運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1984-03-26 第101回国会 衆議院 大蔵委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年三月二十六日(月曜日)     午前十時十二分開議 出席委員   委員長 瓦   力君    理事 越智 伊平君 理事 熊川 次男君    理事 中西 啓介君 理事 中村正三郎君    理事 伊藤  茂君 理事 野口 幸一君    理事 坂口  力君 理事 米沢  隆君       鹿野 道彦君    工藤  巖君       熊谷  弘君    小泉純一郎君       小杉  隆君    近藤 元次君       佐藤  隆君    笹山 登生君       椎名 素夫君    塩島  大君       白川 勝彦君    田中 秀征君       高橋 辰夫君    中川 昭一君       宮下 創平君    村上 茂利君       山岡 謙蔵君    与謝野 馨君       渡辺 秀央君    上田 卓三君       川崎 寛治君    沢田  広君       渋沢 利久君    戸田 菊雄君       広瀬 秀吉君    藤田 高敏君       堀  昌雄君    坂井 弘一君       柴田  弘君    宮地 正介君       矢追 秀彦君    安倍 基雄君       玉置 一弥君    正森 成二君       簑輪 幸代君  出席国務大臣         大蔵大臣    竹下  登君  出席政府委員         経済企画庁調整         局審議官    丸茂 明則君         大蔵政務次官  堀之内久男君         大蔵大臣官房審         議官      水野  勝君         大蔵省主計局次         長       平澤 貞昭君         大蔵省主税局長 梅澤 節男君         大蔵省理財局長 西垣  昭君         大蔵省証券局長 佐藤  徹君         大蔵省銀行局長 宮本 保孝君         大蔵省国際金融         局長      酒井 健三君         国税庁次長   岸田 俊輔君         国税庁税部長 渡辺 幸則君         国税庁調査査察         部長      冨尾 一郎君         運輸省鉄道監督         局国有鉄道部長 棚橋  泰君  委員外出席者         法務省刑事局刑         事課長     北島 敬介君         厚生大臣官房政         策課長     長尾 立子君         厚生省社会局老         人福祉課長   古瀬  徹君         通商産業省立地         公害局工業再配         置課長     小林  惇君         運輸省鉄道監督         局民営鉄道部長 服部 經治君         運輸省自動車局         業務部旅客課長 豊田  実君         参  考  人         (税制調査会会         長代理)    木下 和夫君         大蔵委員会調査         室長      矢島錦一郎君     ————————————— 委員の異動 三月二十六日  辞任        補欠選任   椎名 素夫君     工藤  巖君   田中 秀征君     佐藤  隆君   平泉  渉君     白川 勝彦君   平沼 赳夫君     高橋 辰夫君   藤井 勝志君     近藤 元次君   村上 茂利君     鹿野 道彦君   森  美秀君     小杉  隆君   山中 貞則君     渡辺 秀央君   藤田 高敏君     広瀬 秀吉君 同日  辞任        補欠選任   鹿野 道彦君     村上 茂利君   工藤  巖君     椎名 素夫君   小杉  隆君     森  美秀君   近藤 元次君     藤井 勝志君   佐藤  隆君     田中 秀征君   白川 勝彦君     平泉  渉君   高橋 辰夫君     平沼 赳夫君   渡辺 秀央君     山中 貞則君   広瀬 秀吉君     藤田 高敏君     ————————————— 三月二十六日  大幅減税の実現、大型間接税導入反対等に関す  る請願正森成二君紹介)(第一四七九号)  所得税大幅減税等に関する請願梅田勝君紹  介)(第一四八〇号)  同(佐藤祐弘紹介)(第一四八一号)  同(瀬崎博義紹介)(第一四八二号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第一四八三号)  同(辻第一君紹介)(第一四八四号)  同(野間友一紹介)(第一四八五号)  同(簑輪幸代紹介)(第一四八六号)  同(小沢和秋紹介)(第一五六七号)  同(野口幸一紹介)(第一五六八号)  同(山花貞夫紹介)(第一五六九号)  同(山本政弘紹介)(第一五七〇号)  大企業優遇税制の是正、大幅減税等に関する請  願(佐藤祐弘紹介)(第一四八七号)  一兆円以上の大幅減税等に関する請願柴田睦  夫君紹介)(第一四八八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第  九号)  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣  提出第一〇号)  所得税法等の一部を改正する法律案内閣提出  第一一号)  酒税法及び清酒製造業の安定に関する特別措置  法の一部を改正する法律案内閣提出第五号)  物品税法の一部を改正する法律案内閣提出第  六号)  石油税法の一部を改正する法律案内閣提出第  七号)      ————◇—————
  2. 瓦力

    瓦委員長 これより会議を開きます。  法人税法の一部を改正する法律案租税特別措置法の一部を改正する法律案及び所得税法等の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上田卓三君。
  3. 上田卓三

    上田(卓)委員 竹下大蔵大臣がまだお見えでないので、本当は質問しにくいわけでありますし、また早急に来ていただくようにしていただきまして、御協力いただきたい、このように思います。  所得税法等の一部を改正する法律案について質問させていただくわけでございますが、今回の法の改正は大きく分けて二点あるのじゃないか、このように思っております。所得税減税に関する部分とそれから納税環境整備部分に分かれておるわけでございまして、所得税減税につきましては、同僚議員からも既に質問がなされておるわけでございますので、簡単にその点についてまず触れておきたい、このように思います。  今回の減税規模でありますが、それは景気回復に役立つ相当規模減税実施という与野党の合意点に大幅に背いている、景気回復にはならない、このように思うわけでございまして、非常に残念であります。それだけじゃなしに、過去七年間の課税最低限の据え置きによって生じたところの実質的な大増税というものを埋め合わせるに至っていないという意味で、この辺においても非常に問題があるのではないか、このように思っております。  それから、何といいましても、課税最低税率の引き上げと最高税率の引き下げは、まさしく高額所得者優遇といいますか、本当にそういう意味では納得できない、私たちはそのように考えておるわけでございます。  それから、最後になりましたが、いわゆるパート減税の二万円の上積みでありますが、このことにつきましては早急に具体的な措置をとっていただきたいということを述べまして、これは答弁していただかなくても結構でございますので、いわゆる記帳義務の問題、納税環境整備の問題にしぼって御質問を申し上げたい、このように思います。  まずお答えいただきたいのは、戦前賦課課税制度をとっておったわけでございますね。戦後は申告納税制度、こういうことになっておるわけでありますが、これがなぜこのように戦前と戦後で変わっておるのか、そして具体的に何が変わったのか、そういう点について簡単に御説明いただきたい、このように思います。
  4. 梅澤節男

    梅澤政府委員 所得税申告納税制度に切りかわりましたのは、ただいま御指摘になりましたように戦後、昭和二十二年の所得税法改正によってでございます。申告納税制度の物の考え方は、課税標準なり税額納税者自身が算定し、確定し、それから自主的に納付する。そういう意味で、現在の所得税制の中でも、大部分の場合年末調整納税が完結いたします給与所得者の場合の源泉課税制度と比べて、際立った特徴があるわけでございます。  申告納税制度民主主義社会と必然的な関係にあるというわけではございません。例えば、議会制民主主義をとっておりますヨーロッパの国でも、所得税戦前我が国と同じように賦課課税制度をとっている国もございますけれども申告納税制度は、先ほど申しましたように、納税者がみずから税額を確定して、いわば自分自分税額を評価して納付するという自主的な制度でございますので、アメリカの申告納税制度と非常に似た形を我が国の場合とっておるわけでございますが、物の考え方といたしまして、申告納税制度は、近代的な市民社会を支えていく意味で、税制としてもそれにマッチした側面も持っておるということでございまして、私ども税制当局並びに国税庁を含め、執行当局といたしましては、二十二年の制度改正以来今日まで、申告納税制度定着化を図るために各般の努力を続けてまいったところでございます。
  5. 上田卓三

    上田(卓)委員 戦後の申告納税制度というのは、新憲法下において主権在民主権国民にあるんだ、こういうことから来ているのではないか。戦前のような権力的な、お上が税額を決める、何の何兵衛はこれだけの税額だというような決め方、いわゆる賦課課税制度ではいけない、国民自分所得をみずから計算し、その税額を決めて自主的に申告する、国民みずからが納税者であるという自覚が前提に立って自主申告制度というものがある、このように考えなければならぬ、こういうように思うわけであります。そういう意味で、申告制度というのは本当に憲法上保障された国民権利である、このように理解しなければならぬだろう、このように思うわけであります。  今回の改正案によりますと、私は改悪案だというように思うわけでありますが、前々年分事業所得、それから不動産所得及び山林所得の金額が三百万を超える者に対して簡易な記帳義務づけて、いわゆる三百万以下の者に対しても、取引に関して作成し、または受領した帳簿書類保存義務づけているわけでありますが、先ほど申し上げましたように、本来納税者が自主的にやることを法律義務づけるということは、まさしく主権在民であるところの自主申告権を踏みにじるものではないか、このように思っておるわけでありますが、このことについてひとつ明確に答えていただきたい、このように思います。これは政務次官お願いします。
  6. 堀之内久男

    堀之内政府委員 今回の記帳義務の問題については、ただいま上田委員からの、国民の、何と申しますか、自主申告制度趣旨に反するのではないか、こういうことの御指摘でございますが、我々国民は、申告納税制度は採用いたしておりましても、やはり国民として公平な正しい納税をするという義務もあるわけでございます。したがって、国民皆さんが立派な記帳をされた中で公平な申告をするということが今回の趣旨でありまして、申告納税制度趣旨そのものに反するとは考えておりません。  今委員の御指摘のあった点は、それぞれいろいろな団体から御意見もございましたが、私は大体農村に主に住んでおりますので、農協関係皆さん方からも指摘がありましたけれども、最近の場合、やはりある程度記帳はすることが、御本人経営というものも判断できるわけでございまして、それに基づいた簡単な記帳が結局また本人経営判断にもつながる。いわゆるどんぶり式勘定では、農業そのものにおいても、今日なかなか——自分農業経営規模がいかなる方向に行っておるかということの判断資料にもなるわけでございまして、一律にただ納税という立場だけでこれは判断はできないのじゃないか。したがって、自営業を行う者として当然の資料として、簡単にそろえることが本人のためにもなる、かように私は考えております。
  7. 上田卓三

    上田(卓)委員 私が申し上げておるのは、記帳しなくてもいい、あるいは帳簿を備え置くということをしなくてもいいと言っているんじゃないんですよ。商売をやっていこうと思えば、売り上げがどれだけあって、どれだけ仕入れたか、それで幾らもうかっているか、またどこにロスがあるかとか、これはやはり当然計算をしなければならぬわけであります。そういう意味で、国民自主申告制度のもとにおいてはちゃんとした記帳をするということは、私は当然のことだと思っているわけです。ただ、それをなぜ義務化しなければいかぬ、法制化しなければならぬか、そこに自主申告制度と相矛盾するものがあるのではないか。例えば食事前に手を洗わなければならぬ、これは当然みんな手を洗うという習慣があるわけでありますけれども、そんなことを、食事前には必ず手を洗いなさいというような法律を決める必要はないわけですからね。その点を私は申し上げておるわけです。  記帳しなくてもいいというふうに思っている人は、納税者の中には決していないと私は思うのです。当然どれだけの利益があるかということを、先ほど申し上げたように、今後の経営方針を立てる意味においても記帳するということは非常に大事なことでありますけれども、それをあえて義務化しよう、法制化しようという意図はどこにあるのですか。それを説明してないんじゃないですか。
  8. 梅澤節男

    梅澤政府委員 今回御提案申し上げております帳簿書類保存義務あるいは一定所得以上の事業所得者等について記帳義務をお願いしております考え方の背景は、こういうことでございます。  申告納税制度の理念につきましては、先ほど上田委員のおっしゃいました基本的な考え方に私ども異論を差し挟むものではございませんが、むしろそういう考え方に立った場合、つまり納税者自身自分所得標準を算定し税額を確定するというのが申告納税制度の本旨でございますから、その基礎は、結局納税者取引等で集積された資料に基づいて適正な申告を行うということが、申告納税制度の基本的な考え方と考えるわけでございます。そういたしますと、帳簿書類保存なりあるいは記録というものは、実は申告納税制度に内在しているものであるという考え方に立っておるわけでございまして、この点は昨年十一月におまとめいただきました税制調査会答申にも御指摘をいただいている考え方でございます。  なぜ今の時点でこういう制度化をお願いしておるのかということでございますが、これは立法政策の問題といたしまして、先ほど申し上げました税制調査会答申にも同じく触れられていることでございますけれども、やはり所得税というのは我が国税体系で基幹的な地位を占める非常に重要な税制である、この税制に対する国民信頼理解を得ることが、所得税のみならず税制全般に対する信頼あるいは御理解に結びつくということでございます。  先ほども触れましたけれども、今日、大部分年末調整での源泉徴収納税が完結いたします給与所得者事業所得者等申告所得税納税義務者との間に、所得捕捉等をめぐりましてある種のわだかまりがある、不公平感があるということは、これは否定できない事実でございます。そういった観点に立ちました場合に、申告納税制度の本来の物の考え方に立ち返りまして、この制度に内在する基本的な考え方を確認していただく、これがまず今回御提案申し上げております帳簿記録保存していただくという考え方でございます。  一方、一定所得以上の方につきましては、現在の青色申告制度よりはもう少し軽度の記帳義務としてこの際制度化させていただく。今日先進諸国のいろいろな税制を見ましても、ほとんどの国はやはり納税義務者記帳義務所得税の場合の記帳義務なり帳簿書類保存義務をいずれも制度化しているわけでございまして、これを制度化するということと申告納税制度の基本的な考え方とは決して抵触はしない、むしろ申告納税制度にはそういった物の考え方が内在しておるというのが私どものとっておる考え方でございます。
  9. 上田卓三

    上田(卓)委員 いわゆる記帳義務という言葉ですけれども義務じゃなしに、国民権利として、自分税額を決める場合、それのために記帳をするということは私は当然のことだと思うのです。ただ法律で規制して義務化するというところに私は問題があると言っているんですよ。だからその点で大臣——基本的なそういう記帳義務化法律化国民に強要するということについて私は疑義があるわけですから、この点について大臣に来てもらってください。それでなければ、これ以上質問を進められないと思う。私は基本的な問題を申し上げておるのですからね。義務化じゃなしに、食事の前に手を洗うというようなことは、何も強制されなくても当然のことなんだからね。そのことなんですよ。自分税額自分計算して申告する、何も国から強制されるべき筋合いのものじゃない、こういうことなんです。その点、ひとつ委員長大臣に来てもらってください。
  10. 瓦力

    瓦委員長 ちょっと理事さん、お集まりをいただきたいと思います。——  安倍基雄君。
  11. 安倍基雄

    安倍(基)委員 安倍でございます。  今回の三法につきましての、その前の問題といたしまして、どうも私自身中曽根総理のやり方について非常に不満がある。と申しますのは、選挙の前には減税だけを言った。選挙の後に増税ということを持ち出した。もし本当に将来増税が必要であると考えているのであれば、選挙の前に正直に言うべきであったのではないか、公約違反ではないかと思うのでございます。  しかし、総理がおられないところでこういうことを言っても仕方がございませんから、これはまた後の問題といたしまして、私は、今回の減税増税論議において一つ大きな点が欠けているのではないかと思うのでございます。それは、減税をしたらどのくらい経済効果があるのか、そしてその結果どのくらい経済が拡大して経済成長が見込まれ、それによって将来増収が起こるのかという問題。それはないのかどうか。今度増税をしたらどのくらい経済が冷えるのか。そういったことの論議が非常にあいまいなままにされておる、この点が私は非常に遺憾でございます。  経済企画庁の方にお聞きしたいと思いますけれども、では一兆円減税をした場合に、それがGNPの伸びを通じて最終的にどのくらい税収に響くということを考えておられるのか、その点についての御説明を承りたいと思います。
  12. 丸茂明則

    丸茂政府委員 御質問の、一兆円の減税でどのくらいのGNPあるいは税収への影響があるかという点でございます。  減税が実施されます場合に、仮に一兆円といたしましても、そのときの経済状態等々によりまして、非常に正確に、一義的にこのくらいというのを計算することは困難でございますが、私どもの研究所にございます世界経済モデルというようなもので試算をいたしますと、一兆円の個人減税を行いました場合に、GNP初年度に約四千二百億円、次年度に約一兆三千億円、三年度目に約二兆五千四百億円の増加という計算が出されております。この減税によりまして景気がこれだけよくなるわけでございますが、さらにそれによる税収がどのくらいかということは、このモデルからは実は技術的な理由によりまして正確には計算できないわけでございますが、別途、公共投資を一兆円増額した場合に、それがどの程度税収にはね返るかという計算がございます。御参考のために申し上げますと、税収初年度に約千九百六十億円、次年度に五千五百六十億円、三年度目に七千六百億円、三年間合計いたしますと約一兆五千百億円の税収増になるという計算がございます。  ただ、公共投資を一兆円やりました場合と減税を一兆円やりました場合では、経済に与えます乗数効果と申しますか、刺激効果減税の方が小そうございますので、したがいまして、一兆円の減税をやった場合の税収増効果というものは、今申し上げました数字よりも若干ないしかなり下回るというふうに考えているわけでございます。
  13. 安倍基雄

    安倍(基)委員 どの程度下回るかということは、ある程度わかりますか。恐らく税収も二年目、三年目になると大分上がってくると思いますけれども……。
  14. 丸茂明則

    丸茂政府委員 その点でございますが、どの程度下回るかというのは、先ほどもお断り申し上げたのでございますが、正確にはなかなか、正確と申しますか、計算上出てまいりませんので、どの程度ということをはっきり申し上げる準備がございません。
  15. 安倍基雄

    安倍(基)委員 実は企画庁長官は前回の本会議で、GNP三百兆のうちの一兆円だから大したことはないのだという御答弁をされたわけでございます。それなら、企画庁長官に直接お聞きしなくちゃいけない問題かもしれませんけれども、何兆円減税ならば効果があると思っておられるか、この点について、御本人が答えられなければ事務当局がどう考えているか、ちょっとお聞きしたいと思います。
  16. 丸茂明則

    丸茂政府委員 一兆円の減税でございますと、経済に与えます乗数効果等から見まして、初年度で約四、五千億円というふうに考えられております。と申しますと、現在のGNP規模から見まして〇・二%程度ということになろうかと思います。したがいまして、長官がそういう御答弁をなさいましたのは、もちろん一兆円でございましても当然景気刺激効果はあるわけでございますが、それほど大きくないという趣旨で申されたのであろうというふうに考えます。  どのくらいということになりますと、そのときどきの景気情勢によりまして判断も変わってこようか、一義的にこれだけなら意味があるし、これだけでは意味がないということは言い切れないのではないかと思います。
  17. 安倍基雄

    安倍(基)委員 今回の減税論争で、もし企画庁長官あるいは総理が、減税してみても赤字がふえるばかりだ、余り経済成長しないんだというのであれば、私はそれを正直に言うべきであったじゃないかと思うのでございます。この点、私は、減税増税かということについての正確な経済予測というものが非常に大切であると思います。企画庁はこの数字について自信ございますか。  と申しますのは、企画庁は従来何回もモデルをつくってこられた。例えば五十七年度あたりの予測が非常に狂ったという話も聞いております。したがいまして、こういった企画庁のつくられているいわば予測、これに非常に自信がおありかどうかお聞きしたいと思います。
  18. 丸茂明則

    丸茂政府委員 過去におきまして私どもがつくりました見通しにつきまして、実績と大きな差が出たという点につきましては、もちろん与件が変わったとかいうような理由もございますが、事務局として大変責任を感じております。  御質問の、今申し上げたような数字一体自信があるかということでございますが、最初にも申し上げましたように、あくまでこういう計算は平均的な状況前提としてのことでございますし、減税の場合にいたしましても、景気が上向いてきているというような状況の中で行われる減税の場合と、それから景気下降局面にあるような場合の減税効果というのは、個人減税の場合、法人減税、いろいろございましょうけれども、違ってくるということがございますので、大変正確であるというふうに申し上げることはできないわけでありますが、現在私どもの持っているモデル、そう悪いモデルではないというふうに考えておりますので、大体平均的に言えばこういう程度のものであろうというふうに考えております。
  19. 安倍基雄

    安倍(基)委員 私も、モデルで推計することは非常に難しいということは十分存じておりますが、ただ、本当に減税をするのか増税をするのかという分かれ道に立ったときに、これはどうしてもやはり日本社会の英知を結集して、確信の持てる経済予測をしていただきたいということでございます。個々の減税項目、増税項目を決める前に、どうしても、全体の見通しなしにやることが一番困ると私は考えております。この点どうぞ、企画庁のみならず、政府全体としてこういったことに努めていただきたい。私は今企画庁を矢面にしたのでございますが、大蔵省もこの点を中心にしていかないと、この間野党の人からの質問で、内閣にそういうのをつくったらどうかなんという話も出てきているわけでございまして、これはやはり大蔵省の方々も、減税項目、増税項目を検討される前に、全体的に減税をしたらどうなんだ、増税をしたらどうなんだということを十分検討すべきじゃないかと思うのでございます。  じゃ、質問が次に移りまして、直接税三法の問題に移りたいと思います。  まず第一に、私は共産党の肩を持つわけではございませんけれども、今回の記帳義務の強化について、これは大型間接税への布石ではないかと警戒する者、あるいは推計課税が強化されるのではないか、立証責任が転嫁されるのではないかということをいろいろ懸念する向きも大分ございます。この点について大蔵省の見解を承りたいと思います。
  20. 梅澤節男

    梅澤政府委員 今回五十九年度税制改正で、いわゆる納税環境整備ということで、帳簿記録保存義務あるいは一定所得以上の事業所得者等について記帳義務をお願いしておるその考え方の基本にありますものは、先ほども申し述べましたように、申告納税制度の本来の考え方に立ち戻って、その考え方を確認すると同時に、所得税という基幹税でございますので、これに対する納税者理解信頼を高める上でこの制度化をお願いしておるわけでございます。世上いろいろ今安倍委員がおっしゃいましたような御批判があることを私ども承知しておりますけれども、この機会に明確にさせていただきたいことは、まず今回の所得税法改正法人税法改正による納税環境整備は、巷間伝えられるところの大型間接税の導入問題とは何ら関係はございません。  それから、今回の制度改正によって、徴税当局による推計課税が強化されるのではないかという御懸念が一部にございますが、これも当たっていないわけでございまして、課税処分というのは本来は実額課税で行わなければならないというのは、判例にも示された基本的な考え方でございますけれども、推計課税というのは、そういう実額課税が行い得ない場合、つまり記帳がないとか記帳の内容が不正確であるといった場合に、課税当局が合理的に所得金額を算定するその手段として、法律上認められておる制度でございますので、今回の記帳義務制度化の問題と推計課税の従来の考え方、基本的に変わるわけではございません。したがいまして、推計課税が強化されるであろうという御批判は当たらないということを申し上げておるわけでございます。  第三点の立証責任の問題でございますけれども、今回の問題は、先ほど申しましたように、記帳義務なり帳簿書類保存義務制度的に確認するという趣旨でございますので、現在の立証責任の配分の原則に変更を来すものではございません。立証責任の転換を図ろうとすることを意図しておるものではございませんし、今回の制度改正によってそういう法律効果があらわれるということでもございません。
  21. 安倍基雄

    安倍(基)委員 では問題を変えまして、今回テクノポリス関係のいわば特別償却の制度が導入されておりますが、いわゆるこの特別措置法第四十四条の二の一項で、「政令で定める規模」というのはどういうものでございますか。
  22. 梅澤節男

    梅澤政府委員 「政令で定める規模」といたしましては、具体的に十億円以上ということで定めることを予定いたしております。
  23. 安倍基雄

    安倍(基)委員 その理由は何でございましょうか。
  24. 梅澤節男

    梅澤政府委員 テクノポリスの政策的な意義については、あるいは通産省の方から御説明申し上げた方が適切かと存じますが、税制上の観点からいいますと、テクノポリスには二つの問題の側面があると私どもは考えておるわけでございます。一つは高度技術の産業を当該地域に誘致するという効果の問題と、もう一つは、地場産業のそういう高度技術への成長を促進するという側面でございます。後者の側面につきましては、すでに五十八年度税制改正で手当てをしておるわけでございますが、高度技術の誘致という観点からそういう投資促進を図るというのが、今回の五十九年度税制改正の一つの眼目になっておるわけでございます。私どもは、それが相当規模のものであるということでないと政策効果が期せられないという観点から、一定額以上の規模ということで十億円を予定しておるわけでございますが、この辺の産業政策上の観点については、通産省の方から御答弁があると存じます。
  25. 小林惇

    ○小林説明員 ただいま先生お尋ねの点でございますけれども、主税局長から御答弁申し上げましたとおり、テクノの政策は、先端産業の誘致という側面と、それから既存産業の先端技術産業化という二つの側面がございまして、五十八年度税制改正によりまして、地元のベンチャービジネスあるいは中小企業の育成のための基金造成ということが可能になりました。五十九年度税制改正では、残りの一つの課題でございます先端産業の誘致という点に焦点を絞って税制改正をお願いした次第でございます。
  26. 安倍基雄

    安倍(基)委員 実はテクノポリスなんかの場合に、地元の企業は下請をやっていきたいという希望も非常にございますし、現在十億円以下のものにつきましてはどういう特別措置をとっておりますか。
  27. 小林惇

    ○小林説明員 私どもの調査によりますと、工場の立地に際しましての設備投資額の平均というものがございまして、これは五十一年度から五十五年度までのデータの平均によりますと、八十億円程度ということになってございます。これは工場立地動向調査という調査に基づくデータでございますけれども、その中に占めますいわゆる中小企業の割合というものが、現実には二〇%強になってございまして、実際には、今回の十億円以上という歯どめを設けましても、地元中小企業の利用というものは可能であるというふうに我々は考えた次第でございます。
  28. 安倍基雄

    安倍(基)委員 大規模の企業を誘致するということはわかるのでございますけれども、現地の下請を希望する企業を考えまするならば、私、聞きますところによりますと、十億円以下の投資につきましては、一般の中小企業の投資促進税制によりまして、低い、もう少し割の悪い減価償却率を持っていると聞いておりますし、もしテクノポリスというものが非常に重要であるという観点に立ちまするならば、やはりもう少し小さな規模の投資についても考えていただけないか。これは将来の検討課題として考えていただきたいと考えております。いかがでございましょう。
  29. 梅澤節男

    梅澤政府委員 これは先ほども申し上げましたように、地場産業がそういう高度技術産業に成長していくための手だてというのは、五十八年度税制改正でテクノポリス地域については手当てをしておるわけでございます。一般的に中小企業の政策税制につきましては、機械の特別償却とかあるいは貸倒引当金の特例とか各種の制度がございますし、それから地域に限定いたしまして、例えば企業城下町等につきましては特別の償却を認めるとか、あるいは中小企業の構造改善計画に基づくものについては各種の償却制度を認めるとか、いろんな制度を活用するべく、現在の租税特別措置法にもいろいろな中小企業に対する制度がございますので、そういうものを御活用願うということでございます。  将来の問題につきましては、年々の税制改正におきまして、所管庁である通産省と私ども、いろいろ協議をしながら必要な手だてを講じてまいったわけでございますし、将来ともそういう方向で検討をするということでございます。
  30. 小林惇

    ○小林説明員 通産省といたしましても、五十八年度税制改正で講じていただきました地元の基金造成のための税制というものを活用いたしまして、地元中小企業の育成のためには万全の努力をいたしたいというふうに考えております。  それから、五十八年度あるいは五十九年度の一般会計の方で、例えば五十九年度でございますと、中小企業事業団の高度化事業というのがございますけれども、この工場集団化に係る例えば業種要件あるいは参加企業の要件というものにつきまして、テクノポリス地域の中小企業がこの工場集団化事業がやりやすいように制度改正をお願いしてございまして、そういった措置ともあわせまして、テクノポリス地域における中小企業の育成につきましては努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  31. 安倍基雄

    安倍(基)委員 次に、いわゆる寝たきり老人の問題でございますが、この問題につきましては柴田委員からも先日お話がございました。厚生省にお聞きしますが、寝たきり老人の総数、そして、実はこの問題は予算の分科会でも取り上げた問題でございますが、簡単に申しまするならば、特別養護老人ホームに収容されている人と自宅で看護されている人と、その差が余りに激し過ぎるのじゃないかという感じがするのでございます。特別養護老人ホームに収容されている人数、そしてそれに支出している国の経費、そして、いわば自宅で看護されている寝たきり老人の数字をここで教えていただきたいと思います。
  32. 古瀬徹

    ○古瀬説明員 全国で寝たきりのお年寄りは、大まかに申しますと四十万人いらっしゃいます。そのうちお宅で静養されている方が二十五万人から二十七万人、それから特別養護老人ホームに入って介護を受けておられる方々は約十万人でございます。それから病院におきまして治療を受けておられる方が五万人から七万人、全体合計いたしまして約四十万人となっております。  それから、特別養護老人ホームにおきましては、毎月その生活に要します経費を負担いたしておりますけれども昭和五十九年度におきましては千七百億余り、地方負担を加えまして約二千億円の支出をいたしております。  在宅のお年寄りの方々につきましては、家庭奉仕員のサービスでございますとか、特別養護老人ホームにおきまして一週間お預かりをする、こういった施策を講じておるわけでございます。税制上の措置といたしましては、お年寄りをお宅において介護されている方々につきましての特別の控除制度が設けられております。
  33. 安倍基雄

    安倍(基)委員 それでは、今自宅で静養している全員を国で面倒見るとすると、全部で幾らかかるということになりますか。
  34. 古瀬徹

    ○古瀬説明員 現在特別養護老人ホームにおいてお世話をしておりますのと同じ割合でいきますと、大ざっぱに十万人と三十万人でございますので、なお追加的に六千億程度の費用が必要と見込まれると思います。
  35. 安倍基雄

    安倍(基)委員 実は私の友人で、老人ホームに入れておった人を自分のうちへ引き取った、途端にいわば税金は全部否認されてしまう。年間七万円の控除増はあるけれども、老人ホームに入れておったときには何もかもやってもらって、今度引き取ったら、そういう状況になる。これはいささかアンバランスじゃないか。老人ホームに入っておる老人の場合には、年金ももらえば、またその子供たちは扶養控除ももらう。ところが、引き取った途端にそれが全部パーになって七万円しか差が出てこない。したがいまして、一遍入った老人は絶対出ない。各地におきまして、例えば土地を持っている農家の人々は、自分の土地を提供するからつくってくれ——建設費は国が見る、また運営費も全部見るという形でございまして、次々と志望者があるということでございます。これは余りアンバランスじゃないか。とするならば、むしろ控除面でもう少し考えるか、控除面で考えられないのであれば、その辺の支出を考えなければいかぬじゃないか。私は何もその担当者個人を責めておるわけじゃない。こういった形に福祉がなってきていることを、あるいは実情を把握すべきじゃないかと思うのです。  時間がございませんから、大臣が来られてからもう一度この問題と、別の問題を取り上げますけれども、午前中の質問はこれで終わります。
  36. 瓦力

    瓦委員長 午前十一時四十五分より再開することとし、休憩いたします。     午前十時五十九分休憩      ————◇—————     午前十一時四十六分開議
  37. 瓦力

    瓦委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  酒税法及び清酒製造業の安定に関する特別措置法の一部を改正する法律案物品税法の一部を改正する法律案及び石油税法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。  この際、竹下大蔵大臣より発言を求められておりますので、これを許します。竹下大蔵大臣
  38. 竹下登

    竹下国務大臣 三月二十一日の間接税三法審議の際、伊藤委員から御発言のあった物品税の課税範囲の問題について、補足的に御説明申し上げます。  一、委員から御指摘のあった物品税の課税範囲の拡大の問題については、重要な問題でありますので、当委員会における審議の状況を正確に税制調査会に報告の上、検討すべき課題であると考えます。  二、なお、今回御提案している課税物品の追加は、これまでの改正と同様、主として奢侈品ないし比較的高価な便益品や趣味娯楽品等を対象とするという考え方の枠内で行うものであります。
  39. 瓦力

    瓦委員長 伊藤茂君。
  40. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 ただいまの御発言は、私の提起した論点に対する回答としては不満でありますが、指摘した問題は当委員会における立法政策にかかわる大事な問題の一つとして、引き続き大いに議論を行い、さらに検討を深めていくこととしたいと思います。
  41. 瓦力

    瓦委員長 これより三法律案を一括して討論に付します。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。山岡謙蔵君。
  42. 山岡謙蔵

    ○山岡委員 私は、自由民主党・新自由国民連合を代表いたしまして、ただいま議題となっている酒税法及び清酒製造業の安定に関する特別措置法の一部を改正する法律案及び物品税法の一部を改正する法律案並びに石油税法の一部を改正する法律案の三案について、賛成の立場から討論を行うものであります。  昭和五十九年度税制改正につきましては、国民各層の強い期待にこたえ、所得税大幅減税を行うこととしておりまするが、その場合、現在の極めて厳しい財政事情を考慮すれば、財政状況をこれ以上悪化させることのないよう、社会経済情勢の変化に即した税制の見直し等によって、最小限、減税額相応の規模の増収措置を講ずることとせざるを得ないのであります。  今回の酒税、物品税の見直しは、このような税制改正の一環として行われるものであります。  まず、酒税につきましては、物価水準の上昇等に伴いその負担水準が低下してきていること等にかんがみ、従量税率の引き上げ等を行うことといたしたものでありまして、やむを得ないものと考えます。  その引き上げ幅を見ますると、現行の税負担率の低い酒類を中心に税率の引き上げ幅を見直すことを基本方針とし、各酒類の消費及び生産の態様に配意して、引き上げ幅について必要な調整がなされております。近年、所得水準の上昇、平準化等を背景に酒類消費が多様化、均質化してきていることを勘案すれば、酒類間及び級別間の税負担格差の縮小を図ることが望ましいと考えられます。このような見地から、今回の改正案は適切かつ妥当なものと認められます。  次いで、清酒製造業の安定に関する特別措置法の改正について申し上げます。  清酒製造業におきましては、第四次近代化計画の実施とともに、経営基盤の一層の安定に努めることとしておりまするが、このような清酒製造業の自助努力を実効あらしめるため、今回これを改正し、日本酒造組合中央会の事業範囲の拡大等を図ることは、まことに時宜を得たものと思われます。  次に、物品税につきましても、最近における消費の実態及び課税物品相互間の負担の権衡等にかんがみ、課税対象の追加及び税率の引き上げ等を行うこととしたものであり、やむを得ない措置と考えます。なお、急激な負担増を避けるため、新規課税物品については必要な暫定軽減措置を講ずる配慮も行われております。  さらに、石油税につきましては、原油等に係る税率の若干の引き上げとともに、いわゆるLNG等の液化ガスを含むガス状炭化水素を課税対象に追加するものでありますが、このことは、現下の厳しい財政事情の中で、石油及び石油代替エネルギー対策の歳出内容を厳しく見直した上で、同対策の財源の安定的な確保を図るための必要かつやむを得ない措置として許されるものと認めます。  以上のとおり、三案に対し、私は全面的な賛成の表明をいたしまして、討論を終わります。(拍手)
  43. 瓦力

    瓦委員長 渋沢利久君。
  44. 渋沢利久

    ○渋沢委員 ただいま議題となりました酒税法及び清酒製造業の安定に関する特別措置法の一部を改正する法律案物品税法の一部を改正する法律案石油税法の一部を改正する法律案の三案に対し、日本社会党・護憲共同は断じて反対であるということを表明いたします。以下、その理由を述べます。  言うまでもなく、大幅減税の実現は、長い間の大きな願望であり、また、過般の総選挙における政府並びに各党の国民に対する共通の公約であると同時に、この減税は、大蔵大臣も認めておりましたように、増税なき減税として国民理解され、約束されたものであったのであります。したがって、この増税三法の提案それ自体、政府並びに自由民主党、新自由クラブの国民に対するいささかの恥じらいも忘れた重大な公約違反なのであります。この三法は、まずこのような欺瞞的な性格を持って登場しているという事実を第一に指摘しなければなりません。  第二に、このような背景で立案された三改正案の内容は、その論理性を著しく欠くという点において共通しておるのであります。例えば酒税において、今回の改正の最大の目的として酒類間格差の縮小をうたいながら、酒類間では、大衆酒でありながら高級ウイスキー同様の高率課税で批判のあるビールをさらに大きく引き上げて、一層の格差拡大を図るかと思えば、極めて不十分な資料を利用して消費の均質化傾向をうたいとげ、しょうちゅう三五%アップに見られるように、従来低率に抑えることに努めてきた大衆酒の大幅引き上げの根拠としておきながら、一方清酒だけは、清酒業界の要望を入れて大衆酒の低率維持を図るなど、まことに一貫性を欠く改定となっているのであります。現行酒税法において抜本的な見直しを求められている課題のあることは事実でありますが、今回の改正は、減税財源捻出の帳じり合わせのために、取りやすいところから取るという、無責任きわまる改定と断ぜざるを得ないのであります。  また、物品税の改定について指摘を省くことはできません。そもそも戦費調達のための臨時的戦時立法としてスタートした物品税は、戦後ぜいたく品課税として政府から説明されてまいりました。しかるに政府は、たび重なる改正を通じて、今や生活必需品にその課税範囲を拡大しているのであります。のみならず、政府税調は、サービスを含め、事実上一般消費税、大型間接税と同様のものとする趣旨答申をするに至っているのであります。これは明らかに憲法八十四条に反するとの我が党委員の強い指摘に対して、政府は何ら説得的見解を示し得なかったのであります。  さらに、石油税法改正について言うなら、既に過ぐる大蔵委員会の数回にわたる附帯決議が示しますように、石油関係諸税については、制度が複雑になっているため、その合理的なあり方について検討を急ぐとされながら、何らの検討もなく推移しており、石油対策財源として創設されながら八〇%を道路整備に充てている現状の中で、原油価格の値下がりと需要の減退が原因で生じた税収不足を、安易に税率引き上げによって解決しようというのは、何ら問題の解決にはならないと言わざるを得ないのであります。  以上述べたるがごとく、この増税三法案の決定は、税制改正の道筋をゆがめ、税制に対する国民の不信感と重税感を高めるだけであります。また、各種公共料金の値上げと相まって、内需の中心である個人消費にマイナス作用を及ぼすことは必至であり、その責任は重大と言わなくてはなりません。  河本経企庁長官の、一兆円減税をして一兆円増税をするなどという、こんなややこしいことはやめてしまった方がいいという発言を、その言葉のまま、中曽根内閣と自由民主党並びに新自由クラブにお返ししなければなりません。  採決に当たり、いささかの所見を述べて、討論といたします。(拍手)
  45. 瓦力

    瓦委員長 柴田弘君。
  46. 柴田弘

    柴田(弘)委員 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりました間接税の三法案に対して、反対の立場から討論を行います。  最初に、私は中曽根内閣の政治姿勢を厳しく糾弾するものであります。  議題となっている酒税、物品税の増税は、所得税減税の見返りとして国民に強要をされております。大衆増税は、中曽根総理がさきの総選挙において、臨調答申を守り、増税は行わないとしていた公約を一方的に破棄し、減税に対する国民の期待を大きく裏切る上に、政治不信を倍加させるものであります。同時に、大衆増税が物価の上昇をもたらし、個人消費を萎縮させ、景気に水を差すことは、減税規模景気浮揚に役立つものとしていた与野党合意に全く反し、議会制民主主義を後退させるものであります。  しかも我が党は、社会、民社、社民連の各野党とともに、極めて現実的な予算の共同修正を要求しております。中でも酒税、物品税、石油税は、増税撤回を求めた結果、自民党から、酒税、物品税については関係委員会において審議し、その結論に従うとの回答を得ましたので、当委員会では粘り強く増税の見送りを要請してきたのであります。しかし、政府・自民党は我々の切迫した現実的要求にさえも全く消極的な姿勢であり、この事実はまさしく反国民的と言わざるを得ないのであります。  また、政府・自民党が反国民的姿勢をとり続けることは、中曽根総理が今国会において、私の内閣の間は大型間接税の導入はしないと公約をしていることに対しても、国民信頼を失うものであります。もし中曽根内閣が大型間接税の導入見送りを本当に公約するのであれば、「増税なき財政再建」の方途と手順を明確かつ具体的に提示すべきであります。  次に、酒税の増税は、五十一年度以来ほぼ三年ごとに強行されており、これでは三年ごとの増税が定型化されるばかりか、他の間接税と比べても異常なものと言わざるを得ないのであります。また、増税の内容も、しょうちゅう、ワイン、ウイスキーの二級酒など、近年の売れ行きが好調なものをねらい撃ちする上に、ビール等の高負担を突出させるなど、酒税間の格差を際立たせるものであります。  この増税傾向は、大衆課税の強化を鮮明にするとともに、製造、販売を問わず、業界全体の活力を著しくそぐものであり、到底認めがたいものであります。  石油税の増税は、この税制度を従価税制としたことによって、原油値下がりがもたらした税収の落ち込みを穴埋めするための措置であります。  石油税の創設時を振り返りますと、我々の反対を押し切り、従価税制を強行したのは政府・自民党であります。したがいまして政府は、石油税についてはまず不明を反省するとともに、他の石油関係税もあわせて、抜本的な見直しから着手するのが本筋であります。特に、安易な増税を行う前に、原油の需給見通し、備蓄率の洗い直しを初め、エネルギー対策の再検討を行い、将来展望を明確にすることを優先させるべきであります。石油ガスなどを課税対象に加えることは、エネルギーコストの上昇による物価上昇を抑えるためにも見送りを強く求めます。  物品税は、これまで奢侈品課税、生活必需品非課税を原則としておりましたが、今回の増税によって、必需品的な自動車の税率が奢侈品である宝石類の税率を上回ることになり、また同種の物品でも課税と非課税に区別され、その基準が明確にされないでいることなど、物品税の体系を混乱させております。  こうした物品税の課税対象の拡大と税率の引き上げは、大型間接税の導入に一歩踏み出すものと指摘せざるを得ません。最後に私は、大型間接税の導入には強く反対することを申し上げまして、反対討論を終わります。(拍手)
  47. 瓦力

    瓦委員長 米沢隆君。
  48. 米沢隆

    ○米沢委員 私は民社党・国民連合を代表いたしまして、ただいま議題となっております酒税法及び清酒製造業の安定に関する特別措置法の一部を改正する法律案物品税法の一部を改正する法律案並びに石油税法の一部を改正する法律案に対し、一括して反対の討論を行います。  我が党は、かねてより政府・自民党に対し、経済運営をこれまでの縮小均衡型から拡大均衡型へ転換するよう提唱し、その第一歩を踏み出すべく、来年度予算を「増税なき財政再建」を目指す拡大均衡型予算とするよう強く主張してまいりました。しかるに政府・自民党が、来年度予算においても減税効果を相殺する増税の強行、公共事業費の削減、大幅投資減税の見送りなど、景気回復に逆行する措置を講じ、既にその破綻が立証された縮小均衡型経済運営をなおも踏襲しようとしていることは極めて遺憾であります。このような経済運営によっては、速やかな内需主導型の景気回復も、我が国経済の潜在成長力の顕在化も望めず、それに伴う税収の伸び悩みが「増税なき財政再建」を不可能とし、早晩大増税が余儀なくされることは必至と言わなければなりません。かかる政策選択は、国民の真の要求に全く反するものであることに政府が思いをいたし、早急に経済運営を転換するよう強く求めます。  さらに、中曽根総理が昨年の総選挙の際に、増税を行わないと公約したにもかかわらず、減税財源確保の名のもとに、減税総額を上回る、国、地方合わせて約一兆三千億円の増税を行おうとしていることは、到底容認できません。減税との抱き合わせであれば、酒税、物品税などの大衆課税並びに法人税、石油税などの企業課税の強化を行っても増税ではないとの中曽根内閣流の解釈は、国民を欺く詭弁と言わなければなりません。中曽根総理は、減税減税と言いながら、増税は増収として逃げておられるのでありますが、総理が何と弁解されようとも、約一兆円もの増税は、国民の目からは増税以外の何物でもなく、中曽根内閣最大の公約たる「増税なき財政再建」の方針は、既に五十九年度から大きく崩れたと断ぜざるを得ません。  特に、我が党を初めとする野党三党が、酒税、物品税の増税は家計を圧迫し、税負担の不公平を拡大するので、少なくとも実施期日を大幅に繰り延べるよう強く求めたにもかかわらず、政府・自民党がこれを全く無視したことは極めて遺憾であります。  また質疑を通じて明らかになりましたように、今後なし崩し的な物品税の課税対象の拡大路線は、結果的に大型消費税への布石であり、断じて許しがたいものであります。  財政再建を初めとする国家的課題に取り組むに当たっては、国民理解と協力が十分得られるような、確固とした信頼に足る政治姿勢が何よりも肝要であることを、政府は強く銘記すべきであります。我が党は、来年度予算を契機として、政府が今後、増税による財政再建路線へ一層突入していかぬよう強く要請するとともに、国民への公約違反について、政府に反省を促すものであります。  なお、我が国にとっての重要課題であるエネルギーの安定供給確保のための財源調達については、安易な増税に走る前に、エネルギー政策の重点化、効率化を徹底するとともに、一般会計に留保されている石油税収約五千億円を速やかに石特会計へ返還すべきであります。今後、政府が石油税創設の本旨に照らし、早急に石特会計へ返還するよう強く求め、私の反対討論を終わります。(拍手)
  49. 瓦力

    瓦委員長 箕輪幸代君。
  50. 簑輪幸代

    簑輪委員 私は、日本共産党・革新共同を代表し、酒税法等一部改正案物品税法一部改正案及び石油税法の一部改正案、以上いわゆる間接税増税三法案について反対の討論を行います。  反対する第一の理由は、これらの間接税を今回の減税の見返り財源として、抱き合わせ増税しようとしていることです。  政府は、総選挙中の、増税はしないという公約を投げ捨て、酒税、物品税、石油税など、逆進性の強い間接税を初年度四千二百二十億円、平年度ベースで五千四百十億円増税し、増税約一兆円の半分以上を賄おうとしています。これは、所得の低い者ほど減税を台なしにし、かえって増税となり、しかも減税に何ら浴しない生活保護世帯や母子家庭など、最も生活の困難な世帯からももぎ取ろうとするやり方で、断じて許せません。税負担感がないからと、安易にこれら間接税増税を行うことは、税の不公平、不公正をも拡大することになり、著しく不当なものです。  第二に、酒税の約二割引き上げは、最も安易な大衆課税の強化である点です。家計調査によっても、酒類消費は収入による格差はほとんどなく、税の逆進性は酒税については特に顕著です。  さらに、その税負担率は、大衆酒であるビールを例にとると、国際比較でも飛び抜けて高いばかりか、今回値上げで約半分が税金に取られようとしています。これは、たとえ酒が特殊な嗜好品であり財政物資であるとしても、もう限界を超えるのではないでしょうか。また、今回の増税は、一部の酒類を除いて大衆酒ほど大きい増税率となっており、これでは大衆負担をますます強めるもので、納得できません。  清酒醸造業保護育成策も、今回の安定法による転廃給付金事業の再開が深刻な今日の業界の実情を救うのに役立たず、かえって多数の地方の造り酒屋を切り捨てる懸念が濃いもので、賛成しかねます。  第三に、物品税増税の問題です。  自動車関係税への税率アップと、スポーツ用品、電気製品を中心とした急成長商品への課税対象拡大は、若者を初めとした消費者に負担を強制するものです。今回、全自動でない洗濯機にまで課税するなど、生活必需品への課税拡大は、到底納得できるものではありません。また、これらの課税対象拡大は、OA事務関係機器への対象拡大の検討にあらわれているように、従来の物品税の性格を変質させ、いずれ課税ベースの広い間接税として大型間接税導入に道を開くもので、断じて許せません。  第四に、平年度千三百四十億円の石油税増税についてです。  これも、いずれ製品価格に転嫁され、最終的には消費者負担となり、しかも元売会社の恣意によりガソリン、軽油、灯油など一般消費者用の生活関連石油製品に偏って転嫁される可能性が強いものです。さらに今回の石油税増税は、成功払いの石油探鉱・開発投融資や、実情に合わない過大な国家備蓄目標の達成など、安保体制下の総合安保政策、米系メジャー、日本の石油大企業などのための石油政策を遂行するもので、到底賛成できません。  私は、政府のこれら大衆増税を財源とするまやかし減税ではなく、軍事費や大企業優遇の不公平税制を是正して財源を確保した二兆円減税の実現を強く要求し、反対討論を終わります。(拍手)
  51. 瓦力

    瓦委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  52. 瓦力

    瓦委員長 これより採決に入ります。  まず、酒税法及び清酒製造業の安定に関する特別措置法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  53. 瓦力

    瓦委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  次に、物品税法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  54. 瓦力

    瓦委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  次に、石油税法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  55. 瓦力

    瓦委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  56. 瓦力

    瓦委員長 ただいま議決いたしました三法律案に対し、越智伊平君外三名より、自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合四派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  この際、提出者より趣旨の説明を求めます。伊藤茂君。
  57. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、提案の趣旨とその内容を簡単に御説明申し上げます。  御承知のとおり、三法律案につきましては、慎重に審議を進めてまいりましたが、これらの審議の中で委員からさまざまな問題について議論が展開されました。この附帯決議案は、これらの議論などを踏まえ、今後、政府において検討あるいは配慮を要する事項を取りまとめたものであります。  なお、個々の事項の趣旨につきましては、案文で尽きておりますので、案文の朗読により趣旨の説明にかえさせていただきます。     酒税法及び清酒製造業の安定に関する特別措置法の一部を改正する法律案物品税法の一部を改正する法律案及び石油税法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について配意すべきである。  一 酒税制度について、酒類の消費の実態等を踏まえ、酒類間の税負担格差の縮小、級別制度等の問題について、さらに検討するほか、酒質の一層の向上を図るための方策を検討し、良質の酒が供給されるよう努めること。  一 清酒が伝統ある民族酒であることにかんがみ、清酒製造業に対し、原料事情の特殊性、業態の特異性に留意しつつ、指導・育成に努めるとともに、その基本的振興対策について引き続き検討すること。  一 今回の酒税の改定が小売価格の不当な値上げにつながらないよう十分に指導するほか、公正な取引を図るため、必要に応じ所要の措置を講ずるように努めること。  一 物品税の基本的性格及び課税のあり方について、不断の検討を行うとともに、課税範囲、税率のバランス等に配意するよう努めること。  一 石油に対する課税は複雑になっているので、社会経済情勢等の推移に即応しつつ、そのあり方については、使途を含め幅広い観点から検討すること。  一 わが国経済国民生活にとってエネルギーコスト低減が重要な政策目標であることに十分配慮すること。 以上であります。  何とぞ御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  58. 瓦力

    瓦委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  お諮りいたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  59. 瓦力

    瓦委員長 起立多数。よって、三法律案に対し附帯決議を付することに決しました。  本附帯決議に対し、政府より発言を求められておりますので、これを許します。竹下大蔵大臣
  60. 竹下登

    竹下国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨に沿って配意してまいりたいと存じます。ありがとうございます。     —————————————
  61. 瓦力

    瓦委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました三法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  62. 瓦力

    瓦委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  63. 瓦力

    瓦委員長 午後二時より再開することとし、休憩いたします。     午後零時十七分休憩      ————◇—————     午後二時開議
  64. 瓦力

    瓦委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  法人税法の一部を改正する法律案租税特別措置法の一部を改正する法律案及び所得税法等の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。正森成二君。
  65. 正森成二

    ○正森委員 私は、先日、納税環境整備という関連について、若干の時間、質問をさせていただきました。本日は、その問題にも間接的には関係がございます一、二の問題について質問をさせていただきたいと思います。  それは、最近報道機関で報道されております福島交通株式会社、福島交通不動産株式会社をめぐる問題であります。  この問題につきましては、私は既に、昭和五十七年四月七日に当大蔵委員会で、主として日債銀の融資が異常融資ではないかという観点から質問をさせていただきました。その私の質問に対して、当時の宮本銀行局長、現在でも銀行局長ですね、こう答弁されております。「検査におきましては、その貸出金の内容を十分チェックいたしております。したがいまして、いま御指摘の融資につきましても、私どもといたしましては、具体的にその計画の中断というか、やや先行き暗くなったくらいの時点から、十分貸出金内容につきましては掌握いたして、かつ当該貸出金についての回収方について厳重な警告もしておりましたし、」云々と、こう言っておられます。そして続いて「検査結果につきまして、特に与信姿勢の厳正化であるとか、あるいは融資の審査管理の充実強化であるとか、あるいはややグレーがかった貸出金についての事後管理について十分な注意をするよう、厳正な示達をいたしておるところでございます。」というように述べておられるわけであります。  そこで、その関連で伺いたいのですが、実は、決して厳正に行われておらず、少なくとも相手方の福島交通や福島不動産は極めてずさんな経理をやっているのではないかというように疑われる点が十分にあるわけです。  ここに、福島交通株式会社の第百十期、昭和五十七年十月一日から五十八年九月三十日までの有価証券報告書があります。この有価証券報告書は極めて異常でありまして、公認会計士の海老美与治、この方の監査意見は、新聞でも報道されておりますようにまことに異様なものでありまして、こうなっております。「福島交通不動産株式会社に対する長期貸付金ほかの債権五百七十六億六千二百万円については、損益計算書注記1に記載の事情の発生により、会社は貸倒引当金を計上する必要性はないものと判断し、前期末における当該債権に対する貸倒引当金残高十八億一千七百万円を取崩して特別利益に計上している。当事業年度において主力銀行を含め当該債権の付替のための具体的作業を実施しており、基本的には関係機関の同意を得ているとの説明を受けたが、決算日現在においては、当該債権および担保物件の付替は未済であり、かつ、今後の実施時期も未定である等、現時点ではその実現の確実性に関する文書的証拠を入手できなかった。」こうした上で、「事業年度経営成績を適正に表示しているか否かの意見の表明を差控える。」という異例の監査報告になっております。  そして、ここで言われておるところの注記事項ではどうなっているかといいますと、有価証券報告書の二十六ページに書いてありますが、「福島交通不動産株式会社に対する長期貸付金及び他の債権については、昭和五十四年九月期より毎期継続して貸倒引当金の設定を行なってきたが、当事業年度において経営改善計画の一環として、当該債権については金融機関から福島交通不動産株式会社への直接融資に振替えるべく、具体的作業を実施し、基本的に関係機関の同意を得たため、当該債権についての回収不能の虞れはなく前期末残高十八億一千七百六万二千円を取崩して計上している。」こうなっているのですね。  この問題について有力新聞はいずれも報道いたしましたが、それを受けた後で、三月二十四日付の福島民報、これは福島で発行されておりまして、社長は同じ小針社長でありますが、その小針社長は、自分が主宰しておる民報の中で、こう言っておるのですね。「福交の有価証券報告書も問題なし」、こうしまして、「これはすでに解決ずみで海老美与治公認会計士も大蔵省の承認も得ており、問題がないとしていることがわかった。」「決算時に銀行の同意書が届かなかったため、公認会計士の報告となったものだが、その後日債銀の融資振り替えの同意が得られ、大蔵省証券局でも「報告書の内容は問題ない」とみており、公認会計士は「銀行、大蔵省の双方から了承を得たもので問題にはならない」と述べている。」こう書いているのですね。  果たしてこれは本当でありましょうか。これが本当であるということになりますと、諸新聞の報道は誤っているということになり、あるいは公認会計士の意見を留保するというような異例の監査報告はその必要がなかったということになるわけですね。この問題について、証券局並びに銀行局の明快な答弁をお願いしたいと思います。これは場合によっては証券取引法違反の問題や、同法に基づく訂正とか効力の停止の問題も起こってくると思いますので、正確に答えていただきたいと思います。
  66. 佐藤徹

    佐藤(徹)政府委員 お答えいたします。  有価証券報告書の仕組みについては今さら申し上げるまでもないかと思いますが、一たん増資等の行為がありまして届出書を提出いたしますと、事後毎期報告書を提出することになっておりますが、この報告書は一義的には公認会計士の監査によって担保されておりまして、私どもの局として直接その報告書は、その提出された時点で正当であるか否かということを判断する立場にはございません。したがいまして、御指摘の新聞報道、詳細には私まだ読んでおりませんし、一体どういう言葉で御本人が記者に話されたのか、その辺の事情はよくわかりませんけれども、少なくとも承認をしたとか認めたとか、そういう段階が存在する手続行為ではございません。
  67. 正森成二

    ○正森委員 そうすると、この民報は事実に反することを書いておるということになると思いますが、銀行局でもよろしいし国税庁でもよろしい、どちらでも結構ですが、私が二年前に非常に問題があるということを指摘いたしまして、今後厳正に見ていくという意味のことを言われたわけですが、そういう観点からこの問題をどう見ておられるか、お答えを願いたいと思います。
  68. 宮本保孝

    ○宮本(保)政府委員 この問題は正森先生からもかねがね御指摘いただいておりまして、私どもといたしましても重大関心を持って、検査の都度厳正な注意をしてきたところでございます。  本件に関しましては、実はそういうような振替のような事実がもしもあるとすれば、銀行としては承服できないということをかねがね申し入れているようでございまして、それにもかかわらず今回銀行の了承を得ることなくそういう措置がとられたということを聞いております。そういうことに関しまして、私どもといたしましてもまことに遺憾である、こう思っております。
  69. 正森成二

    ○正森委員 銀行局の答弁は、事後的に調べる証券局よりも一歩進んで、日債銀はそういうことはいたしておらないということを確認されたと思います。それにもかかわらず莫大な借り入れを行い、連続赤字のものが、同じグループの中の福島交通不動産への貸し付けが焦げついておるということで貸倒引当金を充てておる。十八億やそこら充てておったのでは問題にならないぐらい少ないのです。それなのに、それをさらに取り崩して利益とみなして決算するということになれば、まさに事実に反する粉飾決算であります。  国税庁に伺いたいのですが、そういうことを福島交通は行い、そして問題の福島交通不動産をお調べになりましたら、この前の質問のときに同僚委員からも質問があり、基本的にはお認めになりましたが、特別事業費ということで七年間にわたって五十億円の使途不明金を出しておる、こういうことが報道されておるのです。そのほかに貸付金という名目で莫大なお金が貸し付けられておる。そのうち新聞の報道によれば、遺憾ながら政治家の名前も出てまいりまして、お亡くなりになりました中川一郎氏に、二年前に最終段階で少なくとも四千万円、総額については故人の名誉のために発言を控える、そして石原慎太郎氏には中川氏を通じて五千万円、これははるか前の都知事選挙のときだそうでありますが、出されておるということになっておるわけであります。それ以外にも某有力政治家には元金だけで一億円で、利息を加えれば二億円になんなんとするという報道もあります。  そこで、あなた方はかねがね所得税法でも法人税法でも、質問検査権を行使していろいろのことを調べておられる。質問検査権に対して正当に答えないという場合には、御承知のように一年以下の懲役もしくは二十万円以下の割金という刑事犯罪にもなり得るわけです。そしてわずか資本金四千万円の会社が、大胆不敵にも特別事業費という項目を設けて五十億円ものお金を使いながら、それを使途不明金だというようなことを言っておるとすれば、これはもってのほかで、この解明は正確になされなければならない、こう思うのです。あなた方は質問検査権を行使してどれだけ真相に迫られたのか。それに対して、報道によりますと、このお金はほとんど社長が一人で決済をして、社長がお金を出させて、社長が自分みずから配り、あるいは自分の会社に呼んで配ったということになっているので、真相を知っている一番の有力者は小針社長であると思われますが、その小針社長に対してどのような態度で接せられたのか、御報告を願いたいと思います。
  70. 岸田俊輔

    ○岸田政府委員 御指摘の法人に関します調査内容等につきましては、具体的な問題でございますのでお答えを差し控えさせていただきたいと思いますが、御指摘の使途不明金の問題につきましては、私ども非常に頭を悩ましている問題でございます。  ただ、御指摘のように、私どもの税務調査は、質問検査権というものに基づいてはおりますけれども、大量処理でもございますし、また納税者の協力も得なければいけないということで、通常は任意調査ということを基本にしてやっておるわけでございます。そういった結果、納税者がどうしてもという場合にはなかなか解明できないのが実情でございまして、総体的な面から見てまいりますと、全体で私どもが昨年度発見をいたしました使途不明金は四百二十八億でございますが、残念ながら使途の解明ができましたのは八十七億で、約二〇%というのが現状でございます。
  71. 正森成二

    ○正森委員 使途不明金というのは毎年大体三百億円台ないし四百億円発生している。これは調べでわかった分でですね。そのうち、今のお答えによりますと、約二割程度が解明できただけであるということです。それを当てはめれば、五十億円のうち少なくとも十億円くらいは解明してなければならないのですが、これも新聞報道によりますと、約一億二千万円ぐらいが社長の個人的に使われたものということで、九千万円ぐらいが追徴金その他で出されたというだけで、多くは解明されていないのですね。法人税法によりますと、青色申告の取り消しという規定があって、事実が明らかになっておらない、全体として帳簿の正確性を疑うという場合には、百二十七条等で取り消しができることになっておりますが、本件のケースは、資本金の額との対比において、明らかに青色申告を取り消すべき事態であると思いますが、その点はどうですか。
  72. 渡辺幸則

    渡辺(幸)政府委員 恐縮でございますが、ちょっと調べておりますので、後から御返事申し上げます。
  73. 正森成二

    ○正森委員 恐縮でございますが調べておりますと言いますから、場合によったら、調べが済む前にほかの質問をしてお待ちしてもいいのですけれども、こんな明らかなことで、いいですか、資本金何百億で取引が何兆円もある商社じゃないんですよ。たかだか四千万円の会社が五十億円も使途不明金をつくっておるということになれば、帳簿の正確性なんて疑いがあるというのは当たり前じゃないですか。そうすれば、法人税法の規定でも、百二十三条の一の二及び百二十七条の一の三等で取り消しということに、通常はなるのでしょう。それも考えてみなければいかぬ、私がわざわざ質問通告をしておっても。一方ではそういうことをやりながら、二百万、三百万という零細の業者に対しては記帳義務を課して、記帳が大蔵省令に従っておらなければ推計課税もやむを得ないというような、納税環境整備なんかやるといったって通用しないじゃないですか。これは法人で青色でやっているんじゃないですか。そうでしょう。  そこで、調べるというならよく調べてからお答えいただいたらいいと思いますが、運輸省来ておりますか。——この有価証券報告書を見ると、この会社は地方のバス関係の会社ですか。それで運輸業としての補助金を五十七年から五十八年は約十億円、その前年は十一億円ほどもらっているんですね。これは一体国から幾らで、地方からはどういうぐあいに、どういう名目でもらっているのか答弁をしてください。
  74. 服部經治

    ○服部説明員 お答え申し上げます。  私、鉄道の関係を所管しております民鉄部長でございますが、福島交通につきましては、地方鉄道近代化設備整備補助金といいますものと、踏切の整備補助金という二種類の補助金が、五十七年度においては支出されております。  まず、近代化設備整備補助金でございますが、五十七年度におきましては、国からは二千四百九十万円でございます。これは地方公共団体と折半して補助するものでございますので、地方公共団体もまた同額の二千四百九十万円を支出いたしております。それから踏切の方でございますが、五十七年度におきましては国から三百八十三万円、それから地方公共団体からは二百五十五万円、こういうことで、国、地方全部合わせまして五千六百二十万円の補助金が交付されております。  このほかに、バスの関係の補助金がございますが、ちょっとかわりまして御答弁申し上げます。
  75. 豊田実

    ○豊田説明員 お答えいたします。  バスの補助金の場合は、国が事業者に直接交付するという仕組みではございませんで、関係の県が地域の生活路線を維持するために関係の事業者にまず交付する、その県が交付する補助金の交付額の二分の一に相当する額以内の額を国が県に補助するという仕組みになっております。  実績の数字でございますが、五十七年度におきましては、国は福島県に対して二億九千万ほど、それから五十六年度、やはり国から福島県に対して、福島交通株式会社分として四億一千百万円補助をしております。
  76. 正森成二

    ○正森委員 だからそれは、地方公共団体の二分の一以内でということだから、地方公共団体は少なくともその倍以上を補助金で出しておる。したがって、それぞれの年度が十一億円になってみたり、十億円になっておる、こういうことですね。——今うんうんとうなずきましたから答弁は求めませんけれども、そのとおりだと思うのですね。そうすると福島交通というのは、こういうように補助金を持っておる。その福島交通が、社長も同じ、そして同族といいますか、同じグループである福島交通不動産というのにこれまた何百億円も貸し付けておる。その福島交通不動産というのは、五十億円の使途不明金を出し、貸付金を放漫に出し、それが政治家に献金をされておる、こういうことになるのですね。  そうすると、法務省来てますか。——法務省に伺いたいのですが、政治資金規正法の二十二条の三、一、あるいは六によりますと、国から、あるいは地方公共団体から補助金を受けておる会社というのは政治献金をしてはならぬことになっているのですね。そういうことをやったり、受けたりした場合は、二十六条の二で、三年以下の禁錮もしくは二十万円以下の罰金になっておる、こういうことになるわけであります。この場合には、もちろん福島交通が補助金を受けておって、福島交通不動産は補助金を受けていないから構わないんだという理屈で福島交通不動産が政治献金をしているというように思いますが、我々が全体の資金の流れを見れば、明らかにトンネル的に使われておって、実体は福島交通の政治献金と認めてよい場合もあり得ると思います。それが第一点。  それから第二点に、福島交通不動産に限ってみましても、わずか資本金四千万円の会社が何億という貸付金を政治家等に行い、あるいは少なくとも七年間に五十億円の使途不明金を出し、それについて使途を十分に明らかにすることができない。一部は明らかになったようですが、ということになれば、これは商法四百八十六条に言う取締役がその任務に背いて第三者の利益を図ったということに明らかに該当して、七年以下の懲役もしくは三百万円以下の罰金の犯罪を明白に構成する疑いがあるというように言わなければならないと思うのです。  そこで、順次伺いたいと思いますが、まず法務省刑事局に、一般的にそういう疑いがあるかどうか、それについてお答え願いたい。  第二番目に、銀行局ないし国税庁に、刑事訴訟法二百三十九条によれば、官公署の役人は、「犯罪があると思料するときは、告発をしなければならない。」という義務が課せられているのですね。我々は明らかにこれは商法の特別背任その他の犯罪を構成する疑いがある、こういうぐあいに思うのですが、それについてはどう考えているのか、あわせて各官庁から答弁していただきたいと思います。
  77. 北島敬介

    ○北島説明員 お尋ねの会社につきまして、御指摘のような報道がなされておるということ、それから政治資金規正法で御指摘のような規定があるということはもちろん承知しておりますが、何分、具体的な犯罪が成立するかというお尋ねですので、その辺は私どもまだ十分事実関係を把握しておりませんし、あるいは仮定の問題というふうなことでお答えするのはちょっと適当でないというふうに考えておりますので、お答えは差し控えさせていただきたいというふうに考えております。
  78. 岸田俊輔

    ○岸田政府委員 先生御指摘のように、調査や公務執行の途上におきまして犯罪行為を確認いたしました場合には、告発しなければいけないということになるのかと思います。ただ私ども、税務調査はいわゆる税務の調査が主眼でございまして、その他の派生の事実につきまして、それが犯罪行為に当たるかどうかというところまで確認をする段階がないのが通例でございますので、実態から申しますと、なかなかそういう告発はできないというのが実情でございます。
  79. 正森成二

    ○正森委員 具体的に捜査しなければ犯罪になると言えないというのは、これは法務省の刑事局刑事課長答弁のとおりだと思いますが、少なくとも四千万円の資本金の会社が五十億円もの使途不明金を出して、その使途を明らかにしないというようなことになれば、これは取締役が任務に背いて自己もしくは第三者の利益を図る、あるいは会社に対して損害を与えるという可能性のあることは明らかではないでしょうか。  新聞の報道によりますと、ある新聞に対して小針社長は、これは自分の懐には入れていない、公に使っている、こう述べているのですね。別の新聞には、「保有土地の値上げを図るためには」——百七十万坪持っているのですね。これは簿価一万円にしかならないわけですが、「保有土地の値上げを図るためには長期的な環境整備を図る必要があり、広く関係方面に工作資金として使っている」と説明しているというのです。そうなれば、これは自分のために使っているんじゃない、公のために使っている、土地の値上がりのために、長期的な環境整備を図るために関係方面に工作資金として使っているということになれば、これはだれが考えても、地方自治体やあるいは中央政界、あるいは官界に工作資金として使っているということをみずから認めているものにほかならないのですね。そうなれば、これは単に取締役の特別背任というにとどまらないで、場合によれば、それ以外の刑事犯罪になる可能性すら十分にあり得ると思うのですね。  私は法務省に、こういう問題について重大な関心を持って、そういう姿勢でごらんになるかどうかについて伺っておきたいと思います。
  80. 北島敬介

    ○北島説明員 具体的な問題に対する対応につきましては御勘弁をいただきまして、一般論として申し上げますれば、いわゆる使途不明金があるということだけで必ず直ちに犯罪につながるというふうには考えておりませんが、御指摘の会社役職員の特別背任とかその他いろいろな不正資金の温床になるという意味におきまして、この使途不明金というものが犯罪につながる可能性といいますか、機会がなかなか多いということは十分承知しておりまして、検察当局といたしましても、従来からさような面で犯罪につながるものがありました場合には厳正に対処してまいったというふうに考えておりますし、今後も同様に厳正に対処してまいりたい、かように思っております。
  81. 正森成二

    ○正森委員 使途不明金が犯罪につながる可能性があり、そういうような場合には厳正に対処してきたし、これからもするという答弁のようでありましたから、私は、使途不明金の中でも今度の件ぐらい犯罪につながる可能性の多いものはないというように思いますので、その点について厳正な態度をお願いしたいと思います。  時間が参りましたので、最後にもう一点だけ伺って質問を終わらせていただきます。  同じく諸新聞が報道しているところでは、この福島交通のグループ、小針社長の中核と言われております「美福」という株式会社が当時で百六億円、株を福島交通不動産に買ってもらった。これは何と約二十八万株を時価の七百倍で買わしたということになっておるのですね。これは銀行局、証券局あるいは国税庁、どこになるかわかりませんが、これもまた非常に奇々怪々なことであり貸して、こういうことが行われているとすれば、これまた特別背任その他の疑いが十分にあり得るし、取引の公正さを疑うに足るものだと思いますが、いかがでしょうか。  そして私が申し上げておきたいのは、こういう問題について小針社長と一部の政治家との間に非常に不明朗な動きがあるということであります。二年前に私自身指摘しましたが、「夜に蠢く政治家たち」という本があります。これは余り表題自体私も感心いたしませんけれども、この中で小針社長と再々「大野」という料亭で会食をした政治家の名前が挙げられておるのですね。その中で一番回数が多いのが、故人の名前を挙げて失礼ですが中川一郎氏なんです。その中川一郎氏については、故人になられたということがあったのかもしれませんが、小針社長も四千万円貸したとか、それ以上貸したとか言っておられるのですね。非常に失礼でございますが、中川氏に続いてだれが一番小針社長と会食をしておられるであろうかと調べてみますと、安倍晋太郎氏と加藤六月氏の回数が一番多いわけであります。  私は、こういう政商と呼ばれる、あるいは呼ばれかねない人、こういう疑惑に満ちたお金の使い方をしている人と料亭でしばしば会食をするということは、政治家としても絶対に避けなければならないことだと思うし、あえてきょうは名前は言いませんが、ここには大蔵省の高官が同席をして、何回か会食をしたということが出ているのですね。私は五十七年の四月に言いましたからあえて申しませんけれども、そういう点を考えますと、厳正な上にも厳正に対処しなければならぬというように思うのですね。そういう点について、事務当局答弁と、最後に政務次官の答弁をお伺いして、私の質問を終わります。
  82. 岸田俊輔

    ○岸田政府委員 先生御指摘の個別の問題でございますが、私どもの方は残念ながらお答えは差し控えさしていただきたいと思いますけれども、一般的に申しまして国税の調査では、関連会社の資金の流れその他につきましては十分いろいろな情報を念頭に置きまして調査をいたしております。
  83. 堀之内久男

    堀之内政府委員 ただいま御指摘になりました件は数日来新聞等に出ておりまして、国民等も重大な関心を持っておることだ、かように考えております。したがって、先ほどからいろいろ御指摘がありましたが、大蔵省内でできる限りのことは十分調査をいたしまして、今後とも国民信頼をかち得るように最大限の努力をいたします。
  84. 瓦力

    瓦委員長 午後五時より再開することとし、休憩いたします。     午後二時三十五分休憩      ————◇—————     午後五時二十七分開議
  85. 瓦力

    瓦委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。上田卓三君。
  86. 上田卓三

    上田(卓)委員 私は、記帳というものは義務というよりも自主的にやるものである、いわゆる自主申告という建前から見てそうではないか、だから義務化とかあるいは法制的にそれを押しつけるということはどうだろうか、こういうことを先ほど申し上げたわけでございます。  それに関連して、角度を変えてその点についてさらに申し上げたいと思うわけでありますが、現在の申告制度には青色申告と白色申告がある、こういうことでございまして、本来ならば自主申告といえばこれはもう白色申告が原則ではないか、こういうふうに私は思っておるところでございます。そこで、白色申告者は記帳などの記録とか保存義務づけられていないわけでありますが、青色申告には専従者給与あるいは事業主報酬など各種の控除と更正処分の際の理由付記という特典が与えられておるわけであります。そのかわり記帳義務がある、こういうことでありますが、要するに青色申告の方が白色申告に比べて各種の特典があり、圧倒的に有利であるということが言えるのではないか、このように思っておるわけであります。それでも青色申告の普及率は法人で八〇%ちょっと、それから個人事業者で五〇%余りだ、こういうふうに聞いておるわけでありますが、青色が有利であるにもかかわらず青色申告を選択しない人が半数近くあるということ、この現状をどのようにお考えでしょうか。
  87. 竹下登

    竹下国務大臣 これはいささか政治論になるかもしれませんけれども、今度の記帳義務というのは、どちらかといえば、元来奨励申し上げております青色申告の方へある意味において移行していただくある種の誘導策であるかもしらぬ。したがって、ここでなれていただいて、いずれは青色の方へ行っていただくということになれば、それこそ特典も、また罰則もない、こういうことで、言ってみれば、好ましい姿としては青色へ行っていただく誘導策だというふうに御理解をいただいた方がいい。いささか政治論的な答弁になりますけれども、私はそのように見ております。
  88. 上田卓三

    上田(卓)委員 そういうことじゃなしに、質問趣旨は、いわゆる青色申告がいろいろな特典が与えられておる、にもかかわらず青色申告をしてない人がかれこれ半分はおるじゃないか、なぜそういう有利な青色申告をしないのか、そこらあたり一体どないに考えておるのかという質問ですので。大臣
  89. 渡辺幸則

    渡辺(幸)政府委員 お答えいたします。  青色の件でございますが、実は私ども確たる証拠を持っておるわけではございませんが、実務の経験というところからお話しいたしますと、青色申告、なるほど大変結構でございますが、非常に小規模の事業者におかれましては、まさに小規模である、特に人手がない、そういうことのために記帳がなかなかできないといった声を聞くわけでございます。それから、これはやはり青色申告制度、私どもはそう複雑なものではないと思っておるのでございますが、白色事業者につきましては、青色の記帳制度がやや複雑である、面倒であるといったことを聞くわけでございます。こういった事情から、ただいま委員指摘になりましたように、最近の青色比率というのは余り伸びておらないというふうに承知しております。
  90. 上田卓三

    上田(卓)委員 大蔵大臣、今のお話のように、有利な青色申告をしないで白で出している人が半数ほどある、それはなぜかというと、青が有利であることはわかっているんだが、やはり小規模事業であるということとか、あるいは人手がないとか、あるいは記帳ども非常に面倒である、こういうことから青が伸びてないんだ、こういうことなのですね。これはどうなのですか。そういう現実があるのに記帳義務化を押しつけても、実際そういう環境を変えないで法律化しても、守られないという現象が起こってくるのじゃないですか。これは大臣、やはり政治家同士の話ですから。
  91. 竹下登

    竹下国務大臣 確かにいささか停滞しておりますわね。それは今御答弁があったように、人手が足りないとかあるいは煩雑で面倒くさいとか。しかしながら、本来奨励しておるのは青色申告でございますから、それに移行する誘導策としては、このことはそれなりに意義があるのじゃないかという基本的な考え方に私は立っておるわけであります。また、実態から考えましても、面倒だとか人手が不足だとか言いながら、日本人の知識水準からすればかなり消化能力はあるわけでございますから、その消化能力に大いに期待して指導していく。十分こなす能力があると私自身は思いますので、それらを念頭に置いてアプローチしていく時期に到達したのじゃないかな、こういう感じがしております。
  92. 上田卓三

    上田(卓)委員 大臣、私これは非常に矛盾だと思うのですね。青色の方が非常に有利であるにもかかわらず白色でやっている。青色やりたいのだけれどもできない事情というのが、今言うように小規模な事業である、人手がない、それから税務について明るくないというのですか、あるいは煩雑である。だから、何か青色に誘導するためだと言ったって、誘導するように、青の方が有利になっているのですよね。そういう措置があるにもかかわらず、それが進んでないということは、あなた、義務化すれば全部そうなるというようにおっしゃるのですか。その点どうなのですか。もっとはっきり言うならば、やはり記帳できないそういう条件の人。  それからもう一つは、十分学校へ行けてない方々がおりますよね。八〇年の国勢調査によっても、未就学者がかれこれ三十万人ほどあるように聞いておるのですね。それから、在日朝鮮人、韓国人の方々も、それは確かに日本語はしゃべれるだろうが、実際書くということになるとなかなか不得手な方々もおられるだろうし、今日同和問題と言われる問題も一つ。そういう劣悪な環境のもとで十分就学の機会がないということで、商売する上にとっていろいろ記帳はしなければならぬ、したいのだけれども実際できないという、いわゆる能力はあるのだけれども忙しいのでできないという人と、もともとそういう能力を持ち合わせてないという人があるわけですから、それを法律で縛って義務化するといったって、もともと無理なのじゃないですか。できないことを法律にすること自身大きな矛盾じゃないですか。守られもしないのに法律化したって、それはもうざる法にしかならぬのじゃないですか。
  93. 梅澤節男

    梅澤政府委員 これはただいま大蔵大臣からも答弁があったところでございますけれども上田委員指摘のとおり、現在の青色申告の普及割合を見ますると、大数観察として、やはり事業規模が小さくなるに従いまして普及割合は落ちていく。これは業種別に営業の場合とその他の事業の場合と若干態様は異にするわけでございますけれども、基本的にそういう傾向にあることは否定できないと思います。この点については、先ほど国税庁の方からも説明があったわけでございますが、私どもは、そういう実態もよく考えまして、今回御提案申し上げております記帳義務の法制化に当たりましては、二つの点で考慮しておるわけでございます。  一つは、今回お願いいたします記帳の内容が、現在青色申告でお願いしておりますよりも簡略化しておる。これは法律に明記しておりまして、具体的な手続は省令で定めることにしておるわけでございます。  もう一つは、この記帳義務化はあらゆる階層について求めるのではなくて、現在の青色申告の普及割合から見ますと、今回お願いしております所得三百万以上の営業所得者の場合には、青色申告の普及割合が七五%ぐらいに達しております。したがいまして、おおよそのめどといたしましては、所得三百万ぐらいのところでございますとかなりの記帳能力もある。それから、事業規模から見ましても、所得三百万ぐらいの規模でございますと大体本人のほかに、従業員といいますか、その事業に従事している人が三人ないし四人という階層でございますので、そういうことになりますと、簡単な記帳をお願いするということは、実際問題として不可能を強いるというふうなことではないのではないかということで、そういう基準を設けておるわけでございます。
  94. 上田卓三

    上田(卓)委員 時間がありませんので、余り長い答弁は困るのです。  私はいろいろ問題があると思うのです。それでさらに突っ込んだ形で聞かせていただきたいのですが、青色申告というのは、本来は貸借対照表などを用いたところの複式簿記といいますか、そういうものじゃないかと思うのですが、現実はそういう複式簿記を実際ようとらないということから、もっと簡易な、たとえば大福帳とかあるいは金銭出納簿のような、そういうものでも許しておる場合があると思うので、そこらあたりの、複式簿記で申告しておる部分とそうでない部分の割合なんか、具体的に報告していただきたいと思うのです。
  95. 渡辺幸則

    渡辺(幸)政府委員 現在青色申告者で現金式の簡易簿記を選択しておる者は約四%でございます。それから、その他の方式によっている者、これは実は区分が私どもにははっきりわかっておりません。しかしながら、個人の青色申告者につきましては簡易な簿記でよいということにされておりますので、税理士さんが関与しておるとかいう場合は別にいたしまして、大部分の青色申告者は簡易な簿記によっておるというふうに承知しております。ただ、何%が簡易な簿記によっているのか、何%が複式簿記によっているのかということは、私どもにもちょっと定かでございません。
  96. 上田卓三

    上田(卓)委員 大臣、今の話のように、青色申告をしている人たちでさえ、いわゆる法人の場合はいろいろ会社組織ですから人もおるというようなことで、複式簿記で記帳するということはそれなりに普及することは私わかるのです。ところが今お答えのように、個人事業者の場合は複式簿記ではどうも能力的にできないんだということから、いわゆる簡易な現金出納簿を中心とした記帳をしている。これは恐らくは個人事業者の場合は九〇%以上じゃないですか。私はある税理士さんに聞いたのですけれども、個人事業者で複式簿記で記録しているというのは本当にまれだ、こう言っているんですね。そういう点で、現在の青色申告でさえ簡易な記帳、こういうことになっておるわけです。そうすると、今回記帳義務づけようとするのはさらに簡易なものなのかどうか、その具体的なものは出ているのですか。お答えください。
  97. 梅澤節男

    梅澤政府委員 先ほど申し上げましたように、今回お願いいたします帳簿は現在の青色申告よりも簡易なもの、したがいまして、ただいま委員が御指摘になりました青色申告、現在、複式簿記と簡易簿記と両方ございますが、その簡易簿記よりもさらに簡易なものということを予定しておるわけでございます。  例えば、これは省令で具体的な基準を決めるわけでございますけれども、まず、今回の記帳は、先般も御説明申し上げましたように、損益取引に対する記録だけであるということが青色の場合と基本的に違うわけです。青色の場合は、簡易な簿記といえども、損益取引、資産負債取引両方を記録することになっておりますが、損益取引だけでございます。その損益取引だけについてもさらに簡単にするということで、例えば売り上げで御説明申し上げますと、原則は取引の年月日、売り上げ先、その他売り上げの相手方、それから金額並びに日々の売り上げの合計金額を計上するというのが基本的な建前でございますけれども、今回の場合は、保存している納品書の控えとか請求書の控え等によりその内容を確認できる取引につきましては、日々の合計金額のみを一括して記載することで結構であるとか、あるいは掛けで売り上げした場合の取引で、納品書の控えとかあるいは請求書の控え等のあるものは日々の記載を省略し、現実に代金を受け取ったときに記載することができる。もちろんこれは年末に売掛金残高を記載していただかなければなりませんけれども、そういったこととか、簡易な方法をいろいろ決めることにいたしておるわけでございます。
  98. 上田卓三

    上田(卓)委員 青色申告でも既にもう複式簿記じゃなしにもっと簡易な記帳ということになっているわけですね。今度義務化しようというのはさらに簡易なことだと言うのだけれども、実際はそんな差はないんじゃないか。今詳しく何か読み上げたら、物すごく違いがあるのかなというように思うのだけれども、実際問題として、現金出納帳とか、あるいは月計表程度のものはやはり最低必要になるんじゃなかろうかな、こういうように私は思っているわけですね。だからそういう意味で、現在行われているものとこれからさらに簡易なものに義務づけをしようとするものの差はないものだから、結局手間暇は一緒になってしまいはしないだろうかな、こういうように思っているのですね。だから、そういうできもしないものを義務化をしても、結局それ自身は特典がない。青であれば特典がある。白の場合は義務化で一生懸命手間暇やって、実際できるかどうか私は疑問だと思うのですけれども。そういう特典という意味から見ても、さらに私は義務化が進まないんではないのかな、記帳化が進まないんではないのかなというように思うのですけれども、特典がないというのは一体どういうことですか。
  99. 梅澤節男

    梅澤政府委員 現在の青色申告制度につきましては、課税上の特典あるいは手続上の特典いろいろございます。今回お願いしておりますものに特典という条件を法制化しなかったのは幾つか理由があるわけでございますけれども、まず第一点は、今回お願いしております記帳なり記録保存等は、本来申告納税制度に内在する考え方に基づくものでございまして、納税義務者にいわば最低限の義務をお願いするということでございます。一方、青色申告につきましてはそれよりもより高度な記帳内容をお願いしておるわけでございますから、その点のバランスから見て、やはり特典というものでこの制度を構成するのはいかがかという観点がございます。  ただ、そうはいいましても、今回記帳をお願いするわけでございますから、記帳をしていただきました場合には、税務官庁側といたしましてもそれに誠実に対応するという観点から、いわゆる特典という考え方ではございませんけれども、調査に伺った場合には、その帳簿をまず検査するというふうなことを税務職員に義務づけておるわけでございます。
  100. 上田卓三

    上田(卓)委員 大臣、今の青色申告でも、先ほどくどいように言っておりますけれども、現金出納簿とか月計表とかいう程度のものなんですよ。非常に簡易なものなんですよ。それでもつけられない人がおるわけですね。そうじゃないんだ、青色申告で、今簡易なものでもつけられないから、もっと簡易なものにするんだと言うんだけれども、恐らく僕はうそじゃないかと思うのですね。本当にそういう差というのは、実際省令で具体的に云々でと今言葉だけで一応基本的なことを出されたようですが、そうすると、逆にうがった見方をすれば、今は青色申告をすれば特典がある、ところがその特典のある記帳義務と、特典のない、今度義務化されようとする記帳義務の差が余りないということになると、今度は逆に特典の部分青色申告制度をなくしてしまうのかということにつながってくるのではないかと私、思うのですけれども、その点どうですか、大臣
  101. 竹下登

    竹下国務大臣 甚だ素人論議して申しわけないのですが、現金出納帳、売掛金、買掛金ぐらいなものでございますね。実際問題、私もこの法律を出すに当たっていろいろ議論いたしましたが、やはり青色申告というものが奨励されており、その方向に近づけるべきである。その納税の環境の整備とは何ぞや。一つは、いわゆる制度としてその納税者の責務を明確化するということが一番意義があるではないかということです。したがって今度は、ではその能力の問題ですが、私は能力の問題ということになりますと、そのころ勉強しておりましたが、今文盲率も〇・二ないし〇・三%、これは世界でずば抜けて一番低いし、高校進学率も世界一になりまして、大学進学率も世界一になりました。そうすると、課税とか徴税の側でなく、納税者という側に立った場合、自分所得自分納税額を知る訓練というものは、この際日本の社会の中には容易に入り得るものではないか。だからそういう意味においては、私はより青色申告に近づけていくための過程として結構なことじゃないか、こういう判断をしておるわけであります。  ただ、現金出納帳と売掛金と買掛金、それよりももう少し簡単なものは何かというと、メモ程度のものかな。それは私は専門家ではありませんからよくわかりません。
  102. 上田卓三

    上田(卓)委員 今簡易な方法で認められている青色申告、その簡易なものよりもっと簡単なというのは、今大臣もいみじくもおっしゃったようにメモ程度か、そういうことでいいのですか。
  103. 梅澤節男

    梅澤政府委員 この青色申告との関係は、政府税調でも議論されておりまして、今回お願いしております記帳義務制度青色申告制度とを併存させる、求めるべき記帳の水準に差を設けることによって両者を制度的に整理すべきであるというのが基本的な考え方でございます。  具体的には、先ほど大臣答弁でも触れられたわけでございますが、先ほども申し上げましたように、今回お願いいたしますのは損益取引だけでございますから、したがって、現金とか当座預金、手形、売掛金、買掛金、減価償却資産等々につきまして、例えば現金出納帳などは今回の記帳義務の組織としては入ってこないわけでございます。つまり、極端に言ってしまえば、売り上げと仕入れに対する記録をきちんとしていただくということでございます。
  104. 上田卓三

    上田(卓)委員 またその問題は申し上げるといたしまして、例えばこういう問題がありますね。領収証が一枚足りないということだけで、いわゆる検査が困難というような形で推計課税になるということも私は起こってくるんじゃなかろうかというふうに思っているんです。だからそういうことも含めて、やはり記帳義務化というものは、あくまでも私が冒頭に申し上げましたように自主申告権なんで、勝手にやるんですから、それを法律義務化するというのはもう本当に問題だということ。それから、もともと青色申告の方が有利であることがわかりながらも、現実に青色申告してないということは、それだけ記帳できない、能力があってもできない条件にある、あるいは能力がない、こういうことなんですから、それを幾らいろいろな方法でやろうとしても、なかなか私は無理な状況があるのではないか、こういうように思っておるわけです。  そういう点で、今局長からも話があったように、そういう記帳についても簡素化するというものも一つだろうし、またそういう推計課税の乱用というものなども厳に戒めていかなければならぬのではないか、こういうように思っておりますので、そういう点について絞って大臣から考え方を明らかにしてもらいたいと思います。
  105. 竹下登

    竹下国務大臣 でございますから、今仕入れと売り上げという局長からの答弁がございましたが、なるほどなと思って、私もやはりその人が納税者、いわゆる徴税、課税の立場からでなく、納税者という立場になると、本来みずからの所得、みずからの課税をみずからが知るという立場が一番義務という面においてもいいと思うんであります。したがって、そういう習性がなおよりつくための環境の整備だというふうに理解をしていただきたいものだというふうに私は考えております。
  106. 上田卓三

    上田(卓)委員 それから、この記帳義務化がされる、それは今の青色の簡易なものよりもより簡易なものにするんだ、こういうことであっても大差がない。そしてこの青色の場合は特典があるということですが、何が何でも白から青——もともとこの白というのが自主申告の原則ですよね。そして青は、本来はこれは例外的なものですよ。もっと端的なことを言うならば、戦前賦課課税制、そして戦後の自主申告納税制度になっているわけですけれども、そうすると、今度は青に持っていくというような形、あるいは義務化するということは、青の特典をなくするとか、あるいは戦前賦課課税制度に逆戻りするということになるのじゃないですか。その点はどうですか。
  107. 梅澤節男

    梅澤政府委員 現行の所得税制におきまして青色申告制度が奨励的な制度として位置づけられておるということは、御指摘のとおりでございます。  ただ、今回帳簿記録保存をお願いしたり、あるいは一定所得以上の方に記帳義務化をお願いするという考え方でございますが、これは午前中にも申し上げましたように、納税者自身が自己の課税標準を算定し、税額を確定する。申告納税制度というのはそういう制度でございますが、それは基本的にはやはり納税者がみずから持っている資料で、必要な資料に基づいて適正な算定を行うということを予定しているものでございますから、帳簿記録保存なりあるいは一定の方々以上に記帳義務化するということは、実は申告納税制度に内在する基本的な考え方でございますので、私どもはこういったものが申告納税制度考え方に抵触するということではなくて、むしろそういう考え方をはっきりさせる制度であるというふうに考えているわけでございます。
  108. 上田卓三

    上田(卓)委員 大臣、ここに二冊の——これは全建総連の方から二十年間記帳義務を御指導されている組織ですが、これは一人親方といわれるような、そういう建設労働者に近い大工さん、左官屋さんの組合、こう見ていいのではないかと思うのですけれども、百人でこれ記帳できるのは二十人もいない。これが大蔵当局が言う何か一番簡易な記帳内容のようですけれども、私がこれを見てもなかなか複雑ですよね。だから、例えばそういう一人親方のような大工さん、あるいは魚屋さんとかうどん屋さんとか八百屋さんとか、そういう朝早くから仕入れに行って晩遅くまで働いて、実際ちょっとこれを見ていただいたらいいと思うのですけれども、現実問題そういう記帳できない人々に記帳義務義務化すると言っても、実際守られないのではないか。守られないものを法制化するということはざる法にしかならぬので、私は一体どこにねらいを持っておるのかということでちょっと理解に苦しむわけですがね。  いずれにいたしましても、クロヨンとかトーゴーサンピンとかトーゴーサンとか、そういう言葉もありますように、給与所得者、サラリーマンの抱いている税負担の不公平感、そういうものを何とか和らげなければならぬという気持ちがおありなのではないかというふうに思うのです。しかし、そういう例えばサラリーマンと自営業者とか、あるいは自営業者と農民とか、そういう形で、どういうのですか、いがみ合い、対立させるというのじゃなしに、もっと端的な言葉で言うならば、給与所得者自身も本来は、今源泉徴収ですけれども、これも自主申告制度の原則から言うならば、やはり申告してもらわなければならぬ、こういうことになるのではないか。だから、年に一度のそういう年度末に申告してやるということがやはり私は当然あってしかるべきだろうし、また同時にサラリーマンが、今何といいましても課税最低限が据え置かれてきたという状況を一つ見ても、過酷な税制のもとに置かれている、こういう根本的な問題があるのではないか、そういうふうに私、思うのですね。だから、大型所得者のそういうものを優遇をするのじゃなしに、税が取れるところから取るということでやるべきであって、弱い者いじめするようなやり方というものに対して私は納得ができない、このように思っておるわけですが、その点について大臣、どのようにお考えでしょうか。
  109. 竹下登

    竹下国務大臣 この質問の観点とちょっとずれるかもしれませんが、私は全建総連というのは、本当はちょっとお願いすれば十分消化できる団体だと前々から思っております。二十年ほど前でございましたか、日雇い健保の擬制適用を受けていらっしゃるころは、この前もちょっとお話ししましたけれども、全建総連の中にホステスさんがいらしたり、神主さんがいらしたり、これは何ですかと聞いたら、起工式のときに「はらいたまえ」やるとかいうような話があって大笑いをしたことがありますが、その後あの健康保険制度を立派にやられて、今やあれはむしろモデル的な制度でやられたんです。だから、毎年お会いしますが、実に組織としても立派なものだ。だから、十分そしゃくできる能力があるのじゃないかというふうに私は考えております。  したがって、いつも先生おっしゃいますように、官が課税するとか徴税するとかいう立場でなく、逆に主語が変わって納税するという立場に立った場合、みずからがよりよく知っておる、それの練習をしていただくということになれば、これだけ知識水準の高い国民だったら、また十分消化し得ることじゃないかという気持ちが、私には前提としてございます。
  110. 上田卓三

    上田(卓)委員 そんなことおっしゃっても、現実にこれを記録できるのは二〇%程度だと言っているのですよね。だから、これより簡単なものというのは果たしてあるのかなというような、実際出してもらわなければわからないので、言葉だけではだめだと私は思うのですね。だから、そういう点もあるのだけれども、実際これよりも簡易なことをやるといったって、似たり寄ったりだと私は思うのですよ。同じ手間暇かかって、青であれば特典があって白であれば特典がない、こういうことだから、恐らく義務化をしても今と同じような結果にしかならぬのではないか。そういうことが本当にスムーズに大臣、実行されると思いますか、どうですか。
  111. 竹下登

    竹下国務大臣 これも例に出すようですが、あれだけの健康保険組合を十分やられたくらいな方ですから、十分おやりになる能力が、ちょっとしたきっかけでできてくるのじゃないか。そうすると、なるほど青色の方がいいなといって、またそっちへ移行していかれるというような感じで、この案を成文化する際、私の認識はそうでございました。
  112. 上田卓三

    上田(卓)委員 組織を持っている、そして二十年の歴史を持って御指導されていても二〇%なんだから、そうでないような業種がたくさんあるわけですからね。くどいようですけれども、特典があっても、特に大臣局長も認めるように小規模事業、そして人手が足らない、それから煩雑であるということから、個人の方々においては本当にもう半分しかそういう申告ができてない。こういうことを考えた場合に、やはり私が言っていることが正しいということは理解されるのではなかろうか、こういうように私は思っているのです。  いずれにいたしましても、ちょっと時間の関係もありますからもう少し前へ進みたいと思うのですけれども、国税の職員は一九五二年当時が五万二千人おられたようでございますが、今日までほとんど変わってないのが現状ではないか、こういうように思うのです。要員の不足ということは大臣もお認めになるのではないかと思いますが、やはりこういう絶対数の不足ということが労働条件等、そしてその厳しいノルマといいますか、あるいは労務管理ということになるのですか、そういうことが一方での納税者の人権を踏みにじるような、プライバシーを侵害するような、そういう本当に納税者を震え上がらせるような徴税攻撃となって、いろいろな事件として起こっておるわけであります。そういう意味で税務行政の民主化といいますか、円滑化のために、そういう定員を大幅にふやすとか、あるいは待遇の改善とか、そういうものについて一体どのように考えておられるのか、大臣の考えを明らかにしてもらいたいと思います。
  113. 竹下登

    竹下国務大臣 定員問題についてはいつも悩むことでございます。定員問題が予算編成で最終的に持ち上がると、必ず各省は、まず隗より始めよ、こう言ってまいります。しかしながら、私の抱えておる中で税務職員の方についてはどうしても増員をお願いしなきゃならぬ。したがって本委員会等で決議があるというのが、私にとってはこれは最大の神様、応援団、失礼な表現をすれば応援団であるという立場でやっております。  それから待遇改善の問題につきましては、やはりその都度必ず私の方から直接人事院総裁に対して、税務職員に対する扱いについては、まあ言葉で言えば陳情しておるということでございましょうか、正式な文書を出すわけじゃございませんが、押し迫ってまいりますと、必ず言葉の上で私から正式に連絡をしてお願いをしておるということでございます。
  114. 上田卓三

    上田(卓)委員 昔は結核、今はノイローゼ、こう言われておるわけですが、いわゆる職業病の罹病率も、他の省庁に比べて大蔵省がトップクラスにある、こういうことのようでございますので、そういう実態等についても、後刻で結構ですから報告をしてもらいたい、こういうように思うわけであります。  それに職員の待遇改善とあわせて、最近、毎年の確定申告期間中の還付請求ですね。納税者がそれだけ自覚されてきたということにもなるのでしょうけれども、そういう点で職員が非常にオーバーワークになっている。こういうことで、あわせてやはり納税者への税務サービスというのですか、そういう意味からも、税務当局は真剣にこの問題を考えていかなければならぬ、こういうように思うのです。それは当然職員の労働条件をよくするということにもつながってくるわけでありますが、その点について、国民に対する税務行政のサービスの向上という観点で大蔵省はどのような考え方を持っておられますか。
  115. 竹下登

    竹下国務大臣 還付申告は急増しておる、確かに十年前の昭和四十七年に比べると二・八倍になっております。それはよく奥さん方が、医療控除等について一緒に還付に行こうやといってお誘いになっていらして、帰りにそれでお昼をお上がりになってお帰りになるというような話で、これはそこまで税に対する知識も高まったと同時に、それが税務職員に対して仕事量をふやしておるなという感じを、そういう一つのエピソードだけ見ても、私自身も感じておるわけでございます。  ただ、非常にうれしゅうございましたのは、よく地方回りをいたしますと、財務局とかそういうところでございますが、それで関係団体との懇談会をしてアンケートをとりまして、窓口サービスの一番いい役所はどこかと言ったら、財務局と税務署が大体必ずどこかで一番にありまして、国鉄がどうもそのころはラストでございましたけれども、私にとっては極めてうれしいデータだなと思ったわけでございます。したがって国民皆さん方に対しても、あっ徴税官が来た、あっ課税をする人が来たというよりも、みずからの納税のサポーターが来たとか、そういうふうな認識になるように、これからも心がけていきたいと思っております。
  116. 岸田俊輔

    ○岸田政府委員 先生御指摘のように、最近の税務行政を取り巻きます環境は非常に厳しい状況でございます。納税者に対しますサービスを確保していくためにも、いろいろの面で事務量が増大してきておるというのは事実でございます。私どもといたしましては、この重要な仕事をしております職員のための待遇改善ないしは定員の増加ということにつきまして、関係方面の御理解を得てその改善に努めてまいりましたけれども、今後もさらに一層努力をしていきたいと考えております。
  117. 上田卓三

    上田(卓)委員 私が大蔵大臣に申し上げたいのは、先ほどの繰り返しになりますけれども、幾ら簡易な記帳といっても、到底その記帳ができない人たちがたくさんできてぐるのではないか、このように思うのです。今の青のそういう特典があっても、それが非常に簡易なものにまで引き下げられておるにもかかわらず、それでさえできない人たちが半数以上おるのに、幾ら法制化して義務化してもできない人がたくさんできるだろう。だからこそ恐らく罰則規定も、最初考えていられただろうけれども、そんなのをつくってもどうにもならぬということで、恐らく反対があったということもあるだろうけれども、やはりそういう罰則規定をつくっても仕方がないということにもなってきただろう。それも、初めからこんな法律をつくっても守られないだろうということを前提に考えておるからではないか、私はこういうように思うのです。  そういう現実を知りながらあえて義務化しようというのは、勘ぐれば、先ほど言いましたように、例えば一枚の領収証が足らない、そういう書類が不備である、記帳が不十分であるということを口実に、安易な推計課税をして徴税攻撃をしようとしているのではないか、こういうように我々自身考えざるを得ない。それについては、当然納税者からのいろいろな反発が出てきて、例えばそういう処分取り消し訴訟に対しては、国税通則法の百十六条の改正で、いわゆる挙証責任というものを納税者側に一方的に転嫁しようというのですか、本当に大国税庁というものと一納税者である立場の弱い人間との裁判ざたの場合に、納税者に有利なものは先へ出さなければ、後から出したやつは認めないというような、そういうやり方自身に非常に問題があるのではないか、私はこういうように思っておるわけであります。  いずれにいたしましても、そういうことからいろいろなトラブルが起こってくるのではないか、こういうように思うわけでありまして、税務行政のそういう矛先といいますか、そういう職員の立場からいうと、増差万能主義といいますか、ノルマを課せられるというような形でいろいろな問題が起きてきはしないだろうか、こういうように思っておるわけであります。当然税務職員の、心意気と言えば語弊があるかもわかりませんけれども、やはりそれは弱い者いじめではなく、やるからには、先般の福島交通の使途不明金の摘発というような、大口の脱税といいますか、そういう不正を暴くことにもっと意欲を燃やすべきであって、本当に人手のない、能力のない人たちに義務化を押しつけるという弱い者いじめをするやり方はいかがなものだろうか、こういうように思うわけでございます。私たちは、そういう記帳義務化というものについては絶対に反対をしてまいりたいし、また、そういう徴税攻撃というやり方じゃなしに、もっと景気回復といいますか、内需の拡大で、増税じゃなしに増収を図ることが一番大事ではないか、こういうように思っておるわけでございます。  きょうは政府税調の方もお見えのようでございますので、それに関連して、今回の記帳義務化というのは、総収入の申告の導入で、結局は大型間接税の布石になるのではないか、すべてのそういう売り上げをつかむことによって一般消費税の地ならしを図るということにもなりかねない、こういうように思うわけてございまして、そういう点についてもお答えをいただきたいと思います。  時間の関係で、さらにもう一点突っ込んだ形でお尋ねいたしますが、政府税調の答申は、いわゆる課税ベースの広い間接税の導入が検討課題である、こういうように言っておられるようであります。大蔵大臣もこれを受けて、検討する姿勢は捨てていないのではないかというように私は思うのですけれども、これは哲学的な勉強であるとかいうこと、あるいは、中曽根総理も再三大型間接税は導入しないというようなことを言っておるようでございますが、政府税調としてはどのように考えておられるのかをお聞かせいただきたい、このように思います。  幾つかの質問をまとめて申し上げましたので、大蔵大臣からひとつ答えられる範囲で答えていただきたい、このように思います。
  118. 竹下登

    竹下国務大臣 最初の問題、いわゆるタックスペイヤーと申しますか、そういう立場に立って税務行政はあるべきであるという考え方は等しくいたしております。  それから、次の問題のいわゆる幅広い間接税の検討の必要の問題でありますが、これについては税制調査会からも指摘を受けておりますので、やはり税というものは絶えず私どもとしては勉強していなければならぬということで、そのように申し上げておるところであります。  それから、中曽根総理が申しております大型間接税は導入しない、その大型とは、いわゆる多段階にわたったものであって、しかもかなり幅が広く、そうしてまた額も大きい、こういうことでございますが、厳密に言った定義は議論のあるところでございましょうけれども、その総理の言明されたことについては、私どもは絶えずこれまた念頭に置いて、そういう角度からのアプローチというものはよほど慎重であらねばならぬというふうに考えております。
  119. 木下和夫

    ○木下参考人 お話の中で私の出番がようやく出てまいりましたので申し上げますと、税制調査会の昨年十一月に答申をいたしましたいわゆる中期答申におきまして、私ども申告納税制度に関する特別部会の答申を受けまして議論をしたわけでございますが、この記録記帳に基づきます申告制度の確立ということは、やはり広い意味納税環境整備というものの一環として非常に重要な意味を持つものと解釈をいたしております。  その意味におきましては、申告納税制度を採用している限りは、やはり税制の中で代表的な地位を占めます所得税の場合について申し上げますと、納税者取引の過程で集積されましたさまざまの客観的な資料によって裏づけのある所得金額をもって申告するということでございますから、自分所得を知っておるのは、その当事者が最もよく知っておるということは間違いないところだというふうに判断をいたしまして、私どもはこのような一連の答申をいたしたわけでございます。  したがいまして、今回の納税環境整備のさまざまの項目は、あくまでも申告納税制度を定着し、かつ、課税の公平の一層の推進を図るという趣旨から考えたものでございまして、御指摘のように近々大型間接税を導入する云々というものとは全く切り離して検討したものでございますので、関係はないと御承知いただきたいと思います。
  120. 上田卓三

    上田(卓)委員 まことに不満でございますけれども、時間が来ましたので終わります。
  121. 瓦力

  122. 安倍基雄

    安倍(基)委員 実は、午前中いろいろ質問をいたしましたその中で、一、二大臣の御答弁をいただきたいものがございます。  一つは、午前中主として経済企画庁に聞いたのでございますけれども減税増税という前に、今回の減税及び増税というものが、どうも減らした分を取るという感じが否めない。やはり減税あるいは増税のそれぞれの経済効果というものをもっと自信を持って、いわば効果ということを測定するというか、見きわめる必要があるのじゃないか。これは主として経済企画庁に聞いたわけでございますけれども、大蔵省といたしましても、個々の減税、どういったものを減税するか、個々のどういった物品税を取るか、酒税を取るかという前に、その辺の大きな見きわめが大事じゃないかということが、大蔵省特に必要じゃないかと思うのでございまして、それについての大臣の見解を伺いたいというのが第一点でございます、  第二はテクノポリス関係税制でございますけれども、テクノポリスに進出する企業に対しまして減価償却割り増しの三〇%のがある。これは十億円以上の投資に限っているわけでございます。それに対しまして、今まで実は十億円までのものにつきましては、低開発地域に対する投資につきまして百分の十六という償却がある。今度の場合に十億円以上に限ってしまった。地元の企業におきましては、やはりその方面の仕事で下請をしたいというものもあるわけでございますので、十億円以下のものについても今後考えられないかということでございます。簡単でございますが、後の問題につきましてはどちらかと申しますと技術的問題でございますから、検討していただくかどうかということのお答えで結構でございます。
  123. 竹下登

    竹下国務大臣 まず、増減税、何といいますか、チャラとでも申しましょうか、あるいは抱き合わせとでも申しましょうか、そういう議論は何度も本委員会においてもなされたところでありますが、私どもも、一昨年以来の本院の大蔵委員会の小委員会における審議の経過等からいたしまして、議長に正確に中間報告をいただいたのには、まず財政再建の方向に反しないように、すなわち赤字国債を財源とした減税は慎むべきだという前提の上に立っての中間報告がなされ、そしてそれをやっぱり踏まえて、本院等におきましても何回か議論をいたしました。その結果として、このたびの所得減税というものは、少なくともこの赤字国債によらないという考え方の上に立とうということで、きょう本委員会で議了していただきました間接税三法につきましては、あるいは酒税等はそうでなくても、時間的に大体見直しの時期が来ておったかもしもぬ、こういう議論もございますが、それら等と法人税等を合わせまして、結局増減税抱き合わせという形になったわけであります。したがって、本来今度の財政あるいは予算とでも申しますか、これが経済成長に果たす役割というのは、寄与度はゼロでございます。下支えにはなっておるわけでありますが、寄与度はゼロということになっておるわけであります。  景気問題そのものを議論をしてまいりますと、せっかく今緩やかながら民間の自助努力等々によりまして、景気がなだらかながら上昇傾向が定着しつつあるというこの機会でございますので、この機会にこそ、むしろ私はこの財政再建というものの考え方を失わないように見定めていかなければならぬ。基本的には日本人の持つ潜在成長力を幾らに見るかということで、大きな政策論争の土台が変化してくるわけでございますけれども、私自身、かつての高度経済成長に我々の体自身もなれ過ぎておる。したがって、まさにこの経済企画庁の中期展望で言われておりますように、五抜きの七、六、四、三、二、一、その四%程度が普通だという、ある種の認識、意識転換とでも申しますか、そういうものをお願いしなければならないのではなかろうかというふうに考えるわけであります。  テクノポリスの問題につきましては、事務当局からお答えをいたします。
  124. 梅澤節男

    梅澤政府委員 テクノポリスの問題につきましては午前中にもお答え申し上げましたように、大きな新技術産業を誘致するという側面と、それから地場産業がそういった企業へ成長していくことを促進するという二つの側面がございまして、後者の方につきましては、税制面の措置といたしましては五十八年度で既に手当てをしております。  五十九年度、今回お願いしておりますのは、そういう大きな新技術の企業が当該地域に入ってまいります、そういう導入を促進する観点からの特別償却の制度をお願いしておるわけでございますが、これはおのずから相当規模の投資額を伴うものでございまして、具体的にどういう基準にするかは、政令によって十億円以上ということを予定しておるわけでございますが、この規模自身につきましては、通産省と私どもの間で十分検討いたしまして、政策効果が期待できる規模としてこの十億円というものを設定したわけでございます。その点、御了解を賜りたいと思います。
  125. 安倍基雄

    安倍(基)委員 第三の問題といたしまして、午前中ちょっと入りかけた点もございますけれども、実は同居老親等の控除でございます。実はこの前の予算委員会の分科会で厚生省に聞いたのでございますけれども、いわゆる寝たきり老人がどのくらいいるかと申しますと、約四十万いる。その自宅におるのが大体三十万、そしていわゆる特別養護老人ホームにいるのが十万ということでございます。その十万人に対してどのくらい国が経費を出しているのかといいますと、約二千億円、寝たきりでない通常の養護老人ホームというところに入っているのを入れますと約三千億円を国が支出しているわけでございます。そうしますと、自宅におりますいわば寝たきり老人を、もし全員普通養護老人ホームに入れますと、約一兆円近い経費がかかる。  私にある友人がおりまして、そこから引き取ってうちへ連れてきた。そうしたところが、税金のいわば控除がわずか七万円である、あとの経費は全部否認されてしまった。養護老人ホームに入っている人は、年金ももらえば、それをいわば扶養している人間は全部その控除ももらえる。わずか七万円の控除ということで、これは何かうちへ連れて帰るときに、おまえ気違いじゃないかというように言われたそうでございます。  その意味合いにおきまして、一つの考え方は、このいわば寝たきり老人などの場合におきまして、これを扶養控除と同じように、一定額以上につきましては、一定額を限度としていわゆる実費控除するという方向も考えられます。しかし非常に何と申しますか、余りのいわばアンバランスがある。考え方によっては、控除制度と申しますのは一つの補助金でございますから、補助金の出し方と見合って控除制度を考えるべきではないか。この点につきまして、大臣の御見解を承りたいと思います。
  126. 梅澤節男

    梅澤政府委員 特別障害者につきましては、現在一般の扶養控除のほかに特別障害者の控除があるわけでございますが、ただいま安倍委員が御指摘になりました在宅の寝たきりの障害者に対して、福祉政策上そういう在宅福祉政策を促進するという議論が従来からございまして、この制度自身は、昭和五十七年度税制改正で新しく設けられたものでございます。  今回の所得税法改正法案におきましても、この在宅の特別障害者の控除につきましては、この方が被扶養者であります場合にはその扶養控除、それから特別障害者控除、それから今おっしゃいました在宅の特別控除を全部合わせますと、現行よりも八万円引き上げることにしておるわけでございます。今回の所得税税制改正では、各種の人的控除につきましては原則四万円引き上げるということで設定をいたしておるわけでございますが、いわばその引き上げ額からいって倍にしていただく、現在の財政事情のもとで私どもといたしましては精いっぱいの御提案を申し上げているつもりでございます。  それから御提案の、かかります費用によりまして個々の家計ごとにその控除額を設定するというのは、これは非常に技術的にも難しい問題でございますし、税制調査会の昨年十一月の答申等を見ますると、この種の特別控除というのはなるべく整理して、基本的な人的控除の中に吸収すべきであるという方向を打ち出されておるわけでございますが、私どもはそういう基本的な方向を十分わきまえながら、しかし福祉対策的な観点の控除につきましては、五十九年度税制改正でもできるだけの配慮はされるべきであるということで、ただいま御提案申し上げているわけでございます。
  127. 安倍基雄

    安倍(基)委員 大臣、私の申し上げておりますのは、やはりこういった補助と控除とのバランスを少しとるべきじゃないか。ですから、控除の方を見るのかあるいは補助の方をもう少し考え直すのかということでございます。いかがでございますか。
  128. 竹下登

    竹下国務大臣 政策の基本から言えば、特別養護老人ホームのような施設への収容ということよりも、可能な限り家庭や地域社会で生活できる在宅福祉対策というものに重点が置かれなければならぬというように思います。特老に入っていらっしゃる方というのは、大体家庭において介護をすることが難しい老人の方、そのような方が多いわけでございますので、そのような観点から収容せざるを得ないということになります。コストが月当たり東京で十九万五千六百円でございますか、相当なコストがかかっておることは事実であります。  しかしながら、今度は税という問題で考えた場合、本来こういうことは御答申でもいただいておりますように、追加的費用のしんしゃくという見地から今日あるものだが、本来そうあるべきものであるかどうか。税制は複雑化いたしますし、可能な限り基礎的な人的控除の引き上げによって吸収していくのが適当であるというふうな御指摘もいただいておるところでございますので、今主税局長も申し上げましたように、現状においてはぎりぎりの提案ということに御理解をいただきたいというふうに考えております。
  129. 安倍基雄

    安倍(基)委員 私は何も寝たきり老人に同情しないわけはないので、非常に同情しておるわけでございますけれども、逆にある意味から言うと、要するに一兆円に近い経費を出してそういった皆さんを収容するのか、それができないのであれば、やはりその辺はバランスをとるべきではないかということでございます。  次の問題に移りますが、現在国債費が非常に伸びている。結局、例えば五十一年と五十九年をとりますと、社会保障関係費が国債費の三倍程度だったのが、つい最近はとんとんである。簡単に申しますれば、五十九年度で九兆一千億というのが国債費でございまして、社会保障関係費が九兆三千億ということでございます。国債費はもっともっと伸びていくだろう。簡単に申しまするならば、社会保障関係費は富んだ者から困った者にお金が流れていくという流れでございますけれども、国債費と申しますのは、どっちかといいますと富んだ人へお金が逆流していくという形でございます。いわゆる「増税なき財政再建」と申しますけれども、全く増税なくして財政再建ができるかどうかという問題はございます。  それで、やはり一番問題なのは、いわゆる利子所得の問題かと思うのでございます。その場合におきまして、私の考え方は、従来国債が大量発行されておったということは、ある意味から言うと、利子の下がることをいわば下支えしておったと思わざるを得ない。その意味合いにおきまして、利子所得者というものは税制でも恩典を受けている、それプラス社会の仕組みとしても恩典を受けていると考えざるを得ない。この点につきまして、いわゆる国債の大量発行が利子の低下を下支えしていたかどうかということについて御見解を承りたい。  その前に、もし海外投資が自由であればそうでなかったでございましょう。要するに、海外投資が自由であれば海外の金利に引きずられたでございましょうけれども、海外投資が今まで比較的抑制されていた時代におきましては、国債の存在は利子の低下をいわば下支えしていたと思いますけれども、いかがでございましょう。
  130. 竹下登

    竹下国務大臣 国債に対する考え方、この表現は別といたしまして、いわば社会保障なんというのはまさに資源の再配分ということでありましょう。国債費で我々がいつも疑問を感ずるのは、言ってみれば予算の中の国債費というのは、意図せざる所有者に対して金利という形で支出されるわけでございますから、これは富の再配分機能からすれば非常に逆行したものである、だからこれは減らそう、こういうことでございます。今日までのいわゆるISバランス論に基づく議論だと思います。いわゆる金というのは、要するに国か地方か外国か、個人か企業がしか投資するところがないわけでございますから、それが外国の方がどっちかといえば抑えられておるから、国債が多量にそれを消化することによって金利そのものをある程度下支えておったじゃないか、こういう御議論だと思いますが、それは私は議論としては成り立つ議論だと思っております。  ただ、今の時点で申しますならば、金融も緩んでおりますし、海外投資等についてもだんだん門戸が開かれておりますので、いわば実勢の中で定着しつつあるのではなかろうかという理解の仕方であります。
  131. 安倍基雄

    安倍(基)委員 現在海外投資が非常に伸びておりますけれども、どの程度伸びておるか、事務当局からお答え願いたいと思います。
  132. 酒井健三

    ○酒井政府委員 お答え申し上げます。  海外の外貨債券に対する居住者の投資というのは、私ども漸次自由化しておりまして、確かに過去におきましてはかなり規制している時代もあったわけですが、五十五年の十二月に外為法を改正しまして、これは原則として自由に行える、単純な届け出、しかも指定証券会社を通ずる場合には事後報告で済むようになっております。  居住者のそういうような外国の債券への投資というのは、御指摘のように年々ふえております。これは、国民の資産というのがだんだんふえていくのに伴って、その運用の効率化、さらには内外金利差というものがかつてとは全く逆で、外国の方が大きいというような情勢等によるものでございますが、数字で申し上げますと、最近における外貨債券投資の純増額は、五十六年度では七十五億ドル、五十七年度は五十八億ドル、五十八年度、四月からことしの一月までの期間でございますが、これで約百十億ドルという状況になっております。
  133. 安倍基雄

    安倍(基)委員 大臣、今お話がありましたように、海外投資が自由化されない前は、国債の大量発行が金利の低下の下支えをしておる。現在におきましては、相当海外投資が始まっておりますから、それはまだある意味で利ざやを求めてそういった海外投資をできる立場の者が非常に有利な立場にある。いずれにいたしましても、日本の現在の構造は、いわゆる大衆から金が集まったのが、いわば利子所得者あるいは資産所得者の方に流れ込んでいるということでございます。その意味合いにおきまして、大型間接税の導入とかいろいろな物品税の増徴の前に、やはりこういう資産所得に対する課税に目を向けるべきではないかと私は思うのでございます。  それと関連いたしまして、これは事務当局からお答え願いたいと思いますけれども、いわば現在のマル優の額、それに現在の率を掛けたらどのくらい税収があるのか、それをお聞かせ願いたいと思います。
  134. 梅澤節男

    梅澤政府委員 五十八年の三月末で非課税貯蓄、これはマル優、郵便貯金を含みますが、残高二百二十六兆円でございます。それから財源の御質問でございますが、ただいま私どもが国会に提出申し上げております五十九平年度の、仮にマル優の制度を廃止いたしまして総合課税に移行した場合の増収額は、約三千三百九十億円でございますが、これは郵便貯金の分は入っておりません。今おっしゃいましたのは、そういう数字でよろしゅうございますか。
  135. 安倍基雄

    安倍(基)委員 そんな少ない数字ですかな。これはいわば約二百二十何兆円の利子を考えて、その利子に現行の税率を掛けたときこうなりますか。
  136. 梅澤節男

    梅澤政府委員 総合課税をした場合にそれぐらいの増収があるということでございます。ただ、先ほど申しましたように、この数字には郵便貯金の分は入っておりません。
  137. 安倍基雄

    安倍(基)委員 これと関連いたしまして、利子所得に対して相当率の源泉徴収を課して、その後申告によって還付すべきものはするという方策を講じるということにつきまして、大蔵大臣どう考えていらっしゃいますか。
  138. 竹下登

    竹下国務大臣 利子所得に対して源泉分離課税を課して、そして何らかの証明書を持っていけばそれを還付する、大筋そういうお話だと思います。各方面でもいろいろこの問題は議論をされております。  それで、三百万の事業世帯ということになりますと、これはいわば年末調整でお願いずれは可能ではないか、こういう議論もあります。それからもう一つは、申告なさる人は税務署へいらっしゃるから、そのときにやれるではないか。それからそうでなく、本当にまさにマル優そのものの権利等で老後を営んでおる、そういう方は市町村役場でやればいいではないか。私もこの間帰ってみたら、私は五千人の人口の村ですから、まあ仮に僕らのところはやれるようでございます。ところが世田谷の区役所が七十九万、ちょうど私の島根県が七十九万。そうすると、世田谷一つで一体やれるのかな、こういうような問題もあるなあ。が、勉強させていただく課題だというふうに、私は事実認識はいたしております。
  139. 安倍基雄

    安倍(基)委員 さっきのはちょっと数字としてあれですけれども、非課税貯蓄は約二百二十兆とすれば、その利子が五%としても十兆くらいはあるだろう。十兆あれば、それを二〇%の源泉徴収をすれば約二兆くらいになるだろうと思いますけれども、この点いかがでございますか。
  140. 梅澤節男

    梅澤政府委員 これは今おっしゃいましたように、二百兆の残高があった場合に利回りをどれぐらい見るかということでございますが、私どもが今国会に提出申し上げております、私が先ほど申しました数字で申しますと、個人分の利払いベースで十兆円を超えることになります。ただ、これは総合課税に移行しましても、本来課税最低限以下の方は税金がかからないわけでございますから、そういう計算をいたしますと、先ほど申しました三千四百億ぐらいの減収額になる。しかし、これは七十兆からございます郵便貯金の部分計算は入っておりません。
  141. 安倍基雄

    安倍(基)委員 もし二百兆あるとすれば、一人当てもいわば二百万くらいのあれがあるという感じでございますから、そうするとやはり隠れたものが随分ある。相当の部分課税最低限に入るというよりは、課税最低限を超えたものを相当持っておると思わざるを得ない。この計算はまたあれでございますけれども、いずれにいたしましても利子所得に対する取り扱いというのがやはり今後の一番大きな問題ではないかと思います。  それとともに、そうすると利子所得ばかり考えるとどうなのか。やはり証券市場といわば金融市場との関係がある。キャピタルゲインの課税の問題が起こるわけでございます。これについての当局のお考えを承りたい。
  142. 梅澤節男

    梅澤政府委員 キャピタルゲインの課税問題につきましては、これはもう累次にわたる政府の税制調査会答申で基本的な考え方が述べられておるところでございます。税の議論としては、総合課税をするというのが適正公平な課税のあり方としてはもちろん最も望ましいわけでございますけれども所得の捕捉に対する技術的なシステムが完備しないまま、つまり所得の捕捉が不十分なままの体制で総合課税に移行する場合には、かえって実質的な不公平を招くというのが税制調査会の基本的な考え方でございます。したがいまして、そういう捕捉のシステムというものが期待できないような現状のもとにおいては、やはり一挙に総合課税へ持っていくのは問題であるということでございまして、漸次課税強化の方向で臨むべきであるということでございます。最近では、昭和五十四年に一銘柄二十万株新たに課税対象に取り入れたというふうな制度改正を行っておりますが、今後とも引き続きそういうふうな観点でもって、キャピタルゲインの課税のあり方については検討してまいらなければならないと考えております。
  143. 安倍基雄

    安倍(基)委員 余り時間もございませんからあれでございますけれども、いずれにいたしましても、大型間接税の導入とかいろいろな話がございますが、これはやはりある意味からいいますと、非常に大衆から取っていく、大衆から取っていっていわゆる利払いに充てていくということが否めないわけでございます。そういう意味合いにおきまして、そういった大衆課税をする前に、どうしてもこういった資産所得に対する課税を見直す、租税体系を見直す必要があると私は考えるのであります。  この点について大臣の意見と、最後に、最近いわゆる低利の無税国債を出そうなんというようなうわさもございますけれども、そういったことについて今検討されているかどうか。これはうわさにすぎないのでございますけれども、それについての御答弁を承りたい。
  144. 竹下登

    竹下国務大臣 今御意見を交えての御質問でございますが、利子所得者の問題、これはまさに税制調査会で御議論をいただいておるところであります。いわゆる非課税貯蓄のあり方等についてもさらに掘り下げた検討がいただけるという期待を持っております。  そうしてキャピタルゲイン課税。先ほど局長からも申しましたように、いわゆる有価証券譲渡益について、その把握体制が十分整備されないまま総合課税に移行する場合には新しい不公平があるというので、段階的な課税の強化、したがってこれまた引き続き広い角度から検討すべきだ、そういうことは私ども十分認識をしておるところであります。  それから無利子国債の問題は、これは検討しておるという事実は全くございません。今まで、きょうも参議院でも議論があっておりましたが、私どものところへいろいろな議論、まあ主張といいますか、提言なされたことはございます。例えば防災事業だけは防災国債で無利子国債にしたらどうだとか、そのかわり相続税もすべて免除されるものにしたらどうだとか、あるいはきょうの議論は福祉税、福祉国債というものにしたらどうだとかいうような議論がございましたけれども、ドイツの場合とは全くその趣を異にする議論でございますし、あれは強制国債でございますから。したがって、やはり一番最初御議論になったように、国債政策そのものが持つ、いわば、えてして資源の再配分機能を失わすということから考えると、とても飛びつける議論ではないような気がしております。
  145. 安倍基雄

    安倍(基)委員 いずれにしましても、財政再建、このままで行きますと、ともかく税金が全部利子の方あるいは国債の償還の方に回らざるを得ない。そうすると、もちろん国債の発行を減らしていくべきなのでございますけれども、それと同時に、やはり受け取る側の方から相当税金を取っていかなければ、下から上への流れの方が本当に大きくなってしまう。こういった意味で、いわば基本的な税制の再検討が必要だと思います。その点、最後に大臣の御意見をお伺いして、質問を終わりたいと思います。
  146. 竹下登

    竹下国務大臣 これは、とにかく三年に一遍国税、地方税のあり方、こういうことについて御諮問申し上げて、そして税制調査会の専門家の先生方から逐次中期答申をいただき、あるいはその年度ごとの答申をいただくということでありまして、税制というのは、やはり絶えず見直しの対象として対応していかなければならないものであるという認識は持っております。
  147. 安倍基雄

    安倍(基)委員 これをもって、質問を終わります。
  148. 瓦力

    瓦委員長 坂口力君。
  149. 坂口力

    ○坂口委員 大分遅くなってまいりましたので、頑張って早く終わるようにいたします。  木下税制調査会会長代理には大変お忙しいところ、きょうはありがとうございました。一、二、聞かせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。  きょうは、社会保障費の問題をお聞きをしたいと思っておりますが、今さらもう申し上げるまでもなく、高齢化社会がだんだんと進んでまいりまして、昭和七十年、一九九五年には、六十五歳以上の人が一三・六二%というふうに厚生白書にも出ております。二〇二〇年になりますと二一・八二%というふうに、非常に急速に高齢化が進んでまいりますが、この高齢化にあわせまして、社会保障費の問題が大変大きな問題になってくることは言わずもがなでございます。老齢年金の受給者一人当たりに対する加入者数は、昭和五十五年におきましては十二・四人でございましたが、昭和七十五年には四・〇人、昭和八十五年には三・〇人と、加入者に対する受給者の割合がだんだんとふえてくる、こういう状況下にあるわけでございまして、こうした中で、ひとつきょうは、今後どうしていくかということについての御質問をさせていただきたいというふうに思います。  まず、きょうは厚生省にお越しをいただいておりますので、今から大体十年先——十年先というのが、昭和五十九年でございますのでちょっと端数になりますが、一応昭和七十年というふうにしていただいて結構でございますけれども昭和七十年におきますところの年金の給付費及び総医療費、両方大体丸めた数字でも結構でございますが、どれくらいになるというふうに計算をしておみえになるか、その辺からまずお聞きをしたいと思います。
  150. 長尾立子

    ○長尾説明員 お答えを申し上げます。  ただいま先生御質問の年金の給付費でございます。昭和七十年の給付費の推計でございますが、現在御審議をお願いしたいと思っております厚生年金、国民年金の改正案に沿いまして説明をさせていただきたいと思います。  この改正案におきまして、将来の保険料率を計算いたします際に、年金の改定率を五%という前提計算をいたしておるわけでございますが、その場合、昭和七十年度におきまして厚生年金が二十四兆二千九百六十二億円でございます。国民年金が二兆九千七百二十億円でございます。福祉年金が千九百三十六億円、合計いたしまして二十七兆四千六百十八億円という計算をいたしておるわけでございます。  次に、先生御質問の医療費の問題でございますが、国民医療費につきましては、今後の老齢化状況、また老齢化に伴います医療費の増等はなかなか推計困難な点がございますので、非常に大ざっぱでございますが、医療費の伸びを国民所得の伸びと同じ程度に伸びるというような仮定で、六・五%の伸びを示すという前提で考えますと、昭和七十年度数字国民医療費ベースで申し上げまして、二十九兆七千五百億円というふうに推計をいたしておるわけでございます。
  151. 坂口力

    ○坂口委員 そういたしますと、国民年金、厚生年金合わせまして、昭和七十年約二十七兆円余でございますが、二十七兆二千六百八十二億とおっしゃいましたですか、厚生年金、国民年金合わせてその額になります。それで、昭和五十六年の厚生年金、国民年金の合計の給付費が六兆八千三百八十二億円でございまして、これは全年金の五八%に当たっております。したがいまして、非常に乱暴でございますけれども昭和七十年二十七兆二千六百八十二億円という厚生年金、国民年金の給付費が全体の年金の五八%、約六〇%ぐらいに当たると仮定をいたしまして、全体の全年金給付費というのを出してみますと、四十七兆何がしに実はなるわけでございます。大変粗っぽい計算でございますので多少いかがかとは思いますけれども、現在の五十六年度のパーセントがそのまま推移するといたしますと、昭和七十年には四十七兆円ぐらいになろうかと思います。  それから、今お示しになりましたように、医療費の方は二十九兆七千五百億円ということでございますので、この年金と医療費合わせまして七十六兆七千六百四十一億円、こういう数字になります。  年金及び医療費が社会保障費全体の中で占める割合がどれだけかという見方によっても全体の額の出し方はいろいろ違いますけれども、もしもこれが七割と仮定すれば、全体の額は百九兆円ぐらいになりますし、もし八割と仮定をいたしますと、九十六兆円ぐらいになるわけでございます。丸めまして、大体昭和七十年には百兆円前後かな、こんなふうに計算をいたしております。その中で、社会保障関係費は大体三分の一でございますので、そうしますと三十五兆円前後ではないかなというふうに計算をしてみたわけでございます。そういたしますと、昭和五十九年の予算におきます社会保障関係費が九兆三千二百十一億円、全体の予算の中で占めます割合が一八・四%でございますから、約四倍ぐらいになる、こういうふうに思って大きな間違いはないのではないかというふうに思うわけでございます。  そこで、この十年先に約四倍になります社会保障関係費の財源をどこに求めるかということがこれからの大きな課題になることは、もう言うまでもございません。それではまず最初に、この財源をいわゆる保険料に求めていくのか、あるいは一般財源に求めるのか、それとも、先ほど少しお話が出ましたように目的税的なものに求めるのかという、大きく分けまして三つの行き方があろうか。しかし、どれかに偏るわけにはいきませんから、そのいずれかの組み合わせであることは言うまでもないと思いますが、どこを中心に行くのかという議論は、これから非常に大きな問題になるのではないかというふうに思います。したがいまして、厚生省の方並びにきょうは木下先生にお見えいただいておりますので、木下先生にもひとつ御意見をお伺いするとして、大蔵省の方にも意見をお聞きをする、三者からひとつお聞きをしたいと思います。
  152. 竹下登

    竹下国務大臣 まず、今おっしゃる意味は私はよく理解できるわけでございます。確かに昭和五十二年の社会保障制度審議会の文を読んでみますと「けだし、ここにいう付加価値税の導入なくしては基本年金の創設はありえないと考える。」そういう結論が出ております。その付加価値税は、先生御案内のとおり、いわゆる消費を対象としたものではございません。所得を対象としたものでございます。これは年金についてでございますが、そういう税方式によって賄うべきであるという提言が一つあるわけです。そうして、今度は一番近いところで見ますと、やはり要するに社会保険を基本としてやるべきである、こういう考え方でございます。非常に大ざっぱな話でございますが。  したがって、まず特定財源論というのは、この答申の問題は別といたしまして、実際我々がいろいろ勉強する間によく出てくる課題、よく出る話でございます。ただ、一般論として税調でも申されておりますように、特定財源というものは間々財政の硬直化を招くし、これは必ずしも社会保障を対象にした議論ではございませんけれども、したがって我々としても、いわば税収というものはそういう特定財源、今日でも道路とかいろいろございますが、そういうものが現実として機能しておることは認めるものの、それによって行政サービスの実体が大きく伸びたという実例もあるが、色のつかない一般歳入、租税収入ということが、本来の議論からすれば好ましいものだなというふうに考えます。したがって、やはり国庫負担というものはそれなりになされなければなりませんし、結局この問題というのは、基本的には今度いただいておるものが一番近うございますが、将来の国民負担が限度を超えることのないような社会保障制度の設計をしておくことが必要であって、それで今度年金改革法案とか医療保険制度改革法案を提出しているわけでございますし、究極的には国民の合意と選択によって決められるべき問題ではあるけれども、年金、医療については加入者が給付と負担の両面にかかわり合いを持ち、拠出と給付の関係が明確である社会保険方式によって運営することが望ましいという考え方が今日の大体のコンセンサスではないかな、こういうふうに考えております。
  153. 長尾立子

    ○長尾説明員 今先生お話しの社会保障の費用をどういう形で負担をしていただくかという点でございますが、先生お話しになりましたように、社会保障全体の費用の中では医療費それから年金が確かに大部分でございます。したがいまして、保険料で御負担をいただくのか、租税でどの程度その場合に御負担をいただくのか、また別途な方途を考えるかというような問題になるかと思うのでございますが、諸外国の社会保障の費用に関する負担の状況を見ましても、これは実は国によってさまざまでございます。医療保険について国庫負担を持っておるところもございますし、また持っておらないというところもあるようでございます。年金についても同様でございます。いわばその国の社会経済情勢、また社会保障を取り巻きますいろいろな情勢の中で、国民の方々の合意がどういうところに得られるかということになるかと思うのでございます。  ただいま大蔵大臣からの御答弁もございましたように、厚生年金保険の今回の改正案を御審議いただきました社会保険審議会におきます御意見におきましては、給付と負担にかかわりを持つ社会保険方式を維持するようというような基本的な方式が示されておるわけでございます。従来我が国の社会保障は社会保険方式を中心に運営してきたわけでございまして、費用の負担も保険料が中心ということになってきたかと思うのでございます。今後高齢化社会の進展に伴いまして、先生御指摘のように社会保障給付費全体の増大が予想されるわけでございますが、これに伴いまして国民の皆様に相当な負担をお願いしなくてはならないわけでございます。その際、基本的にはこういった各審議会の御意向に沿って考えていくべきではないかというふうに思っておるわけでございます。
  154. 木下和夫

    ○木下参考人 坂口先生のお話のうち、前提となります高齢化社会の進展に伴いまして社会保障関係の経費が急速にふえることは、もう御指摘のとおりでございます。その財源と申しますかあるいは国民負担のあり方についての問題でございますが、社会保障関係費の中でいわゆる公的扶助と言われるもののウエートは比較的軽いと思いますけれども、これは生活保護その他の問題に関係いたしますもので、本来税収で賄うべきものだと思います。しかし、主として増加が予定されております年金、医療等につきましては、先ほどからお話がございますように、私ども税制調査会で審議をいたしております内容は、やはり社会保険方式というものを堅持してやるということでございますから、社会保障の費用というものは原則として、受益者という言葉を使わしていただきますならば、いわば受益者の負担によって、保険料の徴収によってこれを賄うというのが筋ということになります。  もちろん、その足りない分を、現実には一般税収から補助金その他の形で補っているというのが実態でございますけれども、社会保障制度と申しましても、今厚生省の方から御説明がありましたように、国によって社会保障負担率というものの差がございます。例えばイギリスなどでは、医療保険は御承知のとおり、ナショナル・ヘルス・サービスという制度で一般の税収を財源にして、それで全部を賄うという建前をとっておりますので、相対的には社会保障負担率が他の先進諸国に比べて低くなっておりますが、そのかわりに税負担が四〇%を超えるという高さになっておる。その他のヨーロッパの諸国におきましては、大体我が国と似たような制度をとっておりますが、既に二〇%を超えておるという実情でございます。  現在の我が国は、新年度の予算で社会保障関係の負担率が一〇・八ということになっておりますけれども、これは当然将来は上がっていくということを見通さなければなるまいと思います。     〔委員長退席、中西(啓)委員長代理着席〕  したがって、これだけの負担がたえ切れるものであるかどうか、あるいは社会保障制度の中身というものをこれから検討していく過程におきまして、一体財源をどうするかは同時に決めていかなければならない問題でございますが、たえ切れないような負担を課していくような社会保障の設計というものを変えなければいけないだろう、変えざるを得ないであろうという感じがいたします。  そこで、最後に御指摘の目的税の創設でございますが、これは私ども昨年の十一月に中期答申を出しました際に、特定の公共サービスの受益と負担との間に非常に密接な対応関係があるというものがはっきりしておる場合には、この目的税というのは一定の合理性を持ち得る。しかし、それが財政運営で公共部門と民間部門との適正な資源の利用の仕方、あるいは財政運営においていたずらに硬直化をもたらす可能性があるわけでございますから、そういう場合にはやはりこれは慎重に対処しなければならないという態度を私どもは表明をいたしました。したがいまして、今後十年後というような時点を想定することは非常に困難な状況にありますけれども、税負担それから税以外の社会保障負担というもののあり方につきましては、やはり根本的にさまざまの工夫をして検討していくべきだろうと思います。目下のところ、それに対してはっきりした成案というものは打ち出しておりませんが、それは一にかかって今後の年金及び医療というもののプランがどのように動くかということにかかっておる、このように思っております。
  155. 坂口力

    ○坂口委員 一応厚生省から示されました案は、年金につきましては、今回改正になりますところのいわゆる一本化への道を歩み出します年金制度の中におきます数字でございますし、また医療費につきましては、対国民所得比六・三%という仮定のもとに、これからずっとそのまま十年間進んでいくという仮定のもとにはじき出された数字でございます。いずれもなかなか、高齢者がふえてまいりますしいたしますから、とりわけ医療費を国民所得比の六・三%並みにずっと続けていくということは至難のわざではないかというふうに思います。  しかし、厚生省からの一応お申し出のとおりに今後進むと仮定をいたしましても、医療費だけで二十九兆七千五百億円、そして年金の方で先ほど申しましたように約四十七兆円というような数字になってくることは必至でございまして、今大蔵省それから厚生省、参考人、それぞれの御意見をお聞かせをいただきましたが、いずれも主体としては保険料で、いわゆる受益者負担ということを中心にしながらというようなニュアンスのお話ではなかったかというふうに承りました。しかし、これから十五歳から六十四歳までの間のいわゆる働く年齢層の比率が低下をする反面において、六十五歳以上の比率が大変増加をしていく。そういう中で、いわゆる保険料という形を主体にしてこの社会保障費をどんどんとふやしていくことは、これはなかなか難しい、限度のあることではないだろうかとも思うわけでございます。とりわけ現在の保険料といいますのは上限、頭打ちがございますし、まあ完全な逆進性と言えば言葉は言い過ぎになりますけれども、しかし、年間例えば三百万以下の方とそれから一千万以下の方との比で見てみましても、三百万以下ぐらいなところにこの保険料の比率がかなり高くなっているという、大ざっぱに言ってのそういう逆進性というものも存在するわけであります。  これらの問題を一体どうするのか。このままにしておいて、そして受益者負担だからというので保険料を中心にしてこれを上げていくということになりますと、かなり無理を強いる層が出てくるのではないだろうか、こんなふうに思いますが、この保険料の問題は、これは厚生省ですか、その辺のところはどのようにお考えになりますでしょうか。
  156. 長尾立子

    ○長尾説明員 お答え申し上げます。  先生御指摘のように、社会保険料の場合には定率で負担をしていただきますし、事業主の負担も、収益が上がろうと上がるまいとにかかわらず、雇用をしている場合には負担をしていただくというような点で、確かにいろいろな問題点をはらんでいることは御指摘のとおりであると思います。したがいまして、私どもとしては、保険料の負担が企業主または被保険者本人にとりましても過重にならないようにということを第一原則に考えていかなければならないと思っておるわけでございます。  現在御提案いたしております厚生年金の今後の保険料率でございますが、最高のところで二八・九%ということを予定いたしておるわけでございますが、これは三割の負担ということでございます。現役の方とそれから受給者との間のバランスを考えますと、できる限りこれを抑えていくことが望ましいのではないかと思っておるわけでございます。この二八・九というのを前提といたしまして、もし医療費が、医療の方につきまして、例えば政管健保の現在の保険料率がそのまま維持できるというような仮定で考えますと、両方合計いたしました保険料負担は千分の三百七十三、つまり三割七分ということになるわけでございます。  これは諸外国の保険料負担の例を引いて大変恐縮でございますけれども、保険料負担が大変重いと言われております西ドイツは、現在保険料負担が千分の百八十五でございます。医療につきましては、これは国庫負担がございませんので、若干同じように比較するということは問題かと思いますが、これは千分の百二十でございます。それで、これを合計いたしますと千分の三百五になるわけでございますが、御承知のように、日本の場合にはボーナスにおきます保険料負担が、年金の場合は負担をしていただいておりませんし、医療も若干料率が違うというような要素を持っておりますので、これをボーナス換算をいたしますと、現実には千分の三百九十七、西ドイツの現在申し上げました千分の三百五は千分の三百九十七程度に当たるのではないかと思われます。こういうものを考えますと、現在の私ども改正案考え方は、現在の西ドイツ水準、一つの限界と言われておりますけれども、こういうものを下回る水準であるというふうに考えておるわけでございます。
  157. 坂口力

    ○坂口委員 そういたしますと、現在のところ、昭和五十六年の国際比較がございますが、今御指摘のように、西ドイツでありますとかフランスの例を見ますと、国民所得に対する租税負担、社会保障負担を見ますと、西ドイツでは租税負担の方が三一・二、そして社会保障負担の方が二二・五。それからフランスを例にとりますと、租税負担の方が三二・九、社会保障負担の方が二六・六ということでございます。それから、先ほど出ましたイギリスのように、租税負担が四二・九に対して社会保障負担が一〇・七。こういうふうなイギリスとそれから西ドイツ、フランス型と二つの極端な例があるわけでありますが、今お話を聞きますと、日本の国のこれから政府が選ぼうとしておみえになります方向はフランス型であるというふうに理解がされるわけでございます。  このフランス型を選びましたときに、先ほど私は十年先ということを申しましたので、十年先でございますと先ほど言いましたような数字におさまるわけでございますけれども、しかしまだまだ十年先、二十年もっと先に高齢者のピークが来るわけでございますから、十年先どころではなくて二十年先、二十五年先にはさらにどんどんと社会保障費が増加をしていかざるを得ない状況にあるわけでございます。そういたしますと、十年先ぐらいのところはぎりぎりのところ現在の西ドイツあるいはフランスの負担率ぐらいなところ、大体その辺のところに行くのかな、しかしそこを超えてくるとさらにこれを上回っていかざるを得ないという状況になると思います。先ほど木下先生から、できるだけ社会保障の形を変えるというお話がございましたけれども、租税負担と社会保障負担の両方を合わせて、対国民所得大体何%ぐらいなところまでにおさめることが望ましいというふうにお考えになっておりますか。
  158. 長尾立子

    ○長尾説明員 ただいま私御説明申し上げました保険料の負担率は、昭和九十五年度、つまり年金といたしましては一応ピークになる時点をもって御説明を申し上げたわけでございます。したがいまして、現在の制度で予定いたしております一応負担の最高のところというふうに御了承いただきたいと思います。  将来の我が国の社会保障負担、それから租税負担の合わせたものがどれぐらいが望ましいかという点でございますが、これの点につきましては、臨時行政調査会から西欧先進諸国の現在の水準よりはなるべく低いところというような線を示されておりまして、四〇から四五の間にとどまるようにというような御指摘であるかと思います。政府といたしましては、その線で今後の社会保障全体の負担率を考えていくということに決定を見ておりまして、私どもの今回の改正につきましては、ほぼそういう方向に沿ったものというふうに考えておるわけでございます。  私は、医療につきまして、現在の料率が維持できるとしてということを申し上げたわけでございますが、先生御承知のように、年金につきましては、財政計算ということでいろいろな仮定を置きまして将来の推計をいたしておりますけれども、医療の要素、これはなかなか複雑な要素が絡みますので、この点につきましての推計、大変難しい点がございます。それと、雇用者所得国民所得の伸びがどういうような関係で、簡単に言いますと、国民所得よりも雇用者所得が伸びるものか、またそれを下回るものかということによりまして、社会保障の負担率は、九十五年とか昭和百年とかというところになりますと大変動くものでございますから、ちょっと確定的な数字を申し上げるわけにはいかないと思うわけでございます。
  159. 木下和夫

    ○木下参考人 社会保険負担については今お話がございましたので、私は主として税負担の方を申し上げますと、先ほどから坂口先生御指摘になっておられます問題といたしまして、国民所得に占める租税負担率ということでございますけれども、これは今から約十年ほど前の税制調査会で非常に時間をかけて審議をしたことがございますが、通常は分配国民所得をベースに置きまして、そして税負担及び社会保険料負担というものの比率をとりまして、租税負担及び社会保険料負担というふうに申しておりました。しかし、実は分配国民所得の中には間接税が入ってない概念でございます。したがいまして、これはベースとして分配国民所得をとるということは必ずしも正しい表現の仕方ではないという議論がございました。  それからもう一つは、分子の方の税負担の中にはいわば目的税が入ってないという問題、これを入れるか入れないかという問題がございます。目的税と申しますと、今国会で問題になっております石油税のごときはその例でございますし、道路関係の目的税もございますが、そういうものを入れるのか入れないのかという問題もございます。そういういわば国民所得比という概念そのものにもかなり検討し直すべき問題が一つあるということでございます。  それからもう一つは、中長期的に将来の負担率というものを考えます場合には、これは当然我が国のような経済状況のもとでは一人当たりの実質の国民所得水準というものは上がってまいりますが、上がってまいりますと、実質国民所得水準が低い場合の望ましい負担率と、非常に高くなった場合の負担率というのは、おのずからやっぱり差が出てくるであろうという感じもいたします。したがって、中長期的に特定の国民所得比の負担率というものを想定して政策の目標にすることはいかがなものかというふうに考えておるわけでございます。  租税負担率のあり方につきましては、先ほども御指摘がありましたように、我々の前には第二次臨時行政調査会の答申における壁というものがあるわけでございます。その中で一体これをどう処理していくかということになりますので、租税負担率の引き上げも困る、あるいは社会保険料負担率の引き上げも困るということで、現行の水準からややふやすといたしましても、例えば現在が租税負担と社会保障負担と合わせまして約三五%ぐらいではないかと思うのでございますが、これは確定的な数字は存じませんけれども、そのような国民負担というものを、例えば五〇を限度にして四五ぐらいがいいとかというような御議論もあったと聞いておりますけれども、それで現行の制度における社会保障、特に医療と年金がうまく機能していくだろうかという非常に危ぶんだ悲観論を私自身は持っておるわけでございます。  この点につきましては、今後いろいろな制度の検討というものの中で租税負担のあるべき姿というものを考えると同時に、社会保険料の負担のあり方についても我々は検討しなければならないと考えております。
  160. 坂口力

    ○坂口委員 そこで大蔵省の方、大臣からお答えいただいても結構でございますし、事務当局からでも結構でございますが、先ほど大蔵大臣が言われました昭和五十二年の社会保障制度審議会の建議でございますか、所得型付加価値税の導入の話があったわけでございますが、いいとか悪いとかということではなくて、この所得型付加価値税というものは一体どういうふうなものなのかという、その定義もなかなか明確でないわけでございますが、大蔵省としてはこの所得型付加価値税なるものをどういうふうに認識しておみえになるのか、それをひとつお聞きをしたいと思います。
  161. 梅澤節男

    梅澤政府委員 これは学問的なお話ですと、むしろ木下先生がお話しなさった方がいいと思いますけれども、普通私ども税制当局理解しております所得型付加価値税と申しますのは、あるいは加算型ともいうわけでございますけれども、マクロで見ますと各要素費用に対する合計になりますから、結局国民所得課税標準になるといったような税金になるかと思いますが、税の性格としましては、これも学問的にいろいろ議論があるようでございます。つまり、要素費用の源泉税であるのか、あるいは転嫁を予定しておるという観点から見れば一種の消費税と申しますか、間接税と観念するのか、あるいは企業課税と見るのか、いろいろ議論があるようでございますが、いずれにいたしましても、この税につきましては、過去税制調査会なり、それから我々内部でも具体的にいろいろ議論したということはございません。研究の一つの項目として関心は持っておりますけれども、具体的に検討したという実績はないわけでございまして、きょうの段階でそれ以上のことを私ども申し上げる用意はないわけでございます。
  162. 坂口力

    ○坂口委員 大臣、今お聞きのような考え方でございますが、社会保障費、その多くはいわゆる受益者負担、保険料というものに依存すると仮定をいたしましても、なおかつ現在は約三割、一般会計からこの負担が出ているわけでございますけれども、約三割はこれからも続いていくと仮定いたしますと、それだけでも、先ほど申しましたように、十年先には三十五、六兆というようなところに数字が行くわけでございまして、これは国庫負担分だけを見ましてもかなりな額になるわけでございます。したがいまして、この税金はいけない、あの税金はいけないというようなことではなくて、どうしても要ります将来の社会保障費なるものをいかなる形で捻出をするかというのは、大変難しい問題になろうかと思います。しかし、これは今後の国民の選択の問題であるというようなことで済まされない状態に既に来ているわけでございまして、政府としての考え方をある程度まとめていただかなければならない、あるいは明確に国民の前に示していただかなければならない時期にもう既に来ていると思うわけでございます。したがいまして、その辺のところの話をもうちょっとお聞きをしたいと思います。
  163. 竹下登

    竹下国務大臣 この問題、おっしゃる趣旨は私もよく理解できます。だから、こうして坂口さんが今いろいろなデータに基づいて、提案ではない、そういう御意見をお述べになった。そういうのが国会という窓口を通じて、国民の中でそれらが関心事となって、そこから初めてコンセンサスというものが出てくるだろうというふうに思うのであります。     〔中西(啓)委員長代理退席、委員長着席〕  したがって、今勇気を持って、例えば一般財源か特定財源があるいは社会保障負担か、そういう三つをお出しになって、あるいは言ってみればその組み合わせか、そこのところがまさしく国民の選択に関する問題であって、そこまで議論が出てくるということがその国民のコンセンサスを促進する結果になるんじゃないか。だから、今日の時点において政府が、これは別に私は待ちの政治という意味で申しておるわけじゃございませんが、この方向だぞと言っておるのは、大筋、先ほど来議論がありました社会保険方式を維持して、これを基本としてやってみよう。しかし、何としたところで、最終的にはそういうものが可能になる設計をまず立てようというのが今度の医療費であり、年金法であるというふうに、現実的な問題としては理解をいたしておるところであります。  先ほど来、国民所得に対する租税負担率と社会保障負担率との問題がございましたが、私も国会へ出ておりますと、本当にこの問題が毎日私なりの頭の中をよぎっておるわけであります。かつて二十六カ二分の一というものを想定した七カ年計画を出したことがございます。しかしながら、それそのものが今は定量的に示すことはできないというので、定性的な問題となって数字として出ておりますのは、いつも申しますように、まさに「七、六、五抜きの四、三、二、一、それだけの数字を基礎に、その経済の一部である財政の展望についても、あらゆる問題をみんな仮定計算としてお示ししておる。その仮定計算が、こういう問題を議論しておる間に熟度を増してきて、また国民のコンセンサスの選択の幅が逐次狭まってくるであろうということを私は毎日期待をいたしておるわけでございます。
  164. 坂口力

    ○坂口委員 どうもうまいぐあいに逃げられてしまうわけでございまして、まだ私の方が話は明確で、大蔵大臣になったような気持ちになるわけでございます。  もう一度申し上げますけれども、これから十年間をとりましても、これから十年間の国民所得の伸び方よりも社会保障費の伸び率の方が高いことは明確である。そしてその大部分は保険料で賄うといたしましても、一般財源からの持ち出し分だけを見ましても、その伸び率は一般財源の伸び率よりも高くなることは明確である。その中で一般予算全体の中に占めますところの社会保障費の割合をうんとふやしていけるというのであるならば私はいいと思うわけでございますけれども、それはふやすことができ得ない、政府は今までこう言っておみえになるわけでございます。したがいまして、全体の中で社会保障費の枠をもうこれ以上は伸ばせない。二〇%ぐらいございましたが一八・何%に最近だんだん落ちてきておりますし、もしもこれからもこういうふうな状態を続けると仮定をいたしますれば、それでは社会保障の財源は一体どうして捻出をするのか。もうある程度はっきりさせなければ、今度は年金の法案を出すそうだけれども、将来本当に年金はもらえるのであろうかという素朴な疑問を国民は持たざるを得ない。  それにこたえるためには、保険料は保険料としながらも、保険料というのは上限があって、逆進性もあり、すべてをここにゆだねるというわけにはいかない。一般財源からも出さなければならない。そうした場合に、それをどういうものに頼っていくかということをまさしくここで、国会としては詰めなければならないところに来ていると思うわけでございます。そうした意味できょうは質問をさせていただいているわけでございますし、したがいまして、大蔵大臣としてもう一歩突っ込んだところを、ひとつきょうは胸の中をお聞かせをいただかなければならない、そういう状況に立ち至っているのではないだろうか、こういうふうに思います。
  165. 竹下登

    竹下国務大臣 まさにそこまで議論を突っ込んでいただきますと、また私どもが各方面の議論を集約して、それにこたえていくことに対する一つの前進を行う大きな推進力になり得る御発言をきょうはいただいた、その推進力を受けてどう判断するか、もう少し議論を積み重ねて、国民のコンセンサスがどこにあるかというのを見きわめなければならぬのだな。  ただ、きょうも感じておりますのは、年金にしても医療にしても、そういう破滅的な状態というものが現実にあってはならないという前提の上に立って、各種審議会を終えて、たしかあしたの閣議でございましたか、医療の問題はもう出ておりますが、いろいろな法律が最終的にあした出るわけでございます。年金にしても医療にしても、もう既に出た法律でございますが、随分御議論をなすって、そういう国民が、おれ将来もらえなくなるのじゃないかということではない、説明ができる状態で法律案提出をされておるということでございます。  なかなかここのところが難しい問題でございまして、事実臨調で、ヨーロッパ先進国よりはかなり下回る、さはさりながら現在、今木下先生がおっしゃったように、日本が三五でございますから、なれば四〇がいいのか四五がいいのか、臨調で四〇とか四五というものを念頭に置いて議論されたことはあると言うが、臨調で別にお決めになったわけでもない。これも結局は国民の合意と選択の問題だなというふうに考えておるわけであります。徐々にだんだん浮き彫りになってまいりますと、それこそまさに、ここが国民のためにいい結論が出る場所になるであろうということを期待をしております。
  166. 坂口力

    ○坂口委員 だんだんわからなくなってまいりまして、もう少しお聞きをしたいところでございますけれども、厚生省が先ほど出されました数字というのは、将来の社会保障を、年金ならば年金、医療費なら医療費というものを全部賄うに足り得る保険料率ではなくて、それはそれとして、それとは別途やはり国からの負担というものは別枠でふえ続けるということでございます。そうでございますね。先ほどの厚生省のお話を聞いておりますと、あの千分の三百七十三とおっしゃいましたか、その数字でいけば全部それで賄えるのかというのは、そうではなくて、それは七割なら七割であって、三割なら三割は国から補助を出さなければならないわけでございまして、だから、こちらの方がふえればふえるほど一般財源から出す方もふやしていかなければならないわけでございます。  これをどうしたらいいのかというのは、これ以上大蔵大臣に聞きましても、どうも大蔵大臣としても、これ以上は言うに言われず渡るに渡れずという心境ではなかろうかと思いますので、木下先生、その辺代弁してもらうわけにもまいりませんが、学問的な立場も踏まえて、大蔵大臣よりも多少気楽なお気持ちで御発言をいただければというふうに思います。どの税制が悪いとかいいとかというようなことは一切申しませんので、ひとつ思う存分に言っていただけたらというふうに思います。
  167. 木下和夫

    ○木下参考人 非常な難問で私にもわかりませんが、まず第一に、今さしあたり問題になっております、先ほど所得型付加価値税というものでございますが、これを取り上げられました意味もよくわかるわけであります。社会保障制度審議会の答申の中で出てきておりますが、これは御承知のシャウプ勧告のときに府県税として提案されました付加価値税でございます。したがいまして、言いかえれば国民所得に対する税だと言っていいわけでございますけれども国民所得にも減価償却を含ませる概念と含ませない概念がありますので、そのどちらをとるかは随意でございますが、仮にとらない、いわゆる純所得型の国民所得という考え方をとりますと、先ほどの主税局長の御説明のとおり、利益、いわば所得、利潤と言ってもよろしゅうございますが、利潤プラスの支払い給与、支払い賃金、それから支払い賃貸料、支払い利子というものが付加価値と呼ばれる概念でございます。したがって、これはいわば国民所得だと言ってもよろしゅうございますし、これに減価償却分を加えればいわゆる粗所得と言ってもよろしいわけでございます。これは概念といたしましては、いわゆる消費型の付加価値税が課税標準にしておるものとは違います。  さて、これに対してどのくらいの税率を適用して課税をするかということでございますが、我が国法律になりました府県税としての付加価値税は、とうとう目の目を見ませずにオシャカ入りをいたしましたが、この場合、一体どういう方々が非常な反対をなさったか、その他を見れば、その方々の負担がふえるということではなかったかと思うわけでございます。言いかえれば、結局はこの税がだれの負担になるだろうかというような問題を私どもすぐに考えるわけでございます。例えば社会保険料の負担につきましても、企業の負担する分は結局製品の値上げを通じて消費者に転嫁をされるんだという議論と、そうはいってもそれほど転嫁されないんだ、よほど経済状況がインフレ的である場合にはそういう形が起こるけれども、普通はそうならないという非常に激しい論争がございまして、私がそれを受け継いでここでどちらとも主張するだけの論拠はございません。両方の可能性があるということでございます。  それで、この所得型の付加価値税を課税いたしました場合に、これがどのように転嫁されるか。言いかえれば、その負担は終局的にはどこに持っていくかということを見定める必要があると思います。これが製品の値上げに通ずるのかどうであるのかというようなことになりますと、表向きは個人及び法人の企業が負担するといたしましても、それは名目にしかすぎずに、結局は国民一般が負担をすることになるかもしれません。したがって私は、こういう場合の税のあり方を選ぶときには、やはりそういう問題を煮詰めて選択をしないと、とんでもない、我々の期待に反するような結果になるという感じがいたします。したがって私は、にわかにこの案に賛成をしがたい理由は幾つもございますが、その中の一つはこの問題でございます。  そうしますと、今度は次の問題で、先ほどもお話し申し上げましたが、社会保障の給付というのは医療と年金を通じて急増することは間違いない、これをどうするか。しかも国庫負担というものが現在どおり続くとすれば、一般税収の方もふえてもらわなければ困るわけでございまして、社会保険料の引き上げで特別会計の収入がふえるだけでも困るわけでございますから、こうなりますと、今税負担を上げるなという空気の中で、勇気を持ってこれだけの税負担の引き上げがやむを得ないんだと言うためには、今後の医療及び年金制度に関するいわば設計というものを示していただかないと、私どもには答えのしょうがないということでございます。  それで、年金については基礎年金の構想が出て、一歩踏み込んだじゃないかとおっしゃいますけれども、私どもにはまだその長期的な財政計算というものは資料をいただいてはおりませんし、全く知識が不十分でございますから、医療に至りましては今後どのようになるかは全く見当もつきません。したがって、何も包み隠しなく申しまして、年金及び医療の今後の姿というものに応じてこれを実現しようとすれば、税負担及び社会保険料負担はこのくらいになりますよ、これが納得できないとするならば設計の方を縮小せざるを得ぬというような試行錯誤を重ねていく以外に、本当のところ方法はないというのが実感でございます。
  168. 坂口力

    ○坂口委員 ありがとうございました。わかったようにも思いますし、わからないようにも思われます。しかし、木下先生に言っていただきましたことは大体理解ができました。  それで、これから先年金、医療、その長期計画なるものが次々になされるだろうと思います。先ほどもお話がございましたとおり、年金の方は一応形を整えて今国会に提出をされるようでございますし、医療の方につきましても、先日厚生大臣にお聞きをいたしましたら、ことしじゅうに長期展望を踏まえた今後のあり方なるものの大略を示したいというようなお考えが開陳されました。そうしたことで、この医療並びに年金の将来像というものが、厚生省を中心にしてそこに示されるということになってまいりましたら、それに合わせて大蔵省としては今後のあり方というものを早急に検討しなければならないわけでございますが、私はその時期は、厚生省のテンポから申しまして、もうこの一年以内に迫っているのではないだろうかというふうに思うわけでございます。そういった点で、これからどれぐらいな期間の中に大体そうした結論めいたものを求めていくのかというような今後の御方針をひとつ承りまして、終わりにしたいと思います。
  169. 竹下登

    竹下国務大臣 年金関係閣僚会議というのがございまして、年金担当大臣は厚生大臣でございます。したがって、担当大臣を中心にして我々もいろいろな問題を検討するわけでございますが、まず、はしりは去年御審議いただきましたいわゆる国家公務員共済とあとの三公社関係の年金統合、あれが第一段階、そうして今度御審議願いますのが第二段階、その次が七十年でございます。したがって私どもといたしましても、年金担当大臣、言うならば厚生省を中心にいろいろ進めていただくテンポの中で、もとよりおくれをとらないように衆知を絞って、いい案ができるようについていかなければならぬと思って、精いっぱい勉強しておるところでございます。
  170. 坂口力

    ○坂口委員 何となく胸に詰まった思いがとれなくて困るわけでございまして、おっしゃるとおりだと思いますけれども、それを大体どのように、いつごろまでに詰めていかれるのかということを聞きたいわけでございますが、これ以上聞きましても酷かと思いますので、もうこれ以上聞くことはやめにいたしますが、ひとつ差し迫った問題であるという認識のもとにもう少し突っ込んだ、結論とまではいきませんけれども、これからこういうふうな方針で行くという、その過程だけでも今国会中の議論の中でぜひお示しをいただきたいと思います。  要望いたしまして終わりにいたします。ありがとうございました。
  171. 瓦力

    瓦委員長 この際、参考人に一言申し上げます。  本日は、長時間にわたり御出席をいただき、まことにありがとうございました。  御多用中、大変恐縮に存じますが、明日も本委員会に御出席をいただきたいと存じますので、何とぞよろしくお願いいたします。  次回は、明二十七日午前九時二十五分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時五十四分散会