○正
森委員 それ以上は今おっしゃれない立場であろうと思いますので、これ以上は伺いません。しかし、私が
質問した
意味はよく御理解いただけたと思います。
財政問題を真剣に考え、
償還を円滑に行い、かつ
予算本体に過大な
負担をかけないようにやろうというように考えれば、党派は異なりましても、まじめに考えていけばそういうような問題点が起こるであろうということになるわけで、来年一月を待たずに、この四月の
大蔵委員会で問題点だけは指摘しておくということで申し上げたわけであります。御苦労さまでした。
そこで経企庁、えらいお待たせしました。おくれまして済みません。もう
一つの問題に移らしていただきたいと思います。
それは、
歳出の
カットか
国民の
負担増という二つのことしか残っていない、借
換債の問題は片づき、それ以外の四条債にしろ特例債の
発行にしろふやせないという
状況に
中期展望でなっておるのだからということを申しました。そこで残るところは
国民の
負担増の問題であります。それで「一九八〇年代経済社会の
展望と指針」でしたか、それをお
出しになりました。
私は、こういう問題について昨年の二月と九月、特に九月でしたか、当時は塩崎経企庁長官でしたかに御
質問をいたしました。こういうような
財政危機のときに「経済社会の
展望と指針」、総理の御意向で「経済計画」という
言葉を「
展望と指針」というように変えたわけですけれども、お
出しになる場合には、これまでの七カ年計画あるいは五カ年計画は全部
一定の
数字を
出した。これはもちろん計画ですから、定量的に確定的に決まるものではありませんが、
数字を
出したのですね。ところが、「一九八〇年代経済社会の
展望と指針」の場合には
数字を出さないということで
出していないのです。塩崎さんに私が
質問しまして、塩崎さんは正直だからか知りませんが、つい口を滑らして、
数字はあるんだけれども出さないんだともとれる
答弁をしたのです。私は、非常に正直な方である、私の本日の
質問の中で一番よい
答弁だったと言って褒めてあげたことがあるのです。大蔵省より経企庁の方が正直かなという気もしないでもないのですが、塩崎さんは確かに正直で、あるけれども出さないんだという
意味の
答弁をされたのです。しかし、待っておりましたら、
大内委員が非常にお怒りになって
質問をしておられますが、ことしの
予算委員会の
総括になりましても出さないのですね。
大体経済運営をやる場合に、抽象的な名目成長率が幾らか、あるいは
国民総生産がどうなるか、あるいは失業率がどうなるかというような漠としたものだけは出すけれども、
政府がまさに自分の責任で決めなければならない租税
負担率がどうなるか、
社会保障負担率がどうなるか、
社会保障移転がどうなるか、特に
政府の
公共投資の総額の見込みがどうなるか、これは全部
政府が主体的に決めることのできる
数字ですが、それを出さないで、それも含めて、民間活力も含めて、海外の貿易も全部含めて決まる名目成長率が幾らか、失業率が幾らかということだけは
数字を出す。世の中にこんなに
ばかげた、人を食ったことはないのですね。自分が何をやろうとするかは言わないで、それも含めて、あなたたちの統制の及ばない民間の経済から貿易から全部含めた
数字だけは
出してくる。こういうことが
政府の「一九八〇年代経済社会の
展望と指針」なんですね。これが、そんなものを
出して下手に野党に揚げ足をとられてはいかぬという総理の知恵なんですね。私は同じ静岡高等学校出身なんですが、やはり性格が違うとみえて、私ならもっと
数字を
出して
国民の批判を仰ぐと思うのですけれども、そういう手法をとっておられるのです。
そうして
竹下大蔵大臣の、定量的にお示しになるのじゃなしに定性的に示しておる次第でございますという名
答弁があるんですね。これは非常にお上手な
答弁で、定量的には出さないが定性的に
出したというと、何かごっついものを
出したように思うのですが、本当に何も出さないことを、定性的に出すことにしたわけでございます、こう答えているんですね。私はそこの
速記録には線を引っ張って、これくらいうまい
答弁ができるようにならなければ
財政危機の
大蔵大臣は務まらぬというように思ったのです。しかし、それでは
国会でのまじめな論議にならないのですね。自分が主体的に決めることのできる租税
負担率をどうし、
社会保障負担をどうし、
公共投資をどうするということを決めないで、もう五十九
年度が決まったし、六十
年度は目の前でしょう。それを三年先、五年先のおおよそのことを示さないで、そのかわりに民間も全部入れた名目成長率や何やらだけは七年先まで
出しているんですよ。いい心臓でしすね、本当の話。だから、こういうことをやったらいかぬですね。
国会軽視、
予算委員会、
大蔵委員会軽視も甚だしいというように言わなければならぬと思うのです。これはおわかりでしょう。
そこで、私がそう言っても、どうせ余りいい
答弁をしないつもりでしょう。顔を見れば、先生のおっしゃることはまことにそのとおりでございますが、
予算委員会の
答弁以上に
審議官の私が
答弁できる権限はございません、そう書いてありますね。だから、
答弁はいいです。
答弁はいいから、具体的な問題を聞きます。答えたければ後で答えてもいいんですが、
財政制度審議会が五十九年一月十八日に「中期的
財政運営に関する諸問題についての中間報告」というのを
出しているんです。これは非常に興味のある文章でございまして、その一番後ろに「
国民負担率の推移(対
国民所得比)」というのが別表2でついている。これは読めば読むほどいろいろ我々に教えてくれるものがある。
質問すると言っておりませんでしたが、よく御存じでしょうね。なんでしたら、私のこれを見て
答弁してください。
これを見ますと、
昭和四十七年から五十七年を対比した
数字と、四十八年から五十八年を対比した
数字というのが載っております。私は、オイルショック前の四十七年から五十七年の十年を比べた
数字で物を言わしていただきます。これを見ますと、税の推移は四十七年から五十七年の間に三・八%ふえたんですね。それから
社会保障の
負担は四・八%ふえたんです。十年間に計八・六%ふえたということになっております。これは四十八年から五十八年という
数字をとりましても似たようなもので、計六・九%ふえておりますから、
財政審は、十年間に大体七から八%
国民負担がふえておる、そして現在は三四、五%になっておる、こういうことになるわけですね。
こういう推移を見ますと、ここで言えることは、税
負担よりも著しく
社会保障負担の
負担率の
伸びが速いということを私は指摘せざるを得ないのですね。
そこで、日本型の
国民に
負担を求める道は、
政府にかわって言いますと、
国民に直接抵抗が多い租税
負担率を大きく
増大させるよりは
社会保障負担を
増大させることによって、つまり各種保険料等を
増大させることによって全体としての
国民負担増をふやすのではないか、これが日本的な
国民負担のふやし方ではないかという気がしてならないわけであります。
そこへもってきて、さらに第三の手法があらわれたということを申し上げなければなりません。これは
財政審の報告の中でこういう
表現で言っております。最後のところです。「なお、
国民負担の問題を考えていくに当たって留意しなければならないことは、
歳出の削減を進めていく場合、公共サービスの縮小をもたらすことになるということである。公共サービスの縮小は、行政の責任領域を見直して、
国民が自らの
選択において自ら対処すべきものを、公共サービスの対象からはずすということであり、その結果、
国民それぞれの支出はある程度増えることになる場合もあると思われる。したがって、
国民負担の問題を検討するに当たっては、租税
負担と
社会保障負担を合わせた
国民負担の増と、
歳出削減による公共サービスの縮小との
関係をどう考えるかという観点も含め、
国民に
選択を求めることが必要であると考えられる。」こう書いております。つまり、これは租税
負担と
社会保障負担のほかに国がカバーする領域は減らして、国に対する租税
負担率や
社会保障負担率は減るが、そのかわり
国民が今まで国から受けていたサービスを自分の懐から直接
出して
負担しなければならないものをふやすという
三つがあるということを言っているものにほかならないのですね。
そして、
審議官にまず答えていただいて
竹下大蔵大臣に答えていただきますが、本
年度の、五十九
年度予算編成を見ますと、
国民健康保険法の本人の一割
負担といい、退職者医療
制度の創設といい、
国民健康保険に対する国庫
負担を医療費の四五%から大略三八・五%に減らしたことといい、あるいはまた雇用保険法やまた母子年金ですか、というようなものの
制度の改変といい、ことごとく直接の
国民の
負担をふやすという方向に向いていると言わなければなりません。
ですから、
予算委員会の
質問の中で、ヨーロッパよりは低い水準ということを言いまして——私は本当は経企庁の高官から聞いているのですよ。あなた方は出さないけれども、あなた方のかばんの中には、いいですか、
昭和六十五
年度をめどに
国民の
負担は全体として四〇%にする、今より約五、六%上げるんですね。租税
負担は約二七%にするという
数字があるということを知っておりますが、それはあなたの口からは言えないでしょう。言わなくてもいいです、言いたければ言ってもいいですが。ですけれども、それはそれだけではなしに、その
国民負担にあらわれない別の
意味の
国民の
負担をふやして、その結果そういう
数字にする。ですから、実質の
国民負担は四〇%をはるかに超え、臨調の、名前をちょっとど忘れしましたが、元伊藤忠の副社長、瀬島さんですか、がいみじくもおっしゃった四五%というような、そういう
数字に結局なるのではないか、そういうことを考えているんでしょう。