブるところがありますが、違っておりますね。税法が定めている現在価値額の算定の前提となっております条件は、これは必ずしも個々の企業の実態と合致するものとは限らないのは当然でございまして、税法の定めるところによる両一的な計算に基づいて退職給与引当金を設定した場合には企業によっては適正な債務額の計上とはならない、これは当然出てくる問題でございます。こういう問題を大蔵省としてはどういうふうに理解をされておるのか、また、今までにこのような問題はどのように調整されてきたのか、この点をちょっと聞かしてもらいたいと思います。
  141. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 税法が画一的に決めております基準と個々の企業の実態に格差といいますか、いろいろ食い違いが生じるということは御指摘のとおりでありまして、先ほど私が引用させていただきました四十三年の企業会計審議会の報告にも、その点に対する言及がございます。平均的なものとして定められるのはそれなりに便宜であるとは考えられるけれども、近い将来に大量の退職者が見込まれる場合等が明らかな場合に、法人税法が定める限度額によらないことができるというふうな方法もあるのではないかといったような指摘もございます。  これはいろいろな考え方があるわけでございますけれども、冒頭に私が申し上げましたように、税法の原則というのはやはり公平の基準のほかに画一性あるいは簡便性といったものもあるわけでございまして、これは法人税法に限りませんで、特に所得税とか法人税のいわゆる所得課税につきましては、個人、法人を問わず納税者の個々の事情を制度上しんしゃくするにはおのずから限界があるということでございまして、何らかの線で画一的な基準を設定せざるを得ないということでございます。  ただ、今の審議会報告にありましたような手法は全然不可能かといいますと、制度が非常に複雑化しない限りそういう方法もあり得るかと思いますけれども、しかしそのことは逆に、実態的に見ればそれほど積み立てる必要がない企業につきましては現在の画一的な基準より下でやはり積み立ててもらわなければならないという問題も起こるわけでございまして、そうなりますと、選択性とは申しながら、やはり制度が複雑になるという問題もあるということは御理解願いたいと思います。
  142. 米沢隆

    ○米沢委員 今の問題と関連するのでございますが、現行税法による退職給与引当金の累積限度額は、先ほどからるる話をしておりますように、昭和二十七年には期末要支給額の一〇〇%でありました。三十一年に五〇%になり、五十五年に四〇%と変遷しておるわけでありますが、このような累積限度額切り下げの論拠として、冒頭質問いたしましたように、期末要支給額のすべてをその年度末に引き当てる必要はない、社員が現実に退職するまでの期間で現価換算した額を引き当てられておれば十分ではないか、こういうことで、昭和三十一年には平均残存勤続年数が九年、昭和五十五年には十二年として、これを八%の年利で割り引いてそれぞれ五〇%、四〇%とした、こういう経緯ですね。そして現在では、先ほど局長の話にもありましたように、特に大企業等を中心にして平均残存勤続年数が上昇しておる、まあ十四、五年だと想定をすれば、大体三一%から三四%ぐらいで結構だ、したがってこれを税制改正で何とか取り込もう、こういうことなんでしょう。  しかしながら、先ほどから問題を提起しておりますように、元来退職給与引当金は、期末要支給額の満額とするか、現価換算方式をとる場合には将来支給額の引き当て不足を発生しない妥当なやり方であるべきだと思いますが、しかし現在は、先ほどからすれ違いに終わりましたように、現行税制のいわゆる現価方式がとられているということなんですね。百歩譲って、現行の税制方式によるやり方も、企業は永続するわけでありますから、わかったという立場になったとしても、やはり三つの問題があると思うのです。一つは、期末要支給額の算定方法。二つ目には、今の話の残存勤続年数の企業別格差。それから現価換算利子率。この三つの問題は依然として重要なファクターであると私たちは考えます。  いわゆる期末要支給額の計算は、今は自己都合退職の場合ということで仮定をして計算しておりますが、御案内のとおり退職金というのは勤続年数が伸びれば伸びるほど累増していく。そして会社の都合、定年退職というものがかなりあるわけでありますから、そこらを加味したような算定でないとちょっと実態と離れ過ぎはしまいか。これが第一点。  また、平均残存勤続年数は個別企業の実態によるといたしましても、今の場合、少なくとも十二年より短いところは明らかに引き当て不足が生ずる。一体これをどうするんだ。  第三番目に、現価換算の利子率八%、これは大きな問題があると我々は考えます。例えば昭和三十五年の政府税調答申によりますと、この現価換算の利子率八%というのは、当時の総資本利益率を使用して八%とした、こういうふうに書いてあります。しかし、企業の総資本利益率は、もう御承知のとおりその後年々低下してきておりまして、八%をそのまま継続することは非常に大きな問題があるのではないか。  ちなみに五十七年度の総資本経常利益率は全産業平均で三・一〇%、製造業平均で三・八九%にすぎません。例えば総資本利益率八%ならば現在の四〇%という限度額でいいかもしれませんが、もし現在の総資本利益率の実情に合わせて、例えば四%ぐらいだというふうにして計算をすれば、四%で十二年の勤続年数を前提にいたしますと、この四〇%が六二・五%に引き上がる。五%でもし計算をしていただくならば、これは五五・七%に引き上がる。六%にしましても四九・七%に引き上がる。  私が言おうとすることは、現在税調等では残存勤続年数のみの実態に合わせて修正する議論がありますけれども、それならば、同時に利子率も実態に合わせて修正を行ってもらわないとおかしいではないか。この割引率、いわゆる利益率を現状に合わすことになりますと、先ほど申したみたいに引き当てるパーセントは実態には全然合ってない結論が出るのではないかと思うのです。  改めてこの三つの問題について大蔵省の見解を聞かしてもらいたい。
  143. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 まず最初の期末要支給額の算定方法、税法では自己都合退職を前提に積算するということになっております。これを、会社都合の退職もあり得るわけであるから、自己都合だけで算定するのに問題ありという第一番目の御指摘でございますけれども、例えば労働省なんかの御調査によりましても、会社都合と自己都合の場合の退職金のレベルは、当然のことながら会社都合退職の方が自己都合退職よりも高く設定している企業が一般でございますが、傾向といたしまして、在職年数が長くなればなるほど、会社都合退職の退職金レベルと自己都合退職の退職金レベルは接近してまいります。したがって、考えられるほどに自己都合退職と会社都合退職の間の積算を変えることによっての格差というのはそう大きくないのかもしれないということでございます。いずれにしても、会社都合退職が高いレベルになることは事実であります。それでは現実の退職事由の実態というものを見てみますと、これは企業によっていろいろでございましょうけれども、やはり大勢的には自己都合退職によって退職し、退職金をもらっていくという形が一般的であり相当部分を占めているとするなれば、やはり自己都合退職を基礎として期末要支給額を算定するという現在の税法の立場はそれなりの根拠があると私どもは考えております。  それから二番目の、企業によって年数の格差があるという問題につきましては、先ほども申し上げましたとおりでございまして、格差があることはこれは否定できないと思いますけれども、税法の画一性というものと比較考量した場合に、制度の簡明性という観点からいってもこれはひとつ御了解願いたい点と考えます。  最後の割引利子率の問題でございますけれども、これは、委員が引用になりましたように昭和三十五年当時の税調の答申、当除の総資本利益率八%で割り引くという考え方に立っておるわけでございます。先ほど委員がおっしゃいました総資本利益率の数字自体は誤りではないと思いますけれども、この退職給与引当金の利子率を議論する場合には、いわゆる分母に総資本を置きまして分子に経箱利益だけを置くというのは片手落ちになるわけでございまして、これに金融費用を足すことによって利子率を出すということになるわけでございます。したがいまして、そういう計算に立ちますと、税調のレベルでいいます総資本利益率、年によっていろいろ動きはありますけれども、それは四%とか五%という水準でございませんで、やはり八%前後で推移しているということでございます。
  144. 米沢隆

    ○米沢委員 できればその数字もいただきたいものだと思います。  もう一つ問題は、現在、適格年金制度をとっておりますと、社外に資金を留保する場合には掛金は全額損金処理である、その数理計算上の利子率は五・五%である、利子分はほとんど無税である、こういうことになっておるわけでして、この適格年金制度に対する処遇と退職給与引当金制度の処遇を比べると、この退職給与引当金に対する冷遇ぶりは一目瞭然だと言わねばなりません。このような格差はどうして生じてきておるのか、その根拠をまずお示しいただきたい。このことは、金融機関優遇の制度でないとするならば、やはり保全措置の有無によって取り扱いを変えておるんだというふうにしか理解し得ないのでありますが、その点は一体どうなのか。この二点を御説明いただきたい。
  145. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 適格退職年金の制度と一時払いである退職金に見合う退職給与引当金制度とは基本的に制度の性格が異なるわけでございます。退職給与引当金は、先ほど来御説明申し上げておりますように、累積限度額の制限はありますけれども、社内に債務性の引当金として引き当てておる、毎期の繰入額を損金算入する、こういう制度であるわけでございますが、適格退職年金の場合は、将来の退職後の年金原資として企業が現実に社外のファンドに支出をするわけでございまして、その時点で実は本来でございますとそれを受け取る人の経済的利益ということで所得が発生しておるわけでございますが、現実にはまだその人の手に渡っていないものですから所得税が課税されないということで、課税延期という観点から特別法人税として一%の利子率相当分を課税しておるということでございまして、制度の性格が全然違うということでございます。
  146. 米沢隆

    ○米沢委員 結局保全措置の仕方が違うところから出てきておるというふうに思っていいですか。
  147. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 委員がおっしゃったこと、大体そういう御理解でよろしいかと思いますが、社外に積み立てる場合も、その企業の名において例えば信託銀行とかあるいは銀行預金としてイヤマークしておくという場合も社外に積み立てるという一つの方法でございましょうけれども、適格退職年金は、そのほかに、条件つきではございますけれども所有権が既に将来受け取るであろう人の手に移っておるわけでございます。つまり、企業の所有から離れておるという意味で、いわゆる社外の一定の金融資産に積み立てるというよりも社外流出性が一段と高いということでございます。
  148. 米沢隆

    ○米沢委員 次には、先ほど来申しておりますように、現行制度の基本的な問題は行き違いに終わりましたが、このような現行の問題に加えてもう一つの問題は、繰入限度額を期末要支給額の四〇%としておりますが、発生類基準を設けているために累積限度額まで引き当てが行えないという場合がある。さらに、期末要支給額の計算ベースは、先ほどから話がありますように自己都合による退職金額であるにもかかわらず、取り崩しは全額支給ベースで行うこととされております。ですから、特に石油危機等に伴って不況がやってくる、そして大量の退職者を出した企業等においては、会社都合による支給額相当額を引当金から取り崩したことに伴いまして在職従業員の引き当て額が著しく不足するといった実態が出てきておるわけでございます。しかも、企業は債務の重要性にかんがみて繰入限度額まで引き上げ計上を行おうとしても、発生類基準というのがありますからやむを得ず有税で引き当てを行っていかねばならない、こういう事情が出てくる。このような不合理はどういうふうな格好で是正されようと思っておるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  149. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 二つ御指摘があったわけでありますけれども、発生類基準によって繰り入れた場合、結果として累積限度額にまで達しないということは十分あり得るわけでございます。それは、例えばその前の期に大量の退職者あるいは解雇等会社都合等で退職金の支払いが発生した場合に引当金の限度額がそれだけ減るわけでございますから、そういった事態の場合にはそういう場合もあり得ますけれども、基本的には発生基準というのはまさに当期の退職金費用として正確に反映されるものでありますから、そういう前の期に異常な退職があったような場合に限度額に達しないということはあり得るとしても、それは決しておかしいことではないわけであります。  それからもう一つの問題でございますが、現実に当期で退職金を支払います場合に、取り崩しまして益金に繰り入れる額は前期の要支給額ということになりますから、現実に当期で支払われます退職金が取り崩し額よりも上回るということも、制度の仕組みがこういうことでございますから、これも当然のことながら発生するわけでございますが、しかしその差額というのはまさにその期の損金として落ちているわけでございますから、課税所得の計算としてはきちんとなっておる、こういうことでございます。
  150. 米沢隆

    ○米沢委員 最後に、退職給与引当金の保全の問題について労働省にお伺いしたいと思います。  問題は、せっかく退職給与引当金として引き当てを行っていても、会社の倒産などによって一時に大量の退職者が出たような場合には退職金が十分に支払われないという場合が生じ、現実には退職金の保全に役立たないという意見もある。同時にまた、保全措置そのものが余りはっきりしないがゆえに企業の経理の中でこの引き当てた金が砂にしみ通るがごとくに保全されておるものだから、何かしら企業の優遇税制として見られる傾向が強い。そういう議論があることを考えたときに、もっとこの保全措置をしっかりしなければならないと私たちは考えるわけでございます。  現在、御承知のとおり賃金の支払の確保等に関する法律という法律の中で、第五条に「退職手当の保全措置」というものが決められておるわけでございますが、これによりますと、保全の仕方は同第三条の貯蓄金の保全措置に準ずる措置を講ずるものとして、同施行規則第二条で四つの措置の仕方が列記されており、また保全措置を講ずべき額については、同施行規則第五条において、自己都合による退職を仮定して算定した全退職手当額の四分の一に相当する額以上の額を積み立てろというようなこと等々三つの算定方式が列記をされておるところでございます。  この法律に基づいて退職手当の保全措置がどのようになされておるのか。まず、その実態はどうなっているのか、うまくなされておるのかどうか。それから、この問題は努力義務規定になっておるのでありますが、労働省としてはどのような指導をなされているのか。保全措置の実施については、その実効方はいい方向に進んでおるのか、それとも悪い方向に進んでおるのか、そのあたりの分析も交えて御答弁いただきたい。
  151. 逆瀬川潔

    ○逆瀬川説明員 昭和五十六年に労働省が実施いたしました退職金制度調査によって申しますと、退職手当制度がございます事業場のうち、一般の中小企業退職金共済制度、適格退職年金制度、厚生年金基金制度等に加入すること等によりまして保全措置を講ずることを要しない事業場が六七%を占めるわけでございます。保全措置を講ずる必要のある事業場は残りの三三%ということでございますが、こういった保全措置を講ずべき事業場のうち、保全措置を講じているものは一二%でございます。保全措置は余り講じられていないのが実情でございます。  こういった退職金の保全が十分でないという点につきまして、労働省としてもその対策を今後どうするかということについて検討しているところでございます。そもそもこの賃確法でこういった努力義務規定としたということにつきましては、退職手当の支払いに充てるべき資金の確保を画一的に強制いたしますと、企業全体から見れば、倒産という非常にまれな危険のためにかなりの高額の資金を永続的に固定させることになってしまう、それだけの資金の流動性を損なうこととなる結果、企業経営に支障を来たし、かえって不都合になると考えたからであったわけでございます。  しかし、先ほども申しましたように、退職金の支払い確保の問題につきましては大変重要な問題でございますので、今後これをどのように取り扱うべきかについて現在労働基準法研究会で御検討をお願いしているところでございまして、その結果を待ちまして適切に対処してまいりたいと考えております。
  152. 米沢隆

    ○米沢委員 保全措置をとっておるところは、努力義務規定になっておるせいもありましょうが、非常に少ない。  ところで、保全措置がとられていなかったために支払い不能になったというような実態は、労働省としてはどれぐらいの件数があるのか、把握されておりますか。
  153. 逆瀬川潔

    ○逆瀬川説明員 昭和五十八年度の上半期、四月から九月でございますが、この期に把握いたしました退職金の不払いは、件数では三百八十一件、対象労働者では二千三百五十八人、金額では三十億九千六百万円となっております。前期からの繰越分を入れた累積で、それぞれ五百三十六件、九千三百五十二人、百八十七億五千万円となっております。  退職手当の保全措置の実施状況と不払い状況との関係については統計的に把握していないわけでございますが、さきに述べましたような保全措置の実施状況等から見ますと、退職手当の支払い不能となった企業においては保全措置が講じられてない場合がほとんどであろうかと思います。
  154. 米沢隆

    ○米沢委員 いまのような実態を聞いておりますと、先ほど話がありましたように、確かに努力義務規定を完全に義務規定にするということは会社の運営上等さまざまな難しい問題が発生するかもしれませんが、少なくとも今の実態を聞かしていただいて感ずることは、これは従業員に対する退職給与債務の発生額を損金に計上しこれを引き当てたものだという性格論からして、やはりこの保全措置というものが努力義務規定では万全ではないという感じがしてなりません。そういう意味で、でき得れば従業員貯金に対すると同じような保全措置を立法化するなり制度化するというそういう方向で労働省は汗をかいてもらいたいと思うのでございますが、最後にその点についての御答弁をいただいて、質問を終わらしていただきます。
  155. 逆瀬川潔

    ○逆瀬川説明員 先ほど私がお答えいたしましたようなことで現在の賃確法はできているわけでございますが、先生指摘のようなこともございますので、現在労働基準法研究会で研究しているところでございますので、そういう御意見も十分勘案いたしまして研究会の結果を待って対処してまいりたいと思います。
  156. 米沢隆

    ○米沢委員 その基準法研究会ではいつごろ結論を出すのですか。
  157. 逆瀬川潔

    ○逆瀬川説明員 特にただいま御指摘の問題につきましては、つまり退職金の支払い確保の問題につきましては大変難しい問題であるということでございますので、来年の三月ぐらいまで専門的に御検討いただこうと思っておりまして、そのほかの基準法上の問題が幾つかございます。そういうものとあわせまして、来年の夏までには全体として結論を出したいというふうに考えております。
  158. 米沢隆

    ○米沢委員 終わります。
  159. 熊川次男

    ○熊川委員長代理 箕輪幸代君。
  160. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 まず最初にリッカーミシンが二十三日和議申請をして事実上の倒産ということになった事態について通産省に伺いたいと思います。  政府はこれまで連鎖倒産の防止とか消費者保護のためにどのような措置を講じてこられたのでしょうか。また、今後どのような対策を講ずるおつもりなのか、簡単にお答えいただきたいと思います。
  161. 田辺俊彦

    ○田辺説明員 リッカーミシンの倒産事件につきましては、現在、二十四日、東京通産局に関連中小企業臨時対策本部を設置いたしました。また、中小企業信用保険法に基づく倒産関連特例保証の迅速な適用、これは七月二十七日に大臣告示をいたします。その他、東京通産局における倒産防止対策の推進協議会の開催等、鋭意実態調査を含めまして対策を講じつつあるところでございます。中小企業庁において対策を推進しているところでございます。
  162. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 前払い式の割賦の方法というのは、商品が現実に手に渡る前に企業が倒産すると消費者が著しく不利になるわけです。  現在、前払い式割賦の方法をとっている場合の許可の件数、契約者数、利用者数ですね、そのうちリッカー分についてはどうなっているのか。  それからさらに、消費者が積立金の返済を申し出た場合に全額返済できるようにすべきではないかと思いますが、それについてどうなっておりますでしょうか。
  163. 糟谷晃

    ○糟谷説明員 まず最初に、前払い式割賦の現状について御説明申し上げます。  前払い式割賦の中でいろいろな種類がございますけれども、今回リッカー株式会社がやっていたもの、それからリッカー・ファミリークレジットといいます子会社がやっていたもの、二種類あるわけでございますけれども、前者の前払い式割賦販売、これについてまず申し上げますと、五十九年三月三十一日現在で許可業者数五十六、それから前受け金の総額は、半年前でございますが、五十八年九月三十日現在で四百八十億でございます。それからファミリークレジットがやっておりますいわゆる友の会方式の前払い取引につきましては、同じく業者数が三百五十五、それから前受け金の総額が千三百九十七億という状況でございます。  それからリッカーについてでございますけれども、リッカー株式会社の前受け金総額は約八億五百万円、口数にいたしまして十一万八千口でございます。子会社のリッカー・ファミリークレジットがやっております友の会方式の方につきましては、前受け金が六十三億五千六百万円、口数にしまして六十八万五千口ということでございます。したがって、今回のケースで総額としましては七十一億六千万余り、口数にしまして八十万日余りということでございます。なお、この口数に対応する消費者の数につきましては、一人で二口、三口とやっているケースもございますので、正確な数は掌握しておりませんけれども、会社側の説明によりますと大体六十万ないし七十万人というふうに言われているわけでございます。  私どもとしましては、今先生お尋ねの前受け金の保全というところに重点を置いて対応をいろいろ考えてきておりますけれども、割賦販売法によりますと、前受け金総額の二分の一については保全措置を講ずるようにという義務づけがございまして、具体的には日本割賦保証株式会社というところとの間で委託契約を結んでいるわけでございます。したがいまして、私ども、この事件が起こりましてから直ちに日本割賦保証株式会社に対しまして、通産大臣の指示があったときには直ちに供託できるような準備をするようにという指示をしたところでございます。  それから一方リッカー等に対しましては、こういう事態になりました以上、前受け金の総額がふえるということはいかがかということから、一つは、顧客の新規募集をやめるようにという指導をいたしております。それからもう一つは、既契約分につきましても前受け金の集金を停止するようにという指導をしております。それから二点目といたしましては、既にある程度のお金を支払ったお客様に対して、その消費者が希望すれば何かほかの商品と取りかえるとか、あるいは残額を一括支払うことによって契約商品を手に入れたいというお客様があればそれに応じたらどうかというような指導をしているわけでございますけれども、実は、このケースの一つ難しいポイントは、和議手続が始まっているということでございまして、和議法上どういう行為ならば許されるのか、どういうことはできないのかといったところが必ずしもはっきりしない点がございますので、現在私ども、裁判所の方と密接なコンタクトをとりながら、その辺の解明を急いでいるというところでございます。
  164. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 全額返済ということが保証されないのではないかという心配がありますので、その点をぜひ完全にできるように御尽力をいただきたいと思います。  この問題については、五十年以降新規に前払い割賦の取り扱いというのは認めていないというふうに伺っておりますけれども、これまでに契約した分が既に多数あるわけですね。前払い契約については、途中解約というのについても消費者が不利だというふうに言われております。リッカーの倒産を契機に、前払い式割賦制度そのものについて消費者保護の規定という点で見直すということが必要ではないかというふうにも思われるわけです。また、現物を引き渡すという場合にはアフターケアというのはどうなるのかという心配もあるわけで、消費者保護規定の見直しとアフターケアの問題についてどのような対策をとられるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  165. 糟谷晃

    ○糟谷説明員 前払い式割賦取引と申しますのは、消費者から見ますと、代金の一部を前払いすることによって商品を市中価格よりも安く入手できる、こういう制度でございます。したがいまして、戦後この制度が非常に普及をしたわけでございまして、現在でもこの前払い式取引の消費者にとっての魅力というのは、代金は前払いするけれども商品が安く手に入る、こういうところにあるわけでございまして、私どもこの制度を考える場合には、その消費者利便の面もやはり忘れてはならない面があるかと思います。  ただ同時に、前受け金を事前に受け取るというところから、倒産等の不測の事態が起こった場合にそれが取り返せないというような事態は避けなければいけませんので、私ども何回かの法律改正を重ねまして割賦販売業者に対するいろいろな規制を強化してきているわけでございます。例えば、前受け金の保全割合にしましても、三分の一から二分の一に引き上げるとか、許可のときの基準、許可された後維持すべきいろいろな財産的な基準、こういったものも逐次強化をしてきておりますので、こういうことで消費者保護を図っていきたいというのが現在の私ども立場でございます。したがいまして、こういう消費者保護の問題、それから消費者利便の問題、この辺を考えながら検討すべき問題ではないかというふうに考えております。  それから、アフターサービスにつきましては産業機械課長の方から御説明申し上げます。
  166. 田辺俊彦

    ○田辺説明員 アフターサービスについてでございますけれども、現在リッカーメンテナンスという子会社がアフターサービスに従事しております。現在のところ、そういうことで対応しておりますが、今後の変化する状況におきまして、通産省といたしましては、消費者保護の観点からアフターサービスに万全を期しますよう、会社及び業界全体に万全の指導をしてまいりたいと思っております。
  167. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 たくさんの婦人がかかわっておりますし、消費者の皆さん方の重大な関心を呼んでおりますので、万遺漏なきを期していただきたいというふうにお願いを申し上げて、次の質問に移りたいと思います。通産省、結構でございます。  次に、郵政省は視覚障害者に対するサービスの向上策として、定額郵便貯金とか定期郵便貯金の新規預け入れあるいは簡易生命保険とか郵便年金の新規契約の際に、証券の内容を利用者に点字をもって通知するという制度を三月一日から実施しております。六月十八日から、簡易生命保険等については既契約者についても同様のサービスを開始しております。さらに十一月には、全国五千台の現金自動支払い機などで点字表示を行うことにしております。  大蔵省にお尋ねをするわけですけれども、点字サービスについて、都銀、地銀など金融機関が現在どのような実施状況であるのか、概要を御報告いただきたいと思います。
  168. 吉田正輝

    吉田(正)政府委員 点字預金の取り扱い状況は、現在、都銀が十二行、地銀が六行、相銀、信金が各一行で、合計二十行が取り扱っております。なお、このほか地銀三行が近々実施する予定であると聞いております。
  169. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 地方銀行などについては、全体として点字サービスが行き渡るように指導をしていただかなければいけないのじゃないかというふうにも思っております。そして、障害者の方は普通預金について点字サービスを行うように求めておられます。都銀などでは預金残高について点字サービスを行っているわけですけれども、取引経過が全体として自分でわかるようなものを点字サービスでやってほしいという声が強いわけです。その点での御指導をお願いしたいと思いますし、さらに民間の生命保険、損害保険についても、郵政省の郵便年金や簡易生命保険の点字サービスなどを参考にしながら、視覚障害者に対する点字サービスを行うように大蔵省として指導していただきたいと思うわけですが、その点、あわせてお答えをいただきたいと思います。
  170. 吉田正輝

    吉田(正)政府委員 都銀から始まっているということで、引き続いて地銀、信金等についても指導すべきではないかという御指摘でございます。金融機関は確かに公共性を持たねばならぬ機関でございますから、それぞれ、国の施策あるいは今のモラルの観点からも、社会的要請があるというような問題につきましてはできるだけ協力すべきだというふうに私どもも存じておりますが、基本的にはこういう施設の問題あるいは投資の問題でございますので、同時に経営の自主性という問題もございますので、そのような総合的な観点でこの点字預金の運動が次第に萌芽を見せ出しているというふうに私、感じておるわけでございます。全体として見てみますと、この点字預金を取り扱っていない金融機関につきましてもそういう意識は高まっていると聞いておりましたので、また、先ほど申し上げました二十行のうち十行が五十九年になって始めたばかりで、最近にはそういう兆しが出ているということでございますので、今後の状況についてはそういう観点から期待を持って見守ってまいりたいというふうに考えているわけでございます。  それから、定期預金ではなくて普通預金の点字預金を、月末残高しかわからないのではないか、これを日々家計簿的にと。そういうふうになりますと視覚の御不自由な方々にとっては大変結構なことだとは存ずるわけでございますけれども、かつ、そういうことについては一部の金融機関でも検討するというふうに聞いておりますけれども、普通預金でございますと日々かなり頻繁な取引でございますので技術面、制度面でも問題がある、それからコスト面でも問題があるということでございますので、今普通預金の残高通知のサービスが始まっているところでございますので、先ほどのようなことでございますけれども、サービスのより一層の充実という観点を頭に置きながら、金融機関が自主的判断において進めていく検討状況を期待を持って見守ってまいりたいというふうに考えておるところでございます。  生損保につきましては保険部長からお答えさせていただきます。
  171. 加茂文治

    ○加茂説明員 お答え申し上げます。  生命保険会社、損害保険会社ともに、点字保険証券の採用をしている会社はございません。  御指摘の点につきましては、保険会社におきましてこれまで顧客に対して十分な説明をする等御不便のないように対応しておると聞いております。
  172. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 今の御答弁はまるで木で鼻をくくったような答弁ということだと思いますけれども、やはりもっともっと障害者の完全参加と平等という観点をしっかり踏まえて前向きに対処していただかなければいけないんじゃないかというふうに私は思います。  あわせて国税庁にお伺いしたいと思いますけれども、三療で働く視力障害者は、毎年の確定申告で税金は取られるけれども、税額を自分で計算しようにも点字の解説書がないのでできない、平等の原則に反するのではないかというふうに視力障害者の方々から私どもに強い要望が参っております。障害者の完全参加という点で各省庁がそれぞれ障害者対策に取り組んでおられるところでしょうけれども国税庁としてもぜひこの確定申告の申告書並びに解説審についての点字での取り扱いということについて御検討いただきたいと思いますが、簡単にお答えいただけないでしょうか。
  173. 冨尾一郎

    ○冨尾政府委員 お答えいたします。  国税当局といたしましては、目の御不自由な方はもちろんのこと、体の不自由な方に対しまして、従来から確定申告の際に御不便をおかけしないように十分な御説明、御指導を申し上げるように配意をしておりまして、この旨職員にも徹底をさせております。したがいまして、職員もこのような納税者の方々の確定申告の際にはいろいろ御相談申し上げ、御納得いただいたところに基づいて確定申告書の代筆を行うなどのことで対応させていただいております。  今後とも、基本的にはこのような考え方で対処いたしまして、体の御不自由な方に対しまして確定申告の際に御不便をおかけすることのないように、私どもとしては十分徹底してまいるつもりでございます。
  174. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 私、今の答弁は納得できないのですね。やはり申告納税制度、自主申告、自主計算でなければならないと思うのです。そのことが自分で納得のいくようにできるという、その観点から見ても点字でのサービスというのをぜひ前向きに検討していただきたいと思いますが、大臣よろしいですか。  先ほど来から大蔵省にお聞きしておりますことは、今の点字での申告書の問題、解説書の問題、それからいろんな証書、契約書などの点字サービスの問題、銀行の預金などの点字サービスの問題、そういうような問題について、ぜひとも障害者自身の要望にこたえる方向で検討していただくというふうにお願いをしたいと思うのです。大蔵大臣の指導よろしきを得てぜひそういう方向に向かうようにお願いをするわけです。ちょっとそれに当たりまして、手元に郵政省のものを持ってきておりますので、これをまずごらんをいただきまして、お答えをいただきたいと思います。
  175. 冨尾一郎

    ○冨尾政府委員 ちょっと一言申し添えさせていただきたいと思います。  確定申告の用紙、それから説明書の点字訳のものをつくれ、つくったらどうかというお話でございますが、実は、私どもとしては納税者の確定申告の御相談をさせていただいているわけでございますが、その確定申告というのは単に申告書に記入をすればいいということではございませんで、その方の年間の収入や必要経費を計算される、またそれをいろんな領収証であるとか書類に基づいて点検をされる、いろんな作業の積み重ねとして出てきた答えを確定申告書に記載していただくという一連の作業で申告ができるわけでございます。したがいまして、今の段階で私どもとしては、申告書が点字になったからどうこうということではなくて、やはり全体としてうまく障害者の方、目の御不自由な方が納得のいただいた申告ができるような体制ということが当面最も必要なことであり大事なことである、そういう方向で十分配慮してまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  176. 加茂文治

    ○加茂説明員 先ほどの問題でございますが、基本的には各社の自主的な対応にゆだねられる問題であろうかと思いますが、御指摘の点もございますので、どのような顧客のニーズがあるのか、あるいはどのような対応が可能かについて検討させてみたいと思っております。
  177. 竹下登

    竹下国務大臣 今、加茂保険部長から話しましたように、国会でこういう貴重な意見があったということをまず伝えるのが初めかな、私もちょっと実態がよくわかりませんので……。
  178. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 要望があって私ども申し上げているものですから、生の声をもう一度しっかりと受けとめていただきまして、ぜひ善処していただくように重ねてお願いしておきたいと思います。  さて、私はこれまで当大蔵委員会で何度もいろいろな角度から男女差別の是正を求める質疑を行ってまいりました。その中で、夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定についての男女差別については、昭和五十七年四月二十一日、昭和五十八年五月十八日と二回にわたって当委員会指摘し、是正を求めてまいりましたが、今日に至るも一向に改善される気配はございません。婦人労働者の怒りはますます大きくなっている。私はこのことをぜひお伝えし、改善を求めたいわけです。  殊に来年は婦人差別撤廃条約を日本政府として批准しようとしておりまして、そのために国籍法の改正も行われましたし、また雇用における男女の機会の均等、待遇の平等確保の政府案が本日の本会議で可決されました。この均等法は労働基準法改悪と実効性のない均等法という内容であるため、私ども日本共産党は、労働基準法改悪部分の全面削除と実効ある雇用平等法に改める内容の抜本修正案を提出して、労働者の要求実現のために奮闘しております。  こういう経過と、それから今日の婦人労働の実情から見て、今日何としても昭和四十三年の「夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定について」の通達を改めていただかなければならないと思うのです。この通達は、男女平等に真っ向から違反する内容を各省連絡協議会という形で、国の公式の文書で男女差別を公認するものであって、絶対に認められないというふうに考えます。  最初に大蔵省に伺います。  所得税法上扶養控除という制度がございますけれども、これは一体何のために設けられたものでしょうか。そして扶養控除の場合、対象の扶養親族の認定はどのように行われますでしょうか。
  179. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 所得税法の扶養控除制度でございますけれども、所得税法では、納税者本人の担税力を算定する場合に、基礎的な人的控除の制度といたしまして基礎控除、配偶者控除、扶養控除がございます。これは、その納税者の家族の状況等、担税力を算定する場合の基礎的な部分としてこれを控除するという制度でございまして、基礎控除等と並びまして課税最低限を構成するわけでございます。  この基礎的な人的控除の一つである扶養控除の認定の基準といたしましては、民法上の親族のうち配偶者以外の者がまず一つの大きな範囲でございますが、そういう親族であって扶養の対象になっている人でございます。しかし、所得要件がございます。
  180. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 ちょっと私の聞き方が悪かったかもしれませんが、扶養親族の認定というのは、例えば申告書に記載すればそれで扶養親族になるということになるのかどうかです。
  181. 冨尾一郎

    ○冨尾政府委員 お答えいたします。  扶養親族の場合には、生計を一にする扶養親族という要件を満たしたものとして申告されている方ということになります。したがって、そういう事実がございませんと、仮に申告書に書いてあっても扶養控除等の適用を受けられないということでございます。
  182. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 申告書に記載してあれば、それが生計を一にしておれば、夫の方の扶養家族、扶養親族で申請しようが、妻の方の扶養家族で申請しようが、確定申告書の記載に従って課税の際判断されるということでよろしいわけですね。
  183. 冨尾一郎

    ○冨尾政府委員 そのとおりでございまして、どちらの方の扶養親族として申告されるかは御本人の選択でございます。
  184. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 夫婦共働きの場合に、どちらが主たる生計維持者かというようなことは全く問わずに、税法上は、どちらでも申告がされた方の扶養親族という認定が行われているわけです。  次に自治省に伺いますけれども、昭和四十二年十月四日に出された「住民基本台帳事務処理要領について」と題する通達によれば、「世帯とは、居住と生計をともにする社会生活上の単位である。世帯を構成する者のうちで、その世帯を主宰する者が世帯主である。」「「その世帯を主宰する者」とは、「主として世帯の生計を維持する者であって、その世帯を代表する者として社会通念上妥当とみとめられる者」と解する。」というふうになっております。  住民基本台帳法が制定された当時は、親子が何代か一緒に住んで家計、生計を維持するということであり、その中心がだれかというようなことは割と明確であったケースを想定していたと考えられておりましたが、毎年核家族化が進行している中で、夫婦がともに働きに出るというケースが非常に多くなっております。  こういう傾向とともに、世帯とか世帯主とかという確定が非常に難しくなっていると言われておるわけです。夫婦がともに収入がある場合、そのどちらを世帯主にするかということは、前記の基準に照らしてどちらがその世帯を主宰する者であるかということによって決められることになるわけですけれども、実際問題として夫婦で協議してどちらを世帯主として届け出るかということによらざるを得ない、そういう解読書もあるわけですね。  夫婦共働きの場合では、ほぼ同程度の収入を有する場合に、妻が世帯主として申請された場合それを窓口で受理されないというようなことがあるでしょうか。また、市町村の窓口で、夫を世帯主として届け出すれば仮に夫が低収入、無収入でも何の抵抗もなく受理され、他方、妻を世帯主として届け出ると夫の収入が問題とされるというようなことがあるのでしょうか。それから、夫の収入より三割以上多くなければ妻を世帯主として受理しないというようなことがあるのでしょうか。その点について、窓口の実態をお聞かせいただきたいと思います。
  185. 石山努

    ○石山(努)政府委員 お答え申し上げます。  住民基本台帳に係る世帯主の扱いにつきましてはさきにも委員から御指摘をいただいておるところでございますが、これにつきましては、これまでもお答えを申し上げてきておりますように、主として世帯の生計を維持し、かつその世帯を代表する者というものを世帯主に認定をするということで指導をしてきているところでございます。もちろん、こういう要件に該当する者であれば男女の性別を問わず世帯主になり得るものでございます。  これについて、さきの委員会の際にも御指摘をいただいたわけでございますけれども、私どもの方で出しております質疑応答集の中で若干誤解を招くような表現があったということで、これを削除することなども含めまして、市町村に対しましてはいろいろな機会を通じて指導をしてきているところでございます。  このようなことから、私どもとしては現在のところ、市町村の窓口で特に問題のあるような事例があるということは承知はいたしておりませんが、今後とも、そのような問題があるような指摘がされることがないように十分留意をして対処してまいりたいというように考えております。
  186. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 私が伺ったところによれば、夫婦共働き、ほぼ同程度の収入ということであれば、夫婦で協議して妻を世帯主として届け出ればそれはそのまま受理されているというふうに伺ったのですけれども、それでよろしいのですか。
  187. 石山努

    ○石山(努)政府委員 住民基本台帳の世帯主につきましては、本人の届け出が原則となっております。したがいまして、今御指摘のような場合には、御指摘のとおりというように考えております。
  188. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 自治省結構です。  それで、労働省にお伺いします。  まず手当についてですけれども、扶養手当、家族手当、住宅手当等諸手当については、ILO百号条約でも、また労働基準法上も、賃金に該当するということは間違いないというふうに理解されておりますが、これでよろしいですね。
  189. 松原亘子

    ○松原説明員 お答え申し上げます。  労働協約、就業規則等にはっきりその支給基準等が定められている場合には、賃金に相当するものでございます。
  190. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 そうすると、労働基準法と就業規則に書かれていなければ、扶養手当とか家族手当とかいうようなものは賃金ではない、こういうことになるわけですか。
  191. 松原亘子

    ○松原説明員 お答えいたします。  事業主が、いわば恩恵的にといいますか、たまたま特定の労働者に払うとか恩恵的に払うというように、それが労働者の権利として確定していない場合には、賃金とは言えないものでございます。
  192. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 ILO百号条約の解釈でもそのようでしょうか。
  193. 松原亘子

    ○松原説明員 ILO百号条約は報酬ということだけを言っておりまして、私どもはILO百号条約を批准しておりますが、それは基準法四条によって十分担保されているということで批准いたしておりまして、今のことで問題はないというふうに理解いたしております。
  194. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 労働基準法上で賃金と言うのは、労働者にとって非常に重要な問題なんですね。この手当が賃金の中に含まれるということで理解をし、そしていろいろと法制度もできているわけですので、その部分について引き続きお伺いしておきたいと思います。  この手当の支給基準が労働協約あるいは就業規則等で定められており、その場合に、夫たる男性労働者には無条件に手当が支給され、妻たる女性労働者にはその夫の収入の三割増し以上の場合でなければ支給しないと定めることは、労基法四条に違反するのではありませんか。
  195. 松原亘子

    ○松原説明員 お答えいたします。  労働基準法は、「使用者は、労働者が女子であることを理由として、賃金について、男子と差別的取扱をしてはならない。」と規定しておりますが、就業規則にこの四条違反の規定があるということだけでは基準法四条違反とはならないわけでございます。つまり、その規定に基づきまして具体的な取り扱いが行われたという事実がなければ基準法違反にはならないわけでございますが、今御指摘がございましたような規定があり、それに基づいて現実に賃金が支払われだということを前提といたしますと、まず、夫には支給するが妻には支給しないというようなことについてでございますが、それが他の合理的な理由に基づきまして支給した結果夫である者には全部支給され、妻である者には支給されないという、結果がそうなった場合は、それは制度上そうなっているということではございませず、その結果でございますので、基準法四条違反というふうにはならないわけでございます。しかしながら、そういうことではなく、あらかじめ女子であることのみを理由として支給しないということになっておって、それに基づいて女子であることのみを理由として支給されなかったということがあれば、それは基準法四条に違反するものでございます。  それから次に、世帯主に支給するというふうになっておりまして、その世帯主の認定に当たって男女に差があるというようなケースでございますが、まず、その世帯主に支給するということ自体は特段労働基準法四条の問題ではございません。ただ、その手当を支給する基準が世帯主となっておりまして、その世帯主の決め方は通常事業場で自主的に判断されて決められるわけでございますが、その決定に当たりまして女子であることのみを理由として男子と異なる基準を設け、かつそれによって賃金、今の場合は扶養手当でございますが、扶養手当を女子に支給しないというようなことになる場合には、それは基準法四条違反になるものでございます。
  196. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 私の質問に対して、それをさらに抽象化されてお答えになっておられますので、もう一度確認をいたします。よく聞いておいてください。  就業規則あるいは労働協約等で、夫たる男性労働者には無条件に支給され、妻たる女性労働者の場合にはその夫の収入の三割増し以上の場合でなければ支給しないと定める規定があり、そして、それに基づいて取り扱いがされている場合は労基法四条違反になりませんか。
  197. 松原亘子

    ○松原説明員 今先生が御指摘のケースで、有配偶の男子は無条件に支給される、しかしながら、有配偶の女子については、女子であることだけが理由となって男子と異なる基準が設けられ、かつ、それによって賃金が支払われるということであれば、それは基準法四条に違反するものでございます。
  198. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 手当の支給に当たって扶養手当支給の基準は、一般職の職員の給与に関する法律では「扶養手当の支給については、」「他に生計の途がなく主としてその職員の扶養を受けているものを扶養親族とする。」というふうに定めておりまして、世帯主とか云々というようなことにはなっていないわけですね。公務員の場合、手当の支給に当たって男女異なる取り扱いは許されないはずですが、もし男女異なる取り扱いが許されるとすれば、どんな場合があるのでしょうか。先ほど他の合理的理由というようなことも言われましたけれども、その場合の合理的理由というのは何をお考えになっていらっしゃるのでしょうか。人事院のことでわからないというなら、そのようにお答えください。――これは公務員のケースで今お尋ねしたわけですけれども、それでは、一般の労働者の場合で結構ですが、手当の支給に伴って男女異なる取り扱いが許されるというような場合があるとすれば、それが許されるケースというのはどういう合理的理由を労働省としては考えておられますか。
  199. 松原亘子

    ○松原説明員 お答えいたします。  それは個々具体的なケースに基づきまして判断する以外にないというふうに存じます。
  200. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 非常に重大なことであり、この問題について差別は許されないということで論議をしているときに、合理的理由の個々具体的なケースの例も挙げられないというのは問題だと思うのです。  続いてお尋ねします。住居手当について、世帯主に支給をするというようなケースがあります。その世帯主とは、単身居住者とか既婚者である男性職員とかというふうに取り決めて、世帯主に準ずる者として、既婚者である女性職員で夫の所得より二割以上の所得のある者というふうに定めているケースがあるわけですけれども、これも結局、男性職員の場合は無条件で、それから既婚者である女性職員の場合は夫の所得よりも二割以上の所得のある者という条件つきでというような場合は、労基法四条に違反するというふうにならざるを得ないと思うのですね。私のこの解釈でよろしいでしょうか。
  201. 松原亘子

    ○松原説明員 先ほど私がお答えいたしましたのは、必ずしも扶養手当のみならず賃金一般についてでございますので、住宅手当が賃金と解される場合には、先ほど申し上げたことは住宅手当についても当てはまるものでございます。
  202. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 世帯主に係らしめるというやり方で、結局は男性の方にはほとんど無条件で、それから女性の方にはほとんど支給されないというケースが非常にたくさん現実に行われております。  労働省が昭和二十二年九月十三日に出されました十七号の通達ですか、「労働者が女子であることのみを理由として、或は社会的通念として、若しくは当該事業場において女子労働者が一般的、又は平均的に能率が悪いこと、知能が低いこと、勤続年数が短いこと、扶養家族が少ないこと等の理由によって、女子労働者に対し賃金に差別をつけることは違法であること。」というふうに言われておりますが、この通達は今日もなお有効なものと理解してよろしいわけですね。
  203. 松原亘子

    ○松原説明員 現在もなお有効なものでございます。
  204. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 社会通念によって賃金に差をつけることは違法であることというふうに読ませていただいてよろしいわけですね。
  205. 松原亘子

    ○松原説明員 そのとおりでございます。
  206. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 次に、健康保険や共済組合の適用の問題についてお伺いしますけれども、今回、政府案で出されております均等法の中で「福利厚生」という部分がございますけれども、この健康保険の問題や共済組合の問題は、その「福利厚生」に当たる問題と理解してよろしいでしょうか。
  207. 松原亘子

    ○松原説明員 今回、私どもが国会に提出いたしましたいわゆる均等法案の中における「福利厚生」というのは、事業主が自主的に行う福利厚生を対象といたしておりますし、さらに、かつ、禁止規定の対象といたしますのは、先生も御存じのとおり、一定範囲のものを労働省令で定めるということにいたすことになっております。前段に申し上げたことから、健康保険等いわゆる法定福利は私どもの法案の対象としているところではございません。
  208. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 そうすると、それは政府関係して法律でやることだから、男女平等であることは当たり前の前提であるということで、労働省がそのことをとやかく言うものではないというふうに理解していいのですね。
  209. 松原亘子

    ○松原説明員 そのとおりでございます。
  210. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 そうだとすれば、健康保険や共済組合の適用について男女異なる取り扱い、男女差別が行われているということは全く許せないことだというふうに思うのですね。  昭和四十三年の通達は、もう再三この委員会でも申し上げておりますように、被扶養者の認定に当たって、原則は夫、妻は夫よりも著しく収入が多いときでなければ子供を被扶養者とされない。つまり女は、その場合に妻は夫よりも三割以上収入が多いときにというふうに通達で出されております。私は、これを読んだときに、男と女を比較して、女は男の三割安かというふうに全く腹が立ったわけです。平等に取り扱うべき政府の通達が、男は無条件で、そして女の場合は夫よりも三割収入が多くなければ同じように扱われない、こんなばかなことがあるかと、私はもう腹が立って腹が立って仕方がないわけです。現実にこういう通達によって不利益な取り扱いを受けている婦人労働者の怒りは非常に大きくなってきているわけです。こういうふうに、男女異なる取り扱いをするのに一体どこに合理的根拠があるのでしょうか。合理的根拠があると考えるならば、その理由を明らかにしていただきたいと思います。これは厚生省でしょうか。
  211. 伊藤卓雄

    伊藤説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生指摘の昭和四十三年の通達でございますけれども、これはもう先生案内だと思いますけれども、現行被用者保険におきましては、被扶養者として認定されるためには主として被保険者により生計を維持する者という要件が要求されておりまして、この具体的な取り扱いについては、いろいろ問題があったことを解決する一つの手段として関係各省が集まりまして決めたものでございます。  これは、特に法律におきましては、主として被保険者により生計を維持する者であるということでございますけれども、具体的な認定が保険者に任されておるというところから種々問題が起きた。特に夫婦共稼ぎの場合は保険者が違う場合があるわけでございますので、保険者によってその解釈が違うというところから保険者同士の間に落ち込んでしまうということで、どこも引き取り手がないというような事例が四十三年当時若干あったようでございます。特に子供のような場合には、いつ病気になるかわからないという不安を抱えている状況のもとでどこの被扶養者にもなれないという事態で、これは何とかしなければならない、そういうお話が当大蔵委員会でもあったやに承っておりますが、そういったことを受けまして各省協議をいたして決めたわけでございます。  なお、合理的な理由はどうかというお話でございますけれども、やはり当時も今日もそうでございますが、一般的に言いまして男性つまり夫の方が収入が高いケースが多いということを念頭に置きまして原則的には夫ということにしておるわけでございますけれども、やはりそれだけで処理をし切れないということもございまして、女性の所得が著しく高い場合、その他特別の事情がある場合という規定をいたしているわけでございます。さらには扶養手当が出ている、これは画一的な判断の基準として使いやすいわけでございますので、そういったことがあればまた必ずしもその原則にこだわらないという形で、三つの原則を立てまして処理をしたわけでございます。  なお、三割が妥当かどうかというお話でございますけれども、事務の取り扱いを考えてみますと、ちょっとでも高ければそちらの方の被扶養者にすればいいという御議論もあるかもわかりませんけれども、被扶養者の地位を安定的にしておくという観点からいたしますと、やはり二割あるいは三割といった数字が妥当ではないか。つまり手当が出たり出なかったりということもございますし、そういった所得の移動ということを加味いたしまして、被扶養者の地位の安定という観点から三割というものを決めたように私ども理解しております。なお、この三割程度というものにつきましては、トラブルが生じた場合のあっせんの基準ということで示しておりまして、具体的な個々の認定につきましては、その実態に即して保険者の方でやっていただくというのが建前でございます。
  212. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 女は特別に三割増しでないと一人前に扱われないというのは全く問題なことなんです。それを子供のせいにして、それで男女平等を踏みにじっていても子供のためだから構わないという認識は全く誤っていて、これは事務処理上の問題などということで合理化される筋合いのことではないのです。人間の価値の平等ということは至上のものであって、その取り扱いの便宜のためにこのような差を設けるということ、三割という基準は何ら根拠なく、具体的な数字が示せるものなら示してください。女が男よりも三割安いというような、具体的な根拠が出せるものなら出してみてください。こんないいかげんな基準をいつまでも続けておくことは絶対に許せないことだと私は思うのです。  今この時点でこういう事態を迎えるに当たって、昭和四十三年当時と今日とでは情勢も変化しております。その情勢の変化も何ら認識しないようなことでは、歴史の発展もわからないものだと言わなければならないと思います。今日の社会の実態、婦人労働の実態、さらに共働きの状況、そういうものがどのように変化しているか、厚生省ちゃんと承知していますか。数字を明らかにして示してください。
  213. 伊藤卓雄

    伊藤説明員 お答えいたします。  ただいま共稼ぎの数字について云々ということでございますが、手元にちょっとございませんけれども、先ほど男女不平等を我々が考えてこの通知を出したかのような御指摘でございますが、私どもとしては、この趣旨はあくまでも保険の全体的な業務を合理的に処理するという意味で画一的に定めたものでございます。
  214. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 別に男女不平等を一生懸命やろうと思ってこんなことをやっているとはだれも思ってませんよ。だけれども、今日、無意識にでも不平等になっているという自覚がないこと、そのことを問題にしているわけです。  私は、厚生省がそのことがわからなければ、労働省に今の婦人労働の変化を明らかにしていただきたいと思います。
  215. 松原亘子

    ○松原説明員 四十三年当時と最近の状況をかいつまんで申し上げますと、女子雇用者数は長期的にはずっと増加しておりまして、五十八年には四十三年の一・四倍となっており、現在、雇用者総数の三分の一を占めております。有配偶者数の占める割合も高まっておりまして、四十三年には女子雇用者のうち約四割が有配偶者でございましたけれども、五十八年には約六割となっているところでございます。
  216. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 私が労働省から資料をいただきましたところ、また今、有配偶者は傘としても四十二年から五十八年と高まっているというお話でした。そのほか、専門的、技術的職業に従事する者も、四十三年が九十三万人であったものが二百一万人にもふえている。教育程度の問題でも、短大卒業や大学卒業が四十三年は七十五万人であったものが五十七年では二百六十七万人にもふえている。そしてさらに勤続年数別女子雇用者構成比の推移は、三十年以上勤続する者も昭和四十三年から比べて八倍にふえている。そして逆に、一、二年とか三、四年でやめる婦人の数は年々減ってきている。そして平均勤続年数の推移も、昭和四十三年には三・六年であったものが五十七年には六・三年にふえてきている。  このように、働く婦人が増加し、既婚者が増加し、そして継続して働く婦人がふえ、高学歴者がふえてきているという実態があると思いますが、労働省、これは間違いありませんか。
  217. 松原亘子

    ○松原説明員 そのとおりでございます。
  218. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 このように実態が変化してきておりますし、婦人労働者、それから婦人全体、それから理解ある男性の意識もどんどんと変化してきているわけです。ところが、差別撤廃条約の批准を目前にしまして、こうした政府の公式の通達文書で、原則は男性、女は収入が三割以上多くなければ男と同じようには扱わない、こういう通達はどうしても改めてもらわなければならないと思います。事務処理、事務処理、もう聞き飽きました。事務処理はいいかげんにやめてもらいたいと思います。何が価値として優先されるべきであるか。個人の尊厳、基本的人権、男女平等、こういうものを尊重し、それに必要な事務処理は、いかに少なく効率的にやるかというものはみんなで工夫をしていけばいいわけです。例えば、どちらか収入の多い者が被扶養者を受け入れるというふうにした場合に、配偶者の所得を申告させることによってそれをチェックすることもできるでしょう。そして、もし不当に悪巧みをするような人がいるとすれば、その段階でそれを処罰することだって十分可能です。真の民主主義、男女平等、私は事務処理の都合によって侵されても構わないという考え方は絶対に認められません。  そこで、大臣にお伺いしたいと思います。今まで私が申し上げましたように昨年も大臣にこの問題を指摘し、大臣は勉強すると言ってくださいました。私はきょうの論戦でも明らかにいたしましたように、歴史の発展と婦人労働者の意識と実情の変化を踏まえて、男女平等を雇用の場で真に実現していくというこの時代に政府が出す通達で原則夫、妻は三割収入が多くなければいけない、これをぜひとも改めていただきたいと思うのです。昔は合理的であり、昔は社会通念にかなっていると思われてきたことでも、時代の進歩とともにそれが時代にマッチしない、国民にマッチしないということが間々あります。国籍法の改正でもそうでした。帰化要件の夫と妻の違いがございましたけれども、それが「配偶者」ということに改められました。そういうことをあわせ考えてみますと、何としてもこの通達を改めるべく、各省連絡協議会というものをぜひとも大臣の方から積極的に取り組みをし、改善のためにお骨折りいただきたいと思いますが、お考えをお聞かせいただきたいと思います。
  219. 竹下登

    竹下国務大臣 昨年、勉強させてください、こう申しました。そのときに政務次官がいい話をしてくれた。それてそのまま政務次官に勉強してもらえぬか、こう言った記憶だけはございます。が、私自身勉強していなかったことは非常に不徳のいたすところだと思っております。  今の問答を私も聞かしていただきまして、大変参考になりました。私が指導的立場にあって連絡会議を開くべきものかどうか、その辺は私も定かにしておりませんけれども、御趣旨をよく吟味して対応してみたいと思っております。腹が立たないようにいたします。
  220. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 先ほど、これは大蔵省の方から話があって各省連絡協議会を開いてこういうような基準を定めましたという答弁もございました。まさに大蔵省がリーダーシップを発揮して、適切な通達をつくっていただくべき立場にあるというふうに思うのですね。ですから、腹が立たないようにという言い方ですけれども、私は別に腹を立てたくて立てているわけじゃないのですね。あるべき真の平等ということで大臣にお骨折りいただきたいということでございますので、もう一回だけ熱意のある御答弁をいただいて終わりにしたいと思います。
  221. 竹下登

    竹下国務大臣 腹を立てようと思って立てておられるとは私も決して思いませんので、そういうお腹立ちのことがないように私どもが努めなければいかぬ、こういう意味で申し上げたわけでございます。
  222. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 終わります。
  223. 熊川次男

    ○熊川委員長代理 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十二分散会