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1984-04-06 第101回国会 衆議院 大蔵委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年四月六日(金曜日)     午前九時五十分開議  出席委員   委員長 瓦   力君    理事 越智 伊平君 理事 熊川 次男君    理事 中西 啓介君 理事 中村正三郎君    理事 伊藤  茂君 理事 野口 幸一君    理事 坂口  力君 理事 米沢  隆君       鍵田忠三郎君    亀井 静香君       熊谷  弘君    小泉純一郎君       笹山 登生君    椎名 素夫君       塩島  大君    田中 秀征君       中川 昭一君    西山敬次郎君       平沼 赳夫君    平林 鴻三君       藤井 勝志君    町村 信孝君       村上 茂利君    森  美秀君       山岡 謙蔵君    与謝野 馨君       上田 卓三君    川崎 寛治君       沢田  広君    渋沢 利久君       戸田 菊雄君    堀  昌雄君       松浦 利尚君    坂井 弘一君       宮地 正介君    森田 景一君       矢追 秀彦君    安倍 基雄君       玉置 一弥君    正森 成二君       簑輪 幸代君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 竹下  登君  出席政府委員         大蔵政務次官  堀之内久男君         大蔵大臣官房審         議官      水野  勝君         大蔵大臣官房審         議官      大山 綱明君         大蔵省主計局次         長       平澤 貞昭君         特許庁長官   若杉 和夫君         特許庁特許技監 齋田 信明君         特許庁総務部長 小野 真魚君         特許庁審査第一         部長      野崎  紀君  委員外出席者         科学技術庁計画         局調査課長   尾藤  隆君         大蔵省主計局法         規課長     八木橋惇夫君         大蔵省主計局主         計官      兵藤 廣治君         文部省大学局技         術教育課長   遠山 耕平君         文化庁長官官房         会計課長    田中 潤佑君         農林水産省農蚕         園芸局総務課長 近長 武治君         農林水産省畜産         局衛生課長   今井 正夫君         水産庁研究部研         究課長     田邊 隆一君         通商産業省機械         情報産業局情報         処理振興課長  柴崎 徹也君         特許庁総務部総         務課長     眞木 祐造君         特許庁総務部資         料整備課長   柴田 勝隆君         特許庁審査第二         部調整課長   吉田 豊麿君         特許庁審査第四         部長      梅田  勝君         特許庁審判部長 貞重 和生君         大蔵委員会調整         室長      矢島錦一郎君     ――――――――――――― 委員の異動四月六日  辞任         補欠選任   笹山 登生君     平林 鴻三君   平泉  渉君     西山敬次郎君   平沼 赳夫君     亀井 静香君   宮下 創平君     町村 信孝君   山中 貞則君     鍵田忠三郎君   川崎 寛治君     松浦 利尚君   柴田  弘君     森田 景一君 同日  辞任        補欠選任   鍵田忠三郎君     山中 貞則君   亀井 静香君     平沼 赳夫君   西山敬次郎君     平泉  渉君   平林 鴻三君     笹山 登生君   町村 信孝君     宮下 創平君   松浦 利尚君     川崎 寛治君   森田 景一君     柴田  弘君     ――――――――――――― 四月四日  貸金業規制等に関する法律の一部を改正する  法律案伊藤茂君外十三名提出衆法第一〇号  )  出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関  する法律の一部を改正する法律の一部を改正す  る法律案伊藤茂君外十三名提出衆法第一一  号) 同月六日  調和ある対外経済関係の形成を図るための国際  通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う  措置に関する法律等の一部を改正する法律案  (内閣提出第五四号) 同月二日  申告納税制度改悪反対等に関する請願天野等  君紹介)(第一八三〇号)  同(田並胤明君紹介)(第一八三一号)  同(竹内猛紹介)(第一八三二号)  同(上野建一紹介)(第一九〇九号)  同(小川国彦紹介)(第一九一〇号)  所得税大幅減税等に関する請願串原義直君  紹介)(第一八三三号)  同(小林進紹介)(第一八三四号)  同(田並胤明君紹介)(第一八三五号)  同(細谷治嘉紹介)(第一八三六号)  同(宮地正介紹介)(第一八三七号)  同外一件(井上一成君紹介)(第一八九九号)  同(岩垂寿喜男紹介)(第一九〇〇号)  同外三件(上野建一紹介)(第一九〇一号)  同(加藤万吉紹介)(第一九〇二号)  同(佐藤観樹紹介)(第一九〇三号)  同(田中美智子紹介)(第一九〇四号)  同外五件(野間友一紹介)(第一九〇五号)  同(松沢俊昭紹介)(第一九〇六号)  同外三件(横山利秋紹介)(第一九〇七号)  公立高校用地確保のため筑波移転跡地払い下げ  等に関する請願伊藤昌弘紹介)(第一八八  八号)  同(石川要三紹介)(第一八八九号)  同(上田哲紹介)(第一八九〇号)  同(小澤潔紹介)(第一八九一号)  同(鯨岡兵輔紹介)(第一八九二号)  同(小坂徳三郎紹介)(第一八九三号)  同(渋沢利久紹介)(第一八九四号)  同(藤原哲太郎紹介)(第一八九五号)  同(山花貞夫紹介)(第一八九六号)  同(与謝野馨紹介)(第一八九七号)  申告納税制度改悪反対等に関する請願高沢  寅男紹介)(第一八九八号)  物品税増税大型間接税導入反対等に関する請  願(野間友一紹介)(第一九〇八号)  大幅減税実現大型間接税導入反対等に関す  る請願外四件(伊藤茂紹介)(第一九一一号  )  同(上田哲紹介)(第一九一二号)  同(金子みつ紹介)(第一九二二号) 同月四日  所得税大幅減税等に関する請願石田幸四郎  君紹介)(第二〇三四号)  同外一件(岩垂寿喜男紹介)(第二〇三五号  )  同(近江巳記夫紹介)(第二〇三六号)  同(長田武士紹介)(第二〇三七号)  同(経塚幸夫紹介)(第二〇三八号)  同(斉藤節紹介)(第二〇三九号)  同(坂口力紹介)(第二〇四〇号)  同(新村勝雄紹介)(第二〇四一号)  同(田並胤明君紹介)(第二〇四二号)  同(高沢寅男紹介)(第二〇四三号)  同(富塚三夫紹介)(第二〇四四号)  同(春田重昭紹介)(第二〇四五号)  同(東中光雄紹介)(第二〇四六号)  同(正森成二君紹介)(第二〇四七号)  同(松本善明紹介)(第二〇四八号)  同外二件(元信堯君紹介)(第二〇四九号)  同外一件(矢追秀彦紹介)(第二〇五〇号)  同外一件(山口鶴男紹介)(第二〇五一号)  同(山下八洲夫君紹介)(第二〇五二号)  申告納税制度改悪反対等に関する請願上田卓  三君紹介)(第二〇五三号)  同(浦井洋紹介)(第二〇五四号)  同(新村勝雄紹介)(第二〇五五号)  同(正森成二君紹介)(第二〇五六号)  同(三浦久紹介)(第二〇五七号)  同(矢追秀彦紹介)(第二〇五八号)  大幅減税実現大型間接税導入反対等に関す  る請願坂口力紹介)(第二〇五九号)  同(松本善明紹介)(第二〇六〇号)  公立高校用地確保のため筑波移転跡地払い下げ  等に関する請願(有島重武君紹介)(第二〇六  一号)  同(長田武士紹介)(第二〇六二号)  同外一件(工藤晃紹介)(第二〇六三号)  同(斉藤節紹介)(第二〇六四号)  同(高沢寅男紹介)(第二〇六五号)  同(中川嘉美紹介)(第二〇六六号)  同(浜野剛紹介)(第二〇六七号)  同(不破哲三紹介)(第二〇六八号)  同(松本善明紹介)(第二〇六九号)  申告納税制度改悪反対等に関する請願(小沢  和秋君紹介)(第二〇七〇号) 同月六日  身体障害者使用自動車に対する地方道路税、揮  発油税免除等に関する請願上野建一紹介)  (第二一五九号)  同(武部文紹介)(第二一六〇号)  間接税増税反対所得税減税実現等に関する  請願外一件(上坂昇紹介)(第二二二二号)  所得税大幅減税等に関する請願外五件(網岡  雄君紹介)(第二二二三号)  同外二件(伊藤茂紹介)(第二二二四号)  同(佐藤敬治紹介)(第二二二五号)  同外一件(新村勝雄紹介)(第二二二六号)  同(高沢寅男紹介)(第二二二七号)  同(堀昌雄紹介)(第二二二八号)  同外二件(山中末治紹介)(第二二二九号)  申告納税制度改悪反対等に関する請願井上一  成君紹介)(第二二三〇号)  同外一件(伊藤茂紹介)(第二二三一号)  同(野口幸一紹介)(第二二三二号)  同(村山富市紹介)(第二二三三号)  同(和田貞夫紹介)(第二二三四号)  大幅減税実現大型間接税導入反対等に関す  る請願藤田高敏紹介)(第二二三五号)  申告納税制度改悪反対等に関する請願外一件  (左近正男紹介)(第二二三六号)  同(高沢寅男紹介)(第二二三七号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  小委員会における参考人出頭要求に関する件  各種手数料等の額の改定及び規定合理化に関  する法律案内閣提出第五〇号)  特許特別会計法案内閣提出第五一号)  国家公務員等の旅費に関する法律の一部を改正  する法律案内閣提出第五二号)  昭和四十二年度以後における国家公務員等共済  組合等からの年金の額の改定に関する法律等の  一部を改正する法律案内閣提出第五三号)      ――――◇―――――
  2. 瓦力

    瓦委員長 これより会議を開きます。  各種手数料等の額の改定及び規定合理化に関する法律案及び特許特別会計法案の両案を議題といたします。  この際、両案について政府より順次趣旨説明を求めます。竹下大蔵大臣。     ―――――――――――――  各種手数料等の額の改定及び規定合理化に関   する法律案  特許特別会計法案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  3. 竹下登

    竹下国務大臣 ただいま議題となりました各種手数料等の額の改定及び規定合理化に関する法律案及び特許特別会計法案につきまして、提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  まず、各種手数料等の額の改定及び規定合理化に関する法律案につきまして御説明申し上げます。  各種行政事務に係る手数料等、すなわち、特許料登録料試験手数料、書類の交付手数料等につきましては、これまで三年ごとに見直しを行い、これらの手数料等改定を行ってきております。  昭和五十九年度は、ちょうどこの見直しの時期に当たり、また、同年度の厳しい財政事情にもかんがみまして、各種手数料等金額について全般的な見直しを行い、これらの事務に係る所要経費に見合った改定を行うことにより費用負担適正化を図ることとするとともに、昭和五十六年度における各種手数料等改定に関する法律に係る国会の附帯決議等の御趣旨を踏まえまして、経済情勢等の変化に対応し、費用負担の適切な調整に資する等のための規定合理化を図るため、この法律案提案することといたした次第であります。  以下、この法律案内容について御説明申し上げます。  第一に、特許法等工業所有権に関する四法律規定されております特許料等金額または限度額につきましては、これらの所要経費増加等を勘案して、それぞれ必要な額の引き上げを行うこととしております。  第二に、これら特許法等工業所有権に関する四法律及び不動産の鑑定評価に関する法律等三十九法律規定に基づく各種手数料等で、所要経費に係る実費により算出できるものにつきましては、その額をこれらの実費を勘案して政令で定めることができることとする等の規定合理化を行うこととしております。  次に、特許特別会計法案につきまして御説明申し上げます。  近年における特許等工業所有権出願件数の著しい増大、その内容高度化複雑化等に対処するため、コンピューター化を中心とする総合的施策を講ずることにより、特許等工業所有権に関する事務の遂行に資するとともに、その経理を明確にするため、特別会計設置し、これを一般会計と区分して経理することが適当と認め、この法律案提案することといたした次第であります。  以下、この法律案内容について御説明申し上げます。  第一に、この特別会計は、特許等工業所有権に関する事務に係る経理を行うことを目的とし、通商産業大臣が管理することとしております。  第二に、この特別会計は、郵政事業特別会計からの特許印紙に係る受入金その他の収入をもってその歳入とし、事務取扱費施設費その他の諸費をもってその歳出とすることとしております。  その他、この特別会計予算及び決算の作成及び提出に関し必要な事項を初め、一般会計からの繰り入れ剰余金繰り入れ、借入金の借り入れ等必要な事項を定めることとするとともに、この特別会計設置に伴い必要な経過規定を設け、関係法律の諸規定整備を行うこととしております。  以上が、各種手数料等の額の改定及び規定合理化に関する法律案及び特許特別会計法案提案理由及びその内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。     ―――――――――――――
  4. 瓦力

    瓦委員長 これにて趣旨説明は終わりました。
  5. 瓦力

    瓦委員長 これより両案について質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊藤茂君。
  6. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 ただいま提案されました二法案について、幾つか質問をいたします。  まず、特許特別会計の関連でございますが、特許庁に伺う前に、会計法上の見解を伺いたいと思います。前にも当委員会で議論したことがございましたが、特会新設については極力抑制するようにという臨調答申もなされておりますし、またその中で、特別会計はそれぞれの顔とそれぞれの体質とそれぞれの内容を持っている、もっと国民にわかるようにディスクロージャーの努力、それぞれの会計内容についての研究をしなければならないなどなどの論点指摘をされておりますが、そういう立場で極力抑制という臨調答申が出た中で、まず最初にこの創設、新しくこれがつくられるという問題が出てきたわけであります。そういう意味でいって、これを、特別会計をつくるそういう状況の中での積極的な理由というものはどうお考えになって出されましたか。
  7. 平澤貞昭

    平澤政府委員 今回、特許特別会計創設をお願いしました理由でございますけれども、これも御存じのように、我が国の特許処理が大変おくれておりまして、諸外国等と比べますと、このままでいきますといろいろの問題が生じてくるということが一番大きな背景になっております。現在でも、特許等を出願いたしまして、二年三カ月くらい処理にかかっておりますし、このまま推移いたしますと、十年後くらいには七年くらいかかるのじゃないかというような予想も立てられるような状況であるわけでございます。  そこで、特許行政全般国際的に十分評価できるようなものにしていくというためには、積極的に各般施策をとっていくことが必要であるわけでありますが、そのためには、一般会計で行うよりも特別会計新設いたしまして、そこで特許料等収入をこの特別会計に入れ、これをそのような方面で使っていくということにするのがいいのではないかということが主たる理由でございます。  それから、その場合にやはり受益と負担との関係というものも明確にしていく必要があるのではないかということも、この会計を設けていく理由一つとして挙げられるのではないかと考えるわけでございます。  その場合に、特許特別会計新設いたしますので、臨調等答申もございますように、特別会計新設は極力抑制ということもございますので、別途機械類信用保険特会を廃止して、数としては差し引きゼロということでお願いしたいということでございます。
  8. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 というふうな趣旨が文書でも出ておりますが、今平澤さんが言ったような趣旨に立って、特許料等改定により増徴を図るとともに、一般会計と区分して経理することとする。ちょっとこれの文章も、「増徴」というのはおかしい。増収か負担をお願いするかわからないけれども、徴兵の「徴」が書いてありますから注意してください。  私は、このような制度なり、あるいはまた先端技術も使った処理方式がとられる必要があるというのは、時代に対応する今日の問題であろうというふうな気がいたします。ただ、会計財政面からいいますと、臨調答申その他いろいろな意味でさらに努力をされなければならない面があるわけでありまして、そういう面についての努力と並行して行われないと、さまざま指摘をされている問題点が依然として残っていくということにもなりかねない。そういう面をきちんとしなければならないと思います。  そういう意味で二つ伺いたいのですが、一つは、確かに、特別会計という制度にいくということのメリットもあるし、デメリット現実にありますね。メリットとしては、今の御説明のような、より合理的なという側面があると思います。それからデメリットの面では、臨調でも指摘をされたように、それぞれ自由にといいますか、そういう形が出てくる。そういう会計内容や、あるいはさまざまの仕事をしたその内容の整理、経理区分というものが必ずしも明確にならない面が出てくる。それから、さまざまの行政あるいは国民的なコントロールから離れて推移するような危険性もある。メリットデメリット、両面あると思うんですね。今日の時代ですから、やはりこういう特別会計をつくるに当たっては、さまざま指摘されている論点も含めて、デメリットがないように計画、運用の考え方が立てられる必要があるというふうに思います。今までの論議の経過を含めて、そういう視点をどうお持ちになってこの特別会計創設提案なさっているのか。  兼ね合わせまして、臨調答申などで問題がさまざま指摘をされました後、指摘をされた問題についての改善努力、どうしたらいいのかということについてさまざまの研究なども行われているようであります。昨年二月に当委員会で議論をしましたときにも答弁をいただきまして、財政制度審議会の中に小委員会をつくって抜本的な勉強をしようということで開始をしておりますということとか、あるいはまた、さまざまの指摘された問題について、若干時間はかかるだろうけれども極力努力をしていきたいとかいうふうな見解が出されておりますが、全体としてそういう努力が今日どう進められているのか。大蔵省の庁内で、あるいは財政審も含めまして、どういう努力がなされているのか。  それから、私は思いますが、そういう中の一つとして、特別会計にはさまざまの顔とさまざまの内容がある。しかし、その共通ルールといいますか、あるいはできれば共通法といいますか、そういうものはできておりません。全部ばらばら、別々の法律であります。共通法があればいいんだろうと思いますが、少なくとも一つ共通の基準、ルールというものがあって運用されていくというふうなことが必要ではないだろうか。数も多いし、あるいは予算の総額からいっても膨大な額になるわけでありますから、国民にとってもそれが明瞭にわかるようにしなければならないと思いますが、今回の創設に当たってのその辺の問題意識をどうお考えかということと、それから特別会計制度全般についてのその後の御努力、どうなっておりますか。
  9. 平澤貞昭

    平澤政府委員 御存じのように、特別会計につきましては財政法第十三条に「国の会計を分って一般会計及び特別会計とする。」という規定が第一項にございまして、それから第二項に、その特別会計三つの場合がある、特定事業を行う場合、特定資金を保有する場合、それからあと経理を区分して行う必要がある場合、このように三つに分けておるわけでございます。  最後の御質問からお答えすることになると思いますが、このように財政法上は、特別会計につきまして共通的に規定しておりますのは、この十三条ということでございます。しかし、今申し上げましたように、三つの場合に特別会計設置を認めているわけですが、現在三十八あるわけでございますけれども、特別会計中身一つ一つ見ますと極めて多様な中身になっておりまして、これを共通法的に規制するのはなかなか問題があるわけでございます。そういう意味で、個別に特別会計法をお願いしておのおの設置しているというのが現実の姿ではないかというふうに思うわけでございます。  そこで、その前の御質問へのお答えになるわけでございますけれども、御指摘のように臨調答申で、この特別会計につきましてはできるだけ整理合理化していくべきであるという答申が出されているわけでございます。若干詳しくなりますが、指摘を受けておりますのは、特別会計設置抑制見直しの推進を積極的にやるべきであるということが一つございます。この特別会計新設につきましては、昭和四十二年に四十五という数の特別会計がございましたが、その後設置抑制いたしまして、現在、先ほど申し上げましたように三十八という数字になっているわけでございます。特に五十年度以降は四十二特会を三十八ということで、四つ廃止しているということでございます。そういう意味で、新設については極力抑制しておりますし、今回も先ほど申し上げましたように、機械類信用保険特会をかわりに廃止するということでこの方針を貫いているということであります。  それから、二番目に臨調で言っておりますのは、この特別会計の運営について改善していくべきであるということでございます。先ほど委員からこの点特に御指摘がございましたように、これにつきましても各般努力予算編成等の過程においてしてきているところでございます。御存じのように、交付税特会につきましては赤字補てん的な借り入れは今後やめることといたしておりますし、その他厚生保険特会健康勘定日雇い勘定等々につきましても同趣旨改善を図っているところでございます。また臨調答申で、資金の保有あるいは多額の剰余金が生じている場合には一般会計への繰入措置等を講じたらどうかということもございますが、これにつきましてもいろいろの措置をとってきているわけでございます。  それから、三番目に臨調答申で言っておりますのは、特別会計会計経理明確化をすべきではないかということでございます。特に損益計算書作成を義務づけてはどうかということがございますが、これらの点につきましては財政審の安分業会計小委員会で、特別会計を含めて安企業のあり万全般について現在調査審議を行っていこうとしておりますので、その結果をまって適切な施策をとっていきたい、このように考えております。
  10. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 私が申し上げたのは、臨調答申指摘をされたそういう建前論論点以外に、またそれ以上に、この数年間当委員会あるいは私どもの審議としては、この特会制度についてはさまざまの苦々しい思い出があるわけでありまして、補助貨幣積立金と減税財源の問題も大分ごまかされたという思いで、私どもいたわけであります。  それから、財政再建上のことにいたしましても、特に昨年度、税外収入が非常に大きな額が見積もられまして、その中でこの特別会計の幾つかにも手がつけられたというふうな経過があったわけであります。数年前にはそれらのことはよく説明もされないし、我々もよくわからない、そういう中でさまざまの法案審議なり議論なりせざるを得なかったということがあるわけでありまして、そういう経過から見ましても、やはり数も多く、多面性があり、しかも金額全体としては巨額になるというものについてもっと明確にする、そういう問題意識を持って、ほかのどこよりもきちんとした中身のシステムになっていくような運用が、ここで一つのいい方向のモデルとして運用されるべきであろうという気持ちで申し上げたわけであります。  具体的な特別会計がつくられて、今後どうなっていくのかということに関連をした御質問を幾つかしたいと思います。  一つは、この特会制度の導入によって、工業所有権制度の理念といいますか、そもそもあり方の問題が変わらないかという疑念があるわけでありまして、特許法の第一条には、産業施策の一環であり、公共の利益を追求する制度である、公共の利益という立場が出されております。それから、今回の特会制度をつくる経過の中では、臨調に出した通産省の資料などなどの中では、やはり受益者負担という原則が貫かれている。受益者負担と公共の利益とあるわけでありますが、やはり理念としては、高度技術国家を目指す我が国の立場というものを考えますと、やはり出願をする人というところに、あるいはそれを利用する人というところに限定をされた受益者負担というものよりも、特許法第一条で言っているような産業全体の発展、産業施策の重要な一環であり、また公共の利益というふうな側面、こういう面も大事であろう。特許法第一条で言っているような、そういう理念、目標というものが曲げられるということがあってはならないのではないか、そういう懸念もあるわけでありますが、どうお考えですか。
  11. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 お答えいたします。  先生御指摘のとおり、工業所有権制度特許制度というものが非常に公共性の高いものであり、公益的といいますか、国家的見地からの制度であることは論をまたないわけでございます。  そこで、今度の特会法との関係でございますけれども、まず基本的な工業所有権制度のフレームワーク、つまり出願審査あるいは権利の付与、権利の期間あるいは権利の内容、そういう基本的な工業所有権制度のフレームワークは、御承知のとおり、一切、まず変わっておりません。今後も基本的には変わらないものと思います。  ただ、特別会計制度を導入することによって、料金体系の問題とか、あるいは、事業性を重視する余り、そういうある種の公共的な立場とのアンバランスが出てくるのではないか、こういう御懸念であろうかと思いますが、料金につきましては、確かに今度ある程度の値上げというものを考えておりますけれども、同時にこれは受益者といいますか、出願人の大幅な利益改善というか、利益というものとのバランスということも十分考えましたし、それから国際的な価格、料金の動向ということも十分勘案いたしまして、そしてなおかつ世界各国も通観しますと、先進国系統のかなりの国におきまして、やはり特別会計制度の導入というのを既にかなり前から実施しているという現実もございます。さような意味合いで、我々としては、公共の利益とのバランスが特に崩れるということはないと思っています。  もちろん、この会計事業会計じゃございません、区分経理特会でございまして、収益を一切目的としているわけではございませんし、また、先ほど冒頭申しましたように、いろいろな特許制度にかかわる一般サービスというのがございます。資料館の特許情報サービスとかいろいろなサービスについても、今後とも一切変更するものではございませんので、特に今後特会制度を導入したからといって、その基本フレームワークが変わるものではないと我々は確信しておるわけでございます。
  12. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 その点をきちんと踏まえていただきたいと思いますが、具体的な今後の内容についてお伺いいたします。  特許の申請件数を見ますと、日本は世界の四割ですか、異常に多い。非常に多いというよりも異常に多い状態になっておりまして、事前のレクで長官の話も伺いましたが、なぜ日本はかくも出願件数が多いかということについて、五つのポイントが書いてございました。技術開発に熱心であるとか、非常に国民的関心が高いとかさまざま書いてございまして、そういう状態が今日まであって、これからどうなるのだろうか、これからのことですから、と思うわけであります。  私は、これからの社会の変化を考えますと、幾つかさまざまな要因を考えなければならないということではないかと思います。激しいテンポで高技術化社会というものに移行していく、そういう中で、一面では極めて激しい開発競争、企業間、国際間競争を含めた激しい技術開発競争が展開されているというわけでありますが、そういう面から見れば、さまざまの開発技術申請件数もふえるということも予想されるでありましょう。伸び率も相当高いと言われるわけてありますが、別の面から見ますと、やはり今日の技術開発の状態を見ましても、非常に高度な技術内容とベースが必要なわけでありまして、開発には膨大な人員と膨大なエネルギーが投入されている。したがって、さまざまの工業特許関係をする内容にいたしましても、非常にコストの高いものになってくるというふうな側面もあるのではないだろうか。そういうことを考えますと、非常に多い出願数ということの将来というものをどう考えたらいいのかという問題意識もあるような気がいたします。  それともう一つは、五割、五割と上げていくわけでありますけれども、やはり世界から見て特許料金が安いということも一つの要素になって、世界の二分の一ないし三分の一であるというふうに言われておりますが、安いことも一つ、異常な数の理由にもなっていたのではないだろうか。私は、これからの社会の将来を考えますと、さまざまのコストがありますから、コストに見合う負担という側面もあるでありましょう。同時に、技術をもって進んでいかなければならない日本の国でありますから、何でもほかの国より安いからほかの国並みがいいという問題でもないだろうというふうに思うわけでありますが、五割、五割と上げていくその見通しと、そういう視点、どうお考えになっておりますか。
  13. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 現在、世界の四割を占めています日本の非常に多い特許、実用新案の申請、換言すれば特許活動というものが今後どうなるだろうかという、非常に難しい先生の御質問でいらっしゃいます。確かに二つの面があるのでございます。といいますのは、やはり先生御承知のように、日本の技術というのは改良技術が今非常に多いわけでございまして、基本的なベースの技術開発が非常におくれているということでございます。近年、これについては日本の朝野を挙げる努力もありまして、企業が基礎技術開発というのをやはり非常に重視しております。一つ研究開発投資が五十億、百億というようなものも、ざらとは申せませんけれども、かなり頻繁に見られるようになってまいりました。大型の基礎技術開発というものが非常に進んできているわけでございまして、そういう意味では逐次アメリカ型に接近しておるという面がございます。  そういうような意味とか、あるいは率直に言いまして非常に特許出願が多いのは、企業の競争。この競争に二色ありまして、実は新商品、新製品のライフサイクルが非常に短くて、同じようなビデオテープが幾つも出てくる。そういう商品間の競争もありますが、もう一つはもうちょっと悪い競争でありまして、ある社が特許出願をこれだけやるとおれの社はもっとふやそうというような競争も実はございまして、そういう競争に支えられている面がかなりございますが、これは逐次落ちついてくるものと思われます。こういう意味のむだな競争は逐次減ってくるのじゃないか。そういう二点は、やや出願件数が落ちつく見通しの一つの根拠になります。  それから同時に、今度はもう一つ違う方のファクターを申しますと、今私ども地方へ行きましても、中小企業のすそ野まで技術開発をやりたい、そうして自分の企業の優位性を確保したいという意欲が非常に感じられるわけでございます。現在中小企業の出願動向というのは安定しておりまして、それほどふえていないのですが、今後ある程度ふえていく可能性を包含していると私は思います。そういうようなプラスの要因もあります。  両方相まちますとどういう見通しになるのか。ただ御承知のように私ども通産省の長い経験でも、日本の十年先、二十年先を占うときに、アメリカの十年先、二十年先がやはり相当参考になるケースが非常に多いのでございます。そういうものも勘案しますと、今後ある程度伸び続けるけれども、一定の段階に行けば収れんするのではないか、無制限にどんどん伸びていくというようなことにはならないのではないか、かように判断しております。  次に、料金の値上げと出願件数関係がどうなるのだろうかということでございます。これは率直に結論を言いますと、五割とか倍、三年にわたっての倍程度では有意な変化は及ぼさないというのが、我々の得た結論でございます。  それは二つの理由からでございます。いずれも過去の経験でございますが、日本でも過去にインフレ率が高かった時代もありますし、三年ごとというまとめて値上げをしているケースが一般でございますので、上げ幅が大きくなるわけでございます。過去でも一回に一〇〇%、ひどい場合は三〇〇%という値上げもありました。通常やはり五割ぐらいの値上げをずっとしてきたわけでございますが、そういうときの経験。それから、今度アメリカにおきまして一挙に出願料を四倍にいたしました。一昨年やりましたが、その経験。アメリカもかなり心配したのでございますが、結局出願は落ちなかったというような経験。それからもう一つ、今度の値上げでいろんな企業の方とお話をいたしました、そのときの企業サイドの反応。こういうものを総合勘案いたしますと、はっきり言いまして五割程度では出願件数に有意な変化はないだろう、出願抑制的な効果はほとんど少ないだろうというのが、我々の得た結論でございます。
  14. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 そこで、こういう面がさらに配慮されていいのではないだろうかと思います。長官もおっしゃいましたが、これからの技術開発、さまざまな研究あるいは特許申請というものを考えますと、一面では大企業の、しかも大規模な資本力を投下した研究開発の中から生まれてくる分野、ある意味ではこれがメーンという性格を持つだろうと思います。  私の地元の神奈川県なんかでも、先端産業部門が圧倒的に多いところですから、エレクトロセンターとかあるいは研究所的なものとかいう部門が非常に拡充をされている姿をいつも見ております。そういうところへ伺いましても、名前は工場であるが、そういう部門では半分以上が博士号とかいうような、アメリカのベル研究所に近いみたいな報告が出てくる。そういうところで先端技術を開発して特許申請をする、国際的にも出願をするというふうな部面が大きなウエートを占めるであろう。  もう一つは、中小企業、中堅企業ですね。長官も言われたように、中小企業の技術開発意欲あるいは新しい機械を入れる設備投資意欲が非常に根強い。根強いというよりも、そういうものがなければ仕事がもらえないという構造にあるわけですから、大変苦労してやっている方が多いわけであります。日本の産業構造から見てもそうなんですが、いろいろな困難がありながらも、そういう中小あるいは中堅企業が先端を行く技術開発をして伸びていく。ソニーだって本田だって、全部戦後派ですからね。そういうものがあって、言うならば法人の圧倒的な層は中小企業ですから、そういうものが単なる下請でいじめられて苦しいだけじゃなくて、活力ある多数派としてこれからの産業構造の中でもウエートを占めていく。そういう活力ある多数派としての中小企業あるいは中堅企業が開発の努力をしていく。私のおつき合いした中で聞いてみましても、何かアイデアを発揮しても、自分のところでやる能力がなかなかないので、大手のところに持っていって、こういうアイデアがありますが実際に使えないでしょうかという相談に行ったとか、時々そういう話も伺うわけでありますが、そういう層を大事にしなければならないと思うわけであります。  そういう面を考えてみますと、それに対するさまざまの配慮というものが産業政策上も当然あって、特許制度の対応があってもいいんじゃないだろうか。何か国によって違うと思います。今長官がおっしゃった、アメリカのように上がっても心配なかったという例もあるでしょうし、それから、幾つか伺ってみましたが、国によっては中小企業への配慮という意味で、料金を安くする制度をつくるとか、あるいはさまざまの恩恵を与えるとかいう特別配慮という面での国の例もあるようであります。その辺のきめ細かいといいますか、弱いものを助けるというだけじゃなくて、産業政策として活力ある多数派としての、そういう意欲のある中小、中堅企業を育てていくという視点からの行政配慮があるべきであろうというふうに僕は思います。それは料金だけじゃなくて情報提供の方、そういう情報提供のシステムの中でも、そういう小規模だが強い意欲を持ってやろうとしているものに対するサービスをできるだけ十分やっていくという配慮が必要だろうと思いますが、どうお考えでしょう。
  15. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 先生御指摘のとおり、中小企業の技術開発意欲は非常に強いわけでございます。それから同時に、中小企業の特許、実用新案の開発の関係と大企業の関係とは、ある種の際立った特徴があります。一口に言いますと、中小企業の特許あるいは実用新案の申請は、採算といいますか企業化といいますかに近いものの比率が非常に高いわけでございます。  これはいろいろな例から言われるわけでございまして、例えば自動車というものを一つ例にとりますと、自動車には何千という特許と実用新案があるわけでございます。日産の自動車もトヨタの自動車もあると、一体両方がどうなっているかというと、クロスしているわけです。クロスしてお互いに認め合っているわけですね。そうすると、日産、トヨタが、具体的な会社の名前を申して申しわけないのですが、ある程度の発明なり実用新案を、自動車のちょっとしたものでしても、実は相手を押さえられる力はないのです。というのは、相手のものをもらっていますから。そういうようなことが大企業のケースに割と多いんです、これは例外ももちろんありますけれども。ところが中小企業の場合は、俗に言えば割と簡単なものが多いんです。簡単だから重要でないということはないのですが、ゲージとか、ちょっとした測定器とか、ちょっとした設備、こういうものは、そこを押さえますと、極端に言えばある期間相当独占性が保てるというようなケースも、中小企業の方はどちらかというと多いのでございます。  そういうことと、もう一つは、中小企業の場合、そういう意味でライフサイクルの割と短い発明も多いわけでございます。つまり、実用化が割と早くてライフサイクルが短いというようなことが、比較的中小企業の発明に多い傾向があります。そこで中小企業の場合は、非常に早く審査をしてくれという要望が大企業以上に強いというのが一つの特徴でございます。  それから、今度は中小企業の発明特許活動の一つの弱点を申しますと、大企業の場合は何千何万と企業によって出しておりますから、立派な特許部で、大きい会社は三百人も特許部員がおるわけでございまして、そしてコンピューターを駆使し、整理し、データを集め、いろんな特許分析、技術情報分析をやっているわけでございます。それが主たる特許部の仕事になるわけでございます。ところが、中小企業の場合は、はっきり言って年に一件とか二件の出願、しかも特許部員なんて一人もいない、おやじさんがやっているというわけでございまして、そういう情報とか分析能力というのは逆に言えば極めて低いわけでございます。そこが弱点でございまして、端的に言いますと、申請しても特許登録になる率は大企業に比べて非常に悪いわけでございます。それはそういうことの反映でございます。  したがいまして、今中小企業に一番望まれていることは二点ございまして、一つはやはり審査を早くやること、それから第二は、特許管理、特許情報管理。入手能力が非常にウイークでございますから、それを何とか補ってあげたいという、この二点が中小企業サイドからは非常に必要なことでございます。  そこで、我々としてはこの両方ということで今度のコンピューターシステムをやるわけでありまして、特に審査の迅速的確は当然中小企業も大企業も一律に行われるわけでございますけれども、情報提供というのについて、我々特に中小企業に力を入れたいと思います。そのためにコンピューター化あるいは要所要所に共同で利用するようなオンラインというものを将来持っていかなければいけませんし、そもそも特許情報の利用の仕方、どこでどういうふうに利用したらいいか、今極端には電話一本で利用できるようなシステムになっておるわけでございます。そういうことすら知らない。  それからさらに一歩進めますと、ちょっと専門的になりますけれども、特許マップというものをつくって、自分の専門のゲージならゲージ分野におきまして、世界のあるいは国内の競争者の開発状況特許取得状況というのをツリー、枝、木みたいにつくりまして、自分のねらう方向、そういうものも精査する。特許マップというのが大企業ではもう常識化しつつあるわけでございますが、そういうものもそんなに難しいわけじゃございません。そういうことの指導とかそういう面について、今度の予算でも新たにかなりの額を計上いたしまして徹底してやっていきたい、かように思っているわけでございます。
  16. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 その部面をぜひ十分配慮してやっていただきたいと思います。これからの中長期の日本の技術開発時代がどうなっていきますか、私も予測はできませんが、一面では多額のエネルギーとコストを導入して大規模にやっていく、先端技術を開発していくという側面は当然あります。同時に、戦後の日本のさまざまの技術あるいは企業の歴史を見ましても、中小、中堅のところからやはり先を見越した新たな開発を持ち、それが内外に大きく成長していくという面も実はあるわけでありまして、いろいろなそういう活力があって日本の経済、産業が発展していくというふうなことであろう。まあ弱肉強食的様相にはならないように配慮をしていくということが、弱きを助けるというのと違った意味で重要な日本の産業の一視点ではないだろうかと思うわけでありまして、そういう配慮をぜひ持ってやっていただきたいと思います。  次に、このペーパーレスシステムに関係をして、審査官やあるいは必要な事務職員を含めた人員の見通しの問題であります。この進行の中で減るのですか、ふえるのですか、今と同じラインでいくのですかということになるわけでありますが、調べてみますと、昭和四十六年から五十一年まで純増三百四十五ですか、それから五十六年まで純増ブラス九十三、アメリカの場合に八二年から八五年、四年間、さっき長官も言われましたさまざまな新しい努力の中で八百七十五人増員をするというようなことがございます。今、審査官の数が八百人ぐらいですか、今後の見通しとして、それらをどうお考えになるのか。また、労使交渉の中ではもっとふやさざるを得ないだろう、ふえるだろうというふうな展望も言われているようでありますが、その辺をどういうふうにお考えになっているかということと、それから、こういう気がするわけでありますね。この間、関税法の審議のときにも私参加できなかったので思ったのですが、今までのオフィスオートメーションや何かの浸透の中で、事務的な労働がなくなる。帳簿、伝票のたぐいが消えていく。それではなくて、もう一段階進んだ変化が出てくるんじゃないだろうか。例えば関税局でも研究をこれから始められるようでありますが、税関業務、それから商社、倉庫、さらには貿易の主要各国と結んだ統一コードをつくってコンピューター処理をしていくというようなことになりますと、税関の専門官、専門屋さんですね、品物をぱっと見てこの税率をいかにどうする、要するに事務的な伝票や帳簿がなくなる時代から専門家の消え去る時代になっていくというふうなこともあるわけですね。そういう心配も出るわけです。ですから、そういう人員とかみ合ったペーパーレスシステム、それからさらにその後の展望を含めまして、どういうふうに考えて対応されるのか、特にその人員の関係の問題とか審査官の関係をどうお考えですか。
  17. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 過去にも実は審査期間が五年以上に延びまして、非常に大問題になったケースがありました、約十年以上前でございますが。そのときの対応は実は二点ありまして、一つは審査官の大幅増員を図りました。一つ制度面の改正を図りました。この二点で、まあ特に制度面の改正というのは二度と使えないのでございますが、この二点で乗り切ってきたわけでございます。ところが、最近は審査官の増員がとまってしまった、むしろ若干の減員である、制度改正は二度と使えないということで、また能力と申請件数とのギャップが出てくる、これがもう拡大する一方である、こういう事態になったわけでございます。  そこで、コンピューター化という問題を考えました。コンピューター化の目的はいろいろ多方面にありますが、一つは人の問題もありました。つまり、現在の厳しい行政簡素化の国民的な要求と厳しい政府全体としての定員管理、そういうことから過去のような大幅な定員増というのは難しいということも、実は重大なファクターとしてコンピューター化推進の要素になっております。したがいまして、我々の気持ちとしてはできるだけ人手をふやさないで処理していこうというのが、コンピューター化一つの基本方針でございます。  ただ、さはさりながら、コンピューターは万能ではございませんで、申請のふえぐあいにもよりますけれども、コンピューター化の効果だけで全部を処理するのは、いろいろな条件、将来の予想される状態にもよりますけれども、常識的に考えますと、やはりそれだけではなかなか乗り切れるものではないという感じでございます。したがいまして、我々はある程度のマンパワーといいますか、人手、審査官の増員は必要だと思っております。ただ、この点についても非常に厳しい状況でございますので、我々としては、率直に言ってお金はある程度あるものですから、お金でそのマンパワーを何とか、はっきり言えば、俗な言葉で恐縮ですけれども、買えるものがあればある程度そういうこともやっていきたい。はっきり言えば、そういう我々の仕事の一部を分担してくれるようなシステムをつくるとかいうことも今検討いたしております。そういう意味で、できるだけ定員というものでない方法で解決したいという道も実はいろいろ研究してございます。  しかし、特許庁の性質といたしまして、やはり権利を設定し付与する、あるいは判断するという中心的業務をそういうものでかえるには限界がございますので、冒頭からくどくど申しましたけれども、コンピューター化によってできるだけマンパワーの節約を図る、それからさらに外へも、俗に言えば民間活力ということになりますが、民間活力の活用によってできるだけそれも人手の問題をやるということをやりました上で、どうしても必要な人間は必ず確保していかなければならないというふうに考えております。
  18. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 なるべくマンパワーを節約をして、厳しいけれどもどうしても必要なものはという話になるわけでありますけれども、そこに労働条件の問題が絡み合ってまいりますね。何か今、標準が審査官一人三百件とか伺いますけれども、私はいろいろ伺いましても相当厳しい条件の仕事のようですね。何か毎年お一人ぐらいずつ死者があったとか、新聞でも見たことがございましたけれども、こういう部面を考えますと、高技術化、ME導入と労働条件ですね、今これは全体社会的な問題になっておりますし、電機労連の調査なんかでも、ME導入によって九〇%ぐらいの人が精神的苦痛を訴えているというような調査もございまして、それらについての労働組合レベルでの世界会議も開かれている。御承知のとおりであります。  これは特許庁だけじゃなくて行政全体としても、あるいは社会的なコントロールも含めてやらなければならない時代に今入っているというふうに思いますけれども、そういう中でいろんな新しい問題もできてくるであろうというふうに思いますし、電機の関係とか自動車その他ME導入に関する分野でも、何か新しい社会的なコントロールが必要である、そのためのガイドラインをどうするのかという議論に入っておりますが、このペーパーレスシステムと労働条件、当然この導入については事前に労働組合といろんな議論をして、協力し合いながら了解のもとに採用していくということも必要であろうと思いますが、そういう労働条件や労使の立場、どうお考えですか。
  19. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 べーパーレスシステムが完成する段階、我々のビジョンが大体完成する段階になりますと、かなりの業務が映像によって行われるというようなことを予想しております。したがいまして、それに伴いまして目の衛生上どういう問題が出てくるだろうか、そしてその疲労というものが、はっきり言えば肉体、特に精神的疲労というものにリンケージしてくるのではないかということが一つ問題点として出てくるかと思います。この点は、先生御指摘のように、今広く世界の研究課題になっておりまして、労働省でも当然今検討をしております。ガイドラインをつくる、あるいは将来は場合によっては、基準法なのか私よくわかりませんけれども、そういうものの規則というものを考えるというような研究をしていらっしゃると思います。しかし、我々は、ある程度もう現実問題になりますので、もちろんそういう各方面の研究というものも同時に参考にいたしますけれども、我々自身の問題として受けとめなければならないと思います。  したがいまして、我々自身も研究会、委員会を組織いたしまして、もちろん当初数年間は試行錯誤というか、テスト段階でございますので、そう大幅なものが行われるわけじゃございません。したがって時間的余裕がまだありますので、その点はかなり労働者側の意見も入れましていろいろな研究をしていきたいというふうに思っています。もちろん我々は、職員の健康を守るということが何よりも最優先の課題だということをよく認識しております。したがって、職員の健康を破壊してすべての物事を強行する気は全くございませんで、それと両立するように、必ず心配のないように、また組合の諸君ともよく話し合って万全を期してまいりたいと思っております。
  20. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 これから先を考えますと、特許庁のペーパーレスシステムに限らず、さまざまの、今予測できない問題も起こってくるであろう。仕事のそもそもの労働のあり方が変わってくるわけでありまして、産業革命前後から含めて、仕事の基本は職場でもピューマンリレーションがベースにあって、人間と人間とがどうお互いに顔を突き合わして協力していくのかという時代から、今おっしゃったようにディスプレーの画面を見ながら仕事をしている。いろいろな意味で人間的なひずみまで含めた問題、特許庁だけの問題ではございませんけれども、先端部門の特許の承認、審査、開発ですね、そういうシステムのことをやっておられるわけでありますから、希望としてはそういう部面でも先端的な御努力を労使協調してやられるようにお願いしたいと私は思います。  長官にもう一つだけ伺いたいのですが、今後の収支バランスの問題です。  ペーパーレス計画、建物を含めて大体二千億、それから五割、五割の値上げの問題というふうな大枠があるわけであります。また調査室につくっていただきました資料によりましても、人員増のみで対応した場合、それから同じパフォーマンスをペーパーレス化して達成をする場合、昭和七十年からコスト的にはバランスをする、庁舎の建設を入れると七十六年から逆転とか出ておりますが、それらとの関連で言いますと、さっき長官も言われました若干のマンパワーの増強も考慮しないわけにいかない。そうなりますと、バランスをするのは七十六年以降ということになるのじゃないだろうか。そうすると、相当の先という期間になるわけですね。そうすると、約十年間でこのペーパーレスシステムは完成をするという御計画、その間の特別会計としての収支ですね、どうお考えになるのか。  あるいはさまざまな変動要因もあるでありましょう。一般会計との関連。それからそれに関係いたしますと、臨調答申でも、さまざまの借り入れをするということについての、特別会計内容についての指摘もございますが、それらを含めまして収支バランスの中長期の展望というのをどういう角度で安定してとらえられるのか。場合によっては、今の五割、五割以上の値上げが予想されるのか。受益者の方が不満があれば、結局は合理化と人員の方に、働く方々の方にしわ寄せがいくということになっても困りますし、その辺を含めて収支バランスの中長期展望をどのようにお考えですか。
  21. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 お答え申し上げます。  我々のこの特別会計をつくる当初から、この問題について十分な推計といいますか、調査といいますか、予測というものを立てまして、つまり、この収支バランスの問題がこの特会のある種の生命線でございますから、念には念を入れていろいろな角度から検討いたしまして、我々といたしましては、まず収入予測についてはある程度かた目に立てておるつもりでございます。これは事態がどうなるか、十年先ですから必ずしも一〇〇%わかりませんが、予見される範囲では全部かた目に立てているつもりでございます。  それから、支出面につきましては、一応現段階で予測されるインフレ率、これもインフレ率の予測までできるかとおっしゃるとあれですけれども、予測されるインフレ率も全部織り込み、もちろん人件費の問題もいろいろの角度から織り込んでおります。そういうことで、歳出面におきましてもかなりの振れについて予測しております。  それからもう一つはコンピューターのコストでございますが、約千二百五十億円程度予測しております。このコンピューターの問題については、もちろんレンタル費が相当なウエートを占めておるわけで、レンタル費の動向についてもある程度予測しておりますが、実は過去の経験からいいますと、レンタル費はかなり急速に予想よりも下がってくるのが一つの常識にはなっております。そういういろいろな意味で我々としては、超健全といいますか、健全ということですべてはじいておるつもりでございます。  そういう意味合いから、収支差額が、俗に言う赤字といいますか、不足するということは、この十年間、万ないという強い確信を持って我々は臨んでおるわけでございます。そういう意味で、予定された以上の値上げをすることはまずないだろうということと、それから収支差額が出ることは絶対にないだろうという確信を持っております。したがいまして、そういう面で広い意味の労働側に御迷惑をかけることはないものと確信をいたしております。
  22. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 この間サンケイ新聞を見ておりましたら、ソニーの井深さんがこの問題で文章を書いておられまして、現長官はそういう意味での有能なお役人の典型であると高い賛辞を送られておりました。財界人からそう言われておることですから手抜かりはないと思いますが、そういうことをきちんと計画を持ってやっていただきたいと思います。  あと関連して二つ伺いたいのですが、一つは、ニュースを見ておりましたら、発明協会と日本特許情報センターの再編一元化の問題が出ておりまして、恐らくはこの特許特別会計、ペーパーレス化と関連をしていることだろうと思います。六十年三月に統合ということで、両団体の会長が合意となっているようでありますが、話し合いが足踏みしているのか、進んでいるのか、報道がなされております。また、その内容によっては発明協会の特許情報事業部門を切り離して特許情報センターに統合される。そうすると、今までの運営、財源、それからそこに働いている方々の問題、いろいろな問題が出てまいるということになると思うのであります。関係者も一面では不安な状態だろうと思いますが、監督官庁としてはこれらについてどういうふうに対応されますか。
  23. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 この問題の具体的な進め方あるいは諸条件の整備の仕方というのは、先生御承知のように両団体が主体的に決めるものということでございます。そういう前提のもとに、特許庁としての基本的な考え方を御説明させていただきたいと思います。御承知のように、まさに先生おっしゃっておるとおり、コンピューター化と密接に関連をしておるわけでございまして、現在特許情報の提供体制は、基本的には発明協会と日本特許情報センター、二つに分かれておるわけでございます。発明協会の方は御承知のように社団法人でございまして、八十年の歴史があるわけでございます。特許情報センターというのは財団法人でございまして、正確ではありませんが、これは十数年の経緯がございます。発明協会の方は官庁と共同でございますけれども、いずれも特許庁の監督下にございます。  そこで、特許情報が二つに分かれているといいましても、おおむねは整理されておりまして、発明協会の方は、俗に言えば紙といいますか、「特許公報」あるいはその複写というもの。しかし、それもいろいろな整理の仕方がありまして、加工したりして提供しておるというのが発明協会の情報事業活動の一つの主なポイントになっております。  特許情報センターの方は、これも非常な特徴がありまして、一定のものをデータインプットいたしまして、オンラインでサービスをしておるということでございます。つまり高度に加工したものを大型コンピューターを使って、通信回線を使ったオンラインという形で提供いたしておるわけでございます。現在の両方の規模というのはそう大きくありません。私も正確じゃありませんけれども、両方合わせて百億程度ということだと思います。  ところで、この情報につきましては、先ほど来ある程度お話ししたかと思いますが、企業が非常に求めているわけでございまして、特許情報についての企業の利用価値といいますか、利用ニーズというのが急速な高まりを見せているわけでございます。これが、我々の今度の計画を出願人サイドが強烈にサポートしていただいている大きな背景の一つでございます。豊富な情報を低廉で迅速に提供してくれというのは企業の大きな、切なる願いでありまして、中小企業を含めてそういう状況でございます。  それに対して的確に対応するために、序としてはコンピューター化、データ化をやりまして、データを民間に開放する、情報を提供するという任務が残っているわけでございますが、そのチャネルの問題が問題になってくるわけでございます。そうしますと、どうしても一元化してほしいという庁の方の要請が出てくるわけでございまして、常識的に言いますと、オンラインサービス、データサービスでございますから、従来の経緯からいえば特許情報センターの方に流れていくわけでございますが、そうすると、今度は発明協会の方の情報提供というのは非常にデクラインしてきます。そこにまた両団体としての盛衰という問題が出てきます。それから、企業サイドの需要に対して迅速的確、高度加工して提供していくためには、一元化というものが最も効率的で能率がいいわけでございます。  そういうような要請から、しかもこれが一元化して再編成しても非常に成長性のある、はっきり言えば、これをビジネスと考えれば物すごい成長力のあるビジネスでございます。現に今特許情報センターは、この数年の不景気にもかかわらず、オンラインサービスというのは売り上げが三割ずつ毎年伸びているわけでございまして、非常な成長力があります。したがいまして、基本的な立場としては今のようなことで、しかも従業員の諸君の不安があることは私はよくわかりますけれども、非常な成長性のあるビジネスなものですから、はっきり言えば首切りだとか労働条件の悪化というのは、一般論としては私どもは考えられない。もちろんそういう具体的な問題は両団体が主体的に決めるわけでございますけれども、我々としては第三者として、そういう見通しもありまして、ここはひとつ一元化して強力なものをつくられたらどうかという指導をいたしておるところでございまして、具体的には両団体の方が進めると思います。
  24. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 法案に関連をして最後にもう一つ、弁理士の問題であります。  私も初めて関係者からいろいろな話を聞いたり、また資料を読んでみたりしたわけですが、今までの議論と兼ね合いましても、何か弁理士さん方が、特に中小企業あるいは個人を含めて、どのようにやっていくのか。さっき長官もおっしゃったように、大企業の中での、弁理士さんの資格を持った人を企業内で持つ、そういう申請能力も十分あるというふうなことですね。それから、申請の傾向を見ましても、上位三十社ぐらいの大手の方々で半分ぐらいとかということのようでありますし、大企業が全体の七割から占めると伺いました。特に、時代として当然でありますが、やはり大手の電機関係の会社が非常に多い。それに対して、さっき長官も言われました中小のさまざまのアイデアなり技術開発をどう生かしていくのかという側面で考えますと、私は、古いスタイルではなくて、やはりこれからのそういう高技術化新時代の専門家として、社会的に有益な団体として活動していただくということが必要だろうと思います。  何か伺いますと、そういう正式な資格がなくて申請業務を扱っている、年間千数百件、二千件とかいうような話も聞くわけであります。何か商工委員会の議事録を読んでいましても、それはやはり違法でありますから取り締まらなければなりませんというふうな御答弁になっているようでありますが、それらの問題と、それから、これも伺いましたら、何遍か議論がありまして、そういう高技術化新時代の中での領域の確保なり社会的権威を高めていくという意味での法改正ということが長年話題になっているようであります。これはやはり政府提案といいますか、当局が提案にかかわることになってくるだろうと思いますが、それらのことについて前向きに対応されるべきではないかと思いますが、いかがでございましょうか。
  25. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 弁理士制度あるいは弁理士というものは工業所有権制度の中で重要な一翼を担っておりますし、またいろいろな出願の適正化の問題、合理化の問題についても、弁理士の皆さんの御協力を得なければならない問題が多々あるわけでございまして、我々はいわゆる工業所有権制度の中の重要な一環として位置づけておるわけでございます。  しかし、いろいろな問題がなくはないわけでございます。一つは、先生御指摘のように、いわゆるいろいろなところでの非弁活動といいますか、我々の仲間では弁理士でない者が弁理士的な仕事をすることを非弁活動と言うわけでございますけれども、そういう活動がある程度行われているというような確実もあります。  それからもう一つは、先ほど先生また御指摘になりましたように、たしか上位百社で五〇%ぐらいでございますか、大企業の出願が非常に多いわけでございまして、そうなると大企業の中の弁理士でない社員が、ある程度出願書類の整理等をするというような問題もあります。それにどう対応するかというような問題もあります。実はいろいろな問題があるわけでございます。  それからさらに、弁理士というのは今個人でなければならないということで、会社とか法人というものの組織にはできない建前になっております。そうしますと、先生方の方が御存じだと思いますが、公認会計士というのは法人組織が認められているというような問題があって、それにまつわるいろいろな問題もあります。それから弁理士の研修とか、今言ったように技術進歩が非常に激しいわけですから、そういう能力を高めるためにどういう問題があるかということもあります。  いろいろな問題がありまして、会社との関係では幸い過去一年、弁理士会と会社とネゴシエーションといいますか、いろいろ交渉を持ちましてある種の進展を見せました。しかし、基本的にはやはり法律改正を必要とする問題もあるわけでございまして、これについては、率直に言いまして従来何回も附帯決議をいただきまして、基本的な改正をサボったと言っては変な言い方ですが、余りやってこなかった経緯があるわけでございます。我々こういうものにつきまして、当然のことでございますけれども、いいことはやるという立場に立つべきである。  したがいまして、一言で言えば前向きに対処してまいりたいと思いまして、既に実行といたしまして特許庁と弁理士会の方で懇談会的なものを設けまして、まず懇談会で、はっきり言いますと弁理士会の中のコンセンサスというのはまず必要なんでございまして、そこの辺もまだ最終的にはとれてないわけでございますが、そういうものも含め、しかし弁理士会の方から言うと、先生おわかりのように、庁の意向というものがコンセンサスをとるためにまた必要だ、こういうリアクションになっておりまして、そういう意味特許庁と弁理士会側と今懇談会を始めておりまして、めどは来年と言いたいんですけれども、ちょっと実は工業所有権についてはいろいろな、工業所有権審議会という立派な審議会、はっきり言えば逐条解説する審議会がありまして、ちょっと私も今、来年とかという約束はできないんですけれども、私の気持ちとしては、可及的速やかに法改正が必要であるとコンセンサスができればやりたいと思っております。
  26. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 手数料に関係して一つだけ伺います。ちょっと簡単にお答え願いたいと思います。  前の附帯決議に関連をいたしまして、政令に移管されるという分野が数十項目ございまして、それなりに妥当だろうと思います。その取り扱いの問題でありますが、前回の附帯決議にもございますが、やはり社会的に、あるいはさまざまの経済状況を含めて公正な見直しが、今後とも政令部分の中でも行われるべきであろうというふうな趣旨のことがあったと思います。やはり各種手数料の法的部分の今までの扱いと同じように、三年に一回くらいの標準でそのときどきの見直しを行っていく、その見直しに際しての基準なり考え方というものは、どんな考え方でいかれますか。
  27. 平澤貞昭

    平澤政府委員 いわゆる手数料の定義から申し上げるのは恐縮でございますけれども、国もしくは地方公共団体等が提供する役務に対して、その費用を償うために徴収する料金であるわけでございます。したがいまして、今回政令にされました場合に、規定にございますようにいわゆる費用の実費を勘案してこれを決めていくということになっているわけでございます。  通例この手数料等の費用の内容でございますけれども、人件費、物件費が主なものでございます。したがいまして、物価等が上昇いたしますとこの費用もおのずから上がってくるわけでございますので、本来ですと毎年この改定を行うのがいいわけでございますが、従来からこれは三年に一回程度改定してきていることでございますので、これからも政令委任された手数料等につきましては、従来と同様に三年に一回程度の改定を行っていきたい、そのように考えております。
  28. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 ちょっと残りの時間で入場税の問題を伺いたいと思います。  一昨日、関係者の方々が議員会館で百名ほど集まった会合がございまして、各党おそろいでございましたが、私も一人で伺ったのですが、ピアノの安川加寿子さんとか、名簿を見てみますと、芸能団体では中村歌右衛門さんが代表、新劇の方では千田是也さんとか、歌手の方ではディック・ミネさんとか、いろいろな方が集まって、舞台入場税についてのさまざまの切実な御要望がございました。私もお話を伺いまして、なるほど、我が大蔵委員会でも関心を持たなくちゃならぬと思ったわけでありますが、それを伺う前に、どうも政府もそうですけれども、大蔵省の文化への対応姿勢というものを非常に考えざるを得ないようなことになるわけでありまして、率直な見解を政務次官に伺いたいのですが、率直な問答ですから、お役人の書いたペーパーはそこに置いてお聞きを願いたいのですけれども、数字をちょっと並べてみました。一般会計は今年度プラス一・四%であります。文化庁予算はマイナス五・六四%であります。全体の総額が三百七十七億四千九百万、これは戦闘機三台分ですね。文化庁もだらしがないものだということをつくづく思いましたが、文化の予算予算全体の〇・〇七%、予算全体が一メートルの高さとすれば〇・七ミリというようなことになるわけでありまして、まさに虫眼鏡で見ないとわからぬとなるわけであります。フランスの場合には予算の〇・五%、イギリスの場合には○・二%。憲法二十五条にも、さっきも言われましたが、「健康で文化的な最低限度の生活」と書いてありますが、健保の改悪の計画もございまして、今のままでは不健康で非文化的、非文化的ではない、無文化的という予算の状態ではないだろうか。  文化予算が年間国民一人当たりどうかというのを比べてみますと、これは昨年度の数字のようでありますが、フランスが国民一人当たり千九百五十円、イギリスが千二十円、我が日本国はたったの三百四十円という状態ですね。子供の文化予算などを見てみますと、子供一人当たりたったの三十一円という状態のようであります。しかも問題は、傾向を調べてみますと、昭和五十年総予算比〇・一%、ずっと数年それが続きまして、それからこの数年間〇・〇九、〇・〇八、〇・〇七と減る一方というふうな状態になっているわけであります。  私は、二面では文化庁もだらしがないと思います。たったの戦闘機三台分。こんなものでは日本の文化を代表する役所としてはしょうがないので、まあきょうは会計課長さんだけのようですから、あなたに文句を言ってもしょうがないのですが、これはむしろ文部大臣ですね。教育臨調も結構だけれども――、いや結構じゃないのだが、やはりこういう文化の方に力を入れるようなことを、新進気鋭の早稲田マンの大臣がやられるべきであろうと私は実は思うわけでありまして、文化庁が日本の文化を愛する心を持ち、責任感を持つなら、やはり防衛庁が防衛予算をむしり取る以上の果敢な闘いを大蔵省と展開するというぐらいにならなきゃいかぬだろうと思うのです。  心ある大蔵委員はみんな応援しますから、やるべきじゃないだろうかと思うわけでありまして、今のままでは映画の何とかじゃないが、虎ノ門の一角に、「ここに文化庁ありき」という何か柱が立つような運命じゃないだろうかと、実は非常に心配をしながら思うというわけでありまして、文化庁の方はいろいろ頑張って一応大蔵省にささやかな要求はしているのだと思いますが、堀之内さん、フランスよりもイギリスよりも日本は経済大国ですし、予算規模も大きいし、借金も大きいけれども、何といっても経済的に大きな国ですね。しかも平和憲法、文化の国にならなければならぬというふうなわけでありますね。どうですか、こういう数字を並べますと、フランスとイギリスと日本と比べて、どの国が一番いいと思いますか。何か改めて本を読んでみたら、亡くなった大平さんのプロジェクトでも、文化問題について近い将来に――遠い将来じゃないですよ、近い将来に予算の〇・五%ぐらいは占めるべきであろうというふうなことを、亡くなられた大平総理も言っているというわけでありますが、大臣がいらっしゃらないから、政務次官、大蔵省と文化についてどうお考えですか。
  29. 堀之内久男

    ○堀之内政府委員 本当に伊藤委員の言われることはよく理解できるわけでございますが、欧米諸国、特にヨーロッパと日本という中においての文化の比較というのはなかなか簡単にはできないわけでございますが、非常に社会資本の深いヨーロッパの状態と、社会資本の浅い日本でございますので、今後大いに努力をいたしまして、伊藤委員の言われるような方向で文化の薫り高い平和国家、こういうことでこれから努力をしなければならぬ、かように私ども今理解をいたしております。
  30. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 そういうことですね。私は、恐らく大蔵省のお役人に囲まれている政務次官だから、必要性はあるが、何しろ財政危機でございましてと言うと思って、そう言った。これは財政規模というよりも、財政全体の中における比率のあり方の問題、そして財政構造の問題として、赤字か銭がないかというよりも、構造の問題としてとらえていただきたいという気持ちであります。一メートルのうち〇・七ミリですから、よく考えてもらいたい。  そういう視点も含めまして入場税の問題を実は考えてみました。調べてみましたら、今までの我が大蔵委員会は非常に前向きの議論をしていたのですね。この前の入場税の改定昭和五十年の国会であります。当委員会で御議論がございまして、我が党からも広瀬さん、高沢さんなどがこの問題を取り上げております。そのとき答弁に立たれましたのは森美秀政務次官。私は改めて敬意を払ったわけでありますが、我が党の委員から、やはり文化というものに対してもっと優遇措置がとられなければならない。大平さんも、教育と同じように文化に対する税上の優遇措置が必要であると言われております。そういう意味で言って、今舞台演劇については三千円の免税点であります。  時間がありませんから、最近のさまざまの芝居やオーケストラや新劇などの料金がA、B、Cとか、それが何ぼかというところまでは申し上げませんが、やはりこれでは間尺に合わないのではないかというふうに思うわけでありますが、そういう展望についての我が党の質問に対して、当時、森美秀政務次官は、「やはり物価の趨勢その他を見まして、また来年、再来年、いろいろな事態に即応して考えていこう、こう考えております。」というふうな話であります。また、お役人の方からも、「大方の人たちのそういうものへの入場についての非課税ということを考えます場合には、やはりときどきの見直しが必要であろうと思っております。」というふうな話であります。要するに非常に高級な、非常にぜいたくなという部面は別にして、大体入場税非課税という方向がいいのではないだろうかというふうな趣旨のお話が、当時の我が党の高沢、広瀬委員と森政府委員との間に交わされているということであるわけであります。  また、そのときの我が大蔵委員会では附帯決議がございまして、附帯決議をもっと尊重してもらわないと困ると思いますが、免税点については「物価及び貨幣価値の動向を考慮し、適時、額の引上げを配慮すべきである。」これは五十年ですから、あれから満九年たっているわけでありまして、さっき平澤さんの答弁がございましたけれども、料金を上げる方か何かは、三年に一遍は見直すということはえらくきちんとなさっているわけであります。  また、所得税の問題もそうですね。去年の秋の政府税調答申でも、数年に一度は見直さなくちゃならぬというわけでありますが、数年の数倍ぐらいにならないと見直さないというふうな経過。これは酒税でも申し上げましたように、片一方では随時見直すというふうな表現がされているわけでありまして、これをやらなかったら、一つのシステム、ルールとして実質上の増税になるわけですから、ぜひとも改善を図られるべきではないだろうか。  また、調べてみましたら、おととい集まった安川加寿子さんらの主張を見ましたら、本年度の収入予定は、五十九年度予算で九十億、昨年八十億、これは十億ふえる。舞台芸術関係で四十億。それに対して民間芸術などの活動費補助というのは、昨年十億、ことし九億ですか。言うならば、四十億取っておいて十億くれるというふうな話に、なっている。劇団の方とかオーケストラとかいろいろ聞きましても、本当に貧しい生活ですね、僕もびっくりするぐらい。そういう中で芸術活動をなさっている方も多い。大商業資本の場合は別に、して、そういう部面があるわけであります。  私は、音楽議員連盟という超党派の団体の一員でありまして、今会長は櫻内さん、その前は前尾さんでございました。いろいろとささやかな活動をいたしているわけでありまして、音楽議員連盟であるけれども、よその人からは国会音痴クラブじゃないかというようにささやかれているぐらいであります。しかし、その音楽議員連盟でも、今まで総会のたびに入場税の撤廃を目指す、あるいはこれがおくれているのは行政の怠慢であるというふうな決議もしているわけであります。  いずれにいたしましても、五十年の審議のときにそういう御議論があり、当時森政務次官の御答弁があり、しかも附帯決議もあり、それから八年、九年たって、上げる方はどかどか上げるけれども、本来下げるべきものは下がらない。国会という場で約束したことが守れないということは問題だろうと思いますし、それから、おとといの集会でもピアノの安川さんが言われておりましたが、この歴史は物品税と同じですね。北支事変、日華事変、そのときの戦費を賄うために、とにかく細かいものでも税金を取るんだというような経過で出てきた。関係者からしたら、これは非常にやむにやまれない気持ちがあるだろうと思うわけであります。昭和五十年の森政務次官の経過を含め、現堀之内政務次官はどのようにお答えになりますか。
  31. 堀之内久男

    ○堀之内政府委員 先ほどの文化庁の予算等についてもいろいろ御質疑がありましたが、私は、やはり文化全体というのは文部省がいろいろ考えるべき問題で、予算内容等について大幅な、四兆円以上の文部省予算があることですから、その中でどこに重点を持っていくかということは文部省の所管だなと改めて感じております。例えば私学補助金を一遍にふやした時代もございました。そういうことも含めて今後文部省の中で十二分に検討し、また、大事な文化の発展ということは日本の将来の上にもやはり極めて大事なことでございますので、今後文部省ともよく相談していきたいと思います。  ただいま御指摘の入場税等につきましてもまさしく御指摘のとおりでございまして、昭和五十年改定以来そのまま据え置きということはやはり一考しなければならぬ。非常に財政が厳しいとはいいながら、今後の文化発展を図るという立場からは、両方から検討していかなければならぬと思いますので、委員の御趣旨に沿って、今後の検討課題として勉強させていただきたいと思います。
  32. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 堀之内さん、やはりこういう問題は、僕は思うのですね、財政が厳しいことはよくわかるし、この日本財政の状態をどうするのか、これからの財確法審議の中でも、今まで以上に本当に真剣な論議を我々もこの場でやらなければならぬと思います。やはり国民に対する責任にふさわしい議論をしなければならぬというふうに思っておりますが、予算というのは厳しいばかりが能じゃないので、やはり厳しい中にも何か温かみがあるとかあるいはほのかな明るさを感じさせるとか、いろいろなものがあって国民の信頼があるのだろうという気がするのですね。政務次官の気持ちはわかりましたが、やはりこれらの議論をきちんと政府税調の話題にもしていただく。国会が終わったら報告なさるのでしょうが、八年、九年たつ、間もなく十年になろうとしている、余り放置はしておけないというふうな議論があったことを政府税調にも報告をして、政府税調の話題にもきちんとしていただき、また我々も、政府税調の皆さんは当然ですが、自民党税調の皆さんにも大いに要望して実現を図っていきたいというふうに考えておりますが、税調の扱いを前向きに検討していただくということを重ねてお答えいただきたいと思います。
  33. 堀之内久男

    ○堀之内政府委員 ただいま委員の御指摘がありましたことは十二分に政府税調にも御諮問申し上げます。取るべきだけが大蔵省というわけではないわけであります。やはり国民のゆとりある問題あるいはささやかなそういう楽しみというのも、国民の理解を得る上で極めて大事でございますので、委員の御指摘は十分政府税調にもお伝えして御審議をいただこう、かように考えております。
  34. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 もう時間ですから、もう一つだけで終わりにしたいと思いますが、ただ、政務次官、さっき文部省の予算の中でと言われましたけれども、ことし、私学助成なども含め、一番大きな削減率になっていることは御承知のとおりです。うちの神奈川県なんかは、国が削った分を県の方が私学助成費をえらいしょっちゃって県の予算を組むのに四苦八苦しているという状態であります。シーリングを押しつけて、その枠内で何とかしろという非情な、情け容赦のないやり方じゃなくて、やはり文化の薫り高き大蔵省、大蔵委員会と言われるぐらいのことを少しはやった方がいいのじゃないかというふうに思います。  もう一つ、文化のことで、これは具体論までには至らぬと思いますが、文化庁や政務次官のお気持ちを伺っておきたいと思うのです。ちょうど文化の話になりましたから、一つだけなのですが、私はこう思っているのですね。我が日本風族はすばらしい文化の伝統を持ってきたと思うのですね。さまざまの西洋文化その他が、我が日本は国際性が強いですから必要でありますが、やはり日本人の文化をどう発展をさせるのかという角度をこれからもっともっと重要視しなければならぬということではないのだろうか。  たまたま私の友人に芸大の先生がおりまして、この間、「歌を忘れた日本人」という本を出しました。書いてあることは、日本人本来の、そして御先祖様から歌い継がれてきた日本人の文化を日本ほど粗末にする国はないということであります。例えば民謡があります。宮崎県も民謡の宝庫の方ですし、私の生まれの「おしん」のふるさとの山形もそうでございますけれども、例えば仕事歌とか童歌とか祭り歌とかこういうものは、まさに民衆の生活から生まれた物語であり、歌詞であり、メロディーですね。生活様式がどんどん変わりますし、お年寄りが亡くなるとどんどん消えていく、急激に消えていくということですね。私は、こういうものをやはり早く貴重な文化的遺産として整備をする、小規模でいいから国立の資料館ぐらいつくる、そういうものをやったらどうだろうか。そういうものを音楽の先生やあるいは専門家が利用したり勉強する中から、日本の文化、日本の物語、日本のメロディーに根差した、芸術水準の高い、すばらしいオペラができるとかドラマができるとか、そういう文化を育てていく必要がある。  聞いてみましたら、文化庁の方はそういう関係予算は年額たった一千万。一千億かと聞いたら一千万。百万円ずつどこかに配って資料整備をなさっている。百万円もらって、うちの神奈川県でもこういうのをつくりました。完全ではありません。しかし、調べてみますと、本当に、自分たちの住んでいる周りで昔こういう物語があり、こういう歌があり、こういうことだと書いてあります。すばらしい日本の文化をつくる意味でも、やはり今のようなスズメの涙以下のことじゃなくて、そういうことをなさったらいいんじゃないだろうかというふうに実は私は思うわけであります。滝廉太郎が書いた本を前に読んだことがありましたけれども、日本の音楽、日本のメロディーと、それから西洋から大量に入ってくる文化との間で非常に悩むのですね、どういうふうに将来の文化があるのだろうかと。時間だからやめますが、非常に大事だろうと思うので、文化庁も大いにこういう部面について力を入れてほしいと私は思うのですね。  それから、文化の議論とかそういうのは余り国会でも、大蔵委員会でもしたことがないけれども、こういうものを大事にするという意味での対応姿勢があり、大蔵省の方でも、削るばかりが主計局の能じゃないと思いますから、さっき言ったように、ほのかな明るさを国民に持っていただくような御努力を含めてやっていただきたい。これらのことは何も一党一派の問題ではございませんから、超党派の立場でいろいろなことを、特に銭の問題にかかわる大蔵委員会の人も含めてやっていきたいと思っておりますが、ちょっと次官、恐縮ですが、一言だけお答えいただきたいと思うのです。
  35. 田中潤佑

    田中説明員 お答え申し上げます。  先生御指摘のとおり、文化庁といたしましても、従来から民謡の保存、伝承につきましては意を用いてきたところでございますが、昭和五十二年度から、全国各地に古くから伝承されております特色ある民謡の保存と振興を図るために、毎年一回民謡大会を開催いたしております。また、昭和五十四年度からは、地域に古くから伝承されております民謡について実態を把握し、その保存と伝承に資するため、都道府県において行っております民謡調査事業に援助をいたしておるわけでございます。  なお、現在のところ、今先生御指摘の国立の民謡資料館の建設については考えていないところでございます。
  36. 堀之内久男

    ○堀之内政府委員 私も伊藤委員考えは全く同じでございますが、民謡等については地域に密着したものでございますので、その地方地方で保存し、また伝承することの方が、かえって郷土に密着した文化としていいのじゃないかと思います。  先ほど委員がお示しになったように、神奈川県でこうした、あるいは私の宮崎県でもそういうことで、県は県でちゃんとやりますが、市町村は市町村で今盛んに、全体の地方予算を合わせると恐らく文部省の一千万よりははるかにすばらしい予算で伝承しておるのじゃないか、かように考えておりますし、NHKの方にも聞いてみましたら、幸いNHKの方が全国的な記録を相当保存していただいておるようでございますので、改めて国立民謡資料館というのはいかがかな、こういう厳しい財政のときでございますので、地方のいろいろな協力をいただきながら、御指摘の文化は保存していきたい、かように考えております。
  37. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 終わります。
  38. 瓦力

    瓦委員長 この際、関連質疑を許します。沢田広君。
  39. 沢田広

    ○沢田委員 この前の、三年前の手数料の値上げのときに、原価計算の方式が各省まちまちでありました経緯もありますので、二分で質問を終わりますが、その経緯にかんがみ、見落とし見直しは怠るなかれ、それが第一。  第二は、原価計算の計算形式を明確にし、政策要素はその後に加除し、加えて、答えを先に出すな。  以上二点について、そのとおりと今後考えでいいのかどうか、お答えをいただいて関連質問を終わりますが、お答えだけお願いします。
  40. 平澤貞昭

    平澤政府委員 今委員指摘の点につきましては、今回そのような方向で処理をいたしております。今後ともそういうことでやっていくつもりでございます。
  41. 沢田広

    ○沢田委員 了解いたします。  では、終わります。
  42. 瓦力

    瓦委員長 戸田菊雄君。
  43. 戸田菊雄

    ○戸田委員 質問の要旨、通告順序をちょっと変えまして、最初に法制度の問題について、これは特許法と弁理士法について若干見解を伺っておきたいと思うのであります。  私は、特許四法に対して歴史的変遷、経緯等についてずっと調べてみました。我が国特許法は、明治十八年専売特許条例というものがまずできました。十七年に商標条例というものができて、二十一年に意匠条例というものができました。明治三十二年に主業所有権の保護に関するパリ条約に加入をいたしました。明治三十八年に実用新案法公布、明治四十二年に工業所有権四法(特許法、実用新案法、意匠法、商標法)、そして大正十年に特許法改正になりまして、昭和四年、十三年、二十二年、二十三年等々の改正を経まして、そして現在、昭和三十四年に大幅整備をされて、その後三十五年に施行が行われ、三十七年に改正が行われ、三十九年に改正、四十年、四十一年に改正をされて、四十五年、四十六年、そして最近は五十年に改正をされまして現行特許法というものが制度的に整備をされてまいっている、こういう状況でございます。  これは「弁理士制度八十年史」、こういうものが発刊されておりますが、これの三十二ページに「第十六条 特許局ニ対シ為スヘキ事項ノ代理業ハ特許弁理士二非サレハ之ヲ行フコトヲ得ス 特許弁理士ノ資格、登録、監督、懲戒等二関スル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム」、こういうものが大正十三年以前には特許法に入っておった。ところが、これが十三年の改正で削除されたわけですね。この削除された理由は、行政上から見てどういうふうに考えますか。きょうは法制局長官を呼んでいませんから、法律見解はいずれまた後で求めてまいりますけれども、きょうは、行政上から見てこれはどういうことで削除されたか、ちょっと見解をまず伺っておきます。
  44. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 弁理士法というものがございまして、その法律の中の一環として趣旨が全うできるということで私は削除されたと思いますが、なお不敏でございまして、明確に今理解できないところがありますので、もし間違っていましたら後で御訂正さしていただきます。
  45. 戸田菊雄

    ○戸田委員 この弁理士の場合は、弁理士法の第二条によって資格が確定されておりますね。ところが、この二十二条ノニ、弁理士の業務独占、こういうことがありますが、内容を読んでみますと、「弁理士二非サル者ハ報酬ヲ得ル目的ヲ以テ特許、実用新案、意匠若ハ商標若ハ国際出願二関シ特許庁二対シ為スベキ事項若ハ特許、実用新案意匠若ハ商標二関スル異議申立若ハ裁定二関シ通商産業大臣二対シ為スベキ事項ノ代理又ハ比等ノ事項二関スル鑑定若ハ書類ノ作成ヲ為スラ業トスルコトヲ得ス」「前項ノ書類ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム」、そしてなおかつ二十二条ノ三で弁理士等の名称ということで、「弁理士二非サル者ハ利益ヲ得ル目的ヲ以テ弁理士、特許事務所其ノ他之二類似スル名称ヲ使用スルコトヲ得ス」、いわゆる報酬と利益、これは資格がなければやっちゃいけませんよ、こういうことになっているわけですね。  ところが、現行の特許庁の対応は、例えば企業でもってそういう専門職がある、あるいは例えば特許庁に勤めて七年以上の者は資格要件を与えられる、そういう有資格者が弁理士の登録をやらずにないしょでやっている場合がありますね。そうすると、報酬やあるいは利益を得ないからおれはただでやっているんだということになりますと、今の特許庁は、それを黙認した形で出願の届け出その他を受理をする、こういうことをやっておられるわけですね。そういうことになりますと、弁理士の職域というもの、身分というもの、これは相当損なわれていくんじゃないだろうかという考えを持つんですが、その辺の見解はどうですか。
  46. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 弁理士法、その職域擁護という問題、これは大事な問題でございます。ただ、基本的な物の整理といたしまして、本人が自分で出願するものは、これはやむを得ない、人に頼む場合は弁理士の資格のある者でなければいけない、大ざっぱに言えばこういう整理で成り立っているわけです。  実は、その整理というものはある種の理があると思うんですけれども、問題はそこからまた生じてくるわけでございまして、例えば本当に中小企業なりあるいは個人で、自分で書いて、自分で図面をつくって出してくる人もかなり大勢います。これは案外中小企業者に多いわけです。これは全く弁理士さんたちも問題にしていないわけです。これは事実そのとおりでございまして、本人が書いてきちっと出してくるわけですから、いいわけです。問題は、やはり出願件数が非常に多いのが、先ほど来答弁申し上げておるように大企業といいますか、大きな企業、これは出願のウエートが非常に大きい。ここは御承知のように弁理士もおりますけれども、弁理士でない人もいて、そして俗に言えば特許部というようなものを構成をしておるわけでございます。この特許部の仕事というのはいろんな面がありまして、弁理士業務以外の仕事も相当多いわけでございますが、同時に一つの、何といいますか、書類の作成とか何かの業務もその乗務であることは間違いないわけです。  そこで問題は、書類の作成をするんだけれども、出願人は会社の代表者だということで、別にそれを代理しているわけではないという点が一つエクスキューズにはなっているわけでございます。しかし、大会社の社長が自分で出願しても、結局資料は部下がつくっているのは理の当然でございます。事実でございます。そこで、社長本人が出願しているから、部かがつくっていいかどうかという問題はそれはありますけれども、社員が明らかに代理行為はしてない。問題は、そこは代理行為とか手続行為を弁理士以外の人にやらしたらいけない。  問題は、さらに行きますと、会社の社長が判こを押すのが大変だから、社員が判こを押すということがあるわけです。そうすると、これは相当代理行為になるんじゃないか。そうすると、これを社員代理と俗称しておるわけです。これは取り締まってほしい、幾ら何でもひどいじゃないかというのが弁理士の立場から当然あるわけでございまして、これにつきましては我々も会社の方に指導いたしておりまして、会社の社長が出すのはこれはやむを得ないかもしれない。しかし、他人を代理人として介在さしてないわけですからやむを得ないけれども、自分の社員で弁理士でない者を代理行為として介在させるというのはよくないよということで指導しまして、今の段階では大体消えております。したがいまして、実際問題としては、純粋法律的に言えばその段階で一応解決は見るわけですが、実体問題としては、なおさっき言いましたように、社員が事実上書類をつくっているじゃないかというような問題は、依然として残ることは残るわけです。  しかし、これはここまで行きますと、いろんな面に影響が出てまいります。そうすると、中小企業の場合でも社員につくらしたらいけないとかいろんな問題が出てきまして、そこで、業としてとか「利益ヲ得ル目的ヲ以テ」ということで制限を加えているわけです。  次に問題になるのは、社員以外の、俗に言いますと特許管理士とかそういうような方がいらっしゃるものだから、これになりますと問題はさらに深刻になりまして、明らかに楽として「報酬ヲ得ル目的ヲ以テ」というのが、社員と違って、常識的にはっきりしてくるわけでございます。もちろんその方が代理行為をやりますと、我々はだめだという論理になります。これはやはり資格がない者の代理行為。けれども、代理行為をしないで、その方が中小企業者なりの依頼を受けて、あるいは大企業でもいいんですが、書類を作成しちゃう。極論すれば、判こをつくだけのところまで持っていっちゃう。それで判こだけは代理はしない。だから、形式的には代理になってないけれども、実質的に代理といいますか、書類の作成という過程、総合的に見ると、実質的にはかなり代理しているというような問題があるわけでございます。しかもそれは報酬を目的としている。この辺になりますと、自分の会社の社員を使う以上にまた問題になってきます。  そういう問題がございますけれども、現在の法制度では、あくまで代理行為を業として報酬をもらってやってはいけないということになっていますものですから、そこの一点で今絞っているというのが現状でございます。
  47. 戸田菊雄

    ○戸田委員 各般の職域がありまして、例えば税理士があり、会計士があり、弁理士があり、弁護士があり、こういうことになっておるわけでありますが、そうすると、弁護士のような場合は、弁護士法というものがあって、そこに資格もしくはこういった保護政策をぴちっとうたわれている。なおかつ、民事訴訟法七十九条でございますが、ここにも弁護士等の問題については明確にその資格要件について書かれてあるわけですよ。七十九条、「訴訟代理人の資格」ということで、「法令二依リテ裁判上ノ行為ヲ為スコトヲ得ル代理人ノ外弁護士二非サレハ訴訟代理人タルコトヲ得ス但シ簡易裁判所二於テハ」こうあるわけです。明確なんですね。だから、大正十三年以前はこの十六条によって特許法にこれがありましたから、弁理士もそういう点では資格要件が明確だったわけですね。それはどういう関係がわかりませんが、今長官の答弁がありましたけれども、これが削除された。  だから今度特許庁としては、弁理士法でいけばそういうことになりますが、利益報酬を得ない者で、ただでお手伝いをしている人がいますよということになって、それが黙認される格好になっている、こういう状況ですね。これが特許法に挿入されれば、これは事が解決すると私は思うのです。会計士法だって、これは商法その他においていろいろ資格要件の一定の条件が入っている。そういうことで保護政策がとられていっているわけですから、これはでき得れば抜本的改正をやりますと、今まで通商産業大臣も大蔵大臣も言ってこられた、いろいろ検討があった、後で出しまするけれども、そういう経緯があるのですから、この挿入について私は検討していただきたいと思うのです。見解どうでしょう。
  48. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 問題の複雑さは、なかなか外形標準でわかりにくい、代理行為以外の書類の作成とかなんかが一体本人がやったのか、業として報酬を受けてした人がやったのかというのは、外形標準で窓口でわからないというのが最大の問題なんですね。それがレントゲンで見るようにはっきりわかれば、我々はそれはだめだ、これはだめだというふうに区別できるわけでございますが、そういうことがこの問題の実質的な解決を難しくしているゆえんだとは思うのです。しかし、そういう意味特許法上削除したというのも、いろいろな意味もあると思いますけれども、当時の経緯は、ここはひとつ弁理士法でいこうということだったのだろうと思います。  しかし先ほど御答弁申しましたように、今度弁理士法についてはかなり時間をかけて、根底にまでさかのぼって討議しようじゃないかということで、今弁理士さんの方と連絡会を設けてやっておりますので、その一環として十分先生のおっしゃる趣旨も根底から、いろいろな角度から検討いたします。
  49. 戸田菊雄

    ○戸田委員 それから法的な問題でもう二点ほど。  その第一点は、私も深くアメリカのことを勉強しているわけじゃございませんが、アメリカでは請求権の範囲が非常に拡大されている。例えば、丸い鉛筆を六角にして倒れないようにして発明をした。それに今度また消しゴムをつける、付着させるということになれば、日本の場合ですとその一件一件について特許という制度になっているけれども、向こうはそれを連動して一括認めていこう、こういうようなことになっているというのですね。だから、そういう意味においては非常に請求範囲の拡大といいますか、そういうものが一面で行われている。  それからまた保護政策についても、今の弁理士その他の資格者に対して非常に保護が厚いし、出願者に対して保護政策がとられているというようなことで、大分日本の今の法体系、特許法とは違うということを聞いておるのでありまするが、この辺はやはり今後の検討課題として検討していく必要があるのじゃないだろうか。それは出願件数九十万件以上も百万件も、こうなってきているわけですから、もちろんそれぞれ対応して今まで努力してやってこられておることは私もわかっておりまするが、そういう点の検討をひとつお願いをしたいというのが一つなんです。  それからもう一つは、商工委員会等で、これは我が党の同志の皆さんが再々附帯決議を提案いたしまして、三十一国会の参議院商工委員会、それから三十一国会の衆議院商工委員会、三十四回の衆議院商工委員会、六十三国会の参議院商工委員会、七十五回参議院商工委員会、八十四回参議院商工委員会等々で附帯決議を出しまして、これに対して、抜本的に検討いたします。その附帯決議の内容は「弁理士法の抜本的改正法案を速やかに検討すること。」こういう附帯決議なんです。それに対しては、抜本的に検討いたしますとは言っておりますけれども、三十四年以来五十年に至って六回、七回も決議はやられておるが、回答は全然なし、こういう状況なんです。検討も何もなし。これでは国会の、最高議決機関の決定が一例どういうふうに扱われているのだろう、これは疑問に思わざるを得ないですね。こういう点について私は真剣に検討し、それにこたえていく必要があるんではないだろうか、こう思いますので、この二点について見解をお願いいたします。
  50. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 弁理士法の問題については先生の御指摘のとおりの状況になっておりまして恐縮をいたしております。したがいまして、私は赴任以来、そういうことがあってはならないという方針を立てております。したがいまして、先ほども申し上げましたとおり、既に検討作業に入っておりますので、もちろん弁理士さん方のコンセンサスあるいは関係者のコンセンサスというものは当然前提になりますけれども、私としてはやるつもりで進めておりますので御了解願いたいと思います。  そこでアメリカの特許法あるいはさらに言えば外国の特許法に比べて、日本のはもう少し合理性を追求すべきではないかという御意見だろうと思います。私、実は不敏でありまして、アメリカの特許法のことについては詳しく存じ上げませんけれども、今先生おっしゃったのは多項性というような問題だろうと思います。しかし、日本でも多項制を導入しておりまして、制度的、理論的にはアメリカの特許法が広くとれて、日本の特許法が狭くしかとれないということは、建前上といいますか、法制的にはないと思います。ただし、私も時々そういう御指摘を聞くことがございます。  説明を補足させていただきますけれども、私の考えでは、多分従来のこういう特許制度というのは、出願人の方にも長い慣行みたいなものがありまして、そういう趣旨が必ずしも徹底していない、今までのようなやり方の方が特許がとりやすいのじゃないかというようないろいろな誤解とか考え方もあって、制度はあってもアメリカほど広い状況になっていないのじゃないかという気がいたします。もしそういう点があれば改めなければならないし、PRしなければなりません。  それから一方、工業所有権法については、私どもとしてはこういうような非常に難局にあるわけでございますから、非常に小さいことでもとにかく合理性のあること、はっきり言えば我々のロードが軽くなるようなこと、あるいは企業のロードが軽くなるようなこと、こういうことはたとえ小さいことでもおろそかにせずに、外国の例も参照しながら絶えず改正についてちゅうちょすべきではないという方針をとっております。これはしかしなかなか歴史のある制度でございますので、いろいろな関係機関もありまして時間はかかりますが、例えば来年の通常国会においてはひとつ特許法等につきまして一応改正をする、そうしてその後もいつでも必要なものがあれば直していくという態度といいますか基本方針でいきたい、かように思っております。
  51. 戸田菊雄

    ○戸田委員 長官の非常に誠意ある答弁で、ぜひひとつ御検討願いたいと思うのです。  それで本論に入ってまいりたいと思いますが、まず最初に特許、工業所有権の現状についてお伺いをいたしたいと思うのです。  一つは、現在の出願件数、それと増加数。それから第二は、出願の内容が非常に高度化し、かつ複雑になっていると思いますが、審査機関を必要としている、その扱い方等々の問題について、現行は二年三カ月程度、こうなっておりますが、これは、十年後に向かいますとあと十年ぐらいかかる、こういうような状況にあるようでありまするから、そういった問題の内容についてひとつお知らせを願いたい。  第三点は、審査官の定員ですね、現状はどうなっておるか。これは五十九年度の予算定員で結構でございます。  それから審査期間の状況、これは二と兼ね合いがありまするから、その中で含めてひとつ御回答願いたいと思います。  それから次は、検索すべき資料の累増と審査体制、こういうものについて、現在の状況を教えていただきたい。今後の状況については、いろいろ計画がありまして、それは見ておりまするから、現在の状況をひとつ教えていただきたい。
  52. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 お答え申し上げます。  工業所有権の現状というのはなかなか深刻な状況にあります。その第一は、出願件数が非常に増大していることでございます。例えば、特許で申しますと、十年前は十四万三千件余りだったのですが、五十八年に来ますと二十六万五千余りということで、急増を見ています。特にこの三年ぐらいの増加は大きいものがあります。伸び率で申しますと、五十六年は対前年比一三%、五十七年は対前年比七・五%、五十八年は対前年比一〇・七%というふうに伸びております。実用新案も長期的に見ればほぼ同様な傾向がありまして、かなり伸びております。ただ、特許に比べれば相対的に伸び率は鈍化をいたしております。そういうことで、四法合計で、現在の出願件数は約六十万をはるかに超えております。膨大な数になっておるわけでございます。そういう出願の絶対量が多いことと、絶えず伸びているということが非常に問題でございます。  それから、現在の審査の期間でございますが、過去二十年ぐらいを見ますと、昭和四十五年あたりで約五年強という時代がありまして、このとき相当大きな問題になったわけでございます。これに定員の増あるいは制度改正で対応いたしまして、何とかこの審査期間の遅延を二年一カ月ぐらいまでに。実は二、三年前までに持ってきたわけでございますが、二、三年前から、定員の増というものが逆に減員になるとか、あるいは制度改正のメリットといいますか、メリットが消えるということじゃなくて、ベースにもうビルトインしちゃったという方がいいと思いますが、というようなこととかありまして、再び審査期間が延び出す傾向になりました。現在は二年三カ月ないし二年四カ月という状況ですが、問題は、もう三年前から、能力と受け入れ量というのにギャップがありますので、急速にこれが拡大していくということで、十年後には約七年を超えるだろうというふうに推定をいたしておりまして、こうなると制度はあってもワークしないということになりますので、大変深刻な事態になるわけであります。  それから、その悪化原因のいろいろな理由一つで、審査資料が累増をいたしております。急激に累増をしまして、現在では特許、実用新案だけに関しまして約二千八百万点ぐらいの先行資料調査が要るわけでございますが、この急増ぶりというのが審査を困難にいたしております。  それからもう一つ、先生御指摘の申請の内容高度化というのがありまして、例えて申しますれば、申請書類の厚さに端的にあらわれております。といいまして、別に繁文縟礼な書類をふやしているわけじゃありませんで、出願の技術の内容説明の資料でございますが、それがどんどん厚くなってまいっております。それは理解をするのに非常な時間がかかる。それからまた、技術の内容が、先生御指摘のように高度化するのはもちろんですが、横断的に、なっているわけです。例えば、昔はおもちゃの場合に実用新案とか特許といいましても、はっきり言えば三ページぐらいの審査資料だったと思います。ところが、今おもちゃといえども御承知のようにコンピューター、マイコン内蔵というようなことになりまして、おもちゃと電子というのがドッキングするとか、同じことが、いろいろな分野でドッキングし始めました。そうなると、先行調査をやる場合でも、おもちゃはおもちゃのところだけ見ていればいいというわけにはいかなくなってくるわけでございます。関連しそうなところを幅広く見なければミスしてしまうということですから、サーチ範囲というわけでございますが、それが急速に拡大をしてきている。これも審査を困難にしている状況で、いろいろな意味で審査の処理能率の維持、いわんやアップというものは非常に困難をきわめているというのが現状でございます。
  53. 戸田菊雄

    ○戸田委員 そこで、今回の特許特別会計法案設置経過について、一つは、第二次臨時行政調査会の答申があるわけですが、「一般会計と比較して、特定事業についての事業収支や受益と負担関係等をより」明示することができるという答申がなされている。     〔委員長退席、中西(啓)委員長代理着席〕 なおかつ、今日までの各般審議の中で、大蔵大臣が、昭和三十九年三月二十七日ですが、衆議院大蔵委員会の我が党の議員の質問に対して、「ある特定の人の利益を守るために、一般財政を使うよりも、特定の人から料金等を徴収して特別会計をもってまかなうほうが、より国民のために負担の軽減になるという場合には、特別会計に移行するわけであります」と見解を述べております。すなわち、これは受益者負担の原則を盾にとっての御答弁だったと私は記憶しているわけでありますが、なおかつ、通産省も、五十七年九月三十日、臨時行政調査会に提出した文書で、「通産省の行政機構について」ということで提案をしているわけですね。その内容を見ますと、工業所有権行政に「適切な受益者負担原則を確立」することを明記しております。また、特別会計制度、こういったものは、今まで幾つかありまして、現状これが加わって一つ廃止になりましたから三十六あるわけでありますけれども、殊にこの特別会計中身というものは、受益者負担、そしてなおかつ独立採算、この強化体制でいきますから、今回の特許特別会計もそういう趣旨でつくられて運用されるということになれば、特許法第一条の目的からも変質は免れない状況になるのではないだろうか。私は、これではいけないのじゃないかと思うのです。そういう点の心配があるものですから、その辺の見解をまず伺っておきたいと思います。
  54. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 基本的な特許に対する理念、考え方、あるいはさらに広く工業所有権に対する理念、考え方は、いささかも変わるべきでないし、変わっていないと私は確信をいたしております。これはやはり、国民の側の発明奨励の意欲を引き出す、そして同時にそれを公開をさせまして、独占権を与えるとともに公開制度というものをもちまして、そして技術内容を秘密にすることなくオープンにしていく。そしてさらに関係者の刺激、あるいは発明というものの方向づけとか意欲をそういうオーブン性の中から引き出して相乗効果をねらおう、そして技術立国を目指そう、こういう特許制度の基本理念はいささかも変わることはないと私は確信をしております。  そこで問題は、特別会計制度あるいは受益者負担というものの考え方から何か変質するものがないだろうかという不安が一つはあるのだろうと私は思います。ただ、これを申しますと、明治百年来我々は工業所有権制度を維持するわけでございますが、総合収支というものはほとんど一貫して、大体収支相償うという原則でやってきている百年の歴史が実はございます。そして諸外国の例を見ましても、同時にかなりの国で、極端に言えば今は先進国のほとんどの国でやっぱり収支相償うという、特にそれを受益者に負担させるというような明確な意思表示ではないのですが、事実行為といたしまして、収支相償うという運営が行われておるわけでございます。したがいまして、この特別会計制度というものは事業特別会計ではないわけでございまして、我々はプロフィットを得るとか、あるいはそういうような立場でいささかも運用する気はないわけでございまして、従来の収支相償うという原則の一環として運用いたしたい。  じゃ、なぜ特別会計制度にするのかといいますと、これは一つにはやはり受益との関係を明確にするということもあるわけですが、受益と負担との関係を明確にするのには二面ありまして、一面というのは、受益者に負担させろ、受益者以外に負担させるのはちょっと酷ではないかという面。それから今度は受益者の方あるいは負担者の方からいうと、その負担するもの、今度の値上げでかなり負担増になるわけですが、負担するものが、はっきり言えば一般会計のよその人に回ってしまうのじゃ趣旨がおかしいじゃないかという非常に強い要請もあるわけでございます。今度の値上げにつきましても、各方面に私はいろいろ回りましたけれども、一貫して皆さんがおっしゃるのは、今度のビジョンについては支持する、値上げも支持する。しかし、これが一般会計に回ってしまうのじゃ趣旨がおかしいですね、そこはきちっと整理してくださいよというのが異口同音の、ほとんど全員の意見でございました。そういう意味で、負担と受益の明確化というのには私は二面あるのだろうと思うのですが、そういう問題。  それからさらに特別会計。我々これは主として今度十年計画で大幅なコンピューター化をやるわけで、大幅なお金を使うわけですが、これはどうしても長期的見通しといいますか、あるいは弾力的な運営でやらないとやれないわけでございます。もう先生、釈迦に説法でございますが、インプット一つするなり、ソフト開発するなり、かなりの期間がかかるわけでございます。それが先行き利用できる、例えばコンピューターとか端末機の導入ができるのかできないのかというのがわからない限り、投資する気にはならないわけでございます。また、状況によってはむだになるわけでございます。そうすると、かなり長期的な一定の見通し、これはそのときの予算査定があるわけですが、一応収入見通しその他考えて、大体いけるというようなことを考えながら、場合によっては繰り越すとか、余れば翌年に回すとかいって合理化も図りながら、長期的展望のもとにやっていかないと、とても今度の事業はできないということからも、我々としては特別会計にせざるを得なかったというようなことでございまして、特別会計にするから、従来からの工業所有権制度、発明奨励という感覚、特許というものの理念を変えるつもりは全くないという点は御理解願いたいと思うわけでございます。
  55. 戸田菊雄

    ○戸田委員 確かに特許庁等の御努力で、今日までは百年の歴史を持って収支バランスがとれてはきましたね。しかし、えてして手数料収入等を特定財源として発足をさせた特別会計というのは、常に赤字を生み出す危険をはらんでいるのですね。だからそういう点については赤字が出たというような場合には、これはやっぱり一般会計からの繰り入れをやるとか、あらかじめ利子補給をやるとか、そういう諸措置をやっておかないと、これが合理化の人員削減でいったり、業務の削減でいったりということになると公共サービスも低下をするということになりますから、私はそういう点は十分あらかじめ一つの対応措置をとっておいていただきたい。  例えば今年度は、この法案が通れば七月一日施行ですから、二百五十一億何がしという予算大綱はこれは九カ月分でしょう、だから前段の三カ月はこれは一般会計から従前どおりということになっておりましょうが、そういうことを考えると、必ず長い状況の中では経済変動その他がありまして、そういう憂き目に遭っている。例えば今一番苦しんでいるのは、国鉄なんかは独算制でもってやられておるわけです。それから林野特別会計も、もう約一兆円に近い赤字累積でもって困っちゃっている。そういうふうに、三十六ある各般特別会計見ましても、何らかのそういう状態が生まれてきている。石炭特別会計においても、今回二百億も増税をして補てんをするという状況なんです。だからそういう点を考えますると、この辺のあらかじめの対応措置というものを私はきちっとやっておく必要があろうというふうに考えますが、その辺はどういう長官の御見解が。それから大蔵省見解もひとつ聞いておきたいと思うのです。
  56. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 まあ我々は事業特別会計ではありませんから、いわゆる事業的な意味の赤字という問題はないんだろうと思いますけれども、むしろ現実論として収支不足、収支バランスの不足というような事態がという問題だと思います。これは、我々といたしましては、この特別会計考えた場合にどういうことになるかということの最大のポイントでございました。そこで、我々としては、この点についてはいろんな角度から将来の予測を行いまして、値上げの影響、値上げによって出願が減るのではないか、いろんな傾向はどうなのか。これはいろんな先例がございます。たまたまアメリカも約二年ちょっと前に特別会計を導入したというような経験もありますので、いろんな事態、それから出願の将来の動向はどうなるんであろうか、コンピューター経費はどうなるんだろうか、いろんなことをいろんな角度から検討いたしまして、率直にいいますと、我々は、万、歳入不足になることはない。それから、もちろん我々はお金があるからといってむだ遣いは絶対にさせない。合理的な使用方法をやっていくということで、絶えず堅実な運営を考えていくという立場でございますので、私どもは、赤字になることはあり得ないという確信は持っているわけでございます。  ただ、確信は持っていても、万一赤字になったらどういうことになるんだろうかということも、それは頭に入れておかなければいけません。私は、それはもちろんかなり長期的にある程度予測はできると思いますし、我々、ほかの事業会計と違いまして、市況の変動とかそういうことは全くありませんし、競争者の出現ということも全くありませんのです。要は、日本の技術活動が沈滞してしまうかということにかかっているわけでございまして、我々、余計な仕事――余計なと言っては変ですけれども、特許、工業所有権四法以外に変な事業をしようという気もさらさらないし、また法律上できませんので、余計な仕事をすることもありませんし、まあ変動要因というのは非常に少ないわけです。一にかかって日本の工業技術といいますか科学技術といいますか、発明活動がえらい衰えてしまうかどうかということにかかっているわけでございますが、私は、日本としてそうあるべきではないし、そういうことはないと思います。  しかし、万一の場合はどうなるのかな、あるいは超長期の場合どうなるのかなということはもちろんあります。そうなりますと、いろんな努力を我々まずいたしますけれども、やはり工業所有権制度というものは、特許制度というものの、何といいますか、国の基礎的なフレームワークとしての制度でございますので、いろんな努力をした上でなおかつ――一方、この近代化時代で的確な審査をするには一定の規模、一定の予算、陣容というものが必要でございます。それを割り込んだらもう的確な審査ができないというぎりぎりの水準もあるわけでございます。そういうような限界的な状況の中で、必要ならば一般会計からの支援を仰ぐというのは十分考えなければならないと思います。そういうことはないと思いますが、そういうこともありまして、我々は、それは不測の事態と思っておりますが、制度的には、ごらんになりますように、法案上はいろいろな制度といいますか、仕組みが入って知りますので、対応できるのじゃないかと思っております。
  57. 平澤貞昭

    平澤政府委員 御質問の点につきましては今長官から御答弁があったとおりでございますので、若干重複するかと思いますが、こちらからも考え方を述べさせていただきたいと思います。  先ほどもお話がございましたように、本特別会計は受益と負担関係明確化するという点も、この設置一つの目的であるわけでございます。したがいまして、たびたびお話がございますように、収支が相償うということを前提に今後運営されていくということでございますので、そういう意味では赤字が発生するということは考えられないわけでございます。かつまた、その運営に当たりましても、赤字を発生させないような方向で運営していただくということになるかと思います。  しかし、万一赤字が発生するというような場合には、今まで申し述べましたような基本的な考え方からいいますと、やはりその料金水準をどう考えるか、あるいは歳出面でこれをどう見直していくかというようなことで、まずその収支のバランスを回復していただくということが適当であろうと考えるわけでございまして、特別会計法法案の中にございます一般会計からの財源補てんにつきましては、原則として依存しないでやっていただきたい、こういうふうに考えているわけであります。ちなみに、諸外国におきましても、大体各国ともそのような制度でやっておりますし、それから臨調答申におきましても、このような特別会計はそういうことでやってくれというお話もございます。したがいまして、我々としてはそのように考えているということでございます。
  58. 戸田菊雄

    ○戸田委員 確かに、先進資本主義国と言われるアメリカを初め、大勢としてはそういう状況にあるかと思います。いろいろ工夫をして手当てをして運用しているようでございます。しかし、万が一そういう状況が発生をしたら、これはやはり大蔵省、今答弁がありましたが、一貫して料金値上げその他について受益者負担方式をということで押しつけることは、私はもう少しそういう点は考えてもらいたい、こう思うわけです。  それで、時間も余りございませんので、あと三点ほどあるわけでございまして、スピーディーにひとつ質問をしてまいりたいと思いますが、ペーパーレス構想に基づいて大体事務処理システムの機械化、あるいは審査、サーチにおける機械検索システムの開発、情報提供サービスの強化、あるいは国際協力推進等々、総合機械化等の総合的施策の展開が必要だということで、一定の計画をお持ちですね。具体的にありますが、時間がありませんから読み上げません。そういう中で、やはり最終的にはこの財政基盤の確立とそれから必要人員の確保、これが非常に大事な要素、ウエートを占めているのじゃないか、私はこう思うのです。殊に要員は、最近のこの目まぐるしい技術開発その他によって高度な技術化、そして複雑多様にわたっている。こういったものを全部マークして審査官が全部業務を処理していくということになりますると、それにはまず大ベテランがいなければいけないのですから、そういう点については大変な苦労をなさるのだろうと思うのです。したがって、特許庁からいただいたこの資料の二十九ページにも、アメリカの場合はそれらに対して、これは長期となるかどうかは別にして、五カ年計画というものを設定をいたしまして「米国の中長期計画のイメージ」ということで一連の計画が行われているわけです。この中では、やはり今言ったような財源の確保とそれから要員の整備、これに力点が置かれているように私は理解するのですよ。  それによりますると、少なくともアメリカの場合には、そういう日本で今考えられているペーパーレス構想等に基づいて、同じような改革案に対しましても、一九八二年から一九八五年の間に八百七十五名を新規採用する。その後も毎年八十名程度の新規採用を予定をいたしております。一九八一年から八三年の間には、毎年三十名程度を新規採用いたします。その後も二十名程度の新規採用を予定をいたしております。これは特許、商標ともにですね。こういうことで、それぞれ対応策をとっているのですね。  ところが日本の場合は、残念ながら今日まで二十六名程度の純減ですね。今後このままいけば、この資料によりましても、おおむね九百何名ですか等々の要員が必要だという計画を出しておるようでございますが、それが幾ら機械化投資をやっても、そこまで要員を切り詰めるわけにはいかないんじゃないだろうかという気が私はするわけであります。ですから、その辺の見解をひとつ伺っておきたい。  それからもう一つは、現在の特許庁庁舎なんですが、これは非常に分散状況にありますね。そうしますと、行政上の低下は免れない。非常に各地に散らばっておりますから、そういう意味では業務の提携、連携その他も非常にスムーズにいかない、こういうような幾つかの欠陥があると思うのですよ。だから、確かにこの計画書の中にも、庁舎建設その他の構想もあって、それは二千億見当の対応資金も準備をするということになっておりますけれども、これは急がれて庁舎建設をやったらいいのじゃないだろうかというような気が私はいたしておるわけでありますが、この二点についてまず御答弁ください。
  59. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 ペーパーレス計画の目的はいろいろ多岐にわたっておりますが、その大きな一つは、我々としては従来のように人手依存だけでやっていったのでは、いろいろな意味でもう限界にぶち当たるということが発想の原点にあったわけでございます。したがいまして、我々としてはこのペーパーレス化、コンピューター化については、人手は極力抑制する、何とかミニマイズして処理するというのが基本的な骨格にあることは確かでございます。それは同時に、現在の行政簡素化とか、国民の側の立場からいいますれば、そういう立場というのはやはり十分考えていかなければならない、こういうふうに思っているわけです。  ただ問題は、先生御指摘のように、コンピューター化といいましても限度があることも確かです。すべてコンピューター化でやれば人間にかわってしまうというわけではありません。先ほど来申しましたように非常に複雑化しておるし、最後は人間の頭で理解し、ジャッジし、そして処理していかなければならないということも残るわけでございまして、そういう意味で人員の確保というものはある程度必要になってくると私は思っております。ただ、そういう全体の精神が、できるだけマンパワーを減らしたいということですから、できるだけミニマイズする努力をしなければいけない。しかし、その努力にも限界がありますので、ある程度の人員の確保が必要である。  それで、その場合でも、できるだけ今度は民間活力といいますか、あるいは関係団体、新設も含めましてそういうものも動員いたしまして、できるだけやっていこうと思っております。しかし、それもやはり最後にいけばまた限界があって、何でも民間活力でやれるというものでもありません。したがって、そういうぎりぎりのところのものの人員確保については、関係方面に我々としても強力にお願いいたしたいと思っております。  アメリカのケースについては、私も一〇〇%知っているわけじゃございませんけれども、確かに人間の増がありますが、あれは新規採用の面がありまして、リタイアというのも別にありますので、あれが純増になるとは私は思っていません。しかし、それにしてもかなりの純増になる計画でございます。アメリカはアメリカの行き方があると思いますが、私の方は人間の増大についてはアメリカよりはさらに、ミニマイズしていきたいと思っていますけれども、それにもおのずから限界があるので、必要なものについては必ず確保するように努力してまいりたいと思っております。
  60. 戸田菊雄

    ○戸田委員 これは私も舌足らずでしたけれども、日本の出願件数は非常に多いですね。アメリカは日本よりもはるかに少ないです。そういう状況の中で、日本のペーパーレス構想みたいなことをやりながら人員をふやしていく、こういうことで、日本の場合はもっと多いんですから、そういう点については十分配慮していただきたい、こういうふうに考えるわけでございます。  主税局の審議官来ていると思うのでありますが、今回の特別会計収入の大半は特許印紙収入、これで大体二百四十三億何がし、こういうことになっておりますね。今五十九年度の印紙収入の総額はどのくらいありますか。それから登録税関係は、これは資料をいただいてわかっておりますので、よろしいです。ちょっとその点だけお伺いします。――じゃ、後でひとつ調べ終わったらやってください。時間がなくなってまいりました。  これはざっと私の計算ですけれども、長官、出願件数の割合は大手企業が七〇%、中小企業が約三〇%ですね。それで特許で、拒絶があり、この資料を見ますと大体四〇%は拒絶体制に入っていくわけですね。そうして再審判をやるということになりますると、費用がおおむね百万円見当かかる、こう言われているんですね。そういうことになりますと、費用負担の面から中小の皆さんはとても耐えられないという状況になっているようですが、この辺の政策は一体どうお考えになっているか。  それから特許料及び登録料、これは政令確定になるわけでしょう。政令手数料は、これは国会議決ですね。従前どおりですね。そうですね。そういうことになりますると、例えば今回の値上げで、従前政令手数料は出願の場合に六千三百円、これは固定でかかります。それから二万二千プラス発明の数掛ける三千五百円、こういう計算で来ましたね。ところが今度改定になりますると、六千三百円は九千五百円になる、とにかく五〇%上がるわけですから。そうしますと、審査に対しては三万三千円、それに五千三百円、こうなりまするから、大体五万を超すことになりますね。これを十年以内に倍にもう一回やるというのですから、この値上げは少し過酷じゃないかという気がいたしますが、その辺の見解をひとつ聞かせていただきたい。
  61. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 おっしゃるとおり、中小企業の出願が内国出願のうちの大体二五%、大企業が七五%。それで中小企業の、大体七十万製造企業ございまして、出願者が年間大体四万人ないし四万企業、中小企業一件当たりの平均出願件数が二・五件前後というのが中小企業の実用新案、特許の出願の平均像でございます。  それから、次に料金問題でございますが、特許については先生おっしゃるとおりでございます。ただ、中小企業の場合は比較的実用新案が多いことも事実でございます。大企業は特許の方がウエートが大きいけれども、中小企業の場合は実用新案も多いということも事実でございます。したがいまして、先ほど先生のおっしゃった特許に比べますと、実用新案の方は料金の絶対額はぐっと安くはなっております。例えて申しますれば、出願時の出願料は現在四千七百円が二千四百円上がって七千百円になります。それから出願の請求といいますか、審査請求については、現在の一万四千円が二万一千円へ上がって、七千円上がるということでございます。あと年金も上がりますが、例えば最初の三年間は三千円が四千五百円ということで、非常に小さい。これは一年でございますが、一年ごとに三年間は毎年千五百円ずつ上がるということでございます。それが実用新案の状況でございますので、確かに五割というものの響きというのは大きいのでございますが、絶対金額ということになりますと、小さいとは決して申しませんけれども、一年ごとといいますか、その都度に直しますと比較的容認されるのじゃないかと私は思っておるわけです。  というのは、やはり中小企業者にもいろいろ話を聞いたのでございますが、先ほども申しましたように、中小企業の方は特にいろいろな特徴がありまして、割と事業化する目的を直接持っている発明が多い。そして割とライフサイクルの短い発明が多い。そして同時に、特許情報管理、特許管理についてのスタッフがほとんどいないということですので、今度のコンピューター化のいろいろなサービスの向上の利益については非常な関心があるのでございまして、そのためにはかなり声援をしていただいているのが現実でございます。さようなことを総合的に考えますと、確かに率的には大きいのでございますけれども、何とか御理解願っていると我々は確信をいたしておるわけでございます。  それから、先ほどおっしゃいました、トラブルになってくると百万円かかるのじゃないかということでございますが、我々の方の料金はささやかなものでございまして、多分、アバウトですけれどもせいぜい十万円ぐらいにしかならないと思います、九十万円というのは、はっきり言えば弁理士さんとか弁護士さんという費用になるのだろうと私は思います。それで、確かに特許庁の責任でそういうトラブルに巻き込むケースもないとは言えない。責任と言うとちょっと語弊がありますけれども、ないとは言えないわけで、本来うまく審査すれば認めるものがうまく認められないとか、いろいろな問題がありますから、その審査の質を高めるについては、我々は全力を挙げて努力したいと思っています。そしてそういうことによって、そういうトラブルの種がうちの方から出るのは極力小さくするのが我々の責任だと思います。そういうことで努力いたします。しかし、そうはいいながら、どうしてもいろいろな立場で係争になるわけでございまして、そういう係争になるケースはそう多いわけじゃないのですけれども、確かに割と多額な金がいろいろな方面からかかることも我々は心苦しいのでございますけれども、はっきり言いまして料金の絶対値はそんなに大きくないと私どもは確信をしているわけでございます。
  62. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 印紙収入全体の予算額でございますが、これは五十九年度といたしましては、一兆三千三百九十億円は計上はいたしておるわけでございます。
  63. 戸田菊雄

    ○戸田委員 これで終わりますけれども、小さな問題なんですが、庁舎建設で、今技術顧問団、弁理士会等々が入っておるわけですね。数は六百名程度と聞いているのですが、これは庁舎建設になりますと、やはりどこかへ行かなくちゃいけない。これはできるだけ面倒を見ていただいて、それから、ペーパーレス構想等であれば、これは貸与機関としても、中小企業の出願者も弁理士も、それなりにやはり一定の機械化、コンピューター方式をとらなくちゃいけませんね。だから経費が大変なんですね。そういう面について、正面切って、今これは行政改革その他でもってなかなか厳しい時代ですから、たんまり助成をやれとか何とかということは言えないけれども、そういう点も配慮していただく必要があるのじゃないだろうかという気がいたしますのですが、その辺の要望を二点ほど質問いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  64. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 狭隘化あるいは分割されていること、あるいはコンピューターを導入すること、各般の面から新しい総合庁舎の建設が必至になっております。その関係で、現在特許庁敷地内にあります弁理士会館、そのスペースをどうするかという問題は、実は頭の痛い問題でございます。その敷地について、弁理士会が当然の権利を持っておるわけではございませんで、はっきり言えば間借りしているようなものでございますので、その対策というのは、我々非常に難しい問題だと思います。そしてまた、弁理士さんも機械化するわけでございますから、いろんな経費がかかることも承知しております。これについては、率直に言いまして、我々も補助とかというのは直接は難しいのでございますが、何とか知恵を絞りまして、共同でうまく利用するとか、あるいは特許庁で恐らく今後かなりの公報閲覧体制といいますか、を整備できると思います。そういうものを利用していただきまして、低料金で利用できるように、皆さんが大きな設備投資を――大きな弁理士事務所は別ですけれども、一人でやっている、極端に言えば自宅でやっている、あるいは一人でやっているというような零細な弁理士さんについては、十分成り立つように配慮していきたいと思います。  また、弁理士会館の問題についても、我々今すぐこうしますという答えはできませんけれども、問題意識を十分持ちまして、引き続き検討させていただきたいと思います。
  65. 戸田菊雄

    ○戸田委員 ありがとうございました。これで終わります。
  66. 中西啓介

    ○中西(啓)委員長代理 午後二時より再開することとし、休憩いたします。     午後零時四十四分休憩      ――――◇―――――     午後二時二分開議
  67. 瓦力

    瓦委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。矢追秀彦君。
  68. 矢追秀彦

    矢追委員 午前中も議論が出ておりましたが、最初に、特別会計の問題について総論的な御質問をしたいと思います。  まず、臨調答申について、大蔵省としてはどう認識をされ、今日までどのような方向で特別会計の問題について検討を進めてこられたのか。できれば、できるだけ具体的にお願いしたいと思いますが、まず一つは廃止というのが考えられると思います。今回も一つ廃止になったわけでございますけれども、廃止、これが一つ。それからもう一つは、民間に委託をするというやり方による見直し、それから現在のままで内容をしっかり指導してコスト改善を図る、そういうようなことが考えられると思うのですけれども、臨調答申でも、恐らく終わったものについてはなくせという考えだと思いますね。それから、二番目が見直す、これは今申し上げた民営化に対抗するあるいは民間に委託をしていく、そういう点だと思います。②、③はそういう点に当たるかと思いますが、そういう点で、特に臨調答申の百八十六ページの(2)のイの項における四項目、これについてどうお考えになっておるか。できるだけ具体的にお願いします。
  69. 平澤貞昭

    平澤政府委員 臨調答申特別会計につきましては、その「設置抑制見直しの推進」ということが一つ内容として書かれております。  そこで、まず第一に、特別会計新設についてでございますけれども、これにつきましては、従来から極力抑制することとしてやってきております。かつまた、既存の特別会計につきましても、その必要性について常に検討を行ってまいっておりまして、その必要のないものはこれを整理する方向で対処してきているわけでございます。昭和五十年度以降、特別会計の廃止を特に集中的にやってきておりまして、五十年度当初四十二特別会計がございましたが、現在三十八特会というふうになっておるわけでございます。  それとともに、特会中身見直しもいろいろ行っております。特に、特会の中でいわゆる赤字補てん的な借り入れを行っておるもの、これは極力抑制するということで、本年度におきましても御高承のように、地方交付税特会につきまして、資金運用部資金から十一兆五千億円の借り入れがあるわけでございますけれども、これにつきましては今後一切この借り入れを行わないこととしております。その他厚生保険特会健康勘定あるいは旦展勘定等においても類似の措置をとってきているわけでございます。  一応今までの御質問趣旨はそこまででございますね。
  70. 矢追秀彦

    矢追委員 現在、今言われた三十八のうち、今後廃止するとすればどういうふうなものが考えられるか。私は意見として申し上げたいのは、特に産業投資特別会計は随分古い時代にできて、大体役目は終わったのではないか。しかも一般会計からの受入額もございませんし、これは一番先に廃止できるのではないかと思うのですが、今どういう険討をされておるのか。今年度は廃止になっていないわけですが、その理由についてお伺いします。
  71. 平澤貞昭

    平澤政府委員 ちょっと今具体的な数字は持っておりませんが、産投会計はこれまで投融資を行っておりまして、たしか一兆円を超える額の投融資の残高があると思います。現在それの管理を行っておりますのが一つの仕事でございます。それから次は、そういうような投資に基づいて収益が出てきておりますけれども、この収益を引き続き必要な分野に対して投融資を行っているというのがもう一つの産投会計の仕事となっております。その結果生じました剰余等については一般会計へも繰り入れているということでございまして、昔ほどいろいろの仕事はやっておりませんが、依然として今申し上げたような仕事を引き続きやっておるということで、その特会としての存在意義は依然としてあるのではないかというふうに考えるわけでございます。  ただ、今委員指摘のように、それでは今後このままでいいのかという点は、やはりいろいろな観点から検討は進めていく必要がある、そのように考えているわけでございます。
  72. 矢追秀彦

    矢追委員 検討を進めるということですが、もう御承知と思いますが、昭和二十八年にできて、「経済の再建、産業の開発及び貿易の振興のために国の財政資金をもって投資を行うため、」こういう第一条になっておるわけでして、こういう条文からすれば、もう目的は既に達成された、現状には合わない。しかも出資金等で一兆七千億ですから、これを回収して一般会計繰り入れても別に問題ないと私は思うのですけれども、その点いかがですか。
  73. 平澤貞昭

    平澤政府委員 現在産投会計が出資等で投融資をしております額が一兆七千億円あるわけでございますが、これらの主なものは輸開銀等だと思います。したがいまして、それらの機関において融資されたり出資されたりして運用されているわけでございますので、その金額を引き揚げて一般会計に納付させるということは、現段階では巨額な額にわたって行うことは困難ではないかと思うわけであります。したがいまして、先ほど申し上げましたように一応回収されたもの、収益として上がってきたもの等につきまして、さらに運用する資金を控除した後のものを一般会計繰り入れているというのが現状でございます。
  74. 矢追秀彦

    矢追委員 今四つしか減っていないわけです。私はまだほかにも廃止できるものがあるような気がするわけですが、今年度はもうやむを得ないとして、財政再建の期間中にめどとしてかなり廃止を考えておられるのか。先ほど申し上げた民営化あるいは民間に対する委託を含めまして、アバウトの目標というのはできておるのですか。
  75. 平澤貞昭

    平澤政府委員 先ほど申し上げましたように、現在三十八の特会がございます。それらにつきましては、臨調答申でも指摘しておりますように不断に見直す必要がございますので、その特会につきましては今後とも見直していきたいと思っているわけでございますが、それでは現在具体的にこの特会、この特会が廃止できるかもしれないというようなものについては持っておらないわけでございます。
  76. 矢追秀彦

    矢追委員 今は持っておらない。それは、きょう言ってあしたというのは無理でしょうが、大体こういう問題については、財政再建の期間というのも区切られておるわけですから、そういうスケジュールもあわせて出さないと、ただ財政収支試算を出したというだけではだめなのではないか。大体半分ぐらいには減らせるのじゃないか。残すものがそれぐらいで、四つか五つくらいはまだ廃止できるのじゃないか。あとは民営化あるいは民間委託という形になるのじゃないか。具体的にやってもいいのですけれども、私もまだ結論を出したわけではありません。まだ勉強中の段階ですけれども、そこまで私としてもできるわけですから、大蔵省としては、財政再建という大きなテーマを抱えておりながら、もう一つビジョンがはっきりしないような印象を受けるわけです。その点、これは大臣の問題だと思いますが、もう一度お考えをお聞きしたい。
  77. 平澤貞昭

    平澤政府委員 おっしゃるような御趣旨で今後とも見直していきたい、そういうふうに思っております。
  78. 矢追秀彦

    矢追委員 今の問題に関連しまして、見直しをしなければならぬ理由一つ一般会計からの繰り入れ、これが大きな問題だと思うわけでして、繰り入れについての見直しというのは、結局は一つはコスト意識の改善もしなければなりません。そういう点の意識のなさもありますが、繰り入れの主たるものは、パーセンテージからいいますと大体事務量だと思うのですよ。この事務量についてどうしていったらいいのか。事務量については、停止するという考えは非常に厳しいあれですけれども、そういうふうなものがいいのか。ところが、これは人件費という問題、給与が絡んできますから非常に難しいと思うのですが、要するに一般会計から特別会計等の他会計への繰り入れが問題になるわけですから、これの見直しをどうやっていくのか、この基本方針、特に特別会計への繰り入れ、今後どういうふうな形でこれを厳しくやっていくか、この点いかがですか。
  79. 平澤貞昭

    平澤政府委員 特別会計につきましては、いろいろな種類がございます。その中には、例えば事業を行っている特別会計がございます。こういうものにつきましては、できるだけ独立採算的にやるという方向でやっているのが多いと思います。それ以外に、資金等を支出して、その資金の管理を明確にするという特別会計がございます。こういうものについては、資金を必要とする場合には一般会計から繰り入れるという必要がございますので、必要に応じて繰り入れるということは常に行われるわけでございます。三番目には、御存じのように経理を区分する特別会計、今回の特許特別会計というようなものがございます。これにつきましては、先ほど来御議論がございましたように、受益と負担との関係を明確にするというような種類のものもあるわけでございまして、その限りでは、一般会計から繰り入れることが必要になることは余りないのではないかと思うわけでございます。  したがいまして、御指摘の中で一番問題になるのは、最初に申し上げました、事業を行っている特別会計で、経営のあり方が問題で赤字を生じる、それを安易に埋めるのは問題ではないかというのはまさにそのとおりでございまして、こういうものについては、そういうようなことのないように不断に厳しい目で見ていくということをやってきておるということでございます。
  80. 矢追秀彦

    矢追委員 今回の特許特別会計、午前中も答弁されておりましたので大体の御趣旨はわかっておるわけです。今回許された理由というのも一応明確にされているわけですけれども、もう一つ納得できないのは、これは特別会計にしなければならなかったのか、あるいは一挙に民間委託というような形がとれたのではなかろうかとか、いろいろなことを考えるわけですけれども、いろいろなケースを想定した上でこの特会にされた最大の理由というのは、今言われた問題と理解していいわけですか。
  81. 平澤貞昭

    平澤政府委員 特許行政につきまして、今お話がございましたように、民間委託というのは、行政本来の趣旨からいいましてまず除かれると思います。したがいまして、これは行政として引き続き行うということになると思いますが、その場合に、従来と同様一般会計でやっていく問題、それから特別会計設置してやっていくという方法があるわけでございますけれども、後者の方法を今回とることにいたしました理由は幾つかあるわけでございます。  一つは、日本の特許行政のあり方が論外国に比べて非常におくれてきている、したがいましてこれを諸外国並みに持っていくためにはかなりの資金が要るという点もあるわけでございます。それを一般会計でやっていくのがいいのかどうかということでございまして、一般会計も財政上大変苦しいという点もあるわけでありますけれども、特許に伴う受益とそれに伴う負担との関係、その中でこういう大事業をやっていくのがいいのではないかというふうに考えるということでございまして、そういう場合に、負担と受益との関係明確化するには特別会計を設けた方がいいのではないかという観点が一つございます。  それから、このように大変大きな事業を行うわけでございますので、その事業を行う際にかなり機動的、弾力的に行っていく必要もあるのではないかと思うわけでありまして、これも特別会計設置してやっていくのがいいのではないかというふうに思われ、かつ考えて、今回のような法案を出したということでございます。
  82. 矢追秀彦

    矢追委員 今までは一般会計でやってこられて、今度変える。そういう意味では、受益者負担が非常に高くなってきたから特別会計に移行する。ということは、特別会計というのはだんだん受益者負担、受益者負担ということですべてがやられてくるような流れになってくるのではないか。そうすると税外負担が大変ふえてくる。そうでなくても、今国民の間には増税感が非常に高まってきているところへもってきて、またいわゆる税外負担がどんどんできていく。これは一つの例です。もちろん形は違いますよ。一部の人でしょうから、国民全体の税とは全然違いますけれども、そういう意味で非常に受益者負担を強調されておるということについて、私は、特許料の値上げをする、これはお金がたくさん要る、そして受益者負担が今までより高くなる、だから特別会計でいった方がいいのじゃないかとなると、ほかのものもどんどんそういう形になってくるのじゃないかという危険性を感ずるわけですが、その点はいかがですか。
  83. 平澤貞昭

    平澤政府委員 今回特会をつくりました際に考えました大きなポイントは、先ほども申し上げましたように、特許制度をいろいろ改善合理化することによって結局、特許を申請する人あるいは特許権を取得した人たちが受益をすることになる、いろいろの利便も得ることが可能になるわけでございます。先ほど特許庁長官からもお話がございましたように、例えば特許を申請しまして、現在二年三カ月かかっておるわけでございますけれども、このままほっておきますと、十年ぐらい先には七年ぐらいかかってしまうという問題があるわけでございます。したがいまして、今回のようなことをやることによって、特許を申請する人たちにとっては迅速に特許権が取得できるという大きな受益があるわけでございますから、その受益に応じて収入も国の方でいただくという関係もあるわけでございます。したがいまして、その収入と支出との間にはおのずから合理的な関係があるという前提で考えているということでございます。
  84. 矢追秀彦

    矢追委員 私が聞いているのは、要するに今まで一般会計で来られたのは、一つは公共性ということが重要視されてきたのではないか。ところが、今回からは、今言われた受益者負担が高くなってくる。もちろん高くなるわけですね、十年間で倍くらいになるわけですから。しかも特許庁をきちんとするために巨額の金がかかる、だから特会に移すのだ、そういうことが今後、わかりませんけれどもまた出てくると、傾向として公共性のあるもの、受益者負担とのあり方という問題もきちんとしておかないとまずいのじゃないか。  大体受益者負担というのも、どこまで負担すべきなのか、これは議論のあるところで、先ほど申し上げたように税と税外負担というものを考えた場合、そうでなくとも今国民負担がだんだん上がってくる。今度の健保だってそうですし。そういうことになると、この問題はただこの特許行政をこうするからこれで特会にすればいいんだというような、これだけをとらまえて――これは私は賛成ですから、決してこれにけちをつけるわけじゃないのですけれども、今後の方向としてこういう問題をどうしようとされているのか。また何かぐあいが悪くなったら特会をつくる、それでこっちはこっちで一応受益者負担でバランスさえとっておけばそれでいいんだ、そういうふうなことにほかのものも、今どういうものがどういうようになる可能性があるか、私も勉強してませんからわかりませんけれども、その点私はきちんとしておいていただきたい。どうも今の説明では、この問題については納得させられても、原則的な面としては、私勉強足りないのかもしれませんけれども、ちょっと納得できないのです。いかがですか。
  85. 平澤貞昭

    平澤政府委員 今回の特許特会と類似するものといたしましてはいわゆる車検特会がございます。これも大体似たような考え方で設置したわけであります。  そこで、それでは今後似たようなもので次から次に同じように特会に移していくものがあるんじゃないか、こういうお話かと思いますけれども、この特許特会を検討する際に、それらについても我々としては検討してみました。登記関係事務が似たような点がございます。それから旅券関係事務も、そういうのがあると言えばあるわけでございます。しかし、いずれも一般会計と区分して経理する必要性が、今回の特許の場合ほど大きくないわけでございまして、先ほど来御議論がございましたような臨調答申との関係とかいろいろな問題も慎重に検討しまして、特許特会について設置するというふうにしたわけでございます。
  86. 矢追秀彦

    矢追委員 そういう意味で、これは特許庁長官にお伺いしたいのですが、工業所有権制度の理念というのは一体どういうものなのか。今回この受益者負担ということになってきた場合と、この公共性との絡みですね。もちろん特許ですからその人のものです。しかし、これは広く国民全般も利益を受けるわけですから、かなり公共性の強いものでもある。しかし、主体としてはやはり個人といいますか、そちらに置いておられるのだと思うのですけれども、今回の特会というのが、そういう本来の工業所有権制度の理念に反していないのかどうか、その点いかがですか。
  87. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 工業所有権制度の理念といいますのは、俗な言葉で申しますと、典型的なのは特許、実用新案になるわけですが、やはり産業の発展ということが基本にあるのだろうと思います。そしてさらにそれをブレークダウンしますと、やはり発明、創作活動に対する刺激、それに対して独占権を一定期間与えることによって刺激を与え、そして同時に、独占権を与える反面、公開の義務をつけまして公開させる、そういうことによっていろいろな進歩が社会的に全部公開される、それに基づいてさらに新たな発明、改良が加えられる。そういう相乗作用によりまして、産業技術といいますか国民生活といいますか、発展を図っていきたいというのが特許、特に実用新案制度の理念だと思います。この理念というのは、いささかも今度の特会によって変わらないだろう、変わるべきではないし、変えるべきではないと私は思います。     〔委員長退席、熊川委員長代理着席〕  特別会計で収支相償うというような原則で今後運用するわけでございますが、実はこの原則というのは、今まで一般会計でやってきました過去百年の特許の歴史で貫いているわけです。そしてまた、世界の先進国の工業所有権制度考え方とも同じなのでございます。したがいまして、確かに、例えば全部国家の一般資金でこれを賄って、およそ極端な例でございますけれども、出願料なり年金は一切取らない、あるいはその中間の形とかというのも、理念的には成り立ち得ないとは言えませんけれども、しかし、現実的に過去百年の歴史あるいは世界の潮流ということを踏まえますと、そういうことではなくて、大体収支相償うという原則で運用しておる、そして、工業所有権の公共的な立場、理念というものもまたしかるべく確立されておる、こういうのが現状でございます。したがいまして、理念的にはいろいろな立場からの考えはあると思いますが、私どもは、そういうことで過去の歴史と現実というものを考えますと矛盾をしていないし、変更を加えるものではない、かように考えているわけでございます。
  88. 矢追秀彦

    矢追委員 それでは、今ちょっと収支のことをおっしゃいましたけれども、特別会計が赤字に転落しているものが非常に多くて、先ほども申し上げたように、収支の問題についてきちんと監督指導あるいは見直ししなければいかぬのが非常に多い。半分くらいあるわけですから、今後、過去の例でいきますとそう赤字にならないと思いますが、これから相当お金の要る仕事でもございますし、果たして赤字転落は絶対ないのかと私は心配をしているわけなんですが、その点はいかがですか。
  89. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 この点につきましては、我々がこの制度の検討を開始した段階から、最初にして最も根本的な検討の対象でございました。  一言で言いますと、赤字転落の心配はないと断言できると私は思います。なぜかといいますと、まず基本ベースとして、幸いなことでございますけれども、世界各国の特許行政事務処理の、一言で言えば能率でございます。これを見ますと抜群の好成績を上げておるわけでございます。これはもう紛れもない事実でございまして、二倍とかあるいは数倍という処理を上げているわけでございます。そこで、我々はビジネスじゃありませんので、ちょっと誤解を与えると思いますけれども、ビジネス的に物を考えれば抜群の国際競争力を持っている。この力は幸い相当維持できるし、また維持できなければならないという自信がございます。それが根底にあることは確かでございます。  それからまた、この事業につきましてはかなり長期的に見通しがつきます。事業の範囲というのは我々は厳格に限定されておりまして、はっきり言ってお金があるから余計な仕事をするわけじゃございませんし、それからコンピューターにつきましても、経費についてはかなり予測可能でございます。長い目で見れば、コンピューターのレンタル費が主でございますけれども、かなり急速に下がってくる実情にございますし、いろいろな収入面、支出面において、通常のビジネスと違いまして、もちろん市況の変動あるいは競争相手の出現ということもありません。したがって、午前中にも御答弁申し上げましたけれども、唯一のファクターというのは、日本の技術開発力、発明意欲というものが急速にしぼむかどうか。これが急速にしぼんで、極端に言えば半減してしまうというような事態になりますと、これは相当な問題になることは当然でございます。これが率直に言えば、もし収支問題を議論するとすれば最大のポイントファクターになると思います。  しかし、先生御承知のように、今日本全体が技術立国ということで、極端に言えば大企業から零細企業まで、非常な意気込みに燃えてやっております。我々は日本人の勤勉あるいは技術立国にかける熱意を日ごろ感じておるわけでございまして、これが衰えない限りは、また我々は運用上、もちろん合理的な支出を非常にセンシティブに心がけてまいる所存でございますので、万々、俗に言う赤字になるということはない、またあってはならないという決心なり確信を持っているわけでございます。
  90. 矢追秀彦

    矢追委員 二千億円の事業費が十年間で見込まれておりますが、今も少し言われましたけれども、コンピューターもかなり大型、小型、端末機、相当入れられる計画がここに出されております。これは全部レンタルでいかれる方針ですか。
  91. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 結論的に言えば、ほとんど全部レンタルでまいります。それはもう先生恐らく私より御存じだと思いますけれども、この分野の技術開発、技術改善が非常に激しいわけでございまして、一たん買い取った場合には、もしそれが長くもてはレンタルより安いかもしれませんけれども、陳腐化した場合にはえらい損害が出ます。また、そういうことでいいものができた場合には、いいものをさらに追求していって、効果を上げていかなければなりません。さような意味で、我々といたしましては、できるものはほとんど全部レンタルでやっていきたい、かように考えているわけでございます。
  92. 矢追秀彦

    矢追委員 機械の方は今の長官の方で問題ないと私思いますが、問題は人間の問題でございまして、現在でも非常にたまっておる、審査官の数も少ない、増員が要求されておる。今度こういうふうないわゆるペーパーレスシステム、コンピューター化になってきますと、コンピューター化というのは人が減るかどうかというとかえって減らないわけですね。特に自動車工場のような、ああいうロボットを使う場合であればまた別ですけれども、特許の審査のようなものについてはむしろ人間が要るのではないか。その点について、人員はふやしていかなければならぬ、その場合の人件費との絡みで今後どうなっていくのか。私はその点は計算されていると思いますけれども……。  それと、午前中もいろいろやられておりましたけれども、コンピューターを使うというのはなかなか大変なことでして、データを入れた後は楽ですけれども、入れるまでの入力が大変ですし、また、もちろん業者に頼んでソフトはつくられるので問題ないと思いますけれども、それにしてもやはり業者任せにはいかぬのじゃないか。特許庁の中でどういうふうな審査をやるにしても、データの整理をするにしても、やはりソフトの開発もしていかなければならぬ、それなりに専門家が必要になってくる、こう思いますので、コンピューター化イコール人減らしという考え方は間違いである。その点はどう認識されていますか。
  93. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 コンピューター化が人減らしの万能機械でないことは我々十分認識しております。職場によりますし、当然職種にもよりまして、非常な人減らしに役に立つ部門もないとは言えませんし、人減らしが直ちに連動しない部面もあるということで、総合的に見まして、コンピューター化が人減らし万能機械でないことは当然でございます。なかんずくコンピューター化によりまして構築する間はむしろ人手がかかる傾向が、先生おっしゃったとおりございます。もちろん我我できるだけ、ソフトウエアであれ入力であれ、民間会社を一〇〇%活用するように努力はいたしておりますが、それでも、それをスーパーバイズする者、コントロールする者、企画する者等が、やはり新たに構築する場合に追加投入要員となることは当然我々計算をいたしております。しかし、我々といたしましては、やはり現在、増員の非常に困難な状況、また公務員の数の膨張に対する非常に強い御批判ということも十分考えなければならないので、できるだけコンピューターで人手をかえていくという路線を最重点にいたしておるわけでございます。  しかしながら、もちろん先生御指摘のように、コンピューターを使いながら全力を挙げて合理化してまいりますけれども、要は、結論として迅速的確な処理ができなければ困るわけでございます。そういう全体の問題、目標はとにかくコンピューターはやはり手段でございまして、結論は迅速的確な処理ができなければ我々は責任を果たせません。そういう意味で、必要な人員については確保してまいる所存でございます。もちろんその過程で現下のいろいろな厳しい状況がありますから、できるだけ民間活力を利用しながらやっていく所存でございますけれども、特許庁の仕事の内容からいって、それに一〇〇%頼るということはできないわけでございますから、そういう意味で、どうしてもやむにやまれない人員の確保については、我々最大限の努力を払っていかなければいけないというふうに考えております。
  94. 矢追秀彦

    矢追委員 今回、こういうふうな形に踏み切られた理由は二つあると思うんですね。一つは、非常に事務量がたまって、審査を早くしなければいけないということ。それから膨大なデータを整理する、またそれをどうやって民間にサービスをするかという、この二つに分けられると思うのですけれども、後者の方は、これはうんと早くやっていただくことは、コンピューターというものが非常に威力を発揮するということも事実ですが、前者の方の、審査そのものが果たしてどれだけ今たまっているのを早くできるのか。いろいろプログラムみたいなものをつくられておりますけれども、私がもし特許をつくった場合、フロッピーに入れて持ってきますね。そこから後、審査を終わるまでの間というものは、今までの事務の簡素化といいますか、スピードアップというのはどの程度なのか、ここがやはり一番心配なところなんですけれども、その点はいかがですか。
  95. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 今後の出願動向あるいは審査請求動向にも依存しますけれども、我々、一定の推定値を加えまして予測をいたしております。  御承知のように、今何もしなかった場合には多分能率は劣化いたします。それは先生御指摘のように、審査資料はどんどん累増しておりますしということで劣化していくと思います。したがいまして、そういうものをいろいろ計算いたしまして、現在、二年三カ月ないし四カ月、審査請求があってからでございます。出願から請求までがさらに加わりますけれども、もちろん当然出願と同時に請求する権利もありますから、それは出願者のオプションでございますけれども、出願請求というか審査請求から処理するまでの平均期間というのは、今二年三カ月ないし四カ月かかっておるわけでございます。これは特許、実用新案のケースでございます。これが、このまま放置しますと、十年先に七年を超えるというのは確実でございます。  これが一体どうなるかということでございますが、もちろん一定のコンピューター化メリット、あるいはコンピューターのメリットにはいろいろありまして、一つは、我々の審査官の手間暇を省く問題もありますけれども、同時に、先ほど申しました請求する人が減るわけでございます。というのは、今平均値で申しますと、出願をして登録になる確率は約三割だと思います。ということは、残りの七割が、むだな出願とは言いませんけれども、ある程度事前調査を十分やれば、出願をしなくてもいいもの、審査請求をしなくてもいいものがかなりあることは確かでございます。これは企業側にとっては合理化にもつながるわけでございますが、これを一言で言えば、審査請求率に大きく依存してくると思いますが、これがかなり下がってくるものと予測しております。コンピューターには実はそういう効果もあるのでございます。  もちろん、それ以外のマンパワーあるいは所要の人間の確保等もいろいろ織り込みまして、我々としては、この七年以上のものを何とか現状程度といいますか、そこを確保してまいりたい。そして、でき得れば、さらに我々の理想としてはもう少し短縮ができればと思っておりますけれども、そういう理想も一方に持ちながら、大体そういうビジョンで今作業をしておるところでございます。
  96. 矢追秀彦

    矢追委員 このペーパーレスシステムは非常に大きな規模のシステムになりますし、特に第二期の六十二年から六十五年の間にもう電子出願をさせるというふうなことになっておりますので、あと二年ちょっとしかないわけです。技術的に、この巨大なシステムの開発というのは、もう見通しはついているわけですか。これから研究されるのですか。また、日本のいわゆる技術を使ってほしいわけですが、ソフトなんかアメリカの方が強いことも事実ですし、IBMあたりはなかなかの力を持っておりますので、その点、日本の技術で、現在もうこのシステムは十分可能だという結論は出ているわけですか。その点はいかがですか。
  97. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 ちょっと難しい御質問でございまして、まず技術的に可能であるということは十分検証されておると思います。ただ、どういう方法がいいのか、どういう方法がベターなのかという点については、まだこれからの問題も多々ございます。したがいまして、ビジョンといたしましては、もちろん我々、具体的に一定のビジョンを現在持っております。そして、そういう技術的な可能性も確信を持っております。ただ、実際にそれをアプライしていく場合については、ソフト間のいろいろな関連、コネクションも出てきます。  それから、さらに一番重要なのが自動検索のシステムでございます。この自動検索システムについて我々は一定のビジョンを持っていますが、一体どういう分類といいますか、自動検索についてもその分類付与によって随分結果が違ってくるわけでございます。そういう問題については、引き続きテストをしながら逐次拡大していく、こういうふうに考えております。したがって、一〇〇%といいますか、やれることがきちきちと全部決まっているとは到底まだ言えません。ただ、一定のビジョンは持っておって、それを必要に応じて検証しながら進めていく。必要に応じては進路変更しながらやっていく。それの技術的可能性は十分確信を持っております。  それから、もちろん我々、これについていろいろな機器その他、率直に言いまして、別に国産品でなければならないということは思っておりませんが、いろいろな技術的なものを検証しますと、見通しとしては多分、ソフトもハードも含めまして、国産技術でいけるのじゃないかと思いますが、そこは、はっきり言いまして値段の関係とかいろいろありますし、今後の技術開発もありますから、国産オンリーでいかなければならぬとも思い込んではおりません。
  98. 矢追秀彦

    矢追委員 フロッピーでこれから出してくるようになると、今までのようないわゆる町の発明家という方にはちょっと負担になるんじゃないか。しかし今日本ではコンピューターが入り込んで、今の子供さんたちは我々と違って、小さい間から何でもやれるような状況になっておりますから、遠い将来は問題はないと思いますけれども、先ほど申し上げたように、いわゆる六十二年から始まる第二期の中で果たしてどれだけ出てくるのか。大きなところは問題ないですよ。非常にいいアイデアを持った町の発明家の方に負担というものがふえてくるのではないか。それが日本全体にマイナスを及ぼしてはいけない。その場合、特許庁として、それに対する何かサービスをしていく、そういう点は考えられておるわけですか。
  99. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 電子フロッピーの出願でございますが、結論的に言いますと、零細企業なりあるいは地方の方のことも考えて、フロッピーなりオンラインを強制する気は全くありません。従来の文字でも結構だということでございます。しかし現実問題として、それじゃ中小企業が敬遠するかということでございますが、実際はそうならないだろうと思います。と申しますのは、ワードプロセッサーが今御存じのような普及状況になってまいりました。ワープロ時代はもう時間の問題だと思います。ワープロでございますと、電子フロッピーはもう自動的にできておるわけでございまして、ワープロの結果をそのまま送ってくればいいということになります。自分の方は文字でももちろん見れるし、ワープロの電子フロッピーでも出るわけでございます。したがいまして、むしろ企業サイドの意見を聞きますと、もうワープロを採用すれば電子フロッピーの方が合理的だ。もちろんワープロといっても、私よく知りませんけれども、レンタル費が月に今十万以上かかるのだろうと思います。そうしますと、たまにしか出願しない人がワープロを設備できるはずはございません。したがいまして、町のワープロ屋というのがこれからますます発展してくるんだろうと私は思います。そういうことも考えられます。  しかし、いずれにいたしましても、冒頭申し上げましたように、どうしてもワープロでない方がいいという方については結構でございまして、それは強制いたしません。恐らくそういうのは数%とかで十年後もあると思いますけれども、量は少ないので、それは特許庁の方で磁気テープといいますか、テープの中に変換するように予定を組んでございます。
  100. 矢追秀彦

    矢追委員 この問題で終わりにいたしますが、今後企業とのオンライン化ということも考えられておるようですが、その場合の企業秘密の保護の問題、それから、最近コンピューター時代に入って、コンピューターを利用した犯罪というのもふえ続けておる現状の中で、こういった犯罪が特許庁、いわゆる大きなシステムに対して行われる可能性もあるとも思うわけです、わかりませんけれども。その点お伺いして、終わりたいと思います。
  101. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 特許、実用新案について言いますと、出願後一年半たつと公開するという原則になりますから、一年半以降は秘密性が原則としてないわけでございます、  問題は、その一年半の間の秘密性を保たなければいけないというわけでございます。したがって、オンラインで入力する、電子フロッピーで入力する、いずれにしましてもそれをデータに入れてしまう。それを外部の人がオンラインで取り出せるということになると大変でございまして、そこは完全に遮断をするつもりでございます。つまり、俗に言うと何か番号を間違えて取られちゃったということもあり得るわけでございますから、暗証番号で秘密を保持するだけでは困るわけでございまして、我々はアクセスできないようにいたしますので、基本的には心配は要りません。私も専門家じゃありませんが、そこは最大の問題でございまして、絶対に大丈夫なように措置いたします。
  102. 熊川次男

    ○熊川委員長代理 坂口力君。
  103. 坂口力

    坂口委員 今矢追議員が特許庁に対しましていろいろお聞きいたしましたので、特許庁一つだけ聞かせていただいて、その後手数料の方に入っていきたいと思います。  今いろいろと議論をしていただきましたが、その中で、特別会計になります場合に、赤字は出さないというお話がございました。その決意でひとつお願いをしたいと思いますが、また逆に、こうした財政難のときでありますので、黒字になるのではないだろうかという熱いまなざしもあるわけでございまして、特別会計というものを次から次へとつくっていくということは、一般会計というものを非常に苦しい立場に追いやるのではないかというような議論が、この委員会におきましては以前からもたくさんあったわけでございます。そうした中で今回特会になるという話が出ましたときに、非常に厳しい財政状態でありますがゆえに、そうした逆の見方もまた出ているわけでございまして、極力赤字は出さないようにしていただくのと同時に、また極力節減もしていただいて、残るべきものは残していただいて、言わなくても大蔵省はまた一般会計の方に取ると思いますけれども、できるだけその辺のところの整理をきちっとしていただきたいということが一つの願望でございますが、ひとつ御意見だけ先に承っておきたいと思います。
  104. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 もちろん我々は、極端な言い方をすれば一銭でも合理的にお金を使いたいということで、職員に徹底をいたしております。予算が取れたから全部使ってしまうというのは絶対にならない。最も合理的に使って、残すものは残すという精神で貫きたいということで、職員に徹底させるようにいたしております。そういう意味で、経営と言うとちょっとビジネス的ですけれども、事業の執行に当たり、かたい決意をいたしております。できるだけ黒字にしてというお話でございますが、そういうことに持っていきたいと思います。  ただ。特許関係につきましては、全体の料金設定の理念あるいは過去百年の歴史、各国の歴史を見ても、収支相償うバランスというものが、はっきり言えば歴史であり、伝統であり、かつ世界の常識になっていまして、大いに稼いでいるというふうな歴史はないわけでございます。したがいまして、もちろん黒字になりまして、そして長期的な展望に立っても余裕がある場合に、国庫に一部繰り入れるということもあり得ないことはないと思います。そしてまた、そのとき同時に、今度は出願人の立場からいいますと、料金を下げるという議論も当然並行して出てくるとは思います。しかし、特許庁といたしましては、とにかく目的は迅速的確な審査をすることであり、特許情報その他を的確に企業に届けるという任務遂行がポイントでございまして、我々は稼ぐ目的はございません。したがいまして、おのずからバランスのいい収支状況になるものと確信はいたしております。
  105. 坂口力

    坂口委員 もう一つお聞きをしておきたいと思いますが、大型コンピューター導入ということでございます。  特許等関係は、諸外国との関係も非常に多い仕事でございます。したがって、外国との間のいろいろの資料の提出、あるいはそれを求めることもあるでしょうし、また外国から求められることもあろうかと思いますが、諸外国との間のそうしたいろいろの手続等をできるだけたやすくするように、全部の国というわけにはいかないのでしょうけれども、先進諸国との間には何らかの統一の基準というようなものをつくっていくとかというようなお話もあるのでしょうか。
  106. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 既に特許協力条約という条約が発効しておりまして、現実に日本も加入し、日本の出願人も随分利用しておりますが、これはまさにそういう先生のおっしゃった御趣旨に基づいているものでございまして、一定の統一されたもので、日本の特許庁に出すことによって各国に即出願手続ができるシステムになっております。もちろんそれの利用度というのは、まだ必ずしもそう高いわけではありません。  それと同時に並行して、できるだけ各国の特許制度を合わせていこうというのも願望として持っています。ただ、これは各国歴史と主権がありまして、おいそれと一朝一夕にはできないわけでございます。ただ、幸いなことに、今度コンピューター化を通じまして日本とアメリカと欧州特許庁三者は緊密に連絡をとり合っております。つまりこれはお互いに得をしよう、節約しようということの発想でございまして、例えば日本でいえば、日本が独自でドイツの特許公報もアメリカの特許公報も全部データにインプットしますと大変な金がかかるわけでございます。したがって、そのデータインプットの金はみんなそれぞれの国がそれぞれ持ち寄ってやろう、つまり自分の国のものは自分でやって交換しよう。交換するとただみたいな値段になるわけです。自分で入力すると何十倍と金がかかるわけでございます。そうしますと非常な節約になる。そういう話がまとまりまして、そのためにはいろいろなデータとか見出しとか、極端に言えば順序とかいうのはできるだけ合わせないと利用価値が少なくなるわけでございまして、そういうような、一言で言えば標準化というのがここのところ急速に進んでまいりました。  なお、法律とかそのほかの同一化というのは、理念としてはあるのですけれども、現実はなかなか難しいので、今言ったようにむしろ特許協力条約というような条約をつくって、そのルートで、各国違う法制だけれども、手続的には非常に楽にして出願ができるようにしよう、こういうことになっておるわけでございます。
  107. 坂口力

    坂口委員 ありがとうございました。  それでは特許庁、ちょっとお休みをいただきまして、手数料の方を少しお聞きしたいと思います。  各種手数料等改定の主な内容をお聞きをいたしましたが、この数字を拝見いたしますと、中にはアップ率のかなり高いものもございますし、中には案外低いものもございます。また、よく似た手数料でも、額がかなり高いものもございますし、低いものもある。各種手数料等改定の主な内容というものを一覧表で見ますと、一見、かなり大きなばらつきを感じるわけであります。  お聞きをいたしますと、例えば受験手数料でありますと、受験なさる方が非常に多いようなものについては、したがって必要経費が少ないから安くなる。そして受験の非常に少ないようなものにつきますと、必要経費が一人割にいたしますとかなり高くなるので手数料も高くなっているというお話でございましたけれども、それならばこの手数料というのは必要経費料なのかというふうに考えてみますと、もちろんそうした側面もあるかもしれませんけれども、それだけではなくて、一つの権利を与えられる、それに対する料金というような側面もあるように思えてならないわけでございます。  例えば医療関係のものを見ましても、薬剤師試験受験手数料というのは現行は二千円でございますが、改正案で見ますとこれが三千三百円になるわけでございます。そのほか、もう一つ、獣医師試験受験手数料というのは現在三千円でございますが、今度これが六千円になるわけでございます。医療にかかわる同じような受験手数料でございますけれども、片方は三千三百円、片方は六千円、額にいたしますとかなり差がつくわけでございます。確かに、受験をなさる方の数からいえば、薬剤師受験の方がかなり人数は多いんだろうとは思いますけれども、そうした必要経費ということだけでこの手数料を考えていいんだろうか、もう少し、横並びに見ましたときに手を加えるべきことはないんだろうか、そんなふうに思えてなりませんが、ひとつ御意見を承りたいと思います。
  108. 平澤貞昭

    平澤政府委員 今回お願いしました法律で手数料の金額の定め方の考え方でございますけれども、一つは基本的な考え方といたしまして、個々の行政事務に要するコストをはじきまして、それで適正な手数料を決めておるものがあるわけでございます。それ以外に、コスト以外の観点から手数料を決めているものが若干ございます。その場合は、今委員指摘のような、応益的な要素とか政策的な要素等々を加味いたしまして決めているものが若干ございます。  しかし、今回お出ししました中でそのような観点からやっておりますのは、特許関係の四つの法律特許料登録料等と、それからあと社会教育法の社会通信教育認定手数料、土地収用法の事業認定申請手数料でございまして、それ以外のものにつきましては、純粋に一の基本的な考え方であるコスト主義によっているわけでございます。  そういう中で、先ほど御指摘の薬剤師と獣医師試験でございますか、この双方につきましては、この基本的な考え方で算定して出した金額が、先ほどの三千三百円と六千円ということになっております。
  109. 坂口力

    坂口委員 そんなに重要なことではないと思いますが、そのコスト主義というのは、今までもとられていたんだろうと思うのですね自今回初めて取り入れられた考え方ではないと思うのです。薬剤師試験の方が二千円が四千円になって、獣医師の方が三千円が六千円になったんなら、ちょうど倍になったということでわかりがいいわけですけれども、薬剤師さんの方は二千円が三千三百円に上がり、そして一方は三千円が六千円に上がる。いずれも以前にコスト主義をとっており、現在もコスト主義をとっておって、同じような手続の中で、この獣医師の方だけがとりわけコストが高くかかるようになったとは、どうも考えにくい一面もあるし、そうした矛盾みたいなものは、この表を見ましてあちこちに考えられるものでございますから、私はお聞きをしたわけでございます。  したがって、今後の問題でございますけれども、必要経費料というものだけで見るのではなくて、もう少し横との並びの関係考えていただく必要はないだろうか、これは私個人の考え方でございます。それをひとつお考えいただきたいのと、それから――それでは、それをひとつお答えいただいて、次に進みましょうか。
  110. 平澤貞昭

    平澤政府委員 今のお話の点につきましては、手数料につきまして法律でどこまで決めるかという問題に結局絡んでくるお話だと思うわけであります。実費を勘案して決めるということになりますと、実費というものは一応一つしかないわけでございます。したがいまして、そのものが正確に出せれば、これはまさに一つものが出せるわけでございますが、その他の政策的要素をかなり加味して出す場合には、やはりその加味の仕方によってはいろいろな行政的な判断で決めることも可能になってくるわけでございまして、その辺、その法律の決め方をどうするかという問題に結局絡んでくるということでございます。したがいまして、今回お願いしましたのは、いわゆるコストを考えて決める手数料につきましては、政令の委任をお願いしておるということで考えておるわけでございます。  それから、最初の薬剤師と獣医師との違いという点は、おっしゃるようにアップ率等が違いますし、改定後の単価も違ってくるわけでございますけれども、先ほども申し上げましたように、計算上は人件費と物件費に分けまして、おのおの担当している職員がございます。それの一人一時間当たりの、例えば人件費の場合は、人件費単価を出して要事務処理時間に掛けて出しておりますし、それから物件費につきましても、同じような算定方法で客観的に一つの答えが出るようなやり方でやった結果、この三千三百円であり六千円というふうになっているわけでございます。
  111. 坂口力

    坂口委員 そうしますと、薬剤師法の中の第三章、第十六条に「受験手数料」というのがございますが、これを見ますと、「試験を受けようとする者は、二千円をこえない範囲内において厚生省令で定める額の手数料を納めなければならない。」こう書いてございます。そういたしますと、今度は天井が三千三百円になるということですか。必ずしも三千三百円になるということでなくて、その以内で納めるということですか。
  112. 平澤貞昭

    平澤政府委員 今回、これにつきましては、実費を勘案して政令で定める……(坂口委員「全部を直すわけですか」と呼ぶ)はい、お願いしております。
  113. 坂口力

    坂口委員 若干、手数料の問題とはずれますが、この手数料に絡んでこの際にお聞きをしておきたいことがございます。  それは、獣医師法に絡むわけでございますけれども、現在、日本の各地域におきましては、特に漁業におきまして、いわゆるとる漁業から養殖をする漁業へということに変わってまいりまして、ハマチ養殖その他の事業が非常に多くなってきたわけでございます。そういたしますと、魚の病気というものがたくさん出てまいりまして、これを一体だれが処理をするのかということが大きな問題になってまいりました。魚がたくさん病気になりまして死にますために、ハマチの養殖等がなかなか採算がとれないというようなことも起こっておりますし、また、これに保険が掛けられておりますけれども、それが病気で死んだものなのか、それともほかの二つないし三つ理由で死んだものなのかというような判断を、だれが一体するかというような問題も実は出てきているわけでございます。  そこでお聞きをしますと、獣医師法の国家試験はことしから魚病学というものを加えたということでございますけれども、農林水産省の畜産局の方からお答えをいただきたいと思います。間違いございませんか。
  114. 今井正夫

    ○今井説明員 ただいま先生のお話しのとおり、最近は養殖漁業等、大変重要になっておりますし、また公衆衛生上からも非常に大切になっておるということでございまして、本年の三月に実施いたしました国家試験から、魚病学もその試験科目の一つにいたしたということでございます。
  115. 坂口力

    坂口委員 文部省の方にひとつお聞きしたいと思うのですが、獣医畜産科の科目の中に魚病に関する科目が必須としてあるのか、それともないのか、あるいは、もしなかったら、今後それは必須にする予定があるのかないのか、その辺ひとつお聞きをしたい。
  116. 遠山耕平

    ○遠山説明員 お答えします。  昭和五十三年に、文部省におきましては、前年に獣医師法の一部が改正されたことに伴いまして、獣医学教育に関する基準を一応大学局長名で各大学に通知したわけでございますが、その際、魚病対策の重要性にかんがみまして、大学院の修士課程における応用獣医学の分野というのがあるわけですが、その授業科目の例としまして魚病学を掲げまして、その開設について各大学を指導してきたわけでございます。その結果、現在では、獣医学関係の十六大学すべてに急病学に関する授業科目を開設しております。そういうことで、獣医学関係の分野においても魚病学に関する教育、研究が行われている、こういう実態にございます。  また、水産学関係においても、ほとんどの水産学関係の学科を置く大学において、そういう魚病学に関する授業科目が開設されているわけでございます。
  117. 坂口力

    坂口委員 そういたしますと、獣医師法の中に定められております畜産という項目の中には、「牛、馬、めん羊、山羊、豚、犬、猫及び鶏をいう。」こうなっていて、この中には魚が含まれていないわけなんですけれども、現場におきましては、その対応は獣医さんが現在なさっている、そこにお願いをする以外にないという状況でございますし、また、たくさんの薬剤を頒布いたしましたりしておるわけでございますけれども、それに対しましても獣医さんが現在指導をされているという実情にあると思うわけですけれども、これから先魚病学なるものを大々的に獣医師の中に取り入れていこうということになりますと、この獣医師法なるものがこのままでいいのか、あるいはこれに対して改革を加えなければならないのか、その辺について、文部省にお聞きするよりも、これは農林水産省でしょうか、お聞きをしたいと思います。
  118. 今井正夫

    ○今井説明員 先生のお話のとおり、養殖漁業も盛んになりまして、その衛生指導をどうするのかというお話でございますけれども、現実問題といたしまして、現在では、先ほど先生からお話がございましたとおり、十七条の中には魚は入っておらないということでございますが、実際の対応といたしましては、先ほど文部省の方からも御説明がございましたけれども、学校教育の中では水産関係の大学、学部、あるいは最近になりまして獣医学科の方でも教育を始めた、こういう実情でございまして、こういった獣医学、獣医師の方で申し上げますと、これからそういった学校教育を受けてまいりました獣医師さんがますます多くなってまいるわけでございますけれども、現段階におきましては、そういった獣医師さんたちが養殖の現場等に実際にはまだ十分じゃないという面もございますし、学校教育における魚病学教育といったものも開始をして間もないという事情もございますので、こういった問題が将来積み上げられてまいりまして、そしてそういうことに対応し得るというような段階で検討すべき問題ではないかというふうに考えておるわけでございます。
  119. 坂口力

    坂口委員 しかし、現在そうした必要性というものはかなり続いておるわけでございますし、何とか解決をしなければならない問題になっているわけでございますので、遠い将来、こうしたことの積み重ねによって決めていい問題ではないように思うわけです。私はどちらかと申しますと、もともと獣医さんがこの仕事をなさるのにはいささか範囲を超えているのではないのだろうか、大変お忙しいお仕事の中でそこまで手が回らないのではないだろうかと考えていた一人でございまして、別枠魚のお医者さんをつくるべきであるというのが私の持論で、前にも一度取り上げたことがあったわけでございます。きょうは手数料の論議の中でこの問題を取り上げるのはいささか気が引けたわけでございますけれども、少し取り上げさしていただいたわけでございます。  水産庁の方は、いろいろの水産学を学ばれた人人の中において、その資格を持つ人々を育てていこう、こういうお考えもあったように聞いておりますけれども、その後どうなっておりますのか、水産庁の方のお考えをひとつお聞きしたいと思います。
  120. 田邊隆一

    ○田邊説明員 水産庁におきましては、魚病問題は養殖管理の一環として総合的に対応することが肝要であるというふうに考えております。人間の場合もそうでございますが、養殖漁業の場合も、病気になったら治すということだけではなくて、適正な養殖管理を通じまして、日常の魚類の健康維持といったことによって魚病の発生を防止することが重要であるというふうに考えておるわけでございます。また、養殖といいますものは、水の中で千尾万尾といった単位で群飼育をするものでございますから、陸上の場合と違いまして、どうしても対応が個体対応でなくて群対応という形にならざるを得ないという性格を持っておるわけでございます。そういうようなことから、魚病対策の指導に当たる専門家といたしましては、魚病とか薬理とかいった点について十分知識を持っていると同時に、魚類の生理生態についての専門知識を持った人が必要であろうというふうに考えております。  こうした見地から、魚病対策に当たる専門家といたしましては、魚類の専門家である水産技術者であって、魚病とか薬理について習熟した人あるいは獣医、これは薬とか病気の専門家でございますが、こういう獣医師の中で魚類の生理生態について習熟した人が適当であろうかというふうに考えております。  水産庁といたしましては、こういう点を背景といたしまして、現在都道府県の水産試験場等の増養殖の技術者を対象といたしまして、病理とか薬理、公衆衛生といったような内容の魚病研修を実施してまいりまして、現在までに約二百名ほどこの研修を修了しております。五十九年度以降さらにその内容の充実を図ることとしたいと思っております。
  121. 坂口力

    坂口委員 水産庁と畜産局と大分意見が違いますので困るわけですが、いずれにいたしましても現場はそれに対応してもらえる人ができればいいわけでございまして、一つは獣医師の皆さん方の方からの手を差し伸べていただくことも大事かと思いますが、それだけではなかなか間に合わない、そういう面もありますので、水産学の立場から、先ほどお話がありましたように、養殖管理の範囲からの専門家もここに参加できる、両方から参加ができるという形が一番いいのではないかなと私は最近思っているわけでございます。そうしませんと、畜産局と水産庁と仲が悪くて困るわけでございますので、中に入った考え方に私も立っているわけでございます。しかし、そうしようと思いますと獣医師法の内容と絡んでまいりますので、現在の獣医師法の範囲内で獣医師さんがそれができ得るのか、学問として、そしてまた国家試験の中では取り上げられるようになってまいりましたけれども、実際に獣医師法の範囲に含まれていないことをしていただくということが果たしていいのか、これはやはり改正すべきところは改正をして臨まなければならないのではないか、そんなふうに思うわけでございますが、これは文部省の範囲になりますか、そちらですか。
  122. 今井正夫

    ○今井説明員 獣医師法の中で、先ほど先生からお話のございました十七条で定めておる家畜でございますけれども、これは、この定められております家畜につきましては獣医師以外の者は行ってはならないという規定でございまして、魚でございますとか鳥類でございますとか、そういったものをやることについては何らの制限がございませんので、実際に獣医師でございましてそういった技術を持っておる方が魚病対策に取り組んでまいるということにつきましては、何ら差し支えない問題でございます。
  123. 坂口力

    坂口委員 そうしますと、獣医師さんがやってもいいし、ほかの人がやってもいいしということになるわけですね。  それでは、もう一度最後に文部省の方にお願いをしておきたいと思いますが、獣医師試験の方でこの魚病学なるものを取り入れ、そして各大学におきましても、必修ではないにいたしましても、十六大学すべてがこの問題に取り組んでいるということになれば、これは実質的に必修にはなっているわけでございます。しかし、実質的に必修であるのと必修科目であるのとは大分違うと思いますので、そういう現実をよく認識をして、ひとつ今後の改革に取り組んでもらいたいと思うわけです。その点をお伺いをして終わりにしたいと思います。
  124. 遠山耕平

    ○遠山説明員 先ほどお答え申し上げましたように、現在十六大学全部一応魚病学に関する授業科目を設置しているわけでございまして、一応、大学局長の獣医学教育に関する基準の通知では、魚病学を授業科目として開設しなさいということで指導しているわけでございますが、それ以上にどの科目について必修にするか、どの科目について選択にするかは、一応大学の自主性に任せられているということで、文部省でこの科目を必修にしなさい、この科目については選択でやりなさいというところまでいきますと、ちょっといろいろな点で問題が出てくると思いますので、おのずから獣医師を目指そうという人は、獣医師試験の科目である魚病学については履修されるものというぐあいに考えております。
  125. 坂口力

    坂口委員 ありがとうございました。  先ほどもお断り申し上げましたように、話題が多少ずれましたけれども、ひとつお許しをいただきたいと思います。もう少し質問するように言われましたけれども、切れましたので、終わりにいたします。
  126. 熊川次男

    ○熊川委員長代理 米沢隆君。
  127. 米沢隆

    ○米沢委員 ただいま提案されております特許特別会計法案は、言うならば特許行政に関連して、近年における技術開発の発展に伴う出願件数の増加、出願内容高度化に対応するとともに、国際的な情報交換の要請にこたえる必要があるために。工業所有権にかかわる事務処理体制を、コンピューター化を図るなどして充実させて所要の目的を達成したい、そのため新たに特許特別会計創設し、その歳入としては特許料等収入を充てることとし、五十九年度において特許料等の料率引き上げをさしてもらいたい、こういう提案でございます。  考え方としては、私どももこれらの方向を是とするものであり、逆にちょっと遅きに失した感もあるとさえ考えておりますが、この際、関連する問題について若干の質問をさしていただきたいと思います。  まず、特許行政の現状と問題点につき質問をいたします。  まず最初に、増大の一途をたどっていると言われる出願件数の問題であります。いただいた資料を読みますと、「我が国の特許・実用新案の出願件数は、昭和五十六年四十二万件、同五十七年四十四万件と非常に多く、全世界の出願件数の四割強にも達している。」これは大変なことでございます。  そこで、このように我が国では出願件数が大変多いというその要因の中に、例えば「活発な技術開発意欲」を持っておるとか、あるいは「激しい市場競争と結びついた商品開発指向、改良開発指向」が強いとかというような原因の指摘がありますけれども、その中で、「未発達な特許管理」というのが出願件数を多くさしておる要因である、こういうような指摘がなされておるわけでありますが、「未発達な特許管理」というのは一体どういうことを指すのか。  例えば五十七年度の例をとってみますと、特許、実用新案に関しては出願件数は四十四万件で、方式審査を終えて出願公開される。そのうちの七〇%が審査請求に回されて、審査を行った結果約五〇%、約十万件が拒絶、約五〇%が公告に回って、最終的に登録されるのはわずか十万件である。四十四万件の出願に対して四分の一ぐらいしか登録されない。また、意匠登録にいたしましても、出願件数が六万件、最終的に登録されるのがわずか三万件で、約半分。商標登録も出願が十四万件で、最終的に登録されるのが九万件等々、特許、実用新案、意匠、商標すべて合わせて出願件数に対して最終的に登録される数は三四%しかない。このあたりが非常に未発達な特許管理のゆえだというふうになっておるのか。例えば、ちょっと問題があるにもかかわらず、もう何でもかんでも出願に持ってくる、そういう傾向を指して未発達な特許管理のゆえだというふうに指しておられるのか。これをまず最初にはっきりさせていただきたいと思います。
  128. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 お答えいたします。  両方が関連し合っていると思います。おっしゃるとおり、一〇〇の出願のうち三〇強が登録になっているから、七〇がむだというわけでは必ずしもございません。というのは、企業としては出願をして請求しないものが、今先生のお話しのように三〇%あるわけです。これは目的がありまして、人に取られたくないという意味もあります。というのは、出願をいたしますと公開されますから、そういうものは人が取ることができないということで、自分は権利は取得しなくてもよろしいけれども、人には取られたくないケースがそういうケースでございますから、残り七〇%全部がむだ弾というわけではございません。しかし、請求して登録にならないものは、ある意味ではむだ弾だということになります。  これは一言で言えば企業のずざんとばかりは言っておれないのでございまして、的確な情報、データがないわけでございます。というのは、これだけ世界じゅうで特許出願が多いし、過去の登録も多いものですから、それを全部当たってやってくると大変なお金がかかるわけで、俗に言うと出願をしてチェックしてもらった方が安いやというようなことにもなりかねない。そういう意味で、我々の特許情報の提供というのは重要な問題になってくるわけです。だから、私、企業を責めるわけじゃありませんけれども、それを称して特許管理がもうちょっときちんとすればということが言えるわけでございます。  それから第二は、同時に、これも企業を非難するわけじゃありませんけれども、やはり出願競争という面がないことはありません。これは単に同業者との競争ということもありますが、同時に職員の鼓舞激励ということもあるようでございまして、日本では御承知のように工員さんまで実用新案なり考えるという気風が会社ぐるみで非常に厳しいわけでございまして、その場合にせっかく工員さんたちが出してくる、技術者でもいいのですが、それをどんどん会社がチェックして、だめであるといってはねると、ディスカレッジするというようなムードも実はあるようでございます。その辺になると、企業は知っていてやっておるわけです。したがって、一概にそれをずさんだとか、だらしがないとか言いにくい面もあると私は思います。したがって、全部がそういうわけじゃないのですが、そういうのはできるだけ合理化してもらいたい、こういう気持ちはあるわけでございます。
  129. 米沢隆

    ○米沢委員 ちょっと話がそれるかもしれませんが、「特許・実用新案の各国別出願件数」というのを見ますと、昭和五十六年で全世界で約百万件、日本がそのうち四割、その次にソ連が約一五%、これはアメリカの一〇%よりも西ドイツの八%よりもイギリスの四%よりも高い比率を持っておるのでありますが、このソ連の一五%の出願件数中身等がわかれば、大変興味があるものですから教えていただきたい。
  130. 齋田信明

    ○齋田政府委員 お答えいたします。  ソ連の特許出願十五万件と書いてございますけれども、ソ連は発明者証制度というのがございまして、内容は大体変わりませんけれども、権利が国家に帰属するというようなことでやや形が違うものではございます。しかし内容についてはほとんど変わりません。  ソ連の中で出願されております最も多い技術を順番に申し上げますと、一番最初は測定とか試験とかあるいは光学技術等、こういうものが最も多うございます。その次に金属加工技術が二番目でございます。三番目は電気、電子回路部品あるいは発電とか変電技術、そういうものがございます。それから、第四番目は工作機械、プラスチック加工技術というようなことでございます。その次に混合・分離技術というようなことがございます。
  131. 米沢隆

    ○米沢委員 どうもありがとうございました。  それから、外国人の我が国への特許出願件数昭和五十七年度の科学技術白書によりますと、アメリカから一万一千百五十九件、西ドイツからは五千七百九十四件。今度は日本人の主要国への特許出願件数は、同じくこれは昭和五十六年度と書いてありますが、アメリカに対して一万四千九件、西ドイツに対して四千九百四十五件、こうあります。これも大体でいいのですが、出願案件の内容等について、わかれば教えてもらいたい。
  132. 齋田信明

    ○齋田政府委員 まず我が国ヘアメリカから出願されるものについてお答えいたします。  大体一万件以上ございますけれども、その中の一番多いものは半導体、電気通信技術でございます。二番目は有機化学関係の発明でございます。それから三番目が測定、光学関係、四番目が工作機械、五番目が医療に関するものでございます。  それから西ドイツでございますけれども、西ドイツから我が国へ出願されるものの中で最も多いものは有機化学関係でございます。それから次が半導体、通信技術、三番目が測定、光学関係、四番目は工作機械、五番目はエンジン、ポンプ等、そういうものでございます。  それから、逆に日本から米国、西独にどういうものが出されているかということについてお答えいたします。  まず米国でございますが、米国に対しましてはやはり半導体、電気通信技術等の弱電分野が最も多いわけでございます。第二番目が測定、光学分野、第三番目は工作機械分野、第四番目はエンジン、ポンプ分野、第五番目が有機化学分野ということになっております。  引き続きまして、西ドイツに対してどういうものが出されておるかといいますと、最も多いのが測定、光学分野でございます。二番目が半導体、電気通信技術等の弱電分野になっております。三番目は録音・録画装置の分野でございます。引き続きまして四位が工作機械分野、五位がエンジン、ポンプ分野ということでございます。総トータルが大体五千件ぐらいでございます。  以上でございます。
  133. 米沢隆

    ○米沢委員 ところで「我が国の地域別技術貿易額の推移」という表を見ますと、昭和五十七年度で北アメリカに向けて四百八億、南アメリカに向けて百八億、アメリカだけでトータルで五百十六億の技術輸出を行っております。ヨーロッパに対しては三百八十九億技術輸出を行っております。  今度は輸入はどうかといいますと、北アメリカからの輸入額が千八百八十五億、それからヨーロッパからは九百二十六億、南アメリカがちょっとわかりませんが、総括して言いますと、まあ日本は技術立国あるいは技術大国だ、こう言って長年やってきたわけでありますが、この技術の輸出入の関係を見ますと、いまだに外から買う方がかなり多い。     〔熊川委員長代理退席、委員長着席〕  このことは、日本の技術水準というのがあるいは低いためか、それとも外国に売るような技術がないのか、あるいはまた見方を変えて、まだまだアメリカやヨーロッパから技術を買った方がベターであり、水準的に高いものが買えるというような、技術水準としては日本はまだ低水準の状況にあるのかどうかというのは、この表から見ると大変危惧の念があるのでございますが、そこらの事情について御説明いただければと思います。
  134. 尾藤隆

    ○尾藤説明員 今御質問で引用されました科学技術白書の表でございますけれども、これは総理府統計局のつくりましたデータに基づくものでございまして、ここで申しております技術貿易は、特許はもちろん含みますし、技術上のノーハウ等の国際取引でございます。その取引額の中には、過去の技術を購入した場合に、毎年それによって製品を製作しまして外国に輸出する分が、当該年次輸出額については当然入ってくるわけでございます。大体技術の契約の場合、製品の売上高の一定の比率を長期間にわたって支払う条件のものが多うございます。したがって、輸出がふえればふえるほど、この技術の支払いの方が大きくなるという傾向がございますし、例えば新たに契約を行った技術、新規契約分につきまして見てみました場合に、四十七年度以降は出超という形で、むしろ輸出の方が多くなっております。  そういうことを見ましても、技術貿易全般は確かに技術の輸入の方がむしろ圧倒的に多いということは事実でございます。そういう意味では、今後とも国際的に技術面の貢献が期待されていることでもございますし、先端分野の技術開発に今後とも努めていく必要があるというふうに考えております。
  135. 米沢隆

    ○米沢委員 世間で一般に言われる日本の技術大国というのは、どうも確かにこの数字の統計上の問題とか契約上の問題等で少々の数字のそごはあるかもしれませんが、どうもまだ技術というものは外から買う方が多いという結果を見てみますと、今おっしゃったように、もっともっと科学技術分野の保護で力を加えてもらわねばならぬ、そんな結果のような感じがしてなりません。特に、このごろ、技術なんかでもクロスライセンスという方式ですね、こちらでいいものがないと、あちらからいいものが買えない、こういう状況ですから、こちらの方がいいものがないということになると、逆に欲しくても、今でさえこれは輸入過剰になっておりますが、欲しい欲しいと思いながらも、こちらの方にいいものがないと交換条件にならないというようなことになりますと、こういう状況の中にありながらも、何か日本という国が技術的には寂しい感じで推移しておるというように見えるのでございまして、その意味におきましても、これは産業界の努力も必要でありますが、政府サイドといたしましても、今後、これが逆転するぐらいのものになるように、ぜひ御努力いただきたいということをお願いしておきたいと思います。  それから次は「長期化する審査期間」という問題でございますが、資料を読ませてもらいますと、「現状のまま放置すれば現在の二年三月から十年後には七年程度にまで長期化することが予想される。さらに、審査の際に検索すべき資料の大幅な累増により、現在のマニュアル処理の審査体制では対応できないこととなり、ひいては特許制度の根幹が揺らぐことにもなりかねない。」という意識のもとに、今度のようなペーパーレス計画等を導入しようという議論になったのだと思います。  そこで、今から取り組もうとされておりますこのペーパーレスシステムの推進によって、中長期的には審査期間はどういうように変化していくのか。いただいた資料から読みますと、大体二年台に推移する、こう書いてありますが、これは、現状の二年三カ月の前後ぐらい、ペーパーレスシステムを入れてもそれぐらいの審査期間であって、余り短縮しないということに読めるのでございますが、世界の各国の審査期間というのは一体どれぐらいなのか。それとの見合いで、今後、ぺーパーレスシステムを導入した場合の審査期間の変化について具体的に教えてもらいたい。同時にまた、審査官の定数が、ペーパーレスシステムの推進によってどういうふうに変わっていくのか、この二点について、ちょっと詳しく説明してもらいたいと思います。
  136. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 お答え申し上げます。  世界の特許の審査期間の状況は、おおむねでございますが、やはり二年二、三カ月かかっていると思います。具体的にアメリカについて申しますと、アメリカは、やはりたしか二年をちょっと超えていると思います。それで、アメリカも三年前に長期計画を立てまして、これを十八カ月ぐらいに持っていこうじゃないかというビジョンを立てておるわけでございます。  ところで、日本の状況でございますが、今先生おっしゃったように、現在は二年三カ月ないし二年四カ月でございます。これが、放置すると七年を超える。これはいろいろなデータで積み上げて確実にしております。  ところで、今度コンピューター化をやるということでどういうふうに動くのかという御質問だと思います。これにつきましては、いろいろな前提条件がもちろんございます。ございますが、我々としては、いろいろな現実可能の前提条件を置きながらやってみますと、率直に言いまして、この三、四年はむしろ若干延びると思います。三年ぐらいあるいは三年を超えるという状況が一時的に出てまいります。そうして、十年ぐらいになりますと、現状程度にまた戻っていく。我々としては、現在は、ビジョンはそこまででしていますが、決してそれに満足しておりませんで、結論的に言えば、我々の目標は、特許、実用新案については二年程度にしたいと思っています。したがって、さらに一層の努力を諸般の面で加えまして、二年ぐらいまでに落としていきたい。おおむねの推移を申しますと、そういうような感じでございます。     〔委員長退席、中西(啓)委員長代理着席〕  それでは、途中でなぜ延びてしまうのかというわけなんですが、これはある意味ではやむを得ない面があります。というのは、やはりいろいろな施策の効果というのは時間がかかるのに対して、やはり能力と受け入れ態勢のギャップは既に発生しておりまして、どうしてもそれがこの三、四年は広がってくる傾向にやむを得ずなると思います。できるだけ早く現状維持程度に戻すというのが一応の十年ビジョンでございますが、さらにその先、何とか二年ぐらいまでは目標にして持っていきたい、こういうふうに考えているわけでございます。  定員、定数の問題でございますが、午前中も御説明いたしましたように、実際問題として、審査官の定員は、この三年ほど減っておるわけでございまして、非常に苦慮しておるわけでございます。非常に厳しい国全体の定員管理は先生御承知のとおりでございまして、我々の非常に大きな問題点一つでございます。それで、我々のコンピューターの発想もいろいろな理由がありますけれども、その中の一つは、このままいくとえらいことになるけれども、定員をどんどんそれにスライドしてふやしていくのは、現実論としてなかなか難しいのじゃないかということで、もちろんかなりのショッキングな、八年とか七年とかいう状況になれば、世間も考えてくれるかもしれないけれども、そこまで行ってからでは遅いということでございまして、それをできるだけ定員に大きく依存しないで、何とかできないかという発想が一つはあったわけでございます。  そういう意味で、コンピューター化の問題を今やっておるわけでございますが、もちろん、コンピューター化が万能ではございません。コンピュ-ター化をやっていきますと、途中ではむしろ人手を余計食う面もあるわけでございますし、それから最後のジャッジメントは、人の頭と起案力ということがどうしても働くわけでございまして、コンピューターだけですべて片づくわけではございませんから、必要な人員の確保というのを同時に、並行的に考えています。  ただ、これにつきましても、我々としては、人手の方はぎりぎりミニマムにしたいとは思っていますけれども、それとてもなかなか難しい状況にあります。したがって、外部の、民間活力の活用とか、そういうものもできるだけ取り入れたいということで、今研究しています。しかし、最後に行きますと、これもやはり特許庁が責任を持ってジャッジしなければならないものですから、民間の活力に依存するといっても、当然限界が出てくるわけでございまして、その分はどうしてもミニマムを確保しなければいけない、こういうふうに考えております。
  137. 米沢隆

    ○米沢委員 今、五十七年度で定数が二千三百五十二名ですね。僕はその審査官の職務内容は定かにはわかりませんが、例えばコンピューター化していきますと、現在の審査官が即端末機を扱うようなことにはならない、あるいはまた、今検索でもマニュアル処理の審査体制ということでございますが、ここらだって即それに応じた労働に応じていけるかどうか。ここらは一番頭の痛い問題ではないかと思うのですが、いわゆるペーパーレスへの転換が特許庁の職員の皆さんの労働の質の転換につながっていく、そこらはどういうような感じで対応をされていくのか、簡単に説明してもらいたい。
  138. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 お答え申し上げます。  いろいろな見方がありますが、特許の審査処理というものの基本は、中論内容をまず理解して、そしてそれについて先行発明とか先行事例があるかないか、これは全世界ベースにわたりましてチェックいたしまして、ないとなったら登録をする。非常に簡略化しましたけれども、そういう基本からなっているわけで、その基本は一切変わらないわけでございます。ですから、仕事の質といいますか、骨格というのは変わらないわけでございます。  ただ、非常に変わってまいりますのは、一つは検索について、マニュアル検索から機械検索へできるだけ持っていくということが第一点でございます。それから第二点は、そういうことに伴いましてVDTと申しますか、ビデオターミナルですね、画像でかなり処理することになります。ですから、もちろんプリントアウトで直ちに字を見たければ出てくるわけですけれども、やはりスピード処理その他から考えると、画像で処理する問題が出てきます。そういう点が現象的に違ってくると思います。それから、全部というわけにはいきませんけれども、いろんな起案があるわけです。それもできるだけ自動起案ということはもちろん考えています。しかしそれも、全部というわけにはいきませんけれども。  そういうように、仕事の基本的な本質は私は変わらないと思うのですけれども、現象として変わってまいります。そういうものについて、いろんな問題が当然出てきます。端的に言えば、画像を対象にいたしますから、目の健康とかあるいはいろんな意味のそれに伴う精神的負担とか、そういう問題が出てくると思いますし、いろいろな問題が出てきます。こういうものについては、我々としては今後職員の健康を守るという立場を第一に考えざるを得ませんので、そういう点について十分に配慮しつつ、かつこれは一遍にくるわけではございませんで、逐次試行を重ねながら持ってきますので、その過程でもいろいろ研究をいたしまして、円滑に最後のゴールに到達したい、かように考えているわけでございます。
  139. 米沢隆

    ○米沢委員 それから、特許情報が年々累増して、予想では現在の二千八百万件から十年後には約五千万件に到達するであろうと言われておりまして、余りにも量が大きいために、現在の提供体制では必要な情報への的確なアクセス自体が困難となりつつある。したがってこの総合施策の導入ということになるのでありましょうが、ちょっと聞かしてほしいのは、増大する工業所有権の情報というものも、時代とともに技術が変化、進展しておるわけでありますから、中には陳腐化したり時代おくれになったりするものがたくさん出てくる。したがって、累計で二千八百二十万件から五千万件になるだろうという件数の中には、そこらをみんなカットして、必要量としてここまでふえてくるという数字なのか、それとも陳腐化したやつまですべてためて、こんなに大きくなるんですよという見せかけの数字なのか、そこらをどう処理されておるのですか。
  140. 齋田信明

    ○齋田政府委員 お答えします。  特許情報というのは、権利情報と技術情報の二つの側面を持っておるということがよく言われます。なぜかといいますと、明細書の中に技術を公開いたしますが、同時にそれは権利になってまいります。権利になりまして、それは公告から例えば特許ですと十五年、実用新案ですと十年という期間がございます。したがって、権利としてそれをいつまで持っておるか、あるいはいつ切れるかというようなことまでウォッチしていることでございます。したがって、権利情報としての側面が非常に強うございまして、ある程度の期間は必ずウォッチされるものでございます。  一方、技術情報としての価値はどういうことかと申しますと、例えば具体例で申し上げますと、皆さんよく御存じだと思いますけれども、例のオプティカルファイバーというようなものがございます。あれは昭和二年のイギリスの発明でございまして、イギリスの明細書に今のオプティカルファィバーと同じ図面が載っております。以後それが実現するためにはかなりの期間を要しておるわけでございますが、これは材料の開発だとかあるいはその他いろいろな開発がなければ実際にはできないものでございます。したがって、再びそれが開発をされる時期になってまいりますと、またそれについて細かい出願が出てまいるようなものでございます。そういうことで、必ずしも私ども古くなったからその情報は廃棄していいということにはなりませんで、私ども過去の事例をかなり古くまで探しまして、それに基づいて二重の権利が起こらないように、あるいは新しいものでないものを許さないように努力してきておるわけでございます。  ちなみに、私ども特許協力協定と申しますけれども、世界全体でお互いに出願がしやすくなるような協定を持っておりますが、その中にミニマムドキュメンテーションというのがございまして、つまり最低限どこまでお互いにサーチをしなければならぬかという期間が決めでありますが、それが最低限一九二〇年までさかのぼれということになっておりまして、世界全体、かなり古いところまで持っていなければならないというのが現状でございます。
  141. 米沢隆

    ○米沢委員 それから、累増する特許情報をうまく利用して出願、審査請求の適正化を図るのが今特許庁に与えられた大きな課題である、こういうふうに言われておりますが、出願、審査請求の適正化という問題は、例えば特許庁が総合庁舎になったりあるいはペーパーレス計画を推進してもまだ、今なお残る部分が大分あるんじゃないかと思うのです。先ほどの質問とちょっとダブるのでございますが、いわゆる出願、審査請求の適正化というのは一体どういうことをねらっておられるのか。ペーパーレスシステムや総合庁舎ができることだけでは改善できない大部分のものがあるような気がするのですが、そこらはどういうふうに理解したらいいんですか。
  142. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 審査請求あるいは出願の適正化という問題は、昭和五十一年ぐらいから実はやっております。それで、具体的にどういうことかといいますと、出願なり審査請求を合理精神のもとでやってください。一言で言えばそういう指導でございますが、かなり効いてまいりまして、歴然と出ております。具体的に申しますと、そういう指導をしたグループの企業とそうでない企業とを数字で比較しますと、かなり顕著な請求率のダウンとかいうのが出てきますから、それなりの効果は上げておるわけです。そこで、そういう問題にさらに今後一歩も二歩も踏み出すのが、コンピューター化と連動した審査請求の適正化なんであります。  それで、もちろん特許庁のいろいろな自動検索とか事務合理化にコンピューターを使うわけですけれども、同時に、それを企業の方に特許情報として提供いたします。理想的な最後の姿はオンラインで提供いたします。それによりまして企業の方は、先ほど申しましたように自分の事前サーチができやすくなるわけであります。しかも格安でできるわけであります。そういうことを通じてむだな出願、むだな請求がかなり落ちてくると我我は判断をいたします。そういうものも両々含めまして、特許管理の問題の指導ベース――指導というとおこがましいですけれども、俗に言えば指導ベース、そして同時にオンラインのデータ提供によるふるい分けで、企業の飛躍的な増大というものを通じまして出願の適正化を図ってまいりたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  143. 米沢隆

    ○米沢委員 次は特許制度の問題でございます。  この提案趣旨にもありますように、今後、世界各国との特許情報交換を積極的に推進していかねばならない。これが要請されておる重要な課題でございますが、聞かしていただきたいことは、当面、我が国が国際化という観点から重点を置いて取り組んでおられる問題はどういうものがあるのか。それから、国際的な流通を促進していくという問題とペーパーレス計画の推進とどういう関連をしていくのか、そこらをちょっとわかりやすく説明してもらいたい。
  144. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 まず、ペーパーレス化、コンピューター化との関連で申しますと、こういうことでございます。  欧米の特許庁は、日本の特許データについて非常に必要性を感じているわけでございます。それはもう日本の技術力が上がり、日本の特許出願がふえ、日本の特許国情報報を見ないでは自分の国の特許チェックができないような状況になってきたわけでございます。一方、その件数は、御承知のように、日本の場合非常に多いわけでございます。しかも、それが日本語ときているわけです。これを検索するなんというのは、はっきり言えば至難のわざになっているわけでございます。したがって、我々はそれは心得ておりますので、要約の英語版というのをサービスで提供しております。日本語ではどうにもならないと思いまして、相当なお金がかかるのですけれども、国際的な義務として、日本語を英語に翻訳いたしまして各国に提供しております。  しかし、それはレジュメ、要約版でございまして、フルテキストではありません。そこで、フルテキストについては、やはりどうしても、場合によっては向こうは細部に当たらなければならない場合もあるわけでございまして、そこまで全部翻訳するのは物すごい国費がかかりますからできませんが、せめてそれを我々のコンピューター化したデータファイルで送ってほしいという要請が非常に強いわけでございます。それは無理からぬことでございます。そういうようなことで、我々の協力なしては向こうも特許審査ができなくなってきているということで、要請が非常に強い。  一方、日本も、経費の節約を図る上では、相手のデータファイルをバーターでもらう、交換するということをしますと、我々もデータインプットの経費が大幅に下がるわけでございます、外国のものまで我々データインプットする必要がなくなるわけでございますから。そういうことで、合理性ということもありまして、特に日本と欧州とアメリカの特許庁は完全に一致いたしまして、昨年来緊密な会談を続け、さらに事務レベルの会談を続け、そのデータ交換の合理性についての現実的な処理、どういうふうにやるかという処理に当たっております。既に我々はもう一部、ことしの末あたりから実行段階に入ろうとしておるわけです。そういう意味合いで、先進国間協力というのが今一番脚光を浴びておるわけでございます。もちろんそれだけにとどまらないで、さらにいろいろな発展が行われると思います。  それから次に後進国の問題でございますが、これもはっきり言って非常に重要な問題でございまして、今一番問題になっているのが中国の問題でございます。中国が特許法を来年から施行する、ことし公布するという段階に入りまして、中国が、あれだけの国土があって、あれだけ全国に広がりがあって、そして特許制度を施行する。そうすると、国内、国際的なデータバンクの構築というのは至難のわざでございます。お金さえあればある程度早くできますが、そこがまたお金が、失礼ですけれども余りない、こうきているわけでございますので、はっきり言って、いろいろな意味で日本の協力を求められています。  それで、我々としては、現在の段階では向こうのトレーニング、それから、こちらから行って情報構築のための具体的なサゼスチョンというものに取り組んでおりますが、日本政府全体としては、場合によってはデータ構築についての援助ということも、我々の範囲をちょっと超えますけれども、必要になってくるかもしれません。そういうことで、後進国の問題についてはまず中国――実はその前には、韓国に我々はかなり協力いたしましたけれども、現在は、一番クローズアップしているのが中国でございます。これから数年続くだろうと思います。  それから第三には、国際連帯ということで、実は国連の中に世界知的所有権機構というのがありまして、ジュネーブに大きな組織があります。そして、アフリカから南米、いろいろな後進国に対して、先ほど言いましたように、中国ほど大がかりな協力は我々はなかなかできませんけれども、情報提供とかその他いろいろなサービスをしておりますが、そういうものへの協力が第三のジャンルでございます。
  145. 米沢隆

    ○米沢委員 商標登録条約、ニーズ協定への加盟とかパリ条約の改正問題等があると聞いているのですが、このあたりはどう動いているのですか。
  146. 小野真魚

    ○小野(真)政府委員 お答えいたします。  私どもの工業所有権関係の条約の中では、パリ条約というのが一番基本の条約になっておりまして、各国がこれで特許、実用新案あるいは商標、意匠その他商号といったようなものを保護する条約機構、バリ条約というのがございます。これはもう大方百年の歴史を持っておりまして、九十二カ国が加盟している条約でございまして、これが各国の工業所有権の保護のあり方の粗筋を決めているという条約でございますけれども、この条約の改正につきまして先般来動きがございまして、今回の改正、特に後進国に対する技術移転をどうするか。  問題になりますのは、先進国の技術が後進国で特許権として確立した場合に、現地でなかなか実施されない、技術移転が行われない、これについてどういう措置をとるか、特許を実施しない場合の制裁措置をどうするか。それから第二番目といたしましては、いわば東西問題と申しますか、先ほどもちょっと御紹介がございましたけれども、ソ連等の共産圏では、国が特許権を持つ関係で、特許権に相当するものとして発明者証という制度がございます。これを特許権とどのような関係に位置づけるかというような問題。それから第三番目には、有名原産地、ワインなんかで特に問題になるわけでございますが、例えばボルドーといったような地名を使った商標というようなものをどういう形で保護するか。その辺が現在のテーマになっておりまして、先ごろ、二月の終わりから三月にかけまして一カ月ばかりジュネーブで外交交渉がございましたけれども、ついに各グループ間での利害が一致せず、さらに九月に会議を開こうという状況に、パリ条約についてはなっておるわけでございます。  なお、商標登録条約、それからニース協定についてお話がございましたが、商標登録条約につきましては、これは商標の登録を各国協力してやろうではないかということで提案されておるわけでございます。それからニーズ協定につきましては、商標登録に当たりましての分類を各国統一しようということで提案されておるわけで、一部の国が入ることによりまして既に発効はしておるわけでございますが、我が国としましては、これに対する対応策等を検討しております。と同時に、欧米各国の動き等を慎重に見きわめまして、慎重に検討してまいりたいと思っております。
  147. 米沢隆

    ○米沢委員 次は、総合的施策の展開に関連いたしまして、究極的には業務全般にわたって電子ファイル化システムを目指す、こういうことになっております。これは先ほどもちょっと議論があっておりましたが、このコンピューター化等はほとんどレンタルでやられるというふうに理解してよろしいのですね。  それから、この計画を推進されるに当たりまして、十年間で二千億ぐらいの追加資金が必要だ、こういうことでございます。そこで、ことし約五〇%ぐらい、商標については約二割ぐらい値上げをするという提案でございますが、先ほど長官もおっしゃっておりましたように、この二、三年は逆に審査期間がちょっと延びる、そしていっときしてから定着していく、こういうお話でございました。しかし、値上げは五十九年の八月一日から実施するということでございますから、今出願する皆さんにとっては、値上げはされるわ、審査期間が短くなるというメリットは受けられないわ、こういう期間的にはちょっと不満層が出てくるような感じがするのでございます。したがって、一挙に五割というのではなくて、年々逓増方式で値上げをする方が、そういう皆さんに対する理解は深まるのではないか、こう私は思うのです。一たん提案になったら、そんなことはできないという返事はもう決まっておりますが、本当ならば、値上げはされたわ、この二、三年は逆に審査期間は長くなるというのはちょっと矛盾だ、こう思うのです。本来ならば逓増方式での値上げというのが実情に応じた値上げ方式ではないかと思うのですが、いかがお考えでしょうか。
  148. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 大変苦しい御質問でございまして、そういう側面があることは否むことはできません。ただ、特許関係につきましては、極論すると九割の方というのは常連でございまして、絶えず出願をされておるわけでございます。そして、その方たちの非常に強い希望に我々は沿ってやっているわけでございまして、率直に言えば中小企業の常連の方も含めて我々は励ましを受け、遅いぐらいだという強い希望と期待を持って、ある意味ではハッパをかけられながらやっている面も実はございまして、基本的には許してもらっていると私どもは思っております。といいますのは、どうしても先行投資をしませんとコンピューター化というのは完成しないわけでございまして、確かにもう少し、少しずつ小分けにして値上げをしたらという御意見も傾聴に値する御意見だと私は思いますけれども、従来、特許の場合に、毎年値上げということになるといろいろな事務量の問題が実はありまして、三年とかそういう一定のインターバルを置いてやるというのが慣例化しているという面もございます。さような意味で、大変厳しい御質問でございますけれども、全般的な状況からかような結論に達したわけでございます。
  149. 米沢隆

    ○米沢委員 あとこの特許制度に関連しまして、今問題になっておりますいわゆるソフトウエアの保護について若干質問をさせていただきたいと思います。  御案内のとおり、このソフトウエアの保護にっきましては、権利保護の関係がまだ確立されておりません。特許権で保護するとか著作権で保護するとかいろいろな議論がなされておりますが、いずれにしても一長一短が出てきておりまして、それゆえに保護について混乱が生じる、あるいはまたさまざまな紛争が生じておることは御案内のとおりでございます。特許権の方は、ソフトウエアの保護につきましてはまだ明確な判断を示していないという感じがしております。しかし、マイクロコンピューターの応用プログラム等については保護の可能性があるのかな、一部は保護されるけれども、大部分はどうもオミットされる可能性がある。あるいはまた、著作権におけるソフトウエアの保護については、一応は適用し得る判断はできておりますし、あるいはまた裁判等での判断もそこらに落ちついておるようでございます。しかし、ソフトウェア等はこれから日進月歩どんどん変化していくものでありますから、そういうものが本当に著作権になじむのかどうかというのは、これまた疑問なしとしない。そういうことで、かなり混乱があることは事実でございます。  そこで、新しい酒には新しい革袋をというような発想でございましょうが、通産省の方がいわゆるソフトウエアというものをそれ自体の特徴に即して保護しよう、こういう動きがあり、今国会において通産省がプログラム権法案というものを出そうとされておることまではよく存じ上げておるのでございますが、まず最初に、このプログラム権法案がねらっておるもの、いわゆる著作権あるいは特許権ではカバーできないものをカバーしようというところでございますから、そこらを整理してちょっと御説明いただきたいと思うのです。
  150. 柴崎徹也

    ○柴崎説明員 通産省の情報処理振興課長でございます。  コンピュータープログラムの権利保護の問題につきましては、米沢先生今おっしゃいましたようなことでございます。通産省におきましては、御指摘のようなプログラム権法を制定する必要があるのではないかということで現在検討を進めているわけでございます。昨年一年間かけまして、いろいろな角度から、このコンピュータープログラムの権利保護の問題につきまして検討いたしました。その結果、既存のいろいろな法体系だけでは必ずしも適当ではない、不十分な部分もあるということで、新しい法律をつくる必要があるのではないか、そのような結論に達したわけでございます。  それでは、この新しい法律というのは一体どういうことをねらいにしておるかということでございます。一つは、もちろんコンピュータープログラムを開発する権利者の保護を図ることでございます。それとともに、コンピュータープログラムというのは転々流通するわけでございます。そういった意味で取引流通面も促進する、そういうものでなければいけない、こういった観点から考えております。  それで、まずその権利者の保護という点からは、コンピュータープログラムの取引、これは使用権を設定するというのが契約で一番大宗をなすところでございます。そういった意味で、プログラム権法におきましては使用権という概念を中心的な概念として据えたい、このように考えております。  それから、取引の流通を促進するという観点を入れなければいけないわけでございまして、そういった意味で登録、公示あるいはユーザー保護、こういった規定も盛り込む必要がある、このように考えております。     〔中西(啓)委員長代理退席、委員長着席〕
  151. 米沢隆

    ○米沢委員 このプログラム権法という法案の内客を要約しますと、今少々触れられましたが、保護するものはソフトウェアのうちプログラムのみにする、フローチャート等は著作権法にゆだねる。それから、権利として認めるものはプログラムの使用権である。これはプログラムの使用を専有する権利でございますから、貸しソフトウェア業は規制できる。それから、権利の保護期間は約十五年とする。それから、公共の利益のために必要なプログラムに対しては、プログラム権所有者に対してその実施許諾を強制する制度を設ける。こういうような内容だというふうに漏れ承っておるのでございます。  私は、もしこういう法案ができますと、それなりにソフトウエアの保護に関して我々の考え方が大体まとまる、まとまった考え方ができる、そう評価するものでございます。例えば、今までのようにソフトのプログラムに対して特許法の言う自然法則の利用というものも、著作権法による文化への寄与というようなものも求めなくてもいい。また、新規性とか進歩性といった特許要件やいわゆるコピー、複製という著作物の定義に悩まされることもなくなるであろう。また、特許権が強制する内容の公開につきましても、著作権法が保護する著作者の人格権にも惑わされることがない等等、いわゆるソフトウエアに情熱を燃やしている技術者の皆さんにとっては、非常になじみやすい発想だというふうに、我々は評価するにやぶさかではないのでございます。ところが、文化庁とか、あるいは外国あたりからのいろんないちゃもんもついておるようでございまして、今度の国会までに間に合うかどうかということが危惧されておりますが、そのあたりはどのように今整理をつけようとされておるのか。そしてまた、今度の国会に間に合うのかどうか、そこらをまず最初に聞かしてもらいたい。
  152. 柴崎徹也

    ○柴崎説明員 文化庁におきましては、著作権法を所掌する立場から、コンピュータープログラムにつきましては著作権法の一部改正で対処しよう、このようなお考えであるということを承知しております。いずれにいたしましても、コンピュータープログラムの権利保護を図らなければいけない、これが解決すべき喫緊の課題であるということにつきましては、通産省、文化庁とも全く認識は共通しているわけでございます。そういった観点に立ちまして、文化庁との間で鋭意調整を進めていきたい、このように考えております。  それから外国との関係でございます。特にアメリカでございますけれども、アメリカにおきましては、アメリカのソフトウエア企業、ソフトウエア開発者の権利保護が、私どもの考え方では権利保護を図ることが必ずしも十分に行われないのではないかという懸念を持っているようでございます。具体的には保護期間、プログラム権法では十五年と考えておりますけれども、アメリカの著作権法では七十五年の保護を与えております。そういった保護期間の問題。それから、先生おっしゃられました裁定制度でございますけれども、この辺につきまして懸念を持っていることは事実でございます。従来からハイテク・ワーキング・グループなどの公式の協議の場を通じまして協議をしております。今後も引き続き鋭意、この辺につきましてアメリカ側とも調整をしていきたいと思っております。  こういった事柄の調整を済ませまして、ぜひとも今国会にプログラム権法というのを提出させていただきたい、このように考えている次第でございます。
  153. 米沢隆

    ○米沢委員 三月十四日の新聞の記事を読みますと、今触れられましたように、アメリカの政府が、今通産省が検討されておるこの法案に対して強い懸念を表明する文書を、日本の政府関係者らに配布したことがわかった、こういうふうに書かれております。この文書は「コンピューター・ソフトウエアに関する米国政府の立場」というタイトルだそうでございますが、まず、通産省が持っておられるこの新法案に対して、「万国著作権条約などでうたわれている国際法の精神を侵害する」、二番目に、「日米両国のソフト創作者に不利益を与え、ソフト産業の発展を阻害する」、三番目に、「ソフト保護についての新しい特別な制度創設は、日米両国だけでなく世界中の取引相手国の長期的利益に反する」と厳しく批判した上で、通産省案に深い懸念を持つといったような内容であるというふうに報道されておるわけですが、このアメリカの言い分に対して、通産省はどういうふうにお考えになっておるのでしょうか。
  154. 柴崎徹也

    ○柴崎説明員 コンピュータープログラムは非常に国際的に取引をされるものでございます。そういった意味で、国際的な調和のとれた権利保護体系を考えなければいけない、こういうことでございますけれども、アメリカ側が幾つか言っております中には、かなり誤解ではないかというふうに考えざるを得ない部分もあるわけでございます。国際的な条約体系につきまして、いずれにいたしましても、既存の条約体系では、コンピューターソフトウエアというものを想定をしておらなかったわけでございます。そういった意味で、例えば著作権条約でコンピュータープログラムが保護される、そういうコンセンサスができているわけではないわけでございます。  それから、いずれにいたしましても、日本の企業であれあるいはアメリカの企菜であれ、法律上全く対等に権利を保護するということでございますので、アメリカのコンピューターソフトウエアについて著しく不利になるというようなことは全くない、このように考えております。
  155. 米沢隆

    ○米沢委員 世界知的所有権機構、WIPOでコンピューターソフトのためのモデル条約草案が昨年六月提出された、こう記録してあるのでございますが、この動きは今どうなっておりますか。  同時に、今おっしゃいましたように、ソフト保護は著作権でという国際的な合意は全く存在しないというようなお話でございますが、これはそのとおり考えてよろしいですか、本当に。
  156. 柴崎徹也

    ○柴崎説明員 世界知的所有権機構、WIPOと言っておりますけれども、昨年の六月に専門家の会合が開かれまして、そこでモデル条約草案が一つの参考として提出をされております。これにつきましては、例えば保護期間二十年あるいは無断複製、無断使用、無断貸与あるいは無断公開を禁止する、こういった内容になっております。この条約草案は一つの参考ということでございまして、WIPOにおきましては、今後とも引き続き各国相集まって、このコンピュータープログラムにつきましての国際的な保護のあり方について検討を進めていく、こういうことになっております。  それから、著作権条約のことでございますけれども、確かにアメリカにおきましては、著作権法を改正をすることによりまして、著作権法の中にコンピュータープログラムというのを明定をしております。しかしながら、ほかの国におきましては、まだ法律措置をした国はございません。ヨーロッパにおきましては、著作権法でいけるのではないかという意見が多いことは間違いはないわけでございますけれども、むしろコンピュータープログラムがますますこれから取引が多くなる、そういった場合にどういった保護が一番いいのだろうか、その辺につきまして世界各国の実務家たちが、何が一体一番いいのだろうかということを模索をしている、こういう段階であろうと思います。
  157. 米沢隆

    ○米沢委員 私どもがこれから先の問題として懸念する問題は、一つはソフトウエアの保護については、少なくとも一昨年来、曲がりなりにも著作権を認めるという判断が裁判で出ておりますよね。そういうものがあって議論を逆に混乱させておるのではないかと推察するのでございますが、著作権でいくのか、新規立法でいくのか等々の議論が余りにも長くだらだらとやられまして、結局、問題が先送りされますと、逆に関係者にとっては迷惑だということもあるわけですね。したがって、早くけりをつけてもらいたい、これが切なる我々の希望でもあります。  それからもう一つは、アメリカあたりが著作権でいったらどうだと言い、ほかの海外諸国も大体著作権で処理しているという現状があるならば、日本が新しい概念を持ち出していきますと、やはり海外に通用しないだろうという部分が出てくるだろう。逆に海外からは、また非関税障壁を設けたとかなんとか、いろいろ非難されることになるきっかけをつくるかもしれない。これもやはり懸念しなければならない問題です。  それから、特にプログラム権所有者の権利を制限する強制許諾制度というものは、著作権保護に関する国際条約はないし、したがって、国際的な紛争の原因になっていくかもしれないという懸念もございます。また、権利を宣言される国は、もうプログラムを輸出しないという動きになるかもしれない。そうした事態が出現いたしますと、日本はソフトウエアに関しては鎖国的な状態になる危険性もあるというふうに我々は考えるのですが、そのあたりをどういうふうに理解されて、どう対応されようとしておるのか、聞かしていただきたい。
  158. 柴崎徹也

    ○柴崎説明員 著作権法によりまず判決が既に三件出ております。それ以外にも係争事件は非常に多くなっております。そういった点から、この問題につきまして一刻も早く解決を図らなければいけない、これは先生の御指摘のとおりでございます。  それから、各国との関係でございます。確かに私どもはプログラム権法という名前の法律案提出しようといたしておるわけでございますけれども、必ずしもこれはほかの世界各国と全く違った形の法体系をつくろうというようなことを考えておるわけではございません。私どもの念頭にありますのは、まさに国際的な調和を図らなければいけない。コンピュータープログラムというものは非常に新しいものでございます。そういったことで、新しい発想で考えなければいけないという観点から考えているわけでございます。そういった意味で、今後各国の理解を求めていく、これが非常に必要なことであろうと思われます。  裁定の制度でございますけれども、これにつきましては、これを置くことによって何か非常に鎖国的な状態になるのではないかという御指摘でございましたけれども、いろいろな誤解があるようでございます。ただ、実際にこのような規定を発動するというケースはほとんどないであろうと思われますし、もちろん非常に厳格な運用を行わなければいけない規定でございます。こういった点につきましても理解を求めていきたいと思っておる次第でございます。
  159. 米沢隆

    ○米沢委員 終わります。
  160. 瓦力

    瓦委員長 正森成二君。
  161. 正森成二

    ○正森委員 特許庁に伺いますが、特許、実用新案の全世界の出願件数は、資料を拝見いたしましたら約百万件、うち日本が四〇%と言われておるようであります。これは特許庁のパンフにたしかそう書いてございました。内国人出願で見ますと七十六万件中四十四万、つまり五〇%以上が日本で、この五年間の増加の七割が日本で、あとの三割はソ連だということが、「特許管理」という本に書いてございます座談会に出ておるようでありますが、そういう傾向は事実でございますか。
  162. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 事実でございます。
  163. 正森成二

    ○正森委員 今名前が出ました「特許管理」という本の一九八四年ナンバースリーを拝見いたしますと、非常に興味ある事実がたくさん出ておりますが、その中で幾つか引用をしてみますと、例えば第二小委員長の篠崎さんという方がおられますが、「日本の出願は世界の中にあって確かに異常に多いと思います。この現象をどうとらえるべきかまことに迷うところです。日本の研究費、研究者の数と質から考えて、日本の出願の異常な多さをリーズナブルとするにはきわめて抵抗を感じます。」こういう表現をしておられます。  あるいは「出願増というのは、一見、発明がたくさん見られていいように思うけど、過去のものを調査して有効に使おうというときには、いいものがたくさんあればいいのですが、そうでないものもあるのは事実ですから、調査にも影響する、有効に使えないものがかなりあるといった意味で、日本特許の出願が多いというのは問題として感じてもいいのではないかと思います。」というような表現とか、あるいは「どうしても理解できないのが、常識外れの出願量なんです。イギリスは四万件で、約半分が外人出願ですから、内国人出願は二万件。フランスが二万件あるうち、内国人出願が一万件です。日本というのは一社でもって一万、二万超えるところ、あるいはそれに匹敵するぐらいの相当な出願が出るところがありまして、あの先進国のイギリスとかフランスを一社で超えるという出願が出るのはどうしても理解できない。」云々というような表現があるわけであります。  そこで特許庁は、こういう出願増の現状やら原因、またその利害得失についてどう評価しておられるか、詳しく承りたいと思います。
  164. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 出願が非常に多いという分析はいろいろなところから言えると思います。  簡単に言いましても、競争が激しいとか、新製品がじゃんじゃん出てくるとか、フォアマンまで発明奨励に従事しているとか、いろいろな理由がありますが、どうもそれだけでも割り切れない。過当競争とかいろいろありますが、割り切れないほど多いように感じております。批判する立場に立つと、今先生が一、二御指摘されたような、さらにそのほかにもありますけれども、いろいろな批判の立場があります。  そこで、我々、中小企業も含め大企業の特許関係者、場合によっては最高トップ、副社長クラスの技術開発担当の人たちとしょっちゅうこの問題について話をします。どうも行き着くと、ジス・イズ・ジャパンということになってしまって、企業の方はそういう批判的な方もいらっしゃいますけれども、多数の方は、これが日本なんだなということで議論が終わってしまうような感じなんです。それで、私は、どちらかというとやや異常性の方が強いんじゃないかなと思いながらも企業の担当者に話すと、これが日本ですよという感じがして、角を矯めると技術開発のバイタリティーがなくなるよというような同義語で響いてくる。  ですから、私としては合理的な範囲で出願を減らしてください、それはいいでしょうということを強く訴え続けておりまして、我々の出願適正化運動の重点もそこに置いておきます、その合理的な意味なら間違いないだろう、皆さんそんなに合理性の範囲といいながら、出願からは三割しか登録にならないのですが、請求があったもののうちでは半分ぐらいしか登録にならないじゃないですか、もっと調査をされれば減るじゃありませんか、それは企業の合理化になるじゃありませんかと言うと、俗な話ですが、いやそうでもないんだ、先行技術調査を今の段階でやると十万円も二十万円もかかるんだ、出願料の方が安いんだということを露骨に言う人もいます、はっきり言いまして。したがって、我々の特許情報をコンピューターラインで提供しましょうというのも、そういうところから来ているわけでございます。  格安で提供しなければならないということもあるわけでございますが、一方、中小企業なんかに聞きますと、これはもっと意欲的でございまして、いや、これからこれしか生きる道はない、ほかとの際立った自分の特徴を出すために、あるいは下請は下請なりに親企業から離れないようにするためには、やはり技術開発しかないというのを強く訴えられて、これからどんどんふえますよということを聞くわけです。したがって、究極的には日本の技術開発のバイタリティー、それはいかにもジャパニーズスタイルかもしれないけれども、これを根本からなくするのは怖いような感じがいたします。しかしそうかといって、かなり異常な面、過当競争に発する面、我々の情報データ提供不足も原因でありますから、一概に責められませんけれども、先行調査の不十分な面が十分ありますので、これはひとつ我々も努力するけれども、企業の方でも努力して、できるだけ合理化してください、こういう運動を今後とも続けていきたいなと思っております。
  165. 正森成二

    ○正森委員 同じ座談会で、「人事処遇制度の問題、発明奨励、あるいは人事面からの活性化、こういった面から特許法を使ったというのは日本だけじゃないかと思うんです。それがちょっと極端過ぎる。」という表現をしておるのですね。特許を、発明奨励あるいは人事処遇上の問題、こういう人事管理の面としていろいろ使い過ぎている点があるのじゃないかという指摘をしているわけです。  あるいはまた、私一夜漬けでございますが、特許庁の工業所有権制度研究会というのがございますか、それが、「特許制度の発生と変遷」という本を書いておられます。その中で、これの代表である富田徹男さんという方がいらっしゃるようで、その方の御指摘のところを非常に興味深く読んだのですね。その方がどういうように言っておられるかといいますと、非常な過当競争が過ぎたのではないかということで、戦後農地解放で農村に非常に大きな市場が発生した。そこでまず、  最初に製品を農家に売り込んだのは当然のこと  ながら農機具会社であり、農家の台所改善理由に電化製品やミシンがこれに次いだ。農機具会社は大体が中小企業であり、かつ地域ごとに土質も異なるので、 云々とありまして、  各地域の農機具会社は、それぞれが全機種を揃えて自社の系列販売店を通じて供給するというシステムをとった。この系列販売店の制度は家庭電器でも自動車でもその後採用されるようになる。   このような製造・販売システムの下では、トラクターにせよ、脱穀機にせよ、すべての機種が、それぞれ、農機具メーカーの会社数だけできることになる。メーカーが一〇社ならば、同じ性能の脱穀機も一〇種類、脱穀機の回転速度計も一〇種類あることになる。   家庭電器の場合、販売店の系列化には更に極端なものがあった。だから、各社は、自分の系列店に電気釜もカラーテレビもすべてを供給しなければ、顧客はその系列の販売店から離れ、会社はその販売店を失うことになる。だから各社は系列店に対し、他社と同じ種類の電気製品をすべて供給しなければならない。われわれは、現在、店頭でソニー、東芝、日立、三菱、シャープ、松下、サンヨーのカラーテレビを比較することができる。電子レンジも電気洗濯機も同様である。品質は向上するが研究開発の面では極端な重複投資が行われている。 云々と言いまして、「推定であるがこということで、特許だとか特に実用新案の出願を促したのは、  本来ならば、どこか一社がある製品を作って特許をとれば、例えば脱穀機に回転速度計をつけたものの権利をとれば、他社はこの権利者に対して実施の許諾を受けなければならない。ところが、多少異なった設計をして特許権や実用新案権が得られ、それが先の権利に対して実施を保障する手段となるのであれば、実施料を払う代わりに別のモデルのものを設計して出願した方が簡単である。戦後の出願増については、経済復興にともなう当然の増加があるのは勿論であるが、それを超えて異常に出願が増加したのにはこのような背景があったと考えられる。 云々というように書きまして、   最近、日本が技術開発競争の先端に立ったことや、貿易摩擦が議論される中で、日本企業の特許出願の数が異常に多いことが指摘されている。この異常な出願増が企業努力の結果であることは疑いの余地がない。それではこの出願増に結びつく企業努力がどうしてなされてきたかといえば、基本的には過剰な市場競争のためのものだったとしか考えられない。工業所有権は、本来、市場の製品に関する権利である。だから企業内での研究特許出願に直接結びつくということは、逆にいえば基礎研究が軽視されているにほかならない。 云々ということで、  特許制度よりもむしろ日本の企業における研究開発のあり方について問い直すべき時がきているのではないかと思われるのである。 云々というように書いておられるのですね。私はこの指摘は、「私の推定であるがこというような前書きをしておられますけれども、非常に正鵠を得た点があるのじゃないかと思われるのですね。  これは特許庁だけにお聞きすることじゃなしに、むしろ科学技術行政とかもっと広い面でお聞きしなければならないことであるかもわかりませんが、若杉さんはこういう点での非常な権威で御勉強家でございますから、忌憚のない御意見を承っておきたいと思います。
  166. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 ただいま指摘されました点が、事実と言うと変ですが、一つ指摘として、理論として十分納得できるということは当然でございます。  ただ私、感じますのは、そういう過当競争が、今日の日本のバイタリティーといいますか、日本の技術レベルをアップしたという事実も見逃せないような気がします。ですから、理論と実際の差が何と大きいことかというふうにも私、いつも感ずるのであります。理念的に言えば、今お読みになったような方向の方が合理的な気がしますが、それでは、そういう一辺倒でいったら今日のバイタリティーができただろうかというのも、同時に気にするものでございます。したがって、確かに基礎研究がかなりなおざりになっていたことは事実ですけれども、幸い先生も最近の状況はお認めになると思いますが、そういう過当競争なりで頑張った結果、かなり自信もついた結果、最近では我々の見るところ、基礎的な研究も、かなり大型研究も企業は始めております。それだけ力がついたのかもしれません。  そういうこともありますから、率直に言って、私としては、現実としては両面あるのかなということで、しかし両面ありながら一つの合理精神は絶えず持っていかなければならないというような感じを持っているわけでございます。
  167. 正森成二

    ○正森委員 その合理精神なんですけれども、やはりこの座談会でこういうことも言っているのですね。「ある大手の会社では、出願料が五〇%上がれば、」まさに今度上がるわけですが、「それに応じて特許出願は減らすんだ、トータルとしての予算は一定に抑えるんだとおっしゃっている会社もないわけではないんです。」「無用なものは年金を払わずに捨てましょう」。年金というのは、あの年金じゃなしに、毎年払う方ですね。「まずそこからいくみたいですね。」という発言があるのですね。これは問わず語りに、自分の出した特許や実用新案がそれほど有用でない、だから五割上がれば、トータルの予算は同じだから、結局それほど必要でないなというのは年金を払わずに失効になっても構わないという意見を述べているわけですね。  そうしますと、私が漏れ承っているところでは、特許庁ではぺーパーレスシステムが――後で伺いますが、導入されたりいろいろするについて、今度は特許料その他の手数料の値上げもあるわけですけれども、今全部で大体六十万件だとすれば、これが八十万件の場合は十年間にこれぐらい値上げしていけるだろう、しかし、半分の三十万件になれば、これはこれぐらい値上げしなければいけないだろうというような議論が内部であったやに伺っているのですね。そういう点から見ますと、大体こういうことでペイするだろうというように思っておられるお考えも、一社で一万も二万も出しておる大企業が、トータルの予算は一緒で、五割上がれば年金は払わないでいわば権利を放棄するだけだ、そういう考えを持っているとすれば、なかなか若杉さんのお見込みどおりにいかない場合もあって、予定よりも値上げの回数を多くしたりしなければならないこと、あるいは一般会計からの繰り入れを求めなければならない場合も起こってくるんじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  168. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 大勢の人がいますから、いろんな意見もあることは承知しておりますが、現実論として、我々何百人という企業の特許の幹部あるいは技術担当の重役としょっちゅう会っていますけれども、私の前でそういうことを言う方はいらっしゃいません。(正森委員「座談会でも言っているよ」と呼ぶ)はい。むしろ私は、若干出願件数のブレーキをかけてもらいたいという潜在的気持ちを持っておりますから、そういう態度でいろいろ接しておりますけれども、むしろ、申しわけないけれども、ちょっとふえるようだという方が圧倒的に多いのが現実です。  それで、おっしゃったようなこともわかりますが、一方こういう見方もできるわけです。技術開発費に占める特許関係経費というのはネグリジブルスモールなんです。恐らく〇・五以内だと思います。会社全経費じゃなくて、技術開発費に占める特許関係経費は〇・五ぐらいだと思います。それで今先生御承知のように、技術開発費の伸び率は売り上げの伸びを上回っておるわけでございます。したがって、特許にかける経費は、総体的技術開発費の中では割とウエートが小さいという点が一つあろうかと思います。  そういうことと、それから、いろんなことを話しますけれども、むだな、どうでもいい出願もあるんじゃないですかと言いますと、いや最近クロスライセンス時代でございまして、何とかかんとか言ったって、外国とやるときでも量ではかるんですよ。一件一件これは価値が幾らかなんてでぎない、一万も二万もあるのに。ある程度量というのも大事なんですよという答えも返ってきます。ですから、あながち広い意味の合理性が全くないわけではないようでございます。  そういうことで、我々は今先生おっしゃったような赤字になったり、極端に言えば収入を確保するために値上げと件数が悪循環といいますか、反比例するような、そんなことになったんじゃたまりませんので、この制度を最初から、一年半前に検討した段階から、これは一体どういう影響が出るのかというところについては最もセンシティブなアイテムでございました。したがいまして、いろいろな聞き込み、それから外国の例、日本の上げた例、いろいろな調査をいたしまして、我々としてはどちらかと言えば内輪に見ているつもりでございます。はっきり言いますと、ことしの八月一日ですから半年以内に勝負が決まりますが、もし私たちの見込みが大幅に狂うならば、我々は重大な変更を考えざるを得ませんけれども、私はそういうことは万ないと思います。
  169. 正森成二

    ○正森委員 それとの関係で承っておきたいと思うのですが、この特許関係法は、万一の赤字の場合に備えて一般会計からの繰り入れを決めておりますね。同様にあなたの方で余裕があった場合には、これも一般会計への繰り入れというのですか、規定があるようです。これは総合的に当然のことであるのですが、何か私の聞き間違いかもしれませんが、私の耳に入ってきた情報では、それはまあ総合的なものだから、余った場合は一般会計繰り入れるという規定はあるけれども、それを具体的にやる政令なんかつくる気はさらさらないんだ、そんなことはしないんだ、もらうだけで出さないんだということを内部で言われておるやに聞くのですが、それは本当でしょうか。
  170. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 少なくともこういう二点ははっきり断言できると思います。一点は、そもそも黒字運営といいますか、もちろん若干の黒字運営は基調とせざるを得ませんけれども、大幅な黒字を計算した料金設定は行わない。それから第二に、今後十年間は非常に大きな建設投資をいたしますので、その期間についてはある程度繰り越しが大きくなっても、後の仕事が待っていますから、そういうことでいきたいということは言わざるを得ないというところでございます、  ただ、さらに超長期的になりましてどういう事態になりますか、非常な予想以上の黒字が出ることもございましょうし、いろいろな事態があります。その場合に値下げをするのか、国庫に納めるのか、いろいろな議論があります。まあ国庫に納めるのも悪くはないと私は思いますけれども、値下げしろという要請もあろうし、そのときの情勢で、それは余裕があったら、どちらかというとうれしい方でございますので、広く皆さんの意見を聞いて方針を決めたらいいんじゃないかというふうに考えています。
  171. 正森成二

    ○正森委員 特許料その他について中身で伺いたいと思うのですが、大きな企業は、さきに触れた座談会発言のように、長官は、出願を減らして予算を抑えるというようなことを少なくも私の前では余り言う人はいないとおっしゃっていますが、少なくも今名前を挙げた方は、私は聞いておる、こう言っておるわけですね。いずれにせよ、調整をすることができるわけですね。しかし、個人や中小企業は、自分がこれは価値のある特許だとか実用新案だということで恐らく申請するんでしょうから、これを年金を放棄してどうこうとか、そういう調整ができないということになろうかと思います。なぜ中小企業や個人に配慮した料金体系がとれないのであろうかというのが、私のお伺いしたいところであります。  例えばアメリカでは、料金値上げの際に中小企業や個人から非常に強い不満が出て、大企業と中小企業、個人、非営利団体とを分けた二段階の料金制度が導入をされたというように聞き及んでいるのです。アメリカではこれらの団体は大企業の二分の一で、そのことによる減収については一般会計から繰り入れるというような制度もあるやに聞いておりますし、中小企業の基準としては従業員が五百人以下であるとかいうような規定がある。申請手続については、宣誓と自己表明といいますか、自分が間違いなく中小企業であるというようなのが必要で、不適切な申請をした場合は特許を取り消すほか、親企業を考慮するので、大企業が子会社に代理で申請させるというようなことはできない、あるいは大企業とライセンス契約をしている個人も排除されるというようなことで、不正が行われないように担保しているということを漏れ承っているのです。我が国でも今回手数料等の値上げの中に特許料等も入っておるわけですが、こういう配慮ができないものであろうかどうか。これは我が党にとっては非常に大きな関心でございますので、承っておきたいと思います。
  172. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 アメリカにおきまして、先生御指摘のように、中小企業関係には減額料金制を採用したということは事実でございます。  ただ、若干そこで事情を御説明しますと、アメリカにおきましては極めて大幅な値上げをいたしました。出願から公告までの段階で、具体的な数字を申しますと、今まで四万三千円だったものを十九万八千円というふうに五倍弱にいたしました。もっとすごいのは、今まで年金を取ってなかったのでございますが、新たに導入いたしました。それでよくまあ上げたものだとは思うのですけれども、今まで安過ぎたと言えばそれっきりで、そういう年金部分まで考えますと二十倍に上げたわけでございます。そういうものすごいトラスチックなことをやったという非常に大きな問題があったろうと思います。趣旨は、皆そういう大きな影響が中小企業に来ちゃ困るということだったろうと当然思います。  それからもう一つは、今度は日本の方を申しますと、確かに値上げ幅としては五〇%ということで、これはアメリカの四倍とかなんかに比べれば小さいけれども、日本の中小企業にとって決して小さいお金ではないとは思います。しかし、実額の方を見ていただきますと、ちょっと私も負担が少ないと言えばそれは言い過ぎでございますけれども、例えば中小企業が――日本はこういう制度もあります。特許と実用新案と両方つくっていますから、ある程度そこに互換性があるわけです。実用新案になりますと、実は我々の特許に比べて大幅に値段を小さくしているわけです。これは、従来から中小企業対策という色彩がありまして、はっきり言えば、特許に比べますと三分の一以下でございます。したがいまして、現在でも非常に安いわけでございます。これを五割アップとするわけですが、例えば絶対額で言えば、十年間全部持った場合に確かに四万五千円くらい上がるわけでございます。今生涯年金ということで考えれば、九万三千円くらいが十四万ちょっとになりますから四万五千円上がるのですが、十二年間でございます。大体、十年プラス出願その他ありますから約十二年間。しかもそれが、年金は後傾斜になるわけです。したがいまして、最初のころの年金のアップというのは年に千五百円という程度のアップなんでございます。出願料も、率直に言いまして四千七百円が七千百円ということで二千四百円程度。非常に大きいと言えば大きいのですけれども、ちょっと語弊がありますけれども、実額から言えばそう大きな規模ではないという判断をいたします。  それから、日本の場合、アメリカと違いまして、率直に言いますと、これは役人が悪いと言えばそれきりですが、アメリカでは宣誓主義で信賞必罰という制度になっていますから、うそを言ったらアウト、だれも文句は言いません。日本の場合は、最初からもしこういう制度を導入しますと、はっきり言ってチェックが大変な問題になります。ダミーを使わないか、脱法行為をしないか。それで千五百円とか三千円の問題。これはちょっと語弊がありますから誤解がないようにしていただきたいと思いますが、そういうようないろいろなことを判断しなければならない。  それから、中小企業の申請でございますけれども、七十万くらいの人がいまして、中小企業製造業を見まして大体常連が四、五万、その方が年に実用新案を中心にして二・七件くらいの出願でございます。これは平均でございますから幅がございますが、確かに先生がおっしゃったように、大企業に比べて中小企業の方が特許、実用新案の出願をやめるという感じは少ないと思います。なぜならば、わりかし企業化に結びつく、直ちに事業にしたいというものが多いのでございます。したがって、多分私は大企業も余りやめないと思うのですけれども、中小企業の場合はもっと本質的にやめにくいことはもうはっきりいたしております。そういう意味では、確かに先生御指摘のとおりなんですけれども、逆に言えば、私たちも中小企業の人に随分会いましたけれども、この問題について非常に真剣でございます。つまり、早くやってほしい、それから特許情報を的確に送ってほしい、非常なニーズがありまして、そういう強い期待もあります。  以上を総合いたしまして、まことに大幅な値上げで申しわけないのでございますけれども、私の方は中小企業者も御理解いただけるもの、こう考えておるわけでございます。
  173. 正森成二

    ○正森委員 次に、ペーパーレス計画について伺いたいと思うのです。  コンピューターの開発は、ハードだけでなしにソフトの面も非常に大事で、これは一部の新聞に、出ておるのですけれども、「情報検索用のソフトウエアを整備しておきさえすれば、何千万件もある過去の資料の中からも、必要なものだけを選りすぐって短時間に参照できる仕組みだ。」一方ではこう言っているのですが、同時に、「だが情報の電子化時代を迎えたとはいえ、特許のペーパーレス化は並大抵ではない。なにせ情報量が多い。必要なデータをさぐり出すためのソフトウエアの開発だけでも、大変な作業である。情報の記憶媒体などについても技術革新が必要だ。」ということが言われておりまして、一説では、コンピューターの開発に二十年はかかるというような説もあり、果たして特許庁が言っておられるように約十年くらいでできまして、そしてほっておけば七年くらいかかるのが二年台くらいで抑えられるというようにいくであろうかという疑問と、それから、どこまでをペーパーレスにし、どの程度を文書にするかについてはいろいろ議論があって、最小限これだけはやはり文書にしてもらわなければ困るという説もあるようであります。  それからまた、ついでに伺っておきますが、ペーパーレスでコンピューター化したら当然に人員はふやさないでいいとか、ましてや減らせるとは言えないので、やはり特許を拒絶するかあるいはしないかということは判断事項で、検索もこれまた判断が要るわけで、アメリカを見ましても毎年大体八十人とかいうような人員増を予定しておるということで、皆さん方がこういう特許特会制度をとって今度のような措置をとれば、一定の効果が出て、二年台に抑えていけるのだという皆さんの計画の中には、ペーパーレス化だけでなしに、やはり一定の人員は確保するということも入った上でのできるというお考えじゃないかと思うのですが、そう理解してよろしゅうございますか。
  174. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 ペーパーレスのソフト開発あるいは機種の問題でございますが、若干の例外がありますが、数年あるいは二、三年という間隔を置きますと、機種もソフトの内容も全部含めまして、今我々が考えている全電子化は問題はありません。今の日本の技術からこれは断言できます。ただ、若干と申しましたのは、ビデオディスクとかそういうものについて、あるいは自動起案のターミナルとかについて、なお若干の改善があります、それはぜひしたいと思います。それから、もちろんできると言っても、さらによくできるのはエンドレスにあります。しかし、我々の今考えている程度のことは問題なくできると思います。それは断言できます。  ただ問題は、ではないかと言われると、ないことはありません。というのは、情報検索の質と内容については問題がないとは言えません。つまり自分の欲しい物が的確に必ず出てくるかどうかというところでございます。これについては、我々今現在考えているのはFターム方式と言いまして二万何千、私正確じゃないですが四万ぐらいの国際分類の、縦に割っているわけですが、それをさらに横に三百とか四百に割る。今まではこの分類でしか出てこないわけですが、今度はこっちの分類が出てきますから一挙に三百倍の細分類ができるわけですね。しかも横断的にできる。そういうようなものを考えておりますが、それで的確に審査能率が上がるような、ヒットするものがなお出てくるかどうかというのに、問題が全然ないわけではありません。これは十分試行錯誤を重ねながら、テストしながらやっていきたいと思います。これが今完成したとは言えません。しかしこれもテストして、よりよいものに持っていくという過程を踏みたいと思います。  それから、最後になりましたけれども、人間の問題は確かにおっしゃるとおりあります。そこで我々の考えているのも、もちろん今の時代でございますから、人手というもの、定員化というものについては大きくは許されないだろうということは私よく知っておりますが、ミニマムなものについては当然なければいけないということで、そういうマンパワーについてももちろん入っております。
  175. 正森成二

    ○正森委員 今度は大蔵省の方になるかもしれませんが、「国の研究機関などが研究・開発した国有特許の多くが、外国では申請さえもされずに放置されている。」という問題があるようであります。その大きな原因が「財政難のあおりで必要な予算が取れないためでこという報道があるわけです。「たとえば、五十六年度から十年計画で進められている次世代産業基盤技術研究開発計画では、すでに三百七十八件の国内特許を出願しているのに、海外での特許出願は数件。通産省・工業技術院は、このままでは、海外企業が追いかけて取得した特許のカベに国内企業の活動が阻まれたり、国の研究者の意欲が鈍るなどの悪影響が深刻になりかねないこという懸念を表明している、こう報道されているわけであります。  大体見ますと、「政府がわが国の特許庁に出願した件数は、五十三年度の六百二十七件から昨年度の千二百四十九件にまで急増している。  これに対して、外国への特許出願は五十年度以降、六十件前後で頭打ちの状態だ。昨年度は、国内で特許を出願したもののうち、米国を中心とする外国へ特許出願したのはわずか六十三件で、その割合は五%程度にとどまっている。」こう言われているのですね。それはなぜかというと、「国内では、政府の申請に限って、審査料と特許料金(特許を維持するための費用)が不要なのに、外国では有料なため。」こういうように言われているのですね。  そこで、主計局ですかどこですかわかりませんが、海外申請費用としてここ三年ないし五年間どれくらい予算をつけたのか、あるいは本年度予算ではそれが幾らになっているのか、答えていただきたいと思います。
  176. 平澤貞昭

    平澤政府委員 いわゆる国有特許外国出願費という費目で出しておりますのは、通産省、科学技術庁、農林水産省の三省庁にわたっているわけでございます。その金額は、五十九年度におきまして総計で六千六百万円。省庁別に申し上げますと、通産省が五千五百万円、科学技術庁が六百万円、農林水産省が五百万円、こういうふうになっております。対前年で比較いたしますと、五十八年度が六千九百万円でございましたので、トータルで三百万円の減ということでございます。
  177. 正森成二

    ○正森委員 お聞きのとおりなんですね。それで、こういう予算要求ではまさに焼け石に水であるということで、こういう報道があるのですね。「日本の国有特許を使用し衣内外の民間企業が政府に支払った特許実施料収入は、昨年度で二億四千万円。たとえば工技院微生物工業技術研究所が開発した人工甘味料を作る技術(イソメラーゼ技術)は米欧で特許を取得したため、これまでに米国を主に十三億九千万円の実施料収入をあげた。これに対し、大阪工業技術試験所が開発したPAN(ポリアクリルニトリル)系炭素繊維の製造方法は、海外で特許を申請しなかったため、実施料は国内企業からの二億三千万円にとどまっている。」こういう報道があるのですね。これについて特許庁はどういうぐあいに評価しておりますか。海外からの収入を失うというだけでなしに、逆に海外が先に開発した場合には、我が国の産業なり技術なりにやはり重大な不利益を受けると思うのですが、それを政府が、国内はただだからいいけれども、国外は金が要るから出さないんだというようなことでは、これは非常な怠慢になるというふうにも思うのですね。その点について御見解を承りたいと思います。
  178. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 先生おっしゃる事実で炭素繊維の残念な例があります。ただし、それは当時の予算がなかったんじゃないと私は思いますけれども、結果として、大阪の工業試験所で、御承知のように、例えばゴルフのカーボンブラック、飛行機の機材に使われている炭素繊維について外国特許を取りませんでした。で、実際の生産量は外国の方が圧倒的に多かったわけですから、日本の二億何千万に比べれば何倍もの収入があったはずでございます。それは完全な基本特許でございました。非常に痛恨の一字に尽きます。  それで、我々特許庁は、お金の方は直接関係ないものですが、せめていろんなサービスをしたいと思って、外国出願で取れそうかとかどうなるかというチェック機能は我々非常に持っていますし、それぞれの試験所の方もお金もないでしょうから、我々はそれについては全力を挙げてバックアップしたいと思っております。もちろん私としては、外国特許について厳選は必要だと思います。取れそうか取れそうでないか、それについて我々は専門家ですから、力をかしたいと思います。その上で取れそうなものについては、お金があったらなあと私は思います。
  179. 正森成二

    ○正森委員 政務次官に伺いたいと思うのですが、報道によりますと、国内出願されたもののうち一般的には約二〇%くらいが海外へ出願するというのですね、今法律が変わりまして一々外国へ行かなくてもいいわけですから。ところが、政府関係のはわずか五%だというように言われているんですね。若杉さんは大蔵省に遠慮して、予算がないからではないと思うと言って弁護されましたが、予算がないからであるという場合が多いのは非常にはっきりしているのですね。そういう点について、政務次官はどういうぐあいにお考えになっており、どう対処されるか、承っておきたいと思います。
  180. 堀之内久男

    ○堀之内政府委員 先ほど特許庁長官からも御答弁があったようでございますが、研究開発費の予算としては、一応それぞれの省で了解の上で予算が配分されておるわけでございますから、研究費の方に余計使うのか、あるいはそういう特許出願の方にも配分するかということは、やはりそれぞれの工業技術院なりあるいは農林省の試験場なり、そうしたところで判断されるもの、かように考えておりますし、技術立国でございますので、私どももこうした特許関係、こういう面は今後とも前向きに取り組んでいくように努力をしたいと思います。
  181. 正森成二

    ○正森委員 申しわけありませんが、もう一問だけ聞かしていただきます。  農水省来ておられますね。――農林水産省は二十五日、特許庁に対し日本新薬が開発し、”植物特許第一号”として特許出願している回虫駆除剤に使うヨモギの新品種について、特許権を与えないよう強く要請した」というように報道されております。「特許権が与えられると、これが突破口になって今後、バイオテクノロジー(生命工学)を応用した新しい育種技術を手がけている内外の企業が次々と特許をとって育種市場に進出、日本農業を脅かす恐れがあると判断したためである。」というように言われているのですね。こういう問題について、農水省と特許庁はそれぞれどういうように考えておられるのかお伺いいたしまして、私の質問を終わらしていただきます。
  182. 近長武治

    ○近長説明員 お答えいたします。  実はこの問題は、五十三年に種苗法を制定するときの論議にまでさかのぼるわけでございます。植物について新しい品種を育成するということは大変重要な問題でございまして、これを促進する一つのよすがとして、新しい品種を育成した人には一定の権利を与えるということが重要なやり方だと思っております。当時、農林水産省におきましても、この問題についてどういうふうに取り組むかということで、かなり時間をかけて検討いたしました。また国際的にもUPOV条約、植物の新品種の保護に関する国際条約ということが話題になっておりまして、そういう新しい条約の内容にも沿ったような形で、なおかつ農林水産業とか、あるいは植物の育種の実情に合うような、そういう制度をつくりたいということでございます。  その際に、一つ問題点は、先生御指摘のように、特許法においても、発明に該当する品種については出願の道が理論的には閉ざされていないわけでございます。そのために、両制度の間でどういうふうに整理をするかということで、農林水産省と特許庁の間でかなり詳細な打ち合わせをいたしまして、簡単に申し上げますと、新品種それ自体の発明は理論的には否定しないわけでございますが、従来ともそういうようなものはなかったわけでございますし、それから、今後ともそういうものが出てくるかどうか。  当時の理解といたしましては、一つは、農林水産物というものは工業製品とは違った特別の性格を持っております。そういう特殊性に基づきまして、新しい品種であっても、新規性であるとかあるいは進歩性という特許の要件を満たすものはまれであると考えられる。それから、新しく品種登録制度が種苗法に基づいてできますが、この要件が特許に比べてかなり緩和されているものでございますので、大部分がこの品種登録の出願になるというふうに予想されるということで、今後とも事実上ほとんどない。こういう前提で種苗法を制定したわけでございます。  御指摘の案件につきましては、これは特許庁の方で審査していただいている案件でございますので、個別、具体的案件について私たちの方から意見を差し挟むべき筋合いではないと思っておりますが、ただ基本的には種苗法と特許法との運営について、やはりそごがあってはならないということでございますので、両省の間の意思疎通を密にしたいということで、農蚕園芸局長と特許庁長官が直接に会いまして、また比較的高いレベルでの意見交換等もしながら、農林水産省といたしましては、農業の実情に合うように、なおかつ農業の健全な発展を確保していくというような基本的立場に立って、十分に特許庁とも話し合いを進めていきたい、かように考えております。
  183. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 現在の見通しては、先ほど農林省の課長さんがおっしゃったように、極めてまれであります。今後も極めてまれであろうと思います。そういう意味では従来とスタンスが変わっておりませんが、農林省の課長が申し上げたように、うちと農林省とはしょっちゅう連絡をいたしておりますので、円満といいますか、緊密な連携のもとに処理したいと思います。
  184. 瓦力

    瓦委員長 これにて両案に対する質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  185. 瓦力

    瓦委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決いたします。  まず、各種手数料等の額の改定及び規定合理化に関する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  186. 瓦力

    瓦委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  次に、特許特別会計法案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  187. 瓦力

    瓦委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  188. 瓦力

    瓦委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕      ――――◇―――――
  189. 瓦力

    瓦委員長 この際、国家公務員等の旅費に関する法律の一部を改正する法律案及び昭和四十二年度以後における国家公務員等共済組合等からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。  両案について、政府より順次趣旨説明を聴取いたします。竹下大蔵大臣。     ―――――――――――――  国家公務員等の旅費に関する法律の一部を改正   する法律案  昭和四十二年度以後における国家公務員等共済   組合等からの年金の額の改定に関する法律等   の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  190. 竹下登

    竹下国務大臣 ただいまの二法案、ありがとうございました。  さて、ただいま議題となりました国家公務員等の旅費に関する法律の一部を改正する法律案及び昭和四十二年度以後における国家公務員等共済組合等からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案につきまして、提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  まず、国家公務員等の旅費に関する法律の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。  政府は、最近における国家公務員の旅行の実情等にかんがみ、外国旅行における日当、宿泊料、移転料等の定額の改定等を行うため、本法律案提出した次第であります。  以下、この法律案内容について、御説明申し上げます。  第一に、国家公務員等の外国旅行に際して支給される日当、宿泊料及び食卓料の定額につきまして最近における宿泊料金の実態等を考慮し、平均四〇%程度引き上げることといたしております。  なお、その際、外国旅行の実情に即して日当及び宿泊料の支給に係る地域区分を改めることといたしております。  第二に、外国旅行における移転料の定額につきましても、国家公務員の赴任の実態等にかんがみ、二五%程度引き上げることといたしております。  次に、昭和四十二年度以後における国家公務員等共済組合等からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案につきまして、御説明申し上げます。  政府は、国家公務員等共済組合法等の規定により支給されている年金につきまして、別途、本国会に提出しております恩給法等の一部を改正する法律案による恩給の改善措置を参酌し所要改定を行うとともに、掛金及び給付額の算定の基礎となる俸給の最高限度額の引き上げ等の措置を講じるため、本法律案提出した次第であります。  以下、この法律案内容について御説明申し上げます。  第一に、国家公務員等共済組合等からの年金の額を改定することといたしております。  すなわち、旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法、旧国家公務員共済組合法、国家公務員等共済組合法及び旧公共企業体職員等共済組合法に基づく年金につきまして、恩給における措置を参酌し、昭和五十八年度の国家公務員の給与の改善内容に準じ、年金額の算定の基礎となっている俸給を、国家公務員等共済組合法及び旧公共企業体職員等共済組合法の施行前の期間に係るものについては本年三月分から、施行後の期間に係るものについては本年四月分から増額することにより年金の額を平均二%程度引き上げることといたしております。  ただし、昭和五十七年度において仲裁裁定等による給与改定の適用を受けた者で同年度に退職したもの及び国鉄共済組合から年金の給付を受ける者については、年金額の引き上げは行わないことといたしております。  第二に、六十五歳以上の者の受ける退職年金、遺族年金及び公務関係年金の最低保障額を恩給における措置に倣い改善することといたしております。  その他、掛金及び給付額の算定の基礎となる俸給の最高限度額について、国家公務員給与の引き上げ等を考慮し、現行の四十四万円から四十五万円に引き上げることとするほか、昭和五十七年度において退職した公共企業体職員の旧公共企業体職員等共済組合法に基づく退職年金等の額について、退職手当支給額との関連から既裁定年金の額の引き上げに準じて引き上げること等の所要措置を講ずることといたしております。  以上が、国家公務員等の旅費に関する法律の一部を改正する法律案及び昭和四十二年度以後における国家公務員等共済組合等からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案提案理由及びその内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  191. 瓦力

    瓦委員長 これにて両案の趣旨説明は終わりました。      ――――◇―――――
  192. 瓦力

    瓦委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  金融及び証券に関する小委員会において、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、人選、日時等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  193. 瓦力

    瓦委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次回は、来る十一日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時四十三分散会      ――――◇―――――