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1984-04-25 第101回国会 衆議院 大蔵委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年四月二十五日(水曜日)     午前十時開議  出席委員   委員長 瓦   力君    理事 越智 伊平君 理事 熊川 次男君    理事 中西 啓介君 理事 中村正三郎君    理事 伊藤  茂君 理事 野口 幸一君    理事 坂口  力君 理事 米沢  隆君       熊谷  弘君    小泉純一郎君       笹山 登生君    椎名 素夫君       塩島  大君    田中 秀征君       中川 昭一君    平泉  渉君       平沼 赳夫君    宮下 創平君       村上 茂利君    森  美秀君       山岡 謙蔵君    与謝野 馨君       上田 卓三君    川崎 寛治君       沢田  広君    渋沢 利久君       戸田 菊雄君    藤田 高敏君       堀  昌雄君    柴田  弘君       宮地 正介君    矢追 秀彦君       安倍 基雄君    玉置 一弥君       正森 成二君    簑輪 幸代君  出席国務大臣         内閣総理大臣  中曽根康弘君         大 蔵 大 臣 竹下  登君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      河本 敏夫君  出席政府委員         内閣法制局第三         部長      大出 峻郎君         国防会議事務局         長       伊藤 圭一君         防衛庁経理局長 宍倉 宗夫君         経済企画庁調整         局長      谷村 昭一君         経済企画庁調整         局審議官    丸茂 明則君         経済企画庁国民         生活局長    及川 昭伍君         大蔵政務次官  堀之内久男君         大蔵大臣官房日         本専売公社監理 小野 博義君         官         大蔵大臣官房総         務審議官    吉田 正輝君         大蔵大臣官房審         議官      行天 豊雄君         大蔵省主計局次         長       平澤 貞昭君         大蔵省主税局長 梅澤 節男君         大蔵省理財局長 西垣  昭君         大蔵省銀行局長 宮本 保孝君         国税庁次長   岸田 俊輔君         文部省体育局長 古村 澄一君         通商産業省機械         情報産業局次長 児玉 幸治君         運輸省鉄道監督         局国有鉄道部長 棚橋  泰君         郵政省電気通信         政策局次長   富田 徹郎君         労働省婦人少年         局長      赤松 良子君         自治省行政局長 大林 勝臣君  委員外出席者         郵政省貯金局規         画課経営企画室         長       結城 淳一君         郵政省電気通信         政策局監理課長五十嵐三津雄君         参  考  人         (日本銀行副総 澄田  智君         裁)         大蔵委員会調査         室長      矢島錦一郎君     ――――――――――――― 四月二十四日  身体障害者使用自動車に対する地方道路税、揮  発油税免除等に関する請願愛知和男紹介)  (第三三七二号)  同(田邉國男紹介)(第三三七三号)  同(高橋辰夫紹介)(第三三七四号)  同(野呂田芳成君紹介)(第三三七五号)  同(葉梨信行紹介)(第三三七六号)  消費生活協同組合共済事業に係る税制改善に  関する請願岡田利春紹介)(第三五三〇号  )  所得税大幅減税等に関する請願関山信之君  紹介)(第三五三一号)  同外四件(戸田菊雄紹介)(第三五三二号)  大幅減税の実現、大型間接税導入反対等に関す  る請願渋沢利久紹介)(第三五三三号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和五十九年度の財政運営に必要な財源確保  を図るための特別措置等に関する法律案内閣  提出第三号)      ――――◇―――――
  2. 瓦力

    瓦委員長 これより会議を開きます。  昭和五十九年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置等に関する法律案を議題といたします。  この際、お諮りいたします。  本案につきまして、本日、参考人として日本銀行総裁澄田智君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 瓦力

    瓦委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
  4. 瓦力

    瓦委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。戸田菊雄君。
  5. 戸田菊雄

    戸田委員 最初に、日銀副総裁に若干の質問をいたしたいと思います。  第一点は、国際のいわゆる累積債務金融不安等の問題についてお伺いをいたしたいと思いますが、現在の世界経済の一大不安は、何といっても発展途上国が大きく債務を抱えている、こういうことであるかと思います。これはIMFの一九八三年の年次報告でありますが、それによりますると、民間金融機関に対する推定債務額の多い上位国ということで、メキシコブラジルアルゼンチン、チリ、ペルー、エクアドル、コロンビア、韓国等々、二十カ国が列記されておるわけであります。その債務額は、大手借入国が、金額で総額において四千四百七十億ドルですね。その中で短期債務が約九百九十七億ドル、それから長期債務が三千四百七十三億ドル保証付公的債務が九百三十七億ドル、その他二千五百三十六億ドル。非産油途上国全体に対する比率としましては、総額が大体七三%この二十カ国で占めている。短期債務が八八・四%、長期債務が六九・五%、保証付公的債務が四八・五%、その他八二・七%等々という莫大な債務を実は抱えておるわけなんでございます。一九七一年で大体七百十億ドルが一九八二年末に六千億ドル、一九八三年末で八千億ドル、こういうことで膨大な累積債務を抱えているわけでありますが、こういったものが今メキシコあたりは返済不能という状況になっておるわけです。  こういうことになると、世界的に金融不安というものが増大をされるという状況になりかねない。こういうものに対してどういう御理解をお持ちになっておりましょうか、まずお伺いいたしたいと思います。
  6. 澄田智

    澄田参考人 ただいま御指摘のありましたように、発展途上国累積債務問題は、やはり現在世界経済が抱えている非常に大きな問題であると思います。現状は、発展途上国がそれぞれ厳しい自己努力をいたしてまいりまして、どうやらそれが少しずつ効果を出しているというようなことで、これを支えるものといたしまして国際通貨基金など国際機関を中心とする金融支援体制、すなわち必要な債務の繰り延べを行う、そうしてさらに、どうしても必要なものに限って追加の融資も行うというような形で金融支援体制がとられてきておりまして、こういうことによって小康状態にあるわけでございます。  ただ、今も御指摘がありましたように、この問題は非常に大きな問題でございまして、今後とも借入国側は、それぞれの国にとってはかなり苦しいことでありますが、調整努力をずっと続けていかなければならない。そういう状態でありますし、それから、これらの債務支払い利子等が、米国金利が高水準のために高とまりをしているというようなこともございますし、今後とも相当期間にわたって楽観は禁物である、こういう状態でございます。しかも、これはもし処理を誤りますと国際的な信用全体に大きな影響を及ぼしかねないだけに、十分に慎重に対処しなければならない問題でございます。その場合には、何といっても債務国の厳しい自己努力前提でございますが、世界民間金融機関国際機関、それから公的当局といった各面の一致した金融協力が不可欠でありまして、こういう総合対策を今後ともずっと続けていかなければならない、そういうことによって世界信用秩序を維持していくということが今後の世界経済のために最も必要である、こういうふうに思っております。
  7. 戸田菊雄

    戸田委員 そういった不安に対して、国際決済銀行等を通じまして先進国中央銀行がいろいろな援助を与えていくとか、あるいはIMF債務国の方の経済政策の監視といったものをやって誘導していく、あるいはスタンドバイクレジットを与えて民間銀行債務取り立て猶予をやっていくとかいろいろな手当てをやって、何とかその不安解消をしようということで努力はしておるようでありますが、結果的には、何か最近アメリカが余りそういうものに対して積極性を欠いているのじゃないかという気がします。そういう点はどういうふうに見ておられますか。  それからもう一つは、為替レート変動の問題であります。これは御存じのように一九七一年ころまでは固定相場制でやってまいりましたが、その後IMF通貨体制変動で現在の変動相場制に移行しておるということで、殊にニクソン・ショックと言われた一九七三年等々を通じまして変動相場制へ移行した。円ドル通貨レートも、アメリカ高金利政策等に基づいて非常にドルが強くなって円安。こういうことでしょっちゅう変動を来しているという状況で、こういうものに対して今大勢としては、全体的には変動相場制でいかざるを得ないだろうということになっておりますけれども、そういう面に対する今後の見通し、その辺もひとつあわせて御質問しておきたいと思います。  それからもう一つは、ついでですから、時間が余りありませんので一括して質問してまいりたいと思いますが、これは朝日新聞でありますけれども、金利自由化問題について「わが国の今後の金融政策基本指針として大蔵省がまとめた「金融自由化の展望」の要旨が十三日、明らかになった。」ということでございます。そういう中において、六段階方式といいますか、金利自由化方式について市場を開放するということになっておるわけであります。こういう国際金融不安の高まりの中で、なおかつこういうことで対応措置をやっていかざるを得ないのですけれども、このことによって国内中小金融関係への圧迫といいますか、そういうことが将来ないのかどうかということに非常に危惧の念を抱くわけでありまするが、そういう問題についてもひとつあわせて御質問しておきたいと思います。
  8. 澄田智

    澄田参考人 累積債務問題につきましては、先ほど申しましたように、国際的な協調体制というものが不可欠でございまして、今御指摘にもありましたように、国際決済銀行は、どうしても必要と認める場合には、各国中央銀行によって国際決済銀行を通じてつなぎの融資を行う。そして国際通貨基金IMFは、債務国にそれぞれ自助努力のための条件を課しまして、そういう条件に沿って債務国努力をするという前提で、それを監視しつつ、信用供与を行う、こういうようなことで今までも行ってきているわけでありますが、今後ともこういう体制はぜひとも必要である、こういうふうに考えております。  それから、アメリカでございますが、アメリカは、一昨年のメキシコの場合あるいは昨年のブラジルの場合、それからことしの初めにございましたアルゼンチンの場合、いずれの場合を通じましても、こういった国際機関及び各国当局、それから民間金融機関協力体制をつくっていく上の中心的な役回りを果たし、そしてこれを推進してきている。この点は、やはり今まで一番大きな貸し手でもありますけれど、しかしそれと同時に、こういう体制をつくっていく柱としての役回りを果たしてきておりますので、今後もこの点はアメリカに期待していく、そしてそれぞれ、これに対する協力を惜しまないという体制、ほかの国は当然ではございますが、アメリカがそういった役回りを果たしていくということについては今後もそういうことであろう、こういうふうに思っております。それが第一点でございます。  それから為替変動相場でございますけれど、変動相場になりまして十年ということになります。この間に第一次、第二次の石油ショック等もございまして、国際的な経済条件が非常に激変をしたわけでございますが、変動相場を通じてとにかくいろいろ、為替そのもの動きましたけれど、しかし、こういう大きな国際的な、経済的な変化に対応してくることができたわけであります。固定相場ですと、こういう場合にはレートが固定されているだけに、また別の対応の難しさがあるわけでありますが、変動相場ということによって、変動相場一つのクッションになるというような形で、ある程度これがスムーズに処理されてきたという面があるわけでございます。  変動相場のもとにおいて、いかにして為替相場の安定を図っていくか。これは変動制というもので為替が動くだけに、その安定化を図る努力というのはたゆまず各国が払っていかなければならないわけでございます。しかし、そういう形で今後ともいくということが今後の姿ではなかろうか、こういうふうに考えております。  その安定を図るためには、やはりインフレなき持続的な経済成長を目指して、各国がその経済政策に協調していくということ、こういうことによって各国の基礎的な経済条件、いわゆるファンダメンタルズと言われておりますものの状態を、各国余りに大きな差のないような形に維持をしていく、そういう努力をしていくということが不可欠であると思います。我が国がそういうふうに努めるのは当然でございますが、ほかの国に対しても、いろいろな国際機関等会合等を通じまして各国とも足並みをそろえていく、お互いにそういうことに努めるということに努力の目標をやはり払っていかなければならない、こう思うわけであります。もちろん急激な一時的な変動思惑等もありまして、動くことがございますから、そういう場合に、必要と認める範囲で介入をしていくということも時に応じて必要でございますが、基本的にはやはり各国政策協力、こういうことが基本である、こういうふうに考えております。  それから金融自由化、なかんずく金利自由化の問題でございますが、これはやはり内外の資金が自由にこれだけ動く、こういう体制のもとにおいて今後とも避けて通れない、不可欠な道ではございますが、しかしやはり漸進的に進める、積極的に取り組みますと同時にこれを漸進的に進めていくということが必要であろうと思います。金融機関として、自由化によって預金金利が動く、そういうことによってコストアップをするというようなことに対して、それぞれ金融機関経営合理化を通じてこれに対応していく、こういうことが可能になるわけでございます。  中小企業等の貸し出しを含めて、自由化によりまして金融機関がそれぞれ競争をしていくということによって、貸出金机が必ずしも上昇するということではなく、今の状態などを見ておりますと、都市銀行なども、大企業資金需要は、あるいは債券の発行、国内資本市場あるいは外国の資本市場等によって資金を調達することができますので、むしろ大銀行を含め、都市銀行を含めて中小企業の分野で競争していくというようなことで、自由化を通じて、預金者のみならず、借り入れる企業に対して中小企業を含めて一層のサービス、一層の需要にこたえた金融サービスを行っていく、貸出金利もそういう線に沿って行っていく、こういうことが十分に期待できるわけでありまして、自由化は決して中小企業金融に悪影響を生ずるものではない、積極的な面を持っている、こういうふうに考えていいのではないかというふうに思っております。  以上でございます。
  9. 戸田菊雄

    戸田委員 もう少し詳しく、三点ほどあったわけでありますが、時間がありませんので、きょうはこれだけにしておきます。どうぞ御退席ください。どうもありがとうございました。  経企長官が参られておりまして、経企長官の方に若干経済見通しについてお伺いをいたしたいと存じます。  その第一点は、一九八四年の世界経済見通し、これはどんなように考えておられるか、この点が第一点であります。  それから第二点は、国内需要動向について若干質問しておきたいと思いますが、一つはどうしても今輸出主導型、こういう状況にあるのではないか、これはやはり今後、年度内も続いていくのじゃないだろうか、こういう考えてありますが、この点に対する見解。  もう一つ設備投資ですね。やや復活しつつありますが、それは限られた業種に行っておるという気がするのでありますが、そういう問題についてお伺いをしたいと思うのです。それから在庫投資はどのようになっているか。消費環境、これはどうでしょう。それから住宅投資、こういった問題について、以下各般項目ごと見通しについてお伺いすると同時に、年度後の景気動向、こういうものについてひとつ質問いたしたいと思います。時間がありませんので項目的にお願いをいたしたい。
  10. 河本敏夫

    河本国務大臣 まず世界経済動向でございますが、昨年の春以降、アメリカ経済は相当な勢い回復をいたしましたので、その影響が順次世界に広がってまいりました。そこで我が国経済も、ことしになりまして五年ぶりで第二次石油危機からようやく立ち直りの方向方向転換をした、こういうことが言えると思います。ただ、その回復力がまだ弱いものですから、地域別ばらつきが相当残っております。それから業種別ばらつきも残っておりますが、これは経済の力がもう少し強くなりますと、回復力がもう少し拡大をいたしますとばらつきも順次解消するであろう、このように考えておりますが、世界経済全体を見ました場合には、最近も国際機関も発表しておりますが、三%台の上の方に行くであろう、こういう報告も出ております。ヨーロッパの一部もよくなっておりますし、アジアの一部もよくなりつつある。やはり一番大きなこの原動力は、先ほど申し上げましたアメリカ経済の非常に力強い動き、これが一番の大きな原動力になっておる、このように判断をいたしております。  そこで、アメリカ経済がしばらく続くという説と、それから景気がそんなに長く続かないという説がございます。アメリカ政府は相当長く続くということを言っておりますが、私どももそのとおりでなかろうか、そのように判断をいたしておりますので、だんだんと世界経済は力強い回復方向に進んでいくであろう、しばらく続くのではないか、こういう感じがいたします。  それから、国内のいろいろな経済指標のうち主な動きはどうかという御質問でございますが、まず投資動向を見ますと、設備投資につきましては中小企業が数年ぶりでよくやく投資をしてみようか、こういう空気が出てまいりました。大企業よりもむしろ中小企業設備投資の方がことしは拡大するのではないか、こういう感じがいたします。やはりその背景は、先ほど申し上げました世界経済が、この際いい方向にしばらく続くのではないかという見通しと、新技術に対する投資をやらないと競争になりませんのでひとつやってみよう、こういう機運が出てきたのが中小企業投資拡大背景であろう、このように思います。大企業ももちろんある程度は増加をすると思います。昨年に比べまして大体五%強ふえるのではないか。あるいは動きいかんによってはもう少しふえる可能性もあるであろう、このように判断をいたしております。  それから在庫投資の方は、調整がほぼ終わりましたので、部分的に在庫投資拡大方向に行くであろう、こういう判断をいたしております。  それから住宅投資は、ひどい状態がここ二、三年続いておりましたが、これもよくやく底を打ちまして、ことしは少し拡大方向に行くであろう、こういう見通しをいたしております。  それから消費の方につきましては、その背景国民名目所得がどうなるのかということが一番大きな課題でございますが、最近の動きを見ておりますと、去年のようなひどいことはない、ある程度去年よりはふえるであろう、このように思いますので、消費も去年よりは堅調であろう、このように判断をいたしております。  そういうことで、ことしの一月につくりました経済全体の見通しては、内需拡大が三・六%、外需による成長が〇・五%、内需主導型の経済成長、このように判断をいたしております。  ところが最近になりまして、どうも輸出が非常な勢いで伸びておりますし、経常収支の方も、一月につくりました政府見通しよりもやや拡大するのではないか、こういう動き等も出ておりまして、まだ定かにはわかりませんけれども、当初つくりました内需三・六、外需〇・五というその比率は若干変わる可能性もあるであろう、このように考えておるところでございます。
  11. 戸田菊雄

    戸田委員 今長官が説明をされたような状況であると私も思うのでありまするが、OECD経済見通しを見ますると、時間がありませんから八四年度に限定いたしますが、米国の場合は大体四・六%、日本が四%、西ドイツ二・二%、フランスマイナス〇・一%、英国が二%、イタリアが二%、カナダが四・九%、OECD全体としては平均約三・三%の成長率というような状況に相なっておるわけであります。  消費物価におきましてもやや鎮静の度合いをたどっておるのではないか。米国の場合でおおむね五・二五%ですか、日本はずっと下がりまして二・五%、西ドイツが三%、フランスイタリアが六%以上、こういう状況にあるようでございます。OECD全体で六%。ただ、歓迎できないのは失業者が非常に多いですね。米国で九・五%ですから。日本の場合は三%ちょっととなっておりますけれども、西ドイツ九・二五、フランスが九・七五、英国は一二・二五の二けた以上ですね。  こういう状況を見ますと、必ずしも各国が完全に基調回復に乗ったというようなことまでは言えないかもしれませんが、業種的にはいろいろと伸長しておる部面がありますから、そういう状況になってくるのではないだろうかというように考える。  そこで問題は、世界経済がよくなっていけば大体日本もいいというのが今までの通俗的な状況でございましたね。五十七年度ですか、非常に世界景気がよかったときには日本も非常によかった。五十八年度になりますと若干差がある、そういう状況があったと思うのであります。  そういう状況の中で、日本輸出規模というのは相当ふえておるのですね。貿易収支でもって四百億ドルくらい、各般の損失を差し引きしても三百億ドルぐらいの黒字という状況です。     〔委員長退席中西(啓)委員長代理着席〕 こういう状況を続けていくから、結果的には経済摩擦その他でもって各国から大変な攻撃を受けるという状況に相なっておるわけだと思いますが、こういう問題について、日本としてはどうしても政府が目指しておるように内需主導でそういうものを誘導していかないと、今後の経済摩擦というのは解消できないのではないだろうかというような気がいたします。  その中で、殊に消費環境でありまするが、大体ごとし全体の平均が五%見当の賃上げということでありまするから、実質可処分所得についてはどのくらいふえるか、私もまだ厳密な計算やっておりません。若干はふえるんじゃないだろうかということでありますが、殊に住宅投資の場合ですね。持ち家方式がずっと減少しているんですね。五十八年度の場合は前年度比でマイナス二%くらい減少、前年度比で五十九年度は三%増の投資傾向にしているわけでありましょう。ここまでいくのかどうかというのは、私は非常に疑問視しているわけです。こういったものは、やはり収入が目減りをして所得全体が低下をしている、停滞をしている、こういうところにあるんじゃないかと思うのでありまするが、この住宅投資については具体的に計画どおり大体いきましょうか。今の長官の話もありましたが、やや下回るかもしれないということでありますが、これはどうでしょう。
  12. 河本敏夫

    河本国務大臣 住宅投資は民間の設備投資等と比べまして、全体の金額がそんなに大きな数字ではございません。十六兆前後だと思っておるのですが、そこで数%伸びるといいましても七、八千億、こういうことでございますので、その見当はふえるんではないか、こういうことを関係各省と相談をいたしまして、年初に見通しをつくったわけでございます。  今お述べになりましたように、雇用者所得が昨年は政府見通しを非常に大幅に下回りました。これが経済成長の足を引っ張った一つの大きな原因だと思いますが、ことしになりましてから、時間外手当等も相当ふえておりますし、ベースアップも昨年よりは若干高い、こう思っておりますので、ことしの政府の雇用者所得見通し、一人当たり四・七、全体として六・八――二%、これは去年と違っておおむね達成できるんではないか、このように思います。まだ新年度になったばかりでございますので、そういう背景等もございまして、今のところは政府見通しどおり、ほぼ若干の増加があるんではないか、こういう判断をいたしております。
  13. 戸田菊雄

    戸田委員 時間の制限ありますので、あとこの一点だけ質問して終わりたいと思いますが、長官は今までも積極減税政策をということで言われてまいりましたが、六十年度以降、減税対策についてはどういうふうに考えておりましょう。
  14. 河本敏夫

    河本国務大臣 実は私は減税問題につきましては、昨年の九月の与野党の合意、五十八年から景気浮揚ができる規模の所得減税をする、そういう与党と野党の合意が国会でできましたので、そのとおり減税が進めば、これはもう景気回復に非常に大きなてこになる、こう思いまして大変期待をしておったのでございますが、いろいろな経過がございまして、事態は必ずしもそのとおりいっておりません。そこで、ことしの一月、自由民主党と政府との連絡会議がございましたので、そこでこの減税問題をもう一回再検討してもらいたい、税制体系全体を見直す中においてこの減税問題をもう一回再検討してもらえないだろうか、それもできるだけ早い方がよろしいということを経済政策の立場から申し上げまして、今大蔵大臣と自由民主党の方で検討していただいておるところでございます。
  15. 戸田菊雄

    戸田委員 どうもありがとうございました。  同様の見解について、ひとつ大蔵大臣の御所見を伺っておきたいと思います。     〔中西(啓)委員長代理退席、委員長着席〕
  16. 竹下登

    ○竹下国務大臣 今経済企画庁長官からお答えありましたとおり、過般の政府・与党連絡会議のときに、ことしの場合既に税制調査会の結論も出ておる。だが、将来にわたって、中長期的にも税制の基本的なあり方について、直間比率とか、そういう問題も含めて、減税問題等について検討してもらいたい、こういうことで、自由民主党の方では、先般来税制調査会が――普通の場合、税制調査会というのは、その年度の答申が出ますと開店休業になります。我が方は、幸いといいますか例のグリーンカード問題等の審議も続いておりますので、国会等の議論を集約したものを正確に御報告申し上げて、やっぱり税というものは絶えず見直していくという立場からこの御検討をしていただこう、こういうことにまでは至っておるというのが現状であります。
  17. 戸田菊雄

    戸田委員 本題に入って質問をしてまいりたいと思いますが、今回の、財政運営に必要な財源を得るための特別措置に関する法律案、この中身は、五十九年度における特例公債の発行、国債費定率繰り入れ等の停止、日本電信電話公社及び日本専売公社の国庫納付金の納付の特別措置、五十九年度以前各年度において発行した特例公債について償還の起債の特例等々が、大体法案の骨格になっておるわけであります。私は五十六年のときに同じように財特法の問題について本会議でもって質問をいたしておりまして、その際に、こういう処置をやるならば、今の政府金融機関並びに公庫等に貸倒引当金、こういったものがあるのですから、こういう問題もひとつ活用してはどうなのかということを質問しているわけなんですが、今回そういう点について活用されなかったというのはどういうことですか。
  18. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 税制改正に当たりまして、毎年度税制調査会で税制全般の議論をしていただくわけでございますが、その場合に、今委員が御指摘になりました各種の引当金について、その繰入率を実態に即して見直すという問題提起は常にあるわけでございます。ただ、五十九年度につきまして・は、貸倒引当金、これは各業種ごとに引当率を決めておりまして、過去の経緯を申し上げますと、五十八年度におきまして金融保険業の貸倒引当金の見直しを行ったわけでございますが、その前の年に、金融保険業を除く各業種の引当金の繰入率を引き下げまして、今実はその経過期間が進行中であるわけでございます。  したがいまして、六十年度以降この問題をどういうスケジュールで取り上げていくかというのはこれからの課題でございますけれども、この引当金の見直しというのは、財政再建の問題とももちろん密接な関連はございますけれども、常に企業の経理の実態を見ながら、実態に即した見直しを行っていくということで従来も取り組んでおりますし、今後もその方向で取り組んでまいるつもりでございます。
  19. 戸田菊雄

    戸田委員 今政府金融機関、これは開発銀行輸出銀行、ほかに住宅金融公庫等々八つの公庫がございますね。この貸倒引当金はどのくらいありますか。
  20. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 銀行局の担当でございますので、ちょっと私の方で数字はわかりませんので、後ほど……。
  21. 戸田菊雄

    戸田委員 これは私の資料によりますと大体各公庫とも一・二%ぐらいの蓄積がある、こういうふうに見ているんですが、もし間違っていれば後で資料としていただきたい。  これを取り崩してやっていけば、私は少なくとも今回も電電から二千億、専売から三百億、総額にして二千三百億、これは十分埋め尽くせるんじゃないかというように考えているんですがね。この前の回答でも、十分検討します、今主税局長がおっしゃられたとおりなんです。これはどうして検討されないのですかね。
  22. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 委員御指摘のように、特別会計なりあるいは今おっしゃいました特殊法人等に各種の積立金があるわけでございます。その中に貸倒引当金もあるわけでございますけれども、一応それらの積立金なり引当金等は、これらの法人がその目的あるいは事業を遂行する意味で必要なものとして積み立てているわけでございます。それから、それらの積立金は、御存じのように現金としてあるわけではございませんで、投資なり融資なりということで既にほかに固定している資金であるわけでございますので、これをいただくという点は、今申し上げましたような二つの点から、いろいろ検討はいたしましたけれども我々としては消極的に考えてきているわけでございます。
  23. 戸田菊雄

    戸田委員 この貸倒引当金はとっていますけれども、私が調べたところでは、実際はその支出はゼロなんですよ。ですから流用金として全部そのまま、今答弁があったように別の方に利用しているということになっているんですね。だから、こういったものを検討すると言ったのですから。殊に、前回もそうですが、今回電電等の場合の拠出は非常に問題があるんですね。例えば収支差額、そういったものが公社法第六十一条で、資本勘定、仮に予算を上回った場合でもこれは繰り入れることに決まっている。そういうことで、公社法で全部厳密にその方法というものは決まっているわけです。そういうものを無視して前回もやられたし、今回もやられておるわけなんです。だから、そういうものをあえてやらずとも、こちら側の方を検討してやれば円滑にいくのではないかという気が私はするのですけれども、それはどういうふうに考えられておりますか。
  24. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 今回、電電公社及び専売公社から納付金をいただくことで本案の御審議を願っているわけでありますけれども、それらにつきましては、この法律の規定にもございますように、ストックからいただくというのではなくて、五十八年度に生じましたフローの利益の中から二千億及び三百億円を納付していただくということにしております。その意味で、委員が先ほど来御指摘のストックからいただくという観点とは別の観点で今回はお願い申し上げているわけでございます。
  25. 戸田菊雄

    戸田委員 これは私は五十六年度でも指摘をしたのですけれども、電電が千二百億、四年間で四千八百億、今回二千億、合計で六千八百億になるわけですね。前回の場合もそうであったのですが、財投資金から従来五百億借りていたけれども、一挙に三倍の千五百億、増加しているんですよ。そして利子を払ってそこから補てんをやっているんですよ。だから、そういうことをやらせずとも、私はもう少しいい方法があるのではないかという気がするのですが、これはぜひひとつこういった部面の政府金融機関関係の貸倒引当金等に対しては、その活用について十分検討していただきたいと思いますね。
  26. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 それらの問題につきましては、今後六十年度以降の予算編成の際に、税外収入につきまして各般の検討を加える際にあわせて検討させていただきたいと思っております。
  27. 戸田菊雄

    戸田委員 それで大臣にお伺いをしたいと思うのでありますが、五十九年度の予算総額は御存じのように五十兆六千二百七十二億円、名目の伸び率で〇・五%、一般歳出対前年度比が三百三十八億円の減額、財政投融資計画が二十一兆一千六十六億円、対前年度比一・九%増。今まで、鈴木内閣時代もそうであったのですが、いわば財政規模をずっと圧縮をして財政の再建を図っていく、こういうのが今日までのやり方だったと思うのです。  そこで、五十九年度の歳入の租税、印紙収入は対前年度比で二兆二千八百十億円ばかりふえているわけでありますが、国債費は対前年度比で九千六百二十六億円の増、地方交付税交付金が対前年度比で一兆五千七百十二億円、政策的経費と言われる一般歳出に振り向ける経費は税外収入でということで、財特法等を設置して今回持ってきているわけでございます。しかし、一般歳出その他をずうっと見ますと、税外収入でないと予算の歳出その他が貯えないというような格好になっているわけです。  こういうことになって、なおかついわゆる経済の「展望と指針」というものが出されて、六十五年度までにいわば赤字国債を脱却しようということなんでありますが、私は、やはり何らかの大改革をやらない限り、とても六十五年度までに赤字国債脱却なんというものはできかねるのじゃないかという気がしているわけです。そういうことになりますと、どうしても歳入面の構造的な部面を全面的に見直しをする、結局増税か国債発行か、こういうことしかないわけですから、そうするといきなり増税、こういうことになっていくのじゃないかと思うのですけれども、その辺大臣は一体どうお考えですか。
  28. 竹下登

    ○竹下国務大臣 今御指摘がありましたように、私も、財政再建という言葉が使われるようになってから今日までは、率直なところ歳出削減ということが第一義的に存在しておったと思います、それが「増税なき財政再建」という言葉によって示されるごとく。したがって、それを逐年やってまいりまして、五十五年度予算がプラス一〇%シーリング、五十六年がプラス七・五%シーリング、それで五十七年でゼロシーリング、また五十八年がマイナス五%、今年度がマイナス一〇%、こういう厳しいシーリング枠を設定して、それが内なる改革というものを呼んできて歳出削減という形で対応したということであるというふうに私も認識しております。  一方、減税という要求にこたえるという意味から、酒税とか物品税あるいは法人税の一部等にも、この財源を見つけるための増収措置を図った。しかし、基本的にはまず「増税なき財政再建」ということをてこにした歳出削減ということからやられた。したがって、なおこれからもその姿勢は崩せない問題だと思います。しかし、それは勢い国民に対するサービスを低下させるということを伴っていかなければなりませんから、そこに国民としても受忍し得るおのずからの限界というものもあるだろう。ということになれば、やはり受益者も国民、負担する方も国民ということになるとすれば、この赤字公債依存体質から脱却するとすれば別途増収措置を講じなければならぬ。  その中で、おっしゃいますように税外収入というものも目いっぱい取ってきた。しかし、そうは余計ないじゃないか。今御指摘になりましたこの金融三公庫等あるいは九公庫等々の問題にしましても、現実それは貸出原資になって使われているわけでございますので、また中小企業対策として別途原資を探すということもなかなか難しい問題でございましょう。しかし、それらをも、この細々としたものすべてを対象にして税外収入の確保を図っていった。そうしてそれとも、もうそうたくさんないじゃないか。確かに電電さんにしても専売さんにしても、仮に法律が通るという前提の上に立ては、来年はちょうだいできる対象にはならぬわけでございます、まさに配当と法人税という対象の範疇に入っていくわけでございますから。しかし、なおこの国有地の活用あるいはそれを売ることによっての利益等を税外収入として考えたりしなければならぬ問題はまだ残ってはおります。  そうなると今度はいよいよ増税か、こういうことになりますと、そこのところは結局私ども素直な反省をしてみても、五十四年に準備してかかって五十五年からと思っておったいわゆる一般消費税(仮称)というようなものも、論理的には成り立ち得る一つの仕組みではございますが、国民に許容されるという状態になかった。したがって、財政再建の手法としてはそれは取り上げない、こう言っているわけですから、今のところ税の問題については、不公平税制というような立場から国会等で富裕税の議論が出てみたり、あるいは法人税関係の各種引当金の取り崩しの議論が出てみたり、あるいは利子・配当課税の議論が出てみたりいたしております。そういうものを総合して税調等に正確に報告をしながら、税制調査会でも答申されているようなたゆまざる見直しと、いわゆる個別物品税の範囲の拡大と申しますか、その便益性についてのそういう議論も続けてはいかなければならぬだろう。  そういう中で、やはりおっしゃいますように革命的なことはなかなかできるものではございません。その中で国民の理解を得ながら、最終的には国民の選択でございますから、じゃあ歳出削減はこのようにして、あるいは増収措置はこのようにしてという組み合わせというものを逐次考えていかなければならぬ。一方、国民負担率全体からすれば、ヨーロッパのそれよりもかなり低いところ。かなり低いところとはどこかということはまだ議論は生煮えではございますけれども、そういうものを念頭に置きながら六十五年度というものを努力目標として、そこへ向けてソフトランディングとでも申しますか、まさに軟着陸するような形で国民の理解を得ながらやっていかなければならぬ。  だから、私はいつも感じますのは、例えば五十四年のとき、それはぽしゃったとはいえ一般消費税というもの、これがありますと。これは今ないわけであります、何があるかと言われたら。それは結局今立ちどまって考えておりますから一緒に考えましょう、こういう姿勢で対応しておるところに私どもも苦しみがあると同時に、そういう手法でないことにはまた国民の理解も得ることはなかなか難しいじゃないか、こういう考え方で対応していっておるというのが現実の認識ではなかろうかというふうに私は考えております。
  29. 戸田菊雄

    戸田委員 大臣の説明よくわかるのでありまするが、結局私は、歳入面の見直しということになれば、何はともあれ増税体制に行かざるを得ないところに追い込まれるのじゃないかという気がいたします。私はそれを賛成だと言っているわけではないのです。そういう方向に追い込まれるんじゃないだろうか。だから今やることはやはり不公平税制というもの、これがあるとすれば見直しをやっていく、こういうことにならなければいけないのじゃないかと思うのです。恐らくこの財特法は西ドイツの財政再建法、こういうものをモデルとして五十六年に導入をされて、今回もそれを踏襲してやられた、私はこう理解をしているわけでありますが、西ドイツ等ではこの財政再建法を提案をするときに、徹底して大企業など、こういったものに対する優遇措置、この政策減税は全部撤廃したのですね。そういうものを全部整理をした上に立って、どうしてもこういう方法でなければ財政再建はできませんということで、国民にあからさまに訴えて了解をいただいた、こういう状況にあるわけであります。  だから、今私たちが指摘をしておるように、例えば引当金であるとか、貸倒金であるとか、あるいは分離課税の問題であるとか利子・配当課税の問題であるとか、そういった不当な、国民にはどうしても理解のできないようなものをまず撤廃をして、見直しをやって、それでもなおかつ歳入面が足らないというならば、そのときに一体どうするかということで、仮に若干の増税をやるとかいうことはあっても、国民は納得するだろうと思うのですね。だから、そういうものを前段としてやらなくてはいけないと思うのですけれども、その辺は大臣、一体どうお考えになっておられましょうか。
  30. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いわゆる不公平税制というのは人によってその感じ方は違うと思いますが、一般的にいえば、今ドイツの例示がございましたように、各種特別措置というもの、これは政策税制でございまして、税の本体そのものが論理的にはいささか曲がっておるものでございますから、これらを是正していくという考え方に立って、逐年その数を減らしてきて今日に至っておるわけであります。しかし、いろいろな政策目的がある限りにおいて、これがまだ皆無になっておるわけじゃございません。かなりございます。が、そうしたものは中小対策でございますとかあるいはエネルギー対策でございますとか、もろもろの政策税制として今日それなりの機能を果たしてはおる。しかし、それらをすべてゼロにして、そこで国民の理解と協力を得ていく、これは一つの手法であると思います。  が、私はもう一つ前に、それぞれの立場から不公平税制というようなものが、よしんば主観に基づこうとも、議論されることによって、国民の皆さん方がそこを理解ができて、先ほどドイツの手法をお話しなさいましたような形でそのことが国民に認識されたら、今度なおこれ以上歳出削減すればまさにサービスそのものの低下をもたらす、さればという一つ前の段階を踏んでいかないことには、五十四年度にいろいろ模索したいわゆる一般消費税一仮称一というようなものが、国民の中に理解を得ることができなかったという反省からは、いささか憶病のようでありますが、不公平税制とは何ぞやとか、それぞれの立場から議論される段階をもう一つ置くべきではないか、その段階が今ではないか、こういう感じ方をいたしておるところであります。
  31. 戸田菊雄

    戸田委員 戦争中戦費調達の手段として大量の国債が発行されたことは御存じのとおりなんですが、私、参議院に出てきまして四十年に初めて国会に臨みまして、四十一年の二月でありますが、このときに本格的に建設国債が特例措置として導入された。そのとき反対討論に立ったのですけれども、いろいろと当時調べてみた記憶があるのです。結局、戦争中ああいう大量国債を発行して、戦争に負けて、終わった途端にインフレで、当時の国債を抱いておった国民は封鎖でもって全部没になってしまったのですね。貨幣価値は、当時役所等に勤めておった人がおおむね今の金で三千円ぐらいの退職金でしょうか、これがサツマイモ一俵でもって全部消えちゃったという状況ですね。そういう厳密な反省から財政法第四条というものを設定した。以後国債は一切発行まかりならぬということで財政法というものが設定をされた、その中心は第四条である、こういうように私は理解をしておる。  ところが、この四十年の補正段階で若干の建設国債が発行され、特例措置が設けられて、四十一年度本格的に、当時の記憶で二千九百億見当だと思ったのでありますが、大蔵大臣は福田赳夫さんだったと思いますが、そういうことで導入をされて、そのときに論議としては歯どめ論が非常にいろいろ言われました。当時は市中銀行引き受け、これをそれ以上伸ばさないんだから、そこでやっていきますからそんなに乱発するようなことはありませんということで歯どめ論というものが出てきました。なおかつ償還に向けての定率繰り入れは百分の一・六ずつ確実に積んでいきますよ、こういうことであったわけです。しかし、それもいつの間にかずっとなし崩し的に全部廃止をされるという状況になっているわけでありますが、そういう点で、財政の憲法と言われる財政法第四条というものに対して、大臣はどういう御理解を持っておるのでありましょうか。まずその点からひとつ……
  32. 竹下登

    ○竹下国務大臣 私も戸田さんと認識を等しくしておりますのは、四十年の補正予算のときは、確かに田中大蔵大臣から福田大蔵大臣になりまして、それでオリンピックの翌年のいわゆる戦後最大の不況、こう言われたときに、言ってみれば禁を破るという感じで国会の協賛をいただいた、あの四十年の国債は、したがって特例措置であって必ずしも建設国債だという認識は――ぎりぎり一年議論して四十一年から本格化した、こういう感じでございます。  そのときの閣内での議論、私は内閣官房副長官をしておりました当時ですが、議論というのはいわゆるインフレに対する歯どめ論。ところが、私も記憶を呼び戻してみますと、戸田さんや私どもはその年代でございますが、あの戦時国債というものは結果として超インフレの中で消化してしまった。したがって、あのときは敗戦というショックがあって、しかも新円切りかえ、モラトリアム、政府関係としてできておるものは復興金融公庫というのがささやかにできておるだけ、そういう敗戦の大ショックがあったからあの超インフレというものの中に過去の国民の蓄積がパアになったということを結局やむを得ず受けてきた。だが、少なくとも我々より後世代の人から見れば、もうあのときの超インフレを精神的に消化する経験もなければ、またそういう考えはなくなってきたところから、いわゆる物価というものが政治の課題の中の大変な優先事項となって出てきたと思うわけであります。  したがって、やかましく行われた議論を振り返ってみますと、やはりインフレに対する歯どめ、すなわちもう一つ日銀引き受け絶対まかりならぬ、市中消化で、当時の比率からいえば、総体の予算からいえばまだ少ないものでございますから、国債の許容限度一けた論とかいうようなことでやってきておのずからそれなりの効果というものが、今度はこの高度経済成長の、オリンピック後の後半の七〇年代を支えてきたんじゃないか。だから、効果のあった政策であったというふうに当時は思っております。  が、そこでやはりこれが命ずると行ったじゃないかと言われる。それは私も認識をほぼ等しくしておりますが、それは何であったかというと、まだ七一年、四十六年のいわゆる固定相場から変動相場制への移行というときに、我が国輸出競争力はどうなるかわからぬ、とにかく内需を喚起することによってこれをしばらく様子見よう、これもまた建設国債の一つの発行の契機であったが、それなりの効果を上げてきたじゃないか。問題はやはり四十八年の暮れからの、二ドル原油が毎月毎月で十二ドルになってきた、あのときからがやはり財政法というものに対する絶えず御指摘をいただくような事態、避けて通れなかった事態とはいえ、やはり今日の大きな後遺症の原因はその第一次石油ショックのときからではないか、私はこういう事実認識に立っておるわけであります。  したがって、今度は五十年から――五十年は借りかえはついておりませんでしたが、今度は五十一年からの特例債というものの歯どめをどこで議論して、結局この借りかえをしないというのをつけたかといえば、五十年の国会の議論で五十一年からそれを節度としてつけてきたわけですね。これを外さなければならぬということになったというのは、やはり財政法の建前を考えてみますと、私も本当にそれこそまさにやむを得ざる措置という理解以上の論理的な説明というものはつかないというような気持ちで、実際今回お願いしておるわけであります。  そうすると、現実可能なものをどこに置くか。それが結局六十五年努力目標というものになって、そして第一義的には、言ってみればこの特例債の発行そのものを減らしていって、そして第二段階としてこの国債残高そのものを、対GNP比ということになるでございましょうが減らしていくという、その二段構えということに今日ならざるを得なかった。振り返ってみますと、私もちょうどあの四十年の補正、そして本格的に四十一年、そのときやかましく議論した問題というものが、言いかえるならば世界経済の同時不況なり不透明感の中にあの議論を積み重ねながらも、毎年毎年こういう膨張した国債依存体質にならざるを得なかったということを私なりに認識をいたしております。  したがって、やはり財政運営の衝に当たる者が絶えず念頭に置かなければならぬのはいわゆる財政法第四条というものでありまして、そのことを念頭に置きつつ、国民の理解といわゆる歳出削減に伴うサービスの低下等に対する受忍というようなものもまたお願いしていかなければならぬやむを得ざる現状ではないか、こういう事実認識をいたしております。
  33. 戸田菊雄

    戸田委員 いずれにしても、この国債というものは麻薬と同じで、一回やったら廃人になるまでやめられない、根底にそういう性格を持っているものです。ですから、できるだけ早い機会にそういう依存脱却をやはりやっていかなくちゃいかぬと思うのです。私たちも、今日国債についてそうかたくなな固定観念で対応しているわけじゃないんですけれども、やはりできるだけ早くそういうものを脱却することでお互い努力をしていかなくちゃいけないな、こういうふうに考えているわけでございます。  しかし、それにしてももう二点ほどやはりどうしても触れておかなければいけないと思うのですが、それはこの定率繰り入れの停止問題ですね。これは昨年度やられたわけでありまするけれども、五十七年から三年間もう既に停止をしているわけであります。しかし、一たん借金をしているんですから、やはり意思表示として、そういう問題について適切な対応策をとっていくことが大事じゃなかろうか、私はこう思うわけです。  今まで政府大蔵省としてはいろいろな言い方を言ってきたわけであります。例えば建設国債は道路や港湾など資産として残ります、したがって孫子の代まで世代間の公平負担につながっていくから、こういう問題はいいんだということを言っておったわけです。それに比してこの赤字特例公債の場合はそういうものは全然ないから、結局この根拠法に、年度によって若干の規定やあるいは条章の違いはありますけれども、一貫して赤字国債償還のための起債は行わない、いわば現金償還ですよということで唯一の、建設公債とは違った扱いをやってきたわけですね。これも今度外していくわけです。  しかし私は、特例公債については十年返還で現金償還ということであるならば、定率繰り入れの方は百分の一・六、こっちは百分の十というくらい、意思表示としてぴちっと制度上はっきりしておくことが非常にいいんじゃないだろうか。確かに精神訓示規定みたいなものは、努力する目標はそれはありますよ。裏づけとして六十五年まで、「展望と指針」がそういうことで具体的に示していますと言うかもしれませんが、やはり制度上としてその点は残しておくことが必要じゃないか、こう思うのです。もう一度、くどいようですけれども、ひとつ大臣の見解を承っておきたいと思います。
  34. 竹下登

    ○竹下国務大臣 一昨年、昨年以来議論をして、部内におきましてもあるいは国会の議論の中にも、言ってみれば定率繰り入れをするためにまた赤字公債を発行しておるということになれば同じことではないかという議論も一部に存在する。したがって、この問題は国会の議論を踏まえて財政審に本格議論をお願いしたわけです。それが今戸田さんのおっしゃったと同じ結論に至ったというふうに私は事実認識をいたしております。やはり定率繰り入れは現行の総合減債制度の基本であり、いわゆる六十年償還ルールを担保するものである、この点についてはまさに財政審において、基本的には現行の減債制度の仕組みはこれを維持するのが適当である、こうことしの一月十八日に建議されたわけであります。したがって、やはり国債の持つ信用性というものからも、これは基本的に維持すべきであるという認識の上に立ちます。  が、そこで六十年度以降の定率繰り入れをどうするかということになりますと、結局今の国債整理基金の資金繰り状況、そして財政状態というものを考えて対応していかなければならぬ。しかし議論を通じ、そしてそれを財政審にお諮りし、建議として、やはり維持することが基本的に必要である、適当であるという建議をいただいておりますから、その基本認識の上に立って、財政事情と国債整理基金の資金繰りというものでもってその都度適切に対処していかなければならぬ課題だ。だから基本認識は、もろもろの議論を繰り返しながら財政審から建議していただいた考え方と、今御意見としておっしゃった考え方と同じ認識に立って、そのときどきの財政事情等で対応していかなければならぬ課題だ、こういうふうに事実認識をいたしております。
  35. 戸田菊雄

    戸田委員 国債の管理政策について若干質問しておきたいのでありますが、国債の経過措置等については省きますけれども、この間参考人として都市銀行の意見の一端を伺ったわけでありますが、今都市銀行等では保有国債の量が非常に大規模になってきておるわけです。国債の引受額が六六年から七〇年まで、四十一年から四十五年ですが、これは大体三千億円から六千億円、七一年―七四年は八千億円から約一兆六千億円見当、七五年以降になりますると大体四・二兆円ないし六・五兆円、こういうことになってきておるわけです。これは大蔵省の資料でありまするが、総体に占める割合は都市銀行の場合で二八・六%、長期信用銀行が六・九%、地方銀行で一二・四%、信託銀行で九・一%、相互銀行で三・四%、以下農林中央金庫、生命保険会社、損害保険会社、証券会社等々ございますが、割合として一番多くいっているわけです。  ですから、こういうところに拠出をして、一般の融資状況が大変な状況にあるということでありまするけれども、こういう問題については各行ごとに、いわば標準といいますか限度といいますか、その辺は、どの程度なら大体一般の金融業務を支障なくやっていけるか。銀行にはいろいろな経理基準その他がありましていろいろやってはおられるのですけれども、その辺の兼ね合いはどういうことであればいいんでしょうか。その辺ひとつ見解を伺っておきます。
  36. 西垣昭

    ○西垣政府委員 今戸田先生がお挙げになりました比率はシンジケート団の中の各金融機関種類別の引き受けシェアでございます。この引き受けシェアというのはシンジケート団の中の話し合いを基本として決められておるものでございまして、これからも弾力的に決められるだろう、このように思いますが、問題は各金融機関が能力以上に押しつけられるというようなことがあってはいけないということだろうと思います。私どもも適切な国債管理政策を運営していくに当たりまして、その辺については十分配慮をしているつもりでございます。  現状について申し上げますと、五十九年度の新規財源債のシ団の引受額につきましては、そういった意味での負担にも配意しながら、五十八年度から金融機関による窓販が開始されたことも考慮いたしまして、六兆八千億円ということにしておるわけでございます。これは長期国債については五十八年度の当初計画の六兆四千億円、その同額でございます。それから、割引国債につきましては、金融機関の窓販が始まったということもありまして、その分を追加して二千億を四千億にしておりますが、実質的には五十八年度と同じでございます。そういった意味では五十八年度も円滑に発行、消化ができておりますので、五十九年度のシ団の引受額は無理がないものではないか、こういうように思います。  なお、確かに過去におきましては預金等増加額と比較してみましても、国債の引受額が非常に大きかったということがございます。過去一番大きかったのが、都銀につきましては五十四年度でございまして、五十四年度につきましては預金等増加額に対して九一%国債引き受けに回されたというような実績がございますが、その後は五十五年度三九%、五十六年度二四%、五十七年度四八%、五十八年度の上期で二六%というようなことで、かつてのような問題はないのではないか、こういうふうに思っております。
  37. 戸田菊雄

    戸田委員 確かに今局長が説明されますように、長期国債発行手続の問題については、その都度国債発行等懇談会等々があって、そこでいろいろと相談をされることは私も十分承知しているのですが、しかしその中に例えば大蔵大臣、日銀総裁、財政審会長、それから全銀協会長、証券業協会長、金制会長、証取審会長、政保債引受シ団代表会社、学識経験者、日銀副総裁、大蔵事務次官、これは限定されているのですね。少なくとも、今の都市銀行を含む関係の皆さんの銀行だけでおおむね六十数行あるわけですね。相銀も六十九行くらいありますね。また、信金は百幾らある。そういうことで、各行がいろいろあるのですけれども、そういう人の意見が余り反映されてないのですね。全体をにらんでいろいろやっていることは間違いないでしょうけれども、こういう人に代表されて、懇談会でいろいろ取引、決まっていくわけです。だから、その辺はもう少し各行の意見が集約できて反映されるような、そういうものにやはり配慮していく必要があるのじゃないかと思うのですが、そういう点はどうですか。
  38. 西垣昭

    ○西垣政府委員 国債の円滑な発行、消化を図っていきますためには、引受団に参加しております金融機関の真の意向というものを把握する必要があるということについては御意見のとおりでございまして、その点については、形式的なものではございませんで、私ども、十分努力しているつもりでございます。そういった意味で、現状におきましては国債の窓販等も円滑に実績を上げつつありまして、かつてのように、必要以上に引き受けたものが市中に出回って国債市況を悪くするというようなこともなくなっているわけでございまして、先生が言われるような心配は今のところはない、こういうふうに申し上げて差し支えないかと思います。
  39. 戸田菊雄

    戸田委員 反面、国債消化の促進のために、発行条件の弾力化とか、中身としては個人消化の促進、それがために例えば税制面での優遇措置、例えば少額貯蓄非課税制度、この制度が六三年の四月にできたのですが、一定限度内において、これは当初は五十万円、六五年、昭和四十年には百万円、七四年、昭和四十九年には三百万円、こういうことで国債利子非課税、これは特措法の第四条でありまするけれども、そういうことで非課税制度というものを設置した。それから、最小額面の十万円券、これを五万円券にもっと下げて、買いやすいような方法をとったとか、いろいろやられているわけです。こういった状況で全体の国債の発行促進をやっているようですけれども、これだけでもしかし、なかなか今後容易じゃないのではないかと思うのです。何か別途いろいろと検討されているという話を聞くのですが、こういう問題に対する促進の内容について、あればひとつお答え願いたい。
  40. 西垣昭

    ○西垣政府委員 国債の円滑な発行、消化につきましては、私ども従来から努力をしてきておるところでありまして、特に発行条件の弾力化につきましては、毎月その実績としてあらわれてきていると思います。  シンジケート団から特に強く望まれておりますのは、市場実勢に即応した発行条件で発行をしてくれ、こういうことでございまして、過去数カ月、毎月、十年利付国債については発行条件をシ団との交渉において改定をするということで来ております。それから中期債につきましては、もともとこれは公募でございまして、市中の実勢に合わせて発行条件が決まるわけでございます。  むしろ、私どもこれから努力が必要だと思いますのは、五十年代に大量発行された国債の償還期が六十年度以降続々と到来してくるわけでございまして、その中の相当部分を借りかえなくちゃいけない。新規債の発行もある程度の規模が今後続くことを覚悟しなくちゃいけませんし、借換債もふえるということになりますと、それをいかに円滑に消化するかということで、五十年代になかったような苦労があるのじゃないかということで、六十年代に備えましては、国債借換問題懇談会というようなものを設けまして、今勉強しているところでございます。六十年度に間に合うようにその結論を出してまいりたい、こういうふうに考えております。
  41. 戸田菊雄

    戸田委員 銀行局の審議官が来ているようですから、一点だけ伺っておきたいのです。  銀行の利ざや計算の問題で、例えば都市銀行十三行、地方銀行六十三行、信託銀行七行、長期信用銀行三行、総称して全国銀行ということになるのじゃないかと思うのですが、この調査の内容を見ますと、五十七年度預貸金利ざやは〇・五%マイナスだ、こう言っているのです。それから総資金利ざやは〇・三三%であった、こういうことを言っているのですが、五十七年度の損益計算書でありまするけれども、それを見ますと、貸出金利、利息、これが十四兆二千八百億、全体の約六割ですね。それで、結局、その他の受け入れ利息で約六兆五千億でありまするから、こういうことで、非常に多くの利ざやが発生してくるわけですね。  これはどういうところに問題があるかというと、結局、利ざやの計算方法が、今利ざや計算をする場合には預金、債券コストと銀行業務全体の経費を含めているのですね。言いかえると、利ざや計算の対象となる業務の人件費、物件費、税金、全部ぶち込んでいる。だから、何というか、デパート全体が八階建てであって、一階部分の売りのノルマが何ぼ。ところが、そこまでいっていないから赤字だ、赤字だ、こう言っている。しかし、八階全体の総売り上げをやってみるとどっと利益が出てくる、こういうような方式で今やられているのです。ですから、前段で言ったように、銀行総体から見れば実際は〇・三%のプラスだ、こういう計算方式になっているのですが、これはやはり計算の方法に欠陥があるのじゃないかと私は思うのですよ。こういう点の指導ないし今後の検討はどう考えておりますか。
  42. 行天豊雄

    行天政府委員 銀行の利ざや計算につきましては、確かに先生御指摘のとおり、いろいろ複雑な問題がございまして、単純な預金コスト、それから貸し金の利回りということだけでなくて、いろいろな手数料の問題であるとか内部留保の運用利益であるとかございますので、なかなか素人に理解しにくい面があることは否めないとは思うのでございます。  ただこれは、いみいろ経理基準等のルールに従ってやっておる話でございますので、私ども、できるだけわかりやすいような基準をつくる努力は今までもやっておりますし、今後も続けていきたいと思いますけれども、なかなか単純明快なルールができにくいような複雑な要素があることは否めないと思うのでございます。したがいまして、よく数字を見ていただくと、なるほどこういう計算をするとこういう数字になるなということはおわかりいただけるとは思いますが、今後とも、できるだけディスクロージャーを大いに進めていかなければならないような時期でもございますので、理解しやすいような経理のあり方というものについては従来どおり努力を続けていきたいと思っております。
  43. 戸田菊雄

    戸田委員 これはぜひ検討していただきたいと思います。  最後に、大臣に御質問して終わりたいと思うのでありますが、五十九年度の歳出カットはいろいろ御努力をされて、しかし、額にいたしますと三百三十五億円しか出なかった、こういうことですね。恐らく今後もそういう点については十分厳しくやっていくんだろうと思うんですが、私は、今回制度まで切り込んでいろいろやっておるわけでございますが、もう限界じゃないかという気がするんですね、歳出カットは。  だから、どうしても財政再建ということになりますると、歳入面の見直し、そういう点について力点を置いてやっていかざるを得ないんじゃないだろうか、こう思うんですが、その辺の見解と、六十年度予算編成に対するシーリングは、やはり今年度並みくらいに持っていく予定であると聞いておりまするが、その辺の見解を伺って質問を終わりたいと思います。
  44. 竹下登

    ○竹下国務大臣 かなり、いわゆる地方行政といい、あるいは健保といい、小さくは、金額はやや小さいものでございましょうが、児童扶養手当といい、言ってみれば制度にまでさかのぼっていろんなことをやってきた。もうぼちぼち限界じゃないかと、私も時にそういう印象を受けることはございます。が、待てよと思って、そこでもう一遍踏み直りまして、まだ制度、施策の根源にさかのぼってやるべきものがありはしないか。それで、指名手配方式とでも申しますか、これはどうも少し多いじゃないか、こういうようなものでなく、シーリングというものが、ある意味において内なる改革というものを進めていく一つの環境になったとすれば、やはり六十年度予算編成に当たっても、従来どおりの厳しい対応で臨まなければならぬじゃないか、こういう考え方に立って、さてはてそれじゃどういうふうなシーリングの実体にするかということについては、いま少し勉強さしてください、こういうふうに閣議でも御発言し、了解を得ておるというのが、まさに現状そのものでございます。
  45. 瓦力

    瓦委員長 先ほど戸田議員からの御質問で、お答えがございます。行天議官
  46. 行天豊雄

    行天政府委員 先ほど戸田先生から御質問がございました政府機関の貸倒引当金でございますが、五十八年度末で二銀行、輸、開銀と八公庫でございますが、合計が五百五十七億円でございます。それから、その引当率でございますが、公庫では実績で〇・一ないし一・一%、それから銀行では二・一ないし三・〇%ということになってございます。
  47. 戸田菊雄

    戸田委員 どうもありがとうございました。
  48. 瓦力

    瓦委員長 宮地正介君。
  49. 宮地正介

    ○宮地委員 昭和五十九年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置等に関する法律案につきまして、最初に御質問してまいりたいと思います。  特に今回のこの改正案におきまして国民が大変に心配をしておりますことは、いわゆる赤字国債の借換債の発行の問題であろうと思います。昭和五十年に特例公債の発行に踏み切った大蔵省が、十年たって、その生命線ともいうべきこの借換債の禁止規定を、その歯どめ措置を取り払う、これはよくよくのことではないかと思います。私は、特に日本の財政を運営する大蔵省の皆さん、断腸の思いではなかったか、このように思うわけでございますが、この点について、一方から見れば大蔵魂がやはり欠如したのではないか。こういうふうにわれわれも大変に遺憾に思っているわけでございますが、この点についてまず大蔵省の、特に主計局の官僚の、財政運営の一番がなめにあります主計局の見解を伺い、さらに大臣の所見を伺いたい、こう思います。
  50. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 今回、法案におきまして、借換債の禁止規定を外すことをお願い申し上げております背景でございますけれども、財政の事情が大変厳しい状況になってきておるわけでございます。五十九年度予算におきましても、歳入歳出両面にわたっていろいろの措置をとってきたわけでございます。     〔委員長退席中西(啓)委員長代理着席〕  しかるに、今後の財政事情をさらに展望いたしますと、これもまた非常に厳しい状況が予想されるわけでございます。それにつきましては、本国会にお出しいたしました「中期展望」なりあるいは「仮定計算例」等をごらんいただければおわかりのような状況であるわけでございます。  そういう中で、今後の我が国経済の着実な発展と国民生活の安定を図りながら財政を運営していくというためには、やはり特例公債の問題について避けて通れないのではないかというふうに考えるわけでございます。特に、大変厳しい財政事情の中で、五十九年度特例公債の脱却という目標が達成が不可能になった。そのかわりに、「展望と指針」等におきまして、六十五年度に脱却を目標とするというような情勢も新たに出てきたわけでございます。  そういう中で、やはり六十年度から参ります大量な特例公債の償還につきまして、やはりこれを借換債の発行によってその償還財源を賄っていかざるを得ないという状況になったわけでございます。したがいまして、そういう状況の中で、今回の法律の中で特例公債の借りかえ禁止規定を取り除くということを法案で御審議をお願いしているということでございます。
  51. 竹下登

    ○竹下国務大臣 昭和四十年に最初国債を発行しますとき、当時、まさにこれがインフレにつながる懸念はないかとか、一体歯どめはどこにあるか。そして、それが四十一年本格化いたしまして、あくまでも建設公債である、だから四条公債として許容されるべきものであり、そして、そのものは民間消化であって、日銀に引き受けさすようなことは断じてない、こういうような議論の積み重ねの中で、それが第一次石油ショック後、特例公債の発行に頼らざるを得ないようになる。そこで、その財政の節度とは何ぞや。これは借りかえ禁止規定そのものを、しかも、これは政府が五十年に提案したものについていなかったわけであります。国会の議論の中で、五十一年度以来その借りかえ禁止規定というものをつけてきた。言ってみればその禁を破る、こういうことになるわけでございますから、それは感慨まさにじくじたるものがございます。  したがって、少なくとも今日考え方としてお示ししておるように、六十五年までに特例債の、新発債そのものは何とかこれをやめることを努力目標として努め、そしてその後、この借りかえというものも含むいわゆる公債残高の減少というものに極力努力していくということで御理解をいただかなければならぬということについては、まさに私自身も、歴史的経過の中で複雑そのものの心境であります。
  52. 宮地正介

    ○宮地委員 国民は、やはり特例公債に対する借換債の導入ということは、これはまさに、いわゆる財政のサラ金地獄に政府みずからが落ち込んでいくのではないかと。民間であればこれは大変な事態であります。国では、私は、より以上の国家的責任、使命というものに対して、少し大蔵省は、やはり先輩諸公に、もっと範を垂れるような決意と使命感があってよかったのではないか。その辺の反省の上に立って今後の財政改革というものがなければ、国民の納得は得られない。失政のツケが常に国民に回ってくる。これでは幾ら政府が財政再建、財政再建と言っても、なかなか納得されないと私は思うのです。  特に、歴代の内閣を見ましても、財政再建の問題についてはだれ一人としてその目標、公約を達成した人がいない。特に三木内閣においては、五十一年の二月に、五十五年度に赤字国債脱却を目標とする。これもだめ。福田内閣になりまして、五十二年の一月に、五十七年度に赤字国債の脱却を目標とします。これもだめ。大平内閣になりましても、五十四年一月に、五十九年度に赤字国債脱却を目標とします。これもだめ。そして鈴木内閣においては、五十六年一月、この五十九年度に赤字国債脱却を、今度は目標でなくして公約をしたわけです。それもだめ。中曽根内閣になって、昨年五十八年の八月に、六十五年度に赤字国債の脱却を目標とすると。  このように、三木内閣以来過去四代にわたる内閣の目標、公約というものはすべて崩れてしまった。そして今回中曽根内閣になって、六十五年度に赤字国債の脱却を目標にがんばりますと、こう言っても、また六十五年度がやってきたとき果たしてこの公約が実現できるかというと、先ほどお話ございましたが、後ほどまた触れたいと思いますが、今後の財政再建の手順や方途を見ておりますと、非常に心配である。国民から見ますと、歴代の内閣のこうした目標や公約が、常に失敗、破られておる。そして今回は、一番国民の心配しておりました特例公債に対する歯どめ措置であった借換債の禁止規定というものが削除をされる。それも五十年度の特例公債の、毎年毎年この特例公債の法案を国会でチェックをし、議決をしてきたものを、今度は遡及してまでその歯どめ措置を取っ払ってしまう。まさにこれは政府の財政のサラ金地獄化ではないか、こういうように心配するのも当然だと思います。  今大臣並びに主計局次長のお話を伺っておりますと、やむを得ない、何かそんな感じを受けるわけでございますが、もう少し国民に対しての強い反省と今後に対する決意と、今回のこの財政改革に対しての、中曽根内閣の六十五年度の目標はどんなことをしてもやり抜くんだ、こういう決意がどうも見られない。そんな感じが私はするわけでございますが、その点についてもう一度、主計局と大臣の決意と、今後の国民に対するお約束をどのように考えておられるのか、またそれに伴う内閣としての政治責任というもの、こうした問題に対して、国民はどう受けとめればよいのか大変疑問視していると思うのです。この点についても伺いたいと思います。
  53. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 六十五年脱却に向けまして、今委員がおっしゃいましたように、我々としても全力を挙げて努力してまいりたい、そのように考えております。
  54. 竹下登

    ○竹下国務大臣 今御指摘なさいましたとおり、いわゆる努力目標というものがその都度変更されてきた内閣の歴史が、今日まで至っておるわけであります。お互い六十五年度とういう立場にあるか、それは別にいたしましょう。私どもが政権の与党であるということは、議会制民主主義の中で確定しておる問題ではもちろんございませんが、やはり国民的課題として、この努力目標達成のためにあらゆる手法を模索し、国民の理解を得ながら実行していかなければならぬ政治課題だという事実認識はしっかりといたしておるつもりであります。
  55. 宮地正介

    ○宮地委員 先ほど話が出ましたのでお伺いをしておきたいのですが、いわゆる財政再建、あるいは財政改革、この手順、方策というものに対しても、やはり国民にもう少し責任のある対応というものを明らかにして進めていかなくてはならない、このように思うわけでございます。ただいまお話のございました、政府としては「一九八〇年代経済社会の展望と指針」の中で六十五年度に赤字国債の発行から脱却することを公約をしておる。この六十五年度までの数字というもの、この中期的な財政事情の、例えば「仮定計算例」の問題を見ましても、本当に六十五年の赤字国債の脱却は可能なのだろうか。具体的にこの「仮定計算例」でお話をしてまいりますと、努力目標であるということで、どうも国民から見ればあいまいもことした感じにある。果たしてそこに責任というのはどのように対応していくのだろう。特に私は大蔵大臣に、将来は総理大臣になるとも言われている大蔵大臣ですから、こうした財政再建、財政改革という内閣の目標、公約、この問題と政治責任、国民に対する責任というこの問題、これはどのように受けとめられておるのでしょうか。御確認をさせていただきたいと思います。
  56. 竹下登

    ○竹下国務大臣 私は人様の心境を推しはかることはいささか非礼かとも思いますが、鈴木前総理が政権の座からおりられたというのは、やはりみずからの一つの政治家としての責任のとり方ではなかったかというふうに考えております。いわゆる政治責任のとり方というのはいろいろあるでございましょう。私自身もみずからじくじたるものは、御案内のようにグリーンカードの法律案を提出して提案者となり、御協賛を得て成立せしめたものを、今度はそれを凍結する提案者となり、そして成立させていただいたということなどは、これは責任のとり方としては漂いものではないなと思っております。ただ、みずからの責任をみずからでとったという理屈はつかぬわけではございませんけれども、自分自身、そう潔かったとは思っておりません。したがって、責任のとり方にはいろいろあるでございましょうけれども、要は、これは私自身の問題でもなく国民に対する問題でございますから、それはその時点で、政治家たる者まさに厳粛に考えるべきことであろうと思っております。
  57. 宮地正介

    ○宮地委員 私は、今大蔵大臣のいみじくも責任のとり方というお話がございましたが、決してやめることが責任をとることであるとは思っておりません。むしろ私は、目標なり公約というものを掲げたその内閣が、やはりその目標に近い、あるいはまた目標達成のために本気になって使命感に燃え、責任感に燃えておやりになる、御努力されていることには敬意を表しますが、やはり歴代の内閣がいわゆる目標、公約というものを踏みにじってきた。まあオオカミ少年じゃございませんが、またかと。そして、最後の赤字国債の生命線と言われたこの借りかえの禁止規定までがここで削除される。これはまさに日本の財政の大きな危機の状態に来ている、私はこう思うのです。  そこで、もう一つうがった見方をしますと、今回のこうした「仮定計算例」などを現実に分析をしていきますと、これは非常に至難中の至難、そんな感じがするわけです。そうなると、結局日本の財政の再建というのは非常に難しいのだという中で、次に出てくるのがやはり大型間接税の導入、歳入の負担増、こういうところに、何か大蔵省を中心とした中曽根内閣は誘引していくんではないか、こうした危惧も国民の中には現実に出ているのは事実なんですね。そういう面からも、そうした問題はやはり払拭していかなくてはならない。そのためにも、今回のこの特例公債の借りかえの禁止規定の削除というのは、当然これは慎重に対応すべきであり、何とか踏ん張ることはできなかったのか、私はこういう感じがするわけでございます。  確認の意味でお伺いをしておきますが、こうした「仮定計算例」などの一連の政府の国会に提出した資料などは、いわゆる大型間接税導入の伏線という意味はないと思いますが、その点について確認をしておきたいと思います。
  58. 竹下登

    ○竹下国務大臣 まさに一定の前提を置かしていただいて仮定計算をお出しして、それを御審議いただくよすがともしていただこう、こういう考え方でございますので、まさに仮定の計算で、しかも機械的な手法で行ったものでありますだけに、裏返して見たときに、大きな政策意図というものはそれには含まれておりません。したがって、むしろ国民の皆さん方の中に、いわばそれらの要調整額というようなものを歳出なり歳入なり組み合わせなり、どのようにして埋めていくかといういわば基礎資料というようなもので御提示したものでありまして、最初から政府としての政策意図が見え隠れしておるものではないというふうに御理解をいただきたいと思います。
  59. 宮地正介

    ○宮地委員 むしろそうした政府が国会に提出された一連の資料というもの、率直に申し上げまして、政府が「経済社会の展望と指針」で描いている経済成長の姿では、六十五年度といえども私は赤字国債の発行をゼロにするということはほとんど無理である、むしろ無理であるということの証明になっているのじゃないか、こういう感じがしております。  そこで私は、我々公明党が予算の修正の問題など、矢野質問など通じましていろいろ述べてまいりましたが、そういう中で特に経済政策の転換をもっとやるべきではないかという感じがしているわけでございます。特に我々は、経済の実質成長率、これを五%程度、やはりこれの達成を目指すべきである。名目成長も七・五%程度、その確保を主張しております。  例えば我々が所得税、住民税の減税につきましても一兆四千億円ということを要求をしてまいりました。また大衆増税や法人税の増税の見送り、公共事業の追加など、こうしたもので何とかこの五%の経済成長というものは達成できるのではないか。また私は、五十九年度においては、諸般の情勢から恐らく四・六%ではなくして五%台に経済成長というものを、非常に近い状態の景況というものも見受けられると考えておる一人でございますが、こうした実質経済成長五%に裏づけられた名目成長七・五%に、政府が考えておられますところの租税弾性値一・一で税収を試算し、歳出の方は政府の仮定計算の数字をそのまま使い、五十九年度の自然増収分は減税財源に充てるとしても、六十五年度の姿はケース(1)の政府案に比べてみましても、政府が一般歳出の五%の伸びで要調整額を九兆九千億円としているのに対しまして、我々の試算では六兆四千億円に縮小できるわけでございます。また、一般歳出の伸びが三%の場合は、要調整額は政府の五兆一千億円から一兆七千億円に縮小できます。  つまり、我々はこれまで財政赤字の循環部分を早く解消することを主張してきたわけでございますが、政府が実質成長五%に高めることに努力し、安定成長を実現すれば、かなりの部分の要調整額が解消することになるわけでございまして、財政再建から見ましても、基本的にこうした景気をよくしていく、景気成長というもの、これをもっと五%台に乗せていく、そういう中での財政再建というこの経済の転換、こういうものをもっと力点を置いて対応していくべきではないか、このように思いますが、大臣、この点についてはどのようにお考えになっているか、所見を伺いたいと思います。
  60. 竹下登

    ○竹下国務大臣 絶えず皆さんと御議論をしておる問題でございますが、いわゆる潜在成長力が、日本経済、実際何ぼあるか、この見方の相違が一つあると思うのであります。やはり、高度経済成長を終えた第一次石油ショック後の情勢を見てまいりますと、当初我々が見込んでおったよりも、実質面においてはるかに低成長、こういう実態になっております。したがって、ここのところ、いろいろ議論を重ねた結果、昨年の「八〇年代経済社会の展望と指針」というものに六ないし七、こうなりますと、やはりその中間値の六・五というものをとって「仮定計算例」というのはお出ししておるわけでありますから、これを、今おっしゃいますようにもう一ポイント上げて七・五%の名目成長率で、あるいは七・五ということになれば、普通の場合は、あるいは弾性値というものは一・一を超すかもしれません。そういう仮定計算を前提として置けば、私は、今おっしゃったことはいわば図面は描けるというふうに思うわけであります。  しかし、どこにそれを置くかということになりますと、結局潜在成長力というのは、実際問題、なかなか組み立ては難しいものでございますが、我々の実質成長四%程度というものよりもより高目に見ていらっしゃるわけでございますから、したがって、私はむしろ、そのような試算が出てくるようになったということが、国会の議論がこれから一層がみ合ってくるために好ましいことじゃなかったか、素直にそう思っておるわけであります。  そこで、もう一つ基本的な考え方で申し上げますと、さて、されば、仮に一兆四千億の減税あるいは公共事業の追加が、現実の問題としては、その財源を見るところ、特例公債と建設公債とにとりあえずはならざるを得ない。そうすると、それのよってもって立ついわゆる乗数効果等々から見ました場合に、仮にこれが企業経営であるといたしますならば、私は、将来を見込んだ設備投資等が借入金のもとになされても、果実を生めばそれで結構なことだと思いますが、財政ということになると、今度は単年度主義という一つの枠の中で、少なくともその単年度主義の中においては、いわば公債依存度というものは上げていかなければならぬ。それが仮に、かつてのように、いわゆる国際経済の不透明感等からいたしまして、思わざる低成長等の路線を歩んでいった場合、企業経営ならば自己責任でありますが、国家財政ということになると、一体その失敗に対する責任をどうするかというと、まさに取り返しのつかない状態になるのではないかということになると、勢い財政当局者としては慎重にならざるを得ない。  したがって、よくぞまあ描かれました「経済社会の展望と指針」の中の「七、六、五抜きの四、三、二、こという数字というものに、どうしても整合性を持ちながらの見通しということになっていかざるを得ないということで、ただ、たまたま宮地さんが、七・五というのは一つ考えられる、それが九や一〇だったらそれはとんでもないと言う人がございましょう。が、考え得る、それは四%程度としましても、五%に張りつくこともあろうかと思います、中期的に見れば。あるいは下回ることもあるかもしらぬが、一つのそういう試算が出てくるようになるということが国民の前で議論が明らかになって、国民自身の選択肢がどこにあるかということを求めていく一つの過程として好ましいことじゃないかな、私の側からいえばありがたいことではないかな、こういう感じであえて議論をいたしておるところであります。
  61. 宮地正介

    ○宮地委員 私は、こうした財政の改革、健全なる改革というものがバックボーンになければ、今後の二十一世紀に向けての日本の福祉国家をつくっていく上において、やはり財政というものが硬直化し、また財政のそうした改革というものが非常にサラ金財政的な地獄化していくことは、国民にとって将来に希望もなければ夢もなくなってきてしまう、こんなことを感じて大変心配をしているわけです。  そこで、ここ三年ぐらいで結構ですが、いわゆる国家予算の中で、国民がこれは本当の新規政策費だと受けとめられるような予算、これは大体どのくらいになっているのでしょうか。概算で結構です。
  62. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 委員御質問の新規政策費を集めて集計したのは、現在ございません。しかし、毎年当然増的な、現行の制度、仕組みを前提にして当然ふえてくる金額は、一兆数千億あるわけでございます。実際の予算は、でき上がりましたところ三百億円強三角になっているわけでございますから、そういう当然増的なものを切り込んで、なお新規のものをそこへ盛り込んできているというのが実情でございます。その新規のものが、それでは具体的にどれだけの金額かという点につきましては、ちょっと私としては現在具体的な数字は持っておりません。恐らく千億単位のどこかにあるのではないかと、これはあくまで推定でございますけれども。
  63. 宮地正介

    ○宮地委員 後で結構ですから、過去三年ぐらいの、概算どの程度になるか御報告をしていただきたい、こう思います。  そこで、きょうは経済企画庁の国民生活局長来ておりますので簡単に御説明いただきたいのですが、昨日、人生八十年時代、こういうことで経済企画庁と労働省が財団法人の余暇開発センターに委託した「人生八十年時代における創造的自由時間活動のための条件」と題する調査報告書を発表したようでございますが、この特徴と概要について、ちょっと報告していただきたいと思います。
  64. 及川昭伍

    ○及川政府委員 御存じのとおり、我が国世界で最高の長寿社会に入ってきておりまして、長寿社会とともに国民のライフスタイルが変わってくるとか、あるいは一日当たりの労働時間が減ってくるとかいう形で、自由時間がふえてきております。その自由時間をどう過ごすかが生きがいにとって大事なことになってくるということで、この調査結果から見ますと、まず時間構造につきましては着実に自由時間がふえてきておりますが、諸外国に比べますと、まだ若干日本の方が少なくなっておりますし、国民の意識としては、生活への生きがいとして、仕事に生きがいを感ずる人は相変わらず多うございますが、だんだん自由時間において生きがいを感ずる人が多くなってきておりますし、さらに家計の中身ではレジャーへの支出、文化への支出が多くなり、雇用関係でも第三次産業が非常に多くなってきている。そういうことを前提にして、労働時間制度についてさらに柔軟化していくような動きが各方面で起きてきており、今後国民の生活を豊かにしていくために、自由時間を活用するための条件を政策としても用意しなければならないという結果が出ております。
  65. 宮地正介

    ○宮地委員 人生八十年時代というそうしたいわゆる生きがい、余暇の活用、こういうことで非常にこれからの人間らしい、またそうした生活、福祉国家、こういうものをやはり今後つくっていかなければならないわけでございます。そういう中で、今主計局次長の方から、新規政策の予算というものは大体千億単位ぐらいじゃないか、こういうことでございますが、やはりそうした国民に生きがいのある福祉国家をつくっていく、その基本は何といいましても財政の健全化、そういうものがしっかりしておりませんと、これはすべて絵にかいたもちになってしまうわけです。  それだけに、今回の法案の審議というのは非常に大事であると思いますし、これからの日本の財政の改革というものは、私は非常にシビアに受けとめ、それなりの責任ある改革というものを断行していかなければならぬ、こう思うわけです。この点についての新規政策費というものを生み出していくためにも、財政の硬直化、または今回のこうしたような赤字国債の歯どめ措置をなくしていくということが、逆に財政の健全性というものを失っていく。大変私は心配しているわけでございますが、そうしたいわゆる今後の福祉国家をつくっていく上における健全財政の今後の方途といいますか、そういう問題については大蔵省はどのように考えられておるか、見解を伺っておきたいと思います。
  66. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 その前に、お許しを得まして、先ほどの、いわゆる新規政策費の問題について答弁させていただきたいと思います。  新規政策費を仮に計算いたします場合に、新規とは何かという定義が非常に難しいわけでございます。例えば補助金につきまして、ある補助金の仕組みを今度新しい仕組みに変えた場合に、これを根っこから新規と考えるのかどうかという問題もございます。それから、例えば公務員の給与を仮に上げるという前提で、これの上がった金額を新規と考えるのかどうかというような問題もあるわけでございます。といいますのは、当然増経費という場合には、このベースアップ分は入らないわけでございます。したがいまして、なかなかどの範囲をとって新規と考えるかという点は判断が難しいわけでございまして、具体的にこの数字を集計してお示しするのはいろいろ問題があろうかと思います。しかし、先ほどお話がございましたので、そういうものができるかどうか、我々としても研究させていただきたいというふうに思うわけでございます。  それから二番目は大変大きな問題でございまして、健全財政をどういうふうに持っていくかという御質問だと思いますが、健全財政というものはしからば定義の上でどういうものを言うかということが一つあるかと思います。ぎりぎり言えば、税収その他で入ってきた財源ですべての歳出を賄うという姿が理想の姿としてあり得るわけでございます。しかし、そうでなくて、諸外国におきましても、ある程度国債を発行して財政を賄うのも、財政政策としてある程度は許容できるのではないかという考え方もあるわけでございます。ひところ国債につきまして火種論というのがございまして、国債発行に依存する率が五%未満ならば健全ではないかという御議論もあったやに伺っているわけでございます。そういう意味からいきますと、まさに御指摘のように、現在の財政のあり方は健全というところから非常に外れているわけでございまして、したがいまして、できるだけこの部分を我々としては是正していくことで努力していかねばいけないと思っているわけでございます。
  67. 宮地正介

    ○宮地委員 私は、財政の硬直化というものは、新しい時代に適応した新しい政策というものをつくっていく上におきまして非常に大きな壁になってきていると思うのです。この点については、今後も財政改革の中での新規政策費というもの、新しい時代の国民のニーズにこたえた対応という政策の必要性というものを訴えておきたい、こう思います。  もう一点、今回のこの法案の中におきましての、いわゆる日本電信電話公社の臨時国庫納付金の納付の問題について少し議論をしてみたいと思いますが、この「二千億円に相当する金額を昭和六十年三月三十一日までに国庫に納付しなければならない。」財政当局の立場から見ますれば、どこからでも何とか財政をかき集めたい、こういうお気持ちは私もわからないわけではないのですが、もう一方、やはり電電公社というものの置かれた立場、特に国民消費者との接点にあるわけで、例えば電話料金の値下げとか、そういった直接的に国民に還元をしていく、こういう方途も当然考えられてしかるべきではないか。電電公社の職員から見れば、おれたち一生懸命働いて利益を出せば、結局国庫納付だ。こういうことはまた、そうした働く職員に対すると気の問題にも出てくるのではないか。  例えば自動車の電話というのが最近非常にはやってまいりましたが、これはまだまだ大衆化していないと思うのです。なぜかといえば、相当これは高いんですね。設備投資でも三十万ぐらいかかる、また基本料金が四万五千円ぐらいかかる、こういうような状態ですから、いろいろまだまだ技術的にも問題があるようですが、ともかくそうした国民の便に非常に寄与している。こんなものもやはりもっと大衆化していくために直接還元して、こうしたことの財源というものを活用していくなら、国民消費者にももっと喜ばれるのではないか。  そこで、きょうは郵政省、電電公社も来られておりますので、今回のこの二千億円に相当する金額の国庫納付について、郵政、電電としては、率直に言って私は消費者に直接還元する道もあったのではないか、こういうことも十分考えてよいのではないか、こう思っておるわけでございますが、この点について郵政、電電としては率直にどういう考え方をお持ちになっておるのか。きょうは大蔵大臣おりますが、大蔵委員会の場、国会の場でございますので、遠慮なく率直に、謙虚にお述べいただければありがたいと思います。
  68. 五十嵐三津雄

    ○五十嵐説明員 ただいま先生から御指摘ありましたように、五十八年度の電電公社の利益の中から五十九年度に二千億納付をするということに相なっているわけでありますが、電電公社の性格から申しまして、これは受益者負担に基づく独立採算制と申しますか、本来的にそういうことで運営をいたしております。したがいまして、国庫納付という制度自身は本来なじまないものであるというふうに考えているところであります。  ただ、今回の二千億の納付につきましては、国の財政が引き続き危機的な状況にあります。一方、電電公社の経営は、技術革新、生産性の向上あるいは企業努力、さらには利用の増というようなこともありまして、財政的には順調に推移してきております。そういったことで、五十八年度の利益から、当初予定したものを上回るものにつきまして、この利益を国に納付するということも、大局的な見地からやむを得ないものというふうに考えた次第でございます。  なお、先生から今御指摘のございました自動車電話の料金等につきましては、かねがねいろいろな御批判を耳にしているところでございます。しかし、電話の料金の設定につきましては、基本的なサービスの利用の増加の見通しを見ながら、その費用を回収するというような観点から、現在のところあのような料金の設定になっておりまして、やむを得ざるものがあるというふうに思っております。なお、公社の合理化努力によりまして、ここ二回ほど使用料、いわゆる基本料でございますが、自動車電話は下げてまいったところでございます。  つけ加えて申し上げさせていただきますと、料金といいますものは、今回の納付金のような臨時特例的なものと若干性格を異にいたしておりまして、料金自身はそのサービスの利用の見通し、あるいは公社の財務状況、あるいは電話料金体系全体、こういうものの均衡を総合的に考えまして、長期的な視点に立って決定しなければならないと考えておりますので、今回のような臨時国庫納付金の取り扱いとはその趣を若干異にするものでございます。
  69. 宮地正介

    ○宮地委員 大蔵省伺いたいのですが、財政当局としては、受益者負担に基づいての電電公社の国庫納付、これは非常に苦心の果てにこうした形で吸い上げたと思うのですが、今後こうした受益者負担あるいは国民消費者に直結する財源については慎重に対応していくべきではないか。ただ財政が大変だからといって、また経営が非常に黒字でうまくいっておるからということで国庫納付ということになりますと、当大蔵委員会ですから、今恐らく相当遠慮した答弁ではなかったかと思いますが、本音は相当苦々しく思っているのではないかと私は思います。そういう点で、大蔵省として、今後のこうした問題の取り扱いについて私は慎重に対応していくべきではないか、こう思いますが、その点についての、これは大蔵大臣の所見を伺っておきたいと思います。
  70. 竹下登

    ○竹下国務大臣 この問題は、何分にも四千八百億円、それの最終年度分を一年早めていただいて、その上にまた新たに二千億、こういうことでございますから、私もこれをお願いするときに、過去の答弁を全部私なりに読み返してみました。このような措置はまさに異例の臨時的措置でございまして、将来断じていたしませんというところからずっとトーンが流れてまいりまして、しかしながら、大変よだれの出るような財源だなという感じもなきにしもあらずでございますという、これは決して答弁をリードしたわけじゃございませんけれども、そういうお答えをしてきたわけでございます。  しかしながら、元来確かに受益者負担による独立採算制ということで、今御説明がありましたように、料金体系の問題はいささかその趣を異にするも、四千万台あれば、一台に対して五千円返して差し上げることも、粗っぽい議論をすれば可能なお金でございます。なかんずく合理化等を推進して――電電公社へ行ってみますと、確かにエレベーターは使われないような仕組みになっております。     〔中西(啓)委員長代理退席、委員長着席〕 必ず歩いて上がれ、そういうところまでやって努力された結果のものでございますだけに、根回しという表現が適切であるかどうかは別といたしまして、各方面に対してひそかにお願いをして、私なりには機の熟するのを心の中で期待しながら、最終的には御協力をいただくことができたということでありますだけに、心境を率直に申し上げれば、深くこうべを垂れてありがとうございました、こういう偽らざる心境であります。
  71. 宮地正介

    ○宮地委員 次に、けさほどの新聞紙上を大変にぎわしておりますが、二十七日の経済対策閣僚会議で、アメリカ、ヨーロッパとの貿易、金融摩擦などの解消を図るための対外経済政策の骨子をまとめたということが報道されております。この点について現段階でどのようになっているか、大蔵大臣として、わかる範囲で結構でございますが、概要を御説明いただければありがたいと思います。
  72. 竹下登

    ○竹下国務大臣 二十七日に、河本経済企画庁長官が座長をしていらっしゃいますが、対外経済対策の閣僚会議を開こう、いわゆる対外経済対策についての骨子を、各省間それぞれございますので、それまでにまとめよう、こういうことになっておるわけであります。それで、私の方へ直接関係のあります問題といたしましては関税の問題、それから金融資本市場の問題等々の問題になろうかと思うのであります。  一つだけ、具体的にどういう表現になるかということは今鋭意各省間でも検討しておるさなかでございますが、言ってみれば金融自由化あるいは資本市場自由化等はその方向というようなことで、まずは二十七日はその辺までが限界かな。と申しますのは、いま一つアドホックグループの専門家会議が、いわゆる円ドル問題につきましては、中曽根・レーガン会談を受けて、私とアメリカのリーガン財務長官に対して報告書を提出する、こういう国際的課題が一つあるわけでございます。それが五月に報告書をいただけるということになっておりますので、その経緯を私が全く知らぬというわけではございませんけれども、したがって、そういう約束に基づく会議がある前に具体的なものを出すということは、どの辺までが詰まった問題として許容されるのかというような点、いささか部内でもまだ議論をいたしておるところでございますので、姿勢としてあえて申し上げますならば、金融制度調査会等からいただいた答申を骨子として、主体的にかつ積極的に進めていくという方向性だけは打ち出せる最小限ではなかろうか、こういうのが現状でございます。
  73. 宮地正介

    ○宮地委員 金融資本市場自由化の促進等についても、恐らく円の国際化あるいは金融自由化の方針などが閣議決定されるのではないか、その後にまたいろいろ次の大蔵委員会等で検討していきたいと思いますが、それに伴いまして、特に最近の中期国債ファンドの問題についてちょっと伺っておきたいのですが、これは証券界の主力商品であることはもう御存じのとおりでございます。五十七年度で純資産総額が約一兆六千六百十八億、これが五十八年度には四兆八千二十五億と、この一年間で差額約三兆一千四百億、こういうことで中期国債ファンドが都市銀行の預金を非常に食ってきている。考えようによってはこれは金利自由化に非常に加速を与えるということで、私は理解もできるわけでございますが、この点については大蔵省として、この証券投資信託協金あるいは全国銀行協会連合会、こういうところのいわゆるあつれきといいますか、いろいろその調整工作があろうかと思いますが、こうした問題に波及して、最近では、証券投資信託協会の方ではいわゆる短期金融資産投資信託、MMF、これをもう検討してきておる。全銀協の方は市場金利連動型預金と言われるMMCの発売を何かもう既に決めているようだ、こうした動きがあるわけでございますが、この点について大蔵省としてはどのように御指導されておるのか、お伺いしたいと思います。
  74. 宮本保孝

    ○宮本(保)政府委員 大量国債の発行を契機にいたしまして、非常に大きな国債の流通市場ができてきております。その過程で、特に昭和五十年度以降大量に国債が発行されたものについてだんだん期限が近づいてまいりますので、期近物の国債商品が出回る。これは市場で自由に価格が形成されるわけでございますので、逆に金利が自由に決まってまいるということでございます。そういたしますと、特に投資信託なんかの商品は、市場に出回っている商品を持ってきまして、そこにまた新しい商品を使ってその資金を仲介して売るというわけでございますから、つくろうと思えば幾らでも商品ができてしまうわけでございます。したがいまして、その過程で中期国債ファンドであるとか、あるいは公社債投資信託のいろいろな商品が証券界の方でできているわけでございますが、それはそれとして必然の流れでございますから、それをとめるわけにはいかないわけでございますけれども、ただ、一方で預金金利が規制されておりますので、そういたしますと、勝手にどんどん自由金利商品をつくっていきますと、そちらの方にお金が流れ過ぎてしまうということでございます。したがいまして、そこのところは秩序立てて認めていかなければいけないのじゃないだろうか。自由な公社債投資信託を認めるに当たりましても、余り急激にどんどん認めていくというようなことがあってはならないし、また、もう一つ金融と証券があくまでも分離しているわけでございますので、そういう商品を認めることによって証券会社の方から、例えば決済機能を持つとか預金類似行為になるとかいうようなことがあっては、これはぐあい悪いわけでございます。そこは一つルールをつくりながら認めていくということかと思います。  一方では、金融界の方も、規制金利だけ扱っておったのでは資金が集まらなくなるわけでございますので、そういうふうな証券の方で出てまいります自由金利商品に対抗いたしまして、今先生御指摘のような市場金利連動型の預金とか、あるいは金利自由な預金であるところのCDの枠を広げていくとかいうようなことでもって対応しているわけでございます。  いずれにいたしましても、自由化を進めていく過程におきましては、余り信用秩序が混乱するとか、あるいは一方だけに金が流れるとかいうようなことがあっては困るわけでございますので、その辺は私どもといたしましては自由化を進めつつも、しかるべきルールをつくりながら着実に進めていきたい、こういうふうに思っているわけでございます。
  75. 宮地正介

    ○宮地委員 中国ファンド、この特徴は、私もなかなかなものだなと思っているのです。この表利回りが年五・四七五%、一カ月複利でいきますから、一年後には五・六一四で定期の五・五を上回る。また、契約後一カ月で解約も自由だ。これは一般にまだまだ知られていない面もありますけれども、PRいかんによっては非常に興味のある商品ではないか。だから、余りいたずらに、今銀行局長おっしゃいましたが、下手な歯どめをしない方がいいんじゃないかということで、一定の筋はつくりながら対応していただきたいと思います。こうした問題もやはり自由化の今後の加速になる、特に金利自由化の問題に加速を与えるので、余り行政が介入して歯どめはしない方がいいのではないかという感じがしておりますので、要望しておきたい、こう思います。  それからもう一つ、最近既発債の業者商売買市場、特にBB市場、ブローカー・ツー・ブローカーというのですか、この問題について、銀行にも開放すべきだという意見が多いと伺っておりますが、これについて大蔵省としてはどういう御見解を持っておられるのか、ちょっと伺っておきたいと思います。
  76. 宮本保孝

    ○宮本(保)政府委員 銀行の窓販、ディーリングの開始とともに、今御指摘のような銀行業界にBB会社を自分たちもつくりたいというふうな要望があることは私どもも存じておるわけでございますが、この点につきましては実は証券局担当のことでございまして、私の口からお答え申し上げるのをちょっと差し控えさせていただきたいと思います。金融界ではそういう希望を持っていることは確かでございます。
  77. 宮地正介

    ○宮地委員 これは御存じのように有価証券取引税の免除との問題が働いておるということで、この問題については非常に興味があるようでございますので、この問題についても銀行業界で日本相互証券の定款変更が、あるいは今おっしゃっているように銀行独自の仲買い会社をつくろうか、こういうようなことが既に検討が進んでいるようですね。この点について大蔵省として、やはりこうした金利自由化とか金融自由化といいますと、どうしても証券業界と銀行業界がいろいろぶつかるところが非常に多いわけで、こうした問題の調整工作というのは非常に大事だと思うのですけれども、その点、ぜひ銀行局長と証券局長で詰めながら、また国民消費者ニーズの立場を優先して――私は、金利自由化という問題を進めながら、一方で国民のニーズヘの対応、これが大事だと思うのですが、そういうふうにぜひ御検討いただきたい。これについてちょっと所見を伺っておきたいと思います。
  78. 宮本保孝

    ○宮本(保)政府委員 かねがね両局は意思の疎通を図りながらやっておるわけでございますが、きょうのお話を十分踏まえまして対応したいと思います。
  79. 宮地正介

    ○宮地委員 次に、金利自由化の問題で、きょう郵政省来ておると思いますので、郵政省の澤田貯金局長が二十三日の記者会見で、預貯金金利自由化は大口預貯金も小口預貯金も同時に行うべきである、こういう発言があったようでございまして、大蔵省としては非常に耳の痛い話のようでございますが、この点についてもう少し当委員会で明確に、率直に郵政省の見解を伺っておきたい、こう思います。
  80. 結城淳一

    ○結城説明員 先生御指摘のように、金融国際化、国債の大量発行等を背景といたしまして、金利自由化は避けられない時代の流れとなっておるわけでございまして、郵便貯金もこのような動きに積極的、前向きに対応していかなければならないと考えておるわけでございます。金利自由化対応していくためには、市場の実勢に合わせた金利が提供できるようにすることが郵便貯金としても必要でございまして、そのために資金運用方法の改善等、こういった面が不可欠なことになってくると考えております。  それから、御指摘の大口、小口問題でございますが、金利自由化に対しまして、我が国では大口から自由化を進め、個人、小口の預貯金金利自由化については最後に検討を行うといったような動きにあるわけでございます。小口預貯金の範囲につきましてはいろいろ議論があろうかと思いますが、仮にマル優、また郵便貯金、こういった非課税預貯金をとってみますと、法人、個人を合わせました預貯金が五十七年度末現在で約三百五十兆円ございます。そのうち、今の非課税預貯金が約二百十兆円、六割を占めておるわけでございます。したがいまして、こういった六割を占めておるような小口を圏外に置いた自由化というのは、真の自由化とは言えないのではないかというふうに我々は考えておる次第でございます。  また、金利自由化が進展いたしますと、従来の人為的な低金利政策にかわりまして、ある意味では、本来得らるべき金利が実現する可能性があるわけでございます。小口預貯金者の利益の実現のためにも、小口預貯金金利自由化を進めていく必要があるというふうに考えております。また、小口預貯金を規制の枠内に閉じ込めておこうといたしましても、先ほどの中国ファンドで先生御指摘のように、それは不可能ではなかろうかというふうに考えております。規制を維持していたのでは金融機関資金調達が困難となりまして、金融の混乱へとつながる、こういうおそれもあろうかと思います。したがいまして、大口と小口の自由化にタイムラグを置くことは適当でないというふうに考えておるのが実際でございます。
  81. 宮地正介

    ○宮地委員 預貯金総額我が国は三百五十兆円、そのうちの約六割の二百十兆円が非課税預貯金である。今、いわゆる小口に対する郵政省の見解を伺ったわけですが、時間も限られておりますので、大蔵省としては、この点についてはどう考えておられるのか。一方だけお話があって一方だけ押さえておくと不公平でございますので、大蔵省の見解を伺っておきたいと思います。
  82. 宮本保孝

    ○宮本(保)政府委員 私どもも小口の預貯金金利自由化をしないと言っているんじゃないのでございまして、やはり最終的には小口の預貯金金利自由化いたしませんと金融が混乱いたすわけでございます。同時にやると申しましても、これは非常に問題がございます。例えば郵便貯金の金利自由化の中でどう決めていくのかという問題もございます。また、一挙に小口の預貯金金利まで自由化いたしますと、中小金融機関の経営問題というものも発生するわけでございます。そういう意味におきましていろいろな点があるわけでございまして、物事には、順を追って一つのことを進めたら、それがどういう影響を与えるのかということを十分わきまえた上で次のステップを踏んでいく、これがやはり金融を秩序立てて自由化を進めていく一つの手法じゃないかと私は思っておるわけでございまして、最終的には小口についての自由化を実現するために、私どもとしてもいろいろな方策を考えつつやっておるということでございます。
  83. 宮地正介

    ○宮地委員 きょうは郵政省と大蔵省の見解が若干異なっているわけでございますが、政府としても国民のニーズにこたえた中でこの対応をしていただきたい、こう思いますので、どうか大蔵大臣も、政府という立場から、大蔵省、郵政省のそうしたおのおのの立場というものをよく玩味しながら、国民の立場に立ってのニーズとしての今後の金利自由化、これはどうあるべきかというものを慎重に対処していただきたい。時間がありませんので、これは大臣に強く要望をしておきます。  そこで、残された時間をいただきまして、若干法案とは異なりますが、私の地元の埼玉県で今大きな問題となりつつありますので、この点について国税庁の方に少し御質問をさしていただきたい。  これは、既に地元埼玉県においては各紙報道されておりますが、越谷の税務署におきますところの大量といいますか、七名の職員が結核に感染をしているという事実が発生いたしましたことは、極めて残念なことであり、遺憾なことであると私は思っております。過去十年にわたりまして国税職員の負担が大きくなっていることから、国会の場におきまして、国税職員の定員の増加について過日も決議がなされてきたところでございます。  今回の事態にかんがみまして、国税当局はどのような認識を持っておられるのか。特に越谷税務署を統括しております関東信越国税局の大多数の職員で組織しております関東信越国税労働組合、通称関信国税、ここの調査によりますと、三〇・六%の職員の人たちが、多忙なために、自宅に帰ってまで仕事をしているというデータが出ております。こうした大変な御苦労の中で、残念ながら七名の結核の患者さんが発生した、こういうことで、署の職員はもちろんのこと、納税者の皆さんも、地元埼玉におきましては大変心配をされているわけでございます。  この点についての事件発生の経過と現状、また現在どのような対応策をおとりになっていられるのか、この点についての国税庁の御報告を受けたい、こう思います。
  84. 岸田俊輔

    ○岸田政府委員 国税庁といたしましては、従来から職員の健康管理につきまして万全を期すということで努力をしてまいったのでございますが、先生御指摘のように、先般越谷署において七名の結核患者が発生をいたしまして、まことに残念だというふうに考えております。  これまでの経緯でございますが、昨年の十一月、一名の職員に微熱が発生をいたしまして、診療所におきまして結核の判定を受けたわけでございます。直ちに越谷署職員全体、それから関係宿舎の職員百九十六名でございますが、これにつきまして検査を実施いたしました。ところが、その結果では、全員異常がないということでございました。しかしながら、若干日にちがたちまして本年の四月になりまして、また新たに一名の職員が、これはせきが出ているのでおかしいということで、これも嘱託医に見せましたところが、結核という判断を下されました。直ちにまた越谷の税務署の職員全体それから家族、そういう者につきまして、局の検診車によります検診を実施いたしました。その結果、五名の患者が発見されたという状況でございまして、直ちに越谷の保健所に通報をいたしまして、さらに県及び保健所の指導のもとに対策を講ずるということにいたしたわけでございます。  現在やっております対策でございますけれども、この七名の職員のうち三名は確定申告期の相談にも応じておりまして、来署の納税者の方々に感染をしている危険性もあるということで、埼玉県の草加、越谷、吉川の三保健所で相談窓口を開設いたしました。現在までのところ検診を希望しておられますのが大体七百四十四名の申し込みがございまして、現在三百二十四名の検診希望者に対して検診を実施中でございます。  また、埼玉県内の全税務署の職員、関係家族、これは二千三百四十四名でございますが、これに対しましても検診を実施いたしております。職員につきましての検診はほぼ終了いたしておりますが、以上の結果、現在までのところ患者の家族も含めまして検診を受けました職員や市民の中から新しい患者は発見されておりません。  私どもといたしましては、現在埼玉県に、特に越谷税務署における結核患者の集団発生にかかわる検討委員会というものが設けられておりまして、その検討の結果、これに基づきます指示に従いまして、例えばことしの六月にまた全員の再検診を行う等のいろいろな事後措置を講じてまいる所存でございます。さらに、このような事態が二度と発生いたしませんように、今後とも健康管理につきましてなお一層徹底してまいりたいというふうに考えております。
  85. 宮地正介

    ○宮地委員 さらに、昭和五十二年三月に、川口税務署でも四人の結核の患者が発生したということが地元の新聞にも報道されているわけでございますが、この点についても把握をされておられますか。また、これについての対応をどのようにされてこられたか。
  86. 岸田俊輔

    ○岸田政府委員 先生御指摘のように、五十二年の春から秋にかけまして、これは若干期間があるのでございますが、川口税務署におきまして結核患者四名が発生をいたした報告を受けております。  その際にも、患者の発生の都度、関係職員及び患者の家族に対しまして検診を実施をいたしておりまして、私どもといたしましては適切な措置を講じたというふうに考えておりまして、現在のところこの四名のうち一名は退職をいたしておりますが、残る三人は元気で職場で活動いたしております。
  87. 宮地正介

    ○宮地委員 この問題について私が心配しておりますのは、こうした事件が発生したことにつきまして、地元の税務署がいわゆる公表を恐れまして、何か隠ぺい工作をしたのじゃないか、こういうようなことがマスコミに報道されておるのですが、この点についての事実はどのようにお考えになっておるのでしょう。
  88. 岸田俊輔

    ○岸田政府委員 先ほど申し上げました、最初に十一月に結核患者が発見されました段階におきまして、嘱託医から保健所の方には連絡をいたしております。さらに全職員につきましての検査を行いました段階におきまして、すべて保健所に連絡をいたしておりまして、保健所と県の指導のもとに万全の対策をとっているということでございまして、それを隠すというような事実は全くございません。
  89. 宮地正介

    ○宮地委員 先ほど次長に御報告いただきましたが、例えば越谷税務署における健康診断の状況ですね。昭和五十八年十一月二十九日に越谷税務署の職員全員に検診を実施した、そのときには異常がなかった。そして、ことしの四月五日に同じく越谷税務署の職員全員に検診をしたら六名ばかり再検査を要する、こういう状況が出た。わずか五カ月でこれだけの方が出られた。相当やはり確定申告だとか年末調整だとかいろいろ仕事が重なって、非常に過労も影響したのじゃないかと私は思います。  こうした状況は、全国的にやはり税務職員の皆さんの健康管理というのはもっと慎重に対応していきませんと、越谷税務署のみならず、こうした職員の皆さんの過重労働といいますか、そういう中での過労。先ほど申し上げましたように関信国税のデータによりますと三〇・六%、三人に一人の職員の方が、非常に忙しいために、自宅まで持ち込んで仕事をやっておる。こういう大変な御苦労をされているわけですね。ですから考えてみれば、私は起こるべくして起きたのじゃないかという心配もあるわけなんです。  先日来から附帯決議をつけさしていただいたり、あるいは定員増についても特段の御配慮をするようにお願いしたり、中高年層の皆さんの処遇改善等も、人事院としても六十年度から行う、こういう非常に前向きの姿勢で政府も取り組んでおりますが、やはり健康というものはその方にとって一番の大事な問題でございますので、ぜひこれを一つの大きな教訓としまして、国税職員の皆さんの健康問題についても、国税庁としてもさらに積極的に対応して、その健康問題の改善にも取り組んでいただきたい、このように思うわけでございます。  もう一つ私が心配するのは、こうやって結核になられた方々、いわゆる民間であれば労災というのがありますね。国家公務員の場合はいわゆる賠償法ですか、こうしたものがあるわけでございます。これは因果関係というものが成立しないと労災なんかもなかなか難しいわけでございますが、国家公務員災害補償法の適用の問題です。これはやはり考えてあげるべきである。いきなり結核なんというのは出るわけじゃないし、まして国税職員の皆さん、中高年の方は一生懸命働いて、もう非常にスペシャリストでございますから、そういう方が結核になられた、因果関係が難しいから国家公務員災害補償法は適用しないというのでは、これはお気の毒だと思うのです。ぜひこの適用問題についても対応してあげるべきじゃないか、こう思いますが、この二点について次長の御見解を伺いたいと思います。
  90. 岸田俊輔

    ○岸田政府委員 健康管理の問題につきましては今後ともさらに充実をしていきたい、今度の事件をまた契機にいたしまして十分その原因その他を追求し、事後の対策に効果を上げさせるようにいたしたいと考えております。  また、公務災害の問題その他につきましても、先生御指摘の点は十分わきまえまして検討さしていただきたいと考えております。
  91. 宮地正介

    ○宮地委員 今大臣いろいろ聞いていておわかりと思うのですが、埼玉県の越谷税務署で結核の職員の方が残念ながら七名出まして、私たちも国税職員の皆さんのそうしたお仕事柄、大変お気の毒なことだな、もっともっと温かい手を差し伸べて対応してあげなければならぬな、こういう感じがしておるわけでございますが、今次長とのやりとりを聞いておりまして、大臣としての御所見を伺いたい、こう思います。
  92. 竹下登

    ○竹下国務大臣 ちょうど国会、衆参両院それぞれ法案の審議をいただいて、まさにこの国税職員の処遇問題、定員問題等についての御意見を交えた質疑応答を繰り返しておるさなかでございましただけに、私にとりましても大変ショッキングな報道であり、ショッキングな報告でございました。したがって、これらに対しましては、我々にできるあらん限りの対応というものをしていかなければならぬというのが、私に課せられた使命であろうという事実認識をいたしております。
  93. 宮地正介

    ○宮地委員 時間が参りましたので、本日の質問はこれで終わります。
  94. 瓦力

    瓦委員長 暫時休憩いたします。     午後一時休憩      ――――◇―――――     午後五時開議
  95. 瓦力

    瓦委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  これより内閣総理大臣に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊藤茂君。
  96. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 きょうは、大蔵委員会に総理の御出席をいただきましたが、御承知のように、五十九年度財確法の審議をいたしているところであります。  今までさまざまな議論が当委員会でございましたが、それらの中で、五十九年度、ことしの財確法の審議はいろんな意味で大事な時点という指摘が一様にございまして、総理も御承知のとおりに、来年から多額の国債償還の時期に入っていく。借りかえの問題、大きな政策の転換点に入る。これからどのように財政再建あるいは財政改革、そういう将来像を描いたらいいのだろうか、これは私ども大蔵委員会に属する者の共通の気持ちでありますが、財政再建の課題は、あるいはまたその具体的な方策を示していくということは、すぐれて重要な政治の責任という気持ちで対応してまいったわけであります。  そこで、まず、総括的に総理の見解をお伺いをしたいと思いますが、年来、大量国債発行の歯どめあるいは再建の展望という議論をいたしてまいりました。一年ごとに残念ながらさらに深刻な議論をいたしているわけであります。先般、参考人に来ていただきまして質疑をいたしましたが、その中でも、財政制度審議会の宮崎さんがお越しになりまして、今後の歯どめあるいは展望の中で一番大事なことは何だろうか、それは六十五年度特例公債依存体質脱却を目標とする責任ある財政計画、それが最も重要であろうということを言われておりましたが、私どももそのとおりだと思います。また総理は、先ほどの本会議の御答弁の中でも二十一世紀という言葉を使われておりました。しばしばお使いになりますが、やはり今後の日本の社会の将来像をどう持っていくのかについて、最も大きな柱になるのがこの財政改革の視点ではないだろうかという気がするわけであります。  そういう気持ちでお伺いしたいのですが、この重要な課題に、行政の最高責任者の総理として、この財政再建の戦略をどうお持ちになるのか。財政制度審議会のことし一月の答申を見ましても、「八〇年代経済社会の展望と指針」に基づいて六十五年に赤字公債から脱却をする、この目標達成のために政府は万難を排し全力を傾注する必要があるというお言葉遣いをされているわけであります。この国会始まって以来何遍かそれについての決意もお答えになっておりますが、この機会に、公約として、単なる努力目標ではないやはり重大な公約目標として、この財政審の言葉のようにかみしめておられるのか。そういう意味で具体論をまた伺ってまいりますが、一番大事なことはどういうことだろうというふうな御所見でいらっしゃるか、最初にお伺いいたします。
  97. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 財政改革という問題は、これからの諸般の政治政策の中で非常に重要な地位を占めるものであると思っております。いろいろな施策を考えても、財政的基礎のないものは絵にかいたもちにすぎなくなるからであります。そういう意味から、非常に慎重に、着実にこの問題を推進していかなければならぬという考えに立って、まず基本的には、臨時行政調査会の諸答申を尊重して、その設定された軌道の上を前進していくということが基本でございます。それから経済運営につきましては、八〇年代の「展望と指針」をつくりましたが、あのやり方に従いまして経済運営を行っていく。この二つのポイントを頭に置き、特に臨調答申におきましては「増税なき財政再建」という理念を我々は与えられておるわけでございますから、その理念に従いましてこれから諸般の考え方を策定していくということでございますが、その中で、やはり六十五年赤字国債依存体質から脱却するというものが我々の一つの大きな目標でございまして、これに挑戦してまいるつもりでおるわけであります。  そこで、どうするかという問題になりますが、やはり歳出歳入構造の根本的な見直しということが大事ではないかと思います。そしてできるだけ歳出カットを行っていく、そして小さな政府を実現していくということ、あるいはさらに歳入構造等におきましても、不公平税制の是正とかそのほかにつきまして、臨調答申で示された諸般の事項を実行していく。特に税外収入の確保という問題も登場してまいるだろうと思います。そのような誠実な努力を重ねて、一つ一つ着実に今の枠の中でこれを実行していこうというわけでございます。大蔵省からは、予算委員会の審議の前にいわゆる財政構想、考え方というものが示されまして、幾つかの試案が提示されておるわけであります。あの試案というものを一つのよすがにしつつ、毎年毎年そのときの財政事情あるいは政府経費の節減等々を踏まえまして、その目標のもとに一つ一つ組んで実行していく、そういう考え方で今後推進してまいったいと考えておる次第でございます。
  98. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 幾つかの具体論に入る前に、もう一つ総体的な御見解を伺いたいと思います。  当委員会の今までの議論の中で、財政再建あるいは財政改革、その具体的なプロセス、プログラム、目標に近づく手段あるいは政治的手法も含めた努力国民の前に提示をする、それがないと極めて不透明な段階に指標もとどまっている、あるいは国民に対する説得性も余りないということではないだろうかという御議論がいろいろございまして、私は思いますが、先般ある新聞を見ましたら、社説のタイトルに「財政再建の本音を問う」というタイトルがございました。私も全く同感であります。今これだけ重大なときに、はっきりしない内容が行政から述べられる。目標だけがあって、そこに行く道筋あるいは政治的手段というものがはっきりしない。我々の方も建前の質問をする。これでは私は、国家国民にとって不幸な事態ということだと思います。真剣な本音の議論を通じて、多くの国民の皆さんの前にこれからの経済社会の将来像を一歩一歩提示をしていく、そして御理解と選択をお願いをするということが私どもの使命ではないだろうかというふうに思うわけであります。  予算委員会以来のいろいろ議事録や報道を見まして、財政改革中曽根語録と言っては失礼なんですが、幾つか特徴的に言われた言葉を拾ってみました。先ほども総理から言われたとおりであります。「増税なき財政再建」の路線は全力を尽くして今後とも堅持をしていきたい。また、臨調の提言を大事にしていきたい。私の内閣が続く限り、大型間接税の導入はしない。また、六十五年度脱却という問題は税制とも関連をいたしますが、非常に難しく、無理で苦しいことは承知をしているなどの御発言が総理からあったようであります。また、先ほども当委員会河本経済企画庁長官に御出席を願いまして御発言がございましたが、いわゆる日本の潜在成長力を生かした積極経済論、その中で税収をふやし、財政の基礎も固めていくというふうな趣旨の御発言が今まで幾たびかございました。また、大蔵大臣とは何遍も頻繁な議論をいたしまして、やはり厳しい財政削減、合理化、節約、そういうものをしなければならない、あるいはまた政府税調が検討してい合課税ベースの広い間接税という問題についても、税調での研究、議論は続けていただくというふうな意味合いのことが続いているわけであります。  そういたしますと、非常に重大な目標として、国家国民の将来のためにも六十五年特例公債依存体質からの脱却ということを掲げられているわけでありますが、じゃ一体そこにどういう道筋で行くのかということになりますと、何かいろいろあって混乱してわからないという印象が各界、国民の立場からはぬぐえないと思うのであります。それで、私は思うんですが、やはりこういう大きな問題、すぐれて国家国民の将来に関する問題であり、そうしてまたすぐれて政治の課題であります。そういう意味からいいましたら、総理もおっしゃいましたように、大蔵省が、後年度推計方式という枠内でありますが試算を出しております。検討していただきたいということになっているわけでありますが、大蔵省の一定のセクションのところで、予算編成の過程で、あるいは予算編成が終わった後、何かそういうモデルをつくるとかあるいは試算をしてみる、そういうことではなくて、事柄の本質からいたしますならば、これは総理の指導のもとに、内閣の責任でこれらの重要な課題にどう取り組んでいくのかというシステムが必要ではないだろうか。  諸外国の場合を見ましても、ドイツの場合、イギリスの場合、それぞれいろいろな例がございます。ドイツの場合でも、当時ブラント首相が中心だったと思いますが、一大蔵大臣だけではない、やはり内閣の総体の課題としてこれらの問題に取り組んでいこう、言うならばシステムとして、内閣の責任で総理の指導のもとに、国家国民の将来にかかわるこういう問題にどうしていくのかということを考えようという、やはり気迫と熱意があってドイツなりに、財政構造改善法などというような努力が今日に至っている。国によってですから、そのまま日本に直輸入するわけではありませんが、というものがあるわけであります。事柄の重要性からいいますと、そういうものが必要ではないか。  しかも今日の状況を考えてみますと、六十五年といってももう遠い先ではないわけであります。あと七年足らず、予算で言うならばあと六回。あと数回の予算編成の作業を通じてこの重要なことを、目標を達成しなければならないということになっている。それを考えますと、大蔵省が出しました試算とかあるいは大蔵省主計局の一セクションのところでやっているさまざまの推計とかいうことでない、やはりまさに政治の重要な課題としての総理の指導のもとにおける将来についての検討をやっていく。私は半年かそこらで一挙にできるというふうには、現実問題必ずしも思いません。さまざまの努力をしなければならないと思います。模索もしなければならないと思います。また、一定のシェーマができた場合でも、それをローリングして、毎年あるいは適時さまざまの見直しをしていくということも必要だろうと思いますし、一定の幅も必要だろうと思います。しかし、このような手法を通じて、このような方向で、こういう手段をもって達成していきたい、そういうものを総理の指導のもとにつくられていく、まさにそれが求められている時期ではないだろうかと思うわけでございますが、いかがでございましょう。
  99. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 財政再建構想と申しますか、数字的なものを裏づけたものは非常に難しいと思います。ですから、八〇年代の「展望と指針」をつくるときも、定量的なものから定性的右ものへ変換を指示したわけでございます。それに伴いまして、財政再建の方も割合に定性的な性格を持たせるという形になっております。もとより大蔵省内部におきましてはいろいろ試算の数字はあるだろうと思いますが、それは内部的なものであって、公に責任を持って出すべきそれほど確実性のあるものではないと思っております。  我々といたしましては、毎年毎年の状況をよくにらみながら、大体の目の予算用で、この程度公債を減らしていく、景気はこの程度にしていく、あるいは税外収入はことしはこの程度確保できやしないかとか、そういう苦心を積み上げまして、そして最終的な目標を達成する、そういうような過程で今後も努力していきたいと思っておる次第でございます。
  100. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 総理に今御答弁いただきましたが、お伺いしました中心眼目は、大蔵省が試算をつくる、それから関係の有能なお役人の方々がさまざまの模索や計算、推計をしてみるということも必要でしょう。しかし、今求められているのはやはりそういう一つの試算ではなくて、六十五年まで完全な一つの青写真ができるというのはなかなか難しいと思います。それは、財政、経済にしてもそこまでの、数年の見通し、五年、七年、八年という見通しは難しいと私は思います。しかし、ドイツの場合でも、今年度予算をつくるに当たっては来年度、その次、三年間の推計を出すわけですね。それはもうきちんと出していく。それから、日本のように膨大な要調整額なんというのが存在しない一つの形というものを提起をしていく。  しかも、先ほど申し上げましたように、スタート以来内閣の責任、国難ともいうべき言葉遣いなんですが、そういう今日の財政状況だろうと思います。いろいろな諸政策の集約点になっているそういうものの将来について、やはり総理が指導的な立場を持たれて、さまざまな関係閣僚会議その他システムがございますけれども、その中での重要なそういうものとしておやりになる、それが求められている時期ではないだろうかということを申し上げたのでございますが、率直なお気持ちを伺いたい。
  101. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 その点は、先ほど申し上げましたように、定性的な考え方に立てはある程度のものは持っておるわけです。これは「展望と指針」というものを基本にして考えれば考えられることでありますが、定量的な要素になると変動的要因が非常に多いと思うのであります。したがいまして、数字を盛ったようなものでつくることは非常に難しい、つくってみてもそれは根拠が非常に薄い、そういうものにならざるを得ない、そう思うのであります。しかし、我々はゴールとして六十五年に赤字公債依存から脱却する、そういうゴールは持っておりまして、それでそのもとに毎年毎年の努力を重ねていこう、こういうことでありますので、先ほど来申し上げましたことで御了承賜りたいと思うのでございます。
  102. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 私はさっきもちょっと申し上げましたが、今政府・与党、野党、我が大蔵委員会もそうですが、何かさまざまの努力をする、あるいはさまざまの機会をとらえてお互いにこの重大な国民的課題についての本音の議論を展開していく、そういう場を、そういう可能性を持っていくことが必要ではないか。私どもも、ニュー社会党だからというわけではありませんが、そういう努力をぜひやって、国民の期待にこたえる野党としての努力をしていかなければならないという気持ちで申し上げました。特に総理の指導性といいますか、大きな責任を果たされるべきではないかということを申し上げているので、そういうお気持ちをぜひ持っていただきたいと思いますが、六十五年というゴールはきちんと持っております、あるいはそこに向けて年々さまざまの検討、模索をしながらやっていきたいという総理の御答弁であります。  それでは、幾つかの視点からその具体論を伺っていきたいと思いますが、まず第一は、これは言うまでもないことだと思いますけれども、六十五年が重要なゴールであると言われました。振り返りますと、総理も御承知のように、今まで何回か目標が立てられ、試算がつくられ、何回かそれが破綻をいたしてまいりました。特にこういう問題については非常に真剣な苦悩、努力をなさった大平元総理もいらっしゃいます。あるいはまた、五十九年脱却が不可能という中で退陣をされた鈴木前総理もいらっしゃるわけであります。そういうことを振り返りながら、今もう一度それと同じように挫折を重ねられるということになれば、これは国に対する、あるいは行政に対する国民の不信も今まで以上に大変なことになってしまうと思います。そういう中で六十五年ゴールをきちんとやっていきたいということを言われておるわけであります。  六十五年までに赤字公債の発行額をゼロにするということになりますと、これは予算委員会その他で指摘をされてまいりましたように、毎年平均一兆円減らしていく。これが五十九年度の予算では五千億余りできなかったわけであります。初年度でつまずくのかという追及質問に対して、いやこれからさまざまの経済情勢、財政構造を見ながら六十五年にはやっていくんだという趣旨の政府との問答が今まであったわけであります。そして、五十九年度予算は成立をし、執行過程に入りましたので、これから六十年、六十一年どういう展望を持っていくのかということになってまいります。六十五年に特例公債依存体質から脱却ということになれば、初年度のつまずきということではなくて、当然のことながら六十年度以降平均一兆円余りの額になるわけであります。多少景気、税収、将来のでこぼこがあっても、ことしのようではなくて、一兆円の特例公債の減額はしていくということが六十五年脱却への当然の前提条件、六十五年赤字公債脱却をやるからには当然の内容というふうなことになってまいると思います。これからあと2カ月もすればシーリングの問題になるでありましょう。六十五年がそれらについての重大なゴールとおっしゃるならば、特例債を一兆円以上減額していくということについての総理の決意を伺っておきたいと思います。
  103. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 数量にわたることは非常に御発言しにくいと申し上げましたので、同じように赤字公債脱却を毎年幾らずつやるかという数字をお示しすることは非常に難しいと思いますが、総括的に見まして、六十五年度にはこの赤字公債依存体質から脱却しよう、そういう線で今後も引き続いて努力してまいりたい、そう思っておる次第でございます。
  104. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 定量的なことはなかなか言いにくいということでございますけれども、六十五年というゴールは掲げられている。それで、六十年で何ぼ、六十一年で何ぼというふうに私は御回答を求めるつもりはありません。しかし、六十五年に特例公債依存体質から脱却をする。さまざまの政府関係審議会その他の答申などを通じて、それに向けて政府の方が確約をされている。これは総理も大臣も何遍も確約をされているというわけでありますから、少なくとも平均一兆円強は減債をしなければならない。将来の方がやや多くなって当面のところが厳しいからとか、いろいろあるかもしれません。しかし、その辺のところがなかったら六十五年脱却ということももちろんないわけでありまして、これは簡単な方程式に関する問題ということになるわけであります。ですから、定量的にはなかなか言いにくいだけでは済まされないではないでしょうか。重ねていかがでございましょうか。
  105. 竹下登

    ○竹下国務大臣 一兆円ずつ均等に、そしてそれが初年度のことし一兆に満たなかったわけでございますから、それをまた均等にやりますと一兆八百億ずつ、「仮定計算例」からすれば、均等にいけば一応そうなるわけであります。しかし、これはすべてが均等にいくという前提の上に立てたものではなく、あくまで仮定計算でございます。そのときどきの財政事情等を考慮しながら、あらゆる努力を払って、そして今ゴールと言われた六十五年度には、結果として赤字公債の体質から脱却を目指していく。したがって、一年一年が一つ一つの勝負になっていく問題であると私どもは認識をいたしておるところであります。  伊藤さんがよく指摘されますのは、それはそれであるとしても、それをいま少し数字的にも明らかな、いわゆる計画に近いような形のものを模索する努力をすべきである。この議論は私どもも絶えずちょうだいしておるところでありますが、目下は、言ってみれば、今度議論をしておりますと、きょうも議論がございましたが、成長率等を名目七・五に見た場合の成長率からすればこのようになるではないか、こういうような議論が出る。そういう状態がまさに今日の状態であって、そういう議論をお互いが交換する中に国民の選択肢、コンセンサスはどこにあるかということを模索して、単年度ごとの予算の中でゴールに向かって進んでいくという財政に対する対応の仕方をしていきたいという基本的な考え方であります。
  106. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 次の話題に移っていきたいと思いますが、総理にも大臣にも御要望申し上げておきたいと思います。  六十五年というゴールを高く掲げていらっしゃいます。初年度は一兆円減額ができませんでした。六十年度どうかということについて、先般も竹下大蔵大臣にお伺いしましたら、その点も明言はされない状態であります。きちんとした見通しをお持ちいただく必要があるのではないかと思いますが、初年度ため、二年度ため、その先の将来が十年、十五年あるならばまだよろしいでしょう。説明はつくかもしれません。しかし、六十五年というゴールは遠い将来ではありません。予算でいけばあと六回組むのですね。六年余りというこの期間のうちにそれをやらなければならない。一年一年がまさに重大な正念場になっている。ことしの予算編成作業、恐らく六月ごろでしょうか、そのころから始まって、それをやっていく中で、そのことが五十九年度予算と同じであるということならば、総理が言われた六十五年の大きなゴールに対して国民の信頼感が大きく揺らぐということではないだろうかと実は思うわけであります。これは皆様がそうおっしゃっているので、その論理の必然性としてそうであろうと申し上げているので、私も私どもの党の方も、もうちょっと期間を緩やかに、確実に立てたらどうかという見解であることは御承知のとおりであります。  次に、今後の国民の負担ということについてのお考えを伺いたいと思います。  当委員会でも、専門委員会でたくさんの詳細な議論がございますので、総理から細かい計数的なことよりも総括的なお考えを伺っておきたいと思うわけでありますが、現実問題として、総理が先ほど冒頭に幾つか指標を述べられましたが、第一に臨調答申の尊重という立場を言われました。恐らくは、財政審の言葉で言うならば、さらなる財政の節約合理化、普通に言えば財政削減、財政カットということが中心ということでございましょう。また、六十年度も厳しいマイナスシーリングという言葉はお使いになりませんでしたが、厳しい枠組みをしなければならないということも大蔵大臣も言われました。  総理、いかがでしょう。六十五年、これはもう十年、二十年先のことではありません。そこに向けての備えと確実な手だてを一歩一歩どうしていくのかということが問われているわけでございます。当面はやはり歳出の縮減合理化、歳出カットということが重点、増税のことは今重点には置かないということで、これからこの一、二年あるいは二、三年を展望するということでございましょうか。
  107. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 やはり財政と経済政策とを組み合わせまして、さらに金融的な諸般の機動的措置等も組み合わせまして、それで生きた経済を運営しつつ財政基盤を拡大して堅実にやっていく、そういうことであるのだろうと思います。したがいまして、均一的に、大根を切るように切るということではなくして、国際経済情勢等をにらみながら、ある場合にはエンジンを吹かすこともあるし、ある場合にはエンジンを収縮させることもあると思うのです。そういうように生きた経済を相手にしながら進めていくということが現実的な対策ではないかと思うのであります。  世界経済自体が、ことしはこうだけれども来年はどうかという展望すらなかなかできにくい情勢でございます。それは中近東の情勢一つだけでもどういうふうに転換するかわからない情勢であります。そういう非常に不安定性の強いときでありますだけに、財政政策を行う者としましても、非常に現実的基盤に立って着実に一歩一歩積み上げていくということ以外にはちょっと考えられないのではないかと実は思っておる次第でございます。
  108. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 ある意味では数年後などを定量的に把握をするということは確かに難しいでしょう。しかし、それにしても余りにも抽象的過ぎるのではないだろうか、率直に申し上げましてそんな気持ちがするところであります。しかし国民の注目をしているところは、具体的に一体これから来年あるいは六十五年に向けてどうなるんだろうか、現実に膨大な要調整額がここにあるわけですから。それはマスコミでもさまざまの面でも、すぐこれは増税の疑惑としてはね返っていくということでありました。じゃそれに対する手法というものは、将来までは別にして当面、といってもこれは明らかになっていない。言うならば、竹下さんのいつも言われているところでは模索の過程というふうなことになるわけでありまして、もう一歩そこをどう示すのかということが必要ではないかということが私の趣旨であります。  それでは、多くの国民が不安を感じている、あるいは心配をしている負担の面から見たらどういうふうにお考えでしょうか。これもそう具体的な数字並べのことを申し上げるわけではありません。二つ考え方を伺いたいと思います。  一つは、しょっちゅう議論になります直間比率という問題があります。これは政府、それから竹下さんは余り言われませんが、今までの大蔵大臣経験者の方々も、現在の直間比率は六、四が望ましいとか、将来は五、五だが当面は六、四が望ましいとかなどと言われております。また、各界にもそれなりのさまざまな意見があるということになっておるわけであります。六十五年という遠い将来は、私は今は問題にしません。六十五年という大きなゴールに向けた中でこういう取り扱いを一つの発想として、考え方として、具体論でどの新税までは申しませんが、どうお考えになるのか。  それから、これは大蔵大臣の御発言でしたか、政府税調でいわゆる課税ベースの広い間接税ということについて、その導入についての検討を続けていただくというのが今までの大臣の態度だったと思います。また比喩的に、学問的研究としてということを言われたようにも記憶をいたしておりますが、今の直間比率の問題とも関連をいたしますけれども、そういうものをいつまで学問的研究という段階にとどめておかれるのか。それから解放されるという時期が間もなくか、やがては必要であろうとお考えなのか。特に六十五年という一つの時期をめどにしながらその辺をどうお考えでしょうか。
  109. 竹下登

    ○竹下国務大臣 結局いわゆる税における直間比率という問題につきましては、直間比率という言葉から来る概念としては非常にわかりやすうございますし、よく使われてまいりました。したがって、臨時行政調査会においても直間比率という言葉が使われております。その後、専門家の集まりであります税制調査会等でもいろいろ議論があって、直間比率というのは理論的には結果として出てくるものであるということが一つと、それから直接税というものは、言ってみれば経済成長率によって大きく影響を受けますが、間接税というのは比較的景気動向によっては影響を受ける度合いが、少なくとも直接税に比べては少ない。そうすると、仮に今年の時点で直間比率がかくあったといたしましても、経済情勢の推移によってはまたすぐ直と間との比率は、経済がよければ直の方がより高くなってくるという性格のものでございます。そして、従来我々が直間比率として使っておった言葉が最近、税体系の見直しというようなことで使われるようになっておるのじゃないかな。税調等の答申を見るとそんな感じがいたしております。いずれにしても、消費の段階に担税力を求めるか、所得の段階に担税力を求めるか、こういう大前提は存在するわけでございますが、従来とも所得の段階に担税力を求める、いわゆる消費一般に係る税制そのものは否定すべきでない、こういう考え方で今日に至っておるわけであります。  そうして、今私どもは税制調査会の答申において、広く便益性等を考えながら個別物品税等のいわば範囲の拡大というようなことは検討すべきである、こういう御指摘をいただいておりますので、たゆまざる勉強課題として、やはり筋としてこれを抱いていかなければならない問題である。それはいわゆる大型間接税というものを導入をいたしますという議論とは別の、いたします、いたしませんという議論とは別の次元で、消費一般に係る税制の中における、特に個別消費税の便益性とかそういうことを考えた範囲というものについては不断の勉強をしておかなければいかぬということに位置づけておるわけでございます。  ただ、伊藤さんの御主張、きょう総理との問答の中で明らかにしていらっしゃるのは、第一点は六十五年ということを政府は言っておるが、場合によっては我々はもう少しその問題は柔軟に考えてもいいという考え方を持っておるということ。そして二番目には、総理との問答の中におきまして、やはりいま少し「仮定計算例」とか「中期展望」とかいう以上のがっちりした数字を、何年にわたって出せとは言わないが、国民に問いかけるためにはより熟度の高いものにすべきだということを議論の中に主張していらっしゃる。そして三番目のいわゆる税の問題についても、そういう勉強を絶えず続けておるならば、少なくても六十年度ぐらいは直間比率あるいは国民負担率全体がどうなっていくかということを示すべきではないかということと、私どもが申しておりますのは、その問題についてもこういう問答を通じながら国民の選択肢はどこにあるかということをいま少し見定めながら、六十年度予算編成に当たってそのことを結果として明らかにしていきましょうという、まあ一歩先の問題を主張していらっしゃるわけ。であります。  そのことは私どもはよくわかる話でございますが、今日いわゆる消費一般に係る大型間接税というものを導入する考えはありません。しかし、税体系全体の見直し作業というものは、国会においても、それぞれ主観の相違はあれ、不公平税制という問題の指摘もございますし、絶えずやっていかなければならない課題だ。それをこうした議論を通じながら、国民の前にも明らかにしながら、国民のコンセンサスがいずこにあるかを見定めていこう、こういうことではなかろうかと思うわけであります。
  110. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 先ほどの総理の御発言ございましたように、確かにこれからの財政、これからの経済含めて、多面的な勉強と構想を描かなければ、それぞれの解答は得られないという面があると思います。それらのことを次に伺いたいと思いますが、その前に税制に関係をして二つ、総理の御所見を伺っておきたいのであります。  その一つは、今回行われました所得減税に関することでございますが、さまざまの議論を、本会議、予算委員会初め当委員会でも、審議に当たっていたしました。大方の議論の方向、野党側の方向は総理御承知のとおりだと思います。そういう上に立ちまして私どもは、今後どうするのか、どうしていくのかという議論をいたしたわけであります。  私どもの立場からすれば、景気浮揚に役立つという与党のお約束も具体化をしなかったし、あるいは内容は文字通り増減税でございますので、不公平是正に大きく役立ったのか。過去十年、二十年の企業税と所得税、サラリーマンの税金のバランスを比べてみましても、非常に大きな顕著なアンバランスが生まれている。それが是正されたかどうかとなればごくごくささやかなものにすぎないという評点をしたわけでありますが、同時に、これが終わったから今後はいいんだということでは済まされないことではないだろうか。政府税制調査会の先般の中期答申の中にも、所得税における「負担の急激な増加や歪みをもたらさないよう、社会経済情勢の変化に対応して、数年に一度はこという表現をしてございますが、「数年に一度は、適宜その見直しを行う必要がある。」そう述べておられます。そうしてこれらの観点について、当委員会で竹下大蔵大臣も、今後ともその税調の趣旨も含めながら不公平是正に取り組んでいくということをおっしゃいまして、私どももこれは当然この機会にさらに必要なことであろうということで、採決に当たりまして附帯決議の冒頭にもそれを付したところであります。そういう経過がございますが、総理もそういうお気持ちで今後の所得税あるいは不公平是正に取り組まれるということでよろしゅうございますか。
  111. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 これは政府税調及び党税調で今後御審議を願う内容でございまして、我々が予断を持ってこれに前提を加えることは余り適当でないと思いますが、大蔵大臣がしばしば申されますように、公費の使用と国民の負担の限界、そのバランスをどうとるか国民の選択にまつ、そう一般的に言っておりますが、そういう問題としてますます登場してくる可能性が強いのではないかと思います。
  112. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 総理、これは極めて簡明かつ素直な表現なんですね。今までの経過を見ましても、企業税と所得税と、二十年前には所得税一〇に対して企業税の方が一四ぐらいでしたか、十年前には一九になって、今は一〇に対する七・五、こういうバランスですね。確かにそれはGNP構造の中における企業と給与所得者の構造とのバランスの変化もございますでしょう。しかし、税制によってそれが生まれているという部面も相当程度あるという中から、今度の減税を評価あるいは今後、税調もそう言われているということなんで、これから負担とサービスがどうなるのかということは別途の議論であります。  しかし、いずれにしても政府税調もこの問題については言っておりますように、数年に一度は見直しをしながら、常に公平のための努力はしていくというふうなことになってくるわけですね。ですから、負担とバランスの今後の全体の構造をどう持っていくのかということとは、全体とは絡まった意味でなくて言っているわけなんですが、政府税調も言われている、それから大臣も当委員会でもそういう趣旨は今後とも大事である、そう答弁をされた。これが終わって、また長期にわたってこういう――これは減税を何とかという意味じゃなくて、公平の視点を特に税制としては注意深くいつも持っていなければならないという気持ちを表現したわけであります。そういう意味では当然だと思うのですが、いかがでしょう。
  113. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 それはやはり経済変動、社会情勢の変化に応じて税というものを常に見直していくということは常識だろうと思うのです。特に所得税あるいは間接税等々の問題につきましては数年に一遍――数年というのは何年が適当かどうかは別として、常に変化を見直していくということは、国民生活を維持する上からも大事なことではないかと思います。
  114. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 もう一つ総理に御所見を伺いたいのですが、政府税調のあり方に関する問題であります。  これは総理が任命になる重要な調査会となるわけでありますが、私はこういう気持ちがしています。初代中山伊知郎さん、二代目東畑さん、今三代目小倉さん、それぞれ立派な方で、大事な役割を御努力をされてきたというふうに私は思います。同時に、これからを考えますと、今のままでいいのだろうかという実は気がしてならないわけであります。というのは、総理も御承知のように、残念ながら税に対する国民の不信、税制に対する国民の不安、不信、不公平感――不公平感というのはいろいろな要素で起きてきますから、特に信頼性の問題、どの世論調査を見ましても七割台が不信の方といいますか、そういう形で出ているという状態があります。  私は、これは日本の社会がこれから近代国家としてどう発展をしていくのかという重要なベースではないだろうか。税というものが取る、取られるではなくて、納税者といいますか、タックスペイヤーがやはり国の基本でありますから、社会のためにどういう会費を払い、社会の一員としてどのように行動していくのかという観点が生まれるような近代国家、民主国家になっていきたいと私は思いますが、そういう意味でのやはり一つの転機のために努力をしなければならない。それがあって、その垣根を越える作業があって初めて、社会のためにもうちょっと負担をふやさなければならぬが、それも当然でしょうという意識が生まれてくる、そういうものだろうと思うのですね。その最初の一つ努力といいますか、ハードルを乗り越える努力を今しなければならないのじゃないだろうか。  たまたま、長年努力をされました現在の会長が、秋に任期というふうなことになっているようでございますが、単なる人事の交代とか会長のチェンジとかいうだけではない、今日の時代に求められているさまざまな新たな努力をしていく。それは構成とか会議のやり方とかそんなこともあろうと思いますが、基本的に、国民に向かってオープンシステムで、オーブンドアで意見を聞き、国民に向かって語る。審議をした結果のレポート、報告書を総理に提出をすればそれでおしまいというだけではないさまざまな努力が、大変ですけれども求められている。しかも、これからは経済社会も急激な変動が起こるわけでありまして、総理のお好きな二十一世紀論ではありませんが、科学技術の発展、高度情報化社会あるいは高齢化、国際化の進展、女性の社会進出などなど、さまざまな大きな社会変動が起こっている。税制について、シャウプの原点に戻ってさまざまな議論ということも大事でございましょうけれども、大きく変化をするこれからの社会の中での国民のニーズと負担というものはどうだろうかという意味での前向きの、将来に向けたさまざまの御検討あるいは研究などをやはり豊かにやっていくとかいうようなことも必要ではないだろうか。場合によっては、不信を解消するために、政府関係者も後押しをしたあるいは参加をした大規模な国民的なシンポジウムがあってもいいと思います。そういうさまざまの努力をしながら、税等を中心にしながら、社会と国民、市民と社会というものについて、近代社会、民主国家としてのあるべき一つの形というものをやはり形成していく。何かそういうことで、会長が秋におかわりになるだけではなくて、一つ一つやはり新たな、ユニークな方法が必要ではないだろうか。  実体としては、これは政府税調も大蔵省の監督で、実際には大蔵省主税局が全部動かしているのではないかなどの評論も時々あるわけでありますが、事柄の本質からすれば、総理が任命される、しかも社会から見ても国民から見ても重要な調査会、続けるであろうと思います。そういう位置づけの、そういう制度の委員会ですから、総理がひとつ御指導といいますか、イニシアチブを発揮されるということも大事なことではないだろうかと思うわけでございますが、いかがでございましょうか。
  115. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 政府税調は、総理大臣が任命する、たしか総理府の諮問機関になっておる、そういうふうに思いますので、これはやはり私が責任を持って諮問し、また答申をいただく、そういうものであるだろうと思います。ただ、非常に専門的なことにわたるものでございますから、大蔵省の皆さんにいろいろ面倒を見ていただいて、運営について御協力申し上げるようにお願いしておるわけでございます。しかし、お示しのように、政府税調といえども国民の上に根差したものでなければならないのでございまして、政府税調の皆さんがいろいろな案をつくる上において、あるいは公聴会をつくるなりあるいは国民の御意見を徴するなり、そういういろいろな方法によって国民と密着した形でこれが運営されていることは、御指摘のとおり大事なことであると思います。
  116. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 冒頭の部分で総理が言われましたことでちょっとひっかかることがあるのでお伺いしたいのですが、税外収入の確保に努めなければならないということを幾つかの項目の中でおっしゃいました。  実は、この審議を通じまして、私どもはこういう点を指摘をしたわけであります。この数年来、予算の編成の場合に、歳入歳出両方合わせましていろいろなやりくりがなされて、非常に苦しい思いをして予算が組まれているということが続いたわけであります。税外収入の面でも、御承知のとおりに、五十七年度は非常に大きな額でございました。減税問題とも関連をいたしまして、補助貨幣積立金の取り崩しなどというのは私ども非常に苦々しい思いがしたわけでございますが、また今年度も相当な額になる。あるいは電電、専売からそれぞれ二千億、三百億、特別の納付金を出していただく。これも、大蔵大臣も言われておりましたが、私どもからすればルール違反のことしの納付のさせ方だろうと思います。しかも大臣の方は、職員も含めた努力の結晶でございますけれども、国家が財政困難の折から、いろいろと特段のお願いをして御協力をいただいたということでございますが、法律の案文には納めなければならないと書いてあるというふうなことも当委員会でも指摘をされました。おっしゃる気持ちと法律の案文と、法律は命令調、言葉の説明はお願い調で、違うじゃないかというような話もございましたけれども、それは別にいたしまして、この数年来、いろいろなやりくりがされてきているということを指摘をいたしてまいりました。  ちょっと予算委員会などの討議を聞いておりますと、去年、ことし、口の悪い方からは、粉飾決算と言うが、これは粉飾予算ではないかという言葉すら出たような状態であります。当委員会で議論いたしてまいりましたが、そういうことについての今後の可能性は非常に枠が狭まったということではないだろうか。電電、専売は、皆様の出している法案からすれば来年には会社になるということになりますから、法人税はルールどおりいただいても、特別のお金を取り立てるというわけにはまいらない。数々の特別会計その他も今までやってまいりましたけれども、これらについても、千億単位の目ぼしい銭目のものが残っているというふうにもなかなか思えないというふうな状態がございます。  私は、そういう意味で申しますと、今重要なことは、今までさまざまのやりくりをし、そして予算を編成した、収入の面でも、歳出の面に関してもさまざまなやりくりが行われた、しかし、その条件は非常に厳しくなっていき、言うならば、ほとんどなくなってきている、もうそういうやりくりではなくて、予算自体の、本体の構造をどうしていくのかということについて厳しい検討をし、それから国民の生活、日本の将来社会を含めた努力をしていく、そういうのがむしろこれからの主眼であろう。税外収入の確保ということを大きな項目の一つに挙げられましたが、そうではないのが現実の状態ではないだろうか。今までやりくりの可能性が少なかったので、もっと新たな努力をしなければならないというのが現実じゃないだろうか。先ほどの御発言でちょっとひっかかりましたので、その辺の御認識を伺いたい。
  117. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 だんだん狭まってきているように思います。  まあしかし、例えば国鉄で用地を売っていただく。今国鉄あるいは公務員住宅、国有地等々の売却等もいろいろ進めて、民間活力の拡充ということをやっておりますが、そういう形で国鉄で、この間何か新聞によると、一千億で売れたということがありましたが、それだけ売れれば国鉄の方が潤ってくる。そうすれば、国から、一般会計から出す分も少しは減らしてもらえるのじゃないか。そういうような形で、税外収入というものが間接的に財政にも貢献してくる。そういう分野も、努力のやり方によってはふえてくる可能性もなきにしもあらずである、そう思っております。
  118. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 あと残された時間で、今後の考え方を幾つか伺いたいと思います。  最初に申し上げましたが、財政改革、それは、単に収支のつじつまを合わせるだけではなくて、今後の社会経済構造に合う財政の姿をどうつくっていくのか、大蔵省基本的な考え方にも昨年はそう書いてございました。ことしは書いてないので、どうしたのかなと思っているのですが、財政再建と言われるものは単なる帳じり合わせではない。これからの時代に合った構造をどうつくるのか。しかもこれからの社会の目標といいますか、高齢化社会が進む、福祉も大事ですし、平和も大事です、さまざまなものも大事です、そういう状況に合わせた一つの構造をどうつくっていくのかという意味での財政改革であろうというふうに私は思うわけでありまして、そういう意味では、極めて政治の責任が大きい。  同時に、当面の段階からいたしましても、政治の選択、政策の選択、それが直接に財政再建、財政改革にかかわってくるということが特徴的な今日の状況ではないだろうかというふうに思います。総理の好んで言われる二十一世紀という十数年後だけではなくて、当面の段階でもそれが言えるのではないだろうか。例えば防衛についてどういう政治選択をするか社会保障についてどういう政治選択をしていくのか、公共事業費でどうか、国と地方との関係、私どもは、分権型財政論といいますか、というものが非常に大事になっているというふうに思いますけれども、そういう発想とか、今政府がどのような政治的な選択、姿勢をとるのかということが、財政をこれからあるいは六十五年どう持っていくのかということと直接にかかわり合いを持ってくる、そういう特徴的な状況があるんではないだろうか。そうなってまいりますと、やはり政治路線の選択がどう行われるのかということと常に関連をして、重要な判断材料にしなければならないという段階だと思います。  幾つもお伺いできませんので、一つだけ伺いたいのですが、例えば安全保障、防衛という問題があります。総理も御承知のとおりに、私ども社会党も、東西南北いろんな方向に向けて積極的な役割を果たす野党外交を展開する。先般の石橋委員長の訪米もございましたが、野党なりに、必要な何か緊張緩和をして平和の構図をつくり出す努力をしていきたいと思って、いろんな努力を開始をいたしていると思うのであります。  私は思いますが、総理が今とられている選択というものは、東西の緊張を、つの与件として受け入れて、それをさらに加速をする方向ではないだろうか。ことしの予算にあらわれた姿、去年の予算にあらわれた姿、中曽根さんが総理におなりになってからできた方向というのは、そういう印象で内外に受け取られているということではないだろうかという気がしてならないのであります。  しかし、私は思いますが、我が日本は、総理のおっしゃるように西側同盟の一員ということだけではないと思います。経済的にもあるいは社会関係からいいましても、地理的にも東西南北の接点、東西南北全体の接点に置かれている、貴重であり重要なポジションを日本は占めている。そして経済的にも、世界経済の一割を超す大きな責任と力を持った国になっている。しかもノーモア・ヒロシマ、ナガサキではありませんが、憲法に書いてございますように、平和国家として国際社会に名誉ある地位を占めていくという気持ちを持ってやらなければならないという憲法がある。  そういうことを考えますと、私は、かつて西ドイツでブラントさんが、東欧政策とか、あるいはヨーロッパの安全保障で重要な役割を果たされて、今でも東西双方に大きな発言権を持っておられるわけでありますが、ヨーロッパの安全保障でブラントさんがやられた以上の条件あるいは可能性あるいは将来性というものを、言うならば使命というものを我が日本が持っているんではないだろうかという気がするわけであります。ですから、そのコースをとるのか。私の考えからすれば、東西の緊張を一つ前提にして、さらにそれを加速させるような方向に、いわば軍拡路線に進んでいくということだと思うのです。そういう判断というものがもう財政再建の将来の重要な柱となってくるという気がするわけであります。  いろんなものがありますけれども、例えば防衛の問題ですね。やはりドイツのブラントさんのことを例にとって私は申し上げましたが、それ以上の大きな可能性を果たすべき、果たし得る日本という道を我が日本政府は進んでいただきたい。それが財政にも、今とは異なった危機を解消する方向への一つの有力なプラスになっていく。それが、これから総理もインド、パキスタンなど訪問される、あるいはサミットでも途上国の問題、南北問題を積極的にお取り上げになりたいと言われているようでありますが、世界のさまざまな問題を前向きに解決する契機となっていくんじゃないかと思いますが、いかがでございましょう。
  119. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 国際緊張を緩和して核並びに通常軍縮を推進していくというのは、私の国策の重要な部面でございます。遺憾ながらしかし極東における周囲の状況を見ますと、軍事力の増強はとみに最近顕著でございまして、今までのようなバランスではいけないような情勢が最近は馴致されておる。あるいは大韓航空機の撃墜事件のようなああいう不祥な事件も起こっておる。思わざる事件が起こったわけであります。そういういろいろな面からして、これはこちらの側からやるんじゃなくて、客観情勢がそういうふうに動いてきているという冷厳なる事実を前にして手をこまねいているわけにはいかぬ、そういうような関係もなきにしもあらずなのであります。といって、我々は仮想敵国を設けたりしている考えはありませんが、日本列島防衛という主体的な面から考えてみると、みずからなすべきことはしていかなければならぬ、そういう考えに立ってやっておるという現状でございます。  南の問題を重視しているということは御指摘のとおりで、インド、パキスタンヘ伺うのも、非同盟、中立グループの有力国を訪れていろいろ話し合いをしてみたいという考えからやったものであります。しかし、西欧におきましても、ブラントさんの後継者であるシュミットさんがパーシングⅡの展開を主張して、それでこうなっている。あるいはミッテランさんは、我々の国会へ来て演説をしまして、核兵器で断固として抑止力をつくって守るんだ、そういうことをおっしゃっておるので、やはりあちらの方々は独特の見解を持って、個性的におやりになっているんだということが、我々には非常に感知されたところでございます。これは、国により、また地域によっていろいろ伝統も違うのでございましょうけれども、我々はそういうふうな感じを持っておるということを申し上げておきたいと思います。
  120. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 総理、いろいろな例えを申されましたが、今言われた国々、政権党もございますし、昨年政権を失った党もございます。社会主義インターとかいろいろなところで、私もときどき参加をいたしますが、いろいろな議論をいたします。現実、そしてまた中曽根さんよりははるかに強く、何か軍縮への理念は持ちながらという面も感ずるわけでありまして、今、目の前のさまざまの状況からすれば、そういうような例えもございますでしょう。しかし私は、日本が今とり得る道というものをもっと真剣にお考えになるべきじゃないだろうかという気持ちを申し上げたわけでありまして、これは大きな話でございますから、安保特別委員会が、あるいはさらに我が党の委員長と論争でもやっていただければありがたいと思います。  ここで、当委員会の審議に関連して伺っておきたいのは、予算委員会で我が党の田辺書記長が総理に御質問申し上げまして、総理から御回答がございましたいわゆるGNP一%を守りますという、あれからちょっと日にちが過ぎまして、これからシーリングにも入っていく。夏には人勧もございます。それから今年度予算で決められたさまざまの防衛関係予算の執行をどうしていくのかという問題もございますし、別な面からしますと、五六中業から五九中業へ目標への作業、それから現在のプログラムの執行率をさらに完全にしていくという意味でのさまざまの計画、まだまだされてくる。ですから、この問題は遠い将来のことではなくて、予算委員会で総理がいろいろ紛争の末お答えになって、あの問題は遠い将来のことではなくて、間もなく具体的な解決といいますか、そのお約束を履行するための御努力が求められてくるということになっているんだと私は思います。  それは考えようによって、五十九年GNPがどうなるのかは年度末になってみなければわからない。分母がわからないということもございますでしょう。さまざまのことがあるわけでございますが、予算成立前の審議の中でああいう議論が行われた。今予算の執行過程に入って、さまざまのそういう具体的な判断を迫られる時期が次々にやってくるということがあるわけであります。それらをどうするのかということを大蔵大臣に伺いましたら、これは大蔵大臣だけの問題ではなくて、政府全体の重要な問題であるという御答弁で、大変正直な御答弁でございます。いかがでしょう。予算委員会でああいう問題がございました。今日の時点、これから起こってくる対応など含めて、あのお約束どおりにどういう御判断を、あるいは対応をなさいますか。
  121. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 予算委員会で統一的に申し上げましたように、昭和五十一年三木内閣が決定いたしました防衛予算GNP一%以内にとどめるという目標、この方針は守ってまいります、こう申し上げましたが、そういう考えに立ってまいりたいと思います。
  122. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 もう一つ総理に伺いたいんですが、総理も言われておりましたが、今後の財政運営では、六十五年赤字公債脱却ということと今後の経済の運用をどうしていくのか、経済見通しがどうなるのか、かかわり合った非常に大きな問題であります。  私ども社会党にも一つの考え方がございます。それらについての考え方はさまざまございますが、何か見ておりますと、今までは臨調答申あるいは財政再建、削減――臨調といっても、財政再建が主要な命題となったさまざまの削減などの改革計画という感じがいたします。  私は、行政改革というのは、すぐれて将来社会の構想にかかわる問題、言うならば将来日本の設計図をつくる仕事ではないかというふうに思いますが、読んでみますと、比較して恐縮ですけれども、私も立場は違いますけれども、亡くなられた大平さんの残された幾つかのプロジェクトのレポートなどの方が非常に興味深く読ましていただくというふうなわけでありますけれども、それは別にいたしまして、二つ考え方があると思います。言うならば、もっぱら削減を続けていく、その上でどうしても難しければ増税に踏み切っていく。財政収支バランス優先と申しましょうか、というものがある。もう一つは積極経済拡大論、経済拡大をさせる中で、財政の安定もあるいは改革も図っていく。経済優先主義と財政優先主義と申しましょうか、発想があって、それに基づくさまざまの議論も行われてきた。この議論は自民党、与党の中にも、閣内にもそれぞれの御議論があるというふうに伺っているわけであります。  私ども社会党は、大臣も一遍申し上げたんですが、こういう考え方であります。皆さん方の方は六十五年脱却という姿をとっておりますが、これは日本経済にとっても、国民生活にとっても、あるいは重要な社会保障、教育などにとっても非常に厳しい姿になってしまうのではないか。むしろ大事なのは、第一に福祉、国民生活、第二は経済、そうして第三に財政を考える。それは数年、七年というよりも、もっと長い期間があっていいんじゃないだろうか。その方が確実で、そして展望性が安心して持てる方向ではないだろうかということで、一つの案として三段階を考える。第一段階では、一般会計における特例公債、建設公債の合計の依存率を二〇%以下まで持っていく。不可能な数字じゃないと思います。五年間で二〇%まで持っていく。第二段階として、その依存率を次の五年間のうちに一〇%以下に持っていく。そうして第三段階で、それから後五年というと合計十五年使って長いんで、なるべく五年以内の範囲の中で、特例公債の発行を完全にやめていく。これは遅くとも五年以内の枠内で、その間に福祉、教育、国民生活というものを大事にしながらやっていく。それは今日の日本経済国際的にも要望されている、日本に求められている内需拡大、サミットでもまた多くの先進国からは日本に注文がされているというところかと思いますが、そういうこととも適合する方法ではないだろうかと思うわけであります。  ですから、私どもはそう考えておりますが、そういう意味からいって、当面する問題としては、やや景気も上向きというふうなことが言われているわけでありますが、改善傾向に入っている日本経済をより安定的にどう発展をさせるのかということと、それから財政の収支バランス、それから財政再建ということですね。総理は一番最初臨調答申尊重を言われましたが、何かもう一つ広い視野で、私の主張がそのままいいというふうには言えないと思いますが、広い視野で今後の経済と財政を考えていくということが、予算が通った後の今後の執行としては大事な時点じゃないだろうか。普通ですと、秋口に経済対策、景気対策がなされて、それが補正に結びついていく。それが現実に大きな効果を生んでいるかどうかは問題だと言われておりますが、近い時点でそのような検討が必要ではないだろうかと思いますが、いかがでございましょうか。
  123. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 もとより財政、経済というものは生き物でございますから、硬直した一本やりだけでは済むものではないと思います。しかし、最近の事例を見ましても、フランスのミッテランさんが福祉優先で賃上げやらいろいろおやりになったが、非常にうまくいかなくなってしまって、今、福祉を相当ばんばん切っておる。そのために非常にストライキが起きたり、しかし、それでも勇猛果敢に共産党に対して信任投票まで求めても強い意思を貫こうとしていらっしゃる。あるいはさらにドイツにおきましても、あるいはイギリスにおきましても、やはりそういう福祉を犠牲にして財政を堅実にするという方向に今必死の努力をしておる。  こういう情勢を見ますと、日本でも雇用問題を非常に大事にして、福祉をまた大切にして今までずっとやってきたわけで、必ずしもそれは悪いとは思いません。思いませんが、やはり財政を整理するという重要性がのしかかってまいりますと、今のような外国の情勢も見まして、やはり我慢するときには我慢しなくちゃいかぬじゃないかなという気がいたします。しかし、余りこれが長続きしますと、人心がうんできまして、活力を失ってくるという危険性もある。そういう意味におきまして、やはり臨調答申というものを基調にしつつ、あとは応用問題で変化球を加えていくということは、これは政治の場面ではあり得る、そう思うのであります。しかし、どういう球を投げるかということは、そのときの予算を編成するときの情勢で、諸般の情勢を見ながら、相手のバッターの顔色を見ながら球を投げなければならない、そういうこともあるだろうと思っております。
  124. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 いろいろ議論したいこともございますけれども、時間が迫ってまいりますので、最後にもう一つだけ総理に伺っておきたいと思います。  それは、今後の金融市場金融自由化、それと国債管理、借りかえに伴う膨大な国債市場の問題という関係のことでありますが、具体的なさまざまなことは当委員会で議論することもございますから、特に総理のイニシアチブに関係した部面のことを一、二伺いたいと思うのであります。  一つは、日米間の金融自由化のさまざまの作業も進んで、第三回円ドル委員会も終わりまして、一つの山といいますか、と同時に、内外含めました金融自由化に対するさまざまのガイドといいますか、展望、指針が必要ということで作業が続けられているようであります。何か私どもは今まで話を聞いておりますと、今ごろはできるんじゃないだろうかというふうに思っていたんですが、ちょっとおくれているような状態のようであります。  その中で、総理に伺っておきたいのは、日米間の問題もあります。国内においても大きな流れとして、自由化というのは時の流れとして必要なことでございましょう。しかし、さまざまの不安もあります。中小金融機関の不安もあります。金融機関にとってのさまざまの心配と同時に、これはユーザーの立場から見てもどうなるのかという問題があるわけであります。何か総理はレーガン大統領とのお約束ですか、お話の中で、金融自由化については熱心に推進をするようにという立場、イニシアチブをおとりになってきたようでありまして、内外含めてさまざまな不安などがあることについての基本的な姿勢というものをどうお考えかということと、もう一つ関連をして、そういう状況変化の中で国債管理運用政策というものは大きな転換期に立っているわけであります。  昔は御用金と言われましたが、国の方からお願いをして、あなたのところは何兆お願いします、シ団とか運用部とかお願いをして、割り当てと言ってはなんですが、それに近いような形がとられました。それからこの数年間、マーケットメカニズムが大きく働いてまいりますから、その論理が通用しなくなって夏には外債、発行できないという状態が続いてまいりました。これからはもっと大きな変化の状態になる。アメリカに近い形でしょうか。そういうこれからの変化の中で、一つはどうやってそういう大量発行時代でインフレにならない抑えをしていくのかということが大事になると思います。これは世上、膨大な国債発行、あるいはまた調整インフレの危険性があると言われておるだけに、きちんと対応策をとらなければならない。マネーサプライ・コントロール、さまざまな努力が、政府としても日銀としても必要なときでありましょう。  もう一つは、これだけ国債を出したいから、金利負担か、あるいは高金利になるかならないか、それと関係なしに、これはどうしても消化してやるのだというような形はとれなくなると思います。アメリカの場合はそうでありますけれども、やはり高金利のときに出そうと思えばたくさんの金利負担がかかる。それはもう国家財政としてもとても困るという中で、マーケットメカニズムの中からそれを抑制して、そういう財政金融操作をしていかなければならないという時代に入っていくのではないだろうか。ですから、国債も減額しなければなりません。今までのようなお国の方から、あるいは政府から押しつけるかお願いするという形とは違った形になる。そういう中でのインフレやあるいは大量発行にならない歯どめというものを考えていかなければならない。そういう時期になっていると思うわけでありますが、そういう中で特に自由化の問題については熱心に総理が主張されてまいったという経過がございますので、その辺のお考えを伺っておきたいと思います。
  125. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 まず第一に、一般論としまして資本あるいは金融自由化というものは推進していかなければならぬと思います。それは何か外国から頼まれてやるという問題じゃなくて、日本資本市場あるいは金融市場を強靱にする、そして国際性を持たせていく、そういう意味においてそれは大事なことである。日本経済体質を強靱にするためにも大事なことである。ちょうど日本の産業資本の面におきましても、自由化をやりましてかなり厳しい局面に立たされたのもあります。例えばブルドーザー会社が、外国のブルドーザー会社が上陸するというのでQCを徹底的にやって、それを迎え撃ってとうとう負けなかった、そういうような例もあります。だからそういう苦しい試合に臨んでますます強靱な産業というものができてきた。それと同じように金融あるいは資本市場におきましても、苦しいけれどもこれを開いていくということはやはりやらなければならぬところであると思って、そうして債券市場を育成して、これをできるだけ拡大していく、また国際性を持たしていくということも必然的に大事なことではないかと思っております。  そういう一般論に立ちまして、私の素人考えでは、やはり金利の問題、金利自由化という方向をまず一生懸命やるというのが順序じゃないだろうか。その上に立ちましていろいろ資本市場の問題等もだんだん出てくる。それと同時に、国内的な問題あるいは国際的な問題というものも、原則的には国内を整備して国際的な方に手を伸ばしていくというのが原則論でありましょうが、しかし物によっては国内国際的な問題とを同時に進行させるという問題も現時点に立っては十分あり得る、そういうように思っております。  重ねて申し上げますけれども、これは外国から頼まれて、外国に要請されてやるというべき筋の問題ではなくして、日本自体が資本市場やあるいは金融市場というものを強靱にしていくために、あえて苦しみに耐えても実行していくということは大事だと思っております。  ただ、ここで考えなければならぬのは、日本には郵貯という大きな別の、独自の存在がございますし、日本金融機関の性格を見ますと、弱小のものもございますし、あるいは農業関係の協同組合みたいなのもございます。いろいろ千差万別なものがありますから、そういう面に対する配慮で大きな衝撃を与えないようにしつつこれを実行していくことがやはり大事なことではないか、そう思っておりますけれども、一般論と申しましては今申し上げたような次第であると思っております。
  126. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 いろいろお尋ねをさしていただきましたが、時間ですからこれで終わりたいと思います。  最後に要望でございますが、いろいろな話題をお伺いさしていただきましたが、何といっても中心は、六十五年脱却ということを政府が言われている。それから中長期にどうなるだろうか、まさに国家国民にとって大きな問題。そしてまた多くの人々が不安を持って見ている、不透明ではないかというふうに見ているという状況であろうかと思います。さらに民主的なさまざまな改革を、総理を初め精力的に取り組まれるように要望いたしまして、質問を終わります。
  127. 瓦力

    瓦委員長 坂口力君。
  128. 坂口力

    ○坂口委員 総理には大変お忙しいところ、きょうは御出席をいただきましてありがとうございました。  この財確法の審議の中で、我が党も四人の議員がいろいろな角度から実は大蔵大臣を中心にいたしまして議論を詰めてきたところでございます。きょうはこの大蔵委員会でいろいろ出ました議論の中でその主たるものを拾い上げまして、今までの議論を整理しながら総理のお考えをお聞きしたいというふうに思っております。  一番最初に、これは総理の方にお伝えをしていなかったわけでございますが、いわゆるパート減税の問題がございますので、それだけ先に一言だけ言わせていただいて、次に移りたいと思うのです。  予算編成の段階におきまして、総理並びに大蔵大臣にパート減税につきましていろいろと我々の意見を申し上げまして、十分というわけにはまいりませんけれども、九十万まで引き上げていただいたわけであります。不十分な面はございますけれども、多とする点もあるわけでございます。いよいよこの大蔵委員会におきまして、会期末までにこの問題の決着をつけていただくように今要請をしているところでございまして、社会党さん初め社公民の三党でお願いをしているところでございます。ぜひ五月二十三日の会期末までに成立するように、これは議員立法ということで自民党の方からも返答をいただいておりますので、総理大臣にお答えをいただくのは多少無理があるかとも思いますけれども、そういう事情を勘案をしていただきまして、大臣の御所見を賜っておきたいと思います。
  129. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 いわゆるパート減税に関する与野党間の話し合いというものは、誠実に守って実行してまいりたいと思います。具体的なやり方につきましては、非常に専門的な問題にわたりますので、大蔵大臣から御答弁いただくようにいたしたいと思います。
  130. 坂口力

    ○坂口委員 大蔵大臣からお答えをいただきます前に、この給与所得控除の二万円引き上げに要します財源は約百二十億というふうに言われております。この財源をどうして生み出すかということが一つあろうかと思います。  まず第一は、この引き上げのために、五十九年度も含めて、六十年度以降も増税をしないという約束のもとにこの百二十億円はひとつ捻出をしていただきたい。いわゆる増税をすることによってこの百二十億円を捻出するというような形にならないように、あるいはまた赤字国債をこれに振り充てるというようなことにならないように、ひとつお願いをしたい。  この財源でありますが、財源といたしましては自然増収、それから既定経費の節減、あるいはまた予備費の利用、それから五十八年度に余剰金があればその活用、それから、例えば外国為替特別会計などからの繰り入れ等々、いろいろこれは考えられると思いますが、こうした中でひとつその財源確保をしていただきたい。要望を込めてお聞きをしたいと思います。
  131. 竹下登

    ○竹下国務大臣 坂口さんおっしゃいます意味は十分理解できる話でございますが、一応議員立法の形で、本委員会で専門家の皆さん方に相談していくわけでございますので、その折衝の中でおのずから解決される問題、究極的にはそういうことであろう。ただ、その御主張の意味は十分理解できる話でございます。
  132. 坂口力

    ○坂口委員 そういう方向でぜひひとつお願いをしたいと思います。  それから、大蔵大臣とこの委員会におきましていろいろの議論をしてまいりましたが、その一つは高齢化、もしくは高齢社会の問題を迎えるに当たって、今後この国債との絡みでどうするかということでございました。これまで大蔵大臣と議論いたしましたことを要約をしてまず先に申し述べて、それに対する御意見を伺いたいと思います。  一つは、全人口に占めます六十五歳以上の割合が大体、余り先を見ますのもあれですから、十年先を見まして、五十九年ですから六十九年、というのは少し端数になりますので、昭和七十年に一体どんな形になるのだろうかという議論をいたしました。昭和七十年に六十五歳以上の占めます割合は一三・六二%、こういうことでございまして、そうして七十年の厚生年金、国民年金が、これは政府の試算でございますけれども、政府の試算によりますと、この給付費は約二十七兆円ということで、これは厚生省にお越しをいただきましてお聞きをいたしました。これを昭和五十六年の、ちょっと古いデータしかないのですけれども、全年金の中で厚生、国民年金が占める割合は五八%でございました。約六〇%ということで計算をいたしますと約四十五兆円、昭和七十年に年金額約四十五兆円ぐらいになるのではないだろうか、こういう試算でございます。  それからもう一つ医療費の方は、これは厚生省の方が対国民所得比六・三%ずつしかふえないという仮定のもとに出された数字でございますけれども、これが二十九兆七千五百億円という数字をいただきました。この年金と医療費を合計いたしまして七十五兆円ということになります。社会保障給付費全体に占めます年金と医療費は大体八五%ぐらいでございますが、これからもう少しふえるのではないだろうか。全社会保障給付費の中で年金と医療で九〇%ぐらいになるのではないか。ということになりますと、約九〇兆という数字がここに、まことに大ざっぱな数字でございますけれども、出てくるわけでございます。  それで今度は、これから予算の伸びがどれくらい伸びていくのかというと、これもなかなか予測のしがたい問題でございますけれども、例えば政府の国債の試算でも、五%とか三%とか〇%とかいろいろ出ているわけでございます。以上、五%はちょっと無理と思いますが、五%ということにいたしますと、これまた昭和七十年には約九十兆ということになるわけでありまして、国の予算と社会保障給付費とが同じぐらいな数字になってくる。ただ、この社会保障給付費の方は全部が全部国から出すわけじゃございませんで、それの三割になりますのか二割になりますのか、とにかく国の負担分があるわけでございまして、これは政策によっていろいろ変わってくる問題ではないだろうか。こういう前提のもとで、こうした高齢化によりまして非常に厳しくならざるを得ない環境の中において、一体この国債をどうしていったらいいのだろうかという議論を、実は大蔵大臣とさせていただいたところでございます。  まずお聞きをしたいと思うのは、現在行政改革を総理が先頭に立って進めておみえになるわけでありますが、この行政改革で一体どこまで歳出をカットすることができるのだろうか、これは非常に国民の注目をしているところであろうかと思いますし、私たちもそこを実は知りたいわけであります。しかし、これを一言でこれからどれだけの金額を行政改革できるということを言っていただくのは難しいことであることは、私も重々わかっているわけでありまして、非常にアバウトな聞き方でございますけれども、まだまだこの行政改革ができるか、それとももういよいよ限界だとお考えになっているか、大変大ざっぱな聞き方で恐縮でございますけれども、それ以上には聞きようがないのではないかというふうに思うものでございますから、その辺の御意見を先に聞いておきたいと思います。
  133. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 行政改革は、やはり常住不断の努力で積み重ねてやっていかなければならぬし、そうしなければとても財政的にもつじつまが合わぬ形になるのではないかと、そう思います。
  134. 坂口力

    ○坂口委員 そういたしますと、行政改革はこれからも不断の努力で進めていかれる、しかしそれによってどれだけの歳出がカットできるのかは、そう一概にこれは言うことができない問題である、こういう御意見だと思うわけでございますが、これで年々歳々増加していきます社会保障費、今から十年間というのは割にまだ高齢化が緩やかでございまして、昭和七十年ぐらい過ぎましてから急激にまた上がってくるわけであります。この十年間はまだ割に緩やかなのですけれども、この緩やかな間といえども、この新しくふえていく社会保障給付費を生み出していくほどの行政改革というのは、なかなかこれは言うはやすく行うはかたいのではないか。私、今までの政府状態いろいろ見せていただきまして、そう感じているわけでございます。これについても後でひとつ御意見を賜りたいと思いますが、この大蔵委員会は、五年先、それから十年先のそのたまりました国債をどうするかという長期の議論をしておるところでございますので、こうした一面におきましても、ぜひひとつ、これは詰めておかなければならない問題であるというので、実は大蔵大臣の意見も求めてきたわけでございます。最終的に大蔵大臣にお聞きをして、そしてなかなか答弁が難しかったわけでございますが、これを将来、いわゆる社会保険料にウエートを置いた形にしていくか、それとも年金にウエートを置いた形にしていくか、あるいはまた年金も、いわゆる目的税みたいな形のものを導入をした形での税制を考えていくのか、この辺が非常に意見の分かれ道になるだろうと思うわけです。  厚生省がお見えいただきまして、厚生省の方は、この社会保険料も年々歳々それにつれて上げていくことをお願いをいたします、しかしそれは社会保険料の範囲であって、それにプラスして国庫補助もいただかなければなりません。社会保険料の方が上がっていけば、それにつれて国庫補助の方もこれは上がっていかなければならない、こういう状態が、十年先と言わず五年先あるいは七年先にはだんだんと厳しさを増してやってくるわけでございます。  税金を主体にするか、社会保険料を主体にするかというこの議論、それからもう一つは、社会保障制度審議会の建議がございまして、これは昭和五十二年に出たものでございますが、これは所得型付加価値税の導入ということをここで提案をしておみえになるわけであります。先ほども議論がございましたが、総理は、私の在任中は大型の間接税は導入をしないという意味の御発言をなさっているようにお聞きをいたしておりますし、先ほどもその議論があったところでございますが、その中にこの所得型付加価値税なるものは含まれているのかどうかということもあわせてひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  135. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 昭和七十年以降の問題というものは、昭和七十年に至る問題でもなかなか見通しができない。六十五年が今我々の一応のめどになっておるわけであります。したがいまして、非常にお答えしにくい問題であると思いますが、しかし、いずれにせよ、昭和七十年には年金の大統合をやるという予定で、今進めております。医療費にせよあるいは年金にせよ、ともかく結局は公費支出とそれから国民負担というもののバランスをどういうふうにとるか、負担と給付の関係をまたどういうふうに国民が選択するかという問題になってくるので、それはそのときの国民の世論やら考えを聞いて、政府が決めていくべき性格の問題であろう。国民がどちらを喜び、選択するかという問題で、今から予断を持ってあらかじめ決めるにしては、余りに遠い将来の問題のように私は思うのであります。  しかし、いずれにせよこの社会保障制度というものは、長期的に安定的に持続していかなければならない制度でありまして、世代間の公平というものも考えていかなければならぬ問題であります。今おっしゃるように、六十五歳以上が一二%以上になるというような形になると、一人の老人を支えるのに何人の若者が負担しなければならぬかという問題にもなってまいりまして、そういう意味において世代間の公平性維持、また制度の長期的持続安定性の維持という問題も絡んでくる問題で、そういう総合的な観点からこの仕組みをどういうふうに編成していくかという大きな課題に我々は取り組まなければならぬときが来るのではないか、そう思っております。  その場合の基本的な考え方というものは、今の税にするのかあるいは保険料にするのか、そういう問題も含めまして、よく検討を加うべき問題であり、終局的には国民の選択がどちらを選ぶか、そういうような問題に帰する問題ではないか、そう思っております。いずれにせよ、国家財政は維持していかなければならぬ問題でありますし、あるいは社会保障の制度自体も、今申し上げたように持続的に安定して維持していかなければならぬ問題でもある問題でございますから、その中の内部のやりくりやらバランスやら負担の公平性というものをどういうふうにあんばいしていくかという問題なので、究極的には国民がどれを選択するかという幾つかの選択肢を出して国民に判定を求める、そういう問題になっていくのではないかと思います。
  136. 坂口力

    ○坂口委員 御答弁は大体大蔵大臣と同じでございまして、大蔵大臣も実はそう御答弁になったわけでございます。よくぞ一緒になったと思うほど同じ御意見でございます。  ふだんはいろいろの考え方を総理はお示しになりますし、いろいろの法案を実はことしは国会にも出しておみえになるわけであります。例えば一例を挙げますと、この社会保障に関連をするものといたしますと、先ほどお話のありましたように年金の法案も出てまいりましたし、それからいわゆる一割負担、二割負担の健保の問題も実は出てきているわけであります。  健保の問題につきましては非常に明快にこの方針をお示しになりまして、国民がどういう方向を選ぶかということを抜きにしてその提出をされたのではないか、私はこう考える一人でございます。しかし、その問題は、国民の意見を抜きにして、選択の自由を与えることなしに出されたにもかかわらず、こうした大事な問題になりますと、国民の選択に任すべき問題であるというふうに逃げられる。大変そこを残念に思うわけでございます。私どもも決して、どの税制がいけないとか、どの改革が好ましいとかということを条件をつけて実は言っているわけではございません。政党でございますからいろいろの主張もいたしておりますけれども、少なくともこの委員会におきましては、そうした政党の意見も一方で持ちながらも、なおかつそこを離れて真剣にひとつ議論を詰めようじゃないかという、お互い各党ともに真摯な議論が続いているというふうに私は思っているわけでございます。  そういう意味で私は、大蔵大臣にもそれから総理にも、そうしたところをぜひひとつもう少し、当然国民の選択にゆだねるべき問題ではありますけれども、それはそれとして、政党であり政府であります以上は、こうあるべきだという一つの哲学みたいなものを持っていなければならないこともまた事実でございまして、そうした点につきましてもう一度、およろしければ御意見を承りたいと思います。
  137. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 もとより政党あるいは政府の場合には一定の考えを持ってやるべきでありますが、その一定の考えというものは、独善的に独断で決める問題ではなくして、いろいろ国民の考え方を比較考量し、かつまた現実の行政の仕組みの中における安定性やら公平性というものを考え、そうしていろいろ考えた結果案をつくっていく、そういう形のものであるだろうと思います。  今度の医療保険の問題にいたしましても、いろいろ御不満があるかもしれませんけれども、我々のサイドから言わせますれば、やっぱり定年退職者が国民健康保険へ入って、がたっと重圧を受けるのをどういうふうにして防ぐか、そういう問題をどう解決するか、あるいは世代間の安定性、公平性というのを維持していくために、この制度をどうして持続的にやっていくかというようないろいろな問題を考えた結果、ああいう形の法案提出ということになったのでございまして、これらは国会においていろいろ御審議を賜るべき問題である、そう思っております。
  138. 坂口力

    ○坂口委員 もう少し申し上げたいような、精神衛生上余りよくない心境でございますけれども、時間の方がございませんし、もう一つお聞きをしたい問題がございますので、そちらの方に移らせていただきたいと思います。  もう一つ大蔵大臣と議論をさせていただきましたのは、タックスペースの構造変化の問題でございます。参考人としてお越しいただきました宮崎さんも、そのタックスペースの構造変化ということを指摘になりました。私も実はそう考えている一人でございます。  経済成長率の計画見通しと実績の比較が大蔵省から示されまして、詳しいことを申し上げているゆとりはございませんが、その実績とそれから見通しとの間には、かなりな乖離があったわけであります。特に五十四年から五十七年の間にはその乖離が非常に大きかった。これは第二次石油ショックがあったということもございましょう。そこで、それならば五十八年以降はどうかということを見ますと、五十八年もまだ、実績見込みでございますけれども、なおかつ実績と見通しの間に乖離が生じている。これは石油ショックのいわゆる後遺症なのか、それとも八〇年代シンドロームと申しますか、新しい病因によりますところの一つの症候群なのであろうか。これを判別をして考えることは、今後の財政運営上非常に大事なことではないだろうか。  そういう議論を、昨日でございましたか、させていただいたわけでございまして、その中で、日本経済の優位性というものが今までは続いてまいりましたが、それがどんな要因によって優位性が続いてきたかということを、いろいろのインディケーターを見てみますと、その中で特別にはっきりいたしておりますのが労働生産性である。この労働生産性は、一九七〇年を一〇〇といたしまして一九八二年の伸び率を見ますと、日本は六%であり、アメリカは三・一であり、イギリスは二・七であり、西ドイツは四・三であった。ここに非常に特徴的なものがある。この労働生産性を今後も維持することができるかどうかということは、今後の経済に及ぼす影響が非常に大きいという意見を、私、昨日申し上げたところであります。それで、終身雇用制度でありますとか、年功序列型の賃金体系でありますとか、こうしたものが低成長あるいは高齢化によっていろいろと変わってまいりました。こうした変化の中でこの労働生産性が維持できるかどうか、とりわけ高くこれを維持することができるかどうか。  それから、この労働生産性を維持するためには何が必要なのかということを見ますと、やはりそこに浮かび上がってまいりますのが、いわゆる技術進歩の問題である、技術革新の問題である。この技術進歩によりまして高い投資率を得ることができるかどうかということが大きな問題になってくるのではないかという指摘をいたしまして、それならば科学技術というものに対して国の予算はどうかということを、科学技術白書を見せていただいて議論をしたわけでございますが、各国とも、例えば軍備の問題が絡んでいる国もございますし、一概に比較はできないけれども、日本は大体全予算の中で占めます割合が三%ぐらいで、これは先進ヨーロッパ諸国に比べますと少し低いではないか。この辺のところにこれから、版で押したような公共投資ではなくて、成長率を高めますためには、財源の使い方というもの、配分、その辺をもう少し考えなければ、タックスペースにおける新しい芽が出てこないのではないだろうか。新しい税制をどうするかということも大事でありますけれども、そうした構造変化に対応した考え方が必要ではないかということを実は昨日申し上げたわけでございます。  総理は、こうした私の我流の考え方ではございますけれども、五十四年から五十七年、そしてまた五十八年、五十九年――五十九年はこれからですからまだわかりませんが、実績とそれから見通しとの間の乖離が生じておりますことについて、これはまだ石油ショックの後遺症であるというふうにお考えになるか、それともこれは新しい病因によっているところであるというふうにお考えになるか、この辺をひとつお聞きをしたいと思うわけであります。
  139. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 今の問題、労働生産性に関する坂口さんのお考えは、私も正しいと思います。労働生産性を上げるというポイントは、一つはやはり労使協調という問題があります。労使関係があります。もう一つは物価の安定という大きな重大な問題があります。インフレーションを起こさないということ。それから大事なのはイノベーションであると思います。そういう意味において、科学技術の進歩、特に設備投資の問題というものは、労働生産性の向上にとって非常にバイタルな性格を持っていると思います。そういう点につきまして、我々も将来的展望に立つと、これから考えていかなければならぬときに入りつつある、そう思っています。  今までは世界経済の中で、学者の説によれば、循環がありますね。それで、石油危機の後遺症の問題もありますけれども、それと同時にやはり循環過程で大体下降線に入ってきている段階が二十年ぐらい続く。あるいは二十五年ぐらい続く。そういう意味で、まだ下降線の中に入っている段階であると言う学者もおります。そういう感じはしないでもないと私、思っておるのです。それは、新しい技術革新がいまだ起きておりません、例えば自動車であるとかテレビであるとか。新しい技術革新の要素というものはエレクトロニクス、特に高度情報社会に向かってのいろいろな試みであるだろうと私予想しておりますが、またそれは着実に軌道に乗って動き出したというところまでは行っていないと思います。そういう意味においてまだ時間がある、そう思っております。したがって、我々がここでいろいろ噴射をやっても、それがすぐ景気回復、上昇の方へぐっと向かうかというと、その点は疑問の余地がまだ残っている、そう思っておりまして、そういう意味においても、しばらく行政改革という形でこらえ、耐えていかなければならぬときではないか。現にフランスやイギリスにおいてもそういう状況でもありますし、アメリカにおいては所得減税をやって、そして景気回復したかに見えておりますが、やはりこの景気回復の腰がそう強くないようである。ことしは大統領選挙で続くけれども、来年はまだわからぬというのが一般に言われていることであります。  日本の場合は、遅々として、速度は遅いですけれども、財政が中立性を持っていて景気上昇に入りつつあるというのは、やはり自律反転の力が経済自体に出てきておる。そういう意味におきましては、これは非常に望まじき現象である、そう思っております。が、しかし、遅々としている。そういうような面は依然としてあるのでございまして、そういう点についてはやはり財政運用の面からも非常に注意深くやっていくときではないか、そう思っております。
  140. 坂口力

    ○坂口委員 そういたしますと、今の総理の御意見は、公共投資その他の方法による景気回復が非常に難しい。どちらかといえば、その間は公共投資ではなくて、財政改革、行政改革というものを中心にやっていく。しかし、一たび景気回復というものが軌道に乗る時期があれば、この軸をそちらの方に移していけばいいのではないか、こういう御議論でございますか。
  141. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 おおむねそれに近いと思うのです。しかし、政治をやるという側から見ますと、三年も行政改革で切って切って切っておるわけですから、人心がうんできたり、あるいは希望を失ってはいかぬ、そういう面もあります。これは政治の側から来る一つの配慮であります。そういう面をどういうふうにとらえるか、今言ったような基礎的な認識の上に立ってどういうふうにとらえるかということが、やはり政策的配慮の一つの要因として登場してくるんではないだろうか、そう思います。
  142. 坂口力

    ○坂口委員 総理が先ほど指摘になりました、行政改革というものは常にたゆまず続けなければならないというお言葉と若干矛盾をするようにも思いますけれども、これはこれだけにしておきたいと思います。  もう一つ最後にお聞きをしたいのは、直間比率の問題を実は私も聞こうと思っていたのですが、先ほど大蔵大臣がお答えになりまして、すんなりお逃げになったような感じになったわけでございますけれども、総理が先ほど申しましたように、大型間接税は私の任期中には導入しないということを明言されたわけでございますが、この明言されました裏には、かなりな裏づけ、自信があって総理はこうおっしゃっておみえになるのだろうと思うのです。先ほど申しましたような構造の変化、それに見合うべき新しい税制というものは何か。そうしたことも考えながら、そうした中でこの大型間接税というのはそれになかなか適合しないんじゃないかというようなことも含めて、多分総理はそういう言葉を言われたのではないかというふうに私は考えているわけでございますが、そういうふうに総理がおっしゃった、その確信なるもの、それならばその後大型の間接税ではなくて、来るべき高齢社会に対する社会保障給付費その他をどのようにしていったらいいのかという、総理のどうお考えになっているかという疑問もまたそこに出てくるわけでございます。  最後に、確信を持っておっしゃったその背景、ならばいかなる形をとろうとしておみえになるのか、それはまた先ほどの御意見じゃございませんが、国民の選択をする問題であるとおっしゃるかもしれませんけれども、ただそれだけではなくて、大型間接税を導入しないと明言をされたその背景をひとつ聞かせていただいて、終わりにしたいと思います。
  143. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 国民の選択ということを申し上げましたけれども、大型間接税というものは国民は選択しないと私は予想しているからであります。  私は昭和二十二年に国会へ入りましたが、二十三、四年でありましたか、取引高税というものをやらされまして、それで、これについては国民の反対が非常に出てきまして、悪評さくさくたるもので、すぐやめてしまったのです。いろいろ考えまして、印紙で取るとか証紙で取るとかいろいろなことをやりましたけれども、結局日本の体質になじまない。いわゆる間接税はそれと直接似たものではありませんし、物品税なんかも間接税でありますが、いわゆる大型間接税と想像されるものは日本の体質になじまない、そう私は感じておりまして、国民は歓迎しない、そういう判定からそういうふうに申し上げたのであります。
  144. 坂口力

    ○坂口委員 国民が選択をしないものは私は選ばない、その総理の志やよしとしなければならないわけでありまして、私のみならず、きょうはこの大蔵委員会の面々がその総理のお言葉を聞かせていただいたわけであります。これからひとつ十分にそういう路線を総理が歩まれるように見守っていきたいと思います。ひとつ我々のこの気持ちを裏切らないようにぜひお願いを申し上げたい。要望申し上げまして、終わりといたします。
  145. 瓦力

    瓦委員長 安倍基雄君。
  146. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 初めて総理大臣に質問させていただくことはまことに光栄でございます。  この委員会でいろいろなことが論議されましたけれども、私は一つの点、現在国債だけが非常に表立っておりまして、五十九年度末百二十二兆円と言われておりますけれども、先回の大蔵委員会で、将来国のいわば債務になり得る可能性のある潜在的な債務はどのくらいあるかということを聞きましたら、百五十三兆円ぐらいある、それプラス国鉄の債務が二十二兆円くらいあるというようなお話を聞きました。それ以外に地方債六十四兆円。地方債につきましては必ずしも赤字ではないのでございますけれども、これだけの債務が潜在的にあるというお話を聞きました。それでまさに慄然としたわけでございますけれども、例えば国鉄の債務、国鉄総裁は民間経営者の気持ちで一生懸命やると言っておられましたし、また既存資産なんかも売っていくという努力もしておりますけれども、こういったものについて、これ以上国の債務がふえては困ると私は思っておりますけれども、総理はどうお考えでいらっしゃいますか。こういったような国の債務を将来もしていくのかどうか、その御意見を聞きたいと思います。
  147. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 国の債務はできるだけ少ない方がいいと思います。日本は今超過債務と言われるくらいの債務に悩まされて苦労しておるわけで、できるだけこれを整理して身軽になっていかなければならない、そう思っております。
  148. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 次に、現在総理は教育臨調などの構想を打ち上げていらっしゃいます。教育関係は非常に大切かと思います。しかし、それによって行政改革がなおざりになっては困ると考えております。特に、私考えまするのに、地方行政、さっき六十四兆円の地方債があると申しましたけれども、いわば国債費に相当する、利払いだけでも七兆円ぐらいある。でございますから、国債費九兆円プラス七兆円。この七兆円の中には元本償還もございますけれども、すごい額である。したがいまして、地方の行革というものも当然考えなくてはいけない。  その場合に、現在のように国と地方がお互いにもたれ合っている。どこまでが国の事務だ、どこまでが地方の事務だと、非常にもたれ合っておるということ。しかも国税の三二%が地方交付税で持っていかれる。こういう現状を見ますると、幾ら増税をしていっても、その三分の一は最終的には地方の債務の償還に充てられるというような話になりますとどうにもならない。でございますから、現在本当に国と地方のいわば事務の再配分、財源の再配分、それによる地方の行革を徹底的に行わなくてはいけないと考えておりますけれども、この点についての総理の御見解を承りたいと思います。
  149. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 一面において、憲法で地方自治の本旨ということがうたわれておりまして、やはり地方自治というものは我々はあくまで尊重していかなければなりませんし、地方自治の中には財政自主権という面も含まれていると考えて、我々はそれなりの尊重性を持っていかなければならぬと思っております。したがって、国の方ばかりを考えて地方を考えないというわけにはいかないのであります。国と地方ともども、これは車の両輪のごときもので、相補って国政を行っていくというべきものであると思います。  しかし、どちらかというと、今の負担率を見ると、国の方が非常な負担をしょっているように思います。地方も苦労していらっしゃいますけれども、やはり国の方が負担の率は非常に重い、債務の率も非常に多い、そういう状態であると思いますので、その点については地方の御理解をいただいて、協力していただくところは協力していただく。今回の中央、地方の財政関係調整ということも、ある意味においてはそういう性格も持っているのではないかと思っております。
  150. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 教育臨調と似たような形で、地方に関する臨調ということを考えておられるということはございませんか。
  151. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 行革の次の大きな仕事の一つは、やはり地方の行革という問題が次に登場してくるのだろうと思います。もちろん、地方においても、府県、市町村、おのおの行革をやっておりますけれども、やはり地方の声が非常にそういう点では高まってまいりまして、地方の行革というものに相当力を入れるときに入ってきたと、私は中央政府の一員としてもそう感じております。
  152. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 実は、まず行革が第一であるという点でございますけれども、私は、現在一番大切なのは税制の見直しかと考えております。これだけの累積債務がある。もちろん、景気を浮揚させて増収を得ることは大切であろう。歳出もカットすべきである。ただ、何らかの形で税制を変えていかなければしようがない。簡単に申しまするならば、例えば国債費九兆円、あるいは地方債費七兆円、そういったものがどんどんと利子の形で所得者の中に入っていく。ですから、幾ら歳出を切り詰めてもそれはどんどん出ていく。となりますならば、どうしても税金を取らなければいかぬ。結局、現在の構造はいわゆる大衆課税でもってそういったものをいわば太らせていくといいますか、大衆から税金を引っ張り上げてこういった利子所得者に回していると言わざるを得ない。  私ども、この委員会におきまして、例えば酒税法の改正のときにも、三千億をひねり出すのにもうきゅうきゅうとしておる。ビールの半分までが税金であるというような状況。これから物品税、ねらい撃ちにされるかもしれぬ。大型間接税の問題がある。そういうようなことでございますが、そういった、いわば税収がすべて利子所得-国債、地方債が存在しますときには金利もつり上げられる、一般的な金利所得者が有利な立場になると思いますので、これからはやはりどうしても利子所得あるいは資産所得を考えていかなければいかぬ。例えば、非課税預金が二百十兆円もある。一人当て二百万。恐らく相当の脱税が行われているだろうと思われます。こういった面からいきまして、「増税なき財政再建」というものは、言葉としてはいいけれども、何らかの形で増税が必要である。むしろ、大衆増税なき、大衆課税なき財政再建という形で考えていかなければならないのじゃないか。  先回、大蔵大臣にいろいろお聞きしましたときに、税調にもその意見を反映して税制体系を見直してみるという動きを考えてみようというお答えを承りましたけれども、総理大臣の御見解を承りたいと思います。
  153. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 臨調答申の中には、不公平税制の見直しというものは増税の中に入らない、現にいろいろ今まで不公平税制の見直しをやってきたものであります。そういうような点から考えられはしないかということも頭の中に浮かんでくるものであります。
  154. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 不公平税制と申しますと、例えば医者の所得とかそういったところの、非常にマイナーな面が問題にされている。ただ、この社会構造全体が、税金を大衆から資産所得者に持っていくという、所得の再配分が非常にいびつな形で行われているという意味合いにおいて、これは単なる不公平税制の見直し以上のものではないか、むしろ社会構造、経済構造から当然考えなくてはいけない税制の再編成ではないかと考えますが、いかがでございましょうか。
  155. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 その点はごもっとものように伺いますが、ひとつ専門家である主税局の方で御答弁を願うようにいたします。
  156. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 昨年の十一月の中期答申にも、今委員のおっしゃったような税制面での所得再配分のほかに、現在の財政構造から見て、例えば典型的に国債費に象徴されておりますように、利子所得の再配分がゆがめられておるという点も指摘されております。ただ、現在の歳出構造自体は、全体としては非常に所得再配分的な機能を果たしておるわけでございますので、一概には言えないわけでございますが、そういった観点も含めて、利子・配当課税のあり方等の議論が今後税制調査会で行われるということを私どもは期待しておるわけでございます。
  157. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 次に、ではこれからどうやって国債を市場で消化していくかということが大問題でございます。大蔵省の試算によりますと、もう六十年、六十一年、六十二年と、二十兆、二十一兆、二十三兆というぐあいにそういった国債を消化していかなければいけない、しかも地方債も消化していかなければいけないという状況でございます。  この関連で、いわゆる金融自由化の問題がございます。確かに、いわば自由化の問題は、何と申しますか大勢でございますけれども、ただ、現在考えていかなければいけないことは、米国において非常に金利が高いということでございます。でございますから、自由化をますます進めていけば、どんどんとその高利を追って資金が動くということでございまして、それはまた、国債を消化させるときに金利高になるということでもございます。また、日本の場合には、非常に蓄積率が高いわけでございます。資本の蓄積が高い。貯蓄が大きい。そのために、国内では今まで非常に低金利で済んでおった。ところが海外の金利が高いと、それにずっと吸い寄せられていく、いわゆる低金利政策をとれなくなるということがございます。  それからまた、中小金融機関日本の場合には中小企業がたくさんございまして、それが中小金融機関に頼っておるという現状でございます。その場合、もし金利が上がって、いろいろ預金金利が上がってきた場合には、中小金融機関は非常に苦しい立場になる。もし、大きな銀行のように海外にそれを投資できれば、その金利差を利ざやでもって稼ぐことができる。しかし、一般的には海外に手が伸びない。中小金融機関と申しますものは、資金コストばかり上がりまして運用利益が少ない。どんどんと危なくなる。過日テレビを見ておりましたら、「時事放談」で土屋清さんが、預金者銀行を選択できるようになればいい、日本銀行というものは絶対つぶれなかったから、日本銀行は護送船団方式でやっておるということを言っておりましたけれども、もし中小企業者がどの信用金庫、どの銀行を選んでいいのかということに神経を使うようになってきましたら、全く本当の意味の営業はできない。恐らく私は、この金利自由化自由化という言葉は非常にいいのでございますけれども、日本の場合には間接金融でずっと来ておった。しかもいわば銀行がつぶれないということは、高い貯蓄率を維持するゆえんであった。また低金利企業競争力を維持してきた。さっき総理は、ほかの国と、自由化した方が競争できるとおっしゃいましたけれども、それは個々の産業ではなくて、資金調達方式が本当に利点が失われてきたら、幾ら頑張っても競争できない場合がございます。  その意味合いにおきまして、私は、いわゆる金融自由化と申しますものは社会の根底に関連する問題だと思います。これは単なる牛肉、オレンジの問題ではない。もし首相がアメリカとのいわば摩擦を恐れると申しますか、それを回避するために今回の米国の要求をのんだとするならば、私は、社会の根底を揺るがす大きな問題、まずいことをしてしまうのじゃないか、本当に日本の将来にとっていいのかどうか恐れているわけでございます。この点につきまして私は、ある程度の自由化というものは自然の勢いといたしましても、少なくとも米国の高金利があるうちは難しいんだ、日本のいわば間接金融状況ではそう簡単にはいかないんだ、この問題の重要性から見まするときに、今回の対米交渉の結果、ユーロ市場についての自由化とかその辺につきましては、日本の今までの有利な点を減殺させていくという気がするのでございます。  私はまた、過日霍見というニューヨーク市立大学の教授と会ったときに彼の言いますのには、アメリカの要求は決して円高是正じゃない、本当は日本にも同じ高金利を持たせて経済全体、企業全体の競争力を失わせることが目的なんだということまで言っておりました。私もまさに同感でございました。この点につきましての、総理の今回の対米交渉の問題も含めました自由化問題についての御見解を承りたいと思います。
  158. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 やはり日本がこれだけ経済大国になってまいりますと、日本だけが封鎖性を持って独自の世界を行くというわけにはいかなくなってきておると思うのであります。やはり国際通念に従ってまずこの辺が妥当だと思うような金融並びに資本自由化をやるということが、日本経済体質自体をまた強靱にするゆえんなのである、そう思いまして、一般論としてはやはりこの際資本・金融自由化に踏み切ってできるだけ窓を広げた方がよろしい、私はそう考えております。  大体日本金融機構というものを見ますと、資本蓄積率は非常に高くて、安定性と信頼性があることが大特色であって、非常にいいところであると思っております。が、しかし一面、過保護と言われる面もまたある。安定性を持たせる、安全性を維持させる、そういう意味から非常に保護したり監督したり、いつも調査査察をしたりしてやっているという点は理解はできますけれども、それがややもすれば監督官庁の過剰な介入とか、あるいは自由経済の趣旨にそぐわないようなものが起こる。近ごろ地方銀行を見ると、ほとんど大蔵省の役人が天下って頭取やっていますね。あるいは社長やっていますね。相互銀行なんかほとんどそういうふうにまたなりつつある。こういう状況を見ると、これはまた考えさせられる面でもあるわけです。  したがって、そういういろんな面から考えていかなければならぬのでありますが、しかし急激なショックを与えることは避けなければならない。そういう意味におきまして、先ほど申し上げましたように、弱い金融機関に対しては段階的な措置も必要でありましょう。時間的な経過も必要でありましょう。また場合によっては合併とか協業とか、思い切ってそのように体質を強化するという措置もどしどしやらなければいかぬ。そう思って、いつまでも安穏な世界、温室の中に閉じこもっておるということは許されないであろう、そう考えております。
  159. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 しかし問題は、やはりアメリカの高金利というのは非常に人為的と申しますか、大赤字の結果生じている金利でございます。例えばレーガンのこの高金利につきまして一つの批判は、余り金利が上がるために、実質投資に向かうよりは金融投資をした方が利益が上がる。通常の工場を建てるなんというよりは、そういった債券に投資した方がいいということさえ言われているわけでございます。したがいまして、現在の金融情勢のもとにおいて本当にこれを自由化することが経済体質を強めるものかどうかという懸念があるわけでございます。でございますから、私は単なる自由化という言葉が本当に意味があるのかどうか、こういった人為的な海外の高金利のときに、少なくともアメリカに対し財政赤字を減らせ、それによって金利が下がる、そういった自然機能のもとにおいてこそ言えるのであって、こういったことができないうちは我々はしないんだというくらいの頑張りがあってもいいと思いますけれども、いかがでございますか。
  160. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 アメリカの高金利に対して我々がこれを批判することは正しいと思いますし、私自体も、先般レーガン大統領が来たときには、アメリカのTBレートの変化と円ドルの関係等々、そういう資料までも出してアメリカの高金利というものの欠陥を指摘しているところです。また、日本の資本が大体二十億ドルぐらいずつ毎月外国へ行っている、特にアメリカに行っている、そういう現象はそこから来ているというようなことも指摘したところでございます。そういう意味において、正常化していくということを我々は今後も強く指摘して、その是正を求めるようにしてまいりたいと思っております。
  161. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 その問題はそれといたしまして、ただ総理にお願いいたしたいことは、中小金融機関、弱小金融機関のもとに多くの中小企業がぶら下がっている、その二重構造が日本一つ競争力にもなっておるという事態を十分認識していただいて、自由化と申しましても漸進的な自由化ということに配慮していただきたいと考えておりますが、いかがでございますか。
  162. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 おっしゃったように、弱い者に対する取り扱いにつきましては段階的とか、時間的余裕とか、あるいは協業とか合併とか、そういう形によって体質改善を行わせる、こういうことが大事であると思います。
  163. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 さきに行政改革が非常に重要であるということでございまして、当面の問題といたしまして電電公社の民営化ということが問題となっております。これ自体私は非常にいいことだと思いますけれども、そこで問題となるのは、外資に対する規制が当初の案にあったのが、いつの間にか落ちていることでございます。私がかつて大蔵省におりましたときに、いわば自動車産業の自由化という問題がございまして、通産省はもうちょっと待て、外務省は自由化する、五年間待った。その結果、日本の自動車産業は今の金の卵になったわけでございます。半導体においても同じでございます。しかし、今回のいわばVANの問題、御承知のように情報産業と申しますのは非常に成長力の大きい産業でございまして、いろいろ説明によりますと一九九〇年には二十数兆という市場になる。現在、鉄が五兆、自動車が二十兆でございますから、それを超すだけの二十一世紀に向けての産業である。とするならば、我々はどうしても国内の産業が成長するまで待たねばならないと私は考えるのでございます。  それに対して今回の問題点は、通産省と郵政省が権限争いをしている。そのために通産省が勝った形で外資の規制を撤廃した。私は外務省の当事者に、一体外国ではどうなんだ、いわばどういう自由化状況か、外資の状況かと聞いたら、担当者はそれを知らなかった。こういった権限争いのために、日本の将来の産業の基盤となるものが崩されることは、私は絶対に許すことができない。  この点につきまして、この外資規制というものを落としたことは、本当に将来のためにどうなんだろうか。日本の産業は強いと言われております。今度の法律は三年ぐらいの後に見直しをすると言っております。一度自由にしたものに対して規制を復活するということは非常に難しい。一応規制をしておいてから三年間ぐらい様子を見て、と申しますのは、今までこの面におきまして電電公社が独占であった。民間はほとんど育っていない。電電公社を民間におろして、民間にもそういったものをつくらして、その結果IBMなりATTなりと競争させることが好ましいのではないか。事業規模においても、ATTは例えば売り上げ十五兆円、IBM八兆円、富士通一兆円というような規模でございます。こういったことを考えまするならば、早く外資規制を撤廃いたしますと、IBM、ATT、電電の三つどもえの争いになって、日本に本当の意味のそういった面の産業が生まれないのではないかと懸念されるのでございます。この点についていかがお考えでいらっしゃいますか。
  164. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 一種と二種とたしかあったと思いますが、二種のVANにつきましては外資規制を撤廃しておりますけれども、私は妥当な措置である、こう思っております。いろいろ御心配する向きがありますけれども、やはり相互主義でこういうものはやっておるので、自分たちだけを保護しておるという態勢を、この経済大国の日本だけがいつまでも続けられるものではない。そういう意味において、外資規制を撤廃をするし、また、いろんな商品を百花繚乱のように出してもらって、そしてそこで勝負していく、勝負のないところに進歩はない、そう私は思っておりまして、それぐらいの力は既についてきておる、そう私は思っておるのであります。
  165. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 相互主義と申しますけれども、本当にいわば自分の産業が強い面におきましては、その国は自由主義を標榜するわけでございます。弱い間はそれを守っていく。もちろんある一点におきましては、そういった障壁を取っ払うことは必要でございますけれども、現在、本当にそれを取っ払っていいのかどうか。やはり当初はその垣をしておいて、情勢を見て垣を取っ払うというのが正しい方法ではないか。相互主義と申しますけれども、力の強い者、弱い者、それがやはりそれぞれの立場で主張するわけでございますから、単に相互主義という言葉では律することはできないと考えますが、いかがでございますか。
  166. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 やはり日本の貿易構造全般を見まして、例えばアメリカならアメリカ、イギリスならイギリスに対してどんどん自動車も出ておる、エレクトロニクスも出ておる、何億ドル、何十億ドルという商品を出しておる、そういうような形で片っ方ではもう自由流通でばんばんやっておるが、日本の不利な問題については垣根を閉ざしてしまう、ドアを閉ざしてしまう。これがアンフェアと外国から言われているゆえんなのであって、今までの日本だったらそれでも通用したと思いますが、これだけ貿易の黒字がたまって三百億ドルにもなるという、そういうような情勢のもとに、いつまでも昔どおりのことを言っていることは、世界にはもう通用しないという時代に入ってきたと私は思っておるのです。ただしかし、バイタルな面については、やはりこれは国益を考えてやらなければならぬし、国際的に見てこれは妥当であるということは、我々もやっていっておるつもりでございます。そういう点で御理解を願いたいと思います。
  167. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 私は、ここに提起した問題は、行革を急ぐの余りこういった点を軽視してもらっては困る、特にこれから成長する産業と申しますのは、私は、さっきの雪見君と話したときに、アメリカはこれまでは弱い産業、例えば日本に負けそうな産業、鉄鋼とかあるいは自動車とか、そういう面で日本に対して反撃をかける。ところが、最近はそういったものじゃなくて、先端産業、そこでもって、この面においてはどうしてもアメリカ日本を制覇しよう、日本を凌駕しようという形で来ておる。この意味合いにおきましては、私は、二十一世紀に向かって日本が情報化社会に進んでいくときに、果たしてこれでいいのか、単に、こういった自由貿易のときにおいて、片方で黒字をつくりながら勝手なことを言えないという問題で済むのかどうか、もっともっと、先々がどのくらい、どういう市場になるのか、どういう産業になるのかということを見越してやるべきだと考えております。その意味合いにおきまして、私はやはり一時期に外資を規制しておいて、その後門戸を開くという方法がベターだと思うのでございますけれども、この点もう一度再考を願えないかと考えるのでございます。
  168. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 今までの例を見ますと、日本における外資会社等見ますと、やはり日本的経営というものに順化されないものは伸びない。したがって、アメリカ人が出てくるという場合でも、イギリスに出ていく場合とあるいはフランスに出ていく場合と日本に出てくる場合は違うようです。やはり日本人を使い、日本の商習慣とか日本になじまない限りは伸びない。日本独特のそういう土壌というものをよく研究したものでないと伸びない。IBMがコンピューターでは三割ですか、その程度のもので、四割近くまで持っているけれども、これにしてもやはり非常に日本的な経営に順化されて伸びているので、イギリスにおけるようなやり方でIBMがやったって伸びるものではない。そういう意味において、日本独特の商習慣あるいは労使関係その他の問題もあるのであって、私は競争的共存という方向に行くであろう、そう考えております。
  169. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 もう時間もございませんから、これ以上あれでございますけれども、いずれにせよ、我々といたしましては財政再建のためにはいろいろなことをやらにゃいかぬ。例えば行革を急ぐの余りこういったことを見逃してはいけないよということをお話ししたわけでございますけれども、結局、我々といたしましては、もう少しこういった基本問題について事前協議と申しますか、法案をつくった後、要するにこれで押し切るよというのではなくて、現在いわゆる政策協議という問題が起こっておりますけれども、原案ができる前にもう少し野党に対して説明し、その了解を求めるということが必要じゃないかと思うのでございますけれども、この点、総理のお考えを承りたいと思います。
  170. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 その点はごもっとものお考えのように思いまして、我々も将来考えてみたいと思います。ただ、法案の性格等によりまして自民党の内部だけでも大騒ぎして、保元、平治の乱みたいな様相を呈した点もありまして、とても野党なんかに相談する暇もなかった、提出時間が迫ってきた、こういう問題もあった事情も御了察願いたいと思うわけです。
  171. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 もっともっといろいろ御意見を伺いたいのでございますけれども、時間もございませんので、この辺で終わりたいと思います。どうぞ財政再建に向けて蛮勇を振るっていただきたいと思うのです。  どうもありがとうございました。
  172. 瓦力

    瓦委員長 蓑輪幸代君。
  173. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 最初に財源確保法に関連して、来年度予算編成方針について総理の見解を伺いたいと思います。  政府は、赤字国債の発行を五十年から特例ということで行ってきました。そのこと自体非常に問題だと思いますけれども、今回赤字国債の借りかえまで行うというふうになるわけで、これは財政法第四条を完全に空洞化するもので、私どもは断じて容認できないと思っています。  財政法四条の規定が設けられた歴史的背景を見てみますと、かつて日本軍国主義が赤字国債を増発して軍事費を調達し、侵略戦争を拡大していったというこの歴史の反省があると思うのです。したがって、財政法第四条というのは憲法九条の戦争放棄の規定を財源面から保障するという性格も持っているわけですから、この財政法四条というのは非常に重要な規定だと考えております。今回の赤字国債の借りかえは、借金をして赤字国債の発行をさらに行っていくというわけですから、財政法四条を踏みにじるもので、到底認められないわけです。このことを強く指摘しまして、来年度の予算編成方針について一点お伺いしたいと思います。  総理は、再三大型間接税を導入しないと言明しておられますけれども、「財政の中期展望」によれば、赤字国債を借りかえしても、最も少ないケースでも三兆八千億円という、なお多額の要調整額が計上されているという事態です。大型間接税の導入を行わないということになりますと、財源確保は一体どのような税目で図るおつもりなのでしょうか。電話利用税とか広告税とか、小型、中型の新しい間接税の導入も検討されているのかどうか、それとも既存の税制の枠内だけで行われるのかどうか、総理の御見解をお伺いしたいと思います。
  174. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 臨調答申を受けまして、歳入構造の見直しあるいは税外収入の確保、あるいは景気政策の機動的運営、そういうようなさまざまなものの組み合わせにより、あるいはさらに国鉄や電電の改革の推進あるいはそれらの持っておる財産の売却、そういう形による国家財政負担の軽減、そういうようなものまでもいろいろ考えまして努力してまいりたいと思っておる次第です。
  175. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 新税の導入など、新しく国民負担がふえるということはとうてい納得できないところでございますので、大型間接税を導入しないというふうに言明されるその姿勢、それを国民生活を守るという立場で堅持していただきたいと思います。  総理にこの際お伺いしておきたいことが幾つかあるわけですけれども、総理はたばこを吸われないようでございますけれども、実はたばこの煙の中に発がん物質が多量に含まれていると言われておりますが、どの程度含まれているか、総理御存じでしょうか。
  176. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 私知りませんが、そこでたばこを吸っている方がいますから、どうぞお聞き願いたいと思います。
  177. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 総理も多分御承知だと思いますけれども、たばこには本当にたくさんの発がん物質があるんですね。四十種類を超えるというふうにも言われておりまして、二百種類を超える有害物質が含まれている、有害物質の缶詰と言ってもよいというふうにも言われています。  WHOの専門委員会が一九七五年に出した報告「喫煙とその健康への影響」というところでは、結論として、「各国から提出されている疫学的証拠は、たばこ煙が肺がん、慢性気管支炎、肺気腫、虚血性心疾患及び閉塞性抹消血管疾患の重要な原因の一つであることを示している。また喫煙が舌、喉頭、食道、膵臓及び膀胱のがん、更に流産、死産、新生児の死亡、胃や十二指腸の潰瘍などの発生にも関係していることを示している」こういうふうに述べて、いろいろな疾患と喫煙の関係を明らかにしております。  さらに、国立がんセンターの平山雄博士によれば、がんの半分はたばこが原因で、食物に関係のあるものは三割、職業性のものは一割程度であるというふうに言われております。また、WHOの統計によれば、たばこをのむ人はのまない人に比べて、肺がん十・八倍、喉頭がん五・四倍、口腔内がん四・一倍、食道がん三・四倍と、がんになる率が非常に高くて、国立がんセンターの調査によれば、喉頭がんは十三・五九倍、一日二十本以上のむ人は何と四十三倍という結果でございます。しかも、たばこは吸う人だけでなく、自分は吸わないのに吸う人のそばでいや応なく吸わされる、そういう受動的喫煙というのがいかに健康に有害であるかということも明らかにされているわけです。  世界各国では、たばこのない国を目指すスウェーデンを初めとして、アメリカでもヘクラー厚生長官が、西暦二〇〇〇年までに、二十一世紀を目指してがんによる死亡を半減させるために、喫煙量を半分にする運動を徹底するということを明らかにしております。さらに、イギリス、アメリカ、ドイツ、フランスイタリア、北欧三国、ソ連、オーストラリア等、先進諸国においては、ラジオ、テレビ等による広告宣伝は厳しく禁じられているのです。  ところが、日本においてはいかにたばこを売るかということが考えられておりまして、テレビなどのメディアを使ってのたばこの宣伝は野放し状態です。昨年の専売公社のたばこ宣伝費というのは二十四億円以上にも達しております。国民の健康を犠牲にしてまで当面の財政利益を追求するようなあり方は、結果的により多くの医療費を支出するという結果ももたらしますし、深刻な経済的損失とも言えると思います。  総理の提案で決定されました対がん十カ年総合戦略、これの施策から見ても非常に大きな矛盾ではないかと思います。国際的な流れをあわせ考えてみましても、日本のこの姿勢は逆行するという事態でございますし、即刻改めていかなければならないのではないかと思います。当面テレビやラジオ、新聞等、たばこの宣伝は、特に青少年に対する影響という点からも厳しく規制すべきだというふうにも考えますけれども、この広告宣伝の規制という点についての総理のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  178. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 たばこは健康にどういう影響を持つか、専門家の御意見を拝聴した次第でありますが、私は別にたばこを奨励するわけじゃありませんけれども、私自体は吸いません。それから、嫌煙権というのはいい言葉だろう、そう私は思っています。しかし、それを強制するということまでにはまだ至らぬ時代だろう、そう思っております。  やはりたばこをのんで神経衰弱から治ったという人もおりますし、小説家あたりはやはり一服吸わないと原稿が書けないという、非常に精神の余裕を回復する、そういう場合もありますし、また商社マンなんかは商談のときに一服くゆらして、それでいい知恵を考える、そういうのもありますし、目に見えない効用もまた一面においてはあるようですね。だが、しかし、健康自体というものを考えると、やはりおっしゃるように考えさせられるべき問題もあると思います。  しかし、現段階におきましては、たばこの宣伝というものは自粛した方がいい、そういうわけであのたばこの箱に表示する文章も最近は変えさしたようでありますし、テレビの時間帯やその他につきましても非常に注意してやっておるようです。アメリカの宣伝と比べると、日本の専売公社の宣伝というのは何十分の一か何百分の一ぐらいのスケールで行っていると私聞いておりまして、かなり自粛してやっているんではないかと思います。しかし、こういう状況でございますから、将来なお注意してまいりたいと思います。
  179. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 今総理がおっしゃったことは、大変問題がある部分もあると思うのです。  といいますのは、目に見えない効用ということをおっしゃいますけれども、それは個人的に狭い部屋で、自分だけの範囲で影響を受ける分なら一向に構いませんけれども、公共の場所において他人にまでたばこの害をまき散らすという点まで、効用だからといって権利であるかのごとき顔をするというのはやはりどうかと思うのですね。そして国際的に見て、商社マンが云々とおっしゃいましたけれども、逆に先進諸国との国際会議などで、いかに日本人がたばこに無神経であるかということが非難されている状況もあるわけですね。  それから、今おっしゃいましたアメリカの広告宣伝費用ということですけれども、私が調べました限りでは、アメリカはラジオ、テレビによる広告というのは全面規制しているんですね。ですから、その点などももう少しよくお調べいただきまして、あわせて、先ほど申し上げましたように、がんを撲滅しようというその政策と兼ね合わせてみて、一向に緩慢な状況でなくて、この際総理が本当にがんを撲滅する、そしてまた国民の健康を守るという点でうんとリーダーシップを発揮していただきたいというふうに思うのです。  特に問題になりますのは、喫煙の低年齢化ということなんですね。二月の教研集会の保健体育分科会というところで、新潟県のある小学校の六年生ですけれども、男児の七三%が喫煙の経験がある、こういうショッキングな報告がされています。児童の発育、健康上からも無視できない問題だろうというふうに思います。通勤通学列車で煙に巻かれてたまらないから禁煙してほしいという声も強く出ておりますし、自動販売機が野放しされているのも、これも青少年の問題から考えてみましたときに、これは何とかしなければならないというふうに思います。それから、保健教育の単位時間がこの問題で極めて少ないということで、深刻な問題として指摘されてもおります。  喫煙開始年齢が早いほど肺がん死亡の危険性が高いということが、国立がんセンターの平山博士らの調査で明らかになっております。非喫煙者に比べて、未成年者で吸い始めた場合、五・五倍もの肺がん死亡率というのが認められています。未来を担う青少年の健康を保障していくというのは、政府の重大な責務であろうというふうにも思います。  大学あるいは認定講習等における保健教育法の制度的充実によって、教師の認識を高める施策を講ずることも必要ですし、マスコミを通じて喫煙の有害性を広く国民に知らせる、または保健所等における地域講習会によって国民の知識普及を図るということも極めて重要だというふうに思います。自動販売機ということで、いつでもどこでも入手できるという環境は非常に有害だと思いますので、こういう点もあわせて、青少年の健康それから日本の未来の子供たちのために、政府の熱意ある対応というのをぜひ早急にお願いしたいと思います。  WHOは、一九七八年に加盟国政府に対しまして、喫煙に関する健康教育の強化、包括的な喫煙制限処置の実施、非喫煙者の権利の擁護というのを要請しております。総理はこれからサミットに出席されるわけでございますけれども、日本政府がこういった問題についてどのような対策をとっているのかというふうに聞かれたときに、大変恥ずかしい思いをなされることのないように、厚生省を初め関係省庁を督励して、世界に胸を張って、日本は健康のためのたばこの規制についてこのような施策をとっていると言えるようにやっていただきたいと思います。この委員会でもそうですけれども、公共の場の禁煙や、それから国民の命と健康を守るということを積極的に受けとめていただきまして、リーダーシップを発揮し、ぜひ具体的な施策をとっていただきたいことをお願いしたいと思いますので、総理の御決意を伺います。
  180. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 アメリカの会社に比べて、たしか私の記憶では、売り上げに対する四%ぐらいアメリカは広告費を使っているようですが、日本の専売公社は〇・〇〇〇七ぐらいだったろうと記憶しております。それぐらい宣伝や何かについては日本は自粛をしております。ただ、最近の模様を見ると、エチケットにおいて、アメリカ、ヨーロッパではたばこを吸うという点については人の迷惑を相当考えておやりになっているが、日本はまだ無神経なところがかなりある。しかし、これは趣味嗜好の問題でありますから、政府が強制するというのはまずいのであって、むしろこれは国民運動というような問題で、社会浄化の運動としてそういうことをおやりになることは好ましい。政府が上から強制するということは趣味の問題として余り適当ではない、そう思うのです。  それからもう一つは、おっしゃることはよくわかりますけれども、政治の問題というのはなかなか複雑でして、何しろたばこ耕作組合、十万人ぐらいの方の生活がかかっているわけでございますね。それから小売店だけでも二十五万軒以上がそれで生活をやっておる。三十五万軒ぐらいの方々がたばこで生きているという面を考えますと、急激なショック療法はできない。段階的にその人たちが納得するようなやり方で穏当にやっていくということが私は政治としては好ましい、そう思っております。
  181. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 総理は段階的に取り組んでいただけるような御答弁だと伺いましたけれども、私は、健康の問題ですので、ぜひ格別の御配慮をこの際思い切ってとっていただくように、重ねてお願いしておきたいと思います。  続いて、婦人に対するあらゆる形態の差別撤廃条約の批准に向けて、日本政府国内法の整備等に取り組んでおりますけれども、特に婦人にとって関心の高い雇用平等法の問題について、総理は婦人問題企画推進本部長でもあられるわけですので、この点についてお伺いしたいと思います。  最初に総理の女性観を伺いたいと思います。
  182. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 私は、立派な妻であってほしいが、それ以上に立派な母であってほしい、そして女性は常に美しくあれ、それが願いであります。
  183. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 婦人が人間として男性と同様に人間の尊厳を全うして、妻としても量としても、そして何より女性として同じようにこの社会で役割を果たし生きていく、そのことをだれしも望んでいると思います。ところが、そのように婦人が思っても、なかなかそれが受け入れられない社会環境もいまだ残っていることは、総理大臣も御承知のことと思います。  今日多くの職場で、また公務員の職場でさえも昇進、昇格等において著しい男女差別があり、賃金に至っては男性のおよそ二分の一という実態になっておることは御承知と思います。大学卒の女子の就職が極めて厳しいということを見てもおわかりのように、募集、採用に始まって各種の差別は歴然としているわけです。それだけに、平等法に対する婦人の期待も大変大きなものがございます。  ところが、男女雇用平等法制定ということで私どもが大いに期待をしているこの問題について、四月十九日に出された雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を促進するための関係法律案要綱、これを見て怒りの声が寄せられています。婦少審の建議でさえも、配置、昇進、昇格、教育訓練、福利厚生については強行規定によることとなっていましたけれども、法律案要綱では配置及び昇進を、募集、採用と同様に努力義務規定に落としてしまいました。  労働大臣はかねてから、審議会の結果を尊重すると繰り返し答弁しておられましたし、審議会のこの建議を無視するような法律案要綱は、私どもとしてはまことに理解しがたいところでございます。そこで、せめて配置、昇進、昇格については、審議会の建議で述べておりますように強行規定にすべきだということで、総理のリーダーシップをお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  184. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 あれはまだ法案としてできているのではなくして、要綱みたいなもので審議会にお願いしているものであると思います。労働省がつくった要綱を見ますと、労働側の委員、公益委員あるいは使用者側委員の意見、そういうものの全般的なバランスを見ながら、しかも女子の雇用を狭めないようにという配慮もあるのではないかと思います。余り理想主義的なところに走って強い条文や何かを整えますと、ややもすれば、なお女子の採用を控えてくるという傾向がなきにしもあらずであります。それよりも今の状態においては、女子の雇用をもっと促進するということを考えつつ、条文の整備については今の時代と余りかけ離れたことがないようなやり方で女子のことも考えておやりになっている、私はそういうふうに解釈しております。
  185. 瓦力

    瓦委員長 持ち時間が参りましたので、御整理いただきたいと思います。
  186. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 今私がお願いしましたことは、真の平等を実現していくためにとても重要なことなのでお願いしたわけですが、今後法案の審議も行われる中で、総理も労働大臣を初め関係省庁に対して、ぜひその線で指導していただきたいと思います。  婦人に対するあらゆる差別を禁ずる、あるいは平等法を制定するということは、全人類的普遍性と世界観の問題だと思います。だから、いろいろ事情をお述べになりますけれども、この際、世界に出して恥ずかしくない平等法を制定することは総理大臣の責任だと思いますので、お願いをするわけです。先進国の中で最もおくれて平等法をつくるのが実は我が国なんです。どのような法律になるのかということは、世界が大変注目しております。そういう点で、サミットにお出かけになる総理も、ぜひこういう観点で実効ある男女雇用平等法の制定、そして婦人の地位向上のために御尽力をいただきたいと思います。  この際、最後に総理にお願いしておきたいんですけれども、ぜひ婦人の地位向上に関する特別委員会というようなものを国会に設置していただいて、この問題を十分論議し、あらゆる分野から審議が尽くせるように特段の御配慮をいただきたいと思います。これは、総理といいますよりは自民党の総裁としての中曽根総裁にお願いをすることになるかと思いますけれども、婦人の登用について非常に積極的な御意見をお持ちというふうに伺っております。婦人大臣が実現できなかったことは残念だというようなこともおっしゃいましたし、その線で婦人の登用ということもあわせ考えまして、総裁としてその点での御配慮をお願いしたいと思いますが、それをお伺いして終わりたいと思います。
  187. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 毛沢東も、天の半分は婦人が支えている、そう言っておるので、大いに婦人の地位向上には努力をいたしたいと思います。  今の委員会の件は、まだちょっと今の国会の情勢では、自民党総裁としても熟していないな、そう思います。むしろ社労委員会の中にそういう小委員会でもおつくりになる方が現実的ではないか、そう思いますが、よく検討いたします。
  188. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 終わります。
  189. 瓦力

    瓦委員長 次回は、来る二十七日金曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後八時一分散会