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1984-07-26 第101回国会 衆議院 社会労働委員会 第29号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年七月二十六日(木曜日)     午前十時三分開議  出席委員   委員長 有馬 元治君   理事  愛知 和男君 理事 稲垣 実男君   理事  小沢 辰男君 理事 丹羽 雄哉君   理事  池端 清一君 理事 村山 富市君   理事 平石磨作太郎君 理事 塩田  晋君       伊吹 文明君    稲村 利幸君       今井  勇君    古賀  誠君       斉藤滋与史君    自見庄三郎君       谷垣 禎一君    友納 武人君       中野 四郎君    長野 祐也君       西山敬次郎君    野呂 昭彦君       浜田卓二郎君    藤本 孝雄君       箕輪  登君    森下 元晴君       網岡  雄君    大原  亨君       河野  正君    多賀谷眞稔君       竹村 泰子君    森井 忠良君       大橋 敏雄君    沼川 洋一君       橋本 文彦君    森本 晃司君       伊藤 英成君    小渕 正義君       塚田 延充君    浦井  洋君       田中美智子君    菅  直人君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 竹下  登君         厚 生 大 臣 渡部 恒三君         農林水産大臣  山村新治郎君         運 輸 大 臣 細田 吉藏君         郵 政 大 臣 奥田 敬和君         労 働 大 臣 坂本三十次君  出席政府委員         厚生大臣官房長 幸田 正孝君         厚生大臣官房総         務審議官    小林 功典君         厚生省児童家庭         局長      小島 弘伸君         厚生省年金局長 吉原 健二君         社会保険庁年金         保険部長    朝本 信明君         林野庁長官   角道 謙一君         運輸大臣房国         有鉄道部長   中島 眞二君         労働省労政局長 谷口 隆志君         労働省職業安定         局高齢者対策部         長       守屋 孝一君  委員外出席者         臨時行政改革推         進審議会事務局         参事官     新村 淳一君         総務庁行政管理         局管理官    八木 俊道君         大蔵省主計局共         済課長     坂本 導聰君         大蔵省主計局主         計官      小村  武君         厚生省年金局年         金課長     山口 剛彦君         労働省職業安定         局高齢者対策部         企画課長    佐藤 勝美君         社会労働委員会         調査室長    石黒 善一君     ――――――――――――― 委員の異動 七月二十六日  辞任         補欠選任   永井 孝信君     大原  亨君   塚田 延充君     伊藤 英成君 同日  辞任         補欠選任   大原  亨君     永井 孝信君   伊藤 英成君     塚田 延充君     ――――――――――――― 七月二十六日  重度戦傷病者と妻の援護に関する請願鹿野道彦紹介)(第八八〇九号)  はり、きゆう治療の患者救済に関する請願宮澤喜一紹介)(第八八一〇号)  労働基準法改悪反対、実効ある男女雇用平等法制定に関する請願富塚三夫紹介)(第八八一一号)  同(伊藤茂紹介)(第八八八〇号)  同外六件(池端清一紹介)(第八八八一号)  同(小川国彦紹介)(第八八八二号)  同外四件(小川仁一紹介)(第八八八三号)  同外一件(川俣健二郎紹介)(第八八八四号)  同外十一件(河野正紹介)(第八八八五号)  同(辻一彦紹介)(第八八八六号)  同(水田稔紹介)(第八八八七号)  同外八件(矢山有作紹介)(第八八八八号)  同(渡部行雄紹介)(第八八八九号)  同(阿部昭吾紹介)(第八九一三号)  同外四件(伊藤茂紹介)(第八九一四号)  同外七件(上田哲紹介)(第八九一五号)  同(江田五月紹介)(第八九一六号)  同(小川国彦紹介)(第八九一七号)  同(金子みつ紹介)(第八九一八号)  同外十件(河野正紹介)(第八九一九号)  同(菅直人紹介)(第八九二〇号)  同外一件(小林進紹介)(第八九二一号)  同(上坂昇紹介)(第八九二二号)  同外一件(佐藤観樹紹介)(第八九二三号)  同外二十二件(多賀谷眞稔紹介)(第八九二四号)  同外二件(竹内猛紹介)(第八九二五号)  同(辻一彦紹介)(第八九二六号)  同外四件(細谷昭雄紹介)(第八九二七号)  同(前川旦紹介)(第八九二八号)  同外一件(松沢俊昭紹介)(第八九二九号)  同外五件(村山喜一紹介)(第八九三〇号)  同外三件(安田修三紹介)(第八九三一号)  同(山口鶴男紹介)(第八九三二号)  同(和田貞夫紹介)(第八九三三号)  同(阿部昭吾紹介)(第八九六七号)  同(井上一成紹介)(第八九六八号)  同外七件(上野建一紹介)(第八九六九号)  同(江田五月紹介)(第八九七〇号)  同(菅直人紹介)(第八九七一号)  同外一件(木島喜兵衞紹介)(第八九七二号)  同(経塚幸夫紹介)(第八九七三号)  同外一件(沢田広紹介)(第八九七四号)  同外八件(田中克彦紹介)(第八九七五号)  同(田中美智子紹介)(第八九七六号)  同外四件(武部文紹介)(第八九七七号)  同外九件(富塚三夫紹介)(第八九七八号)  同(中川利三郎紹介)(第八九七九号)  同(野間友一紹介)(第八九八〇号)  同(東中光雄紹介)(第八九八一号)  同外一件(藤田スミ紹介)(第八九八二号)  同(正森成二君紹介)(第八九八三号)  同(松前仰君紹介)(第八九八四号)  同外二件(元信堯君紹介)(第八九八五号)  同(山口鶴男紹介)(第八九八六号)  同(横江金夫紹介)(第八九八七号)  同外六件(横山利秋紹介)(第八九八八号)  男女雇用機会均等法案反対、実効ある男女雇用平等法制定等に関する請願角屋堅次郎紹介)(第八八一二号)  同(渋沢利久紹介)(第八八一三号)  同(田中恒利紹介)(第八八一四号)  同外一件(土井たか子紹介)(第八八一五号)  同(堀昌雄紹介)(第八八一六号)  同(水田稔紹介)(第八八一七号)  同(武藤山治紹介)(第八八一八号)  同(川俣健二郎紹介)(第八八九〇号)  同(井上普方紹介)(第八九九六号)  同(小澤克介紹介)(第八九九七号)  同(後藤茂紹介)(第八九九八号)  同外二件(土井たか子紹介)(第八九九九号)  同(永井孝信紹介)(第九〇〇〇号)  実効ある男女雇用平等法制定等に関する請願安倍基雄紹介)(第八八四〇号)  同(青山丘紹介)(第八八四一号)  同(伊藤英成紹介)(第八八四二号)  同(伊藤昌弘紹介)(第八八四三号)  同(稲富稜人君紹介)(第八八四四号)  同(小川泰紹介)(第八八四五号)  同(小沢貞孝紹介)(第八八四六号)  同(大内啓伍紹介)(第八八四七号)  同(岡田正勝紹介)(第八八四八号)  同(春日一幸紹介)(第八八四九号)  同(河村勝紹介)(第八八五〇号)  同(神田厚紹介)(第八八五一号)  同(木下敬之助紹介)(第八八五二号)  同(小平忠紹介)(第八八五三号)  同(小渕正義紹介)(第八八五四号)  同(近藤豊紹介)(第八八五五号)  同(佐々木良作紹介)(第八八五六号)  同(塩田晋紹介)(第八八五七号)  同(菅原喜重郎紹介)(第八八五八号)  同(田中慶秋紹介)(第八八五九号)  同(滝沢幸助紹介)(第八八六〇号)  同(玉置一弥紹介)(第八八六一号)  同(塚田延充紹介)(第八八六二号)  同(塚本三郎紹介)(第八八六三号)  同(中井洽紹介)(第八八六四号)  同(中野寛成紹介)(第八八六五号)  同(中村正雄紹介)(第八八六六号)  同(永江一仁紹介)(第八八六七号)  同(永末英一紹介)(第八八六八号)  同(西田八郎紹介)(第八八六九号)  同(西村章三紹介)(第八八七〇号)  同(藤原哲太郎紹介)(第八八七一号)  同(三浦隆紹介)(第八八七二号)  同(宮田早苗紹介)(第八八七三号)  同(横手文雄紹介)(第八八七四号)  同(吉田之久君紹介)(第八八七五号)  同(米沢隆紹介)(第八八七六号)  同(和田一仁紹介)(第八八七七号)  同(渡辺朗紹介)(第八八七八号)  原子爆弾被爆者援護等に関する請願小渕正義紹介)(第八八七九号)  てんかんの総合対策に関する請願戸塚進也紹介)(第八九〇八号)  実効ある男女雇用平等法制定に関する請願橋本文彦紹介)(第八九〇九号)  同(森本晃司紹介)(第八九一〇号)  同(矢追秀彦紹介)(第八九一一号)  同外六件(薮仲義彦紹介)(第九〇〇一号)  食品添加物規制緩和反対食品衛生行政充実強化に関する請願中川嘉美紹介)(第八九一二号)  実効ある男女雇用平等法制定に関する請願江田五月紹介)(第八九三四号)  男女雇用機会均等法案反対、実効ある男女雇用平等法制定に関する請願江田五月紹介)(第八九三五号)  実効ある男女雇用平等法の実現に関する請願東中光雄紹介)(第八九四四号)  同(藤田スミ紹介)(第八九四五号)  労働基準法改悪反対男女雇用平等法制定促進に関する請願外二十件(伊藤茂紹介)(第八九四六号)  同(梅田勝紹介)(第八九四七号)  同(浦井洋紹介)(第八九四八号)  同(岡崎万寿秀紹介)(第八九四九号)  同(佐藤祐弘紹介)(第八九五〇号)  同(柴田睦夫紹介)(第八九五一号)  同(津川武一紹介)(第八九五二号)  同(中島武敏紹介)(第八九五三号)  同(中林佳子紹介)(第八九五四号)  同(野間友一紹介)(第八九五五号)  同(藤木洋子紹介)(第八九五六号)  同(藤田スミ紹介)(第八九五七号)  同(松本善明紹介)(第八九五八号)  同(山原健二郎紹介)(第八九五九号)  男女雇用平等法制定等に関する請願経塚幸夫紹介)(第八九六〇号)  同(中村正雄紹介)(第八九六一号)  同(藤田スミ紹介)(第八九六二号)  同(正森成二君紹介)(第八九六三号)  男女雇用機会均等法案反対に関する請願土井たか子紹介)(第八九六四号)  同(藤木洋子紹介)(第八九六五号)  同(山花貞夫紹介)(第八九六六号)  労働基準法改悪反対、実効ある男女雇用平等法制定に関する請願岡崎万寿秀紹介)(第八九八九号)  同外一件(工藤晃紹介)(第八九九〇号)  同(佐藤祐弘紹介)(第八九九一号)  同(田中美智子紹介)(第八九九二号)  同(中島武敏紹介)(第八九九三号)  同(不破哲三紹介)(第八九九四号)  同(松本善明紹介)(第八九九五号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国民年金法等の一部を改正する法律案内閣提出第三六号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(国鉄労働組合関係)(内閣提出議決第一号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(国鉄動力車労働組合関係)(内閣提出議決第二号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(全国鉄施設労働組合関係)(内閣提出議決第三号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(鉄道労働組合関係)(内閣提出議決第四号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(全国鉄動力車労働組合連合会関係)(内閣提出議決第五号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(国鉄千葉動力車労働組合関係)(内閣提出議決第六号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(全国電気通信労働組合関係)(内閣提出議決第七号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(日本電信電話労働組合関係)(内閣提出議決第八号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(全点売労働組合関係)(内閣提出議決第九号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(全逓信労働組合関係)(内閣提出議決第一〇号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの作(全日本郵政労働組合関係)(内閣提出議決第一一号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(全林野労働組合関係定員内職員及び常勤作業員常勤作業員処遇を受ける常用作業員を含む。)」)(内閣提出議決第一二号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(全林野労働組合関係基幹作業職員常用作業員常勤作業員処遇を受ける者を除く。)及び定期作業員」)(内閣提出議決第一三号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(日本林業労働組合関係定員内職員及び常勤作業員常勤作業員処遇を受ける常用作業員を含む。)」)(内閣提出議決第一四号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(日本林業労働組合関係基幹作業職員常用作業員常勤作業員処遇を受ける者を除く。)及び定期作業員」)(内閣提出議決第一五号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(全印刷局労働組合関係)(内閣提出議決第一六号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(全造幣労働組合関係)(内閣提出議決第一七号)      ――――◇―――――
  2. 有馬元治

    有馬委員長 これより会議を開きます。  内閣提出国民年金法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大原亨君。
  3. 大原亨

    大原委員 これから歴史的な審議に入りますが、入る前に、前年金局長である山口さんが非常に努力をされました。今この席におられぬわけですが、質問に入る前に、私は、心から冥福をお祈りいたしたいと思います。     〔拍手〕  きのうおとといでありますか、私の部屋にも厚生省文書が入ってまいりまして、この国会で成立をしないと昭和六十一年四月実施に間に合わない、こういうふうな、私はやわらかに申し上げておりますが、脅迫的な文書が回っておりました。  厚生大臣、私は考えてみますのに、私どもは、年金については非常に歴史的な国民的な課題ですから徹底的に審議をする、こういう気持ちであり、主張をしてきたわけです。しかしながら、健康保険法の取り扱いをめぐりまして、例えば会期延長をあのように大幅にいたしましても、政府与党自体健康保険法に対する修正をするという内外に対する公約を繰り返したこともありまして、その修正案で一部の団体との関係等に非常にこだわってまいりまして、修正案ができないので審議が進まない、こういう段階がつい最近まで続いたわけであります。  ですから、会期延長をいたしまして、もちろん健康保険法改正は大法案ですから徹底的に審議をするわけですが、政府与党の態度が決まらない。内閣総理大臣はしばしば本会議等で言われましたように、昨年の総選挙では、あれは厚生省の案であって、政府与党としては国民の要望にこたえて必ず見直しをします、こういうことを言われたわけでございまして、そういうことが終始この問題の審議には一つの大きな壁になっておったわけであります。ですから、その結果といたしまして年金審議がおくれたのであって、年金国会審議がおくれたのは、野党の責任というよりも与党政府責任にあるというふうに私は思いますが、大臣はいかがでございましょうか。見解を聞かせてもらいたい。
  4. 渡部恒三

    渡部国務大臣 先生御指摘のように、年金改革、一日ともゆるがせにできない極めて重大な問題でございます。国民年金国民保険、これは我々の国民生活を支える車の両輪のようなものでありますから、いずれが大事かというよりは、いずれも極めて重要な問題であり、早急な審議を私ども政府の立場ではお願いをしなければならないのでございますが、健康保険法改正がたまたま五十九年度の予算に一番深いかかわりを持つということで、健康保険法改正を先に審議をお願いしたわけでございます。これがなかなか審議が進捗しないことから、今世紀最大社会保障重要法案ともいうべき年金法の御審議を、このような時期にお願いすることになってしまったわけでございます。これは会期の中でこの厚生省提出法案審議が週に一日しかないとか、いろいろの御事情もございましょうが、私ども政府も大きく責任を痛感しておるところでございます。
  5. 大原亨

    大原委員 慎重な御答弁のようでありますが、社会労働委員会厚生日を週一日と決めておるのは、非常に意味があるというふうに私は今でも思っております。というのは、何も時間をかけてぱたぱた質問すればいいというのではなしに、質問をしながら常に討議や研究を深めていくということで、そして集中的に審議をしていく、こういうことは重要法案を取り扱う上においても極めて重要な問題であるということで、よく国会の進行を簡単にするということで与党の方から言われるのですが、そういう便宜的な考え方はなしに、国会議員が非常に審議を尊重しているという一面があるということを御承知いただきたいと思います。  そこで、大臣答弁によりますと、このような段階になりましたことは、政府与党法案全体の取り組みにおいて反省すべき点があるという点を含めての御答弁だと私は思います。  国会会期制があるのでありまして、会期をやたらに延ばしてそのことで政府与党考え方を通すというのではなしに、会期内で議論を尽くして、そして臨時国会召集権政府にあるわけですから、内閣総理大臣が持っているわけですから、ですからそれらを、臨時国会等を運営するならば問題の処理はてきぱきとできると私は思うわけです。ですから、いよいよ会期末になりまして、歴史的な大法案である厚生年金国民年金統合法案が出されておるわけですが、最初に、非常に重要な問題ですから、この問題については国会の総和を絞って審議をすべきである、私はこういうふうに考えますが、この点については、私の申し上げました点について大臣は、賛成、反対ということではなし十分理解をされておると思いますが、いかがでございましょうか。
  6. 渡部恒三

    渡部国務大臣 おっしゃるとおりに認識しております。
  7. 大原亨

    大原委員 それで、あとそれぞれあると思いますが、当面、差し迫った問題もあるわけです。例えばベース改定については、年金改善措置につきましては、二%引き上げの問題等については、例えば事後重症制度改善等も特別に扱ってありますが、そういう問題等については議会の良識でこの問題の処理適確にすべきである、こういう点を私どもは考えておるわけですが、これはまた改めて最後に質問をいたしたいと思います。  そこで、いよいよ年金質問に入るのですが、その前にいわゆる臨時行政調査会、今は行政改革推進審議会というふうになっておりますが、同じように土光さんが会長でありますけれども、その行政改革のやり方は、確かに高度成長時代にあるところのぜい肉を落としていくということは必要です。これはもう低成長時代に入って、そして、高齢化の問題や国際化の問題や技術革新やあるいは雇用問題についても大きな変化があるわけですから、それに対応することは必要ですが、政府がやっておる行政改革というのは、言うなれば収支のバランスをとるということだけに重点を置きまして、行政改革のスローガンとして「増税なき財政再建」というふうに言っておりますが、そういう狭い視野で問題を取り扱おうとしておりますと、結局は予算の多い福祉とか教育にカットが集中をいたしてまいります。全体といたしましてもそういう傾向にあるわけですから、そういう行政改革を繰り返してまいりますと、日本経済縮小均衡の道をたどる。そこで建設国債赤字国債、すべての国債の返還の見通しが立たないばかりではなしに、逆にそのことを通じまして行き詰まってまいりますと、その出口インフレしかない、インフレを通じて借金を減らしていくという道しか残らないという、これは長い話は別として、今まで繰り返したようなそういう出口しかないのではないか。行政改革に対する考え方を根本的に変えるということを通じてこれからの年金問題も審議すべきではないか、こういうふうに思いますが、いかがでございましょうか。
  8. 渡部恒三

    渡部国務大臣 今先生からお話のあった、国が赤字を増大させるとその簡単な解決方法インフレを通ずるしかなくなるのではないか、これは国民生活にとって極めて重大な問題でございまして、そのようなことになってはならないからこそ、私どもは、今非常に厳しい問題等を投げかけながら行革、また財政再建のために全力を尽くしておるわけでございます。しかし、その中でも、私どもは、社会福祉というものは国民生活ぎりぎりの面で、財政状態がたとえどのようにあろうと、これは削ることのできない内容を含んでおるものが非常に多いということから、また年金とか諸手当とかあるいは医療の問題にいたしましても、これは金がないからことし待ってくれ、来年に延ばしてくれというような条件にない支出を要せられる問題から、こういう厳しい財政条件という枠の中に協力すべきことは積極的に協力していかなければならないけれども、しかし、金がないから、はい、そうですかと言うわけにはまいらない社会保障予算というものを抱えておる主務官庁として、今後、こういう厳しい財政条件に協力しながらも、福祉後退というような御心配を受けないように積極的に必要な予算の確保に向かって努力してまいるつもりでございます。
  9. 大原亨

    大原委員 前に経済企画庁の事務次官をしておられました宮崎勇さんの軍縮経済の持論でありますが、世界経済拡大均衡へ行く、それから世界の一兆ドルに及ぼうとしておる軍備軍事予算縮小均衡へ、こういうことを通じて、南北問題や各国の国内問題、内需の問題を解決しなければいかぬ、こういうような、今まで官庁エコノミストとして心血注いで学問をしてこられた人の言葉として、非常に集約した議論があります。そういう経済は国際的に拡大均衡へ、それから軍備縮小均衡緊張緩和に向かっていくような、そういう努力日本自体もすべきである、それも一つ行政改革の視点ではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  10. 渡部恒三

    渡部国務大臣 まことに傾聴に値する御見識と考えます。
  11. 大原亨

    大原委員 臨調は私が申し上げましたことに対しまして御見解がありますか。その次に総務庁行政改革推進審議会事務局出席を求めているのですが、臨調は、この勧告の中に、行政改革一つの言うなればよりどころといたしまして、租税保険料負担率について触れておるわけです。昭和五十八年度の租税保険料負担率は合計して幾らになっておりますか。
  12. 八木俊道

    ○八木説明員 ただいまお尋ねでございます臨調答申自体におきましては、第三次答申におきまして「租税負担と社会保険負担とを合わせた全体としての国民の負担率」、これは答申の出ました五十七年七月三十日当時の現状でございますが、「現状(三五%程度)」、そういう記述になっております。
  13. 大原亨

    大原委員 その中に租税と社会保険料の負担率があるわけですが、社会保険料の負担率は一〇%程度だと思います。それを臨調の答申では四五%を目安にするという勧告があるわけです。これは国会でもしばしば引用されたわけです。その根拠は一体どういうことな
  14. 八木俊道

    ○八木説明員 ただいまのお尋ねにつきまして正確に答申の文言を申し上げますと、答申の当時の現状は三五%程度でございまして、社会保障移転その他のいわば歳出の増大等によりまして、これよりも「上昇することとならざるを得ないが、徹底的な制度改革の推進により現在のヨーロッパ諸国の水準(五〇%前後)よりはかなり低位にとどめることが必要である。」ここだけ申しておりまして、答申の趣旨は、三五%と五〇%程度のその間ということであろうかと存じます。  ただ、委員お尋ねの四五%程度ということにつきましては、臨時行政調査会審議の途上でどういう質疑があったかということにつきまして、当時の臨調委員でありました瀬島参考人が国会で、四五%程度という議論はあったというふうにたしか御紹介をなさっておられたように私ども記憶しております。答申自体の文言といたしましては、三五%程度の現状とヨーロッパ諸国の水準五〇%程度、これの中間という趣旨であろうかと存じております。
  15. 大原亨

    大原委員 そうしますと、三五%の現状はヨーロッパ以下ということで四五%程度、こういうふうに臨調は答申をしたというふうに私は答弁を理解いたしますが、その根拠は一体どういうことなんですか。
  16. 八木俊道

    ○八木説明員 臨調解散後でございまして、実は責任を持って御答弁申し上げる立場にないわけでございます。  私も、勉強といたしまして当時の記録なども少し参照してみたのでございますが、余りはっきりしていないようでございます。いずれにいたしましても、ヨーロッパ諸国よりは低い水準、こういう議論が極めて強かったというふうに伺っております。
  17. 大原亨

    大原委員 臨調というのはそんな根拠のないことを言っているのですか。臨調というのはそういう根拠のないことをどんどん出して、それで枠をかけているのですか。どうなんですか。
  18. 八木俊道

    ○八木説明員 経済発展とか社会保障制度の今後とかにつきましては、いろいろと綿密な御検討があったように伺っておりますけれども、先ほど申し上げましたとおり三五%程度の現状、ヨーロッパの水準の五〇%のその間という数字の問題につきましては、余り詰めた結論めいたことは言っていないということでございまして、審議過程でさまざまな細密な御検討があったということは承知しておりますけれども、結論めいた打ち出し方はしていないというふうに理解をいたしておるわけでございます。
  19. 大原亨

    大原委員 そういうことはだれが責任を持って答弁できるのですか。責任を持って答弁できないようなことをどんどん出しておいて、そして大蔵省はそれを予算査定その他の基礎にする。一体どういう議論からそういう枠の議論が出てきたのですか。どういう理由なんですか。(「保険局長が言ったんだぞ、四五%というのは」と呼ぶ者あり)
  20. 八木俊道

    ○八木説明員 たびたびで恐縮でございますけれども、いわばヨーロッパ諸国程度の租税・社会保険負担率ということになりますと、民間の経済の活性化その他の点で今後多々問題があるのではなかろうか、かつ、日本の今後を展望いたしますと高齢化のピッチが非常に速いという状況でもございますから、やはり当面は三五と五〇の間というあたりで制度の基本的な改革を進めていくべきではなかろうか、そういうことで、答申自体の表面にはこの数字は明確には出ておりませんで、制度改革の重要性という問題が中心に取り上げられているというふうに私ども理解しておるわけでございますけれども、何分臨調解散後でございますので、現状におきましては、答申の字句そのものから政府が解釈するという以外に手だてがないわけでございまして、半分御答弁になっていない点は恐縮でございますけれども、そういう状態でございます。
  21. 大原亨

    大原委員 今まで臨調答申に基づいて、そして政府は、あんなに神経過敏になる必要はないというぐらいまでぎりぎりとやってきたわけです。しかし、例えば現在の租税保険料負担率の三五%を四五%にするのと五〇%にするのとでは大違いですよ。どんなに違うかわかりますか、答弁してください。         一〇八木説明員 勉強不十分で大変恐縮でございますけれども臨調答申の趣旨と申しますのは、今後の社会経済の発展とか経済活動の動向等が不確定でございますから、四五という数字は実は表には出てないわけでございまして、非常に幅のある不定量的な言い方をいたしておるわけでございまして、あくまで制度改革が重要であるという指摘を基本に打ち出しておるというふうにひとつ御理解をいただきたいと思うのでございます。
  22. 大原亨

    大原委員 あなたの答弁の中で一つだけ私が納得できたのは、制度改革が中心である。しかし臨調はそんな方針じゃないです。あなたは私の前を逃れようと思って言っているのでしょう。ちゃんと答弁できる人を持ってきなさい。あなたが答弁の中でほのめかしたのは、言うならばヨーロッパのような先進国病という病気、それから日本高齢化が厳しいし猛スピードであるから、野放しにすればどんどん伸びていくからこれをチェックしよう、そういう気持ちがあらわれておるようなふうですが、問題は、制度改革だという前に、それなら四五と五〇では大違いですよ。四五という数字は政府の中あるいは国会の中でもひとり歩きをしているのです。答弁できる人をあなた呼んできなさい、いるはずだから。あなたの答弁では全然納得できない。  これはひとつその問題は預けておきますから、委員長、私の発言として記憶しておいてください。後で整理しますから。  その臨調答申の租税保険料負担率を受けまして、厚生省は、特に社会保険料の国庫負担という問題に関係をいたしまして、大体どのような理解をいたしておるのですか。
  23. 小林功典

    小林(功)政府委員 先ほどの社会保障の負担率と租税負担率、細かく申しますと五十九年度ベースで社会保障負担率が一〇・八%、租税負担率が二四・二%、合計いたしますと全体の国民負担率が三五%、こういうことでございます。  そういうことで今の御質問にお答えいたしますが、これから高齢化が御案内のようにどんどん進んでまいります。それに伴って社会保障給付費が増加し国民の負担というものも増加していく、これを何とかしなければならないということで、今いろいろやっておりますのは、一つは医療保険改革、もう一つ年金改革でございます。これは、医療保険につきましては今御審議いただきました医療保険改革を成立させていただき、かつ、そのほかのいろいろな医療費の適正化対策を強力に進めますと、私どもの見込みでは何とか国民所得の伸びの範囲内でとどまるのじゃないか、こういうふうに考えております。ただ年金の方はそうはまいりませんで、御案内のように高齢化も急速に進みますし、制度も成熟化してくるということでございますので、年金制度の改革を行いましても、国民所得の伸びをさらに上回った伸びを示すだろう、こういうことでございます。  それにしましても、臨調答申の趣旨も尊重しないといけませんし、西欧諸国並みの水準よりはかなり低位にとどめるという目的を達成するために、そこら辺はぜひ実現したい、こういうことで努力をしているわけでございます。
  24. 大原亨

    大原委員 臨調の方針とか圧力におびえて、そして、今も質疑応答をしてみますと、正体のわからないことを前提にして、だんだん小さく小さくしていく、枠を小さくしていく、選択の幅を縮小していく、そういうことが今の日本の現状では行政改革の一番の欠陥として指摘されておる点ですから、つまらぬことを行管が言えば、ちゃんと厚生省の立場で反発をするところは反発をして、こうあるべきだということは言わなければならぬ。  では、具体的な問題から尋ねてみますと、例えば健康保険でしたら、政府管掌ですと千分の八十五の保険料率、所得が上がっていけば収入がふえていくわけですから、その枠の中でやろうというわけでしょうが、それを国民所得との関係に直してみますと何%になり、そして、もう一つの大きな柱であるところの年金の、言うなればこれからの二十一世紀へかけましての伸びを、どのように国民所得との関係で判断をしてこの法律案をつくったのか。こういう点について、厚生省の側の受けとめ方を御答弁をいただきたい。
  25. 小林功典

    小林(功)政府委員 まず最初に医療保険でございますが、これは中長期的な問題ですから、年々の料率ということではございませんが、マクロに見まして、現在、政府では国民所得の伸びを大体六ないし七%というふうに踏んでおりますので、大体六・五%前後の伸びで抑えたい。それには、国民医療費の伸びをその程度におさめることは可能であろう、こういう推計をしているわけでございます。  それから、年金でございますが、年金の方は、後から保険料率の御質問があるかと思いますが、マクロの話で申しますと、医療と違いまして、国民所得を上回った伸びを示すわけでございますが、どの程度上回った伸びを示すかという具体的な数字を示すのは、国民経済の動向がなかなか不透明な要素が多いですから難しいのでございますが、いろいろな仮定を置きまして、ごく大ざっぱに大体の推計をしてみますと、これから四十年ぐらい先の昭和百年ぐらいを見当に見てみますと、今よりも五、六%の伸びを示す。したがって現在の、さっき申しました一〇・八の社会保障負担率の中で、年金部門の占める比率は五・八でございますから、約六でございますから、一一ないし一二ぐらいの伸びで抑えられるのではないか、こういうことでございます。これはもちろん、年金改革をお通しいただきました場合の数字でございます。
  26. 大原亨

    大原委員 租税保険料の負担率が三五の現状からちょっと出ておりますが、その現状から二十一世紀へかけまして四五か五〇かと言うたら、はっきり言わぬのですよ、向こうは。そんなことは、四五と言ったことはない、臨調の答申にはそういうことはないと、こう言っているのですが、前の吉村局長の今の話がありますが、四五ということを想定しているという。その際に、四五ということは仮に棚上げいたしましても、医療が一〇%伸びる中で、医療と年金はどういうシェアを占めるのか。
  27. 小林功典

    小林(功)政府委員 四五というのは厚生省の目標として恐らく申し上げていないと思います。ただいま私が申しましたのは、医療の方は国民所得の伸びにパラレルに伸びるとすれば、これは負担率としては変わらぬわけでございます。年金が先ほど申しましたように五ないし六にふえるということになりますと、租税が仮に横ばいという仮定を置きますと年金部分だけしかふえませんから、結論を申しますと三五から四〇か四一ぐらいでとどまるのじゃないか、こういうことを一応目標にしているわけでございます。もちろんいろいろな仮定を置いてのかなり大ざっぱな推計でございますが、そういうことでございます。(大原委員「四一……」と呼ぶ)四〇から四一ぐらいでございます。
  28. 大原亨

    大原委員 今の答弁は、医療費は現状で大体横すべりで同一であるならば、金額、成長率に従って内容はふえていく。年金が現状よりもふえて、四一%まで年金が上がっていく、そういう意味ですか。はっきりしてください、租税負担率との関係で。
  29. 小林功典

    小林(功)政府委員 内訳を申しますとおわかりいただけると思いますが、社会保障負担率、先ほど申しましたように一〇・八%でございます。その中で年金の占める割合が五・八、五・八の部分が一一か一二程度になる。医療は一〇・八の中で四・〇%なんですが、これは仮に改革を通していただきあるいは適正化を進めることによって国民所得並みの伸びにとどまるとすれば、その分ではパラレルに伸びますから負担率としては変わらない。それに租税の方の負担率も変わらないというふうに仮定をしますと、年金の部分だけがふえるわけでございますから、五・八から一一ないし一二、つまり五ないし六%ふえるわけですから、全体で合計してみますと三五が四〇ないし四一になるということを申し上げているわけでございます。医療保険の分と租税の分は変わらないという前提で申し上げておりますから、年金だけがふえる、年金のふえる分が現在より五、六%ですから、三五から四〇か四一になる、こういう意味でございます。
  30. 大原亨

    大原委員 三五から五、六%というのは租税保険料負担率ですか。つまりこういうことなんですか、三五%の中で一〇・八ほど社会保険の費用が占めておる、その内訳は年金については現在五・八%である、これがふえる。医療の方は率としては横すべりである。成長率に従って絶対額はふえていくけれども、横すべりである。年金のふえ方は幾らですか。
  31. 小林功典

    小林(功)政府委員 昭和百年ぐらいをめどに考えてみますと、年金のふえ方がプラスの五、六%、つまり五・八から一一ないし一二%に上がる、こういうことでございます。
  32. 大原亨

    大原委員 五・八%が一一%程度に上がる。そうすると、三五から四五にいくのに、あと残っておるのは何がふえるのですか。どこがふえるのですか。大蔵省、わかっておりますか。
  33. 小村武

    ○小村説明員 ただいま小林審議官からお答えのありましたのは年金だけ、年金の社会保険料部分についての負担増という部分をとらえて、その分を御答弁されたものと存じます。現在三五%の負担率、社会保険一〇%、租税二五といたしますと、この推移が将来どういうふうになるか。これは社会保障の分野だけではございませんで、あらゆる分野の行政需要を含めての国民負担でございますから、全体につきまして将来どういうふうになるか、これは極めて政策的な問題であろうかと存じます。
  34. 大原亨

    大原委員 それは例え幅があるにしても、それが四五%ないし五〇%以下、天井が五〇%と、そういうことを臨調は言ってきたのでしょう。政府もそのことを答弁している。であるとするならば、全体の中で年金は少なくともこれだけはふえていくのだということをちゃんと頭の中に置いて、それで年金をどのように改革をしていくかということを考えるべきではないか、そういう中期、長期の展望なしに場当たりに切っていくから、切られる方も萎縮をしてしまうし、そして切る方もできるだけむちゃくちゃ切って、官僚組織では功績、手柄を立てようということになる。政治が動く余地はないだろう。そのことを今みんな議論している。であるならば、政府全体としては、総務庁、大蔵省全体としては、租税、社会保険料の負担率をどのようなめどに置いて年金改革について考えておるのか。今度は一歩進めまして、厚生省側の議論を受けて大蔵省や総務庁は、全体としてどういうふうに政府として考えておるのかということです。
  35. 小村武

    ○小村説明員 私ども理解しておりますのは、社会保障の分野におきましては高齢化の現象、これが加速度的に進んでいくということで、確実にこれは計算可能な、予測可能な分野でございます。こういった分野について、臨調答申を拝見いたしましても、将来高齢化社会に向けて国民の負担が増加するということは、はっきり認めているわけでございます。  したがって、国民が負担し得る限度がどういうところにあろうかという観点から議論がなされたものと存じますが、そういったマクロのチェックをされて今回厚生省年金改革法をお出しになったということでございまして、単に単年度の予算の収支じりを合わすとかそういう意味ではございませんで、長期的なビジョンに基づいた改革と私どもは存じている次第でございます。
  36. 大原亨

    大原委員 今の国民所得に対する租税保険料の負担率はどうあるべきかというフレームを頭にしっかり置いてやらなければいかぬ。これは今、行政がどことなく進んでいっておるわけですから。しかし、日本高齢化の比率というものは非常に高いわけです、しかもスピードが早いわけです。これは今に始まったことではない、わかっておったのですけれども。そしてその上に、財界のおじいさんたちが集まって、先進国病じゃ何じゃと言うわけです。しかし、ヨーロッパでは皆五〇%を超えておるわけです。わからぬ者はそれに追従しているわけですよ。スウェーデンは六七%になっておるわけです。それで、先進国病ということを言うけれども、実際は今ヨーロッパは、この間も言ったけれども、一〇%内外、それを超えるような莫大な失業率なんですよ。しかし、経済が何とかやっていけるとかあるいは国民の不安が爆発をしないとかいうのは、あるいはほかにもいろいろ、外に向かって植民地の侵略政策をやるわけにいかぬからマーケットを拡大するという、武力でやるということを癖骨にできないから、今盛んにイラン・イラク戦争に、両方に武器を輸出しているわけですが、フランスもイギリスもどこも、アメリカもソビエトも。日本だけ輸出していないから、だから日本は、安倍外務大臣が両方に顔が立つわけです。武器の輸出は形を変えた戦争ですけれども、それが一つのそういう緊張現象を起こしているのですが、なおかつ各国内で社会不安になっていないというのは、社会保障制度が整備をされているからなんですよ。ある意味においては、国内で経済がそのうち一定の需要をつくり出しておるからなんですね。  ですから、簡単に先進国病とか負担率の問題で観念的、公式的にそれらを日本行政改革の尺度として議論することは、これはおかしいのではないか、主客転倒ではないか。特に社会保障を担当する国務大臣である渡部厚生大臣は、今度の予算編成はいよいよ本番に入りますが、そういう点についてきちっとした考え方を持ってもらいたい、というだけではなしに、年金改革議論の基礎として、前提として、私はそのことを強く主張をして、その議論をすることが国会の第一の仕事である、そういうふうに理解をいたしますが、いかがですか。
  37. 渡部恒三

    渡部国務大臣 大変次元の右回い、また将来にわたって政治家が避けて通ることのできない重要な問題提起を今大原先生からちょうだいしたわけでございます。  先生考え方に私もほぼ同感するところが多いのでございますけれども、ただ一つだけ、お言葉を返して恐縮でございますが、私ども、日山主義経済社会の中で、活力ある経済社会の発展が結局は長い目で見て国民の幸せにつながっていくという哲学から言えば、やはりどういう事態がやってこようと、働く人たちが、その所得の半分以上がどういう理由であれ取られてしまうというような時代になって、果たして活力ある社会が持続できるだろうかということを考えると、私どもの哲学から言えば、やはりどういう社会がやってこようと、働く人たちがその所得の半分以上は自分が自由に使える、手元に残るような政治が活力ある社会であるという、これは漠然たる将来に対する感覚でございます。そうしますと、租税社会保障の負担が、どのような高齢化社会がやってこようと、やはり五〇%を超えるようにならないような努力を今からしていかなければならないな、こういう感覚は、臨調でどういう制約を受けたとかどうとかいうこと以前の、自由主義経済社会の中で将来の国民の生々発展を夢見る私どもの常識として、私どもは持っております。  したがって、私も、厚生省担当の国務大臣を命ぜられて、やはり二十一世紀の将来にわたって、社会保障というものは極めて重要であるけれども、その重要な社会保障の骨組みとその基本は守っていかなければならないけれども、そのためにその租税社会保障の負担が国民所得の五〇%に上るようなところまでいっては困るなというような意味、これが今回、私が年金改革法と医療保険改革法をお願いしまして、今六・二人の人が掛金を納め一人の先輩を支えておりますが、いずれ三人の方が働いて一人の先輩を支えるような時代になりますから、これは、今のままの制度に年金の制度をしておけば、将来は皆さん方の掛金負担が倍あるいは三倍というふうになってしまうことは、五足す五は十の数字の計算と同じように明らかでありますから、そこまではいかないように、今それぞれ政府委員から答弁されましたように、五・八の現在の負担が一一ないしは一二程度にとどまるようにしなければならない、そういう改革は今のうちからやっておかなければならないという考えは私も持っております。やはりそういう枠の中で、これはどうしたら将来、国民の皆さんが心配する年金の質を落とさないようにできるか、あるいは医療保険の質を低下させないように済ますにはどうすればいいかということで、日夜私は頭を痛めておるところでございます。
  38. 大原亨

    大原委員 時間が大分たちましたから、この問題についてはそれ以上の議論は私はいたしません。  それで、例えばスウェーデンは国民所得の六七%を福祉に使っているというのですね。具体的にどういう社会や経済の状況かということをいろいろ私も関心を持っておるのですが、しかしあれは、パルメという総理大臣はもう一回総理大臣になりましたね。それで、保守党でも革新政党でも考え方は余り遣わぬということを私は思っているわけです。あれは、ストックホルム平和戦略研究所とかあるいはノーベル賞とか、スウェーデンというのは文化的にも行政水準でも非常に高いですよ。ああいう制度を支えている国民というのは非常にレベルの高い国民です。ですから、活力のあるということがよく言われるのは、これは厚生大臣も誤って解釈をされておらぬと思いますが、大体ちょっと気を緩めたら生きるか死ぬるか、そういうすれすれですよね。刑務所の塀をすれすれじゃありませんよ。生きるか死ぬかのすれすれですよ。そういう生かさず殺さずというところへ国民を置いておけば活力があるという考え方で、そういう本能をもって福祉をふった切っている連中がおるのですが、それは間違いであるということです。誤りである。  日本は非常に異常な高齢化社会、これはわかっておるのですけれども、迎えておるわけですね。それから海洋国でもあるし、無資源国でもありますからね。しかし、これから経済は一定の新しい技術革新で大きくなっていくという希望もあるわけですが、これは軍事予算との関係があると私は思うのです。世界の軍縮との関係と日本の軍縮の問題があると思うのですが、そういうところで考えた場合に、年金に対してどれだけの税金や保険料を投下するのだということで、今の枠で考えた場合に、具体的にその枠を伸ばしてまいりますと、具体化してまいりますと、どういう今回の改正案との関係になるか、そういう点をひとつ厚生省の方で答弁願います。
  39. 吉原健二

    ○吉原政府委員 年金が現行制度のままでございますと国民の負担能力を超えてくる、それを給付水準を適正化し国民の負担の限度内にとどめるというのが今度の改革案のねらいでございますけれども、全体としての年金の負担というのは、先ほど大臣からもお答えをいたしましたように、四十年後、昭和百年ごろには国民所得に対して一一、二%、現在が五・八でございますが、一一、二%の規模になる、その程度にとどめたいという考え方に立っているわけでございます。  租税との関係につきましては、年金国民一人一人の負担をする保険料と一定の国庫負担によって賄われているわけでございますけれども、その給付費に対する国庫負担は、今度の改革案におきましてもほぼ現状程度のものを維持したいということで考えているわけでございます。
  40. 大原亨

    大原委員 これはまた話を進めてまいりますが、他の省からも来ているからちょっとやるわけですが、年金議論する際に、日本の縦割り行政の欠陥なんですけれども、雇用保障の改革を離れて年金議論することはできないわけです。だから、年金のこのような歴史的な大統合、大改革をやろうとするときには、雇用保障をどうするのかということを考えないでやることはできないわけです。だから、高齢化社会における課題としては、もうこれは議論がかなり出尽くしておるわけですが、例えば労働時間を短縮する、定年を延長する、ウエートが高くなってくる中高年齢層の雇用を促進するという意味において、言うなれば規制力のある制度をつくっていく、そうして、全体としては若い人口が減っていくわけですから、ワークシェアリングといいますか、仕事を分かち合って、一生を言うなれば健康に送っていく、こういうビジョンを描く必要があると思います。そういう意味における年金等の絡みにおける雇用改革についての政府の作業は進んでいないというふうに私は思いますが、いかがですか。
  41. 佐藤勝美

    佐藤説明員 ただいま大原先生御指摘のとおり、年金と雇用の関係は大変に重要でございます。私どもといたしましては、年金と雇用が相まちまして、高齢者の生活に不安がないようにするということが最も重要であると考えております。そのためにはやはり、この年金の問題を考えますときに、定年延長の進捗のぐあいあるいは雇用延長の進捗のぐあい等、高齢者の雇用の状況を十分に勘案しながら総合的に検討することが必要であると存じております。  そういうようなことから、大原先生御承知のように、現在六十歳定年の一般化という目標に向けまして行政指導にひたすら努力をいたしておるわけでございますが、さらに六十歳を超えます六十歳台前半層の方、特にこういう方は体力、健康状態等から、例えば短時間就業の希望が多くなるというような就業についてのニーズが多様化をしてまいりますので、こういった短時間雇用に対するニーズにこたえるための助成金の新設というようなことを通じまして、高齢者の方の雇用の確保に努めているところでございます。  こういう問題を進めます場合に、これはもちろん労働省だけで考えるというような問題ではございませんが、これまでも非常に多くの回数にわたりまして、厚生省とは、年金の問題を中心といたしまして局長レベル、課長レベルあるいは部長、審議官レベルで会合を持ちまして、意見の交換、協議を繰り返しておるところでございます。今後もこういった機会を通じまして、厚生省との間の意思疎通を十分行いまして、両方の政策にもそごのないように努めていきたいと存じておる次第でございます。
  42. 大原亨

    大原委員 最近そういう議論が繰り返して議論になりましても、実際には六十歳定年制を超えるということは非常に難しいという状況なんですね。大体六十歳定年を六十年に達成するということが目標で、大分それに近づいてはおりますが、平均ということは、五十五とか五十七とか八とかいう定年もあるわけです。それ以上という場合には、言うなれば嘱託とか、臨時とか、身分をかえたり、外郭団体へ出したり、傍系の会社へ出したりして雇用をつないでいるという実情なんですね。ですから、労働時間短縮は総評初め労働四団体の非常に大きなこれからの目標になっています。日本は労働時間が長いわけです。先端技術その他をやりますと非常に精神的に摩耗いたしますから、労働時間の関係も出てくるわけですが、労働時間を短縮することと、例えばアメリカは七十歳の定年があるわけですから、七十歳までは、意思と能力があるならば、そういう能力がある限りは職場で働くという権利を定年制度は保障しているわけです。ヨーロッパでも六十五というのは普通になっているわけです。ただし、個人個人は年金を六十歳から選択するということは制度といたしましてはそうですが、雇用の方が進んでまいりますと年金の開始年齢がおくれてくるわけですから、雇用を改革しないでおいて年金の開始年齢だけをひとり歩きさせるような法律を通すというわけにはいかぬわけです。ですから、雇用について労働省のようなへっぴり腰ではなしに、男女雇用平等法、中高年齢雇用促進法について身体障害者雇用促進法並みの規制強化をやる、さらに身体障害者雇用促進法あるいは労働時間短縮や定年延長というのは、総合的に高齢化社会に対応する雇用の問題として計画的に取り上げてやる。そして、そのことは自由に任せておく、自由主義だから自由に任すという部面がもちろん多いほどいいわけですが、介入することはできるだけ避けるべきであります。しかし、最低の守るべき基準についてはやるということがないと、資本主義を支えている自由主義というものは成立しないですよ、民主主義というものは成立しないです。ですから、労働省の政策は非常におくれている。この年金審議するに当たって、そういう今の雇用の政策をとる労働省なり政府の雇用政策では年金議論にならぬ、こういうわけですよ。あなた、それ以上の答弁ができますか。
  43. 佐藤勝美

    佐藤説明員 雇用の問題、大変いろいろな御指摘がございましたが、高齢者の雇用に関して申し上げますと、定年延長の問題につきましては、政府の行政指導、それから労使の努力が相まちまして、最近の調査を見ましても、六十歳定年が現実に行われている企業が既に五二%を超える、一方、従来の伝統的な定年でありました五十五歳定年というのが二九%何がしということで、既に三〇%を割るような事態になっております。また、定年を将来六十歳以上に延長するということを決定あるいは予定をしている企業を見ますと、これはもう六五%になるというような状況でございますので、既に六十歳定年が主流になっているというふうに言っていいかと思います。  また、六十歳を超える高齢者の雇用の問題につきましても、先ほどの繰り返しに一部なりますけれども、こういった方々のいろいろな就業ニーズ、短時間雇用といいますか、通常より労働時間の短い雇用を希望される方が非常に多くなってくるというような現実を踏まえまして、そういった雇用機会の確保に努めるというような施策を進めつつあるところでございます。  なお、定年の問題につきましては、先生は法例の問題にも触れられましたが、定年の立法化問題がいろいろなところで議論になっておるわけでございますけれども、労働省といたしましては、雇用審議会におきまして、昭和六十年ごろの適当な時期に改めて検討するというような結論をいただいておりますので、当面行政指導によって進めながら、雇用審議会の御検討の結果にまちたいというふうに思っておる次第でございます。
  44. 大原亨

    大原委員 各論へはすぐは入るつもりはなかったわけですが、大体重要な基本的な課題について今話をしているのですが、例えば今の話をちょっと年金の制度と関係して進めてまいりますと、例えばスウェーデンを初めヨーロッパでは、六十歳から六十五歳以上については、日本で言えば大体常雇用的なもの、そういうものは六十蔵が一つの限界点というふうな考え方があるわけです。しかし、実際にはそれを超えても、それまで蓄積した経験や知識というものを使っていくならば人間は使える、そういうことですけれども、これは通説でありますが、しかし、六十歳から六十五歳以上で制度として考えた場合に、日本には在職老齢年金の制度というのがあるのですが、これは非常に欠陥が多いのです。  そこで、スウェーデン等がやっておるのは、部分雇用それから部分年金、六十を超えますと労使間で契約する、あるいは会社で就業規則をつくったりいたしまして、そして六時間の労働をやろう、五時間の労働をやろう、これは通勤時間との関係がありますけれども、そして残りは部分年金で保障していこう、そういうふうに、そのときの個人個人の働く意思と能力に即応したような条件に対応して、部分雇用とか部分年金の制度を制度として順次確立さしていきますと、高齢化社会において一生涯一定の役割を果たすという道も開けるし、年金制度においても画一的な開始年齢の議論等は私はだんだんと形が変わってくる、こういうふうに思うわけです。部分雇用、部分年金のそういう制度というものを私は政府全体として考えるべきではないか、こう思いますが、いかがでしょうか。
  45. 吉原健二

    ○吉原政府委員 年金と雇用の関係、大変難しい問題でございますけれども、私どもは、一つは、年金との関連で言いますと、支給開始年齢をどうするかという問題が一つございます。それからもう一つは、今スウェーデンの例を引かれましたけれども、在職中の高齢の方々に対する年金をどう考えたらいいのか、それを賃金との関係でどう調整したらいいのかということが、私は年金と雇用との関係におきまする年金制度の側から言うと問題点だろうと思います。  今回の改正案におきましては、支給開始年齢については、基礎年金は六十五歳からということにしておりますけれども厚生年金については、現在の雇用の状況、定年制の状況等から見て時期尚早であるという御意見もございましたので、今後の課題としておりまして、従来どおり、六十歳から六十五歳までは従来の厚生年金を支給することにしているわけでございます。  それから、六十歳から六十五歳までの間のいわば在職老齢年金をどうするか、つまり賃金を受けながら年金を受け取るという間でございますけれども、それについてもいろいろ議論はございましたけれども、今回はその基本的な考え方をそのまま受け継ぐ。やはり、今御質問の中にもございましたスウェーデンの部分年金なんかの考え方、これも一つの非常に参考になる考え方でございますので、今後その在職老齢年金をどうするかということにつきましては、今後の課題としてひとつ検討をしてまいりたいというふうに思っております。
  46. 大原亨

    大原委員 後でまた各論で、皆さんも同僚議員も議論をいたしますけれども、在職老齢年金というのはこれは逆選択をしまして、月給を下げておいて、ボーナスをぱっと上げて、そこで所得を保障しておいてそして年金も取っていく、だんだんとこういう制度になっておるわけですよ。そういう不合理な制度というものが固定しできますと逆選択が起きるのですが、そういう問題をやはり改革をしなければいかぬわけですよ。これでは改革にならぬわけです。もちろん在職老齢年金自体も改善をしなければならぬということです。働いた場合に損がないようにしなければならぬということもあります。しかし、それらをにらみながら、やはり制度として六十歳を超えた雇用と年金のあり方について根本的に、申し上げましたような点を考える必要があるだろう、こういうふうに私は思いますし、今、それは検討課題というふうな御答弁がございましたので、一応おいておきます。  そこで、さらに質問を進めてまいりまして、昭和五十六年の十一月、十二月の臨時国会におきまして、行革特例法が出たわけです。これは場当たりの政策の一番典型的なものでありますが、厚生年金の国庫負担を四分の一ほどカットいたしまして、そして後で返すという仕組みでありますが、その厚生年金等の四分の一を政府が支出を抑制いたしまして、社会保険料に振りかえたわけであります。その金額について、利子を含めまして、五十七年から始まって五十八年、五十九年ですから三年がいよいよ過ぎまして、来年度予算編成ですから、この三年の間で実際に予算措置をいたしました、そういう大蔵省の予算上の操作と一緒に、厚生年金の会計に穴があきました。その数字的な実態をお答えいただきたい。
  47. 朝本信明

    ○朝本政府委員 お話しのように、五十七、八、九と三カ年間にわたる特例措置でございますが、三カ年間合計で減額された金額は六千四百二十億でございます。
  48. 大原亨

    大原委員 その運用上の利子ですが、利子分は幾らですか、それを加えて。
  49. 朝本信明

    ○朝本政府委員 そのときどきの預託運用利率で計算をいたしますと九百四十億でございます。したがいまして、先ほど申し上げました六千四行二十億と足し合わせますと、七千三百六十億に達するわけでございます。
  50. 大原亨

    大原委員 七千三百六十億円が三カ年間で、言うなれば特例措置として法律で決めまして国庫負担をカットしてきたわけですね。そのカットしたものを、厚生年金特別会計は、今のお答えになった文字どおりの言うなれば穴を保険料で埋めた、積立金で埋めた、こういうことになるわけですか。
  51. 朝本信明

    ○朝本政府委員 給付費に対する国庫負担でございますので、給付費自体は変化をいたしませんで、受給者がふえればその分だけふえていくということでございますから、お話しのように国庫負担が繰り入れられなかった分は保険料相当額で支払われたということに保なるわけでございます。
  52. 大原亨

    大原委員 それは以上でも以下でもないのですね。そのときの議事録を読んでみますと、五十九年が終わりますと、利子を含めまして今の七千三市六十億円を速やかに返すということが何回も繰り返して確認されておりますが、厚生大臣は、六十年度の予算編成においては当然その返却を求めていかれると思うのですが、その御意思と見通しについてお答えをいただきたい。
  53. 渡部恒三

    渡部国務大臣 これは年金の将来の安定した財政の確保のために極めて重要な問題でございますので、できるだけ速やかにこれが返されるようにこれからも求めてまいるつもりでございます。
  54. 大原亨

    大原委員 具体的に六十年度の予算編成の中で返却を求めるのですか。
  55. 渡部恒三

    渡部国務大臣 国の財政が非常に厳しい状態でございますが、そういう財政の中でこれは当然返してもらわなければならないお金ではございますから、できるだけ速やかに返還を求めていくということでお許しをいただきたいと思います。
  56. 大原亨

    大原委員 それは、あの法律は特例法ですから、三年たちましたら本則へ返るのですよ。その法律に基づいて、当然大蔵省に対しまして予算上の要求をすべきである。国庫負担を具体的に厚生年金特別会計に返す。これは今年金改革議論しているのですから、しかも莫大な七千三百六十億円の金ですから。とにかく国庫負担をカットしておいて保険料の負担で穴埋めするとかいうのは、さっき租税保険料の負担率の議論を長々といたしましたけれども、被保険者や国民にとってはそういうことは何の行革でもないわけですよ。労使が保険料を出し、そして今までは、年金を支払う段階はなし保険料を拠出する段階で国庫負担がついた時代があるのですから、そういう国庫負担も含めて年金財政をつくっているわけです。ですから、それを移動させるだけというのはそんなものは行政改革でも何でもないわけです。被保険者とか国民にとっては無縁なものです。それこそ、そのために仕事をつくっていくことになるでしょう。ちゃんと利子も払うなら国債でやったって同じことでしょう、借金をしたって同じことでしょう。厚生年金の特会から借金をしましてやっておいて、しかもあるとき払いのようなそういう態度をとるということは、最近ちょいちょい一部では言われておるようですが、もっと厚生大臣としては毅然たる態度をとって、これから年金改革議論しようというときですからぴしっとやってもらいたい。それでなければ、これから私がいろいろな憶測を加えて推定して質問する、そういう問題に入ってまいりますけれども政府の意図というものがどういうところにあるかということを明らかにする必要があると思うのですが、毅然たる態度をとってもらわないと、そんなものが行政改革であるなどというようなことはとんでもないことでございます。こんなものはインチキもひどいものでございます。そのために仕事がふえるのですよ。そういうところで仕事をふやしていくというふうなものは全然理屈にならない。行政改革の名前においても、私の立場から断じて認めることはできない。厚生大臣のしゃんとした答弁をいただきます。
  57. 渡部恒三

    渡部国務大臣 今先生からお話しのありましたように、これは筋としては当然本則に戻るのでございますから、私どもは、将来の当然のことでございますが、これは要求していくべきものでございます。これは考えは全く同感でございます。ただ、具体的に、この六十年度の予算編成に対する個々の私どもの問題はまだ確定しておりませんので、いましばらく御猶予をちょうだいしたい。
  58. 大原亨

    大原委員 厚生大臣は、基本的な態度としては私が申し上げたことと同じだ、こういう答弁です。  大蔵省、それから総務庁、それぞれ見解を述べてください。
  59. 小村武

    ○小村説明員 行革特例法に基づきます年金の国庫負担の減額分につきましては、先ほど厚生大臣からお話しがございましたように、できるだけ速やかに特別会計への繰り入れに着手するという考え方につきましては、この法律の制定のときの論議のときからいささかも変化はございません。法律にも書いておりますように、将来にわたる年金財政の安定を損なわないこと、それから国の財政状況を勘案して考えるということになっておりまして、いつ、どういうふうな内容で、手続でこれを行うかということについては、国の財政状況等を考えまして、現時点ではまだ明確にお答えできるような状況にはございません。
  60. 大原亨

    大原委員 この本則に、本法に返って、そして本法をそのままやればいいわけですから。また、もう一回こういうことを繰り返すのですか。特例法のようなことを繰り返すのですか。そんなことは断じてできませんよ、今年金審議しているときに。そういうインチキなことは絶対できませんよ。その主計官の答弁を、大蔵省の答弁とか政府答弁というふうに、そういう予算編成の基本方針として、私は聞き流しにはできませんよ。あなたの答弁ではだめです。
  61. 小村武

    ○小村説明員 今申し上げましたのは、五十七年から五十九年までにおきます年金の国庫負担の減額分の返還について、特別会計への繰り入れについて申し上げたところでございまして、今後どうするかということでございますが、特例法でございますから、特例期間経過後は本則に戻るということは当然のことでございます。
  62. 大原亨

    大原委員 では、本則に基づいて来年度の予算編成をやるか。具体的に当時の議事録を見ますと、二年計画で返す、三年計画で返す、こういういろいろな案を出して、審議を促進しておったようです。つまり議員の目をごまかしておったようであります。しかし、二年案と三年案というのが出ておるけれども、何年案でやるのか、こういうことまで含めまして、いよいよ予算編成にかかるわけですから。これはシーリングをやっているでしょう、シーリングということでこれだけ削れということの命令を出してこういうことをやるものだから、つまらぬことをやって仕事がふえて、議論がふえて国会が時間がかかることになるんだろう。そうだろう。大体行政改革に反しているのはおまえたちじゃないか。あなたの答弁じゃだめだ。返還計画を含めてあなたの考え方を言ってみなさい。
  63. 小村武

    ○小村説明員 過去におきます繰り入れ減額分についての返還計画、どういう内容で、どういう手続でやるかということについては、特例期間経過後における国の財政状況等も勘案をしてこれを考える必要があるということで、現時点ではまだ明確に申し上げられるような状況ではないということでございます。
  64. 大原亨

    大原委員 共済関係の人も待っているので、ここまでだけで終わるわけにいかぬので申し上げますが、今度の改革案によりますと、新国民年金昭和六十一年から六千八百円という定額保険料を取るのですね。そして国民年金の特別会計へ入れるわけですね。その特別会計から、国民年金の会計の枠内で基礎年金の勘定をつくるわけです。その基礎年金の勘定は、俗な言葉では賦課方式ということを言いますが、一年計算です。それで六千八百円一人ずつ保険料を取りまして、五千五百円の基礎年金分を一人について拠出をするわけです。そういうふうな仕組みになっておるわけです。そうすると、給付費の負担で五千五百円に対する三分の一の国庫負担がついておるわけですから、従来の考え方よりも、国民年金に対する国庫負担は、給付費負担ということにいたしましても、減っておるというふうに考えてよろしいか。
  65. 吉原健二

    ○吉原政府委員 現行制度の場合と改革案が実施されました場合の国庫負担がどうなるか、これは制度の仕組み、体系が全く変わってまいりますので、単純に国民年金の部分についてだけ国庫負担がどうなるかという比較が実は難しいわけでございます。  私どもの基本的な考え方としては、厚生年金国民年金を通じまして、現行制度の場合の国庫負担と比べて、新制度に移行した場合の国庫負担が減ることのないように、実質的に同じような水準を維持するようにという考え方で、今回の改革案をつくっているわけでございます。したがいまして全体としては国庫負担は同じである、減らないというふうに御理解をいただきたいと思います。
  66. 大原亨

    大原委員 厚生大臣、私の質問にちょっと足らなかったのです。そして、吉原新年金局長答弁もごまかしです。  年金というのは、後で議論するのですが、国民健康保険料は定額保険料ですね。そして、現行の国民年金というのは完全に、一〇〇%に近い賦課方式なんです。年金財政はパンクしておったのですよ。妻の任意加入の分で今七割ほどやっておるわけですが、それで助かったのです。その人がもらっていないから助かっておるのですよ。これは給付を受け出したらバンク以上であります。  そこで、国民年金の救済方法を考えたのが基礎年金の構想なんです。基礎年金の構想は今までの国民年金の水準よりも水準を下げるのです。六十年度については、一人五千五百円基礎年金の勘定に拠出をするわけです。そして年金水準はずっと足踏みさせていきまして、その結果として前の年金よりも給付が減ってくるわけです。前の年金をそのまま積んでいけば七万八千円になるのですから、二十五年で五万円ぐらいになるのですから、五年間休んだら五万円になるのですから、それを四十年五万円で抑えようというのが基礎年金です。そうすると、基礎年金の三分の一を国庫負担をするということになれば、前よりも国庫負担は減るでしょう。私の言うのはわかりますか。
  67. 吉原健二

    ○吉原政府委員 今度の国民年金について基礎年金の給付水準と比較をして申し上げますと、現在の国民年金が基本的に基礎年金部分に移行するわけでございますが、給付水準は、四十年の水準で見ますと、確かにおっしゃいますように従来七万八千円程度の給付水準が四十年で五万円ということになるわけでございますから、四十年というのはまだ発生しておりませんけれども、給付水準は低くなる、こういうことになるわけでございます。現行水準のままでやる場合には国民年金保険料は一万九千五百円まで上げなければならない、それをこの制度改革によりまして一万三千円に抑える、つまり給付も抑えることになりますけれども、同時に保険料の限度額も三分の二程度に抑えよう、そして国民の負担できる範囲内にとどめておこうという考え方でございます。  その国民年金の財政が一体どういうことになるかといいますと、確かに今までは、国民年金というものは、農業、自営業をやっておられる方、それからサラリーマンの奥さんの方も皆保険料を払っておられた。払っておられた方に対しまして、給付がだんだんふえてはきておりますけれどもまだまだ少なかったわけでございますが、今度の新しい体系では、被用者の妻、これは原則として基本的には厚生年金の方で負担をするということになったわけでございます。したがいまして、当両国民年金保険料は、少なくとも基礎年金の部分に関する限りは、確かにおっしゃいましたように六千八百円のうち必ずしも全部が基礎年金に今すぐ必要であるというわけではございません。ございませんけれども国民年金には、基礎年金の給付以外に死亡一時金でありますとか付加年金でありますとか寡婦年金といった独自の給付は残りますし、厚生年金の方も保険料を上げていく、国民年金もいずれ保険料を一万三千円まで上げていかなければならないという考え方に立ちまして、国民年金国民年金として必要な保険料をなだらかに段階的に上げていく、こういう考え方に立っているわけでございます。それから御質問のお答えに戻りますが、結局総体としての給付が減るために、全体として国庫負担の額も現行制度のままよりも減ることは確かでございます。
  68. 大原亨

    大原委員 そのことを聞いているのです。つまりそういうふうにして給付を絞っていけば国庫負担が減るから、それでなし崩しにずっと国庫負担が減っていくものだから、この特例法で、少々国が持ち出してもその穴を埋めていこう、こういうからくりが入っている。だから本則に戻って、厚生年金の財政についてはきちっとしなければいかぬ。そして利子も収入のうちであるから、それがきちっと年金計算の収支にできるようにしなければいかぬ、そのけじめをつけなければ絶対にだめです。  これ以上の基礎年金の問題については改めてやることにして、テーマを変えます。ここで今の問題は一応中断しますが、そういうことですから、絶対に来年度の予算編成においては本則に戻って、今まで三年跡融通した資金についてはちゃんと返して、そしてそれを基礎にして計算をしていく、こういうふうにしてもらいたいと思いますし、この問題は大蔵省側もある程度の答弁をいたしましたが、これはすれすれの答弁でございますし、臨調などは中長期の展望なんか全然考えないで腰だめでやっておるということですから、この問題は残っておるということにしていきたいと思います。  共済の諸君が見えておるわけですが、共済年金の調整、統合の問題をどういうふうに扱うのか。厚生年金国民年金政府案のように、私はまさか通るとは思わぬ、修正されると思うが、私ども考え方の接点を私は言っているのです。今話をしておったのですが、国庫負担との関係で、話を切りましたけれども、そう絞るのはけしからぬという話が前提にあるのです。国庫負担をふやして、基礎年金の形を変えていけば、これは年金制度基本懇の答申にもあるわけですから、そういう財源の調達をどうするかという問題がある。経過的にどうするかという問題があるが、その問題には触れませんが、非常に重要なのは、共済年金厚生年金国民年金の統合との関係においてどのように調整をしていくのかという点について聞きたいと思います。
  69. 坂本導聰

    坂本説明員 お許しを得まして、大蔵省の共済課長坂本でございます。  御案内のように、去る二月二十四日の閣議決定におきまして、「昭和六十年においては、共済年金について、上記の基礎年金の導入を図る等の改革の趣旨に沿った制度改正を行う。」こういう決定が得られております。ところで、今大蔵省と申しましたが、この共済制度は、御案内のように大蔵省所管の国共済あるいは自治省所管の地方共済、農林省所管の農林共済、文部省所管の私学共済と分かれてございます。したがいまして、私どもとしては、各共済おのおの歴史的な沿革等もございますから、全く同一ということではございませんけれども、各共済が共通して対応すべきものは共通して措置することが必要ではないかということで、各共済グループの所管者が集まりまして、なお学識経験者も含めまして、全体として共済制度をこの六十年改正に向けてどう行っていくかということを目下勉強中でございます。
  70. 大原亨

    大原委員 その勉強会のメンバーを言ってください。
  71. 坂本導聰

    坂本説明員 お答えいたします。  ただいま申し上げました大蔵省の共済課長、文部省福利課長、それから自治省福利課長、農林省農協課長という所管四課長のほかに、朝日新聞で編集委員をやっている橋本先生、あるいは団体生命の村上先生、そのほかに公務員制度とのかかわりがございますので、人事院の研究課長、そのほか国共、地共等について経験のある方々を含めまして勉強会を行っております。
  72. 大原亨

    大原委員 その研究会はいつごろ結論を出すのですか。
  73. 坂本導聰

    坂本説明員 去る二月二十四日の閣議決定を得ました後、三月末から検討委員会を始めておりますけれども、私どもといたしましては、明年二月あるいは三月という時期に法律案を提出するということを考えますと、その検討委員会のいわゆる共済共通のたたき台的なものは、この九月ぐらいまでにぜひつくり上げていただきたいというふうに考えております。
  74. 大原亨

    大原委員 そのたたき台、原案をつくる際に、厚生年金国民年金の統合の問題で問題になっている基礎年金、あるいは二階の報酬比例年金、所得比例年金、それぞれ算式があるわけなんですが、そういうものは共済年金も適用するということなんですか。
  75. 坂本導聰

    坂本説明員 御指摘のまず基礎年金については全く同一のものを考えることになるのではないかと思っておりますが、その上の部分につきましては、何分にも過去の歴史的沿革あるいは給付、算定の方式等が異なるわけでございます。したがいましてどういう形に構築するか、例えば報酬比例年金というものはできるだけ厚生年金に近いものにして、さらに公務員制度なり職域年金というものをつくり上げるのか、あるいはそういった職域年金部分も含めた報酬比例年金等にするのか、あるいはいずれにいたしましても、そうした場合に公務員制度なり職域年金という部分をどういった程度の水準にするのか、あるいはそうした二階以上の部分についての給付要件等を過去の歴史的違いを含めてどう調整していくのかという点が、まさしく大きな検討課題ではないかというふうに考えております。
  76. 大原亨

    大原委員 これで時間を全部とるわけにいきませんが、つまり一階の基礎年金については千二百五十円掛ける勤務年数というふうな新しい基礎年金の算式を使う。例えば二階や三階については、所得比例年金や職域年金についてはそれぞれ今までの経過、身分関係その他の特殊事情を考えながら積み上げていく。その際に、二階は標準報酬と関係がありますから、標準報酬をとるのかあるいは本俸をとるのかあるいは総報酬をとるのか、これについては議論を具体的に詰めていますか。
  77. 坂本導聰

    坂本説明員 まさしく御指摘の点が非常に大きな問題でございます。仮に公的年金の完全一元化ということならば平均標準報酬をという考え方もあり得ましょうけれども、しかしながらかつての歴史的沿革があり、本俸で保険料を徴収しているという事実関係がございます。したがいまして、その辺をどう考えていくかということで目下検討中でございます。
  78. 大原亨

    大原委員 先般の国会で、国家公務員共済と三公社の統合法案で、国鉄共済年金救済の措置をとりました。この保険料率についてはもう既に決定しましたか。あるいは昭和六十五年以降はこれは全く野放しの状況でありますが、国鉄共済年金のように、他にも例があると思いますが、行き詰まった年金については大体どのような骨組みで統合を進めていくのか。
  79. 坂本導聰

    坂本説明員 全体の年金制度の一元化ということについて私からお答えするのはあるいはいかがかと思いますが、まず前段の国鉄共済の昭和六十年から六十四年の問題でございますけれども、これは目下、国家公務員共済組合連合会の中に国鉄問題の財政調整事業運営委員会というのを設けて、そこで具体的に、国鉄に対していかなる拠出をしていくかということを目下検討していただいているところでございます。したがいましてその結論はいましばらくかかるのではなかろうか。しかし、いずれにいたしましても、国鉄共済に対しまして国家公務員共済及び電電、専売共済が応援をするという形で対応することになっているわけでございます。  その次の昭和六十五年以降をどうするかということでございますが、これはもう率直に申し上げまして、国家公務員グループでは、母数の関係からいって、国鉄という大世帯を将来とも背負い込むということは困難でございます。したがいまして、私どもは、去る二月二十四日の閣議決定の中に、第四項目でございますけれども、「昭和六十一年度以降においては、以上の措置を踏まえ、給付と負担の両面において制度間調整を進める。これらの進展に対応して年金現業業務の一元化等の整備を推進するものとし、昭和七十年を目途に公的年金制度全体の一元化を完了させる。」とございますが、この線に沿いまして、給付の一元化にあわせて負担の一元化、制度間調整というものをお願いしたいというふうに考えております。
  80. 大原亨

    大原委員 今の坂本課長の説明は、現段階を説明する場合には、その段階の問題としては正直に答弁をしております。しておりますが、重要な問題についてはほとんど決まっておりません。私は、厚生年金国民年金の統合と一緒に、やはり共済年金の統合についても、基礎年金部分だけではなしに全体としての合意がなければいけない、今までいろいろな議論が続いてきたわけですから。ですから、今の話を聞いておりますと、年金担当大臣の国務大臣である厚生大臣はほとんどノータッチのような状況であります。それで年金担当大臣は、私も予算委員会議論しましたが、きちっとやるべきだと思うのです。しかしながら、後藤田君とポストを争いました危機管理何とかいう国務大臣、中西君、あの場合だって設置法的なものが一応あるんですから、年金担当大臣の場合はちゃんと内閣に設置法をつくっておかなければ、何も聞かないでどんどん独走している。  自治省の考え方も聞きたいのですよ。地方公務員共済は、公立学校や警察はそれは全然蚊帳の外なんです。地方公務員の共済組合法の内部でも、地方公務員の自治体だけは連合体をつくったわけですが、非常にシェアは狭いわけですけれども、ともかくも共通項があるわけです。組織があるのです。国家公務員共済と三公社の間は、統合法案と言いながら、これは全然別なんです。ですから、これから国庫負担のあり方をどうするかとか追加費用をどうするかというたくさんの議論があるわけですよ。それを整理しなければできないわけでしょう。日本銀行や道路公団や住宅公団等は準公務員的なものでありましても、これは厚生年金の方では国庫負担は行っているわけですから、公団公社などもちゃんとやるべきことをやっておいてやらないと、将来統合しようと思ったってできはしない。民営とか国営とかということは関係ないです。関係なしにそういうことをしなければならない。たくさん問題があるのですけれども、地方自治体においても公立学校とか警察はもう全然別だ。  だから、そういう問題を考えてみますと、共済年金の統合というのは高級官僚諸君も含めて自分の問題ですから、これはかなり抵抗があると思うのですよ。表面ではついていっているように見えるけれども大臣の任期は大体十一月かなと見ておいて、留任するともう二年かな、総理は三年になるらしいから一年間かなと思うにしても、大体年金担当大臣の言うことなんかというものは聞かないで、そこを中心ではやっておらぬ。そうすると、年金審議する途中において重要な問題が起きてくる。だから、私は、年金の担当大臣についても、それぞれ担当大臣の場合には設置法があるのですから、設置法をつくって年金担当大臣が総括ができるようにしないと、現業部門は別にいたしましても、企画部門についてはきちっとしておかないと、この問題というのは非常に大きなそごを来すし、変なものができる。厚生年金国民年金統合法案でも変なものができるかもしれない。十分その可能性がある。あなたが大臣を続ける続けないにかかわらず、年金担当大臣の職務権限を設置法で明確にするような措置をとるべきであると思いますけれども、いかがでしょう。     〔委員長退席、稲垣委員長代理着席〕
  81. 渡部恒三

    渡部国務大臣 大原先生の御意見、極めて貴重な御意見であると考えます。今御指摘のように、いろいろ難しい問題が包含されておることは事実でございます。ただ、私はこの意味では評価していただいていいと思うのでありますが、国民的な大きな要望である高齢化社会に備えてのしっかりとした年金制度を一日も早く発足をさせなければならない。また、官民格差という出題をやはりこの機会に是正しなければならない。こうした国民の要望にこたえて、それぞれの沿革があり、それぞれの利審がある皆さん方が同意してくれて、閣議決定にまで持ち込むことができたわけであります。いわばこれは、年金制度を立派なものにして、国民生活を将来にわたって安定させるということで、小異を残して大同につくという大きな立場でここまでこぎつけることができたわけでありますが、小異は残されておるわけでありますから、これらの問題を今後精力的に詰める努力をしてまいりたいと思います。
  82. 大原亨

    大原委員 大蔵省の答弁によりますと、九月ごろに共済年金厚生年金国民年金にどう対応して改革していくかという原案ができる、たたき台をつくる、まとめるという見通したというふうに言われたわけです。私どももしばしば機会があることに言っておるのですが、年金の問題は、年金担当大臣議論の点においても触れたのですが、これは国会においても縦割りではなしに、例えば農林共済は農林水産、私学共済は文教、地方公務員共済は地方行政、それから大蔵は国家公務員、三公社は運輸省、こういうふうな形、縦割りの年金はなしに、それこそ国会年金改革の特別委員会を設けて、国会一つ委員会を設けておいて、そしてそこで臨時国会を開いて、そして集中的に審議をしていけばいい。そういうことをやらないといかぬ。この問題だけばあっと、この国会中にやってくれなんてとんでもない話だ。そんなことをやったら、後どういう問題が起きるかわからぬよ。臨時国会を開く権限は総理大臣にあるんだが、この問題は高齢化社会の中心的な課題だから、臨時国会を開いて特別委員会を設けて総合的に議論する、そういうことをやるべきである。与党を含めてやる。大臣、いかがですか。
  83. 渡部恒三

    渡部国務大臣 先生の御意見、まことに共鳴するところの多い貴重で重要な御意見だと思いますが、ただ、私がお答えするには余りにも大きな問題でございます。私は気持ちとしては同感でございます。(「早く通してもらわぬと……」と呼ぶ者あり)
  84. 大原亨

    大原委員 早く通すんだよ。そのかわり徹底審議するんだよ。徹底審議して、いいものに変えて通すわけだ。  それで厚生大臣政府与党連絡会議か閣議かな、中曽根総理大臣をあなたが指揮するわけにはいかぬだろうが、あなたが発言をして、そういう趣旨のことで、そういう国民的な合意を得るようにしなければいかぬ。問題点の議論はこれから申し上げるのですが、私は序の口で一番大切なことをやるんですが、徹底的な審議をしながら、合意を得なければ、これからの高齢化社会に対応できない。そのことが、今は亡き山口さんの霊にこたえる道になるんだよ。心血を注いでやっているんだよ。非常に苦労してやっている。頭を使って苦労してやっている。しかしながら、その枠が問題なんです。だから、これは二者択一ではないけれども、知恵を絞れば絶対にいい案があると私は思っているんだ。これは午後の質問に集中いたしますけれども、案はあると思う。だから、国会に総合的なそういう委員会、これこそ特別委員会を設けて、そして臨時国会で徹底的に審議をするということにしてもらいたい。  十一月の総裁選挙で中曽根総理が吹っ飛べば、またその吹っ飛ばした者が総理大臣になってやればよろしい。そんなことは構っちゃいられないですよ。鈴木元総理大臣は、秋には風が吹く、こう言ったそうだが、私も吹くと思う。レーガンかモンデールか、どっちが勝つかもわからぬよ。私もそう思っている。親ガメが倒れると子ガメが倒れるかもしらぬよ。しかしながら、そんなことは別だ。これは徹底的に審議をして、立派なものをつくっていかないといけない。このような複雑な、国民の中長期にわたる負担にかかわった、しかも高齢化社会になっていくに当たり、本当に社会的な連帯をもって、できるだけの審議を尽くしていくということが日本の民主主義の社会を保っていく道である。平和の基礎である。平和の基礎というのはソシアルセキュリティー。ソシアルセキュリティーというのは社会保障のことだ。ナショナルセキュリティーというのは国家保障のことだ。これは本当は同じことなんです。それらの情報を集めて議論をして、そして方針を決めるべきであると思うが、あなたは賛成されたんですから、あなたをこれ以上追及することはできませんが、与党理事委員の皆さん方には、私は後ろを向いて声を大きくしてこのことを言っておきます。  それから、重要な問題で、最近の動きの中で欠落している問題は児童手当の問題であります。特に財界の諸君が、児童手当を邪魔者のような格好で処理している。最近の小委員会や最近の答申を見てみましても、児童手当を抜本的に見直すというふうに強調しておりますね。行革審の方、いますね。臨時行政改革推進審議会が、またその前は小委員会がしばしば出しておる、その意味はどういう意味ですか。
  85. 新村淳一

    新村説明員 お答えいたします。  臨時行政改革推進審議会では、五月に政府の方から、六十年度において、臨調答申に沿って「増税なき財政再建」を進めていくための行財政改革のあり方をどうしたらいいか、そういうような御要請がありまして、今、先生の御質問の小委員会をつくりまして、いろいろ専門の方にもお集まりいただき、それからまた、その後も審議会そのもので議論を重ねてきたわけでありますが、大きな考え方といたしましては、やはり政府の方からの御要請にもありますように、臨調答申に沿って六十年度においても「増税なき財政再建」を堅持していただきたい、そういう大きな考え方に立ちまして、すべての行政分野の制度、施策の見直しを行っていただきたい、考え方としてはそういう非常に大きな考え方に基づいて、今回総理に御意見を提出した、そういうことでございます。  お尋ねの児童手当につきましては、その意見においては、「臨調答申の趣旨に沿って、速やかに制度の抜本的見直しを行い早急に措置する。」こういう意見の内容になっております。(大原委員「その内容は」と呼ぶ)はい。今、そこに至りました私どもというか、審議会が検討いたしました大きなスタンスを御説明したわけでございます。(大原委員「前が長過ぎる」と呼ぶ)いやいや、そこから御説明申し上げないと、全体の大きなフレームの中の話でございますので、お言葉を返すようでございますが、恐縮でございます。  先生も御承知のように、この児童手当につきましては、臨調の緊急答申におきまして「抜本的見直し」を行うということがまず提言されているわけです。それからその後、まさにその臨調答申に沿いまして、所得制限がこの三年間行われてきたという事実関係がございます。そして、その期限は六十年の五月に切れるということでございます。それらを踏まえまして、私、審議会の個々の議論の内容をああだ、こうだと御説明する立場にはございませんけれども、すべての行政分野で見直しを行っていかなければいけない、そうして臨調答申で抜本的見直しということが提言されておる、そこら辺を踏まえまして、政府の方では、現在、六十年五月のその期限が切れるのを控えて、児童福祉審議会の方で鋭意検討しているという御説明があったわけでございます。  そこで、籍議会としては、いろいろ議論はございましたが、最終的な意見といたしましては、臨調答申に沿いまして児童福祉審議会で検討を重ねていただき、抜本見値しを行っていただきたいということをお願いいたした、そういうような経緯であると私は考えております。
  86. 大原亨

    大原委員 何を長いこと答弁しているんだよ、何を言ってるんだよ。つまり児童手当は廃止せよということなのか、これは。
  87. 新村淳一

    新村説明員 審議の過程ではそれはいろいろな議論はございました。それは、現在の制度が持っている意味はどこにあるのだろうか、臨調答申がその抜本的見直しと言っている意味を今の時点でどういうふうに考えたらいいんだろう、まさにいろいろ議論がございました。しかし、そこはまさに、行革審議会の今回の審議は非常に短期間の審議でございまして、臨調答申が抜本的見直しと申し上げた趣旨を、政府、それから政府の児童福祉審議会で、国民の理解が得られるようによく十分御審議をいただいて見直しを行っていただく、これが提言の趣旨でございます。
  88. 大原亨

    大原委員 端的にもう一回聞くが、見直しをして、原点に返って考えて、必要であるならばこれは育成をしていく、存続させてよくしていく、こういうことも含まれておるのかどうか。
  89. 新村淳一

    新村説明員 おっしゃいました原点という意味がどこの原点なのかちょっとわかりかねますけれども。いや、恐縮でございました。要するに臨調緊急答申が抜本的見直しと申し上げたわけでございます。それは、その前の制度を見て抜本的見直しということを申し上げているわけでございます。今回は児童福祉審議会で、所得制限の期限が切れる、それを控えていろいろ御検討いただいている、その臨調緊急答申の意味と同じ意味で、抜本的見直しをしていただきたいというふうに審議会は考えたものと私、事務局の参事官として考えます。
  90. 大原亨

    大原委員 全然わからぬじゃないか。何を言っているのだ。あなたじゃだめだ。あなたじゃだめだから、瀬島氏なり、もう少しだれかかわれる人を持ってきなさい。  あなたにちょっと聞いてみるけれども日本の児童手当というのは何番目の子供から出しているの。それから日本の合計特殊田生率と言われているのは大体どのくらいの数字だ。その二つにどの程度認識しているか、答弁してください。
  91. 新村淳一

    新村説明員 今手元に資料がございませんので、あるいは間違ったらお許しくださいませ。現在の児童手当につきましては、第三子以降と承知しております。  それから、合計特殊出生率につきましては、手元に資料がございませんが、近年低下しておりまして、一・七幾つかと思います。恐縮でございます。
  92. 大原亨

    大原委員 それで、時間も来たから簡単に言うが、児童手当について審議会は二、三年前に答申を出しているのです。税金の家族の控除を振りかえる案があるわけだ。外国でもやっているわけです。第一子から出すのがある。第一子から出しているのが六十何カ国あって、最近は児童手当の見直しが始まっているのですよ。日本では、その対応で母子福祉年金で児童扶養手当ができたけれども、今問題は残っている。その前に児童手当は、所得保障、年金と同じような密接な一環として児童手当を位置づけて、昭和四十二年に初めて佐藤総理大臣国会答弁して、その後立法化に着手をして、小さく生んで大きく育てる、こういう答弁を繰り返してやったんだ。これは全然大きくならぬだけじゃなしに、依然として第三子じゃないですか。第三子といったら、今第三番目の子供を生むのなんか少ないわけだ、合計特殊出生率からいったって。だから関係ないのだ。  だから、子供を社会的に大切にしていくということをやらないと、二十年後には労働力になるんだから、民族の活力というものは落ちてくるんだ。ばかな厚生大臣がおって、優生保護法を改正して避妊を禁止をして、そして子供をふやしていこうという人もおるのだが、その意図たるや非常に壮であるけれども考え方は全然とんちんかんである。そういうこともあったんだが、国際的にも、ドイツなどでもそうですが、この議論が真剣になされておるわけです。  しかし、厚生省の人口問題研究所が、時間がないからはしょりますが、しばらくして二十一世紀になると合計特殊出生率が二ぐらいに返ると言うのですが、私はそうではないと言っておるのです。慶応大学の安川研究会などはそれを否定しておる。安川研究会の意見がここ四、五年来は人口の推計にはちゃんと当てはまっておるわけです。人口問題研究所はだれかが政治的にちょっかいをかけるのかもしらぬけれども、非常に推計が間違っておる。  私は、今の状況は、共働きもあるけれども、高学歴化もあるし、住宅環境、住宅は土地政策がないから、土地がとても高くなって、ローンが高くなっておる、そういうこと等で教育費も重なっておるから、日本の状況というものは非常に問題を抱えておると思うのです。ですから、年金を考える際には、所得保障全体を考えるときにやはり視野を広げて児童手当の問題も議論をしていかないと、目先だけで抜本見直しだ、それで内容については参事官が答弁するように全然インチキな答弁をしておいて、実際にはあれを切れ、切れと指導しているのです。  厚生大臣は、そういう大勢の中で、児童手当の問題についてきちっとした考え方を持ってやってもらいたい。これは民族百年の大計であるだけではなしに、児童福祉政策とかあるいは民族の活力とか言われる問題と直接関係ある問題であるが、私はその点について大臣見解を聞きたい。
  93. 渡部恒三

    渡部国務大臣 来年度予算編成の方針というような政策面でのことは、今お話しがありましたように、これは児童福祉審議会の答申をちょうだいすることになっておりますからそれまで御勘弁をいただきたいと思いますが、私の私見を申し上げさせていただければ、これは大原先生の考えとほぼ同じでございまして、今度厚生省が発表いたしました人口白書では、出生率は一・八を下回っております。これは将来の活力ある民族の発展ということを考えさせられる問題でありまして、私は子供は国の宝であると思っております。その子供を当然親が立派に扶養していかなければなりませんけれども、しかし、そういう今日の状態を考えれば、やはり二人以上の子供さんを生んで立派に育てて世の中に出してくださる方、これは国家民族の将来にも大きな役割を果たしてくださるのでありますから、そういう方を奨励するというようなものは積極的な意味も持つものでございますし、先生の御指摘のこの児童手当は、でき得れば存置をしてまいりたいという個人的な考えを私、持っておりますが、これはあくまで、厚生大臣としては、今御審議をお願いしておる審議会の答申を待って政策を決定してまいりたいと思います。
  94. 大原亨

    大原委員 時間が来ましたので、これで一応私の質問は午前中の分は切りますが、これからの予告をしておきます。  私は全部へ手を広げて質問はしない。あと残っているのは、私がぜひ集中的に議論したいと思っておるのは、政府の基礎年金の構想は果たして妥当なものであるかどうか、修正する余地がないかどうか、問題はどこにあるのか、こういう点を中心といたしまして、きょうは同僚の皆さん方のそれぞれの各分野における専門的なこと、この議論は全部関係がありますが、私はその総論的な質問をしておりますから、再開をされましたならば、基礎年金につきまして質問を続けさせてもらいたい、こういうことを予告をいたしまして、私の午前の質問を終わります。
  95. 稲垣実男

    ○稲垣委員長代理 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時五分休憩      ――――◇―――――     午後一時六分開議
  96. 有馬元治

    有馬委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。大原亨君。
  97. 大原亨

    大原委員 午後の質問ですが、第一の質問は、基礎年金を思い切って導入した理由、背景についてお聞きするわけですが、その前に、その問題に関係しまして、大蔵省の方が時間の都合か何かがあるそうですから、一番よくない説明員ですけれども、便宜を図りまして最初に質問をいたします。  基礎年金に国庫負担を導入することについては、臨調答申は直接は触れておりませんが、「抑制」というのですが、社会保険審議会や社会保障制度審議会における答申は、年金制度に対する国庫負担についてはこれを抑制しないこと、そういう趣旨の答申が出ておることについては大蔵省、知ってますか。
  98. 小村武

    ○小村説明員 本法案が提出される前に、各関係審議会にお諮りをし答申をいただいた、そのことについては存じております。内容についても存じております。
  99. 大原亨

    大原委員 大蔵省は、財政再建その他の問題を取り扱うときに一定の枠をはめていくわけですが、それはいつまで続くかわからぬけれども政府の方針がそうだ。そのときに、大蔵省もそのことを承知の上で予算の査定をやっているのか。
  100. 小村武

    ○小村説明員 私ども、毎年予算の査定を行う場合には、臨調答申等も尊重をいたしまして査定をしております。ただ、大きな制度問題につきましては、制度それぞれの論理がございますから、その論理に従って、厚生省と御相談をして予算を組んでいくということで、今対処している次第であります。
  101. 大原亨

    大原委員 年金の制度の中身とか、これから十年、二十年後にはどうすべきか、どうなるかということについて認識がない者が予算査定するわけです、今の日本の制度は。そういうシステムになっているのだ。そこで、厚生省が九兆円余りの予算を管轄しているものだから、そして臨調で萎縮している、そういう弱いところになたを振るう、こういうことになるわけです。だから、国会論議等を通じて、主計官だけでなしに、厚生省全体が十分勉強して前向きに対処することが必要だ。  今度は基礎年金一本に国庫負担を集中するわけです。集中しますと、従来の国民年金の国庫負担と厚生年金の表面的には二割の負担、その現状と制度改正による差がどういうふうに出てくるのかということについて、大蔵省はどういう理解をしておるか。
  102. 小村武

    ○小村説明員 先生御指摘のとおり、現在の国庫負担率は、国民年金は三分の一、厚生年金は二〇%、共済グループで一番大きい国共済は一五・八五%と非常にまちまちになっております。年金制度に対する国庫負担というのはやはり公平でなければならない、私どもこれがまず第一だと思います。  今回の改正法によりますと、基礎年金に国庫負担を集中させる、三分の一の国庫負担を導入するということでございまして、公平という見地から、私どもは大変評価をしている次第であります。  このほか、経過的に免除分あるいは優遇加算分等々について国庫負担がついておりまして、国庫負担率としては現状の維持ができているというふうに考えております。
  103. 大原亨

    大原委員 新国民年金になっても国庫負担率の三分の一の原則は変えない、こう言うのですね。しかし、これは議論を蒸し返すと時間がかかりますからしませんが、拠出時に国庫負担を三分の一するのと、保険料を出したときに負担するのと、給付時に負担するというふうに数年来変えてきたわけですが、そういうのは理屈の上では同じようでありますが、今度新しい基礎年金の構想が出てまいりますと、基礎年金自体が小さくなってくれば、率は同じであっても金額は下がる、こういうふうにあなたの答弁は理解してよろしいか。
  104. 小村武

    ○小村説明員 今回の改革一つの柱は、先ほど、午前中年金局長からも御答弁のありましたように、給付水準の適正化ということも一つ入っております。その反映として、国庫負担も保険料も同じように国民負担でございますが、適正な水準になるということをねらってつくられた制度と理解しております。したがいまして、率は維持できますが、適正化の分の反映というのは当然国庫負担の方にもあるだろうというふうに理解しております。
  105. 大原亨

    大原委員 率は維持するけれども、金額については納入としては違う場合が当然ある、こういう答えである。その答えのとおりであって、実際上、年がたつに従って現在の国庫負担のベースとは違ってくるわけです。しかし国民年金は、後で質問するのですが、現在の国民年金はパンク状況であります。そこで、現在の国民年金に出しておる国庫負担を、これは立法の経過があって、その中には五人未満もあれば、日雇いもあるわけですよ。単なる自営業者等でかなりいいベースのところと、下の方に零細企業があるわけですが、自由業やその他もあるわけですけれども、そういうことを考えて国庫負担をふやしてきたわけです。三分の一ということにしたわけですね。その精神から言うと、この国庫負担については削除すべきではない、絶対額も縮小することは間違いである。  もう一つは、厚生年金は給付時負担になって、二割になっています。共済年金は、農林共済や私学共済等は給付時の国庫負担ですね。他の方は拠出でやったのが給付時に変わっておるわけですね。それで、この国庫負担率が変わるけれども年金の統合調整に当たって、厚生年金、共済年金の国庫負担率に対する考え方はどうか。
  106. 小村武

    ○小村説明員 現在提案されている法律は、厚生年金国民年金、船員保険の三つのグループ、約九割を占めるグループについて基礎年金を導入することによる制度改正でございますが、共済年金につきましては、先ほど共済課長がお答え申し上げておりましたように、現在関係審議会あるいは勉強会を開いて検討しているということでございまして、私どもとしては、その検討結果を待って判断したいと思います。ただ、国庫負担についてはあくまでも公平でなければならない、こういう考え方は、私ども御相談にあずかるときでもそういうふうに申し上げたいと思っております。
  107. 大原亨

    大原委員 これはあなたに聞いても時間がむだになるかもしらぬが、ひとつ間いてみよう、テストしよう、あなたを。  これから後で議論するのですが、産業ロボットとかFAとか〇Aとか、第二次産業は、製造過程の中にそういうオートメーションやコンピューターが入っていって、労働力が非常に減ってくるわけですよね。そして就業構造の五割以上は、今既にそうですけれども、ソフト化、サービス化という傾向を産業構造と一緒に示しているわけですね。そうすると、頭割りに保険料を取るということは、中小企業とか労働集約度の密度の高い企業とかサービス業とかいうものは、人をたくさん使っておって保険料がどんどん上がってくると、経営者の負担もそうですが、労働者の負担もどんどんふえてくる。そして、産業ロボットその他で、企業活動に比較をして、人間の労働力をたくさん使わないところは保険料が少ないということになる。こういう保険料と国庫負担の関係が出てくるわけですが、この国庫負担との関係について大蔵省は基本的な議論をしたことがあるかないか。
  108. 小村武

    ○小村説明員 私ども、産業構造の変化等に伴って、これは保険料だけではございません、税制等についても当然関係局におきまして検討をしております。雇用や経済にこういう産業ロボットの導入等がどういう影響を及ぼすかということについては、まだ一概にその影響について結論は出ておりませんが、基本的には、産業構造の高度化あるいは労働生産性の向上等の問題につきまして、社会保険料なり税制等にどういうふうにこれを反映させていくかという問題については、今後も重要な課題だと思っております。  ただ、先生御指摘の年金に対する国庫負担率、基礎年金に対して、私どもは、蛇口でといいますか、給付に対して三分の一の負担をしているということでございまして、全体の国庫負担の量そのものについては確保されているというふうに理解しております。
  109. 大原亨

    大原委員 これから基礎年金議論するのですが、政府は基礎年金を思い切って導入したのです。しかし、これは北欧型だと言われる。きょうの午前中の議論でいいましても、基礎年金については共済を含めて同じようなものをつくる。全国民共通年金をつくる。全国民共通年金になっておらぬのだけれども厚生省の案は、政府の案は。だからそういうものをつくるということなのですが、それは中間的な段階もあるのですけれども社会保障制度審議会は昭和五十二年、七七年に新年全体系をつくったわけです。新しい体系をつくって建議をしました。その中には大蔵省の次官も委員で出ておるのです、一番出席が悪いけれども。あんなものは、行政改革でこの間絞ったときにカットすればいいのだけれども、ちゃんと置いてある。出てこない次官である。そして、勝手なことを大蔵省で言っているわけだ。これは内閣総理大臣の諮問機関だから、そこでやれば行政改革なんか吹っ飛ぶんだよ。  だから、そこで答申を出した中で、高齢化社会に対応して、国際的な立法の例を考えながら、基礎年金というのは保険料という名前がついた方がいい、スウェーデンのように特別保険料、それはついてもよろしいが、名前はともかくとして、安定した特別な財源を確保するという方針を出したわけだ。それが所得型の付加価値税の問題です。しかし、これは実施の段階でだんだんと客観情勢が変わってきた。それは「増税なき財政再建」ということで財界がけっちんを食わした。しかし、社会保障制度審議会には日経連の代表も委員として出て議論をして、そして学者が中心ですけれども、その答申、建議に対しましては消極的ではあるけれども賛成したのです。自民党の中にも、小沢委員が当時出ておったかどうかわからぬけれども、ともかくも何名か出ていまして審議してきたわけです。ですから、そこで議論したので、高齢化社会に対応しての国際的な立法の水準からいっても、後にも議論しますが、基礎年金にふさわしいような財源として所得型の付加価値税を提起したわけです。私どもの中にもかなりたくさんの議論があるのですけれども、社会保険料に近くて、直接税に、近くて、そして今申し上げましたように、産業ロボットとかオフィスオートメーションとか工場オートメーションとかと言われる猛烈なソフト化の情勢の中におきまして労働力の再編成が行われているわけですが、そういう企業活動の減価償却を除いた概計に、二%程度でありますと五兆円でありますが、そういう薄い税率を課していくということになれば、労使関係から言ってもこれは中立なのです、賃金や利潤や利子や地代、家賃の分配以前の根っこにかけるのですから。そして国民所得に相当する面ですが、直接投資として基本年金の財源にするという考え方は、政府の負担が三分の一でもだんだん重くなっているのですから、国民年金あるいは厚生年金については保険料もふやす必要があることは認めているのですから、だからどれを選択するかといえば、社会保障制度審議会の答申も十分選択して、現在できなければ将来どういう段階でやる、私もそういう案をつくっているわけですが、そういう案についても、石頭の行革の答申が、財界が負担を拒否しているからという理由だけでネグレクトすることはいけない。日経連の代表はそのときどういう発言をされたかといいますと、労使に対して所得型の付加価値税は中立てあると言っている。分配以前の根っこにかけるのだから理論的に中立てあることはわかる。それをどちらが負担するかということは労使間で協定すればよろしいこともわかる。しかし直接負担するのは企業である。これはスウェーデンの特別保険料を基礎年金に充当するのと同じです。そういう意味において、その財源についても、中長期にわたっては租税保険料等の負担率との関係においてこの問題を議論して、そして基礎年金が名実ともに性格にふさわしい安定した年金になるように考える必要があると思うのですが、大蔵省は――主計官、聞いておれ。こんなものは答弁集なんかにないよ。そういうことについて議論したことがあるか、議論する意思があるか、二つの点について聞きます。これが最後だから、答弁がよかったら帰すけれどもね。
  110. 小村武

    ○小村説明員 今回の年金法改正に当たりまして、まず第一点の、昭和五十二年の社会保障制度審議会で答申をされました所得型付加価値税を財源とする年金構想についても、十分念頭に置いて議論されたものと思います。これは厚生省が主管庁でございますので私どもはその御相談にあずかった立場でございますが、その結果、私ども厚生省と御相談した限りでは、やはり社会保険方式、給付を受ける者と保険料を払う者、この関係について、負担と給付の関係を明確にしておく社会保険方式の方がすぐれているのではないかという結論を得まして、今回法案が提出されているものと存じます。  先生御指摘の所得型付加価値税、これは国民所得に対してどれだけの税をかけるかということでございますが、一度に膨大な五兆円も、あるいは計算方式によるとそれ以上の増税が可能であるかどうか、それから税体系問題としても所得型付加価値税が現在の税制の中でどう位置づけられるか、理論としても十分議論のあるところでございますが、こういった点も十分念頭に置きまして、今回の厚生省御提案になっているような基礎年金構想に対して、私どもも大変評価をしているということでございます。
  111. 大原亨

    大原委員 その評価をしておるというのが、そもそも根元が間違っておるわけだよ。そこを見直せ、こう言っているのだ。臨調が出しているのを見直すのだ。つまり、臨調とか大蔵省が圧力をかけるから厚生省が非常に縮こまって、それで理屈をつけたのが今度の基礎年金の社会保険方式である。制度審議会にちゃんと次官も出ているのだ。大蔵省も厚生省も全部出ているのだけれども、勉強してないのだ。  そこで、あなたは釈放するわけにいかぬけれども、これは話のなにだから、後でまたひとつということで、忙しいらしいので、あなたは帰って、後でよく聞きなさい、また機会があったらやるから。今は時間がない、君を相手にしていると時間が惜しいわ。帰ってよろしい。  じゃ、もとへ返りまして、第一の基礎年金を導入した背景、理由、そのことについて答弁してください。
  112. 吉原健二

    ○吉原政府委員 基礎年金導入の理由でございますけれども、大変よく御案内の大原先生に改めて申し上げるのはなんでございますが、現行年金制度の問題点、いろいろございますけれども一つは、制度が分立をしていることによりまして給付なり負担に非常に大きな格差がある、それも合理的な格差ならともかく、合理的でない、不合理な格差があるということから、国民の間に今の年金制度に対する不公平感、不信感というものがだんだん大きくなってきているということがございます。  それからもう一つは、制度が分立していることによりまして、長い間に産業構造なり就業構造というものが変化をしていく、そういたしますと、小さな、特に小規模な年金制度では給付なり負担を維持することが非常に難しくなってくる。国鉄共済が一つの典型的な例でございますけれども、分立することによりまして制度の安定が非常に難しくなってきているということがございます。  もう一つは、いろいろな制度が分立していることによりまして、給付に重複が出てくる、あるいはむだ、過剰な給付が出てくるという面がある一方、各制度間のいわば落ちこぼれというような穴があくといったようなことから、無年金に結びつくというようなことがあるわけでございます。  これからの年金制度のあり方を考える場合に、こういった現行制度が持っているいろいろな問題点、不合理な点を是正していく、それには一体どうしたらいいかという考え方に立ちまして、私どもが結論を得ましたのが、各制度に共通する給付として基礎年金を設ける、いろいろな沿革なり経緯のございます年金制度というものを今すぐ全部一本にすることは不可能である、しかしながら各制度に共通した給付を基礎年金として設ける、その上にそれぞれの制度の現在の姿あるいは過去の沿革、そういったものに基づいて二階建ての給付を設ける、そういった二階建て年金の構想が一番よいのではないかという結論になったわけでございます。  これは、私ども各方面、各団体のいろいろな将来の年金構想のあり方というものを十分参考にさせていただきまして、今先生がおっしゃいました社会保障制度審議会の答申も、いわば基本年金と報酬比例年金の二階建て年金の構想であったわけでございますけれども、ほかのいろいろな団体、審議会の構想もおおむねそういった二階建ての構想がいいではないかというような御提案でございましたので、そういった御提案も踏まえまして、政府としても、共通の給付として基礎年金を設け、その上に報酬比例の二階建て年金を設ける、こういう制度の仕組みにすることにしたわけでございます。  そうしたことによりまして、一体どういうねらいといいますか、基礎年金によって問題点が解決されるかといいますと、最初に申し上げました制度間の給付なり負担の不公平がなくなる、格差が是正をされるということが一つございます。それからもう一つが、産業構造や就業構造の変化による影響を受けなくなる、受けるにしても非常に小さなものになる、そういったことによって制度の財政的な安定が図られるということになるわけでございます。それから第三に、給付の重複あるいはむだ、過剰あるいは無年金になるといったいろいろな問題点、現行制度で言われておる問題点が解決をされる、そういったねらいで基礎年金を導入することにしたわけでございます。
  113. 大原亨

    大原委員 あなたは新しい年金局長だから、答弁が少し長過ぎる。  第二の質問です。国民年金がピンチになったから、そういうことを言うたら厚生省はみんな顔をしかめるんだけれども、本当なんだから。国民年金がピンチになったから、今度は基礎年金制度を導入して、言うなれば財政調整をしようということにした側面がある。この側面を否定できない。これが非常に重要なウエートを占めているわけです。  そこで、なぜ国民年金は破産寸前になったのか。一〇〇%賦課方式だ、完全賦課方式に移っている。完全賦課方式という意味はいろいろあるのですけれども保険料と給付についての収支は、もう支出の方が多くなっているわけですから破産状況でありますが、なぜそうなったのか。
  114. 吉原健二

    ○吉原政府委員 国民年金ができましたのは昭和三十六年でございますけれども厚生年金に比べまして成熟度が大変早かったということがございます。それが、財政の面におきましても厚生年金のような大きな積立金を持つに至らず、今おっしゃいましたような賦課方式に近いような格好になっているわけでございますけれども、その一つの理由は、国民年金の発足が厚生年金に比べ遅かったわけですけれども、できるだけその成熟化対策を進める、つまり年金制度というのは三十年なり四十年納めて給付を受けるというのが本来でございますけれども、できるだけ早く給付を受けられる人が多くなるようにする、あるいはその給付自体も、相当年金として意味のあるものにするために、保険料は低いままにして給付を厚くする、そして同時に受給者を早く発生させる。したがいまして、本来二十五年が資格期間でございますけれども、十年までその資格期間を短縮する、そういったことによって十年年金、さらにその後五年年金というものを設けましたけれども、受給者を早く発生させる、そして年金として意味のあるものにするという考え方でやったということが一つございます。いわゆる成熟化対策でございます。  もう一つが、先ほども申し上げましたように、国民年金ができましたのは昭和三十年代、その後約二十数年経過をしておる間に、産業構造、就業構造が非常に変わってまいりました。国民年金の主たる対象は第一次産業であったわけでございますけれども、御案内のとおりもう第一産業の就業人口はうんと減りまして、二次、三次の方に移ってくる。ということは、結局国民年金の被保険者が減って厚生年金の被保険者がふえてくる、こういうことになるわけでございまして、当然その保険料を負担する方が少なくなって、給付を受ける方が多くなるという結果になったわけでございます。  ほかにもいろいろございますけれども、主としてこの二つの理由によって、国民年金の成熟度が非常に進んだ、同時に財政面におきましても、積立金を多く持たずに、現在実質的には賦課方式に近い形になっているということだと思います。
  115. 大原亨

    大原委員 就業構造とかいろいろな点については理解するところがあるのですが、政府の説明に触れてないところで一番重要な問題は、社会保険審議会の厚生年金部会長の小山さんも方々で言っておられたのですが、昭和四十八年に年金についてのスライド制をつくったわけですね。水準を上げたわけですよ。そのために悪くなったということを方々でこの先生は言っている。あれはかなり厚生省に密着した人だけれども、そういうことを言っているのだけれども、それだけじゃないのです。それは本来の年金のあるべき姿に一歩前進したというのが歴史的な経過なんですよ。四十八年の最初です。その四十八年の年末にオイルショックになったわけです。そこで四十八年、四十九年、五十年と、第一次、第二次のオイルショックを通じて狂乱物価が起きて、二割、三割の物価上昇があったわけです。そこで、厚生年金国民年金も積立金が非常に目減りをしただけではなしに、スライド制の財源を持ち出すということになりますから、そこで年金財政が崩れたことが一つで、インフレが大きな原因なんです。このことについて触れたがらない。  それからもう一つは、経過年金その他改善設置をとったことはいいのです。いいのですが、実際上六十五歳から年金をもらう五年年金、十年年金の人が、一斉に六十歳から減額年金を取り出したわけなんです。しかし、これは一年間の減額率が八%もあるのですから、高利貸しほどではないけれども、かなりの減額率なんですね。損なんです。しかし、そういうことが進んだのを助けたのは、七、八百万人のサラリーマンの無業の妻が任意加入して財源補てんをやったわけです。しかし、これが年数がたってまいりますと、昭和六十一年から二十五年年金の資格が発生して、昭和六十六年からもらい出す人が出てくるわけです。  ですから、それを前にいたしまして、言うなれば国民年金に火がついたわけです。そこで、国民年金を救済するにはどうするかということでいろいろ知恵を絞って、ない知恵もありましたが、絞ってつくったのがこの基礎年金でありますから、そのことをやはり国民の前にはっきり示さなければいけない。まるでそれとは別のことで、いいことだけをやっているような説明を繰り返してするから、政府はそういう宣伝機関を持っているから、誤解をする国民が出てくるわけであります。  そこでお尋ねをするわけですが、今、国民年金の中に保険料免除の制度があります。法定免除と申請免除があるのですが、法定免除、申請免除は合計いたしまして現在何万人ほど保険料免除者がいるか、それをお答えください。
  116. 朝本信明

    ○朝本政府委員 昭和五十七年度末でございますが、法定免除が八十八万人、申請免除が百九十七万人、合わせまして二百八十四万人でございます。
  117. 大原亨

    大原委員 二百八十四万人免除をしているわけですね。これは当時我々は議論したことを思い出すのですが、その免除者には、法律に従いまして、保険料を払わないけれども三分の一の国庫負担は行っておるから、そこで三年間たちますと、一年分の年金加入の資格を得るわけです。今度国民年金の主要部分が基礎年金に移行するのですが、移行しましても、言うなれば非常に社会保障的な進んだ制度であります。当時その議論をしたことを思い出したのですが、評価をされているわけですね。  現在いるその二百八十四万人の保険料免除者は、昭和五十年当時は何人ですか。
  118. 朝本信明

    ○朝本政府委員 ただいまの二百八十四万人に当たりますのは、五十一年度末で百六十九万二百三十二人でございました。
  119. 大原亨

    大原委員 昭和五十年当時百六十九万人であった保険料免除者が、どんどんふえてまいりまして二百八十四万名になったわけです。免除者がふえた原因はどこにあるのか。法定免除と申請免除があるのですが、答弁があったとおりです。その中身については時間がありませんから申しません。なぜふえたか。
  120. 朝本信明

    ○朝本政府委員 免除が数としても比率としてもふえ続けているというのは、御指摘のとおりでございます。  これは、一つには、保険料が毎年段階的に若干ずつ上がってきているという影響もあろうかと思いますが、基本的には先生お話しのような、オイルショック以後の景気の低迷による所得上昇率の低下であるとか、失業の状態とかいうような最近までに至る経済事情を反映している、こういうふうに考えております。  しかし、もちろんお話しのように、免除制度によって年金権を被保険者の方々に持っていただきたいという制度でございますので、これがふえないように、免除をする者が必ずしも有利な取り扱いではないということを被保険者の方々に十分知っていただくように努力をしておりますし、これからも重ねてまいるつもりでございます。
  121. 大原亨

    大原委員 答弁は非常に不足しているのですが、進めながらまとめていきます。  二百八十四万人の保険料免除者というのは、国民年金加入者の一五%を占めておるわけです。この比率も人数も、将来もこの調子でいけばずっとふえていくという可能性がある。  もう一つの問題は、国民年金制度から落ちこぼれておる人、無年金者、これは平均的にですが、一生涯個人個人について言うわけではありません。ありませんが、免除者等は非常に動かない性格がございます、かなり長期にわたりますが。しかし無年金者というのは、落ちこぼれというのは大体何人、何%あるのか。
  122. 朝本信明

    ○朝本政府委員 いわゆる国民年金制度に加入すべき被保険者でありながら、実際には保険料を払っておられないという方々につきましては、市町村あるいは社会保険事務所では、どなたがどれだけの期間納めておられないかということをそれぞれ把握いたしておるわけでございますが、それぞれの被保険者の方々につきまして未納期間の長短がございますので、ある時点において何万人いるかというお尋ねにお答えするというような、全国的な集計はとられていないというのが実態でございます。  それにかわるというわけではございませんが、ある年度におきまして被保険者が払うべき保険料の納付月数全体に対しまして、保険料が未納となっている月数、検認率と申しておりますが、いわゆる収納率で見ますと、昭和五十七年度で九五・二%の収納率でございますので、全体的に見た場合約四・八%の未納が生じているというのが実情かと存します。
  123. 大原亨

    大原委員 その免除者とかいうことについてはわかるわけですが、この検認率からいって未納者の実態というものを調査したことがありますか。なければないと言ってください。
  124. 朝本信明

    ○朝本政府委員 申しわけございませんが、どれだけの期間納めておられないか、なぜ納めておられないかという調査を全国的に実施したことはございません。
  125. 大原亨

    大原委員 例えば老齢福祉年金をもらえる人は七十三歳以上ですか、二歳ですか。そういうような五年年金、十年年金に入っていなかった人で、無年金者もかなりたくさんあるわけだ。七十歳になったら老齢福祉年金がもらえるのかと思ったら、明治四十四年四月一日以前に生まれた人しかもらえない、落ちておるわけですね。そこで、無年金者や保険料免除者というものが非常にふえている大きな原因は、あなたは言われなかったけれども、定額保険料にあると私は思う。定額保険料で、保険料率がどんどん毎年三百円プラスアルファ物価上昇分で上がっていくから、上がれば上がるほど未納者がふえる。確かにオイルショック以降所得が実質的に低下しているということもあるのですよ。ボーダーラインの人がたくさんいることもあるわけですが、この定額保険料制度というものに原因がある。今度は昭和六十一年から月六千八百円になるわけです。一万三千円まで毎年三百円プラスアルファですから、実際には二十年後には莫大な保険料ということになりますが、その定額保険料で、七十万円月給がある人も、五万円月給がある人も定額保険料を払うのです。そうすると、日雇いとか五人未満の人とか、パートその他でやっておるようなそういう人々は、夫婦とも強制加入ですから倍の保険料をやらないと国民年金につながらない、基礎年金をもらえない、そういう形になるわけですから、定額保険料について検討を加えなければ、基礎年金構想というものはますます矛盾を大きくしていくのではないかと私は思いますが、定額保険料について検討したことはないか。
  126. 吉原健二

    ○吉原政府委員 国民年金保険料が定額でよいかどうか、あるいは給付の水準を定額でよいかどうか、これは先生御案内のとおり、国民年金をつくるときから大変大きな問題になった検討事項の一つでございまして、できれば厚生年金と同じように、所得の段階に応じて保険料を払っていただき、その払っていただいた保険料に応じて給付を出すという仕組みの方が年金制度としては望ましいのではないかということは十分考えたわけでございます。しかしながら、国民年金の対象者が、先ほどから御議論がございますように、農業経営者あり、あるいは農業以外の自営業者あり、無業者あり、失業者あり、さまざまな人、それを全部を国民年金が対象にしているわけでございますので、果たしてその所得の把握というものが的確にできるかどうか、またその所得に応じてどういうふうに給付を決めたらよいのか、非常に難しい問題があるわけでございます。同時に、やはり全然所得のない方もおられます。そういったことも考えますと、なかなか、定額保険料じゃなしに、所得比例保険料あるいは所得比例給付というのは、考え方としては非常に望ましいけれども、実際問題としてそういう仕組みをつくるのは非常に難しいということで、現在まで実は国民年金は今日のような姿で来ているわけでございます。  今回、この基礎年金を導入するに際しまして、やはり国民年金の形、つまり基礎年金の仕組みが今のような格好でいいのかどうかについては十分私どもも検討をいたしましたし、審議会でもいろいろ御議論をいただいたわけでございますけれども、今の時点でもなおかつ、なかなか所得比例の保険料なり給付なりを導入することは非常に難しい、今後の検討課題として考えていこうじゃないか、こういう結論になりましたので、今回も従来どおりのような格好でやらしていただいているわけでございますが、今申し上げましたようにやはり今後の重要な検討課題だというふうに思っております。
  127. 大原亨

    大原委員 北欧型の年金とか、横割り年金とか、基礎年金構想とか言いますが、これは北部ヨーロッパの国々がやっておるので、例えばスウェーデンとかイギリス等がかなり理論的に整備をしておると私は思っております。  そこで、この議論は後にいたしましても、やはり日本のように定額保険料というのは、これは所得に応じて保険料を出して、そして給付については、生命保険のような形ではなしに、下を上げて上を抑えるような形で分配をしながら年金の制度の目的を達成する、再配分をしていく、こういうのが制度の仕組みであるわけですが、これは定額保険料であって、七十万円の月給の人も五万円の所得の人も同じような定額を出すということは制度としておかしいので、イギリスは非常に厳しい状況であったわけですが、所得に応じた保険料を取っているわけです。ですから、そのことは、所得の把握は非常に難しい、日本でも議論一つでありますが、しかし年金のように自分の給付にはね返ってくる制度の中で、自分の所得を正直に出していって、それに応じて保険料を出して、そして一定の年金を保障するということもこれは制度としては考えなければいけない。そういうことですから、定額保険料という制度というのは、これは根本的な基礎年金の中におきましては欠陥ではないかというふうに指摘をしておきます。これは検討課題であると言うから、これで議論をするわけにはいきません。  それから、基礎年金は今度は給付の水準が問題になるのは四十年ですよ。気の遠くなる話です。四十年掛金を掛けて最高が五万円。最低じゃないですよ。今の年金ベースで言えば〇二十五年で大体五万円。それで四十年をモデルにするならば、政府答弁したとおり七万八千円になるところを最高五万円に抑えて、そして保険料を納めていないということになると一つ一つカットしていくことになりますから、五万円は最高である。最高の下が四万、三万、二万、一万というようになるのだが、これから五年、十年で展望した場合に、そういう五万円以下の基礎年金の給付についての分布状況について、若干の資料があればお答えをいただきたいと思います。全然それがなしにこんなものをやっておるというようには私は思わないし、そういうことは許しませんよ。
  128. 山口剛彦

    山口説明員 先生今御指摘がありましたように、今度の基礎年金加入可能の期間、すべてをきちっと保険料を納めた方には五万円を支給をするという基本的な考え方でございます。原則としては二十から六十まで加入することになりますので、四十年加入で五万円ということになりますが、中高齢の方につきましては経過措置も講じておりますので、二十五年から四十年までですね。したがって、私どもは、保険料をきちっと納めていただければ、ほとんどの方が五万円の基礎年金に結びつくというふうに考えております。ただ、経過的には、今回婦人の年金保障ということで、今まで任意加入でありました御婦人について強制加入ということにいたしますので、従来に加入をしておられなかった婦人については、その期間は社会保険方式でやりますので、加入期間と見るわけにはまいりませんから、五万円を下回る基礎年金の方が当分はおられるということと、それから、残念ながら低所得のために保険料を納められないという方につきましては、先ほど来お話しがありますように三分の一ということにしてますので、これもその期間がある方については若干五万円を下回る場合があるということと、保険料を納めていただけない方については、これは社会保険の原則でございますので、五万円を下回るケースというのはございます。  その数が何人かということについては、ちょっとこれからの推移も見なければわかりませんので申し上げられませんけれども、今申し上げましたようなことですので、私どもはきちっと加入をしていただけば、ほとんどの方が基礎年金の五万円を受給をしていただけるというふうに考えておりますの
  129. 大原亨

    大原委員 つまり、その話を裏返して私の方で説明を加えたら、ずっとみんなが年金に入って、行政サービスが徹底して入って、そして百年ぐらい後になると大体みんなが入る。大体近づくかもしれぬ。百年ぐらい後なんです。現在あるのは、例えば二百八十万人の保険料を免除した者は、はっきり言えば三分の一しかないわけだから。五万円の中で二万円以下になるわけだから、少なくとも二百八十万人に相当する人は、全体として、個人としては移動しても下がってくる。それから大都会を中心にして、行政サービスが徹底しないために、住所を移動するために、あるいは所得が少ないために、忙しいためにやれなかったという人で、落ちこぼれが都会を中心にしてある。農村では一人一人が、あそこはだれとだれだとわかっているから全部やる。それから、サラリーマンの任意加入制度の無業の妻、その三百万人はこれから始める。今までは空期間だった。そういうふうに考えてみますと、五万円以下がいっぱいできるわけです。基礎年金だから、ちょっと掛金掛けたならばかなりもらえるんだと思ったら大間違いじゃないですか。基礎年金というのは最低保障的な性格でなければいかぬ。  例えば、この制度は、厚生年金の定額部分を移動したんですよ。それは基礎年金に再編成して移動したのが一つの大きな構えなんです。定額部分というのは、定額があって一定年数を掛けているんですから、これはかなり定額的な最低保障的な年金です。しかし今度の四十年掛けて最高五万円というのは、底が切りがないんだ、無限です。千円、二千円から五万円まで分布しているんでしょう。そしてこれは、最低の保障というのは何もないんですよ。そうして、政府の解説書の中にありますが、「基礎年金の財政のしくみ」というので図面が書いてありますけれども、これは私が午前中も質問いたしましたが、第一号被保険者は新国民年金に入るわけです。六千八百円払うのです。その中から五千五百円ほど月に基礎年金部分に移していくわけです、六十一年は。そして千三百円は保留して積み立てたり、死亡一時金にするわけです。そういうふうにするのでしょうが、五千五百円ということになります。それは国民年金の勘定の中に、俗に内履きというのですが、その中に置いているものですから、国民年金を脱落したら、皆年金年金制度からは離れていくことになる。厚生年金でたとえやっておっても、妻の方はつながらない場合がある。それは具体的な例はありませんけれども、そういう場合がある。ですから、この基礎年金は、最低保障年金としての年金の制度の名前だけついておるけれども、最低の支えの年金ということになると、厚生年金の定額部分よりも後退しているのではないか。保険料の払い方と最低保障の仕方というものができていないのではないか。ただ、できておるというふうに思われるのは、二百八十万人の中の保険料免除者は三分の一の国庫負担は入るわけですから、これは最低保障的なものができている。しかし無年金者は脱落するということになる。年金には実際上はつながらないで、年金としては非常に低い年金ということになる。この基礎年金は、みんなが、怒濤のような皆さん方のPR誌を見て、全部五万円もらえるというように思っているのだ。そんなことはないわけですよ。  例えば厚生年金の場合だって、サラリーマンが失業いたしましたらすぐに妻の加入は切れていくわけですから。これから職場を移ったり失業したりいたしますと、それにつれて移っていくようになるのですから。そうすると、日本では男よりも五歳くらい奥さんは若いわけですから、六十五歳の基礎年金にはおやじと一緒に到達するわけになかなかいかぬわけです。そういういろんなことがあって、実際上は最低保障年金になってない。国民年金の特別会計の中に勘定を設けたから、そういう制度上の欠陥ができてきたということになる。  私どもの基本年金というのは、制度審もそうですけれども、みんなが議論したものは外履きにしてあるのですよ。制度を外に出してあるのです。これは基礎年金基金というふうなものを設けておきまして、国庫負担とか保険料を入れていって、そして最低の保障をしていく。やたらに全部が全部ということでなくとも、そういう保障をするという発想に基づくわけですから、政府の基礎年金には根本的な欠陥があるのではないかと私は思っておりますが、その点について意見があれば、もうあと五分になったから、長い答弁はいけませんよ、簡単に。
  130. 吉原健二

    ○吉原政府委員 社会保障制度審議会の御意見にございましたように、今の制度は今の制度として置いておいて、そのほかに新たに基本年金をつくる、六十五歳以上は全部税金ですべての人にという仕組みをとれば、確かに先生今御指摘のような問題点はないかと私は思いますが、ただ、果たして今の段階で、現行制度はそのままで、別にそういった全額について税を財源にした基本年金制度ができるかといいますと、これは実際問題としてなかなか難しいということで、今の改革案の中に私ども審議をお願いしていますように、今の厚生年金の定額部分と国民年金の部分、それをいわばドッキングさせた形、それを基礎年金として再編成をする、そういう仕組みをとったわけでございます。ですから、あくまでも今までの社会保険方式、保険料を納めた人に年金を出すという仕組みはとっております。そのために、いわば保険料を納められなかった人に出ないということはあるわけでございますが、将来の姿としては、まじめに保険料を納めていただく限りは、四十年納めれば、経過的には二十五年以上の人でございますけれども全部五万円の年金が出る、こういうことになっているわけでございます。
  131. 大原亨

    大原委員 それは百年後の話なんですよ。今の時代と関係ないのだ。つまり、私どもも制度審議会の答申したものは頭に置いてやっているけれども、そうでなしに経過措置もちゃんと考えているのです。というのは、外履きにして基礎年金基金を外に設けておいて、それで国庫負担分を少し余分に入れるのですよ。保険料免除者には三分の一出しているのだから、無年金者も入れるのですよ。それから、底上げをする部面も入れるのですよ。そして足りない部面は保険料を入れて、そしてそこで基金をつくっていく。あなた方は、だんだんと保険料の負担が高くなってくるから、そこでこのままでいくと開始年齢を変えないと二八%になる、現行制度だったら三八%になるというようなおどかしを言っているけれども、そうやればそうはならぬのです。しかし、三八とかそこまではいかないが、かなりふえることは間違いない。そこで千分の二百四十にとどめるためには開始年齢をおくらせる、こういうふうに言っているわけですが、そうではなしに、基礎年金基金を外に設けておいて、そして段階的に保険料の負担の限界を考えながら国庫負担を入れていく。財源としては、今の産業ロボットとかそういう先端技術の産業構造、雇用構造の変化にふさわしいような年金を探求していくということで、その仕組みを内履きではなしに外履きにして、全部の国民の最低保障年金をここでつくるんだという思想でやれば、名実ともに基礎年金になるのではないか。非常にわかる話をしている。公式の話じゃないんだ。段階的に話をしているのです。そういうことで、この年金につきましては質疑は終了しました。(笑声)  この年金については徹底的な審議をして、やはり臨時国会でも開いて、それでじっくりと、けさほどのように小沢さんも賛成しておったからやるだろうと思うけれども、やらなかったら、今度大臣になったら徹底的にやってやるから。それで議論をして、全部の国民が注視をしている中で、年金を立派につくっていくというふうなことをやらないと、これしかないんだというふうなことで追い込んでいくことは将来を誤る。臨調が石頭で、あいつらは別なことを考えているんだから。将来の社会保障の位置づけについて、そういう非常に誤った方向へ行く可能性があるということは最初に私が申し上げたとおりでございまして、そのことを申し上げておきます。  大臣、これはたくさんの問題がありますよ。開始年齢があるし、保険料負担があるし、年金水準があるし、婦人の年金権があるし、障害者の年金権があるし、積立金の運用があるし、そういうものも多面的に議論をして、立派な合意を得るように努力をすることが必要である。最後に、厚生大臣の決意のほどをお聞きいたしまして、終わります。
  132. 渡部恒三

    渡部国務大臣 今、国民の皆さんの非常に大きな関心は、老後の生活の安定でございます。そういう意味で、将来の高齢化社会、これをみんなが心配しております。そういう点で、高齢化社会に備えて今、年金改革が行われようと国会審議をされておるということに、国民の皆さん方も非常に大きな関心と期待があると、私どもはその責任の重さを痛感しております。  また、今大原先生からいろいろ御質問を受けますと、私どもも大変傾聴する、非常に大事な勉強になるところでございます。この国民の期待にこたえるためには、この国会において年金の問題を先生方に徹底的に御審議を賜ることは大変ありがたいことだと思いますので、私ども委員会の命令があれば、朝どんなに早くても夜どんなに遅くても、連日でも、いつでも先生方の御審議に応じてまいりたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
  133. 有馬元治

    有馬委員長 大橋敏雄君。
  134. 大橋敏雄

    ○大橋委員 私も引き続いて年金の大改革法案を今からいろいろとお尋ねをしていくわけでございますが、この厚生省提出の改革案は、我々公明党がかねてから提案をいたしておりました、主張してまいりました国民基本年金構想、こういうものが基本的に盛り込まれているという立場に立ちまして、制度改革の大きな前進だ、そういう意味では、その構想の骨格については我々は高く評価をいたしております。  しかし、内容に至りますと大変な問題点がございます。あるいはまた多くの疑問点があるわけでございますので、これから、私は、私見を交えながらその疑問点を数点お尋ねしていくわけでございますけれども、今回の改革案はまさに国民的な改革案でありまして、この対応をもし誤れば、大変な政治責任になろうかと私は思うわけです。  今も大原先生がいろいろと指摘しておりますように、確かにこれは問題点が多く見えますので慎重審議をしていただきたい。これは当然のことでございます。ただし、きょう私の部屋に、これはどこから来たのか知りませんけれども、とにかく、今回この法案が成立しないといろいろ問題があるぞというようなビラみたいなものが入っておりましたが、これとそれは別です。  ただ、一つ非常に懸念する問題は、この法案と一緒に、恩給の引き上げに合わせまして、厚年や国年の二%引き上げの分までが一緒に入っているわけです。これは何としても今回間に合わせねばいけない。これは委員長に申し上げますが、この分だけは特段の配慮をもって対処していただきたいことをまず要望いたしておきます。そして、本体は十分慎重審議を尽くしたいということでございます。  そこで、具体的な質問に入る前に確認をしておきたいことがございます。昨日の委員会質問した内容なんでございますけれども、中国の残留日本人孤児が日本に永住した場合の年金の加入要件について、私はお尋ねしました。その中で、中国の国籍を持ったまま一緒に来た御主人の年金については、その資格が従来二十五年必要であるけれどもどうなんですかとお尋ねしたときに、その御主人が中国国籍から日本に帰化をした場合は、空期間として昭和三十六年以来の期間が認められますという答弁があったように私は記憶したのですけれども委員会が終わった後で政府の役人の方にもう一度この点を確認しましたところが、別に帰化しなくとも永住が確定すれば空期間を適用しますという話を聞きましたので、この点をもう一度確認をしておきたいと思いますからお願いします。
  135. 吉原健二

    ○吉原政府委員 中国人の方の場合には、日本に帰化されなくても、永住許可をお受けになれば、昭和三十六年四月以降の期間が資格期間の中に算定されます。永住許可だけで資格期間に過去の期間も算定されるということでございます。
  136. 大橋敏雄

    ○大橋委員 はっきりしましたので、それは結構でございます。  ところで、今度の改革案は、まず長期的、安定的な年金制度を確立しようということが最大の目的だろうと思うのです。それは制度の一元化につながるわけでございますが、今三種類八制度の各年金制度があるわけでございますけれども、これを単に一元化してしまっても根本的な解決にはならない。さきに国鉄共済年金が、財政破綻が目前に迫りまして、国家公務員等の共済年金に統合されたわけでございますが、これらは果たしてこのままの状態でいった場合に安定するのかどうか、これらも近い将来国鉄共済と同じ運命にあるのだと私は思うわけでございますが、その点まず確認をしておきたいと思うのです。これは大蔵省を呼んでおりませんけれども年金担当大臣である大臣の方から、大体の方向はおわかりだろうと思いますからお答え願いたいと思います。
  137. 渡部恒三

    渡部国務大臣 先生御案内のように、今回の年金の制度改革はいろいろな意味を含めておりますが、一つは、現在六・二人の人が一人の人を支えておる、これが将来三人の人が掛金を納めて一人の人を支えるという方向になってくる。これは、年金の将来に対していろいろとそれぞれの方面での御心配があるわけでございます。ところが、今日の現状においては、厚生年金国民年金あるいはそれぞれの共済年金、強いものもあれば弱いものもあるという状態でございます。したがって、そういうものに備える意味では、一人よりは二人、二人よりは三人、三人よりは四人の力で支えることの方がはるかに安定するわけでありますから、年金を統合一元化していくことによって、将来不安になっておる年金問題に対して心配のない、強力なものになっていけると私どもは確信しております。
  138. 大橋敏雄

    ○大橋委員 今の大臣のお話は、制度を統合していけば何とかなっていくみたいな御答弁のように伺ったのですけれども、私は違うと思うのです。八種類の公的年金制度が今ありますが、その財政基盤は少なくとも十五年、二十年たっていくうちには全部、平らな言葉で言えばバンクしてしまう運命にあるわけです。したがいまして、根本的な年金改革は基礎年金の導入による再編統合でなければならぬのだということで出てきた法案だと私は確信しますが、いかがですか。
  139. 渡部恒三

    渡部国務大臣 先生御指摘のとおりでございます。
  140. 大橋敏雄

    ○大橋委員 要するに、年金の根本的な改革は基礎年金の創設以外にないということでありまして、この基礎年金というのは全国民で支えていこうという新しい制度であるわけですね。  問題は、全部で支えるというのですから、共済年金はどうなるのだろうか、今度の法案の中にはそれが明確に入っていないわけです。先ほども、共済年金の問題がはっきりしない限りはこれはだめだという外野席からの意見がありましたように、この共済年金の問題ですけれども年金担当大臣に、基礎年金に対する統合の方式についてお尋ねしておきたいと思います。
  141. 渡部恒三

    渡部国務大臣 共済年金については昭和六十年において基礎年金の導入と、今回の国民年金厚生年金保険改正と同趣旨の制度改革を行うことになっております。  今、先生御心配のように、確かにいろいろの問題が残されております。しかし、そういう中でもみんなが理解し合って、将来、国民全体が支える立派な年金でなければならない、高齢化社会がやってきても二十一世紀びくともしない年金でなければならない、そういう大きな気持ちから、一つになろうという皆さんの共鳴をいただいて、閣議決定をいたしておりますので、先生御指摘のように、これは確かにこれから細かい一つ一つの問題で難しい問題があろうと思いますが、二十一世紀の高齢化社会に備えての、びくともしない立派な年金をつくるという大きな目標のもとに、これらの難しい問題を克服していけるし、また克服していかなければならないと私は考えておるのでございます。
  142. 大橋敏雄

    ○大橋委員 簡単に言えば、年金制度というのは給付と負担のバランスをどうとるかということに尽きると私は思うのです。したがいまして、おみこしに例えますと、上に乗る方が給付を受ける老齢世代、老後世代の方です。それを支えていく、つまり担い手が勤労世代といいますか、そのバランスの問題もあるし、それから給付額の問題でまた変わってくるわけでございます。いずれにいたしましても給付と負担のバランスをいかにとっていくかというわけでありまして、上に乗る方が多くなって支える者が少なくなると、これは火を見るより明らか、崩壊していくわけです。国鉄共済年金はまさにその姿になったわけです。  そこで、我々は、そういうことになってはならぬということで、これ以上の安定的な支えはないわけですから、まず基礎年金というものは国民全体で支えていくのだという意味で、共済年金の統合が明確にならない限りは基礎年金肉体の趣旨が崩れてしまう、こういうことでございます。そういうことから、基礎年金導入による年金の大改革につきましては、社会保険審議会も社会保障制度審議会も全会一致の答申でございましたね。私は珍しい答申だと思うのです。それだけに内容は偉大な骨格を示していると私は思うわけです。  そこで、我々公明党も、今から約十年くらい前に、基本年金構想というものを提唱してきたわけでございますが、ここで私は、先ほどから問題として主張しております共済年金改正手順といいますか、官民格差の解消について私なりにこういうふうに考えておりますということを述べますので、どういうお考えか、御見解だけ承りたいと思うのです。  要するに、各共済組合の改正手順と官民格差の解消ということになるわけでございますが、まずその一つとして、年金の算定方式等につきましては、昭和七十年までの経過措置としまして、共済年金の計算方式等を厚生年金方式に改める。もう既に通年方式で共済の計算でいただいている方がほとんどでございますので、これはそう難しい問題ではないと思います。  それから二つ目には、年金水準の見直しでございますが、定額部分と報酬比例部分につきましては、国民年金及び厚生年金改正措置に準ずる。  三つ目は、昭和七十年以降の公務員年金のあり方ですけれども昭和七十年以降の公務員年金のあり方については次の一または二のいずれかにするということで、その一ですけれども、公務員は厚生年金に加入すると同時に、民間における企業年金、すなわち税制適格年金に相当する新制度を創設する、これが一つ考え方。もう一つは、公務員は厚生年金に加入すると同時に、厚生年金基金、いわゆる調整年金ですね、これを創設するという考え方。このいずれかということですね。  それから四番目ですけれども、三公社が民営化された場合の共済年金のあり方でございます。いまどんどん民営化されてきたわけですけれども、こういうふうに民営化に移行された場合、及び私学共済、農林漁業共済のあり方についても、先ほど申しました一または二に準ずる方法をもって行う。  官民格差の解消につきましては、官民格差の解消は、生涯所得、いわゆる在職中の給与、退職金、年金の合計において官民の均衡を保つような所要の措置をとるべきでありまして、また、人事院は早急に公務員年金のあり方について調査研究を行って、昭和七十年に二階建て年金制度が導入できるよう国会及び内閣に対して勧告すべきである。  このような一応の考え方を持っているわけです。共済年金がいずれこういう姿になってこなければ、先ほど育った基礎年金は実現しないわけです。言うならば、共済年金は三階建てになりますかね、基礎年金と報酬比例とそして企業年金的なものがプラスアルファされる、こういう姿以外にないと私は思うのでありますが、これは私の私見でございますけれども、これに対して大臣のお気持ちを聞かしていただきたいと思います。
  143. 渡部恒三

    渡部国務大臣 私ども考え方も、今先生に御説明申し上げたように、共済年金については昭和六十年に基礎年金の導入と、今回の国民年金厚生年金保険改正と同趣旨の制度改革を行い、昭和六十一年度に同時に新制度のスタートを切る旨、閣議決定されておりますし、さらに昭和六十一年度以降も制度間調整等を進め、昭和七十年には制度全体の一元化を図りたい、こういうことで進めております。  今、大橋先生のお話しを承りますと、ほぼ私ども考え方と同じ、まことにすぐれたるお考え方でございまして、私、大橋先生年金担当大臣をかわっていただいてもいいのじゃないかと思うくらい、すぐれたる考え方であると思っております。
  144. 大橋敏雄

    ○大橋委員 非常にありがたい御答弁をいただいたわけですが、あと、じゃ私が年金担当大臣となったような立場で、具体的な改正あるいは修正を申し上げますから、ひとつ素直に聞いていただきたいと思います。  まず、国民全体で支えるいわゆる基礎年金、これは理論的には最高の安定体制にあると言えるわけです。しかし、人口構造のうねりといいますか、これはどうしても避けて通るわけにはまいりません。よく言われております団塊の世代が老齢年金を受給する時代、団塊の世代と言われている方々がいよいよ老齢年金を受けられる時代、そのときの世代間の負担についてどういうふうになっていくのか、御説明願いたいと思います。
  145. 吉原健二

    ○吉原政府委員 これからの人口構造の変化、高齢化というものを考えますと、やはり今御指摘のございました団塊の世代、つまり昭和二十二年から二十五、六年にかけましてのベビーブームのあの世代が年金受給者になる、老人になる、そのときが実は一番大変なわけでございまして、年代でいいますと昭和九十年から百年ぐらいの時期になるわけでございます。そのときのことを私ども考えまして、現行制度のままですと非常に負担が大きなものになる、厚生年金保険料でいいますと今の三倍以上になる、国民年金につきましても三倍以上になる、それでは国民の負担の限界を超えるというようなことを考えまして、将来に向けて給付水準の適正化を図る、負担とのバランスを図る、あるいは現役の働く人の賃金といいますか生活水準とのバランスを図る、こういうことで今回の改革案というものをつくったわけでございます。  この改革案によりますと、保険料の負担は先ほど申し上げましたような水準よりかかなり低くていけるということになりますし、先ほどからお話しのございますように、基礎年金の導入によりまして、人口構成のうねりといいますか、人口高齢化の一番ピークになる二十一世紀の一〇年代、あるいは二〇年代に何とか年金制度も有効に効果的に機能できる、こういうふうに考えているわけでございます。
  146. 大橋敏雄

    ○大橋委員 昭和八十五年から九十年ぐらいの間に、こういう団塊の世代の方々が高齢化して受給されるようになるわけですね。そのときが一番大変だという話ですけれども、私もそう思います。そこに焦点を合わせてバランスをとるように計算なさったと思うのです。それについて私は異議は挟みません。  しかしながら、後で申し上げますけれども、本当に厳しい世代はだれだ、こうなると、団塊の世代のその次の方なんですよ。年金というのは長期保険ですよね。世代間相互扶助ですから、これを念頭から離しちゃいかぬわけですよ。じゃ今回の改正内容は、そういう方々の立場に立った場合に、改正した負担の内容というものは果たしてそれでいいのかということに実はなっていくわけですが、現状のままで推移していきますと、今言われましたように、老後世代と現役世代との世代間の収入がまず逆転しますね。現在の厚生年金、モデル年金、三十二年で平均賃金が二十五万四千円ということでございますが、それで計算していきますと約十七万円余りですが、これは平均賃金に対して六八%ということです。これならまあまあというようなことをよく言われる人がいるのですけれども、これがそのまま二十年たっていきますと、十七万円の年金額が二十一万円になるわけですよ。老人お二人の受給されるお金が二十一万円になって、そのときの平均賃金に対するパーセントは八三%ですね。また、奥さんが厚生年金で二十五年入っていた場合、あるいは四十年丸々入っていた立場になると、その八三%が九七%とか一〇九%とか、まさに現役世代と老後世代とが逆転してしまうわけですね。  担い手の数がまた減少していくことにもなっておりますが、六十五歳以上の人口がどんどんと多くなるようになっています。六十一年度は千二百万人ですね、それが七十五年度は二千万人、八十五年度は二千四百万人、九十五年度は二千七百九十五万人。勤労世代が逆にどんどん減っていきまして、五六・三%から五五・四%、四九・八%、四九・六%と、まさにダブルパンチを受ける格好になるわけですね。  そういうことを考えましたときに、果たしてこのままの状態でいいだろうか。つまり今回厚生省が考えられております厚生年金保険料負担、あるいは国民年金保険料の額、これが大変な額になるわけでございますが、ダブルパンチを受ける団塊の世代の次の世代の方々に対して、これで支えられるだろうかと私は思うのでございますけれども、いかがでございますか。
  147. 吉原健二

    ○吉原政府委員 今回の改正案によりましても、厚生年金について申し上げますと、保険料率にいたしまして二八・九%、本人と事業主半々の負担になるわけでございますけれども、それほどの率になるわけでございますし、国民年金にいたしましても現在の六千二百二十円が一万三千円になるということでございます。これだけの保険料負担に果たしてたえられるかという御質問でございますけれども一つは、やはり給付水準とのバランスで保険料の負担というものは考えなければなりませんし、保険料の負担の限度といったものがどの辺にあるかということを考えます場合に、年金保険料だけではなしに、ほかに社会保障といたしまして健康保険保険料も負担しなければなりませんし、児童手当等の保険料、雇用保険保険料等もございます。それから、保険料ではございませんが、租税の負担というものも国民の負担でございますので、午前中の御論議の中にございましたように、ほかの社会保障保険料負担、それから租税の負担がどうなるかということを総合的に考えませんと、果たしてこの年金保険料負担というものが可能かどうか、適切かどうかということも判断できないわけでございます。  そういった観点から、私どもとしては、租税社会保障、社会保険保険料率負担というものを、国民所得に対して、まあいろいろ御議論ございましたけれども、四〇%から四五%以内にとどめるというようなことを頭に描きながら、年金については、そうは言ってもやはりこれからだんだんとその負担が高くなっていく、現在五%程度でございますけれども、そのころになりますと一一ないし一二%はやむを得ないのじゃないか。現在のままですと一五とか一六になるおそれがあるわけでございまして、それではとても負担の限界を超えることは明らかである。そういった意味におきまして、給付水準とのバランスも考えまして、保険料負担というものは総体的には国民所得に対して一一に抑えるというような考え方で、今回の改正案を提案したわけでございます。
  148. 大橋敏雄

    ○大橋委員 確かに給付水準というのは高くなればなるほど負担は重くなるわけですから、この設定が非常に大事であるわけです。そこで、今回、厚生省の案を見る限りにおいては長期的、安定的な年全体制が確立しましたよと、こういうことのようでございますけれども、先ほど申しましたように、厚生年金の三十二年のモデル計算で、収入二十五万四千円、その六八%で十七万三千円。この程度で四十年ずっと続いていった場合を考えたとき、いわゆる四十年の加入期間になった場合、基礎年金を五万円と計算した場合、合計しますと十七万六千二百円になる、まあまあ六九%程度だからこれは何とか安定していくだろう、こういうことですね。確かにこれは数字の上から理論的には理解できるのです。しかしながら、実際問題としてこれでいいかなというのがいろいろあるわけです。  まず一つは給付水準。先ほど言いましたように、これを上げれば上げるほど負担が多くなるのですから、やはりある程度抑えなければならぬと思いますよ。だけれども、これは五万円と、こう決まったですね。大臣、これはしっかり聞いておいてくださいよ、担当大臣でなければ当たれない場所だろうと思いますからね。この五万円というのが、生活保護基準のお年寄り二人の受給額よりも、わずかですけれども下回るのですよ。わずかながらも下回っている。私は、これは保険料を納めでいっている被保険者あるいは国民の立場から納得いかぬような気がするのですが、いかがですか。
  149. 渡部恒三

    渡部国務大臣 これは私も、心情的には大橋先生と同じように、国民年金、基礎年金部分五万円、夫婦合わせて十万円というのが、生活保護世帯を下回るというものに最初非常に抵抗を感じたのでございます。これはいろいろ考えてみますと、生活保護を受けるにはそれなりに、資産は全部なくなってとか条件が全然違いますし、生活保護世帯の受ける給付とこの年金では性格がかなり違うだろうというようなことで、私はやはり本来はもっと、何となく心情的には生活保護世帯の水準より上回りたかったなというような気がいたしますが、現在の負担の中で、また将来の高齢化の中での健全な年金関係というものを考えますと、これが精いっぱいの数字であった。また実際上は、生活保護世帯が受ける支給の場合と生活状態は全く違うということも御理解いただきたいと思います。
  150. 大橋敏雄

    ○大橋委員 大臣がおっしゃることも私は一応理解できないことじゃないのです。しかし、私、調べてきたのですが、一級地が男七十二歳、女六十七歳のモデルケースでございますけれども、十万六千八百八円になります。それから二級地が九万八千五百四十円。もし二人とも七十歳以上になられると、一級地は十二万一千六百八円、それから二級地は十一万三千三百四十円、こういうことであります。このほかにアパート、借家だとかあるいは住宅扶助料等が加算されるとまだふえていく。  確かに生活保護を受ける方と年金受給者の性格や立場は違います。違いますけれども、先ほどから何遍もお話が出ておりましたように、基礎年金というのは生活の最低保障年金なんだ、こういういわゆるミニマムですから、ここをわずかでもいいから、気分的にでもいいから上乗せすべきじゃないかな、これは私は強く要望しておきます。  それから、次は負担の問題でございますけれども、現行のまま放置してまいりますと、六十歳支給として現在の保険料が、これは厚生年金ですが一〇・六%、これは労使折半ですけれども、ピーク時が三八・八%だ。それで今度改正したんですよ。その改正では二八・九%。国民年金も五十九年四月、今ですね、月額六千二百二十円ですけれども、ピーク時は一万九千五百円になるのだというのです。そこでこれを一万三千円に抑えました。こういうことでございますけれども、確かに適正にしたという言葉が出てくるのでしょうけれども。私は、単なる数字のつじつま合わせではないかな、このように思うわけです。なぜならば現実、実際的ではない、極めて不安定な保険料ではないか、こう思うわけでございますが、いかがですか。
  151. 吉原健二

    ○吉原政府委員 将来どの程度の保険料負担になるか、これは将来どの程度の給付水準というものを標準的なものとして考えるか、恒常的なものとして考えるか、一番それによってくるわけでございます。  給付水準につきましては、先ほど来いろいろ御議論がございましたけれども、私どもは現役の働く人とのバランス、国民の負担能力、そういったものを考えて、サラリーマンで言えば六九%、国民年金で言えば基礎年金、夫婦合わせて十万円。確かに低いという御意見もあろうかと思いますけれども、やはり負担のことを考えますと、精いっぱいの給付水準ではなかろうかということで考えたわけでございます。  そういった給付水準からいわば計算上出てくる、当然そこまで負担をお願いしなければならない料率というのが、厚生年金の場合に二八・九であり、国民年金の場合に一万九千五百円になるわけでございます。  そこへ持っていくときに、私ども、そういった料率を現在の一〇・六からいきなり二八に上げるということは避けなければならないし、今の六千円台の保険料をいきなり一万九千円台に上げることは避けなければならない、段階的に三十年、四十年かけて上げていくというような考え方で、保険料というものを引き上げていきたいというふうに考えているわけでございまして、私ども、この改革案をつくりますときに有識者調査というものをやりまして、一体給付水準はどの程度のことを考えたらいいのか、また保険料の負担の限界といいますか、厚生年金なり国民年金保険料の負担としてどの程度のことを考えたらいいのかということを、「二十一世紀の年金」というテーマで有識者の方にアンケート調査をいたしました。その結果も実は十分考えました上で、国民年金について言いますと、大体一万円から一万四千円ぐらいまでならまあ何とかというのが大半を占めるというような結果も出ましたので、そういったことも頭に置いて決めさせていただいたわけでございます。
  152. 大橋敏雄

    ○大橋委員 これは確かに計算していけばそういうことになるでしょう。だけれども、実際的にはこれは負担し切れないものが出てきて、むしろ制度が崩壊していくのではないかというほどに私は心配している問題ですが、時間の関係もありますので、後でまた問題にしたいと思いますので、次に移らせていただきます。  基礎年金というものの性格なんですね。今回の抜本改正国民的重要課題でありまして、その対応を誤れば重大な責任だぞと私は言ったわけでございますけれども、公的年金制度というものは、国民が安心して信頼できる制度であること、これが一つですね。健全かつ安定的に機能していくための第一条件は、公平性の確保です。それから、年金制度が基盤とするところは国民の社会連帯というわけですね。したがいまして、公平性が損なわれ、国民の制度に寄せる信頼感が揺ぐようなことがあれば、制度存立の基盤が危うくなる、つまり崩壊していきますよということですね。  したがいまして、基礎年金は、二十から六十歳未満のすべての国民が支えていく、すなわちサラリーマンの奥さんも公務員もすべて含まれるわけでございますが、その一番大事な問題は公平、平等な制度であること、ここにあるわけです。  したがいまして、当然ながら、現行制度の制度間の格差の是正がなされた、あるいは合理的な理由のない不均衡は是正されたよ、こういうふうな内容になっていったときに、初めて基礎年金と胸を張って言えるのではないかと思うわけでございますが、いかがですか。
  153. 吉原健二

    ○吉原政府委員 基本的な考え方はおっしゃるとおりだと思います。
  154. 大橋敏雄

    ○大橋委員 そこで、公平性の点から見まして、基礎年金保険料の負担方法に私は疑問があるわけでございます。それは、新しい制度である基礎年金であるわけでございますが、それを支える財源調達というものは、国民すべてが公平、平等の観点から納得のいくような保険料の負担にすべきだと私は思うのですけれども、どうもその点がぴんとこないのです。  それはなぜかというと、従来の国年のグループ、いわゆる自営業者等のグループは、定額保険料ということで徴収されるわけですね。厚年、いわゆるサラリーマングループの皆さんは、従来のとおりの定率保険料ということで徴収されるわけですよ。というように負担の方法が分かれているのですね。同じ新しい制度をつくろうというのに、そこの財政を確保するための保険料の徴収の仕方が二つに分かれているということは非常にわかりにくい。大改革の目的の一つに、制度間の格差あるいは不均衡の是正があったわけですね。そういう点からも、基礎年金保険料は、同じ負担の方法をとって、わかりやすい形で徴収していくべきではないかと私は思うのですけれども、いかがですか。
  155. 吉原健二

    ○吉原政府委員 基礎年金の財源調達の仕方といいますか負担の仕方をどうするか、今度の改革案を考える場合に、私ども大変重要な問題だとして検討した問題の一つでございます。  しかもそれを、基礎年金だけの財源調達として別な仕組みをつくるか、果たしてつくれるか。それよりも、現在のそれぞれ厚生年金でやっております調達の仕方、つまり事業主なり本人が負担をする形で、賃金に料率を掛けて負担をしていただく厚生年金方式、その中で基礎年金の分を負担してもらう方法の方がいいのかどうか、それと別にした方がいいのかどうか。それから国民年金にいたしましても、基礎年金だけを国民年金はやるわけではございません。大部分が国民年金の場合は基礎年金に移行するわけでございますが、ほかに寡婦年金でありますとか死亡一時金とか、国民年金独自の給付があるわけでございます。そういった独自の給付の財源調達といいますか、保険料負担というものを切り離した方がいいのかどうか。いろいろ検討したわけでございますけれども、私は、基礎年金の調達方法として、別に新しいものをつくるのではなしに、やはり現在の厚生年金の財源の調達方法の中で基礎年金の分も公平に負担をする。それから、現在の国民年金保険料の負担のあり方の中で、大部分基礎年金でございますが、基礎年金の財源を負担してもらう、調達をしていくということの方が現実的である、実際的ではないかということで、こういうことにしたのが一つの理由でございます。  それからもう一つは、仮に今先生のおっしゃいましたように、では、基礎年金だけでサラリーマンとサラリーマン以外の人と別な仕組みはおかしいじゃないか、一方は所得比例、一方が定額というのはおかしいじゃないか、その公平とか信頼ということからいうと同じにしたらいいじゃないか。それは確かに一つのお考え、問題点として私も十分理解できるわけでございますが、では果たして同じようなやり方が、現実にサラリーマンと自営業者、非サラリーマンの間でとれるかといいますと、非サラリーマンの場合、自営業者の場合にどういうやり方をしたら一体そういうことができるのかといろいろ検討はいたしましたけれども、先ほどの所得比例の保険料の問題、あるいは所得比例の給付の問題との関連もございますけれども、今の国民年金の対象者から所得比例で保険料を取るということは、なかなか実際問題として今すぐは難しいということで、今回のように、従来どおりの保険料負担の仕組みの中で、基礎年金部分だけは、いわば被保険者の数といいますか頭割りで各制度から出していただく、そういう仕組みをとったわけでございます。
  156. 大橋敏雄

    ○大橋委員 先ほど申しましたように、今度国民全体で支えていく基礎年金をつくりましょうね、それは六十一年度は一人六千八百円の保険料をまず出し合いましょうよ、こういうことになったのですから、それが明確に、確かにあの人から六千八百円の保険料が国年特会に入っているな、こういうことになれば問題ないわけですよ。私は定額保険料の問題も後で問題に取り上げますけれども、そういうことでなければ公平ではない、平等感は出てこない、これを強く指摘するわけです。  そこで、次にこういう問題が出てくるのです。厚年の保険料というのは、報酬の一二・四%で徴収されまして、その中に基礎年金部分と所得比例部分の両方が含まれております、こういうことですね。これは、先ほど私が言いましたように、明確に基礎年金部分と所得比例とに分離して徴収する方法を編み出すべきである、私はこう思うわけです。そのことを先ほどから言っていたわけですね。そこで、基礎年金の対象者分はきちっと計算して納入できると私は思うのですよ。というのは、一二・四%の中から結果的には一人分については、六千八百円を国年の特会に入れるのだからということでしょう。だから、いずれはそこへ入るわけですから、これはそうしようと思えばできるということでしょう。どうですか。
  157. 山口剛彦

    山口説明員 先生の御提言は、基礎年金につきましては一人当たり幾らということで、今六千八百円という御指摘がございましたけれども、実際には国民年金は、先ほど御説明いたしましたように若干独自の部分がその中に含まれておりますので、大体五千五百円ぐらいずつを一人当たりの頭数で持ち寄ろうという考え方でございます。したがいまして、国民年金の階層の方々につきましては、一人当たりまさに五千五行円という数字がはっきりするわけですけれども国民年金の方あるいはその被扶養の奥さんからもはっきり目にあらわれる形で五千五百円を取る、そういう考え方も制度的には十分あり得るかと思いますし、私どもも検討いたしましたけれども、サラリーマンの方方の実際の年金の負担のあり方として、やはり所得の高い方からはそれに応じた率で取っていくという現在の仕組みがありまして、その方が、サラリーマンの方々の社会保険の費用負担のあり方としては、私どもは定額にするより望ましいのじゃないかということで、現在の考え方をそのまま踏襲しながらも、一人当たり公平に五千五百円の計算で持ち寄ればいいわけですから、そういうことで公平という面も図られるのではないかというふうに考えた次第でございます。
  158. 大橋敏雄

    ○大橋委員 そして、計算して持ち作ればいいのだからと言われるから、どっちみち計算して持ち寄るのですから、一人ずつ入れたらどうですか、こういうことになるわけですね。そういうことで、今の自営グループですね、従来の国民年金グループの方とサラリーマンとの間で、保険料負担のあり方で非常に不公平感が出ているのです。それが一つです。  もう一つは、サラリーマングループの中で、これまた内部で、負担のあり方について非常に不信感といいますか不公平感が出ているわけです。というのは、例えば標準報酬が二十万円といたしましょうか。妻帯のサラリーマンの自己負担、自分が負担する保険料というのは一万二千四百円になるわけですよ。一万二千四百円ですね。ところが、自営グループのいわゆる国民年金を掛けている夫婦の定額保険料は今言ったように六十一年度から六千八百円、こうなっていますね。それが二倍になるわけですから一万三千六石田、こうなるわけですよ。まともに払っている旧年の対象者の夫婦の一万三千六百円にも、先ほどの二十万という低い賃金を取っている方は一万二千四百円にしかならぬわけですから、ここにも非常におかしな感じが出てくるわけでしょう。  それから、もう一つ単身サラリーマン、ひとり者ですよ。その人がやはり二十万円の給料を取っているとすると、一人で一万二千四百円の保険料を負担しなければいけませんね。それから、夫婦共稼ぎをするサラリーマンは、これも二十万ずつ取っていると仮定しますよ。そうしますと、一人が一万二千四百円の保険料を取られて、二人合わせますと二万四千八百円の保険料になるわけです。そういうことで、自営グループとサラリーマングループとの間で不満が一つ出ていることと、サラリーマンの中で、何だ、これはおかしいじゃないかという不公平感、いわゆるダブルの不公平感が出ているわけですね。私は、こういう公平性が損なわれてくると、国民の制度に寄せる信頼感が揺らいでくるのではないか、これは重大な問題点ではないかな。この負担のあり方、保険料の負担のあり方をもう一遍じっくりと見直すべきではないかな。こう思うのですが、いかがですか。
  159. 吉原健二

    ○吉原政府委員 御質問の趣旨は、もし国民年金の場合に定額保険料六千八百円とか一万三千円とかを定額で取るならば、サラリーマンの場合にも同じ額を定額で取ったらどうなんだ、端的に言いましてそういう御質問だと思いますけれども保険料負担のあり方として、国民年金の場合はいわばやむを得ず定額で取っている、本来ならば収入や所得に応じて保険料に段階をつけるという考え方の方が望ましいのですが、なかなかそれが実際問題としてできませんので定額保険料という格好をとっているわけですが、果たしてサラリーマンの場合にもそれが公平になるかどうかということを考えました場合には、サラリーマンの場合やはり賃金によって相当大きな開きがある、しかもその賃金が幾らかということもはっきりするということになりますと、将来の年金保険料負担のあり方としてはやはり賃金に一定の率を掛けた取り方がいいのではないか。したがって、基礎年金の部分ももちろん給付としては同じでございますけれども、負担のあり方としては賃金の低い人は低い負担になり、賃金の高い人は多い負担になる、それはある意味では本当の公平なのではないかというふうに考えているわけでございます。  それから、先ほどちょっと御質問にございました、夫婦共稼ぎの場合と御主人が働いて奥さんが家におられるという場合と当然負担が違うわけでございますが、その場合にも、やはり夫婦共稼ぎで働いておられる方は賃金はいわばそれぞれ倍、実際は借かどうかわかりませんが、お互い二人とも賃金を得ておられるわけですから、その賃金に応じた保険料を負担していただくというのが、公平という面からいって、その方が私どもとしてはある意味では公平なのではないかと思うわけです。
  160. 大橋敏雄

    ○大橋委員 あなたは私が質問したいことを今言ってくれました。というのは、基礎年金の定額保険料の問題、局長はこれは本来ならば所得比例保険料にすべきなんだとおっしゃいました、私もまさにそのとおりだと思います。というのは、定額保険料というのは所得再配分機能はゼロですね。それから、むしろ定額保険料というものは逆累進性を持っている、いわゆる基礎年金本来の趣旨にも反すると言っても過言ではないと私は思うのですよ。問題点は、現行の国年のいわゆる定額保険料については、多くの有識者の方々から、これは不合理だぞという指摘があちこちになされております。なおかつ、定額保険料が五十九年度価格で将来一万三千円という高額に達するということになれば、これはもう本当に問題だ、たえ切れない、ここのところを私は問題点としてクローズアップせざるを得ないわけです。  そこでお尋ねしたいわけでございますが、昭和五十七年、それから五十八年、最近の年度の国民年金の被保険者中に保険料免除、いわゆる脱退していった方々あるいは保険料免除になった方々の数とその割合を示していただきたいと思いますが、いかがですか。
  161. 朝本信明

    ○朝本政府委員 御質問が二つございまして、一つ保険料の免除に関する御質問、それからもう一つは被保険者数に関すること、こういうふうに分けてお答えをさせていただきたいと存じます。  五十七年度末における保険料の免除の状況でございますが、法律に定める法定免除八十八万人、それから申請免除百九十七万人、合わせて二百八十四万人、免除率一五%でございます。  それから、国民年金の被保険者数の動向でございますが、御承知のように強制加入被保険者、それから任意加入被保険者がございますけれども、全体的に見ますと最近は減少傾向にございます。五年前の五十三年度には合わせて二千七百八十万程度でございましたけれども、五十七年度末には二千六百四十六万ということで約百万人の減少をいたしている。その原因として考えられますのは、これまた御承知のように、厚生年金へだんだん移っている、それから女性の方が職場に進出をしているというようなこと、それから免除の理由としては経済状況というようなのが主なことと考えられます。
  162. 大橋敏雄

    ○大橋委員 任意加入の脱退者が八百万人を超えるぞというような報道を見たこともあるのですけれども、今あなたがおっしゃったような理由で減っていっているというよりも、やはり保険料が払えなくなったということと、もう一つは、何か制度が崩壊するのではないか、国民年金がだめになるのではないかという不安から、だだだっとおやめになった方がかなりいるんだということなんですよ。  そこで、私が今言いたかったのは、従来の比較的安い保険料ですらも、脱落者がこのように増大傾向にあるわけですね。ましてや、基礎年金保険料はこれから毎年毎年上がっていくことになりますね、ついには五十九年度価格で一万三千円まで上がっていくわけですよ。長期的、安定的な年金制度とおっしゃいますけれども、私はこれでは絵にかいたもちだな、とても払えなくなる。脱落者が続出してまいりますと、基礎年金の趣旨というものは、先ほどからお話しがあっておりましたように、全国民の老後を最低保障しようという基礎年金の趣旨がここから崩れていくわけです。基礎年金の持つ本来の趣旨というのは、すなわち、一般国民の老後におけるミニマムの所得保障ですね。こういう立場からすれば、本来ならば目的税をもってあかなうことが極めて公正な策である、多くの学者がこう指摘しているところでございます。かつて社会保障制度籍議会、ここからの答申あるいは建議も、目的税による基礎年金の創設ということを育っていたと思うわけでございますが、本来ならば私は目的税でやるべき性質のものだ、こう思うのですけれども、いかがですか。
  163. 吉原健二

    ○吉原政府委員 社会保障制度審議会で言います基本年金、それから私ども改革案によります基礎年金、この財源調達をどうするか。それから社会保険方式で考えるのか、あるいは税方式で考えるのか。この二つが実は今度の改革案を考えます場合の一番出発点といいますか、原点の問題であったわけでございます。  確かにおっしゃいますように基本年金、基礎年金一つの新しい目的税でやるというのは、考え方としては私は一つ考え方、しかも大変すぐれた考え方だと思いますけれども、現実問題として果たして今そういった新税、しかも今の税負担よりもかなり新たに税を課するという形の新税の導入が可能かどうかということがございますし、それからもう一つ、やはり将来の年金制度の発展というものを考えた場合に、果たして税の方が安定的に制度の維持に有効かどうかということを考えますと、仮に税ということで出発をするにいたしましてもうまくいくだろうか。端的に言いまして、税というのは、税の種類によっても違いますけれども、大体国民経済なり国民所得の伸びに従って伸びていく。しかし、年金の給付費というのは、けさほどの御議論にもございましたように、国民経済なり賃金なり国民所得の伸びをはるかに上回る勢いで伸びていくというときに、果たして税でもってうまくやっていけるのかどうかといいますと、実際問題として非常に難しいだろうということがございます。  それから、今の厚生年金なり国民年金というのは社会保険方式で発足をして二十年、四十年の歴史を持っている、その上にそれとの接続を考えた場合に、やはり社会保険方式がいいんではないかというような、主として今申し上げましたような三つの理由から、大変一つ考え方としては立派なすぐれた案とは思いますけれども、なかなかとり得ないなということで、現在のような改革案の考え方でお願いをしておるわけでございます。
  164. 大橋敏雄

    ○大橋委員 私、今手にしているのは、年金制度基本構想懇談会、これは大臣の諮問機関ですが、五十二年の十二月のものですけれども、その中に大阪大学の先生をなさっている藤田晴先生、有名な先生ですね、この方がやはりメンバーの一人として、「年金制度の費用負担問題」というところで意見を述べられております、論文を出しておられますけれども、その中にこうありますよ。「基礎年金と付加年金から成る二層型の年金システムを形成した場合である。この場合において、基礎年金は原則としてすべての国民に対して、老後の最低生活を保障する役割を果たすことが一般に期待されている。そこで、これを受益者負担的な定額拠出でまかなう方式は、社会的公正の理念に矛盾する。」いいですね。「また、戦後のイギリスの年金政策の経験によって立証されているように、この方式では十分な給付水準を確保することはむずかしい。」これはもうイギリスは失敗したということでしょう。「そこで、一般税あるいは目的税による能力説的な費用調達方式を選ぶべきであろう。」先生は、本来なら基礎年金というものは目的税等でやるのが一番妥当なんだ、こうおっしゃっているのです、諮問機関のメンバーの方ですよね。そこで、これもそうだろうなということで、我々もそういう考えでいろいろと検討をしてきたわけでございますが、現行制度から円滑な基礎年金の導入による再編統合ということになれば、やはり社会保険方式を採用せざるを得ないかな、これは私の私見でございますけれども、やむを得ないかな、こう思うのです。  それは、総理府広報室が五十五年十月に実施した年金問題、高齢化問題に関する世論調査、そこを見ますと、やはり保険料を納めていくやり方の方がいいですと言った人が六五%もあったというのですね。厚生省が五十九年初めに有識者対象に行った調査でございますけれども、社会保険方式を維持したいというのが八二・八%もあった。こういうことを私もお聞きしましてから、これはもう大衆の声といいますか国民の声なんだから、社会保険方式を採用することもやむを得ないかな、こういうふうに考えたのですけれども、もしそういうふうに社会保険方式で保険料を徴収するということになれば、私は特段の配慮が必要だということを言いたいわけです。  基礎年金の定額保険料というものは、いわゆる同民全体の中で三分の二は、表現はよくないかもしれませんけれども、豊かでない方が多いわけです。一般的に低所得階層とでもいいますか、そういう方々が長期にわたって負担し得る程度の保険料としなければ制度はもたないということですよ。よろしいですね。ですから、私がここで言いたいことは、今の定額保険料の額でずっと伸びていくと制度は崩壊するぞということで、私が言いたい大事なところは、安い保険料のために財源が不足しできますよ、もし定額を低くしますと財源は不足します、その不足する財源については所得比例による応能負担として補っていくのが妥当ではないか。これは保険料というよりもむしろ目的税の性格があるんだという立場から、この二つを考えているわけですが、いかがでございましょうか。
  165. 吉原健二

    ○吉原政府委員 先ほどからの御質問にもございますように、本当に年金制度としては、段階的な保険料といいますか保険料も所得に応じて払っていただく。給付をどうするか、給付もそれに応じた比例的なものにするかあるいは定額制に近いものにするか、それはいろいろ考え方があるかと思いますけれども、いずれにしても所得に応じた保険料の納付というのは、将来ぜひそうしたいという考え方は私ども持っておりますけれども、先ほどから繰り返し申し上げますように、今の時点でなかなかできないということで、今までのやり方に沿ったやり方を踏襲するということにしているわけでございます。  将来、そういった所得比例の保険料というものの徴収のめどがついた段階では、おっしゃいますように所得の低い方には保険料の額を低いものにして、所得の高い方からの保険料をそちらの給付に回すというやり方は十分検討をさせていただきたいというふうに思います。
  166. 大橋敏雄

    ○大橋委員 大臣、この基礎年金ですね。低所得者階層が多いわけです。こういう方々が長期的にまあまあ払っていけるという保険料にできるだけ抑えなければならぬと思うのです。しかし、そういう方々を対象にして保険料を抑え込んでしまえば、当然財源は足らなくなります。だから、これは力のあるいわゆる中・高といいますか、高い所得のある人から所得比例に応じた保険料としていただいていく、こういう折衷的な内容にしていかねばならぬのではないか、私はこう思うわけです。先ほどから申しておりますように、基礎年金には所得比例保険料を導入することによって、この基礎年金が全国民を包含するミニマム年金ということに初めてなる、そういう性格からすれば当然の帰結ではないか、こう思うのです。  そこで、先ほどの藤田晴先生が最近、一月二十五日に出版なさった「福祉政策と財政」という、これはいつも厚生省にああしなさい、こうしなさいと指導なさっている大阪大学の教授でしょう、その先生がこう言っていますよ      基礎年金の財源政策  基礎年金の財源調達方式としては、社会保険料中心の社会保険方式、租税中心の税・移転方式、両者の折衷方式という三つのタイプが考えられる。それぞれについて簡単に検討を加えよう。  ①保険料中心方式……基礎年金は最低生活保障型給付であるから、その費用負担にあたっては支払い能力を重視することが公正の観点から要求される。したがって、定額保険料は明らかに望ましくない。保険料中心なら所得比例型保険料を採用すべきであろう。この場合、人々は生涯所得の大きさに応じて費用を負担し、同一条件年金給付を受けることになるが、この保険料は明らかに目的税的な性格を持っている。  社会保険方式といっても、本来の保険料のイメージからはかけ離れたものになる。そのうえ、所得税の免税点以下の零細所得を持つ多数の人も含めて、全活動年齢人口の所得を正しく把握することはきわめて困難であろう。したがって、所得比例保険料中心の財源調達方式にも重大な難点があると思われる。五十八年厚生省年金改革案における財源調達方式は、既述のように単純な定額保険料方式ではない。しかし、従来の国民年金強制適用クループに関しては、定額保険料中心方式に対するわれわれの批判がそのままあてはまる。とりわけ、この案で予定されている将来の保険料(最高月一三、〇〇〇円五十九年度価格)の実現の可能性には凝固がある。 こうおっしゃっています。  大臣、ここの定額の水準、これも見直さなければならぬかもしれませんが、それよりも払える定額を取って、あとそれをカバーしていく所得比例保険料を導入する以外ないということを言っているわけですよ。このことは非常に重大なところですから、大臣の記憶にしっかとおさめておいていただきたいと思うのですが、三日でいいです。
  167. 渡部恒三

    渡部国務大臣 極めて貴重な御指摘であると思いますので、しっかりとその考え方、私、これから胸におさめてまいりたいと思います。
  168. 大橋敏雄

    ○大橋委員 今大臣も胸におさめたとおっしゃいました。なるべく安い定額保険料として、そして所得比例保険料というものを組み合わせた財源調達方法を考えていただきたい。  そこで、所得を把握するのは難しいということが出てくるかもしれませんけれども、現に確定した所得に対して税金がどんどんかかっているわけですから、クロヨンの問題はあったとしても、税金はそういう中ではびしびしと取っていっているわけですから、やろうとすればできるということです。  時間もたってきましたので、今から非常に大事な問題を申し上げます。  老齢福祉年金の引き上げの問題なんですけれども、これも今の先生がこう言っていますよ。同じ先生がこう言っています。   年金制度における異なるコーホートの取扱いが公平かどうかを判断しようとする場合には、保険料拠出額と年金受給額との関係だけに注意を奪われてはならない。現在の老齢年金受給者たちは、活動年齢時に父母の私的扶養のため重い費用を負担している。また、彼らは戦後日本の再建のためきびしい耐乏生活を強いられており、今日の日本の繁栄は彼らの寄与に負うところが大きい。これらの点を無視して、年金制度への拠出がとぼしいから低額年金に甘んじるべきだという議論は公平でない。 こうあるのです。老齢福祉年金を受けている人を忘れてはいけませんよ、こういうことですよ。  そこでお尋ねしたいわけでございますが、老齢福祉年金とそれに関係する経過的年金は置き去りになったわけです。このたびの改革案の中に障害福祉年金、母子福祉年金はフル年金に大改善をされたのです。そうですね。最終的な額だけ言ってくれませんか。障害福祉年金一級、二級、母子福祉年金が幾らになるか。時間がないから、私の方で調べてきたのを申しますので、もし間違っていれば訂正してくださいよ。  障害福祉年金は、一級が三万八千四百円から六万二千五百円になる、二級が二万五千六百円が五万円になるわけですね。母子福祉年金は、子供一人の場合は六万七千八百十七円から八万円になる。こういうことで、ほかの福祉年金はみんなフル年金に改善されたわけです。肝心の我が国を支えて繁栄させてくれたお年寄り、重要な方々の老齢福祉年金だけは取り残された。これは国民は納得いたしません。これについて私はいつも言うのですけれども、もともと年金改革のはしりになったのは福祉年金の引き上げたったのですよ。これが重要な大改革の中にあって取り残されていくことは、私は許されないと思うのですね。私は、基礎年金と同じようにしなさいとは言いません。言いませんが、老齢福祉年金も計画的に、徐々にでいいですから、基礎年金の額にならないまでも、それに近づくような額に引き上げていくように改めるべきではないかと私は思うのです。いかがですか。
  169. 吉原健二

    ○吉原政府委員 まず、老齢福祉年金と障害福祉年金、母子福祉年金の扱いが違うわけでございますけれども、その理由を簡単に申し上げたいと思います。  今老齢福祉年金を受けておられる方、これは今も御質問の中にございましたように、今日の日本経済なり社会の繁栄に大変寄与された世代の方でございます。現役世代としては、その人力に対して当然それなりの十分な措置なり手当てというものをこれからもやっていかなければならないわけでございますけれども、現在の老齢福祉年金、まことに経過的な受給者でございまして、国民年金発足時に既に七十以上の人、厳密に言うと若干それ以下の年齢の人も入りますが、そういう人たちも経過的にだんだん減っていくことが一つございますし、やはり老齢年金というのは保険料を長い間納めて年金を受け取るというのが原則という考え方でございます。  ところが、障害福祉年金と母子福祉年金といいますのは、老齢福祉年金と違いまして、現在の陣容福祉年金というのは、経過的なものというよりか、むしろ大部分が二十歳になる前の、あるいは生まれたときから、あるいは小さいときの障害が原因で障害者になりという方が非常に多いわけでございます。そういったことが一つ。それから母子福祉年金は、国民年金発足当時は相当の受給者の方がおられましたが、今は大部分が拠出制年金に入って、ほとんど甘子福祉年金の方がなくなって、九百人ぐらいの受給者にすぎないわけでございます。そういったことから、保険事故の性質といいますか、老齢と障害、母子は違うということもございまして、障害、勘子はひとつ基礎年金の中に取り込んでいこう、老人の老齢福祉年金については従来のようなやり方でやっていこう。この点も何なら取り込んだらどうだというお考えもあるかと思いますけれども、老齢福祉年金の受給者はまだ三百万人近い大変な数になってございますし、給付費が全額国庫負担で七千億を超えるような財政問題もございますので、今回は今までのようなやり方にとどめたということでございます。
  170. 大橋敏雄

    ○大橋委員 誤解されぬように言いますが、障害福祉年金を、母子福祉年金を改善することについて私はおかしいと言っているんじゃないのですよ、間違えないでください。老齢福祉年金を置き去りにすることが問題ですよ。今あなたがいみじくもおっしゃった、だんだん減ってくる、毎年毎年二十万人以上減っていっていますね。昭和八十年度にはゼロになるでしょう。ですから、今の人数でも五十七年で二百六十万程度でしょう。他の障害年金の方だとか母子年金の方よりも人数が多いから問題だと言うけれども、一番大事にしなければならぬ人ですよ。私は五万円くれとは言いませんよ、徐々にこちらも引き上げていくような内容を明示しなさいと言っているわけですよ、いいですね。そうせぬと惨めですよ、申しわけないですよ。これを言いたい。大臣、一言。
  171. 渡部恒三

    渡部国務大臣 先生のお気持ち、全く同感でございますので、これから勉強してまいりたいと思います。
  172. 大橋敏雄

    ○大橋委員 もう時間がわずかになりましたので、まとめて二つ聞きますから一緒に答えてください。  今回の基礎年金を導入しましてもなお無年金者が出てくる可能性がある、これは大きな欠陥だと私は思うわけでございます。要するに、従来の強制加入者であったそういう対象者が、未加入であった者が、今後その人たちが強制加入の再徹底の指導をされまして、仮に掛金をかけても二十五年にはなりませんし、無年金になっていくのではないかということが一つ。  それから、婦人の年金権の問題の中に、婦人一人一人の年金権を確立することは私は非常にうれしく思っているわけでございますが、遺族年金に見る子のない若妻、四十歳以下は基礎年金をあげませんとなっていますが、これはひど過ぎると思うのです。この二つ。
  173. 吉原健二

    ○吉原政府委員 基礎年金についても無年金者が生ずるのではないかということでございますが、基礎年金につきましては、四十年保険料をまじめに納めておられる限りは無年金ということはあり得ないわけでございます。それから、免除者についてはそれなりの手当てをしてございますし、免除された後も追納というような制度もございます。そういった意味におきまして、一般的にはあるいは原則的には無年金者というものはこれからは生じない。海外の方、海外におられた方のその期間、そういったものも資格期間の中に今度は新たに算入をすることにしております。そういった方々には救済措置も講じておりますので、今までに比べましてそういった無年金という場合が生ずるケースははるかに少なくなると思っております。  それから遺族年金の問題でございますけれども、確かに子のない妻、寡婦につきましては基礎年金が受けられないということ、四十歳でもって違いが出てくるということがあるわけでございます。これは、基礎年金といいますのは従来の母子年金、母子の基礎年金、遺族基礎年金でございますが、従来の国民年金の母子年金考え方をとりまして、子供のある妻、遺族の方々には手厚い給付をするという考え方が基礎にあるわけでございます。子のない妻よりか、子のある妻を優遇する、基礎年金はそういう方に出そうということが基本になっているわけでございます。  それで、全部それに統一をしてしまいますと、今までの厚生年金で遺族年金を受けられた方が受けられなくなるというようなことがございますので、厚生年金の方につきましても、基礎年金国民年金と同じように子供があるということを原則にしますが、子供のない方については基礎年金は出さずに、上のいわば二階建ての部分を従来と同じような形、厳密に言いますと少し率を上げる、四分の三に上げるわけでございますが、従来の二階建ての部分を厚生年金の独自給付として出そうということでございます。ただ、そうは言いましても、子のない妻といっても、相当高齢の方につきましてはそれだけではというような考え方で、四十歳を一つの区切りとしまして、四十歳以下で亡くなられた場合とそれ以上の方で差がつくようになっているわけでございます。
  174. 大橋敏雄

    ○大橋委員 もう時間が来ましたのでこれで終わりますが、これは非常に重要な問題点ですので、後日また質問させていただきたいと思います。  終わります。
  175. 有馬元治

  176. 小渕正義

    小渕(正)委員 年金質問をいたします前に、この点についてまずただしたいと思います。     〔委員長退席、愛知委員長代理着席〕  「年金法案は今国会で是非成立を図る必要がある。仮に成立しなかった場合次のような問題がある。」こういう四角囲みで1から3にわたって、成立しなかった場合の問題点を書いたこのビラが、厚生省の封筒に入って配られてきたのですが、これは厚生省の方でお配りになったのですか、どうですか。
  177. 吉原健二

    ○吉原政府委員 このぺーパーでございますが、年金法案をぜひ今の国会で通していただきたい、こういう私どもの気持ちをお訴え、お願いに上がるという趣旨で、厚生省の者が手分けをいたしまして、関係の先生方にお願いに上がったわけでございます。
  178. 小渕正義

    小渕(正)委員 厚生省の方でお願いする、そのかわりにこういうビラをつくってということですが、これは配付対象範囲はどういうところまででしたか。
  179. 吉原健二

    ○吉原政府委員 与野党を通じまして関係の先生方にお願いに上がったということでございます。
  180. 小渕正義

    小渕(正)委員 全議員じゃないわけですね。
  181. 吉原健二

    ○吉原政府委員 全議員の先生方ではございません。
  182. 小渕正義

    小渕(正)委員 大臣、これをお読みになって、大臣が議員という立場でどのようにこれを受けとめられますか。確かにこの年金法案がいかに大事かということは、これはもうそれぞれの濃淡の違いはあったにいたしましてもそれぞれが理解しているところでありますが、これを昨日になってもう会期があとわずかしかないという中で、あえてこれを出してきたということは一体何かということです。我々議員に対して一種のおどしじゃないか。悪く言えば恐喝じゃないか。素直に問題がこういうのがありますよというならば、これだけのものを考えるのならなぜもっと早くからやらぬ。今まで健康保険のために、この委員会厚生省法案が、かなり大事な法案であるけれどもこの年金に入れなかったことはこれは御承知のとおりでしょう。しかし、健康保険法も大事だけれども、これも大事ですよ。こういう問題がありますよ。なぜもっと早目に、本当にそういう真意があるならばそれをやらなかったのですか。今ごろになってから、明らかに衆議院段階でもとてもじゃないし、審議してもとても日数が足らないような状況になってからこういう問題を出してくるというのは、これは極めて遺憾だと思うのですよ。どうですか、厚生大臣
  183. 渡部恒三

    渡部国務大臣 これは先生、私なども大臣になる前、国対とか各委員会理事などやっておりますと、役人の人が、先生、この法案理解してくださいといろいろ説明に来るのですけれども、何かごちゃごちゃ説明なんか聞いてもわからないものだから、何かちゃんと紙に書いたものはないのか、こういうようなことがよくあったものですけれども年金局の者が関係の先生方に、今の年金法というものを御理解いただくためにお願いに上がっているとき、余分であったと言えば余分でありますけれども先生方に御理解をいただくのにはやはり要点を書いたメモがあった方がいいということで、用意して配って歩いたものであって、別にメモだけを全部配ったというような意味でなく、先生方に御説明を申し上げる資料として用意しておったというふうに御理解を賜りたいと思います。  もう一つの問題は、これは私の責任でありまして、健保と年金は、これはまさに今国会に私どもがお願いしなければならない将来の社会保障の車の両輪のごとく重大なものでありますけれども、しかし健保の方は五十九年度予算により密接な関係があるということで、私が先に健保の方をお願いするというふうに選択をいたしました。しかし、これは年金局の担当の者にしてみれば、これはお互いそうですけれども、健保よりも年金の方が大事なぐらいの気持ちで今まで一生懸命頑張っておったと思うのですけれども、私は、健保法を審議している間は、先生方に別なことを、またこういうことで混乱するようなことをさせてはということで、年金局の動きを抑えておりましたので、健保を衆議院を通らせていただいたので、年金局が、六カ月じりじりしておったのをせきを切ったように、年金の重要性というものを特に社会労働委員会の関係の先生方に認識していただきたい、御理解を賜りたいということで一生懸命の余りこのようなことになってしまったので、仕事熱心の上ということで、先生どうぞ御理解を賜りたいと思います。
  184. 小渕正義

    小渕(正)委員 年金局の皆さんが仕事熱心で取り組まれていることについてはとやかく申しませんよ。しかし考えてごらんなさい。もう日程的、物理的に今国会の参議院まで通るということは不可能でしょう、よほど異常事態の中であれば別ですけれども。そういう中でこんなものを出してくるなんということは、少なくとも私は正常なやり方じゃないと思うのです。だから、そこまで熱心ならば、厚生省一体になって、何か新聞報道等では秋は臨時国会なし、もう来年の通常国会だ、いろいろ報道されておるようでありますが、そこまで真剣に考えるならば、もちろんこれは先のことですけれども、少なくともそういうことまで考えて、何としてでも、これは今国会成立しなくても、すぐにでも次にまたそういう審議の機会を設けてやるようなことでもやるべきだと思うのです。その点厚生大臣、いかがですか。
  185. 渡部恒三

    渡部国務大臣 私どもは、国会法案審議をお願いしている立場でございますから、もうこの会期をどうこうしてとかいうところまでは言える立場でございませんが、まだ会期も八月が残っておりますから、与えられた環境の中で、私どもは、この法案を成立させていただくように全力を尽くしてお願いを申し上げ、そしてできなかったときはまた次のことを考えていかなければならないと思います。
  186. 小渕正義

    小渕(正)委員 意図的、意識的にこの年金法案のいろいろと審議をサボるとか未了にするとか、そういうことはさらさらございません。国民生活に極めて重要な内容をはらんだ法案でございますから、私たちもこれは積極的に散り組んでいきたいと思っておるわけでありますが、ただしかし、そうだといっても、もう日程的にどう考えても物理的に不可能なことなんですよ。そういう中でこういうことを出すということは、それは年金局としてはやむを得ずやったかもしれませんが、少なくとも国会対策として考えるならば、それは少し軽率じゃなかったかというそしりを免れないと思います。  私はこの程度でやめますけれども、そういう点で、本当にこのことを真剣に考えられるならば、当然厚生省としては次の対策を考えられるべきだと思いますので、その点だけ強く申し上げておきたいと思います。  次に質問に入りますが、今回の年金は基礎年金というものを導入するということが大きな特徴でありまして、それにあわせて厚生年金との統合の中で二段階といいますか、二階建てとか言われておりますが、そういう方向で組み立てられていくというところに大きな特徴があろうかと思います。  ただ、問題は、この基礎年金は四十年加入で月額五万円でありますが、これを一般の生活的な感覚で見るならば、やはりこれはちょっと低いんじゃないかというふうな見方もかなりあります。そういう意味でこの基礎年金五万円、現在の生活水準の中でこのように策定された根拠というものはどのようなものか、まずその点をお尋ねいたします。
  187. 吉原健二

    ○吉原政府委員 基礎年金を五万にした理由でございますけれども、端的に言いまして、この基礎年金、各制度に共通する給付として設ける基礎年金は、老人の方の老後の生活の基本的な部分の需要ですか、そういったものを賄うものでなければならないという考え方に立っているわけでございまして、具体的に一体じゃどういう金額がいいのかということでいろいろ検討いたしましたけれども、  一つは、全国の消費実態調査というのがございます。その中で、これは五十四年の数字でございますが、六十五歳以上の単身の場合の月額の消費支出の中から雑費等を除きました金額が四万六百八十五円、これは五十四年の調査の数字でございますが、五十八年の物価で換算をいたしますと約四万七千円になるというようなことがございます。  それから、先ほども議論にございましたけれども、ちなみに生活保護の老人の世帯の場合の給付水準はどうかといいますと、二級地の場合五十九年度予算では、単身者の場合の六十五歳の一類と二類の経費は五万三千円程度、二人世帯の場合には八万二千円程度でございますが、一人当たりにすると四万一千円程度になる。そういったようなことも考えまして、基礎年金の水準は大体五万円くらいが妥当ではなかろうか。  ちなみに、制度審議会が五十二年に出しました基本年金に関する答申におきましては、かなり前の時期でございますけれども、一人三万円、夫婦の場合に五万円というのを出しておりますけれども、その後の物価上昇、国民経済の上昇もございますので、現在の時点で考えます場合に、大体一人五万円、夫婦で十万円程度の金額であれば老後の生活の基本的部分を賄えると言えるんではなかろうかということで、五万円というものを考えたわけでございます。
  188. 小渕正義

    小渕(正)委員 金額の水準が低過ぎるか高いのか、それはそれぞれの見方にもよりますが、どこらあたりを平均的にとってみるかということによっていろいろありましょうけれども、一応御説明としてお聞きいたしておきます。  ただ、今お話しがありましたように、老後の夫婦のお二人の基本的な生活部分としてはこれくらいでいいのではないかと言うが、もう老後の二人にとりましては、基本的も何もこれだけの収入でしか生活できないわけですから、そこらあたり、御説明の中では別途何か収入がまだあるのではないかというような見方を持たれているようでありますが、その点はもしそうだとするとちょっと誤りではないかという気がするわけです。  それから、確かに夫婦では二人で十万円、まあまあという感じはいたしますが、では単身五万円とした場合に、夫婦での十万円の生活と、では単身で半分でいいかということになると、おのずから違うわけですね。そういうことを見ると、単身として見る場合にちょっと低過ぎるんじゃないか、実はこういうふうな感じがしているわけでありまして、そこらあたりについては、もちろん夫婦十万円ということは一応置いたとしても、単身の場合にもう少し考慮するということが必要ではないかというふうな点が一つ。  それからあわせて、これは先ほどから議論になっておりまして、説明もされておりましたが、財源を社会保険方式にするか特定の税方式でするかということで、それぞれ質疑が展開されておりましたが、厚生省の御答弁では、将来的なもの等を含みながら社会保険方式で処理していくということであったようであります。これはもちろん基礎年金のそういう水準をどこに置くかということとのかかわり合いもありますけれども、そこらあたりについては、制度の基本としてどちらの方式をとるかという見方もありましょうし、幾らをベースにして、出発点にしていくかということの中でどちらがいいか、そういったとり方もありましょうし、そういう兼ね合いについてはどのようにお考えでこのような形になったのか、その点をもう少し具体的に御説明いただきたいと思います。
  189. 吉原健二

    ○吉原政府委員 年金の場合に、夫婦の水準とそれから単身の場合の水準を一体どういうふうに考えたらいいのか、バランスをとったらいいのかということは、今度の改革案の中でも私ども非常に重要な問題として検討した課題でございます。  現行制度の場合、特に厚生年金の場合には、余りにも夫婦の場合と単身の場合とで開きがあり過ぎる。これからの年金制度のあり方としては、むしろ単身を基準にしながら夫婦の場合にバランスをとっていく。つまり厚生年金が従来の世帯単位というものを考え方としては単身を基準に考えていくということが、国民年金とのバランスあるいは将来の年金制度を通じた基礎年金の導入の場合には必要ではないかという考え方で今度の改革案ができているわけでございますけれども、サラリーマンの場合には、この改革案におきましても、この基礎年金だけじゃございませんで、上の二階建ての部分というものがあるわけでございまして、平均的な標準的な給付水準としては、現在とほぼ同じ程度の十七万六千円程度の給付水準を将来にわたって維持をしていこう、こういう考え方になっているわけでございます。国民年金の場合には基礎年金だけで十万円ということになるわけでございますが、これはやはりサラリーマンの場合と自営業者等の場合には、老後の生活の中での年金の果たす役割、そういったものが当然ある程度違うと思いますし、稼得手段というものも違いますので、いろいろ御議論はあるかと思いますけれども国民年金の場合にも十万円という水準に将来ともなるわけでございます。  第二の御質問の、税方式と社会保険方式の違い、それからなぜ社会保険方式をとったのかということでございます。  先ほどからもいろいろ申し上げておりますように、今の時点で新たな税方式をとることについては、実際問題としてなかなか国民的な合意が得られないのではないかということが一番大きな背景としてあるわけでございますが、今までの日本年金制度というのは、厚生年金国民年金も共済組合も、それぞれの制度を通じましてすべて社会保険方式で発足してからこれまで来て、既に二十年ないし四十年くらいの歴史を持っているわけでございますので、それとの接続、円滑な移行ということを考えた場合は、やはり社会保険方式で基礎年金部分も考えていくのがいいのではないかということが基本にあるわけでございます。  それから、仮に税方式をとるにしても、一体どんな税方式なら将来の年金制度の安定的な維持のためにいいかということになりますと、実際問題としてうまい適当な税というものが今の時点ではなかなか考えられない。将来もそういうことは考えられないかといいますと、将来は税方式というものを考えるという余地はあるいは出てくるかもしれませんが、今の時点では税方式を導入するということは基本的にはなかなか難しいんじゃないだろうかということと、それからもう一つは、つけ加えますけれども、若いときに保険料を納めておいて老後から受け取るという社会保険のやり方が、年金の場合につきましてもこれから必要なのではないかということでございます。
  190. 小渕正義

    小渕(正)委員 次に移りますが、今回の国民年金の場合に報酬比例の部分を給付としては行わないわけですね。基礎年金一本やりだけでありますが、これを少しでも、報酬比例分も上積みするというようなことは検討されなかったのかどうか、それから、もしやれなかったとしたらなぜ今回やれなかったのか。また、報酬比例分の年金給付ということももっと前向きに考えていいのではないかと思うわけでありますが、そこらあたりについて検討を全然されなかったのか。検討課題として今回それが改正までいかなかったのはどういう問題点があるのか、今後なおその問題を解決していくための努力ということについてもお考えがあるのかどうか、その点についてお尋ねをいたします。
  191. 吉原健二

    ○吉原政府委員 国民年金に報酬比例の保険料あるいは給付をつくることにつきましては、これは国民年金をつくるときからの大変大きな検討課題でございました。何といいましても国民年金の対象というものが、サラリーマン、被用者と違いまして、多種多様な業態の人を対象にする。農業、自営業、無業、それから所得のない人、低い人、全くさまざまな方々を対象にし、しかも人数でいいますと二千六百万人という大勢の人を対象にする。その対象者の所得や業態が全く千差万別であるというようなことから、その報酬比例の保険料、給付というものが年金制度としては望ましい姿であるということは十分わかっていながらも、一体実際問題としてどういう仕組みにしたらいいのか、公平なのか、実現性があるのかということを検討した上で、今回の場合にもなかなかそれは今すぐ導入というのは難しい、ひとつ今後の検討課題にさせていただきたいという、審議会でもいろいろ御議論いただきましたけれども、将来の検討課題にしてはどうかというような御意見、御答申をいただきましたので、私どももそういった考え方に沿って、これからの検討課題にさしていただいているわけでございます。
  192. 小渕正義

    小渕(正)委員 それでは次に、今回の保険制度の中で、任意加入ということについてはこれは学生に限られておるわけですね、そういった学生の人が任意加入ということで加入しなかった場合、そういう中で、自動車交通事故その他ありますが、傷害が発生して障害年金が結果的にはもらえない、こういう状況はかなり想定されるわけでありますが、これらについてはどのような対応があるのか。制度のそういったものからいって一切何もなしということで、それは切り捨てということでやむを得ないということになるのかどうか、その点についてこの制度の中でこれを検討された場合こういった関係はどうなのか、その点いかがですか。
  193. 吉原健二

    ○吉原政府委員 実は学生の取り扱いも国民年金ができるときからの問題でございまして、二十歳以上の方を国民年金の被保険者としますが、一般的に収入、所得がないわけですから、強制加入に初めから制度的にするのはどうだろうかということで、任意加入ということになっていたわけでございます。これからもどうするかというのは私ども内部でもいろいろ検討いたしましたし、審議会でも御議論をいただいたわけでございますけれども、両論ございまして、今までどおりでやむを得ないじゃないかという御議論と、いや、そうは言っても、今御指摘がございましたように、学生のときに障害になったらどうだというような、年金が出ないのはどうかという御議論もございまして、入れたらどうだという御意見もあったわけでございますが、やはり保険料の負担能力などを考えますと学生さんを一律に強制加入に初めからしてしまうのもどうかということで、従来どおり一応適用除外にいたしますが、任意加入の道を残しておく、こういうことにしたわけでございます。  この法案を諮問したときに、国民年金審議会から、将来の学生の適用のあり方を検討すべきであるというような御答申をいただいておりますので、やはりこれも今後さらに引き続いて検討させていただきたいというふうに思っております。
  194. 小渕正義

    小渕(正)委員 任意加入ですから、加入しなかった者が結果的にそういうことになってもやむを得ないということに理屈はなりますけれども、現実問題としてはそういうものが発生した場合、やはりこれは結果的には放置できないような状況になりますので、そこらあたりお互いに研究しなければいかぬ問題かもしれませんが、ひとつ御検討をお願いしたいと思います。  次に、今回の保険年金の中では、妻が六十五歳になるまでの間、夫婦の年金水準は、六十五歳になった世帯の水準に比べると、大体夫は六十五歳、妻がまだ六十五歳に到達しない、そういう場合との比較をしますと、これは五万円と一万五千円ですから六万五千円、どうしても三万五千円の格差が生ずるわけですね。夫はもう六十五歳に達した、妻は六十二、三歳だったということになると、その間の差は、夫婦ともども六十五歳になった人たちの水準と比べると、そこに三万五千円の差が出てくる。これが妻がまだ五十代とかいえば働く婦人という道もありましょうけれども、もう六十歳を超して、ただ六十五歳に到達しないというがゆえに、六十五歳以上の御夫婦との間にこれだけの開きがあるというのは、ちょっとこれはそのままで、格差としてやむを得ないということでいいのかどうか、私どもとしては非常に疑問を持ちます。そういう意味で、何らかこれについての、もう少し格差解消とか何かをもっと考えられないのかどうか。現実問題として、夫が六十五歳になり妻が六十二、三歳になった場合におけるこれは、六十五歳に両夫婦が到達したと余り変わらない状況だと思うのですね。それにこれだけの差がつくというのはちょっと酷じゃないか、年齢別段階的でもいいから何かの配慮をすべきじゃないか、こういう考えもあるわけでありますが、この点に対しての御見解をお伺いいたします。
  195. 吉原健二

    ○吉原政府委員 今御指摘の問題も、実はこの改革案におきましては、いわば世帯単位の年金考え方を変えまして、原則的に個人単位の年金ということにしたことに伴ういわば影響でございます。  確かにサラリーマンの場合に、奥様が六十五歳になられませんと基礎年金が出ないわけですから、原則として六十から六十五の間は単身に加給分がつくという格好にならざるを得ないわけでございます。その差が将来大きいではないか、制度としては大きいではないか、これは確かに御指摘はそのとおりでございますが、一つは、当面はそういう三万五千円の差は出ないようになっております。段階的に基礎定額部分の単価乗率を引き下げていくというような経過措置をとっておりますので、当面すぐにはそういった問題は出ないのですが、将来、制度が成熟段階といいますか、そういった段階で明らかに御指摘のような差が出るということはあるわけでございますので、一つ将来の問題、これは年金の支給開始年齢をどうするか、男女の支給開始年齢をどうするかという問題もございますし、雇用との関係もでざいますし、それからもう一つは実は国民年金とのバランスもあるわけでございます。国民年金の場合も、まさしく御夫婦お二人が六十五歳にならないと今でも十万円は出ない、お一人の場合には五万円、こういうことになっているわけでございまして、年金制度間の格差をなくすというときに、国民年金はそういう個人単位で、夫婦がともに六十五になって十万円、サラリーマンの場合は六十のときから十万円というのもどうだろうかということもございまして、考え方としては六十五歳から男女とも、夫婦ともそれぞれ基礎年金をもらえる、出すということにしたわけでございますが、御指摘の点は確かに将来の姿としてどうだろうかという御意見もございますので、ひとつこれも将来の検討課題にさしていただきたいと思っております。
  196. 小渕正義

    小渕(正)委員 まだいろいろとそれぞれ一つの筋道どおりなかなかいかないのがありまして、そういう点で難しい問題でしょうけれども、ぜひひとつこの点も、当面は問題ないとするならば、将来的な課題としてこれは大きく検討課題にしておいていただきたいと思います。  次に移りますが、今回の制度の中で三級の障害年金の問題でありますが、障害年金の水準を報酬比例部分だけにしたわけでありますが、これはなぜこういうような三級の障害年金についてのみ標準報酬比例部分だけを根拠にしたのか。現行水準に比べますとかなり給付が改善されないということになりますので、そこらあたりを例えば定額加算でするか、あるいは最低保障額を固定するかどうか、何かこういうことによってやらないと、障害の等級によって国民年金厚生年金の違いがあるということはこれは好ましいことではないという気がするわけでありますが、何か政府の方では、これは政令とした場合、政令でこれらの問題を今後考えるというようなことがありますが、そういう場合にはどのように改革されようとしておるのか。制度がすべてすっきりしない面がありますが、そういう点で今回の制度の中でこれも一つの問題点ではないかと思うわけでありますが、その点に対する状況と、これを政令でどのように改革されようと考えておちれるのかどうか。もしそういうこともありましたらあわせて御説明いただきたいと思います。
  197. 吉原健二

    ○吉原政府委員 障害年金の要件に各制度ごとに格差、違いがあるということがやはり現行制度の問題点の一つになっているわけでございます。  厚生年金国民年金を比べました場合にも、厚生年金は一、二、三級までが今の御質問にございましたように対象になっておる、国民年金は一、二級までにとどまっているわけでございます。厚生年金の方が広い、軽度の障害まで対象になるということになっているわけでございますが、やはりこれからの年金制度はできるだけ基礎的部分を合わせていくという考え方をとった場合に、障害年金の対象も基礎年金部分は合わせる必要があるという考え方に立っておりまして、障害基礎年金というのは、これからは国民年金の対象者も厚生年金の対象者も同じ障害の程度に同じ年金額が出るということにしておりまして、その同じ程度の障害の具体的な程度の定め方、等級表というものを政令で決めることにして今の等級表をもとに調整をして合わせる、基本的には国民年金考え方に合わせるということになっているわけでございます。  障害基礎年金をそういう考え方で出すことにいたしますが、では現在の厚生年金の三級の方に対する障害年金をどうするかということが問題になるわけでございますけれども、障害が軽いから一体障害年金を出す必要性はどうだろうか、率直に言ってそういった考え方、意見がなかったわけではございませんけれども、やはり現在まで三級の対象者の方にも障害年金を出してきたという経緯も踏まえまして、基礎年金は一、二級を対象にする、しかし三級の方についても従来からの経緯にかんがみて、基礎年金は出ませんが上の、いわば二階建の部分だけ厚生年金の独自の給付として残すべきじゃないかという考え方で、実は障害の三級を厚生年金独自の給付として残すことにしたわけでございます。  そういった意味におきまして、障害年金全体としては、先ほどからのお話しにございますように非常にその給付水準を上げたわけでございますけれども、この障害の三級の方の扱いにつきましては今までと比べて確かに給付年金額が落ちる、下がるという場合があるわけでございます。基本的にはそういった考え方でこの改革案ができているわけでございます。あと、この障害の三級の扱いにつきましては、共済との調整の問題も実は現行制度では違いがございまして残っているが、当面はやはり今申し上げましたような考え方でいかせていただきたいというふうに思っているわけでございます。
  198. 小渕正義

    小渕(正)委員 やはり問題は、制度が移行するときでありますので、今のお話しでいくとまた共済との関係もあるので、そういう中であわせて調整その他のことを含めて少し検討させてくれということでありますが、これがスタート前にそういうことが調整可能で、スタートのときにそれが不利にならないような状況になればいいのですけれども、もうスタートしてしまって後からということになると、やはりこれは、普通のこういった制度の移行の場合には経過措置的ないろいろなやり方が考え方としてありますが、一応スタートして後から何とか見直してみますということは難しいのではないか、やはりスタートのときに若干理屈が通らなくても若干無理してもやって、そして何年後かに経過措置として打ち切っていく、こういうのが正常というか一つの方式ではないかと思うのでありますが、そういう点で、何とかそういうものも問題点として理解されて、共済年金との関係の中でももう一度考えてみたいということは十分理解するわけでありますけれども、やはりこれはスタートのときに何らかの配慮ができないかということをどうしてもそう言わざるを得ないわけでありますが、その点はやはり無理でしょうかね。
  199. 吉原健二

    ○吉原政府委員 この問題につきましてもいろいろ審議会等でも御議論がございまして、いわばその結論に従いまして今度の改革案を出させていただいておるわけでございます。経過措置はほかにもいろいろございまして、確かに今までと比べてかなり下がる、端的に言って下がるというケースもあるわけでございます。全体としては遺族年金、障害年金につきましては改善をする、全体的にはそういう姿勢、考え方をとっておりますが、部分的にはそういう面もやむを得ない形で残ってしまったわけでございますが、私どもの立場としては、できるだけ御理解をいただきたいというふうに思っておるわけでございます。
  200. 小渕正義

    小渕(正)委員 ひとつ、この点もぜひ問題点としてとめおいていただきたいと思います。  次に、先ほどからもちょっとお話しが出ておりましたが、子なし寡婦といいますかの遺族年金の取り扱いでございます。先ほども質疑の中で出ておりましたが、標準モデルで平均標準報酬の二十万円で加入期間が二十年とした場合、子なしの四十歳以上の寡婦については月額六万五千六百円。ところが四十歳未満の子なしの寡婦となった場合、四十歳未満の場合は二万八千百円、こういうふうになるわけです。したがって、同じ子なし寡婦といっても、例えば四十歳で子なし寡婦の方と三十九歳で子なし寡婦の方とでこのような開きがあることは、これはちょっと不合理だと思うのです。しかも、これがその発生した時点でその人にずっとついて回るわけですから、三十九歳の方が四十歳になったら四十歳の適用の方向に移るというのであればまた別ですけれども、三十九歳で子なし寡婦になられた方は四十歳未満というそれがそのまま一生ついて回ることになりますので、そういうふうに考えますならば、これは余りにも格差があり過ぎるのではないか。こういうものが発生した時点の年齢だけでなしに、その方が四十歳に到達したならば、せめて何らかのそこらあたりに対する配慮をするかどうかということはやはり必要ではないかと思うのです。もちろん、子なし寡婦といっても二十歳の手なし寡婦もおられるかもしれません。若い人の場合は再婚その他のことがあるからということが大体頭の中で考えられるでしょうけれども、もう三十七、八歳から三十九歳の方たちにとりましては、必ずしもそういうことにはなり得ないのが多いと思いますから。そういう方がそのときの発生した年齢でもって一生ついて回るということでは、制度として余りにも温かみがないのじゃないか。そういう意味ではそういう年齢到達との兼ね合いてもう少し何らかの配慮をすべきじゃないか、こういうふうに考えるわけであります。  それから、あと一つは、子育てを終わったそういった四十歳過ぎた寡婦についても、やはり何らかの加算をするということが必要ではないかと思うわけでありますが、この点についての御見解をひとつお聞きいたします。
  201. 吉原健二

    ○吉原政府委員 遺族年金につきましても、有子の妻といいますか子供さんのある遺族、奥様、寡婦の方に対する給付を手厚くする、こういった考え方に立って改革案をつくったものですから、手なしの方につきましては今までよりかどうかという御議論がいろいろ出る余地があるわけでございます。  ただ、子なしと言いましても、四十歳以上という相当高齢の方、四十歳という年齢がいいかどうかというのも今の御質問一つの問題点だと思いますが、大体二十代、三十代の方でしたら再婚の可能性あるいは働く可能性ということも考えられますのでまあまあ御遠慮いただくことにして、四十以上になりますと実際問題としてなかなか難しい面もございますので、一応四十ということで切ったわけでございます。  年金といいますのはやや形式的に、年金が受けられるかどうかを一つの年齢で切る、老齢年金もそうでございますが年齢で切るというような要素がどうしてもありますので、その境目のところでちょっと差があり過ぎるではないかというような御議論はほかにもいろいろあるわけでございますけれども、実際問題としてちょっと差があり過ぎるなと、私ども、今の時点で、御質問の趣旨といいますか、そういうものも十分考えなければならないかなというふうに率直に言って思っております。
  202. 小渕正義

    小渕(正)委員 この点は、格差を縮める、縮小することが一番好ましいわけでありますが、それはまた、大きな制度の中でのいろいろバランスの問題もありましょうから、だから格差縮小か、そうでなかったら、先ほども申しましたように、四十歳を一つの基準とするならば、四十歳に到達したち見直ししていくとか、何かそういった段階的な配慮をぜひひとつ検討していただきたいということを特に強く申し上げておきたいと思います。  次に、女子の年金問題についてでありますが、支給開始年齢を五十五歳から六十歳に今回引き上げられたわけでありますが、その根拠をまずはっきり明示していただきたい。  それから、あわせて、女子の保険料率の引き上げということは、従来は毎年千分の一ずつ引き上げるということで今日まで来ているわけでありますが、今回は、一挙に千分の二というふうに大きく変わったその理由は、一体なぜこういうふうになったのか、この二点についてお尋ねいたします。
  203. 吉原健二

    ○吉原政府委員 女子の老齢年金の支給開始年齢の問題でございますけれども、もともと男女に支給開始年齢に差があるべきなのか、そうでないのかというのは根本の議論としてあるわけでございます。厚生年金も今は男六十歳、女五十五歳ということになっておりますが、厚生年金ができました当時、二十九年改正までは、実は男女とも五十五歳であったわけでございます。そのときに、二十九年改正のときに男子だけ六十に上げたわけでございます。  共済はどうなっているかといいますと、共済は男女ともかつては五十五歳でございましたが、現在経過措置の期間中でございますけれども、今十五年かけて男女とも六十歳に上げよう、上がりつつあるわけでございます。  そういった段階の中で、この厚生年金の女子の支給開始年齢を一体どうするかということをいろいろ検討いたしまして、審議会にも御議論いただきましたけれども、やはり女子について五十五歳というのをそのまま残しておくのはどうだろうかということで、共済と同じような考え方で、女子につきましては、十五年ほどかけて六十に上げていくという考え方をとったわけでございます。  ただ、沿革的にいいますと、女子五十五歳になっておりますのは、女子の場合にはやはりなかなか年金に結びつきにくいというようなこともあったわけでございますが、現在はそういうこともございませんし、逆に考えてみますと、女子が五十五歳から年金をもらうということになりますと、年金の受給期間というのは何と二十七年、平均寿命からいいますと、五十五から二十七年間女子の場合には年金で生活をする、年金で保障する、こういうことになってしまうわけでございまして、ちょっとどうだろうか、年金の受給期間としてはやはり長過ぎるのではなかろうかというような御議論もございまして、徐々に、長い期間をかけて六十に引き上げさしていただくということにしたわけでございます。  それから、料率の問題でございますが、従来は千分の一ずつ引き上げてきたわけでございますが、料率に差があるというのもどうだろうか、賃金なり標準報酬が同じであれば、同じ料率で負担能力はあると考えていいじゃないかというようなことで、これの男女格差というものも、今の時点で考えますと合理的な理由はもう薄れたのではなかろうかということで、できるだけ早く男子に合わせていくということで、従来よりもテンポを早くいたしまして、千分の二ということにしたわけでございます。
  204. 小渕正義

    小渕(正)委員 料率の問題は、やはり急激に大きく変えてはいかぬという配慮から毎年千分の一ずつ引き上げようということになっておったわけですね。五十五歳を六十歳に支給開始年齢を引き上げるということについても、そういういろいろなほかの制度との兼ね合いという理由は理解いたしますが、男女均等法をこの前この委員会でやっておるわけでありますが、まさかそれに悪乗りしてこういうことになるということではいけませんので、そこらあたりいろいろお互いに議論なり問題のあるところでありますが、一応やはりこの料率の問題は、これは決めてからまだ余り長くならぬと思うのですね、そういう点では、やはりそこらあたりの配慮はあってよかったのではないか、かように思っている次第です。  次に、今回の制度の中で特に資格期間の特例措置の廃止ということで、中高年齢者に対する特別二十年を十五年でいいというようなものとか、それから第四種の被保険者制度の廃止とか、坑内員に対しての期間の計算特例の廃止とか、こういうふうな特例を廃止することが今回出ておりますが、特例廃止の理由はなぜなのか。それから、廃止することによって実際に実害というものはないというふうに思われておるのかどうか。特に坑内員の期間の特例措置の廃止ということは、現在の段階ではかなりこれは厳しい批判もあるわけでありまして、こういうものをただ一挙に廃止してしまうということでは、これはちょっと問題が余りにもあり過ぎるのではないか、かように思うわけであります。やはりせめて、そうであればあるほどなりに、先ほど申しますように、制度の切りかえ時の一つの特例措置としての経過措置等をもっと配慮する必要があるのではないか、特にそういった点を強く感じるわけでありますが、こういった点についての御説明をいただきたいと思います。
  205. 吉原健二

    ○吉原政府委員 今、厚生年金でやっております坑内夫の方でありますとか船員の方に対する期間計算の特例、つまり十五年加入して二十年にみなすという計算の特例、それから男子であれば四十歳以上は十五年で資格期間がつくというこういった特例、そういった各種の特例を見直しをして整理していくという考え方に実は立っているわけでございますが、こういった特例というのは、そもそも考えてみますと、まだ各種年金制度の間で通算制度というものがない、国民年金の制度がないという時点に、一定の期間ある制度に入っていたのにそれが実際に年金に結びつかない、それではいけないじゃないかということで、こういった期間措置の特例が認められているわけでございますが、もう昭和三十六年から国民年金、通算制度ができておりますので、期間計算の特例がなければ年金に結びつかないという事情がなくなっているということが一つございますし、やはり今度の改正のように、各制度ごとを横断的に見て、不公平をなくしていこう、格差をなくしていこうというときに、特定の方にだけそういった期間計算の特例を残しておくというのはどうだろうか。もう存在意義もないし、それから公平感ということからもいろいろ議論があるのではないかということで、これも社会保険審議会等でいろいろ御議論はございましたけれども、もう既にそういった期間計算の特例については存在意義が薄れている、それから、他の被保険者との均衡上からも問題があるので、所要の経過措置にも配慮しながら見直しをしろという御意見をいただいておりますので、今回、改革案のような措置を講ずることにしたわけでございます。
  206. 小渕正義

    小渕(正)委員 経過措置について、今言われたような形で廃止していくということについては理解いたします。  ただ、しかし、この中で地下産業というか坑内で働いている人たちに、五十五歳をいきなり六十歳にしていくというのは、ちょっと今の現実の状態といいますか、産業の実態といいますか、五十五歳以上の人たちは坑内勤務というのはもう難しいというのが今の特殊な産業の実態なんですね。そういう作業だから、そういう産業だから特例措置という形で別に配慮されておったと思うのですが、そういう意味で、今言われるように、ある程度そういうものはもう横断的な横にらみの中で廃止していくということが好ましいということについては、これは十分わかります。ただ、しかし、坑内員の問題については、理屈は理屈として通っても、現実の実態を見るとちょっときついのじゃないかという気がしてなりません。だから、ぜひひとつここらあたりについては、先ほど申しますような段階的な経過措置等を持ちながら、そして関係者もそれなりの心構えをしながらやっていくような形にしていくことが今必要じゃないか、かように思いますので、特にその点についてもう一つ強く意見を申し上げて、御配慮をお願いしたいと思うのですが、いかがでしょう。
  207. 吉原健二

    ○吉原政府委員 坑内夫の方の特例につきましては、実は二つ問題があったわけでございまして、一つは、支給開始年齢の五十五歳を一体残しておくかどうかという問題、それから、三分の四倍するという期間計算の特例を残しておくかどうかという二つの問題があったわけでございます。  考え方、意見としては、実は両方とももう見直しをしてやめるような方向で考えたらどうだという御議論もあったわけでございますけれども、やはり最初の年齢の問題につきましては、今先生から御指摘のございましたように、そうはいっても今一挙に五十五を女子と同じように六十にするのはどうだろうかという御意見もございましたので、それではもう年齢の問題は現行のままにしておくべきではないかということに結論的になったわけでございますが、期間計算の特例もそのままということは一体どうなんだろうかという意見が全体の審議会では非常に強かったので、期間計算だけは特例を見直しをさせていただいた、こういう経緯もあるわけでございます。恐らく坑内夫の方の立場から見ますと確かにいろいろ御議論が、いろいろなお気持ちがあろうかと思います。
  208. 小渕正義

    小渕(正)委員 ああいう地下産業の実態からいいまして、やはり勤続年数がほかの産業に比べると非常に短いわけですね。それだけ特殊な仕事と言ったら怒られるかもしれませんが、やはり難しい状況の構成にあそこはなっていますので、ひとつそこらあたりもぜひもう一度検討いただきたいということを強く申し上げておきたいと思います。  次に、在職老齢年金の六十五歳以上の廃止の問題です。  これは所得に関係なく今度は支給するということでありますが、それらの点は非常に評価できるわけでありますが、問題は、六十歳から六十四歳までの在職する人たちに対してはどういうふうにこの点について考えるのか。やはり私は、所得制限を撤廃する、廃止してしまうということが一番好ましいわけでありまして、もうそこらあたりは割り切っていいのじゃないかという気がするわけでありますが、この在職老齢年金の六十五歳以上の廃止についてはこれは十分わかりますけれども、問題は、六十歳から六十四歳までの人たちについての段階的な措置、これをもう少し何らかの形で考える。本来ならば、もう所得制限ということでのそういう措置を廃止することが一番好ましいと思うのですけれども、それができなかったならばもう少し何らかの考慮をすべきではないかと思うのですが、その点はいかがでしょう。
  209. 吉原健二

    ○吉原政府委員 六十歳から六十四歳までの、今までは低在と言っておりましたけれども、在職老齢年金をどうするか、今までどおりにするか、何か基本的に変えるかというようなことも検討いたしたわけでございますけれども、なかなかこれは、今の制度についていろいろな問題点が言われておりますけれども、そうかといって、これをどういうふうに今すぐ改めたらいいかということによりますと、実は議論がいろいろ分かれたわけでございます。  今は御案内のとおり、一定の標準報酬の額で三段階になっております。二割、五割、八割という年金がもらえるという三段階の仕組みになっておりますけれども、この標準報酬の額の段階の決め方と年金の出す割合の決め方の組み合わせを一体どうしたらいいのだろうか。これは変えるとなりますと、非常にまた有利になったり不利になったりというようないろいろなケースが出てまいりますし、なかなか難しい問題がございますので、将来の原則的に支給開始年齢を一体どうしていくのかという問題との絡み、それから、今おっしゃいましたように、賃金との関係ではなしに、何か年齢によって年金額に段階をつけたらどうだという御議論も、私は十分考え方としてあり得ると思うのです。これも、今度の改革案をまとめる時点までに議論が分かれましたので、次の課題の一つとして残しておこうじゃないか、こういうことにいたしまして、標準報酬の額だけ、従来の賃金のアップに見合った形で上げるという措置をとっているわけでございます。
  210. 小渕正義

    小渕(正)委員 この問題は、後に続く共済年金との統合の問題でも必ず出てくるわけですから、合わせるなら、合わせやすいようにもう取っ払ったら合わせやすいと思うのですね。だから、やはりそういった次の共済年金との統合という問題等も考えますならば、ひとつそこらあたりを十分兼ね合わせて、現在合わせやすいような状態にしておくことが好ましいことではないかと思いますので、その点がどうしてもいきなり無理ならば、先ほどお話しがありました年齢別でも採用してひとつ割り切っていただくということで、今の社会慣行の中においての六十蔵以上六十五歳までに働かれている人たちの大体の状況というものは、特殊な人以外は、大体定年以後の人が給料が半分になったりいろいろしながら働いておられるわけでありますから、できるだけそこらあたりを考えて、もう少し緩やかにしていただくということを強くお願いしておきます。  次に、年金の積立金についてであります。これは前々から議論のあるところでありますが、我が党としては、特にこれはもっと有利な運用をするべきではないか、少なくともそういった意味で自主的な運用で、せっかくの年金の積み立てでありますから、そこらあたりをもう少し独自性を持ったような形でやるべきではないかと思うわけでありますが、なぜこれがそういう運用ができないのか。  それからあと一つは、年金は毎年大体どれくらいずつ積み立てられていくのか、毎年の大体の平均が三兆円程度と聞いておりますが、そこらあたりがどの程度の金額なのかということと、なぜそれがもっと自主的な運用でもっともっと有利に運用できるような形にならないのか、その点についての御説明をいただきたいと思います。
  211. 吉原健二

    ○吉原政府委員 厚生年金の積立金の累積状況を申しますと、五十九年度で、見込みでございますけれども、当該年度分、五十九年度分は三兆七千八百七十九億、累積額で四十四兆七千二百四十六億円ということになっております。過去数年間の推移を見てみますと、大体その積立金の当該年度分の増加は四兆円前後、少し最近減っておりますけれども、四兆円前後ずつふえていっているという状況でございます。国民年金の場合には、大体現在三兆円程度の積立金の額ということになっておるわけでございます。  それから、この積立金の運用につきましては、制度の発足当初から資金運用部資金の中に入れまして、他の資金、郵便貯金等と統合運用というものがされているわけでございますが、私どもとしては、やはりこの年金資金というのは、ほかの資金と違いまして、国民の方から将来の年金の原資として強制的に納めていただいた資金でございますし、将来の年金の給付の有力な原資になるわけでございますから、もちろん安全でなければなりませんけれども、できるだけ有利な運用ということでなければならないというふうに思っているわけでございまして、関係者の方々、それから関係審議会からも、今の積立金の運用については、そういった面では非常に不十分じゃないか、被保健者の方の意見、意向というものがもっと反映できるような民主的な運営、より有利な運用というものを考えるべきでないかという御意見、御議論があるわけでございます。私どもも、こういった制度改革を行うに当たりまして、できるだけそういった方向に持っていきたいということで、現在事務的に大蔵省といろいろ協議を続けているわけでございます。  大蔵省の考え方はもう改めて申し上げるまでもないかと思いますが、国の制度、信用を通じて集められた公的資金というのはやはり統合運用するのが一番いいのだ、それが国全体の公的資金の資源の適正配分にも資するというような基本的な考え方を持っておりまして、年金の積立金資金だけを特別扱いするわけになかなかいかないというのが大蔵省の基本的な考え方でございますし、また、年金だけ外してしまいますと、財政投融資の中で大変大口のお金が外れてしまいますと、今の財政投融資制度、ひいては一般会計の制度に大変大きな影響を与えてしまうというようなことも心配をしておりまして、どうしたらいいかという結論がまだ出ておりませんけれども、私どもとしては、あくまでも最初に申し上げましたような考え方で、さらに大蔵省と折衝、協議を続けていきたいというふうに思っております。
  212. 小渕正義

    小渕(正)委員 資金の重点的な配分ということで、それなりに国の政策としていろいろありましょうけれども、これだけのお金ですから、全部じゃなくてもその一部でも、今それぞれ民間の企業でも資金運用を上手にやりながらかなり運用益を出しておるような状況ですから、そこらあたりももう少し配慮しながら頑張っていただきたい、特にこの点をお願いしておきたいと思います。  それから、時間が参りましたので最後ですが、今度の制度で、国庫負担分としては、今回の改正分でいきますならば、基礎年金部分についてのみ三分の一程度負担していく、大体こういうような状況でないかと思いますが、これは今後も長期的に大体この考え方に変わりはないというふうに見ていいのか、将来は将来の財政事情の中でまた見直しを考えていくということも含まれているのか、その点はどういうふうな考えなのかをお尋ねいたします。
  213. 吉原健二

    ○吉原政府委員 国庫負担につきましても、今各制度ごとにばらばらに行われている国庫負担、それから率も違いがございます。そういったものを公平なものにする、統一的なものにするという考え方で、今回の制度改革におきましては、各制度の独自の国庫負担というものをやめて、基礎年金部分に集中をする、それが国庫負担の公平なあり方につながるという考え方にしているわけでございまして、これについては、私どもも、年金給付につきましては当然それなりの相当の国庫負担というものは入れるべきであるという考え方を持っておりまして、この三分の一の国庫負担というものはできるだけ将来とも堅持してまいりたいというふうに思っております。
  214. 小渕正義

    小渕(正)委員 時間が参りましたのであと一問だけ簡単にお尋ねいたしますが、共済年金の統合が次の一つの大きな課題としてあるわけです。この共済年金の統合についての基本的な考え方は、今回の国民年金厚生年金の統合と同じような考え方のベースの上に立ってやっていくと理解していいかどうか、その点はいかがですか。
  215. 吉原健二

    ○吉原政府委員 共済年金も基本的に厚生年金国民年金と同じ考え方に従って統合一元化を進める、とりあえず基礎年金の導入につきましては六十年度に行う、そしてそれを六十一年四月から実施するということが決まっているわけでございます。
  216. 小渕正義

    小渕(正)委員 終わります。
  217. 愛知和男

    ○愛知委員長代理 長野祐也君。
  218. 長野祐也

    ○長野委員 まず初めに、この法案づくりに献身的な努力をしてこられました山口年金局長の御逝去に、心から御冥福をお祈り申し上げたいと思います。(拍手)     〔愛知委員長代理退席、委員長着席〕  志半ばにして倒れた山口局長も、泉下におかれて、本日からの実質的な審議入りを喜ばれ、一刻も早いこの法案の成立を期待されているであろうことに思いをいたしつつ、若干私の所見を述べながら、質問をさせていただきたいと思います。  まず初めに、大臣にお伺いをいたしたいのですが、けさの毎日新聞の社説をお読みになったでしょうか。この社説は「年金改革に精力的審議を」と題して、最後に「残された会期内の日時を、「委員会は慣例により週一回」などと言わず、精力的な審議をしてほしい。その論議を通して、国民年金改革の問題点を明らかにし、よりよい年金制度を確立することが、国会に課せられた責任なのである。」と結んでおります。私も全く同感でありますが、この感想をまず大臣にお伺いをいたしたいと思います。
  219. 渡部恒三

    渡部国務大臣 私も読ませていただきまして、新聞の社説が本当に国民の声を代表してくださっているという、深い感動を覚えました。
  220. 長野祐也

    ○長野委員 この毎日の社説に限らず、他社の論説も大体同じようなトーンでありまして、同氏の世論を反映しておるという大臣答弁でありましたが、私も全く同感に思います。そういう意味で、私どもは、国会に課せられた責任を全うするためにも、今後この法案の精力的な審議を強く望むものでございます。  さて、我が国が二十一世紀に向けて今から急速に高齢化をしていくということは御案内のとおりであります。六十五歳以上の高齢者との関係でいいますと、現在は現役人口六、七人で一人を支えているわけでありますが、二十年後には三、四人で一人、そして三十年後には二、三人で一人を支えなければならないという予測が出されております。予測というのは、経済の成長率にしても、我我の選挙の予測にしても余り当たらないわけでありますが、この高齢化に関しては、どうも確実にこの予測が当たりそうであります。一方、今後の世代の老後生活を考えてみますと、年金というものに頼っていかざるを得ない。これから年金制度がどうなっていくかということは、国民の大変大きな関心事であります。ところが、一部において、日本の公的年金は本当に大丈夫なんだろうかというような不安を耳にするわけでありまして、そういう不安があっては国民は安んじて生活ができない。そういう意味において、将来に向けて確実に信頼をされる制度をつくることが年金改革の基本でなければならないと私は思います。  我が国の公的年金制度は三種八制度に分立しておりまして、この分立に伴ってさまざまな問題点が指摘をされ、臨調等からも年金の一元化が指摘をされております。今回の改正法案は、こういったもろもろの年金の課題についてどのようにこたえようとしておるのか、大臣の決意を含めましてお伺いいたしたいと思います。
  221. 渡部恒三

    渡部国務大臣 私ども、政治がやらなければならない非常に大事な問題は、国民の将来の不安を取り除くことだと思います。今御指摘のように、高齢化社会は間違いなく近づいてまいります。先生御指摘のように、今六・二人の人が掛金を納めて一人の人が年金をもらっているわけですが、これが極めて近い時期に三人に一人というようなことになれば、今の制度のままでは年金が極めて不安定なものになりますし、あるいは掛金を一挙に値上げしなければならないとか、年金の支給額を少なくしなければならないとか、大変な問題を抱えておるわけでございます。これを解消するためには、今までのように幾つもの制度になっておったものを、これからは国民がみんなで力を合わせて親孝行をしていくということで、一つになっていかなければなりませんし、また、今まで長い間いわれてきた官民格差というようなものも解消していかなければなりませんし、そういう多面的な立場に立って、私どもは今回の改革案をかけたのでございます。  一番大事なことは、年金というのは、国民の皆さん方の期待権を尊重し既得権を守っていくものでなければ、国民の政治に対する信頼は薄らいでまいります。この国民の皆さんの既得権を守り期待権を尊重していくためには、年金改革というものはとても一年、二年ではできません。どうしても二十年前後の年月を要しますから、二十一世紀はあと十七年でやってくるわけでございますから、したがって私どもは、一分でも一秒でも早くこの年金改革をやらなければならない、ぜひ先生方の御審議を賜りたいと思います。
  222. 長野祐也

    ○長野委員 期待権を尊重し既得権を守りつつ、二十一世紀に向けての長期的な展望によって立つ国民的な事業だ、今回の改正案は私も評価をするものでありますが、それだけに、当面の財政問題への対応といった短絡的なものであってはならないということは言うまでもないことだと思います。  そういう観点に立ちまして、今大臣が述べられたような改革の必要性というものを、広く国民全体に合意を得るということが必要であると思いますが、政府はそのためにどういうような努力を今日までされてこられたのか、伺いたい。
  223. 吉原健二

    ○吉原政府委員 今後の高齢化社会の到来に備えて、今の年金制度のままではいけない、いずれ破綻を来すというような問題認識を私どもが持ちましたのは、実は昭和五十年代の初めごろでございました。それで、厚生省年金制度基本構想懇談会というものを設けまして、そこでもいろいろ御検討、御議論を始めていただきましたし、また社会保険審議会、国民年金審議会等におきましても、そういった今後の年金制度のあり方についていろいろ御議論をしてまいったわけでございます。それから、社会保障制度審議会からも、五十二年十二月に、先ほどの基本年金構想等についての御意見をいただいておりますし、今度の改革案の作成に当たりましては、こういった関係の審議会といったものに十分御意見をお伺いをし、その御答申を踏まえて、それからまた、関係のいろいろな各種の団体等ともいろいろ議論をさせていただきまして、その上で、国民的な改革についての合意というものを、時間をかけてつくり上げることに努力をしてきたわけでございます。  それから同時に、具体的な構想として、いろいろな関係団体なり各党からもいろいろな御提言がございましたので、そういったものも十分踏まえ、また国民に対する有識者調査というものも行いまして、年金制度の将来のあり方について国民的な合意を得て、今回の改革案を国会に提出させていただいたわけであります。
  224. 長野祐也

    ○長野委員 今回の改正案の第一の柱とも言うべき基礎年金の導入というのは、今まで各制度に分立をしていた日本年金制度の中にありまして、大変画期的な改革であり、かつ、国民の要請にかなうものである、そういう意味で私は非常に高く評価をするものであります。  そこで、今回の基礎年金導入とそれに伴います制度再編成の具体的なねらいというものにつきまして、改めて大臣から御説明をいただきたいと思います。
  225. 渡部恒三

    渡部国務大臣 今回、基礎年金を採用するに当たって、社会保険方式をとるべきか、税方式によって運営させるべきか、いろいろの御意見がございまして、それぞれにやはり耳を傾けなければならない問題があったと私は思います。そうした中で、我が国の公的年金制度は、いずれも国民が拠出と給付の両面にかかわり合いを持つ社会保険方式をとろうという判断をいたしたわけでございます。  これは、巨額なこの財源を補うため国民に多額の増税をお願いすること、これは今日の情勢の中で合意が得られることはなかなか困難であろう。また、税方式ということによれば、拠出のいかんを問わず全国民一律の給付を行うこととなりますが、これまでまじめに保険料を納めてきた者、滞納していた者、これが一律になるわけでございますから、こういったいろいろの問題等もございまして、今後にまた検討の課題は残しておるものと私は思いますが、今回は社会保険方式をもって出発させていただきました。
  226. 長野祐也

    ○長野委員 それでは、基礎年金の中身について伺いたいと思います。  基礎年金は四十年加入で月額五万円でありますが、実際に二十蔵から六十歳まで四十年加入した年金受給者が出てくるのは大分時間的に先のことであります。当面出てくる年金受給者というのはまだ四十年も加入をしてないわけでありますが、こうした方々への年金額は一体どのようになるのか、基礎年金の給付の仕組みについて簡単に御説明をいただきたいと思います。
  227. 吉原健二

    ○吉原政府委員 基礎年金の給付の仕組みでございますが、まず基本的に、制度施行日、発足時は六十一年四月を予定しておりますけれども、施行日に六十歳以上の方については、現行どおりで基礎年金の適用ということはございません。基礎年金の支給の対象になるのは、制度発足時五十九歳以下の人に基礎年金が支給される。ただ、現在既に障害福祉年金等を受けておられる人については、障害福祉年金の裁定がえというようなことはございますけれども、老齢年金について言えば既裁定の人、六十歳以上の人については現行どおり、こういうことになるわけでございまして、五十九歳以下の人に基礎年金が適用されるということになるわけでございます。  基礎年金の基本的な資格期間は四十年ということになっておりますが、五十九歳以下の人につきましては、年齢に応じてその四十年という資格期間の特例というものを設けておりまして、二十五年から四十年まで短縮をすることにしております。完全にその四十年の加入期間を満たして五万円のいわばフルぺンショシの基礎年金が受けられる方が発生をいたしますのは昭和八十一年、それまでの間は、資格期間を短縮して基礎年金を出すということになっているわけでございます。
  228. 長野祐也

    ○長野委員 今、基礎年金の仕組みについて御説明があったわけでありますが、若干細かい質問になりますけれども、この基礎年金と今お話しのあった加入可能年数との関連について御質問をしたいと思うのです。  この基礎年金は成熟時に四十年加入で月額五万円でありますけれども、その四十年で五万円というのは、改革案によりますと昭和十六年四月二日以降に生まれた人で、それ以前に生まれた人は、その年齢によって二十五年から三十九年の加入で五万円のフルぺンションが支給されることになっております。つまり、これはどの年齢でもいいのですが、例えば昭和三十六年四月一日の国民年金制度の発足時に、六十歳まで何年間加入することが可能かということで、この二十五年から三十九年までの加入可能年数というものを設けたもので、これは非常に合理的で、その趣旨はよくわかるわけであります。  ところが、私どもが選挙区等でいろいろこの年金改正の話などをしますと、よく受ける質問にこういうのがあるのです。これは何年でもいいのですが、例えば昭和六年を例にとりますと、昭和六年四月二日から昭和七年四月一日の間に生まれた人の加入可能年数というのは三十年であります。その三十年加入すれば月五万円の年金が支給されるわけでありますが、サラリーマンの妻の場合は昭和六十一年四月から強制加入となる。昭和三十六年四月からずっと国民年金に加入しているこの年齢層の人は、ある人は誕生日によって三十年ぴったりの人もいれば、場合によっては誕生日の遅い人は三十一年近く、半年の人もあれば九カ月の人もあれば十一カ月の人もあるわけですが、そういうふうになるわけですね。そうしますと三十年でも五万円、仮に三十年十一カ月加入してもやはり五万円というわけで、現在の任意加入のうちいわばむだな数カ月分、むだという言い方はおかしいですが、数カ月分の端数をなくすために、任意加入の今の段階のうちに半年なら半年、九カ月なら九カ月、こういう考え方はおかしいのでしょうけれども、自分がどうも損をするから、今のうち任意加入の段階でその分だけをやめておいた方がいいのではないかというような問い合わせが結構あるわけですね。厚生省が業務処理という面からこういうように加入年数というものを決めたのは理解ができるわけですけれども、何となく割り切れないなというのも率直な感じでありまして、これはサラリーマンの妻だけでなくて自営業者にも当てはまることであります。  現在の国民年金の制度というのは加入の月数によってその年金額がふえるということを考えていきますと、こういう点についても配慮があってしかるべきではないかと思いますが、この点について検討していただけないか、お答えをいただきたいと思います。
  229. 山口剛彦

    山口説明員 技術的な問題でございますので、私からお答えさせていただきます。  ただいま先生御指摘ございましたように、基礎年金につきましては加入可能期間をすべて加入していただいた方に五万円を支給するというのが原則で、中高齢の方につきましては四十年加入できませんので、御指摘いただいたような経過措置を設けているわけでございますが、この経過措置を生年月日別に設けておりますので、非常に綿密にやりますれば、その経過措置を各月ごとに細かくやっていけば御指摘のような問題も回避できるわけでございますけれども、加入可能年限、この経過措置を年単位で一応処理を実際上もせざるを得ないということでしておりますので、御指摘のような問題が出てくるわけでございますけれども、今度の基礎年金考え方、年齢別に二十五年加入して五万円の方もおられますし、二十六年加入で五万円の方もおられるということでございますので、御指摘の点は十分わかりますけれども、業務処理面も含めた一つの割り切りということでお許しいただけないかというのが私ども考え方でございます。
  230. 長野祐也

    ○長野委員 経過措置で各月別にやると、業務処理上技術的に大変なことだということはよく理解できるのですが、一方でそういう声もある、率直に言って割り切れないということもまた事実でありますので、今後十分検討課題として御研究をいただきたいということで終わりたいと思います。  次に、改正法案における年金の給付水準についてお伺いをいたしたいと思うのです。  今回の改正案のもう一つの柱といたしまして、将来に向けての給付と負担の適正化ということがあるわけでありますが、将来の年金の給付水準についての今回の改正案の基本的な考え方を聞かせていただきたい。またこれによって、先ほどお話しのあったように、二十一世紀に向けて我が国の年金制度の財政運営が安定するというふうに理解をしてよろしいのかどうか。国民は何よりも、将来の年金制度を当てにしてよいのかどうかということに関心を持っておりますので、ぜひこの点については明快なお答えをいただきたいと思います。
  231. 吉原健二

    ○吉原政府委員 将来の給付水準のあり方、この改革案が、現在年金をもらっている方の水準は維持しつつ、将来に向かって給付水準というものを適正化していくという考え方に立っているわけでございますが、サラリーマンについて申し上げますと、年金の水準は一体どの程度の水準であるべきなのか。従来から、私ども、サラリーマンの方の厚生年金につきましては標準報酬方式といいますか、現役の労働者、勤労者の方の賃金の六〇%をめどにするという考え方でやってきたわけでございます。現実には、そういった考え方でやってきながらも加入年数等の伸長によりまして既に六八%の水準になっている、これを一体どうするかということが一つの問題であったわけでございますが、私ども、それでは高過ぎるという御意見がございましたし、一方ではまた、もっと上げるべきではないかという御意見もあったわけでございますけれども、現在の六八という水準は将来に向かってほぼ維持していこうということで、厚生年金の水準は大体六八ないし六九を将来に向かって維持していくという考え方にしているわけでございます。  それから、国民年金につきましては、従来も厚生年金、サラリーマンの世帯とのバランスを考えながら上げてきたわけでございますけれども、今度は国民年金が基礎年金を支給する制度に基本的に変わってくるということでございますので、基礎年金の水準をどうするか、これは先ほどからもいろいろ御説明申し上げておりますけれども、単身で五万円、夫婦で十万円ということでどうだろうか、やはり国民年金保険料の将来の負担ということも考えました場合に、五万円という水準で基礎年金の水準を考えたわけでございます。  これで将来の年金の財政制度というものが安定するかということでございますが、私ども、この改革案をお認めいただければ、将来二十一世紀に向かって年金制度は本当に不安のない、しっかりとした揺るぎない基盤が形成される、国民の方にも十分安心をして、信頼をして年金制度に加入していただきたいと思いますし、保険料も払っていただける、今お約束している給付はその時点においてもきちんとお約束できる、こういうふうに確信をしているわけでございます。
  232. 長野祐也

    ○長野委員 今の局長の御答弁で、改革案が成立をすれば、将来にわたって財政的には揺るぎない制度になるという答弁を開きまして、安心をいたしましたし、一刻も早い成立を期していきたいと思います。  そこで、次に、諸外国との年金通算協定についてお尋ねをしたいと思うのです。  海外に在住する日本人は今や五十万近くに達しておりまして、今後国際化が進む中でますますふえることが予想されます。このうち永住権を持つ人は少なくて、大半は企業の海外駐在員であるのが実情であります。ところが、特に先進国におきましては、その国に短期間でも在住しますと年金制度に加入をしなければならないケースが多いわけであります。我が国の厚生年金制度が、日本に所在する事業所の五人以上の事業所に対しては、外国人の法人であっても強制適用として保険料を徴収していることを考えますれば、在外日本人がその国の年金制度に強制加入させられることはやむを得ない面もあるわけでありますが、その在外日本人も、永住者を除く在日外国人も、数年間保険料を納めても大半が年金に結びつかない、掛け捨てになっているという点が私は問題点だろうと思うのです。また一方では、在外日本人は外国にあっても厚生年金保険料を払っているケースが多いわけで、つまり保険料を二カ所において払って、そのうちの一つは全くむだになっている、そういう実情であります。特に西欧諸国では最近保険料が高くなっている国も多くありまして、企業にとりましてもその負担増は無視できないと言われております。  こうしたむだ、不合理をなくすために、在外日本人は厚生年金に加入せず、そのかわり、その国で数年間でも加入した分は年金として支給されるようにすることを、相手国と日本で交互に便宜を図るという年金の通算協定の必要性が叫ばれてから久しいわけでありますが、政府は、これまで西ドイツと米国との間でこの交渉を個別にされてきたわけでありますが、その後の進捗状況をまず最初に伺いたいと思います。
  233. 有馬元治

    有馬委員長 ちょっと、答弁は後で……。      ――――◇―――――
  234. 有馬元治

    有馬委員長 この際、公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(国鉄労働組合関係)、公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(国鉄動力車労働組合関係)、公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(全国鉄施設労働組合関係)、公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(鉄道労働組合関係)、公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(全国鉄動力車労働組合連合会関係)、公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(国鉄千葉動力車労働組合関係)、公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(全国電気通信労働組合関係)、公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(日本電信電話労働組合関係)、公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(全専売労働組合関係)、公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(全逓信労働組合関係)、公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(全日本郵政労働組合関係)、公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(全林野労働組合関係定員内職員及び常勤作業員常勤作業員処遇を受ける常用作業員を含む。)」)、公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(全林野労働組合関係基幹作業職員常用作業員常勤作業員処遇を受ける者を除く。)及び期作業員」)、公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(日本林業労働組合関係定員内職員及び常勤作業員常勤作業員処遇を受ける常用作業員を含む。)」)、公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(日本林業労働組合関係基幹作業職員常用作業員常勤作業員処遇を受ける者を除く。)及び定期作業員」)、公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(全印刷局労働組合関係)、公共企業体等労働関係法第十六条第二、項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(全造幣労働組合関係)、右十七件を一括して議題といたします。  趣旨の説明を聴取いたします。坂本労働大臣。     ―――――――――――――  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(国鉄労働組合関係)外十六件     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  235. 坂本導聰

    坂本国務大臣 ただいま議題となりました公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(国鉄労働組合関係)外十六件につきまして、一括して提案理由を御説明申し上げます。  昭和五十九年二月二十八日以降、公共企業体等関係労働組合は、昭和五十九年四月一日以降の賃金引き上げに関する要求を各公共企業体等に対し提出し、団体交渉を重ねましたが、解決が困難な事態となり、四月二十日以降、関係労働組合または当事者双方の申請により公共企業体等労働委員会の調停が行われ、さらに五月一日同委員会の決議により仲裁手続に移行しました。同委員会は、五月十二日、公共企業体等と関係労働組合に対し、本件各仲裁裁定を行ったのであります。  本件各仲裁裁定は、職員の基準内賃金を、本年四月一日以降、一人当たり基準内賃金の一・三九%相当額に千百七十円を加えた額の原資をもって引き上げること等を内容とするものであります。  政府といたしましては、現状におきまして、本件各仲裁裁定の実施が予算上可能であるとは断定できません。したがいまして、公共企業体等労働関係法第十六条第一項に該当するものと認められますので、同条第二項の規定により、同会に付議し、御審議を願う次第であります。  何とぞよろしく御審議の上、国会の御意思の表明を願いたいと存ずる次第であります。
  236. 有馬元治

    有馬委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。     ―――――――――――――
  237. 有馬元治

    有馬委員長 以上の各件につきまして質疑及び討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(国鉄労働組合関係)外十六件を一括して採決いたします。  右十七件はいずれも公共企業体等労働委員会の裁定のとおり実施することを承認いたしたいと存じますが、これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  238. 有馬元治

    有馬委員長 起立総員。よって、右十七件はいずれも公共企業体等労働委員会の裁定のとおり実施することを承認すべきものと決しました。  右十七件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  239. 有馬元治

    有馬委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  240. 有馬元治

    有馬委員長 この際、関係大臣を代表して労働大臣の発言を求めます。坂本労働大臣
  241. 坂本導聰

    坂本国務大臣 ただいま御承認の議決をいただき、まことにありがとうございました。  私といたしましては、本会議及び参議院での御承認が得られ次第、速やかに仲裁裁定が実施されるよう努力する所存でございます。(拍手)      ――――◇―――――
  242. 有馬元治

    有馬委員長 国民年金法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。長野祐也君。
  243. 長野祐也

    ○長野委員 先ほどの質問に対する答弁をお願いいたします。
  244. 吉原健二

    ○吉原政府委員 国際間の人事交流その他、いろいろな交流が活発になるにつれて、年金制度の面における通算制度が非常に重要な問題になってきておるわけでございますが、まずアメリカとの年金通算協定の締結に向けまして、五十四年から、私の方から日本からアメリカに行き、またアメリカからも担当官に日本においでいただいて、いろいろ協議を進めてきたわけでございますが、現在まだ協定の締結というところまではいっておりません。それから、西ドイツとの年金通算問題につきましても、これはアメリカよりもさきに早く、昭和四十年代から、お互いに両国で問題意識を持ちまして協議をしてきておりますけれども、これもいろいろな事情がございまして一時中断をしておりまして、できるだけ早い機会に再開をして結論を出そうじゃないかというような状況でございます。
  245. 長野祐也

    ○長野委員 西ドイツ、アメリカとの交渉も随分時間がかかっているわけですが、なかなか余り進んでいないようですけれども、そのネックとなっている部分はどういうことなんでしょうか。
  246. 吉原健二

    ○吉原政府委員 ネックというほどではないのでございますけれども年金の通算協定をいざ実施するということになりますと、適用の問題をどうするか、あるいは二重加入、それから保険料の負担がどうなるか、それから年金財政に対する影響がどうなるか、給付はどういうふうにするのかという、いろいろな大変細かい技術的な問題があるわけでございます。特に国が違う上に制度が違いますために、お互いの意見の違い等も率直に言っていろいろあるわけでございまして、そういった意味におきまして、お互いにやりたいという気持ちは持ちつつもなかなか締結合意までは至っていないという状況でございますし、西ドイツとの関係について申し上げますと、例えば前の制度におきましては、日本から西ドイツに行った場合に、日本の制度とそれから西ドイツの制度と二重適用というようなことになっておりましたけれども、その二重適用の制度が改正をされましてそういった措置がとられなくなったということもございまして、いわば通算の必要性というものが半分解決をしたというようなこともございまして、あと残りの問題をやろうというようなことで協議を再開しようじゃないかということになっているわけでございます。
  247. 長野祐也

    ○長野委員 いろいろ技術的に、制度が違うわけですから難しい点はあると思うのですが、協定を結ぶ必要性というものは理解をしていただいていると思うのです。このままいりまでたっても進まないということでも困るわけで、今後どういう具体的な努力をされていくつもりなのかが第一点。  もう一つは、アメリカとの関係において事務的にどのような詰めの段階にまできておるのか。  それから三番目は、西ドイツからは、非公式ではあるけれども協議再開の打診がことしあったと聞いておりますし、それに対して日本からも積極的な対応を回答されたというふうに聞いておりますが、その後西ドイツからもう一回そういう正式な打診があった場合は、残りの問題というのはどういうことかわかりませんので、残りの問題というのはどういうことなのかも御説明いただきながら、そういう協議にすぐ入る御意思なのかどうか。  この三点についてあわせて伺います。
  248. 吉原健二

    ○吉原政府委員 西ドイツの問題から先にお答えを申し上げますと、むしろ私の方はいつでも応ずる用意がある、西ドイツの方から協議再開についての正式の意向を待っている段階でございます。  それから、西ドイツの問題で今後検討すべき問題というのは、老齢もございますけれども、遺族や障害給付をどういうふうにするかということでありますとか、あるいはそう長期でない一時派遣者の適用の調整、そういった問題は、今後お互いに新しい問題として詰めていかなければならないというふうに思っているわけでございます。  アメリカとの問題ですけれども、端的に言いまして、いろいろありますけれども、二重適用排除の具体的な方法、それから業務処理体制のあり方、そういった問題が一つございますし、それから、アメリカとの基本的な考え方では、今まで日本からアメリカへ行った場合にはアメリカの制度の適用を受けるというような仕組みになっていたわけでございますが、もしそういったようなアメリカへ行ってもアメリカ制度の適用から除外するということになりますと、アメリカの制度に対する影響が必ずしも今まで考えていたほど小さいものではないというような問題意識も持っているようでございまして、その点をアメリカ側がどういうふうに考えるかということが、今後の話し合いの一つのポイントになろうかというふうに思っております。
  249. 長野祐也

    ○長野委員 いろいろそういう問題点があることはわかりますが、今後、この協定を結ぶまでに、どういうような具体的な努力日本側としてはされるおつもりなのか。
  250. 吉原健二

    ○吉原政府委員 具体的な努力といたしましては、私どもとしては、向こうの都合といいますか、やろうということであればいつでも応ずる用意がございますし、そういう意思はアメリカなり西ドイツに伝えているわけでございます。
  251. 長野祐也

    ○長野委員 今日まで、アメリカと西ドイツだけと交渉をやっているわけですが、それ以外の国と交渉する意思があるのかどうか。
  252. 吉原健二

    ○吉原政府委員 年金通算の必要性というのは、何もアメリカと西ドイツだけじゃございませんで、ほかの国とも交流が多いわけですからいろいろあるかと思いますが、やはりお互いの協定でございますから、相手国もやろうじゃないかというようなことでないとなかなか話も出てこないという状況でございまして、今のところ、現時点におきましては、アメリカ、西ドイツ以外にそういう具体的な話が出ているところ、出そうなところはございません。
  253. 長野祐也

    ○長野委員 それは相手側の意思によるものなのか、あるいは通算協定の交渉に入るために基本的な条件ということはどういうことが必要なのかということをまず伺いたいのですが、同時に、西ドイツ、米国以外とできない、できないといいますか、向こう側から言わないからこっちもやらないのだということなのか、あるいはもっと基本的に、いろいろな制度の仕組みが違うためにやりにくい状況になっておるのかどうか、その辺をお聞かせいただきたいと思います。
  254. 吉原健二

    ○吉原政府委員 制度の仕組みから言いますと、年金制度の通算ということになりますと、基本的に制度の仕組みが違うということになりますとなかなかやりにくいわけでございます。具体的に言いますと、日本のように厚生年金国民年金いずれも社会保険方式をとっておりますが、スウェーデンなどでは税方式ということを基本にしておりますので、税方式と社会保険方式の通算というのはなかなかできにくいというような事情がございます。それから、やはりそういった制度の仕組みの違いも一つございますし、国際的な交流といいますか人の行き来の大きさ、それから、そこで具体的に問題が生じているかどうか、そういったことも通算協定というものを進める場合の一つ条件といいますか、そういう熟度といいますか、そういったものになろうかと思います。
  255. 長野祐也

    ○長野委員 今までの私の意見と局長答弁を聞かれながら、大臣にお伺いをしたいのは、大臣のこの問題に対する必要性をどういうふうに御認識をされておられるのかということと、この問題に取り組まれる決意といいますか、基本的な姿勢を伺いたいと思います。
  256. 渡部恒三

    渡部国務大臣 これは長野先生の御指摘、非常に重要な問題でございます。日本は言うまでもありませんが世界の中で生きておる国でありまして、特に海外で多くの人たちが働いて、そのことによってこの国の発展の基礎があるわけでございます。その人たちがやはり安心して働けるためには、将来の年金権が保障されることであり、また現在のような中で二重に負担する、重複負担するというようなことは、個人にとっても企業にとってもこれは大きなマイナスでございますから、私は、海外で働く我が国の人たちがみんな安心して、将来の年金に対する安心した立場をつくり上げること、これが政府にとっても大きな使命であると思います。  ところが、今先生から政府委員に対する質疑の中にありましたように、我が国と相手の国との間の年金のやり方、仕組みの違いとか、また、私は最初は単純にお互いに相殺されればいいと考えたのですけれども、大体、我が国の場合は、世界の相手国にこちらから行っている人の方がはるかに多くて、向こうからこちらに来ている人の方が少ないわけでありますから、そういう意味での利害から言えば、この問題は、我が国にとってはどうしてもやらなければならないことであるけれども、相手の国にとってはさほど、我が国ほどの熱意を持たないというようなことで非常に難しい問題がございます。  しかし、これはまず一つでも二つでもその国との通算協定ができれば、これは同然に、かつての協約改定のようなもので、すべての国にこれは行き渡っていくことができますので、私は、国会が終わってお許しをいただければ、アメリカにも西ドイツにも行ってこの問題を解決しなければならないと思っております。
  257. 長野祐也

    ○長野委員 重要な指摘だという御認識を持っていただいておりますが、その仕組みの違いからくる難しさはわかるのですが、やはり相手国の熱意が日本よりないということはわかるのですが、それだけに、今大臣がおっしゃったように、ひとつ国会でも終わって、特に今まで交渉のあった西ドイツ、アメリカを中心に、相手側の国の熱意、また日本側の熱意を理解してもらうために、大臣みずからが外国に出かけて交渉といいますか、問題提起をされるというふうに理解をしてよろしいですか。
  258. 渡部恒三

    渡部国務大臣 国会の事情がお許しいただけるような状態になり、私が出張する時間を総理から与えていただければ、私はぜひ行ってこの問題の解決のために努力したいと考えております。
  259. 長野祐也

    ○長野委員 国会が終わられてからひとつぜひ行かれて、直接この交渉のトップとして頑張っていただきたいと思います。  次に、改正法案で、現在の給付設計を二十年程度の経過措置をもって見直すこととされておりますが、この給付水準を見直すといいましても、先ほど大臣の御答弁にありましたように、既得権といいますか、現に年金をもらっている人の年金額を削るというようなことは許されないことだと思いますし、また期待権という意味で、もうすぐ年金をもらえる人の年金ががくんと下がるようなことがありますと、人生設計といいますか計画が狂ってくるわけでありまして、こういう既得権や期待権といった点について、改正法案についてどういうような配慮がなされているのか、経過措置についての基本的な考え方を伺いたいと思います。
  260. 吉原健二

    ○吉原政府委員 まず、給付水準の適正化を具体的にどういうやり方でやるかといいますと、厚生年金の定額部分につきましては、現在の一年ごとの単価、それから単価というものを漸次逓減をさせていくということと、それから報酬比例部分につきましては、千分の十という乗率を逓減をさせていくというやり方をとっているわけでございます。それで、その定額部分を実質的に基礎年金相当部分の五万円にしていく、報酬比例部分も千分の七・五にするということによって給付水準の適正化を図るということにしているわけですが、そういった経過措置の適用年齢を、この新しい制度が施行される時点において、五十九歳以下の方に適用することにしておりまして、その定額部分の単価と乗率というものを二十年かけて逓減させていく。そして、二十年後にこの制度が考えております単価を具体的に申し上げますと、一年について千二百五十円という単価になり、また報酬比例部分については千分の七・五という乗率になるわけでございます。そういったことにおきまして、これから年金がもらえる人についても、いわば期待権を尊重しながら、年金の額というものが急激に下がるというようなことのないような配慮をしているつもりでございます。
  261. 長野祐也

    ○長野委員 現在既に年金を受けている人の年金額は変わらない、さらに期待権を尊重するということでありますが、その点はわかるのですが、心配なのは物価スライドの制度がどうなるかということでありまして、年金の財政事情とか一般会計の財政事情が悪化した際に、物価スライドが凍結をされるというようなことがあっては大変不安なことでありまして、この制度が将来とも堅持をされると考えてよろしいかどうか、はっきり御見解をお示しいただきたいと思います。
  262. 吉原健二

    ○吉原政府委員 物価スライドの問題につきましては、むしろ現行制度よりも明確な形でこれからもやっていく、むしろ内容の改善を図っております。  法律的に言いますと、従来、物価スライドの規定というのは附則の方に置かれていたわけでございますが、これをまず本則の中にしっかりと規定をすることにしておりますし、内容的には前年度の物価上昇率五%以上の場合に、上下の幅があるわけでございますけれども、物価スライドをするというのは従来どおりでございます。スライドの対象に加算だとか加給といったものは従来対象にされておりませんでしたけれども、そういったものも対象に加えることにしておりますし、また、物価スライドの実施時期もこの改正案におきましては四月にさかのぼって、毎年四月からやるということにしているわけでございます。  それから財政再計算といいますか、国民経済状態、生活水準、賃金等に大きな変動があった場合に、政策的な改定を一定の年限ごとに行うという建前は、この改正後の制度においても維持していくということにしております。
  263. 長野祐也

    ○長野委員 次に、大臣厚生年金の支給開始年齢について伺いたいと思うのです。  今回支給年齢をやはり六十歳ということで維持されておりますが、先ほどからのお話しのとおり急速な高齢化社会に向かう中で、また一方、午前中に議論がありましたように、税と社会保険料の国民の負担の限界というようなことを考えていきますと、いずれ六十歳を引き上げるということは避けられないと認識をするわけでありますが、この点将来どのような方針をお持ちか、お聞かせいただきたいと思います。
  264. 渡部恒三

    渡部国務大臣 先生御指摘の支給開始年限の問題は大変大事な問題であり、国民の皆さんも一番関心の深い問題だと思います。人生五十年社会が御案内のように八十年になり、さらに八十五年になろうとしておるのでありますから、これは理論的には、いずれ支給年限は六十五歳とかということになる時期が来るであろうと思います。またそういう決断を迫られるときがあろうと思いますが、今皆さん方が非常に不安に思っておりますし、この問題は、単に私どもだけが判断していい問題ではない、労働問題とかそういうもろもろの問題と関連があり、また、我が国では人生八十年社会になったとはいいながら、かつての人生五十年社会での労働条件というものの慣習が残っております。これらのものは当然どんどん変化していくものでございますが、そういう中で、国民の皆さん方が安心して広い立場での合意を得られる時期というものがあろうと思いますが、今回はそういう不安も皆さん方に与えてはならない、また労働条件等社会的時期がまだ熟していないということで、不安感を与えないために六十歳支給ということにしたわけでございます。
  265. 長野祐也

    ○長野委員 いずれ決断をする時期が来るだろう、今はその機が熟していないということですが、大臣は、将来どの辺の時点でそういう時期が来るというふうにお考えですか。
  266. 渡部恒三

    渡部国務大臣 これは大変難しい御質問でございまして、まず今度の人口白書でも、女性の方が四歳近く高いのでありますが、八十近くなりました。これも絶対的な予測というのはできませんが、かなり近い時期に八十五歳まで行くだろう、こういうことも言われております。そういう中で、今労働問題いろいろ言われておりますが、五十五歳定年というようなものが六十歳あるいは六十五歳というふうになっていくだろうと思います。そういう時期を見ながら国民の皆さんが安心していただける時期にやるということで、まだその年月、期限というものはお許しをいただきたいと思います。
  267. 長野祐也

    ○長野委員 厚生大臣のお立場では、今そういう時期を示すということは、そういう答弁を期待する方が無理だと思いますので、次の問題に移りたいと思います。  婦人の年金の問題について、二点確認をしておきたいと思います。  これまで婦人の年金につきましては、すべての婦人が制度に加入をして独自の年金を持つ方向と、夫の年金のもとで保障していくという方向と二つの議論があって、いずれにするかという大問題があったわけでありますが、改正法案では、サラリーマンの奥様もすべて国民年金に加入をし、すべての婦人が自分の基礎年金を受けることになります。年金制度の根幹にかかわるこの大問題について、今回よく知恵を出されて解決を図られたと思うのですが、この点についての基本的な考え方を伺いたいということが第一点。  第二点は、そのサラリーマンの奥様の中に、過去に国民年金に任意加入していた人、あるいは現に任意加入をしている人がおります。今回、婦人の年金権の確立ということで御婦人もみんな基礎年金がもらえるようになりますと、過去に任意加入をしていた人は何だかばかを見たんじゃないかというような心配を耳にすることもあるわけですが、このあたり、任意加入の実績をどういうふうに見てくれるのか、二点伺いたいと思います。
  268. 吉原健二

    ○吉原政府委員 年金制度の中で婦人をどういうふうに取り扱うかというのは、重要でありますけれども、大変また難しい問題であったわけであります。今度の改正案におきましては、御婦人の方もすべて男子、働いている方と同じように強制加入ということにしたわけでございます。これは、考え方としては先ほど御質問にございましたように二通りの考え方がございましたけれども、現実にサラリーマンの妻も七、八百万人、一千万人近い方が国民年金に任意加入しておられるという現実、そういったことを考えますと、御婦人一人一人が自分自身の年金を受けたいというお気持ちが非常に強くなってきておる。国民年金が発足して二十年以上たちました現在、非常にそれが強くなってきているということを踏まえまして、御婦人の方一人一人に年金の受給権が与えられるようにするということが制度のあり方としても望ましい、あるべきだ、そう考えて、今回基礎年金の導入という形で婦人の年金権の問題も解決をすることにしたわけでございます。  それから、これまでサラリーマンの奥様の方で任意加入をされた方が、基礎年金に入って一体損をしたのか得をすることになるのかという御質問だと思いますけれども、任意加入をされていた方は、やはりそれなりの任意加入の実績というものを踏まえて年金が出ることになっておりまして、決して今までの任意加入した分が損になるというような、措置にはなっておりません。
  269. 長野祐也

    ○長野委員 最後に、障害者の所得保障について伺いたいと思います。  年金の給付水準はこれまで改善が重ねられてきましたけれども、障害者の所得保障という観点からはなお不十分であるという声を聞いてまいりました。特に、幼いときから障害がある人は障害福祉年金しかもらえない、これでいいのかという関係者の訴えには強いものがあります。大臣は就任の際、障害のある方々と弱い立場にある人たちに対する施策は、どんなに厳しい環境にあっても充実をさせるんだという考えをお示しになったことに、非常に敬意を表したいと思います。  今回の改正案において、障害者の所得保障の充実が一つの柱になっておりますが、具体的にどういうふうに取り組まれるのか、お示しをいただきたいと思います。
  270. 吉原健二

    ○吉原政府委員 障害者の方に対する年金といいますか手当、そういったものを含めました全体的な所得保障の充実、これは、今度の改正案におきましての一つの私ども最大限重点を置いた事項の一つでございまして、二十歳未満の障害を持った方につきましては、もう二十歳から基礎年金の対象にして金額も大幅に引き上げをするということにしておりますし、またそれとは別に、新たに日常生活において常に特別の介護を必要とするような在宅の重度障害者の方には、特別障害者手当というものを支給をするということにしているわけでございます。それから第三点でございますけれども、従来、厚生年金で障害年金を受ける場合には、障害の認定期間に五年という制限があったわけでございますけれども、五年以内に発病して、あるいは傷害になってから五年以内に障害の状態にならなければ年金が出ないというような制限がございましたけれども、これもこの際思い切って撤廃をする、六十五歳まではそういった五年の事後重症の認定期間を撤廃をするということにしまして、従来慢性的な経過をたどって障害が重くなるという方に対する障害年金というものの道を大きく開いたということでございます。
  271. 長野祐也

    ○長野委員 この問題に対する大臣の今後の取り組みの御決意をお聞かせいただきたい。
  272. 渡部恒三

    渡部国務大臣 今回の年金改革案、私どもは、まず、今、高齢化社会を前にして、いろいろ取りざたされておる同氏の持さん方の将来の公的年金に対する不安感を一掃するということ、そのためにまた同民全体が先輩を支えるということでありますが、その中で特に私どもが力を入れましたのは、弱い立場の人、恵まれない立場の人、これを国民全部が支えていくのだということでございます。そのために、これはいろいろ財政的に難しい面がありましたが、今御指摘いただきましたように、障害者の皆さん方には倍近い年金価になる大改革をあえて実行したわけでございますが、これからもやはり恵まれない弱い立場の人に対しては、国民全体が無限の愛を注いでいくという我々の、政府の厚生行政のいわば原点を、この年金改革の中に入れたものでございます。
  273. 長野祐也

    ○長野委員 最後に、この改革案に対する私の所見と要望を若干申し上げて、質問を終わりたいと思います。  今回の改革案は、年金財政の安定、制度間の格差是正という二大目的でなされたもので、これはともに極めて重要かつ必要なものであると思います。  改革案は、その目的をほぼ全面的に果たしていると言っても過言ではないと私は思います。  具体的には、厚生年金の場合、負担を将来的に二三・九%という、西ドイツが既に実施をしているという意味において、現実的な線に抑えて、一方、給付は、四十年加入で平均月収の六九%という、諸外国と比べても遜色のない水準を設計をしております。現在の三十年加入で六八%という水準と比較をしますと、加入期間が長くなった分だけ給付ダウンということになるわけでありますが、近い将来四十年加入が一般的になることを考えますれば、生活に影響する給付ダウンとは言えないと思います。負担を抑え、一方で給付水準を事実上維持したという改革案は、実にバランスがよくとれていると私は思います。そういう意味で、少しでも給付と負担のバランスがどちらかに傾き過ぎると、そのバランスを失する中で、そのわずかな間の可能性を見きわめた一つのベストの案であると私は評価をするものであります。  また、障害年金の改善など見るべき個々の点も多いわけでありますし、とりわけ世代間の不公平を、考え得る最小限度にとどめるように配慮したこの経過措置の乗率は、実に工夫をされていると私は評価をしたいと思います。  亡くなられた山口年金局長を初め、この案をつくられた事務局の皆さんの三年にわたる徹夜に継ぐ徹夜といいますか、大変な御努力に敬意を表したいと思います。  ただ、一点だけ申し上げたいことは、年金に対する国民の関心が高まる一方の中で、負担に対する国民の意識というものは、政府が考えておられる以上に私は厳しいものがあるということを申し上げたいと思うのです。国民年金をやめて個人年金に入った方がいいとかというようなこともよく耳にいたしますし、先ほども指摘があったように、国民年金の未納が相変わらず少なくないことも私はあらわれの一つではないかなと思います。サラリーマンの間でも、既に厚生年金保険料は高くなったという声は少なからず出ております。改革案では、将来的な負担を現実的なものに抑制しているとはいいましても、現在よりも上げていくことは事実であるわけでありますから、年金制度を支えるために適正な負担は当然なわけでありますけれども国民の間に不満が出ないように、ぜひ大臣を初め局長から御答弁があったようなそういう政府考え方というものを今後周知徹底をさせられて、負担に対する、この制度を長続きするために必要な負担の必要性というものをよく理解をしていただく努力をしていただきたいと思います。  言うまでもなく、年金制度は、医療保険制度と並んで社会保障制度の柱でありますし、特に日本は、今から大変な高齢化を迎える中で、この老後の収入を保障する年金制度の持つ意味はさらに大きくなってまいりますし、関心は非常に高くなってきております。この時点における改革案はまさに時宜を得たものでありますし、障害者の方々もかたずをのんでその成立を待っております。  この際、これを早期に成立をさせることが国民の願いにこたえるものであるということを強調いたしまして、私の質問を終わります。
  274. 有馬元治

  275. 田中美智子

    ○田中(美)委員 今、年金の今度の改正案で、妻の年金権の確立とか婦人の年金権の確立ということが新聞や雑誌などに非常に大きく報道されておりますけれども、そのようにお考えなのでしょうか。
  276. 渡部恒三

    渡部国務大臣 まさに御指摘のとおりでございまして、現在の年金法の中では、サラリーマン家庭の方など、国民年金に奥さんが入ってないので、離婚されますと無年金者になってしまいます。これは非常に大きな社会問題も含んでおりましたので、今回は、この国に住める皆さん方が全部年金をお持ちになる、奥様方も立派に年金をお持ちになるということがこの改革案の大きな目玉でございます。
  277. 田中美智子

    ○田中(美)委員 この国に住める御婦人方の年金がすべて確立されるようにすることが大きな目玉だというふうに大臣は言われたわけですが、これはちょっと大分違うんではないかと私は思います。大臣のお考えの御婦人というのはだれが御婦人なのか、だれが妻なのか、私などは御婦人の中に入っているのかどうか、非常に不思議に思うわけです。この国に住める御婦人ということはすべての御婦人だと思うのですけれども、ちょっとそういうことではないと思いますけれども、間違いありませんか。
  278. 吉原健二

    ○吉原政府委員 基本的な考え方としては、今大臣が申し上げましたように御婦人の方の年金権を確立をする、すべての御婦人に御自身の年金が受けられるようにするという考え方に立った内容になっているわけでございますが、そうはいいましても、今御婦人で年金をもらっておられる方の年金がではすべて上がるのか、あるいは今年金を受ける権利を持っておられない方の御婦人すべてが直ちに年金権を持たれるのかといいますと、これはそうではございませんで、やはり一つ年金制度の仕組みとして、将来はそういうことになるように措置をとったということでございまして、現実の御婦人の方が全部権利を、今までない人が持つようになるということではございません。
  279. 田中美智子

    ○田中(美)委員 ほら大臣、違うでしょう。この国に住めるすべての御婦人の年金が確立することを目玉にしたのだ、こういう不正確な言い方をしてはならないと思うのですね。今おっしゃったように、それはそうではないというふうに言っているわけですから。第一、年金の確立と言われますけれども、一体どれぐらいが年金の確立と考えているのですか。これは局長でいいです。
  280. 吉原健二

    ○吉原政府委員 まず、婦人の年金権の確立といいますのは、この改革案におきましては社会保険方式をとっておりますから、この改革案におきまして、一定の保険料を一定期間納めた方、そういった御婦人にはすべて年金が受けられるようになる、今までもともと適用対象外になっていた御婦人の方もおられるわけですから、そういった方々も全部制度の適用対象にする、それで一定の保険料を一定期間納めた方には年金が受けられるようにする、それが基本でございます。  それから、給付水準につきましては、基礎年金の五万円というものがすべての御婦人の方に将来受けられるようにするということでございます。
  281. 田中美智子

    ○田中(美)委員 今の大臣局長のお話を聞いていますと、やはり週刊誌などが非常に朗報だと言われるようなそういうニュアンスを非常に含んでいるわけです。この国に住めるすべての御婦人が、大きなめどとしては今局長が言われたような五万円の方向を向いている、こういうふうに聞こえるわけですね。しかし、細かく見てみますと、細かくでなくても、大ざっぱに見てみても、そうはなっていないというふうに思うのです。  第一、老齢福祉年金の受給者は今何万人ですか。
  282. 吉原健二

    ○吉原政府委員 二百七十万人でございます。
  283. 田中美智子

    ○田中(美)委員 約三百万近い方たちが受けているわけですが、この方たちは、今一番若くて七十三歳ですから、その方たちは平均寿命としても八十から八十過ぎぐらいまで受給されるというふうにも、もちろん全部ではないですけれども考えられます。この中の女子の比率が約六六%ぐらいで、これは年々女の寿命が延びておりますので、老齢福祉年金というのは婦人が受けるようにどんどんなっていっているわけですね。ですから、こういう御婦人も、大臣の言う御婦人の中には入っていないのじゃないか。七十三歳以上であっても御婦人であるというふうに私は思うのですね。この方たちは今二万五千百円ですね。そうですね、局長
  284. 吉原健二

    ○吉原政府委員 そのとおりでございます。
  285. 田中美智子

    ○田中(美)委員 それが政府案ではわずか二万五千六百円になっているのであって、このこと自体、約二百七十万ですか、その中の約六六%ぐらいというのは御婦人ですから、この人たちが五万円になっていく道というのは開かれていない。この人たちはもういなくなってしまうのだからいいのだという考えがありありと出ているではないか。そうならば、このこと一つとってみても、御婦人の年金権がこの日本に住んでいるすべての御婦人にという方向には向いていない。もう少し正確に言っていただきたいと思うのです。  それから、もう一つあります。女子労働者の厚生年金。これは自分が入っているのですよ。妻といってもいろいろありますからね。無職の妻もあれば、自分で入っているのもあれば、おたくのかあちゃんのように、大臣のかあちゃんのように……(「大臣の妻もあり」と呼ぶ者あり)そうです、大臣の妻が自営業者である場合もある。妻というのはいろいろあるわけですね。婦人というのはいろいろあるわけです。これすべて婦人です。そして、厚生年金に入っています女子労働者は、標準報酬が男子の五三・三%です。これで計算しますと、年金も非常に少なくなるわけですね。六十一年度で計算してみますと、これはそちらの数字に基づいて私が計算したのですが、六十一年度には十三万八千百六十円というふうになります。ところが八十一年、今から二十年後には八万四千三百七十円になるわけです。一生働き続けてですよ。働き続けた婦人が八万四千円の年金になっている。これは婦人の年金権が確立したと言えるでしょうか。
  286. 吉原健二

    ○吉原政府委員 今御質問年金額の計算、一体どういう前提での御計算か、御質問だけではちょっとわかりませんけれども考え方といたしましては、今の厚生年金の給付水準というのが夫婦単位、夫婦で老後生活できるような年金ということで計算をされているわけでございます。そういう給付設計になっているわけでございまして、それを、今回の改革案におきましては単身の個人単位といいますか、単身の水準を基礎に考えるというふうに考え方を大きく変えたわけでございます。そういったことによりまして、夫婦の場合と単身の場合との給付水準のバランスを考えるということにしたわけでございます。それを一つ考え方の基礎に置いているわけでございますから、従来、単身の場合には相対的にかなり高い給付水準というものが保障されていた、夫婦の場合の給付設計でございますから、実際に単身の方についてはかなり高い水準の給付が設定をされていたということがございます。したがいまして、それを今回の場合には、適正化という考え方に立って、単身は単身なりの給付水準で御遠慮いただこうじゃないかということにしたわけでございまして、今までと比べますと、単身の場合の給付水準というのは現在の給付の計算方式でやります場合よりも低いものになるということは確かでございますが、それはあくまでも給付の水準の適正化でございまして、婦人の年金権をどうこうしたという問題ではないと私は思っております。
  287. 田中美智子

    ○田中(美)委員 婦人をどうこうしたということではないならば、婦人の年金権を確立したことが今度の改正案の目玉だなどということは言えないじゃないですか。今言ったのは男の人の年金が高い――これは私、高いとは思いません。後にも触れますけれども。あなたが今高いと言ったのは、男のことを言っているのですよ。婦人が独立して働いて、一生働いてですよ。あなたは、無職の妻でも五万円が何十年か先にもらえるようになるということを目玉のように言っていらっしゃるわけです。そうして、それを拡大してすべてがよくなるように言っているわけですけれども、実際に今働いている人たちが、結局婦人労働者は八十年、八十一年には八万何がしかの年金しかもらえないということは、これは婦人の年金権が確立したとは言えないというふうに思うわけです。  それから、もう一つの問題ですけれども、これは無年金者の問題です。今、無年金者がどれぐらいいると推定できますか。
  288. 朝本信明

    ○朝本政府委員 無年金者につきましては、いろいろな事情で発生をするわけですが、国民年金の対象となるべき被保険者の中で、例えば被用者年金厚生年金等の被保険者等が適用除外になっている。それからもう一つ、現に年金受給権を持っておられる方々は適用除外になっている。こういうような状況がなかなかわかりにくいというようなことがございます。したがいまして厳密な推計というのが困難でございますけれども昭和五十三年七月から五十五年六月までに実施いたしました無年金者救済のための保険料特例納付というのがございます。このとき対象者数を約八十万人と推定いたしました。実績といたしましては四十万人の方々に納付をしていただきましたので、差し引きますと四十万人程度まだおられるのではないかということで、ただいま努力をしているところでございます。
  289. 田中美智子

    ○田中(美)委員 なるたけぱきぱきと話してください。私は時間が少ししかありませんのでお願いします。  今言われたのは、さかのぼって年金権をつくるというときの計算でまだ四十万ぐらい残っているということですけれども、婦人の場合には、今まで厚生年金に入っていた人たちが随分脱退をしているわけなんですね。会社なんかで、やめればこういう金が入りますよというような形で脱退している人が非常に多い。それで、今こういう受給資格の年齢に差しかかっている人たちが特に多いのですね。最近の若い人たちはなかなか考えていますけれども、以前はそうでなかったので、これからはそういう年齢の人たちというのが非常に多く出てくる。その上に、学校の教員でも途中でやめて何がしかの一時金をもらって共済年金を脱退している。こういう人たちというのは今年金権がないわけですね。こういう人たちは四十万に入っていません。ですから、落ちこぼれてしまった婦人が非常にたくさんいるということです。こういうものが今度の改正案の中では全く問題にされていない。あなた方は、この国に住めるすべての婦人、こう言われましたけれども、老齢福祉年金にしても、自分で一生働いて掛け続けた人にしてもわずか八万ぐらいになってしまうのだし、まして無年金者がこんなにたくさんいる。こういう救済というものが、今度の改正の中に、すべては解決できないにしても、その救済の芽が出てきてこそ、初めて婦人の年金権の確立と言わなければならないのじゃないですか。その意味からすれば、今度の改正案というのは、ほんの一部の婦人にという言葉をつけないと、日本国に住めるすべての婦人の年金権を確立したなんて、大臣、これはもうちょっと勉強してもらわなければならないと思うのです。この無年金者の問題をどうします。
  290. 吉原健二

    ○吉原政府委員 年金制度の改革というのは、この改革案の基本的な考え方がそうですけれども、長い時間をかけて、給付水準も適正にし、負担も適正にし、すべての御婦人が年金を受けられるようにしようということでございます。今、無年金者の人も全部一挙に年金が五万円もらえるようにというのは、それはお気持ちとしてはわかりますけれども、なかなか実際問題としてできないことでございますし、今までまじめに保険料を掛けてこられた方とそうでない方との公平の問題もございますので、これからはまじめに保険料を掛けてこられた御婦人の方にはすべて御自身の年金がもらえるようになる、これは間違いのないことでございます。
  291. 田中美智子

    ○田中(美)委員 まじめにという言葉は実にけしからぬ言葉です。今四十歳以前の人たち、これからの人たちはそういう言葉は使えると思います。これだけ年金の制度のPRもできていますので。ですから、これから払えるのに払わなかったという場合は、まじめでないということも少しは言えると思います。しかし、もうすぐ年金という人たち、私の年代の女性ですね、少なくとも今四十歳以上ですね、この人たちにしてみれば、若いときから年金をもらって生活するという考え方日本には定着していなかったのですね。ですから厚生年金を脱退したということも、第一、年金に入っているということさえも会社の中で知らない。会社もきちっと説明しない。厚生省は最も怠慢だったのですよ。それをPRしなかったのです。だから、国民年金に入ってないという人がたくさん出て、無年金者が出るので大変だというので、何回も救済制度をとったというのも、厚生省が怠慢であったということをある程度認めているからこれをやったんじゃないですか。今局長はまじめに納めた人と言われるが、じゃ納めない人はまじめでなかったのか。納めていたけれども脱退している人もいるわけでしょう。そういうことを考えれば、今の局長の言葉は、一つ一つ私は気に入らないのです。(発言する者あり)全部とは言いません、一部分ですけれども。それから、私は今すぐ全部五万円にせよなんて言ってませんよ。そんなことは言ってないのに、言ったように言わないでください。あなたの方が言っているのですからね。ごまかしをしているわけです。さっきもそうです、拡大解釈している。大臣が、あんな大きなことを言うようなのは、もっとちゃんと指導しておかなければいかぬ。  私が今言っているのは、そういう人たちを何らかの形で救済する、五万円にせよと言ってません、救済する道を開かなければいかぬ。例えば最低保障年金というような形でそういうものをつくっておくとか、これはスウェーデンなんかでもやっているわけですから、こういうことだって考えられたのじゃないか。そうすれば無年金者も救うことができるし、そういう形で落ちこぼれさせられた人たちを救うこともできる。これは女だけじゃないのですよ。男にだってあるわけですから。数は男は少ないというだけです。こういうことを考えてないということが、今度のこの法案の最大の欠点の一つだというふうに私は思うわけです。  確かに細かいところでは非常に心を配った、非常に縮めた枠組みの中の努力を、元の山口局長が頑張られたという痕跡は、うーんとうなるようなところがあります。しかしこういうところは全く触れていないというところが、自民党与党のもとにある政府の大きな欠陥であるというふうに思います。  年金というのは、憲法二十五条で保障されている生活権にかかわる問題ですから、つつましくても見苦しくない生活をしたい。そんなに大きく金をもらおうと庶民というのは余り思っていないのですよ。庶民は、あなたが言うようにまじめでないというのは本当に少ないのですよ。本当に庶民というのはまじめなんですよ。つつましくて見苦しくない生活をしたい。ですから、今の日本ではやはり最低保障年金というものを、それを幾らにするかということは今私は言いませんけれども、何らかのそういう道をつくれば無年金者が全くなくなる。その上に社会保険制度というものが乗って、ここでは掛金を掛けた人がそれだけたくさんもらえるんだということになってこそ、初めて憲法二十五条がきちっと保障されている方向の第一歩を踏み出すのではないかと思うのですね。そこがすぱっと抜けている。そういう抜けているところは女が多い。それを知らぬ顔していて、サラリーマンの妻一それも今は七〇%くらいは任意加入で入っているんじゃないですか、実際には自分で入っているわけですね。そうすると、四十歳にならない人たちからの場合にはそういう五万円という人たちが出てくるでしょうけれども、それまではそうではない。そうしますと今四十歳になっている人、これから年金をもらう今生きている人たちというものは少しも考えない、この人たちに対する考え方が非常に抜けている。今、局長は、年金というのは時間をかけて、こういうふうに言われますけれども、やはり政治というものは今生きている人間をまず大事にしながら、将来にわたってこれをさらにいいものにしていくという考え方を持たなければならないのに、今生きている人たちを犠牲にして(「犠牲……」と呼ぶ者あり)いや、ここが一番犠牲になっているのですね。犠牲になっていないとは言いません。公平という点ではあなた方が言うような面が出てきているけれども。今生きている人たちの中には、落ちこぼれが非常にいっぱいあると思う。これを救おうという努力がなされていないで、妻の年金権だとか、婦人の年金権だとか、日本に住んでいるすべての御婦人だとか、こういう失言を大臣がなさるというような状態、この点はもう一度十分に考えなければならない点だと思います。大臣、失言であれば訂正してください。
  292. 渡部恒三

    渡部国務大臣 残念ながら先生とまた世界観、人生観が大分異なってきたようでございますが、私が申し上げましたのは、政府の指導を素直に聞いていただいて、そういう国民の皆さん方は、この国に住む御婦人の皆さんで、将来年金を持たないという人などが今後一人もいないようにしようというのが、この改革案の骨子でございまして、これは何遍おしかりを受けても、今度の改革案は、我が国の婦人の皆さん方の年金権の確立のために努力をしたものであるということを私は申し上げざるを得ません。  ただ、これは年金にしても何にしてもそうですが、やはり公平ということでありますから、掛金を納めた人も納めない人も全部一緒にしろというわけにもいきませんが、しかし、生活保護の方とか掛金が納められない低所得者の方とかいろいろございますから、そういう方々には政府がかわってそれなりの掛金を納めるとかいろいろな制度をとっておるものでございまして、生活保護の方、収入のない方でも、政府の指導を素直に受けてやっていられる方は年金権者になり得るのでございます。先生もどうか、国民の皆さんが我々の改革のあるところを素直に受け入れていただくよう、将来婦人の無年金者など一人も出ないように御協力を賜りたいと思います。
  293. 田中美智子

    ○田中(美)委員 大臣はわかっていてとぼけていらっしゃるのかもしれませんけれども局長は認めているのですよ。無年金者がいる、それに手を打ってないということはわかっているわけですから。結局、大臣は、今四十歳以前の人のことで、大臣もこの世にいなくなってからのときにはそういうことがあり得るかもしれませんけれども、私は、今生きている四十歳から上の人たちのことを話しているのです。だから、それは世界観の違いではなくて、どこに焦点を当てているかということです。自分が死んでから先の、若い人たちの社会では公平になるんだ。しかし、私は今の時点を言っているわけです。これは思想、信条の違いとは違うわけですね。  次の質問に移りますが、今度五人未満の事業所の人たちが被保険者になるというふうに言われていますが、それはどれぐらいになるという見通しが立ちますか。
  294. 吉原健二

    ○吉原政府委員 五人未満の事業所の中で、法人になっているところとなってないところがあるわけでございますが、今回の改革案で考えておりますのは、法人の事業所を当面厚生年金の適用対象にするということでございまして、事業所の数で言いますと約二十三万程度のものでございますし、被保険者の数で申し上げますと約百二十二万人程度が新たに厚生年金の適用に入ってくる、こういうことでございます。
  295. 田中美智子

    ○田中(美)委員 私が総理府の事業所センサスで見ますと、約二百七万ではないかと思うのですけれども、そちらの方では百二十二万ぐらいふえる。全部が入るということはないのでしょうし、多少数は違いましょうけれども、いずれにしても百万なり二百万の被保険者がふえるという計算が、今度の計算の中に入ってないということはちょっとおかしいと思うのですね。私が今計算しているのはもちろん法人のところです。それはもうわかっていることです。  それから、もう一つは婦人労働者、無職の妻だった人たちが今どんどん働きに出ていく。これは年々ふえているのですね。ですから、あなた方が言う無職の妻の年金を今の若い人たちのために確立してきているということは悪いことではないし、それは一つ考え方だと思いますけれども、そういう人たちはどんどんいなくなるんじゃないか。みんな自分の年金を持つようになるのですね。五万円というのも、あなたでいえば自分の名義で出ますから、しかし無職の妻は自分が掛けているんじゃないですね。そういうのではなくて、自分で厚生年金に入ってそこで働いてと、こういうふうに婦人の労働者の数がどんどんふえていくという傾向にあるわけです。そうしますと、この被保険者数というのはふえるんじゃないですか。減るということはあり得ませんね。
  296. 吉原健二

    ○吉原政府委員 婦人の方の職場進出が今後ともおっしゃるように進むというふうに予想されますので、そういった意味におきまして、厚生年金の被保険者本人の適用者の数もふえていく、そういうふうに見込んでおります。
  297. 田中美智子

    ○田中(美)委員 ふえるということは、それは推定した計算というのは、そちらも大変かもしれませんが、しかし、そちらの財政再計算を見ますと、こういうものが全く見込まれないで計算されているのですね。そうしますと、出す方のことは金がないからどんどん削っていくわけですけれども、入ってくる方は全然計算に入れてない。それは随分虫のいいやり方をしているというふうに思うのですよ。そうしますと、こういうのが入ってくれば今の財政再計算というのは非常に狂ってくるんじゃないかということは明らかですね。局長、そうでしょう。
  298. 吉原健二

    ○吉原政府委員 今までの厚生年金の財政再計算のやり方も実は同じやり方でございまして、現在時点での厚生年金の被保険者数、それを前提にして将来の財政再計算をやっているわけでございます。しかし、私ども、十年先、二十年先ずっと同じ状態が続くなんということは全く考えておりませんで、そういった就業構造の変化あるいは婦人の方の職場への進出、そういったものが毎年進んでいく、変わっていくということは当然考えているわけでございまして、そういった状況の変化があるからこそ、十年二十年ずっとそのままじゃなしに、五年ごとに財政再計算をするということが法律の中にあるわけでございます。そういった状況の変化を、五年ごとの再計算の際にきちんと実態に合ったものにしていくということにしているわけでございます。今後ともこういう考え方に立っているわけでございます。
  299. 田中美智子

    ○田中(美)委員 御意見は私と一致してます。確かに十年二十年では狂うのだ、だけれども今のところは、今までもそうしてきたからそういう新しく入ってくる人たちの計算をしないでやっているんだ、こういうふうに言っていらっしゃるので、これはそのとおりだと思うのです。その狂ってくるのを五年ごとに見直すということはいいことです、見直さなきゃいけないことです。それじゃそれまでの間だけを法律で決めたらいいじゃないですか。なぜ二十年も法律で拘束しちゃうのですか。そこがおかしいと思いませんか。狂うということがわかっていながら、二十年先まで決めちゃう。あなたは今二十年先には大いに狂うんだとはっきり認めている。そんな狂うものをどうして法律で決めるのですか。法律で決めちゃったらしょっちゅう法改正をしなければならぬでしょう。行革、行革なんと言っているのに面倒くさいじゃありませんか。きちっとこういうものを見込んで計算して、せめて五年なり三年なりずつ決めていく、そして五年ごとに見直すというならわかるのです。なぜ二十年もこの法律で拘束してしまうのですか。
  300. 吉原健二

    ○吉原政府委員 ちょっと年金というものに対する誤解があるといいますか、御理解をお願いしたいと思うわけでございますけれども年金というのは、長い間保険料を掛けて、年をとって老人になってから給付を受ける、こういう仕組みでございますので、人生八十年の中で、これから恐らく四十年くらい保険料を恒常的に掛けられる、四十年くらい保険料を掛けて将来六十ないし六十五から年金を受ける、そういう社会的な仕組みが年金制度でございますから、五年だけを決めて一体何を決めたらいいのか、ちょっと御質問の趣旨がよくわからないのでございますが、四十年保険料をこれだけ掛ければ六十ないし六十五からこれだけの年金がもらえるのだという全貌がはっきりしてないと、公的な社会保障としての年金制度にはならないと思うのです。  ただ、そうは言いましても、おっしゃるように、何も婦人の職場進出だけではございません、賃金も変わりますし、物価も変わっていきますので、そういった変化に対応して五年ごとに年金制度の財政再計算で給付の水準も見直すということになっているわけです。今までもそうでしたし、これからも、現在の時点は大まかにこういうことを考えておりますが、これから五年後、さらに五年後と、五年ごとに再計算をして、そういう調整をしていくという仕組みはこの制度の中に入れているわけでございます。そういった調整によって実態に見合ったものにしていく、給付水準も上げていくし適用関係も変わってくる、保険料も上げていくということにしておるわけでございます。それ以外に、年金制度としてはそれ以上のいい方法はなかなかないのじゃないかと私は思います。
  301. 田中美智子

    ○田中(美)委員 局長、私の言っていること、私の言い方がよく御理解できなかったのかと思います。何も私は五年ごとに決めると言っているのじゃないのです。だから、こういう計算を二十年、三十年、昭和百二十五年なんというのがあるかどうかは別として、年金は長いのですから、計算してみるということは大事なことです。しかし、法律で決めてしまうなと言っているのです。そういう見通しを出すことはいいことですけれども寸何も法律で決めなくてもいいじゃないかと言っているのです。それを決めるときに、入ってくるものは五人未満なんというように、これは人口もふえるでしょうけれども、それは別として、新しく制度を変えて法人の五人未満の事業所を入れるわけでしょう。それで婦人の労働者がどんどん無職の妻でなくなってくるわけでしょう。これが、みんなじゃないにしろ、厚生年金に入ってくる。そういうことを計算しないで、入れないで、二十年も三十年も先まで物事を決めるという決め方に問題があるということを私は言っているわけです。  時間がありませんので、次に移ります。  今、局長さんは、保険料も上げるけれども水準も上げるのだというふうに言われましたが、私は今生きている人の話をしているのです。これから年寄りになってくる人で、今の若い人のことを言っていません。若い人も生きているのですけれども、少なくとも昭和二十一年に生まれた人の事例を言ってみますと、昭和二十一年に生まれた人は今三十八歳だと思うのです。若い人というのは年金のことを幾ら言ってもなかなかぴんとこないわけですけれども、三十八ごろになるとそろそろ自分の年金が幾らになるか気になり出す年ですね。そうすると、一体自分は幾らもらえるんだということで、今の保険料の一〇・六%というので、会社の中で自分より上の人がやめていくのを見ると幾らもらっているか、大体自分の給料と比べて、自分もあの年になったら幾らもらえるなというふうに見るわけでしょう。――大臣、聞いていてくださいね。そうすると、平均標準報酬で計算してみたわけですが、十九万何がしもらえるから、多少蓄えでも持っていればまあまあちょっとは遊べるし、年をとっても楽しみがあるというふうに思っているわけです。一般の人は余りこういう表をつくってみないわけですから、ああ、あれならまあいいやと思うのです。ところが今度の改正ではどうなるかというので、これはちょっと気になるから、保険料が一二・四%に上がるということになりますと、それで計算してみますと十八万五千六百円になっている。十八万五千六百円ならいいかというふうに思うわけです。そして、五年後になりますと保険料が一四・二%になりますでしょう。それで給料をもらって、保険料がこんなに上がったから年金の水準も上がると思って見てみると十六万五千円になるのです。あれ、自分がもらえる年金は、計算すると保険料がどんどん上がるにつれて下がるというふうに思うわけです。局長、こっちを見て聞いておってください。私の話を聞いていてください。今三十八歳の人の心境を話しているのです。まだ自分は年金はもらえないけれども、年をとったら、六十歳になったらもらえるなと思って計算してみて、まあまあと思うでしょう。今度、五年後に掛金が上がったからまたやったら、十八万でなくて十六万五千幾らになる。もう五年たって一六%になるでしょう。それで、これでまた年金の水準が上がるのかなと思ったら、数字が十四万八千円になっておるのです。また五年たって保険料が一八・七%になる。それでまた計算すると年金が十三万円に下がっているのです。あれっということになる。もうここいらになってくると、局長ぐらいの年になりますから、貯金をしていないと大分あわててしまうわけです。年金で大丈夫と思っていたところがあわててしまう。そして、いよいよ自分が年金を受け取るときになると掛金が二三・四%になる。このときの掛金はほとんど三万円です。そうしますと十一万九千円で、基礎年金がちょっと入っても十二万六千円にしかならなくなるわけです。これは今三十八歳の人に全く悲劇じゃないか。  今、私は、昭和二十一年生まれの人を全部集めて、あなたの夢はこんなふうにつぶれていくのだと演説したいと思うのです。局長、どう思いますか。一々後ろに聞かなくて、自分で答えたらどうですか。
  302. 山口剛彦

    山口説明員 御指摘のように、今回年齢別に単価を徐々に落とす、あるいは乗率を落とすということで適正化の措置を講じておりますし、逆に保険料の方は、これから年金制度を維持するためにどうしてもある程度引き上げなければなりませんので、若い方たちにはそれだけの保険料負担をどうしてもお願いしなければならない、それが両方効いてくるということになりますので、基本的には先生おっしゃったような御指摘はあろうかと思いますけれども、これは給付と負担のバランスをとる、長期的な安定した年金制度をつくるために御了解いただかなければならない範囲ではないかと私どもは考えております。
  303. 田中美智子

    ○田中(美)委員 大変素直に認めていただきましたが、まさにこうなっているのです。ですから、長期にということは、観点がどこを向いているかということなんです。  今、四十歳からの人たちは、そういう意味で非常に犠牲になるのです。犠牲ということは、見果てぬ夢を見せられて、実際にはその夢がつぶされたという心理的なものが非常に大きいのです。四十歳以下の人は見果てぬ夢を余り見ていなかったから、気がついてみたら年金というのはこんなに低いものなのかというところから人生が出発するから、どちらがいいか悪いかということは言えませんが、若い人は大変だと思います。しかし、少なくとも今三十八歳以上の人たちは見果てぬ夢を見てしまったものですから、五年ごとに掛金が上がるたびに自分がもらえる年金の計算をすると今のようにぐっと下がる。そうすると、課長が今お認めになったように、そういう夢が果たされなくなるということです。そういう点では、どこに観点が置かれているか、今四十歳からの年輩の人たちに対する配慮が非常に抜けているということです。そこには無年金者もおれば、残念ながら掛金を払っていたのに脱退させられたためにもらえなくなった人もおれば、福祉年金のような、年金制度がなかったためにこれからまだまだ生きていくのに二万何がしかの年金しかもらえない人とか、そういう人たちが四十歳以上のところにはたくさんいるということです。
  304. 有馬元治

  305. 田中美智子

    ○田中(美)委員 私はまだ質問していませんけれども、簡単に……
  306. 山口剛彦

    山口説明員 先ほどの件、ちょっと補足させていただきたいと思います。  先ほど申し上げましたような経過措置を、年金額の計算におきましても、保険料を引き上げていく段階におきましても考えておりますけれども、それはあくまでもそういう世代の方、そういう年齢層の方の年金の水準はこうなり、保険料の水準はこうなるということであって、個人の方の年金が、年々、もらえると思っていた水準から下がっていくというようなことは絶対ございません。かえって物価水準あるいは賃金等の水準に応じて、公的年金ですから必ず水準を維持していくということになっておりますので、その点だけはちょっと誤解のないようにお願いします。
  307. 田中美智子

    ○田中(美)委員 その回答はちょっとおかしいですね。時間がなくなりましたので、先ほどあなたがお認めになっていらっしゃるので、それでは後でゆっくり私の部屋に来て論争いたしましょう、全部計算しておりますからね。だから、これは本当に残酷なんですよ。  時間がありませんので最後に簡単に大急ぎでやりますけれども、このような大改悪をするというのは、年金水準が今のままでは構造的に水準が高くなるから、どうしようもなくなるんだというようなPRが過大にされているわけですね。それは私はそういうふうに思わないのですけれども、一人当たりの年金給付額が幾らになるかということをちょっとお知らせ願いたいのですけれども、時間がありませんので一括して聞きます。  昭和六十一年と昭和八十年、九十年、それから百年ぐらいのところ、わかりますか。
  308. 吉原健二

    ○吉原政府委員 手元に六十一年と百年の数字しかございませんのでお許しいただきたいと思いますが、厚生年金保険では昭和六十一年度十一万四千九百円、昭和百年度十四万六千九百円、国民年金では昭和六十一年度二万五千八百七十二円、昭和百年度四万六百二十八円というふうな見込みでございます。
  309. 田中美智子

    ○田中(美)委員 今おっしゃったように、昭和百年、ここのところがピークだと思うのですけれども、ここでわずか十四万六千円ですよ。それなのに一般へのPR、あなたたちの厚生省からPRを、出しているのじゃないですか、成熟すると年金が給料より高くなるとかなんとかいって。だまされちゃうのですよ。そんなに年金が高くなるんだったら大変だ、それはしょうがないなというような気持ちになる。今おっしゃっておりますと、現行法のままで昭和百年だって十四万六千円くらいのものじゃないですか。それをなぜそんなに高くなる、高くなると。それはマスで言えば高くなりますけれども、これは経済成長だって伸びているわけです。ですから、何しろあなたたちは、入るところのことは知らぬぷりして、そして出す方ばかりけちけち、そして今必要な人のところはほうりっ放しにしておって、若い人には全部公平になる、公平になったらそれで妻の年金権が確立されるんだ、無年金者はいなくなるといったって、それはもうずっと先の話じゃないですか。そういうところは本当に基本的な姿勢がおかしいというふうに私は思うのです。
  310. 吉原健二

    ○吉原政府委員 ちょっと誤解があるといけませんので申し上げますが、十四万六千九百円と言いましたのは、今の貨幣価値、物価水準でのことでございまして、昭和百年といいますと今から四十年先でございますから、当然その間に相当程度の物価なりあるいは賃金の水準なり生活水準というのは上がるわけでございますから、当然そのときにはもうこれの十倍といいますか百倍といいますか、相当物すごい金額になっていると私は思うのです。だから百年後に十四万六千円、えらい低いじゃないかという点は、ひとつ誤解のないようにお願いいたしたいと思います。実質でございます。
  311. 田中美智子

    ○田中(美)委員 いや、百年後じゃない、昭和百年です。今昭和元年じゃないですからね。四十年後です。  時間になりましたので質問を終わります。
  312. 有馬元治

  313. 菅直人

    ○菅委員 きょうは、この年金の大改正法案質疑に入ったわけでありますけれども、この厚生箱の年金局から出された本の中にも、「今なぜ年金改革が必要か」という中に、戦後第一次ベビーブーム時代に生まれた団塊の世代が年金を受けるようになるのが三十年後だ、このころが一番大変なんだということが述べられております。私はちょうどこの団塊の世代の入り口の生まれでありまして、そういう点では、この年金問題というのはまさに世代を超えて、あらゆる世代が非常に強い関心を持っているということを私自身も痛感をいたしております。  そういう点に立って、これから年金のこの案に対する質疑を行うわけですが、基本的に、今回政府が出された改正案の中で、いわゆる基礎年金の上に二階建て年金という形で構成されているこの考え方そのものについては、賛意をあらわしておきたいと思います。基本的にやはり全国民が享受できる基礎的な年金があって、その上にいろいろなこれまでの経緯あるいはこれからの努力によって上乗せがあるということ、それ自身は考え方として多くの専門家の中でもほぼだれもが認めるところでもあると思いますし、私もこのようにあるべきだと考えております。  しかし、その中にあって、それを前提とした上でも、さらに大きな矛盾点がこの提案されている制度の中に数多く残っているというか、存在していると思います。  その最大の問題だと私が感じるのは、一つには、厚生年金の場合にはモデル計算で十七万円程度の給付が受けられることになっているわけですが、今までの国民年金に加入をしている人は、夫婦合わせて四十年満期全部払っている人で十万円というふうになっているわけです。これはもちろん負担の問題でのいろいろな差とかということはありますけれども、逆の見方をすれば、ではもうちょっと負担をしてもいいから厚生年金と同じような給付を将来受けたいと思う人に、何かそういうことに対応できる制度があるのなら、それは選択制ですから一つ考え方になるかもしれませんが、この制度であれば、いわゆる被用者の年金については、負担もかなり重いかもしれませんが、とにかくモデル計算で十七万円が一応保障される。しかし、国民年金の自営業者等については、どう頑張ってみたってこの公的年金部分では十万円までしか保障がされない。ここに非常に大きな片手落ちの制度になっているという感じがするわけです。  まず大臣に、この問題について、仕方がないのだとお考えなのか、今回はこうだけれども何らかのことを考えなければいけないというふうにお考えなのか、その点について基本的なお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  314. 渡部恒三

    渡部国務大臣 この年金改革案、基本的には先生率直に御理解を賜って大変ありがとうございます。  今御指摘の国民年金の基礎年金、それにプラスするこの問題で、私もあちこち歩きますと、やはり我々にも二階建て年金を掛金が余計になっても欲しいという御意見等をあちこちで聞くのであります。まさにこの年金改革は、私どもは自信を持って、勉強に勉強を重ねてつくったのでありますが、その中で御指摘を受けるとすれば、今先生の御指摘の点だと思います。今後の検討課題として勉強しなければならない問題と考えております。
  315. 菅直人

    ○菅委員 率直に大臣から、自分もそのように考えるというか、大きな検討課題だということをお認めいただいたので、重ねて余りくどくは申しませんが、確かにきょう朝来の審議を聞いておりまして、基礎年金というものの性格、あるいは国民年金に対していわゆる定額制の保険料ということが、この上乗せ部分をつくる上でいろいろと考えにくい、難しい問題があるということも論議の中で出てきているわけですけれども、公的年金がどこまで将来の老後の生活をカバーするかということを考えるときに、この夫婦十万という、いわゆる五万、五万ということを議論された中で、ある本にさきの山口局長の話として、生活保護世帯の費用とか等々を勘案して、十万というのはぎりぎりだけれどもまあまあ何とかいく水準だということで、十万ということを、五万、五万ということを出されたという文章も読みましたけれども、やはり社会的に見て、自分の家があるかないかによっても違いますが、ある程度安心できるということになれば、今の厚生年金のモデル計算程度の給付は期待したいところではないかと思います。  そういう点で、例えばの話、基礎年金五万円の上に例えば六万円、七万円、八万円という三段階でも設けて、それに対しては掛金が若干高くなるとしても、この上乗せ部分を物価スライドできるかできないか、これは制度の組み方によっていろいろ違うと思いますけれども、そういう定食部分の五万円の上にプラスアルファの制度をつくるということについて、具体的にその可能性について、局長にでも考え方を聞かせていただきたいと思います。
  316. 吉原健二

    ○吉原政府委員 私も、基本的には、年金制度というものを魅力ある制度とするためには、定額保険料、定額給付という考え方はどうだろうか、できれば所得に応じた保険料、所得に応じた給付というのが望ましいという考え方を持っております。厚生年金は大体そういう仕組みになっているわけでございますけれども国民年金の場合にも、いろいろ難しい問題はございますけれども、制度的にそういった仕組みができれば大変いいという気持ちは持っておりまして、今回の改革案の中でもいろいろそういう問題が検討されたというふうに私も聞いているわけでございます。  将来そういった可能性はどうかという御質問でございますけれども、はっきりしたどんな姿ならできるかというところまで、実は今の段階ではまだ持っていないわけですけれども、それは一つは、繰り返し申し上げましたように、国民年金の適用対象が業種、所得、さまざまである。それを一律に仮に所得比例を設けるにしても、どういう段階で所得比例を設けたらいいのか、その所得の把握をどうすればいいのかという問題が根っこにありますし、またその上の二階建て部分を、これは社会保険ですから、任意適用というか任意加入というのは社会保険の場合にはどうもいけないのではないか。やはり二階建てを設ける以上は、厚生年金でもそうでございますけれども強制適用にしなくちゃいけない。強制適用ということになりますと、所得を相当きちんとつかまえて、あなたの場合にはこのランク、あなたの場合にはこのランクということをきちんとつかまえて適用して、それなりの保険料を払っていただくということでないといけないので、二階建て部分は任意加入という格好にするということであれば、それでいいということであれば、私は割合仕組み方がやさしいと思いますけれども、社会保険である以上は強制適用、そして社会保険である以上は物価スライド、個人年金やら郵便年金と違ってそれなりに年金額も上げていくということを考えますと、これはなかなかどうも容易なことではないなという感じを今の段階では持っているわけでございます。  それからもう一つ国民年金の適用対象者に全部一気に所得比例というものの導入がなかなか難しいとすれば、何か業種別に、例えば所得の高い方、それから中くらいの方、そういった方々を中心に何か業種別の基金というものをつくりまして、そういった二階建ての部分ができないかということも実は私の頭の中にあるわけでございますけれども、現に農業者につきましては、農業者年金といういわば国民年金の二階建ての仕組みが既に農業経営者についてはあるわけでございます。問題は、農業者以外のそういった自営業者の方について業種別にできるかできないか。仮にやるとすれば、国民年金基金という仕組みが既に今の法律の中にあるわけでございまして、そういったものの活用というものも考えながら、これからの検討課題ではないかというふうに思っているわけでございます。
  317. 菅直人

    ○菅委員 局長の方から、私が次に取り上げようと思っていた年金基金に関連した話も出ましたけれども、今まさに局長が言われた点と関係するのですが、厚生年金の場合には、今の公的制度だけでも十七万円程度モデル計算でなるということですし、さらにその上乗せとして適格年金なり年金基金なり、制度によって、企業によってはかなり充実したものを設けてきている状況があるわけです。しかし、国民年金の対象になっている内営業者とかそういう人たちには、そうした企業年金のような形もなかなか仕組むことが難しくてできていない。あえて入るとすればいわゆる個人年金という形で、生保とかそういうところがやっているものに入らなければならない。そうなると、それが果たして十分な保障になるのかどうか。これもちょっと後で議論をしてみたいのですけれども、そういう状況になっているわけで、今局長の方からの話にも出ましたけれども、こういった意味での二階建て部分の、場合によったらさらに上に乗る企業年金について、今後も積極的な育成を考えられているのかという点が一つと、今、同業種という形での年金基金について考慮中だと言われましたけれども、あわせて例えば地域的な年金基金なんというものも、これは健保でも同じような議論がありましたけれども、健保の場合にはやや難しい面もあるかと思いますが、地域的な年金基金というものの可能性、この二点について見解を伺いたいと思います。
  318. 吉原健二

    ○吉原政府委員 企業年金について一体どういう考え方を持っているかという御質問でございますが、基本的には企業年金はこれから育成の方向で考えていくべきだというふうに私は思っております。企業年金の中にも、御案内のとおり厚生年金基金の形をとっているもの、それから税制適格年金の形をとっているもの、それからそれ以外のいわば独自の自社年金という形をとっているもの、さまざまございますけれども、やはりいろいろな形であれ企業年金というものは育成をしていく、公的年金を補完するものとして何らかの形で助成をし、育成をしていくものというふうに考えております。それも、これからこの改革案が実施に移りました後の一つの大きな宿題、検討課題だというふうに私は思っております。  それから、同業種の場合の基金、国民年金の場合でございますけれども、それも同業種の方々の中でそういったものをつくろうというような機運といいますか、御希望といいますか、もしそういったあれが盛り上がってくれば、私どもむしろ積極的な対応をしていきたいというふうに思います。  それから最後の御質問の、地域的な基金というものが考えられるかどうかということでございますが、率直に言いまして、地域単位でそういった年金の基金ができるかどうかということにつきましては、突然の御質問でございますので、私は十分まだ考えておりませんけれども、なかなか難しいのではないかというような感じでございます。といいますのは、医療保険とか短期保険はある程度地域でまとまって保険ということができますけれども、こういった長期の保険を、地域といってもいろいろな範囲がありますけれども、市町村単位とか都道府県単位を考えましても、果たしてうまくいくかどうか。また、年金の場合には加入者の移動ということがございます。移動があったら当然その受給権を失うというようなことがございますので、地域的な小規模での基金という形が年金の場合にはなかなか難しいのではないかという感じでございますが、さらにこれからいろいろ検討させていただきたいと思います。
  319. 菅直人

    ○菅委員 五人未満の事業所ということになりますと、どうしてもそういう何らかのくくり方をいろいろ工夫しないと組めない場合が多いわけですから、同業種と同時に、地域的にも、私もまだ十分な確信はありませんが、例えば一つのベースになる地域的な健康保険組合などがある場合にその上乗せでつくっていくとか、ぜひ検討をいただきたいと思います。  もう一つ大臣、これはぜひよく聞いていただきたいのですが、私も地元をよくあれこれ歩くわけです。そうすると、必ず、特に婦人の人たちから年金の話が出ます。そのときよく聞かれるのが、今は国民年金に任意加入している、だけれども、この間ある生保の人が来て、もうそんなのはどうせこれから先どうなるかわからないのだから、確実なところでうちの方のこういう年金があるからぜひこれをやった方がいいですよ、国の年金なんというのは運悪く死んでしまったら一円にもならないけれども、うちの方は死んだ場合にもそれまでの分はちゃんと全部利子をつけてお戻しします、そういう形で、本当に、私が会っただけでも、何人かの人がもう既に任意加入を脱退して、そちらの生保の年金に入った人、あるいはいま考えているけれどもどうだろうと、そういうことが実際に何度もあったことがあるわけです。最近もそういう話を、変な話ですけれども私の事務所の者にもそういう話があったりして、どうもこの公的年金、特に今この法律改正によって任意加入というものがなくなるにしても、またなくなるとすればもう今から掛けたって意味ないのだみたいなことも含めて、何か公的年金よりもそうした私的な個人年金の方が有利なんだというふうな宣伝がやや行き過ぎているのではないか。私は、その基礎年金的なものがあった上に、二階建であるいは三階建て部分としてそうした民間の企業が大いに営業努力をされること、それはもちろん営業の自由ですから構わないと思いますが、任意加入とはいえ公的年金であって、法律改正になれば基礎年金の掛金として、将来の五万円もらえるのか、四万五千円しかもらえないのかということに大変大きな影響があるものを、何か脱退を勧めてその一時金で入れてしまうようなことを実質的にやっていることを耳にしますと、ちょっと行き過ぎではないか、こういうふうに感じるわけです。こういう点について、厚生省としてこういう事実を把握されているのか、把握されているとすればその問題についてどういうふうに対処されているのか、この点を伺いたいと思います。
  320. 渡部恒三

    渡部国務大臣 私も先生と同じような経験をあちこちでするのであります。これは大変大事な問題だと思うのですが、一つは、やはり今の年金の中で、余りにも高齢化になってくると今の制度のままでは破壊してしまうというようなことから、何か将来の公的年金に対する不安感がある。したがって、今回の改革案を一日も早く実現させていただいて、どんな高齢化社会がやってきても公的年金は揺るぎないものだということを、国民の皆さん方に周知徹底させることが極めて大事なことだと思います。  もう一つは、これは私、いつも言っているのですけれども、我々の親の代、生命保険に入った者が苦労をして掛金を納めて、あの戦後のインフレで、これはもうもらうときは本当にばかみたいな数字になった経験を随分持っているわけでありますが、公的年金というものが私的年金に比べてずば抜けてすぐれているものは、やはり物価スライド、インフレに対して強い。私的年金の場合はこれが極めて弱いわけでありますから、これはもう徹底させて、我々国民の皆さんに知っていただく努力をしなければならないと思います。  そこで、私的年金と公的年金の関係ですが、正確かどうかわかりませんが、国鉄に例えてみれば、公的年金は普通乗車券で、これは絶対に必要なものであります。私的年金はグリーン券のようなものですから、グリーン車に乗れれば幸せ、万が一インフレやなんかで乗れなくても、普通乗車券だけ持っていれば目的地に行けるということになるものであります。  もう一つの話も、これも私、経験しているのですが、やはり選挙区の人たちと会うと、公的年金は若いうち死んだらもらえない、生保だともらえるということをよく言われるのですが、しかし、年金制度というものは年とってから困らないためにあるわけで、生命保険で一番得することは入って次の年に死ねば一番もらえるわけですが、それで得する人はだれもいないわけです。ここのところは私も一生懸命説明するのですが、厚生大臣が説明してもなかなか理解を受けられないので、先生にもっといい説山の方法を教えていただきたいと思っているところでございます。
  321. 菅直人

    ○菅委員 全く同じ経験をされているようですが、やはり物価スライドということと積み立て方式ということが必ずしもわかりやすく伝わっていない。例えば、先日もちょっと計算をしてみたのですが、五%で物価スライドしていけば三十年後には大体四倍ぐらいにはなる。そうすると、五万円というのがそのときの名目価格でいうと二十万円になる。しかし、今、三十年後に二十万円ぐらいもらえるような年金を私的に入れば、多分月に数万円、それもかなり大きい額の数万円の額を払ってもなかなかそこまではいけないのじゃないかというふうに思いますけれども、そういうところの、これは私的年金の場合は商売ですから大いに知恵を出される、しかし、どうも厚生省の方は、商売ではないわけではないと思いますが、もう少し知恵を出されてもいいのではないかと思います。  それとあわせて、それにも関連しますし、この制度本体に関連したことですが、積立金の運用のあり方が、どうも厚生年金国民年金の場合にそういった努力がなされているのだろうか。つまり、今一般国民も非常に金利というものに敏感になっていることは大臣も御承知だと思います。そういう中にあって、現在の年金のいわゆる積立金の運用がどういうふうになっているかということを見ているわけですが、時間もないので、多少基本ベースのところを申し上げながら問題点をちょっと指摘したいのです。  今、厚生年金国民年金は全部が資金運用部資金として強制的に繰り入れられておるわけですね。それに対して、例えば国公共済なんかは三割を資金運用部資金に入れて七割は自主運用をやっている。自主運用の中では一部は福祉運用なんかをやってあとの一部を有利な運用に回して、それでもトータルでいえばそう悪くない利回りでやっている。さらに、厚生年金基金なんかの完全な自主運用を見るとかなりの金利差が生まれてきているのじゃないかと思うわけです。そういうところで、厚年、国年の現在の資金運用の大体の傘と、例えば農林共済なんかは政府保証債を使って逆用されていますが、政府保証債の率等についてどういうふうな差があるのか、あるいはその差についてどういう見解を持っておられるのか、もっと高利運用をやるべきだと考えておられるのか、それともかつてあった、資本蓄積論という名前がついているようですが、将来の国の発展のためにどんどん資本に使うのだ、だから金利が低くていいのだというふうな考え方厚生省としてもいまだにとるつもりなのか、そのあたりを含めて見解を伺いたいと思います。
  322. 吉原健二

    ○吉原政府委員 積立金の逆用に関連する問題でございますけれども、まず、今の厚生年金国民年金、これは資金運用部に預託をされて他の資金とあわせて統一的な運用が図られているわけでございますけれども、その利回りを申し上げますと、資金運用部に対する預託金利、現在は五十九年二月時点では七・一%でございます。この資金運用部の預託金利は、公定歩合その他の各種の金利との関係で上下をいたします。高いときは八%、五十五年当時は八・五%まで上がった時期もございますけれども、現在は七・一%ということになっておりまして、預け入れる、預託をする時期によってその利回りが当然違ってくるということになっているわけでございます。  では、厚生年金国民年金の積立金全体が命一体どのくらいの利回りで回っているかといいますと、五十七年度までの実績しかございませんけれども厚生年金は七二一二%という状況でございます。国民年金厚生年金に比べて短期ものが多いものですから、六・七%という状況でございます。ちなみに国家公務員共済がどのくらいかというと、これは私どもの方で聞きました資料によりますと七・〇九%。農林とか私学が厚生年金よりも高く、農林共済が七・六五%、私学共済が七・四八%。大体国民年金が六%台でございますけれども厚生年金、国家公務員共済、農林、私学はいずれも七%台、こういう運用になっているわけでございます。  この厚生年金国民年金の運用利回りをもう少し高くすべきではないか、できないのかということでございますけれども、私ども、気持ちとしてはもう少し、この年金積立金の性質といったものを考えまして、それから将来それが年金の給付になるし、保険料の負担の軽減にもつながることでございますので、何とかもう少し特別に年金の積立金についての有利運用ということを考えてもらえないかということで、大蔵省と協議を進めているわけでございますけれども、大蔵省の考え方は、年金制度が発足してからこれは資金運用部資金に預けてもらって、郵便貯金や何かと一緒に運用してきている、財投資金に充てられてきている、それを年金資金だけを特別な方面に融資をしたり特別に利回りを高くするということはできないんだ、それが公の資金、国の制度、信用で集められた資金の統合運用、その資金全体を適正に必要なところへ配分をしていくという考え方、財政投融資の考え方からいって、それは一つ基本的には変えられないんだというのが大蔵省の基本的考え方でございまして、もしそれをあえて変えようとすれば、財投というものがその基盤を失うことになりますし、ひいては一般会計予算の仕組みそのものにも影響してくるので、統合運用という考え方はこれからも堅持したいというのが率直に言って大蔵省の考え方でございます。  臨調なんかでもこの問題は議論されましたけれども、私どもにとっては大変残念ですが、今申し上げました大蔵省で言う統合的な運用の堅持ということを臨調でも言っておりますので、年金の資金についてだけ特別な運用、特別な利回りというのはなかなか難しいと思いますけれども、私どもの立場はあくまでも立場として大蔵省に要求をし、少しでも前進を見ることができるように、今最後の努力をしておるところでございます。
  323. 菅直人

    ○菅委員 大臣、今の話を聞かれたと思います。今の数字は、私もあらかじめ言っておいたのですが、若干ごまかしと言っては言い過ぎかもしれませんけれども、国公共済が七・〇九と言われましたが、これは福祉的に組合員に非常に安く貸し付けをやっておられて、このうち四割ぐらいのものを、五・五%という特に安い金利なんですが、それは組合員だから安くお金を貸すということでやっておられ、かつ三割程度は運用部資金に充てておられて、あとの三割だけを有利に回転させて、トータルで言うとこの程度やっておられる。だから、有利にやればこれは明らかに一%以上は金利は高くなるわけですね。  大臣、これは大変大きな政治問題だと思います。大蔵省との交渉ということですから大変大きな政治問題だと思いますし、まさに日本の財政そのものの半ば見直しにも一部つながる面もあると思いますが、厚生大臣は同時に年金のトータルの大臣でもあるわけで、これから統合を進めようとすれば、他の共済がやっている運用と今までの国年、厚生年金もいや応なく絡んでくるわけですから、この年金制度を長期的に見て国民が納得できる形に進めていく上では、もちろん長期的な安定ということは当然必要ですから全額を自由に回転させろとは言いませんけれども、五割なりあるいは四割なり、少なくとも何割かはもっと高利の運用にしていくというのが当然の流れではないだろうか。この点を、できれば大臣に一日、その決意のほどをと言いましょうか、伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  324. 渡部恒三

    渡部国務大臣 年金の有利運用、年金の積立金は将来の国民の皆さん方の老後の生活を保障する貴重な原資でございますから、これは私どもが最大に知恵を絞らなければならない問題だと思います。御指摘のように、もちろんこれは安全であることが前提になりますが、その前提の中でできる限りの有利運用ということを考えていかなければなりませんので、大蔵省当局と私ども、一生懸命これから折衝を続けてまいりたいと思います。
  325. 菅直人

    ○菅委員 では、終わります。
  326. 有馬元治

    有馬委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時六分散会      ――――◇―――――