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1984-06-22 第101回国会 衆議院 大蔵委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年六月二十二日(金曜日)     午前十時一分開議  出席委員   委員長 瓦   力君    理事 越智 伊平君 理事 熊川 次男君    理事 中西 啓介君 理事 中村正三郎君    理事 伊藤  茂君 理事 野口 幸一君    理事 坂口  力君 理事 米沢  隆君       熊谷  弘君    小泉純一郎君       笹山 登生君    田中 秀征君       中川 昭一君    東   力君       平泉  渉君    平沼 赳夫君       藤井 勝志君    宮下 創平君       村上 茂利君    山岡 謙蔵君       与謝野 馨君    上田 卓三君       沢田  広君    渋沢 利久君       戸田 菊雄君    堀  昌雄君       坂井 弘一君    柴田  弘君       宮地 正介君    矢追 秀彦君       正森 成二君    簑輪 幸代君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 竹下  登君  出席政府委員         大蔵政務次官  堀之内久男君         大蔵大臣官房日         本専売公社監理         官       小野 博義君         大蔵省主計局次         長       平澤 貞昭君         大蔵省主税局長 梅澤 節男君         大蔵省関税局長 垂水 公正君         大蔵省銀行局長 宮本 保孝君  委員外出席者         公正取引委員会         事務局経済部調         整課長     糸田 省吾君         行政管理庁行政         管理局管理官  八木 俊道君         厚生省公衆衛生         局結核難病課長 松田  朗君         農林水産省農蚕         園芸局畑作振興         課長      吉田 茂政君         日本専売公社総         裁       長岡  實君         日本専売公社総         務理事     岡島 和男君         日本専売公社総         務理事     西村 忠弘君         日本専売公社総         務理事     森  宗作君         日本専売公社理         事       生平 幸立君         日本専売公社理         事       遠藤  泰君         日本専売公社理         事       丹生 守夫君         日本専売公社理         事       友成  豊君         大蔵委員会調査         室長      矢島錦一郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  委員派遣承認申請に関する件  たばこ事業法案内閣提出第七四号)  日本たばこ産業株式会社法案内閣提出第七五  号)  塩専売法案内閣提出第七六号)  たばこ事業法等施行に伴う関係法律整備等  に関する法律案内閣提出第七七号)  たばこ消費税法案内閣提出第七八号)     —————————————
  2. 瓦力

    瓦委員長 これより会議を開きます。  たばこ事業法案日本たばこ産業株式会社法案塩専売法案たばこ事業法等施行に伴う関係法律整備等に関する法律案及びたばこ消費税法案の各案を一括して議題といたします。  この際、委員派遣承認申請に関する件についてお諮りいたします。  ただいま議題となっております各案につきまして、審査の参考に資するため、委員派遣いたしたいと存じます。つきましては、議長に対し、委員派遣承認申請をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 瓦力

    瓦委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、派遣地派遣の日時、派遣委員人選筆につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 瓦力

    瓦委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  5. 瓦力

    瓦委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。渋沢利久君。
  6. 渋沢利久

    渋沢委員 本関連法案提案に当たりまして、提案理由の概略の説明は受けたわけでありますが、質疑に当たりまして、改めてたばこ関連法案提案をするに至った主な理由背景、そのポイントになる部分を簡潔に要約してまず御説明を承りたいと思います。
  7. 竹下登

    竹下国務大臣 御質疑ありがとうございます。  今渋沢さん、いわゆる専売改革法案提出背景とその概要について端的に申し述べる、こういう御趣旨でございます。  たばこ専売制度、それから専売公社制度、これは長い歴史の中で財政収入確保のために大変寄与をしてきたことは御承知のとおりであります。しかしながら時代の変遷、環境変化等背景としまして、それの見直しの必要性もまた一方とみに高まっておる。  こうした状況を踏まえて、おととしの七月に臨時行政調査会から出ました行政改革に関する第三次答申の趣旨に沿いまして、たばこ事業関係者等との意見調整を十分図ってまいりながら、政府部内において検討を進めてきたわけであります。その基本認識は、開放経済体制を志向する我が国が、そういう開放経済体制というのをある意味における国是とする限りにおいて、いつまでもたばこ事業をいわば閉鎖的な状態に置いておくということは適当ではないではないか。  そこで、たばこ輸入自由化に踏み切りますとともに、一方、これと並行して、専売公社経営形態を自由な競争に耐え得るものに改めていくという必要が生じます。そういう認識のもとで、改革法案を取りまとめて御審議をいただくという手順になったわけであります。  だから基本的な柱は、まず一つには、開放経済体制に即応する等のため輸入自由化に踏み切ることとして、このためたばこ専売制度を廃止し、たばこ専売法を、御審議いただくたばこ事業法案に移行していくわけであります。  それから二番目には、国際競争力確保という観点から、専売公社を、合理的企業経営が最大限可能な特殊会社に改組する。これを法律の上で言えば、日本専売公社法が、御審議いただく日本たばこ産業株式会社法案に移行していく。今お尋ね提出背景法案概要は、こういうことになろうかと私は思います。
  8. 渋沢利久

    渋沢委員 自由化に踏み切った経緯について簡単な説明があったわけであります。開放経済体制を志向するという政府基本的な方針にかかわって、積極的にそのような開放体制たばこ産業について行うという側面はわかったわけでありますが、すべての産業について同様でありますけれどもたばこ産業輸入自由化という、自由化体制を通して起こり得る日本たばこ産業関連者への影響というものは、当然それぞれに深刻な課題を持っているというふうに思うわけであります。そういう自由化日本国内産業に与えるマイナス要因というものについてはどのようにお考えになっておられるのか、受けとめておられるのかということを次にお尋ねをいたします。
  9. 小野博義

    小野(博)政府委員 お答え申し上げます。  製造たばこ輸入自由化と申しますものは、我が国市場におきまして国産品輸入品がいわば対等立場競争を展開することを意味しておるわけでございまして、その意味におきまして、先生指摘のように我が国たばこ産業に何らかの影響が及ぶことは避けられないものだというふうに考えておる次第でございます。したがいまして、今回の改革に際しましても十分な対応策を準備することが必要であるわけでございますけれども、その基本といたしましては、たばこ産業の中で中心的な役割を担っております日本専売公社を、当事者能力が付与された株式会社形態に改組する。そして輸入品との自由な競争に耐え得るような経営形態とすること。これによりまして、労使が一体となって率先して経営合理化に取り組み、輸入自由化影響をみずからの合理化努力によりまして可能な限り吸収するように持っていくことが期待されるところでございます。  今後は、輸入自由化という新しい局面のもとにおきまして、新会社に限らず、耕作者も含めましたたばこ産業全体として一層の経営効率化に努め、みずからの自助努力によりまして将来の展望を切り開いていくことが求められるわけでございますけれども、そのための基本的な枠組みは、今回の改革法案によって整備されているものというふうに考えております。
  10. 渋沢利久

    渋沢委員 いろいろ尋ねていきますけれども、その前提として幾つかの状況把握お尋ねしておきたいと思います。  たばこ国内需要停滞傾向ということが指摘をされているわけでありますが、具体的にそれはどういう趨勢になっておるのか、何が理由で、どういう停滞状況というものが国内で、たばこ需要の中で発生をしているのか、まずこの辺を伺います。
  11. 長岡實

    長岡説明員 お答え申し上げます。  我が国におけるたばこ消費傾向と申しますか、需要傾向につきましては、これは国際的にもそういう傾向がございますが、極めて大きな流れといたしましては、昭和四十年代はおおむね五%ないし六%の年率需要伸びておったわけでございますが、五十年代に入りましてそれが一%程度という微増の状態になっております。これが大変大きな流れでございます。  最近時点の傾向数字で御説明申し上げますと、昭和五十八年度の国産紙巻きたばこ数量は、五月一日に定価改定をいたしました影響もございまして、五十七年度よりも四十二億六減りまして三千六十億本になっております。これは対前年比で申しますと一・四%の減でございます。一方、輸入紙巻き数量の方は、五月一日に値下げが行われまして、一箱十円の値下げでございますが、それと取扱店の数の拡大等影響によりまして、五十八年度においては五十七年度よりも約九億本ふえて五十七億本になっております。これは前年比で申しますと一八%という大きな伸びになっております。五十九年度につきましては、国産紙巻き数量の目標を三千七十億本としまして、それから輸入紙巻き数量の方は七十億本程度と見込んでいるところでございます。  お尋ねの、近年の需要停滞原因として一体どんなことが考えられるかという点でございます。いろいろ考えられますが、一つ成年人口伸び率年平均一%程度と余り伸びていないということ。それから、全体としての喫煙者率が、基調として減少の傾向をたどっておるということ。これには、世界的に喫煙と健康の問題その他の影響もあろうかと存じます。それから、一人当たりの喫煙本数についても、従来に比べますとやや頭打ちの傾向がございます。そのほか、過去のように大幅な経済成長時代ではないということ、その他いろいろございましょうし、また輸入たばこが一方においてふえておるという傾向もございましょうが、そういったようなもろもろの要因がございまして、現在需要伸びは芳しくないというのが率直なお答えでございます。
  12. 渋沢利久

    渋沢委員 今の総裁の答弁の中にもありましたけれども、このような趨勢日本国内にとどまらずということで、世界的な趨勢としてはおおむね同じような理由で、同じような停滞傾向を示しているということですか。
  13. 長岡實

    長岡説明員 我が国の事情と世界的な傾向とはおおむね類似しておると申し上げてよろしいと思います。  先進諸国販売数量伸び等を見ましても、先ほど私が、我が国における最近の平均伸び率が一%前後まで下がっておるということを申し上げましたが、一九七五年から一九八〇年、この五年間の平均伸び率を見ますと、年率でございますが、アメリカが〇・九%、イギリスがマイナスの一・七%、フランスが〇・二%、西ドイツが〇・五%、イタリアがちょっと高こうございまして年率二・一%。しかし、全体として我が国とほぼ同じような伸びになっております。その需要停滞理由も、先ほど申し上げたような、我が国の場合とほぼ同じではなかろうかというふうに考えております。
  14. 渋沢利久

    渋沢委員 国内たばこ販売量の中で、外国たばこの占める割合、シェアはどのくらいのパーセントになっていますか。ここ数年、四、五年の状況でいいです。
  15. 長岡實

    長岡説明員 お答え申し上げます。  昭和五十五年度が一・二%のシェア、五十六年度が一・四%のシェア、五十七年度が一・五%のシェア、五十八年度が一・八%のシェア、五十九年度に入りましてほぼ二%といったところでございます。
  16. 渋沢利久

    渋沢委員 国の内外においてたばこ消費傾向停滞の一途をたどる、そういう厳しい環境が国際的にある、こういう状況説明されたわけでありますが、一方、世界たばこシェアの六四%を数社の国際たばこ資本企業独占をして寡占化状況になっている。私も不勉強ですが、法案質疑に当たって若干調べてみますと、大変巨大な国際たばこ資本というものが存在して、世界たばこ市場の寡占的な、独占的な状況を特徴づけているというものがあると思うわけであります。これはどこに原因があるというふうに考えますか、こういう特性を生んでいる背景というのは。
  17. 長岡實

    長岡説明員 御指摘のとおり、最近の傾向を見ますと、世界たばこ市場巨大たばこ資本寡占化傾向が進んでおるというふうに見てよろしいかと存じます。  それはどういう理由であろうかということでございますが、たばこと申しますのは、これは国際商品でございまして、例えば酒の例をとりますと、ウィスキーもあれば、日本には日本酒もあるといったような各国の特色があるわけでございますけれどもたばこは酒に比べまして、若干の特色はございますけれども、いわば国際共通商品である。アメリカでつくったものがどこへ出ていってもそのまま通用するという商品でございます。  そういったような性格の商品の流通の中におきまして、やはり何と申しましても、激烈な販売競争が展開された上でシェアが決まってまいるわけでございますけれども、先ほど申し上げましたような世界巨大資本はそれだけ強い競争力を持っておる。したがいまして、開放経済体制下において、私ども日本たばこ産業維持発展を図ってその競争に耐え抜くためには、やはりそういう巨大たばこ資本に対して対等競争力を持つように努力しなければならないというふうに考えております。
  18. 渋沢利久

    渋沢委員 御指摘のように、世界たばこ資本というものが巨大資本にならざるを得ない条件というのがある。葉たばこの熟成のためには長期間、大量の原料保有を不可欠とするとか、あるいは大量生産大量販売というメリット、大規模メリットというものを事業の中で一つの重大な要件とせざるを得ない。あるいは化粧品等にも言えることだけれども、莫大な広告宣伝費を投入するという販売要件商売の上での不可欠の条件になる。幾つかの条件によってこの事業は巨大な資本を持って大規模に展開せざるを得ないという特性を持っているような感じを受ける、今の総裁の御説明もそういう趣旨であろうと思うわけであります。それはそういう認識でよろしいですな。
  19. 長岡實

    長岡説明員 お説のとおりであろうかと存じます。
  20. 渋沢利久

    渋沢委員 それから、日本たばこ消費が非常に停滞しているということはわかったんですけれども、にもかかわらず世界たばこ消費量の中で日本は意外と高い消費水準を持っている。有数のたばこ消費国であるというふうにもデータの上では言えるのではないかと思うのですが、その点は具体的にどうでしょう。
  21. 森宗作

    森説明員 お答えいたします。  世界市場寡占化ということでございますが、確かに先生指摘のとおり、大企業による寡占化が進んでおりまして、専売公社におきましては世界市場におきまして——これは私どもの資料では世界四十五カ国のシガレット販売数量でございますけれども、その中で公社は一九八二年、昭和五十七年現在で一三・五%というシェアになっております。
  22. 渋沢利久

    渋沢委員 先ほど大臣は、開放経済体制を積極的に志向するというのが国の立場だ、そういう意味たばこ輸入自由化に積極的に踏み切った、もうそういう時期に来ている、こう御説明になったわけであります。しかし、しからば自由化に伴う国内たばこ産業関連者不安材料マイナス要因、デメリットはということの問いに対しては何のお答えもなかったわけでありますが、大臣の御説明のほかに、今お尋ねいたしまして一つの輪郭、状況が出てまいりますのは、世界的にたばこ消費は落ち込んでいる、こういう状況がある。しかも消費が全体として健康問題その他そういう要因で落ち込んでいるという状況の中でいうと、これは一層その趨勢は変わらないという見通しを組み立てなければならない状況にある。そういう意味で、たばこを売る立場、これで商いをする立場でいえば、事態は深刻な環境にある。つまり、言葉をかえて言えば、たばこ商売をする世界たばこ資本たばこ企業にとっては、今までもそうであったように激烈な競争が既にあり、これからもそれ以上にますます激烈な競争が展開されるというその環境条件の中に立たされておる、こういうことが非常に明らかになってきていると思うのでございます。  それからさらに、そのたばこ資本というのは、これは事実が示すように、巨大な資本力を駆使して、国境を越えて商いを展開をする。こういう力なしには展開し得ない特性を持っており、現にシェアの大半を四社か五社のたばこ国際企業独占をするというような寡占化趨勢を強めている、こういう特徴がある。こういう国際環境たばこ産業をめぐる内外の情勢の中で、開放経済体制政府方針であるからしてやるべきときが来たというだけでは、これは大変納得のいく説明にはならないと思うわけであります。  なぜ今自由化なのか。それぞれの産業分野で外圧がありまして、それぞれの産業分野で悪戦苦闘して、政府もてこになり支えになり、日本産業を育成するという立場に立って苦闘しておられる、大蔵大臣も常にその先頭に、矢面に立って奮闘しておられる、こういう状況であります。たばこ自由化については、こういう状況の中で日本たばこ産業をより大きく発展をさせるためにも、積極的に自由化に踏み切ることのメリットというものが見えない、よくわからない。これは相当なものがなければならないし、相当な戦略と展望がなければならないはずである。確かに状況環境は厳しい、悪条件を持っているけれども、なおかつ自由化に踏み切ることによって日本たばこ産業の前途を、大きな展望のもとに活路を開くというものがなければ、これだけの転換、自由化の英断をやるという政治的な理由がない。この辺がまだよく御説明いただけでない感じがいたしますので、大臣並びに総裁からそれぞれの立場でひとつ詳しい説明をお願いしたい。
  23. 竹下登

    竹下国務大臣 すべての産業開放体制下にあってその競争力を持っていくという歴史をひもといてみましても、その中にはいろいろな歴史的経過の中をくぐり抜けて、そして競争力ができていくわけであります。  昭和三十八年でございましたか、たまたま私は通商産業省の政務次官をやっておったことがあります。そのときに自動車のいわゆるノックダウン方式というようなものが外国から言われた際に、これは我が国自動車産業にとって致命的な問題であるから、どうしてもそういう自由化方向を今日の状態で志向するわけにはいかない。そこで、競争力をつけるために、開発銀行等体制金融というようなものをつくったりしてこれに対応しようとした当時と、ひょっとこの間比較してみましたら、ちょうど当時の自動車生産台数が五万三千台でございました。今一千万台を超しておる。今度は競争力の点で見ますと、これも私も一日で割ってみましたら、日本自動車が毎日五千台アメリカへ出ております、アメリカだけを対象にして。それから、アメリカから入ってきますのが十一・五台と、二年分を平均しますとちょうど一日十台でございます。十台というと、あのおじさんとあのおじさんとわかるぐらいな数字で、片方は五千台。ああ、競争力というものが随分それなりについたものだな、こう思いました。  しかし、それだけの競争方をつけなければならぬというのはなぜかといえば、やはり一つにはエネルギー源を全く持たないと言っていい日本の国において、好むと好まざるとにかかわらず、エネルギーの大宗をなす石油というものは全部輸入に頼らなければならぬ。それをあがなうための資金は、それに見合う輸出というものが必要だ。でございますから、今度考えてみますと、経常収支黒字になる、なかんずく貿易収支で大きな黒字だ。ところが、これも計算してみますと、ちょうどその三分の一分の黒字原油価格の下落、すなわち、かつては我が方から払うべきであったものを、それだけ少なく払えば済むようにということで、そういう状態になっておる。したがって、自動車などに例えたのは必ずしも適切ではないかとも思いますが、日本の国というものがいわば貿易立国としてよって立つ基盤が、開放体制の中に初めてあるのではないか。  しかし、どこの国にも共通して言えるのは、いわゆる農業問題がある。これについては、どういたしましても完全なる開放体制というものは困難な諸要素がある。その農業問題の観点から見ますと、我が国には、たばこ産業ということになりますと、何としても約十万の耕作者の方がいらっしゃる。販売網では二十六万でございますか、小売店の方がいらっしゃる。そういうことをかれこれ勘案して、ガットでありましょうとOECDでありましょうと、そういうところで開放経済を主張する我が国に対して相手方が求めてくるものは、今ならまだ勝てるというものをどうしても、強硬といいますか、強く求めてくる。その一つたばこではないかというふうにも私は考えてみるわけであります。  しかしながら、確かに、耕作者を持ち、そして価格の高いたばこ原料葉というものをもとに今日まで来ておる日本専売公社たばこ産業というものでございますけれども、私どもかれこれ総合して勘案するならば、日本人の知識水準技術水準、そして専売公社といえば相当なものであって、これがまた分割・民営となれば問題が多かろうと思うわけでございますけれども、今度のような形でもってこれに対応していくならば、それは開放体制のあらしの中であろうとも、競争力を持ち得る基盤は今日存在しておるではないかという観点に立って、なかんずく専売公社総裁中心に、あるいは各党の関係者皆さん方ともお話をしながら、耕作者団体あるいは耕作者の方々の理解と協力を得ることができるという状態にまで機が熟した。小売の方ももとよりでございます。あるいは今日専売公社というのは、労使関係がそれこそ世界最高と言うとちょっとオーバーでございますけれども、先般のサミットヘ行ってみましても、労使関係はどだいほかの国は日本と比べものになりません。これは模範でございます。どうしたらあんな労使関係ができるか教えてください、竹下さん、こういうような感じすらあるぐらいでございますが、最高労使関係にあるのじゃないか。そういう関係団体等のたび重なる協議の中にある種のコンセンサスができて、今日に至った。だから、技術力とかいろいろな問題が残ろうとも、国際競争場裏にあって、それは五千台と十台というような自動車の問題とは別といたしましても、私はこれに対応することは可能ではないかという判断に至ったわけであります。  いささか話が長くなりましたことをおわび申し上げます。
  24. 長岡實

    長岡説明員 大臣からのお答えに尽きておると思いますけれども開放経済体制下においてたばこ輸入自由化に踏み切るという問題は、大きな流れとしては私どもはやはり受けとめざるを得ない方向ではなかろうかと考えております。ただ問題は、自由化を通じまして外国からいろいろの物が入ってくる、そして激烈な競争が展開されますときに、私どもの方に備えがなければ、我が国たばこ産業がおかしくなってしまうということでございます。  その観点から考えますと、十万戸近い葉たばこ耕作農家、それから二十六万を超えるたばこ小売店、こういったような面に大きなショックを与えないようにしながら、どういうふうに制度改正を考えていくかという点が第一点でございます。この点につきましては、また御質問に応じてお答えを申し上げることになると存じますが、基本的には葉たばこの面積や価格の決定方式とかあるいは全量買い取り制度といったような制度が維持されておりますし、販売店につきましても、指定制、定価制等の考え方が基本的に維持されておるわけでございます。  そこで問題は、その中核的存在として日本たばこ産業を支えていかなければならない私ども日本専売公社がどうなるかということでございます。先ほど御質問にもございました世界たばこ巨大資本による寡占化傾向についてのお答えの中で、私は一つ重要なポイントのお答えを忘れておったのではないかと思いますが、資本力が強いということの一つの別の表現かもしれませんが、たばこ、なかんずくシガレットのようなものは、大量生産、いわゆる規模の利益というようなものが非常に大きな意味を持つわけでございまして、そういう意味で大きな企業がだんだんに伸びていっている。幸いにと申しますか、現在の私どもの営業規模といいますか販売規模は、世界巨大資本に伍していけるぐらいの規模を持っております。今のところ世界でビッグフォアと申しますか、非常にずば抜けて大きなたばこ企業が四つございますが、私どもはその三番目に位置しております。そういったようなことで、この製造規模を維持させていただくならば、すなわち分割でなくてこのままの状態で移行させていただくならば、葉たばこの問題あるいは小売店の問題等も考えながら、労使力を合わせて経営合理化に取り組みながら努力することによって、何とか日本たばこ産業を維持し、発展させていけるのではないかと考えておる次第でございます。
  25. 渋沢利久

    渋沢委員 最初の大臣の御説明を要約すると、開放経済に向かって進まなきゃならぬという立場がある、臨調の答申もある、それでやったという、非常に簡潔といえば簡潔なんですが、積極的な戦略、たばこ産業発展のプログラム、決意、そういうものとは全く無関係に、受け身の対応を思わせるだけの答弁があった感じがいたしましたので、幾つお尋ねをしたわけであります。それに対してまた大変具体的なお答えがありましたけれども、おおむね自動車の話でありまして、幾らたばこ法案だからといっても、きょうは煙に巻くような答弁はなさらぬで、率直にいろいろ意見を述べてほしいと思うのです。お話にちょっとありました民営の問題とか労使問題とか、そういうこともきょうは少し具体的にこれから逐次お尋ねをしていきたいと思うのです。  私が先ほどお尋ねいたしましたのは、今総裁も言われるように、これから世界たばこ競争に生き延びていくためには、自由化というこの環境の中で、大変厳しい受けとめ方をして、今度の制度改正を通してそういう環境に本当に対応できるような仕組み、システム、組織、そのプログラム、体制が一体できるのか。今総裁はまさにその体制づくりが一番大事な部分だとおっしゃったわけですが、本当にそう言えるかどうかということ、その解則がこの委員会の今度の法案審議の課題だろうと思うわけであります。しかし、幾つか疑点があるわけでして、逐次お尋ねもしていきたいと思います。  一つは、外国たばことの販売競争が激しくなることが予想されるという状況の中で、現行の関税率の維持ということについてどういう考え方、方針でありましょうか。あるいはさまざまな販売条件、表示等の競争条件の整備というような課題。やはり自由化とはいいましても、この大きな転換を効率的に、漸進的に、安定的に行っていくために、関税率を初めとして必要な対応というものは欠かせないと思うわけでありますが、どういう対応を考えておられるのか、用意しておるのかということを一点お尋ねします。
  26. 小野博義

    小野(博)政府委員 お答え申し上げます。  たばこの関税につきましては、昭和五十八年度の改正におきまして、国内における大変困難な事情にもかかわりませず、自由貿易体制を維持強化するという見地から、米国並みの水準まで大幅に引き下げたところでございます。すなわち、従来三五%の関税率でございましたものを従量、従価合わせて従価換算二〇%ということで米国並みに引き下げたわけでございますけれども、この引き下げ措置につきましては、いわば我が国がとり得るぎりぎりのものでございまして、さらに最近の輸入たばこ販売数量は増加傾向にあるため、これ以上の関税引き下げにつきましては私どもとしては困難であると考えているところでございます。したがいまして、五十八年度の関税の引き下げ措置につきまして、今回の流通面における自由化措置とあわせますと、我が国たばこ市場の開放については一段と促進されたということでございます。
  27. 渋沢利久

    渋沢委員 先ほど来幾つお尋ねしたように、激烈な競争が予想される。そういうものに打ちかっていくための今考えられる対応というものは何か。今のお話では全く答弁になっておらぬ。やはり今後さまざまな競争が予想される。予想すべきことですから余り無責任に推定はできませんけれども、細かいことをちょっとお尋ねしますと、例えば外国たばこ国内販売について、その販売価格とかマージンとかいうものは、特定販売業者と小売業者との間の任意の自由な契約にするという趣旨になっているのですね。そういうことの中で外国企業日本たばこと比較をして有利な販売環境、体制をつくるために、マージンの点あるいは価格の点、その他の点で積極的な対応をしてくるということも想像される、推定される。販売業務の上でかなりの混乱を起こす。例えば起こさないという保証はありますか。
  28. 小野博義

    小野(博)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生指摘ございましたように、今回の改革に伴いまして、小売定価につきましては大蔵大臣の認可にかかわらしめるところでございますけれども小売人マージンあるいは卸売人マージンにつきましては、一般の商品と同様、小売人あるいは卸売人と新会社あるいは特定販売業者との契約によることになろうかと思っております。  ただ、現在小売人マージンにつきましては、国産品について一〇%、外国品について八・五%という数字になっておりますけれども、この辺がどうなるかは、今後外国メーカーあるいは特定販売業者の営業戦略によることでございまして、まさに先生がおっしゃいましたように、その危惧が全くないということはない。そういうおそれが考えられるということはあるわけでございますけれどもたばこという商品小売マージンは、国際的に見ましても大体我が国の市場とおおむね同様の状況にあるようでございます。したがいまして、極度の混乱が生ずることはないのではないかと考えております。
  29. 渋沢利久

    渋沢委員 これは答弁としては大変不満なんですが、そこの部分で入りますと大変路地が細くなってまいりますので、いま一度大きな柱に話を戻しまして質問をしていきたいと思うのです。  経営形態について、さっき大臣も民営のことに一言お触れになりました。既にこの前の当委員会で大蔵大臣が民営についての一定の見解を表明されておるようでありますので、私からも改めてお尋ねをしておきたいと思うのですが、先ほど申し上げたように、大変厳しい環境の中で日本たばこ事業の新たな出発の体制づくりを行うとすれば、これは非常な決意と従来の問題点をえぐって制度改革が必要だろうとある面では思うわけです。そういう中でまず基本的に、専売公社は将来民営にするんだ、それを前提にして当分の間特殊法人としての新会社を発足させるんだという考え方などはとんでもない発想だと私は思っているわけであります。  それで、幾つか具体的に、民営が持っているむしろ大変困難な課題、間違った選択という部分について指摘しながらお尋ねをしたいと思うのですけれども、まず改めて大臣たばこ事業における民営についてどうお考えになるか、お尋ねします。
  30. 竹下登

    竹下国務大臣 まず一つは、市場の自由化ということになりますと、結局輸入自由化とは何ぞや、すなわち我が国輸入業者が自分の責任と自分の計算と、危険負担とでも申しますか、自己責任において外国から製造たばこ輸入して国内販売できるというものであるから、したがって製造たばこ輸入と販売の機能が今のように国に専属しておるということになりますと、いわゆる輸入自由化という問題は、まさにそういう法体系からいえば不可能である。そこで今度の改革どうなっていくわけでございますが、いわゆる完全民営化というものを念頭に置いて考えますと、先ほど来御意見にもございますし、私の考え方をお述べした際にも申し上げましたが、割高な国産葉を抱えた現状のもとにおいて、国際競争力の点からやはりこれは著しく問題があるという問題意識をまず持っていなければならぬ、したがって完全民営化は適当でない、こう基本的に、まずそこに一つ考え方を置いております。  したがって、今次の改革でそういう割高な国産葉を抱えた状況のもとでたばこ輸入自由化を行いながら、なお今巨大産業のワン・オブ・セムというお話もございましたが、我が国たばこ産業が国際競争力確保して健全な発展を期するためには、やっぱり専売公社政府出資の特殊会社ということに改組して製造独占権を付与する以外にないという判断あるいは決断とでも申しましょうか、これに達したわけであります。したがって今次改革法案におきますところの特殊会社という経営形態、また製造独占、これはいずれも完全民営に至る経過措置として位置づけられておるというものではまずない、これが一番はっきりしていなきゃならぬことではないかというふうに私は考えておるわけでございます。
  31. 渋沢利久

    渋沢委員 その点については総裁からも意見を伺っておきたいと思うのですけれども、この民営化によって独禁法の適用を受けて分割の可能性が強い。これは先ほど来指摘いたしましたように、たばこ産業特性として、規模メリットを不可欠の要件とするこの事業の中で、この要件が損なわれるおそれがある。国際競争に、巨大な国際たばこ資本との競合に打ちかつ条件を損なう、こういう趣旨からだけでも完全民営というようなことはあり得ない。  あるいは、たばこ事業というものが持っている特殊性の一つに、やはり喫煙と国民の健康という課題もある。これは営利事業、純粋に利潤を積み上げることに最大の目的を置いた民営企業の中で、この部分についての一定のチェック、対応を求めることは限界がある。これは健康問題にとどまらず、公社制度自体がそうであるように、公共性と企業性の調和の中でこの事業が推し進められてきた。今、その企業性をどう高めるかという課題の中で制度改正が議論されているということではあっても、本来この事業が持っている社会的な、公共的な要素というものを無視するようなことはあり得ないというふうに思うわけで、特にそういう部分では、さっき大臣も言われたように、この事業が国や地方の財政寄与という、材としての役割を越えてさまざまな、例えば地域経済との融合、あるいは安定雇用への貢献とか、あるいは良質のたばこを開発するための高度な研究開発、技術開発、これは公社はかなり進んだ力を持つに至っているというふうに思いますけれども、やっぱりこれはある面では公社ならではという、そういう関係の中でつくられた要因がある。このたばこ事業が持っている一つの側面というものを完全に放棄して完全民営というようなものは、将来、第一に挙げた、あるいは大臣の御指摘になった規模メリットといいますか、大規模性という要因を除いても、これはやはり到底避けられない課題だというふうに私は考えるわけであります。  幸い大臣からは、単に完全民営へ向かってのワンステップとしての新会社ではないということを明確に位置づけて、民営を否定するという立場でこの法案提案があることの趣旨説明が明確にされました。竹下大臣の最近の御答弁の中では大変際立って歯切れのいい答弁と伺って、その部分については大変共感を示すわけでありますが、総裁も同様の所見であるか。  同時に、そういう前提で今度の新しい会社組織を考える上で、先ほど私、大臣にもお尋ねいたしました中で必ずしも明確に触れられなかった、積極的に日本たばこ産業を大きく世界的な規模で展開をしていく戦略、そういうものを目指してやる経営の体制一これから細かいことをお尋ねしていきますが、経営形態と言い切れるような案に今の案がなっておるのかどうかということについてのお考えを、総裁からもまず伺っておきたいと思います。
  32. 長岡實

    長岡説明員 お答え申し上げます。  将来の私ども経営形態の問題でございますが、規模の利益が大事であるということ以外に、渋沢委員が御指摘になりましたような、例えば喫煙と健康の問題あるいは未成年者の喫煙の防止の問題、あるいは広告宣伝についての節度あるビヘービアと申しますか、あり方その他から考えまして、完全な民間企業として、利潤追求だけを考えておればいいという表現は適切かどうか存じませんけれども、そういうことだけを考えてやっていけないい企業体よりは、公共性を持ったものの方が望ましいであろうということは御指摘のとおりでございます。  ただ、ぎりぎり詰めてまいりますと、世界各国の中には、民間企業たばこ事業が営まれながら、やはりそういう問題について別の角度からいろいろ規制を行われている国もあるわけでございまして、そういう点から申しますと、本当にせんじ詰めていった場合には、やはり大蔵大臣が言われましたように、厳しい国際競争に勝ち抜いていくためには、何と申しましてもせっかく三千億本を超える規模を持っております今の私ども経営体を、分割することなく一つ企業体として、合理化を図りながら厳しい競争に耐えていくということが一番大事なポイントではなかろうかと存じます。それはやはり公共企業体の専売公社が、制度の改正になりましても、純然たる民間企業と申しますか民営ではなくて、政府関係の特殊法人の中に一定の政策目的に奉仕する存在として位置づけられまして、それによって独占的な製造が維持できるというところが一番ポイントではなかろうかと思うわけでございます。  したがいまして、結論を申しますと、私どもといたしましても、今度の制度改正が分割・民営へのステップではなくて、新しい事態に対処していく上において、日本たばこ産業の中核的存在として、国際競争に負けないように頑張っていくための制度改正であるというふうに理解をいたしておるところでございます。
  33. 渋沢利久

    渋沢委員 おとといの本委員会の中で、新たな経営形態についての政府との今後のかかわり方等について、幾つかの見解が政府側から示されているわけであります。株式の放出に絡んで、株主権の行使という問題については小野監理官が答弁をしているようですけれども、その要約を改めて聞いておきたいと思います。
  34. 小野博義

    小野(博)政府委員 お答え申し上げます。  日本たばこ産業株式会社の株式につきましては、日本たばこ産業株式会社がいわば一定の政策目的を持った会社といたしまして適切に運営されることを担保するために、恒久制度として二分の一以上の政府保有義務を課しているところでございますし、また、たばこ産業株式会社経営が安定し、国内たばこ産業の安定のめどが立つまでの間、すなわち当分の間につきましては三分の二以上の株式の保有義務を附則で課すことにしておりまして、それによって政府が十分な監督ができるということを担保しているわけでございます。  なお、この前お答え申し上げましたのは、会社の株式の放出につきましては、それぞれの特殊会社の置かれた状況によりまして一概には論ずることはできないものであるけれども、いずれにいたしましても、今回のたばこ産業株式会社法案におきましては国会の議決を要することにしておるということをお答え申し上げたところでございます。
  35. 渋沢利久

    渋沢委員 適切な事業運営がされるために、いわば株主権を背景に積極的に関与していくという趣旨が述べられておるように思うんです。経営の安定的な状況をつくるまで株の保有を云々という部分は別といたしまして、株保有の、株主権の積極的な行使で積極的な関与、今のあなたの言葉で言えば、適切に事業運営がされるように関与していく、こういう趣旨を言われたわけですね。
  36. 小野博義

    小野(博)政府委員 お答え申し上げます。  先日の本委員会で申し上げたわけでございますが、やや私の言葉が不足しておったかと思います。政府の株主としての立場は、いわば経営基本方針確保あるいは経営の健全性の確保ということを通じまして出資金の安定を図ることにあるわけでございますけれども、一般の民間企業あるいは特殊会社等に対する政府の関与のあり方といたしましては、いわば後見的、間接的な監督からかなり詳細にわたる監督まで、いろいろな段階があると考えられるわけでございます。私が積極的と申し上げましたのは、そういう後見的、間接的監督にとどまらず、このような一定の政策目的を持った株式会社でございますので——本来、通常の業務に関しましては会社経営の自主責任体制というものを最大限尊重していく。そのために、いろいろ公的規制というものはできるだけ緩和し、最小限のものにとどめているということが今回の基本方針でございますけれども、一定の政策目的を持った会社であります以上は、場合によってはその会社経営基本方針に対して軌道修正を求める、いわば間接的、後見的監督にとどまらない場合もあり得るという意味で申し上げたわけでありまして、やや言葉足らずの点があったかと思いますので、この際補足させていただきます。
  37. 渋沢利久

    渋沢委員 これはとても納得のできる説明ではないですね。  今度のたばこ改革法案の原則というのは、一般商法に基づく特別法だというふうに理解しますが、そういうことですね。
  38. 小野博義

    小野(博)政府委員 おっしゃるとおりでございます。
  39. 渋沢利久

    渋沢委員 だとすれば、この法律に記載されてないものは、原則として一般商法の適用によるというふうに理解するのが当然ですね。
  40. 小野博義

    小野(博)政府委員 政府関係特殊法人である株式会社ではございますが、今先生がおっしゃいましたように、原則的には商法に基づいて設立されるわけでございまして、それに対してたばこ産業株式会社法において所要の規制を加えているわけでございますから、それ以外の部分については、御指摘のとおり、一般商法の原則によって律せられるものだと考えております。
  41. 渋沢利久

    渋沢委員 ということであれば、商法の原則というのは所有と経営の明確な分離、こういうことに相なるわけでありまして、これをどう理解しておるのか。あなたの言うように、株主権を背景にして、政府基本方針を貫くために積極的に関与するというようなことが、この法改正のどこに書いてある。何を根拠にしてそんなことを君は言う。
  42. 小野博義

    小野(博)政府委員 お答え申し上げます。  積極的と申し上げましたのは、先ほど申し上げましたように、いわば後見的、間接的な監督規制にとどまらないという意味で積極的と申し上げたので、用語としては必ずしも適切ではなかったというふうに考えておるわけでございます。  株主の権限につきましては、商法上、例えば定款の変更の議決であるとかあるいは取締役、監査役の解任の決議であるとか、あるいは合併、解散の決議であるとかいうように特別決議によるものもございますし、それ以外に、一般に役員の選任であるとか、そういったようないろいろな権限と申しますか、株主総会の権限が商法上に規定されておるわけでございます。これらのものにつきましては、当然株主としての立場から行使されることになると思っております。
  43. 渋沢利久

    渋沢委員 今回の提案趣旨は、政府や議会の介入、統制を極力免れて、自主的な経営の体制をつくり上げるということに趣旨があることは、提案者のあなた方が一番御承知の上で説明をしておられることである。しかも、どこまでが実際自主的で、企業性、自主権、当事者能力と言うけれども、これからお尋ねしていきますが、まだ細かい点では定かでない状況の中で、株主権の行使というのは、場合によれば積極的に強権を、力を示して影響を与えますよ、そういうこともあり得ますよということを言うのはまことに適当じゃないと思う。何の根拠もないです。法の趣旨にむしろ反するのです。そういうことじゃないのか。  大臣お尋ねをしていきます。やはりこういう八十年にわたる長い日本の専売事業の制度改革に当たって、新たな経営形態、しかも民営のワンステップとしての一時しのぎの経営形態ではなしに、製造独占の恒久化、この特殊法人の恒久的な位置づけ、しかもこれをもって内外たばこ産業の厳しい環境に対応していく、こういう重大な法改正の提案をしている。こういうことの中で、これはすべて明確にできる範囲のものは明確にして審議を尽くす責任がお互いにある。  この経営形態の部分におけるポイントは、どこまで自主性を、当事者能力を、つまり厳しい環境の中で、本当に言葉の上でなしに対応できるような組織をつくらせるかということにかかっているのですね。あなたは、まずこの間の発言を取り消しますか。あなたの話は、いや、これはこの法の趣旨からいってもさまざまな政府などの介入、統制は最小限度に抑えるんだ、これが趣旨。けれども、——けれどもの方にあなたの姿勢はもう明らかに重点がかかって、しかも積極的な介入ですね。放言をしているように私には響くのです。これは撤回しますか。何が中心なんですか。この経営形態における中心課題は何なのですか。統制に問題があるのですか、政府の関与権に問題があるのですか。我々は議会みずからの関与権をある部分、かなりの部分で放棄して、そしてなおかつこの内外の厳しい環境の中で、新会社の発足についての質疑を積極的にやろうとしているのだ。こういう状況の中で、まだ具体的なことの何も明らかにされない中で、政府の関与権の積極性、事と次第によってはという言い方であるけれども、実に乱暴な内容で、これは大蔵省の本音か、それとも撤回するか。
  44. 長岡實

    長岡説明員 株式会社移行後に株主総会において経営責任を問われる立場にある者としてお答え申し上げたいと思うのでございますけれども、これは申すまでもないことでございますが、政府関係特殊法人の中には、現在の私ども公社のように、予算を国会に提出して国会の議決を経なければ予算というものが生まれないという、非常に、いわば政府並みのコントロールを受けておりますものから、最も制度的に公的統制の少ない経営形態として株式会社組織の特殊法人があるわけでございます。したがいまして、現在御審議をいただいております日本たばこ産業株式会社法案におきますこの会社というものは、専売公社時代に比べますと法律上の公的統制というのは非常に少なくなりまして、そして私ども企業経営を弾力的、合理的にやれるような仕組みになっていると思います。  しかし、一方において政府関係法人である以上、公的な目的に奉仕する義務を持っているわけでございますが、そういう場合に、法律上の公的統制を最小限度にするけれども、私どもがその経営の責任を十分に果たさない場合、果たし得ないような場合には、当然のことながら株主総会において株主がその経営責任を問う。そういう意味において、国が全額株を持っているわけでございますから、株主である国が株主総会において監視の目を光らせるぞ、そういう趣旨の御答弁ではなかったかと理解いたしております。
  45. 渋沢利久

    渋沢委員 新会社の新社長の予定者が、監督を受ける立場で監督のありようについて解明されても、これはお気の毒で聞いてられぬ話だ。大蔵省、代表して物を言った人がその点の見解を明確に示してほしい。
  46. 小野博義

    小野(博)政府委員 お答え申し上げます。  今回の改革につきましては、先ほど大臣からもお話がございましたように、輸入自由化に対処いたしまして、国際競争に十分対応できるような経営の自主責任体制を持った合理的な企業経営が最大限可能な政府関係特殊株式会社とすることが目的でございます。したがいまして、先生がおっしゃいますように、公的規制につきましては現行法上必要最小限のものにとどめておるところでございまして、経営の自主責任体制というものを最大限尊重していこうというふうに考えておるわけでございます。  ただ、私が申し上げましたのは、ただいまの総裁の御答弁にもございましたように、会社としては会社法あるいは事業法の目的達成のために最大限の努力をされるというふうに考えております。そういうことで、万々一にもその事業法なり会社法なりの目的から逸脱されることはないというふうに考えておりますけれども、万々一の場合には、今総裁からお話がございましたが、株主権の行使もあり得るという意味で申し上げたわけでございまして、決してその日常の業務の遂行について私どもが積極的に口を出すという意味で申し上げたわけではございませんので、御理解いただきたいと思います。
  47. 渋沢利久

    渋沢委員 仮にどんな形態になろうと、議会の関与権がどれだけ薄くなろうと、その事業に問題が起こったときには、国会は必要な手続を通して必要な制度改正も法律もつくるのですよ。だから万々一の場合には、いろいろなことが起こり得るかしらぬけれども、今法案の審議の出発に当たって二つの方針、そう受け取るのだ、今のあなたの説明は。一つには、最小限度に関与をとどめます、しかしやるときはやりますよ、その力のあることだけは、姿勢を持っていることだけははっきりさせておきますよ、この二つの柱を説明しておる響きがあるのですよ。  なぜ今改めてそのことを言わなければならぬのか。誤解を招く部分は素直に取り消した方がいい。この法案の特徴は、あくまで基本的に、今度の新しい会社に期待するものはまさに自主的な経営判断、経営能力、その機動性、企業性、人事も予算も財政も資金計画も、さまざまな点で大幅な当事者能力を与えるというところに——それがないから、今まで親方日の丸でどうというような議論があって、こういう形が出てきているのでしょう、そもそもが。そこを転換する。最大限企業性を発揮できる、そういう条件をつくるということがあるとすれば、私はまさにそのことを執拗に繰り返すべきだ、そういう立場じゃないかと思うのです。
  48. 小野博義

    小野(博)政府委員 お答え申し上げます。  会社の業務運営とか経営判断とか、そういうものにつきまして会社の自主性、機動性というようなものを尊重すべきことは、まさに先生のおっしゃったとおりでございます。政府の株主権を背景とする監督というものは、あくまでも間接的な、後見的なものでございますし、そういう意味におきまして、基本的には会社の自主性を最大限尊重するという考え方に立っておるわけでございます。したがいまして、このことが、今おっしゃいましたような親方日の丸意識と申しますか、あるいは従来批判がございましたような会社企業性の発揮を困難にすることは決してないというふうに考えております。
  49. 渋沢利久

    渋沢委員 大臣にこの際率直にお尋ねをいたしておきますが、経営の自主性は拡大されていると言うけれども、よく見ると大蔵大臣の許可、認可事項もかなり多くて、監督権はかなりある。運用に期待すればいいじゃないかという部分も、そう言われるかしらぬけれども、特に人事の自主性、それから労使関係とかいろいろあると思うのです、自主権の内容を高めるということで言うと。特に人事のことで言えば、従来の大蔵省の人事権は、これは法定事項はありますけれども、そこを除いては、明文化されていない部分についてはもう放棄する。大蔵省の従来の人事権はなくなったものだと考えていいというくらいの性質のものだと私は思う。これが一つ。  それから、この会社は、天下り白書で言われる——この間白書を見ましたら、官僚の中の官僚大蔵省、質量ともに天下りの高い水準を占めていると白書で拝見しました。最近は、問題のサラ金の企業にまで大蔵省の優秀な官僚が行っておられるような趨勢までおありのようでありますけれども。余分なことは言いませんが、この新会社については、これは少なくとも天下りの対象にはしないというくらいのことは当然のことだと思う。政府や議会の拘束でぎしぎしして総裁が何も決められない、そういうことがあるから思い切った仕事ができないというような状況改革するというなら、当然これは従来の発想で大蔵省の傘の下で位置づけちゃならぬですよ。大蔵大臣、そういう考え方に立つべきだ、これは明確に言っておいていただいた方がいいというふうに思うのです。
  50. 竹下登

    竹下国務大臣 基本的な考え方を申しますと、元来、今の専売公社でも、本当はかなり労使の自主性において行われる範囲はあると思いますけれども、今いろいろ御指摘なさいましたような関係で、私どもが所管官庁という以前に財政官庁、こういう形で関与することがやはりあるな、こういう感じを私自身常日ごろ持っております。したがって、今度は何といったっていわゆる労使関係というようなものについては、まさに私は最大限の自主性というものが与えられていくということは、今度の法律一つのポイントじゃないかなと思っております。そうあるべきものだと思っております。  ただ、一方考えますと、一般の商法上による株式会社でございますと、有価証券報告書というものが毎日大蔵省の分室の方へどんどん出されていく。それらを一般の株主が見まして、そして総会に対応するところのいろいろな勉強の資料にする。だから今の場合、考えようによればというよりも、事実今度の株主、言ってみれば一億一千八百万人を代表する一人の株主、こういう感じになるわけでございますので、そうするといわゆる有価証券報告書、財務諸表等に多くの株主が参画できるように、国民全体を代表する株主としての地位というものは、それは万々一という言葉がいいのか、やはりそれなりにきちんとしておかなければならぬという考え方は持たないわけではございません。  が、人事ということになりますと、基本的にまず考えなければいかぬ問題は、いわば当該者の出身母体がどこかというようなことはまず全く無関係に置いて考えなければいかぬ。これは第一義的にそういうものであると私は思っております。が、その新法人の取締役及び監査役の選任及び解任の決議がなされた場合は、主務大臣たる大蔵大臣の認可を受けなければその効力が生じない。こういうところにいわば最低限の関与ということがあるわけであります。したがって、株主総会における選任、解任の決議あるいは大蔵大臣の認可は、新法人の役員としてふさわしいかどうかという見地から行われるものであって、最初申しましたように、当該出身の母体がどこかというようなことは考えの外に置いておかなければいかぬ問題だ。それでこそ、今度法律改正した意義の一つがあるんではないかというふうに考えております。  天下りという定義はなかなか難しゅうございまして、迎えられて行った場合、これは天下りなのか、栄転、左遷という言葉にも、栄転のほかに横転もある、こういうようなことがよく言われるように、定義そのものはなかなか難しいのですが、よく商業紙等で使われる、社会部記事における天下り先というようなものとして特定して考えることはいけないというのは、出身母体がどこであるかということを特定すべきものでない、同じ趣旨になるではないかというふうに考えます。
  51. 渋沢利久

    渋沢委員 私は余りこのことだけにこだわって言いませんけれども、天下りの定義は難しいとか、そういうまさに煙に巻く議論はしない方がいい、もうわかっていることなんだから。それは場合によれば、まさに役所内部で操作をして回したというものでない人事もある。それも含めて、あるいは時に世間から、元大蔵省であれば、既に大蔵官房が手配した天下り人事配置の一環とみなされる、そういうことはあり得るでしょう。あり得るでしょうが、主として各省、それは残念なことにやっておるじゃないですか。老後保障の確かなのは、日本政府の、やはり枢要な地位を経験された皆さんであるということは、これは何と言おうと動かない事実だ。だから私は事細かにあれこれ言いませんけれども、やはり基本的にそういう発想、姿勢でこの新会社の発足というものを見るという視点がなければ、こういう法律改正をやる意味が損なわれるだろうということを言っているわけです。その点については率直に、そういう趣旨で対応する、人事権の自主性、これも認めるような努力、したがって、その一環で天下りについても、従来とかく言われるような指弾を受けないような厳しい対応を示すということは、やはりはっきり言っておかれた方がいい、そうすべきだと思うのですが、いかがですか。
  52. 竹下登

    竹下国務大臣 厳に慎まなければいかぬのは、俗称天下り先ができたなというような認識を持つことは、これは絶対排除しなければならぬという考え方を、私自身にも言い聞かしておるところでございます。したがって、人事配置ができた場合は、まさに渋沢さんも、なるほど考えたなと言われるようなものになることを期待し、そしてそういう方向で努力しなければいかぬと思っております。
  53. 渋沢利久

    渋沢委員 大臣の認可事項であります事業計画、こういうようなものは、やはり原則的なものにとどめる。その新会社は日常的な細々としたことについては云々、こう言われたけれども、具体的に言えば、資金計画とか収支計画の細目とかあるいは賃金の自主的決定を損なうような、そういう関与はあってはならないと思うのであります。そうでないと、経営自主権、当事者能力といっても、これはうそになる。形は新会社になったけれども、やはりちゃんと大蔵省の太いひもがついておる。ひもという表現は適当かどうか知らぬけれども、そういう形のものであったんでは意味がない。そういう危惧があるのですよ。新会社にいろいろ権限を付与したと言っているけれども、意外と基本的に変わらないのじゃないのか、肝心なところは、やはり大蔵の管理監督という太い筋で見ていく、そういう姿勢が基本にあるんじゃないかという危惧がかなりあるのです。ですからその点は、いや、そうなんだと言うなら、それはそれでまた議論がしやすくなるんで、御明確にすべきものだというふうに思うわけで、その事業計画等の大要、大臣認可事項の押さえ方というものについて、どういう考え方か伺っておきたい。  ついでに労使の問題で、大臣世界まれに見る有数な専売労使の評価をされておる。後で労使問題、またお尋ねいたしますが、今度の新会社でまさにそういう労使関係というものは完全に自主権、当事者能力が付与された、こういうふうに言い切っていい、そう認識していいということですね。
  54. 小野博義

    小野(博)政府委員 お答え申し上げます。  事業計画の認可につきましては、先ほど来先生が強調されておられますように、今回の改革趣旨からいたしまして、たばこ産業株式会社に対する政府の関与は、設立の趣旨に沿って、他の類似の特殊会社に対する政府関与のあり方を考慮しながら、必要最小限にとどめることにしているわけでございますけれども法律上認可を必要とするとしておりますのは、事業計画のみでございます。  事業計画と申しますのは、いわばその年度における会社事業基本的な枠組みに相当するものでございますので、これについては大蔵大臣があらかじめ認可をしておくという必要性はあると考えておるわけでございまして、他の特殊会社につきましても、大体同様の規制があるわけでございます。  しかしながら、先ほど申し上げましたように、認可を必要としますのはこの事業計画のみでございます。この事業計画の内容をどのようなものにするかということにつきましては、現在大蔵省と公社との間で詰めておるところでございますけれども、例えば日本航空等の例に倣いまして、資金計画、収支計画等はいわば添付書類として添付をしていただくというようなことも、一つ方向として考えておるところでございます。  なお、当事者能力についてお尋ねがございましたけれども、今回の制度改正によりまして、公労法の適用から外されまして、完全に労働三法の適用になるわけでございます。したがいまして、労働三法上の当事者能力を完全に保有するということになるわけでございます。
  55. 渋沢利久

    渋沢委員 労使問題などさらに具体的なことは、また詰めてお尋ねをします。  ちょっと角度を変えて幾つか尋ねておきたい。  五十八年度のたばこ事業の収益というのはどうなっていますか。
  56. 岡島和男

    ○岡島説明員 お答えいたします。  現在決算を作成中でございます。したがいまして、その数字はまだ申し上げられませんけれども、五十八年度の見込みの数字で申し上げさせていただきますと、たばこ事業の純利益は約五百八十億円というふうになっております。
  57. 渋沢利久

    渋沢委員 これは新会社になった場合の利益として考えでいいですか。約六百億近い純利益が見込まれるということですけれども、新会社になった場合、これが税引き前の利益というふうに考えていいわけですね。
  58. 岡島和男

    ○岡島説明員 現在の公社の経理のあり方とそれから税務会計のあり方と、若干食い違う面があるのではないかというふうに考えております。今度会社になりますと、私どももいわば法人税を納めるというようなことになってまいります。したがいまして、現在の経理制度とそれから税法に基づく制度との間に、現在精査中でございますけれども、若干の違いがあるようでございます。例えば耐用年数なんかをどうするかとか、あるいは資本的支出と修繕費のあり方をどうするかとか、いろいろ利益の計算上の差がございますものですから、その辺で多少の違いが出てくるのではないかというふうに思っておりますが、大筋としてはそんなに変わりがないというふうに思っております。
  59. 渋沢利久

    渋沢委員 この利益から何が引かれることになるわけですか。
  60. 岡島和男

    ○岡島説明員 御質問は、新会社に移行後の……(渋沢委員「そうそう」と呼ぶ)新会社に移行いたしますと、今度は株式会社でございますから、法人税とか事業税とか、そういう直接税がかかります。それから、今まで非課税であった例えば固定資産税なんかも課税される、こういうふうになってまいります。その他、ちょっと今手元に資料を持っておりませんけれども……(渋沢委員「株主の配当」と呼ぶ)配当をどうするかというのは、今後これから大きな問題になろうかと思っております。
  61. 渋沢利久

    渋沢委員 新会社の株主配当というのはどの程度にする考えですか。
  62. 岡島和男

    ○岡島説明員 その点につきましては、まだ議論を十分いたしている段階でございませんので、ちょっとお答えの方はお許しいただきたいと思います。
  63. 渋沢利久

    渋沢委員 新会社の純利益というものをどのくらいに見ているのです。
  64. 岡島和男

    ○岡島説明員 現在いろいろな数字を検討中でございますが、ちょっと今の段階でその数字を申し上げることをもう少し御容赦いただきたいと思います。
  65. 渋沢利久

    渋沢委員 純利益の見込みも言えないというのは何ですか。事情があって言えないとは、どんな事情。わからないというのは、なぜわからない。そんなことはないだろう。
  66. 長岡實

    長岡説明員 公社の五十八年度の決算もまだ確定いたしておりません。そういうようなものの数字を固めつつ、一方においてその新会社移行後の私ども事業の推移と申しますか、例えばどの程度の販売本数が見込めるかといったようなものを考えながら、新会社移行後の経営内容というものを私ども詰めていかなければならないと考えておりますけれども、現時点では、まだはっきりとした数字お答え申し上げる段階には至ってないということでございます。
  67. 渋沢利久

    渋沢委員 国会に法案提案して、この段階で、しかも公社事業を新会社に継承することを規範にしながら発足させようとしているわけで、純利益の見込みも立たないという。そんなばかなことがどうしてあるのだ。それは誠意のある態度ではないと思うのです。納得できない。  定款の中で資本金はどのくらいに予定されるのですか。
  68. 小野博義

    小野(博)政府委員 お答え申し上げます。  日本たばこ産業株式会社法上、資本金は定款の定めるところによりまして決まることになっておりまして、法案成立後設立委員会が開催されるわけでございますけれども、その設立委員会において定められる定款によって決められることになっております。
  69. 渋沢利久

    渋沢委員 そんなばかなことが答弁になると思いますか。ここで資本金も純利益もわからない、いろいろおっしゃるとおりであります。まさに純利益も言えない、資本金も言えない、わからない。そんな会社日本たばこ産業を——先ほど来質疑をしておるように、内外の厳しい環境の中でこの事業を担っていく新会社を設立させようというのに、そんな無責任な答弁で我々は任せるわけにいかないじゃないですか。会社の性格も中身もこれは……(「それでは審議できないよ」と呼び、その他発言する者多し)そのとおりだ。
  70. 小野博義

    小野(博)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま申し上げましたのは法制度上の問題でございましたが、今後検討するわけでございます。現在検討中の作業方針でございますが、新会社に対しては、国が直接ではなくて公社がその財産を出資するという方式をとるわけでございますけれども公社の財産は究極的には国民の財産ということでございますので、この点にかんがみますと、資本金についても慎重な処理が必要なわけでございます。  一方、その新会社輸入自由化後の競争状況のもとで経営活動を行う立場に立たされているわけでございますので、ただいま純利益が幾らかというお話がございましたけれども、その収益力に比して過大な資本金を設定いたしますと、これが健全な経営活動の阻害要因となることも考えられますので、そのような事態は避ける必要があるわけでございます。そういったようなことを考えながら、現在一兆円の純資産から正当な理由によって控除し得る額、例えば公社は現在一般の民間企業と違いまして退職給与引当金のようなものを積んでおりませんけれども、そういう退職給与引当金を設定するとか、そういったような控除をどれだけ行うのが適当かということで作業中でございます。
  71. 渋沢利久

    渋沢委員 これだけの法案提案しておって、純利益も資本金も示せないというような状況で、どうしてこんな重要法案と位置づけての審議ができましょうか。  委員長、これは質問できない。(発言する者あり)委員長、聞いてないよ。今聞いてない。こんなことでは質疑のしようがないと言っているのだ。
  72. 小野博義

    小野(博)政府委員 現在作業中でございますので、確たる……(発言する者あり)御答弁申し上げたいと思いますが、現在作業中でございますので、確たる数字を申し上げられるわけではございませんが、大体でよいということでお許しをいただけるならば、大変大ざっぱでございますけれども、おおむね二千億円が上限になるのじゃないかと考えております。
  73. 渋沢利久

    渋沢委員 これはそもそも審議に先立って提出すべき重要な資料の一つだと思うのですよ。ですから、私はこの際、文書で緊急に、今尋ねた点をきちんと回答することを要求します。  これは委員長、この委員会の審議の権威のためにも、その程度の処置はぜひ委員長の権限においてお指図願いたい。質問できない。
  74. 瓦力

    瓦委員長 速記をとめてください。     〔速記中止〕
  75. 瓦力

    瓦委員長 速記を始めて。  小野監理官。
  76. 小野博義

    小野(博)政府委員 現在の考え方について、確定数字ではございません、あくまでも見込みでございますが、一応の考え方を申し上げますと、五十九年度末の公社の純資産額見込みというのは約一兆二千億でございます。これから控除されるものといたしまして塩事業の財産。これは塩専売事業会社にやらせます関係上、一般の資本金と分離して会社に拠出することにしておりますけれども、この塩専売事業関係の財産。それから退職給与引当金、賞与の引当金、これは五十九年の十二月から六十年の三月分でございます。それから未払い地方たばこ消費税、これは六十年の三月売り渡し分でございます。等の合計約五千億円。こういった金額については当然控除し得るものというふうに考えております。これを控除いたしますと七千億円になるわけでございますが、さらに、納付金率法定化以後の年度に生じましたたばこ事業に係る利益、これは五十四年から五十九年までの間に約五千五百億円ございます。これはいわば一般の株式会社でいえば利益準備金に相当するようなものでございますので、これを控除いたしますと、残りが約一千五百億円。こういうようないろいろな数字があるわけでございます。この中で、先ほど申し上げましたように、会社資本金と申しますものは究極的には国民の財産であるという点を考えまして、かつまた、余りに過大な資本金である場合には会社経営の健全性の阻害要因になるというようなことも考え合わせまして、目下鋭意検討を進めておるところでございます。
  77. 渋沢利久

    渋沢委員 今の説明で、これはとても新しい会社経営形態に対する我々の判断をする材料にはならないし、本来これは質疑がなくても、新会社経営形態に対する理解、法案趣旨委員に理解させるための資料として、当然出すべきものである。省政令の部分でも、これは建前からいえば法律が上がってからということであっても、重要な部分については省政令の案という形で、それぞれ各委員に事前説明まで行われておるのです。その対比で言うならば、八十年にわたる公社の大改革をやろうというのに、新会社の輪郭も我々自身には定かでないような、そんな説明の仕方では我々納得できない。それが今の説明にあらわれておる。しかも、私の最初の質問に対しては、これは建前だけ言って答弁は断っておる。声が大きくなったらにわかに、その他いろいろ。その他いるいるとは何ですか、一体。そんな委員会を侮辱した答弁に私は納得するわけにいかない。数字で、文書で提出しなさい。それを見て判断するまでは質問のしようがない。  委員長、これは御配慮願いたい。
  78. 瓦力

    瓦委員長 速記をとめて。     〔速記中止〕
  79. 瓦力

    瓦委員長 速記を始めて。  この際、暫時休憩いたします。     午前十一時五十四分休憩      ————◇—————     午後一時三十一分開議
  80. 瓦力

    瓦委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。上田卓三君。
  81. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 今回の専売改革法案は、国鉄あるいは電電の民営・分割化論を打ち出した臨調答申に基づいて提出されている、このように我々は考えておるわけであります。改革の直接の目的は、一年分以上の過剰在庫を抱える国内産葉たばこ問題への対応、それから外国たばこ輸入自由化に伴う国際競争力の強化ということに尽きるのじゃなかろうか、こういうように思っておるわけでございます。ということは、たばこ産業効率化を図るため、こういう解釈が成り立つわけであります。  しかし、この改革案の内容をつぶさに見れば、例えば製造独占の維持はもとより、国内産の葉たばこの全量買い取り制、あるいは小売店の指定制度の実質的な維持といいますかなど、外国たばこ輸入自由化を除いて現行の専売制度とほとんど変わりがない、こう言ってもいいのじゃなかろうか、このように思うわけでございます。輸入自由化に伴う流通の自由化への対応ということであれば、現行の公社制度の改革で十分ではないか、このように考えるわけであります。なぜこの時点でわざわざ公社制度をやめて特殊会社にするのか、特殊法人にするのかということにつきまして、大臣からお答えをいただきたい、このように思います。
  82. 竹下登

    竹下国務大臣 現在の公社制度と今回の違いといいますのは、やはり製造独占、これはきちんとするわけでございますが、いわゆる輸入自由化に対応するということになりますと、現在の制度の中では自由化に対応することはできない。したがって、製造独占を守りながら自由化の門戸を開くという意味においては、それだけでも経営形態を変える必要がある。なかんずく、その上にいわゆる民間企業という体系になるわけでございますから、当事者能力を最大限に付与した形の中において、自由競争に耐え得る体力そのものをつくっていく、この二つではないかというふうに考えます。
  83. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 輸入自由化に対応するということだけでも、公社制度から特殊会社にする必要がある、こういうふうに大臣お答えをされているわけでございますが、輸入自由化に対応するだけであれば、別段公社制度でもいいのではないか、こういうことでありますから、この論議は平行線をたどっていると言ってもいいのではないか、こういうふうに思いますので、また後ほどその問題については突っ込んだ形で質問させていただきたい、このように思っておるわけであります。  いずれにいたしましても、やはりたばことかあるいは塩事業は、これまで八十年余りにわたって専売制度のもとで経営され、またその役割を十分に果たしてきた、このように思っておるわけであります。たばこの場合も、その財政物資としての重要性、あるいは国民の健康に関係の深い大衆嗜好品としての性格、あるいは地域経済を支える葉たばこ農業などを考えれば、やはり極めて公共性の高い事業であると言わなければならぬ、このように思うわけでございます。また財政的にも、八三年度で年間一兆八千億円の納付金を国庫に納めている。その意味では優良企業、こう言ってもいいのではなかろうか、このように思うわけであります。外国たばこ資本の市場開放要求の中で、我が国たばこ産業が厳しい競争場裏にさらされているということは事実でありますが、だからといって何が何でも公社制度をやめて特殊会社にしてしまうというのは、先ほど申し上げましたように、私としては絶対に納得できない、このように思うわけであります。  そこで、政府は、八十年間専売制度の果たしてきた公共的な役割というものについて、一体どのように理解しておるのか、大臣お答えをいただきたい、このように思います。
  84. 竹下登

    竹下国務大臣 たばこ専売事業、これはやはり財政専売でございますから、財政収入確保に長い間貢献してきたということが、一つ評価する第一義的な問題ではないかと思います。  それから塩に関しましては、これは公益専売として、いわゆる塩の需給と価格の安定という二つに対しての役割を今日まで果たしてきた。これはこれからも新しい会社の中で専売として残るわけでございますけれども、そういう評価をすべきではないかと思っております。
  85. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 八十年間の専売制度が非常に国民、また特に公共的という立場で大きな貢献をしてきたということは、大臣自身がお認めのようでございますが、輸入自由化に対応するというその一点のみでいわゆる特殊会社で対応する、こういうことだろうと思うわけでありますが、その前提になるところの、ずばりと言って、私企業は善である、効率性が高い、安企業は悪である、非常に効率性が悪い、こういう考え方が臨調答申の考え方を貫いておるのじゃなかろうか、こういうように思うのですね。だから、外国たばこ自由化という厳しい状況のもとでは、公社制度、公的なものでは対応できない、だから私的な効率性の高い会社方式でそれに対応しよう、こういう考え方になっているのじゃなかろうか、こういうように考えるわけでありまして、その点についてお聞かせいただきたいわけでありますが、いわゆる民間活力の導入とかあるいは活力論というのは、そういう形であらゆる分野に市場原理を持ち込むとするならばどんな問題でも解決できるのだというような、そういう単純な発想があるのではなかろうか、こういうように思うわけでございます。  市場原理というのは、利潤の追求を目的とした、いわゆる弱肉強食の論理でありまして、利潤追求のためには何でもやるが、もうけにならないことは何一つやらない、金の都合がつかなければ人権を無視してもよいというような、非常に差別的な論理でもある、このように私たちは考えておるわけであります。もしかそういうような論理がまかり通るとするならば、これはもう当然国鉄も電電もそうでございますが、本来国が、公がしなければならないところの、例えば新関西空港も特殊株式会社になったわけでございますが、そういう第一種空港も株式会社にするのだ、あるいは健康保険も、これはもう自己負担でやるべきだというような形にもなるだろう。  そういう理屈で言うならば、警察であったって、お役所であったって、あるいは自衛隊ということにもなるのかもわかりませんけれども、要するに公的なものは皆能率が悪いのだ、皆民間にしてしまったらいいのではないか、こういうような暴論にもなりかねない、こういうように思っているんですね。だから、例えば消防活動なども資産に応じてとか、あるいは捜査活動についても、これは金持ちと貧乏人は差があるわけでありますから、そういうような市場の原理を入れるということになれば、本当に公的事業というものと私的班業というものは一体どこにこの区別を設けておるのかということになるのではないか、このように思っておりますので、そういう意味で、公共の哲学というのですか、公共部門というのはどういうふうに考えておるのか、その点ひとつ大臣から明確にお答えいただいたらありがたい、このように思います。
  86. 竹下登

    竹下国務大臣 これはなかなか難しい御議論であろうと思うのであります。およそ自由経済というものを是認した場合には、そこには競争の原理が働く。しかしながら、それにはおのずから社会公共のための秩序というものがある。例えば、自由競争原理というものが根底にあっても、独占禁止法がそれらのものに対する調整機能を働かすというようなことでもあろうかと思うのであります。が、今おっしゃいましたように、俗によく言われる、いわゆる親方日の丸とかそういうものは非能率であって、そして民間のみが能率を上げるものであるというふうには私も考えておりません。これは、おのがじしそのところに従い、きちんとその公共性のあるものに対する役割を果たしていっておるところもたくさんあるわけでありますし、専売公社の、いわば製造独占、販売独占の二つも持っておった今日も、公共性の中ですべて立派に機能してきておるというふうに私は理解をしております。  そこで、どこまでが公共性か、あるいは私企業の分野はどこかということは、それぞれの国のいわゆる政治の問題でもあろうかと思うのでありますが、少なくとも国民全体の中で、ひとしく国民としての権利義務に対応して、いわゆる財政とかそういうものが出動して対応していくものがまさに公共部門というふうに私はこれを位置づけておるわけであります。だから公経済と私経済といえば、企業は私経済、そして国家財政なかんずく予算あるいは地方公共団体、これらはやはり公経済の範疇に属するでございましょう。したがって、また別の角度からいえば、いわゆる競争原理だけではとても覆い切れない国民に対するサービスの提供というようなものは、従来国有鉄道などもそれを果たしてきたでありましょうし、これはやはりいわゆる公共分野に入るべきものではないか、こういう感じで受けとめております。
  87. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 まあ臨調だとか行革だとか財政再建だとか、こういうような何か一つのはやり言葉というのか、そういう一つの物の勢いの中から、先ほど私が申し上げたように、公的企業は悪である、私的企業は善である、こういう競争原理が入るとするならば、国家の役割、公共の役割というものはもう全く否定される、こういうことになるわけて、大臣もそういうように公共のもの、公のものはすべて悪だというようには考えてない、公共の役割というものは果たすべきものがある、こういうことで、一般論としては私も大臣の考え方もさほど変わりがないというふうに思うのです。しかし、やはり具体論ということになりますと、電電とか、今問題になっております専売制度の問題、国鉄の問題あるいは関西新空港の問題、こういうような形で、実際国会の論議を見ていますと中身は余り変わらないのに、何か形だけを変えようとしている。そして形を変えることによって、中身は変わらないのだと言いながら、いつの間にか実際中身も変えていって、全く民営あるいは分割というような、やはり結局公的なものは不経済である、全部民間の活力でと、こういう形になっておるんじゃなかろうか、こういうように我々は考えざるを得ないわけであります。  そこで、そういう公共的なものがやはりどうしても効率が悪い、経済性が悪い、こういうことから、ややもすれば政府というものは小さければ小さいほどいいんだ、こういうような考え方が根底にあるのではなかろうか、こういうように思うわけです。そういう点で、資本主義社会、産業社会が誕生して以来、国家の役割というのはどんどん高まってきて、大きな政府にずうっとなりつつあるわけでありますが、これを急激に小さな政府に切りかえるということは、恐らく資本主義の抱えるいろいろな矛盾、失業の問題とか経済恐慌の問題とか、そのほか公害の問題とか、いろいろ問題があるわけでありますが、そういう問題を解決していこうと思えば、おのずからやはり大きな政府でもって対応せざるを得ない。資本主義社会でも、自由な発展という初期の時代ならいざ知らず、国家独占と言われるこういうような時期の中では、おのずからやはり国が産業に果たすべき役割というのは、大きくなりこそすれ小さくはならないというように思っておるわけでありますが、そういう物の考え方について大臣はどのようにお考えでしょうか。
  88. 竹下登

    竹下国務大臣 今おっしゃる意味は、私なりに理解できる話であります。それで、私は現実の今日の世界情勢等々から見ましても、一つは原始共産主義社会から封建主義社会、資本主義社会、そしてそこに矛盾が生じて、分配の公平を旨とする社会主義社会という、歴史的必然性というものも教わったことがございます。  されば現実の政治というのはどういうふうに動いておるか、こういうことを言いますと、やはり国家統制力の非常に強い社会主義体制というものの中には、いわば自由競争原理のいいところ、メリットの部分を導入して自由化傾向というものが進んでいく。それから、爛熟した資本主義社会の場合は、そこに今おっしゃいました公害でございますとかいろいろな問題が出て、そこに今度は社会公共の秩序という原則が働いてきておる。したがって、その出発点が共産あるいは社会主義社会であれ、あるいは奔放な自由主義社会であれ、この現実は人類全体の英知というものが両者の出発点から徐々にこれを近づけて、その間において将来の構図を描いた場合にはそれが非常に近寄ってきて、そして分配の公平というようなことを絶えず念頭に置きながら、いま一つ努力と報酬の一致というこの自由競争原理というものを巧みに調和して、だんだん両方が近づいておるというのが現状認識として持つべきことじゃないかな、こういう感じがいたしております。
  89. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 資本主義社会というのは、やはり競争の原理が働いて、弱肉強食といいますか、富める者がますます富む、そして貧しい者はますます貧しくなる、こういう格差が生まれるのが私は競争原理だと思うのですね。だから、そういう点で、やはり資本主義社会におけるところの国家の果たすべき役割というものは、そういう、あるところから税金を取って、そして低いところにそれを土持ちする、そうやって公平な、国民の自由なりあるいは福祉なり幸せというものが均等化される。そのことを公共の立場から見ても、私的な企業というのはやはり全体のことを考えない、自分の企業のことだけ考えるわけですから、そうすれば、やはり公害という観点から見ても国の方の施策が必要であるし、また、福祉あるいは教育というものについても国の役割が大きいのではないか。オイルショック以来、世界が非常な低成長というよりも恐慌的な状況の中で、日本が非常に奇跡的というのですか、そういう形で通り抜けてきたのも、やはり戦後一貫して、社会党だけじゃございませんけれども、皆さんが努力されて、それなりの教育と福祉を保ってきた、そういうことが大きな社会不安というものをある程度緩和する役割を果たしてきた、こう言ってもいいのではなかろうか、こう思うのですね。そうでなければ、大変な社会不安が現在起こっても不思議でない状況にあっただろう、こう思うのです。  そこで、政府なりあるいは大蔵省がここ数年来やってきた施策というものは、緊縮政策ですね。財政赤字を口実にして、政府なりあるいは大蔵省の国民経済に果たす役割をできるだけ小さくしようという考え方でやってきたのではないか。しかし、今日国民が求めておるのはそういう緊縮政策じゃなしに、景気回復のための積極的な経済財政運営ではないか、このように思っておるわけでございます。国民も、もうこれ以上我慢できないという状況になっておると我々は考えざるを得ない、このように思っております。過去四回の総選挙を見ましても、そのうちの三回までが、実質的な伯仲を国民が求めているということは、やはり自民党政府に対する国民の、あるいはもうこれ以上我慢ならぬという怒りの反映だというふうにも考えなければならぬのではないか、こう思うわけであります。特に、来年度のマイナスシーリング論というものに対して、野党だけじゃなしに、与党の中からも、例えば宮澤さんなどは資産倍増論というようなものも掲げて、積極財政、拡大均衡論を主張されておるようでございますし、また、経済界においても積極的にそれを支持する考え方もあるやに聞いておるわけでございます。  本法案とは直接関係ないとはいうものの、国民がその点について非常に関心を抱いておるところでありますから、大臣がそれらの国民の意見あるいは自民党内での若干のそういう積極財政論に対する意見等に考えがあれば、ひとつお答えをいただいたらありがたい、このように思います。
  90. 竹下登

    竹下国務大臣 現在の経済状態をどう見ていくか、上田さんと私との本委員会を通じての議論をずっとトレースしてみれば、言ってみればあなたが拡大均衡で私が縮小均衡、強いて位置づければそういうふうに位置づけられるかな、こういう感じがしております。  それで、この機会でございますので、私なりに今思ってみますと、今おっしゃいましたように、福祉とか教育とかいうお話がございましたが、確かにこれは、私もこの間三回目のサミットヘ参りまして、どういう観点から日本を見ているかというと、これは自由民主党とかいう問題じゃないな、要するに文盲率が仮に日本の次がアメリカとしても、十五歳以上の男女にして字の書けざる者が日本のまず四倍ぐらい。そうすると、ほかの先進国は大体十倍ぐらいおるわけです。高等学校進学率を見ても、日本アメリカ、その次に韓国、それからフランス、西ドイツ、イギリス、こういう順番になります。だから、たまたま歴代保守党政権、あるいは片山内閣もございましたけれども、そういう日本の過去の政治体制というのが教育というものに非常に力を入れてきたから知識水準も上がったに違いない、それが一つには尊敬されておるゆえんになっているのじゃないか。だから、一自由民主党とかいう問題ではなく、日本の戦後今日まで行われてきた政治の生んだ果実というものは、私は、これは私どもの先輩たちの努力のたまものじゃなかったか、こういう感じがしております。  そこで、今度は経済の問題ということになりますと、これは一九四五年に戦争が終わって五年間は、食うに精いっぱい。それから朝鮮戦争を契機として、日本の工業がもう一遍息を吹き返してまいりまして、それで前進の時代とも言われるべき五十年代が続いて、繁栄の時代とも言われる六十年代というのが続いてきた。その辺で、私がいつかもお答えしましたように、世界銀行なんかから金を借りて、それでできたものが新幹線であり東名高速であり、あまたの水力発電等のダムである。やはり、うちも、開発途上国という表現は適切でないかもしれませんが、中進国のような立場で、そういう国際機関等に支えられて今日あるのだな、こういう感じもしみじみと持ちます。  だが、今仮に一人当たり所得を見ましても、日本以上に購買力のある国民は世界にほとんどなくなった。そういたしますと、購買力がないことには、せっかくの日本の優良な製品も売れないわけでございますから、したがって、経済協力の必要性もまた現実問題としてそこにもあれば、そしてまた、かつては日本よりも高いヨーロッパに追いつけ、追い越せ、そういう高い状態のところへ物を輸出しておった。それが高い状態でないわけでございますから、勢い安定成長というものにならざるを得ない。そうすると、結局、私がそうでございますが、高度経済成長になれております。したがって、一〇%ぐらいの成長でないと景気のうちに入らぬという意識が自分自身にあるのじゃないか、やはり四%程度の成長が普通だというある種の意識転換というものもしていかなければならぬじゃないかな、こういう感じがしておるところに、よく縮小と言われるゆえんのものもありはせぬかな、こう思います。  それからもう一つの問題は、話が長くなって恐縮でございますが、やはり私ども今度サミットで議論したときに思いますのは、昭和五十二年に、日本にいわゆる機関車論で内需振興をやってもらった、それはありがたかったという感じ方がないのであります。むしろ、それによって財政赤字を多くして日本に済まなかった、こういうような感じであります。そうして、例えばイギリスにしても、そういう機関車的な役割がかつてのイギリスの支配下の中進国等々から期待されて、自分らもまた全部財政赤字を持った。それで、世界じゅうの先進国が、人口で言えばサミット参加国というのは六億でございますから一三%、それで五六、七%のGNPを持っておる。だが、それらの国が全部財政赤字になった。したがって、それが高金利というものを生んで、結局開発途上国は今までの債務も返せぬようになれば、新しく金を借りる力もなくなった。だから、むしろ先進国が、緊縮財政とは申しませんが、そういう財政赤字をつくらないような努力をしたならば、その余剰の貯蓄というものが開発途上国へいわゆる資本輸出されていって、それによって開発途上国もよくなり、先進国のものもまた買えるだけの購買力もついてくるのじゃないか。  だから、今度不思議に思いましたのは、貿易黒字に対してけしからぬ、こういう話がなくて、日本の持っておる長期資本収支の出と経常収支の黒とがちょうどとんとんくらいになりますから、むしろ資本輸出国として、低利にして良質な資金の供給源としての日本の国の役割というようなものが評価されてきておるのじゃないか。だからその意味においては、おのがじしそのところに従い、先進国がまずはこの財政赤字からの脱却をするのが先決だ、こういうことが一応の合意になったわけです。  そうなりますと、シーリングの問題に返ってまいりますと、シーリングというものは、私も不勉強でございましたが昭和三十六年から行われております、言ってみれば予算編成作業の一つの手法ではないかというふうに受けとめます。そうしますと、そのうち、去年のことを思い出してみましても、例えば人件費でございますとか年金でございますとか、そういうものは増分としてこれを位置づけて、それから医療費とか生活保護をゼロシーリングにして、それから一〇%シーリングが四兆幾らか対象になりますか、公共投資等五%シーリングというのが七兆幾らになりますか、そういう形でやって、総枠の中で、大蔵省は専門家ではございませんから、各省の専門家の皆さんでひとつ内なる改革をしてください、こういう手法でやってきたわけでございます。  これは一つの手法であって、ただ国民全体に、一概にシーリングといえば何かこう全部頭から五%とか一〇%とか切ってしまうような暗い印象を与えてきたとすれば、やはり我々のPR不足ではなかったかな、そういう反省を持ちながら、いつも申します「七、六、五抜きの四、三、二、」といいますか、平均値でございますが、その程度の実質成長率を見込んで孜々営々として努力するのが今のあるべき姿かな。その辺がまた、いつも上田さんに批判されておるところでもあるわけであります。
  91. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 後でまたそれはちょっと突っ込んで話をしたいと思いますけれども、我々としては、専売公社を特殊法人にすべきでない、現在の公社制度でも十分輸入自由化に対応できる、また対応させるような対策を立てるべきだ、こういうふうに考えておるわけでございます。特にこの経営形態の変更が分割・民営化のワンステップではないか、こういう懸念を我々は抱いておるわけです。一昨日の本委員会での大臣の答弁では、このたばこ、塩事業については分割・民営化は好ましくない、このように明確に答弁されたというふうに思うのですが、それはここでもう一度確認できますか。
  92. 竹下登

    竹下国務大臣 この問題、私も正確に申し上げなければならぬと思います。  とにもかくにも割高な国産葉を抱えた現状のもとにあって、我が国は国際競争力の点から著しく問題がありますので、分割・民営化は適当でない。いろいろ議論した結果、基本的にそこに達したわけであります。したがって、今次の改革におきましては、割高な国産葉を抱えた状況のもとで、一方たばこ輸入自由化を行って、しかも我が国たばこ産業の国際競争力確保していこうというわけでございますから、特殊会社に改組しつつ製造独占を付与する以外にはない、こういう判断に達したわけであります。  今次の改革法案におきます特殊会社という経営形態及び製造独占は、いずれも恒久的な措置とされておりまして、特殊会社化が分割または民営に至る経過措置として位置づけられておるものではない。これだけははっきり申し上げておかないと、いろいろな意味において関係方面に不安、動揺を与えてはならないと思ったから申し上げておるわけでございます。
  93. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 ということは、現時点で割高な葉たばこの在庫、また葉たばこという今のような状況のもとでは、民営とかあるいは分割という形にはならない、独占という状況を実施しなければならぬ、こういうことのようですけれども、何か民営・分割化のワンステップでないと言いながら、やはり行き着くところはそこに行くのじゃなかろうかという懸念を、大臣の今の話の中でも感ぜざるを得ないわけです。  そこで、ちょっと大臣にお聞きしますが、割高な葉たばこあるいは在庫を相当抱えていますね。これはどうしたら割高でなくなるのですか、それを聞かしてください。
  94. 竹下登

    竹下国務大臣 今抱えております在庫の措置ということ、どう位置づけるかということはこれからの問題でございますが、それはバイオテクノロジーみたいな感じで農業大革命が行われれば別でございます。そういう場合には別でございますけれども基本的に、結局口に入らない農作物としてたばこそのものを位置づけてみた場合においては、私は率直に言って、自然条件、天候、それからいま一つは面積の問題等からして、いつも言うようでございますが、アメリカの二十六分の一の面積であって農用地面積が六十分の一でございますから、人間一人当たりにすると向こうは三十倍土地があるわけでございます。そうすれば粗放栽培という中でやれますし、コストが安くできますし、そういう気候等を含む自然条件、土地の広さというようなところからしてはかなりの努力をしなければ、割高でない原料葉というものをつくるのは、これはバイオテクノロジーみたいな問題が起きれば別でございますけれども、なかなか難しい問題だ。  しかし、現実十万いらっしゃるわけですから、その方々といろいろな連絡をしながら、その耕作者の方々の生計というようなことを当然考えながらやっていくために、詳しくは事務当局の方からお答えした方が適切であろうかと思いますが、各種審議会等においてこれをきちんとしていこう、こういうことでございます。ただ、自然条件等からして見た場合、同じコストで原料葉がつくられていくというのはなかなか難しい。品種の改良等はございますが、なかなか難しい問題だと私も思っております。
  95. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 公社の方からもお答えをいただきたいわけでございますけれども、四月二十四日の読売新聞に、この改革案が通れば、来年から向こう五カ年間に、現在の三万七千人の公社職員を約一万人削減する。それから二番目には営業所、製造工場の数を二分の一から三分の一に統廃合する。それから三番目には国産たばこの産地の集約化などで原料費の引き下げを図る、こういうような趣旨のことが述べられておるわけでありますが、このような合理化案というものが既に準備されておるのですか。
  96. 長岡實

    長岡説明員 お答え申し上げます。  現在公社を取り巻いております情勢は大変厳しいものがあるということは御理解いただけると思います。消費停滞ぎみであること、あるいは外国たばことの競争が激しくなっていくというようなこともございまして厳しいわけでございます。したがいまして、そういう厳しい環境の中で、私ども日本たばこ産業の中核的な存在としてたばこ産業を支えていくためには、当然のことながら国際競争力を身につけると申しますか、が必要であり、そういう観点から経営体質の改善等を図らなければならないことは事実でございます。そういった意味での経営合理化というのは、今まで公社の形態のもとにおきましても、でき得る限り努力してきたつもりでございますけれども、今後さらにその必要性は増すものと考えまして、一生懸命に現在具体的な成案を得ようと努力している段階でございます。  したがいまして、日本たばこ産業全体が合理化方向に向かって進まなければならないということは事実でございますが、ただいま上田委員が御指摘になりましたように、何万人人を減らすとか、どれだけ事業所を減らすといったような問題については、まだ具体的な成案に到達している段階ではございません。
  97. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 大臣公社特殊会社にするこの眼目は輸入自由化に対応する、こういうことでありますが、臨調答申では葉たばこの在庫が一年分余分にあるんだということであります。自由化に対応するということは、ずばり言うなら外国たばこ輸入するということですよね。輸入すれば葉たばこの在庫はなくなるんですか。かえって輸入をとめた方が、在庫をなくする早道になるんじゃないですか。そこらあたり、非常に矛盾と我々は考えておるのですが、大臣はどのようにお答えになりますか。
  98. 長岡實

    長岡説明員 私からお答えをお許しいただきたいと思いますが、今度の輸入自由化は、上田委員も御承知のように、製品輸入自由化でございます。原料につきましては、現在もう特にその制限はいたしておりません。ただ、めぐりめぐってと申しますか、製品の輸入自由化によって国産たばこ消費が減れば、したがって、その国産たばこに使う原料が減るじゃないか、そういう意味で過剰在庫の解消には役立たないんじゃないか。そういう観点から申しますと、輸入自由化が即過剰在庫解消に結びつく問題ではございません。むしろある意味では、私どもにとっては大変大きな問題を抱えることになろうかと存じます。  ただ、やはり日本たばこ産業全体が、みんなで一生懸命に合理化を図りながら国際競争力を身にづけようという立場から考えますと、輸入自由化されることによって、国内において競争状態が現出される、その競争を通じて私ども合理化をしていくという意味においては、葉たばこの生産から製造、販売等に至るまで、やはり私どもが必然的に合理化の道を歩んでいくということになるわけだろうと考えておるわけでございます。  一方において、過剰在庫をどう解消するかという問題は、別途の角度から私どもは受けとめておりまして、これは決して簡単なことではないわけでございます。消費がどんどん伸びているときであれば過剰在庫の解消も比較的楽だとは思いますが、決してそういう状態でないというもとにおいて、現在この在庫をいかにして使い込みをふやしていくか。これは例えば各シガレットの葉組みと申しますか、その材料に使う葉たばこの種類、まあいろいろ割合があるわけでございますが、国産葉をたくさん使った銘柄を開発して、それを売ることによってその在庫を減らそうとか、あるいはこれは割高の国産葉でございますから若干赤字が出るわけでございますけれども、葉たばこ状態で輸出をするとかというようなことも含めまして、何とか過剰在庫の解消を図りたいという努力をいたしております。  ただどうも、今私どもいろいろ努力はいたしておりますけれども、私どもの努力だけで果たして本当にこの一年分の過剰在庫の解消が比較的早い期間に図れるかどうかという点については、必ずしも自信を持っておるわけではございませんので、その辺につきましては、やはり生産者の方にも応分の御協力と申しますか、をお願いせざるを得ないかもしれないというふうに考えております。
  99. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 経営形態の変更それ自身は、この過剰葉たばこの解消にはつながりませんね。これは全然関係ないですね。お答えください。関係あるのですか、ないのですか。
  100. 長岡實

    長岡説明員 直接は関係ないと思います。
  101. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 大臣、いわゆる製造たばこ輸入、製品ですね、これはなぜ自由化しなければならぬのですか——大臣から。
  102. 竹下登

    竹下国務大臣 その問題になりますと、要するに開放経済体制に率直に対応していくことが、我が国経済全体のためにいいことである。たまたま今御審議いただいておる、いわゆる製品たばこ自由化もその一つである。で、我が国自由化に対する対応というものがまた全世界の、言ってみれば、いわゆる保護貿易主義の台頭を抑える大きな役割を果たすのではないかということが、やはり大眼目としてそこにあるのではなかろうかというふうに考えるわけであります。
  103. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 経営形態が変わるにしても、この独占事業は守るということは、やはり外国の製品の輸入に伴って国内のそういうたばこ産業を守るという意味が、独占という意味に非常につながっているのじゃないかと思うのですね。私は民営・分割化に反対です。経営形態も変える必要はないと思っております。しかしながら、今独占にしなければならぬ、この形態で置かなければならぬということ自身は、輸入自由化はまだ早いということになるんじゃないですか。あるいはもう既になされていますけれども、これ以上ふやしてはならぬということになりゃしませんか。葉たばこの在庫が余っているのでしょう。こんな状況のもとで製品のたばこを大量に輸入。まあ売れるか売れぬかという問題はありますけれども、そういうものに道を開くということは大きな問題があるんじゃないですか。大臣、どうですか。
  104. 竹下登

    竹下国務大臣 これはやはり世界全体の開放体制、そして我が国貿易立国でございますから、まさに主として工業製品の輸出等において生活に必要なエネルギー等を求めておるわけでございますので、保護貿易主義の台頭というのが一番我が国にとってはいけないことではないか。したがいまして、その場合、単純な一つの諭理としては、この製品たばこが入ってきて、競争の結果どうなるかは別といたしまして、それは我が方も大変な自己努力をしていくにしても、葉たばこの存在そのものとこの自由化の問題とは直接結びつかなくて、仮にもし競争場裏において輸入たばこシェアが大きくなれば、在庫をさばくということに対してはいろいろな方法で工夫されておりますが、直接的には有利な条件にはならぬというふうに、私もそれは認識はしております。
  105. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 それでは、もっと端的な言葉で言うならば、この貿易の自由化、これは世界のそういう大きな傾向ですけれども、しかし、各国には国のいろいろ国内産業の保護という意味から、あるいは保護貿易をしなければならない部分も当然あると思いますね。そうすると、我が国の場合は例えば貿易摩擦がありますよね。去年度も、成長率が三・四%と見通しておったものが三・七%になった。しかし、依然としてその多くの役割が輸出産業で、外需に依拠している。そういう意味で、日本が少し景気がよくなったといったって、それは決して貿易摩擦の解消につながってない。逆に内需の拡大がおくれているがために、対米一つ見ても不均衡があらわれている、こういうことですね。だから、日本の先端技術を中心とした輸出製品の見返りといいますかその犠牲として、我が国たばこ産業がこれからだんだん輸入自由化によって破壊されるということになるんじゃないですか。その点どうなんですか。
  106. 小野博義

    小野(博)政府委員 国内たばこ産業に対する影響というお話でございますので、私の方からお答えすることをお許しいただきたいと思いますが、製造たばこ輸入自由化必要性については、ただいま大臣から御説明のあったとおりでございます。それに伴いまして、やはり我が国国内におきまして国際競争が生ずるということは当然なわけでございますので、その結果として我が国たばこ産業関係者に対しまして何らかの影響が及ぶことは避けられないことだというふうには考えております。  それだけに、今回の改革法案におきましては、たばこ事業関係者に急激な変化が及ぶことがないように慎重な配慮を加えているところでございまして、具体的に申しますと、我が国たばこ耕作者につきましては、我が国たばこ耕作等の現状にかんがみまして、葉たばこ全量買い取り制を維持するとか、あるいは葉たばこ審議会を設置するとか、さらには葉たばこ審議会における審議基準を法律上明定する等の措置を講じておるところでございます。特に葉たばとの耕作面積及び買い入れ価格につきましては、製造独占が認められている会社が一方的に、実質的な買い手独占といたしまして買い入れ価格を決定するというようなことがないように、新会社内に葉たばこ審議会を設置いたしまして、そこで公正な審議をいただくことにしておるところでございますし、また、審議会の委員の委嘱に際しては、あらかじめ大蔵大臣の認可にかからしめることによって一層の公正さを担保することにしておる。そういうことでございまして、制度的に十分の保護措置を講じているところでございます。
  107. 竹下登

    竹下国務大臣 今上田さんのおっしゃいました論理は、いつの時代にも自由化の場合にある論理だと私は思うのでございます。  それで、一方で例えば業種別で工作機械は随分輸出が活発になって、それで国内の工作機械業界が潤うかもしらぬ。そうすると、一方貿易の不均衡等から、我が国産業を圧迫するような業種について自由化が求められ、それに対応していきますと何らかの影響は必ず受けていく。そういう結びつきでこれをとらえた場合には、そのような議論は成り立ち得る議論だ、これはいつの場合でもそうではなかろうかというふうに私は思うわけであります。  ただ、私どもやはり考えてみなければなりませんのは、説明もしておるわけでございますけれども、要するに油の九九・八%を輸入しておるということになりますと、例えばこの間の値下がりだけで貿易黒字の三分の一、いわば払うべきものを少し払うわけでございますから、それが黒字一つ要因にもなるわけでございます。しかしながらいろいろな国々で見ましても、まだ日本の場合いわゆる輸入超過の国、対産油国、あるいは先進国の中でいえばカナダとかいうところを見れば、これは輸入の方が超過しておりますので、やはり貿易収支なり経常収支なりというのはグローバルなといいますか、全世界的な視野で考えなければならぬ、二国間だけで見て考えるべきものじゃない、こう言って我々も折に触れ説明しておるわけであります。それをできるだけグローバルな形で均衡させようというところでいろいろな知恵が出て、ガットというものがあったりOECDのような会議があったりということで全世界の調整をとっている。  ただ、一つ言えますのは、そういう意味における経常収支黒字に見合う——ちょうどは見合いませんけれども、それがまた資本収支の流出として低利な、いわば良質な資本を開発途上国等に供給しておるという立場における評価もまた一方なされておる。だから、単品ごとの自由化と貿易とで考えた場合にはあり得る議論ではございますが、そういうのをできるだけ影響を少なく、かつ自立さすように、またそれが国際競争力を持つような努力を期待してこれからも進んでいかなければならぬ問題ではなかろうか、こういうふうに考えております。
  108. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 大企業だけじゃないけれども、そういう輸出産業のために零細な中小企業、零細企業あるいは農民、漁民が犠牲になっていいんですか。今古々米の問題も大きな問題になっております。土地がありながら減反せざるを得ない。減反したために、例えば雨が降ってもやはりそれが洪水になりやすい。保水に今までそれが一つの役割を果たしてくれた。あるいはがんがい用水にしても、あるいは山林の伐採とかいうようなことの中から、昔であれば、あの程度の雨であれば別段洪水にならないにもかかわらず、減反だけが原因ではないにしても、そういう日本の農業政策の中で大きな惨事になっているという場合は往々にしてあると私は思うのですね。そうして今日減反の結果、あれだけ政府自身が輸入米を入れない、こういうことであったにもかかわらず入れるというような形になってきている。  結局、私が先ほど申したように、やはり守るべきは守っていく。日本の国益というのは一体どこにあるのか。だから、今のような経済構造であれば、どんどん欧米の自由化攻撃といいますか、そういうものに押されて、だんだん次から次へと、日本の農民や葉たばこ耕作者も一緒でありますが、あるいは当然専売公社に働く労働者を合理化せざるを得ない。そうでしょう。輸入たばこが製品として入ってくるわけですから、それがシェアが広まれば、その分だけたばこ消費量は減ってもふえる傾向にないですよね。限られたそういう一つシェアの中で外国たばこが入ってくるということになれば、当然これは、先ほどそんな計画はありませんと言ったって、やはり職員を一万人、五年間に減らそうじゃないかとか、あるいは葉たばこ耕作者の集約とか言ったって、結局減反という形にしわ寄せがいくんじゃないですか。だから、私から言うならば、絶対に公社制度を変える必要ないし、外国たばこ輸入する必要ない。そんな日本産業構造の中から出てきたひずみだということであったとしても、日本産業構造自身を切りかえていかなかったら、これは本当に日本の国益という立場からいったら、葉たばこ耕作者はあるいは日本たばこをつくらなくたっていい、全部外国たばこを買うたらいいんだという理屈になりませんか。あるいは徐々にそういうことをやっていくんだというように考えているんですか。
  109. 長岡實

    長岡説明員 過剰在庫問題を抱えておりまして、私どもとしてもいろいろ苦労はいたしておりますけれども基本的な考え方として、それならば国産の葉たばこはゼロになってもいい、安い葉たばこ外国から買ってきてつくればいいじゃないかという考え方は私どもはとっておりません。なぜかと申しますと、世界の葉たばこの市場からいきますと、例えばアメリカならアメリカが大変強い発言力を持っておるというときに、私ども日本で原料の一定の供給量を確保しておきませんと、いわば売り手の言いなりになってしまうという危険性もあるわけでございます。したがいまして、私どもとしては、一定量の国産の葉たばこは今後とも国産の原料として維持すべきだというふうに考えております。
  110. 竹下登

    竹下国務大臣 今おっしゃいます議論というのは、私は自由化の際にいつでもある議論だと思っております。そもそも貿易の自由化とは何ぞや、こういいますと、全地球上に生存する人類が安価に、良質なものを自由に、どこからでもとれる、こういうのが貿易自由化の大原則。しかし、そこには民族があり、国民がおり、国家がある。その中の産業構造の中で、有無相通じながらも上手に調整していって世界国家ができる、こういう立論になろうかと思うのであります。したがって、今我が国耕作者、そしてたばこ産業そのものを考えれば、自由化しないでこのままの体制の方がいいんだという諭理も、現状固定の諭理からいえば成り立ち得る諭理であると私は思うのです。  いつも感ずるのは、結局人口こそ世界で七番目でございますけれども、四十分の一の人口でもって十分の一のGNPを上げておる我が国のいわゆる国際国家としての立場から見た場合に、開放経済に背を向けるわけにもいかない。そしてまた、我が国が今日あるのは、我が国の国民の国内における切磋琢磨と良質な労働力とでも申しますか、そうしたもので今日の地位を得た。ただ、先ほど御指摘になりました、五十八年度でございますけれども、三・四を三・七に上方修正した中で、一・九が内需で一・八が外需でございますが、辛うじて〇・一内需が多いとはいえ、もともとは〇・六を外需に見ておったわけですから、その限りにおいて三倍になっております。したがって、片方は二・八でございましたか、それが一・九でございますから、半分よりはちょっと上でございますけれども、そういう外需依存の状態にあるということは事実でございます。したがって、上田経済理論からいえばもっと内需を余計にして成長率を上げていけ、こういう論理の根拠がそこに存在する余地はあるな、いつの日かまた議論しなければいかぬかなと思って今承っておったわけでございます。
  111. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 外需依存型の経済から内需依存型の経済に転換をしなければ、貿易摩擦の解消の根本的な解決にならぬ、私はこのように思うのです。そういう点で、何もこれは私の理論じゃないので、多くの学者、経済人も言っていることだし、自民党の中でもそういうことを言う人がどんどんふえておることも事実であろう。恐らく大臣も近くそういうことを言い出してくる、また言わざるを得ないというようなことも大いにあり得ると私は思うのですよ。これはあなたの今の立場でそういうことを言っておりますが、少し立場が変われば、内需拡大型で積極財政ということをいつ言い出すかわからぬというふうに僕自身思っているのです。だから、余り強くここで言わない方がいいんじゃないかと私は思っているぐらいなんです。  そこで、外国たばこが去年だけで約五十億本ですね。シェアにして二%弱でありますが、聞きますれば、四、五年もたてばシェアを三〇%に拡大してみせるというようなことを外国たばこのメーカーが言っておるようでありますが、大体どういうように予想されていますか。
  112. 長岡實

    長岡説明員 過去二、三年間の傾向を見ますと、いわゆる輸入自由化が行われる前におきまして、年率二割に近い程度輸入品伸びております。これが来年の四月一日に輸入自由化が行われた後で一体どの程度伸びを示すであろうかという点の予測は、大変難しいわけでございます。     〔委員長退席、中西(啓)委員長代理着席〕  と申しますのは、何と申しましてもたばこは嗜好品でございまして、これは習慣性と申すのでございましょうか、自分がいつも吸っているたばこに愛着を感ずるという傾向が相当ございます。したがいまして、輸入品がどんどんふえてくればどんどん輸入品に回ってしまうというほどでもないと思います。  それから、今約三割ぐらいになりやしないかという御趣旨の御質問がございましたけれども、これは恐らく、フランスやイタリーが輸入自由化をしたところ、国内シェアが三割ぐらいになってしまったというところからの御指摘であろうと思うのでございます。これは私ども別に自負しているわけではございませんが、フランスやイタリーのたばこ専売に比べますと、私どもの方が、最近の喫煙者がどういう傾向たばこを好むかということには敏感に反応してきたつもりでございます。例えば、今日本消費されている最大の銘柄でありますマイルドセブン、これが四二%ぐらいのシェアを占めておりますけれども、これなどは、アメリカから輸入されるたばこと比べてもそんなに引けをとらない自信もございます。  そういう意味において、どの程度シェアになるかというのを数字でお示し申し上げるのは大変難しいのでございますけれども、今申し上げられることは、フランス、イタリーの轍を踏むことはないであろう。要するにシェアを三割も奪われることはないであろうということは、申し上げられる第一点でございます。それから、何年間にという具体的な期限ははっきり申し上げる自信はございませんけれども、例えばシェアが今せいぜい一・八とか二とか言っておりますけれども、それが五%になる、あるいは五%を少し超えるというような状態になることはある程度覚悟しながら、今後の事業運営に当たっていかなければならないと私どもは考えております。
  113. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 外国たばこ国内でのシェアが、フランスとかイタリアのように三〇%台になることはないと思う、あるいは、いつも吸いつけているものが一番いいのであって、急に外国たばこを吸ったからどうのというものでもないという意味じゃないかと思うのですけれども、これは歯どめがないのじゃないですか。そう思うというだけでしょう。例えば五年後あるいは三年後に三〇%になるかもわからない。絶対させませんという保証はありますか。
  114. 長岡實

    長岡説明員 絶対させませんと申し上げるのはいかがかと存じますけれども外国たばこに負けないような製品をつくって、そういうことのないように最大限の努力をするということは、お約束申し上げます。
  115. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 負けないようなといっても、これは好みの問題で、宣伝合戦、将来そういうことになりますよ。今日本人は日本たばこを吸っていいと思っていますけれども、いつ嗜好が変わるかわからないですよ。おいしいかおいしくないかというのは、恐らく個々人の好みの問題じゃないか。まさしく嗜好品なんだからね。絶体に日本たばこ日本人に——それだったら初めから輸入をやめたらいいんじゃないですか。そうでしょう。その歯どめがないということは、どういうことになるのですか。ずばり言うならば、競争に負けるということになりますと、いわゆる専売から特殊法人になったその会社自身がつぶれるということになるのじゃないですか。そこに働く労働者が皆職を失い、葉たばこ耕作者が失業するということになるのじゃないですか。三〇%シェアを奪われるということになってきたら、絶対量はふえませんね。もっと吸いなさい、吸いなさいと言うんですか。これは私、後から健康の問題で質問しますが、これは消費量はふえないと思いますよ。減ることはあってもふえない。その中で三〇%シェアをとられたら、その分はどうなるのですか。そうしたら職員は何人減るのですか。それから葉たばこ耕作者はどの程度、何割ぐらい減反しなければならぬのですか。十万人ほどがそれで仕事をやっているというのが何万人減るのですか。例えば三〇%の場合、数字を出してください。
  116. 長岡實

    長岡説明員 輸入品シェアが三〇%になりまして、しかも国内需要が頭打ちという場合で考えますと、国内品がそれだけ食われるわけでございますから、それは本数にいたしまして大体八百五十億本程度。それから、現在五万四千ヘクタールございます耕作面積については、これは極めて大ざっぱな計算ではございますが、一万五千ヘクタールぐらい減らさなければならない。人員の方は必ずしも一本当たり何人というわけになかなかまいりませんので、的確にお答えはいたしかねますけれども公社の職員を減らしていくという方向にも当然つながっていこうかと思います。したがいまして、そういうことにならないように最大限の努力をする……(上田(卓)委員「大体何人減りますか」と呼ぶ)これはちょっと今のところなかなか見当がつきかねるところでございます。
  117. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 大臣、これをどうお考えですか、歯どめという問題ですね。実際三〇%になってからこういうような形で減らしていくわけですか。人員整理もするわけですか。自由化するということは、当然外国製品のシェアが広まるということでしょう。それをどの程度食いとめるかというだけの問題でしょう。食いとめるこの歯どめというのは全然ないわけでしょう。何かあるんですか。それとも、何%ぐらいまでならということで向こうと話をしているわけですか。そうでもないでしょう。何かよくわからないんですけれどもね。
  118. 小野博義

    小野(博)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま総裁から、シェアをふやさないように最大限の努力をされるという御答弁があったわけでございますけれども、私どもといたしましては、先ほど申し上げました葉たばこ耕作者に対する配慮であるとか、あるいはまさに自由化に備えて国際競争に打ちかっていくための制度として、公社特殊会社に変更いたしまして、労使双方が当事者能力を持った経営形態とすることによりまして、労使双方で最大の努力を尽くしていただくというための制度的な担保を整えているところでございます。
  119. 竹下登

    竹下国務大臣 これは上田さん、現状固定的な観念で立論をした場合にはそういう問題が出るわけでございます。自由化というものは、いわばその現状固定的な考え方で言えば、これは言葉は悪いんですが、いわゆる不自由化でございますから、自由化というものを前提に置いた場合には、おのずからなる体質改善の中で競争力を保持して努力をしていくというのが前提になるわけであります。だから長岡総裁から、全力を尽くして競争力を持っていくような精いっぱいの努力をしていきますと。だからこの自由化問題というのに対して、これは個々の問題によって違いますが、いわゆる歯どめという問題は、自由化全体とはまた別の角度からの一つの議論になるわけでございます。
  120. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 今三〇%ということでお聞かせいただいたんですが、例えば自由化俊二、三年後に五%を上回るというようなことになったらどうなりますか。
  121. 長岡實

    長岡説明員 現在のシェアが一・八%でございますので、五%とすれば三・二%ふえることになるわけでございます。それで国内品がそのまま三・二%減った場合というふうに想定いたしますと、国内品の数量は百億本ぐらい減ることになります。それから耕作面積は千八百ヘクタールぐらい減ることになろうかと思います。
  122. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 総裁、やはり二、三年後になれば五%ぐらいいくんですか。
  123. 長岡實

    長岡説明員 私どもはなるべく国産品シェア確保に努力いたすつもりでございますけれども、将来の経営計画を立てます場合に、ここ数年間に五%程度輸入品シェアになることは、やはりある程度想定して対応していかなければいけないと考えております。
  124. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 そこで大臣、先ほどの葉たばこの在庫が今三年分あるというんですね。臨調答申でいえば大体二年ぐらいでいいんじゃないか。あと一年分ほど多いということなんですけれども、これをどうやって減らすんですか。何か処分するんですか。どうするんですかね。
  125. 長岡實

    長岡説明員 過剰在庫の解消策としては幾つかのことが考えられるわけでございますが、現在私どもが鋭意詰めておりますのは、何とかして国産葉の使用の割合を高めていくというのが一つございます。これは過剰在庫の中にはある程度品質が劣るものがあるわけでございますが、その品質の劣る葉たばこに加工いたしまして、それをたばこの材料として使っても差し支えないようにする技術の開発にもある程度成功いたしておりますので、そういう道を通じての増加と、それから、先ほどから申し上げておりますように、国産葉をたくさん使った新しいブランドの開発、例えば最近出ておりますキャスターというような製品は、比較的国産葉の使用の割合が高いわけでございます。しかも喫味が喫煙者に満足していただけるような製品の開発も、過剰在庫解消策の一つであろうかと思います。それから、割高であるために、これはおのずから限度がございますけれども、葉たばこのままでの輸出につきましても最近非常に力を入れておりまして、一時に比べますと、まだそれほどの数字にはなっておりませんけれども、ある程度輸出数量もふやしております。  そういったようなことを総合的に実施することによって、何とか過剰在庫の解消に努力いたしたいと考えておりますが、現時点で今私が申し上げたようなことだけで本当に過剰在庫が解消できるのかどうかという点につきましては、率直に申し上げまして不安もございます。そういったような場合には、耕作農家にだけしわ寄せするつもりは毛頭ございませんけれども公社といたしましても合理化努力を払いながら、耕作農家にもある程度協力要請をする必要も出てくる可能性はあろうかと存じます。
  126. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 国内の葉たばこは割高であるということだけじゃなしに、やはり質の関係にもかかわるのかわかりませんが、外国の葉たばこもやはり三分の一ぐらい輸入してそれをブレンドするんですか。どうしているのかよくわかりませんが、恐らくそうしているんだと思うけれども、それも必要なんでしょう。そういうような外国の葉たばこ輸入しなければならぬという状況のもとで、日本の割高な葉たばこをどこに売るのか。その努力はしてもらわなければいかぬけれども、私は言葉だけに終わってしまうんじゃなかろうかという懸念が一つあります。  それから、これは大臣にもお答えいただきたいんですけれども、いずれにしても自由化をすれば外国たばこシェアが広がる、その分だけ、全体の消費伸びないんだから国内産のたばこが打撃を受ける。その場合、それに対してどのように極力激変緩和対策をとるのか。そういうのが具体的にあるわけですか。あれば言ってもらいたいと思います。
  127. 小野博義

    小野(博)政府委員 お答え申し上げます。  現在葉たばこについて考えております点について御説明申し上げますが、先ほどちょっと御説明申し上げましたように、今次の改革法案については、たばこ事業関係者に急激な変化が及ぶことのないようにという配慮は十分に講じているところでございまして、具体的には、現在のたばこ耕作等の現状にかんがみまして、葉たばこの全量買い取り制を維持する、それから葉たばこ審議会を設置する、葉たばこ審議会の審議基準を明定するというような措置を講じておるところでございます。  特に葉たばこの耕作面積と買い入れ価格につきましては、製造独占を認められる新会社でございますので、実質的な買い手独占になるわけでございますから、一方的に買い入れ価格を新会社が決定するようなことがないように、新会社の中に葉たばこ審議会を設置いたしまして、さらにその委員の委嘱に際しましてはあらかじめ大蔵大臣の認可にかかわらしめるという手段を講じまして、審議会の審議の一層の公正さが担保されるように配慮しているところでございます。
  128. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 そこで、外国たばこ国内たばこ、要するに競争力を高めるということなんですが、現在どの程度の水準にあるのですか、日本たばこは。
  129. 西村忠弘

    ○西村説明員 ただいまの日本の製造の水準という御質問でございますが、製造技術といいましてもいろいろ幅の広い、広範な領域がございます。それを一言で一概に結論づけることは非常に難しいわけでございますけれども、我々も従来たばこの製造機械の高速化なり、工程の連続化、自動化等を行ってまいっておりまして、これらの技術の開発状況から見ますと、現在の公社技術水準というのは大体先進国と同レベルくらいにあると私ども思っております。さらに、ただいまお話にありました原料の使い方、材料の使用の面におきましても、機械の効率、品質状況から推察いたしますと、先進国の中で比較的優位な位置づけにあるのではないかというふうに思っております。  しかしながら、今後工場におきまして、各国とも大変エレクトロニクス等の技術が進歩をしております。その変化が非常に大きいわけでございますので、そういう面とか、あるいは今御指摘になりました国産葉の問題を抱えておりますので、今後ともコストなり品質の維持なりというものについて格段の努力をしていかないと、なかなか国際競争力の面では難しい状態があるだろうと予測しておりますので、今後とも鋭意努力していきたいというふうに考えております。
  130. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 今回の改革案を見ますと、大蔵省が唯一の最大の株主ですね。そして大蔵大臣の監督下にある、こういうことですね。だから公社制度から特殊法人に移すのは、貿易自由化に対応するということが一番大きなねらいだが、やはり可能な限り経営の自主性を与えるということがうたい文句ではないのか、私はこのように思っているのですね。公社制度であればそれはできないのだけれども特殊会社にすればそのことができるんだと言いながら、実際特殊会社の中身を見れば、もうがんじがらめですよね、そうでしょう。株主であって、それは独占だし、そして大蔵大臣の監督下にある、こういうことであるわけですから、僕は、ずばり言うならば、現在の公社制度も可能な限りの自主性、裁量権を与えるべきだ、与えることができるというふうに思っているのですが、大臣、どこにその差があるのですかね。
  131. 小野博義

    小野(博)政府委員 法案の制定の技術的な問題として私の方からお答えさせていただきたいと思いますが、公社制度におきましては、従来いろいろ言われているところでございますけれども、例えば労使関係について公労法の適用があるとか、あるいは国会議決の問題があるとか、いろいろと法的規制があるわけでございますけれども公社制度のままで今回の改革に対処しようとする場合には、やはりおのずからなる限界があろうかと思っております。  と申しますのは、今回の輸入自由化に当たりまして、十分な国際競争力を持つ、完全な当事者能力を持った、いわば経営の自主責任体制を確立した企業体とするということに関しましては、やはり現在の政府関係特殊法人の中で、そういう意味で最も合理的な企業経営が可能である特殊会社にすることが、今回の改革趣旨に最も即したものであると判断した上で、このような形態をとることにいたしたものでございます。
  132. 竹下登

    竹下国務大臣 今、専売監理官からお答えいたしましたが、私がお答えするのはどういう立場からお答えした方がいいでしょうか。ちょっともう一遍聞かしてください。
  133. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 どういう立場って、大蔵大臣、株主として私は言っているわけでもないわけですけれども、いずれにしても監督する者と監督される者、経営の主体、あなた自身が経営するわけではないにしても、やはりそういう監督権というのはあるわけでしょう。それから小野さんも、一昨日の審議の中でも、政府が株主権を背景に積極的に経営に関与する、こういうことを言っているわけですね。積極的に関与するわけですか。
  134. 竹下登

    竹下国務大臣 詳細なこと、法制上の問題、そう詳しく知っておるわけじゃございませんが、これは私流に見ますときは、やはり公労法から要するに労働三法へのこの移り変わりというのが一番大きいポイントじゃないかな。元来私、いささか私見を申し上げますならば、できるだけそういうものは自主的であった方がいいと思っております。したがって、重ねて申し上げるようでございますが、世界に冠たる日本労使関係、これが僕はどこへ行っても一番、威張るという言葉はいけませんけれども、逆に言えば褒められることじゃないかなと思っております。それだけの良識と知性というものが日本人にはあるわけですから、本当は今日の時点においても当事者能力が可能な限り出るのが結構だ。それが商法上の法人となり、かつまた、まさに労働三法の適用ということになっていけば、これは日本人の良識、従来の専売公社そのものからしても、その点の当事者能力が何よりも自由化に対応するところの活力になるものだという、これは私なりに信念というと言葉が大きくなりますが、そういう理解の仕方を従来から持っております。  ただ商法上、よく私どもが有価証券報告書を受け取りますですね。その株主であることは事実でございますから、国民を代表した唯一のその株主が、有価証券報告書を見てから、ひとつどうか、こういう意見をするのではなくして、そこに最小限の関与の道が開かれておるということであって、それは法律がひとり歩きすれば、人によってその運用の方法は違ってくるという議論もございますけれども、根底を流れるものは、まさに今度は当事者能力とかそういうものに最大限のウエートを置いた議論をしながら、可能な限りのそうしたものをつくっていった。だから先例で見れば、例えば電発でございますね、あれの法律と比べてどうかとか、あるいは日本航空の法律、あるいは既に完全民営化しましたが、これは最初の出資のときの趣旨も違っておりますけれども、例えば日本合成ゴム株式会社とか、そういうような、関与を最小限にとどめるという観点で、私が一条一条やったわけではございませんけれども、そういう方向で立案してきたということは、私は自信を持ってお答えできることではないかな、こういう感じがいたしております。
  135. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 いずれにしても、今まで自身がそうであったわけで、余りにも公社の自主性を損なうことがしばしばであった、それを改革するということであって、特殊会社にしたからそれが改まるというようなものではない。いわんや、先ほど私が指摘したように、さらに一層大蔵省、政府のそういうような介入が強まるのではないかという懸念すら我々いたしておるわけでありますから、なおさらそういう経営の自主性というものを明らかにすべきである、このことを我々は申し上げておきたい、このように思います。  それから、先ほどもちょっと申し上げたんですけど、やはり少し確認しておかなければならぬ、このように思いますが、例えば新会社たばこ製造独占権は恒久措置である、こういうことを一昨日も述べられておるし、また大臣も、先ほどそういう意味独占権というものについても述べられたわけでございます。しかし、臨調答申では、「国産たばこ問題が解決され、特殊会社経営基盤が強化された段階で製造独占を廃止」する、こういうようになっておるわけでございまして、そういう点で、国内たばこ産業維持発展というものを考えるならば、この製造独占を決して将来も崩すべきでない、このように私は考えているわけでございますが、この点について再度大臣から明確にお答えをいただきたい、このように思います。
  136. 竹下登

    竹下国務大臣 この改革法案において、たばこの製造独占会社に付与しておるということは、いわゆる国産たばこの現状、それからたばこ耕作者への激変を回避しますということとともに、国産たばこ問題を抱えた状況のもとでの国際競争力確保するためのものであって、将来、製造独占についてどのように取り扱うかという問題がありましても、今申しましたような観点から検討さるべき問題である。すなわち、葉たばこの現状とかあるいはバイオテクノロジー、いろいろな問題ございますでしょうが、大変な変化があるというような事態は容易に想像できることではないと私は思います。したがって、あくまでもそういう問題を抱えたままでの国際競争力というものを確保するという観点から、将来にわたっても対応すべき問題ではないかということでおります。
  137. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 先ほどの葉たばこ耕作者の問題にまたかかわってくるわけですけれども外国製のたばこシェアが広まれば、回内たばこ産業が圧迫される、こういうことは当然のことであるわけですけど、やはり公社もそういう立場になっていただきたいのですが、約十万の葉たばこ耕作者の生活というものを守っていかなければならぬ、こういうふうに思うのですね。だから、ここでどのような事態になっても葉たばこ耕作者の生活を守っていくのだ。また、こういう葉たばこ耕作者というのは本当にそういう立地条件といいますか、他の農業の耕作に適しない、また同時に、そういう意味では、それだけに転業が難しいということから専業農家でもあるというような状況があるわけですから、どのような状況にあろうとも、減反を強いるとかいろいろな形で農家を犠牲にさせない、そういう決意というのですか、そういうものをここで述べていただきたい。  あわせて、それにかかわって、いわゆる葉たばこの買い入れ方法ですね。これが耕作許可制から契約制に改まる、こういうことで、葉たばこ農家の方々が、今まで全量買い上げていただいておったのだけれども、それが一体どうなるのかということで非常に不安におののいておられるわけですから、そういうこともひとつお答えをいただきたい、このように思います。
  138. 小野博義

    小野(博)政府委員 お答え申し上げます。  葉たばこの買い入れ方法につきましては、現在の専売制度下におきましては、葉たばこの生産については、法形式上はたばこの耕作を一般的に禁止しております。したがいまして、公社が特定者について許可を行い、しかも種子から収納時まで各種の許可、制限等を行って、いわば完全に統制する仕組みになっているわけでございます。  しかしながら、葉たばこと申しますものを別の面から考えてみますと、製造たばこの原材料という意味では一種の財貨でございますので、財貨の売買といたしましては、対等な当事者の取引関係によるのが普通でございますので、専売制が廃止された場合に、葉たばこについても一般の財貨の売買と同様のものであるということが考えられると思います。  また、社会情勢が変化いたしまして、戦後、非常にたばこが不足しているような場合には密製造というのがかなりあって、検挙件数なんかも相当あったように聞いておりますけれども、現状におきましては、密製造というものは全くなくなっておるわけでございます。そういう状況で、たばこ耕作を全面的に許可制度に置いておく必要性が極めて希薄になったわけでございます。  以上の理由により、耕作許可制から契約制に改めるわけでございます。
  139. 長岡實

    長岡説明員 許可制から契約制への改定の点につきましては、ただいま監理官からお答え申し上げましたが、葉たばこ耕作農家の安定を今後どうやって図っていくかという点につきましては、率直に申しまして、私ども公社にもまだまだ合理化を行う余地が残っておると思いますし、葉たばこ農業につきましても、生産性の向上あるいは品質の改善等について、まだまだ合理化努力の余地があろうかと思います。そういうような努力を払うことによって、国際競争力を身につけながら、現在程度に、要するに国産の葉たばこを主原料として我々がたばこをつくっていくという考え方は、今後も維持してまいらなければならないというふうに考えております。
  140. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 葉たばこ耕作者の生活を守る、しかし、そういう合理化すべきものは合理化していく、割高にならないようにしていかなければならぬ、国際競争力という問題もあるのですから。これは、先ほど私も申し上げたように、本来ならば、こういう分野というのは保護していく、ある程度割高であっても仕方ないのだというぐらいの割り切り方をしないと、そういう国際自由化の中で実際生き延びていけるのだろうかどうだろうかということを私は考えざるを得ないのですね。米の問題でもそうですよね。日本の米、いろいろおいしい米もありますけれども、カリフォルニア米など非常においしいものですよね。そういう点で、初めから競争できるのかできないのか、努力は必要だけれども、ある程度競争に耐えられないものはもうだめにしてしまうのか、それとも守っていくのか、そこの問題じゃないだろうかと私は思うのですよ。だからそういう点で、外国シェアの問題もあるとはいうものの、この産業を最後まで守ろうとしているのか、もう努力してあかんかったらつぶしてしまってもいいと思っておるのか、そこのことが私はいわば根本的な問題だと思うのです。その中でやはり守るんだ、にもかかわらず努力するんだというなら、それなりのことはわかるのですけれども、そこらあたりをもう一度述べていただきたいということ。  それと、許可制から契約制に変わるということで、言葉がなじまないということもありますが、これは公社から特殊法人になったからそういう用語になっただけであって、中身は全く一緒なんだというふうに解釈していいのですか。何か違いがあるのですか。言葉が変わったから中身も違うのだというふうに解釈していいのですか。
  141. 小野博義

    小野(博)政府委員 お答え申し上げます。  専売制度が廃止されまして特殊会社になったわけでございますので……(上田(卓)委員「まだなってないじゃないか」と呼ぶ)失礼いたしました。特殊会社になるわけでございますので、先ほど申し上げましたように、許可制から契約制に変更されるわけでございますけれども、買い入れの手順とかそういったようなものにおいて、従来と大きな変更はございません。(上田(卓)委員「何が変わるのですか」と呼ぶ)許可制が契約制に変わるという法律上の問題でございまして、内容的に大きく変わっているわけではございません。
  142. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 大きく変わらない、全然変わらないのですか。変わるのだったら何が変わるのか、言ってください。
  143. 小野博義

    小野(博)政府委員 例えば、現在耕作許可制でございますので、概算払い制度であるとか、あるいは災害補償制度であるとか、そういったようなものは法律に規定しておりますけれども、今後は基本的には耕作者会社の契約内容となる。その契約内容についてはおおむね同様と申しますか、変更することは考えておられないようでございますけれども、そういった点で、手続的な点と申しますかあるいは事務的な点と申しますか、いろいろ変化はございます。しかし、買い入れの手続その他大筋のところは変わらないと申し上げてよろしいと思います。
  144. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 全量買い上げ制で、それはもう原則は変わらないから、つくったものはみんな買ってもらえる、こういうことですね。
  145. 小野博義

    小野(博)政府委員 契約でございますので、会社との間で特定の面積、種類について契約をするわけでございますが、その契約した面積から出てきた葉たばこにつきましては、原料としての使用に適しないものを除いては全量を買い上げることにしております。
  146. 長岡實

    長岡説明員 補足的に御説明申し上げますが、今度の制度改正でどこが変わるかと申しますと、現在のところ葉たばこというものは、国家の専売権があるわけでございますから原則禁止で、そして許可をするという形をとっておりますが、これからは、私は量としては大したことはないと思いますけれども、例えば花を吹かせる鑑賞用の葉たばこというのもあるのでございます。こういったようなものについては、恐らく自由に農家がつくることができるというふうになろうかと思います。  ただ、たばこの原料の用に供するものについては、従来と同じように全量買い上げをする。「たばこの原料の用に適さないものを除きこという意味は、これは現在の許可制においても、適しないものは、もちろん農家とちゃんと相談はいたしておりますけれども、廃棄処分その他の措置をとっておるわけでございまして、そういう意味においては実質的に変わりはないとお答え申し上げられると思います。
  147. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 今「原料の用に適さないもの」ということを言われたのですけれども、それは現行法の十八条の三項によると、「納付するに適しないもの」という言葉でしたね。それが今度は「原料の用に適さないもの」、一体何が違うのですか。言葉だけですか、中身は変わらないのですか。
  148. 長岡實

    長岡説明員 納付という表現も、やはり専売権に基づいてたばこ耕作を許可して、それを買い取るというところからきた表現だろうと思います。内容は変化はございません。
  149. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 先ほどの葉たばこ農家の立場、そういうものを守っていくということについてお答えください。     〔中西(啓)委員長代理退席、熊川委員長代理着席〕
  150. 長岡實

    長岡説明員 お答え申し上げます。  たばこ事業法におきましても、第一条で法律の「目的」の中に、「製造たばこの原料用としての国内産の葉たばこの生産及び買入れ並びに製造たばこの製造及び販売の事業等に関し所要の調整を行うことにより、」云々とありまして、日本たばこ産業を維持していく中に葉たばこ農業が入っていることは間違いございません。  それから、たばこ産業株式会社法は、これを受けまして第一条「会社の目的」のところで、「たばこ事業法第一条に規定する目的を達成するためこういう会社をつくるということになっているわけでございます。したがいまして、先ほど来何回も繰り返しましたように、会社といたしましても、葉たばこ耕作農家といたしましても、合理化の努力は払わざるを得ないと思いますけれども基本的に日本の葉たばこ農業を維持していくという考え方は、そのまま貫いていくことになると思います。そういう仕組みになっております。
  151. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 そこで、先ほど申し上げたように、過剰在庫問題ですね。こういう問題については、年々生産されるものでもありますから、それでは過剰のものをどうするか。そこへ外国製のたばこが入ってくる。こういう板ばさみで、なかなか容易に解決するという問題でもなかろう、こういうふうに思うわけでございます。そういう点で、葉たばこ耕作者に対してあくまでもそういう独占で保護していく。保護という言葉がいいのかどうか別にして、そういうものを守っていくということが非常に大事ではないか、こういうように私は考えておりますので、やはりいろいろ——今度特殊会社になるということの中で、我々が切り捨てられていくのではないか。今までは公社で買い上げてもらった。移行形態でややそういうことがまだ守られておるとはいうものの、将来どんどん耕作者が切り捨てられていくのではないかという不安があるわけですね。八十年間続いたこの制度でありますから、変えるということについて、名前も許可制から契約制になるとか、原料の用に適さないとか、そういう形の言葉が少し変わってくるものですから、やはり非常に不安を覚えているということがあるわけであります。  具体的なそういう保護というものを頭に置いて、さらにそこで言えることは、原料葉の輸入割合ですね。現在三五%程度というように聞いておるわけでございますけれども外国の葉たばこがどんどんふえてくるということになると、また国内の葉たばこが圧迫されるということになるわけでありますから、こういう割合というものは今後も守っていくのですか、どうですか。
  152. 長岡實

    長岡説明員 基本的には現在の割合を維持してまいりたいという気持ちでおります。
  153. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 将来変えるわけですか。
  154. 長岡實

    長岡説明員 将来にわたりまして今の割合を維持していきたいというような意味でございます。
  155. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 ぜひともそういう形でしてもらいたいというように思います。  そこで、時間の関係もございますので、少し小売店の問題等にも入りたいと思います。  現在、日本たばこ販売店、小売店——私もおじいさんの代から小売店をしておるわけで、小さいときはたばこを売った経験もあるわけでございますけれども、そのほとんどが零細な小売店でございます。家族合わせて約百万人が生計を営んでおる、こういう実態があるわけでございまして、零細なたばこ販売店、小売店の生活の安定を図るという意味で、今まで指定唐ということで、また特に社会政策の一環として、身障者あるいは母子家庭に対して指定優遇措置というものがとられてきたわけでございます。そういう点で、指定制から許可制というような形になるのかもわかりませんが、私はこれは中身は全く同じものだというように思っておるわけでありますが、その点についてどのように解釈されておりますか。
  156. 小野博義

    小野(博)政府委員 今次の改革におきまして、小売店につきましては、八十年の専売制度のもとにおきまして、流通制度の上でそれなりの役割を果たされてきたわけでありますけれども、一挙に自由化いたしますと申しますか、指定制度を廃止いたします場合には、大変な混乱が生ずることが考えられるわけでございます。そこで、従来は公社が指定するといういわば指定制度であったわけでございますけれども、今回の改革法案におきましては大蔵大臣の許可制とすることとしておるわけでございますが、その内容については、実質的な変更は行われていないわけでございます。
  157. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 指定制から許可制といいますか、大臣の許可ということで、中身においてはいささかの変更もないということですね。  そこで、このたばこ事業法の第二十二条の一項によれば、小売販売店は当分の間、営業所ごとに大蔵大臣の許可を受けなければならない、こういうことで「当分の間」ということが入っておるわけであります。ということは、「当分の間」を過ぎれば、指定制といいますか許可制というのですか、そういうものがなくなるというように解釈されるんですが、その点どうですか。
  158. 小野博義

    小野(博)政府委員 今回の小売人許可制度の趣旨と申しますのは、ただいま申し上げましたように、小売人指定制を一挙に廃止した場合には流通秩序に少なからぬ影響を与える、その結果として零細小売人の共倒れであるとか、あるいは深刻な社会問題を引き起こす可能性が大きいというような既存小売店の実態、先ほど先生がおっしゃいましたように極めて零細な小売店が多いというような実態にかんがみまして、小売人への激変を回避する意味から、当分の間小売販売業についての許可制を採用するわけでございます。  そこで、この激変回避措置でございます小売販売業許可制につきましては、輸入自由化後に新たな流通秩序が形成されまして、許可制を廃止いたしましても小売人に対して激変が生じないというような状況に至るまでの間、それが「当分の間」ということの意味でございますけれども、維持される必要があるわけでございます。したがって、この時点がいかなる時点になればそうなるかということにつきましては、現時点では申し上げかねるわけでございますが、そういう状況が現出した場合にどうすべきかというのは、その場合における日本たばこ産業なり小売店状況なりにおいて判断すべきものだと思っております。
  159. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 指定制と実質的には変わらないというならば、この「当分の間」というのはもう当然なくすべきだと思いますね。そうせぬと、将来許可制がなくなって自由販売になるということになるのじゃないですか。指定制と変わらないと言いながら、将来どこでも売れるということになりますと、現在の指定制のそういう将来性がどうなるのか、生活権が奪われるということになるのじゃないですか。
  160. 小野博義

    小野(博)政府委員 お答え申し上げます。  現在の専売制度下におきましては、たばこ小売店というのは公社の手足ということに法律上位置づけられておるわけでございまして、一般に国民が自由にたばこ小売店を営業することは認められておらないわけでございます。今回の法案において提案されておりますたばこ専売制度の廃止によりまして、今まで禁止されておりました営業の自由が復活するわけでございますので、許可を得ればという前提条件はございますけれども基本的にはだれでも小売営業ができる、また小売価格は自由に決められるという状況になるわけでございます。しかしながら、先ほども申し上げましたように、専売制度の廃止に伴いまして、小売人指定制、小売定価制というのを一挙に廃止した場合には、八十年にわたる専売制度の歴史の中で一定の秩序を形成してまいりました流通分野に少なからぬ影響を与える、また零細小売店経営規模の縮小であるとか経営悪化であるとか、あるいは共倒れ等、社会的混乱を起こす、ひいては財政収入の安定的確保にも悪影響を及ぼす、そういうことが大変懸念されるわけでございます。  以上を総合勘案いたしまして、小売人に対する激変を回避するという意味で、当分の間、小売販売業の許可制並びに小売の定価制を採用することとしたわけでございます。
  161. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 大臣、いわゆるたばこ独占の恒久性といいますか、やはり独占が維持されなければならない。それと同時に、耕作たばこを全量買い付ける、不適当なものは別にして、つくったものは買う。それから、たばこ小売段階で指定制が許可制になるにしても、やはり自由販売ではない。定価も、店によって、地域によって値段が違うのではなしに、一つの製品はどこへ行っても値段は同じだ。これはワンセットじゃないですかね。だから、当分の間許可制にする、将来はなくしていくということ、あるいは将来定価もそういう形で各府によって違ってくるんだということになれば、いわゆる特殊会社自身もまた、はっきり言えば実質的な民営・分割化というようなことになって、全量買い付けというものも崩れてしまうことになるのじゃないか。その点、一貫性がないように思うのですけれども、どうなんですか。
  162. 小野博義

    小野(博)政府委員 お答え申し上げます。  製造独占につきましては、先ほど来るる御説明申し上げましたように、割高な国産たばこを抱えた現状のもとで、会社が国際競争に十分耐えていくために設けた措置でございます。小売店の場合につきましては、これまた先ほど御説明申し上げましたように、現状において一挙に指定制、定価制を廃止する場合には、零細小売店に対する影響が非常に大きく、社会的混乱を生ずるおそれもあるということで設けられた措置でございまして、それぞれ設けられた理由と申しますか、設けた根拠が違っておるわけでございますので、必ずしも連動するものではないというふうに考えております。
  163. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 私もくどいようですけれども、割高などという言葉は余り使わないでほしいと思うのです。割高でいいんじゃないですか、一生懸命みんな努力してやっているんだからね。それは割高な部分もありますよ。この葉たばこ産業が地域経済にどれだけ尽くしているか、そういうようないろいろなことを総合して言うべきであって、何か、例えば葉たばこだけじゃなしに、米をつくっている農家が本当に税金を食いつぶしているようなことを言ってみたり、本当にそういう意味では、先ほど私言いましたように、もうかるから私的企業、もうからなかったら公的企業、そんな問題じゃないですよ。もうかるもうからないにかかわらず、その産業というものの重要さというのですか、そういうことから、ある部分は私的なもの、あるときは公的な部分という形になっているんじゃないかと思いますし、また、こういう国内状況等を思えば、特に我が国は資源がないわけでありますから、割高になっても守るべき産業は守っていくという観点がなければならぬのじゃないですか。聞いていたら、割高で、何かもう厄介者みたいな物の言い方というのは、私はどうだろうかなというふうに思うのです。だから、ある程度合理化するということ自身は私はわかりますけれども、余りそういう耳につくような物の言い方というのはやめられたらどうですか。あなた、そのことについてどう思いますか。
  164. 小野博義

    小野(博)政府委員 お答え申し上げます。  製造たばこの原料としての国産たばこ輸入たばこを比較いたしました場合に、これはむしろ公社の方が専門かと思いますけれども、品質、喫味、その他いろいろございまして単純な比較は難しいかと思いますけれども、一般論として輸入たばこの方が国産たばこよりも安いということが言われている意味で申し上げたわけでございまして、決して先生がおっしゃいましたような批判がましい意味で申し上げているわけではございません。
  165. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 たばこというのは嗜好品ですから、たばこを吸う人にとっては安いにこしたことはないかもしれませんけれども、まあそこそこの値段で皆値上げしたって吸うているのですから。それは外国たばことの競争関係はわからぬでもないですよ。しかし、何ぼでなければならぬということはないんですよ。そういう意味を我々はやはりよく考えなければならぬし、政府のいろいろの事業の中で割高で、必ずしも採算とれないものはたくさんありますよ。しかし、採算とれないからといってけしからぬということはないですよ。大事なことは大事なんですから。社会的に必要なものは必要なんですから。そのことをひとつ十分に理解してもらいたい、このように思います。その点について大臣にも、時間があれば最後に申し上げたいと思いますので、もう少し前へ進みたいと思います。  それで、「当分の間」ということで、いつかということは具体的に明示されておるわけではありませんから、この言葉自身は私は必要でない、不適当だと思っているわけですが、要するに実質的な指定制と変わりがないということでありますから、現在の零細な小売店、また今まで果たしてきた役割というものを十分考えて、どこでも売れるということで生活権を脅かすことのないように、今までどおりのやり方で、許可するものは許可していく、指定店を、ふやすものはふやさなければならぬけれども、むやみにふやさないというような立場が大事ではないかというように思いますので、その点が一点。  それから、我々は、断固反対でありますけれども、もし公社から特殊法人になれば、当然これはたばこ消費税で小売店への記帳の義務化というのですか、そういうものが出てくるわけでございますが、非常に零細でありますから、記帳義務といったってなかなかなじまないということがあろうかと思います。そういう点で、そういうものの運用に当たっては、十分に小売店の実態というものを配慮して、できる限り簡素化していくということが大事ではないか、私このように思いますので、その点についてお答えをいただきたい、このように思います。
  166. 小野博義

    小野(博)政府委員 指定基準の点についてお答えいたしたいと思います。  今次改革において小売指定制を小売販売業許可制に改めるわけでございますけれども、許可基準につきましては、たばこ事業法案の二十三条に規定しているところでございます。距離基準であるとかあるいは売上高基準であるとか、現在の小売人の指定基準が基本的には維持されたものとなっているところでございます。
  167. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 ただいま御審議をいただいておりますたばこ消費税法案の二十五条で、ただいま御指摘がございました販売業者の方に一定の記帳をしていただくという規定を設けさせていただいておるわけでありますが、これはたばこ消費税ということでございますので、他の間接国税とバランスをとりまして、検査取り締まり上必要最小限度の帳簿は記帳をしていただく、こういう趣旨でございます。  具体的には政令で定めることにいたしておりますけれども法案を成立させていただきました後、私どもといたしましては、酒税とのバランスをとりながら、この制度の内容は決めるということにさせていただく予定でございますが、ただいまおっしゃいましたように、非常に零細な事業規模の方も多いわけでございますし、販売業者はそもそもが納税義務者ではございませんので、必要最小限度の簡易な記帳にとどめる。例えば毎日毎日記帳するのではなくて、一月くらいまとめて記帳するとか、そういう執行上あるいは運用上の問題につきましては、もし法律が通りました後、執行当局と実態に即した運用を十分図りたいと考えております。
  168. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 税の問題で少し申し上げたいわけですけれども、特殊法人の新会社になれば、これまで課税されていなかったところの法人税、それから印紙税、地方税の事業税やあるいは事業所税などが新たに課税される、こういうことになるわけであります。そういう意味で、新会社の安定的な経営ということと税制との絡みを一体どのように考えておられるのか、お聞かせいただきたい、このように思います。
  169. 長岡實

    長岡説明員 新会社が発足いたしますと、株式会社組織でございますので、公社のときとは違いまして、法人税あるいは事業税その他固定資産税等についても租税の負担がふえることは事実でございます。ただ、私どもといたしましては、そういう税金の負担にたえられるだけの経営内容をこれから努力して実現していかなければいけない。利益があって初めて税の負担が行われるわけでございますから、その程度の税負担にたえられるだけの利益を上げるような経営努力を払うというつもりでやってまいりたいと考えております。
  170. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 そういう面から見ても大変なことだと我々は考えるわけです。  そこで、政府はこの八三年と八四年に二年間の時限措置として、たばこ一本当たり〇・三四円のいわゆる臨時納付金を専売公社から受け取っておるわけでございますが、これは当然来年度以降はなくなる、そのとおりですね。
  171. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 この三十四銭につきましては五十八、五十九両年度ということになっておりますので、法律上当然になくなるわけでございます。
  172. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 次に、健康の問題について少し質問したいと思います。  喫煙と健康問題は、今日世界的な問題として注目されているわけでありまして、特に世界保健機構、WHOではたびたびたばこの健康に対する警告や宣伝広告の規制を呼びかける決議が出されておるわけであります。また厚生省も、WHOの指摘に従って、喫煙が肺がんや気管支炎などの病気と密接な関係があるとの観点から、行政指導で、公共施設などにおける喫煙規制や喫煙に対する警告を行っておるのが現状だと思います。しかし、今回の専売改革輸入自由化により、国内市場で内外たばこの激しいシェア競争といいますか販売競争が予想されるわけであります。専売公社は、喫煙と健康問題に対してどのような対応をとってきたのかということです。たばこに表示しておるようでございますが、それでは新会社になったときは一体これをどうするのか、そこに変化があるのか。健康問題に関しての宣伝のあり方、そういうものについてお答えいただきたいと思います。
  173. 長岡實

    長岡説明員 現在どういう措置をとっておるかという点につきましては担当者の方からお答えを申し上げますけれども、私ども喫煙と健康の問題に対する適切な対処ということは、たばこの製造、販売主体としての社会的責任の重要な部分であると考えております。したがいまして、公社が新会社になりましても、この責任はいささかも変わるところがないと考えております。新会社になりましても、喫煙と健康の問題を解明するための研究の一層の充実を図るとともに、ニコチンやタールの含有量の少ない製品の開発等に努めて、消費者の喫煙と健康問題にかかわる不安の解消に努めてまいらなければならないと考えております。
  174. 丹生守夫

    ○丹生説明員 現在公社でとっております喫煙と健康に関係をいたします措置、これは今総裁からお答えいたしましたように、新会社移行後も続けたいということでございますけれども一つは包装の注意表示というのが御存じのようにございます。四十七年以来やっております。それから、ニコチン、タールの含有量の公表を販売店頭並びに新聞に対して行っております。四十七年以来実施をいたしております。それから、広告の自主規制をやっておりますが、これは四十四年以来でございます。それから、喫煙に関する医学的研究。これは私どもの中には専門家がおりませんものですから、外部の専門家、日本全国の専門の方々に委託いたしまして研究を行っておりますが、昭和三十二年以来実行しているわけでございます。それから、商品の関係といたしましては低ニコチン、低タールのたばこ。これは一般の消費傾向がそういうことでございますし、また、健康に配慮いたしますと、今後ますますこういった傾向たばこが必要となるということで、低ニコチン、低タール製品の開発に努力をしてまいりましたし、今後とも続けてまいりたいと思います。  それから、未成年者の喫煙防止に関しまして法律があるわけでございますけれども、私どもといたしましてもその法律が守られますように、販売店を通じて喫煙の風習が未成年者の中に広まらないような御協力をいたしているわけでございます。  それから、喫煙マナーにつきまして、昨今受動喫煙とかいうようなことと関係いたしまして、非喫煙者からいろいろな問題提起がございます。結局、これは喫煙者と非喫煙者とがお互いの立場を尊重し合うというところで調和をしていただくということかと思いまして、私どもといたしましては喫煙者の方々に、非喫煙者に対する心遣いを日ごろ心がけていただきたいというような意味での喫煙マナーに関するキャンペーンを実施してまいりましたし、現在また実行中でございますが、今後ともこういったような点につきまして引き続き努力してまいりたいと思います。
  175. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 現在、日本たばこのケースには「健康のため吸いすぎに注意しましょう」こういう文言が入っておるわけですが、アメリカでは「公衆衛生総監は、シガレットの喫煙はあなたの健康に危険があると決めています」、こういうように書いていますね。西ドイツは「喫煙はあなたの健康を危うくします」、それからフランスは「吸い過ぎは危険」、こういう表示がされておるわけですね。  そういうことを考えますと、各国と比較すると日本の表示は極めて穏やかといいますか、緩やかといいますか、そういう表示になっておるわけです。これはまた堀先生の方から後日あるかもわかりませんが、今の日本の表示でいい、欧米並みにしなければならぬと思っている、その点はどうなんですか。
  176. 小野博義

    小野(博)政府委員 ただいま先生がおっしゃいましたように、外国の表示文言を見ると、注意というよりもウォーニングと申しますか警告の方が多くなっていることは事実でございますし、またアメリカのように、かつてコーションという表示であったものをウォーニングという表示に変更した国があることも存じているところでございます。  しからば、我が国の現行の注意表示文言をいかがすべきかというお尋ねでございますけれども、現在の注意表示文言は昭和四十七年の四月でございますか、専売事業審議会におきまして、専門家も参加の上において慎重に審議された経緯を踏まえて決定されたものでございます。表示文言の内容につきましては、たばこをめぐる環境の変化であるとか、そういったことに伴いまして、常に見直されるべきものであるとは思ってはおりますけれども、他方、慎重な議論を経ることなく変えることにも問題があろうかと思っております。したがいまして、制度移行後、専売事業審議会にかわるべきたばこ事業等審議会において、再度専門家にも参加していただいた上で、注意表示の内容についても検討してまいりたいと考えております。
  177. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 たばこ事業法案の第四十条は「未成年者の喫煙防止及び製造たばこ消費と健康との関係に配慮するとともに、その広告が過度にわたることがないように努めなければならない。」こういうふうにしておりますね。それから輸入自由化による販売合戦等、また広告宣伝を大量に行って市場進出するという外国たばこのやり方、ずっとその他の国でも既になされておるわけでありますから、そこで広告が過度にわたるという基準は何か、こういうことになるわけであります。これが一点。  それから、当該広告を行う際、大蔵大臣の指針に従わない者に対し必要な勧告を行う、勧告に従わなかったときは、その旨を公表するということになっているが、これで果たして規制できるのかどうかというように思います。  諸外国の広告規制を見ますと、アメリカでは一九七一年以降、法律によってラジオ、テレビによる広告が禁止されております。それからフランスでは、一九七六年から全たばこ製品のテレビ、ラジオによる広告及び公共の場における広告が禁止されておるわけです。また西ドイツでも、一九七五年からフランスと同様に広告が禁止されております。しかし、日本ではテレビ、ラジオによる広告は野放しであるわけでありますが、自由化で過当宣伝になるのを抑えるためにも、やはり宣伝広告の規制を強化すべきではないか。そのことが国内たばこ産業を守ることにもなるのかどうかですが、いずれにしても、外国ではテレビとかラジオは禁止している。我が国は野放しである。ところが、外国の場合はいろいろな新聞とか雑誌とかに大変なお金をかけて宣伝をしておるようでございまして、そういう点で、自由化されたらシェアが一変するほど大変な意気込みで我が国での宣伝がなされる、そうすると公社もしなければならぬ。こういうことで、やはりそういう規制ということが大きな問題になるのじゃなかろうか、このように思いますので、その点についてお聞かせいただきたいと思います。
  178. 小野博義

    小野(博)政府委員 製造たばこの広告の問題につきましては、世界各国、テレビ、ラジオを禁止しているところは多数ございますけれども法律によって禁止しているところ、あるいは自主規制によって禁止されているところがあるわけでございます。我が国におきましては、従来公社を中心といたしまして、自主規制によって広告の内容あるいは量について規制が行われ、それなりにその効果が上がっておると考えているわけでございます。  ただ、しかしながら、まさに先生の御指摘にございましたように、今後製造たばこ輸入自由化に伴いまして国内競争が激化してきた場合には、必ずしもその自主規制が守られなくなるという可能性もないわけではございません。そういう意味合いにおきまして、四十条において広告規制についての規定を置いたわけでございますけれども、やはり広告というものは、営業の自由であるとか表現の自由であるとか、そういう問題にもかかわるものでございますから、基本的には業界の自主規制によって行われることが私どもとしては望ましいと考えております。  そこで、四十条に規定する広告に関する措置は、どのような場合に過度にわたることになるかということでございますけれども製造たばこの広告が過度にわたるか否かにつきましては、先ほど先生のお話にもございましたように、外国メーカーの場合には日本に数十倍する広告費を使っているというような話もございますけれども基本的には社会通念上の判断によらざるを得ないものだと考えております。しかしながら、先ほど申し上げましたように、広告の制限と申しますのは国民の権利義務に関することでもございますし、製造たばこの広告に関する指針を大蔵大臣が示すべきときに至っているかどうか、あるいは指針の内容をどうするかということについては、たばこ事業等審議会の場におきまして十分な御検討をいただきまして判断すべき事項だと考えておるわけでございます。  それから第二点、過大な広告をした者に対して勧告や公表という手段のみでは実効性が上がるのかということでございますが、たばこ事業法におきましては、大蔵大臣の示した指針に従わずに広告を行った者に対しまして勧告を行い、さらにそれにも従わない場合にはその者の氏名等の公表を行えるように措置しているところでございます。この公表制度は、違反の事実及び違反企業名を国民一般に知らせまして世論に訴えることにより、業者の名誉、信用に打撃を与え、過去の違反につき事実上の制裁を加えるとともに、将来の違反の発生を防止することを目的としたものでございます。特に今日のように情報化社会と申しますか、情報が非常に発達している社会におきましては、こういったことの公表と申しますものは、名誉とか信用を大切にする企業にとりまして大きなダメージを受けることになると思いますので、その実効性は大きいというふうに考えております。
  179. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 そういう意味で余り過度にならないような宣伝の規制といいますか、そういうことをぜひとも望みたい、このように思います。  当然ニコチン、タール量の少ない、またおいしいたばこをつくらなければならぬということになるわけでございますが、いずれにしても吸い過ぎは健康に害を与えるわけで、いわんや、成長盛りの青少年がこういうものを喫煙することについては厳に慎まなければならぬ、こう思っております。これは公社とか大蔵省という立場だけではなしに、厚生省、文部省とも提携して、そういう青少年に対してそういう措置を厳重に、横断的にやる必要があるのじゃないか。そのことをひとつ強く要望しておきたいと思います。  塩の問題について少し触れてみたいと思います。  私は、塩はいわゆる代替性のない生活基礎物質である、全国一律の安い価格で安定的に供給する非常に大事な製品だ、こう思っております。そういう点で、まさしくこれこそは専売事業でなければならぬ。それ一つから見ても、新会社へ移すということは全く変則的も変則的、このように本当に危惧するものであります。  塩専売法案の附則の第二条によれば、「政府は、国内産業の自立化の目途が得られた段階で、この法律について検討を加え、必要に応じ所要の措置を講ずるものとする。」こうなっておるわけでありますが、この自立の目途が得られた段階というのはどういう状況を指しておるのかということ。それから、もし仮に自立の目途が得られたとしても、塩は先ほども申し上げた国民の生活にかけがえのない基礎物質であり、しかも産業規模もそれほど大きくないということ。それから、買い占めなどによって価格がつり上げられることになれば大変なことだ、こう思うわけでありまして、そういう意味で塩はあくまでも専売制を維持することが絶対必要である、このように思いますが、どうでしょうか。
  180. 小野博義

    小野(博)政府委員 お答え申し上げます。  塩専売法改正法案の附則の二条には、ただいま先生から御指摘ございましたように、国内産業の自立化の目途が得られた段階においてこの法律を見直し、「必要に応じ所要の措置を講ずる」と規定されておるわけでございますが、国内産業の自立化と申しますのは、製塩コストが国際競争力を持つということが主要な要件でございますけれども、より基本的に申しますと、塩流通業界も含めまして国内の塩産業全体が、専売制度といいますか、そういう制度に依存せずとも自力で存続発展できる状態になることであるというふうに考えております。したがいまして、自立化が達成された段階においては、専売制度そのものが不要になることになると思われますけれども先生指摘のように、塩が国民生活に欠くことのできない基礎物資であることに変わりはないわけでございますから、その時点におきましてまさにこの制度そのものを見直して、「必要に応じ所要の措置を講ずる」、つまり、公的関与のあり方等を含め検討することが必要になるだろう、かように考えております。
  181. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 そこで、国内の塩産業のいわゆる合理化目標として、八三年のトン当たり二万一千二百円を八六年に一万七千円にするとされておるわけですが、この目標は実際達成されるのかどうかということでございます。もし達成されるとしても、塩産業で働く労働者の労働条件の悪化や雇用不安を招くおそれはないのか、その辺についての対応を聞かせていただきたいということ。  それから、塩事業で働く労働者は、専売事業にかかわる部分については守秘義務等の関係でみなし公務員の扱いを受けることになっておるはずです。しかし、その点を除けば、基本的には塩事業たばこ事業も、労働者の労働条件は同じと考えてよいのか、人事交流等も自由に行われることになるのかどうか、その点についてお聞かせいただきたい、このように思います。
  182. 長岡實

    長岡説明員 最初の御質問点について私からお答え申し上げます。  国内産業の自立化促進の観点から、国内塩の生産者価格を極力輸入価格に接近させることが必要であるということで、現在合理化努力が進められているところでございますが、この合理化目標の達成は可能ではなかろうかというふうに考えております。しかも、そういう価格を決定する場合には、製塩企業のコスト状況を十分に参考にしながら、業界の代表も参画しておられます塩収納価格審議会に諮って決定をしてまいっておりまして、製塩企業経営の実態から考えて、そこに働いておられる方々にしわ寄せされるような無理な引き下げにはなっておらないと思いますし、今後ともそういう方向で進めてまいりたいというふうに考えております。
  183. 小野博義

    小野(博)政府委員 塩事業に関する会社の職員の関係についてお答え申し上げます。  塩事業につきましては、先ほど先生もおっしゃいましたように、公益専売事業としての公共性、公益性を強く持っておるものでございますので、そこに従事する職員につきましては、みなし公務員として、刑法の公務執行上の保護を与えるとか、非違行為に対して公務員と同様のステータスをとるとか、塩専売事業に関係するいろいろな職務の中で製塩業者、販売業者、あるいはそういう関連についての秘密を知り得る立場にあるというようなことから守秘義務が適用されるということになっておりますけれども、こういう点を除きましては、同じ会社の職員でございますので、原則といたしまして塩事業に従事する職員もたばこ事業に従事する職員と同様に扱われるということは当然でございます。
  184. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 私の質問時間は四時間ということでお願いしてあったわけでございますが、あとのこともあるようでございまして、先ほどの渋沢代議士の質問にありましたように、新会社資本金等、この委員会におきまして質疑をする前提になる部分があいまいであるということ、あるいははっきり申し上げて葉たばこの過剰な部分をというように処理するのか明らかでないということ、あるいは公社から特殊会社にしなければならない理由等についてどうもよくわからないということ、また、基本的な問題について大臣にいろいろと質問したいわけでございますが、一応の時間が来たようでございますので、多くの質問を留保して終わりたい、このように私は思います。     〔熊川委員長代理退席、委員長着席〕
  185. 瓦力

    瓦委員長 宮地正介君。
  186. 宮地正介

    ○宮地委員 私はたばこを吸わない立場でございますが、専売改革案についてまず最初に、五十七年七月に臨調の第三次答申が出されたわけでございますが、この答申と今回提出された法案、いろいろチッェクをしてまいりますと、非常に後退した形で出てきているのではないか。確かに専売公社の現在の多面的な視点から見ましても、大きな課題があるわけでございます。国民の健康と喫煙の問題、財源確保の問題、あるいは外圧との関係、また先ほど来いろいろ論議をされておりました葉たばこ耕作者の将来の問題、こうした難しい問題のいわゆる連立方程式を解くという大変な課題があるわけでございますが、ともあれ第三次の臨調答申、政府基本的な行政改革、専売の民営化といった将来に向けての一つの大局観、こうした中でこの臨調答申との比較をさせていただきますと、大幅に後退をした法案になっているという感じを受けるわけでございますが、この点について、政府としてどのように考えておられるのか、またその間の状況について御説明をいただきたいと思います。
  187. 竹下登

    竹下国務大臣 専売制度及び専売公社改革は、電電公社改革とともに、行政改革の最重要課題の一つであるという事実認識をまずいたしております。  そこで、政府として臨調答申の趣旨に沿って改革案の検討を進めてきたわけでございますが、この臨調答申の基本的性格といえば二つ。その一つは、市場開放要請に適切に対応しますとともに、競争原理の導入によって効率化の促進を図るための輸入自由化を行う。二つは、経営の自主責任体制の確立等のために公社制度を抜本的に改革する、こういうことであろうと思います。この二点に要約されるといたしますならば、これらはいずれも今次改革案に盛り込まれておりますので、その意味で専売改革関連法案の内容は、臨調答申の基本的な趣旨にそれなりに沿ったものではないかという理解でございます。  ただ、現実問題として法律案をつくり、こうして御提示します間においては、今もまさに宮地さんがお触れになりましたように、まずポイントは、話し合いの対象として最も心を砕かなければいかぬ点が三つあったかなと思います。その一つはやはり耕作者の方々の問題、二つには小売店、販売店の方々の問題、三つには当事者能力の問題からして、労働組合を含む当事者、すなわち専売公社の方自体の問題、この三つには大変に心を砕いて話し合いをして、その結果基本的な趣旨に沿った形で今御提案申し上げて御審議いただいておる形に集約された、こういうふうな考え方でございます。
  188. 宮地正介

    ○宮地委員 特に臨調答申の中におきましても、改革基本的な考え方、その理念はやはり公共性と企業性との調和の問題であったわけであります。その企業性との調和の問題の中でいわゆる競争原理の導入、企業性発揮のための自主性の確立、この問題について特に臨調答申の中では、「経営の自主性を阻害する国会及び政府による諸規制を排除し、経営の自主性を確立するとともに、より一層経営全体にわたる合理化効率化を推進する必要がある。」いわゆる公的な規制というものをできるだけ排除して改革をしていくべきである、こういう企業性発揮のための自主性の確立がうたわれていたわけでございますが、この点についてはどのように配慮されたのか伺いたいと思います。
  189. 小野博義

    小野(博)政府委員 お答え申し上げます。  公社合理的企業経営が最大限可能な特殊会社に改めるという今次改革趣旨を全うするため、会社事業運営に対する公的関与につきましては必要最小限にとどめておるというふうに考えております。本法に規定しております事業計画とか役員選任等の認可、そういった監督事項につきましては、会社が担う政策目的を達成するため、いわば必要最小限度のものでございまして、これによって経営の自主性が損なわれることはないというふうに考えております。
  190. 宮地正介

    ○宮地委員 それでは、先ほど大臣が民営化の問題について触れられておりましたが、臨調答申においては、経営の形態というものは基本的には民営とすべきである、こういうふうにきちっと明確にしているわけですね。政府は安定的な収益の確保等の目途が得られた段階で漸次特殊会社の株式を市場に公開する、特殊会社は製造独占が廃止をされた時点で民営会社とする、こういうふうに非常に具体的に、そして明快に臨調は答申をしているわけですね。ところが、大臣の先ほどからのお話を伺っておりますと、製造独占の問題などについては半永久的である。これはまさに臨調を無視した、あるいは臨調答申に逆行するのではないか、こういうふうに考えるわけでございますが、その点について大臣はどのようなお考えを持っておられますか。
  191. 竹下登

    竹下国務大臣 やはり問題といたしましては、分割・民営ということにするとすれば、最大のネックは、専業比率の高い約十万の耕作者を初めとするたばこ事業関係者にまさに甚大な影響を与えるということでございます。だから、その限りにおいては、私も各方面と協議の段階において、臨調の答申の趣旨に沿いながら、これを立法化していく段階の現実的な処理ということになると、やはり耕作者団体ないしそれのおつくりになる葉たばこの問題、そして国際競争力ということからいたしまして、今私どもがいろいろ考えて対応してきた三方面とでも申しましょうか、耕作、販売あるいは当事者そのものということの意見をも聞きながら最終的に集約していったということでございますだけに、いわば臨調答申を最も極端に読んだ方からいえば後退ではないかとかいうような批判は、私どももそれなりには受けましたが、それは主観の存するところ、私は甘んじて受けてもやむを得ない、こういう考え方に立って今度御審議をお願いするに至っておるというところであります。ただ、基本だけはきちんとしたというふうな事実認識は持っております。
  192. 宮地正介

    ○宮地委員 やはりこれだけの専売公社改革をする、その改革をするなりには、前提としての臨調答申を受けてということがこの法案の冒頭にもあるわけでございますので、何かこの専売改革というのは、民営化していくという一つ方向がきちっとしているのか、あるいは先ほど来論じられておりましたように、外圧に対する自由化、この面だけを何か小手先でいじくる。専売公社そのものの名前が日本たばこ産業株式会社と改称されても、その内容的実体はほとんど変わらない。これでは本来の行政改革ではないのではないか、こういった国民の批判もあるわけでありまして、この点については政府としてどのように感じておられるのか、再度伺いたいと思います。
  193. 小野博義

    小野(博)政府委員 お答え申し上げます。  ただいまのお話で、専売公社特殊会社になりましても、余り実体として変わらないではないかという御質問でございますが、私どもといたしましては大変大きな変化であるというふうに考えておるわけでございます。それはやはり基本的には公社が、合理的企業経営が現在の政府関係特殊法人の中で最大限可能である特殊会社に変わったということでございますけれども、やや細かくなって恐縮でございますが、例えば事業範囲におきましては、従来公社の場合、専売事業ということもございまして、本来業務を非常に詳細に書いておった。逆に、それ以外の業務は一切できない。附帯業務は別でございますが、一切できないようになっていたものに対して、目的達成業務を行い得るようにしてその業務範囲の拡大を図るとか、あるいは公労法の適用から労働三法の適用に移りまして当事者能力を与えて、労使が協力して経営合理化に当たる条件と申しますか、基盤を整えるとか、そういったようなことがございますし、また業務面につきましても、例えば認可事項は、先ほど申し上げましたように事業計画とが役員の選任にとどめるとか、あるいは利益金処分等についても、従来は積立金一本であったものを、大蔵大臣の認可がございますけれども、処分し得るようになるとか、借入金についても、従来大蔵大臣認可であったものが自由になるとか、いろいろな面で大幅に公的規制を緩和しているわけでございまして、今回の制度改正の目的である経営の自主責任体制の確立ということに対しまして決して遺漏はないというふうに考えております。
  194. 宮地正介

    ○宮地委員 行政管理庁はこの点についてどういうふうな見解を持っておるか、伺いたいと思います。
  195. 八木俊道

    ○八木説明員 お尋ねの点でございますが、既に大蔵大臣から御答弁のございましたとおり行政管理庁としても考えているわけでございます。  と申しますのは、臨調第三次答申のこの専売公社の部分は、「基本的考え方」というところで、一つは諸外国の市場開放要請に適切に対応するため、いわば外国たばこ自由化を行う、こういう点が一つございます。次に、企業的な経営を阻害する諸規制を極力排除して経営の自主性を確立する。この二つが、句と申しましても第三次答申の専売改革の骨格になっているわけでございまして、その二つの要素について、まさに今回の法案ではそのとおり改革の骨格が形づくられているというふうに思うわけでございます。  そして、その経営形態の具体的な改革の進め方につきましては、答申は、御指摘のとおりいろいろ細かいことも申し上げていることは事実でございますけれども、ただ、経営形態の変更のその進め方につきましては、答申の中に、たばこ耕作者、流通業界等への影響に配意しつつ段階的に葉たばこ等の諸問題を解決していく、その過程で経営の自主性を確立し、かつ外国たばこ自由化を図っていく、こういう考え方を出しております。そういう点で、仕事の進め方といたしましても、臨調答申の基本線には沿ったものではなかろうかと思うわけでございます。  ただ、制度の具体的なあり方につきましては、実はいろいろ細かいことを指摘していることも事実でございまして、この辺はやはり葉たばこ関係あるいは小売関係の諸条件の成熟化に伴いまして、政府部内でしかるべく検討を続けていくべき課題はまた今後に残されているところでもあろうかと思いますが、答申との関係でいえば、基本的には答申の改革の線上にあるという認識を持っておるわけでございます。
  196. 宮地正介

    ○宮地委員 基本的にその答申の線上にあるという大変微妙な行管の答弁でございます。具体的に会社の形態の問題、公的規制の問題についても先ほど言っておりましたが、例えば政府の株式保有の義務の問題についても、二分の一以上、当分の間三分の二以上。ではこの「当分の間」というのは大体どのくらいの期間を想定しているのか。また、三分の二以上というのは、いわゆる商法の特別決議事項、定款の変更とか役員の解任とか営業の譲渡、あるいは監督権についての役員の解任、選任、事業計画等、これは大蔵大臣の認可。こういうものを見ておりますと、やはり公的規制は大変なものになっているわけですね。こういうものもとらえてみて、今監理官の言うようなものと今の専売公社の実体とはそう変わっていないんじゃないか、私たちはこういう感じがしているわけでございます。  まず、この「当分の間これについてはどういう認識を持っておられるのか。三分の二以上、ここのところをやはりどうしてもやらなければならないのか。むしろ、大蔵大臣の認可ということ、あるいはこうした特別決議事項ということであれば、大蔵省の自由自在の裁量で定款変更あるいは役員の解任、営業譲渡、こういう問題についてもある意味ではできる仕組み、装置ができているわけですね。こういう点、やはり今後もっと改善をしていかなければならないんではないか、こう思っておりますが、この二点について伺いたいと思います。
  197. 小野博義

    小野(博)政府委員 お答え申し上げます。  我が国たばこ産業の健全な発展を図るという新会社の設立目的に沿った事業運営を担保するということから、政府に対し、常時二分の一、附則で当分の間三分の二以上の株式保有を義務づけているものでございますが、当分の間とは、新会社の専業運営が軌道に乗って、将来にわたって我が国たばこ産業の健全な発展のめどが明らかになる、そういう時期までというふうに考えておりますので、事柄の性質上、年限を明示いたすのは適当ではないというふうに考えております。  それからまた、株主権の行使、あるいは大蔵大臣の認可ということでがんじがらめではないかというお話でございましたけれども大蔵大臣には株主としての立場と主務大臣としての立場があるわけでございまして、株主としての立場はいわば出資者として、経営基本方針なり、あるいは経営の健全性なりを確保することによりまして、出資金、これは国民の財産でございますから、出資金の安全を確保するという立場にあるわけでございます。そういう意味で、いわば間接的なコントロールと申しますか、そういう趣旨でございますし、それからまた主務大臣としての監督権限につきましても、先ほど申し上げましたように、他の特殊法人等の例を見ましても、現在の政府関係特殊法人の中で一番規制が緩和されておる日本航空、そういったものと並べましても特段厳しいものではないというふうに考えておりまして、決して新しい会社経営の自主責任体制を阻害するようなことはないというふうに考えております。
  198. 宮地正介

    ○宮地委員 「当分の間このところをもう少し。今のでは漠然としているんですね。もう少し詳しく言ってください、どういう条件が整ったらというふうに。
  199. 小野博義

    小野(博)政府委員 先ほど二つ申し上げたわけでございますけれども一つは、明治以来八十年の一定の秩序を形成されておりました専売制度、あるいは公社になりましてから既に三十五年たつわけでございますが、公社制度というものが大きく変革されるわけでございますので、そういう全く新しい状況の中で新会社事業運営が軌道に乗っていくということが一つでございます。  またそういう中で、新会社を中心としたたばこ産業関係者全体の努力によりまして、我が国たばこ産業の健全な発展のめどが明らかになる、そういう時期までと考えておりますが、再度のお尋ねでございますけれども、今申し上げましたような性格のものでございますので、具体的な年限については、申し上げることは適当ではないと思っております。
  200. 宮地正介

    ○宮地委員 例えば現在の財務状況が平行線があるいは現在よりも上昇した段階というふうに理解していいですか。
  201. 小野博義

    小野(博)政府委員 新会社事業運営が軌道に乗ったということを、何をメルクマールにして判断すべきかということは、いろいろ難しい問題でございますが、例えば利益につきましては、いろいろな事情によって各年それぞれに変動があろうかと思われます。したがいまして、例えば公社から会社に移行します直前の五十九年度の状況に対してどうなったかということだけで判断することは、なかなか難しいと思います。もう少し総合的な判断が必要だと思われます。具体的には、そういう判断をすべき時点において、会社のその時点の経営状態なりあるいは将来の業務見通しなり、そういうものによって判断すべきものと思います。
  202. 宮地正介

    ○宮地委員 いわゆる特殊会社であり、こうした株式会社ということになれば、やはり企業の体力、その体力の象徴は事業の内容であり、財務諸表だと思います。ですから、この財務諸表の一つのめどがどういう状態になったら、まずこの三分の二の「当分の間、」を取っ払うのか。この点についてはっきりしなければ、当分の間というのは、今まででも、戦後ずっと「当分の間」の法律もあるのですから、こんないいかげんなことはないと思うのですよ。
  203. 小野博義

    小野(博)政府委員 先ほど申し上げましたように、条件は二つあるわけでございまして、一つは、新会社の運営が軌道に乗るということでございますし、一つは、たばこ産業全体の将来の発展のめどが明らかになるということでございますので、現在、具体的な計数としては申し上げるまでに至っておりません。
  204. 宮地正介

    ○宮地委員 先ほどの、やはり新会社資本金の問題だとか経営の努力目標とか、そういう青図面も全然できてない。国会でこうした論議をするのに、「当分の間、」をあいまいにしたままの論議というのは難しいと思うのですよ。こういう問題についてだって、どういう状況下になったときこの「当分の間、」を取っ払うのか、こういうことについてもっと真剣に——何か、国会で法案が通過した後に設立委員会などつくって具体的に詰めるというのは、これは国会を冒涜しているんじゃないか。むしろ、今までの実績のもとに、今後についてはこういうふうに努力目標を立てます、そうした一つの試案的なものをこの大蔵委員会に出して、そして今後について健全な、どういう会社になっていくかということをもっともっと国民にわかりやすくしなかったら、これは国民、わかりませんよ。もう少し具体的な、どういう指標を持ってこの「当分の間こということを考えているのか。
  205. 小野博義

    小野(博)政府委員 どうもたびたび繰り返しで恐縮でございますけれども、新会社の財務状況につきましても、ある意味では非常に見通しの困難なところがございます。と申しますのは、今後のたばこ消費需要の動向であるとか、あるいは外国会社の営業政策であるとか、あるいはいろいろな国際経済情勢であるとか、そういう問題がございまして、財務状況自体非常に見通しが困難な点がございますけれども、それだけではなくて、繰り返しになって恐縮でございますけれども、単なる会社の財務状況だけではなく、会社を中心といたしました、耕作者から小売店を含めました我が国たばこ産業全体の健全な発展のめどが明らかになる段階ということでございますので、「当分の間」というのを日限を切るというのは、なかなか難しいことではないかと考えております。
  206. 宮地正介

    ○宮地委員 日限の問題じゃないんですね。(発言する者あり。)
  207. 瓦力

    瓦委員長 静粛に願います。
  208. 宮地正介

    ○宮地委員 株式会社という、こういう一つ企業形態に改革されるわけでしょう。民間のどこの会社でも、一つ会社が、あるいは合併したり新会社を設立するときには、やはり一つのゾレンというのをつくるんですよ。事業計画、資金計画、人的計画、そしてその中は必ずその損益のバランスの問題からすべてこういう一つの努力目標というものをつくって、そして現在の体力というものと比較して、いけるかいけないか、マーケットリサーチなど全部して、それでゴーするわけでしょう。あなた方は、当分の間事業計画はありません、資金計画わかりません、資本金もどうなるかわかりません。で、国会で漠然とこうしたものだけ出しておいて、通った後おれたちがやります、こんなのじゃ納得いきませんよ、国民が。だから、この「当分の間」というのは、あなたが今言った二つの状態をもう少し詰めて、具体的にどういう状態になったときにこの「当分の間」というのを取り払って二分の一にするのか。その物差しというか、一つの目標というか、あなたのおっしゃっている二つ、今おっしゃった漠然とした抽象論だけでは、この問題は納得しないと思うのですね。それ、今後検討して、当委員会に早急に文書で報告いただけますか。
  209. 小野博義

    小野(博)政府委員 先生のお言葉ではございますけれども、具体的な計数と申しますか、現時点において文書にすることが果たして適切であるか。どうか……(「要求しておるのだ」と呼ぶ者あり)いや、まさしく私の言い方が悪かったかと思いますけれども、現実問題として、そういう具体的な計数なり年限なりということで文書としてお出しすることが可能であると申しますか、非常に困難であるというふうに考えられますので、ちょっとお出しすることは無理かと思っております。(「そっちだけ一人で国会をやっているわけじゃない」「これはだめだ」と呼び、その他発言する者多し)
  210. 瓦力

    瓦委員長 速記をとめて。     〔速記中止〕
  211. 瓦力

    瓦委員長 速記を始めて。  小野監理官から再答弁をいたさせます。
  212. 小野博義

    小野(博)政府委員 現在、法律上恒久制度として二分の一以上の政府保有義務を課し、当分の間の措置として三分の二以上の政府保有義務を課しておりますのは、二分の一以上ということにおきましては、八十年来続いてきた専売制度、あるいは三十五年来続いてまいりました公社制度を変革するに当たりまして、葉たばこ耕作者、それから小売人等たばこ産業関係者が非常な不安を感じておるということから、二分の一ではなくて、当分の間三分の二という規定を設けたわけでございます。したがいまして、今後この新しい事態のもとで、会社を中心としてたばこ産業関係者が鋭意努力することによりまして、おのずとこの新しい状況に適応し、改革後の状況が定着していくということが考えられます。そうなれば、関係者の不安もおのずと解消されると思いますので、そういう時点において三分の二という附則から二分の一以上という本則になる、そういうことになると思われます。
  213. 宮地正介

    ○宮地委員 要するに今の監理官の話では全くわからないのですね。  例えば今後、これから入ろうと思ったのですが、事業の拡大の問題、海外進出の問題、やはり現状の体力を拡大しながら強化していかなければいかぬですね。そういう一つ事業の目標というものはこれからできてくるわけですね、特に多国籍とやるわけですから。この「当分の間」というのは、あなたのは何か一つの葉たばこ耕作者の配慮だけという感じなんですね。あなたは企業として軌道に乗っていくということなのですから、それでは具体的に企業一つの体力のバロメーターは何かといえば、これは経営の内容でしょう。それは具体的に言えば財務諸表でしょう。そういうふうに具体的に詰めていったときに、何らかの数字的なそういう尺度というものが明らかにされなければ、この「当分の間」というのはいつになってもとられませんよ。そういう具体的努力目標というのはないのですか。
  214. 小野博義

    小野(博)政府委員 もちろんたばこ産業関係者が、ただいま申し上げましたように不安を感じないような状況になるということにつきましては、先生がおっしゃいますように新しい会社の財務内容が健全化して、その経営が安定するということが中心ではあろうかと思いますけれども、やはりそれだけではなくて、事業運営の全体が定着していって、それがたばこ産業関係者に安定を与えるということが、またもう一つ重要なことだろうと思っております。(発言する者あり)
  215. 瓦力

    瓦委員長 速記をとめてください。     〔速記中止〕
  216. 瓦力

    瓦委員長 速記を始めて。  宮地正介君。
  217. 宮地正介

    ○宮地委員 それでは、今の案件については二十七日までにきちっと当委員会また私の方に報告をいただきたい、こう思いますが、いかがでしょうか。
  218. 小野博義

    小野(博)政府委員 そのように対応させていただきます。
  219. 宮地正介

    ○宮地委員 ぜひ具体的に、また誠意のある、国民の皆さんがわかりやすい回答をお願いをしたい。また、大蔵委員会の一つの権威にかけてもよろしくお願いしたい、このように思うわけでございます。  次に、そういうことで今回のこの日本たばこ産業株式会社が、今度は輸入自由化をするわけでございまして、国際競争力の強化のために事業の拡大、この問題も非常に今後大きな問題になってこようかと思います。  既に御存じのとおり、R・J・レイノルズなどは、国内あるいは海外でたばこの販売の事業を起こしておるのみならず、石油、海運、食料品、こういったところにも手広く事業を起こしておりまして、年間約二兆六千億という売り上げを上げておるわけです。また、フィリップ・モリスという会社におきましても、ビール会社とか清涼飲料、機械、こういうようなものをたばこ事業とあわせて行っておりまして、年商約二兆四千億。こうした巨大企業も、既に多角的な経営の中でこのたばこ事業を営んでいるわけでございます。  そういう中で特に日本たばこ産業株式会社が、いわゆる外圧による輸入自由化で、国内のそうした市場の彼らの拡大によりまして、先ほど五%程度と言っておりましたが、そういった面で受け身の立場のみならず、逆に今後は海外に進出をしていく。たばこの例えば海外における合弁会社をつくっていくとか、あるいは先日も皆さんの平塚の試験場などを見させていただきましたが、なかなか研究開発も熱心におやりになっておる。我々素人から見ても、心臓病に効くようなそうした薬品の開発なども非常に進んでおる。何か薬の関係にひとつ事業の手を伸ばすことも可能なのかな、こんな率直な感じをしてきたわけでございますが、こうした事業の拡大というものも、今後十二分に体力をつけ検討していかなくてはならないだろう。  あるいは投資の問題、こうした問題の範囲の拡大、今申し上げました海外進出の展望、こういったような、やはりこれだけの大きな専売改革をするわけでございますので、日本たばこ産業株式会社として今後こうしたたばこの巨大外国企業に対応するためにもっとパイを大きくして、そういう中で例えば国内の葉たばこ耕作者の今後の対応、こういうものも考えていくべきではないか。何かパイを小さくし、受動的立場で対応していくには、やはりそこには無理も出てきますし、また一つの限られた経営の小さな手法に終わってしまうのではないか、こう思うのです。この点について、総裁はどのようにお考えになっておるのか、お伺いしたいと思います。
  220. 長岡實

    長岡説明員 御指摘のとおり、企業経営規模が縮小の一途をたどるのであっては、日本たばこ産業を維持する立場を私どもが守っていくわけにはいかないと思います。一方におきまして、輸入自由化の暁においてはっきりとしたシェアのめどを数字で御説明申し上げることは困難だと申し上げましたけれども、数年の間に例えば五%程度シェアになることも覚悟しなければならない。そうなった場合には、ただ手をこまねいておりましたのでは、私ども国内品の製造なり販売の規模が縮小するだけでございます。  そういうことで、私どもといたしましては、やはり海外進出も真剣に考えていかなければならないと考えまして、この四月には輸出会社を発足させた次第でございます。輸出会社は、まだ発足後間もないわけでございますけれども、東南アジアその他の地域に私どもの製品の輸出を促進していく役割を担うわけでございますが、率直に申しまして、先発しております欧米巨大資本に比べますと、数歩おくれをとっておることは事実でございます。そういったような意味で、これからの努力によってどの程度の成果を上げるかが決まるわけでございますけれども、私どもといたしましては、私どもの営業の規模が縮小の一途をたどらないように、輸出の面におきましても、例えば国際的に通用する銘柄を開発してこれを売り込んでいくといったような面について、最大限の努力を払っていきたい、これが一つの大きな目標になろうかと存じます。  それから、国内的には、今回の制度改正によりまして、私どもの営業の範囲がある程度多角化が図られるということになろうかと存じます。ただ、新しくできます会社はあくまで製造独占企業体でございますので、その製造独占という一つの枠の中で、いわばそういう性格の会社がこういう分野に出て民業を圧迫しないかといったような制約はあろうかと思います。そういう制約はあろうかと思いますけれども、先ほどお話に出ましたように、例えば葉たばこを原料としてどんなものがつくられるか、これはユビキノンという、心臓の薬の材料になり得るということまではわかっておるのでございますけれども、これをいかにして企業採算に乗るような製造方法にまで発展させていくかといったようなことを今研究をいたしております。  それから、いわばバイオテクノロジーの関係で、育苗であるとか、そういったような問題についても、私どもの中央研究所その他で相当の研究成果を持っておりますので、そういったようなものを基礎にいたしまして、公社の部内に事業開発委員会というものを設けて、現在鋭意検討をいたしております。その検討の結果、事業化ができて、なおかつそれが私どもの仕事の範囲内で民業圧迫にならないというものであるならば、でき得る限り範囲を拡大していただきたいというのが率直な私の気持ちでございます。
  221. 宮地正介

    ○宮地委員 そうした具体的な事業計画、こういうものはいつごろから着手し、つくられるのですか。普通、一般の民間会社でも、事業計画というのは一年、三年、五年、十年と、いろいろ経済の要因が変わりますから、そうした事業計画というものを明確につくっていくことが——例えば、先ほど来合理化の問題とかいろいろ出ていますけれども事業の拡大によって、また事業内容が拡大されていろいろとふえていけば、合理化なんかしなくたって、むしろ人が足りないぐらいになるわけですね、配置転換だとか適正配置だとか。私は、けさほどからいろいろ論議を聞いておりますけれども、何かパイを小さくしていく、何か切っていく、こういう発想に聞こえるのですね。そうじゃなくて、もっとやはり、今までの専売公社の皆さんの御努力で専売公社それ自体の体力も相当強いと私は思うし、また大蔵の官僚の皆さんのブレーンがこれまでやってきたのですから、この頭脳と今までの体力を、今度は民間の活力を生かしていくわけですから、さらに強化拡充していくならば、私は、葉たばこ耕作者の問題についても、あるいは現在のいわゆる事務レベルの人たちが多過ぎるとか、いろいろ言っておりますけれども、そうしたいわゆる人員の合理化などしなくても、将来的にはもっと希望と夢のある事業にしていけると思うのですよ。それがこれからの新社長のリーダーシップだと思うのです。そうした、国民の側から見ても、また現在の専売公社の職員の皆さんから見ても希望のある計画というものを、これだけの頭脳があるのですから、勇気を持って綿密につくるべきだと私は思う。そういう計画はいつごろつくられるのですか。
  222. 長岡實

    長岡説明員 大変微妙な問題になるわけでございますが、現行制度のもとにおいて、現在の日本専売公社の中央研究所その他がどの程度の研究のところまで手を広げ得るかという問題が一つございます。これは、私どもの本来の事業を逸脱したことにばかりお金とエネルギーをかけておったのではおしかりを受けるわけでございます。そういう意味におきまして、新会社発足と同時に新しい技術開発なりそれの事業開発なりが直ちに間に合うというほどに、私たちが今そこにエネルギーを割きかねる事情があることは御理解いただきたいと思います。しかし、おしかりを受けない範囲内においては、私どもは真剣に将来を見越した準備態勢は整えておるつもりでございまして、中には新会社発足と同時に手をつけ得るものもあろうかと存じますし、遅くとも二、三年の間には何とか軌道に乗せたいというものもあるわけでございまして、一律に、いつごろまでにどんな事業まで手が広げられるかというお答えは、今のところ無理かと存じます。
  223. 宮地正介

    ○宮地委員 その辺が官僚的発想といわゆる民間企業の発想の基本の違いだと思うのですよ。やはりもっとシビアに情報を先取りしながら、こうした株式会社として機構が改革されていくわけですから——具体的にそうした対策室みたいなものをちゃんとつくるお考えを持っていますか。
  224. 長岡實

    長岡説明員 先ほど申し上げましたように、技術開発の委員会は従来からございましたけれども、本年度の初めだったと思いますが、公社の内部に事業開発委員会という組織を設けまして、定期的に会合を開いて、いかなる事業が新事業として開発し得るかという問題を精力的に詰めておる段階でございます。
  225. 宮地正介

    ○宮地委員 技術面だけでなくて、いわゆるゼネラルスタッフ的な、総合的な経営戦略、そういう一つ経営ビジョンあるいは経営の戦略の対策室というものも検討して対応していかないと、私はちょっとそういう点が心配なんですね。何か非常にとろいという感じを受けるのです。そういう点で、特に私は、新会社経営的な中期的な展望事業的な面、財務的な面、あるいは人的な面、そういうものを速やかに検討すべきであると思う。法案が通ってから、通ってからと言っていますけれども、そんなことをしてたら置いてきぼりを食っちゃうのじゃないか、そんなに世の中は甘くないと私は見ているのです。その辺がやはり親方日の丸と言われるゆえんだと思うのです。そういう点についての今後の対応を、もう少しはっきり、もっと国民が期待できるような決意を言ってくださいよ。
  226. 長岡實

    長岡説明員 どうも官僚的発想というおしかりを受けそうでございますけれども、現行制度のもとにおいて進め得る準備が限度を越しますと、これは国会軽視になります。やはり、国会で新しい法案の御審議を通じましていろいろと御指摘を受けながら、新会社発足までに間に合うように最大限の努力をいたしてまいるということが基本姿勢ではなかろうかと存じます。  しかしながら、私ども決して現行制度で手をこまねいているつもりはございませんで、先ほど来申し上げておりますように、新事業の開発その他の面につきましても、とにかく新しい制度に移行したときに、いつまでも結論を出すことがおくれないように、できるだけ早く新しい体制を整えるような準備は、私どもなりにはいたしておるつもりでございます。そういうこともあわせまして、競争激化の将来が予想されるわけでございますけれども、私どもといたしましては、過去の技術、経験等の蓄積もあわせまして、外国企業に負けないようにやってまいりたいというふうに考えております。
  227. 宮地正介

    ○宮地委員 これは余り逆手にとって、かっかなさらない方がいいと思うのですね。私はそういう点で、やはり経営の自主性、皆さんにはからんとくるかもしれませんが官僚性の脱皮、こういう両面からこの新会社に対して対応していきませんと、特に多国籍企業経営陣というのは相当な、言葉は悪いかもしれませんが、つわものだと思うのですよ。それにもしも負けるようなことになれば、これはひいてはたばこ耕作者にも大きな影響が出てまいりますし、あるいは小売店にも出てまいりますし、あるいは社の合理化の問題にもつながってくるわけですね。経営努力としての当然の合理化というものは、私も決して否定はしませんが、やはりパイを拡大しながら、体力をつけながら拡大していく中で、その自助努力の中でもっと前向きな、健全なる運営というものができるんではないか。このことを、生意気のようですが、ぜひアドバイスさせていただきたい、こう思うのです。  特にそういう中で、今回葉たばこ耕作者の方々に対して大変な配慮をされている。これは言ってみればもろ刃の剣になるんではないか、こういう感じがするわけですね。それだけに、今私が申し上げたような一つの前向きな経営の対応というものが大事である。特に、御存じのように、我が国たばこの製造原価のうち、原料費というのが五九%占めておるわけですね。その原料費が、国産の生産者価格を諸外国と比べてみましても、日本の場合は一キログラム当たり七・七六ドル、アメリカなんかの場合は三・六六ドルでございますから約二倍。東南アジアの中でインドネシアなんかは、人件費の問題とかいろいろあろうかと思いますが、ともかく一キログラム一・一二ドル。世界的に日本の葉たばこの生産者価格が非常に高いわけですね。これが今後のそうした国際競争の中でハンディの要因になってはならない。さりとて、九万三千世帯の今までの耕作者、この御努力に対して何らかの対応もしていかなければならない。こういうことで、今回契約制ということで、今までの全量買い取り制も維持した、このように私は解釈しているわけでございます。  企業性という一つのそうした経済競争、自由主義経済の中の経済競争、こうなればコストの問題が今後一番大きなネックになるわけですね。この調和をどういうふうにしていくか。こういうときに、私は、やはり葉たばこ耕作者に対しては、いわゆる専売という範疇の中で今までとらえてこられましたけれども、そういう範疇のままに置いておくことがベターなのか、葉たばこ耕作者についてはもっと大きな立場から、日本の農政という立場から対応していくべきではないか、こういう感じもするんですね。この点について大臣、所見をちょっと伺っておきたいと思います。
  228. 竹下登

    竹下国務大臣 農政という角度からこれを見ますと、本当は農林水産省でこの葉たばこ耕作者問題というのは位置づけられるべきである、こういう議論をする人もございます。が、従来とも、先ほどおっしゃいましたように専売という角度から、これはまさに所管省といえば大蔵省、こういうことになっております。しかし、全体的な構想の中におきましては、この全体の農政の中で極端な刺激を与える——非常にちゅうちょしながら私も言葉を選ぶわけでございますけれども、あるいは時に転作の問題とか、農業という産業構造の中における位置づけとしてのそういう総合的な問題というのは、私はあり得る問題だと思っております。  が、今この耕作者皆さん方の不安というものを少しでもなくしていくということは、そういういわば転作とか転業とか、そういうものが前提になった場合に、このたびの法改正というものを一番足を引っ張る要因になるではないか。したがって、今後いろいろな推移がございましょう。何の影響も受けないということはないと思います。それだけに、審議会等に関係者に入ってもらって議論をしたりというようなことをも含めて、この法律案をつくるに至った経緯の中でそういう濃密な話し合いというものを重ねながら、この法律を作成してきた経過があるわけであります。だから大局的に、おっしゃいますところの、言ってみれば土地を相手にする仕事でございますから、そういう意味において、日本農政全体の中でこれは問題意識を持っておるべき課題だということは、私も認識を等しくいたしております。
  229. 宮地正介

    ○宮地委員 特に今度、日本たばこ産業株式会社の中にいわゆる葉たばこ審議会、こういうのができるわけでございますが、私は、この葉たばこ審議会のメンバーの中に、今まではどちらかというと耕作者、それと学識経験者、こういう方々の大体二つの系列の方が入っていたわけでございますが、やはり今後、この学者の範疇の中に入れるか、あるいは別に消費者代表的な方、こういう方もやはり入れてこの審議会の改革もしていくべきではないか。特にこの葉たばこの購入価格とか耕作面積、こうしたものを審議するわけですから、この新改革と並行して、この審議会の人的構成の内容に消費者代表などを入れる、こういったことは検討できないか。こういう点についてはいかがでしょうか。
  230. 小野博義

    小野(博)政府委員 お答え申し上げます。  葉たばこ審議会のメンバーにつきましては、たばこ事業法第七条によりまして、たばこ耕作者の代表及び学識経験者から構成されるということになっておるわけでございますけれども、学識経験者の選定に当たりまして、今先生指摘の点も加味しながら人選が行われるのが適当ではないかと考えております。
  231. 宮地正介

    ○宮地委員 特に買い手独占の弊害を除去するための公平な機関、こういうことをうたっているわけですから、ぜひそうした、さらに第三者的な機関としての機能が発揮できるように強く私は要望しておきたい、こう思うわけでございます。  時間も限られてきておりますので、次にお話を進めたいと思いますが、たばこ事業法等の関係整備法の中で、特に身体障害者福祉法、母子及び寡婦福祉法、この第三十八条から三十九条に、小売販売業許可の特別配慮措置、これは継続をするというふうになっておりますが、この身体障害者福祉法あるいは母子及び寡婦福祉法に基づいたこの小売販売業許可の特別配慮措置については、ぜひ維持を継続すると同時に、今後はむしろ拡充をしていく方向で、法的にも、また事務作業的にも私は強く要望したいと思いますので、この点についての御見解を説明いただきたいと思います。
  232. 小野博義

    小野(博)政府委員 お答え申し上げます。  母子及び寡婦福祉法、身体障害者福祉法におきまして、たばこ小売店につきましては、そういった方々から申請があった場合には、現行は専売法に定めます欠格要件がない限り優遇するという規定があるわけでございますが、それに従いまして、現在、たばこにつきましては、距離基準であるとか取扱高基準というのがそのたばこ小売店についてあるわけでございますけれども、おおむね二割程度一般の方々よりも緩和した形でその基準を適用することにしております。  現在、両方合わせまして約八千人の方々がこの規定の適用を受けて小売店を行われているわけでございますけれども、今後ともこの点については継続していくつもりでございまして、整備法上、その手当てをしているわけでございます。
  233. 宮地正介

    ○宮地委員 特に小売人の方々の今までの指定制、これについては、指定書というのが実際に発行されておるわけですね。これが今度は許可制ということで許可書、今までの方々についてはそのまま継続をする、こういうふうになっておるわけでございますが、今の指定書をそのまま許可書として認定する、あるいはこの指定書を書きかえて許可書を発行する。何か財政的に、ちょっと予算の問題等で苦しんでいるようですが、この点についてはどういうふうに明確にしていくのか。  また小売人は、今までは指定制で、これから許可制になるのですが、新しく小売人として許可を受ける場合のいわゆる基準、この基準の措置が、我々現場でいろいろ相談を受けますけれども、最近は売上高だとか非常に手厳しい。特に先ほどの身体障害者などの方々なんかは、そういう面では非常に厳しい試練に立たされるのではないか、こう心配するわけですが、この二点について、どういうふうに今後実際に進めていかれるのか伺いたいと思います。
  234. 小野博義

    小野(博)政府委員 最初の点でございますが、既存の小売店につきましては、法律上指定制が許可制に変わるわけでございますけれどもたばこ事業法によって許可を受けたものとみなされることになっておるわけでございます。  そこで、その許可書の問題でございますが、これにつきましては現在検討中でございますけれども、いずれにせよ、既存の小売店がすべて法律により小売販売業者とみなされるものでございますので、既存の指定小売人につきまして、現在の指定書をもって許可書とする方向で考えておるところでございます。  それから指定基準の問題でございますけれども、指定基準のうち、特に距離基準と取扱基準というのが中心になろうかと思われますけれども、今回、小売人に対する激変回避という観点から、指定制を許可制に変更して基本的に維持するということからいたしまして、指定基準につきましても基本的に維持されたものというふうになっておるところでございます。
  235. 宮地正介

    ○宮地委員 そうすると、今の指定書を持っている小売人に対しては許可書は出さない、今の指定書をもって許可書とする。文書通達か何かする考えはあるのですか。
  236. 小野博義

    小野(博)政府委員 政省令によって規定することを考えております。
  237. 宮地正介

    ○宮地委員 書きかえる場合、どのくらいの予算がかかるのですか。できればこの際、日本たばこ産業株式会社というので、やはり許可書をきちっと——どうなんでしょう、本体は変わるのだから。
  238. 小野博義

    小野(博)政府委員 今回の制度改正で予定しておりますのは、従来、日本専売公社の指定小売人ということでございましたが、今回は大蔵大臣が許可をする小売販売業者ということになるわけでございます。したがいまして、許可書は大蔵大臣の名前になりますか、あるいはその権限の委任を受けました財務局長の名前になりますか、まだ具体的にそこまで詰めてはおりませんけれども、出すわけでございますが、いずれにいたしましても二十六万店というかなりの数の小売店でございます。それにつきまして許可書を交付するということになりますと、いろいろ手続の問題もございますし、そういう小売店の手間と申しますか、そういう面も考えながら、あるいは予算上の問題も考えながら、今後検討してまいりたいと存じます。
  239. 宮地正介

    ○宮地委員 予算はどのくらいかかるのですか。
  240. 小野博義

    小野(博)政府委員 むしろ指定書をそのまま許可書とするというふうな方向で検討しておりまして、予算の積算というのはまだやっておりませんのでお答えいたしかねるわけでございますが、いずれにせよ、申し上げましたとおり数がかなり多うございますし、手間もかなりかかるのじゃないかと思っております。
  241. 宮地正介

    ○宮地委員 その辺が、言葉を悪く言えば官僚思想というか、やはり新会社ができて、小売店の士気の高揚とか、いろいろそういう点の配慮を考えて、これは前向きに——やはりもとのところは、今の指定書というのは「専売公社」、こうなっているわけでしょう。今度は「日本たばこ産業株式会社」でしょう。違うのですか、そこのところは。いずれにしても、この辺についての対応はもっと積極的に考えるべきではないか。これは強く要望しておきますので、今後政令の段階でよく検討してください。  次に、大臣に先ほど御質問したときにちょっと農林水産省にも伺っておきたかったのですが、前後して大変申しわけございませんが、先ほどのいわゆる葉たばこ耕作者に対して、農林水産省としては、今後こうした専売改革の中で、日本の農政の立場からどのように対応されようとしているのか、伺っておきたいと思います。
  242. 吉田茂政

    ○吉田説明員 お答え申し上げます。  葉たばこは、我が国の畑作地域におきまして非常に重要な作目でございますので、農林水産省といたしましては、葉たばこ生産農家の経営の安定化を図るという観点から、専売公社と従来から緊密な連絡をとりながら各種の補助事業や制度融資を実施しているところでございます。  具体的に申し上げますと、生産性の向上の基本でございます圃場整備あるいは排水対策事業基盤整備事業を実施しております。また、葉たばこ生産の合理化近代化を推進するための共同育苗施設、共同乾燥施設等の共同利用施設に対する助成も行っております。さらに農業近代化資金あるいは農業改良資金といった制度融資によりまして、小規模な土地改良事業でありますとかあるいは農機具の購入とか、いわゆる個別の農家の経営の改善も図っているところでございます。  今後、先ほど来いろいろ議論されておりますように、国際競争の激化が一段と厳しくなってまいりまして、葉たばこ生産の合理化、近代化という問題はますます重要になってまいりますので、農林省といたしましては、大蔵省あるいは新法人、さらにたばこ耕作組合の方々と一層緊密な連絡をとりながら、先ほど申し上げましたような各種の生産対策を有効に活用することによりまして、葉たばこの品質の向上と生産コストの低減に努めてまいりたい、かように考えております。
  243. 宮地正介

    ○宮地委員 次に、輸入自由化の問題の中で、いわゆるフランスの公社の教訓、この問題をぜひちょっと御説明いただきたいのですが、専売改革一つの悪いお手本というか、フランスの轍を踏むな、こういう言葉もあるようでございますが、一九五九年にフランスではSEITAというたばこ・マッチ産業経営公社が設立をされ、一九七七年にEC域内の輸入、流通を自由化した。このため、七六年の、自由化の前の輸入品シェアが一〇・四%であったものが、八一年にこの輸入品シェアが一挙に二九・七%になった。また経営内容も、一九七六年には八百万フランの赤字であった。これが自由化をした七七年の一億六千二百万フランから七八年には三億三百万フランに拡大した。そういうことで、八〇年にはこの公社特殊会社に移して経営の向上を図り、輸入シェアが鈍化した。これがフランスの公社の教訓ということで、世界的にも有名な一つのお手本があるわけでございますが、このときには、いわゆる黒たばこという大変なニコチンの含有量のあったものが、非常にニコチンの含有量の少ないアメリカたばこによってやられた。  ニコチンの問題については、私も先日専売公社の試験場に行きまして、低ニコチンをやっているのも見まして少し安心した感じなんですが、やはりこうした教訓を生かして今後の日本の専売改革公社から特殊会社、こういうものをやっていかなくてはならない。日本の場合は、経済的な状況あるいは市場の状況、いろいろと状況がフランスのときと違うと思いますが、この点についてどのようにこの教訓を生かしていこうとされておるのか、伺っておきたいと思います。
  244. 長岡實

    長岡説明員 フランスの場合には、輸入自由化に対しまして特殊会社化その他のとるべき措置が若干後手後手に回っておったというようなこともあろうかと存じますけれども基本的には、御指摘のように黒たばこと称しまして、これは銘柄の名前で申しますとシタンとかゴロワーズとかというたばこがございます。非常に特殊な味であり、きついたばこでございますが、フランスのSEITAが、フランス国民はこういうたばこしか吸わないのだという、これは言い過ぎかもしれませんけれども一種の自信のようなものがありまして、アメリカたばこがどういう傾向であるかというようなことに対する研究が怠りがちであった。そういうことで、自信を持って市場を開放しましたところが、フランス国民、なかんずく若い方たちだと思いますけれどもアメリカたばこの方に非常に移行いたしまして、そして輸入たばこシェアが急激に上がっていった、これが今日に至るまでの経緯であろうと存じます。  そういう点を考えますと、輸入自由化によってまた新しい商品が入ってくるといったような場合に、今の日本喫煙者の方々がどういう性格のたばこと申しますか、どういう傾向たばこを好むであろうかというようなことに対しては、私どもは敏感に反応しなければいけないわけでございまして、そういう点については、今までも新しい製品の開発に相当程度努力をしてきたつもりでございますし、今後ともその努力は怠ってはならないというふうに考えております。  先ほども輸入自由化後のシェアが一体どのくらいになるかという御質問に対して、フランスのように三割にもなることはないと思いますというお答えを申し上げましたのは、実は現在日本喫煙者の方に吸っていただいているたばこの総量のうちの四二%がマイルドセブンというたばこでございますけれども、このマイルドセブンなどはやはりアメリカたばこ傾向その他を十分に私どもで調査した結果開発し、市場に投入したものでございまして、そういったような点につきましては、フランスの今までの歩みを繰り返すことがないように、今まで十分に注意をいたしてきたつもりでございますし、今後ともその注意は怠りなく続けてまいりたいというふうに考えております。
  245. 宮地正介

    ○宮地委員 特に最近こうした新会社への改革の問題を機にいたしまして、既に国内輸入商社の、いわゆる外国たばこの販売の系列化といいますか、そうした販売網の強化というのが非常に動き始めているわけですね。三菱商事などはR・J・レイノルズ社のウィンストン、こういうものを今後積極的に販売するために、既にMC・タバコ・コーポレーション、こうしたレイノルズの販売促進会社をつくっておるわけですね。もしこの法案が可決されるようなことになりますと、今度はいよいよこの販売会社に移行していく。あるいは三井物産においても、ラークとかパーラメント、こういった東日本の販売担当、特にフィリップ・モリス社と提携をしていく。日商岩井が西日本の販売担当、伊藤忠商事においてもリゲット社の、いわゆるアメリカたばこ輸入の代行をしていく。日本の大手商社も、今回の専売改革を機に、非常に虎視たんたんと、いわゆる日本の市場の拡大に、既に今から具体的な事業目標を持って対応をやっておるわけですね。  そういう点で、こうした国内の商社の対応にも負けないように、この改革が、やる以上は成功するように、緻密な計画と戦略というものをやっていくべきではないのか。そういう点で、何か大変にとろいという感じを私は先ほどから受けているわけでございますが、こうした各輸入商社の動きに対して、今後どのように対策といいますか対応をしていこうという考えを持っておられますか。
  246. 森宗作

    森説明員 お答えいたします。  ただいま先生指摘のとおり、主としてアメリカ大手企業並びにイギリス系の大手企業が、日本の主要商社といろいろ輸入代理店という関係をつくりまして仕事を進めておるわけでございますが、今後におきましても、この制度改正後いろいろこういった商社との連携の中で市場拡大ということを考えてまいるというふうに思う次第でございます。  ただ、日本におきましては、この輸入品を扱っております商社は現在十九商社ございます。これらのものを含めまして、今回制度改正がございました際に、輸入品を取り扱う業者でございます特定販売業者に、それぞれがどういった形でなるかということにつきましては、私どももこの法案につきましてのいろいろの説明等も行って、内々意思疎通を図っておりますけれども、またほとんどのメーカーにつきましてはその方法を決定をしていないという状況でございます。  今後とも、私どもも密接な接触をとりながら、この相手方、メーカーなり商社の今後の動きについて注目してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  247. 宮地正介

    ○宮地委員 大臣に伺いたいのですが、先ほど来私は、この新会社の将来についてのステップについて、やはりもっともっと民間的ないわゆる活力、これは決して——私はもちろん政府の官僚の皆さんの頭脳というものをすばらしいと、敬意を表しております。しかし、民間というのはまた民間なりのすばらしい活力というものがあるわけで、そういう中でこれを生かし切っていくことが非常に大事である。ですから、具体的に、今後こういう新会社を立派に経営し、発展させていくためには、それなりに、事業計画にしても資金計画にしてもまた人的計画にしても、そうした内容を詰めて積極的に対応していかなくてはならない。法案が通った後に対応します、その前にいろいろ検討すると国会軽視になるとか、そういうちょっと詭弁がありましたけれども、私はそうした言葉じりでなくして、やはりこの新会社が、いわゆる臨調の答申に基づいて一つ方向、第一歩が示されたわけですから、もっと真剣かつこの新会社が国民の期待に沿うように対応していかなければならない。そういう点で、お役人の皆さんはお役人なりの御努力に敬意を表しますが、やはり発想の転換ということも大事でございますし、そういう点では、私は、大変悪い言葉で恐縮ですが、官僚的思考から、もっともっと民間のそうした柔軟な活力ある思考へ、いい面をお互いに生かし切って対応していくべきではないか。この点についての大臣としての今後の御決意、これを伺いたい。  また、先ほどの「当分の間、」については、ぜひ誠意ある御回答を留保いたしまして、本日の質問を一時終わりたいと思います。
  248. 竹下登

    竹下国務大臣 今度の臨調の答申、また開放経済という国際的時代流れ、そういうものの中から、基本的には小さな政府とかいうようないろいろな問題から、政府関係機関のあり方についての御論議が行われて、答申が出されたわけであります。その基調にあるものは、いわゆる民間活力の導入、こういうものであろうかと思っております。したがって、新会社、まだ法案御審議いただいておるさなかでございますけれども、この今後のあるべき姿としては、まさに斬新な、あるいはビビッドと申しましょうか、躍動的な発想というものが必要であろうということは、私自身も認識をいたしておるつもりでございます。  ただ、従来とも、いわゆる国会審議に当たって、今の専売公社の方は今の専売公社の機構の中に位置づけられていらっしゃるわけです。それから、その新社長に決まっておるわけでもない。したがって、そこのところ、私もきょうの問答を聞きながら、言ってみれば、その辺の節度を考えると、勢い答弁というものにもある意味における限界というもの——私ども両生動物であっても、そのことだけは、ハウスと行政府との節度というものに対しては非常に気をつけて物を言っておりますが、それののりを越して、もっと躍動的な答弁をしてもよろしいという印象を受けましたことについては、別の意味において、私は感謝をいたします。
  249. 瓦力

    瓦委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十五分散会