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1984-03-23 第101回国会 衆議院 大蔵委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年三月二十三日(金曜日)     午前九時三十二分開議 出席委員   委員長 瓦   力君    理事 越智 伊平君 理事 熊川 次男君    理事 中西 啓介君 理事 中村正三郎君    理事 伊藤  茂君 理事 野口 幸一君    理事 坂口  力君 理事 米沢  隆君       熊谷  弘君    笹山 登生君       椎名 素夫君    塩島  大君       田中 秀征君    中川 昭一君       平泉  渉君    平沼 赳夫君       藤井 勝志君    宮下 創平君       村上 茂利君    森  美秀君       山岡 謙蔵君    与謝野 馨君       上田 卓三君    川崎 寛治君       沢田  広君    渋沢 利久君       戸田 菊雄君    藤田 高敏君       堀  昌雄君    柴田  弘君       宮地 正介君    矢追 秀彦君       安倍 基雄君    玉置 一弥君       正森 成二君    簑輪 幸代君  出席国務大臣         大蔵大臣    竹下  登君  出席政府委員         大蔵政務次官  堀之内久男君         大蔵大臣官房審         議官      水野  勝君         大蔵大臣官房審         議官      行天 豊雄君         大蔵省主税局長 梅澤 節男君         大蔵省国際金融         局長      酒井 健三君         国税庁次長   岸田 俊輔君         国税庁税部長 渡辺 幸則君  委員外出席者         人事院事務総局         給与局次長   藤野 典三君         経済企画庁調整         局財政金融課長 服藤  収君         国土庁土地局土         地政策課長   木内 啓介君         法務省民事局参         事官      宇佐美隆男君         外務大臣官房外         務参事官    瀬崎 克己君         通商産業省産業         政策局企業行動         課長      藤原武平太君         中小企業庁計画         不振興課長   前田 正博君         労働省労働基準         局賃金福祉部企         画官      藤井紀代子君         建設省住宅局住         宅政策課長   内藤  勲君         大蔵委員会調査         室長      矢島錦一郎君     ————————————— 三月二十二日  所得税大幅減税等に関する請願外三件(川崎  寛治紹介)(第一三四〇号)  同(中村重光紹介)(第一三四一号)  同(堀昌雄紹介)(第一三四二号)  同(網岡雄紹介)(第一三八六号)  酒税増税反対に関する請願矢追秀彦紹介)  (第一三四三号)  申告納税制度改悪反対等に関する請願外二件  (渡部行雄紹介)(第一三八七号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第  九号)  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣  提出第一〇号)  所得税法等の一部を改正する法律案内閣提出  第一一号)      ————◇—————
  2. 瓦力

    瓦委員長 これより会議を開きます。  法人税法の一部を改正する法律案租税特別措置法の一部を改正する法律案及び所得税法等の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。  各案について政府より順次趣旨説明を聴取いたします。竹下大蔵大臣。     —————————————  法人税法の一部を改正する法律案  租税特別措置法の一部を改正する法律案  所得税法等の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 竹下登

    竹下国務大臣 ただいま議題となりました法人税法の一部を改正する法律案租税特別措置法の一部を改正する法律案及び所得税法等の一部を改正する法律案につきまして、提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  まず、法人税法の一部を改正する法律案につきまして、御説明申し上げます。  政府は、現下財政事情等に顧み、法人税延納制度を廃止するほか、課税の公平を一層推進する等のため、所要改正を行うこととし、本法律案提出した次第であります。  以下、この法律案内容につきまして、御説明申し上げます。  まず、法人税延納制度を廃止することといたしております。  次に、課税の公平を一層推進するため、帳簿書類の備えつけ制度を設ける等の措置を講ずることといたしております。  その他、工事負担金で取得した固定資産等圧縮額損金算入制度対象となる事業卸電気事業を加え、公的医療機関に該当する病院等を設置する農業協同組合連合会で特定の要件を満たすものを別表第二の法人とする等所要改正を行うことといたしております。  次に、租税特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、御説明申し上げます。  政府は、現下の厳しい財政事情に顧み、臨時措置として法人税税率引き上げ及び欠損金の繰り戻しによる還付制度適用停止を行うとともに、租税特別措置整理合理化を進めるほか、エネルギー利用効率化中小企業設備投資等を促進するための措置その他所要措置を講ずることとし、本法律案提出した次第であります。  以下、この法律案内容につきまして、御説明申し上げます。  第一は、法人税税率引き上げであります。  すなわち、二年間の臨時措置として、法人税税率を一・三%引き上げることといたしております。ただし、中小法人公益法人協同組合等に対する軽減税率につきましては、一%引き上げることといたしております。  第二は、法人税欠損金の繰り戻しによる還付制度適用停止であります。  すなわち、法人税欠損金の繰り戻しによる還付制度につきまして、解散等の特別な場合を除き、二年間その適用停止することといたしております。  第三は、設備投資促進のための措置であります。  まず、エネルギー効率的利用等に資する一定設備につきまして、二年間限りの措置として、一定要件のもとで、取得価額の百分の三十の特別償却取得価額の百分の七の特別税額控除とのいずれかの選択を認める措置を講ずることといたしております。  次に、中小企業者等の取得する一定電子機器利用設備について、二年間限りの措置として、一定要件のもとで、取得価額の百分の三十の特別償却取得価額の百分の七の特別税額控除とのいずれかの選択を認める措置を講ずるとともに、これをリースにより使用する中小企業者等に対しましても、一定要件のもとで、リース料基礎として計算した額の百分の七の特別税額控除を認めることといたしております。  さらに、高度技術工業集積地域において法人の取得する高度技術工業用設備について、一定要件のもとで、機械等にあっては百分の三十、建物等にあっては百分の十五の特別償却を認める措置を講ずることといたしております。  第四は、土地住宅税制改正であります。  土地住宅税制につきましては、一定要件に該当する民間の再開発事業に係る買いかえの特例のほか、父母等から住宅取得資金贈与を受けた場合の贈与税につき、二年間限りの措置として、住宅取得資金のうち五百万円までの部分について五分五乗方式により税額を計算する特例を設ける等の措置を論ずることといたしております。  第五は、既存の租税特別措置整理合理化であります。  まず、企業関係租税特別措置につきましては、昭和五十一年度以来連年厳しい見直しを行ってきており、その整理合理化をさらに進める余地はかなり限られている状況にありますが、昭和五十九年度におきましても適用期限の到来するものを中心見直しを行い、特別償却制度及び準備金制度等整理合理化を行うことといたしております。また、登録免許税税率軽減措置につきましても所要整理合理化を行うことといたしております。  第六は、普通乗用自動車等に対する物品税軽減税率引き上げであります。  普通乗用自動車等に対する物品税軽減税率につきましては、課税物品相互間のバランス等を考慮し、〇・五%引き上げることといたしております。  その他、同居特別障害者及び同居老親扶養親族特別控除額引き上げを行うとともに、住宅取得控除中小企業の貸倒引当金特例等適用期限の到来する租税特別措置について、実情に応じその適用期限を延長する等所要措置を講ずることといたしております。  次に、所得税法等の一部を改正する法律案につきまして、御説明申し上げます。  政府は、昭和五十九年度の税制改正の一環として、最近における所得税負担状況等にかんがみ、その負担軽減を図るため、人的控除引き上げ給与所得控除拡充及び税率見直し等により、初年度八千七百億円に上る所得税減税を実施するとともに、課税の公平を一層推進するための措置を講ずることとし、本法律案提出した次第であります。  以下、この法律案内容につきまして、御説明申し上げます。  第一は、所得税負担軽減を図るため、人的控除引き上げ及び給与所得控除拡充を行うことといたしております。  すなわち、基礎控除配偶者控除及び扶養控除をそれぞれ現行の二十九万円から三十三万円に引き上げることといたしております。  また、給与所得控除について、四〇%及び三〇%の控除率適用対象となる給与収入の範囲をそれぞれ一割拡大するとともに、最低控除額現行の五十万円から五十五万円に引き上げることといたしております。  この結果、給与所得者課税最低限は、夫婦と子供二人の四人世帯の場合で二百三十五万七千円となります。  第二は、以上の改正とあわせて、税率見直しを行うことといたしております。  すなわち、税率につきまして、その累進構造を全体として若干なだらかなものとするとの観点から、現行最低税率一〇%を一〇・五%に、最高税率七五%を七〇%に改めるとともに、税率の刻みの数の縮減を図ることといたしております。  第三は、障害者控除等の特別な人的控除についても、その控除額引き上げを行うことといたしております。  すなわち、障害者控除老年者控除勤労学生控除及び寡婦ないし寡夫に係る控除をそれぞれ現行の二十三万円から二十五万円に、特別障害者控除現行の三十一万円から三十三万円に引き上げることといたしております。  第四は、配偶者控除等適用要件である給与所得等所得限度額引き上げを行うことといたしております。  すなわち、配偶者控除扶養控除適用要件である配偶者等給与所得等所得限度額現行の二十九万円から三十三万円に引き上げることとし、いわゆるパート主婦については、年間給与収入八十八万円以下の場合は控除対象配偶者となるよう措置することといたしております。  その他、白色申告者専従者控除現行の四十万円から四十五万円に引き上げるほか、個人年金保険料等について所得控除を設けるとともに、予定納税を要しない予定納税基準額限度額現行の十万円から十五万円に引き上げる等所要措置を講ずることといたしております。  第五は、課税の公平を一層推進するための措置として、納税環境整備を図ることといたしております。  すなわち、前々年分事業所得不動産所得及び山林所得金額が三百万円を超える者等記帳制度及び難業所得等に係る総収入金額が五千万円を超える者の総収入金額報告書提出制度等を設けるほか、過少申告加算税課税処分取り消し訴訟における証拠の申し出等につき所要整備を図ることといたしております。  第六は、災害被害者負担軽減するため、所得税の減免を受けることができる災害被害者所得限度額及び所得税軽減または免除の対象となる所得限度額を、それぞれ五割引き上げることといたしております。  以上が、法人税法の一部を改正する法律案租税特別措置法の一部を改正する法律案及び所得税法等の一部を改正する法律案提案理由及びその内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  4. 瓦力

    瓦委員長 これにて各案の趣旨説明は終わりました。     —————————————
  5. 瓦力

    瓦委員長 これより質疑に入ります。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。渋沢利久君。
  6. 渋沢利久

    渋沢委員 大臣参議院の本会議関係で、おいでになる時間が少ないということでありますから、最初に、どうしても大臣から一言伺っておきたいということをお尋ねをしておきたいというふうに思います。  今度の予算審議を通して、いわば社公民三党の修正要求に基づいての与野党合意といいますか、そういう折衝を通してパートの問題が取り上げられたということ、これは非常にいいことであったと私は思っておるわけであります。特に私は、東京の下町でパート族内職族といいますか、大変零細な勤労者の多いところにおりますから、事情をよく知っておるつもりであります。そういう意味で、パートの問題がここまで大きな政治課題で取り扱われたということは、国民の多くが政治国会というものに対して非常な親近感を持って受けとめた部分だろうと思うのです。ただ、それは非常に評価すべきことなのでありますが、この間新聞の当初にもありましたし、我々の周りでもそういう声が実はあるわけであります。パートが九十万円までその所得が非課税になるということは大変いいことだが、これもよく考えてみると、本当にささやかなことでありまして、我々は胸張って国民に言うほどの中身ではないのですけれども、今、内職扱いはこのパート並み扱いにはなっておらない。内職では三十三万の基礎控除を除けば、あと収入はどんなにささやかなものであっても課税対象にされている、こういう現状があるわけであります。  投書に出ておりました。私たち内職者は三十三万だけが基礎控除で、あと課税対象になる、配偶者控除もなくなる、ひど過ぎやしないか、こういう声があるわけであります。今の税制仕組みの上からいえば、制度上いろいろな制約があって大変難しい問題だということを知っています。今その理屈のやりとりをしようということじゃなしに、実態として、家計補助の役割といえばパート内職も全く同じ機能を果たしているのですね。ですから、これはぜひ内職パート並み税制面で考える、そういう前向きの検討をしていかないと、大臣がおとといもこの委員会で言っておられましたが、国民の、納税者の税の不公平感をなくすということがやはり税務行政の第一の基本だ、こういうことからいいますと、パートの皆さんにも満たないささやかな家計補助としてのこの内職収入パート以上の過酷な税が課せられるという実情は、これは何らか打開してあげなければいけないというふうに思うわけであります。  局長に聞けば、これは今の仕組みの上での理屈が出てくるだけですから、そうじゃなしに、やはり政治的な感覚でこれは大臣にぜひ今後の——今ここで直ちにパート並み扱いにということについて確答を得ようとは思いませんけれども、少なくともこういう状況を踏まえてパート並みにという、この内職所得者のささやかな希望はわかる、それを十分理解する立場で前向きな検討をぜひしていただきたいというふうに思うのですが、いかがでしょう。
  7. 竹下登

    竹下国務大臣 これはあるいは渋沢さんにお答えすると、ちょうど参議院はきょう本会議でございまして、これ一問になるかもしれませんので、少し丁寧な答えになるかとも思いますが、私どもも、この問題が各党間の政治マターにのりましたときに、いわば制度上の問題からしてどういうふうに説明がつくか。むしろ内職者あるいは婦人外交員の方も含めて、少し時間をかけて各党間の専門家にお集まりいただいて検討した上でやるか、こういうことも率直に考えました。しかし今、大人のお話とおっしゃいましたか、という感じを受けましたように、各党間でこの話はついたわけでございます。そうしますと、今、百も承知の上でお尋ねになっておりますように、いわゆる制度上の問題でいきなり直ちには解決のできない問題があるわけであります。  さあ、どうするか。個人個人対象に考えてみますと、ある人はたまたまA社内職をやっておる。ある人はB社をやっておる。A社の場合は、内職であってもある種の雇用契約のような形で、言ってみれば給与所得者として扱えるような措置をしていただいておるところもあるようでございます。それからB社の方は依然として、いわゆる事業所得かまたは雑所得という範疇に入らざるを得ない。そうなると、幾らか労働政策雇用政策上の問題も入るのかなというようなことで、労働省でもかねてから議論をされておるところのようでございます。したがって、どうしていくか、こういうことになりますと、今おっしゃいました感覚というものは、これはだれしも自己中心で不公平というものは感ずるわけでございますけれども、これは客観的に見て自己中心じゃなくても不公平という感じを受けるのは当然のことだと思うのであります。したがって、今までのやり方を見てみましても、源泉徴収票が出ておるとか明細書が出ておるとか、できるだけ給与所得と認めてあげるような方向でこれに対応してきた。そして、どうしてもそうならない場合、あるいは白色申告者等の場合、どれだけの必要経費というものが認められるか。とにかくありとあらゆるものをできるだけお認めしましょう。しかし、内職の方でそういう証明がなかなかつかない場合、およそ三割程度とかいうようなことで対応しておる。そういう過去にやってきた対応の形と、七十九が九十になるということを一方念頭に置いて、どういうふうな徴税の方向を見出していくかということはまさに検討課題であろう。  それで、今度与党から御返答のあった、申し入れに対する御返答の中でも、従来国会議論等であった問題についてやれるものもひとつ検討しよう、こういうことが書かれてありますので、やはりそれの中の大きな一つ課題でもあるのかなという感じを私、持っておりますので、本当におっしゃったような趣旨行政の上でつないでいきたいという気持ちでいっぱいでございます。
  8. 渋沢利久

    渋沢委員 与野党間で話し合われた検討課題の中の一つと受けとめて前向きに検討したいというふうに大臣か言っていただいたことは、これは私は大変満足すべき姿勢だと思って伺いました。事実これは深刻でして、具体的に突きつけられて、これは一体代議士さん、どうなんです、こう問い詰められたときに、本当に回答に困る。それで、九十万に満たない内職所得で、それは今控除お話もありましたけれども、仮にそういうものを経ても、一言で言えば、働けば働くほど税金を取られるという、そういう仕組みの中にあって、それで配偶者控除も、稼げばカットされる。今、税法上で配偶者扱いをされませんと、健保の上でも扶養親族にならない。ですから、二重、三重の負担を逆に強いておる。パートよりも少ない収入でありながら、具体的に私、試算もしてみましたけれども、これは時間がないからやりませんが、仮に三割の控除を引いてみても、地方税を含めてかなりの税負担をして、その上配偶者問題からいっても、今言ったような健保に至るまでの負担があるということで見ますと、現状は大変これは無視できない状況にあると思うわけであります。  もう時間が来たようですから言いませんが、今の大臣の、これは与野党間の話し合いの中にある、今後詰めていく政策課題一つとして受けとめるという言葉を私はそのまま素直にひとつ受けとめまして、ぜひ早い機会に、やはり制度面での改革がないと——現場は、国税庁出先はいろいろ苦労して、いろいろな対応をしてもらっていると思いますけれども、ぜひその御検討、早期に問題解決できるように、少なくともパート並み内職もと、この点で努力されることをいま一度お願いをして、もう一回確認をして、それでどうぞ。
  9. 竹下登

    竹下国務大臣 御趣旨の点、十分理解しております。  では、ちょっと向こうへ行かせていただきます。
  10. 渋沢利久

    渋沢委員 今そういうことで、大臣からは制度面での検討について前向きにやるということをかなり明確におっしゃいましたから、このことについてはそこの部分できょうはとどめまして、国税庁が見えておりますから、ひとつあわせてこの問題でお願いをしておきたいと思うのです。  今大臣からも話がありましたように、現状では実情に見合った指導対応をしているという趣旨の話がありました。それは確かにそうだろうと思うのですが、一層そういう配慮を願いたい。たまたまパートとの違いでいろいろ仕分けをされますけれども、会社の、企業の都合で、一定事業所、工場に集めて作業させる、そういう形態ではなしに、自宅で同様の中身一定の時間を拘束し、一定の時間給等賃金契約を結んで、そうして受ける側は税法工事業者所得扱いにされて、経費があるのないのと言われても、実際は何の計算もできない。相手の指図という枠の中で一定仕事を、まさに労務提供している、こういう構造である。まさに形の上で必ずしも厳格に雇用契約を結んでいないということがあっても、実態としては大変それに近い状態で、しかも内職だからという扱いを受けているというケースが非常に多いわけですね。私ども周りはそういう方が非常に多いわけです。ですからここのところは、制度面改正大蔵省としてもやるということで、現場指導の上でぜひそれはきちんとした温かい対応をしていただかないと、大変これは気の毒だというふうに思うのです。  この間も税務署が、私知っている話だけれども内職先のリストを調べていったら、公務員住宅に行き当たってしまった。公務員だって大変ですよ。減税はないし、人勧凍結はあるし、奥さん、やはり内職せざるを得ないという状況があるわけで、多分税務署の職員のところじゃなかったかと思うのですが、実態としてそういうことが非常に多くあるわけですね。  ですから、経費といいますけれども経費などは実際出し切れない。例えば電動ミシン仕事をしている労務提供の中で、電気代電話代水道代経費で出せといったって、出しようがないですよ。家計費との区別がつかぬのですよ。しかし、内職はそれは事業者所得の部類だという。こんな扱いは、これは不当だと思います。ですから、ぜひひとつ国税庁としてもそういう温かい対応をしてほしいというふうに思うのです。実態はどうです、そういうこと、わかっているでしょう。ちょっと。
  11. 渡辺幸則

    渡辺(幸)政府委員 ただいま非常に詳しい実態お話をいただいたわけでございますが、私ども国税庁といたしましては、先ほど大臣から申し上げましたように、内職につきましてはおおむね概算経費ということで三割の控除をいたしておるわけでございます。これは正式な制度上のものではございません。私どもの内部の扱いとして、いわば標準的な、概算的な経費を引くということでございます。大体内職の方は帳簿などをつけるような余裕もないわけでございますし、そういう方の申告をいただいて、私ども費用を一々つけろというようなことを申し上げるのは酷なことかと存じます。そういうことで、そういう場合には大体こういう経費控除をする。しかしながらそれでも、今委員御指摘のように引き足りない、また課税所得があるという場合があるだろうと思います。そういう場合にはお申し出をいただきまして、私ども一線の税務署員は、ただいまおっしゃいましたような、なるべく雇用所得と見られるものは給与所得として見ていく。それは源泉徴収票とか支払い明細書とかございますれば一番いいわけでございますが、なお実態に即しました課税に努めておるところでございます。また、そのように国税局あるいは税務署を通じまして、国税庁の方からも指示をいたしておるわけでございます。  今後とも、このパート内職とのバランスには、私どもは常に意を用いておりますので、執行の範囲内でできることはなるべく努力をしてまいりたい、そういう感じでおります。
  12. 渋沢利久

    渋沢委員 ぜひひとつ、そういう方向お願いをしておきたいと思います。  さて、次の問題ですが、これはきょう新聞にも報道されておりまして、大蔵省国会の威信にもかかわる部分がございますので、幾つか尋ねておきたい。  福島交通不動産に対する使途不明金がこの七年間で五十億を超えるということの中で、政界への政治献金、使途不明金の中で社長が政治献金、そして貸倒引当金の取り崩しをめぐる虚偽記載の報告の問題、あるいは退職金の不払いというような幾つかの問題が出ておりまして、ちょっとお尋ねをせざるを得ません。これは、使途不明金というのは正確には幾らですか。それから、その使途不明金の中で判明したものは、どういう性質のものがどれだけ明らかになっておるのか。それから、社長の使った金の中でかなりの金が政界に献金されているということが国税当局によって確認をされているというふうに今伝えられておるわけでして、その献金の趣旨金額、規模等について当局が掌握している部分を、これはもう世の中に出ておる話ですから、きちっと報告をしてもらいたい。
  13. 岸田俊輔

    ○岸田政府委員 まず、使途不明金の問題でございますが、五十七年度で使途不明金としまして把握いたしましたのは四百二十八億でございます。これは全体でございます。そのうち判明をいたしました、内容を確認いたしましたのが八十七億でございます。その使途不明金の把握をいたしました内容でございますけれども、これはリベートとか内部のいろいろな総会対策費とか、そういうような内容でございます。  具体的に、先生御指摘の福島交通不動産でございますが、今朝新聞で発表になりました。調査をいたしました事実につきましては、あえて否定をいたしません。ただ、個別の問題でございますので、その内容自体を明らかにするのはちょっと差し控えさせていただきたいと思いますけれども、私どもといたしましては内容を調査いたしまして、適正な課税の調査を行っているということだけにとどめさせていただきたいと思います。
  14. 渋沢利久

    渋沢委員 報道されているような内容については否定をしない、特に明らかにはあなたの方からはしないけれども、報道されている中身はもちろん否定するというつもりじゃないでしょうね。これは事実に反するというふうに否定なさるわけじゃないでしょうね。
  15. 岸田俊輔

    ○岸田政府委員 あえて否定はいたしません。
  16. 渋沢利久

    渋沢委員 それはそうでしょう。ということであれば、あなたの口から言わなくても、報道された事実に間違いはないということは確認をするわけです。  しかし、そこで問題になるのは、余り時間もありませんのでくどいことは聞きませんけれども、当該委員会として大変気になる部分は、この有価証券報告の中で、貸倒引当金の取り崩しが不当に、虚偽的にされているというような部分一つであります。それからもう一つは、政界への金のばらまきの問題もありますけれども、これはまあ一応さておくといたしましても、退職金の支払いがされておらない。ここは、退職給与引当金の残高は幾らありますか。わかりますか。  では、それをちょっと調べてもらっている間に、貸倒引当金の取り崩しを銀行の同意なしに取り崩した。それを同意があるがごとくして虚偽の事実をもって報告をして取り崩しをやった、その取り崩しで福島交通の赤字を一挙に黒字に転じて、そうして借金の方は福島不動産の方に寄せちゃうという操作をやったということが伝えられている。この銀行の同意なしで貸倒引当金が崩された、これは事実ですか。
  17. 渡辺幸則

    渡辺(幸)政府委員 ただいまお尋ねの点は、企業会計の面と、それから税法の面と両方あるわけでございます。多分お尋ねの件は企業会計に関する方面の事柄であろうと思うわけでございますが、ちょっと大蔵省から担当者が参っておらないと思うわけでございます、突然のお尋ねでございますので。  税法に関する限りは、貸倒引当金につきましては一定の額を積み立てまして、そうして毎期毎期洗いがえと申しますか、引き当てました金額を取り崩してはまた積むという制度になっておるわけでございます。そういうことでございますので、任意の取り崩しというようなことには税法の方はなっておりません。ただし、企業会計の方面については私どもちょっと承知しておらないわけでございます。
  18. 渋沢利久

    渋沢委員 退職金の引当金の残高もかなりのものがあるはずなのに、実際には去年の八月ごろからの退職金は会社が通告して不払いになっておるということが伝えられておるわけです。これは退職給与引当金制度趣旨に全く——実際はこういうときに退職金として支払われない、公然と。そういう意味で、福島交通の問題というよりは、これは今の退職給与引当金の制度自体が、いざというときに、これだけ恩恵的な優遇を与えておりながら、企業が退職金を支払わないで済む。こういう事実に照らして、これは非常に重要なことだと私は思ったわけです。わからないですか、残高は。
  19. 渡辺幸則

    渡辺(幸)政府委員 これは貸倒引当金総体、全国での話でございますが、五十七年度の末で、貸倒引当金の積立額全体は三兆二千四百四十四億になっておるわけでございます。  この個別の事案につきましては、ちょっと私は承知しておりません。
  20. 渋沢利久

    渋沢委員 しかし、いずれにしても、今トータルで三兆の累積残高と言いましたけれども、私はもっとあるんじゃないかと思うのです。政府が出した資料で。言うと、七兆ぐらいあるよ。そうだろう、貸し倒れだろう、三兆というのは。
  21. 渡辺幸則

    渡辺(幸)政府委員 失礼いたしました。今の貸し倒れのほかに、退職給与引当金の残高は、七兆三千七百五十六億でございます。
  22. 渋沢利久

    渋沢委員 いいよ。あなたにかわって僕が答弁しているみたいでおかしな話だけれども、七兆だ。つまり、退職給与引当金というのは、こういう便法を講じて税金まけてやるということを大蔵省は大法人にお世話をするだけで、退職金として支払われようと支払われまいと、それも掌握してないし、全く支払わないで済んでいるのです、現実に。福島交通がそういうことなんだ。そういう意味で非常に重大だと私は思うのですよ。これはどうですか。
  23. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 税法上、現在認められております退職給与引当金については、今委員がおっしゃったような議論が再々この委員会でも提起されておるわけでございます。申すまでもございませんけれども税法上の退職給与引当金と申しますのは、企業が労働協約等によりまして退職金の支払い債務という格好で確定債務を負うわけでございますので、それを一定の方式で引き当てる、毎期毎期損金として繰り入れられるべきものを、企業会計の考え方にのっとりまして損金として認めるという考え方に立っておるわけでございます。  ただ、今おっしゃいましたように、間々会社等が倒産等いたしました場合に、この退職給与引当金が取り崩されまして、実際に労働者に支払われないという事態が起こるという事実は私ども否定しないわけでございますけれども、基本的にはやはりこの引当金というのは、企業会計の基本的な原則に基づきまして、税法上損金として認めているという制度でございます。したがって、労働者の債権を確保するという問題はまた別個の問題として御議論をいただくということになりませんと、なかなか議論が整理できないというふうに考えております。
  24. 渋沢利久

    渋沢委員 このことで特にきょう議論しようとは思わないが、それは全くひどい話でしてね。その企業が支払うべき退職金が円滑に支払い得るように、その準備金に対して税制の恩恵を与えるという制度でありながら、実際に退職金が、倒産してなくても現実に支払われない。支払い困難の通告を出して、それでけろっとして済んでおる。そこで労使問題が起きれば、今あなたが言ったように、いや、労使問題は労働行政のかかわりでございまして、それは労働省にお聞きくださいという趣旨対応では、何のためにこの制度があるかということ。我々は関係ないというような態度じゃないですか。こうなんですよ。それがこの制度の本質なんだ、今のあなたの答弁が。このことを議論し合うと、もっとほかに聞きたいことの時間がなくなりますから……。非常にひどい態度だと思う。しかし同時に、この制度の特質をそのまま今のあなたの答弁があらわしているというふうに思うので、不満だけれども、これはちょっと打ち切ります。  それで、本題の中の一つお尋ねを変えていきたいと思うのです。  納税環境整備について。これは全体としてここで出ている幾つかの改正は、徴税体制を強化するという発想で貫かれているように思うのです。権力のあるものが一層権力を強めるというときには、その権力の乱用はないか、行き過ぎはないか、そのことで国民の権利が侵害されることはないか、そういう配慮でチェックをする責任と機能が国会のものだと思っておりますから、そういう観点でお尋ねをするわけです。  素直にこの法律を読んでみますと、まず、帳簿書類の保存義務、記帳義務等の、二百三十一条の数項にあるわけですが、まずお尋ねするのは、この保存義務、記帳義務等について、不動産所得事業所得山林所得、こう限定した理由
  25. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 今回の申告納税に当たりまして、記録に基づく申告という観点から、記録あるいは帳簿の保存あるいは記帳義務をお願いいたします場合に、今おっしゃいましたように、事業所得山林所得、それから不動産所得に限定した理由は、御承知のように、所得税法では十種類の所得があるわけでございますが……(渋沢委員「簡潔に言ってくださいよ」と呼ぶ)考え方は、要するに継続して事業をやっております場合に、申告に基づいてきちんとした納税をやっていただく、そういう公平という観点からでございまして、例えばその給与所得等につきましては既に源泉の徴収の制度がございます。利子所得についても、配当所得についても源泉の制度がございます。それから事業所得に類したものとしては雑所得がございますけれども、これも大部分が源泉徴収ということでもございまして、やはり継続的な所得が発生する場合の所得の公正な申告という観点から、所得の性格上、この事業所得並びにそれに類する不動産所得並びに山林所得に限定をしておるということでございます。
  26. 渋沢利久

    渋沢委員 従来、利子・配当所得にかかわる部分などは、今までの議論の中では、なかなか把握しがたいとか資料がつかみにくいとかというようなことでいろいろ議論があった、議論というより言いわけがあったように聞いておるのですけれども、例えば利子所得、配当所得、譲渡所得などを除いた理由はあるのですか。
  27. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 先ほど申しましたように、継続的な事業等に基づいて発生する所得、これを継続的に記帳、記録していただくということでございまして、例えば利子等でございますと、これは事業所得者に限りませず、いろいろな階層の方がそれぞれ金融資産を持っている場合に利子が発生するということでございまして、そういうものに対して一々記録の保存、記帳を求めるということが適切かどうか。  あるいはもっと個別の議論に入りますと、利子の場合は税法経費というものは認めておりません。したがって、収入等を継続的に記録させるということが意味があるのかどうかということでございます。配当につきましても同じようなことが言えるわけでございまして、いろんな人がそれぞれ株式を持っておられるわけでございますけれども、これは年々変動するようなものでもございますし、これも先ほど申しましたように、源泉という制度で把握されておる。それから譲渡所得ということになりますと、これは文字どおり、通常の場合は何年間に一遍起こるような所得でございます。こういったものに継続的に記録なり記帳を求めるというのも、実益等の面から見ても、そこまですることが果たしていいのかどうかということでございます。なるべく限定的に考えるということで、この三つの所得について記録なり記帳を求めるということにしておるわけでございます。
  28. 渋沢利久

    渋沢委員 その譲渡所得というのは、継続的なものではなしに、まあめったにないものでしょうが、山林所得だって似たようなものじゃないですか。
  29. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 山林所得につきましては、もちろん個々の納税者の場合にいろいろなケースがあると思いますけれども、通常の場合はやはり計画伐採と申しますか、事業として山林事業をやっておられる方は、通常、計画伐採というような格好で年々継続した所得が発生するということが想定されるわけでございます。したがいまして、事業所得を含めたと同じような考え方に立って山林所得対象にしておるわけでございます。
  30. 渋沢利久

    渋沢委員 利子、配当、譲渡所得の分野で脱税がないというふうに言えますか。大口脱税の温床じゃないんですか。その記帳義務で一番明らかに掌握しておきたいのはこういうところじゃないんですか。なぜ避けた。避けた理由が、本当の意味で今のような話じゃわからぬじゃないですか。
  31. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 利子・配当所得につきまして、事業所得との相違点ということは、先ほど私申し上げたわけでございますが、もう一つ、今委員から新しい角度からの問題の御提起でございます。  利子・配当所得につきましては、現在、総合課税が原則でございますけれども租税特別措置法によりまして分離選択制度が認められておる。あるいは利子課税につきましては少額非課税制度もあるということでございます。したがいまして、その課税方式そのものを一体どうするかという基本的な問題があるわけでございまして、そういう課税方式をどうするかという観点から、さて、今後その記録なり記帳をどうするかという議論にあるいは発展するかもわかりませんけれども、現在の課税方式のもとで利子配当について記帳なり記録を求めるということについて、いささか問題がありはしないかということでございます。
  32. 渋沢利久

    渋沢委員 そういう答弁では納得のできる話じゃないんですね。お金が一番大きく動いて、一番問題になるところについては避けて、そして書類の保存義務だ、記帳義務だというものを細かいところに押しつける、こういう発想なんですね。国民の税に対する不公平感をなくすことが税務行政の基本だなどという物の言い方とは、まるで違うことじゃないかと思うのですね。  次のことを聞きます。  国税通則法百十六条の改正、原告の立証責任というものを特定したといいますか、特に強調したことですね。課税処分での訴訟で、税務署課税処分基礎となった事実を述べたら、遅滞なく、直ちに納税省はそれと異なる事実の主張を証明するすべての証拠を出さなければならないように義務づけられる、こういうことですね。民事上では債権主張側が挙証義務を持つ。これは民事の争いでは五分と五分でやれるわけですね。しかも、債権を主張する側が挙証の義務を持って争うということ。今度は税法では、行政処分に対して不服な者については、不服とする者が挙証義務を負う、こういうものになるわけです。これは大変な性格の違い、権限強化じゃないでしょうか。
  33. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 税務訴訟の場合の立証責任につきましては、現在我が国の判例では民事訴訟の債務不存在確認訴訟におきます法理が適用されておりまして、債権者たる税務官庁が立証責任を負うというふうに我が国の訴訟では運用されておるということは、御指摘のとおりでございます。  今回お願いしております国税通則法の現在の百十六条「証拠申出の順序」に対する規定の改正でございますが、これは今申しました立証責任の分配に変更を来すという規定ではございません。今回お願いしておりますのは、課税処分取り消し訴訟に当たりまして、訴えが提起されました場合、課税庁であります税務署長が、それぞれその訴えに対しまして、課税庁としての処分の根拠になりました事実なり主張を裁判所に提出いたしますが、それを受け取った場合に、原告の側である納税者の方が、自己に有利になる事実があった場合には遅滞なく立証をする、証拠を申し出るということでございまして、それはいわば訴訟指揮に関する規定でございますから、立証責任の分配に対しては影響がないわけでございます。
  34. 渋沢利久

    渋沢委員 そういうことではないですね。何の権限強化にもつながらないようなものなら出す必要はないのです。現状でも、訴訟で納税者税務署相手に問題解決しようというのは非常に困難です。訴訟で納税者側が勝ったという例はほとんど、五%あるかなしかでしょう。一〇〇%近くこれは有利なはずなんですね。大体時間がかかりますよ。不服審判所を経て、裁判だって五年から七、八年はかかるでしょう、訴訟で立証するのに。当局は国民の税金で裁判闘争をやるわけだけれども納税者の方は自前でやるのだから、そんな五年も七年もというのは大変なんですよ。勝てるわけがない。しかも、民事の五分の争いじゃなしに、税務署に、それだけじゃなくていろいろ調べるよという顔をされてやられると、大概震えちゃうのですよ。だから、現状でもめったなことでは勝てないようなハードルがたくさんあって、仕組みがあるのですね。なかなか主張が通らないという部分があるわけです。  あなた方は、勝った者は正義だと思っているかもしらぬけれども、権力と、そういう力を持たない国民の側の権利関係のバランスというのは、非常に気を配らざるを得ない。記帳義務とか保存義務というのがずっと出てきて、それとの絡みで推計課税ということは当然強くなるだろう。争いも出てくるだろう。保存している資料との関係で争いも出てくるだろう。そういう流れの中で見ると、これはわかるわけですね。なぜ今さらこんなものを特に出してこなければならなかったかという背景は、どうもそこにあるとしか考えられないように思うのです。どうも大変心配でありますね。  ちょっと聞きますが、推計課税課税が決定されたときに、税務署が当該納税者に対してその課税根拠を説明する義務というか、責任はないということですね。あるのですか。
  35. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 推計課税は、所得税法なり法人税法なりにそれぞれ根拠がございまして、本来課税処分といいますものは、なるべく実額ですべきことでございます。これは判例上もそういうことがはっきりしておるわけでございますが、どうしてもよるべき帳簿がない、あるいは正確なる資料がないといった場合、やむを得ず合理的な根拠に基づいて推計課税をするわけでございます。推計課税をすべき理由を明示するということはい税法上税務官庁にそういうことは規定されておりませんけれども、いずれにいたしましても、訴訟の段階あるいはその前の不服申し立ての段階になりましたら、税務官署としての推計課税の根拠が事実上当然納税者に明示されることは明らかでございます。
  36. 渋沢利久

    渋沢委員 明示する必要がないとなっているのですね。必要があると思えば、親切に説明できるように書いたらいいのです。そうはしていないのです。説明する必要はないのです。納税者の方は、書類や帳簿は十分に整っておる、これでもう十分だ。税務署は、それは不十分で不完全だ。それで最終的に推計課税になる。そして推計課税は、もちろん納税者が納得しない。しかし、なぜこういう処分が決まったかということについての説明を、納税者に対してする必要がないとされておるのですね。これはまことに一方的な仕組みではありませんか。裁判をやれば言いたいことも言いますよというだけのことでは、これはまさに大変一方的な仕組みになっておるということではないでしょうか。  それから、特に今度の記載のことや何かを見まして私が思いますのは、いずれにいたしましても、大きな法人などは比較的帳簿整備能力、そういうものを持っているのですね。対応能力、持っていますね。それから、例えば訴訟の中での立証機能、能力というものも持っているのですね。小さいところほど帳簿整備能力というのですか、記帳能力を持っていない。それはそうでしょう。そんなスタッフも余裕も力も時間もないわけです。朝は朝星夜は夜星で、記帳義務だ保存義務だといろいろ義務を押しつけられたりしまして、たかだか年収三百万。したがって、訴訟になれば、そういうところが一番立証能力を欠くのですね。そういう層、ここに結局は推計課税が強くなる。推計課税が決めやすくなるし、それから訴訟もやりにくくなる。今まさにそういう構造になっていると思うのですね。それが改善されるのじゃなしに、ますます強くなる方向に動いているということが私は大変心配なわけです。いかがですか、そんな心配はないですか。
  37. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 今回御提案申し上げております考え方について若干御説明を申し上げることをお許し願いたいわけでございますけれども申告納税制度と申しますのは、納税者自身が課税標準なり税額を算定し、決定し、自主納付するという制度でございます。したがって、その根拠には、みずからの事業等に対する記録とか帳簿に基づいて申告するということが前提になるわけでございます。したがいまして、今回お願いしております記録とか帳簿の保存義務というのは、この保存義務によって新しく記録をつくっていただく、帳簿をつくっていただくということではございませんで、申告納税制度に内在しているそういう帳簿とか記録に基づく申告というものを法律上確認していただくという性質を持っているわけでございます。  一方、帳簿の記帳義務につきましては、これは新たに法律上の義務として帳簿をつけていただくということでございますが、これは委員御指摘のとおり、余り零細な納税者に御負担がかからないようにということで、年所得三百万でございますから、現在、青色申告の場合でも、年所得三百万以上の人のうち青色の人は七割ぐらいを占めております。したがって、これくらいの水準になりますと、ほぼ簡易な帳簿の記帳能力はあるというふうに考えられるわけでございます。しかし、これにつきましても罰則等の制裁規定はないわけでございます。  それから、たびたび御指摘になっておるわけでございますけれども、今回の制度によりまして推計課税が強化されるとか、あるいは訴訟に至りまして、立証責任等の面で納税者が今までよりも不利な立場に立つとか、そういったことは一切ございませんので、その点はぜひ御理解を願いたいと思います。
  38. 渋沢利久

    渋沢委員 全く理解のできない答弁なんですが、そこで、今度、今まで記帳などをしなかった、あるいはしたくてもできなかった人たちも含めて、そういう人にいろいろ記帳をしてもらう、あるいはその帳簿を保存してもらうという責任を、義務を法律の上で押しつけることになるわけです。いろいろおっしゃったけれども、青色だって実際、帳簿の整理がなかなかうまくいかなくて、いろいろ苦労している実態があるのですね。簡単なことじゃないのですよ。  ところで、それだけに問題になるのは、その二百三十一条に書いてある「大蔵省令で定める簡易な方法により記録し、」云々と、その法律には省政令にゆだねるという部分が当然出てくるわけですけれども、意外と省政令の部分こそ問題だ、ここに本当の顔がある、問題の焦点がそこにあるというようなことが多いものがあるわけです。国会審議、うかつに素通りしたら、意外とそこで想起し得なかったものが省政令、通達などを通して出てくるということもあり得るわけでして、それだけに、ここで言う省令は具体的にどういう形で記帳なり帳簿の保存義務というものを決めていくのか、その中身が非常に問題だと私は思いますね。ぜひそれがわかる具体的な省令の案の中身を示していただきたい。それから記帳明細というのですか、そういうものが当然あるわけで、それはぜひ配付してもらいたい。
  39. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 これはただいま御指摘のありましたように、現在御提案申し上げております所得税改正法案の二百三十一条の二の第一項でございますが、ここに法律上はっきり書いていただいておりますのは、「その年の取引のうち総収入金額及び必要経費に関する事項を大蔵省令で定める簡易な方法」というところまで法律で要件を決めていただいております。したがって、その内容につきましては……(渋沢委員内容は要らない、省令を出して」と呼ぶ)省令はこれから作成いたしますが、省令の基本的な考え方は幾つかございます。  一つは、簡易な方法でございますので、現在の青色にお願いしておりますよりもより簡易な方法、具体的には取引のうち、この法律に書いてございますように、損益取引に関する記録だけをお願いする、資産、負債に関する取引は記帳をお願いしないということでございます。  それから、記載方法等につきましても、例えば小売業者の現金の売り上げとか少額な現金売り上げについては、一々記帳せずに、その日々のものを一括して記載してもよろしいとか、そういう記載事項を詳細に決めさせていただく。それから保存期間は、基礎的な帳簿は七年でございますが、その他の帳簿は青色よりも緩和いたしまして五年ということで、現在省令案を作成中でございます。
  40. 渋沢利久

    渋沢委員 まだ省令ができていないと言うけれども、そこが一番問題になる部分で、今の簡単な口頭説明でなく、私が求めたのは、それをきちっと文書にして、そして帳簿方式というものがあるわけで、そういうものを具体的に資料として配付すべきだということを申し上げておる。時間がないので、口頭で今そのことを説明を求めるというのじゃなしに、その資料を出してくださいということを私は言っているわけです。いいですね、それは。出しますね。——  そこで、もう時間がありませんので、一つ伺っておくのですが、さっきも言いましたように、どうもこの「納税環境整備」と言うけれども、これはミスプリじゃないでしょうかね。「徴税環境の整備」じゃないでしょうかね。納税者の立場はどこにもないのです。徴税の側の権利だけが、ともかくもワンポイント、それぞれ強化されている。納税者の立場というものはないです。今、情報公開とか、そういうものが一面あって、そして権利も強化するけれども、チェックする機能も強化するというものがあればバランスがとれるのだろうけれども、これはまさに徴税環境の整備と読みかえるのにふさわしい中身なんです。これはミスプリだと思うのです。直した方がいいと思います。中身と合わないです。  そこで、例えば公示制度改正にしても、全く今の趣旨に反するのですよ。今、情報公開、資産公開で、我が国の大臣の皆さんも資産公開までやっている、そういう時代ですよ。しかも一方では、財政再建で国民に次から次へと財政負担を強いようという。減税まで、選挙のときには増税の話をしないものが、出てくれば、その分まで帳じりは増税でということで我々が今審議している、こういう状況でしょう。そういう中で、せめてできるだけやはりオープンにわかるものは知らせるというぐらいのことがなければ、税制の民主化という側面はかけらもないですね。ここが問題だと思うのです。大体何でこんなものを変えたのですか。所得一千万以上のものをやめて、今度税額にする。税額にすると、これを所得に読みかえると三千万ぐらいのものになるのですか。幾らですか。税額一千万というと、所得に直すと幾らですか。
  41. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 税額一千万というのは、夫婦子二人でやりますと、所得として二千六百五十万見当になると思います。これは家族構成によって違います。
  42. 渋沢利久

    渋沢委員 そうですね。これはなぜやったか理由を聞きたいけれども、全くおかしなことですよ。しかもこれは、新聞の伝えるところによれば、これで国会議員も公表の対象外になるというようなことが指摘されて、我々こそ迷惑なんです。今まさに政治家の資産公開ということが政治日程に上っているような問題ですよ。このときにあたかも資産隠しと思われるような、しょうちゅうを三五%上げたりビールをがっちり上げて、そういう負担国民に強いるその当局が、まさに庶民の神経を逆なでするようなこれは改正じゃないですか。我々は迷惑だ。これは何も私だけじゃない。全国会議員は、こんなことで国会議員が助かったとか資産隠したとか言われるのは大変迷惑な話です。これは撤回すべきですよ。こんなものはやめてもらいたい。なぜこんなものを今このときにやらなければならぬのですか。
  43. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 これは世上若干誤解がございますので、若干時間をいただきまして御説明申し上げたいと思うのですが、高額所得の公示制度昭和二十年代に設定されたわけでございます。これは第三者のチェックによる牽制効果によって間接的に申告水準の向上を図るというのが制度の本来の趣旨でございました。  高額所得の限度をどういうふうにするかということでございますが、現行の一千万という制度は、昭和四十五年に一千万という限度になったわけでございます。その前は五百万でございました。一千万になったときに公示された人間の数が、昭和四十五年でございますが約七万八千人でございました。その後十数年放置してあるものでございますから、五十八年で推計いたしますと、恐らくこれは五十万人近い数の方の公示になる。したがいまして、これは税務署の事務負担等の問題もございまして、ここ二、三年来この限度額引き上げが懸案になっておりました。税制調査会でもたびたび議論をしていただいたわけでございまして、現在の一千万という公示限度額引き上げるべきであるということは、税制調査会の中でも御意見があるわけでございます。  ただ、今回この公示制度をどうするかということにつきまして、昨年十一月の中期答申でも書いておられますように、そもそも現在の公示制度が形骸化してやや興味本位になっておる、したがって廃止すべきであるという意見も税制調査会の中にあるわけでございます。  それから、公示限度を引き上げる際に、従来のように所得限度でやるのかあるいは税額を公示するのか、あるいは税額所得とを両方公示すべきではないか、さまざまな意見があるわけでございます。税額を公示する意見と申しますのは、一つ税額を公示することによりましても、結局その背後にあるその人の所得の額はわかるわけでございますから、所得公示の場合と同じように牽制効果という機能がやはり期待できる。同時にもう一つ所得公示以外に、税額を公示することによって、それを見る納税者個々の人が、自分が払っている税負担と比較してみて、それで納税者の税に対する意識が高まるという効果も期待できる。それから、高額の納税者がやはりそれだけ国家に貢献されておるわけでございますから、それを顕彰するというふうな効果もあって、実際に高額の納税をしておられる方の納税意欲にもプラスになるであろう。そういうことで、高額所得者の所得隠しとかそういう意図は一切ございませんで、さまざまな議論の経過と現在までのこの制度の経緯を見まして、この際一度税額公示によるということでやってみてはどうか。  それで、先ほどおっしゃいましたように、今回の限度額でやりますと、標準四人世帯の場合に二千五、六百万くらいの所得限度になりますが、この法案を通していただきますと、恐らくこれはちょうどことしの五月で税額公示になります。そういたしますと、恐らく公示される人数は七、八万人、つまり昭和四十五年に一千万になりましたときの公示人数ぐらいの水準に戻るわけでございまして、世上一部誤解があるわけでございますけれども、私ども、この制度によりまして高額所得者に対する所得隠しというふうな意図は毛頭ございませんので、これはぜひ御理解を願いたいと思います。
  44. 渋沢利久

    渋沢委員 何とおっしゃろうと、そういう受けとめ方にはならないですよ。今の税の負担、その不公平感、ふんまん、さっき私は内職パートお話もしましたけれども、そういう税に対する不信感がある中で、やはり今度の処置は高額所得者の所得隠し、こういうふうに受けとめられる。あなたはどう受けとめようと、国民の側はそういう受けとめ方をする。というのは全体の流れに、情報公開とか税制の民主化とかいうような取り組みがあれば別だけれども、全くそれが欠落している中で、これがさまざまな環境整備と言われることの中にまた一つ入って出てくる、こういうことです。興味本位というけれども、そんなことはないですよ。結構それはみんな楽しんでいるんですよ。あれが高額所得者の神経をどうのというのは、そこにばかり気を使い過ぎるのです。  今度の法案自体もそうです。所得税税率の七五%は高過ぎるから七〇%にするとかいって、実効税率はもっと低いのに、私だって本当に一生に一度でいいから七五%払ってみたいですよ。そういう税金を払えるような所得が……。全く高額所得者にだけ神経を使い過ぎているということを、先ほどの退職給与引当金との絡みでも思いますし、この徴税環境の整備にかかわる一連の改正は、まさに今の公示制度改正を含めて、国民の期待に全く反する中身だということを言わざるを得ない。こういう制度改正についてはひとつ思い直しなさい、こう言わざるを得ない。  それから、先ほど要求いたしました資料については速やかに配付されるように望みまして、私の質問は終わります。
  45. 瓦力

    瓦委員長 沢田広君。
  46. 沢田広

    ○沢田委員 政務次官、今あなたは、税金は、国民として高いと思っていると思いますか。それとも、この程度はやむを得ないのかなというふうに思っていますか。うそは言わないでください。あなた自身が感じている感覚では、今、税金に対する国民の認識、どういうふうに理解しておりますか。
  47. 堀之内久男

    ○堀之内政府委員 税金が高いか安いかという国民としての感覚でございますが、それぞれ考え方が違うと思いますので一概にどうと言うわけにはまいりませんが、私も長い間首長をいたしておりましたので、その辺で市民の直接の考え方というものを考えるときには、一般的には税金がそう高いという感じは受けておりません。ただ、その当時私が一番言われておりましたのは、やはり保険税が一番高いというのがよく市民の声を通してありましたので、所得税そのものを市民が高いというような、これはふだん私はそう聞いておるような気はいたしておりません。
  48. 沢田広

    ○沢田委員 大蔵大臣は「梅ちゃん」、こういう言葉で言っておりました。それが愛称なのか通常呼ばれている言葉なのかわかりませんけれども、大変御苦労さまですが、今渋沢さんが言った問題についてちょっと質問を続けていきます。  さっきこういう言い方をして、やってみてはどうか。やってみてはどうかという意味は、どういう意味ですか。
  49. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 さまざまな議論の経過を経まして税額公示に切りかえる。これは戦後この制度が始まりまして以来の一つ制度の切りかわりでございます。ただ、私どもは先ほど申し上げましたように、従来の所得公示以上にいろいろないい効果も期待できるということでございます。しかし、何しろ新しい制度の試みでございますから、一度これを制度化して私どもが期待できるような効果がもし出ないとすれば、この制度に限りませず、常に社会経済の伸展に応じて税制というものは見直していかなければならないわけでございますから、そういう意味を込めて申し上げたわけでございます。私どもは、この制度の方が、今までの所得公示の制度よりも新しい効果も期待できるのではないかと考えております。
  50. 沢田広

    ○沢田委員 時間が限られているので、簡潔にお答えいただきたいのです。  やってみてはどうかということは、これから言う我々の意見も取り入れて直す意思はある、こういうふうに非常に幅のあるお答えをいただいたなというふうに私は感じていたわけです。やってみてはどうかなというのは、言うなら試しなんですね。試しだから、これは我々がこれから言う意見には十分耳を傾け、直すことも考えられる、そういう意味だ。またこれは、歯を食いしばって、目じりを逆立ててがたがた言うほどのものでもないでしょう。どうですか。
  51. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 私どもは、先ほど申し上げましたような理由で、今回の税額公示の制度でぜひやらせていただきたいと考えております。
  52. 沢田広

    ○沢田委員 さっきよりばかにかたくなになっちゃったのでありますが、これは例えば税額控除ということになると、非常に多様化しますね。いろいろな控除対象が当然含まれてくるということなんであります。さっき国会議員の問題も出ておりましたけれども、そういう意図があろうとなかろうと、国民から見ると、寄附金控除などが所得の二五%認められているとすれば、税額控除で考えていくと、例えば四千万とすれば二五%で一千万までの寄附控除が認められるとすれば、税額では、とてもじゃないが、それは減ってくるということになります。  ですから、税額表示ということの意味は、ある意味においてはやはりそういう中身まで隠していってしまう、こういう結果になる可能性が強い。また、政治献金なり寄附金なりというものをある程度認めていくという形になると、そのことが逆に不公正、対社会的に見ると不平等。やつは献金をしたから表に出なかった。片っ方はしなかったから表に出た。同じ所得の人でそういう現象が出てくるわけですね。それはそうでしょう。
  53. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 税額公示でございまして、もちろんいろいろな税額控除後の最終税額で一千万円以上ということでございますから、個々のケースごとにはそういうこともあり得ると思います。ただ、先ほど申し上げましたように、税額の背後にある所得というものはおよそ推認ができるわけでございますし、特に個人の場合、もろもろの税額控除にはおのずから限度もございます。  それからもう一つ、そういうことによって例えば公示されないといった場合はまた逆の問題があるわけでございまして、あの人はどうして一千万円以上の税金を納めていないのかという意味でのいろいろなチェックの効果もあるわけでございます。それは所得の場合でも同じことかと思いますけれども、そういうことでございますので、やはり第三者によるチェック効果というのは、所得公示の場合とそんなに機能的には大きな差異はないというふうに考えております。
  54. 沢田広

    ○沢田委員 時間がないので、何をねらってこれを改正をしたのか。それから、人数だけを減らすと仮定するならば、一千万を二千万、そういう金額を上げればいいわけですね。それを税額に変えたというところに非常に細工が、大したものだなというふうに思っている点があるのですよ。もし所得だけで見るならば、一千万で人数が多過ぎるなら二千万に変える、それで十分事は足りるはずなんですよね。それをあえて税額にしたというところに細工の跡が見えるだけに、疑心暗鬼を招くわけですね。だからなぜ素直に、一千万では人数が多過ぎるというならば二千万——大体大手の所得階層の人は相続税ですよね。ほとんどの大口というものは相続税ですよね。あとの一般所得というものはたかが知れている所得ですよ。あとは相続税とかそういうものが一番の大手。土地売却とかというものが大体一番大きな所得構成をなしているわけです。だから、一千万がもし多過ぎるとすれば、二千万にするという方法はあったのじゃないか。それをなぜ税額に変えたのか、そこが不明ですのでお答えいただきたい。
  55. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 その点は先ほども申し上げたわけでございますけれども税額公示にすることによりまして、一般にそれを見ている納税者が、自分の払っている税負担と対比しながらいろいろ税の負担についてお考えをいただくという意味で、納税意欲あるいは納税に対する理解を深めるという意味で、今回御提案申し上げております納税環境整備の一環としてそういう機能も期待できる。  それからもう一つは、高額の納税者についての納税意欲の問題で先ほど触れさせていただきましたけれども、これは毎年所得の公示があるときに間々新聞等にも報道されますけれども、高名な職業人が所得の公示をされるときに、やはりその背後に、かなりの税金も払っているということも一緒に発表してくれないかなというふうなことは、いろいろ従来から議論としてあるわけでございます。そういった意味で、納税意欲を高めるという意味でも、納税環境整備に一脈通ずるものが期待できるというふうに考えておるわけでございます。
  56. 沢田広

    ○沢田委員 あなたの答えでだんだん怒りたくなるのだけれども、今ここにいる人で、自分で納めている税金をここで答えられる人は何人いますか。私は年間幾ら税金を納めていますと言える人が何人いると思いますか。ほとんど皆無ですよ。聞いてみたっていいですよ、自分が一年間税金を幾ら納めたか。確定申告のときなんだけれども、後ろの列の人全部ひとつ言ってみてください。幾ら税金を納めましたか、言ってみてください。——後ろの列に聞いているのだよ。全部言ってみなさい。
  57. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 その前にちょっと答えさせていただきたいわけでございますけれども、私個人といたしましては先ごろ確定申告いたしましたので、おおよそのことは承知いたしております。  私が申し上げました意味は、正確に何円何銭までということではなくて、大体の税、国税、地方税を含めまして年間どれくらいの負担をしているのかということを知っている人もありましょうし、あるいは知っていない人も、そういう税額公示を見ながら、自分が一体果たしてどれだけ納めているのかと、引き比べていろいろ考えるよすがにもなるという意味で、いろいろなことを申し上げているわけでございます。
  58. 沢田広

    ○沢田委員 これ以上やると、ほかのものが全然進まないといけないから……。  大体知らないですよ。私もいろいろな年金だの何かの説明会に行っても、いわゆる天引きされてきているものに対する感覚は極めて感じが悪い。短期が幾ら、長期が幾ら、税金が幾らとぴしっと答えられる人は、百名いる中ではほとんど皆無ですね。ゼロです。ここにいる人だって恐らくそうだ。税金でということになると、ほとんど知らない人が多いですよ。私はこんな、きょうも言ったのですが、六法全書を一週間で見てこいと言われているような法案の審議で、これは極めてどうにもならない状況だと思うのです。急いでいる意味はわかりますけれども、改めた方がいい。これは言ったってしょうがないから、あと申し送りをして、次の人に譲っていく以外にない。時間がないのです。だから私は、金額は一千万を二千万に上げた方がいい、税務署が大変ならば。そういうことで、税金でない方が、より客観的な物の見方ができるというふうに判断します。  それから次に、「所得税納税人員の所得階層別分布の推移」というのがあるのでありますが、これは予算委員会に配られた資料でありますが、お持になっておられますか。
  59. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 今国会に御提出申し上げましたもので、源泉所得税申告所得税、合計、それから収入所得階層別には百万円から一千万円まで六段階の刻みになっておる資料でございます。
  60. 沢田広

    ○沢田委員 時間がないので言いますが、源泉徴収になりますと、三百万円以下という人は九百二十万人いるわけですね。そして三千六百二十三万人に対しますと、三〇%は三百万円で線が切れる。それ以下というものが二百万と三百万以下ですから、三百万の人を入れれば二千万人にやや近い数字です。それから申告所得の方でいきますと、全体で六百五十八万、これは青色も全部入っているのでしょうが、その中で三百万円以下ということになりますと四百万人ですか、三分の二ということになるわけですね。大体そういうふうに見て間違いありませんか。
  61. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 おおむねそのとおりでございます。
  62. 沢田広

    ○沢田委員 今度のこの三百万という線引きの意味ですね。だからいわゆる源泉徴収の経費控除とそれから申告所得経費控除と、その違いがこういう数字をあらわしていると思うのですが、いかがですか。
  63. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 それは、給与所得者の場合は収入で区分しておりますし、申告所得税の場合は当然のことながら所得で区分しておりますから、御指摘のとおりだと思います。
  64. 沢田広

    ○沢田委員 そこで問題は、さっきも言われておりますように、三百万円で切った理由ですね。三百万が能力をあらわしていることになるというのが、少し私には理解しがたい。三百万円以上だったら記帳ができます、三百万円以下だったら記帳ができないでしょう、こういう差別的な発言というのは、これは大体人をばかにした言葉だと思うのです。泥棒だって三百万円以上収入があれば能力があるのか、こういうことにもなる。それは頭がいいから泥棒するのかもしれませんがね。だからそういうことになる。三百万円で線を切るということは何を示しているのだろうか。記帳義務というか、記帳というものが三百万以上ならできるでしょう、三百万以下は難しいでしょう、それは人に線引きするということになるのじゃないでしょうか。いかがでしょうか。
  65. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 今回お願いしております記帳問題は、これは新しく税法で記帳義務を課する、新たな負担お願いするわけでございます。しかも、そういうことになりますると、私どもこれを検討しました段階で、やはり零細な事業所得者に余り大きな負担をかけるのはどうか。そういたしますと、おのずから記帳能力といいますか、そういったものを考慮に置かざるを得ない。具体的にはそれは、結局は所得のようなもので客観的な基準がございませんと、義務の区分がはっきりしないわけでございます。  先ほど私が申し上げましたのは、三百万というのは、ちょうど今青色申告でいろいろ記帳をお願いしておるわけでございますが、三百万以上の事業所得の方になりますと、七割ぐらいの人がもう青色に入っているということでございますから、この段階でございますと、ほぼ青色並みの記帳能力はあるというふうに判断すべきだろうということで、新しい制度でございますので、三百万で一応線を引かしていただいたということでございます。
  66. 沢田広

    ○沢田委員 三百万以下は逆に言えばそう無理に記帳しなくてもいい、片方の言葉で言えば、三百万を超える者は提出しなければならないこととする。そうすると、以下は反対用語からすれば簡易の簡易の程度でよろしい、こういうことになる、反対解釈すれば、ということに理解せざるを得ないですね。いかがですか。
  67. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 これは三百万以上の方に新たに省令で定める記帳をお願いするということでございます。したがいまして、それ以下の方につきましては、この現在提案申し上げております二百三十一条の二の三項でございまして、新たな記帳をお願いするわけではございませんけれども、取引に関連して作成しあるいは受領した資料とか帳簿、これは保存していただくということでございます。したがいまして、その意味では新たな記帳をお願いするわけではございませんけれども、通常、事業をやっておられる方は、記録なりメモなり帳簿というものもお持ちでございましょうから、そういうものは整然と保存をしていただくということにしておるわけでございます。
  68. 沢田広

    ○沢田委員 五千万と三百万との関連性は何を物差しにしたのですか。
  69. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 五千万円は、恐らく総収入金額報告書提出義務をお願いする場合の五千万を御指摘になっていると思います。これにつきましても、客観的基準をどうするかということでございます。  私どもが考えましたのは、一つは、余り零細な事業者にこれをお願いするというのもいかがかということでございまして、もっと具体的に申し上げますと、家族のほかに従業員一人ぐらいを持っておられる規模の事業者というもの、それは大体四千万から五千万くらいのランクになると思います。それからもう一つは、五千万くらいのところで線を引きますと、業種によってばらつきがございますけれども、おおむね事業所得者の一割ぐらいがカバーされるというふうな指標もございます。そういった点を考慮いたしまして、一応五千万ということで、今回御提案を申し上げておるわけでございます。
  70. 沢田広

    ○沢田委員 五千万を総収入で抑えて、今度は三百万は結果的には所得で抑えた、こう言う。これは逆転する場合もありますね。五千万を超える者で、しかも税金は三百万以下ということはあり得るわけですね。五千万以上の場合は資料収集の整備が必要である。記帳の問題ではない。だから総収入では七千万でも、あるいは一億あっても、税金ではいろいろ青色申告経費控除すれば二百八十万ぐらいになってしまうことは当然あり得る。第三次産業なんかでは人件費が主体ですから、そういうことは当然あり得る。そうすると、片方は記帳義務はないけれども片方には記帳義務が発生する。そうすると対社会的に見ると、一億、二億の総収入がある者が、結果的には税金としては二百八十万であったとすれば、これは記帳義務は負わない、こういうことになるわけですね。それはやはり矛盾の一つということになりませんか。
  71. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 これは記帳義務と総収入金額報告書制度の性格が全然違うわけでございまして、記帳義務の方は、前二年間、今おっしゃいましたように三百万の所得のある人には記帳をお願いする。これは、きちんとした申告をしていただくための制度であるという考え方でございます。  一方、総収入金額報告書は、これは臨調答申で総収入申告制を導入するという提案が行われているわけでございますが、現在の所得税法でございますと、確定申告義務のない人は申告をしなくてもよい。つまり納付すべき税額がない人、今の委員の御指摘によりますと、例えば一億、二億の収入はあるけれども所得は赤字だという人は申告しなくていいという制度になっております。そういうことになりますと、税務官署がいろいろ所得を捕捉する場合に少し手落ちが起こるのではないか。したがいまして、所得の有無にかかわらず、一定収入のある人は、税務署にとりあえず資料を出していただく。そのことによりまして、その人の収入が例えば二億で所得は赤字である、それが正確な計算であれば、それはそれで結構でございますけれども、それが間違っておるとかあるいは故意に所得の計算を隠ぺいしておられたというような場合は、そういうものを手がかりとして、税務官署としてきちんとした課税をするということが今回のこの総収入金額報告書制度のねらいでございまして、記帳義務の所得の基準と総収入金額の五千万という基準は、そもそも制度のねらい、性格が違いますので、これを同列に議論するということはいかがかというふうに考えるわけでございます。
  72. 沢田広

    ○沢田委員 同列に議論しようがしまいが、そういうことが起こり得るということは事実ですね。——首を縦に振っているから、まあそれで終わります。これは矛盾があるということもまた、ここで指摘をしておきたいと思うのです。  そこで、一〇・五というふうな最低税率にしたのは、予算委員会のときの大蔵大臣の答弁は、一一にしようかなと思ったけれども、一一じゃちょっと大きいかな、一〇にしておくのではちょっとどうかな、だから一〇・五にしたんだ、足して二で割ったような回答のようでしたが、一〇・五という根拠は何なんですか。     〔委員長退席、中西(啓)委員長代理着席〕
  73. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 これは税制調査会の昨年の十一月の答申にも書かれておるわけでございますけれども、我が国の所得税累進構造が先進国の中でも非常に急である。その特徴的なことは、最低税率が低くて最高税率が高くて、刻みの数が多いという指摘がございまして、これは人的控除をそのままにしまして最低税率引き上げますと増税になるわけでございますけれども、今回は、人的控除引き上げまして、それとの組み合わせによって最低税率をある程度引き上げるのが適当であるという方向をいただいたわけでございます。ただ今回は、あくまで四十九年以来本格的な税負担見直しを行っていないわけでございますから、あらゆる階層について改正前と改正後では税負担軽減が生じなければならないという制約といいますか、基本的な要請がございました。したがいまして、今回基礎的な人的控除をそれぞれ四万円引き上げたわけでございますが、それとの組み合わせにおきまして増税が出ない、税負担の増加がいずれの階層についても出ないということを目安といたしますと、一〇・五%ということに相なったわけでございます。  なお、この端数のついた税率は、過去、四十年代の初めにもそういう例がございます。
  74. 沢田広

    ○沢田委員 この五十万円以下の金額が一〇・五と、〇・五になる。しかもその中で、例えば四百万以下はゼロ、これはもう全然現行と変わらない。一番得と言っては悪いですが、七百万以下が五%。それで、千五百万から逆算をしますと、千五百万を頭にして一、千二百万で二、一千万で三、八百万で四、七百万が五。それから六百万になると二になり、五百万になると三になり、また一般、多いなと思われる二百四十万以下が二%なる。これには極めてアンバランスがあると思うのですが、いかがですか。
  75. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 今委員が御指摘になりましたのは、改正後のブラッケットの各限界税率現行のものと御比較になった御議論かと思いますが、申すまでもございませんけれども所得税は超過累進税率税額が決定するわけでございますから、例えば五百万なら五百万の所得の方は、それまでのブラッケットごとに税率を当てはめて積み上げて計算していくわけでございますので、その積み上げた結果、最終税負担がどういうことになるか。例えば今回は五十万までが税率一〇・五としてございますが……(沢田委員「いいの、いいの、それじゃもういいです、もう時間がないから」と呼ぶ)はい。そういうことで、税率構造を若干なだらかにするということを配慮しながら、しかも中堅所得階層の税負担軽減中心としてなだらかにするという考え方で、今回のブラッケットなり税率構造は組み直しておるわけでございます。
  76. 沢田広

    ○沢田委員 だから、その中間層というものを幾らに押さえたかというところを聞きたいわけ。この制度改正の中では中間層というところは、結果的には積み重なっていくんだが、一番プラスになるものはどこの層を頭にしたのかということ。
  77. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 これはいろいろな指標があるわけでございますけれども、実効税負担の弾性値と申しますか、所得がある限界単位ふえた場合の税負担のふえ方、それによって税負担のカーブを検討するという観点から見ますと、今回の税率改正等によりまして、年収七百万から八百万ぐらいのところの実効税負担軽減が一番大きくなっておりまして、それから上の方になだらかに薄くなっていく、下の方にもなだらかに薄くなっていく、そういう構造になっております。
  78. 沢田広

    ○沢田委員 それでは、後でひとつ、どういうふうな所得のものがどういうあれか、給与所得なら給与所得で結構ですが、それをモデルに、あと時間がないですから資料としてひとつお示しをいただきたい。これはまだ半分もいかない。  最後に、法人の問題でお伺いしておきます。もう一分ですから、簡単に言います。  今日、資料を見ると貸倒引当金の残高が三兆二千四百四十四億、それから退職給与引当金残高が七兆三千七百五十億、賞与引当金残高が四兆八百二十二億、製品保証等引当金残高が千百六億、価格変動準備金が四千四百九十六億、これをずっと読んでいるだけで時間がたってしまうから、あとはもう読まないでいきますけれども、これだけ内部留保金がある。さらに、今度の改正でそれぞれ考慮がされる。特に、もらった資料の百二十四ページを見ても、「特別措置に関する調」として期末残高が、各準備金、引当金も含めて総額が出ておる。さらに、今度交際費が三兆四千八百三十五億ですね。損金の不算入になったものが一兆四千九百十四億ある。こういうところに課税対象となるものはたくさんある。  もう時計が鳴ったから終わりだという意味なんで、これで終わりにしますけれども、いわゆる法人税の両方のかけ方の格差、四三・三と三三・三あるいは三一と中小の場合の差、この差の基本になるものは何か、わざわざこの差が出てきている基本になるものは何か、一言お答えいただいて、あとは次の大臣の方の質問に譲りますけれども内容だけお答えをいただきたい。
  79. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 ただいま委員がおっしゃいましたのは、いわゆる中小法人軽減税率と基本税率との格差の問題を御指摘になったかと思いますが、これは三十年に中小法人軽減税率ができたときに、基本税率は当時が四〇%でございました。中小法人が三五%、その格差は五%でございました。それが年々拡大いたしまして、前回の税制調査会の答申ではこの格差を縮小すべきであるということで、五十六年度の改正ではいわゆる基本税率軽減税率も同じパーセンテージだけアップさせていただいたわけでございますが、今回は二年間の措置ということでもございますので、基本税率については一・三でございますが、中小法人については一%にとどめ……(沢田委員「だから、その差は何で分けたかということを聞いているのだ」と呼ぶ)この軽減税率税制上の説明づけは、中小企業に対する政策税制でございます。
  80. 沢田広

    ○沢田委員 もう時間だから、やめておこう。また後にします。
  81. 中西啓介

    ○中西(啓)委員長代理 宮地正介君。
  82. 宮地正介

    ○宮地委員 私は、直税三法に関連いたしまして、「増税なき財政再建」の問題につきましての大蔵省当局の基本的考え方を少し確認したいと思っております。  国民の多くの皆さんは、昨年の総選挙におきましても「増税なき財政再建」ということについては大変に期待をしておりました。特に昨年来、与野党合意によりまして、いわゆる景気浮揚に相当な額の減税を行う、この額は常識的には所得税減税一兆円、住民税減税四千億円、合わせて一兆四千億円、これが昨年の十二月年内実施、こういうことで国民の皆さんは大変期待をしておられたわけでございます。  しかし、この第百一国会に入りまして、この国会の中における予算審議など、またこの大蔵委員会審議などをいろいろ伺っておりますと、この「増税なき財政再建」の「増税なき」という概念について、果たして大蔵省はどのように考えておられるのか、国民の目から見ますと大変に疑わしいわけでございます。まずその点について、大蔵省現場の主税局長、あなたのこの「増税なき財政再建」に対する基本的考え方はどのように持っておられるのか、伺いたいと思います。
  83. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 これは大蔵大臣が今国会でもたびたび申し上げているところでございますけれども、財政再建に当たっては、まず歳出の節減合理化ということによって特例公債への依存度を下げる努力をする、つまり安易な増税によって財政再建を行わないという基本的な理念でございます。  その場合の「増税なき」とはどういうことかということになりますと、これは具体的な政策展開をする場合のきちんとした作業概念として必要なわけでございますけれども、これは臨調答申にございますように、国民所得に対する税負担の新たな上昇を生ぜしめるような措置が増税であるということでございます。したがいまして、そういうものを観点にして、一方、歳出当局は歳出の削減合理化について努力をいたしますとともに、私ども税制担当者といたしましては、そういったことを観点に置いて五十九年度の税制改正作業も策定をいたしましたということでございます。
  84. 宮地正介

    ○宮地委員 租税負担率の問題を言っておりますが、きょうは国民生活の観点から率直に、謙虚にお答えいただきたいと私は思います。  今回の所得税法あるいは租税特別措置法法人税法、こうした法案の審議に当たりまして今回政府の出されてきた税制改正案、これは率直に言いまして減税につきましてもいわゆる一兆一千八百億ということがよく言われております。しかし、その反面増税の方も約一兆三千百二十億。このベースで比較しますれば、減税は政策減税を入れまして一兆二千四百二十億。これにいたしましても見返り増税ということでございまして、逆に七百億国民生活から見れば負担増になっておるわけです。こうしたいわゆる増税に対して、臨調答申の言っている「増税なき財政再建」というものと、今回の大蔵省の出してこられておる税制改正の中に盛り込まれた大増税ラッシュ、こういうものとの関係で、今主税局長のおっしゃった答弁では国民はなかなかわかりにくいし、また納得していないのが実態であります。その点について政務次官、あなたは政治家として率直にこの問題をどのように受けとめておられるか、所見をお伺いいたします。
  85. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 政務次官の御答弁の前に事務的な御説明を申し上げます。  ただいま委員御指摘になりましたけれども、国税ベースで申し上げますと、五十九年度初年度の減税額、これは所得減税のほかにその他の政策減税も含めまして九千三百二十億円でございます。それに対しまして、この財源を補てんするために、ただいま委員が御指摘になりましたが、法人税、酒税、物品税のいわゆる税負担引き上げによりまするものが七千八百五十億円でございます。したがいまして、減税財源にまだ一千四百七十億円不足をいたしますので、本来の増税とはいささか性質が異なるわけでございますけれども延納制度の廃止とかあるいは法人税欠損金の繰り戻し還付制度適用停止等で一千四百五十億円の増収措置を講じまして、減税財源にほぼ見合う財源を補てんした。  この結果、租税負担率の見通してございますけれども、五十八年度の補正後の国税、地方税合わせました租税負担率が二三・九%でございますが、五十九年度の見通しが二四・二、したがって、租税負担率は〇・三%ポイント引き上がるということでございますが、これはいずれも自然増収によるものでございまして、税制改正による税負担引き上げではない。したがいまして、ただいま申し上げました臨調答申に言う増税には該当しない。これは極めて事務的な説明でございますが、念のために御説明申し上げました。
  86. 堀之内久男

    ○堀之内政府委員 ただいま基本的なことは主税局長から御答弁申し上げましたが、今回の減税に当たって財源をどこに求めるかということについては、与野党とも赤字国債にはよらないという合意には基本的に達しておるわけでございます。したがって、今回の減税の財源をいかにしてやるかということで大変苦慮をいたした次第でございます。しかし、先ほどから申し上げておりますように、国民減税期待感というのは極めて大きいわけでございますので、その辺を配慮しながら、今回物品税あるいはまた酒税の中においてある程度の御負担を願うということは大方の合意を得られるんじゃないか、こういう形でお願いをいたしておる次第でございます。財政の厳しい中でございますので、これ以上の財政の悪化を招かない、こういうことについては国民の御理解も得られるんじゃないか、こういうことで、法人税の方にまた幾分の負担お願いする、こういう形で行ったわけでございますので、大方の国民の御理解を得られる、こういうように私自身判断をいたしておるわけであります。
  87. 宮地正介

    ○宮地委員 今主税局長から、「増税なき」というのは租税負担率が上がらないことである、しかし、〇・三%の租税負担率の上昇は自然増収である、こういう答弁でありますけれども、そうしたいわゆる展開論というのは国民の皆さんは理解してないと私は思います。  また、今回の中曽根総理の施政方針演説の中においても、大変苦しい、「国民の皆様の強い要望に沿うべく所得税、住民税合わせて一兆一千八百億円の減税を行うとともに、現下の厳しい財政事情にかんがみ、法人税、酒税、物品税等の税収増加こういう表現なんですね。今回の法人税の一・三%あるいは一%の税率アップは、率直に言ってだれが見ても増税です。先ほどおっしゃったような、例えば法人税の延納廃止、これは確かに増収という言葉で国民も理解ができると思います。国民の皆さんから見てわかりやすい政治、わかりやすい行政、こういうものから見たとき、どうも大蔵省はそういう点国民に対してなかなかわかりにくい対応をしている、こういう感じがしてならないわけでございまして、率直に増税は増税だ、こう申し上げ、対応すべきではないか。特に今回の百一国会というのは保革伯仲の再現という政治状況国民は期待をした、選択をした、そういう中の国会だけに、私はこうした問題についてももっとシビアに、国民にわかりやすく対応すべきである、こう考えております。  さらに私は、今回のこうした見返り増税、この負担増というものに加えて、御存じのように、例えば医療保険の本人一割負担、あるいは国鉄運賃の値上げあるいは消費者米価の値上げあるいは私鉄運賃、タクシー料金などなど、いろいろ国民生活に関連する公共料金の値上げなど関連のものを考えてまいりますと、大蔵省政府が苦労して減税といって、いわゆる一兆一千八百億円の減税をしておりながら、増税プラスそうした値上げラッシュによって国民生活はさらに圧迫されている、これが私は実態であろうと思います。やはり国民生活、暮らしというものに目配りをし、配慮をした中においての健全なる財政運営、こういうものが必要であろう。どうも大蔵省当局は、現在の財政の厳しい中で、国民の暮らしにもっともっと目を向けた配慮、こういうものが欠けているのではないか、こういう感じがしているわけでございますが、大蔵省としては国民生活への、暮らしへの影響、こういうものをどのように考えて今回のこうした税制改正案を国会提出されておるのか、伺いたいと思います。
  88. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 今回の税制改正の基本的な考え方は、やはり所得税の十年ぶりの本格的な見直しによります減税、これが基本でございます。ただ、この構造的な赤字財政のもとで、減税財源を税財源以外のもの、つまり赤字公債で補てんするということは、結局は現世代の減税を後世代の負担にツケを回すという、端的に言ったらそういうことになるわけでございます。したがいまして、税制調査会での減税の御論議をいただきました場合でも、その前提条件としてはこれを特例公債に依存しない、現在の財政事情を悪化させないという基本的な考え方に立って税制改正を組まざるを得なかったというのが実情でございます。  その場合におきましても、現行税制の枠の中で、しかも一般の家計に対する負担増を極力圧縮する努力は私どもなりにいたしたわけでございまして、酒税の引き上げ、それから物品税引き上げ等によりましてその部分減税の効果が相殺されることは私どもも否定いたしませんけれども、この部分について相殺をいたしました結果としても、おおよそ各世帯につきまして減税の効果が均てんするという格好にはなっておると私どもは思うわけでございます。  その他公共料金、公共負担等についてお触れ願いましたけれども、この辺の話になりますと、税制当局として御答弁申し上げる範囲をやや越えているわけでございますが、企画庁等において分析しております結果を見ましても、少なくとも現在御提案申し上げております減税の効果によって、各種の公共料金が全部相殺された結果、負担増になるという計数的な分析は出ておりません。この点はぜひ御理解を賜りたいと思います。
  89. 宮地正介

    ○宮地委員 具体的に私はまず法人税の問題から少し伺っていきたいと思いますが、今回の法人税率の一・三%、また一%アップ、これはまず角度を変えまして、産業の活力の面に非常に大きな影響を与えるのではないか。また、中小企業の立場から見ますと、この一%のアップというのはやはり大変深刻ではないか。特に昨年末は史上空前の中小企業の倒産、また本年におきましても大手の倒産などで、負債総額も非常に大きくなってきているわけでございます。通産省、中小企業庁、きょう来ておると思いますが、その点について、この法人税率アップというものがどういうように影響していくのか、見解を伺いたいと思います。
  90. 藤原武平太

    ○藤原説明員 お答え申し上げます。  五十九年度の税制改正におきまして、法人税率の引き上げが二年間の暫定措置として実施される予定となっております。  法人税率の引き上げにつきましては、所得税減税のための財源確保ということで位置づけられておりまして、通産省といたしましてはやむを得ない措置ではないかというふうに考えております。しかし、景気が緩やかながら着実に回復をしておりまして、同時に実施されます予定の所得税減税等によりまして、民間活力の発揮を通じ内需中心の経済成長の実現を図ってまいりたい、そういうように考えております。
  91. 前田正博

    ○前田説明員 お答え申し上げます。  私どもは日本経済の活力の源泉が中小企業の振興によってもたらされるというふうに考えておりまして、従前にも増しまして中小企業の振興の必要性を感じておるわけであります。  ただ、中小企業を取り巻く経営環境を見てまいりますと、先生御指摘のとおり、我が国の景気回復が全体として緩やかなものにとどまっておるがために、倒産件数は五十八年に、中小企業だけで見ますと一万九千百十件ということで史上最高を記録しておるわけであります。これは、中小企業の場合には内需への依存度がかなり高いものでございますから、その辺の影響が出まして、生産活動が大企業に比べまして若干回復がおくれてきたのではないかと思っておるわけであります。  こうした状況にかんがみまして、今回の法人税引き上げにおきましても、中小企業者に対しましては、こうした厳しい財政状況のもとではございますが、その軽減税率を三〇%から三一%へと一%引き上げにとどめたものでありまして、私どもとしては、厳しい財政状況のもとで精いっぱいの配慮をした税制ではないかというふうに考えておるわけであります。
  92. 宮地正介

    ○宮地委員 いわゆる民間活力を引き出して景気の浮揚に役立てよう、日本経済に大きな活力を与えていこう、これは中曽根内閣の政策の大きな目玉であろうと私は思うのです。私は、今回の法人税率の引き上げは、まさにそうした内閣の基本の目玉に対して逆なでする、活力を失うようなことで、大蔵省当局がいわゆる財政の厳しさという中から、そうした大きな観点を見過ごしているのではないか、こういう懸念をしているわけでございます。例えば、アメリカなどにおいては最近民間活力、産業の発展に大変配慮いたしまして、いろいろと税制上の優遇措置、特別措置というものを積極的に政府はやってきております。逆に日本は水をふっかけ、また逆なでする。こういったことは、今後二十一世紀を迎える将来の日本の産業に対して、果たしてどんなものかなと私は大変危惧をしている一人であります。  例えば、皆さん方が予算委員会提出されました「各国の法人税率の推移」を見ましても、特にその中でアメリカは五十四年から五十七年そしてこの五十八年におきまして、いわゆる中小企業と見られるクラスに対しては税率を、例えば五十四年から五十七年に対しては、恐らくこれは利益だと思いますが、二万五千ドル以下の企業に対しては一七%から一六%に一%税率を引き下げておる。二万五千ドルを超え五万ドル以下のところは二〇%から一九%に一%引き下げておる。さらに五十七年からこの五十八年におきましては、同じように一六%のものは一五%に、あるいは一九%のところは一八%にと、この五十四年から五十八年に至る間に中小企業向けに約二%の税率を引き下げておる。こういうふうに、既にアメリカなどにおいては非常に中小企業に配慮し、まだこれからの産業に活力を入れようということで、大変税制上の配慮というものが見受けられるわけであります。既に皆さんも御存じと思いますが、自動車産業などにおいては、十年後は、今までアメリカが日本に対応してきたような試練というものと逆に、日本がアメリカに新規設備投資などによって試練が逆行するのではないか、こう言われております。  私はそういう点、まず大蔵省としては、そうした日本の今後の経済、産業、こういう発展を配慮した中で一既にアメリカなどでは、税制措置によって産業に活力を入れていこう、産業の振興というものに非常に力を入れている。ところが日本は財務当局、財政当局のそうした財政オンリーといいますか、財政主導型が逆に産業の活力を奪おうとしている、こんな嫌いがあるわけです。この点について、まず大蔵省はどういうふうに考えておられるのか、また通産省といたしましても、こうしたアメリカなどの対応と日本の対応を見て、率直にどういうふうにお考えになっておられるのか、伺いたいと思います。
  93. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 企業税制を考えます場合に、委員が御指摘になりますとおり、産業、経済に及ぼす影響、なかんずく企業税制企業投資に及ぼす影響というものを慎重に見きわめなければならないということは、一般論として私どもそのとおりだと考えております。  ただ、諸外国、なかんずくアメリカとの対比におきましての御指摘でございますけれども、例えばアメリカと我が国とを比べました場合に、GNPに対する投資のウエート、昨今我が国の場合は一七%ぐらいのコンスタントな水準で推移しておりますけれども、アメリカ、それからEC諸国になりますと、恐らく一〇%前後ということでございます。その限りで、もちろん我が国の企業がそれだけの努力をされておるということのあらわれではございますけれども、それぞれの国、それぞれの経済局面によって、やはり租税政策の展開の仕方がおのずから異なってくるであろうということでございます。  それから、アメリカが六〇年代から大規模な投資減税をやっておりますし、レーガンの政権になりましてから加速度償却を導入したということを私ども承知いたしておりますけれども、この政策効果につきましてはいろいろ論争にわたる面がございます。私どももそれなりの分析をいたしておりますけれども、少なくとも我が国の企業現状におきましてそういう恒常的な、しかも一般的な投資減税あるいは企業税負担軽減を図るということにつきましては、租税政策のみならず経済政策的にも、私どもはそういう政策効果に非常に疑問がある。むしろ今回五十九年度、お願いしておりますように、個々の具体的な投資の重点を絞りまして、そういったものに税制のインセンティブをかけていくという方が、財政資金のコストベネフィットから見ても非常に効率的な租税政策であろうということでございます。  それからもう一言、今回の法人税率の引き上げでございますが、これは先ほど申し上げましたように、減税財源等を補てんするために、既存税制の枠内でなるべく間接諸税の税負担引き上げを圧縮する、それから延納措置の廃止等、本来の税負担引き上げにつながらないような増収措置を活用しながら、最終的に税負担引き上げを基本税率一・三%、軽減税率一%というふうにお願いせざるを得なかったわけでございます。その限りにおいて企業負担が増加するということは否定するものではございませんけれども、昨今における企業の内部留保とかあるいは設備投資の動向等から見まして、各種のシミュレーションによりましても、今回の税率引き上げが現在あるいは今後の企業の投資活動にさほど大きな影響は与えないというふうに効果を見きわめてもよろしいのではないかと私どもは考えております。
  94. 藤原武平太

    ○藤原説明員 お答えいたします。  アメリカでは一般的な投資減税ということをやっておりますけれども、私ども通産省といたしましては、日本経済の抱えるいろいろな課題がございます。エネルギー制約とか中小企業の近代化の促進とかあるいはその技術の地方への移転とか、そういう政策的な課題対応した政策税制というものを推し進めていくべきであるというふうに考えておりまして、今回も投資減税、三つの税制から成っておりますが、それぞれ重要な課題を解決するために資するという観点からお願いしておる次第でございます。その他技術開発の関係あるいは公害防止の関係等さまざまな政策税制お願いしておりますが、そういう国情の違いあるいは政策的な観点の違いというものがございますものですから、私どもとしては、今後とも政策税制を十分活用してまいりたいというふうに考えております。
  95. 宮地正介

    ○宮地委員 私は、景気の面から見ましても、やはり今までは比較的物価も安定し、また経済成長率も五十八年度までは三・四%、大体三%台で来られた。しかしこの五十九年度は、政府見通し四・一%の経済成長率を見込んでおりますが、私は諸般の情勢いろいろ分析して研究してみますと、五十九年度は非常に明るい見通しが出てくるのではないか。ともすると五%台の経済成長率もいくのではないか。まさに低経済成長から一つの脱却のできる好材料、チャンスではないか。そういうときに財政当局は余り冷水をぶっかけるようなことをすることはやはり好ましくないのではないか。むしろ、そうした好材料が出てきておる現在の経済環境の中でございますので、プッシュしていくような、押し上げていくような、そういう面で今回投資減税が盛り込まれてきた、もっと積極的にやるべきではないかと私は考えておるわけでございまして、この法人税率などにおいても、むしろ据え置きをすべきではなかったかという感じがしておるわけでございます。  そこで、既にいろいろ諸先輩からも発言があったと思いますが、この時限立法の二年後。これについては、二年後の対応によって云々ということでございますが、私はこうした産業、経済に活力を与えていく、まだこれからの日本経済の景気の動向というものを見ていったときに、二年後においてはこの問題は時限立法でどう対応されるのか、この辺の配慮をされるつもりがあるのか、大蔵省の考えを伺いたいと思います。
  96. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 今回の法人税率の引き上げの経緯につきましては、先ほど申し上げましたとおりでございます。しかも今回の一・三%の税率引き上げによりまして法人の実効税率が、我が国戦後最高の水準に来ておることもまた否定できないということでございます。したがいまして、今回二年間の時限措置としてお願いをしておるわけでございますが、この二年後の措置につきましては、たびたび申し上げておりますように、そのときの経済の動向、財政の状況、なかんずく税収の動向等をにらみながら、税制全体の中でどういうふうに考えていくかということでございまして、今日の時点で二年後もこれを引き続き継続するとか、あるいは二年後はこれを取りやめるとか、そういった具体的なことを申し上げられる段階にはないということを御理解願いたいと思います。
  97. 宮地正介

    ○宮地委員 時間が参りましたので、所得税法などにつきましては午後の部に移したいと思います。
  98. 中西啓介

    ○中西(啓)委員長代理 玉置一弥君。
  99. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 大臣が昼からということでございまして、朝急に三十分、三十分に分けるという話で、分けられるかどうかわかりませんけれども、多少ダブってお聞きすることになるかと思います。  今回、所得減税を初めいろいろな増税も含めて話が出てきているわけでございますけれども所得減税を見ても、現在の大蔵当局の皆さん、すべて給与所得者だと思いますけれども、その割にサラリーマンの生活実態というものについての御理解が非常に少ない、こういうような気持ちを持っておりまして、大蔵省の方はサラリーマンでないのかな、ちょっとそんな気がするわけです。そこで、特に現在のサラリーマンの生活実態から見たいろいろな要望、これを述べてみたい、かように思います。  五十七年度国税庁の調査によりますと、平均給与が今三百二十万円ということでございまして、給与総額は百十一兆数千億円、税額が六兆幾らで、パーセントにすると大体五・七一%が税率ということになっているそうでございます。世代別に見ますと、男の方で、大体四十五歳から五十歳ぐらいが給与所得のピークにあるということで四百六十四万円、男女平均いたしますと三百六十六万円で、これは大体四十歳から五十歳の間に入っている。女性だけを見ますと、二十五歳から二十九歳、この辺がピークになっておりまして二百七万円、こういうことになっております。勤続年数でいきますと、勤続三十年ぐらいが一応ピークであって、それ以降は低減をしてきているというような状況になっているそうでございます。     〔中西(啓)委員長代理退席、熊川委員長     代理着席〕  私たちの年代、ちょうどことし四十になるところでございますけれども、大体中間管理職あるいはサラリーマン中堅層という層にぼつぼつ入ってまいりまして、子供が小学校、中学校、早い人になると高校生、そういう方がおられる。こうなってまいりますと、現在の日本の社会の構造上、受験戦争というものがどうしてもついて回るということになります。それと、三大都市圏といいますか、特に大都市中心に人口が集中をしておりまして、産業構造給与所得者、サラリーマン、これが昔に比べて大変ふえてきている。ここ十年ぐらいでももう既に八百万ぐらいふえているわけでございます。こういう状況から、自分たちが食べていくために会社に勤めざるを得ないというような形になってきておりまして、これがまさに人口集中という形で、逆に言えば大変な負担の要因になっているわけでございます。  これもまた、需要と供給の関係で大都市に集中するものでございますから、土地、家、これがなかなか手に入らない、手に入らないから高くなる、こういうことで実質的な生活の負担が従来の給与の上昇分以上に増大をしている、こういうことがあるわけです。役所におられる方は官舎がございまして、非常に適正な値段で近くに入る可能性がある。場合によっては、賃貸で民間の住宅を借りても、そこそこ賄っていけるというような態勢にもあるわけでございまして、むしろ住宅面での御認識が非常に甘いのではないか。教育については同じような考え方を持っていただいているようですから、その辺についてはよくわかると思いますけれども、どうも住宅についての考え方、これが非常に甘いというふうな感じがいたしまして、もっと生活の実態というものを十分把握をしていただいて、行政の面で生かしていただきたい、かように思うわけでございます。  そこで、累進課税率につきましては、私毎回大蔵委員会で、特にサラリーマン中堅層の是正ということを訴えてまいりまして、今回一応二%から四%、私が従来主張しておりましたゾーンについて低減をされるような形になってきております。しかし、まだまだ幅を広げていただいて、そして本当に今の苦しい世帯、この辺にもっと恩恵をというようなことを要求したいわけでございます。  また精神的な面での圧迫、特に中堅層になりますと、下からはいろいろ突き上げられ、また上からは責められるという立場でございまして、その辺が今度は、家へ帰っても責められるというような形に今なっているわけでございまして、私たちが会社時代の同僚とかあるいは同世代としておつき合いをしている方々のお話を聞きますと、必ずその辺が愚痴になって出てきているというのが現状でございまして、これからの中でその辺の実態を明らかにしながら、またいろいろなお願いをしたいと思います。  今回の累進課税率、一応は評価をしておりますけれども、まだまだ、先ほど申しましたような状況、住宅あるいは教育、そして私的交際費といいますか、こういうものがかなりあるわけです。役職員の場合には交際費が若干つくこともあるわけでございますけれども、社内接待になってくるとなかなかそうはつかないということもありますし、やはり先輩が後輩におごるというのは日本の昔からの慣習でございまして、独身者はお金はあるのですけれども、なかなか割り勘にはできないというような事情もありまして、この辺で、今累進課税率の一応の手直したというふうに聞いておりますので、今後の見通しとして、またもっと粋を広げていただけるのか、あるいはもうこれで精いっぱいなのか、その辺について、今の生活実態感覚とともにお答えをいただきたいと思います。
  100. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 昨年の十一月に出ました税制調査会の答申で、所得税につきましては、今回、四十九年以来十年ぶりに基本的な見直しお願いしておるわけでございますが、その議論の前提といたしまして、やはり所得税というものは税体系の中で基幹的な地位を占めるものであるし、現在も納税者の方が四千万人以上に達しております。その九割以上は給与所得者であるという現状でございます。我が国の所得税負担率が、少なくとも所得に対する負担割合から見ますと、諸外国と比較して必ずしも高い水準にはないということ、これは客観的事実として否定できないわけでございますけれども所得税は年々の所得に対して累進税率でもって税負担お願いするものでございますから、やはり適当なインターバルでこれを見直しませんと、負担の累増感が高まってくるということでございます。したがいまして、税制調査会の答申でも、トータルとしての税負担は諸外国の中で必ずしもそんなに高くないということを国民の御理解も得つつ、やはり数年に一度は見直すべきであろうという方向を示されておるわけでございます。  私どもは、今回の所得税負担軽減が、現下財政事情から見まして精いっぱいの処置であるということをぜひ御理解を賜りたいと考えておりまして、今後数年後に見直す時期があるいは来るのかもわかりませんけれども税制調査会の答申を貫いております考え方は、そういった中での負担の適正化を図っていくために、一つはやはり独身世帯に比べて多人数世帯の生活のゆとり感がやや窮屈である、それから中堅所得階層の税負担軽減がやはり中心的な眼目の一つにならなければならぬだろうということ、それから我が国の場合は所得の上昇とともに平準化が進行しておりまして、これは当委員会でも先般来いろいろ御議論のあるところでございますが、そういった状況から見ますと、やはり累進構造がかなり急である、やはり今後とも累進構造所得の平準化に沿って適合したものであるようにということでございまして、今回も累進構造を若干なだらかにするという努力をいたしておるわけでございます。今後もそういった基本的な方向に沿って、絶えず所得税制というものは適当な時期に見直さなければならないわけでございます。ただ、本日の段階で、例えば税率の刻みを将来はこういうふうに持っていくんだとか、最低税率はこうする、最高税率はさらにこうするというふうな具体的な展望を持っておるわけではございません。
  101. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 今すぐというのは非常に難しいと思いますけれども一つ方向としてぜひ検討お願いしたいということでございます。  それで、具体的な話なんですけれども、これは三大都市圏に限定するとちょっとしかられるかもわかりませんけれども、十大都市あるいは六大都市、この辺の特に周辺部の値上がりが非常に大きいわけでございまして、住宅費の関係で、これも総理府の統計ですけれども、全国平均、これは指数として聞いていただきたいんですけれども、住居費が一一・七という数字が出ておりまして、大都市になりますと、一一・七が一五・二、そして中都市で一二・八、小都市で一〇・七、こういうふうに大都市がはるかに大きな数字をあらわしているわけです。  農地の方で宅地並み課税というのがございまして、これも三大都市圏、ABCというふうに分かれてやっておる。これを見ても、住宅費あるいは住宅ローンの補てんという意味での、例えば特別措置としての何らかの方法が考えられないか、こういうふうなことをまず提言を申し上げたい。今すぐできるかどうかという話は難しいと思いますけれども一つ方向として、余りにも大都市に集中をしてきている今の日本の産業構造。これは日本だけじゃなくて各都市、外国に行きましても、都市部になると非常に高い値段になっているわけでして、住宅問題については日本だけじゃなく、外国でもぼつぼつ問題になり始めているというようなところもございまして、逆にウエートが非常に高いわけですね。昔はエンゲル係数が三割とかあるいは逆に五〇%を超えれば低民度だとかいろいろなことがあったわけですけれども、逆に今住宅費が五〇%を超える可能性も非常にあるわけでございまして、むしろ持ち家志向が逆に減退をし始めるんじゃないかというふうな感じも持っております。  そういう意味から考えて、やはり住宅対策として特に大都市周辺についての住宅対策、これが従来例えばいわゆる小都市と言われる近辺でございますと、二千万かからない家がたくさんある。ところが大都市周辺に行きますと、今四千万あるいは六千万という、我々からするととても手が出ない状態でございまして、住まなければいいじゃないかという気もするんですけれども、なかなか持ち家志向というのは日本の中でまだまだ根強いものがございまして、やはり無理をしてでも買いたいということになってくるわけです。こういうことが、逆に言えば、サラリーマンの生活のかなりのウエートを占めている。逆に今、可処分所得が抑えられるということになるわけで、住宅が順調に動けばいいんですけれども、そうでないときは景気低迷という形で長引くでしょう。こういうことを考えると、特に大都市周辺についての住宅対策という意味でも、いわゆる所得あるいは所得税、そういう面での対策が打てないかどうか。具体的にあるわけですけれども、ちょっと時間がありませんので、何らかの形で検討できないかどうか、その辺についてお答えいただきたいと思います。
  102. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 住宅問題、特に大都市圏で大変重要な問題であるということは、御指摘のとおりでございます。現在、所得税で五十八年の改正によりまして、住宅ローン控除につきましては限度額をかなり引き上げさせていただいております。最高今十五万でございまして、しかもこれは税額控除でございますから、三年間で四十五万の税額控除というのは、現在の財政事情のもとではかなりの水準であるということはまず御理解願いたいと思うわけでございます。  そういう大都市周辺の住宅問題に着目して、税制上何らかの、特に所得税対応ができないかという御指摘でございます。これは従来からこういった問題の提起があるわけでございますけれども、御承知のとおり所得税と申しますのは、基本的にはその必要な非課税部分控除いたしまして、そこに累進税で税負担を求めるという構造になっております。個々の生活の条件、地域の条件あるいは家計の構造、いろいろまちまちでございます。大都市に住んでおられる方一般に住居問題が非常に大きな問題であることは否定できませんけれども、それも個々人を取り上げますと、借家住まいの方、持ち家の方あるいは家の広さ等々千差万別でございます。したがいまして、所得税の基本的な考え方といたしましては、そういう個々の方の地域問題も含めまして、生活の条件とかあるいは個々の家計費の特定の費目を取り上げまして、これを個人の事情にぴったりはまるように税制上しんしゃくをしていくというのはおのずから限度がある。つまり、そういった個々の問題に対応するというのは所得税制ではなじまないということでございます。しかもそれはいたずらに税制を複雑にするという側面もございます。私どもは、その住宅対策の問題を否定しないわけでございますけれども、それは租税政策で対応すべき問題よりは、むしろほかの対応をいろいろ考えていかなければならないのじゃないか。土地問題もございましょうし、あるいは公共投資等いろいろな分野があると思いますけれども税制上これでぴったり対応するということはなかなか難しいということは御理解を賜りたいと思います。引き続き検討課題として勉強させていただきますけれども所得税本来の性格から見ましてなかなか難しい問題であるということは御理解願いたいと思います。
  103. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 宅地並み課税もわざわざ地域を限定しながら課税をしたわけですから、逆に減税もできないわけはないというふうに思います。それと土地税制でも、緩和をしながら一向に値段が下がらない。ただ単に土地の所有者の利益をふやしたということになっておりますので、住宅を必要としている人たちに回ってこなかった、こういうこともございまして、ぜひそういう面での反省を踏まえて新しい方法を考えていっていただかないと、今までのことがすべて生きてこないということになるのでございまして、ちょっと時間がないので次へ進みますけれども、こういうことをぜひこれからも検討していただきたいと思います。  これまたサラリーマンの話でございますけれども、通勤手当というものがございまして、今この通勤手当の非課税限度額というものがございます。これは五十八年にも改定をされて、総額で一カ月当たり一万九千四百円から二万四百円というふうに千円上がりました。これを東海道沿線で見ますと、現在の非課税の地域は藤沢市の辻堂というところがございまして、そこの駅までで現行価格が一万九千七百八十円。茅ヶ崎へ行きますと二万一千百七十円ということで、非課税限度額を一応超えてしまう、こういうことになっております。ところが、今度国鉄の方から運賃改定の申請が出されておりまして、これが四月に今度値上げをされる。こういうことになりますと、今まで非課税でございました辻堂が二万一千七百円ということで、約二千円近く値段が上がるということになります。その手前の藤沢でございますけれども、これが現行一万八千七百九十円、こういうことになっておるわけですけれども、これが二万六百円、だからもう二百円オーバーしてしまう。こうなりますと、大船までしか非課税にならない。こういうような形で、だんだんと手前手前に来ているわけです。  そこで今の通勤状況、東海道線で見ますと、従来は大体平塚ぐらいが限度でございましたけれども、二宮あるいは場合によっては小田原近く、車両基地もできたという関係もございまして、その辺まで非常に伸びてきておりまして、特に二宮、大磯、この辺が住宅地として非常に大きく伸びてきている。ですから、当然通勤圏としても、東京中心に、従来は、我々のころは一時間半と言われておりましたけれども、今はもう一時間五十分を超えてしまっているというような状況でございまして、中央線でいきますと高尾、この辺になるかと思いますけれども、ふえてきているところがどんどんと非課税地域から外れてしまう。これは単に国鉄だけを今見ているわけですけれども、辻堂でもあるいは茅ヶ崎でも、駅から行けるところに家がふえているかというと、もうそういうところはとっくの昔にふえてしまっておりまして、バスで十五分あるいは二十分走らないと住宅地に到達をしない、こういう状況になっております。  こういうことを考えていきますと、従来からいろいろな努力をしていただいているようでございますけれども、今回のように国鉄の値上げによってまた大変大きく変わってしまう。こういうようなことになりますと、現状からだんだんとかけ離れた部分が増大をしてしまう、非課税地域として今まで含まれていたところがどんどんと外れてしまうというようなことになるわけでございまして、企業負担でやればいいじゃないかという気もするのですけれども、従来の、非課税だから出していた、こういうところが今度課税されると、本当に出してくれるかというような問題も出てくるわけでございまして、それぞれ通勤者と企業との間の話し合いが順調にいかなくなるというような心配もございますので、この改定をぜひお願いしたい、こういうように思うわけです。  そういうことで、まず通勤手当について、国鉄の値上げもあり、これは財政事情等いろいろありますけれども、むしろ民間の責任でない部分、いわゆる公共料金の値上げによって課税になるというような状態になるわけでございますから、今後通勤手当についての非課税限度額増大という要望に対しての御答弁をいただきたいと思います。
  104. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 通勤手当の非課税限度額につきましては、ただいま御指摘のとおり、現在一月最高二万四百円、これは昨年の十一月に改定させていただいたものでございます。  通勤手当につきましては、従来からもほとんど毎年見直しを行っております。通勤の事情とかあるいは公務員の通勤手当等を参考にしながら見直しを行っておるわけでございまして、現在の二万四百円という水準は、ただいま委員も国鉄の運賃との関係で御指摘をいただいたわけでございますけれども、例えば私鉄で見てみますると、東京を起点といたしまして今幾つかの私鉄がございますけれども、現在の二万四百円の水準は、一カ月定期でほとんど終点までカバーしておるという水準でございますので、かなりの水準にあるとは存じますけれども、今後の運賃の動向等も見ながら、適切な対応をすべきときにはきちんをした見直しはしていかなければならないと考えております。
  105. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 今の話を聞きますと、大蔵省が私鉄に乗れというような感じを受けるわけです。本当にそういう形になっていいのかどうか。あるいは逆に私鉄の能力もあるわけですね。京王線にしても小田急線にしても京成にしても、もう通勤時間帯は乗り切れないところまでいっているはずなんですよね。国鉄でも辻堂からこっちというか、むしろ茅ヶ崎からこちらなんですけれども、これは朝六時台から超満員でございまして、九時を過ぎるまでは、とてもじゃないけれども、かばんも手を離すとどこへ行くかわからないというような状況でございまして、私も十二年間通いまして大分体を鍛えられたわけですけれども、それで本当に、じゃ国鉄のことを考えないでいいのかどうかという問題もあるし、じゃ国鉄東海道線を私鉄に売り渡せという話になるのか、いろいろな問題が出てくると思うのですね。  だから、現状是認という形で、今これはもう多分東海道を売り渡すというのはまずないと思いますので、そういう点から考えて、ぜひ通勤手当、昨年十一月ですか、上げたところだということはわかっているわけですけれども、もうすでに国鉄の値上げが来て範囲が変わってしまう、こういうこともありますし、また逆に言えば幾ら幾らという時代じゃなくなっているのじゃないか。というのは、大体限度額目いっぱい広げていただいている。それが逆に言えば運賃の値上が力によって狭められてきているということになるわけです。私鉄だと大体終点まで行けるというのは確かな話でございまして、国鉄の場合は通勤定期が大体二倍になっているわけですね。こういうことを考えていきますと、やはり現状に合わせ、また逆に言えばどこからでも通っためにはしょうがないじゃないかということもございますので、できたら全額、できなければもう少し考えていただきたいということでお願いをしたいと思います。  時間の関係もございまして次に進みますけれども、会社にお勤めになっている方で、お昼はもちろんでございますけれども、場合によっては夜勤のときの食事、これをとられるということがございまして、従来から、社員の食事の価格の半分以上を負担し、かつ会社の負担が月額二千五百円以内の場合非課税扱いとするというふうになっております。しかし、現在のところ月額二千五百円以内、二十日間稼働といたしましても一日百二十五円、こういうことになります。そして昼と夜があった場合には、とてもじゃないけれども、その倍では済まないということになってきておりまして、ほとんどが非課税扱いにならないというような現状でございます。  その中でも、特に大手の場合には、社内に厨房設備がありまして、自社で材料だけ持ってできる場合があるわけです。ちなみに、いろいろな会社の例がございまして、ある会社ですと、本人負担が百五十円で会社負担なしというのもあります。そして、大体一食当たりの値段をずっと見てみますと、二百五十円前後から三百五十円ぐらいまであるようでございます。これは大手の場合ですけれども、これを見ても、社内で加工してやった場合で、もう既に限度額の二百円を超えてしまうというような状況になっております。まして中小あたりで外部から食事をとるということになりますと、今二百円で何がとれると思いますか。二百円だとパンが二つぐらいですかね、それくらいしかない。サンドイッチでも、一番安いのは三百円ぐらいすると思うのですけれども、かけうどんとかの一杯、それでも二百円超えていると思うのですね。ラーメンでも今三百円超えておりますから。  こういうふうに考えていきますと、昭和五十年以来据え置きにされております食事代の非課税枠、これがもうまさに現状に合わないという状況になっておりますし、特に中小零細企業の従業員の方に大変な格差ができている。こういうことを考えると、ぜひ今回、所得という意味ではなくて、やはり生活実態を十分見直した上での改善というようなことで、これもまた要望としてお願いを申し上げたいというふうに思うわけでございます。これについていかがでございますか。
  106. 渡辺幸則

    渡辺(幸)政府委員 お答え申し上げます。  今御指摘になりました食事の関係の現物給与の非課税でございますが、これは、委員よく御承知のとおり、非常に長い歴史がございまして、そもそも昭和二十年代におきまして給与所得者の方々が食糧事情の非常な逼迫等によりまして、使用者から食事の給与を受けるということで、そういうことを考慮するためにできた制度でございます。その制度の名残が今日まだ続いておるわけでございますが、これはやはり経済的な利益の一つでございまして、所得税の上からは一応課税対象になるわけでございますが、そうは申しましても、現実にこれを全部課税するということは非常に酷でありますし、また、社会的な常識に反しますものですから、私ども、執行の段階で一定の限度で非課税扱いにいたしておるわけでございます。しかし、この点につきましては法律に格段の規定もございませんし、私ども執行の段階でやることにつきまして、おのずから限度がある。会社の福利厚生費であるという面と、それからまた従業員の利益という点を考えまして、非課税にいたしておるわけでございます。  お尋ねの二千五百円では安過ぎるのではないかということでございますが、委員先ほどお読み上げになりましたように、これは直接費だけでございます。したがいまして、一月に何回食事を召し上がるかということでございますが、最近は土曜日も休みでございますし、回数もやや減っておるのではないか。それから直接費だけでございますので、実は減価償却費でありますとか、それから金利でありますとか、そういうものは入っておりません。そこでこれを時価に換算いたしますと、決して二百円というようなものではございませんので、これはいろいろ算定の仕方があると思いますが、時価に換算をいたしますと、恐らく六百円以上になっておるのではないかと私ども推察をしておるわけでございます。そういう点で、非課税になっておる社員食堂も随分数があるというふうに私ども承知をいたしております。
  107. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 社員食堂のある場合は比較的恵まれているという話をしておりまして、外部から購入される場合の問題、これを言っているわけです。それと、社員食堂の場合の総額。これを、さっきも言いましたように二千五百円で、今、大体二十日稼働なんですね。二十日稼働ですから、一日百二十五円にしかならないということもありますし、そういう二十日稼働のところは大体夜勤もやっている可能性も非常に多いですから、夜の場合はもっと高くなるわけです、両方重なりますから。そういう意味で、とても二百円では済まないということでございまして、二百円で済むならば、役所の中の食堂を全部二百円以内におさめていただいて、負担をしないでできるかどうかというのを一回確かめていただきたい。  時間がありませんので、これから単身赴任のいろいろな悲しいお話をしたかったのですけれども、後でまた大臣が来られてからやりたいと思います。  どうもありがとうございました。
  108. 熊川次男

    ○熊川委員長代理 午後一時より再開することとし、休憩いたします。     午後零時二十二分休憩      ————◇—————     午後一時八分開議
  109. 瓦力

    瓦委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。沢田広君。
  110. 沢田広

    ○沢田委員 大臣、忙しい中で御苦労さまです。また、今回は御尊父の御冥福を心からお祈り申し上げます。  今まで事務局に対する質問を行ってきたので、極めて限られた時間ですから、もう理由等は余り述べないようにして、簡潔に結論だけいきたいと思うのです。  与野党の折衝の中の項目にも、この委員会審議中身によっては可能な限り誠意を持って対処をする、具体的に対処できるものがないかどうかを検討したい、こういうことで回答がなされております。そういう趣旨に受け取って質問してよろしいのかどうか。今まで梅澤さんの御答弁は極めて忠実なる官僚の義務を果たしておられましたので、ちっともその辺の前進がございませんでした。大臣来られましたので、その点改めてお伺いした上で項目に入りたい、こういうふうに思います。
  111. 竹下登

    竹下国務大臣 私が理解しておりますのは、与党の理事さんが野党の理事さんにお示しになった、その中で、国会等で議論されておる問題等については、実行できるものは可能な限り整理して返答します、こういう趣旨であったと理解しております。  どんなものが実際あるのかなと思って私なりにもいろいろ考えてみておりますが、元来、本大蔵委員会のいわば歴史的な一つの流れを考えてみますと、大体国会でいろいろ問題になり、本委員会で問題になるのが、必ずという言葉はちょっとオーバーかもしれませんが、翌年とか次年度とか、そういうときに大体実効的な案として実を結ぶというような、非常に継続性の傾向がございますので、そういう一つの歳入委員会の伝統と申しますか、そういうものは守っていくべきものだというふうに考えております。
  112. 沢田広

    ○沢田委員 だから、きょう直ちにそのことが実現できなくとも、我々といいますか、それぞれ各野党も主張しております事項について、近き将来という言葉がいいかどうかわかりませんが、十分考慮して対応する用意はある、用意はあるとまでは言えないが、対応していきたい、そういう意思を持っているものなんだという理解でよろしいですか。
  113. 竹下登

    竹下国務大臣 元来、本歳入委員会は、そういう一つの伝統のようなものがあるんじゃないか。だから、たとえいろいろ国会論議等がぎしぎししても、ある種の合意が得られたら、今おっしゃったような考え方で物が進んでいく性格が、本歳入委員会には非常に強いという認識を持っておるわけです。
  114. 沢田広

    ○沢田委員 来て、とんとんとんとんと機関銃のように聞いたんじゃ休む暇もないでしょうから、若干場面を変えまして、次の、国土庁と建設省を呼んでおりますので、その方へ暫特質問を移してみたいと思うのです。  我が国の国土の面積の中に占める、いわゆる農耕地、森林あるいはいわゆる住居地区、先ほども若干そういう問題にも触れられておりましたが、果たして我が国の家族構成、住まいの状況、住宅の状況、衣食住というけれども、衣はやや足りてきただろう。食も、自給率は悪いけれども、現在の消費能力としてはまあまあの線に来ている。しかし、自給率が低いということが今後の大きな課題ですから、農耕面積をこれ以上減らすことは、極めて危険な国土の利用ということになる。そうしますと、一番悪いのは、衣食住、それに加えてこのごろは医療、健康、こういうものが言われておりますけれども、住的なものの質は世界に比べると極めて低い。大体世界の水準の先進国の中で日本が最低ではないかとさえ言われる状況です。  それで、建設省にお伺いするのでありますが、二DKの中に親子四人、しかもこのごろの子供はでかくなっておりますし、中学生で親を超えるような大きさである。靴なんかは、恐らくここにおられる年配の人ならば、九文、十文なんという、古い言葉でありますが、古い言葉の方がわかりやすいから言うのでありますが、まあ二十五センチから二十五、六センチ。ところが、今の子供たちは二十七から八、アントニオ猪木の足か馬場くらいの足になっている。そういうような状況でありますから、そういう状態の中における二DKにおける親子四人という生活は果たして妥当なものか。特にまた子供が男と女であったとか、そういうふうに性別が違ったような場合に、二DKの存在は果たしてどうなのか。その点ひとつ建設省から、建設を進めていく立場に立って、どういう視点でこれをとらえているのか、お伺いしたいと思います。
  115. 内藤勲

    ○内藤説明員 二DKのお話でございますけれども政府では住宅建設五カ年計画というものを持っておりまして、居住水準というものを決めております。今、先生の四人世帯ということで考えますと、最低でも三DKを確保したい。あと平均水準としましては三LDKを確保したい。そういう水準を閣議決定を通じて持っておりますので、二DKというものは四人世帯としては望ましくない、そういうことは言えると思います。
  116. 沢田広

    ○沢田委員 続いて国土庁。国土庁も我が国土の利用について余り権限がない省だけれども、どういう程度に物を考えているのか、一応お伺いしたい。
  117. 木内啓介

    ○木内説明員 先生おっしゃるように、今後、住宅、宅地等とも質の向上を図るべきだと考えております。
  118. 沢田広

    ○沢田委員 いや、そういうことじゃない。国土の利用の立場からどう考えているか。全く権限がないけれども答弁もなっていない。それは話にならない。いわゆる国土利用計画の中における住宅事情というものがどうなのかということを聞いているわけなので、ちょっとお粗末ですが、先に行きましょう。  さっきの建設省の答弁で、三DKではどういう利用の仕方をするということですか。今私の言った、例えば子供が中学生なり高校へ行っている、もう下の子も高校へ行っているか中学生、そういうような場合の三DKの利用の仕方、ちょっと例示して言ってください。
  119. 内藤勲

    ○内藤説明員 三DKというものの考え方は、最低水準としてはあるわけで、三DKは三寝室という意味なんですけれども、夫婦の寝室が一つ、それから子供がある程度大きくなりますと、性別を分けて就寝する必要がございますので、それで二つということで三ルーム、三DK、そういう考え方でございます。
  120. 沢田広

    ○沢田委員 今の状態は三畳間なんというのがあるのですね。それも一室に数えている。三畳間に夫婦が寝て、六畳間に子供が寝る。下手すると押し入れの上下で寝るということすら行われているので、三DKですら、世界の水準から比べれば極めて狭隘といいますか、非常に厳しい状況にある、こういうふうに思いますが、その点は世界の先進国と比べてどうですか。応接間なんてありっこないでしょう。人が来たらばたばたと片づけて、朝起きたら布団片づけて、飯食って、そしてまたということで、一つ部屋が寝たり起きたり全部する場所になっているのが現状でしょう。どうですか。
  121. 内藤勲

    ○内藤説明員 三DKという、最低水準ですから、余裕室がない状態ですので、三DKが望ましいということでありませんで、少なくとも三LDKは確保したい。三寝室以外にL、リビングルームを平均世帯では確保したい、そういう考え方でございます。
  122. 沢田広

    ○沢田委員 時間がないからこれ以上余りやっていられないのですが、だんだんやっているうちにでっかくなってきた。それで、これにおばあちゃんかおじいちゃんが入ってきたらどういうふうな住まいの形式になるのですか。
  123. 内藤勲

    ○内藤説明員 高齢化が非常に進んでおりますので、高齢化対策ということが必要になってまいります。それで、公的な住宅としましても、公営住宅におきましては老人同居世帯向き公営住宅を提供するとか、それから公団住宅につきましても、最近は四LDKというものを供給することによりまして、高齢者を含めた三世代同居が可能になるような施策を講ずるとか、あるいは公庫の融資におきましても、老人同居割り増しということをやっております。そういうことでございます。
  124. 沢田広

    ○沢田委員 私は、あなたが言った三DK、三LDKでもいいが、その中におばあちゃんなりおじいちゃんが入ったらどこに寝るのかと聞いている。夫婦はどこで寝るのか、子供はどこで寝るのかということを聞いているのです。言ってみてください。計画を言っているのじゃない、どこで寝るのだと言っている。
  125. 内藤勲

    ○内藤説明員 三DKの場合には高齢者と一緒に同居することは難しい、高齢者と一緒に同居する場合には四DKとか四LDKとか、そういうものが必要になってくると思います。
  126. 沢田広

    ○沢田委員 だからそうなるでしょう。それは現実的にはそうなってないですね。話としてはある。だから建設省としてはおじいさん、おばあさんというか、お父さん、お母さんとは一緒に住まわせない計画で家をつくっているのですか、どちらなんですか。
  127. 内藤勲

    ○内藤説明員 建設省の施策といたしましては、老人同居も今後根強い需要がございますので、三世代同居も相当数残っていくわけです。それから最近では高齢単身というものも非常にふえておりますので、高齢単身世帯住宅の対策も考えますし、三世代同居も考えたい、そういうことでございます。
  128. 沢田広

    ○沢田委員 現在ある、国がつくっている住宅の大多数は二DKである。ようやくこのごろになって三DK、それで三LDKがややふえてきた、そういう今日の国の住宅建設の方針だったでしょう。この事実は否定できないですね。  将来のことはさておいて、じゃ今までつくってきた家の家数で言ってみてください。国がづくってきた家数の、二DKが幾らで三DKが幾らで三LDKが幾らで。首かしげているけれども、言ってみなさい。
  129. 内藤勲

    ○内藤説明員 供給した戸数は今手元に資料がございませんので言えませんが、例えば公団住宅などを見ますと、かつて二DKというのが非常に多かったということが言えます。しかし、五十年あたりからは四LDKというものの建設を始めましたし、ごく最近におきましては二DKというものよりも三DK、四DK、四LDK、そういったものに変わってきております。
  130. 沢田広

    ○沢田委員 二DKは実効的な役割は果たし得なくなってきた、だからやはり三LDKなり四LDKにしていかなきゃならぬという発想は間違いないですね。——首を縦に振っているからそうだ。これは速記録上そうです。そういうことですると二DKをぶち抜くという方法もある。二つぶち抜いて四LDKとか、こういうことにしていくという方法も一つあるわけですね。それは考えていますか。
  131. 内藤勲

    ○内藤説明員 考えておりますし、既に実施を始めております。
  132. 沢田広

    ○沢田委員 なるべくこれを多く実施することを期待をしていきます。  そこで、この三DK、三LDKでは、おばあちゃんが来たら困ってしまう。それこそどこにも寝る場所がない。年じゅう優しいおばあちゃんばっかりとは限らぬし、おじいちゃんばっかりとは限らぬ。そういうことでいくと、同居していく場合にはこれは大変な家庭生活の中の破壊につながってしまう。そう思いませんか。どうですか、あなたのうちで実験してみますか。言ってみてください。大変でしょう。この三LDKの中におばあちゃん、おじいちゃん一人入ってきた場合に、その扱いはどういうふうにするかといったら困るでしょう。
  133. 内藤勲

    ○内藤説明員 普通の四人世帯に高齢者が同居する場合には、三DKでは大変だと思います。
  134. 沢田広

    ○沢田委員 そうすると、実質的にはおばあちゃん、おじいちゃんというものが入ってくれば、これは本当に三畳間に夫婦が寝るような騒ぎになってしまう。  そこで大臣実情は以上のようなことですから、三、四年前になりますか、せっかくつくっていただいた同居減税なんですが、仕送りの方は三十五万で、四十万と五万しか違いがない。これでは少し、一緒にいる者と比べて仕送りは楽過ぎると言っては悪いんですが、この二つだけの次元でとらえると、仕送りしている者はその精神的な苦痛、そういうものの苦痛が伴わない。ですから、同居減税の中で仕送りと同居の分についてはもう少し差があっていいのではないのか。仕送りの分と、一緒に住んでいる者の減税の額というものについては、これからの時代に対応していくという条件も含めて考えると、同居減税引き上げがさらに若干上積みされていいのではないのだろうか。  もう一つ、私は、日本の家族制度のあり方として、どこかの生命保険会社の世論調査ではそうなっていないようですが、我が国の狭い国土の中で親子が住むということは、年寄りの一つの楽しみでもある、いわゆるおば捨て山論というものは我が国の風土に合わない。そういう状況を考えれば、この同居減税引き上げについてさらに若干考慮してやっていいんではないのか、一緒に住んでいる者という場合は考慮する余地があるのではないか、こういうふうに思うのですが、いかがですか。
  135. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆるマイホームと申しますか、あるいはいい悪いは別として、日本の長い家族主義的な、一緒に住みたいということ、ちょうど私も沢田さんと同じように十文三分、十文半の時代でございまして、半分以上はセンチの時代でございますが、そういう感じは十分持っております。  したがって、いろいろ議論したときに、住宅の金融の方ではなるほど二つの措置を行って、一つはいわゆる建て増しの場合、おじいちゃん、おばあさんを田舎から呼ぶ場合の建て増しの場合のものと、それから子供が大きくなって二世代論の場合、標語にしますと「じいちゃん、ばあちゃんいらっしゃい、おうちが大きくなったから」、それから二番目は「おまえも大人になったから、一緒におうちを建てようや」、これは選挙のキャッチフレーズに考えましたが、余り受けませんでした。それと同じような思想で恐らくお考えになったでございましょう。専門的なその辺の関係の考え方は私自身わかりません。が、今おっしゃったような問題は当然のこととして、また政府税調へお伝えする課題だというふうには私も理解しております。
  136. 沢田広

    ○沢田委員 内容的に極めて小市民といいますか、そういう市民生活の中における厳しい状況というものがあるということを大臣が理解をしておいていただきたい、こういうふうに思います。  二十八分までということですから、もうこれで時間がなくなってしまって、ほかのものができなくなってしまったんですが、それぞれほかに実は記帳義務の問題について、いろいろこれから同僚議員も言われると思いますが、記帳義務に対していわゆる税金が重いという感じ、それから税金を納めるのが苦痛であるということ、それから何とか税金の公平感を確保してほしいということ、やはりこれを満足さしていくような税制上の姿勢、こういうものが確立されることが、精神論になりましたけれども必要である、そういうことでひとつ大臣がまず配慮していただけるかどうか、大体総括論に入りましたけれども、一応大臣からお答えいただきたいと思います。
  137. 竹下登

    竹下国務大臣 まずは不公平感、これはその人人によって差異はございますけれども、客観性の中にそうしたものは絶えず見直していくべきもの。それから重税感、その次はいわゆる痛税感、こういうことでございますが、確かに重税感というものは、場合によって直接税の方が重税感も痛税感も余計あるかもしらぬ、間接税の方が比較的少ない。しかし、原則的に考えれば実態は必ずしもそうでない。いろいろな角度から税というものを考えた場合には、まず納税者の立場に立ちながら、そういう不公平感、重税感、痛税感、そういうようなものを総合して、最終的には負担と受益の関係等から、高度なこうした議論の中で判断をしていくべきものであると考えております。
  138. 沢田広

    ○沢田委員 続いて、先ほど途中まで行ったのですが、法人税の問題であります。  法人税、百七十六万ぐらいですか、若干の凹凸はありますが、百七十六万余の法人があって、税金を納めているものは約八十万程度であります。半分の法人は税金は納めていない。そういう状況の中で、法人の大きさを示す、普通とか中小とか、比率が分かれておりますが、この中身を再検討する時期ではないのか。三百万の資本金で三十億の売り上げを上げているところもある。あるいは三千億の資本金で一千万か二千万しか利益を上げていないところもある。そうかと思うと、今度の大沢商会みたいなところもある。そういうように大と中と小、それを区別する物差しが今資本金だけに依存しておる。この形骸化した資本金で区別することが果たして妥当かどうか。商法上は別として、税制上は妥当かどうかという点が、私は検討されるべきだと思うのであります。その点、いかがでしょうか。
  139. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 ただいまの委員の御指摘は、法人税法におきまして、政策税側の観点から、中小企業の基準として資本金をとっておるということに対する御指摘かと思うわけでございます。  これはいろいろ議論があろうかと存じますが、税制の観点からいきますと、例えば総資産のようなもので区分できるかなということを考えてみますと、これは業態によりまして、例えば装置産業のようなものとサービス産業では、基本的に総資産の規模で変わってまいります。そういうものは区別の基準にはなり得ないのではないか。  もう一つは、活動の状況を示すものとして、売上高とかあるいは所得とか、そういったもので区別できるかという議論も前からあるわけでございますけれども税制の基準ということになりますと、これは年々変動するものでございますから、特に軽減税率適用されるのかされないのか、あるいは租税特別措置における優遇措置が受けられるのか、受けられないのかということで、年々変動するというのは、税制としてはなかなかなじまないということでございまして、結局資本金基準によっておる。  ちなみに税制以外のいわゆる中小企業関係法を見ましても、客観的基準として資本金、場合によっては従業員という場合もございますが、そういうことでございますので、なかなかこの問題は難しい問題をはらんでおります。しょせん、客観的基準としては資本金によらざるを得ないというのが私どもの考え方でございます。
  140. 沢田広

    ○沢田委員 現状、資本金だけの単純要素がより不公正感をつくり出しているということは言えると思うのですね。それはいかがですか。資本金だけで課税をしていくことはいわゆるアンバランスをつくり、不公平をつくっていく要因になっていることは間違いない。ほかのものがあるかないかは別問題。これからの議論。しかし、資本金だけで割り切っていくということは、今日の経済活動がこういう状況になっておるし、業種別に多様化している中で、極めて単純な割り切り方であるけれども、そのことがアンバランスなり不公平感をつくり出している。これは事実だと思うのですが、いかがですか。
  141. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 中小企業税洞を適用するか適用しないかの区分基準として、資本金のみによりました場合に、確かに委員がおっしゃるような事態、あるいはそういう考え方を持つ向きがあるということは、私どもも否定はいたしませんけれども、先ほど申し上げましたような事情でございまして、やはり資本金基準、客例的なものとしてはそれによらざるを得ないのが現状であると御理解を賜りたいと思います。
  142. 沢田広

    ○沢田委員 きょう結論を求めようと思いません。物品税でもそうでありましたけれども、多様化した価値樹というものが今日の生活の中にあるがごとく、資本金も一つでしょう。総資産も一つでしょう。あるいは売上総額もその一つだと思う。今ラスパイレスなんて、私は余り賛成しないのですけれども、三次方程式まではとにかく十分にこなせる段階に来ているわけですから、少なくとも一つ法人の区分けをする場合には、数を分けて合法性をとるか、さもなければ今言ったような要素をかみ合わせた中でのABCをつくるか、そういうことが必要に、なっているのではないのか、こういうふうに思います。これはもう大臣の段階の高い問題になってしまいますから、これからの問題として、資本金だけで割り切るということがいかに不公平をつくるか。だからこのごろは七百万、八百万、一千万円とか、とにかく小さい資本金でつくる。ですから、同族が物すごく多くなるし、それだけまたいろいろな不正も行われるし、危険な問題もまた起こってくる。また一般の監視能力もなくなる。  そういうようなことで、資本金も一つでしょうけれども、総資産も一つである。同時に現在の総売り上げというものもその一つだと思うのですね。だから、そういうものが総合的な判断材料になっていかなければならないのではないか。もし今政府の言っているような考え方でいきますと、結果的には見かけ課税に走らなければならなくなってくる。従業員の数、床面積、そして商売の状況、こういう形になっていかざるを得なくなる。あれだけのでかい、駅前の一等地でやっていて、採算は赤字だからといって均等割しか納めていない会社というのがたくさんある。これは社会の正義感からいって許されることではないですね。ですから、そういう意味において総資産、総売り上げあるいは資本金、こういう要素で段階を決めていく問題ではないのか、こういうふうに思いますが、最後にこれを聞いて、あと大臣に要望だけして終わりたいと思うのですが、いかがでしょう。
  143. 竹下登

    竹下国務大臣 法人を区分する場合、今も議論がありましたように、総資産が相当なものでないことには成立しない法人もございますし、したがって、どこで区分するかというと、まさに中小企業基本法等が議論されたときからの議論でありますが、やはり資本金。もう一つは従業員という問題がございます、法人税の問題は別として。だから、おっしゃるように、感覚的にはだれしも感ずる人が多いと思いますが、今直ちにそれが加味されるべきであるというものには私はくみしがたい。一応その中で一番とらえやすいものは資本金というものだな、こういう感じは前々から持っておりますが、そうした意見も当然のこととして、私どもとしては政府税調にも伝えつつ、勉強の課題であるという認識は持たしていただきます。
  144. 沢田広

    ○沢田委員 最後、わずかですが、大蔵省は年度末手当はもう支給されましたか。首を縦に振ってくれればいいです。——ああ、そうですか。結構です。おめでとうございます。  大蔵大臣、それだけ公務員の人が全部もらったことは御同慶にたえません。しかし、また一方ではひもじい思いをしている人たちもいるんだということも十分頭の中に入れて、一万円で泣けと言うか、あるいは十万円もらえるか、そういう瀬戸際の人たちもいるという状況も判断していただいて——子供が入学をする、高校に入る、こういう意味から年度末手当が生まれました。これは黒字であろうと赤字であろうと変わりのない社会的な現状であります。子供はほっておいても大きくなると言いますけれども、またそれだけに金もかかるわけですから、やはり入学シーズンにある一定の見合うものが支給されることが世間的な生活をしていくための必要な要件である、こういうふうに思いますので、そういう窮状の者もあるんだということを、大臣忘れてはいないと思いますけれども、ひとつ念頭に置いて御判断をいただくよう、これはもうそう御判断いただけるかどうかだけで結構でありますが、御判断を心から願って私の質問を終わりたいと思います。よろしいですか。
  145. 竹下登

    竹下国務大臣 今大蔵省もらったか、確かに〇・五カ月分でございますか、年間十六・九カ月分の〇・五カ月分が年度末手当で支給されたはずでございます。  私ども関係としてあと何があるかと言えば、専売と造幣と印刷、これは私の所管にかかわる問題でありますが、元来労使当事者間の話し合いで決まるべきものでございます。が、だれしも沢田先生のおっしゃったような意見を念頭に置きながら交渉が行われるであろうと思います。
  146. 沢田広

    ○沢田委員 以上で終わります。
  147. 瓦力

    瓦委員長 宮地正介君。
  148. 宮地正介

    ○宮地委員 最初に大蔵大臣に御質問申し上げます。  大型間接税の導入につきまして中曽根総理は、みずからの内閣が存在しておる間は導入をしない、公約である、このように参議院の予算委員会などでお述べになったと承っておりますが、今後の財政の厳しい状況などを考え、見たときに、大蔵大臣としてはこの総理の公約をそのまま受けとめてよろしいのでございましょうか。
  149. 竹下登

    竹下国務大臣 私は中曽根内閣大蔵大臣でございますから、それは総理のおっしゃったことを拳々服膺していくべきものであるというふうに思っております。  私どもが絶えず申し上げておりますのは、国民のニーズというものは絶えず変化してまいりますので、税制というものはいつでも見直しておかなければならぬ。そこで政府税調等々で、勉強はいつもいつも怠ってはならないよというお諭しをいただいておりますので、そのお諭しに対しては忠実に、あらゆる勉強をしていなければならぬということは、税そのものの組み立てを考える役所としてはあるべき一つの姿であろうと考えております。
  150. 宮地正介

    ○宮地委員 この秋に総裁公選があるようでございますからどうなるかわかりませんが、当両国民は六十年度予算でこの問題はない、このように理解をしていると思いますが、これでよろしいでしょうか。
  151. 竹下登

    竹下国務大臣 中曽根内閣というか自由民主党内閣でございますし、総裁選挙もあるわけでございますけれども、自由民主党内閣の今の総理大臣がそのようにおっしゃったということは、これはやはり重いものだというふうに理解をしておくべきものであると考えております。ただ、途中で仮にもし解散があって、今度は政権が野党に移動するということも理論的にはあり得るわけでございますから、その際まで拘束はいたしません。
  152. 宮地正介

    ○宮地委員 特にこの大型間接税の導入については、大平政権のときに政府はあの一般消費税導入で大変に苦い経験をしておるわけでございますし、またこれは増税の中におきましても、国民の反対運動も非常に強い。しかし一方では、財政当局としては財政再建をしていかなくてはならない。今いみじくも大蔵大臣も勉強はしている、こういうお話がありました。ということは、伏線として将来こうした問題を大蔵省としては、機が熟せば出すのではないか、こういう感じもするわけでございますが、もう一度この点について大臣の所見を伺いたいと思います。
  153. 竹下登

    竹下国務大臣 機が熟せば出すではなかろうかということ、仮にもし、日本の場合直接税が多過ぎるというような立場に国民の合意がなされたとすれば、それはいついかなるときにでも対応すべきでございましょう。しかしながら今私どもは、いわゆる一般消費税(仮称)というものがこの五十四年に国会決議でもって一応たががはめられておるわけでございますから、勉強もいわゆる大型間接税というものを特定して勉強するのではなく、個別的に、物品税をも含めて絶えず税制を勉強しておるということで、かつての一般消費税(仮称)を念頭に置いて勉強しておるというものでは必ずしもございません。
  154. 宮地正介

    ○宮地委員 また時間が限られておりますのでこの論議は後に回しまして、若干所得税法の改正について、具体的問題について伺っていきたいと思いますが、特に新規控除の問題について、中間答申では非常に消極的な答申をしているわけでございます。  やはり国民のニーズの中には、一つパート減税の問題のように、こうしたパートの皆さんに対する減税。現在の七十九万、八十八万、今回の与野党合意で議員立法で九十万、これは給与所得控除のスライドによって結果的にそうなる。いわば当然の理という感じでございますが、そうした問題。あるいは教育費控除。これは最近教育費の家計に占める割合が非常に高くなっておる。特に御存じのように、もう小学校、中学校から塾に通わなければなかなかいい学校に入れない。こうした教育産業のあおりを受け、現実には家計に大きな教育費控除の問題というものも、非常に強い国民の期待があるわけでございますが、こうしたパート減税に対する考え方。どうも大蔵省の考え方と我々国民の立場から見た考え方にちょっと食い違いがあるのじゃないか、認識に食い違いがあるのじゃないか。また、この教育費控除についてはどのように取り組んでこられたか、この二点についてお伺いしたいと思います。
  155. 竹下登

    竹下国務大臣 パート減税と俗に言われるものは、パートタイマーの方が非常に多くなったので、そうした関心が大変高まった。だから国民世論の中にも概念的に非常に高まってみたが、さてどれが一番適切かということになると大変な議論があって、結局は基礎控除給与所得控除の最低限の組み合わせ、現状においてはこれしかないかな、こういう考え方で一つの基準のようなものができたわけであります。それまでは必ずしもその基準が基準でなかったわけであります。  そこでこの問題は、各党でもいろいろ御協議をいただく課題でございますので、いわゆる内職との問題をどうするか、あるいは一般の婦人外交員の方の問題との感覚的な不公正をどうするかという問題等、これは引き続きこの場でも御検討いただく課題である。政府税調ももちろんでございます。それはそういう方向で絶えず意見交換しながら進めていかぬといけないなと思っております。どっちかといえば、我々は政治家ですから、国民に接触しておる。したがってそういう感覚的なものが政策決定の意識の中に強く出ていく。それで、役所そのものからきますと、いわゆる税のあるべき姿という税理論からの発想、その調和をどこにとるかというのが結局政治でございましょう。  そこで、この教育減税ということになりますと、やはり問題は、教育というものはどういう立場から行われておるかというと、いわゆる助成政策、私立大学には助成をするとか、そういう各種助成政策というものが一応教育の根底にある政策の基礎でございます。したがって、そういう概念的なものをその中へどう組み合わせていくかというと、今度の所得減税が、たまたま、子供様がちょうど教育費のかかるであろうというような方々のところが優遇されるように是正されたということで対応すべきものであって、その家庭の実態それぞれに対応してやりますと、例えば、進学しないで働いてみずから税金を納めておる者から来る不公平感というものもまた生じ、自分らが働いて納めたもので自分の同級生は大学へ行って、減税の恩典にその家庭は浴しておるという不公平感も生じてまいりますので、いわゆる教育減税と銘打って、これを対象として考えた場合には非常に難しい問題になってまいります。  それから、塾の問題等も確かにございますけれども、宮地先生も、かく申す私どもも、余り塾にも行かないで、ちゃんとお国のためになろうと思ってやっているのでございますから、その辺は時代の推移というものも感じるな、こういう感じがしております。
  156. 宮地正介

    ○宮地委員 私は、税について一番大事なのは、一つはやはり税に対する不公平感国民が非常に強く抱いている、これをいかにして払拭するか、こういう面が一つと、もう一つは、国民の生活実感、税的な控除によって、暮らしと税というものとの関係をもっと緊密化して、何とかその期待にこたえてくれないか、こういう生活実感から来るもの、それと今大臣がおっしゃったように税体系、いわゆる税務論。この三つの中において最もやらなきゃならぬのは、やはり不公平感の解消であろう。  それからもう一つ、今言ったパートとか教育費控除の問題だとか、医療費控除はもう既に進んでおりますが、こうした問題などの生活実感から来る問題。これに対してもやはり私は、単に大蔵省の税務論だけの論議というものは限界に来ているのではないか。もっと国民生活に密着した形で、税というものを大きな意味でもっと理解を示し、また実施していく時期に来ているのではないか、こう考えておりますが、この点について大臣、もう少し見解を伺いたいと思います。
  157. 竹下登

    竹下国務大臣 それは事実だと思います。もともと学問というものがあって、そこから税理論というものがある。どちらかといえば我々政治家は国民に接触しておりますから、生活実感の訴えの中から物を捕捉しやすい立場にある。その調和というものが毎年毎年税制議論され、法律となって執行されていく、こういうものだと思います。  ただ、その中でやはり考えなきゃいかぬのは、生活実感だけで個別的に物をとらえた場合、理論的にいかにも不公平が生じてくる、実態として不公平が生じてくるものもありますだけに、そういうものがない形でどこに調和を求めるかというのが政治ではないかなと思っております。
  158. 宮地正介

    ○宮地委員 論議は後ほどまだやるチャンスがありますので、またやっていきたい。  少し具体的問題で、最近非常に多くのいろいろの団体の皆さんから、記帳義務の問題について、自主申告制度の精神を脅かすのではないか、民主主義の基本にもとる問題でございますが、この点についてはどのように、今回の法人税法あるいは所得税法の改正の中で取り組んでこられたのか、大蔵省の見解を伺いたいと思います。
  159. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 今御指摘になりました記帳義務の問題でございますけれども、これは問題の背景といたしまして、税制調査会の前々回の答申あたりから強く指摘されておる問題がございます。これは税の公平、特に所得課税の公平をめぐる問題でございまして、一般の給与所得者は源泉徴収でほとんど納税は完結するわけでございますが、事業所得者等は御自身で税額を算定し、納付されるという自主申告制度があるわけでございます。この申告納税の場合には、所得の捕捉をめぐりまして不公平感が絶えずございます。その結果、給与所得者事業所得者との間にあるわだかまりというものが今日、所得税制に対する国民の信頼感をもう一つ高めない一つ理由ではないのかという反省に立ちまして、申告納税制度は言うまでもなく自分で税額を算定するわけでございますから、本来取引等に伴います記録とか記帳、これは事業をなさる以上、当然あるわけでございます。したがって、そういうものに基づいて申告するのが申告納税制度でございますから、本来記録を保存し、あるいは記帳をするというのは申告納税制度に内在するものである、今回はそういった反省に立ちまして、それを制度上まず確認をしていただく。したがって、事業所得者等につきましては、取引工作成し、あるいは受領した資料あるいは記録、これは保存をしていただくというのが第一点でございます。  第二点は、積極的に納税のために記帳をしていただくという義務を設けさせていただく。ただし、この場合はやはり零細な事業者に負担になってはいけませんので、個人の場合でございますと、前二年間に所得が三百万を超える人、こういう方々に、現在青色申告お願いをしております記帳の程度よりもより簡易な記帳をしていただく。もちろんこれには罰則等もございません。したがいまして、こういったところでひとつ申告納税制度の本来の姿に立ち返った制度として新しく出発させていただきたいというのが、現在御提案申し上げているものの内容でございます。
  160. 宮地正介

    ○宮地委員 特に国税庁にお伺いしたいのですが、最近国税業務が質的な面あるいは量的な面で非常に増大をしている、このように思います。例えば法人関係にいたしましても、昭和四十六年と昭和五十六年の十年を比べましても一五四。三%、一・五倍にふえております。こうしたニーズの多様化の中、質、量ともに厳しい環境に置かれておりますが、特に国税職員の皆さんの御苦労に私は敬意を表しているわけでございます。いろいろ予算的に厳しい中で処遇改善の問題あるいは定員問題、こうした問題についても国税庁としても御努力をいただいているわけでございますが、この点について現在どのように考えておられるのか、今後どのようにこの問題に対応していこうとされているのか伺いたいと思います。
  161. 岸田俊輔

    ○岸田政府委員 税務を取り巻きます環境は、先生御指摘のように年々厳しさを加えてきているわけでございます。この中で重要、複雑、困難な事務を遂行しております税務職員の待遇改善の問題につきましては、国税庁としましては従来よりできるだけの努力を続けてきております。  具体的には、ポストの新増設とか税務職員の給与表の水準の向上、等級別定数の改善、さらには定員の増加というような諸問題があるわけでございます。いろいろ行財政、厳しい状況でございますが、例えば五十八年の給与改定におきましては、税務の給与表の水準差も拡大をしてまいりました。また、五十九年度の政府予算案におきましても、ポストの新増設、等級別定数の改善というものがなされておりますし、また、定員につきましては、ネットで十六名の増員という御配慮を今のところいただいているわけでございます。いずれにいたしましても、税務行政の重要性につきまして、関係方面の御理解を徐々に得ているわけでございまして、さらに厳しい行財政のもとでございますが、今後ともこれらの処遇改善の諸点につきましてはできるだけの改善をいたしてまいりたいというふうに考えております。
  162. 宮地正介

    ○宮地委員 人事院の方に伺いたいのですが、公務員制度見直し作業を現在進めているようですけれども、これに際して、国税職員について、特に十年間、国会におきましても附帯決議がついているわけでございますが、これはどのように尊重され、また今後国税職員については見直し作業の中でどのように考えておられるのか、伺いたいと思います。
  163. 藤野典三

    ○藤野説明員 お答えいたします。  税務職の特殊性、困難性またはその職員の御苦労性につきましては、私どもといたしましても十分承知しておりまして、給与上においても優遇措置を講じております。  具体的に申し上げますと、給与上でいきますと二つの点において考えておりまして、一つはいわゆる俸給表におきまして一般行政職よりも高い額にしております。もう一つは、いわゆる格付面でございますが、等級別定数等においても有利な、専門職として格付をしておる。そういう実態でございまして、必要に応じまして、先ほど国税庁からお話がありましたように改定をしてまいっておりますが、この点につきましては、今御指摘がありましたように附帯決議を尊重いたしまして、六十年の見直しに当たりましても十分考慮いたしまして検討いたしたいと思っております。
  164. 宮地正介

    ○宮地委員 大蔵大臣、この国税職員の皆さんの御苦労に対してまだまだ非常に見直しをすべきである、決してそんなすばらしい待遇はされてないと私思うのです。特に、中高年層の処遇改善の問題、また人員など仕事の量との関係、特に最近の非常に税務行政の厳しい情勢、こういうことから考えましたときに、国税職員に対しての対応は、政府としてもっともっと積極的に取り組むべきである、こう思いますが、大臣の見解を伺いたいと思います。
  165. 竹下登

    竹下国務大臣 まず、前段で申し上げますのは、毎年大蔵大臣として、国税職員の増員の問題が最初一つあります。これはいつも一番悩みます。とにかくこういうときには、まず隗より始めよ、こう言われます。確かに隗より始めなければいけないが、私の所管の中にまさに国税職員がいらっしゃる。これだけはと、幸い国会で応援してもらえますから、ささやかながら、結果として一けただったというようなことがあっても、逐次充実がされておるということでありますので、これからも御声援を願いたい。  それから二番目の問題につきましては、これまた人事院等へ我々としての実情を申し述べますときには、今おっしゃったような趣旨を踏まえて実情を絶えず申し述べておるところでございます。したがって、人事院等の御理解もいただいておるところでございますが、おっしゃった趣旨というものは、私どもは絶えず踏まえていなければならぬ。中には、あれは嫌われ賃でございますかと言う人もございます。国税職員は間々嫌われがちだから、あれは嫌われ賃でそれだけ高いのですかなどという質問も一遍出たことがありまして、いや、今幸いにして、公務員あるいは公共企業体等の中で、いわゆるサービスの態度がいいか悪いかという点数、国税職員は局によっては一番、こういうことも言われるぐらいでございますので、決して嫌われ賃などという性格ではない。その仕事の持つ特別な、過重な勤めに対しての報いとして、人事院等の御理解もいただきながら対応して今日も来ておるところでございますので、せっかくの今二つの御声援というのは今後とも続けていただきたい。我々にとってもありがたいことでございます。     〔委員長退席、中西(啓)委員長代理着席〕
  166. 宮地正介

    ○宮地委員 確定申告の問題について少し伺いたいのですが、三月十五日で確定申告が終わったわけでございますが、現場の税理士の先生方が、二月十六日から三月十五日の約一カ月間、そのうちの四日から五日間ぐらい無料奉仕で、無料税務相談というものを各所でやっておりまして、私も国会の合間を見まして少し激励に行ってまいりました。  そういう中で私は、納税者の立場、それからそうした献身的な税理士の先生方のお立場というものを考えて感じましたことは、実は一つは無料税務相談をやる場所でございますが、普通は大体各地方自治体の役場の会議室をお借りしてやっておる。こうなりますと、住民税の関係とか非常に機能的に、また納税者も非常に集まりがいいわけでございます。ところが、そうした会議室を使うに若干抵抗のある地方自治体もまだまだあるようでございまして、別の商工会館とか別のコミュニティーセンターとか、こういうところを使っておる。こうなりますと、納税者の皆さんも、あっち行ったりこっち行ったりということですから、せっかくの無料税務相談になかなか集まりがよくない。事務的サービスもなかなかうまくいかぬ。せっかく税理士の先生方が無料税務相談で会議室に行かれながら、なかなかお集まりがいただけない。これは国税庁として、自治省あるいは地方のそうした自治体との連携の中で、この一カ月間の確定申告期間に、納税者の皆さんも非常に便がいい、また、せっかくそうして奉仕的にやっていただいている税理士会の皆さん方も非常に密度の高い税務相談を受けられる、こういうような便宜を図るために、ぜひ国税庁あたりが自治省あたりを通じまして、全国の市町村会などにそうした便宜を図っていただくように要請をすべきではないかと私は感じております。  もう一点は、我々は地元の税務署で確定申告をしてもいいし、あるいは宿舎の所管の税務署にしてもいいと、大変便宜を図っていただいているわけでございますが、もっと開かれた——最近特に東京、関東通勤圏、首都圏の人方は、自分の住んでいるところで申告するのでなくて、特に医療費控除の還付など多いわけですから、大都市の駅の近くに、開かれた税務相談受け付けの場、こういうようなものをつくって、もっともっと国民の皆さんの還付や確定申告がしやすい環境づくり、こういうものもやはり、大変でございましょうが、この一カ月の間でございますので、より開かれた税務行政ということで積極的に取り組むべきではないか、私はこう思っております。  この二点について、国税庁の御見解を伺いたいと思います。
  167. 渡辺幸則

    渡辺(幸)政府委員 まず最初に、確定申告に関しまして大変御理解と、それからまた御協力を賜りましたことを厚く御礼申し上げます。  確定申告事務でございますが、おっしゃいましたように年々増加をいたしておりまして、私どもでもその対処に苦慮しておるところでございます。  今お話をいただきました二点でございますが、最初にまず地方団体との関係でございますが、これは五十七年に私ども国税庁と自治省との間で相談をいたしまして、実は自治省を適じまして、地方団体御当局に確定申告書の受け付けあるいは納税相談といったものをやっていただくように覚書を交換いたしておるわけでございます。これに基づきまして五十七年分におきましては、全体の申告書の三割強というものを地方団体で受け付けていただいておるわけでございますし、また市町村の役所、役場におきまして、今いろいろ御指摘のありましたような場所で納税相談をいたしておるわけでございます。それからまた税理士の先生方にも大変な御協力を賜りまして、あるいは公民会館であるとかあるいは文化センターであるとか、そういうところで無料相談をいたしておるところでございます。お互いに非常に手が足りないものでございますから、税理士の先生方と市町村の職員の方々と一緒に相談をするというようなところまでなかなか手が回らない点もございますが、これは一つの御示唆と受けとめまして、今後また自治省の御当局の方にもお話をしてみたいと思うわけでございます。  それから第二点の、開かれた税務相談ということでございますが、これも非常に大切なことであるし、また建設的な御提案だと承っておる次第でございます。私ども、実は税理士会の無料相談をするに当たりまして、全国的にすべてというわけではございませんが、大都市におきましては例えばターミナルのデパートとか、そういった場所に税理士の方に行っていただきまして、ここで相談をやっているようなこともあるわけでございます。署員もそういうところへ出向きまして相談をするということが望ましいわけでございますが、実はこれは、例えば還付申告の場合などは奥様とだんな様両方がいろいろ御関心を持っておるのですが、奥様の方は地元の税務署の方へ来られる、だんな様の方は勤務地の大都市の繁華街へ来られるということで、職員の振り分けをどうしたらいいかという問題があるわけでございます。しかし、そういういろいろな問題を踏まえまして、今後ひとつ内部で検討をさせていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  168. 宮地正介

    ○宮地委員 限られた時間でございますので、これで終わります。  経済企画庁の皆さんには景気問題と税収見積もりなどについて伺いたかったのでございますが、お許しいただきたいと思います。次の機会によろしくお願いしたいと思います。
  169. 中西啓介

    ○中西(啓)委員長代理 玉置一弥君。
  170. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 大臣のおられないときに、きょうの質問の主なテーマとして、サラリーマンの生活実態を踏まえたいろいろな要望を申し上げました。  現在の所得減税は、どうも内容からいきますと、生活実態をよく把握をされてないような感じがいたします。特に今回中堅層といいますか、そういう方々の累進課税率の低減を取り入れていただいたわけでございますけれども、まだまだ教育費あるいは住宅費、こういう問題が大変負担になっている。先ほども議論がございましたけれども、塾の話だとかあるいは私学が経営上大変な値上がりを続けているということもございます。一方では私学助成がなかなか追いつかないということにもなってきております。これがすべてにつながってきているわけでございます。  その中で、特に住宅費でも、三大都市圏あるいは大都市と言われる地域周辺が大変な値上がりを示しておりまして、住宅そのものの取得ができないような状況にもなっている。また、取得をされた方が非常に厳しい状況の中でその支払いを続けておられる。こういうことから、特に大都市周辺あるいは大都市に限っての住宅ローンの助成でありますとか、あるいは住宅費控除、こういうことを考えてくれというような要望を申し上げたわけでございます。  それと通勤手当の問題でございますけれども、現在非課税が二万四百円という金額でございます。二万四百円でいきますと、特に首都圏のいわゆる通勤圏と見られている地域の中で足切りをされるというような実態でもございまして、特に五十九年度は国鉄の運賃改定がある見込みであるということからいきますと、やはり今までの金額見直しが必要ではないか。また、逆に言えば全額控除、免除といいますか全額非課税、こういう方向にぜひ持っていっていただきたい、かように思うわけでございまして、そういう要望を申し上げました。  それから、今各企業の中での昼食あるいは夜勤のときの夜食、これが非課税の枠を一応決められておりまして、これが昭和五十年に改定をされまして既に九年たつわけでございますけれども、材料だけでももう既に足が出ているところがございますし、まして中小企業なんかだと、外部から食事をとるということになりますと、一食一日二百円という枠では何もとれないというような現状でございますので、ぜひこの制度があるということ、そして既得権という話がございます、そういう面からぜひ見直しお願いしたいということでございます。  十分な返事をいただいてないわけでございまして、今申し上げました内容の範囲で、まず大臣としてこの実態をどういうふうに受けとめておられるか、それについてお伺いしたいと思います。
  171. 竹下登

    竹下国務大臣 第一番目に、いわゆる中堅所得階層の税負担というものを今度それなりに対応したが、やはり考えてみれば、まさに育ち盛りの子供を抱えたそういう階層に対しては、もっと手厚く行うべきではないか。現行においては、そういう意見を踏まえて今日の改正に至ったということであります、限られたこの範囲の中で。その中で、先ほども議論しておりました教育控除の問題について、いつでも議論がありますが、税制調査会等で諮ってみても、やはり教育というものは歳出面からの助成政策で対応すべきもので、税制面ということになると、あらゆる個別の問題から税制面を考えていくと、例えばそれこそ義務教育だけを終了して働いて既に所得税、今度の改正を見ましてもたしか月額七万四千円以上になりますと納めるわけですから、自分はかくして働いて所得税を納め、一方同級生は学校へ行っているために、その親たちは教育控除を受けるということに対するある種の不公平感、そういうこともございますので、総じてその階層が優遇されるような、総じての施策の中で解決しなければならぬ。それのいわば今日の限度の中の精いっぱいなものが、このたびの税法改正であるというふうに考えられます。  それから住宅ローン問題というのは、これも本院の要求と本委員会等の議論を集約して、要するに大税制改正でないときに、五十八年に特にやったわけでございますので、この改善合理化を図ったばかりだ。多々ますます弁ずということはよくわかりますが、今日の状態から言うならば、まずはこれが限度いっぱいということではなかろうかというふうな感じがしております。  それから通勤手当の問題、これもいろいろ議論がございますが、首都圏の方は大体あの中で入るではないかということでございます。  それから食事代を支給されるという問題につきましても、本当は、こうした措置はサラリーマンに対する福利厚生を考慮しつつ、少額不追求という趣旨から定められたものであって、これを引き上げるということについては、現状においては慎重にならざるを得ない課題ではないかというふうに思っております。  ただ、いつも申しますように、こうしてお互いが国民に接触しながら肌で吸収した問題が、国会議論されるというものを、そのまま税調等の機関に正確にお伝えして、我々も勉強の課題として絶えず念頭に置くべき問題ばかりだというふうには私も認識しております。
  172. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 確かに通勤手当も昨年十一月に改定をされまして、ほぼ大体入るということでございます。大体入るなら、もう全部非課税にしたらどうだというふうなものもあるわけでございますから、そういう面で、これも値上げごとに改定をするというのは大変な作業でございますし、通勤手当も、何も住みたくてわざわざ遠くまで行くという、逆に言えば、勤め先があればそこでカバーできるわけでありますから、今の社会構造上こうなってしまっているという現状もぜひ踏まえて検討いただきたい。  それから食事代。食事というのは生きるためにみんなとるべきもので、自己負担で本来やるべきものだと思います。しかし、当初から福利厚生の一環としてやられているというようなものもございますし、また有税で会社負担というのも今やっているわけでございますから、そういう面でもやはり若干の恩恵をぜひ既得権という面で見て御検討いただきたいと思います。  次に、単身赴任あるいは出向という形が今非常にふえてきている。こういう問題について現状を訴えながら、まだこれからの対応という面での御相談をしたいと思います。  ほとんどの企業がいろんな地域に営業拠点を拡大したり、あるいは工場を拡大する、場合によっては、関係子会社というような形で事業所を拡大をしてまいりますと、従来自宅から通えた勤め先が、転勤あるいは単身赴任というふうな形でやらざるを得ないというような状況にございまして、ある労働組合が調査をいたしますと、大体四十代、五十代のサラリーマンの方々、この中で二五%、約四分の一、この方々が何らかの形で単身赴任あるいは出向というふうな形になっているという調査結果が出ているわけでございます。  単身赴任、我々も単身赴任と言えば単身赴任でございまして、妻子を地元に置いて単独でこちらへ来てお仕事をさせていただいているわけでございますけれども、精神的な負担もかなりあるわけですね。逆にちょっと助かる面もあるかと思いますけれども、現実問題として家族との意思の疎通もとれない、そして子供の教育についてのいろんな相談もできない、ましてや家をほとんど今任せきりというような形になるわけです。病気のときなんか、こちらにおりますときには、本当にどうしていいかわからない。私も会社時代、寮におりまして、病気がひどくて電話もかけられないというときがありまして、危うく欠勤扱いになったのがあるのですけれども、実際、例えば東京からほかの地域に出られた方々が大変な苦労をされているのではないか。現実、我々は毎週新幹線で行き来をいたしますけれども、顔が覚えられるくらい同じ方が乗っておられる。こういう現状から見ても、単身赴任なりあるいは出向という形での行き来が非常にふえている。  生活からいきますと、まさに本来の生活以外の場所での生活費負担ということが生じてまいるわけでございまして、このことからほとんどの企業が今単身赴任手当あるいは別居手当というような形での手当を支給したり、あるいは一時帰休といいますか帰省というか、自分の家に戻るための費用、これも調査いたしますと、大体七〇%くらいの方が月に一、二回お帰りになるというふうなことになっています。これを見てみますと、単身赴任のために生活費負担が非常にふえてしまっているという状況が出ております。日本全体で二十万とか三十万とか、これは正確な数字はよくわかりませんけれども、ぐらいいるんではないかというような推定もあるそうでございまして、ぜひこの現在の産業構造、この辺から見て、この単身赴任に当たられている方々のいわゆる所得面での軽減措置といいますか、こういうことをお願いしたいというふうに思うわけであります。  ちなみに一つの例が出ておりまして、例えば年収五百三十万、これはちょっと高い方でございますけれども、年齢が四十二歳、その年収五百三十万の方が大阪に単身赴任として行かれる。こういう調査をしたときに、赴任手当が二十六万四千円ございます。これは月に二・二万円、二万二千円で十二カ月。そして一時帰省交通費、ここはまた非常に待遇のいいところで、二・三万円掛ける月三回掛ける十二、これが合計八十二万八千円。合計いたしますと六百三十九万二千円という年収になるわけです。そして所得税、住民税の税金、社会保険料それぞれが値上がりをいたしまして、五百三十万のときの社会保険、税金の負担が七十七万三千七百四十円という金額が、六百三十九万円のときに百三万七千四百五十二円、大体二十六万ぐらいふえるというようなことになっております。可処分所得としては、見た目には八十万ぐらいふえているわけでございますけれども、交通費によって相殺をされまして、実質的には可処分所得としては横ばいになる。ところが、実際の生活費というのはこれからさらに発生するわけでございまして、その分が丸々のマイナスになる、こういうような現状になっております。  現在の税制では、手当というもの、あるいは交通費に対する課税というものが、今の限度額を超えるとあるということでございまして、実質的な生活苦を強いられるというようなことになっているわけでございます。この辺をぜひ今後の検討課題としてとらえていただいて、特例措置をぜひ設けていただきたい、かように思うわけでございます。まず、それについてお答えいただきます。
  173. 竹下登

    竹下国務大臣 まず単身赴任手当、私がかつて何の問題でございましたか、建設大臣をしておって、フェリーか何かの廃止。そのときに海員の皆さん方が陸へお上がりにならなければいかぬというので、海員の手当の話をいろいろ勉強さしてもらったことがあります。そうしたら、中に「人間性回復手当」という言葉がありまして、これは一体どうだろうか。大体わかるような気がしましたけれども、恐らく外へ長らく航海していらして港へお帰りになったときに、奥さんをお呼びする、それが人間性回復手当という名前だな。単身赴任の場合いつも感じますのは、そのようなものも考えられる一つの問題だというようなことを考えますが、元来単身赴任者の方に支給されます単身赴任手当というものは、いわば通常の給与と同じように雇用関係の中で生ずるものでございますから、給与そのものと性格はまさに同様なものでございますので、したがって、それを切り離すというのはなかなか難しい問題だ。自宅との往復旅費とかそういうことについても、人間性回復手当の問題は、私は初めてその勉強をしたときにあったものですから、そういうことも考えてみましたが、やはり通勤手当と同列に論ずるというようなことは適当ではないではないか。  それからもう一つ問題がございますのは、家族そろって移った場合もかなりの経費がかかるわけであります。そうして今度は別に、今の企業のサラリーマンの中に実存する形の単身赴任というのはよくわかりますが、一方ああして東北とかいろいろなところから出稼ぎにお出になる。これもまさに単身赴任といいますか、人間性回復の必要性のある状態であるというようなことを考えますと、やはりいつも議論される個別的な生活実態対象にして、それを税でもってカバーしていくということの難しさの限界に到達するわけであります。したがって、社会の実態がそういう傾向になっていくという理解をしつつも、税法の中でそれを消化するということは、現在は非常に難しい問題ではないかというふうに思います。やはりこうした問題は、社会の生活実態の変化の中に、それがどのようにマジョリティーを持っていくかというような推移の中で絶えざる議論を続けていくことではないかな。その議論が、場合によっては雇用関係の中における、言ってみれば給与体系の中へ組み込まれていく一つのきっかけにもなるかもしらぬ、そういう印象を最近私は強くしております。
  174. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 単身赴任をする理由というのがいろいろありまして、一番多いのが子供の教育、進学のため、二番目が住宅を取得済みのため。我々もよく言うのですけれども、家を建てると大体転勤だ。たまたまそういう人が目立つわけでございますけれども、家を建ててさあ住もうかなと思ったら、自分たちが住まないで転勤をしてしまう、こういうことが非常に多いわけですね。転勤の中で本人の意思をどの程度重要視しているかというのもあるわけでございますけれども、本人の同意がないということでまずできないというのもあるわけですが、本人の同意がないと絶対やりませんというところはわずか七%しかない。あとはやはり会社都合ということでやっているわけでございまして、そこの会社にいる限りは職場の異動、逆に言えば経営者の方から考えていきますと、いろいろな人が一カ所にいると、上がくたばるまで上に行けないということにもなるわけで、人を有効に活用しようということであればやむを得ない制度だと思うのです。ところが本人の意思は尊重されない。そして片方では、先ほども出ておりました今の教育の問題、無理してようやく受験ができて入った、入って今度は一回よそへ行って戻ってくるときに、また入れるかどうかわからない、こういう問題もあります。そして住宅をようやく建てた、その家を人に貸すということではちょっと不安だというのもあるわけでございまして、特にこの二つが飛び抜けて多いわけで、あとはもう家族の中に病人がいるとかいろいろなのがあるのですけれども、ほとんどの場合こういう大きな理由があるわけです。  こういうことから考えていきますと、今の社会構造、こういう面での責任というものがかなりあるわけでございまして、学校にしてもどこに行っても入れる、住宅も非常に買いやすいというようなことであれば全然問題ない話でございますけれども、こういう今申し上げたような事情からやむを得ず単身赴任というような形になっているわけでございまして、本人の負担によって今やられているというのが実情でございます。  先ほどの手当の問題でございますけれども、手当を大部分、七〇%が支給をしておる。そして支給が会社によって変わってくるわけですけれども、その辺が今までいろいろな労使の話し合いによって培われてきたものでございまして、ようやくここまで上がってきた。逆に言えば、せっかくの労使の話し合いで盛り上がってきた現状の手当、これが税の関係で全然生かされてきてないということでございまして、その生かされてない分をぜひ見ていただきたい。確かに上積みをすればいいわけでございますけれども、今までの分以上の上積み、倍額を上積みしても丸々効いてくるわけでもないし、またそれに税金がかかるということで追っかけっこになるわけでございます。そういう意味で、部分的な層ではございますけれども、ぜひ何とか軽減措置というものを考えていただきたい。  これは社会的な論議といいますけれども、まさに、まあ埼玉県でございましたけれども、ある家庭の主婦、これは単身赴任の奥さんでございまして、女性であることを嘆いて自殺をされたということがございます。気持ちはよくわかるような気がするわけですけれども、家庭に入られて御主人は年じゅういない。そして子供さんたちのお世話を自分一人がやるというような形でやっているわけでございまして、ただでさえ精神的な苦痛が多い。そこにさらに持ち出しというような形で生活の負担を強いられる。逆に言えば、それだけ苦労しているわけでございますから、その分を上積みできるぐらいの配慮というものがなければいけないと思います。企業の方もそういう方向でやっているようでございますけれども、なかなか一気に上積みもできないし、また逆に言えば税金面での負担というものがふえる。ましてや今高度成長じゃございませんで、いかに利益を上げていこうかという中でございますから、非常に難しいという実態でございまして、確かに東北、北海道の方面から出稼ぎに来られる方がおられますし、こういう方々との比較をどうするかというのもあります。だけれども、絶えずそれぞれを見ていかないと、全体を同一視してやっていくというのは非常に難しいわけでございます。税制が複雑になるというのは、ほかの件で主税局長の話もございましたけれども、幾ら複雑になっても、やらなければいけないことはやらなければいけないということでございますから、ぜひ今後の検討課題としてとらえていただいて、大蔵当局の姿勢を前向きに向けていただきたい、かように思うわけであります。それについてもう一回お願いしたいと思います。
  175. 竹下登

    竹下国務大臣 個々人の生活実態を個別的にしんしゃくしてそれを税の中で消化するというのは、現実問題としては非常に難しい問題だと思います。しかし、そういう議論が一方にあるからこそ、雇用関係の中においてそうした制度もできてくるであろう。この問題は税調でも議論してもらいましたが、やはりこうした歳入委員会等で議論があるというのは、そうした対象になる人の数が非常にふえてきておる。我々もよく考えます。特に教育問題なんということになると、海外勤務に移転する人なんか、ずばりそういう年の人が移転していくというときに、いろいろ考えさせられることが多いわけでございますが、それが税制の中でどういうふうに消化されていくかということは難しい問題でありつつも、やはりそうした問題は絶えず検討対象としていくべき課題ではある、それは問題にならぬよという問題ではないという意識は私も持っております。  いろいろな個別的な問題を税の仕組みの中で消化するという基本的な難しさがありつつも、そういう意見があること自体が実態を反映したものであるという認識は持っております。
  176. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 まさに今までそれぞれの企業が独自で手当をつけて、これが歳入の面で税として取られてしまっている、これが非常に効いてきているわけでございまして、その辺ぜひ御検討いただきたいと思います。  あと二分でございますが、先ほど法人税関係で沢田先生の方から大と小の区分、この話がございました。私も法人税で、例えば今の区分が資本金でございまして、資本金で区分をされるというところから見て、法人税の中で特に装置産業と言われる産業、これを第三次産業的な、設備投資が比較的軽微になる産業との差、例えば同じ百万をもうけることで税金は同じじゃないかという話がございますけれども、そういう理論でいくならば、何で中小企業と大企業との法人税格差がついているのかということをまずお聞きしたい。  そして、先ほどの議論のように、資本金だけではなくて、企業の体質といいますか、あるいは売り上げ、労働装備率あるいは投下資本それぞれを加味した中での、複雑にはなりますけれども、そういう税体系をつくらなければいけないのではないか。投下資本に対する回収率を考えていきますと、企業体力というものは装備が壮大になるに従って弱小になるというような感じがいたします。特に最近の技術革新あるいは産業構造変化、こういう面から見て、早い対応を迫られる時代に移ってきておりまして、これをぜひ変えていかなければ、特に設備償却の問題にもかかってきますし、あるいは企業収益、体力という面から、内部留保がどんどんと、逆に言えば吐き出させられる。今そういう方向に向かっているわけでございますから、一律の法人税課税というものはおかしいのじゃないかというような気持ちを持っておりますので、それに対する御答弁をいただいて終わりたいと思います。
  177. 竹下登

    竹下国務大臣 これは税調でよく議論される問題でございますが、法人税に累進税率、あるいは段階税率でも結構でございましょう、を導入すべきであるという意見はある。しかし「累進税率適用を妥当とする考え方の基礎にあるとされる限界効用逓減や所得の再分配という観念は、本来、自然人である個人についてのみ適用できることであり、法人についてはあてはまらない」。そうして「税制は経済活動に対して極力中立的である」べきだということからして、「法人課税に累進税率を導入することは適当でなく、税率は基本的には単一の比例税率であるべきである。」こういう答えを一応去年の十一月もらったわけですね。しかし中小企業には既にあるではないか。これはまさに中小企業対策としての観点から、これに対して長い議論の中でそういう体系が取り入れられたものであって、それが本論であるという姿ではないと思うのであります。  それで、確かにいわゆる装置産業とサービス産業との相違、これは私どももわかりますが、やはりそれの応能主義、すなわち能力に応じ、あるいは純利益に応じたという形でとらえた場合は、やはりそこに段階を設けるということについては適正を欠くという考え方から結論が出されたわけであります。だからなお、そういう議論があるということは事実でございますから、こうした問題こそ、お互いの問答の中でお互いが納得する方向で、まだこの負担の論議は続けられる性格のものだという理解は私も持っております。
  178. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 終わります。ありがとうございました。
  179. 中西啓介

    ○中西(啓)委員長代理 正森成二君。
  180. 正森成二

    ○正森委員 私は、まず最初に「納税環境整備」というように政府税調で言われている事柄について、大蔵大臣に質問させていただきたいと思います。  ここに一税制調査会が「五十八年十一月 今後の税制のあり方についての答申」というのを出したものがございますが、その私の持っておりますものの三十四ページにこう書いてあります。「納税環境整備は、申告納税制度の定着と課税の公平の一層の推進を図ることにより、長期的な観点からみて所得税ひいては税制全体に対する国民の信頼をより強固なものとし、それによって将来の安定した財政構造の確立に寄与するものであり、そのためにもまた不可欠な検討課題である。したがって、これをもって当面の各般の財源対策の一つとして期待することには無理があり、また、昨今の財源不足を補うための徴税強化策として批判することは当たらないと考える。」こうなっております。  そこで二点伺いたいと思います。  この政府税調の答申の諸示唆からすれば、今度納税環境整備ということで、記帳義務その他もろもろの制度が設けられますが、これは決して徴税強化策として行うものではない、あるいはまた財源対策の一つとして期待することには無理があると言う以上、それによって大幅な税収増をもくろんでおるものではないというように言えますかどうか、伺いたいと思います。
  181. 竹下登

    竹下国務大臣 税収増といいますか、適正な税収が入ってくるということはもちろん期待の中にあるわけでありますが、基本的には、申告制度というものを奨励し、それが定着しつつある今日、それが本筋であるということをより整えていくという考え方で進んできたものであるから、おっしゃるように、いわゆる徴税強化策ということを前提に置いてやったものではないと言えると思います。
  182. 正森成二

    ○正森委員 徴税強化策ではなく、またここには財源対策の一つとして考えているものでもないという指摘をしておりますが、私の指摘を大臣も反対はされなかったというように思います。もっともその内容には、これから質問いたしますようにさまざまな問題点があるわけでありますが、ここに、全建総連という団体があります。大臣も御存じかもしれませんが、零細な建設業者で、いわば町の大工さん、あるいは一人親方といいますか、そういう方で組織されている団体であります。その全建総連の「なぜ申告納税制度の「見直し」に反対するのか。」という訴えの中でこう言っているのですね。   全建総連は、計算や記帳すること、そのことに反対しているのではありません。  義務化し、法制化することに反対しているのです。  全建総連は、だれにでも簡単に記入ができ、事業の収支状況が一目でわかる「建設職人のための記帳簿」を作成し、組織的に記帳講習会等を開催し指導をおこなっているのが実態です。  零細な個人経営の事業者、とくに建設現場で働く町場の工務店・一人親方等は、朝早くから夜遅くまで、それこそ文字通り汗と埃にまみれ真黒になって屋外重労働に従事し、その日の仕事が終われば身体を休めることで精一杯です。  その者への記帳の強制は困難といえます。云々と書いてあります。  ここにも示されておりますように、多くの納税者は、自分なりの事業の全体像を把握するための記帳あるいは書類の保管ということに反対しているわけではない人が多いと思うわけであります。ただ、今回の法案のように、大蔵省令で定めるところによって記帳する、あるいは記帳方法で行うということを義務化されるということは、一日じゅう真っ黒に働いている零細業者、そして我が国の今までの事業のあり方からいって必ずしも記帳に習熟しておらないというところから、それを大蔵省令で一律に定めることはいかがなものであろうかというように言っているわけですね。  そこで伺いたいのですが、先ほどの答弁を聞いておりますと、主税局長などは、この記帳義務というのは申告納税制度に内在的に備わっているものであって、新たな義務を課するものではないという趣旨の答弁をされておるようでありますが、商法でも、小商人などは記帳の義務を負わないんですね。それを初めて税法上、記帳の義務を負わせる、それを法律上の義務とする。なお、私がこれから質問いたしますが、それを欠いている場合には、政府税制調査会などでも、反射効として裁判その他で不利益をこうむることがあり得るということを言っているんですね。そうだとすれば、それは内在的に、もとからあったのだというようなことで済まされるものではなく、少なくとも新たに人民に対して義務を負わせるものにほかならないのではないですか。
  183. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 私が先ほどから申し上げているのも、そういうことを申し上げているわけでございまして、もう一度正確に申し上げますと、二百三十一条の二の三項、つまり帳簿書類の保存、一般的な保存、ここに書いております保存につきましては、文面も「保存するものとする。」と書いてございます。これは申告納税制度に内在するものを法律的に確認するという意味でございまして、第一項にございます、一定所得以上の事業所得者等につきましての帳簿の作成及び保存につきましては、申告納税制度に内在する考え方でございますけれども、これはあくまでも法律上は義務の創設であると私どもも考えております。
  184. 正森成二

    ○正森委員 義務の創設であるということになりますと、新たに義務を課する場合には、当然のこととしてそれに見合うものが普通は要求されるわけですね。青色申告の場合には確かに記帳義務は義務として課されておりますけれども、その見返りに専従者給与の支払いについてはこれを経費として認めるとか、あるいは更正決定を行う場合には理由付記ということになっておるように、義務に見合うものがあるわけですね。今回の場合には、主税局長も今、新たに義務を課するものであるということは認められましたが、その新たな負担対応する何らかの見返りというものが事実上ないんじゃないですか。
  185. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 ただいま御指摘になりましたように、青色申告の場合の帳簿の記帳義務、これは青色申告制度のそもそもの趣旨は、奨励的な制度として構成されておるわけでございます。したがいまして、これはあくまで納税者個々の選択によって青色申告を選ばれて記帳される場合には、特典といたしまして例えば専従者控除の規定とか、あるいは推計課税の禁止とか、更正決定の場合の理由付記とか、もろもろの特典的な制度があるわけでございますが、今回の制度は、先ほど申し上げました義務の創設ではございますけれども、本来申告納税制度に内在する考え方を確認して、新たに法律的に義務を創設するということでございますが、そこでお願いしております記帳の水準は、あくまで青色申告お願いしておる記帳の水準よりも簡易なものであるということは、これはわざわざ法律本文で断っておりまして、そういう簡易なものの内容を省令で決めるというふうに、省令に委任させていただいておるわけでございます。  税制調査会の答申にもございますように、今回の記帳義務の位置づけは、青色申告はあくまでもより進んだ記帳慣行と申しますか記帳制度として位置づける、奨励的な制度として位置づける。今回の制度は、一般的な記帳義務、簡易な記帳義務を導入するということでございますので、もちろん特別の制裁規定もございませんけれども、それに見返る意味での特典の規定はございません。そういうことに慣熟されながら、より進んで青色申告を選んで特典を受けるように、むしろ青色の方へ、より進んだ記帳の方へ進んでいただくというふうに、二つを組み合わせるのが適当であるということで、特別の特典の規定を今回の記帳については設けていないということでございます。
  186. 正森成二

    ○正森委員 今答弁を聞いておりますと、主税局長大蔵大臣では若干の矛盾があると思うのですね。大蔵大臣は私の質問に対して、当初は奨励するものであるという意味のことをおっしゃったと思うのですね。青色申告に進めさせるにしても、今度新たに義務を課するのに、奨励なら奨励らしく何らかの特典といいますか、それに見合うものを与えておるなら、なるほど奨励になり、青色に誘導できるということかもしれませんけれども、何らそれに見合うものがなくて、そして将来は青色になれということであれば、これは記帳義務だけで特典がないというような不利な状態。義務だけ課するという状態が嫌なら青色まで進めということで、これは特典でも何でもなくて、逆にある意味では、国民に対して今までなかった義務を課し、あるいは重荷を与えることによって、その重荷が嫌なら青色申告に行け、こういうことに結局はならざるを得ないんじゃないですか。だからこれはニンジンではなしに、むちだけであるということにならざるを得ないように思うわけであります。それは、主税局長も、特典はございませんというように言っていることからも明らかだと思うのですね。だからそういうことでは、国民の間で納得ができないという気持ちが起こってくるのも無理のないことであろうかと思うわけであります。  そこで、個別の条文について伺います。前後やや順序が逆になるかもしれませんが、二百三十一条の二を見ますと、前三年といいますか、三百万超、その所得を有する者、それから「(これらに準ずる者として大蔵省令で定める者を含む。)」というようになっているんですね。「これらに準ずる者」というのは非常にあいまいな概念でありまして、一般に言われておるところでは、「これらに準ずる者」というのは、その三百万超という申告はしなかったけれども、調べてみれば実際は三百万超であったとされる者も含むんだ、少なくとも。あるいはそれ以外にもいろいろあるんだというように言われておりますが、これらの点について明確なお答えを願いたいと思います。
  187. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 二百三十一条の二の第一項にございますように、ここの三百万というのは「確定申告書に係る当該合計額」が三百万ということでございます。  「大蔵省令で定める者」「これらに準ずる者」と申しますのは、期間は恐らく前二年、同じく前二年間を通じてでございますが、確定申告をしてない場合でございましても、三百万という決定を受けた場合、そういう客観的なものとして決めさせていただくことを予定いたしております。
  188. 正森成二

    ○正森委員 そうすると、そういう客観的なものがなければ「これらに準ずる者」にはならないというように解してもいいわけですか。
  189. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 ただいま申し上げましたように、三百万円という決定を受けた人、それから確定申告申告税額が三百万の人、こういうことでございます。
  190. 正森成二

    ○正森委員 そういうぐあいに客観的に決まっていると言いますが、いつ三百万超という決定を受けるかどうかということはわからぬわけですね。ですから、納税者としては、自分は三百万以下である、超ではないと思っておっても、更正決定その他によって三百万超になるかもしらぬということであれば、その証明は、自分もやはり証明しなければならないということになれば、三百万以下の者であっても、大蔵省令で定める帳簿その他、それを記載しておかなければ安心できないということになるのじゃないですか。これは事実三百万超と言っておりながら、それより下の者についても義務を課することになるのじゃないですか。
  191. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 この三百万と申し上げますのは、過去二年間にそういう事実があった人が前に向かって記帳義務をするということでございますから、そういう客観的事実がなければ、当然義務はかかってこないわけでございます。
  192. 正森成二

    ○正森委員 そういう事実があるかノーかということは、決定を受けなければわからないわけでしょうが。あなた方が調べてそういう決定をすれば記帳義務が出るのだけれども、本人たちは三百万超ではない、こう思って申告してきたわけです。だから決定を受けるという客観的事実があるといっても、その決定はいつおりるのやら、それが正しいのやらどうやら、少なくとも納税者の側は三百万以下である、こう思っているわけですから、実際上はいつ決定を受けるかわからないということになれば、三百万超でなくても、念のために記帳をしておかなければ物騒で仕方がないということになるのじゃないですか。
  193. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 これはそうではございませんで、今の決定の場合に即して申し上げますと、その年の前年分所得に対して決定があった場合に、前年の十二月三十一日現在においてそういう事実があった人、こういうことでございますので、基準は客観的にはっきりしていると思います。
  194. 正森成二

    ○正森委員 それ以後になる、こういうことですか。
  195. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 はい。
  196. 正森成二

    ○正森委員 次に、この第二項に「同項の帳簿を検査するものとする。ただし、当該帳簿の検査を困難とする事情があるときは、この限りでない。」つまり青色申告のようになっていないわけですね。困難であるとする事情がある場合には、この限りではない。あなた方はどういう場合をもって「困難とする事情」とするつもりですか。
  197. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 この規定は、先ほど私が特典に関する御質問についてやや答弁の不十分であった点でございますが、この第二項は、特典ではございませんけれども、今回新たに法律によって記帳義務をお願いするわけでございますから、それを誠実に履行された場合に、税務職員としてはそれに誠実に対応するという意味で、総収入金額及び必要経費に関する事項の調査に関しては、まずその同項の帳簿を検査するということを、いわば税務職員に義務づけておるわけでございます。  ただし、その場合におきましても、ただいま御質問の「帳簿の検査を困難とする事情があるとき」、これはまず物理的に困難であるということでございまして、例えば、帳簿はもちろんその方は記載しておられるのでしょうけれども、いろいろな事情があって帳簿が紛失したとか、現実に存在しない場合とか、あるいは例えば調査にお伺いしたときに、帳簿をお見せ願って調査に御協力が得られずに、帳簿を検査することが物理的にできない、そういったような事情はやむを得ないということでございます。(発言する者あり)
  198. 正森成二

    ○正森委員 我々が真剣に論議しているのに、後ろで不規則発言をする人がおりますが、我々がこういう重要な法案を審議しているときにそういう発言をするということは、この間の本会議の事例にもかんがみて、厳重に注意していただきたいと思います。
  199. 中西啓介

    ○中西(啓)委員長代理 御静粛に願います。
  200. 正森成二

    ○正森委員 そこでお話をしたいと思いますが、今、主税局長が、「当該帳簿の検査を困難とする事情」ということで二つほど事例を挙げられました。帳簿がない場合には、これは仕方がないですね。しかし、帳簿がある場合でも、御協力が得られなかったといって検査しない場合があるのですね。  例えば民主商工会などという団体がありますが、そういう団体の事務局が帳簿作成をやっておるという場合に、当該作成者などが立ち会って、帳簿を見てくださいと言っても、本人以外の者がおる場合にはそういう帳簿は見ない、こう言って立ち去って帳簿を見ないという事例があります。現に、昨年私が関与した事案ですけれども、青色申告の人がそういう帳簿を全部前に置いて、見てくださいと言っているのに、民主商工会の事務局が横におるから見ない、こう言って見ないで帰って、それならばこれを全部コピーして税務署へ持って帰って見ていただいても結構ですと言っているのに、なおかつそれもやらないということで、青色を取り消して更正決定を行ってきたという事例があります。余りにもむちゃくちゃではないかということで、異議申し立てあるいは不服申し立てをいたしましたら、私も国税庁、本省に言いましたが、これは余りにもひどいということで、青色の取り消しをさらに取り消すということが行われた事例が住吉税務署と阿倍野税務署と二件ございました。  そこで私は伺いたいのですが、こういうような新たな規定を設けられる場合に、かつてやったような、帳簿作成等に関与した民主商工会の事務局等が立ち会っておるということを理由にして帳簿を検査しないで、そうしてこれは帳簿の検査を困難にする事情があるのだというような理由はつけないということを確約できますか。それは主税局だけでなしに、国税庁に明確に答弁をしていただきたいと思います。住吉と阿倍野で取り消した事例は知っているでしょう。
  201. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 後ほど執行の問題については国税庁の方から御説明申し上げますが、先ほど申し上げましたように「帳簿の検査を困難とする事情があるとき」、物理的に帳簿がない場合と、それから平穏に検査をするような協力を得られない場合ということでございます。具体的にどういう対応かということにつきましては、国税庁の方から詳しく御説明申し上げます。
  202. 渡辺幸則

    渡辺(幸)政府委員 ただいま主税局長からお答え申し上げたことで大体尽きておるわけでございますが、そのほかに若干補足をいたしますと、私どもといたしましては、従来、従業員とか税理士以外の第三者の方が税務調査に立ち会うことにつきましては、納税者の秘密の保持といった観点もございますし、また税理士法違反のおそれの問題もございますので、遠慮させていただいておるところでございます。調査の場に第三者が立ち会うような場合には、納税者に、その第三者の退席を求めることにいたしておるわけでございます。納得をいただくようにいろいろお話をすることにいたしておるわけでございます。しかし、どうしても納税者の方々が第三者の退席をいたしていただけないという場合には、私どもといたしましては、今申し上げたような観点もございますので、なかなか調査を続行するわけにはいかないわけでございます。  住吉署と阿倍野署の件につきましては御指摘のとおりでございまして、青色取り消しをいたしまして、その後更正をいたしているわけでございます。
  203. 正森成二

    ○正森委員 今、最後の点、もう一遍言ってください。青色の取り消しを取り消したのですよ。それを、青色を取り消して更正決定したとは何事ですか。逆のことを言っておるじゃないか。青色の取り消しけしからぬということで、その取り消しを取り消すというぶざまなことをやったのですよ。だからそれを言っているのですよ、私は。
  204. 渡辺幸則

    渡辺(幸)政府委員 失礼いたしました。御指摘のとおりでございます。青色の取り消しを取り消しておるわけでございます。
  205. 正森成二

    ○正森委員 私が言ったとおりでしょう。だから、帳簿作成に立ち会った者は純粋な意味での第三者じゃないので、私は大蔵大臣に聞いていただきたいが、大きな企業は、どんな難しい複式簿記にしても、経理部や経理課がいて、給料をもって雇って、これが記帳するんですね。そのときに、財界の首脳のような社長や会長でなければ説明は聞かないということは言わないんですね。経理部長なり課長なり、例えば担当課員だって税務署員は聞くのです。ところが、全建総連にしろ、あるいは零細な業者にしろ、自分が一人で朝から晩まで働いているのです。だから百人、二百人が寄って、一人なり二人なりの事務局を共通でいわば雇って、その人に記帳をしてもらう。だから共通の従業員だと言ってもいいんですね。そういう者が記帳して、だから秘密も何も、自分のつけた帳簿なんですよ。それなのに、その者が立ち会うておるからといって青色を取り消して、そして国税不服審判所に異議を私どもが指摘して、その取り消したものをさらに取り消すということをやっているんですね。零細業者に対して余りにも権力的過ぎるじゃないですか。零細業者が一生懸命やっているときに、その帳簿を作成をした者が立ち会ったところで、帳簿はそこに現にあるのだから、平穏である以上は見なきゃいけないじゃないですか。そういうことを保障されないでこういう規定をもし設けるとすれば、それは人民に対する権利の侵害以外の何物でもないんですね。  今直税部長は思い違いをしておられたようですが、後で青色申告の取り消しの取り消しをしたということを認められたから、そのことは、あの事例でも明らかなように、民主商工会の事務局であっても、その帳簿作成に関与した者がそれについての説明をする。税理士法のことを言われましたが、課税所得とかそういうことに直接口出しするのと、帳簿そのものを説明するのとは別なんですよ。それは税理士法の審議でも私が質問し、他の委員も質問して明らかになっているじゃないですか。守秘義務云々と言うけれども、その帳簿自身を作成した者が知っているのは当たり前で、新たに守秘義務なんて起こらないじゃないですか。大体、守秘義務というのは公務員に課せられているもので、人民に課せられているものじゃないんですね。そういう理屈にもならぬ理屈を言ってあなた方が今まで徴税をやってきたから、私は念のためにここで聞いたわけです。今の答弁で、青色申告の取り消しのさらに取り消しをやったことを認められたことによって、私の主張を認められたものと見て、次に移りたいと思います。  「大蔵省令で定めるところにより」と言いますが、これは二百三十一条でも、二百三十一条の二、三あるいは百二十条でも、全部出てきますが、どの程度のものを考えておられるか、できる限り明らかにしていただきたいと思います。
  206. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 まず、二百三十一条の二の「大蔵省令で定める簡易な方法により」のこの内容でございますね。(正森委員「はい、そうです」と呼ぶ)これは、ここの法律に書いてございますように、「総収入金額及び必要経費に関する事項を」、それからそこを飛ばしまして、「簡易な方法により」という法律上の委任要件をいただきまして大蔵省令で決めるものでございますから、この内容は、まず、青色申告の場合の帳簿の記録よりもより簡易な方法でやるということが第一点でございます。  第二点は、総収入金額及び必要経費に関する事項でございますので、資産、負債に関する取引は除外される。この点でも、青色の場合の帳簿の記録の取引の対象よりも狭められておるわけでございます。  それから、そういったいわゆる損益取引になるわけでございますが、損益取引につきまして記載事項、記載の方法を具体的に定めるものでございますが、後ほどこれは詳細に、午前中の御質疑でもございましたので、事項として必要な場合提出させていただきますけれども、例えば原則は取引があったことに、取引一件ごとに売り上げなり仕入れの記載をするというのが本来の記帳の趣旨でございますけれども、小売業者の場合とかあるいは一件の売り上げ金額が小さいような場合には、その日一日分を一括して記載してもよいとか、そういった具体的な記載事項の要領を定める予定でございます。
  207. 正森成二

    ○正森委員 税理士さんの中には、こういう規定を厳密にやろうと思えばどうしても複式簿記あるいはこれに準ずるものでなければ、実際上明らかにできないのではないかという危惧が非常にありますが、その点との関係はいかがですか。
  208. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 これはいろいろ議論のあるところでございますが、現在の青色申告におきましても、全部が複式簿記による記帳なり経理を求めているものではありません。簡易な簿記の方法によってもよろしいということにいたしております。今回こういうふうに複式簿記の関連でこれを更正いたしておりませんのは、先ほど申しましたように、これは所得金額を捕捉していただくためのものでございますので、一番簡易な方法として損益法によって所得をとらえる、そういう考え方に立っておるものでございます。
  209. 正森成二

    ○正森委員 二百三十一条の三で総収入金額報告書について「大蔵省令で定めるところにより、当該合計額その他参考となるべき事項を記載した総収入金額報告書を」云々とありますが、「参考となるべき事項」というのはどの程度のものを言うわけですか。
  210. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 合計額でございますけれども、ここに書いてございますように、不動産所得事業所得それから山林所得対象になるわけでございます。だから、こういう三つの所得をあわせ持っておられる方は、それぞれの所得についての、例えば不動産所得収入額幾ら、事業所得収入額幾ら。山林所得収入額幾ら、合計幾らというふうに分別して記載していただくといったこととか、お名前のほかに例えば職業のようなものを記載していただくというふうなことを現在予定いたしております。それが「参考となるべき事項」の具体的内容でございます。
  211. 正森成二

    ○正森委員 これらの法律の中にはいずれも「保存するものとする。」という規定がありますが、この保存期間はどれくらいを考えておられますか。
  212. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 まず二百三十一条の二の帳簿の保存でございますが、帳簿につきましては七年を予定いたしております。これは言うまでもなく除斥期間との関係がございます。その他の書類につきましては、二百三十一条の二の三項も含めまして原則五年を考えております。
  213. 正森成二

    ○正森委員 これは納税者にとって非常に重い義務になるものであると思いますが、さらに次へ移らせていただきます。  二百三十五条で新たに官公署等への協力要請というものを設けております。これは「国税庁、国税局又は税務署の当該職員は、所得税に関する調査について必要があるときは、官公署又は政府関係機関に、当該調査に関し参考となるべき簿書及び資料の閲覧又は提供その他の協力を求めることができる。」こうなっております。  そこで大蔵大臣に伺いたいのですが、今まで二項はなかったわけですね。これを新たに課する場合に、官公署や政府関係機関に勤務しておる公務員、あるいは一部は準公務員と言ってもいいかもしれませんが、それぞれ守秘義務を課されている場合が大部分であります。これは守秘義務を一律に解除するということでしょうか。それともそうではないのか。そうではない場合には何を基準とされるのかを伺いたいと思います。
  214. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 御案内のとおり、国家行政組織法の二条によりまして、各行政機関の相互協力ということは、基本的には確認されておるわけでございますけれども、個々の行政の場合に、あの条項によって協力の法律的根拠にならないというのが通説でございます。今回のこの二百三十五条二項の持つ意味は、税務官署が官公署または政府関係機関に、ここに書いてございます簿書、資料その他の協力を求めることができるという、税務官署側からの協力を要請する法律的な根拠規定であるという意味でございます。したがいまして、この規定があるからといいまして、当該協力要請を受けた各官公署が持っております守秘義務の範囲を縮小するなり、あるいは守秘義務を排除するという意味はございません。
  215. 正森成二

    ○正森委員 そうすると、どういうことになるでしょうか。官公署の中には、国家行政組織法でも、それぞれの行政目的によってその公務員はその官庁に勤め、それぞれの行政目的によって人民からいろいろ情報を得る、あるいは資料を得るというようになっておるのですね。今回の場合には、その行政目的を超えて税務当局、国税庁に協力するということになっておるのですが、その協力し得る範囲は、守秘義務に反しない範囲に限るというように伺っていいのですか。
  216. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 ただいま申し上げましたように、そのとおりでございます。
  217. 正森成二

    ○正森委員 それでは官庁は、これは守秘義務の面から見て、国税当局にも提供できないということがあれば、それはこの法律をもってしてもなおかつ可能なわけですね。
  218. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 それは、そのとおりでございます。
  219. 正森成二

    ○正森委員 しかしながら、国民にとっては、当該官庁からの要請によって提出せざるを得なかったというようなものがあるわけですね、例えば、いろいろな意味の開業の届け出とか、あるいは政府関係機関ですから、中小企業関係の三つの金融機関等にお金を借りる場合には、自分のいろいろの収入金額とかそういうものを届け出なければならない、あるいは提出しなければならない。それは、お金を借りるという目的あるいは貸すという目的のために集めているわけですが、そういう問題については税務署側としてはどうなるのでしょうか。また、守秘義務一般をいささかも解除するものでないということになれば、実際的な意味をどこに置いてこういう規定を設けられたのか、そこら辺が明確にわからないのですが、お答え願いたいと思います。
  220. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 現在におきましても、実際上、税務署と例えば地方公共団体相互間の関係で、お互いに資料の協力関係を保ちつつやっておるわけでございます。  ただ、先ほど、これは例示でございまして、委員が御指摘になりました、例えば開業届のようなものでございます。環衛業者の開業届というのは、各保健所に参るわけでございます。税務署、特に大都市の税務署になりますと、納税者のそういった方々の開業の状況を捕捉するために、保健所にいろいろ現在でも資料の開示をお願いして協力をいただく場合が多いわけでございますが、やはり地方公共団体側等の事情もございまして、法律根拠があいまいなままに税務署に協力するというのは、立場上非常に難しいといったような苦情の出るような場合も間々ございます。したがって、そういったような場合には、この根拠規定を示して、こういうことで協力をお願いするわけでございますというふうに申し上げるわけでございます。  その場合に、この保健所の例で申し上げますと、保健所の守秘義務との関連で一体どうなるのか、開業届を税務署に開示することは、保健所に課せられた守秘義務を破ることになるのかどうか。これはいろいろ御議論があるかと思いますけれども、およそ事業の開業というのは平穏公然に御商売をなさっているわけでございますから、それを税務署に開示することがプライバシーの侵害になるのかどうか。私どもはそれは恐らくならないだろう、そういった守秘義務に直接抵触しない。しかも税務執行上必要な資料をお願いする根拠としてこの法律のことをお願いしているわけでございまして、先ほども一つ例示をなさいました、あるいは公的金融機関等の融資等の問題、これは物事によりましては、その人の財産状況等私有財産の秘密に属するような事項がございましょう。そういう場合は、当然プライバシーの観点からそういう協力の要請には応じられないということで、従来もやってまいっておりますし、今回の法律の規定ができましたからといって、その条件が変わるわけではないわけでございます。
  221. 正森成二

    ○正森委員 大蔵大臣に念のために御答弁願います。  今主税局長は、この規定は当該官庁のそれぞれの守秘義務をいささかも緩和あるいは侵害するものではないという答弁がございましたが、大蔵大臣もそうお考えか、確認を願います。
  222. 竹下登

    竹下国務大臣 その趣旨が徹底しておったと思います、これを作業する段階で。したがって、むしろある種の疑心暗鬼から、この問題についての御質問なり固い合わせがあったのは、農業協同組合とかそういうところであったと思います。
  223. 正森成二

    ○正森委員 間接的な御表現でございましたが、主税局長と同意見と判断させていただいてよろしゅうございますね——速記録には入りませんが、確かに何度もうなずかれましたので、その旨を私から申し上げておきます。  そこで、多くの情報は電算機に入っているのですね。このごろは地方自治体もそうですし、社会保険庁にしろ何にしろ、電算機にぶち込まれておる。その電算機にぶち込まれておる情報についても、これは当該官庁が守秘義務に反しないということになれば、提供を受ける予定ですか。そしてまた、提供を受けた資料を、大蔵省あるいは国税庁が所有している電算機、これはグリーンカードが延期になりましたので相当大規模なものが延期になっておりますが、そういう電算機に投入なさるおつもりですか、お伺いしたいと思います。
  224. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 当該資料なり簿書の内容が電算機処理をされております場合でも、特別にあの条項によりまして守秘義務に反しない。あるいはそのほか電算機の情報の関係につきましては別の規制があるかもわかりません。そういう規制に抵触するものについては、もちろん従来と同じ規制を受けるわけでございます。従来の状況が変わるわけではございません。
  225. 正森成二

    ○正森委員 大蔵大臣にもお伺いしたいのですが、我が国の場合にはプライバシーを保護する特別の立法がないのがヨーロッパに比べて非常に問題である、これはグリーンカードのときにさまざまな議員から主張されたことなんですね。例えば、官庁の持っておる自分に関する情報についても公示、公開の制度がないんですね。したがって、それを閲覧した上でアピール権といいますか、異議を申し立てるという権利もない。そういう状況のもとで、これは守秘義務違反にはならないというように当該官庁が思えば、電算機に入っておる資料であろうと入っていない資料であろうと大蔵省に提供するということになれば、これは国民全体にとっては非常に不安であるというか、危惧する問題が起こってくると思うのです。ですから、こういう問題で広く協力義務を課する場合には、官庁のいろいろな資料の公開あるいは自分のプライバシーに関してのアピール権というものを認めるものとパラレルに行わなければ、非常に不公平になってくるのではないですか。
  226. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 プライバシーの保護に関する議論はいろいろ行政管理庁等で研究している問題でございますが、ただいま御提案申し上げております規定との関連で申し上げますと、先ほど来申し上げておりますように、今回の規定は、税務官署が官公署等に現在事実問題として行っております協力要請の法律的な根拠をいただくということでございますので、プライバシーの保護等に関する点で、これに対応されます官公署等の守秘義務とそういうプライバシーに関する現在の状況の変革を、この制度によって来すというものではございません。
  227. 正森成二

    ○正森委員 プライバシーの問題については十分納得しているわけではありませんが、時間の関係で次の論点に移らしていただきたいと思います。  国税通則法百十六条について伺いたいと思います。この条文では「当該課税処分基礎となった事実」という文言がございます。これは被告つまり国税庁あるいは税務署側に関することでありますが、「当該課税処分基礎となった事実」という主張は、どの程度に具体的な内容として行われるのか伺いたいと思います。それは、原告に対しては異なる事実を具体的に主張することを求めておりますので、それとの対比において当然のことながら被告はどの程度の具体性を持って「当該課税処分基礎となった事実」を主張するのかということを聞く必要があるからであります。
  228. 渡辺幸則

    渡辺(幸)政府委員 今回の改正条文についての解釈ということではなくて、現在の租税訴訟のもとにおきましては、御承知のとおり租税訴訟の形態にいろいろあるわけでございますが、青色の訴訟の場合または白色の訴訟の場合、その中にも推計課税その他の訴訟と分かれるわけでございます。  そこで、青色の場合におきましては理由付記の関係もございますし、一々の収入とか経費とかそういった事柄というものが課税処分理由ということ、いわば主要事実と申しますか、そういう事実になっておると思っておるわけでございます。  それからまた白色の場合におきましてはいろいろの説があるわけでございますが、所得というものが主要事実になっておろうかと思うわけでございます。  また、推計課税におきましても同様であろうかと思っておるわけでございます。
  229. 正森成二

    ○正森委員 今の答弁はとんでもない答弁ですな。白色申告の場合には所得が「課税処分基礎となった事実」ですか。そうすると処分庁は、課税所得が二百五十万でなしに三百五十万だと言えばそれでいいということですか。「当該課税処分基礎となった事実」ですよ。それなのに、あなたの所得は三百五十万だと言えばそれでいいということになれば、原告側はそれとの対比において、どうやって自分と異なる事実を具体的に主張することができるのですか。
  230. 渡辺幸則

    渡辺(幸)政府委員 課税処分基礎となる事実ということでございますが、これは課税処分の根拠となる事実を言っているわけでございます。例えば所得税の場合には、課税の根拠となりますのは、ある年分における特定の納税者課税所得の存在でございます。課税所得はある年分における総収入金額から必要経費控除した額ということになっておりますので、実額課税事件におきましては、個々の所得の発生原因たる収入あるいは必要経費の存否が課税の根拠となる事実であると思っておりますし、また推計課税におきましては推計の合理性を基礎づける事実、例えば収入でございますとか仕入れでございますとか推計方法等がございますが、これが課税の根拠となる事実であろうかと思っておるわけでございます。
  231. 正森成二

    ○正森委員 先ほどの答弁を事実上修正されたものだと思いますが、それにしましても、今推計課税ということが出ましたが、訴訟に実際に参加している弁護士などが言っておるところでは、推計の基礎とされた事実、場合によったら数値すら守秘義務を口実にして明示しないのですよ。例えばA、B、Cというような符号で、Aは売り上げが何ぼなら経費が何%で、利益といいますか課税所得は幾らだということで、幾ら言ってもA、B、Cが何かというようなことは全然言わないという場合が多いわけですね。そういう場合に原告側つまり納税者はいかに促して同業者比率と違うんだ、そのA、B、Cというのは特殊な例だということを言おうと思っても、具体的に言うことができないということになっているのではないのですか。だからあなた方が実額で言う場合は、もちろん売り上げなり経費なり具体的に主張されるでしょうが、推計課税を言われる場合は単にA、B、Cという符号ではなしに、近隣のどこそこのどこがどうであるということであれば、それはそうだけれども、うちのところはこの点が違うということが言えますけれども、A、B、Cというようなことでは、それに対して異なる具体的な事実、自己に有利な主張なんということは事実できないのですね。  さらに申しますが、例えば被告が、つまりあなた方が売り上げから売上原価を推計して所得を算出する場合に、あなた方は経費や損金のような有利なことについてだけ先に主張、立証せよ、こう言うのですけれども、何が有利なことかわからないのですね。例えば売上原価はこうだ、あなた方が言っているよりも売上原価は高いんだということを言うと、それなら売上原価をもとに、これだけの売上原価なら売り上げがこれだけあるはずだということで、新たな推計をしてくる可能性だってあるんですね。経費についても同じことなんです。あなた方の主張する経費よりも多いから、自分に有利な事実だと思って、経費はこれだけだと言えば、逆にそれだけ経費があるんなら売り上げはこれだけあるはずだと言う。  私は大阪の国税局へ行ってきましたが、大阪の国税局では、大臣参議院審議があったそうでありますが、生計費から所得を推計してこれだけの所得があるはずだ、これより低いものはごまかしているんだから、それについては追及しろということを枚方税務署等では流しているんですね。こんなでたらめなことがございますか。  大蔵大臣、もしそういうことが言えるなら、国の場合には五十兆幾らかという歳出をやっております。これは国の生計費であります。だから、それだけ収入があるんだということになれば、十数兆にわたる国債を発行していることをどうやって理由づけるのですか。全部が税収じゃないでしょう。住民の場合だって同じことで、これだけ支出して何とか生きておるという場合だって、その人の収入だけじゃないんですよ。奥さんが働いている場合、子供が新聞売りをしている場合、あるいは学費についてはおじいちゃんやおばあちゃんが出してくれている場合、いろいろあるんですね。それなのに、これだけかかったらこれだけ収入があるはずだというようなことを大阪国税局は現にやっているのです。  それと同じことをこれでやられて、有利な事実だと思って経費やら原価を主張したら、今度はそれをもとにして売り上げを推計してくるということになれば、決して自分に有利なことにならないじゃないですか。だから、こういうことをやるためには、処分庁がまず自分の課税所得基礎となった事実を明確に主張して、しかもそれを動かさないということであれば、これはある意味では考えは成り立つけれども、あなた方は変幻自在に動かしているでしょう。初めに主張したことと裁判の途中とで事実をどんどん動かしてきているでしょう。それだから税務訴訟が長引いているのです。税務訴訟でこれは危ないと思ったら、あなた方は推計課税対象になったA、B、CのほかにDがあった、Eがあったというようにどんどんつけ加えているでしょう。それが訴訟遅延の目的なんです。ところがその方は今度の国税通則法百十六条では何ら規制しないで、訴訟を起こした者だけを規制する。当事者対等の原則も何もないじゃないですか。
  232. 渡辺幸則

    渡辺(幸)政府委員 法律の解釈についてお答えをいたします前に、お述べになりました数点についてまず私の方から申し上げたいと存じます。  最初におっしゃいました、A、B、Cというような名前を隠した同業者の数字を出しまして、それによって推計をするという点でございます。  この点については、もう委員よく御承知のとおり、いろいろ判例があるわけでございます。現今は、私どもは裁判所にこういう問題を持ち出しますときには、国税局長にあらかじめ指示の格好で、どういう業者の、どういう所得を、どういうふうにとるかというような、具体的な標準となるべき企業、あるいは同業者の性格その他を提出いたしまして、これによって裁判所にそういう同業者比率の作成過程、その内容等を明らかにいたしまして御納得を得ているところでございますし、またこれを支持する判例もあると思っておるわけでございます。  第二におっしゃいました逆推計の点でございますが、これは最近の判例がございました。これも委員よく御承知のとおりでございます。そういうことで、仮に、ある実額の経費があるということであれば、それに対応する売り上げということの推計の方法につきまして、これも裁判所の御判断をいただいておるところでございます。  それから第三点でございますが、大阪国税局で確かに「お尋ね」というものを出しまして、標準生計費その他につきましてお尋ねをしていることは事実でございます。しかし、そのことは、その標準生計費以下の人につきましてそれを引き上げ課税をするとか、そういうことではございません。あくまでも標準生計費というのは一つ課税の目安でございます。そういう方針で、大阪国税局がそういった標準生計費その他の生計費によりまして課税所得申告しろというようなことを強要しておるということは、私はないと思っておるわけでございます。  それから、最後の点でございますが、主張を動かすという点でございます。これも委員よく御承知のとおりでございますが、現在の租税訴訟におきましては、債務の不存在確認訴訟に準ずるという建前になっておるわけでございます。そして、訴訟物としましては、行政処分の違法性一般というものが対象になっておるわけでございます。これは形成訴訟でございますが、形成要件というものがはっきりいたしておりません。特定いたしておりませんので、そういう点から、いわゆる総額主義というものがとられまして、いろいろな所得の形成となる原因を被告側から主張することは自由だということに判例をいただいているわけでございます。そういう判例に従いまして、私ども訴訟を遂行いたしておるわけでございます。
  233. 正森成二

    ○正森委員 今の答弁を聞いているとますます危険だということになるのですね。本来税務訴訟については、総額主義じゃなしに争点主義をとるべきであるというのは、学者なども広く主張されているところであります。ところが、現在では総額主義と講学上呼ばれるもので推移しておる。そして今あなたがお認めになったように、前段で言われましたが、経費から逆にさらに売り上げを推計するということを後に行ってもよろしいという判例があるというように、判例を二種類ないし三種類お述べになりました。ところが、現在の判例の場合には、国税通則法の百十六条というような規定はないんですね。だから、あなた方がそういうことをやれば、それによってまた納税者側も逆に主張を立証するということが可能なんです。  ところが、今回の場合はどうですか。この百十六条が出てくれば、総額主義をとっており、今言ったような判例があるというところからすれば、経費だとか損金だとか、自分に有利なことだと言って主張しておれば、それが命取りになって、あなた方の方は何ら制限がなくて、それを基礎にして新たな推計を出してくる。ところが、納税者の側は、今度百十六条によって、「時機に後れた攻撃防御方法」ということで主張立証ができないということになるんじゃないですか。それではボクシングに例えるなら、納税者側は十五回の選手権のラウンドで一回目だけは相手をぶん殴ることができるけれども、二回目以後は防御だけだ。税務署側は十五回思う存分ぶん殴ることができる。それでタイトルマッチをやれというようなものです。こんな不公平な争訟法がありますか。私は法曹だけれども、前代未聞だと言わなければならないのですね。こんなことでどうして当事者対等なんということができましょうか。  だから、日本弁護士連合会も決議を三月十六日に行って、これに対しては絶対反対という立場を表明しているんですね。こう言っておるわけであります。  本来、裁判所の裁量にゆだねるべき民事訴訟法の適用について、租税手続法の中に「みなし」規定を設けること自体、まことに奇異の感を否めない。政府税制調査会の「中期答申」以来の経過に鑑み、この規定の意図するところは、租税訴訟における主張と立証責任の実質を、原告の側に転換するところにあり、しかもその内容は、原告の訴訟活動のみを封じ、被告の事実主張の遅延について同様の規定を欠くことは、争訟法の基本たるべき当事者対等主義を著しく損なうものといわねばならない。国民の権利救済の道をせばめるにひとしい争訟手続上の重要な「改正」が、法制審議会や法曹三者協議など、事前に十分論議をつくされる機会もなく、突如、国会提案され、早期の成立を期せられている事態は、到底黙過し難いところである。こう言っているわけですね。  私が主税局の担当者から聞いたところでは、この規定ができれば、もはや「時機に後れた攻撃防御方法」という点では裁判官の判断は出てこない、必ず適用される、こう言っているのですね。また、別の委員の質問に対して、梅澤主税局長は訴訟指揮に関する規定でございます、こういう答弁をしました。  裁判官の訴訟指揮に関すること、裁判官の判断を奪うことを、法制審議会にもかけず、一方の当事者である日本弁護士連合会の意見も聞かないで、国税通則法の中で規定してくるなんということはもってのほかじゃないですか。こんなことで憲法三十二条の国民の裁判を受ける権利がどうして守られますか。私は絶対に賛成することはできない。これは銭金の問題ではない。国民の憲法上の権利にかかわる問題であります。  時間がございませんので、あと一点だけ質問をして、次の機会の質問にこの続行をさせていただきたいと思いますが、この規定では「時機に後れた攻撃防御方法」とみなされても、著しく訴訟を遅延するかどうかはなお裁判官の判断事項に残っており、裁判官が訴訟を遅延させまいと思えば、これは却下しないということは当然可能であるという規定と読み取れますが、そのとおりですか。
  234. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 それは御指摘のとおりであります。
  235. 正森成二

    ○正森委員 判例によれば、第一審の終了間際に提出された場合なら著しく訴訟を遅延させるものであっても、第二審の冒頭に提出された場合には、必ずしも著しく訴訟を遅延させるものではないというのが通説、判例でありますが、やはりこれもそのとおりですか。
  236. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 それは私ども行政庁がお答えすべき問題の範囲をやや超えておる問題でございまして、民事訴訟法の適用上、我が国の裁判所がどういうふうにこれを適用されるかということでございます。
  237. 正森成二

    ○正森委員 今の答弁を見ても、これは本来法務委員会審議すべき内容であるということを示していると思います。  さらに、法務省が出てきていると思いますので伺いますが、今までの判例では、書証については、どの段階で提出しても、それは訴訟を遅延するものではないというのが確立された判例や通説ですが、それは守られるでしょうか。この規定では、主張やあるいは証拠法についても非常に著しく制限しているように見えますが、その点はどうですか。
  238. 宇佐美隆男

    ○宇佐美説明員 お答えいたします。  国税通則法百十六条の規定は、遅滞なく出されなかった場合には、「時機に後れた攻撃防御方法」とみなすという点についてのみの特則でございまして、そのほかについては何ら百三十九条の解釈を変えるものではございません。
  239. 正森成二

    ○正森委員 それでは、「遅滞なく」というのも裁判官の判断事項ですね。
  240. 宇佐美隆男

    ○宇佐美説明員 そのとおりと考えます。
  241. 正森成二

    ○正森委員 私は本来法務省等に、なぜ法制審議会に審議を仰がなかったのか、日弁連の意見を聞かなかったのかについて答弁を求めたいと思いますが、残念ながら時間が参りましたので、次の機会に譲らせていただきたいと思います。
  242. 中西啓介

    ○中西(啓)委員長代理 次に、川崎寛治君。
  243. 川崎寛治

    川崎委員 まず冒頭に、竹下大蔵大臣の御尊父様の御逝去に対して心から弔意を表したいと思います。そして、政治家は大変非情なものだということで、悲しみをこらえて任務についておられますことに、心から敬意を表したいと思います。  私は、午前中我が党の渋沢委員が質問をいたしました内職の問題、まずこれを、きょうは労働省にも来てもらっておりますから、この衆議院の予算の最終段階における与野党間の話し合い、そういうものから発展をいたします今後の問題として、パート並びに内職、婦人の外務員、そういう問題等の関係について少し詰めてまいりたい、こういうふうに思います。でありますから、午前中の渋沢委員との論議、また予算の第二分科会における社会党の松沢委員との間の論議等も踏まえながらひとつ詰めてまいりたい、こういうふうに思います。  労働省お尋ねをいたしますが、主婦のパート、それから内職の主婦労働者、婦人外務員、それの実態というか数、そういうものについてまずお尋ねをしたいと思います。
  244. 藤井紀代子

    藤井説明員 まず、家内労働者について申し上げます。  労働省では毎年家内労働の実態調査を行っておりますが、五十八年におきまする家内労働者数は百二十万人、補助者数は九万人となっておりまして、計百二十九万人が家内労働に従事いたしております。また、家内労働者を男女別に見ますと、男子が八万人、女子が百十二万人となっております。それからまた、同じ調査によりまして収入の点を見ますと、一カ月当たりの平均工賃額は、男女計で四万八千三十一円となっており、男子では十六万七千二百五十七円、女子では三万八千五百三十円となっております。  次に、パート労働者について申し上げます。  パートタイム労働者を、週間就業時間が三十五時間未満の短時間雇用者として見てみます場合、総理府の労働力調査、五十七年によりますと、非農林業におきましては四百十六万人となっております。うち女子が二百八十四万人でございます。また、パートタイマーの数を、総理府の労働力調査特別調査、これは五十六年三月のものでございますが、これによって見ますと、パートタイマー等と呼称されている者が二百五十五万人、うち女子が二百四十一万人となっておるわけでございます。なお、女子パートタイマーのうち、配偶者を有する者を同特別調査によって見てみますと、二百七万人となっております。また、死別、離別した者二十三万人を含めますと計二百三十万人ということになっておりまして、女子パートタイマー総数の九五・四%が有配偶の女子ということになるわけでございます。また、賃金を見てみますと、女子パートタイム労働者の一時間当たりの所定内賃金を労働省の賃金構造基本統計調査、五十七年六月で見ますと、五百四十円となっております。そこで、一日当たりの所定内実労働時間数は六時間、実労働日数は二十二日というふうになっておりますので、これから月平均の月収を推計いたしますと、七万一千二百八十円、こういうふうな実態になっております。
  245. 川崎寛治

    川崎委員 そこで、労働政策に大変かかわる、こういう大蔵大臣の答弁であったわけでありますが、労働省の方はこの問題について、つまりパートの主婦の収入に対する税金の問題、それから先ほど来議論になっております内職あるいは外務員、こうした面での税制上の問題について、大蔵省と何らかの話し合いをしておるのか。大蔵大臣の方は何かそういう話し合いをしておるような意味にとれることを答弁をしておるのでありますけれども労働省大蔵省との間の話し合いはどうなっておるのか。
  246. 藤井紀代子

    藤井説明員 お答えいたします。  私の担当は家内労働でございますけれども、過去に折衝いたしております。
  247. 川崎寛治

    川崎委員 過去に折衝いたしておりますということでございましたので、それでは大蔵大臣労働政策にかかわるということで先ほど渋沢君には答弁をしておるわけでありますから、労働省の方とはどういうふうに話をし、また税調にどういうふうにこの国会議論を踏まえて持ち込んでいくのか、そういうこれからの方向づけを伺いたいと思います。
  248. 竹下登

    竹下国務大臣 この間この問題が持ち上がりました際に、自由民主党の政調会長とお話をいたしましたら、政調会長は労働大臣経験者でございましたから、私よりもその点は詳しゅうございました。それで、大臣じゃなかろうと思いますが、労働省の方を呼んで今までの経過をいろいろ聞いてみた。だが、これをパート労働法というような角度から取り上げてもなかなかこれは時間のかかる問題だ。そこで、ある意味においては政治課題として取り上げて、せっかく話ができるものならば大蔵委員会あたりで議論してみてもらったらどうだ、こういうようなお話で、それはまことに結構だと私も思っております。  そこでどうした方がいいのか。何でもかんでも小委員会をつくってやりますと、前のあの減税のときに結論が出なかったというある種の体験から、あるいはヘジテートされはしないかなと私も思ってみたり、がしかし、元来そういう税に関する小委員会というのは減税問題に関する特別な小委員会でなくてもあるわけですから、そういうところで専門家さんに議論してもらって、そうすると社労の関係にもならぬかな、こういうような議論があります。しかし、これは税の問題から入っていったんだから、いずれにしてもそういう問題をまずは議論してみなければいかぬぞ。  それで、それを窮屈に議論しますと三、四年かかるかもしらぬ、その限りにおいては政治的判断が非常に伴う本委員会なんかがいいかな、こういうような議論を折々しておるところでございます。そうすると税調にもそういうものが比較的正確に伝えられる。税調でも、パートというものに限って議論されたときに、結局内職の問題と婦人外務員との問題で結論が出なかったわけですから、あるべき姿としては各党間協議がここの場が、そんなものでお願いしなければならぬのかな。これは院の問題について私が口を挟むものじゃございませんが、そういう話をしておるという現段階でございます。
  249. 川崎寛治

    川崎委員 政府・与党の間でそういう話をしておるということであれば、当然これは政党間の問題として当委員会等で詰めていかなければいかぬ議論だろう、こう思います。といたしますならば、当委員会が詰めますと同時に、政府側もこの問題について協力をして解決の方向を見出していくということで、つまり今は政府と与党との間の話がございましたから、ここの議論としては与野党議論、こういうことになります。そうしますと、与野党議論に対しては政府は協力をする、こういう問題が生じてくるわけでありますから、そういう方向で協力をしてもらいたいということをお願いしたいと思います。
  250. 竹下登

    竹下国務大臣 これはやっぱり政治家同士の話し合いになりますと、あの資料を持ってこい、この資料を持ってこいということになりまして、それは役所の方がそういう点は、よりそういうものは余計持っておりますので、協力していかなければならぬ課題だなというふうにはもとより感じております。
  251. 川崎寛治

    川崎委員 次に移ります。  この中期答申から五十九年度の税制答申、あるいは今本委員会にかけられております各種税法改正案の税体系の見直しというものの基本の中にありますのが所得の平準化、こういうことでございます。これは先般の酒税、物品税の際に議論をしようと思っておりましたが、時間がなくてできませんでしたので、この際、少ししたいと思うのであります。  中期答申で「給与所得のウエイトが上昇するとともに、高度成長期を通ずる全体的な所得水準の上昇の中で所得の平準化の進行がみられる。」こういうふうに見ておるわけです。しかし一方では、同じ中期答申の中でも「課税最低限」の項目のところでは、「安定成長期に入り所得の伸びが鈍化したことを受けて、中堅所得者層を中心負担の累増感が高まっている」こういうふうに、同じ中期答申の中でも、そこのところは違う見解が出ておるわけです。  また、日銀の調査月報の二月号を見ましても、これは「最近における家計の金融資産選択の変化について」という論文の中を見ますと、「減速経済の定着に伴い先行き所得の伸びに多くを期待できない」、こういうふうに日銀の家計の金融資産選択との関連の中で分析をしておるわけです。  先般来、主税局長が答弁をいたしておりますジニ係数の問題、このジニ係数の問題はまた経済白書も触れておるわけでありますが、これは勤労者世帯だけについて計測をしておる、その点については間違いありませんね。     〔中西(啓)委員長代理退席、委員長着席〕
  252. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 経済白書等で対象になっておりますのは、勤労世帯の家計調査のジニ係数だと思います。
  253. 川崎寛治

    川崎委員 そういたしますと、今フローである所得の格差は縮小ではなくて拡大をしておる。これは大蔵省が出しております「税務統計から見た民間給与の実態」を見ましても、フローである所得の点については縮小よりも拡大をしておるということが言えるわけです。また、ストックの格差として金融資産の残高というものを見ますと、金融資産残高の格差というものは非常に拡大をしておるわけです。  今、金融資産の平均残高は五百十一万だ、こういうふうに見られておりますが、そういうふうに見てよろしいですか。
  254. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 ただいま委員が引用になりましたのは貯蓄動向調査の数字であるとすれば、そのとおりでございます。
  255. 川崎寛治

    川崎委員 そうしますと、勤労者の家計調査を基礎にしたジニ係数でもって所得の平準化、こういう規定の仕方は私は当たらないと思うのです。だから、フローである所得の格差が拡大をしておる。そして一方金融資産残高の格差というものを見ますと、これはますます拡大をしておる。こういう面からしますと、その所得の平準化ということについて私は大変疑問がある、こう思うのです。いかがですか。
  256. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 これは私ども説明なり税制調査会の答申の表現が非常に簡潔に書いてございますので、あるいは委員が御指摘になるような御疑問も生じるかと思うわけでございますが、これはまず中長期的な観点からの議論が背景にあるわけでございます。昭和三十年代から高度成長期を通じまして、所得水準の上昇と平準化が進行したということは、今日通説になっていると思うわけでございまして、例えば五十四年の国民生活白書でも、この点につきましては三十年代、特に重工業を中心とする産業構造の変革を引き金にいたしまして、若年労働者の、企業規模の間での賃金格差が縮小したということが主要な原因になりまして、これはジニ係数で見ましても、家計調査の第一分位と第五分位の格差等を見ましても、計数的に明らかであろうと思うわけでございます。  ただ問題は、そういった背景で今日まで進行しておるわけでございますが、ただいま委員も御指摘になりましたように、税調答申のある部分では、安定成長期になって所得水準の伸びが鈍化したということでございますが、五十年代に入りまして従来の平準化の進行の度合いが停滞をしておるということは、これはまた事実でございます。  その場合の原因といたしましては、既にその所得の平準化がかなり進行したという観点がまず一つございます。それから四十年代まで所得の平準化の引き金になりました若年労働者の賃金格差の縮小という要因が、今日余り大きく働いていないということ。それからもう一つ、よく言われますのは、主婦の有業化とか、あるいは核家族化の伸展によりまして世帯人員の働き手の数が非常に変動しておるということで、世帯間の所得の平準化に対して攪乱作用が起こっておるというふうな側面もあるということが指摘されておるわけでございます。  ただ、税制調査会で間接諸税を含めました税体系の議論をしていただきました背景には、そういう三十年代から今日までの我が国の構造的な所得水準の上昇なり平準化という変化を踏まえて、今日の時点で税制を見直すとした場合に、やはり三十年代、四十年代の税制の組み立て方とは違ったアプローチが必要ではないのか、そういう問題意識があるわけでございます。
  257. 川崎寛治

    川崎委員 じゃ、金融資産はその税調の中で議論されておるんですか。
  258. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 昨今におきますストックの格差が拡大しておるという議論は、現在のところまで具体的には行われておりません。ただ、この辺の問題につきましては、この夏までに税制調査会で作業が予定されております利子・配当課税課税のあり方については、当然そういった議論が展開されるということは十分予想されますが、今までのところそういう議論は行われておりません。
  259. 川崎寛治

    川崎委員 だから、あなたのは、高度成長期で進行してきた、こういう議論なんですね。でありますが、中期税制の中でも「所得の平準化の進行がみられる。」こうあるわけで、今あなたは停滞は見られる、こう見たわけです。そうすると、明らかに減速経済に入って変わってきておるということについて、つまりそこからフローの所得の格差と金融資産残高の格差、ストックの面における格差と、その両方の格差が開いてきておる。だから、平準化してきた、こう言うけれどもそれが開いてきておる。しかも今御答弁のように、税調でも金融資産の問題は入ってないと言われるんですね。そうしますと、これは大変大きな、今日の国民所得実態というものからしますと、私は議論としては片手落ちだ、こう思います。大蔵大臣、どうですか。
  260. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる所得の平準化という問題でございますが、これは今のジニ係数に基づく議論と、それから金融資産から生み出す所得議論とあると私は思います。  これはお互い政治家の答弁でございますからお許しいただくとすれば、ちょうどきょうは持ってきておりませんが、昭和五年からの日本の所得、これは県民所得格差で私自身調べました。そうすると昭和五年は、東京を一〇〇とした場合にラストが福島県、それから次が千葉、茨城、比較的この辺の周辺が多いな、それがおおむね九分の一。愛知県ですら東京の三分の一、こういうような状態であった。それが今度は昭和五十五年の分をとってみますと、一番下が沖縄、次が先生のところ、その次が僕のところ、こういうことでございまして、それでも東京を一〇〇として、沖縄でも四九くらいになってきておりましたか、その五十年間の所得均衡の平準化というものはまさに世界一である、これはOECDの統計やら我々のをまぜましてそういう判断をしたわけです。  それで、なぜかと思って調べてみると、例えば公務員の初任給、いろいろなとり方がございますが、まあ大体オランダ、日本、西ドイツ、それでアメリカをもうしのいでおる、初任給というのは比較的若いわけでございますから。それから海上自衛隊の二等水兵さんが一年で百九十万。アメリカの第七艦隊は百六十五万。軍曹のところで日本が抜かれまして、曹長からずっと、大将になりますと二倍。二倍になるけれども、今度は累進税率が効いてくるから、手取りにすれば向こうが三倍。その意味においても日本が一番均衡がとれておるから、革命も起こらなかったのだな、こういう資料を自分なりに作成したことがございます。  近時の分を今度見てみますとどうなっておるかというと、これは先生おっしゃるように、ずっと高度経済成長期は縮まってきましたが、いわば安定成長に入ってきてからは、税調でも御指摘があったように、確かにそれが鈍化しておるということは、可処分所得の面で見ても私は言えると思っております。が、また、人によってはむしろ、余りにも平準化し過ぎたではないかという議論をする人もいらっしゃいます。金融資本から生み出すところの所得の問題については、今直ちに私、知識がございませんが、先生の指摘されることを感覚的にはある程度肯定すべきじゃないかな。ただ数字で勉強したことがございませんので、非常に政治家答弁になりまして、お許しいただきたい。     〔委員長退席、越智委員長代理着席〕
  261. 川崎寛治

    川崎委員 金融資産の格差を見ますと、非農家平均と農家を見てみましても、一九六四年の五十六万と十万、それが八二年には五百十一万と二十万、こういうぐあいに大変開いておるわけです。そして、職業別にも非常に開いてきている。ですから、フローの面とストックの面と両方見ますと、非常に開いてきているわけです。しかし、この議論をここでしておりますと時間がありませんし、今大臣もそういう非常に政治的な答弁をされました。  そこで、大蔵省の方に資料要求したいのでありますが、金融資産の実態調査というものを出してほしいわけです。所得階層別、資産保有別の金融資産の実態調査というものを資料として本委員会に出してもらいたい。いかがですか。
  262. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 突然の御要求でございますので、にわかにはっきりしたお答えをする用意はないわけでございますが、今委員がおっしゃいましたような調査を大蔵省がやったことはございませんし、ほかの機関でそういうデータがあるのかないのか、もう少し検討させていただきたいと思いますけれども、ちょっと資料としては難しいような気がいたします。
  263. 川崎寛治

    川崎委員 ただ、非常に所得内容が変わってきている、資産内容、家計の内容が変わっておるわけですから、その点はぜひ努力をしてほしい、こういうふうに思います。  次に移りますが、農業以外の事業者数は何ぼですか。それから所得税を納めている人。
  264. 渡辺幸則

    渡辺(幸)政府委員 お答えいたします。  農業以外の事業者数というお尋ねでございますが、昭和五十七年の農業以外の事業所得者数は七百二万人でございます。それから納税者は二百七十七万人でございます。  それから、農業所得者の方を申し上げますと、農業所得者は百三十七万人、納税者数は二十万人でございます。
  265. 川崎寛治

    川崎委員 そうすると、給与所得者数と納税者数はどうなりますか。
  266. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 ただいまの数字は五十七年でございますが、それで申し上げますと、給与所得者数が四千九十八万人、納税者数が三千六百二十三万人でございます。
  267. 川崎寛治

    川崎委員 次に、五十七年度の確定申告書の数、それからその年度に実施した税務調査、それから実地調査率はどうなりますか。
  268. 渡辺幸則

    渡辺(幸)政府委員 五十七年度の確定申告書数、総計でございますが、千三百八十二万九千件でございます。  この内容は、申告税額のあるものが六百五十七万九千件でございまして、そのほかに還付申告が五百五十一万六千件ございます。そのほかに百七十三万四千件の申告書をいただいておるわけでございます。  それから、その年度に実施した税務調査件数でございますが、営庶業所得者につきまして十五万四千件でございます。これに係る実地調査率が四・一%でございます。
  269. 川崎寛治

    川崎委員 次には、その脱税額はどうなりますか。
  270. 渡辺幸則

    渡辺(幸)政府委員 いわゆる脱税額と申しますか、一件当たりの申告漏れ金額ということでございますが、申告所得税、営庶業所得者をとりまして、全体の申告漏れが五千百二十億円でございます。これに係る税額が千百八十七億円でございます。一件当たりで申し上げますと、申告漏れ額が三百三十三万円、これに係る税額が七十七万円でございます。
  271. 川崎寛治

    川崎委員 この五十七年度のサラリーマンの平均給与額は何ぼになりますか。
  272. 渡辺幸則

    渡辺(幸)政府委員 私どもの民間給与の実態調査によりますと、五十七年度のサラリーマンの平均給与は三百十九万七千円でございます。
  273. 川崎寛治

    川崎委員 そうしますと、サラリーマンの平均給与額よりも一件当たり脱税のための申告漏れの方が高いのですね。ここに問題があるわけでしょう。この不公平感というのがサラリーマンにとっては一番大きな痛みなのです。大蔵大臣、どうですか。
  274. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる給与所得者の人がそういう感覚をお持ちである、私もそういう認識は等しくしております。
  275. 川崎寛治

    川崎委員 過去十年間の脱税者の第一位は、職業は何ですか。
  276. 渡辺幸則

    渡辺(幸)政府委員 ちょっと今資料の持ち合わせがございませんので、調べております。
  277. 川崎寛治

    川崎委員 これは、十年間続けて個人経営の病院の医師がトップを続けてきておると思います。そういたしますと、そういうところに対する不公平感というか不満、これがあるわけですね。ですから、そうなると、こういう大口脱税者をなくすことが先決だと思うのです。先ほど来議論もございますが、一人親方の大工さんとか左官さんとか、そういう人たちと勤労者の諸君が非常に不公平だ、事業者所得、不公平だ、こういう感じは持っておられる、こう思うのです。その点いかがですか、大臣
  278. 渡辺幸則

    渡辺(幸)政府委員 先ほどの数字につきましてちょっとつけ加えさせていただきたいわけでございますが、一件当たりの営庶業所得者に係る申告漏れ額でございますが、これは私どもの方であらかじめ、高額な申告漏れがあるという方につきまして、いろいろな資料からこれを判断いたしまして調査した結果、出てきているものでございます。したがいまして、全体といたしまして営庶業所得者につきましてこのような高い申告漏れがあるということではなかろうと存ずるわけでございます。  なお、先ほどのお尋ねでございますが、五十一年からの資料しかございませんが、五十一年からで見ますと、申告漏れのトップは病院ということになっております。
  279. 川崎寛治

    川崎委員 大蔵大臣、これは私たち地方で生に聞くわけです。それは、例えば共稼ぎしているサラリーマンが家を建てた、子供を学校に出す、そして小さい子供がまた生まれたとかというふうな場合に保育所に入れるのです、お願いするのです。ところが、保育所に行きますと、外車で乗りつけてきた社長さんが、そのサラリーマンよりも保育料が低いわけです。これは矛盾だと思いませんか。
  280. 竹下登

    竹下国務大臣 これは、私も保育所長をしておったことがありまして、これは政治家同士の話になりますが、いわゆる郵便局にいらっしゃる、配達なすっておる方の方が——外車はちょっと私の田舎には余りございませんで、川崎先生と民度は大体同じようなところでございますけれども、そうした矛盾は感じます。
  281. 川崎寛治

    川崎委員 そうしますと、不公平をなくすための記帳義務という議論は、実際に今、例えば一人親方の大工さんとか左官さん、一緒に隣り合わせて住んでいる。今不況なのですよ。大変不況で仕事がない、これはもう深刻なのです。この間も、鹿児島である結婚式に出ましたら、百数十軒あった洋服屋さんがもう七、八十軒になりました。つまり、自分でつくる洋服屋さんがなくなっちゃった。何になったか。タクシーの運転手さんになっているというのです。これは内職の労働とも関係するわけですけれども、大島つむぎが多い。そうしますと、大島つむぎも非常に不況の中で、タクシーの運転手さんになっている人が非常に多いわけです。一方では、タクシー運転手のその人たちも過当競争で大変苦しい。  そういう状況の中でありますが、例えば今の保育所の問題。そうなりますと、不公平をなくしていくという問題は、記帳義務ということで解決する問題ではないと思うのです。そうじゃなくて、今サラリーマンが持っておる不公平に対する感覚というのは、先ほどの病院がトップだ。そういうものをどうなくすかということ。あるいは同じ保育所に子供を連れていって、外車で通う者が保育料が低い。そうなりますと、それは例えば所得申告制と収入申告制というふうな基本の問題にかかわると思うのです。どうですか、収入申告制に変えようという議論もここでいろいろされてきておるわけですが、そうした点についてどうお考えになりますか。
  282. 竹下登

    竹下国務大臣 申告制を、青色申告を長い間奨励してきて、そっちへ皆さんが近づいていただきたいという気持ちは今日もございます。僕は同じようなところでございますのでよくわかりますが、実態上、いわゆるクロヨンとかトーゴーサンというものは、言葉で印象づけられるほど数はないと思うのです。だが、一つ一つをクローズアップしたときに非常に強烈な印象を与えるものであるということは、私もこれは十分認識をしておるわけであります。したがって、やはり所得の捕捉というものがより的確になされるというのは、給与所得者の方はその大宗が源泉徴収でいただくわけでございます。したがって、事業所得等についての問題は、全建総連の方であれ、やはり記帳義務というようなものがむしろ青色の方へ誘導していく施策としていいのじゃないか。  それからもう一つ、全建総連は、本当は記帳義務などが割に浸透する組織だと思っております。と申しますのは、二十年ぐらい前、全建総連の人がお見えになりまして、日雇い健保に擬制適用を受けておる。そしてだんだん調べてみたら、神主さんもホステスさんも入っておる。何で全建総連ですかと聞いたら、あれは起工式のときに、「はらいたまえ、清めたまえ」もするし、パーティーに出るから、それで全建総連に入っておる。それじゃどうもおかしいのじゃございませんかというような話をしておりましたら、結局組合健保をおつくりになって、これは大変健全な経営をしておられます。毎年お見えになりますが、徐々に健全になって、あの方たちは今度の記帳義務なんかが割にすんなりと入っていけるような感じの団体になったなということを、実は正森さんのときにも言ってみようかと思ったのですが、ちょっと機会がなかったものですから、あえてここでそういうことを申し上げさせていただいたわけでございます。
  283. 川崎寛治

    川崎委員 しかし、法律で一般の白色申告者に義務づける、罰則をかけるというようなことになれば、これは当然青色申告者が受けておると同じ権衡というものが保たれなければ、立法の過程においてもおかしいと思うのです。それは、要するに青色申告者に進めていくのだ、こうなりますと、犠牲を強いながら、それに対する何らの反対給付なしに追い込んでいくというならば、午前中の渋沢委員の質問と同じように、納税環境整備ではなくて、徴税環境の整備という、まさにそこに行くと思うのです。だから、立法の問題としても、これは基本的には憲法の議論にもかかわってくるというふうに私は思います。いかがですか。
  284. 竹下登

    竹下国務大臣 したがって、青色というものに対して誘導すると言うと表現はおかしいのですが、そういう環境を整備していく段階の問題でございますから、罰則もございませんし、そして少なくとも全建総連組織というようなものは、みずからのためにもそれを消化していただける。実際あの健康保険一つ見てみましても、あれくらい医療給付とか、そういう点においても正確にやっていらっしゃる団体はないと思いましたので、そういう能力は——恐らく若干幻影におびえていらっしゃるんじゃないかという感じすら私はいたします。
  285. 川崎寛治

    川崎委員 全建総連が簡単な帳簿づけを組織としてやってきておりますことは、御承知のとおりだと思うんです。といたしますならば、やはり政令の中身というものを出して、このとおりですよと。そうすると、例えば全建総連の書式とあなた方が考えておるものとの間の食い違いはないとか、それであるならば、今までやっておることがなぜ悪いのか、そうなるわけです。そうなると、やはり政令の案を出して議論をしなければ、おびえているんだと言うが、実体がわからぬければ、おびえるのは当たり前であって、その点は私は、法律の最終的な論議の終着までの間には、それはやはり示して議論をしなければいけない、こう思いますが、いかがですか。     〔越智委員長代理退席、委員長着席〕
  286. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 これは先ほど来の御議論がございましたように、省令で定めようとしている記帳の方法、記載の方法の具体的な事項につきましては、なるべく早く現在の私どもの考えている案をお示ししたいと考えております。
  287. 川崎寛治

    川崎委員 私は次に、外務省に来てもらっておりますから、きょう中曽根総理が訪中されましたので、関連をして少し尋ねておきたい、こういうふうに思います。  それは、今度も日中間の経済協力は相当進めようとしておられます。私は、日中の経済協力が進むということは、アジアの平和のために大変大事な問題だ、こういうふうに思います。我々もまた促進もしてまいりました。しかし問題は、体制の違う両国間の経済協力というものを進めてまいります場合に、しかもそれが平和共存、互恵平等、こういうことになりますと、政府間だけでは私はいけないと思うんです。つまり、安全保障というか、平和保障というアジアの平和の問題から考えましても、民間における経済協力が進まなければ私はいけない、こういうふうに思います。  それで参りますと、最近、サントリーであるとか、あるいは三越、東京丸一商事が新僑飯店と洋食店をつくるなど、そういう合弁事業が進んでまいっておりますが、今私は、日本の経済界は必ずしも安心をして経済協力に出ていくという姿勢にはないと思います。つまり、政府が先に立っておりますからね。そうしますと、一番基本にある問題は、やはり日中の投資保護協定の問題であろう、こういうふうに思うんです。協定でございますし、体制の違う間の議論でございますから、相当深刻な、基本的な議論があるであろうということは、私も理解をいたします。理解をいたしますが、どう進めていったらいいかということについては、やはり日本側の、日本国民の世論を背景にした進め方も必要であろう、こういうふうに思います。現状についての御報告をいただきたいと思います。
  288. 瀬崎克己

    ○瀬崎説明員 お答えさせていただきます。  中国側は現在経済開放体制というのをとっておりまして、できる限り西側を含めました諸外国の資本、技術、企業等を誘致したいということで環境整備に努めているわけでございます。その一環で、私どもの方から見ますと、やはり投資ないしは企業進出の環境が整備されるということが非常に重要でございまして、一九八〇年、日中経済閣僚会議が開かれた際にこの点を非常に強調いたしまして、先方も投資保護条約の交渉を早期に開始するということについて合意したわけでございます。  その後、一九八一年から五回にわたりまして東京と北京で交互に事務的な交渉をいたしまして、五回協議したわけでございますが、いずれにせよ先生御指摘のように体制が違う国でございますし、また、先方の法的な整備も徐々に整ってきている、こういうような客観的な状況でございますので、時間はかかるわけでございますが、先方もこの条約の重要性というものは十分認識しているわけでございます。  したがいまして、私どもも事務的な交渉を進めているわけでございますが、常にこの民間交流を進める際にはやはり環境を整備するということが非常に重要であって、この点、例えば今国会で御承認いただく予定になっておりますが、租税条約であるとかこの投資保護条約というのが車の両輪のような関係にあるのだということを強調しておりまして、この点につきましては中国側からも徐徐に御理解が高まっておるということでございますので、今後も鋭意この重要性を強調しつつ先方の理解を求めまして、できるだけ早い段階で交渉妥結に持っていきたい、かように考えているわけでございます。
  289. 川崎寛治

    川崎委員 率直に言って今政治的に開放体制に向かっておる、こういうことでございます。でございますが、やはり日本側にある不安感というか、それは政策の変更がしばしばあったと思うんです。そういうものが安心感として十分に信頼されないという点については、私たちも率直に中国側のそれぞれの筋の友人諸君にも言っております。でありますから、そこらをやはり背景にしながら、どうして安定したものにしていくかということが必要であろうと思います。  これはは聞くところによると、当初中曽根総理の訪中までに何とかしたいということでもあったようでありますが、時間的には相当まだかかる問題なのか、あるいは相当大詰めに来ているというふうに見ていいのか、その辺はいかがですか。
  290. 瀬崎克己

    ○瀬崎説明員 先ほど御説明いたしましたとおり、この条約の重要性というのは先方も十分認識しているわけでございますが、いかんせん体制の相違、相互の体制、手続につきまして十分理解を進めるということが肝要でございまして、この点時間がかかるわけでございます。したがいまして、中曽根総理が訪中されるのに焦点を合わせましてこの協定を早期に決着をつける、こういうようなことは考えてなかったわけでございます。
  291. 川崎寛治

    川崎委員 交渉中ですから、これ以上余り詰めません。大蔵大臣どうでしょう。経済閣僚として、また中曽根内閣の重要なポストにあります大蔵大臣として、この問題について大蔵省もかんでおりますから、いかがですか。
  292. 竹下登

    竹下国務大臣 これはそれこそ川崎さん国際局長時代から、沖縄ももちろんですが、日中ずっとおやりになって今日に至っておるわけであります。確かにおっしゃいましたとおり政策の変更と申しますか、そういうことが間々ありがちであったと思いますが、まさに一九八〇年にこの交渉が始まって、私も去年は閣僚会議に参りました。いわゆる友好的な交流の中でこれらのものが進められていくということは大事なことでございますし、いわゆる双方の体制の相違というものからくる意見の相違というのは、回を重ねるによって近まってくることを期待していくべきじゃないか。かなり違った面もございますけれども、そういうふうに私も期待をいたしております。
  293. 川崎寛治

    川崎委員 それじゃ外務省、結構です。  もう一遍またもとに戻りまして、先ほどは医師がトップだ、こういうことでございましたが、そういうことに対する、そして新聞にしょっちゅう出てくる、だからなお一層不公平感というものは強いわけですね。そうしますと、大口の脱税者をなくすにはどうしたらいいのか。どうですか。
  294. 渡辺幸則

    渡辺(幸)政府委員 私ども国税庁といたしましては、今委員の御指摘のございましたように、常に高額あるいは悪質な申告漏れ、あるいは脱税というものに重点をかけまして鋭意調査をやっておるわけでございます。もとより税務職員全体の数にも限りがございますけれども、そういった中で、ただいま御指摘になりましたような多額の申告漏れ、例えば医療業につきましてはこれを重点業種に指定をいたしまして、毎年非常に重点的にたくさんの調査を行っておるわけでございます。私どもといたしましては、現在の持てるだけの力をもちまして、こういった高額、悪質な申告漏れを防ぐための最善の努力をいたしたいと考えているわけでございます。
  295. 川崎寛治

    川崎委員 次に、中期答申というのは、委員はことしの何月ですか、半年延びて五月ですね。そうしますと、委員の任期を見通していくということになると、期間としては、中期というけれども大体三年ぐらいという見方になるわけですか。
  296. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 従来の例を見ますると、今委員のおっしゃいましたように、任期三年たって中期答申をおまとめになっていただいておるわけでございます。しかし、そういった場合の中期というのは必ずしも三年ということを意味しません。と申しますのは、私ども今いただいております一番新しい答申が、昨年いただきました十一月の答申でございますけれども、五十年代に入りまして既に二回、五十二年と五十五年、答申をいただいておるわけでございます。その考え方はずっと継続して次の税制調査会に引き継がれていくという関係にございますので、三年を区切った答申というよりも、もう少しロングレンジと申しますか、長い展望というふうに私どもは受け取っておりますし、現実に今までの答申はそういう意味を持っておったと思っております。
  297. 川崎寛治

    川崎委員 そうしますと基本的に、先ほど来議論しましたように、また議論が行われましたように、記帳義務のベースに置いておる三百万円よりも一件当たりの脱税の方が大きいし、サラリーマンの平均給与よりも脱税の方が大きい。先ほど答弁がありましたように、これは三百三十三万、サラリーマンの平均給与が三百十九万、そして今記帳義務をかけようというのが三百万、こう来たわけですね。それよりも脱税の方がとにかく一件当たり大きいわけです。そうしますと、不公平感をなくすという基本の問題は、こうした記帳義務という、先ほどから議論があるような、白色の人たちを青色に追い込んでいくということよりも、もっと基本的な税制全体の問題でなきゃならぬ、こう思うのです。  先ほど私は保育所の問題で言いましたが、そういうあれからいくと、中期税制の中で根本的に考えていかなければいかぬ問題は、例えば所得申告制のものを収入申告制にしていく、こういうのはどういう検討になっておるのか。あるいは給与所得控除への物価スライド制の導入、さらには利子・配当課税見直し、総合課税の問題、グリーンカードの復活、そういう基本的な問題について方向が出なければ、そういう記帳義務をかけることによって公平感が生まれるという形には受け取れないわけです。いかがですか。
  298. 竹下登

    竹下国務大臣 納税ということは国民の義務という感じてこれを受けとめた場合、その義務というものには非常に抵抗感なく順応していただく、そういう環境が一番必要であります。その環境を一番阻害しておる一つは、多少個人個人によってその相違はあれ、不公平感というものであると私も思っております。したがって、今御指摘なさったもろもろの、いわゆる利子課税等の問題は、夏ごろまでに検討して結論をお出しいただくように、今期待しておるわけでございますけれども、もろもろの問題等について絶えず検討が行われなければならぬ課題だ、だからやはりこうした議論というのは素直に整理して、税制調査会にも報告すべきものであるというふうに私は理解をいたしております。
  299. 川崎寛治

    川崎委員 終わります。
  300. 瓦力

    瓦委員長 柴田弘君。
  301. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 最初に私はパートタイマー減税についていろいろお尋ねをしていきたいと思います。  今回、与野党の話し合いによりまして、給与所得控除の最低限度額の二万円アップ、こういうことで政府案の八十八万から九十万になりました。  まず最初にお尋ねしたいわけでありますが、一つはこの給与所得控除の最低限度額を二万円引き上げる、こういうことによって何人が、一人当たり幾ら減税になるか、そして総額幾らか。そしてもう一つパートの方たちです。八十八万が九十万になります。二万円アップしたことによって配偶者控除が受けられる方が何人お見えになって、一人平均大体どのぐらいで、減税額は幾らだ、ここから御説明をいただきたいと思います。
  302. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 八十八万から九十万に上がる場合でございますが、対象になります方の人数がおおよそ三百万人でございまして、そのうち給与収入が低い方、具体的には年収百四十二万五千円以下の人でございますが、一人当たり平均二千円ぐらいの減税額になります。  それから、逆転が解消されるという方になると思いますが、御主人の所得税の減税額、それから御本人の分も含めまして、これは年収のランクによっていろいろ変わりますけれども、おおよそ平均五万円から六万円ぐらいの減税額。財源といたしましては合計約百億円ということになると思います。
  303. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 給与所得控除最低控除額が二万円引き上げられることによって約三百万人ということですが、その中というのかそれ以外というのか、いわゆる主婦を中心にしてパートで働いていらっしゃる方、これは何人ですか。今金額的には一人平均五万円から六万円、こうおっしゃいましたが、どうですか。
  304. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 後ほど正確な資料を取り寄せてお答え申し上げますけれども労働省、それから総理府、各機関でそれぞれ調査をいたしておりますが、その場合のパートの定義によりまして、過労働時間がたしか三十五時間未満といったようなものでとりました数字とか、あるいは御自身が主観的にパート労働者であると考えておられる人の数が幾らとか、いろいろな数字がございますが、大づかみに申しますと、私の記憶では、一番低い数字で百五十万ぐらいから三百万人前後ぐらいであったかと記憶しております。——失礼いたしました。労働省の調査では百四十六万人、それから総理府の統計局の調査では三百九十万人、大体そのくらいの幅でございます。
  305. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 局長さん、私が聞いているのは、要するに、今度給与所得控除最低控除額が二万円引き上がったでしょう。そうすると、独身サラリーマンなんかでこれに当てはまる人も随分おるわけです。それ以外に、御主人があってパートで奥さんが働いている、こういう人も中には見えるわけです。これをできれば立て分けて御報告ください、こういう意味なんです。
  306. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 今回八十八万から九十万に引き上げるというお話がございまして、その面で計算いたしましたのは先ほど申しました七万人でございますが、根っこからの数字でございますと、今ちょっと担当の方に調べさせます。
  307. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 つまり、今回最低控除額の二万円引き上げによって約三百万前後、それでパートの方たちは八十八万が九十万になることによって約七万人、一人平均五万円か六万円、これは非常に大きなことである、私はこんなふうに考えているわけであります。  そこで大臣お尋ねしたいわけでありますが、先回、三党の共同申し入れに対して御回答いただきました。これをいろいろきちっといたしますと、一つは自民党さんの方からの回答でもあるだろう。もう一つは、政府としても、これは政務次官がおっしゃったということでありますが、大臣からの御回答として受け取ってもらってもよろしい、こんなような意味のことをお聞きをしております。この中で、第一番目に「給与所得控除最低控除額の二万円引上げについては、今国会中に当大蔵委員会において提案することといたしたい。この場合、必要に応じ事務的協力を得ることについて政府側からの応諾を得た。」こうありますね。今各先輩、同僚の委員の皆さん方からもお話があったわけでありますが、やはり二万円というのは非常に評価すべきものではないか、ぜひともひとつこういったことで御協力をお願いしたいということを考えているわけでありますが、まずその辺の御見解をここでお伺いをしておきたいと思います。
  308. 竹下登

    竹下国務大臣 「給与所得控除最低控除額の二万円引上げについては、今国会中に当大蔵委員会において提案することといたしたい。この場合、必要に応じ事務的協力を得ることについて政府側からの応諾を得た。」まさに私自身そう思いまして、これをお書きになって御提示になる前に参加をさせていただいております。やはりそれは必要でありまして、本当のところは、最初は僕は、まずここで委員会をつくってもらって議論してからやった方がいいじゃないかとも思いました。というのは、これはパート労働法とかあるいは内職の人とか婦人外交員の問題とかになりますと、税制議論が大変混乱もするだろう、少なくともこういう資料を持ってこいとか、そういうときには最大の協力をしてみるという考え方は、これは今でも変わりません。
  309. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 一つの成果が上がったわけだと思っております。  そこで、これは私ども国民に対する政治家としての一つの義務という立場から、今日のパート労働というものに対する社会的な現象というものをいろいろと考えてまいります場合に、よりよき政策の遂行とその選択を求めていくというのは私どもの義務である、こういうふうに私は考えているわけでありまして、そういった観点から何点かにわたってお尋ねをしていきたいわけであります。  大臣も御承知かと思いますが、来年は国連の婦人差別撤廃条約の批准ということが我が国の一つ課題になってくる。当然これに対する国内法の整備ということがあるわけでありまして、男女雇用平等法の制定、あるいはまたそれに関連をいたしまして、このパート労働者の保護問題と大いに密接な関連があるのではないか、私はこういうふうに考えているわけであります。労働省の調査によれば、先ほども御答弁があったわけでありますが、五十七年の調査では、今四百十六万人いわゆるパートタイマーと言われる方がいらっしゃる。過去十年間で二倍にふえている。そのうち女子が二百八十四万人、そして主婦が九十数%、こういうことでありますね。最近の産業構造というものをいろいろ見てまいりますと、やはり第三次産業に従事する人が多いわけであります。しかも企業別では大企業が一〇%、残りが中小企業で、三十人未満の企業が五十数%と半分以上になっている。その動機は、その約六〇%がやはり家計の補助、こういうふうに言っているわけであります。賃金も、五十七年の調査は平均月八万二百九十二円、年収が九十六万三千六百円程度になると思います。これは五十七年度であります。やはり五十八年になりまして多少は上がっているだろう、こう私も推計をいたすわけでありますが、八万二、三千円になっているだろう。そうすれば年収百万、こういうことになってくるのではないかと思います。  パート減税の問題を質問いたしますといつも大臣は、まずパートとは、この定義づけ、こういうことをおっしゃっていますね。私も大臣のおっしゃることはよくわかります。やはりこういった社会的な背景から申しまして、あるいは我が国の産業構造の変遷という立場からいって、労働省の方もやっと重い腰を上げまして、法制定ではございませんが、パート労働の対策要綱というものを今策定中であるやに聞いております。これは政府の政策選択の問題として、私ども政治家の一員として、このパート労働に対する位置づけというものがやはり重要な問題になってきたなということを感じます。  今回のこの予算修正の、何点がありますが、一つの焦点というものがこのパート減税であったということも考えますと、やはりこれは解決を迫られている一つ国民課題ではないか、こういうことを申しても決して過言ではないと私は思います。現実に、総理府が三月十五日でありますか、発表いたしました五十八年の家計調査報告によりますと、だんだん税金や社会保障負担が上がってまいりまして、もう一五・一%、これは家計費に占める割合。そういった中で子供の教育費が相変わらずふえている。あるいはまた住宅ローンの返済世帯というのは、前年から比べて約三〇%近くになっているわけでありますが、上昇をしている。御主人の方の、いわゆる世帯主収入が実質一・二%増である。これは五十七年度に比べて、三・六%増から後退をしているわけであります。奥さんの収入というのは五・四%増と非常に高い伸びになっている。こういった家計調査報告では、家計全体に占める妻の収入の比率というものも、やはり五十七年の七・六%から五十八年は七・九%、こういうふうに上昇をしているわけであります。つまり、妻の収入は着実に重みを増している。  こういったことを考え合わせてみますと、パートで働きに出る奥さんが五十八年は非常にふえてきているのじゃないかな。これは将来我が国の一つの大きな問題となってくる。ここら辺でこの問題をそろそろ手がけていって、位置づけをはっきりとしていかなければならないときに来ているのではないかという感じが私はいたしておりますね。その辺、大臣ひとつ。いつも、政治竹下登氏、こういうふうにおっしゃっていますがね。税の論理というのは私もよくわかりますが、やはり大蔵大臣として、政治家としてのあなたの御見解というものをひとつお聞かせをいただきたい、こういうふうに思います。
  310. 竹下登

    竹下国務大臣 これは御案内のように、いわゆる控除対象配偶者所得限度額を幾らにするかということで、昭和三十四年から五十五年までは基礎控除配偶者控除の額を下回っておったわけでございます。それをあのとき税調で何か工夫してもらえぬかというので、まあこの二つの組み合わせだろうということになった。それそのものにも、税理論からいえば、それこそ柴田さんすべて御承知の話でございますけれども、いろいろな議論がございました。先ほど来の内職もある、婦人外交員の問題もある、あるいは純粋な家庭主婦の立場。また客観的に眺めますと、本人が所得があって、しかも扶養控除を受けられる。そしてまた、企業によっては家族手当の対象にもなっておる。近ごろの社会構造の変化から見ますと、これがふえてきたというのは、家計の足しにするという考えは基本的にございますけれども、要するに昔と違って子離れも早くなった。だから子供が学校へ行くようになったら、そういう環境にいち早く昔よりは置かれる。そうなると、これは本当に論理的にやるならどうするのだというと、また二分二乗方式なら論理的にわかるじゃないか。そうなると今度は、夫婦単位よりも家族単位の問題が出てくるじゃないか。  いろいろな問題がございますので、今度の税調でも、とにかく上げてみろとおっしゃった。ここのいわゆる扶養控除の方を三十三万に今度は上げますと、みずからが納税者になり、しかも扶養控除を受け、一方家族手当ももらう。そして今度は保険の問題になりますと、ある限界からはみずからが被保険者にならなければ、いわゆる家族としての位置づけがなされないというような大変複雑な問題がございます。が、四百万とか三百万とか、いわゆる国家公務員、地方公務員を合わせた数と一緒くらいの数になっているわけですから、社会の構成要因としては相当なものだ。やっぱり政治課題として、ここまで浮かび上がったわけでございますから、私は政治家としてもとよりですが、せっかくこの場で詰められる議論でありますから、そういう議論をとことんして、それでよき方向が模索されるようにしなければならぬ。要は、我々が絶えず国民に、選挙民に接して、それで肌で感ずるものを今度は税制理論体系の中へどう調和していくか、ここの調和をどこに求めるかということが、お互いが衆知を絞る対象ではないかというふうに私は常日ごろ考えておるわけです。
  311. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 そこで、昨年も私どもで試算をしたのですが、一つの逆転現象の試算をいたしました。大臣にひとつまた見ていただきます。  御案内のように、今度九十万になります。そうすると、これは一万円上がっただけでも逆転現象が起こりますね。こういう実態であるわけであります。それで、この場合は二万円で私計算いたしましたが、やっぱり二万円上がりますと、これは先ほど大臣もちょっとお述べになりましたように、奥さんが国民健康保険に加入しなければならぬ、保険料負担が出る。それから扶養手当、これはカットされる。しかもその上に税負担が増加をする。二万円プラスになったということで、十九万五千百円、まあ二十万近い実質収入が九十万の人に対して減る。これは百万で計算をすると十三万円ちょっと、それから百十万だと四万九千八百円。やっと百二十万になってこの逆転現象は解消する。こう言いますと、すぐ当局は、いや、それは柴田君、仮に百二十万まで非課税に持っていったって、百二十万と百二十一万は逆転現象が出てきますよ、こうおっしゃる。ちゃんとわかっていますからね。  ところが私の言いたいのは、やっぱり物事には常識というものがある。先ほど労働省の調査で、これは五十七年度で月額平均が八万何がしか。そうすると五十八年度は百万ぐらいになっているだろう、こういうことなんですね。だから、やっぱりこういった一つ実態というものを大臣にひとつ見ていただいて、これはどうしたらいいんだろうか。今、一つ政治的な課題と、そしてまた税の論理との調和ということをおっしゃった。これは本当にそのとおりだと私は思うのですね。確かに発足当時は、給与所得控除の最低限度額、そして基礎控除配偶者控除というのですかね、それとミックスしておった。私は、パートの定義、位置づけさえきちっとすれば、もし税の論理として通ずるならば、そしてまた一つ政治課題としての決着を図るというならば、それにいわゆるパートに対する特別控除という考え方も一つ出てきてもいいんじゃないか。この三つの組み合わせをどうするかという問題もありますけれどもね。これはここでどうこうという答弁を私はもらいませんが、やはり一つ議論の推移として大臣にお受けとめいただいて、税調へ御報告をしていただいて、よりよき方向への解決を図っていただきたい、こういうことを私は申し上げているわけでございますが、いかがでしょうか。
  312. 竹下登

    竹下国務大臣 税調でも五十五年税制のときに議論してもらって、本来は扶養控除、いわゆる給与の最低控除パートという問題は別の問題だ。しかし、強いてその基準を求めるならばここだろう。まあ、それを今日お互い常識の中で消化して拳々服膺してきている。そうしますと、やっぱりどうしても議論を詰めてもらわなければならぬわけでございます。  税調というのは、三年に一遍総理大臣の諮問機関として御委嘱申し上げて、そこで国税、地方税のあり方について、こういう大諮問をするわけです。しかし、正確に報告をするからこそ、一つ一つの問題をまた勉強していただく。だから今度の問題というのは、私はもちろん勉強していただけると思いますが、せっかくここまで実ったんだから、この場の勉強が伝わっていくというのが、実際問題としては一番いいんじゃなかろうか。だから簡単に結論が出る問題だとは、率直に言って必ずしも思いません。今、柴田さんもいみじくもおっしゃったように、百万に上げれば百一万はどうだ、こういう議論に必ずなりますから、その辺また雇用政策の面もあると思うのです。  内職の方にしましても、同じ家に二人の内職の人がおって、一人はA社、一人はB社A社雇用契約してくれる。B社はそれがないというようなことの雇用政策の問題もこれはあると思いますが、そういうものを皆一緒にして、やはりここで議論を詰めていただくということが、政府税調にももとより連動していって効果が上がるのじゃないか。素直にそういう気持ちになって、私自身も一人の政治家としてそんな感じがしております。
  313. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 大臣のおっしゃることは理解できます。ところが、先ほど来申し上げておるように、これは社会的、産業構造的にもたらした一つのものだと私は思いますね。だから大蔵大臣としても、主務大臣であり、政府の閣僚であるならば、こういった問題をただこちら側にげたを預けてどうこうでなくて、これは一つのそういった時代の趨勢というものから見て、やはりこういった議論があったということもひとつ素直に税調に御報告をいただいて、そして議論対象にしていただきたい。そしてこのパートの位置づけというものも、これは政府としてもやはりそろそろやっていくときに来ているのじゃないですか、こういうことを申し上げているわけであります。どうでしょうか、それは。
  314. 竹下登

    竹下国務大臣 これは本委員会等でこれだけ議論のあった問題ですから、当然税調の方へお知らせする。そうした議論が出てくるに違いない問題だと私も期待もし、確信もいたしておりますが、政府がこれをちゅうちょするという考え方はございません。が、せっかく難しい中で、ここで実ってきた。だから、もとより政府としては国権の最高機関に対してあらゆる協力をしましょうという、建前上そういう姿勢だと思いますが、まあ腹の内で考えるならば、一緒に勉強しましょうや、それには選挙で忙しい者とそうでない者と、多少知識の差も出てくるから、余計手伝いしましょう、こういうことも出てくるでございましょう。せっかくそういう機運が出たときですから、そういう体制で最大限の協力をしていくということで、おまえらこういうことでひとつ検討してみたらどうだということもあるでございましょうけれども、そういう感じがしみじみといたしております。
  315. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 それでもう一つ、くどいようですけれども大臣、今言いました二問目の質問です。  パートの位置づけというもの、これは先ほど来申しておりますように、労働省もやっと重い腰を上げて、法制定ではないわけなんですが、対策要綱を出してきた。やはり考えなければならぬというところへ来たから出してきたと思う。私どもは、パート労働法を制定せよという提案をいたしております、正直言いまして。  それはそれといたしまして、こういった時代の趨勢というものをキャッチして、やはり政府部内においても、私どもは私どもでまた勉強もいたしますよ、政府の御協力もいただくということでありますが、大臣も有力な閣僚の一人でありますから、労働大臣云々という話もあったわけでありますが、やはりそろそろそういった検討にしっかりと入っていくときに来ておるのじゃないかという質問をしておる。それに対する明確なお答えがないものですから……。
  316. 竹下登

    竹下国務大臣 それはそのとおりだと思います。素直にそう思います。今日までもやってきたわけですね。  それで、公明党のパート労働法の制定というのは選挙公約にもございまして、それは話をしてみました。公明党の方でも、本当は、これをつくるということになると作業に相当な日時もかかるだろう。それがここへこういう議論として持ち出されてきたわけですし、当然のこととして政府でも議論してみたことはあるわけです。おっしゃるとおりに、我々としてもまさに国民の意見がここで象徴的に出てくる場所でございますから、対応していかなければならぬ課題だという事実認識は十分ございます。  ただ私、決して逃げておるわけでも何でもございませんが、一遍選挙公約を見せていただいた後、ちょっと議論してみたら、これは相当な時間がかかるなどいう気持ちがしたことだけはございますが、もちろんそれでほうっておくべきものじゃないと思います。
  317. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 それで、せっかくここまで来ましたので、ひとつ私のアイデアといいますか、考え方を申し上げさせていただきます。  先ほど言いましたように、給与所得控除、それから基礎控除、これは本来の姿だと思います。これを引き上げていくということ。それから特別控除、こういうものもあるということですね。  その辺のところの御確認をいただくとともに、もう一つの問題は、これは簡単な問題なんですけれども、一般サラリーマンの人は、先ほど来玉置委員からいろいろと通勤手当の非課税の問題についてお話がありましたね。これはきちっとサラリーマンの場合は認められている。もちろんパートタイマーの場合でも、いろいろお聞きするとそれを認められているわけでありますが、どうもいわゆる経営者の方とそれから雇われている方と、この話し合いがうまくいっているのかどうか知りませんが、その辺が徹底をしていない嫌いがあるわけです。だから一括して支払ってみえるということがあるわけです。例えば今回の場合九十万まで、これはパート収入ですよ、十万円はこれは交通費ですよ、これはやはり十万円の交通費というものに対するいわゆる非課税限度額措置がとられるわけですね。どうですか、その辺は。
  318. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 通勤手当につきましては所得税法で、通常必要とされる部分については非課税ということになっております。ただ限度額は、先ほど来委員会で御議論がございますように、現在、月二万四百円までが最高限度になっております。したがいまして、正常の形として通勤手当が支給されました場合、所得税法に照らして非課税になり得るということでございます。
  319. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 だから、パートも同じように認められているわけなんですがね。ところが、なかなかそれが実態としてそうなっていないところに僕は問題があるのじゃないかなと思うのですね。その点はひとつ問題点として指摘をしておきます。そうすれば、非課税限度額をもらえれば、これを上げるという議論もあるわけでありまして、私はそれに賛成でありますし、きちっとできた政令だと思いますが、やはりこれの執行面において、これからも前向きの対処というものをお願いをしていきたい、こういう議論があったということもひとつよろしくお願いをしたい、こういうふうに思っておるわけであります。  あと、だんだん時間が来たわけでありますが、パートの問題はこれでやめますが、同居特別障害者ですかの特別控除の問題。この問題は大臣も御承知だと思いますが、昭和五十四年の三月に、これはやはり私が本委員会におきましてこのお話をいたしました。寝たきり老人を中心にして、そういった気の毒な家庭に対して、福祉の給付面も結構だけれども、やはり税制上の措置というものもできないかというようなことで、税調の方へ御報告する、こういうことで議論を積み重ねてきていただいたわけであります。  それで、これは初めて五十五年ですか、それから五十六年にもたしか渡辺大蔵大臣にその促進について質問をいたしました。五十七年度からこれは控除額五万円ということで特別控除が設定をされまして、スタートしたわけでありますね。今回、二万円の引き上げということで、これは私も一定の評価はいたしておるわけであります。  まず、これの引き上げによって、一体減収はどの程度なのか、対象者というのは五十九年度はどのように見てみえるか。これはひとつ公務員も含めて、数字がわかっておりましたら聞かせていただきたい。
  320. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 五十九年度の税収見積もりの算定根拠といたしましては、対象者約三十万人、二万円引き上げに伴います減収見込み額は十億円ということで計上をいたしております。
  321. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 それで、この控除の基本的な考え方であります。二万円引き上げられました。将来、年金の問題等々もあると思いますが、これは非常に喜ばれているわけであります。私は、先ほど申しましたように一定の評価はいたしております。それで、そこら辺の控除のあり方を基本的にどうお考えになり、将来、これはぜひとも拡充をしていただきたいわけでありますが、そういった方向へのお考えがあるのかどうかという問題。  それからもう一つ、喜ばれてはおるのだが少ないという意見もあるわけでありますが、たまたま申告のときに漏れる人があるというのも聞いているわけですね。せっかくこういう制度ができて、それで漏れるというのも私はいかがかと思うわけであります。そこら辺の対応についてお聞かせをいただきたいと思います。
  322. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 まず前段の方を私からお答え申し上げまして、後段の方は国税庁の方からお答えを申し上げます。  五十九年度の税制改正、ただいま御審議をいただいておるわけでございますが、特別障害者の中で同居を常況とされておる方に対する控除額でございますが、御案内のとおり、現行では扶養控除が二十九万円、特別障害者控除が三十一万円に、御指摘がございました特別控除分を上乗せいたしまして六十五万円でございます。それで、今回の改正によりまして扶養控除を四万円、特別障害者控除を二万円、それぞれ引き上げるということでございますが、そのほかに二万円引き上げるということでございます。したがいまして、通常の場合、今回は人的控除につきましては引き上げ額を四万円としておるわけでございますが、特別障害者の方につきましては、結局のところ、上げ幅といたしましてはちょうど倍でございます。八万円に引き上げさせていただいておるわけでございます。その点では、今委員が御指摘になりましたこの五十七年度にできた新しい制度でございますが、私どもは、その制度の本旨にかんがみましてできる限りの配慮をしたつもりでございます。  ただ、税制調査会の御答申などをごらんいただきますと、この種の特別な人的控除については、今後はむしろ基礎的な人的控除の中に吸収していく、余り細々とした控除は、なるべく税制を複雑化しないように吸収していくという考え方も示されております。私どもも、一般論としては、今後の所得税制の見直しに当たってはそういう方向対応しなければならないと考えておりますけれども、この制度自身は、非常に福祉政策的な色彩の濃い沿革で制度化されたものでございますので、今後とも適切な対応をしてまいりたいと考えております。
  323. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 大臣、今主税局長からいろいろ御答弁がありました。税制調査会ではいろいろと言われておるということも私も承知いたしております。しかし一方においては、これは寝たきり老人を中心にして、やはりどこかに働きに行きたいわけだけれども、そういった抱えている家庭はなかなか出るに出られない。給付面も大事かもしれませんが、やはり税制面の配慮というもの、せっかくここまでできたんですから、これは存続をし、むしろ拡充方向に行くというのが政治家としての一つ課題ではないか、こんなふうに私は考えております。簡単で結構ですから、ひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  324. 竹下登

    竹下国務大臣 これは今も答弁があっておりましたように、元来社会保障政策の中で十分にやられるのが、本当は政策的にはいいのでありましょう。それを言ってみれば補完するという考え方のもので、ある意味においては柴田さんのおっしゃる政治が論理を追い込んだということの一つかもしれません。それが政治というものでしょう。だが、本来のあるべき姿というものをネグって、こっちにだけウエートを置いてもならぬ。その辺の、これまた調和の問題ではないかなと思いますが、基本的なお考え方を否定する考えは全くありません。
  325. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 じゃ次の問題、今回の税制改正に関連をいたしましてお聞きをしていきたいわけであります。  しばしば議論が出ておりますように、今回のこの税制改正は増税と減税のセットだ。これはやはり国民負担という点から見ましても、あるいはまた与野党合意事項でありました景気浮揚という点から見ましても、いかがかと私は思っております。これは本当に一体どういった政策目的があったのか、私どうしてもわかりません。だから、帳じり合わせだ、こういうふうに皆さんがおっしゃっているわけでありますが、やはりこの辺の考え方ですね。  それから二つ目には、増税というものに加えて公共料金の値上げが画策をされている。それは大蔵省としては、公共料金の値上げというのは余り関係ありません、私の方は税制問題だけです、こうおっしゃるかもしれませんが、実際の国民生活という立場から見れば、やはりこれは大きな問題であります。  それで、私ども簡単に試算をしたわけでありますが、この減税地方税も入れまして一世帯当たり三万二千円、これだけの負担減になるわけでありますが、やはり酒税、自動車関係税等々の引き上げ法人税、石油税の引き上げもあるわけであります。その上に医療保険の本人負担、これは一割、こういう問題もあるわけであります。それから公共料金も、国鉄運賃や消費者米価がそれぞれ一世帯当たり四千八百円から二千四百円になる。要するにこれは、本当に国民負担から見ても、せっかくの減税が帳消しになっているのではないか。しかも景気浮揚に役立つという与野党合意事項というものは、これは政府も追認をされたわけでありますが、残念ながら何の役にも立っていかない。それは増税だけでなくて減税もやったのですから、あるいは減税のために増税をせざるを得なかった、こういう理屈も私はわからぬでもないのですが、やはりそういう点は素朴な国民の立場からすればわからないわけなんですね。きょうはひとつ大臣、税の論理を超えて、政治家としての議論というものを私はさせていただきたい、こう思っていろいろと質問させていただいておるわけなんですが、そこら辺のお考えはどうでしょうか。  それからもう一つは、やはり不公平税制というものがまだ混在をされておった。取りたいところから、取りやすいところから取ったというこの増税。そういった問題も、本当に国民のコンセンサスを得られないことじゃなかったか、私はそんなふうに考えているわけであります。総括的にで結構でありますから、ひとつ大臣の思いのままの御意見を承っておきたいのであります。
  326. 竹下登

    竹下国務大臣 所得税減税が増税とセットであって、したがって当初お互いが議論しておった経済効果も相殺してしまうのじゃないか、言ってみれば政策目的が失われたのじゃないか、この議論はそれなりにあり得る議論だと私は思っております。  少し前広に考えてみますと、減税委員会ができて、いろいろ議論していただいた。そこで大事なことは、これ以上財政悪化の方向をとってはいけない、すなわち、その財源にはいわば赤字公債をもって充ててはならぬ、これは一つのかんぬきだったと思うのです。その中でやってみますと、それに見合うものがいわば増税、増収措置等としてセットされたわけであります。だから、素朴な国民は、右から左へ移しただけだ。生活態様は個々によって違いますから、非常に難しい議論になりますけれども、私はやはりそれによって幾ばくか、貯蓄性向の強い国民ではございますものの、消費も拡大されるであろう、そうすれば経済にも好ましい効果を与えるであろう。そうして、政策的には、よく言われる中堅階層にいわば手厚くカーブが直されておる。こういうことからいうと、私はやはり減税の効果というものは期待し得るものであるというふうに考えるわけでございます。  元来、いろいろな議論もございましょうけれども、例えばアメリカの場合も、実際相当な減税をやってみた。ところが、歳出削減が一向に進まなかったために、結局それも貯蓄、設備投資へ行かないで、むしろ消費の方へ行って、それなりの景気は出たが、歳出の方は赤字がますます膨大になった。だから、減税だけがすべてではないという論理もそこに、あるだろうと思うのであります。  かれこれ勘案しながら、やはり国会議論等を通じながら絶えず考えていなければならぬ問題が税だな、こういう認識を持っております。そのためにはまた、主観によって多少の異なりはございましても、不公平という感覚がなくなるような仕組み、これもまたふだんの議論の中で絶えず気をつけていかなければならぬ問題だという認識は等しくしておるつもりであります。
  327. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 簡単にあと一問、大臣に聞いておきます。  六十年度、今宮地委員も大型間接税を導入するのかどうか、こういう議論がありましたが、どうも本会議での代表質問あるいは予算委員会、本委員会あるいは参議院の予算委員会等々の議論を聞いてまいりますと、やはり私は、六十年度は増税だ、こういうふうに思っております。国民は、本当に大型間接税が導入されるかどうか、あるいは大臣は新消費税だとおっしゃる、主税局長物品税対象の拡大だ、やはりこれは増税です。そうしますと、一方において所得税というのは、ようやく五十九年度で七年ぶりの所得税減税がなされたわけでありますが、当然これは実質増税になってくるわけであります。もちろんそれは、中期展望を見ましても、歳入不足というのは出ております。やはり増税ありきということでありまして、ここら辺が国民が不安におののいているところであります。  そういった場合に、六十年度のことを言うと鬼が笑うとおっしゃるかもしれませんが、国民の立場から見て、減税というのは、もう七年ぶりにやったんだから当分ありませんよ、こういうふうなお考えであるのかどうか。これは簡潔で結構でありますからお聞きをして、私の質問は終わりまして、あと、坂口理事の関連質問をお願いしたいと思います。
  328. 竹下登

    竹下国務大臣 まさに「国民所得に直接負担を求める税であるだけに、今後とも税体系の基幹税たる役割を担うためには、国民の理解と信頼によって裏付けられることが必要である。」と考えられるところから、「社会経済情勢の変化に対応して、数年に一度は、適宜その見直しを行う必要がある。」こういう、割に明確な答申をいただいておるわけですよ。したがって、政府としては今後ともそうした考え方で対処していきたい。もちろん、所得税のあり方は、そのときどきの財政経済事情を踏まえて検討すべきものでございますので、基本的には今の答申を下敷きにしながら、いわゆる財政経済事情対応していくということではなかろうかと思います。
  329. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 この問題、非常に大事な問題ですね。次の機会に私は議論をさせていただくことをお願いいたしまして、私の質問を終わります。あと、坂口理事の方から、よろしくお願いいたします。
  330. 瓦力

    瓦委員長 坂口九君。
  331. 坂口力

    ○坂口委員 では、関連で一言だけお聞きをしたいと思いますが、先ほど柴田議員がパートの問題をやらせていただきまして、我々が執拗にパートの問題を取り上げておりますのは、別にパートにだけ光を与えよというわけでは決してないわけでございます。いわゆるパート就業者というのはどのような社会構造の中で生まれたものかということを考えてみますと、先ほどからも議論がありましたように、一つは子供の教育盛り。そうした中で御主人の給料だけでは足りない、さりとて正規に勤めるには時間が足りない、こうした生活の中から生まれた一つの新しい就業のスタイルではないかと思うわけでございます。そのほか、パートの人たちもたくさんお見えになりますけれども、こういう形の人が非常に多いという結果が総理府等の統計からも出ているわけでございまして、そこには日本の最も平均的な家庭の、ささやかではありますけれども、よりよく生きるための知恵が結集されている。そうしたところから、ここに何らかの道がないだろうかということを何度か取り上げてきたわけでございます。このことは大臣もよく御理解をいただけると思いますし、また御議論がございましたらひとつ御意見を承りたいと思うわけでございます。  わずかな財源で大きな効果が、したがってそこに与えられるのではないかというふうに思うわけでございまして、先ほど柴田議員がお示しをしました、御主人の収入が四百万円である夫婦、子供二人、いわゆる平均的サラリーマンの世帯におきますところの九十万、九十二万あるいは百万、百十万、百二十万という、それぞれの奥さんの方のパート収入によりますところの逆転現象が出るわけでございますが、これは先ほど議論になったところでありまして、その中で逆転現象が出ます大きな原因は何かということを見ますと、これは扶養手当のカット分が大部分を占めているわけであります。したがいまして、例えば百万円の場合に約十三万円の逆転現象が起こりますけれども、その中の主な部分は扶養手当のカット分にあるわけであります。この扶養手当のカットも、これはどこかで線を引かなければならないわけでありますから、九十万で引くのかあるいは百万で引くのか、それぞれの引き方はあろうかと思いますが、どこかで線を引かなければならないことは十分にわかるわけであります。  ただ、ここで考えなければならないのは、扶養手当をカットするかしないかの線を引くのは、ただ金額だけで考えでいいものかどうか。もう少し雇用の安定だとか、奥さんの方の、例えば勤めたことに対する社会保障の程度だとか、何らかの考え方がもう少し加味されてもいいのではないだろうか。ただ金額で、例えば九十万なら九十万とかというような一つの区切り方というのは、ここに少し考える余地があるのではないだろうか、こんなふうに考える一人でございますが、これは割に大ざっぱな話でございますので、主税局長が答えましたら、そんなことはあり得ぬと言うに決まっておりますので、大臣から、そうした考え方についての御意見をひとつ承りたいというふうに思います。
  332. 竹下登

    竹下国務大臣 そこで、これからなお議論してもらいたいと思うのですよ。この問題が議論されて、本当は五十五年のときにこういう組み合わせを仕組んでいただいた。しかし、あのときも皆さん方、これで実効さえ出れば一つの成果だという認識はあったが、これが本来正しい論理だろうかということについては恐らく疑問を感じながら、税調の先生方もあるいは本院でも議論があったと思うのです。だから私も画然とそれに対して答えると言われても、率直にもっと勉強しないと、本当のあるべき姿というのはどうか。そこで、パート労働法というものを考えたりいろんなことをして、これも難しいという話ですが、何もかも難しいで勉強ばかりしておったってどうにもなりませんし、だから、せっかくここで集約されたところだから、一緒になって勉強しながら今の問題も考えていかなきゃならぬのじゃないかな、そういう素直な認識です。
  333. 坂口力

    ○坂口委員 言われることはよくわかりますが、先ほど言われましたように、パートというのは一体その定義は何かというところからもう少し煮詰めていかないと、決まってこない問題なのかもしれません。そうした意味で私どもも勉強をさせていただいて、そこによりよい道を探って、日本の社会が生み出した一つの縮図と申しますか、いろいろの考え方の結果生まれた一つのこの縮図に対して何らかの手を差し伸べることができないであろうか、そんなふうに思うわけでございます。  したがいまして、そうした意味で一言だけ追加をさせていただいて答弁を求めた次第でございまして、これ以上求めようと思いませんので、我々もひとつ勉強をさせていただきますが、一層大蔵委員会中心にしてぜひ煮詰めていただきたいと思いますし、大臣の方にもいろいろと御検討をしていただきたいと思います。
  334. 竹下登

    竹下国務大臣 日本人の生み出した生きる知恵、これは正しいと思います。その知恵はやはり日本人が世界で一番あると、私は今でも思っております。それは文盲率の低さから、高校進学率から、大学進学率から、全部世界一になっておるのですから。だからいろんな意味において生きる知恵というものは最もある。その上にやはり高度化、近代化を生かしまして、言ってみれば子供の養育というようなものも、割に御婦人の方が電気製品その他から早く退屈——退屈になられるという表現はおかしいのですけれども、いち早くそういう時間の余裕を持たれるような環境も、総合的には日本人の知恵でできたわけだと思います。そこへより高きものを望む。すなわち無限の理想への挑戦とでも申しますか、そういうものが加わってできたものである。だから、現実これだけのウエートを占めておるものを、ないがしろにすべき問題ではない。共通認識だと思います。
  335. 坂口力

    ○坂口委員 大体意見は一致いたしておりますけれども、今大臣が言われたのは、ニュアンスとして、現在の生活はある程度満ち足りてはいるけれども、さらに高度な生活をするためにパート労働というものがあるというふうにもとれる発言でありました。中にはそういうふうなのもあるかもしれませんけれども、平均的な生活を生み出すためになおかつ足りない、そのためのパート労働でもあり、あるいはまた、中には平均になかなか届かないためにパート労働をせざるを得ない家庭も多いということを、あわせてひとつ認識としてお持ちをいただかないと、話がちょっと横にずれるのではないだろうか、そんなふうに思います。
  336. 竹下登

    竹下国務大臣 その認識は等しくしております。が、全般に言えることは、要するに三種の神器が暮らしの中に入ってきたのが一九五〇年代、それから三Cが入ってきたのが六〇年代、これは統計資料がございますが、そういうことからそういう時間の余裕ができたということも確かだ。そしてその五〇年代、六〇年代を例えばアメリカと比べてみますと、二十五年前の一人当たり所得がおおむね五分の一、十五年前が三分の一、十年前が大体半分、五年前が大体八割、そういうような状態になってきておりますので、総体の生活水準もそれなりには上がった。一方、生活扶助の額を見ましても、ちょうど生産者米価百俵と一緒になったわけですから、そういう中で生きる知恵というものは、結局より高度なものを求めようという意欲と結びつくわけでございまして、認識は全く一緒でございます。満ち足りたから小遣い稼ぎに勤めているなどという大それた見方は、絶対にいたしておりません。
  337. 坂口力

    ○坂口委員 ありがとうございました。     —————————————
  338. 瓦力

    瓦委員長 この際、お諮りいたします。  ただいま議題となっております各案につきまして、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選、日時等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  339. 瓦力

    瓦委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次回は、来る二十六日月曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時四十六分散会      ————◇—————