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1984-03-30 第101回国会 衆議院 大蔵委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年三月三十日(金曜日)     午前八時五十二分開議  出席委員   委員長 瓦   力君    理事 越智 伊平君 理事 熊川 次男君    理事 中西 啓介君 理事 中村正三郎君    理事 伊藤  茂君 理事 野口 幸一君    理事 坂口  力君 理事 米沢  隆君       熊谷  弘君    小泉純一郎君       笹山 登生君    椎名 素夫君       塩島  大君    田中 秀征君       月原 茂晧君    中川 昭一君       長野 祐也君    平泉  渉君       松田 九郎君    宮下 創平君       村上 茂利君    森  美秀君       山岡 謙蔵君    与謝野 馨君       上田 卓三君    沢田  広君       渋沢 利久君    戸田 菊雄君       藤田 高敏君    堀  昌雄君       横江 金夫君    遠藤 和良君       柴田  弘君    宮地 正介君       矢追 秀彦君    安倍 基雄君       玉置 一弥君    正森 成二君       簑輪 幸代君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 竹下  登君  出席政府委員         経済企画庁調整         局審議官    丸茂 明則君         大蔵政務次官  堀之内久男君         大蔵大臣官房総         務審議官    吉田 正輝君         大蔵大臣官房審         議官      大山 綱明君         大蔵大臣官房審         議官      山田  實君         大蔵大臣官房審         議官      行天 豊雄君         大蔵省関税局長 垂水 公正君         大蔵省銀行局長 宮本 保孝君         大蔵省国際金融         局長      酒井 健三君         大蔵省国際金融         局次長     佐藤 光夫君         国税庁次長   岸田 俊輔君  委員外出席者         人事院事務総局         給与局次長   藤野 典三君         警察庁刑事局保         安部保安課長  加美山利弘君         外務省北米局安         全保障課長   加藤 良三君         外務省経済局国         際機関第一課長 沼田 貞昭君         厚生省公衆衛生         局保健情報課長 野崎 貞彦君         農林水産省経済         局国際部国際経         済課長     上野 博史君         農林水産省経済         局国際部貿易関         税課長     重田  勉君         農林水産省農蚕         園芸局植物防疫         課長      管原 敏夫君         農林水産省農蚕         園芸局果樹花き         課長      武政 邦夫君         農林水産省畜産         局畜産経営課長 香川 荘一君         局食肉鶏卵課長 鎭西 迪雄君         農林水産省畜産         局衛生課長   今井 正夫君         林野庁林政部林         産課長     三澤  毅君         水産庁漁政部水         産流通課水産加         工対策室長   九鬼  望君         通商産業省通商         政策局国際経済         部通商関税課長 雨貝 二郎君         通商産業省貿易         局輸出課長   土居 征夫君         通商産業省貿易         局輸入課長   奈須 俊和君         通商産業省貿易         局為替金融課長 植松  敏君         通商産業省産業         政策局産業構造         課長      細川  恒君         通商産業省機械         情報産業局産業         機械課長    田辺 俊彦君         通商産業省機械         情報産業局電子         機器課長    島  弘志君         通商産業省機械         情報産業局航空         機武器課長   渡辺  修君         通商産業省生活         産業局通商課長 新関 勝郎君         大蔵委員会調査         室長      矢島錦一郎君     ————————————— 委員の異動 三月三十日  辞任        補欠選任   平沼 赳夫君     月原 茂皓君   藤井 勝志君     松田 九郎君   山中 貞則君     長野 祐也君   川崎 寛治君     横江 金夫君   坂井 弘一君     遠藤 和良君 同日  辞任        補欠選任       月原 茂皓君     平沼 赳夫君   長野 祐也君     山中 貞則君   松田 九郎君     藤井 勝志君   横江 金夫君     川崎 寛治君   遠藤 和良君     坂井 弘一君     ————————————— 三月三十日  昭和五十九年度の財政運営に必要な財源の確保  を図るための特別措置等に関する法律案内閣  提出第三号) 同月二十九日  申告納税制度改悪反対等に関する請願山花貞  夫君紹介)(第一七四二号)  同(渡部行雄紹介)(第一七四三号)  所得税大幅減税等に関する請願外二件(柴田  睦夫君紹介)(第一八〇二号)  同(藤田スミ紹介)(第一八〇三号)  同(正森成二君紹介)(第一八〇四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  関税定率法等の一部を改正する法律案内閣提  出第三二号)      ————◇—————
  2. 瓦力

    瓦委員長 これより会議を開きます。  関税定率法等の一部を改正する法律案議題といたします。  まず、政府より趣旨説明を聴取いたします。竹下大蔵大臣。     —————————————  関税定率法等の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 竹下登

    竹下国務大臣 ただいま議題となりました関税定率法等の一部を改正する法律案につきまして、提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  政府は、最近における内外の経済情勢の変化に対応し、我が国市場の一層の開放を図る等の見地から、関税率特恵関税制度等について所要改正を行うこととし、本法律案を提出した次第であります。  以下、この法律案内容につきまして、御説明申し上げます。  第一は、関税率改正であります。  まず、東京ラウンド交渉に基づく我が国関税譲許品目のうち、鉱工業品千二百八十品目に係る実行関税率段階的引き下げを一年分繰り上げて実施することといたしております。  また、主要関係国の関心の深い半導体、再生木材香水バナナ等関税率の撤廃または引き下げを行うことといたしております。なお、これに伴い、入国者が携帯して輸入する香水に課される簡易税率引き下げることといたしております。  第二は、特恵関税制度改正であります。  鉱工業品に対する特恵関税適用限度額等について、約五割の拡大を図るため、その算定方式を変更するとともに、特恵関税の便益をより多くの開発途上国へ均てん化するための措置を講ずる等所要改正を行うことといたしております。  以上のほか、昭和五十九年三月三十一日に適用期限の到来する暫定関税率及び各種の減免税還付制度について、それぞれその適用期限を延長するとともに、関税に係る延滞税計算方法等について所要改正を行うことといたしております。  以上が、この法律案提案理由及びその内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  4. 瓦力

    瓦委員長 これにて趣旨説明は終わりました。  速記はとめていただきます。     〔速記中止
  5. 瓦力

    瓦委員長 速記を起こしていただきます。  この際、暫時休憩いたします。    午前八時五十六分休憩      ————◇—————    午前十一時三十分開議
  6. 瓦力

    瓦委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。沢田広君。
  7. 沢田広

    沢田委員 最初に、人事院総裁においでをいただいておりますので、人事院総裁にまずお伺いをしておきたいと思います。  一つは、ラスパイレス方式について今どのように考えておられるのか、お伺いします。
  8. 藤野典三

    藤野説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生質問ラスパイレス方式については、現在これを使って較差を出しております。
  9. 沢田広

    沢田委員 それで、初任給大学卒というのを加えている場合に、常時そのラスパイレスの中に大学卒ウエートが三割加わっていくということについての疑問はお持ちになっておりませんか。その場合は初任給高校卒なら高校卒の場合にいったときのラスパイレスで、あと給与の配分、こういうことになるんじゃないのかと思うのでありますが、ラスパイレスというのは学歴別勤続年数別年齢別という三次方程式の中で同じにウエートを持っていくわけですから、常時大学卒業というのが毎年の平均給与の中の三割三分のウエートを占める、こういうことになるわけで、そのこと自身に問題が起きてくるのではないのか。じゃ初任給とはどう調整するのか、その点お伺いいたしたいと思います。
  10. 藤野典三

    藤野説明員 お答えいたします。  ラスパイレス比較でございますが、これはいわゆる在職者について比較をしておるわけでございまして、したがって公務員の方の調査につきましては実は技術的な問題もございまして、毎年一月十五日現在の職員をもって比較しております。ところが、初任給につきましては、四月実際に支払われたものでございますから、そういう意味において、初任給についてお互い比較するのは適当でないということで、お互い比較をしてないわけでございます。
  11. 沢田広

    沢田委員 ラスパイレスがすべてであるがごとく、今日自治体の給与その他も決められているわけでありますが、これはいわゆる正規の上級試験というようなものを中心としたものだけで調べているということになるんですか。それとも履歴上大学卒業ということであれば、それは上級試験合格者でなくとも大学卒として扱うということでやっているわけでありますか。どちらですか。
  12. 藤野典三

    藤野説明員 お答えいたします。  では、少なくとも民間初任給はどう決めているかということでございますが、初任給につきましては、やはり全く調べておらないわけではございませんで、民間におきます……(沢田委員「いや、そういうことを聞いているんじゃないよ。地方公務員の場合どうなのかと聞いているんだ」と呼ぶ)人事院が所管しておりますのは国家公務員でございますので、地方公務員のことまでは承知しておりません。
  13. 沢田広

    沢田委員 じゃ自治省でなければわからないということなんですか。あなた方がラスパイレス方式を採用して、例えば地方が一一〇であるとか一〇八であるとか一〇六であるとかいう数字を出して言っていく場合の根拠は、その今の私の言った内容はどういうふうになっているんですか。これも何ら関知しないということですか。どちらですか。
  14. 藤野典三

    藤野説明員 お答えいたします。  先生指摘のように、国に対して地方のラスで百幾つという数字が用いられておりますが、これにつきましては人事院としては直接関知しておりません。
  15. 沢田広

    沢田委員 そこで、じゃ関知してないならば、これは自治省でないとわからないということのようですから、これは追っての機会にいたします。  関税職員国税職員に対する給与については、今までも委員会で言われてきているわけでありますが、いわゆる国税関税とどういう違いがあると思っておられますか、給与面の問題で。
  16. 藤野典三

    藤野説明員 お答え申し上げます。  税務職につきましては、先生御承知のように、いわゆる税務特殊性なり御苦労性なりというものを評価して税務職俸給表を適用いたしまして、行政職に比べましてある程度高い水準の給与としておりますが、今先生指摘のような税関職員については、実はこれはそういう税務に近い職種もございますと同時に、一般行政職を適用しております他の職種に近い職種もございまして、そういう意味において一律に取り扱うことは給与上適当でないということで、現在一般行政職を適用しておるわけでございます。
  17. 沢田広

    沢田委員 だから、一般にしているのはわかるけれども、何か矛盾を感じないか、こういうことを言っているわけです。
  18. 藤野典三

    藤野説明員 お答え申し上げます。  先生指摘のように、税関職員の中でもそういう特殊性が高い職種もございますので、したがいまして現在私どもといたしましては、そういうものにつきましては特殊の手当を支給することによって措置をいたしますとともに、いわゆる税関職一般につきましてそういう専門性が高いということに着目いたしまして、個々の職員格付におきまして一般行政職よりも相対的に有利な格付をいたしまして、現在措置をしているわけでございます。
  19. 沢田広

    沢田委員 そうなると、号俸表そのものは別につくらないけれども税関の職務の特殊性というものが多角的に非常に多いからか、それぞれに応じた手当あるいは特別手当特別給与、こういうような方法措置をする考えである、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  20. 藤野典三

    藤野説明員 先生指摘のように、現在まではそのように取り扱っておるわけでございます。
  21. 沢田広

    沢田委員 これからもそういうふうに考えていくと理解してよろしいですか。
  22. 藤野典三

    藤野説明員 この点につきましては、いわゆる税関職に対します特別な俸給表をつくってくれというような御要望もございますので、この点については関係者の御意見、御要望等もあわせ考えまして、税関職員をどう取り扱うのが最善の方法であるかということについては、十分今後も検討してまいりたいと考えております。
  23. 沢田広

    沢田委員 大臣がいないから大臣関係は省略して、次の警察庁にお伺いいたしますが、現在銃砲取り締まり、それからきのうかおとといかの報道でも、あるいはその前にもピストルの乱射というようなことが行われているわけであります。これは税関と両方で、大変またお骨折りをいただいているわけですけれども、なかなかそう思うような銃砲取り締まりが行われていない、こういうふうにも感ぜざるを得ないのであります。その点、銃砲刀剣等取り締まりについて、警察と、あるいは税関の分野におきましての取り締まり等について、資料はあるのでありますが、簡単でいいですからひとつ、どういう対応でいるのか。それからもう一つは、これだけ流れ込んでいる銃砲等について、警察庁として、あるいは国内治安維持の立場からそれにどういう責任を感じているのか。これだけ野放しになっている状態を何と見ているのか。その点ひとつお答えいただきたいと思います。
  24. 垂水公正

    垂水政府委員 お答えいたします。  ただいま沢田委員の御指摘のように、覚せい剤等とともに銃砲は社会悪事犯代表的事例でございます。これが取り締まりは、税関に課せられた非常に重要な使命の一つであるという認識を持っております。しかしながら、年々その輸入者密輸手口は巧妙化してまいっておりますので、それとのいわば知恵比べというのが率直な実情でございます。  税関といたしましては、この種の事犯取り締まりを最重点目標として、まず第一は情報収集活動を強化する、第二は取り締まり機器を充実する、第三は、これは麻薬に関してでございますが、麻薬犬の活用を図る等々で、関係機関との連携を強化して実効を上げてまいりたい、かように考えております。
  25. 加美山利弘

    加美山説明員 お答えいたします。  銃砲取り締まりにつきましては強力に対応しているところでございますが、何といってもけん銃密輸事犯がございまして、それを水際で押さえる、検挙するということがまず第一でございます。昨年一年間で十四件、十七名を検挙し、真正けん銃を二十五丁押収しているところでございます。その密輸入手口方法大変悪質化、巧妙化しておりまして、いろいろ関係機関とも連絡をとりながら対応しているところでございます。  なお、けん銃押収状況でございますが、昨年は千百十二丁押収してございまして、そのうち真正けん銃は六百七十三丁でございます。  いずれにしましても、けん銃密輸入、あるいは国内けん銃押収事犯等暴力団に絡むものが大半でございまして、私どもとしましては、密輸事犯につきましては税関等関係機関とも十分連絡協調いたしまして、水際でしっかり押さえて強力に取り締まるという方針で対処しているところでございます。
  26. 沢田広

    沢田委員 大体後ろがうるさくて聞き取れないで、今言われていることがわかっている人はいないでしょう。聞く耳持たぬだったら出ていってください。そういうために審議が全然できないという状態では極めて遺憾ですから、委員長の統制を切に望んでやみません。  続いて、今言われた数字ですが、けん銃においては警察白書その他の資料でいくと千百九。問題は、国内銃砲等はどの程度、今日暴力団その他を通じて散在しているのか、現在のところどの程度の数が暴力団やその他を通じて我が国に入り込んでいるのか、言ってみてください。
  27. 加美山利弘

    加美山説明員 お答えいたします。  先ほどもちょっと申し上げたと思いますが、けん銃押収状況は昨年は千百十二丁でございます。暴力団に絡むものがほとんどだと申し上げましたが、毎年のように千丁前後を押収しているところでございまして、国内にはそういう暴力団等が不法所持しているものがかなりあるものということで、強力な取り締まりを続けているところでございます。
  28. 沢田広

    沢田委員 私の聞いているのは、現在我が国の中で放置されている銃砲等は、推定であるけれども、どの程度の数が今日野放しとなっているのか。推定もつかないのですか、見当もつかないのですか。全然、皆目わからないのですか。ともかく、わからないならわからないで、そのいずれかを答えてください。
  29. 加美山利弘

    加美山説明員 お答えいたします。  先ほど申し上げましたように、毎年押収しているけん銃の数が千丁前後、昨年は千百十二丁ということでございまして、水際での検挙、それから国内での検挙ということを強力に進めているところでございますが、このような過去の経緯からしますと、まだ相当数暴力団等が不法所持しているものということで、真剣に取り組んでいるところでございます。  どの程度あるかという推定数につきましては、はっきりしたことは申し上げかねるところでございます。
  30. 沢田広

    沢田委員 最初からそう言ってくれればむだな時間を費やさないのですよ。わからないならわからないと答えろ、こう言ったのだから、わからないならわからないと答えてもらえばいい。ただ、わからないでは済みませんぞと今度は言いたくなるわけだ。そのための警察なんだ。  それで、けん銃もそうだけれども刀剣もそのとおり。刀剣も大体千何百件ぐらいずつ押収しているが、現在潜在化されている刀剣類はどの程度あるのか、それから銃砲等はどの程度あるのか、きょう今、答えは求めません。時間がなくなってしまうから、しょうがないから、次までには、現在の日本の状況において大体どの程度密輸入されたまま温存されているのか。その推定もつかないような警察庁だったら、まず警察庁から責任をとってもらわなければだめだ、こういうことを言っておきたいと思う。  続いて、ヘロイン、モルヒネ、大麻覚せい剤、これに対する状況についてお伺いをいたします。  密輸入内容は、時間の関係で省略いたしますが、現在我が国の中で退蔵されているこれらの問題、特に覚せい剤等が一番多いのでありまして、あと大麻が多いのでありますけれども、どういう程度の量になっているのか、これに対する取り締まり状況、これを簡単に一言で言ってください。幾ら残っておって、どういう方法をとっているんだということです。
  31. 加美山利弘

    加美山説明員 お答えいたします。  覚せい刑事犯検挙状況でございますけれども、昨年一年間で三万七千三十三件、検挙人員は二万三千三百一人を検挙しております。押収量でございますが、約九十九キロでございます。  私どもの捜査の段階でどの程度の量の覚せい剤が潜在しているのかというようなことを推定するわけでございますが、押収量の十倍ないし二十倍は潜在しているのではないだろうかというふうに思っているところでございます。
  32. 沢田広

    沢田委員 これも宿題ということで、時間がないので、関税局長及び政務次官、今言われたような状況で、税関職員のちょっとした油断によって我が国内の秩序がより一層乱されるという原因を醸成するわけであります。人事院もよく聞いておいてもらいたいのは、そういうことに対しての後始末、それだけの重要性を持っておるんだということを考え合わせながら、今のようなことでわからないような状態で——わかればつかまえておるだろうけれども、わからないような状態でいるということは、我が国治安を維持していくために極めて危険である、こういうことが言えると思うのであります。  そこで、現在の輸出入の件数入港隻数入港機数、それから入国者は大体四百万と言われておりますから、これは一応省略します。以上の点について一言でお答えいただきます。輸入輸出入港入機。以上。
  33. 垂水公正

    垂水政府委員 お答えいたします。  ただいまの数字申告件数で申し上げます。輸出申告件数は五十八年で約五百万件、輸入申告件数は二百二十万件でございます。外国貿易船入港隻数は九万五千隻でございます。それから入国者数、先ほどちょっとおっしゃいましたが、私の手元数字では六百六十三万人というようなことになっております。飛行機につきましては、ちょっと手元数字がございませんので、後で申し上げます。
  34. 沢田広

    沢田委員 あとカスブロの実態について一言聞いて、これで終わりにいたします。  現在のいわゆる申し込み件数営業所数及びその従業員の数、このカスブロ税関職員とのバランス。これは政務次官にお答えをいただきますが、今日カスブロ等営業によって、言うならば代替的な職員に充てられて関税職員が正当な業務につけない状況を生んでいる。そのことがこういう密輸入その他を増発さしていると解釈できるわけでありますが、カスブロの現状を一言聞いて私の質問を終わります。
  35. 垂水公正

    垂水政府委員 お答えいたします。  ただいまの御質問にお答えする前に、先ほどの航空機の入国機数でございますが、同じく五十八年で四万八千機というふうに御理解をいただいたらと思います。  それから次に、ただいま御質問のありましたカスブロでございますけれども、これは通関業者のことを指しておっしゃっておると思いますが、全国で約八百社あると理解しております。業者の数にいたしましてそのようなことになっております。それが全国の港湾において、通関業法にのっとって正常な活動をしている、かように考えております。
  36. 沢田広

    沢田委員 答弁、不十分でありますが、農林省には検疫外務省には同じように安保関係のいわゆる関税、非関税物品の取り扱い、通産省等についても、厚生省も同じで、検疫問題等を聞く予定でありましたけれども、時間の関係で、残念ながら以上をもって終わります。  ただ、ゆうべ十一時半までレクチャーで追い回されまして、十二時ですよ。これは職員も大変だということで、ひとつ労はねぎらってもらいたいと思いますが、我々も随分苦労する方なのでありまして、今後こういうことについてはひとつ十分是正できるように配慮をしてもらわないとかなわない、こういうふうな気もいたしますので、念のため申し添えて、しかし職員の方は御苦労さんであったということに敬意を表して終わりたいと思います。
  37. 瓦力

    瓦委員長 宮地正介君。
  38. 宮地正介

    ○宮地委員 きょうは関税定率法の一部改正案について審議をするわけでございますが、特にこれは自由経済体制を開放するというところに大きな意義があるわけでございます。きょうは七十五分の時間が四十分ということで縮減されましたので、内容的に限りある時間の中で詰めてまいりたいと思いますので、答弁の方も御協力をいただきたい。  三月二十九日の米国の商務省の発表によりますと、対日貿易赤字は二十四億三千二百万ドル、こういうことで、米国全体の収支赤字も百億を突破いたしまして百億九千二百万ドル。恐らくこのままいくと、アメリカの貿易収支、国際収支は年間一千億ドルあるいは一千百億ドルになるのではないか。昨年は六百九十四億ドルの赤字であったわけでございます。特に日本は、昨年におきましても、アメリカの六百九十三億九千万ドルの全体の赤字の中、対日貿易赤字が二百十六億六千五百万ドル、三〇%以上を超えているわけであります。この商務省の発表によりますと、ことしは恐らく対日赤字が三百億ドルぐらいになるのじゃないか。こうした深刻なアメリカの対日貿易における国際収支の実態であります。ドル高が原因ではないか、こういうことも言われておるわけでございますが、この点について、大蔵省としてその対応を今後どのように考えておられるのか、伺いたいと思います。
  39. 垂水公正

    垂水政府委員 ただいま宮地委員からお話のありましたとおり、アメリカの統計によります米国の貿易収支は、一九八三年におきましては六百九十三億ドルということになっております。かつまた対日では二百十七億ドルというような赤字になっておりますが、単に我が国のみならず、対ECあるいは対開発途上国、対カナダに対しましてもアメリカは赤字になっておるわけであります。  この事態に対して一つの報告が出ておりまして、本年二月の米国の大統領経済諮問委員会の年次報告におきましては、最近の米国の貿易赤字拡大の原因としては三つ挙げております。一つがドル高、二つ目が債務累積国への輸出の減、三つ目がアメリカのスピードの速い景気回復、こういう三つが赤字拡大の原因であるというふうに考えているようであります。  我が国といたしまして、この事実について無関心であるわけではありませんが、既に宮地委員御案内のとおり、貿易収支はそもそも二国間で均衡させるという性格のものではありませんので、二国間貿易は自由貿易主義の原理原則に沿って動かされていくことが望ましい、かように考えております。
  40. 宮地正介

    ○宮地委員 こうした対日貿易におけるアメリカの大変な赤字収支の中で、特に先日からリーガン財務長官が日本に参りまして、いわゆる円ドル部会というのが行われてきた。リーガン財務長官も、日本政府については、言葉だけの対応ということで大変怒りを爆発させているようであります。特に今回の交渉について、本当に進展したのかどうか、大変疑問であります。中曽根総理も大場財務官を呼びまして、ロンドン・サミットに向けてこの問題についてはさらに詰めをするようにという指示があったというふうに聞いておりますが、本当にこの問題の進展はどの程度まで進んだのか、伺いたいと思います。
  41. 佐藤光夫

    ○佐藤(光)政府委員 お答え申し上げます。  議員御指摘のとおり、去る二十二日、二十三日の両日、第二回の日米円ドル委員会の作業部会を東京で開催いたしました。  実質的な進展があったのかというお尋ねであったかと思いますが、私ども事務レベルと申しますか、ワーキングパーティーのメンバーといたしましては、かなり議論がかみ合ったなという感じを持っております。  やや具体的に申し上げますと、我が国の金利の自由化の問題あるいはユーロ円市場の拡大の問題に対する双方の考え方というようなことを中心にいたしまして、相当程度深い相互の間の話が行われた、そういう意味では先方も、ミーニングフル、有意義なトークであった、かようなことを申しておるわけであります。引き続きまして第三回の会合等を重ねてまいりまして、さらに実りのある最終的なリポートがつくれますように、日米双方で努力を傾けてまいりたい、かように考えているところでございます。
  42. 宮地正介

    ○宮地委員 特に、金融開放を求める米国のねらいが円ドル相場の適正化、日本の円高にあるのではないか、それとも米金融機関の日本での事業の機会、こういうものを拡大するところにあるのか、いろいろ言われているわけでございます。特に金融開放の問題につきまして、果たして本当にこれによって円相場が実際に上がるとアメリカが考えているのか。かえって資本が流出して下がる可能性も十分あるわけです。その点について、政府として率直にどのようにアメリカ政府に対して物を申しておるのか、この点について伺いたい。
  43. 佐藤光夫

    ○佐藤(光)政府委員 御指摘のとおり、日本の金融資本市場の自由化というのは、短期的に見ますと必ず円高方向に作用するとは言えない、資本の流出を通じてむしろ円安に働く部分もあるということは考えておりますし、そのような態度でアメリカにも対応いたしておるわけであります。ただ、中長期的に長い目で見ますと、円の持つ魅力あるいは日本の金融資本市場の持つ魅力というのが高まっていく。それは中長期的な観点からいいますと、円高要因といいますか、一層円の魅力が増していくということは言えるのではないかなと考えているような次第でございます。
  44. 宮地正介

    ○宮地委員 特に、リーガン財務長官はやはり六月のロンドン・サミットまでの決着ということに大変期待されているようでございますが、日本の金融資本市場の開放にはタイムリミットというものが陰で相当動いている、こう思います。現実には、そうなりますと四月ごろには計画の全体が出てこなければならない、あるいは五月ごろにはいよいよ実行に移していかなければならない、こういったスケジュールが現実問題として浮かび上がってくるわけでございますが、この点についてどのように検討されておるのか、伺いたいと思います。
  45. 佐藤光夫

    ○佐藤(光)政府委員 日米双方の合意によりまして、本年の五月の末までに私ども作業部会の結論を報告書に取りまとめまして、それぞれ大蔵大臣、財務長官に報告をいたす、かような日程になっておりますので、来月の十六、十七日、ワシントンにおきまして第三回の作業部会を開催いたしまして、そこでの主題は、先ほども申しましたようなユーロ円の問題あるいは円の国際化の問題がかなり大きなウエートを占めることになろうかと思いますが、それらを受けまして鋭意双方で努力をして、実りのある結論、報告書を五月の末までにはつくりたい、かようなスケジュールを考えておる次第でございます。
  46. 宮地正介

    ○宮地委員 この問題も、日米間の国際収支の解決問題に非常に大きな役割を果たす一つであろうと私は思いますので、ぜひこの問題についても真剣に、なお責任ある積極的な対応を要求しておきたいと思います。  次に、本法案について具体的に伺ってまいりたい、こう思っております。  今回のこの法案はいわゆる東京ラウンド交渉の経過の中からできてきているわけでございますが、外務省、この東京ラウンド交渉の経過といわゆる新東京ラウンド、こういう問題がいよいよまた再浮上してくる時期にも来ているのではないか、この点について、あわせて所見を伺いたいと思います。
  47. 沼田貞昭

    ○沼田説明員 お答えいたします。  まず、東京ラウンドの経過でございますけれども関税及び非関税面の広範な分野で貿易障害の軽減を図るという目的のもとに、昭和四十八年東京で開催されましたガット閣僚会議で採択いたしました東京宣言によって、正式に交渉が開始されました。  その後種々交渉を続けまして、その間にロンドン・サミットあるいはボン・サミット等でそれぞれ交渉の実質的進展を図っていこうというようなことが合意されたということがございますけれども昭和五十三年末から昭和五十四年初めぐらいにかけて交渉の実質的妥結を見まして、五十四年の末には諸協定が署名され、五十五年の初めにほとんどの協定、政府調達協定、関税評価協定を除き諸協定が発効し、その一年後の五十六年一月一日に政府調達協定及び関税評価協定が発効したわけでございます。  以上が東京ラウンドの経緯でございます。  その後、東京ラウンドで決められた種々の成果、関税引き下げであるとかあるいは非関税面において八つの協定ができたわけでございますけれども、その運用ということに焦点が当てられてきているわけでございます。東京ラウンドの後の国際貿易上の問題といたしまして、東京ラウンドにおいてある程度の進展は見たけれども、まだ引き続き議論を続けていく必要がある分野というものも残っております。それから、東京ラウンドで決めたいろいろなルールを現実に運用してみて、そのルールをさらに改善していく必要があるのじゃないかというような分野も出てきております。  そのような問題点につきまして、おととしの十一月にガット閣僚会議というものが開かれまして、東京ラウンドの後の経過を踏まえて、今後の貿易体制の問題点はどういうものがあるかという議論が行われたわけでございます。五十七年十一月のガット閣僚会議におきまして、大体ことしの末ぐらいまでをめどとしてどのような作業にガットが取り組んでいくべきであるかという作業計画が合意されまして、今その作業計画を実施しておるところでございます。  この間、東京ラウンドの後に、いろいろな国において保護主義的な動きが高まってきているということも現実でございますし、それから特に最近に至りまして、世界経済に一部回復の兆しが見えてきているということもございますので、私ども政府といたしまして、自由貿易体制の一層健全な発展あるいは保護主義の防圧を図ることが世界経済発展のために不可欠であるという認識のもとに、我が国として、今我が国が置かれている国際的地位にふさわしい貢献を行っていくことも必要であろうというような観点から、より一層の貿易の拡大あるいは国際貿易体制の強化ということを目指して、そろそろ新しいラウンドということを考え始めるべきではないかというような問題意識に立ちまして、具体的には昨年十一月、レーガン大統領が日本に見えましたときに、中曽根総理から新ラウンド開始の準備ということをそろそろ考えていくべきではないかということを提唱されたわけでございます。  新ラウンド開始の準備に向けて今後努力していくという場合にも、広く先進国、途上国各国と一緒に進んでいく必要があるわけでございまして、そのためには、これら関係諸国のコンセンサスをなるべくつくっていく必要がございますので、目下のところ種々の非公式な接触あるいは公式の接触等を通じて、その準備促進という目標に向かっての地盤づくりをしていこうという状況でございます。
  48. 宮地正介

    ○宮地委員 今回東京ラウンドの合意の繰り上げ措置といたしまして、昭和五十九年度及び昭和六十年度の両年度におきまして、工業品について東京ラウンド合意に沿った関税引き下げを三年分繰り上げる、原則として東京ラウンド合意にかかわる最終譲許税率まで引き下げる方針。昭和五十九年度においては、主要先進国が未実施のため一年分の繰り上げ措置を実施する、いわゆる主要先進諸国が未実施であるというこの辺のもたついている状況、これはどういうふうに把握されておるのか。  また、既に今外務省がお話しのように、総理の指示を受け、新ラウンドの開始の準備に入っている、こういうふうになっておるわけでございますが、国内業界、この産業界との調整というものも大事であるわけでございまして、こうした国内の産業の体質あるいは経済状況の中における活力、こういうものの調整についてはいかがやりながら進めておるのか、現場の関税局長伺いたいと思います。
  49. 垂水公正

    垂水政府委員 お答えいたします。  まず第一に、東京ラウンドの関税前倒しについて、我が国以外の主要国は未実施であるということはどうなっているのかという御質問でございますが、一言で申し上げますと、こういう東京ラウンドの前倒しは、でき得べくんば保護主義の防圧という目標からすれば、共同行動であることが望ましいわけでございます。そういう観点に立って見ますと、少なくとも他の主要貿易相手国の行動が注意を集めざるを得ないということは当然である。  そこで、まずアメリカでございますけれども、アメリカにおきましては、現在、技術的なことを申し上げますと、行政府においてはこれの引き下げを可能ならしめる授権法というものを用意しているようでございますけれども、他方、米議会は御存じのような状況に現在ございますので、なかなかこれが法案として提出されても、直ちに実現に至るというふうには見られないということが第一点でございます。  それから第二点はECでございますけれども、ECは少なくとも本年に関しては、現在置かれているECの経済情勢からして、外国に対してこれ以上関税障壁を下げるということは極めて難しいという判断をしているわけでございます。さはさりながら、来年については、状況が許せば、この種の共同行動を希望しているというように承知しております。  それから三番目にカナダでございますけれども、カナダにおきましては、これは仄聞するところでございますが、政府と産業界との間でいろいろ話し合いが行われておりますが、国内関係者との調整がついているという段階にはないというふうに申し上げて、現段階では大きく誤りではないだろう、こういうふうに思っております。  それから、新ラウンドとの関係について若干コメントをさしていただきますと、まあ今のような欧州の情勢あるいは開発途上国の現実の経済力、これは先ほどもちょっとお話がありましたとおり、債務累積というような問題を抱えておるわけでございますから、そういうものからいたしますると、なかなか新ラウンドに一気がせいにいくという態勢にはなくて、そういう構想に対しては極めて用心深い姿勢をとっていると思います。  そこで、私の感触を申し上げれば、第一点は、日本としては新ラウンドの旗をいわばレーガン大統領来日の機会に上げたわけでございますから、その旗はそのまま維持していかねばならぬと思います。  第二に、さはさりながら、今過早に具体的な新ラウンドの日程を定めていくというのは、適切と言いがたい問題が多いと思うのでございます。  そこで、最終的には先ほども外務省から御答弁がありましたとおり、やはり諸外国との共同行動への機運の醸成というものを進めるということをやる一方で、国内の産業界に対する影響等についての十分な検討を行ってまいる必要がある、かように思っておるわけであります。
  50. 宮地正介

    ○宮地委員 特に個別品目関税率改正の中におきまして、時間がありましたら鶏肉の問題あるいはサケ・マス、バナナ、再生木材、黄麻織物等、半導体、こうしたものについて日本の業界と、また今回の関税率引き下げの実態、状況についてお伺いをしたかったわけでございますが、この中で特に私が、まず国内の業界の中でこの関税率引き下げの問題で大変に厳しいのではないかな、こういう感じがしておるのが再生木材、また逆に日本の出超、これがかえって先ほどの貿易摩擦などに非常に拍車をかけるのではないかな、こういう感じがしているのが半導体であります。  この再生木材と半導体について、今回の関税率引き下げがまず日本国内の業界にどういう影響を与えるのか、農林水産省と通産省に伺いたいと思います。
  51. 三澤毅

    ○三澤説明員 お答えいたします。  パーチクルボードにつきましては、先生指摘のとおり、今まで合板製造業等の工場残材あるいは三十年代からだんだんふえてきております間伐材等、こういったものを原材料とすることから、今後これは私どもとしてもその需要先として大変重視していくべき産業、こう思っておるわけでございます。  しかしながら、御案内のとおり、住宅需要の低迷等に伴いまして需要は低迷しておりまして、業界は非常に困難な状況になっておりまして、一層の経営の合理化あるいは需要の拡大策、そういうものを強いられている状況になっております。  そうしたような状況の中で、今回米国からの木材製品に対する関税引き下げ要請にも対応し、しかも我が国を取り巻く経済社会情勢を総合的に勘案いたしまして、とり得る最大限の措置といたしまして、パーチクルボードについても一定率まで関税引き下げること、こういうようにしたわけでございます。  そこで、私ども農林水産省、林野庁といたしましては、今後とも木材産業拠点整備緊急対策事業等木材関連の諸施策、こういったものの充実を図りながら、木材産業の健全な発展に努めることとしておりますけれども、パーチクルボード製造業につきましても、木材資源の有効利用促進、こういった観点から、その振興を図ってまいりたいと考えておるところでございます。
  52. 島弘志

    ○島説明員 お答えを申し上げます。  半導体、IC、一言で言いますけれども、いろいろ種類があるわけでございまして、日本は比較的量産の汎用品が得意だということでございますが、アメリカの方はマイクロプロセッサーといった非常に高度な技術志向製品が得意でございます。つまり、一方の国が他方の国を全分野にわたって圧倒するといったような状況にはないわけでございます。にもかかわらず、一昨年の暮れあたりからいわゆる日米半導体問題というのが急浮上してまいりまして、この問題を解決するために日米政府間でハイテク・ワーキンググループというのを設置いたしまして、そこでいろいろ議論を重ねてまいりました。  この日米半導体問題が浮上いたしました背景は、先ほども先生指摘がございましたように、八一年ぐらいまでは日米間での半導体輸出入というのはバランスをしておったわけでございますけれども、八二年からはっきりと日本側の出超傾向というのが目立ってまいったのが第一点でございます。  それから第二点は、そういう中で特に日本が得意だと申し上げた分野、その分野でアメリカの市場の大きな部分を確保したといったようなことがございまして、特にこの分野が比較ウエートも高いし、伸び率も高いというようなことでございまして、先方の危機感がいろいろ高まってまいった。こういった二つの点を背景に、日米半導体問題というのが浮上したわけでございます。  しかしながら、私ども日米間でいろいろ話し合いをいたしまして、貿易を抑制する、縮小均衡に持ち込むということではなくて、相互に資本、貿易、投資、技術といった各面での交流をより一層今後とも深め合っていこうではないか、こういうラインで提言を取りまとめたところでございまして、こういった文脈での関税相互撤廃ということでございますものですから、そのマイナスの影響を心配するという感覚では全くございませんで、むしろこれを関係業界も含めて非常にポジティブに評価をしているということでございます。  ちなみに申し上げれば、日米ハイテク・ワーキンググループでこの議論はいろいろやっておりましたけれども、そこには日米から業界代表も参画をしておりまして、いわば官民合同でこういう提言を取りまとめたということに相なっております。
  53. 宮地正介

    ○宮地委員 今回改正される四十七品目のうち、半導体については日米相互同時撤廃、これは非常に市場開放としてはベターな方法であろう。ただ、半導体のいわゆる関税撤廃対象分の輸出入の一九八三年のデータによりますと、輸出に対しては約六千四百六十一億五千四百万円、輸入はそれに対して一千八百八十億七千九百万円、これは差し引きますと、単純に計算いたしましても四千五百八十一億の出超になっておるわけです。こういうことは我々としては、日本の国内の半導体の産業が非常に力をつけてきたということで、大変好感が持てるわけでございますが、やはり先ほど申し上げたような日米の国際収支の状況は大変厳しいわけでございまして、その中の中核がこの半導体である。これについても今後やはり適当な、アメリカの国内をにらみながら、日米相互の発展というものを考え、調和のとれた共存共栄の形でいくべきである、こう思いますが、通産省としてその点どのように今後対応していこうとされているのか、簡単に伺いたいと思うのです。
  54. 島弘志

    ○島説明員 御指摘のような出超傾向を踏まえて問題が起こってきたわけでございますけれども、ただ一つ注意をしなければいかぬと思いますのは、アメリカの有力メーカーが日本に続々と生産拠点をつくって活発な活動をしておられます。この点だけをとりますと、場合によっては対日輸出の減、それから場合によっては企業は対米輸出もしておりますから、その分だけ対米輸出がふえるといったようなことがあるわけでございまして、今後交流が非常に活発化いたしますと、貿易のバランスあるいはインバランスというものが何を物語るかということは、なかなか難しいことになってくるわけではございますけれども、いずれにしろ先ほどのようなことを背景に問題が起こってまいりまして、一応その提言を取りまとめたわけでございます。  私どもとしては、この提言を誠実に実施をいたしまして、国内市場をさらに一層開放するといった点も含め、誠実に実施をしてまいりたい、かように考えております。
  55. 宮地正介

    ○宮地委員 先ほどの再生木材についてでございますが、農林水産省からも説明がありましたように、これは非常に将来的に影響の大きい品目であろう。特に我々の身近な家具とか建築用、家電製品、こういうところに影響するものでございまして、聞くところによりますと、今回の一三・一%から一二%、これが限界である、こういうように業界は相当悲鳴を上げておる。これについてもやはり今後実態を正確に把握し、また大蔵省としてもそうした業界の内容もよく見て、そして大局的見地に立っての関税定率の引き下げをやっていかなければいかぬ、こう思っております。  私は若干そういう点で心配をしておるわけでございますが、関税局長どのように今後対応されるか、伺いたいと思います。
  56. 垂水公正

    垂水政府委員 お答えいたします。  先ほど来各省から申し上げておりますとおり、この四十七品目の対象の選定あるいはその場合の引き下げ引き下げ幅、それにつきましては、宮地委員指摘のように、慎重な検討を加えた上に行ったつもりでございます。  したがいまして、やや具体的に申し上げますと、例えば乳製品であるとかあるいは皮製品であるとかというような外からの要望の強いものがございましたが、そういうものは国内事情に着目して除外しております。また、先ほど御指摘のありました半導体、ガスタービンのように、競争力の十分整ってきたというものについては無税という行き方をしております。また、再生木材については、農水省の計画、林野庁の計画に配慮をしたところで、東京ラウンド最終までという区分けをしておるわけで、今後とも対象品目の選定あるいは引き下げ幅の決定に当たっては、委員おっしゃるとおり、十二分に各省と相談をしてまいりたい、かように考えております。
  57. 宮地正介

    ○宮地委員 この関税定率法のこうした引き下げに伴い、特に現場の税関職員の問題について、私、質問をさしていただきたいと思います。  税関職員の皆さんも大変御苦労が多いわけでございます。特に最近は、いわゆる覚せい剤国内流入、こういうものに対しての取り締まり、また水際で押さえなければならない。税関職員は、非常に大変な御苦労が多いと思っております。そういう中で、既に御存じだと思いますが、こうした覚せい剤乱用時代というか、そうした大変な時代に対応して、税関職員も名古屋港と大阪港で各一人ずつ殉職をされておるのです。ある方は酸欠でお亡くなりになっておる。ある方は、果たして捜査中に自分でおっこったのかあるいは落とされたのか、大変残念ながら不明のようでございますが、ともかく調査のときにお亡くなりになって、殉職になっておる。これは私は大変お気の毒であるし、また、こうした税関職員の皆さんの御苦労に対して、やはり我々国会においてももっともっと積極的に対応してあげるべきである。やはりこうした陰の苦労の方々があって関税定率法の効果的運用もあるわけでございますし、私はそうした現場の方に配慮いたしまして、まず人事院伺いたいのでございますが、人事院は、先日、国税職員についても、国家公務員の見直しの中で積極的に対応していく、こういうありがたい御答弁をいただきましたが、私はこうした税関職員についてもぜひ積極的な見直しをしてあげていただきたい。  また、関税局長は、あなたの部下でもございますが、そういう方々に対しても、もっともっと積極的に処遇の改善についても御努力をしていくべきであろう、こう思いますが、人事院の、そして関税局長の答弁をいただきたいと思います。
  58. 藤野典三

    藤野説明員 お答えいたします。  税関職員につきましては、現在行政職を適用しておりますが、行政職を適用しております他の事務系職員とは異なる面が多々あることは、人事院といたしましても十分承知をしておりますが、税関職員の中には、仕事の面でいろいろ差がございます。したがって、現在これを一律的に取り扱うことについてはいろいろ問題があるということで、いわゆる専門性ということに着目いたしまして、現在給与格付等について、いわゆる専門官職としてかなり有利な格付を行っておるところでございますが、さらに特殊な業務に携わる方につきましては、いろいろの手当等においていわゆる実体的、実質的なきめの細かい配慮を行っているところでございます。  さらに、先生お尋ねのように、これら税関職員の処遇につきましては、給与制度の見直しに当たりましても、関係者の御意見、御要望等承りながら、この点につきましては、そういう特殊性専門性につきましては十分考慮いたしまして、税関職員をどうすることが最も適正かつ最善な方法であるか、そういうことにつきまして検討いたしたいと考えております。
  59. 垂水公正

    垂水政府委員 お答えいたします。  申し上げるまでもなく、税関の業務に対する需要というものは、先ほど来の質疑の中でも出てまいりましたが、ますます増大をしておるということは紛れのない事実でございます。そういう中で税関職員は、私の口から申し上げるのは恐縮でございますが、非常にまじめに、真剣にその職務に当たっておると思います。かつまた先ほど、最近起こりました大阪、名古屋の事故について温かいお言葉をいただいたことに関しましては、私からもお礼を申し上げるわけでございますが、そういう事故が起こることは何としても未然に防がなければいけないと思っております。そういう意味におきまして、職務の遂行に当たっての安全対策ということについては、従来にも増して心配りをする必要があるというふうに考えておりますし、そのための指導を行っております。  と同時に、まさに御質問のありました処遇の改善につきましては、私どもとしましてはできる範囲でということでございますが、まず第一に上位の等級別定数の確保について努力をする。それからまた特殊な勤務体制に伴う諸手当についても改善を図る、そういうことで在来からも努力をしてまいっております。今後とも、温かい御理解あるお言葉をちょうだいしましたので、さらに我々としても十分この点について留意をしてまいりたい、かように思っております。
  60. 宮地正介

    ○宮地委員 最後に、今関税局長は前向きに努力をしていきたい——特に仕事の質と量、そういう面で非常に大きく増大をしていく中で、税関職員昭和四十七年が七千九百六十人おったわけでございますが、昭和五十八年に七千九百四十三人ということで、逆にマイナス十七なんですね。これは私、中身を精査しておりませんが、やはり専門職のそういう方々についても相当厳しい状況に置かれているのではないか。そういう点で、そうした仕事の面というものの増大、質的な増大、また覚せい剤乱用のこうした大変な時代に今なりつつある、こういうことを考えたときには、やはり勇気を持ってこの税関職員についてはきちっと対応し、定数の問題、必要な人員増加の問題などについても関税局長として対応していくべきであろう。この定員の問題についてはどのようにお考えになっておるか、伺いたいと思います。
  61. 垂水公正

    垂水政府委員 ただいま御質問のありました定員の問題でございますけれども、十年間で見ると定員はほとんどふえておらない、むしろ微減であるということでございます。しかし、そういうのは厳しい行政の環境の中での結果であると受けとめておるわけでございます。すなわち御承知のとおり、国家公務員の定員事情というのは極めて厳しいわけでございますから、それを大きく覆すようなことはできないわけでございます。したがいまして、今後とも税関に課された使命というものを十分に果たすためには、一方で事務の効率化、業務の合理化というものをやっていかなければいけないと思っております。  他方におきまして、まさしく御指摘のありましたとおり、要員の確保についてもやってまいる必要があると思っております。関係方面に十分働きかけていきたい、かように思っております。
  62. 宮地正介

    ○宮地委員 時間が参りましたのでこれで終わりますが、当初七十五分が四十分ということになりまして、水産庁を初め関係の皆さんには御質問できないで残念でございましたが、その点は御留意、御承知おきいただきたいと思います。  ありがとうございました。
  63. 瓦力

    瓦委員長 安倍基雄君。
  64. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 私も五十分のところ三十分でございますので、かいつまんで御質問したいと思います。  私自身もいろいろ貿易の自由化の必要性については十分認識しているわけでございますけれども関税といいますものは一つの企業環境なわけでございます。一定の関税のもとにしばらくの間みんながそれぞれ要するに採算を考えて企業を運営してきたというわけでございますから、関税率が下がるということはそれだけ企業環境ががらっと変わるわけでございます。その意味合いにおきまして今回の東京ラウンドの繰り上げ実施、この場合には最終的にはこの辺に行くということはわかっておるわけでございますから、それが促進されるというわけでございましょうけれども、いずれにいたしましても企業がそれなりに合理化をしていこうという場合には、それをタイミングを早めるという意味があるわけでございますし、また個別品目引き下げにつきましても、今までは関税はこのぐらいだったというのがそれだけ下がる、大きな変化なわけでございますから、そういったことについて本当に通産省あるいは農林省の方々が、今回の繰り上げ実施は農林水産物は含まれておりませんけれども、十分留意されているのかどうかということが第一点。  第二点は、本当にこれが海外において評価されておるのかということについて外務省の御意見を承りたいと思います。
  65. 雨貝二郎

    雨貝説明員 先生の御指摘のとおり、関税の重要な役割は産業を保護するという点にあることは、私ども十分理解しているところでございます。特に通産省としましては、関税制度は通商産業政策上も大変重要な役割を果たしておりますので、その基本的なあり方については、もちろん個々の国内産業の実情を十分反映し、また国際化している時代でもございますので、国際分業といった観点をも踏まえた、そういうものでなければならないというふうに考えておるわけでございます。  こうした基本的な考え方を持って関税問題に取り組んでおるわけでございますが、他方、特に我が国は自由貿易あるいは貿易立国ということが基本的な問題になっておりますので、貿易の拡大均衡による世界経済の発展を図るということから、これまで市場開放に努めてきたわけでございますが、その一環として諸外国の関心を踏まえた関税引き下げといったことも実施してきたわけでございます。この検討に当たりましては、先ほど申し上げました関税の基本的なあり方あるいは関税問題についての当省の基本的な取り組み方といったものを踏まえて、個別の産業事情に十分配慮して、特別の影響がその引き下げによって生ずることがなきよう、対象品目の選定あるいは引き下げ幅といった面で、産業事情の許す範囲内で対応してきた、こんな気持ちでございます。
  66. 重田勉

    ○重田説明員 お答えいたします。  農林水産物の関税制度の運用につきましては、国内農業の特殊性に十分配慮した形で行われることが基本的に重要であるというふうに認識しております。したがいまして、農産物の関税につきましては、通常の定率関税あるいは定額関税のほかに、産品の特性に応じまして関税割り当てあるいは季節関税、または価格安定制度と連動した形での差額関税制度というようなことを十分に活用いたしまして、適切な運用を図っておるところでございます。  市場開放措置の一環としてとってまいりました関税引き下げにおきましても、国内農業に不測の悪影響を及ぼさないよう十分配慮してきたところでございまして、今後の関税制度の運用につきましても、国内農業の健全な発展と調和のとれた形で進めていくということに十分配慮してまいりたいと考えております。
  67. 沼田貞昭

    ○沼田説明員 お答えいたします。  各国の評価についてでございますけれども、今までの答弁にもございますように、私ども保護主義の圧力の強まっている中で自由貿易体制を擁護するという見地から、今まで何度かにわたって自主的な関税引き下げ措置を講じてきております。五十九年度の関税改正におきましても、先生指摘の個別品目関税引き下げ、それから東京ラウンドの関税引き下げの前倒し、あるいは特恵シーリング枠の拡大等いろいろな措置を市場開放措置の一環としてとっているわけでございますが、これに対する各国の反応は、我が国が前向きな努力をしているものとして一応の評価をしているということであると思います。各国の期待というものはいろいろ大きいものがございますので、そのあらゆる要求にこたえるということは、我が国国内の事情もあって困難なわけでございますけれども、保護貿易主義を抑えて自由貿易体制を維持強化していくという方向に向かって、我が国がある意味で先鞭をつけていくという意味で、できる限りの前向きの対応をしているものとして諸外国が評価をしていると同時に、より一層このような面での努力を期待するという気持ちも持っているということであると思います。
  68. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 どうも関税の場合に、ほかの国から強く言われるとその分を引っ込めるというような動きが非常に多いのではないか。基本的には、関税政策というのは実は産業政策でもあるわけでございます。  かつて私は昭和四十三年ぐらいに、関税ではございませんけれども、外資課におりました。そのころ自動車産業の自由化の問題が起こってきて、外務省は一日も早く自由化せいという話でございましたし、通産の方はあと五年ぐらい待ってくれ、そうすればどうにか力がつくんだ、こういうような争いがございました。大蔵はむしろ基本的には通産の肩を持って、若干自由化がおくれた時期があると思います。私としては、最終的には自動車産業の進展に非常によかった、現在の自動車産業の基礎はその時期にできたと考えております。  いずれにいたしましても、どの産業を伸ばし、どの産業は仕方がないのかという大きな構想がなくして、単に個々の圧力に応じてそれを下げていくということは、私は非常におかしいのではないかと思うのでございまして、例えば農業の場合に自給率をどう考えるのか、ほかの産業について一体何を守らなければいかぬ、何を伸ばさなければいかぬ、これは仕方がないという基本的な構想がどうもないのではないかという気がするわけでございますが、この点について通産省のお答えをお願いしたいと思います。
  69. 細川恒

    ○細川説明員 先生の御質問でございますが、私ども通産省では、例えば八〇年代の通産政策ビジョンというのを持っております。その中で、国民のニーズをこの十年という長期を見渡しまして充足する基準があるかどうか、あるいは省エネルギー基準とか省資源基準といった経済の流れに合って産業が動くことができるかどうかというような基準を持っておりますが、これは産業が進む方向を判断するに際してということの一般的に考慮すべきものでございまして、基本的には市場メカニズムによって決められるものというふうに考えております。
  70. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 これと関連いたしまして、現在の農産物交渉が非常にデッドロックになっておりますけれども、これについての打開策といいますか、農林省のお答えをお願いしたいと思います。
  71. 上野博史

    ○上野説明員 お答え申し上げます。  東京ラウンドで取り決められました牛肉、かんきつについての合意数量の期限が今月をもって切れるわけでございまして、鋭意新たな取り決めを達成すべく努力を合いたしているわけでございます。これにつきましては、農林水産委員会の方で、これまで私どもの話し合いを取り進める方針を決議あるいは申し入れというような形でお示しをいただいておりまして、その方針にのっとって今鋭意進めているところでございます。趣旨は、農業者が犠牲にならないように、我が国農業の発展に差し支えのないような形で話し合いを進めるようにという内容のものでございます。
  72. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 いわば自由化の問題は、ある意味からいうと強い産業がどんどん海外に出ていく、その結果黒字がふえることが、間接的に弱い産業に対して早く関税率を下げてこいという形になるわけでございまして、かつて石油にどんどんと日本が移行した、その際に石炭の閉山を考えている、それについては特別の措置を考えるというようなことをしたわけでございますけれども、この自由化の問題は、強い産業が間接的に弱い産業を倒していく。これは自由経済の原則かもしれませんけれども、それが急激に行われますと、どうしても弱い産業は今までの環境が変わってくるわけでございますから、これは非常に大きな問題で、そう簡単にいくかどうか問題がございますけれども、ある程度強い産業の出方を秩序的にして、また弱い産業を転換するような形での助成と申しますか指導、そういうことが必要じゃないかと思いますけれども、この点について通産省どうお考えですか。
  73. 細川恒

    ○細川説明員 弱い産業に対する対策でございますが、例えば石油危機を契機といたします原材料あるいはエネルギーコストの上昇といったような構造的かつ相当急激な変化というものが一部産業を襲ったわけでございまして、それにつきましては、昨年特定産業構造改善臨時措置法というものを成立させていただきまして、それを中心として現在構造改善対策を推進をいたしてきておるわけでございます。今後も産業の抱える問題に対応いたしまして、問題に応じて適切な対策を講じたいというふうに思っております。  なお、先生指摘の急伸産業から衰退産業へ何らかの措置を講じたらどうかという御指摘かと思いますが、それにつきましては、例えば原因者負担といったことがあり得るかどうか、産業政策上の基本問題でございますので、そういうふうな問題を含めて極めて慎重な判断が必要であろうというふうに考えております。
  74. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 この関税引き下げということ、これは繰り返すようでございますけれども、企業環境の変化でございますから、結局、個人個人あるいは企業企業の自主努力を超える話でございます。その意味合いにおいて私は言っておるのでございまして、エネルギーのような問題の構造改善と若干意味が違うと私は考えておりますけれども、これはひとつ今後の検討課題としていただきたいと思うのでございます。  時間がございませんから、その次に私は、実はいろいろ繊維産業なんかを回っていきますと、特恵関税はそろそろ見直してもいいのではないか、本当に今まで華やかであった繊維産業がだんだんと追い上げられてくる、発展途上国には相当力もついてきている、そろそろ特恵関税を見直す時期ではないかという意見もございますけれども、これについてどうお考えでございますか。
  75. 垂水公正

    垂水政府委員 お答えいたします。  特恵関税は、その創設の趣旨からいたしまして、安倍委員の言われたとおり、開発途上国が余り競争力がないという時代に、その競争力をいわば補完をするという考え方のもとに設けられた面があることは否めないと思います。  我が国の場合は、四十六年八月にこの特恵関税制度を創設いたしまして以来、今日までその制度を運営してまいっておるわけでございますが、この創設ないしはその後における改正の各プロセスにおいて、やはり外国の事情もさることながら、御指摘国内産業事情については常に配意をしてきておるわけでございまして、国内的にセンシティブな状況にある産業につきましては、例えば特恵適用限度額の、これを俗にシーリングと呼んでおりますけれども、その伸び率を抑制するとか、あるいはシーリングの枠の管理についてしかるべき配慮を加える、つまり管理を強化するとか、さらに申し上げれば、国内産業に重大な支障があるというおそれが見られるものについては、特恵関税制度から適用例外にするというようなことを行ってきたわけでございます。  今後とも、特恵関税制度の運用に当たりましては、この輸入の動向を見きわめながら、国内産業に不測の影響が及ばないように十二分に配意してまいるつもりでございます。
  76. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 さっき宮地委員からもお話がございましたけれども、私も個別案件として例の合板とかあるいは紙とか、非常に心配しております。こういったことにつきまして、特に産業政策を管掌する通産省は、今後とも、一体この産業は大丈夫なのかどうかということを本当によく見きわめていただきたい、そう考えております。これは既に質問がございましたから繰り返しませんが、こういった産業政策、私はこの特恵関税の見直しの問題につきましても、政府の方はどんどんと自由化ということで下げていくけれども、意外と方々で苦しんでいる企業があるということを重々御認識願いたいと思うのでございます。  次に、ちょっと話題を変えまして、関税もさることながら、やはり円高、円安が業者にとっては非常に大きな問題である。最近、アメリカの基礎収支が大分悪くなってきておる、円高になるのじゃないかというような話もございますが、それについての見通しと、こういった関税引き下げがダブルパンチになるのじゃないかという話につきましてはどうでございますか。
  77. 酒井健三

    ○酒井政府委員 私の方から為替の先行きの見通しにつきまして御説明申し上げたいと思います。  御承知おきのように、ことしの二月の末ごろからドイツ・マルクがドルに対してかなり強くなってきた。そういうようなことから、日本円とドイツ・マルクとの間で割安感というのが出まして、今月の初めから円に対する水準訂正ということで、円もドルに対しかなり上伸をいたしまして、本日は大体二百二十四円程度で推移いたしているわけでございます。  為替相場の先行きにつきましては、今日変動相場制でございまして、為替相場は相対的なバランスというものがそこへ出てくるかと思います。日本の状況だけでなく、アメリカの状況、そしてまたドルとヨーロッパ通貨との関係、そういうものが複雑に絡み合って動いているわけでございます。そしてまたこの為替相場は、御承知おきのように、必ずしも経済的な要因だけではなく、政治的あるいは軍事的ないろいろ要因で変動いたすものでございます。したがいまして、なかなか私ども円ドルレートの先行きにつきまして明確なことを申し上げることはできかねるわけでございますが、基本的には、御承知のように、日本の基礎的条件と申しますかファンダメンタルズは非常に良好でございますし、他方アメリカの方では、大きな財政赤字とか大きな国際収支の赤字というようなことでファンダメンタルズがよくないわけでございます。そういうものを反映いたしまして、じわじわと円がドルに対しては強くなっていくというようなことになりましても、何ら不思議はないというふうに私どもは思っております。
  78. 垂水公正

    垂水政府委員 ただいまの円高と関税引き下げがダブルパンチではないか、その結果ダブルパンチとして国内企業が被害を受けることはないか、大丈夫かという御趣旨の御質問であろうと思います。  御案内のとおり、関税は、変動為替相場の制度のもとにおきましても、為替変動に伴って絶えず上げたり下げたりというような性格のものとは考えておりませんし、そのような制度でもないわけであります。また、既に御高承のとおり、円高と関税引き下げというのは確かに輸入促進効果を持つものではありますけれども、同時に、それが直ちに輸入の増大を常にもたらすということでないことも、従来の経験がこれを示していると思っております。  五十九年度の関税改正におきまして、既に御高承のとおり、調和ある対外関係の形成というものの必要性にかんがみまして、先ほど来質疑の過程で出ておる関税引き下げを今御提案申し上げて、おるわけでございますけれども、先ほど宮地委員との質疑の中で、対象品目の選定あるいは引き下げ幅については、国内産業事情を十二分に勘案して、関係各省と共同して精査した上で決めたものでございますと申し上げたとおりでございまして、そういう意味においては御心配のようなことはないのではないか、かように考えております。     〔委員長退席、中西(啓)委員長代理着席〕
  79. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 これは既に各要員からお話があったことでございますけれども税関職員の問題でございます。  私自身も実は門司の税関で一年ばかり働いたことがございます。現実問題といたしまして、税関職員は、いわば非常に危険度が高い仕事に従事する者が多い官職でございます。また、ほかの部におきましても、いろいろ時間的に迫られて、本当にやらなくちゃいけないものが随分ある。特に現在、社会におきまして非行が問題となり、いろいろ麻薬の問題が随分大きくなってきているという状況におきましては、水際作戦というのが非常に重要になりつつある。いろいろなことを含めまして、私は税関職員の待遇改善あるいは定員についての考慮ということはどうしても必要じゃないかと思いますけれども、この点につきまして大蔵省の御意見をお聞きしたいと思います。
  80. 垂水公正

    垂水政府委員 ただいまの安倍委員の御指摘のように、税関職員の職場というのは大変複雑化して困難性を増してきておるということは事実でございます。かつ、国際物流というものはスピードを一層要求されるということも、これまた税関に対する外部からの強い要請であるわけであります。したがいまして、そういう環境の中で業務を正確に、真剣に遂行していく職員の処遇が重要なことは申し上げるまでもありません。  先ほど来お話の出ておりますように、この税関職員の処遇改善のためには、私どもとしては従来から上位の等級別定数の確保、あるいはもろもろの、何といいますか、職務の性格、業務の特性に見合った諸手当の拡充などをやっていく必要がある、こういうふうに考えて、従来から努力してきでおるわけでございます。  先ほど人事院の御当局の方から、税務職のような新税関職俸給表をつくるということについては、いろいろ技術的に問題があるというような御趣旨の御感触がありましたけれども、それはそれとして、私どもとしては、従来の努力をさらに積み上げて処遇の改善確保を図ってまいりたい、かように考えております。
  81. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 もっと聞きたいことが多いのでございますけれども審議促進の見地から、ここで私の質問を終わります。
  82. 中西啓介

    ○中西(啓)委員長代理 正森成二君。
  83. 正森成二

    ○正森委員 関税定率法関係について質問いたします。  これまで我が国は、東京ラウンド協定後だけでも、五十五年度の早期実施措置、五十七年度の一律二年分繰り上げ実施措置を行い、今度の繰り上げ措置で実に三回目の前倒しを行うことになると思います。個別の品目引き下げは別といたしまして、東京ラウンド合意の一律前倒しを行っている主要先進国は我が国以外にもあるかどうか、お答えを願います。
  84. 垂水公正

    垂水政府委員 お答えいたします。  主要な先進国におきましては、東京ラウンドの合意のとおり関税引き下げをやっております。したがいまして、前倒しはやっておりません。
  85. 正森成二

    ○正森委員 五十九年度は、主要先進諸国が未実施のため一年分の繰り上げ措置を実施して、六十年度における具体的措置は、主要先進諸国における東京ラウンド合意の繰り上げ措置の実施状況を勘案して、昭和六十年度改正において決定するとしていますが、これまでの政府の姿勢から見まして、仮に主要先進諸国が六十年度になっても実施しない場合でも、いろいろの理屈をつけてまた単独で前倒しを行う可能性がございますが、そういうことはないというように言うことができるかどうか、お伺いしたいと思います。  アメリカはことしじゅうに前倒しを行う意思を表明しておりますが、これは極めて不確かであり、EC諸国も、他の加盟国が共同歩調をとるという条件つきで六十年一月から一年分繰り上げを実施する、こういうように報道されて、いずれも不確かでありますが、我が国の今後の対応について伺いたいと思います。
  86. 垂水公正

    垂水政府委員 六十年度における関税改正のあり方は、まさしく今後の検討課題でございます。その中で、御質問の、東京ラウンドの合意にのっとった関税引き下げを繰り上げるかどうかということもその一環でございます。したがいまして、御質問の過程でありましたとおり、私どもは現時点では諸外国、特に主要先進国の動向を注目しておるというのが実情でございます。  なお、現在までのところ、それらのパートナーの動きはおおむね先生の御指摘のとおりではないか、かように考えております。
  87. 正森成二

    ○正森委員 我が国の場合、関税について見受けたところ、非常に一方的な譲歩が多いというように思われるのですね。それで、貿易摩擦との関係もございまして、外国、特に米国からの要求あるいは圧力と言ってもいいかと思いますが、そういうものが非常に強いということなんですが、例えば、外務省顧問の牛場信彦氏は、「身勝手な米の主張」ということで新聞等にいろいろ意見を発表しているのですね。「米国の貿易赤字は、日本のせいにするが、」「米国自身の責任の方が非常に大きい」ということを牛場氏自身が言っているようであります。時間の関係でその一部を申し上げますと、「円安が悪い、と米側は言うが、欧州通貨の方がはるかに安くなっている。つまり、これは米国が高金利政策でドル高にしているだけで、円安問題などこの世に存在せず、あるのはドル高問題だけだ」というような表現をしておられます。あるいはまた、「米国の貿易赤字は、日本のせいにするが、これまで出超だった対欧州貿易が、今年は入超に転じたり、日本以外のアジア諸国やカナダからの輸入を自ら増大させ、他方で中南米への米国からの輸出が減ってしまったなど、米国自身の責任の方が非常に大きい」というように言っておられるようであります。あるいは、御承知のことでございますが、アメリカの大統領経済諮問委員会、フェルドシュタインという人が委員長ですか、その報告などを見ますと、ある程度までは両国が貿易不均衡になるのは当然であるとか、要は、二国間で貿易収支を均衡させようと考えることは不必要だし、望ましくもないとか、あるいは、牛肉、オレンジ問題は日本の貿易黒字の主因でないとかいうようなことが述べられておるのですね。  時間があればもう少し引用いたしますが、こういうような主張から見ますと、我が国が一方的に譲歩するというのは理論的には非常に問題があるのじゃないですか。
  88. 垂水公正

    垂水政府委員 お答えいたします。  確かに、アメリカの貿易収支というものは大幅な赤字に悩んでおるわけでございますが、その原因の中に、アメリカ自身の理由によると思われる部分がそれはそれなりにあると思います。現に、アメリカの大統領の経済諮問委員会、先ほど委員から御指摘のありましたその年次報告の中でも、その原因の第一はドル高である、第二は債務累積国への輸出の減である、第三は米国の速やかな景気回復による、そういう三つを挙げておるわけで、その真ん中の、第二番目の点を除けば、二つはそれぞれアメリカの理由に基づくものというふうに解することはできると思います。  しかしながら、そういう見方は見方として成立するわけでありますけれども我が国は御案内のとおり貿易立国でございますし、ここで第一に、やはり国際的に見て長年の景気停滞過程の中で保護主義的な傾向が広がりつつあるということが一つと、それから第二番目は、日本はその間にあって大幅な黒字を貿易収支で出している。三つ目は、しかしてアメリカのあるいはECの主要パートナーの産業の中には、日本の市場に対して接近が容易でない、もう少し市場を開放してほしいという要望が行われていること、これまた否定できない事実でございます。したがいまして、我が国といたしましては調和ある国際関係、これは私どもとして無視できない重要な政策課題だと思っておるわけでございまして、そういう政策課題にこたえていくためには、我が国の自主的な判断でこれからの関税のあり方を決めていくというのもこれまた当然のことではないか、こういうふうに私は考えております。
  89. 正森成二

    ○正森委員 今垂水さんはアメリカの大統領経済諮問委員会が三つの点を挙げている、こういうように言われまして、そのうちの一と三はアメリカの責任だけれども、二の点についてはそうではないという発言をされました。しかし、発展途上国の債務累積の問題は、これまたいろいろ考えれば、アメリカの高金利で途上国の利子支払いが非常にふえておるという問題があるのは、多くの人が全部指摘しているところなんですね。そうすると、三つの点全部について米国自身の責任を否定することができないということになるのじゃないですか。私が今指摘した点について、幸い国金局長がおられるようですけれども、御意見を承っておきましょうか。
  90. 酒井健三

    ○酒井政府委員 お答え申し上げます。  今日、開発途上国が累積債務問題苦しんでおりまして、恐らく今日約七千億ドルとか八千億ドルぐらいの規模の債務を抱えているということで、大変困難な環境にあることは委員指摘のとおりでございます。  そこで、開発途上国も、経済を再建するために、国内経済政策をディシプリンのあるものにするとともに、また国際収支の面につきましても、IMF等のアドバイスに基づきまして、できるだけ輸入を減らせるものは減らす、輸出も伸ばせるようなものは伸ばす。アメリカの景気回復が一面ではそういうような累積債務国の輸出の増大の方にいい影響を与えているという面はあろうかと思います。しかし、ファイナンスの問題もございまして、なかなか思うように輸入できないような状況にあることも事実でございまして、特に累積債務国がラテンアメリカの諸国に多いというようなこともあって、アメリカのラテンアメリカへの輸出がかなり減少するような傾向にある。それがアメリカに影響するということも否めないかと思いますが、しかし、アメリカの金利、債務のうちフローティングで金利の動きによりましてそのときの利払いがふえるというような金の借り方もかなりいたしておりますので、そういうことによってアメリカの金利が上がれば、開発途上国の債務の金利の支払いというものの負担も大きくなるということは委員指摘のとおりだと思います。
  91. 正森成二

    ○正森委員 アメリカは経常収支が赤字だということで我が国にいろいろ圧力を加えてくるわけですが、統計の数字に誤差があって不突合と言われているもので、OECDなんかはそれを非常に重視しているという報道がされております。あるいはアメリカの商務省の統計でも、一九八二年度で誤差脱漏が四百十四億ドルあると言われておりまして、それについて、例えばアメリカのモルガン・ギャランティー・トラストというのは、このうち約半分が経常収支、残りは資本収支に計上されるべき黒字である、したがって、八二年の米国の経常収支は黒字であったというように言っておるのですね。  そういう点を見ますと、これが赤字であるということで我が国にさまざまの問題について、関税の問題あるいは農産物の問題ということで圧力をかけてきているというのは、非常に問題があるというように思われると思うのですね。通産省は、報道などによりますと、この問題を非常に重視して、日米貿易小委員会などでもこういう問題を持ち出す、そして実態を明らかにさせるというようなことも言われておりますが、こういう点を含めて通産省と大蔵省の御見解を承りたいと思います。
  92. 酒井健三

    ○酒井政府委員 委員指摘のとおり、国際収支の統計上の不突合、誤差脱漏と申しますか、これはどうしても多少は生ずるのはどこの国でもやむを得ないかと思うのですが、アメリカの場合、一九八二年に御指摘のように約四百十四億ドルの誤差脱漏があって、モルガン・ギャランティーの「ワールド・フィナンシャル・マーケット」にそのような推計と申しますか、分析をしたのが載っておったことも御指摘のとおりでございます。ところが、一九八三年には経常収支で四百八億ドルの赤字になっておるのでございますけれども、誤差脱漏が七十一億ドルという数字になっておりまして、経常収支の赤字がそういうふうに大きくなるのにもかかわらず、どうして誤差脱漏が四百十四億ドルから七十一億ドルに小さくなったのか、この辺についてはまだアメリカサイドでも十分の分析がなされておりませんで、私どもも非常に関心を持っているところでございます。  不突合が生ずる要因といたしましては、貿易外取引とか資本取引、今日いろいろアメリカでもアンダーグラウンドのマネーがあるとか、資本がセーフヘーブン的に逃げてくるとか、いろいろな金がございますので、十分把握できない面があろうかと思いますが、四百十四億ドルから八三年に七十一億ドルに減ったという原因の解明がまだ十分なされてないものですから、私どもいささか戸惑っているわけでございます。  原因の解明につきましては、アメリカに一九八〇年の九月から省庁間の合同委員会作業部会というものを設けまして、国際収支統計に関する分析の作業をしているというふうに言っております。しかし、まだそれにつきまして明確な報告というものも私ども見ておりません。私どももアメリカといろいろ国際収支の問題を議論するときに、そのベースになる統計がしっかりしてくれなければ議論が正確なものにならないじゃないか、一九八二年につきましては、モルガン・ギャランティーの分析では、国際収支が経常収支で百十二億ドルの赤字だと思うけれども、仮に二百億ドル貿易外の受け取りがあるとすれば、むしろ黒字であったじゃないかというような指摘もございますので、私どもも日米のアドホックの作業部会の際にも、そういうような誤差脱漏をできるだけ小さくするようにということをアメリカ側に強く要望いたしている次第でございます。
  93. 正森成二

    ○正森委員 非常に納得ができないのです。IMFの一九八二年の世界各国の経常収支を合計したら八百九十億ドルも赤字になった。本来経常収支というのは、黒字のところがあれば赤字があるんで大体はとんとんになるべきものが、これはおかしいということで誤差脱漏という問題が非常に出てきているわけですね。ところが、商務省の統計を見ますと、一九八〇年は誤差脱漏が二百九十六億ドル、一九八一年は二百四十二億ドル、それから一九八二年は四百十四億ドルと年々ふえよるのですね。それが、統計をよほどしっかりしたなら別だけれども、一挙に七十一億ドルに減るなんというようなことは常識上信用できないのです。しかも、アメリカは財政赤字になるので統計関係の予算を減らしよるのですね。ですから、ますます統計が信用できないということになっているので、七十一億ドルに誤差がなっているとすれば、それは誤差が少なくなったということじゃなしに、統計上の体制がますます不備になっているということをむしろ物語るものじゃないですか。余りにも変動が大き過ぎるように思われるのです。そんな数字をもとに我が国にいろいろあれせいこれせい、けしからぬというように言ってきても、これはなかなか信用ができないのじゃないですか。  大蔵省というのは数字を重んずるところでしょう。七十一億ドルなんて、本当に信用しているのですか。
  94. 酒井健三

    ○酒井政府委員 確かに経常収支がプラスの国、マイナスの国、世界全体を突き合わせたらこれはゼロサムで、それがゼロにならなければいかぬということはご指摘のとおりでございます。アメリカの統計上の不突合が八三年に七十一億ドルと急に小さくなりまして、これは最近発表になったわけでございますが、私どももどうしてそういうふうに急に減ったのか非常に奇襲に思っておりまして、その辺の説明を求めたいと思っておりますが、統計が発表になってからそう時間もたっておりませんで、まだ明確な説明を受けておりません。今後とも我々の議論のベースである統計がはっきりするように、そして誤差脱漏が——経済規模が大きくなっていくとかいろいろな問題はあるかと思いますし、私どもの統計でもある面では推計で出さざるを得ない面もあるわけでございますが、できるだけそういうような誤差脱漏が小さくなるようにしていく必要があるというふうに私どもも思っております。
  95. 正森成二

    ○正森委員 ドルが基軸通貨ですから、統計上いろいろ難しい面が諸外国よりはあるという点も承知しておりますが、それにしても余りにもひどい大きな誤差であり、しかも、その変動が四百十四億ドルから七十一億ドルに変わるというようなことはちょっと信用できないということを申し上げておきたいと思うのです。  それから、時間の点で急ぎますが、アメリカから産業構造審議会に参加させろという要求が、この一月初めにオルマー米商務次官が来られたときにあった。これは政府当局もしくは財界人を参加させろという要求があったというのですね。これはいろいろ意見がありまして、専門委員などには建設省関係でドイツ人を参加させておるとかいろいろございますけれども、それは我が国で必要と認めて委員にするのであって、向こうの方がアメリカの政策を反映させたいとか、早く情報が手に入るとか、そういうようなことで産構審に米政府代表あるいは財界人を参加させろというような要求をしてくることは、我が国の自主性あるいは独立国としての我が国のあり方から見ても非常に問題があると思いますが、そういう問題について通産省から答弁をしてください。
  96. 細川恒

    ○細川説明員 御質問でございますが、本年一月に、御指摘のように、アメリカ側から産業構造審議会にアメリカ人を参加させてほしいという旨の要望がございました。その後、小此木通産大臣訪米の折にもボルドリッジ商務長官から、何らかの方法で産業構造審議会においてアメリカ側の意見を述べる機会を与えるという形での参加につきまして要望がございました。大臣から、産業構造審議会においては、議長が必要と認める場合は、外国人を含め委員以外の者から参考人または意見陳述人という形で意見を聞く道が開かれている旨をアメリカ側に伝えておりまして、本件はそういう形で落着をしておるというふうに我々は理解をいたしております。
  97. 正森成二

    ○正森委員 本来、審議会等の委員や臨時委員や専門委員というのは全部非常勤の国家公務員で、国家公務員法による守秘義務を課されているのですね。そういうところへ、我が国の方から積極的に、国益のために意見を聞かしてもらうことが必要であるということで要請するならともかく、向こうの方から厚かましくも、最初の要求は委員にしろということだったようでありますが、そういうことを言ってくるというのは非常に問題です。内閣法制局が昭和二十三年ごろ出した意見では、「公権力の行使または国家意思の形成に携わる公務員となるためには日本国籍」が必要であるというようにされているようでありますが、こういう点について、我が国の国益を守って自主的な態度をとってもらいたいと思うのです。  最後に、時間の関係で次官に伺いますが、こういうような問題、それからまた統計上の誤差が非常に大きくて、果たしてアメリカ側の貿易についての我が国への要求が妥当なものかについても疑いがあるという状況のもとに、どういうぐあいにして我が国の自主性と国益を守られるかについての御決意を承って、私の質問を終わらせていただきます。次官、どうぞ。
  98. 堀之内久男

    ○堀之内政府委員 先ほどからいろいろ御論議いただいておりますが、日本の貿易が大変な輸出超過であることはもう御承知のとおりでございます。したがって、自由主義陣営の中でお互いに国際協調を図っていくという立場から、今後日本としてもとるべき最大限の措置をしてお互いの国際協調を図ろうというのが今回の関税の前倒してございまして、また国益を絶対的に守っていくべきものは、今回の関税前倒しにおきましても、特に農林水産物にはアメリカ側の希望もあったわけでございますが、この辺はもう御承知のとおりわずか一品目という形で、やはり国内の農業、林業を守っておるというところで御理解を賜りたいと思っております。
  99. 中西啓介

    ○中西(啓)委員長代理 堀昌雄君。
  100. 堀昌雄

    ○堀委員 最初に、今もアメリカの問題の話が出ておりましたが、この間終了したアドホックの二回目の会合での経過の対応をひとつ大蔵省側から答えてください。
  101. 酒井健三

    ○酒井政府委員 御説明申し上げます。  アドホックの作業部会第一回目は先月の二十三、二十四日行われまして、第二回目を三月二十二、二十三日大蔵省で開催したわけでございます。議題としては、大きく分けますと三つございまして、一つは、円ドルレートの現状及び決定要因、二番目が、昨年十一月十日に発表されました竹下大蔵大臣とリーガン財務長官との共同新聞発表におきまして日米がそれぞれとると表明しました措置のフォローアップ、それから三番目が、日米双方の追加的な関心事項ということになるわけでございます。  第二回目の作業部会におきましても、それまでの間の円ドルレートの推移等から意見交換もいたしました。フォローアップの方につきましては前回行いましたので、今回は補足的な問題だけ。主として日米双方の関心事項。それで、日本側の関心事項につきましては、第一回のときに私どもの関心事項、州際業務問題であるとか、国際金融機関に対する協力の問題であるとか、そういうような問題提起をいたしまして、第一回目のときには米側から回答を聞く時間がございませんで宿題のような形になっておりまして、第二回目におきましてそれについての米側の意見の表明、それに伴う質疑というものを行いました。しかし、主な時間はアメリカ側の日本に対する関心事項ということになったわけです。  この関心事項は、第一回のときとおおむね同じような項目でございます。それは四つに分かれ得るかと思います。一つは、ユーロ円市場の拡大という問題、第二番目が日本の金融・資本市場へのアメリカの金融機関のアクセスの改善の問題、第三番目が日本の金融・資本市場の自由化の問題、第四番目が日本に対する投資交流の促進の問題、この四つでございます。  第一回目の会合におきましては、いわば相互教育というような情報交換、どういうところが問題であるかというようなところを相互に認識し合うのに重点が置かれたかと思います。第二回の会合では、金利の自由化の問題、それからユーロ円市場についての日本側の考え方、そういうものを説明するなどしまして、より突っ込んだ議論が行われまして、事務方としては、これは双方にとり前進であり、意味のあった会合であったというふうに考えております。  私ども、共同新聞発表にもございますように、一九八四年の春ごろに両方の共同議長に報告書を提出することを表明しております。具体的にはロンドン・サミットの開かれる前、五月の末ごろまでに報告書を作成する、その報告書を双方にとってできるだけ実り多いものにする、そして作業部会としてはすでに一回、二回終わっておるのですけれどもあと二回くらいはやって、その報告書をまとめ上げていきたいという段取りを考えている状況でございます。そして、作業部会では、さしあたり第三回目の作業部会を四月十六、十七日ワシントンでまた行うということを合意いたしました。  以上であります。
  102. 堀昌雄

    ○堀委員 さっき話が出ていましたけれども、今アメリカ側が金融あるいはそれに関連するものに非常に比重をかけてきておるというのは、どうも貿易関係では日本に入ろうと思ってもなかなか入れない、そうするとアメリカは今はサービスの点では大変力があるわけですから、このサービスの点で日本の市場に参加することによって、貿易上でどうにも取り返せないものをそこでひとつ取り返そう、こういう戦略を立てているのではないか。ですから、それなりに日本の金融市場に対するアメリカのいろいろな要求は、これからも広範囲にわたって出てくる可能性があると私は見ておるわけです。その中において、どうも日本は内圧には強いけれども外圧に弱いというか、外圧があると、なかなかうまく進んでいなかったものが片づくという例がなきにしもあらずなんでありますが、どうもそういうふうに外国から見られるということは、さっきの正森さんの質問にもありましたけれども、日本の主体性に関する問題ですから、我々は向こうから言われたからやるということではなくて、国内的にあるいは国際的に見て、日本の主体性の立場からこういう対応をとる、こういうことでなければいけないと実は思っておるわけであります。  そこで、具体的なことを少し伺うのでありますけれども、ユーロ円市場の拡大という問題です。これにはいろいろな問題がかかわっておるので、円建てユーロ債の発行という問題を、これに関連して国内的にも認める方針になっているようでありますが、このユーロ債は本来無担保です。これは銀行局長、あなたの方に関係があるのです。だから、この今の日本の国内における有担社債の問題は常識の範囲で処理がされるべきではないかと私は思うのだけれども、ともかくユーロ債なら無担保で出せるだけのちゃんとした企業が、日本で社債を出そうとすると担保が要る。これは今の問題に非常に関連をしておるのであって、要するに外では無担保で出せるものが国内では担保が要るなどという、そして、私どもが見て、それは担保が本当に要る企業かと思うと、実はそうではない。  先に聞きますけれども、これは銀行局で答えられるのかな、要するに現在無担保で国内で社債を発行できる企業の名前を挙げてほしいと思います。
  103. 酒井健三

    ○酒井政府委員 今手元資料がございませんので、後ほど御報告させていただきますけれども、私ども、昨年十一月十日の共同新聞発表におきましても、一九八四年の四月から居住者ユーロ円債のガイドラインを緩和し、今まで日本の企業のユーロ円債の発行を原則として認めてなかったわけでございますが、これについて規制を緩和するというような態度表明をいたしたわけです。現在、銀行界、証券界等との意見調整を進めておりまして、四月からガイドラインの緩和を実施する予定にいたしております。  その際に、このユーロ円債の適債基準と申しますか、それをどうするかということが議論されておりまして、結果的に申し上げますと、ユーロで無担保で発行できる企業の数をふやす、それに伴いまして国内で無担保で発行できる企業の数もふやすというような運びになっておりまして、私の記憶しておるところでは普通社債、ストレートボンドにつきましては従来よりも社数をふやしまして約三十社、転換社債につきましては大幅に数をふやしまして約九十社ぐらいになろうかと存じております。
  104. 堀昌雄

    ○堀委員 その数は後で伺いますが、問題はその数ではなくて物の考え方なんですね。要するに、今の昨年の話によって、これは外圧だったわけですね。それで、居住者の円建て債を欧州で出せるということになって、それがはね返って、要するに国内の有担社債が無担保に変わる、こういう今の行政のあり方というのが私は大変気に入らないわけです。主体性を持ってこっちがやって、後から国際的な問題に対応していくというなら日本の主体性がはっきりするのだけれども、そういう事実があると、また一つ押し込め、押し込めば日本はまたそれを妥協する、国内的な構造や秩序のいろいろな問題があるにもかかわらず、押し込めばいけるのだというふうに思わせるようなことを過去にやっているものだから押し込まれる、こういう循環になっているのではないかという気が私はして仕方がないのです。だから、皆さんがアドホックの会議でいろいろと詰めておられても、向こう側の感触としては、あそこまで言っているけれどもあと政治的にもう一押しすればいけるぞ。そこで、この間から、アメリカ側からいろいろな発言が出ると、今度は中曽根さんが大蔵省を呼んで、ともかく自由化の促進をしろ。これはどうも話が逆立ちしているのじゃないか。本来、日本の側でみんなが考えてこうしようという話を、大蔵省が総理のところへ行って、総理、こう言っていただきたい、そう言って物が動くというのが物の順序だと私は思うのだけれども、政治的な力が来ると、すぐそれを政治的にだけ受けとめて、今のような格好でさらにいい返事をしろと。  私、きのうだったかな、テレビを見ていたら、何か農産物交渉がどうもうまくいかない。アメリカ側は、ともかく政治会談で何とかしろ。そうすると、どこが言っているのか、農林大臣がアメリカへ行って解決すべきだ。そして農林大臣は、今行く気はありません。こういうことが起きているわけです。これはやはり同じことだと思うのです。要するに、政治と言ったって、なるほど今それが非常に大きな問題になっているのは、中曽根さんが余りリップサービスして先へやっているものだから、そのリップサービスのツケを今返されておるわけで、そのリップサービスをした者のところへつけ込まれて、こうしろああしろと言われると、中曽根さんはまたすぐそれをこっちへ、国内へはね返す。だから私は、そのリップサービスしたやつは仕方がないけれども、あれはリップサービスでしたということをはっきりとやらない限り、この式が幾らでもこうなってくる。これは日本の国益にならぬですよね。今大臣がいないからこの答弁は後に回すけれども。本当は中曽根さんに聞きたいのだけれども、今私は中曽根さんに聞く立場にないからあれですけれども、要するに循環のあり方を正常な形に戻すということは、あらゆる点で日本の国益を守る上から必要だと私は思いますが、政務次官、ひとつ御答弁をいただきたい。
  105. 酒井健三

    ○酒井政府委員 政務次官が御答弁なさる前に、私ども事務方の考え方、立場を表明させていただきたいと思います。  私どもも、この円の国際化、金融・資本市場の自由化の問題につきましては、財務官が記者会見でも言っておりますが、自主的、段階的、積極的に行うというスタンスでございます。必ずしもアメリカとかECから言われたからやるという問題ではなくて、今日日本経済が非常に国際化が進展している、日本の銀行も証券も企業も海外では非常に積極的な活動もしている。そういう面から考えてみると、やや我が国の金融・資本市場の自由化がおくれている面があるんじゃなかろうか。その辺は私どもとして謙虚に反省する必要がありますし、それから、例えば円の国際化の問題につきましても、円建ての取引が今日なお輸出につきまして四割弱、輸入についてはわずか二、三%というようないささか不自然な状況である。やはり我が国が自由主義世界で第二位の経済的な地位を占めるようになってきている今日の現状から考えますと、そういうような円の国際化、金融・資本市場の自由化につきまして積極的に取り組む必要がある。しかし、これは私ども自主的に取り組んで、もちろんアメリカ側が関心を表明されたらそれはそれなりに意見として十分耳を傾けなければならないし、それからまた国内の、例えば企業の人たちの御意見もやはり聞かなくてはいかぬ。そういう意味で幅広くいろいろな御意見を伺って、そして主体的に自主的に取り組んでいくという気持ちでございます。
  106. 堀之内久男

    ○堀之内政府委員 ただいま国際金融局長が御答弁申し上げたような考え方であると私も思います。これだけ経済大国となりました以上、ある程度円というものが国際的にも認識されておるところでございますので、そうした意味ではユーロ円債あるいはユーロ円市場を拡大していくということも、今後の円建ての取引を進めるという立場からも極めて大事だ、かように考えます。  先ほど中曽根総理の政治姿勢というようなことも先生お話がありましたけれども、やはり総理自身もその点は十分国益を踏まえて、昨晩あたりでも私どもは農産物関係では総理にも厳しく申し上げ、また解決のめどがない問題については、総理がどういう御指導をされようと、現場の農林大臣にお任せをいただきたいということも申し上げて、総理もその辺は御理解を賜っておりますので、その点は今後とも、我々も総理の御指導をいただきながらでも十分やっていきたいと思っております。
  107. 堀昌雄

    ○堀委員 誤解があるといけませんが、私は自由化論者ですから、国内をどんどん自由化しろというのはしょっちゅう言っているわけです。要するに、私が言ってもなかなかやらないけれども、アメリカが言ったらすぐやるのはどういうことだというのが、私が聞きたい最大の問題点です。だからそういう意味で、要するに自主性を持ってやってほしいということをここではっきり申し上げておきたいと思うわけです、  そこでその次に、今の問題でそのベースになる非常に重要な問題があるのです。それは今の国際的な問題の中で、この間、西ドイツの連銀の総裁が、ドルが相当に下がる、新聞によっては暴落だと書いてあるところもありますが、相当に下がるということを公式に発表しておるようです。西ドイツの連銀の総裁は、そういう為替の問題なんかについて公式の発言をしたことは余りないと新聞で報道しておりますが、そういう発言があった、こう言われておるわけです。それの背景というのは、私はやはりアメリカの財政赤字だと思うのです。  そこで、ちょっと伺いますので大蔵省で答えてほしいのですけれども、アメリカの財政赤字については、フェルドシュタインの経済諮問委員会が実は八四年二月二日に、八三FYから八九までについての財政赤字の見通しを出しています。それから大統領府というのか、政府が、これも同じものを出しています。議会予算局も同じものを出しています。この三つを、一九八四年における実績見込みのところを言っておいていただいて、八五年の財政赤字の規模を今の諮問委員会政府、議会予算局についてお答えをいただぎたいと思うのです。
  108. 吉田正輝

    ○吉田(正)政府委員 三つの御比較でございますけれども、ただいま私の手先にございますのは、レーガン大統領が一月末に出しました予算教書のものでございます。それによりますと、八四年には、財政収支の赤字は千八百三十七億ドル、来年はこれを改善させるということでございますけれども、千八百四億ドルということになっております。(堀委員「八九年をひとつ」と呼ぶ)八九年につきましては千二百三十四億ドルということでございます。  ただ、これも一応全体の見通しを立てた上で、歳出削減とか行政効率化とか、そういうような手段を講じて、三年間に約千億ドルの赤字削減を目指しましたダウンペイメント計画と申しますけれども、向こう三年につきまして、超党派委員会によってそういう削減ができた上で千二百三十四億ドルにするということでございます。
  109. 堀昌雄

    ○堀委員 資料を持っておられないようですから私の方から言いますと、議会予算局が、防衛費の実質伸び率を五%と前提すれば、先の方で、一九八九年で三千二百六十億ドルの財政赤字、もし防衛費が実質伸び率ゼロとしても二千四百九十億ドルの赤字。それから大統領経済諮問委員会の見通しては、八九年で千九百三十億ドルの赤字。こういうふうに、アメリカの関係資料を見ておると、政府が一番希望的観測をしておるのであって千二百三十四億ドル、それに対してフェルドシュタインの経済諮問委員会ですら千九百三十億ドル、全然これは減らないのですね。途中の経過を言うと、八五年がフェルドシュタインの方は二千八十億ドルということで、ここもレーガンの方は千八百四億ドル、それから議会予算局は千九百五十億ドルから千九百億ドル、こういうことでありますから、いずれも今レーガンが言っておるよりは、アメリカの財政赤字は今後もふえるだろうということはどうも間違いがない、こういうふうに思うのですね。財政赤字がこのようにふえるということは、結局、今アメリカでは景気が上昇過程に入っていますから、クラウディングアウトが起こるのは避けられない。既にともかくも金利は上昇過程に入ってきておる。そういうふうになってきて、片や、今お話があった経常収支の赤字はますますふえると思いますね。——大臣、いつ入ったの。気がつかなかった。国際金融局長、今の経常収支の赤字だけを、ことし、それから来年の見通しが出ていると思うので、ちょっとそれを答えてください。それからちょっと大臣に聞きましょう。
  110. 酒井健三

    ○酒井政府委員 一九八三年でございますが、アメリカの経常収支の赤字は四百八億ドルでございます。八三年が四百八億ドルでございまして、一九八四年につきましてははっきりした見通しはないのでございますが、大体八百億ないし八百五十億ドルの赤字になるだろうというふうに予測されております。
  111. 堀昌雄

    ○堀委員 大臣、実は今アメリカとの関係の議論をしておりまして、それで、どうも外圧が来ると対応するけれども、私がここでやっておってもなかなか対応しない、日本はどうも主体性がないぞ、こういう話をしてきたわけです。  そこで、これからの問題として、まずアメリカの財政赤字、これは減らない、ふえる方向に間違いなく行くだろうということをちょっとやりまして、それからもう一つが、経常収支の赤字も今の情勢のままなら減らない、ふえる方向にだけ行く、こういうことですね。要するに、そのことは結果的には日本の為替にもはね返ってくることであるし、最近問題になっておるのは、後で詳しく聞きますけれども、アメリカに入っていっている資金が、かつては長期資金がかなり入っていたけれども、今や短期資金しか入らなくなってきている。そのことは、いかにアメリカのドルに対する信頼が揺らいできておるかということです。いつでも引き揚げられるものだけが今実は入るようになってきておるということは、もし出始めれば、アメリカのドルがかなり急速に下がるおそれは十分にある、こう判断すべきだと私は思っているわけであります。そういう全体の問題を背景にしながら、今我々がここでアメリカとの関係で、これからサミットもあるでしょうし、あなたはこの間リーガンと会談をされて大分いろいろと注文をつけられておることだろうと思うのですが、大蔵大臣として、対米関係における我々のこれからの対応をどうしていこうと思っておられるか、お答えをいただきたいと思います。
  112. 竹下登

    竹下国務大臣 二時に参議院本会議がございますので、中途半端にならないように精いっぱいお答えします。また帰ってまいりますが……。  この決算の月例報告を見ましても、アメリカの場合、それは日本に比べれば問題にならないにいたしましても、消費者物価も安定して、それから失業率も低いという方向に来ております。問題は、この消費者物価の安定の問題というのも、かなり金融面で、何と申しましょうか、高金利、引き締め、そういう傾向もあるから、これが余りにも強力な圧力になった場合には、将来問題を残すという可能性はなしとはしないと私は思っております。  もう一つ、どっちかといえば外圧に対して弱い、この議論は、私、最近考えてみまして、日本の税制なんというのは、歳入委員会で議論されたことが大体翌年とかあるいは数年後にあらわれる。特にプロの議論の行われる場所の問題は、たびたび堀さんからいわゆる金利の自由化とかそうした議論をされたものが国民に理解されるには、本当は後追いぐらいが日本の場合ちょうどいいのではないかと思います。その後追いのときと、たまたま外圧というような印象を与える最近の急激なアメリカの要請の機会が一致した。だから、私は、外圧に弱く、そうして内部の建言に対しては非常に迅速な動きがないということは必ずしも当たらない、後追いくらいが現実問題としては国民の理解の調和の中にはちょうどいいのじゃないかな、こういう感じも持っております。  いずれにしても、リーガンさんが言っておられるのは、かつての堀議論と大体似ている議論です。円が完全に国際化すれば世界の二大通貨になって、為替レートの変動というようなものも必然性を持ってなくなっていくんじゃないか、だから、それだけの力があるからもっと自由化し国際化しなさい、こういうことですから、大筋、哲学としては私はこのリーガンさんの言うこともわかります。ただ、余りにも歴史的な問題がいろいろ違うから、したがって、我々はあくまでも機動的にはやるが、主体性を持ってやるよ、そのスピードの差というのが今日若干新聞紙上等で議論されているところではないか。  いわゆる本質論に対するお答えになりませんでしたが、ちょっと行ってまた帰りますので……。
  113. 堀昌雄

    ○堀委員 何だかさっぱり要領を得ない答弁でありましたが、こう出たり入ったり出たり入ったりではまともな質問はできませんから、来月、日を改めてたっぷり時間をいただいて、この議論をやることにします。     〔中西(啓)委員長代理退席、委員長着席〕  そこで、時間があれですから、少し関税の問題の方をやっておきたいと思います。  実は、いろいろなものを読んでおりましたところが、現行関税についてひとつ手直しをしてもらいたいという問題が提起をされているものがあります。私は、確かに考え方としてはこれがいいな、こう思うのです。それは問題の性質から多少違いがあるかもわかりませんけれども、要するに、昭和五十五年に外風為替及び外国貿易管理法というのを全面的に改正をして、これまで原則禁止・例外許可であったのを原則自由・例外禁止に実は改めていますね。国金局長、ここのところちょっと答えてください。そのとおりだろうと思うのですが……。
  114. 酒井健三

    ○酒井政府委員 戦後、外国為替管理法は、御指摘のように原則禁止・例外許可という建前でございましたが、自由化の要請、動向にかんがみまして、五十五年十二月から、私ども関係するところにつきましては原則自由・例外禁止というふうに法体系を改めたところでございます。
  115. 堀昌雄

    ○堀委員 これはやはり自由化の要請があって、当然そこで過去の哲学が転換をしたんだ、こう思うのですね。  そこで、それじゃ貿易とか関税、要するにガットに関係するものというのも、かつてはかなりの高率関税をやっておったものを、今や東京ラウンドでかなり大幅に下げるという方向に持ってきておる。さらに、既に合意がされて、また八五年から何らかの新しいラウンドで問題を発展させようという話も出ておるというふうに聞いておるわけですね。全体として、関税はみんなどんどん下げましょう、こういうことなんです。そのことはやはり自由化への方向という一つの大きな流れだと私は思うのですね。  そうすると、今の関税法は、確かに私もちょっと関税法を読んでみてなるほどと思ったのは、この関税法の第一条、「趣旨」というところに、「この法律は、関税の確定、納付、徴収及び還付並びに貨物の輸出及び輸入についての税関手続の適正な処理を図るため必要な事項を定めるものとする。」これは昭和四十一年法律三十六号で一部改正になっているようですが、改正する前はこれはどういう法律だったのですか。ここをちょっと答えてくれませんか。
  116. 垂水公正

    垂水政府委員 今付議されております関税定率法、それは暫定措置を伴っておりますために非常にしばしば改正をしておるわけでございますが、関税法の方は、先ほど委員が仰せのとおり、輸出入に関する関税賦課の手続を定めたものでございますから、従来から関税法ということで参っておったと理解しております。
  117. 堀昌雄

    ○堀委員 いや、四十一年に法律三十六号で一部改正になっているわけです。だから、こんなありきたりのことを書いてあるやつを一部改正をしたというのは一体どこを改正したのか、前はもっとひどいものだったのかなと思って、ちょっと……。
  118. 垂水公正

    垂水政府委員 ただいま御指摘のありました四十一年の改正は、先ほどお読みになりました一条……(堀委員「一条を聞いているのです」と呼ぶ)一条の部分について訂正があったと理解しておりまして……(堀委員「どこを訂正したか、今わからなければわからないと言ってください」と呼ぶ)今ちょっと詳細は、私わかりません。
  119. 堀昌雄

    ○堀委員 答弁者は、質問者が質問をしたことに正確に答えてもらわないと、今あなたが言っているのは時間のむだなんですよ。全然答弁したことにならないので、わかりません、今調べておりますからお待ちくださいと言ってくれれば時間のむだがない。今非常に時間がないところで問題をやっておるのですから、もう少しきちんとした対応をしてもらわなければ困ります。  そこで、結局この問題の中で今三つの問題が提起をされておりまして、一つは、輸出品目ごとの許可制になっておる。これは届け出制にできないか、こういうことですね。これが一つ。これはなかなか難しいだろうと思うから簡単なのからいきます。  二審目は、現在は関税法の六十七条の二で、要するに輸入貨物は保税地域または税関長の指定する場所に入ってから輸入の申請の手続をしろ、こういうふうになっているわけですね。しかし、法律をずっと読んでみると例外規定がちゃんと設けられておる、政令もある。こういう時代に、品物が保税地域または税関長の指定するところに入らなくても、こういう品物を輸入しますから事前申請をやらしてくれ、こういう話が出ておるので、私はこれは極めて合理的だ、こう思うのですね。事前にそういう荷物が入るのはわかっているわけだから、こういうので審査して、書類的にはそうやって届けておけば、物が入ってきたら直ちに処理ができて、さっとこれが国内に出される。これは私は行政の取り扱い上そんな難しいことじゃないのじゃないかと思います。  それから三つ目は、要するに関税貨物の輸入を、次々来るのを一つずつ金を払うということはどうも大変なので、ある程度まとめて払えないかという後納制という問題ですね。これはちゃんと法律に担保の問題の処理が書かれているわけだから、一定の担保を提供してある業者については、その担保の範囲内において実は後納を認めたってちっとも構わぬ。もし後払いで払わなかったらその担保で処理すればいいわけだから、今の事前申請の問題と後払いの問題というのは行政の運用上の問題として処理ができるのではないか、私はこういうふうに思うのですけれども、ひとつ答弁をお願いいたします。
  120. 垂水公正

    垂水政府委員 堀委員の三点の御質問についてお答えいたします。  まず第一点の輸出の許可制についてでございますけれども、これは御案内のとおり、輸出を許可制にしておりますのは、必要がある場合は現品検査をするということを可能ならしめるためでございまして、水際におけるチェックのための欠くべからざる制度ではないかと思っておるわけであります。具体的に例を申し上げれば、武器とかあるいは高度技術を化体したもの、それは輸出貿易管理令によって規制がかかっております。そういう規制を担保するためにはこの制度が必要なわけでございまして、そういう意味において、国会での重要な御決議を踏まえた、依然必要なものであるというふうに考えております。  ただ、一言強調しておきたいと思いますのは、輸出についての許可制がしかれているからというので、手続について大変時間がかかるということではこざいません。非常に迅速に処理をしております。平均で見ますと、案件の処理時間は一時間というふうにスピードアップされているということを申し上げておきたいと思います。  それから第二に、輸入貨物について到着前の事前の申告を認めてはどうかというお話でございますけれども、これは私どもの過去の経験によりますと、輸入される貨物といいますのは、貨物自体が輸入の直前に変動しているというのがまことに多いわけでございます。したがいまして、そういう貨物の変動要素が大きいということが一つと、いま一つは、到着の日時、場所あるいは蔵置場所、そういうものについても、到着の直前に向こうの荷主の方から申し出があって、変更されるということがかなり多いわけでございます。そういう意味で見ますと、先ほど御指摘のような保税地域に搬入した後に申告をするという方が、輸入者にとりまして、改めて申告書をつくり直すとかいう手間も省けるわけでございますし、税関の方でも、また改めて申告書の受理をやり直すというような手間が省けるというふうに考えておるわけでございます。  これまた申し上げておきたいのは、輸入が許可にかからしめられておるからといって、輸入通関手続に非常に時間がかかっているというわけではございませんで、平均の通関に要する時間は一件当たり〇・三日というふうに短縮をされておりまして、これについてはアメリカの方でも、その他諸外国でも、あるいは国内関係者の間でも、通関の迅速化は大変進んだという評価をいただいていると思っておるわけであります。  それから三番目に後納制の御質問であったと思いますが、確かに担保の規定もあるわけでございますけれども、現実にこれまた後納制を導入するという場合を想定しますと、担保の提供者がだれであるかということが大変な問題になるわけでございまして、従来の経験では、中小の通関業者あるいは中小のいわば荷扱い者、そういうものにしわが寄せられるというのが、これは経験からくる私どもの教訓でございまして、そういう意味において一気に後納制に踏み切るということはなかなか問題があるのではないか、こういうふうに考えておるわけであります。
  121. 堀昌雄

    ○堀委員 これは経団連の方で何か検討をして、四月に文書にして出すというのを私読んでいて、ちょっと私なりに第三者から見ると、まあこの程度はどうかなと思ったので、今の一番目のものは問題ないのですが、あとの話は、今のようなことなら、何も経団連がそんなことを文書にして申し入れたりする必要のないことではないかと思うのです。私もこの問題、実務をやっておる人間ではありませんからちょっとわかりませんけれども、原則的にはできるだけ通関の事務が速くなればそれで結構なんで、問題はそこにあるのだろうというふうに思いますから、より一層の時間の短縮の努力をしてもらいたいと思います。  そこで、基本的な問題で、一生懸命皆さん努力をして関税を下げているけれども、今の変動相場制の中では、この関税の問題とそれから為替の問題ということになると、関税の方は大きいのは二〇%も三〇%もあるけれども、今や皆さん方、東京ラウンドや何かで下げているのはごくわずかなパーセンテージのものを下げている。為替の方はしょっちゅう一〇%も動くわけですから、現実問題とすれば、どうも関税を下げておるというのが、確かに象徴的に貿易の自由化のためにやっておることでいいことではありますけれども、どうももう一つ関税を下げたという効果が出ていると感じるものが余りないのですが、象徴的に、関税を下げたので輸入はこういうのがふえましたというのがあったらちょっと答えてもらいたいと思うのです。
  122. 垂水公正

    垂水政府委員 お答えいたします。  ただいま手元のもので申し上げますと、昨年の改正であったと思いますけれども、いろいろ問題があって引き下げましたチョコレート、ビスケットについては、堀委員のおっしゃるとおり、それほどの輸入の増加を来しておりません。しかしながら、例えば同じときの紙巻きたばこあるいは紙、コンピューター、そういうものにつきましては、関税を下げました直後において輸入の増加が見られておるということでございます。  御案内のとおり、輸入というものは、堀委員に申しわけないのでございますが、やはり内外の需給によるところ、あるいは内外の相対価格の要素、それは為替相場の話にもまつわってまいると思いますが、そういうものによって左右される要因が大きいわけでございまして、関税率も価格要素ではあると思います。しかし、同様にその他の景気動向、具体的に申せば日本の内需、そういうようなものに影響される度合いの方が大きいというのが現在の状況ではないか。  ただ、申し上げておきたいのは、昨年と一昨年、この二つの年の輸入といいますのは前年に比べて減になっておる、いわば異常な時期でございます。それはすなわち、長年の景気停滞の中で世界貿易が連続して縮小を続けたという、そういう時期の中における日本の輸入であると考えておかなければいけないのじゃないか。したがいまして、そういう他の要素が変化することによって、関税引き下げが持つ本来あるべき輸入促進効果というものは、それはそれで生かされるということではないかと思います。  それからなお……(堀委員「簡単にしてください」と呼ぶ)はい、一言。先ほど御質問のありました関税法の改正は、賦課、徴収という言葉を使っておりましたのを申告納税にかえて、字句の訂正をした、それが一条の改正でございます。念のため申し上げます。
  123. 堀昌雄

    ○堀委員 終わります。
  124. 瓦力

    瓦委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  125. 瓦力

    瓦委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  関税定率法等の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  126. 瓦力

    瓦委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  127. 瓦力

    瓦委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、中村正三郎君外三名より、自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合四派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者より趣旨説明を聴取いたします。野口幸一君。
  128. 野口幸一

    ○野口委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して提案趣旨を御説明申し上げます。  御承知のとおり、この法律案につきましては、審議の中で種々の観点からさまざまな議論が展開されました。この附帯決議案は、これらの議論を踏まえ、政府において特段の配意を要する事項を取りまとめたものであります。  なお、個々の事項の趣旨につきましては案文で尽きておりますので、その朗読により趣旨説明にかえさせていただきます。     関税定率法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、左記事項について配慮すべきである。  一 関税率の引下げに当たっては、国内産業への影響を十分考慮し、特に農林水産業、中小企業の体質改善を併せ考えつつ、輸入の拡大を図り、国際的協調を進めるとともに、国民生活の安定に寄与するよう努めること。  一 税関業務の増大、複雑化にかんがみ、不断に通関制度等の見直しを行うことにより、その効率的、重点的運用に努め、税関職員の要員の確保とともに特殊な職務にかんがみ、処遇の改善に努めること。 以上であります。  何とぞ御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  129. 瓦力

    瓦委員長 これにて趣旨説明は終わりました。  お諮りいたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  130. 瓦力

    瓦委員長 起立多数。よって、本案に対し、附帯決議を付することに決しました。  本附帯決議に対し、政府より発言を求められておりますので、これを許します。竹下大蔵大臣
  131. 竹下登

    竹下国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても御趣旨に沿って配意してまいりたいと存じます。ありがとうございました。     —————————————
  132. 瓦力

    瓦委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に対する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  133. 瓦力

    瓦委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕
  134. 瓦力

    瓦委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後二時十八分散会      ————◇—————