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1984-04-27 第101回国会 衆議院 大蔵委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年四月二十七日(金曜日)     午前十時一分開議  出席委員   委員長 瓦   力君    理事 越智 伊平君 理事 熊川 次男君    理事 中西 啓介君 理事 中村正三郎君    理事 伊藤  茂君 理事 野口 幸一君    理事 坂口  力君 理事 米沢  隆君       伊吹 文明君    熊谷  弘君       小泉純一郎君    笹山 登生君       椎名 素夫君    塩島  大君       田中 秀征君    中川 昭一君       長野 祐也君    平泉  渉君       平沼 赳夫君    宮下 創平君       村上 茂利君    森  美秀君       山岡 謙蔵君    与謝野 馨君       上田 卓三君    川崎 寛治君       沢田  広君    渋沢 利久君       藤田 高敏君    堀  昌雄君       渡部 行雄君    坂井 弘一君       柴田  弘君    宮地 正介君       矢追 秀彦君    小川  泰君       玉置 一弥君    正森 成二君       簑輪 幸代君  出席国務大臣        大 蔵 大 臣  竹下  登君  出席政府委員        大蔵政務次官   堀之内久男君        大蔵大臣官房総        務審議官     吉田 正輝君        大蔵大臣官房審        議官       田中 泰助君        大蔵省主計局次        長        平澤 貞昭君        大蔵省主税局長  梅澤 節男君        大蔵省理財局長  西垣  昭君        大蔵省証券局長  佐藤  徹君        大蔵省銀行局長  宮本 保孝君        大蔵省国際金融        局長       酒井 健三君  委員外出席者        日本電信電話公        社経理局長    飯田 克己君        参  考  人        (日本銀行副総  澄田  智君        裁)        大蔵委員会調査        室長       矢島錦一郎君     ————————————— 委員の異動 四月二十七日  辞任        補欠選任   藤井 勝志君    伊吹 文明君   山中 貞則君    長野 祐也君   戸田 菊雄君    渡部 行雄君   安倍 基雄君    小川  泰君 同日  辞任        補欠選任   伊吹 文明君    藤井 勝志君   長野 祐也君    山中 貞則君   渡部 行雄君    戸田 菊雄君   小川  泰君    安倍 基雄君     ————————————— 四月二十七日  たばこ事業法案内閣提出第七四号)  日本たばこ産業株式会社法案内閣提出第七五  号)  塩専売法案内閣提出第七六号)  たばこ事業法等の施行に伴う関係法律整備等  に関する法律案内閣提出第七七号)  たばこ消費税法案内閣提出第七八号) 同月二十五日  所得税大幅減税等に関する請願横山利秋君  紹介)(第三六五四号)  旧南方軍国鉄派遣第四・第五特設鉄道隊軍属の  処遇改善に関する請願相沢英之紹介)(第  三七一〇号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和五十九年度の財政運営に必要な財源確保  を図るための特別措置等に関する法律案内閣  提出第三号)  調和ある対外経済関係の形成を図るための国際  通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う  措置に関する法律等の一部を改正する法律案  (内閣提出第五四号)  株券等の保管及び振替に関する法律案内閣提  出第七一号)(参議院送付)      ————◇—————
  2. 瓦力

    ○瓦委員長 これより会議を開きます。  昭和五十九年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置等に関する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。藤田高敏君。
  3. 藤田高敏

    藤田(高)委員 財政再建をめぐる問題につきましては、私もここ数年来、少しくその議論に参画してまいりましたが、率直に申し上げて、私どもがここ何年来、特にここ二、三年来危惧してまいりました、ある意味では最悪局面を迎えたような気がするわけでありまして、それだけに政府にとっても大変な事態ではないかという認識があるわけでございますが、私どもの観点から申しますと、その取り組みにおいてもいささか積極性に欠けるものがあるのじゃないか、このように思うわけであります。これは私の率直な感じでございます。  さて、私は、そういう感覚も含めて具体的に質問をいたしたいのであります。  昨晩、たまたま大蔵省広報ファイナンス」を見ておりますと、「政務次官就任雑感」という形で、なかなかいいことを政務次官はお書きになっておりまして、雑感とはいえ、今問題になっておるところに焦点を合わせて御発言になっておるわけであります。政務次官はこの中で「財政改革を進めるに当たって、歳出歳入両面に、わたる「国民選択」がどのようなものか、真剣に考えねばならない。今こそわれわれ政治家は、目先の選挙のことだけにとらわれず、勇気をもって国民国家財政の真の姿を知らせ、理解協力を得るよう努力すべきである」、これはまさにこのとおりだと私は思うのですけれども、ここでお尋ねをしたいと思うのは、それでは財政問題の中心に当たっておる政務次官として、国民が今求めておる選択は何かということについてどのようにお考えになっておるのか。また、理解協力を求めるよう努力すべきであると言っておるのですけれども、まだ十分な理解協力を求めでないような御発言のように思うのですが、そのあたりはどうなのか。  そのことは、特にその末尾に「責任政党としての自由民主党自体財政改革に対する政策の強力な一本化こそが、何よりも先決である。」読み方によってはいろいろ解釈できると思うのですが、政府と自民党とが、財政改革財政再建について一致したところまで行ってないんだ、一本化するに至ってないんだというようにも読めるわけですね。そういう実態なのかどうか、これはやはり審議に重大なかかわり合いを持つと私は思うので、ひとつ御見解を聞かせていただきたいと思うのです。
  4. 堀之内久男

    堀之内政府委員 先般「ファイナンス」に広報室の方で所感を求められまして、一応、私的な考えという形で投稿させていただいた次第でございます。  国民は何を求めておるかというような御質問でございますが、これは幅広い考え方で、国民の全体の意向をはかり知ることはなかなか困難でございますが、私ども政治に携わる者として、やはり国民のいろいろなニーズというものにはこたえていかなければならぬわけでございます。しかし、その裏づけは、何といっても健全なる財政というものが最も大事であるわけでございまして、今日の財政状況国民理解を求めながら率直なお話をしていくというところに、国民要望というか求めというものもおのずと判断ができるのじゃないか、こういうように考えております。  何といっても、高度成長時代の、非常に豊かな財政時代政治と、今日のような低成長時代、言えば横ばいの経済成長時代における財政運営の中の国民ニーズというものもおのずと変わってまいりますが、最近は、私は、ようやく国民の大多数も、今日の財政危機的状況にあるということは理解をいただきつつあるのじゃなかろうかと思っております。しかし、まだまだ国民には、百二十兆円の国債が非常にげだが大き過ぎるために、なかなかその辺の理解が深まらない。私も、先日私の町で、国債利払いだけでも一日大体約二百六十億円である、利払いがそうだ、それがいわゆる九兆一千億円の国債費であるということを申し上げて、私の都城市の一年分の予算が毎日利払いに食われるということを問いて、百二十兆円という国債がいかに大きいものであるかということも初めて一部は理解をいただいたようでございます。したがって、私は、やはりそうした意味での国民理解協力を求めながら、今後の財政再建改革は進めていかなければならぬ、こういうように考えて、一応そのような投稿をさせていただいたところであります。  また、今後、政府与党が一体となった中でこれをやっていかなければならぬということを申し上げております。私も党内のいろいろな政調各部会に出席をさせていただいております。それぞれ立場はあろうと存じますが、政府与党財政再建改革ということをお互いに深く認識をしていただかなければ——それぞれの立場での要望というものは、これは確かにどの意見を聞いてもなかなかもっともな御意見であることは間違いありませんが、何はあっても今回は、行政改革財政改革がこの内閣の最大の課題であるというところに、お互い理解を示さなければならぬということを考えております。     〔委員長退席中西(啓)委員長代理着席〕  これも私が党の総務会で「財政中期展望」の御説明を申し上げましたときに、五%、三%、〇%の一応の試算を御説明申し上げた段階で、五%のときに約十兆円のマイナスになるということで、これは大蔵省の幹部に対して、増税をしろということか、こういう御質疑がございましたが、私どもはそういう意味で言っておるわけではありません、やはりこれぐらい財政が厳しい状況にあるということを申し上げたわけであります。そのことを考えて、やはり我々は大蔵関係のある代議士と、また直接しょっちゅう携わる者と大分考えずれがある、こういうことを考えましたので、一応そういうような認識のもとで投稿させていただいた次第でございます。
  5. 藤田高敏

    藤田(高)委員 一番最後の点は、比較的率直な御発言ではないかと思うんです。これはお互い財政問題に真剣に取り組んでおる議員と、その分野から少し離れておる議員との間には、若干の乖離もありましょうし、感覚の違いもあるかもわからない。そのあたりのことを言われておると思うんですが、私はその限りにおいては理解するんですけれども、やはり今日ここまで、後ほど触れますが、毎年のように、借換憤をやらないんだ、赤字公債の償還に当たっては借換債というようなものはやらないんだ、財政の節度を保持していくためにもやらないんだということを確認し合ってきながら、ある意味では最悪手段に手をつけざるを得ないというところまで事態が進展しているにもかかわらず、政府与党の中に、政権与党の中に、今言ったような感覚ずれがあるという点については、私は率直に言って残念に思うわけです。  しかし、そのこと自身について時間をとる余裕もございませんので、以下大蔵大臣お尋ねをいたしますが、鈴木内閣は、財政再建についてはそのものずばりで、財政再建内閣政治生命をかけてもやるんだと言わんばかりの熱意と真剣さで取り組んできたと私は思うんです。そして例によって五十九年度から赤字公債をゼロにするという非常にわかりやすい目標、これは結果として実現できなかったけれども国民立場から見れば、非常にわかりやすいそういう目標を掲げてやってきたんですが、中曽根内閣になってから、財政再建というものがストレートで前に出ないで、財政改革というような形に変わってきたと思うんですね。これは何か特別な意味があるのかどうか。鈴木内閣の掲げてきた財政再建と今日の内閣財政改革との間には、その目的において違いがあるのかどうか、あるいは中身においてどのような違いがあるのか。このあたり、輪郭の問題も含めてひとつ教えてもらいたいと思うんです。
  6. 竹下登

    竹下国務大臣 なかなか難しい問題でございますが、財政再建という言葉が使われました。これは私が大平内閣大蔵大臣であった当時もそうであったわけでおりますが、要するに、今財政の出動する余力がなくなった。この対応力回復するということが、文章で書けばそういうことであろうと思います。  そこで、具体的にはということで、五十九年度に赤字公債から脱却をいたします、これが非常に明確であったということは、私もそういう認識をいたしております。しかしながら、これが諸般の事情からギブアップせざるを得なくなったという状況下に、一つ行政改革という言葉政策目標として掲げられ、それの対句として財政改革という言葉が出てきたということもあろうかと思いますが、いずれにしても、対応力回復するためには、歳出歳入両面から、いわば制度そのもの根源にさかのぼって改革していかなければその目標が達成されないということから、財政改革ということが、より国民皆様方に強烈な印象を与えるものであろうということから、財政改革行政改革、こういう対句として今日に至っておるわけであります。  したがって、いずれにしても財政再建というものが財政対応力回復ということであるならば、それは財政改革も終局的にはそうであろう。が、それを行うためには、諸制度根源にさかのぼっての改革をやっていかなければ、結果としてそこへ及ぶことができないから、財政改革という言葉が最近、より国民のいわば人口に膾炙されるようになりつつある言葉ではないか、こういう感じ方で私は受けとめておるわけであります。
  7. 藤田高敏

    藤田(高)委員 そうすると、財政改革は、財政再建を果たすための手段、方法だ、このように理解してよろしいですか。財政再建をやるというその目的においては、前内閣方針中曽根内閣方針にも変わりはありませんか。
  8. 竹下登

    竹下国務大臣 財政再建に至るまでには、財政歳入歳出両面からの改革を行わなければならぬ。だから、財政改革とは、財政再建状態に至るための手段であると同時に、財政再建そのものをも含んだ表現として財政改革、こういう言葉が使われておると理解しております。
  9. 藤田高敏

    藤田(高)委員 いわば財政改革財政再建、これ表裏一体のものである、究極は財政再建目的である、このように理解してよろしいですね。  そういう前提に立って質問をいたしたいと思いますが、今日の我が国財政現状は、一朝一夕にして再建兆しが見えるとか、あるいは再建方向が明確になったというほど簡単なものでないことは、私もよく理解をしておるつもりでございますが、さて、中曽根内閣になってからかれこれ一年半、まだ二年ちょっと足らずかもわかりませんが、この財政再建に対して取り組んでおる姿勢、これは私は大変失礼な言い方かもわからぬのですが、総理の政治姿勢は、口では財政再建を強調されるんだけれども、外交、防衛については大変御熱心である、しかし、財政再建そのものについては、内閣政治生命をかけてでもおやりになるというような、そういう積極的な意欲には少し欠けるものがあるんじゃないかという感じがするわけであります。これは私一人の杞憂であればそれでいいわけでありますが、私はそういう意味合いからいって、後ほど触れますが、財政当局がお出しになっておる六十五年に向けての仮試算の問題についても、あるいは今財政改革と称するそのこと自体についても、まだまだ内閣自身としての積極性に乏しいものがあるんじゃないか、このように思います。  そこで、一つお尋ねをしておきたいと思いますことは、中曽根内閣になってから、財政の体質というものはよくなる方向に向いているのかどうか。財政再建の意図は強く持っておるにしても、現状は残念ながら悪い方向を今なおたどっておるのじゃないか、こういうふうにも見れるわけでありますが、見方としてどのように判断すればよろしいでしょうか。
  10. 竹下登

    竹下国務大臣 これもなかなか難しい問題でございます。政府部内におる者から申し上げますならば、いわゆる経済全体の動きを外に置いて財政だけを考えるわけにもまいらない。そうなりますと、経済の問題を見てまいりますと、緩やかながら景気回復基調にあるという中の財政ということであるわけでございますが、財政そのもの景気上昇等についての対応力を持っていない今日でありますだけに、財政改革が少しでも進んでおるかという御批判に対しては、一兆円というものをやることはできませんでしたが、いずれにしても対前年予算に比して特例公債を減額したということが、一つ財政改革のあかしてはなかろうかというふうな理解の仕方もお願いできないものかと思っておるところであります。
  11. 藤田高敏

    藤田(高)委員 確かに経済全体からいえば最気回復基調にあるわけで、そういう兆しも具体的に見えつつあるわけですから、その限りにおいては、財政にこの景気がどうプラスの面で寄与してくるかという、これは確かに財政好転一つの、あえて挙げれば条件になろうかと思うわけですけれども、少なくとも今日の断面で、今日射碓法中心とする国債問題を中心に検討する限りにおいては、公債依存度の面から見ても、公債残高GNP対比の面から見ても、あるいは私はこの点が一番心配なんですけれども一般会計に占める国債利払い費ですね、国債費関係から見ても、そうして特に今日、そのものずばりの法案審議になっております借換債に手をつけざるを得ないという今日の局面を見ても、私は残念ながら、中曽根内閣になってから、財政が具体的に好転しておるとは思えないのですけれども、どうでしょうか。それであればあるだけに、あえて言えば、鈴木内閣以上の真剣さを持って具体的なものを国民に示すものは示し、協力を求めるものは求めるという、そういう姿勢が出てこなければ、これはもう言うべくして財政再建は実を結ばないんじゃないか、こう思うのですが、どうでしょう。
  12. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに私は、前内閣の場合、「新経済社会七カ年計画」というものにも、あるいは税収の面においても二十六カ二分の一という数値が示され、そして公共投資の面においても二百四十兆という数値が、たとえ途中で下方修正されたとはいえ、それが示されて、国民皆様方理解協力を求めてこられた姿勢というものは、それなりに評価すべきだと思います。  中曽根内閣になりましてから、やはり今度はそれの反省というものから来ますと、余りにも不確定要素が大きかったということもございましょう。が、大変な歳入欠陥をもたらすような状態になりまして、いわばもろもろ指標というものが、ある意味においては逆に余りにも乖離した結果になるだけに、政治不信にもつながりかねない。したがって、今日本透明な時代であるから、言ってみれば経済展望におきましても、名目成長率実質成長率消費者物価失業率卸売物価、それのみを指標でお出しして、あとのものは定性的な考え方で申し述べ、定量的なものが一つもないという状態経済の「展望と指針」になっております。  その経済全体の中の一部であります財政も、したがって、まずはそういう数値をどのようにして模索していくかという、その前階段の議論を提供申し上げようということが、もろもろ仮定計算、こういうことになっておるわけであります。したがって、このもろもろ仮定計算等に基づいて、この場においていろいろ議論をお聞かせいただく中に、国民のコンセンサスとして、ある面は定量的なものも、将来おぼろげながらでも描けるような形になっていくであろう。したがって、定量的なものを議論するその前段階の定性的な物の考え方と、そしてあらゆる仮定計算に基づいた仮定計算だけで今議論が始まったところだという意味においては、進め方は前内閣のときよりもスローテンポになっておるという批判は、これはやっぱり甘んじて受けるべきであろうというふうに、私は事実認識をいたしております。
  13. 藤田高敏

    藤田(高)委員 極めて率直な見解の表明がございまして、いろいろ議論していく場合にも、そういう姿勢お互い議論のできることを私はうれしく思うわけですが、今も大臣おっしゃっていたように、事財政再建に対する処方せんのつくり方というものは非常に困難ではありますが、ここまで来れば、先ほどの政務次官雑感ではありませんけれども、やはり定量的なものを具体的に提示をせざるを得ない段階に来ているんじゃないか。いわゆる赤字公債の借換債までやらざるを得ない局面を迎えておるということは、国民が何を選択しておるか。場合によれば国民は、この処方せんはだめだという拒否反応を示すかもわからないけれども、少なくとも政権政党として、また内閣として、事態がここまで進展をすれば、その具体的な中身、そういうものを定量的なものをもって示さなければ、早い話が、私はもう本当にこれは大変失礼なことを言うのですけれども、こういう味もそっけもないといいますか、単なる算術的なこんなものを出してみて、果たして財政再建意欲政府にあるのかどうか。  今財政当局政府は本当に国民に何を問いかけようとしておるのか。そして今日の現状というものは、国民が大体わかっていますよ。借金財政で国の財政もえらいということはわかっておる。しかし、この立て直しをどうするのだろうという具体的なものですね。政府は何を国民に求めようとしておるのか、その数量的なものはどの程度のものなのか。しかし我々は、例えば新しい負担増があるにしても、五年先にはこういう新しい展望が開けてくるんだ、この試算でいけば、六十五年の段階が来れば新しい展望が開けてくるんだ、我々の社会福祉、社会保障的なものも、国民へのサービスも、この程度のものは保障されるんだというような定量的な裏付けを持ったものが、もう今日の段階で出て来なければ、これは大蔵大臣、避けて通ることのできない段階にまで立ち至っておるんじゃないでしょうか。これは来年になるか再来年になるか知りませんよ。しかし私は、もうそこまで来ておるというように思うわけですが、その認識についてはどうでしょう。
  14. 竹下登

    竹下国務大臣 今藤田さんの御指摘なすったもので、将来を展望した場合のサービスはかくなるものでいかがでしょうかというものは、今度それを御審議いただく法律としては、あるいは健康保険法あるいは年金等の問題、二十一世紀に向かってこのようなものまでは最低のサービスをいたしましょう、そうすれば負担はどうなりますというのが出てきたというふうに私は思うわけであります。が、それらを個別的に出すのではなく、もっと総合的に、要調整額というものは現行の制度施策をそのままに置いたらこうなる、それを埋めるためには、この面は負担増をお願いしなければなりません、あるいはこの面はサービスの低下でやらなければなりません、そういう具体的なものを提示して、御批判をいただくというその前の段階に今日ございまして、したがって、毎年度の予算編成の中でそれらの問題を一つ一つ、この制度施策根源にさかのぼった改革として御審議をしていただく、こういうことになろうと思うのであります。  しかし、私自身も本国会で議論を重ねておって、精いっぱいのものとして仮定計算を出したが、今おっしゃいましたとおり、これは仮に藤田さんが、じゃ七・五の成長で出してみると言われれば、はいといってまたそれの数字が出せるようなものですわね、言ってみれば。あるいはもっと低目に出してみると言えばそれでも出せる。だからむしろそういう基本的なものをこの審議の糧としてもらって、その議論の中で逐次定量的なものが浮かび上がってくるような形で進めなければいかぬという意味においては、先ほども申し上げましたように、ある種の定量的なものを示しながら財政再建、結論は五十九年の脱却はできなかったとしても、そこまで踏み込んだ出し方から比べてみますならば、まさにその限りにおいてはスローテンポになったと言われても、その批判は甘んじて受けなければならぬ課題だ。その中でも、こういう議論をしておりますと、徐々にそういう定性的なものがある面において定量的なものへと逐次議論も誘導されていくであろうし、その中でまた国民理解も深まっていくであろうという期待感は持ちながら、このような形で御審議をいただいておるわけであります。
  15. 藤田高敏

    藤田(高)委員 財政当局から出されておるこれは、大変慎重な表現を使われておると思うんですね。これはもう政治的には余りこれで、我々揚げ足を取るつもりはありませんけれども財政当局がお出しになる資料なんというものは、国会審議の、現実政治の中では生きた材料として使われるものでないといかぬのじゃないか。表題からして仮の、仮定の計算の例と、全く政治的にはこれだけ用心深く表現を使っておけば間違いないだろうと思うわけであります。私はやはりこれを見て、この前の「財政の中期試算」じゃないけれども、非常に迫力を感じないんですね。六十五年度までに赤字国債をゼロにする、こう言われておるのだけれども、先ほども触れましたけれども、問題は、この中では要調整額をいかなる財源によって調達するのか、これはやはり責任ある政府としては提示せなきゃいかぬじゃないでしょうか。これが一つ。  それといま一つは、なるほど五%それから三%、ゼロ%、そして借換債を出した場合と出さない場合、こういう基準はありますけれども、それでは政府はこの中で例えば基本的には三%でいくのか、事と次第によってはゼロ%になる年もあるかもわからないけれども、原則的には三%であれば三%で、こういう手法をもっていけば六十五年度には大体赤字国債はゼロになるんじゃないか。私どもは石で手を詰めるように、それが六十五年にできなかったからといってどうこう言うつもりはございません。しかし私は、先ほどから言っているように、これで言えば要調整額を埋める財源は何か、そうして数量的にはこの三%をもって六十五年というものを設定したのかどうか、こういうものがやや明確にならないと、これは予算委員会でも議論になったかどうか知りませんが、やはり財源確保するという財政再建、特に五十九年度の予算編成にかかわるこの財源確保するという財源確保の真の審議というものはできないのじゃないか、こう思うわけでありますが、その点についてはどうでしょうか。  それと、時間の関係もございますので質問をまとめて申し上げたいと思うのですが、大変率直な言い方ですが、六十五年度までにゼロにするというのですが、これどうですか、自信がございますか。まあそこをちょっと聞いておきましょう。
  16. 竹下登

    竹下国務大臣 まず最初の問題は要調整額の問題であります。確かに現行の制度施策をそのままに置いた場合はこれだけの要調整額が、五%の場合、三%の場合、ゼロ%の場合要ります。その要調整額を、いわゆるサービスの低下で補うのか、増税等による増収措置でこれをやるのか、あるいはその中の組み合わせでやるのか、それをまず議論の土台に乗っけて議論をいたしましょう、こういう段階から今出発しておるわけでございます。したがって、その点負担増はこうなって、そしてサービスの低下はこのようになるというものを定量的に出せるその以前の議論をしておる、こういうふうに御理解をいただかないことには我々の方も説明がつかぬというような資料であると、私自身も事実認識はいたしております。それが徐徐に、年度年度予算編成に当たって明らかになっていくものではないか、私はこういうふうに考えておるわけであります。  そこで、六十五年度赤字公債脱却は確実にやれるか、こういうことでございますが、厳しい環境にあるというふうに私も思っております。しかしながら、やはりこれは努力目標として明確に掲げたわけでございますから、その目標に向かって歳入歳出両面で厳しい対応をしながら進んでいかなければならない、いわゆる責任を背負わされておる。重い重い荷物を背負って、中曽根内閣五百何十日になりましたが、何段の石段を上るわけかわかりませんけれども、ちょうど私が佐藤内閣のときには、二千七百段の石段を重い重い荷物を背負って上り詰めたところで内閣は終わり、こういう感じがいたしましたが、今もまた重い重い荷物を背負って、まさに今や五百何十段の石段を上って、さあこれから六十五年までこれを支えて、重い荷物を背負いながら行くことは大変だが、だれかが背負わなければならぬ、こういう素直な心境でございます。
  17. 藤田高敏

    藤田(高)委員 いや、私も池田内閣以来国会に出してもらっておりますが、竹下大蔵大臣は若くして官房長官もおやりになった。私の記憶に間違いかなければ、内閣がつぶれる場合の幕引きを見事に二回おやりになったという点については、若い政治家だけれども大したものだなと、私はこう評価してきた一人でありますが、気持ちからいけば、もうついでに今度も早目に幕引きをやって、そしてだれがおやりになるか知らぬが、財政再建についてもっと真剣になっておやりになる内閣をつくった方が国民のためにいいのじゃないかという気持ちさえ、率直に言ってあるわけであります。しかし、そのことは言ってみてもしょせん始まらぬと思いますが、この六十五年に赤字国債をゼロにするというのも、大臣、大変失礼ですが、私はこれはできぬような気がするのです、私がここ六、七年来予算委員会中心議論をさせてもらった幾つかの材料をもってする限りにおいてはですよ。これはもう極端なインフレ政策でもとるとか、そしてまたかつての高度成長時代のような税収が二年、三年続くような状態が来れば別ですよ。しかし、今私どもお互いがやや専門的、やや常識的に推定できる条件の中では、私はできないような気がする。  というのは、これは五十九年度が初年度ですね。赤字国債を一兆円ずつなくしていくんだというこの計画が、もう初年度において六千六百億ぐらいしかできない。大体最初スタートを切った初年度ぐらいは計画どおりでいかなければ、これは世間が納得することにはならぬのじゃないかという気がするのです。そのことをはしなくも非常に専門的に分析しておるのは、民間機関は幾つかいろいろ専門的にやっておりますが、第一勧銀の去年の段階の資料ですけれども、持っておりますので要約して言えば、政府の六十五年までに赤字国債をゼロにするというこの計画は、結論的に言えばできない。政府がおやりになろうとしておるように六十五年をゼロにするためには、事のよしあしは別にして、間接税を中心に約四兆円程度の増税をやる。増税をやって歳出面はゼロ、全然伸ばさない、ゼロでやって初めて七年で赤字国債はゼロになりますよ、ゼロにするためには四兆円からの増税をやらなければいかぬという試算が出ておる。常識的には歳出をゼロにするわけにはいかないだろう、三・五%程度伸ばすような予算を組まざるを得ないのじゃないか。そういうことにすると、増税を前提にしてもなおかつ十四年かかる。政府の方は七年だと言うのですが、十四年かかりますよ。いわんや中曽根内閣が言う「増税なき財政再建」、これはどこからどこまでか範囲はまだ決まらない面もありますが、仮に新規の増税を全然やらないで赤字国債をゼロにしようとすれば、一般歳出の伸びをゼロにしても十年かかる。三・五%程度一般会計の伸びをやるような予算を組めば二十二年かかりますよ。二十二年といったら二十一世紀を越すわけです。  この資料をかなり詳しく読んでもみましたけれども政府のこういう六十五年に赤字国債をゼロにする、これをいわば財政百姓の大きな足がかりにするんだ、これは本当に架空計算じゃないか。この政府がお出しになっておる、なるほど仮の試算だとよう言ったものだと思うのですけれども、私は残念ながらこれは全く架空的なものであって、信憑性に非常に乏しいものになっているのじゃないかと思うのです。そういう意味合いにおいて私は、大臣に自信があるのかどうか、中曽根内閣が何とか延命策にこんなつなぎの目標、願望的な目標を示されただけでは済まぬと思うのですよ。そのあたりをもう少し、財政当局を含めて実現可能性のあるものを提示する必要があるんじゃないかと思うのですが、どうでしょうか。
  18. 竹下登

    竹下国務大臣 その可能性ということになりますと、まさに要調整額というものの内訳を国民皆様方の前に示していくということまで至らなければ、確実な資料というふうには受けとめていただけないだろうと私も思っております。だから今の場合は、その「仮定計算例」等でお示しいたしますところの要調整額というものをどの組み合わせでやるかということを国民皆様方に問いかけておるというのが、私は今日の実態として御理解をいただかなければならぬではなかろうかというふうに思っておるところであります。
  19. 藤田高敏

    藤田(高)委員 この詰めの議論をやるとすれば、私は三時間、五時間かかると思うのですよ。ですけれども、きょうはその余力はございません。したがって、問題としては昨年、一昨年来特にそういう道筋に沿って議論を展開してきたところですが、その都度結果的には体裁のいい言葉で逃げられたという感じが、私にしてはしておるわけであります。私、あえてこのことをしつこくこのように申し上げるゆえんのものは、今日そういう中身をいろいろな角度から出し合って議論をすべき段階に来ておるのじゃないかという、このことだけは明確に事実認識の問題として申し上げておきたいと思うのです。  そこで、このことも一部繰り返しになるかもわかりませんが、事ここまで財政が逼迫してきた段階では、政府がお出しになっておる、これはあくまでも仮定試算だと言われるかもわからぬけれども、六十五年度ぐらいまでには赤字国債をゼロにするという財政再建の成果が生まれるように、あらゆる努力を集中すべきじゃないか。そのためには景気浮揚による税収の増についてどういう手だてをしていくのか。  二つには、歳出カットと言うけれども歳出カットにはおのずから限界があるのじゃないか。私は、この歳出カットの面については政府はかなり積極的に取り組んできておると思うのですよ、さっきの大臣の御答弁じゃありませんが。しかし、今日の段階において政府の言う財政改革という中身については、二つ目には歳出カットというものを検討せざるを得ないだろう。その中身は何なのか。  三つ目は、特に私は社会党という党の立場を含めて強調してきておるわけですが、大臣、要調整額中身の問題にも関連するのですが、不公平税制の是正の問題については、まだ物足らないというか努力不足だと私は思うのですが、どうでしょうか。そういう点については、中身を細かく申し上げることはできませんが、今度の国会が始まって大蔵委員会でも議論になっておりますグリーンカード制の問題等については、財政がここまで逼迫すれば、六十年を待たずして利子・配当の総合課税という基本的な立場に立ってきちっと折り目、切れ目をつけていく。あるいは法人税に関連をして、貸倒引当金であるとか、退職給与引当金であるとか、あるいは価格変動準備金であるとかいろいろございますが、こういう不公平税制の是正についてもっと大胆に抜本的な改革というもの、それこそ財政改革の柱の中にもっと明確に位置づける必要があるんじゃないか。  これは何も私どもが今まで国会で主張してきたことをイージーゴーイングに言うつもりはございませんが、我々の検討によれば、不公平税制の是正によって財源を浮かそうとすれば三兆円、あるいはやり方次第によっては四兆円。それは一年限りのものもあるかもしれない。しかし、この不公平税制の中には毎年税収としてかなりなものが見込まれるものもあるわけですが、そういうものをもっと大胆に財政改革の中に位置づけて、その上でなおかつ新しい負担増というものに手をつけざるを得ないのかどうかという、四つ五つの柱をきちっと立てて、その中身をもっと鮮明なものにしていく。そういう手だてをしないで、赤字国債の借換債をやらなかったら五十九年度以降の予算が組めないんだ、財源がないんだ、こういう言い方は内閣として、また財政当局として余りにも不定見のそしりを免れないのじゃないかと思うのですが、どうでしょうか。     〔中西(啓)委員長代理退席、委員長着席〕
  20. 竹下登

    竹下国務大臣 まずは今御指摘のありましたように、いわば歳出の点からかなりの切り込みをやったではないか。それをちょっと整理してみますと、制度施策の根本に立ち返って、これで終わりというものではございませんが、まず地方財政対策の改革、医療保険制度改革、年金制度改革、育英奨学制度改革、児童扶養手当制度の見直し、雇用保険制度改革、食糧管理費の改善、国鉄経営合理化、それから特許に係る財政制度の改正、ちょっと整理してもこの九つが一応挙げられるわけであります。私なりに感じておりますのは、厳しいシーリングというものがあって、それを各省におかれて自分たちの発想で、内なる改革という少しきざっぼい言葉を使っておりますが、そういうもののあらわれがこういう制度改正になって出たものではなかろうか。しかしなお制度施策の根本にさかのぼって継続的にやっていかなければならぬものもございますし、なお手をつけなければならないものもあろうかと思います。  一方、歳入の側については、今おっしゃいましたとおり、いわゆる「増税なき財政再建」ということをてことして、言ってみればでこぼこ調整と言うと少しイージーに過ぎますけれども、酒税あるいは物品税等の間接税に手をつけさせていただいたわけでございますが、いわゆる不公平税制ということになりますと、いわば税の当局者としては不公平税制という言葉は非常に使いにくい言葉でございます。まさにこれを理論的に不公平税制とは何ぞやと言えば、本来の税制そのもの政策税制という名において変えたものと言えば、各種特別措置ということが一応は概念的には言えると思います。他の不公平税制というのは、人それぞれのよって立つ立場において主観が入りますから、不公平税制とは何ぞやということになりますと、かなりの議論が進展していく問題であろうかと思います。が、かねて御主張なすっております、今も例示でお出しになりました利子・配当課税の問題、これは御案内のように夏ごろまでには結論を出そうというので、こういう場所で議論をした問題を正確に伝えまして、税制調査会へその報告をする会合の始まりがきょうでございます。きょうからまたやっていくわけであります。  それから、よく言われるいわゆる大企業優遇税制とかいう問題は、企業関係の租税特別措置というものを指すといたしますならば、五十一年度以来主要な項目のほとんどについて改善措置が講じられております。さらに合理化を進める余地はかなり限られた状況になっておるというふうには思いますものの、この問題も税負担の公平化の観点から、引き続き必要な見直しは行っていかなければならぬわけであります。  そうして、よく言われますところの各種引当金等の問題でございます。これは課税所得を合理的に計算するため設けられたものでありますので、制度自体政策税制と考えることは必ずしも適当ではないと思いますものの、税調等でも指摘されておりますし、本院においてもたびたび指摘されておりますところの繰入率等につきましては、これも絶えず実態に即した見直しをやっていかなければならぬ。そういうことを、先般中期答申をちょうだいいたしましたものを土台といたしまして、これから各年度ごとの経済の客観情勢に対応して、不公平税制という立場から申し上げるわけにはまいりませんが、公平性確保の観点から、これらに対しての見直しは引き続き対応していかなければならない課題であるというふうに考えておるわけであります。  それからもう一つの、いわゆる自然増収と申しますか、そういう問題につきましては、景気の動向等に左右されることはもとよりでございますけれども、かつての高度経済成長期のような自然増収は、私は、日本の国が言ってみればヨーロッパを追い越せ、アメリカに追いつけ、それが一応その目標を達成した今日でございますので、そういう水準にまで達した場合には、高度経済成長というものからくる自然増収は今後望むことはできないだろう。安定成長の中で模索していかなければならない。事ほどさように、ある意味においては追いつけ、追い越せのある段階における目標に達したという理解に立ては、私はこの自然増収を多く見込むということは困難ではなかろうかという考え方でございます。  それから、かねて御主張なすっております、あるいは一過性と言えるかもしれませんが、土地保有税でありますとか富裕税でありますとか、そういう問題になりますとまたこの議論は、各方面に展開される問題として検討を続けつつも、今日それを実現するという環境はなかなか整っていないというのが現状認識ではなかろうかな、こういう感じがいたしておるところであります。
  21. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私があえてこの不公平税制の是正の問題を中心に強調いたしますのは、政府が一応の目標とはいえ、結果的にはかなりずれたわけですけれども、六十五年であれば六十五年に赤字国債発行をゼロにするというところを一つ目標財政再建をやっていくんだということになりますと、さっきの第一勧銀の試算ではございませんが、尋常なことではできないんじゃないでしょうか。そのためには、言葉の遊戯ではございませんが、不公平税制の是正なんというのはもう今日国民の常識になっておるんですから、それはわざわざ公平の何やらを確保するなんて言い回しは私は要らぬと思うので、だれが見ても客観的に不公平な税金だと思うものは大胆に、不公平な税金として改革をやるんだということで取り組まないと、とてもじゃないが六十五年はおろか六十二年か三年ごろが来たら、馬の先にニンジンをぶら下げて競馬馬を走らしたという例えじゃないですけれども、もう財政再建の時期は向こうへ向こうへずれていく。そのことによって最後はだれがばかを見るのかといえば、私は国民じゃないかと思いますよ。それは、私の質問の順序からいえば脱線するようですけれども国債利払い費が全予算の二割近くにもなってきて、そして国民の払った税金で、国債を買った人には——国債を買えるような団体なり利子の高い国債を買える国民は、ある意味ではそれで利殖を求めて何とかいけるかしらぬけれども、まさに所得再配分の方向に逆行するようなことをやっておるんですからね。このことは、ずっと先へ先へ延びていくというのは、一般の国民にとってはこれは大変な犠牲ですよ。こういう状態から早く脱却することを、内閣の責任においてもっと積極的に取り組む必要がある。そのためにはばんと、不公平なものはこういうものです、それはもう大胆に手をつけていきます、もう遅きに失しておるのじゃないかということを私は強調しておるわけでありまして、その点の認識についてはしかと受けとめていただいてこの対応をしてもらいたいと思うのですが、どうでしょうか。
  22. 竹下登

    竹下国務大臣 私も、今藤田さんおっしゃいました国債政策に対する基本的な問題としては、後世代の納税者にツケを回すという議論のほかに、今おっしゃいましたとおりのいわゆる富の再配分というものが、ある意味において国家予算の果たすべき役割であるにもかかわらず一八%、まさに二割近いものが、言ってみれば利払いという形で支出されていくということ、なかんずく資産の残らない特例債の場合は、やはりそのことが一番——国債性悪説という表現が適当かどうかはわかりませんが、その点は私も事実認識を等しくしております。したがって、赤字公債を発行してでも減税すべきだとか、あるいはこの施策をやるべきだとか言われたときに、一番最初に立つ抵抗感というものは、意図せざるところへ富の再配分が行われる、これは基本認識としては等しくしておる点であろうと私は思っております。  そこで、今度は不公平税制という問題ですが、税当局者が、これは不公平でこれが公平でということはなかなか言いにくい問題であります。それぞれの主観によっての相違はございましょうが、そういう角度から、指摘された問題については絶えず見直しの対象に置かなきゃならぬものであるという事実認識はいたしておるわけであります。御意見を交えながらの最初の御質問の中で、今九つほど並べましたが、個人的に賛成、反対は別として、なるほど切り込みの方はそれなりのものがあるが、歳入の面における手だてというものは、歳出に対する対応の仕方から見ればなお緩い、あるいはアンバランスだ、この御指摘はやはり素直にいただくべきである。したがって、歳入歳出両面にわたりということを必ず言うように最近心がけておるところであります。
  23. 藤田高敏

    藤田(高)委員 特に不公平税制の是正を中心とする歳入面の見直しについては、歳出面の改革に比較していささか劣るものがあるのじゃないか、これまた大臣らしい率直な受けとめについては、私は、それなりに敬意を表するわけでありますが、我々が指摘をしておりますものについては、ぜひひとつ大胆な見直しをされることを強く要請しておきたいと思います。  そこで、時間もございませんので、この法案に直接かかわり合いを持つ借換債の問題についてお尋ねをしたいわけであります。  私は、この問題については、もう本当にばかの一つ覚えじゃないけれども昭和五十三年、大平内閣以来、公債の減債制度はなぜ必要なのか、なぜできたのか、定率繰り入れあるいは特に赤字国債の償還についての平準化の措置として、わざわざいろいろな数字を、今の松下大蔵次官がまだ主計局の次長じゃなかったかと思うのですが、その当時から財政当局にも相当手を煩わせて、今日問題になっておりますこのような借りかえ、借金を返すのにまた新たな借金をやる、また利子のつく新たな借金によって過去の借金を返すようなぶざまなことだけはやらないようにしようよ、これは与党、野党を超えて、政府、立法機関を超えて、そのことだけはひとつ真剣にやりましょうよということで、私は、自分自身予算委員をやっておる期間は、もうこのことに大半以上の関心を寄せて議論をしてきた一人だと思っております。ところが、結果的にこういう事態を迎えて、今、私は非常にむなしい心境であります。  ここで、特に財政当局に要請をし、また御意見を承りたいのは、大臣、こういうことになりますと、国債発行にかかわる、国債問題にかかわる財政の節度、俗に言う歯どめですね、これがもうこれで全然なくなってしまうのじゃないでしょうか。それは言葉のやりとりとしては、さればこそ、この法律案の中に努力規定というものを盛り込んでおるのだ、そのことによって一定の良識ある歯どめをやっていきたいのだというふうにお答えになるかもわかりませんが、私は、そういう抽象的な努力規定だけでは有効な歯どめにはならぬと思うのですけれども、どうでしょうか。
  24. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに、五十一年以来、五十年度の御審議において国会で議論されたことを念頭に置いて借りかえ禁止規定というものをくっつけて、その年度ごとに御審議をいただいた、これはそのとおりであります。そして、それがいわゆる特例債に対する歯どめ、財政の節度というものであったと私も事実認識をしております。それを今度は取っ払う御相談を合しておるわけでございますから、これは私なりにも、確かに大きな政策転換だというふうに素直に申し上げなければならぬ。それでもと思って部内でも議論をいたしました。その節度の問題については、例えば年度ごとに、これは借りかえざるを得ないという形の御審議をいただくのが一つの節度でもなかろうか。しかし、既に五十九年度に発行いたします特例債についても借りかえ禁止規定を削除するならば、事実、借りかえが参るのは既発債の方から参るわけでございますから、政策転換ということになれば、これを一挙に法律の中で削除をしていくということをお願いするのが正直であろう、こういうことから最終的に踏み切ったわけであります。  そこで、それは余りにも節度がなさ過ぎるという御批判を承知の上で、いわゆる訓示規定というものを設けまして、それによって一つの節度として御理解をいただこうというところで、苦しい答弁を予算委員会から今日までずっと引き続きいたしてきておるというのが率直な事実認識であるというふうに私は理解をいたしております。
  25. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私は、今国会の予算委員会のやりとりも全部一応目を通してみました。今大臣がおっしゃっておるような意見のやりとりのあったことも承知いたしております。しかし、そのことを十分承知しながらも、なおかつ私は自分の心の中にすとんと落ちない、理解し切れないものが率直に言ってあるわけです。  というのは、赤字国債を出してから、最初のうちは借換債を行わないという規定がなかったのですね。それが、国会の議論が始まって、わざわざ毎年、借換債はやりません、借換債はことしも、またことしもという形でお互いに歯どめをかけてきた。ところが、結果として、五十九年度までの累計既発債は五十四兆円ですか、数字はちょっと間違っておるかもわかりませんが、私の記憶に間違いかなければ、五十八年度で四十七兆、五十九年度で五十四兆と思いますが、この五十四兆の分を含めて一括して、全部十把一からげにして、今までは、これは赤字国債ですよ、借換債をやらない債券ですよ、こう言ってやってきたものを、いわば建設国債と同じような性格のものに全部政策転換というか、性格変更をやるというのは、余りにも乱暴過ぎるやり方じゃないか。  あえて我々国会の立法機関の立場からいえば、これはかれこれ九年、十年にわたって審議してきた国会の権威というものをみずから踏みにじることになるのじゃないか。借換債をやらないというこの意思は、政府の意思だけではなかった。立法機関の確たる意思であると同時に、これまた行政府の意思でもあった。まさに行政府と立法機関一体の共通の認識でやってきたものを、ほかに全然選択の方法がないというのであれば別ですけれども、私はあると思う。それははしなくも今大蔵大臣がおっしゃったように、この予算委員会のやりとりの中でも若干あったようでありますが、一年ごとに刻んできたのですから、一年ごとにどうしても借換債をやらなきゃいかぬというのであれば、一年ごとに借換債をやるという法律を出して、法律の適用は国債整理基金の五条だったら五条によってやるにしても、なぜ一年刻みというのはできないのでしょうか。  内閣法制局も、私は実際けしからぬと思うのですね、こういう解釈をするのは。それはこんなことやれば便利かもわかりませんよ。完全に五十四兆円の既発債に対してはもう努力はやりましたということを言えば、あとは全部行政府にフリーハンドを与えて、九年間、十年間の立法機関の意思を無視するようなやり方をするのは、実際内閣法制局の見解というのはでたらめだ。  そういうことではなくて、一年刻みでここまで慎重にやってきたのだから、私は率直に申し上げますが、今出されておるこの法案は潔く撤回してもらいたいと思う。これは財政当局内閣のメンツにこだわらないで、素直に一遍撤回する。一遍撤回をして、そして一年一年今まで刻んできたのだから、残念ながら借換債をやらざるを得ないということであれば、最大限の努力をしたけれども、五十九年度は六兆円だったら六兆円の借換債をやらざるを得ません、また来年も、あってはならぬことだけれども、五兆円だったら五兆円の借換債をやらざるを得ません、こういう形で一年一年刻んで法律を出すことはどこが悪いのでしょうか。  私は、大蔵省部内でもそういう検討をやった、そして大蔵大臣もそのことについては、やりとりを読んだだけでもかなり真剣に心を痛めたように、この議事録の中から拝承しました。私はこれはある意味大蔵大臣の非常に良心的な物の考え方がここに出てきておると思う。こういうものをやはり現実に生かしていくということがあってこそ、国会の審議というものは実りの多いものになるのじゃないでしょうか。国会の権威というものをお互いに曲がりなりにも守っていくことができるのじゃないでしょうか。その意味において、今からでも遅くないという言葉がありますが、まさに今からでもこれは遅くない。決してそのことは、一遍出したから、これを撤回して、今私が主張しておるようなものに変えることによって財政当局の権威を失墜するものでもないと思う。私は、その点については内閣のメンツなんというものにこだわらない、素直な気持ちで今日までの審議の継続性の上に立って新たな選択の方法というものを考えてもらいたい。  これはもう私は、本当にこのことが通らなかったら、この質問台からおりたくない。次の質問者にバトンを譲らないで、委員長から退場を命ぜられても、私はこのことだけは何としても言うことを聞かぬというような気持ちなのです、率直に言って。そういう点では、やはり折り目、切り目というものはつけないと、財政の節度というものは全然なくなってくる。全くノーズロじゃないですか。まさに公債のたれ流しということが言われたけれども、公債のたれ流しになって歯どめをかけるものは何もない。これはブレーキのない自動車と一緒ですよ。ブレーキの壊れた自動車と一緒じゃないですか。  その点では財政審議会だって実に権威のない話です。そういうブレーキをかけるようなことをやらなきゃいかぬ財政審議会までが財政当局の言いなりになって、何の注文もつけないで唯々諾々としてこんな答申を出している。そして財政当局はまたそれを隠れみのにしてこういう法律を出してくる。財政審議会がこう言うたからこうやるなんという、そんな不見識なことはひとつおやめになってもらいたい。私はこれは怒りを込めて政府に法案の撤回を求めると同時に、一年ごとに法律を出して、借換債をやらざるを得ないのであれば、やるかやらないかという慎重な審議をして、そうして財政再建を図っていく、ぜひこのことを強く求めたいと思うのですが、大臣、どうでしょうか。
  26. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに歴史的に見まして、今おっしゃいましたとおり、五十年には特例公債法に借りかえを行わない旨明記すべきではないか等々の議論があって、当時の大平大蔵大臣が、五十一年度特例公債法案立法時までに財政審に諮り検討します、こういう答弁からいわゆる五十一年以来この借りかえ禁止規定をつけてきたわけであります。  そのときの財政審の言葉を申しますならば、「公債発行の特例措置等についての報告」、この中で「これを法定する必然性はないが、立法政策の問題として財政の節度を示すという観点からこれを法定するのであれば、あえてその意義を否定すべきものでもない」こういうことに財政審でなり、そうして法律がそのようになって年々続いてきたわけであります。  そこで借りかえ問題というもの。これはいわゆる国債の減債制度というのは、確かに五十三年三月の藤田高敏委員の要求に対して、国債整理基金の資金繰り状況についての仮定計算を出した。これがきっかけになって、以後毎年提出しておる、こういう経過になるわけです。  それから、藤田さんと私と議論しました一番新しい分で見ましても、昨年の一月、このときから実は私も大変に注意をいたしまして、言ってみれば三つの手法がございます。借りかえもその一つの手法でございますが、これについては財政審に諮ってみようと思うということを初めて申し上げまして、それから財政審に諮って今日に至ったわけであります。「我が国経済の着実な発展と国民生活の安定を図りつつ、財政改革を具体的に進めていくためには、特例公債の償還財源の調達について借換債の発行という手段によらざるを得ない」という答申がことしの一月にちょうだいできた。だから、一年前から予告じゃございませんが、質問に対して、財政審に諮らざるを得ない段階に来ておる、まずこういうことを申し上げたわけであります。その継続性の中において、私自身も部内で議論いたしますときに、一括削除じゃなくして償還期限が来るたびにという議論もいたしたということを、素直に予算委員会の場でも御答弁を申し上げたわけであります。  やはり借りかえ禁止規定というものを存置しておりますと、その規定は事実上形骸化しておるということになれば、借りかえをするであろうという前提を念頭に置きながら借りかえ禁止規定を置くということは、これはまた国会に対する不誠実だ、こういう議論もございました。  それから、法律相互間の整合性という問題、これは主として法制局の問題でございますが、方針変更を法律上も明示したが、事実に即し法律相互間、五十九年度財源確保法とそれ以前の特例公債発行根拠法との整合性、こういうような議論もございました。  そこで私も、これはやはり政策転換として御審議いただいた方が、まさに政策転換ですから、それが国会に対する正当なあり方であろうというその議論を終えた末に、このようにして一括削除ということでお出しをした。そうなれば節度の問題というのが議論されるのは当然だということで、いわばできる限り発行を「行わないよう努めるもの」の努力規定というものを置いたという経過で今日御審議いただいておるわけでございますので、藤田委員の長い間の国債管理政策あるいは国債の信用の問題に対する今日までのたびたびの議論からいたしますならば、今の質問が出てくるということには必然性もございますし、それだけ念頭にあったからこそ、部内でその議論を含めて最終的にこの法律として今御審議をお願いするに至った、そういう経過でございますので、最初言うべき言葉かもしれませんが、撤回することなくして御賛成いただくよう切なる悲願に燃えておる、こういうことであります。
  27. 藤田高敏

    藤田(高)委員 議論の繰り返しをやる時間的余裕はございませんが、借換債がやや問題になったのは、去年の予算委員会で議事が一時中断をして、そして各党間、政府との間に意見調整をやったときに、まとめらしきものとして出てきたものの三つの中にこの一つが出てきた。そのときにはわざわざ「理論的にはこという言葉がついておったのです。私はその三つに対しては、明確に私ども立場見解というものは表明しておきました。しかし、私はそのときといえども、五十八年度にも借換債はやらぬという法律が出ておるわけだから、あくまでもこれは理論的な問題として、事と次第によってはというぐらいの検討というふうに理解はしておったわけです。  しかし、そのことは言ってみても、もう今日の段階ではこれは始まりませんが、今大蔵大臣おっしゃったように、私が今主張しておるように、年度年度に新たな法律を出して借換債をやるようなことは、法律的にはこれはできないのだとか、あるいは他の法律との関係において、そのことは法秩序からも決定的に矛盾をするんだとか、そういうものがあれば別だけれども、そういうものがない以上、どちらを選択するかというのは、お互いの協議の中で決まることじゃないでしょうか。法制局の見解一つの方法かもわかりませんよ。しかし、これは余りにも、公債の財政運営の節度をつけるという立場からいって、過去九年間、十年間にわたるものを一遍に全部枠の中から解放してしまうような、そんなことをする必要は全然ない。そういうことをやれば、今までお互いに何のために議論してきたのかということになるのじゃないでしょうか。  大臣は、それはここまでお出しになられたら、これを撤回することはできないので何とかと、こう言うのだけれども、これはまた私は委員長にもお願いしたいのだけれども、やはりこれは当委員会としても、立法機関としても、過去のこの経緯からいけば、今私どもがまじめに、真剣に具体的なものを出しておることについて、一遍ちょっと、何も委員会をストップしたりする必要はありませんが、十分この委員会として理事会を開いて、こういった問題についてはどうするんだということで、法律審議が終わったらとんとん採決していくのではなくて、こういう重大な問題については特に委員長の計らいによって——この意見は私一人じゃないと思うのです、我が党の今まで質問した同僚の議員からも出ておると思うのですけれども、社会党だけじゃなくて共産党からも出たでしょうし、そういう点については、委員会としてもこの意見をひとつ真剣に取り上げてもらう場を、理事あたりを開いて、ひとつ御検討願いたい。私は、これはひとつ委員長要望しますが、それは取り上げていただけるかどうかは委員長の判断に任せますけれども要望をいたします。  ついては大臣、もう一度私の主張について、この法案を出したからということでそう何としてもというのじゃなくて、あなた御自身がこの十年の間に二回大蔵大臣をやっておるのですから、閣僚の中では一番この問題についてかかわりの多い、ある意味では責任の多い大臣ですよ。渡辺大蔵大臣も二年ほどやったか。そのほかの方もおやりになっただろうけれども、グリーンカードの問題とこの問題は竹下大蔵大臣、一番かかわり合いがあるわけですから、その点では、私が強く主張いたしておりますことについていま一度ひとつ検討を煩わしたいと思うわけであります。
  28. 竹下登

    竹下国務大臣 これはまず、先ほど申し上げましたように、五十一年の一月、財政審から、あえて財政の節度を示すという観点からこれを法定することはよろしい、こういうことをいただいて以来のものでございます。したがって、私自身も去年、今、藤田委員おっしゃったとおりです、一時中断をいたしまして、理事会で、そして三つの方法があろうというところに、借りかえ問題を私も正直に申し上げたわけであります。それから一年間、いろいろ議論をしたわけでございます。その結果が、借りかえを認めていただこう、こういうことになりまして、そうして部内の議論の中で、その歴史的な経過からして、一年刻みの法律考えられないわけではないという前提において、私から問題を提起して種々議論をしてきたことも事実でございます。  そこで、最終的にはやはり、先ほど申しましたように、いわば政策転換だという位置づけ、これをしていかなければならぬ。そうなると、五十九年度特例公債について借りかえ禁止規定を置くことはもう困難であるとするならば、そこで、できる限り借換債の発行を行わないよう努めるという努力規定を置いて、そうなると、この場合において、五十九年度債よりも前に償還期の到来いたします五十八年度以前の発行に係る特例公債についても、やはり政策転換として同様の考え方に改めざるを得ない。だから、おっしゃいましたように、そういう違法であるという考えはございませんでした。私どもも、その手法も、一つの節度の問題からと歴史的経過からの問題として取り上げて議論したことは事実でございます。だが、政策転換ということになった場合、借りかえ禁止規定が存置されたままの状態に置くということはいろいろな角度から適当でないじゃないか、こういう結論になったわけでございますので、いずれこれはそのときが来たら借りかえるであろうという懸念の上に立ちながら、なお借りかえ禁止規定をそのまま存置しておくということは、国会に対して、別の意味において不誠実だという議論も出てくるであろう等々をいろいろ議論をいたしまして、こういうことでお願いするようになった。したがって私どもも、これは違法だからとかいう考え方ではなく、その方が正直だという考え方でお願いをすることにしたわけでございます。開き直りととられないようにと思って、一生懸命議論をした納入がこうなったわけであります。
  29. 藤田高敏

    藤田(高)委員 最後に。竹下大蔵大臣のお人柄からいって、そんなに開き直りなんということは思いたくないわけでありますが、極めて丁重な形で、いんぎん無礼な形で、これは結果としては開き直りになっておると思うわけでありまして、私は率直に申し上げて、このことだけは絶対承服することはできません。私は、一人の政治家として、今日までこの問題を長年にわたってやってきた立場からも、承服することはできない。しかも、今言ったように国会審議をやってきた歴史的な経過、これは立法機関、立法府含めてのまさに一致した見解としてやってきた経過から見ても、また、立法措置としても、今私が言っておること自身は、違法性だとか法体系の中からいって何ら矛盾を来すものでもないという点からも、いま一つは、本来の財政、ここはやはり財政問題を議論する委員会ですから、この大蔵委員会という、そういう歳入委員会の性格を持つ立場からも、財政問題に対する節度は節度としてきちっと、できるだけ厳格に保持していくという立場からも、私は、一年ごとの法律を出して、そして、借換債をやらざるを得ないのであれば、そういう措置によってやるべきである、このことを強く要求しまして、私の質問を終わります。     —————————————
  30. 瓦力

    ○瓦委員長 この際、お諮りいたします。  本日、参考人として、日本銀行副総裁澄田智君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  31. 瓦力

    ○瓦委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  32. 瓦力

    ○瓦委員長 堀昌雄君。
  33. 堀昌雄

    ○堀委員 きょうは、財源確保法の私が最後の質問者でございますが、今、同僚の藤田委員が、昭和五十年の国債大量発行以来、予算委員会あるいは大蔵委員会でこの問題に大変熱心に取り組んでこられて、それらの経験の上に立って、ここで今度の法律の一番重要な問題であります特例債の借りかえ問題について真剣な討議をされたことに、私は非常に敬意を表したいと思うのであります。  そこで、まずきょうは、そういう意味では、この問題の中心はやはり何と申しましても国債問題でありますから、そういう国債の沿革の問題から少し考えてみたいと思うのであります。  国債整理基金特別会計法というのは、明治三十九年三月二日の法律でありますが、一体この明治三十九年にこの法律を必要とした事情というのは大体どういう経過であったのかを、ひとつ簡単に御説明をいただきたいと思います。
  34. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 詳しくは存じませんが、日露戦争等の際に発行いたしました国債の管理のためにこの特会をつくりまして、その管理政策を行うという趣旨で創設されたというふうに理解しております。
  35. 堀昌雄

    ○堀委員 今御答弁のあったように、日露戦争の戦時国債の管理の問題が始まりのようでありますが、当時は、実は外債を非常に大量に発行しておったという経緯もありますから、どうしても対外的な信用を含めて、国債管理政策というものが必要になったのだと思うのであります。ですから、この国債整理基金特別会計というものが設けられたのは、そういう意味では、まず日露戦争のための戦時調達費の公債の管理政策で、ずっと経年的にこれが改正をされた経緯を調べてみますと、そのときどきの財政経済情勢に応じて、国債整理基金特別会計法というのは手直しがされてきておるわけであります。  そういう経過をたどって、実は昭和四十年に、御承知のように戦後初めての国債が発行されることになりました。この昭和四十年の国債発行のとき、私は予算委員会で、昭和四十年度補正予算三案に対する質疑を佐藤総理大臣との間に行いましたので、歴史的な経過を含めて、ちょっと御紹介をしておきたいと思うのであります、私ども国債というものに対して戦後初めて対応することになったのでありますから。   そこで、総理に最初に少し確認をさしていただきたい点がありますので、これから始めたいと思います。   いま私ども大蔵委員会にかかっております昭和四十年度における財政処理の特別措置に関する法律案というのがございます。これは、本年度に限って赤字公債を出したい、つまり財政法第四条の例外規定でございます。私ども、これは例外だと考えておりますが、総理大臣は、さっき私申し上げたように、先のことは約束することもできませんが、あなたの在任中にはこういう例外的な処置はもう繰り返さない、こうお約束願えれば、私たちはこの特例の問題についてはかなり不安が取り除かれるような感じがするのでありますが、その点をひとつ、ちょっとお約束をいただきたいと思います。  要するに、この昭和四十年の国債というのは初めて発行されることになったわけでありますから、本来的には四条国債で処理をしても差し支えなかったのだと思うのでありますけれども、当初からそういう建設国債として発行しておるのならともかくも、そうではない限り、やはり特例債としての処理をするのが筋だろう、こういう当時の福田大蔵大臣考えで、特例債が法律としてできるようになった。これが、実は今の財源確保法の、戦後の日本の財政史の最初の問題だった、こういうことでございます。  そこで、私が幾つかの問題についてちょっとお尋ねをしておりますことについて……。  ○佐藤内閣総理大臣 私は、はっきりとお約束をいたしますが、御承知のように、ことしは特異中の特異な財政状態であります。しかも、一面において、経済状況から需要も喚起しなければならない。こういうわけで、均衡のとれた予算にする、税収が足らなければ支出を削減する、こういうこともできないという、いわゆる異例中の異例であります。やむを得ずかような処置をとるのであります。私がいつまでやるか、それは別といたしまして、かような状態は、これは特例でございますので、もう重ねてかようなことはしないとお約束いたします。  ○堀委員 その点ははっきりいたしましたので、その次に、これに関連があるわけでございますが、財政法第四条は、いまとの見合いで改正はしない。ということは、これは例外で二度と繰り返さないとなりましても、本法のほうが、財政法第四条が変わってくると、いまのお約束が無効になるものですから、それを担保すると言うとたいへん大げさになりますけれども、いま特例は二度と繰り返さないとおっしゃっていただいたわけでありますから、あわせて、財政法第四条のこの部分に関する改正はしないというふうにひとつお約束をいただきたいのですが……。  ○佐藤内閣総理大臣 私は法律にやや弱いんですが、この部分に関しての改正はしない、  ——するかどうかというお尋ねでございますから、非常に限られた範囲だと思います。先ほど申しましたように、私の方針ははっきりしておりますから、この部分についての改正はしない、かように御承知願いたいと思います。  ○堀委員 いまのこの部分と申します表現は、まず見合いでございますから、それを先 に伺ったわけでございます。ちょっと法文を読んでおきますと、四条は、「回の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。但し、公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行し 又は借入金をなすことができる。」「前項但書の規定により公債を発行し又は借入金を なす場合においては、その償還の計画を国会に提出しなければならない。」第三項として、「第一項に規定する公共事業費の範囲については、毎会計年度、国会の議決を経なければならない。」こうあるわけでございます。この一番最初の第一項について伺った わけでございます。   そこで、その次に、今度の公債の発行の歯どめの議論の中で、日銀の引き受けはとらない、市中公募で行なう、こういうふうに本会議でも御答弁があるわけでございます。 そこで、これも一つの歯どめの問題でありますが、この点は、今後も日銀借り入れまた は日銀引き受けによる公債の発行等はおやりにならないのかどうか、この点をちょっと伺っておきたいと思います。  ○佐藤内閣総理大臣 私は、いま考えられたような発行方式を変えることは、よくよくでなければやりたくない、かように思いますが、ただいまとにかく一応の歯どめを考えておりますので、これで実施してどんな形になりますか、あるいはこれをもっと厳格に すべし、かような議論が出るか、あるいはもっと拡大しろとか、かようなことが言われるかもわかりませんけれども、しかし、もともとこの種の事柄、いわゆる赤字公債は絶 対に出さない、特例は別ですが、今後は赤字公債は出さない、また、その公債を発行する使途もはっきり限る、かようにいたしておりますので、その原則に立ちまして、どういうように消化されるか、実際を見てまいろう、かように思います。ただいまのお尋ね も、赤字公債への危険を避けろ、こういうことだろうと思いますので、十分注意するつもりでございます。  ○堀委員 私がいま日銀借り入れに触れておりますのは、実は、財政法の側の問題では なくて、日銀法第二十二条では、ここに対して道がはっきりと開かれておるわけでございます。日銀法第二十二条は、「日本銀行ハ政府二対シ担保ヲ微セスシテ貸付ヲ為スコトヲ得」、二項は、「日本銀行ハ国債ノ応募又ハ引受ヲ為スコトヲ得」こうなっておるわけでございます。   実は、私どもはやはり日銀引き受けなるものの持っておるインフレに対するおそれというもの、これは非常に大きいわけでありますし、これは諸外国においても国によっては法律をもって禁止しているところもあるわけでありますから、私は、願えればこの際 この日銀法第二十二条を改正をしてもらって、そういうことができないということになりますと、われわれこの今後の国債問題については不安がなくなる、こういう感じがす るものですから、そういう意味でお伺いをしたわけでありますが、日銀法二十二条については、総理はどういうふうにお考えになりましょうか。  ○瀬田(赳)国務大臣 日銀法につきましては、全般的な改正の問題があることは、堀 議員もよく御承知のとおりであります。その際、どういうふうな内容にいたしますか検討いたしますが、ただいま公債の問題が財政法のたてまえから議論になっておる。その歯どめとして、日銀引き受けというような形は絶対にとりませんと、このことだけははっきり申し上げておきます。  ○佐藤内閣総理大臣 ただいま大蔵大臣の答えたこと、私もさように考えております。こういう実はやりとりを昭和四十年の十二月二十三日、予算委員会で行っておりますが、これが特例債という問題について私どもが公式に国会で議論をした最初のことでございます。  それから、さっきの藤田さんの質問のように、五十年までは実は特例債の問題というのはなしで、建設公債だけの、第四条国債だけで処理をされてきましたが、ここから実は大量な国債発行時代ということになったのであります。  さっきちょっと古いところへ戻りましたけれども、今の国債管理のシステムというものは、ですから、ある意味では明治三十九年にスタートをしておる一つのシステムである、改正をされておりますけれども、そういうシステムである。そうして同時に、この四十年のときの佐藤総理のお答えでもありますように、これは特例中の特例であって、二度と赤字国債を発行するようなことにはならないという前提のもとにこの法案審議というものがされたという経緯がございますが、五十年からは実は大量の特例債の発行、こうなっておるわけであります。このことから、我々としても一体特例債の発行というのは今後どうなるのかという問題についての心配が実は絶えないというのが現状なのであります。  ちょっと事務当局の方で御答弁をいただきたいのでありますけれども、五十年の特例公債の発行以来、実績で特例公債が一体各年度、五十九年度までを含めて、五十七年までは実績が出ていると思います。五十八年はまだ最終的にはあれでございましょうが、現状での、補正予算状態で、そうして五十九年は予算状態で、一体特例債というのはどのように発行されてきておるのかをちょっとお答えをいただきたいと思います。
  36. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 五十年度以降、特例公債発行額の実額を申し上げたいと思います。  まず五十年度におきまして二兆九百五億円、五十一年度三兆四千七百三十二億円、五十二年度四兆五千三百三十三億円、五十三年度四兆三千四百四十億円、五十四年度六兆三千三百九十億円、五十五年度七兆二千百五十二億円、五十六年度五兆八千六百億円、五十七年度七兆八十七億円、五十八年度につきましては、補正後でございますけれども六兆九千八百億円、それから五十九年度は、当初予算でございますが六兆四千五百五十億円ということになっております。
  37. 堀昌雄

    ○堀委員 さっき藤田委員も、今の「展望と指針」の中で六十五年に特例債から脱却をしたいということについてのお尋ねがありました。この数が、実は今の特例債の減額というものがいかに困難であるかということを象徴的にあらわしていると思うのであります。要するに五十年は最初で二兆でありますが、五十一年が三兆四千になり、あとの細かいところはちょっと省きますが、五十二年が四兆五千、五十三年が四兆三千、そして五十四年になって六兆三千三百九十億円と、ここではね上がりました。それから後は七兆二千、五十六年の五兆八千というのは、これは実は例の整理基金から取り崩しましたからこれで済んだだけのことでありまして、その関係で五十七年が七兆、五十八年が六兆九千、ここはまあ今の取り崩しの返りもあったでしょうが、五十九年が六兆四千ということですから、時間がたっていますけれども、要するに、最初に六兆三千に乗った五十四年から五十九年まで実は全然減ってないのです。この間減ってないのが、これからこの六兆四千が減るかどうか。これはもうだれが考えても計算の問題として成り立たないことではないのか。  私は、これまで国債の問題を、最初に今申し上げた議論をした後で、これについてはいろいろなかかわりを持ってまいりました。福田大蔵大臣のときだったと思うのでありますけれども、最初の長期国債というのは七年債でございました。私は、どうして七年債という中途半端なものを出しているのだ、要するに金融債が五年でして、その次が国債が七年、長期債というのなら十年にすべきではないかという議論をいたしました。大蔵省もそれに賛成をして、実は十年債になったという経緯があります。五十年に松野さんのときに、今の二兆円を超える赤字国債の発行になったときに、これから国債の大量発行をやるのならば、国債の種類を多様化すべきではないのかということで、五年の中期債を出すべきだということを松野さんに強くお話をいたしました。松野さんは、それはもっともだ、必ずそれはやってみたいということで、実は五年の割引債というのが出ることになりました。その後、落選いたしましたときに、「ファイナンス」に書いたのかどこに書いたのか覚えておりませんが、さらに二年、三年、四年のような中期債の発行をすることによって、大量の国債の消化をできるだけスムーズに行うべきだという提案は、やはりそのように実はなってまいりました。そういう経過を通じてだんだんと実際、国債の残高がふえてきたというのが現状であります。  そこで、大蔵大臣、今私が計数を示して、過去の実績では実はそんなにうまくいっていない、おまけに非常に問題なのは、特例債によって実は電電公社の問題も、それからその他のところから金を持ってきて、それでこの赤字国債で済んでいるわけですから、実際の歳入の赤字というのは、もっと実は過去に大きかったわけであります。私は、これは一つのドレッシングだ、こう考えておるのであります。この点について大蔵大臣、あなたが今から六十五年まで大蔵大臣をしているわけではないけれども、この時点に立った大蔵大臣として、六十五年にやるなどということが、この前、五十九年の赤字国債をゼロにするという話はもう初めからだめだったわけでありますが、今の計数を下敷きにして——そうして特に私気に入らないのは、財政の問題というのが、赤字国債を減らすことが先にあるという物の考え方は間違いだと思うのですね。要するに歳出をいかにすべきか、歳入をいかにすべきかという問題の中でこれは考えられるべきことであって、ですから、歳入がふえるか、歳出を減らすかということによって結果として特例債の発行が減るという哲学に立たない限り、特例債を幾ら減らした、一兆円をめどにとか、そういうことはターゲットにすべき問題ではないのではないか、私はこういうふうな感じがしますので、それについての大蔵大臣の御見解を承りたいと思います。
  38. 竹下登

    竹下国務大臣 私も記憶を呼び戻してみますと、佐藤総理大臣、福田大蔵大臣「あれは昭和三十九年十一月九日に佐藤内閣ができまして、四十年に初めて内閣改造をやって、それで福田さんが大蔵大臣になられた、こういうときでございます。     〔委員長退席中西(啓)委員長代理着席〕 私もその後閣議にいろいろ出ておりますが、その当時内閣官房副長官でございました。特例債にするか、閣内には建設国債でいいじゃないかという議論もございました。まさにオリンピックの翌年の、戦後最大の不況のいわゆる財源措置でございますから。しかし、次の四十一年の発行の分は正正堂々と、当初予算からだから、これは建設国債。だが、ことしはまさに歳入欠陥そのものを埋めるわけだから、二千億とかその程度の金だったような……(堀委員「二千四百億」と呼ぶ)二千四百億ですか、その程度の金。それは大きな転換期でありますから、あれほど議論された閣議というのは今まで私も知らないぐらい。私は発言権あるわけじゃございませんが、閣議で承っておりました。それからずっと建設国債で、五十年からいわゆる特例債というものの発行に至って今日に至った。  それで、私も今の御意見を承りながら考えてみますと、その後私自身大蔵大臣として初めて組みましたのが五十五年度予算でございます。その五十五年度予算に際しましては、いわゆる「初めに一兆円の減額ありき」、こういう構えでやったわけです。そのときも実は、国債は最終的に歳入歳出の結果として生ずるものであって、その中身が特例債が幾ら、建設国債が幾ら、こういうことになるわけでございますから、それを「初めに一兆円の減額ありき」という考え方予算編成するのはいかがか、それも議論いたしました。しかし、今でもそうですが、当時の財政審の桜田さんあたりは、ここまで来れば「初めにありき」でやらなければそれはできぬよ。偉い先生だから、そういうものかなと思って、そういう形で私はこれに対応してきたわけであります。  それで、当時は、少なくとも五十五年は、したがって税外収入というようなものはなしにやれたわけです。これは五十四年の経済運営が、今までの公債発行の集約がいい傾向に出て、出すべきものを出さなくて済んだという状態にあったぐらいでございましたので、その惰性もあって、税外収入というようなもので特別に手当てすることなくやれた。だから、あの時点の物の考え方からすれば、減らしていくということは全く不可能ではないという考え方に私は立っております。  五十六年は、それこそ産投会計やら中央競馬会やらいっぱいもらいまして、その後、もらい癖じゃありませんが、税外収入を一生懸命でやるようになって、今度も結果としてとはいいながら、最後の電電から二千億ちょうだいする。それによって、実際私の頭の中は、あれで赤字公債をその分だけ減らせるなという考え方しかなかったという感じでございます、率直に申しまして。だから、そういう税外収入の確保にもこれから努めていかなければなりませんが、あの五十五年当時のことを想起して対応していくならば、まだやれるところがありはしないかという期待を持ちながら、これからも取り組んでいこうというわけであります。  ただ、おっしゃいますように、本当は歳入歳出の帳じりで最終結果として出てくるものであって、「初めにありき」というのは、五十五年のときも、それに対しては私は心情的には若干消極的でした。しかし、初めてなったばかりでございますから、偉い先生が言われるとやはりそうかなと思いながら取り組んだ。したがって、今度の場合も、五十八年予算、五十九年予算、特に六十五年に脱却期を延ばしたことを明らかにした五十九年度予算のときも、「初めにありき」という考え方には私もついに立ち得なかった。結果として五千数百億ということになっておるわけでございますので、その点につきましてはおっしゃるとおりの議論はあるわけです。  そこで六十年度予算、私が編成するかどうかは別として、五十五年のことを振り返ってみて、どっちがいいかもう一遍考えてみよう。元来は歳入歳出の結果として出るものでございますが、あの五十五年のときに「ありき」でやってみたらできたから、あの考え方もやはり捨ててはならぬという、素直に言いますと迷っておるところである、こういうことでございます。
  39. 堀昌雄

    ○堀委員 大変正直ですけれども大蔵大臣一つの哲学をきちっと持って、事務当局にこの方向でやれと言って指示をしないと、今のお話を聞いていると、桜田財政審会長、確かに偉い人ではあります、偉い人ではありますけれども、これは諮問機関の長でして、決定権は大蔵大臣なんですよ。  私はかつて、あなたが大臣に就任されたときに、田中大蔵大臣の話をしましたね。というのは、大蔵大臣で大事なのは政治決断ができる、これが大蔵大臣の値打ちだと私は思うのです。きょうこれからいろいろ問題を提起しますから、これについてひとつ政治家竹下登が答弁をしてもらいたいと思うのです。  昭和三十八年だったかと思いますが、例の証取法の問題について、私は田中大蔵大臣との間に質疑をいたしました。そうして、少なくとも証取審ももう答申しておることだから免許制にすべきだということを強く迫りました。最後に、政治家田中角榮はどうするのか、ひとつ答えてくれ、こう言いましたら、当時加治木さんが証券部長で、そばにいて、大臣、ひとつ慎重にお願いしますと、見ていてわかるようなあれでした。そうしたら、堀さん、事務当局は賛成ではありませんけれども、私は政治家としてあなたの御提案に賛成です、今内閣委員会に証券局設置法をお願いしておりますが、この法律が通って証券局ができましたら、その最初の仕事に、今堀さん御提案の証取法の改正案を出すようにいたします、こういう決断で実は証取法の改正が決まったわけですね。その作業が進んでおりましたから、例の昭和四十年の証券恐慌の際には、証取法の改正というのはほぼでき上がるところまで来ていた。私どもはそういう意味で、大蔵大臣の決断というものは非常に大きなものがあった、こう見ておるのです。  結局、経済というのはずっとだんだん流れているわけですね。今私は明治三十九年の話から繰り起こし、さらに昭和四十年、五十年と、一つの節目節目で問題が起きていることを申し上げておるのは、今度は六十年というのが一つの節目になるわけですね、国債管理政策としては。大量な国債の借りかえが求められる段階にやってくる、こういうことなんです。そうするとこの大量の国債借りかえというものが、これまでのシステムでうまくやれるというふうには私は思っていないわけです。  五十六年の二月十日に、当時、渡辺大蔵大臣が就任をした最初の委員会で、私はその問題について触れたわけであります。そのことも、会議録の中で申し上げた方がわかりやすいと思いますから……   そこで、まず国債特別会計という発想をちょっと御説明しますと、いまの国債整理基金というものを国債特別会計というものに改めたい。そうして国債の発行、償還その他の国債に関するすべての仕事をこの特別会計が一手に取り仕切るということにしたらどうかというんです。たとえば昭和五十六年度予算で十二兆二千七百億かの国債発行を一般会計が予定をした、そうしたら一般会計国債特別会計に対して、十二兆二千七百億円の資金を調達して一般会計へ入れなさい、こういう処理ができる。同時にしかし、一般会計国債費を国費特別会計へ入れる。この年度の国債費は六兆六千五百四十二億円でありますが、  国債利払いその他。だから、国債に関することは全部この特別会計でやらせるということにして、その国債の発行パターンは国債特別会計へ一任して、別に十年債を出そうと五年債を出そうと三年債を出そうと、それは国債特別会計がそのときの市場の情勢を判断しながら出せるということにしたらどうかということが一つ。   もう一つは、限度は設けておかなければなりませんけれども、ここでひとつ国債証券、短期国債です。これは公募によるところの短期国債の発行、言うなればアメリカのTBのようなものをこの国債特別会計で発行させる。いま特別会計は、食糧特別会計も外為特別会計も資金の必要があるときは証券が発行できる、それは一年以内、こういうふうに法律に書いてある。だから国債特別会計も一年以内と限度を限って短期国債の発行ができる。一年以内ということは年度とは別なんですから。発行したところから一年ということですからね。ただし、一年は長過ぎるから、そこで六カ月程度国債証券を発行させて、これは市中公募で、要するにアメリカのTBのようなかっこうにしてしまう。 ということを実は提案をしたわけであります。  これに対して大蔵大臣の答弁もあるのですけれども、やはりこのときの渡辺喜一理財局長が、   私どもも余り考えつかないような非常にユニークな構想でございますので、実はいまここでいろいろ申し上げる用意はないわけでございますが、私どものいままでの経験からいたしますと非常にメリットがあることは事実でございます。実は、いままでわれわれの国債発行というのはどういう銘柄を幾らの量出すかということがすべてもう国会で決められておりまして、これを自由に変更するのにはなかなかいろいろ手続が要るので、そう弾力的に動かせない。そういうことになりますと、市中はもう年度の初めからわかっておる。十年債は幾ら出る、二年債は幾ら出るとこうわかっておるわけでございますので、仮に公募入札をしてみても本当にフリーな値段というのはつかない、どうしても利回りが高目になってしまう、こういうのが現実でございまして、本来発行当局としてはどういう銘柄をどういう期間のものをどのくらいの量出すかということについてのフリーハンドがなければ本当の意味の管理ができないのじゃないかというふうなことをつくづく経験から感じておるわけでございますが、そういう点を勘案いたしますと、いまのお話は大変結構な話だろうと思います。   それからもう一つは、六十年度から大量の償還あるいは借りかえが始まるわけでございますが、その場合を考えてみますと、借りかえのときに償還する時期と借りかえる時期とが常に同じ時期にやるというのがなかなかむずかしい。量が多くなります。したがって、ある意味では先に借換債を発行して資金を用意しておいてそれで償還するとか、あるいは逆に先に償還しておいて後で借換債を発行して資金を穴埋めするとか、いろいろなそういう弾力的な方法をとらなければうまくワークしないのじゃないかというふうなことをいま考えておるわけでございますが、そういう場合にどうしても償還する金の出る時期と借換債を発行して金の入る時期と、そこのずれのつなぎが要るのじゃなかろうか。そのためには、そのつなぎ資金として整理基金で短期のものを発行することも考えざるを得ないかなというようなことも実は検討課題になっているわけでございます。   そういう意味で、大変私どもの参考になるサセストであったわけでございますが、一方いま大臣が申し上げましたように、これは単に国債管理という面のみならず、財政制度そのものに関連してくる非常に大きな問題だろうと思います。そういう意味で、こういう制度が本当にわが国の現在の状態のもとにおいて採用し得るのかどうか、その辺は相当深く突っ込んで検討いたしませんとどうも結論が出ないのじゃなかろうか、こういう感じがいたしておる次第でございます。 こういうふうに当時の渡辺理財局長が答弁しているわけですね。  私がこの問題に触れておるのは、要するに、市場実勢で国債が発行されるということは非常に重要なことなんですが、今の予算総則では償還規定がちゃんとあります。幾らが幾らというのがずっと実は全部予算総則の中へ出てきますから、今渡辺さんが言っておるように、シンジケート側は事前にいろいろなディーリングをやる過程を通じて、それなりの価格を買い手の側がコントロールできる、売り手の方はコントロールできないという一方通行になっておるのが現状なんですね。  これからさらに、さっき私が申し上げたように特例債についても、私の考えでは、徐々には減るでありましょうけれども、相当長期間にわたって特例債を出さざるを得ないというのが、日本の財政の今日置かれておる状態ではないか。こう考えますと、この国債発行について、大量の国債を発行する場合に一番大事なのは何か、金利コストだと思うのですね。いかにして安いコストで国債が発行できるか。そのことは今度は、今第二臨調がいろいろ問題を出していますけれども、私に言わせると、一番肝心な国のことに余り触れていないのですが、国の百十兆になる国債をもし一%安い金利で調達できるようになれば、ともかく一兆円以上財政が節約できるのですね。だから、そこで節約ができたもので国債発行を減らせるわけです。国債費負担が軽くなれば国債費は減らせるわけですから、あらゆる意味で一番安いコストでまず国債が発行できる道をどうするかということが、これからの国債管理政策の一番大きな問題ではないか、私はこういうふうに第一に思うのですね。  二番目は、アメリカから非常に強く要求されておりますけれども、実は私が当委員会で何回もやってきたオープン・マーケット・オペレーションの問題。大蔵省はどうしても、なかなか大蔵省の蔵券はそういうTB市場の対象にはしたくない、これは単なる財政資金の調整手段です、こうなっていますからね。しかし、この新しい制度で、特にこの間参考人の方に来ていただいたときに申し上げたのですが、アメリカは現在国債発行の大体七〇%から八〇%がTBになっているわけでして、だからここらを参考にすれば、これは単に国内問題だけでなくて、国際的にも適切な市場がつくれるのではないかとか、そういう意味ではこの問題は、単に私が言っておる借りかえの問題ということだけではなく、非常に大きなその他の問題を含んでおるわけであります。  そこで、まずこの問題について大蔵大臣の基本的なお考えを少し伺って、今の問題にもう少し深く入っていきたいと思います。
  40. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる国債特別会計構想あるいは短期国債の発行を含めた弾力的な国債発行ができるような制度を創設しろという問題、これは昨年も堀さんから、九月でございましたか、そういう御質問があったことがございます。確かに国債はちょうど四十年からでございますから、国債とともにずっと歩いてこられたと言うと、ちょっと、発行したのは堀さんではございませんけれども国債とともにずっと来られた中において、いわゆる国債管理政策についての御見解というものがありまして、我々部内では堀構想とかいう言葉を使わしていただいておりますが、そういうものを勉強していかなければならぬし、それから中期国債を発行する場合もそういう議論が先行して、それで我が方もああして中期国債に踏み切ったわけですね。  したがって、短期国債の問題というものも、私どもが今日ここまで参りますと、新聞紙上等にも、私が懇談のときに若干そういうことにとられるような発言をしたというようなことで、大蔵省も短期国債の発行に踏み切った、こういう表現を使われたことがございますが、踏み切ったというわけではもちろんございませんけれども、いわゆる国債管理政策の弾力的運営という意味ではこれは貴重な御示唆でございますから、事務当局にこれまでも勉強さしておりますが、今後ともこの財政法との関連等におきまして、また金融市場に与える影響というものにおきまして勉強させなければならぬ課題だというふうに思っております。  ただ、蔵券をアメリカのTBと同じように……(堀委員「蔵券はもういいと言っている。短期国債でやるということですね」と呼ぶ)わかりました。蔵券の場合は、たびたびお答えしておるように、あれは資金繰債なんです、こういうことでお答えをいたして今日に至っておるということでございます。
  41. 堀昌雄

    ○堀委員 日本銀行にちょっとおいでいただいておりますので、お伺いをいたしますけれども、今の問題、この間もお越しをいただいて、いろいろ議論させていただいておりますけれども、この間、参考人にシンジケートの代表であります草場全銀協会長においでいただいて議論をいたしました。そのときに、市中銀行の皆さん、非常に短期国債というものには反対だというふうなお考えが強いというふうに聞いていたものですから、この六月から、要するに銀行に対して証券業務のディーリングが、部分的にですが認められることになる。そうしますと、六月にとりあえず期近物、二年以内のものを取り扱ってよろしい、こういうふうになります。そうしますと、この中にはもちろん一年の期限のものもありますでしょうし、半年のものもありますでしょうし、もうすぐ、三カ月で期限が来るものもありましょうし、非常にバラエティーのある問題をやることになる。理財局長に伺ったら、たしか十六兆円、いわゆる玉はあるんだということのようでありますから、当然その中にはそういうものがある。皆さんはそういう短期の国債のディーリングは喜んでやりたいといって手を挙げられておって、それが新規に出てきたら、それは困るというのは論理的におかしい、どうですかといってお尋ねをしたわけであります。草場さん、大変苦しい答弁をしておられたと思いますが、まず、日銀副総裁として、今の問題は、物事の諭理としては、銀行が対応するのは同じではないか。  そのときに、一年物の定期と競合するというお話が出たのですが、私が今考えておるのは大体九十日のサイトのものでいいんじゃないか。国債発行というのは二月、五月、八月、十一月ですか、こうなってクォーターごとでありますから、クォーターのときに全部償還されるようなかっこうの処理でいいんではないか。それはやはり相当大量に出るでしょうから、割引債にして九十日物というものでこの処理をして、そこで今の借りかえの資金の処理をやれば十分で、そのためにはかなりのものが市場に出てくるということで、それが日本銀行の考えておられるマーケットオペレーションの種になるという形になれば、今アメリカが要求しておるところのTB市場の問題に対しても解決がつくし、私はかねてから当委員会で随分何回もこれはやってきたのですよ。  中曽根さんに入ってもらったときにも、去年でしたかやりましたし、なかなかいかなかったのは、考えてみると、今大蔵大臣が言われた蔵券はどうも材料として適切でないという大蔵省認識があるようですから、それをどうしても無理にやろうといっても無理ですから、新しい特別会計でそういう短期の九十日物を発行することで資金繰りを調整しながらやっていけば、私はかねてオープン・マーケットオペレーションというものをやりたいということで実は金利の自由化問題ということを勉強するようになったわけでありますが、それについての日本銀行の御見解を承りたいと思います。
  42. 澄田智

    ○澄田参考人 今るるお話のありました短期国債につきまして、先ほど大蔵大臣も検討に値するというようなことでおっしゃいました。しかし、非常に慎重に今後検討、こういうことでおっしゃったわけで、今御質問に、日銀の副総裁として私の見解、こういうことでございますと、まだ、日本銀行としては、短期国債が現実に発行される、行われる、こういうふうなこととして政府からお話を伺っているわけではございません。したがって、それを金融調整の対象としてどうかというお話も含めて、日銀副総裁という立場での見解としてお尋ねでございますと、まだ具体的な検討をいたしておりません、こう申し上げるよりほかございません。
  43. 堀昌雄

    ○堀委員 それでは、大蔵省の先輩である学識経験者澄田さんということで、日本銀行の立場を離れて、銀行局長三年在職という、今宮本さんが三年目で、戦後、銀行局長を三年やったのは澄田さんと宮本さんしかいないという澄田さんでございますから、学識経験者の立場からいかがお考えであるかお伺いしたいと思います。
  44. 澄田智

    ○澄田参考人 どうも、日銀副総裁としてお答えができないと申し上げたために、かえって、学識経験者としてどうかというふうなお尋ねを引き出してしまったようなところがありまして、私も学識経験者としてもなおはっきり意見を申し上げるというのにはいささかどうもちゅうちょするものがございます。  この部分は、日本銀行副総裁としてお受け取りいただいて結構でございますが、現在、日本銀行の保有している蔵券、TBその他為券や糧券も含めてでございますが、これを金融調節上の必要において弾力的に市中にオペをするということを、随時そのときの金融調節の状況に応じてやっておりますし、今後とも積極的にTBオペを活用してまいりたい。今もお話のありましたように、オープン・マーケット・オペレーションの材料として、その中核としてTBというような国の発行する債券を対象にすることは最も必要なことでああと考えまして、それは積極的にやっているわけでございます。  しかし、そのTBでなくて、短期国債ということになりますと、これはやはり国の財政制度関係、いわゆる単年度主義等の関係という問題もございまして、まさに今おっしゃられた国債特別会計というような、そういう弾力的に国債の管理政策を行える特別会計をつくることの問題、その御提案の核心の部分になると思うわけでございますが、戦後財政法でずっと堅持してまいりました単年度主義、それから国債がある意味では非常に不便な、順便な発行という意味から申しますと拘束になっているような借換債を厳格に対応させる、そういうようなことでやってきた制度、そういうものによって運用の厳格を期すということと、順便に市場の状況によって発行していくということとの両方の比較考量の上に考えなければならない問題の方が、むしろ重点の問題ではないかと思うのであります。  いずれにせよ、国債が市場の状況に応じて発行条件が決められる。この点についてはぜひそうなくてはなりませんし、それから、今後ともますます国債が大量に市場にある、そして一方、内外の資金の交流がますます活発になる、こういう状態のもとにおいての金融調節としてはオープン・マーケット・オペレーションが十分にできる。そのための種といたしましては、現状においてはTBが一番適当である、こういうことだけは間違いない。その点は私、そういうふうに考えているわけでございます。  短期国債がそこへ出てまいるということになりました場合の短期国債の発行の態様、ただいまおっしゃったように、九十日の割引というような形の発行がどうかというようなこともあると思いますけれども、そういったような態様を含めて新しく短期国債というものが現実になった場合に、短期国債の発行条件その他姿をよく勘案をいたしまして、そしてこれももしオープン・マーケット・オペレーションの対象になるようなことであればそれは考えられることであろう、かように思うわけでございます。
  45. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっと大臣にお伺いいたしますが、大変慎重な答弁なのですけれども、ほかにいい方法はありますか。要するに、今の制度のままで、私の提案以外に。そうすると、今の制度のままでは最初に予算で決まった以外のものは出せないわけですから、予算で決まったもの以外出せないということで、今のクォーターごとに来る借りかえを可能にできるのかということなんですね。この間財政制度審議会の宮崎委員に来ていただきまして、要するに全体が動いてきておる。当初五十年のときは、国債残高どれぐらいだったかしら。ちょっと答弁してください、五十年のときの国債残高。
  46. 西垣昭

    ○西垣政府委員 五十年の段階では、建設国債、特例国債合わせまして、五十年度末現在におきまして十四兆九千七百三十一億であります。
  47. 堀昌雄

    ○堀委員 今のように五十年に国債発行したときは、わずか十四兆円という残高ですから、その当時から今日の十年間というものが、いかに大量の国債発行であったかということがわかるわけです。ですから、明治三十九年につくった国債整理基金法を修正をして今日に至っておるにしても、これは実はもう当初予想しなかった国債残高であり、国債大量発行が継続しておるというわけなんですね。現状のままでいけるというのなら、大蔵大臣、一遍現状のままで必ずやります、六十年、六十一年も現状のままでやります、こう答弁してもらいたいが、私はそれはちょっと難しいのじゃないか、だからそういう意味ではより積極的な検討が必要なのではないか、こう思うのですが、大蔵大臣どうでしょう。
  48. 竹下登

    竹下国務大臣 今までのことを整理してみますと、短期国債の期間、発行方式等の具体的内容については、現段階では全く検討しておりません、こう申し上げて、そして一方、御意見は十分検討に値する問題であります。事実、私の経験からしても、ある月は外債にしたり、それでまた状況のいいときに大量発行したり。そうすると、特定日に集中する。それにはつなぎというようなものが当然考えられてくるわけです。したがって、特定日に集中しますだけに、それだけを長期、中期できちんと埋めた場合は非常に不利になるじゃないかという議論も当然出てきますから、そのつなぎの問題等も存在する。でございますから、この問題は検討さしてください、こう申しておるわけですが、それをさらに問題点の指摘から一層部内で積極的検討をすべきである、私もそのことはそのとおりでありますという答えをすべきだという頭の整理を最近行ってきておるところでございます。
  49. 堀昌雄

    ○堀委員 私が今のサイト九十日とか割引債とか言っておりますのは、銀行が短期の国債はお断り、要するに定期預金と競合するような商品を国に出されてはたまらぬ、こういうことがあるようですから、そこへちょっとアクセントをかけているわけです。要するに定期預金と私の構想は競合しませんよ。九十日の定期預金というようなことは——制度は六カ月からでしょう。今三カ月からですか。——三カ月から。ああ、そうですか。しかし、そんな大したウエートがあると思いませんので、普通、定期預金というのは一年というのが中心でしょうから。ですから、そういう意味で実は心配ありませんという意味で言っているので、何もそうしなければならぬということではない。これはもうさっき申し上げたように、新しい特別会計に完全なフリーハンドを与えましょうという考えですから、そこはいいのでありますけれども、ともかくも私はこの問題はこれから非常に重要になると思うので、大蔵省はひとつ事務方として真剣な検討をしていただいて、少なくとも六十年以降の大量借りかえがスムーズに行われて、同時にできるだけ安いコストで資金を調達をしてもらいたい。それが今の財政再建問題の非常に大きな一つの柱だということを特に申し上げておきたいと思うのであります。  それから、副総裁にもう一つ伺いたいのですが、率直に言うと、今度の特例債の借りかえが認められるということになって、さっきの藤田さんの話のように、今特例債を発行するときには毎年、特例債の発行をお願いします。これも一本の法律でさあっと幾らでも出せるというのは、大蔵省自体としても特例債の発行の歯どめとして、手数がかかっても、当委員会にこうやって出すということが一つの歯どめだという認識だろうと思うのですが、それを含めて今藤田さんが、同じ出すなら毎年やったらどうかという御議論があったわけですが、それも今度はこういう法律になっておるので、何らかの歯どめはどうしても必要になるのじゃないか。それを考えてみますと、どうもこれは日本銀行の方で、要するに通貨の供給量のコントロールといいますか、マネーサプライをコントロールしていただかない限り、将来インフレにならないという保証はない、私はこう思うのであります。アメリカにしろ西ドイツにしろ、最近はマネーサプライを中心とした金融調節の手段がかなりとられておるわけでありますが、こういう状態でありますから、日本銀行として、これに対応する、インフレを起こさないための金融政策という点で、お答えをひとついただきたいと思います。
  50. 澄田智

    ○澄田参考人 国債の大量発行が続いていく、あるいは借換債を含めて続いていく、こういうようなときに、一方民間の資金需要が、今後景気回復が順調に進むようなもとにおいては活発になってくる。こういうことは当然でございまして、そういう場合に、資金需要が競合してまいりますと、どうしても金利が上昇してくる、こういうようなことになります。そういう状態において、これにいかに対応していくかということになりますと、やはりマネーサプライの過大ということにならないように適正にこれを管理をしていくということが、今後の金融政策の上で非常に重要になってくるという点はおっしゃるとおりだと思います。したがいまして、今後インフレの防止、通貨価値の安定ということを目標として、マネーサプライの適切な管理ということに我々の努力も傾注してまいらなければならないというふうに考えております。  もちろん財政法において禁ぜられております日銀引き受けによる国債発行、先ほど日銀法の二十二条の方の規定のお話がございました。あの規定は昔のままになっておりますが、財政法の方は、その後に定められて、日銀引き受けによる国債発行が厳に禁止されているわけでございますから、私どもとしては、かりそめにも国債の引き受けを行うというようなことはないのはもちろんでございます。  そして、マネーサプライの適切な管理ということは何よりも重要であるという考えに徹して、そのための調節をどういうふうにするか。先ほど申し上げましたオープン・マーケット・オペレーションなどもその一つの有効な手段、こういうふうに考えるわけであります。そしてもちろん、今後とも財政改革国民課題として推進していただきまして、借換債を含めた国債の発行額をでき得る限り圧縮をしていっていただく、これはぜひとも我々としてもお願いし続けなければならないこと、かように考えております。
  51. 堀昌雄

    ○堀委員 今の国債の管理、運用問題については以上で一応終わりにいたしまして、今度の法律の中で、実は私がちょっと気がつかなかった点でありますけれども、電電公社から二千億円の納付をするという問題が法律に書かれています。この前、真藤総裁がここへ御出席になった御答弁を聞いておりますと、過去の四千八百億については資本勘定からの繰り入れなので、これは後年度に非常に負担が残るということで、今回は損益勘定からにしてほしいということで処理がされた、こういうふうに伺ったものですから、私は、損益勘定から納付をされるのであれば後年度には負担は残らないのかな、こういうふうに思っておったのでありますけれども、どうもそうでないようでございます。電電公社の経理局長から、その間の、要するに今後の電電公社の後年度負担について、ちょっと答弁を求めます。
  52. 飯田克己

    ○飯田説明員 先生おっしゃるとおり、確かに今国会に提案されております財確法の納付金方式と、それから昨年までの納付金方式とは違っております。しかしながら方式としては、申し上げますれば、前回までの、五十六年度以来三年間の分というのは、貸借対照表上の利益積立金、これの取り崩しという格好で行われておりました。しかし、今回御提案になっております財確法によりますと、五十八年度の利益のうち、それを五十九年度に払うという格好になっております。したがって前回に比べますれば、利益積立金というのは、まあ無制限に取り崩される可能性がある。しかしながら、今度は一応前年度の利益の中において払うということで、消費者の方にも見やすいということもございますし、また経営上の一つの目安にもなり得る、そういった変化もございます。  ただしかしながら、資金的にこれを見ますれば、いずれも、私ども、口銭で入ってきます零細な電話料金は、すべてこれは事業運営費に使われると同時に、かなりな部分が電話局等の通信設備の方に日々化けておるわけでございます。したがって手元流動性というのは非常に少ないということで、今回も前回同様に、方式は変わっても、資金的に見ればすべてこれは借金によってお払いするということに相なります。したがって借金でございますから、これは私どもの資金調達の大宗というのは電電債でございまして、十年という長いお金を借りておる。したがって十年間利払いが続くし、かつまた、元本もすべてお返しするのは十年先、こういうことに相なります。
  53. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、この四千八百億と二千億円の金融費用というのは、最終にトータルとして幾ら負担をすることになりますか。
  54. 飯田克己

    ○飯田説明員 今まで借り入れましたのは四千八百億でございます。これに対応する利子は三千四百億円でございます。なお、今御審議中の法案に基づく二千億円というものに対応する利払いは千四百億円でございます。したがいまして、三千四百億円プラス千四百億円、合計四千八百億円ということでございます。
  55. 堀昌雄

    ○堀委員 これを見て私は、結局国の借金を電電公社へ肩がわりさせて、ですから、本来なら国が負担すべき後年度の利子を含めて、要するに電電公社に負担をさせる。どうも私はこれを見ながら、まあ今度は電電公社も経営形態が、法律が通れば変わるんでありましょうが、これはやっぱり私はどこの問題にしろ、結局国が負担すべきものをそこに負担させるというだけで、国が何といいますか、すり抜ける。しかし、その分だけ実は歳出はふえているわけですからね。だからそこのところは、やはりこれからこの電電公社の問題、今話がありましたように、結局、納めたのは六千八百億だけれども、そのための利子を四千八百億払わなければいかぬということは、これは公社にとっては大変大きな経営上の負担になることでありますので、私は、この問題をひとつ大蔵大臣としても厳しく受けとめていただいて、今後はもう要するに正攻法でオーソドックスに、歳出を減らして、その減らした限度において必要な財源調達はもうきちんとやる。オープンにきちんとやる。もうそこらからこそこそ金を集めてやりくりしようなどということを、この際考え直す必要があるんじゃないか。そういう問題を考え直すという前提もなければ、財政の節度なんというものは今後保たれないんじゃないかという気が私はいたして仕方がないので、その点ひとつ大蔵大臣のお答えをいただきたいと思います。
  56. 竹下登

    竹下国務大臣 私も最初は、今度の二千億は育ってみれば五十八年度の利益勘定だから、今までとは違う、こういう感じで見ておりました、率直に言って。しかし、説明を聞いてみれば、今の経理局長の御説明のとおりであります。だから、私どもがちょうだいしたものは六千八百億ではなくて、それの金利、まあ仮にその金を借りて支払うべきもの、支払っていただいておるものが仮に借りないであっても、それは利益を生んでいるものになるわけですから、いずれにしても今おっしゃるような計算になります。したがって、それに私自身も気がついてみて、これは確かに大変なものをちょうだいしたな、こういう認識をひとしお新たにいたしたことは事実であります。だから他人様、まあ他人様と言っては失礼ですが、他人様の財布を当てにするときには、そういう影響の度合いというものを十分に考えてお願いをしないことには、まさに節度を失っていくという認識は、私もいよいよ等しくいたしております。
  57. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、あともう二つほど残っておる問題の処理をしたいのでありますが、実は渡辺さんの、さっきの国債特別会計を提案しましたときに、金融財務官構想というのを打ち上げているのです。というのは、これはたびたび言って大蔵省の各局長耳が痛いでありましょうけれども、私が見ておる限りでは、大蔵省という省は局あって省なしという感じが極めて強い、こういう感じがいたします。しかし、この金融の問題というのは最近ますます実は複雑になってまいりました。例えば大和証券と京都信用金庫が組んで新しい商品を開発し——これはまだ認可されてないのかどうか、ちょっと銀行局長、これはどうなんですか。どっちの答弁かな、これは。証券局長なのか、銀行局長なのか、答弁する方がどっちかなということを考えなければいかぬような問題が起きてきておるわけです。まあそれでは銀行局長、三年の古参の局長ひとつ。
  58. 宮本保孝

    ○宮本(保)政府委員 今回認可いたしまして、もう発足いたしております。
  59. 堀昌雄

    ○堀委員 今私が答弁者をどっちにしたらいいのかと思うような問題が実は起きてきているわけですね。この前、大蔵省の先輩であります森永さん、河野さん、さらには日本銀行の佐々木さんと、三人にお願いをして三人委員会ということで、いろいろと窓販とか、ディーリングの問題について、いわゆる銀行、証券の調整をお願いをされたようでありますけれども、私は、部外の方にお願いをしないでも処理できるようなシステムを考えた方がいいというふうに思っていたものですから、五十六年の二月に、ひとつ金融財務官というシステムを一遍考えてみたらどうか、実はこういう問題提起をいたしたわけであります。そのときに各局長、当時の銀行局長、証券局長、理財局長、それから加藤国際金融局長、四人の局長から意見を聞いたのでありますが、皆さん大体賛成だったのですが、加藤局長は、今は必要はないかもしれないが、これからさらに金融の自由化が進めば、これは非常に重要な提案だと思いますと言って、あの大体が非常に弾力性が少ない加藤局長も、この提案に賛成をしてくれておるという事実があるわけであります。  そこで、もう今やその加藤さんが言われた金融の自由化というのが非常にどんどん進んできて、これからまだまだ進むという情勢の中では、私は、竹下大蔵大臣、これこそあなたの政治家の判断として、この際ひとつ金融財務官というものを置いたらどうか。確かに今財務官というのはありますが、これは名称が、英語の名前でどうなっているのか、ちょっとだれか答弁してください。
  60. 酒井健三

    ○酒井政府委員 お答え申し上げます。  バイスミニスター・オブ・ファイナンス・フォア・インターナショナル・アフェアーズでございます。
  61. 堀昌雄

    ○堀委員 少なくともインターナショナル・アフェアーズなんですね。だから、こうじゃなくて、要するにドメスティック・アフェアーズに対応できるものがやはり一つ必要じゃないか。よその官庁にも、それに類するようなものが複数であるところがかなりあるのじゃないか、こう思うのですけれども、これは吉田総務審議官にひとつ答弁してもらおうかな、あなたが今それに一番近い仕事をやっているわけだから。
  62. 吉田正輝

    ○吉田(正)政府委員 私、実は総務審議官ということでございます。それで、ただいま堀先生がおっしゃいましたような、財政、金融の中で特に重要な事項について総合調整を行うというようなことを、昨年新設された職で命ぜられておりますが、かなり似ておりますけれども、先生がおっしゃるほど強力なものではございません。このような総務審議官的なポストはかなり各省にも設けられており、設けられつつある、かように認識しておりますが、今先生がおっしゃいました金融財務官的な総合的なものがあるかどうか、私だだいまのところ承知しておりません。
  63. 堀昌雄

    ○堀委員 少し飛びます、後でもとへ戻ってきますけれども。  今いみじくも吉田総務審議官が、財政と金融にわたる所管をやるために新しく審議官の仕事をやるということですね、そういうことになっているということであります。私はこの前は金融財務官という金融の枠組みの中の問題を一つ提起したのですが、これからはもう大蔵省という役所は財政と金融が離れて考えられるような段階ではなくなってきた。要するにすべてが極めてフレキシブルにずうっとこう動いていく中では、当然財政と金融の接点といいますか、中長期に考えながらこの問題の調節をしていかなければならぬという段階に入ってきている、こんなふうに私は思うのです。  ですから、ちょっと後でまた戻りますが、今そういう話が出たからちょうどそこへつなぐわけですけれども大蔵大臣、私も、あなたがもう三年も大蔵大臣をやると思ってないわけだ。この二年やって、大変よかった、こう私は思っているわけですが、あれは竹下大蔵大臣のときにできたといって、歴史的にそれが大蔵省のためになるいろいろなシステムを考えるということについての決断をあなたが今下すのは極めて重要なことになる、私はこう見ているわけです。ですから、今の金融財務官の問題は五十六年二月にボールを投げているのですが、きょうは新たに財政金融研究所というか、名称はいいのですが、財政と金融の問題について、今吉田総務審議官が具体的に始めておられるのでしょうが、少なくとも経済企画庁の経済研究所のように部外の学者も正式に委嘱をし、部内の皆さんが参加をして、そこでひとつ新しい財政、金融の全体をひっくるめた、大蔵省プロパーの問題になるでありましょうけれども、そういう一つの研究所というものをスタートさせたらどうか。例えば財政審、金融制度調査会、証取審、これはこれまでの過去の歴史ではそれなりの部分でやってきた歴史があっていいと私は思うのですよ。しかし今や、さっきの問題のように、いずれの分野も非常に融合性ができておる。要するに学際マターといいますか、今や省際マターもあるわけだから、省際マターはあるけれども、やはり学際のマターというものが適切に処理されるということでなければ、大蔵省としての十分な機能が発揮できないのではないか、私はこう思いますので、金融財務官の構想とあわせて今の財政金融研究所構想というものについて、大臣の、政治家竹下登としての判断をひとつここで明らかにしてもらいたい。
  64. 竹下登

    竹下国務大臣 まず私が、堀さんと若干意見は違いますがよかったなと思っておりますのは、あの三人委員会です。これは、いろいろ考えてみますと、日本は年齢尊重というような傾向もございますし、それから、まさに三人さん、どこから見てももっともらしい、まあもっともらしいと言うとちょっと表現がおかしいのですが、その知名度から経験から年齢から。あそこでやってもらったことは本当によかった。あれは正式な諮問機関でもございませんし、考えようによれば非礼にも当たるとも思いつつも、あの三人さんの存在というのは、この世論形成にも三人さんの議論ですと非常に入りやすい。あれはよかったなと私は実は思っております。  それから五十六年の御指摘がありまして、その御指摘を臨調へつないで、それで臨調に出していただいた意見は、「銀行局、証券局等の金融関係部局については、金融の自由化及び我が国金融市場の国際化の進展等内外における金融環境の変化、大量の国債発行の金融市場に対する影響の増大、銀行・証券両行政間の調整を要する事務の増加等を踏まえ、中期的な視点に立って、速やかにその在り方を検討する。」ということをこの大蔵省に対して「内部部局の再編合理化」の中で指摘されたわけです。それはまさにその議論からつながれた臨調の答申になってきております。  それから、この答申が出てからなおのこと、今国際化、自由化は余計かまびすしく議論されるようになっておりますので、この問題につきましてはまさに私ども中期的な視点に立ちつつも、どういう形が一番いいかという問題について絶えず勉強していかなければならぬ課題だ。まず金融財務官の方からはそういう考え方です。  それから、財政金融研究所みたいな考え方の分は、私どもといたしまして大臣官房に財政金融研究室というのがございまして、そこで今研究をしておるわけです。それから吉田君、自分の仕事として言いましたが、これも今私が大臣になってから総務審議官に彼を任命したわけです。そういうような形でこの社会経済の変化に対応してきているわけです。だから、絶えず見直しを行っていくことが必要でございますので、どの程度の格にするかという問題もございますし、そういう構想を含めて、組織体系というもののあり方については、私も見直しはしていかなければならぬという認識は持っておるところでございます。     〔中西(啓)委員長代理退席、委員長着席〕
  65. 堀昌雄

    ○堀委員 今私が言っているのは単に銀行、証券じゃないのですよね。理財局と国際金融局を含めて金融は関係が非常に深くなっておる、こういう情勢ですから、今度のアドホックの問題を見ても、現実にはインターナショナルの問題だから大場さんがやっておられるにしても、各省各局調整をやってこられたと思うのです。ですけれども、それはどちらかというと名称にあるように、インターナショナル・アフェアーズということになっているわけだから、そこのところはこれからますます国内における調整というのは必要になってくることだと思うので、ぜひひとつ竹下大蔵大臣在任中に決断をされることが望ましいと私は思います。それは歴史の上にも残ることなのでありまして、別にあなたに手柄をとかいうのではなしに、要するに今の変革期の大変なさなかに大蔵大臣をやっておる人間の当然対応しなければならない問題だ、私はこう考えておるからであります。  大臣官房にあるという今の財政金融研究室ですか、それはいいんですが、この問題を要するにそういう閉鎖的な問題でなくて、部外の学者の皆さんにも一定期間その研究所に来ていただいて、大蔵省の諸君と一緒にひとつ議論を闘わして、いろいろとその方たちも御勉強になるということになるでありましょうし、ですから、審議会をたくさんつくれば同じだということになるかもしれませんけれども一つそういう恒常的な機関ができることは、日本の金融財政の出題にとっても私は大変有意義なことだと思うのです。  そこで、たびたび澄田さんにお願いして恐縮ですが、澄田さん、この前昭和五十四年の十二月に当時の佐々木さんに来ていただきまして、金融制度調査会長ですから、あなた金融制度調査会長としては御発言大変無理だと思うので、ひとつ学識経験者佐々木さんということで答弁してくださいとお願いしたことがあるのです。今の金融財務官構想とか財政金融研究所というのは、まさに澄田さんが長く大蔵省でやっておいでになった仕事であり、同時に今日もこの金融問題について日本銀行でずっとおやりになっておるわけでありますから、日本における最もすぐれた金融関係における学識経験者だ、私はこう認識をいたしておりますので、ひとつ学識経験者として澄田参考人の金融財務官及び財政金融研究所についての感想をちょっと伺いたい、こう思います。
  66. 澄田智

    ○澄田参考人 先ほど来お話を伺いまして私も思い出しておったわけでございますが、三十年来ずっと証券業及び証券市場の発達によって理財局から証券局ができてまいりました。それから先ほど御指摘の財務官も、その前財務参事官と言っておりましたのが、バイスミニスターとしての財務官というものが三十年代から四十年代にかけての間にできてきた、こういうことでございますので、明治以来かなりがっちり固まっております大蔵省の機構においても、そのときの状況に応じてのそういう変化、対応をやってきているわけであります。そういう状態から考えますと、今御指摘のように非常に大きな変化を迎えつつあるわけでありますので、当然それの対応は常に考えていかなければならぬ。大臣もおっしゃられましたが、そういうふうに思います。  先ほどちょっと発言をしておられましたが、総務審議官が昨年設けられて、円ドル委員会、アドホック委員会の対応を外向けには大場財務官がアメリカ側と交渉するというようなことでございますが、設けられました総務審議官のポストが非常に有効に働いている、吉田さんがそのポストで非常にうまく、円ドル委員会の問題に対してそれの取りまとめにふさわしい役割を果たしている、外から見てそういうふうに拝見をして敬意を表しているわけでございます。  かれこれ考えまして、まず金融財務官権想につきましては、今非常に速い勢いで自由化が進んでおりますし、内外と言っても今は水際から外の交渉は別だということが言われるときではございません。国内の制度が、あるいは国内のあり方がすぐそれに密接に関連する、こういうところでございますので、その辺含めての問題として、今後、現在対応をしておられる総務審議官をどういうふうにされていくのかというような問題とあわせて検討せらるべき問題である。これは私の個人的な意見としてそう思います。  それから、財政金融研究所でございますが、日銀も実は一昨年、百年のときに金融研究所を設けました。そしてこれのねらいの一つは、やはり学者の人との交流を盛んにして、しばらくその研究所に籍を置いていただいて、そしていろいろ研究をしていただく。それから、この学者には日本の学者だけでなくて外からも、内外の学界との交流、こういうことも兼ねてシンポジウム等も開いたり、来ていただいたりする、こういうことをやっております。内外の情勢、こういう状況でございますので、研究所ということのメリットは、やはり部内の機関であると同時に、研究所という形で外にもオープンにされた機関というところにあると思いますので、財政金融という領域は純粋の研究、金融学界の研究というのとはちょっと違う面がございますし、また審議会との関係等もあろうかと思いますが、今後確かに一つ方向であろうというふうに思うわけであります。研究所として余りに独立し過ぎても、これは財政金融の場合にはぐあいが悪いんじゃないか、こういうふうにも考えます。
  67. 堀昌雄

    ○堀委員 大蔵省の先輩であり、金融問題に非常に詳しい澄田さんの今の御答弁は、私も大変多としたいと思います。  大臣、結局役所というところは、機構ができていましても、年次とかそういう問題が非常に物を言うわけですね。ですから私は、恐らく今の仕事の上で金融財務官ができても、吉田総務審議官がやっておられる仕事とそんなに広がるとも思いませんけれども、やはりクラスの古い人、要するに次官と同じ年次ぐらいの人がそういうポストにつくかつかないかで、各局に対するコントロールというのはより有効に働くのではないか、こう思います。役所の問題としては、私はただ機構があればいいということではなくて、その機構がより効率的に本来の目的に沿って運用できるような人的配置ということを考えることは、やはり今後の運用の上で大変重要な問題だ、こう考えますので、その点も含めて、あわせてこの法律を通す以上は、少なくとも今後の財政に対する節度をひとつしっかり考えてもらいたい。  私は、かつて五十四年の選挙が終わりましてカムバックをしてきましたときに、当時の事務次官だったと思いますが、長岡さんのところへ行きまして、今度の選挙で一般消費税が敗北して、伯仲になったのは、大蔵省にとっては天佑神助だ、私はこう言ったわけです。なぜかといえば、この水膨れした財政で一般消費税なんかを取ったら、財政の圧縮ということは全然できなくなっていたと思うが、幸いにして一般消費税がアウトだという国民の判断で御承知のような格好になった。だから私はそういう意味で、ひとつ長岡さん、これから大蔵省は要するにトヨタの方式ではないけれども、乾いたタオルを絞って絞り切るぐらいの財政の圧縮に努めてもらいたい、それが今度の選挙の国民の判断ですよ、こういうふうにお話をしたことがあります。  今主計局大変努力をされて、かなり絞り込まれておるわけですが、それを絞り込むことなくして赤字国債脱却なんということは考えられないわけでありますから、そういう意味で、これからまた六十年度予算の編成が始まるんでありましょうけれども、ひとつ十分その点に意を用いて、当委員会の意向が少しでも国債の発行を減らすことを求めておるということを十分御認識をいただいて対応してもらいたいと思います。その御答弁をいただいて私の質問を終わります。
  68. 竹下登

    竹下国務大臣 一つだけ前の質問のお答えになりますが、かつて通産省に通商監というのがおりまして、それはそれなりに機能しておった。それが、そういうのをなくして建設省の技監だけを残して、あとは審議官とか参事官というものに整理されてきた、こういう歴史のようでございます。したがって、総合調整機能の問題については総務審議官というものが、これは私、実は五十一年に建設大臣をしておりましたときに建設省内で総務審議官というものをつくりまして、そのことが私の経験にもあったわけでありますが、総合調整の問題、先ほどおっしゃいました学際業務がたくさんできておりますだけに、それが機能を果たしていくような努力を重ねていきたいと思っております。  それから、ただいまの問題につきましては、おっしゃいますとおり、あのときの考え方からいえば、仮にあのとおりいっておれば、もう今租税負担が二十六カ二分の一になっておるわけでございますが、それが痛烈な批判を受けていわゆる一般消費税(仮称)がポシャってしまって、それだけにやはり厳しい対応をするようになったから、今の租税負担そのものを見ても二十六カ二分の一には届いておりませんし、そのことが一つの手かせ足かせになって、歳出に対する厳しさというものは風比企体の中にも理解が逐次行き届きつつあるのではないか。そういう過去の反省も含めて、これからも厳しい対応を省内一体となって行っていくように、私も指導監督に努めなければならぬというふうに考えております。
  69. 堀昌雄

    ○堀委員 終わります。
  70. 瓦力

    ○瓦委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  71. 瓦力

    ○瓦委員長 本案に対し、自由民主党・新自由国民連合を代表して、越智伊平君外三名より修正案が提出されております。  この際、提出者より趣旨の説明を聴取いたします。熊川次男君。     —————————————  昭和五十九年度の財政運営に必要な財源確保   を図るための特別措置等に関する法律案に対   する修正案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  72. 熊川次男

    ○熊川委員 ただいま議題となりました昭和五十九年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置等に関する法律案に対する修正案につきまして、提案の趣旨及びその内容を御説明申し上げます。  御承知のとおり、この法律の施行期日は、原案では「昭和五十九年四月一日」と定められておりますが、既にその期日を経過しておりますので、本修正案は、施行期日を「公布の日」に改めることとしようとするものであります。  何とぞ御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  73. 瓦力

    ○瓦委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。     —————————————
  74. 瓦力

    ○瓦委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に付します。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。塩島大君。
  75. 塩島大

    ○塩島委員 私は、自由民主党・新自由国民連合を代表し、昭和五十九年度の財政連営に必要な財源確保を図るための特別措置等に関する法律案及び同法律案に対する修正案に賛成の意見を述べるものであります。  本法律案は、先般成立いたしました五十九年度予算と一体不可分の重要な財源確保等に関する法案でありまして、現今の国の財政状況等から考えて、いずれも必要かつ、やむを得ない措置であると考えるものであります。  すなわち、第一に、特例公債の発行であります。五十九年度予算においては、歳出歳入両面の厳しい見直し等の政府の努力にもかかわらず、なお財源が不足するため、六兆四千五百五十億円の特例公債の発行を予定いたしておりますが、財源確保のためにはやむを得ないものであります。  第二に、国債費定率繰り入れ等の停止であります。基本的には、現行の減債制度の仕組みを維持するのが適当と考えますが、財政状況等によって、一時これを停止するなどの措置をとることもやむを得ないものであり、この措置をとることにより、さらに特例公債が増発されることを避けようとするものであります。また、このような措置をとっても、五十九年度における公債の償還には支陣を生じないものと見込まれているのであります。  第三に、電電公社、専売公社からの一般会計への納付であります。五十九年度予算において、異例に厳しい財政状況のもと、歳入面については、所得税大幅減税等所要の税制改正が行われるとともに、税外収入についても、特別会計及び特殊法人からの一般会計納付等の措置を論ずるなど、思い切った増収が図られております。  本法律案に盛り込まれている特殊法人からの一般会計への納付措置はその一環であり、いずれも五十九年度限りの特別措置であります。しかも、これらの措置は、公社の事業の遂行等に支障が生じない範囲で、かつ利用者等への配慮も加えた上でとられているものでありまして、やむを得ないものと考えます。  第四に、特例公債の借りかえであります。特例公債の残高については、できるだけ早く減少させることが望ましいことは申し上げるまでもありませんが、今後の厳しい財政事情を考えれば、我が国経済国民生活への影響を考慮しつつ、財政改革を具体的に進めていくためには、特例公債について借換債の発行を考えざるを得ません。  したがって、従来の借りかえ禁止規定にかえて、できる限り特例公債の借りかえは行わないよう努めるものとする旨の努力規定を置くことは、必要かつ最小限の措置考えます。  また、施行期日を公布の日に改めることとする修正案につきましては、事の性質上当然の措置であると考えるものであります。  最後に、私は、政府国民のコンセンサスを得て今後一期財政改革を推進されることを切に希望いたしまして、本法律案及び修正案に対する賛成討論を終わります。(拍手)
  76. 瓦力

    ○瓦委員長 渋沢利久君。
  77. 渋沢利久

    ○渋沢委員 私は、日本社会党・護憲共同を代表いたしまして、本案並びに修正案を含めて反対の立場で若干の意見を申し上げることにいたします。  昭和五十年以来、年々政府は特例法を国会に提出して特例公債を発行してきたわけでありますが、財政規律を保持するという立場で、この赤字国債の乱発を防止する歯どめとして借換債の発行をしないという定めを、特段の配慮をもってその都度定めてきたことは明らかであります。今回の法案によりましてこの歯どめを完全に外して借換債の発行に道を開く、すなわち財政再建どころか、赤字国債増発の危険に道を開くという措置をとろうとしているわけであります。  政府は、本案の審議に当たりまして、ただいたずらに六十五年度赤字公債解消をめどにする努力目標として、この赤字国債依存体質からの脱却をうたいとげてまいりましたけれども、しかし、この審議を通して明らかなように、何ら責任のある財政再建の具体的な計画を示すに至らず、まさにそれは努力したい、努力するという言葉表現にあらわされておりますように、最初から責任を回避する立場でこの財政再建に対応しようとしていることが明らかなわけであります。  しかも、この審議を通して仮定試算等も検討されましたけれども、これは我が党の委員が指摘をいたしましたように、仮定計算にあらずして架空計算というべきものだと指摘をせざるを得ないほど、中身の薄いものと論破をされているのであります。  みずからの失政で招かれたこの財政危機を乗り切るに当たって、責任回避の立場に立って、政治生命をかけてもこの財政再建にかけるという気概もなければ、あるいはその気概を裏づける責任のあるプログラムも計画も示し得ないという状況の中で借換債の発行に道を開くということでありまして、我々は到底このような法律案に賛成することはできないわけであります。この立場を明らかにしておきたいと思うわけであります。  なお、政府は電電公社等に対して、五十六年から五十九年に至る四年間に単年度千二百億、トータル四千八百億の国庫納付を求めた議決を既に行ったわけであります。ところが、昨年度、すなわち五十八年度の財確法において、五十九年度分の納付責任を、いわば前倒しという形で繰り上げ納付を決めておるわけであります。そのこと自体、これは野党の批判と反対にもかかわらず、大変非道な措置をおとりになっておるわけであります。  加えて、今回は既に五十九年度の国庫納付の責任を果たしている電電公社に対して、新たに五十九年度分二千億の国庫納付を求めるというこの始末であります。これはまさに御用金調達の権力乱用になれた悪代官のやり方だと言っても言い過ぎではなかろうと思うわけでありまして、専売公社の三百億とともに、このようなまさに労使当事者の並み並みならない企業努力を無視してはばからないこの納付金のいわば調達法案に、我々は賛成するわけにはまいらないのであります。  いささか意見を述べて反対討論といたします。(拍手)
  78. 瓦力

    ○瓦委員長 柴田弘君。
  79. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりました昭和五十九年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置等に関する法律案並びに修正案に対して、反対の討論を行います。  我々が反対する理由の第一は、本法案によって、これまで、いわゆる財政特例法で禁止してきた赤字国債の借りかえが導入され、財政再建を大きく後退させることであります。政府は、昭和五十年度に本格的な赤字国債の発行に陥って以来、五十二年度には、国債依存度三〇%の突破、五十七年度から国債整理基金への定率繰り入れの停止、そして今回は赤字国債の借りかえと、次々に国債発行の歯どめ策を崩しております。  我々は、今日まで政府財政再建の名のもとに、国民に対し増税や福祉の削減を強要していることを考えますと、赤字旧債の借りかえは財政再建に逆行するものであり、到底認めがたいものであります。  同時に、昭和五十年度以来四代にわたり、自民党内閣は、それぞれ赤字国債からの脱却を表明しながら、すべての内閣が公約をほごにしており、見過ごしにできません。財政再建に関する国民の虚脱感と不安感を増幅させる政治責任は極めて重大であり、厳しく糾弾されて当然であります。政府に反省を求めます。  反対する理由の第二は、中曽根内閣国民の強い要求にもかかわらず、「増税なき財政再建」の方途と手順を示そうとしないことであります。我我だけでなく、臨時行政改革推進会議でさえも、「増税なき財政再建」の具体的な手順と方策を国民に早急に提示すべきと要求しております。ところが、政府国民に提示しているのは、赤字国債からの脱却目標昭和六十五年度としているだけです。しかも、その方途と手順を示さないため、脱却年度がひとり歩きしているのにすぎないのであります。中曽根総理は、今国会で、私の内閣の間は大型間接税の導入は行わないと公約されました。また、総理がさきの総選挙では増税は行わないと公約しながら、その公約を破棄し、大幅増税を強行したことも明白な事実であります。中曽根内閣は、国民の疑いを解消し公約を厳守するためにも、「増税なき財政再建」の具体的な方途と手順を提示すべきです。重ねて強く要求してまいります。  反対する理由の第三は、赤字国債の借りかえが、これまでの国会審議の経緯を全く無視して強行されることであります。  今を去る九年前、五十年度補正予算で赤字国債が発行されるとき、当時の故大平大蔵大臣は、赤字国債発行の歯どめ策として借換債の発行は行わないと明言をされ、五十一年度からは法文として借換債の禁止条項が明記されてきたものであります。また、政府は、借換債禁止にかける決意を信頼してほしいと国会で繰り返しております。  したがって、本法案は、与野党はもとより、政府国民の間の信頼の核であり、いわゆる財政特例法のバックボーンである赤字国債の借りかえ禁止規定を一方的に葬り去るものであります。その方法も、既に施行されている法律にもかかわらず、八年前にさかのぼって削除するというやみ討ちにも等しいものです。まさに、憲政史上例を見ないものであり、議会制民主主義の根幹を揺るがす暴挙と言わざるを得ないのであります。  反対する理由の第四は、安易に赤字国債の借りかえを実行する上に、大量の国債償還と借りかえが必至であるのにもかかわらず、国債管理政策の整備に手をこまねいていることであります。  申すまでもなく、安易な赤字国債の借りかえは、赤字国債の発行と同様に財政赤字の病理を隠し、財政運営の節度を失わせるものであります。赤字国債発行の根拠である財政特例法が単年度ごとに審議されてきた理由は、散大平総理の国会答弁を持ち出すまでもなく、財政運営の節度を守り、赤字国債の発行を抑制するためであります。  したがって、赤字国債の借りかえについても、毎年度の予算編成、行財政改革、不公平税制の是正などとあわせてその借りかえ額を決定するのが本筋であり、単年度立法とすべきであります。この立法府による歯どめ策を一挙に崩すことは、政府による国会軽視であり、断じて認められません。  また、今後、大量の国債を市場で円滑に消化するためには、金融の自由化や短期国債の発行を初め、国債の多様化など、解決すべき多くの課題があります。これら国債管理政策の未整備は、市場の混乱と国民の不安を拡大するものであります。  なお、今年度予算が、最気回復による安定成長の実現を初め、国民生活の防衛、行財政改革財政再建など克服すべき課題を抱えながら、国民の期待を大きく裏切り、所得税、住民税減税を一兆一千八百億円にとどめたばかりか、国民生活の防衛、景気対策にも極めて消極的であり、行財政改革財政改革にも具体的な進展を示しておりません。  その上に、我々の極めて現実的な予算修正要求にも、給与所得控除の最低控除額を二万円引き上げ、バート収入者等の減税上積みを確約するにとどめてしまったのであります。  こうした事実も、我々が本法案に反対する大きな理由であることを申し添え、私の反対討論を終わります。(拍手)
  80. 瓦力

    ○瓦委員長 玉置一弥君。
  81. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 私は、民社党・国民連合を代表して、ただいま議題となっております昭和五十九年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置等に関する法律案本案並びに修正案に対し、反対の討論を行うものであります。  政府は、財政再建を急ぐ余りに、国内景気対策より財政圧縮に重きを置き、結果的には長期にわたる景気低迷と同時に、かつてないほどの税収の伸びの低下を招き、このことがかえって財政再建をおくらせてまいりました。  昨年の企業の倒産は、前年比一一・八%増の一万九千百五十五件と過去最高となり、完全失業率も過去最悪の二・六%の水準に達し、実質賃金の伸び悩みと相まって、国民生活に大きな不安を与えております。また、内需の冷え込みの影響は国内面だけにとどまらず、経常収支が大幅な黒字となり、対外経済摩擦を激化させています。  今日の低成長は、政府が内需拡大のための積極的な景気対策を講じなかったのみならず、景気回復に逆行する大幅増税を強行したことなど、縮小均衡型経済運営による政策不況に起因していると考えます。  したがって、我々は、大幅な所得減税、法定耐用年数の短縮など投資促進税制の強化、公共事業費の増額などを柱とする拡大均衡型経済運営への転換を強く要求してまいりました。しかるに、政府は、減税を上回る一兆三千億円の増税の断行、大幅投資減税の見送り、公共事業費の二%削減など、縮小均衡型経済運営をなおも踏襲しております。  こうした政府経済財政運営が巨額の歳入欠陥を生み、特例公債の増加を招いており、今日の財政危機を引き起こした政府の責任は極めて重大であります。  今回の財特法の五十九年度におきます内容につきましては、特に従来からの約束事でございました借換債の発行の禁止や、電電公社におきます五十九年度先取り等があったにもかかわりませず、五十九年においてはこれらを無視し、従来から言われております実質的な赤字国債発行を続け、その処置も先行きままならないような状態の中でこの財特法の論議が行われてまいりました。これまでの政府姿勢に対しまして、我々は最も不信の感を抱いているのであります。今回の日本専売公社の納付金等の臨時調達など、財政の実体を国民の目から覆い隠すということだけで、制度の根本的な改革につながらない実質的な赤字国債の発行は断じて容認できないのであります。  政府が公約どおり「増税なき財政再建」を達成するには、本格的な行財政改革を推進し、我が党が提唱する拡大均衡型経済運営路線へ転換していかねばならないことを特に強調いたします。続いて長期的な展望のもとに財政再建が行われますよう、特に政府の中長期的な財政計画が策定され、それによって国民が安心して政府に任せられる、そういう状態をつくっていただくように強く要望して、私の反対討論を終わります。(拍手)
  82. 瓦力

    ○瓦委員長 蓑輪幸代君。
  83. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 私は、日本共産党・革新共同を代表し、昭和五十九年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置等に関する法律案及び修正案に対し、反対の討論を行います。  まず、五十九年度の財源確保そのものについて述べます。  これに反対する第一の理由は、政府みずからが引き起こした深刻な財政破綻の原因について何の反省も見られないからです。政府・自民党の五十九年度までに財政再建を図るとして進めてきた諸施策は、国民犠牲の臨調路線の実行でした。その結果、我が国財政は、再建どころか、破綻のきわみに達し、政府がみずから公約した赤字国債の五十九年度脱却すらできなかったのです。  本法案は、このような深刻な財政破綻を招いたみずからの責任は棚上げし、そのしわ寄せを国民の財産の食いつぶしや、いずれ国民負担になる赤字国債の引き続く大量発行など、専ら国民に肩がわりさせ、乗り切ろうというもので、断じて容認できません。  第二の理由は、本法案が軍拡と大企業奉仕の反国民的な五十九年度予算財源対策であるからです。  五十九年度予算は、福祉総破壊元年と言われるように、福祉、教育など国民生活関連予算がかつてなく冷遇された反面、軍事費突出の常態化、大企業関連支出の優遇など、これらの予算は大幅に伸ばされています。このような反国民的な予算施策のための財源確保策には到底賛成できません。  反対の第三の理由は、国民的な財政再建の方途に背を向け、当面を糊塗する安易な財源確保策であり、今後の財政危機を一層強めるからです。  まず、六兆五千億円もの赤字国債の増発は、財政危機を深刻化する根本原因です。膨大な国債費予算を先取りし、財政硬直化を強め、これが福祉切り捨てと大増税へのてことなることは必至です。  三年連続の国債費定率繰り入れの停止は、国債整理基金の枯渇を早め、基金本来の役割を果たせないばかりか、減債制度の存在の基盤を掘り崩すに等しいものです。  また、電電公社の積立金は、本来利用者に還元すべきものであり、新たな臨時国庫納付には反対です。  次に、本法案で最大の問題である赤字国債の借りかえ是認措置についてです。  赤字国債の借りかえは、その分当面の元金償還を先送りして財政危機を軽減するものの、第一に、国債残高の累増と利払い費の急増をもたらし、長期的には財政危機を一層泥沼化する。第二に、赤字国債の借りかえ分を特別会計に移すことで、財政危機の実体を隠し、今後の財政運営上の歯どめをなくすおそれがある。第三に、国債保有の状況から見ても、財政の所得再配分機能を損なうとともに、世代間の負担配分を乱す。第四に、金利自由化を中心とした金融政策や金利体系の全面見直しへの大きな圧力となり、しかもこれが、国債の主要な引き受け手である大銀行や大証券会社の強い主導のもとに進められる可能性が強いこと。そして第五に、国債の大量累積を推し進め、それを通じてインフレ要因の火種を拡大する等等、将来に新たな抜き差しならない諸問題を蓄積するもので、断じて容認することはできません。  政府は、「八〇年代経済社会展望と指針」で、新たに六十五年度までに特例公債依存体質からの脱却公債依存度の引き下げをするとの基本方針を打ち出しています。ところが、赤字国債の借りかえは、赤字国債への恒常的依存であり、公債依存の実体隠しにほかならず、これは「展望と指針」がいかにまやかしの目標でしかないかということを示すものです。  このような諸問題を持つ赤字間債の借りかえは、政府の公約違反の最たるものであるとともに、この回避のため、有効かつ抜本的な対策を講ずる努力を放棄してきた政府の責任はまことに重大であり、絶対に認められません。  以上で私の反対討論を終わります。(拍手)
  84. 瓦力

    ○瓦委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  85. 瓦力

    ○瓦委員長 これより昭和五十九年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置等に関する法律案について採決いたします。  まず、修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  86. 瓦力

    ○瓦委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいま可決されました修正部分を除いて、原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  87. 瓦力

    ○瓦委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。     —————————————
  88. 瓦力

    ○瓦委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、越智伊平君外三名より、自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合四派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者より趣旨の説明を聴取いたします。野口幸一君。
  89. 野口幸一

    ○野口委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、提案の趣旨を簡単に御説明申し上げます。  申し上げるまでもなく、我が国財政は、昭和五十年度以降、特例公債を含む多額の公債発行を行ってきた結果、公債残高は、昭和五十八年度末には百十兆円の規模に達し、そのため国債費も急増し、毎年度の予算編成上大きな圧迫要因となってきております。  このような厳しい財政事情の中で、今後の高齢化社会の到来等、社会経済環境の変化に適切に対応していくためには、財政改革を通じて、一日も早く財政対応力回復することが緊要な政策課題であることは言うまでもありません。  本附帯決議案は、財政改革等を一段と推進する上で配慮すべき諸点を取りまとめ、政府に特段の努力を要請するものでありまして、個々の事項の内容につきましては案文で尽きておりますので、その朗読により、内容の説明にかえさせていただきます。     昭和五十九年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置等に関する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について十分配慮すべきである。  一 現下の厳しい財政状況にかんがみ、可及的速やかに、特例公債依存体質から脱却するよう、財政改革に対する具体的方策に関する考え方を明らかにし、もって国民理解協力確保できるよう努めること。  二 今後、特例公債について借換債の発行を行う場合においても、その残高の区分を明確にする等厳正な管理を行うことにより歯止め策を講じ、できる限り速やかにその残高を減少させるよう最大限の努力を行うこと。  三 財源対策としては、中長期にわたる展望に基づく対応を図り、税外の臨時的な財源に安易に依存することなく財政構造のあり方についても抜本的な検討を行うこと。  四 今後における大量の公債借換えの本格化及び金融自由化の急速な進展に備え、新たな段階における国債管理政策について基本的な検計を行うとともに、我が国経済に混乱を引き起すことのないよう適切な運営に努めること。  五 予算編成に当たっては、制度施策の優先順位を厳しく判断し、歳出の削減・抑制、補助金等の洗い直しを進めるとともに、いたずらに、後年度負担の累増を招くことのないよう、厳正に対処すること。  六 今後とも現行の減債基金制度の基本を維持するよう努めるとともに、満期到来の公債が、保有者に対して支障なく償還されるよう所要の償還財源確保し、公債に対する国民の信頼の保持に万全を期すること。 以上であります。  何とぞ御賛同を賜りますようお願い申し上げます。
  90. 瓦力

    ○瓦委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  お諮りいたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  91. 瓦力

    ○瓦委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  本附帯決議に対し、政府より発言を求められておりますので、これを許します。竹下大蔵大臣
  92. 竹下登

    竹下国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても御趣旨に沿って配意してまいりたいと存じます。  ありがとうございました。     —————————————
  93. 瓦力

    ○瓦委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に対する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  94. 瓦力

    ○瓦委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  95. 瓦力

    ○瓦委員長 調和ある対外経済関係の形成を図るための国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律等の一部を改正する法律案及び株券等の保管及び振替に関する法律案の両案を議題といたします。  これより、両案について、政府より順次趣旨の説明を聴取いたします。竹下大蔵大臣。     —————————————  調和ある対外経済関係の形成を図るための国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律等の一部を改正する法律案  株券等の保管及び振替に関する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  96. 竹下登

    竹下国務大臣 ただいま議題となりました調和ある対外経済関係の形成を図るための国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律等の一部を改正する法律案及び株券等の保管及び振替に関する法律案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。  まず、調和ある対外経済関係の形成を図るための国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律等の一部を改正する法律案につきまして、御説明申し上げます。  最近における我が国社会経済国際化の進展には、まことに顕著なものがあり、また我が国経済の規模は、世界経済のほぼ一割を占めるに至っております。我が国経済の繁栄と発展は、世界経済との調和ある関係を欠いては、もはや考えることができない状況にあり、同時に、我が国が相応の国際的責務を果たさなければ、世界経済の繁栄と発展は望み得ません。  このような環境のもとで、昨年来我が国の貿易・経常収支は、原油価格の低下、ドル高及び米国を中心とする世界景気回復を主因として、大幅な黒字を続けており、諸外国では、我が国に対してその不均衡の是正を求める声が高まってきております。  このような我が国の貿易・経常収支の黒字は、必ずしも我が国のみの努力では制御し得ない要因によるところが大であります。しかし、世界経済の重要な一翼を担う我が国としては、この際率先して自由貿易体制を維持強化し、調和ある対外経済関係を形成していくため、積極的な努力を行うことが緊要な課題となっております。  以上のような情勢を踏まえて、政府は昨年十月に総合経済対策を策定し、市場開放、輸入促進のほか、資本流入の促進、円の国際化、金融・資本市場の自由化及び国際協力の推進等、広範多岐にわたる施策を講ずることといたしたところであります。  本法律案は、この総合経済対策に掲げられている諸施策のうち、調和ある対外経済関係の形成を図るとの観点から、一括して法律改正を提案することが適当な措置について定めるものであります。  以下、この法律案の内容につきまして、御説明申し上げます。  第一に、国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部改正、国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部改正及びアジア開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部改正につきまして申し述べます。  今般、国際復興開発銀行国際開発協会及びアジア開発銀行におきまして、その円滑な事業活動の継続を図るため、増資を行うこととなるのに伴い、我が国は、国際復興開発銀行に対しては総額六億六千二百四十万協定ドル、国際開発協会に対しては総額五千三百三十五億九千八百五十七万円及びアジア開発銀行に対しては総額十二億三千三百七十五万協定ドルの追加出資を、それぞれ行うこととしております。このため、所要の追加出資ができるよう、規定の整備を行うこととしております。  第二に、証券取引法の一部改正につきまして申し述べます。  外国会社に係る有価証券報告書の提出期限につきましては、本国における法制度等を考慮して、弾力化することとしております。  第三に、外国為替及び外国貿易管理法の一部改正につきまして申し述べます。  非居住者による対内不動産投資につきまして、その自由化を行うべく手続を改正することとしております。  また、非居住者である個人等による株式取得に関する指定会社制度を廃止するほか、対内直接投資に関し規定の整備を行うこととしております。  第四に、日本輸出入銀行法の一部改正につきまして申し述べます。  日本輸出入銀行の輸入金融につきまして、その貸付相手方に、新たに外国法人を加え、輸入金融機能の充実を図ることとしております。  また、余裕金の運用方法として、新たに外国通貨をもって表示される預金等を加えることとしております。  最後に、外貨公債の発行に関する法律の一部改正につきまして申し述べます。  財政法第四条第一項ただし書き等の規定により発付する外貨公債につきまして、発行地の法令または慣習によることができることとする等、所要の規定の整備を行うこととしております。  次に、株券等の保管及び振替に関する法律案につきまして御説明申し上げます。  我が国の証券市場は、投資家の資産運用の場として、また企業の資金調達の場として、国民経済上その役割が高まってきており、近年、売買取引の機械化が進められるなど、市場機能の強化が図られております。しかしながら、株券等の保管や受け渡し面では合理化がおくれているため、発行量や流通姓の増大に伴い事務量が極めて膨大なものとなってきております。このため、株券等の保管及び受け渡しを抜本的に合理化し、株券等の流通の円滑化を図ることが緊要な課題となっております。  このような状況を踏まえ、証券取引審議会において、株券等の保管を合理化するとともに、その帳簿上の振替が受け渡しと同一の効果を持つような新たな制度の導入が一昨年十二月に提言され、また、法制審議会の商法部会においても、新制度導入のための法律案要綱が昨年十二月に取りまとめられました。これらの提言を受け、その後、政府部内において検討を進めてまいりました結果、今般ここに、株券等の保管及び受け渡しの合理化を図るため、この法律案提出することとした次第であります。  以下、この法律案の内容につきまして御説明申し上げます。  第一に、保管振替機関についてであります。  本制度の対象となる株券等の保管及び振替を行う保管振替機関について、所要の規定を設けることとしております。この保管振替機関は、その事業を適正かつ確実に行うことができると認められる公益法人の中から主務大臣が指定することとしております。  第二に、株券等の交付にかわる振替についてであります。  投資家は証券会社、銀行等へ株券等を預託し、証券会社、銀行等はこれらを保管振替機関に再預託することにより、その後の売買取引や担保取引は、保管振替機関や証券会社、銀行等に備えられる帳簿上の振替によって行うことができる旨の規定を設けることとしております。  第三に、預託された株券に関する株主の権利行使についてであります。  預託された株券は形式上すべて保管振替機関の名義に書きかえられますので、これを預託した株主は、発行会社が作成する実質株主名簿に基づいてその株主権を直接行使する旨の規定を設けることとしております。  なお、本制度の対象となる株券等は、証券取引所に上場されている株券等または流通状況がこれに準ずる株券等で、主務大臣が指定することになっており、個々の投資家が本制度を利用するかどうかは任意となっております。  以上が、両法律案の提案理由及びその内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  97. 瓦力

    ○瓦委員長 これにて両案の趣旨の説明は終わりました。     —————————————
  98. 瓦力

    ○瓦委員長 この際、お諮りいたします。  株券等の保管及び振替に関する法律案について、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、人選、日時等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  99. 瓦力

    ○瓦委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次回は、来る五月八日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時四十七分散会      ————◇—————