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1984-04-24 第101回国会 衆議院 大蔵委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年四月二十四日(火曜日)     午前十時一分開議  出席委員   委員長 瓦   力君    理事 越智 伊平君 理事 熊川 次男君    理事 中西 啓介君 理事 中村正三郎君    理事 伊藤  茂君 理事 野口 幸一君    理事 坂口  力君       金子原二郎君    熊谷  弘君       小泉純一郎君    笹山 登生君       椎名 素夫君    塩島  大君       田中 秀征君    中川 昭一君       平泉  渉君    平沼 赳夫君       藤井 勝志君    宮下 創平君       村上 茂利君    森  美秀君       山岡 謙蔵君    与謝野 馨君       上田 卓三君    沢田  広君       渋沢 利久君    戸田 菊雄君       藤田 高敏君    堀  昌雄君       坂井 弘一君    柴田  弘君       矢追 秀彦君    安倍 基雄君       玉置 一弥君    正森 成二君       簑輪 幸代君  出席係国務大臣         大 蔵 大 臣 竹下  登君  出席政府委員         内閣法制局第三         部長      大出 峻郎君         行政管理庁長官         官房審議官   佐々木晴夫君         大蔵政務次官  堀之内久男君         大蔵大臣官房総         務審議官    吉田 正輝君         大蔵大臣官房審         議官      大山 綱明君         大蔵省主計局次         長       平澤 貞昭君         大蔵省主税局長 梅澤 節男君         大蔵省理財局長 西垣  昭君         大蔵省理財局次         長       吉居 時哉君         大蔵省証券局長 佐藤  徹君         大蔵省銀行局長 宮本 保孝君         大蔵省国際金融         局長      酒井 健三君         国税庁次長   岸田 俊輔君         国税庁税部長 渡辺 幸則君  委員外出席者         経済企画庁調整         局財政金融課長 服藤  収君         科学技術庁計画         局計画課長   川崎 雅弘君         外務省北米局北         米第二課長   七尾 清彦君         文部省大学局大         学課長     坂元 弘直君         厚生省児童家庭         局企画課長   土井  豊君         通商産業省機械         情報産業局電子         政策課長    関   収君         郵政省貯金局第         一業務課長   山口 憲美君         郵政省電気通信         政策局データ通         信課長     内海 善雄君         労働省労政局労         働経済課長   石岡愼太郎君         自治省財政局財         政課長     小林  実君         自治省財政局調         整室長     前川 尚美君         自治省税務局市         町村税課長   緒方勇一郎君         日本国有鉄道総         裁       仁杉  巖君         日本国有鉄道常         務理事     竹内 哲夫君         日本国有鉄道常         務理事     太田 知行君         日本国有鉄道事         業局次長    猪俣 為久君         日本電信電話公         社総裁     真藤  恒君         日本電信電話公         社職員局長   外松 源司君         日本電信電話公         社経理局長   飯田 克己君         大蔵委員会調査         室長      矢島錦一郎君     ————————————— 委員の異動 四月二十四日  辞任         補欠選任   塩島  大君     金子原二郎君 同日  辞任         補欠選任   金子原二郎君     塩島  大君     ————————————— 四月二十日  所得税大幅減税等に関する請願藤田高敏君  紹介)(第三〇七三号)  同(渡部行雄紹介)(第三〇七四号)  公立高校用地確保のため筑波移転跡地払い下げ  等に関する請願佐藤祐弘紹介)(第三〇七  五号)  旧南方軍国鉄派遣第四・第五特設鉄道隊軍属の  処遇改善に関する請願西山敬次郎紹介)(  第三一四二号)  不公平税制是正等に関する請願戸田菊雄君  紹介)(第三一四三号) 同月二十三日  大型間接税導入反対に関する請願東中光雄  君紹介)(第三一九九号)  同(藤田スミ紹介)(第三二〇〇号)  所得税大幅減税等に関する請願外一件(和田  貞夫紹介)(第三二〇一号)  同(山花貞夫紹介)(第三二九二号)  旧南方軍国鉄派遣第四・第五特設鉄道隊軍属の  処遇改善に関する請願江藤隆美紹介)(第  三二〇二号)  消費生活協同組合共済事業に係る税制改善に  関する請願上田哲紹介)(第三二九一号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十九年度の財政運営に必要な財源確保  を図るための特別措置等に関する法律案内閣  提出第三号)      ————◇—————
  2. 瓦力

    ○瓦委員長 これより会議を開きます。  昭和五十九年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置等に関する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。渋沢利久君。
  3. 渋沢利久

    渋沢委員 本論に入ります前に、証券局長が見えていますので、局長担当部分だけ先に尋ねて、あとは結構ですから。  福島交通有価証券報告書のことで何回か聞いてきましたから、最初にちょっとお尋ねをしておきたいと思うのです。  十九日に訂正報告書が正式に提出をされた、こういうことに承知しております。この報告書提出虚偽記載の事実が明らかになった、こういうことだろうと思うのです。事細かな、時間をかけての報告は要りません。その辺のいきさつだけはわかっております。しかし、訂正報告大蔵省行政指導で行われたというのだが、その訂正報告自体に間違いがあったらこれはまた大変なことになる。その内容をつぶさにもちろん検証されておられることだと思うので、それを含めてこの訂正報告に対する大蔵対応、処置というもの、そこのところをひとつ明確にお答えをしていただきたい。
  4. 佐藤徹

    佐藤(徹)政府委員 お答えいたします。  御指摘福島交通の五十八年九月期の有価証券報告書につきましては、御指摘のとおり公認会計士意見差し控えという意見をつけておりまして、その公認会計士意見を付された事情とか、それから会社経営担当者考え方につきまして事情聴取をやってまいりました。  御指摘の点につきましては、その事情聴取過程で、昨年の九月の決算期の前後にかけて会社日債銀の間に融資のつけかえといいますか、振替についての交渉がかなり進展をしていたという事実があったことは私どもの方で確認をいたしました。ただ、最終的に会計処理として借入金振替を形として行う状況には九月期においてなっていなかった。そういう状態でありながら引当金十八億を取り崩して利益計上した。ここがまさに公認会計士意見を差し控えた理由でございます。  その点について会社側からいろいろ事情聴取をいたしました結果、当時日債銀福島交通との間で行われていた話し合いないしはその間でいろいろ文書等もございますが、そういったものについての認識会社側日債銀との間では食い違っておった。つまり、日債銀の側は、まだ完全に条件が具備されていないので、最終的な合意をする段階にはなっていなかった。しかし、会社側は、実質的な話し合いの中で既に実質的な合意はでき上がっていたというふうに認識をしておった。そういう認識に立って、もはや貸し倒れのおそれがなくなったということで引当金を取り崩したいこういう経緯であったようであります。その点が御指摘有価証券報告書では注記という形で会社側から提出をされておりまして、私ども事情聴取の結果、この注記が客観的な事実と今日の時点から見ますとやや異なっている。つまり、当時の会社側認識はそうでありましても、今日の時点で当時を振り返ってみますと、日債銀からことしの三月、合意をした事実はないという文書も出ておりますし、客観的な事実が今日の時点で見ますと実態と異なった、そういう形の報告書が出ていることが判明したわけであります。  会社側から事情聴取をしております過程で、今日の時点においてそういう客観的な事実と相違をした記載があるということは、福島交通自体もこれはそのとおりであるというふうに言っておりまして、その結果、私ども指導といいますよりは自主的な判断に基づいて有価証券報告書注記のところの補足をする、形としては訂正報告書になるわけでございますが、これを出したいということで、その内容について若干私ども公認会計士、それから会社側と検討いたしまして、結果として御指摘のとおり十九日に訂正報告書が出されたわけであります。  以上のような経緯報告書は出てきたわけであります。
  5. 渋沢利久

    渋沢委員 公認会計士報告書提出に当たってチェックをしている段階で、銀行側との同意が得られていない、このまま出せば虚偽記載報告になるということは明らかだったわけですね。だから公認会計士同意をできなかった。そしてあのような意見を付したわけでしょう。しかも日債銀から福島交通には重役も送り込まれておる。そういう段階で当然虚偽記載の事実ということは明らかだったわけです。これは大変不可思議な話であります。しかし、いずれにしても訂正報告が出されて、それで虚偽記載の事実は明らかになった。これは間違いない。そういうことですね。虚偽記載の事実があるかないかだけ、まず。
  6. 佐藤徹

    佐藤(徹)政府委員 今日の時点から見れば、事実と異なる記載がされていたことは明らかであります。
  7. 渋沢利久

    渋沢委員 事実と異なる記載が明らかに出されている。そして訂正報告がされた。その訂正報告中身が、だから大変問題だ。この検証が具体的にされておらなければならない。これによると、既に文書日債銀は四点にわたって、福島交通に対してこの振替について同意するに当たっての具体的な条件を示しておるのですね。それが今日の段階において満たされたかどうかということについても、当然証券局は厳格な調査をやられておると思う。もしこの訂正報告自体が、当初の報告書を出したときのようなまことに不確かな根拠に基づいて出された報告書だとすると、これは大変な事態であるというふうに思うわけなんですね。  そこのところを具体的に、例えば「物件売却による不動産事業部門並びに福島交通不動産借入金返済」これは重大な条件だと言っている。「担保付替」あるいは他行金融機関の支援の体制、この保証、具体的に出しておるわけですね。この点で読み違いがあったということで訂正報告が出たけれども、事実はどうなっているか。例えばこの条件の中で最も重要な借入金返済については、五十八年九月期末においては、「完遂の段階に至っていないがこと言っているが、これはもう済んでいるのか、これらの条件は満たされておるという状況なのかどうか、その点の確認がどうか。日債銀との関係においてその調査は明確に確認されておるのかどうか。いずれにしても虚偽記載報告であったことだけは間違いないのであるが、これに対して大蔵省はなぜ告発をしないのか、告発をしない理由を明確に述べてもらいたい。
  8. 佐藤徹

    佐藤(徹)政府委員 初めに申し上げておきますが、公認会計士意見差し控えというのは、公認会計士虚偽記載であるかどうかわからないということでつけられた意見であります。そのことを前提にして若干お答えを申し上げます。  この訂正報告書の中で言っております四つ条件のうち、物件売却による借入金返済、これは今日に至るもまだ実現しておりません。その旨書かれているはずでございます。その他の条件につきましては、訂正報告書記載されているような状況に今日あるわけであります。したがいまして、借入金福島交通から福島交通不動産への振替は、御指摘のとおり今日に至るも実現はしない、そのことも報告書の中で明らかにしておるわけでございます。  訂正報告書内容につきましては、私どもも慎重に日債銀あるいは福島交通等から事情を聞きまして、その内容に間違いのないことを確認いたしております。  そこで、最後の御指摘であります虚偽記載があったのだからなぜ告発をしないのかという点でございます。先ほど申し上げましたように、このような事実と異なる記載内容とする報告書が出されました原因でございますが、これについては、私ども一つの事柄についての会社側認識の差異であると考えております。故意にこういうことをやったという心証は得ておりません。したがって、告発をするような問題は起こっていないというふうに判断しております。
  9. 渋沢利久

    渋沢委員 なぜあんな報告書が出たかということについて言いわけで出した訂正報告書の中では、四つ条件があるけれども、この中で一番重要だと思われるのはということで、担保のつけかえ、あるいは借入金返済ども当然ですけれども、その段階ではこういう事態が実質的に進んでおるので、なるほど銀行側との話はきちんとしておらなかったが、四つ条件については内容としては事実上解決している、それでああいう報告書を出してしまった、連絡ミスだった、こういう言いわけ書を出して、そのとおり受けとめて、告発の要なし、こう証券局が言っているわけです。ところが、事実上もうこの段階で進んでおります、こう言っている中身が実際にはいまだに解決されておらないということは、あなたもお認めのとおりなんです。ですから私は、あの報告書うそだったが、あれが間違いでしたと言って出した訂正報告書うそに近い言いわけにすぎないのではないかという疑いを持たざるを得ない。この究明が今の答弁では納得ができない。  それから、告発できないというのは、いろいろ偉い政治家かかわりがこの件については言われておるから、あるいは大蔵の偉い官僚も日債銀融資の中ではかかわりがあると言われておるから、それでこのような寛大な対応をされておるということですか。そうとしかとれないじゃないですか。いささかも厳しさがない。
  10. 佐藤徹

    佐藤(徹)政府委員 連絡ミスとかそういうことではないのでありまして、一つの事実に対する当時の銀行会社側認識が食い違っていたということであります。会社側としては、そこに示されております条件のうち、物件売却による借入金返済、これが形式的にはまだ済んでいない、しかし、近々済むという認識を持っておった。その認識に基づいて報告書が出されたわけであります。確かに今日までそれは実現はしておりません。しかし、それが客観的事実と異なるということが言えるのは今日の時点だからでありまして、当時の時点でそれが客観的な事実と異なるということを断定することはできなかった。したがって、公認会計士も、不適正ということではなくて、意見差し控えという意見を付したということでございます。したがいまして、私どもは相当いろいろ事情聴取をいたしましたけれども会社側故意にこういう客観的事実と異なる報告書を作成し、提出したという心証を得ることはできませんでした。したがって、先生がおっしゃる証取法百九十七条に規定しております告発を行うという要件は満たされていない、こう判断しているわけであります。
  11. 渋沢利久

    渋沢委員 大変寛大なこの種の問題についての対応をあなた方はされる。虚偽報告がなされても、こういう一片の訂正報告さえあれば問題にならないというような前例をつくるだけだとすれば、これは大変問題だと思う。  きょうこれが本題でありませんから、このことでこれ以上時間が使えませんので、その指摘にとどめておきますが、これは大変根が深くて、水脈が広範、多岐にわたっておるので、時間をかけて究明していかなければならないことだろうし、日債銀やあるいは福島交通関係者をお招きして伺わなければならぬこともたくさんあるように思う。きょうはこの程度にして本題に移ります。証券局長、結構です。  そこで大蔵大臣、四月の二十日に三人の参考人においでをいただきまして、提案されております財確法案についての御意見をお伺いいたしました。宮崎財政制度審議会委員草場全国銀行協会連合会長、立教大学の和田教授に大変有益な御意見を承ることができたわけであります。このお三人の参考人の御意見、それぞれニュアンスの違いもありまして大変興味深かったわけですが、借換債のことについて一致している認識がございました。極めて遺憾である、こういう事態を招いていること自体は、理由があるにしても大変遺憾なことであるという点では考えを同じくしているというふうに受けとめました。それから先の御意見についてはそれぞれの持ち味がおありであったと思うのです。そしていわゆる歯どめ論、この赤字公債の増発への歯どめが欠けていくことへの憂慮というものが強力に指摘をされたというふうに受けとめるわけであります。  まず、借換債発行による影響ということについて最初大臣から伺って、逐次お尋ねをしていきたいというふうに思います。
  12. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに、借換債ということは、参考人各位から遺憾であったという趣旨の御発言があり得べきことであると私も事実認識をいたしております。  五十年の際、国会からいろいろな御議論をいただいて、五十一年から借りかえをしない、こういうことを法律に明記をして、毎年毎年御審議をいただいて今日に至った。したがって、この歯どめは何か、こういうことが一つございます。その歯どめというもの、私も何度か申し上げましたように、この節度というものをどこで保っていくか、こういうことでありますが、やはり政策転換ということになれば、この際過去のものもいわば借りかえ規定をとらせていただく。そこに出てきたものがいわゆる訓示規定と申しましょうか、精神規定というものがこの法律の中にも一つは明記されておるわけであります。したがって、毎年毎年どういうふうにするか、こういうことは、我々として今後の重要な対応策としての問題でございます。  私どもが、第二次石油ショックというまさに予期せざる事態の発生ということから、こういうことをしなければならぬようになって、国会においても、もう借りかえ必至ではないかといういろいろな御批判をいただきつつ、財政制度審議会にかけた上でその結論を出すということで結論に至ったわけでありますが、私どもが今考えておりますのは、この借りかえというのは、現金償還をするための一つの手段としてこれを選ぶわけでございますけれども、今日までの国民貯蓄の中に、言ってみれば既発債というのは吸収されておる。したがって、第一義的にはやはり今後ふえていくであろう国民貯蓄、そしてそれを対象として我々が求めていきますところのいわゆる新発憤、この特例債の新発憤をとにもかくにも六十五年度までに努力目標として発行をゼロにしていくということにまず努力をいたしまして、そしてこの新発債対象部分というのがなくなった段階から、いわゆる既発債残高というものを、対GNP比というようなことでございましょうが、それに対してどのように減らしていくかということを第二段階としての位置づけをやった。  だから、私どもがこれに踏み切るに至りましたことは、いろいろな理由がございますが、一つには、既発債というものは今日までの国民貯蓄の中に一応吸収されておるということで、新発債との意義の相違というところに一つの着目をしてきたということは、これは事実そのとおりであるというふうに私どもも事実認識をいたしておるわけであります。
  13. 渋沢利久

    渋沢委員 これは和田教授の御意見の中に、大変ソフトな言い方でおっしゃっておったのですが、私がこれを翻訳すると少し荒っぽい表現に変わってしまうかもしれません。しかし、整理して伺っておって、非常に私感銘を受けた部分があります。  問題は、歴史的に見て借換債発行するに至った事態というのは非常に重大だ、その重大だという受けとめ方が一体国会にあるのだろうか、そういう言い方をされませんが、やはりかなりの憂慮を下敷きにしておっしゃっておったと私は思う。  三つのことを言われた。少なくとも借換債発行ということに同意を与えるというこの条件のもとでは、まず第一に、このような財政状態を招くに至った、事ここに至った原因を改めて政府は明確にすべきだ、これが一つであります。それから第二に、その責任を明確にすべきだ、こう言っておられる。そして第三に、これからどうするということについて具体的で責任のある明確な計画を示す責任がある。やることはやったけれども、うまくいかなかったというような性質のものでは全く意味がない、責任のある計画を示す責任があるという趣旨のことを——借換債発行を容認する、こういう節目に当たって、少なくともこの三つの点は当然政府国会が明らかにする必要のあることではないかという趣旨のことを言っておられるように聞きました。なかなかこれは真髄に触れた発言だったと思うのですが、大臣いかがでしょう。
  14. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに、いろいろなことをやりました、しかし仕方がございませんでしたという言い方というのは、私どもとしても一番この責めを感ずる率直な気持ちでございます。確かに、いわゆる第一次石油ショックから第二次石油ショックに至るところの成長率の鈍化というものは、言ってみればあの時点において見通すことのできなかった一つの要素ではないかということで、率直にお許しをいただくしかないではないか、私はこういう気がいたしております。  それから、将来の問題については、それは可能な限りにおいて、いまの議論を進めていけば、言ってみれば財政再建計画でもこれにつけて出せばなおまだ許容し得るじゃないか、こういうことになろうかと思うのであります。したがって、その財政再建計画という言葉が正しいかどうかは別としまして、そういうものを模索していくということになると、やはりここでいろいろな場合のケースを予測しながら、今年の段階ではそれを国会等にいわば展望とかあるいは仮定計算の形でお示しして、それを土台にして議論を重ねる中に、それの具体的な方途を見出していくしか現段階では方法がないではないか、私はこういう考え方に立って御審議をいただいておるわけであります。
  15. 渋沢利久

    渋沢委員 どうもそれは期待した答弁になっておらないのですね、大蔵大臣。やはりわかる議論をしなければいけません。和田教授のおっしゃったことは、国民が聞いて大変よくわかる話である。こういう法案を提案されるに当たって、政府国会国民に対してわかりやすく明らかにしなければならぬだろうということについて、政府責任においてこの際、こうなってしまった原因はここにあると思います、その責任はここにあると思います、この状況を解決するために責任のある、だれにもわかっていただける具体的な再建計画はこのとおりですということを示す。  どうも今の大臣お話では、ともかくやってきたけれどもこうなった、ぜひ何とか六十五年に向かって努力をしたい、一生懸命やる以外にないというだけのことで、大変ユニークでお話の上手な大蔵大臣としては、どうも大変そらした、かわした御答弁だと思うのです。いま一つ歯切れよくわかる話でお答えをいただきたい。特に第三の点については、何をもってこの具体的な再建計画とするかということを含めて、いま少し明確にお答えをいただきたい。
  16. 竹下登

    竹下国務大臣 今回、財政改革の進め方ということで御審議をお願いしたわけでありますが、その財政改革の進め方で今国民の皆さん方の前に明らかにしておることは、まずは第一段階におきましては、五十九年の脱却は困難になりましたので、六十五年度を努力目標として赤字国債からの脱却を図るのを第一段階の目標としております。そして第二段階としては、言ってみれば、残高をGNP等に比して逐次減らしていくということにいたしております。こういうことだけを大筋として申し上げ、そして抽象的ではございますが、いわば歳出削減、そうしてそれは制度、施策の根幹にもさかのぼってやると同時に、また歳入の面においても、いわば公共サービスの確保というのは国民の負担によって行われるわけでありますから、これについても税制のあり方等について検討を行う必要があるという事実認識をいたしております。  そうして最終的には、そのいずれの方法、組み合わせを選ぶかということになれば、まさに国民の選択がどこにあるかということをこの国会議論等を通じながら、各方面の御議論を伺いながら、これから種々の努力を積み重ねていくということに、結論からすればなるわけであります。しかし、それでは御議論をいただくにいたしましても余りにも土台となる資料が乏しい、したがって、それがいわゆる展望であり、またまさに前提を置いての話ではありますが、仮定計算等々がその議論の素材になるということでお許しをいただきたい、こういう姿勢でお答えをして今日に至っておるわけであります。  だから、実際私どもといたしましても、かつての「新経済社会七カ年計画」のときのような、ある意味における定量的な数値を示しながら、それに結びついての財政改革の進め方ということを議論の素材として提出したいという意欲は持ちながらも、現実、定量的なものをお出しする状態にないという意味で、定性的な文言によって御議論をいただいておるのが偽らざる今日の実情であるというふうに認識せざるを得ないわけであります。
  17. 渋沢利久

    渋沢委員 先日の十七日の委員会で、川崎委員がこの借換債がもたらす諸影響をただす中で、財政法の四条、五条等に示される原点というものに触れた御質問がありました。これに対して主計局の次長ですか、これはまさに不動の原点である、ここに立ってあらゆる努力が払われなければならないし、ここに返ってこなければならぬという趣旨の答えをしておった。大臣は、本法案の提案、借換債発行、これは明らかに重大な政策転換だ、今もちょっとそうおっしゃっていました。これは大きな転換です、こうおっしゃっているわけであります。大蔵大臣がおっしゃる政策転換ということの意味をいま一度改めて伺っておきたいのです。  ある意味では総理大臣は、戦後政治の総決算ということが中曽根内閣の大きな旗幟でありまして、新しい憲法を下敷きにしてこの財政法が出された、そしてこの戦後政治のさまざまな仕組みが今問い直し、洗い直すということで行革、教育改革、あらゆるものが行われているし、行われようとしているということだろうと思います。こういうことの中で、主計局はああはおっしゃったが、大蔵大臣、財政法が持っているさまざまな基本的な、原点と言われたような諸規定がございますが、ここの部分を含めてやはり今問い直しがされなければならないところへ来ているという御判断でしょうか。政策転換、政策変更という意味をいま少し具体的に大臣からお答えをいただきたい。大臣のお言葉を聞きたい。
  18. 竹下登

    竹下国務大臣 これはいずれにしても、五十一年から特例公債の借りかえは行わない、これを財政の節度として法律に明記して毎年毎年御審議をいただいている、そしていま一つは五十九年度までに特例公債依存から脱却する、これを政府の方針としてきたわけでありますから、その五十九年の脱却がまずギブアップをせざるを得なくなった、それはやはり一つの大きな事情の変更であろうと思います。したがって、そういうことから考えてきた場合に、また一方、特例公債の借りかえも行わなければならなくなった。節度として借りかえを行わないということで御審議をいただいておって、今や借りかえを行わざるを得ないということになったわけでございますから、私は、これはまさに基本的に政策の転換であるという事実認識に立たざるを得ないという考え方政策転換ということを申し上げておるわけであります。  それで、そもそも百二十兆を超す公債残高になるわけでございますが、五十年度以降に発行したものがまさにその中の百十兆でございますから、必ずしも戦後からずっと経過してきた財政の総決算ということよりも、むしろオリンピックの翌年、戦後最大の不況というときに発行された公債政策、それからその次のドルショック、そうしていわゆる石油危機、そういう事情の変化に対応した政策の中の政策転換ということであるという位置づけをすべきではないか。本来、おっしゃいますとおり、それは憲法、財政法、まさに歳入歳出というのはいずれも租税中心主義であるべきものであろうと思います。したがって、公債発行に至った今日までの歴史的経過の中に、なかんずく五十年以降、いわばよく言われます一九七〇年代以降のいわゆる不確実性の時代とでも申しましょうか、予期せざることが起こり、しかもそれを避けて通ることはできなかったという事態対応した政策の中の公債政策、その中のまさに借りかえ禁止規定を取っ払うわけでございますから、その意味においては大きな政策転換ではないかというふうに事実認識をいたしておるわけであります。
  19. 渋沢利久

    渋沢委員 戦後政治の総決算というほど大げさなものではないという趣旨のふうでありますけれども、ただ私は、財政法のいわゆる原点と言われた部分で考えれば、やはり料金法定主義、特別会計、一般会計の区分、赤字国債、公債の発行を原則禁ずる趣旨というのは、これは、言われているとおり、戦費調達の中で国債の果たした役割、戦争財政の混乱に対する反省、そういうものの中で、つまり戦争の反省の中で出てきたものだ。憲法九条のいわば裏打ちとしてつくられた財政法だ。それが原点と言われるところに制度として保障がされているというふうに受けとめているわけであります。そういう意味で、その根幹が、事実上はなし崩し的にこの仕組みも崩れてきていると思うのですけれども、まさに借換債発行というのはその流れの中で一つの大きな節になろうとしているのではないだろうかという感じを受けるわけです。そういう感じがあるからこそ歯どめという議論がどこからも出てくるということだろうと思うのであります。そういう中で政策転換、事もなげに大きな転換ですとおっしゃられると、一瞬背筋の寒いような思いもしたわけであります。この財政法に対する私の受けとめ方、不勉強でございますが、こういう受けとめ方をしておることは間違いでしょうか。
  20. 竹下登

    竹下国務大臣 財政法第四条というのは、国の歳出は原則として先ほど申し上げました租税等をもって賄うべし、いわゆる健全財政主義、こういうことであります。そこでただし書きというものがあって、公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、これが国の資産の形成であり、その資産からの受益が通常長期にわたるから、建設公債の発行は許容がされておるということであろうと思うのであります。  憲法九条という問題からこれを敷衍してみますと、戦前の我が国において、確かに巨額な公債の発行によっていわゆる戦費が調達された。したがつて、無原則かつ歯どめのない借金財政はいけないという意味においては私は理解しますが、やはり財政法でございますから、必ずしも法理論的に憲法九条とつながって財政法四条があるという趣旨のものではなかろうと思います。が、いずれにしても戦費調達のために行われたあのような借金財政というものは戒めなければならぬという点においての認識は可能であると思いますが、その九条のゆえにできた四条というふうに理解をする性格のものではないではなかろうか。やはり純粋な、国の歳出というのは原則として租税等をもって行うものであって、したがって、ただし書きで建設公債の発行は許容し得るも、特例債というものがただし書きにもないということは、いわば健全財政主義というものの立場から財政法四条というものは位置づけられておるものであるという理解の仕方ではなかろうかというふうに考えます。
  21. 渋沢利久

    渋沢委員 政府は、赤字国債の乱発を防止する、いわば財政規律を守るという立場で借換債発行は認めない、しないという立場を貫いてきたと思う。しかし、今度これを外すことによってまさに歯どめがなくなったということは事実なんです。しかし、歯どめは、大臣おっしゃるように「展望と指針」、それに基づく試算がある。これで具体的に六十五年度までに赤字公債ゼロという状態をつくりたい、そういう努力をしたい、そのことで解決をしていく、それが歯どめだ、こうおっしゃる。それが歯どめになるかどうかは別といたしましても、そうおっしゃる。しかし、借換債発行後の財政規律を守るところの制度的な保障というのはどこにあるのですか。簡潔に。
  22. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 歯どめにつきましては、先ほど大臣からお話がございましたように、まず六十五年度までに新規財源債としてはこれを脱却する、その後は、この法案の規定にもございますことと絡んでくるわけでございますけれども、政策としてできるだけ減債に努めていくという訓示規定もございまして、したがいまして、その規定に従ってやっていくというところが歯どめになるわけでございます。
  23. 渋沢利久

    渋沢委員 それはさっき大臣も言って、大臣答弁を聞かぬでもわかることなんです。それは制度的な歯どめじゃない。財政制度的な歯どめはあるのかないのかと聞いている。今までは、借換債を出さぬということ、現金償還、これが歯どめだった。そうでしょう。ところがこれを今度はやらぬ。今度の財政制度的な歯どめはどこにあるか聞いている。六十五年度までに指針と何とか、これが本当の歯どめになるかどうかというものは今聞きます。しかし、今あなたの言ったことも、要するに制度的に歯どめがあるかないかといったらないということでしょう。具体的にあるならある、なければないでいいです、あとがあるから。
  24. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 具体的には財政法四条の規定が精神的にあるわけでございます。したがいまして、我々としてはこの前具体的に「仮定計算例」で数字をお出しいたしましたが、その数字を前提に考えていきました場合に、特例公債は六十五年度に総発行残高が百六十六兆になりますけれども、その中で建設公債が約百兆円、特例公債が六十六兆円ということになりまして、その後漸次減少していくという数字をお出し申し上げております。
  25. 渋沢利久

    渋沢委員 聞いていることと違うじゃないか。そんなことを聞いてはいない。制度的にどこに歯どめがあるかと言っている。そんなものはないのですよ。それで、「仮定計算例」や「指針」で、これでやっていくということなんです。後で聞きますが、これも、何もこれでやっていくというものじゃないでしょうが。こうすればこうなるというだけの話じゃありませんか。  そこを聞く前に一つ聞いておきますが、これは五十九年度並びに五十年から五十八年までの十年間の借換債発行を可能にするわけですね。これはいつ、だれが発行額を決めるかというと、これは大蔵省がお決めになる、こういうことですね。国会はどこで正式にこの審議権を行使するのですか。毎年毎年の借換債発行額については、国会の議を経ない、国会の承認を必要とするということは全くないわけですね。あるのですか。それはどういうふうに保障されているのですか。
  26. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 特例公債の予算上の問題でございますけれども、これは、ご存知のように、国債整理基金特別会計法第5条の規定によりまして、国債の償還等のため必要な額を限度として、その範囲で政府に授権されているわけでございます。したがいまして、今後政府といたしましては、先ほど来申し上げますように、毎年度どの程度特例公債の借換債発行するかについては、努力規定趣旨を十分念頭に置きまして、各年度の財政事情等の中で考えていくということになるわけでございます。
  27. 渋沢利久

    渋沢委員 私の聞いていることに答えてもらいたいのですよ。政府がやることはわかっているのです。政府がやるのですね。国会は毎年毎年の、五十年度の分の借換債についてはどういう償還、どういう額で決めるということについて審議権を行使する場があるのですかないのですか。どこでそれは議決案件になるのですか。ならないのですね。そこを聞いているだけです。
  28. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 具体的には国債整理基金特別会計法の償還財源として予算の中に入ってくることになります。したがいまして、特会予算の御審議対象になるわけでございます。
  29. 渋沢利久

    渋沢委員 しかし、その年度年度に一体幾らの額でどういう借換債発行を決めていくかということは非常に重要な案件ですね。国会はそれの全体をやはり知っていなければならないですね。今までは、特例公債ということでやられた部分は、単年度で国会審議をその都度それぞれ経て承認を求めるという形でやってきた。借換債発行は、今の基金の予算の中で審議をする形になるということではあるけれども、これは、国会審議権の及ぶ範囲ではあるけれども、やはり予算の中での審議であって、単年度の法律案として提起されるものではないから、私はこれは国会審議権を薄めるものだという認識に立たざるを得ない。違いますか。
  30. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 財政法第四条の規定をまた申し上げることになるわけでございますけれども、第四条は、新たな財源調達手段としての公債の発行、これについての規定でございます。したがいまして、借換債といいますのは、これも御存じのように、既に財源を調達しております。金融的に言いますと、新たな貯蓄からお金を調達するのではなくて、既に調達している貯蓄を借りかえていくということでございまして、その意味で財政法体系の中では特会法五条で借換債発行、要するにそのための財源の調達を認めているという仕組みになっているわけでございます。
  31. 渋沢利久

    渋沢委員 もう既に国会の承認を経てそれぞれ認められた特例公債の発行で、その借りかえであるから、改めて一々国会の承認を得る必要はない、こういう趣旨でおっしゃるわけだけれども、借金の証文の書きかえをやるのに、五十年の分をことしどういう形で幾ら借りかえにしていくか、書きかえていくかということについて、その都度やはり従来特例公債の発行について承認を求めたような手続で国会の議を経るということが筋ではないかというふうに思うのです。そのことで初めて借換債発行が及ぼす全体の財政再建計画への影響、これに国会は介入することができるというか、見ることができるということではないだろうかと思うのですね。どうでしょうか。
  32. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 借換債につきましては、予算上は先ほど申し上げましたように特会の予算の御審議対象となっているわけでございます。諸外国におきましても、この借換債については国債管理政策上の問題として、一応政府の権限にゆだねられているところが多いという面もございます。しかし、我が国の場合は、今申し上げましたように、特会の予算の御審議対象にはなっているわけでございます。
  33. 渋沢利久

    渋沢委員 外国じゃみんなそうだと言うけれども、外国でやらないことを随分やっているじゃないですか。要するに歯どめは、先ほど来大臣も主計局も言うように、「展望と指針」、それに基づく「仮定計算例」だ、こう言うのですね。その「仮定計算例」というのによれば、歳出の伸びをゼロ%、三%、五%と三つに分けて、借換債発行した場合、しない場合ということに分けて、そうしてその数字を出しているけれども、これによると、歳出の伸びをゼロ%で見るという仮定は成り立たないものとして、三%で見ても、六十五年に要調整額が五兆一千億ですね。五%で見ると九兆八千億ですよ。一言で言うと、借換債発行しても特例公債の圧縮はできないということじゃないですか。
  34. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 今の委員指摘のケースaの場合でございますけれども、この「仮定計算例」に従いましていった場合に、特例公債は、先ほども申し上げましたが、六十五年度に残高六十六兆円になるわけでございますけれども、その後借りかえていく際に、一応の計算でございますが、十年債でございますと百分の十六ずつかえていきますので、したがって残高としては徐々に減っていくという計算になってまいります。
  35. 渋沢利久

    渋沢委員 しかし、要するに、借換債発行しても、歳出の伸びを三%、五%で見れば、それぞれ五兆、九兆というような要調整額を残すわけだ。特例公債の圧縮は結局できないということじゃないか。どうして六十五年に、借換債発行をすれば片づくということに仮定計算でなるのですか。どうも歯どめというのはこれしかないと再々おっしゃっているわけだが、それは歯どめになってないじゃないですか。
  36. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 委員指摘の点は恐らく、その要調整額が十兆、五兆という数字が六十五年度で出るわけでございますが、これをどうするか、仮に借換債ではなくて特例公債の発行によって埋めるということになると残高がふえていくじゃないか、こういう御質問と考えるわけでございますけれども、したがって、この要調整額を今後どのように解消していくかということにつきましては、歳出面の縮減合理化あるいは歳入面での各般の措置等々、今後幅広い角度から検討していくという中で解消していくわけでございまして、そういう意味で、我々としては、まず六十五年度までに何としても新規財源債である特例公債からは脱却したいという目標を掲げて考えていくという前提で先ほど来の数字を申し上げたわけでございます。
  37. 渋沢利久

    渋沢委員 これを読みましても、読み方が悪いのか知りませんけれども、あなたの答弁を聞きましても全く確信が持てないわけですね。六十五年度までの展望が出てこない。この「仮定計算例」で歳出の伸びをゼロ%、三%、五%で前年度比の試算をしていますけれども、税収の弾性値でも、すべてのケースでこの十年の平均値ということで一・一%と読んでいるわけでありますが、歳出の伸びと弾性値というのは関係するのじゃないですか。
  38. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 御質問の点がちょっとのみ込めない点もございますが、私の方で今理解いたしましたのは、歳出がゼロ、三、五と変わってくれば経済に対するインパクトも変わってくるだろう、したがってその税収も変わってくるだろうということが御質問の内容かと理解しておりますが、よろしゅうございますか。——  その問題につきましては、予算委員会等でも御議論がございましたが、今回お出ししております「仮定計算例」、これは幾つかの前提を置いて仮定して伸ばしている数字でございます。したがいまして、今御指摘の点も、要するに経済学的に言えばフィードバックしてないという点につきましても、そういう問題は我々としても十分に理解しているわけでございますが、ごらんのように「仮定計算例」の要調整額そのものが五兆、十兆という巨大な額でございます。したがいまして、これをどこで解消していくかによっても経済に与える影響がまた違ってくるわけでございまして、そういう意味でこの部分をどう処理するかということも加えて、したがって、それをさらにフィードバックしたらどうなるかという検討は必要に応じて加えるべきものであるというふうに理解はしておるわけでございます。
  39. 渋沢利久

    渋沢委員 時間が非常に少ないので細かくただせないのですけれども、税収見込みなども何か非常に不安定なんですね。この「財政の中期展望」の歳出というのは、もちろん現行制度を前提にして各省庁からのヒヤリングで詰めているわけでしょう。ですから私は、こういう試算表だけでは本当に正確なものと言えない、言い方は乱暴だけれども、どう信用していいのかわからぬ。この積算根拠をなぜもっと出さないのか、出せないのか。そこまで出してこなければ、裏づけのある計画ということになってこないのじゃないのか。  借換債発行にかかわる諸問題の歯どめはある、それは六十五年度までに赤字公債を解消することだ、この依存体質から抜け出る、それを示すものは「展望と指針」だ、それに基づくこの仮定計算だ、こう胸を張って大臣もあなたもおっしゃるのだけれども、これは、そういう意味で本当に胸を張って説明できるほどの具体的なプログラムになっているとは思えない。この積算根拠を提出してもらいたい。
  40. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 国会にお出ししましたのは「基本的考え方」といわゆる「中期展望」試算と、それから「仮定計算例」と三つございます。そのうち二番目のものにつきましては、資料をごらんいただけばおわかりのように、その積算の根拠というのは、後年度負担額推計方式によっていることにつきまして詳しくお示ししていると思います。それから「仮定計算例」につきましては、あくまでもこれは一定の前提を置いております。例えば、名目成長につきましては六・五%とか租税の弾性値については一・一とか、そのような仮定を置いております。その仮定等につきましては、すべて資料の中に試算の前提として入っております。  したがいまして、御質問の趣旨が私ちょっとのみ込めないのでございますけれども、さらにその歳出について、それでは「仮定計算例」で割ってみたらどうだとか、そういう御質問としますと、「仮定計算例」の出し方が、一般歳出についてゼロ、三、五というように総額で伸ばしておりますので、中身についてはこれをお出しするようにもともと計算がなっていないということでございます。
  41. 渋沢利久

    渋沢委員 そういうことだろうと思うのですね。だからかみ合わないと思います。  そこで、せっかく大臣がお見えになっているのに、時間があとわずかですから、大臣に幾つかお尋ねして私の質問を締めくくりたいと思うのですが、要するに財政制度上の歯どめはない、そうするとあとは六十五年度という目標を定めて、そこへ向かってしゃにむにやる以外にない、これも大臣の言われようの中でそういうことである。しかし、これも努めたいということであって、六十五年度までになくすと言ってないですよ、努めると言っている。いつかも言ったと思いますが、努めるというのは、やることはやってみたけれどもあかんだったなと言えばそれまで、責任を問われるものではないということで「努める」というように表現を薄めている。なくすとは言ってない。だから歯どめにならないという響きがある。そういう意味で非常に問題があるというふうに思うわけであります。  しかし、何遍言っても大臣の答えははっきりしておるように思うのでありますが、しかも経済運営について、財政再建に絡んで政府の中でもいろいろ意見が分かれている。経済見通しの上でも非常に不確定な要素があります。それだけに、歯どめの問題が非常に重要だというふうに私は思うのです。  大臣、例えばアメリカの経済が日本に与える影響というのは大変大きいわけでありますが、エコノミストの多くが、大統領選挙の後でのアメリカの経済はかなり悪くなるというふうに見ていると思います。同じ認識に立っておられるでしょうか。
  42. 竹下登

    竹下国務大臣 米国経済の現状と今後の見通しということでございます。  今いろいろな諸指標を見ますと、米国経済は個人消費、民間設備投資、在庫投資の増加などから着実な景気拡大を続けておるということが一般論としては言えると思います。そうして、この間貿易収支、経常収支はまさに記録的な赤字をまた計上しておるということであります。したがって、いろいろな議論が行われる中において、何しろレーガン政権の最初の目標を見てみますと、ちょうど一九八四年には、本来はアメリカの場合は財政が五億ドルでございましたか黒字になっておるという目標で最初お立てになったわけでありますが、アメリカの場合、いわば歳出削減については、これも一般論としてレーガン大統領の教書を見ますと、若干開き直りの感がないでもございませんが、国会が協力しなかったからじゃないか、こういう開き直りみたいな形になって、依然として千八百億ドルぐらいでございますか、いわば財政赤字はふえていく傾向にあるという意味において、なおそうなれば当然高金利の問題が生じてくる。したがって、最初大変な英断をもってやった所得減税、また設備投資等の企業減税というようなものが、どちらかといえば個人の貯蓄がふえていく、それが設備投資の方へ回っていくという物の考え方であったが、個人の貯蓄はふえないで消費の方へ回った、したがって一方財政赤字というものはますますふえていった、こういうことであります。  だから、懸念する向きの中には、言ってみればインフレがまた再燃するのじゃないか、こういう懸念をする向きがあることも私どもも承知しておりますが、現段階においては、高金利の及ぼす影響というものは決していいことじゃございませんけれども、今日いわばインフレ懸念というものは、われわれが懸念しておるよりは消費者物価等も比較的落ちついておりますし、そこには至っていないというのが現状の認識ではなかろうかなというふうに思うわけでございます。  だから、我々がサミットで集まりますと、要するに各国がそれぞれインフレなき持続的成長というものを目指して、各国それぞれの立場で国内における財政赤字というものを減らしていく努力をしようという方向とは、必ずしもそのとおりには来ていないというところに若干の懸念材料がある。しかし、今日の時点でその懸念が現実のものになっておるというふうには、まだ指摘できないのではなかろうかな、こういう感じでございます。
  43. 渋沢利久

    渋沢委員 私も現状がそこまで行っているというふうに言っているわけではないのです。現状は非常によく言われておるが、しかし時期で言えば、大統領選挙の後にはまた高金利、増税も一緒にやるというような状況も出てくるのじゃないか。あそこで高金利になると、設備投資も影響を受けるし、それから特に住宅や自動車のローンの国のようですから、この影響が大変問題になってくる。いろいろな分析や見通しが既にかなり突っ込んでされておるというふうに思うのです。  アメリカの経済の日本に与える影響というものが大きいだけに、こういう不確定要因、不安材料も財政再建へ向けての展望の中に現実にある、むしろ差し迫ってある、こう私は言っていい。貿易摩擦はまたそれで一層激化する。貿易摩擦を乗り越えて輸出を伸ばして稼いできたけれども、これも非常に壁が厚くなるという状況を見通さざるを得ないというものも一方にあります。  その経済運営の中で、大臣、河本さんがかなり大胆に、国会の予算が通る前にも後にも発言をしております。非常に積極的な意見の展開をしておられると思うのです。河本さんの見解の中身はいろいろありますけれども一つは、日本経済は依然として高い潜在成長力がある、これを抑えることはないじゃないかということが一つだと思う。もう一つは、日本の貯蓄率の高さというものからいって、国債発行の余地は依然としてあるという趣旨を言っていると思うのです。それで、財政危機をいろいろ言うけれども、高い成長を遂げて、自然増収と景気回復による増税で財政再建ができるというのが、河本理論というのか提言というのか、これは経企庁の金森さんですか、エコノミストの間でもかなりこの種の議論があるように思うのであります。  政府部内で、しかも経済担当の閣僚から、こういうかなり積極的な提言や発言がある。決して政府部内の不統一というようなことで揚げ足取りのような趣旨の物を言うつもりはいささかもありません。しかし、大蔵大臣としてあなたのおっしゃっておること、あるいはこの前大蔵省がお決めになった来年度予算編成へ向けての基本姿勢など、いろいろこの間聞きましたけれども、かなりニュアンスの違った形で議論の展開が政府部内にもあるということは、これはやはり非常に奇異な感じがある。大蔵大臣の見解を伺っておきたいのです。
  44. 竹下登

    竹下国務大臣 やはり政府としては、昨年経済企画庁でおまとめいただいて、政府一体の責任において明らかにしております「一九八〇年代経済社会の展望と指針」というものが一応ベースとして考えられるのではないか。そのベースで考えますと、要するに六ないし七%程度のいわゆる名目成長率を見込んでおるわけであります。したがって、仮定計算等はその中間値をとって、六・五%の名目成長等々が前提にもなっておるわけでありますから、実質成長が四%程度とされておりまして、今度の予算審議等に当たっても、ことしの見込みとして四・一%、こういうことをお示ししておるわけですから、その限りにおいては、いわばこの考え方は統一されておるわけであります。  それで、いわゆる拡大均衡、積極財政が、あるいは緊縮財政、縮小均衡が、こういうふうに判然と分けるというのもなかなか難しい問題でございましょうけれども、人それぞれによって経済運営に対するニュアンスの相違はあると私も思っております。自分自身を振り返ってみても、余り緊縮、いわゆる縮小均衡でもない、もちろん拡大均衡でもない、ちょうど中立ぐらいなところかなと自己判断を時にしてみたり、自己反省をしてみたりしておるわけでございます。  潜在成長力のもう一つは、見方によって大きな差があると思うのでございます。要するに労働の質とでも申しましょうか、それから金融の状態貯蓄性向が高いということを今おっしゃったが、そのとおりでありますだけに、そういうことからすれば、潜在成長力というのはほかのどこの国よりもあるような気はいたします。一方、資源小国でありますので、その点のマイナス要素はあるにしても、潜在成長力をどう見るかというのは、大変数字的には難しい議論でございますけれども一つは、国会等議論されておるときにも、潜在成長力をもっと高く見るべきじゃないか。事実、仮に七・五とか八とかで名目成長を見てまいりますと、自然増収で六十五年の脱却はできるという数字も計算上は出てまいります。したがって、そこのところが一番難しいところでございます。ただ、河本大臣からの、予算が通ったら早速勉強を始めてもらいたいという点には、税制の問題等についても勉強はしてもらいたい、こういう御要請は確かに私どもも受けておるところであります。  実感として我々が感じておりますところの景気というものは、高度経済成長になれておりますだけに、四%程度で景気が回復したという認識は、実際問題として、実感としてはなかなかそういう感じを受けないと思うのでございます。それだけに、その点は国民の皆さん方にもある種の意識転換というものをお願いしなければならぬではないか。しかし、少なくとも経済の諸指標を見る限りにおいて、緩やかながら景気回復基調にあるという事実は実体として存在しておりますので、こういう場合にこそむしろ財政改革の好機としてこれをとらえて、それにさらに積極的に財政が対応してその成長率を引っ張り上げていくということに対しては、やはり勢い財政当局者としては消極的にならざるを得ない。せいぜい行うことといえば、金融は諸般の情勢が大変よろしいといたしますと、財政の出動ということになれば、今の時点では、公共事業の執行に関する機動的、弾力的運用というものが財政の出動し得る限界じゃなかろうかな、こういう事実認識をいたしておるわけであります。
  45. 渋沢利久

    渋沢委員 河本さんはかなり大胆に言っているわけですよ。公共事業の前倒しだけではだめ、不十分、大幅な所得税減税、投資減税などをさらに思い切ってやれ、内需喚起、景気対策を大胆に展開しろという趣旨を言っておるのですね。先ほど尋ねましたアメリカ経済との絡みなどを見て、むしろ大胆な手法で内需型の景気浮揚策をとって一挙に乗せちゃう、思い切って乗せる、それがいわば外敵に対する突破策になるという展望があって言われているのかどうかよくわかりませんけれども、何かそんな感じで、総裁選挙だけ見て物を言っているというふうには受け取らないで、まじめな議論として見る必要もあるというふうに思うわけですが、今の大臣お話を聞いておっても、かなりニュアンスの違いが際立っておる。  今の話は、河本さんからは、予算が通った後でいろいろ詰めたいというような、検討をしたいというような申し入れがあったというのですが、それは、前から言っておった河本提言というものについての検討をしてくれというような趣旨なのですか、それとも何か改めて相談したいというようなことでやられようとしているということですか。
  46. 竹下登

    竹下国務大臣 二つあると思っております。  最初政府・与党連絡会議等で党の政策責任者、そして政府部内では大蔵大臣の私に対して、税制というものについて、表現としては所得税の問題とか投資減税の問題とか、あるいは直間比率の問題とかいうことについて、基本的に勉強してもらいたいということでありました。  それから対外経済対策の面では、今おっしゃいます内需拡大ということで、言ってみればもろもろの貿易摩擦等を排除していくための努力としての政策というものを、これは大蔵大臣だけではございませんが、我々経済対策にかかわる閣僚に対して勉強してもらいたい。したがいまして、その問題については、大体今月いっぱいということになりますと、連休にも入りますから、今の場合、招集していただくとすれば二十七日ぐらいかな、それに向かって私どもは私どもの部内で、主として金融等になりますけれども、今問題を検討しておる最中であるということでございます。  ただ、その問題は、経常収支等にかかわる問題にもなってまいりますが、一方でアドホックの円ドル問題の議論を詰めておりますので、したがって、それの報告が五月にいただけるということになっているものですから、それとのタイミングの問題をどうするか。勢い、それの出る前に余り具体的なものが出るのもいかがかという議論もございますでしょうし、その面においてだけはある程度抽象的にならざるを得ないのかなというようなことを折々詰めておる現状でございます。
  47. 渋沢利久

    渋沢委員 河本さんはかなり積極的な議論の展開をしているわけで、これはやはり今の大蔵大臣の見解といいますか、政府の全体の対応との際立った違いに注目せざるを得ないと思うわけです。六月のサミットということもあり、ヨーロッパや米国からは日本の内需を高める積極的な施策を求める、そういう外からの風もかなり厳しく吹いてくるだろう。河本さんが言っているように、日本国内の購買力そのものを思い切って拡大をする。大減税、この間のように中途半端な増税つきの減税というようなことではなしに、大胆な大減税をやるべきだ。当然大型補正予算という議論にもつながっていると思うのです。あの方は大型補正を組めということを言っておられた。これを下げたという話はもちろん聞いていない。むしろ一連の積極的な提案を続けておられる。今の大臣お話でも、政府部内でもさらにそれを詰めるということでありますけれども、これはやはりぜひ具体的に、方針を誤らないように詰めていただきたいと思うのです。  時間が参りましたので、大変何か中途半端な質問になりましたが、最後に、残っている時間一、二分で大蔵大臣に、この財確法案審議に関連をしてぜひひとつ要請を申し上げておきたいと思うのであります。  やはり先ほど来私申し上げましたように、借換債発行ということを一つの転機として、財政制度の上で非常な不安要因が残っておるというふうに思いますで先ほど申し上げましたように、この財政法の原点がなし崩しにこうして崩れていくという状態は大変憂慮にたえないと思うのです。竹下大蔵大臣は将来の政権を担当する有資格者の一人で、ニューリーダー、こう言われておる息の長い政治家でいらっしゃるのだから、中曽根さんが私の内閣の間にどうする、こうする、こうおっしゃっても、これはしょせんそれまでの響きでありますが、あなたはやはり息の長い政治家として、ニューリーダーとして、財政再建にまさに責任を負われているわけであります。あなたも保守本流に位置する政治家であるならば、抽象的なことになるかもしれませんが、日本が強大な軍事大国を目指すような方向は実際はとるべきじゃないと本来お考えになっているはずだと私は思うのですよ。軍事大国に日本がなれば、経済大国にはなり得ない。両立しない。世界の歴史が示しておる。世界の現状が示しておる。国論の分裂があると国際的には孤立をするのです。改めて多くを言いませんが、日本は国論の分裂を避けてやはり外交と経済で勝負をする、そういう意味で強い国になるべきで、絶対に軍事大国を目指してはならぬ。  私は、財政法の原点は憲法九条の裏打ちとしての財政制度の出発でなかったかと申しました。それが今崩されようとしているというその感じがこの借換債発行の中に見える、こう申し上げましたが、中曽根総理の戦後政治総決算という響きの中では、どうもアメリカのタカ派とでもどことでも組んで、日米同盟のきずなで御自身の政治基盤の弱点を補おうというような動きに見える。非常に危険だ。やはり軍事大国を目指すような方向に日本の政治のかじを持っていってはならない、こういう思い。保守の本流なら、むしろそこをきちんと踏まえておられるはずだという認識と期待を私は持ちたいですね。  そういう意味でこの歯どめの議論もいたしましたが、私は、しかと歯どめがあるというふうには、きょうの質疑を通してもいささかも手ごたえを受けとめるわけにいかなかったわけで、非常に残念であります。しかし、この点は心して今後の財政運営に対処してほしいということを申し上げて、私の質問時間が参りましたので、終わります。
  48. 瓦力

    ○瓦委員長 箕輪幸代君。
  49. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 財確法の審議に当たって御質問するわけですが、これまで特例公債の償還に当たっては借りかえをしないということが法律で定められ、再三言明もされてまいりましたが、今回これを全面的に改めて借換債発行ができるようにする、ほんの申しわけ程度に、借りかえをできるだけしないよう努力するという形にしようとしているわけですね。  財政法の四条では特例債発行を禁じているわけですけれども昭和五十年から、臨時特例の措置ということで財政の特例法をつくって、赤字国債を発行し続けてきました。これはいわば財政法違反を合法化してきた措置というふうにも言えると思います。しかし、それでも建設国債とは違って、償還に当たっては借換債発行は行わないという歯どめがあるので、これで許してほしいと言わんばかりの合理化がされてきたわけです。ところが、今回、この赤字国債の償還に借換債発行することが許されるということになれば、建設国債との違いは一体どこにあるのだろうかということで、全く違いがないのではないかとも思います。  そうなれば、これは真正面から財政法四条を踏みにじって、開き直りとでも言えるようなものではないかと私は思うわけです。これまでは、恥ずかしながら臨時特例の措置でございますのでお許しくださいませというような感じでやってきたわけですけれども、それでも財政法の四条の基本精神というものは厳然としてあって、特例措置はできるだけ早くやめたいというふうな姿勢を示してまいりました。ところが、今回現金償還という歯どめを全面的になくすということになれば、幾ら努力規定があったとしても、実際上財政法四条というのは完全にあってなきがごときと言われても仕方がないというふうにも言えると思います。  そもそも財政法の四条というのは健全財政を担保するために設けられたものであるということは、これまで各大臣が言ってこられたわけです。ただいまの審議にもありましたように、一方では憲法九条を財政的に裏づけるために財政法が設けられた、そこに四条の意味もあるんだということも言われておりますし、そういう点も含めて考えてみましても、今回、この四条に真正面から全面的に違反していくということは到底許されないことだというふうに思います。  今日、財政危機がどんどんと悪化してきたというのは、そもそもこの財政法四条は健全財政を担保するというために設けられていたわけで、これを守ってさえいれば健全財政が維持されてきたはずなのに、これに違反してきたために財政危機というものを見事に招いてしまったということが言えるのではないでしょうか。今日のこの事態を踏まえて財政法四条をもはや投げ捨ててしまうというような姿勢は、まことに問題があろうかというふうに思います。こういう状況のもとで、財政法四条というのを一体どのように受けとめておられるのか、大臣の姿勢をお伺いしたいと思います。
  50. 竹下登

    竹下国務大臣 財政法四条というのは、国の歳出はまさに原則として租税等をもって賄うべしということにうたわれておるいわゆる健全財政主義というものを明らかにしておるということであると私も思っております。公共事業費と出資金及び貸付金の財源については、これは国の資産の形成であるから、その資産からの受益が通常長期にわたる、だから建設公債の発行は許容し得るものであるという趣旨であると私も思っておりますから、特例公債発行というのは元来これは好ましいものではないという認識は等しくしておるわけであります。  ただ、憲法九条から来たものかどうかということになりますと、これは確かに、いわゆる戦費調達というものにおいて巨額な公債発行をやったわけですから、無原則な借金財政はいけないという意味においては、これは考え方を同じくするわけでございますが、この九条があるから四条ができたという性格のものではなく、あくまでも健全財政主義というものを中外に明らかにしたというものが四条ではないかというふうに考えております。
  51. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 その財政健全主義というものを財政法四条で担保しているわけですが、それを踏みにじってきた、その事態を踏まえて、今この財政法四条をどう受けとめてどうするのかということですね。新たな歯どめの問題も論議されておりますけれども、実際上何の歯どめもないということになりますと、この四条というのはまさにあってなきがごとき状態ではないか。それでもなおこの財政法四条というのは堅持しているというふうに言えるのかどうかということですね。その点はいかがですか。
  52. 竹下登

    竹下国務大臣 先ほど来の御議論にもございましたいわば歯どめというものは、政策上六十五年度脱却という努力目標、これが一つの歯どめであろう、そして国会に対しては、その都度歳入歳出両面にわたって議決をいただくということがこの歯どめであろうということであります。ただ、その手法についてはそれが明らかにされていない。その手法については、まさに「中期展望」それから「仮定計算例」等を参考に供して、そしてこのような国会議論の場等を通じながら、国民のコンセンサスがいずこにあるかということを模索していこうという姿勢で臨んでおるわけであります。
  53. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 財政法四条の受けとめ方が余り重くないという感じで、私はまことに遺憾だと思うのです。     〔委員長退席、中西(啓)委員長代理着席〕 今日、事態が非常に悪化しちゃっている中で、もはやそれをどうしようもないという事態であるから、これを打開するためにやむを得ないという姿勢だろうと思いますけれども、やはり財政法四条の原点というものをしっかり受けとめて財政運営をしていただくということが肝心であろうかと思います。  借換債発行されるわけですけれども、今後それが一層雪だるま式にふえていって、新発債も含めて国債発行というのが急増してくるというふうに思います。そうした中で、国債消化のために国債の多様化というのが検討されているようですし、特に、各種短期国債発行の準備というものも進行しているようですけれども、アメリカなんかでは国債残高の三分の一が期間一年以下の短期国債で占められているということもあわせ考えますと、今後、日本もそういう方向にどんどん進んでいくのではないかという懸念もあるわけです。そうした中で、短期国債の問題についてはこれまで各委員の論議もございましたので、それに関連して、政府短期証券の問題をお伺いしたいというふうに思います。  特に、大蔵省証券の発行というのが近年急増をしておりますが、このような大蔵省証券の発行がふえている原因というのは一体何なのでしょうか。
  54. 西垣昭

    ○西垣政府委員 大蔵省証券につきましては、過去の実績をちょっと申し上げてみますと、平均発行残高におきまして、五十四年度が一兆二千六百九十八億、五十五年度が一兆六千四百十六億、五十六年度が二兆九千五百四十二億、五十七年度が三兆五千三百四十四億と毎年ふえてまいりましたが、五十八年度は少し減りまして二兆九千七百五億、こういう姿になっております。蛇足かもしれませんけれども大蔵省証券と申しますのは、国庫金の一時的な資金不足を補てんするために発行するものでございます。そういうものでございますので、大蔵省証券の発行残高は、税収の収納状況でありますとか、国債発行の進捗状況でありますとか、そのほか、歳入の収納状況あるいは公共事業費の支払い等歳出の進捗状況等によって変動するものでありまして、各年度、各月の発行残高の増減理由はさまざまでございます。そういうことでございますので、先ほど、毎年ふえているというふうにおっしゃいましたが、五十八年度は若干減っているということで、この組み合わせでもっていろいろになろうかと思います。こういうことでございますので、大蔵省証券発行残高の一般的増加要因という形で御説明をするのは困難ではないかな、こう思います。
  55. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 大蔵省証券の発行が増加傾向にあるということは言えると思うのです。大蔵省証券は、おっしゃるように全体として国庫資金繰りのために発行するものというふうに言われているわけですが、その発行は国債発行消化の問題とも関連しているというふうにもおっしゃいました。実際に長期国債の発行が増加するにつれて大蔵省証券も連動して増発という傾向もあるわけで、大蔵省証券が長期国債発行かわり金を償還財源として発行される関係を示しているというふうな指摘もあります。  私はこういう状況を見まして、大蔵省証券と国債の関係というものがどういうふうになるのかということですけれども昭和四十一年当時に初めて建設国債が発行されるときに、国債と大蔵省証券との関係で、当時の福田大蔵大臣が、「公債の消化につきましては、」「市中消化の方針を堅持していきたいと思うのです。」「市中の様子によって、窮屈な状態でありますれば、まず大蔵省証券を発行しておく、そうして市中情勢が順調になったというところをもって国債に置きかえていく、こういうことも考えておる」というふうに述べておられます。これは、国債発行のための金融環境をつくるために大蔵省証券を日銀に引き受けさせるということであり、日銀の中立性ということから見ても問題ではないかというふうにも思います。日銀による大蔵省証券の直接引き受けが我が国の公債発行政策を支える役割を果たしている、そういうような姿、あり方は問題ではないかというふうに思うのですが、この点はいかがでしょうか。
  56. 西垣昭

    ○西垣政府委員 一般論として申しますと、四条、五条の系統の国債と七条の資金繰り証券である大蔵省証券とは違うものでございまして、大蔵省証券によって調達された資金というのは歳出の財源には充てられない、あくまで資金繰りのための資金調達である、こういったことで日銀引き受けが認められているわけでございまして、その点については私どもの運用としても問題はないのではないか、こういうように思っております。  なお、昭和四十一年に当時の福田大臣答弁された件につきましては、当時の状況のもとで、市中の金融を逼迫させないようにという御趣旨答弁されたものというふうに理解してよろしいのではないか、こういうように思います。
  57. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 理屈で言うとおっしゃるようなことになるかもしれませんが、現実には、大蔵省証券は日銀で直接引き受けがされて、その資金は市中に出回るわけですね。そして、その後国債発行によってそれを吸収していくというやり方、それがそのようにねらってやられているのか、あるいは結果としてそうなっているのかというようなことはあるかもしれませんが、客観的には、そういうふうな大蔵省証券の発行、これが容易に日銀で引き受けられるという事態、それから考えますときに、長期国債の発行を支えているということはやはり言えるのではないかと思うのです。そういうことになれば、日銀引き受けということは七条で大蔵省証券に認められている趣旨から逸脱していくということにもなるわけで、そういう点を非常に心配するわけです。  そして、今後短期国債の発行ということも行われていく場合に、大蔵省証券との違いということも余り明確でない中、実際上日銀引き受けという形に進んでいくのではないかという懸念もあります。財政法の五条で日銀の引き受けを禁止している規定がございますけれども、その中で「但し、特別の事由がある場合において、国会の議決を経た金額の範囲内では、この限りでない。」といっただし書きがあります。この「特別の事由」というのを一体どのように理解したらよろしいのでしょうか。
  58. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 この五条の規定を御説明いたします場合に、なぜ五条の規定ができたかということを御説明した方がいいかと思いますので、当時の提案理由の説明の中の文章でございますけれども、「一般の者の貯蓄によって公債を消化するという方法によれば、財政上はきわめて健全でありまして、インフレーションの危険は起らない、ところが日本銀行に引受けさせますと財政インフレを超す」、こういう関係から五条の規定を置いたということでございます。したがいまして、その五条の本則のただし書きになるわけでございますが、このただし書きに書かれております「特別の事由がある場合」という意味につきましては、今申し上げましたような立法の精神に基づいて「特別の事由」も考えていかなければいけないのではないかというふうに思うわけでございます。  そこで現在、具体的にそれではどういうものが「特別の事由」に入っているかといいますと、特別会計の予算総則に規定を置いておりますけれども、日本銀行が保有する公債の借りかえのために発行する公債、それにつきましては国会の議決を経て日銀引き受けにより発行しているということでございます。これは、先ほど御説明いたしましたような本則がつくられました精神からいいまして、借換債の場合には既存の貯蓄で既に取得されておりますので、通貨膨張の要因とならない、したがって、インフレのおそれがないということから、この事由に該当するということになっておるわけでございます。現在、その一つだけが「特別の事由」に該当しているということでございます。
  59. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 非常に限定的に解釈をしなければならないということだろうと思いますけれども、日銀に引き受けをしてもらえば極めて簡単に資金が融通できるということで、これが安易に流れないように、限定的な解釈を厳密に行うということで、今後も運営上厳しくしていただかなければならないというふうに思います。  それから、今後長期国債の発行が引き続いて行われ、多量の国債が市中で消化されなければならないということになってきますけれども、結果的には回り回って日銀がこれを引き受けていくという形になっているわけです。その際に、将来にわたって国債残高が非常にふえる、そういう中で金融市場というものも大変圧迫されて不安定な要因も強まってくると思います。そうした中で、長期国債についても将来は日銀引き受けというような事態も起こり得るのではないかという懸念もなきにしもあらずというふうにも思いますが、そういうことは絶対にないというふうに伺ってよろしいでしょうか。
  60. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 この財政法の規定に従いまして、我々としてはこの問題について健全財政の建前を守っていかなければいけない、このように考えております。
  61. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 財政法四条があっても特例債発行されるような事態でございますので、財政法があってもまたそれを改正して発行できるようにするというやり方というのはあり得るわけでして、財政運営上そういうことが絶対ないように、健全財政ということは厳に強く戒めてやっていただきたいというふうに思います。ちょっとその点の大蔵大臣の御答弁を伺って、次の質問に行きます。
  62. 竹下登

    竹下国務大臣 これはやはり財政法の建前をきちんとして、今の蔵券は別といたしまして、日銀引き受けということはやってはならない、これは越えてはならない一線だという事実認識は持っていなければいかぬと思います。
  63. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 日本の財政が大変危機を迎え逼迫しているという中でこの法律審議されているわけですけれども、財政審では「財政改革を進めていくためには、歳出面において国・地方を通ずる歳出構造の合理化に最大限の努力を」というふうにも言っております。それから歳出抑制のために制度、施策の基本に立ち返った見直しという事も述べられ、さらに国と地方の役割分担の見直しというのも言っているわけです。こうした点に直接かかわって、今日大幅な福祉の切り捨て、切り下げが強行されようとしている、それを私は問題にしたいというふうに思います。  端的に、きょうは児童扶養手当の問題をお尋ねします。  二月二十二日の大臣所信に関する質疑の中でもお尋ねをいたしましたが、国と地方との役割分担の見直しというのに絡んで、今度地方の負担が導入されるということで、この児童扶養手当の改正問題については自治体が強力な反対を展開してきたところですけれども、最終的には大蔵、厚生、自治三省で合意ができたというふうに言われております。  自治省にお伺いしますけれども、この児童扶養手当の改正について大反対をしておられたのにあっさりと合意ができたというのは、到底納得できないのですけれども、一体どんなことだったのでしょうか。
  64. 前川尚美

    ○前川説明員 お答えを申し上げます。  御承知いただいておりますとおり、児童扶養手当は、従来、母子福祉年金を補完するものとして制度が立案をされ、実施をされてまいったわけでございます。したがいまして、財源負担面におきましても、年金の補完的性格を持つものとして全額国庫負担によって対応がされてきたということでございます。私ども自治省の立場に立つ者として、この年金の財源負担につきましては、従来から、これは全額国庫負担でございますから、制度の改正なしに地方負担を導入することは納得しがたいということを、あらゆる機会に申し上げてまいったわけでございます。  昭和五十九年度におきましては、この従来の児童扶養手当制度の改正が行われまして、福祉施策として改められるということでございます。したがいまして、私どもといたしましてもそのことを前提にいたしまして、福祉施策に関する他の制度との均衡等を考慮いたしまして、地方負担の導入に同意することにしたということでございます。
  65. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 今度の法改正では、その経過にも重大な問題があります。  昨年三月、厚生大臣の私的諮問機関として児童福祉問題懇談会が設置され、十二月二十六日に報告書提出されておりますけれども、母子福祉の問題を審議するこの児童福祉問題懇談会に、実は婦人の代表は一人もいないわけです。さらに公的諮問機関の中央児童福祉審議会というところには全く語らないままで、ことしの二月十日になって社会保障制度審議会に形式的な諮問を行った。この社会保障制度審議会にも婦人の代表はいない。そしてわずか一週間後の十七日には答申が出されて、法律改正案の提案という方向に来たわけですけれども、そのほか自治体等にも十分な意見を求めたり説明したりということがないままに強行しようという、非常に強引な姿勢が感じられます。これはやはり国民を無視した政府の態度で、私は到底納得できないと思います。  と同時に、実は昨年、厚生省が母子世帯実態調査というのをやっているわけですけれども、その結果は公表されておりませんし、中央児童福祉審議会では児童福祉の総合的見直しというのを進めて、ことしの六月に結論が出される予定というふうに言われているわけですから、これの結論を見た上で改正案を出しても少しも遅くはないし、なぜこんなに急ぐのかというのに非常に疑惑を持つわけです。     〔中西(啓)委員長代理退席、委員長着席〕 私的諮問機関の報告だけをにしきの御旗として強引に突っ走ったやり方、これは国民の大きな反対運動の前に力ずくで押し切っていくという姿勢で、私は到底許すべからざるやり方だというふうに思います。  今回の法改正で、目的規定に新たに母子世帯の「生活の安定と自立の促進に寄与する」という点が加えられました。現行法と比べて「自立の促進」ということが違いですけれども、自立の促進を担保するための施策条文がこの法律の中のどこに盛り込まれているのか、端的にお答えいただきたいと思います。
  66. 土井豊

    ○土井説明員 今回の改正は、先ほどお話がありましたとおり、児童福祉問題懇談会というところで約一年近くいろいろ議論をいたしまして、かつまた、地方の現地調査等も行いまして、その上で、今後の方向を示す考え方が昨年の暮れに出されました。私ども、その考え方を基本に置いて制度の改正を行おうとするものでございます。  その場合に、ただいま御質問にありました母子家庭の「生活の安定と自立の促進」を図るということを新しい制度の眼目といたしておるわけでございまして、この考え方は、母子及び寡婦福祉法におきましても既に、母子家庭は、「自らすすんでその自立を図り、家庭生活の安定と向上に努めなければならない。」という規定がございまして、そういう母子家庭対策、母子福祉対策という考え方に立ちまして、今後ともそういう中で児童扶養手当も運営してまいりたい、そういう考え方でおる次第でございます。
  67. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 そうすると、特別にこの法律で「自立の促進に寄与する」施策というものが規定されているわけではないというふうに承りました。  そして、従来の法律と比べても基本的に変わるところは何もない。私は、自立促進のための新たな手だてというのを何もとらないままでこの法律が自立促進だというふうに言っているとすれば、それは給付の制限を行ったり支給の対象を限定したりということによって、自立をせい、自立をせいと言わんばかりであるというふうに受けとめざるを得ないわけです。「自立の促進」というのが単なる精神規定、従来ある他の法律規定をここに引っ張ってきただけだとするならば、基本的なこの法律の目的、性格というものは少しも変わらないものだと受けとめざるを得ないわけですが、それでよろしいのでしょうか。
  68. 土井豊

    ○土井説明員 もともとこの児童扶養手当制度というのは母子福祉年金の補完という位置づけでございまして、その年金自体が現在九百件程度、非常にわずかになっておりまして、六十一年度には年金改正によりましてなくなるというような状況を踏まえて、今後この制度をどういうふうに運営をしていくかということが根本的な問題でございます。  先ほど言いましたような目的をもちまして、今回福祉施策として見直しを行ったという次第でございますが、しかしながら、一方におきまして、母子家庭に対する種々の対策というものは、私ども、先ほど申しました母子及び寡婦福祉法等々によりましていろいろやっておるわけでありまして、今回の改正と関連いたしまして、例えば母子福祉貸付金という中に新しく児童扶養資金という無利子の貸付制度をつくりまして、そういう形で種々の施策を進めていく、あるいは母子相談員による種々の行政サービスを今後とも充実させていく、そのように考えている次第でございます。
  69. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 この法律の第一条、「父と生計を同じくしていない児童」という規定の仕方も、また「児童の福祉の増進を図る」という規定の仕方についても全く同じです。そして、第二条の第一項、「児童の心身の健やかな成長に寄与すること」を目的とするという点でも同じです。法律の条文から見まして、「目的」を見ても、それからこの「児童扶養手当の趣旨」というものを見てみましても、制度の基本的な考え方が変更されたということは、何らこの条文から看取することができないわけです。  ですから、この法律の目的というところから事は考えなければならないと思いますが、私は、そういう点から見まして、まず第一に、母が婚姻によらないで懐胎した児童については支給しないという今回の法改正の趣旨、これは立法の目的に反するのではないかと言わざるを得ないと思います。憲法はもとより、国際人権規約や婦人に対する差別撤廃条約あるいは児童憲章等々、児童の権利は至上のものであるというふうに規定している、そういう精神から見ても、この法律の目的から見ても、婚姻によらないで懐胎した児童について支給しないというのは、当然のごとくは出てこないと思います。出生の事情によって児童の健全育成を図ったり図らなかったりというのはおかしなわけで、児童の福祉の増進についても、出生の事情によって差別されるというのはおかしいと思います。  未婚の母に対するいわれなき差別とか偏見とかというものがあるわけですが、未婚で母になるという事情は、実は一般的に俗に言われている問題だけではなくてさまざまな事情があるわけで、必ずしも母親が非難されなければならないような、そんな一方的責任があるような事情ばかりではないことは御承知だと思います。社会保障制度審議会でも、真に援助の必要な人には手厚い保護をということを言っているわけですし、この法律規定の仕方から見ても、「父と生計を同じくしていない児童」、これに着目しているわけですから、そういう事情になった、あるいはそういう事情をもたらしたときに、母がどのような状況に置かれているかということによって差別をするというのはまことにおかしなことだというふうに思います。だとするなら、これは法文に書かれていることだけではなくて、その裏にある例えば道徳的理念みたいなものをここに強引に盛り込ませてきたのではないかというふうにも思われますけれども、その点はいかがでしょうか。
  70. 土井豊

    ○土井説明員 いわゆる未婚の母の問題でございますが、この手当は離婚をした母子家庭に対する手当という基本的な性格を持っていると考えております。結婚をした夫婦で子供を養育しているわけでございますが、離婚ということによりまして生活上の大きな激変というものが生じてくる、そういうような母子家庭に対する生活の安定と自立の促進という趣旨で支給されるものでございまして、離婚という事実がない、今お話がありました未婚の母等にまで税金による手当の支給を続けるということについては、種々の批判もございまして、今後につきましては、私どもはそういう方々にはこの手当の支給を御遠慮いただきたいというふうに考えた次第であります。  なお、先ほどちょっとお話がございました、ことしの六月に中児審でお答えが出るというのは児童手当でございますが、児童手当につきましては、これはそういうようなものとこの児童扶養手当は異なるのではないかというような考え方に立っている次第でございます。
  71. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 離婚という事実によって家庭に変化が起こり、その激変を緩和する措置として設けられたというのなら、そのように条文にちゃんとお書きになればよろしいのですね。この法律第一条はそうではなくて、「父と生計を同じくしていない児童」、そしてその児童を健全に育成するように「福祉の増進を図ることを目的とする。」と言っているわけです。  それからさらに第四条、どのような児童に手当を支給するかということを定めたところで、離婚だけではありません、ほかの条件も書いてあるじゃありませんか。例えば五号「父が引き続き一年以上遺棄している児童」、それから六号で「父が法令により引き続き一年以上拘禁されている児童」、つまりそういう事態が起こってから一年以上たってしまった、そういう家庭でも、そういう父と生計を同じくしていない生活困難な家庭の児童に対して、福祉を増進するためにこういう手当を支給すると書いてあるわけですから、離婚だけではないという事実から見てみても、今おっしゃったのはおかしいのではありませんか。
  72. 土井豊

    ○土井説明員 今、一年以上遺棄されている場合あるいは拘禁されている場合というお話がございました。遺棄というのは、例えば蒸発というような場合でございますが、それ以前の状態というのは父母が子供を養育している状態。拘禁の場合も同じでございます。そういう状態であった者が、何らかの事情で父が蒸発したりあるいは拘禁されるということになったわけでございまして、そういうケースは離婚に相当するケースというふうに考えている次第でございます。
  73. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 あくまで離婚ということにこだわられるわけですけれども、親が離婚したかしないかということは子供にとっては何の関係もないし、責任もない事実に属するわけですね。親の事情によって子供の受ける手当というものがこのように差別をされるということについては、到底納得できるものではありません。だれも好きこのんでどこの親から生まれたいと思って生まれてくるわけではありませんで、そういう点から考えてみましても、生まれてきた事実そのものに着目をして児童の健全育成というのを図る、それを取り巻く状況については一切差別をしないということこそ平等な取り扱いということになるのではないかというふうに思います。私は、今おっしゃった答弁は到底納得できない。そして、何とかして支給をできるだけ減らそうとする強引な姿勢と受けとめて、到底それを承知することはできません。  続いて別の質問に移りますけれども、この四条の五項で、婚姻を解消した場合、離婚した場合ですね、「当該児童の父の所得が、」「政令で定める額以上であるときは、支給しない。」というふうに規定されておりまして、その政令の定めというのは、年収六百万円以上の収入があるときは支給しないというふうにするように伺っております。収入というのは所得とは違いますが、その辺のところはどのように政令で規定されるのでしょうか。
  74. 土井豊

    ○土井説明員 現在予定をしております案でございますが、離婚をした後、父が一人だけになった場合、この場合は六百万の収入というふうに考えております。ただ、子供が二人、三人いて、それを母親と父親が分けて引き取る場合、養育する場合、そういう場合には、父親の場合にも扶養親族というものがいるわけでございますので、例えば父親の扶養親族の数が三人あるという場合には七百万という金額を現在案として考えております。
  75. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 私がお聞きしたのは、収入と所得とは違いますでしょう。税金の問題であれこれ論じられる場合に、所得ということと収入ということとは全く別ですから。今おっしゃったのは年収六百方あるいは年収七百万ということのようですが、所得でいうとその辺のところはどうなるのでしょうか。
  76. 土井豊

    ○土井説明員 給与収入が六百万の場合の所得でございますけれども、四百三十五万という給与所得に相なります。
  77. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 四百三十五万というのは給与所得ですか。では、その他の給与以外の所得の場合はどうなるのですか。
  78. 土井豊

    ○土井説明員 給与所得以外の場合には、それぞれ収入があり、経費があり、所得が幾らあるかということがまちまちでございますので、政令段階で具体的に決めるという考え方でございます。
  79. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 今その政令を聞いているわけですから。政令でまだ給与所得以外の所得の基準というのは決められていないのですか。私がさっきからお聞きしているのは、法律はもちろん「政令で定める額以上であるときはこという規定の仕方ですから、その政令で、今、四百三十五万という給与所得者の基準をおっしゃったわけですけれども、給与以外の所得の場合どうなるのかということです。
  80. 土井豊

    ○土井説明員 具体的には政令段階で定めますが、給与収入の場合には先ほど言いましたとおり四百三十五万という所得を予定をいたしております。
  81. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 私が質問したことにちっとも答えていただいてないのですけれども、時間がどんどんたっていっちゃいますから、別途詰めたいというふうに思います。  それから、離婚後、失業とか倒産とかで事情が変更し、収入が激減するという場合もございますけれども、こういった場合に果たして手当の支給を受けることができるのかどうかという点について、前回お尋ねしたときの答弁は極めて不明瞭でしたので、いま一度その点についてお答えをいただきたいと思います。
  82. 土井豊

    ○土井説明員 離婚の時点で収入が六百万以上、一定額以上ありまして、そのために子供に手当が支給されない父親が、離婚後、失業でありますとか倒産でありますとか、そういう客観的な事情で所得がなくなった場合、そういう場合には何らかの救済措置を講ずるという予定にいたしております。
  83. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 それは第四条の五項ただし書きの中にある「その他の特別の事情により母又は養育者が父に当該児童についての扶養義務の履行を求めることが困難であると認められるとき」というのに該当するのでしょうか。
  84. 土井豊

    ○土井説明員 該当いたします。
  85. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 ぜひ弾力的に、支給が行われる方向で処置していただきたいというふうに思います。  実は、この手当の支給期間が今回七年間というふうに限定されますけれども、これは非常に不都合な規定だというふうに思います。と申しますのは、平均すると五年程度だからこれで十分じゃないかというような御説明もございましたけれども、子供が十一歳で離婚したときには十八歳まで手当を受けることができる。しかし、子供が八歳未満で親が離婚した場合には十五歳で打ち切られる。これは非常に不公平だというふうに思うのですね。子供が義務教育だけではなくて、今ほとんど高校に進学する時代を迎えまして、こうした義務教育修了で手当の支給を終わらせてしまうということは、時代にマッチしないと思います。手当が十五歳から十八歳にまで引き上げられたというのは、五十四年の時点でやっとこれが実現したばかりであって、今回それをぐっと引き下げるということは非常に問題だろうというふうに思います。当然、義務教育ではなくて高校修了まで手当を支給すべきだというふうに私は強く主張します。平均して七年の中におさまるから七年というふうに決める必要はないので、どんなに頑張ってみても、子供が十八歳になれば自動的に手当は打ち切られるわけですし、さらにまた、再婚すれば打ち切られるというようなことで自動調節機能も働いているわけですから、あえてここで強引に制約する理由は全くないということを強く申し上げておきたいというふうに思います。  それから、大変心配されておりますのが、今回国の施策から地方自治体の施策に移ることによって、例えば現場で大変厳しいチェックが行われるのではないか。大体、藤尾政調会長も、今まで地方負担がないために、申請されたものが十分審査されず、そのまま出てくる疑いがあるなんという認識をしておられるわけですから、地方負担を導入するとかなり申請が制約されて、その分で支給が減るのではないかという期待すらしておられる不謹慎な発言まである状況から考えてみますと、地方負担が導入されることによって自治体の方はうんと厳しくこれをチェックして、結局のところ児童扶養手当支給対象者がぐっと絞られてしまうという危険があるのではないかと心配をするわけですけれども、その点について、自治省の方で従来の対応とうんと異なるような厳しい対応ということはないと理解してよろしいでしょうか。
  86. 前川尚美

    ○前川説明員 私ども自治省といたしましては、今回の地方負担導入の問題は、審査の適正化といいますか認定の適正化といいますか、そういう事柄とは直接のかかわりはないことと理解いたしております。この認定の適正化、審査の適正化、不合理な面があれば、これは的確なものに改めていくことは当然のことであろうと思いますけれども、その業務の内容をどうするかということは、やはり所管省である厚生省がどういう指導をするかということにもかかっているわけでございまして、私どもの基本的な立場としては、冒頭申し上げましたように、地方負担導入と直接のかかわりのある問題ではないというふうに理解をいたしております。
  87. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 しかし、現実にこれまでの運用を見てみましても、プライバシーの問題にまでわたる調査が行われたり、今回父親の離婚時の収入あるいは所得が必要になってくるとなりますと、自治体の対応というのはますます重要な役割を負わなければならないというふうに言われるわけです。そのときに、母子家庭の生活管理とかプライバシーの侵害ということまで起こってくるのではないかという懸念があるわけで、厳にそういうことのないようにしていただきたいというふうに思います。  それから、こういう制度が変更されることによって、従来手当の請求の権限があるとかないとかということについて十分認識していなかった人たちにも、この際新たに広報活動を強化して、制度の存在すら知らない母子家庭というのがないように十分にPRをし、そして児童の健全育成という点で積極的な対応が望まれるというふうに思います。その点の施策もあわせて、厚生省それから自治省にお伺いしたいと思いますが、簡単にお答えいただきたいと思います。
  88. 土井豊

    ○土井説明員 私どもといたしましては、今回の制度改正は福祉施策に改めたと考えておりまして、それは先ほど言いましたような締めつけをやるために地方負担を導入するのではなくて、福祉施策につきましては国と地方が力を合わせてやるという考え方に立つものでございます。  なお、この制度につきましては、適正な制度の運営というものは今後とも心がけてまいるという考え方でございますが、プライバシーの問題等につきましては、制度の運用上必要なものについては、こういう仕組みの制度でございますので私はやむを得ないと思いますけれども、必要以上のプライバシーの侵害は避けるという考え方で臨んでおります。  なお、制度の周知徹底につきましては、今後とも努力してまいる所存でございます。
  89. 前川尚美

    ○前川説明員 私ども自治省といたしましても、ただいま厚生省から答弁がありましたようなことで理解をいたしております。
  90. 瓦力

    ○瓦委員長 箕輪議員に申しますが、正森議員の質問も続いておりますので、恐縮ですが、時間の方を調整していただきたいと思います。
  91. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 最後に大臣にお伺いしたいと思います。  今回の児童扶養手当の改正に伴って、実際の母子家庭から大変大きな心配、不安そして強い反対がありまして、私どものところにもたくさんのはがきや手紙が届いております。一つ広島の中川さんという方から届いた手紙を読み上げますので、大臣に御感想をお尋ねして、終わりたいと思います。   私は五十一年夏、度重なる夫のギャンブル狂いの為、サラ金に追われ家を出ました。死ぬ覚悟でした。その時子供は四才と二才でした。   けれど”子供は神仏からの預りもの”という言葉を思い起し、私の人生は終った、子供の為に生きようと心に決め、今日まで頑張ってきました。渡部厚相は安易な離婚に歯止めをと言われますが、男社会の中で別れるというのは口に出せない苛酷な事情があるのです。ましてや田舎で偏見があり、それでも尚生きる為に別れなくてはならないことだってあるのです。   子供だけは明るく立派にと自分を励まし励ましの毎日の生活でした。裁判所でもギャンブルの借金をかかえた主人からは養育費など取れないと言われ、児童扶養手当の制度にどれ程助けられたか分りません。お蔭様で子供はこの春中一と小四になります。どうか子供達の健全な育威の為に手を貸して下さい。   私達も社会の一員なんですよ、必死な思いで生きていますよと叫びたい思いで一杯です。   私達の為にも後に続く母子家庭の為にも是非手当改正阻止の御助力を下さいますよう切にお願いします。こういうお手紙をいただきました。御感想をお聞かせいただきます。
  92. 竹下登

    竹下国務大臣 今度の法律そのものは、福祉施策として地方に他の福祉施策と同じように負担をしていただこうという内容が柱でございますので、今の奥さん、多少あるいは制度そのものについての御認識が十分でない点もあろうかと思いますので、どうぞ御賛成をお願いいたします。
  93. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 この大臣答弁をこの方にお届けしたいと思いますけれども、それでは到底納得されないだろうと申し上げて、終わります。
  94. 瓦力

    ○瓦委員長 正森成二君。
  95. 正森成二

    ○正森委員 十八日に本法案について前半の質問をさせていただきました。きょうはその続きの部分を、時間の許す限度で大臣その他局長等にさせていただきたいと思います。  この前の質問のときには、私は、従前竹下大蔵大臣が、税収不足といいますか、財政危機の中で予算編成を切り抜けていく三つ考え方あるいは組み合わせとして、赤字国債の借りかえという問題がある、それから二番目にはやはり歳出のカットである、三番目には国民の負担増をやむを得ずお願いするということをおっしゃったことから出発いたしまして、とうとう赤字国債の借りかえをやらざるを得ない事態になった。その他の国債発行についても、特例国債は毎年一兆円ずつ減らさなければ六十五年までにゼロにすることはできないから、これはふやすどころか、税収としては減らさなければならない。また建設国債、四条債も大蔵省が出した「中期展望」・ではほとんど横ばいですから、これも見込めない。そういうことになれば、残るところは歳出のカットと国民の負担増であるということを申しまして、この前の質問のときには、その歳出のカットのうち、軍事費とかいろいろございますが、歳入委員会の性格から、それらは質問いたしませんで、定率繰り入れの部分に絞って質問をいたしました。きょうはその残りの部分の、やむを得ず国民の負担増を求めるという問題について若干質問させていただきたいと思います。  四月十七日の自民党税調の論議を見ますと、三つほど御論議があるようですが、その一番大きい五十九年度税制改正大綱の一つが、利子・配当課税のあり方については非課税貯蓄のあり方を含め全般的な見直しを行い、五十九年夏ごろまでをめどに具体的な成案を得るよう引き続き検討するというようになっております。なお、政府税調も大蔵省との連絡のもとにこの問題について論議を始めまして、遅くも八月までには一定の結論を出すようであります。この問題はまた、グリーンカードが三年延期になっておりますが、それが六十一年の一月一日までですから、六十会計年度の間に処置をしなければこれは手おくれになる部分が出てくるという意味で、グリーンカードの後をどうするか、利子・配当課税をどうするかという問題は避けて通れない問題であろうというように私どもとしては考えているわけであります。  そこで、順次伺っていきたいと思いますが、昨年の非課税貯蓄申告数は項目別に言いますと河口あって、その総額は項目別にどれぐらいあるかをお答え願いたいと思います。
  96. 渡辺幸則

    ○渡辺(幸)政府委員 非課税貯蓄申告書でございますが、ちょっと私今ここに計数を持っておりませんが、昨年出しましたのは多分三千八百万件ぐらいであろうかと思っております。全体といたしますと、従来までに蓄積いたしましたものが約三億件くらいでございます。最近数年の間に大体三千七百万件から三千八百万件ぐらいに推移をしているかと思います。
  97. 正森成二

    ○正森委員 資料をお持ちでないようですから、私の方の一応つかんでいるところを申しますと、郵便貯金も全部含めまして、非課税貯蓄申告数は、銀行など金融機関の取り扱うマル優が二億千七百二十六万口、百二十六兆四千六十八億円。次いで郵便貯蓄が七十八兆九百七十八億円で三億四千六百七十九万口、少額公債が八兆六千二百六十五億円で五百九十一万口、国債のマル優が六兆三千八百五十億円で七百三十六万口、財形貯蓄が六兆二千五百十三億で千三百九十万口。これを合計いたしますと五億九千百二十二万口、二百二十五兆七千六百七十四億円というように報道されておりますが、ほぼ間違いありませんか。
  98. 渡辺幸則

    ○渡辺(幸)政府委員 おっしゃるとおりで間違いございません。
  99. 正森成二

    ○正森委員 主税局長、そうしますと、口数が五億九千百二十二万口というのは国民一人当たり大体五口座ということになって、もちろん家族全員でやるのも別に非合法ではありませんから、それが一概に全部悪いとは言えないわけですが、それにしても余りにも口数が多過ぎるということで、報道等では、その中に脱税分あるいは節税分等々、さまざま紛れ込んでいるのではないか、だからやっぱりグリーンカードあるいはこれにかわる限度管理あるいは総合課税というものが必要であるといろ意見がございますが、これについてどうお考えになりましょうか。
  100. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 ただいまのその郵便貯金も含めまして五億口座あるという話でございますが、これは御案内のとおり、郵貯の場合は口座だけではなくて、定額貯金の枚数も入れました単純合計でございますので、必ずしも五億口座ではないわけでございます。ただ、そういう点を考慮いたしましても、郵便貯金も含めました少額貯蓄の利用状況というのは非常に多いという点がございます。  それからもう一つ政府税調での議論過程でこの乱用問題が議論されましたときには、今委員がおっしゃいましたこの五億口座、あるいは枚数も入れました、この数だけではございませんで、これは今の残高でございますね、そうではなくて、今非課税貯蓄を利用する場合には、まず枠を設定するわけでございますけれども、実はその枠が単純合計いたしまして世帯平均で見ますと大体一千万ぐらいになるわけでございます。ところが、これは総理府の貯蓄動向調査等で見ますと、勤労者世帯で全体の平均が、これは五十七年でございますけれども、金融資産の貯蓄総額、これは生命保険から株式から全部入れた数字でございますが、勤労者世帯の場合、ざっと六百万ぐらいございますが、このうち、いわゆるマル優といいますか非課税貯蓄対象になる定期性預金の額というのは、実はこの半分でございます。したがって、そういう数から見ると、この制度の乱用といいますか、今の枠の三百万、三百万、三百万の水準が大きいか小さいかの議論も含めまして、非常に問題があるという議論がされているところでございます。
  101. 正森成二

    ○正森委員 マル優制度というのは一定の役割を果たしたし、必要性があったということは事実であります。しかし、これと貯蓄率との関係というのを見てみますと、私は大蔵省からあらかじめ資料をいただいておりますけれども、そこからおっしゃっていただいても結構ですが、大体我が国の貯蓄率というのは、昭和四十年からのものをいただいておりますけれども昭和四十年が、経済企画庁の「国民経済計算年報」では一五・五、それから順次上がりまして昭和四十九年がピークで二三・一、それから少し下がってきまして五十六年が一九・二、五十七年は一七・三ということになっておるようであります。この間、利子課税制度はいろいろ変わりまして、たしか昭和四十年は一〇%の分離課税、四十二年が一五%の分離課税になりまして、その後四十六年には二〇%の源泉選択、一般分が一五%、四十八年には二五%の源泉選択で、一般分が一五%、五十一年には三〇%の源泉選択で、一般分が一五%、五十三年に三五%の源泉選択で、一般分二〇%というように税制は推移いたしましたが、貯蓄率はそれほど大きな変化がないように思っておりますが、これは事実でしょうか。
  102. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 利子課税制度の変遷と貯蓄率といいますか、貯蓄に対して税制が一体どういうふうに影響しているかという議論は前からあるわけでございまして、その端的な見方としては、今おっしゃいましたように、制度の変遷と貯蓄率、今おっしゃったのは個人貯蓄率でございますが、それの相関関係を見るという考え方で従来税制調査会などでも議論をしておりますが、結論からいいますと、必ずしも税制と貯蓄動向の動きに非常に強い相関関係というのはなかなか見にくいというのが大方の議論になっております。
  103. 正森成二

    ○正森委員 主税局長も税調等の御論議を踏まえて答弁されましたように、我が国の利子課税のあり方はここ十数年の間に数次変わっておることは申し上げましたが、それによって貯蓄率に非常に大きな影響を与えて相関関係があるというわけではないことは答弁の中にございました。もちろん、金融資産が一定の方向に著しくシフトするような税制というのは大いに問題があって考えなければなりませんが、そういうことを生ずるおそれがない場合には、利子課税を若干変動させましても、我が国の貯蓄率が大きく変わって、それによって経済に悪い影響を与えるわけではないということは、ある程度言えるのではないかと思いますが、大蔵大臣、いかがでしょうか。
  104. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 貯蓄の動向を左右いたしますものは、基本的にはやはり所得水準といったようなものが考えられるわけでございますが、税制の干渉が全然ないかというと、そうではないと思うわけでございます。  これは、ただいま委員がおっしゃいましたように、トータルとしての貯蓄率に大きな変化は、直接的な関係は見られないにいたしましても、金融資産相互間のいわばポートフォリオ・セレクションといいますか、金融資産選択に非常に大きな影響を持つというのは、過去のグリーンカードの議論とかに端を発しまして、金融資産の相互間のシフトの問題があったわけでございます。したがいまして、税制の議論、利子・配当課税の議論をいたします場合に、これは昨年の十一月の税制調査会の答申にも書いてあるわけでございますけれども、公平の問題のほかにいろいろな観点が要るわけでございますが、金融市場との関係からいいますと、金融資産の選択、これに不測の影響を与えるということは税制を議論する場合十分注意しなきゃいかぬ、ここが非常に一つの眼目になると考えております。
  105. 正森成二

    ○正森委員 そのことをおもんぱかって、私の質問でも、金融資産の著しいシフトを招くということは避けなければならないがという条件を置いて申しているわけであります。  そこで、これもあらかじめ資料をお願いしておきましたが、我が国における財産所得の推移、これは資料をいただいておりますが、大きく昭和四十年、五十年、五十七年で結構ですから、財産所得を利子、配当、賃貸料に分けてお答えください。
  106. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 これは企画庁でまとめております「国民経済計算年報」からの数字でございますが、一番最近時点で申し上げますと、昭和五十七年度で財産所得の総額が二十五兆、それから、さかのぼりまして五十年で約十二兆五千億、それからさらに十年さかのぼりまして昭和四十年度で二兆一千億強という数字でございます。
  107. 正森成二

    ○正森委員 恐れ入りますが、利子、配当、賃貸料についてもお願いします。
  108. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 五十七年度で申しますと、トータルが先ほど申しました二十五兆円でございますが、その内訳といたしまして、利子が約二十兆円でございます。それから配当が三兆四千億強、それから賃貸料が一兆六千億弱。五十年度で申し上げますと、総額が先ほど申しました約十二兆五千億円でございますが、そのうち、利子が九兆五千億円強、それから配当が約二兆円、それから賃貸料が八千八百億円、約九千億円でございます。それから昭和四十年度、財産所得の総額が二兆一千二百七十億でございますが、そのうち、利子が約一兆二千六百億円、それから配当が六千三百六十億、約六千四百億、それから賃貸料が二千三百億という数字になっております。
  109. 正森成二

    ○正森委員 ありがとうございました。  その後で、今度は国税庁の「統計年報書」にある利子所得、配当所得、それからこれは統計上は不動産所得になっておるようですが、それについて、時間がございませんので私の方から申しますと、四十年は、利子所得は源泉分離課税となっているので統計数字がないようですが、配当所得は千二百六十九億円、不動産所得は二千八百二十六億円。昭和五十年は、利子所得が百五十四億、配当所得が三千五百七十一億、不動産所得は一兆四千四百六十五億。五十七年度は、利子所得が四百五十五億、配当所得が四千七百七十億、不動産所得が二兆六千六百五十五億、こうなっておりますが、間違いありませんか。
  110. 渡辺幸則

    ○渡辺(幸)政府委員 ただいまお読み上げの数字はすべて間違いございません。
  111. 正森成二

    ○正森委員 そこで伺います。  これを見ますと、もちろん不動産所得と賃貸料所得でまとめ方が違いますが、これについては大きな開きはないわけですけれども、配当所得になりますと相当開きがあるだけでなく、利子所得に至ってはもう著しい開きがあるというように言わなければならないと思うわけであります。これは、もちろん源泉分離課税分や非課税分を含んでいないという言いわけもありましょうが、それにしても、余りにも差があるというように思われるのですが、いかがですか。
  112. 渡辺幸則

    ○渡辺(幸)政府委員 確かに大きな差があるわけでございます。しかし、今委員から御指摘のありましたように、一面におきまして利子所得、配当所得につきましては源泉分離制度その他の制度の問題がございます。そういう意味で、私どもの方で把握をしてない所得があるわけでございます。また、先ほど御指摘になりました所得の総体の数字でございますが、これはいろいろな数字の推計であろうかと思うわけでございます。そういうことに基づきまして差が出ているのであろうかと思っておるわけでございます。
  113. 正森成二

    ○正森委員 今いろいろ御説明があったのですが、それにしましても、余りにも利子所得の申告分が少ないということは言えるのじゃないでしょうか。  同じように、あなた方から国税庁の「統計年報書」の「利子所得の課税状況」という書類を出していただきましたが、それを見ますと、五十七年度で利子の課税分が五兆五千三百十一億ほど、その源泉徴収税額が一兆一千九十二億、それに対して源泉分離課税適用分、この支払い金額が一兆九千八百三十六億、源泉徴収税額が五千五百二十九億というようになっているのですね。  そうしますと、源泉分離選択課税をとった分は一応これで済んでいるわけですが、一般分は二〇%の源泉はあるかもしれませんが、当然のことながら、源泉分離選択課税をとる人は、三五%税金を取られてもその方がまだ有利だという人がとるわけですね。だから、それ以外の二〇から三五に間する人は、本当なら申告しなければならぬということになるわけでしょう。ところが、それが結局今の統計で見ても四百五十五億円くらいしかない。ということになれば、これは所得は四百五十五億ですから、その税額たるや微々たるものにすぎないということになりますと、これは常識的にもいかに利子課税について正当な申告が行われていないかということを示すものにほかならないと思うのですね。  それから、もう一つ伺っておきたいと思うのでありますが、非課税の利子部分が非常に多いわけですが、その中で、あなた方からいただいた資料を見ますと、少額貯蓄等の非課税分が五兆四千九百五十八億、その他の非課税分が十二兆二千六百七十五億もあります。その他の非課税分というのは、公共法人分とかあるいは公共信託とかそういうものが中心であると言われております。しかし、学者の中には、こういう点についても一定の見直しを行うべきではないかという説もあります。  そこで大臣、あるいは答弁者はどなたでもいいのですが、伺いたいと思うのですが、新聞報道等によりますと、やはり利子課税については抜本的に考える必要があるということで、三つの案が大蔵省で考えられている。それは、現行方式内での合理化で「非課税限度額を一人五百万円程度に限度管理の強化。分離選択課税を四〇%に引き上げ」、これは現行制度を一応前提としております。第二案が「原則四〇%、住所・氏名を明らかにした者二〇%、低所得者〇%の三段階制。少額利子控除制度で非課税分を還付」、これは管理が可能だが徴税機関の負担が増大するという欠点がある、こうされております。三番目は一律分離課税方式で「非課税貯蓄制度を全廃。一律一〇%で徴収」、これは徴収が簡単で徴税費用が安くて済むが、高額預金者が相対的に有利だという批判がある。  この三案を政府税調に出して、そのどれがいいか、あるいはその組み合わせということを考えておられるということですが、この点について率直な御見解を承りたいと思うのです。そして、大体どれくらいの税収を考えておられるのか、お答えを願いたいと思います。
  114. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 利子・配当課税の問題につきましては、昨年十一月の税制調査会の中期答申をまとめていただきます過程で、約半年ぐらいをかけまして小委員会議論していただいたわけでございます。現在その議論がまだ結論には至っていないわけでございますけれども、そのときの論点は二つあると考えておるわけです。利子・配当の課税方式を一体どうするのかという基本的な論点が一つ。それから、現在認められております少額非課税貯蓄制度をどう考えるのか、この二つでございます。  利子・配当課税の基本的な考え方というのは、完全な総合課税から完全な分離課税に至るまで、いろいろなバリエーションがあるわけでございますね。無限あるいは無限の組み合わせがあるのかもわかりません。少額貯蓄についても同じことでございまして、現行の制度をそのまま是認するのか、あるいはその枠をさらに拡大する方向で考えるのか。それから、極端な場合には全部廃止してしまう。その中間段階にこれまたいろいろな段階があるわけでございます。したがいまして、利子・配当課税の問題というのは、極端にいいますと、基本的な課税方式と非課税貯蓄のその制度のあり方を組み合わせた、非常に数多くのパターンといいますかバリエーションがございまして、その中で、新聞等に報道されておりますようなものも一つのパターンとしては考えられるわけでございますけれども、現在の時点で、税制調査会はもとより、私ども大蔵省といたしましても、利子・配当課税のあり方というものは、実はこれから議論をして、できれば夏ごろまでにまとめていただきたいと考えておるものでございますから、具体的にこういう方式を考えているとか、あるいは複数項以上のパターンに絞ってきて、この中から何か考えなきゃいかぬとか、まだそこまで議論は煮詰まっていないというのが現状でございます。
  115. 正森成二

    ○正森委員 確かに組み合わせについては順列組み合わせといいますか、そういう方式でいえば非常にたくさんあるということは事実です。今の段階ではそれ以上答えられないようですが、少なくとも政府税調に、この問題について八月をめどに答申をしてほしいというようにお願いしていることは事実でしょうか。  それから、自治省に来ていただいておりますが、源泉分離課税については地方税はかかっておりませんが、これについても一定の範囲で地方税をいただきたいというようなお考えをお持ちやに伺っておりますが、この点についての態度や将来の方策についてお答え願えればありがたいと思います。  二つの点、お願いします。
  116. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 最初の方の、結論をまとめていただく時期の問題でございますけれども、これは今おっしゃいましたように、それからことしのといいますか、五十九年度税制改正の答申にも触れられておりますように、グリーンカード制度の凍結期間との関連から、できればことし夏ごろまでに政府税調として結論を得ることが望ましいとされておりまして、私どももそういう期待を持っておるということでございます。
  117. 緒方勇一郎

    ○緒方説明員 源泉分離課税されました利子所得につきましては、地方税が現在課されておりませんけれども、やはり我々は住民負担の公平という点から問題があるとは思っております。この問題につきましては、総合課税に移行しますとおのずから解決する問題ですけれども、もし分離課税のまま今後とも続くとなりますと、地方税独自の課税の方途なんかについても今後検討していかなくてはいかぬ問題だと思っております。
  118. 正森成二

    ○正森委員 時間の問題で次の点に移らせていただきます。  この財源確保法案には、電電公社から二千億円納付金をいただくというのがございます。これは何も電電の肩を持つわけじゃないのですが、考えてみれば多少気の毒な感がしないでもないのです。五十六年の法案では、千二百億円ずつ四年間にわたって四千八百億円もらうということになっておりまして、それを五十八年には、財源がないものだから、五十八年と五十九年と二年分二千四百億円を先に払えということでもう召し上げてあるわけですね。それをさらに今度、五十九年に、大分余裕があるようだからもう二千億払え、こういうことになっているわけで、昔の幕府の御用金を言いつけるといいますか、そういう感じがするわけですね。ことし一応余裕金があるようですから出すわけですが、電電公社は、あなた方の行革法案ということで民営に移行するということになっております。それが衆議院、参議院を通過するかどうかわかりませんが、政府のお考えのように通過いたしますと、少なくも六十年からはもう御用金を言いうけることはできなくなるであろうというように思われます。  そこで、それにかわるものとして何を考えておられるのか。基本的には恐らく、民営に移管すれば、利益が出ればそれは法人税という格好で税収が上がるであろう。もう一つは、電電の場合には、資産のうちどれだけを資本金にするかというのは問題がございまして、商法の二分の一以上ということになると資本金が多過ぎるので、これを三分の一ぐらいにしようかとか、いろいろ案があるようですが、仮に資本金一兆円ということになれば、一割配当ということになれば千億円前後が入ってくるということ、これは民間に放出するまでは政府が持つわけですから。それと法人税で何とか賄おうとしておられるのかというようにも思いますが、いやいやそれだけでは不十分なんで、電話利用税、そういうものも考えようと思っておられるのか、そこら辺のお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  119. 竹下登

    竹下国務大臣 それは、今御指摘なさいましたとおり、法人税と配当でございますね。法人税、もちろん利益が出なければそれはいただけないのですが、今の場合、そういう法人税と配当というもの、理論的にはこの二つが期待できるということだと思っております。  電話利用税というような話が出ましたが、一度議論されたこともございますけれども、もう一つ電話保有税というような話もございました。これはなかなか議論の多いところだろうと思っております。今私どもは、電電公社の経営形態移管に伴うところの物の考え方としては、原則論としての、今おっしゃいました法人税と配当、それだけを念頭に置いておるところであります。
  120. 正森成二

    ○正森委員 時間でございますので、あと一問だけ聞かしていただきます。  それは、いろいろ税収不足の中で、国税庁の職員が月夜御苦労なさっていることについては、私どもも敬意を表しております。しかし同時に、最近いろいろ報道されておりますのは、税務署の職員の健康状態に非常に心配な点が起こっているということであります。例えば、越谷の税務署では集団的に結核患者が七名発生するということになりまして、これは私、近く現場の事情を聞かしていただきたいと思っておりますので、御答弁は要りません。きょうは結構です。  ただ、一般的に見ますと、国税職員の年間の死亡が非常にふえできているのですね。七八年、七九年ごろは六人とか七人だったのですが、八二年は十八人死亡、八三年も少し減りましたが十二人死亡。その内訳を見ますと、八二年の十八人のうち、がんが十人あるんですね。がんというのは、かかれば運が悪かったということで、それでも早期発見の場合は助かる可能性があるのです。それ以外に心筋梗塞とか心不全というような心臓病が三名、それから脳溢血ですね、そういうものが約四名ということで、これは非常な過労に伴うものではないかというように思われるのですね。  それで、全国税という労働組合が水野長官といろいろ交渉をしておりますが、非常に仕事がふえて、来署依頼のはがきあるいは手紙ですか、それを非常にふやしたもので、うんとたくさん確定申告のときにおいでになる、あるいはその前においでになる。そのための集計事務がふえるしということで、非常な超過勤務になっておるということです。  例えば、非常にお気の毒な話なんですが、二月二十四日に芝の副署長が死亡されたようですが、この方は休まれる前日に奥さんに付き添われてよろよろしながら出勤されて、翌日、風邪をこじらせたというので入院されたのですが、三日目に死亡しておられるという非常にお気の毒なことが起こっております。あるいはまた、武蔵府中でも、中間管理職の人が二月の末に心臓病で入院をされるというようなことがありましたようで、渋谷署の実態でも、計画では一日に八人とか十人とか納税相談に当たることになっておりましたところが、納税者が予定より三倍以上やってきたので、三倍くらい人員を増加せざるを得なかった。そのためには、予定人員で間に合わないで、非常な超過勤務をせざるを得なかったということが報道されているのですね。  これを見ますと、時間がありませんので、全部言ってしまいますが、東京国税局を見ますと、人員との関係では、国税局の方は百十四名定員よりも実員が多い。ところが、現場の税務署は、局に吸い上げられているものですから、重複分は抜いて、逆に百十四名少ないという状況になっているのですね。だから、税務署の人員配置も、こういう状況の中で、管理部門の国税局の、国税局が一概に管理部門とは申しませんが、比率の問題とか、それから人員を無視した呼び出し状の発送事務が多くなり過ぎる上に、結局、人がたくさん来るわけですから、そういう点はやはり考えなければいけないのじゃないかと思いますが、その点についてだけ御答弁願います。あとの問題はまた改めて聞きます。
  121. 岸田俊輔

    ○岸田政府委員 お答えいたします。  先生御指摘のように、現在、税務行政を取り巻きます環境は極めて厳しい状況でございまして、職員の皆さんにいろいろ苦労をかけているということも事実でございます。  まず、健康管理の問題でございますが、私どもとしては、やはり税務行政は人でございますので、まず健康ということで注意を払っているわけでございまして、人事院規則に定めます基準以上の定期健診その他を実施している状況でございます。かつまた、全体に職員が高齢化してまいりましたので、成人病の対策というような問題につきましても、人間ドックその他十分な管理をできるだけいたすようにしているわけでございます。  それから、先ほど申しましたように、超勤の問題でございます。これは私どももいろいろ事務の合理化、効率化ということを考えると同時に、アルバイトを利用して職員の事務負担を少なくするように、また事務計画でも、超勤のないような事務計画を組むように指示をいたしているわけでございますが、いろいろな情勢から、やはり超勤が発生をしているということも事実でございます。そういう状況でございますけれども、私どもといたしましては、全体といたしましてできるだけ苦労が少ないような形に努力はいたしてきておりますし、また今後とも最善の努力をしてまいりたいと思います。  それからまた、御指摘の局と署の定員と現員の問題でございます。私どもも適正な定員の配置と申しますか、現員の運用ということは考えているわけでございますが、最近のように税務行政がいろいろ広域化をしてまいりますと、やはり中央で集約的に運用しなければいけないという面もございますので、局の方に現員がややふえているという状況でございますが、これにつきましては毎年見直しをしまして、適正な定員配置ということに努力してまいりたいと考えております。
  122. 正森成二

    ○正森委員 終わります。
  123. 瓦力

    ○瓦委員長 午後一時三十分より再開することとし、休憩いたします。     午後一時八分休憩      ————◇—————     午後一時四十二分開議
  124. 瓦力

    ○瓦委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。野口幸一君。
  125. 野口幸一

    ○野口委員 非常に重要な法案であります昭和五十九年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置等に関する法律案の質疑が続行されておるわけでありますが、私は、きょうは金融の自由化に伴う諸問題について焦点を絞って御説明を受け、御質問をいたしたいと思っているところでございます。  最近、とみにその進展を望まれておりますものが金融の自由化でありまして、特にその中で金利の自由化について、既に御案内のように、短期金融市場及び長期の金融市場においても自由化が進んでいるわけでありますが、その状況の推移をまずお承りいたしたいと存じます。
  126. 宮本保孝

    ○宮本(保)政府委員 短期の金融市場につきましては、コール市場、手形市場、さらに現先市場、CD市場、いずれも自由化されておるわけでございます。     〔委員長退席、熊川委員長代理着席〕 ただ、日本の場合には、アメリカからも言われておりますが、BA市場であるとかあるいは短期の国債の市場であるとかというような点についての整備はできておりませんけれども、現在ある短期の金融市場については大体自由化されておる。それから長期のマーケットでございますが、これも大量国債の発行を契機にいたしまして非常に大きな公社債流通市場が形成されておりまして、昨年などは公社債の売買が四百兆に及ぶというアメリカに次ぐような市場になっておりまして、そこで国債が流通しているわけでございますので、非常に大きな自由な流通市場ができ上がっておる。それから金融機関の貸出金融市場でございますが、これも短期プライムレートと長期プライムレートというような制度はございますけれども、それを基準にいたしまして、大体貸し手と借り手の間で自由な相対の取引が行われておりまして、したがって、各金融機関別に約定平均金利がまちまちになっておるわけでございまして、貸出金利についても自由化されているんじゃないだろうか。  問題は預金金利でございまして、預金金利につきましては、現在のところ臨金法に基づきますところのガイドラインによって規制されておりまして、自由化の残りは預金金利が主眼であるということでございます。
  127. 野口幸一

    ○野口委員 一昨年ですが、四月より施行されました新しい銀行法によりまして、銀行業務の面におけるところの自由化はどのように進んでおりますか。
  128. 宮本保孝

    ○宮本(保)政府委員 新しい銀行法の一つの理念といたしまして、できるだけ行政の介入を少なくして、経営者の創意工夫なり自主性を尊重すべきであるというふうな理念がうたわれておりまして、私どもといたしましては、それに基づきまして数次にわたります弾力化、自由化行政を発表いたしてまいっております。  今御指摘の業務につきましても、金融機関の業務がかなりの広がりを見せておりまして、特に注目すべきものは証券業務でございます。これは去年の四月から長期国債の窓口販売、十月からは中期国債の窓口販売、それからことしの六月からはいわゆるディーリングでございますね、これが開始されるような状況でございます。それからさらに付随周辺業務におきましても、例えば付随業務でございますと、ファクタリング業務とか、クレジットカード業務とか、あるいは金の売買であるとか、そういう付随業務も進展してきております。それからまた、いわゆる銀行本体ではできないのでございますけれども関係会社をつくりまして、そしていわゆる周辺業務と言っておりますけれども、例えばリース業務とかあるいはベンチャーキャピタル業務とか、そういうふうな業務も銀行が手がけております。  なお、本業でございますけれども、国内ではございませんで、国外で行ういわゆるインターナショナルな国際業務でございますが、これも相当の広がりを見せてきておりまして、業務面におきます弾力化も最近かなり進行しているというような状況でございます。
  129. 野口幸一

    ○野口委員 そういたしますと、いよいよ残るところはいわゆる金利問題が中心になって、自由化の問題がそこの一つの焦点になりつつある、こういうことであろうと思います。  そこで、いわゆる預金金利の自由化の問題について四月十四日に日経新聞で発表されましたものは、お聞きすると大蔵省の発表じゃなくて、いわゆる推測記事だということでございますけれども、その後の報道なんかを見せていただいておりますると、およそ今日大蔵省が考えておられますものとそう大差のないものがこの新聞紙上にもあらわれておるように思うのでありますけれども、今日の時点でこのいわゆる「展望と指針」というものはいつごろ発表なさるおつもりなのか、その辺をちょっとお聞かせいただけませんか。
  130. 宮本保孝

    ○宮本(保)政府委員 自由化の展望につきましては、かねがね総理から、国民の前にいわゆる自由化の展望のようなものをお示ししたらどうかというふうなお話がございまして、私どもこのところずっと作業を進めてきているわけでございます。ただ、ちょうどアドホック委員会等、対米との関係もございまして、実はそれの報告と絡んだような状況になっておるわけでございまして、アメリカ側との最終的な折衝段階に入っておりますのでもう少し時間がかかると思いますけれども、なるたけ早くお示ししたい、こういうふうに思っております。
  131. 野口幸一

    ○野口委員 しかし、先ほども同僚議員の質疑にもお答えになっておったようでございますから、その範囲内におけるといいますか、今日の時点大蔵省当局としてのお考えをお聞かせいただけるものと思いますが、まあ大ざっぱに申しまして、今日の時点に立って今後早急に対処しなければならない問題点として、金利のいわゆる自由化、預金金利の自由化の問題があるわけでありますが、さしあたって一番先にやらなければならぬということになるとするならば、どういうことが一番初めに手をつけるべきものなのか、さらにまた、金融秩序を混乱させないでこれらの進展を図るためにはどうすればいいのか、この二つについてお答えをいただきたい。
  132. 宮本保孝

    ○宮本(保)政府委員 私ども、三年ぐらい前から、自由化につきましては、時の流れということで真剣に取り組むべきだということで、実は金融制度調査会に金融の自由化につきまして御審議をしていただいておりまして、それの一応総論的な部分といたしまして、去年の春に金利の自由化を中心といたしました御報告を実はちょうだいしているわけでございまして、それの趣旨に従って一応自由化を今進めてきているわけでございます。したがいまして、これからお出ししようとしております展望についても、金利につきましては、去年の春にお出しいただきました金融制度調査会の報告に肉づけをしたものをお出しすることになるんじゃないかというような感じでございます。  したがいまして、きょうのお答えといたしましては、その調査会の報告に盛られたような内容になろうかと思いますけれども、基本的には大口預金金利の自由化を当面目標に考えていく。そのために、当面手をつけるべき話といたしましてはCD、いわゆる金利自由な、譲渡可能な預金でございますこのCDをもう少し弾力化していったらどうだろうか。実は、これはことしの一月から発行単位を五億円から三億円にいたしているわけでございますが、さらに今後逐次これを小口化していく。それからまた枠につきましても、自己資本の一〇〇%にいたしていく、それも順次やっていくということで四半期ごとに五%ずつふやしていきまして、来年の四月に自己資本の一〇〇%まで発行可能にいたすということで、さらにそれも逐次広げていく必要があるだろうというようなことでCDの弾力化を図ってまいる。もう一つは、一部金融界で提唱されておりますような市場金利連動型の預金のようなものも、割と小口なものにしながら発行を認めていくということになりますと、いわゆる大口の定期預金の金利の自由化をやってもおかしくないような環境の整備ができるんじゃないだろうかというようなことで、そういう方向でとりあえず今金利の自由化を進めているところでございます。  第二番目の御質問で、実は金利の自由化を進めてまいりますと、どうしても諸般の情勢から金利が高くなる可能性があると思うわけでございます。     〔熊川委員長代理退席、委員長着席〕 そういたしますと、中小の金融機関にとりましては資金調達コストが高まってくるわけでございまして、一方で、低成長時代でございますので、資金の借入需要が高度成長時代と違いまして余りないということで、貸出金利の方は過去に比べますれば相対的に低くならざるを得ないということで、どうしても利ざやが縮小する傾向になりまして、中小金融機関の経営が圧迫されるというようなことが考えられるわけでございます。したがいまして、金利の自由化を進めます場合には、やはり漸進的に段階的に、一つのことを実施いたしましたらそれがどういう影響を金融に与えるのか、あるいは個々の金融機関の経営にどういう影響を与えるのかというのを見定めながら、ステップ・バイ・ステップで実施していくべきではなかろうか、こういうように思っております。  なお、仮に破綻した場合の措置といたしまして、預金保険機構を見直しておくとか、あるいは合併問題等についても真剣に検討していく必要があるのではないかというように考えております。
  133. 野口幸一

    ○野口委員 後段お述べになりました意見というのは、必ずしも私とは一致しないわけであります。つまり、金融秩序を混乱させないでこれらの進展を図るということは非常に大事なことでありまして、今銀行局長がおっしゃいましたように、中小の金融機関が高利になってくることに対する原資調達の問題も非常に大切な課題でありますし、これらをめぐっての問題は、特に郵便貯金等においては深刻な問題であろうと思うのであります。  四月二十四日、きょうの新聞によりますと、郵政省は金利の自由化に対応しまして、今銀行局長の大口からというような話がございましたが、大口も小口も同時に金利の自由化を図るべきであるというので、大蔵省のこの預金金利の自由化について見解をまとめたと伝えられております。郵政省にお聞きをいたしますが、郵政省は、いわゆる段階的に大口から金利の自由化を図っていくという銀行局の意見に対してどのようなお考えをお持ちか、明らかに御説明をいただきたいと思います。
  134. 山口憲美

    ○山口説明員 御説明を申し上げます。  先ほど来お話のございましたように、金利の自由化という問題は、これは避けられない、そういう時代の流れだろうということで私ども認識をいたしておりまして、これにつきまして郵便貯金も前向きに積極的な対応をしていかなければならぬ、こういうふうに考えているところでございます。  特に個人の預貯金金利につきましては、いわゆる人為的な低金利政策というふうな言葉で言われておりますように、現在、本来あるべき水準よりも低い状態に規制をされているというふうなことが言えようかと思うわけでございますが、金利の自由化というものは、こういった規制を廃止をいたしまして、金融機関の競争を通じてその市場実勢を反映した、本来得られるべき合理的な金利が実現をする、そういう可能性を持った預金者にとって一つのメリットのあるものだというふうに考えておりまして、郵政省といたしましては、そういったメリットを少しでも早く預金者に実現をすることが望ましいことではないか、こういうふうに考えているところでございます。
  135. 野口幸一

    ○野口委員 もう一度重ねてお尋ねをいたしますが、郵政省は、この新聞によりますならば、金利の自由化は大口預金も小口預金もタイムラグを置かずに、つまり時間のずれを置かないで同時に実施すべきだ、郵便貯金に市場実勢を超える金利をつけることは不可能であって、自由化の障害にはならないというような見解を示しておられるわけでありますが、この大口、小口も同時に行わなければならないという理由について、詳細に郵政省としての見解をもう一度お述べください。
  136. 山口憲美

    ○山口説明員 御説明を申し上げます。  ただいま御説明を申し上げましたように、基本的に預金者にとってそういったメリットがあるということでございますので、なるべく早くそれを実現することが望ましいというのが基本的な考えでございますが、現在小口を幾らからというふうに考えるかということでいろいろ御議論あろうかと思いますけれども、仮に現在の非課税貯蓄ということを考えますと、これが二百兆円を超えるような規模になっているわけでございまして、こういったものを自由化の圏外に置いたような形での自由化というふうなことは、いわゆる預金についての自由化が実現したということにはならないだろう、こういう大きなものを圏外に置くことはできない問題だろうということが一つございますし、また先ほど来お話がございますように、もしこれを長期にわたって現在のような形のままにしておきますと、いわゆる自由金利型の商品というものの開発が進んでおりまして、そういったものに資金がシフトするというふうな、金融秩序に混乱を与えるような結果にもなりかねない要素もあるだろうということから、私どもはぜひ早くというふうに考えているわけです。  従来この小口の問題について、小口の煩雑性というふうなことがよく言われたわけですが、現在エレクトロニクスの技術が進んでまいりまして、そういった問題もかなりの程度克服されるという状況でもございますので、私ども考え方では、やろうと思えばやれるというふうな気持ちで、なるべく早く、ぜひ大口と一緒にというふうなことを郵政省としては希望しているということでございます。
  137. 野口幸一

    ○野口委員 恐らく郵政省は郵便貯金のことを頭に描いておられるわけでありますから、当然そういうふうお答えが出てくるところでありましょうけれども、ただ、従来の制度をそのまま温存していくことだけが郵政省の使命でもないし、またそうであってはならないということも御存じのはずであります。金利の自由化というのが現代の趨勢であるとするならば、それに対して積極的にその対応を考えていかなげればならぬということも、おのずから求められているところであると思うのであります。  ただ、先ほどの銀行局長の御説明のような状況といいまするか、いわゆる大蔵貧の中長期のプログラム「金融自由化の展望と指針」の中でも述べられておりますけれども、「大口預金がら小口預金へと六段階に分けて進める」という表現につきましては、きょうも新聞に載って、おりますように、いわゆる中期国債ファンドが爆発的な人気で伸びを示しておることに示されておりますように、金融界において混乱が生ずる一つの兆しを見せているような気がしてならないわけであります。したがって、郵政省が述べていますように、この金利の自由化というのは、大口、小口——これは、小口というのはどこから小口なのかという議論もあるわけでありまするけれども、その辺のところは大所高所に立った方針と申しますか、プログラムをぜひ関係筋と十分な御協議を重ねていただいて、お互いが納得ずくで自由化の問題について対応ができるような御配慮を煩わしておきたい。この辺についてどのようなお考えがあるか、ひとつ銀行局長に重ねてお伺いをしたいと思います。
  138. 宮本保孝

    ○宮本(保)政府委員 私どもも、金利の自由化は大口預金金利の自由化だけで終わるとは思っておりません。小口預金金利の自由化にまで進まなければいけないということは当然でございます。  ただ問題は、小口預金金利の場合には、やはり郵便貯金の金利がどう決められるのかという点が非常に大きな問題でございまして、この問題は郵政当局とも十分意思の疎通を図りながら、今後どうやって自由化に対応していくのかということを時間をかけて議論をしてみなければいけないのではないかということ。  もう一つは、金融制度調査会の議論なんかでも割と多数説として述べられたことなのでございますが、日本の場合に、零細な小口預金の金利まで完全に自由化してしまうことが本当にいいのだろうかどうだろうか、やはり何らかのルールをつくった上で安定的な金利を確保することの方が、日本のような場合にはふさわしいのではないだろうかという議論もございまして、この辺は、郵便貯金を含めた小口の預貯金金利につきましては、大口預貯金金利を自由化する過程でもう少し慎重に議論をしていく、そして金融に大きな悪影響のないような形でもって小口預金金利の自由化を進めてまいりたいと思っております。  また同時に、先ほども郵政省の方から御指摘がございましたが、その過程で小口の預金者に不利なようなことになっては、これはまたまずいわけでございますので、その辺につきましては、いろいろな組み合わせ商品あるいは提携商品等によりまして、小口預金者に対しても不利にならないような方策を考えながら対応していくべきではないかというふうに考えております。
  139. 野口幸一

    ○野口委員 私、偏見を持っているわけではないと思うのですけれども、御存じのように、たまたま私も郵政省の出身でありますからそういうような見方をするのかもわかりませんが、最近新聞でもよく書かれておるわけでありまするが、郵便貯金というものはどうも自由化に対するがんだと言われるような記事が見かけられるわけでございます。どうして郵便貯金がそのように言われているのかということを私も私なりに検討もし、勉強もさせていただいておるわけでありまするけれども銀行現金と郵便貯金の違いというのは、預金と貯金と字が違うように、非常に少額な金額をかき集め、国民の底辺に浸透して百年の歴史を持つのが貯金であります。したがって、これに対する手だてと申しますか手当てというものは、後ほどまた財投の問題も取り上げて申し上げますが、政府の施策とも非常に密接不可分なるものを持っておるわけでありまして、一概に金利の自由化というものだけで今日の郵便貯金側度そのものが崩壊をするようなことがあってはならない、こう考えるのが私の主張すべきところでございます。  次に、利子・配当課税の問題についてもお伺いするわけでありますが、仮に郵便貯金が課税の対象になるというようなことになるとするならば、郵貯百年の歴史の中で、かつて課税のなかった郵貯がその対象になるということによって、郵貯のメリットというものは全くなくなってしまうことも考えられるわけでありますけれども、利子・配当課税について若干お尋ねをいたしたいと思います。非課税貯蓄の実行をしていくための今後のスケジュールといいますか、どのように進めようと考えておられるのか、この点についてお聞かせをいただきたいと思います。
  140. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 利子・配当課税の問題につきましては、昨年かなりの期間をかけて税制調査会で御議論をいただきました。昨年秋にいただきました中期答申で、今後の利子・配当課税の問題を論ずる場合の幾つかの問題点が指摘されておるわけでございますが、今日の段階で、税制調査会でまだその結論は出ていないわけでございます。  それから、五十九年度の税制改正の答申をことし一月にちょうだいしたわけでございますが、そこでは、たまたま五十八年の所得税法の改正で、いわゆるグリーンカード制度を当初の予定よりも三年ずらせることにしていただきましたけれども、そういたしましても、六十一年の一月からグリーンカードの交付が始まることになるわけでございます。したがいまして、この問題につきましては、六十年度の予算あるいは六十年度の税制改正の問題として取り組まなければならない。そういうことでもございますので、税制調査会としては、でき得ればこの夏ごろまでに結論を得るのが望ましいというふうに、先ほど言いました答申にも書いてあるわけでございまして、私どもも、そういったテンポといいますかスケジュールでこの問題についての結論が得られるように、そういう作業スケジュールで進むことを現段階では期待しておるわけでございます。
  141. 野口幸一

    ○野口委員 そういたしますと、これは今日では決まっていないと言われるわけでありまするけれども、主税局長のお考えとして、今後は少額利子控除方式というものを採用されるのか。あるいはまた、続けてずっと御質問申し上げますが、年末調整をすることになるサラリーマンの見込み件数がどのくらいになるのだろうとか、先ほども申し上げましたが、郵便貯金も課税の対象に考えられているのか。あるいは家庭の主婦だとか老人、子供までも還付請求ができることになるわけでありまするが、この件数はおよそいかほどになると思われるのか、これらの還付請求業務に税務署が耐えられるのだろうか。あるいはまた、現在支払調書の名寄せはどのくらい出てきておるのか、それからそのことによってどのくらいの税収が上がっているのか。続けて申し上げますが、三五%の源泉分離というものを選択している者は今全国にどのくらいあるのか、その税収はどのくらい上がっているか。仮に累進税率二〇%以上が適用されるといたしました場合、どのくらいの人がその適用の範囲に入るのか、あるいはまた今日の状況はどのような状況にあるのか。申告漏れのために追徴をしたというような人は、今日の段階ではどのくらいあるのかというような点など、約六、七点あるわけですが、順次これを御説明いただけませんでしょうか。
  142. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 非常に多岐にわたる御質問があったわけでございますが、後ほど計数等については国税庁の方から補足して御説明申し上げることにいたしまして、まずその入り口の議論でございますけれども、非課税貯蓄を今後税制上どういうふうに考えるのかという問題は、先ほど申されました利子・配当課税の今後のあり方と密接な関連を持つ問題でございまして、夏ごろまでに結論が得られることを期待しておるということを先ほど申し上げたわけでございます。  この非課税貯蓄につきまして、税制調査会の昨年秋の答申で指摘されておる問題、幾つかあるわけでございますが、基本的な論点は二つあるわけでございます。つまり、貯蓄奨励という、政策税制という観点から見た場合の非課税貯蓄制度の政策的意義というものをどう考えるのかという問題でございまして、税制調査会の小委員会でも、この問題につきましてはいろいろ意見が分かれております。まだ統一的な方向は出ておりませんけれども、政策税制としての存在意義をどう考えるかという問題がまずございます。それからもう一つは、そうは言いながら、現在の制度の運用の問題としてやはり乱用の問題がある。民間のマル優の問題、それから郵貯の三百万円の枠、両方含めまして、現実の税務調査段階で乱用の実態があらわれておるわけでございまして、この乱用の問題をどう考えるか、この二つがあるわけでございます。  その場合に、現行の非課税貯蓄制度をそのまま存続させることにして限度管理をきちんとやる方法、これが一方の極でありますとすれば、もうこの制度を廃止してしまうというのがもう一つの極にあるわけでございまして、その中間段階にいろいろな方法があるわけでございます。それから、限度管理を厳正にやるにいたしましても、いろいろな技術的な方法で手段が分かれる。課税をする場合におきましても、委員が御指摘になりましたように、税務当局はもとより貯蓄者の皆さんの負担を考えまして、なるべくそういう広い意味での社会的なコストのかからない方法を考えなければいけないわけでございます。その場合に、まだ税制調査会でも私どもといたしましても、具体的な結論なり方向づけ、そういう予断は一切持ってないわけでございますけれども、考えられる方法としては、高い税率で源泉徴収して還付するやり方とか、世の中の議論として新聞紙上なんかで紹介されておりますように年末調整でやる方法とか、いろいろあるわけでございます。  したがって、そういういろいろ難しい問題を含んでおるこの非課税貯蓄制度のあり方について、実はこれから議論を進めていただくわけでございますので、後ほど国税庁の方から、ただいま御質問になりました計数上の点については説明をするとは思いますけれども、例えば源泉徴収税率を何%にした場合に還付の人間がどれだけになるのか、これは徴収税率を一体幾らで設定するかによっていろいろ数が変わってまいります。それから税収見積額が一体どれぐらいになるのかという御質問でございますけれども、これも制度の組み方によっていろいろなことが考えられるわけでございますので、今御指摘になりました点で、今日の段階できちんとした御説明ができない、あるいはお答えができない性格の問題も含まれているということはあらかじめお断りしておきたいと思うわけでございまして、以下の点につきましては国税庁の方からお答え申し上げます。
  143. 渡辺幸則

    ○渡辺(幸)政府委員 続きまして、今御質問いただきました幾つかの点について申し上げます。  最初に、年末調整をしておる給与所得者数がどのぐらいあるかということでございます。これは私どもの民間給与の実態調査結果に基づきまして推計をいたしたわけでございますが、官公庁に勤務する者を含めまして、現在約四手百万人であろうかと思っておるわけでございます。  その次に、還付申告に関連してのお尋ねがございました。いろいろな階級の人々、例えば主婦だとか老人だとかそういう方々でございますが、これは実は大変申しわけないのでございますが、私どもそういう分類を持っておりません。主婦とか学生につきましては、申告書にそういうことが必ずしも記載してございませんのでわからないわけでございます。老人は年齢は一応記載はあるわけでございますが、現在のところ統計をとっておらないわけでございます。  それから、支払調書についてのお尋ねがございました。支払調書は、現在のところ利子関係につきましては約千四百万件いただいておるわけでございます。これは法人の分も入っております。その中で個人分につきましてはこれより大分少ないのだと思いますが、今ちょっと計数を持っておりません。しかしながら名寄せにつきましては、利子につきましては、私ども全部一応税務署の中で審査をいたしまして照合をいたしておるわけでございます。もとより事務職員の数に限度がございますので、全部を調べるということはいたしておりません。しかしながら、一応支払調書につきましての照合は、利子につきましても配当につきましても、今の段階ではやっておるわけでございます。  その次に、二〇%の源泉徴収税率ということになった場合に、どういうような還付とか対応能力とかいうことでございますが、これはただいま主税局長から申し上げましたように、私どもこれを定かに申し上げる段階にはないわけでございます。ただ、全体として申しますと、現在の課税の体系のもとにおきましては、源泉分離の選択をされておられる方、それからいわゆるマル優の選択をされておられる方、そういう方は全部非課税になりまして、あと総合課税の方だけが残るわけでございます。そういうことで、総合課税分といたしまして、私ども利子所得として把握しておりますのが四百五十五億円でございます。  それから源泉分離についてのお尋ねがございましたが、源泉分離につきましては、元本の額は私どもわからないわけでございます。制度の建前がそういうことになっておりますので、これは把握いたしておりません。しかしながら、源泉分離課税を選択した預貯金等の利子の支払い額、これは五十七年分で約一兆二千億円ございます。この税額が四千四百億円ということでございます。  限度額管理につきましては、委員よく御承知のとおり、いろいろ問題があるわけでございます。私ども、金融機関の全店舗の大体一一%につきまして、毎年利子所得調査を実施しておるわけでございまして、その結果出ました申告漏れ税額というものが大体百七十億程度あるわけでございます。  大体以上でございますが、また追加の御質問がございますれば、その段階お答えを申し上げたいと思います。
  144. 野口幸一

    ○野口委員 最後に漏れておったのは、先ほど来のお話ではありませんが、いわゆる二〇%の課税を全体的に実施するというような問題だとか、あるいはまた還付請求全体の業務に対する税務署の職員の対応というのは、こういった仮定の状況を想定してみた場合において、現在の状況でそういうことが業務上可能なのかどうなのか、その見通しはいかなるものかということの御返事がなかったようですが、それはいかがですか。
  145. 渡辺幸則

    ○渡辺(幸)政府委員 還付申告の問題、これは私ども執行当局にとりまして大変重要な問題でございます。現在、大都市の税務署におきましては還付申告の数が非常に多うございまして、例えば東京都区内の税務署でございますと、非常に多くの税務署におきまして、還付申告の数とそのほかの確定申告の数が大体相半ばするというような状態でございます。全体といたしましては、還付申告の数は全国で五百五十万件ということになっております。現在、御承知のとおり所得税の税務職員が約一万人おりますが、この申告事務も含めまして実調率を維持する、その他の重要な事務に最大の努力をいたしておるわけでございます。したがいまして、還付申告の数が非常にふえるということになりますと、私どもの税務処理の対応は非常に難しくなってくるということは申し上げられるかと思っておるわけでございます。
  146. 野口幸一

    ○野口委員 今お答えをいただいておりまするように、先ほども梅澤局長がどのようなものを採用するかは決まっていないと言われておりましたけれども、まさに利子・配当課税のあり方というものは非常に大変な仕事でありますし、仮に今私が述べましたような方式のどれをとられてみましても、その業務の実態から見ましてこの還付請求に応じられる状態にはない、こう申し上げてもいいと思うわけであります。したがって、これらの対応については、先ほどもちょっと触れられておりましたけれども国民の立場からいうならば煩雑さを避け、かつまた税務職員の立場からいうならばこれ以上の業務負担がむやみにふえるということがないやり方で、しかも実収の上がる方法というものはいかなる方法があるものかということが非常に求められるという焦点の中では一番難しい点であろうと思うわけであります。しかし、その辺は英知の塊である大蔵省でありまするから、何とかいい方法をお考えになるのだろうとは思います。  そこで、焦点として、今日までいわゆるマル優制度とともに課税対象から外されておりました郵便貯金というものの存在に、今日の段階でどのように対応しようと考えておられますか、この点もつけ加えて御説明いただきたい。郵便貯金も含めていわゆる利子・配当課税はその対象になる、こういう考え方ですか。全部一緒に丸めてやるだけですか、そういう意味ですか。
  147. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 郵便貯金の非課税の制度は、たしか大正九年からもう既に長年我が国に定着してきた制度であるわけでございます。その意味で、郵便貯金の課税の問題と申しますか、税制上の扱いは当然検討を避けて通るわけにはいかないわけでございます、結論はいずれにいたしましても。たびたび引用して恐縮でございますけれども、昨年の秋の中期答申でも、この問題につきまして一つの問題は、税制というもの、特に利子課税のあり方というものが金融資産の選択に非常に大きな影響を与えるということでございますので、現在の郵便貯金に関する税制をそのまま存続させるのか、あるいは何らかの変更を試みるのかという結論の問題は別にいたしまして、いずれにいたしましても、改めて非課税貯蓄を含めて利子・配当課税を考える場合には、当然個人貯蓄のうち相当部分を占めておりますこの郵便貯金の問題というものは、やはり避けて通ることはできないだろうというふうに考えております。
  148. 野口幸一

    ○野口委員 くどいようでありますが、重ねて。この郵便貯金が金融政策の機動的運営を妨げているという言葉があるのです。いわゆる金融政策の機動的運営を妨げていると言われている郵便貯金の存在というものは、具体的にどういう理由によって機動的な運営を妨げているとおっしゃるのですか、銀行局長
  149. 宮本保孝

    ○宮本(保)政府委員 金融を考えます場合には、やはりマネタリーオーソリテノーのもとに一元化されて金融政策が行われませんと金融が円滑にいかない。現在の金融政策のもとでは、金利の決まり方が、一広いわゆるマネタリーオーソリティーの系統の決まり方と、もう一つは郵政省を中心とした郵政審の決まり方とあるわけでございまして、この二元化しているところに経済金融原則がなかなか貫徹しない面がございます。したがって、やはり金融政策として考えます場合には、どうしても一元的に金利が決まるような制度になっておりませんとなかなか難しいのじゃないだろうかというのが第一点。  それからもう一つは、金利の自由化といいますのは、要するに民間の企業体が取引をする、あるいは経済活動をする、金融活動をする、その過程の中で自然に決まってくる金利がまさに自由金利でございます。ところが、郵貯の場合には、民間の企業体とは違った国家の信用力をバックにする、それからいわゆる配当も必要ない、あるいは税金も払わなくてもいいというようなことで、民間の企業体とは非常に性格が違うのでございます。そういうものと同じように競争しようといたしましても、なかなか競争条件が合わないというような点があるわけでございます。その点もございまして、経済金融情勢の中で自由に金利が決まるといういわゆる金利自由化の中で、こういう特殊な郵便貯金、しかも八十兆に及ぶような巨大な金融集団でございますから、この金利が先に決まってしまいますと、もう民間がこれに全部追随しなくてはいけないというような状況でございます。したがって、金利自由化の中で郵便貯金の金利をどうやって決めていくのかというのが非常に大きな問題でございまして、これはやはり今後大蔵省と郵政省と十分議論をし合いながら、どうやって自由化の中で郵便貯金の金利を決めていくのかということが非常に大きな課題ではないかというふうに考えておるわけでございます。
  150. 野口幸一

    ○野口委員 私は逆の考え方を持っておりまして、自由化にすれば、郵便貯金が恐らく逆に銀行預金についていけない、とてもそれだけの利子をつけることができなくなって郵便貯金が激変するのではないか、こういう危惧を持っているわけであります。したがって、自由化になった場合、このままで推移をすれば、恐らく郵便貯金の方が、もちろん信用問題というものは別にあるとしましても、今日の非常に高い選択眼を持っておられる国民の目からするならば、必ずしも郵便貯金が確実有利だということで今までのような状況を続けられるとは考えられないのでありまして、こういう点から考えまして、今銀行局長がおっしゃるような意見に必ずしも賛成する立場にないわけであります。この点について郵政省も意見があるようでありまするから、郵政省はどのように機動的運営を妨げられている——こっちは妨げられていないのだという意見を持っているはずでありますから、郵政省、答えてください。
  151. 山口憲美

    ○山口説明員 まず、現在のもとにおける金利の決定の問題でございますけれども、先ほどちょっとお話が出ましたので申し上げさせていただきますが、郵便貯金法第十二条というものがございまして、郵便貯金が国民大衆の少額貯蓄の手段であるということに留意をいたしまして、預金者の利益を増進するよう十分な考慮を払うとともに、あわせて民間の金融機関の預金の利率についても配意するという原則が定められておりまして、この原則に従いまして、民間の預金金利の動向等を考えて決めるという形になっているわけでございます。ただ、その具体的な運用に当たりましては、五十六年の九月にいわゆる三大臣合意というふうなものが決められまして、郵政省、大蔵省が十分な意思疎通を図って、整合性を重んじて機動的に対処するということになっておりまして、その線に沿って今後とも対応してまいりたいというふうに考えております。  なお、この自由化のもとにおきまして、ただいまいろいろ郵便貯金のお話がございましたけれども、郵便貯金が今後この自由化に対応してまいりますためには、現在の出口と申しますか、運用部資金の運用の問題で、今のままでは自由化に郵便貯金が対応できない、対応していくためにはどうしても市場実勢にふさわしい金利が提供できるような、そういった運用方法の改善を図っていく必要があるというふうに思っているわけでございます。  その場合に、郵便貯金がいわゆるプライスリーダー的なものになるというふうなお話でございますけれども、その点につきましては、仮に運用をするというふうなことになったといたしましても、おのずからその運用対象というものは公的機関だということでの制約があるということから、その運用についても非常に有利な形での運用ができるということには決してならないだろうということで、おのずから預金金利というものについても、そのプライスリーダーになり得るというふうなことにはならないのじゃないか。  それからまた、先ほどのお話で、国の信用というふうなことで郵貯の非常に有利な面のお話がございましたけれども、同時に、郵便貯金は非常に山間僻地まで、コストの合わないところにまで提供していかなければならないという、国としての逆の負担もあるということでございまして、私どもとしては、郵便貯金がプライスリーダーになるというふうなことにはとてもならないんじゃないかというふうに考えているわけでございます。
  152. 野口幸一

    ○野口委員 双方といいまするか、郵政省もあるいはまた大蔵省も、自由化に対応する郵便貯金の存在といいまするか、そのことについてはそれぞれの御意見があるようであります。  そこで、大臣にお伺いするわけでありますが、後ほど財投の資金調達の問題についても出てくると思うのでありますけれども、今日の郵便貯金の使命について、一説では、郵貯は民間金融機関を補完する性格にしなければならないものだという議論もあるわけでございます。補完ということになりますると、これは足らざるを補うという意味でございまして、補完事業で果たしていいのかということ、あるいはまた、財投の資金調達の点から考えましても、郵便貯金の存在というものは欠くべからざるものと考えるわけでありますが、今後の金融政策全般の中における郵便貯金の存在はいかがあるべきかという点について、大臣の御所見をひとつこの点で伺いたいと思うのであります。
  153. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに郵貯は民間金融機関を補完すべきであるという意見があることはそのとおりであります。  郵便貯金というのは、いずれ御指摘のある問題でございましょうが、資金運用部資金としてこれが一元的に管理運用されるということによりまして、我が国の財政投融資の運営に重要な役割を今日も果たしてきておるわけであります。官業である郵便貯金は、民間金融機関の補完的役割を果たしていくものであって、今後ともそのような役割を維持して、民間とのバランスを保ちながら増加していく、今我々の立場から言えばそのような期待を持っておるわけであります。したがって、資金運用部の資金運用も、いわば集まってくる原資の範囲内で行っていくべきものであろうというふうに基本的には考えておるわけであります。  確かにいろいろな指摘が今日までなされております。私自身も、どういう考え方でこれに臨むべきかということからいたしまして、両省よって立つところの歴史的根源からして、話し合いを行う機会をより多く持つべきだという方向で努力をいたしてまいりました。そうして、いわゆる預金金利の問題につきましても、たしか三大臣合意というのがございまして、その際にも、ちょうど私は大蔵大臣をやめて党におるときでございましたが、その仲介をして機動的、弾力的、整合性のある決め方にしようというようなことの合意を見たわけでございますけれども、なおいわゆる金利決定機能が二元化いたしておりまして、それがまた若干のタイムラグを生じたという事実も今日ございますので、これらの問題についてもより一層両者の協議というものの密度をなお重ねていかなければならぬ課題ではなかろうか、こういうふうに考えておるものでございます。  ただ、今ほど大きな存在になっておりますので、かつてのよってもって立つ歴史的根源からすれば、極端に言えば、国の信用というものが背景にあるから、銀行は倒れることがあっても、郵便局は倒れない。そこで、細民の貯蓄意欲を刺激していくためにも、金利は若干安くても、それがそれなりに存在しておった時代であったと思うのでありますが、今日はまた、日本の銀行というのが、明治三十四年、一九〇一年でございますかに例えば千八百あったものが、この間の合併で恐らく百五十六になったと思うのですけれども、だんだん集約されて、実際問題金融機関というものは倒れないものだということで、国民一人一人が、倒れるものだという意識をしていない。それだけに、いわば金融機関も倒れないもの、もちろん国の信用の基盤の上に立っている郵便局は倒産するわけがない。そうすると、その条件は、ある意味においては同じような条件になった。  そこで、その変化からして、金利というものもおおむね同じ水準でもって今日来ておるわけでありますが、その間にあって、いわば双方が非常に大きなウエートを占めるような形になっておるだけに、いわゆる金融自由化という必然性の中で、もう一遍本気に大所高所からと、いま一つ担当する両省間と、両方で協議を重ねていって、あるべき姿というのを基本的に打ち立てていかなければならぬ時期にも到来しておるのではないか。こういう考え方の上に立っておりますので、今おまえはいかにこれを位置づけるかと言われましても、私自身結論めいたものを先にお述べするほどの自信も、また勉強も、率直のところ自信を持って申し上げるほどいたしていないというのが現状でございます。
  154. 野口幸一

    ○野口委員 非常に抽象的なお答えで残念なんですけれども、言葉じりをとらまえて失礼なんですけれども、民間といいますか金融とのバランスのとれた補完的な役割、この民間とのバランスというのは、どういう状況を民間とのバランスという言葉で表現されておるのでしょうか。大臣もしもなんでしたら理財局の方から、例えば財投をこれから維持していくという立場において、民間とのバランスというのは一体どういう立場で維持をしなければならぬか、一つの言葉じりをつかまえての話ですけれども、このバランスという意味は、理財局としてはどのように考えられますか。
  155. 西垣昭

    ○西垣政府委員 今大臣から御答弁申し上げましたのは、郵貯は財投原資の大宗でございまして、私どもは、国の制度、信用を通じて集められる資金は統合運用するということでやっておるわけでありますが、郵便貯金はその大宗でありまして、財投原資の立場からいいますと、郵貯がどんどん伸びてくれるということは、運用面からいいますと非常に助かるわけでございます。     〔委員長退席、中西(啓)委員長代理着席〕  しかし、民間金融機関との関係からいきますと、郵貯はどんどん伸びる、しかし民間金融機関の方は伸びないというようなことを期待していいかというと、それはそうはいかないであろう。その間にはおのずからバランスがあるであろう。そのバランスの中で集まった郵貯を大宗とする財投原資の中でいかに効率的に活用するかということを財投の運用としてやっていく、そういうことを大臣申し上げたわけでございますが、その間のバランスというのは、これはやはり常識的なものがあろうかと思います。私の方から、これがすなわちバランスであるということを申し上げるのは難しいのではないかなと思います。
  156. 野口幸一

    ○野口委員 少しく視点を変えて、財投の問題に入りたいと思います。  最近の財政投融資の原資の推移を眺めてまいりますと、郵便貯金の占める状況というのは、昭和五十五年に金利の問題がございまして非常に急騰いたした場合を除きまして、総じて減少の一途をたどっている状況であります。五十七年度八兆三千四百五億、五十八年度七兆九千億、五十九年度の予算では六兆九千億、こういう状況に徐々に減ってきておりますが、この状況は、先ほどのバランス論でありますけれども、こういう状況こそ民間とのバランスという意味では好ましい状況だというような形でおつかみになっているか、それとも、余り好ましくない、やはりもう少しふえてもらった方がいいと思っていらっしゃるのか、その辺はいかがですか。
  157. 西垣昭

    ○西垣政府委員 今野口先生から御紹介がありましたように、郵便貯金の伸びは最近よろしくありません。私どもの財投計画の編成ベースで申し上げましても、五十六年度に八兆九千億という伸びを期待しましたが、それ以後は、五十七年度七兆九千億、五十八年度七兆九千億、五十九年度六兆九千億というふうに伸びが鈍化しておりまして、財投原資に占める割合も、五十六年度の三八・七%から五十九年度には二七・九%ということで、財投原資を苦しくしている最も大きい理由一つになっているわけでございます。  そういった意味では、郵貯の伸びがよくないということは、私どもにとっては非常につらいことでありますけれども、しかし、民間の金融機関の預金の伸びというものと比較してそれほど小さいかというと、それほどではないわけでございまして、まだまだ郵貯の方がいいというふうな見方もあるわけでございます。私どもといたしましては、これは一つの与件といたしまして、そういう苦しい原資の事情の中でどういう財投計画を組んでいくかということでございまして、つらいことではございますけれども、だからどうということではないというふうに考えております。
  158. 野口幸一

    ○野口委員 それに関連をいたしまして、政府保証債あるいは政府保証の借入金が、郵便貯金の減少と逆に年々増加をしているわけであります。すなわち、五十六年は一兆六千億余、五十七年は二兆二千億余、五十八年は二兆九千億、それから五十九年の予算では三兆二千百億という数字になっているわけであります。もうこれは申し上げるまでもなく、郵便貯金にお払いになっておる財投の金利と政府保証債におけるところの金利の差というのは、明確に金利の面においては政府保証債の方が高いわけでありまして、その分だけいわば財政事情を圧迫をしている、こういう現状にあるわけです。これはお認めになるわけでございます。そうなりますと、こういう状況、例えば今日の財投の原資総額というものは、二十四兆七千六十六億というのはこれでも足りないのか、これ以上欲しいのか、このくらいがいいのかということになりますと、今日の時点でどうお考えになっていますか。
  159. 西垣昭

    ○西垣政府委員 今、財投の運用面で申しますと、大きく分けて三つございます。一つが国債の引き受けでございます。国債の引き受けにつきましては、もっともっと財投、資金運用部で引き受けるべきだ、こういう議論がございます。それから次が地方でございます。地方も、地方財政の状況からいいまして、政府資金をふやしてくれという要請が非常に強うございます。それから第三が、財投機関に対する配分でございます。財投機関からも相当強い資金需要がございます。私どもといたしましては、その三者の需要をいかに配分するか、限られた財投資金を最も効率的に配分するのはどうしたらいいかということで財投の配分をやっているわけでございますが、その配分をするに当たりまして、やはり財投原資の事情を念頭に置きながら、原資が苦しいときには厳しい配分計画をつくらざるを得ないということでございます。  その中で多少バッファーの役割を果たしているのが民間資金の活用ということでございまして、政府保証債等につきましても、必要なものについては多少原資が高くても政府保証債の増発を図らなくてはならないということでございますが、これの方も、引受手は金融機関でございまして、限界がございます。そういった制約の中で、運用面と原資面との調整を図りながら財投計画の編成をしているというのが実情でございます。ですから、お答えになるかどうかわかりませんが、財投計画の編成ということからいいますと、原資がふえてくれるというのは望ましい姿ではございますが、望ましいといって期待しているわけにもいきませんので、現実に合わせて財投計画の編成をしているということでございます。
  160. 野口幸一

    ○野口委員 しかし、現実には結局郵便貯金が減少をしていく部分を補完をするといいますか、補足するというような数字がいわゆる政府保証債において行われているとするならば、おおむねこの二十四、五兆円という金は今日の財政運営の中である意味では必要欠くべからざる原資の状況だと言えるのじゃないだろうか。そうしますと、その足らざる部分だけはいわゆる政府保証債等で補わなければならない。当然この郵便貯金の減少分を高い金利でもって埋めている、こういう現象があるわけであります。  三年ほど前でありまするが、私同じくこの問題を質問いたしまして、なるべくならばこの政府保証債というのを少なくするのにこしたことはない、安い金利である郵便貯金の方をもっと奨励すべきが筋なのではないか、こういうことを申し上げたのであります。そのときには御答弁として、そのとおりでありますと言われたのですけれども、残念ながらそのとき以降さらにまた減少をしているという今日の現象であります。したがって、先ほど来私どもが言っておりますこの郵便貯金の存在というのは、一部にはそれはもちろん金融の自由化に対応していろいろな議論をされているところでありますけれども、国の財政という点から考えますと、この点は一考あってしかるべき存在にあって、非常に重要な位置づけにある、このことの認識だけはひとつ忘れないでいただきたいという気がするわけであります。  さらに、釈迦に説法でありますけれども、この回収金等ということしの予算の中の八兆一千五百五十二億のおよそ六〇%程度は、これも郵貯の資金が回ってきて、この回収金として出てきているはずでありますから、総額としては非常に大きなものを郵貯が占めているということも言えるわけであります。  そこで、若干回収金の問題についてお伺いをするわけでありますが、今日この回収金というものは、前回私が質問しましたときは、この貸し付けについてはコンピューターに入っておって非常に正確でございます、したがってその見通し等についてはそんな狂いのあるものではございませんというような御説明がございました。しかし、今日のこの「財政金融統計月報」というやつを見せていただきますと、五十五年度の回収金等の予算は六兆一千八百九十四億、実績は何とその数字を大きく下回りまして四兆三千八百四十三億、五十六年に至りましては、今度は逆に、当初計画が六兆六千八百二億であったに対して実績は七兆八千八百三十七億という非常に大きな狂いが出ているわけですね。これは私は、回収金という性格から考えて、年度当初に償還されてくる金額というものはおよそもうはっきりとわかっているはずでありまして、こんなに大きな狂いが出てくるというのはどうしてもわからぬわけです。どういう理由でこんなに大きく変わるのですか。
  161. 西垣昭

    ○西垣政府委員 今御指摘がありましたように、回収金等の中身でございますが、これは償還金の見込み額と、それから特別会計等の預託金の見込み額といったものがその内容になっているわけでございます。お話がありましたように、私ども説明いたしておりますのは、これはコンピューターで回収金等の見込み額を計算しているので間違いがないはずですということを申し上げているわけでありますが、償還金の中には、相手の都合によって繰り上げ償還されるようなものがございます。それから特別会計等の預託金につきましても、特別会計の予算が予算計上どおりに執行されないというふうなこともございまして、預託額が当初の見込みよりもふえるというようなこともございまして、そういうのが偏って発生いたしますとかなりの額がぶれてくる、こういうことでございまして、財投計画編成のときにおきましては、私どもといたしましては最善の精度をもって回収金等の見積もりを行っているということにつきましては、これは間違いないところだと信じております。
  162. 野口幸一

    ○野口委員 私も中身をそんなに詳しく調べさせていただいたわけでありませんから、御答弁を信用する以外にはないのですけれども、少なくとも今日まで、私が設問をいたしましたときに大蔵省は、一本一本コンピューターに入れて管理をしているから、既往の貸付分について明確に計算できるようになっている、狂いはない、こう言われておったのでありますが、少しぐらいの狂いは、今おっしゃったように予算の執行上の問題だとかあるいはまた早期償還だとかいろいろな問題があって出てくるとしましても、五十五年度の六兆一千億が四兆三千億に変わるというような大きな変化は、何か特別の事情があったのですか。
  163. 西垣昭

    ○西垣政府委員 五十五年度という特定年度の狂いにつきましては、私、本日調べてまいりませんでしたので、よく調査をしてみたいと思います。
  164. 野口幸一

    ○野口委員 よく調査して、御回答いただけるのですか。——それじゃ後ほどこの分については御返事をいただくことをお約束をしておきます。  そこで、お尋ねをいたしたい件がもう一つあるわけですが、財投の資金というものは一般会計の肩がわりをしてはならないということはもちろんのことでありますけれども、今私がちょっと調べさせていただいたところによりますと、実は住宅金融公庫の融資に関連いたしまして若干疑義がございますので、その点をお尋ねしたいと思うのです。  住宅金融公庫に貸し付けておられるわけでありますが、今日、住宅金融公庫の五十九年度末のいわゆる累積赤字の想定額というのは、およそどのぐらいになると見込んでおられますか。先ほどお聞きしましたら、住宅金融公庫に聞かなくても御存じだということでしたので。
  165. 宮本保孝

    ○宮本(保)政府委員 二千三百四十億円でございます。
  166. 野口幸一

    ○野口委員 同様に、地方交付税等特会においても、一般会計の財源不足を補うために、資金運用部から借入金を五十八年度末までに幾らお貸ししておられますか。
  167. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 私の方はお借りしている立場なんですが、十一兆五千億円借りているということでございます。
  168. 野口幸一

    ○野口委員 これらのいわゆる資金を運用しておられることにつきましては、この問題は一般会計の財源難から起こってくる部分をこの財投資金で肩がわりをしておられる。これは財投の本来の資金運用の立場から間違っているのじゃないだろうかと思うのでありますが、本来一般会計で負担すべきものを資金運用部が肩がわりをしている、一種のやみ国債ではないか、こういうような声もあるわけでありますが、この点に対する御意見はいかがですか。
  169. 西垣昭

    ○西垣政府委員 御存じのことかと思いますが、資金運用部資金法の原則と申しますのは、資金運用部の運用といたしましては、公共性という立場を守りながら安全かつ有利に運用するということでございます。  一般会計の肩がわりということでございますけれども、私どもといたしましては、資金運用部の使命といたしましては、一般会計と並びまして合理的な資源配分ということをやっているわけでございますけれども、いたずらに一般会計、国の予算が苦しいからそれを引き受けているという形ではございませんで、一つ一つやはり念査をいたしまして、それなりの資金運用を考えて運用しているわけでございます。
  170. 野口幸一

    ○野口委員 私は納得できないのでありますけれども、財投というのは、対象事業の収入により投下資金を回収し、それにより元利を確実につかむことができるというものに限りこれにこたえるということでなければいけない。それを一般会計の赤字補てんというものに使うということは財投の趣旨に反しているのではないか、こういう趣旨でこの問題を眺めてきておるわけであります。この点につきましては、私、時間がありませんので、もう少し突っ込んだ話をしようと思いましたが、やめさせていただきますが、いずれにしても今日の財投の運用については念が上にも念を入れて十分な対応をぜひお願いをしておきたいという気がしてなりません。時間がありませんので、ちょっとしり切れトンボになりますけれども、これでその問題を終わらせていただきます。  次に、電電公社に対する納付金の問題について若干伺いたいと思います。  電電公社に対して、昨年もまたことしも同じでありますが、一定額の納付金を要請をしておられます。この納付金の問題は、五十九年度の納付金が五十八年度の電電公社の収支差額の中から納付されるのだということでありましても、建設投資が減額されるわけではないわけでありますから、実質的には借金で賄うことになるという性格のものであると思いますが、これに対する御見解はいかがですか。電電公社、お答えいただきます。
  171. 飯田克己

    ○飯田説明員 先生おっしゃるとおり、私どもは毎年、五十九年度で申しますと一兆七千百億の建設投資を行っております。したがいまして、毎日入ってくるお金は日々電話局あるいは通信設備等に化けているわけでございまして、手元に現金等の余裕資金を残しているというわけではございません。したがいまして、今御審議願っております国庫納付金二千億につきましても同様でございまして、形の上では五十八年度以前と形は変わっておりますけれども、実体的にはすべて借金ということによって国庫に納付するということに相なります。
  172. 野口幸一

    ○野口委員 そういたしますと、五十六年から五十九年度にわたって四千八百億、五十九年度新たに二千億、計六千八百億の借金を負うことになるわけであります。この部分にかかる利子負担率を仮に八%と勘定いたしますと、毎年五百五十億これから払っていかなければならぬということになります。一方、仲裁裁定等に係る電電の給与総額の拡大分、これは一・八四%で三千六百八十一円ということでございますので、約二百三十億円であります。これは納付金に伴う利子負担の約四割にしかすぎないのでありまして、電電の経営の効率化という問題を取り上げられ今日問題化されておりますが、その中心的な課題が人件費に焦点を合わせているということを考えますならば、まさに本末転倒と言わなければならぬと思うのでありますが、この納付金の影響が極めて大きいということを認識すべきであると思います。  そこで、五十七年度も五十八年度も仲裁が完全に実施されておらないわけでありますけれども、今日いわゆる収支差額の中から納付されるということでありますけれども、今日見込まれています三千四百億という金は、予算上は一応一千三百億、増収を図って約一千億、節約を図って一千百億ということで、合計が三千四百億程度になっていると言われておるのでありますが、これは職員の努力が大きに貢献をしている、こう言わざるを得ないと思います。したがって、今日このような状況の中で生み出されている三千四百億のいわゆる収支差額の金とするならば、二千億円国に取られるといたしましても、一方、職員が努力をして増収を図り節約をしている分に対して、それ相応の貢献、それに報いるものが当然あってしかるべきだと思うのでありますが、公社はどのように考えておられますか。
  173. 外松源司

    ○外松説明員 お答え申し上げます。  先生御指摘のように、国庫納付金を納め、そしてまた数次の料金値下げもやっておるわけでございますけれども、これは職員の努力、協力に負うところが非常に大きいわけでございまして、公社といたしましても、これから職員の勤労意欲を向上させるという意味合いからも、節々をとらえて、この職員に対する労働条件の向上という問題についてやってまいらなければならないというふうに考えておる次第でございます。
  174. 野口幸一

    ○野口委員 労働条件の貢献に応じてやってまいらなければならないというのはどういうことですか。そんな抽象的なことを言わないで、もっとはっきりと、職員の労に報いる方法はどうするかということについてちょっと……。
  175. 外松源司

    ○外松説明員 昨年度の年度末手当につきましても、現在電電公社の予算上、制度上認められておりますところの限度いっぱい支給することができたわけでございます。先生も御承知のように、非常に厳しい情勢下にございましてそういうことができたわけでございまして、政府関係機関としての諸制約はございますけれども、これから節々をとらえて職員への還元の問題についてもやってまいりたい、努力してまいりたいということでございます。
  176. 野口幸一

    ○野口委員 くどいようですが、それはいわゆる年度末手当とかそういうものじゃなくて、今日このような情勢を生み出した職員の労に対して何らかの手だてをしたいということですか。別にやるということですか。
  177. 外松源司

    ○外松説明員 お答え申し上げます。  先ほど来申し上げておりますように、諸制約の中で公社として最大限の努力をこれからもしてまいりたいということでございます。
  178. 野口幸一

    ○野口委員 どうもこの大蔵委員会の場では言えないのかどうか知りませんけれども、少なくとも、先ほども言っていますように、予算上は千三百億しかなかったものを三千四百億に引き上げたのだ。それは、もちろん電話料の引き下げによって、あるいはまたいろいろなサービスを提供することによって、企業努力という形の中で生み出されたものもあるけれども、職員自身も努力をして節約をし、この三千四百億を生み出しておるわけだ。一方、仲裁実施なんというものは、完全に五十六年度も五十七年度もやられてないわけですよ。それは御存じのはずなんだ。だから、もちろん一つには国に対して二千億出すのもいいけれども、それに対して一生懸命やっている職員に対しても何らかの方法でその労に報いるべきではないか、こう申し上げておる。だから、それに対して具体的にどういうようにいたします——単に決められた額を出しているなんて、そんなこと当然でありまして、それ以上に努力しているのだから、何らかの形で職員に、その労に報いたいと思っていますか。どうですか、その辺は。はっきりとおっしゃってください。
  179. 外松源司

    ○外松説明員 お答え申し上げます。  先生御指摘の点もよく心にとめまして、電電公社といたしましても最大限の努力をさせていただきたいと思います。
  180. 野口幸一

    ○野口委員 今、後ろに大蔵大臣がいるからちゅうちょしているのかもわかりませんが、大臣、どうですか。今の問題について、どのようにお考えになりますか。取るだけ取っているのですから、職員に対しても何らかの措置をとるべきだと思いますが、いかがですか。
  181. 竹下登

    竹下国務大臣 この問題は、最終的には御案内のように、公共企業体等職員の給与は労使交渉により決定されるという建前に立っております限りにおいて、大臣として意見を述べろと言われても、そこにはおのずから私どものそういう仕組みの上で守らなければならぬ節度がございますので、その限りにおいては、私から答弁できる限界としては、ただいまの御質問の趣旨は私なりに理解できますが、本来給与のあるべき姿につきましては、建前上大蔵大臣としてそれにじかに触れるわけにはまいらない、こうお答えするしか方法がないじゃないかな、こう思います。
  182. 野口幸一

    ○野口委員 では、どうですか、私がこういう質問をしたら。この千三百億しか予算上計上されていなかったいわゆる収支差益金を三千四百億まで引き上げてきた、こういう努力が職員によってなされた、そのことによって政府は二千億を取り上げることができたわけであります。できたといいますか、するように今しようとしているわけでありますが、それに対してやはり職員に対しても何らかの手だてはすべきであると私は思う。それに対して、そのことについては肯定をするか。そういう立場について肯定するかしないか。
  183. 竹下登

    竹下国務大臣 私どもがお願いして御協力をいただいた貴重な財源であります。その財源を生み出すに当たっては、今御意見を交えての御質問にあったように、職員の皆さん方の献身的な努力があってこそ初めてそれは生じた財源であるという認識は、十分私は持っておるわけでございます。ただ、給与、こういうことになりますと、建前上労使の自主交渉によって決められるべきものを、大蔵大臣がそれにコメントする立場には置かれていないというお答えをせざるを得ないのかな、こういう感じでございます。
  184. 野口幸一

    ○野口委員 後のことを言わなければいいのに。先のことだけでおいておけばいいのですがね。  それで、くどいようですが、大臣、こういうような形でありますから、どうせこの問題は労使において話をされると思いますけれども、そのことについて、大臣の立場として当然のことだということであると思いますが、重ねて御答弁をいただきたいのでありますけれども、この問題について理解を示すということでお返事をいただけませんか。
  185. 竹下登

    竹下国務大臣 今の御意見を交えた御質問のあり方については、私も思いを等しくいたしております。
  186. 野口幸一

    ○野口委員 ようやく何か私の質問に対する核心に触れられたような気がいたしますし、予定の時間も来ましたので私の質問を終わらせていただきますが、最後に、くどいようでありますが、今日の金融の自由化に当たりまして、郵便貯金の存在というものは極めて重要な位置にございます。先ほど来私もくどくどと申し上げましたが、郵貯百年の歴史をたどってみましても、この課税の問題あるいはまた財投に貢献した今日までの歴史的経過、いろいろな点から考えましても、単なる自由化の波にただただ押されて、郵便貯金そのものが崩壊をし、あるいはまた衰微の一途をたどるというようなことであってはならないと思うのでありますし、財投の立場から見ましても、郵便貯金の存在というものは極めて重かつ大、かつまた欠くべからざる存在として、厳然として存在をしているわけでありますから、そういった意味で一層の御検討を、郵政当局とも忌憚のない意見を十分にお交わしいただいて、そして金融の自由化に対応する諸政策を決めていただきたいということを特に御要望を申し上げたいと思います。大臣、まことに失礼ですが、その点について重ねて御答弁いただいて私の質問は終わります。
  187. 竹下登

    竹下国務大臣 今日までの歴史の中において郵貯の果たした役割というのは偉大なるものであると私は思っております。私ども国際会議等の場において金融の自由化が議論される際に、郵貯問題というのは諸外国の諸君にはちょっと理解できない存在でございます。事ほどさように日本の独自的な立場で今日まで果たされた役割というのは大きいだけに、相互の関係はもとより濃密な協議を重ねてあるべき姿というものをきちんとしなければならない問題だという理解はしておるつもりであります。
  188. 野口幸一

    ○野口委員 終わります。
  189. 中西啓介

    ○中西(啓)委員長代理 伊藤茂君。
  190. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 財確法についての質疑を続けさせていただきたいと思います。  今までさまざまの同僚議員からの論議が行われたわけでありますが、私は、この五十九年度の財確法の持つ意味というのは非常に大事な内容であり、大事なときではないだろうか、かねがねそう思っているわけであります。この財政状況をどうするのか、今まで歯どめと言われたものも今回やめざるを得ない、そういう中で一体将来どうしていくのかということについて思うことは、また御要望したいことはたくさんあるわけでありますし、また、私どももそうですから、政府としても、特に将来日本を担う抱負を持っておられる大蔵大臣としても、さまざまのことを気持ちの中ではお考えになっておられるのではないだろうかと思うわけでありまして、専門委員会の本委員会でありますからぜひ本音の御意見、お気持ちをお聞かせ願いたいというふうに思います。  中長期のさまざまの問題があるわけでありますが、近くの方からお尋ねをしてまいりたいと思います。  これから予算の執行をどうしていくのか、あるいは経済、最気動向を見ながら補正をどうしていくのかなとさまざまの問題が出てまいるでありましょうし、また、五月二十三日で会期が終わりましたら、すぐシーリングとか六十年度の作業に入っていくということになるわけであります。先日新聞を読んでおりましたら、主計官会議が開かれて、決意新たにとは書いてございませんでしたが、厳しい決意を持って作業を開始をしようというふうな話になったようであります。もちろんこれからその内容の詰めになっていくわけでありますし、また、シーリング、概算要求締め切り、査定などの作業に入っていくということになるわけでありますから、年末までそれが続くわけでありますが、六十年度から非常に厳しい状況に入っていく、今まで指摘をされたとおりであります。そういう方向に向けてどうしていくのかということについては、戦略と言ってはなんだと思いますが、単なる気構えだけではないさまざまの思いがするのではないだろうかというふうに思うわけでありまして、その辺、まず数点お伺いをしたいと思います。  まず第一点は六十年度のシーリングの問題でありますが、何か報道では六月の末をめどにとか出ておりますが、例年からしてそのようなところでございましょう。また、今までの各委員会の討議の中でも、五十九年度と同じように、あるいはそれ以上に厳しい枠組みを考えなければならないというふうな御発言があったようであります。まず、それらについてどのようなお考えでしょう。
  191. 竹下登

    竹下国務大臣 先般予算を参議院で議了をしていただいたわけでありますが、その後、直ちに閣議において私から発言を求めまして、いずれにしても六十年度予算に当たっても厳しい歳入歳出両面の合理化というものをやっていかなければならぬ、それについてのまず心からなる協力を求めたわけであります。したがって、そういうことから議論をしてまいりますと、まさに具体的方法ということになりますと、それについてだけはいましばらく勉強さしていただきたいという表現にとどめたわけであります。だから、いずれにしても厳しい概算要求枠を設定していかなきゃならぬという考え方に今日立っておるところであります。
  192. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 厳しいということがこの数年来続いてまいったわけでありますし、五十八年度はマイナス五%、五十九年度はマイナス一〇%というふうなことでございましたが、大体五十九年度、本年度と同じような状況で考えなければならないとお考えになっておりますか。全体に、今の状況からいえば、それよりも上回るくらいの厳しい考え方、枠組みしかできないというのか、やらざるを得ないというのか、そういう状態とも言われているわけでありますが、もうちょっと突っ込んでその辺いかがでしょう。
  193. 竹下登

    竹下国務大臣 そこのところがまさにいましばらく勉強さしていただきたいという発言をしたところでございまして、やはり歳出面においては、まさに制度、施策の根源にさかのぼって、ことしの予算でいささかなりとも内なる改革とでも申しますか、そういう形があらわれたと私は思っておりますので、その路線を一層推進しなければならない数々の問題がまだ残っておる、こういう認識の上に立っておるわけでありまして、今のところ、どの程度か、こういうことになりますと、まさにいましばらくの時間をいただきたいという表現に尽きるわけであります。
  194. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 もう一つ大きな問題は赤字公債発行額をどう減らしていくのかということで、御案内のように、五十九年度予算においても一兆に至らずということがさまざまの話題となりました。そうして「中期展望」によりますれば、これから一兆円以上、本年度一兆に至らなかった部分も含めてやらなければならないという試算表というものがあるわけでありまして、初年度でつまずいたとかさまざまな議論がございましたけれども、これから先を考えますと、二年度がことしと同じということではますます不信感も高まるであろう。しかし、それをめぐる状況が厳しいことは私もよくわかります。ただ、将来展望に向けた、五十九年度はこうだったが六十年度はどうとかというふうな戦略的な腹構えだけは当然持っておられるであろうというふうに思いますが、試算によるところの、例えば一兆八百億赤字公債発行枠を減らしていく、これは言うならば予算の作業を進める大前提の鉄則としてお考えになるということでございましょうか。
  195. 竹下登

    竹下国務大臣 要するに、「初めに減額ありき」という姿で対応するべきものか、あるいは、その気構えの中で予算編成作業を行って、結果としてこのような減額があった、そういう表現、いずれが妥当かということも含めていましばらく勉強させていただきたい課題であるというふうに考えております。     〔中西(啓)委員長代理退席、委員長着席〕
  196. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 大臣御案内のように、私どもの党の方は、六十五年といえども、まだターゲットは先に延ばしても、経済なりあるいは国民生活なりを重要視をするという視点が必要ではないかというふうな考え方を持っているわけであります。ただ、皆さん方の方は、六十五年赤字公債脱却、それは臨調にしろ、敗政審にしろ、八〇年代展望指針にしろ、非常にきつい言葉で表現をされているということですから、私としては、皆さん方の立場からすれば、当然、ことしは一兆に至らなかったが、来年はそれを大前提、鉄則としてやっていくんだというふうな決意ではないだろうかと思ったわけでありまして、そうでない、その辺があいまいということでしたら、じゃ、これから先だんだん尋ねてまいりますが、先々の方もまだまだあいまいかというふうな感じもせざるを得ないということになるわけであります。  また、こういう面もあります。試算の中で、新規施策等に充てるための予備枠を考慮しない場合でも、六十年度三兆八千億の要調整額ということになっているわけでありますが、この辺はどうお考えでしょう。五十九年度の予算案の編成についてもさまざまな議論があったんですが、五十九年度についても、経常経費二十四兆四千億円のうちマイナス一〇%シーリングに対応したのは約二割弱ぐらい、四兆二千億が対象となっただけ。また、その対象となった中身についても、今日、法案でもいろいろとまだ難航しているというふうなことがあるわけでありまして、そんなことを考えますと、さまざまな政策的な政治選択というようなことも含めて考えなくちゃならぬということだろうと思います。ですから、今までのようなシーリングによるところの数字の枠組み、そしてその枠内での概算要求とは違った手法ということも考えられないと、大臣言われている、財政再建だけではない、財政改革あるいは構造的に変えていくということにならないんじゃないかと思いますが、これからさまざまな作業がスタートするに当たりまして、何か従来とは違った手法なり新しい発想なりお考えでございましょうか、
  197. 竹下登

    竹下国務大臣 考えてみますと、なかなか奇想天外な発想というものは出てくるものではございません。したがって、オーソドックスな手法にならざるを得ないかな、こういう感じもないわけではございません。主計官会議を主計局長の方で主宰をして、今第一回のいわば心構えという域を出ておりませんので、これから財政当局でももっと詰めた議論をいたしまして、その上で方向を明らかにしていきたい。その第一着手は、先ほど来御指摘なすっておりますような、いわゆる概算要求の際に対応するその態度というものであろうということは同じ考え方であります。
  198. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 主税局長に伺いたいのでありますが、政府税調も二十七日からと報じられております。さまざま私ども国会議論をさせていただいたことも報告がなされ、また御議論になるということだろうと思いますし、例年と違って利子・配当課税など目の前の作業もしなければならぬということに伺っているわけでありますが、これからの作業ということを考えますと、幾つか新しい視点も必要なのではないだろうか。また、五十九年度の編成の中で残された問題と言ってはなんですが、いろいろ話題となったが先送りになった、あるいは政府税調の五十九年度あるいは中期の答申などで話題となって今回現実のものとならなかったものとか、いろいろなものがございます。そんなことを含めまして、さまざまの論議が始まっているというふうなことになるでありましょう。  そういう中で、幾つか申し上げたいのですが、例えば企業税制に関連をして今回の法人税の引き上げ、それから同時に話題となりましたのは、退職給与引当金損金繰入率の問題があったわけでありますが、けさの新聞などを見ますと、政府税調も始まるが、来年度の幾つかターゲットになるといいますか、話題となるものの一つがこれであろうというふうなことになっているわけであります。それらをどう考えていくのかという前に、五十九年度の経過の中でちょっと主税局長に伺いたいのです。  それはこういう問題なんです。政府税調の今までの答申や考え方の中では、退職給与引当金、それから法人税についての増税の余地があるということ、その二点あったのではないかと思います。また、皆様方の方でも、これも昨年暮れ以来の報道で見るところでありますが、両方セットにしてやっていきたいというのが政府税調や大蔵省の当初の考え方ではなかっただろうかというふうに思うわけであります。現実には法人税の方が提案をされまして、退職給与引当金の方は提案をされていないということになるわけであります。  では、それがどんな意味を持ったのかなということをちょっと考えて、こういう点を実は思うわけでありますが、いかがでございましょうか。それは、その二つがそれぞれ大企業、中小零細企業などにとってどういう意味を持つのかということを思うわけであります。これも皆さん御承知のとおりでありますが、退職給与引当金の利用状況、残高。年来本委員会でも議論になるところでありますけれども、例えば五十六年末の退職給与引当金の残高利用率というのを見ましても、いつもそうでありますが、累積額の大体四割ぐらいが資本金百億以上の大企業、超大企業。それから中小零細企業はほとんどそれを利用していない。資本金十億円以上のところで大体六割から七割近いぐらいというふうな状況になります。そういたしますと、こちらの方に手をつけるのと、それから一律に法人税を上げるのと、企業規模によって影響の構造が違ってくるということに実はなるわけでありまして、法人税の方は、大企業、中小企業、協同組合それぞれございますが、ほぼ横並びで上がっていく。ところが退職給与引当金の方は大企業が特に利用している。例えば五%程度この損金繰入率を圧縮した場合にどうなるのかといえば、利用状況と並行するわけでありまして、主として影響を受けるのは大企業の方、それから中小零細企業の方は関係なし。そういうことを考えてみますと、結局大手の企業にとっては退職給与引当金の限度額を例えば五%引き下げるというよりは、法人税率の横並びの引き上げの方がよかったというふうな実体構造になるのではないだろうか。  そこまで自民党税調や主税局長が意識したかどうかは知りませんが、言うならば今回の企業税制についての手配といいますか、改正案というのは、全体、大企業も中小零細企業も同じようにかぶっていく。そうして今回話題とならなかった退職給与引当金は、大企業が利用率その他からいってももっと圧縮されてしかるべきだろうというのが社会的常識じゃないかと思いますが、それの方は手をつけられなかった。大手企業に得な方に実はいったんだというようなことが言えるのではないかと思います。主観的にどう思った、思わないではなくて、現実効果としてそう言えるのではありませんか。
  199. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 企業課税特に企業の税負担率を中心にいたしまして、税制調査会の現在までの考え方は、ただいま委員もお触れになったわけでございますけれども、昨年秋の時点では、各種の税目の中で法人税は、国際的に比較いたしますとかなりの水準に来ているけれども、なお若干の負担増加の余地があるということでございます。一方、退職給与引当金につきましても、雇用の実態等に着目いたしまして絶えずこの繰入率あるいは限度額を見直す必要があるという方向をいただきまして、五十九年度の年度の税制改正に当たりまして再度具体的な御審議をいただいたわけでございます。  五十九年度につきましては、御案内のとおり所得税減税をやらせていただきました。しかし、現在の財政状況のもとでは、この財源はやはり税制改正の中で見出していかなければならないということで、各種の税目につきまして税率の引き上げなり増収措置をお願いしたわけでございます。その場合に、法人税につきましては中期答申のそういった観点も入れまして、結論的には二年間の時限措置でございますけれども、基本税率を一・三%ポイント上げる、ただし中小法人の軽減税率は一%にとどめるという御結論をいただいたわけでございます。  ただ、法人税の現在の税率構造は、御案内のとおり基本税率と中小軽減税率と基本的に二本立てになっているわけでございますけれども、税制調査会の従来の考え方は、軽減税率ができました昭和三十年当時はこの間の格差が五%しかなかったわけでございますが、その後、高度成長期を通じまして、法人税率の変遷の過程の中でこれがどんどん差が開いてまいりまして、一二%までの水準になった。それが昭和五十六年度の時点でございました。したがいまして、あの時点で二%ポイント税率の引き上げをお願いしたわけでございますけれども、この格差をこれ以上拡大させてはいけない、むしろそういう考え方に立ちまして、五十六年度については基本税率も軽減税率も同じ上げ幅で税率の引き上げをお願いしたわけでございます。  五十九年度の改正におきましても、私どもは、率直に申し上げまして、基本的には、仮に法人税率の引き上げをお願いするとするならば、基本税率もそれから軽減税率も同じ幅でということで検討をお願いしたわけでございますけれども、諸般の情勢を勘案いたしまして、中小企業対策というふうな観点も入れまして、二年間の暫定措置ではございますけれども、実は従前の手法に戻りまして、軽減税率の上げ幅を少なくしたという配慮もされているわけでございます。  それから、退職給与引当金についても、具体的に累積限度額について検討はいたしました。五十五年にそれまでの五〇%の限度額を四〇%に引き下げたわけでございます。それは、高度成長期を通じまして企業の雇用の実態というのは、定年制の延長等の制度的な背景もあるわけでございますけれども、平均在職年数が非常に長くなったということでございまして、したがって、現在のいわば年金数理の方式で認めております退職給与引当金の限度額ということになりますと、在職予定年数が長くなれば長くなるほど累積限度額は少なくていいという計算になるわけでございます。その改正が実は五十六年度でございました。その後五十九年、本年まで三年しか経過してないわけでございますが、引き続き大企業を中心にして在職予定年数が長期化する傾向にあることは事実でございます。ただ、仮に五十九年度これを引き下げるにいたしましても、その引き下げ幅ははかばかしい数字としては出てこなかったという点もございました。かたがた五十九年度は、先ほど申しましたように所得税の減税財源を各種の税目で手当てしていくという過程で、むしろ退職給与引当金よりは、二年間の暫定措置ではございますけれども、冒頭に申し上げましたそういう法人税率の引き上げということで対処する方が適当である、またそれで済んだということでございます。  この六十年度以降、退職給与引当金をどうするかということはこれからの課題でございます。六十年度にこれを引き下げるとかいうことを今結論として持っているわけではございませんけれども、退職給与引当金にとどまらず、貸倒引当金等各種の引当金について、実態に即して絶えず毎年度の税制改正の作業過程で実態を見直していくということは、今後とも検討を続けなければならないというふうに考えておるわけでございます。
  200. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 梅澤さんの今の御説明、大体同趣旨を法人税法の議論の中でも伺ったわけでありますが、ただ、客観的に法人税とそれから退職給与引当金の損金繰り入れ牽引き下げの問題、それぞれどういう効果を現実に持つのか、あるいはどういう御負担をそれぞれお願いをするのかということを大企業、中小企業、零細企業と考えますと、確かに法人税については今主税局長お話しになったような税率構造になっている。同時に、退職給与の方は今の利用率からいっても大企業に大きな影響を持つ。二つセットにしてという話題が新聞でも随分報道されたのに片っ方になった、残された方はむしろ大企業の方に大きな影響が残る問題である。何かそちらの方が反撃が強かったのか、そちらの方にやわらかい結果になったのかという気がするわけであります。  私は、本格的な企業税制についての議論をするつもりはきょうはございません。しかし、もう一度やらなくちゃならぬ問題だろうという思いがいつもいたしております。先般、三年前ですか、あの政府税調でさまざまの仕組みについての御議論がございました。これでいいのかなという議論がつきまとっているわけでありまして、まあしかし、それは別にいたしましても、昨年来の経過その他からいっても、やはり五十九年度の中で本年話題となり、残されたこれも、政府税調の今までの考え方の経過からいっても、明年度取り上げられるべき幾つかの項目の一つの話題ではないだろうか、テーマではないだろうかと思うわけでありますが、二十七日から政府税調の審議も始まる。六十年度の税制自体を詰めるのはもっと先になるでありましょうが、そういう問題意識はお持ちになって当然ではないだろうかと思いますが、それでよろしゅうございますか。
  201. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 政府の税制調査会は、先ほど御指摘のありましたように、今週の二十七日、総会を会長に招集をしていただきました。当日は、五十九年度の税制の審議あるいは予算審議過程で、当委員会を中心といたしました国会の御論議を、私の方から総会に御報告申し上げる予定にいたしております。それを契機といたしまして、六十年度の税制改正に向かって税制調査会の作業がスタートすることに相なるわけでございます。ただ現時点、まだ五十九年の税制改正を国会で成立させていただきました直後でございまして、六十年度にどういう税制改正をするかというのは、その二十七日の国会報告からやっと作業がスタートするわけでございます。  ただ、基本的な考え方といたしましては、六十年度の税制改正に当たりましても、公平と適正な負担のあり方という観点から税制全体を見直していく。これは毎年度の作業でございますが、その過程におきまして、ただいま委員が御指摘になりました退職給与引当金だけにとどまりませず、貸倒引当金等も含めました引当金の繰入率が現状でいいのかどうかという議論は、当然作業の中の一つの項目として入ってまいるわけでございます。では、六十年度、必ずそれを引き下げるという方向でやるかどうかということは、実はその作業の結果秋ごろに出てまいる問題でございますけれども、とにかくこれから作業をスタートさせていただくということでございます。
  202. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 主計の方に伺います。後ほど申し上げたいのですが、財政構造の中でこの数年間さまざまのやりくりがなされてまいりました。私どももそういう問題をいつも議論にしてきたところであります。やりくりのウエートが非常に大きい。税収の面で、あるいは支出の面で、地方との関連で、また、整理基金への繰り入れ停止の問題もそうでございますし、いろいろなやりくりがなされております。その中の一つとして税外収入。補助貨幣なんというのは苦々しい思いをする経過がありますけれども、さまざまのものがあるわけであります。ことしも、先ほど来話題がございました電電、専売から特別に二千億、三百億ということになります。これらは、皆様の予定では来年からは株式会社になるというわけでありまして、そうなるにしろならないにしろ、これが永久に最後ということだろうと思います。ことしもそうですし、特に昨年は非常に大きなウエートを持ったわけでありますが、毎年こういう税外収入が続くのかどうか、また、そういう可能性があるのかどうか。順番でいってまた来年は外為とか日銀納付金というのを考えるのかもしれません。しかし、全体としては、そういう意味でのやりくりで何とか予算をつくり上げるという余裕は非常に少なくなったのではないだろうかという気がいたしますが、どのように御判断なされますか。
  203. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 今お話がございましたように、まず五十八年度におきましては、一時的な支出といたしまして、例の決算不足の補てんの繰り戻しがあったわけであります。したがいまして、先ほど余り評判がよくないというお話がございましたけれども、補助貨幣の回収準備資金の取り崩しなど、政府部内の過去の蓄積をできるだけ吐き出してくるというやり方でやったわけでございます。ポケットのあっちこっちにあるお金をできるだけ出してくるというような感じで五十八年度の税外収入を出してきたということでございます。したがいまして、五十九年度につきましては、税外収入につきましてもそのような蓄積の中からというものはほとんどございませんで、経常的な項目を中心として見直しを行ってきた。しかし、その中で特殊法人等、特に電離、専売につきましては、そういう総常的なということではございますけれども、予想よりも収益が上がった中から二千億及び三百億をいただいているということでございます。  それでは今後どういうふうにしていくのだというお話でございますけれども、一時的な収入をやりくりして出してきまして、歳出の方が恒常的な支出ということになりますと、財政体質が非常に悪くなるものですから、そういう意味での税外収入に頼るという点では制約があるわけでございます。したがいまして、六十年度以降におきましても、今申し上げたような観点も十分踏まえながら考えていくということではないかと思うわけでございます。しかし、現段階ではまだ具体的にこういうものと検討しているわけではございません。
  204. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 それからもう一つ、今後歳出の節減合理化、歳出の削減と申しましょうか、そういう視点でどういうお考えを持っているのか、お伺いをしたいと思います。  五十九年度予算に関連をして財政制度審議会から出されました「歳出の節減合理化の方策に関する報告」、毎年出されているわけでありますが、この正月に出されたものと、五十九年度予算及び関係法案に反映された内容と、ざっとその項目を洗ってみたわけであります。  さまざまの厳しい対応、財政審の言葉では「節減合理化」でありますが、一般的には厳しい削減という内容が出されております。この中でも、「社会保障」、「文教」、「地方財政」、「防衛」、「公共事業」、「農業」、「国鉄」、「その他」に至るさまざまな項目が出されていたわけであります。多くのものがそれぞれ具体化をされて、今日、関係委員会でも難航しているという状態になっているわけでありますが、そのメニューと予算と比べてみまして、ほぼパラレルで行っているのですが、ちょっと奇異に感ずることがあります。  例えば、4に「防衛」というのがありますが、これに「検討の方向」というのがありまして、その内容を見てみますと、財政の立場から思いのほか厳しい表現をされております。例えば、人件費のところでも「その抑制を図るべきである。」それから国庫債務負担行為の後年度負担、当然でありますが「全体としての規模の抑制を図る」、要するに額全体を抑えろということですね。また、活動経費についても「一層の抑制」。「一層の抑制」といっても、今までふえてきたのですから、どうもけげんな感じもするわけですが、いずれにしろ非常に厳しい言葉遣いで語られている。実際には御承知のとおり五%を超える拡大ということになっている。  そしてまた、先ほど来同僚議員の質疑もございましたが、児童手当制度、児童扶養手当制度、保育所、幼稚園の問題とか生活保護に関する問題については、相当厳しく行われている。  また、この中では医療の問題がありますが、薬価基準、レセプト審査などなど、きのうもNHKのテレビでやっておりましたが、これは関係団体その他の社会的抵抗が非常に大きい問題。これらの方は、今日医療費の健保本人負担の問題が出ておりますが、本格的に今の医療制度全体にメスを入れることが行われたならば、もちろんこれは何も大蔵省だけの責任じゃありません、主管は厚生省ですが、もっと合理的なシステムができるのではないか、今日の法改正のような、健保改悪のようなことをしなくて済むのではないかというふうな気もするわけであります。  そういう点を考えますと、今年度の予算に関連をして出されましたこれらの検討事項についても、抑制を図れというのに何でこれの方がふえちゃったのか、あるいはこれは相当厳しくやられたな、それから、これらの方はまだ大きな課題として、銭目で言えば千億単位のものが残されているのじゃないかというふうな気がするわけであります。そういうことになりますと、将来の社会の一定の価値観も含めながら、厳しいシーリングあるいはその中身というものを考えていくことが必要だと思いますが、この一月に出された報告、この内容のメニューと予算化される段階の経過、どういう御感想をお持ちですか。また、今後の対応姿勢も……。
  205. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 今お話がございましたように、五十九年度予算編成に当たりまして、財政審から各歳出項目について全般的な見直しを行う必要があるということで、一月に「歳出の節減合理化の方策に関する報告」というものをいただいたわけでございます。今御指摘がございましたように、ここで述べられている事項は、歳出予算全般にわたって極めて網羅的なものでございました。そこで、予算編成に当たりましては、この報告趣旨を十分に予算に反映させるべく最大限の努力を行ったわけでございます。指摘事項につきましては、それぞれ考えられる必要な措置を講じてきたということでございます。  ただ、今お話がございましたように、それぞれの項目を子細に当たってみますと、なお指摘された事項で予算に反映されている程度が不十分なものも幾つかございます。これらにつきましては、引き続きまた六十年度予算あるいはそれ以降の予算編成の上でできるだけ我々としては努力して反映させていきたいと考えております。
  206. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 当面のといいますか、ことし一年のこれからの作業に関連をして、主税局長にもう一つだけ伺っておきます。  先ほど来話題になりました利子・配当課税の問題でありますが、さまざま御議論がなされましたから繰り返しません。ただ、一般的な姿勢としてどうお考えかということなんですが、一時、新聞や雑誌の報道などでも、一般消費税がためならばマル優全廃、それぞれ兆単位の税収になるというようなあれが出まして、要するにこういう制度というものは金持ち優遇税制にならないように、あるいは総合課税、限度管理もきちんとして税の不公平をなくするようにということを含めながらさまざまの議論がなされてきたわけであります。その間にそれぞれ増、減税の話もまとまってくるというのは当然でありますが、何か大型消費税が無理ならこれに目をつけようというような、そんなみたいな視点というものを腹の中に一体お持ちなのかどうかということが伺いたいことであります。  それからもう一つ、これは大臣に所感を伺いたいのですが、この利子・配当課税の問題は、いずれにいたしましてもことし八月の概算要求締め切りまでに結諭を出さなければならない。それはなぜならばグリーンカード三年延期。このグリーンカード三年延期については、竹下大蔵大臣に深いまとわりのあるといいますか、かかわり合いを持った経過で、三年延期の法案のときにもいろいろとおわびを含めた大臣のお言葉がございました。そういう経過からしましたら、普通ならば素直にといいますか、多少無理でも、三年間延ばしましたが、これだけ税に対する国民の不満も高まっているのですから、やはりこういうことは三年おくれて済みませんがちゃんとやりましょうと言うのが一番いい正解ですね。新聞の報道を見ても、そういう案というのは全然出てこなくて、別の一、二、三というような考えられる案というのが出てくるわけなんですが、制定のとき、延ばす前の、そもそも法修正がなされ、グリーンカード制が採用されたとき、あのときの法案の趣旨、目標、そういうことは少なくともきちんと踏まえて、どうしたらいいのかを御検討なさる。今、三つぐらいの案があるであろうとか、それぞれどうなるか知りませんが出されております。新聞には報道されておりますが、そういう気持ちが出るような対応が必要ではないだろうか。特に、いろいろと難しい御関係をなさった竹下大蔵大臣としては、そういう気持ちで今年度の打開に当たられるべきではないだろうか。これは行政の責任者としては、政府税調あるいは自民党税調の答案をいただけばいい立場ではないと思いますので、どうお考えでしょう、それぞれお答えください。
  207. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 利子・配当課税、特に非課税貯蓄の制度のあり方と、それから、いわゆる一般的な消費税とがいわば振りかわりのような関係ではないかという点の御指摘について私からお答え申し上げたいと思うわけでございますが、沿革的に見ましても、この利子・配当課税の問題は、御指摘のとおり、利子所得、配当所得の総合課税と申しますか、公平な課税のあり方ということを起点にして議論を進めてまいったわけでございます。四十年代、五十年代を通じまして、税制調査会の議論は一貫してそういう方向で進んでまいったわけでございますが、ただ、五十五年の所得税法の改正でお願いいたしましたグリーンカード制度の問題が、諸般の経緯を経て今日のような延期されている状態になっております。あのあたりを契機にいたしまして、もう一度基本的に利子・配当課税のあり方を議論し直すということが各方面から大変な議論を呼びまして、税制調査会でももう一度改めて小委員会を組織して議論していただいて今日にまで至っているのが経緯でございます。  ただ、その過程の中で、公平な課税のあり方とともに適正な負担のあり方、それは、もう一つはグリーンカードの議論を契機といたしまして広く社会的なコストと申しますか、そういった観点から見た場合と、それから貯蓄奨励税制というものの存在意義といったようなところまで議論が今日広がってまいっておることは事実でございます。したがって、私どもといたしましては、そういった各種の議論、各方面の議論を十分お伺いしながら、税制調査会での御議論というか御結論を期待しておるということでございます。したがいまして、沿革的にもそれから現在の作業過程におきましても、いわゆる一般的な消費税の問題と利子・配当課税の問題というのは、今日にあっても私どもはそういうものを直接結びつけて考えておるというわけではございません。
  208. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 いろいろ伺いましたが、ことし一年間にやらなければならない作業の状態を見ましても、今まで以上に難しいといいますか、厳しい条件が重なっているというふうなことであろうと思います。また、今まで粉飾予算とかいう言葉もございましたけれども、さまざまなやりくりをしてその場しのぎをやってきたという経過がございますが、その可能性も小さくなってきたということであろうと思います。そうなりますと、いろいろな意味で国民の皆さんにも、今日の財政の状況、今後の見通しを含めて真剣に議論をする、特に本音の議論をお互いに闘わすということが非常に大事になっているときではないだろうかというふうな気がするわけであります。  そういうことになりますと、結局これから後どうするのかということについてのより確かなガイドをどう持つのか、展望をどう明らかにするのかということの重要性がますます大事になっていると思います。歯どめ諭などの議論が先ほど来さまざまございました。さまざまの制度的な歯どめが必要でございますけれども、何といっても大事なのは、行政の責任を持つ、あるいは政治の部面で将来の財政あるいは国民生活、日本の将来をどうしていくのかということについての信頼性の高い努力、そういう方針の議論をしなければならないというふうなことであろうと思います。  そこで、大臣に伺いたいのですが、今年も「中期展望」、「仮定計算例」、もう五十一年からですから、長い期間にわたるところのさまざまの中期の展望や試算が出されてまいりまして、今日も出されているわけであります。財政制度審議会でもそれらのあり方についてさまざまな御議論がこの数年来ございまして、私どもも拝見をいたしておるわけであります。財政制度審議会の御答申もそうでございますし、それから政府が出されている毎年の試算、中期展望もそうでございますが、やはり基本的な性格としては、いわゆる後年度負担推計方式という形で出されております。外国の場合も「計画」とか名がついているけれども、ほぼ同じだからそれでいいのではないか、また、現実問題としてそれが適切なのではないだろうかというふうな御意見を伺っているわけであります。それは普通の場合だったらそういうことで間に合うときもあるかもしれませんが、何といっても膨大な要調整額が出ている。そういうものが定量的に出されていない形での数字を出しているほかの国の場合はいいと思いますけれども、こういうことになりますと、今のままいったらこうなりますよというだけではどうしようもありませんし、またそれではいつまでたっても国民の不安も消えないし、将来展望への政府責任も出てこないという状態が続いてくるというふうなことであろうと思います。  幾つか本を読んでおりますと、財政審や、また大蔵省主計局にいらっしゃった方々が、おやめになった後、あるいは正式の会議でないところでは非常にフリーに言われているようでありまして、ある本を読みましたら、財政審の特別部会のメンバーでもある新日鉄の河野さんですね、「国民にわかりやすく実態を知らせる必要はあるが、財政再建の目標が示されていないのはおかしい。政府、企業を問わず、中期計画が成功するかどうかの鍵は、目標をどの程度しっかり設定するかによる。」というふうなことも言われているようなことを読みました。ほかの大蔵省にいらっしゃったことのある学者の皆さんなんかでも、きちんとした戦略と手だて、手段、それが明確にならなければ意味がない。同じ後年度負担類推計といっても、ドイツ、イギリスなんかの場合とは現状に照らして違うではないかというふうなことなども読んだりするわけであります。  要するに、皆さんもさまざま苦労なさって、今年度も六十五年をターゲットにした六種類の仮定試算とかいうようなものをおつくりになっているわけでありますが、今のままいったらこうなりますよという今日の制度を後年に投影して出した数字、それから六十五年脱却するとすればこうなりますよという数字。それからもう一歩出た、一つのプロセスを含めたプログラムを組んでいく。それが国民が求めているものであるし、それによってしか財政への信頼感は生まれてこないし、また、それがなければ歯どめとしての権威あるものにももちろんならない。これはそれぞれの行政システムの問題というようなことよりも、やはりすぐれて政治の責任であり、大臣内閣責任ではないだろうか。一歩出る努力ですね。今までのこの委員会での御審議の中でも、大臣の方からは、ことしはえらく苦労しまして中期展望、仮定試算などの作業をいたしました、ぜひこういうものを参考にしていただきたい、そうしてこれからどうするかはこの国会の御議論の場で皆さんの御意見を伺ってということになっているわけでありますが、それでは政府のイニシアチブはゼロかマイスナでありまして、もう一歩出られた努力をされるべきではないか。  一月、二月作業してすぐできるという問題でもないと私は思います。諸外国の場合を見ましても、さまざまの前提となった作業や研究の積み上げがあってということもございますし、また政治的な責任を持った方向性をさまざまの制度の面でも示していくということも感じられます。一挙にできるかどうかは別にして、そういう方向に脱却をすることがやはり必要ではないか。赤字公債依存体質からの脱却は今日の後年度推計方式のパターンからの脱却が必要ではないだろうかと思うわけでございますが、大臣、いかがでございましょう。
  209. 竹下登

    竹下国務大臣 やはり現在の段階では、私も今の後年度負担推計、この形が現状においては一番適切なものではなかろうか。伊藤さんの御意見にもありましたように、確かにこのたびの試算、あの仮定計算等を含めてお出ししたものは、おぼろげながらでも政府は一体との点を大体志向しておるかというようなことすら明瞭にできない、まさにもろもろの仮定を置いての計算をお出ししたわけであります。したがって、その仮定計算等に基づいた御議論のまさにことしが初年度という感じが私はしております。したがって、そういう議論の中にどういうふうなものを——どうせ六十年度予算編成の手がかりとしても、また御審議の手がかりとしてもお示ししなければならぬことについては、まさにそれこそこの御議論等を承りながら、より衆知を集めて努力を続けていくべき課題だ。だからいま一歩踏み出してみろ、こう言われても、さればどのような形のものでいま一歩踏み出すかということも、今にわかにお答えする段階にはございません。まさにこの御議論を聞きながら模索中、こういう感じが素直にいたしております。
  210. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 予算委員会大蔵委員会のこの問題の議論を振り返りますと、大分集中して財政計画あるいは財政の確実な将来展望ということが議論の焦点になったのは、たしか五十七年の補正予算のときでございましたですね。予算委員会でさまざまな御議論がございました。昨年も、その前もそうでございますが、昨年もいろいろ突っ込んだこのたぐいの議論がなされております。それらを議事録のポイントを読み返してみますと、どうも大蔵大臣、去年よりもことしの方が、前進ではなくて後退しているのではないかというふうな感じがしてならないわけであります。  例えば二、三挙げてみましょう。昨年の大蔵委員会で、これは我が党の大先輩の堀さんに対する御答弁でありますが、長期の計画性ということに関連をいたしまして、経済審議会等での議論を横目でにらみながら、「横目でにらみながらという表現は必ずしも適切ではございませんがこと書いてありますが、「それと整合性をできるだけあらしめる形で財政の占める役割りと財政改革の一つのプランニングというものを考えていかなければならない課題だなと、こういう認識でおります。」ということを述べております。  それから、同じく昨年の当大蔵委員会でございますが、私の質問に対しまして、私が質問しましたのは、これから財政再建ではなくて改革だと言われている、そこにはどのように構造を変えていくのか、社会目標も必要であり、さまざまな政策的な構想力も必要であり、そこに向けてのプログラムとプロセスをつくっていく、言うならばターゲットとプログラムが必要だというようなことを御質問を申し上げたわけでありますが、そのときの竹下国務大臣答弁は、「基本的な認識は私も一致しております。」「それを、今度はその中で財政の面を取り出して考えた場合に、財政改革には哲学と手法とそしてターゲットと三つがないといかぬな。それが一つ考え方として、このお出しした財政改革の基本的な考え方でお示ししたわけでございますが、それに手法といわば数値、ある意味におけるターゲット、目標、そういうものをどう組み合わしていくべきであるかなということを考えております。」というふうな話がございました。それからやはり同じ大蔵委員会の、これはどなたに対する御答弁でしょうか、竹下大臣の御答弁で、「これからの財政運営の改革の基本的考え方に沿って、それらのものを工夫して当てはめていく努力をしなければならぬと思っております。」  また、これは昨年の大蔵委員会ですね、元同僚でございました阿部助哉さんへの御答弁でございますけれども、「プランニング、そしてその手法、そういうものをできるだけ具体的にお示しをするということが私もあるべき姿、好ましい姿であると思っておりますが、」「それらの作業と並行しながら、私は御満足のいけるものであるとは思っておりませんが、御意見を聞きながらそれに適応するようなものを出していく努力は、これからも引き続き、鋭意続けていかなければならない問題であるというふうに、しかと認識をいたしておりますので、いろいろな機会を通じての御叱正、御鞭撻をお願いするわけであります。」というようなことがございまして、そういう御議論が昨年もいろいろございましたので、たしか昨年の財確法採決の前に附帯決議を私どもつくりまして、これはもちろん共産党さん以外は全部一致でありますが、この第一項目には「昭和五十九年度予算編成に合わせて、財政再建に対する具体的な方策等についての考え方を明らかにし国民の理解と協力の確保に努めること。」というのを、大臣のそういうやや前向きな話もございましたので、附帯決議の冒頭に実は付して採択をしていただいたわけであります。  要するに、今これを出るのはさまざまな意味で難しいなという気持ちあるいは立場は、私もそういう面があるのだろうなと思います。大臣の立場、与党の立場、今日の政治状況、今日の総理の財政面における御指導の立場など考えますと、それはいろいろあるだろうと思います。しかし、六十年度からさらに大きな困難な時期を迎える。そうなってまいりますと、ここに仮定試算があります、ここに中期展望があります、参考にしてください、ケースA、ケースBがあります、あるいは「仮定計算例」でいえば合計六種類あります、その中で、これは難しいだろうと聞かれれば、思いますとお答えになる。やはりそういうものから一歩出たものがなければ政治じゃないのだろうと私は思うのですね。そういう意味で、昨年の議事録を読み返し、ことしの御答弁を伺っておりますと、竹下大蔵大臣は前進ではなくて後退ではないだろうかという気がしてならないわけでございますが、前進的御答弁を……。
  211. 竹下登

    竹下国務大臣 これが一番難しい問題でございまして、経済全体が流動的である中で、経済の一部分である財政の将来についてあらかじめ定量的な実行計画を策定するということは極めて困難な問題であります。しかしながら、私どもとしていわゆる「一九八〇年代経済社会の展望と指針」というものを政府部内で作成するに当たりまして、やはりまずそこから議論をしてみたわけであります。しかしながら、余りにも不透明だ。余りにも流動的だ。過去の経験からいたしまして、いつも申し上げますように、まさにこの数字といえば、「七、六、五抜きの四、三、二、こという数字しか存在しない経済展望、こういうことに相なったわけであります。その中でどういうものを出していくか、概念的に私は言われる趣旨がみずからなりに理解できるだけに、いろいろ検討した結果、それでも中期的展望を持った財政運営ということが必要であるということから、「財政の中期展望」というものをお出しして、そして、まさに機械的手法ではございますが、「仮定計算例」をあわせてお出しして、審議の参考に供したということであります。  したがって、これからどうやっていくかということになれば、具体的な歳出歳入両面を通じて、どのような施策の組み合わせによって財政改革を進めるかに当たっても、それら御提示申し上げたものがやはり参考の基礎に置かれて幅広く検討していかれなければならぬ問題だ。したがって、おっしゃるように、さて六十年度予算審議の際どのようなものがお出しできるかということになると、私もにわかに一歩突っ込んだ、この程度までと言うだけの準備も今ございません。要は、それに基づいて御審議いただいたもろもろの意見を参考にしながら、六十年度予算がどういう姿になっていくか、それによってお出しできるものがどのようなものが整っていくかということにならざるを得ないではなかろうか。しかし、当然のことながら、概算要求の段階から我々はそのようなものを念頭に置きながら進めていかなきゃならぬという事実認識はございますものの、胸を張って、伊藤さん、こんなものを出しましたと言えるものができるかどうか、これに対しては非常にお答えしにくい、勢い消極的なお答えにならざるを得ないというのが現状の事実そのままでございます。
  212. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 大臣、私は何も理想的なものをことし出しなさいとかというところまで言っているわけではありません。しかし、試算あるいは仮定試算で国民はこれからの将来に一体どう安心感を持てるのか、あるいはこの方向で我々も生活をしていく、あるいは御商売をやっていくというふうな勇気が出てくるのだろうかという気がするわけであります。試算を出されるごとにここに出てくるのは要調整額の巨額な金額。これが出るたびに、マスコミでは、これは増税だ、でしょう。私は、これからの将来社会におけるニーズと負担というものは、いろいろな形での国民合意が得られるような検討が必要だと思います。しかし、今のままでは余りにも不透明。  これは、行政というよりもまさに政治の問題、将来に展望を政治が与えることができるのかできないのかという決断の問題というふうなことではないだろうか。やはり主計局長よりも、主税局長よりも、事務次官よりも、大蔵大臣は偉いと言うとおかしいですけれども、大きな責任、また、展望を示す責任を持っておられるわけですから、私は個人的には、これは大蔵大臣というよりも内閣全体、特に総理の責任であろうというふうな感じがしてなりませんが、そういう気持ちでそういう方向への具体的な検討を開始する。あるいは、今本音を、さまざまの議論国民の前にしなくちゃならぬ責任を持っておると思いますから、いろいろな意味で若干の試行錯誤があっても、こういう方向が必要だと私は思うと言うとか、また、要調整額の処理にしろ何にしろ、こういうことでなければ国民の将来がかえって危機になりますということを言うとか、そういうことが必要じゃないだろうかというふうな気がするわけであります。  昨年の議論との対比を申し上げましたが、私は、幾つかの西欧諸国の例を見ても同じことが言えるのではないだろうかというふうに思います。一々詳しくは申し上げません。やはりそれぞれの国でも、それぞれ数年前に大変な危機的な状況の中で一つの知恵を出し、あるいは大変な努力をして、さまざまの試みをしているというふうな経過であろうと思います。財政制度審議会の答申の中には、諸外国の中でのさまざまな例についても、いわゆる日本語で言うところの計画というものとは違った意味合いではないか、本質的には後年度負担推計方式ということであろうというふうに書かれています。私はそういう面があることを否定はしません。社会主義の国はいざ知らず、自由主義の諸国において、社会主義の国と同じような第何次五カ年計画とかいうふうな官僚型経済システムはとっていないということは私もよく知っております。ただ、財政制度審議会のさまざまの文書で言っておるように、それは基本的には後年度負担推計方式であるというだけではない、さまざまの努力とさまざまの模索の経過を見るということがむしろ大事なんじゃないだろうかというふうな気が私はいたしております。  ドイツの場合でも、これは私の方から申し上げる必要はないと思います。よく御承知のとおりです。やはりこれがスタートをした経過を考えましても、ブラント社民党党首、当時首相のそういう努力を初めとする、経済関係のさまざまの大臣、閣僚というよりも内閣全体として、政府全体として知恵を絞り、あるいは将来への勇断をもってスタートをされたというようなことであろうと思います。その結果として、今御承知のように当年度、来年度、その後三年、きちんとした指標を並べて、もちろん毎年見直しはするわけでありますけれども一つの権威あるといいますか、少なくともガイドラインとなる、指標となる方向づけが出されているというふうなことだろうと思います。  イギリスの場合でもそうでありますが、アメリカなんかの場合は違います。大統領四年間ありますから、自分のスタートに当たって、おれはこういう経済、財政をやるんだということを、もちろん単年度ではない一つの方式が示されるというふうなことになるわけであります。  ですから、諸外国の場合を見ましても、ちょっと財政審で言うカテゴリーのとらえ方とは違ったさまざまの努力というものを見ることが大事なのではないだろうか。それは日本は日本でありますから、日本の現状その他の状況の中でやらなければなりません。しつこいようですが、そういう国際的な状況から見ましても、しかもまだ、諸外国にないような膨大な、不透明な要調整額の表示、それがいつも焦点になるというものから脱却をする。  大臣、今の国際化時代でさまざまの各国の大蔵大臣ともおつき合いがあるということで、そういったことは御承知でございましょう。そういう国際的なさまざまの努力がありましても、一方そういう努力に着手をされるということが必要ではないだろうか。今まで何遍も何遍も試算、展望、その他出ました。後々まで考えてみて、それが当たったことは全然ありません。全部外れであります。もちろん経済の変化もそれだけ非常に大きいという事情も私はよくわかります。それはそうであれば説明がつく問題です。しかし、何か国民にとっても、社会にとっても、あるいは政府の権威としても、余り重みがないものをやっているということから脱却をすることが、国際的なそういう例から見ても必要なことではないだろうかという気がするわけでございますが、重ねてお願いします。
  213. 竹下登

    竹下国務大臣 結局、今例示されましたアメリカの大統領の場合、とにかく八四年には、五億ドル程度ではありますが黒字になるだろう、こういうのが、千八百億ドルの財政赤字を抱えておる現状である。今度の予算教書を見てみましても、むしろ開き直りのごとく、それは国会が、言ってみれば歳出削減ということを妨げたのではないかと言わんばかりの御発言でございますが、事ほどさように不透明な、あるいは流動的な経済社会の中にあって、財政そのものに計画性を持たすということの難しい一つの例ではなかったか。  ただ、お言葉にもありましたごとく、どこの国も試行錯誤を重ねて今日に至っておるわけです。私どもも今、例えば企業経営者に対して参考になるのは何かなと思ってみると、結局六ないし七%程度の名目成長率で、そして実質成長率が四%程度でという中でもろもろの企業計画というものが論ぜられていく、それだけしか今の場合、ある意味においてはないではないか。かつての「七カ年計画」を振り返ってみますと、例えば租税負担率が二十六カ二分の一とか、社会保険負担が一一とか、そういうような数値があると同時に、公共投資の二百四十兆というようなものが国民の皆さん方にとってはある種の指標ではなかったかと私は思うのであります。  ところが、それも途中で百九十兆に下方修正するような時代で、むしろ国民がそれに対してどういう感じを持ったかというと、言ってみればある時期には既得権のごとき印象でもってそれを受けとめ、そしてそれが実行できなかった今日は、ある意味における政治下信というようなものすら招いたではないかという反省からして、今「一九八〇年代経済社会の展望と指針」となってあらわれ、そして私どもの財政改革に臨む基本的な考え方というものになってあらわれ、そして国民の皆さん方に議論の中に入っていただくためのいわば試算なり仮定計算、こうなってあらわれておるわけでございます。したがって、例えばサミットへ参りましても、言ってみれば抽象的に一致するのは、インフレなき持続的、安定的成長というところまでが合意に達し、おのがじしその立場にあって財政赤字を滅していく努力をするんだというにとどまるというところに、私は世界経済全体の余りにも流動的であるという一つの証左があるのではないかというふうに考えております。  したがって、今のような御叱正を受けながら、どこまで国民のコンセンサスと、そして国民の皆さん方がよすがにできるものがどこまで描けるかということを、これからもまさに模索を続けていきたいという考え方に立っております。
  214. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 平行線のうちに時間が終わっちゃうわけでありますが、大臣が最後の言葉に言われましたように模索を続けていきたい、これは今のままでは永遠の模索ですね。模索は大事だろうと思います。また、国会国民各界の意見も聞きたいということも、民主主義政治ですから大事なことだろうと思います。しかし、竹下さんのおっしゃるのは、とにかく皆さんの意見を伺う、議論をするということでおしまいであります。政府はたたき台を出す責任というのはありますし、政治ですから、大蔵大臣は財政の面でイニシアチブを、展望を示すのがやはり大事な責任だろうと思うわけであります。私は、そういう意味では大変不満でありまして、いま一パンチを効かしていただくようにぜひ希望するわけでありますが、時間がありませんから、じゃ一つだけ伺いましょう。  今出ているのは六十五年という目標がある、これも特例公債体質からの脱却というわけでありますから、果たして財政構造の改革なのか、再建なのか。その脱却後のまた第二段階、借りかえ問題に関連をして、財政審でも、今までの御答弁でもお述べになっております。しかし、六十五年というものがあり、膨大な要調整額がある。一体それを国民負担の面でどうしますか。確かにそれは現在三五%から、社会保険費を含めて四〇か四五になりますか、・〇台前半とかいう数字なども言われております。しかし、それをどういう手法でやるのか、どういうふうに国民の皆様にお願いをして、御理解を得るように、合意を得るようにやるのか。あるいはそういう負担率の向上とともに、財政審の答申の中でも、自助努力あるいはさまざまの制度的な改革、厳しくメスを入れる、負担とサービスということについての考え方も非常に大きく述べられています。それらが一体何をターゲットにして、どういうふうになっていくのかというプログラムなり手法というものが示されておりません。そこにやはり不透明と言われる部分と不安さがあるということだろうと思います。  時間がありませんから、例えばその中の一つを伺うわけでありますが、今後の税制、その負担の面でどういうことになるでしょうか。少しこれは率直に言っていただきたいと思いますが、「八〇年代の展望と指針」、それから大蔵省の出された「基本的考え方」、それから財政制度審議会の答申、さまざまございます。大体同じように、現状約三五%よりも高く、ヨーロッパの水準よりはかなり低い水準、八〇年代指針の方は、将来の負担と書いてございますし、財政改革の基本的な考え方の方は中長期的なと書いてございますが、一般的には二十一世紀初頭とか、これはもう遠い話ではありませんで、六十五年までの間に六、七年、それから後、二十一世紀初頭といっても十五年か十六、七年かというような話になるわけであります。  その間に、例えば七ないし八%負担率を上昇させるとします。現在、税負担と社会保険の負担率と二対一でしょうか、もっと税の方が大きいと思いますが、それを考えますと、国民所得比数%のところは税負担を上げなければならない。ことしでいって二百三十兆ぐらいでしょうか、一%といっても相当な額になります。あるいはまた、数%といえばまた十兆近いお金になるということになるわけでありますが、それぞれの文章を、こういうものをどうしていくのかと考えて丹念に読んでみますと、やはり一挙に革命的にやるわけにまいりませんから、段階的に緩やかにと書いてあります。緩やかにということは、例えばこの二、三年のうちにも、あるいは将来的にも、激変ではなくやっていく、あるときから五兆円税金がふえたというのじゃない形だろうと思いますが、やっていくというふうなことだろうと思います。  そういうことを考えますと、現在の税制の自然増収があるいは税率を若干変えるか、枠内では解決しがたい問題、これは常識で当然出てくる問題だろうというふうに実は思うわけであります。そういたしますと、この諭理からいけば、この二、三年のうちにも必要とお考えになるかもしれませんが、一定の時点で、今までの税制とは違った、ここで言われている新しい負担を現実のものとするための新しい税制というものがなければ、これはもう私ども議論としては当然常識だと思いますけれども、こういうものも出ていかないというようなことだろうと思います。数%の負担がこれから中長期的にある。国民所得比数%ですから、相当の額になります。将来的にいえば大変な額になるでありましょう。しかも、それは緩やかに気をつけてやっていかなければならぬと書いてあります。緩やかにということは、今から中長期ずっと含めて考えなければならぬ。そういたしますと、当然でありますがそういう問題が出てくる。  それをどういうところに求めるのか、あるいはどういう改革が必要なのか、そこまではなかなか。詰まらないかもしれません。しかし何らかの、税制全体を新しくつくり直すか、新しい税制を考えるかということでなければ、こんなことはできるはずがない。これも一つでございますけれども、どういう手法で一体六十五年に向かっていくのかという疑問が全く解明をされていないというわけでございますから、例えばそういう問題について、中長期でありますから、何もことし何税なんという話でもないと思いますが、国民所得比数%、しかも緩やかに考えていかなければならぬ、それが六十五年、懸命にやらなければならない、達成しなければならぬという中の少なくとも重要な半分の柱、何らかの新しいシステムか新税創設というものは考えなければならぬということだろうと思いますが、何かそういう中長期的なプログラムの全体像が出せないというならば、個々にもそういうことについては解明をなさるというのが当然ではないだろうかと思いますが、いかがでございましょうか。
  215. 竹下登

    竹下国務大臣 税の問題、あるいは後ほど主税局長からお答えする方が適当かと思うのでありますが、要するに今出されておるのは何かといえば、今伊藤さんも御指摘なすったように、ヨーロッパよりもかなり下回る国民負担全体の問題でございます。国民負担率の問題についても、もとより激変というものに対してはおのずからそこに限界がございます。したがって、それらがある意味においてはソフトランディングしてとても申しましょうか、そうした形の中で国民合意を逐次得ていかなければならぬという立場に今日あるではなかろうか。  したがって、先ほど私が試行錯誤ということを申しましたが、確かに試行錯誤というのはトライ・アンド・エラーと、こう言うのですが、最近私なりに自分に言い聞かしておるのは、トライ・エラー・ストップ・レシンク・アンド・ラン・アゲイン、こう言っているわけです。それはまさに、トライしてエラーをし、あれ、と思って立ちどまってレシンク、考え直してまた走り出していく、私はちょうど今の時期がそのストップとレシンク、立ちどまって考え直す、こういう時期に来ておるのじゃないかという感じ。トライ・アンド・エラーではなく、トライ・エラー・ストップ・レシンク・アンド・ラン・アゲィン、そのストップとレシンクのところに今日あるのじゃないか、こういうことを自問自答しておるということを率直に申し述べてみたかったわけでございます。これは余り適切な答弁にならぬということを承知しながら、あえて申し上げたわけであります。
  216. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 なかなか大臣の方も、まあ永久に立ちどまるわけではないと思いますけれども、もう一歩抜け出していくという意味では、残念ながら余りにも慎重過ぎるという気がしてならないわけでありますが、最後に注文だけもう一言申し上げます。  私は、今の時期に当たって、これからの財政、これからの経済、税制などを考えますと、やはりすぐれて政治の責任ということではないだろうかと思うわけであります。そういう面から考えてみまして、何か一つ、現在のシステムから抜け出していく、脱皮をしていくということが必要だと思います。また、そういうものの中で皆さん方の方からも、これからどうするのか、一〇〇%本音で言いにくいかもしれませんが、いろいろとやはり本音の問題提起を、御答弁をいただく、我々の方も、建前諭ではないさまざまの努力を、あるいはよりベターな考え方はこうではないかという議論をしていくということが大事なときではないだろうかという気がしているわけでありまして、特に大臣の方からそういう決意に立っての行動を起こし、またそういう中でこれからの補正なり六十年度なりに向かっていくということを、前向きの御答弁が得られなくて残念ですが、強く注文をいたしまして、質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  217. 瓦力

    ○瓦委員長 坂口力君。
  218. 坂口力

    ○坂口委員 既にもう先輩諸氏がいろいろの角度からこの財確法に対する審議をされまして、できる限り議論のされなかったところを中心にしてさせていただきたいというふうに思いますが、政府が示されました「仮定計算例」なるものを拝見をいたしますと、借換債発行いたしまして一般歳出の伸びを五%というふうに仮定をいたしますと、昭和六十五年に国債費が十五兆六千億円に上る、また国債発行額がなおかつ九兆九千億円残っておる、また公債残高が百六十六兆六千億円に達する、こういうふうな数字が政府の方から示されたわけでありまして、これを解決することは容易ならざる事態であることは、この数字を見ても明らかでございます。  そこで最初に、この財政再建に取り組まれる大蔵省の姿勢について幾つかお聞きをしたいわけでございますが、まず最初に、先日来金融の自由化の問題が当委員会におきましてもいろいろと論議をされました。そのところからひとつ聞き始めていきたいと思います。先日の五十九年四月十四日付の日本経済新聞によりますと、これからの金融自由化の手順といたしまして、一番としてCDの発行単位の小口化及び発行枠の拡大、二番目として市場金利連動型大口預金の導入、三番目として一般の大口預金を対象に規制金利に幅を設けるワイダーバンド制の導入、それから四番目といたしまして短期大口預金金利の規制撤廃、それから五番目として大口預金の全面的な金利規制撤廃、六番目として小口預貯金金利の自由化の検討、この六段階方式を採用することに内定した、こういうふうに出ているわけでございます。きょうも午前中の議論でございましたか、金融の自由化の問題、CDの問題でございますとか、その他銀行局長から示されたわけでございますけれども、この辺のところからひとつお聞きをしたいと思います。
  219. 宮本保孝

    ○宮本(保)政府委員 金利の自由化につきましては、金融制度調査会で昨年の春に金融の自由化の総論に関する御報告をちょうだいいたしておりまして、それに基づきまして順次進めているところでございますが、今後のあり方といたしましては、その調査会で報告されましたところを肉づけいたしまして、それで順次進めていくということで、具体的に申し上げますと、我が国の場合には小口の預貯金金利の自由化といいますのは、郵貯の金利の決定をどうするかというのと絡まっておりまして、やはりちょっと時間がかかるのじゃないだろうかということで、まず大口から入っていく方がやりやすいということで、そのための環境づくりをしていくのを私ども一つの手法にいたしているわけでございます。  そのために、まずとりあえず、現在金利自由な商品でありますCDというのがございまして、これの発行条件を弾力化していくということで、ことしの一月から五億円を三億円に小口化したわけでございますが、これを順次また二億とか一億とか、あるいは何千万とかいうようなことで小口化していく。それから発行枠は現在自己資本の一〇〇%ということで、これは実はことしの四月から一〇〇にしたのでございますが、四半期ごとに七五から五%上げていくということで、来年の四月に自己資本の一〇〇%になりますので、それをさらに引き上げていくというふうなことで、CDの発行条件の弾力化を行う。  もう一つは、一部の金融機関から提案されているのでございますが、市場金利連動型の商品、例えばCD金利とかあるいは手形の金利でございますとか、そういう金利に連動する商品をつくっていく。これは例えば五千万なら五千万というようなものを単位にいたしましてつくりますと、例えば大口の五千万なら五千万以上の定期預金の金利の自由化ができるというふうな環境ができるわけでございますから、そういうふうに順次、金融全体に与える影響を見きわめながら、信用秩序を維持しながら、金利の自由化を進めていくというのが私どもの今の構想でございます。
  220. 坂口力

    ○坂口委員 今お答えいただきました御答弁、けさほども答弁いただいたことと若干ダブるわけでございますが、お聞きをしたいのは実はその次でございまして、こういうふうに金利の自由化を進めていくということになりますと、もう一つどうしても検討しなければならない問題がございます。  それは、各種銀行に対します大蔵省からのいろいろの規制がございます。この規制の自由化という問題が、金融の自由化について回る一つの大事なことではないかと思いますが、現在大蔵省が規制をいたしておりますものには、どういう種類のものが大体幾つぐらいあるかということを端的にひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  221. 宮本保孝

    ○宮本(保)政府委員 いわゆる銀行行政上の規制につきましては、銀行法に基づいて私どもはしているわけでございますが、まず免許事項といたしまして、法律レベルで一項目ございます。これは営業の免許でございます。  それから認可事項といたしまして、法律レベルで十六項目、これは支店の設置等でございます。  それから大蔵大臣の命令とか検査ができるわけでございますが、そういう点についての事項といたしまして、法律レベルで十一項目ございます。  それから承認事項があるわけでございますが、これが法律レベルで四項目、これは大口信用供与規制等でございます。  それから政省令レベルで三項目ございます。  以上が法律に基づきます一応の規制でございます。
  222. 坂口力

    ○坂口委員 大体私調べさせていただいたのと違いはございませんが、免許で一、それから許可で十六、それから命令、検査で十一と言われましたが、十四項目ではございませんか。それから承認のところが法律、法令、それから政令、省令合わせまして九項目、それから業務運営指導基準というのがございまして、これが八項目、こういうふうな分け方になるのではないかと思いますが、若干の違いは結構でございます。  それで、現在ございますところの規制のいろいろの種類がございますが、この規制をどういうふうにこれからしていこうとなさっているのかということをもう一つお聞きをしたいと思います。
  223. 宮本保孝

    ○宮本(保)政府委員 これらの規制はいずれも法律に基づきまして、法律上の規制ないしはそれを受けました政省令上の規制であるわけでございまして、新銀行法をつくりましたときに、新しい時代の光を当ててこういう規制を見直しまして、新しく規制をつくったわけでございます。まだ新銀行法施行後二年しかたっておりませんで、こういう法令に基づきます規制につきましては、当面スケジュール的にこれをどういうような方向で緩和していくかというのは、ちょっと今のところ私ども考えにくいわけでございまして、新法に基づきます法令の規制はしばらくこれで運営していかざるを得ないのではないか、こういうように考えております。  ただ、いろいろ御指摘の、今おっしゃいましたような業務運営指導基準のようなものは、これはまさに銀行行政上の一般的な監督権に基づきます指導といいますか、そういうものでございますので、あるいはこれ以外のそういう事実上のいわゆる指導みたいなものがあるわけでございます。こういうようなものにつきましては、順次緩和していくというふうなことでございまして、それは銀行法施行後三次にわたりまして自由化、弾力化措置を講じてきておりまして、今回また近々第四次の措置を発表いたしたいと思っておりますけれども、そういうような問題につきましては順次取り扱いの規制の緩和ということを行ってまいりたい、こう思っております。
  224. 坂口力

    ○坂口委員 銀行などに聞きますと、支店をつくるときは当然のことながら、新しいところをつくろうと思いますと、新しい支店の応接セットにまで大蔵省は口を出してくる、こういう銀行各行の皆さん方の発言もあるわけでございまして、そこまで本当にあるのかどうか私知りませんけれども、そういう話題も実はあるわけでございます。  それで、今お答えになりましたように、規制に対するこれからどうしていくかというスケジュールは、具体的なものはないということでございますが、私はやはり、金利の自由化あるいは金融の自由化というものを進めていこうと思いますと、どういたしましても、この規制の自由化というものも当然これは話題に上ってこなければならないのではないだろうか、実はそう考えておる一人であります。したがいまして、大蔵省は、銀行に対しましては、こういうふうな金利なら金利の自由化をいたしますよ、そういうことは言いますけれども大蔵省自身はみずから変わろうとはなかなかしないと、私はこの答弁を聞いて考える一人でございます。  話題をもう一つ変えて、また後へ戻ってまいりますが、もう一つは、先般の一般質問のときに、この財確法が提案されます前に、私、大蔵大臣にこの法体系のあり方について質問を申し上げたことがございました。そのときと重複いたしますので、余り屋上屋を重ねることは申し上げませんが、この財確法の法体系を見ましたときに、かなりな無理がある。この無理な面につきまして先般御説明を申し上げたわけでございますが、きょうは法制局にお越しをいただいておりますので、一度施行されました法律が、約十年の歳月を経まして、いわゆるその法律内容がもう既に現状施行をされておるにもかかわらず、以前にさかのぼってという言葉を使いますと、大蔵省、とりわけ主計局の皆さん方はお嫌いになるわけでございますけれども、平たく言えば、さかのぼって項目を削除する、しかも重要な項目でございました第五条の、借りかえは行わない、「第二条の規定により発行する公債については、国債整理基金特別会計法第五条の規定による償還のための起債は、行わないものとする。」この第五条を削除するということになるわけでありますけれども、こういう法律案というものが過去に出たことがあるのか、あるいはそうした形で成立した法律というものがあるのかということを、ひとつ法制局にお聞きをしたいと思います。
  225. 大山綱明

    ○大山政府委員 お答えを申し上げます。  いわゆる財確法についてでございますが、これは先生十分御承知のところでございますけれども、各年度のいわゆる財確法あるいは特例公債法に基づきまして、借りかえ禁止規定があるわけでございます。これにつきましては、伺ってみますと、今まで中期国債とか割引国債とかというような発行もあり、そういうものにつきましては、まさしく借りかえ禁止規定というものが適用されてきた事実もあるというような話のようでございますが、大部分は今後の問題だということのようであります。  そこで、施行はされているけれども実際に余り適用されていないような法律、そういうようなものについて、今までさらに改正をしたというような例があるかという御趣旨の御質問かと思いますが、例えば、大変古い例でございますけれども、地方税法の中に付加価値税を設ける、こういう内容法律があったわけであります。しかし、結局はこれは実施されないままに改正が行われたというような例がございます。それから、いわゆる医師法であったかと思いますけれども、医薬分業等についていろいろ一時定めておったことがございますが、これも、私の承知する限りではほとんど実施されないままに、その後改められたというふうなケースもあろうかと思います。あるいは地方自治法の中に、今は大都市制度というふうになっておりますが、昔、前に特別市制のような法律中身があったかと思いますが、この特別市制というのは、結局実施されないままに、その後改正が行われたというようなケースがあるかと思います。御質問の趣旨に沿ったお答えであるかどうかわかりませんが、このようなケースがあるということを申し上げておきたいと思います。
  226. 坂口力

    ○坂口委員 今御指摘になりました例は、例えば医師法でございますとか薬剤師法でございますとか、そうしたものは、例えば施行の日を公布の日にするとか、あるいはその日を変えるとか、そうした法律の末端と言えばちょっと言い過ぎでございますけれども、そう重要でない部分の転換でございます。ところが今回の場合にはそうではなくて、言うならばこの法律の目玉と申しますか、一番核心部分でございます。こういうふうな部分を、さかのぼってという言葉はお嫌いになりますけれども、言うならばさかのぼって削除するというような例はない。挙げられなかったところを見ると、そういう例はないというふうに理解してよろしゅうございますか。
  227. 大山綱明

    ○大山政府委員 お答え申し上げます。  借りかえ禁止規定は非常に重要項目である、そういう重要項目をというお話でございますれば、先ほど申し上げました何が重要項目かということにつきましては、いろいろな見方なり評価があり得ようかと思いますけれども、例えば医師法の例、あるいは地方税法では付加価値税を実施をする、こういう法律内容になっていたこともあるわけであります。結局実施されないままに改正がなされたというその後の経緯があるわけであります。それから地方自治法におきましても、いわゆる特別市制というのは地方制度の上ではかなり重要な制度であったかと思います。この地方自治制度の非常に重要な制度が実施されないままに、その後改正をされたというようなことでございまして、重要項目ということの理解あるいは評価の仕方がいろいろあろうかと思いますけれども、私どもはこのようなケースがあるということを承知いたしておるわけであります。
  228. 坂口力

    ○坂口委員 今御指摘のように、地方税法の付加価値税の場合なんかも、これは施行される以前に廃止になったわけでありまして、施行されてからのものではないわけですね。私も、これは法制局にお邪魔をいたしまして見せていただきました。まあ、よろしゅうございます。  今私がこの問題を、なぜあえて再び取り上げたかと申しますと、先ほどの銀行局におきますところの金融の自由化に対する姿勢にいたしましても、それからこの法律の出し方にいたしましても、大蔵省の姿勢に非常に高いものがある。高いものがというのは、評価が高いという意味ではなくして、姿勢が高いという意味でございます。先日の委員会の中で大蔵大臣も御答弁になりましたが、大平大蔵大臣のときにこの特例法の法律案を出されますときに、一年一年これを出さずに、これからずっといけるようにまとめて出したらどうでしょうかというような意見もあったけれども、しかし痛みをかみしめる意味で、年々歳々これは出すようにすべきだという当時の大平大蔵大臣のお言葉もあって、毎年毎年これを出すようになったというお話をいただいたわけでございますが、やはりもしそのお気持ちが大蔵省におありになるならば、私はこの法律も、出ましたときと同じように一年一年これは出していくべきものである。先日、私の方の矢追議員がこのことを質問をいたしましたとおりでありまして、昭和五十九年度に決して急いで出さなければならないものではなくて、六十一年でもよかった。それを急遽出し、しかも、これから五十兆円を超える多額の赤字国債というものを、国会の手を煩わさずにこの処理をしていく。それだけ大変熱心にやっていただければ、国会の方は楽だと言えば楽でございますけれども、しかし、そういう筋合いのものではないだろうと実は思うわけでございます。  先日も大臣に金融の自由化の問題で質問をいたしまして、大臣からは、この金融の自由化ということ、大筋ではそのとおりであり、現在はその勉強中であるというような御答弁があったわけでございますが、大臣から御答弁をいただいております。そのころ、大蔵省におきましては、大蔵省の今までの勉強の結果が新聞の方に流れていた、そして翌日の新聞には堂々とその大蔵省考え方が出ているというような一幕がございまして、こちらの方は鋭く指摘したところでございますけれども、そのときに大蔵大臣は答案を見てお答えになっておりましたから、ひょっとしたら大蔵大臣も御存じなかったのではないだろうか。大蔵省のお役人の皆さん方は、おれたちがこの日本の国を背負っている、そういう強い自負心をお持ちになっている。それはまことに結構なことでございますけれども、その自負心とは別に、それであればこそ、やはりもう少し謙虚に対応していただかなければならないのではないだろうか。  一つは、今回のこの法律にあらわれました法律のつくり方、あるいはまた金融の自由化に対します銀行局側の対応の仕方、あるいはまた質問に対する対応の仕方、その端々にそうした大蔵省の、大蔵省でなきものは人間にあらずというような態度が衣の下からちらちらと見え隠れしている、そのことを私は厳しくここで指摘をしたい一人であります。ひとつ大蔵大臣から御意見を伺って次に進みたいと思います。
  229. 竹下登

    竹下国務大臣 まず第一は、先般来御指摘をいただいております、この法律の御審議に当たって財政というものに対する節度というものを考えるならば、かつて年々それを出して、年々借りかえ禁止規定を設けて御審議をしていただいたものを、今回は過去にさかのぼっていわゆる借りかえ禁止規定をとってしまう、これは法律のかつて考えておった財政の節度というものを失うではないか、こういうことに対して、私は、これはその議論をいたしました、いたしましたが、言ってみれば政策転換でございます、そうなれば、ここで御審議をいただくにはこのような形の方が現在適当であるという判断に立ちました、こういうふうに申し上げたわけであります。  それで、まさに節度の問題は、いわゆる訓示規定の中に——それは訓示規定だから精神規定じゃないかと言われれば、それもその指摘を甘んじて受けなければならないわけでございますが、財政に対する節度の問題は、まずその訓示規定等にあらわれておるわけでありますし、そして特例債そのものの発行は、これまた年々お願いをして御審議をいただくということに一つの節度が残っておるということを御理解をいただきたいものであるというふうに考えます。  それから二番目の金融の自由化の問題でございますが、これも理事会等で当局からあるいは釈明したかとも思うのでございまけれども、私どもも現実問題として、この十六、十七にアメリカでいわゆる自由化、国際化の問題に対しての随時協議を行うその直前のことでございます。したがって、金融制度調査会からいただきましたいわゆる自由化の方向というものに対してどのような肉づけをするかということについては、きょう銀行局長からお答えしておりますような形の一つの方途がもう既にやられたこととして、CDの小口化等は既にやられておるわけでございますが、そうした一つの手法というものは、これはあり得るという考えは持ちますものの、このアドホック委員会のまさに直前という状態でございましたので、いわばそのアドホックで議論する課題を事前に議論することについては避けた方がよかろうという判断も、私には幾らかあったことも事実でございます。と同時に、やはりそれらは外へ漏れるべきものではないという考え方は今日も変わっておりません。特に部内から出たら大変でございますから。しかし、それが、ある意味においては、いわゆるプレスの方の競争原理とでも申しますか、そういう中で我々が考えておったようなものに近いような形のものが外へ出たということはまことに適切でなかった、こういう考え方でおるわけであります。  大蔵省という役所は、なるほどいろいろな複雑な、多岐にわたる問題を、それぞれのつかさによって勉強して政策として打ち出すわけでございますが、別段、大蔵省にあらざれば人にあらずとか、あるいは大蔵省独善とかというようなことはございません。竹下登程度の者でもちゃんと大蔵大臣が務まるように、みんながサポートしておるわけでございますから、その点はおごり高ぶっておると格別私は感じたことはございません。しかし、そういう記事が、たとえ予測記事とはいえ部外に出ていくことに対して、管理上我々は気をつけなければならないという指摘は、これはそのままちょうだいすべき御忠告である、こういうふうに理解をいたしております。
  230. 坂口力

    ○坂口委員 それでは、次の本論に入らせていただきたいと思いますが、決して大蔵省の皆さん方が一生懸命おやりいただいておりますことに難癖をつけるつもりはさらさらございませんで、本当に一生懸命に夜遅くまでいろいろと御努力をいただいていることには敬意を表している一人でございます。ただしかし、それはそれとしながらも、それだけに、大蔵省の皆さん方にはほかの省庁の皆さん方よりもいま一つお考えをいただかなければならない点もあるということを申し述べたわけでございます。  さて本論でございますが、この財源がなぜ赤字になってきたかということにつきましては、いろいろの方々、大蔵省の皆さん方あるいは経企庁の皆さん方、あるいはまたそれぞれを御研究になっている学者の皆さん方、それぞれの立場でいろいろの御意見を発表になっているわけでございます。この赤字公債がこれほどたまってきたその理由は何かということをよく知りますことは、それは当然のことながら、これからこの赤字をいかにして解消していくかということにとって最も重要なことになるのではないかと考えるわけでございます。  そういう意味でお伺いをしたいと思うわけでございますが、大蔵省から出されました「経済成長率計画・見通しと実績との比較」というパンフレットがございます。これを拝見いたしますと、大蔵省がそれぞれ計画をされました成長率と実績との差が明確に示されております。昭和五十四年から五十七年までの、いわゆる「新経済社会七カ年計画」の中で、経済計画として示されました実質成長率五・七%が、実績では平均四・二%。昭和五十町年から五十七年までの間でございますけれども、これが五・七が四・二であります。名目成長率におきましては一〇・三が平均六・六でありました。これだけにとどまらず、五十八年度以降におきます数字におきましても、まだ五十八年の実績見込みだけしかわかっていないわけでありますから、余り多くを言うことはまだでき得ないかと思いますが、五十八年以降につきましては、実質成長率は四程度、こういうふうに「程度」という言葉がついているわけでございますが、五十八年の実績見込みは実質成長率で三・四でございました。それから名目成長率で六ないし七程度、こういうふうになっておりましたものが、実際には四・五という実績見込みになっております。  これを拝見いたしますと、五十四年から五十七年のところは第二次石油ショックもございまして、それに対する大きな影響があったことはもう当然でございますけれども、どうも石油ショックは既に脱却をしたのではないかと言われておりますが、なおかつそれが尾を引いている。これを石油ショックによる後遺症と見るか、あるいはそうではない、これはほかの要因によるものだと見るかということは、今後の経済運営にとりまして大きな問題ではないかと思うわけでございます。  そこで、OECDの「エコノミック・アウトルック」という雑誌が出ておりますが、その五十八年七月号に、日本の財政赤字を構造的赤字と循環的赤字に分解いたしまして、構造赤字が二%、それから循環赤字が一・五%、これは対GNP比、一九八二年のものでございますが、実は合計して三・四%という数字が出ているわけでございます。構造赤字と循環赤字というふうに明確に分けるということはなかなか難しいことでもあろうかと思いますが、OECDはこういう分析を実はしておるわけでございます。このことも踏まえながら、経済企画庁は今申しましたことをどのようにお考えになっているか、また大蔵省はどのようにお考えになっているか、あわせてひとつお聞きをしたいと思います。
  231. 服藤収

    服藤説明員 お答え申し上げます。  近年におきます経済見通しの数値と実績との乖離、その原因がどういうところにあるのかという御質問と承りました。いろいろ考えてみますに、大きな理由として二つばかり考えられるのではないかというふうに思います。  一つは、これは甚だ技術的な理由になるわけでございますが、統計技術上の影響を受けたことがかなりあるのではないかということでございます。五十年代に入りましてから、いろいろ国民経済計算体系の整備を進めております。そういったこともありまして、基準年度の改定ということがかなり頻繁に行われるようになってきております。基準年度が改正されますと、これは主としてGNPの実質比を出すために基準年というのを定めておるわけでございますが、それが改定されますとデフレーターが変わってくるわけでございます。物価の指数が変わってくるわけでございます。それで、価格の上昇率の非常に高いような生産物のウエートが高まってくるとデフレーターが高まってくるということで、四十年代後半以降の石油価格の上昇、あれの影響を受けまして、デフレーターが大変上昇をいたしました。  そういったこともございまして、例えば五十四年度なら五十四年度の経済見通しあるいは長期の経済計画をつくるときには、その時点で用いられている経済統計、国民経済計算の数値、そのベースで計画なり見通しなりがつくられるわけでございますが、基準が改定されますと、今申し上げましたような事情でデフレーターが上がるものでございますから、実質成長率が下がります。現在は五十年基準で国民経済計算が推計されておるわけですが、四十五年基準の推計値と比べまして、実質GNPの成長率が、年によって違いますけれども、平均いたしまして〇・六%ぐらい違うというような結果が出ております。したがって、今申し上げましたような経済見通しとか計画と実績との乖離の相当部分は、そういう基準年度の改定によるものであるということが言えようかと思います。  それからもう一つ理由は、特に五十五年以降の動きを申し上げれば、五十五年度あたりにつきましては、第二次オイルショックにもかかわらず、日本経済は比較的順調にその影響を切り抜けまして、まあまあ政府の見通しに似たような実績を残したわけでございます。ところが、五十六年度、五十七年度につきましては、見通しの作成時に予測した以上に第二次石油ショックの後遺症が長引きまして、特に米国におきましてその後遺症が出たと申しましょうか、米国が異常な高金利になる。これはもちろんレーガンの登場によるレーガノミックスの実践というようなこと、あるいはそれ以前からの、非常にマネタリズム的な金融政策の運営による金利の上昇というようなこともあろうかと思いますけれども、そういった米国の金利の上昇といったものが世界的な不況をもたらしたわけでございます。世界同時不況というような言葉で当時言われましたけれども、それが我が国の輸出等にも影響いたしまして、五十六年度、五十七年度、政府の見通しの数字をかなり下方に修正せざるを得なかった大きな要因ではないかと思うわけでございます。  見通しと実績の乖離につきましては、以上の二つの要素が大きな理由ではないかと考えております。
  232. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 現在の財政の赤字をどういうふうに考えるかという御質問でございますが、最初に構造的なものかどうかという方から御説明いたしたいと思います。  構造的なものであるかどうかということにつきましては、諸外国におきましても、先ほど御指摘のようなもの等々、多々ございます。アメリカにおきましても、完全雇用のもとで財政の姿を考える、それでもなお赤字があればこれは構造的だというような考え方もあるわけでございます。しかし、構造的なものかどうかという点を計数的に具体的に出すのはいろいろの要件がございまして、各国ともなかなか苦労しているようでございます。したがいまして、我が国においてそれではどの程度が構造的な財政の赤字がということにつきましては、具体的にずばり数字というのはなかなか出てこないのではないかと思いますけれども、いずれにしましても歳入の中で税収が六割強しか占めてないというようなことを考えますと、やはりこれはかなり構造的な赤字があるのではないかなというふうに考えられると思っております。  そこで、それではこのような状況になった原因はどこにあるかということでございますが、今経企庁の方からも御指摘がございましたけれども、恐らく大きな原因は、やはり第一次、第二次オイルショックによりましてかなりの程度に経済成長率が落ちる、特に名目成長が落ちてまいった。それに対しまして、租税の弾性値は、成長率が高いときは傾向的に高いわけでございますけれども、名目成長が下がってくると低くなるというようなことから、税収が非常に落ち込んできたということがやはり大きな原因ではないかなというふうに思うわけでございます。  歳出面につきましても、いろいろのそういう中で制度その他を財政構造の変化に応じて弾力的に変えてこなかったような点も、やはり構造的と言えば言える点があるかと思います。そういうものを合わせて今日の赤字の原因になっているのではないかというふうに考えているわけでございます。
  233. 坂口力

    ○坂口委員 経済企画庁の方の統計技術上の問題という話がございましたけれども、これは当然統計技術上の問題は常にある問題でありまして、完全にこれを避けて通るということはなかなかできないわけですね。現在なし得る一番よい方法を用いて統計上やっているのでしょうから、統計技術上の問題でこの数字が大きく違ってきたというのは少しいただけない話で、これは確かに私もないとは申せません。私も今まで医療の分野におきまして統計処理をいたしますのに、いかにして統計上のエラーをなくするかということで苦心をした経験がございますので、よくそこはわかります。しかし、その中でいかにすれば一番真実に迫れるかというので苦労しながら統計上の処理をするわけでありまして、統計上の処理でありますから、その中には平均値なら平均値が出ましても、それに対するスタンダードエラーがどの幅にあるのかというようなことも含めて、これは幅もあることでありますから、私もそこは、何もないとは申せませんけれども、数字が大きく違った最大の項目の一つに統計技術上の問題を挙げられるのは、経企庁としてはいかがなものか、私はこう思います。  御専門の方のお話でございますから、専門的なお話でございますので拝聴をしておきたいと思いますけれども、今御指摘になりましたように、石油ショックによる影響があることは当然でございますけれども、現在なおかつ続いております赤字構造というものが、その後遺症としてとらえていいのか、それともそれではない新しいものがそこに芽生えているのかということに対する検討は十分になされてしかるべき問題だと私は思うわけでございます。  今、両省からの御答弁をいただきましたが、その辺のところが余り明確にされませんでしたけれども、時間の都合もございますので、少し先へ進みながらこの問題をもう少しまた詰めていきたいと思います。  いずれにいたしましても、日本の国は第一次及び第二次の石油ショックを経まして大きな変動をしたわけでございます。しかし、他の諸国に比べますと良好なパフォーマンスを示した、こう言われているわけでございます。この良好なパフォーマンスを示したと言われます、その指標には何がなっているかといえば、これは成長率と物価上昇率と失業率という三つの指標をとりまして、この三つで見ます限り良好なパフォーマンスを日本は示した、こういうふうに言われているわけでございます。例えば一九八二年を見ますと、これもさっきの「エコノミック・アウトルック」に出ているわけでございますが、アメリカは一九八二年、成長率はマイナス一・八、物価上昇率は五・九、失業率は九・七。それに対して日本は三・○、二・九、二・四。西ドイツはマイナス一・一、五・三、六・八。フランス、イギリス、イタリア、その他ございますけれども、こういう数字が出ておりまして、この三つの指標で見ます限り、良好なパフォーマンスを示しているという言葉は当然出るだろうと思うわけでございます。  しかし、一方におきまして、この間に政府の債務残高がどれだけ出たかという対GNP比で見ました債務残高を見ますと、英国が四七・四%と、これはとりわけ悪いわけでございますけれども、日本はそれに次ぎまして四〇・一と、もう一つ政府債務残高というものを加えてみますと良好とは言いがたくなってくるわけでございまして、これも指標のとり方によると思うわけでございますが、こうした大きな債務を残したわけでございます。     〔委員長退席、中西(啓)委員長代理着席〕  このことに関しまして、名古屋市立大学の牛嶋正先生が編集されました「財政危機の日米比較」という書物がございます。この中におきまして竹内信仁助教授、これは名古屋大学の経済学部の助教授でございますが、その先生がお書きになっているのを拝見をいたしますと、財政の不均衡を生じた原因として二つ挙げておみえになりまして、「第一の理由は、昭和四〇年代後半にいたる高度成長による税収の急増と社会保障を中心として諸関係支出の大幅な増加が挙げられる。社会保障関係費の一般会計歳出の中に占める割合は、七〇年の一五・八%から七九年の二二・四%にまで上昇した。」これが第一だ。それからもう一つは、「第二に、日本経済は第一次石油ショック後深刻な不況にみまわれたが、七六年は輸出が牽引車となって経済は回復過程に向かった。しかし七七年に入ると、輸出依存による回復が困難となり、政府は本格的ケインズ政策を七七年から七八年にかけてとった。」このことがもう一つ理由である、こういうふうにこの先生は実は挙げておりまして、そして「財政の大幅赤字の原因として、以上二つの要因を考えてきたが、問題としては第一の原因」、すなわち社会保障の方ですね、「第一の原因が重要であり、第二のケインズ政策による財政赤字は、景気が十分回復すれば解消する問題である。」とこの先生は述べておるわけであります。  私は、挙げられた項目につきましては賛成をいたしますが、その後の、今後のことにつきましてはいささか意見を異にするわけでございます。と申しますのは、社会保障の方は、確かに一九七〇年に比べまして七九年ないし八〇年というのは非常なアップになったわけでございます。しかし、欧米先進国と現段階で比較をいたしますと、横並びあるいはそれよりも低いという程度でありまして、欧米先進国よりも高過ぎるということは決してないわけでございます。むしろ低いわけであります。ですから、現在の社会保障費が多いからという理由によって、もし赤字が解消されないということになってくれば、これからの高齢化社会あるいは高齢社会に対応いたしますときに、これは一体どうなるのだろうか。現在をクリアできなくて将来が果たしてクリアできるのだろうか、こう考えるわけでございまして、むしろ今後の問題としては、先日も質問をいたしましたとおり、社会保障費、これはふえてくるしと間違いございませんし、それに対する対応は考えなければならないわけでございますが、現時点におきましては、むしろ私は二番目の方のケインズ政策に重きを置いて考えたい一人でございます。  そういう意味で、これからどういう景気対策をとっていくならば現在の赤字構造から脱却をすることができるのだろうか、そのことをここでもう一度考えてみたいわけでございます。  そこで、今まで日本経済の優位性が保たれてまいりました原因は何かということについて、いろいろな人の意見を読んでみますと、結局のところは、日本経済が今日まで優位性を保ってこれたというのは、いわゆる日本の労働生産性の高さのためであったということが大体の意見の一致するところのように思います。一九七〇年を一〇〇として見ました場合に、一九八二年までの労働生産性は、日本が六・○、アメリカが三・一、イギリスが二・七、西ドイツが四・三というふうになっておりまして、労働生産性は日本が六・〇で、アメリカやイギリスや西ドイツに比べますと実は高くなっているわけであります。これにもいろいろの異論はあろうかと思いますけれども、これが日本経済の優位性を保たせた一つの大きな牽引車であったことは、私も事実ではないかと考える一人でございます。そこで、労働生産性を今後も高め得るかどうかということが、これからの日本の経済をどのような方向に持っていくか、そして、山積した国債をどのように消化していくかということに大きなかかわりを持っているように思えてなりません。  そこで、労働省にお聞きをしたいわけでございますけれども、この高い労働生産性なるものを今後も果たして維持できるだろうか。終身雇用制度でございますとか年功序列型の賃金体系が、低成長下といわゆる高齢化の中で変化しようとしておりますやさきでございますが、そうした中でもなおかつ、労働生産性が今後も維持できるであろうかということを危惧する一人でございますけれども、その辺についての御答弁をひとつお願いをしたいと思います。
  234. 石岡愼太郎

    ○石岡説明員 先生のお挙げになりました労働生産性の数字は製造業の数字ではなかろうかと思いますが、御指摘のように、我が国の労働生産性は諸外国に比較いたしまして相対的に高い水準を維持してきております。これは、我が国におきまして、一九七〇年代以降も諸外国に比べまして相対的に高い経済成長率が維持されたこと、あるいはまた製造業におきまして、MEなど技術革新に支えられました積極的な設備投資が行われたこと、さらには基本的に勤勉な労働力の存在があったといったことによるものではなかろうかと考えております。  今後の動向でございますが、去る五十八年の八月に閣議決定を見ました二九八〇年代経済社会の展望と指針」に示されておりますように、我が国経済は、今後中長期的に見まして、技術革新の進展やあるいはまた相対的に高水準の貯蓄率があることなどから、四%程度の経済成長率を達成することが可能であるというふうに見込まれていることなどから、製造業を中心としました労働生産性につきましても、技術革新に対処する設備投資の伸びを背景にいたしまして、かなりの伸びを今後も示すのではなかろうかというふうに考えておる次第でございます。  それから高齢化の進展も、御指摘のように我が国経済の中に見られるところであります。これがいろいろ賃金制度その他に影響を与えているのもまた事実でございます。この辺について申し上げますと、先生御指摘のような年功序列賃金その他日本の労働慣行が、労働者の労働意欲を高めるなどによりまして日本の生産性の高さを維持してきた。確かにそれは一つの要因であると思います。しかしながら、近年高齢化の進展が見られますので、こうした中で企業の賃金制度やあるいは雇用制度がどういうふうに変わってきているだろうかと、私どもも分析いたしております。  その分析結果によりますと、例えば賃金カーブは、五十年と五十八年を比べますと、今まで賃金カーブのピークが五十歳台前半にあったものが四十歳台後半に移ってきているとか、あるいはまた雇用管理面では昇進の年齢がおくれているとか等々の変化が確かに見られます。しかしながら、こういう変化は高齢化や定年延長に対応した変化でありまして、基本的には、今まで見られました我が国の年功序列賃金体系やあるいはまた終身雇用体系という日本の労働慣行は変わってないというふうに認識いたしている次第でございます。  しかしながら、今後の事態を考えますと、高齢化の進展というのは確かにあるわけでございますから、高齢者の職業能力の開発あるいは向上といったものを職業訓練などで進めていくといったことが必要ではなかろうかと考えている次第でございます。
  235. 坂口力

    ○坂口委員 ありがとうございました。  労働生産性の高い上昇率を実現していきますためには、今も技術進歩の問題を挙げられましたけれども、技術進歩率と結びついた高い投資率の維持が重要になってくるだろうと思いますが、この技術進歩率と結びついた高い投資率と、もう一つは労働意欲というものが挙げられるだろうと思います。  国際的に見まして今まで優位を保ってこられましたが、日本経済と欧米先進工業国の立場がこれからは逆転をいたしまして、むしろ日本経済が今度は追われる立場になる可能性もあるわけでございます。攻めから守りへということがよく言われます。守りという言葉が適切かどうか私わかりませんが、とにかく今までは先輩の後を追って、それを見習ってくればよかったわけでありますけれども、時には先に立って、先人がまだ経験をしたことのないことを日本がやらなければならないということもあるわけでございます。そうした中で、いわゆる知識集約型あるいはまた高付加価値型の産業構造への転換を図っていかなければならないわけでございます。  そうした一方、他の国に先んじた技術をどうするかという問題を見ます一つの指標といたしまして、これも予算がついているから科学技術が振興するとも考えがたい問題でございますが、一つの指標にはなるだろうと思います。昭和五十七年度版でございますが、科学技術白書を拝見いたしまして、主要国の科学技術関係予算というものを拝見いたしますと、日本は、総予算に占めますところの比率をパーセントで見まして大体三%前後でございます。一九七七年が三・一、七八年が二・九、七九年が三・〇、八〇年が三・〇、八一年も三・○、それから八二年も二・九、こういうふうに大体三%前後でございます。米国が大体五%台ですね。それから西ドイツが四・五から四・八ぐらいの間にあります。フランスが五%から六%台にあります。こういうふうに各国ともに科学技術予算を組んでいるわけでございます。日本とこれを比較いたします場合にも、何を科学技術予算に入れるかということによってこのパーセントは違ってくると思いますので、一概にこの数字を見て日本の科学技術予算が随分少ないということは言いがたいとは思います。しかし、一つの指標になるのではないだろうか、そう思いますが、科学技術庁お越しになっておりますので、ちょっと御意見を伺いたいと思います。
  236. 川崎雅弘

    ○川崎説明員 お答え申し上げます。  先生の御指摘になりました数字は、私どもが本年一月に出しました科学技術白書に、我が国の研究開発のポテンシャルを示す指標として各国と比較を試みたものでございます。御指摘のとおりの数字になっているわけでございますけれども、何分我が国の行財政の仕組みとアメリカあるいはその他の欧州諸国の行財政の仕組みは、防衛問題を含めましていろいろ違いもございますので、一概に比較をするのがなかなか困難な作業を私どもとしてやってみたわけでございます。  もちろん、私どもの科学技術政策全体といたしましては、先ほど来御指摘のありました新しい第三次あるいは第四次、第五次の技術革新を目指して、しかも国際的にも評価のできる、我が国として独自の創造性の豊かな科学技術をつくりたいということで努力をいたしておるわけでございまして、五十九年度の予算におきましても、マイナスシーリングの中で科学技術関係予算については若干の増を見ていただいている次第でございます。もちろん研究すべきあるいは技術開発を進めるべき分野というのは非常に多うございますので、多ければ多いほどいいということではございますけれども、政策全体の中で国として調和ある姿をとるという中においては、政府の中でともどもにかなり努力をいたしておると考えておる次第でございます。
  237. 坂口力

    ○坂口委員 文部省の方もお越しいただいておりますので、特に大学の工学部あたりの予算が、平均してでも結構でございますが、大体どのぐらいで、それが諸外国との間でどのくらいの比率にあるものかということをひとつお願いをします。
  238. 坂元弘直

    ○坂元説明員 お答えいたします。  国立大学におきます一講座当たりの人件費を含めました平均研究費を把握するということは、教育にかかわる部分もあるものでございますので大変難しいわけでございますが、基本的な研究経費であります教官当たり積算校費について申し上げますと、工学部の講座当たり本年度七百四十四万円でございます。そのほかにこれを補完する経費といたしまして、私ども教育研究特別経費というものを計上いたしておりますが、これは本年度、前年度の予算よりも一一・六%増額いたしまして、百四十六億円国立大学全体で計上いたしております。それから、研究プロジェクトに交付いたします科学研究費につきましても、厳しい財政状況の中でございましたが、前年度より二十億増額いたしまして四百五億円を計上いたしております。その他、これは学部にかかわるもの以外で附属研究所あるいは国立大学の共同利用機関が持っておりますビッグ研究プロジェクトを抱えておりますが、これらにつきましても、研究に支障のないようそれぞれぎりぎりの増額措置を講じておるというところでございます。  それから、諸外国との比較でございますが、先生も御承知かと思いますが、アメリカの州立大学のように、研究についてのプロジェクトを持たない限り研究費を出さないというような建前をとっておる大学もございまして、一概に我が国の講座当たり経費と比較するということは困難で、私どももそういう数字は、まことに恐縮ですが持っておりません。  ただ、工学部あるいは理学部、理工系にかかわるものではございませんが、国民所得全体に対する高等教育費の比率を申し上げますと、我が国が昭和五十五年で一・六%でございましたのに対しまして、私どもの持っておる数字が比較年度がそれぞれずれてまことに恐縮でございますが、アメリカが五十四年度で三・〇、それから西ドイツが五十三年で一・五、それからイギリス、フランスにつきましては、私どもの手持ちの数字が大変前で恐縮でございますが、日本の一・六が昭和五十五年度と申し上げましたが、それよりもイギリスは六年前の昭和四十九年度の数字が〇・九、フランスが昭和五十一年度の数字で申し上げますと〇・六というふうになっております。そういうことで、私どもとしましても、国立大学の教育研究が支障のないように前へ進むように、今後とも努力をしていきたいというふうに考えております。
  239. 坂口力

    ○坂口委員 今文部省の話を聞きましたらかなり余裕のあるようなお話でございまして、余り余裕のあるようなお話をすると大蔵省はまた削るのではないかと思いますが、いずれにいたしましても、科学技術並びに大学におきますところの予算というのは非常に厳しいわけでございます。私も大学の経験がございますので、大学の一講座当たりの予算の厳しさというものは痛切に感じている一人でございまして、決して楽な内容ではないと思うわけでございます。今お聞きいたしましたが、科学技術に対する予算というのは、諸外国との比較はなかなか難しい面も確かにございます。しかし、どうも日本も諸外国に比べてそれをかなり大きく上回っているということは言いがたい。むしろどちらかというならば、諸外国よりもおくれているということを言った方が適切ではないかというふうな数字でございます。  そこで、話をもとへ戻すわけでございますけれども、今まで景気回復のためには公共投資、公共投資ということになりますと土木事業あるいは建築という方により多くの予算が向いたわけでございます。しかし、私らも地元に帰りますと、公共投資が少ない、住宅あるいはまた道路等の土木に対する予算が少ないということをよく言われるわけでありまして、私も地元三重県のためを考えますと、もう少したくさんいただきたい、こう思う一人でございます。  しかし、それはそれとしながらも、今までのように景気の回復ということになれば公共投資、公共投資ということになれば土木並びに建築中心という判で押したような考え方で果たしていいのであろうか。経済構造はかなり変化をしてきているのではないだろうか。そういう意味で実はこの労働生産性の問題を挙げ、そしてその労働生産性を高めていきますための科学技術というものに目を向けて、今科学技術庁並びに文部省から御答弁をいただいたわけでございます。こうした物の見方をもう少し多面的にしていきながら、新しい処方せんを描いていくということが大事ではないかと思うわけでございますが、この辺でひとつ大蔵大臣の御意見を聞きまして、あとのまとめに入りたいと思います。
  240. 竹下登

    竹下国務大臣 勉強なすった御議論を承っておりまして、我が国の経済のパフォーマンスというのは、八二年のみならず八三年も、確かに先進国の中ではずば抜けた優等生だということは、どこからもまさに指摘されるところであります。このことは、考えてみますと、結局、いわゆる高度経済成長期に二ドル原油をじゃぶじゃぶ買いましてひた走りに走った。そこのところで追いつけ追い越せ、こういうことになって、それで第一次石油ショックの前に例のドルの兌換制停止、すなわちドルショックの時代があったと思います。そのときに公債発行いたしまして、ケインズ理論でございますが、要するに公共投資をやって、その国内景気でもってドルショックをどこの国よりも早く切り抜けた。そしてその次が第一次石油ショックでございましょう。二ドルから十二ドルまで、こういうことに上がっていったわけであります。そのときがちょうど昭和四十八年、名古屋大学の先生の御指摘にもありましたが、いわゆる福祉元年と銘打って社会保障の水準を落とさないでいこう、こういうときでありました。それとちょうど時期が一緒になりまして、建設国債からついには赤字国債というところにまで踏み切って、さはさりながら経済のパフォーマンスが一等賞であるということは、やはり経済そのものは確かに一等賞だと思います。  最近もよく諸外国の財政当局の方がお見えになりますが、日本の経済どうだといって説明すれば、一番ここで説明することになれましたので、「七、六、五抜きの四、三、二、こと覚えておいてください、こう言いますとみんな興味深く帰っていかれる。なかんずくその中の実質成長率の四と失業率の二でございますね、それと消費者物価の三、これだけはどうしてこんなことができるのか、実際不思議に思われるくらいでございましょう。それだけに貯蓄も高かったから、公債政策がそれを支えてきた一助にはなっているであろう。したがって、財政自身は、今この国債残高の点で御比較がありましたように、窮屈になってきておることは事実でございます。  それと、今労働生産性の問題をおっしゃいましたが、これは勤勉さと知識水準、学歴とかいうことでいつもこれを比較しておりますが、学歴というのは、御案内のように高等学校進学率も世界一高いし、大学進学率も世界一高うございます。これはこれとして、そのほかまた、審議いただいたように特許の出願数が世界で一番多かったり、だから頭がいいに違いないと思います。それからもう一つ勤勉さということになりますと、無届け欠勤が世界でずば抜けて少のうございますし、それからいわゆる長期のバカンスをとる、これは日本が一番少のうございます。そういう点があって、さらにそれに今御指摘なすっている技術革新というものが加わっていけば、労働生産性というのは依然として世界一を維持し続けるだけの素地はあるというふうに確信をいたしております。  そこで、今度は科学技術の予算ということになりますと、先生も御指摘なすったように、軍事研究費を抜くことは非常に難しゅうございますので、けさも科学技術会議に私出かけてまいりました。それともう一つは、民間と国の予算と両方足すと日本も結構いっておりますが、民間の方がほかの国に比べれば突出が大きゅうございます。だから国の財政そのものから言えば、他の国に比較して必ずしも多いという状態ではございません。しかし、乏しい中でもこういうことに対してはアクセントをつけながら、科学技術の面では予算をささやかでもふやし続けて今日まで来ておるわけでございますが、より付加価値の高い産業というようなものを念頭に置いての御発言でございますだけに、これらの点については今後ともやはり重大な関心を持って、アクセントのついた予算編成というようなものを志向していかなければならない課題ではないか、こういうふうに思っておるところでございます。  もう一つ、労働省からお話のありました賃金の問題がございましたが、言ってみれば、中産階級意識が非常に高くできるように上下の所得バランスというのが日本は一番狭うございますから、それがある意味においては労働生産性向上の大きな要因の一つではなかったかな、こういう感じを持っております。  ただ、御指摘のように、ヨーロッパを追い越そう、アメリカに追いつこう、それはある意味においては終わりました。しかし、そのいわゆる追いつけ追い越せが逆の立場に立つということになるだけに、付加価値の高い産業構造等に眼を転じていかなければならぬし、そうなれば、その土台となる基礎研究とかあるいは技術革新とか、そういうことに重点が志向されなければいかぬというお考え方には私も全く同感でございます。
  241. 坂口力

    ○坂口委員 大変丁寧な答弁をいただきまして、ありがとうございました。しかし、中身がもう一つでございましたが。「みのひとつだになきぞ悲しき」とまでは申しませんけれども、もう一つでございました。  それで、ちょっと時間がなくなってしまいましたので、最後にもう一つ、こういう議論が実はございます。英国の「エコノミスト」が「日本を裸にする」という本を出しておりまして、この中にも実は書いてございます。一言で申しますと、日本は貯蓄率が非常に高い、貯蓄率が高いのだから国債はもっと発行していって大丈夫なんだ、そうそう気にする必要はないのじゃないか、それをびくびくしているということをこの「エコノミスト」は実は言っているわけであります。その一部だけ読んでみますと、「けれども政府は二、三の国債発行を公開入札にかけることで、足の先をほんのちょっとだけ水に入れてみたものの、二つの理由から全面自由化をなお恐れている。」金利の自由化も非常に及び腰である、それから国債の発行についても非常に及び腰である、こういうことを実は言っているわけでございます。こういう意見があるわけでございますが、これに対して、これはどこになりますか、どの局からでも結構ですけれども、ひとつどのようにお考えになっているかということをお聞きしたい。  それはなぜかと申しますと、老齢人口比率というものとそれから貯蓄率というものとの関係が、これは昭和五十七年の経済白書の中にも出ているわけでございますが、この関係を見ますと逆相関になっている。この老齢人口比率と貯蓄率との各国比率を見ますと逆相関の関係にある。これからだんだんと高齢化してくるわけですね。例えば昭和六十五年を見ますと、六十五歳以上はまだ一・一%台でそれほど高くはございませんが、十五歳から六十四歳までの間が七〇%、これはもう今までで一番ふえるわけでございます。その七〇%の中で、しかも五十五歳から上、六十四歳まであたりのところが大変膨れてくるという時期でございまして、昭和六十五年を見ましてもまだそれほど高齢化ではございませんが、かなり上の方に来ていることは事実でございます。そういたしますと、今後老齢人口比率がふえてまいりますと貯蓄率と逆相関いたしまして、貯蓄率がだんだんと減ってくることを覚悟しなければならないのだろうか、そんな思いも実はするわけでございます。  そういたしますと、現在貯蓄率が非常に高いからというのでそのことに安心をしていると、高齢化が参りましてだんだんと貯蓄率が減ってくる。それによってまた国債の償還その他も非常に困難になってくるということも考え得ますので、このことに対してもう少し議論をさしていただきたかったのですが、時間が参りましたのでもうこれ以上申し上げません。そのことに対する御意見を一言伺って終わりにしたいと思います。
  242. 竹下登

    竹下国務大臣 日本は世界一貯蓄率が高いからまだまだ国債を発行できるゆとりがある、こういう議論が俗に言いますISバランス論というものでございまして、インベストメントとセーブ、これは要するに貯蓄というものはどこへ投資するか、個人か企業か、国か地方か、外国か、この三つしかないではないか、そういうところからして日本はまだまだ国債発行余力があるじゃないか、こういう議論が確かにございますが、このISバランス論というのが危険なことは、いわゆる金融面に与えます影響とかそういうことを十分考慮しない点にございます。それから、財政は確かに健全財政であるべきものが、一時的に景気対策として公債発行などをして刺激していく。これは政策としてとり得ることでございますが、これが慢性的になっていわば赤字国債になって、それで今困っていろんなことをお願いしているわけでございますから、したがって、この諭には私はやはりくみしちゃいかぬなと思っております。  それからもう一つ言えますことは、その諭にくみしちゃいかぬなというのは、そもそも国債というものを発行しますと国債費がふえてまいりまして、国債費と言えば利払いでございます。元来その国の予算というのは、ある意味において道路とか教育とかそういう共通の面もございますが、生活保護とかいろいろな福祉に対して、いわば富の再配分機能を持つべきものだ。にもかかわらず、国債費というものは利払いでございますから、必ず金持ちだけが国横を持っているという意味じゃございませんが、意図せざるところへ富の再配分がなされていくという意味において、一番気をつけなければならぬ問題ではないかということをかねがね自分に言い聞かせながら、それで財確法をお願いしておる、結論からいうとそういうことになるわけであります。
  243. 坂口力

    ○坂口委員 ありがとうございました。終わります。
  244. 中西啓介

    ○中西(啓)委員長代理 安倍基雄君。
  245. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 今までほとんどの問題が論じ尽くされた後でございますので、また繰り返すようなものも若干あるかと思いますけれども、私としての質問をさしていただきたいと思います。また、真藤総裁、お忙しいところわざわざ何度もありがとうございました。  今回のいわばこれだけ国債の累積した財政、そのための行革の第一歩として電電公社が民間に移行するということはございますけれども、この関係の電気事業法案に関連いたしまして、私が一つ大きな懸念を持っている点がございます。この問題はあるいは逓信委員会あたりで論議された問題かと思いますけれども、ぜひこの点だけは明らかにしておきたいということは外資の参入の問題でございます。  まず第一に、外務省の方、本当に担当された方に、どういう経緯で当初の郵政の原案にあったいわゆる外資規制が落ちたのか、アメリカとどういう経緯でもってこれは交渉されたのかということの御説明を願いたいと思います。
  246. 七尾清彦

    ○七尾説明員 お答えいたします。  電気通信事業法案の今次国会提出という話が郵政省の方からございまして、そのタイミングで、かねてよりこの問題に関心を示しておりましたアメリカの方から、その後はヨーロッパもございますが、外資規制の問題、それから許可制、届け出制の問題、それから法律成立後の運用面での透明性等の問題、そういった形で種々問題提起がございました。
  247. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 今の問題の提起があったということだけではわからないので、その後どういう経緯で外資規制が落ちることになったのかという御説明を願いたいと思います。
  248. 七尾清彦

    ○七尾説明員 外資規制の問題につきましては、その他の問題も含めまして、これは日米の交渉ということではなくてあくまでも日本国の法律の問題でございますから、アメリカ側の要望ないし心配事を十分聴取する機会を与えようという形で、累次一月以来アメリカ側とのコンタクトを外務省、郵政省、関係省庁でやってきたわけです。特に、御指摘の外資規制の問題につきましては、私ども外務省としましては、特に国際条約の関係ではOECDの資本自由化コードというのがございますが、この関係で、第二種特別事業につきまして二分の一の外資規制を入れる場合にはその条約上の違反の疑義ありという判断に立ちまして、郵政省とも種々御意見を交換してまいった。最終的にはアメリカ側との話し合いを踏まえて、郵政省と外務省との間で協議が調ったという経緯でございます。
  249. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 それでは外務省の方にお聞きしますけれども、ECにおけるこういった問題についての外資規制の現状はいかがでございましょう。具体的にドイツ、イギリス、フランス、どうなっておりましょうか。
  250. 七尾清彦

    ○七尾説明員 イギリスにつきましては、外資規制の問題は自由化ということで動いているように理解しております。ドイツについては若干の規制がある。それからフランスにつきましては、制度上は自由であるという説明を私どもにしておりますが、その実態面におきましては必ずしも十分情報がございませんけれども、ある程度の制約があるという理解をしております。詳細は必ずしも承知しておりません。
  251. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 今のある程度の規制があるとか、自由化に向かって動いているということでは非常にあいまいでございます。例えば二分の一とかなんとか、そういった知識はお持ちじゃありませんか。
  252. 七尾清彦

    ○七尾説明員 そういう情報は有しておりません。
  253. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 私は、実はほかの国はどうかということについての質問を外務省に出してなかったのでございます、少し意地が悪いと言えば悪いのでございますけれども。ただ、本当にアメリカの要請を受けて日本国内で自由化すべきだということを外務省が主張するならば、当然の知識としてほかの国はどうなっているということを知っていなければならないのじゃないか。だから私は、本当の担当者が来て説明してくれという話をしたはずであります。この点いかがでございますか。
  254. 七尾清彦

    ○七尾説明員 担当者、もう少しハイレベルの者が出席すべきところ、万やむを得ざる諸般の事情で参上できませんで、その点はおわび申し上げます。  御指摘のヨーロッパの状況を当然外務省は承知すべしというところでございますが、私どもも公電を発しまして種々調査をいたしたのでございます。同時に、郵政省さん手持ちのデータも突き合わせましていろいろ分析は行いましたが、まことに申しわけないのですが、具体的にその実態がはっきりつかめていないということでございます。
  255. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 私は何も担当責任者が来いというのじゃなくて、本当に外務省が外資規制の撤廃を国内で要求するならば、ほかの国においてどうであるかということの実情をしっかり踏まえた上で当然要求すべきじゃないか。これは調べるのは通産省だ、あるいは郵政省だということでは許されるわけはないと思う。  実は何でこの話を持ち出したかといいますと、私がかつて大蔵省におりましたころに自由化問題がありました。自動車の自由化問題でこざいまして、当時通産省はあと五年待ってくれということをるる述べたわけでございます。外務省は即時自由化しろということでございました。しかし、結論的には五年待つことによって自動車産業は非常に伸びたという実績がございます。私は、外交の場合に、外国が言うたかうそれでもって自由化するとかいう態度というものは許されるべきじゃない、外務省たるものが本当に日本のことを考えれば、自由化を要求するならばほかの国でどうであるか、それが日本にどういう影響を及ぼすかということを本当に知った上でこそ、初めてそれを要求できると思うのでございます。いかがでございますか。
  256. 七尾清彦

    ○七尾説明員 その点はまことに御指摘のとおりでございます。先ほども申し上げましたように、累次訓令を打って、現地でも、郵政省から大使館に出向しておられます専門家にもいろいろ調査をお願いしたわけでございますが、実態がはっきりしないという面がどうしても残りました。  それからアメリカとの関係におきましては、もとよりアメリカがこういうことを言ってきておるということをお伝えはしておりますが、国内の現状あるいは産業政策の考え方、その辺は外務省がよくするところではございませんから、その辺は関係国内御省庁とよく相談をして、最終的御判断は専門の担当官庁にお願いするという姿勢は維持してまいったつもりでございます。御指摘の点はまことに不十分な情報で申しわけないと思います。
  257. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 それでは通産省の方にお聞きしますけれども、外資規制が撤廃されたときに、本当に日本のこの分野における産業が伸びていくものかどうか。かつての自動車産業のように、金の卵であった、それがつぶれはしないかという考えがあるのでございますけれども、情報産業が今後発展していったらどのくらいの市場になるかという見通しについてお聞かせ願いたい。それが現在の鉄鋼とか自動車とかというのに比較してどういう大きさの産業になるかということでございます。
  258. 関収

    ○関説明員 お答え申し上げます。  先生御指摘の情報産業と申します場合に、どの範囲を意味するかいろいろ議論があるところでございますが、私ども、狭い意味ではハードウェアメーカー、ソフトウエア業、情報提供サービス業、計算センター業等々を仮に情報産業ということで定義をさしていただきますならば、現在の我が国の情報産業の規模はハードウエアで大体七兆円強、それから計算センター、ソフトウエアあるいは情報提供サービスを入れまして、いわゆるソフト的な部分が約八千億ないし九千億、合わせまして約八兆円という規模でございます。  これが今後どのように伸びていくかということにつきましては、残念ながら公式の見通しというものはございません。しかしながら、一つの試算をすることは可能なわけでございまして、例えばハードウエアにつきましては工業会の試算がございまして、これは今後一九九〇年までの間に毎年一二、三%ずつ伸びるであろう。それから情報提供サービス、ソフトウェア業務等々につきましては、これは明確な将来の伸び率についての見通しがないわけでございますが、仮に過去五年間の伸び率を維持したといたしますと、大体過去一七%程度ずつ毎年ふえておりますので、それで試算いたしますと、八千億円程度のものが一九九〇年には三兆二千億になるということでございます。合わせまして、これは非常にラフな試算ということで御理解いただきたいわけでございますが、二十四兆程度の規模になる。これは今日の他の主要な産業が、オーダーで申しますと自動車がおおむね二十兆円、鉄鋼業が十兆円程度、家電が五兆円程度という産業の規模と比較いたしましても、今後の我が国の産業構造を支える極めて重要な産業であり、しかも、その中でも極めて成長性の高い分野であるということだけは申し上げられるかと思う次第でございます。
  259. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 現在、いわば外資と日本と競争する場合の考えでございますけれども、IBM、ATTなどと比べた場合の富士通の規模はどのくらいでございますか。
  260. 関収

    ○関説明員 先生御指摘のワールドワイドな規模ということで私どもが把握いたしております数字で御説明申し上げますと、ATTが大体十五兆円程度の売上高、IBMが八兆五千億程度と理解をいたしております。それに対しまして富士通の売上高は一兆円弱、こう理解をいたしておるわけでございます。
  261. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 それでは郵政省と通産省に聞きますけれども、もとへ戻りまして、本当に外資規制が撤廃されたときに日本の民間産業は育つのかどうか、対抗できるのかどうかという見通しと、何を根拠にそう考えておるのかということをお聞かせ願いたい。
  262. 内海善雄

    ○内海説明員 先生御指摘のとおり、外国、特にアメリカの巨大通信事業者あるいはコンピューターメーカーというものは卓越した資金力だとか技術力を持ち、長年にわたる経験を持っておりますから、我が国の通信市場において大きな力を発揮するのではないかというような心配があることは事実でございます。しかしながら、優秀な外国系企業と自由競争市場で競争を行い、内外企業が切磋琢磨して、新しい電気通信事業の分野において発展を図るという競争原理のメリットも非常に大きいところでございます。従来の日本企業の技術発展に対する対応力だとかあるいは成長力というものを考えますと、これらの外国企業に対抗いたしまして、日本企業による健全な電気通信市場が形成されるということも十分期待できるのではないかというふうに考えておるところでございます。  電気通信事業法案におきましては、そういう点を総合的に勘案いたしまして、保護主義的な道をとるのがいいのか、それとも内外無差別、原則自由のもとで、自由濶達な競争原理のもとに電気通信事業を発展させるのがいいのかというようなことを総合的に考え、後者の方、自由濶達な方法によって発展を図るという道を選んだわけでございます。  特に問題になります第二種電気通信事業というものは、第一種電気通信事業者から回線を借りまして、そして多種多彩なサービスを提供するというところに非常にメリットがあるわけでございまして、競争で多種多彩なサービス、ニーズに合ったサービスを提供するというところに非常にメリットがあるならば、競争原理の導入というものは非常にいいのではないだろうか。さらに、そういう多種多彩なニーズというものは、日本の企業活動といいますか、日本企業の特殊なニーズというものにこたえなければなりませんので、外国系企業の非常に弱いところでございまして、日本特有のいろいろな商習慣、仕事のやり方に合った、そういうサービスを提供できる分野である。そういう観点から総合的に考えまして、法案の中身のようなものを提案したところでございます。
  263. 関収

    ○関説明員 先生御案内のとおり、我が国におきます情報化は今から十数年前にスタートいたしたわけでございますが、その後我が国におきます情報化も大変進展をいたしまして、今やコンピューターと通信回線とを接続いたしまして、いわゆるオンライン情報処理でありますとかVANに対するニーズというのは、産業界だけではなくて社会面、あるいは近い将来におきましては家庭生活におきましても、極めて大きな潜在力を持っているものと思うわけでございます。  その中で、いろいろなサービスを提供する産業でございますけれども、今郵政省さんの御指摘がございましたように、回線を借りてサービスを行います、いわゆる電気通信事業法案で第二種電気通信事業と定義されております分野につきましては、民間企業の自由な創意と活力と、そして切磋琢磨を通じて本当にニーズに合致したサービスが生み出されてくるのではないか、私どもはかように考えておるわけでございます。  その点、先生御指摘の外資規制との関係でございますけれども、直接の参考にはならないかと思いますが、一例を申し上げさせていただきたいと思うわけでございますが、いわゆるオンライン情報処理サービス業につきましては五十一年に自由化をいたしたわけでございます。その後、オンライン情報処理サービスにつきまして非常に多数の民間企業が出、もちろん外資もございますが、その中でいろいろなサービスの競争をし、またソフトウエアの競争をするという形で、民間あるいは産業界は社会、家庭のニーズにこたえつつあるわけでございまして、私は、第二種電気通信事業につきましても、このような形で競争が行われ、ユーザーの希望に十分こたえるようなサービスを行いますとともに、産業としても発展することが非常に期待される分野ではないか、かように考えている次第でございます。
  264. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 それでは、もし外資規制を撤廃しなかった場合にどういう不利が生じるのでございますか。これは外務省でも通産省でも、どちらでもよろしゅうございます。
  265. 七尾清彦

    ○七尾説明員 外務省といたしましては、先ほども触れました国際条約上の権利義務関係との関係におきまして、OECDの場で種々対抗の議論をやっていかなければいかぬ。基本的には資本自由化を例外業種以外は進めようという方向で走ってきておる方針との関係で、かなり難しい状態になるということでございます。実体経済面の方は私ども専門家ではございませんので、条約面からはそういうことが考えられます。
  266. 関収

    ○関説明員 先生の御質問に直接お答えする形ではなくて恐縮でございますけれども、外資規制をすべきか否かということにつきましては、恐らくいろいろな視点からの御判断というものがあったろうと思うわけでございます。先ほど申し上げましたように、この分野で企業活力を発揮するにはどういう形が一番いいのか、あるいはユーザーの利益、あるいはユーザーの立場というものの選択の範囲を広げるといったような視点で何が一番いいのか。あるいはただいま外務省からお答えございましたような我が国の国際的関係での配慮、あるいは国際的な約束事との調整といった総合的な形で今回の案が決定されたもの、こう承知をいたしておる次第でございます。
  267. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 ちょっと通産のさっきの答えで、一体日本の国内産業がちゃんと対抗できるのかどうか。私、実は最近テレビに出ましたニューヨーク市立大学の霍見という教授に、竹村健一さんとの対談の一日か二日前にある人の紹介で会いに行ったのでございますけれども、その際話題となったことは、現在の貿易摩擦は、今までは要するにアメリカの弱い産業、負けそうな産業、自動車とか鉄とかであったが、最近はそうではなくて、もっともっとアメリカの強い産業が貿易摩擦の中心になりつつあるのだという話を聞いたわけでございます。まさにこの情報産業、IBM、ATT、こういったものが本気に乗り出してきたときにどうなるか。皆さんも御承知のように、レーガン政権は独禁法を緩和してIBMと妥協した。それまでは、IBMは向こうでそういった産業に乗り出していくことは子会社しかできなかった。それが今や綱を解き放たれたという状況なのでございます。  もう一度通産省にお聞きいたしますけれども、果たして日本の民間産業がIBM、ATTに対抗できるのかどうか、それをお聞きしたい。
  268. 関収

    ○関説明員 先生大変鋭い御指摘でございまして、正直なところ、現在時点でIBMなりATTなりに対抗して勝てるのかどうかということについてなかなか明確なお答えは申し上げられないわけでございます。  御指摘のとおり、IBM、ATTは大変すぐれた技術を持っていることはそのとおりだと思います。しかし、同時に考えてまいりますと、このVAN事業、第二種電気通信事業といったものにつきましては、とりあえずは例えば企業がみずからの計算処理等々にそのサービスを使うというようなことでございますから、実際上の競争におきましては、単に通信技術が進んでおるかおくれておるかだけの問題ではなく、いわゆるアプリケーションも含めた意味での競争になるわけでございますので、私どもは、そういった角度から、この今後開放されますいわばマーケットにおきまして、日本の企業、外国の企業それぞれが大いに競争をし、ユーザーの輿望を担うような形でサービスの体系が展開されることを期待しておる次第でございます。
  269. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 実はきょうわざわざ真藤総裁に来ていただいたことは、ただ一つでございます。電電公社がIBM、ATTと対抗できるかどうかということが一点と、第二点は、電電公社以外の、今から育とうとする民間のいわばこういった業者、こういったものが本当に対抗できる力になり得るのかどうかということについて、忌憚のない、財界人としてのフリーなお気持ちでお答え願いたい、電電公社総裁という立場を離れて。私自身あるいは予断かもしれませんけれども、こういった状況で外資を入れたときに、日本の民間は十分育たないで、IBM、電電公社、ATTの争いになるのじゃないかという懸念を持っております。いかがなものでございましょう。
  270. 真藤恒

    ○真藤説明員 今先生からお許しいただきましたように、民間人の立場、あるいは第三者的な立場でお答えさせていただきます。  実は今電電公社で、VANという言葉で表現される内容の業務あるいは情報産業というふうな言葉で表現される業務をかなり大きなスケールでやっておりますが、その技術的な内容ということにつきましては、世界のどこの国よりも最高の、トップレベルの技術内容を持って今動いております。それで、今後新しい法案に基づきまして私どもの経営形態なり業務内容が変わってまいりますと、私どもが今持っております。そういう技術の能力あるいは営業能力というものは、私どもの組織の中でやってもいいし、あるいは子会社なり関連会社という形に分離してやってもいいということになりますので、そういう私どもの現在持っております実力、技術的な実力という点から、私はIBM、ATTをそう恐れてはおりません。  と申しますのは、私どもはもう十何年こういう仕事をやっておりますが、御存じのように、IBM、ATTはそれ自体でこういう業務は今日までまだ余りやっておりません、独禁法の関係やいろいろなことで。日本に入ってくるアメリカの二事業に対するのは、むしろアメリカの金融関係の組織の持っております国際的なネットワークをベースにしたものが一番先に入ってきて、それが一番強いんじゃなかろうかと思います。一般のいわゆる流通関係とか、それから科学技術関係とかそのほかのいろいろなものは、やはり日本の国内の商習慣というものに根本的につながるものでございますので、日本の商習慣をベースにしたソフトウエアの洗練されたものを持っているはずはございませんので、仮に彼らが入ってまいりましても、実際の業務になるのには相当の時間がかかるというふうにならざるを得ないと私どもは見ております。ですから、私どもが新しい法案で動けるようになりましたときに、政府の御指導をいただきながら上手な分離なり自営なりということで展開すれば、まず大口のVAN、外資の侵入に対しては十分対抗できる自信は持っております。  それから、日本の一般民間のこの種の事業も最近急速に進歩を始めておりまして、ある面では私どもが競争で負けまして、それも値段で負けただけじゃなくて、いわゆるソフトのからくりの賢さで日本の業者に負けた例もいろいろございます。それから、今各金融機関なり企業が自家用としていろいろVANに類することをおやりになっておりますが、その技術的な内容とか世の中のニーズに対する対応の仕方というものも、ここ二、三年の間に非常に急速な進歩を始めております。それで、私どものそういう御要望に対応するための専用線のデマンド、需要の伸び率が毎年一七%、一八%、専用線の収入といいますか、専用線の貸し料がふえておるということから見ましても、かなり健全な発展がもう既に行われているんじゃなかろうかというふうに私ども見ておりますので、外資が自由になったということになりましても、そう危機感を持たぬでもいいんじゃないかというふうに私自身は見ております。
  271. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 いずれにしましてもこの問題は、私は、行政改革が必要である、早く電電公社を民間形態にすることが必要である、しかしまだ、外資の問題は別ではあるまいかと考えております。どうも世上伝えるところによりますと、郵政と通産のいわば権限争いということがむしろ中心になり、私はある友人と話したのでございますが、もし通産が民間の業者をたくさん持っておったならば、かつての自動車座葉のように、こういった部門が電電で独占されてなくて民間だけであったならば、外資規制は大反対したろう。ただしかし、今度は自分たちが参入する、いわゆる電電の独占を排除したいという点に重点が置かれたために、自由化、自由化と、それに乗って外資も自由になるというような印象が私は非常にある。この業界が非情に成長産業であることを考えまするならば、もう少し我々は外資の問題について慎重であってしかるべきじゃないかと思うのでございます。三年後に見直すというような規定がございますけれども、一度外しておいてまたたがをはめるということはほとんど不可能に近い。しかし、三年は規制を続けておって、その後様子を見て外すということなら可能ではないかと私は考えます。  大蔵大臣のお気持ちをお聞きしたいのですけれども、この問題は直接的には大蔵省の問題じゃないかもしれません。しかし、大蔵省はすべてのものを見ていかなければいかぬ。特に産業の発展というところを考えまするならば、これから伸びようとする産業であれば、もっともっと外資に対して警戒しなくちゃいけないのじゃないか。電電が民間に移り、ほかのものとよく争い、切磋琢磨した後初めて外資の導入を認めてもいいのじゃないかと思うのでございますけれども、この点につきましての大蔵大臣の御見解をお聞きしたいと思います。
  272. 竹下登

    竹下国務大臣 もとより、今回の法律内閣一体の責任提出し、御審議をいただくということであるわけでございますけれども、この問題につきましては、この担当の省であられる郵政、通産等々それぞれ議論をされ、最終的にはこの問題は党側の調整というような問題、そういう経過をも経ててきた法律案でございます。したがって、私ども、いわゆる内閣一体の責任においてはその責めを担うのにいささかも憶病ではございませんけれども、ここで安倍委員の見解に対して私の見解を述べるということは差し控えさしていただきたい、このように御理解をいただきたいと思います。
  273. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 まあ、個人的な見解を発表できないということはわかりますけれども、私は、この問題についてもっともっと慎重であるべきである。行政改革も大事だけれども、それを急ぐの余り、一番大きな点を見逃してはいかぬのじゃないか。後世になって、この中曽根内閣がせっかくの金の卵をつぶしたよと言われるようになっては困る。これは何も中曽根さん自身の問題でなくて、我々これから二十一世紀に向かってどういう社会になるかということで非常に大問題ではないか。それを単に自由化の美名のもとに性急に処理するのはどうかと思う。私は本当に心から思います。もう一度自民党内で再検討していただきたいと思うのでございます。いかがでございますか。
  274. 竹下登

    竹下国務大臣 これは内閣一体の責任提出したものでございますので、この法律案審議そのものは、その審議段階で安倍委員の御懸念に対してもいろいろなお答えもあることでございましょうから、審議段階でそれらが解明されていくことを私は期待をいたしております。
  275. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 今大臣から御答弁いただきましたので、この問題はここでピリオドを打とうと思います。  その次にお伺いいたしますけれども、現在、国債が五十九年度は百二十兆円を超えるという状況でございますけれども、それ以外に国の潜在的債務、まだ債務になっておらないけれども、もしかしたら国が背負わなければいけない債務というものが随分あると思います。例えば現在累積債務が二十兆を超えている国鉄の問題、あるいは今回、地方自治体のいわば一般会計から交付税特会への貸付金が、半分は国が負担し、半分は地方が負担するという状況になったわけでございますが、いわゆる国の潜在的債務ということになると大体どのぐらいになりましょうか。
  276. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 国債以外に、将来も含めて国が負担する可能性のあるいわゆる潜在的債務の総額は幾らかという御質問でございますが、潜在的な可能性のある債務というものはなかなかこれを特定しがたい点もございまして、現在、五十九年度末の見込みとして国が負うている債務の総額はわかるわけでございます。それを申し上げたいと思いますが、いわゆる政府債務としての総額は百五十三兆円ございます。そのうち国債が百二十二兆円ございます。あと、主なものといたしまして借入金が約十七兆、それから短期証券が十二兆等々あるわけでございます。しかし、御質問の公社等はこれに入っておりませんので、一般会計と特別会計の政府債務総額ということでございます。
  277. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 従来百二十二兆円の国債ばかりが中心とされておりましたけれども、それ以外のいわば潜在的債務というものもある、それプラス国鉄の二十兆に上る債務がある、こう考えますと、我々はもう背筋が寒くなるような状況でございます。本当に、何と申しますか、「増税なき財政再建」などと言っておられぬぐらいの債務でございます。  そこで私、従来三Kと言われているものがございますが、その三Kの持つ赤字の最近の推移をお聞きしたいと思います。
  278. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 まず三Kの第一であります食管特別会計でございますが、これの赤字、これに対する食糧管理費としての繰り入れの方がよろしゅうございますか。——これは五十九年度で八千百三十二億円の繰り入れとなっております。しかし、五十六年度に九千九百四十八億円でございましたので、千八百十六億円の減ということでございます。三年連続でマイナスということになっております。  それから続きまして、三Kの第二でございます健保でございますけれども、健保の収支は最近改善してきております。五十三年度に百二十六億円、五十六年度に七百六十九億円、五十七年度に六百十一億円の黒字となってきております。したがいまして、健保につきましては、フローの姿としては現在一応いい姿になってきているということが言える。  それから、国鉄が御指摘のように一番問題だと思います。現在単年度で、五十九年度で国かる六千五百億円の助成を受け入れましても、なお約一兆七千億円の赤字が見込まれております。それから繰越欠損金は十二兆円を超える。それから長期債務は、先ほど御指摘のように二十兆円を超えているというような状況でございます。
  279. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 今の事務当局のお答えで結構ですけれども、国鉄の五十九年度の赤字原因と申しますものは、どうしてこれだけの——私ども実は今回のいわば増税法案でも、酒税だけでようやく三千億引っ張り出すのにきゅうきゅうとしておる、業界は非常に反対しておるという状況であるのに。一方ではこれだけの赤字を出している。この赤字の大きな原因は何でございましょうか。
  280. 竹内哲夫

    ○竹内説明員 お答えいたします。  国鉄のこの赤字が生じた原因についてはいろいろな原因があろうかと存じております。一つは、やはり何と申しましても遠距離は航空機、それから近距離、中距離はバス、トラック、それから貨物につきましては内航海運、こういう輸送構造が大変大きく変化して、国鉄の従来の陸上交通におきます独占的なシェアというのが失われていったということが非常に大きな要因の一つであろうかと思っております。しかし、それにとどまらず、やはり昭和四十年代に入りましてからの経済構造、輸送構造の変化の中で、国鉄のこの構造変化に対する対応が大変おくれたということが一つあろうかというふうに思っております。そのほか、最近の状況からいたしますと、いわゆる特性を発揮しがたい分野、特にローカル線の赤字が逐次増大をしているというような点もございます。あるいは貨物営業におきます輸送量の激減というような問題もあるわけでございます。  これらの原因と、最終的には国鉄を維持運営するという観点から、不足分を借入金に頼って今日まで運営をしている。したがって、大変に長期債務が増大し、かつ、そのための利子負担が非常に大きな重荷になってきているというようなところが国鉄の赤字の原因ではないかというふうに考えております。
  281. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 国鉄総裁、こういった状況のもとに引き受けられて、ある意味からいえば非常にお気の毒とは思いますけれども、また反面、本当に責任が大きい。私自身、実は当選してきまして、六千億の繰り入れと約二兆に及ぶいわば赤字が出ているとは思いもよらなかった。これでは一体どうなるのだという本当に危機感を感じるのでございます。  私、実はかつて役人をしておりましたころに、いわゆる円高によりまして次々と中小造船所が倒れていったことを経験しております。その際に、私ども大蔵省といたしましてできるだけ支援態勢をつくろうということをしても、どうしてもいざとなると金融機関は手を引く。それで労働者は路頭に迷うし、債権者はイナゴのように群がってくる。突然こんなことを聞いてなんですけれども、総裁はかってそういった倒産企業を目の前にしたことがございましょうか。こんな話を聞いてはまことに申しわけないのでございますけれども
  282. 仁杉巖

    ○仁杉説明員 私も民間におりましたので、少ない例ではございますが、そういう形の企業を見て慄然としたことがございます。
  283. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 総裁がそういう民間のいわば経験をなさっていらっしゃるということが、新しい総裁になられたまた一つ原因かと思いますけれども、考えてみますると、やはり国鉄の場合に方向転換をすべきときにしなかった、恐らくそれが十年前であったろうと私は考えるのでございます。いささか今になって、さっきの事務当局のお話で、借入金の利子が累積しておる、これ以上できないというようなお話がございますけれども、それであればもっと以前の段階で、新しい採用を減らすとか、建設についてもっといわば取捨選択するとか、そういう方針をとるべきであったのではないかと考えざるを得ないわけでございます。最近、業務についてのいわゆる規定が直ってきたということでございます。それはそれなりの評価をすべきでございますけれども、それでもまだ民間経営と比べるとやはり差があるのではないか。ここでいろいろ過去のことをあげつらうことはございません。しかし、私は、当時におけるいわば国鉄の首脳、これは名前を今言うことはございませんけれども、考えてみますれば、田中角榮元首相はもう年がら年じゅうマスコミにたたかれている。しかし、本当の意味で現在の国鉄をこういった形にして、あるいはそれが最終的に国民の税金にかかってくるかもしれないという人については全く触れられない。私は、何も個人のことをあげつらうつもりは毛頭ありませんけれども、十年たって弾劾を受けるような政策はとってもらいたくないと本当に考えております。まあこの国鉄の問題を余り長くし過ぎてもほかの問題もございますからあれでございますけれども、本当に私は国鉄総裁のいわば御決意と申しますか、それを聞きたい。  その前にちょっとあれでございますけれども、第三セクターというのがございますが、例えば駅ビルとか、ああいったところからどの程度利益を上げているのか、その辺も事務当局からお聞かせ願いたい。
  284. 猪俣為久

    ○猪俣説明員 お答えいたします。  国鉄法六条に基づきまして出資が認められております出資会社で五十七年度に開業しております会社が八十九社ございますけれども、それぞれ出資目的によりまして、国鉄に対する寄与の仕方は違うわけでございます。ちなみに、いわゆる駅ビルと申しております旅客ターミナル施設の会社が四十八社ございますけれども、これらの会社から国鉄に対しまして、営業料金というふうな形で約八十億円の収入があるわけでございます。なお、それに対します出資額が約同額の七十数億でございます。大体総出資額に見合うものが単年度の収入で入ってきておるというふうな状況でございます。  なお、そのほかに配当を始めておる会社がございまして、それらからの配当収入が出資会社全体で約三億七千万程度はあるわけでございます。
  285. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 国鉄の場合に、駅なんかにいたしましても、非常に地の利を得ている場所を使っているわけでございます。総裁は民間におられたわけでございますから、いろいろなことをごらんになったと思いますけれども、こういった第三セクターにおけるいわば収益の上がり方ということも、民間ベースで考えればもっともっと上がるのではないかなと考えざるを得ないのでございます。  これは私はまだこの前ちょっと聞いたばかりですから、余り真偽はわからないのでございますけれども、例えば東京から横浜あたりの高架の下あたりをどう活用されているか。話を聞いてみますと、ある者に貸すとそれが又貸しをしてすごい利益を得ているというようなことさえ聞くわけでございます。こういった第三セクターと申しますか、いろいろな面の見直しということが行われるべきではないかと思うのでございます。今ここでそのデータを一つ一つ見せていただこうとは思っておりません。しかし、国鉄再建という面からいけば、本当にもっともっと——私はこんなことを言っては悪いのでございますけれども、実は退職金なんかも調べてみたわけでございます。これは事務当局からちょっとお聞きしたいのですけれども、一人当たりの退職金はどのくらいでございますか。
  286. 太田知行

    ○大田説明員 平均しまして大体千七百万円ちょっとでございます。
  287. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 私は、まじめに働いた人々の退職金を値切れとまでは言ってないのでございますけれども、民間の全民労協というのが調べた退職金の平均を見ますと、五十五歳で一千百万円くらい、六十歳でやはり同じくらいのレベルでございます。これはいろいろな企業平均でございます。私自身がある中小企業に会いに行ったら、いや、おれのところは三十年勤めても五百万よというようなことさえ言っているわけでございます。公共企業体の職員がそれだけのいわば保護を受けていることはわかります。それに法的な根拠があることはわかりますけれども、本当に民間あるいは倒産企業というぐあいに並べてみたときに、やはり少し甘いのではないかな。  私は、まじめにやった連中の退職金を削れとまでは言っておりません。しかし、常に民間と比べてどうかな。乗務基準につきましても、いろいろな面につきましても、こういった退職金が高くなるのは、例えば退職勧奨なんかもございまして、そういったような関連ございましょう。そういったことでございますから、私自身もっともっと民間との横並びというか、民間であればどうなんだろうということを常に念頭に置いて収益も上げていただきたいと思いますし、この点ひとつ、わざわざ総裁に来ていただいたものでございますから、国鉄再建についてのいわば決意と申しますか、またどういう方策があるのかということをお聞きしたいと思います。
  288. 仁杉巖

    ○仁杉説明員 第一に国鉄再建の問題でございますが、御承知のとおり、ただいま再建計画を五十六年から六十年までやっているわけでございます。これもやはり収入の面では必ずしも計画どおりいっておりません。ただ、その後の職場の効率化というものを非常に進めましたために、かなり数字としては合ってきておりますけれども、実はその収入が上がらないという面が、これからの国鉄の再建の一つの大きい壁であるというふうに私も考えております。  それで、今のような予算と申しますか、企業体としての財政運営をしておりますと、今先生御指摘のようにだんだんと深みに入っていくということを私も感じておりまして、実は就任直後から事務当局に指示をして、いろいろな方策につきまして作業をさせておるわけでございますが、それを見ておりますと、今のようなやり方で参りますと、数年後には相当大きな負債がふえるというような状況になってくるということでございます。こういう状況のままでは、実は私ども非常に困るということでございますが、これらにつきましては、実は今、国鉄再建監理委員会が長期債務の問題並びに今後の国鉄のあり方について御討論になって、来年の夏ごろ答申を総理に出されるという形になっておりますが、もちろんそれを待っているということではございませんので、今申し上げましたように、我々といたしましても、将来の見通しがどうなる、そしてその上に立って我々としてはどういう方法をとるべきかということを今懸命に探っているところでございます。  そうした中で、まだここで確たることを申し上げかねますけれども、その作業を通しまして、できれば六十年度の予算等にも反映できればしていただきたいというふうなことを考えているわけでございます。  その次に、今御指摘がございました関連のいろいろな事業でございますが、鉄道事業というものは、私も民間にもおりましたが、本業では、大小いろいろございますが、大体とんとんというのが普通の姿でございます。利益を出しているということは、大体関連企業で出しているというのが普通でございますが、国鉄の場合には、今までいろいろ民間企業との競合等の問題がございまして、必ずしも自由にできなかったという面がございますが、今後は、できれば国鉄自体である程度のことをやって、利益を今よりもさらに上げるというような方向をとらせていただきたいというような希望は持っておりますが、これらにつきましては、また運輸省あるいは再建監理委員会等とも御相談してまいりたいと思うわけでございます。  退職金その他の問題がございますし、今先生かる御指示がございました民間企業との比較という問題でございますが、これは私ども私鉄との比較ということを非常にしておるわけでございます。私鉄にも実は大私鉄、中私鉄、小私鉄といろいろございます。これらにつきまして実は今、作業といたしましては、国鉄の中でも大私鉄に相当する線路あるいは中私鉄に相当する線路、小私鉄に相当する線路というようなことがございます。これらにつきまして、考えてみると、小私鉄の場合には給料も安いし退職金も少ないしというようなこともございますし、大私鉄と比較すると、給料も国鉄の方が低いし退職金も少ないというような問題点もございます。これらが一つの組織になっているということでいろいろ問題もあるということで、分割とか民営化というようなことが起こってきているのだろうと思いますが、この辺につきましても今いろいろ作業をいたしておりますので、その結果を運輸省並びに国鉄再建監理委員会等に申し上げまして、いい解決法を探ってまいりたいというふうに考えております。皆様方の御支援を得ながら、何とか国民の足としての国鉄が再生できるように努力をしてまいりたいと思っている次第でございます。(「隣によく言っておいてください」と呼ぶ者あり)
  289. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 隣によく言っておけとおっしゃるので、ひとつ竹下大臣にお聞きしたいのでございますけれども、この累積債務でございますね。これをまた国民の税金でという話になりますと、非常に大きな問題も起こってくる。第三セクターを伸ばすのかあるいはいろいろ資産処分をするのか、いろいろな方法があると思いますけれども、こういった国鉄のいわば累積債務、これをどう処理するか、これは非常に難しい問題でございます。国鉄監理委員会が考えているとおっしゃるかもしれませんけれども、それは国鉄監理委員会にお荷物を渡しただけでは解決がつかない問題でございます。ちょっとこれは急の質問かと思いますけれども、ひとつ大臣、どうお考えかをお聞きしたいと思います。
  290. 竹下登

    竹下国務大臣 何分二十二兆でございますから、これは大変な重荷であるということは私も事実認識しております。が、今日どうか、こうおっしゃれば、今安倍さんから意見を交えての御質問のように、まさに国鉄再建監理委員会においてその方途を今一生懸命御検討いただいておる、その御検討を待って適切に対処するということに、公式にはとどまると思います。したがって、国鉄再建監理委員会のいろいろな御検討に当たっては、我々の方からもあらゆる資料等を提出申し上げ、協力しなければならぬというふうに考えております。
  291. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 それでは話題を変えまして、現在国の債務が非常に問題となっておりますけれども、地方自治体、これがまた随分債務を持っているわけでございますけれども、地方自治体の債務総額は幾らでございますか、自治省の御答弁をお願いしたいと思います。
  292. 小林実

    ○小林説明員 お答え申し上げます。  五十九年度末でございますが、地方債残高でいいますと、普通会計で約四十兆五千億ございます。それから下水道等企業会計あるいはそれに準ずる会計で処理しておるものがございますが、その残高のうち普通会計分が負担するものが八兆二千億ございまして、両方合わせますと四十九兆近くになるという状況でございます。
  293. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 今、五十九年度末のお話をされましたので、どういうぐあいに推移しておりましょうか。
  294. 小林実

    ○小林説明員 五十五年度以降をとらえてみますと、普通会計におきます地方債残高、五十五年度が二十九兆五千億でございまして、これは対前年度一二・九%の増であります。五十六年度末が三十二兆七千億、前年度対比で一〇・九%増、五十七年度末で三十五兆六千億でございまして、九%の増、五十八年度末は約三十八兆四千億、七・七%の増、五十九年度は先ほど申し上げましたように約四十兆五千億、こういうことでございます。
  295. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 今の答えを聞きますと、年々増加しているわけでございます。そうしますと、こういったものをどうやってまた償還していくのかな、また、国債費に相当する地方債と申しますか、利子、元本返済を含めまして、大体年々どういうぐあいに動いておりますか。
  296. 小林実

    ○小林説明員 六十年度以降のことは、地方自治体の場合には、地方債計画で計上しております地方債以外に枠外債ということで発行する場合もございまして、大分変わってくる場合があるわけでございますが、仮に六十年度におきます新発債を、五十九年度の地方債計画の建設地方債の増発、一兆二千億しておりますが、それをしない金額約三兆五千六百億と同額というふうに想定いたしまして出してみますと、六十年度は公債費が五兆六千六百億、それから六十一年度が約五兆八千億、それから六十二年度が六兆というふうに見込まれております。
  297. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 そうすると、地方債の引き受け内訳と申しますか、その辺はどうなっているのですか。接近においての計数を自治省の方おわかりですか。
  298. 小林実

    ○小林説明員 決算ベースでのものは五十七年度末まででございますが、五十七年度末におきましては、政府資金が、この地方債現在高約三十五兆七千億でございますが、そのうちの約四四%、約十五兆六千億ということでございます。それから公営企業金融公庫が約二兆三千億強でございまして六・六%、その他は民間等になるわけでございます。市中銀行が十一兆七千億、三二・八%、市場公募債が二兆二千億、六・一%、こういうことになっております。
  299. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 時間も少し減ってきましたから、少し先を急いでお聞きしますけれども、実は私ども民社党の中で、地方財政一体どうなのかということを私自身が議題として取り上げて、それが比較的今の民社党のいろいろな議論にもなってきているわけでございますけれども、いわばこれだけの債務がある。じゃ、この財源は何で返していくわけでございますか。
  300. 小林実

    ○小林説明員 地方も国と同様大変厳しい状況でございまして、財政再建が急がれておるわけでございます。財政再建の見通しというものにつきましての確たる姿といいますか、それを示すのは大変難しいわけでございますが、「増税なき財政再建」という大方針がございまして、私どもといたしましては、歳入の面では、やはり地方税、譲与税、それから交付税を合わせました一般財源が地方財政の場合は基本となるわけでございますが、従来のようには大きな伸びは期待できないというふうに考えております。したがいまして、まず歳出の面でやはり徹底して抑制を図るということが第一であろうというふうに思っております。  それから、一般財源確保したいというのは基本でございますが、そのほかにやはり税外収入等につきましてもでき得る限り確保してまいりたいというふうに思っておるわけでございます。  それから、新規施策につきましては、もちろん厳しい選択を行いまして、財源を重点的に配分するということが肝要であろう、ひたすらに歳出の方の抑制を基本としながら健全化を図っていかざるを得ないのではないかというふうに考えております。
  301. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 実は時間の関係ではしょって聞きますけれども、いわゆる増税をしても、いわば三税の三二%は地方の方に回っていく。恐らくそれがストップすれば地方債の償還なんかできないのじゃないか。ですから、増税、増税といっても、その三分の一が地方債の償還になっていくということになりますと、私、繰り返すようでございますけれども、この前の三千億の増税にだって各業界がひいひい言っておる。これからどの物品税を取られる、どれを取られるというように戦々恐々としている。それがこのまま幾ら取っても国債費に流れていき、そして交付税の方へ回っていく、地方債の償還にいくというのでは、まさに一体どうなることやらと思わざるを得ない。  私、実はアメリカにおったときに、地方公共団体がそこで発電所をつくるかつくらないかで大論争をした。新しい発電所にするか、税金がふえることはまずいから建て直すのをやめようかとけんけんごうごうの結果、そこで初めて建てないこととしたということを見聞きしたことがございます。これが本当の意味の地方自治ではあるまいか。と申しますと、やはり国の財源と地方の財源ともう少し分け、事務も分け、地方は地方である程度やっていく。このままでいきますと、交付税というものが本当に一つの依存体質をどうしても継続させることになる。  私は、中曽根さんの教育臨調もいいけれども、行革がまだ不徹底じゃないか、地方の行革をしなくちゃいけないんじゃないかなという気持ちがございます。この点、行政管理庁長官はきょう見えておりませんけれども、一応大蔵大臣がそれを含めて地方の行革についてどうお考えになるか、御意見をお聞きしたいと思います。
  302. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる財政という点から考えますならば、まさに地方と国は公の経済の車の両輪、それが巧みに回っていかなきゃいかぬ。そして、決して財政のための行革ではないにいたしましても、行政改革という問題は国、地方を通じて真にこれの効果がてこなければならぬ。こういう意味におきまして、今後の行政改革は、地方に対するもろもろの意見も各方面から高く上がっておる今日であります。今の安倍さんの議論もまさにその一つであろうと思っております。したがって、自治省におかれて、地方の行革の問題については適切な指導がなされるよう、常々行管との間で綿密な意見交換がなされておるというふうに私どもは承っておるところであります。
  303. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 時間も減ってきましたから、もう一つ別の問題を取り上げます。  まず、先回、金融小委員会でしたか、日銀副総裁以下皆さんをお呼びして、参考人意見を承ったわけでございますけれども、そのときに、皆さんの御意見、例えば日銀副総裁なども、もう自由化は避けられぬ、どんどんやっていくんだ、金融自由化は自然の勢いであるというお話をされたのでございます。  私はそのときに、日本の国は中小企業が随分多い。それが中小令融機関に頼っておる。しかも貯蓄のほとんどは間接金融、預金として預けられ、それが運用されている。国内の自由化をどんどん進めていけば預金金利は上昇せざるを得ないだろう。これは私のみならず、堀委員あるいは正森委員も御指摘されましたけれども、要するに海外において高い金利で運用できる金融機関については十分ペイするだろう。ところが、国内で集めて貸すというだけの中小金融機関と申しますものは、預金金利が上昇していけばたちまち経営困難になる。  この前「時事放談」か何かで土屋清さんが、預金者が適当に銀行を選択すればいいじゃないかというようなことを言われましたけれども、預金者が銀行を選択する、そういったところに神経を使うようになったらおしまいではないか。アメリカの高金利がこれだけの状況で、本当に私は日本の金融自由化を推し進めても大丈夫だろうかという懸念が非常にあるわけでございます。が、中曽根さんが約束してきたということで、それのいわゆる「中圧」とでもいいますか、大蔵省の連中は非常に苦しんでいるようでございます。中曽根さんは、あしたでもひとつ聞いてみようと思いますけれども、金利の自由化の意味を本当に理解してやっているのかどうかと思わざるを得ない。少なくとも、実は霍見さんとお話ししたときも、アメリカの一つのねらいは、日本の低金利がアメリカの高金利に引き寄せられる、それによって企業の競争力がなくなる、それがねらいなんだよ、円高などというものは表向きにしかすぎないというような議論。私もそうだそうだというような話をしたのでございますけれども、本当に中曽根さんが金利の自由化についての認識を持ってやっているのかどうか、同僚に聞くのも気の毒ですけれども、中小金融機関についてこの金利の自由化がどう響くのか、ちょっとお答え願いたいと思います。
  304. 宮本保孝

    ○宮本(保)政府委員 金利の自由化はいや応なしに進むということなんでございます。といいますのは、期近債等非常に短期の自由な金利商品が出回るようになりますと、どうしてもそれと同じ金融商品を仮に低く抑えておきますと自由金利商品の方へ金が流れていくということで、いわゆる規制金利商品に金が集まらなくなる。要するに、中小金融機関の預金も含めて、いわゆる規制されております預金を扱っておる間接金融機関への資金のパイプが非常に細くなるわけでございます。そういう意味におきまして、どうしてもそういう類似の金融商品が自由化されて、ある程度高どまってまいるということになりますと、規制金利商品の方も動かさざるを得なくなってくる。これが不可避的に金利の自由化が進む原因になっているわけで、それに対して、では政策的にどういうふうに対応していくのかというのが、私どもに課せられた大きな課題であるわけです。  そこで、その場合に、やはり中小金融機関、確かにコストが高くなります。同時に、低成長時代でございますから、資金の運用はかってよりは非常に難しくなるということで利ざやが縮小する。そこで経営の効率の悪いところにつきましては非常に経営上の問題が生ずるということでございますので、私どもといたしましては、まず自由化のテンポは漸進的に段階的にやっていくということが一つ。それから、新しいいろんな金融商品を認めます場合にも、それがどういう影響を個々の金融機関の経営に与えるのか、あるいは金の流れにどういうふうな影響を与えるのかという点を見きわめた上で次のステップを踏んでいくということかと思います。  同時にまた、金利自由化の巡行する過程で、そういうふうないろんな漸進的な措置をとってまいりましても、なお経営に問題が生ずるということが出てまいりますれば、これは信用秩序の維持の点からいいましても非常に問題でございますので、あるいは預金保険機構制度を充実させていくとか、あるいは場合によっては合併再編とか、あるいは業務提携とか、いわゆる受け皿の整備でございますが、そういう点につきましても十分配慮しながら、慎重に段階的に進めていくということで対応したいと思っております。
  305. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 いろいろ金利の自由化というのがある程度避けられないという点もございますけれども、例えばCDなども三億円から一億という話に下がってくる。それだけの単位を運用できる連中はいい。ところが本当に中小の企業などはそういったのは利用できぬというので、だんだんと、じゃ小口金利までひとつ上げようかという話になってくると、中小の金融機関は運用する場所がない。預かる金利は高くなる。もともと日本の国と申しますものは、資本の蓄積率が高いことをもって聞こえているわけでございます。それが日本の低金利を生み、企業の競争力を強めている。  実は最近、例えばレーガンがああいった高金利政策をとるというために、実質的な投資、工場や設備に投資するよりも、金融資産に投資した方が有利じゃないかという形で、投資そのものがそういういわば実体性のない投資へ向けられている気味もあるかと聞いております。そうすると日本の場合には、安い金利で国内でとって、それを海外で運用する、しかもそれが金融資産的な運用である、せっかくの日本の高い蓄積率をそちらの方に使ってしまうというような形になる大きな傾向があるのじゃないか。とするならば、アメリカに対し、もし君たちが本当に高金利をやめるならばもう少し自由化しようというくらいの強い態度が必要ではないかと私は考えるのでございますけれども、この点、大蔵大臣の御見解を承りたいと思います。
  306. 竹下登

    竹下国務大臣 米国の高金利というのは、やはり基本的には私は財政赤字から来ておるというふうに考えます。サミットにおきましても、その米国の高金利に対する是正を求める声は、まさにコーラスのような感じで、どの国からも連呼をされるというのが実態でございます。ただ、財政赤字そのものから来る影響というもの、これは今度は大変な削減委員会等もつくって超党派的なものができるようでございますけれども、一朝一夕にはなかなか名案は出ないだろう。しかし、そういう方向で努力する旨を、今日レーガン政権も内外に宣明しておられるところでありますから、さらにこの高金利問題については、我々としてもそれの是正を求めていくという態度は変えてはならないことだというふうに事実を認識をいたしておるところであります。
  307. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 今回のいわば金融市場の自由化がどの程度大蔵関係の発意に基づくものか、あるいは「中圧」に基づくものか、ちょっと定かでないのでありますけれども、私は、もしそれが「中圧」であるとするならば、中曽根さんがアメリカに約束してきたからということであるとするならば、それがどのくらい大きな影響を日本の経済にもたらすのかということをもう少し啓蒙していただきたい。さっき霍見君との話をしましたけれども、彼が、先端産業においてアメリカが日本を制する、情報産業で制するということと同時に、金融の関係でもって日本に対し大きな圧力を加えてきている、それは通常の自動車産業とかあるいは鉄鋼産業とか、アメリカにおいて弱い産業と異質なものなんだということをしきりと言っておりました。私もまさに同感でございまして、この金融市場の変化というものが至るところで大きな問題をこれから生じてくるんじゃないか、単にオレンジ、牛肉というような次元とは違うんじゃないかと思うのでございます。  その意味合いにおいて、私は、大蔵大臣がどう受けとめておられるのか、もし中曽根さんがよくその辺を理解してなかったら、よく啓蒙していただきたいと思います。いかがでございますか。
  308. 竹下登

    竹下国務大臣 この金融・資本市場の自由化問題というのは、国際的に見てGNPがまさに自由世界第二位となってきた今日、これはかって、ポンドは衰退しましたが、ドイツマルク等が金融・資本市場として大きな役割を果たす、それ以上の役割を果たさなければならないある種の必然性はあろうかと私は思うのであります。  ただ、私どもが絶えず議論しておりますのは、例えて申しますならば、今安倍さんの意見を交えた御質問の中にもございましたように、日本が貯蓄性向が非常に高いというのは、金融機関とは倒産しないものであるという認識が日本国民全体にあるということも、勤倹貯蓄の思想の問題とは別に私はあったと思います。その経過を見ますと、一九〇一年ですかに千八百もあった銀行が、今や、この間合併しましたから、百五十六になりますか、そういう形でいわば預金者保護を貫いて今日やってきた。それだけにまた自己責任主義を通してきたアメリカの金融界とはかなり歴史的な違いがございます。したがって、やはり今自己責任主義というものの上にも立脚しなければならぬし、そうなればまた当然のこととして、今も話がありました預金保険機構等の力もつけていかなければならぬだろう。それがいわゆるソフトランディング、大きな摩擦を防ぐ環境を整備しながら、推移に従って軟着陸していくという基本的な考え方に立って、したがってあくまでも自主的にかつ積極的に、その「自主的に」という言葉を念頭に置いて対応すべき問題であるという事実認識をいたしております。
  309. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 さっきの「時事放談」で土屋清さんが、預金者が銀行を選択する、どこに預金していいか選ぶ。実はそんなところに神経を使い始めたら中小企業者は一遍に経営ができなくなってしまう。安心してそういった金融ができるからこそ、彼らはどうにかやっていけるんです。銀行を選択するということのよしあし、自由がいいというわけではないと思います。特に日本の経済がそういった基盤の上に成長してきたということを、もし「中圧」であれば、よくよく私は認識させるべきではないかと思うのでございます。  時間もございませんので、最後に、これはこの前議論したことでございますけれども、この現在の財政再建に関しまして、物品税とかいろいろ税を課していく。しかし、一般的にはいわゆる大衆課税でもって巨大な国債の利子を払い、そして償還していく。いわば一般から吸い上げた金でもって資産所得者をふやしていく。しかも、彼らは高い利ざやでもってうまく運用していく。富の不均衡をますます高めるのが現在の経済体制になってきているのではないか。  と申しまするならば、やはり利子課税あるいは資産所得課税、その辺に着目していかなければ、幾ら「増税なき財政再建」などと言っても空論に終わるのじゃないか。したがいまして、この利子課税、資産所得課税、その辺について税体系を根本的にもう一遍見直していくべきじゃないかと思うのでございます。時間も最後でございますから、大蔵大臣の御見解をお聞きして私の質問を終わりたいと思います。
  310. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる利子・配当課税等の問題につきましては、まさに税制調査会で検討されるさなかということでございますので、本日の議論等も正確にお伝えすることによって税調の議論の種とさしていただきたい。  それからキャピタルゲインの問題等につきましては、いろいろ御議論が今日までなされてきておるところでございますが、今の意見もそのまま税制調査会の方へ正確にお伝えするということには、もちろん当然のこととして考えておるわけであります。
  311. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 これをもって質問を終わります。
  312. 中西啓介

    ○中西(啓)委員長代理 次回は、明二十五日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時三十五分散会