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1984-04-17 第101回国会 衆議院 大蔵委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年四月十七日(火曜日)     午前十時二分開議  出席委員   委員長 瓦   力君    理事 越智 伊平君 理事 熊川 次男君    理事 中西 啓介君 理事 中村正三郎君    理事 伊藤  茂君 理事 野口 幸一君    理事 坂口  力君 理事 米沢  隆君       熊谷  弘君    小泉純一郎君       笹山 登生君    椎名 素夫君       塩島  大君    田中 秀征君       中川 昭一君    平泉  渉君       平沼 赳夫君    宮下 創平君       村上 茂利君    森  美秀君       山岡 謙蔵君    与謝野 馨君       上田 卓三君    川崎 寛治君       沢田  広君    渋沢 利久君       戸田 菊雄君    堀  昌雄君       坂井 弘一君    柴田  弘君       宮地 正介君    矢追 秀彦君       安倍 基雄君    玉置 一弥君       正森 成二君    簑輪 幸代君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 竹下  登君  出席政府委員         大蔵政務次官  堀之内久男君         大蔵大臣官房総         務審議官    吉田 正輝君         大蔵大臣官房審         議官      水野  勝君         大蔵省主計局次         長       平澤 貞昭君         大蔵省主税局長 梅澤 節男君         大蔵省理財局長 西垣  昭君         大蔵省銀行局長 宮本 保孝君  委員外出席者         農林水産省経済         局国際部国際経         済課長     上野 博史君         林野庁業務部長 田中 恒寿君         日本電信電話公         社総務理事   岩下  健君         参  考  人         (日本銀行副総         裁)      澄田  智君         大蔵委員会調査         室長      矢島錦一郎君     ————————————— 四月十六日  葉たばこ生産確保に関する請願志賀節君紹  介)(第二八二五号)  所得税大幅減税等に関する請願外一件(網岡  雄君紹介)(第二八二六号)  同(大久保直彦紹介)(第二八二七号)  同(近江巳記夫紹介)(第二八二八号)  同(藤田高敏紹介)(第二八二九号)  一兆円以上の大幅減税等に関する請願武藤山  治君紹介)(第二八三〇号)  大幅減税の実現、大型間接税導入反対等に関す  る請願大久保直彦紹介)(第二八三一号)  公立高校用地確保のため筑波移転跡地払い下げ  等に関する請願大久保直彦紹介)(第二八  三二号)  同(島村宜伸紹介)(第二八三三号)  旧南方軍国鉄派遣第四・第五特設鉄道隊軍属の  処遇改善に関する請願山中貞則紹介)(第  二八三四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和五十九年度財政運営に必要な財源確保  を図るための特別措置等に関する法律案(内閣  提出第三号)      ————◇—————
  2. 瓦力

    ○瓦委員長 これより会議を開きます。  昭和五十九年度財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置等に関する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑の申し出がありますので、順次これを許します。川崎寛治君。
  3. 川崎寛治

    川崎委員 百億円国債と言われた高橋財政、そしてまた今日は百兆円国債という大変な時代に入っておるわけでおりますが、私はこの問題を詰めてまいります前に、基本的な姿勢として、これは政府税調の問題でも少し議論したところでございますが、大蔵省というのは、私は魔術師だと思うのです。それは何かといいますと、財政制度審議会の「中期的財政運営に関する諸問題についての中間報告」あるいは「歳出節減合理化の方策に関する報告」、そして「昭和五十九年度予算編成に関する建議」、こういうものは一月十八日に発表になっているわけですね。ところが、大蔵原案は、たしか翌日だったと思いますが、発表になる。私は、これは中立的な審議会というか機関としてのあり方としては大変不思議だと思うのです。  つまり、審議会報告を出した翌日にはもう原案が出てくるということになりますと、これを踏まえた議論ではなくて、並行しておるのです。つまり、予算編成財政制度審議会議論というのは並行しておるわけです。中立的な機関としてのあり方というものとは違うと思うのですね。そうしますと、大蔵大臣はいつこれを諮問し、こういう形になってきたか。本来これは、こういうことであるならば、前の年の暮れに総選挙がございましたけれども審議会は総選挙なり政権そのものと、また中期議論をしますについては、もっと客観的なものであるべきだと思います。としますならば、私は魔術師だと言いましたが、その点についての大蔵大臣見解を伺いたい。
  4. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに昨年の解散前の国会二つのことがあったと思います。  一つは、税制調査会にあらゆる予見を持たないで国会議論等を正確にお伝えし、あるべき姿といいますか、それが中期答申ということになったわけですが、これは出していただいて、そして今度はそれが五十九年度税制に関するもの、こういうことになりますと、これは選挙が終わってから、確かに予算編成作業と結果的に並行して行われてきたと思います。  それから、財政審の問題は、これは解散前の国会で、今後の財政運営あり方について財政制度審議会等議論をしていただこうと思っておりますと。そこでいわゆる借りかえというようなものが許容されるに至る審議というものは確かに、まあ魔術師という言葉が適切であるかどうかは別として、選挙後これが議論が煮詰められていって、予算編成と並行しながらこれが進んできたということは事実であろう、私も結果的に事実であろうと思っております。したがって、基本的な考え方、元来税調のごときは三年に一遍国税、地方税あり方についてという諮問になっておりますから、そういう中期答申とその年度税制あり方とにおいては、少なくとも年度税制あり方ということになると、川崎さんおっしゃるように、まさに並行してこれが進められておったということは否定できないことだと私も認識いたしております。
  5. 川崎寛治

    川崎委員 これは今後、税調なり財政審なりの審議あり方として、その権威を疑われるような、そういう運営にならないように、大蔵大臣の方としても十分配慮してほしい、こういうふうに思います。  今度のこの五十九年度財源確保法というものを見ますと、随分法律として無理をしておる、こういうふうに私は思います。こんな無理をした法律はないのじゃないか。だから、法体系として見ますと、もう大変——法制局も来てもらって議論すべきであったと思いますが、時間の関係もありますからそれはきょうは省いておりますけれども、第一、五十九年度にゼロにできない。そこで今度は、今後の財政再建というものは、公債発行ゼロ、赤字国債発行ゼロと国債の残額の速やかな縮小ということが目標だと思うのでありますけれども、基本法的な法の形になっておるわけです。そして、赤字国債建設国債との違いはどこにあるかといえば、借換債はやりません、現金償還ですということを言い続け、五十年の法律はこれは抜けておりますけれども、五十一年からの特例法は全部、やりません、いけません、こう言ってきたわけですね。そうしますと、その各年度国民に向かって公債政策の信用というか、そういうものを担保するものとしてこれをやってきたわけです。ところが、それを附則でずばりと各年度のものを切ってしまう。だから一方では、基本的な姿勢というものを、基本法的な「努めるものとする。」ということで精神規定を置いておる。そして肝心かなめ公債政策の一番のかなめだ、こうしてきたものについてはそれをずばり切ってしまっておる。私は、法体系として大変無理のある法律だ、こういうふうに思いますが、大蔵大臣、いかがですか。
  6. 竹下登

    竹下国務大臣 これも、御指摘のことをこの法律を出すに当たって我々も部内で一番議論したところでございます。御指摘にありましたとおり、五十年は、現金償還のための借りかえ禁止規定というものはなかったが、あのときの国会議論を受けて、したがって、五十一年からは借りかえによる現金償還ということはしないという禁止規定をあの国会の意向を受けて、また政府としてのいわば財政節度という両面から禁止規定を置いてずっと今日までに至ってきた。そこで、今度もその節度という考え方からすれば、毎年償還するものにつきまして、その借りかえ禁止規定を解除すると申しますか、そういう法体系もあり得はしないかという議論をしてみたわけでございます。  だが、やはり考えてみますと、されば五十九年度、今年発行するこの国債はもとより借りかえ禁止規定をつけないということになりますと、要するに法の体系整合性と、今一つはやはりこれは結局借りかえをせざるを得ないといういわば政策転換だ。政策転換ということになれば、やはり正直にこれはそうして、しかし、節度がなくなってはいかぬから、今精神規定とおっしゃいましたが、訓示規定みたいなものをつけてその節度を守った。だから私は、この問題については、この議論が中心的に我々に対してもなされる問題ではないかということを十分吟味して、ある意味においては覚悟して決断をいたした法律である。法律体系の問題については、私も定かでございませんので、これは事務当局からお答えすることといたさせますが、考え方はそういう経過をたどって、やはりこれは政策転換だということでお願いをすることにしたということであります。
  7. 平澤貞昭

    平澤政府委員 今、委員お話の中で、附則規定の改正を行うのは問題ではないかという点についてでございますけれども、今大臣の御答弁にもございましたように、いわゆる借りかえの問題についての政策的な規定を本則の方で入れておりますので、それと考え方が異なることになる過去の部分につきましては、附則でこれを改正するという考え方附則でやっておるということでございます。
  8. 川崎寛治

    川崎委員 僕の聞いていることと違うあれをしているわけですけれども、細かにそこのところはやりません。  それじゃ大臣特例国債建設国債と、これからどこが違うんですか。
  9. 竹下登

    竹下国務大臣 四条公債四条公債としての性格を持っており、そしてあくまでもそれは四条公債である。したがって、特例公債四条公債じゃないわけですから、概念的な性格の相違としては、いわゆる四条公債というのは言ってみれば資産が残ります。特例公債というのは資産が残りません。概念的にはそういうことでありますが、恐らく川崎委員のおっしゃっているのは、これを借りかえを許したら、まるっきり色のつかない、同じ借金になりはしないかということだと思いますが、それは私どもも形の上では、その御指摘はそのとおりだというふうな感じを持っております。
  10. 川崎寛治

    川崎委員 今までは借換債をやらぬ、そこが違うんだということで言っておりましたね。しかし、例えば鉄建公団などに対する特例公債は、必ずしも資産として残るものでない資金にもなっているわけですね。そこで、先ほど主計局次長は、附則でこれまでのあれを削って、政策転換だ。大臣もそういうふうに政策転換だ。こういうふうに言われたわけですけれども、四十年に建設国債発行して以来、五十年に特例国債、こうなってきましたね。それから五十七年からは、今度は国債整理基金特別会計への定率繰り入れを停止してきましたね。そうしますと、減債制度というのは、去年までいろいろと理屈を言って、減債制度はもう守っていくんだ、このとおりだ、こういうことを言ってきたんだけれども、それも変わるんですか。
  11. 平澤貞昭

    平澤政府委員 過去におきましてたびたび御説明いたしておりますように、国債償還の方法につきましては、一つ定率繰り入れがございます。二つ目剰余金繰り入れがございます。それで不足する場合には一般会計から繰り入れるということになっております。そのいわゆる仕組みにつきましては、今後ともその方式をできるだけ尊重しながらやっていきたい、そういうふうに考えるわけでございますが、たびたび御議論がございましたように、大変厳しい財政事情でございますので、今度お出ししております法案の中では、五十九年度については定率繰り入れは停止したいということで、条文を入れて御審議を願っているということでございます。
  12. 川崎寛治

    川崎委員 私は今、国債のない時代、それから国債が始まってからの三つの変化を申し上げました。今度のこの法律による借換債発行、こういうことになりますと、四番目の国債政策についての変化ということが五十九年度に出てくるわけですね。  そうしますと、先ほど政策転換だ、こう言われた。それで附則で、単年度の歯どめのところは削るんだ、政策転換だ、こう言っている。昭和二十二年、現在の財政法が制定をされた。国債のない財政法時代というのは二十二年から三十九年まで十七年間。国債発行以来、ことし五十九年度、こう見ましても、もう既に財政法そのもの時代を越す時期に入っちゃったわけですね。そこで政策転換だ、こういうことになりますならば、今後借換債というのはずっとやっていかざるを得ないという政策転換の長期の問題に入っていると思うのです。それならば当然これは特例法特例法でいく。本法特例法で変えていくわけですね。つまり、状況変化している、状況変化だからということで、本法特例法で縛って、新たな政策転換をしていっているわけです。これは、財政健全化、そういう面からいいますならばやむを得ないんだということでの転換をずっとしていくわけですけれども、今申し上げましたように、本来の財政法のもとの時期よりも、国債発行以降、そしてさらには特例法、こういうふうになりますと、それの方がもう既に越しておるという時期になったのであるならば、当然これは財政法そのものを見直す時期に来ているんではないか、あるいは見直さざるを得ないのじゃないか。その点はどうですか。
  13. 平澤貞昭

    平澤政府委員 今おっしゃいました委員お話は、財政法四条の考え方なり精神についてのお話だと思いますが、これはやはり財政運営に当たっての基本的な規定であるというふうに我々は考えております。したがいまして、その意味では原点でございますので、その原点に向かって我々としては努力していくということで財政運営を行っているわけでございます。  しかし、御存じのように、財政状況が今大変きついようなわけでございますので、そういう中で努力していっている。その際に特例公債につきましても、まずできるだけ六十五年度までに新規財源債についてはこれをゼロにしていくということで努力いたしますし、その後におきましても特例債残高は減らしていく方向で努力するというふうに、財政運営の「基本的考え方」でお示ししておりますので、その原点に向かって努力していきたいというふうに思っておるわけでございます。
  14. 川崎寛治

    川崎委員 そうしますと、建設国債を初めて出したとき、それから特例公債を出したとき、そして定率繰り入れ停止をやったとき、それぞれ歯どめを言ってきたわけですね。ところが、今全部それが崩れちゃった。しかし財政法原点に向かうのだ、こういうふうに言って、法そのもの政策転換だとさっきは言ったけれども政策転換と言いながら、しかし財政法原点に向かうのだ、こういう言い方で議論が返ってきたわけですね。そうしますと、これまで歯どめだと言ってきたものが全部崩れているわけですけれども政策転換の中で新しい公債政策に対する信頼を得るための歯どめというものは何ですか、大蔵大臣
  15. 平澤貞昭

    平澤政府委員 今後の国債問題につきましての歯どめの問題でございますけれども先ほども申し上げましたように、まず第一段階としては、特例国債依存財政運営からできるだけ早く脱却していきたい、そのためには六十五年度というのが一つ目標になっているということでございます。  第二段階といたしまして、そのような特例公債からの新規財源調達を脱却しました後には、公債残高につきまして、これをできるだけ減らす方向で努力していくということを考えているわけでございます。
  16. 川崎寛治

    川崎委員 それは今までの歯どめ論といったのと全然違うわけですよ。こうしますという目標を言っただけだ。だからそれは精神規定だ、こう言ったら、大臣訓示規定だ、こういうふうに言いました。どっちでもいいのですけれども、じゃあ歯どめは何ですか、こう言ったら、要するにこれらの方向を言っただけでしょう。それは今まで全部崩れてきたわけですよ。全部崩れてきた。崩れてきた中で、しかも大量償還という時代に入るわけですし、これは後ほど円ドル委員会の問題とも関連してお尋ねもしますが、大変流動しておるという中で、じゃあ公債を求めている保有者は、どこにこの公債に対する信頼感を置けばいいのか。つまり、六十五年度赤字特例国債発行をゼロにします、それは目標です、できるかどうかはわかりません、それから先は減らす方に努力します、それが歯どめです、こう言っても信頼するでしょうか。だからそこのところの歯どめは、つまり政策転換をした。政策転換をしたという中における新しい公債政策に対する信頼をかち得るための歯どめは何ですかということを伺っているわけです。
  17. 平澤貞昭

    平澤政府委員 国債国民生活の上で経済的にも、その他いろいろな観点からどういう影響を与えるかということを考えます場合に、やはり一つ考え方GNPの中に占める公債残高、これが一つ考え方の基準になり得るのではないかと考えるわけでございます。その意味で、先ほど第一段階、第二段階と申し上げましたが、特例公債依存体質から財政が脱却しました後におきましては、これは「基本的考え方」でもお示ししておるわけでございますけれども国民総生産に対する国債残高の比率についても極力低くしていく方向で努力していこう、こういうことを申し上げているわけでございまして、そういう方向で我々としても努めていきたいというふうに思っているわけでございます。
  18. 川崎寛治

    川崎委員 わからぬですよね。今までは、五十一年からの、野党が厳しく言って五条の規定による償還のための起債は行わないものとする、こう言って、これが歯どめです、だからきちっと現金償還します、こういうことを約束してきたわけでしょう。ところがこれを、状況が変わりましたから政策転換をします、こう言って附則で外すわけですよね。附則で外すならば、今まで法律で明記をして、保証します、保証しますと言ってきたものを何で保証するのですか。GNPに対する発行の率で保証するのですか。それは何%というのですか。だから率じゃないのでしょう。これは年度によっては五条であったり、あるいは別の書き方の場合もございますけれども、いずれにしましても償還のための起債はやらぬ、だから現金償還しますとずっと誓ってきたわけです。それが変わるわけです。変わるのに対してはどうしますか。そこはやはりはっきりしなければ。この法律政策転換です、こう言う。法律の中の重要なポイントだと私は思うのですよ。しかも今まで申しましたように、幾つかのこれまでの段階を通ってきて、全部これは崩れてきているわけです。崩れてきて、万やむを得ずここで政策転換を、附則で撤廃をしてやりましょう、こう言うのですから、その歯どめは何ですか。
  19. 平澤貞昭

    平澤政府委員 今の御議論の中で個々の国債保有者に対しましては引き続き現金償還をするわけでございます。  そこで問題は、そのための財源をどう調達していくかというところにあるわけでございます。その場合に、現金でこれを調達して現金償還するということになりますと、財政運営の上で、詳しくは申しませんが、いろいろ問題が生じてくるということで、やむを得ず借換債発行して財源を調達し、それを現金保有者償還していくということを今度の法案でお願いしているわけでございます。  そこで、それでは今後そういうような状況でいった場合に償還財源をどうしていくか、いつまでも借りかえでいくのはどうかという御質問かと思いますけれども、それにつきましては、今後、そのときどきの財政事情を総合的に勘案しながら、歳入歳出両面で最大限の努力をしつつ、その中で適切に対処していくという考え方でいかざるを得ないのではないかというふうに思っておるわけでございます。
  20. 川崎寛治

    川崎委員 いずれにしましても、これは従来の建設国債赤字特例公債との違いとしてきたものは崩れてしまった。大臣も認められましたように、その差はもう実際発行の形式からすればなくなった、こういうことになるわけですから、これは国債管理政策として今後のあり方というのが当然問われてこなければならぬだろう、こういうふうに思います。これは後ほどまた追及してまいります。  そこで、先ほど来ましたら、理事会大分円ドル委員会の問題についての新聞発表についていろいろと議論もございましたようですが、現在ワシントンで行われております第三回の円ドル委員会で、中曽根総理の強い指示もあり、アメリカ側の強い要求によって、円の国際化という線に沿ったユーロ円市場自由化を目玉として決着を目指しているのじゃないかというふうに新聞は報道しておるわけでありますけれども前川日銀総裁は、国内自由化促進のためにユーロ円取引自由化をふやすのは順序が逆だ、政策対応としておかしい、こういうふうに指摘をしております。国外で取引される通貨が非常に多くなれば、中央銀行通貨コントロールはそれだけ困難になる、これはどこの中央銀行でも同じだと、こういうふうに大変厳しく批判をしておるわけでありますが、大蔵大臣としての見解を伺いたいと思います。
  21. 竹下登

    竹下国務大臣 日本銀行の大目的といえば、これはいわゆる通貨管理でございますから、一般論としていえば、国内通貨管理がしやすいし、いわゆる国外の円は管理がしにくくなるのじゃないか、これは共通の一つ認識だと思っております。したがって、そこには制度的にはいろいろな歯どめをつけるわけでありますが、原則として今の川崎さんの主張と私ども主張とが変わらない点がございますのは、あれは第二回の会合でいきなりユーロ円という形で出てまいりましたので、あたかもそれがすべてを引っ張っておるという印象を与えておるわけですが、私どもも、本来国内市場がより自由化されると、それとの整合性の中でいわゆる国外円自由化方向をたどっていく、そこに整合性があらねばならぬという考え方は一緒だと思います。私どもも、基本的にはそう思っております。  ただ、向こうからの出方がいきなりユーロ円と、こう出てまいりました。きのうもある討論会、テレビでございましたが、夜遅く参りましたら、やはりユーロ円ということそのものが大体国民に非常になじまない問題じゃないか。むしろ竹下さん、なるほどかつては、いわゆる国際基軸通貨であるドルにしても、米国内に存在するものと、そして米国外といえば、当時は国際的交易の中でヨーロッパだけに集まったから、ヨーロッパにあるドルということでユーロダラーという言葉になった。だが、今やユーロダラーといえば、例えば日本にあるドルも、アメリカからいえばユーロダラー国外ドルだ、だから国外円というふうな表現になすったらどうですかと。これは一つ考え方ですが、一般国際金融市場ユーロダラーとは、米国以外にあるドルと申しましょうか、あるいはユーロ円すなわち日本国外にある円。が、認識としてはユーロ円という言葉になってしまっておる。しかし、本来我が国などは特になじまないじゃないですかと。もっともな議論だと思いました。しかし、実質操作の中で国外円が全部ユーロ円かというと、仮に旅行者が持ち出しておる段階のものはどうかとか、私もそこまで判然と答弁ができませんでしたが、そのどちらかといえば日本一般的にはふなれなユーロ市場というのが最初に出てきましたので、そればかりやっているのじゃないか、こういう印象を与えておると思っておりますが、あくまでも国内の金融市場、資本市場の自由化国際化と並行してやるべきものであるという基本的な考えは、私どもは同じような考えを持っております。  それで、日銀当局が一般論として言われるのは、私もむべなるかなと。それをより把握しやすいようなチェックの仕方とかいうことは、これは私ではお答えする能力の範囲を超えておりますけれども、それに対しては十分慎重な対応をしながらそれに対処していくという考え方で進んでおるわけであります。
  22. 川崎寛治

    川崎委員 しかし、いずれにしてもそういう方向で決着をし、ユーロ円市場自由化が先に進んでいく。同時だと言われておるけれども、実際には先に進む形になるのじゃないか、こう思うのです。そうしますと、ユーロ円残高が増大をしてくる。こういうことになりましたときに、東京市場における国内企業債や非居住者の円建て外債などの起債、そういうものがユーロ円市場ヘシフトしていく、こういうことが当然考えられるわけですね。そうしますと国内資本市場の弱体化であるとか、あるいは特に大量国債という、消化の問題が深刻になってきておるとき、この問題はどうなるかという点について伺いたいと思います。
  23. 宮本保孝

    ○宮本(保)政府委員 御指摘のとおり、国内の市場がユーロ円市場等の影響を受けてかなり自由化が進むということは確かでございます。そのために国内の市場が混乱してはいけませんので、私どもといたしましては、今大臣お答えのとおり、ユーロ円市場だけが早くいくことについて日銀総裁は批判しておられるのだと思いますので、ユーロ円市場の規制の逐次緩和と同時に国内の市場の自由化も進めまして、日本の金融の国際化で、そのユーロ円国内の市場両々相まって着実な意味の対応をしてまいりたいと思っておるわけでございます。  今御指摘のように大量国債発行でございまして、残高が非常にふえておりますし、いや応なく国内の市場の自由化も進んでおるわけでございますので、その際に、私どもといたしましては、自由化のための自由化ではなくて、やはり日本の金融秩序に混乱なくこの自由化を達成させるために、自主的ではあるけれども段階的に対応をしていきたい、こういうことを考えておるわけでございます。
  24. 川崎寛治

    川崎委員 そういう自主的な対応というのを要望しておきたいと思います。  次には、期近債と借換債が非常に増大をしてくる。日銀や運用部以外の所有者には現金償還がなされる。そうすると、日銀や運用部の場合は乗りかえをしていく、こういうことになるわけですけれども国債の再投資、つまり借りかえをしていく、こういうことになりますし、そうなると国債の再投資に償還のかわり金を円滑に向かわしていくためには、市場実勢に応じた国債発行条件というものを決めていかなければいかぬ。今も主計局次長からもお話ございましたが、そういう非常に難しい問題が出てくる。そうしますと、市場のニーズに応じた国債の種類や、発行方式の多様化というものが進められることになると思うのでありますが、金融自由化についての昨年の大蔵省政策でもその点については触れておるわけでありますけれども、今後期近債や借換債の増大というものに対して、今後の政策といいますか、それをどう進めようとしておるのか、伺いたいと思うのです。
  25. 西垣昭

    ○西垣政府委員 今御指摘がありましたように、五十年度から国債の大量発行ということで、それの多くが満期十年でございますので、六十年度以降その大量の国債償還期が参る。それを借りかえなくちゃならない。借りかえるにつきましては、今御指摘がありましたように、満期が参りますので現金償還されて、それが国債へ再投資されるわけでありますから、市場としてはプラス・マイナスそれほど違いがないというような状況でありましても、市場のニーズそれぞれに応じましたいろいろな種類の国債を出していくことが必要ではないかというふうな問題意識を皆さん持っておられるわけでございます。  私どもといたしましても、六十年度以降、そういった国債借りかえ消化、これを円滑に進めていく必要があるということで、去年の秋から学識経験者あるいは市場の専門家、そういった方々にお集まりいただきまして、国債借換問題懇談会というのを設けまして、今勉強しているところでございます。方向といたしましては、円滑に市場に消化されますように、投資家のニーズに合いました国債を出していくということで、多様化につきましても十分研究していきたい。今具体的な方策を持っているわけじゃございませんが、そういった方向で検討したい、こういうふうに考えております。
  26. 川崎寛治

    川崎委員 その懇談会によります借りかえのルールといいますか、それは、この五十九年度までを見通しておったわけですね。そうすると、六十年度以降を今懇談会の方で検討してもらっている、こういうふうに思うのですけれども政策転換だ。先ほども、今度の法律一つの大きな政策転換だ、こう言った。しかし、政策転換のときに、その借りかえのルールについて法律をつくりなさい、法律を制定したら借りかえのルールは懇談会からもらいましょう、出しましょう、それじゃおかしいのじゃないですか、議論は。つまり政策転換だから、転換に伴う借りかえのルールというものをやっぱりここで、つまり五十四年、五十五年の大変落ち込んだときには「当面の国債管理政策について」という発表をして、そのときに対応してきましたね。今大きな政策転換だ、こういうときに、具体的な方向というものを示さないでおいて、それは懇談会の方で御議論願っておるのです、これでは、この法律議論せいということについてはいささか失礼だ、こういうふうに思うのです。だからもう少し懇談会で議論を願っておる方向というものを具体的に示してもらわなければ、要するにここは法律だけを制定すればいいんだ、あとは大蔵省でやります、これでは国会としての議論として、私は大変片手落ちだ、こういうふうに思います。
  27. 西垣昭

    ○西垣政府委員 昨年国債借換問題懇談会をスタートいたしますときは、特例債借りかえはまだ方向が決まっておりませんでした。私どもといたしましては、特例債借りかえ問題を別にいたしましても、建設公債につきましても、六十年度以降の満期償還額が非常にふえてくるということで、五十九年度まで以上に難しい状況になるということで検討を開始したわけでございます。その後、特例公債借りかえ問題が方向がはっきりしてまいりましたので、それにのせまして特例公債借りかえについても、そういう方向になりました場合には十分に対応できるようにということで検討しているところでございます。  五十四年、五十五年の例を出されましたけれども、当時はまだ国債管理についての方針と申しますか理解が十分でなかった。しかもあの時期は非常に市況が悪くなりまして、市中に動揺が見られたというようなこともございまして、ああいった方針というものを公表するというようなことになったわけでございますが、その後は順調にいっているわけでございますし、当局が市場の状況に応じて弾力的に国債管理をやっていくということにつきましての信頼も出てきている、こういうふうに思います。  いずれにしても、六十年度以降の国債、これは新規債もございますが、借換債につきましても、その円滑な借りかえ消化については、市場の実勢を尊重しながら、市中にいかに消化していくかということでやっていくということについてはだれも疑念を持っておりませんし、具体的にどうするかということにつきましては、国債借換問題懇談会の検討を通じまして私どもとしては方向を出していきたい、こういうように考えているわけでございます。
  28. 川崎寛治

    川崎委員 じゃ、もう少し突っ込んで伺いますが、償還期限一年未満の短期国債は応募入札の発行の形式で、これは計画があるんですか。
  29. 西垣昭

    ○西垣政府委員 短期国債の問題につきましては、一つの重要な検討課題ということで検討いたしております。検討いたしておることは事実でございますが、まだ具体的な方法等を考えているわけじゃございません。なぜ重要かと申しますと、例えば大量に償還期が参る国債が、しかも一定の月に集中する、こういうふうな問題がございます。そうしますと、十年国債借りかえでございますから、十年国債借りかえるのが望ましいと思われるわけでございますけれども、そのときの市況の状況によってはそれがなかなか円滑にいかないかもしれない。そういう場合の対応策の一環といたしまして、もっと短期の国債を検討したらどうか。これは一つの御意見でございますし、私どもとしては十分検討したい、こういうふうに考えております。
  30. 川崎寛治

    川崎委員 有利な金融商品としての期近債を組み込んだファンドという考え方もあるようですけれども、これは認めるつもりですか。
  31. 西垣昭

    ○西垣政府委員 今国債につきましては、二年、三年、四年の中期債につきましては、完全に自由な公募で発行条件を決めております。それから五年の割引国債あるいは十年の利付国債につきましては、シンジケート団と、そのときの市況を参考にしながら話し合いで発行条件を決めております。発行されました国債につきましては、これは市場で自由に原則としては流通しているわけでございます。市場に自由に流通している国債を使いまして、いろんな取引の工夫がございます。そういう工夫が行われているということは、これはむしろ私どもではなくて市中の方の工夫なりニーズなりから出てくるわけでございまして、いろんなファンドが出てき得る、自由な流通が確保されている限りはそういったものがこれからも出てくるだろう、そういうことは言えますけれども、私どもが、だからどういうものを想定しているかということはないわけでございます。
  32. 川崎寛治

    川崎委員 期近債の増大が当然国債金利の自由化というものを促進をすると思うのですけれども、預貯金金利に、つまり規制金利に非常に影響を与えることになるのだろう、こういうふうに思いますが、いかがですか。
  33. 宮本保孝

    ○宮本(保)政府委員 おっしゃるとおりでございまして、いわゆるインターナショナルの国際という意味と、それからいわゆるポンドの国債二つの「コクサイ」の与える影響は大変大きいと思っております。
  34. 川崎寛治

    川崎委員 次に、資金運用部の国債引き受けの問題についてお尋ねをしたいと思いますけれども、運用部の五十七年度国債引き受けは三兆七千億だと思いますね。資金量増加の二七%を占めておるのですけれども、五十八年九月の運用部の資金運用を見ますと、政府機関等の貸付金が七十兆八千九百九十四億円。それから長期利付国債が二十三兆九千四百八十六億円。一般並びに特別会計の貸付金というのが十三兆七百五十七億円だ、こう思うのです。市中に回っている分が非常にふえてくる。こうなりますと、日銀並びに運用部の保有といいますか、そういうもののウエートが落ちてくるわけですけれども、やはり資金運用部が国債を引き受けるということが必要ではないだろうか、こういうふうに思うのです。そうしますと、それは当然高度成長時代に非常に伸びた財政投融資、第二の予算と言われます財政投融資で、これは予算委員会でもいろいろと議論がなされてまいっておりますけれども、抜本的なメスを入れて運用部の国債引き受けというものに向けていくことが必要じゃないだろうか、こういうふうに思うのです。いかがですか。
  35. 西垣昭

    ○西垣政府委員 国債の市中消化の中でできるだけ資金運用部の引き受けをふやすべきだ、こういう御議論がございます。殊に国債の市況が悪いときにはそういう議論が強いわけでございます。私どもといたしましては、貴重な財政投融資の原資をいかに効率的に配分するかということで、国債の引き受けのほかに財投機関に対する配分、あるいは地方に対する配分、その三者の配分を気をつけながらやる、最も効率的に使えるようにやる、その中で国債の引き受けについてもできるだけの努力をする、こういうことで来ているわけでございまして、基本的な考え方は先生の今の御指摘と同じでございます。  五十九年度の例を申し上げますと、資金運用部、原資の事情が非常に思うございまして、二千三百億の減少でございます。その中で国債の引き受けは三兆六千億ということで、五十八年度三兆七千億に対しまして千億減っておりますけれども、資金運用部の運用の中の国債のシェアといたしましては、むしろ上げているわけでございます。資金運用部が引き受けている国債のシェアといたしましては、国債の減額がことしは六千億ばかりあったわけでございますが、資金運用部シェア分を落とさないで減額が千億にとどまったということは、むしろ国債に対する配分をふやしている、これが私ども姿勢だというふうにお考えいただいてよろしいかと思います。
  36. 川崎寛治

    川崎委員 国債の種類の多様化ということは当然進めなければならぬし進むだろう、こういうふうに思います。そうしますと、短期、中期債への依存を高めるのがよいのか、あるいは本来からいえば長い方がいいわけですね。だから超長期といいますか二十年物、そういうものがあるわけですけれども、超長期のものが考えられていいのじゃないのか。しかしそれは実際にニーズがあるのかどうかという問題ですけれども、企業年金とか個人年金というものが高齢化社会を迎えて増大をしていく、こういうことになりますと、超長期債に借換債を切りかえていくということも必要ではないか、こういうふうに思うのですが、いかがですか。
  37. 西垣昭

    ○西垣政府委員 要はバランスだと思います。通常の場合には、短期のものの方が利子負担が少なくて済むというのが普通だと思います。そのかわりに常に借りかえの圧力がかかってくる、こういう問題がございまして、私どもといたしましては、財政負担の軽減ということも大事でございますので、利率の低いものというのが一つのポイントでございますし、それから借りかえ負担ということを考えますと、満期構成を短くするわけにはいかないということで、そのときの市場の状況に応じまして長短取りまぜて出していく、こういうことかと思います。  従来の私どもの経験を申しますと、当初十年利付で来ていたわけですが、五年の割引国債さらに三年の利付国債、四年利付国債、二年利付国債、十五年の変動利付の長期債、二十年の固定利付長期債というふうなことで、短い方へも長い方へもいろいろと工夫をいたしまして、そのときのマーケットの状況で円滑に消化ができる、金融への影響等も考えながら財政負担はなるべく安くしていく、しかも満期構成は短くならないように努力をするというふうなことで、いろいろ工夫をしながらやってきているわけでございまして、今のところ、満期構成をそれほど短くしないで何とか消化していく、これからも短期の方向へも長期の方向へもいろいろと工夫してまいりたい、こういうふうに考えております。
  38. 川崎寛治

    川崎委員 国債に抱かれた日本経済、こういうふうに表現をされる事態になっているわけですけれども、大量国債の本格的な借りかえという火種によって金利自由化の山場を迎えるわけで、それは国内においても、さっきの国際においてもそういう状況になるわけですね。そうしますと、規制金利体系下の護送船団方式、こう言われてきておったわけでありますけれども、強い銀行の自由な活動を抑えるという形で、船足の遅い、体質の弱い銀行、弱小金融機関というものを守ろうとしてきたと思うのです。ただ、実際の実態を見ますときには、弱小金融機関というのは、大きな強い銀行で借りられない、そういう弱い基盤の人たちでもあるわけなんです。そうしますと、弱小金融機関の再編整理というものがいや応なしに促進されると思うのですけれども、そういう劣悪な条件の中で弱小金融機関に依存をしておる、そういう需要者をどう守っていくのか、この点は大変難しい問題だと思うのですが、いかがですか。
  39. 宮本保孝

    ○宮本(保)政府委員 自由化によって金融の効率化を図り、それによって国民に良好な金融サービスを提供するということは、基本論としてはそのとおりでございまして、私ども自由化を今進めておるところでございますが、また一方で、今御指摘のような、それぞれ金融制度が持っております本質的な機能というものがあるわけでございまして、今の中小金融機関等におきましても、これはそれなりにいろいろな取引先、特に日本の経済をしょって立っているところの中小、弱小零細企業あるいは個人信用等々について大変重要な役割を持っているわけでございます。その点につきましては、混乱を起こさせては大変でございますので、やはり自由化、効率化を進める一方でその金融秩序は守っていくということじゃないかと思うのでございます。ただ、先ほどユーロ円の方の自由化を進めて、国内の方の自由化も漸次進めていくというふうなことは申し上げましたが、ちょうど大銀行の方の自由化も進めると同時に、一方で中小金融機関の方の自由化が進みませんと、これはまた混乱しますので、やはり中小金融機関の方の自由化も進めていかなければいかぬ、それから大銀行の方の自由化の速度は余り急いではいかせないというようなことで、バランスをとりながらその行政を進めていくのがいいのではないかというふうに思っておるわけでございます。
  40. 川崎寛治

    川崎委員 その意味においては五十九年、六十年という年は大変なそういう荒波の年だと思いますから、バランスのとれた、そういう施策を要望しておきたい、こういうふうに思います。  ところで、大量国債時代の中で政策転換先ほど来繰り返し追及しておるわけでありますけれども財政再建のプログラムは正直言って明示されてないと思うのです。財政収支の仮定計算というのはプログラムではないわけですね。こうなった、こうなりますというだけの予測にすぎぬわけですから。そうしますと、インフしか増税か、こういうことが大変大きな不安としてあるわけです。冒頭申しましたように、財政再建目標が、財政の体質を改善する、それで国債依存度を減らしていく、こういうことになるわけですね。社会党は、国債依存率を計画的に下げていこう、こういうことで、五年で二〇%にする、それから十五年で一〇%に下げていく、こういう長期の政策を提示をしておるわけであります。そうしますと、いわゆる政策転換に当たってそうした財政再建目標を明記していく必要があると思いますね。  財政制度審議会あるいは政府税調、こういうものを見ますと、要するに財政制度審議会というのは削る方ですね、削る方を出しておるわけです。それから政府税調の方は取る方、税を集める方をしきりに議論をしておるわけです。それで、諸外国と比較をしてみまして、財政の赤字というものに悩んできたことについてはちっとも変わらぬと思うのでありますけれども財政制度審議会報告にも書かれておりますように、その国債依存度というものは諸外国の方がより早く低めておる、減少させておるわけです。そうしますと、そうした財政の再建ということについては歳出、歳入両方合わせた、つまり両方を見る財政再建委員会というふうなものが今こそ必要ではないだろうか、こう思います。  私は、政府税調の問題で税の議論をしましたときに、要するに租税負担の問題と社会保障負担の問題について、これから高齢化社会に向かう中で出てくるでしょう。しかし、それをどこが調整するかということについては、実はないわけですね。政府税調と社会保障制度審議会というもののあり方の違いを私は指摘をして、これはひとつ長期の議論でいたしましょう、こういうことを申し上げたと思うのです。この歳入と歳出の問題につきましても、そうした財政再建目標というものをきちっとして、仮定計算じゃなくて、国債依存度をこうして下げていきます、そういう財政再建委員会が必要じゃないだろうか、こう思うのですが、いかがですか。
  41. 竹下登

    竹下国務大臣 例えば税調がありまして、言葉は適切でございませんが、これを税制臨調というようなものでもっと基本的な議論をしたらどうだ、こういう意見がございます。しかし、それは結論から申しますと、税調というのはたまたま大蔵大臣の諮問機関ではなく内閣の諮問機関でございますので、これは屋上屋を重ねることになりはしないか。現実どういうことで機能しておるかというと、そのときどきに応ずる特別部会とかいうことで機能をしております。一方財政審におきましても、御案内のように、部会でございましたか小委員会でございましたかちょっと忘れましたが、いわゆる借りかえせざるを得ない、やむを得ざるものと思うというに至るまで長らく議論をしていただいた。そうして一方に今度は臨時行政調査会、これはまさに臨時でございますけれども、これがございまして、これは各般の行政改革の中で、財政再建そのもの目標に置いたものではございません。もっと全体的なものでございますけれども、そういう臨調でもろもろの指摘をいただいておる、こういうことになるわけであります。したがって、より高度な、財政再建プログラムとか財政改革の手順とか、そういうものを議論するための、言ってみればもう一つ総合的な諮問機関というようなものが必要ではないか。この議論は、いみじくも川崎先生がおっしゃったように、一つの長い目で見た議論としてはあり得る議論だと私は思うわけであります。  しかしながら、今日まで考えてみますと、五十九年赤字公債脱却ということを今歯どめとおっしゃいましたが、そういう政策目標一つあり、一方に借りかえはしないという、これも歯どめでありましたが、それがいわばしないという歯どめは訓示規定精神規定になっていって、五十九年は六十五年度に、言ってみれば努力目標として延期された。したがって、いわば歯どめとか、たがが非常に緩んできて、国民はそれなりの信頼感を持ち続けることが徐々にできなくなるではないか。こういうことからして、財政再建プログラム等をつくるためのそのようなものがあったらいいじゃないか、この議論はあり得る議論だと私は思いますが、私どもといたしましては、やはり当面財政審税調等々の議論をいただきながら、最終的には国民のコンセンサスがどこにあるかを見定めつつ、この国会という議論の場がありますから、それでもって議論を重ねながら、政策の最終的な選択判断は内閣一体の責任においてこれをやっていかなければならぬ、こういう方向でこれに対応していこう、こういう考え方になっておるわけであります。  それと、川崎さんと私ども議論とで多少距離のございますのは、いつもの議論でございますが、もっと定量的な、あるいはきちんきちんとある種の期間を切ったスケジュールというものをつくるべきじゃないかという考え、我々は事ほどさように国際経済社会が混乱する今日、むしろそうしたものをつくった場合に、それがいつも見通しが外れて政治不信を増幅する結果にもなるじゃないか、やはり財政民主主義あるいは予算の単年度主義からして、その都度都度の財政事情国民のニーズを勘案しながらそれに対応していくんだ、こういう考え方を申し述べておるわけでありますが、その辺の、ちょっと開きがあるというのは、これは考え方として、開きがあるのもまた事実そういうものであろうという事実認識に立ちながら、結局国会議論等を通じ、この議論を少しでも縮めていくことによってその方途を模策し、政策選択は最終的には政府の責任でやっていこう、こういう考え方でありますので、わかり切ったようなお話をいたしましたが、お答えにかえさせていただきます。
  42. 川崎寛治

    川崎委員 つまり、五十九年のときにはゼロにすると割に明確にしたけれども、六十五年の場合には少し自信のない方向へ来ているわけです、難しいと。来年は、六十年度予算編成については緊縮ということで、同じだ、こういう方向大蔵省は出してきておるわけです。ところが、要するに財政再建政策国民信頼を置いていない、だから歳出の方は確実に削られてきているわけです。ところが歳入の方が全部落ち込んできている。それは見通しの誤りであると同時に、政策への信頼度の問題だ、だから臨調的な発想というものに国民がついているのだろうか、こういう疑問もあるわけですね。そうしますと、マイナスシーリングでいいのかということになりますが、防衛費や経済協力やエネルギーという特別枠を設けながらのマイナスシーリングの形でまたいくということになりますと、結局同じことを繰り返している、こういうことになるのですが、六十年度予算編成についてどうするおつもりなのか、お伺いいたします。
  43. 竹下登

    竹下国務大臣 予算が成立いたしました翌日の閣議において私から発言させていただきまして、諸般の事情からすれば、まさになお険しきものこれあり、したがってこれから節減その他、六十年度予算に向かっての厳しい財政事情にあるということを認識していただいて、各省そのところどころに従って内なる改革に努めてもらいたい、が、さてそれならば、マイナスシーリングでどれぐらいにするかということは今しばらく勉強させてくださいということがたまたま今の現状でございます。最終的には、これは負担するのも国民、受益者また国民でございますから、したがってそのコンセンサスが那辺にあるかということを見きわめていかなければならない問題であります。したがって、国会におけるこのような議論を通じながら、政策選択の方向を決めていかなければならぬ課題だというふうに考えておりますが、削減にいたしましてもかなり厳しいものがあろうと私も想像しておりますし、そして景気がいささか回復基調にあるとはいえ、今のところ直ちに実質経済成長四・一%を上方修正するというところまで、もとより年度が始まったばかりでございますから来ておりません。したがって、来年度のいわゆる自然増収がどの程度見込めるかということについても定かな目標は立っておりません。  ただ私ども、五十六年、五十七年はまさに意図せざる国際同時不況というものがあったと思います。したがって、五十七年度におきましては、ささやかながら五十八年分の減税財源に充てるだけの剰余金を生じたわけでありますが、なおその上に三千億円ばかり国債を、発行を予定しておったものを発行しなくて済んだということがございました。したがって、五十八年度におきましても税収がだんだん詰まってまいりますけれども国民信頼を裏切らないように、一%以下は誤差のうちというのも何か学問的定義があってつけた言葉ではございませんけれども、先般若干の減額補正をさせていただいておる税収についても、少なくとも誤差のうちと申しますか、プラスであろうとマイナスであろうと誤差のうちにおさまるような経済運営そのものをしてきたつもりではございますが、なお正確な数字はまだない。いずれにしても歳入歳出両面にわたって国民の理解と協力を得ながら、そのあるべきコンセンサスの方向を、国会の論議等を通じて今後検討してまいることではなかろうかというふうに考えております。
  44. 川崎寛治

    川崎委員 電電公社の岩下総務理事さん、大変長いことお待たせをして、大変恐縮でした。  電電公社と専売は、両方とも相次いで御用金を召し上げられようとしているわけです。きょうは電電公社の方からおいでいただいておりますけれども、制度を改革しようという前に、飲んだくれのおやじが非常に稼ぎのいい息子から、新しく変わろう、新しい旅立ちをしようとしておるのだけれどもひとつ出せということで召し取ろうとしておるわけでありますが、電電公社の場合に、五十六−五十八年で四千八百億、そうしますと、利子を加えて八千二百億くらいになるのだろうと思うのですけれども、そうした大変な負担をかけるということは、新しい制度が発足をするについては私は大変な後遺症が残る、こういうふうに思います。そう思いますので、電電公社としてのそういう考え方について伺いたいと思います。
  45. 岩下健

    ○岩下説明員 お答えいたします。  五十九年度予算編成の過程におきまして、政府は国の財政再建のため、特にいわゆる税外収入の確保という観点から、五十九年度限りの措置として、電電公社から臨時国庫納付金二千億を納付するという措置を決定されたわけでございます。私どもとしましては、もちろんこういった措置は、独立採算制という建前あるいは現実に財務への影響、さらには、これは非常に大事な問題でありますが、職員の勤労意欲への影響、こういった点を考えますと、いろいろ問題が多うございます。決して好ましいものとは考えておらなかったわけでありますが、片方で国の財政再建という喫緊の、いわば国家的な重要課題だという点から、政府関係機関としての立場におきまして、やむを得ないということで判断をしたわけでございます。  御審議いただいておりますこの法律案にもございますように、納付の方法といたしましては、従来のものと変わりまして、五十九年度納付のものにつきましては、五十八年度の予定利益の中から五十九年度において支払うということでございます。しかしながら、五十八年度におきまして、予算で予定しました黒字以上のものが確保できる見通しは確実ではございますけれども、資金的に見ました場合に、私どもでは五十八年度において一兆六千百億円の設備投資を行っております。内部資金をもって足らざるところは外部の借り入れを予定をしておったわけでありますが、こういう予算を上回る増収あるいはまた支出を下回る節約、こういったものから出てきましたいわば黒字の増加分に対する見合い資金は、すべて予定した外部資金つまり借り入れを自己資金に置きかえる、利子のつかない金で設備をするということによりまして財務の健全化の努力をしているところでございます。したがいまして、五十八年度の予定利益から納付をすると申しましても、資金的には五十九年度において借り入れをもってこの資金手当てを行うということを予定しておるわけでございます。  なお、先ほど申し上げましたようなこういった影響を極力小さくするために、収支面におきます増収あるいは節約あるいは投資の効率化といった努力につきまして、職員の理解と協力を得ながら最大限の経営努力を重ねてまいりたい、かように思っております。
  46. 川崎寛治

    川崎委員 お聞きのとおり、大変重い負担が残るわけですね。それで職員の協力を得ながら、こういうことでございますが、としますならば、政府関係機関の労働者に対する有額回答というものが出されると思うのでありますけれども財政当局がいつも抑えてきたわけです。しかし、今のお話のように、新しい旅立ちをしようとする中でなおかつ大変な努力をし、負担をあえてしておるわけです。専売も同じですね。そうしますと、この有額回答に対しては当然仲裁にも持ち込まれるでありましょうが、ことしは完全実施を目指して取り組む、こういう政労交渉になっておるわけでありますけれども財政当局として、この問題については、ことしは当然完全実施で明確に直ちに処置するということであるべきだと思うのです。大蔵大臣見解を伺いたいと思います。
  47. 竹下登

    竹下国務大臣 川崎委員のおっしゃるいわゆる四千八百億ちょうだいした上に二千億ちょうだいしたわけですね。それから、それは職員の協力があったからこそである、そういう認識は私も全く等しくいたしておるところであります。ただ、労使交渉でございまして、今恐らくかなり微妙と申しましょうか、現実に労使双方でお話し合いの最中であろうというふうに聞いておりますので、専売は担当ということになりますけれども、なかんずく国庫大臣としての全体の立場からすれば、今自主交渉をしていらっしゃるさなか、私から予見めいたものを申し上げることはできないことではないか。ただ、川崎委員の御指摘になっておる環境とか心情とか、それは私どもも十分理解のできるところでありますが、今行われております、まさに自主的交渉についてのコメントは、立場上やはり差し控えるべきではないか、そのように考えております。
  48. 川崎寛治

    川崎委員 自主交渉の最中ですから、そういうことで、出された後の問題になると思いますけれども、そういう方向で努力してほしい、こういうふうに思いますし、また、それは年度末手当でも大変努力をされたわけでありますが、差別をつけないということで当然処置をされるべきだ、こういうふうに要望しておきたいと思います。  農林省、大変お待たせして恐縮でした。電電公社は結構です。岩下さん、どうも恐縮でした。  ハワイで協議が始まっておると思うのでありますけれども、私は、牛肉とオレンジの交渉については、ここではもう触れません。私は、日本一の畜産県ですから、大変たくさんの問題を持っておりますけれども、触れません。ところが、この十三品目の中にあります例えばでん粉、これもまた鹿児島と北海道なんです。しかも牛肉も鹿児島と北海道。北海道は特に乳雄があるわけです。しかも、これは公共投資等でも今議論になっておりますように、地域のばらつきというのがいろいろと出ておるわけです。そうしますと、でん粉などは地域の農業政策の柱なんです。十三品目は当然牛肉、オレンジと一緒に決着かな、こう思っておりましたが、大変もめたために外れたんだろうと思うのですけれども、ハワイで協議をされておるわけであります。当然そうした地域の農業政策の柱であるという立場を踏まえて交渉に当たるべきである、こう思いますし、打撃を与えないように措置をすべきだ。それからまた妥結がどういう方向に行くのか、これからの交渉の方向、それからガットとの関係、そういうものについて伺いたいと思います。
  49. 上野博史

    ○上野説明員 お答え申し上げます。  先般の山村農林水産大臣とブロック通商代表とのお話し合いでは、十三品目についてのお話し合いは行われておりません。ただ、両閣僚のお話し合いの中で、十三品目につきましては今月中に解決を図るべく、事務レベルで集中的なお話し合いをしようということは申し合わされております。  先ほどハワイでのお話が出ましたが、私どもの部長がハワイの方に参りまして、たまたま休暇で参っております通商代表部のネルソン代表補と、今後の話し合いの段取り等について、ごく下ごしらえ的な意味合いの話し合いを行っております。これは今申されましたような本格的な話し合いというものでございませんで、今後の段取り等が今回の話し合いでつきますれば、それによりまして今月中に本格的なお話し合いをするというようなことになろうかと思っております。  十三品目につきましては、先生おっしゃいましたように、地域、地域にとって大変関心の深い品目でございまして、私どももその辺は十分心得て、当衆議院の農林水産委員会の一昨年四月の決議でございますとか、あるいは本年一月に行われております申し入れ、こういうようなものにのっとりまして、農業者が犠牲にならないように最善を尽くしてお話し合いをしたい、かように考えている次第でございます。
  50. 川崎寛治

    川崎委員 その決着を見たら、ガットとの問題はどういうふうに見通しておるわけですか。
  51. 上野博史

    ○上野説明員 お答えを申し上げます。  これは日米双方のそれぞれ要求なり考え方があってお話し合いをするわけでございますので、結論を今私どもがどうこうというふうに申し上げることもできないわけでございますが、私どもとしてはできるだけ円満な解決を図るべく努力をいたしたい、かように考えております。
  52. 川崎寛治

    川崎委員 解決を図れば、そのガットとの関係は提訴を取り下げというのか、そういうことになるのですか。
  53. 上野博史

    ○上野説明員 ガットの協議は、アメリカが我が国に対して要求をして行っているわけでございまして、この協議の結果、その後の話をどういうふうにするかということは、これは専らアメリカ側の判断でございます。したがいまして、私どもといたしましては円満な解決に努めたいというふうに思っておりますけれども、その結果、私どもといたしましても、先生先ほどお話しございましたようないろいろ厳しい事情がございますので、私どもの言い分も十分アメリカ側に伝え、事情を理解をしてもらうということで、ガットにもいかないで済むような解決になっていくことを期待をしておるということでございます。
  54. 川崎寛治

    川崎委員 じゃ、終わります。
  55. 瓦力

    ○瓦委員長 渋沢利久君。(発言する者あり)  ちょっと速記を待ってください。     〔速記中止〕
  56. 瓦力

    ○瓦委員長 速記を始めてください。  暫時休憩いたします。      ————◇—————     午前十一時三十七分休憩     午後四時三十分開議
  57. 瓦力

    ○瓦委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、お諮りいたします。  ただいま議題となっております本案について、本日、参考人として日本銀行副総裁澄田智君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  58. 瓦力

    ○瓦委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  59. 瓦力

    ○瓦委員長 質疑を続行いたします。柴田弘君。
  60. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 きょうは日銀副総裁、大変にお忙しい中、参考人として御出席をいただきまして、本当にありがとうございました。  御案内のように、財確法の審議にきょう入りまして、それにつきまして、いろいろと関連をいたしまして御質問をさせていただきたい、こう思っております。  その前に、大蔵大臣がお見えになっておりませんので、政務次官に一点だけお聞きをしていきたいと思います。  この財政再建、今中曽根総理は、あるいは大蔵大臣は、財政再建という言葉を使わずに財政改革というような言葉を使っていらっしゃる。私はあえてこれを財政再建と申し上げたいわけでありますが、この財政再建につきまして、三木内閣以来、福田、大平、鈴木と、それぞれ赤字国債脱却を目標にしてまいりました。特に、鈴木内閣におきましては、五十九年度赤字国債脱却を、これは公約をしている。政治生命をかけた。また今回、「経済社会の展望と指針」に従って、中曽根内閣は、六十五年度赤字国債脱却を努力目標、これはトーンが落ちてきたわけでありますね。六十五年度のことはわかりませんが、恐らくこれも無理じゃないかなというふうに思います。いずれにいたしましても、三木内閣以来、歴代四内閣が赤字国債の脱却をそれぞれ目標にし、あるいは政治生命をかけたけれども、御承知のとおり財政再建はならなかった。  しかもまだ今回、財政事情の悪化という理由はあるにせよ、赤字国債借りかえについて政策転換を図る。これはもう、大蔵大臣がおっしゃっている。あるいはまた、不公平税制の是正の見直しのために最たるものであると言われておりましたグリーンカード制度も、三年間凍結をされている。それで年間約二千億の税収不足ということも、これはあるわけであります。それからまた、今回の財確法によって、五十八年度限りでと言われておりました電電公社の臨時国庫納付金、これも、五十八年度限りと言っておって五十九年度にもまた出てきておる。しかも、増税は行わないと言っておりながら、物品税あるいは酒税の大増税を行われた。つまり、こういった財政再建に対して一つ一つ歯どめをずっとなくされてきておる。これでは、財政再建に対する国民信頼というものをより一層失っていくのではないか。もう既に、本当にこの財政再建というのはできるのか、今国民の中からそういった声が出てまいりまして、財政再建をしなければならぬという国民のコンセンサスはあるにしても、本当にできるのか、またそれが政治に対する国民の不信というものをますます助長をしておる、こういうふうに私は思うわけであります。  それで、今回のこの赤字国債借りかえ、この政策転換というものについての責任というのを、まず政府の一員としてどうお考えになっているのか、それに対してその責任をどのような方法でとっていかれるのか、対処していかれるのか、まずこの点をお伺いをしていきたい、このように思います。
  61. 堀之内久男

    ○堀之内政府委員 ただいま先生から御指摘ありました件は、政府・与党十分これは反省もいたしておるところでございますが、最初五十九年度赤字特例公債の脱却を目標に掲げておりましたが、御案内のとおり、第二次オイルショックという予期せぬ事態が起こりまして、したがって、当時五十四年から五十七年にかけての名目成長平均一〇・七というものが、実質は六・六という大変な低成長に終わってしまいまして、期待したような税収がなかったわけでございます。したがって五十九年度の赤字特例脱却というのは、残念ながらこれを実現することができなかった次第でございます。  その後の歳入歳出等を比較いたしましても、何としてもこの際借換債をお願いいたしておりますのは、特にこれを行わないということになりますと、極端な歳出カットなりあるいは極端な国民負担の増をお願いしなければならない、こういう事態になってまいりましたので、今回借換債を行うことでお願いをいたしておる次第でございますが、さらに今後財政再建と申しますか財政改革を行うに当たっては、何としてもまずこの特例公債の脱却を図る、すなわち昭和六十五年度までに何としてでもこの特例公債の脱却を図ることを大きな目標にし、またそのような形で今後歳出のカットを徐々に行いながら努力をし、さらに歳入の確保を図っていく、その上で、六十五年度特例公債の脱却を図った段階で、今後のこうした累積する国債償還と申しますか、国債の縮減に最善の努力を持っていくという目標を立てておるわけでございます。  しかしまた、この間におきましてもなるべく国債の縮減を図る、こういう努力を今後とも続けていくという訓示規定というか、今後とも政府としてはそれを大きな目標に掲げて努力したいと思っておるわけであります。したがって、公約違反と言われれば全くそのとおりでございまして、最善の努力をいたしたところでございますが、やむを得なかった処置でございますので、御理解を賜りたいと思うのでございます。
  62. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 このあとについては大蔵大臣がお見えになりましてからいろいろ質問いたしたいと思います。  言いたいことは、少なくとも鈴木内閣のときは政治生命をかけられた。今度は、今政務次官から御答弁いただいたように努力目標である。それから、本当に六十五年度赤字国債を脱却をするというなら、そしてまた大型間接税の導入はしないというなら、少なくとも六十五年度までの中期的な財政再建の手順と方途、プログラムというものを提出しなければ、国民のコンセンサスは得られませんよ。これは後で質問いたします。  日銀副総裁、どうもお待たせいたしました。  今のような御説明でございまして、それで、御承知のように昭和四十一年に建設国債発行され、その後赤字国債発行されて今日に至っている。そしてまた国債整理基金への定率繰り入れも今停止をされている。六十年度も恐らくまた停止をされるのではないかというふうに私は思っておるわけでございます。それから、今回のこの赤字国債借りかえ、だんだん財政再建に対する歯どめというものを今政府大蔵省は外してきているわけであります。そして、これはもう予算委員会でも前川総裁が御出席になって、たとえ一年未満の国債でも借りかえについての日銀の引き受けはしない、こういうふうにおっしゃったということは、マスコミ報道等で私も知っているわけでありますが、今ここでちょっと私も歯どめをさしていただきたいと思いますね。  それで、やはり一番魅力があるのは、要するに消化の問題あるいは低金利という問題から、私は政府のねらっているのは日銀引き受けた、こう思います。今御質問いたしますと、ねらっていないと言うかもしれません。だから、これの日銀引き受けの問題については、短期国債も私は恐らくこれは発行される、こう思いますが、もうしないと、歯どめをひとつきちっとかけていただきたい、こういうふうに思っております。この点どうでしょうか。
  63. 澄田智

    ○澄田参考人 国債の日銀引き受けによる発行につきましては、申し上げるまでもなく、財政法第五条でこれが禁止されているところでございまして、この趣旨はいかなる事態においても変えてはならないことであると思います。日本銀行といたしましては、たとえどのような事態でありましても、日銀引き受けによる国債発行に応ずる考え方は全く持っておりません。また、日銀引き受けによる国債発行というものは、一たびそういう道が開かれますと、これは通貨の供給量が直ちに膨張するということで、インフレにつながる危険が全く大きいわけでございます。この点につきましては、新聞の例えば論調等にあらわれておりますように、最近一層理解が深まっておりまして、およそいかなる場合においてもそういうことは行うべきでないという考え方一般に広まってきていると思います。政府ももちろん、そういうふうな点については承知をしておられるわけでございまして、私どもといたしましても、今後そのような要請と申しますか、あるいは、率直な言い方をすればそういった圧力とでも申しましょうか、そういうものが現実に起こってくるということも想定をいたしておりません。しかし、仮にそういうことがございましても、絶対にその引き受けをいたす考えはございません。
  64. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 それで、先ほど来申しておりますように、私はこの借りかえには反対であるわけでありますが、現実の問題として、もし法律が通れば、これは大量の赤字国債発行、それで借りかえが行われる。それで、もちろんできるだけ借りかえをしないように、あるいはまた減債に努めるといういわゆる規定はありますが、これはあくまで努力規定です。私は、財政法上こういった努力規定を設ける——禁止規定というのはこれはわかりますが、努力規定というのは、今回の法律、どうも解せないわけでありまして、この法律上これは本当にどの程度までこの努力規定が守られるかということも、僕は疑わしいわけであります。  これは一つの意見として申し上げているのです。しかし、現実の問題として大量の国債発行借りかえが行われる。そうしますと、国債管理政策の新しい確立という問題がここで一つ出てくるわけてあります。それで、もちろん実勢化の問題、国債商品の多様化の問題あるいは発行方式の多様化の問題、こういったいろいろな問題があるわけでありますが、ここでどうも大蔵省が考えているのは、いわゆる期間一年未満の短期国債発行であるというふうに私は思います。これは、やっぱり消化の点からいいましても、あるいは一時的な資金のつなぎの問題からいいましても……。現実に将来の借りかえのあれを見てまいりましても、例えば昭和六十三年の五月二十日には三兆六千億、これを償還しなければならない。これはやっぱり短期国債でつないで、それで一時的な資金繰りもしていかなければならない。これは、やっぱり運用の対象としても国民のニーズに合っている、こういうふうに私自身も思ってはおるわけでありますが、この短期国債発行の問題、この市場の創設という問題について、ひとつ中立的な立場に立って御見解をお聞かせいただきたい。  それから、総論的にいわゆるこの国債管理政策の確立という問題。今私は、実勢化の問題とか商品の多様化の問題、発行方式の多様化の問題ということを申しました。やっぱりそういった問題についても御意見もあろうか、こう思いますが、その辺についてあわせてひとつ御参考の御意見を承っておきたいと思います。
  65. 澄田智

    ○澄田参考人 今御指摘の短期国債、これは歳入としての短期国債でございますが、これが発行されることになるであろうということでお話がございましたが、まだ私ども政府から具体的なその点についての話を聞いておりませんので、現段階におきましては、いわば一般論として申し上げますが、短期国債一年未満というようなことで考えますと、これはやはり国債償還借りかえの時期が集中しているというような、先ほど例示をされましたが、そういうことに対する対策という意味を含めて国債発行あるいは消化、それの多様化、そういうふうな考え方で対応するわけでございますが、預貯金等の既存の商品との競合という問題も、同時にこの場合にはあるわけであります。そういうようなことで、急激な資金のシフトが起こりますと、これはやはり金融市場にある程度の混乱が考えられるというような問題が考えられるわけでございます。  一方におきまして、借換債というのは、申すまでもなくその借りかえられる旧債、もとの国債があるわけでありまして、それの償還金がそのときに支払われるわけであります。したがいまして、金融市場の資金の全体の量ということから参りますとプラス・マイナス・ゼロになる、ネットはゼロになる、こういう性格でございまして、新規に市場で国債を消化する、したがってそれだけの資金が新しく国債によって吸収される、そういう問題とは違うわけでございます。ただ個別的に考えますと、その償還金が支払われる、すなわち旧債をそのときまで持っておった所有者が、必ずしもその借換債を引き受けることになるとは限らないわけであります。そこで、その意味においては資金が移動し、資金の総量はプラス・マイナス・ゼロであっても資金の間の移動がある、こういう問題がある。そういう意味においては、新規債の発行と同じような金融に対する影響というものもあるわけであります。そういう面において、先ほど申しましたように、短期であれば、それと期間の同じような預貯金との競合というような問題にもなるわけでございます。  以上のような前提で考えまして、現実問題として借りかえの問題が今後六十年以降において大きい問題になってくる場合には、基本は新規債と借換債とあわせて、国債発行総額をいかにして円滑にこなしていくか。そのためには、やはり基本としては財政改革の推進を通じまして、新発債の削減の方を図っていくということが基本であろうと思います。そして今後ともその総量をできるだけ圧縮していく、その努力は常にやっていかなければならない、こういうふうに考えるわけでございます。次には、やはり発行条件につきまして、その期間の問題はもちろんでありますが、表面金利とか、あるいは発行価格とか、そういった発行の態様、条件につきまして市中の実勢に合わせていく、市中の需給がうまくマッチするような、そういう発行に努めていく、こういうことになるのではないかというふうに考える次第でございます。
  66. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 まことに中立的といいますか、常識的な御意見をいただきました。  それで、今度は発行方式の多様化、商品の多様化という問題で、いろいろと検討をされてはおるのかどうかわかりませんが、一つは郵便局の国債の窓口販売の問題、それからもう一つは貯蓄国債発行の問題。これはちょっと難しい問題かもしれませんが、御答弁できる範囲内で結構でございますので、この二点について……。
  67. 澄田智

    ○澄田参考人 これも、現実のそういった問題について日本銀行の立場で検討をしているということでございませんので、一般的な問題として申し上げさせていただきますが、郵便局を通じて国債を消化をするというようなことは、やはり郵便貯金による運用という問題とも非常に密接な関係がございます。それから、金融機関の窓口を通じて国債を販売するという、いわゆる窓販と言われるものが開始されてきておるわけでございますが、そういうものとの関係等もあるわけでございます。貯蓄国債につきましては、やはりこれはその国債に対する税の扱い、それからこの場合もどういう機関を通じて販売するか、こういうような問題等の態様によって非常に問題が変わってくる面があるのではないかというふうに思います。  一般論としては、既に金融機関及び証券会社を通じての国債販売の窓口というものが非常に大きくなっておりますことでございますし、郵便局を通じてこれを販売するというようなことがその上に必要かどうか、それからその国債の額面等も余りに小口化することはどうであろうかとか、そういうような点をあわせて考えないと、一概にメリット、デメリットというふうには申し上げられない問題ではないか、かように思います。
  68. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 大体わかりました。  それでもう一つ、こういうふうに大量の国債発行、それからまた金融の国際化二つのコクサイ化。新聞紙上等でも我々見ておるわけでありますが、我が国の金融自由化というものはいよいよ本物になってきておる。これは今までは金融制度調査会でもいろいろ議論をされてきたと私も理解をしております。それで、この金融の自由化の中で、やはり金利の自由化というのが一つの大きな焦点であろう、私はこう思います。この中で、いろいろな意見があるわけでありますが、一つの障害になるのは郵便貯金、残高八十三兆円ということであります。この問題があると思います。中には、郵便貯金というのは保護しなければならない、こういう御意見もあります。これはもっともだというふうにも私も思います。また一面においては、郵貯の定額貯金というものを見直して、これは官は民を補完するものである、肥大化を防がなければならぬという意見もあるし、あるいはまた金利の問題からいえば市場金利を優先して、郵貯金利というのはあくまでこれに追従をしていくルールというものを、今ここで確立をすべきではないかという御意見があることもよく承知をいたしております。さまざまな意見があるわけでありますが、この金融の自由化、そして一つの大きな焦点である金利の自由化の中で、この郵便貯金というものは果たして現実にどのように対応していったらいいのか、やはりこれこそ国民経済的な視点に立って議論をしなければならぬと私は思います。だから、そういった観点に立ちまして、ひとつ忌憚のない御意見をここでお伺いをしていきたいと思います。
  69. 澄田智

    ○澄田参考人 金融の自由化、その中で金利の自由化というのが大きな中心でございますが、その自由化というものが国民経済的にも避けて通れないところである、そういうふうに私ども認識をいたしております。そうしてこれが避けて通れないという前提で考えてまいります場合に、大口預金の自由化を進めるというのがその場合の当面の一つ方向であろうと思います。しかし大口だけでなくて小口預金ということになって、その自由化ということになってまいりますと、おっしゃるように、どうしても郵便貯金との関係というものがその場合に非常に問題になってくるわけでございます。  その場合に、私どもとしては、金利自由化を進めていくに当たっては郵貯金利がやはり民間金利と整合性を持って、それを基準に決定されるという体制ができることが非常に重要であると思っております。なぜかと申しますと、郵貯はやはり非営利の官業でございまして、もしそういう官業としての郵便貯金が独自の立場で金利を決めるということになりますと、これはどうしても、民間金融期間の金利が自由化されて、自由化の結果市場の需給によって決まっていく、そういう市場の需給というものとは異質なものとなってしまうのではないか、こういうふうに考えるわけであります。また、現在シェアから見ましても、個人預貯金の中で郵貯が極めて高いシェアを持っているわけでございます。これが独自の立場で金利を決めるということになりますと、郵貯がどうしても金利というプライスのリーダーになってしまう。こういうことになりまして、民間がその水準に従わざるを得ないということになるわけでありまして、こういう形におきましては、これは需給によって価格が決まっていくという意味の金利の自由化というものが実現できない、それの大きな障害になってしまう、こういうことであろうと思います。  したがいまして、郵便貯金金利が民間の金利を基準といたしまして、それと均衡を保って決定される、そういう意味の金利決定の、一元化という言葉はややいろんな意味にとられますが、そういうことがあって初めて小口預金の金利の自由化というものが進む前提ができるんではないか、こういうふうに考えるわけでございます。
  70. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 せっかくの機会ですので、副総裁、あと一問だけひとつお許しいただきたいのです。  御承知のように、先ほどちょっと質問いたしましたように、いよいよ金融の自由化というのは我が国にとって避けて通れない。金利の自由化、今一元化というお話もあったわけですが、それで日米円ドル委員会ですか、きょうもテレビでやっていましたが、ワシントンで開かれています。新聞等にもすっぱ抜かれていろいろ書かれておるわけです。それが本当であるのかどうかであるか。中には本当のこともあるだろうし、あるいはまた憶測で書かれたこともあるだろう。いろいろあると思うのですね。それはともかくとして、やはり中立である日銀の立場からして、いわゆる金融の自由化というものにはどう取り組んでいったらいいのか。いわゆるそのプロセスといいますか、その手順と方途といいますか、そういったものの何か考えをお持ちになっているのではないか、私はこんなふうに思います。端的で結構でございます。どうかひとつその辺の考えをお聞かせをいただきまして、副総裁への質問を終わりたいと思います。
  71. 澄田智

    ○澄田参考人 目下開かれておりますいわゆる円ドル委員会で金融の自由化というものが一つの大きな課題となっているわけでございますが、そういった日米間の交渉を通じて、それによって自由化が進められるということは、これは日本国内の今までの金融の歴史とか現在の金融制度、そういうものを離れてアメリカ側の要請によって決まっていくということであってはならない、日米委員会による交渉がそういう形で進められていくものであってはならない、こういうふうに私どもも考えます。やはり金融というのは、その国の経済の基本として、そしてそれぞれ独自の今までの発達を持ってきているわけでございますから、したがって、そういう金融というものが直ちにアメリカと全く同じやり方、同じ仕組み、同じルールでということにはならないわけであると思います。そういう意味で、相互主義というような考え方がそういうことで言われているとすれば、これはやはり間違ったことであろうと思います。  ただ、日本の金融制度が、もし現在の日本経済の大きさ、資金の国際的な自由な移動、あるいは円が国際的に広く使われる、こういう点からいって、いろんな面で支障がある、余りに閉鎖的である、硬直的であるということであれば、これはやはり改善をしていかなければならない。そういう意味におきまして積極的に取り組んでいく。先ほど、内外の情勢からいって避けて通れない、そういうことであると申しましたが、そういうものであるとすれば、これに積極的に取り組んでいくということがあくまで必要でありまして、自主的に、そして積極的にこれに取り組んでいくことが問題であろうと思います。  その場合に、金利の自由化とそれから金融機関の業務等の問題という面があるわけでございまして、金利の自由化で言えば、先ほどもちょっとお話の出ましたように、大口、小口の預金金利の自由化というようなものはどうしても今後進んでいかなければならない、そういうところであろうと思います。それから、金利の自由化を進めますと、やはりどうしても金融機関の業務の自由化というものもこれに伴っていかなければならない、こういうふうに考えている次第でございます。
  72. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 副総裁、どうもいろいろありがとうございました。これで結構でございますので、お帰りいただきます。どうもありがとうございました。  それで、大蔵大臣がまだお見えになっていませんので、国債管理政策につきまして大蔵省にいろいろお聞きしたいと思います。  今、短期国債について副総裁から御意見を承ったわけであります。私はやはりどうしてもこの短期国債というのは新しく発行せざるを得ぬというふうに考えておるわけであります。もちろん、午前中御答弁がありましたように、今借換問題懇談会ですか、そこでいろいろと議論をしておる、こういうことであるわけでありますが、それはそれとしてよくわかります。しかし、私は、少なくとも今回この赤字国債借りかえを認めてもらいたいという法律を提案する以上は、やはり国債管理政策というものはこういうふうにやっていきますよというものもあわせて提案をすべきじゃないかという気がしてならないわけであります。法律が通ってから決める、こういうことかもしれませんが、やはり両方あわせて提案をして、そういった考え方でおるのかという、これは国民の立場に立てはそういう理解ももらえるのではないか、こういうふうに正直に言いまして思っておるわけなんです。  端的に聞きますが、国債管理政策の上から、この期間一年未満の短期国債、これはもうどうしても発行せざるを得ぬ、このように思います。また、それ以外に何かいい方法があるのかどうか、一遍教えていただきたいと思います。どうでしょうか。
  73. 西垣昭

    ○西垣政府委員 短期国債は午前中も申しましたように、私どもにとりましては重要な検討課題でございますが、私どもといたしましては、六十年度以降大量の借換債、それに加えて新規債につきましても、まだしばらくは相当の量の発行が予想されるわけでございまして、これをいかに円滑に国民経済の中で消化していくかということが、真のねらいというか目的でございます。そのためには、先ほど来申しておられますように、市場が必要とする、あるいは投資家が必要とするようないろいろな国債の多様化あるいは発行上の工夫、それをやっていく必要があると思います。その一環として、私どもは短期国債についても重要な検討課題としてこれから取り組んでいきたい。具体的には、けさ申し上げましたが、学識経験者や市場関係者にお集まりいただきまして、国債借換問題懇談会を開きまして今検討中でございます。  で、国債管理の方針をはっきりさせろということでございますが、私どもといたしましては、市場の状況によりまして弾力的に対応していく。ねらいは財政負担の軽減を図りながら、負担がふえないようにということも考えながら、しかも円滑に消化をしていくということで、そのときそのときの状況に応じて国債管理に誤りなきを期していく、そのためにはいろいろと多様化も研究しなくちゃならない、こういうふうに考えております。で、今直ちにこういう基本方針で行くというふうなことをお示しするのは、むしろ適当ではないんじゃないかな、こういうふうに思っております。
  74. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 短期国債発行は重要な検討課題であるということでございまして、やはり発行する場合、国債整理基金ですね、これはもし決まれば国債整理基金の特別会計。そうしますと、この特別会計法ではやはりこの短期国債発行に対する明文がないわけである。やはり同一年度内に償還される短期国債発行については、恐らくまだこれはできない、認めてない、私はこういうふうに特別会計法を理解しているわけであります。やはり法改正というものが伴ってくると思いますね、先の話かもしれませんが。そこら辺の法律の取り扱いについてお聞かせをいただきたいと思うわけであります。
  75. 平澤貞昭

    平澤政府委員 今問題になっております短期債のうち、年度を超えるものにつきましては、現在の特会法の中で発行が可能ではないかと考えられるわけでございますけれども年度内に償還されるものについては解釈上問題があるのではないかというふうに考えられるわけでございます。(柴田委員「法改正」と呼ぶ)したがいまして、仮にそういう短期債を発行するということになれば、法律改正も検討しなければならないのではないかというふうに思うわけでございます。
  76. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 もう一つだけ聞きましょう。  国債の多様化の問題、このシ団引き受け、十年物の長期国債ですね、六年とか七年とかあるいはまた十五年とか、こういうことについてはどうでしょう。それから中期国債、割引国債、この多様化、例えば十年の割引国債の創設の問題、これはいかがでしょうか。
  77. 西垣昭

    ○西垣政府委員 先ほども申しましたように、市場に受け入れられるような、逆に言えば投資家の方から魅力があるような国債発行していくということが必要だと思っております。そういった意味で、従来も十年利付国債のほかに五年の割引債とか二年、三年、四年の利付国債あるいは十五年の変動利付国債、二十年の固定利付国債と、いろいろ工夫してまいっているわけでございまして、私どもはそういったニーズがあれば多様化をこれからも進めていきたい、こういうふうに思っております。しかし、今例示として挙げられたものをどうするかということは、これは検討してみたい、そういったものをつくることによってより大量に、円滑に消化が図れるのか、今までのものとの競合というようなことでむしろ円滑にいかなくなるおそれがあるのかどうか、あるいは金融市場に及ぼす影響はどうであろうかといったような問題につきましてはよく検討しなければならない、こういうように思っております。方向といたしましては、私どもといたしましては多様化の方向で検討してまいりたいというふうに考えております。
  78. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 大臣の出席、五時十分ごろというふうに聞きました。今十五分ですが、どうなりますか。
  79. 瓦力

    ○瓦委員長 ちょっと速記をとめてください。     〔速記中止〕
  80. 瓦力

    ○瓦委員長 速記を始めてください。  柴田弘君。
  81. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 もう一つ聞きましょう。  これは政務次官でもいいですが、減債制度の問題で、要するに国債整理基金への定率繰り入れ、これはもう五十九年度で三年連続停止をされておる。どうもこのまま行けばだんだん国債整理基金が枯渇をする、六十年度になればこれがより一層払底をしてくるだろう、こう思います。  四十一年十二月の財政制度審議会報告、これは御承知のように国債政策に対する国民の理解と信頼あるいは償還財源を先取りすることによる財政の膨張、国債の累増に対する間接的な歯どめ、あるいはまた財政負担の平準化、資金の効率的な活用による国債の市場価格の維持、要約いたしますとこういったことで、やはりこの制度があったわけであります。しかし、実質上は崩壊をしていると言っても決して言い過ぎじゃない、こう思いますね。六十年度どうですか。再開をされますか、どうでしょうか。
  82. 平澤貞昭

    平澤政府委員 定率繰り入れの制度は、現行の総合減債制度の基本的な仕組みでございますので、この仕組みは引き続き維持していきたいというふうに考えているわけでございます。財政制度審議会の御答申におきましても、これは五十九年一月十八日に出ておりますが、同様の趣旨を述べておるわけでございます。  そこで、六十年度以降の取り扱いについてはということでございますけれども、この問題につきましては、そのときどきの財政状況あるいは国債整理基金の資金繰りの状況等を考慮する必要がございますので、先ほど申し上げましたような現行の減債制度の仕組みを維持するという基本的な考え方の中で、この問題についても引き続き考えてまいりたいということでございます。
  83. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 大臣、どうも御苦労さまです。  それで、今回の財確法、赤字国債借りかえ禁止規定削除、もちろん努力規定はあるわけでありますけれども、やはり財政再建に対する一つの歯どめが失われた、私はこういうふうに思います。それから、今まで三木内閣以来の財政再建、つまりそれぞれの内閣におきまして赤字国債脱却を目標にしている。あるいは、鈴木内閣は五十九年度赤字国債脱却を、これはもう政治生命をかける、公約になっております、政府公約。ところがこれはできなかった。中曽根内閣も六十五年度赤字国債脱却を、これは努力目標にトーンダウンしているわけです。本当に六十五年度赤字国債脱却できるか、極めて疑わしい。過去の歴代内閣の財政再建が崩壊をしたという実例がありますからね。  あるいはまた、先ほど申しましたように赤字国債借りかえ、これは行わないと絶えず竹下大蔵大臣も本委員会において昨年までは明言をされておった。ところが今回いとも簡単に政策転換という一言によってこれが葬り去られようとしているわけであります。それからグリーンカードの問題がある、それから電電公社の臨時国庫納付金、これは五十八年度限りと言いながら五十九年度もまた出てきたわけですね。それから増税の問題。増税は行いませんよと選挙公約をされながら酒税、物品税、法人税等々大増税を行われる。  つまり、こういった状況は、一つ一つ国民の目から見れば、やはり財政再建に対する、いわゆる政府に対しての不信感というものを助長する以外の何物でもない。政治に対する、特に財政再建に対する不信感というものが今ほうはいとして出てきておる、こういうふうに思います。遺憾ながらという言葉大臣しばしば使っておみえになります。その辺のところはわからぬでもないわけでありますが、やはり国民の目から見たいわゆる財政再建政府の責任ということについて、どういうふうに大臣としてお考えになっているのか、どう対処されようとしているのか。責任と対応、この二点についてお伺いをしていきたいわけであります。
  84. 竹下登

    竹下国務大臣 まずいわゆる財政再建財政改革、いずれでも結構ですが、それに対して政府はたびたび方針を変更するから政治に対する不信感が出ておるではないか、私もそのことを否定するものではありません。なかんずく五十九年赤字公債脱却ということをギブアップをお願いしなければならなかったということに対しては、まさに五十六年、七年のあの世界同時不況という、言ってみれば不可抗力という言葉はおかしいのでございますが、日本独自での対応でもってこれを克服するだけの環境にはなかった。より厳しい環境にあった。そこでこれをいわば断念せざるを得なかった、こういうことであります。  しかしながら、いずれにしても、国民選挙等々を通じながら、とにかく今たまたま政権を持っておる自由民主党・新自由クラブの連合内閣というものに対して一応の審判を下したということになれば、その状態の中でやはり果たすべき責任を果たさなければならぬ。したがって、努力目標として掲げております六十五年に、まずは国民の理解を得ながら赤字公債の脱却をしていこう。そうして、いささかイージーなことになりますけれども、とはいっても既発債は今日までの日本国民の貯蓄力に支えられておるものであって、これから特に新発債というものを、より貯蓄の伸びというものを対象に求めていくわけでありますから、それをまず減らすということを第一段階にしよう。そして第二段階としては、対GNP比幾らが適当かということも、これからの議論を通じて明らかにするところでございますが、少なくとも公債残高全体を減していく努力をしようという考え方をとったわけであります。  よく言われるのには、一つは調整インフレ政策ということも言われるでありましょう。あるいは負担増という問題も言われるでありましょうが、調整インフレなどというのは、私ども、言ってみれば大正二けたなどは、あの戦争直後のまさに不可抗力の状態の中から、それを割に平易に認める癖がある。それだけにむしろ警戒しなければならぬ。やはりインフレなき持続的成長ということを目指して経済政策の基本もそこにあらねばならぬということで、国民の皆さん方の理解を得ながら、結局国会議論等を通じて国民の皆様方の歳入、歳出両面からのコンセンサスがどこにあるかということを見定めていこうという姿勢で立ち至っておるわけであります。  したがって、やはりそのときどきの政治情勢の中で政権を担当していく者は、行政執行の上においてその責任を果たしていかなければならぬし、さらに手順の問題は、今日財政改革の進め方について、本院に対しても考え方を明らかにしていろいろ御議論をいただいておることでありますが、一つだけ、恐らくは今の御議論の背景の中には、よりリジッドなとでも申しましょうか、定量的なものをも含めた再建計画というようなものが出るだけの努力をすべきであるという御趣旨も、考え方の底意にはあろうかと思うのでありますが、なかなか今日、世界全体の経済が不透明な状態にありますときに、経済全体の中の一部である財政で極めて定量的なものを議論をした場合、またそれが崩れた場合に、政治不信というものをより増幅する結果にもなりはしないか。だから、結局は国会の問答等を通じながら、国民のコンセンサスがどこにあるかを模索し、そしてそれを政策選択の指針にしていくということでありましょう。  それで、確かに去年も、借りかえなどはいたしませんと申しておりまして、おたくの党の正木さんからも一遍怒られましたが、しかし、もう借りかえするしかないじゃないか、だからおれは借りかえしたとまでは、そこまで心臓強く言うつもりはございませんけれども、そういう意見が出るのも、国民のコンセンサスの動向を探る問答の中に出てきた政策選択の一つ方向であるというふうにも御理解をいただいて、どんどん御議論をして我々に対して御忠告を賜りたい、こういう姿勢であります。
  85. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 大臣、六十五年度赤字国債脱却は努力目標だとおっしゃる。このままの調子で行って本当に脱却できるか、私は極めて難しいと思いますね。それから、「増税なき財政再建」を貫いていく、大型間接税は導入をしない、こういうふうにおっしゃっておるならば、少なくとも六十五年度ぐらいまでに至る財政再建への手順と方途、プログラムはある程度のところまでは出していかなければならぬ、これが財政再建に対する国民信頼をかち取る一つの方法でもあるのではないか、こういうふうに思っておるわけであります。それが政治の責任ではないかと私は思います。確かに定量的なものは、もしそこでまたそうならなかったら、それに対する不信感が大きい、こうおっしゃいますけれども、少なくともこういう方法でやりますよ、こういうことをおっしゃっておれば、そういったものに対するきちっとした裏づけになるようなものが必要じゃないか。こういうことで、私は毎年のようにこういうことを質問しているわけであります。その辺が一つ。  それからもう一つ国債依存度の問題も今大臣からお話がありましたが、五十四年十二月の財政制度審議会においては一けた、一〇%未満というのが国債依存度ということで言われておりました。これは一般会計の歳入に占める国債発行。それで、最近の大蔵省考え方は、今もありましたように、GNPを分母として国債残高、いわゆる国債依存度でも、本当にやはり五十四年の財政審一つの指標というものがあったわけです。それはいつの間にやら外されてしまった。ただ、今言っているのは、財政改革についても、あるいは「展望と指針」においても、国債残高を減らしていこう、あるいはまた極力赤字国債から脱却していこう、こういうようなことが言われておるわけであって、では、国債依存度をどうしていくか、あるいはGNPに対する国債残高をどこまで抑えていくのか、そういった一つのメルクマールがあるかといえば、これは全然ない、あくまで精神規定的なものではないか、こう私は思うのであります。その辺、どうでしょうか。
  86. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる我が国の歳入に占める国債の比率、国債依存度というものは、考えてみますと、確かに、従来から一けた、一〇%以下なら許容できるかというように国会議論等でもなされておりますし、それが今日徐々に徐々に上がってきておることは事実でございます。  それからいま一つ、いわゆる対GNP比という問題で申しておりますのは、各国ともに、とかく公債残高については対GNP比でその数値を求めておる傾向がございますので、残高の問題についてはそれも一つの指標として大事にしなければならぬ。しかし、それも、今現実にどれぐらいが好ましいか、そして六十五年にはどういう形になるのか、そしてさらには七十五年にはどういう形になるのかということをまだ御提示できる段階になく、私どもとしては今年度予算を御審議いただくに当たって、「中期展望」と、それに伴いますところの各種仮定を置いた「仮定計算例」というものを御参考にして今日までに至っておるというのが偽らざる現状でございます。だから、そうした議論というものも、この国会の問答を通じながら、毎年の予算編成に当たって、結果としてそういうものをある種の「中期展望」につなげて、やはり逐次これが定性的なものから定量に近いものに移行していくという方向はとらなければならぬ課題ではないかというふうには考えております。
  87. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 そうしますと、国債への依存度、それからもう一つは今のGNPに対する国債発行残高、それはそれなりのメルクマール、一つの指標をどれだけにするかというものを出す努力、定量的なものへの努力は一生懸命やっていただける、こういう理解でいいわけなのですか、その辺のところを伺いたい。
  88. 竹下登

    竹下国務大臣 とはいえ、その定量的なものは、実際問題として早急に「中期展望」の中で出していくというのはなかなか難しい課題だと思います。したがって、予算の単年度主義の中で、その単年度、単年度ごとに積み重ねていくわけでございますけれども、定性的なものから、そのときどきの財政事情においていわゆる変化があるものの、定量的なものを議論し、見通せるような方向に近づいていく努力はしていかなければならぬ課題だと思っております。
  89. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 それで、この「財政中期展望」と「仮定計算例」、これは一生懸命大蔵省としても大臣としても出されたと思いますが、「中期展望」というのは現行制度というものを前提としてのものなんですね。六十二年度まで試算をされている。それから「仮定計算例」は、歳出の伸び率〇%、三%、五%、この三つを想定されて六十五年度まで出されている。とにかく両方とも、赤字国債借りかえるとか借りかえない、この二つのケースがあるわけですが、これを見て絶望的な感に襲われるのは私一人じゃない。要するに、黒字のケースは、可能性の全くない、歳出の伸び率ゼロの場合です。これは仮定計算です。絶望的な試算を国会にもあるいは国民にも突きつけられた、こういうことですね。これは私は、昨年来ずっと事あるごとに質問してきたわけでありますが、昨年の夏に「経済社会の展望と指針」を出された。そこでは六十五年度までに赤字国債脱却ということが一つ目標にされた。やはり国民はそれに至る手順  と方途、プログラムというものを、今回の「中期展望」にしても、財政の収支試算にしても、何らか本当に中身のあるものが出てくることを期待をしておったわけです。少なくともこれは、私は「増税なき財政再建」というものを試算したとは言えない、こう思います。一つの仮定を置いてコンピューターにインプットしてぱっと出たのじゃないでしょうか。これはそんなふうに思うわけであります。  大臣はどうおっしゃっているかと言えば、要調整額をどうするかというのはまさしく国民の選択の問題である、国会でも議論していただきたい、こう言っておるわけであります。そうおっしゃるのですが、大臣のおっしゃる選択というのは、何もなくて、白紙のままの選択をせよ、こういうふうにおっしゃっているようにしか私にはとれないわけであります。だから、制度、施策の根源にまでさかのぼった、いわゆる歳出のカットをやると大臣はおっしゃっています。あるいは歳入面においても見直しを行う、「増税なき財政再建」を貫いて大型間接税の導入はしない、そうおっしゃっているが、真に聞きたいのは、歳出の限界は一体どこにあるか、あるいは大型間接税を導入しないなら、歳入面の見直しというのは一体具体的にどこなのか。やはり少なくとも財政再建の手順と方途について国民の前に提示するのが本来の行き方である。それでこそ国民の前に、本当に財政再建をしなければならぬという、いわゆる財政再建に対する信頼が与えられる。むしろその方が、大蔵大臣としても大蔵省としても財政再建をやりやすい、また国会議論も本当に的を射た、正鵠を射た議論が出てくる、私はこういうふうに思うわけであります。今のままでは、来年どうするか、再来年どうするか。再来年のところまではまだ行きません。来年どうするかという方針も決まってない。本当に、一体何を一つの指標として我々は財政再建を論ずればいいか。僕は、本当に大蔵省は不親切だと思いますよ。どうですか。
  90. 竹下登

    竹下国務大臣 今柴田さんのおっしゃったと同じ意見が、ニュアンスに多少の差はあれ、昨年の十二月に出されました臨時行政改革推進審議会の「財政再建の具体的な手順と方策についての考え方を早急に国民に提示すべきである。」という提言であるわけですね。  そこで、それを受けたのがいわゆる中期展望をもって財政運営を考えていくことが必要である。それで「財政改革を進めるに当たっての基本的考え方」と「財政中期展望」とをお示しして、それに、極めて機械的手法ではございますが「仮定計算例」をあわせて審議に供した、こういうことになるわけであります。したがって、それは手順を模索するための一つの趣旨に沿ったものであるというふうに考えております。したがって、そのことはむしろ、政府サイドだけから御提示するべきものでなく、この委員会あるいは個人的にも、例えば成長率をこう見た計算をしてみるとか、これまた一つの仮定計算でございますけれども、そういうものに基づいて議論が行われるようになった、それだけの、素材を提供した効果はあったというふうに私はこれを理解しておるところであります。したがって、具体的には歳出、歳入両面を通じて、どのような施策の組み合わせによって財政改革を進めるかということの参考になったという考え方から、国会等の議論を通じて幅広い議論をしていただきながら、その中にまさに国民のコンセンサスはどこにあるかということをおのずから模索し、政策選択の基礎にしようということで議論しているわけですから、大蔵省も精いっぱいのものを考えてお出しした。ただ、事ここにまで至っていろいろな指標を見れば、経済全体はそれは世界の一等賞でございましょう。しかし、財政は、少なくとも公債依存度等からいえば、先進国の中でもいい方じゃない。少なくとも公債依存度という点から見ればいい方じゃないということも事実でございます。  したがってむしろ、なるほど受益者も国民、そして負担するのも国民という視点に立った場合、国民次元でそれを代表する国会等で議論していただくことが、今後の財政改革の方途を進めていくための土俵として、これが一番いい土俵じゃないか。それが今日このように不毛の議論じゃなく、将来物すごい実を結ぶであろう可能性のある議論を繰り返しておるというのが現状じゃないかなと思っておるわけであります。ある意味においては、このような形で進めます、国民の皆さん方これについてきてくださいと言うことの方があるいは親切じゃないかという感じも、私はいたしておるわけであります。
  91. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 どうも私はよくわかりません。  それで端的に一遍大蔵省事務当局に聞きたいのですが、このままの状態で行って財政再建ができましょうか。抜本的な対策を立てる必要はないのか。大蔵省のお役人の目から見てどうでしょうか。
  92. 平澤貞昭

    平澤政府委員 今大臣の御答弁にございましたように、歳入歳出両面にわたって、もうあらゆる努力をしていく必要がある。これは必死にやっていかなければできない、そのように思っております。
  93. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 歳入歳出、必死に努力するというなら、じゃ歳入面は具体的にどういう努力をするのか。歳出面は徹底的にカットしていくということですが、じゃ福祉、教育の水準というのは一体どうなるか、ここに一遍出してもらいたい。
  94. 平澤貞昭

    平澤政府委員 今御質問のいずれの問題につきましても、今後六十年度予算編成するに当たりまして、我々としてはいろいろな角度から……(柴田(弘)委員 「どういう角度ですか。どんな角度ですか。それを具体的に教えてもらいたい」と呼ぶ)具体的にとおっしゃいますと、一つ一つやはり検討していかないと答えは出てこないと思います。(柴田(弘)委員「何を」と呼ぶ)おのおのの費目ごとにどういう点を合理化あるいは縮減できるかという点を検討する必要もございますし、それから歳入面にわたっても、いろいろな角度から一つ一つ検討をさらに加えていくという必要があろうかと思います。     〔委員長退席、中西(啓)委員長代理着席〕
  95. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 じゃ、そのあと聞きますけれども大臣先ほど議論の続きで、来年の六十年度予算審議がまた来ると思いますね。それで今、定量的というお話があったわけでありますが、また来年度のいわゆる財政再建への一つの指標、メルクマール、あるいは国会審議、あるいはまた国民の理解と納得を得るための財政再建への取り組み、そういったものは今の「中期展望」あるいはまたことし出された財政の「仮定計算例」、これぐらいしか来年は出ませんか。定量的に云々というお話があったのですが、そんな程度ですか、どうでしょうか。  というのは、大臣もよく知ってみえるわけですね。五十五年の予算審議のときに、私も大蔵委員会あるいは予算委員会でもいろいろ質問しました。あのときはやはりそういったものでなくて、何か一つ財政再建への計画というものを出そうという意欲が、僕はあの当時は大臣にもあったし、大蔵省にもあったように理解しておったのですね。それからずっとここ数年たちまして、やはり難しいかもしれませんが、どうもその辺のところが後退をしてきた感がせぬでもない。だから申し上げるわけなんです。その辺もひとつ心に置いていただいて、来年の六十年度のそういったものへの取り組みというのはどう考えていらっしゃるか、お聞かせいただきたいわけであります。
  96. 竹下登

    竹下国務大臣 五十五年当時の予算審議の際にお出ししました展望とか指針とか、今の仮定計算のようなものとか、それを考えますと、少なくとも要調整額というようなものがその当時見通された次の年よりもかなり切り込まれた状態となってこの予算編成されてきた。ただ、それが五十六年、五十七年のいわば国際的同時不況の中でまさに対応力を失ったという状態になったわけであります。したがって、今いみじくもおっしゃったように、五十五年のときは、例えば「初めに一兆円の減額ありき」、こういうような構えでありましたが、今度は結果としてこれだけの減額をいたしました。それだけの、受ける印象からする意気込みと申しますか、それは恐らく後退してきたではないかという印象もなきにしもあらずだというふうに私は思います。  ただ、考えてみますと、あの五十五年度予算編成というのは、まず予算編成に対するシーリングが対前年度比に対して一〇%プラスの範囲内で概算要求をしろ、こういうことだったわけであります。それが五十六年にプラス七・五%となり、ゼロ%となり、マイナス五%となり、マイナス一〇%となっておるわけでございますから、その中にあって、国会の論議等を踏まえて制度、施策の根本にもさかのぼってきただけに、これだけのことが一応できてきたではないかというふうに考えるわけであります。したがって、まず六十年度予算編成に当たってのスタートとしては、いわゆる概算要求からこれをやっていかなければならぬということになりますと、ことしも厳しいシーリングを置かざるを得ないということを閣議で御発言を申し上げましたものの、具体的にはいましばし時間をちょうだいして、お互い勉強したいということに発言もとどめてあるわけであります。  やはりこの際、歳入歳出両面にわたって施策、制度の根幹にさかのぼりながら、あるいは国、地方あるいはそれこそ企業、個人、その辺のいわば政策の分野調整等をもまた念頭に置きながら対応していかなければならない課題ではないか、こういうふうに私どもは事実認識を合いたしておるところであります。
  97. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 あと歳入と歳出の問題についてちょっと具体的にお聞きしておきますけれども、租税負担率は二四・二%、社会保障負担が一〇・八%で合計三五%。これは欧米諸国よりも低い。五〇%以下、四〇%台前半ですね。  大臣も御承知のように、パーキンソンという人がいらっしゃいます。この人は、課税の最低基準は国民所得比で二〇%までだ、三五%になると自由と安定性が悪化し、やがて破滅的な結果を招く、こういうふうに警告をしているわけであります。やっぱり活力維持という問題あるいは負担の水準という問題から、四〇%前半というのは、これは臨調答申が言っているとか、どうのこうのということかもしれませんが、私はこれは一つの何か科学的な根拠というものがそこになければいかぬのではないか、こういうふうに思っておるわけなんですね。その辺はどうでしょうか。臨調が言っているからそのぐらいを目指すのか、何か一つここで、そういった根拠というものがあるのかどうか、一遍お聞かせをいただきたいわけです。
  98. 竹下登

    竹下国務大臣 これは非常に難しい問題でございますが、租税負担率というのも、いわば結果において生ずるものでございましょう。が、しかし、およそ租税負担率と社会保険負担とを足した国民負担率というものが、今日ヨーロッパのそれよりはかなり下回るところということを臨調も指摘されております。そのかなりとは何ぼだということは、いわば理論的根拠の中でこれを追求していくということはなかなか難しい問題だ。それは終局的には受益者も国民、負担する方も国民でありますから、国民の方で受益の限界はここまで、されば負担のおのずから出てくる数値はここまで、こういうことが出るでありましょうから、最終的にはやっぱり国民の合意と選択の問題ではないか。したがって、あらかじめ、例えば今おっしゃいました三九とかあるいは四五とか、そういうのが先進国並みの負担水準の限界であるとかいうことはなかなか難しいのではなかろうか。また、事実国民負担がかなり高率にあって、そして行政サービスが、あるいは他の国等に比較した場合に、これが過大であった場合、別の意味におけるひずみを生じてきておるということもございますので、やはりそのときどきの経済、財政事情等を勘案しつつ、最終的には国民の合意と選択の問題に帰するというのが結論ではなかろうかというふうに私は考えております。  ただ当面、少なくともヨーロッパのそれをかなり下回るという認識は、いつでも持っていなければならない認識ではなかろうかというふうに考えます。
  99. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 それで、今の負担の問題で、厚生大臣が参議院の予算委員会で、四十年後の昭和百年、えらい先の話ですが、社会保障負担というのは、年金負担と医療保険負担を合わせると大体一六・七%になる、こう言っておりますね。ところが、この租税負担というのは今二四・二で、先回も主税局長がここで答弁しておりましたが、六十五年度は二四・七。これはもう既に四〇%台を突破するわけであります。そうしますと、歳入の見直しを徹底的にやる、こういうお話であります。大型間接税は導入しないかもしれませんが、恐らく増税ということが出てくるであろう。それから減税の問題でも、これは余り簡単にはやられない、こう思います。そうすると、やっぱり租税負担率というものは、社会保障負担と合わせてまいりますと、上げていく限界というものが非常に難しくなってきたのではないか、私はそんなふうに思っているわけですね。だから、科学的な根拠というのはありますか。まさしく大臣の答弁のように、いやそれはあくまで国民に決めてもらうことだ、こうおっしゃいますけれども、やっぱり、これこそ四〇%台前半とおっしゃれば、一つの根拠というものが私はなければいけないだろう、こういうことで御質問をしたわけなんですけれども、その辺はどうお考えになっていますか。
  100. 竹下登

    竹下国務大臣 これも、したがって四〇%前半という一つ考え方もあろうかと思いますが、これを今一つの数値として確定するだけの自信も、また環境にも今ないのじゃないか。  一つは、前の「新経済社会七カ年計画」を思い出しますと、一応租税負担率が二十六カ二分の一というのが漠然とながらございました。この二十六カ二分の一というのは、当時の私どもとしては、かなり念頭に置くべき数値だというふうに考えておったわけです。しかし、その背景にはやはり、かつて考えましたいわゆる一般消費税というものが見込まれておったと考えるべきじゃないかな。そうすると、それが一応国会決議等であのままのものが否定された今日、それを見込んだ形の二十六カ二分の一というのはやっぱり根拠が崩れたと言わざるを得ないという考え方に立っておるわけであります。したがって、やっぱり臨調等でも四〇とか四五とか、いろんな議論があったやには、議論の過程では行われたと聞いておりますが、臨調等においても結局、ヨーロッパをかなり下回る水準、そういうことでございますので、これらはどの辺が一番妥当か。それには不公平税制の是正とか、いろいろな問題もあるでございましょう。それらこそ、まさにこういう機会における議論が、何となくそういう一つの数値を生み出していく基礎になっていくものではなかろうか、こういう感じがいたしております。
  101. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 余りわかりませんが、もう一つ聞いておきます。  歳出ですが、マイナスシーリングということを今おっしゃっているわけです。制度、施策の根源にさかのぼる。だけれども、一律削減方式というのもいよいよ六十年度は三年目を迎える。いわゆる社会保障、文教予算の圧縮ということがどうもつまみ食いをされているように考えられる。一方においては防衛費が異常突出をしている。しかも、これは大蔵省原案よりも異常突出をしている。やっぱりこの歳出の見直しというものについても、先ほどからくどいように言っているが、私は方途と手順というのを明確にしなければいかぬと思う。  それからもう一つ、これはマイナスシーリングで閣議に諮られたかどうか知りませんが、建設大臣や厚生大臣から異論が出ておった。初めてこんな異論が出たということですね。それと、五十九年度予算を見てまいりましても、経常部門経費が二十四兆四千億あって、その二割弱の四兆二千億程度が対象になっているだけだ。やっぱりこのシーリング方式というものも私は限界に近づいてきたような感がしておるのです。制度、施策の根源にさかのぼるというのも結構でありますけれども、やっぱりここでそれこそ国民の理解と協力を得るために、その辺の国会議論等もよくお聞きいただいて、政策の優先度というものをつけた歳出の抜本的な見直しというものも、これからよく勉強して考えていただかなければならない、そういうところへ来ておるんじゃないか、やっぱりそれのスタートが六十年度予算編成じゃないかなというふうな気がせぬでもないわけですね。この辺の御見解はいかがでしょうか。
  102. 竹下登

    竹下国務大臣 要するに、ずっと過去へさかのぼってみますと、表現は悪いんですが指名手配方式といいますか、これは多過ぎるからこれを切るとかいうような傾向があったというある種の反省がある。そうすると、やはりこいねがわくは、各省が御担当なすっている制度、施策の根源にさかのぼって、それこそ厚生大臣じゃございませんが、二十一世紀を展望してのあるべき姿を念頭に描きながら、内なる改革というものをやっていかなければならぬ。その内なる改革というのが、やっと私は、今年度、五十九年度予算編成に当たってそういう空気が芽生えてきたではないかという感じがいたします。その内なる改革というものができたのは、やはりシーリング方式というものがそれに一つの衝撃といいますか、きっかけを与えた手法ではなかったか、こう理解をいたしておるわけであります。したがって、やはり私はこれから勉強しなければ結論的なことは申し上げられないにしても、そういう方向でこれからも勉強していかなければならぬだろうな、こういうふうに考えておるところであります。  すべてを画一的にやるということには問題もございます。したがって、結果として出てきた予算は、これは別に全部が全部一〇%マイナスシーリングでやっておるわけでもございませんけれども、まずは一つのシーリングの中で内なる改革というものをお互いに模索していくということが必要ではないか。その中で苦悩しながらまた国民の理解も得られていくべきものではないか、こういう感じが私はいたしておるところであります。
  103. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 時間が参りましたからこれでやめますが、大臣、やはり財政再建というのは大事ですね。大臣、口癖のようにおっしゃっておりますように、歳入面、歳出面、それはまさしく国民の選択の問題であります。しかし、やはり国民が選択できる、そして私ども国会において本当に実のある議論ができる定量的なものを、たとえ敗れても出していただいて、本当に財政再建に対する実のある議論をさせていただきたいし、それがまた国民の本当に選択ができる、そして財政再建に対する理解と納得が得られる方途じゃないか、こういうふうに私は思うのですよ、大臣。だから、その辺の今後の努力というもの、財政再建の方途、手順というものをできる限り明確にして、国民の選択ができる方途というものに今後とも一生懸命努力していただきたいと要望して、私は質問を終わりたいと思いますが、やはりその辺の御見解だけ、簡単で結構でございますが、お聞かせいただいて終わりたいと思います。いかがでしょうか。
  104. 竹下登

    竹下国務大臣 毎年毎年の御要請であるし、それにどうして沿っていくかということを大変勉強しながら、ことしはあそこまで一応手がかりとしての資料を提出することができた。しかし、なお具体的なものを、審議の手がかりとしても、よりわかりやすいために提出する努力をしろという議論は、これはやはりありがたくちょうだいをして努力しなければならぬ問題だという理解は持っておるつもりであります。
  105. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 終わります。
  106. 中西啓介

    ○中西(啓)委員長代理 米沢隆君。
  107. 米沢隆

    ○米沢委員 本当に御苦労さんです。  私は、国債百兆円時代にどう対応するかという問題に絞って質問をさせていただきます。  近年における国債発行の経緯を振り返ってみますと、まず昭和四十年度の不況による税収不足を契機といたしまして、四十一年一月から一般会計長期内国債発行されることになりました。特に四十八年秋の石油危機後の五十年度には不況によって大幅な税収不足を来し、とうとう赤字国債発行を余儀なくされ、それ以降、大量国債発行時代が続くという歴史であります。かくて、昭和四十九年度末に十兆円を下回っていた国債発行残高は、五十四年に五十兆を突破しました。その後わずか四年間で倍増し、五十八年六月六日、ついに百兆円の大台に乗って、国債百兆円時代となったわけであります。このような情勢を見て、昭和四年から六年にかけてのあの恐慌克服のための財政、恐慌に陥ったと言われる高橋財政国債百億円をほうふつさせると言う人がおりますが、まさにその感が強いと言っても過言ではありません。  このように国債残高が急増する一方で、赤字国債依存体質からの脱却のめども立っておりません。したがって、六十年度以降本格的な国債償還借りかえ時代を迎えるに当たりまして、償還財源をいかに確保するか、借りかえをどうするかの問題解決は焦眉の急なのであります。早速今国会終了次第、六十年度予算編成に取り組まれる立場にある大蔵大臣、この償還財源をいかに確保するか、借りかえをどうスムーズに行うか、この二つの問題解決にいかなる決意と展望を持っておられるのか、まずその点からお伺いしたいと思います。
  108. 竹下登

    竹下国務大臣 確かにおっしゃったとおり、いわば今年度末で百二十二兆、こういたしましても、今おっしゃいましたとおり十兆弱であったもの、ですから、五十年代になって百兆というものがプラスされた。そのとおりでありますし、そうしてまた確かにオリンピックの翌年の、戦後最大の不況と言われたときに、この国債発行政策というものが直ちに、当時の高度経済成長をもと戻しをいたしまして、非常に効果があったと私は思っております。  その後、言ってみれば昭和四十六年のニクソンの新経済政策、すなわちドルの兌換制停止というものも、内需振興の建設国債があずかって力があった。そうして四十八年暮れの石油ショック後は赤字公債についに踏み切らざるを得なかった、こういう経過は私も等しくしております。  そうして、結局それらの一番集積された限界が、五十四年の下期から五十五年にかけてそれらの効果が出たときではなかったかというふうに思います。だから五十五年におきましても一兆円の減額ありきというふうな予算が組めたのだな。ところが五十六、五十七が予期せざる国際同時不況の中で、おっしゃいましたとおり、いわば五十兆であったものが百兆時代に進んでいく、あのときが大きなきっかけになって今日に至っておる。さはさりながら、国会でも議論はありながらも、まだ大量償還時期が来ていないというところで、我々としても将来の検討課題だった。財政審で、それをいわば国民の負担増でやってもらうのか歳出の削減でやってもらうのか、あるいは償還のための財源借りかえ得るのかということが言えたのが去年までだったと思うのであります。そうしていよいよそれが昨年、財政審等において借りかえやむを得ずという答申をいただいて、借りかえをしていかなければならぬということになります。六十年度から本格化することになろうと思われますので、大量の国債償還借りかえを円滑に行っていくには今後の国債管理政策をどうするか、こういうことになるわけであります。  そこで、現在は理財局長の私的懇談会と申しましょうか、五十八年の十一月に発足いたしました学識経験者、市場関係者による国債借換問題懇談会において検討を行っていただいておるわけでございます。まさに今、議論をいただいておるさなかでございますので、現段階で確たる予見を持ったことを申し上げる段階ではなかろうと思うのでありますが、何とかその議論の展開と見合わせながら、今御指摘のとおり、六十年度予算編成も少なくとも概算要求の時期が逐次近づきつつあるわけでございますから、私どもとしてはまず借換懇の議論というものを踏まえながら対応していかなければならぬというのが現状の偽らざる認識であります。
  109. 米沢隆

    ○米沢委員 御案内のとおり、五十六年度から五十九年度までの借りかえについての基本的な考え方は、例の五十五年の国債借換問題懇談会によってそのルールが合意されて今日に来ております。今おっしゃいましたように、六十年度以後どうするかについては何も決まっておりませんので、昨秋新たな国債借換懇が発足をして今検討されておるやに聞いております。今僕はその検討内容等について、もう少し具体的に聞ければ聞きたいものだな、こう思っておるのであります。  例えば本法案に盛られておりますように、赤字国債についても建設国債と同様に借換債発行するということはわかっておりますが、その他の物の考え方等については、例えば大量の借換債を円滑に発行、消化するため期間一年以下の短期国債発行するとか、あるいは借換債についてもシンジケート団方式による引き受けを存続するとか、新聞にはちらほらと出ております。それが決まったものか、決まってないものかはまだわかりません。しかし、少なくとも借換懇の検討されておる中身等が新聞等に打ち上げられますと、やはりそこらも含めて検討の内容等聞きたい、これがまた人情でもございます。そういう意味で、現在の段階で答えられる範囲で結構でありますが、借換懇の議論の中で考え方として方向がほぼ決まったもの、決まってないものを分けてもらって結構でありますが、一応御説明いただきたい、こう思っておるのでございます。
  110. 西垣昭

    ○西垣政府委員 大臣からお答えがありましたように、昨年十一月から国債借換問題懇談会で勉強いたしておりますが、ここでは忌憚ない意見を交換する、全く遠慮なく自由に議論をするということで非公開ということにいたしているわけでございます。現に非常に熱心に議論をしていただいておりまして、まだ結論を出すに至っていない、こういう状況でございます。新聞にもちらちら観測記事のようなものが出ておりますので、そういう御質問をされるのはまことによくわかるのでございますが、この段階で内容を申し上げることはひとつお許しをいただきたいというふうに思います。
  111. 米沢隆

    ○米沢委員 おっしゃることは素直に信じて、それならば大蔵省考え方等を具体的にちょっと聞かしていただきたい、こう思います。  政府の出された国債整理基金における要償還額、国債発行額という一覧表を見ますと、これは特例公債借りかえ発行するという前提の表でありますが、六十年度以降の借換債新規財源債を合わせた年々の国債発行総額はかなりのピッチで増加していくことがわかります。もう言うまでもなく昭和六十年、来年は約二十兆五千億、六十一年が二十一兆四千億、六十二年が二十三兆三千億、赤字国債をゼロにしようという昭和六十五年の時点で国債発行額は二十三兆四千億、資料の最後の七十二年になりますと、何と三十一兆という国債発行をしなければならない、こういう数字でございます。この数字だって、新規財源債が今から減額がどうなるかというあいまいな点も持っておりますし、あるいはまた新規財源債をもっと出さねばならぬという状況が出てくるかもしれませんので、この国債発行総額というものは、ふくらむことはあっても減ることはない、こういうふうに見ていいのだと思います。したがって、これから先の償還財源をいかに確保するか、借りかえをどうスムーズに行うか、新規財源債をどういうふうに発行していくのかという重要な問題は、簡単に言えば、これだけ大量に発行される国債をいかに摩擦なく消化していくのかという問題、言葉をかえれば大量の国債をいかに金融市場の中で弊害を少なくしつつ抱いていけるのか、そういう問題にほかならない、こう思うのでございます。  ところで、金融市場で余り円滑に国債を消化してしまうと財政運営が安易になってしまうのではないか、そういうことを危惧する人があります。大量の国債がうまく消化されて財政改革に緩みが来るのじゃないか。よもやこんなことはないと思うのですが、大臣姿勢のほどをちょっと伺っておきたいと思います。
  112. 竹下登

    竹下国務大臣 それはやはり、よほど気をつけていなければいかぬ課題だという事実認識をしております。  率直に申しまして、言ってみれば日本が世界最高の貯蓄率ということになりますと、よく言われるISバランスからいってみても、貯蓄はどこに投資されるかといえば、それこそ個人か企業か国か地方団体か、または外国か、こういうことになります。そして貯蓄性向が強い。しかもそれは金融機関の信用ということももちろんございましょうが、いわば物価が安定しておる、だからその限りにおける実質金利は高いということもあるわけでございましょう。そこで貯蓄が伸びて、民間の設備投資意欲というものが少なければ、どうしても国債消化が場合によっては円滑にできる、こういうことになる。  そうすると、歳出等に対する厳しさというものが失われていくことでございますので、いささか私見でございますけれども、結論から申しまして、とにかく歳出歳入というものが借金なしに均衡がとれておってこそ初めて富の再配分ということにもなるのであって、国債がふえますとその利払いがふえます。そうなれば、いわば予算の中の十数%が、国債を保有しておる人の金利として計上されるわけでありますから、少なくとも富の再配分という機能からすれば、意図せざるところへ偏在していくという、ある意味における国債性悪説とでも申しますか、そういうものが基本にはあらなければならないもの。国債政策というものは、いわば経済が著しく変動した場合の対応力として発動し、考えるべきものであって、イージーな考えを持った場合は、これは我々が一番痛い目に遭いましたインフレにもつながることでございましょうし、そしてまた、財政運営の衝に当たる者としては一番持ってはいけない思想ではないかという考え方は、基本的に認識を等しくいたしておるところであります。
  113. 米沢隆

    ○米沢委員 今おっしゃいましたように、これから先厳しい財政節度を求めることは当然でありますが、もはやそういうことだけでは事は済まない段階に来ておることも事実でございます。現在のような国債の無理な形での消化を続けていきますと、我が国の金融機構あるいは民間金融は本来の機能発揮ができなくなってしまうことも恐れなくてはなりません。そこで、これからの新しい国債管理政策の確立が望まれるわけでございます。  それならば、大量国債の存在というものをどういうふうにとらえたらいいのか、これがこれから御質問をいたします前提として、大蔵省サイドから聞かしてもらわねばならない問題でございます。例えば金融面から見た場合、大量国債の存在というものは、よく言われますように、何といっても長期金利高どまりの最大の原因になってしまう。第二に、国債の大量発行が直接民間金融を締め出してしまう危険性がある。特に景気が上昇してくる局面になりますと、こうした危険が現実のものになる可能性は十分にあります。第三に、インフレの危険性であります。クラウディングアウトを避けようとして金融を緩和すれば、これはインフレにつながりますし、また、今考えられておりますような円滑な消化を図ろうということで期間の短い国債を集中的に発行しますと、市中に流動性の高い金融資産が過剰に供給されることになるわけですから、これもインフレの危険性につながります。  したがって、このような国債発行の弊害を少なくするための基本的な対策は何かと言われれば、やはり何はさておき国債によって金融市場が圧迫されることのないように発行量を抑えることだ。したがって、行革や制度改革や等々を通じて歳出の徹底的な合理化を図り、国債依存度を減らす努力をしなければならぬ、こういうことになるわけであります。つまり、国債があったとしても、何もそれはすべて悪ではなくて、我が国の経済力に見合うようなものであれば、国債を使うことは何もとやかく言われることではないと思うのです。しかし、ここまで大量の国債発行されるということは、果たしてその国債が我が国の経済力に見合ったものかどうか、そういう判断をする必要はあります。  抽象的に言いますとそれは簡単でございますが、どういう状況下なら経済力に合ったものか、こう言われても、ちょっとこれは指標としても難しい面があるかもしれませんが、一応大臣に聞かしていただきたいことは、どのようになったときに国債が量的に危険水域に達しておるんだという御判断をなさるのか、一応の目安みたいなものがあるのだろうと思いますが、そこらの政府見解をまず聞かしてほしいと思います。
  114. 竹下登

    竹下国務大臣 この大量国債は、当然のこととして長期金利の高とまり、こういうことにもなり、ます。それから、いわゆるインフレにつながる、それも事実でございます。そこのところで、危険水域というお言葉でございましたが、言ってみれば、国債残高の対GNP比率あるいは財政赤字の対GNP比率等が一応一つの指標としては考えられるわけであります。  で、この公債残高の対GNP比というのは、まさに五十年度におきましては、先ほどおっしゃいましたように一〇%以下であったものが、五十九年度末には四一%に達する、そういうふうに見込まれる。それから財政赤字の対GNP比、これは対財政規模という考え方もあり得るであろうかと思いますが、財政赤字の対GNP比で実績値で見ますと、この国民経済計算上の中央の政府ベースからいたしますと、いわゆる五・三%と、国際的に見ては極めて高いということであります。アメリカの場合が一・二とか、西ドイツの場合が二・二とか、フランスが一・一とか、イギリスが二・七。したがって、どの程度の水準からが危険水域であるかということを具体的に示すことは、おっしゃるとおり困難な問題でございますけれども公債発行とそれの残高の累増というのが経済、財政に与える影響は好ましいものでないことは事実でございますから、やはり毎年度着実に、まずは公債発行額を縮減していく。それで残高を抑制して、既発債は、いつでも申し上げるように、いささかイージーな考えだと言われ、批判も受けますが、一応今日までの貯蓄というものを対象にして存在するわけでございます。新発債というものは新しい貯蓄の伸びの中へのり込むものでありますだけに、それをまずは減していくということを考えて、そして第二段階としてこの公債残高の対GNP比というものをできるだけ低い水準にとどめるような努力をしていく、こういうことではなかろうか。だから、今危険水域はどこだと言われましても、これをはっきり申し上げるだけの自信はもとよりございません。  よく諸外国で見れば、おまえのところは貯蓄性向が高いから、その危険水域はおれたちの国と違うんじゃないか、こういう議論もあります。ありますけれども、それがやはり私どもは一番危険な考え方じゃないかなという考え方の上に立って、これからもやっていかなければならぬ課題ではないか。いわゆる長期債務の残高で見れば、今イギリスは相当な、四四・〇とかいうようなものでございますけれども、しかし、今日、今度はいわゆる公債残高ではなくして財政赤字で見れば、日本よりもはるかに低目にございますので、私どもはやはり、まずは当面このいわゆる発行そのものを縮減していくというのを第一段階として掲げていかなければならぬ課題であろうという事実認識をいたしておるところであります。
  115. 米沢隆

    ○米沢委員 国債残高がその国にとって危険水域になっておるかどうかという判断は、確かに指標的には非常に難しい問題かもしれませんが、現象的にはインフレの度合いとか、あるいは長期金利が高どまりしておるかどうかという問題だとか、あるいはクラウディングアウトみたいなものが発生しているかどうかということでまずわかると思うのですね。しかし、こういう現象的な問題については、物の見方等がかなりぶれるわけでございまして、やはりこれから先徹底的に財政改革をやって国債減量をやろうというならば、もっと政府サイドにおいては具体的な、超してはならない目標みたいなものを設定して汗をかいてもらうととが大事でないかな、私はこんな感じがするのでございます。  現在、御案内のとおり、財政再建のプログラムというのは、昭和六十五年に赤字国債をゼロにするのだというだけでございまして、あとその中身等については、あのような大きな財政不足額をさあどうするんだという議論さえ、答弁としては定かに返ってこない状況でありますから、私は、そういう状況を放置したままいきますと、本当にこの大量の国債の上にもう一つ大量が加わっていく、そういうことを許してしまうではないかということを非常に危惧するものでございます。したがって、この指標が適当であるかどうかは問題であるかもしれませんが、例えば歳出削減のめどを、やはり国債依存度二〇%ぐらいに確実に毎年毎年の予算編成をやっていくという指標をつくるとか、あるいはまたマネーサプライを一層管理しなければならぬということを明確にしていくとか、増税に歯どめをかけるために租税負担率あたりに天井を設けるとか、何かそういう内なる指標みたいなものをつくってもらわないと、安易に国債発行につながっていくことになりはしないか、こう私は思うのですが、そのような意見に対して大蔵大臣はどういう御見解をお持ちですか。
  116. 竹下登

    竹下国務大臣 これは原則的には意見の相違はないと思っております。ただ、例えば「新経済社会七カ年計画」のときに、租税負担率二十六カ二分の一なんというものがありました。そしてあの七カ年計画を見ますと、例えば公共事業は二百四十兆やろうとか、あれは私はあの当時の感覚で、素人なりに、これはいいものができたなと率直に思いました。しかしながら今度の「八〇年代経済社会の展望と指針」をおつくりになるときも、我々としての意見も申し上げましたのは、あのときは、その後の五十六、五十七というものの状態からして、公共事業を二百四十兆から百九十兆に下方修正するというだけでなく、あとのかなりのものを修正しないままに持ち歩いておりましたけれども、現実目標とするにはかけ離れた数値にそれがなってしまった。そこにやはりある種の政治不信、これは国際同時不況というやむを得ざるものがあったとしても、やはり私どもとしては反省の原点に帰らなきゃならぬ。そこに定量的なものでなしに定性的な、いわば哲学が先行するという状態になって今日に至っておる。したがって、国会でのいろいろな問答等を見定めながら、最終的には国民の合意と選択でありますだけに、そこの方途をどう見出していくかというのが今の段階ではないかという考え方であります。基本認識は全く相違はないのではなかろうかというふうにも思います。
  117. 米沢隆

    ○米沢委員 国債発行残高をでき得る限り抑えていく、そのためには歳出増につながる構造的な要因を徹底的に合理化していくということは大事な問題でありますが、同時に我々がうるさいくらいに申し上げておりますように、自然増収を多くつくっていくという観点も、やはり国債残高を減らしていく一つの重要な手法ではないか、そう考えておるわけでございます。  ところで、ここに「日本財政赤字(一般会計)の要因分解」という表がございまして、財政赤字を構造的な赤字と循環的な赤字に分けて分析してある表がございます。例えば昭和五十年度の時点で構造的な赤字は約二兆円、循環的な赤字が三・三兆円、比率で言いますと、構造的な赤字が三七・七%、循環的な赤字は六二・三%であろう。昭和五十七年度財政赤字の構造的な部分が八・二兆、パーセントにしまして五七・三%を占める。循環的な赤字が六・一兆円、パーセントでいきますと四二・七%を占める。締めて合計一四・三兆の財政赤字である、こういうような分解表があるのでございます。  これを見ますと、確かに財政赤字を減らしていくためには構造的な要因を徹底的に合理化するということは大事でありますが、やはりこの数字が示しておりますように、循環的な赤字というものを何とか解消していくという努力も、やはり政府としてはとってもらわねばならない重要な政策手段の一つであろう、こういうふうに考えるわけでございます。  ところが、ちょっと横道にそれるかもしれませんが、昨年末の例の税の中期答申におきましては、現在の財政状況の悪化を構造的な要因とだけしかとらえていない。そして「財政赤字を拡大することによって経済の成長を図り、当初の財政赤字を上回る税の自然増収を期待するようなことは、従来の経験に照らしても現実性を欠く」。確かに今度の中期答申だけではなくて、税調の動きそのものが、所得税減税の財源をどう捻出するかということに振り回されて、租税政策みたいな観点で物を見てくれなかったことは大変残念なことであります。しかし、だからといって現在の経済政策として、内需拡大による景気浮揚が重要であることは疑いのない事実なんでございまして、単に財政悪化の原因が構造的要因だけではない、やはり循環的な要因にもあるんだということは、これも私は事実だろうと思うのです。  ところが中期答申では、「財政赤字を拡大することによって経済の成長を図り、当初の財政赤字を上回る税の自然増収を期待するようなことは、従来の経験に照らしても現実性を欠く」と言って、循環的要因が財政赤字の要因の一つでもあるということを全く一刀両断のもとにぶっ切るというようなことは、ちょっとこれは言い過ぎではないか。景気政策的な面での租税政策がどの程度まで有効性があるかという議論は分かれるにせよ、循環的な赤字はすべてだめだなんというこんな言い方は、税調考え方そのものが間違っているのではないか、こう判断せざるを得ないのです。その中期答申を見てどう政治選択をされるかは政府の話。しかし、税調そのもの財政赤字の原因をみんな構造的な赤字だけに要因を求めて、循環的な赤字を抹殺するなんというのはちょっと行き過ぎではないかな、こう思うのですね。  同時に、今度の中期答申を眺めて痛感しますことは、産業政策とか住宅政策とか、あるいは土地政策などの個別の政策的な課題を持った税制については全然見解を示していない。これもやはり片手落ちではないかな、税調政策的な判断を完全に停止しておるということは大変問題だと思うのです。大蔵大臣でもいい、主税局長でもいい、ちょっと御見解を聞かしてもらいたい。
  118. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 ただいま御指摘になりましたように、昨年十一月の中期答申の、財政の構造的赤字あるいは循環的赤字の分析の基調になっております考え方は、構造的赤字とか循環的赤字というのは、方法論的に非常に難しい問題ではございますけれども税制調査会の基本的な認識としては、現在の我が国の財政が抱えております赤字というのはやはり構造的な赤字と認識すべきだろう、その前提としていろいろ現状の分析が行われておるわけでございます。  その中で、例えば税収面につきまして、近年になって税収の伸び率が非常に悪くなったという指摘がございます。そのときに、この税収の伸び率の悪くなった原因は、やはり構造的な要因が非常に大きいという認識が述べられておるわけでございまして、これは計量的といいますか、経験的に申し上げましても、いわゆる高度成長の時期と、それから一次オイルショックを契機といたしました、安定経済成長に軌道修正された時期、税収の弾性値を見ますと、これは弾性値が非常に下がってきておるということが言えるわけでございます。これは、経済の構造的な動きと税体系の動きとがミックスされた結果で税収の伸び率というのは出てまいるわけでございますけれども、その意味で現在の財政赤字の一つの要因をなしております、全部ではございませんが、一つの要因をなしております税収の伸び率が非常に悪くなってきているのは、これは構造的としか言いようがないわけでございます。  ただ、税制調査会の答申を注意深く読んでいただきますと、循環的要因について必ずしもこれを否定しているわけではないわけでございます。特に、短期的に循環的な要因に着目をして、財政の景気政策的な運営というものは決して否定されるべきではないけれども、現在の我が国の財政が抱えておる赤字というものは、歳国政策であろうと租税政策であろうと、財政の面からする対策によっては治癒されない。これは投資減税のときに議論されたものでございまして、答申等には明示的には示されてないわけでございますけれども、仮に現時点である単位の投資減税を行ったとする場合に、なるほどそれによって経済の成長効果はあるし、自然増収の効果があるわけでございますけれども、それをトータルとして計算いたしますと、つまり財政の現在抱えておる赤字に対してプラスの方向に働くかマイナスの方向に働くかということになりますと、これは確実にマイナスの方向に働く、そういう認識があるわけでございます。ただ、短期的な、循環的な赤字なりそういう側面に着目した財政運営そのものは否定されておらない、これだけはひとつ御理解を願いたいと思うわけです。
  119. 米沢隆

    ○米沢委員 同じ政府の中で、経企庁の方が循環的な赤字を認めて、大蔵省の気持ちが十分に込められているこの中期答申等には、循環的な赤字についてはほぼ否定的な見解に立つ、これは私は重大な問題だと思うのですね。そういう意味で、ここでは深追いをしませんけれども、今後の租税対策等については、少なくとも同じ内閣に属する経企庁等との議論のすり合わせ、そして政策選択についてはもっと慎重でなくてはならないし、もっと積極的に循環的な赤字を見るという姿勢も、結果的には否定されたとしても、やはり一つ考え方としてかなりの議論をやってもらわなければならない問題ではないかな、こういうことを注文させていただきたいと思うのであります。  さて、先ほどの話の続きに移りますが、国債を国の経済力に見合った量に抑える努力、これは先ほど大臣からも御見解をいただきましたが、これだけでは金融市場に与える悪影響を除くことにはならない。もう一つの問題は、必要な発行量というものをいかに円滑に消化するかという制度づくりの努力も欠かすわけにはいかない問題であろう、こういうふうに考えます。このごろ金利等については、まだ不十分だとは言えますが、市場実勢が尊重されるようになったり、期間やその他の発行条件についても多様化が徐々に進んでおります。また、発行方式についても、公募方式の拡大や金融機関の窓口販売の認可等の対策が実行される。それなりに評価をしていいことだと思います。  しかし、今までの努力は、どっちかというと主として個人など、金融機関以外の民間部門への消化促進を図ることが対策の大宗をなしておる。しかし、今後の大量の国債発行時代を迎えるということになりますと、これまでのような金融機関以外の民間部門の消化促進、これも大変重要でありますが、同時に、民間の消化促進に対応するだけではなくて、やはり従来からのいわゆる金融機関機関投資家が長期的に国債を保有できるような対策、そこらにもっともっと意を配っていかなければならないのではないか、こういうふうに考えるのでございますが、その点について御見解を伺っておきたいと思います。
  120. 西垣昭

    ○西垣政府委員 市場実勢を無視して無理な発行条件で国債発行するということでは、国債の円滑な消化ができないという御指摘はそのとおりでございます。従来から長期国債につきましては、その発行条件につきまして、当然のことでありますが、そのときそのときの経済政策、金融政策の基本的な考え方を踏まえながら、その市場の実勢と申しますか、他の金利とのバランスを考えながら決めてきているところでございまして、具体的に申しますと、十年の利付国債につきましては、シンジケート団の代表幹事と、市場の実勢を踏まえてどういう条件で発行するかということで話し合って発行条件を決める、こういうことでやってきているわけでございまして、今後とも円滑に国債の消化を図っていくためには、市場実勢に即応しながら発行条件を決めていくということでいかざるを得ないというふうに考えております。  具体的に申しますと、シ団との交渉で発行条件を決めておりますのが、六カ月ぐらいにもうなりましょうか、市場の状況が変わるに応じまして発行条件を変えるということで、毎月のように発行条件が変わるというのが最近の状況でございまして、今後とも市場の実勢を踏まえながら、無理のない円滑な消化を図っていくということで国債管理を進めていきたい、こういうふうに考えております。
  121. 米沢隆

    ○米沢委員 金融機関国債を長期安定的に保有できるようにするためには、一つの方法として変動金利付の長期債、十五年の超長期債というものは変動金利付になっておりますが、例えば十年物だって、変動金利付の長期債を発行すれば、金融機関としてはかなり安定的に保有できるという条件ができるのだけれども、そのあたりは御検討になっておりませんか。
  122. 西垣昭

    ○西垣政府委員 借りかえ負担を軽減するためには、長期国債と申しますか、満期構成を長くする、満期構成を長くするためには長期国債発行をしやすくする、金融機関機関投資家が安心して持てるように変動利付の十年国債をつくったらどうか、こういう御趣旨の御質問だと思います。私どもといたしましては、国債管理政策を適切にやっていくためには、満期構成ということを十分配慮しなければならないということで、国債の多様化の中で満期構成が短くならないように十分努力をしているところでありまして、今言われましたような構想もひとつ検討してみたいというふうには思っております。  ただ、変動利付の十年債というものを公募の形で発行することにつきましては、我が国ではまだ流通性を有する変動利付債券の発行例がないということでございまして、変動利付国債が転々流通した場合に有価証券市場に与える影響について十分検討する必要がある。また、変動金利という場合に基準となる金利を何に求めるか、これはかなり難しい問題でございまして、技術的にもいろいろと検討する必要がありますので、国債多様化の検討課題の一つとして私どもとしては検討したいと思っておりますが、なかなか難しい問題ではないかなというふうに考えられます。
  123. 米沢隆

    ○米沢委員 ところで、もう一つ今の段階で問題になっておりますのは、国債といえどもこれは金融商品でございますから、国債発行条件は市場の需給実勢を反映して決定されるというのが筋だ、これはもうおっしゃるとおりであり、我々も当然だと思います。しかし、現状におきましては、よく言われる問題点として、発行条件の弾力化が徐々に進展しているものの、引き上げ局面と引き下げ局面では、市場実勢と発行条件の乖離が目立ち始めてから条件改定に至るまでに、タイムラグに余りの差があり過ぎる。発行条件が市場実勢を下回る傾向が強い。  さらに、こうした発行条件に加えて売却制限の存在から、国債引受金融機関は一定の据置期間中引受国債の流動化はできませんので、機動的な国債売却の道が閉ざされているために、売却損や償却のリスクにさらされている、こういうふうなことが今でも言われております。こういう問題の解決をしないと、これから先の大量発行時代にはやはりちょっと問題が生じる、そんな感じがするわけでございまして、新しいこれから先の国債管理政策の中にこのあたりの対策が盛り込まれるのか、盛り込まれないのか、あるいはそれは是正される方向にあるのかないのか、そこらについて聞かしていただきたい。
  124. 西垣昭

    ○西垣政府委員 御質問の第一の点でありますが、市場実勢を十分踏まえて発行条件を決めていくという点につきましては、上昇局面でも下降局面でも同じでございます。私どもといたしましては、同じように市場実勢を考えながら発行条件を決めていきたい、こういうように思っております。  それから売却制限の緩和の問題でありますが、現在金融機関保有の国債につきましては、売却制限の期間が発行後百日程度というふうになっております。これは昭和五十六年四月以降そういうことにいたしておるわけでございまして、さらに詳細に申しますと、発行後三カ月を経過した日の属する月の翌月の月初、売却制限が外れるわけでございます。この売却制限は引受者に市場の維持機能を期待し、国債市況の安定化を通じて国債の円滑な消化を図るという観点から設けられたものでありまして、そういう観点から申しますと、引受者にとっても決してマイナスばかりではないというふうに言えるのではないかと思いますが、この取り扱いにつきましては市況に与える影響のほか、アンダーライターの引受責任のあり方等々密接に関連いたしますので、これらを総合的に勘案しながら今後検討していきたいというように考えております。
  125. 米沢隆

    ○米沢委員 ちょっともとに返りますけれども国債発行総額は今後六十年以降かなり急速に増加することは先ほど申し述べたとおりでございますが、その消化にはいろいろ策は講じられても相当の困難があるだろうという見方の人と、そうではないよ、国債の消化環境というのは、例のこの前、借りかえ問題が検討されました五十五年当時に比べたらかなり良好になっているので、かなり大量のものでもうまく消化できるような環境になっているのだよ、そういう両極の議論があります。  そこで大蔵省としては、五十五年当時と比べて、現在は国債の消化環境という点からよくなったのか悪くなったのか、どのような状況にあると思われるのか、またこれから先の消化環境の見通し等について御見解があれば聞かしていただきたい。
  126. 西垣昭

    ○西垣政府委員 まず第一の、前回の借換懇の検討時点と今の検討時点とで国債消化の状況がどうかという点でございますが、たまたま前回の借換懇で御審議をいただいておりました時期は五十五年の十月から十二月ということでございまして、当時は第二次石油危機に対応するということで公定歩合も、それから市中短期金利も高水準にありまして、国債市況も軟調ということで極めて厳しい状況でございました。これに対しまして現在は、公定歩合も当時と比べて低い水準にございますし、一般的に金融が緩和状態にあります。また、昨年四月から金融機関による国債の窓販が開始されまして、その実績が比較的良好に推移しているということがございまして、現時点で申し上げます範囲では、国債を取り巻く消化環境は、前回の借換懇当時に比べればよいということが言えると思います。  ただ、それではこれからはどうかという点につきましては、国債市況は世界経済の動向でございますとか、世界の、特にアメリカの金利の動向でございますとか、為替レートの動向でございますとか、そういったことによりまして大きく変わっていくわけでございまして、今の時点で軽々に予測をするというわけにはまいらないと思います。  私どもといたしましては、どういう状況であろうとも、必要な国債発行、消化をそれなりに円滑にやっていくために努力をしていかなくちゃならない、こういうように考えております。
  127. 米沢隆

    ○米沢委員 例の中曽根ボンドの可能性はあるのですか。
  128. 西垣昭

    ○西垣政府委員 中曽根ボンドと言われますのは、政府国債あるいは政府の保証債で、ドル建てで主としてアメリカ発行されるようなものが現時点で発行できるのだろうか、こういうことだと思いますが、幸いにこの二月に政府保証の開銀債が米国で非常にいい条件で発行できました。いい条件と申しますのは、スイス・フラン建てのカレンシースワップというような仕組みを使いまして、スイス・フランでスイスの市場で発行するのと同じような条件で発行できたということでありまして、日本における金利水準とアメリカにおける金利水準が今や四、五%も向こうは高いという状況にありますけれども、それが回避できたということでありまして、政府保証外貨債につきましてはそれが実現できたわけでございますが、事が国債になりますと、そういうカレンシースワップというような方法で国債にふさわしい規模の起債ができるかどうかというふうな問題がありますので、技術的にいろいろと検討しないとなかなか難しいのではないかな、こんな感じがいたしております。
  129. 米沢隆

    ○米沢委員 ところで、六十年度以降当分総額で約二十兆から二十五兆円前後ぐらいの国債発行していくことになりますが、このうち市中消化額はどれくらいになるというふうに御判断いただいておりますか。
  130. 西垣昭

    ○西垣政府委員 六十年度以降の国債発行額のうち、どのくらい市中消化する必要があるかにつきましては、今後の国債の保有状況が金融市場の動向等のいかんによって大きく変動することもありますので、現時点で確たる計数を申し上げることは困難であります。ただ、仮に五十九年一月末の資金運用部、日銀の保有状況を前提といたしまして、資金運用部、日銀保有の国債については全額乗りかえる、それから新規財源債の運用部引受額は、五十九年度横ばいの毎年度三兆六千億円という前提を置いて試算をいたしますと、六十五年度までの要市中消化額、これは国会の方にお出しをしておりますケースaという試算を前提としてはじいたわけでございますが、これによりますと、六十年度以降、一番多い年が六十三年度の十七兆五千八百億円、大体十四、五兆から十六、七兆、こんなことに試算としてはなろうかと思います。
  131. 米沢隆

    ○米沢委員 大量国債だ、大量国債だ、こう言っても、今おっしゃったように、市中消化が大体十五兆から十七、八兆ということであれば、従来、五十八年、五十九年ぐらいは大体十二兆ぐらいですか。ですから、ちょっと三兆か四兆ふえるくらいで、まあ、当面のところ市中消化するにはそう問題はない、そういうふうに安心していいような状況だと判断をしてよろしいですか。
  132. 西垣昭

    ○西垣政府委員 先ほども申しましたように、国債発行条件というのは、市中の実勢を見ながら無理のない発行条件を決めるということで円滑な消化を図っていくわけでありますが、国債の市況を決める条件というのはいろいろございまして、予断を許さないわけでございます。私どもといたしましては、全体としての発行規模が抑制されるということで、借換債につきましては市中に対する影響はプラス・マイナス・ゼロだということはございますけれども償還財源を受け取った投資家の人たちが国債に円滑に投資をしてもらう、そういう発行条件を確保するということは、そのときそのときでそう簡単な話ではない、相当努力をする必要があるのではないかな、こういうふうに考えております。
  133. 米沢隆

    ○米沢委員 今、金融界筋あたりから、財投の中心である資金運用部の資金配分のあり方を根本的に変更して、国債の消化を第一の役割とすべきであるという声が上がっておることは御案内のとおりであります。私も、これは大賛成でございます。この資金運用部資金は、財政投融資の重要な原資として従来まで相当大きな、また重要な役割を果たしてきたことは私も認める立場にありますが、低経済成長へ移行するに伴いまして、財政投融資の役割を再検討すべきだ——この問題は、後でといいましょうか、また別の機会を設けてじっくりと御質問をしたいと思っておるのでございますが、とりあえずこの資金運用部の果たすべき役割を改めて問い直す中で、その運用は国債引き受けを最優先とすべきである、そのような制度を確立すべきであるという意見には傾聴に値するものがある、私はそう判断をしておるのでございます。  特に、もう御案内のとおり、欧米諸国におきましては、公的に集められた国民の貯蓄はほとんど国債に運用されておるという事実等を考えますと、やはりこの資金運用部というものの資金配分のあり方を根本的に洗い直す中で国債を消化する役割を持たせるというこの発想は、今非常に時宜を得た物の考え方ではないか、こういうふうに考えるのでございますが、その点大蔵省の御見解を聞かしてもらいたい。
  134. 西垣昭

    ○西垣政府委員 資金運用部を中心にいたします財投計画のあり方につきましては、臨調でも抜本的な見直しをするようにという御指摘がありまして、私どもも、財投機関あり方等も含めまして、その基本に立ち返った見直しをしたいというつもりでおります。資金運用部資金の運用として国債を重視すべきだという御意見、私どもも同感でありまして、私どもといたしましては、資金運用部資金の活用に当たりましては、国債と財投計画、それから地方、この三者の配分を、そのときそのときの経済金融情勢あるいは財投機関の資金需要等も見まして、最も効率的にやるようにということでその配分を決めているわけでございます。  五十九年度につきまして申しますと、資金運用部の原資が非常に厳しい状況でございまして、資金運用部としてはたしか二、三千億の減額になったわけでございますが、その中で国債に十分配慮をしている。具体的に申しますと、国債発行につきましては六千六百五十億の減額を見たわけでございますけれども、資金運用部としては、五十八年度の三兆七千億に対しまして一千億の減額にとどめまして、三兆六千億を引き受けることにした。これは割合としましては、五十八年度は三七・七%に対しまして三八・四%の引き受けになっております。つまり、資金運用部の原資が厳しい中で国債の引き受けについては十分配慮をしているということで、私どもといたしましては、これからも資金運用部の国債引き受けについては、そのときそのときの状況にはよりますけれども、できるだけの努力をしたいというふうに考えております。
  135. 米沢隆

    ○米沢委員 今年度におきましても、運用部資金で引き受ける国債の額等についてはいろいろと御苦心があったというふうに今お聞かせいただきましたが、私はやはり、そのときどきの事情等によって決めるというよりも、制度的に、少なくとも運用部資金が毎年ふえる、その部分の何%かを国債引き受けに自動的に回すというような一つのルールをつくることが大事じゃないか。特に、財投に今後メスを入れるという御判断であります。私は大賛成でありますが、やはり資金運用部資金がある程度窮屈にならないと、本格的に財投にメスを入れることはできないであろう、そう私は考えておるのです。  大蔵大臣一般会計の赤字だけがよく議論されますけれども、財投も含めて、国債発行残高等を見ますとびっくりするような金額になるはずですね。それは健全な国債もあれば不健全な国債もありますけれども議論になるのは、財政再建というと普通は国の一般会計だけが問題にされるきらいがありまして、実際は一般会計のやりくりのために財投が利用されておるというようなことを見ておりますと、財政改革というのは、単に一般会計財政改革ではなくて、財政投融資まですべて含めて一体どれくらいの国債発行しておるのだろうか、借金を持っておるのだろうか、こういうふうな計算をしたことがありますか。びっくりするような金額になるはずです。また、そういうものがオープンにならないと、本当の意味財政改革の国民的な理解は得られないであろう、そう思うのでございます。したがって、私はこの運用部の資金配分の変更をてこにして初めて、おくれている財投及び財投機関の根本的な改革に手をつけることができると信じて疑いませんが、大蔵大臣の御見解はいかがですか。
  136. 西垣昭

    ○西垣政府委員 財投計画の見直しにつきましてはお説のとおりでありまして、私どもは厳しい見直しをしていく必要があると思います。  ことしの財投計画の編成に当たりましては、実はふえたものは全部地方へ配分をするということで、財投計画としてはふえてない、こういう状況でございます。その中で特に政策金融機関につきましては、資金需要が落ちているということもありまして、全体として圧縮をいたしております。財投計画の中で政策金融機関として十機関ございますけれども、そのうちふやしましたのは三機関でございまして、七機関は減額ということになっております。  今、その前に機械的なルールをつくったらどうだ、こういうことも御意見として言われたわけでありますけれども、私どもといたしましては、やはりそのときそのときの財政金融情勢、経済情勢、あるいは財投機関の資金需要というものはその年その年によって違うわけでございまして、現実的なアプローチの仕方、基本的な考え方としては、むだがないように、国債への配分については十分配慮するようにということでその年その年の配分をする方が適当ではないか、こういうふうに考えます。今のように増加の一定額を国債というようなことになりますと、減少した場合には機械的に減少しなければならないというわけでございますけれども、五十九年度の配分はむしろ減少したから減らすということではなくて、国債には十分配慮しながら国債の引き受けの割合をふやすというようなことでやってきているわけであります。  それから、まことに申しわけないわけでありますが、さっき数字を私、勘違いして言い違えたようでございます。さっき、何か二七・七のつもりで申しましたのを三七・七と申したようです。それから二八・四と言うつもりで三八・四と申したようでありますので、訂正をさせていただきます。
  137. 竹下登

    竹下国務大臣 民間金融機関の方とかの中で、いわゆる財政投融資、国の責任において集めたお金はいわば国債とか地方債とかいうことに限定して、その他の財投機関につきましては民間の金を活用して、むしろ一般会計から利子補給等を行うとしたならば政策金融としての役割を果たし得るではないか、こういう議論をなさる人がたしかございますですね。が、今日までの歴史的経過を考えてみますと、さようしからば、その場合は、言ってみれば民間金融というのはそのときどきの資金需要において非常な変化がございますから、その点、いつも政策金融というものが機動的に対応できるという限りにおいては、今の財投の原資ということが好ましいという議論が一方にやはりあるわけでございます。したがって、今度はそれが時に応じて、財投の原資をちょうだいする政府関係金融機関が民間金融の分野にまで乗り出して、いわば自然の中の金融で措置されるものを政府関係金融機関政策金融の中で取り込んでいって、むしろある意味においては投資先の邪魔をする、こういう議論が出る場合もまだございます。したがって、民間金融の場合はやはり何としてもそのときどきの経済事情に応じて資金需要というものに大きな差がございますだけに、固定的なある程度のものが安心して見込める原資としては、いわゆる資金運用部資金、すなわち財投というものが果たす役割はまだあるのではないか。  しかし、私どもとしては、財投というものの行き先については、西垣理財局長から申し上げましたように、厳しくそれを律していって、既に政策金融の範囲からは自立できる状態になっておるものとか、もろもろのものを洗い直して、今度の第二の予算と言われる財政投融資計画についてもこれに厳しく対応してきたというのが実態でございます。したがって、本当にそれを実現するとしたら大変な時間のかかる、ある意味においては革命的な議論かもしれませんが、そういう議論が民間金融機関等の方々の中で存在しておるということは、私自身もそれは承知しております。
  138. 米沢隆

    ○米沢委員 私は、財投にもっとメスを入れてもらいたいという立場で、御意見かたがた御質問するのでございますが、ことしは財投資金のうち三・六兆円が国債の引き受けに充てられました。残りはすべて財投に使われておるのでございますが、借り手の機関が健全な財政状況だったらこれは問題ないのでございますが、非常に問題のあるところに貸し出しが多過ぎる。  よく例にとられる国鉄ですが、御案内のとおり、累積赤字は約八兆円、長期負債はついに二十兆円を超えました。毎年の赤字は実質二兆円ぐらいで、今一生懸命合理化のために頑張っていただいておりますが、当分この赤字は減りそうにありません。何せ国鉄が負担する年間支払い金利だけで一兆円を超える。そのほか政府が棚上げした長期負債の金利が三千五百億円ほどある。そういう意味では、国鉄の累積債務二十兆というのは、合理的な判断をした場合に到底返済の当てはない、こう思うのですね。民間であればこれは完全にお手上げ、倒産、貸し付けする銀行もありませんでしょうし、手形を受け取るような会社もない。民間企業が倒産すれば債権者が泣くだけです。ところが国鉄の場合は、御案内のとおり国の機関というふうになっておりますから、結局最終的には国の責任で弁済しなければならぬ。したがって、そこに甘さが出てくる、そう考えざるを得ないのですね。  財投の資金が産業の発展やこのような交通網の発展等に多大な寄与をしたことは認めるにやぶさかではありません。しかし最終的には、財投の資金が豊富にあった時代であるがゆえに、逆に国鉄の経営等をぬるま湯につけさせるようなことになったのではなかろうか。そういう意味では、財投そのものが持つ責任みたいなものは、一面では評価されながらも、一面では財投であるがゆえに、財投という金があるがゆえにぬるま湯になっておったという反省は、これは言い過ぎても言い過ぎでないぐらいに反省を加えてもらわねばならない、そういう問題ではないかと私たちは考えております。  国鉄はそうした中でも、東北・上越新幹線等をつくる。これはその地方の皆さんにとっては歓迎すべきことかもしれませんけれども、その内容たるや、ちょうど東北新幹線が開通したときに、国鉄の元技師長でありました、東海道新幹線を計画した島秀雄さんという方が、東北、上越は華美に過ぎると評したほどに、大体東海道線に使われた鉄とセメントの倍ぐらいを使用して過剰な投資を行っておる。車両にしても東海道型の五割ぐらい高いと言われる。その上、近々時速二百三十キロのスピードアップができるように設計されておるという。その増加投資に見合うだけの収入があれば、見込みがあれば、これは何も文句は言いませんけれども、結局のところ、大体十七年ぐらいしないと収支とんとんにならないなんという、そういうところにこういう過大な投資がなされること自体、やはり甘さそのものだと思うのですね。そういう意味で財投を見直してもらいたいということを申し上げたいのでございます。  あるいはまた、第二の国鉄は林野特別会計だと言われておりますが、ここだって、住宅不況のさなか、木材が値が上がらない。官業であるがゆえに労働生産性は低い。そして今いろいろとまた七十二年度目標にして合理化計画を立てられて、これまた汗をかいていらっしゃいますけれども、果たして七十二年度で収支とんとんになるような改善のめどが立っておるのだろうか。一回これは林野庁に聞かせてもらいたい。  同時にもう一つ不思議なのは、国有林野事業というのは、経済的に成り立つ事業と経済的に成り立たない部分がありますよね。例えば、水源林の涵養のための森林の培養、また奥地では経済的に成り立たないであろうという森林も、景観の維持だとかあるいは国土保全のために林地育成をしなければならない。そういう経済性の立つ事業と非経済的な事業を一緒くたに会計にほうり込んで、そして赤字になったら、そのような非経済的なものを持っておりますから仕方がないのでございますよと、一面では開き直るような言い方をする。そこらがまさに甘えそのものだと思うのですね。これだって、国鉄だって、もし財投の資金が枯渇をして、そんなこと言っても金がありませんよと言ったら、もっと合理化は早く始まっておったかもしれないし、もっと健全なものに早くなっておったのかもしれない。そういう反省がまだまだ足りないのではないか、私はそういう感じがするのでございます。  そして一方では、林野特別会計の補助はわずか九十億円ですね。そして、赤字の穴埋めの方は、返済のめどのない財投の貸付金で先送りをどんどんやっている。一般会計の収支の出し方もこれは問題だ。中曽根さんがこのごろ緑を大事にしようなんとおっしゃっておりますが、たった九十億円ぐらい一般会計から補助をして緑の確保が大切だなんてナンセンスですね、こんなのは。本当に緑の涵養が大事であり、そして水源林としても国土保全としても大事だとするならば、一般会計はもっと責任を持って林野会計に金を出すべきである。そういう発想がなぜ起こってこないのか、これは不思議でなりませんね。  同時に、今回提案されております林野三法というのですか、あれだって退職金の引当金をどうしようもないから財投から借りてくれ。利子は一般会計が払うと言っておりますけれども、住宅金融公庫と同じように、最初は金利を払いますよと言いながら、実際は、今度は自分でやれ、こういうことになるのでしょう。やることがどうもせっぱ詰まってどうしようもないから財投から、財投から。財投はだしにされておるわけですよね。もしこれ、財投に金がなかったらどうするのですか。林野庁の皆さんの退職金払わねばなりませんから、その資金繰りは大事だと思いますよ。しかしながら、だからといって財投がこういうものに金を出してよかったのですか。できないから今度は法改正だとこう言う。どうも政府がやるのは、法律が皆さんを縛るのではなくて、どうしようもないよ、どうしようもないよと後追い的に法律をそれに合うようにつくりかえていく。  今度の借換債だってそうですね。整理基金に繰り入れすることだってそうですね。皆さんが歯どめを失わないように、節度を持つように、努力目標として法律ができるにもかかわらず、そういうのができないとなると後から法律をつくって、今までの約束事はみんなほごにしてしまう。こんなのはでたらめじゃないですか。どうもこのごろ政府のやり方を見ておりますと、確かに財政が厳しい、それゆえにいろいろな面でふん詰まりであることは事実ですし、それを私も認めてはおりますけれども、やり方が何か事実を追認するように法律を変えていく。こんなことだったら法律なんかつくる必要はないな。こんなための法律審議するために一々委員会を開くなんということも、こんなのは要らない。幾らまじめに審議して法律を通しても、何年かすれば、事情に合いませんからまた変えさせてもらいたいと言って、都合のいいように法律を変えていく。大体おかしいんじゃないですか。大臣、総括的に御見解を聞きたい。
  139. 竹下登

    竹下国務大臣 林野三法については、私からお答えすると、もし間違えるといけませんからこれは避けることにいたしますが、本来財政が窮屈になりますと、よく歳出圧力の側におりますときに、いわば財投へ逃げ込む施策を間々考えがちなものでございます。その例が、幾らが御指摘のような問題も含んでございます。林野の場合も、財投資金を入れるというのが、一つ段階における、あるいは目標であったと思います。それから一般会計から入れるというのがその次に来た目標であったと思います。本来独算制であるべきものが、環境の変化の中でやむを得ざる措置として、そういうことが講ぜられてきた。しかし本来あるべき姿としては、財投というものは言ってみればその財投独自が抱えておるところの使命を達成すべきものであって、歳出圧力の中で財投に逃げ込むことに対して、イージーにこれに対応すべき性格は持っていないということは、私も基本認識として一緒でございます。  したがって、財投全体の問題については、御指摘なさったいろいろな角度から、さらに先ほど申し上げましたように、厳しくこれに対応していかなければ、言ってみれば一般歳出——一般会計、特別会計をも含めて、いわゆる歳出の中において財政改革そのものをとかく考えがちなものであるだけに、財投というものも厳しさを持って対応していかなければならぬ課題だという事実認識は、私どもも持っております。
  140. 西垣昭

    ○西垣政府委員 大臣からお答えがありましたように、財投について厳しい見直し、運用をするということは当然のことでありまして、私どももそのつもりでおります。資金運用部資金法は、安全確実原則というのがございまして、運用に当たっては安全確実ということでございます。私どもは、確かに収支不均衡の機関あるいは赤字機関に対する貸し付けというものをどう処理するか、これは非常に厳しい問題でございますが、そういう原則に照らしまして、改善計画の策定とか、いずれにせよその特別会計なり機関の内容が改善するようにという形で、それを確認しながら資金の運用を行っているわけでありますが、今御指摘がありましたように、なかなか厳しい状況でございます。これからも資金の運用に当たりましては厳しく対処したいというふうに考えております。  さっき言われました国有林の退職金に対する融資の問題でありますが、国有林の改善のためには要員の縮減がどうしても避けては通れない道として、そのための手段として退職金に対する融資という問題が出てきたわけでございまして、国有林の改善のための一つのやむを得ない措置として、全体の改善を前提といたしまして融資に踏み切ろうということにしたわけでございまして、御理解をいただきたいと思います。
  141. 米沢隆

    ○米沢委員 もう時間もありませんが、少なくとも資金運用部資金法の第一条には「確実且つ有利な方法で運用することにより、」と書いてありますように、大体毎年赤字を実質二兆円も出して長期負債累計が二十兆円というような公社に金を貸すなんというのは本当は法律違反だ、そういうようなぐらいのつもりで今後メスを大胆に入れてもらいたいと思います。  ちょっと横道にそれて大変恐縮でございますが、最後に、今後の借換債を含めた国債全般の消化を考えていく場合に、三つの留意しなければならない問題があると思います。  一つは、発行当局のコストをどう最小限にしていく対策をとるか。第二は、広い意味での金融市場への影響、特に他の金融資産との競合の問題をどう解決していくのか。第三に、よく言われますように、特定日への満期集中に伴う国債整理基金の資金繰りの問題。この三つが特に配慮しなければならない問題だと思いますが、この問題は三つとも絡み合っている問題で、一つ一つの分析はしにくいかもしれませんが、いずれの立場から見てもこれは短期国債の扱いあるいはシ団引き受けの扱い等々が焦点だろうと思います。これを総括して、現段階における大蔵省の御見解を聞かしていただきたい。
  142. 西垣昭

    ○西垣政府委員 短期国債につきましては、私どもは非常に重要な検討課題ということで検討を続けていきたいというふうに思っております。利子負担を軽減するために国債の種類をどうするかということは常に考えなければならない問題でございまして、一般的に言うならば、通常の金融情勢でありますと短期のものの方が利率が低い、長期のものの方が利率が高いという姿、これは普通の金融情勢のもとではそういうことになっております。したがいまして、その観点からだけいいますと、短期を相当出した方がいいのではないかという議論もあり得るのでありますが、満期構成が短期に偏りますと借りかえの圧力が強くなるという問題がありますので、その辺も十分踏まえながら、できることならば満期構成を短期化しないで何とかしのいでいきたいな、こんな感じでおります。  それから、競合する金融商品との問題でありますけれども、私どもといたしましては、国債の円滑な消化を図るために、国債だけがほかの競合する金融商品のことを考えないで、発行する国債の種類を決めていくということではなくて、やはり競合する金融商品との問題も考えながら、そこは円滑に発行、消化を図っていくという姿勢を失ってはならない、こういうふうに思っております。  それから、今御指摘がありましたように、六十年代借りかえがふえるだけではなくて、ある時期にそれが集中するという問題がございます。そのときの金融情勢によって、ちょうど償還期に同じように長期の国債借りかえることができるならば、それは非常に望ましいわけでありますけれども、常にそういうことが可能であるとは限りません。そういった意味で、前回の借換懇の場合にも、年度を超えた前倒しとか後ろ倒しを検討すべきではないか、こんなことが指摘をされておりますので、私どもといたしましては金融情勢のいかんによっては前に倒したり後ろに倒したりというようなことも含めまして、円滑な消化が図れるようにということを検討してまいりたいと思います。それから、今後の発行に当たりましては、一時期に償還が集中しないように、その辺も十分配慮してまいりたいというふうに考えております。
  143. 米沢隆

    ○米沢委員 終わります。
  144. 中西啓介

    ○中西(啓)委員長代理 次回は、明十八日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時三十六分散会