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1984-05-08 第101回国会 衆議院 大蔵委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年五月八日(火曜日)    午前十時一分開議  出席委員   委員長 瓦  力君    理事 越智 伊平君 理事 熊川 次男君    理事 中西 啓介君 理事 中村正三郎君    理事 伊藤  茂君 理事 野口 幸一君    理事 坂口  力君 理事 米沢  隆君       加藤 卓二君    熊谷  弘君       小泉純一郎君    笹山 登生君       椎名 素夫君    塩島  大君       田中 秀征君    中川 昭一君       東   力君    平泉  渉君       平沼 赳夫君    藤井 勝志君       宮下 創平君    村上 茂利君       山岡 謙蔵君    与謝野 馨君       上田 卓三君    川崎 寛治君       沢田  広君    渋沢 利久君       戸田 菊雄君    藤田 高敏君       堀  昌雄君    坂井 弘一君       柴田  弘君    宮地 正介君       渡部 一郎君    玉置 一弥君       藤原哲太郎君    正森 成二君       簑輪 幸代君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 竹下  登君  出席政府委員         外務大臣官房審         議官      都甲 岳洋君         大蔵政務次官  堀之内久男君         大蔵大臣官房総         務審議官    吉田 正輝君         大蔵大臣官房審         議官      山田  實君         大蔵省主計局次         長       的場 順三君         大蔵省理財局長 西垣  昭君         大蔵省理財局次         長       吉居 時哉君         大蔵省証券局長 佐藤  徹君         大蔵省銀行局長 宮本 保孝君         大蔵省国際金融         局長      酒井 健三君         国税庁間税部長 山本 昭市君  委員外出席者         経済企画庁調整         局審議官    海野 恒男君         外務大臣官房外         務参事官    木幡 昭七君         外務大臣官房外         務参事官    瀬崎 克己君         外務省アジア局         南東アジア第二         課長      橋本  宏君         通商産業省通商         政策局南アジア         東欧課長    小林 盾夫君         通商産業省貿易         局輸入課長   奈須 俊和君         郵政省貯金局規         画課経営企画室         長       結城 淳一君         日本輸出入銀行         総裁      大倉 真隆君         参  考  人         (日本銀行副総         裁)      澄田  智君         参  考  人         (海外経済協力         基金総裁)   細見  卓君         大蔵委員会調査         室長      矢島錦一郎君     ————————————— 委員の異動 五月八日  辞任       補欠選任   森  美秀君   加藤 卓二君   山中 貞則君   東   力君   坂井 弘一君   渡部 一郎君   安倍 基雄君   藤原哲太郎君 同日  辞任       補欠選任   加藤 卓二君   森  美秀君   東   力君   山中 貞則君   渡部 一郎君   坂井 弘一君   藤原哲太郎君   安倍 基雄君     ————————————— 五月七日  身体障害者使用自動車に対する地方道路税、揮  発油税免除等に関する請願岩垂寿喜男紹介  )(第三九二二号)  同(安田修三紹介)(第三九二三号)  同(渡辺美智雄紹介)(第三九二四号)  公立高校用地確保のため筑波移転跡地払い下げ  等に関する請願金子みつ紹介)(第四〇一  八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  調和ある対外経済関係形成を図るための国際  通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う  措置に関する法律等の一部を改正する法律案  (内閣提出第五四号)      ————◇—————
  2. 瓦力

    ○瓦委員長 これより会議を開きます。  調和ある対外経済関係形成を図るための国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上田卓三君。
  3. 上田卓三

    上田(卓)委員 本法律案は、調和ある対外経済関係形成を図るための各種法律改正案、こういうことであるわけでございます。国際化社会、こういうことで、非常に大事な法案の審議になるわけでございます。  私は、先月の本委員会でも大蔵大臣質問をしたところでございます。特に内需拡大ということで景気回復を図るべきだ、こういう国内的な要因から主に論じてきたわけでありますが、きょうは、対外的な関係という意味から見ても内需拡大均衡政策というのが必要だということを論じたい、このように考えておるわけでございます。  八三年の状況を見ますと、確かに政府見通しどおり経済成長率三・四%の達成はやや可能ではないか、こういうような状況になっていることも事実であります。しかし、それは特に昨年からのアメリカ景気回復といいますか、そういうものにやはり多く依存しておるということは事実ではなかろうか、こういうように思っておるところでございます。しかし、そのアメリカ景気というものを考えますと、特に、慢性的なといいましょうか、財政赤字が非常に累積しておるわけでございまして、一年間に約二千億ドルもの膨大な赤字を抱えている。それだけじゃなしに、経常収支についても七百億ドルから八百億ドルに近い赤字を抱えている、こういうような状況でございまして、特にアメリカ高金利政策というのですか、そういうものにすべておんぶしているということはないにしても、それが景気の支えの一つ要因になっている。それと同時に、アメリカがそういう大幅な赤字財政であるということは、やはり軍事負担が非常に重荷になっておるのではないか、そういうふうに我々は考えざるを得ないわけでございます。  そういうことを考えますと、対アメリカとの関係につきまして、特に貿易摩擦の解消ということが大きな問題になるのではなかろうか。そういうことを考えますと、やはり内需拡大を図って日本景気回復する、そして外国からの製品をどんどん買い入れる、そしてまた、それに伴って日本製品輸出するということが一番大事なことではないか。日本は売るばかりで品物を買わないじゃないか、こういうことであってはいけないのではないか、こういうように私は思っておるわけでございます。  特に、そういうことで、日本景気も一部回復したというものの、なかなか回復したという実感がいまだに持てないわけでありまして、そのことを先般も申し上げたわけでございます。輸出関連の一部の大手企業だけが非常にもうけておるようでございますが、中小零細企業は非常に苦しい状況に置かれておる。それだけじゃなしに、昨年度だけでも一万九千九百五十九件の企業が倒産に追いやられているというような実態があるわけでございます。そういう点で、何としても、今こそ内需拡大によって景気回復をということを主張しておるわけでございますけれども、大蔵大臣財政の制約を口実にして、相変わらず「おしん」型我慢経済学といいますか、そういうような緊縮政策をとり続けておる。これは大蔵大臣だけの責任じゃなしに、中曽根内閣自身臨調行革路線に基づいて緊縮財政、こういうことで、本当に、そういう意味では景気回復に役立つどころか、かえって足を引っ張っておるという現状があるのではないか、こういうように考えるわけでございます。  それに関連いたしまして若干申し上げたいわけでありますが、大蔵大臣は、現在のアメリカ中心としたところの世界経済全般についての現段階と今後の展望といいますか、見通しというものについてどのように考えておられるのか、まずお聞きしたい、このように思います。
  4. 竹下登

    竹下国務大臣 世界経済全体をどう考えるかということでございますが、第二次石油危機以後、景気の停滞あるいはインフレの高進、失業率上昇、こういう三つのことが世界経済全体の中で非常に大きな悩みを与えておったことは事実であります。したがって、まず、その第二次石油危機から世界全体がどのようにして脱却していくかということで、総じて言えば、我が国が脱却するスピードが他の国に比べれば速かったと言えるでございましょう。  私はサミットに参りますといつも感ずることでございますが、サミット参加国アメリカの二億三千万、日本の一億二千万、西ドイツの六千万、そして五千六百万がイタリアでございますか、イギリスが五千三百万、フランスが五千万等々、足しますと大体ちょうど六億人口がございます。六億というのは世界人口の一二%、そうしてそのサミット参加国が上げておるGNPは恐らく五七、八%。一二%の人口で六割近い生産をしておるというところでありますだけに、その先進国経済状態世界全体の経済情勢に大きく影響を与えるわけであります。したがって、それらの先進国状態を見ますと、今御指摘にありましたように、国別にばらつきはございますけれども、アメリカ中心に、あるいは西ドイツ、総じて回復に向かってきて、そこで今インフレ率も低下した。失業率ということになりますと我が国等から比べればまだ高いといえば高いわけでございますけれども、少なくともイタリー等を除けばおおむね一けた台には入ったというようなことで、失業にも改善が見られた。そこへ原油価格の安定からする物価落ちつきというような感じで、それなり回復方向に向かったというふうに言えると思っております。  しかし、その先進国全体の経済情勢発展途上国にどの程度の影響を与えておるかといいますと、先進国景気回復に伴って発展途上国との交易もふえていくわけでございますから、総じではいい方向に向かっているとはいえ、御案内のような債務累積国等がございますので、そういう国は個別にかなり困難な状況が続くと予測いたしましても、全体的には、徐々にではありますが回復傾向に向かいつつあるのではないかというのが最大公約数的な見方ではなかろうかというふうに事実を認識いたしております。
  5. 上田卓三

    上田(卓)委員 けさの日経新聞などを見ますと、確かにヨーロッパにおいても少し数値が上がっているようですけれども、しかし、それも統計上のことだけであって、実際大した効果というようには我々は考えられない。大臣自身そのようにも御理解しておられるようでございます。  そこでアメリカ景気でございますが、秋の大統領選挙これあり、大統領選挙が終わるまではこのままの景気上昇といいますか、一定の景気は保たれるでしょうが、先ほど申し上げましたように、やはりアメリカ自身が非常に財政赤字で苦しんでおる、経常収支においても大幅な赤字である、こういうことであります。また同時に、高金利政策も、これは日本を初め世界各国を犠牲にして、そういう意味ではアメリカ高金利政策世界経済景気回復の足を引っ張っておる原因であると言ってもいいというように思っておるわけであります。そういう点で、ことし一年間は何とかいけるでしょうが、来年以降はアメリカにおいても大きな転換を迫られるのではないか、景気後退局面に入ると見なければならぬと思うわけでありまして、そういう点について日本自身がどうするのかということにもかかってくるわけでございますので、アメリカ経済が今後ともこのまま伸びるのかどうか、あるいはことし一年限りと見られるのかどうか、大臣見解をお伺いしたい、このように思います。
  6. 竹下登

    竹下国務大臣 御心配になっておりますように、アメリカの場合大幅な財政赤字、それからいわゆる貿易赤字、この二つがインフレなき持続的成長ということにとってはマイナス要因あるいは懸念要因となっておることは、これは私も否定できないところだと思っております。ただ、八三年の第四・四半期に若干停滞しましたが、八四年の第一・四半期にまた盛り返したということからいたしますと、個人消費の伸びが堅調でございますし、企業収益それなりに改善されていくというところから見ますと、景気拡大が継続していくであろうというふうに見るのが一応は至当な見方ではなかろうかというふうに私は考えております。  ただ、八四年の第一・四半期の瞬間の成長率が高過ぎる、したがって、インフレ懸念ということを指摘する方もございますけれども、その辺は、今日の物価上昇率を見ておりますと、ある意味においては日本に続くとでも申しますか、数年前から見れば異常なほどに落ちついておりますので、まあインフレ懸念というものもないのではなかろうか。ということになると、総じて、今御指摘なさいました財政赤字拡大貿易収支の不均衡という懸念材料を抱えながらも、やはり持続的な回復基調をたどるのではないかというのが常識的な見方ではないかというふうに私は考えております。
  7. 上田卓三

    上田(卓)委員 大臣アメリカ高金利政策はこのまま持続されるだろう、あるいはアメリカ財政赤字は、軍拡路線ということとも相まって、解消されるような見通しがない、このままずっと突っ走る、こういうふうにお考えですか。
  8. 竹下登

    竹下国務大臣 アメリカ高金利のよって来る要因といえば、やはり御指摘財政赤字だと思います。したがって、レーガン政権でも、これは来年からとはいえ、与野党で財政削減委員会をつくって、それで目標値を定めて財政赤字をなくしていこうという政策を今志向しておられるということになりますと、それはやはり金利の面についてもそれなり落ちつきが期待される一つ要因ではないかというふうに考えております。しかし、当面どうかということになりますと、私は、金利が低下していく傾向は当面はないではなかろうかというふうに事実認識をいたしております。
  9. 上田卓三

    上田(卓)委員 私の質問に十分答えられていないわけでございますが、いずれにしましてもアメリカの今の高金利政策あるいは今の景気というものに、非常に軍需産業に支えられているというような部分もこれあり、そのことがかえってまた財政赤字を生み出し、そして、それがまた財政赤字原因にもなっている、こういうことでありますから、やはり早晩これは大きな転換が見られるというように考えざるを得ない。大統領選挙もありますから、いましばらく、ことし一年間あたりはそうであるかもわからないが、やはり来年以降は後退局面に差しかかる、我々はそういうふうに認識しなければならない、そのことの方が順当ではないか、こういうように思っておるわけでございます。  そういうことを考えますと、やはり我が国世界経済に果たす役割というものを考えた場合、先ほど申し上げましたように、内需拡大を図って景気回復する、そして景気回復すれば海外からの輸出我が国にとっては輸入量がふえる、ふえることによってまた輸出も伸ばしていく、こういう形で世界経済に貢献すべきで、国内の内需拡大を図らないでそのはけ口を全部輸出に回していくということが、貿易収支の不均衡といいますか、大幅な黒字となって、それが欧米諸国では貿易摩擦という形で非常な非難の的になっておるわけでありまして、OECD閣僚理事会とかあるいは来月に開かれますところのロンドン・サミットなどで、日本欧米から袋たたきに遭うというような状況になることは必然である、こういうように考えざるを得ないわけであります。  そういう点で我々が今後しなければならない問題は、まず第一点は、アメリカに対して高金利政策を直ちにやめよというきっぱりした態度が必要ではないか、こういうように思っておるわけでありまして、その点について一点お答えをいただきたい。  それから二点目は、巨額の累積赤字を抱える発展途上国ですが、これも非常に高金利なために利子払いもできないというようなことで、サラ金操業みたいな、いやそれ以下の、国自身が破産してしまうような状況があるのではないかというように思っておるわけでありまして、先進諸国発展途上国に対して、もっとその国の立場に立って、借金奴隷にしてしまうとかあるいは本当に国自身を破壊してしまうようなやり方じゃなしに、自立自助といいますか、そういうものを助けて、その国の真の発展につながるような援助を大幅にふやしていくことが今後大事ではないか、こういうように思っております。  それから第三点目は、やはり何といいましても米ソ緊張緩和ではなかろうか、このように思っておるわけであります。ソ連経済も、軍拡路線によって本来の社会主義建設に手が回らない、こういうようなことになっておるようでございますし、それはアメリカにおいてもしかりであります。ヨーロッパにおいても我が国においてもそういうことが言えるわけでございまして、軍事費というものがいかに人類にとっては迷惑な厄介者であるかということは、もう論をまたないというように思うわけであります。軍事予算が年間約六千億ドルを超えると言われておるわけでありますから、こういう予算の一割でも発展途上国援助するならばどれだけ助かるか、南北の問題がどれだけ解決するか、こういうことになるのではなかろうか、こういうように思っておるわけであります。我が国がみずから率先して米ソに対して世界平和を訴え、軍縮を訴える、そのために我が国においてもやはり軍拡路線をとらないということがぜひとも必要なのではなかろうか、こういうように思っておるわけであります。  第四番目には、そういうものを確かにするためにも、やはり東西貿易をもっと活発化させることが必要なのではなかろうか、こういうように思っておるわけでありまして、もう既に東西貿易はされておるとはいうものの、全面的に開放されていない、全面的に枠が取り外されていないという状況があるのではないか、こういうように思っておるわけでございまして、そういう東西貿易をもっと活発化させることによって世界経済活性化を図るべきだと思っておるわけでございます。  時間の関係もございますので、簡単にこの四点について総括的に大臣からお答えいただきたい、このように思います。
  10. 竹下登

    竹下国務大臣 かねての上田委員の御持論でございますが、要するに内需拡大をしていけば当然のこととして輸入がふえてきて、いわば国際収支等の不均衡それなりに是正されていって、そしてまた、世界経済全体にも貢献する、こういう議論であります。  この議論に対して私がいつも申し上げておりますのは、今のところは、日本とか西ドイツ世界的規模においてのいわば機関車的役割を果たしてくれとかという要請は、世界全体の声にはなっていないのじゃないか。まだ、現実おのがじしそのところに従い、みずからの国の財政赤字を縮小することによってインフレなき持続的成長をもたらすという路線が今は継続しておる。したがって、一部そういう議論が出るでございましょう。OECD等においては幾らか議論が出るでございましょうが、サミットにおいてそれが大勢になるということはないではないか、こういうことを私は申し上げておるわけであります。それは一つ経済見方に対する見解の相違でもあり、どっちの立論もそれなりの評価もあるところであろうと私は思っております。  そういう背景を踏まえながら、一つアメリカ高金利というものが世界経済に悪影響をもたらしておるのではないか。私もそれは否定をいたしません。我が国としても、米国が適切な財政金融政策をとることによって財政赤字を削減して、高金利の是正が行われることが望ましいということは、機会あるごとに米国関係者に対してこれを要請しておるところであります。  それから二番目の債務累積国の問題でございますが、例えばメキシコでございますとかいうのは好転をしてきつつあるというふうにも言われるわけでございますけれども、これはやはり国際協調の場、すなわち国際機関IMF等中心になってそれぞれの国の自助努力によるところの計画等を見定めて、それに対応して私どもは、その分に応じてというよりも、むしろ積極的に債務累積国の問題に対応して今日に至っておるわけであります。したがって、基本的にはやはりIMF等国際機関というものが各国民間金融機関をも含めた援助体制媒介活動をすることを期待し、それを中心方向を見定めておる問題であります。  三番目の、言ってみれば米ソ両大国のいわば軍拡世界経済全体に対していい影響を与えていない、これは私も全くそのとおりだと思っております。したがって、日本は武力という問題については力なき国であるとはいえ、絶えず国際会議等の場におきまして、この両国のいわゆる軍拡競争というようなことがあってはならないという意味で、最大公約数としては軍縮を否定するものは一人もいないわけでありますから、折に触れその軍縮問題を説いておる。したがって、中曽根総理が今度インド、パキスタンを訪問されたに際しても、なかんずくインドにおいて、軍縮問題については非同盟中立国インドの首相も、最大公約数として、それに対しては心からなる賛意を表したという御報告を受けておるところであります。  それから四番目の東西貿易、これは御案内のようにいわゆる政経分離の形で自由に進めていくという考え方を必ずしも全体的にはとり得ない問題が、確かに現実問題としてはございます。事実、単に二国間の貿易拡大を目指すという観点のみでなく、安全保障等の分野を含めて、全体としてこれをとらえていかなければならない。すなわち無原則に政経分離でいいじゃないかという議論には、現実問題としてはなかなかくみしがたいところでございます。ただ、体制が異なる国とはいえ、やはり両当事者の努力によって、今後とも輸出輸入両面における拡大というものが行われていく方向努力をしていかなければならぬということは、私も同感であります。
  11. 上田卓三

    上田(卓)委員 私が申し上げたいのは、それに関連して、日本という国が幾らGNP世界で第二位と言われましても、アメリカとかソビエトあるいは中国などのような資源国じゃないわけで、本当にそういう意味では資源の乏しい貿易立国、こう言っていいのではないかと思っておるわけでありますから、やはり政治経済においても、全方位外交といいますか、全方位で多くの国々と仲よく共存共栄していくということが大事ではないか、私はこういうように思っておるわけであります。  日本資本主義国でありますから、アメリカヨーロッパとも仲よくしていくということは当然のことでありますが、十年前、あの犬猿の仲でありました中国とも仲よくなって非常にみんなが喜んでおるわけであります。日本にとって、あと残された国はお隣のソビエトではないか、このように思っておるわけで、お互いに嫌いであっても引っ越しのできない地理的な関係にあるわけであります。特に軍事的な面あるいは北方領土問題の解決という意味から見ても、やはりソ連と仲よくするということは非常に大事なことだ、こういうふうに思っておるわけであります。  そこで、きょう通産省の方もお見えのようでございますが、対ソ貿易について、アフガン事件あるいはポーランド事件等もあって、経済制裁というようなこともこれありで、双方の貿易額が一時に比べて非常に落ちておるというふうに思うわけでありますが、そういうことについて一体どのように考えておるのかお答えいただきたい、このように思います。
  12. 小林盾夫

    小林説明員 両国間の貿易につきましては、八〇年、八一年、八二年にわたりましてかなりの伸びを示したわけでございます。しかしながら、先生御指摘のように、八三年におきましては輸出入合計で四十二億八千万ドルということで、八二年に比べまして約二三%の減少ということになっております。  これは品目別の動向をちょっと見ていただきますとその辺の事情、背景がわかると思うのでございますが、一つ大きな要因は、シームレスパイプを中心といたします鉄鋼が減少している、それから第二に建設、鉱山用の機械、荷役機器、それからトラックといったいわゆるプロジェクト案件の関連の輸出が減っておるということでございます。  それから輸入につきましては、金なり綿花といった品目が減少しておりますけれども、その他の品目についてはむしろ増加傾向ということでございます。  このように、我が国の対ソ輸出という点につきましては、プロジェクトの有無ということに大変左右されるということでございまして、八三年の大幅な減少につきましては、我が国が関連しております第三次極東森林資源開発プロジェクトですとか南ヤクート炭の開発プロジェクトといったプロジェクトに関連します輸出が八一年、八二年にほぼピークを過ぎまして、八三年にはほぼ輸出がそれで終わってしまったということによります反動減ということがございます。したがいまして、輸出のレベルというものが大体八〇年のレベルに戻ったというような状況になっておるわけでございます。それにかわりまして新しいプロジェクトが出てこないというのが、もう一方の背景としてあると考えております。  以上でございます。
  13. 上田卓三

    上田(卓)委員 経済制裁ということで、たしか八〇年、八一年、八二年は、かつてのそういう契約したプロジェクトの継続というようなことで、貿易の絶対量は余り減ってないという状況ではなかろうか。しかし、三年目に入って去年度は大幅な落ち込み、こういうことではないか。恐らく今後においても、このまま手をこまねいておれば、本当にもっともっと減っていく、こういう経過をたどるのではなかろうか、こういうように思っておるわけでございます。  きょうは外務省の方もお見えでございますが、三月三日の予算委員会で我が党の岡田利春議員の質問に対して、外務省は、経済制裁については、西側全体が結束して制裁をとったところに意義があった、こういうようなことも言っておるようでございます。しかし、そうはいうものの、現実問題として、例えばアフガンの問題やあるいはポーランドの事態がその結果何も変わっていないという事実があるわけであります。また、それだけじゃなしに、西側が結束したところに意義があるとはいうものの、初めからヨーロッパあたりはアメリカのそういう経済制裁に対して反対しておったようでございますし、また、具体的な実行段階においては一つも——一つもということはございませんが、ヨーロッパあたりは全然そういうものを守らないで、かえって忠実に守った日本が貿易量を減らしている。片や、例えば西ドイツやフランスやイタリアなどはその間隙を縫って貿易量を大幅にふやしておる。結局、経済制裁で損をしたのは、政治絡みでありますから損得だけの問題で見るべきでないかもわかりませんが、経済ベースで言うと結局は我が国が損したことになりはしないだろうか、こういうように我々は思っておるわけでございます。  また、アメリカにおいても、先端技術などについてはかたい態度をとっていることはわかるわけでございますけれども、しかし農産物、特に穀物についてはこれはもうそそくさと解除するというような、言っていることとやっていることが全然ちぐはぐである、こういうような状況があるわけであります。特に、ポーランドの戒厳令の布告に伴ってとられた第二回目の制裁措置に至っては、ウレンゴイの天然ガスをパイプラインで西ヨーロッパまで延ばす計画でありますところのヤンブルグのプロジェクトを何とかレーガンは妨害しようといたしたわけでありますけれども、結局は西ドイツやイギリスやフランスなどの各国の実力行使といいますか、いわゆるパイプラインの機材を政府命令で船積み輸出するというような結果になっておるわけでございまして、そういう点で、やはりこの制裁というものは西側の結束を示したところに意味があるというよりも、かえってそのことによって乱れが見えたということで、そういう意味では、私は、失敗に終わったというふうに見るべきでないか、こういうふうに思っているわけでございまして、そういう点で通産、外務、それから最後に大蔵大臣からお答えをいただきたい、このように思います。
  14. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 お答え申し上げます。  東西経済関係につきましては、先生御指摘のようにいろいろな実行段階におきまして曲折がございましたし、それから具体的な案件の取り扱いにつきまして、特に石油関係機器の輸出の問題につきましては、米国国際法上も認められないような管轄権の域外適用という形をとったということもございまして、これに対する各国の反発があったというような事態もございましたので、個々の局面におきましては紆余曲折ございましたけれども、御案内のようにオタワ、それからベルサイユ、それからウィリアムズバーグの三回のサミットにおきましても、東西経済関係につきましては、これを西側の政治安全保障の利益に合致した形で進めるということにおいては、基本的な認識が各国の間で強く存在することは御承知のとおりでございます。  先ほどの御指摘のような西側の内部での技術的な問題につきましては、一九八二年の十一月にワシントンで各関係国の大使会議が開かれまして、この問題については別な枠組みで継続協議をしようということで、むしろ今後長い期間にわたって東西貿易の進め方について調整を図っていこうではないかという形での合意が見られているわけでございます。そういうことで、今後とも高度技術の流出等の問題を含めまして、ココムあるいはOECDの場等を通じて一層協力して対ソ経済関係を進めていこうという認識が強まっているということは、個々の具体的な問題についての曲折にもかかわらず、西側全体としてやはりこの問題についての認識がむしろ高まったというふうに私どもは受けとめております。  そういう形で、技術的な問題がございましたけれども、ソ連に対してアフガンの問題、ポーランドの問題について自制を求めるという形での西側の結束というものをソ連側はかなり重く受けとめているということを私は感じておりますし、その限りにおいてそれなりの効果があったというふうに評価できる問題であろうと考えております。
  15. 小林盾夫

    小林説明員 対ソ経済措置に関します効果、評価につきましては、ただいま外務省の方からお答えしたとおりでございます。
  16. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに、いわゆる対ソ経済制裁措置というような問題になりますと、今も御指摘なさっておりましたように、既契約分は除いて新規契約から、こういうことになりますので、既契約がかなり続いておった三年間ぐらいはそれなりの実績が上がった。ただ私は、八三年の落ち込みということを考えてみますと、これは一応見方によってではございますものの、ソ連の大型プロジェクトというものがある周期に来た、一巡をしたということが言えると思います。  それといま一つは、言ってみれば各国とも同時不況というようなものを抱えておりますときには、勢いいわば競争が激化いたしまして、必ずしも我が国の側から見て我が国に重点的にいろいろな商談が継続しないで、他の国へそれらの問題が移っていったという要素も幾ばくかはあろうかと思っております。  ただ、先ほど来申し述べられておりますように、たび重なるサミットにおきまして、いわば西側陣営の一員として西側全体の結束というものが、私はいろいろな意味において大きな効果をもたらしておるということは、平たく評価してしかるべき問題ではなかろうかというふうに考えております。  ただ、それぞれの国によりまして、先ほど例示として出されましたアメリカの穀物の問題でございますとかあるいは西ドイツのガスの関係からするもろもろの問題でございますとかという個別的な問題は、それぞれの理由によって存在するわけでありますけれども、総体的には西側の共同歩調というものがそれなりの効果を上げてきておるのではないかという評価をいたしております。
  17. 上田卓三

    上田(卓)委員 経済措置とおっしゃっていますけれども、やはりこれは経済措置という名の経済制裁であることは事実であろうというふうに思っております。当然その効果のほどについては、政府はそれが正しいということで西側のアメリカヨーロッパと一緒になってそういう共同歩調をとったということでありますから、それが実際効果が上がってない、失敗しておっても、恐らく失敗であったということは認めたがらないことは事実そのとおりであると思うわけでありますけれども、現実にその後の関係を見ますと、もう既に実質的に経済措置なるものが崩れつつあるということは事実言えるのではなかろうか、こういうように思っておるわけであります。  そういう意味で、名実ともにそういう経済措置経済制裁というものは一刻も早く取り除くということが必要ではないか、こういうように私は思っておるところでございまして、日本が幾ら経済大国だといったって、いつまでもこの繁栄が続くとは限らないわけであります。やはり五十年、百年、そういう長い関係の中で、昔日本はあのときこういうことをしたんだ、ああいうことをしたんだということでまたしっぺ返しされるというようなことが将来あるかもわからないわけでありますし、そういう点で、日本は特にこういう小さな島国で、極東の一角にあるわけですから、もっと慎重な、子孫の代まで考えたところの状況を十分に考えなければならぬのではないか。  特に、経済制裁といいますかあるいは措置の結果、商談を西ヨーロッパにとられていったという例は、電磁鋼板の製造プラント、それからポリエステルの製造プラント、計五億五千万ドルが挙げられておるわけでありますけれども、これ以外に、当時商談が進められておりましたところのリグ製造設備やあるいはカリ塩製造設備あるいは石油回収設備などの数億ドル級のプラント輸出商談が中断になったまま、ついにまだ復活してないというような現状があることを、大臣もひとつよく理解をしてもらいたい。  また同時に、それだけじゃなしに、その後もヨーロッパ諸国は次々にソビエトと新しい商談を成立させて、最近ではそのプロジェクトの参加がウラル山脈を越えてシベリア、極東地方にまで進出する傾向がある、こういうことでありまして、第三次のKS(森林資源開発)のプロジェクトを除いて新規の経済協力プロジェクトが一つも成立してないというようなことを考えた場合に、日本の財界の中でも、やはりこのことに対して無関心ではおれないという状況が起こっておるのではないか、こういうように思っておるわけでございます。そういう点で大臣から、また外務省からも、経済制裁措置というものについて取り除くという方向努力をしてもらえるのかどうか、そのことについて簡単にお答えしていただきたい、このように思います。
  18. 竹下登

    竹下国務大臣 元来、この経済制裁措置というものは私も好ましいものであるとは考えておりません。したがって、そのケース・バイ・ケースに当たりましても、既契約分を除くとかいろいろな名分の中においての最小限の措置をすることによって、自国経済あるいは今具体的におっしゃいました商談等に影響がないような配慮もしながら対応していかなければならぬ。しかし、やはり東西貿易ということになりますと、原則的に政経分離の姿勢だけを貫くわけにはまいらぬ。安全保障等の面もございますので、したがって、西側の共同歩調の中でこれに同一歩調をとっていくということはそれなりに意義のあることではないか。しかし、原則として経済制裁措置などをする必要のない友好関係が続いていくというのが大前提であるということは私も同意見であります。
  19. 上田卓三

    上田(卓)委員 そうは言うもののことしになってから政府、特に外務省が、これまで凍結していた日ソの人的交流あるいは経済面での話し合いを公然と復活させる方向に動いてきたというように私はとっておるわけでございますが、これは非常にいいことだというように思っております。大臣からも、本来ならばそういう経済的な措置、制裁というものはとるべきでない、ケース・バイ・ケース云々というお話があったわけでありまして、そういう点で私はことしに入ってのそういう外務省等の動きについて評価をいたしておるわけでございますが、今月の初句に西山欧亜局長が訪ソをして、今後の日ソ対話の具体的スケジュールの協議について話し合ったということを聞いておるわけでございますが、その報告をしていただきたい。  それと、昨年十月にモスクワで開かれた日ソ貿易経済協議を、ことしは秋に東京で開いて、これまで中断されておりましたところの日ソ貿易定期協議を事実上復活させるということも決まったようでありますけれども、この秋に開かれる会議の主なテーマというものは一体何なのかということをお聞かせいただきたい、このように思います。
  20. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 お答え申し上げます。  先ほど先生から御指摘のありました対ソ経済措置の問題につきましては、私どもとしても、本来こういうものがなくて済むような状況があるべきだと思っておりますけれども、ソ連がアフガンにおいて、他国に対して武力によって侵攻したという状況がなお残っており、そしてそれがさらに強化されるという趨勢がある現実というのは、考慮に入れざるを得ないだろうと思います。ポーランドにおいても基本的な改善を待つということが必要だと思いますし、そういう意味での西側全体としての措置というものは、私どもとしてもこれは協力をしていく必要がある。しかし、個々の対応においては、情勢の変化に応じて西側と調整しながら対応していくということは必要であろうというふうに基本的には考えております。  それから、先ほど御指摘のございました西山欧亜局長の訪ソでございますけれども、これは、先般行われました事務レベル協議、あるいは二月にグロムイコ大臣安倍大臣の間で合意されました、厳しい中でも今後の日ソ間の対話を強化拡大していこうという路線に従いまして、具体的なプログラムづくりをしたということがその内容でございました。その結果、詳細には申し上げませんけれども、日ソ租税条約交渉の開始の日取りを決めたり、国連あるいは中東問題についての局長レベルの会談について具体的な取り決めを行ったり、それから映画祭について具体的な日取りを決めたというようなこともございました。それから、その際に特に触れられ、双方から前向きな姿勢が示されましたのは、国連の場における日ソ外相会議の開催でございます。そのようなことでかなり具体的なプログラムを今後決め、対話を拡大強化していこうという路線がしかれたということ自体、私どもは非常に結構なことではなかったかと思っております。  それから、先ほど御指摘になりました貿易経済協議でございますが、実は、これは昨年の十月にいわばアドホックなものといたしましてモスクワで開催をしております。これにつきまして、十月ぐらいをめどに再び東京でこれを開催しようということで、基本的な合意を見ているわけでございます。  その内容でございますけれども、具体的な日時とか議題等につきましてはまだこれを決めておりません。しかし昨年は、最近の日ソ貿易の実績レビュー、それから両国間の貿易経済関係に関するその他の諸問題ということを中心議論をいたしましたので、ことしもそのような形での協議が行われるものだと思いますし、私どもも、このような互恵の形での日ソ貿易が進むことについて、いろいろな問題での意見交換をすることは非常に有意義だと思っておりますので、そのための準備を進めたいと思う次第でございます。
  21. 上田卓三

    上田(卓)委員 先般、日商会頭の永野重雄さんという、日ソ問題に経済界の立場で非常に努力された方が亡くなられたということで、日ソ間にとっては非常に大きな痛手ではなかったかと非常に残念でならないわけでございます。昨年の二月に経済界を代表して二百五十人の大型の永野ミッションが訪ソされたわけでございまして、非常に冷却している中でそういう行動をされたということは非常に勇気ある行動だ、このように思っておるわけでございます。日ソ経済合同委員会の復活版として、日ソ貿易経済会議というものの第二回目を開こう、こういうことになっておったわけでございますが、ぜひともこの東京での会議が成功されるようにお願いしたいと思います。  特に、通産省にお聞きしたいのですが、永野ミッションのときもそうでございますが、具体的な日ソ協力についてのプロジェクトについて、日本側から何ら提案らしき提案がなかったというふうに聞いておるわけでございまして、今回の第二回の会議が開かれたとしても、双方からの何らかの具体的なプロジェクトを出される見通しというものが非常に大事じゃないかと思いますので、通産の考え方をお聞かせいただきたい、このように思います。
  22. 小林盾夫

    小林説明員 いわゆる日ソ貿易経済協議、民間ベースの問題につきましては、永野氏の死去という事態もございまして、現在どのように取り進められるかということが判然としておりませんけれども、私どもといたしましては、こういった機会に実際の実務家ベースで深い検討が行われまして、新たなプロジェクト等が発掘されることを基本的には希望しておるわけでございますが、現在の経済界の状況を申しますと、やはり資源エネルギー関係が大変需給が緩和しているという状況の中で、一時ほどシベリア開発等に関する魅力が失われてきているということでございまして、なかなか新たなプロジェクト発掘に苦労しているという状況でございます。  昨年の二月に行きましたときには、消費財関連のプロジェクト、いわゆるミニプロジェクトといった名前をつけておりますけれども、そういった分野で何らかの協力ができないかという検討も進められているように聞いておりますので、そういった方向での検討がさらに今後進めばというふうに考えております。
  23. 上田卓三

    上田(卓)委員 時間も来ておるわけですが、日ソ経済協力の拡大を妨げているのは、やはり最大のネックは信用供与ではないか、こういうように思います。特に日本輸出入銀行の融資ということが決定的なものではないか、こういうように思っておるわけでございます。やはりOECDの八・五%のガイドラインをもっと下げるということが基本的に大事ではないか、こういうように思っておりますので、その件についての輸銀総裁見解を聞きたいことと、現実にこれらが利用できないということから、例えばディファレンシャル方式といいますか、金利の原価組み入れという形で、民間サイドで苦肉の策として相当努力をされておるようでございますが、こういう実態をつかんでおられるのか、このことが正常だとお思いになっておるのかどうか。もっと実のある具体的ないろいろな形での援助というものが必要ではないか、私はこういうように思っておるわけでございますので、その点についてお答えをいただきたい、このように思います。
  24. 大倉真隆

    ○大倉説明員 お答え申し上げます。  御質問の第一点のOECDのガイドラインでございますが、これは、いろいろな経緯を経まして、日本について低金利国として適用されますがイドラインは、一時に比べますとかなり合理的な方向に修正されてきております。現在は御承知のように八・〇%という金利水準を適用するということになっておりますが、しかし、依然として、私どもが考えております実質的な日本の市中金利に比べましてなお割高な水準に設定されるということはございますので、今後ともOECDの場におきます政府間交渉におきまして、ぜひとも日本側の立場を一層よく説明し、合理的な修正の方向に動いていただけるように、私どもとしましても政府に対してお願いをいたしておるというのが現状でございます。  対ソ関係におきまして、そのガイドライン金利と実際の輸出者が契約いたしますいわゆる水際金利との関係でございますが、これは上田委員よく御承知のとおり、ガイドラインというのは公的信用機関が輸出をサポートするときの金利水準の取り決めてございまして、水際のエクスポータトと相手国との契約金利まで規制するものではございません。しかし、通常の取引といたしましては、やはりソ連に限らずどの国との取引におきましても、ガイドライン水準で水際金利も設定されるということが望ましいことは、これは申し上げるまでもないわけでございます。  ソ連との延べ払い取引につきましては、これは日本だけではございません、西欧諸国との取引につきましても、ソ連側からOECDガイドラインよりもかなり低い水準でないと発注しないという強い動きがございまして、各国ともこの対応に苦慮しているわけでございます。ソ連側のそういう強い態度に、どう申しますか、非常に申し上げにくいのですが、一つの国がやむを得ず応じますと、ほかの国も競争上それに似たような水準で受注に応じていかざるを得ないという国際的な競争の問題がございます。その結果として、御質問にございました、いわゆるディファレンシャルという状態が発生いたします。これは、私は個人的には決してノーマルな状態ではないというふうに思っておりますけれども、輸出者もガイドラインの存在を十分知りつつ、なおかつ、国際競争上やむを得ないということでそういう判断に立つ場合がある。私どもも、実際に融資承諾いたしますときには水際契約の内容を説明を聞いておりますので、実際にそういう状態が起こっているということは把握いたしております。ただ、個別の案件につきましては、これは個別の商取引でございますから遠慮さしていただきたいのですが、私ども、そういう実態は把握いたしております。  今後の方向としましては、やはりできるだけそういうアブノーマルな状態が解決されるように、エクスポーターとしても十分考えていただきたいし、また個別にそういう事態が発生いたしましたときには、この処理につきまして関係当局と十分御相談しながら、私どもとしての融資承諾を決めてまいっておるというのが現状でございます。
  25. 上田卓三

    上田(卓)委員 最後に、大臣と外務省に一言ずつお聞きをさしていただいて終わりたいと思いますが、いずれにいたしましても、ソビエトという国は対外貿易については長期契約、こういうものを結んでおるようでございまして、特に八六年から第十二次の五カ年計画が始まるようでございますので、ことし、来年とぐずぐずしておりましたら、これに乗りおくれる。もともとする気がなければ別でございますけれども、ソ連との貿易を正常に進めていこうという気があるならば、またそうすべきでありますが、やはり真剣に、ことしから来年にかけて具体的な商談等について取り組まなければならないのではなかろうか、こういうように思っておるわけでございます。魅力のある商品や目ぼしいプロジェクトが少ないというようなことも言われておりますけれども、ヨーロッパあたりではそれが進んでいるということになれば、もっと工夫すれば日本でもそういう活路があるのではなかろうか、こういうように思っております。  それと同時に、例えば森林資源などにおいても、日本はちょっとだぶついておるというようなことがあっても、隣の中国はこれから非常に需要がふえてくるというようなこともあるわけでありますから、日本ソ連から木材を輸入して中国へそれを売るというような三国間の取引というようなことも、これはどこでもあることでありますから、そういうような工夫もするということになりますと、第四次の森林計画もやはりスムーズにいくということになるのではないか、こういうように思っております。  聞きますれば、ソ連の方からは、極東一貫製鉄所やあるいはウトカンの銅鉱山のコンビナート、マラジョーシノエのアスベスト鉱床開発など、プロジェクトはまだまだ生きているというように言っておられるようでございますし、また、この秋から第二シベリア鉄道のバム鉄道が開通する、こういうことでありまして、それに関連して多くのそういうプロジェクトに関連する商取引が出てくるのではなかろうか、こういうように考えておりますので、そういう点で積極的に、日ソだけではございませんが、特に日ソがこういう冷えているという状況にかんがみてやはりこれを拡大するという姿勢について、大臣のお答えと、それからヨーロッパあたりでは二十年、二十五年という長期の経済協定を結んでおるようでございますから、ぜひともそのことを結ぶ必要があるのではないか、このようにも考えますので、お答えをいただきたい、このように思います。
  26. 竹下登

    竹下国務大臣 外務省において、先ほど指摘がありましたように、いわゆる日ソ外交全体についていろいろ積極的な動きをしていただいておるという現状は、政府全体の一つ方向として私は認識していただくべき問題ではなかろうかというふうに今考えております。  当然それに伴う経済問題等につきましては、幸いにして昨日の持ち回り閣議で日ソサケ・マス漁業の問題が妥結した旨の私どもサインをいたしましたが、それは一つの事例でございますけれども、両国間がいろいろな角度から、西側陣営の一員としての位置を保ちながらも友好が促進し、相互のために交易関係拡大していくことは好ましいことだ、そのように努力をしていかなければならぬ課題だというふうに私も事実認識をいたしております。
  27. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 先生御指摘の長期経済協力協定の点について一言お答え申し上げたいと思います。  御指摘のように、確かに西側の多くの国とソ連は長期経済協力協定を結んでおりますけれども、我が国にとりましては、やはり日ソ間で本当に長期的に安定した経済協力を取り決めの形で結ぶためには、それなりの安定した政治的基礎が必要ではないかというふうに考えております。御案内のように、日ソ間にはまだ戦後の平和条約が締結されていないというような形で、終戦処理も最終的になされていないという状況が北方領土問題を基本的な要因としてございますので、政府としては、最近の国際情勢に加えてこのような情勢がある日ソ関係において、必ずしもこのような条約の基礎がないのではないかと考えております。  他方、日ソ間には、このような長期協定がないにもかかわらず、かなり貿易を伸ばしてきたという実績があるわけでございますから、そこにはやはり経済界の方々の御努力があって、また、相互に利益が存在するというところに経済が伸びてきたという実績があると思いますので、当面、そのような形で経済界の方々の御努力にまつということで日ソ貿易が伸展すれば、それは私どもとしても歓迎したい、そのように考えております。
  28. 上田卓三

    上田(卓)委員 時間が来ましたのであれですが、そういう障害になっておりますところの日ソ関係の一番大事な戦後処理、日ソ平和条約、友好条約というものを一日も早く結ぶという努力がやはり前提としてあるべきではないか、こういうように思っておるわけでございます。そのためにも経済交流がいかに大事か。日本の防衛という立場からも、やはり軍事大国にならないという意味からもぜひとも大事であるということをつけ加えまして、時間が来ましたので質問を終わりたい、このように思います。     —————————————
  29. 瓦力

    ○瓦委員長 この際、お諮りいたします。  本案について、本日、参考人として、日本銀行副総裁澄田智君及び海外経済協力基金総裁細見草君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  30. 瓦力

    ○瓦委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  31. 瓦力

    ○瓦委員長 川崎寛治君。〔発言する者あり〕——ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  32. 瓦力

    ○瓦委員長 速記を始めて。
  33. 川崎寛治

    ○川崎委員 お二人の参考人には、お忙しいところを本当にありがとうございます。後ほどお願いします。  財確法のときにも、私は、大蔵省の立法の仕方というものについて指摘をいたしました。つまり特別立法であったやつを一本にまとめて財確法の処理をして政策転換だ、こういうふうにしてきたわけですね、大蔵大臣。今度も七つの法律を一緒にして、余りなじむようなものでないものまで一緒にして、しかも、それはぐあいが悪いものだから「調和ある」ということで調和をとろうとしておるのですが、立法の仕方としても、最近の大蔵省の立法の仕方には大変問題がある、これは細見さんや澄田さんの時代にはなかったことだ、こういうふうに思います。ですから、これは法制局に来てもらってこういう問題も一遍議論したいと思いますが、まず最初に、そのことを指摘をしておきたいと思います。  そこで、「調和ある」対外経済政策とはどういうことですか。
  34. 竹下登

    竹下国務大臣 今日、世界経済全体の中に占める我が国の立場等から申しまして、当然のこととして国際経済社会に果たさなければならない役割というものも必然的に生じてくるわけであります。それらを総合的にまさに調和をとったものが「調和ある」という言葉に集約されるものではないかというふうに理解をしております。
  35. 川崎寛治

    ○川崎委員 提案理由の説明は、一月の主要国蔵相代理会合においてIBRDとIDAの増資を決めた、そこで今度の法律の改正をお願いする、こうきておる。ところが世銀の理事会の方はどうなったのですか。アメリカは反対しているというか、そういう新聞の報道が再々あるわけですね。安倍外務大臣自身も、予算委員会の議事録を見ますと、アメリカは多国間よりも二国間の方に力が入っているということを委員会指摘をしておるわけなんです。そうすると、世銀の理事会で出資の増額ということが認められないというか、それが済んでいないということになりますと、これはどういうことになるのですか。我が国が、国会がこれを決める、しかしアメリカの方はやらない、結局非常に先に走っていくわけですね。そこらの点は今どうなっているのですか。
  36. 酒井健三

    ○酒井政府委員 お答え申し上げます。  世銀関係では、世銀の方の特別増資と第二世銀の増資と二つございます。今回の世銀の方の増資は、IMF、国際通貨基金の第八次増資に伴う特別増資でございます。  アメリカにおきましては、第二世銀の方の増資の審議が現在進んでおります。アメリカは、世銀の方の増資につきましては、私どもの承知しているところでは、次の国会に提案する予定というふうに聞いております。そういうようなこともございまして、現在、世銀の特別増資及び第二世銀の増資につきましての理事会の決議がまだ行われておらないことは先生御指摘のとおりでございますが、しかし、御指摘のようにことしの一月の蔵相代理会議、これにはアメリカの正式の代表も入っておりまして、そこで実質的な合意が行われたわけでございます。  しかし、その後、そう間も置かなくて、両方の増資につきまして理事会の決議の成立を私ども期待しておったわけでございますが、今日まで遅延しております理由としては、御指摘のようにアメリカの一部で、日本の金融・資本市場の自由化の問題とやや絡めて、世銀での日本の地位の上がることについてやや異論を唱える向きも出ておったわけでございますが、四月の中ごろにワシントンで主要国の蔵相による開発委員会等がございまして、その際に、重ねて一月の合意というものが確認されておりまして、現在、アメリカの方は、世銀の理事会決議の前にアメリカの国会の方に十分御了解を得るような事前の動きをして、それによって国会審議をスムーズにさせたいというようなことで、そうしてまた、その世界銀行の増資につきまして、増資の規模が一時三十億ドルというような案のときがございました、しかし最終的に、実質的に合意いたしましたのは八十四億ドルの規模でございまして、それに伴いましてそれぞれ各国の負担というものが割り振られているわけでございます。  そういうような関係もございまして、現在、アメリカはもう少し国会関係の根回しに時間を欲しいという状況でございますが、私どもとしては、理事会の決議が一月に実質的に合意された線で遠からず成立するということを期待しているわけでございます。
  37. 川崎寛治

    ○川崎委員 国際金融機関のあり方というのは、これは後ほどまた大蔵委員長にも提案をしますけれども、国際金融危機という大変な時期に、これは非常に大きなウエートを持っておりますね。それだけに、どうあるべきかということについては、増資をするに当たっては我が国としてもそのあり方というものを厳密にやはり調べなければいかぬ。しかし、残念ながらこの法案を審議するについては、実はそういう材料というのが何にもないんです。これは実は私、数年前大蔵委員会におりましたときに、アジ銀の議論をしたときに、資料を出せと言ったが、出さなかったのです。そのとき、大変きつくしかったことを思い起こします。当時の国際金融局長は今アジ銀の総裁をされておりますが、そういうことを思い起こすのです。ちょっともこれは変わっていない。  それで、やはり世銀なり第二世銀なりアジ銀なり、そういうものの実体なり、あるいは各国の対応の仕方なり、果たしておる役割なり、そういうものについては、客観的に論議できる資料をきちっと出して法案の審議を求めるべきだ、私は、それが政府の姿勢でなければならぬ、こう思うのです。大蔵大臣、いかがですか。
  38. 竹下登

    竹下国務大臣 そのアジ銀の問題でどのような議論がなされたかということは定かに承知いたしておりませんけれども、いわば国際金融機関等の問題につきまして、恐らく部外に出せない問題も中にはあろうかと思いますが、可能な限り、国会で議論をしていただくに際して資料をお出しするということには、極力努めなければならないことであるというふうな考え方を持っております。
  39. 川崎寛治

    ○川崎委員 そこで、アジ銀の問題についてお尋ねをいたしますが、実はアジ銀というのは不幸な出発をしているのですね。不幸な出発というと、これは考え方の相違になりますけれども、一九六六年、ちょうどベトナムの北爆が始まりまして、SEATOが崩壊をしておる、そういう中でASPACを六六年の六月にソウルで開きまして、そのASPACと並行してこのアジア開発銀行というのが発足をしていったわけなのです。でありますから、アジア開発銀行が設立総会をいたしましたのは六六年の十一月、東京で設立総会を開いておるわけです。当時のジョンソン政権は、東南アジアのブロック化ということを非常に考えておったわけです。そういうことで、SEATOも崩壊をしておりますし、新たなASPACをつくった。それの経済的なてこ入れとして、このアジア開発銀行というのが発足をしている。  そこで、我が党はずっとアジア開発銀行に対しては反対をしてきました。増資に対しては反対をしてきました。しかし、ちょうど私が論議しましたときは、ベトナム和平協定の後で、アジアの情勢が変わろうとしておった。そういう中でアジア開発銀行のあり方というものを追求すべきである、そういう立場に立ちまして、私たちはそのときからアジア開発銀行の増資に対して賛成をしたわけなのです。私は、そのときのことを思い起こすわけです。それだけに、このアジア開発銀行というものの、特にアジアにおける役割というのは大変大きい、こういうことを思いますし、そういうブロック化ということについては、してはいけない、こういうふうに思います。  ただ、最近、フィリピンの問題等をめぐりまして、やはりそういう国際金融機関のあり方というのが、少しいろいろ問題が出てくるのではないかという感じを持っております。そこで、そういうものをさせないためにも、アジア開発銀行というのが、本当にアジアの貧困を克服をしてアジアの紛争の原因をなくしていく、そういうことに役立つべきものでなければならぬ、こういうふうに思います。  そういうことを前提にしましてお尋ねをしたいと思うのでありますが、中国が八〇年に世銀とIMFに加盟をいたしました。現在ADBへの加盟申請をいたしておるわけでありますが、昨年の総会並びにことしのアジ銀の総会では、またこれは決着がついていないわけでありますが、中国加盟すると、これはでっかいですから、アジ銀の資金量でどうなるのかという心配もあります、正直言って。世銀にしてもそうだろうと思うのですが、しかし私は、先ほど言いましたようなブロック化とかそういうものを防ぐ意味においても、積極的に入れるべきだ、加盟を促進すべきだ、こういうふうに思っております。  昨年の総会、ことしの総会等を通じての中国加盟問題について、我が国はどういうふうに動いたのか、それから今後これはどういう形で進められるのか、あるいは進めようとしておるのか、そのことを伺いたいと思います。
  40. 酒井健三

    ○酒井政府委員 お答え申し上げます。  昨年、中国がADBに加盟をしたいという申し出を行いまして、昨年のADBの総会におきまして五カ国ほどがこれを支持する演説を行ったわけでございますが、我が国としましても、中国のアジア開銀への参加につきましては、原則としてこれを支持しているところでございます。  しかし、一番頭の痛い問題は、アジア開銀の設立に際しまして、台湾が正式のメンバーとして加盟しております。もちろん、いろいろの国際機関につきまして台湾が加盟しておりまして、それが中国にかわったというような機関がございますが、それらにつきましては、オリジナルメンバーというのが中国であった、そこが台湾と中華人民共和国とかわったという性格がございますが、アジア開発銀行のときには、台湾がオリジナルメンバーであったという特殊な問題もございます。私どもといたしましては、台湾のADBのメンバーとしての地位、これを尊重する必要もございますし、そしてまた中国加盟をしたいというようなことについても支持を与えなければいけない、これらの問題につきまして円満な解決が図られることを心から期待しているわけでございます。  この問題につきましては、中国側の本件についての対応のスタンスというものが非常に大きな要素になるわけでございますが、それらの点につきまして、もちろんADB自身としても非常に重大な関心を持っておりまして、いろいろなルートを通じまして中国側と接触、意見交換を行っておられるというふうに聞いておりまして、この問題につきまして円満な解決案が得られることを期待しているわけであります。ことしのアムステルダムの総会におきましても、中国加盟を演説で述べた国は十一カ国ほどございます。そういうようなことも踏んまえまして、ADBの方でそういうような中国、台湾問題を円満に解決するような解決策を模索し、その打開を図ることを期待しておりますが、現在のところ、いつごろになるとそれが具体的な姿になって、加盟がいつごろ実現するのか、はっきり見通すことは困難な状況でございます。
  41. 川崎寛治

    ○川崎委員 中曽根総理が今度インド、パキスタンを訪問されました。中曽根さんというのは大変融通無碍でありまして、レーガン大統領と会うときは西側同盟の一員ということを大変前面に出すし、今度インド、パキスタンに参りますと、アジアの一員重視を大変強調をしておるわけです。そして南北のかけ橋の役割であるとか、核軍縮の推進であるとか、非同盟第三世界グループとの対話とかということを大変積極的に主張してこられたわけです。私は、それは結構だと思います。しかし、それは実行しなければいけない、こう思うのです。だから、そういう立場が果たして貫かれているか、こういうことになりますと、私は大変疑問があると思う。このことはここでの議論の問題ではありませんから、中曽根内閣のそういう姿勢の基本的なものを私は指摘をしておいて、次にフィリピンの円借款の問題をお尋ねしたいと思います。  これは、今言いましたようなアジアの平和共存とかそういう立場からしますと、よりアメリカの極東戦略というものが前面に出ておりまして、そういう立場からの日本政府の対応であるということは大変遺憾であります。  そこで、フィリピンの問題をお尋ねしますについて、今フィリピンのフィナンシャルギャップというのはどれくらいあるのか、どういうふうに見ておるのか。これはIMFが調査しているわけですね。ですから、わからぬ、こういうふうに言われるかわかりませんが、しかしそれじゃ困るので、当然それがベースにあって今度の五百五十五億円の円借款も出された、こういうふうに思いますから、そうしますと、まず基本的にはフィリピンのその点をどういうふうに大蔵省として、日本政府として判断をしておるのか、その基本を伺いたいと思います。
  42. 酒井健三

    ○酒井政府委員 フィリピンの経済情勢、特に国際収支の状況につきましては、昨年八月のアキノ事件以来急速に悪化をいたしまして、十月には民間銀行に対してスタンドスティルを求めざるを得なくなったわけでございます。民間銀行のスタンドスティルは昨年の十月十七日以降続いているわけでございますが、フィナンシャルギャップにつきましては、仮に昨年の十月からことしいっぱいの期間をとるにいたしましても、国際収支の見通し寺とも密接に関連いたしておりまして、私ども外の方から明確にその見通しをつけるということはなかなか難しいわけでございます。先生御指摘のように、IMFも何回もミッションを派遣をいたしまして、IMF自身としてもいろいろアセスをしております。  フィリピン政府としましては、一九八四年の末までのフィナンシャルギャップは三十億ドルを超すというようなことを仮定しまして、我が国等に支援措置を要請してきているというふうに私どもも理解しております。そしてまた、フィリピンの国際収支の状況を見ましても、一九八二年で経常収支で三十四億ドル弱の赤字。しかし、そのころは資本収支の方がプラスでございまして、総合収支では約十二億ドル弱の赤字だったわけですが、八三年では経常収支で二十七億ドルくらいの赤字が発生しております。資本収支はもうほとんどゼロくらいになっているものですから、約二十五億ドルくらいの総合収支の赤字が出ておりますので、三十億ドルを超えるようなフィナンシャルギャップということは、十分あり得るというふうに私どもは思っております。
  43. 川崎寛治

    ○川崎委員 そうしますと、三十億ドルを超す、三十三億ドルとも言われておりますが、三十億ドルを超す、それを国際的にどういうふうに今対応しようとしているのですか。
  44. 酒井健三

    ○酒井政府委員 IMFの方は、通常ラテンアメリカの場合でございますと、いろいろフィナンシャルギャップをアセスして、それに対する対応策というのを、IMFとしての考え方を固めて示すわけでございますが、フィリピンにつきましては、まだIMFが調査をしておりまして、そしてまたフィリピン政府経済運営の進め方をフォローしているという状況で、現在まだIMF自身として、そういう三十億ドルを超えるフィナンシャルギャップについてどういうような対応の仕方が望ましいというような意見を明確に表明する段階には至っておりません。     〔委員長退席、中西(啓)委員長代理着席〕  ただ、一般論として申し上げさしていただきますると、フィナンシャルギャップにつきましては、民間とそれから公的な金融機関がいろいろニューマネーを供与する等の対応をする、そしてまた公的機関につきましては、国際機関とそれから二国間の協力というような対応の仕方があろうかと思います。しかし、国によりまして民間のウエートとそれから公的なウエートというものがいろいろ違いがあろうかと思います。したがいまして、現在フィリピンにつきまして民間と公的、公的の中でも国際機関と二国間が一体どの程度の分担をするのが望ましいのかというようなことを、IMFが私どもに示すような段階には至っておりません。
  45. 川崎寛治

    ○川崎委員 だから、これは後で円借款のはじき方自身に入りますけれども、今言われるように公的な機関と民と、これは中南米の金融危機の対処と今度のフィリピンというのは大変姿が変わってきている、私はこういうふうに思います。中南米の場合は民間が中心でしたね。だから、これは大蔵省からもらった資料によりましても、我が国のブラジル、メキシコ、アルゼンチン、ベネズエラに対する八三年末の邦銀貸付残高というのは、二百六十億という大変膨大な額になっておるわけです。東南アジアの場合は、韓国、インドネシア、フィリピン、今三カ国で七十億ドル。これの中身については今困る、こう言いますから、私もあえて要求しませんでした。それはもう政府の立場もあるでしょうから、そこの点は十分配慮もしたい、こういうふうに思います。  しかし官、民というものを見ますと、今言われたように中南米が民間が中心で来たのに対して、フィリピンの場合には官、民とこういうふうになり、官が非常に強く前面に出てきている。そうですね。今三十億ドル、こう言われた。そうすると、IMFが予定をしております借り入れ予約というのは大体六億三千万ドル、こういうふうに聞いておるのでありますが、そんなものですか。
  46. 酒井健三

    ○酒井政府委員 フィリピンがIMFにスタンドバイを要請している金額が、私ども六億一千五百万SDRというふうに聞いておりますので、一SDRが大体一・〇五ドルくらいでありますから、先生の御指摘のような金額に近いというふうに思っておりますが、これはフィリピン側の要請でございますので、IMF側がそれに対してどう対応するのか、まだ未定の段階でございます。
  47. 川崎寛治

    ○川崎委員 今のIMFから借り入れたいという要請をしておるのが、USダラーで六億三千万ドルくらいですね。そうしますと、あと三十数億ドルというのは、外国の銀行団、世銀、アジ銀そして日米両政府、こういうふうなことになってくると思いますが、今アジ銀は大体どれくらい要求されているのですか。これはあわせて世銀もですね。
  48. 酒井健三

    ○酒井政府委員 私ども承知しておりますのでは、世銀の方がフィリピンに対して、一九八三年十月から八四年十二月までの、先生御指摘のようなギャップを補てんするのに寄与するようなものとしては、いろいろの構造調整融資あるいは輸出振興基金その他ございますが、大体五億四千万ドル、全体のディスバースの額としては九億九千五百万ドルくらいと承知しております。それからアジ銀の方でございますが、やはり大体同じ期間につきまして、ギャップ補てんに寄与するものとしては約二億四千四百万ドル、ディスバースの額として四億ドル程度を供与するというふうに理解いたしております。
  49. 川崎寛治

    ○川崎委員 そうしますと、世銀が九億九千五百万、アジ銀が四億、これで十三、四億ですね。そうすると、あと三十三億ドルぐらいとした場合に、民間の方はそれをどれくらいのあれで見ているわけですか。
  50. 酒井健三

    ○酒井政府委員 まだ民間も、IMFの方の考え方が固まっておりませんので、とりあえずの支払い期限の来ているものについてスタンドスティルに応じておりますが、フィナンシャルギャップを埋めるために一体どの程度のことを考えるのかは、民間の方としても固まっていないわけでございますし、フィリピン政府としても、まだ民間の方につきまして、そういうようなニューマネーと申しますか、そういうものについてプロポーズするような段階まで至ってないというふうに私どもは理解いたしております。
  51. 川崎寛治

    ○川崎委員 そうすると、日米両国政府で十億ドルという報道もあるわけでありますが、日米折半の五億ドル、五億ドル、大体そういうふうな要求になりますか。
  52. 酒井健三

    ○酒井政府委員 お尋ねの件が民間の銀行に対するものか——公的な問題というふうに理解させていただきますと、私どももこの公的面につきまして、フィリピンとの外交的、経済関係を考えまして、応分の協力をする必要があると考えておりますが、まだ具体的に公的分野、しかも二国間で全体的にどのくらいの援助をするのかというIMFの案も固まっておりません。もちろん日米以外の諸国にもそれなりの協力は期待されるわけでございますが、そういうような状況でございますので、私どももまだ具体的に、アメリカが何ぼの金額、そしてまたそれに対応して日本がどのくらいの金額というような、フィナンシャルギャップを埋めるためという意味での金額というものについてはめどを立てておりません。
  53. 川崎寛治

    ○川崎委員 IMFが調査が終わってないし、IMFの態度が固まってないということをしきりに言われるんですよ。これは予算委員会の議事録を読みましても、竹下大蔵大臣ね、安倍外務大臣はなかなかしっかりしておったと思うのです、予算委員会におけるフィリピンの問題については。外務省の事務当局よりも外務大臣の方が私は常識的だったと思う。つまり外務大臣は、最初はIMFの調査が終わったらということで言った。そうしたら事務当局がこれをチェックした。それに縛られぬということで事務当局はしきりに薄めようとするんですが、最後まで外務大臣がIMF調査と並行してということで主張してこられたことは、私は立派だと思います。  特に、今酒井局長が言われるように、中南米とフィリピンは性格が違うんです。そして、中南米は民間が中心でやってきたわけです。ところが、今度はフィリピンの場合は官民、官といいますか、国際金融機関も官の方に入れますと、官民ということになってきた。しかも、民は今言われるように動いてないんです。非常に危機感を持っておりますから動いてない。そうすると、官が先に行っているんです。その官も、国際金融機関がまだ動いてないんですね。日本政府が先に動いたんです。ここが問題なんですよ。私は、しちゃいかぬと言うんじゃないんだけれども、そういう性格が非常に変わってきている中で、日本政府があえてそういう方向に走ったというところに問題があるわけでありまして、安倍外務大臣もせっかく言いながら、最後はIMF調査はどこへ行ったかわからぬという状況のまま、四月二十七日円借款を決めたわけでありますし、交換公文を既に交わしたわけでありますから、そういう意味では官が優先しておる。つまり四省庁の責任者として、あなたも当然この議論には、最終決断をされる重要な役割を果たされたと思うのです。でありますから、中南米と違ったフィリピンの、しかもアジアにおける先駆け的な問題である、そういう先駆け的な問題に対して決定をされたわけでありますから、その決定に当たってあなたが大蔵大臣としてこの問題に——今言われるように民も動かぬ、IMFも動かぬ、まだ結論を出してない。  では大蔵大臣に尋ねる前に、もう一つIMFの問題を詰めておきましょう。なぜIMFはおくれているんですか。
  54. 酒井健三

    ○酒井政府委員 私どももIMFといろいろ非公式に意見交換、情報交換等を行っているわけでございます。当初IMFがミッションを送って、確かに御指摘のようにもっと早い段階にIMFが態度を決めるだろうと私どもも期待しておったわけです。ところが、不幸なことに、昨年の秋に外貨準備がドレッシングしているというような事態が生じておりまして、そこでフィリピンの統計自身というものを——IMFも、主要国にIMFとしてのフィナンシャルギャップなりあるいは経済調整策やなんかを提案するには、そのベースをはっきりしなくちゃいかぬというような問題が起こってきた、そこに外貨準備の問題につきましても、外部に委託してその辺を調べてもらうというような作業をせざるを得なかったというような不幸なことがあったのも一因かと思います。  それから、IMFが昨年の秋以降フィリピンの経済運営についていろいろ調査もしますが、アドバイスも与えて、当面の経済運営についてもガイドしているわけでございます。ところが、フィリピンは自由主義経済でございますし、必ずしも計画していた数字どおりの運営が十分に行われないという面があるというような点もございまして、さらに指導を強化し、そしてIMFがアドバイスするような方向に持っていかせる。八四年につきましてもこういうような経済運営をというようなアドバイスをしておりまして、IMFとしては、それが忠実に実施されるという心証を得た段階で決断をしたいというような気持ちらしゅうございまして、私どもが思っていたのよりもIMFの方針決定がおくれているという状況でございます。  なお、IMFの方は確かにまだ態度を決めておりませんが、世界銀行、アジア開発銀行、米国等は、既に先ほど申し上げましたような金額等の支援を実施してきているわけでございます。
  55. 川崎寛治

    ○川崎委員 日銀の副総裁、どうも御苦労さまです。何か御予定があるということなので、十二時までには終わってくれぬかということで、そういうふうにせっかく御苦労いただいておるのですから、少し副総裁にお尋ねします。  日銀が直接融資という新聞報道もありましたね。昨年の暮れ以来、何遍か出ているのです。そうしますと、これまで日銀の外国に対する融資というのはどういう例があったのですか。
  56. 澄田智

    ○澄田参考人 従来の例を申し上げますと、昭和三十九年、一九六四年でございますが、ポンド危機がございましたときに、英蘭銀行に対しまして預金をするというような形の措置をとっており、ポンド危機がその後若干期間続きましたときに、国際決済銀行を通じての支援というような形に変わりまして続いておりました。  あとは最近のいわゆる債務累積国問題に関してでございますが、これはハンガリー、メキシコ、ブラジル、アルゼンチン、それからユーゴスラビアといったような国に、いずれもBISが仲に立ったような形の措置がとられた例がございます。
  57. 川崎寛治

    ○川崎委員 今お答えのように、全部BISが間に入っていますね。BISなしては、これまでそうした融資はなかったわけですね。
  58. 澄田智

    ○澄田参考人 先ほど申し上げました昭和三十九年のポンド危機の場合の最初の措置は、BISを通じたものではございません。
  59. 川崎寛治

    ○川崎委員 そうしますと、フィリピンの場合、大変危機が深い、こういうことで直接融資ということがあり得るのですか。
  60. 澄田智

    ○澄田参考人 現在までのところ、フィリピン側から日本銀行に対しまして、そのような要請はまだ来ておりません。したがいまして、現在の段階においては、新聞報道のお話がございましたが、まだ全くそういう話はないわけでございます。現在、私どもとしても、先ほど来お話にありましたIMFとフィリピン側との間の借り入れ交渉に伴う検討状況が、国際信用秩序というような意味から早くまとまることを切に期待をしている次第でございます。
  61. 川崎寛治

    ○川崎委員 それから今度は、BISもまだこの問題については動いていないというふうに理解していいのですね。
  62. 澄田智

    ○澄田参考人 当然のことながら、月例の総裁会議等の折に、この問題の成り行きにつきまして、いろいろ国際信用秩序という意味各国状況について注意をしておるわけでありますが、そういう折の一環としてのこの問題に対する関心ということはあったと思いますけれど、それ以上のものはまだ何もございません。
  63. 川崎寛治

    ○川崎委員 そうしますと、将来あるいは起こり得るかなという問題は、酒井局長の御答弁によると、IMFがなかなかスムーズにいってなくておくれているようでございますが、IMFが融資を決定したという場合に、しかしこれを理事会で決めて実際にというふうになると相当また時間がかかってくる。そういう場合に、日銀につなぎ融資をということはあり得ないことですね。
  64. 澄田智

    ○澄田参考人 先ほども申しましたように、具体的な話はまだ全くございませんものですから、私どもの方としては、何ともその点についてはお答えいたしかねる状況でございます。
  65. 川崎寛治

    ○川崎委員 副総裁、どうもありがとうございました。どうぞ御退席ください。
  66. 中西啓介

    ○中西(啓)委員長代理 御苦労さまでした。
  67. 川崎寛治

    ○川崎委員 そこで、経済協力基金の総裁にもおいでいただいておるのでありますが、今度の円借款は基金がお出しになる、こういうことなのですね。基金というのは厄介なところで、年じゅう問題が出て、国会でも、特に韓国はいろいろありましたし、東南アジアもあるわけです。何で経済企画庁に基金があるのか、そのいきさつもよくわかりません。大変御苦労だと思いますが、今フィリピンの円借款については大変いろいろなことが言われているのです。永田町かいわいでどうのこうのとか、つい最近の権威ある——権威あるのかどうか、雑誌でもそれぞれこういう問題が出てきているわけです。そうしますと、基金は名誉にかけてそういうことはないということでやらなければいかぬのでありますが、援助の対象を決めたり額を決めたりというのは基金がするのですか。
  68. 細見卓

    ○細見参考人 借款の額を幾らにするかというのは、非常に重要ないわば国交の問題、外交の問題ですから、関係の省庁がお集まりになって、いわば内閣としてお決めになるというわけでございます。
  69. 川崎寛治

    ○川崎委員 そうすると、具体的なプロジェクトについては基金が行って、フィリピンの政府側の機関と対象を検討されるのですか。
  70. 細見卓

    ○細見参考人 そのとおりでございまして、政府が決定をなさるに当たっては、もちろん、どれだけの事業をやるか、それは金額が幾らになるかということに絡むわけですから、この程度のことをやろうとすればこれぐらいの金が要ります、あるいはこれを切ればどういう欠陥がプロジェクトとしては出ましょうかというようなことについて十分意見を申し上げております。
  71. 川崎寛治

    ○川崎委員 そうしますと、フィリピン側の機関はNEDA、国家経済開発庁のIO、インプリメンティングオフィス、こういうふうに言われておりますが、そうですか。そしてインプリメンティングオフィスにはわずか四人しかいない、こういうふうに報道があるのですが、実体はどうでしょう。
  72. 細見卓

    ○細見参考人 人数は確かに少ないわけですけれども、非常に優秀なスタッフで、少数精鋭で、必要なデータとか必要な資料とか必要な調査とかいうのはそれぞれの役所に命じてこれを行う、いわば一種の査定であり、国全体の計画の整合性を持たせる。ですから、必ずしも人数が多いことは必要ないというような役所の性格でございます。
  73. 川崎寛治

    ○川崎委員 それは大変失礼な答弁ですよ。先ほど酒井局長によると、IMFとの間で、ドレッシングをやっておって問題になって、今決まらぬわけですよ。決まらぬものが、四人ぐらいの少数精鋭で、ごまかしがないと言えますか。ドレッシングがあって問題になった。何十億ドルと違うのですからね。去年の九月は百八十億、ことしの四月になったら二百五十六億ドル、大変な違いがあるわけだ。そういうごまかしをやっているから、IMFから問題になっているのでしょう。  IOが少数精鋭だから正確だという今の御答弁は細見さんらしくない。何を根拠にそういう断言をされるのですか。
  74. 細見卓

    ○細見参考人 先ほども申し上げましたように、総合的に調整をする機関でございますから、今起こっておる問題は、聞くところによれば、中央銀行の統計の問題とかというふうに承っておりまして、NEDAの問題ではないように聞いております。
  75. 川崎寛治

    ○川崎委員 NEDAの問題ではないということはそのとおりですよ。そのとおりですが、ただしかし、非常に少数精鋭で正確です、正確なデータを出してきてもらってやっておるのですということについては、いささか納得できぬですね、これがいろいろと言われているのですから。  例えば、具体的に本の名前を言ったり、新聞の名前を言ったりするというのは本当は穏当じゃないかもわからぬのです。しかし、特に五月十四日という総選挙を前にしてやりましたから、それだけにアキノ氏の問題等からも大変な危機、つまり民主主義の危機そのものが深まっておるわけでございまして、中曽根総理は、国家や国民のためであって一政権のためでない、こういうことをおっしゃっておりますけれども、IMFの厳しい調査が——厳しいというか、なぜ厳しいかということについては酒井局長も御指摘になったわけでありますが、もっと順調に、もっと早かったはずのものがおくれているわけなんです。そういう中で、今総裁に対して大変きついことを言って恐縮でございますけれども、あなた方がプロジェクトを詰められることについても、外貨の問題は中央銀行だ、だからNEDAについては違うんだ、こう言われても、とかく言われているわけなんです。  例えば「週刊東洋経済」、これはどっちかといえば、考え方は私と——私たちと言わぬで「私」、こう言っておきますが、全体的には違う面が大きいと思います。しかし、その論説室長自体が、「マルコス独裁政権を援助する矛盾」、まさに矛盾だ、こういうことで、危機は救わなければいかぬ、しかし独裁政権に対してのこの援助ということについて、ケネディ大統領が「進歩のための同盟」ということで大変理想的なことをやろうとした、しかしこれは失敗したわけですね。「あれから二〇年以上も経った今日、矛盾を抱えた途上国援助の本質は全く当時と変わっていないことに気が付く。こうした現実を踏まえつつ、援助国の立場から、あるいは債権者の立場から、政治の民主化と経済の効率化を被援助国に求めていくほかないようにみえる。」こういうふうに「マルコス独裁政権を援助する矛盾」というものを言っているわけです。その中で、「イメルダ夫人が権勢をほしいままにし、砂糖、ヤシ油、穀物、漁業、木材などの分野で、取り巻き的な実業家グループに独占的な権益を与え、それが“腐敗”の温床として、批判のマトとなっている。」というふうに指摘しているのです。だから今度の五百五十五億の円借款がそうしたものにならないという保証は残念ながらないわけです。今度の五月十四日の総選挙の結果も変わらぬと思いますけれども、それだけに、今後のあり方というものについても、私は大変深刻に考えざるを得ない。  そうしますと、正確を期すために、従来の方法そのままで経済協力基金がプロジェクトをお決めになって、政府のものとして政府が決定をするという今日のあり方は、私は大変疑問を持っております。本委員会でそのこと自体を細かに追及をしていくという気持ちはありませんけれども、ただしかし、今総裁が言われるほど素直なものではない、こういうふうに思うのです。その点、これまでの経済協力基金としていろいろな批判を受けてきているわけです。そういう中から、特にそれぞれの政権同士の間の最も権力的な金の流れというものになりやすい性格を持っておるわけです。だから、それのチェックの仕方というものについて、どういうふうに基金としてしておるのか、具体的にお示しをいただきたいと思います。
  76. 細見卓

    ○細見参考人 非常に激動する世界経済の中で、しかも発展途上国というのは経済的にも問題がありますし、政治的にも問題があるわけですから、御指摘のような懸念というものが絶えず起こっておるというわけで、その意味では、私たちもある意味では任に余る仕事だという一面はございます。  しかし同時に、日本がこれだけの大国になって、それなり国際的な責任というのはとっていかなければならない、これも事実でございます。そういう意味で、私どもがその中にあっていかにして間違いのなからんことを、少なからんことを願ってやるかというのが、いわば我々に与えられた、非常に困難でございますけれども、職責かと考えまして、一つは、今まで実施したプロジェクトなり援助なりというものが、相手の国民あるいは人々に本当に評価されておるだろうかどうかということにつきまして、私どもも調査いたしますし、政府の方々にもいろいろお願いいたしまして、あるいは場合によっては民間の方にもお願いして、率直な批判をしていただきまして、それを今後の施策といいますか、調査に当たりまして大いに活用するというようなことに絶えず心がけておるわけでございます。  それからもう一つは、そういう非常に難しいことでございますけれども、我々の分野におきまする調査あるいは事績の評価というようなものを、客観的に、また技術的にもできるだけ立派なものにしようということで、調査開発部という部をつくりまして、ここに約四十人ばかり、もともと二十人ぐらいでスタートしたわけですが、四十人ばかりの人間を集めまして、これは関係の各省から優秀な技術者に出向を願って、出向者でございますから、何といいますか我田引水ということにならないで、客観的に見ていただくというような方で、二年あるいは三年とかおって、その間に客観的に評価していただく。もちろん途上国のことでございますから、と言っては非常に失礼かもわかりませんが、思うようになかなか物が運ばないというのが世の常でございますから、いろいろなそごがある事例もないとは申しませんが、おおむね自分で反省するための必要な機構というものだけは、いかなるときも忘れちゃいけないということで、自粛自戒しておるというようなのが現状でございます。
  77. 川崎寛治

    ○川崎委員 大蔵大臣、先ほど話がわきの方に行ってしまって済みませんでしたが、これは大変問題があるわけですね。それで、決めましたときに、いろいろと議論がありますということを外務大臣自身も言っておるのですよ。そういう問題があるというか議論があるというか、そういうことを十分踏まえながら決定しました、こういうことで言っておるわけです。大蔵大臣として、この円借款をお決めになった、しかもIMFの調査が——もう当然IMFがコンディショナリティーをきちっとして、そういう中で日本政府が対応していくということをやるべきだ、そう私は思うのです。まず、そこの原則はどうですか、大蔵大臣
  78. 竹下登

    竹下国務大臣 まず一番先にこの問題が起こってまいりまして、私どもも事実認識といたしまして、ビラタ総理兼大蔵大臣、この方は国際金融の社会において大変信任の厚い方であります。その方は、私が五十四年の大蔵大臣でありました当時からも、もとより大蔵大臣であったわけでありますが、アメリカからの途中あるいは単独で日本へお見えになる、そういう事態の中で、やはりこの問題は、ビラタさんそのものも国際経済通でございますから、IMFの調査団というようなものに対して非常な期待をかけられておりました。  それから、たび重なる調査団が訪比されまして、私どももこの中身は別として、いろいろな角度からそれの推移を見守っておりましたし、それが確定した後に対応するというのが、最初私どもが考えた、今おっしゃったとおりの原則であったわけであります。  しかし一方、世銀、アジ銀、それから米国、こういうところはそういう方向を一応決定される。そしてIMF等の推移を見てみましても、少なくともこれが進行形の形において進んでおるという事実認識はできるではないか。そうなりますと、最終的な判断としては、当時外務省へはもとよりでございますが、私どもの方にも私的にも、あるいは外務省の方は私的にも公的にもでございましょう、この一政権の問題、アキノ事件の問題、あるいは選挙が済むまではこれを凍結したらいいじゃないかという、フィリピン側の野党筋の方等がお見えになっての伝言が私どもの耳にも入る。  そういう中でいろいろ慎重に対処いたしまして、最終的には、今も中曽根総理の言葉として御指摘なさっておりましたが、私ども従来からのフィリピンとの関係等から考えてみまして、いわゆるフィリピン国民に対してこの危機を日本政府が放置しておくということに対する責任というものも考えた場合、やはりもう既にこれ以上放置しておく段階ではないという、IMFの進行形の形にある問題と、そういうフィリピン国と今日までの我が国との関係等からして、踏み切ることに最終的には合意を見た。その間、安倍外務大臣の答弁にもたしかあったと思いますが、熟慮した期間、かなりの時間があったということは、私は事実であるというふうに考えております。
  79. 川崎寛治

    ○川崎委員 細見総裁、どうも御苦労さまでした。  熟慮の期間があったというなら、五月十四日の選挙と四月二十七日、こう見ますと半月ですよ。熟慮の期間があって、最後の決断の期間を、何で半月が待てないのですか。国民のためだ、こう言うなら、国民の方に批判があるのですから、その国民の方の批判にやはりこたえなきゃいかぬわけですよ。なぜ五月十四日まで待てなかったかというその理由をお聞かせいただきたいのです。
  80. 瀬崎克己

    ○瀬崎説明員 お答えさせていただきます。  フィリピンの円借款の問題につきましては、毎年日本政府からフィリピンの民生安定、経済開発支援のために円借款を供与しておるわけでございます。  昨年、中曽根総理がフィリピンを訪れられた際にこの話がありまして、五十八年度の円借款につきまして金額を提示したわけでございますが、その後フィリピンの国内の経済状況、政治状況がかなり変わりまして、フィリピン側から、援助の内容を、円借款の中で商品援助を重点的に供与する方向で変えてほしい、こういう話がございまして、せっかく経済協力基金あるいは国際協力事業団の専門家の方々がいろいろなプロジェクトの調査を済ましていたわけでございますけれども、そういったフィリピン側の客観的な経済状況の変化に対応いたしまして、日本側の援助の内容を切りかえたわけでございますが、そういうような問題がございまして、五十八年度の円借款の供与というのはおくれにおくれていたということがまず第一点でございます。  それから第二点といたしましては、やはり国際収支が非常に悪化いたしておりまして、軒並みに輸入原材料を使って操業しております工業、工場で労働者の一時解雇が行われる、こういうようなことがございまして、一部にはフィリピンの中で日本の円借款を延ばしてほしいという声があったことはこれまた事実でございますが、他方、多数あり方というものについても、私は大変深刻に考えざるを得ない。  そうしますと、正確を期すために、従来の方法そのままで経済協力基金がプロジェクトをお決めになって、政府のものとして政府が決定をするという今日のあり方は、私は大変疑問を持っております。本委員会でそのこと自体を細かに追及をしていくという気持ちはありませんけれども、ただしかし、今総裁が言われるほど素直なものではない、こういうふうに思うのです。その点、これまでの経済協力基金としていろいろな批判を受けてきているわけです。そういう中から、特にそれぞれの政権同士の間の最も権力的な金の流れというものになりやすい性格を持っておるわけです。だから、それのチェックの仕方というものについて、どういうふうに基金としてしておるのか、具体的にお示しをいただきたいと思います。
  81. 細見卓

    ○細見参考人 非常に激動する世界経済の中で、しかも発展途上国というのは経済的にも問題がありますし、政治的にも問題があるわけですから、御指摘のような懸念というものが絶えず起こっておるというわけで、その意味では、私たちもある意味では任に余る仕事だという一面はございます。  しかし同時に、日本がこれだけの大国になって、それなり国際的な責任というのはとっていかなければならない、これも事実でございます。そういう意味で、私どもがその中にあっていかにして間違いのなからんことを、少なからんことを願ってやるかというのが、いわば我々に与えられた、非常に困難でございますけれども、職責かと考えまして、一つは、今まで実施したプロジェクトなり援助なりというものが、相手の国民あるいは人々に本当に評価されておるだろうかどうかということにつきまして、私どもも調査いたしますし、政府の方々にもいろいろお願いいたしまして、あるいは場合によっては民間の方にもお願いして、率直な批判をしていただきまして、それを今後の施策といいますか、調査に当たりまして大いに活用するというようなことに絶えず心がけておるわけでございます。  それからもう一つは、そういう非常に難しいことでございますけれども、我々の分野におきまする調査あるいは事績の評価というようなものを、客観的に、また技術的にもできるだけ立派なものにしようということで、調査開発部という部をつくりまして、ここに約四十人ばかり、もともと二十人ぐらいでスタートしたわけですが、四十人ばかりの人間を集めまして、これは関係の各省から優秀な技術者に出向を願って、出向者でございますから、何といいますか我田引水ということにならないで、客観的に見ていただくというような方で、二年あるいは三年とかおって、その間に客観的に評価していただく。もちろん途上国のことでございますから、と言っては非常に失礼かもわかりませんが、思うようになかなか物が運ばないというのが世の常でございますから、いろいろなそごがある事例もないとは申しませんが、おおむね自分で反省するための必要な機構というものだけは、いかなるときも忘れちゃいけないということで、自粛自戒しておるというようなのが現状でございます。
  82. 川崎寛治

    ○川崎委員 大蔵大臣、先ほど話がわきの方に行ってしまって済みませんでしたが、これは大変問題があるわけですね。それで、決めましたときに、いろいろと議論がありますということを外務大臣自身も言っておるのですよ。そういう問題があるというか議論があるというか、そういうことを十分踏まえながら決定しました、こういうことで言っておるわけです。大蔵大臣として、この円借款をお決めになった、しかもIMFの調査が——もう当然IMFがコンディショナリティーをきちっとして、そういう中で日本政府が対応していくということをやるべきだ、そう私は思うのです。まず、そこの原則はどうですか、大蔵大臣
  83. 竹下登

    竹下国務大臣 まず一番先にこの問題が起こってまいりまして、私どもも事実認識といたしまして、ビラタ総理兼大蔵大臣、この方は国際金融の社会において大変信任の厚い方であります。その方は、私が五十四年の大蔵大臣でありました当時からも、もとより大蔵大臣であったわけでありますが、アメリカからの途中あるいは単独で日本へお見えになる、そういう事態の中で、やはりこの問題は、ビラタさんそのものも国際経済通でございますから、IMFの調査団というようなものに対して非常な期待をかけられておりました。  それから、たび重なる調査団が訪比されまして、私どももこの中身は別として、いろいろな角度からそれの推移を見守っておりましたし、それが確定した後に対応するというのが、最初私どもが考えた、今おっしゃったとおりの原則であったわけであります。  しかし一方、世銀、アジ銀、それから米国、こういうところはそういう方向を一応決定される。そしてIMF等の推移を見てみましても、少なくともこれが進行形の形において進んでおるという事実認識はできるではないか。そうなりますと、最終的な判断としては、当時外務省へはもとよりでございますが、私どもの方にも私的にも、あるいは外務省の方は私的にも公的にもでございましょう、この一政権の問題、アキノ事件の問題、あるいは選挙が済むまではこれを凍結したらいいじゃないかという、フィリピン側の野党筋の方等がお見えになっての伝言が私どもの耳にも入る。  そういう中でいろいろ慎重に対処いたしまして、最終的には、今も中曽根総理の言葉として御指摘なさっておりましたが、私ども従来からのフィリピンとの関係等から考えてみまして、いわゆるフィリピン国民に対してこの危機を日本政府が放置しておくということに対する責任というものも考えた場合、やはりもう既にこれ以上放置しておく段階ではないという、IMFの進行形の形にある問題と、そういうフィリピン国と今日までの我が国との関係等からして、踏み切ることに最終的には合意を見た。その間、安倍外務大臣の答弁にもたしかあったと思いますが、熟慮した期間、かなりの時間があったということは、私は事実であるというふうに考えております。
  84. 川崎寛治

    ○川崎委員 細見総裁、どうも御苦労さまでした。  熟慮の期間があったというなら、五月十四日の選挙と四月二十七日、こう見ますと半月ですよ。熟慮の期間があって、最後の決断の期間を、何で半月が待てないのですか。国民のためだ、こう言うなら、国民の方に批判があるのですから、その国民の方の批判にやはりこたえなきゃいかぬわけですよ。なぜ五月十四日まで待てなかったかというその理由をお聞かせいただきたいのです。
  85. 瀬崎克己

    ○瀬崎説明員 お答えさせていただきます。  フィリピンの円借款の問題につきましては、毎年日本政府からフィリピンの民生安定、経済開発支援のために円借款を供与しておるわけでございます。  昨年、中曽根総理がフィリピンを訪れられた際にこの話がありまして、五十八年度の円借款につきまして金額を提示したわけでございますが、その後フィリピンの国内の経済状況、政治状況がかなり変わりまして、フィリピン側から、援助の内容を、円借款の中で商品援助を重点的に供与する方向で変えてほしい、こういう話がございまして、せっかく経済協力基金あるいは国際協力事業団の専門家の方々がいろいろなプロジェクトの調査を済ましていたわけでございますけれども、そういったフィリピン側の客観的な経済状況の変化に対応いたしまして、日本側の援助の内容を切りかえたわけでございますが、そういうような問題がございまして、五十八年度の円借款の供与というのはおくれにおくれていたということがまず第一点でございます。  それから第二点といたしましては、やはり国際収支が非常に悪化いたしておりまして、軒並みに輸入原材料を使って操業しております工業、工場で労働者の一時解雇が行われる、こういうようなことがございまして、一部にはフィリピンの中で日本の円借款を延ばしてほしいという声があったことはこれまた事実でございますが、他方、多数ンが、さらにインドネシアとか韓国とかいろいろな問題にまた今の状況からしますとなるわけですけれども、国際的にロンドン・サミットもありますし、そういう方向に向けてこういうあり方、私は南北問題は積極的に進めなければいかぬという立場に立っておりますけれども、この企画庁の調査というのは、私は大変衝撃を受けました。そしてインフレであるだけに、援助された額がまた海外に出ておる、随分アルゼンチンやメキシコ、ベネズエラ、インドネシア、マレーシア、こういうところのアメリカの債券や証券投資に流れておる、そういう実態も分析されておるわけであります。  そういうことを見ますと、これは南北問題としての南側の開発発展のために、中進国から追っかけていって経済大国になった日本としては、それこそ中曽根総理じゃありませんが、南北間のかけ橋という重要な役割を持っていると思うのです。持っていると思いますが、こういう援助海外逃避というものの実態が明らかになったからには、これはやっぱりしかるべき対処の仕方というのがなければならぬ、こう思います。その点について、企画庁として分析をされたそういうものから、今後どうすべきだ、そしてそれは四省庁でいろいろの議論をしておるのかどうか、伺いたいと思います。
  86. 海野恒男

    ○海野説明員 累積債務の救済措置につきましては、短期的な、非常に一時的な流動性危機という問題に対処する緊急避難的な措置と、それから今先生御指摘のような長期、構造的な、相手側のいわば債務を返済する能力をふやしてやるという措置と二つあるかと思いますけれども、先生御指摘の調査報告書は、後者の長期、構造的な、いわば返済能力の増強について経済協力はいかにあるべきかという問題を主として取り扱っておるわけでございまして、重複いたしますけれども、先生の御指摘になりました報告書は、そういう観点から、債務累積の実態、それからその原因は何か、その対策はどうしたらいいかというふうなことをまとめておるわけです。  ごく簡単に結論を申し上げますと、債務累積の実態を見ると、開発途上国の中で、やや上の方の中所得国が主として民間銀行から金を借りて、そしてその返済の利子の負担が非常に大きくなっているということから問題が生じておるという特徴を摘出した後で、その解消のためには、債務国も援助国の方もどうあるべきかということを議論しておるわけですけれども、債務国の方といたしましては、できるだけその産業構造を輸出志向型あるいは生産志向型のものに調整していくべきである。そのために、いろいろな補助金のあり方、それから価格支持政策のあり方等も是正すべきであるということを言っておりますし、援助国の方のあり方としては、そういう構造調整というものがうまくいくように、主として国際的な機関、特に世銀等の構造調整のための融資といったものを支援する形で、それを協調してやるべきである、こういうふうな結論になっておるわけでございます。  このフィリピンのものに限って申し上げますと、先ほどるる御紹介がありましたように、非常に短期的な緊急措置でございましたので、本報告書とは直接関係はないかもしれませんけれども、ただ、今回の商品借款の中身が、やはりフィリピンで現在直面しております産業の停滞と申しますか、工場が操短をしたりあるいは閉鎖されている、輸出産業のための原材料を買う金がない、こういった状況を救済するためにやるものであるという観点からいたしますと、やはり非常に短期的なものでありますけれども、将来のフィリピン側の支払い能力をふやす一つの手段でもあるということを考えますと、私どもは、今回の措置がこの報告書の言っておりますことと矛盾しているものではないという判断をいたしております。  いずれにいたしましても、今後の経済援助のあり方といたしましては、この報告書が指摘しておりますように、いわば各国の支払い能力をふやすような構造調整融資に主力を置いて、そして世銀等のいわば国際機関と協調いたしましてその支援をするという形で行うべきものであるということを考えております。
  87. 川崎寛治

    ○川崎委員 私、時間を錯覚しておったので、ちょっと時間が足りなくなりましたのですが、委員長、少しお願いします。  今の点はロンドン・サミットに向けても大変大きな課題になると私は思うのです。ですから、大蔵大臣行かれるのだろうと思うのですが、大蔵省としては、金を出す方の責任ですから、こういう問題についてどう検討をし、国際的にどう議論し合おうとしておるのか、そういう方向、まだロンドン・サミットの骨組みがはっきりせぬ、こう言って逃げるかもわかりませんけれども、少し、もしできたら大蔵大臣からお願いしたいと思います。
  88. 竹下登

    竹下国務大臣 この債務累積国問題というのは、ウィリアムズバーグ・サミットでも原則を確認したということであります。国際機関、民間機関、各国なかんずくサミット参加国等が協調しながらこれに対応をしていこう、そして幸い今日までは一応焦げつきが完全に出たというような状態はなしに済んでおるわけであります。したがって、ウィリアムズバーグ・サミットの精神は今日継続して生きておると私は思います。  その後よくなった国もございますし、去年から比していえば、今御議論になっておるフィリピンなんというのは、ある意味においては予測はされておったとしても、新たな事態に立ち至った国の一つでございます。したがって、これは個人代表がどういうふうなお話をなすっておるか、今度のサミットの議題でこれが出ますとか出ませんとかということは、今日まだ申し上げる段階にはなかろうかと思いますけれども、私どもは、やはり昨年からの協調の継続性の中で、お互いが非常に関心を持って議論される課題ではないか、こういう今のところの認識でございます。
  89. 川崎寛治

    ○川崎委員 酒井局長にお尋ねしますが、中南米の場合にどっと金が流れ込んだんですね。そして急膨張しておる中南米の資金需要を賄ったのは、オイルダラーを原資に急成長したユーロダラー市場だ、こう思い良すね。そうしますと、結局、政府政府系の企業、国立銀行の借り入れは、倒産の危険がある国内の民間企業に対する貸し付けよりもいいという考え方がこれまであったと思うのです。だから安全な投資だ、こういうことで、中南米に対してはどっと行ったと思うのです。  それで、ユーロダラーが流れ込んだわけでありますが、このユーロダラー資金というのは、要するに金利変動の危険性はあるけれども、今IMFの議論国際金融機関の議論などにあるように、やかましいことは言わぬわけであります。だからどっとユーロダラーが行った。そうしますと、この議論をしておりますと時間がありませんからこれはしませんが、ユーロ円市場というものができましたときに、このユーロダラーが中南米でぶつかったような問題が出ないのかどうなのか。どうですか。
  90. 酒井健三

    ○酒井政府委員 開発途上国が今日多額の累積債務を負うに至った原因は幾つかあろうかと思います。開発途上国がオイルショック後も経済運営をやや拡大ぎみにしたというようなこともございましょうし、今先生が御指摘のように、非常にアベーラビリティーの豊かな、調達の容易なユーロダラー市場があったということも一因かと思います。ただ、貸し手はやはり主要国、アメリカとか日本とか、そういう銀行が貸すわけでございます、資金調達はユーロダラーで行うわけですが。そうすると、やはり貸し手としてのリスクはある。  それはどういうリスクがあるかというと、一つは、ユーロダラーでは主として短期で借りて長期で貸すという、ボローイングショート、レンディングロングと申しますか、その短期の資金の借りかえというアベーラビリティーリスク。それからもう一つは、貸す方で、先生御指摘のように、借り手がサプリンであると、そういうようなクレジットリスクというのは、民間の企業に対するものに比べますと比較的低いというふうに認識しがちでございました。そのアベーラビリティーリスク、かつてドイツのヘルシュタット銀行が倒産したときに、ユーロダラーで信用収縮が起こった、そういうような経験もございます。したがいまして、極度に短期の資金調達に依存することを是正するような、長期の資金調達をベースにするような、ウエートを高めるような指導もして、それから今度貸す方のリスクにつきましても、やはり仮に貸し手先が倒れなくても、その国全体の国際収支の状況から外貨の支払いが困難になるというようなことで、カントリーリスクという問題が強く意識されるようになってきているわけでございます。  ユーロ円市場というものの規模が大きくなりましても、これはユーロダラーと同じような性格でございます。やはり貸し手は主要国の銀行になりましょうから、資金調達のリスク、それから貸し出しのリスク、それは大体同じようなものではなかろうかと認識いたしております。
  91. 川崎寛治

    ○川崎委員 これはもう少し議論したいのですけれども、時間がありませんし、それから国際的な情報のとり方あるいは銀行のあり方、そういうものも、中南米なり、フィリピンという官が先に立つアジアの今後の問題等についても議論したかったのですが、それはもう改めての機会にしたいと思います。  そこで、私は最後に大蔵委員長にお願いがあるのです。これはぜひひとつ理事会で諮ってほしいのですが、冒頭申しましたように、国際金融機関に対する増資というのをずっとやってくるのです。ところが、実態はなかなかわからぬ。それから、国際金融危機というものについての国際金融機関のあり方というのが非常に大きくなってきているのです。     〔中西(啓)委員長代理退席、委員長着席〕 そうしますと、つまり米ソの対立だという戦後のあり方だけの枠組みじゃいかぬわけです。だから私はブロック化はいかぬ、こう言いましたね。ですから、そういう中で国際金融機関というものの議論をするについては、実は生のものを我々は持たぬわけです。これは今後の国際金融危機という問題を当委員会議論するについては、実は非常に困る問題だと思うのです。  そこで大蔵委員長、そういう国際金融機関の増資について我々本委員会ではずっとやってきているわけだけれども、委員会として行って、実態の調査というか、これは調査というと言葉はあれでしょうが、要するに実態を知る、それからアジ銀なり世銀なり第二世銀なりのそういう運営方針を的確に当委員会として把握する必要がある、こういうふうに私は痛感をします。  特に、例えばフィリピンの場合、企業が危なくなった、レイオフだ、だから緊急商品借款だ、こういうやり方はいかぬわけですよ。フィリピンに行っておる日本企業を助けるのか、フィリピンの人民を助けるのか、議論からするとその辺もまだはっきりしないのだ。ですから、そういう面で国際金融機関のあり方というものをきちっと知りたいと思うのです。ですから委員長、これはひとつ理事会で御相談いただいて、そういう調査をする計画をぜひ具体的に進めてほしい、私はこういうふうにお願いをして、終わります。
  92. 瓦力

    ○瓦委員長 ただいまの川崎君からの御提案につきまして、理事会で後刻協議をさせていただきたいと思っております。
  93. 川崎寛治

    ○川崎委員 終わります。
  94. 瓦力

    ○瓦委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時四十二分休憩      ————◇—————     午後二時三十五分開議
  95. 瓦力

    ○瓦委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。渡部一郎君。
  96. 渡部一郎

    渡部(一)委員 午前中に引き続きまして少々お尋ねしたいことがございますので、よろしくお願いいたします。  対外経済関係は、御承知のとおり、アメリカ政府から日本に対する金融の自由化の問題を初めとして、非常に多くの要求が突きつけられておりまして、何の問題を議論する場合にも、こうした流れを理解した上で議論をしなければならないと考えるわけでございます。金融の自由化の問題は、アメリカからいえば金融の自由化かもしれませんけれども、日本からいうならば、国際的な金融秩序の再編という立場で論議を進めなければならない問題であって、あるときはその要望に対して十分にこたえることが必要であるし、あるときはこれを拒絶した上で、日本の論議の中に先方を引きずり込むだけの気迫というものが必要であろうかと思うわけであります。そうした問題についてどういう立場をおとりになっておられるのか、一番難しいところでございますが。基本的にまず伺わしていただきたいと思います。
  97. 竹下登

    竹下国務大臣 原則的に、今渡部さんおっしゃったとおりの姿勢が必要であると思っております。したがって、これは英語に訳すと一体どうなるのかなと私は時々思うのでございますが、まずやはり主体的にということを申しております。そして国際的な流れの中で積極的に、しかしながら長い間の歴史と伝統の中に定着しました日本の金融市場等の慣行がございますので、それらに対しては漸進的。一体、主体的かつ積極的かつ漸進的とはいかなることかといってこの間質問を受けまして、一つ一つかみ砕いた場合には今渡部さんのおっしゃっているような筋になるわけでございますが、その三つの言葉を羅列した時には一体どの程度理解していただけるだろうかという疑問を感じながら、毎日これに対応しておるところであります。
  98. 渡部一郎

    渡部(一)委員 ここで取り上げられている問題の中で、まず国際通貨基金のことを少々申し上げておかなければいかぬと思うのでありますが、最近の発展途上国の巨大な累積債務を処理するためにIMFが果たしている役割というものは、国際金融の破綻を救うという意味で、特にその業界から強い支援を得ているのは御承知のとおりであります。しかしながら、累積債務を破綻させないで金融業界を守るという点ではいいのかもしれませんけれども、IMFやBIS等が行っていることは、結局一体何なのかという声が最近はとみに強いのであります。  すなわち、ラテンアメリカ、アフリカ等におきまして大きな過剰融資を行った米欧系の銀行の債権を保全するために、IMFは非常に大きな役割を果たしたけれども、これらの国々の福祉関係を推進していったり、これらの国々が自分で自立した立場で経済政策を考えていくということに対しては、大きなブレーキをかけ続けてきたという側面があるわけであります。それに対して反抗する余地のない国々においては、最近、メキシコのデラマドリ大統領が南米各地を歴訪された際に、植民地主義に抗して我々の経済生活の秩序を再編するために力を合わせようと述べ、また、ラテンアメリカは、債務やその繰り延べの条件を、自国の経済開発の必要に即して決定できるだけの立場を確保しなければいけないと述べているのであります。そして最近におきましては、アルゼンチンの四百二十億ドルという巨額な債務の片づけに対しまして、メキシコのエルソグ大蔵大臣は、積極的にこれに介入した上で打開策を決めたのではありますけれども、我々は支払わないための債務国カルテルではなく、支払うための債務国カルテルなのだと述べて、先進諸国の金融界を安堵させたいきさつがございます。この動きというものは、逆に考えますと、いよいよになれば、徳政令をしばしば徳川幕府において我が国内においても行われましたように、借金棒引きのための結束というものが行われて、そうして要するに債務は払わない、おれたちに払えるかという発展途上国同盟ができる可能性さえもあるのではないかと思われるのであります。  こうしたときに、旧来IMFやBISの行っているような債権保全だけのために頑張るというニュアンスについては、我が国政府は一番発言をすることのできる立場にある政府でもありますし、十分にその意向を反映させなければいけないのではないかと考えるわけであります。我が国は、当然債権は保全されれば保全されるだけ、それはよいことではありますけれども、発展途上国の最近の経済的な格差、特に先進諸国のそれと比較いたしますと、とても払える数量ではないように見受ける国家も多々あるわけでありまして、こうした国々に対する新しい日本の取り組みの仕方というものをまた考えなければいけないのではないか。そうしないと、ここで法案として提出されている改正案議論というのを見ておりますと、世銀の増資をする、我が国は今まで三番だったものを二番の出資比率にした、結構結構というわけにはいかないのであります。二番目の出資比率にするということは二番目に大きな責任を課せられたものであり、道義的な責任を課せられたものであり、そして二番目に世界の中で金融秩序がいかなるものかを発言する立場にあるものではないかと考えるわけでございまして、その辺をどうお考えか、伺いたいと存じます。
  99. 竹下登

    竹下国務大臣 よく投票権の話をいたしますときに、それはいわゆる国連方式かIMF方式かと、日常の会話の中でそういう言葉が使われるくらい、国連は十万人も一票、一億も一票、IMFはまさに出資比率によって投票権がある。それだけに、そういうIMFのような仕組みになれば、当然のこととして、責任もまたその出資比率によってかかってくる問題であるというふうに考えます。  私、いつも考えるわけでございますけれども、我が国が一九六〇年代に仮に先進国に完全に仲間入りをしたということが言えるといたしますならば、その代表的な目に見えるものは何だろうかと思いますと、これは六〇年代当初でいえば黒部第四ダムあるいは新幹線、また東名高速というようなものではないか。それが一つ一つを振り返ってみますと、やはりそういう世銀、国際機関の融資を受けておる立場にあったわけであります。そういうことを考えれば考えるだけ、私どもは経済力に応じた負担とその責任を果たさなければならない、ある意味における使命感を私は常日ごろ感じておるわけであります。  したがって、外務大臣の答弁にもあったという御引用がいつかこの委員会がでなされましたが、どちらかといえば、ある国はいわばバイラテラルな援助体制をより好むという傾向にあるにいたしましても、我が国は、自分が過去そういう国際機関等によって今日の基礎をつくり得たということからして、やはり私は国際機関中心の立場で臨まなければならぬではなかろうかというふうな考え方に立ちます。  それと、いま一つ指摘なさいましたIMFのいわゆるコンディショナリティーの問題でございますが、その債務累積国がいわゆる自立で、たとえ期間はかかっても一人前になっていくという意味においては、その国自身もいわば承知の上でIMFのコンディショナリティーの協議に応ずるわけでございますから、大変例外として大政変があったという国もあるようではございますけれども、私は、その国自身も十分意識した上のIMFとの協議であるという意味においては、やはり今日IMFの果たしておる役割は大きいものではなかろうか、そういう事実認識の上に立っております。
  100. 渡部一郎

    渡部(一)委員 大臣がきちんとお話しになりましたことを私は否定しているわけではありませんし、債務累積国がそれを支払うためにIMFの協議に応じることを否定しているわけでもありませんけれども、IMFのこの協議の内容というものが債務を返済するのに急であって、債務累積の国が、例えば新幹線をつけるとかダムをつけるとかと言うと、まず切りなさい、甚だしいのに至っては学校教育に対する適切な補助金もやめなさい、福祉関係についても大幅の削減、こうしたことが余りにも手ひどく行われるため、我々は国家として自立しているのか、IMF傘下の単なる一地方なのかという話まで出てくるわけであります。このように追い詰めることはいかがなものか。したがって、IMFのこうしたルールというものについて、大きくなった発言権を利して、我が国はIMFそれ自体のやり方も検討するような検討に入るべきではなかろうか、こう思って申し上げたわけでありますが、いかがでしょうか。
  101. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに、この法律を通していただきまして、そうして実際問題としての増資等が行われたら、まさに世界第二位のランクになるわけであります。それだけに、その責任の重大さは痛感していかなければならぬ。しかし、今日の時点で、私は、IMFが累積債務国等との協議をしておるというところに、大きな無理難題と申しましょうか、そうしたものが存在しておるという認識には必ずしも立っておりません。  しかしながら、その国の自助努力をいやしくも妨げるようなことがあってはならないということは当然のことでございますので、十分留意していかなければならぬ課題ではございますけれども、今日の時点で、私は、IMFの債務累積国等との協議というものは、その立場の上に立った協議として、実際問題これがある種の媒介活動として、ほかの国家機関あるいは民間金融機関の協調融資等を誘い込んでおるという機能は、やはり今日果たしておるではないかという事実認識の上には立っております。しかし、十分第二位の責任と立場というものの上に立って参画していかなければならぬという大局論は、私も否定するものでは決してございません。
  102. 渡部一郎

    渡部(一)委員 きょうはここで余り議論するつもりもないのでありますけれども、ある国々におきましては、特定の国の名前を挙げにくいのがこうした論議での致命的なことでございますから、後ほど具体的に申し上げてもいいのでありますが、ある種類の国々におきましては、IMFあるいはBIS等が中心になって行う累積債務脱出のための協議というものは、その国において行おうとしたあらゆる行動というものを非常に阻害する。そしてむしろそうした協議の背景の中で、汚職、収賄と目される権力者を防衛するような働きをするということがしばしばあるわけでありまして、当然大蔵省の皆様方も御存じのとおりかと存じます。したがって、私は、こうした問題も十分御研究の上、今後において我が国がIMFの中でも、良識と人道と、独立自尊の立場を持つ国々に対する深い同情に満ち満ちているというような態度であっていただきたいと思うわけでありまして、要望しておく次第でございます。  それから、我が国の出先の人数が少な過ぎると承っておりまして、世銀においては五千六百三十四人中、日系人は実に六十九人ですか、またアジア開銀においては、千四百六十五人中五十一人しかいないと承りました。これは人数が少ないだけではなく、これらのところに出向された中には、そこの後ろにも座っておられます著名なる大蔵省幹部もおられるわけでありますから、その方々はうまくいったクラスではございますけれども、この往来される方々の資格、肩書というものが非常にかわいそうなことにちぎれてしまって、本省のその後の活動ができなくなるおそれがある。したがって、この人数は原則的にまず増加した方がよい。  第二番目は、その処遇について、あるいは出世について、あるいは給与について十分の配慮をしなければならない。国際関係機関に出ている日本国民の処遇を円滑ならしめるよう、関係省庁とも協議されて積極的に処理していただかないと、こうした変形した様子はなおなお続くのではないか、こう思われるのでございますが、いかがでございましょうか。
  103. 酒井健三

    ○酒井政府委員 お答え申し上げます。  先生御指摘のように、これらの国際機関に対して日本の出資している割合に比べまして職員の数が少ないのが現状でございます。私どもも、日本から優秀な人材ができるだけ多くそういう機関に行って活躍してもらうことは、我が国国際化のためにも大変意味のあるものと考えておりまして、国際機関に対してはできるだけ多く日本人の職員を採用するように絶えず要請し、働きかけているところでございます。  ただ、この件につきましては、いろいろ職員となるための語学の問題であるとか、あるいは西洋流のPhDとかMAとかいうような学歴に対する評価の問題であるとか、雇用構造等が異なっておりますし、そしてまた多くの国際機関の場合、できれば出向というよりもパーマネントな形の職員を求めるというような問題がございます。私どもも、官庁のみならず、民間の銀行等に対しても職員の派遣を要請いたしておりますが、各会社とも遺憾ながら語学の極めて達者な人というのは限られておるとか、それから、給与水準が我が国の場合最近かなり上昇してきておりますので、国際機関に行ってもそれほど待遇がよくないというようなぐあいにもなっておりますし、また、大きな問題としては子弟の教育問題に頭を痛めなければいかぬ。いろいろなネックがございまして、思うように優秀な人材を集めることができかねるような現状でございます。国際機関においても、リクルートミッションを日本に派遣してきて、いろいろ面接をしたり、努力をしてきております。私どもとしても、今後とも日本人職員の増加のために一層の努力をしたいと存じております。  もちろん、そのためには、一時国際機関に勤務した者が日本に帰ってきた場合の後の処遇が非常に大きく影響するということもまさに御指摘のとおりでございます。私どもとしましては、そういうような国際機関で得ました知識、経験というものをできるだけ活用できるようにする。また、そういうような外国語であるとか国際機関的な業務だけということでもなく、いろいろの幅広い分野の経験も積まして、長い目で見てそういう国際機関での知識、経験というものが十分活用されるように努めていきたいと思っておりますし、私どもが職員の応募を呼びかけるに際しまして、官庁、民間にもそういうような要請を今後ともいたしてまいりたいというふうに思っております。
  104. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それは、局長さんは現状を分析された点では立派な御答弁だと思うのです。評論家としてお話しになるなら当委員会としても立派な答弁でありますが、あなたは少なくとも説明する人じゃなくて、ここへ説明員として来られたのじゃなくて、政策委員として、政府委員としてここへ来られておるわけですから、今後どうするという目標がなければいけない。私はいつも言うのですが、問題が面倒くさくなると説明するだけで終わってしまう場合がある。私が聞いているのは、大変なのは私も言っているのです。あなたもそれを述べた。理由を述べてくれたわけですね。それは結構。じゃ、その次どういうふうにするのですか。問題はいろいろあります。それはいずれも解決しなければならぬ問題です。解決しないでほっておいていい問題ではないわけでしょう。少なくとももうちょっと前進させる必要がある。アジア開銀についてでもいい、世銀についてだけでもいいから、今何人いるのを何%まで上げたい、この一年間にどれくらいにしたいのだということは考えているのですか。  それからもう一つは、そういうことをやるために、大蔵省だけでは実際できないでしょう。ほかの省庁とも相談しなければならぬでしょうし、民間の力もかりなければならぬでしょう。担当はどなたなんですか。こういうことをやるときに、答弁されたのは国金局長だけれども、その次聞いたら労働省に回されたりすることがよくある。だから目標は何か、扱いは今後もあなたがするのですか、その二つを教えてください。
  105. 酒井健三

    ○酒井政府委員 お答え申し上げます。  国際機関の職員の増加につきましては、これは絶えず折衝をしているわけでございまして、できるだけ多くをということでやっております。ところが、一九八四年において何人から何人というような具体的数字の目標を立てるまでには至っておりません。そしてまた、私どもも国際機関に職員を採用してもらうとき、なるべく日本人もランクの高い人を採ってもらうようにしたいというようなことで、例えば世界銀行であれば副総裁のポストとか、そういうようなところで働きかけております。したがいまして、そういうようなランクの高いところの折衝になりますと、財務官にいろいろ動いてもらうとかあるいは大臣に要請をしていただくとか、いろいろのことを行って実現に向かっております。  そして、国際機関の場合に担当の部局はどこかという点につきましては、開発金融機関につきましては私どもの投資第一課でございます。世界銀行、第二世銀、アジア開銀のそういう職員の関係です。それから国際通貨基金につきましては国際機構課、そこが担当でございます。
  106. 渡部一郎

    渡部(一)委員 そういう目標がそう簡単に立つことでないことも理解した上で私は言っているわけですが、努力してください。努力の跡が見えませんよ、全然。あなたが今担当部局だとおっしゃったところは、これから、私は気が長いですから何回も言いますよ。毎年報告してもらいます。覚悟して、担当の方に言っておいてください。  それからその次、大臣に金融の自由化について。ここの話からちょっと踏み出しますが、この金融の自由化についてここのところいろいろな問題が出てきまして、新聞紙上を見ましても、TB市場の創設であるとか、銀行間預金の規制の撤廃であるとか、預金金利の連動の問題であるとか、あるいは短期CDを認める話であるとか、いろいろなお話が毎日のように新聞紙上をにぎわしているわけであります。記事によりますと、大蔵省としては何かすばらしいまとめの文章をお書きになっている最中と承っているのでありますが、こういうふうに切り刻んで毎日少しずつ発表なさるというのは、何か特別の意味があってのことなのでしょうか。私はおかしくてしようがない。毎日記事を切り抜いて笑っておるのですけれども、これはどうしてこうちぎりながら発表するのか。大蔵省にはそういうちぎりながら発表する特別の部局があるのか。これは何を意味しているのか、ちょっと伺います。
  107. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる金融の自由化の問題、終局的には金利の自由化問題、そういう大きなテーマがございます。中曽根総理からも、自由化の展望というものを可及的速やかにまとめて発表をしたらどうだという強い要請がありました。  ただ、私が今若干ちゅうちょいたしておりますのは、やはり国際化の問題と同時に展望を示した方がより適切ではなかろうかという考え方が一つございます。それも、中曽根・レーガン会談で決まりました日米の円ドル委員会、それの専門家会議の報告が五月中に私とアメリカのリーガン財務長官の方へ出される作業が鋭意行われておるさなかでございます。したがって、新聞の自由取材あるいは競争取材の結果ばらばらに出るということをおっしゃいましたが、それが政府の側から展望とか指針とかという形で一週間置きに一つずつ出るのも、また国際的に見て適当ではないではないか。そうすると、そこのところ、円ドル委員会の推移を見ながら——これは円ドルとは必ずしも直接関係ございませんが、きょうはブッシュ副大統領もお見えになります。明朝は私がお会いをすることにもなっております。せっかく日米両方の専門家の間で国際化、自由化の問題が論ぜられておるさなか、一方的に我が方が両方の展望を出しますと、いわばその専門家グループの勉強が何かそれを後追いしたような格好にもなる嫌いがありはしないかというところで、私は私なりにやや慎重に構えておるところでありますが、しかし、そう長いこと慎重を継続しようとは思っておりません。  ただ、新聞紙上に出ますのは、この自由化あるいは国際化、いずれにいたしましても関係するところが何分にも非常に広範でございますので、それ一つ一つの立場から非常に専門的に各社とも取材をなさいます。そうすると、また新しいことも多いわけでございますので、人それぞれによっていろいろな意見が吐かれる。それらを個別的に取材して、結果としては世論の喚起に当たっていただいておることになるわけでございます。したがって、本当に鶏の鳴かない日はあっても、いわゆる金融の自由化問題が新聞紙上に載らない日はない、こういうようなことで、お笑いになりますが、また考えようによっては、それがまさに自由化、国際化が国内世論の中でかまびすしく議論をしてもらえる土壌づくりには役立っておるのじゃないかな、こういう認識を持っております。
  108. 渡部一郎

    渡部(一)委員 本当にうまいことを言われるものですな。今のお話を伺っておりますと、かなりやらせで何かをなさっているような気配が濃厚でございますのに、私らが非常に困っておりますのは、私は外務委員会に属していることもございますので、見ておりますと、主要な外交案件についての情報は全くと言うほど漏れない。そして新聞の切り抜きを見て、あれ、これも決めたのかと毎日聞かなければならない。当委員会に対しても、伺ってみますと、金融自由化のプロセスについてはほとんど報告されない。全部箝口令がしかれておる。そうしておいて新聞だけには適当にリークをしてあおり立てる、右に左にそれをうまく使うというのでは、肝心かなめな国政審議権というものを阻害するのではないかと思うわけであります。  特に、金融の自由化の決着を図るというので、先月第三回の円ドル特別会合の第三作業部会が行われる前の日、既に首相は、自由化の時期を具体的に示すなと思い切ってやれという話が新聞にもリークされましたし、新聞だけではない、我々のところにまでそういう指示があったことがもうそれこそずっと響き渡りました。これは軽率を超えておるわけでございまして、交渉の前に交渉の基礎方針をリークするなんということは、あっていいはずがない。大蔵大臣の方はまたえらいかたくて、何にも聞こえてこない、総理大臣がまたぺちゃぺちゃとさえずる、こういう形で私どもは聞いておるわけです。  これでは、交渉される方が交渉もできないだろうと私は思う。交渉である以上は、何かについては譲らなければならないだろうし、何かについては断らなければならないだろうし、その辺のさじかげんを放棄されておるのではないか。小さな命題について、新聞の記事をもって国民にある種類の啓発を行うのは結構ですけれども、基本的問題についてよく議論しないうちに交渉の主方針が漏れる。これは新聞だけでなく漏れてしまったのですから、そういうことが行われるというのでは交渉にならないのではないか、私はそう思いますが、いかがですか。
  109. 竹下登

    竹下国務大臣 総理が私どもに指示しておられますのは、いわゆる国際的な流れの中で国際化、自由化の問題は進めていかなければならぬという大前提を示しておられるわけであります。ただ、多少ともニュアンスの差があるとしましたならば、総理は陸上競技の選手でございますから、ストライドという言葉をよくお使いになります。私はどちらかといえばステップ・バイ・ステップみたいな感じで、もう少し歩幅を広くしたらどうだ、こういうところのニュアンスの相違があるという程度でございます。今鋭意詰めておるところでございますので、大筋の展望というものをお示しできる時期もそう遠いごとではないと考えております。その大筋の中でも、あるいは審議会へお諮りしてみなければいかぬ問題もございますので、それぞれの関係審議会をおよそいつごろ開いて御諮問を申し上げようかというようなことも、その日にち等も折々頭の中に大体描いておるという現状でございます。
  110. 渡部一郎

    渡部(一)委員 問題になっている中でも、余りにも影響性が強いように見えますので伺いますが、米銀の信託参入の問題がございます。  米銀の単独参入は、相互主義の観点から見るとやむを得ないのかもしれませんけれども、信託分離という日本の金融制度から見ますと、根底から日本の金融制度を揺るがすものでございます。兼営法を盾にいたしまして都銀など大手銀行が参入することになりますと、信託銀行の経営には重大な影響を及ぼすので、理論的にはおかしいわけでありますが、外銀だけを超法規的に認め、国内の信託分離行政をそのまま残すという方法などはその一つの選択であろうかと思います。しかし、問題が問題ですから、金融制度調査会などで慎重に検討すべきだと思います。  ところが、そういう手続抜きで今は議論がされている。そして同じ外銀でも、三菱銀行が買収したバンク・オブ・カリフォルニアなどというものは既に認められておる。そうでありますと、三菱はそれを使って実質的に日本の信託銀行参入が認められることになるではないかということも配慮しなければならないだろうと思います。そうすると、外国において信託銀行を買った銀行の方が得だ。この方向で行くのならば、一斉に日本の銀行は外国へ乗り出して、つぶれかかった小型の信託銀行をどんどん買って、そして頭の上にタイガーマスクではなくて外国銀行マスクをかぶってさっそうと日本列島に登場する、そうすると大蔵省は判こを押すというやり方なのか。今注目の的であります。このようなことは話がきちんといたしませんと、もめごとが多過ぎますし、既に業界挙げての騒動でございますし、この辺について御見解をお尋ねしたいと思います。
  111. 竹下登

    竹下国務大臣 外銀の信託進出ということでございますが、確かに新聞をずっと振り返ってみましても、最初はそれが、いわば我が国の証券会社との共同出資により国内に信託会社をつくって進出するというような記事がたびたびございました。それから、ある記事にはそうでなくて、事実上運用は日本企業と進出外銀との間で契約を行ってやるにしても、いわば免許をいただくのは外銀そのものでやっていくというような記事もございました。いろいろな記事が出ておりましたが、いわゆる米国企業我が国において投資資金の運営に参入することについて米国政府からも強い要望が出てきたというのは、私は、第二回目の円ドル委員会くらいからではなかろうか、正式にはそういうことではないかというふうな事実認識をいたしております。しかし、今正確におっしゃいましたように、金融制度、我が国の信託銀行の経営にも大きな影響を及ぼしますし、我が方はあくまでも専門分野ということで今日までやってきておりますだけに、勢い慎重にならざるを得ないというのが現実でございます。  そこで、日米円ドル委員会の協議をも踏まえまして、今のところのスケジュールと申しましょうか、考えておりますのは、五月末に予定せられております私とリーガン長官がもらう報告書の中に、何らかの方向を見出して我々にそれが上がってくるという、言ってみれば最終的な両者の報告書作成という表現が適当でございますか、そういう段階に来ておる。だから五月末までには何らかの方向が見出されるだろうというのが現状認識ではなかろうか。したがって、今例示としていろいろなケースをおっしゃいましたが、それらもこの報告書を私どもがいただく前に専門家の中で——その専門家の意見というのも、おのずから私どもにも聞かしていただける問題でございますので、いろいろなケースが想定された議論は十分し尽くして、アメリカの場合は信託の兼業が認められているわけでございますから、そういう今おっしゃったような趣旨の形のことが起こり得ないような配慮等は十分行っていかなければならぬと思っております。
  112. 渡部一郎

    渡部(一)委員 そうすると、五月の答申書が出るまでの間は、大臣としてはこれについての決断あるいは決定を述べることなく、それを見た上で考慮して判断する、こういう意味でございますか。
  113. 竹下登

    竹下国務大臣 そのように理解していただいて結構だと思っております。
  114. 渡部一郎

    渡部(一)委員 私は見ておりまして、ともかく日本において問題の大きいのは、対外的な自由化よりも国内における金融市場というものがつくられていない、だから自由化の前に銀行間預金の規制を撤廃するとか、あるいはCDについてもうちょっと緩やかな取引をもっと定着させるとか、あるいはTB市場をつくるとか、あるいはBA市場を創設するとか、そうした手続を国内としてやらねばならない方向だろうと思いますし、その点は御異存がないのではないかと思いますが、これは順次進めていくものと理解してよろしいでしょうか。
  115. 宮本保孝

    ○宮本(保)政府委員 御指摘のとおりでございまして、円の国際化であるとか、あるいは国際的なマネーマーケットに進出いたします場合には、当然国際的な影響をもろに我が国の市場は受けるわけでございますから、それに対応するような市場なり金融秩序なりを国内においても整備しておきませんと国内が乱れてしまうということでございますから、今御指摘のような点につきましては、具体的に一つ一つに関して申し上げますといろいろ問題点はあろうかと思いますが、基本的には今先生御指摘のとおり、着実に自由化を進めてまいるということだと思います。
  116. 渡部一郎

    渡部(一)委員 私は、それに加えまして、金融の先物市場を創設することが必要なのではないかと思うわけであります。といいますのは、諸外国における金融先物取引を見ますと、アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア等については既に市場が創設されておりますし、それに加えまして、シンガポールにおきましてもSIMEXですか、シンガポール国際通貨取引所が六月末に取引を開始いたしまして、シカゴのマーカンタイル取引所の金融先物市場IMMと提携して、金のほかにユーロダラー金利、円と西独マルクの各対米ドル相場の四種類を上場し、二十四時間体制で仕事を始める、こういう報道も行われているところであります。  このような状況で、いよいよアジアにもそうした市場ができるわけでございますが、日本のさまざまな取引の中で、こうしたことも何とかしなければいけないのではないかと思うわけであります。国際的にも、先ほど申し上げました金融の国際化が要請されておりますけれども、国内的には、国債の大量発行による公社債売買量というのは巨大なものでございますし、発行条件も多様化し、流通市場の弾力化の問題もありますし、金融先物取引制度の導入が有効なのではないか。特に国債の大量発行の引き受けにつきましては、国債引き受けシ団方式によりまして、言っては悪いのですけれども、かなり強制的に買わされているわけでありまして、その引き受けているところから、将来起こる金利とか債券価格の変動からリスクヘッジの手段を持たないものも多いことでございまして、こうしたものはどうしてもつくっていただきたいという声が上がるのは当然なのではないかと思うわけでございます。この点についていかがお考えでございましょうか。証券取引審議会や都市銀行懇話会においてもこれらを検討している模様でもございますし、当然政府としてもいろいろお考えと存じますが、お考えをお聞かせいただきたい。
  117. 佐藤徹

    ○佐藤(徹)政府委員 先生大変いろいろ御勉強の上の御質問でありますが、御趣旨は私どもも御指摘のとおりだと思います。  最近我が国で先物取引、特に債券の先物取引についての関心が非常に深まっておりまして、早く日本でも市場をつくるべきじゃないかという議論が非常に多くなっております。こういう議論が高まりを見せている大きな要因としては、先生も御発言になりましたけれども、大きく言って二つあるのだろうと思います。  一つは、国債の残高が百兆円にも達し、それから年間の公社債の流通高が四百兆を超えるというような規模に達しております。そういった中で自由金利で売買されておるわけでありますから、金利は当然変動いたします。そういった先行きの金利変動に対するヘッジの要請が非常に高くなってきておる。そういう需要からして、先物取引、特に債券の先物取引を早く実施をしてはどうだろうかという考え方が出てきます。  もう一つ要因としては、これも先生お触れになりましたように、今金融市場もどんどん国際化が進んでおります。日本の国内だけの取引で完結するような部分が非常に少なくなっておりまして、国際間の取引のウエートが非常に高まってきております。そういった状況の中で、先生も御指摘になりましたように、アメリカでは既にかなり前から金融の先物取引が開始されておりますし、最近カナダ、イギリス等でも開始をされております。さらには、シンガポールと香港でことしから近く開始をされるというような状況があるわけでありまして、日本の市場だけがそういった市場を持たない状況でうまく国際金融市場の中で仕事をやっていけるかどうかという問題があるわけでございまして、そういった点からも早くこの問題の検討をし、何とか方向を見出すべきじゃないかという議論が当然出てきているわけでございます。  そういった状況を受けまして、ちょっと先回りするようでございますけれども、特に債券の先物につきましては、具体的な議論が既にかなり行われております。昨年来、東京証券取引所を主体にいたしまして何度かアメリカ等に調査団も派遣をいたしまして、いろいろな資料を持って帰っておりまするし、それらをもとにして、証券業協会とかいろいろなところで調査研究が行われております。それらを背景に、ことしになりましてから、私どもの証券取引審議会で公社債特別部会というのを既に三回開いておりますが、その三回の会合の中でも、緊急な課題の一つとして、特に債券の先物取引についての検討をしてはどうかという問題の提起がされております。また、債券以外の金融の先物取引についても、これはまだ公的なベースになっておりませんけれども、御指摘の都市銀行懇話会といったような場で若干御議論があるやに承っております。そんな状況でございます。
  118. 渡部一郎

    渡部(一)委員 もちろん、我が国におきまして厳しい金利統制のもとでの既成秩序があるわけでございますから、直ちにこうしたものをやることについて幾多の問題点があるのもわかりますし、まず投機という問題に対する国民的な教育といいますか知識レベルといいますか、そういう慣行というか、商業的な道徳の形成というものはかなりおくれているわけでございますから、問題点もあるように思います。しかし、識者のある方の中には、小さく産んで大きく育てると堂々と言われる方もありますし、証取法の現行法体系のもとで有価証券の先物取引は可能だと堂々と主張される方もあるわけで、お話の方は論議的にはかなり進んでいるようにお見受けするわけでございます。  したがって、もしおやりになります場合には、特にアメリカのシカゴなどを拝見いたしますと、伝統的な商品取引の手法というのを、外国通貨、金利、株価指数、そのほかいろいろなものがございまして、調べてきたのですが、資料が出てきませんのでちょっと失礼いたしますが、いろいろなものを先物市場の中に乗せてくる。アメリカの財務省も、初めはこういう金融先物市場というのはある種類のばくち場だという厳しい観点で見ておられた様子でございますけれども、実態調査をいたしますと、適切に運営管理されている限り、金融先物市場の拡大はリスクヘッジの場を提供し、その機能は社会的、経済的にも大きいという評価を下したというふうに言われております。  私は、我が国におきましてもこうしたものを考えませんと、日本は、ともかく物をつくって売るというだけの状況では、今後余計な摩擦を生ずるのではないか、この問題については少し積極的にお取り組みになることが妥当ではないか。既に先ほどの御答弁でも相当の前進がほの見えているわけでありますが、この点いかがお考えになるか伺いたいと思います。
  119. 佐藤徹

    ○佐藤(徹)政府委員 お答えいたします。  この先物取引についての諸外国の行き方を見ますと、大きく分けて二つの行き方があるように思います。一つは、アメリカがそうでありますが、金融先物全体について新しい市場をつくって、そこで取引をやっていく。その中でウエートが高いのはもちろん金利の先物でございますが、そういった行き方が一つございます。もう一つは、債券の先物について、既存の証券取引所の中でまずとりあえずやってみる、ある程度こなれたところで対象を広げていくという行き方がございます。カナダのやり方が後者だと思います。いずれのやり方がいいかという点につきましては、これからいろいろ議論しなければなりませんけれども、我が国の現状からいいますと、一つの新しい金融先物全体についての市場をつくります場合には、相当長期の検討なりあるいは制度の整備なりが必要になっていくのではないかというふうに考えております。どちらがいいかはこれからの議論だと思います。  そこで、いずれにいたしましても、債券の先物取引に限定をいたしましても、我が国でそれを行う場合に、幾つか解決をしておかなければならない問題がございます。大きく言いますと、三つほどあると思います。  一つは、債券の先物の場合は為替の先物と同じような機能を持っておりまして、片方でヘッジの需要がある、一方でそのヘッジの需要と同じ量の、外国ではスペキュレーターと言っておりますけれども、いわゆる投機的な商売、そういった資金が向かってこなければ商売は成立しないわけでございますから、そういったものが我が国に存在するかどうか。ヘッジの需要があることは確かでございますけれども、その反対側のお金があるかどうかという問題が一つございます。  それから第二番目に、ヘッジがうまく機能すれば当然金利の変動幅は小さくなるという働きをするはずなんですけれども、事は必ずしもそう簡単ではなくて、場合によっては逆に変動幅を広げるおそれもあるわけでございまして、我が国の場合に、そういうことが起こり得る可能性があるかどうかという点はよく詰めておかなければならない。  それから第三番目に、戦後我が国の証取法は、とにかく投資者保護ということを基本理念にいたしまして、できるだけ投機的な取引を排除するという方向で運用をしてまいりました。現在ではかなりの投資家が非常に投資に習熟をいたしまして、戦後すぐの段階とは随分違って成長してきておりますので、その辺をどう考えてこの問題に当てはめていくかという点、ここが一番重要な問題かと思いますけれども、そういった点三つぐらいは、ぜひとも実施の前に答えを出しておかなければならない問題ではないかというふうに思っております。
  120. 渡部一郎

    渡部(一)委員 その点私もまことに同感でありまして、こうした問題は今後巧みに片づけていただきたいと思っておるわけでございます。  特に私は、シカゴを見、シンガポールを見て、二つ感じておることがございます。その一つは、シカゴにおきましては、一方に商品市場があって、一方に金融先物市場があって、それが実質上連動していることであります。この連動の結果として、巨大な投機資金が、あるときは先物市場に、あるときは商品市場にと流通しておりまして、その意味で確かに物価の安定に資しているなと思われる筋がございます。  通産省の産業政策局長の私的諮問機関である商品等の取引問題研究会は、さきに諮問のあった商品先物取引行政のあり方について議論を進め、「当面の商品先物取引行政の進め方について」と題した考え方をまとめております。これは通産省の方だけでやっているわけではございますけれども、最近、欧米の商品取引所が、リスクヘッジに加えて資産運用の場としての重要性が増している点を重視して、商品取引所同士を合併して総合化することを最優先にしようという方針を打ち出し始めているわけであります。これは農林省の方も、こうしたはっきりしたものではございませんけれども、同じような御意向があるようでございまして、既に大阪におきましては、農林省管下並びに通産省管下の商品取引所が合併して、連動して一緒にやるということが始まっており、東京でもそうした動きが始まっておるようでございます。  現在、これらと、実質上大蔵省が御担当になるであろう金融先物市場というものは、こうした動きとも合わせて、総合化、統合化の方向に向かわざるを得ないだろうと思うわけでございます。というのは、金融先物の相当部分というものが、こうした実際的な商品取引、商品先物取引の分野と競合したり、重複したり、関連を持ったりするところが非常に多いからでございまして、この辺もひとつ御検討をいただいたらどうだろうかな、こう思っているわけであります。  もう一つは、シンガポールの金融先物取引市場の発足が予定されておりますが、日本の東京銀行はこれに会員権を申請したようでございますね。日本の各企業は、海外においてはどんどん先にやっていく、政府が何か日本国の中の方を考えている間に、向こうではどんどんやる。シカゴの会員権ももうとっくに得て、事実、売買しておられる銀行なり証券会社はあるわけでございますし、そういうふうに事実は先行しておる。そして後から我が国は慌てて帳じりを合わせるために、相互主義の圧力をかけながら、何か重い腰を踏み切るみたいにしてやっていくというようなルールが、ここのところいつも続いているように見えるわけであります。  したがって、私は、ロンドンの金融先物市場のバークシャー会長がシンガポールの市場開設に当たりまして、東京、大阪において金融先物市場ができるならば私の方もそれを積極的に支持すると述べられたそうでございますけれども、世界じゅうで見ていると、日本政府というのはうじうじしてはいるけれども、何かのろのろ来るけれども——うじうじというのは大変失礼な言葉ですから、慎重に十分検討されてはおられるけれども、やがて来る、頑張れよというような期待の声を浴びているわけだろうと思います。私は、その辺を配慮されまして、金融自由化のあらしの中で覆らない日本丸、日本金融丸というものをスタートさせていただきたい。今後各省庁にまたがる仕事でもございますし、実力大臣にぜひともこの辺のおまとめをいただかなければ一ミリも進むものではないと思いまして、御検討の上、先ほどおっしゃいましたように慎重に、漸進的に、健全な方向で前向きに、一歩でも時代におくれないようにひとつ御処理をいただき、検討していただき、進んでいただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  121. 竹下登

    竹下国務大臣 私はかねて思っておりますのは、例を銀行に例えてみますと、この間一つ合併がありましたので、日本が百五十六でございます。アメリカが一万四千五百。生い立ちから見ますと、日本の場合は明治三十四年、一九〇一年には千八百あったことがあるそうでございます。そのころは私ども生まれておりませんけれども、そういう歩行主義から、いわゆる預金者保護のための指導によってだんだん百五十六という少行主義とでも申しますか、そういうことになってきておる。したがって、あくまでも貫かれておるのはいわゆる預金者保護、金融全体でいえば投資家保護、被保険者保護。アメリカの場合はどちらかといえば自己責任主義、極端な言い方をすれば、ああいうところへ預けておったおまえが悪いんだ、おまえの経営が悪いから倒産したんじゃないか。そのかわり、逆に預金保険機構などはどうしても充実してくるわけであります。  したがって、そういう歴史的な成り立ちからいたしますと、勢い慎重にならざるを得ないという背景を持ちつつも、日本経済力がここまで来て、世界的な趨勢の中でやはり自由化、国際化というのは避けて通れない問題だということになると、主体的な立場に立ちながらも、今もろもろの意見を交えての御質問の中に御指摘がありましたように、積極的にこれに対応していかなければならぬじゃないか、そこに摩擦を少なくするための漸進主義というものもまた入ってくるであろうというようなことを考えながら対応していかなければならぬ。  それの一つの区切り——区切りといいましても、先の前進がないという意味の区切りではございませんが、今度の円ドル委員会の報告書の作成、そして私どもにその報告書が提出されるというのがやはり一つの切れ目にはなるのじゃないか。そういう事実認識の上に立って対応していかなければならぬ課題だというふうに私は考えておりますので、この問題についていろいろの立場から意見を交えて御質問をいただくことが、言ってみれば今日までふなれな問題でございますだけに、国民の皆さん方にもより理解を得る機会ともなるであろうし、また、我々が検討するに当たってのポイント、ポイントが、むしろこういう国会の場なんかで指摘されたものが一つのポイントになっていくという感じすらいたしておるところでございます。
  122. 渡部一郎

    渡部(一)委員 金融自由化のあらしは、あらしでありますと同時に、日本国民の預金者の利益からいいますと、危険を覚悟の上ではありますけれども、高い金利の商品に自由に投資することを許される時代を迎えるわけでありますから、日本国内でも多くの投資家たちが何とかして外国に投資したい、こういう強い風潮があるわけであります。この風潮は決して軽々に見逃すべきではないし、これを見逃すと、数字の上に出る以上に大きな衝撃が日本の長期金融体系等に及ぶのではないかと私は思います。自由化という問題は、まさに国内に対して言われる言葉として適切だと私は思っているわけであります。  今私が申し上げました金融先物市場の創設につきましては、どういう形でやるかについてはたくさんの選択肢がございます。一遍に三つも四つもまとめる手もあれば、小さく産んで大きくやる手もあれば、私がわざわざその言葉を引用いたしましたのもその意味でございますが、また思いも寄らぬ形からスタートする手もいろいろあると今私は伺っているところでございまして、その辺十分御配慮の上、今後の行政において一歩前進されんことを希望し、激励の辞を述べ、私の質問とさせていただきたいと思います。
  123. 瓦力

    ○瓦委員長 柴田弘君。
  124. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 あと十数分しかありませんので、簡潔に数点にわたって質問いたします。  一つは、先ごろ四月二十七日に、昭和五十六年の十二月以来今回五回目だと思いますが、いわゆる対外経済対策が決定をされました。果たしてこれで本当に今日の貿易摩擦経済摩擦というものが解決するのかどうか。六本の柱、十五の項目ということでありますが、私は疑問に思っております。案の定、シュルツ国務長官も、いわゆる関税の引き下げの問題あるいは金融の自由化の問題等で官房長官に不満を表明をしている。きょう経済担当の総責任者であるアメリカのブッシュ副大統領が来日をされる、こういうことでありますが、果たしてどうなるか、私は非常に心配もし、疑問を持っておるわけであります。この辺どのようにお考えになり、対応されるのか、総括的にまずお伺いをしていきたいと思います。
  125. 竹下登

    竹下国務大臣 金融自由化という問題、あるいは国際化も含めまして、これは私は歴史の流れであるというふうに考えております。したがって、それにどう対応していくかということになりますと、世界統一銀行法にして、世界統一証券業法にしてやれば、垣根が皆なくなっちゃうじゃないかということをよく冗談で言うのでございますが、それぞれの国によって立つところの歴史的な経過がございます。我が国には我が国の歴史的経過がございます。それはまさに預金者保護あるいは被保険者保護、投資家保護という前提の上に立って今日まで進められてきて、それがゆえに銀行とは倒れないものであるというある種の信用感というものが、もちろん勤勉さというのがその前提に立つわけでございますけれども、私は、世界一貯蓄性向の高い国民性を築き上げた一つ要因ではないかとも思いますので、このことは大事にしなければなりませんが、しかしこの国際化の中に、あるいは自由化の中に、まさにそういう自分の国の主体性を持ちながらも積極的にこれに対応し、しかも、よく言われる弱い部分とかいろいろございますが、そういう問題については漸進的にこれに対応していかなければならぬという、ある種の宿命感みたいなものを感じておるというのが現状の率直な私の認識であります。
  126. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 大臣、金融の自由化の問題については種々本委員会議論がありますので、私も理解をしますが、私が御質問しておる問題、その問題を含めてもう一つの問題は関税の引き下げの問題、時期、規模の問題。例えば合板、木材製品、これは不満があると思いますね。それはいろいろ国内的な事情もあると思います。大蔵省が先ごろ発表いたしました五十八年度の貿易収支三百四十五億ドル、それから経常収支が二百四十二億ドル、これは黒字、史上最高。私が考えますのは、こういった外圧でだんだんと開放経済体制にしていく。これは当然の推移でありますが、何か小出しをしているような格好で、こういった対外経済対策というものは、主体性ということをよく大臣おっしゃいますけれども、やはりできることはできる、できぬことはできぬということをはっきりとして交渉に臨むということが必要じゃないかと思います。  それから関税の問題、今言いましたが、何といいますか、物の時代から金とか先端技術とか、こういった時代に貿易摩擦問題、経済摩擦問題が入ってきたということは、この問題の解決が非常に複雑であり、難しくなってきたということも私ちょっと感じているわけなんです。そういった点で、こうして五回目の経済対策を打ち出されたわけでありますが、本当にこれによって解決できるのかどうか。焼け石に水になるのではないかという気がするわけなんですね。それに対して政府がどういった態度で今後とも対応されていかれるのか、こういった点をお聞きしているわけでありまして、簡単で結構ですから、ひとつ意のあるところを御答弁をいただきたいわけであります。
  127. 竹下登

    竹下国務大臣 おっしゃいますように、今おっしゃいましたような批判がそれぞれあろうかと思うのであります。日本の場合、例えば関税問題等についても、言ってみれば対外経済政策全体に通ずることとはいえ、小出しじゃないか、どすんと出さないじゃないか、それが不満を募らせる一つ要因になっているんじゃないか、こういう御批判もあろうと思います。  私、いつでも考えるわけでございますけれども、結局一つには原油価格が下落したということが、やはり経常収支の面において払う金が少なくなるわけでございますから、黒字要因の大きな要素であるとは思います。それからもう一つ、摩擦問題が起こりますのは、結局私がいつも思いますのは面積の問題じゃないか。例えばアメリカと比べて二十六分の一の面積があって、それを平地面積にいたしますと六十分の一。人口が半分でございますから、一人当たり三十倍の土地があるから、土地を資本とする、すなわち農産物は皆向こうが安くてこっちが高い。頭のことを余り言っちゃいけませんが、頭脳と技術とを余計使うのはこっちが皆安い、極端に言えば。  そういうところにいろいろな問題点があろうかと思いますので、あくまでも主体的に国益というものを考えて、断るべきことは断らなければならぬ。しかしながら、我が国一つのエゴイズムで、世界全体に保護貿易主義が頭をもたげてくるような形の対策については、絶対にこれを避けていかなければならぬという、ある意味においては矛盾した選択肢の中で、アメリカのみならずECにも、また開発途上国に対しても、それぞれ気配りをしながら対応していかなければならぬ課題だというふうな事実認識の上に立っておるわけであります。したがって、これで終わりというものは、現実日本のよって立つ経済基盤からいえばなかなか難しい問題であろうという考え方であります。
  128. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 それじゃ、もう一つお聞きしましょう。  政府開発援助、これはたしか新中期目標がありました。とにかく倍増するというのですね。一九八一年から八五年の五カ年間に前の五カ年間の倍増にする。二百十四億ドルにしなければならない。それで八四年までの実績を見てまいりますと、今年度が九・七%増、五千二百八十一億円予算化されているわけですね。この倍増、これは国際的な公約でありまして、GNP第二位の経済大国である日本国際的に果たすべき役割である、こう思います。そうしますと、八五年には二一%、前年度に比して伸ばさなければならない。六千三百九十一億円、これが必要じゃないか、こういうことであります。  それで、中曽根総理は五十九年度予算の原案が発表されましたときに、防衛費は六・五五%増だ、それからODA、政府開発援助は九・七%増だ、こういうことで胸を張られたわけでありますが、実態はこういう実態であります。     〔委員長退席、熊川委員長代理着席〕 そうしますと、来年度二一%に伸ばしていかなければ、どうしても国際公約というものが日本の国は果たせない、こういうことになるわけでありますね。どうですか。これは恐らく外務省もそういう方針だと私は思いますが、やはり大蔵省、大蔵大臣予算編成の最高の責任者でありますので、特に私は、この点について約束を果たしていかなければならない、こういった観点で御質問申し上げております。ですから、前向きな御答弁をぜひいただきたい、こういうように思いますが、いかがでしょう。
  129. 竹下登

    竹下国務大臣 御審議を既に議了していただきました五十九年度予算を見ましても、それは海外経済協力予算の伸び率が一番高いわけであります。しかしながら、一般会計のODA予算ということになりますと、伸び率は高いものの、現実問題といたしましては、まず為替レートの動向、毎日動くわけでございますから。それともう一つは、今御議論いただいておる法律の中身にも関係するところでございますが、国際開発金融機関等に対する増資の問題、増資交渉が、我々が意図しておるよりいつもおくれるわけでございます。そうして、私どもが意図しておるという表現は適切でないかもしれませんが、およそ予測しておる数値よりも低いところでまとまっていくということになりますと、それもODAにカウントされるわけでございますから、思ったよりも実績を見ますとよくないじゃないか、こういう御指摘をいただくのもむべなるかなというふうに私は思っております。  ただ、今計画期間五カ年のうちの二年分の実績が出ただけでございますので、これからの推移を見なければなりませんけれども、御指摘のように相当の伸び率にしなければいかぬということは、ODAの一般会計予算のみを見ても確かにおっしゃるとおりでございますので、私どもは、財政の厳しい現状でございますけれども、最も意を用いなければならない対象の一つではないかというふうな理解の上に立っております。
  130. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 それじゃ、最後にもう一点。  今の金融の自由化に関連して、やっぱり金融の自由化の最大の焦点は、これは大臣もおっしゃっておりますように金利の自由化だと思いますね。それでやはりその一番の障害というのは、私は個人預金に三〇%を占める八十三兆円の郵便貯金であるというふうにかねがね思っております。これの金利の決定の問題につきましては、郵貯懇の答申以来いろいろな経緯があることも事実であり、私もかねがね当委員会において質問もしてまいりました。それで臨調も郵貯の商品性の見直しの問題とか金利の一元化の問題については答申をいたしております。そこで、金利の自由化、金融の自由化の今後の過程の中で、政府は一体郵貯の問題をどうしていくのか。そして金利の一元化の問題というものを、これは今三大臣合意に基づいてやっていくということでありますが、しかし、確かに五十八年十月の公定歩合引き下げのときにも、あのとき、思いますと、本当に経済対策について、景気対策について、金融政策の機動的な運営というものが図られたのか。七十数日のいわゆるタイムラグがありました。これはもう申すまでもないわけであります。  なかなかこの問題について、やはりこれは行政改革の一端としてとらえられているわけでありますが、これはずっとそのままになっておるわけでありますね。一体、郵便貯金の問題、商品性の見直しの問題、それから金利一元化の問題というのはどのようにやっていくのか、きちっとした制度的な改正というものをはっきり図っていくのか、この辺のところがどうも不明確であります。しかし、金利の自由化の中でどうしてもこれは避けて通れない問題じゃないだろうか。このままほっておけば、郵貯が金利決定のプライスリーダーになるのではないかという懸念もあるわけでありまして、この辺はやっぱり政府部内でも真剣に議論をして解決の方向を見定めていかなければならない、こういうふうに私は考えているわけであります。この辺ひとつ大臣から御答弁を伺って質問を終わります。
  131. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる郵貯問題というのは、郵貯が我が国の歴史的経過の中で今日まで果たしてきた大きな役割というものを、私も、もちろん柴田さんも、これを否定するものではないという前提の上に立ちながらも、今御指摘なさいましたとおりのことを、例えて申し上げますならば、この間の公定歩合の際の金利調整審議会の意見具申の中に「大蔵大臣発議後民間預貯金金利改訂の決定に至るまでかなりの時間を要したうえ、実施日について先例をみない長期の遅れを余儀なくされることとなったのは、金融政策の機動性、有効性を確保する観点からみてはなはだ遺憾である。」こう述べられた事実もございます。そうして、私どもといたしましても、やはり郵貯金利について、民間金融機関金利均衡のとれた形で、機動的にこれが時期を置かずして決定されるような方向努力しなければならぬ。  さらに臨調の最終答申には、「金利政策上、預貯金金利の決定が一元的に行われるよう制度化されるべきであると考えられる」というところまで指摘を受けておるわけであります。  したがって、三大臣合意でございますとかいろいろな形の上に立って経過的に今日に至っておるわけでございますが、そういう基本的理念に基づいて、やはり金融の自由化すなわち金利の自由化というのが避けて通れない、我々の生活の中におけるスケジュールの一つだという認識の上に立って、政府一体の責任でこれは対応していかなければならぬ課題だ、一大蔵省という問題だけでなく、これは政府全体の責任として対応していかなければならぬ課題だという重大認識は私もいたしておるところであります。
  132. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 その手順ですね、大臣、問題は。そういう認識は当然大臣していらっしゃると思う。じゃ郵政省とどういうふうに調整を図っていくのか。これはもう今後の日程の中で、臨調答申もあり、あるいはまた行革大綱もあるわけでありまして、そのままどうもずっと今日まで何もやらずに来ているようなことである。手順と方途ということを僕はいつも言うのですけれども、手順というのはきちっとあなたの腹の中にあるわけなんですか。
  133. 竹下登

    竹下国務大臣 これは私が党におりましたときに自分で鉛筆をなめてつくった「郵政、大蔵両省は十分な意思疎通を図り、整合性を重んじて機動的に対処するものとする。」という三大臣合意というもの、当面はこれだなと私も思っております。  さて、その手順をどうしてやるか。いわば制度改正ということになれば、今度はいわば私が提案する法律でない法律を御審議いただかなければならぬ、こういうことにもなりますので、今逐次金融自由化等の問題を通じて意思疎通をますます図っていって、おのずから政府一体の責任で対応する方途を見出していかなければいかぬ。当面はどうするのだと言われれば、三大臣合意の整合性を持って機動的にこれをやっていきます、しかし、おまえ、この間やれなかったじゃないかと言われれば、そのとおりでございますと、こう言わざるを得ないというのが現状であります。
  134. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 じゃ終わります。
  135. 熊川次男

    ○熊川委員長代理 玉置一弥君。
  136. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 今回は対外経済関係のいろんな法案が盛りだくさんに入っておりまして、私も何を聞いていいのかよくわからないので、本当はそれを聞きたいぐらいなんですけれども、特に貿易関係、そして金融の自由化、金利の問題、この辺に関する質問をしていきたいと思います。  四月の二十七日に対外経済対策の発表がございました。市場開放あるいは金融・資本市場の自由化、円の国際化、投資交流の促進、エネルギー、外国弁護士の国内活動、いろいろな項目があるわけですけれども、基本的に見てまいりますと、五十八年十月の総合経済対策について、特に対外的な貿易の促進を図るためのいろんな諸施策というものの追加というか、それ以降外国からいろいろ注文がついた部分について修正をされ、また追加になった、こういう感じを受けたわけでございます。  我が国貿易収支は黒字基調が依然としてあるわけでございまして、先ほども柴田委員の方から金額が発表されましたけれども、一向に改善される方向ではない、こういう感じを受けております。今回の十五項目にわたります対外経済対策、関税についても七十一品目の引き下げをやろうとか、いろいろなことがありますけれども、果たしてこれを全部やって効果が出るものかどうか。今回の対外経済対策というのは、ロンドン・サミットの前に前準備として、特に米国及びECそれぞれの国からの要望のあったものをまとめてこれに対応するためにつくった、こういう感じが非常に強いわけでございます。幾らやっても貿易摩擦の解消というのはなかなかできない。片方では製品輸入拡大を図れと言う者もございますし、また一方では農産品の輸入をやれということもございまして、この両面が同時に日本に押しつけられてきている。それを、製品の場合には一括して取り扱うところがないものでございますから、何とか受け入れていこうという方向にあるわけですけれども、農産品の場合には、日本の農業事情、そして食糧安全保障というか、そういう面から考えて拒否せざるを得ない、こういう状態になっております。  製品輸入は非常にウエートとしても低いわけでございまして、日本の場合に、五十七年度ですけれども、輸入のシェアの中での製品というのが二四・九%、原油で約半分ということでございます。先進諸国それぞれ見てみますと、アメリカで五六・八%、西ドイツ五六・八%、フランス五五・六%、英国六四・八%と、それぞれ日本製品輸入の比率よりも二倍以上に製品輸入している、こういう実績が出ております。こういう状況から見てまいりますと、日本製品輸入のシェアというのは非常に小さいということが言えると思うので、いずれにしてもずっと継続しての問題点ということになるわけでございます。  今回のこの対外経済対策というものを全部実行しても、本当に効果が出るのか、それと、今までいろいろな製品輸入促進というかけ声がかけられたり、あるいは各国にミッションが行ってやられてまいりましたけれども、どうも実効が上がらないというのが各国の評価でございまして、こういう面で、まさに、もうかけ声をかけるのをやめて、制度なりあるいは今の機構そのものの改革というものをやっていかなければいけない時期に来ているのではないか、そういうふうに感じるわけでございまして、そういう面で、私自身問題点としてとらえておることを述べて、それについてどういうふうにお考えになっているのかということをまずお聞きをしたいと思います。  外国メーカーのいろいろな製品を見ておりますと、先ほど大臣の方からお話がございましたように、いわゆる頭脳、頭を使った製品、あるいは複雑なもの、こういうようなものになりますと、日本と外国との品質の格差というものが大変開いております。そして、まず宣伝広告についても、特にEC圏内でのメーカー、製品をつくっている会社、そういう会社の宣伝広告というのはほとんどないというような状況です。アメリカに参りますとまだ宣伝広告というのは若干出てまいりますけれども、それも日本企業と比較をいたしますと大変な差がある。そして日本国内での販売努力、いろいろな売り込みがあることはあるわけでございますけれども、そうしょっちゅう常駐をしてやるというような状況でもない。こういうことを見ていきますと、どうも日本国内において販売するための努力が足りない、こういうことが言えるのではないかと思います。そして、特に日本国内の販売権、これを総代理店制とかあるいは特約店制というふうに限定をしまして、その総代理店を通さなければ日本国内での販売ができない、こういう形に定着をしてしまっている。その総代理店は、大きな商社のときもありますが、大部分が中小零細の小さな企業に頼っている。これが逆に販売促進という面でのブレーキになっているのではないか、こういうふうに思うわけです。  それと、三年前でございますか、酒税の改定のときに、洋酒の今の中身をいろいろ調べたことがあるわけです。そのときに、一つの例として申し上げますけれども、例えば日本国内で販売される洋酒、一万円という値段のものがありますと、そのうち製品の価格が二千五百円ぐらいで、そして税金が千円ぐらい、フレートが千円ぐらい、そして残りが販売マージンということで、大体五五%ぐらいが販売マージンとして取られている、こういう状況になっております。  こういう実態から見ますと、どうも売り先というか扱い先が限定されているということが、一つはマージンの幅も大きくなり、そして販売シェアの拡大につながらないということになるわけでございまして、これらの点を変えていかなければ、私は、外国からの製品輸入というのは非常に難しいのではないか、こういうふうに思うわけです。  私自身としてこういう意見を持っているわけですけれども、今までいろんな交渉の場でそれぞれ外国に対してどういうことを言われてきたのかというのを含めて、今私が申し上げました内容につきまして、どういうふうに考えておられるか、その辺についてまずお伺いしたいと思います。
  137. 奈須俊和

    ○奈須説明員 お答えいたします。  日本製品輸入促進する場合に、外国の製造業者あるいは輸出業者の販売努力が非常に重要である、先生のおっしゃるとおりと私どもも存じております。  我が国は自由市場経済でございますから、我が国の消費者のニーズに合ったものを販売する方が開発して、それを消費者の方に種々のマーケティングの措置を講じて販売する、こういった面の努力が基本でございます。そういう意味で、今総代理店のお話もございましたが、総代理店を使うのも一つの方法、それ以外のルートを通ずるのも方法かと思っております。総代理店を一社だけ決めまして日本の市場における販売努力をやらせる、相当広告宣伝に費用がかかります。それだけの費用を日本国内で出費するためには、やはりその商品の販売はその会社を通じてやるというのがコマーシャル的に妥当な場合もあるかと思います。いずれにしましても、こういう販売経路、これは外国企業がみずからの日本における販売戦略としてどういうものを選ぶかということで進めるべき問題かと存じております。  以上であります。
  138. 竹下登

    竹下国務大臣 ただいままでの御意見を交えた御指摘でございます。  そもそも対外経済対策、こういうものを考えます場合には、これは何としても貿易立国であります我が国としては、自由貿易体制というものが維持強化されて、しかも調和ある対外経済関係形成という観点からこれは検討していく必要性があるわけであります。したがって、この間発表いたしました中で一つ例をとれば、関税の引き下げということになりますと、そういう自由貿易体制を維持強化するという観点からは、また確かにそれはその国なりの要請に応ずることになりますので、その国にまた別の品目において保護主義が台頭することを未然に防止するという役割を果たすわけでありますが、元来関税というものの主たる機能は何ぞや、こう言えば、これは国内産業保護のためにつくられたものでございますから、国内産業の事情というものは十分考慮に入れなければならぬ課題である、そういう考え方の上に立って、したがって、選択肢がたくさんあるわけでは必ずしもございません。  そこで、その現状認識の上に立ってもろもろの対策を立てた、しかしそれが決め手で、すべてそれで済んでしまう問題であるとは私は考えておりません。我が国の国内産業というものを、ある意味において国際競争力をつけて、関税の引き下げなり自由化の方向に対応し得る体制も一方ではやっていかなければなりませんし、そして個別的な問題で言うならば、ワインについて昭和六十年度から関税の引き下げの方向で、できるだけ早い機会にその具体的結論を出そうということを、これは我が方の所管でございますから決めたわけでございますけれども、そうなるとまた山梨県というようなブドウの主産地というようなこともすぐ念頭にも浮かんでまいりますし、また一方には、国会でこの間税金上げでまた何日もたたないうちにすぐ関税だ、こういうような議論もございますので、その辺には慎重な配意をしながらも、やはりこれに対応していかなければならぬ重要な課題だ。  その中に例示としてお挙げになりました製品輸入等についての問題は、むしろ関税よりは流通機構そのものに問題があるじゃないか。この議論も確かに私は一理ある議論であろうとは思うのでありますが、その辺も相手様にもよく事情を説明しながら、製品輸入がより平易に行われるような環境の整備等につきましても、自由主義経済でございますだけに、いろいろな環境の整備とかあるいはサゼスチョンとか、そういうことにも私どもは意を払っていかなければならない課題ではないか。  総じて、もろもろの意見を踏まえての見解をただされたわけでございますが、およそ思いは等しくしておるということでありましょう。
  139. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 政府も入って、特に通産の中で対策室をつくられたり、あるいはジェトロを加えたいろんなセンターというか、そういうようなものでやられるというようなお話を聞いておりますけれども、どうもやはり民間ベースのいわゆる利潤を追求する側が乗ってこないという可能性も非常にあるわけでございまして、逆に言えば、何か制度としてメリットのあるようなことも考えていかなければいけないのではないか。いろんなことがあるかと思いますけれども、例えばジェトロなりあるいはそういう役所が中心になった製品紹介センターとか、あるいは輸入製品に対する、補助金というのは今余りつける時期じゃないと思いますけれども、一つの例として申し上げますと補助金、そして、例えば設備関係ですと、特別償却とかいろんな方法があるわけですけれども、ある期間を限定して、ある期間に購入された場合には特別償却とか、そういう制度の特権を与えるとか、いろんな方法があると思いますけれども、民間により大きく広げるためには、今申し上げたような何らかの制度を設けていかなければいけないのではないか、そういうように思うわけですけれども、その辺についてはいかがでしょうか。
  140. 奈須俊和

    ○奈須説明員 お答えします。  製品輸入促進につきましては、先ほども先生の御指摘ございましたように、外国企業努力が基本でございます。したがいまして、製品輸入促進対策としまして、やはりそういう外国の企業日本の市場に目を向けるということを第一段階と考えております。  日本市場というのは、特にヨーロッパアメリカ企業にとりましては非常になじみの少ない市場でございますし、競争も非常に激しい、なかなか難しい市場だという理解でございます。そういったことから非常に閉鎖的な市場であるととらえられがちでありまして、もしそういう意識が広がりますと、我が国輸出しようという意欲をそぐことになってしまうんじゃないか。そういう意味で、外国企業において日本市場を正確に理解してもらい、かつ、日本で先ほど先生御指摘のような販売努力をする等の場合に必要な日本の事情を十分伝える、そういう助言を与えるというようなことも進めてきております。  そういう基本でございますが、そういう私どもの対外的なPRというものも一部効果があったかと存じますが、特に最近になりまして、ヨーロッパアメリカから、そういう国々の政府、それから産業界、いずれも対日輸出努力を非常に積極化してきております。例えば、御承知かと存じますが、つい数日前までドイツ博というものが開かれておりまして、これはドイツ政府の事業でございます。日本で大規模なドイツの博覧会をやって、日本の市場開拓を目指そうという努力でございます。同様なプログラムはほかのヨーロッパアメリカの諸国によっても講じられております。したがいまして、第二に私ども行いますのは、こういう外国の対日輸出促進努力を支援して、そういう外国の努力が商談ということで実を結ぶように進めていくことが非常に重要かと存じます。  そのほか、先生ただいま御指摘ございました製品輸入を円滑にするために、これまでにも既に例えば日本銀行によります輸入決済手形制度の再開、それから日本輸出入銀行及び日本開発銀行によります製品輸入金融の実施、それから先生の方からも御指摘ございましたジェトロによります見本市とか相談事業等々の輸入促進対策等々、いろいろな措置を現在までに講じてきております。これらの措置の着実な実施をもちまして、製品輸入がこれからも拡大していく、そういう努力を進めてまいりたいと思います。  製品輸入促進策は外国との協力が非常に重要でございます。これからも外国政府、外国産業界との対話を基礎にして、こういう製品輸入促進を拡大してまいりたいと存じております。
  141. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 今回の対外経済対策というのは、特に米国及びECに的を絞ってやられたものだというような感じを受けるわけです。先ほどから話が出ておりますように、累積債務を大変抱えた国々、こういう国々に対して国際の金融機関でのいろいろな補てんを合しておるところでございますけれども、一方では二国間のいろいろな援助があるわけです。その一つの方法として、逆に言えば国際分業というのもありますし、向こうのいわゆる輸出貿易所得といいますか、その拡大で外貨を稼がせる、こういうこともやっていかなければ今の国際の金融状況の悪化というものは防げないだろう、そういうふうに思うわけでございます。そういう面で見た場合に、今回の対外経済対策はあくまでも先進国相手ということでございまして、開発途上国、こういう国々についてもこういう対外経済対策的なものを考えていかなければいけないと思うわけですが、いかがでしょうか。
  142. 奈須俊和

    ○奈須説明員 私ども、製品輸入促進ということを進めておりますにつきまして、必ずしも国を特定する、限定するということは考えておりません。もちろん、私どものこういう施策の一つの大きなねらいは、世界貿易における保護主義的な動きを抑制するということでございまして、そういった観点から、ヨーロッパアメリカにおきます。そういう保護主義的な動き、これが出てくると、これは世界全体に問題が出るわけでございます。そういう意味で、ヨーロッパアメリカというのはかなりの重要性を持っております。  ただ、それ以外の中進国、発展途上国につきましても、世界経済の重要な一翼を担います我が国としましては、そういう諸国の経済発展のために、我が国国際的な地位にふさわしい積極的な貢献を行っていくべきであると考えております。債務累積等に悩みます中進国、発展途上国からの輸入につきましても、例えばそういった国におきます対日輸出促進セミナーの開催とか、それから我が国から輸入促進ミッションを派遣する、さらにはそういった国々の輸出製品の改良を指導するというふうな事業をこれまでも講じてきているところでございます。
  143. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 いろいろ講じているのはわかるんですけれども、実効が上がらないというのが今までの評価でございますから、国別に本当に何をやるべきかというのをもっとある程度限定してもいいと思うので、その辺を実効の上がるような具体的な対策をぜひお願いしたいと思います。  時間の関係で、あと金融自由化の方へ移りますので、通産の方、本当にありがとうございました。  今回の金融・資本の自由化、こういうものがこの経済対策の中にも含まれているわけですけれども、大臣のお話によりますと、時代の流れであるということでございます。確かに貿易が全世界的に非常に大きく伸びておりますし、日本貿易立国としてむしろ今まで金融・資本の自由化が行われなかったこと自体、非常に不思議だというような感じがするわけです。特に最近外国から、特に強いのがアメリカですね、かなり強引に自由化を迫られてきている。こういうような状況でございまして、今回の中でも、実需原則の廃止とか、指定会社の制度の改革とか、いろいろな具体的な方法、自由化への第一歩といいますか、こういういろいろな条件の整備というものが見られるようでございますけれども、我々が一番心配をしておりまするのは、やはり先ほどからお話が出ておりますように、国内の金融機関なりあるいは国民の受けとめ方、そして金融市場、それぞれが日本独自のものであり、アメリカから言われた、あるいは諸外国から言われたといってそのまま受け入れていけば、逆に日本国内が大変混乱をするということが言えると思います。  貿易摩擦の一環としていろいろな自由化の話が出てきたわけでございまして、この自由化そのものの目的は、それぞれ相手国が利するためのものであろうというように推測をするわけですけれども、しかし一方では、貿易摩擦の解消という面から見てもそうでございますし、大臣がおっしゃいました時代の流れから見ても、もう既に対応していかなければいけない時期に来ておるというのも事実でございまして、日本国内の金融の構造改善といいますか、こういうものを進めながらやっていかなければならない。ただ単に今強く要望されたから、それだけ受けるというわけにはなかなかいかないと思うのです。ですから、一つの金融自由化のための手順、そしてそのために何をやっていくべきかというのがあるかと思いますけれども、特にその辺がなかなか論議になってない。いろいろな雑誌だとかを見ておりますと、話は出ているわけですけれども、例えば円ドル委員会とかあるいはいろいろな折衝事の中で聞こえてくるのは単発にしか聞こえてこないわけでございます。  私がある本を読んで、特に配慮をしなければいけない点というのがあるわけですけれども、例えば急激な自由化が進みますと、銀行と証券とが入り乱れた過当競争になる。これが銀行の利ざやの急激な縮小になり、信用秩序の崩壊につながるというような問題。それから財政再建を通じて国債発行の抑制を図るということ、これがなければ長期金利の高とまりを通じて金利全般が押し上げられる、そして景気への悪い影響をもたらすばかりでなく、資金の流れをゆがめるということ。そして郵貯の問題。先ほども出ておりましたけれども、郵貯が個人預貯金の三〇%というウエートにある、これがプライスリーダーとなるだろうというようなことが言われております。こういうことをそれぞれ解決していかなければ、ただ単に自由化ということで進んでいきますと大変な問題を残すということになるわけでございまして、まず金融の自由化というのは何のために行われるのかということ、そして今申し上げましたような国内市場の整備、これをどうやっていくのか、その辺についてお伺いしたいと思います。
  144. 宮本保孝

    ○宮本(保)政府委員 金融の自由化を進めなければいけない理由といたしましては、先ほど来お話が出ておりますように、非常に国際的に自由化が進んでおるわけでございまして、しかもそれの影響を国内的にもろに受けるというような状況でございますから、日本の市場を自由化いたしませんと、そういう世界的な国際化の動きに日本経済、金融が大変おくれてしまう、適応できないということでございまして、非常に混乱してしまうんじゃないかということがございますから、日本の金融市場なり銀行経営というようなものも自由化しておく必要があるというのが第一点でございます。  第二点は、やはり自由化によりまして金融取引なりあるいは銀行活動なりが経済、金融の原則に従って動いていくということでございますから、それはこういう自由主義経済社会におきましては、まさにそれこそ効率化につながっていくわけでございます。銀行経営のみならず金融全体の効率化にもつながるということでございますから、やはり我々といたしましても積極的にこの自由化は進めていかなければいけないと思います。  ただ、御指摘のようにいろいろ問題点もあるわけでございまして、先ほど来大臣もお答えになっておられますが、金融につきましては、物の動きのように単純に物が行ったり来たりするだけじゃございませんで、長年のそれぞれの制度、慣行があるわけでございます。それに従って自由化を進めていきませんと、また逆に混乱してしまうという点があるわけでございます。したがいまして、そういう我が国の制度、慣行等にも十分配意しながら、国内の金融秩序に混乱を起こさせることなく、ソフトランディングといいますか、金融自由化を我が国経済、金融の中に軟着陸させていくというのが私ども行政の役割ではないかというように考えておるわけでございます。
  145. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 時代の流れといいますか国際化の流れ、孤立しないようにやっていこうということですけれども、今軟着陸と言うんですが、軟着陸というのはやはりおりる場所がないとだめなわけですね。ところが場所の前に垣根がいっぱいありまして、まず垣根にひっかかるだろうというような感じがするわけです。  それと、自由化といってもいろいろな方法があると思いますけれども、例えば業務の自由化、これは銀行業務あるいは商品なりを自由にしていくということ、それから一つはまた金利の自由化というものがありまして、どちらをどういうふうに進めていくかというのも一つの問題だと思うのです。国民にとってみれば、金利の自由化がやられればやはりメリット、デメリットあるわけです。心配なのは、一つは国債の問題、それから郵貯の問題、この二つが絡んでくるわけですね。悪くすると高金利になります。今日本企業の自己資本比率というのは三〇前後だと思いますけれども、アメリカは七〇前後なんですね。それだけの開きがある。だからあれだけの高金利でも企業が生活をしていける、生活をするというのはおかしいですけれども、生き延びていけるということです。日本がもし金利が自由化になりまして、それだけの高い、今のアメリカに近い金利日本国内が移行した場合に、今度は日本の各企業に大変な影響が出るだろうという心配もしているわけです。預金者にとったはいいことなんですね。ところが、お金を使っている側にとっては大変な負担になるということが考えられるわけです。  その辺も含めて、長期的な一つの構想というものを押し出しながら、金融機関だけではなくて、金融機関を利用している企業なり事業家の方たちが対応できるようなある期間というか、受け入れ態勢ができる期間が必要だと思うのですけれども、どういう自由化を進められるかという話と、要するに業務が先かあるいは金利が先かとか、それから今度は影響を受ける側の対応の期間、その辺をどういうふうに考えられているのか、お伺いしたいと思います。
  146. 宮本保孝

    ○宮本(保)政府委員 まさに御指摘のとおりでございまして、金融の自由化につきましては、金利の自由化、金融市場の自由化、銀行業務あるいはその取り扱う商品の自由化、あるいは制度の自由化、いろいろな自由化がございまして、非常に幅広い概念としてとらえられるべきものでございます。その場合にどれから進めていくかというような御指摘につきましては、やはりそれぞれすべてについて関係し合っている要因でございますから、例えば金利の自由化を進めますためには、余り制度ががっちりできておりますと金利の自由化も進まない。また逆も真でございまして、したがいまして、業務の自由化あるいは制度の自由化、それと同時に金利の自由化というものをバランスをとりながら進めていく必要があるのではないか。よく金利の自由化を進めてから業務だというようないろいろ御意見ございますけれども、やはり両々相まって自由化というものが円滑に進んでいくのではないだろうかというふうな気がいたします。  それから、まさに自由化を進めていくに当たりまして、現在のように国際的な高金利であるとか、あるいは国内的には大量の国債発行というような状況のもとではどうしても金利が高とまるという状況がございますから、金利を自由にいたしますと、市場で高どまる金利に収れんして金利が決まっていくわけでございますから、どうしても今のような状況でございますと金利が高くなるんじゃないかという点がございます。そこで、確かに預金者にとりましては非常にいいことでございますが、一方で金融というのは借り入れる方もあるわけでございますから、そういう自由化によって余り高金利をもたらすようなことになりますと、これは民間経済の活力を失わせてしまうということでございまして、私どもといたしましては、金利の自由化を進めるに当たりましても、タイミングをとらえるとか、あるいは一つのことでステップを踏んだら、そのステップがどういう影響を与えたかということを見ながら次のステップを踏んでいくというようなことで対応していきたいと思っております。  しかし、そうかといって、ただやみくもに場当たり的にやるんじゃなくて、総理からの御指示にもございますが、近々日米の話し合いが進みました段階では、展望なり指針みたいなものをお示ししながら、段階的、漸進的に、かつ積極的に自由化を進めていくということだと思うわけでございます。
  147. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 特に、今のお話を聞いておりましても、金利が大体後回しにされているというのは、郵貯の関係とか、それから政府金融機関、この辺のまだどうするかという話し合いがついていないのだと思います。商品だとか、できるところから徐々にやろうという感じだと思うのですけれども、そういう意味で考えて、まず郵貯のウエートが非常に大きい。それと、逆に言えば、郵便貯金金利がもし今のまま自由化されたとして同調するということになりますと、逆に財投の資金に影響するのではないかという心配をするわけですね。それと、財投の資金というのは今固定ですから、そのまま変動しないだろう。逆に預金金利、貯金金利が上がりますと逆ざやになるということで、これがまた財政負担になる。こういうことを考えていきますと、下手をすると大変な逆ざやが出て大変な持ち出しになるという心配もあります。  郵政の方に来ていただいておりますけれども、まず郵政として金利自由化にどういうふうに対応されるか。一つは、今の個人預貯金の三〇%のウエートになってきた、その実感も踏まえて、その辺の考え方をお聞きしたいと思います。
  148. 結城淳一

    ○結城説明員 金融の国際化、それから国債の大量発行、こういったことを背景といたしまして、金利の自由化は避けられない時代の流れとなっておるというふうに我々も受け取っております。郵便貯金も、そういった意味で、このような動きに積極的かつ前向きに対応していかなければならないというのが実態でございます。  従来、個人預貯金金利は、人為的な低金利政策のもとで、本来あるべき水準よりも低位に規制されてきておりました。しかし、金利自由化は、この規制を廃止いたしますので、金融機関の競争を通じまして、市場実勢を反映した、本来得らるべき合理的な金利を実現する可能性を持っているわけでございます。こういった金利の自由化に対して郵便貯金が今後十分に対応していくためには、市場の実勢にふさわしい金利が提供できるようにすることが必要でございます。そのためには、郵便貯金資金の運用方法の改善、こういった点が不可欠であるというふうに考えているわけでございます。
  149. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 金融関係のどの人の意見を聞いても、自由市場となった金利のプライスリーダーとなるだろう、こういう話があるわけですね。今お伺いしますと、市場の実勢に合わせてということで、感じからすると実勢を調べて、すべてそのレートに合わせていくということに単純に言えばなるのですけれども、現状のように人為的に金利を設定するということも、逆に言えば可能なわけですね。全国一律ネットワークですから、大体名古屋金利とか京都金利とか、いろいろ実勢に合わせた金利があるわけですけれども、それとは別に全国一斉のネットワークで金利を決めるということは、そういう地方金利へも影響するのではないかというような心配もあるわけです。  それと、財投資金として確保する分と、それから今何か運用を考えたいというお話をされましたけれども、まず今、例えば八十兆あるうちの、要するに赤字になったら国の持ち出しで国の負担になるわけですから、それも大変だ、だから有効活用していただくのが我々としては一番いいわけですけれども、一方では財投資金というのは当てにしている部分もあるわけですから、その割合がどのくらいになるのかというのも、今の答弁ですとちょっと不明だと思うのです。ですから、金利のつけ方の問題と、それから財投資金としてどの程度であれば確保できるのか。逆に言えば、自分たちで運営するというならば、その方法と、逆ざやにならないための利ざやというか、何%ぐらいという、その辺をお伺いしたいと思います。     〔熊川委員長代理退席、委員長着席〕
  150. 結城淳一

    ○結城説明員 金利の自由化を進めるに当たりまして、郵便貯金の個人預貯金に占めるシェアが三〇%であるというようなことから、郵便貯金がプライスリーダーとなるのではないかという御指摘でございます。そういった議論も確かにございますが、これは郵便貯金が民間よりも高い金利を付利するのではないか、そういった懸念から出たものではないかというふうに考えられるわけでございます。しかしながら、郵便貯金は金利自由化のもとでも独立採算を維持していかなければならないということになっております。また、先ほど申しましたように、直接運用を行ったといたしましても、公的資金であるという制約がございますので、運用対象というのは公共債とか財投、こういった融資に限られるということもあるわけでして、運用利回りにも限界があるというふうに我々考えておるわけでございます。したがいまして、民間が提供できる金利よりも著しくかけ離れたような高い金利を付利することはあり得ませんで、郵便貯金がプライスリーダーになるという御指摘は当たらないというふうに考えております。  それから財投との関係でございますけれども、郵便貯金が財投に対して長期安定的な資金を供給していくという役割、これは今後も変わらないというふうに考えております。郵便貯金の資金というのは、現在全額大蔵省の資金運用部に預託することになっております。その預託利率に市場実勢が反映されておりませんで、その水準というのは、同じ国の資金である国債に比べても常に低くなっているというのが実態でございます。こういった意味で、金利の自由化のもとにおいて市場実勢に合った預貯金金利を我々として提供していく必要があるわけですから、そのためには、郵便貯金資金の運用方法、これをやはり改善する必要があるということで、今後とも関係方面の理解を求めて、そして実現に努めてまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  151. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 今、財投資金というのは七・一%、そのぐらいだったと思いますけれども、国債との差は確かにあるわけですね。ところがどっちについても国のものですから、それはいいのじゃないかと思うのですけれども、我々がちょっと心配しますのは、例えば政府系金融機関、こういうところに回る金利がどう変動するのかということ。それから、逆に言えば政府系金融機関から貸し出される金利、この決定方法をどうするのか。それと政府系金融機関そのもののあり方というものが今問われている、そういう時代に来ておりますけれども、これも含めて考えていかなければいけないと思います。この辺をどういうふうに考えられておるか。それはすべてはあれだと思いますので、大体自由化に合わせた形で、金融機関の整理統合というか、要するに構造改善、この辺の観点から、もしわかればお答え願いたいと思います。
  152. 西垣昭

    ○西垣政府委員 国の制度信用を通じて集まった資金は資金運用部資金として統合運用するというのが現在の資金運用部の考え方でありまして、臨調も、この統合運用の原則は堅持すべきだ、こういうことを言っております。ただ、資金運用部を中心にしまして運用しております財投の諸機関の中には、その合理化等について十分検討すべきものがあるということでございまして、今御指摘がありました政策金融機関のあり方につきましても、この辺の検討はしなければならない、こういうふうに思っております。  金利関係で申しますと、資金運用部で預かる場合の預託金利につきましては、預貯金金利が改定になる都度見直しをいたしておりまして、現在は七・一%ということになっておりますが、それと同じ利率で財投機関には貸し出しておりまして、今は借りる方も七・一%、運用する方も七・一%、こういうことになっております。この辺の根幹は変わらない、こういうふうに思います。  問題は、預貯金金利が変動したときに預託金利の改定をするということで来ておりますけれども、預貯金金利の変動がどういう考え方に基づいて行われるかというのは、財投に関係あります郵貯の金利のあり方だけではなくて、全体の預金金利をどうするかということの中で大局的に判断すべき問題ではないか。私どもの方の財投としては、それを受けて、ではどうするかということを検討していくべき問題ではないか、こういうふうに考えます。
  153. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 預ける側、預かる側といいますか、要するに郵貯の方ですね、郵貯の方が市場実勢を反映させるということになりますと、その全額を資金運用部が預かるわけですから、おのずから資金運用部の貸し出しのレートが決まるということになりまして、それが決まりますと政府系金融機関のレートも決まるというようなことになると思うのです。郵貯が決める実勢金利というのは、非常に各所に響くような内容になると思うのですね。政府系金融機関が決めますと、それに沿って、逆に言えばいろんな金融機関、特に中小企業相手のその辺の金融機関のレートが決まる、こういうことになるわけです。こういうように見ていきますと、どうもプライスリーダーにならざるを得ないというような気がするのですけれども、いかがですか。
  154. 結城淳一

    ○結城説明員 先ほどもお答えしたわけでございますが、郵便貯金としては、公的資金であるということから、資金の運用という点、これはやはり公共債、国債といったようなものに限定して考えざるを得ないというふうに考えておるわけでして、したがいまして、民間の金融機関が市場で貸し出す金利、これに比べて国債等の運用が上回る場合もあるかもしれませんが、大体は平均的な市場の実勢を反映した金利になっていく。特に現在では国債というのが大変大きなウエートを占めております。そういうことから、昨年、五十九年度予算ということで一兆円の国債引き受けを予算要求したわけでございますが、残念ながら認められなかったというような経緯もございまして、そういう運用利回りの面からプライスリーダーになることはあり得ないというふうに考えているのが実態でございます。
  155. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 今申し上げたのは、運用の方じゃなくて預かる方なんですね。貯金の金利、これがすべての決め手になるんじゃないかということなんです。ですから、まだ三者整合性のあるところがないようでございますから、これから自由化を踏まえて、その整合性ある意見をぜひ確立していただきたいと思いますが、大臣、もしよろしかったら、その整合性ある今の金利の話ですけれども、その辺について、郵貯の問題が非常に大きくこれから波及するということになるわけでございまして、先ほどの柴田委員の続きになりますけれども、もう一回大臣の今後の決意といいますか取り組み方、それについてお伺いして、終わりたいと思います。
  156. 竹下登

    竹下国務大臣 郵貯を一応三百万といたしますならば、個人預金であり、あるいは相対的に言えば小口預金であるとも言えるでありましょう。したがって、どこの国の歴史を見てみましても、金利の自由化という問題はまず大口からやっていこうというので、今日の我が国の取り組み方もそこにあるわけであります。しかし、最終的に考えた場合、今御指摘がたびたびあっておりますように、個人預金の三分の一のシェアを占めるこれをネグって、本来の金利の自由化というものはあり得ない。したがって、一方に、大口からというよりも一挙にやるべきだという議論も全く存在しないわけではございません。が、歴史的に見ても、大口から逐次やっていくというのが、言ってみれば、到着地点があるなしの議論はございましたが、ソフトランディングの一つの方法でございましょう。  そういうところから、現状認識を明らかにするとすれば、やはり今日の郵貯の金利というものは、その決定の仕方が二元的になっておるというところがたびたび主張されてきておる問題点であります。したがって、それを二元的な制度のままでいかにして運用するかというのが過般の三大臣合意というものであって、整合性を持って機動的に進めていくというのが現状の対応の仕方だと思います。さはさりながら、先般の公定歩合引き下げのときに必ずしも機動的にいかなかったじゃないかと言われれば、まさにそのとおりですとシャッポを脱がざるを得ない。我々にも反省がございます。  ですから、今の場合は、相互の理解、協力というものを得ながら、あの三大臣合意のような姿で金利が決定されていく姿を、まずは当面の課題としては考えていかなければならぬ。しかし一方、自由化の流れに対する対応の仕方というのは、やはり大変な問題点でございますから、今すぐ、およそどれぐらいの時期にどういうふうな対応をして、制度の改正も行ってというようなスケジュールがあるわけではございませんけれども、関係者間の協議を濃密に重ねることによってその方途を見出していかなければならぬ課題だという問題意識は、私も等しくいたしておるところであります。
  157. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 終わります。どうもありがとうございました。
  158. 瓦力

    ○瓦委員長 正森成二君。
  159. 正森成二

    ○正森委員 対外経済関係の法案について若干の質問をさせていただきます。  今年度の予算では、経済協力費が前年度比七・九%の伸び、五千四百三十九億円であります。政府開発援助、ODAは五千二百八十億円で、前年度比九・七%の増になっております。ODA全体の事業と申しますと、これに財政投融資や国債やその他の資金を加えたものというようになっておるはずでございますが、ODA全体の規模、これは一体幾らになっておるのか、お答えを願いたいと思います。
  160. 的場順三

    ○的場政府委員 計数の話でございますので、私からお答えをいたします。  御指摘のとおり、五十九年度の一般会計のODA予算は五千二百八十一億円でございまして、対前年度比は九・七%の増でございます。これに出資国債、それに財政投融資等を加えました事業費を試算いたしますと、合計で一兆二千九百五十二億円でございまして、前年度の事業費に比べまして三千二百七十三億円の増となっております。これは主として世銀等国際開発金融機関に対する出資拠出が五十九年度において大幅に増加するという特殊要因によるものでございます。
  161. 正森成二

    ○正森委員 今お話しになりましたように、三千数百億円の伸びだということになっております。その理由は、国際関係機関への出資が五十九年度は特に多いからであるという答弁でありますが、それに関連してお伺いしたいと思います。  我が国は、新聞あるいは論文を拝見いたしますと、世界銀行の特別増資とIDA、第二世銀の第七次増資、これを絡めて相当強硬な主張をしたということが報道されておるんですね。私が知っておりますところによりますと、これまで我が国は世銀における出資シェアが第五位ですね。それに対して、第二位のシェア、あるいは地位と申しますか、それを要求した。その理由は、第二世銀に金を拠出している三十三カ国のGNP総額に対するシェアを見ると、日本は断然二位である、資金調達シェアも日本アメリカに次いで二位である、物を調達するシェア、それも二位であるというようなことを言いまして、世銀での出資シェアが二位にならなければ、第二世銀での出資を要求されている三分の一にするというような圧力をかけて、二位の地位を確保することに非常に執念を示したというように報道されておりますが、その間の経緯についてわかりやすく説明をしていただきたいと思います。
  162. 酒井健三

    ○酒井政府委員 お答え申し上げます。  今回の世界銀行の特別増資は、昨年行われました国際通貨基金の第八次増資に伴うものでございまして、従来、世界銀行におきましては、国際通貨基金の増資がございますと、それの特別増資に見合った部分の増資を行うというようなことが慣行でございまして、御承知おきのように、国際通貨基金の昨年の増資におきましては、日本の地位は引き続き五位ではございましたが、増加割合が割合と高こうございまして、シェアもそれなりに上がったわけでございます。そういうようなことからして、従来からの計算方式でやりますと、世界銀行における日本の順位が五位から二位になるような計算になるのが順当な方式でございます。したがいまして、私どもとして、従来から確立されているような方式で計算して日本が二位になるということであるので、それで各国が合意するのが自然な姿でなかろうかというような主張をいたしました。  他方、第二世界銀行の方の特別増資につきましては、これは各国経済の現状とかあるいは世銀のシェアの順位とか、そういうものの変化というものを勘案して決められるわけでございますが、私ども、対外経済協力、特に国際機関を通ずる資金協力につきまして積極的なスタンスを維持しておりまして、第二世銀の今回の増資につきましても積極的な対応をしたわけです。しかし、累積したシェアで第七次増資後のシェアを計算いたしますと一二・六四%でございまして、参加国のGNPのシェア、これは昭和五十六年をベースにしておりますが、それで見ますと一二・七二%でございますので、それらを勘案しますと、今日の我が国経済的な実力に相応するような協力ということが言えるのじゃなかろうかと思います。
  163. 正森成二

    ○正森委員 今のお答えは部分的な答えで、答えに十分なっていないんですね。それは説明としては伺いましたが、我が国としては世界銀行でいかにも第二位になるのが当然みたいに言われましたが、そうではなしに、一九七〇年から十三年間、シェアはだんだん上がってはきておりましたが、五位という地位は変わらなかったわけでしょう。その前にイギリス、西ドイツ、フランスというのがございますが、その次の第五位というのを動かさない範囲で増資のシェアを決められておったわけで、それをわざわざ今回は、これら前に走っている三国を抜いて、五位から一躍二位にしろ、それをしなければ、ここに報道されているのがございますが、こう書いてあるのですね。「IDA増資の話し合いで日本は「世銀で二位の地位を与えてくれないなら、IDA増資の拠出も要請額の三分の一に当たる六%台に減らす」と”脅し”をかけた。日本は約二〇%の出資を要請されたが、世銀出資比率第四位のフランスヘの出資要請は六%台。そこで「世銀における日本の地位を変更しないのなら、日本はフランスに次ぐ比率しか出せない」と、いわば、すねてみせたわけである。」と、こう書いてあるのですね。これはそのとおりではないのですか。
  164. 酒井健三

    ○酒井政府委員 世界銀行における各国の順位というものにつきましては、もちろん経済的な実体を反映すべきであるというふうに観念されておりますが、ただ、いろいろ発言権の問題というようなことでややプレスティージの絡まる問題もございまして、先生御指摘のように、私ども長い間世界銀行で第五位の地位でございました。しかし、私どもも資金協力に対して積極的なスタンスをとる、それに伴って私どもの発言権、それなりの地位の向上も期待したいというようなことをかねがね主張してきておりまして、先ほど申し上げました今回の世界銀行の特別な事情ということもございまして、各国日本経済的な実力、世界銀行及び第二世界銀行に対する日本の拠出なり、それから世界銀行の起債に対する日本の協力、そういうものも勘案しまして、主要国の間でも、自分が順位が下がってでも日本が二位になるのはこれは同意せざるを得ぬというようなことになったわけでございます。その途中の過程でいろいろございまして、あるいは先生が御指摘のような場面も交渉上の話としてあり得たかと思いますが、そこは交渉上の問題として御理解いただきたいと思います。
  165. 正森成二

    ○正森委員 今そういう答弁がありましたが、別の論文によりますと、日本政府は、世銀でのシェア二位を実現してくれるなら、第二世銀の第七次増資で米国のシェア低下分の肩がわりをしてもよいというように主張したと言われておりますね。事実、結果としてはほぼそのとおりになったのではありませんか。そして、イギリスや西ドイツやフランスは財政も余り楽ではないわけですから、世銀で第二位、第三位、第四位という地位をそれは保ちたいわけだけれども、それを保とうと思えば第二世銀の第七次増資で相当金を出さなければならないということで、日本に世銀第二位の地位を譲って、そのかわり日本に金をたくさん出させよう、こういう選択をしたわけですね。そうすると、国金局長アメリカの出資分の肩がわりをするだけでなしに、今後、日本は世銀第二位の地位を占めたんだから、それだけの責任と役割を果たせということで、本来イギリス、西ドイツ、フランスなどの出資しなければならなかった分を肩がわり的に出資して二位の責任を果たせとか、あるいは累積債務に悩む発展途上国あるいは開発途上国に対するさまざまな責任も同様に大きく果たせという意味での圧力といいますか、あるいは主張を結局許さざるを得ないということになるんじゃないですか。  そういうことだから、今年度の予算でも事業量総体では三十数%という伸び。これは決して我が国に金が余っているからそういうことをやったわけじゃなしに、赤字国債を発行し、その赤字国債の借りかえをやり、健康保険その他の改悪で我が国人民には大きな負担をかけるということをやりながら、結局政府のそういう外交姿勢やあるいは海外国際経済機関に対する姿勢から、必然的にそういう多額の金を要求されざるを得ないということになったんじゃないのですか。それは我が国の国内でさまざまな経済的困難から、予算の配分についてさまざまな要求を持っている国民各層にとっては、必ずしも全面的に賛成できない態度である。世銀で二位になるか、五位になるか、しかも一躍五位から二位になる、それをやってくれればフランス並みの六%じゃなしに、要請どおり二〇%金を出すということであれば、それが果たして国益になるのかどうかというのは検討されてしかるべき問題であると思いますが、いかがですか。
  166. 酒井健三

    ○酒井政府委員 今日我が国経済が自由主義世界の中で第二位のスケール、地位を占めるようになってきておりますので、こういうようなグローバルな国際機関の場におきましては、仮に地位が五位であるというようなことであっても、資金協力は二位の期待をされるということになりがちなわけでございます。そこで私どもとしては、やはり先生御指摘のような国民の税金を使っての資金協力であるというようなことも考えまして、金を出す以上はそれなりの発言権、地位も占める。もちろん地位が上がればそれなりの責任も負担もこれは避けることはできない問題であるかと思います。しかし、こういう問題につきましては、各国それぞれが自分の経済的な地位に、実力に応じてそれなりの協力をしていくのがしかるべきだと思います。  今回の第二世銀の増資におきまして、アメリカ、イギリス、西ドイツは若干シェアが下がりましたが、フランスは若干シェアが上がった。ちょっととる基準の期間がアップ・ツー・デートではないということもございますが、各国それなり経済的な力に応じて、それに応じたような協力をすべきである。そういう意味で、日本も自由主義世界で第二位というような状況になってきたことにかんがみまして、それなりの協力という意味でやっていくという趣旨でございます。
  167. 正森成二

    ○正森委員 大蔵大臣に御見解を承りたいと思います。  今、国金局長は、シェアが第五位であっても経済の力から二位と同じような役割を言われるんだ、それならばシェアも二位になってしかるべきではないかととれるような発言でしたが、これは論理学の問題であって、シェアが五位でも相当多額の出資資金を要求されるなら、二位になればますます要求されるということになる、二位だからおまえもっと出せ、もっと出せということになるので、私が先ほど言いましたように、我が国の現在の財政状況やあるいは臨調行革ということで国民に多大の負担を与えておるという中で、もちろん国際的な経済協力もやらなければなりませんが、それにはやはりほどほどということがあって、今回一挙に財投などを入れた事業量が三十数%も伸びておるということは、いささかバランスを欠いておるのではないかと思いますが、いかがですか。
  168. 竹下登

    竹下国務大臣 この今年度のODAの事業費の予算、これはIDAの出資等によりまして大幅に増加して、三〇%強の増加ということになるわけですが、これは、場合によっては五十八年度に話がついておったとすれば、五十八年度の予算になっておったと思うわけでございますから、その意味においては反動増というふうに私は理解しております。  それから、国際機関出資というのは、経済力に応じたバードンシェアリングということが原則というふうにされております。しかし、交渉事でございますから、私も出かけました際に一つだけ自分が言って当たったことがございましたのは、一二・六か何かでおさめたいという一応の理屈を持っておりまして、一三というのは縁起が悪いと言いましたら、みんなが、ああそうかと言いまして、国際的にも通用したなと思って喜んだことがございますけれども、もちろん交渉事でございますから、その種の話もないわけではございません。が、一つには、やっぱりお互いが国会を抱えておるじゃないか、私がいつも主張しますのは。  我が国の国会では、先ほどもちょっと申しましたが、六〇年代の成長期に、新幹線も黒四ダムも東名高速も、言ってみれば世話になった。そういう意味で、国際的に果たさなければならない役割というものは非常に理解をしていただける立場にあります。しかし、お互い国会を抱えておる限りにおいては、やっぱり整合性のある説明が必要であります。したがって、臨時の増資のようなものだけをいわゆるバードンシェアリングでもって主張され、一方の問題は従前どおりというようなのでは説明がつきかねます。やはり整合性を持った説明をするためには、そういう一つの基準がお互いの国にも必要じゃございませんか。アメリカさんの方は比較的出したがらない状態でございますが、それも説明は我が方のコングレスが許してくれないという説明が多いわけでございますから、我が方の国会は、事これに関しては本当に賛成していただけるだけに、その説明がつかなければならない。  いつでも私の主張の根拠は、国会を最大限に信用した立場において、それにいかに整合性のある説明ができるかということで主張し続けておりますので、本当のところ、二番にしてくれなければ承知しないとか、そんな開き直りもございませんし、少なくとも国際機関への出資については、日本は、相手から見れば甘い、あるいはある種の使命感を持っているというふうな見方をされておるではないか、それは決して私は国益を損なうことでないという考え方で、いつでも主張は、そういう整合性のある国会に対する説明ぶりということで主張しておることは事実であります。
  169. 正森成二

    ○正森委員 シェアが五位から二位になったのについて、何か大臣のお話を伺っておりますと国会が非常に役立ったような御発言で、そうなると質問が多少しにくくなりますが、私が言っておりますのは、やはりそのために財政危機の中で一定の資金が要る。そのバランスが国民に説明されるためには必要であって、やはり五位から二位になったということだけでは、説明として不十分であろうということを申し上げているわけであります。  次に、発展途上国国際機関のあり方に対して、例えば融資条件の硬直性と融資手続の複雑性の問題とか、あるいはいろいろ資金を貸してもらう時にさまざまな注文をつけられる、それがだんだんとミクロの問題でなしにマクロの問題にまで口出しをされまして、その世銀の指示する経済再建計画をやろうとしたところが、例えば食品価格引き上げによってエジプトで暴動が起こったというように、非常に内政干渉的な問題があるとか、あるいは意思決定のメカニズムヘの不満、これは例えば世銀の場合には先進国が投票権の六〇・七%を握っており、IDAの理事会の場合は先進国が九三・九%を持っておるというような不満を持っておるという問題について、外務省に、どのように認識し、どういうぐあいに今後の方針を持っておるかということを私はお伺いしようと思いましたが、時間が非常にたっておりますので、この点は問題の指摘だけをいたしまして省略させていただきます。後で機会があればまたいろいろ説明をしていただきたいと思います。  そこで次に私が伺いたいのは、国際援助機関の融資先の偏りももちろんでありますが、日本の二国間援助がやはり非常に偏りがあるのではないかというように見られる点であります。  ここにシュナイダー氏でしたか、アメリカの上院外交委員会公聴会で去年の二月十七日に証言をされております。この証言の中の各所で、アメリカが戦略的に重視している国について触れておりますが、その国を全部拾ってみますと、大体地域別に三十六カ国が挙げられるようであります。その三十六カ国の中から、国民一人当たりのGNPが非常に高いイスラエル等々、それを引きまして三十カ国にしてみますと、引いた国はイスラエル、スペイン、ポルトガル、ギリシャ、キプロス、それから紛争国のナミビアでありますが、それを除いた三十カ国に対する我が国のバイラテラルな援助額というのが非常に多いように思われるのですね。  それで、ちなみにその三十カ国に対する一九八三年の交換公文ベースの額及び全世界援助総額に占める割合、それに比較して、八二年以前の、どの年度でもいいですが、年度をとって比較対照してお答えを願います。あらかじめお願いしておきましたから、資料があるはずです。
  170. 木幡昭七

    ○木幡説明員 お答え申し上げます。  ただいまの御質問につきまして、シュナイダー国務省次官の米国議会における証言が引用されておるわけでございますが、実はこの国について、私ども全部援助しているわけじゃございません。これは先生御案内のとおりでございます。  そこで、国について全部挙げるということは、国の数も多いものでございますから、いずれまた御要望があれば検討させていただきますが、特に御関心の向きと伺っております例えばエルサルバドル、ホンジュラス、ジャマイカについて、八二年度について数字を挙げて申し上げたいと存じます。  まずエルサルバドルでございますが、エルサルバドルにつきましては三億一千二百万円のこれは無償資金協力で援助をいたしております。  それからホンジュラスでございますが、合計で十六億四千二百万円の援助をいたしておりますが、これも同じく無償資金協力でございます。  さらにジャマイカでございますが、ジャマイカにつきましては一九八二年度は援助をいたしておりません。八一年度の数字がございますが、これは総額で二十一億円でございます。これは有償資金協力、借款でございます。
  171. 正森成二

    ○正森委員 八三年は、交換公文ベース。
  172. 木幡昭七

    ○木幡説明員 八三年は、今申し上げました国について資料があります分を申し上げますと、まずエルサルバドルでございますが、これは今のところ集計中で、実は大変申しわけないのですが、正確な数字、持っておりません。  ホンジュラスでございます。ホンジュラスにつきましては、八三年度に有償資金協力で九十七億円強の援助をやっております。それから無償資金協力につきまして十三億円の援助をいたしております。  それからジャマイカでございますが、ジャマイカにつきましては有償資金協力、八三年度合計で百六十一億円強の有償資金協力ということでございます。
  173. 正森成二

    ○正森委員 そういう答弁ですが、私どもが外交青書と八三年の官報で計算したところでは、もちろんアメリカが重視しております戦略国三十国については、我が国援助をしていないという国も十カ国くらいございますから、あなたのおっしゃるとおりですが、それを総計しますと三十カ国で一九八三年交換公文ベースでは全世界援助額の七四・七〇%を占めております。ところが、例えば一九八一年ではそれは四〇・七二%にすぎないということで、いかにこれらのアメリカの重視する戦略国を、我が国が最近重視しているかということを示していると思います。  なお、今私が事前に頼んでおきました三カ国について申しますと、これは今円でお答えになりましたが、ドルで言ってみますと、エルサルバドルでは、八二年に五万ドルだったものが百二十六万ドルと増額を約束しております。それからジャマイカについては、八二年は今言われたように供与なしであったものが、八三年には一挙に六千七百九十六万ドルの約束であります。ホンジュラスについては、八二年に六百五十九万ドルだったものが、八三年には実に約七倍近くの四千四百二十万ドルであります。  これらの三国がいずれもどういう国であるかということは申すまでもありません。例えばホンジュラスというのは、ニカラグアヘの軍事干渉と挑発を行っている国であります。それからジャマイカというのは、アメリカのグレナダ侵略に参画した国であります。エルサルバドルというのは、民族解放運動が前進しておるものを弾圧している独裁政権であります。こういうように非常に問題のある国に対して、我が国の対外援助が、従前よりも急速にふやして使われているということは、非常に問題であるということを指摘せざるを得ないわけであります。  先ほど同僚委員から、フィリピンに対する援助の問題が出ましたが、これも、フィリピンというのは非常に問題のある国ですね。外務省は、フィリピンのマルコス政権をどういうものと考えて、例えばフィリピンに来られた国会議員等に説明をしておりますか。
  174. 橋本宏

    ○橋本説明員 ただいまの先生御指摘のマルコス政権の性格でございますけれども、これは先生も十分御案内のように、政府といたしまして第三国の政権の性格について公式の場でコメントすることは内政事項になるということでございますので、この場においてコメントするのは控えさせていただきたいと思います。
  175. 正森成二

    ○正森委員 あなた方、国会ではそういうきれい事を言うのですよ。ところが、ここに在フィリピン日本国大使館が出している「フィリピン事情」というのがあるのです。それのコピーを持ってきた。これは昭和五十三年十二月に出たものですが、これはフィリピンなんかに行った国会議員等々に、御勉強のためにといって渡すのですね。ここに「在フィリピン日本国大使館」と書いてある。その中でこう書いてあるのです。   比の戒厳令体制は、通常のそれと異なり、軍人による統治ではないところから、「文民による戒厳令」あるいは「民主的革命」などと称せられ、文民政府による上からの改革という点が強調されている。しかし、基本的には、全ての権限がマルコス大統領に集中した独裁体制である。 こう書いております。国会では言えないことを、あなた方は現地で在フィリピンの大使館が「フィリピン事情」ということでみんなに配っているじゃないですか。そういうことをやっておいて、国会で私が聞いたら、第三国政府について言うことはできないといってきれいごとを言う。そんなことを言って日本の国会議員がだませると思っているのか。まして私はこんなに目が大きいのですよ。字ぐらいちゃんと読めるのだ。その中でちゃんとこういうことを言っているじゃないですか。しかも、これは五十三年の十二月で、それからアキノ氏が暗殺されるというようなことがあって、ますますフィリピンというのは独裁政権になっておるのです。  これは私が、日本共産党の国会議員である正森成二が言っているだけじゃないのです。与党である自由民主党の石原慎太郎氏が八四年三月二日の朝日新聞に、「なぜマルコス政権を援助 アキノ氏の死の警鐘を生かせ」ということで投稿しているのです。その中にどう書いてあるか読んでみましょうか。こう言っているのです。   マルコス株式会社とさえ論評されるマルコス政権下で、フィリピンの貧困と腐敗は、その怪奇さ、グロテスクさで現代の黙示録の世界ともいえる。 さすがは作家ですな、こういうことを言っている。   今日では貧困、治安、綱紀の乱脈は徹底し、もはやフィリピンは近代社会の体を成していない。地方のゲリラと戦う政府軍がその兵器をゲリラに売り渡し、その金で麻薬を買い占め、それを首都で売りさばく、と私も耳にするなど、こっけいでグロテスクな挿話はこと欠かない。  それで、アキノ氏のことに触れて、まず民主議会を復活させるよう大統領を説得すべく帰国し、その場で暗殺された。   彼の死はフィリピン社会に大きな波紋を与えたが、フィリピンにかかわりある日本米国もまた、彼の死が証し出したものを冷静に見つめ、自由世界の安定のためにも、マルコス政権とのかかわりを反省する必要がある。 こう言って、五百五十億円の商品借款を含む援助に触れた後で、  フィリピン側は日本に、援助は従来のプロジェクト援助ではなく、不足している商品援助と使用目的を定めぬ融資の形で支出するよう要求してきているようだ。   行革財革で血の汗を流しているわが国が、国民の血税の中から二億ドルという巨費を、あのマルコス政権への支援として投じる必要が、どこにあるのか。 こう言っているのですね。これは自由民主党の議員でありますが、ここで言っている限りは真理であります。ここが非常に問題なんですね。(「自民党にもいろいろいるからね」と呼ぶ者あり)だから自由民主党と言うのでしょう。それはまあいいところでありますが、しかし、こういう意見が出ている国に多額の援助、しかもいろいろ問題があるつかみ取りの商品援助。商品援助の売却代金は、五月に行われる選挙の活動資金に使われるということさえ報道されているわけですね。  そういうことですから、ほかに資料も持ってまいりましたが、例えば暗殺されたアキノ氏の弟さんはこう言っているのです。   現政権が五月の国会選挙のテコ入れに使う恐れがあり、供与を来年か、せめて選挙後に延ばすよう訴えたい。   借款には感謝するが、独裁者を支えるのは、やめてほしい。 こういうぐあいに言っているのです。  あるいはフィリピン大学の第三世界研究所長のダビッド教授はこう言っている。   日本政府はフィリピン政府の要請で供与額のうち三百五十億円をプロジェクト借款から商品借款に切り替えたが、これはマルコス政権とそれにつながる企業、実業家への急場しのぎの援助であり、国民の大多数を占める貧しい人々の手元には届かないだろう。また、援助の時期も悪い。援助がないと困るのは事実だが、いま国民の間には多少の犠牲を覚悟のうえで民主主義の回復を図りたいとの願いが高まっている。   今のような援助を続けるなら、日本はマルコス独裁政権を支持しているとしか思えなくなる。 こう言っているのですね。  私は、こういうことを言われている、それは真実であろうというように思うのです。ですから、いろいろ申し上げたいと思いますが、時間が参りましたので、ほかに通告した質問はやめますが、そういう点を指摘して、与党の中にさえ、この点については、心ある人がそういうことを言っておられるものについて、やはり大臣はよくお考えになる必要があるのじゃないかということを申し上げ、御感想を伺って、私の質問を終わります。
  176. 竹下登

    竹下国務大臣 フィリピンの問題につきましては、第一には、総合的にこれを勘案した場合、いわゆる一政権というものを対象にして考えるのでなく、経済的困窮の度合いを増しておる国民自身を対象にして考えるべきであるという基本的な考え方、それから二番目には、事ほどさように混乱をいたしておりますので、いわばこの商品借款、まあ従来ならば感覚的には最貧国を対象とさるべき商品借款も、この際は両国の国民にとって幸いであろうという考え方、それから三番目には、選挙があるからそれまで延ばそうというようなことは最も避けるべき考え方ではないかという判断等から、内閣一体の責任で既に決定をしたという事実を率直に申し上げます。
  177. 瓦力

    ○瓦委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  178. 瓦力

    ○瓦委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  調和ある対外経済関係形成を図るための国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律等の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  179. 瓦力

    ○瓦委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  180. 瓦力

    ○瓦委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、中村正三郎君外三名より、自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合四派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者より趣旨の説明を聴取いたします。伊藤茂君。
  181. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、提案の趣旨を御説明申し上げます。  御承知のとおり、この法律案につきましては、審議の中でさまざまな議論が展開されました。この附帯決議案は、これらの議論を踏まえ、政府に対し特段の配慮を要請しようとするものであります。  なお、個々の事項の趣旨につきましては案文で尽きておりますので、その朗読により趣旨の説明にかえさせていただきます。     調和ある対外経済関係形成を図るための国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、左記事項について配慮すべきである。  一 世界経済における我が国役割と責任が益々増大する中で、世界経済活性化と南北・東西問題における調和ある対外経済関係形成を図るため、自主的かつ積極的に努力すること。  二 累積債務の増大など開発途上国の経済が深刻さを加えている状況にかんがみ、南北問題の打開・開発途上国の経済と生活水準の向上のために、我が国は積極的に貢献するよう努力すること。  三 国際金融問題に適切に対処する上で国際金融機関の果たすべき役割が重大化していることにかんがみ、その運営についてもより積極的に貢献するよう努力すること。 以上であります。  何とぞ御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  182. 瓦力

    ○瓦委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  お諮りいたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  183. 瓦力

    ○瓦委員長 起立多数。よって、本案に対し、附帯決議を付することに決しました。  本附帯決議に対し、政府より発言を求められておりますので、これを許します。竹下大蔵大臣
  184. 竹下登

    竹下国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨に沿って配慮してまいりたいと存じます。ありがとうございました。     —————————————
  185. 瓦力

    ○瓦委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に対する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  186. 瓦力

    ○瓦委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  187. 瓦力

    ○瓦委員長 次回は、明九日水曜日午前九時五十分理事会^午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十一分散会