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大月参考人 私、
専売事業審議会の
委員長の
大月でございます。
私
ども専売事業審議会といたしましては、昭和五十五年の十月以降数次にわたりまして、臨時行政調査会での論議もいろいろ参考にさしていただきながら
専売事業の
関係者の方々からいろいろ御
意見を承りました。また諸
外国におけるこの
専売の事業について事例を勉強いたしまして、
専売事業の今後のあり方について慎重な議論を重ねてまいったわけでございますが、去る三月三十日に
審議会の
意見を取りまとめて
大蔵大臣に提出してございます。
その
意見は、要約いたしますと、基調的には臨時行政調査会の基本答申と軌を一にしておるわけでございますけれ
ども、
専売事業審議会と申しますのは
専売事業の
運営に関しまして常時
実情の把握に努めながら随時
意見を申し述べてまいる、こういう機関でございます。したがいまして、行政
改革の理念を強く出されております臨時行政調査会の御
意見とは具体的な問題については若干のニュアンスを異にするということはやむを得ないと思います。しかしながら、私
どもの
立場から見まして、今次の
改革諸
法案は全体として臨時行政調査会の答申及び私
どもの建議の趣旨に沿ったものでございまして、今後の
たばこ産業の健全な
発展を図りながら
財政収入の
安定的確保、それから
国民経済の健全な
発展に資する、そういうような
観点から申しまして適当なものだと考えております。
以下、今次
改革法案を適当と考えております理由について申し述べさしていただきたいと思います。
まず第一に、今次の
改革法案を評価いたします第一の理由といたしましては、製造
たばこの輸入の自由化が図られておるという点でございます。
我が国の
たばこ市場は、御存じのように自由世界第二位の市場規模を持っておりまして、その総消費量は三千億本を超えております。しかし、現状では
専売制度のもとで輸入品の販売数量は六十億本に足りない。
シェアから申しまして二%を割るというようなことでございますので、米国を中心とする諸
外国から強い不満が表明されておるということは御承知のとおりでございます。
これに対しまして、私は、国際社会における
我が国の
立場から考えまして開放経済
体制への適切な
対応が不可欠であると考えます。それで、そういう
意味から積極的に開放
体制を進めていく必要があると存ずるわけでございます。
また、輸入自由化を図る場合の方法といたしまして、いろいろ考えられるわけでございますが、一つには
専売制度を
維持しながら
部分的に自由化を行うという考えもあろうかと思います。しかし、むしろこの際は
専売制度を廃止いたしまして、製造
たばこの輸入の完全自由化を図ること、このことが長期的な
観点で
たばこ産業のために必要であると考えておるわけでございます。
改革法案全体を通観いたしますと、このような
立場に立ちまして製造
たばこの完全な自由化と同時に、
専売制度の廃止という抜本的対策を講じておられるわけでございますので、まず第一に、基本的な問題としてこの点を高く評価いたしたいと思います。
第二の理由でございますが、今次の
改革法案におきましては、
専売制度を廃止いたしまして
特殊会社制度をとっておるという点でございます。これによりまして、厳しい
条件のもとでこの産業が合理的、効率的な企業
経営を行っていく可能性が与えられたと感ずるわけでございます。
外国たばこの輸入の自由化に伴いまして、
外国たばこ製品との
競争の激化が予想されるわけでございますが、これに対抗いたしますのには、現行の
専売制度では不十分であります。どうしても、
コスト意識に基づいた合理的な
経営が最大限可能となるような
経営形態を模索しなくてはいけないわけでございます。このために、現行の
公社形態を変える必要があると思うわけでございますけれ
ども、今後、イギリス、アメリカなどの巨大な国際
たばこ資本に征しまして、自由
競争のもとで
我が国たばこ産業の
維持発展を図っていく、こういう必要を考えますと、どうしてもこの
公社の弱体化に通ずるところの分割あるいは複数の
会社の乱立、こういうことは絶対に避けなければならないと思うのでございます。この点は、
我が国の
葉たばこ問題の
観点から考えましても同様でございます。
そういたしますと、結論はどうなるかと申しますと、
公社の業務を承継する新しい組織は単一であることということが結論づけられると思うわけでございます。しかし、そうなりますとこの組織には独占的な弊害が生ずるおそれがあるわけでございますので、これを避けなければなりません。また、公共的
立場において業務を遂行すべき任務もあわせて課せられなければならないわけでございます。こういう二つの
意味からいたしまして、直ちに
民営化するということは適当でない、私はこういう考えを持っておるわけであります。このように考えますと、現状におきましては、公的関与、労働
関係、業務範囲、投資等につきまして、可能な限り自由度を付与された
政府出資の
特殊会社とすることは適当であると考えるわけでございます。
政府の原案におきましては、
公社を
特殊会社化するとともに、公的規制について大臣認可事項を必要最小限のものにとどめてあります。また、労働
関係におきましては労働三法を適用する、また税制におきましては現在の納付金
制度を改めまして
たばこ消費税制度を採用する、こういうように十分の
配慮が見られ、適切なものと考えるわけでございますけれ
ども、翻って考えますと、喫煙と健康の問題等重要な問題がございまして需要の停滞が予想されるというような、内外ともに厳しい
情勢でございます。そういう
条件のもとで
国際競争に耐えていくことにつきましては、
関係者の非常な
努力が必要なのではないか。
今次
改革によりまして設立が予想されております株式
会社は、当然でございますけれ
ども、今後は、当初は全額
政府出資といたしましても、逐次民間に開放していくことが必要だと思います。もちろん、当初いろいろ不確定要件がございまして直ちにというわけにはいかないと思いますけれ
ども、できるだけ早い
機会に民間に
資本を開放し、合理的な、効率的な
経営ができますように
努力いたすべきものだと考えます。
第三点でございますが、新
制度移行に当たりまして、
たばこ事業関係者に不安を与えることがないように、
実情に即した
配慮がなされておるという点でございます。
改革法案は、この点、製造独占を
維持するという方針をとっております。また、
葉たばこの全量購買制、
指定小売人制、
定価制、こういうものについて、当分の間ではありますけれ
どもこれを
維持するという
措置を講じておるわけでございまして、切りかえに際してはこれはやむを得ないことだと私は考えます。しかしながら、
たばこの事業
関係者がこういうような旧
制度が
維持されておるということに安住いたしまして合理化
努力を怠ることは許されない。そういう
意味で、
関係者の方々の効率化、合理化に対する
努力を
要請したいと思います。
第四の理由でございますが、喫煙と健康の問題に対する世論の高まりに
対応いたしまして、広告宣伝規制、注意表示義務を法定してあることでございます。そういう規制はございますけれ
ども、この喫煙と健康の問題と申しますのは、
たばこ産業にとりまして世界的な問題であります。基本的な、極めて重要な問題でありますので、新しい
特殊会社におかれても、十分にこの健康問題に対する科学的研究を進められて、十分安全な
たばこをつくる
努力をされることを希望したい。それから、
政府の側におきましても、未成年者の喫煙防止の問題とか広告宣伝規制等について、従来以上に
関心を持って御
指導いただきたいと思います。
なお、最後に、塩の
専売法案につきましては、これは従来各種
審議会及び閣議決定によりまして国内
塩産業の自立化を図るという方針が確立いたしておりまして、その
方向に向かって
努力し得るよう公的な、法的な規制をここで決めておるわけでございます。そういう
意味におきまして、極めて妥当なものであろうと存ずるわけであります。
以上、いろいろ申し述べましたけれ
ども、今次
改革の
法案は、新
会社を含む今後の
たばこ産業のあるべき
方向について基本的な枠組みを決めておるものでございまして、これを真に生かしますかどうかということは、二つの問題がございます。
一つは、
政府のサイドにおかれまして、民間の
自主性、創意工夫を最大限に尊重するような適切な法の
運用をお願いいたしたいということであります。それから、新
会社を含む
たばこ事業関係者の
対応いかんということが、この
法律の今後を左右するものだと思います。
たばこの事業
関係者と申しましても、
公社の
職員数は三万九千人に上っております。また、
葉たばこ耕作者は十万、また
販売店数は約二十六万、そういうことであります。その他、機械、資材等の
関連産業の従事者を含めますと、優に百万人を超える大きな産業であると存じます。その背後には喫煙者がございます。これは喫煙者率が四〇%を超えるという大衆でありまして、そこに国民の重要な需要者としての存在を考えなくてはいけません。今度の
改革法案は、これら
関係者のそれぞれの複雑な
立場の調整の問題を含んでおるものでございます。したがいまして、いろいろな多様な
方向性を持っておるものでございますけれ
ども、今度の
改革の主眼ということを一言で要約してみますと、それは
たばこ産業全体の効率化の達成だというところにあると思うわけでございます。私は、
関係者の方々がそれぞれの
立場において効率化への
努力を積み重ねられ、今次
改革案の
目的とした、
たばこ産業全体の調和ある
発展に御協力いただきたいことを希望をいたす次第でございます。
以上、簡単でございますが、私見を申し上げました。どうもありがとうございました。(
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