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1984-04-13 第101回国会 衆議院 商工委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年四月十三日(金曜日)     午前九時三十一分開議 出席委員   委員長 梶山 静六君    理事 浦野 烋興君 理事 田原  隆君    理事 森   清君 理事 渡辺 秀央君    理事 城地 豊司君 理事 水田  稔君    理事 長田 武士君 理事 宮田 早苗君       甘利  明君    尾身 幸次君       奥田 幹生君    加藤 卓二君       粕谷  茂君    木部 佳昭君       岸田 文武君    高村 正彦君       辻  英雄君    仲村 正治君       原田昇左右君    深谷 隆司君       古屋  亨君    奥野 一雄君       後藤  茂君    上坂  昇君       浜西 鉄雄君    横江 金夫君       和田 貞夫君    渡辺 嘉藏君       木内 良明君    中川 嘉美君       日笠 勝之君    福岡 康夫君       青山  丘君    横手 文雄君       小沢 和秋君    野間 友一君  出席国務大臣         通商産業大臣 小此木彦三郎君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      河本 敏夫君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     高橋  元君         公正取引委員会         事務局取引部長 奥村 栄一君         経済企画庁調整         局長      谷村 昭一君         経済企画庁調査         局長      廣江 運弘君         通商産業大臣官         房審議官    棚橋 祐治君         通商産業省通商         政策局次長   村岡 茂生君         通商産業省貿易         局長      杉山  弘君         通商産業省産業         政策局長    小長 啓一君         通商産業省基礎         産業局長    野々内 隆君         通商産業省生活         産業局長    黒田  真君         資源エネルギー         庁長官     豊島  格君         資源エネルギー         庁長官官房審議         官       松田  泰君         資源エネルギー         庁石油部長   松尾 邦彦君         中小企業庁長官 中澤 忠義君  委員外出席者         議     員 長田 武士君         科学技術庁原子         力安全局防災環         境対策室長   千々谷眞人君         環境庁企画調整         局環境保健部保         健企画課長   若林 勝三君         労働省労働基準         局監督課長   野崎 和昭君         労働省職業安定         局雇用政策課長 佐藤 仁彦君         参  考  人          (石油公団理事)松村 克之君         商工委員会調査         室長      朴木  正君     ――――――――――――― 委員の異動 四月十三日  辞任         補欠選任   中村 重光君     上坂  昇君 同日  辞任         補欠選任   上坂  昇君     中村 重光君     ――――――――――――― 四月十二日  割賦販売法の一部を改正する法律案内閣提出  第五七号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  割賦販売法の一部を改正する法律案内閣提出  第五七号)  割賦販売法の一部を改正する法律案長田武士  君外四名提出衆法第四号)  通商産業基本施策に関する件  経済計画及び総合調整に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ――――◇―――――
  2. 梶山静六

    梶山委員長 これより会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件、経済計画及び総合調整に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。横江金夫君。
  3. 横江金夫

    横江委員 最初に私は、小此木通産大臣が今夕出発をされまして、韓国のソウルで開かれます関係レベル貿易政策研究センター、いわゆるTPRC会議出席をされまして、冒頭基調演説を行われる予定でありますが、そこでまず第一に大臣に、この会議目的、そしてその意義、また今の基調演説でありますけれども基調演説での呼びかけと内容につきましてお尋ねをしてまいりたいと思います。
  4. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 本日四月十三日から十五日にかけまして、貿易政策研究センター会合及びその会議出席する各国の大臣との会談のために韓国を訪問いたします。TPRC自由貿易体制組織強化立場から各種の研究会合を行う国際経済政策問題に関する民間研究機関でありまして、国際世論の形成に大きな影響力を持つものでございます。  今回の会合目的は、先進国及び発展途上国主要大臣等の間で新ラウンド国際貿易体制をめぐる諸問題等につきまして意見交換を行うこと、特に今回の会合は、中曽根総理が提唱している新ラウンドにつきまして、先進国発展途上国関係レベルが一堂に会しまして意見交換をする初めての場となりまして、極めて有意義なものと考えております。
  5. 横江金夫

    横江委員 今大臣から御説明いただきましたように、初めての会議であるわけでありますし、この会議はケネディ・ラウンドやあるいは東京ラウンドから、今御答弁いただきました新しいラウンドの推進であり、内容的には関税一括引き下げや、あるいは金融、流通をテーマにした重要な会議であるというふうに承っておるわけであります。特に先般のレーガン中曽根首脳会議におきまして、このニューラウンドについて早く実現をするのだ、こういうお話もされている中で、きょうここで出発をされるわけでありますけれども、今お話を伺う中におきましても、先進国発展途上国、特に中進国の中におきまして、この新しいラウンドについての見解が若干違うやに承っておるわけであります。  そういう意味合いからまいりまして、今回お行きになります大臣といたしましては、その両者の橋渡し的な役割も大きな目的でもあるし、そしてこれに対する期待も私は大きいと思うわけであります。そういう意味合いからまいりまして、今回の中進国そして先進国との第一回の話し合いの中で、大きく期待をされておりますこの会議で、ぜひ決意も新たにして大きな成果をおさめられるように強く望むものでもございますし、その決意も改めていま一度伺っておきたい、かように考えるわけであります。
  6. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 御激励いただいて大変感謝申し上げますけれども、確かに発展途上国先進国二つグループの間には、新ラウンドの問題一つ取り上げてみましても、それぞれの意見が異なると思います。また、先進国同士の間にもそれぞれの意見があることは御承知のとおりでございまして、こういう間にあって私には橋渡し云々ということもございましょうけれども、むしろ短い時間の中にお互い自由濶達意見交換を行うことに意義があり、またそれぞれの会議の間には二国間同士話し合い、例えばアメリカあるいはカナダさらにはECとの個別会談、さらには発展途上国あるいはアジアの諸国との二国間での話し合いということにも私は大いに期待を持っておる次第でございます。
  7. 横江金夫

    横江委員 きょうの新聞にも、今大臣答弁のように、新ラウンドにつきましてはそういうような目的の中でも第一回の会合としては瀬踏みの状態でもあるのだというようなお話でもありますし、また姿勢としては非常に謙虚にこれから対応したいのだという大臣お話でもあるわけでありますが、これは先ほど私が申し上げましたように、いわゆるレーガン中曽根総理との話し合いからまいりましても、その成果というものは大きな期待が寄せられておりますので、そういう意味合いで、改めて強くこの成功をお願いしてまいりたいと考えているわけであります。  次に、私は、これと関連をしながら経済運営貿易摩擦解消、特にこの解消を重点とした政策につきましてお尋ねをしてまいりたいと考えるわけであります。  これまた中曽根総理は、対外貿易摩擦解消のためには総合経済対策をこの四月中にまとめるべきだ、このように指示をしておみえになるところであります。そのまとめの作業というものは各省間において進んでおると私は思いますけれども、現段階におきまして、対外貿易摩擦解消にどれほどその作業は進んでいるのか。先ほどのニューラウンドの話からまいりましても、関税引き下げ等々、これ一つとりましても、これも解消のために指示をされていることだというふうに理解しておりますけれども総合経済対策として、その作業がどこまで進んでおるのかということを、まず第一にお尋ねをしていきたいというふうに考えるわけであります。
  8. 村岡茂生

    村岡政府委員 正直に申しまして、現時点では幾つかのテーマについて日米間等におきまして話し合いが進んでおります。しかしながら、全般的に総合対外経済対策というものをまとめる段階にはまだ至っておりません。御承知のとおり、四月中には何とかまとめたい、こう考えている段階でございます。
  9. 横江金夫

    横江委員 この摩擦解消、そしてその課題、とりわけ総合経済対策項目的にいきますと総理からの指示、また現象的にあらわれている項目というのはそう多くの数ではないというふうに私は理解をいたします。例えば農産物関係につきましては、最終的な結論じゃありませんけれども、一応のそういう見通しが立ったということです。そういうような一つ一つ懸案の問題につきましても、解決方策が見出されてきているわけでありますけれども総理から指示をされております幾つかの項目、これを挙げていただきまして、そして対アメリカ、そして四月までにこの結論を出していきたい、まとめていきたいという項目的に御説明を賜りたいと思います。
  10. 谷村昭一

    谷村政府委員 現段階で、先ほど答弁がありましたように、四月中を目途に作業を進めておるわけでございますが、総理から特段この項目という御指示があったという意味ではございませんが、現在懸案となっておる事項につきましては、今お話のございました関税引き下げの問題、通信衛星の問題、それからVANの問題、農産物の問題、金融資本市場問題等々がございまして、これらの懸案につきまして、現在関係省庁調整をいたしておるわけでございます。そのほか細かい問題といたしましては、基準認証制度改善の問題も考えておるわけでございます。
  11. 横江金夫

    横江委員 特に金融関係だとか、あるいは通信衛星、他の省庁にかかわる関係も多いわけでありますが、特に通産関係でまいりますと、例えば今御説明余りなかったやに伺いますけれどもソフトウエアの問題あるいはまたエネルギー、特に石炭とか油の購入問題等について、この問題も懸案項目事項になっておるというふうに思うのです。  私は、通産かかわりの中で、ほかの省庁につきましての話じゃなしに、今申し上げました若干の二つ三つ関係ではございますが、その他も入れまして、この懸案関係等について四月までにまとめたいという、通産としてのそのかかわった項目について御説明を願っていきたいというふうに思います。
  12. 村岡茂生

    村岡政府委員 アメリカとの関係で申しますと、私ども通産省関係のある残された問題という意味で申しますと、関税の問題、ただいま先生御指摘のソフトウエアの問題、それから投資の問題、エネルギーの問題、それから若干関係がございます通信衛星等の問題がございます。これらにつきまして、今後鋭意検討を進めてまいりたい、こう考えております。
  13. 横江金夫

    横江委員 もう四月も半ばに近くなってきておるわけでありますし、こういう大きな懸案の問題になりますと、四月いっぱいにまとめなくちゃいけないとなってまいりますと、そう日にちがあるわけではないと思います。そうしてまいりますと、今通産にかかわる問題だけでも四、五点につきましての御説明がございました。これから鋭意努力をしてまいりますという話で、抽象的に終わっておりますが、例えばエネルギー、特に石炭の問題につきまして、対アメリカとの関係、これはいろいろな問題があると思います。まずこの問題、ひとつどこまで進んでおるか、どういう考え方をお持ちであるのか、これをまずお伺いいたしたいと思います。
  14. 村岡茂生

    村岡政府委員 日米エネルギーの問題につきましては、御高承のとおり、エネルギー・ワーク・グループというのを日米間でつくりまして、そこで検討を進めるということになってまいっておりました。  主な論点と申しますのは、石炭購入の問題、それからLNGのフィージビリティースタディーをやるという問題、さらに加えまして、アラスカ石油問題をどう扱うか、大きな論点はその三つでございますが、石炭につきましても中期長期に目を見据えて、今後どのような協力関係を結んでいくかということでございまして、総体的に申しまして、かなりすべて息の長い問題だ、こう理解しております。  したがいまして、四月末の対外経済対策におきまして取り上げるのが適当かどうかということは、私どもはやや疑問に思っておるところでございまして、要すれば、昨年日米間で発表いたしました共同政策表明、これを着実にフォローアップし、かつ石炭に関しましてはミッションを派遣して、民間同士話し合いを深めていくというようなことが当面の課題でございますが、具体的なテーマについては、かなり中期長期に目を見据えてやるべき問題だと理解しております。
  15. 横江金夫

    横江委員 例えば今アメリカから石炭購入しておりますが、年次的に見まして、どのような石炭をどれだけの量、たとえば昨年、ここ二、三年、そしてことし、それからアメリカからどのように要求されているのか、ここらについても御説明いただきたいと思います。
  16. 村岡茂生

    村岡政府委員 手元に数字を持っておりませんので、やや間違っている数字を申し上げるかもしれませんが、例えば原料炭について申し上げますと、二、三年前は、ピークにおきましては、約二千万トン前後の原料炭輸入しておりました。それが昨年には、まだ必ずしも明確ではございませんが、千四、五百万トン程度輸入まで落ちてきていると思います。  米側は、米国からの原料炭の対日輸出がかなり減りつつあるということに懸念を表明しておりまして、でき得れば大幅に減らさないということを要望してきておるわけでございますが、私どもアメリカだけを特に減らすというのは問題だ、こういう立場で今後話し合いが、当面民間同士の間からスタートいたしまして、話し合いが進んでいくものと理解しております。
  17. 横江金夫

    横江委員 アメリカだけ減らすということは問題だ、同時にまた、大幅に減らされては困るというアメリカの要望ですね。昨年が千四百万トン、そしてその前が二千万トン、これは随分ダウンをしているわけですね。  今お考えになっているのは、そうしますと、随分ダウンをしている、五十八年度の千四百万トン、ことしの数字はこれからでございましょうけれども、減らさないで維持をしていくという、もう少しここらあたりを、具体的なアメリカ要求と、そして日本側の減らさない、民間努力もありますけれども、そこらを数字的に挙げていただきたいと思います。
  18. 村岡茂生

    村岡政府委員 原料炭につきましては、御高承のとおり鉄鋼業がこれは需要者になるわけでございますが、鉄鋼生産自体、ほとんど明るい展望がございません。ほぼ横ばいという状態で今年度も推移するものと思われます。したがいまして、需要はほとんど横ばい。それに対しまして、一方、豪州あるいはカナダ等に対しまして、かなり将来の大幅な鉄鋼生産増を実は見込みましたベースにおきまして、投資開発等の事業を展開してまいったわけでございます。そのような関係から、ある程度これらの諸国からの輸入がふえていくということはやむを得ないと思うわけでございます。その反面、米国からはほとんど大部分がスポット契約と申しますか、そういう状態輸入されてまいりましたので、私どもの見方におきましては、八三年度の輸入数量を八四年度において維持するということはかなり難しいと考えておりまして、かつ、そのようなことを米国側にもるる説明してまいっております。
  19. 横江金夫

    横江委員 五十八年度のその数量を五十九年度、ことしも持続することは難しい。中国やオーストラリアと、この原料炭あるいは石炭については長期契約をしておみえになる、そして不足するところをアメリカから買い付けてきておる。そのアメリカからの買い付けも、えてしてそのスポット買いが大体二千万トン前後を横ばいしてきておる。これは原料炭でありますからすべて鉄鋼関係鉄鋼関係は私どももわかります。景気がよくない、鉄冷えをしておる、不況だ、だから需要が足らないというお話等もありますけれども、今までの鉄冷えは、企業そのものにつきましても、世界的にも若干上向きつつあるのではないかという、そういう企業サイドからも考えられるわけです。  もう一つは、これはうがった、今貿易摩擦ということで心配をし、そしてこの解消のために努力をしていただいておるわけでありますから、そういう関係からまいりまして、例えばこのアメリカ原料炭というのは何か東部東部というのはレーガン大統領の地元やに伺っておりまして、向こうは数量を減らさないでくれ、こちらの方は需要が少ないから減らすんだというようなことになりますと、今予備選挙が戦われておるわけでありますけれども、そういう関係等からいきまして、また選挙かかわり等からいってでも、貿易摩擦の若干刺激的なものになるんじゃないかという心配も実はあるわけであります。  今御答弁をいただきましたように、八三年の千四百万トンが八四年もそれを維持することは難しいようなお話がありましたけれども、しからばどの辺で歯どめをされるのか。もっと言うならば、私としては、八三年千四百万トン、それ以上の数子について大きな希望を持つわけでありますけれども、交渉の中、そして国内需要関係等からいって、省としては、この八四年度はどれだけの数字をお考えになっているのか、その数字を明確にしていただきたいと思います。
  20. 村岡茂生

    村岡政府委員 八四年度の米国原料炭購入目標について、省として何トンにするということを策定したことはございませんし、また私どもも、今後そのような計画をつくるつもりもないわけでございますが、米国懸念は、放置すれば八三年度レベルから比べてかなり大幅にダウンする、場合によっては千万トンをさらに大幅に割るのではないか、こういう懸念が一時ございました。私どもは、そんなに減るということはないだろう、少なくとも千万トン台には乗ると思います。これは計画というのではなくて見通しとでも言うのでしょうか、感触をお伝えしてございます。できれば千万トン以上、そのぐらいにはなると思いますということを言い続けておりまして、千万トンからさらにある程度、一割、二割程度上にいくということを我々も期待しているということは述べたことがございます。
  21. 横江金夫

    横江委員 今の原料炭につきましては、省としてお決めになるということじゃありませんけれども、今御答弁いただきましたような形の中で、貿易摩擦解消する意味を含めて、ぜひ努力をしていただきたいと思います。  小此木大臣、今貿易摩擦の、ただ一つ原料炭の問題を取り上げて申し上げましたけれども、これが随分減ってきているわけです。需要が少なくなってきていますので、ここらあたりについて、今までは二千万トン、そして昨年は千四百万トン、ことしは千万トンを切らないようにという話がありますけれども大臣としてこの辺についてはどのようにお考えになっておりますか、お聞かせを願いたいと思います。
  22. 村岡茂生

    村岡政府委員 日米貿易摩擦解消というのは極めて重要なことでございます。少しでも余裕がございましたり、余地がございましたら、なるべく貿易摩擦解消に資するような動きになることを期待しております。
  23. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 この問題は非常に専門的な問題でございますので、今、日米専門家の間で論議させているということで御理解願いたいと思います。
  24. 横江金夫

    横江委員 先ほど項目的に挙げてもらいまして、これで余り時間をとってはいけないと思いますけれども通産のかかわっておる問題で、ソフトウエアの問題とか投資の問題あるいは通信衛星の問題、税関の問題等につきまして、四月までにまとめるものも必要でございますし、作業進捗状況も含めて、いま少し具体的に一つ一つ説明いただきたいと思います。
  25. 村岡茂生

    村岡政府委員 まず第一に関税の問題でございますが、これも詳しい数字の資料を置いてまいったのでございますが、米国からは主要五品目プラス、全部合わせますと百品目を超える品目について関税引き下げリクエストが来ております。また、同様に、ECからも百品目を超えるものがございますし、同様に、EC以外の先進諸国あるいはLDC等からもリクエストがございまして、全体で申しますと、単純に足したものではございますが、六百品目強にわたる品目関税引き下げ等リクエストが及んでおります。  これらにつきましてどのように対応するか、関係各省と実は内々相談しておるわけでございますが、例えば大蔵省あるいは農林省等におかれましては、国会審議状況というもので手いっぱいでまだ手がついてない、そこで来週ぐらいから急いで関係省庁寄り集まって、やや具体的な方針、めどみたいなものを立てて作業を進めていこうではないか、こういう状況にございます。それから関税につきましては、同様に東京ラウンドで合意いたしました関税引き下げスケジュールというのがございます。それの繰り上げ実施ということを念頭に置いてまいりたいと思っております。  鉱工業品等につきましては、明年四月ではございますが、残りました二年のスケジュールを前倒しできないかということでただいま省内で検討が進められております。  次に、ソフトウエアにつきましては、既に新聞等で御案内のとおり、国内におきましては文化庁との調整問題が残されておりますし、国際的には米国との調整が残されております。法案の国会提出期限等関係もございますが、ただいま鋭意それらの調整を急速に進めようという段階でございます。  投資の問題については、主として対日投資をもう少し促進するための方策はないかということで検討がなされております。例えば、諸外国の対日投資ケース・バイ・ケースに具体的に支援してあげられるような手段はないだろうかということについて検討が進んでおります。  なお、通信衛星につきましては、主として科技庁等の問題ではございますが、私どもも、できるだけオープンにされたような方策が探求できないか、特に民間企業におきます衛星購入問題、これは通信法制等改善が進む中で、やや具体的な目標になるように期待をしているところでございます。
  26. 横江金夫

    横江委員 項目的にも大変鋭意努力をしていただいているわけであります。ここで大臣お尋ねをいたしたいと思いますけれども、これらの一連の解決策を盛り込まなければ貿易摩擦解消、いつまでもくすぶり続けるという、しかも対アメリカ、対EC関係懸案の問題が片づかないためにくすぶり続けることはお互いによくないことだと思うのです。そういう意味合い等から、総理としても、できる限り四月までにまとめなさいという指示をされていると思うのです。  そこで、対アメリカ、対ECとの心配等、とりわけアメリカからもこの四月中旬にはブロック米代表もお見えになりますし、あるいはまた五月の連休明けになりますと、ブッシュ副大統領もお見えになるという予定もあるそうであります。欧州についてもECのトルン委員長がお見えになりますし、五月には経済閣僚会議理事会にも当然小此木大臣も御出席になると思います。あるいは総理も、ロンドン・サミットも六月にはある。これを前にして、各省間でそういう対外摩擦解消するきちっとした対外的な経済政策を確立をすべきだというふうに強く考えるわけでありますけれども、ぜひここらあたりにつきまして、その考え方を大臣から明確にしていただきたいと思います。
  27. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 貿易摩擦への対応は我が国の通商政策上の最重要課題一つであることは言うまでもございません。従来から、自由貿易体制の維持強化を図るとともに貿易の拡大均衡を図るという観点から、私どもは一層の市場開放あるいは積極的な輸入促進に努めてきたことは御存じのとおりでございます。  現在、対外的な懸案事項への対応につきましては、グローバルな観点から配慮いたしまして、四月中を目途に、対外経済対策としてこれを取りまとめるべく鋭意検討中でございます。
  28. 横江金夫

    横江委員 鋭意検討を、ぜひしっかりとした対外経済対策をまとめていただきますように、今まとめ中でございますから、強く要望してまいりたいと思います。  関連をいたしまして、私は河本大臣お尋ねをいたしますが、十日に五十八年度の通関実績が発表されまして、きのうも物持で大臣は御答弁をしておみえになるわけでありますけれども、その通関の発表が、輸出に関して五十八年度で前年対比一一・七%増、千五百二十六億ドル余でありました。また輸入についても一・六%増で、これまた千二百九十三億ドル。この輸出入のバランスからまいりましても、二百三十三億ドルの輸出超過という史上かつてない数字であるし、アメリカに対しましても二百十億ドルの超過ということに数字的にも更新をされているわけであります。またこの三月の力も、これまた発表されておりますけれども、史上かつてないような数字でありまして、輸出超過額が月間として三十億ドルを突破した。こういう情勢の中で、国際収支、経済収支、貿易収支が黒字を続けていく中で、どのように黒字を解消させるか、対応していくのか。私は、黒字減らしも含めて内需の拡大、そうして輸入促進等も含めて、河本大臣の見解をぜひ承っていきたいと考えるわけであります。
  29. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 貿易摩擦をどのようにして解消するかということでありますが、さしあたっては、先ほど来質疑応答にございますように、個々の問題をグローバルな立場で処理しようということで、一応四月末を目標にして関係各省の間で作業が進んでおります。ただ、この作業がある程度目鼻がつきましても、私は貿易摩擦問題は終わらない、このように思います。  と申しますのは、この作業によって改善される我が国の黒字幅というものは極めて小さいものだと思います。そこで、今お話しの巨額の我が国の貿易黒字に対して、世界各国から日本に対して何らかの善処を求めるという声が当然強くなってくると思います。もう既にECからは我が国に対して正式に、マクロ経済対策を求める声が出ておりますし、アメリカからも、まだ公式ではありませんが、やはりマクロ政策を求める声が今出始めておるというのが現状だ、このように思います。  そこで、この巨額の貿易黒字をある程度調整するためには貿易の拡大均衡、こういう形で問題を処理する必要があると思うのです。貿易の縮小均衡ではなくして拡大均衡でこれを処理していく、これが一番大切な点だと思います。  そこで内需の拡大問題が大きな課題になるわけでございますが、内需の拡大をするといってもいろいろな手段が考えられます。さしあたっては公共事業の前倒しということを来週早々政府部内で調整することにいたしております。しかし、これもそんなに大きな効果が出てくるということではないと思います。一体どうすればよろしいか。何しろ私は史上空前の大幅黒字になるであろうと思いますので、ちょっとやそっとのことではこの問題はなかなか解決しない。そうすると、思い切った内需振興策がこの際必要になってくると思うのですが、具体的な内容についてはこれから政府や自由民主党で相談をすることになっております。  また、急いで相談しなければならぬと思っておりますが、抽象的に申し上げますと、内需の振興策として考えられる柱というのは、一つは減税だと思うのです。それから公共投資の拡大だと思います。もう一つ金融政策だと思います。しかし、この中にはなかなかむずかしい課題もございます。今すぐ手のつけられない問題もあると思いますが、そこらあたりを総合的によく相談をいたしまして検討を続けてまいりたい、このように思います。
  30. 横江金夫

    横江委員 大臣答弁を非常に率直に承りましたけれども、私どもは今小此木大臣あるいは局長から伺っておりまして、関係省庁努力していただいて四月末までにはまとめるんだ、そのまとめた作業によって相当の貿易摩擦解消ができるし、あるいはじくじくした対アメリカ、対ECとの関係についても相当改善されるのではないか、気持ちの上では、一〇〇%ではありませんけれども、八〇%以上の大きな期待を実は持って、その作業を見守っているわけでありますけれども、グローバルからいって、河本大臣お話を伺っておりますと、これでは、この作業で出てきたまとまったものでも黒字幅は解消することは少ないのだ、もっとほかの面で、例えば貿易の拡大均衡を図っていくということの中から、この史上空前の大幅黒字をなくしていく作業、その具体的な手を打たなければいけない、こういうことであります。  私どもはこの作業を大変期待しておる中で、今の河本大臣の話を聞きまして、あっというような心配をする気持ちもありますけれども、しからば黒字幅をもっと解消していくために、例えば公共投資の前倒しにつきましては、これから閣議でやっていくんだ、近々結論が出るんだ、これだけでもいけない、これもそう大きな期待を寄せられないんだというお話も今あったわけであります。  そうしてまいりますと、後段でおっしゃいました例えば引き続いての大幅減税あるいは金融政策考えなくちゃいかぬ、こういうお話があるわけでありますけれども、やはり内需の拡大が一番の大事な点であるということも含めて、私は今河本大臣が言われましたことをもう少し減税の話、金融の話――公共事業の問題につきましては近々閣議で結論を出すというお話でございますので、どのくらいの数字で減税をしたならば、あるいは金融はどういう形にしたならばフォローができるのか、ここらあたりをこの際ひとつ明確にしていただきたいと思うのです。
  31. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 実は、内需拡大の検討すべき項目として三つ四つのことを申し上げたわけでございますが、具体的に数字を挙げてあるいは時期を明示してどうこうするという段階までは全然至っておりません。ただ、考えられる内需拡大の方法としては、私が申し上げたようなことが検討課題になるのではないか、こう思いますけれども、具体的な問題、時期、幅またやり方等の問題についてはすべてこれからいろいろな意見が出まして協議する、検討するということでございますから、具体的な考え方については現在持っておりません。
  32. 横江金夫

    横江委員 これは大臣、私は今のお話を伺っていますと、ぽっと出されて後をずっと引くようなお話なんです。それでは私は間に合わないと思うのですね。例えば今お話を伺ったのですけれども、こういうような対外経済政策を確立しても大きな黒字幅を消すことはできないのだ、どれほど消せるのかということの話も伺いたいのですけれども。しかし、もっと上りよく効くには、一番大きな話はやはり内需拡大等今挙げられました項目、その項目大臣が提唱してみえるのですから、ほかの方ももちろん今の部署の上から言っておみえになりますけれども、いつどれだけの幅で、そして史上空前の黒字に対してどうするのかという今のお話は言いっ放しではなしに、時期と幅と規模を明確にしなければこれは済んでしまうんじゃないでしょうか。  それは、失礼でございますけれども評論家であれば私はいいと思うのです。しかしやはり一番の大臣でございますので、一番大きな問題について、内需拡大の中でこうこうこういう項目をやればいいのだ、少しでも解消していくのだという中で、私は言いっ放しではいけないと思います。やはり責任のある上で今申されましたのを少しでも、例えばその項目についていつまでに明確にするのか、これは私は、幅は言えなくても、いつまでに明確にするということだけでもはっきりしてもらわなければいけないと思いますがいかがでありましょうか。
  33. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 その前に、私がなぜ個々の問題の解決をしても貿易摩擦解消しないかということを申し上げた背景について若干申し上げますと、今度の農産物の問題も解決して大変結構だと思います。しかし、このことによってさしあたり、ことしあの枠を変えましても、対アメリカとの関係はせいぜい三千万ドルぐらいなんです、だから三けた問題が違う、こういうことでございます。衛星にいたしましても一個せいぜい二、三千万ドルのものだと思います。こんなものを十も二十も買うわけにはいきません。やはり一つ二つだと思います。これなども大変大きな問題ではありますけれども金額的には小さい、こういうことでございます。  それから、先ほどの関税問題も六十年度からやるということでありまして、五十九年度の分はようやく終わったばかりでありますから、これからの作業は六十年度の分でございます。したがってこれも直ちに大きな効果が出てくるものではありません。金融資本の自由化といいましても、これによって大幅な黒字が出てくるわけでは決してございません。ただ問題が解決できたということでございます。でありますから、全部の問題が解決いたしましても、このことによってそんなに大きな金額にはならぬ。  そこで、ことしの初め政府が発表いたしました貿易の黒字は多分三百四十億ドル、それから経常収支の黒字はおよそ二百三十億ドル、こう言っておりますけれども、これは実は五十八年の数字と全く一緒でありまして、五十八年程度数字におさめないと大変なことになるであろう、こういうこともございまして、一応五十八年の数字とほぼ同じ数字を設定しておるわけでございますが、これが現在の動きから見ますと、今二、三の例をお挙げになりましたけれども、非常に大きな数字になる可能性があります。とてもこういうことでは、このままほっておいたのではおさまりそうにない。この見当でおさまればそんなに大きなトラブルにはならぬと思うのですけれども、これが三割も五割もふえることになりますと大変人ごとになろう、こう思うのです。  そこで考えられる対策といたしましては、円レートがある程度高くなって外国の品物が買いやすくなる、こういうことができればそれはそれなりに大きな効果があると思います。それからもう一つ国内の購買力、これが拡大いたしませんと、外国から輸入することが難しいということでありますから、先ほど申し上げましたようなことを、予算が通ったばかりでありますので、これから基本方針としていろいろ検討していかなければならぬだろう、こういうことなんです。政府部内で検討したわけではございません。  これから内需の拡大ということになりますと、柱として考えられるのはこういうことだ、こういう問題についてこれからひとつ検討していこう。だから、それではいつまでにやるのだ、内容はどうだ、こう言われましても、予算が通ったのはつい二、三日前のことでもありますから、これからこういう課題について検討して、何とか内需拡大をしないと大きなトラブルになるであろう、こういうことを申し上げたわけでございまして、言いっ放しはけしからぬと言われましても、これからの課題でございますから、もうしばらく時間をおかしいただきたいと思います。
  34. 横江金夫

    横江委員 その背景を御説明をいただきまして、やはり河本大臣お話としては、私どもも非常に心配というのですか、大変だなということを思うのです。その中で、今、予算が通ったばかりでございますから、これから鋭意努力をして検討をしていきます、それは確かにそのとおりでありますけれども、それはめどというものだけは、予算が通ろうが通るまいが、この貿易収支黒字はどんどんふえて、しかも大変な、史上空前になってくるのだ。昨年の、それにおさまるような数字で、三百四十億ドルを含めた願望と希望を持って設定したのだけれども、それではおさまりようがない。おさまるならば幸いだけれども、おさまらない、もっともっと大きな数字になるだろう。どの辺の数字を想定してみえるのか、これもひとつ、お伺いしたいのです。  そして、それが余りにも大きな数字になりますと、これこそ大変だ、困難だというようなお話でございます。僕はその意味合い等からいって、ここまで予算も通ったという、これからじゃなしに、これから検討する場合の、どういうことを想定して、どのくらいの数字になるから、こうしなくちゃいけないということが必要なんです。だから、どのくらいの数字になるから、その数字を示してもらいまして、そして、こうこうこういうふうにやっていくのだという、逆説的に、そしてめどだけでも明確にしていただきたいと思うのです。
  35. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 とにかく、先ほど申し上げました数字は、一月に、予算編成の前に政府見通しとして発表いたしたのでございます。ところが、その後の貿易の動向を見ておりますと、どうも大幅にふえそうですし、特にアメリカは、ことしはさらに赤字が三百億ドルほど増加すると、こう言っているのです。昨年は七百億ドルの赤字が、千億ドルを超える。二月の数字を見ますと千二百億ドルぐらいの赤字になるのですが、まあそんなにはならぬと思いますけれども、とにかく千億ドルを超える、こう言っております。何しろ経済状態が非常にいいものですから、どんどん外国から物を買わなければいかぬ。そうなりますと、日本以外のところで、そんなに大きくアメリカへ物を出せるところも考えられませんしいたしますと、やはりアメリカとの黒字幅もこのままほっておいたのでは相当拡大をする可能性も十分考えられます。  もともと、ことしの初めに貿易の黒字が幾らになるか、あるいは経常収支の黒字が幾らになるかという数字を発表いたしましたときに、民間などでは貿易の黒字は五百億ドル近くなるのじゃないか、あるいは経常収支も三百五、六十億ドルになるのではないかと、こういう発表をした民間調査研究所も二、三ございました。しかし、政府は、そんなことにはならぬだろうと思うし、また、そんなことになっては大変だというので、先ほど申し上げたような数字を一応設定したわけでございますが、今の段階で、それじゃ黒字が幾らになるのだと言われましても、このままほっておいたのでは非常に大きくなりそうだ、大変心配だということはわかりますが、しかし、具体的にそれじゃ、年度間を通じて幾らだ、これはまだ作業もしておりませんし、今の段階ではとても正確な数字は申し上げにくい、このように思います。
  36. 横江金夫

    横江委員 大臣お話の感触を伺っていますと、アメリカも景気がいい、よって、大幅な貿易赤字になるのだ、日本の場合の黒字がふえてくるのだ、これは感触的にはぼんぼん響いてくるのですね。しかし、感触的に響いてまいりますけれども、しからば、どういうような数字をと聞きますと、それはこれから検討しなくちゃいかぬとか、作業しなくちゃいかぬと言う。何か言葉に非常に矛盾があるのですね。何か言いにくいものがあるのかどうか私もわかりませんけれども、しかし、そこまではおっしゃるのですから、やはり民間の話として民間にかこつけてお話をされたかもわかりませんけれども、それが本心であるとするならば、この五百億ドルという数字は大変な数字だと思いますけれども、そこらの点も、やはり対策を立てる上におきまして、こういう数字を一応想定をしておる、よって、その上に立ってこれから対策を具体的に樹立をしていきたい、漠然とした話じゃなしに何かの一つ目標だけは明示をすべきじゃないでしょうか。  めどにつきましても、きのうもテレビでやっていましたけれども、大蔵省ではもう来年度の予算の編成に入ってきて、貧乏でこんな忙しいことはないなんて大蔵省の関係の方が言ってみえましたけれども、もうきのうから来年度の予算に入ってきているわけなんですね。そうしてまいりますと、これは来年の想定をしなくちゃいけない。ことしはまだこれから検討したいでやってみえますと、ちゃらんぽらんというのですか、実際にその辺の数字というものが出てこない、間に合わないじゃないかという感じを強く受けるのですけれども大臣から言われて、そういう雰囲気、大変大幅な数字になるというふうに感じますけれども、それを具体的に数字を設定されて、具体的な対策の作業にかかっていかないと、来年度の予算編成、そしてこれから行う問題とチャンポンになってしまう気がしますけれども、これは大変な問題であるだけに、もう少し歯切れよく、申しわけないのですけれども、いま一度はっきりとした御答弁を賜りたいと思うのです。五月までにするならします、こういうような歯切れのいいところをひとつ示していただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  37. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 今、御質問がございましたので、それで問題点を指摘してお答えしたわけでございますが、ただ、今の段階で具体的に何もかも言え、示せ、こう言われましても、これから政府部内でいろいろ研究して、そして一体どうしたらよいか、いろいろな国際会議もございますし、それから既に数日前にはECから厳しい申し出もございますし、いずれアメリカからも正式に何か言ってくるだろう、こういう状態でございますから、だからこれからいろいろ具体的に研究を進めていく、こういう段階です。しかし、事が事でありますし、日本の将来にも関係する非常に大きな問題でもございますから、いつまでもほうっておくわけにはいかない、できるだけ早く研究し、方向を明らかにして、政府部内あるいは自由民主党との関係において方向を明らかにしていかなければならぬ、こう思っております。
  38. 横江金夫

    横江委員 大臣としても言いにくい点、もちろん御協議いただくのは当然でありますけれども、今大臣から言葉が出ましたように、これから幾つかの国際会議もありまして、国際会議は実は待ってくれないと思うのです。もう五月には、先ほど小此木大臣からも言われましたけれども、OECDの閣僚理事会もあるわけですね。あるいは六月に総理はロンドン・サミットヘお行きになるわけです。こういう重要な会議、そこで一番議題になるのはこの問題だと思うのです。  今大臣言われましたね。そしてアメリカが、先ほど私は局長に申し上げましたけれども大統領選挙というちょっとした別の問題もございますし、この問題に対して日本がやり玉に上がるという心配はあると私は思うのです。だから私は、五月のOECDの会議、これはさておきまして、それでも五月だと言っているのです。その五月でも、まだこれから検討しなくちゃいけませんという答弁では、果たして五月もおぼつかぬじゃないかな、国際会議でやり玉に上がってから、それから手をつけようかなということでは、これは全然話にならないと思うのです。  そこらあたりどうなんでしょう。国際会議は待ってくれない。しかもそこへ行けば必ずやり玉に上がる。その前に、今大臣が言っておみえになりますことをもっともっと早く、閣僚会議にしてもあるいは自民党さんの中における会議にしても、コンセンサスを得るために、大臣が明確に、委員会では御発言してみえますけれども、そのようなことを検討の材料としては提言をしているけれども、実際に、進んでこうしなさいというような発言を新聞で見たことないのです。閣僚会議でもおっしゃったような話を聞いたことないのです。ただ、評論家的な発言で問題を提起してみえるだけの話のようにしか私どもには映らないのです。であるならば、今のような御発言でいくならば、もっともっと積極的に、しかも進んで、明確な、こういう姿勢だということだけは、日本にとってこうなんだということははっきりと打ち出していくべきじゃないかと思いますが、どうなんでしょうか。
  39. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 しかし、物には順序というものがありまして、今、個々の問題を全力を挙げて取り組んでおるということでございますから、さしあたって、個々の問題に対して目鼻をつけるということが緊急の課題だ、こう私は思っております。しかし、問題としてはそういう問題が残っておるので、これは重大な課題として検討する必要がある、こういうことを申し上げたわけでございます。
  40. 横江金夫

    横江委員 時間が来たようでありまして、私は、天下りの問題とか、天下りという言葉は響きが余りよくありませんけれども、あるいはまた、中小企業の高度化資金の問題とか御質問申し上げたいと思っておりましたけれども大臣に御足労いただきましたが、時間が終わってしまいましたので、これをもちまして、私の質問を終わりたいと思います。
  41. 梶山静六

    梶山委員長 上坂昇君。
  42. 上坂昇

    上坂委員 質問をさせていただきます。時間をとっていただきまして、ありがとうございます。  今、割賦販売法の改正案がこの委員会提出をされておるわけでありますが、それと非常に関係のある訪問販売の法律の改正も早晩行わなければならないような状況に来ているのではないかと思っております。それに先立ちまして、小売流通業の中での訪問販売が占めている意義といいますか、そういうものについて、通産省は、今一体どんなふうにお考えになっておるか、このことについてまずお聞きをいたしたいと思います。
  43. 小長啓一

    ○小長政府委員 訪問販売は、消費者ニーズにこたえる形で、最近非常にふえておる状況でございまして、全体の流適合理化の中におきましても、訪問販売の占める位置づけというのは非常に重要ではないかというふうに我々は認識しておるわけでございます。
  44. 上坂昇

    上坂委員 一つの流通業の新しい行き方として非常に重要視されておるということであります。  そこで、その訪問販売によって、現在の消費低迷の折から、いわゆる店頭売りをやっている人たちが非常に影響を受けて、そのことが地域の、昔からお店を抱えてやっている店頭の小売業の人たちを圧迫するような状況が出てきているとすれば、訪問販売が必ずしも消費者のニーズだけに貢献をしているというふうには言えないような気がします。  そこで、私は、現在の化粧品の業界をとってみまして、この問題を取り上げてみたいと思うのであります。  全国化粧品業界の協会がありまして、その協会の発表している経済の分析があります。それを見ますと、現在、上位五十社の累計が、千社ぐらいある化粧品のメーカーのうちで大体八八%のシェアを占めていると言われています。特に、製造品を売っているメーカー、これは十一社でありますが、八二年度で前年比一〇二・四%の伸びを示しております。したがって、二・四%の伸びというのは、現在の経済の伸びからいくと、むしろ非常に停滞ぎみであるというふうに言っても、差し支えないと思います。  ところが、いわゆる訪販品を見ますと、これが一一四・六%の伸びを示しております。これはやはり八二年度の統計でありますが、前年比であります。そうすると、訪販品の場合は一四・六%と、これはまた高度成長経済時代のような形に伸びていると言っても、差し支えないと思うのです。一般化粧品の場合が一〇六・八%でありまして、大体六・八%の伸びでありますから、現在の成長よりはちょっといい、こういう格好になりまして、全体的に見まして、訪販品の伸び方が、これは異常と言ってもいいくらいの伸び方を示している。それは訪販メーカーの努力によるかもしれませんけれども、あるいはシステムの中でそういう伸び方をさせるような状況があるのではないか、こういうふうに考えるわけでありますが、こういうことについてどんなふうに見ることができるか、この見解を伺いたいと思うのです。
  45. 小長啓一

    ○小長政府委員 先生御指摘のように、訪問販売は消費者にとっても大変便利な形態ということもございまして、最近、その利用がふえておることは事実でございます。私どももそういう訪問販売件数の増加に伴いまして、それに伴うトラブルもまた増加傾向にあることは、十分承知をしておるわけでございます。先生御指摘のような、いわゆる無理な押し込み販売的なものによってそういうことがふえてきたのかどうかという点については、必ずしもそういうふうには認識していないという状況でございます。
  46. 上坂昇

    上坂委員 そこで、この異常な売り上げの伸びを示している訪販業界を見まして、特に一つの例をメーカーにとってみたいと思うのです。それはノエビア化粧品でありますが、最近、雑誌等でも非常に盛んにこれが取り上げられて注目を浴びているわけであります。国際商業であるとか、最近では週刊朝日とか、週刊新潮とかでもいろいろと取り上げられているわけでありますが、通産省に私が質問をすることで、いろいろ質問の要旨をとりに来たときに、通産省の方にも差し上げておきましたけれども、粧苑毎日という五十七年五月十五日付の業界紙があります。その業界紙の中に、こんなふうに出ているのですね。最近、時々見られる業界誌などのノエビアに対する告発調の記事の内容は、公正な客観報道と見られないものがある、ノエビアという企業が自由競争を行うという面で、基本的に逸脱しているとは見ていない、実は、これはどこの言葉かと思ったら、通産省の商放課の人が言った言葉なんであります。  そこで、私もこんなことを言っていいのかなと思ったわけでありますが、こういう考え方、ノエビア化粧品に関して、今でも通産省はそういうふうに考えておられるのかどうか、これをお答えいただきたい。
  47. 小長啓一

    ○小長政府委員 先生御指摘の資料につきましては、私どもも内容は承知をしておるところでございます。ただ、ここで私どもの商放課の名前がメンションされておるわけでございますけれども、この内容につきましては、私ども考え方がかなりオーバーに伝えられておる点はあると思います。ただ、一言私ども結論的に言及をさせていただきたいと思いますのは、ノエビア化粧品の具体的な販売取引方法につきましては、言われているところのいわゆるマルチ商法ということではなくて、そしてまた、そういうことによる被害あるいはトラブルというものが生じておるという苦情は最近特に聞いていないということは事実でございます。
  48. 上坂昇

    上坂委員 そこで、マルチ商法ではないということだと思いますが、しかし最近、マルチ商法は、これは法律で抑えられているから実際にはできない。そこで、商売のうまい人は、マルチ的なあるいはマルチまがいといいますか、疑似マルチといいますか、そういう商法に入ってきて、そこで、これを非常に大きく利用して法の網をくぐって商売をする方法が非常にばっこしているというふうに考えるわけです。  それに該当する点がありはしないかということで申し上げたいと思うのですが、ノエビアの販売システムというものを見ますと、いわゆるメーカーである本社があります。その下に販売会社があります。これは販社という名前で呼んでいます。そしてその下に第一営業所、またその下に第二営業所、そして最終的な販売員となるのだろうと思いますが、いわゆる美容社員と言われるノエビアレディー、しかもこれが今や六十万人に達している、こういうことになっているようであります。  そこで私は思うのですが、販社、第一、第二営業所、ここは実際に品物を最終の大衆に対して売っていない。本当は、ポーラなんかを見ますと、いわゆる販売員というセールスウーマンがいて、その人たちが末端の一般の消費者のところへ行って売る組織になっておるわけですね。そういう形にここでも形態だけ見ると見られるわけです。ところが、実際にこのノエビアレディーと言われている六十万人もいる人たちが、果たして販売員なのか、それとも本当は六十万人の消費者なのか、ここのところがどうも私にとっては明確でないわけです。  というのは、ポーラとか何かになりますと、かなり強力に、六十万も七十万人もつくらないですね。やはり十五万かせいぜい十七、八万人の人にとめて、それに非常に教育をたくさんして、売り方の教育から何から全部やって、そしてお化粧の仕方から何から一切覚えさせて、それで訪問販売に出してやるわけです。ところが、ノエビアの場合にはそういうことは一切聞いていないですね。ほとんどが素人的な形になっている。また、五十万、六十万という人を教育するということもこれまたえらい大変なことだろうとは思いますけれども、そういうシステムになっておる。     〔委員長退席、田原委員長代理着席〕  そしてもう一つは、最近、ノエビア商品のバッタ売りというのですか、そういうのが出てきている。そして、このバッタ売りというのが一体どこから出てきているものか、営業所から出てきているものなのか、それとも販売レディーの方から出てきているものなのか、ここがなかなかつかめませんけれども、恐らく、ノエビアレディーと言われる美容社員、そこのところが抱え込んでどうにもならなくなったものが出ていくのではないか、こういう感じがするわけであります。  そうしますと、やはりいわゆる標準定価販売、定価がついていて大体その線で売られている化粧品というものが全くえらい値段で、その四割とか五割引きで売られるということになりますと、いわゆる化粧品そのものに対する信用度というのですか、やはり化粧品というのは薬九層倍みたいな形で、これは瓶だけの値段なんで、中身は何でもなかった、こういうことになりますと、その中身に対する信用、しかも、これは女性を美しく、健康をよくするためのものでありますから、それが品質が悪いというような格好になってしまったのでは、これは問題が出てくるだろう。そこでやはり、きちんとした信用ある内容の品質というものが維持されていかなければならない。そういうものが維持されるのに非常に大きな影響が出てくるのじゃないか、こういう形もあるわけです。  それから、先ほど言いましたように、このバッタ売りのおかげで、店頭売りをやっている制度品の、あるいは一般品を扱っているお店が、商品が非常に売れなくなって、これが経営を圧迫する大きな原因になってくるということになりますと、経済の低迷に輪をかける、こういう形になってくると思うのです。そこら辺は非常に問題だと思うので、こういうことについて調査をして、そしてそれらについての対策をとるということも必要なのではないか、こういうふうに考えるわけでありますが、その辺はいかがでしょう。
  49. 小長啓一

    ○小長政府委員 先生の御指摘のように、五十一年の六月に制定をされました訪問販売等に関する法律によりまして、いわゆるマルチ商法と呼ばれます連鎖販売取引が規制の対象になっておるわけでございますが、その定義によりますと、第一に、物品の販売の事業であるということ、そして、販売の目的物たる物品の再販売をする者を特定利益を収受し得ることをもって誘引するということが第二の要件、第三の要件としまして、その者と特定負担をすることを条件といたしまして、その商品の販売に係る取引を行うという三つの要件によりまして、連鎖販売取引というのを定義をしているわけでございます。  御指摘のノエビア化粧品の販売方法でございますが、先生のお話のように、販売会社の下に第一次営業所、第二次営業所、その下にノエビアレディーというような組織になっていることは御指摘のとおりでございますが、私どもの理解をしておるところでは、これは販売業務代行契約という形で、つまり委託販売の形をとっておるということでございまして、訪問販売法によります連鎖販売取引の要件であります再販売行為には該当しないものというふうに理解をしておるわけでございます。  また、先ほども申し上げましたように、現在までのところ、ノエビア化粧品の具体的な販売方法につきまして、特段の被害とかトラブルといったようなものにつきまして、私どもに申し出があったり、あるいはその届け出があったりというような状況はないわけでございますので、したがいまして、これ以上ノエビアの販売方法につきまして私どもも詳細に調査をしておるということにはなっていないわけでございますが、現状までのところ、今申し上げましたような理解になっておるわけでございます。     〔田原委員長代理退席、委員長着席〕
  50. 上坂昇

    上坂委員 今の局長がお答えになった中で、「ノエビア化粧品販売業務代行契約書」というのがありますね。これは全部おしゃべりしていると時間がなくなってしまうから一つをとってやりますが、第五条に遵守義務というのがあるのです。  これは一番に、「甲の指示した価格で販売すること。」ということになって、価格をちゃんと維持させる。これは、再販価格維持制という格好になってしまうのではないかと思うのです。それから、「甲の指定する販売地域において販売すること。」販売地域まで指定するわけです。業務代行というのは委託契約書だ、こういうふうに言っているわけであります。もう一つ、三番目の方に行きますと、他社製品と合わせて販売してはならない。これは独禁法に抵触するような感じが私はするわけであります。  それから、第六条を見ますと、販売代金の支払いがありまして、これは「販売代金の支払」、こうなっているのですが、もちろん、委託したって販売するのですからそれでいいだろうと思うのですが、二十日までに出荷した商品の販売代金を翌月の五日までに送金する、こういうふうになっているわけです。そして、委託料は幾らだというふうなことは全く決められていないのですね。したがって、名前は販売業務代行契約書になっているんだけれども、どうもこれは販売契約書じゃないかという感じがしてならないのです。  そこで、一つ問題なのは、実は化粧品会社の契約書は大体こうなっている、あっちこっちのやつを見ると。それがどうしてそうなったかというと、どうも公正取引委員会が、ここのところを業務代行にすればそれでこれは大丈夫なんだよ、こういう指導をした、こういうふうに化粧品会社は言っているようであります。そうなりますと、公正取引委員会というのは一体何やってるんだ、こういうふうに言わざるを得ないのですが、その辺の真相はどうかということが第一点。  あともう一点、先ほど局長が問題ない、問題ないと言って、どこからも苦情が来ないと言ったけれども通産省信用されてないのかもしれないね。通産省に持っていったって取り上げてくれないんじゃないかということで持ってこないということになれば、これは困るのです。今度私のところへ来たのは皆回しますから、きちんとやってくれるようにひとつお願いをしたいと思いますが、さきの公正取引委員会の方からのお答えをいただきます。
  51. 奥村栄一

    ○奥村政府委員 先生御質問ございました契約書の改定につきまして、相談を受けて何か指導したのではないかという御指摘でございますが、その事実は全くないようでございます。
  52. 上坂昇

    上坂委員 さすがに公正取引委員会だから、そういうことはないだろうと僕も思っておったわけでありますが、聞くとメーカーの方はみんなそう言うものですから心配だったわけであります。  そこで、お伺いしますが、先ほど申し上げた、私が指摘した点についてのいわゆる法的な、これが委託契約書だというふうにはっきり言えるかどうかということについての御見解もついでにいただきたいと思います。公正取引委員会でもどちらでも結構です。
  53. 奥村栄一

    ○奥村政府委員 お答えいたします。  代行契約かどうかにつきましては、書面の表題にそう書いてあるからということだけではもちろん判断できません。それぞれの項目について、もちろん子細に点検をする必要があるわけでございますが、ただ、契約書の書面に書いてあるということと、現実にどういう形で取引自体が行われているかということとまた別でございますので、これが果たして本当に業務の代行、売買の代行の契約なのか、それとも完全な売買契約であるかということは、その実際の取引の実態を見てみませんと、直ちにお答えはいたしかねるということでございます。
  54. 上坂昇

    上坂委員 そうしますと、実際にこれを扱っている業者といいますか、そういう人たちがいろいろな問題を提起をして、それが通産省なり公正取引委員会の方に提起をされて、それで検討すれば、そこではっきりした見解が出る、こういうふうに解釈してよろしゅうございますね。
  55. 奥村栄一

    ○奥村政府委員 先生仰せのとおりでございます。
  56. 上坂昇

    上坂委員 私は、ここにノエビア化粧品の本社に対して抗議をしている人の、実際に販社をやっていた人の資料を全部持っているわけです。そこでの取引制度をずっと見てみますと、まず第一番に、増設キャンペーンというのがあるわけですね。普通、何といいますか、販売の宣伝の方法というのは、大体ノルマをかけるにしても、幾ら幾らの売り上げを上げろ、こういう格好でやるのが普通だと思うのですね。目標を今月は何千万円売り上げをするとか、何億売り上げにするとか、こうやっていくのが普通の販売会社の常道だ。ところが、ノエビアに限ってはそうじゃないのですね。  どうやるかというと、増設キャンペーンというのが大体一年に二回ずつ行われているようでありますが、この増設キャンペーンというのは、営業所をふやせ、それから、いわゆるレディーをふやせ、こういうことなんです。それを一人ふやすと一点と称しまして、それについて賞金が出るわけなんです。ですから、品物を売るより営業所をふやし、レディーをふやせば、それが上位の人の収入になってくるというシステムなんです。ですから化粧品を幾ら売るとか何千万円売るとか何億売るということに関係がない。むしろ人をふやせば、そこへ委託するということになるのですか、買い取り制かどうかわからないけれども、委託をする、あるいは買い取りさせるということになれば、その人たちがたくさん品物を抱え込む。  そして利益がありましてね。例えば販社から第一営業所にやるときは四〇%だ、その次に卸すときには今度は四十何%だということになると、その差額だけが販社なり第一営業所の利益になっているのです。だから品物を売るんじゃなくて、下へ卸していくという格好にするのです。ところがその差が非常に低いのです。大体三%程度なんです。この三%程度ではとても食べていける道理がない。少なくとも一割から一割五分、二割ぐらいの収入がなければ、これは人を雇ってやることはできないから、そこで品物をうんと抱え込む、こういう格好になるわけです。品物をうんと第一営業所が抱え込むとすれば、その下にそれを販売するところのいわゆる販売レディーというのはうんといなくちゃいけない。それに五万円なり十万円なりというものを持たしていくということになれば、それには物すごい人数の人が必要だ。したがって、その与えられた一番末端の販売員というのは、末端消費者に、一番の消費者に売って歩こうと歩くまいと、そんなことは勝手だ、そのレディーに持たしてしまえばいいんだ、こういう形になっていると私は考えています。  これがこの増設キャンペーンのやり方で、人をふやすというやり方、これこそがマルチ商法のいわゆる根幹になるものではないかというふうに思うのです。これは悪徳商法被害者対策委員会委員長の見解によりますと、マルチ商法の定義というのは、無店舗、個人を対象として商品を再販売する者を特定利益が得られると勧誘して、そして特定負担をさせることを条件とする取引である。この特定負担をさせているかどうかということがまだはっきりしていないというところに、マルチ商法と規定することができない、こういうふうにおっしゃるのだろうと私は思うのですけれども、先ほど一番先に言った、六十万人の販売員が、一体これは消費者と見るべきなのか、あるいは販売員と見るべきなのか、ここのところにポイントがある。もし販売員と見ても、その販売員が売れなかった場合には、バッタ売りで、これが市場を攪乱する恐れになっているし、もしこれが消費者として見るならば、抱え込んじゃって五万円なり十万円で抱え込んでいけば、その人数だけふやしていけば、商品はいつでも売れる、こういう格好になってしまうのじゃないかと思うのですね。その辺の見解がマルチ商法であるかどうかの違いであって、そこでまがい商法ではないか、こう見ているわけでありますが、これは私の見解に誤りがあるかどうか、その辺のところをひとつ答弁をいただきたいと思います。
  57. 小長啓一

    ○小長政府委員 お答えする前に、ちょっと一言言わしていただきたいと思いますが、マルチに関します通産省への苦情申し立て状況というのは、最近はほとんどないという状況になっておるわけでございますが、先ほど先生は、通産省に恐れをなして来ないのではないかという御指摘がございましたが、実は苦情処理の窓口は通産省本省だけではなくて、地方通産局、それから地方自治体にも全部窓口を設けておりまして、その苦情は全部本省で集計できる格好になっておる状況でございます。したがいまして、その流れの中でマルチに関します苦情申し立て状況は、最近ゼロであるということを冒頭申し上げさせていただきたいと思います。  先ほど先生御指摘の具体的な案件の問題でございますが、おっしゃいました構成要件はおっしゃるとおりでございます。ただ、具体的な事実がその構成要件に該当しているかどうかというのがまさに問題なわけでございます。したがいまして、先生がせっかく御指摘の案件でございますので、私どもといたしまして前向きに、その事情を具体的に把握をさせていただきまして、マルチ商法に該当するのか、あるいは従来言われております委託販売契約にとどまっておるのかどうかということについて、判断をさせていただきたいというふうに考える次第でございます。
  58. 上坂昇

    上坂委員 私のところへ来ている訴えがありまして、いろいろ相談に乗ったわけでありますが、その人に言わせると、例えば品物を預けられてしまう。二百万なら二百万の信認料、信認金というものを払って、販社、販売会社という名称をもらったわけですね。ところが、二百万どころの騒ぎじゃなくて、一千万も二千万もするような品物をだあっと預けられてしまう。したがって、それを急いで第一営業所に卸していかなくてはならない。そういう形でこれをずっとやってきたのですが、それが第一営業所、第二営業所にいきますと三十万とか五十万というふうに信認料が下がってくる。ところが、下がってはいくんだけれども、その都度品物がぼっと来る。そして最終的に売れなくなった場合には、委託ですから本当は返していいわけです、返品がきくはずなんですが、絶対に返品がきかなくて、信認料で相殺をされてしまう。信認金というのは本当は預託している金なんですね。ですから、本来は返さなくてはならぬ。契約が解除されたときには返さなくてはならないのですが、返さない。それから返品は絶対に受け付けない、受け付けないでこれを全部代金を払えということで裁判まで起こってしまう、こういう状況になっているわけです。  その人は私のところへ来ましたから、この資料を全部もらいました。これを今度は通産省の方に持ち込もうと思いますので、そのときには十分相談に乗ってもらいたいと思うのです。そして、こうした悪徳のような商法のあり方については、これをなくしていくような形にして、流通経済の正常化のために努力をしてもらいたいと思うのであります。  今のところが一つ問題でありますが、もう一つの問題は、このノエビア化粧品というのは自然化粧品というのを非常に盛んに使うわけですね。化粧品の中に一体自然化粧品などというものがあるのかどうか、この辺の見解をひとつお聞きしたいのですね。
  59. 野々内隆

    ○野々内政府委員 自然化粧品なるものがあるかどうか、大変申しわけございませんが、よく存じておりません。
  60. 上坂昇

    上坂委員 そういう言葉に一番弱いんだ、回答に。これはどうにも困ってしまう。  自然化粧品というと僕は何といったらいいのでしょうね、ミカンの皮か何かを搾ってつければ、何となくこれは自然化粧品のような感じがするわけだけれども、大体、いろいろ化学的な手法、技術によってつくり上げられているものだと思うのですね。あるいは合成されているというふうに思うので、どうも自然化粧品というのはないんじゃないか。最近、自然食というのがたくさんあるけれども、化粧品というのはやはり何らかで化けているんじゃないかと思っているわけです。化学的な変化が行われているんじゃないかというふうに思うのですが、そこのところがこの商品の目玉というのですか、それでテレビに毎日映っているんです。こういう宣伝の仕方は誇大宣伝とも言えない、しかし景表法に反するようなものにならないかどうか、この辺は公取委の方いかがですか。
  61. 奥村栄一

    ○奥村政府委員 お答えいたします。  景品表示法におきましては、商品の内容について実際のものよりも著しく優良であると一般消費者に誤認される表示が不当表示である、こういうふうに規定いたしておりまして、これを禁止しているわけでございます。御指摘のノエビア化粧品の広告あるいは表示が不当表示に該当するかどうかは、表示の具体的な内容、その言葉だけでなく全体としての表示といったふうな形も必要でございまして、表示の具体的内容それから商品の原材料、加工方法等について実態も見てみなければにわかには判断しがたいのではないかということでございます。  化粧品の表示につきましては、景品表示法に基づいて昭和四十六年に業界の自主規制である公正競争規約というものがつくられておりまして、ノエビア化粧品は規約の参加者でございます。したがいまして、規約に違反しているかどうかということについて、規約の運用機関である化粧品公正取引協議会においてさらに、それを調査するようにまず指導してまいりたいと考えております。
  62. 上坂昇

    上坂委員 もう一つは、そうした宣伝の方法というか、あたかも自分のところで扱っているものだけは非常に自然に近いというのですか、害がないというのですか、そういうものである。ほかの化粧品より非常に美しくするんだ、ほかの化粧品は石油製品か何か使っているから。そこで、ちょっとマッチをつけてみますなんて言ってマッチなんかつけると、これはアルコールが入っていると燃える場合があるわけです。そうすると、これは石油製品である、こういうことをやって宣伝をやるということになると、このこと自体がいわゆる他社を誹謗する格好になる。この他社を誹謗するということも実は法律で禁止されて、これはやってはいけないことなんですね。そういう形になってしまうのではないかというふうにも思うのですが、ここはどうですか、公取委の方。
  63. 奥村栄一

    ○奥村政府委員 景品表示法におきましては、先ほど申しましたように、実際のものあるいは競争者のものよりも著しく優良であると誤認させるのが悪いということでございます。他のものの中傷、誹謗というものが、それが事実であるとかないとかということにも絡んでまいりまして、もし客観的な事実を述べたにすぎないということになってまいりますと、景品表示法肉体の違反かどうかの判断がなかなかに難しい問題が生じてくるわけでございます。  ただ、先ほど申し上げました化粧品の公正取引協議会というのがございまして、そこでつくっている公正競争規約には、他社の中傷、誹謗の禁止という規定を自主的な規約として定めておりますので、そちらの方の自主的な規約の問題には当然いろいろ関係はしてくるのではなかろうかと思われるわけでございます。したがいまして、先ほど申し上げましたように、自主的な団体である公正取引協議会でその辺をよく調べて判断して、処理できるかどうか、そういうことをまず指導してまいりたいと考えているわけでございます。
  64. 上坂昇

    上坂委員 私、先ほど言いましたいわゆる末端の販売員、ノエビアレディーといわれる人たちが六十万人もいて、さっき言ったキャンペーンが行われて、そして募集が行われる。その募集をやるときにも、催眠術にかけたような格好での募集が各所に見られる。あなたは一カ月たつと百万円もうかるとか、一年か二年やったら家が建ってしまうとか、すぐに次には第一営業所になって、その次、第二営業所になればビルも建ってしまいますよといって夢をずっと与えていくわけであります。そういう形のやり方をするのがマルチの特徴なんです。ですから、実はそういう形でマルチに非常に似ているので、これは問題じゃないか、私はこう言っているわけですが、今申し上げた私の考え方、これは局長とういうふうに思いますか。全然マルチ的でない、こう思いますか。
  65. 小長啓一

    ○小長政府委員 本件につきましては、今先生がお持ちの資料を私どもいただきまして、よく内容をチェックさせていただいた上で具体的な判断をさせていただきたいと思う次第でございます。
  66. 上坂昇

    上坂委員 それでは、福井県でこういう例がありました。福井は繊維の本場ですが今非常に不況で、繊維工場とかなんとかが皆倒産をする。そこに三十名なり四十名の女性が勤めている。その人たちが失業をしますと、これが全員ノエビアレディーになってしまう。各所に幾つ幾つも出てきますとこれは大変な数になる。そうすると、さっき言ったように、別にその人が商品を売って歩かなくてもいいわけですね。その人に買ってもらえばいいわけです。そこでその人を全部販売レディーにしてしまう。そうするとそこへ五万円なりいくわけです。そうすると、二割引きですから二割くらいは自分でつけるのだけれども、あとは親戚に持っていって売ったり友達に持っていって売ったりする。一回りすると今度は売れなくなってしまうから抱え込む、こういう形になっているのが実態のようでありまして、この辺のところも資料を差し上げますから十分調査をしてもらいたいと思います。  化粧品の方はこれで終わりにして、今度はダイヤモンドの方をひとつやらせてもらいたいと思うのであります。  実は五十七年三月十九日の本委員会におきまして、私はダイヤモンドの問題を取り上げまして質問をしたわけです。そのときに、ダイヤモンドというのは値段が全くわからない。ダイヤモンドばかりではなく宝石類というのは大体そうなんですね。この間、こういう例がありました。去年和光で一千万円で売られた宝石があるのです、何カラットであるか忘れてしまったけれども。ところが、それと同カラットのもので、品質から何からいってもほとんど同じものが、ある商店では三百万円だったんですね。これだけの差が出てくるわけであります。実は国際価格によりましても、いわゆる透明度、傷、色、カットの仕方とかというものがありますが、そういうものによって一カラット大体荷五十万くらいから一千万くらいの差はあるわけです。だけれども、それは傷があったり何があったりで違うからそういう差が出てくる。大体同じものは同じように売らなければならない。それで、もしそれが片っ方の消費者に渡るときは一千万円であって、こっちの消費者に渡るときは三百万円だとしたら、三百万円の人は得したかもしれないけれども一千万円で買った消費者はすごく損をしている、これは大変なものを預けられた、こういうことになってしまいますね。そうなりますと、これは消費者保護にはならないと思うのです。  そこで、消費者を保護するという観点から見れば、やはり宝石類といえどもこれについてはちゃんとした基準をつくるべきではないか、そうして一つ一つの商品に対して鑑定書をつけて、その鑑定書がきちんとある一定の標準に合ったもので、これが買う人に渡される、こういう形にしなければならないのではないか。それをやる意思があるか。しかも、宝石類というのは税金をうんと納めているのですよ。ぜいたく品の中でも税金がうんとかかっている品物ですから、そういう意味でもこれはきちんとする。同時に、そうした鑑定書がきちんとする、戸籍がきちんとすることによって脱税が防げる。もう一つは、盗難に遭ったときもその行方がすぐにわかる。こういう形にすべきではないかという指摘をした。そうしたらその当時の局長か何かが、それは前向きに検討しなければいけない、こう言ったのですが、検討したことがあるかどうか。
  67. 黒田真

    ○黒田政府委員 お答えさせていただきます。  先生御指摘のように、五十七年当時この議論がございまして、政府委員から検討するということを御答弁申し上げております。先ほどもその後いろいろ検討しておるところでございます。ただ実情はなかなか難しい問題があるようでございます。  ダイヤモンドの鑑定自身につきましては、先生御指摘がございましたように、国際的な流通がございますから、幾つかの要素について評価がされる、格付がされるというルールはあるようでございます。四つのCというふうに言っておるようでございますが、重量カラット、研磨のカット、色カラー、透明度のクラリティー、そういった要素によってそれぞれ格付がされ取引が行われているようでございます。ただ、しかしながらこれは非常に長い取引の歴史がございまして、アメリカ流あるいはヨーロッパ流、ヨーロッパの中でもイギリス流、スカンジナビア流、ドイツ流、フランス流といったような、いろいろな流儀があるようでございますので、それらの鑑定方式、表示というものを統一することはなかなか容易ではないという背景があるようでございます。  ただ先生御指摘のように、業界といたしましては、消費者の信用を得るという見地からいろいろな勉強をしているようでございます。そういった流派の違いがございますけれども、可能なところから改善を図ろうということで、鑑定書のモデルとなるような記載事項というものを発表いたしましたり、用語の相互比較というものを試みましたり、消費者の苦情相談案件の情報を収集するということで、何がしかずつ前進をしつつあるのが現状だろうと思いまして、私どもといたしましては、そういう業界の動きを側面的に支援をする。役所が先頭を切って入っていってまとめるということには必ずしも適していないようにも思われますので、業界の動きを横合いからそっと支援をしている。しかし、業界の方もいろいろな問題に直面しながら、わずかながら前進をしている、かような現状だと考えております。
  68. 上坂昇

    上坂委員 局長、鑑定の場合、国際的にいろいろあっちこっちでやる方法があると思うのですが、ひとつ日本的な方法を編み出すように努力をしてもらいたいと思います。外国の例とか何かいっぱい集める、そういうのを集約するのは日本はうまいのだから、それはぜひやってもらいたい。それからもう一つ、鑑定人の問題ですが、宝石の鑑定は大体鑑定人は鑑定をすることができるのだけれども、それが果たして本当の鑑定になっているかどうかというところに問題が生ずるわけです。というのは、どうしてもやはり依頼をする方のいわゆる貴金属商なり、あるいは販売店なり、その人たちの恣意というものに動かされやすいところに問題があります。それでないと自分も飯の食い上げになるおそれがあるから、自分の本当の主義だけでやることができない。そこで一つ基準をつくって、その基準をつくる前にいわゆる鑑定人の登録をさせるとか、あるいは組織をきちんとつくって、その人たちに依頼をするとかというような形をやらなければいけない。それを向こうの動きに、こっちは黙って見ているということで、はだめなんですね。というのは、貴金属を売っているところにみんな所属をしてしまう格好になっているから、そこのところがなかなか難しいのです。したがって、やはり通産省なり何なりが音頭をとらないと、本当の立派な宝石を消費者に渡すということができない、消費者保護になっていかない。ここに一つの問題がある。  それからもう一つは、やはり訪問販売が行われるわけであります。宝石の訪問販売というのがどんどん行われて、そこで御承知のようなトラブルがまた起こってきた。いわゆる金のまがい商法、商品取引のまがい商法、あれと同じような形のが今度はダイヤモンドに出てきている。この間、御承知のように、金が取引市場に上場されてから後、また出てくるのじゃないかと言ったら、いえ、もう金しか出てきませんと通産省が私に答えたのです。ところが、その後、プラチナとか鎖とか出てきて、そして、この銀もプラチナも全部上場商品に指定をしなければならなくなっちゃった。今度またごらんなさい、恐らくダイヤモンドが近くそういう形になってきて、これも指定商品にしなければならぬという格好になるだろうと私は予想しているのですが、そういう格好で訪問販売の中でこれが売られているおそれがあるのですね。  そうしますと、きちんとした鑑定のないものが、これはいいものだ、いいものだと言って売られたら、消費者はどんなに損をするかわからない。せっかくきれいな指輪をかけようと思ったのに、まがい物だったりしたら困っちゃうでしょう。だから、この訪問販売なんかにどうしても必要なのはやはり鑑定書である。ですから、何十万、何百万あるか知らないけれども、大変な数ではあるけれども、それに一品一品、ちゃんとした鑑定書をつけて、そして戸籍抄本をつけるということをしないと、税金もちゃんと取ることができないし、脱税の対象になってしまうし、また盗まれたときにはそれを見つけ出すこともできないという、損害を一般の消費者に与えることになる。そこでこういうものが必要だ、こう言っているわけなんです。だから、早くやってもらわなければだめなんです、あれから二年半たっているのだから。いかがですか。
  69. 黒田真

    ○黒田政府委員 仰せのとおり、これは非常に高価なものでございますし、現在、大体正常な取引り多くは鑑定書をつけるという形で実際には取引されているというふうに私ども承知をしております。  ただ、その鑑定の方式というものが、先ほどもちょっと申し上げましたが、それぞれの欧米の国で育ったものが日本に採用されているということでございまして、その間がばらばらである。日本流の鑑定方式のようなものができないか、そのための鑑定人の登録というようなものまで進んだらどうだという御指摘でございますが、まだまだ日本はダイヤモンドのマーケットとしては、大きくなりつつはございますけれども、やはりそのすべてを外国から輸入をしている。そして、その輸入されるものに外国の鑑定書がついておるという現状もあるわけでございまして、残念ながらと申し上げるべきかと思いますけれども、その鑑定の基準というものは、外国で成長をしてきた基準によらざるを得ませんし、そして、鑑定人というものも、その基準をつくったアメリカなり、あるいは国際的な貴金属宝飾品連盟というような、CIBJOと言っておりますが、そういうところの登録を受けているという人たちが現在活躍をしているというのが現状だろうと思います。  これを一気に統一をしたり、新しい基準をつくるということは、一つ考え方かとは思いますか、必ずしも現実的とも思えませんが、私どもといたしましては、そういういろいろな基準国内に多くあるということで消費者が迷ってはいけませんので、その辺はできるだけ各システム間の比較が可能になるように、あるいは鑑定書というものがそもそも同じような様式で書かれるようにということは望ましいことだと思っておりますが、これらについては既にその鑑定人の人たちの団体ができておりまして、宝石鑑別団体協議会というようなところが鑑定書の基本的記載表示規定というようなものを自分たちで決めて、五十七年十月一日から実施をするというようなことで、ある程度の前進もあるということで、我々もそういうものを応援をしてまいりたい、かように考えているところでございます。
  70. 上坂昇

    上坂委員 今聞いていると、一体やるのかやらないのか、そこのところがさっぱりわからない。私は、やる気があるのか、やるのか、やるのだったらいつやるのかということまで聞いているわけなんです。ごちゃごちゃ答弁はしたんだけれども、何だかさっぱり内容がわからないじゃないですか。もう一度。
  71. 梶山静六

    梶山委員長 明確な答弁を求めます。黒田局長
  72. 黒田真

    ○黒田政府委員 大理想としては、日本式鑑定方式というものがあればよいかということになると、私もあればよいと思います。ただ、現実的かと言われますと、いささか疑問を持たざるを得ない。しかし、そういったことはございますけれども、現実のいろいろな状況を一歩でも前進させるという、今の業界の努力というものは我々も支援をしていきたい、かようなことでございます。
  73. 上坂昇

    上坂委員 この間大沢商店が倒産しまして、その下に「ジュエルパレス」とか「珠宝」という宝石店がありまして、これも倒産に追い込まれた。そういう場合に、一体、そこで扱っている商品というのがどういう格好で流れていくのかというようなことも非常に問題になる点だというふうに思っているわけであります。  そこで、先ほど言ったように、宝石業界の場合にはやはりきちんとした宝石に対する戸籍がないものだから、どうしてもいわゆる脱税の対象になってみたり、やみで流れてみたり、あるいは素人は全くわからないからいろいろな品質の違ったものを、悪いものを預けられたりするわけです。特に訪問販売の中ではそういう例がかなり出てきて、昨年でも大体三百五十ぐらいのトラブルがあったというふうに言われておるわけであります。したがって、そうしたトラブルがあるということ自体が消費者を困らせることなので、消費者保護の立場からも早急にこれに対する対策を立てる必要があるだろう、こういう形で私は質問をしたわけであります。  特に、最近の結婚式なんか見ますと、これは女の人に指輪をやるばかりじゃない、男までみんなダイヤの指輪をもらっているわけだから、今は結婚式なんか二つずつ使う。委員長が言うように五本の指に全部はかけないけれども、そういう形になってきているわけでありますから、この点については早急にひとつ対策を立てるように御努力をいただきたい。  それから、いわゆる金取引のまがい商法ですね、ブラック的なものにならないように、このダイヤモンドについても十分に監視をしていっていただきたい。これを申し上げまして、そのことについて一言だけ聞かしていただいて質問を終わります。
  74. 黒田真

    ○黒田政府委員 先生ただいま御指摘のような出題点を十分頭に置きまして、今後関係業界を指導していきたいと思っております。
  75. 上坂昇

    上坂委員 ありがとうございました。
  76. 梶山静六

    梶山委員長 中川嘉美君。
  77. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 私は、通産大臣並びに経企庁長官に、きょうは、経済の諸問題をめぐって伺ってまいりたいと思うわけでございます。  まず、本論に入ります前に、河本長官に冒頭に伺っておきたいことは、過日、牛肉、オレンジの問題については、交渉については一応解決を見たという形でありますけれども、今度は、ブッシュ副大統領が五月に来日をする。これは、御承知のとおり、金融開放、すなわち自由化の間についての課題がここにあるわけですけれども、これは当然金利の自由化につながる大きな問題だと私は思うわけですが、この点について、我が国はどのような対応を行うべきか、どういう態度をとるべきであるか、冒頭に、経企庁長官のお考えを伺いたい。対外経済閣僚会議の一員としての長官の御意見を伺っておきたいと思います。
  78. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 ようやく農産物とVANの問題が解決をいたしまして、これから、残された数項目の問題があるのですが、特に金融資本の自由化問題、こういう問題につきましては、この十六日、十七日、我が国の政府代表がアメリカへ行きまして、アメリカ側とことし第三回目の交渉をする、そういうスケジュールになっております。また、関税問題についても、五十九年度分が一応終わりましたので、引き続いて六十年度分の検討に入る、こういうスケジュールが組まれておりますが、今月末までにおおよその方向を明らかにしたい、こういうことで、関係各省庁と今、協議を進めておるところでございます。
  79. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 我が国のこの会談に向かっての対応については今おっしゃったとおりかと思いますけれども、今、おおよその対応という言われ方をしたわけですが、もう少しそのところ、おおよその対応とはいかなる対応かということが私の質問でありますので、もう少し詳しく御答弁をいただきたい。
  80. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 個々の問題につきましては、やはり交渉中の問題が非常に多いものですから、今、ここで具体的に申し上げることは御容赦をしていただきたいと思いますが、いずれにいたしましても、さしあたっては、幾つかの項目につきまして、とりあえず貿易摩擦解消する第一弾としてどうしてもやり上げなければならぬ、こういう考え方のもとに今取り組んでおります。
  81. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 具体的な個々の対応ということかまだ出ていないようでありますが、そういった具体性を持った対応を踏まえて鋭意交渉に臨んでいただきたい、このように思うわけであります。それで、経済問題をめぐって、先ほども午前中の論議が交わされておりました。経企庁の発表によりますと、昨年二月を景気の底として景気の回復宣言がなされたわけでありますが、五十八年の実質経済成長率、四-六月期ですね、これが前月比一・一%、それから、七-九月期が一・五%、さらに十-十二月期が〇・八%、この十-十二月期は、成長率は多少落ちていましたけれども、五十八年度の政府見通し、実質三・四%の成長は果たして達成される見通しであるのかどうか、まずこの辺について伺っていきたいと思います。
  82. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 昨年十月の総合経済対策の効果等もございますし、それから世界経済全体が大変よろしいという影響等もございますので、政府目標である三・四%成長は、おおむね達成できる、このように考えております。
  83. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 そうしますと、五十八暦年ですね、このGNP統計によりますと、実質三%成長。この三%のうちの一・六%、これが外需による成長となっているわけですけれども、一・六ということはあくまでも外需依存型と、こういうふうに言わなければならないと思いますが、五十八年度の方ですね、暦年でなくして。先ほどおっしゃった三・四%、この数字基準考えた場合に、果たしてどんなふうな割合になるか、この点いかがでしょうか。
  84. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 政府委員から説明をさせます。
  85. 谷村昭一

    谷村政府委員 ことしの実績見込み三・四%のうち、二・二%が内需、一・二%が外需という見込みを立てております。
  86. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 そうしますと、先ほど申し上げた実質三・〇%成長のうちの一・六、半分以上ですね、これが外需依存型ということに、この数字でもってこういう言い方ができるわけですけれども、今伺いますと、三・四%のうちの二・五%が内需である、これはどのような根拠ですか。
  87. 谷村昭一

    谷村政府委員 今私が申し上げたのは二・二%ということでございます……(中川(嘉)委員「内需については」と呼ぶ)二・二でございます。十-十二月期の実績が、先ほどお諮がございました前期比〇・八%増でございますが、その内訳は内需が〇・六、外需が〇・一ということでございまして、十-十月期の実質GNPの中で、内需が非常に大きなウエートを占めてくるような格好になってきつつございます。一-三月期につきましても、我々としてはほぼ同様な傾向が続くと思っておりまして、そういうことを総合して計算いたしてみますと、今申し上げたような数字になる、こういうことでございます。
  88. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 引き続き長官に伺いますが、去る四月の五日に、参議院予算委員会におけるわが党の峯山議員の質問に対しまして、五十九年度の実質経済成長率、政府見通しの四・一%、これは上方修正の可能性があるというふうに発言されているわけでありますけれども、この可能性を生み出す要因、これがあるとすればどの需要項目でかるのか、内需の盛り上がりを期待されているのか、それとも依然として外需によるものであるか、この辺はいかがでしょう。
  89. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 峯山さんの御質問は、民間調査機関で経済見通しの上方修正の動きがあるかどうか、こういうことに関連してお答えをしたわけでありますが、まず動く可能性がある項目といいますと、一つはやはり海外余剰、経常収支の関係だ、こう思います。それからもう一つは、民間設備投資の動向はもう少しよく見きわめないと何とも言えませんが、若干政府見通しが動く可能性も現在のところないわけではない、このように考えております。
  90. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 ただいま御答弁いただいているわけですが、私なりに認識しているところでは、まず、五十九年度の経常黒字の政府見通しは二百三十億ドル程度であるわけですが、二百三十億ドルということは、五十八年度の見通しとほぼ同額である。これは、言ってみれば史上空前の黒字と言わなければならないわけです。  ところが、昨年十二月二十二日にOECDが発表したエコノミックアウトルックというのがあります。これによると、八四年の我が国の経常収支は三百十五億ドル、こういうことになっておりまして、政府の見通しと大きく隔離しているわけです。二百三十億ドルと三百十五億ドル、これがエコノミックアウトルックによる数字ですけれども、その数字を見られた上でのことかどうかわかりませんが、四月三日の日本経済新聞によりますと、五十八年度の経常収支の黒字政府見通しの二百三十億ドルというのは二百四十億ドルぐらいに膨らむ、さらに、五十九年度にはこれがもっと伸びて三百億ドル、場合によっては三百五十億ドルにも達するのではないかとその後に報道されておるわけです。なぜこのような食い違いが出たのかということがここですぐ疑問になってくるわけですが、もしそのように見込まれるとするならぼ、まさにOECDの見通し数字的にほぼ合致するわけです。  河本長官は、五十九年度の経常収支の見通しについてどのように考えておられるのか、もう少し具体的な数字をもって明らかにしていただきたい。報道によると、長官のことも出ておりますけれども、場合によっては三百五十億ドルになる可能性が強い、こういうような表現をしておられますけれども、いま一つこの表現では納得し得ないものがあるわけで、もう少し具体的にお示しいただければと思います。
  91. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 五十八年度は二百三十億ドルの見通してありますが、若干ふえるかもわかりません。しかし、そんなに大きな金額ではない、こう思っております。  五十九年度の分につきましては、一昨日IMFで発表いたしました数字を参考に先ほども見ておったのでありますが、それによりますと、一九八四年分として二百九十億ドルぐらいを想定をしておるようであります。それから、民間調査機関の中には三百五十億という数字を出しておるところもございます。いろいろありますが、一月から三月までの動きを見ますと、このまま貿易の拡大均衡をしないでほうっておけば相当ふえる可能性が強くなりつつあるのではないか。この動きだけは確実であろう。ただ、具体的な数字は、今のところ確たることは断言しにくいというのが現状でございます。
  92. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 三百五十億ドルになる可能性が強いという指摘があるわけですが、そうしますと、これは今御答弁にあったとおり、私とすれば、非常に具体性に欠けた、また根拠に乏しいといいますか、今言われた民間調査機関の数字をそのままおっしゃっているような気がするわけです。  いずれにしても、このような膨大な数字になるであろうということは承知し得るわけですけれども、この経常収支の黒字というものが大幅であることの原因、これはもう言うまでもなく、輸出がふえる割には輸入がふえない、つまり貿易収支の黒字が大幅にふえるということだろうと思うわけです。  通産大臣もひとつよくお聞きいただきたいと思うのですが、特にアメリカに対する輸出が大幅に伸びているということ、これはもう言うまでもありません。アメリカの一九八三年の対日貿易赤字というものは二百十七億ドル、こんな額にも及んでいるわけです。これは、一九八三年に入ってからのアメリカの景気回復が目覚ましく、前年の実質経済成長率がマイナス一・九%であったものが  一気にプラスの三・三%、ことしに入ってからも、この一-三月期では年率で七・二%の成長となっている。ことしの二月一日の予算教書によりますと、一九八四年の実質経済成長率は五・三%、こんなふうな数字になっております。こうしたアメリカにおける景気回復の要因は、最近では、個人消費とかあるいは民間設備投資とか、こんなふうに言われておりますけれども、こういうことであると当然輸入がふえるわけです。  ただ、アメリカの貿易赤字、これは日本だけがその責任を負う必要はないのじゃないかと私も思います。特に、中南米諸国が今大赤字のために輸入を制限している。さらには、為替レートのドル安のせいもあるでしょう。したがって、去る二月二日の大統領経済諮問委員会の年次報告というのがありますが、アメリカの貿易の赤字について、この年次報告の中で、日本の輸出業者の利益がアメリカの利益を横取りした結果だという一般的な見方は正しくない、こんなふうにも言っております。  そこで通産大臣に伺いますが、五十九年度の貿易収支の政府見通しは三百四十億ドル、こんなふうになっているわけですが、先ほど経企庁長官にはいろいろ経常収支の問題でやりとりをきせていただいたわけですが、貿易収支の方の黒字、これは何億ドルぐらいに膨れると考えておられるか、お答えをいただきたいと思います。
  93. 杉山弘

    ○杉山政府委員 今お尋ねの五十九年度の貿易収支の問題につきましては、政府の経済見通し数字は先生御承知のとおりでございますが、それ以外の数字につきましては、まだいろいろと勉強中でもございますし、私どもの方でも、ここで確たる数字を申し上げるような段階には至っておりません。
  94. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 経常収支の方が二百三十億ドル、これが三百から三百五十億ドルになるんだ、こういう想定が交わされたわけですけれども、これを踏まえて考えても、五十九年度三百四十億ドルという、この貿易収支についてどの程度の膨らみが考えられるかということなので、今の御答弁ですと、全くその具体性に欠けているようにしか考えられないのですが、大体どのぐらいに行きそうか、もう一度御答弁いただきたいと思います。
  95. 杉山弘

    ○杉山政府委員 重ねてお答えするようでございますが、まだ新しい年度に入ったばかりでもございますし、内部ではそれなりに勉強も開始いたしておりますが、今この段階で申し上げるような結諭を得るには至っておりませんので、御容赦いただきたいと思います。
  96. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 政治問題化していた牛肉、オレンジの問題は、先ほど冒頭にもちょっと触れましたけれども、これは一応解決したわけですけれども、これが解決をしたとしても金額的には問題にならない。けさもおっしゃっていたとおりでございます。高級牛肉のCIF価格をキロ当たり二千円と見ても、七千トンということで考えますと約百四十億円程度です。これは一ドル二百三十円で換算しても大体六千万ドル程度。こういうことでは、それこそ貿易黒字の三百数十億ドルの解消には全く役立たない、私もそのように思うわけです。  河本長官は以前、この農産物をめぐる摩擦解消するために、アメリカと一緒になってアフリカに援助する構想というようなものを述べられたような気がするのですけれども、それはさておいでも、今回の牛肉、オレンジをめぐる日米交渉に対してどのように感じておられるのか、率直な御意見をここで伺っておきたいと思います。
  97. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 この問題は金額的には非常に小さいのですけれども、しかし、長い間の懸案事項でもございますし、そういう意味で、政治的に非常に大きな問題になっておりました。それが解決したということでありますから、私は、政治的には非常に大きな効果があった、このように思います。  ただ、このことによって、日米間の貿易黒字が解決できるものでもございません。金額がわずかでありますし、向こうから輸入する価格はもっと私は金額的には少ないんじゃないか、こういう感じがいたしますが、そうしますと、金額的には何ら貢献はありませんけれども、政治問題としては非常に大きな意義があった、一歩前進である、私はこのように理解をいたしております。
  98. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 確かに私も、この貿易収支という面からすれば、話は別としても数千トンぐらいでもって日米間の関係が悪化するということは、これはもう遺憾と言わざるを得ない、そういった愚かなことをするようであってはもちろんならないと思いますけれども、大局的な立場から、今後ともこういった問題について賢明なる対応を一つ一つやはり打ち出していっていただきたい、このように思います。次に、通産大臣に伺いたいと思いますけれども、三月に入って円安の対ドルレートが十円ぐらい円高になったわけです。ドルの暴落説がある中でちょっと気になるわけですけれども、今回の円高は、ドイツマルクのドルに対する騰貴があったマルクに合わせて円が調整されたということのようでありますが、先ほどもお話がありましたように、円高にもかかわらず輸出が好調である。これかアメリカの景気の上昇によるものなのか、それともドルに対する不安があって、輸出業者が駆け込み輸出をしているせいなのか、通産大臣としてこの辺をどう考えておられるか、伺いたいと思います。
  99. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 円高の傾向というものが輸出に対して抑制的に動くということは、これは言うまでもないことでございますが、要するに、現在程度の円高ではさしたる影響がないということが一番言い得ることではないかと思うのでございます。さりとて、円高相場というものが我が国経済に対してどういう影響が出てくるかということは、今後の世界経済の動向であるとか、我が国の景気であるとか、あるいは地域、品目別にいろいろと異なるわけでございますから、そういうことも一概に言えないという場合ももちろんございます。  いずれにいたしましても、今後政府といたしましても、通産省といたしましても、世界経済の動向あるいは為替相場の動向というものを十分見守っていかなければならないと考えております。
  100. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 かつてニクソン・ショックのあった四十六、七年ごろ、国際収支が大幅な黒字で貿易摩擦が起きたことはもう御承知のとおりですが、ニクソン・ショックによって円が急騰したにもかかわらず、この貿易黒字はふえ続けたわけです。同じく五十二、三年ごろにも国際収支の大幅黒字で摩擦が起きたわけですけれども、このときも円が急騰して、一時一ドル百七十六円という円高になったわけで、それでも貿易黒字がふえ続けた。  今回も実は円が十円程度ではあるけれども、円が急騰したのに、輸出は相変わらずふえている。かつて四十六、七年ごろ、それから五十二、三年ごろの輸出の増加をJカーブ効果という言葉で説明しておられたと思いますけれども、今回の輸出の好調そのものもやはりJカーブ効果によるものと考えておられるかどうか、通産大臣、経企庁長官、それぞれお考えをこの際承っておきたいと思います。
  101. 杉山弘

    ○杉山政府委員 先生の、円高にもかかわらず最近の輸出の好調の原因は何かという御質問でございますが、大臣からもお答えいたしましたように、十円前後の円高という現状程度の円相場でございますと、日本の全般的な輸出の問題については、そう大きな影響がないということであろうと思います。  もう少し具体的に申し上げますと、輸出の七割ぐらいは現在機械類でございまして、こういったものにつきまして、価格競争力のみならず、非価格競争力も日本製品は非常に強いわけでございますし、それから中小企業の製品にいたしましても、若干円高ぎみにありました段階で、中小企業庁を通じて各産地の御意見を伺ってみますと、この程度の円高ならば一応大きな影響を受けずにやっていける、こういう感じでございます。  したがいまして、日本側の輸出の競争力についてそういう評価がある一方、先ほど来先生御指摘のように、米国経済は非常に順調でございます。したがいまして、こういうことが輸出の現状好調な原因であろうと思います。  ただ、ドル表示の輸出額につきましては、先生おっしゃるようにJカーブ効果というものも若干は入っていると思われますけれども、基本的にはやはり日本の商品の競争力、それと米国経済の好調、さらには世界経済全体に明るさが出てきたということが輸出好調の原因であろうかというふうに考えております。
  102. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 今回の貿易摩擦は五十六年ころからで、第三回目になるわけですね。やはり国際収支が大幅黒字になっていることが当然原因ですけれども、OECDの見通しによりますと、一九八三年はOECD全体二十四カ国、この経常収支はマイナス二百四十億ドル、この中で日本は二百三十億ドルの実は黒字である。十億ドルしか違わない。向こうの赤字が二百四十、こちらの黒字が二百三十。一九八四年もOECD全体が四百二十億ドルのマイナスという中で、日本は三百十億ドルの黒字、これは大変な数字であるわけです。  さらに、一九八五年の上半期もOECD全体が年率四百十億ドルのマイナスという中で、日本は三百六十億ドルの黒字ということですから、欧米諸国から見れば、世界経済の回復の利益というものを日本はひとり占めしているんだというふうに言われても無理がないんじゃないかな。この辺の数字ですけれども、果たして間違いがないかどうか。またこういった傾向に対する通産大臣、そしてまた、これはぜひ経企庁長官の御意見も、お考えも伺っておきたいと思います。
  103. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 OECDの見通しと日本政府の見通しは若干違っておりますが、傾向としてはそんなに違わない、こう思うのです。  ただ、今のお話は、日本政府が内需拡大策について何もしないでほっておくということになると、そういう可能性がないわけではない、このように思いますが、そうなってきますと、やはり一番案ぜられますのは、日本に対する攻撃が非常に厳しくなり、同時に保護貿易的な傾向が必ず顕在化してくるのではないか。こういうことになりますと、世界経済全体がまた再び非常に悪い影響を受けますし、日本経済も大変悪い影響を受ける。こういうことになりますので、この問題は、そういうことになりますと、経済問題というよりもむしろ政治問題になってくる、こういうことになる危険性もございますので、それだけ私どもはこの問題に対して重大な関心を払わなければならぬ、こう思っております。
  104. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 政治的な問題になるであろうという御意見もわかりますけれども通産大臣どうですか。経済的な立場からひとつ…。
  105. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 河本長官のお答えに尽きると思います。
  106. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 特に、アメリカは一九八五年は一千億ドルに近い経常赤字になりそうだ、こういうふうに言われております。日本の市場開放のおくれにいら立つのも無理はない、私はこんなふうに思うわけですが、去る二月二十九日にはマンスフィールド駐日大使が安倍外務大臣に対して、日本の対応が遅いんだ、こういう不満を表明したそうですし、またブッシュ副大統領も対日問題担当として同様の不満を表明しています。さらに三月二日には宇宙中継によって経団連とブロック代表が会談したわけですけれども、その中でもブロック代表は、日本側は決まって漸進的にという言葉を使うけれども、自由世界第二位の経済大国が、十年か十五年前にそれを言うならともかく云々と言っているわけです。そのほか、さらにECからも、関税引き下げとか市場開放をめぐって強硬な要求が来ているわけでありまして、この要求も、見てみますと、「市場開放 EC、さらに強硬要求」「関税下げ百二十八品目」こういうふうに向こうから言ってきているわけです。特に電機、機械ですね。こういったものが「一時ゼロ」という報道もここで見るわけですけれども、こういうのは挙げていけば切りがないわけです。  先月の下旬にはアメリカのリーガン財務長官が来日しましたけれども、我が国の資本市場の開放のおくれを、机をたたきながら、そのいら立ちを表明していたのを私もテレビで見ております。我が国が世界経済の中でその責任を果たすためには、何よりも内需を拡大して輸入をふやすのだ、これが重要なことはけさほども既に論議されたところでありますけれども、このような世界各国の言い分に対して、長官としてどう対応されたのか、現状を踏まえて誠意ある対応をされたかどうか。内需拡大をしないと大きなトラブルになるというような御答弁を先ほどしておられたわけですけれども、トラブルになるよりも、もう既に大きなトラブルは発生しているんだ、こう言わざるを得ないわけですけれども、この世界各国のそのような言い分に対して、とりあえずどういう対応をなさったか、伺っておきたいと思います。
  107. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 世界各国が、現在の我が国の貿易の黒字とか経常収支の黒字を見て大変いら立った動きをするのは私はよく理解できます。したがいまして、日本は、自分の国のことでありますから、いたずらに引き延ばすということをやってはいかぬと思うのです。やはりできることは思い切りよくさっさとやっていく、こういうことをいたしませんと、よけいに向こうがいら立ってくると思います。  まだ今のところは、マクロ経済対策に対してはそんなに厳しいことは言っておりません。つい数日前にECから申し出があり、アメリカもどうやら何か言いそうだ、こういう気配であります。しかし、今お述べになりましたような数字が背景であるだけ、私どもはこの問題に真剣に取り組んでいかなければならぬ、このように思います。  輸出は幾ら伸びてもいいと私は思うのですが、輸入がそれと並行してふえるという経済に何とかできないかというのが今の日本の課題だと思っております。
  108. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 通産大臣、お時間ですので、どうぞ。  それでは、同じく長官に伺っていきたいと思いますが、経済運営に関しては、自民党の中でも極めて明晰で積極的な長官であられるし、また野党の我々も大変に期待をしているところでありますが、残念ながら五十九年度予算は増税の内容であったり、公共事業が前年比マイナス二%であるために、せっかく七年ぶりに行われる減税が帳消しにされてしまう、景気に対する寄与度もゼロあるいはマイナス要因として働く可能性があるわけでありますが、このままでは、先ほど述べたとおり国際収支が大幅に黒字になりそうです。五十九年度もますます外需依存型成長というふうになって、諸外国から非難を受けることになるのではないか、これは十分に考えられることであります。そうでなくとも昨年八月のOECDにおける対日審査、これによりますと、間接税を増税して公共投資をふやして内需を拡大せよという厳しい審査報告がなされているわけですけれども、我が国の経済運営のあり方に対して、このような注文をつけることは、果たして異例じゃないだろうかと私は思いますけれども、この点について長官、どのように考えておられますか、お答えをいただきたいと思います。
  109. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 相手国から見ますと、自分のところは大変な大きな赤字である、日本は大きな黒字であるということになると、私は希望を言うのは当然だと思います。だから、向こうが希望を言ったからといって、内政干渉だとかそういうことを言うべきではない。やはり先方の意見にも謙虚に耳を傾ける必要があろう、このように今考えております。
  110. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 報道によりますと、内需拡大を要請というふうな言葉ですから、今の大臣の御答弁はわからないわけではないわけで、諸外国のいろいろな意見、要望、希望といったものに、今おっしゃったとおり謙虚にこれからも耳を傾けて次への対応を考えていただきたい、このように思うわけでございます。  しかし、このままほっておいたのでは、日本は世界の中で孤立せざるを得ないだろう。今まであった経済摩擦のときを振り返ってみますと、第一回目の四十六、七年のときは、四十八年の第一次石油ショックがあって、四十八年と四十九年の我が国の国際収支は大幅にマイナスになった。貿易摩擦というものは、言ってみれば自然消滅の格好となったわけです。第二回目の五十二、三年のときも、五十四年の第二次石油ショックで、これまた五十四年、五十五年の国際収支が大幅赤字になって自然消滅の格好となったわけであります。  こういう過去二回の摩擦は、幸か不幸か、こういう石油ショックによって我が国の輸入支払いがふえたために黒字が解消した、摩擦が消滅したわけでありますけれども、今回五十六年以降の大幅黒字、これは特に昨年三月の原油の五ドル引き下げという逆ショックといったこともあって、ふえる一方で、減る気配はないのじゃないか。これは我が国の景気がアメリカの景気回復よりもおくれているために輸入がふえないからです。  そこで長官に伺いますが、景気に対する寄与度ゼロという五十九年度予算の中で、一体どのようにして内需を振興し景気回復を軌道に乗せるのか。けさほども答弁があったようですけれども、もう一つ私には抽象的に受けとめざるを得ないというものがあったわけで、いま一度具体的な項目としてここで明確にしておいていただきたいと思います。
  111. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 予算全体から見ますと、例年どおりの予算執行を進めておりますと、年度間を通じては経済成長に及ぼす影響はゼロである、これはしばしば申し上げたとおりでございますが、ただ、執行方法いかんで若干私は変わってくるのではないかと思います。例えば公共事業などを上半期に集中して繰り上げ施行するということになると、上半期には成長に大きく寄与することができる、私はこのように思うのでございます。     〔委員長退席、渡辺(秀)委員長代理着席〕  そこで、さしあたっては予算も成立したことでもありますので、政府部内で来週早々にも、以上申し上げたような方針に沿って具体的な執行方法、公共事業の進め方について方向を明らかにしたい、こういうことで今作業を進めております。今具体的に進めておる項目といいますと、これだけでございます。
  112. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 そのほかに金融政策の機動的な運用とか投資減税を行って投資を誘発するとか、いろいろあると思います。ただ、今おっしゃった公共投資の前倒しの件ですが、これは浮揚しようとしている景気をより確実にさせるための効果といった点では当面期待できると思いますけれども、年度後半になると、今言われたとおり息切れするわけですね。そうして十-十二月期のGNP統計でも公共事業は景気の足を引っ張っている格好になっている。さらに、昨年の中小企業白書によりますと、公共事業の前倒しは中小企業に対して影響がなかったというのが五二・五%、それからそのこと自体が影響があったというのが四七・五%、これを今度小規模企業で見てみますと、影響がなかったというのが五七・六%、あったというのが四二・四%、こんな統計が出ております。  中小企業の問題は後で触れますけれども、公共事業が前倒しをしても、先ほど言われたとおり、後半追加がなければ息切れをしてしまうんだ。そこで長官に伺いますけれども、何らかの思い切った手を早目にとっていただかなければならないのではないか。私は、内需を拡大させるための方策としては何よりも可処分所得、これを当然ふやすことであると思います。個人消費がGNPの六割を支えているという状態にもかかわらず、最近はこれがもたついていることは御承知のとおりで、五十九年度予算のように、減税のために増税をして財政に充てるようでは、これは購買力はふえないわけでありますが、この辺に関する長官の御意見も伺っておきたいと思います。
  113. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 お答えをいたします前に、先ほどの公共事業の問題に関連して一言だけ申し上げたいのは、過去三、四年は、前倒しをいたしますと必ず後半息切れがしてまいりますので追加をいたしましたけれども、幸いに景気全体がよくなりますと、私は、必ずしもことしはそういうことをしなくても済む可能性がないわけではない、こう思っております。と申しますのは、昭和五十四年は景気が非常によくなりまして、むしろ公共事業の後ろ倒しをした、翌年度に繰り越した、こういうこともございますので、要するに補正予算を組むか組まぬかということはこれは景気動向いかんにかかっておる、むしろことしは補正予算を組まぬでも済むような経済にしませんと、先ほど来御指摘のような海外との経済摩擦解消しないのではないかと考えておりますので、この点はもう少し経済の様子を見ながら、後半の問題については検討しなければならぬと思います。  それから、公共事業の前倒し以外に内需拡大の方法としては何があるかという御意見、特に所得の拡大が必要であるというお話でございますが、項目を申し上げますと、所得の拡大が一番大きな課題だ、こう思います。それではどうすればいいかということでありますが、これは収入がふえて税金が減る、端的に言えばそういうことになろうかと思いますが、この問題もいざそれではどうするかということになりますと、なかなか今すぐの解決もできませんので、結論を出すには若干の時間がかかるのではないか、こんなように思います。金融政策を進めるにいたしましても、やはり海外との関係が若干ございますので、これも直ちに今すぐ結論を出しにくい、こういうことでなかろうかと思います。しかし、そんなことはかり言っておったのでは一方でどんどん黒字がふえるばかりでありますから、外国は黙っていないということでありますので、この間のタイミングを一体どうしたらいいかということがこれからの大きな課題であろうと思っております。
  114. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 先ほど申しましたように、自民党内においても極めて明晰で積極的な長官でありますので、前倒し、後ろ倒しの話が出ましたが、そういった問題について当然慎重に対応せざるを得ないでしょうけれども、将来を見越して国民の立場に立った対応をこの際要請しておきたいと思います。  ここで、ここ数年春闘による賃上げ率が低く抑えられているわけで、特に昨年は四・四%という史上最低ですね。したがって、五十八年度の一人当たり雇用者所得の伸びは、当初政府見通しては五・二%であったものが実績見込みでは三・五%、こういうふうに下がっている。そして、雇用者所得全体の金額も、当初見込みの百五十九兆七千億円から、実績見込みでいきますと百五十八兆三千億円、実に一兆四千億円も抑え込まれたわけです。これは春闘賃上げたけではなくて、公務員給与の勧告を値切った、こういったことが大きく影響しているとも思いますけれども、ことしの賃上げがどのような結果に終わるのかまだはっきりしないわけです。  五十九年度の一人当たり雇用者所得の伸び率が四・七%になるわけですが、これはこのGNP統計上経済計画にも盛り込まれた数字であるわけですから、五十九年度の実質GNP四・一%の成長のためにもぜひ達成しなければなりませんけれども、春闘による回答はそろそろ出そろっているこの段階ですが、長官として、この達成の目途について成算ありやなきやを伺っておきたいと思います。
  115. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 五十八年度の成長、先ほど議論されましたが、これが十月に相当大規模な総合対策をやったにもかかわらず、それを加えて当初見通しの三・四%しか達成できないということの一番大きな原因は、政府見通しの雇用者所得が昨年度は大幅に減った、こういうことにあったと思います。ほかの項目はそんなに違ってないのでありますが、この雇用者所得の伸びが非常に見込み違いであったところにあったと思います。それだけ雇用者所得がどれだけふえるかということは経済成長にも非常に大きな関係があるわけでございます。去年よりはことしは幾らかベースアップもいいようでございますし、それから時間外労働もふえておりますので、先ほどお述べになりました一人当たり四・七、全体として六・八という数字を想定しておりますが、ただいまのところはほぼこの水準は達成されるのではないか、現在のところはそのように考えております。
  116. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 次に、テーマが若干戻るようですけれどもアメリカの景気の回復そのものは目覚ましいものがありますが、景気回復の原動力になったもの、これは一体どういうところにその原動力があったのか、長官に今ここで伺っておきたい。個人消費とか民間設備投資といったようなことが出てきておりますけれども、大きな原動力となったものは一体何なのか、この点を伺っておきたいと思います。
  117. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 アメリカ経済回復は、在庫調整が終わって民間の設備投資が始まった、こういう経過をたどって非常に勢いを増しておるのでございますが、その原動力は何ぞやということになりますと、私は、大規模な所得減税にあったと思います。それと並行して進めましたインフレ対策、それから政府規制をできるだけ外していこう、そういう対応もしております。大規模な所得減税と並行して大規模な投資減税もやっておりますが、最大の起爆剤は何ぞやと言われますと、やはりこの大減税だ、このように思われます。
  118. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 最大の要因としては大規模な所得減税であるという、私も当然おっしゃるとおりだと思いますが、レーガン大統領の減税について見ますと、我が国では想像もつかないほどの実は大幅なものである。去る十二月二十日に発表された世界経済白書の中から、アメリカの減税規模を一ドル二百三十円で計算してみたわけです。昭和五十九年が五百四十億ドル、六十年が七百七十億ドル、六十一年千百十二億ドル。今ドルで言いましたが、これを一ドル二百三十円で計算してみますと、五十九年は十二兆四千二百億円、六十年が十七兆七千百億円、六十一年が二十五兆五千七百六十億円、こういうことになるわけです。しかも、この減税は物価スライド制でもって、物価が上がれば減税額も物価にスライドして当然引き上げられるというものでありますが、我が国の五十九年度予算では、我々の減税要求一兆四千億円、これが値切られておる。初年度九千三百二十億円、平年度が八千三百六十億円、こうなっております。しかも見返り増税で平年度では差し引き二百三十億円の増税、石油税の増税分千三百四十億円を加えますと、千五百七十億円の増税、こういう結果になっているわけであります。  我が国は、こういったことで放任しておきますと、当然構造的な外需依存型になってしまう。今こそ我が国経済の大転換が行われるべきだと私は思いますけれども、その先駆けとして、当然大減税による内需の拡大を図って、それが税収の増大につながる政策をとるべきではないかと思いますけれども、この点に関する長官の積極的な御答弁をいただいておきたいと思います。
  119. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 昨年の九月に、与党と野党が臨時国会の劈頭、相談をされまして、五十八年から景気浮揚ができる規模の所得減税をする、そういうことを正式にお決めになりまして、文書の交換もされましたので、まあ私は大変期待をしておったのでありますが、どうも五十八年は御承知のような状態ですし、新年度の減税も一兆ということでありますが、一方で同じ規模の増税がございますから、経済効果はゼロとは言いませんけれど君も、非常に小さなものになっておる。まして、景気浮揚ができる規模の減税という昨年九月の合意から見ますと、私は、大変遠いものになっておる、こういう感じがいたします。  もし、今、我が国で昨年九月のあの合意の内容どおり実行される政策が進められれば、それはそれなりに非常に大きな効果があると思いますが、しかし、残念ながら五十九年度の減税は規模の小さいまま今度一応スタートをしておりますので、引き続いて、できるだけ早い機会に税体系を根本的に見直していくという、その作業の中におい一で、私はやはりこの所得税の減税問題をもう一回検討する、景気浮揚ができる規模という昨年の九月の線に立ち返って、もう一回この問題を検討するということが、今、日本の置かれておる立場から、国内問題じゃなしに、むしろ先ほど御指摘のような国際的な問題からも必要である、このように私は思いまして、実は、一月、自由民主党と政府との連絡会議がございますが、その席でこの提案をいたしまして、大蔵大臣と自由民主党の政策の責任者の間で今、検討をお願いしておるところでございます。私の申し上げましたような趣旨が生かされて、いい結論が出ることを期待いたしております。
  120. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 アメリカと日本の比較の立場から私も質問したわけですが、今の御答弁を踏まえて、長官も鋭意御努力をいただきたい。将来の減税ということにかかわることですから。  次に、リーガン財務長官が三月下旬に来日した際に、河本長官はリーガンと会われて意見交換をしておられます。為替レートが円安に推移している問題で意見が合わなかったというふうに理解をしておるわけですが、これについて長官は今、どう考えておられますか。
  121. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 リーガン財務長官といろんな角度から意見交換をいたしまして、ほとんど全部意見は合ったのでございますが、今お話しのように、アメリカの高金利は日本の円安と関係ない、こういう財務長官の御意見だけは、ちょっと承服いたしかねますので、この問題では意見がいませんでした。この問題を棚上げにいたしまして、ほかの問題を議論したわけでございますが、その後、私の方の事務当局でいろいろ調べてもらいましたところ、やはりここ二、三年の間はアメリカの金利が高くなれば円は安くなる、大体こういう傾向で円のレートは動いておる、調査の結果もそういうことが判明しておりますので、この点は間違いない、こう私は思っております。  したがって、今後も引き続いて、機会あるたびにアメリカにもう少し金利を下げるような工夫をしてもらいたいということを、我が国の立場から要請をしていこう、こう思っております。
  122. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 リーガンの方としては、日本の資本市場が閉鎖されているからなんだというようなことも強調しているようですが、これについてはどういうふうに説明されましたですか。
  123. 谷村昭一

    谷村政府委員 今お話しの点は、円の国際化ということに関連してのお話だと思いますが、この点に関しましては、特に大臣とお会いいただいたときに大きく議論をしたということではございませんが、日米間で関係省庁で円の国際化という観点から現在協議が行われつつございまして、四月のパッケージ対策のときには、それらを含めた形で対策を打ち出したいと思いまして、現在鋭意検討している段階でございます。
  124. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 世界各国が、アメリカの金利を下げてくれ、こう言っているときに、アメリカの主要銀行は三月十九日にプライムレートを〇・五%引き上げまして一一・五%にしたばかりですが、その直後、四月五日ですね、また一斉にプライムレートを〇・五%引き上げて一二%、こうしたわけです。続いてFRBは公定歩合を六日から〇・五%引き上げて九%としておりますけれども、こういった新聞報道によりますと、円相場には既に織り込み済みで影響は少ないんだ、こういうことでありますけれどもアメリカの今後の金利はどうなっていくと考えられますか、お答えいただければと思います。
  125. 廣江運弘

    廣江政府委員 今回のFRBの公定歩合の引き上げは、短期市中金利の上昇いたしておるのに追随したというふうにFRBは発表いたしております。そしてその真意を探れば、持続的な成長を望んで予防的にやったのだと考えられますが、さて、今後の金利の見込みと見通しということになりますと、私どもは公的にそういう推測を申し上げる立場にございませんが、いろいろの見方を総合いたしますと、アメリカの成長率は先ほどお話もございましたように、第一・四半期が七・二でございますが、今後もこのまま続くということはちょっと考えられませんし、若干落ち込むとは思いますが、なお景気の基調は非常に強いということ、それから一方、財政の大きな赤字があるということ等を考え合わせますと、今後、当面アメリカの金利が大幅に下がるという見通しを立てる向きは余りない、大方の見通しは、なおかなり強い、こういうふうに見ているというのが現状かと思います。
  126. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 この問題は、時間が余りありませんので改めてお聞きすることとし、もう少し伺っていきたいと思います。  卸売物価ですね、これが前年比マイナスでありますし、また消費者物価も二%程度というゼロインフレのこういう時代に、プライムレートが七・九%というのは非常に高過ぎるのじゃないか。公定歩合の一段の引き下げは設備投資を促進する上からぜひ必要であろうと私は思います。三月初めに円レートが十円ぐらい上がったときに公定歩合をぜひ下げてほしかったわけですけれどもアメリカの今回の金利引き上げでもって、日銀は公定歩合の引き下げのチャンスを失ってしまったのじゃないか、こんなふうに思います。  河本長官は公定歩合について所管外かもしれませんけれども金融の機動的運用ということは経済政策の重要な柱である、こういう立場から、この際長官のお気持ちを聞かせておいていただきたいと思います。
  127. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 金融政策経済政策とまさに表裏一体の関係にございますので、私どもも非常に大きな関心を持っております。  今お話しのように、物価が大変安定をしております。しかも、その物価の安定状態から見ますと、日本の金利水準は相当高い、実質金利は相当高い状態でございますので、条件が整えば私どもは金利を下げてもらいたいという強い期待を持っております。しかし、どういう条件がそろえば決断をするかしないかということは、これは大蔵省や日本銀行でいろいろお考えになると思うのですが、そういう金融政策の機動的運営につきましては、私どもは、機会あるたびに期待を申し述べておりますので、今の段階では、あるいは決断できないかもわかりませんけれども、今後、そういう方向にできるだけ早くいくことを期待をいたしております。
  128. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 それでは長官、どうぞ。お時間の方、十二時半ということで伺っています。  次に、中小企業問題について若干伺ってみたいと思いますが、我が国の中小企業、これは事業所数で六百二十三万、そして全事業所の九九・四%を占めている、我が国経済に占める役割は極めて大きいということは御承知のとおりであります。  ところで、この中小企業、これは内需依存度が八五・七%、大企業の七二・五%に比べて非常に高い。経済企画庁の景気回復の宣言にもかかわらず、内需の不振によって、東京商工リサーチの報告によりますと、五十八年は一万九千百五十五件、これは史上最高です。五十九年を見てみますと、一月が千四百九十三件、二月は千六百三十九件、これまた今までにない最高の数字である。これは、景気の回復に跛行色が強くて、特にこうした倒産は中小零細企業に多かったために、危機感なき倒産多発、こう呼ばれているものでありますけれども、中小零細企業にとって、外需主導による景気回復のため、いまだに不況の底にあえいでいるということになるわけです。特に、今回の景気回復は、財政支出が抑えられて、実質金利も高い。こういう中では、業種や地域によってその景況感が異なることは、二月の経企庁の地域経済の現況、この調査によっても明らかであります。     〔渡辺(秀)委員長代理退席、委員長着席〕  こうした中で、中小製造業の六割を占めると言われております下請企業、これが長い不況の中で、親会社から大変いじめられてきているわけで、ここ二、三年は、下請代金支払遅延等防止法に違反する疑いのある事件が急増しているようでありますけれども、中小企業庁及び公正取引委員会から実情をひとつぜひ報告していただきたいし、どのような事件が多発しているか、この点についても伺っておきたいと思います。
  129. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 お答え申し上げます。  下請代金支払遅延等防止法の運用につきましては、御指摘のように、公正取引委員会と協力をしながら、中小企業庁におきましても所要の措置をとっておるわけでございます。最近の実績を拾い上げてみますと、五十七年度におきましては、書面の調査件数四万八千事業所、五十八年度は五万一千事業所でございます。そのうち、違反の疑いのあります事業所数につきましては、五十七年度が八千四百八十七事業所、五十八年度は、年間の実績はまだ出ておりませんが、上期が三千四百五十九事業所となっておりまして、そのうち、立入検査を行いましたものが、五十七年度千六百二十件、五十八年度上期八百十三件となっております。  違反の内容、傾向等につきましては、最近におきまして、不当値引きを理由とする返還と、この改善措置を行ったというようなものがございまして、改善指導につきましても万全を期しておるところでございます。
  130. 奥村栄一

    ○奥村政府委員 最近の下請法違反事件の特徴を申し上げますと、従来の支払い遅延とか長期手形の支払い取引の支払い条件の違反に加えまして、不当な値引き等の違反取引における代金にかかわる事件が増加していることでございまして、公正取引委員会といたしましては、これらについて厳正な措置をとっております。  数字的に申し上げますと、五十八年度につきましては、下請法違反の疑いで千四百四十一件の親事業者を検査対象として選定いたしておりまして、そのうち千百十九の親事業者に対して是正措置を講じているわけでございます。
  131. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 いや、いずれにしても、五十七年度、五十八年度あたり数字を伺っただけでも、大変そういった件数がふえておる。先ほども不当な値引き等の事件ということで御指摘がありましたけれども、下請代金の不当な値引きを下請業者に返還さしているということも聞いておりますけれども、最近の事例でどのようになっているか。金額、件数の総額、この辺を公取の方からひとつ伺っておきたいと思います。
  132. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 今のお尋ねの、下請取引における不当値引きについての措置でございますが、これは、実は五十五年の四月に、私ども委員会で不当値引き等の行為に関する下請法の運用基準というものを定めまして、それから親事業者の指導に入ったわけでございます。したがいまして、指導件数はそれ以後、逐年増加をいたしておりまして、五十六年に二十一件、五十七年に三十二件、五十八年に四十九件というふうに指導件数がふえてきております。  五十八年、四十九件の内訳を申し上げますと、返還を求めた金額が一億五千五百万円でございます。それから、返還の対象になりました下請事業所の数は五百社ということになっておりますが、四十九件と申し上げました中身としては改正単価、下請の単価を引き下げまして、それを事前に遡及して適用したという事案が一番多うございまして、これが三十四件ということでございます。
  133. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 結果的に今そういう数字の御報告があったわけですけれども、こういったことに対してはまだまだ手ぬるいのじゃなかろうか。下請業者にしてみれば、訴えたくても訴えられないんだ、もし訴えればそれこそ取引を停止されてしまうんだと、そういう大きな悩みがあるわけで、公取としても、こういったことに十分お気づきだとは思いますけれども、厳しく対応されるように、ここで要望をしておきたいと思うわけです。  次に、この下請法ですけれども、施行後既に二十七年も経過しております。そして、中小企業庁、公取の努力もあって、親事業者には十分その趣旨が理解されているはずでありますけれども、不況になるとこの違反事件が悪質化する、そしてまた、多発することはまことに遺憾と言わざるを得ないわけです。今後とも、中小企業庁、公取とも、親事業者の啓発はもちろん、親事業者自身の自己啓発のためにも、親事業者に下請取引に関する担当窓口、これを設けさせたり、あるいは下請法遵守のためのマニュアルをつくらせるなど、下請法の趣旨が徹底するような方法を講じてもらいたい、このように私は思うわけですけれども、中小企業庁そして公取から、今後の行政指導のあり方について、その辺の御決意を伺っておきたいと思います。
  134. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 全体で親事業者というのは七万ぐらいあると思っておりますが、その七万を半分ずつに分けまして、三万五千件を私ども委員会で下請法の実施の責任を持っておりまして、残る半分の三万五千件を中小企業庁にお願いをいたしておるわけでございます。それの下請法の検査なり、それについての違反の状況は先ほど御報告いたしましたけれども、その際に、私どもは、依然として多くの親事業者で、下請法なり、それの運用基準なりについての御認識が十分徹底していないということがあると思うわけであります。  下請代金の返還の状況を先ほど申し上げましたが、その内容を見ておりましても、四十九の企業、その中で十分御承知がなくて、または社内の事務連絡がうまくいかなくて、それによって形式的に遡及適用というような事態の起こったものも見受けられますし、そういう意味で、ただいま御指摘のございましたように、親事業者に対する周知徹底ということに。今後ともなお一層積極的に取り組んでまいらなければならぬというふうに思っております。  たびたび経済対策閣僚会議でこの問題が取り上げられておりますので、通商産業省と私どもの方の連名で、下請取引の適正化についてという要望を各事業者、団体に行いますこととか、毎年の年末になりますと、下請取引適正化推進月間ということをやりまして、新聞への政府広報を精力的に行いますとか、講習会を開きますとか、やることはもちろんでございますけれども、下請取引の比重が高い業界を選びまして、その団体に対して周知徹底を図ることによって、意識せざる法の違反ということが起こらないように十分配慮しております。  下請協力委員というものを全国で五十五人の方に私どもの方はお願いをいたしておりまして、各都道府県で下請問題について最も認識の深い方、識見の深い方というものを選んで仕事をお願いしておるわけでございます。それから、そういう下請関係で協力団体というものも全国に五十ぐらい選びまして、それに下請法の周知徹底、遵守についての体制についての御協力をお願いしておるわけであります。下請協力委員、下請協力団体という方々が地域の実情もよく御存じでありますし、法の運用の方針ないし法の趣旨についても精通しておられるわけでありますので、そういう方々と手を取り合って、予防行政の見地から周知徹底を図ってまいりたいということが一つ。  それからもう一つは、ただいまもお示しがございましたように、不況になりますと、とかく下請の関係にしわが寄ってくるわけでございますから、下請法の運用に当たりましては、定期的な書面調査なり、それに基づく違反の疑いがあります場合に立入検査なり、勧告または行政指導なり、そういうものの適正、厳正ということを期してまいりたいというふうに考えます。
  135. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 中小企業庁といたしましても、下請対策の強化に努めておりますが、公正取引委員長が詳しくお述べになりましたので重複は避けますけれども、私どもといたしまして、五十九年度から初めて製造事業者の親事業者の悉皆調査化に踏み切りまして、本年からは、五万六千事業所以上の全事業所に対しまして書面調査を行うことにしております。  また、親事業所の外注担当管理者等に対します講習会等につきましては特に力を入れまして、本年につきましても、六月、七月を中心に十回以上、千人以上の担当者を集めまして、主要都市におきまして講習会を開きます。そのほか、下請月間等につきましては、公正取引委員会と協力をしながら、この内容の周知徹底に努めてまいりたい、かように考えております。
  136. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 我々公明党・国民会議は、下請法の一部改正案を今国会提出しておりますが、その趣旨は、第一に、下請代金の支払い期目を六十日以内から四十五日以内に短縮しようとするもの。その第二は、下請企業の手形の割引料負担とかあるいは金融機関による歩積みの要求などを考慮して、下請代金の半分以上を現金または小切手で支払ってもらいたい、こういう内容です。第三点は、中小企業庁長官と同様に都道府県の知事にも立入検査等の権限を与えようとするもの。第四点は、親事業者が下請業者と継続的な取引関係を維持してもらいたい。こういった内容が盛り込まれているわけですが、この法律案について、公取委員長並びに中小企業庁長官の所感だけちょっとここで伺っておきたいと思います。
  137. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 下請取引の公正化、それから下請事業者の利益の保護、これは下請代金支払遅延等防止法の基本的な趣旨でございまして、私どもは、そういうことを今後とも的確に推進していく必要があるということを考えております。  最近のように経済状況が非常に変わってまいる時期、情報化、サービス化というような形で変わってまいりますし、製品の種類も変わってまいります。技術も非常に革新のスピードを加えておるわけでありますから、そういう時期に、先ほど申し上げました二つの下請法の基本精神にのっとって、どのように的確な運用を図り、どのように制度について見直しを行っていくかということは、基本的な問題であろうという認識に立っております。  ただいまお示しのありました四つの項目を含むところの公明党・国民会議の改正案でございますけれども、支払い期日にいたしましても、現在、例えば月末に締め切りまして翌月末に支払うというようなことで、六十日というような形で法律ができております。現実に見ておりますと、大体締め切り後二十二、三日かかっておりますでしょうか、それを直ちに十五日短縮することが可能であるのかどうか、また、そういう法制を設けた場合に、その執行が十分できるかどうかというような問題があろうかというふうに思いますし、現金の支払い比率にいたしましても、大体、比較的小さい業者に対しては五三、四%というものを現金で払っておるようであります。  現金の比率を法定いたしますと、法律は道徳のミニマムということで、かえって中小零細業者に対する現金支払い比率というのが低下するおそれはないかという問題もございます。権限の委譲にいたしましても、まさにこれは地域に密着した行政に適する分野であろうというふうにも考えられますけれども、一方で、下請の保護については全国画一の基準を設けるべきであろうし、直ちに委任することがまた地方財政の実情から、人員、予算等の問題が十分伴ってくるかということも検討すべき課題であろうというふうに存じます。  いろいろ申し上げましたけれども、基本的な問題であると思いますし、現在の経済情勢のもとで、下請法の基本精神にのっとってどのような制度ないし運用をしていくかということは、広範かつ多角的に勉強していかなければならない。とりあえず私どもといたしましては、中小企業庁、それから下請取引の当事者、専門家、地域でいろいろ商工行政を展開しておられます都道府県の担当者、そういう方々の御意見を承るということから手をかけまして、研究検討に努めてまいりたいというふうに存じますし、現在の下請法の運用につきましても、そのときそのときの経済情勢に応じて厳正にやってまいりたいという考えでございます。
  138. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 下請取引の適正化につきましては、公正取引委員会と協力をしながら、従来政策の拡充強化に努めてきたわけでございますが、今後とも施策の実施面につきまして着実な実行を確保していく、それにつきまして努力をしていくということは当然でございます。  代金法改正につきましては、公正取引委員長から御答弁がありましたように、いろいろな問題を含んでおりまして、さらに慎重な検討が必要であるというふうに考えております。
  139. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 いろいろ御答弁いただいておりましたが、これはここで云々するだけの時間がございません。議論の場で私どもの主張についても積極的に発言してまいりたい、このように思うわけです。  時間が来ましたので、最後に通産大臣に伺います。  景気が回復過程にあるといっても、中小企業は内需依存度というものは極めて高いわけです。いまだに不況の底から抜け出せないでいるのが実情でありますが、中小企業の重要性は私より大臣の方がよほど御存じのはずでありますので、今後の中小企業の振興について、大臣の所信、そしてまた決意、そういったものを最後に伺って終わりたいと思います。
  140. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 景気が回復した、回復したと申しましても、中小企業の倒産件数は月ごとにふえていくような状況でございまして、私どもといたしましても、これは全く憂慮にたえないところでございます。  しかしながら、中小企業というものが戦後の日本の経済の原動力であった、また我が国経済の主体をなすものであるということは変わりがないわけでございまして、そのため、御承知のとおり昭和五十九年度の予算におきましても、何とかして中小企業の設備投資を活発にしなければいけないということで、新しい新技術体化投資促進税制というものも創設いたしましたし、あるいは厳しい中にも、中小企業関係の政府系三機関の貸付規模の増大も図るなど、あるいは、このような状態ではございますが、倒産対策をどうしたらよいか、下請企業対策をいかにすべきか等の経営基盤の強化等の予算も積んだつもりでございます。あるいは新しくベンチャービジネスの振興であるとか、あるいはいろいろな新しい企画づくりもいたしましたし、今後中小企業の振興対策あるいはあらゆる面でのこれをいかに守っていくかという対策を怠りなく推進してまいる所存でございます。
  141. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 終わります。
  142. 梶山静六

    梶山委員長 横手文雄君。
  143. 横手文雄

    ○横手委員 私は、まず我が国通商政策についてお伺いを申し上げます。特に繊維関係を中心にしてであります。  昨年十二月、アメリカ政府は繊維輸入規制に新基準を設けたと発表いたしました。その内容は、年間輸入増が三〇%を超えた場合、また輸入量が国内生産量の二〇%に達した場合等に照準を合わせたものであると承知をいたしております。そして、その新基準に基づいて、早速我が国にも合繊紡績糸など五品目に対して、新たに輸入規制の追加を申し入れてきたと聞いております。  そこで御質問申し上げます。まず、新たに追加された五品目とは何か。次に、このようなアメリカの新基準の設定、それに伴う新たな輸入規制の申し入れに対する我が国政府の基本的見解と対処の姿勢はいかがなものでありましょうか。三番目に、さらにこのアメリカの申し入れに対して、四月の四日から七日にわたり、日米話し合いが持たれたと伺っておりますが、この話し合いに臨み、我が国政府はいかなる態度で臨まれたのか、その内容はどうであったか、いかなる決着をつけようとされているのか、まずこの点についてお伺いを申し上げます。
  144. 黒田真

    ○黒田政府委員 お答え申し上げます。  御指摘のように、日米繊維取り決めの規定に基づきまして、米国から協議の要請が次の五品目についてございました。その五品目とは、合成繊維の紡績糸、スフ織物、化合繊製の女子用のブラウス、化合繊製の女子用のスーツ、綿製のプレイスーツ、こういう五品目について申し入れがあったわけでございます。これらにつきましては、先生ただいま御指摘がございましたように、アメリカの中で昨年の十二月に一定の基準を設けて、あるその敷居を超えたものについては、市場攪乱を起こしている真の危険があるというような一つの目安としたようでございまして、そういった新しい方針に基づいて、こういった多くの品目の要請が行われたということでございます。  こういったアメリカの新しい政策につきましては、多くの輸出国から非常に批判があるところでございまして、ガットの繊維委員会等におきましても、それが非常に繊維品輸入の規制の強化にわたるのではないかという懸念が表明されたところでございます。アメリカ側の説明としては、あくまでもそういった数字一つの判断の目安であって、その判断の基準は、アメリカ市場に市場撹乱の真の危険があるかどうかということで申し入れるということなんだという説明をしております。  私どもといたしましては、日米繊維取り決めに基づく協議の要請でございますから、これに対しては真剣に受けとめる必要があるわけでございますが、私ども考え方としては、果たしてそういった品目アメリカ市場において、そのような市場攪乱を起こしているのかどうかということがまず第一でございますので、私どもとしては、そういう事情を起こしているとは考えていないという立場で、アメリカ側の説明を徴した、こういうことでございます。アメリカ側としては、いろいろな説明を行うことによって市場攪乱の状況説明しようとしているわけでありますが、現在相互になおいろいろな資料の突き合わせ等を行いまして、御指摘の四月四日からの交渉におきましては、決着をつけることなく、さらに協議を継続をするんだということで別れております。次の協議日程等につきましては、改めて両国の間で話し合った上で決める、かような段取りになろうかと思っております。
  145. 横手文雄

    ○横手委員 我が国が貿易立国であり、その貿易はフリーでなければならないという態度を貫いておるということは、よく承知をいたしております。過般のこの委員会における質疑の中で、私は大臣に二国間協定、つまりMFAの発動についてその御見解をただしたところでございましたが、これの発動もあり得るということでございますけれども、しかし、そのためには大変慎重の上にも慎重な御発言でございました。ところが、一方の国からこういったことでどんどん新しい規制をつくって、そしてこれもあれもと言われてくると、我が国としては大変なことではないか。業界の一部には、アメリカのやり方に対して、言葉は悪いかもわかりませんけれども、例えばマージャンをやっておるときに、最初の取り決めのマージャンのルールではなくして、途中でどんどんルールを変えてしまう、これではどうにもならぬじゃないか、というような嘆きとも非難とも受け取られるような言葉も聞かれるわけでございます。  今、局長の方から、これらの問題についておかしいということで我が国は対処しておる、こういうことでございますけれども、それら我が国の産業の実態等も十分に勘案をしながら、そして我が国としては対米輸出について大変慎重な態度をとっておるし、業界の皆さん方も、厳しい中でもそれらの問題について耐えて、今日のいわゆる業界の活動を続けおられるわけでございますから、これらの点について十分に参酌をして、日本の通産省という立場で今後も態度を貫いていただきたいと思いますが、いかがでございますか。
  146. 黒田真

    ○黒田政府委員 日米繊維取り決めの枠内の協議でございますので、私どもこれには誠実に対応する必要があるわけでございますが、あくまでも親制の要求の根拠というものは、市場擾乱の真の危険というものがあるかどうかということでございます。先生御指摘のように、日本の繊維産業は、今先進国型へ脱皮しつつあるわけでございまして、日本からの輸出がアメリカにおいてそういった市場攪乱のようなことを引き起こすような性質のものではないというふうに私ども考えているわけでございまして、そういった状況については先方にも十分説明をして、私ども考え方が生かされるよう、今後とも最大限の努力をさせていただきたいと思っております。
  147. 横手文雄

    ○横手委員 ぜひ頑張っていただきたいと存じます。  次に、我が国への不公正輸入に対する政府の姿勢について御質問を申し上げます。  補助金つきやダンピングといった不公正な輸入によって、国内産業が実質的な損害を受けている場合に、アメリカEC等の諸外国は、相殺関税やダンピング関税を賦課して対処しております。アメリカが昨年の初めであったと思いますが、我が国繊維製品の朝鮮輸出物織物に対して二〇〇%ダンピング関税の賦課を提起し、我が国産業、とりわけこれら生産基地の業界に大混乱を引き起こした。今日では一応の決着を見たものの、いまだにその影響は尾を引いております。そして業界の皆さん方は、塗炭の苦しみの中にあるわけであります。近年その件数は増加し、一九八〇年以降でも数百件に上り、我が国を対象とした案件も数多く上ると聞いております。  一方、我が国繊維産業も発展途上国等から輸入の急増が問題になっており、しかも、それが不公平なものであると思われる場合もあるのであります。我が国の紡績協会が韓国、パキスタンを相手取りアンフェアトレードのガット提訴を行ったことは御承知のとおりであります。このように、海外諸国の不公正な輸出によって国内産業が被害を受けている場合に、我が国としても厳しく対処する必要があると思いますが、政府として、不公正輸入に対してどのように対処されるのか、その見解をお伺いをいたします。
  148. 村岡茂生

    村岡政府委員 補助金つきの輸出でございますとか、いわゆるダンピングによります輸出によりまして、輸入国の国内産業に実質的な損害が生じているという場合においては、ガットにおきまして輸入国は相殺関税あるいは不当廉売関税を賦課することが認められております。私どもといたしましては、このような不公正な輸入に対しまして関税定率法に基づきまして厳正に対処していくと考えております。
  149. 横手文雄

    ○横手委員 そういう精神論だけではなくして、具体的に、例えばアメリカにおけるITC的なもの、ここまではいかないにしても、我が国としてもこれらの問題について具体的に取り組んでおられるという姿勢はございませんか。
  150. 村岡茂生

    村岡政府委員 私どもは現時点においてITCを設置する、そういう行政上の独立機関を設置することは必要がないと考えておりますが、いずれにしても、この不公正な輸入に対しまして適切に厳正に対処するという基本方針に基づきまして、過日通産省内に特殊関税調査委員会というものを設置することにいたしました。これによりまして厳正、迅速にこのような問題に対処をしたいと考えております。  なお、この特殊関税調査委員会は、私どもの通商政策局長をヘッドといたしまして、貿易局長並びに関係する物資の関係局長などを委員に含ましめる構成になっております。
  151. 横手文雄

    ○横手委員 そうしますと、その委員会は、先ほど申し上げましたように、我が国の紡績協会が韓国、パキスタン等を相手取ってガット提訴という動きのときに、通産省の中にこれらの対応が全くなかったという嘆きというようなものも聞かれたわけでございます。これからは業界の中で、これは明らかに不公正であるというものが出てきた場合に、そして通産省に相談に行ったら、直ちにその委員会が対処するという体制はでき上がったと理解してよろしゅうございますか。
  152. 村岡茂生

    村岡政府委員 省内の意見を固めます場合に、先生御指摘のとおり、公正厳正かつ迅速に対処するものとしてつくったわけでございます。実は、紡協からの二件の問題のほかに、現在日本フェロアロイ協会からフェロシリコンにつきまして同様の提訴が三月六日になされたわけでございますが、通産省においては同じ日にフェロアロイに関する委員会を設置いたしました。迅速に検討を開始しているところでございます。
  153. 横手文雄

    ○横手委員 それでは、次に参ります。国内における繊維製品の取引改善、流通近代化政策についてお伺いを申し上げます。  まず、基本的な姿勢について大臣並びに公正取引委員会委員長に御見解をお伺い申し上げます。  新繊維ビジョンでは、これまで流通、取引問題が解決に向けて進展してこなかった経緯にかんがみ、政府は業界の自主的努力を積極的に支援すべく、取引準則の策定、指導の強化など抜本的対策を講ずべきであると指摘をしておりますが、これを受けた政府の対処方針はいかがでございましょうか。まず通産大臣にお伺いいたします。
  154. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 繊維取引の近代化は繊維工業の構造改善のために非常に重要でございます。そのため通産省といたしましては、昨年十月の審議会の答申を踏まえながら、繊維取引近代化推進協議会に対する指導、支援等によりまして、業界の自主的な取り組みを積極的に支援していく所存でございます。
  155. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 ただいま通産大臣からお答えがございましたように、所管官庁であられる通商産業省が、繊維工業業界における自主的努力についていろいろヒントを出され、それを支援なさるということが根幹であると考えておりますし、御指摘になりました問題が、今まで長い間手をかけてまいったにかかわらず成果がなかなか実らなかったというような経緯もございますから、ここで私どもとしても、抜本的な対策を通産省がおとりになるについて十分協力してまいりたいと存じます。  独禁法の分野で申しますと、繊維工業界と取引をする外側の業界、例えば問屋さんと機屋さんの関係、それから機屋さんと染め屋さんの関係、また大手のスーパーなり百貨店の関係、そういったところで不公正な取引が行われることがないように十分配慮する必要があると存じますので、集散地問屋の卸の方々を下請法の定期調査に含めるとか、百貨店やチェーンストア協会または個々の百貨店、チェーンストアに対して、納入取引の適正化についての自主規制基準をつくって、それの一層の周知、運をやっていくというようなこと、その他通商産業省と密接に連携をとりながらお話のような施策の充実に努めてまいりたいと存じます。
  156. 横手文雄

    ○横手委員 繊維製品産業は大変長く、それだけに流通の経路も複雑であります。一般的に言われておりますのは、生産から製品へ、そして流通を経て消費者の手元に用くわけでございますが、その中における生産コストは約四〇%、あとの六〇%は流通コストであると言われており、しかもその流通経路はまことに不透明である、ときにはその流れが逆流している場合すらあるのであります。お互いにリスクの持ち合い等が入り込んでいるからでありましょうが、それにしても複雑過ぎる。ある人は、その流通機椎を暗黒大陸と言っておられるのでありますけれども、新繊維ビジョンでも、この暗黒大陸を白日のもとにさらすべしという指摘も含まれていると思われますが、通産省、この複雑で長い繊維の流通機構全体に対して今後いかなる態度で指導、あるいは今申し上げましたように白日のもとにさらす、こういった姿勢についてお伺いをいたします。
  157. 黒田真

    ○黒田政府委員 御指摘のように、繊維産業の流通構造というものは非常に長い年月かかって形成されてきたものでございますし、また過当競争体質あるいはリスクを回避するための仕組み等々が重なり合って大変複雑なものになっているということは御指摘のとおりだと思います。そして今後の繊維産業の構造改善のためには、そういった流通のところにいろいろメスを入れて近代化をしていかなければならないという要請は従来からございますが、この際また改めて確認をされたわけでございます。しかし、それを一挙に改変することもなかなか容易ではないと思います。  白日のもとにさらすという御主張がございました。この辺につきましては、実は私どもコンピュータリゼーションと申しますか、いろいろな意味でオフィスオートメーション等々が入って情報の流れ方というものが変わりつつございます。私は、こういった一つの情報化時代の到来というものが、従来ややもすれば口約束とか正体不明のままで行われていた契約関係等をいや応なしに顕在化せしめるということのきっかけになるのではないだろうかということも期待しているわけでございまして、いずれにいたしましても、今後ともこの繊維の流通の近代化のためには、容易ではございませんが努力をしたい、かように考えております。
  158. 横手文雄

    ○横手委員 コンピューター時代に入ってきたから今までのようなことでもいくまい、したがって、これから徐々にそういったものが明らかになってくるであろう、そういうことに期待をしながらということでございますが、行政官庁として、今御指摘ありましたように、非常に長くて複雑でわからない点があります、大変難しい問題でありますということはよく承知しておられるわけでございまして、繊維の構造改善を進めるためにも、あるいは体質強化のためにもここに何とかメスを入れなければならないということもよく承知しておられるわけでございますが、これらいわゆる事務機器の近代化、オートメ化に期待をするというほかに、行政官庁としてかくなる手段を持って、しばらくお待ちください、そのうちにというのは具体的にどういうことなんですか。
  159. 黒田真

    ○黒田政府委員 本来民間の取引でございまして、いろいろな構造的な要因が問題を引き起こしているわけでございます。したがいまして、私ども最近申しております知識集約化でございますとか、実需直結型というような主張というものは、繊維事業者自体の体質が変わってまいりまして、その分だけ従来リスク回避のために非常な迂回が行われてきたというようなことをむしろ排除しようじゃないかという、抜本的な体質の改善がまず何より必要なことだと考えるわけであります。  と同時に、従来から積み上げられました取引慣行というものがいろいろ問題を生じている、とかく力の強い者の地位の乱用というふうに指摘されるような事態もあるというようなことがあるわけでございますが、これらにつきましては、業界の中に取引近代化推進協議会というようなものを設けていただきまして、これはまず基本的には業界が積極的に取り組むべきことだということを主体に置きながら、そういった事業者の自主的な活動を私どもは側面的にバックアップするということで来ておるのが現在に至るところでございます。  ただ、先ほども御指摘ございましたように、私どもこの新しい繊維産業の再生と申しますか発展にとって、この流通問題というものは避けて通れないということで、昨年のビジョンにおきましても、この流通問題への取り組みをもう一度見直して、政府としても新たな目でこれを支援しようということが考えられておりますので、私どもそういった新たな視点から、基本的にはあくまでも業界の自主的な努力だと思いますが、何かこれに対して政府側から支えると申しますか、支援できる方策というものを具体的に考えていきたい、かように考えております。
  160. 横手文雄

    ○横手委員 長い歴史の中ででき上がったこれらの問題について、これの改革のためには多くの抵抗もありましょうし、いろいろな難しい点も出てこようと思いますが、それだけにまたやらなければならない重要なことだと思いますので、ぜひ通産省としてもこれらの対策について勇気を持って切り込んでいただきたい、御期待を申し上げる次第であります。  次に、具体的な取引問題についてお尋ねをいたします。  ゼンセン同盟は、我が国の繊維取引において返品・歩積み、歩引き、取引遅延あるいは拒否などの非近代的な取引慣行が今なお存在している事実にかんがみ、この改善を急ぐべし、それは繊維産業の体質改善、そこに働く勤労者の雇用条件の改全のためにも緊要の課題と位置づけて、大規模小売店との取引慣行の実態についてアンケート調査を行い、本年一月その集約を発表し、内外の注目を集めたところであります。  さらに、ゼンセン同盟はこの実態を踏まえ、政府機関、業界に対して指導協力の要請を行っております。その要請先は、通産省、公正取引委員会、労働省、日本アパレル産業協会、繊維工業構造改善事業協会、日本靴下工業組合連合会、日本織物中央卸商業組合連合会、全日本紳士服工業組合連合会、東京婦人子供服工業組合、日本百貨店協会、日本チェーンストア協会、日本ニット工業組合連合会、全日本婦人子供服工業組合連合会、日本ニット中央卸商業組合連合会、そして各関係労働組合等々であります。  まず通産省に対してお伺いをいたしますが、これらの諸団体に対して正式に要請が出ております。その中には次のように述べられているのであります。「産業別労働組合として、これらの産業の安定と発展のためには合理的かつ近代的な取引関係を確立することが極めて重要であると考え」アンケートの実施をいたしました。「不公正な取引はむしろ増加する傾向にあり、公正取引の実現には程遠い状態にあります。またこのなかで、労働者個人へのしわ寄せが非常に大きくなってきており、労働問題としても放置できません。」こういった前提の上に立ちまして、まず通産省に対し、  1、繊維工業審議会に繊維取引公正化委員会(仮称)を設置し、公正取引準則の策定を行うとともに、返品等のクレーム処理機関の抜本的検討を実施されたい。  2、繊維品の生産、流通にたずさわる業界、事業者の自主的活動をうながし、業種間の取引ルールの設定や文書契約の推進などが広くなされるよう、行政指導を強化されたい。  3、不公正な取引行為を排除するため、行政上   の監視、指導を一段と強められたい。このように要請を行っておりますが、これに対する通産省の見解はいかがでありますか。
  161. 黒田真

    ○黒田政府委員 ゼンセン同盟がいろいろ調査をされた結果につきましては、私も直接お話を伺いましたし、また今ありました御要望の点につきましても伺っているわけであります。  まず第一の、繊維工業審議会の中に何か繊維取引公正化委員会というようなものをつくって公正取引準則の策定ということを行ったらどうだ、あるいはクレームの問題の処理機閥を考えたらどうだという御指摘につきましては、私ども基本的には、繊維取引近代化推進協議会という業界団体を中心に据えながら、同時に政府の立場、そして学識経験者というような方々もこれをサポートしていくといいましょうか、応援をしていく体制があってもいいのではないかと考えております。  具体的にこれを審議会の中にある委員会を設けることとするのが適当であるのか、あるいはかって生活産業局長の私的諮問機関といたしまして繊維取引改善委員会のようなものをお願いしたことがございますが、そういったような形の機関を設ける方がいいのかというような点につきましては、現在、検討をしておるところでございますけれども、ビジョンでうたわれましたところに即しまして、取引準則というようなものがどのような形で可能かどうかということについて検討をしてみたいというふうに思っております。  それから、第二の、業界の自主的活動を促して、いろいろな取引ルールの設定や文書契約の推進などについて行政指導を強化せよという御指摘につきましては、私どもも、先ほど来たびたび出てまいります繊維取引近代化推進協議会が現在、年間二回の取引近代化推進月間というようなものを設けて、関係の方々にお集まりをいただき、最近の取引の実情に関する調査結果の発表等を行うとともに、改めて意識の高揚と申しますか、取引近代化の必要をうたっているわけでございますが、私もその会議には昨年出席をいたしまして、業界の自主的な活動を大いに促したところでございます。  聞くところによりますと、毛製品等の業界につきまして、既に取引ルールのようなものがありますとか、あるいはニットの業界が、ひとつみんなで一緒になって歩積みのようなことをなくしていこうじゃないかというような努力をしておられるそうでございまして、こういうものが成果を上げているということで、我々もそういった考え方がさらに広まるということを期待したいと思います。  それから。先ほどちょっと落としましたが、クレームの問題につきましても、これはクレームの処理機関というものがどこかにあるべきかどうかという点がございます。これも繊維取引近代化推進協議会というところの中に繊維取引紛争処理委員会というものが設けられておりまして、この活用を期待しているところでございます。  ただ、こういう問題でいつも厄介なことは、ある案件を持ち出した場合に、まず、そもそも持ち出しにくい、あるいは持ち出して解決しても、その後いろいろな波及の問題が出てくるということで、なかなか具体的なケースが取り上げにくいということがございますので、個別の極端なケースは当然、衣正取引の排除ということで取り締まり官庁の手を煩わす以外にないと思いますが、もう少し前の段階での問題は、やはり業界全体としての何かルールというようなものが、より有効なのではないかというふうにも考えるわけでございます。  ただ、いろいろなクレームの中で、品質上のクレームあるいは技術上のクレームということになりますと、ある一部のものにつきましては、第三者の公正な判定ということがあるいはお役に立つかもしれないというようなこともございますので、そういった点については何か公的な機関と申しますか、そういうところがお役に立てるのじゃないだろうか、こういう御要望もございますので、そういう点については前向きに検討をしているということでございます。     〔委員長退席、渡辺(秀)委員長代理着席〕
  162. 横手文雄

    ○横手委員 次に、公正取引委員会に対しましても、前文は同じようなことでございますけれども、具体的には、  1、繊維流通にかかわる不公正な取引行為を排除するため、行政上の監視、指導の強化をはじめ、一段と有効な措置をとられたい。  2、納入側のセールスマンや派遣店員に対する、大規模小売店からの押しつけ販売や不当な応援強制を防止するため、関係業界へ適切な指導を実施されたい。  3、繊維製品の取引の公正化を期するために、排除すべき不公正取引の類型を示したわかりやすいパンフレットを作成され、関係者に配布されたい。 このような要請が出ておりますけれども、これに対する公正取引委員会の御見解はいかがでございましょうか。
  163. 奥村栄一

    ○奥村政府委員 お答えいたします。  ゼンセン同盟の方から申し入れのございました事項につきましては、実は当委員会といたしましても、従来からまじめにといいますか、熱心に取り組んでいる事項でございまして、大規模小売業者の納入業者に対する不当な行為が排除されるよう指導に努めてきたところでございます。  百貨店とかスーパー等の大規模小売業者による押しつけ販売、不当な買いただき等につきまして、問題がある事案に接しましたときには、個別的に是正させるとともに、社内的な実施基準などを作成させまして、再発防止のための措置をとらせているわけでございます。また、業界団体に対しましても、押しつけ販売などについて自主規制基準を設定するように指導いたしまして、さらにその強化、改正を行うように指導いたしまして、これに基づいて会員を指導して是正を図っているわけでございます。当委員会といたしましても、この基準の的確な運用によりまして、不当な行為が排除されますよう指導に努めているところでございます。
  164. 横手文雄

    ○横手委員 次は、労働省に対しても同じように要請が行われております。  1、労働の周辺問題とし、次の事項について小売関係業界を指導し、また監視されたい。   (1)取引上の地位を利用し、セールスマンや派遣店員に対し、商品やサービスの購入を職要しないこと。   (2) セールスマンや派遣店員に対し、本来業務以外の業務応援を強要しないこと。  2、百貨店に勤務する派遣店員について労働基準法上の使用者責任を明確にされたい。また、その結果を関係事業主に周知させるとともに、適正な時間管理の徹底ならびに労働環境の改善を指導されたい。 このように要請が行われておりますが、労働省の見解はいかがでございますか。
  165. 野崎和昭

    ○野崎説明員 お尋ねのいわゆる派遣店員等は、本来派遣元の労働者でございまして、派遣元の業務を行うために派遣されているわけでございます。しかしながら、実態としましては、ただいま先生からお話がございましたように、派遣先がそういった点を十分認識せずに、本来の業務以外の業務の応援をさせるというような点もあるというふうに聞いております。  したがいまして、私どもこの問題につきましては、派遣型の労働全般につきまして、現在、私どもにございます労働基準研究会に検討をお願いしているところでございます。ゼンセン同盟からの資料もその研究会にお配りしまして御検討をいただいておりまして、その研究会の検討結果によりまして法律関係を明確にする、そして、それに基づきまして関係事業主にその点を十分周知徹底するとともに、適正な労働時間管理等が行われるように指導してまいりたいというふうに考えております。
  166. 横手文雄

    ○横手委員 ゼンセン同盟が調査をいたしましたアンケートの集約については、それぞれの省庁にお配りがなされていると思いますし、その内容も大変膨大なものであり、多岐にわたっております。私は、これらの調査が労働組合の手によってつくられた、そして、これらの問題点が今まで皆さん観念的にはわかっていたけれども、事実としてこういったものが明らかになったということは大変評価すべきであろうし、と同時に、明らかになった以上、これを改革していかなければならないということもまた緊要の課題になってきたと思う次第であります。  特に、派遣店員の問題等にいたしましては、そこの本来の事業主のところの労働組合が年間の休日等を定めても、派遣店員なるがゆえにその休日が消化されない、それを消化しようということになってくると、出先の方からいろいろとクレームといいましょうか、そういう話があって、なかなかできない、こういったような悩みもたくさん持っておりますし、そしてまた、今申し上げましたようなこともこれらの中に十分に記載をされていることでございます。これらの問題について、今御指摘をいたしましたけれども、内容についてはもっともっと深いものがあり、そして多岐にわたっております。これらの実態を踏まえて、今御答弁にありましたような方向で、これらの問題が一日も早く解決するように、ひとつ御努力をお願い申し上げる次第でございます。  それから次に、繊維取引所の問題についてお伺いをいたします。  かつて、繊維取引所は、全国的な売買や価格決定として、また各企業のリスクのヘッジのためにも一応の役割を果たしてきたのであります。しかし、今日では、実需直結型への生産流通体制に移行しつつあり、したがって、当事者の直接取引がふえてきたために取引所での扱い量は減少してまいりました。むしろ、投機による相場の乱高下は、せっかく建て値制へと移行している現場に混乱を引き起こして、あるときは迷惑な存在とさえなってしまったと言われております。業界の各団体も、繊維取引所の廃止を求める声が高くなっております。繊維品の上場の廃止を検討すべきではないかと思いますが、通産省、いかがでございますか。
  167. 黒田真

    ○黒田政府委員 商品取引所をめぐる問題につきましては、従来からいろいろ御議論があるところでございます。また、業界の一部からは、上場の廃止というような要望も強く出されているということがございます。私どもも、昨年の十月の、ビジョンをつくります、答申作成の審議の過程で、審議会におきまして広範な討議が行われております。その結果、答申の中では、繊維産業は「近年、多品種少量化、実需直結型取引の増大等の進展がみられ、繊維産業は五十一年提言に示された方向」これは繊維産業が次第に取引所に依存しないで済むような体制ということだと思いますが、こういった「方向に生産・流通体制が移行しつつある」「しかし、現行取引所制度の急激な改廃は、混乱を伴うおそれがある」ので、「当面、秩序ある取引を行うための監視・規制を行うとともに、」「繊維業界及び関係業界は、上場廃止をも含めこれに相応しい体制の整備を図るべきである。」という御答申をいただいたところでございます。  私どもといたしましては、今御説明をいたしましたような答申の線に沿いまして、商品取引所というものが健全に運営されるよう指導監督に努めますとともに、我が国の繊維産業にふさわしい体制の整備というものが必要だ、その整備に努めたい、かように考えているところでございます。
  168. 横手文雄

    ○横手委員 今、繊維ビジョンに示された中身について述べられたわけでございますが、廃止を含めて検討したらどうだというような答申がなされておりますけれども、今、局長の御答弁の中では、これの育成強化も含めてと、こういうような答弁にも聞こえたわけでございますけれども通産省としてどっちを向いておられるのか、今のお答えではちょっとわかりかねますが、このビジョンに示したように、なるほど、一気にこれを廃止するということは、いろいろな混乱もあるでしょうし、長い歴史を持っているだけに、また抵抗も強いことだろうということも大変理解できます。しかし、そういうことはあるけれども、だから、急激に廃止をすればいろいろ問題は出てくるけれども、しかし、このような廃止の方向も含めてというビジョンを示しておられるわけでございますが、通産省としてはどっちを向いておられるのか、強化育成の方なのか、廃止の方向ということなのか、その辺はいかがでございますか。
  169. 黒田真

    ○黒田政府委員 繊維産業の立場から申しますと、今進めております構造改善が進み、実需直結型というふうな体制が整備されますと、次第に取引所に依存することが少なくなるだろう、こういう分析をしておるわけでございまして、繊維産業を所管する立場として申し上げますならば、次第に取引所へ依存することが少なくなる方向というものは、それ自身繊維産業にとっては必要な方向だろう、かように私ども考えております。  ただ、取引所というものは現に存するわけでありますから、これの急激な改廃というものは混乱を起こすおそれもあるので、そこは十分配慮が必要である、かようなことかと思います。
  170. 横手文雄

    ○横手委員 通産省として、現実に存在するものに、これが廃止の方向というのは、現実の問題として、なかなか言いにくい点もあるのでございましょう。しかし、今御答弁の中で、現実に取引所における玉の数はどんどん減ってきておるという事実、これが構造改善が進んでいき、あるいは建て値制が確立をし、実需直結型になっていくと、やがて玉がなくなれば、その取引所のあろうはずがない、こういうことだと、こんなぐあいに理解してよろしゅうございますか。
  171. 黒田真

    ○黒田政府委員 先ほど私が申し上げました点と、今先生がおっしゃられた点との間に、そう差があるようには私、考えません。
  172. 横手文雄

    ○横手委員 それでは、次へ移ります。  染色業界の直面しておる政策課題について、二、三お伺いを申し上げます。  まず、公正取引委員会、染色業界というのは御案内のとおり、大変多額の設備をする企業であります。しかし、その仕事の内容は一〇〇%下請であります。そこで、よく言われる親元が下請をいじめる、こういうことがないように、下請代金支払遅延等防止法というものによって、それらのことは守られているわけでございますけれども、しかし申し上げてまいりましたように、染色業界というものは、その下請をさしてもらっておる世に言う親企業、それは中小、零細がたくさんございます。     〔渡辺(秀)委員長代理退席、委員長着席〕 したがって、下請をする方が規模が大きい。親企業の方が資本的にも、人数的にも規模が小さい、こういう関係になっておりますと、仮にその下請代金支払いの問題についてトラブルが起こった場合に、この遅延防止法を発動をしようということになれば、それは大きいものが小さいものにやってはならないということになっておりますので、全くできないという現象になっておりますが、この点について取引委員会の御見解はいかがですか。
  173. 奥村栄一

    ○奥村政府委員 下請法は、下請取引の公正化及び下請事業者の利益の保護を目的といたしまして制定されたものでございます。その適用対象となります親企業と下請事業者の関係につきましては、資本金区分を設けておりまして、資本金区分の大きいものを親事業者、それから親事業者と取引する資本金区分の小さいものを下請事業者といたしまして、資本金で区分しているわけでございます。したがいまして、この資本金区分に該当しないものにつきましては、ただいま先生もおっしゃいましたように、下請法の適用対象とすることは難しいということになると思います。
  174. 横手文雄

    ○横手委員 そうしますと、今申し上げましたように、現実に染色業というのは、これは装置が要りますから、当然、資本金が大きくなります。そして、仕事をさしてもらう織物会社よりも当然のこととして、その資本金が高くなってくるわけでございますが、しかし、現実には完全に下請の状態の中にございます。そうしますと、この下請代金支払遅延防止法というのは染色業界では全く適用しない法律である、だから、そこでいかなる取引があろうとも、いかなる不利益を下請が受けようとも、それは全く法律のらち外である、こういうことになりますか。
  175. 奥村栄一

    ○奥村政府委員 ただいま先生からお話もございまして、私どもの方でお答えいたしましたとおり、御質問のような件につきましては下請法での対応は難しいというふうに申し上げざるを得ないわけでございますが、染色業者と機屋との取引関係に限らず、繊維業界における取引の流れという中で見ました場合には、あるいは是正を図れる場面もあろうかというふうに思われるわけでございます。したがいまして、具体的な事例がございますれば、また検討はさせていただきたいというふうに考えております。
  176. 横手文雄

    ○横手委員 私はきょうは、具体的な例を出してということは時間の制約がございますからできませんが、そうすれば、仮に織物会社から不当な返品が染色会社に来る、その織物会社はなぜその染色会社にそのようなことをしなければならなかったのか、そのもとを正していけば必然的にこっちも変わるのではないかというような、繊維の取引全体の中でどこかで解決できるというのはそういうことなんでしょうか。  ただ、その場合にはそれぞれ、例えば織物会社と卸屋さんとの間では、これは物が行ったり来たりする完全な商取引でございますが、織物陸さんと染色屋では、これはもう全く下請の関係であります。ですから、極端なことを言えば、言いなりにならざるを得ないような一面も持っておるわけでございますが、さて、下請代金の問題について何かを言おうとすれば、たまたまおまえはずうたいが大きいからそういうことを言ってはならないんだ、したがって、法律のらち外だ、私はこれはちょっと問題があるような気がしますが、仮にそれでは、下請代金の法が適用できない、しかし、そういう関係があった、そういうトラブルがあったというときに、何かそこへ発動できるような法律というものはあるものなんですか、独禁法か何かの中で。
  177. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 事業所間の取引が公正でなくてはならないことは、申し上げるまでもないわけでございます。不公正な取引方法を規制する法律としては、御承知のとおり独禁法があるわけでございまして、今お話しの事案が具体的にどういうものか、私どもにはわからないわけでございますけれども、実態によりましては、例えばその中の優越的地位の乱用とか取引拒絶とか、いろいろな場合に当たるケースもあり得ようかと思います。ただ一般的に、お示しの事案がすぐ独禁法違反になるかどうか、これはケース・バイ・ケース考えてみなければわからない。ただし、著しい不公正があれば、それはやはり独禁法の問題にはなり得ようとは考えます。
  178. 横手文雄

    ○横手委員 それでは次に参ります。  環境庁にお伺いいたします。三つほどございます。  一つは、これは染色業界だけではございませんが、石油をたく業界については公害負担が行われております。私は、いわゆる日本の空を汚して、そして、そのことによってぜんそくあるいはそういった病気になった人たち、その人たちの生活の面側を見るということは、やはり加害者である空を汚した人たち、つまり物を燃やしている人たちがお互いに割り勘でお金を出し合って、その人たちに対する救済をするということは、これは基本的に正しいことだと思っております。  ただ、業界の中では、この企業の支払う賦課金がこの十年間に八十倍に達したのであります。最初はたしか一立米一円七、八十銭だったものが、十年たった今日では百七十円ぐらいに、これは地域によって違いますけれども、はね上がってきております。業界の皆さん方は、その趣旨はわかる、そして、そういうことを負担しなければならないということは承知をしているけれども、十年間で八十倍に達し、そして、これから一体全体どこまで伸びるのだろうか、こういう大変大きな不安を持っておられますけれども、これについていかがでございましょうか。  二番目。臨調もこの公害補償制度の問題についていろいろと指摘をしたやに聞いておりますが、いかなる指摘がございましたか。  さらには、この指摘を受けて、公害対策のあり方について今後いかなる検討を進めていかれるのでございましょうか。この三点についてお伺いを申し上げます。
  179. 若林勝三

    ○若林説明員 お答えいたします。  まず、先生御指摘の公害健康被害補償制度におきましては、大気系の公害忠省に対する補償給付等に充てる徴用につきまして、大気汚染物質を排出する工場、事業場に、汚染負荷量賦課金ということでその負担を求めておることは御指摘のとおりでございます。  ところで、この賦課金の額を算定するためには、硫黄酸化物の単位当たりの負荷量率をまず定める必要があるわけでございまして、この負荷量率は、所要経費が増加いたしましたり、また、汚染物質でございます硫黄酸化物が全体として減少するという場合には負荷量率を上げざるを得ないという関係になっておるわけでございます。そういう意味におきまして、賦課金の増加即、先ほど御指摘の負荷量率の八十倍という話ではございませんけれども、負荷量率そのものといたしましては、御指摘のような数字になっておることはそのとおりでございます。  いずれにいたしましても、この制度が昭和四十九年に発足いたしました当初より現在までのところ、補償給付等のための所要経費につきましてもかなりの増加をしてきたわけでございまして、これは主として、制度発足当初の数年間におきまして、この制度による患者救済が大きく進んだということによるところが大きいと考えているわけでございます。  そこで、この間の患者数の推移を若干申し上げますと、前年同期比で見ますと、制度発足当初は数十%というような伸びで患者数が伸びておったわけでございますが、ここ数年では三、四%の伸びということで、全体として落ちつきは見せてきておりまして、四日市、大阪市などのように、既に患者数が減少に転じているというような地域もあるわけでございます。したがいまして、こういう傾向は賦課金による企業の負担にも当然反映してくるものと考えておる次第でございます。  環境庁といたしましては、今後ともこの制度の趣旨、今申し上げました執行の状況というようなことを企業の方々によく御説明し、一層御理解を得るような努力をいたしてまいりますとともに、制度の適正な運営に努力したいというふうに考えておるわけでございます。  御指摘の第二点でございますけれども、昨年三月、第五次の臨調の最終答申におきまして、この公審健康被害補償制度に関しまして、まず、「今後とも制度を維持しつつ科学的見地からの検討を進め、第一種指定地域」これは今御指摘の大気系の疾病にかかわるものでございますけれども、「第一種指定地域の地域指定及び解除の要件の明確化を図るとともに、レセプト審査の強化等により療養の給付の適正化を進める。」ということが指摘されたわけでございます。  そこで、第三点の御質問にございます、これを踏まえてどうしていくかということでございますけれども、まず、この指摘されている内容のうち、「第一種指定地域の地域指定及び解除の要件の明確化」ということにつきましては、実は従来から各方面から問題提起がなされてきたわけでございまして、環境庁におきましても、かねてからこのために必要な調査を行ってまいったところでございます。そこで、昨年の十一月、これらの調査データを取りまとめましたので、その結果を中央公害対策審議会に御報告するとともに、大気汚染の態様の変化を踏まえまして、今後における第一種地域のあり方ということで、地域指定及び解除の要件の明確化等につきまして諮問を行った次第でございます。  これまで中公審の環境保健部会のもとに設置されました専門委員会におきまして、大気汚染と健康被害との関係をどう評価するのかというようなことにつきまして審議が行われてきておるところでございまして、環境庁といたしましては、この中公審における検討の結果を見まして適切に対応いたしたい、かように考えておるわけでございます。  それから、臨調の指摘の第二点目の、「療養の給付の適正化」ということにつきましては、これはまずこの制度の運営の適正化を図るという観点からも、昨年実は五月にレセプトの重点審査方式の採用、事務点検の充実等、診療報酬審査の充実につきまして、通知をもって各県市区に指示したところでございまして、今後とも療養の給付の適正な執行ということに一層努めてまいりたい、かように思っておる次第でございます。
  180. 横手文雄

    ○横手委員 与えられた時間でございますから、これで終わりますが、最後に通産省に要望だけ申し上げておきたいと思います。  染色業の振興対策でございます。世界的な有数の技術を誇っており、しかし、一方では経営環境、今申し上げましたような公害対策等で大変な負担の急増をいたしておるところでございます。我が国の繊維産業を先進国型産業として育成していくために、染色業も重要な部門の一つと位置づけて、その振興を図るべきだと考えております。どうか適切な御指導をお願いを申し上げまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。     ―――――――――――――
  181. 梶山静六

    梶山委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  通商産業基本施策に関する件について渕査をするため、本日、参考人として石油公団理事松村克之君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  182. 梶山静六

    梶山委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――
  183. 梶山静六

    梶山委員長 それでは、質疑を続行いたします。小沢和秋君。
  184. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 初めに、前面私が新日鉄の合理化の問題で質問をいたしましたときに、十分意を尽くさなかった問題がありますので、労働省の方お見えになっていると思いますので、お尋ねをしておきたいと思います。  今いわゆる社内配転などと並んで大量の出向が各地で発生して、これが大きな職場の不安や不満を引き起こしているわけであります。この点について、前回労働省としての指導を要請しましたところが、そういうことがあるとは承知していないというようなお答えであります。その後、私、労働省が毎年発行しております白書をひっくり返してみたのですが、その中でも雇用調整の手段として出向が行われているというようなことは書いてあるわけでありまして、知らないというような答弁ではちょっと困るわけであります。  特に、私があのとき取り上げましたのは、新日鉄八幡から本工の人が四月一日から出向で四十名社外に出されたわけでありますけれども、その出向先に含まれている岡崎工業とか太平工業などでは、一方で希望退職という名前の首切りをやったばかりだということであります。  ここに三月九日付の現地の朝日新聞の切り抜きを持ってまいりましたけれども、ここには、「三度目の退職勧奨へ 岡崎工業管理職中心に百人程度」ということで、こういうような記事が現地の新聞にも載っておるわけです。あるいは太平工業というところも、去年の十二月に戸畑二分会というところが休止し、あるいは十二月に八幡六分会というところが休止というようなときに、いずれも希望退職を募ったりして首切りが行われているわけです。こういうところに出向せよと言う。そうすると、出向を言われた本人も大変将来のことについて不安でしょうし、出向を受け入れる側の企業にしてみても、そういうような人を押しつけるためにおれたちの仲間を首を切るのかということで、これもまた非常におもしろくないでしょうし、だから、私どもはこういうような首切りなどについては、労働省としてそういうことは起こらないように指導していただきたい。  特に、労働者は就職するときには、そこの会社で働く契約をするのであって、その会社の命令さえあればよその企業に行ってでも働きますなんというようなことは、普通、私は契約の内容に含まれてないと思うのですね。だから、本人がイエスと言わない限り、そういう出向などというのを勝手にさせることはできないというような点については、特に労働省としてはっきり指導をしていただく必要があるんじゃないかと思うのです。その点明確な答弁をお願いしたい。
  185. 佐藤仁彦

    ○佐藤説明員 御説明申し上げます。  三月の二十三日に開かれました本委員会におきまして、私から御答弁申し上げましたが、そのときの議事録を見ましても、私はこのようにお答えを申し上げております。  御質疑の中で、鉄鋼業を取り巻く環境は大変厳しいものがある。そこで鉄鋼業等では、雇用量の調整を図るための措置をとっており、その中の一つとして出向がある。出向については、鉄鋼業が関連企業からの要請を受けまして、労使協議のもとに出向させるというふうに承知いたしておりますと、こういうふうにお答え申し上げたわけでございます。  ただいま先生御指摘のように、出向は、鉄鋼業におきましては大変経済環境が悪い、企業を取り巻くもろもろの情勢が厳しいということから、所定外労働時間を短縮いたしますとか、そうした雇用量の調整をとるとともに、出向という措置をとっているわけでございますが、その場合の出向につきましては、労使間の協議に基づき、また相手方の出向先の企業からの要請を受けて行っているものであって、そうしたことについては、鉄鋼業界の自主的な努力にまちたいと思うわけでございます。  私どもも、もちろん労働省として、失業の予防あるいは再就職の促進に関するもろもろの施策を持っているわけでありまして、そうした施策を十分に活用して、全体として雇用の安定が図られるように努めてまいりたいと考えているわけでございます。  最後のお尋ねの、労働者の合意といいますか同意といいますか、そうしたもののことにつきましては、鉄鋼業におきましては、出向に当たり労使の間で話し合いを行い、労働協約なりその他によりまして合意があった上で行われているものでありまして、その点に関しては、私どもは、そうした労使の自主的な解決によっていいんではないかというふうに考えております。
  186. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 今のような考え方でいくというと、労使の間で包括的な、いわゆる話し合いというのが行われておれば、本人がそういう首切りが行われているようなところには自分は行くのは嫌だというふうに言っても、労働省はそれは当然だ、行くべきだと、こういうふうなお考えだということですか。私は、そういうような場合に、本人が嫌だというふうに言った場合には、守るのが労働省の役所としての立場でなければならぬのじゃないかと思うのですが、その点がどうか。  それから出向の問題については、既に最高裁判所の判例などもあるというようなことを私も聞いておりますけれども、その点とういうふうになっているかということもお尋ねしておきたいと思います。
  187. 野崎和昭

    ○野崎説明員 お尋ねの判例の点についてお答え申し上げます。  出向に関する判例は、過去いろいろございますけれども、最近の傾向といたしましては、労働協約あるいは就業規則に出向についての根拠規定がある場合には労働者が包括的に同意しているものとして、出向労働者の個別、具体的な同意はなくても、使用省は出向を命ずることができるという判例が多いというふうに承知いたしております。  なお、お尋ねの最高裁の判例でございますけれども、これは就業規則に明確な出向についての根拠規定がございませんで、就業規則には休職拠定がございまして、その中に休職の一つの理由として出向ということが挙がっていただけのケースでございます。したがいまして、こういう不明碓な場合には、包括的な合意があったとは言えないというのが最高裁の判例の趣旨であるというふうに承知しております。
  188. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 そうすると、労働省という役所は、今言いましたように、現に行けと言われているところで、百人からの、希望退職という名前だが事実上の首切りですね。しかも三度目の首切りだというようにこの記事を読むと書いてある。こういうようなところにでも、行けと言われたら、もう包括的同意があるから行け、それは妥当な会社の指示だという見解ですか。そうだとすると、もう労働省という役所の存在意義が疑われることになりはせぬかと私は思うのですが、そういうふうに私は理解していいのでしょうか。
  189. 佐藤仁彦

    ○佐藤説明員 お答えいたします。  鉄鋼業から出向いたします際に、そうした労働協約とかその他があり、それがそうしたものに基づく合理的なものであれば、その出向は、それ自体私どもとして特段の意見を申し述べるべきものではないと思います。
  190. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 そういう労働省なら、もうこれから労働省に対して余り大きなことを期待することはできないということが私はよくわかったということだけ申し上げて、この問題は余りやりとりしていると次の質問に関係するから、この辺でやめておきたいと思います。  きょう、特に私がお尋ねしたいと思っておりますのは石油備蓄の問題であります。とりわけ私の地元に白島という島があるのですけれども、ここに世界で初めての海上の石油備蓄基地が建設されようとしております。このことに特に重点を置きながら質問をしたいと思うのですけれども、今度の五十九年度予算で、石油の国家備蓄の新事業として白島など三カ所の着工が決定されたわけでありますけれども、これからの事業の工期がどうなっているかということをまずお尋ねをしたいと思います。  国家備蓄三千万キロリットルの達成を六十五年度までに二年間ペースダウンをさせるということになっておりますけれども、そうすると、工期も全体として、今度着工することは方針として決まったけれども、おくれることになるのではないかというふうに思いますが、この点、どうでしょうか。
  191. 松村克之

    ○松村参考人 お答えいたします。  五十九年度の予算で、今先生からお話がございましたように、九州地区で洋上備蓄二カ所が工事を再開するといいますか、開始するということでございます。またそれ以外に、新しい備蓄基地を一カ所建設することが予算上認められたわけでございますが、これをいつから開始するかという点につきましては、現在まだ予算が通ったばかりでございますので、今後関係方面とも折衝しながら、できるだけ速やかに工事を開始してまいりたいというふうに考てえおります。
  192. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 さっきも言いましたように白島というのは私の地元なので、いつごろから工事にかかるのかとか、今年度はどれくらい工事をやることになるのですかとか、しょっちゅう尋ねられるのですが、少し前に石油公団がおつくりになった工程表というのを私は現地で見せていただいたことがあるのです。これによると、着工することが決まったらすぐケーソンヤードの仮設の工事にかかる、それから二月目には船だまりの防波堤やドルフィン防波堤などの建設及び北、西などの護岸などの工事に着手するというようなことで、全体として三十七カ月ほどで完成する、こういうような工程になっているのです。そうすると、今年度着工するということは、ゴーという命令が出たら大体この工程でいくであろうと見ておいていいのですか。
  193. 松村克之

    ○松村参考人 私は今極めて一般的に申し上げたわけでございますけれども、白島について若干詳細に申し上げますと、公有水面埋め立ての認可が出ましたのが本年の二月二十七日でございまして、その免許が三月二日に出ているわけでございます。その他の水域占用許可あるいは危険物貯蔵所の設置許可等も同じ日になされております。したがいまして、本体工事はまだ若干時間がかかりますけれども、附帯工事と申しますか、北九州市が施行する基地の、陸上管理ヤード造成のための仮設基地と申しますか、仮設ヤードの整備工事については本年の二月から北九州市の方で着手しているわけでございます。五十九年度につきましても、北九州市はこの管理ヤードの造成工事を本格的に開始すると伺っております。また、国家備蓄会社が担当しております工事については、基地の防波堤工事に着手するという予定でございます。  いつまでかかってこれを完成するかという点については、なお詳細今後の問題でございますが、私どもの現在の考えとしては、昭和六十五年までにこれを完成したいと考えております。
  194. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 そうすると、さっきの私が見せていただいた工程表よりは全体としてスローダウンするというお話ですね。
  195. 松村克之

    ○松村参考人 先生の今お話しのございましたスケジュール表というのを私拝見しておりませんので何とも申し上げられませんが、それは一部分で、例えば護岸なら護岸といったようなものではないかと思います。三カ年ではなかなか難しいと思います。(小沢(和)委員「三年半」と呼ぶ)今のところ昭和六十五年ということで考えております。
  196. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 それから、地元で非常に期待の声を私が聞かされるのは、何といっても経済効果、とりわけ雇用の問題だと思うのです。市議会などでは百万人の、これは延べでしょうけれども、雇用効果があるというようなことが言われているのですが、実際にどれくらいの雇用効果が期待できるのか、それもお知らせください。
  197. 松村克之

    ○松村参考人 雇用の問題につきましても、これは実際の問題としては競争入札といったようなことで、それぞれ企業が行うわけでございますので、正確な数字を算出するのは難しいわけでございますけれども、私ども考えとしては、建設のための現地の作業員は、ピーク時には一日二千人程度ではないかと考てえおります。
  198. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 その一日二千人というのは、実際に工事が行われるあの白島周辺でそんなにたくさんの人が働くことになるのでしょうか。そのピーク時というのは何カ月あるいは何年ぐらい続くのでしょうか。
  199. 松村克之

    ○松村参考人 これまで、例えば青森県のむつ小川原石油備蓄基地で作業を行ったわけでございますけれども、この場合には、現地でピーク時に五千人近い人を使っております。これは一月間、一番ピークの月でございます。  また、北海道の苫小牧東部でのプロジェクトを進めているわけでございますが、この場合には、ピークの月に一日二千五百大使っているといったこと、こういうことから推定をいたしたわけでございます。
  200. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 陸上と海は違うわけですね。陸上でしたら整地するとか道路をつくるとか、あるいは油を貯めるタンクそのものもそこの現地で工事をするわけでしょう。ところがあそこは海ですね。我々が考てえみると、小さな部分をちょっと埋め立てをして、あとそれに泊地をつくって護岸の堤防をつくる、地元でやる工事はせいぜいそれくらいなんです。船を、多分日立だろうということで問題になりましたけれども、向こうから持ってくるということになりますと、せいぜいのところ石をよそで切り出してその船に積んできてあそこでひっくり返して捨てる、この関係で幾らか雇用が生まれるかな、それ以外に雇用が工事の期間に発生するということがちょっと私には理解できないのですが、その二千人というのはどんな形で仕事をするんでしょう。
  201. 松村克之

    ○松村参考人 先生今お話しございましたように、これは洋上備蓄でございますので、例えばむつ小川原の今申し上げました五千人程度に比べれば、大分少ないだろうと私ども考えているわけでございますが、そういたしましてもやはり相当な作業、例えばしゅんせつでございますとか埋め立て、あるいは基礎等にも作業人員を必要とするわけでございまして、大体推定いたしまして二千人程度ではなかろうかと考えております。
  202. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 あそこでピーク時二千人の人が働くと言われまして、例えばしゅんせつとか挙げられましたけれども、そういう人たちが地元で採用されるのかといったら、よそから連れてくるような人が相当おって、実際に地元で、臨時にしろ何にしろ雇用機会を得るという人はそれよりずっと少ないことになるんじゃないですか。
  203. 松村克之

    ○松村参考人 例えて申しますと、これも青森の例でございますが、青森のむつ小川原の場合には約半分が現地の雇用になっているわけでございます。白鳥の場合には、単純労働というより、むしろ技術的には非常に高い労働力が必要とされると考えるわけでございますが、ただ、青森県あるいは北海道等に比べまして北九州というのは非常に大きな工業基地でございますので、そういう点ではむしろ北九州の方が有利ではないかと思うわけでございます。
  204. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 技術的に高い労働者が必要ということになれば、なおさらそれぞれの企業がかねてから養成しているような人たちを全国的にえりすぐってあそこに投入するということになって、それが主力で、地元でごく臨時的に若干の雇用は生まれるかもしれないけれども、それは先ほど言われた二千人とかいう中のごく一部分にしかならないのじゃないでしょうか。
  205. 松村克之

    ○松村参考人 そういう点につきまして私どもは、北九州というのは非常に大きな工業基地でございますし、青森あるいは北海道等に比べてそういう労働力の確保が容易ではないかと考えるわけでございますし、また、先生のお話のような点で、地元雇用が大して期待できないということがあっては非常に問題でございますので、今後工事に当たりましては、そういう実際に工事に当たる企業に対しまして十分指導いたしまして、地元雇用を確保していきたい、かように考えております。
  206. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 では、次の問題をお伺いしたいと思います。  かねてからこの白島の石油備蓄基地については政治家の介入などの疑惑が指摘をされているし、また今日のような財政危機のときに、国民にはいろいろな形でしわ寄せがされる。今も健康保険の本人に負担を押しつけるということが問題にもなっておりますけれども、こういうようなときに、どうしてまた新たに白島とか上五島などという膨大な金のかかるプロジェクトをスタートさせなければならぬのかという疑問を感ぜざるを得ないわけであります。今までに石油備蓄事業に一体どれぐらい国としての予算をつぎ込んできたか、今後三千万キロリットルの国家目標を達成するためにどれぐらい必要なのかということをこの機会にお尋ねしたいと思います。
  207. 豊島格

    ○豊島政府委員 先生ただいま御質問の、三千万キロリットル国家備蓄についてどれくらいの金が既に投入されているか、また今後要るかということでございますが、原油の購入資金といたしましては、五十八年度末までに量的には千五百万キロリットルを確保しているわけでありますが、大体五千八百九億円、それから五十九年度以降の積み増しが大体七千九百億円、両方で一兆四千億円くらいになろうかと思います。それからもう一つの基地建設の資金でございますが、五十八年度末までに三千六百六十二億円という資金を投入いたしております。それから今後五十九年度以降でございますが、大体一兆七百億、一兆を超える数字でございまして、両方合わせまして、基地建設としましては大体一兆五千億円、こういうことになろうかと存じます。
  208. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 そのほかにも民間の石油備蓄の関係でかなりのお金を投入するわけですね。これも念のためどれぐらい今までつぎ込んできたか、今後の見通しお尋ねしておきたいと思います。
  209. 松尾邦彦

    ○松尾政府委員 現在国家備蓄の推進に当たりましては、ただいま申し上げました原油の購入資金、それから基地の建設につきまして主として民間の資金を借り入れて、その利子分を特別会計で負担するという仕組みをとっておりますけれども今先生お尋ねの、例えば備蓄の国家基地の建設に当たりまして借り入れた資金の額という点で申し上げますと、きちんとした実績が出ております五十七年度までの数字で申し上げますと、九百七十五億円の借り入れ実績がございます。今後につきましては、先ほど長官が申し上げましたような、全体の資金需要の中で実績値と今後の計画というのが区分されることになるわけでございます。
  210. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 今言われたのは民間の石油備蓄関係の中の一部分でしょう。私がいただいているのでは、こっちは五十九年度までの資料ですけれども、いわゆる石油を買うのについての利子を補給するのやら、そのほかの貯蔵施設の建設のための出資やら、補給金やらというのを加えたら、全部で今までに二千三百二十一億円出していることになります。私、そんなことに時間を余りとりたくないから、あなたの方からいただいている資料のとおりならそういうことになるということを言っておきたいと思いますが、いずれにしろ今まででも相当膨大な金をつぎ込んできましたが、これからもまだまだ大変な金をつぎ込まなければいかぬ。それで、では三千万キロリットルの達成がなされた暁には、もうそれでお金が出なくなるかというと、今のお話にありましたように、例えば原油など買い入れたりするのは全部借金で買い入れるわけですね。利子を払っていくわけでしょう。そして、考え方としては、こういう原油は民間に対して売ったりするような事態にならない方が望ましい、未来永劫にこれはずっとタンクに入れたままでおられる状態が望ましいというのがあなた方の考え方でしょう。それは当然そうですね。そうだとすると、ずっとそのための利子を今後も払っていかなければいけない。あるいはタンクなどの建設のお金も五十七年度からは借金でつくるようにして、これも利子だけ払っていく。そうすると、民間の普通の考え方でいけば、これは減価償却をしたり、あるいは借金を返したりしなければいけないように、これは建設が終わったら、しますね。そうすると、それから先も、三千万キロの備蓄が完了してから後でも、ずっとそういうようなお金が相当にかさむなというふうに私は思うのですが、こういうようなことを試算されたことがありますか。大体、年々どれぐらいずつ、今後どれぐらいずっと払っていくということになる見通しをお持ちですか。
  211. 豊島格

    ○豊島政府委員 今おっしゃいましたように、原油の購入、これも借入金で、利子補給でございます。それから某地の建設も借入金でございます。それから、そういう利子の問題あるいは基地を借りる場合に基地の借入料というのを払わなくちゃいけないということでございます。  ただ、これの毎年の金額がどうなるかということでございますが、これにつきましては、原油の価蓄につきましては六十三年度までに三千万キロリットルという一つスケジュールがございます。基地も目標年次がありますが、毎年どれぐらい出るか、あるいは借入金の返済をどうするかというような、いろいろの状況がございますので、具体的に今の段階ではっきりしたことは申し上げられません。ただ、非常に大胆な計算をいたしますと、たしか別の委員会、あるいはこの委員会だったと思いますが、申し上げたと思いますが、四千億ぐらい、ピークのとき、一番たくさん金のかかるときにはそれぐらい要るという計算もできます。  ただ、その返済の仕方を変えるとピークが三千数百億ということになろうか、それから、だんだん償却その他で返していくということになればまた減っていく、こういうようなことでございまして、再度申し上げますと、ピークには四千億ぐらいいくことも考えられる、こういうことでございます。
  212. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 この三千万キロリットルの計画がちょうど完成した時点で、国が抱える借金は全部でどのぐらいになるのですか、それをどんなふうに払っていくと、今言う四千億というような数字が計算されるのでしょうか。
  213. 豊島格

    ○豊島政府委員 先ほど申し上げましたけれども、大体備蓄の原油代が一兆四、五千億、それから建設費が一兆四、五千億ということで、両方で三兆ということでございます。したがいまして、残高がそのまま残っておれば、一部借入金でないのもございますのですが、それぐらいまではいくかということでございます。しかし、現に減価償却では当然返済ができますし、そのほかの返済財源というのも場合によっては考える。これは長期的に見ますと、その方が効率的のこともございます。そういうことでございますので、実際問題はそれよりは相当下回る数字になるというふうに考えております。
  214. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 IEA加入諸国が日本よりも余計備蓄を持っている、最近の数字でいきますと、百六十七日分というようなことが言われて、何かそういうような国々の方がよほど石油備蓄に熱心で、お金もたくさん使っているような感じを私、持たされてきたのですけれども、政府として、これほどたくさん財政を通じて備蓄のために投入しているような国はほかにはないのじゃないですか。
  215. 豊島格

    ○豊島政府委員 国によっていろいろ違うわけでございまして、どのくらいの資金をそれぞれ国として出しておるかということについて、はっきりしない点もございます。ただ、西独等におきましては、低利の政府保証というようなこともいたしておりますし、法人税、営業税、資産税等の減免ということを民間の備蓄について義務づけております。  それから、フランスあたりでは、備蓄費用、これは価格を政府が決めておる。物価統制といいますか、これはだんだん外れてきておりますが、エネルギーその他、まだ一部に残っておりまして、そういう中で備蓄費用を含むということで民間備蓄をさしております。 アメリカの場合におきましては、御承知のように民間には備蓄義務を課しておりませんけれども、国がみずから特別な戦略備蓄という、これは戦略という言葉でございますが、決して軍事的目的ではございませんで、経済安全保障のための戦略備蓄ということをいたしておりまして、既に三億八千万バレル、将来七億五千万バレルですか、そういう備蓄をみずからやるということでございまして、これ自身は政府が全部負担してやっておるということでございまして、相当な量でございます。そういう意味で、国によって形態は違いますが、アメリカあたりは相当支出をしておる、こういうことは現実でございます。
  216. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 そういうような関係について私も資料を探してみたのですけれども、どうもここで議論をできるほどの資料はないのですね。だから国がどの程度の支出をしているかということはよくわかりませんけれども、私が資源エネルギー庁石油部が監修した「石油産業の現状」という数年前の資料をひっくり返してみたら、その中に「欧州主要国の備蓄制度」というのがあります。これを見てみますと、今あなたちょっと言われましたけれども、国の備蓄のことは余り書いてないので、そこはわからないのですが、民間などに対する備蓄の助成を言えば、フランスは政府の助成なし、西ドイツも政府の助成があるわけじゃなくて、積立金の創設などがちょっと認められているという程度ですね。イタリアもイギリスも政府の助成はないのです。だから、これから類推しても、国がどれだけお金を投入しているかということになると、日本ほどに、こういう今財政危機だと言われている中でお金を投入している国はほかにないのじゃないかというふうに私は思わざるを得ません。  そこで、きょうは時間厳守ということを私約束をしておるから、ここで質問をまとめたいと思うのですが、今これだけ財政危機の中で、しかも、去年の暮れに出されております「長期エネルギー需給見通し」などの中でも、エネルギーの量的な確保だけでなく、エネルギーコストについても過大な負担を課するようなことがあってはならない、その点も今後は十分考えていくべきだというふうな指摘があっておる時期に、こういうような、またまた新たに白島などの工事まで手がけて、これからまたどんどん借金まで雪だるま式に膨らましていくというようなことが、果たしてエネルギーの安全保障というような名前で国策として漫然と許されるものなのかどうか、私、最後に大臣の所見をお尋ねをして、きょうは終わりたいと思います。これについては引き続いてやります。
  217. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 これは私はたびたび申し上げていることでございますが、第一次あるいは第二次石油ショック以後、省エネルギーの推進あるいは代替エネルギー開発等々によりまして、石油の需給が非常に緩和してきたということは事実であります。しかしながら、そういう中で我が国といたしましては、石地供給の多角的なあり方ということをいたしましても、まだまだ中東における原油の依存度が七〇%を超えるという状態にあるわけでございます。  昨年の八月の総合エネルギー調査会におきましても、このような状況を踏まえて、やはり我が国の場合、一次エネルギーにおける石油の依存度が非常に高い、あるいはただいま申し上げましたとおり、中東の情勢が非常に不安定である、さらには世界の先進国が石油備蓄の目標というものを高く掲げて、これを推進している等々の状況を踏まえれば、我が国はその備蓄の目標を、引き続き目標の達成に努力すべしというような指摘もなされたわけでございます。したがって、政府といたしましては、国家備蓄目標の三千万キロリットル、これを取り下げる考えはないということを、ここに明らかにしておきます。      ――――◇―――――
  218. 梶山静六

    梶山委員長 内閣提出割賦販売法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより趣旨の説明を聴取いたします。小此木通商産業大臣。     ―――――――――――――  割賦販売法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  219. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 割賦販売法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  近年、割賦販売等に係る取引が急速に多様化、拡大を示しております。こうした取引は、代金の分割払いにより、高額な商品の購入を可能とするものであり、今後一層その利用が国民の消費活動に浸透し、より豊かな国民生活の実現に貢献していくものと考えられます。  しかしながら、割賦販売等に係る取引の拡大に伴い、消費者とのトラブルも増大してきております。特に現在、購入者保護のための法による措置がとられていない割賦購入あっせんについては、割賦購入あっせん業者が購入者と販売業者との間に介在する複雑な形態の取引であることからトラブルが多発しております。  このような状況からは、割賦販売等に係る取引につき、一周の購入者保護を図ることにより、国民が安心してこれらの取引を利用し得るよう法による措置を充実することが急務となっております。  このため所要の法改正を行うべく、本法律案を提案した次第であります。  次に改正案の内容を御説明申し上げます。  第一に、現在、割賦販売に適用されている購入者保護規定を割賦購入あっせんに同様に及ぼすことであります。  すなわち、割賦購入あっせんに対して、取引条件の表示、書面の交付、いわゆるクーリングオフ、契約の解除の制限等の規定を所要の改正を加えつつ適用するものであります。  第二に、割賦購入あっせんを利用した購入者が販売業者に対して主張できる事由をもって、割賦購入あっせん業者からの代金の支払い請求に対抗することができるものとすることであります。  すなわち、商品の引き渡しがない場合や引き渡された商品に瑕疵がある場合等には、購入者は割賦購入あっせん業者からの代金の支払い請求を拒むことができるものとすることにより、購入者保護の徹底を図るものであります。  第三に、支払い能力を超える購入の防止及び信用情報の適正な利用等を図ることであります。  すなわち、割賦販売業者等は、購入者がその支払い能力を超えて商品の購入を行うことがないよう、正確な信用情報に基づき販売活動を行うべきこと、また、信用情報機関及び割賦販売業者等は、信用情報を購入者の支払い能力の調査以外の目的に使用してはならないこと等を規定したものであります。  第四に、指定商品の対象として消耗品を加え得ることとし、また、いわゆるリボルビング方式による割賦販売等も法の対象に加えたことであります。  すなわち、近年、割賦販売等に係る取引が増加している消耗品をも本法の適用対象とするため指定商品の定義を改正し、また、割賦販売等に係る取引の代金支払いの一形態として近年増加しているリボルビング方式につきましても、明示的に定義規定に追加したものであります。  以上が、この法律案の提案理由及びその概要であります。  何とぞ慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  220. 梶山静六

    梶山委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  本案に対する質疑は後日に譲ることといたします。     ―――――――――――――
  221. 梶山静六

    梶山委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本案審査のため、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選及び日時につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  222. 梶山静六

    梶山委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  この際、暫時休憩をいたします。     午後二時三十四分休憩      ――――◇―――――     午後三時四十二分開議
  223. 梶山静六

    梶山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件・経済計画及び総合調整に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について質疑を続行いたします。水田稔君。
  224. 水田稔

    ○水田委員 通産省が委託費として年間大体七億円ほど、科学技術庁が二億円弱ですか、約九億円の委託費を払っていわゆる放射性廃棄物の処理の研究をやっておる環境整備センターというのがあるわけです。これは一体どういう目的で設立されて、今具体的にはどういう調査なり実験をやっておるのか、まずお伺いをしたいと思います。
  225. 松田泰

    ○松田政府委員 お答えいたします。  原子力環境整備センターは、主として低レベル放射性廃棄物の処理、処分に関する研究開発及びその成果の普及等を通じて放射性廃棄物の安全かつ合理的な処理、処分体制の確立を推進するということが主要な目的で設立されたものでございます。  現在この整備センターが行っております事業は種々ございますが、ただいま先生がおっしゃいましたように、国、それも通産省や科学技術庁及び電気事業者等からの委託を初めといたしまして、自主的な研究開発を行っておるわけでございますが、大きく申し上げますと、海洋及び陸地処分の試験研究、それから極低レベル廃棄物の処分の研究、それから安全性実証試験と申しまして、実際の低レベル廃棄物を処理、処分いたしますモデルの設備等につきまして安全性試験、その他いろいろなフィージビリティーにつきます机上の調査研究あるいは一部現地等の実際の場所におきまして、いろいろなデータその他を得るような基礎的な実験というようなことをやっておるわけでございます。
  226. 水田稔

    ○水田委員 財団法人ですから、何といいますか、それを構成しておりますものはどういうものが主体になっておるわけですか。
  227. 松田泰

    ○松田政府委員 この財団法人の出資金は九電力会社から出されておるものでございます。役員等の構成はいろいろ光電気事業者の人、メーカーの人、あるいは官庁の人、あるいは試験研究所にいた人等から構成されております。
  228. 水田稔

    ○水田委員 このセンター全体の予算を見ますと、約六〇%が通産省と科学技術庁の委託費、それから民間の委託費等、そして残りがこのセンター独自の研究費ということになっておるわけですね。そうすると半分以上がとにかく国の委託事業ということですから、国がどういう事業を委託するかということは、全体的な調査研究一つスケジュールを組んで、その中でこれは独自な研究、この部分は通産省が持とう、あるいはこれは科学技術庁が持つというようなことになると思うのですが、全体的な調査研究調整というのは、いわゆる委託費を組む場合にどういう形でやられておるのですか。
  229. 松田泰

    ○松田政府委員 委託費と申しましても国の予算でございますので、原子力に関します予算につきましては、それぞれ所管する省庁、主として科学技術庁及び通産省で第一義的には原案をつくるわけでございますが、それの各省庁調整に当たり、ましては、原子力委員会におきましてヒアリングを行い、もちろん相互の省庁の間で相談もするわけでございますけれども、総合的に調整いたしました案を持って大蔵省に出しているということでございます。
  230. 水田稔

    ○水田委員 もちろん国の予算はそうでしょうが、このセンターがやる全体計画というのがありますね。もちろん独自だから勝手だということはないと思うのです。それは全体的に放射性廃棄物の処分の研究がある程度バランスをとりながら進んでいく、そういう中で通産省はこの部分の研究の委託費を出そう、科学技術庁はこう、そして独自に、あるいは民間の委託もありますから、それは電力会社が持って出そう、そういう調整はどこがやるのですか、こう言っておるのです。
  231. 千々谷眞人

    ○千々谷説明員 お答え申し上げます。  委託費でございますので、本来これは国がみずから行うべき性格の事業を、それにふさわしい団体に委託して行うということでございまして、科学技術庁では現在この環境整備センターに四つの項目の事業委託を行っております。そのうちの二つは海洋投棄に関するものでございまして、残りの二つが、一つは陸地処分のモニタリング手法に関するもの、もう一つが固体廃棄物の処分技術に関するものでございます。  この整備センター全体の事業計画につきましては、内閣総理大臣通産大臣が所管大臣でございまして、毎年度事業を始める前に事業計画の届け出をもらうということになっております。ただし国がこのセンターに委託費等を出す場合におきましては、事業の内容が重複しないように、原子力委員会の場で調整された予算が組まれているということでございます。
  232. 水田稔

    ○水田委員 そうしますと、委託費だけではなくて、科学技術庁か通産省がどちらかわかりませんが、このセンターのやっておる他の委託ですね、国の委託していない事業、あるいはセンターが独自にやっている調査研究についても、大体それはもう掌握しておるわけですね。そういうぐあいに理解してよろしいわけですね。
  233. 千々谷眞人

    ○千々谷説明員 御質問の、センターが国以外の者から委託を受けたもの、またはセンターが独自でやっているものにつきましては、通産省及び科学技術庁とも承知しております。
  234. 水田稔

    ○水田委員 国の委託というのは補助金ではなくて委託ですから、まさに本来国がやるべき事業なんですね。このやった実験調査の結果、データですか、あるいはその成果というのはどういう形で通産省なり科学技術庁なりへ報告という形になるのか。  それからもう一つは、具体的な処分地の選定を事業者が申請した場合に、科学技術庁なり通産省の判断材料というのは委託だけでは十分なデータにならぬと思いますね。これは当然、センター独自でやっているものも含めた総合的なデータを持った上でなければ行政的な判断ができないのじゃないかと思うのですね。その部分はいいのですが、委託した部分については、これは補助金ではないのですから、出しっ放しということではないので、成果は当然科学技術庁なり通産省に返ってこなければならぬ。それはどういう形で今返っておるのかですね。
  235. 松田泰

    ○松田政府委員 国から委託費を出したものにつきましては、これは各省庁とも同じだと思いますが、その成果につきましては、成果の報告書をいただくということになっておりまして、毎年成果の報告書の報告をいただいておるわけでございます。
  236. 水田稔

    ○水田委員 そこで、こういう調査の中で、岡山県の川上部に成羽町と備中町という二つの町にまたがります金平鉱業の山宝鉱山というのがあるわけですね。ここで五十六年から五十九年、ことしで終わるようでありますが、石灰岩を採掘しておる坑道の中で、低レベルの放射性廃棄物の処分に関する実験を行われているわけです。これはこの委託事業の中に入るわけですか。
  237. 松田泰

    ○松田政府委員 先生が今おっしゃいました山宝鉱山におきます低レベル廃棄物の処分場に関します調査は電力会社の委託しているものでございます。
  238. 水田稔

    ○水田委員 先ほどの質問に対するお答えで、委託以外のものも原子力委員会調整するということですが、ここで五十六年から五十九年まで行われた実験の内容と、その使われた金、予算がわかりますか。わかればひとつお答えいただきたいと思います。
  239. 松田泰

    ○松田政府委員 石灰石鉱床としての山宝鉱山内坑道におきます試験につきましては五十六年から行っておりまして、五十六年、五十七年、五十八年の予算を申し上げますと、二千五百万円、一億一千万円、一億三千万円ということでございます。なお、五十九年度のものを合わせまして、合計二億九千五百万円という予算で行うということになっておりまして、五十六年、五十七年にかけまして、それぞれ事前調査から室内試験、坑道の建設等、準備的な段階を経まして五十八年にいろいろな計測を行い、五十九年度はその結果を解析、検討するというスケジュールであるというふうに承知いたしております。
  240. 水田稔

    ○水田委員 国が補助金を出し、委託費を出して調査研究するのは原則的には基礎的な部分ですね。それから、実際にこれを実用化する場合は当然事業者がやるというのが普通のたてりなわけですね。そうしますと、ここの場合、電力会社の委託事業ということになれば、まさに基礎的な研究から一歩踏み込んで、場所の選定等も含んだ、そういう調査研究ではないかということが地域伍民から大変心配されておるわけですが、そういう点では、流れとして見ればそういうものだと理解をしてよろしいですか。
  241. 松田泰

    ○松田政府委員 この調査の内容について御説明いたしますと、石灰石鉱床の地質調査からボーリング調査、水との関係で注目されますいわゆる透水性の試験といったようなものを行いまして、将来実際に廃棄物処分場をつくる場合の一番基礎的な岩盤物性等のデータを得、それを理論的な設計等での解析を行う場合の設計方法等の開発に資するための基礎的な資料として使おうというふうにやっているわけでございまして、この場所で実際の処分場をつくるということを目的として行っているものではないというふうに私ども承知いたしております。  先生がおっしゃいましたように、電力会社の委託であるから実際の事業につながるような勉強ではないかということはごもっともな発想だと思いますが、本調査の内容につきましては、決してそういう実際の処分場をつくるということを目的検討しているものではないというふうに承知いたしております。
  242. 水田稔

    ○水田委員 一般論としては、私が申し上げたように、基礎的な調査研究については、それは先端技術でも同じように税金をかけてやっていく、事業化する場合はその事業者の危険負担でやるというのが原則ですね。このセンターの仕事で言えば、電力会社の委託というのは、通産省、科学技術庁の委託というのは、まさに基礎的なことをやっておる、一般的にはそういう疑いを持たれても仕方がないと思うのです。今そうでないだろうと断定的には言えないというように思われたんでしょうが、例えばなぜ石灰岩地帯を選ぶのか疑問に思うわけです。廃坑がたくさんあるわけですけれども、石灰岩というのはもともと水に溶けて鐘乳洞をつくるわけですね。土地の下の地質というのは所によって大変な違いがあるし、本当言ったらわからぬわけですね。ですから、そこでやったことをほかでやろうと思いましても、強度とか弾性とか、そういうものは応用ができるでしょうけれども、全体的な場所の選定についてはほかでは使えないものもたくさんあるだろうと思うのです。  成羽川、高梁川というのは、岡山県の三つの川の中で一番水量が豊富で、工業用水から飲料水で約百九十万の人口のうち八十万くらいがその流域でこれを水道水に使っておる、それだけにその下流の人が神経質になるのは当然なことなんです。  そこで、なお疑いを持つのは、環境整備センターが五十九年度の事業計画の中で、五十八年度までの調査で得られた諸資料をもとに地下保管場の概念設計を行う、あわせて実用化に際しての諸条件を検討する、こういうぐあいに正式にうたっているわけですが、そうすると、今申し上げましたように、地質というのは土地によって地域によって大変な違いがあるわけですから、これだけの金をかけてここで研究をするということは、例えばセンターの事業目的の中に候補地の選定というのが入っておるわけですから、単に基礎的な研究がけじゃなくて、選定まで入っておって、これだけの金をかけてここでやったということになると、ある程度の候補地になるのではないか、そういう気持ちもあっての調査研究検討がされたのではないだろうか、そういうぐあいに思うわけですが、そういう点はいかがですか。
  243. 松田泰

    ○松田政府委員 ただいま先生がおっしゃいました文章につきましては、私どもも調べましたところ、岡山県に対する説明資料の中にそういう文章が確かにございます。  それで、御心配はごもっともだと思うわけでございますが、おっしゃいましたように、地盤に関しますいろいろなデータというものは、一般的にはほかの物理的な量ほど余りほかで使えないという側面は確かにございます。しかし、同時にこういう自然のものを利用して何か設備をつくろうという場合には、それに似たような経験が全く皆無な状況で始めるわけにはいきませんので、どうしてもどこかを選びまして、一応そこのデータでやってみるという経験も必要なわけでございまして、全く机上でやるだけではどうしても本当のことがわからないところがございますので、どこかを選んで実験的にやってみるということはしばしばとられる方法でございまして、この石灰石の鉱床を利用したことにつきましても、花崗岩等のものにつきましては十分いろいろなことがわかっているのに比べて、先生今おっしゃいましたようにデメリットも含めましてよくわかってないところがあるので、たまたまここを選んだというふうに理解しているわけでございますが、いずれにいたしましても、これを選びましたことによって、仮に概念設計を行うにしましても、この場所で物をつくるための設計ではなくて、そういう設計をした場合にどのような問題点があるかということを経験するための一つの勉強であるというふうに理解していただきたいと思います。
  244. 水田稔

    ○水田委員 それでは、実際に処分地を選定して決めるという場合に、通産省なり科学技術庁というのは行政上どういうかかわり合いを持つのか、その点をお答えいただきたいと思います。
  245. 松田泰

    ○松田政府委員 実際の処分場、つまり事業として廃棄物の処分を行うというふうな場所を選ぶということは、事業主体であります民間の仕事でありまして、例えば通産省にいたしましても、科学技術庁も同じだと思いますが、その選ばれましたサイトについて所管する法律上のチェック、例えば環境に対する影響あるいは安全性についての基準との適合性等についての審査はいたします。しかし、そのサイトの選定そのものにつきまして、行政庁みずからいろいろ事業主体と一緒になってするというような立場にはございません。
  246. 水田稔

    ○水田委員 ところが、三月二十六日衆議院の決算委員会で、岩動科学技術庁長官が山宝鉱山の問題について、そういう心配を住民がしておるということについて見解を求められて、こういう答弁をしているという報道がされておるわけです。山宝鉱山を処分地にする考えはないと明言した、これは県内で一番発行部数の多い地元の新聞社の日刊紙ですが、そういうぐあいに今報道されておるわけです。今のお話とは若干違うわけですが、この点は長官がそういうように明言をされたというのですが、そういう見解を科学技術庁は持っておられるのかどうか、お伺いしたいと思うのです。
  247. 千々谷眞人

    ○千々谷説明員 お答えいたします。  先般の衆議院決算委員会におきます大臣の御答弁を繰り返して申し上げさせていただきます。  財団法人原子力環境整備センターが山宝鉱山で基礎的な調査をするということは、そこを処分場とはしないというセンターと地元との念書というものがあり、この念書は守られるものと理解している。具体的処分地の立地につきましては、一義的に発生者たる事業者の責任において定められるものであり、具体的な立地に関する計画はないと承知しているということで、御指摘の決算委員会におきまして岩動科学技術庁長官が御答弁いたしております。
  248. 水田稔

    ○水田委員 そうすると新聞で明言されたということは、今の内容からしますと、そういう考え方ではない、こういうぐあいに理解してよろしいですか。
  249. 千々谷眞人

    ○千々谷説明員 お答えいたします。  ただいま私が申し上げましたことが大臣が決算委員会で申し上げた答弁でございます。
  250. 水田稔

    ○水田委員 通産省の方にも同じことで、山宝鉱山については先ほど申し上げましたように流域住民が大変心帆しておるわけですが、通産省としてはそこを最終処分地にしない、そういうことがお答えできるのかどうか、最後にその点をお伺いしたいと思うのです。
  251. 松田泰

    ○松田政府委員 通産省といたしましては、実際の処分場の選定は民間で行うべきものと考えておりますので、それについて明言できる立場にはございませんが、実際にそういった選定が行われる場合には、当然地域住民の方々とはよく話し合いが行われて、理解を得られて進められるということにつきましては指導してまいりたいというふうに思っております。
  252. 水田稔

    ○水田委員 そういう住民の理解云々ではなくて、例えば通産省がそこをするとかしないとかいう立場にあるのかないのか。先ほどの新聞報道は断定的に、しない、こう言われたと報道されておるものですから。今速記録を読まれたように、そういう立場にないということなんですね。だから通産省も同じ立場だろうと思うのですが、念のためにそのことをお伺いしたのです。住民の理解云云ではなくて、住民が反対しておることは確かなんですから、通産省の立場として山宝鉱山を処分地にしないということを言えるのか言えないのか、そのことだけお答えいただきたいと思います。
  253. 松田泰

    ○松田政府委員 通産省は、そのサイトの選定についていろいろ申し上げる立場にはございません。
  254. 水田稔

    ○水田委員 終わります。      ――――◇―――――
  255. 梶山静六

    梶山委員長 この際、長田武士君外四名提出割賦販売法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより趣旨の説明を聴取いたします。長田武士君。     ―――――――――――――割賦販売法の一部を改正する法律案   〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  256. 長田武士

    長田議員 ただいま議題となりました公明党・国民会議提出割賦販売法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  割賦販売法は、昭和三十六年に割賦販売の公正の確保、消費者の保護等を目的として制定されましたが、最近の割賦取引形態の多様化及び取引量の拡大あるいは役務取引の急増といった事態に十分対応できず、消費者保護を図ることは著しく困難になっております。中でも、現行割賦販売法の対象外になっている個別割賦購入あっせんや役務取引をめぐる消費者紛争は拡大する一方であり、今や一日も放置できない状態になっております。  個別割賦購入あっせんは、購入者が販売業者とは売買契約、信販会社とは立てかえ払い契約の二本立ての契約を締ぶため、購入した商品等に瑕疵等がある場合、購入者は売買契約を結んだ販売業者に対しては抗弁することができますが、信販会社に対しては、代金の立てかえ払い契約約款により支払いを枢絶することはできなくなっているのであります。したがって、商品に瑕疵があり販売業者が修糟、取りかえ等に応じない場合や商品の未到着の場合、または役務の提供が不完全である場合や、役務が提供されていない場合でも、信販会社に分割支払い金の支払いを続けなければならないという問題が発生しているのであります。  先進各国においては、消費者が信販会社に対し商品等の瑕疵等を理由に支払い停止の抗弁を主張できるようになっており、我が国においてもこうした抗弁の接続を求める声は著しく高まっております。このため、割賦販売法に抗弁の接続の規定を設け、割賦取引における消費者利益の一層の保護を図るべきであります。  また、割賦形態による役務関連取引の増大にかんがみ、役務関連取引を法規制の対象に加えるとともにマンスリークリア支払い方式をとる取引についても法規制の対象とし、さらにはクーリングオフ期間を延長するなど消費者保護を充実する必要があるのであります。  以下、割賦販売法の一部を改正する法律案の主な内容について御説明申し上げます。  第一に、政令で定める指定役務に関連する取引を法規制の対象に加えることとし、この役務には役務の提供を受ける権利をも含めることといたしました。  第二に、訪問販売形態の割賦取引における購入者の一方的な契約の申し込みの撤回または契約の解除権、いわゆるクーリングオフについては、購入意思が不安定なまま契約の申し込みまたは契約をしてしまった購入者等の救済の充実を図るため、現行の四日間を七日間に延長することといたしました。  第三に、契約解除等に伴う損害賠償等の額の制限において、現行法では全期間にかかわる利息が取られていたものを解除等までの期間に限定し、それ以後は法定利息によるものといたしました。  第四に、購入者等の信販会社等に対する抗弁の接続に関する規定を新設し、個別・総合ローン提携取引、信販会社の立てかえ払いを利用した割賦取引である個別・総合割賦購入あっせんにおいて商品に瑕疵がある場合、もしくは商品の引き渡しが遅延している場合、または役務の提供が不完全である場合、もしくは役務の提供がおくれている場合等は、抗弁の接続を認め、分割返済金等の返済を拒絶することができることといたしました。  第五に、カードを発行する自社割賦取引業者たる総合割賦取引業者がカードを交付する場合には、賦払い金の各回の支払い時期及び方法、賦払い金の計算方法、手数料率等、カードに係る取引に関する事項を記載した書面を交付するよう義務づけるとともに、指定商品または指定役務に係る総合割賦取引の契約を締結した場合には、契約内容を明らかにする書面を交付するよう義務づけました。また契約の解除等の制限、契約の解除等に伴う損害賠償等の額の制限の規定を設け、クーリングオフ期間を延長いたしました。  第六に、個別・総合ローン提携取引については、従来のローン提携販売を個別ローン提携取引とし、抗弁の接統、契約解除等の制限、契約解除等に伴う損害賠償等の額の制限の規定を設け、クーリングオフ期間を延長いたしました。またカードによる総合ローン提携取引については、販売業者たる総合ローン提携取引業者がカードを交付するときのカードに係る書面の交付及び指定商品または指定役務に係る総合ローン提携取引の契約を締結した場合の書面の交付を義務づけ、また個別ローン提携取引同様、抗弁の接続の規定を設けました。さらに契約の解除等の制限、契約の解除等に伴う損害賠償等の額の制限の規定を設け、クーリングオフ期間を延長いたしました。  第七に、個別割賦購入あっせんの消費者保護規定を新設し、販売業者たる個別割賦購入あっせん提携業者が指定商品または指定役務に係る個別割賦購入あっせん提携取引をするときは、取引条件を表示するとともに、この取引に係る契約を結んだときは購入者の支払い総額、商品の引き渡し時期、役務の提供の時期、契約解除に関する事項等について契約内容を明らかにする書面を交付するよう、個別割賦購入あっせん業者である信販会社等が購入者等と個別割賦購入あっせん契約を結んだときは分割支払い金の額、分割支払い金の各回の支払い時期等について契約内容を明らかにする書面を交付するよう義務づけました。またローン提携取引同様、抗弁の接続の規定を設けました。さらに契約の解除等の制限、契約解除等に伴う損害賠償等の額の制限の規定を設け、クーリングオフ期間を延長いたしました。  第八に、カードによる信販会社等の割賦購入あっせんを総合割賦購入あっせんと規定し、信販会社等にカードに係る書面を交付するよう、販売会社たる総合割賦購入あっせん提携取引業者に、契約書面を交付するよう義務づけました。抗弁の接続、契約解除等の制限、契約の解除等に伴う損害賠償等の額の制限、クーリングオフについては個別割賦購入あっせんの規制と同じように規制することといたしました。  第九に、マンスリークリア方式の支払い形態をとる取引を準総合割賦購入あっせんとして契約書面の交付を義務づけるとともに、抗弁の接続を認めることにいたしました。  以上が、割賦販売法の一部を改正する法律案の提案の理由及びその内容の大要であります。  何とぞ慎重御審議の上、速やかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  257. 梶山静六

    梶山委員長 これににて趣旨の説明は終わりました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時十六分散会      ――――◇―――――