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1984-07-09 第101回国会 衆議院 社会労働委員会地方行政委員会大蔵委員会運輸委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年七月九日(月曜日)     午後二時五十分開議  出席委員   社会労働委員会    委員長 有馬 元治君   理事  愛知 和男君 理事 稲垣 実男君   理事  小沢 辰男君 理事 丹羽 雄哉君   理事  池端 清一君 理事 村山 富市君   理事 平石磨作太郎君 理事 塩田  晋君       伊吹 文明君    稲村 利幸君       古賀  誠君    斉藤滋与史君       谷  洋一君    友納 武人君       中野 四郎君    中村正三郎君       長野 祐也君    西山敬次郎君       野呂 昭彦君    浜田卓二郎君       藤本 孝雄君    森下 元晴君       渡辺 秀央君    網岡  雄君       永井 孝信君    森井 忠良君       大橋 敏雄君    沼川 洋一君       森本 晃司君    小渕 正義君       塚田 延充君    浦井  洋君       田中美智子君   地方行政委員会   委員長 大石 千八君    理事 臼井日出男君 理事 谷  洋一君    理事 西田  司君 理事 加藤 万吉君    理事 岡田 正勝君       大村 襄治君    中川 昭一君       平林 鴻三君    松田 九郎君       五十嵐広三君    佐藤 敬治君       安田 修三君    吉井 光照君       経塚 幸夫君   大蔵委員会   委員長 瓦   力君    理事 越智 伊平君 理事 熊川 次男君    理事 中西 啓介君 理事 中村正三郎君    理事 伊藤  茂君 理事 坂口  力君       小泉純一郎君    笹山 登生君       椎名 素夫君    田中 秀征君       中川 昭一君    東   力君       平泉  渉君    藤井 勝志君       宮下 創平君    与謝野 馨君       川崎 寛治君    沢田  広君       渋沢 利久君    戸田 菊雄君       堀  昌雄君    矢追 秀彦君       安倍 基雄君    正森 成二君       簑輪 幸代君  運輸委員会   委員長代理理事 鹿野 道彦君    理事 久間 章生君 理事 吉原 米治君    理事 中村 正雄君       加藤 六月君    田中 直紀君       近岡理一郎君    中馬 弘毅君       増岡 博之君    兒玉 末男君       富塚 三夫君    森田 景一君       梅田  勝君    辻  第一君  出席国務大臣        大 蔵 大 臣  竹下  登君        厚 生 大 臣  渡部 恒三君        運 輸 大 臣  細田 吉藏君        自 治 大 臣  田川 誠一君  出席政府委員        大蔵大臣官房審        議官       大橋 宗夫君        大蔵省主計局次        長        保田  博君        大蔵省主税局長  梅澤 節男君        国税庁直税部長  冨尾 一郎君        厚生大臣官房長  幸田 正孝君        厚生大臣官房総        務審議官     小林 功典君        更生大臣官房審        議官       新田 進治君        厚生大臣官房会        計課長      黒木 武弘君        厚生省健康政策        局長       吉崎 正義君        厚生省保険医療        局長       大池 眞澄君        厚生省保険医療        局老人保険部長  水田  努君        厚生省社会局長  持永 和見君        厚生省保険局長  吉村  仁君        社会保険庁医療        保険部長     坂本 龍彦君        運輸省海上技術        安全局船員部長  武石  章君        自治大臣官房審        議官       津田  正君        自治大臣官房審        議官       吉住 俊彦君        自治省税務局長  関根 則之君  委員外出席者        外務大臣官房外        務参事官     木幡 昭七君        地方行政委員会        調査室長     島村 幸雄君        大蔵委員会調査        室長       矢島錦一郎君        社会労働委員会        調査室長     石黒 善一君        運輸委員会調査        室長       荻生 敬一君     ————————————— 本日の会議に付した案件  健康保険法等の一部を改正する法律案内閣提  出第二二号)      ————◇—————
  2. 有馬元治

    有馬委員長 これより社会労働委員会地方行政委員会大蔵委員会及び運輸委員会連合審査会を開会いたします。  先例によりまして、私が委員長の職務を行います。  内閣提出健康保険法等の一部を改正する法律案を議題といたします。     —————————————  健康保険法等の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 有馬元治

    有馬委員長 法案の趣旨の説明聴取につきましては、お手元に配付してあります資料により御了承願うこととし、直ちに質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。堀昌雄君。
  4. 堀昌雄

    堀委員 この健康保険法改正案には、私は長い議員の仕事を通じて考えておりまして、非常に何といいますか、問題の多い改正案だ、実はこう考えておるわけであります。  そこで、まず大蔵大臣に、十分間ということでありますからこの十分の範囲だけでお伺いするわけでありますが、まず、今回の問題の始まりというのは、第二臨調の方針によって問題の処理をしようということであったろうと思うのであります。その結果、合計で六千二百七十六億円、厚生予算を圧縮する、削る、こういうことが実は土台になっておるようであります。私は長く大蔵委員会におりますから、大蔵委員会でもこの前、昨年の九月にこの問題についての議論をしたわけでありますけれども、どうも最近の政府がやっておることを見ておりますと、財政が優先をして実際の国民の暮らしの方が後ろへ下がっておるというのが現在の自民党・政府の考えではないのかという気がしてなりません。大蔵大臣はおられなかったのでありますけれども、私がそれらの問題の質問をしておるときに、この人間の世の中で一番大切なものは何だ、ひとつ各局長、ずっと答えてくれということを聞きましたときに、ある幹部財政あっての国民でございます、こういう発言がぽっと出たわけであります。私は本音が出たな、こう言ったのでありますが、いや、言い間違えました、国民あっての財政でございますと訂正をされたのでありますが、大蔵省幹部というのは日ごろからもう財政財政で頭がいっぱいで、国民はどうも二の次のような感じで問題が受けとめられておる、こういう気がしてなりません。  そこで、現在ここに出ておるこの問題は、まだ採決が済んでいないわけでありますから今後の問題として残っておるわけでありますけれども、しかしこの六千二百七十六億円、五十九年度で削る。六十年度では一体どういう対応をするつもりか、細かい金額を聞くつもりはありませんが、今から六十年度のシーリングが始まる時期でありますので、大蔵大臣、ひとつこの六十年度において厚生予算にはどう対処するのかをちょっと伺っておきたい、こう思います。
  5. 竹下登

    竹下国務大臣 六十年度の予算編成をやりますにつきましては、第一段階がこの法律政令等で明らかになっております八月末日までに概算要求を行う。そういたしますと、その前にいわゆる概算要求枠シーリング閣議決定をしなければならぬ、こういう手順になるわけであります。したがって、私どもといたしましては、昨年は人件費年金等増分をそのまま認め、医療費、それから生活保護等をゼロシーリング、それから残余の投資的経費を五%削減、そして事務的な経費を一〇%、そういうふうなことを決めたわけでございますが、ことしも、現在まだ作業編成にかかっておるわけではございませんけれども、勢い厳しいものとならざるを得ない。したがいまして、その場合にこの健康保険の問題を含め国保等どういうふうに対応していくかということについては、いまだ原局との話し合いは進めていないというのが現実でございます。
  6. 堀昌雄

    堀委員 私は、幾ら、どうするということを聞いているのではなくて、大臣政治姿勢ですね、要するにここまで切り込んで、六十年もまた切り込むなんということでは、これは国民生活に非常に大きなダメージが与えられる。だから、そういう意味では私が大蔵大臣に求めておきたいのは、一遍切り込んだらしばらくはここで横ばいにいく。まあ、伸ばすということは現状でなかなか難しいから、横ばいでいくぐらいは大蔵大臣が考えられなければ、これは国民の大変厳しい反発が出てくる、私はこう考えろわけです。  既に、この五十八年度の決算で四千五百三十九億円の税の増収が六日に発表されておるわけであります。さらに、大体、この前の一−三月のQEの発表によって実質成長率は三・四から三・七に高くなっておる。当然、げたが大きくなっておるのでありますから、五十九年度も実は経済状態は当初の見込みよりは変わってくるというふうに考えてしかるべきだと思うのであります。既に日本経済研究センター三菱総合研究所野村総合研究所大和経済研究所、山一証券、日興リサーチセンター、東洋信託銀行という七つの機関が発表しておるものを平均しますと、名目成長率で五十九年度当初六・三%と見ていたのを六・七%に〇・四%上方修正をしておるのであります。  この五十九年度の政府見通しは、実質四・一、名目五・九となっているのでありますが、現在の経済の動きから見れば、これは少なくとも実質が大体五%に近くなることはまず間違いがないだろう、当然名目もふえてくる、こうなるわけでありますから、この五十九年度に既に自然増収が相当出る見込みが出てくる。六十年度は、五十九年度ほどにはいかないかもしれない。アメリカ情勢もありますからわかりませんけれども、少なくとも五十八年度がふえてきた情勢がここ二年間は続くと見通さなければならないので、そういう財政経済的な背景から見ても、少なくとも大蔵大臣は、政治的に来年はひとつ社会保障については、ゼロシーリングはやむを得ないかもしれないが、マイナスなどということを考えるべきではない、こう私は考えます。が、いずれ大蔵委員会その他でとっくりやりますけれども、まずきょうは連合審査でありますから、後で厚生大臣といろいろ論議をしますが、基本的な大蔵大臣政治姿勢をもう少し明確にしていただきたいということでお伺いしたいのであります。
  7. 竹下登

    竹下国務大臣 なかなか難しい問題でございますが、シーリングというものを昭和三十六年から採用しておるようでございますけれども、それがとみに国民皆さん方の中にも議論され出したのは、やはり五十五年のプラス一〇%シーリング、その後の五十六年がプラス七・五、それからゼロ、マイナス五、マイナス一〇、そういう経過の中で国民皆さん方からも非常な関心を持たれ出したということは、私もそのように理解をいたしております。  そこで、単純な問題から申しますと、いわば一日約十七億円の歳入欠陥ということになるわけでございますけれども法律を通していただくということを前提におきますならば、来年度からそれが平年度化いたしますので、そういうものは私どもでも極めて事務的にある意味においては計算が出るかもしらぬと思うわけであります。が、私ども政治姿勢として申しますときには、シーリングの対象というのは、昨年度行いましたようないわば硬直した当然増的なもの等は別として、あとはやはりある意味において厳しいシーリングの中で、各省専門でありまして大蔵省専門ではございませんから、調整権限は持っておるにいたしましても、各省の中で内なる改革というものを期待していかなければならぬというふうに私は考えるわけであります。それが、社会保障全般にわたっても内なる改革というのがどういうふうに出てくるか、これはこれから私どもが、今日の時点においては単なる期待感を持っておるにすぎないわけであります。  一方、堀委員からいわば専門的な知識からの御質問でありますが、おかげさまでとでも申しましょうか、確かにことしは、五十八年度決算が確実になるといたしますならば、二千四百九十億円程度の恐らく剰余金が出るという状態になろうかと私どもも思っております。したがって、今おっしゃったげたの問題が生じてきますが、五十九年当初見積もりで法人税等を二けた以上の伸びに見ておるというところで、私ども各種報道機関等から言われますほどの現実五十九年度に波及するかどうかということについては、慎重にならざるを得ないというのが実態でございます。なかんずく六十年になりますと、これも今堀委員からも御指摘がありますように、アメリカ景気後退からして、OECD等も、今の場合、全部六十年はさらに低目になるだろうという見通しの上に立っておりますので、見通しが必ずしもいつも当たるとは思いませんけれども、私どもも六十年度になるとなお慎重たらざるを得ない。  ただ、御案内のようにまだ税収が一番早いので六月にならぬとわからぬわけでございますから、今の場合、歩き出したばかりの五十九年度予算で、一体税収見通しがどうだやらということの参考数値すらきょうの時点ではまだない。こういうことになりますと、今の堀委員のいろいろな角度からの御発言というものも念頭に置きながら、これから対応していかなければならぬ課題だというふうに考えるわけであります。
  8. 堀昌雄

    堀委員 時期がちょっと早過ぎるという問題はありますが、少なくとも国民が要求しておるのは、ことしこれだけ切り込んだら来年はひとつ横ばいでいく、その先でまた考える、歩きながら考えるにしても、少なくともその程度を超えてはならぬというのが国民の声だということを大蔵大臣はしかと受けとめていただきたいと思います。  終わります。
  9. 有馬元治

  10. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 主に私ども地方行政に関連して、国保の問題を中心にして御質問いたしたいと思います。  この間の社労委員会同僚議員から、例の審査した減点についての還付の問題について質問がありまして、何か保険局長から今検討しているというお話がありました。実は、私も四月二十四日の地行委員会でこの問題を取り上げて質問いたしました。今度、同僚議員質問で、制度を設けることを検討しているということで、大変喜ばしいと思いますが、それにつきまして二、三質問したいと思います。  第一に、減額査定というものはいかなる法的根拠を持っているのか、こういうので患者側医師側で何か訴訟を起こしているようなことがあるようでありますが、一体どういう手順、定めによってこれができているのか、法律できちっと決まっているのか、この点をお伺いしたい。
  11. 吉村仁

    吉村政府委員 健康保険法の中に、医療機関に支払う診療報酬審査をした上で支払うべきことが規定されております。そして、審査をする基準と申しますのは、療養担当規則、それから診療報酬点数表の定め、その二つを基礎にして審査をする、こういう規定になっております。
  12. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 そうしますと、これははっきりした法的手続根拠によって減額査定されたその差額は返さなければいけない、こういうことになっているのですか。
  13. 吉村仁

    吉村政府委員 私ども法制局見解に従いますと、審査査定をされた場合に、医療機関で徴収をいたしました一部負担もその分だけは減額になるはずでございます。したがって、その審査減点の結果、既に医療機関に対して支払った一部負担が縮小するということになるはずであります。その部分は不当利得だ、こういう見解法制局が示しておるわけでございます。したがって、不当利得なら当然民法規定によって返還をするのが正しい処置ではないか、こういうように考えておるわけでございます。
  14. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 わかりました。  それでは、これを検討していると言いますけれども、いつから実施するのか。それからもう一つ幾ら一体戻すのか。何か少額であると戻さないし、高額であると戻すということがありますが、今言ったように民法規定にあるような不当利得であるならば、金の大小にかかわらず戻すべきであると思います。  それからもう一つは、今後のものだけを戻すのか、時効があるでしょうが、事前にさかのぼって戻すのか、その点をお聞きしたい。
  15. 吉村仁

    吉村政府委員 確かに十円ぐらいの差が生じてもそれは理論的に不当利得でございますので調整をしなければならない、こういうことになるわけでございますが、そういう細かいものまで調整をするというのは、理屈はそうとしても実際上なかなか難しい面があるわけでございまして、私ども一定額以上のものにつきましてその辺から始めたい。これは査定があった場合には、その査定領医療機関に知らせると同時に、保険者から患者に知らせない限り査定額幾らあったかといってとはわからない仕掛けになっておるわけでございまして、私ども、全部やるのが理論的には正しい方法でございますが、かなりの金額のものをもって始めるのが行政上便宜だ、あるいは行政上のやり方としてその辺から手をつけていくのが適当であろう、こういうことで、現在査定領分布状況だとかあるいは現在の医療費通知方法で知らせる方法はないか、そういうような点を現在検討しておるわけでございまして、できるだけ早い時期に結論を得まして実施に移していきたい、こういうように考えます。  それから、第二番目の過去のものにさかのぼってやるか、こういう御質問でございますが、私ども、膨大なレセプト処理をしておるわけで、年間八億六千万枚くらいのレセプト処理しておるわけでございます。したがって、私どもレセプト保存期間というのは五年ということになっておりますので、五年くらいが限度ということになろうかと思いますが、これも年間八億六千万枚で五年間といたしますと四十億枚くらいあるわけでありまして、その中から一つずつ査定をされたものを引き出して、そしてそれを患者に知らしていくというのは事実上なかなか難しい問題でございまして、被保険者の求めがあれば私どもも事務的に可能な限り対応してまいりたいと思いますが、実際問題としては非常に難しいというように考えております。
  16. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 できるだけ早くというのも、金額もまだわかりませんけれども、しかし、原則としてはこれは返さなければ医者不当利得になるでしょう。何となく何かごまかされて取られてそれを返さない。これは金額多寡じゃなくて、大変納得できないものがありますね。  それから、今、八億六千万枚に五年掛けるとこれは大変な数だと言っていますけれども、実際に減点されて返ってくるのは、市町村やあるいは社会保険事務所にそれはそれのファイルでもって返ってきていますね。だから、別に八億六千万枚を皆調べる必要は何もないのですよ。来ているのはそれでファイルされていると思う。だから、やろうと思えばできると私は思うし、これは当然の権利ですから、いろいろ裁判に付して、どっちの主張が正しいかわからないので、今聞いてわかりましたが、これは明らかに民法上の不当利得だということになれば、金額多寡にかかわらずできるだけ返してやるのがあれだと私は思います。ただここいらで便利だから、便宜上ここいらで返しますというようなものじゃないと私は思うのだけれども、その点はいかがですか。
  17. 吉村仁

    吉村政府委員 確かに先生指摘のとおり、理屈を言えばもうそのとおりであり、理論的にはそういうことでございますが、私ども必ずしも八億六千万枚のレセプトを今先生がおっしゃられたような形で整理をして保管をしておるわけではございません。支払基金から送られてくるレセプトをそのまま保管をしておるわけでございまして、どこの医療機関がだれの診療分でどれだけ減額されたかというのを取り出すためには、非常に極端に言いますと、そのレセプトを一枚一枚めくって引っ張り出さなければならない、こういう事務処理体制になっておるわけでありまして、実際問題としてなかなか難しいということだけはひとつ御理解を賜りたいと思います。
  18. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 私は、今のこと、大変納得いかないのですよ。あなた方は患者には教えないけれども市町村社会保険事務所には教えてあるでしょう。通知してあるでしょう。どこにも全然教えなければ、一体どうして減点されたことがわかるのですか。この前、私が地行質問したときは、国保課長社会保険事務所市町村へ行けばわかりますとちゃんと言っているのですよ。あなた方でなくたって、社会保険事務所市町村でちゃんとわかっているのですよ。戻ってきた例というのはそんなに多いはずはないのですよ力行ってみたらわかるだろうというような答弁で、非常に不親切だと思いますよ。そういう不親切さというものが、今のように患者には教えない、もうかっている医者には不当利得させて知らぬ顔しておる、そういう国保連につながっていると私は思うのですよ。やろうと思えばできないことはないですよ。八億六千万枚が皆重なって、それから一々抜かなければならないなんて、そんなばかなことないですよ。  それから、もう一つお伺いしますけれども、これを返せ、返すなという交渉患者と病院とやるんですか、患者医者と、そこのところはどうですか。
  19. 吉村仁

    吉村政府委員 患者医療機関との間で処理をすべきものでございます。
  20. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 厚生大臣にお伺いしますけれども、今、国民保険で、そして患者が払うのは、例えば今国保が問題になっていますから、国保では十割のうちの三割なんですよ。その三割というのは独立してあるものじゃなくて、十割の中に含まれている三割です。たまたま患者がその三割を窓口で医者に払った。おまえが払ったからおまえが交渉すればいい、こういうわけにはいかぬですよ。全体の中の一部なんです。患者が三割やればそれで医療費の全額だというのならば今の話、わかりますよ。そうでしょう。しかもそれを減点するのも患者がやるわけじゃない、医者がやるわけじゃない、保険がやるんですよ。それを保険減点して知らぬ顔して、その交渉医者患者でやりなさい、そんな不届きなことはないじゃないですか。
  21. 渡部恒三

    渡部国務大臣 先生指摘の問題、これは大変大事な問題で、先般委員会で、これは当然お返しすべきものであるという法的な見解が示されておるのでありますから、審査減点後に超過払いになっている患者支払い超過の分は返していくというのが原則であります。ただ、今政府委員からも答弁がありましたように、事務的に非常に煩雑になる問題であり、また金額的にも非常に小さな問題等もありますので、そのところはひとつある程度の常識的な数字である程度の線が引かれることはお許し願わなければならないと思いますが、これは原則としては当然返すべきでありますから、今後保険者患者にその減点分を通知する等の指導をしてまいって、できる限りそういう矛盾が起こらないように努力してまいりたいと思います。
  22. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 今の患者医者交渉の件はどうですか。
  23. 吉村仁

    吉村政府委員 現在の法律の建前は、一部負担は受診をしたときに患者医療機関に支払うべしということになっておりまして、一部負担に関する限りは医療機関患者との民事上の関係、しかるがゆえにそこに間違いがあればそれが不当利得になる、こういうことでございます。私ども患者に対して保険者からこういう査定がありましたよということを教えるのがぎりぎりのところでございまして、それから後は医療機関患者との関係に任せざるを得ないことになっておるわけでございます。
  24. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 大臣はあれでいいんですか。皆保険で本来ならばすべてが-例えば健保なんか全部十割給付でしょう。こういう問題は保険者医者の間で起きてくるんですね。ところが、たまたま国保は三割で我慢しているからこういう問題が起きてくるんですよ。これは弱い者いじめですよ。医者に対して患者というものは、おまえのところは査定したから金返せと行かれないですよ。そんなの、弱い者いじめですよ。あなたの答弁は官僚ですよ。それはいけないですよ。厚生大臣、どう思いますか。あなたならわかるでしょう。
  25. 渡部恒三

    渡部国務大臣 該当する医師、医療機関、これに、患者に対して超過して取っておる分をできるだけ返還するように、積極的に指導してまいりたいと思います。
  26. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 ぜひひとつ、そういうふうに指導してやっていただきたいと思います。  それから次に移りますけれども、去年の国保税の課税上限を二十八万から三十五万に移しました。来年はどのぐらいにするつもりですか。
  27. 関根則之

    ○関根政府委員 御指摘のとおり、ことしから最高額を三十五万にしたわけでございますが、これは国保税だけの観点から独自に決めているものではございませんで、政管健保でありますとか組合健保でありますとか、そういったところの最高額の設定状況等もにらみ合わせながら、こういう形で設定をさしていただいたわけでございます。したがって、来年度以降どうするかという問題につきまして今ここで明確なお答えを申し上げることはできませんけれども、そういったほかの保険等の動向等も十分考えながら、また、医療費全体の国保財政として負担しなければならない総額との兼ね合い等を考えながら検討をしていくべき問題であると考えております。
  28. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 何にもわかりません。もう少し具体的に答弁してください。何にもわからぬ。
  29. 関根則之

    ○関根政府委員 来年度のことにつきましては、現時点においてはまだ明確な方針等があるものではございません。
  30. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 大臣にお聞きします。  今まで上限が上がってきました。しかし、私、これは三万円のころから知っていますが、最初のころは何年置きかに上がっていたのです。ところが、このごろは加速度的に毎年大変な速度で上がっている。二十五万が二十八万になったと思ったら、今度は三十五万。二十八万から三十五万ですと、まさにぴっしゃり二五%です。大増税なんですね、これは。ところが、これが勢いがおさまるような気配がないのじゃないかと私は思っております。  そこで、年来、国保財政を圧迫するものとして、一つは老人医療ですね、これが大変、普通の平均の三倍以上も金を食っている、これが大変だというので、何とか老人医療を離してくれというので、去年でしたかおととしてしたか切り離しました。今度はまた、年来主張してきました退職者医療というものが今度でき上がりそうであります。この二つの大きなものを切り離せば、この国保財政というものが当然かなりゆとりのあるものになってこなければいけないと思います。そういう意味からいえば、二十八万から三十五万に上げる必要が私はないと思うのですよ。厚生省で出してきておりますこの資料を見ましても、最後のつじつまが、三十五万円に上限を上げなくてもきちっと合うようになっているのです。今までどんどん二〇%近いものを上げてきて今度二五%上げるという、こういういわば国税に似たような厳しい税金をこの際上げるべきではないと思いますし、それからこの老人健保と退職者医療、これをやれば当然これは上限を上げなくても済むのじゃないかという期待感もあると思います。少なくともこれを下げろとは言いませんけれども、ここ二、三年かしばらくの間、これを当分の間上げなくても済ませるようにぜひお願いしたいと思うのですが、どうですか。
  31. 吉村仁

    吉村政府委員 私ども国保の今回の限度額の引き上げにつきましては、やはり医療保険全体としての負担の公平というものを頭に置いておるわけでございます。したがって、限度額につきましては、被用者保険の方の保険料の限度額とバランスを考える必要がある、それが全国民を通じての負担の公平ではないか、こういう観点から今回被用者保険におきましても上限を上げる、こういう措置をとると同時に、国民健康保険についても上限を上げる、こういう措置をとった次第でございまして、やはり保険負担の公平というものを考えると、そういうような措置をとらざるを得ない、こういうように考えております。
  32. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 今公平、公平と、勘定したら五回も公平が出てきておるのですよ。非常に公平、公平と言うけれども、あなた方は取るときだけ七十一万円に公平にそろえて、給付はどうですか。一方は十割給付して、国保は七割しか給付してないのじゃないですか。取るのが公平なら、与える方も公平にしたらいいじゃないの。今度の修正案で、何か公平に上げるというような修正案が出ているような感じもちらりと見ていますが、厚生大臣はどうです。
  33. 渡部恒三

    渡部国務大臣 先生指摘国保の問題、これは今後の保険行政にとって非常に重大な問題だと思います。私も国に帰るたびに、国保保険税が高くなっているという苦情を周囲の皆さんからお聞きするのであります。  先生御案内のように、この十年間といいますか二十年間といいますか、これは地方の社会的構造、経済構造が激変いたしまして、大体農村でも第二次産業、第三次産業にどんどん移っておりますので、国保には所得の低い人やお年寄りが残されて、だんだん財政が苦しくなっておる状態でございます。そこで私どもは、金持ちと貧乏人、有利な人と不利な人とを別々にしておくことが社会保障の本来あるべきことかどうかというようなことを考えながら、当面財政調整等いろいろ考えながら、国民全体が負担と給付を同じような条件で受けるようにしていかなければならないという将来構想を示しておるわけでありますけれども、できるだけ早い時期に国保の給付率も上げていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  34. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 今、大変公平にやりたい、こういうのでありますが、それに関連して聞きたいのですが、厚生省は従来から差額ベッドについてはできるだけ解消する、こういうふうに指導しておった。私どもこれは随分質問しました。今度はこれを自由に認めるような改正をしようというのですが、これからはいわゆる特別の治療の適用として、差額ベッド、歯科の金歯材料、それから入院看護料だとか給食材料、こういうものをどんどん拡大していくと、大臣が今おっしゃったようなことと反対に、患者負担能力で医療内容がどんどん差別されていくような感じがしますけれども、その点はどうですか。
  35. 渡部恒三

    渡部国務大臣 今回提案しております療養費払い制度は、毎年最近の医学の非常な進歩によって先端技術の医学がどんどんできていきますから、もちろんそれをできるだけ保険で認めるように進めていかなければなりませんが、それまでの間、やはりそれぞれ個人の自由があるわけですから、おれはある程度個人として自分の自腹を切っても早い先端医療技術を、すぐれたるものを受けたいとか、条件のいい治療を受けたいという人たちが、みずからの選択でそれをやることによって自分の自由を確保する、しかし、同時に、そういう方でも保険で認められるものはできるだけ保険で認めていく、さらに将来の先端医学についてもできるだけ保険で認めるように進めていくが、それはどうしてもその間に空白期間というものがありますから、その期間を、個人の志向はそれぞれあるわけですから、やはり自分で負担しても早い医学を受けたい、そういう人の便宜を図るものであって、決して現在の保険内容を窮屈にするというものではないということを御理解賜りたいと思います。
  36. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 どうも余り理解ができるような答弁じゃありませんが、時間がないので次の問題に移ります。  今度の給付率の引き下げ、一割にするとか二割にするとかという名目の中に乱診乱療を防ぐ、こういうようなことを掲げていますね。一割にするとそれを十倍するとすぐあれがわかる、こういうふうに言われておりますけれども、私どもから言わせますと、何か患者負担を重くすると乱診乱療がなくなる、こういうふうに聞こえるのですが、しかし、これは一般の常識からいうと、乱診乱療というのは医者の側にあって、別にそんなに患者の側にあるものだとは思っていないのです。ところが、厚生省の言うことを聞きますと、給付率を引き下げると乱診乱療を抑制することができるのだと盛んに言っておるようですけれども、この受益者負担の強化だけで果たして医療費の長期的な抑制ということができるのか。どうですか。
  37. 渡部恒三

    渡部国務大臣 今回御審議をお願いしております、私ども改革案の中の定率で一割患者に御負担を願うということは、いろいろのねらいがありまして、一つは先ほど先生が御心配になっておった国保皆さん方が七割、そして被用者保険の皆さんが十割、これはやはり縮めていくべきものであろうという考え方、また今先生の御指摘がありましたように医療費の適正化、これはもう内外ともに私どもにこれをやれという強い意見が出ておりますが、その適正化を進めていくためには審査体制の強化であるとかいろいろなことをやっていかなければなりません。しかし、今まで十割給付であった被用者保険の皆さんに一割御負担を願うことによって、やはり医療費というものに対する認識あるいは健康に対する自己管理、また診察する医師の側にしましてもかかった医療費がすぐ患者にわかる、そういうようなことからかなりの適正化という方向に役に立つものであると私どもは信じておるのでございます。
  38. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 どうも片一方だけを抑制して、弱いところだけを抑制して、そして医療費の膨張ということには余り、熱意があるかもしれないけれども医師会だとかの強力な反対があるので、なかなかそれに抵抗していけないという悩みがあるようでございますけれども、これはその根本の医療費の急速な膨張というものを抑えなければ幾ら改革したといったって追いつかない、何ぼやっても追いつかないと思います。きょうこういうような大改革のようなことをやっても焼け石に水じゃないか、二、三年すればすぐもとのもくあみになる、こういうふうに私は思っております。どうせ大改革するならば、患者に身を切らせるならば、医者の側にもかなり深い手術をするような両面からいかないと立ち直れない、私はこういうふうに思います。今思い切って歯科医師と医師会などとよく話をしてこの点の改革を図るべきじゃないか、こういうふうに思いますが、いかがですか。
  39. 渡部恒三

    渡部国務大臣 これは全く先生指摘のとおりでございまして、一割負担によって患者皆さん方にも健康の自己管理、また医療費というものについての関心を高めていただくと同時に、医療側でもできるだけ節減に協力していただかなければならないということで、私どもは今年三月一日、一六・六%の薬価の引き下げをまず断行したわけでございますが、今後も支払い審査の体制の強化とかいろいろな面で医療費の節減、これは一つのことでこれですべてということでなくて、医療費の節減に役立つと思われるような政策はあれもやってみよう、これもやってみようということで努力をしていかなければならない問題だと思っております。
  40. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 今もお話がありましたけれども、例えば今回の健保の改革で、国保保険料は総体で約二千億近く上げなければいけないけれども、いろいろなことをやれば大丈夫だ、上げなくともいい、現状維持できるといって今大臣が言われたようなことを言っているのです。例えば退職者医療制度を創設すると保険料が負担減になるからできるのだ、あるいは薬価基準を引き下げるとそれによって大丈夫だ、あるいはレセプトの点検強化をする、こういうことを言っていますけれども、今までのあれを見ますと、薬価基準を下げれば片方では診療報酬を引き上げていろいろなことをやって結局はパァになるのですよ。レセプトの強化と言ったって、さっきも言ったでしょう、八億六千万枚もあって医者がこれしかいないで一分間に何枚だか見なければいけないというような状態が何も改善されない。しかも医者医者審査するというような状態が何も改善されないで、レセプトの点検強化でその膨大なあれを抑えるというようなことは私はできないと思います。  それからもう一つは、退職者医療制度の創設だと言いながら、これは国保にとっては大変大きな問題を含んでいるのです。都会では退職者が非常に多いのですけれども、農村へ行きますと退職者は余りないのですよ。そして農村も都会も一緒に補助金はみんなぶった切られるのです。そうしますと、地方の国保というものは大変大きな打撃を受けるのです。大臣も福島だからよく御存じでしょうけれども、私も隣の秋田ですから、よく御存じでしょうが大変な打撃を受けるのです。だから、これが創設になったから今度は大丈夫だ、こんなことはとても考えられない。本当は大変喜びたいのだけれども実情を見ると全然喜ばれないのですよ。だから、あなた方が挙げている大丈夫だという根拠であるこの退職者制度の創設も、薬価基準の引き下げも、レセプトの点検強化も、今までの経験、実績から見ますと、どうもこれが医療費の膨張の抑制にならぬと私は思うのです。もう少し突き進んだ、もっと根本にメスを入れるような膨張抑制策を講じなければいけない、そうでなければ何ぼ改革したってだめだとさつきから申し上げているとおりそう思いますけれども、いかがですか。
  41. 渡部恒三

    渡部国務大臣 医療費の節減、これは私どもも今国民の健康をお預かりする役所として一番頭を痛めている問題ですが、先生からいろいろ御心配をいただいております。ただ、老人保健法の成立を賜りまして、あれは今まで全く無料だった老人医療を初診時に四百円支払っていただくということでございます。今、我が国の老人の方は一番少なくて二万五千円から六千円の福祉年金をもらっていただいておるわけでありますから、この四百円の初診時負担というのは老人にとって可能であるというふうに私ども判断しておりますが、しかしその四百円を御負担願うということだけですらかなりの医療費の節減効果というものがあらわれるのでありますから、やはり十割給付ということよりは一割御負担をいただくことによって、これは医療機関の方も医療費患者にすぐわかるということでありますし、また患者の皆さんも今まで何となく十割給付でいっておったのが今度一割払うことによって医療費に関心を持つし、健康の自己管理というものに努めるし、国民の皆さんの将来にわたって心配しておる医療費の適正化というものに私はかなりの効果を上げると思います。でき得れば、私どもの出しておる政府原案をそのままお認めになっていただければなおさら効果が上がると思いますので、よろしくお願いいたしたいと思います。
  42. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 何か、今の大臣のお話を聞いておりますと、一割負担をすることによって、医者の方もみんなわかってしまうから余りでたらめはしないだろうというのですが、わかっちゃ困るようなことを医者は今やっておるのですか。
  43. 渡部恒三

    渡部国務大臣 私は医療行政を担当する厚生大臣として、我が国の医師の皆さん方の良識を信じております。しかし、やはり会計というのは、いずれにしても支払う者、いただく者、お互いこれはわかることが好ましいことだと思います。
  44. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 終わります。
  45. 有馬元治

  46. 堀昌雄

    堀委員 厚生大臣とは私は初めて質疑をいたしますが、まず最初に、まだ厚生大臣になられて余り長い期間ではないし、渡部さんは社会労働委員の御経験があったんでしょうか、過去には。
  47. 渡部恒三

    渡部国務大臣 昭和四十四年の十二月、私、初めて国会に出たのですが、そのとき健康保険法の改正が議論されておりまして、その改正のときに社会労働委員を務めさせていただきまして、大変勉強させていただきました。
  48. 堀昌雄

    堀委員 それでは、いきなり厚生大臣ではちょっと大変なことだと思ったのですが、御経験があるというのは大変結構なことであります。  そこで、皆さんの委員会、初めてでありますから、私の過去の歴史をちょっとお話ししますと、私の祖父、父親、皆医者なんです。私は小学校、中学校、高等学校と父と一緒の病院で暮らしておるときに、時々食事のときに全然物を言わなくなるんですね。何にも言わなくなる、父が。沈み込んだ格好で食事をする。私が母親に、どうしたんだろうと聞いたら、大変心配な患者さんがあるので、きょうは余り物を言いなさんなというふうに、我々子供は注意を受けたことがあったわけですね。そこで私は、どうも家の中で、仕事が心配だからといって家族がそう不愉快な思いをするような仕事というのは余り適切でないなと思って、私は長男でしたから、じいさんや母親も皆が医者になれと言うのですけれども、実は医者になるまいと思っていた。しかし、じいさんがやってきて、おまえ、どうしても医者になれと言うので、仕方がなく医者になったわけですね。  戦争に行って帰ってきて、昭和二十一年から三十三年まで十三年ばかり、開業医として働いていて、そして国会に当選しました。私は国会に当選したときに、ああよかった、こう思ったのは、当選したことがよかったというよりも、この医者の仕事というのがいかに精神的に大きな負担があるかということを、私は自分が医者になって初めて、父親が夕食のときに何も言わないで黙々と飯を食っておる姿を思い出すことがたびたびあったわけです。要するに、重い患者がありますと、頭の中のここらに鉛の板のようなものが張りついたようになっていまして、瞬時とも頭の中からこのことは離れないんです。  ですから、一般に今マスコミが、大変薬づけとか検査づけとか金もうけだとか算術だとか、いろいろ実は医師の問題に触れておるのでありますけれども、私の家では祖父も医者、父も医者、そうして私のおじも医者、それから姉も医者にかたづき、私も医者、息子も医者と、一族全部医者ですけれども、少なくとも我々は、よく私どもの同僚に言うのですけれども、金をもうけたかったら幾らでもほかに仕事があるんだから金もうけの方に行きなさい、医療というのは、金をもうけるというのは結果的に収入があるだけであって、少なくとも病に苦しんでおる人、そうしてその人たちの命を助けることが我々の仕事なんだから、こういう精神で私は医者の仕事をしておりましたし、そこで当選したときに、ああ、これでこの厳しい命あるいは病気との闘いから解放されたなという喜びでいっぱいであったわけです。  ですから、そういう意味で私は、今、社会労働委員をなすったことがありますかと伺ったのは、厚生大臣をやっておられる方は、少なくとも医者というのはどういうものかということをまず十分認識をしておいていただかなければいかぬ、こう思ったわけです。さっきの佐藤さんの話は大分私と角度が違うのですけれども、私は出身が医者でありますし、同時に、現在国会の中で健康保険の問題の運動、医師会の運動を通じてそうして代議士になっておるというのは今、私一人なんであります。かつて参議院におられた丸茂さん、彼も関東で長い間医師会の仕事に携わって国会に出てきた人であります。大浜さんもおられますけれども、これはまだ新しい方でありますから。ですからそういう意味では、国会では私が古い者の中では唯一だと思うのであります。  その国会に出ておる私は、ずっと見ておりまして、今の医師会は一体何をやっているか。厚生行政との終わりなき闘いをやっておる、こういう感じがして仕方がないんですね。一体、厚生省と医師がそういう終わりなき闘いをやっておるという認識に立つようなことでは、私は日本の医療行政というのはうまくいかないと思うのですね。だから、私は、そういう意味で、今度の法律の中で、大変保険医は悪いやつがいるんだ——確かにいます。だから、その悪い人は悪い人として識別をしなければなりませんが、どうもこの法律を見ておる感じでは、ここの要綱でちょっと言いますけれども、「保険医療機関等の指定に当たり、当該医療機関等が診療又は調剤の内容が適切を欠くおそれがあるとして厚生大臣又は都道府県知事の指導を重ねて受けたものであるときは、都道府県知事は指定を拒むことができろものとする」。そこから後ずらっとありますけれども、いずれもこれは、こういう保険医、悪い保険医がいるという前提ですね。いますよ。いますけれども、ともかくも私は、こういう姿勢で医療に臨んでおるのならば、これはやはり受ける側からも、それならばということになってくるんじゃないだろうか。  だから、私は、医療というのは一体何か。この前、大蔵委員会で私がいろいろ質問してみたときに、一体この世の中で我々にとって一番大切なものというのは何だろうかと聞いてみました。命なんですね。人間の社会では命なんです。命を大切にすると同時に、我々は健康で働けることが幸せなんですね。幾ら金があったって、どんな豪壮な邸宅にいたって、寝ておる者に幸せはないのです。病気になっている者に幸せはない。だから、そういう意味で一番大切なものを、もう少し血の通った対応が必要ではないのかというのが私の基本的な姿勢です。  ですから、さっきもちょっと申し上げましたけれども、確かに今度は、退職者医療制度というようなものは新しい問題提起として私もそれなりに評価をしておるわけです。ただ、大蔵省の諸君からすると、西ドイツやその他で医療に国庫負担はしていないんだというような、歴史的な沿革を全然無視したことが記述の中に出てくるわけですね。私は、西ドイツは西ドイツの医療があっていい。日本には日本の医療の沿革があるんですね。そこをひとつ十分認識をしていただかなければならぬと思うのであります。ですから、そういう認識を前提として、これから少し問題を伺います。  最初に、ちょっと大蔵省に帰ってもらうために、概算要求というので厚生省が出した案の中には、今度の医療費負担の問題で、被用者本人の八割給付で三百六十三億円マイナスが立つ、こうなっているんですね。ところが、今度は九割給付になったら二百九十三億円も減額になる。大体八割と九割というのは一〇%と二〇%ですから相当な開きがあると思うのだけれども、この概算要求予算の計数が著しく違うというのは、これは厚生省から答えてもらった方がいいのか大蔵省から答えてもらった方がいいのか、よくわからないのですが……。
  49. 吉村仁

    吉村政府委員 当初私ども概算要求をいたしましたときは、いわゆる長瀬係数というものをどう扱うかということを決めかねまして、それは算入をしなかったわけでございます。そこで、御指摘のように三百六十三億円の国庫負担影響領をはじき出した。そして、予算編成のときの九割給付の場合には長瀬係数というものを組み込みまして計算をいたしました結果、二百九十三億のマイナスになった、こういうことでございます。
  50. 堀昌雄

    堀委員 この概算要求というのは予算そのものではないのでありますけれども、ことしもまた概算要求が行われるわけですね。私はさっき大蔵大臣にそれについての姿勢について求めたわけですけれども、今のように変わってきた理由はその他のものが動いたということに関係があるのだろうと思うのでありますけれども、やはり概算要求予算というものは一つの線上にあろということの方が望ましいと思うので、今後はひとつそういうことで処理をしてもらいたい、こんなふうに思います。  その次に、実はこれは非常に重要な問題なんでありますけれども、「さる八月二十四日、昭和五十九年度医療保険関係の予算編成について記者説明した吉村仁・厚生省保険局長は、医療保険制度改革案の内容を一通り説明したあと、「なお、保険制度としての附加給付は認めないこととしたい。企業が互助会、共済会等で独自に実施することをやめろというつもりはないが、保険制度として財政が楽になったので附加給付をやるということは、同じ診療報酬で運営され、今後、給付の統一かつ退職者医療を被用者保険でもつという時代には問題である。……今後は、各組合の予算から附加給付という項目はなくなる」と語った。」、こうあるのであります。しかし、その後これがだんだん変わってきておるのでありますが、伊藤卓雄保険課長はこれの質問に答えて、「被保険者本人にかかる医療費保険給付率を八割とすることによって本人負担となる二割部分の附加給付は認めないこととしている。さらに、現行制度において実施している家族療養費にかかる附加給付についても、基本的には同様の取扱いとすることとしている。傷病手当金等の現金給付にかかる附加給付については、今のところ現行通りとすることとしている。」、こういうふうになって、昨年の八月当時には健康保険の附加給付はやらないということを言われたのは事実ですか。確認だけしておきます。
  51. 吉村仁

    吉村政府委員 事実でございます。
  52. 堀昌雄

    堀委員 大臣、医療保険というものは二つの所得再分配機能を持っている、こう思うのです。一つは、一つの集団、この集団の中でいつ、だれが病気をしたりけがをするかわからない、こういうことに対してはみんなで連帯して、それにひとつ保険を掛けよう、ヘッジしようということで、水平的にそういうヘッジをしよう、これが医療保険一つのシステムですね。もう一つは、垂直的に所得の高い人も低い人もいる、この人たちが所得に応じて保険料を払って、しかし受け取る給付は同一を受け取ろう、こういう所得再分配。要するに、保険の機能の中には二つの機能があるんですね。  その二つの機能の中で非常に重要なのは、今の垂直の問題でして、所得の高い人が保険料はたくさん払う、受け取る給付は同一であるということが社会保障原則だと私は思っているんですよ。金がある者はいい給付が受けられて、金がない者は不十分な給付しか受けられないというのでは、何のための保険の制度か。社会保険という以上は公共性がなければいけないんですね。ところがこれに対して、要するに今度の問題で一割を本人が負担する。しかしこの一割負担については、自分は払わなくていい人たちが出てくる。片方は完全に一割取られる人たちが出てくる。こういうことは、社会保険の制度としては私は何としても納得ができない。  その納得ができないのをさらに広げて、新聞の伝えるところによれば、何か修正の中で政府管掌健康保険組合にも拡大をして、事業所がやるのは認めよう。とんでもない話ですよ。だから、この問題は私は政府と我々の話じゃないと思う。自由民主党と我々国会議員国民を代表する国会議員が真剣に考えなければいかぬ問題だと思う。保険の給付の原則なんですよ。勇敢に吉村局長が実は昨年の八月に発言しておるけれども、いろいろな事情で今日これは消されておる。消されただけではなくて、政府符掌健康保険組合の中にまで持ち込もうなんというのは、これはもってのほかですよ。私は、この段階でひとつここへ御列席の皆さんの協力を得て、こういう社会保険という公共性のあるものにこのような不公平を持ち込むことは断じて許せない、こう思うのですが、大臣のお答えをいただきたい。
  53. 渡部恒三

    渡部国務大臣 社会保障のあるべき姿、これが連帯互助の精神であり、またそれは所得再配分の方向を持つものであるという先生の御見識、私も全く同感でございます。  私は、国会でも幾たびも申し上げておりますように、今回国会に提出しておる政府原案が最も望ましいものであるということを申し上げておるのでございますが、ただ、国会ですから、これは民主主義ですから、国会で通していただかないのでは、私ども政府原案が幾らいいと言ってみても、これは国民の血となり肉となることはできません。そこで、私は、この委員会で各党の皆さん方、御議論をなさいまして、そして出ました結論には謙虚に耳を傾けて、できるだけ尊重するようにしていかなければならない。これは議会民主主義における政党政治家としての当然のことでありますが、でき得べくばこれは政府原案のとおり成立をさせていただければ私どもにとっては最も望ましいのでございます。
  54. 堀昌雄

    堀委員 それは政府原案に実は入ってないんですよ。私が言っておる、健康保険組合の附加給付をやめましようというのは入ってないんですね。何も書いてない。だからこれは問題です。しかも、今の修正によるところの、政管健保の事業所が勝手にやるのはよろしいなんというのはこれはやめた方がいい、法律に書いてないんだから。  しかし、さらに一歩踏み込んで、私ども国民全体に責任を負わなければいけないんですよ。ある特定の健康保険組合あるいはそこの所属しておる労働者の皆さんにだけ責任を負えばいいんじゃないんでして、国民全体が等しく、こういう社会保険の制度では公共の福祉を守るために行われておるわけで、憲法十四条は法のもとには平等だと書いてあるわけですからね。これを大臣、ひとつ十分考えていただきたい。  それからもう一つの問題は、健康保険の本人というものとその他の給付をそろえればいいという考えがどうもあるようですね。私はこれは全然わからない。なぜわからないかというと、健康保険本人というのは、彼が働いて給与を得ているのです。彼が病気で寝たらかわりの人はないんですよ。家族がその人にかわって会社へ行けるか、行けないんですね。健康保険本人というのは、被用者というのは、我々の言葉で言えば、彼が労働力を売って賃金を得ておるわけでありますから。それから国民健康保険の場合の本人というのは、これは商売をやっている人たち、農業をやっている人たち、この方たちは仮に病気になってもかわりが多少できるわけですね。もちろん完全にはできませんよ。しかし、家族の皆さんでみんなで寄ってやれば何とか多少はいけるんですね。片一方はゼロなんですよ、被用者は。国民健康保険の方たちは多少カバーができる。本質的に被用者保険の本人とその他というのは違うのですね。同時に家族ももちろん違うのです。そして、健康保険の制度と国保の違いは、健康保険というのはその所得に対して、給与に対して標準報酬を決めて、家族が何人いたってこれに関係なく実は保険料を取っているわけですよ。  そこで、どうも私はよくわからないのは、そういう非常に異質で、そしてこれが倒れれば全部だめになるという者と、その他の者、家族と給付を同一にすればいいんだなんという話は、私は大変な悪平等だと思うのです。だから、それはできるだけ-家族の給付率もいい方がいいに決まっていますよ。しかし、家族と本人に格差があるなんということは、それをみんな八割にそろえればいいんだなんということは、今のシステムの中身を知らない人間の言うことだと私は思うのです。だから、とりあえずどうなるのかは別としても、将来は一斉にそろえる必要はない。財政状況によって、被用者をそれだけに評価をしてやらなければ、日本の経済を今日支えておるのはこの被用者が主体じゃないですか。もちろん国民健康保険の皆さんも支えていただいておりますけれども。数の上からいっても、生産力の上からいっても、日本経済を支えておる、国を支えておる諸君とその家族とではおのずから比重が違うという認識でちょっと考えていただかなければいかぬ、私はそう思います。大臣、いかがですか。
  55. 渡部恒三

    渡部国務大臣 先生のお話し、一つの御見識だと思いますが、ただ、時代がだんだん変わってまいりまして、健康保険の成立した当時のことを考えると、これはまさしく先生の御指摘のとおり、経済を背負っておられる働く勤労者の皆さん方の健康を守っていかなければならないということで、九割給付で出発したわけでありますが、しかし、その当時はこれは家族の方は見なかったわけです。ところが、それが先生方の御指摘、御指導によって五割、家族を見るようになり、さらに今日七割、八割、家族の方を見るようになってまいりました。また、今、働く人は大事だから十割、これは家族は……(堀委員「いや、十割ということを言っているわけじゃない、格差があってもいい」と呼ぶ)しかし、それも一つの御見識でありますが、今むしろ老人医療、働けなくなったお年寄りの方にこそ十割給付すべきであるというのが社会福祉の方向になってきているものでございますから、これは非常に難しい問題ですが、働く人も大事だし、しかし働かない人も大事だし、すべての人間の生命に対する尊重という意味では、今日の時代はすべて同じだという考え方になっているであろう。そういうことから、今までの長い歴史と沿革の中ではそういうことがございましたが、将来方向は、やはり労働者の方も農民の方も零細な商工業の方も、あるいは家族の方も子供さん方も、みんな同じような給付条件にいけるのが社会保障のあるべき方向という時代になってきておるのではないかと私は考えております。
  56. 堀昌雄

    堀委員 次に、薬価の問題について少し伺うのでありますけれども、実は、先週の終わりの東京証券取引所第一部上場の薬品会社というのは二十四社あるのです。この二十四社の平均の株価は千三百二十円。そして、この一部上場の全部の株の単純平均株価は五百七十一円です。製薬会社の株というのは実は平均の二・三倍の株価になっておる。これはどうしてこういうふうになっているかといえば、収益力が大きいから平均の二倍以上の株価になっておるわけですね。  今、薬価基準の調査によって薬価基準は下げられております。大変結構だと思っています。しかし、今の薬価基準というのは、取引されておる市場価格と薬価基準の差を縮める範囲でしか実は働いてない。この市場取引価格が既にマージンが相当に高いから、こういう高い株価が生まれている。そうならば、少なくとも主に使われているような薬については、厚生省は一回原価計算をきちっとして、調査をやって、その価格と今の薬価基準との関係の処理をするのでなければ、正しい薬価基準というものにならないのではないでしょうか。  私は、お医者さんの皆さんにこう言っているのです。要するに日本の医療の最大の問題点は、薬価にリンクをしておる潜在技術料などと言われるものがあるのですね。私は、これは問題があると言っておるわけです。やはりそこはフェアにいかなければいかぬ。それはフェアに、裸の薬の原価にしなければ、お医者さん、皆さん方保険医は公定価格の医療をやっているのではないか。国が決めた公定価格で医療をやっている。公定価格でやる、材料は自由価格でもうけほうだいにもうける、これでは皆さん、このシステムの膨張するのは避けられないですよ。だから私は、今度の改正の中でもしこういう改正を被保険者の方にするのならば、当然医療費の圧縮という問題はその根源をさわらなければ問題の解決にならない。そうすることによって、しかも技術料を正当に評価して問題を転換していけば、日本の医療というものは正常な軌道に乗る、こう考えておるわけです。  だから、ひとつそういう意味で、製薬会社のこのもうけほうだいの状態、特に、この前藤沢薬品の問題が出て、我々テレビを見ていたら、開発費を五十億円かけても、うまく当たれば毎月二十億円の収入があるというようなことが報道されて、大変な超過利得が生まれるものだなあと実は思ったのでありますが、これだけはこの法律の改正とあわせて医療費を適正に圧縮をするためにどうしてもとってもらいたい、こう思いますけれども大臣、どうでしょうか。
  57. 渡部恒三

    渡部国務大臣 薬価の問題、先生指摘のとおり、これは非常に大事な問題でございます。私も、厚生大臣を拝命していろいろ事情を聞いたとき、コスト計算ができないものかということでいろいろ研究させていただいたのでありますが、現在の薬価の事情でコスト主義というのがなかなか入りにくい。そこで、御案内のように、今までは毎年実勢価格を調査いたしまして、その実勢価格に毎年基準価格をスライドしていくという方向をとりまして、今年も思い切って一六・六多という薬価の引き下げを断行したので、最近では、数年間に四〇%近く下がっておりますから、薬屋さんも過去のようにそうもうかる商売ではなくなってきたというようなことをよく聞きますが、これは先生指摘のような問題等もありますので、私ども医療費の適正化、これは二十一世紀までこの保険制度を続けていくために極めて重要な問題であり、その中で薬価をどう決めていくか、これも非常に重要な問題でありますから、できるだけ国民の皆さんの納得していただけるような適正な薬価をつくるように努めてまいりたいと思います。
  58. 堀昌雄

    堀委員 この日本の市場の中で十分もうかっている限りは、製薬企業というのは外に出ていかないと思うのですね。日本の産業で少なくとも製薬業というのは、今や世界の一流の水準に来ている産業ですからね、これはもっと輸出が行われてしかるべきだと思うけれども、ほとんど輸出はない。それはみんなぬくぬくと国内市場で収益を上げておるからこうなっておるわけです。どうかひとつ、そういう点も勘案しながら、製薬業が世界に伸びていくような方向にするためには、国内における適正な薬価というもの、それによって初めて公定価格の健康保険の制度が守られると私は思いますので、十分御検討いただいて、ひとつ今後の運営に思いをいたしていただきたいと思います。  終わります。
  59. 有馬元治

    有馬委員長 富塚三夫君。
  60. 富塚三夫

    ○富塚委員 私は、運輸委員会に所属しているのですが、船員法の一部改正に関する問題とのかかわり合いもありますけれども大臣が非常にお忙しいというので途中で中座されるやにも聞いていますから、その点は後半に譲りまして、まず基本的な問題について質問をいたしてみたいというふうに思います。  まず第一の問題は、七月五日でしたか、大阪の医師会が午後一斉休診をするという抗議を行ったということが新聞紙上などでも発表されています。これはやはり一割負担導入という問題がある以上、この法案には賛成できないという意味で強い抗議の姿勢を示したものだというふうに私は思います。なぜ七月五日に戦術行使の日を選んだのかということや、あるいは伝えられるところによりますと、五千八百余の、つまり大阪の医師会に加盟をしておられる九割以上の病院や診療所が参加をした、従来に例がなかったように思われますが、こういった医師会の側の強い姿勢のあらわれというものについて、厚生大臣として一体どのように受けとめられているのか、こういうことについてまず所感をお伺いをいたしたいと思います。
  61. 渡部恒三

    渡部国務大臣 これは先ほどもお話がありましたように、私ども厚生省は国民の健康を守るのが務めの行政機関でございますが、その最前線で頑張ってくださっておるのが医師あるいは歯科医師、薬剤師、看護婦さん、いろいろおりますが、医療関係の皆さんでございます。したがって、私どもは、これは車の両輪のごとく力を合わせて国民の健康を守っていかなければならないと絶えず心がけておるのであります。そういう意味では、政府が提案し、しかも、それぞれ賛成の方も反対の方もおりまして、国民の代表の皆さんが国会でこれほど慎重に十分に審議しておる法案に反対して、国民の健康を守る第一線に立ち、その誇りを持っていただくべき医者の方々がストライキをやるというようなことは、まことに好ましくないことだと思っております。
  62. 富塚三夫

    ○富塚委員 医師会の皆さん方は従来自民党を支持されている。また、厚生大臣も自民党所属であります。そういう中で、私が言いたいのは、何か医師会の方が十分納得しない、説得する時間が要るのでというふうなことがかなりマスコミなどに報道されているのですが、国会での審議という問題とのかかわり合いから言うと、ちょっとそういう点が私は納得いかないんじゃないか。その点で、今回の改正案審議に当たって非常に不穏当な点があったんじゃないかというふうに思いますが、その点はどうでしょうか。
  63. 渡部恒三

    渡部国務大臣 私は、幾たびも申し上げておりますように、国が国民の健康を守るために期待しておる保険医の皆さん方が、どのような理由であれ、その一分一秒とてゆるがせにできない国民の健康を守っていく仕事を放棄されることは好ましいことでないと思っております。
  64. 富塚三夫

    ○富塚委員 今回の改正案をめぐりまして、既に社会労働委員会では五月九日でしたか、参考人をお呼びいたしまして御意見を承った、その質疑のやりとりについて拝見をいたしました。その中で、日経連の常任理事をされている今宮さんが、負担増は賛成だが、今回の政府提案は医療費の抑制あるいは肩がわりの観点から出されておって、どうも、今後の医療制度のあり方、つまり病気の原因の追及やあるいは医者患者が心の通い合うような医療制度、すなわち医療の質をどう高めるか、そういう点の提案がないことに極めて不満だと表明されたということを見ました。また、社会労働委員会あるいは本会議の中でも、昭和五十九年度予算で四千二百億不足する、一カ月おくれると五百億円余の国庫負担の追加、つまり財政面からの改正がかなり前面に主張されているというふうに、質疑のやりとりでも承っています。  私は、ここまで到達した医療保障の水準を引き下げずに財政補てん効果を生み出すような知恵を絞るべきじゃないか、またそれが厚生省の役割ではないかと思うのですが、医療保障の水準を端的に示す表を見ますと、本人・家族を含めて今被用者保険の全体の平均の給付率は九〇・五%で、政管健保では八九・八%。ところが十割から九割に変更されますと八六・一、政管では八四・八に下がる。つまり、せっかく高度成長時代につくり上げてきたこの健保制度を大事にするという観点から言うなら、この制度をいじらないで財政を生み出すことはできないのか。例えば点数・出来高払い方式の改革、あるいは薬剤、高度医療機器の公的なコントロール、医療内容のチェックシステムなど考えられるのじゃないかという点で、どうも安易に財政上の問題によってのみ、と言えば失礼ですけれども、その問題が余りにも前面に出されているが、制度をいじらないで財政を生み出す、そういうことは考えられなかったのかどうかについてお尋ねします。
  65. 渡部恒三

    渡部国務大臣 先生の御意見にも私が共鳴する面もございますけれども、ただ、自由診療・出来高払い制度につきましては、戦後三十九年、御承知のように昭和二十一年に五十一歳であった平均寿命が今八十歳になんなんとしております。これはやはり、今日まで我々のやってきた国民保険、また直接患者を、国民の健康を守る仕事をしてこられた医療機関の進歩、前進、こういうものが大きな意味をなしておるので、私は自由診療・出来高払いのこの制度は、一つ一つ取り上げればいろいろの欠点がありますけれども、全体としてはこれにかわるものはないと信じております。私、議会民主政治のようなものである、こう言うのでありますが、全体としてはこの制度が我が国の国民の健康を守ってきたし、また、今後もこの制度を続けることによってこれは守っていきたいと思います。  その中で、薬価基準を引き下げるとか支払い体制を強化して医療費の節減を図るとか、そういうことはこれからも私ども一生懸命に努めていきますが、それにはおのずから限界がありますから、今日、昭和四十年に一兆円だった医療費が今やあっという間に十四兆円と、年々一兆円もふえていく、この保険財政を将来にわたって守っていくためには、国から今以上思い切った国庫の負担を出すか、あるいは被保険者皆さん方、加入者の皆さん方保険料率を上げるか、あるいは患者皆さん方に一部御負担をいただくか、残念ながらこれしかございません。そうすると、「増税なき財政再建」という国の方向の中で、現在でも三兆九千億、医療費国民の税金が出ておるのでありますから、これ以上国民の税金を医療費にばかり出すというのもなかなか国民的合意が得られない、また保険料率を上げるということになりますと、おれは健康を守って一生懸命自己管理に努めて、一度もお医者さんにかかったことがないという元気な皆さんもいっぱいおるのでありますから、保険料率を一律に上げるというのもなかなか難しい問題があるので、今回、今まで十割給付であった被用者保険加入者の皆さんには大変恐縮でございますが、今後二十一世紀にわたっての我が国の医療保険制度というものを揺るぎないものにするために一割の御負担をお願いしておるので、ぜひ御了承を賜りたいど思います。
  66. 富塚三夫

    ○富塚委員 十割給付が一割なり二割、つまり個人負担ということになれば、どういう影響が結果として出てくるかということについて、行政当局としての厚生省が、環境アセスではありませんけれども、制度改革をやった場合とやらない場合ということの影響について調べられたことがあるかどうか、厚生省行政当局としてはどう見られておりますか。
  67. 吉村仁

    吉村政府委員 個人負担をふやす結果どういう影響が出るか、こういうことでございますが、私どもは、一割の定率負担を課すことによりまして、かかった医療費がすぐわかるということになるわけでありまして、医療費についてのコスト意識を喚起する、そして医療費の適正化あるいは効率化につながる、こういうように考えております。  それから、健康者とそうでない者とのバランスが今後の保険運営の場合に必要なのでありますが、公平という見地から考えまして、今度の一部負担によって健康者とそうでない人との負担の公平というものが図られる、こういうように考えます。  なお、一割の負担によって一部には国民の生命、健康に影響を与えるのではないか、こういう御議論がございますが、私ども国保やあるいは被用者保険の家族の医療費並びに健康の状態等と比較いたしまして、そういうことにはならないであろう、こういうように考えております。
  68. 富塚三夫

    ○富塚委員 厚生省案でいきますと、結果として幾ら金がかかることになるかという点で、多くの国民は不安を持っていることは事実だと私は思います。とりわけ中小や零細企業に働く人たち、労働者は非常に心配をしている。仮に運輸事業に携わる労働者、不規則労働である、あるいは長時間労働である、あるいは危険労働である、屋外労働等さまざまの特徴はありますけれども、とりわけ名神高速道路、トラック運送などに携わっている方々は、出先で病気にかかる、そういうことが往々にして起こり得ます。不規則勤務であるために、とりわけ運輸事業に働く労働者はそういうことが多いように思います。出先に行って、一体この病気ならどのぐらいの金を取られるとかという点の不安というものは、私は非常に強いと思うのです。さればといって、給料の半分を持って出るわけにはいかないわけであります。  だから、そういうことについて考えますと、やはりどういう影響が出るかということの問題では、もうちょっとそういう点について検討してみる必要があるだろうし、同時に、そのお医者さんにがかった地域での状況によって、場合によっては乱診乱療などもあり得ると思うのです。お金を高く取られることもあり得ると思うのです。そういうことを私は心配するわけですけれども、そういう観点からのいわば地域的な落差、条件というものが現実にはあるのじゃないかというふうに思います。そういうことなどを含めて分析されて検討されたことはあるのかどうかについてお尋ねします。
  69. 吉村仁

    吉村政府委員 今先生が御指摘のように、例えば特定の職業の方についてどういう影響があるか、あるいはどこで病気をしたことによって影響に違いがあるか、こういうような点については調査をいたしておりません。
  70. 富塚三夫

    ○富塚委員 私は主として国民医療へのニーズといいますか、それを受けてのこれからの課題ということについて、厚生大臣にぜひ御検討いただきたいという点について御質問申し上げたいと思いますが、何回もいろいろな角度から恐らく議論されていると思いますが、今やはり治療中心の医療から、健康管理とか早期の予防発見ということも考えなければならない。重病のときには十分に保障してもらえるかどうか、あるいは緊急のときは直ちに診療してもらうことができるかどうか、またお医者さんに行ったときに大変待たされる時間がある、こんなことがうまくいかないのかどうか、いろいろなことの要求があると思います。  私は、国民医療に対する政治の重要なポイントは、いかに国民に安心感を与えるかということが最大のポイントであろうというふうに私は思います。しかし、国民大多数の皆さん方は、率直に言って、その要望、ディマンドはすべて現実的であって自己中心的であるように思います。私はやはりある程度現実的で自己中心的になっているということの条件なり立場を十分認めてやるということもなげれば、医療問題が根本的な問題の解決になっていかないという一面を持っていると思います。自分の体の健康状態は、皆さんも同じように自分が一番よく知っているわけでありまして、その点ではまさに自己中心的であると言っていいと思うのですが、医学について見識なり知識を持っている人とそうでない人の違いの問題、多くの場合、よいお医者さんにかかれると病気を治してもらえる、病気が治らなければお医者さんが悪いから治らないみたいな感じになっていると思うのです。そこで、やはり個人の意識というものを十分高めていかなければならないというために、医療の情報といいますか、そういうものを適切に取り上げて対処するという姿勢があっていいのじゃないかというふうに私は思います。  そういう点で、今回の健保改正提案には、国民の医療に対する意識啓発という観点から賛成をすべきだという一部の方の意見もあります。しかし、現実に、最近では食品添加物の問題が人体に及ぼす影響という問題も一つありますし、私自身も健康食品の問題などで非常に関心を持っています。かつて紅茶キノコを飲みますと何かが治る、何の病気かが治るとか、最近では偏食に対してビタミンの各種のものをどうかとか、あるいはカルシウム不足について小さな魚を食べない方が割にどうかとか、そういった健康食品問題など添加物問題などが大きく厚生省で問題になっていることも事実だと思うのですが、人間生活のメカニズムが解明されないままに、何か今の状況では、気休めの薬みたいな感じでこういったものに飛びついている例があるのじゃないかと思うのであります。  そういう点で、第一に、医療情報というものについて厚生省はもっと適切な措置をすべきであると考えるのですが、この点についてどのようにお考えか、簡潔にお答え願いたいと思います。
  71. 渡部恒三

    渡部国務大臣 先生指摘の問題、全く同感でございまして、いつでも、どこでも、気軽に、安心して、常に医療を受けられる体制というものが、国民の健康を守っていく上で何よりも大事なことだと私は考えております。そのための法律も今国会でお願いしておりますけれども、医療情報を国民の皆さんに的確に、常に正確につかんでいただくような努力をなお一層続けてまいりたいと思います。
  72. 富塚三夫

    ○富塚委員 第二の問題は、健康教育の問題について考えていただきたい。  過日、厚生白書が発表されまして、日本は男女ともいわゆる世界最大の長寿国になったということが明らかにされました。しかし、この高齢化社会の到来ということの必然性の中でも、なお、がんとか脳卒中とか心臓病とか、三つの大きな病気を克服しなければならない、これを克服するとさらに寿命が延びる可能性があるという点で、厚生白書は出されています。  しかし、私は思うのですが、なぜもっとがんなどに対して予防することができることを考えてもらえないのかと、国民は率直に思っていると思うのであります。この場で言っていいかどうかわかりませんけれども、例えばP3Cの飛行機を一機買うお金があったら、防衛費三兆円の金を出すことがあったら、その中でやはりがん予防を研究するということをなぜもっとやれないのか。これだけ経済大国になって世界にも評価されている日本がだめなのかということについて、疑問を実は持っておられると思うのであります。したがって、こういったがん、まあ脳卒中や心臓病はそれなりに克服する問題があると思いますけれども、やはりこの健康教育の問題について十分に考えていただきたいということと同時に、がん対策あるいは脳卒中、心臓病、こういったものについて国民はどういう予防の手だてをすることが適切であるのかという問題を打ち出していただきたい。この点についての所感を私は承りたいと思います。
  73. 渡部恒三

    渡部国務大臣 先生指摘の心配、私どもも全く同感でありまして、中曽根総理も御案内のように、対がん十カ年計画というものに非常に力を入れられまして、今年度予算、大変乏しいところでありますけれども、私ども、これには大蔵省に要求した予算を確保することができたのでありますが、がんセンターを中心にいたしまして、我が国のがんに対する研究は、この十年間に、国民の皆さんからすばらしい評価を受けるものと確信いたしております。また心臓病等についても、大阪に循環器のナショナルセンターで、これも決して外国に劣らないすぐれた研究者の皆さん方に、循環器系統の病気を克服するために頑張っていただいておりますし、また、御案内のように老人保健事業を強化いたしまして、四十歳から国民の皆さんに健康診断をできるだけ受けていただいて、そういう病気にならないような予防措置、また早期発見、こういうものに全力を尽くして取り組んでいかなければならないという姿勢で私ども頑張っております。
  74. 富塚三夫

    ○富塚委員 お時間があるようですから、もう一つ大臣にぜひ検討することを約束していただきたいのですけれども、私は、医療行政監察委員制度みたいなものをぜひ検討してもらえないかということを申し上げて、提案したいのです。スウェーデンのオンブズマン制度ということもありますが、今国民のニーズに沿った医療の改革、医療制度の確立ということになりますと、御案内のように社会保障制度審議会あるいは社会保険審議会等があります。支払い側、診療側、公益側や、あるいは事業主側、被保険者側、公益側とあります。また、学識経験者だけで構成されている医療審議会あるいは薬事審議会等もあるでしょう。私もかつて総評におったときに、高齢化社会の到来と相まって長期ビジョン懇談会というものを、恐らく厚生省でつくられてその委員になって出たことがあります。結局これらの審議会とかいろいろな懇談会で議論されるのは、国民の健康づくりから薬価の問題、堀さんも指摘をしておりました、また医療費の適正化の問題、あるいは疾病の予防、地域医療供給体制とか年金、雇用、住宅など福祉問題全般についていろいろ議論されます。しかし、本当に活発な議論はされているんですが、それぞれの側がどうしても建前論が多くなる傾向にあるように思います。そして審議会の運営も、私も総評におった時代に代表で各委員を出しておりましたが、やはりマンネリ化傾向は否定できない。また審議会の組織にも限界があるように思います。  そこで、当然これから生きがい論に直結した福祉制度や政策全般が議論されていかなければならぬと思うのでありますが、厚生行政は当然弱い人の立場を考えなければならない。先ほど申したように個人のエゴもある程度認めなければならない。もちろん、それは社会秩序や連帯を大切にする中で、行政の温かいあるいは愛情のある対応というものが必要だというふうに思うのです。きのうでしたかある新聞に、ぼけ老人介護に心のこもる行政をやったらどうか、余りにも制度の運用、適用で機械的、事務的に冷たくやっているということについて残念でならないという問題が出ていました。  しかし、今末端機構には衛生監視員とか、あるいは職場には安全衛生委員とか民生委員とか、あるいは最近は産業医制度でしょうか、何か労働省が産業医科大学をつくっても実際になり手がなくて困っている話も実はいろいろ聞いています。そしてまた、ボランティア活動では、戦後結核予防で婦人が立ち上がって成果を上げたこともよく知っています。また、がんの対策や結核予防、いろいろなことでできているのですが、何か末端に行くとばらばらな対応になっておって、お互いに責任をなすり合う、あるいは制度とか法律とかばかり建前にとらわれておって、弱い人たちを救ってやるということがなされていない場合も往々にしてあるように見受けられるわけであります。  そういう点からいうと、お医者さんと患者さんと医療行政がもっと直結されるということが必要であって、直結された国民の合意、コンセンサスを得るためにどうするかということをいろいろ考えてみると、今のままでは結局またばらばらになっていくんじゃないかという点で、冒頭に申し上げましたように医療行政の監察委員制度、つまりそういう制度を採用することによって、いろいろなそういう問題点を整理をしてきちっとできるような、そういうふうな制度というものを検討していきませんと、ばらばらになってしまって、本当に温かい医療行政、愛情のある医療行政ができないという点について、ぜひひとつ厚生大臣、非常に心温かい大臣だと言われておりますから、そういう点十分に検討していただきたい、こう思いますが、いかがでしょうか。
  75. 渡部恒三

    渡部国務大臣 前段の、国民一人一人に心の通った医療制度を健康を守るために進めていくべきだという御意見、全く同感でございまして、そのために家庭医制度の問題とか、あるいは一次医療、二次医療、三次医療までの問題とか、いろいろ私ども先生と同じような気持ちで今検討しておるところでありますが、ただいま新しく提案をいただきました監察制度の問題は、きょう初めて先生からお聞きする提案でございますので、これは勉強させていただきたいと思います。
  76. 富塚三夫

    ○富塚委員 それでは大臣、どうぞ。  次に、厚生省は、本案の提案理由の説明の中で「本格的な高齢化社会に備え、中長期の観点に立った医療保険制度の改革を行う」としているわけでありますが、医療経済をめぐる中期的、長期的な見通しの計画というものを提示できないのかどうかということについてお尋ねしたいと思うのです。  経企庁は、国民経済に関するマクロのモデル、そういったノーハウを持っておって既に明らかにしているのですから、これを応用した医療経済見通しというものについて十分に検討していく必要があるのじゃないかと思うのですが、いわば国民経済における医療費経済的な視点の問題についてどうお考えになっていますか、お尋ねをいたします。
  77. 吉村仁

    吉村政府委員 確かに先生指摘のように、医療費も十五兆円に近くなっておるわけでありますから、この医療費をめぐる医療経済に関する中長期的な見通しというようなものがなければおかしいではないか、こういう御趣旨、これは全くそのとおりであると思います。  ただ、私どもといたしまして、医療費の将来予測をする場合に、疾病構造がどう変化するかとか、あるいは医学医術がどういうような進歩を遂げるか、この辺がなかなか難しいところでございまして、的確な予測というものがなかなか立ちにくい、こういう困難性がございます。ただ、私ども非常に長い目で見まして、医療費国民所得に対する規模というものを今よりもふやさないようにしたい。六・二%ぐらいでございますが、六・二%ぐらいの規模を維持していきたい。そのためには医療費の伸びというものを国民所得の伸びの範囲内にとどめたい。こういうようなことで諸般の政策を進めていきたい、こういう考え方から今回の提案をしておるわけでございます。  今回の提案によりますと、私どもは中期的にはその目標を達し得ろのではないか、こういうような見通しを持っている次第でございます。
  78. 富塚三夫

    ○富塚委員 「今後の医療政策の基本的方向について」という厚生省試案の説明の中で、「医療費は、長期的には今後も人口の高齢化等により、経済成長を上回って伸びるものと予測される。」ということが書かれているわけであります。やはり経済成長の見通しの計画と医療費がどんなウエートを占めるかという問題は非常に大事な問題であると思うのであります。そういった観点からの判断を示されていないのじゃないか。この社労委の中でのやりとりでも、医療費の規模を適正な水準にしたいと終始繰り返されているように、議事録を拝読すると思うのですが、その点の問題について一体どうお考えになっていますか、お聞かせをいただきたいと思います。
  79. 吉村仁

    吉村政府委員 私ども、長い目で租税と社会保障負担率というものを考えました場合に、現在は国民所得に対して租税の負担率が二五ぐらいでございます、そして社会保障負担率が一〇ぐらいで、大体半分が年金、半分が医療保険というようなことで、現在は三五%の負担をしておるわけでございます。私はこれがやはり今後ふえていくのではないか、こういうように思いますが、年金の方を推算いたしましても、現在大体五%のところが、長期的にいいまして一二、三%ぐらいの負担率になります。そういたしますと、医療保険の方は現在の負担率のままとどめておきましても、租税、社会保障負担率というのは将来四二、三%ぐらいになる。四二、三%が適正かどうかという議論はあるわけでございますが、臨時行政調査会等におきましてはその辺が一つの目安になっておるというように聞いております。五〇%になったのでは大き過ぎる、こういうことで表現をされておりますが、そういうような感覚をお持ちのようでございます。芦、こで、私どもも長い目で、国民所得に対する医療保険負担率というものを、現在五%でございますが、この五%というものを少なくとも上げたくない、こういうことで今後計画を立てていく必要がありますし、そういう見通しのもとに政策の運用をしていくべきではないか、こういうように考えているわけでございます。
  80. 富塚三夫

    ○富塚委員 時間がないから簡単に申し上げますが、何か西ドイツ並みの負担率ということをかなりモデルにして検討されていることを前にも伺ったことがあるのですが、やはり負担率の問題を先行させるというのではなくて、マクロで国民経済がどのように成長していくのか、その中の医療費はどういう位置を占めるのか、あるいは二十一世紀に向けて医療制度の抜本的な改革、そういった展望を含めて、私はもっと明確にそういう観点を打ち出していただきたいことを要望しておきます。  最後に、船員保険法の改正の問題について、一部負担金、療養費、標準報酬、退職者給付拠出金などの改正が提案をされているのですが、このこととは別に、既に雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を促進するための労働省関係法律の整備等に関する法律案、つまり雇用機会均等の問題の法案と相まって、この保険法も改正されるということで議論されているのですが、特に船員の妊産婦の就業制限という問題が実は大きな問題になっているわけであります。こういった点で、身体保護の問題からいろいろ問題になると思うのですが、今回特にこの改正案の中に出ているのは妊産婦就労制限の特例事項が設けられるわけでありますが、その点について慎重に対処していただきたいということを申し上げておきたいと思うのですが、時間がありませんので、考え方を簡単にひとつお答えいただきたい。
  81. 坂本龍彦

    ○坂本政府委員 お答え申し上げます。  今回の男女雇用の機会の均等に関する法律案の提案に関連いたしまして、船員保険におきましては、出産に伴う休業に対する給付でございます出産手当金の支給期間を改正する措置を講ずることといたしております。これは、船員関係につきましては船員法の改正法案が提出されておりますが、その中で、現在分娩の前後六週間にわたって給付をすることにしております出産手当金を、分娩前は妊娠時から分娩時まで、分娩後は分娩後八週間給付をする、こういう改正を附則をもっていたすことにしておる次第でございます。
  82. 富塚三夫

    ○富塚委員 終わります。  ありがとうございました。
  83. 有馬元治

    有馬委員長 森田景一君。
  84. 森田景一

    ○森田(景)委員 今回の健康保険等一部改正法案の中では、船員保険法も健康保険法と同様の改正を行うということになっておるわけでございます。船員保険法は御承知のとおり総合保険制度と言われておりまして、年金部門、疾病部門、失業部門の三部門が包含されているわけでございます。今回の一連の法改正で船員保険制度がどのように変わっていくのか、そして被保険者にとってどのようにプラスになり、またマイナス面はどのようになっていくのか、この辺のところを最初に明確にしていただきたいと思います。
  85. 坂本龍彦

    ○坂本政府委員 船員保険につきましても、今回制度改正を予定しておる次第でございます。特に、健康保険の改正の一環といたしまして船員保険の疾病部門、つまり医療給付の部門につきまして改正を行うわけでございます。  その内容は、現在審議をされております医療保険制度全般の改正の内容と同様でございまして、給付の見直し等を中心といたしまして、また退職者医療につきましても被用者保険として船員保険がこれに参加をする、こういうのが主な柱でございます。  また、船員保険全体に通じて見ますと、そのほかに年金部門におきましても、年金制度の今回の大改正の一環といたしまして、職務外の年金部門を厚生年金保険へ統合する、こういうことも予定をいたしております。  さらに、船員保険は総合保険でございまして、そのほかに失業部門もございますが、これは既に成立を見ました雇用保険法の改正と歩調を合わせまして、船員の雇用失業情勢の変化に対応するために、給付の見直し等、雇用保険に準じた改正を行うことにしておるわけでございます。  これらの改正の考え方につきましては、やはり現在の各保険制度の今後のあり方というものに関連をいたしまして、船員保険制度自体も社会保険一つとして中長期的な安定が図られるように、各種の見地から改革を行っているものでございます。特に、船員保険制度におきましては、被保険者数の減少でございますとか被保険者の高齢化、さらに海運業界あるいは漁業界の不況といった非常に厳しい情勢の中にございまして、今後船員福祉の向上ということから考えて、どうしても制度の安定を図っていきたい。  したがいまして、いま御質問の、どういうメリットがあるかという点につきましては、やはり今後、中長期的に制度の安定を図っていくということが最大のメリットであろうかと考えております。  なお、デメリットについても御質問ございました。私どもは、大きな見地からいたしますと制度の安定的運営ということで、これは船員のメリットにつながるものと考えておりますが、個別の問題といたしましては、やはり給付の見直しの際における若干の負担増でございますとか、あるいは部門によりましては保険料の負担増もある程度お願いをしなければならない、そういう点はあるということは認識いたしております。
  86. 森田景一

    ○森田(景)委員 保険制度が安定して運営されるためには、加入者の数も安定していなければならない。また、したがって保険料収入も保険給付費用とバランスが保持されていなければいけないだろう、こういうふうに私は考えているわけでございます。  現在、船舶所有者数、それから船員数が年々減少の傾向にあるわけでございます。こういうことになりますと、この船員保険そのものも根底からおかしくなるのではないかという心配があるわけでございます。そういう点につきまして、船員保険財政収支の現状と今後の見通し、こういう問題も非常に大事だろうと思います。こういう点についてひとつ明確にしていただきたいと思いますし、もう一つは、船員の雇用拡大が非常に大事なことである、このように考えているわけでございますが、雇用拡大ということは勤労者の生活安定、また船員保険財政の基盤ともなるわけでございまして、政府としてこの船員雇用拡大政策といいますか、こういう点について大臣からひとつ抱負をお聞かせいただきたいと思います。
  87. 坂本龍彦

    ○坂本政府委員 船員保険財政収支の状況でございますが、船員保険を取り巻く客観情勢は非常に厳しいということによりまして、現在の段階ではまだ非常に楽観を許さない状況でございます。かつては船員保険は比較的収支状況は安定しておったわけでございますが、何分にも最近の不況あるいは被保険者の減少、被保険者の高齢化といったような問題から年々財政状況は苦しくなってきておるわけでございます。しかしながら、今回の各方面における改正を実施することによりまして、今後の財政運営につきましては、相当な努力は必要かと存じますが、安定的な運営というものは決して不可能ではないと考えておるわけでございます。  この点につきましては、この船員保険を所管いたします審議会として社会保険審議会というのがございまして、そこで種々御検討もいただいておりますし、またこの審議会には労使、公益、関係の委員の方が参加しておられまして、それぞれやはり、船員保険というものを今後とも船員のための社会保険制度として、ぜひとも現在の総合保険のような形で運営していこうという非常に強い熱意もお持ちでございまして、私どもも、十分関係審議会その他いろいろな御意見を伺いまして、今後の財政の安定に努めてまいりたいと考えておる次第でございます。
  88. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 お答え申し上げます。  船員の雇用の拡大または安定、これが勤労者の生活を安定させるためにも、また保険の面からも絶対必要であることはおっしゃるとおりでございます。今、全体として海運界は大変な不況でございます。私どもは、船員の問題だけではありませんが、全体として日本の海運をどうするかという大きな問題をとらえまして、海運造船合理化審議会で基本的な線を打ち出してもらうべく、今検討をいろいろ進めていただいておるところでございます。私ども、この海運造船の今後の問題は、すなわち船員の問題にも当然触れて考えていかなければならぬ、かように存じておる次第でございます。  個々の雇用安定または拡大の具体策につきましていろいろ細かいことはやっておりますので、これは政府委員から答弁をやらさせていただきます。
  89. 武石章

    ○武石政府委員 お答え申し上げます。  船員の雇用対策といたしましては、船員の内部登用制度、要すれば現在部員である者を職員にする、そういう制度を定着させるために上級の資格を持たせる、そのための訓練を実施し、これを受講させる事業主に対して助成を行っております。これは、部員に比べまして職員がやや不足しているという状況が部分的にあるからでございます。  それから第二に、財団法人の日本船員福利雇用促進センターというのがございますが、そこで、開拓いたしました外国船等に余剰船員を派遣する事業主に助成を行っております。それから、外国船への乗船に必要な訓練を実施したり、これを受講させる事業主に助成を行うというようなこともやっております。  それから第三に、海技大学校というのがございますが、そこの分校におきまして技能講習を行いまして、陸上での就業に必要な技能資格を付与するということもやっております。  それから、本年度から船員保険特別会計からの補助で、同じく日本船員福利雇用促進センターにおきまして実施しております能力開発事業の一環としまして、中高年の船員の職業訓練に当たりましては、陸の公共職業訓練校への入学の道を開くというようなこととともに、これを受講させる事業主に対して助成をするというようなことなども行っておるわけでございます。  船員の雇用の安定ということは極めて重大でございますので、このような措置を通じまして失業の予防を図る、雇用の安定を図るということで努力をしておるところでございます。
  90. 森田景一

    ○森田(景)委員 大臣は、今回の法改正で、二十一世紀を展望する大改正だ、このようにおっしゃっておりました。このことについていろいろとお話しを申し上げたいと思っていたのですけれども、時間の関係で、特に今回の改正で大きな焦点になっております被用者の一割負担という問題、こういうことにつきまして最初に五つのことをまとめて質問いたしますので、お答えいただきたいと思います。  被用者本人の負担導入ということで種々論議されているわけでございますけれども、この政府根拠というのは非常に乏しいものである、こういうふうに私は考えておるわけでございます。  それはどういうことかといいますと、一つは、国民医療費の伸びは国民所得の伸び以下に抑制するべきである、これはわかります。既に国民医療費は、昭和五十八年度で四・六%、五十九年度二・五%、これは推計でございますが、このように国民所得の伸びを下回っております。これはもう大臣も御存じでございます。毎年一兆円規模で膨張する医療費を抑制するためという理由で、一〇%の自己負担を導入するということだったわけでございます。この根拠は薄くなっているわけでございます。これが第一点。  第二点は、国民に医療のコスト意識を持たせるという意図も、医療費通知制度あるいは医療費領収証発行などの徹底で達成できるではないか、これが第二点です。  第三点は、薬価基準の適正化、いわゆる薬価の引き下げでございますが、これは医療費抑制に非常に効果的である。これは先ほども大臣がおっしゃっておりましたが、医療費ベースで一二・七%、過去三年間で総医療費の一三%が節減されているわけでございます。この点については引き続き政府として努力を続けるべきである。したがって、政府の努力目標を明確にしていただきたい。  第四点は、診療報酬の支払い方式、いわゆる出来高払い方式を改革すべきであるということ。この出来高払い方式は、私から申し上げるまでもありませんが、必要な医療と必要な医療供給を保障し、医・薬学の発展に寄与はするわけでございますけれども、反面、薬づけあるいは検査づけの過剰濃厚診療や不正請求を生んでまいりました。これに対してこれからどう対応していかれるのか。  第五点が、医療費のむだ排除には、医療機関における医療機器の共同利用促進、医療機関相互間の機能分担を促進すべきであるというふうに私は考えるわけでございます。  以上五点にわたりまして、非常に短い時間になってしまいましたが、答弁をいただきたいと思います。
  91. 渡部恒三

    渡部国務大臣 第一点の、一割負担も、医療費の節減効果があらわれているからよいのではないかということでございますが、これは御案内のように、老人保健法を通していただきまして、わずかでございましたが初診時に御負担を願うということでかなりの効果が出ておりますが、これは一時的なことでございますので、なお一層医療費の適正化の努力はしなければなりません。  一割負担というのは、私どもいろいろな願いが込められておりまして、一つは、これからの社会保障の方向としては、農家の皆さん方もあるいは家族の皆さんも、零細な商工業の皆さんもサラリーマンの皆さんも、やはり給付条件は将来一つになってもらいたい、こういった問題、また医療費の節減効果、そういう総合的な願いを込めてできておるものでございます。  それから二番目の、それは通知をすれば医療費がわかる、患者にわからせるということはできるのではないか。これもそのとおりでございますが、窓口で患者皆さん方に一割御負担をいただくことによって患者皆さん方医療費に関心を持つ、その節約ということを考えなければなりませんし、また診療側もそういうことをやはり真剣に考えるようになるという効果があって、通知することも大事でありますが、それだけでよいというものだとは思いません。  それから薬価基準の引き下げ、これは御案内のように一六・六%の引き下げを今回やりまして、これからも実勢価格を毎年調査して、国民皆さん方に納得のいただけるような薬価を決めるように一生懸命努力をしてまいりたい、こういうふうに考えております。  それから、自由診療の出来高払い制度でございますが、これはいろいろ欠陥は確かにございます。しかし、大きな目で考えますと、何といってもこの制度によって我が国の国民の健康は守られ、年々我々の平均寿命は延びておるのでありますから、欠点はいろいろあるでしょうが、全体としてそれなら自由診療・出来高払い制度にかわるべき他の方法があるだろうかということを勉強してみますと、この制度が二十一世紀の将来にわたって我が国の国民の健康を守る医療制度としてはベターである。したがって、先生指摘のように、そのためのいろいろな欠陥が出てまいりますから、審査体制を強化していくとか、今後もその欠陥を是正するようにできる限りの努力を続けてまいりたいと思います。
  92. 森田景一

    ○森田(景)委員 若干時間が残ったようでございますから、最後に私の意見を申し上げて終わりにしたいと思います。  ある新聞の記事にこういう記事がありました。「我が国の国民医療費国民が病気の治療などにかけた医療費総額は、厚生省の調べによると昭和二十九年度二千百五十二億円だったが、五十九年度には十四兆八千八百億円(予算編成上の見込み額)とこの三十年間に七十倍にはね上がった。そして製薬産業はマンモスとなり、医者は高額所得者となった。」。この最後の「製薬産業はマンモスとなり、医者は高額所得者となった。」、これはもう大臣も認めるところだと思いますが、これからのこの保険法を適切に運営するためには、こういう状況になってはならない。やはり国民も苦しむならば、こういう方々もともに苦しみを分かつというのが保険の制度であろうと思いますので、参考の意見を付しまして、質問を終わります。
  93. 有馬元治

    有馬委員長 午後六時から再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後五時十二分休憩      ————◇—————     午後六時二十三分開議
  94. 有馬元治

    有馬委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。坂口力君。
  95. 坂口力

    ○坂口委員 前回と申しますか、三月の予算委員会の分科会で、厚生大臣に、この健保の問題の前にひとつ将来ビジョンというものを明らかにしてもらうべきではないか、それが手順というものではないかということを質問をさせていただきましたところ、その後「二十一世紀をめざして」というビジョンを発表をしていただきまして、内容につきましてはいろいろ議論もございますけれども、しかし、出していただきましたことに対しては心から敬意を表したいと思います。ありがとうございました。  ところで、その内容でございますが、まず第一は、その中に給付並びに負担の公平という項目がございまして、「全制度を通じる給付と負担の公平化措置(一元化)」こう書いていただいてあるわけであります。これは、とり方によりましては制度の一元化というふうにもとれますし、それから制度はさておいて給付と負担の内容を一元化をしていく、こういうふうにもとれるわけでございます。まず、これは一体どちらの方向を目指しておみえになるのかというところからお聞きをしたいと思います。
  96. 渡部恒三

    渡部国務大臣 将来、一つの方向に向かっていくことが望ましいと思います。しかし、先生御承知のように、今の保険制度にはその経緯あるいは歴史、いろいろの条件等がありますので、当面は内容、特に給付率を一つにする、あるいは財政調整等を図る、そのような努力をしながら漸次理想の方向に向かって進んでまいりたいということでございます。
  97. 坂口力

    ○坂口委員 そういたしますと、「六十年代後半」と書いてございますが、この「六十年代後半」というのは、六十年代後半には制度の一元化までいく、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  98. 渡部恒三

    渡部国務大臣 私どもが「二十一世紀をめざして」と書いたときの意味は、給付内容を一つに一本化したいという考えでございます。
  99. 坂口力

    ○坂口委員 今、大臣は、将来は制度の一元化を目指すけれども、まず当面はその内容の公平化を目指していく、こういうお話だったわけです。しかし、目指す先というのは制度の一元化である、こういうふうにおっしゃったわけですね。それで私は、「(六十年代後半)」、こう括弧して書いてありますのは、これは制度の一元化を六十年代後半に達成するというプログラムですかと、こうお聞きをしたわけですが、今大臣からは、まず二十一世紀を目指して給付の一元化ということを言ったのだ、こういうふうにおっしゃったそのおっしゃり方は、何となく初めおっしゃったのよりもかなり後退をして聞こえますが、いかがですか。
  100. 渡部恒三

    渡部国務大臣 社会労働委員会予算委員会等を通じてたびたび先生方から御意見がありましたように、現在被用者保険の給付率が十割である、また国保等は七割である、やはりこれが一元化されることが望ましいということには大方の皆さん方の御意見を賜っておりますので、私どもできるだけ早く八割という方向で一つにしてまいりたい、こう考えております。
  101. 坂口力

    ○坂口委員 八割、九割あるいは七割というような話はちょっとおいておきまして、話はまだそこまでいかないのです。制度の問題なのか、それとも給付と負担の内容なのかということを今議論しておりますわけで、もう一度もとへ戻るようですけれども、将来においてはこの制度を一元化をしていく、その一里塚としてまずこの給付と負担の公平化をしていく、大臣はこういうふうにおっしゃったというふうに理解させていただいてよろしゅうございますか。もう一度お聞かせをいただきます。
  102. 吉村仁

    吉村政府委員 私ども一元化というのは、全医療保険を通じて給付、それから負担の公平を図る、そのことを一元化と考えておるわけでございまして、その一元化のために、一つは統合によってそれを可能たらしめるという方法があると思います。それから財政調整によってそれを可能たらしめるという方法もあると思います。それから、これは現在の財政状況からは非常に難しいわけでございますが、観念的に申しますならば、国庫負担というものを投入することによって一元化をするということだってそれはできるわけでございます。そういうように、私どもは一元化と統合の関係は今申しましたような考え方をしておるわけでございます。
  103. 坂口力

    ○坂口委員 それではちょっと観点を変えまして、各保険経費と申しますか、事務費と申しますか、国民健康保険もございますし、組合健保もございますし、政管健保もございます。これらの組合の経費というものは一体どれぐらいかかっているものなんでしょう。
  104. 吉村仁

    吉村政府委員 実際の事務経費の額というのは私ども把握をしておりませんが、国庫補助をしております事務費の総額は千百四十億円でございます。政管、組合、それから国保等を含めて、全部の事務費に対する国庫負担総額が千百四十億ということでございます。
  105. 坂口力

    ○坂口委員 国庫補助だけではなくて全体の……。
  106. 吉村仁

    吉村政府委員 私ども、現在把握しておりません。
  107. 坂口力

    ○坂口委員 先ほど皆さんの方で、急だったのですけれども、医療保険の事務費総額というのをいただいたのです。そちらの方、局長のところへ行ってないのかもしれませんので、私のいただいたのを読ませていただきますと、政管の方が三百五十七億九千七百万円、それから組合健保の方が七百十億一千九百万円、それから日雇の方が十九億三千三百万円、それから船員保険の方が十一億八千三百万円、それから国保の方が七百十一億九千百万円、それで合計いたしまして千八百十一億二千三百万、こういう数字を出していただいたわけでありますが、これは間違いございませんね。もう一度確かめさせていただきます。
  108. 吉村仁

    吉村政府委員 失礼をいたしました。  今お挙げになった数字のうち、組合の七百十億というのは実額、健保組合の決算の実績からとった数字でございます。あとの政管健保、日雇健保、それから船員保険国民健康保険、これは国庫補助によって賄っておる事務費でございます。そして、それを足しますと御指摘のように千八百十一億程度に相なります。
  109. 坂口力

    ○坂口委員 いずれにいたしましても、ざっとでございますけれども、この事務費は約千八百億でございます。したがいまして、制度の一元化か、それとも内容の一元化かという問題の中には、この事務費をどれだけ節約できるかという問題も実は含まれているわけであります。  私の方の社労の理事の平石理事が、先般、もし国保の七割を八割に上げることになったら大体どれぐらい余分にかかるのかという質問に対しまして、約二千億という数字が出ているわけでありますが、千九百億でございますか、それに匹敵するぐらいの事務費が各保険の事務費としてかかっているわけであります。そういたしますと、これから来年の予算に向けましてまたシーリングが始まるわけで、大蔵省が昨年のようにまた厳しく言ってくるということになればこれは大変なことになるわけでございますが、そうしたことも含めて考えますと、厚生省は、この健康保険について、みずから健康保険の中の節約できるところは節約をして、ぜい肉のとるべきところはとっていくという対策をとらなければならないのではないだろうか、そんなふうに私は考える一人でございます。  そういうふうな意味からいたしまして、先ほど申しましたように、給付と負担の公平化というのは、ただ単にその内容を同じようにしていくのだというような意味だけではなくて、この制度を一元化していくというのは、そうすると、先ほど申しましたこの事務費がゼロになるわけでは決してございませんけれども、かなり浮いてくることも事実でありまして、将来に向かって医療費の節減し得るところは節減をして進むというようなときでありますから、この事務費なるものにつきましてもできるだけすっきりとした形で進まなければならないだろう。そうした意味からいきましても、この一元化というのはただ単に内容を均一化していくというだけではなくて、制度そのものをやはり一本化していくというところに意義がある、そういうふうに私は思うわけでございますけれども、もう一度大臣の所見をお聞かせいただきたいと思います。
  110. 渡部恒三

    渡部国務大臣 私、幾たびか申し上げておるのでありますけれども社会保障の本質からいきますと、先生指摘のように、やはり医療保険制度というのは一つであることが望ましいと思います。しかし、特に健康保険制度には過去にいろいろな歴史やら経緯がありまして、今直ちにこれを制度的に一つにするというようなことが現実的に極めて困難でありますので、当面、今まで答弁してまいったように内容を一つにして一元化する方向で努力したい、こういうことでございます。
  111. 坂口力

    ○坂口委員 大臣がそういうふうに答弁をされますから、私は現時点の話と将来構想としての話と両方に分けて、そして将来構想としては制度の一元化ですか、それに至る道筋としては内容の一本化ですかと、こういう問い方をしているわけで、将来の一元化に向けてそれまでに時間がかかることにつきましては私も認めるところであります。今おっしゃるようにそれぞれの歴史があることも認めます。したがってそこまではなかなか一遍にはいかないでしょうけれども、将来においては制度を一本化するのですか、その一本化なんですかということを私は聞いているわけなんです。すぐに今一本化ということを言っているわけでは決してない。  いろいろの歴史があるとおっしゃいますが、厚生大臣のところから出ております年金の法案は、これもいろいろ歴史があるわけですね。いろいろ歴史がありますけれども、これはようやく一元化に踏み切られたわけですね。そうでしょう。だから、医療保険にもいろいろの歴史はあろうかと思いますけれども、しかし年金ができて医療ができないというわけはない。だから、今すぐはできないのだけれども、しかし将来は、目指すところは制度の一本化なのかどうかということを私は聞きたい。それだけなんです。
  112. 渡部恒三

    渡部国務大臣 将来そういう方向に進んでいくことが望ましいと思います。
  113. 坂口力

    ○坂口委員 それでは、これ以上深追いはしないことにいたします。  先ほど大臣の方から八割の話がございましたので、この八割の話の方に進んでいきたいと思います。  「給付の八割程度への統一及び財源の調整等による負担の公平化」、こういう項目が「二十一世紀をめざして」の中にございます。「給付の八割程度への統一」と書いてございますが、これは現在の財政事情並びに将来の財政事情からすれば、八割程度にせざるを得ないということなんでしょうか。それともそうではなくて、医療保険というのは八割程度が望ましくて、二割程度は自己負担が望ましいんだというふうにお考えになっているのか。その辺はどうなんでしょう。
  114. 渡部恒三

    渡部国務大臣 今回、改革案を提出しております理由の一つが、患者の皆さんに一部御負担を願うことによって、被保険者皆さん方の健康の自己管理に努めていただくとか、あるいは医療費がすぐに患者にわかるとか、そういう目標がございますから、やはり一部定率で患者皆さん方に御負担を願うということは必要なことでございます。  ただ、それが一割が当然なのか、二割が当然なのか、あるいはどっちがいいのか、こういうことになればこれは議論がございますが、現実的に今これをやろうとすれば八割程度が望ましいし、また実際は、先生御案内のように、老人医療あるいは高額療養費あるいは難病の公費負担等も行われておりますから、これは制度的に八割給付ということでも、国民皆さん方の疾病に対する給付は実質九割ぐらいになるということから、現在の可能な数字で二割相当ということを私どもは頭に描いておるのでありまして、将来財政が豊かになったり、あるいは医療費国民が健康管理に努めることによって思い切った節減ができたり、そういうことになればあるいは九割ということになるのかもしれません。
  115. 吉村仁

    吉村政府委員 私ども、「八割程度」ということをビジョンに書いておるのでありますが、八割程度という一つ意味は、高額療養費制度をどう仕組むかによって給付率に影響が出てまいります。例えば国民健康保険ですと給付率は七割ということになっておりますが、高額療養費制度を足した実質給付率を考えますと七割七分くらいの給付率になっておるわけでございまして、したがって、八割程度というのは八割プラス高額療養費というようなことで考えた場合に、そういう「八割程度」という字句を使ったわけであります。  そうして、それじゃなぜ八割程度を将来の目標にしておるかということでございますが、先ほど大臣から申し上げましたように、将来は全国民を通じて給付率をできるだけ公平にする、こういう目標が一つございますし、また、余り高い給付率を設定いたしますと国民健康保険が対応できない、こういうようなことで、例えば国保などの給付率を上げるために相当な財政上の負担、これは保険料の引き上げも含めてでございますが必要である。したがって、国保のことを考えますとやはり八割程度が適当なんではないか、こういうのが第二の考え方であります。  それから第三番目に、現在私ども計算をして、保険を全部統合したとすれば、現在の保険料と国庫負担とで八〇・三%くらいの率になります。したがって、私どもは、将来保険料を引き上げたり国庫負担というものを余り引き上げたりしないで医療保険の運営をしてはどうかというように考えておるわけでございまして、保険料率を上げないあるいは国庫負担を上げない、こういうようなことで言えば八〇・三%ぐらいの給付にとどめるのが現実的なんではなかろうか、そういうような観点から八割程度というものを一つの目標にしたわけでございます。
  116. 坂口力

    ○坂口委員 「国民医療費保険負担分の推移」というのをつくっていただきまして、これを拝見をいたしますと、確かに国民医療費の中で、昭和五十八年の推計でいきますと、保険負担分が八一・六%、そして公費負担分が七・五%、患者負担分が一〇・九%・こういうことになっておりまして、最終ではありませんけれども、五十八年度の推計で保険負担分は八一・六%でございます。これを見ますと確かに御指摘のとおりでございますが、また見方を変えれば、この患者負担分は一〇・九%というふうにもう既に一割に達している、そういうふうにもこれはとれるわけでございます。それで公費負担分というのは老人保健その他であろうと思いますが、老人保健はまだ発足したばかりでございますし、それこそ将来の二十一世紀をにらんでつくられた老人保健でありますから、この公費負担分はこのまま存続して、この分については決して削ることなく公費で見ていこうと思っておみえになることに変わりはないのでしょう。これをちょっと確認しておきたいと思います。
  117. 吉村仁

    吉村政府委員 老人保健に関しましては、現時点におきましては現行制度のままで計算をし、それを変革するということで計算はしておりません。
  118. 坂口力

    ○坂口委員 これから高齢化が進んではいきますけれども、一方におきまして定年の延長等が今行われております。六十歳にだんだんなってきておりますが、やがては六十歳から六十五歳に向けてさらに前進をするということがあるはずでございます。そういたしますと、定年が延長されれば保険の中で医療を受ける人の数がだんだんふえてくる。今のように、例えば五十五歳とか六十歳で定年退職になりまして七十歳の老人保健に至るまでの間、十年ないし十五年あるというようなことではなくて、これが少なくとも五年ないし十年というふうにだんだんとこの期間は短くなってくるということになりますね。そういたしますと、大体現在のままで推移をするといたしましても、保険負担分は約八割、そして公費負担分がこのままでいくといたしますと、この七十歳以上の人の数がふえてくればもう少し公費負担はふえるかもしれませんけれども、これは責任を持って政府がやります、こういうことであれば、患者負担分を将来見込んで現在よりも負担が多い八割に統一をしなければならないという理由は非常に少なくなってくるように思いますが、いかがでございます。
  119. 吉村仁

    吉村政府委員 確かに先生指摘のようなことなんでありますが、私どもは、現在国民医療費の全体のベース、老人保健も含め、それから生活保護も含め、それから結核、精神の公費負担医療も含めますと、国民医療費の九割程度をカバーしておるわけでございます。したがって、現在の患者負担というのは医療費の一割程度というのが現時点の姿でございます。  ただ、その中で医療保険の給付率というものを考えましたときに、医療保険だけを引き出して考えましたときに、八割程度というものを目標にしていこう、それに対して高額療養費制度というものでプラスされますし、また公費負担医療というようなものでプラスをしていけば、患者負担というのは一割程度におさめることができるんではないか、こういうことでございます。  したがって、私ども現在提案しておりますものは、医療保険の分野だけに限った給付率を現在お話しをしておるわけでございまして、国民医療費ということになりますと、九割程度の姿になるというように考えております。
  120. 坂口力

    ○坂口委員 最後におっしゃったとおりだと思うのですが、この給付の八割程度への統一というのは、今最後におっしゃったように、これは保険の中での話ということなんだと思いますが、しかし、この給付の八割程度への統一というのは、今お聞きいたしますと、確固たる数字があって、そして将来展望を見て、財政上こうせざるを得ないという何かがあってこの八割程度というものを決められたのではなくて、まあこれぐらいな方が無難ではないだろうかというふうな程度のお考えのもとに、この八割という数字を出されたとしか受け取りようがないわけでございます。この八割程度への統一ということをはっきり書かれるところを見ると、もう少し確固たる数字があって、将来、十年なら十年、二十年なら二十年先、二十一世紀を迎えるときのこの医療の姿というものを見て、どうしても八割にしておかなければ将来これは医療費が足らない、こういうふうなところから出た数字ではないんですね。
  121. 吉村仁

    吉村政府委員 私ども一応の試算はいろいろしております。八割給付でいった場合に医療費はどの程度になるか、あるいは九割でいった場合にはどの程度になるか、こういうことを試算はしております。  例えば五十九年度で九割給付にしようと思いますと、保険負担で七千七百五十億円ばかりふやす、そして国庫負担で五千四十億円ばかりの増額が必要だ、合わせて一兆二千八百億程度の給付費の増になるわけでございますが、それが可能かというと、それは不可能だと言わざるを得ないと思うのです。例えば八割ということになれば、医療保険の一元化というものを、先ほど申し上げましたが統合という形でやる方法もありますし、財政調整という形でやる方法もあるのですが、八割程度の給付率ならばそれほど保険料も上げない、国庫負担も上げないで可能だ。私どもは数字的にはある程度の自信を持っておるわけでございまして、将来そういうことなら余り保険料を上げないで済む、こういうことで八割というものを考えたのも一つの事実でございます。
  122. 坂口力

    ○坂口委員 時間が随分たってきたものですから、余り詳しくこれはでき得ませんが、先ほど申しましたように、将来の高齢化を考えましたときに、定年の延長というものも当然起こるだろう。そういたしますと、今まで六十なら六十で定年退職をして国保に入っていた人たちも、六十五までもしも勤めるということになれば、それは組合健保なりあるいは政管健保なりの中でずっといかれるということになりまして、国保のいわゆる七割なり八割というような人たちは今よりもあるいはパーセントとしては減るかもしれない、そういうふうな変動もあるわけですね。そうしたことをあれこれ考えてみますると、八割程度に統一をしなければならないという根拠が私には非常に薄弱のように思えてならない。もっと確固たる、八割程度にしなければならないという理由があるのならば、これは私もその意見に耳を傾けなければならないと思うわけでありますけれども、今の御答弁のような内容では、この八割というものをまず目指して、そしてここにいくのだというのはこれはよくない。そうして、統一なら統一、統合なら統合という一つの過程を踏んで、その上で、どの程度に落ちついていくのかということをよく見ながら、そして、いや、しかし、それは八割というのはいけなくて、できることならば九割ならば九割にこれはすべきなんだ、あるいは十割なら十割にしていくべきだけれども、十割はいかなくとも、せめて九割まではすべきなんだ、こういうふうなことであれば、やはりそういう目標を目指してやるのが本当ではないだろうか。初めから八割というふうに決めてかかるというのはいかがなものか、これが私の一つの意見でございます。  時間があと五分ばかりでございますので、このことに対してお答えをいただきたいと思いますのと、それから、高額療養費の問題も一言だけ触れさせていただきたいと思います。  五万四千円は五万一千円に据え置かれるというお話も出ておりますけれども、いずれにいたしましても、この高額療養費というものと将来の年金、いわゆる基礎年金ですね、基礎年金というものとはやはり両にらみで考えていかなければならない筋合いのものではないだろうか。例えば基礎年金が五万円で、そして高額療養費が五万一千円でというのでは、これはそれだけで生活をするという人がありとするならば、千円足らなくなるわけでございますし、そんな極端なことはないにいたしましても、そういうことも起こり得るわけでございまして、この辺のところはよくにらみながら、年金と医療というものは絡めて考えていく必要があるのではないだろうか、こういうふうに思っております。  それから、大蔵省はお越しでありますか。——大蔵省の方に、これは今までも出たかもわかりませんが、昨年シーリングの中で六千二百億円、厚生省がそれだけ減額をした、その中で四千二百億円を健保がかぶった、こういうことになっているわけでございますが、またシーリングのときを迎えておりますけれども、来年度ももしこういうふうな大幅な減額を厚生省予算としてしなければならないということになった場合に、また今度は健保にかわって何かが切られるということになるとしたらこれは大変なことでございまして、その辺のところを大蔵省としてはどのようにお考えになっているか、あわせて御答弁をいただきたいと思うのです。
  123. 渡部恒三

    渡部国務大臣 八割というのがどういう確実度を持っているのか、こういうあれですが、私は、将来にわたっても定率で一部患者に御負担を願うということは継続していかなければならないと思います。そういう範囲の中で、これは給付率が多いほど好ましいわけであります。ですから、これは八割よりは九割の方が望ましいに違いございませんが、私ども政権を担当し、一応目標としたところは必ず実現をしなければならないという責任ある立場にありますと、今申し上げられることは八割程度ということで御了承をいただきたいと思います。  それから高額療養費の問題、これは、私はたびたび委員会等でも先生方に申し上げているように、今回被用者保険本人の皆さん方に一割の御負担をお願いすることによって家計破壊が行われたり、そのことによってお医者さんにかかれない人が出るというようなことのないような配慮は、これは極めて重要なことでありますので、今度の改革法が成立する時点では、各党の皆さん方の御意見に十分耳を傾けて、皆さん方に納得していただけるような方法を考えてまいりたいと思います。
  124. 保田博

    ○保田政府委員 お答えいたします。  来年度予算編成の具体的な構想につきましては、現在大蔵省の部内で検討に着手したばかりでございます。しかし、いずれにしましても、基本的にはあらゆる行財政の分野につきまして徹底的な合理化、節減を行うという方針であります。そういうことでございますから、予算編成の第一着手である概算要求シーリングの設定というものにつきましても、従来どおり非常に厳しいものにならざるを得ないと考えておりますが、当然その際には、各種の経費の持っております性格、例えば硬直的な性格の多寡といったようなことは念頭に置きながらシーリングの決定に当たりたいと思いますけれども、特定の分野を優遇するとか、特定の分野を徹底的に切り込むといったようなことはしないつもりでございます。
  125. 坂口力

    ○坂口委員 特定の分野を切り込むこともしないけれども、特定の分野を優遇することもないということは、一律ということになるわけですね。そういたしますと、厚生省の方にもまた一律で来るということになりますが、大臣、どうなさいます。
  126. 渡部恒三

    渡部国務大臣 国民的な幅広い合意で、我々の政府は「増税なき財政再建」という方向を打ち出しておるのでありますから、私どもそれぞれ担当する国務大臣がこの枠の中におることは間違いございませんが、私は、その中でも、厚生省というお役所をお預かりして、これは国民の命を守る、したがってどのような条件の中でも、ぎりぎり必要な予算はやはり国民の生活を守る厚生大臣として確保しなければならないという気構えで、予算編成に臨みたいと思います。
  127. 坂口力

    ○坂口委員 渡部厚生大臣は大変物わかりのいい優等生の大臣であって、大蔵省から言われる前にみずから削減をされたというお話が出ておりますけれども、来年度予算、特に年金だとか医療だとか、大変国民生活に密着をした分野を担当なさる大臣として、この分野だけは特別に優遇してほしい、年金や医療についてはもうこれ以上切らないようにひとつ配慮してほしい、そういうふうに率直にお申しになるおつもりはございますか。最後にお聞きして、終わりにしたいと思います。
  128. 渡部恒三

    渡部国務大臣 私のお預かりしている分野は、どれが第一というよりも、それぞれが極めて重要な問題で、例えば生活保護の問題にしましてもこれは一日とて欠かせない生活ぎりぎりの問題でございますし、また身体障害者の対策というようなものは、これは私どもは今より積極的にやっていかなければならないという考えで、五十九年度の予算編成でも大蔵省に大分無理を申し上げておるわけでありますから、したがってやはり、どういう厳しい財政状態の中でも、国民のぎりぎりの生活を守っていくためにとらなければならない予算大蔵省からいただかなければなりません。したがって、私どもの節減できる分はみずから率先して節減し、そしてまた必要なる予算は徹底的にいただく、したがって、今回の私どもの提案しておる健保法の改正案をぜひ成立させていただいて、私はその前提の中で、来年度必要なる社会福祉の予算は、どのような条件の中でもこれはいただくということで頑張ってまいりたいと思います。
  129. 坂口力

    ○坂口委員 ありがとうございました。
  130. 有馬元治

    有馬委員長 岡田正勝君。
  131. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 大蔵大臣がまだお越しになっておりませんので、それに関連する分を除いてまず質問を申し上げたいと思いますが、厚生大臣に冒頭にお尋ねをいたします。  被用者保険、政管健保、それから国民健康保険などの医療費の統一、いわゆる給付率の統一ということが今回大きなテーマになっておるわけであります。この給付率の統一ということも思想としてよくわかるのでありますが、その大前提としては、やはりお互いが負担すべきものは負担するという負担の公平ということはもう絶対に外しちゃいかぬ道だと思うのです。  そこで、実態はどうであるかといいますと、御承知のように国民健康保険にいたしますと均等割、固定資産割、所得割というようなものが複雑に絡み合って、それぞれの市町村ごとに保険料あるいは保険税という名前で徴収しておりますね。その実態がどうなっておるかというと、これは大臣御承知のとおり、もう人口構成とかあるいは人口数とかそういうものによりまして物すごいアンバランスがあるわけですね。それで、市町村によりましては、例えば一しか取っていない町村があるかと思えば、六倍も七倍も取っている町村もあるんですね。同じ国民の健康を守る保険料、保険税でありながら、たまたま自分が住むところが違ったために、住む町が違うために六倍も七倍も違ってくる。こういう制度というのは、こういう現実というのはまことにおかしい、負担の公正にはなっていないということを私は強く指摘をしておるのでありますが、大臣はこの解消に対して何かお考えがありますか。
  132. 渡部恒三

    渡部国務大臣 先生の御心配、私も全く同感でございまして、私どもも具体的なそれぞれの町村でいろいろ見ておりますと、それぞれの地域によってサラリーマンの多いところ、農家の人たちが多いところ、生活水準の高いところ、これは収入にいろいろございますから、現在も国費によってある程度財政調整をしておるわけでありますが、まだまだ格差がございますので、そういうものを縮めていく努力は必要だと思っております。
  133. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 田川自治大臣地方行政を預かる大臣といたしまして、国民健康保険はちょっとおれの管轄じゃないぞというものではないと思うのですね。そこで、自治大臣が預かっていらっしゃいます三千三百のいわゆる自治団体が、同じ住民の健康を守るために出しておる保険料や保険税が、その住む町によって、選挙の定数のように三倍以内じゃないんですよ。六倍、七倍という違いがあるんですね。こんなことをほっておいていいと思いますか、いかがでありますか。
  134. 田川誠一

    ○田川国務大臣 御指摘のような非常に差があるということはよく承知しておりまして、しかし前より比べると大分縮まってきたようでございます。これはもう岡田さんも御承知のように、先ほども指摘のございましたように、被保険者の所得とか、資産とか、そういう状態とか、あるいは市町村医療費の額の問題とか、そういうことが原因になって格差が生じているわけでございます。必ずしもこれがいいというわけではございませんけれども、このような問題はやはり医療制度全般、社会保障の問題、それから国の全般的な補助制度の問題とかいうことを勘案して、その中で解決をしていかなければならないのではないかと思っております。ある程度の差があることは、先ほど申しましたような理由で、これはやむを得ないことではないかと思っております。
  135. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 今お二人の大臣にお答えいただいたのでありますが、答えておる大臣そのものも、弱ったよなこれは、どうしたらいいかなと、本当に弱っていらっしゃると思うのですね。そして、私はこういうのが本当に不公正というのじゃないかと思うのですよ。たまたま住むところが違ったためにがくんと違うのですから。これはとんでもない話でありまして、これを全国的な視野に立って、国民に不公平がないようにバランスのとれたことをやっていかないと、私は住民が音を上げてしまうと思いますよ。だから、そこにどういうメスを入れていこうとしておるのか。いわゆる給付率の統一も結構でありますが、しかし、何といっても土台となるべき負担の公平というものがないと、この土台が根本から揺らいだのでは何にもならないと思います。それに対して、どうやれば全国的なそんな不公平、アンバランスがなくなるだろうかということについて、何かウルトラCを持っていらっしゃいますか。  もう六十年度予算編成が近づいておりますが、各市町村も事務がこれから始まっていきますよ。ほっておいたら六倍も七倍も違った負担率で、そのまま甘んじて出さなければならぬ国民というのはたくさんおるのですからね。だから、五%ぐらいの地域差の補助費というのでは、これは私は余りにも迂遠な策ではないかと思うのです。何かそういう案をお持ちであれば発表してもらいたいし、これから大至急やるんだと言うのなら、大至急やるという意思表示だけでも結構です。時間がありませんので、決意だけ。
  136. 吉村仁

    吉村政府委員 大した案ではないかもしれませんが、国庫補助による財政調整機能というものを、今先生指摘の五%から一〇%に今度上げることによって、今申されましたような極端な差を避けていきたい、それが一つでございます。  それから第二番目は、都道府県単位に高額医療費を共同負担する。先ほど自治大臣からも申されましたように、地域ごとに医療費の格差があることは否めないことなんでありますが、特に高額の医療費を使用する例えばがんだとかあるいは血友病だとか、そういう患者が一人出ると相当保険料に影響をしてくる、医療費にももちろん影響してまいりますが、そういう高額の医療費につきましては各市町村が共同でひとつ負担しようではないか、こういうようなことで対処してみてはどうかということを考えておるわけでございます。
  137. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 今、当局の方から一部の案の御発表がありましたが、私に言わせたら隔靴掻痒の感がする、まさに足のかゆいところを靴の外からかくようなものでありまして、ぴんとこないですね。だから、もうちょっとはっきりした、全国統一して公平な負担ができるような何か対策を打ち出していきませんと、給付率の統一ということを将来強く推し進めていこうと思っても、これは障害にぶつかると思いますよ。  いま一つ、時間がありませんので申し上げておきたいと思いますが、均等割、所得割、それから固定資産割というものに分かれておりますが、こういうものの中で最もガンとなるところが所得割ですね。今、大蔵大臣御出席になりましたが、御承知のとおり所得の把握ということについては、トーゴーサンという言葉が残っておるとおり、まさに不公平きわまる税制が残っておるのでありまして、例えば奨学資金をいただこうと思いましても、サラリーマンで本当にきゅうきゅう言いながら働いておるような人でも、所得があるという証明があるものですからもらえない。片方では、金の指輪をつけて外車を乗り回しておるような立派な方がおられても、所得がないからその人の子供は簡単にばっと奨学資金がもらえる。働いて油に汚れた作業衣を着ておるような人の子供は本当にきゅうきゅう言っておっても、お隣の金の指輪をつけて外車に乗っておる社長さんの子供は簡単に受けられる。汚れて油まみれになっている労働者の子供は奨学資金を受けることができないという、まことに見てはっきりわかる不公平ですね。それと同じものが国民健康保険の中にあるということを十分御認識をいただきまして、この負担の公正ということを本気になって解消しないと、各保険の給付の統一なんということは、夢のまた夢に近いのではないかということを私は警告申し上げておきたいと思います。  せっかく大蔵大臣がお越しになりましたのでお尋ねをしておきたいと思うのですが、これは三大臣とも関係のあることですから、お願いしたいと思います。  先月の二十二日の日経新聞に、こういうショッキングな報道が出ておるのですね。大蔵省は、六十年度予算編成に当たりまして、行革審の出しました方針、地方自治団体に対する補助金は国が出す補助金のうちの八割を占めておるわけで、それをぶった切る、簡単に言ったら一兆円吹っ飛ばす、これが六十年度予算編成に対する一つの目標でなくてはならないという方針を受けられまして、国と地方の負担のあり方を見直す方針を決めた、こう書いてあります。  そこで、具体的に言いますと三つありまして、三つのうち三番目はきょうのことには関係がありませんから省きます。一番と二番だけ申し上げますと、国が全額を負担しておる国民健康保険の助成費、五十九年度は一兆九千九百十九億円に達しておりますが、この制度に地方負担を導入する、こういうことを言っております。それから第二番目が、国が八割、地方が二割の負担で今実施しております生活保護費、これが五十九年度予算で一兆一千百九十一億円となっておりますが、この地方負担をふやす。それで合わせて、まあ公共事業もありますが、それを含めて国の補助金を一兆円カットする、こういう方針だということであります。まことにショッキングな報道でありますが、大蔵大臣、これはまことでございましょうか。
  138. 竹下登

    竹下国務大臣 参議院の決算委員会がおくれまして申しわけありませんでした。  今の日経新聞の報道でございますが、私どもはかねてから、財政改革を推進するに当たっては、国と地方を通じてその守備範囲を見直さなきゃいかぬ、これは個人企業でやるべきもの、これはまさに地方自治体に帰属すべきもの、これはまた国の段階で当然行うべきもの、まずそういう守備範囲の見直しを行うという建前からいたしまして、いわゆる既存の制度、施策の根本にまでさかのぼろう。そして一応概算要求枠というものを設定し、その中において、大蔵省というのは予算調整権は持っておりますが、現実に政策を立案されるのは原局皆さん方であります。したがって、それらに対する内なる改革がどのように出ていくかということを期待しながら、このたび御審議賜っておる法律もまさにその内なる改革一つではなかったか、私は客観的にそう見ておるわけでございまして、原局の努力がもとより中心であります。  そういう基本的な考え方自身はたびたび申し上げておるところでございますけれども、六十年度予算編成ということになりますと、そうした見直しは継続して努力していかなければならぬ。しかし、具体的にどのような改革を行っていくかということになりますと、まず概算要求、これは八月末に法律、政令に基づいて一応出さなければならぬ。その前に、いわゆる概算要求枠という議論をこれからやっていかなければならぬ。そういうことでございますので、いわば予算編成の過程で幅広い検討を得ながら進めていくべきことでございますので、現段階で、私どもがあらかじめ予見を持って対応していくというような非礼な態度はとってはならないと私は思っております。
  139. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 大蔵大臣は大変慎重な身構えでございまして、よくわかりました。しかし、これはもう現実に出てくると思います。  そこで、こういう問題が、国民健康保険にしましてもあるいは生活保護費にしましても、地方負担をふやすぞという方向に行きそうだということを受けて、これは国民健康保険については厚生大臣の方から、それから今の生活保護ですね、それから健康保険ももちろん一緒に地方の負担になるわけですから、それを受けて、担当の大臣として、この問題に対してどう取り組もうとしているか。今これを見ますと、もう質疑時間が終了したのだそうです。だから、お答えを聞きまして、それで質問を終わるような形になりますから、簡単で結構です、決意のほどを。  これは大問題が出てまいります。来月になって、今知ったというようなことじゃないと思うのです。今ごろは知っておるのだろうと思いますから、どうぞ決意を発表してください。
  140. 渡部恒三

    渡部国務大臣 今、大蔵大臣からもお話しがありましたが、私もそのようなことをまだ聞いておりませんし、また私が今健保で血みどろになって頑張っている姿を見れば、大蔵省、よもやそのようなことは言わないだろう、こう思っております。
  141. 田川誠一

    ○田川国務大臣 新聞では承知しておりますけれども、具体的には何も承知しておりません。  私どもとしては、これからの国、地方を通ずる行政改革を推進していく上には、国と地方の役割分担というものを見直していかなければならないことは当然だと思いますし、また、補助金制度も整理縮減をしていかなければならぬと思っております。  ただ、国の補助対象となっている事務事業を廃止、縮減するということを基本としてやってもらわなければ困るわけでありまして、ただ一律に国庫補助の負担率を下げて、そして地方への負担転嫁、こういうものをやられてはちょっと困るわけでございまして、いずれにしても、国と地方との間の適正な財政秩序を維持する必要がある、このように考えております。
  142. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 最後に、お願いだけ申し上げておきます。  今、大蔵大臣も、別にそういうことを今決めたわけでも何でもない、これから枠を決めていこうという段階で、政策そのものをお決めになるのは各省がお決めになることである、大蔵省は差し出がましいことは一切言いません、非常に謙虚な御態度でございます。血みどろになって戦っておるこの姿を見て、よもやさようなことはと、こういう厚生大臣のお言葉、しかと承りました。どうぞ唯々諾々と、行革につられてということでなしに、また血みどろどころじゃない、今度は骨を出さなければいかぬような戦いになりませんように、十分お気をつけいただきたいと思います。  また、自治大臣におかれましては、こういうことについては、事務費とかそういうものについてのいわゆる見直しということはわかりますけれども、とにかく一律削減、ぶった切りというようなことで、地方の負担をやたらに一方的にふやしていくというやり方は承知まかりならぬという態度でありまして、まことに我々も頼もしいなという感慨を深くいたしました。  いずれにしましても、この健康保険の問題、先ほど冒頭に申し上げましたように、何といってもこの保険制度を支えておるのは国民負担であります。その負担という土台が揺らいだら、ここで幾ら議論したって何にもなりません。その負担の公平こそ、私は第一に着手すべき重要問題であるということを指摘をいたしまして、質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  143. 有馬元治

    有馬委員長 安倍基雄君。
  144. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 同僚議員が既にいろいろ御質問してございますが、厚生大臣、突然の質問で申しわけないのですけれども、医師会との関係はさることながら、なぜこの法案について野党こぞっていろいろな反対を出してきているか、なぜか、どういう御感想でいらっしゃいますか。
  145. 渡部恒三

    渡部国務大臣 野党と与党というのは、特色は、与党というのは責任を持たなければなりませんから、ある場合には、国民皆さん方に嫌がることもやらなければなりません、あるいは増税をしなければなりません、あるいは御負担をお願いしなければなりません。野党という立場ですと、これはそれに反対できるのでありまして、今回の提出している我々の案は、とにかく三千万人のこれは皆さん方に十割給付のものを一割御負担を願うことでありますから、野党の方は反対されるのだろうと思います。
  146. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 実は、私が急にこんな質問を出した理由は、私は三つ原因があると思うのです。  まず第一に財政が悪い。一体これから何が犠牲にされるのだろうか、国民がかたずをのんで見ておった、そこに健康保険の問題が出てきた、国民の健康に関する問題が出てきたということが第一点でございます。果たして本当に政府が骨身を削る行革をした後に、これが出てきたのだろうかという問題がまず一点でございます。  第二点は、この問題、比較的安易に出発しているのじゃないかということを申しますと、大臣、首をかしげられましたけれども、いずれにいたしましても、去年の予算要求の段階で、いわゆるマイナスシーリング、九千億円のいわば当然増と考えておるところを、年金の分についてはある程度別枠、そうすると、それをどうやって消そうかという発想が先に立って、制度の根本的ないわばビジョンと申しますか、どういう制度にすべきかということについての検討が果たしてなされているのだろうか、安易に出発したのではないだろうか。  三番目に、同じことになりますけれども、最終的にはどういうところに持っていくかという長期的なビジョンがあるのかないのかという、この三点におきまして、私は、野党が、医師会の問題とは別に、国民の大きな反撃もある、その辺じゃないかと思うのでございます。  第一点でございますけれども、これはむしろ大蔵大臣にお聞きした方がいいと思いますけれども、一体行革が徹底的に行われていると思っているのだろうか、その後にこの法案が出てきているのだろうか、どうだろう、この点について、大蔵大臣の御意見を承りたいと思います。
  147. 竹下登

    竹下国務大臣 行政改革というのは、佐藤一郎さんが会長のときの第一次臨調、それの答申があります。それから、今が第二臨調の答申、それに基づいて政府・与党一体となって行政改革大綱というものをつくりまして、それに基づいて、今後は、そのフォローアップはいわゆる今の財革審ですかで行われるわけでございますが、そういう流れの中で見ますと、行政改革というのは着実に進みつつある、その大きなワン・オブ・ゼムが今度の法律改正で、だからこそ、厚生大臣が一生懸命お願いしておるところではなかろうかというふうに、私は客観的に見ております。
  148. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 そういうお答えがあるものと予想しておったわけでございますけれども。  次に、厚生大臣にお聞きしますけれども、今回の改正案は、さっきちょっと触れましたように、その九千億の当然増と思われているもの、それがいわば、年金は外枠になり、そして健保の改定で四千二百億、医療費の適正化で二千億ということで、どうにかつじつまが合うという形になっておりますが、それがやはり大きな出発点になっておると理解してよろしゅうございますか。
  149. 渡部恒三

    渡部国務大臣 これは先生御案内のように、健康保険、特に被用者保険の十割給付というものにやはり一部負担していただかなければならないという議論は、昭和四十年代から幾たびか行われておる議論でございまして、今後二十一世紀に向かってこの医療保険制度というものを揺るぎないものにしていただくためには、やはり患者に一部御負担をいただく、そのことによって、逆に今度は、医療保険保険料率は二十一世紀にまで上げないで、これ以上国民の公租公課の負担を余計にしないで、二十一世紀も生き生きとした社会、活力のある社会でなければならないとか、また今は国保が七割、被用者保険が十割、そういう給付率のアンバランスというものを直していかなければならないといったような問題も、これは今日まで長く議論されておって、厚生省はたびたび抜本改正をやれと言われながらなかなかやれないできたのをこの際に踏み切ったということでありまして、財政上厳しい条件もありますけれども、それ以上、将来にわたっての我々の医療保健制度のあるべき方向の理念を持った改革案の一つであるというふうに御理解をいただきたいと思います。
  150. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 以前から検討してきた案であるというお話でございますけれども、私どもちょっと、以前から検討しておったにしては必ずしも長い目で見たおさまり、最終的にどうなるかということまで十分検討されておったのかどうか、いささか疑問に思うのでございます。  それはさておきまして、それでは、六十年度の予算編成がまた始まるわけでございますけれどもマイナスシーリングで行かれるのかどうか、そして、去年は幾つかのいわば特別扱いの項目がございました、今回もそういった考えで進まれるのかどうか、大蔵大臣の御見解を承りたいと思います。特に私は、いわゆる社会保障費というものを将来どう扱っていくのかということを含めてお答え願いたいと思います。
  151. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる六十年度予算シーリングの基本方針とでも申しましょうか、そういうことの御意見を踏まえての御質問でございます。  いずれにしても、財政改革を推進してその対応力の回復を図っていかなければ、将来の安定と発展のために、これはどうしても国民的課題として取り組まなければいかぬという考え方に立つわけでございます。お示ししておる目標は、六十五年度までに特例公債依存体質からの脱却、そして、その後とにかく公債依存度を下げていくということをお示ししておるわけであります。したがって、六十年度予算編成に当たりましても、こういう見地からやはり、今、制度、施策の根本にさかのぼって、内なる改革として生じた法律案の御審議をいただいておるわけでありますが、そうした言ってみればぎりぎりの努力というものは、これからも続けていかなければならぬというふうに思います。  具体的にどうするか、こういうことになりますと、各方面の意見を伺いながらいずれ勉強していかなければならぬ課題でございますが、聖域を設けることなく、この厳しい概算要求を設定していかなければならぬのではないかというふうに考えます。  そこで、私ども概算要求枠設定に当たりまして、例えば昨年の場合、人件費、年金、ODA、国際取り決め等々を、いわば増分を初めから是認し、そして医療費、それから生活保護でございましたか、これをゼロシーリングとし、四兆数千億に上るいわば投資的経費でないものを一〇%シーリングとし、そして中身で人件費を抜きますと七兆数千億、これをいわゆる投資部門ということで五%シーリング、こういうようなことで設定させていただいたわけであります。したがって、そういう設定をさせていただいたということも、一つの経験に徴し十分念頭に置きながら、これからといいましてもそう長い間じゃございませんが、十分勉強して設定していかなければならぬだろう。しかし、いずれにしても厳しいものにならざるを得ないという考え方の上に今日立っておるところであります。
  152. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 その内なる改革に期待するということはいい考えかと思いますけれども、しかし、社会保障費全体をどう見ていくのか。これはある程度当然増的なものとして見ていくのか、あるいはちょうど前回医療費について切り込んだと同じような形で、さっき坂口委員からもそういうお話しがございましたけれども、そういったような形で切り込んでいくのか、それにつきましてもう一度御答弁願いたいと思います。
  153. 竹下登

    竹下国務大臣 やはり私は、いわゆるシーリングの際におきましては、どういう形になるかは別といたしまして、概念的な聖域というものの考え方は、私どもいわゆる予算調整権の立場から考えますと、それはとり得ないではなかろうかというふうに考えております。  ただ、それぞれの政策順位という問題は、これは概算要求の場合は、むしろ国全体の政策順位ということではなくして、いわば各局それぞれに対する概算要求枠を設定するということでございますので、優先順位の問題については、それぞれの専門家の方の原局においての選択、こういうことに相なろうかと思うわけであります。
  154. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 今、聖域を設けられないというお話してございましたけれども、ちょっと細かい話になるのでございますけれども、去年はいわゆる対外援助というものを別枠で考えた。これは、対外援助はこれだけ経済大国になっていれば当然じゃないかという御意見もあるようでございますけれども、私、かつて大蔵省におりましたときに、各国の対外援助を見ると、例えばフランスあたりは旧植民地に対する投資をも含んでおる。日本の場合どういうものか割合と気がいいので、大国になったからやるべきだとしきりとおだてられると、どうしてもやらなきゃいかぬというような気になるのでございますけれども、しかし考えてみますると、サラ金に追われながらお中元あるいはお歳暮だけは弾んでいる、それも日ごろお世話になっている国ならさることながら、何となくそういう国ではないところへまで要するにばらまいている。外にそんなによくするならばもうちょっと中を考えてくれたらいいじゃないかという気もあるのでございますが、この点につきまして、外務省及び大蔵大臣の御意見を承りたいと思います。
  155. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる一般会計のODA関連予算でございますが、これは一つは、この年度間に新中期目標を立ててその拡充に努める、それは特に過去五年間の倍にする、こういうことで国際的にオーソライズされておるという認識の上に一応立っております。  それと同時に、開発援助ということを考えるに当たりまして、私はいつでも、共産党を除く各党の方が必ず増資法案とかそういうものには賛成していただいている、これはなぜかなと思いますと、やはり日本が近代国家として一番目に見えるものと言えば、新幹線でありあるいは東名高速道路でありあるいは各種水力発電のダムである。そういうものもかつては全部世界開発銀行の金が入っております。すなわち、我々はかつて債務者であったということからすれば、我々がたどってきたこの先進国への道というものも、やはり開発途上国も当然そうあられるべきだという考え方がそこにあるからこそ、この苦しい財政の中でもいつでも増資等についても御協賛を賜っておるんじゃないか、私は、こういう一人合点の認識を一つはいたしております。  それから第二の問題は、いわゆるかつての植民地というようなお話してございますが、確かに私どもは宗主国ではございません。あるいはヨーロッパの先進国は特にかつての植民地がございます。しかしながら、この間のサミットでいろいろ議論されてみましても、結局、例えば日本は、あるいは現状というものが続く限りにおいては九九・八%も油を買わなければならぬ。そうなれば、それに見合うところの工業製品等の輸出も必要であろう。ところが、今世界四十六億の人口の中で日本と同程度の購買力を持つ国民、すなわち一人当たり所得を持つ国民が五億七千八百万ぐらいでございます。ちょうど日本の半分のところでいっても八億人しかいない。そうすると、やはり五百ドル以下の二十三億、これは直ちに購買力がつくというのは非常に問題でございましょうけれども、ある意味において日本が資本提供国としての立場をとっていかなければならぬということは、やがて我が国の将来のためにもこれは無意味なことではないという前提の上に立ってODA等は考えられたのではなかろうか。ことし、まだどうすると決めたわけじゃございませんが、昨年度の予算で、私がちょうど去年も大蔵大臣でございますから、考えられたではなく、考えたということでございます。
  156. 木幡昭七

    ○木幡説明員 事実関係を中心に簡単に御報告申し上げます。  フランスが確かに対外援助におきまして海外、圏、海外領土に対する援助を含んでいるということは御指摘のとおりでございます。しかし、フランスの場合にはそういう海外圏等に対する援助を除いても、対GNP比〇・四九というぐらいに大変質の高い援助状況になっているわけでございます。しかも、一九八八年までにはこの海外圏、海外領土を除いて対GNP比を〇・七%にするというふうなことを公約しているわけでございます。したがいまして、日本としましても中期目標のもとで引き続きODAの拡充充実に努めていく必要がある、このように考えている次第でございます。
  157. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 ちょっとODAの話が長くなり過ぎてしまいましたけれども、厚生省、厚生大臣にお聞きします。  今度、相当額の当然増と思われる経費があり得ると思います。これで聖域を設けないという話になりますと、厚生省はこの後何をどうお考えになっておりますか。削っていぐかということです。
  158. 渡部恒三

    渡部国務大臣 今、私の勉強しておる範囲では、削ってもよいというようなものはございません。
  159. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 いずれにいたしましても、私がおそれますのは、やはり社会保障費というものの全体における位置づけというものがはっきりしないままに、何となく内なる改革に期待するという形で推移していくということでございます。この点についてはかの委員からもいろいろ御指摘ございましたから、私はこの辺でとめたいと思います。  三番目の問題といたしまして、果たして今回の案に長期的なビジョンがあるのかどうかということでございます。これは、さっきの大臣のお話だと、いろいろと前から検討しておったということでございますけれども、今までの委員からの質問にもいろいろありますように、一体八割がいいのかどうか、あるいはどういったプログラムでやっていくのか。もちろんこれはいわば与野党の話し合いの上でできた案が入っておりますから、厚生省にとっては新しい問題もあるかと思います。しかし、本来このいわゆる一割負担、そして将来二割負担という案を出すときに、既にほかのいわば国保とかそういったもののバランスというものが当然問題になるだろうということは十分予見されていたわけでございます。その意味合いにおきまして、今繰り返すようでございますけれども、このいわゆる二割負担とかあるいは給付あるいは負担の一元化とか、あるいはこれからの国庫負担率をどう持っていくのかということについてのいわばプログラムについて、厚生大臣にお聞きしたいと思うのでございます。
  160. 渡部恒三

    渡部国務大臣 現在の経済状態の中での我が国の財政状態ということを考えますと、当分医療費に対してこれ以上国庫の負担を余計お願いするということは大変厳しい状態だろうと思います。さらば保険料率を上げることができるかといえば、これも第二臨調等でもいろいろ話が出ておりますように、やはり国民皆さん方が汗を流して働くことに生きがいを感ずる世の中というものは、働いた金の五〇%以上取るようなことになったのでは、これは経済社会が停滞してしまいますから、したがって、当分保険料率も二十一世紀にわたるまで上げないで済むように、そういうことで今回一割の御負担、将来二割の御負担をお願いして保険財政というものを健全に将来にまで維持してまいりたいということでございます。
  161. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 実はさっき、堀委員は、むしろ負担率は変化があってもいいのだというような議論もある、反面においてやはりこれは全部統一すべきであるという議論もある。これはいろいろ質問の中にもありましたけれども、将来一元化するのか否か、そして一元化するのがいいのかどうか、大臣、その点についての確たるいわばお考えはございますか。
  162. 渡部恒三

    渡部国務大臣 これは当然のことでございますが、農業をしておる方もサラリーマンの方もお役人の方も中小企業の方も、国民すべてが同じような条件で給付を受けるようになることが望ましいと考えております。
  163. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 それでは、将来一元化の方向に向かって進むものと解釈してよろしゅうございますね。  いずれにいたしましても、もうそろそろ時間も参りましたからあれでございますけれども、繰り返すようでございますけれども、今回の改正が、どうも何となく進んできている、本当に将来どうするのかということがどうもはっきりしないままにきておる。でございますから、突っ込まれますといろいろ意見も出てくる。そういう形で、この健保の改正が行われるのでは困るということが我々の第一の考えでございます。そしてまた、行革が十分なのかどうか、本当に身を切ってからこういった問題に触れてもらいたいな、もっともっと行革を推進すべきではないのか。そして最後に、いわゆる社会保障費というものの位置づけがどうもちょっとあいまいな形のままに、切り込まれるそのたびごとに、いや、これは健康保険をこうしよう、あるいは年金をこうしようというような動きになっているような気がするのでございます。この点について、今後のいわば厚生省、そして大蔵省の考えをお聞きいたしまして、時間でございますから、私の質問を終わりたいと思います。
  164. 渡部恒三

    渡部国務大臣 これは先生にたびたび御心配いただいておりますが、私は本当は四、五年前にこういう改革案を出しておれば、これは財政だけに合わせてやったなどというそしりを受けないで済んだと思うのですけれども、ずるずる今日まで来て、財政状態もないと言えばうそになる、そういう厳しい条件の中でこれを出したので、いろいろ御心配を受けております。これは財政状態も理由はありますけれども、私が再三申し上げておるように、これは二十一世紀の医療保健制度のあるべき理想に立っての大きなビジョンの中の一環として我々は行っているものでございますから、御安心をいただきたいと思います。  また、社会保障というもの、これは戦後の我が国が、新しい憲法によって高らかにうたいとげた我が国が近代国家として進むべき理想でありますから、厳しい財政条件、厳しい経済条件、そういう中でもやるべきことは断じてやらなければならないということでございます。
  165. 竹下登

    竹下国務大臣 行革に関する意見は先ほど申し述べさせていただきましたが、これからも不断の努力を続けていかなければならぬ、並行して行わなければならない、まさに行財政改革であろうというふうに考えます。  社会保障関係につきましては、専門家である厚生大臣がお答えなすったとおりに私も理解すべきものである、このように考えております。
  166. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 時間もあれでございますから、これで質問を終わります。
  167. 有馬元治

    有馬委員長 蓑輪幸代君。
  168. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 大変遅くまで質問させていただくのでまことに恐縮でございますが、よろしくお願いしたいと思います。  最初に、経団連は去る六月十二日、「今後の財政構造改革と六十年度予算編成のあり方について」という意見書を総理大臣に提出しております。その中で医療費についてどういうことが言われているかと申しますと、「今後とも、医療保険に対する国庫負担を軽減し、国庫負担は、老人・生活困窮者等真に助成を必要とする者に限定していくため、国民健保、政管健保に対する補助率のより一層の引き下げを図るべきである。特に、一層の合理化を求められている国民健保については、例えば課税所得の高い農林業者、自営業者の補助率を政管健保並みにする一方、医師、芸能人等の国保組合の補助率を組合健保並みに原則ゼロとするといった措置が講じられるべきである。」、こういうふうに意見書で述べているわけですね。  一方、日経新聞で言われておりますように、大蔵省が六十年代の半ばには医療保険の国庫負担を全廃するという方向を指し示しているという報道がされております。  こういう一連の動きを見ておりますと、医療保険の国庫負担というのは今後一体どういうことになるのか、そら恐ろしいような気がするわけですけれども、将来的に医療保険における国庫負担のあり方という問題について、まず大蔵大臣、そして厚生大臣、順次お答えをいただきたいと思います。
  169. 渡部恒三

    渡部国務大臣 原則論としては、社会保険制度というものは、でき得れば加入者の保険料によって賄われることが理想であると思います。したがって、国庫が補助を出さないで済み、健全に運営されるようであれば、これは最も望ましい姿でございますが、しかし現実には、戦後の我が国の医療保険制度の中で、一時は健康保険でもそういう状態でなかった政府管掌保険の問題、また今日でも国保というものは、現在の社会構造の変化とか、あるいは人口構造の変化とかいう中でとてもそのような状態でない。したがって、やはり国民の健康を守るために、この皆保険制度を推進する政府の立場としては、必要なるものはやはり入れなければならない。しかし、入れないで済むような制度になれば、これは最も望ましいことでございます。
  170. 竹下登

    竹下国務大臣 今、担当であります厚生大臣から、いわゆる保険制度というものは、元来ならば相互扶助の保険制度で成り立ち得るようになるとすれば、それが最高であろう、しかし、社会保障制度としてこれを位置づけた場合また別の考え方もあり得るだろうという基本的なお考え方は、私もそのように厚生大臣から教わっております。
  171. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 今、私は理想論をあれこれ言っているのではなくて、現実の我が国の実態から見て、財政当局あるいは厚生当局が今後の問題をどのように考えるのかということをお尋ねしているわけですから、基本的に大蔵大臣としても、厚生大臣と同じだというんじゃなくて、財政的にまず枠で縛ってしまっていやも応もなく国庫負担というのをどんどん削減していくという中では、厚生行政のあり方も変わってくるわけですね。  特に、私、問題だと思いますのは、国民健康保険の国庫補助の削減というのがどんどんと行われてきているわけです。これ以上国庫負担の削減がされるということになると、一体どういうことになるのかというふうに思いますが、もし今後削減していくということになると、一体どんな方法で削減されるのか、お考えがあればお聞かせいただきたいと思います。それと、今後の国保における国庫負担の削減はもうしないというふうにお考えなのか。
  172. 渡部恒三

    渡部国務大臣 五十九年度予算でお願いしておりますのは、単純に削減するということでなくて、今まで国保財政を非常に苦しめる大きな一因であった退職者、これを新しく退職者医療を創設することによってその負担が軽くなるわけですから、そういう意味財政的な操作が行われたということであって、何度も私は申し上げておるように、今の国保財政が非常に厳しい状態にあるというのは、単にそれが経営がどうこうというよりも、社会全体の中の大きな時代の変化の中で非常に苦労をしておるのでありますから、やはり国保財政を維持するために必要な予算は、厚生大臣として来年度要求していかなければならないと思いますが、ただ、将来経済がよくなったり、社会がまたいろいろな変化が行われて国保財政にも国の予算を投入しないで済むようなことになれば、それはめでたし、めでたしであって、しかし、なかなかそういう状態にはならないと私は思うので、必要のある場合は、やはりできるだけ予算を確保して大蔵省にお願いしてとっていかなければならないので、ただやみくもに理由なく減らしていくというような考えはございません。
  173. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 そうはおっしゃいますけれども、今回の制度改正、全般的に大変問題が多いわけですが、今おっしゃったような退職者医療制度のもとで考えてみますならば、やはりマイナスシーリングという枠組みの中で、大蔵大臣が大変お得意の内なる改革という形で迫っていったわけですけれども、その結果、何としても国庫負担を減らさなければならないというところに追い込まれているわけですね。そして六千二百億円ですか国庫補助の削減をせざるを得ない、ついてはそれをどこからひねり出してくるかという発想になっているというふうに私は事実上思うのです。  現に六千二百億円の国庫補助の削減で、国民健康保険分について見てみますと、これが五千六百六十二億円になるというふうに数字をいただいております。そしてさらにその中で、内訳は、国民健康保険の制度改正によって四五%から三八・五%の国庫補助率ということになったことによって、一千七百四十五億円の国庫補助の削減ができる、そして退職者医療制度を導入することによって二千三百五十五億円の国庫補助の削減ができるということになっているわけですね。  これで明らかなように、まさに国庫負担を減らすというのが最初にあって、そしてそれはどこから減らすかというと、国民健康保険会計の国庫負担を減らさなければならないということになります。そして、国民健康保険会計の国庫負担を減らすためにどうするかと考えたときに、退職者医療制度というのを創設したというふうに見られても仕方がないような実際の中身ではありませんか。  私はこういうことから見ましても、そういう誤解をもし解くのならば、本当にそれが誤解だというならば、この退職者医療制度に伴う国庫補助というものを削減するのではなくて、それをそのまま退職者医療制度の中に国庫補助として入れていくという措置をとるべきだというふうに思いますが、その点はいかがでしょうか。
  174. 渡部恒三

    渡部国務大臣 何度も私、申し上げておるように、社会保険制度というものは加入者の保険料によって賄われれば最も望ましい姿であって、しかし、それが賄えないような状態になったとき、社会保障全体を守っていかなければならない国の責任で、ある場合に国庫から支出するという方法をとっておるわけでありますが、今回創設された退職者医療はこれは被用者保険でございます。現在の被用者保険は、幸いに、国から財政支出をしなければならない状態というようなことではないということでございます。
  175. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 おっしゃることが私の申し上げたこととかみ合ってないと思いますが、要するに、国民健康保険の国庫負担の問題が一体どうなっているのかというのは、では退職者医療制度で考えてみますと、例えば政管健保からも拠出金をもらう仕組みになっておりますが、政管健保では一六・四という国庫負担が行われております。今回、退職者医療制度で政管健保からも拠出金が出されるというわけですけれども、その中に当然この一六・四という国庫負担が入っているはずだと思うのですが、それは一体どうなっているのか、お聞かせください。
  176. 吉村仁

    吉村政府委員 政管健保の一六・四%の国庫補助金は入っておりません。
  177. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 厚生省が概算要求段階で退職者医療制度の説明資料というのをおつくりになって、その内容によれば、退職者医療制度の拠出金の中に政管健保の中の国庫負担というのは入っているんだという御説明で数字もちゃんと挙げられているわけです。二百三十七億円というのを計上しているわけです。それが法案提出の段階で入ってないというふうになったのでは、そこで考え方の変更が行われたということだと思うのですけれども、一体どういう理由で変わったのでしょうか。なぜ削ったのでしょうか。
  178. 吉村仁

    吉村政府委員 先生指摘のように概算要求のときには要求をしたわけでありますが、その後いろいろと検討をし、退職者医療制度に対する拠出金、それに対する国庫補助を入れる必要があるかどうか、それだけの財政的な能力があるかどうかということをいろいろ考えまして、先ほど大臣が申し上げましたように拠出金を出す健保組合、それから政府管掌、これは一体として出すわけでございますので、全体として財政負担能力あり、こういうような判断から国庫補助金を落としたわけであります。
  179. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 そんなことは急に起こってきたことではないわけです。もう概算要求の段階から既に各組合の力関係というのはわかっているわけですから、当然そんなことも考慮に入れながら概算要求の段階で国の負担分というのが盛り込まれていたはずだと思うのです。だから、概算要求からいざ今度の予算案、そして法案ということになってきたらとにもかくにももっともっと削らなければならない、ついては既に上げた分も削ってしまったということになったのではないかというふうに思わざるを得ません。私はこういうようなやり方は絶対に認められないというふうに思います。こういう計算の方法をするということになれば、国庫補助というのをせっせこせっせこと削って、その分を後は被保険者保険料として押しつけていくという仕組みになっていくわけです。これは必ずなっていくはずなんですね。こういう物の考え方ということになると、この保険のあり方として、国と資本家とそれから被保険者とのあり方、そういう問題が根本的に問われるというふうに思います。  今回の制度改正全体で考えてみた場合に、例えば国は負担がふえるということはあるのでしょうか、ないのでしょうか。そして、国が負担が減った数字はどれだけでしょうか。もう一度お聞かせください。
  180. 吉村仁

    吉村政府委員 今回の医療保険制度の改革では国庫負担の削減をしておるわけでございまして、国庫負担がふえたというような部門はございません。
  181. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 減ったのは全体で幾らですか。
  182. 吉村仁

    吉村政府委員 総体といたしまして六千二百七十六億円でございます。
  183. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 今回の制度改正で、資本家側と申しますか使用者側の負担というのがふえたところはありますでしょうか。
  184. 吉村仁

    吉村政府委員 今回給付を引き下げることに伴いまして、それによって出てくる余裕財源でもって退職者医療を実施しようというわけでございますので、使用者側の負担の増は純増としては出てまいりません。
  185. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 お聞きのように、国は全部で六千二百七十六億円削減し、使用者側は一切負担がふえるということはない。そして今回の制度改正によって専らしわ寄せを受けるのは本人であって、あるいは……(「労働者」と呼ぶ者あり)そうです、まさに労働者側でありまして、こういうことを考えてみますと、今回の制度改正がいかに著しく不当な内容であるかということが明らかだと思うのです。それを全部こういう形で国民に押しつけていくというやり方は絶対に許せない。これは公的医療制度のあり方、それが問われるだろうというふうに私は思うわけです。このことを強く厳しく指摘をして、さらに次の問題に移りたいと思います。  今回、こういう事態を迎えまして、臨調路線と申しますかその中でどんどんと自立自助、そして民間活力の導入などと言っておりますけれども、そこの中で先日、生命保険協会の理事会が四月二十日に行われまして、理事会終了後の午さん会において、大蔵省保険部の幹部発言というのが明らかになっております。ここで「健保改正による自己負担分填補商品について」ということで、「ある理事からの健保改正によって生じる医療費自己負担分を実損填補する商品を認めて欲しい旨の要望に対して、大蔵省としては、前向きに検討したいが厚生省との摩擦を避けるため、時期を見て検討すべきと思料。厚生省に「健保で賄えない医療費分を民間で補完して欲しい」と言わせてから動き出すのが最適」、「なお、損保も同様商品を検討中」ということで述べられているわけです。こういうふうに限りなく国の責任を削っておいて、その分を民間商品で賄うというやり方、こういうやり方はまことに問題だと私は思います。  一体医療のあり方として、こういう方法について大蔵省並びに厚生省は、公的医療と民間保険のあり方をどのようにお考えか、お聞かせいただきたいと思います。
  186. 大橋宗夫

    大橋政府委員 お答えいたします。  高齢化社会が進展しております今日、民間の生命保険会社が、将来の安定した生活を支えるための国民の多様なニーズにこたえていくために、種々の検討を行っていくことは当然のことと思われます。  御指摘のような要望につきましては、現在のところ具体的には参っておりません。  ただ、いわゆる医療保険といたしましては現在疾病保険、がん保険等を認可しているところでございますが、今後とも、国民のニーズや自助努力にこたえることを目的とした民間保険につきましては、民間保険としての健全性等に配慮しつつこれを検討してまいるということにいたしたいと存じております。
  187. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 厚生大臣大蔵大臣の御見解……
  188. 吉村仁

    吉村政府委員 私ども、医療保険に関しましては、必要にして適正な医療給付というものは全部保険に取り入れていく方針を持っておりますので、私どもが関与しております公的な医療保険の分野で、医療の中身を縮減していくというような気持ちは全く持っておりません。
  189. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 大臣が基本的にどのようなお考えか、お聞かせいただきたいと思いましたが、お立ちになりません。私は政治家としての答弁を求めているわけですから、そのときにはちゃんと、あり方の問題についてどのような理念をお持ちか、お聞かせいただきたいと思います。時間が少ないのですが、一言あればお聞かせください。
  190. 竹下登

    竹下国務大臣 皆さん、これは国が負担、国が負担とおっしゃいますが、国の負担というのもまた国民皆さん方からちょうだいした税金でございますから、基本的にはその認識をお持ちいただけないものかなと私も心で念じておるわけであります。したがって、今度は、今の生保等の参入の問題でございますが、絶えず勉強していかなければならぬ問題でありますし、私は民間活力等々を考慮いたしましたときに、今がん保険とかそういうものを既に認可しておりますものの、今後も検討すべき課題の一つではなかろうかという事実認識をいたしております。
  191. 渡部恒三

    渡部国務大臣 先ほど厚生省の政府委員答弁したとおりでございます。
  192. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 このような国民の今、健康という、最も政府が責任を持たなければならない分野、そしてすべてに責任を持たなければならない分野であるにもかかわらず、ここに民間が商品を開発しようと思うのは、まさに国の姿勢をしっかり見て、ここから国が撤退しようとしていることを見抜いて商売を始めようとしているわけです。そういう意味では、厚生省が本当に憲法に保障された生存権を守るために、きちんとそういう心配のないように、どんな場合でも国にお任せくださいと言える姿勢をやはり持つべきではないかというふうに私は強く指摘をしておきたいと思います。  それから、御存じのように国民健康保険では、生活が困難な中で収納率が低下しているということでいろいろな問題点が起こっております。たくさんお尋ねしたいと思いますが、まず最初に、滞納が広がっている中で、特に今回収納率を向上させるための厚生省のいろいろな方針も出されております。それが適切に運営されなければ現場での大変な悲劇が生まれているということを、私は強く指摘したいと思うのです。  例えば、まず最初に、トラック持ち込みで酒屋の仕事をしていたが、二十五日働いても収入は二十万くらい、半分がガソリン代など経費にかかり暮らせず、露店商などをしたが月十万程度、サラ金から借りたりして食べるのがやっとの暮らしで滞納になりました。三人目の子供が生まれたときには、出産手当金を滞納分に充当すると一方的に取り上げられました。まさに出産手当金を滞納分と相殺するというような措置がとられたケースがございます。  さらにまた、自治体が、滞納がふえている中で、生活保護を受けている老人に、保護を受ける前の滞納分を保護費から払うことを強要するというケースもあったという報告も受けております。  さらにまた、毎年の保険証切りかえを、従来の郵送などの方法をやめて役所に取りに来させるようにしている自治体がふえております。その中で最もひどいケースとして問題になっておって、もう既に厚生省も御存じと思いますが、小樽市などでは大変な事態も起こって、保険証がない中で死亡をしてしまったというケースも生まれております。  この中で、収納率を高めるということと、こういうふうにして現実に生活困難な中でやむなく保険料が払えないというケースを、正しく解決していくということが必要だと思います。例えば出産手当金を滞納分に相殺するなど、あるいは生活保護費を滞納分に充てるなど、また保険証を何というんですか人質にとって滞納をなくさせるなど、こういうようなやり方というのは一体厚生省が奨励しておられるんでしょうか。そのことをちょっとお尋ねしたいと思います。
  193. 渡部恒三

    渡部国務大臣 これは先生、差し上げることは簡単なんですけれども、取ることはつらいことなんです。しかし、取らなければ差し上げられないのでありますから、お金は空からは降ってきませんから、そうするとやはり一つの定めができて、そしていただくというものはいただく、これをいただかない場合、これはまた逆に今度は不公平になって、まじめに納めている方から今度は逆な問題も出てくるので、やはり出先の者が、制度で定まった保険料なら保険料をちょうだいするように、出先で努力している労は多としなければならないと思うのであります。  しかし、その中にまた大岡裁きということもありまして、やはり私ども国民のぎりぎりの生活は守っていかなければならない。ナショナルミニマムというのをどこまでに見るか、これは難しい問題がありますけれども、年金でいえばやはり老後の生活は保障する、しかし老後の生活を保障するからといって、ではゴルフに行くところまで年金で見られるかというと、これは個人年金ということになるかもしれませんが、ぎりぎりの国民生活を守るということではこれは弾力的に適用しなければならない面もあるので、その点はよく指導してまいりたいと思います。
  194. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 今のケースについてどうお思いですか、私が申し上げたケースについて。
  195. 渡部恒三

    渡部国務大臣 ですから、個々の問題で、これはお気の毒だなとか、ここまではやらなければならないとか、いろいろの問題は出てくると思いますが、基本的には規則で定まったものはいただかなければこれは差し上げることはできないのであります。しかし、その中で具体的に、これはだれが見ても常識的にここまではやらなくてもいいじゃないかというようなことがあれば、今申し上げたように私ども弾力的に——今先生指摘のように、本当にその人の生活権を奪ってしまうところまでやらなければならないかということには問題があるのでありまして、それは弾力的に指導してまいりたい、こう申し上げております。
  196. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 いただかなければ保険証を上げないという考え方は根本的に間違っているのですね。そうしたら、それはもう一度、ちゃんと行政当局としての責任ある法律見解をお聞きしたいと思うのですね。例えば国民健康保険証の交付というのは保険料が払われなければしないものなのかどうか、そのことをはっきりしてください。
  197. 吉村仁

    吉村政府委員 保険料を納めないから保険証を交付しない、こういうようなことは法律上できません。また、出産費と滞納保険料とを相殺するというようなこともできません。
  198. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 こうやって、法律的にできないことが現に行われている、そのことを今後も絶対あってはならないという立場で私はお聞きしているのです。とにかく、まず取ることばかりを考えて——本当に医療給付を適切に国民にこたえられるようにやっていくという、そういう姿勢がやっぱり今問われているのですね。  だから、私は最後に申し上げたいことは、とにかく国庫負担を限りなく減らしていくというあり方ではなく、国民の健康と命に責任を持つ国、その国の基本的なあり方、そのことをしっかり踏まえていただきたいと思います。責任放棄は絶対に認められません。お金がなければ医療が十分に受けられないという事態は絶対につくってはならないというふうに思います。国は、国民の皆さんに、どうぞ民間保険でおやりなさい、あるいはサラ金へどうぞなどというような姿勢であっては絶対になりません。そういう点で私は厳しく、強く申し上げて質問を終わります。
  199. 有馬元治

    有馬委員長 以上で、本連合審査会における質疑は終了いたしました。本日は、これにて散会いたします。    午後八時二十一分散会      ————◇—————