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1984-06-28 第101回国会 衆議院 社会労働委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年六月二十八日(木曜日)     午前十時一分開議  出席委員   委員長 有馬 元治君   理事  愛知 和男君 理事 稲垣 実男君   理事  小沢 辰男君 理事 丹羽 雄哉君   理事  池端 清一君 理事 村山 富市君   理事 平石磨作太郎君 理事 塩田  晋君       伊吹 文明君    稲村 利幸君       唐沢俊二郎君    古賀  誠君       高村 正彦君    斉藤滋与史君       笹山 登生君    自見庄三郎君       谷垣 禎一君    友納 武人君       中野 四郎君    長野 祐也君       西山敬次郎君    野呂 昭彦君       浜田卓二郎君    箕輪  登君       森下 元晴君    渡辺 秀央君       網岡  雄君    河野  正君       多賀谷眞稔君    竹村 泰子君       中村 重光君    永井 孝信君       森井 忠良君    大橋 敏雄君       沼川 洋一君    橋本 文彦君       森本 晃司君    小渕 正義君       塚田 延充君    浦井  洋君       田中美智子君    菅  直人君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 渡部 恒三君  出席政府委員         厚生政務次官  湯川  宏君         厚生大臣官房審          議官      新田 進治君         厚生省公衆衛生          局長      大池 眞澄君         厚生省公衆衛生          局老人保健部長 水田  努君         厚生省医務局長 吉崎 正義君         厚生省薬務局長 正木  馨君         厚生省保険局長 吉村  仁君         厚生省援護局長 入江  慧君         社会保険庁医療          保健部長    坂本 龍彦君  委員外出席者         議    員  森井 忠良君         警察庁刑事局         安部公害課長  竹内  隆君         社会労働委員会         調査室長    石黒 善一君     ――――――――――――― 委員の異動 六月二十八日  辞任         補欠選任   今井  勇君     森下 元晴君   長野 祐也君     唐沢俊二郎君   浜田卓二郎君     笹山 登生君   藤本 孝雄君     高村 正彦君   河野  正君     中村 重光君 同日  辞任         補欠選任   唐沢俊二郎君     長野 祐也君   高村 正彦君     藤本 孝雄君   笹山 登生君     浜田卓二郎君   森下 元晴君     今井  勇君   中村 重光君     河野  正岩     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律  の一部を改正する法律案内閣提出第三九号)  原子爆弾被爆者等援護法案森井忠良君外六名  提出衆法第一二号)  健康保険法等の一部を改正する法律案内閣提  出第二二号)      ――――◇―――――
  2. 有馬元治

    有馬委員長 これより会議を開きます。  内閣提出原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案及び森井忠良君外六名提出原子爆弾被爆者等援護法案の両案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中村重光君。
  3. 中村重光

    中村(重)委員 議題外の問題について簡単に一問だけ質問しますので、あしからず御了承願います。  昨日も御連絡をいたしておきましたが、例のボゴダ丸昭和二十四年の一月九日に、これは引揚船に使っておった船だと思うのですが、このボゴダ丸が、米軍より引き渡された四千八百二十二体、うち遺骨三百七柱を積み込んで、マニラから佐世保針尾に陸揚げをして火葬をしたわけですね。当時の佐世保引揚援護局というそこで保管をして、それから、後日復員局の方に移送したわけです。復員局の方ではどこかに保管をしておったのだろうと思うのですね。三十四年に例の千鳥ヶ淵戦没者墓苑が設立されたとき、そこへ納骨をしたという問題がある。  ところが、疑問に思うのは、厚生省は引き渡したと言う。ところがこれは名簿がついているわけですね。名簿がないのはほんのわずか五百五十幾つかですが、あとは名簿がついていたのだけれども名簿がある人で、例えば福岡で言えば西村という方、これは送っていると言うのです。本人は、空箱だけ送ってきた、何にも中に入ってなかったというようなことを言っているのですね。これは大変問題になりまして、長崎当局にもいろいろな問い合わせがあった、厚生省は言うまでもなく問い合わせを受けているわけですが、あいまいな点があるわけです。  例えば、西村氏に対する厚生省回答は、「昭和二十四年十一月までの間に、佐世保引揚援護局から福岡県を通じ、遺族に伝達しているものと推測される」というような回答なのです。期間大分幅がありますね。伝達されたものと推測をするということで、的確ではない。ところが長崎県なんかは、長崎県の針尾団地火葬した、当然長崎県の人たちも相当おったであろうことは考えられる、名簿を見ればわかるのだけれども、これについて長崎県なんか全く関知していない。そこらが私は非常に凝固に思っていることです。  さらにまた、七月十日に、「戦後なき遺体」というタイトルで、ある雑誌社が記事にする予定で、もう第一号を印刷に回している。それからまた第二号が出る。また、ほかの社も調査をしてこれを報道するというような準備を進めているということが言われているわけです。  そこで私は、大臣に、疑問点として今一点申し上げた、ある県には県を通じて伝達されたものと推測するとこう言うが、長崎県なんかは全く知らない、厚生省が直接やられためでしょうと、こう言っている。当時は官制知事でしたからね。ですから、長崎県に聞いても全く知らないと言っているのです。そこらが一貫していないということが一つある。  それから復員局は、三十四年の千鳥ヶ淵墓苑ができるまでの間、十年間どこへ保管しておったのだろうか、それもひとつお聞かせいただきたいということでございます。  さらに、現地火葬した長崎針尾団地では、無縁仏釜墓地護持会というのができているのですよ。そして毎年法要しているのです。この護持会は自民党の県会議員が会長をやっているのですが、護持会ではたくさんの遺骨がそこへ埋められていると言っている。厚生省は、いや、そういうことはない、これはもう残骨だけだと言っているのです。現地の人がそう言っているわけで、そういった護持会までつくって法要をしておるというこれらの事実等々考えてみると、こんなあいまいなことでは、み柱に対して、みたまに対して相済まぬと私は思う。ともかく軍人軍属一般邦人四千八百二十二柱、もちろんそれには遺骨三百七柱が入っているのですけれども、本当に相済まない、こういうことでは安らかに眠ることができないのではないだろうか。だからもっと積極的に調査をして、疑問点がないように的確にその内容を明らかにしていく必要があると私は思う。大臣はこの点に対して一この数字についてはもう全く間違いありません。私は調査をして厚生省とも打ち合わせしてありますから、数字についても疑問はない。事実関係についていろいろ食い違いが生じているという点だけが問題です。それで、もう近く雑誌に出るものですから、私は、議題外としてお許しを得てこの問題を今質疑をしたということであります。どうでしょうか。
  4. 渡部恒三

    渡部国務大臣 中村先生から大変大事な問題、御指摘を承りました。これはみたまが安かれと願う気持ちは同じでございまして、そのためには御遺族皆さん方が、やはり納得のできるような解決が大事だと思いますので、そのために私どもこれからも全力を尽くして頑張っていかなければならないと思います。  なお、ただいま御指摘の事実関係については政府委員から答弁をさせたいと思います。
  5. 入江慧

    入江政府委員 今お話しにありました事実関係について、私の方から御説明いたしますと、御質問は三点あったかと思います。  福岡県の方の御遺骨につきまして、お渡ししたと推測されるというあいまいな表現をしておるではないかというお話しがありましたが、これは私どもの方では、佐世保の市役所に、その西村さんという方には御遺骨を渡したという記録はございます。ただ、御本人は受け取っておらないとおっしゃるものですから、それを断定的に表現するのもどうかということで「推測される」という表現をしたわけでございまして、記録としては残っておるということでございます。  次の、四千八百二十二柱のうち、御遺族がわからない遺体と、氏名がわからない御遺骨が六百三十六柱ございますが、それにつきましては、三十四年に千鳥ヶ淵にお納めするまでは、今の援護局の前身でございますが当時の留守業務部というところに保管しておりまして、三十四年に千鳥ヶ淵ができたときにお納めしたということになっております。  それから、第三点目の釜墓地の点でございますが、この点は、私どもは受け取りましてから、一体一体、個々火葬に付しまして、個々遺骨箱に納めたわけでございますが、そのときにどうしても拾えない残灰と申しますか、最後に残る灰のような部分、それを全部まとめまして、佐世保の近くにございます景勝の地に葬りまして、そこに供養塔を建ててお祭りした、その点がちょっと誤解を生んだのではないかというふうに私ども考えております。
  6. 中村重光

    中村(重)委員 時間がありませんから申し上げませんが、ともかく一月九日に佐世保に運んできたわけですね。そして一月十三日から二月十二日、約一カ月間かかって火葬しているわけです。そして西村さんに対しては、西村さんのお父さんがボゴダ丸遺体として送還されたわけですね。西村さんは名簿ではっきりわかっているのだ。ここへ伝達したと言っている、福岡県を通じて。  言いたいのは、火葬に付したのは申し上げたように一月十三日から二月十二日までの間だから、そこで「二十四年十一月までの間に佐世保引揚援護局から福岡県を通じ、遺族に伝達しているものと推測されます。」、こうある。ところが西村氏のところには、なるほど遺骨が入っているお箱だというので送ってきたのだけれども、中身は、普通は髪の毛なりつめなり入るのだけれども何にも入ってない。単なる誤解ではなくて、いろいろ問題が非常にあいまいな点があることだけは避けられないだろうと思います。  同時に、釜墓地に対して地元の人はたくさん埋められていると言うし、厚生省は、いや全部残骨だけだ、そういう食い違い、やはりそれは誤解だとかなんとかということで片づけられない、そう思うから、大臣から答弁があったけれども、的確にひとつ調査をして明確にする、そしてみたまが安らかに休んでいただくように努力していただくということでなければならぬと思いますので、それをひとつ、大臣誠意のある答弁だったのだから、事務当局も積極的な対応をする、こうしてほしいと思います。
  7. 入江慧

    入江政府委員 大臣から申し上げましたとおり、できる限りの調査をしてできる限り明確にしたいと思います。
  8. 中村重光

    中村(重)委員 原爆の問題についてお伺いします。  いつぞや大臣には、大臣室被爆者団体方々とちょっとお伺いしたことがあるのです。この長崎広島被爆をしたと大体見通される人で、韓国在留の人が二万人くらいいるだろう、朝鮮民主主義人民共和国にも相当おられる、あるいはアメリカとか方々におられて、そして今長崎原爆病院入院をしている人が百八十二人、つい一カ月にもなりますけれども、七名入院をいたしました。してみると、同じ病室の中で日本人一緒入院治療させるということには、双方とも何かと不自由な面もあるだろうし不便でもある。だから関係団体は、国際病棟をつくってくれ、こう言っているんだけれども国際病棟というところまでは予算の関係がいろいろあるんで、特別の病室ぐらいはつくる必要があるのではないか、そういうように思います。その点はどうお考えになるかということが一点。  もう一点は、朝鮮民主主義人民共和国にも相当おられるのです。私は長崎ですけれども長崎には朝鮮民主主義人民共和国の人が相当たくさんおりました。だから、朝鮮民主主義人民共和国方々日本治療に来て入院するという場合の扱いをどうしようとお考えになっておるのか。  まずその二点について。
  9. 大池眞澄

    大池政府委員 お答え申し上げます。  第一点につきましては、御指摘のような事情については、勘案した上で、原爆病院等ともよく協議をしてまいりたいと思うわけでございますが、現状におきまして、関係方面とよく相談をして計画的に受け入れを進めておることも先生御承知のとおりでございます。  現在のところ、五十九年度では長崎に関しましては四十人、広島に関しては六十人というようなことで、現在その計画に沿って受け入れを行っているわけでございますが、その限りにおいて、今おっしゃったような点についていろいろ配慮も加えておるわけでございますし、当面の支障は来していないと考えております。  今後の問題としては、原爆病院十分協議をしながら御指摘のような点について配慮を加えてまいりたいと考えております。  それから、第二点の問題につきましては、いろいろと外交ルートの問題でよく下ごしらえが必要でございまして、今後の問題としていろいろとまた関係者と相談したいと思います。
  10. 中村重光

    中村(重)委員 第二点は、答弁大臣だろう。局長では答弁できないんじゃないですか。道義的に考えてみなければいけない問題だ。それは被爆者なんだ。日本被爆をしている、そういう人たち入院治療を受けたいのです。  それから第一点の、計画的とおっしゃるんだけれども、それじゃどういうように計画的にやるのか。私が申し上げたのは国際病棟、あるいは病棟までいかなければ新たな病室を、こう言っているんだけれども、境地の原爆病院にはそういう設備がない、一緒入院させておるというのが実態ですから、計画的とおっしゃるのはどういうことですか。
  11. 大池眞澄

    大池政府委員 私が計画的と申し上げましたのは、その百名につきまして、それぞれの病院受け入れ態勢を勘案しまして一定の期間を設けて、韓国政府にも十分かんでいただいて、こちらの方の受け入れ態勢についても、いろいろ関係団体の御支援もいただきながら計画的に進めているという趣旨で申し上げたわけでございます。  それからまた、病院受け入れの問題でございますが、物的には確かに病棟とか病室とかというのも一つの要素ではございますけれども、さらに大切なことは、そこでの処遇、言葉の問題とか、その点につきましては、今関係団体にいろいろと協力をいただいて、支障を来さないような仕組みで受け入れておるというふうに県、市を通じて聞いておるわけでございます。  そこで、いろいろと病院看護単位の問題とかいろいろな受け入れ態勢上の問題もございますので、原爆病院等一番合理的な効率的な受け入れ方を必要に応じて今後とも協議をしてまいりたい、こう考えておるわけでございます。
  12. 渡部恒三

    渡部国務大臣 先生、御心配をいただいてありがとうございます。  実はせんだって、韓国被爆者代表の方がわざわざ私のところを訪ねてくれまして、大変に喜んでくださっておりました。私も皆さんに喜んでいただけるように一生懸命やらなければならないなと思っておったのですが、今のような先生の御指摘等の問題も大事なことでありますので、できるだけ皆さん方に喜んでいただけるような受け入れ条件を充実していくために努めてまいりたいと思います。  第二点の問題は、これも当然我が国としてでき得ることはやらなければなりませんが、これは極めて外交的な問題でございますので、これは外交的なルートを通じてそのようなお話しがございますれば、私ども誠意を持って取り組んでまいりたいと思います。
  13. 中村重光

    中村(重)委員 第一の問題で、地元だから私は原爆病院実態をよくわかっておるわけです。計画的であるとか連絡をとっていろいろやっているということですが、今の姿はわかっているのです。今の状態ではだめなんだから、不十分だから、国際病棟なり病室をつくるように、こういうことを言ったわけです。それを否定されたわけじゃないけれども極めてあいまいというのか、消極的というのか、おざなりというのですか、そうでなくて、もう一歩踏み込んで、そして、いろいろな団体意見も聞きながら対応していくということにしてもらいたい。  第二点については、朝鮮民主主義人民共和国被爆者の問題について、それはだめだとはお答えにならなかったようだ。大臣、おっしゃいましたね、原爆被爆者の問題だからこれは積極的に対応していくと。あなたの人間性からいっても、これは当然積極的に対応されるべきだと思う。そういう性格であると、長いつき合いの中で私はあなたの人間性を評価しているわけですから、そういうふうにしてもらいたい。  それから次に、受診手帳交付地域是正の問題なんですが、これはなかなか難しい問題です。だから、前から言っておったように、十二キロまでぽんというような、政治的にこれを解決するなんということを私は今言おうとは思っていません。ですけれども個々の市町村から具体的な問題として申請が出たならば、実態調査の上これを受け入れるべきではないかということについては、その書類を受け付けて、書類上の調査をし、いろいろと実態調査等も必要であればやる、そして、地域是正をする必要があると認めればいたしますということをお答えになっているわけです。今のところそういう申請が出ているのかいないのか、また、今までの私の質問に対して、前任者お答えになった方針と変わりはないかどうか、いかがですか。
  14. 大池眞澄

    大池政府委員 お答え申し上げます。  そのような申請という形では受けておりませんが、いろいろとそういう御意見、御要望のあることは承知しておるわけでございます。  こういった地域の定めにつきまして今後の基本的な考え方は、科学的、合理的な基礎を置いてそういったものを取り仕切っていくことが重要である、かように考えておるわけでございます。その意味におきまして、これまでと方針に変わりはございません。
  15. 中村重光

    中村(重)委員 科学的、合理的というのが私の言っていることと同じなんです。だから、申請が出たならば、その申請内容を精査して、認めるものは認める、認められないものは認めない、こうすべきであって、基本の答申だって、あれはだめだとは言っていない。あなたが言ったように科学的、合理的云々、こう言っているわけだ。そういう書類が出てきたならば認めるべきだ、こう言っている。前任者は、そうしますと今まで答えてきたのだ。行政の継続性があるわけだから、今までの答弁と違いはないでしょうね、こう言ったわけです。大臣、よろしいでしょうね。(渡部国務大臣「はい」と呼ぶ)  次に、長崎市が十二キロの地域について独自に調査をやっている。その調査を尊重しますか、いかがですか。
  16. 大池眞澄

    大池政府委員 地域の指定についてただいま科学的、合理的と申し上げたわけでございますが、その中の非常に重要な指標としましては、直接放射能残留放射能といったデータが基礎的な部分として非常に重要でございます。国におきましてもそういう観点に立ちまして、いろいろ御要望、御意見のある地域につきまして、残留放射能調査も五十一年度、五十三年度に子細に行ったわけでございますが、これまでのところ、特に一般地域と差のあるというような心配地域は見出されていないということでございまして、現在指定されている区域以外のところで問題があるというふうには当面考えられない状況にございます。
  17. 中村重光

    中村(重)委員 きょうは時間が四十分となって、議題外の問題も質問したものですから、時間が制約されました。  そこで、きょう私が質問することをずっと箇条的に文章を書いて差し上げてあるはずですから、一括して質問します。それでは、ゆっくり言いますから一括してお答えください。  原爆手帳交付というのはもうここらで打ち切るべきではないかなんというようなうわさが出ているのです。まさかそういうことはないだろうと思っていますけれども、この点に対する考え方をお聞かせいただきたい。  それから、なお今日に至るまで原爆手帳申請が相次いているのです。どうして今ごろというのですが、手帳交付ができる五つの制度があるのです。内容についてはおわかりですから申し上げませんが、保証人中心になっているものだから、もう亡くなってしまって保証人がなかなか見つからぬ。保証人以外に別の方法が四つあるわけだから、それらも活用しながら手帳交付について弾力的に対処していかれる必要があるだろう、そう思います。そのことをお答えいただきたい。  それから、保証人も三親等はだめだという態度をとってきた。ところが、原爆のあの実態というものは親か兄弟でなければわからなかった。私は被爆者ですから、実態はわかっているのです。他人のことなんか構っておられる状態ではなかった。したがって、こういうような状態だから、三親等とかなんとかという従来の形式にとらわれるべきではないと言ってきました。通達を出すべきだということで通達を出したように伺っているのですが、今後とも、ともかく弾力的に対応するようにしてもらいたいということです。  次に、異議申し立てが出ます。県の段階でやるものですが、厚生大臣異議申し立てをする。手帳交付に対する異議申し立て、あるいは認定被爆者に対する異議申し立て等が物すごく時間がかかる。五年も七年もかかる。こんなことでは話にならない。手が足りないのだったらもっと手をふやして、遅くとも一年か二年ぐらいで異議申し立てに対する決定をするようにしないといけない。  それから、財政的な関係からだろうと思うのだけれども、三年に一回、健康管理手当等申請をすると、また再審を受けなければならない。そして医者の診断書によって、続いて交付するか打ち切るかを決めるのだけれども、どうもこのごろ打ち切られた、打ち切られたという声が聞こえてくる。だからそういうことはやるべきではないと思うのです。病気が完全に治ってしまったといえば話は別ですけれども、どうも財政的な点から厳しくやっているのてはないかと思いますので、そういう事実があるかないか。  次に、あの当時亡くなった方に対する各種弔慰金支給、このくらいはもう踏み切るべきではないか。弔慰金の問題については、与野党が政府との間に話し合いをして、前向きで対処するというようなお答えがあったこともあるのです。ですけれども、依然として支給されていません。だから、この点どうお考えか。  それから、特別措置法ができたのが四十三年、四十四年から葬祭料支給されている。それまでの人の葬祭料支給についてどう考えるか。これはそのとき亡くなられた方の弔慰金の問題とは別です。  それから被爆者援護法制定、これは野党の提案している法律案についても一緒にきょう議題となっているわけですが、国家補償による被爆者援護法制定ということはもう踏み切るべきである。ましてや所得制限撤廃厚生省大蔵省に、所得制限撤廃をいつも概算要求として出しているわけです。ところが九六%、四%だけいつも残ってきている。厚生省の権威にもかかわるじゃないか。いつも概算要求ばかり出して、大蔵省からノーと言われる。渡部厚生大臣も、このぐらいはあなたの在任中にひとつ概算要求厚生省が出しているのを実行させる、そういうことをおやりになるべきだということ。  次に老人保健法の適用、これは老人保健法に対しては原爆被爆者はいわゆる別扱い特別扱いということによって、七十歳以上の人たち医療の給付をしているのです。ところが、また財政的な関係から、これは例外にしておったけれどもだめだなんていうことに、まさかならぬだろうと思うのだけれども、この点はそういうことなく、現在のとおりいわゆる特別扱いという形で、医療給付を七十歳以上のお年寄りに対しても行っていくという方針に変わりないかどうか、不動の方針を持って対応していくかということをお答えをいただきたい。  それから、老人保健法に伴う医療補助というのを広島長崎両県、それから広島長崎両市に対して二十三億を厚生省大蔵省概算要求したのですが、十四億を認められておる。これだけで地元負担がないというようにお考えになっていらっしゃるかどうか。二十三億概算要求なさったということはこれだけ必要だと思ってなさったのでしょうけれども、五十八年が十三億四千万円であったから五十九年は十四億ということになっていますが、地元負担がどの程度だとお考えになっておられるか。  それから、近距離被爆者対策は基本懇の答申にも基づきまして非常に前向きにやっておられるわけですが、最近非常に高濃度の放射線量が発見されている。例えば長崎では三菱精機なんかの、歯から八百十ラド、それから貝ボタンから百八十ラド、普通二百ラドぐらいの高度の放射線量が発見されているのですが、これが今度の被爆者医療であるとか、この被爆者対策に対しての影響というものは当然検討を要するようなことになっていくのではないかと思いますが、この点はどのようにお考えになっておられるのか。  それから、被爆者実態調査をおやりになるでしょうから、どういう方法でおやりになり、五十九年度はどういう予備調査をなさるのか。  それから、広島長崎被爆をされた方々は全国に散らばっていますから、これをどうするのか。そして掌握はどういう形で掌握をなさるのか。  非常にたくさんになりましたから、答弁の時間が長くなってはいけませんので、この程度でひとつお答えをいただきまして、これは書いて渡してありますから十分検討しておられると思いますから、それぞれひとつ答えてください。
  18. 大池眞澄

    大池政府委員 それでは、先生の御質問のそれぞれのポイントについてお答え申し上げます。  まず、手帳の交付打ち切りといううわさ云々ということについてでございますが、当方では全くそのようなことは考えておりません。  それから、手帳交付申請に際しての証人確保の困難性の問題の御指摘でございます。私どもとしては、できるだけ客観的にこういったことを証明するということを求めておるわけでございますが、どうしても証明する人がいないと認められる場合、そのようなやむを得ない場合には、本人に当時の状況を詳細に申し述べていただきまして、それに客観的妥当性が認められれば手帳を交付するということで現在も対処しているわけでございます。  次に、審査請求が大変時間がかかっているではないかということに関連してでございます。現状では審査請求について、未処理累積三十四件というような現状でございますが、担当を挙げて鋭意審査を進めているところでございます。何分にも、三十数年、四十年近い以前の事実に係る問題を再確認をするための努力ということをいろいろ尽くしているわけでございます。また請求件数も相当数に上っておることもございまして、実態上おくれている面もございますが、可能な限り迅速な処理に引き続き努力をしてまいりたいと考えております。  次に、健康管理手当の問題でございますが、認定が厳しいのではないかという御指摘でございます。健康管理手当の認定につきましては、複数の専門医師から成る認定審査委員会に、おきまして、もっぱら医学的見地ということで判断をいただいているところでございまして、この点にいささかも変更があるわけではございません。その観点から対応をさせていただいているところでございます。  次に、原爆死没者の遺族方々に対する弔慰金支給考え方はないかという御設問でございますが、原爆被爆者対策の基本といたしましては、「特別の犠牲」について広い意味の国家補償という見地に立って私どもこの制度をお預かりしているわけでございまして、遺族の方については一般戦災死没者と同様な状況にあるわけでございますが、ただいま申し上げましたような「特別の犠牲」という観点に立ちましたときに、その「特別の犠牲」を受けた方とは認められないというようなことで、弔慰金支給することはなじまないというふうなことでお答え申し上げます。次に、四十三年以前に亡くなられた方の葬祭料のさかのぼりの問題でございますが、制度創設当時においても、過去の死亡にさかのぼって支給をするということは行っていないという一つの取り仕切りを行ってきたわけでございまして、この考え方は今後とも変わっておらないわけでございます。  各種手当の所得制限の問題でございますが、この制度が対象となる方の障害の実態に即して、適切妥当な対策を重点的に実施するということでございまして、所得制限扱いは、このような観点から見まして、放射線障害の程度の大きい者に対して支給されるものにつきましては所得制限を設けていない。反面、健康障害がないか、あるいはあるとしてもその放射線との関係が極めて間接的であると判断される者については所得制限を設けているところでございます。  次に、老人保健法に基づく医療の確保でございますが、従前と全く方針は変わっておりません。また、四県市のいろいろな負担の増に対するための緩和措置ということについては、引き続き誠意を持って取り組んでいるところでございます。ただ、県市において生ずる負担と申しますのは、老人保健法医療の給付という関連から生ずるわけでございまして、原爆医療法の方から生じてきている負担ではございません。したがいまして、全町各市町村で負担のふえるのに見合う分は、やはり原爆をたくさん持っておられるところも負担はしていただく、しかし、それ以上に原爆被爆者の老人が非常にたくさんおられる地域、そこはその負担が急増するというような観点に立っての財政措置を講じているところでございますので、御理解を賜りたいと思います。  それから近距離被爆者については、既に御承知のとおり昭和五十六年度、医療特別手当、増額保健手当の創設、原子爆弾小頭症手当の法制化等、逐次重点的な措置を講じてきているところでございまして、五十九年度においてもこれらの手当の引き上げについて御提案を申し上げているところでございます。今後とも必要な配慮を行ってまいる所存でございますので、よろしくお願いいたします。  最後に、六十年度の被爆者実態調査でございますが、五十九年度中に専門家の方々の御検討をいただきまして、その結果を踏まえて内容については決定をいたしたいと思いますが、包括的に申し上げますと、これまで行いました昭和四十年、昭和五十年の調査と接続させる意味におきまして、被爆者方々の生活、健康面等での現状を総合的に把握するよう万全の努力をいたしたいと考えております。
  19. 中村重光

    中村(重)委員 これで終わりますけれども大臣、総括的に、あなたの被爆者援護の強化に関する考え方についてお答えをいただかなければならない。これは、田中正巳さんが自民党代表で、私が野党の代表という形で、原爆被爆者援護強化に関する決議というのを全会一致で衆参両院とも行った。それを受けて特別措置法ができた。私はそのときに、援護法がストレートに出るんだろうという期待だったのですよ。自民党の中にも相当援護法を制定すべしという声があったのです。それが今日に至るまで特別措置法という形になっている。だからもう援護法というのに踏み切る段階にあるということ。弔慰金の問題も、それと関連して当然出てくるものである。線香一本立ててないんだから、まだ今日に至るまで。いいですか。それから、今の老人保健法に基づいての負担が当然あるんだから、特に原爆県ではその影響というものは大きいだろうということで補助金を十四億計上しているということなんだけれども、二十三億の概算要求をしたのでしょう、それが十四億しか認められていない。やはりこの点はもっと積極的な対応をしていく必要がある。それ以外に、被爆県なるがために、両県あるいは両市が独自にいろいろやっているのですよ。いろいろな費用も要る。そこを考えなければならない。それから、近距離被爆者の問題については、先ほど非常に高濃度の放射線量が発見されている。これらの事実等から考えてみると、もっと積極的でなければならない。それから、所得制限の問題も、厚生省は毎年毎年全的に所得制限撤廃しろという概算要求をやっておる。しかし、いつも大蔵省からノーと言われているわけですから、もっと厚生省の権威からいっても要求が実現をするというぐらいに頑張らなければ、厚生大臣、あなたの押しでいったらできないことないじゃないですか。来年はぜひ実現させる。これらの点についてお答えをいただきます。
  20. 渡部恒三

    渡部国務大臣 原爆被爆者対策について大変貴重な御意見先生から承りましてありがとうございました。  ただいま政府委員からも答弁しましたように、これは、原爆の場合は放射線障害といういまだかつてない大きな犠牲を生存者に与えておるということに伴って、被害を受けられた方にその健康を守るための国家補償的な特別の施策を講じておるわけでありますけれども、これが死没者の場合になりますと、他の戦災で死没された方との横並びという問題等もございますので、行政としては一つの区切りをつけなければならないという立場で今日まで対策をとっておることも御理解を願いたいのでございますけれども、しかし、まさに我が日本の歴史が初めて経験した原爆被爆者対策というものは、戦後私どもに残された極めて重要な問題であるという認識においては先生と全く同感でございますので、六十年度、来年度予算編成に当たりまして、大変厳しい財政状態でありますが、私どもが必要な予算として大蔵省に要求する予算は何としても確保するという強い努力で臨んでまいりたいと思います。
  21. 中村重光

    中村(重)委員 終わります。(拍手)
  22. 有馬元治

    有馬委員長 小渕正義君。
  23. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 原爆被爆者関係につきましては、先ほど御質問なさった中村先生長崎被爆者の一人でありますし、私も当時の被爆者の一人で、被爆手帳を現在持っておるものであります。  ひとつ大臣に率直にお尋ねいたしますが、大臣は御出身は福島の方ですが、原子爆弾の被爆者というものに対しての認識が一般被爆者とどのように違いがあるのか、そういう点について、今は厚生省の所管大臣として専門的なお立場からいろいろと認識なさったと思いますが、そういう点で、厚生大臣として所管なさる前と今とで原爆被爆者に対する御認識に何か違いがございましたかどうか、率直にお尋ねいたしますが、いかがでしょうか。
  24. 渡部恒三

    渡部国務大臣 原爆被爆被害という問題については、これは我が日本民族が世界で最初に体験した、こういうことは二度と人類の上にもたらされてはならないむごたらしい惨害でありまして、これに対する考え方というものは、日本民族いずれの地域、いずれの県に生まれたにかかわらず、すべて共通する認識であると思いますし、私も、長崎県にお生まれになった方あるいは広島県にお生まれになった方に劣らない気持ちで、原爆被害に対する国民としてのできる限りの対策を講じ、また二度とこういうことが人類の歴史の中にあってはならないということで努力をしていかなければならないと考えております。
  25. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 今大変敬服いたすような御認識を御発表いただきまして敬意を表する次第でありますが、先ほども話がありましたように、我々野党が今原爆被爆者援護法制定について共同提案をいたしておりますが、この原子爆弾被爆者援護法の成立については、実は長い間の関係者の大きな期待でありますし、強い要望であるわけでありますが、残念ながらいまだにこれが成立を見ていないわけであります。  被爆者対策について、医療面その他について従来よりかなり前進した面はありますが、やはり基本的に、原子爆弾被爆者に対する国としてのきちっとした認識といいますか、国としての意義、性格づけといいますか、そういうものがはっきり示されないところに問題があるわけでありますので、今回の原子爆弾被爆者援護法制定の声が絶えず、ますます年を追うに従って強い大きな世論として巻き上がっているのも実はそこにあるわけでありますので、確かに原子爆弾被爆者援護法の中身については弔慰金の問題、年金の問題その他いろいろございますが、一応そういうものは一歩外に別に置いたといたしましても、やはり国として、世界唯一の被爆国である我が国の世界初めての被爆国民である被爆者に対して何らかのきちっとしたものをすることは当然のことでないかというように思うわけですね。ですから、大臣、そういう意味でこの問題をお考えいただぎたいと思うのでありますが、その点はいかがでしょうか。
  26. 渡部恒三

    渡部国務大臣 まさに、原爆の被害というものは、生存者にも放射能による被害という後々までのむごたらしい惨禍を残しておるものでありますから、これらに対する国の施策というものは積極的に行われるべきものであり、原爆に関する二法案ができまして、その施策に沿って私どもは今日まで対策をとってまいりました。  これにもいろいろの御意見等が出てまいりまして、私どもは、昭和五十五年十二月十一日に原爆被爆者対策基本問題懇談会の御意見をちょうだいいたしまして、その報告書を基本として今日まで施策を続けておるのでありますが、今まで御意見を賜っておりました死没者に対する施策という点については、残念ながら先生の御趣旨と私ども行政にある立場に若干の違いがあるようでございますけれども、これは行政という立場に立ちますと全体の中で横並びというものを考えなければならないために、他の戦災によって亡くなられた方と、原爆によって亡くなられた方と、戦争によって受けた貴重なとうとい生命を失ったという災害被害、これについてどこに行政上の区別をとるかという問題等がございます。これは御理解を賜らなければならないと思いますが、そういう中で、私ども先生と同じ気持ちで、今後も原爆の被害対策、むごたらしい被害を受けられた皆さん方の健康を守っていくために努力してまいりたいと思います。
  27. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 確かにこの基本懇の中で、原爆被爆者は特殊なものだということで、国家としてもそれ相応のものを考えるべきであるという意味においては、やはり非常に基本懇の中でもその点は明らかになっておるわけでありますが、今もおっしゃられましたように、お互いに第二次大戦で国民すべてが大きな被害を受け、そういう意味で戦争犠牲者という形だけで見るならば、それはどこにそういう差異があるかということになるでしょう。しかし、今日まで、我が国が、戦後処理の中で、それぞれの戦争犠牲者に対してそれ相応の、それぞれの状況、条件、立場、そういう中でそれ相応のものを国としてやってきておることは、これは間違いないわけですね。軍人軍属その他、あらゆるいろいろなところで、それぞれの立場における、国として何らかの形における、戦争犠牲者としてのそれ相応の、国としてそれに対する対策をやってきたわけでありますから、そういう問題でこの問題を見てもらわないことには私はいかないのじゃないかと思うわけです。  ましてや、この原子爆弾が少なくとも国際条約に違反し、明らかにこれはもう、そういったヘーグ条約に違反するような実は不法な行為であったわけでありますが、戦争終結という大きな流れの中で、このままこの問題が大きくアピールされなかっただけでありまして、明らかに、これはもうどこに出しても恥ずかしくない大きな国際法違反の行為でありますから、そういう行為を受けた国民が今日なお現存しているという以上、それらに対するひとつ国としての責任の所在という意味で、何らかの形のものを講ずべきであるということは私はもう論をまたないと思います。  したがいまして、その中身をどういうふうにしていくかということについて、やはりそれはいろいろな戦争犠牲者との関係がありますから、それなりのそういういろいろなバランス、兼ね合い等を見ながら、配慮しながらやるべきだとは思いますが、しかしやはりはっきりと戦争犠牲者であるし、国の責任であるという位置づけの中で一つの対策を立てる、そういう基本だけはやはりきちっとしてほしいというのが私は援護法制定の大きな皆さん方の願いだと思うんです。それじゃ援護法の中身はどうするか、これは別として、やはり国としては、明らかにはっきりしたそれぞれの戦争犠牲者の中において、それぞれの立場の中においてそれなりに国としてのきちっとしたものをしていく以上、当然そういうところにこの被爆者援護法も位置づけられていいのじゃないか。これを国が避けているところに一番大きな不満があるわけでありますので、そこらあたりをまずきちっとしていくことが援護法制定の大きな実はスタートだと思います。  そういう意味で、先ほどから私が申し上げましたように、内容のいろいろな濃淡、いろいろなものは、それは一般の戦争犠牲者とのバランスの中でいろいろと配慮されなければならないと思いますけれども、しかしそうだからといって、私は援護法制定を否定するということはこれは理屈に合わぬのじゃないかと思うんですが、その点を特に重ねて申し上げ、大臣の見解をお聞きしたいわけです。
  28. 渡部恒三

    渡部国務大臣 先生御案内のように、やはり原子爆弾の災害被害というものに対する特殊性という中で、国家補償的な施策を講じなければならないということで、原子爆弾被爆者医療等に関する法律原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律と、そういう先生の今お話しになられたような精神に沿ってこの二法をつくり、私どもはその対策を今日まで講じてまいっておるところでございますし、それらに対するまたいろいろな御意見もございましたので、特に原爆被爆者対策基本問題懇談会というものにお願いして、その基本的なあり方というものに沿って私どもはその施策を今日講じ、また将来も講じておるのでございまして、基本的な考え方は、先生考え方と同様であろうというふうに御理解を賜りたいと思います。     〔委員長退席、愛知委員長代理着席〕
  29. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 原爆医療法等の二法によって被爆者に国としての施策を講じられていることについては、これはもう十分理解するわけでありますが、先ほども言うように、そういう形で国としてのそれなりの特別な対策を立てているのでその点で理解していただきたいということのようでありますが、やはり一歩突っ込んで、きちっと国としての責任を明確にするというところに問題があるわけでありますので、そこらあたりがどうしても国が避けているところであります。したがって、そういった点で、この援護法制定についていまだに根強い声が出ているわけであります。  もう戦後四十年、来年は四十年になるわけですね。もう被爆者もほとんど高齢化していきますし、ほとんどの人たちが俗語で言いますとくたびれてしまって、もうどうしようもないというようなところにおられる人が大半、非常に残念ですけれども、どこを信頼していいのかわからぬような言葉を言われる人たちもおるわけでありますが、やはり私は、戦後四十年、いよいよ来年は四十年になりますので、何らかここらあたりで一つのけじめだけはきちっとしてもらいたいということを強く実はこれは被爆者全体の声として申し上げるわけでありますし、少なくとも我が国が唯一の被爆国民であり、世界に対して核軍縮、核を堂々と、しかもその悲惨さを、そういう我々の被爆によって受けた核の悲惨さが今日の核抑止力の大きな原動力になっているのだと思いますから、そういう中で、唯一の被爆国民として、被爆国としての立場から、世界に対しても核軍縮・核廃絶の動きをまた積極的にやらなければならない立場にあるのが我が国の状態だと思いますが、そういうことであればあるほど、では国内において受けた被爆者に対する被爆対策はどうなのか。世界に核軍縮を強く叫べば叫ぶほど、またそれだけの叫ぶ責任と権利があるわけでありますが、そういうものであればあるほど、内部的な、国内的な、内政上の問題としての被爆者対策について、少なくとも世界の皆さん方に恥ずかしくないように、そういう形のものがとられてしかるべきだと思います。そうしないことには、我々が世界に向かって核廃絶を唱えても、それはかなり空虚なものになる可能性さえあると私は思います。そういう立場から、これは余り時間がございませんので申し上げませんが、ひとつもう少し頭を切りかえていただいて、何も中身をどうのこうのするということではなしに、きちっと戦争犠牲者の中の特に原子爆弾被爆者については、特殊な立場における戦争犠牲者としての国の責任の中で位置づけていくということを、きちっとする中で物事を考えていっていただきたい、そういうスタートをやっていただきたいということで、実は強く要望する次第でありますので、その点については、今後とも、この問題についてはもう少し角度を変えた立場から、もう一度問題をぜひ見ていただきたいということを特にお願いしておきたいと思います。  次は、現在の被爆者医療の充実についてでございますが、現在の健康診断とかがいろいろ被爆手帳を持たれた方に行われておるわけでありますが、今の健康診断のやり方、一回受けて、それから要精密検査だと言ってまた再度連絡をとって呼び出して、また来ていただいてそれからやっていくというようなやり方をずっと繰り返しているわけですが、現地というか、長崎あたりの被爆者のそういう健康診断の中で、今までの長い間の実績の中では、単なる今のそういったやり方ではなしに、最初の健診の場合において血液をとる、尿を検査する、血圧をはかる、そういったことと、ほかに原爆被爆者に対する付随したいろいろなあれがあります、肝機能検査とかいろいろ精密検査の中でやらなければならぬようなもの、いろいろな項目が七つ、八つほどあるわけであります、例えば胃の検診もありますけれども、そういうものを、本人が希望すれば、最初のときにそういうものの中からどれか選んで一緒にそういう検診が受けられるように、もう少し中身を充実させてもらいたい、こういう声がかなり強いわけであります。そうしないと被爆者自身も、二回もまた、一年に二回ですから場合によっては四回、再度また足を運ばなければいかぬということになりますので、でき得れば、第一回の健診の際にいろいろかほかの検査項目のどれかを、自分の欲するものを、自分はどうも少し調子が悪いからこの検査か同時にやってもらいたいとか、そういうものが同時に受けられるような方式にならないかというのが実は現場の強い声でありますけれども、この点についてはいかがでしょうか。
  30. 大池眞澄

    大池政府委員 健康診断の問題につきましての一つの御意見かと存ずるわけでありますが、一般的に、今健康診断は非常に専門的な機能を効果的に組み合わせて、できるだけ大勢の方に効率的か健康診断サービスを確保するということで、これは原爆対策に限らず、一般的ないろいろな健康診断対策におきましても、おおむね一般健康診断か行い、その中で浮かび上がってくる疑わしい、あるいは問題のある成績が出た方について精密検査を行うというような二段構えの方式というのが、一番専門的な医療サービスをできるだけ広くの人に適用するという意味ではある程度効果的であるということは、考え方が定着しているわけでございます。そのような観点に立って、原爆被爆者対策の一環としての健康診断も組み立っておるわけでございますが、その一般健康診査の項目につきましては、これまで医学的観点から常に見直し非行いながら、必要に応じて検査項目の改定を行っているわけでございます。必要なものは追加を図っておるところでございます。このような観点で、今先生のような御趣旨も含めまして、調査研究の一環として専門家の方々にいろいろ御検討いただいているわけでございますが、その検討を継続してまいりたいと考えております。  なお、精密検査につきましては、一般健康診断で問題が生じたということについて必要な検査は、そのケースごとに応じて確保されておるわけでございます。御理解いただきたいと思います。
  31. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 かなり長い間の実績の中で、現場の実態の中でのそういう強い期待があるわけです。だから、ひとつぜひ検討してみてください。健診に会社を休んででも行かなければいかぬような、いろいろ半日かかるような状況ですから、それが一回で済むように、そこらあたりはもう少し、そういったただ機械的に最初だけいろいろなものをとって、また医師が必要と認めて呼び出しをしてまたそれから受けるというようなやり方については、今申し上げたようなメニュー化方式でひとつできないかという期待が強うございますので、その点ぜひひとつ御検討方をお願いしたいと思います。  それから、いろいろと国の方でも努力していただいているわけでありますが、相談員の増員とか補助率の引き上げとか、または援護措置に対しての国としての強化拡充とか、実際に原爆被爆者医療に携わっているそういうところからは、個人に対するいろいろな援護の強化じゃなしに、こういった措置をやっておられる医療機関の中でもいろいろ国にたくさんの要望事項があると思います。それはおたくの方にも必ず出てきておると思いますが、そこらあたりをもう少し前向きにできないものか。手当の問題でも管理手当の問題とかいろいろありますが、そういったこともありますけれども、できれば、こういう今の中で可能なものとしてやれる範囲として、もっとそこらあたりに重点を置いてやってもらいたいというのがあるわけでありますが、その点についてはいかがでしょうか。
  32. 大池眞澄

    大池政府委員 私どもも、そのような趣旨に沿って、御要望にこたえるべく、実情をよく踏まえながらできるだけの努力を行ってきているところでございます。  例えば被爆者相談事業に関しましては、広島長崎両県市にそれぞれ被爆者相談員が置かれて、健康相談等を行ってきておるわけでございます。国においてもそれに対するてこ入れを行っておるわけでございまして、五十九年度予算におきましても、前年度に引き続きまして、被爆者相談員を十三名から十四名に増員するというようなことを図っております。今後、被爆者方々のそういうニードが増大していくであろうということを踏まえまして、今後とも引き続き配慮をしてまいりたいと考えておるところでございます。  また、家庭奉仕員の派遣事業につきましても国が援助をいたしておるわけでございます。家庭奉仕員の派遣につきましては、現在福祉の仕組みの中で、老人福祉法を基軸にいたしましての老人家庭奉仕員派遣事業で主として対応しているわけでございますが、これはやはり年齢の一定の下限がございますので、六十五歳未満という方々の同種のニードに対しましては、被爆者家庭奉仕員派遣事業という形でこれを補完するような対応をしてきておるところでございます。  以上のようなことを例示的に申し上げましたけれども、こういった面におきましては、今後とも県、市の実態、また御意見等も十分拝聴しながら、国としてのできるだけの努力はしてまいりたいと思っております。
  33. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 今のお話しの中で、奉仕員制度の改善ということで、年齢制限を撤廃してほしいという要望が来ておるわけですが、それは今の御答弁の中ではそれを措置するということですか。奉仕員制度の中で、今の場合は六十五歳以上を対象になさっているわけでしょう。だから、それをできれば年齢制限を撤廃してほしいということと、それからあわせて、現在三分の一が補助されていますが、これをもっと引き上げてほしい、こういう点がございます。  それから、あと一つ御検討願いたい点として、原爆小頭症ですね、これは非常にまれな方しかおりませんけれども、この方たちのこれからの終身補償、補償という言葉は悪いですが、これからいろいろその面倒を見てくださっている家族の方がだんだんおらなくなってしまえば、一人ぼっちになった場合にどうするか、この問題が実はもう目の前の問題として出てきておるようでありますが、こういう小頭症患者の終身補償といいますか、どうしたら最後まで面倒を見られるかということについて、これが一つの大きな課題になっておるようでありますので、この点についてひとつぜひ御検討をいただきたいと思うのであります。それからあわせて、先ほど出ましたが、広島市、長崎市、それぞれ市が独自でいろいろと療養施設、保養施設その他、そういった対策をやっているわけでありますが、こういった施設に対しても国としてきちっと法制化していただいて、そして助成措置なりをきちっとしていただく、こういうことができないものかということ、これは自治体の非常に強い要望でありますが、この点についてはいかがでしょうか。
  34. 大池眞澄

    大池政府委員 原爆小頭症ということで認定されました患者、先生指摘のように非常にまれなケースでございますが、大変お気の毒な方々でございます。  現在、医療特別手当も支給しておりますし、またそれに加えまして、原子爆弾小頭症手当というものを特に設けまして支給をしているところでございます。また、養護ないしは介護を必要とされる方々につきましては、原爆養護ホームヘの入所もできることとなっております。その援護につきましては、先生が御指摘のような趣旨を十分踏まえまして、現地でそれぞれ対応をしているところでございますが、今後とも意を用いてまいりたいと考えております。  また、原爆のための諸施設について法制化を図るべきではないかという点でございます。  現在、御承知のとおり原爆病院原爆養護ホーム等、被爆者の福祉の確保、向上を図っていく観点から、それぞれ必要な措置を講じているところでございますが、その施設の実質を見ますと、一般医療福祉施設と基本的になかなか変わる点はございませんので、特にそれだけを取り出して法制化するということはいろいろと困難な実情がございます。むしろ、私どもの立場といたしましては、これらの施設につきましては、予算措置によって必要な助成を引き続き配慮していくということを重視いたしまして積極的に取り組んでまいりたい、こう考えておるわけでございます。
  35. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 あと一つ。  御承知のように、だんだん被爆者は高齢化していくわけでありまして、それからそういう意味で身寄りもおらなくなる、「孤老」という言葉ですか、そういう形の人がだんだん増加しつつあるわけでありますが、こういう被爆者を中心にした養護老人ホームといいますか施設というものは、残念ながらそうたくさん収容できるだけはございません。長崎で二つほどでありますし、そういった被爆者の期待にこたえ得るような状況でないわけでありますので、当然一般の養護施設の方に面倒を見ていただく、こういうことにならざるを得ないのが現状でございます。  しかしながら、そうなりますと、同じ被爆者の中であっても、原爆養護老人ホームの方に入られると自己負担一切なしという形で処理できますが、一般の老人ホームの方に入られますと、今の制度上はどうしても最低三万幾らから六万程度、それぞれの年金の収入によりましょうけれども、どうしてもそういった負担を自己負担せざるを得ない、こういう状況が出てくるわけであります。そういう意味で、ひとつこの問題についても、実はこれは現地においては頭の痛い問題なんです、被爆者という立場から見ますならば。ここらあたりに対する何らかの解決策はないものかということで、実はこれは非常に大きな期待といいますか強い要望が出されているわけでありますが、この点について当局として何らか解決策をお考えできませんか、ちょっとお尋ねいたします。
  36. 大池眞澄

    大池政府委員 ただいま先生の御指摘ございました原爆養護ホームにおきましては、確かに被爆者のための福祉施設であるという特殊性に着目しまして、原爆諸手当の所得制限の取り決めを一つの基盤に置きまして、その他の事情も考慮して、一般の養護老人ホームに比べれば非常に緩和された条件で措置を行っているところでございます。しかし、反面、養護老人ホームでの費用徴収基準、これもまた無視できないわけでございまして、実態上そのような差が生じていることは私どももよく承知しております。しかし、この両者の差額を埋めるというようないい考え方をなかなか今のところ私ども持ち合わせておりません。ただ、現地からのそういう声も十分聞いておりますので、今後とも研究してみたいと考えております。
  37. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 これは緊急の問題ですね。だんだん老齢化して高齢化していくような中では、本来ならば、そういう施設を国と地方自治体が一緒になってつくって、そこらあたりでできるだけ面倒を見ていくということが一番好ましいわけでありますが、残念ながらそういうわけにも現実すぐいきませんから、せめてものそういった問題についての解消をぜひひとつ研究していただいて、早く期待にこたえていただくようにお願いしたいと思います。  それから次に、先ほどのお話しにあっておりましたが、老人保健法制定された結果、結果的には、いきさつはいろいろありますが、県、市の負担が大きく出てきまして、そのために厚生省からは、そのための負担軽減措置として十何億でしたか、十三億だったでしたか、特別に出していただいておるわけでありますが、残念ながらこれですべて解消するわけにいかぬような、まだまだ出し前が地方において大きいわけですね。だから、この点についてはぜひひとつ、特に長崎広島という原爆被爆都市であるがためにそういういろいろな面倒というか、いろいろな施策を講じていかなければいかぬ、そういう意味で、やはり特別なそういった位置づけをしていただいて、もっと国がここらあたりに対する費用負担を余りそういう地方自治体だけにさせないようにお願いしたいわけです。そうしないと、現在でも長崎市では年間約六億ぐらいのこういった国以外の支出をそういった対策としていたしておりますけれども、ひとつ、原爆が落とされたということ、そしてたくさんの被爆者を抱えておる都市、地方自治体というだけで、ほかの都市、地方自治体に比べるとそういう意味での負担が大きいわけですから、そこらあたりをいかにして軽減させるかということを、これは先ほど大臣がおっしゃられるように、被爆援護法についての中身の点で徹底してより前向きにやっていきたいと言われるならば、こういったところにももっともっと力点を置いていただいてぜひ努力していただきたい、かように思うわけでありますが、この点についての大臣の御決意をお伺いしたいと思います。
  38. 大池眞澄

    大池政府委員 ただいま先生の方からお話しのございました考え方といいますか、趣旨に沿うべく私どもとしても取り組んでおるわけでございますが、結局この問題は、老人保健法医療の給付ということから生ずるわけでございまして、原爆医療法の方から生ずる負担では必ずしもないわけでございますが、ただ、実態上、広島長崎市を中軸に、被爆者の中で高齢者の割合の非常に多いというような実情が広島長崎にございますので、そこでは一挙に負担がふえる、それの激変緩和のための財政調整というようなことで、非常に厳しい予算ではございましたけれども、目いっぱいその枠を確保したという経緯があるわけでございます。したがいまして、そのような観点から、その地域の実情に沿うべく努力を引き続き行っておるというのが現状でございます。
  39. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 これは老人保健の問題を一つの大きな柱にしましたが、そういう形で非常にいろいろと、そういう地方自治体はそのためにいろいろな負担、ほかの都市に比べて特殊なそういう状況でのそういう支出が多いわけでありますので、そういう点について十分ぜひ配慮をしておっていただきたいという意味で申し上げましたので、よろしくお願いします。  それから大臣、先ほどもお話しがありましたこの被爆地域是正の問題ですね。大臣、実情はおわかりでございますか。  これはちょっと色刷りで出していますけれども、これを見ていただければわかると思いますが、これは赤が最初の指定地域、この青色が次に追加された指定地域、それから黄色がありましょう、この深堀地区一帯は現在でもまだ対象外なんです。隣の土井首地区は指定されている。ですから、ここの住民の方にとってこれはどんな理屈を申し上げても理解できないでしょう。ちょうど築地一帯で片一方は地域に指定され、半分は指定されてないというのと一緒なんですね。しかも被爆地域の指定が科学的根拠に基づいてそういう中でされたのではなしに、当時の事情でしょうけれども、行政区割を中心にしてやられたものですからこういういろいろな問題が出ているわけです。したがって、先ほどから科学的根拠とかやれ何とかの根拠と言われておりますが、大体被爆直後はいろいろやったことがないわけですから、そういうものがあるはずがないのです。後から関係者の方が来ていろいろやられましたが、どうしても地域是正については、そういう意味での不均衡をなくするために、ここらあたりできちっと行政という立場から物事を考えていただいてこの問題を解決していただかないことには、いつまでたってもこの問題が出てくるのですよ。戦後四十年、もう被爆者人たちも高齢化していってだんだん数が減ってきておる段階で、今県、市が挙げてお願いしているようなこの地域是正をやったとしても、それが即大きく国の負担に重なってくるということにはならぬと思うのですよ。だから、もう少しそこらあたりは物事を柔軟に考えていただきたい。そうしないと、逆に距離が近くても現実に地域に入ってないという問題が出てくるわけです。そういうことを考えますならば、当時、原爆直後そこにおられた人たちがどれくらいおるか、これは調べれば数字が出てきておりますが、せめて健診くらいはこの深堀地区まで広げてやっていただきたいというのが率直な県、市挙げてのお願いでありますので、この点はそういう立場で問題をもう一度ぜひ考えていただきたい、特にこれは大臣にお願いする次第であります。  歴代の大臣も前向きに取り組んでいただくような御答弁をいただくのでありますが、残念ながら次にかわられるものですから、また初めからやり直すという話になってしまうので申しわけないのですが、本当に行政の永続性という形で考えていただかぬと園田厚生大臣のときはかなり期待できたのですよ。ずっと大臣の御答弁を聞いているとこの次くらいはと期待できるような状況にいくんだけれども、また後戻りして絶えずこれを繰り返していくという状況ですので、ぜひその点はお願いしたいと思います。  それとあわせて、先ほどもお話ししておりましたが、大臣、これは質疑の中で出しておりませんでしたけれども、小説の「二つの祖国」の中にもはっきり出ていますが、原爆を落とされた直後、アメリカは相当な力を注いで広島における直後のいろいろな影響についての調査をされておるわけです。長崎は二番目でしたから余り注がれていませんが、そういう意味でアメリカはかなりいろいろなデータを持っておるわけですから、これを日本が譲り受ける、そうしてこの被爆者対策についてのいろいろな資料にしていく、これは私はぜひやっていただきたいと思うのです。  この二つ、大臣の御見解をお聞きして終わりたいと思います。
  40. 渡部恒三

    渡部国務大臣 官僚的答弁になるとおしかりを受けるかもしれませんけれども原爆被爆者対策基本問題懇談会の御意見、これを指針として私ども原爆対策をやっているわけですが、これに、被爆地域の指定は科学的、合理的な根拠のある場合に限定して行うべきであるということが明示されておるわけであります。しかし、今先生指摘のように、これは境界というものをつくれば何の場合でも、例えば軍人恩給の支給なんかでも、隣の者とおれと一日しか違わないのに、隣の者がもらっておれはもらわないという問題が出てまいります。確かに境界線というのをつくればどういう境界線をつくってもそこに非常な矛盾を感じられる方が出てくるので、先生お話しはまことにごもっともだと思うのでありますが、しかし、これを科学的根拠を変えて拡大しますとまたそこに新しい不公平というものが出てくる問題等がありますので、これは非常に難しい問題だと思いますが、一生懸命勉強してまいりたいと思います。
  41. 大池眞澄

    大池政府委員 先生の第二の点につきましては、御承知のとおり放射線影響研究所を主軸に日米の情報資料の交換というのは極めて緊密にやっているわけでありますし、また、今後ともそういう努力を続けていきたいと思います。
  42. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 では、その資料は放射線研究所の方でずっといただいているということですか。そうじゃないでしょう。
  43. 大池眞澄

    大池政府委員 アメリカからはアメリカ側での研究成果の情報が入ってきているということでございます。
  44. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 被爆直後のそういう生々しいデータがあるわけだから、現在の外交ルートでも何でもいいから、できたらこの話をぜひ一回進めていただきたいということをお願いしておきます。  以上です。
  45. 愛知和男

    ○愛知委員長代理 田中美智子君。
  46. 田中美智子

    ○田中(美)委員 野党の共同提案者の森井議員にお聞きいたしますが、被爆後来年でちょうど四十年になる。今出されました被爆者援護法制定というのは、被爆者の悲願であるだけでなく世界の人たちの悲願だと私は思っています。特に被爆者方々の生きていられる目の黒いうちに何としてもこれを制定したい、それにはぎりぎりのところに来ているのではないかと思うのです。  世界を見ましても、今反核運動という広がりが非常に大きいし、その中での日本被爆者の果たした役割も非常に大きいということが表に出ておりますので、まさに、提出されました援護法は日本の国民の声だけでなく世界の人類の声だと私は思いますので、提案者の決意を申し述べていただきたいと思います。
  47. 森井忠良

    森井議員 野党は、被爆者援護法案を昭和四十九年以来ほとんど毎年提出をしてきておるわけでございます。おっしゃいますように、今もって国家補償の精神に基づく被爆者援護法案が成立を見ていないということは極めて遺憾だと思います。実は、この法律は奇妙なことに一度も否決をされたことがないのであります。政府案の対案としてしばしば出してまいりましたけれども、そのときにはどちらを先に採決するか、与党の方は政府案から先に採決、全野党は野党が提出しております被爆者援護法案を先に採決、こういうことで、どちらを採決するかを採決いたしまして、政府案が採択されて野党案が自動的に廃案になったという経過があるわけでございます。ただし、諸手当の引き上げがなかったものですから去年は政府案が提出されませんでした。したがって野党案だけでございましたけれども、そのときはさすがに与党の皆さんも野党の援護法案を否決することはいたしませんで、継続審議になり、その後解散になって今日に至っているわけです。こういう経過でございます。  ことしの特徴は、全野党と申し上げましたが、新自由クラブさんが与党にお回りになりましたから、新自由クラブを除く各党で提出をしたという経過であります。  今申し上げましたように、自民党といえどもこの法案はどうしても否決ができないという、それだけ今、田中委員指摘のように極めて重要な課題であり、否決に踏み切れないところに自民党の苦しみがあるんじゃないかというふうに私ども思っております。  そこで、私ども野党案も、最初は四十九年に共同で提出いたしましたが、当時は予算で五千億も要るものでございました。今総理、その当時幹事長でございました中曽根首相は、広島へおいでになりまして、野党案では五千億も要るんだ、これではとても話にならないという発言をして帰られました。しかし、私どもも諸般の情勢を考えまして、確かに本来なら五千億相当の法案をつくりたかったわけでございますが、じっと我慢をいたしまして、現在提出しておりますのは二千百億余りであります。政府案は、年々被爆者皆さんの運動もあり、また院内でもこれだけ野党の強い要望もございまして順次予算がふえてきております。老人保健法施行以前の計算方法をとりますと、ことしの政府被爆者対策の予算は既に一千億を超して、たしか一千三十億余りになっているのです。野党案は今申し上げましたように二千億余りでありますから、中をとれば千五百億ということになるわけでありまして、相当近づいてきておることは間違いありません。ですから、何としてもとりあえず社会保障から国家補償法へ変えていく、これはぜひ必要でありますし、提出者といたしましては、少々内容の譲歩をいたしましても、何とか与党と合意をいたしまして精神を国家補償に切りかえる、そういう中身に切りかえていきたいと思っておるわけでございます。  今回、所得制限撤廃先ほど厚生大臣答弁をしておられましたけれども答弁を聞いておりますと、厚生大臣所得制限撤廃はできないんだ、予算が伴ってこれは大変金を食う、こういうことでありますが、一千三十億になんなんとする予算の中で仮に所得制限撤廃しても、私の試算によりますとたったの三十億余りだと思うのです。三十億の金で所得制限撤廃できるとすれば、これはどうしてもやってもらわなければならないし、国家補償のあかしとして、本当にちょっぴりのものですが、所得制限撤廃をされるということはこれは国家補償の精神に通じますので、せめてそれくらいのことをやってもいいんじゃないかというふうに私ども考えております。  御指摘の反核・軍縮の運動というのは非常に盛り上がってきておりまして、国連でも過去二回軍縮総会がございました。一回目のときは当時の園田外務大臣、二回目のときは私も出席をいたしましたが鈴木総理でございました。そして、お二人とも非常に格調の高い、非核三原則を取りまぜながら、世界初の被爆国の首相や外相として、拍手喝采を浴びるような名演説をされたのです。ところが、現実の問題としては、もう御存じのとおりトマホーク一つとってみましても非核三原則というのは崩れつつある。私は極めて問題だと思い幸すけれども、何はともあれ、国連や全世界に反核・軍縮の声を上げている我が国としては、せめて今まで原子爆弾の犠牲になられた被爆者方々、あるいは遺族方々に対する援護措置を行うことによって、日本の決意を明らかにすべきであるというふうに申し上げていいと思うわけでございます。  ですから、当面はとりあえず、二度と被爆者をつくらないというそのための被爆者援護法と申し上げてもいいわけでございまして、申し上げましたように今もって成立をしていないということは極めて遺憾であります。  それから、本委員会でも、共産党の方々だけでなしに、去年もおととしもさきおととしも、毎年自民党からの質問もあったわけでございます。ことしは健保のあおりを食っておりまして、自民党からの質問がないのは極めて遺憾であります。若い先生方も多いわけでございますから、積極的に野党案に対しても質問をしていただいて、ここまで来たら事は党派の問題じゃないんだから、与野党を通じて被爆者の問題に本気で取り組んでいきたいというふうに考えております。
  48. 田中美智子

    ○田中(美)委員 大変力強い決意を伺いまして、共産党・革新共同としても、国民としっかりと手を結びながら、提案者、代表者に最大の協力をしながら、この法案の制定のために頑張っていきたいと思います。  今のお話しの中で、新自由クラブはもう向こうに行ってしまった以上、野党でないということははっきりしております。それからもう一つ、否決ができないでいる、自民党が苦しんでいられるというお言葉がありましたけれども、私は、個々の自民党の議員の中には苦しみがあるかそれはわかりません、しかし、自民党としては苦しんでいるということは考えられません。これは姿勢に問題がある。どんなことがあっても国家補償にはしたくない、こういう決意があるという点は甘く見ないで、頑としてやはり国民とともに自民党を包囲していかなければならないのではないか、この援護法についてそういうふうに思います。  森井先生 どうもありがとうございました。  その次に、今のようなお話しからしましても、今生きていられる被爆者を大切にしていく、おかしな言い方になりますけれども被爆者は人類の生き証人であり、非常に大切な存在だというふうに私は思っています。数も非常に減ってきておりますし、年齢も高齢化していますので、この人たちには最大の援助をしなければならない。これは援護法を制定する、しないの前の問題、今の問題としてやらなければならないということは大臣も同じではないかと思いますが、その点の御決意をちょっと簡単にお願いいたします。
  49. 渡部恒三

    渡部国務大臣 現行法の中でできる限りの努力を続けたいと思います。
  50. 田中美智子

    ○田中(美)委員 実は最近なのですけれども、私のところにある手紙が参りました。私も本当に驚きました。この方は長崎の諌早に住んでおられまして、八月の九日に原爆が落ちたときに、長崎被爆の中心地の〇・五キロメートルのところにわざわざ出ていって救援活動をなさった方です。その方からお手紙をいただいたのです。田中康修さんという六十七歳の男性の方です。  非常に驚いたということは、この三十八年間苦しみ抜き、援護の法律があるにもかかわらず不幸にも今日まで全く知らないでいた。去年の十一月の末に初めて健康管理手当というものをいただけるようになった。それまでは全く知らなかったということを考えても、これは私たちすべての知っている者の責任もありますけれども、やはり政府のPRの不足ということも私は感ずるのです。今さら過去のことをとやかく言っても仕方がないので、何としてもこの方を助けたい、大切にしたいというふうに私は思います。  この方は死体を運んだり救援をしたわけですけれども、その中で、被爆の翌日ですからまだ家が崩れてくるというふうな中で、ブロックだとか鉄筋などの下敷きに最後になったわけです。そして赤十字のテントに収容されまして、約三時間ほど意識不明でいた。三日間食事も食べられなかったというふうな方で、非常に大きなけが、ガラスなども入っていますので、それを摘出したりする生々しいたくさんの傷跡が今も体に残っているわけです。それと同時に、翌日ですので二次被曝を受けているということは明らかなわけです。  最近、この方が病気になりまして名古屋の国立病院入院なさったわけです。そして、これは国立病院の内科の山藤光彦先生診断書ですけれども、「原発性肺がん」ということが明らかになりまして、「上記疾患は、原爆被爆との関係が大変濃厚と考へられる。」という形で現在入院していられるわけです。もう六十七歳にもなっていられるわけですので、あすの今もということをみんなは心配しているわけです。  これは厚生省も御存じだと思いますけれども、ことしの一月三十日に特別手当を受けるための認定をしてほしいということを申請しておりますが、それがちっとも認定されない。それでまた、ことしの五月五日にもう一度申請しているわけですがまだ来ない。私は過去の怠慢のことは言いませんけれども、この方は三十八年間知らなかった、やっと知ったのは去年の十一月なんです。そして肺がんになって今自分の過去を考えてみて、時間がありませんのでこの手紙は読み上げられませんけれども、本当に涙なしには読めないという感じがいたします。それなのになぜ認定できないのか。私はこの方にできるだけ長生きしていただきたいと思いますけれども、年齢的に見ても相当な年配の方が肺がんということですので、これから手術してどうなるかわかりませんけれども、何としても早急にこの方に認定をしていただきたい。これを渡部大臣に心からお願いしたいのですけれども、そのことをお聞きいたしたいと思います。
  51. 大池眞澄

    大池政府委員 お答えいたします。  ただいま先生が最初に申されました事例につきましては、現在審査中であるということを確認しております。なお、書類をお出しになってから随分時間がかかっておるではないかという御指摘でございますが、この方につきましては、当初出されました書類が不備であった関係上、それを完備するのに若干時間を要したというような経緯があるわけでございます。  なお、一般的にこの認定の処理に時間がかかり過ぎているではないかという御質問でございます。この認定につきましては、御承知のとおり原爆被爆者医療審議会の意見を聞く仕組みになっておりまして、そこにおきます医学的、科学的な高度の判断ということに準拠して私どもは対処しておるわけでございますが、現在どうしても厚生省で受理して二、三カ月はかかるという実態がございます。これはやはり都道府県知事を経由してくるわけでございまして、その間どうしても事務的な処理の期間というものが必要だという実態でございますけれども、一部そういった事務処理において、もう少し迅速にできる面があるではないかというような点につきましては、またいろいろ検討させていただきまして、改善の余地があればそういったことについての改善を図るように指導していきたいというふうに考えております。
  52. 田中美智子

    ○田中(美)委員 改善の余地があればという言葉が私は大変気に入らないのですけれども、肺がんだということを国立病院が言っておるわけですから、それはいろいろ手続もあるでしょうけれども、もう半年になるのですよ。それで、まだ不備があるならばということで一体いつこれが認定できるのですか。大臣大臣は知らぬということではいけないでしょう、半年もほったらかしているのですから。
  53. 渡部恒三

    渡部国務大臣 これは行政でございますから手続を省略するというわけにはいきませんが、その行政上の守らなければならない範囲の中で、先生の今お話しの問題は私も胸を打たれる問題でありますので、できるだけ事務手続をスピーディーに進めていくように努めたいと思います。
  54. 田中美智子

    ○田中(美)委員 それではもう何だかんだ言わないでスピーディーに大臣が言われたようにすぐやっていただきたい。いつごろ認定できるか、私の方にその御返事をいただきたいと思いますけれども、よろしいでしょうか。私は、この方のことを考えるといても立ってもたまらない気持ちです。
  55. 大池眞澄

    大池政府委員 できるだけ急ぐようにさらに努力をいたしますが、結論を得次第、やはり本人あてに通知するのが筋かと思いますので、そのように対処させていただきます。
  56. 田中美智子

    ○田中(美)委員 それではその次ですけれども、これは被爆者からの大きな願いとして出ているのですが、健康管理手当の範囲を広げていただきたい。今、うつ病とか皮膚病というのが入っていないという訴えが、私がいろいろ被爆者と話し合う中で出てきているのですけれども、皮膚病のことを私はまだ十分に理解しておりませんので、ちょっと皮膚病のことはこの次にしたいと思うのですが、これは何としても皮膚病とうつ病を拡大していただきたいというのがきょうのお願いなんです。  このうつ病は、私もいろいろな方に会ってみまして、自分が被爆者だということもなかなか言わなかったり、手帳を持っていても言わなかったり、それから自分が被爆したときどんなふうであったか、本当に話さないという人が多いのです。いろいろ私などは喜んで話していただけるのじゃないかと思って個人的にお会いしても、余り話したがらないですね。それはなぜかということは前から思っていたのですけれども、これはやはり被爆した人でなければわからない気持ちだということが私には最近よくわかるようになってきた。それはなぜかというと、思い出したくないということが非常にあるわけです。  今「人間を返せ」だとか、私自身が目を覆いながらも指の間から見なければいけないと思って見ている、いろいろな映画などが出ています。しかし、あれは本当に奇跡的に生き残った方の姿であったり、また自然が破壊されたり、建物が破壊されている悲惨な状態は出ているわけですけれども被爆の当時本当にたくさんの人たちが死に、そしてわめき、ウジがわいていたというふうなことは私たちは見ていないわけです。被爆者は見ているわけなんです。この地獄絵というものはもう思い出すだけでもぞっとするし忘れられない。日にちがたてばたつほど、生活が安定してなくとも、年限がたてばたつほどそのときのことが鮮明に思い出されて悩むわけです。中でも最も言いたがらないのは、肉親を自分は見殺しにしたと今思っているのです。その当時はやむを得なかったと思っていたのです。しかし、日がたてばたつほど見殺しにしたという気持ちがあるわけです。これは私が大学の教師をしておりましたときの友人の中にも一人あるのですけれども、その先生はお母さんがはりの下敷きになってしまった。その先生は中学校の一、二年だったのです。ですから、認識は非常にできるけれども、力がなくて、はりをのけてお母さんを引き出すということはできなかったのです。まだ生きていたお母さんが、おまえだけは早く逃げろ逃げろと言うので、彼は夢中で逃げたわけです。彼は奇跡的に生き残って、今大学の先生をなさっている方です。この先生は別にうつ病になっているわけじゃありませんけれども、その話を本当にしないのです。それを親しい私にもほとんどなさらなかった先生が、話すときには本当に涙を浮かべながらもう三十九年前の話をするわけです。彼の心の中にはやはり母親を見殺しにした、その言葉は間違いですけれども、そういう気持ちがあるわけです。被爆者の中にはそういうことがいっぱいあるのです。自分の友人だとか恩師だとか子供だとか、助ければ助けられたのではなかったかと。私は、助けられなかったのだといつも彼らと話すときは言うのですけれども、日がたてばたつほど自責の念というのはあるわけですね。こうしたものが重なってうつ病になる方が非常に多い。それを単なる老人性のうつ病だというふうにしてしまうことは間違いではないかと私は思います。  私は、このうつ病というのは、本当に被爆に遭って生き残った人たちの大きな病気だというふうに思いますので、これをぜひ拡大していただきたい、こう思います。大臣、いかがでございましょうか。
  57. 大池眞澄

    大池政府委員 ただいまの先生お話しは、人間の心の問題として大変複雑な内容を持っておると承知したわけでございます。  この特別措置法の立場から申し上げますと、現在の健康管理手当は、原爆放射線との関連が否定し切れない造血機能障害等十一障害いずれかを伴う、そういう病気にかかっているということに着目しての手当の支給でございます。今御指摘のうつ病について、今先生がおっしゃったような心の問題を背景としてうつ病が発生するのかどうかというあたりにつきましては、現在の医学的知見では、原爆放射線の影響があるというふうには認められておらないという現状でございまして、その観点でにわかには追加拡大ということはちょっと今困難だと思います。
  58. 田中美智子

    ○田中(美)委員 私は、放射線だけで物事を考えるというところに問題があると思うのです。やはり政治というのは、人間の心というものを大切にしていくというところがなければ、ただ放射線が当たったからというだけではなくて、その全体の情景の中からどういうものが出てくるかということを考えるべきだと思います。私は、これはすぐにしていただかなければ間に合いませんので、ぜひこの点を今後検討するように、大臣にぜひ心の問題を大切にするということで考えていただきたいと思います。御決意をお願いいたします。
  59. 渡部恒三

    渡部国務大臣 医学的な専門分野の問題を、医学者でない私がこうだ、ああだと判断するわけにいきませんが、今先生からお尋ねがありましたように、その上にやはり政治の判断というものもございましょうから、今のような非常に大事な心の問題、これは努めてそういう気持ちが入れられるように勉強してまいりたいと思います。
  60. 田中美智子

    ○田中(美)委員 ぜひ、うつ病と皮膚病の問題は検討していただきたいと思います。  もう時間がありませんので、最後に二つほどお願いをしたいと思いますけれども、この健康管理手当が一年ないし三年に一回更新手続をする。これは、だんだんお年寄りになって面倒くさくなってきたり、出ていくというのが大変だったりしてきているわけですね。ですから、こういうことはもうしないで、この手続を省略してはどうかというふうに思います。いずれは被爆者はみんないなくなってしまうわけですから、そういう点では今やらなければ間に合いませんので、こういう面倒な手続を、今までは一定のいろいろな効果もあったのだと思いますけれども、ぜひこの点は省略していただきたいということが一点です。  それからもう一つの問題は、被爆者が亡くなってしまいますと二世、三世というのがわからなくなってしまうということはちょっと困るのではないかと思うのですね。その前にもう一つ、被爆者の健康診断やいろいろな状態、こういったものが多少とも記録されているわけですから、これが全国でばらばらになっている問題というのも、今の時点で、やはり歴史の一つの大切な、なくしてはならないものとして、後に続く人たちに残しておかなければならないものとして、この記録を統一してきちっと保管するということをまずやっていただきたいというふうに思います。そういうふうにすれば、きちっと二世、三世の問題もわかるわけですので、今のように地方でばらばらになっていたり、被爆者が亡くなって手帳自体ももうなくなってしまえば二世、三世がわかりにくくなるというようなことがないようにしていただきたい、この点をお願いしたいと思います。  以上について御回答をお願いいたします。
  61. 大池眞澄

    大池政府委員 まず、健康管理手当の一年ないしは三年の上限を設けて更新的な確認をしている点についてでございますが、これは、先ほど御説明申し上げましたような健康管理手当の性格上、その疾病にかかっているかどうかということはどうしても私どもとしては掌握する必要がある。それで、それぞれの病気の特徴、一般的な特性に応じて、一年ないしは三年という取り決めをしているわけでございます。また、高齢者については省略してもよいではないかということでございますが、高齢者だからといって、その疾病との関係が特に事情が異なるわけではございませんので、その点、期間をなくする、省略するという考えは持っておりません。  次に、いわゆる被爆者の二世の方々の問題でございます。これまでの内外の医学的研究調査結果から見ましても、二世の方にまで直接的な遺伝的その他の影響が及んでいるという証拠は、幸いにもまだ全く見出されていない現状でございます。しかし、実態上二世の方々の中にいろいろと不安を抱いておられる方もあって、希望者の方には、そういった不安におこたえすべく健康診断という予算措置を講じているところでございます。  それから、いろいろな健康診断データの保存、これは大切なことでございます。それぞれの地域ごとにきちっと保管されているわけでございますが、また、放射線影響研究所等におきましても、一定の調査計画に立ちまして、相当大きな規模で、ずっとある人口集団を観察させていただいているというような調査研究所も現在継続中でございます。
  62. 田中美智子

    ○田中(美)委員 記録をきちっと保管するということですよ。
  63. 大池眞澄

    大池政府委員 それぞれの地域におきましてきちっと保管している、また保管するように指導したいと思います。
  64. 田中美智子

    ○田中(美)委員 では、質問を終わります。
  65. 愛知和男

    ○愛知委員長代理 菅直人君。
  66. 菅直人

    ○菅委員 被爆から来年で四十年ということで、私は戦後生まれですので、戦争の実情というものは直接には知らないわけですけれども、私の母親も、生まれは広島市ではありませんが、広島県におりました関係もあって、そういう話をある程度小さいころから聞いておりました。とにかく、被爆から四十年を経た今日においてなおこの問題が必ずしも十分な形で対応されていないということについて、一つの責任を私自身感じるわけですが、特にきょうは、短い時間ですので、大臣に幾つかのことをお尋ねをしたいのです。  先ほど来、核兵器を、いわゆる被爆ということを再度発生させることがないようにしていくことが日本の責任ではないかということを、他の委員の方も皆さん言われていたわけですけれども、核保有国が核兵器を使用するのがその国の勝手なのかどうか、その点について大臣の政治家としての見解を伺いたいと思います。
  67. 渡部恒三

    渡部国務大臣 先ほどから私、申し上げておりますように、原子爆弾という、これは人類にむごたらしい惨禍をもたらす、その歴史の中で初めての体験を我が日本民族はしたわけでございます。したがって、人類社会にあって二度とこのようなことが行われるようなことがあってはならないという願いについては、これはすべてが共通する考えであると思います。私もそのとおりでございます。
  68. 菅直人

    ○菅委員 つまり私がお聞きしたいのは、せんだって本会議の席でも、サミットから帰られたときの総理大臣の報告に対する質問の中で、総理大臣は、核兵器を使用するのは勝手だとは言ってはいないと否定をされたわけですけれども、しかし同時に、総理大臣は、そのことは主権の問題で、他国がどうのこうの言うのは内政干渉だというようなことを言われているわけです。  私は、核保有国が核兵器を使うということがもちろん勝手なことではないし、野党が統一して提案をしている法案の精神も、核兵器の使用というのは当然国際法の違反であるということをベースにしているわけでありまして、その点について大臣に、核保有国が核兵器を使うことがその国の主権という立場で自由にやっていいことであるという判断をお持ちなのか、そうではない、当然にそれは国際法なりあるいはその主権の範囲を超えた問題だ、他の国の主権を侵す問題だというふうにお考えなのか、その点についての見解を伺いたいと思います。
  69. 渡部恒三

    渡部国務大臣 人間の一人として、また政治家の一人として、私は、この人類の社会に、あって、あのむごたらしい原子爆弾の災害が、たとえどの地域であろうと二度とあってはならないものであると考えております。そういう願いを生涯持ち続けてまいります。  したがって、原子爆弾の問題については、先ほど森井先生からも、これは超党派でそういうことがあってはならないことを願うものであり、またその対策も超党派でやらなければならないという御見識がございましたが、私もこれは全く同感でございまして、二度とこの人類の社会に核兵器など使用されることがあってはならないという願いを持っております。ただ、具体的ないろいろ外交上の問題については、これは厚生大臣という私がお答えするのは適当ではないと思います。
  70. 菅直人

    ○菅委員 適当でないと言われるのですけれども、この法案の審議、特に野党が統一して出している法案の考え方としての関連も含めて、どうしてもこの問題は厚生大臣としても見解を伺わざるを得ない問題だと思って、あえて御質問を重ねるわけですけれども。  では、過去の問題として、広島長崎に落とされた核兵器の使用というものが、国際法に照らしてみて明らかに違反をすると私は考えるわけですけれども、まずその点について大臣がどう考えているか、お聞かせをいただきたいと思います。
  71. 渡部恒三

    渡部国務大臣 先ほども申し上げましたように、核兵器の使用というようなものが、人類史上に二度とあってはならない、また、したがって、人類はそういうことを二度と使用されることのないように、これはみんながこれから努力をしていかなければならない、こう考えております。
  72. 菅直人

    ○菅委員 大臣、聞いている点をぜひ答えていただきたいのですが、どちらでもいいのです。どちらでもいいというのは、答えられた上での議論ですから、いわゆる広島長崎に対する核兵器の使用が国際法に照らしてみて反していたと考えられているかどうか。いわゆる核兵器を使うことが遺憾であるということは、大臣がそう思われていることは私も疑いません。全人類の大部分の人はそう思っておると思います。ただ、この行動が国際法に照らしてみて違反と考えるのか、あるいは必ずしもそうでないと考えるのかという立場はあるいは議論があるところで、これまでの経緯を見てもはっきりした見解が示されていない例も多いわけですから、その点について重ねて明確な答弁をいただきたいと思います。
  73. 渡部恒三

    渡部国務大臣 私は専門的な立場でございませんが、国際法の精神はあくまでも世界の平和を望み、これは人類に原子爆弾の惨禍というようなものを二度と体験させないためにあるものだと思いますから、私どもはそういう精神にのっとってこれは努力していかなければならないと思います。
  74. 菅直人

    ○菅委員 ということは、国際法に違反と考えるというふうに答えられたと理解していいわけですね。
  75. 渡部恒三

    渡部国務大臣 これは何度も申し上げておるようでありますが、私は人間の一人として、それから政治家として、これは人類の平和をだれよりもだれよりも望んでおりますし、これは二度と世界にそういうむごたらしい惨禍が行われることのないように、世界じゅうの人たちが力を合わせて努力していくというのが国際法の精神であろうと思いますので、その精神を尊重して世界じゅうの国々が努力をしていかなければならないと思います。
  76. 菅直人

    ○菅委員 どうしても答えていただけないようですけれども、これから使わないように、また核戦争が起きないように努力するということについては、全く私も同感ですし、大臣のその決意はぜひ大事にしていただきたいと思うわけですが、それはそれとして、ちょっとくどいようですけれども広島長崎に対する原爆投下というこの行為が国際法上から見て違反というふうに考えられるかどうか、一言イエスかノーで結構ですから、考えられるのなら考える、そうでないならそうでないと答えていただきたいと思います。
  77. 渡部恒三

    渡部国務大臣 世界の平和を望む、これは国際法の精神にのっとって考えれば、そういうことが行われたということはまことに残念至極でございます。
  78. 菅直人

    ○菅委員 まことに残念至極ということは、それは適切でなかった、つまり違反であるというふうに理解をしたいといいましょうか、理解をしたいと思います。  それをベースにして話を進めていきますと、これも何度も議論が繰り返されているところでありますけれども、サンフランシスコ条約によって対米請求権を放棄をするということで、戦後の処理を国としては行ったわけですけれども、それによって被爆者に対しての、本来なら投下をしたアメリカの責任であったものが、国としてそれを放棄をするということを行うことによって、国が、いわゆる日本の国が今度はそれにかわって一つの責任を持つという立場に移ったというふうに考えるわけです。そういう精神に立ってのいわゆる国家補償をベースとした援護法を野党がこの十年来毎年提案をしてきているわけですが、この考え方、つまり国際法に照らしてみて違反だ、そこでその請求権が本来ならあるはずであるけれども、アメリカに対しては請求権を放棄したのであるから、それの肩がわりとして日本政府が、または国がその責任を負って国家補償すべきだという、いわゆる一つの論理の組み立てをベースにした援護法になっているわけですけれども、この論理の組み立てに対して政府の見解をお聞かせいただきたい。つまりそのとおりだと言われるのか、もしそのとおりだと言われないとすればどこが見解として違うのか、その点についての政府の見解を伺いたいと思います。
  79. 大池眞澄

    大池政府委員 ただいま御指摘の非常に基本的な問題でございますけれども、既に大臣もしばしば御答弁申し上げておりますように、この件につきましての基本的な考え方を、基本問題懇談会におきましていろいろ高度の専門家の御議論をいただきまして、意見をちょうだいして、その意見に基づいて私どもはこの制度を理解しておるわけでございます。  すなわち、広い意味の国家補償の見地に立ってという考え方をもう少し敷柏して申し上げますと、それは今回の戦争についての国の不法行為責任の一環としてとらまえるとか、あるいは原爆投下をした米国に対する請求権を放棄したとか、そういう観点でとらえるのではなくて、今次の戦争過程において、被爆者方々が人類未曾有の原爆の放射線による健康障害、すなわち「特別の犠牲」ということに着目しまして、違法性とか過失の有無とかそういう観点ではなく、結果責任という観点からその被害に相応する相当の補償、こういう考え方に立っているわけでございます。その点で、先ほど御指摘しましたように、どちらかとおっしゃる点に対してお答え申し上げたわけでございます。
  80. 菅直人

    ○菅委員 今の回答で必ずしも納得はできないのですけれども、もう一度だけお尋ねしますと、今言われた結果責任という形での考え方があってもいいと思うのです、それはそれとして。しかしそのことと、今申し上げたいわゆる野党の案のベースとなっている考え方が、だからといって否定されるということには必ずしもならないと思うわけですね。ですから、政府考え方としては、結果責任という考え方から現在の特別措置法を出してこれまで実施をされている。それはそれとして、それなりの効果を上げていることは私たちも認めることにはやぶさかでないわけです。しかし、先ほど申し上げたような論理に立った援護法がより適切ではないか、よりこのことに対する十分なる責任のとり方ではないかということ申し上げておるわけであって、それに対しての見解です。この論理が何かおかしいのか。この国際法違反、対米請求権の放棄、それを肩がわりした日本国家補償、この考え方がもしおかしいと言われるのならどこがおかしいのか、その点についてもう一度伺いたいと思います。
  81. 大池眞澄

    大池政府委員 現在の私ども原爆医療法並びに原爆特別措置法の二法によりまして、先ほど申し上げましたような「特別の犠牲」という観点からする被爆者方々に対する健康の確保、福祉の増進といったようなことにつきましては、現在の二法でいろいろ対応しておるところでございますし、また必要な対応の努力を重ねてきておるところでございます。  それで、援護法のお考えで織り込まれている相当な部分は現行二法で事実上対応させていただいているわけでございますが、その相違点として浮き彫りになってくる点が、ただいま御指摘のような不法行為に関する責任であるというようなお考え方部分、あるいは死没者の遺族の方に対する補償というような点が差異があろうかと思うわけでございます。その他幾つか差異はございますけれども。  それで、既にいろいろ御論議がありますように、遺族に対する補償は、遺族方々原爆の放射線による健康上の「特別の犠牲」というものには当たらないということでございますので、その点は私ども考え方からは取り込めない部分であろう、かように考えておるわけでございます。
  82. 菅直人

    ○菅委員 時間ですので最後に一つだけ申し上げておきたいのですが、短い時間の質疑でしたけれども大臣の、核兵器を使ったような戦争を防ぎたいというその真意については疑うものではありませんけれども、この法案、特に野党が出しておる法案を含めて核兵器の使用というものが当然に国際法上の違反であるし、それが当然その一国の主権の範囲に及ぶ問題でないということは、これはもうだれの常識から見ても明らかなんですね。それぞれの国が自分の国の頭の上でそれを爆発させるのであれば、それはその国の勝手かもしれませんが、他の国の上で核兵器を爆発させることがもしその核保有国の主権の範囲に属するとしたら、こんなばかげた議論はあり得ない話であって、そのことをこの間中曽根さんが平然と言っているというのは、私はちょっと総理大臣の神経を疑っているわけですけれども、今回のこの審議の中でも、核兵器の使用というものに対する考え方が非常に明確な形で打ち出されていない。大臣答弁も、明確な国際法違反だから当然にそれは国際法違反として考えるべきだということを言われないというところにも、一つのこういう問題に対する政府のあいまいさが影響しているんじゃないかということを感じるわけです。  そういう点で、これからの核に対する日本政府あるいは国としての政治姿勢を明確にしていくためにも、ぜひ野党が提案をしている援護法のこの基本的な考え方政府にも取り入れて、または政府・与党にも賛同していただいて、この成立をさせていただきたい、このことを最後に申し上げて、私の質問を終わります。
  83. 愛知和男

    ○愛知委員長代理 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十七分休憩      ――――◇―――――     午後一時二分開議
  84. 有馬元治

    有馬委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出健康保険法等の一部を改正する法律案議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。網岡雄君。
  85. 網岡雄

    ○網岡委員 お許しをいただきまして、健康保険改正法案に関連をいたしまして、若干御質問を申し上げたいと思います。  まず最初に、この改正案が出されます前に、厚生省は、一月二十五日に社会保険審議会に本案を諮問されているわけでございますが、その際、同社会保険審議会が答申を出すに当たりまして、その冒頭の答申案の文書の中で触れておりますことは、従来のこの種の審議会の答申の前文といたしましては、かなり異例とも思えるような非常に強い調子で、遺憾の意を表しておみえに保なるわけでございますが、内容を言いますと、「更に、本年一月二十五日、健康保険制度等の改正について諮問を受けたところであるが、今回の改正案は、我が国の医療保険制度の根幹にかかわるものであり、慎重かつ広汎な検討を行う必要があるにもかかわらず、予算編成後の極めて限られた審議期間で審議し、答申をとりまとめざるを得なかったことは、遺憾である。今後このようなことのないよう努められたい。」、こういう今までの答申の中では非常に異例とも思われるような強い調子で、遺憾の意が述べられておるのでございます。  同時に、社会保障制度審議会がやはり答申をいたしておりますけれども、二月二十三日の答申案の内容を見ますと、三つの点が触れられております。  その内容は、一つには「保険財政における収支のバランスのみにこだわった感があり、医療保険本来の趣旨に照らした検討が必ずしも十分になされたとは思われない。」ということが一つです。  二つ目に保は、「本審議会は、これまで、今日の医療保険制度における問題の根本的原因は、医療に関する諸々の体制の整備、合理化を怠ったことにあることを指摘し、これら基本的諸問題の改革についての方向を示し、いくたびか対策を求めてきたが、政府は総合的展望を樹立しないまま推移し、そして、今回の改正に当たってもその点が明らかにされていない。」ということです。  第三は、「国民の生活に大きな影響を及ぼしかねない内容を含むだけに、改革を進めるためには慎重でなければならないし、国民の理解と納得を得ることが肝要である。」ということで、この保険法についても、改正案についても慎重な審議を行うようにということが、暗に制度審議会においても述べられておるところでございますが、社会保険審議会における答申の遺憾の意の述べ方、さらに社会保障制度審議会で前文において三点にわたって述べておる点は、いずれも政府が、長年にわたって大きな問題を抱えてきているにもかかわらず、その医療制度の根本的な改革についてのメスが加えられないままに、一方、財政的な負担が増大をする、百十兆円に及ぶ赤字というものを抱えた中で、財政のつじつまを合わせるために急遽この法案を作成をし、対応してきたということについて、両審議会が遺憾の意を表しておるところでありますが、厚生大臣、この両審議会の答申の内容を見て、提案をされた責任者として今どういうお考えをお持ちになっているか、その所信をこの際お聞きをしたいと思います。
  86. 渡部恒三

    渡部国務大臣 両審議会から、冒頭に、極めて短時間の審議の中で結論を迫られたという点の御不満があったというお話、これは私どももいろいろ今後のあり方について勉強させられたのでありますが、現在の毎年やっておる手順の中では、やはり政府の予算案というものが固まりませんと責任ある諮問というものができませんので、暮れに政府の予算案が決まってから私ども審議会に諮問するということで、それぞれ両審議会には、大変定まった期間の中で御審議をちょうだいするというハードな作業をしていただくことになって、これは大変恐縮であると考えております。  また、今回の私どもが出した案が、これは制度の根幹の問題であり、また将来の医療保険についての基本的な大きな改革であることも御指摘のとおりでございます。  先生御案内のように、今回の案の患者に一部御負担を願うという問題については、昭和四十年代から、この社会労働委員会でも幾たびか審議され、また各党の間でもいろいろ議論が闘わされ、そして、私の勉強した範囲では、厚生省は、その都度その都度小手先の改正というようなことでその場を取り繕うことでない、将来にわたっての抜本改正をやるべきでないかという御意見をちょうだいいたしておりますので、今回私どもは、長い間のそれぞれの皆さん方の御意見に従って、思い切った抜本改正、これをやっていただけることによって、二十一世紀の医療に対する展望が開かれていくという思い切った改革案をお願いしたわけでございます。  また、先生指摘の財政問題はいろいろ議論のあるところでございますが、私どもが今回お願いしておるこの改革案は、今申し上げましたように、四十年代からの先生方のいろいろな御議論を踏まえ、医療費が二十一世紀に向かって、今日まで毎年毎年増額をしておった、これがこのままでよいのか、また国民の皆さん方の負担がどの程度まで耐えられるかというようなことから、今回の改革によって負担と給付の公平化を図り、また医療費の適正化を図るために、今回の改革案を出して、今後保険料率を二十一世紀の将来に向かってまで上げないで済むような願いを込めて出したものでございます。  先生指摘のように、財政問題も関連なしとはいたしません。これは、私ども政府の立場で、予算を伴わない政策というものはないのでありますから、いかなる政策を我々がお願いする場合もそこに財政問題が関連することは当然でございまして、今日の経済成長はもう低成長で当分いくしかない、したがって、国家財政もかなり窮屈な中で今後我々は社会保障制度の基本を守っていかなければならない、そういう中で、今何私どもは改革案をお願いしているわけでございます。
  87. 網岡雄

    ○網岡委員 大臣からいろいろな点で述べられましたが、私は大臣の御答弁、一応聞いておきまして、きょうは健康保険法に対する各論の詰めをする委員会でございますから、具体的にひとつ詰めをしていきたいと思っております。  答申の中にも出ておりますけれども、まず医療制度に対するもろもろの体制の合理化、これは大臣の御答弁にもございましたように古くから議論をされている問題でございますが、その中の一つの問題点といたしまして、今日の医療体制の中で薬づけになっている、こういう医療体制の矛盾というものが、これは随分長い間言われてきておるわけでございますけれども政府もそれなりの対応はなさったということはわかります。しかし、その内容を見ますと、まだまだ薬価の問題についての政府の対応が、その矛盾にすべてメスを加えてしまっているということにはならないと思うのでございます。  きょう私は、今までの委員会の中で余り触れられていない新薬の薬価の問題について、若干御質問を申し上げてまいりたいというふうに思います。  新薬の収載は、業者から提出されましたならばできるだけ早く、こういうことになっているというふうに漏れ聞いておりますが、しかし、薬価の改定は中医協の決定、取り決めが年一回行われなければならない、こういうことになっておるにもかかわりませず、私は、五十六年からことしまでの薬価改定と新薬収載の関係について調べましたものを見ますと、まず、五十六年六月一日に、五十三年七月の調査に基づいて一八・六%の薬価の改定が行われました。続いて五十六年の九月一日にソロ収載が行われ、これは二千九百五十一品目という非常に多いソロ品目の収載が行われました。そして、問題の新薬収載は同じ日の五十六年九月一日に七十四品目が収載になっております。そして、同じ年の五十六年十二月二十八日に同じく新薬の収載が八十五品目にわたって行われております。そして、明くる年の五十七年八月十二日にはこれまた新薬が三十三品目収載になりまして、薬価の改定はようやく二年明けた五十八年の一月一日、ほんのちょっぴり四・九%の改定が行われ、そして、五十八年の二月三日にはまた新薬の収載が行われまして、六十一品目の収載が行われ、ことしに入りまして三月一日、薬価の改定が一六・六%行われました。そして、薬価の改定が行われましたすぐ後で、五十九年三月十七日に新薬の収載が百四品目にわたって、これは従来から見ますとかなり大幅な新薬の収載が行われておるわけでございますけれども、出されました。そして、五十九年の六月二日にはこれまたソロ品目の収載が何と千二百八十九品目にわたって行われているわけでございます。  これを少し経過的に追ってみますと、五十六年から五十九年の三月十七日までを見ますと、薬価の改定は五十六年六月一日に一回、五十八月一月一日に一回、五十九年三月一日に一回生いうことで三回でございます。そして新薬の収載は、五十六年九月、五十六年十二月、そして五十七年の八月、五十八年の二月、そして五十九年の三月、五十五年の十二月を入れますと新薬収載は六回の収載が行われているということでございます。  そうなりますと、薬価の改定は三回で、そして新薬の収載は五十五年を含めますと六回。年二回ということが言われているそうでございますが、この点については三年ということで年限をはめますと、約束どおり一年に二回という新薬の改定は行われている勘定になるわけでございますが、しかし薬価の改定は、四年にまたがるわけでございますけれども三回しか行われていない。つまり、薬価の切り下げは一回省かれていますけれども、新薬の収載はきちっと約束どおり果たされているというところに、今行われている厚生省の薬価行政といいますかそういうものが、業者には甘く、そして医療の問題をじかに受ける国民の立場からいきますと、医療の矛盾を解決していくための施策というものが非常になおざりになっている、こういう感じがしてならないわけでございますが、この辺につきまして厚生省はどういうお考えをお持ちになっているか、お尋ねをしたいと思います。
  88. 吉村仁

    ○吉村政府委員 確かに、新薬の収載は私ども年二遍ということを原則にして収載を行っております。また、薬価の改定につきましては五十七年におきます中医協の御答申に基づきまして年一回は必ずやる、こういうことで五十八年、五十九年は年一回薬価基準の改正をやってまいっておるわけでございます。  なぜそういう間隔といいますか回数の違いが生ずるか、こういうことでございますが、私ども、薬価の改定につきましては全品目を調査して薬価の改正をする、したがってかなり調査期間もかかりますし、その後の追跡調査等にも時間を要しますし、現在薬価基準に載っかっております薬の数、品目が約一万四千ぐらいでございます。したがって、一万四千についての品日につきまして価格をそれぞれ決めていくということにはかなりの時間がかかる、これはひとつ御了承賜りたいというように思います。それから新薬の方につきましては、これはまあ現在日本の製薬メー力ーも力がだんだんついてまいっておりまして、新薬の開発というものを製薬メー力ーの使命としていろいろ開発をしてきております。したがって、最近新薬の承認というものも数が多くなってきていることもこれは事実でございます。そしてやはり新薬を出せばその新薬について医療に適用する、そのためには薬価基準に収載をしなければならない、こういうことに相なるわけでありまして、私どもは、新医薬品を早く保険医療の中に取り入れ、そして国民の皆さん方医療上の適用がされることを望んでおるわけでありまして、そういう観点から新薬につきましては一年に二回原則として登載をする、こういう方針で進んでおるわけでございます。何も薬価の引き下げは回数を少なくして、そして新薬の登載はてきぱきとやって、そういうことによってメーカーの便宜を図っておる、こういうことではございませんので、この点はひとつ御理解を賜りたい、こういうように思います。
  89. 網岡雄

    ○網岡委員 薬価と新薬の改定の問題について今御答弁がございましたが、簡単に私は再質問をいたしますけれども、例えば薬価の場合でいきますと、後で御指摘をしたいと思いますけれども、やったことはやったのですけれども、五十八年の一月一日というのはわずかに四・九%、まさにこれはスズメの涙に等しいと思うのでございます。実勢価格からいけばこんな程度の薬価の改定では済むはずがなかったと私は思うのでございますが、しかしこんな程度でおさまっている。これはもう厚生省としては薬価の改定をやったんだ、こういうスタイルを残すための程度だというふうに思わざるを得ないわけでございます。本格的な改定といえばことしに入っているだけだということから言いまして、新薬の収載と改定の関係というものが、やはり厚生省の姿勢の中に企業に対する優先の姿勢といいますか、そういうものが依然として貫かれているという点を私は指摘をせざるを得ないと思うのでございます。  次に、私、今のは総論的なことでございますから、各論的な具体的な問題で申し上げてまいりたいというふうに思いますが、一部専門家の中で聞きますと、新薬の収載に伴う薬価の決定というものがともしますと、専門家の中の言によりますと、薬の実力よりもえてして薬価の基準が非常に高くついているというようなことが言われておるわけでございます。一つの例として「医事時報」の五月五日号に、帝京大学の清水教授が集まりました医師との懇談会の中で言われておるわけでございますが、例えば使い方によってはリューマチに非常によく効く日本薬局方のアスピリンという薬がある。ところが、これを手本にして新薬の収載に比較対照の薬として申請をする企業は一つもない。その理由は、これほどよく効く薬であっても手本にならないということは、この価格が非常に安い、こういうところに大きな原因がある。ある一つの薬を例に挙げられて、治癒率六〇%から八〇%に切り上がっていく、わずか二〇%のアップに対して、薬価の値段はそのもとのお手本の薬の五倍も六倍にもなっている。こういうものはやはり類似薬効比較方式の一つの欠陥と言うべきではないかということを清水教授が言われておるわけでございます。  今とられている類似薬効比較方式というものは、そういう今指摘があったような点では、やはり薬価を高い方向、高い方向につり上げていく矛盾を持っているということは否めない事実だと私は思うのでございますが、何らかの方法でこの矛盾というものを直していかなければならぬと思うのでございますが、厚生省はその点について一体どういう配慮と、どういう具体的な対策というものをとられているのでございましょうか。
  90. 吉村仁

    ○吉村政府委員 先生指摘のように、現在、新薬の価格は、類似薬効の比較によって決めておることはこれは事実でございます。したがって、比較すべき類似薬効を持つ薬に何を選ぶかということによって、今先生が御指摘のような事態が起こることは否めない事実でございます。したがってその点が、高い薬と比較して効能がいいということになれば高い価格がつきますし、今おっしゃいましたようにアスピリンと比較すれば低い価格になってしまう、こういう問題があるわけでございますが、私ども、新薬の開発で何と比較をして開発をしていくか、これはやはり企業の自由でございます。それからまた、そこが開発の一つの秘密と申しますか、企業秘密としましても最も重んずるところでありますし、学問的にもいろいろ問題があるところだろうと思います。そこのところを、必ずこういう薬はこれと比較をしなければならないというのは、私ども、少し開発そのものについての行政の介入が強過ぎることになるではないか、そこのところは企業の自由な開発に任せるのが現在の自由経済社会においては適当なのではないか、こういう基本的な考えを持っておるわけでございます。したがって、その類似薬効方式の問題を是正する場合に、今先生が御指摘のように、比較、類似する薬について何かの措置をとるということではなしに、その薬について類似薬効比較方式をとることがいいかどうか、そこでもし比較方式をとることが不適当ならば、例えば原価方式をとるとかその他いろいろあるわけでございまして、国際価格とも比較をしてみるとかそういう別途の価格決定方式をとるのが妥当なやり方ではないか、私どもはそう思っております。
  91. 網岡雄

    ○網岡委員 一つの考え方であると思うのでございますが、現実に新薬の収載で薬価が決定していきます際に、これはほとんど例外なしと言った方がいいと思うのでございますが、結局お手本の薬と比較しながら高いものに焦点を合わせて薬価が決まっているというのが、残念ながら今の新薬の決定の仕方でございます。その矛盾というものを私は具体的に出していきたいと思うのでございますが、今局長は、多少軌道修正をするという意味でおっしゃったように、国際価格を参考にしながら薬価を決める、あるいは収載が終わったらその後で用量などが拡大されたときにはその薬価について考慮する、検討するというような項目が一応入っております、それはそれなりに新薬の薬価決定での一つの軌道修正の役割を果たしているというふうに私は評価はいたしますけれども、問題はそういうことが具体的にやられているかどうか、実物をはめて少し御質問を申し上げたいと思うのでございます。  きょう委員長にお許しをいただきまして、資料をお配り申し上げました。これは、つい三月七日の日に薬価収載が行われました、まだでき上がったほやほやの新薬の薬価でございます。これは今局長が御答弁になりましたように、もう一つの軌道修正の目盛りであります外国薬価との比較がどうなっているかということで私が調査をいたしました結果、この表のように百四品目のうちで十二近くの薬を見たわけでございますが、いずれも日本の薬価に対してアメリカの薬価は、例えばβ-ブロッカーは三・四七倍でございます。アテノロールという薬は三・四二倍。イギリスヘまいりますと、マレイン酸チモロールに該当するものは五・一七倍、テノーミンという薬は四・五二倍というふうに、せっかくいい案が、外国薬価と比較して決めようということになっておるにもかかわらず、実際に決定されてまいりますとアメリカの三倍、イギリスの薬価の大体五倍近くになっている。そして、あとの薬を見ますと大体一・五倍近くの割で薬の値段がついているということから見ますと、新薬の薬価決定に基づく内規が決められたわけでございますが、果たして、その規則がきちっと守られていないということを私は感じざるを得ないわけでございます。  例えばこの二つの品目でございますが、三・四倍、五倍近くの高い薬価がついたというのは一体どういう原因なのでございましょうか。そして、一つの目盛りとなっていた外国薬価などとは実際に合っていないのでございますが、これはどうしてでございましょうか。
  92. 吉村仁

    ○吉村政府委員 この三月に収載をいたしました新薬の価格にきまして私ども調べましたところ、確かに、先生指摘のようなものがもちろんございます。ただ、私ども全体的に申し上げますと、今回薬価基準に登載をいたしました品目のうち、国際的に流通をしている品目が四十一品日ございます。その四十一品目のうちで日本が安い品目も十五品目あるわけでございます。全般的に日本が高い品目も十二品日ございます。今御指摘のβ-ブロッカーは日本が高い品目に属します。そして米、英、独、仏と比較しておりますので、アメリカと比べると安いけれどもドイツと比べると高いとか、あるいは逆にフランスと比べると安いけれどもイギリスと比べると高い、いろいろ日本の場合が高かったり安かったりする品目が十四品目あるのでございます。  それで私ども、国際的に比較をする、こういうやり方ももちろんとっておるわけでありますが、物によっては国際比較をしない品目もあるわけでございまして、御指摘のβ-ブロッカーに属する薬につきましては、国際価格との比較ということではなしに類似薬効比較方式によって決定したものでございます。したがって、比較をした薬の価格が高かったがゆえにこういう高い価格に決定をされた、こういうことになる、御指摘のとおりでございます。
  93. 網岡雄

    ○網岡委員 それは局長、おかしいのですよ。今資料がいきましたのでそちらはわかっていると思うのでございますが、手本はイギリスの薬なんです。ですから、外国薬価と比較していくということであれば、この列でいけばイギリスは日本の薬よりも安いという土壌があるわけですから、したがって、最初に入れたときだってやはり安かったのです。それが、せっかく諸外国の薬価に合わせてやるということを言っておきながら、結局外国の薬でありながら薬価を決めていくと五倍、四倍になっていくというのは、非常に賢明な局長の御答弁にしては非常につじつまが合わない話であると思うのでございますが、それはもう少し明らかにしていただきたいと思います。  それからもう一つ、今御発表になった薬の国際評価の安い点、高い点、それから中間にあるもの、国内開発の薬、こういうふうに分けられて述べられましたが、イギリスと日本を比較した場合どうなるか、イギリスとアメリカを比較した場合どうなるか、日本とドイツを比較した場合どうなるか、日本とフランスを比較したらどうなるかということを個別に一遍見てみました。  これは、厚生省のお出しになった資料で私は見たのですよ。そうすると、日本とイギリスの場合は、日本の方が安いものが三つ、日本の薬が高いものは圧倒的に多くて十八。そして、アメリカと日本の比較でいきますと、日本の方が安いのが八つ、そして日本の方が高いものが一つオーバーで九つ。こういうことです。ただ、ドイツはあそこは非常に薬価が高いところでございますから、したがってこれは物によっても検討していかなければなりませんが、大体ホルモン剤と抗生物質と精神安定剤は日本の薬の市場が乱売競争に入っていますから、手本にするもの自身が安うございますので安くならざるを得ないという状況があって、これは外国の薬価よりも安い、こういうことになっておりますから、個別に見た場合にどうなるかわかりませんが、ドイツだけは安いのが二十一、高いのが八つ、こういうことになる。フランスはもう圧倒的でございまして、安いのが一つ、高いのは十二、こういうことになるわけでございます。  局長、今私は、国際的なイギリス、アメリカ、ドイツ、フランスという各国と日本との比較をずっときちっと申し上げましたが、これからいきますと、総体的に言うと日本の方が高いということが客観的に言える、これだけは私は確信を持って言えます。そういう点でいけば、新薬の基準の目盛りというものが実際には守られていないんじゃないかということを私は指摘せざるを得ません。  したがって、局長に再度御答弁をいただきたいわけでございますが、こういうことを踏まえながら、次の新薬収載については一体どういうことを気をつけてやらなければいかぬかという点について、所信を明らかにしていただきたいと思います。
  94. 吉村仁

    ○吉村政府委員 確かに国際比較をいたしますと、先生指摘のような、個別に違いはあるが、総体的に言いますならば日本の価格の方が高い、こういうことは印象としては言えるであろう、こういうように私も思います。  ただ、私ども、薬価基準の薬価の決め方につきましては中医協の答申、これは支払い側と診療側とが合意をした中身なんでございますが、その中医協の答申では一応類似薬効比較方式というものを基準にすべし、こういうことになっておりまして、それを基本にしながら、一方で国際比較をするとかあるいは原価方式を採用するとかいろいろな措置を講じろ、こういうような答申になっておるわけであります。  そこで、βーブロッカー等につきましては、これは国際比較をしないで類似薬効比較方式というものをとった品目なんでございまして、そのβ-ブロッカーの薬価が非常に高いということになるとすれば、類似薬効比較方式を採用したことがやはり問題なのか、こういうことになると思うのです。  そこで、今後、類似薬効方式によって比較をいたしました場合に、非常に国際的に極端に高いというような場合も生ずると思いますので、その辺は私ども少し個別に検討をさしていただいて、国際的に見ても非常にアンバランスだ、こういう場合には価格の是正をする、こういう措置を講ずるよう検討をしてみたいと考えます。
  95. 網岡雄

    ○網岡委員 今御答弁がありましたから、それでは次に移ります。  新薬薬価に対してはもう一つの問題があります。それは、Aという薬を開発する場合に、その手本となるBという薬よりも、用量が半分でBと同じ薬効を持つ、こういうデータを出しまして、そして薬事審議会の審査を合格をいたしますと、結局一日量で倍になって計算されるものですから、そのもとの薬の二倍まではいきませんけれども、大体一・五倍から一・六倍、物によれば一・八位近くの薬価がついていく、こういうことで新薬の薬価が引き上がっていくもう一つの要素をつくっているのでございます。  具体的なことを申し上げませんとわかりませんから、私は一つ申し上げますけれども、例えばエフエム系の注射剤でセファメジンという薬がございます。これは当初二千九百六十円、今はもう千八百円くらいの薬価になっているようでございますが、これを手本にしてハンスポリンという薬が出されました。これはさっき申し上げましたようにセファメジンの半分でいい、こういうことになりまして、結局値段がついたのは四千七百六十五円、こういう値段がつきまして、もとの薬の約一倍半くらいの値段がついてクリアしたわけです。そして市場に出てくるようになりましたら、一年たたずしてそのセファメジンの使用量は大体一グラムから二グラム、こういうことで通常売られているわけでございますけれども、新薬の収載ができた直後は、このくだんのパンスポリンという薬は〇・五ないし一グラム、こういうことで表示がされていたのでございますが、一年たちますとたちまち用量が変わりまして、セファメジンと同じ用量の一グラムないし二グラム、こういうことでじゃんじゃん売られておるわけでございます。結局倍で薬が競り上がっている、こういう状況になっております。  そこで、もう一つの軌道修正をする目盛りであります、収載が終わった後で用量が拡大をされた場合にはその時点で判断をして値段を検討するんだ、こういう一つの目盛りがあるわけでございますが、その目盛りが果たして守られているかどうかということを見ますと、今度の薬価で両者の関係を見ますと、セファメジンは千八百円、そしてパンスポリンは何と三千五百八十四円です。そうすると、その目盛りに合わせますと、最初になったときよりむしろ率が悪くなっているのですよ。最初のときはもとの薬から比較すると一六〇、ところが、今度薬価を改定して、これは見ていただけばわかりますが、千八百円と三千五百八十四月ですから一九九ということになるのですから、約二倍になってしまったわけです。そうすると基準に書いてあることとは全く違っているのじゃないですか。一体どういうことになっているのですか。ここに新薬決定のいろんなお題目は並んでおりますが、採用の際にはそれがだだ盛りになっている。これは私には、どこかで癒着しているのではないかということが疑われてならないわけでございます。こういう点について厚生省は一体どういう反省をし、先ほど言いましたように、比較というものが悪ければ場合によれば原価でいこう、原価でいかなければ国際比較でいこう、こういうふうに軌道修正をされるものがあるにもかかわらず全然守られていない。これでは医療費を少なくしよう、倹約しようと言ったってできるわけはないのですよ。こういう努力をやらずにおいて、そして審議会にもまともにかけずに、わずかの時間で審議を急がしてやって、そして健康保険の改悪をして、本人一割負担、二割負担ということを国民に押しつけるというやり方は、これは私は言語道断だというふうに思うのでございますが、いかがでございましょうか。
  96. 吉村仁

    ○吉村政府委員 薬価基準収載後に、今先生指摘のように、例えば効能効果が違うとか、あるいは用法用量等の変更が行われた場合には薬価を修正する、こういう決めになっておるわけでございまして、私ども、本来迅速果敢にやるべきであるところをそれが遅延をしておる、こういうおしかりをこうむるような事態もあることはこれは私どもまことに申しわけない、こういうように思っておりますが、私ども、この原則によって、薬価の再算定と申しますか、そういうものを今後的確にやっていこうと思います。  ただ、一たん新薬も流通過程に入りますと、やはりそれなりの市場価格を形成をしていくわけでございまして、そういう段階に入りますならば、新薬の価格を決定した時点の原則から離れて、市場価格主義の方に変わっていく、こういうことに相なるわけでございます。  今御指摘のセファメジンとパンスポリンの価格上のアンバランスが非常に拡大しておるではないか、こういう御指摘がございましたが、これは恐らく、現在用法用量の変更が行われて、薬価の再算定をいたします場合におきましても、市場価格、パンスポリンが市場で幾らで売られておるか、セファメジンが市場で幾らで売られておるか、そういう価格を調査してこういう価格になったのではないか、こういうように考えておるわけでありまして、市場価格がそうであれば、私どもその市場価格に従って決めるべきではないか、こういうことで、例えばセファメジンとパンスポリンの価格の差が当初は一・六倍であったものが現在では一・九九、まあ二倍になっておるではないか、こういう御指摘でございますが、それはセファメジンが非常に下がればそういうことになる場合もあるわけでございます。別にパンスポリンの価格設定がおかしい、こういうこともあるかもしれませんが、セファメジンの価格が下がればパンスポリンとの価格比較というのは格差が広がっていく、こういうことになる場合もあるわけでありまして、市場価格に従って私どもはこの価格を現在においては算定をした、こういう結果今申しましたような姿になっておるのだろう、こういうように考えておる次第でございます。
  97. 網岡雄

    ○網岡委員 市場価格はだれがつくっているかと言ったら、これは厚生省ですよ。薬価を決めていくわけでしょう、薬価を決めて、そしてその値段をやっていくわけですから、市場価格は実際は厚生省じゃないですか。これはきょうはやりませんけれども、薬の値段だけは大体メーカー、卸、小売となってだんだん上がっていくのですよ。薬だけはメーカーの段階から下へ行くほど下がるのですよ。この仕組みというのはどこがもとかと言えば、薬事審議会、そして厚生省じゃないですか。そこがやっていくのですよ。だから、厚生省がさっき言った三つの目盛りで修正をするということで腹をくくったら、幾らでもこれは市場価格というのはそこで決まっていくのですよ。極端に言えば局長の手の中にあるのですよ、これは。やれるのですよ、それは。それをやらないだけの話じゃないですか。そして、収載が決まってから既に十年近くたっているのですよ。そして、用量は前の薬と同様の一グラムと二グラムになっちゃっているじゃないですか。そうだったら、薬価を下げるということであるならば、千八百円という手本の薬に合わして同額ということがひどければ、二百円ぐらいの差をつけて二千円にするとかいうところが、せっかくつくった基準を生かすという方法じゃないでしょうか。これじゃ薬価を、総体的には低くなっていますけれども、実際は高くすることに操っているということを言ったってこれは過言じゃございません。どうですか。
  98. 吉村仁

    ○吉村政府委員 薬価基準の価格はこれは厚生大臣が決めるわけでありますから、私ども下僚としてその作業をする、これは私どもの仕事でございます。しかし、市場価格を私が決めるということはないわけでありまして、市場価格というのは、医療機関とメーカーあるいは卸の間の実際の取引価格が市場価格でございますので、無数の市場価格が成り立つわけであります。その市場価格というものを調べて、八〇%なり九〇%のバルクラインを引いて薬価基準の価格を決める、こういうことなんでありまして、市場価格というものを参考にしながら私どもが決めるということでございますので、市場価格そのものは私どもが決められる代物ではない。そして、どういう形で市場価格が決まるかというと、それは医療機関とメーカーとの間のいろいろな取引条件によって決まってくる。したがって、一つのセファメジンという商品をとりましても、A医療機関とB医療機関あるいはC医療機関とは取引価格が違うわけでございまして、その取引価格、すなわち市場価格というものは私が決めるわけではございませんで、その市場価格を見ながら薬価基準を算定していくというのが私どもの仕事なんでございます。
  99. 網岡雄

    ○網岡委員 次のこともありますから質問を進めていきたいと思いますけれども、今の点でございますが、私は局長答弁、納得できません。市場価格を決めていくということは、これは私は実態論から言っているのでございます。決めていくのは薬価をお決めになるということでございますけれども、しかし先ほど言いましたように、薬に関する価格の仕組みというものは、薬価を決めていくことによって市場価格が移動してくるのでしょう。それについて回っていくのですよ。だから薬価を高い位置に決めれば、市場価格はそれに比例していくわけですから、高い市場価格になっていくということになるのじゃないですか。だから、本当に薬の市場価格というものを下げていこうという努力をなさるならば、薬価を実勢価格に思い切って合わしていく、こういうことをやらなければいけないじゃないですかということを私は申し上げているわけであります。  次の質問に移りますけれども、新薬の問題は今言ったような問題点がございますから、局長もさっき言われたような三つの物差しで軌道修正を図っていくということを言われたわけでございますから、私はその発言を信頼をいたしまして、薬価の改定についてはぜひひとつそういう点を判断しながらやってもらいたいということを強く要望いたしまして、次の質問に移りたいと思います。  あと、時間がだんだんたっておりますのであれですが、もう一つの表にゾロ品目の一覧表が書いてございます。これはゾロの会社が大体四十社以上のところに焦点を当てまして表をつくったものでございますけれども、これを見ますと、先ほど局長から御答弁いただいたように薬が一万四千品目もある、こういうことからいってゾロ品目というものも大変よく出ているということがはっきりわかるわけでございますが、問題は、少し薬の中身の点について申し上げますと、一番上にユビデカレノンという薬がございますが、これは一体日本以外に使用されている国はあるでございましょうか。それからもう一つは、リン酸ピリドキサールという薬は外国で使用されているでございましょうか。
  100. 正木馨

    ○正木政府委員 お尋ねのユビデカレノン錠でございますが、これは強心剤としまして昭和四十八年に承認されたものてございますが、台湾、韓国、ドミニカで承認されておるというふうに承知をいたしております。  それから、もう一つのリン酸ピリドキサールでございますが、これはビタミンB6剤として承認されたものでございますが、私ども承知しておる限りでは、外国における承認例はないと聞いております。ただ、このリン酸ピリドキサール剤と同じビタミンB6剤であるピリドキシンというのがアメリカ、イギリスにおいても承認されておるというふうに承知をいたしております。
  101. 網岡雄

    ○網岡委員 今お聞きをいたしますと、アジア諸国を中心にした国で使われているわけでございますが、新薬収載の際の基準になるようなアメリカやイギリスというところで使われていないということが今の御答弁でわかったと思うのでございますが、問題は、このリン酸ピリドキサールなどは、再評価をなさったときの評価を見ておりますと、用量と薬効との間にきちっとした関係がない、だからこれはむやみやたらに使用してはいかぬ、こういうことが出ているようでございます。それから、この中にもありますグルタチオンもやはり主なところは日本しか売られていないわけでございますが、これなどは大分長く再評価をされておられるようでございますが、いまだにこの薬に対する結果というものは出ていないわけでございます。これはどうしてこんなに長くかかっているのか、まずその理由を述べていただきたいと思います。
  102. 正木馨

    ○正木政府委員 まずグルタチオンでございますが、先生おっしゃいますように再評価にかかっておるわけでございます。先生御案内のように昭和四十二年に承認審査の基本方針が定められたわけでございまして、それ以前の薬につきましてまず再評価をしようということで、審議会の意見を聞きまして指定をいたしまして、再評価の作業にかかっておるわけでございます。それも着々再評価が進行しておりまして、現在八六、七%までいっておると思いますが、グルタチオンにつきましては確かに相当長期に、かかっております。  と申しますのは、いろいろな理由があるわけでございますが、このグルタチオンは肝疾患に適用を持つ解毒剤でございます。したがって、肝疾患ということで薬効分ごとに薬事審議会調査会が分かれておりまして、実は九つの調査会でいろいろな角度から調査をしているというのが一つございます。それから、これも先生御案内のように、肝疾患の薬というものにつきましては薬効の評価というのはなかなか難しい面があるということで、調査会での審議の過程におきまして、これはもう一つダブルブラインドテストを実施すべきじゃないかということでかなり時間がかかっておりますが、審議の方も大分進捗をしておりまして、私どもの見通しとしましてはことしじゅうには結果の公表が得られるのではないかというふうに承知をしております。
  103. 網岡雄

    ○網岡委員 ことしじゅうということはかなりスローモーでございますが、早くやっていただきたいというふうに思います。結果を見なければ言えないことでございますけれども、今私が挙げました薬というのは、いずれも薬効評価というのは一般の薬から見ますとかなり削られたり認められなかったようなものが多い薬ばかりでございます。だからアメリカやイギリスというようなところでは使用されていないということの大きな原因だと思うのでございますが、これが不思議に日本では非常によく売られている。日本というところは薬王国なんでございましょうか、非常に不可思議な感じがいたします。  これは先ほど局長が一万四千品目からあるから、これだけあると薬価の評価も大変だ、時間がかかってしょうがないということをおっしゃっているわけでございますが、こんなにゾロをたくさんつくっていって、そして薬価に対する市場調査をやるにしてもこれは非常な労力と時間を必要とするわけでございますけれども、一体どうでしょう。ここらあたりで、ふえる薬に対しては、いい薬は残し、評価して、外国にも通用しないような薬はこの際もう落とすという、思い切った行政改革をやらないと大変なことになるよという気がいたすわけでございますが、局長、この点どうでしょう。
  104. 正木馨

    ○正木政府委員 薬につきましては承認審査、最初の製造承認の段階におきまして、薬事審議会で有効性、安全性というものをチェックいたしまして認めるわけでございます。その後におきまして、状況を見まして再審査という制度もありますし、また再評価という制度もございます。その時点におきます医学的、薬学的最高水準によりましてもう一度チェックをして、これが有用性が低いということになりますれば変えていくということでございます。先ほど来お話しのございました個別具体的な薬につきまして一つだけ申させていただきますと、例えて申しますと塩化リゾチームというような薬は消炎酵素剤の一種でございます。これも先生お詳しいわけでございますが、消炎酵素剤というような薬はその作用機序と個体に対する効果との関係というのがいろいろあるということで、これは非常に効く人もいるけれども効かない場合もある。再評価の際には、もちろん効く場合もあるけれども、ただ漫然と使っておって、効かないのにいつまでもということがあってはいかぬぞということで、再評価の結果その辺を注意するというようなことで、その時点時点におきます一番いい薬を、そして、むだのない効率的な使われ方をするようにというのが現在の仕組みで、そういう面で私ども審議会の意見を聞きながら努めておるというわけでございます。
  105. 網岡雄

    ○網岡委員 今御説明があったような薬は、もう一度どこかの時点で判断をされて、そして薬価収載の中にこれは入れるか入れないかということについても、先ほど申しましたような整理をして、一万四千からの薬があるわけですから、どこかに当てはまるはずです、よく効く薬があるわけですから。それで整理をしていくということをやらないとこれは大変なことになるという気がいたします。くどいようですからこの問題はこれで質問を終わっておきますが、一つだけ申し上げます。  この間、ゾロ品目に対する収載が行われましたね。ついこの間、まだ十五日くらいしかたっておりません。具体的な品目を言いますとちょっと差しさわりが出ますから私は言いませんけれども、もう既に、この間、発表になった薬価から、今契約を結ばれつつある金額は大体下は二〇%から四〇%ぐらいのラインで動いていますよ。薬価が決まってまだ十五日もたっておらぬのに、実勢価格はそういうふうな形で動いているという実態をどう踏まえておられますか。だから局長、これはそういう実態を一遍よく調査をしていただきたい。そして、薬価の改定は、こういうことを踏まえると、一体次にいつやるか、年一回ということですからね。そして、その薬価の幅についても、もうこの際一〇%台ということじゃなしに、物によってはずばり切っていくというぐらいのことをやらないといけないと思うわけでございますが、その点についてはどうでしょうか。
  106. 吉村仁

    ○吉村政府委員 御指摘のように、六月二日にゾロ品目、約千二百品日程度を載っけたわけでありますが、まだ一月もたたないうちに、今先生指摘のような二〇%ないし四〇%の値引きが出る、こういうような状態であることもまだ載っけたばかりでございますので、その点については私ども薬価調査もやっておりません。しかし、今先生指摘のようなことは、従来の例からいいましても十分想像のできるところでございまして、これは薬価調査とは離れて、何か薬価基準に載っけて、その後、非常にひどい事例だと私は思いますが、そういう事例があった場合には、薬価基準の収載を削除するとか、何かそういうような特別の措置を講じない限りそういう事態はなかなか改まらない。  先ほど申されましたが、一つの薬を八十二社もみんなが競合してつくっておる、そういう事態そのものがやはりおかしいのではないか。そういう事態にメスを入れ、また薬価基準の一万四千品目についても、やはりそれぞれ評価をしていく面があると思っております。いずれにいたしましても、価格の問題については私ども今後厳正に、的確に対処するようにいたしたいと思います。
  107. 網岡雄

    ○網岡委員 ぜひやってください。次に、今度は医療問題の中でもう一つのあれがあるのでございますが、一つは、薬に重点が置かれているために診療報酬が実態に合わない安い評価になっている。私は、これも日本医療体制の大きな問題の一つだと思うのでございます。  具体的なことを申し上げますが、例えば入院料は三千百円です。これは非常に安いですね。例えば国民宿舎の宿泊料、四千八百円です。これと比較をいたしますと、三食で看護婦さんがついて、そして三千百円というのはちょっと安過ぎはしないかということを感じます。  それから二つ目は往診料、これは昼間二千円、夜間四千円、JAFのロードサービスは昼間三千円で夜四千円、こういうことでございますから、これから比較をいたしましてもこれは問題にならぬ、非常に安い診療報酬じゃないかと思います。  それから次に、全身マッサージですが、これは三百円ということになっております。普通のマッサージでいきますとこれは安いと思うのですが、普通は二千五百円から三千五百円ということでございますから、全身マッサージで三百円というのは、医療とはいえいかにも安いのではないかと思います。どうでしょうか。  それから、初診料が千三百五十円、今は映画を見れば二千円です。ということですからこれまた安いのじゃないか。  それから、胃の洗浄は三十分間かかるそうでございますが、それで千百円、こういうことでございます。車の洗車はわずか三分で二千五百円、こういうことでございますから、その実態からいって、これは局長、大変安過ぎはしないかという気がするわけでございます。  それから、今日の医療がいかに薬に重点を置いているかということの端的なあらわれですけれども、例えば傷をして、傷を手当てをしたと仮定をいたしますと、お医者さんの話を聞きますと、傷口の手当てをして包帯を巻くと処置料百二十円、診察料三百八十円、締めて五百円。そして二つ目のケースは、手当てをして塗り薬を渡すと、これは処置料百二十円、診察料三百八十円、そして若干の調剤料が加わって五百七十円。それから傷口を見るだけですと、不思議な話ですが六百五十円もらえる。これは内科加算ということで、加算がついてそういうことになるようでございます。それから、薬を渡すと今度は内科加算された上に調剤料が加わって七百二十円ということになって、薬が伴った方がやはり高い、こういうことになりまして、実際の診療報酬というものが、先ほど例を挙げたように非常に安いということは問題ではないかというふうに思います。  六月十五日に、厚生省が、技術診療についてこれは見直す、予防とか指導料について技術料を加味する、こういうことを考えられているようでございますが、歯科医の方のことも言わないとちょっと片手落ちになるといけませんので言っておきますが、金銀パラジウム合金の場合は、これはやはり物に傾いているということでございますが、大臣の御専門ですけれども、技術料がだんだんだんだん五面に包んでいくほど安くなるということなどから見まして、大きな問題があるのではないかと私は思うのでございますが、この点についてどういう処置を今後されようとしているのかという点について、御答弁をいただきましょう。
  108. 吉村仁

    ○吉村政府委員 確かに先生指摘になりましたような点、個々の技術料をとりますと非常に安い、こういうことに相なって、これが現在の診療報酬についての一つの批判される点でございます。  しかし、私どもが非常に悩みますところは、全体としての医療費というものが非常に高い。確かに医師の収入から考えましても、また所得から申しましても、これはかなり高い水準にございます。国際的に言っても高い水準にある。しかし、今申されましたように、個々の初診料あるいは往診料あるいは歯科の技術の点数、それから入院料等比べますと、確かに日本の場合が低い。そこで、その間にどういうつながりがあるかと聞きますと、個々の点数と全体の医師の収入、あるいは医療機関の収入の高さ、個々の診療行為の評価の低さとの間にどういうつながりがあるのかということを考えますと、それはやはり非常に量をたくさんこなすということが一つと、先ほどから御指摘になっております薬づけ医療みたいなところで、技術料の不足というものをカバーをしておる、この二つではないか、私どもはそう思うわけでございまして、少なくとも今後、現在の点数表を直していく場合には、薬を使えば総体の収入が上がる、そして余り親切な診療をしなくても、患者の数さえこなせば収入が上がる、こういうようなことは少なくとも是正をしていくべきだ、こういうことで、そういう観点から技術料の重視を志向した診療報酬の改正というものを考えていきたい、私どもはそう思っておりますし、現在の中医協におきましてもそういうことを頭に描きながら審議が行われておる状況でございます。私どもそういう方向でひとつ努力をしてみたい、こう思っております。
  109. 網岡雄

    ○網岡委員 時間があともう一時間ぐらいしかないところへ来ましたものですから、私は質問を要点だけ申し上げていくようにいたしますので、核心に触れた御答弁をいただきたいと思います。  次に、健保法改正問題のもう一つの大きな柱であります退職者医療制度の問題につきまして、御質問を申し上げたいというふうに思うわけでございます。  退職者医療制度というのは、これは御案内のように被用者保険のところから拠出をしていただいて、そして退職者医療制度というものをつくっていくわけでございますから、いわば人の懐を当てにしていくわけでございますね。だとするならば、やはり関係のそれぞれの保険者団体に、十分な相談と審議の時間を与えた中でやっていかなければいけなかったんじゃないだろうかということを私は思うわけでございます。経過を聞きますと、五十七年の十月二十五日に白紙諮問をされたということを聞いておるわけでございますが、これは白紙の諮問をされれば、お互いに懐の関係がありますから、やはり厚生省が国の責任でこういうふうにするんだ、こういうものを出さなければ審議が煮詰まっていかないことは大臣もよくおわかりいただけると思うのでございますが、それをあえて白紙で諮問をした、しかも審議会では何らこの問題については審議がされなかったという経緯があるわけでございますが、こういうことからいきますと、冒頭の質問と関連をいたしますけれども、やはり健康保険法の改正をする前に十分な時間をとって、金を出してもらうそれぞれの保険者に対して納得のいくような時間をとってやっていくべきではなかったかと思うのでございますけれども、どうなのでしょうか。簡単にひとつ。
  110. 吉村仁

    ○吉村政府委員 私ども五十七年に白紙諮問をいたしまして、審議会から事務当局の試案ができればそれを提出をしろ、こういうことを言われておりました。したがって、私どもとしては、白紙諮問をして以来いろいろ検討をして、その検討の結果まとまったものを社会保険審議会にかけた。ただ、かける時期が少し遅いではないか、こういうおしかりはこうむるかもわかりませんが、私どもとしてはそういうことで事務当局試案をまとめて審議会に御諮問を申し上げた、こういうように考えております。
  111. 網岡雄

    ○網岡委員 次に移りますけれども、これをやっておると、原則の線の話ですから、恐らく同じことで一日じゅうやっていくことになるだけですから、確認のことなどもございますので、次の質問に移ります。  被保険者に一割の負担をさせることによって、そしてその金で退職者医療保険制度というものを運営していくことになるわけでございますが、大臣でございましたか保険局長でございましたか、丹羽議員の質問に答えて、今後保険負担率が、拠出の率が老齢人口の伸びに比例してだんだんふえていくわけでございますが、議員の質問に答えて、保険料は上げないということを御答弁になっているわけでございますが、私、この際確認をさせていただきたいわけでございますけれども、この料率が、事実上人口がふえていくことによって上がっていくように厚生省の資料は出ておるわけでございますが、そういうことになればどうしても拠出の割合というものはふえざるを得ないというふうに判断をするわけであります。そういうことになるのかならないのか、その辺をお答えいただきたい。
  112. 吉村仁

    ○吉村政府委員 保険料を上げないと申し上げましたのは、今年度退職者医療制度を創設するに当たりまして、一割の患者負担というものをやりますならば、保険料率を上げないで退職者医療制度ができる。退職者医療制度をつくるために保険料率を上げる必要はない、こういうことを申し上げたのでございます。  それから、それじゃ今後保険料率はどうなるのか、こういうことでございますが、これは退職者がふえていけば保険料が上がっていくことは間違いない、こう思います。ただ、丹羽議員に、お答え申し上げましたのは、仮に上がるにいたしましても三十年後がピークになる。そのピーク時における保険料の負担率は千分の九・八になるだろう。そして、現在もし一割負担しないで退職者医療制度をつくるとすれば千分の五・七の料率が必要なわけでありますが、一割負担をしていただくことによって五・七の引き上げは必要でない、こういうことでございますし、三十年後にピーク時になりましても、現在の五・七の所要保険料率が千分の九・八になるだけで、三十年間で千分の四ぐらいの引き上げならば負担能力云々、負担ができないとかそういうような問題にはならないのではないか、こう申し上げたわけでございます。
  113. 網岡雄

    ○網岡委員 局長の御答弁でいけば、千分の四程度の上げ幅であるからそんなに大きい負担ではない、こういう御答弁ではございますが、しかし、私どもこの内容をずっと見させていただきますと、必ずしも局長が言われたようなそろばんにいくとはなかなか信用ができないわけでございます。いろいろなファクターがあるわけでございますが、もし仮に、例えば退職者医療に対して拠出をしていく場合に、例えば組合健保なら組合健保を一つ例にとりましても、組合健保の場合は全体的に言えばいいわけであります。しかし、中には財政がアップアップでやっているところもあるわけでございます。そういうところが拠出の率がだんだん高くなっていくということになれば、その保険団体は赤字ということにもなる場合もあるわけでございますけれども、そういうような問題が起きた場合、あるいは健康保険の場合でも政管健保へ五人未満以下の事業所の方々が今度入っていくことになるわけでございますが、そういうことになれば、国民健康保険の保険料を納める人の中で、この人たちは働いておるわけでございますから、納める保険料が確率としては高い方の人たちでございますけれども、これが政管健保に吸収されていくということになりますと、国民健保の面でもやはり赤字要因というものが生まれてくる可能性というものが高いと思うのでございます。  そういうようなことを考えていきますと、この退職者医療制度というものは私はやはり相当問題があると思うが、ちょっとその前に御質問しておきたいのですが、この退職者医療制度というものは社会保険なんでございましょうか、社会保険の性格を持っているものでございましょうか、その点をまずお答えいただきたいと思います。
  114. 吉村仁

    ○吉村政府委員 私どもは、被用者保険の性格を持った制度だと思っております。
  115. 網岡雄

    ○網岡委員 被用者保険の制度ということは、裏を返せばこれは国が責任を持たなければならない、場合によれば、政管なんかは国庫補助金を出しておるわけでございますから、したがって財政の状況によっては国がやはり責任を持って補助を加えていくというようなことも、政管健保の例なども見れば出てくると思うのでございます。  そうしますと、高齢化へ進んでいく状況の中で、一つの高齢化対策の一環としてやられるこの退職者医療制度というものは、青天井で被用者保険が拠出をしていく、こういう全く私的保険の論理で、要るだけ全部それぞれの保険団体に負担をさせていくということではなしに、一定の国の責任で国庫負担をする、こういう姿勢を示すことが私は社会保険の性格からいって国のとるべき基本的な態度じゃないだろうか。社会保障制度の一環としてとらえられているそのものは、社会保障の原則からいっても国がそこに責任を持つという姿勢が必要だと思うのでございますが、この辺について厚生省、どうお考えになっているでしょうか。
  116. 吉村仁

    ○吉村政府委員 社会保険だから国庫負担を必要とする、こういうように私ども考えておりません。社会保険であっても、財政力の強弱によって物事を考えるべきでありまして、例えば現在でも健康保険組合に対しては国庫補助金を入れておりません。それから財政力の強弱によって国庫負担の入れ方も違っておるわけでございますが、今回つくります退職者医療制度は、被用者保険のサイドで、被用者保険の現役、それから事業主がOBのためにひとつ負担をしてつくろう、こういう制度でございまして、現在の被用者保険の財政力というものを全体的に考えますならば、この退職者医療制度に国庫負担を入れなければならないという理由は見当たらないし、また、国庫負担を入れなくても十分やっていける制度であるというように私ども考えております。
  117. 網岡雄

    ○網岡委員 仮定でございますが、もし被用者保険の中で赤字要因を生むような事態が将来出てくる、こういうことになった場合には、厚生省としては、その社会保険の論理からいって国庫負担の考えを持つお考えがあるかどうか、その点をお尋ねします。
  118. 吉村仁

    ○吉村政府委員 将来のことでございますので今確答はできかねますが、私ども考えでは、先ほど申し上げましたように、被用者保険総体としての負担力というものがそれほど弱体化するという予測は持ち得ませんので、そういうことはないというように思っております。しかし、そのときにおいてやはり判断をしなければならない問題ではないか、こういうように思います。
  119. 網岡雄

    ○網岡委員 結論的なことを申し上げて次に移りたいと思うのでございますが、私は、老人保健法にとられたような退職医療制度という一つの社会保険の制度を新しく創設をする、こういう姿勢でいきますならば、やはりそこに国の一定の責任を持った姿勢というものが示されるべきでございまして、それは国庫がそこに一定の率の補助をされるということで、そこに社会保険としての国の責任を持っている姿勢が明確に財政的にも示されることになるわけでございますから、そういう方法でぜひひとつ今後考えてもらいたいということを我々は考えておりますし、こういう方向で健康保険というものが対応されるように、私どもは慎重な審議をこれからも続けるようにしていきたいというふうに思っておるところでございますが、そのことを申し上げて、次の質問に移ってまいりたいというふうに思います。  時間も大分たっておりますので、次に、私が三月一日に質問をいたしましたところ厚生省から正式に文書が出されました問題について、一点だけ御質問をさせていただきまして、厚生省の明確な御答弁をいただきたいと思うのでございます。  質問内容は、薬剤師法第十九条の薬剤師の調剤権にかかわる規定中、「医師若しくは歯科医師が次に掲げる場合において自己の処方せんにより自ら調剤するとき、」云々とあるが、この「自ら」はあくまで医師、歯科医師自身であって、監督権は含まれないと考えるが、どのように解釈したらよいのか。こういう質問に対して厚生省から答弁がありましたことは、十九条ただし書きの「調剤」は、原則として医師自身がやることであるけれども、調剤の中身には種々の過程が含まれており、医師等が個別具体的な指示を与え、調剤行為の本質的でない部分を代行させるような場合には、同条の規定の趣旨に反しないものと考える、こういう御答弁があったわけでございますが、これに関連しまして、若干時間をいただいて質問いたします。  まず最初にお尋ねをいたしたい点は、昭和四十七年の参議院予算委員会において、斎藤昇厚生大臣がこの同じ質問に対して、医師みずからが調剤するということであって、医師には監督権がないと明確に答えているわけでございますが、その答弁の精神は今日も変わっていないのでございましょうか。
  120. 正木馨

    ○正木政府委員 先生からの質問主意書、医薬分業推進に関する質問に対する答弁書の内容は、先生の先ほど申されたとおりの政府答弁をいたしております。  それから、四十七年の四月十日に参議院の予算委員会で、斎藤昇大臣が同じ問題に御答弁をされまして、「医師みずからということは、やはりみずからであって、監督権はございません。」と答弁をされております。  先生質問主意書に対する答弁と斎藤昇大臣の御答弁と変わりはないのかという御質問だと思いますが、結論的に申しますと、端的に申し上げまして変わりはないわけでございます。
  121. 網岡雄

    ○網岡委員 では、まずその点だけ確認をしておきます。  次に、この回答によりますと、「医師等が個別具体的な指示を与え、調剤行為の本質的でない部分を代行させるような場合には、同条の規定の趣旨に反しない」、この項のくだりのところでございますが、問題は、調剤の本質行為というものと調剤の非本質行為というものは一体何と何かということを具体的に明らかにしてください。
  122. 正木馨

    ○正木政府委員 この薬剤師法の十九条、それから医師法の二十二条、これが裏腹の規定で医薬分業の基本原則を定めておるわけでございますが、こういう規定を設けられた趣旨は、やはり医師は診断、治療の専門家である、薬剤師は調剤の専門家であるということが基本にあるわけでございます。  ところで、医師みずからが調剤する、こう書いてございますのは、調剤という専門性というものに着目をしておる規定でございます。その調剤につきましては、先生御案内のように、処方せんを受け付け、監査をしてから、患者に交付して、服薬指導をする、非常に幅広いその中で、薬剤師の専門性というものが強調される本質的部分は何かということでございますが、処方せんの監査、それから疑問点を照会する、それからそれに対する回答の処置をする、それから薬剤を確認する、秤量をする、混合する、分割をする、あるいは薬袋、薬札のチェックをする、それから薬剤の監査をする、服薬指導をする、こういう行為は調剤の本質的な部分だと思います。それに、調剤というと広いですから、それ以外に、薬袋に名前を書くとか補助的な業務というものも、非本質的な部分としてあろうかというふうに思うわけでございます。
  123. 網岡雄

    ○網岡委員 薬袋の記入というものは調剤の非本質的行為だと一つだけ挙げられておりますが、まだほかにありませんか。薬袋に書くことだけですか。
  124. 正木馨

    ○正木政府委員 非本質的部分、例えで申しますが、今申しました薬袋、薬札の記入をするとか、それから、最近は自動分包機等で行われるというのが多いわけでございますが、それについて薬剤師あるいは医師の指示のもとに機械操作をする、あるいは予製剤にかかる機械操作をするといったようなものが、例示として挙げれば非本質的部分に当たるのではなかろうかというふうに思います。
  125. 網岡雄

    ○網岡委員 そこで、むしろこれは、まず非本質的な部分質問した方がはっきりすると思いますからさしていただきますけれども、これは医師だけじゃなしに、調剤と言う以上は薬剤師も同じなのでございます。そういう点で、むしろ薬剤師が調剤をしていく場合にどうなるかということが話の一番もとになるところでございますから、そういうことでこれから議論をしていただきたいと思うのでございます。  まず、薬袋の記入ということは非本質的行為であるという御見解でございますが、これは私は、厚生省のただいまの見解は明確に間違いだ。薬袋の書記は服薬指導の一部でございますよ。服薬指導ですよ。一番最後に、食前、食後、しかもこの薬はこうこうかくかくということを口頭で言う、あるいは文書で示すということは何人も侵すことのできない調剤行為でございまして、重要な部分である服薬指導の一部なんです。これを非本質的部分だというふうに厚生省考えられておるとするならば、これは重大な間違いですよ。
  126. 正木馨

    ○正木政府委員 先生おっしゃいますように、調剤につきましては原則として薬剤師がやるわけでございますが、薬剤師が調剤する場合も、薬剤師自身が絶対やらなければならない本質的部分と補助者にやらせるもの、それから医師がみずから調剤をするとき、医師自身がやらなければならぬ場合と補助者にやらせる場合、それは全く同一でございます。私ども考え方としましては、医師であれ薬剤師であれ、先生の言われました服薬指導といったようなもの、その本質的部分は薬剤師なり医師がきちっとやっていただかなければいかぬ、それを包括的に薬袋の記入などをさせるということはあってはならないというふうに思います。本質的な服薬指導を行い、そして薬袋についてはこうこうこういった点を書きなさいよという個別具体的な指示に基づきまして実際にそれを記入するということは、薬剤師さんあるいはお医者さん自身がみずからペンを取ってやらなければならないというところまで言うべきものかどうか、それは私どもは本質的部分には入らないと解しておるわけでございます。
  127. 網岡雄

    ○網岡委員 この後ろにも、病院のところで実務をとられている方がお見えになるようでございます。私は一つの統計を持っておりますが、調剤ミスというものの一番多い部分は実は薬袋の誤記ですよ。単純なことでございますが、これが一番間違っているのです。これは調剤学の権威者である一流の調剤の名を持っておみえになる大学の教授ならみんな言っていることです。これが一番間違うのですよ。間違ったらこれは大変なことになるのです。したがって、服薬指導の重要な部分なんでございます。これがいわゆる非本質的な部分だという見解は厚生省として直してもらわなければいけないですよ。  それから、医師には看護婦という補助行為を行う人がちゃんと法律に定められてあります。しかし、薬剤師の場合にはそういう補助行為をさせるような人は法律では全然定められておらないのです。でありますから、薬剤師の規定というものは初めから補助というものを想定してないのでございます。したがって、処方せん監査から服薬指導に至るまで全部これは薬剤師がやらなければいかぬということが、薬剤師法十九条の規定なんでございます。  私は、これでもう一カ月ぐらいたっておりますが、専門家のところを十軒、十人ぐらい回りました。これは調剤の有名な方々です。その人たちの言によりますと、調剤行為というものは、薬ですから異物を人に与えるものである、したがってこれは念には念を入れたチェックが必要だ、したがって一つの行為、一つの動作をするときには必ず一つ前の動作をチェックしていかなければいかぬ、それぐらいの二重、三重のチェックをしていって、初めてその調剤というものがだれにも安心して飲んでもらえる薬になるのだ。ところが、例えば分包機のボタンを押すということで、この作業は単純なんですよ。単純ではございますが、そのボタンを押すことによって、真ん中に無資格の人が入ったことによって、このボタンを押す前の行為とボタンを押してから後の行為をチェックしていくところに空間があいてしまうわけですよ。そうすると、一つの間違いがそこに出てくる危険性というものが出てくる。これはオートメ化になればなるほどその危険性というものが生まれてくるのです。これからは調剤室でボタンを押したらベッドの上から薬がおりてくるというぐらいになってくるのです。したがって、ボタンを一つ押し損ないをやれば結局これは命にかかわるような事態にもなりかねないという時代に入っておりますときに、私は非本質的部分というものはそう簡単に言えるものではないというふうに思うわけです。その点どうですか。
  128. 正木馨

    ○正木政府委員 私の言葉足らずの点もあったわけでございますが、先生今御指摘のように、これは薬剤師という専門家に期待されておる調剤というものについて薬剤師でない者が関与するということで、もし間違いがあったらどうなんだということで、そういう間違いがあるようなところを、いかに個別的な指示があろうとも薬剤師でない者あるいは医師でない者が関与するということは、これは認められないと思います。  そこで、私が言葉足らずと申しましたのは、薬袋の記載ということを例示として挙げたわけでございますが、薬袋に記載すること自体、これは薬剤師さん本人あるいはお医者さん本人がやらなくてもいいだろう。ただ、先生がおっしゃいますように、本当に間違いなく書かれてあるかどうかというこのチェックというものは、やはり薬剤師さんなりお医者さんがやってもらわなければならない、それがやはり調剤の本質にかかわるものだと思います。いわば個別具体的な指示に基づいてチェックとかそういう専門性を生かすというものがありつつ、そして単純な補助的な業務をやるというところまで御自身でやらなければならぬと法は要請しているだろうか、そうは私どもとしては考えていないということでございます。
  129. 網岡雄

    ○網岡委員 業務局長、あなたが一遍やってみたらいいんですよ。こうやってボタンを押しなさいよと言ってあなたが指示するより、自分が押した方が早いですよ。それから、薬袋に字を書くのに、こういうふうに書きなさいと言って指示をするより、あなたが書いた方が早いんじゃないですか。押すことによってチェックがそこで真空状態になったとしたら、後に起きる問題は重大なんですよ。そのことを考えてくださいよ。これは全部そういう連続行為が行われなければ事前チェックというものが打てない。これはもう日本の調剤にかかわる権威者が全部異口同音に言っていることですよ。この辺は厚生省考えてもらいたいというふうに思います。  もう一つ問題を出しますが、本質行為の部分に入るのですが、今、高カロリー治療ということで輸液、それから混合注射が物すごくこれからも病院で使われていくことになるわけであります。そういう今の時代です。そういう中で、混合注射に対する配合はこれはまさに調剤の本質部分ですよ。それが現状どうなっていますか。これは薬剤師がやらなければいかぬことなんですよ。
  130. 正木馨

    ○正木政府委員 先生の先ほどおっしゃいました、ボタンは補助者にやらせるよりも御自分でやられる方が早いということですから、そういう薬剤師なり医師が私どもが申します非本質的部分を含めて全部一貫してやっていただく、もちろんそれにこしたことはないと思うわけでございます。ただ、そういう本質的でないものを、個別具体的な指示のもとに補助的な業務をやらせるということまで法は否定していないんじゃないかということを申しておるわけでございます。そういうことで、この規定の趣旨というものは、調剤の重要性というものにかんがみてやはり専門家がやらなければならぬ、そういう本質を没却するようなことがあってはならぬということは、私ども重々考えておるわけでございます。  それから、いわゆる混注の問題でございますが、これは入院患者等に投与する目的を持ちまして、院内薬局から病棟の医師等に交付される、そして病棟で二種の液体を混合しまして患者に投与する、これが調剤に当たるのではないかという先生のお尋ねだと思います。これは法律的な解釈といたしましては、その薬剤は調剤済みの薬剤でございますから、注射剤でありましても他の薬剤と同様にこれはもう既に調剤行為は終わっておる、したがって調剤済みの二つ以上の薬剤を混合して用いるかどうかということは、用法の問題でありますから調剤行為には当たらないというふうに解釈できると思います。  ただ、そういった薬であるわけでございますから、これは聞けばアメリカでは、クリニカルファーマシーということで、病棟におきましてお医者さんとか看護婦さんとか薬剤師というものがチームをつくっていろいろやるということで、将来の問題として、そういった面についても薬剤師さんの知識、技能というものを生かしていくということが望ましい方向であるということはそう思うわけでございますが、ぎりぎりこれが調剤行為に当たるのかどうかということになりますれば、調剤行為には当たらないのではないかというふうに思います。
  131. 網岡雄

    ○網岡委員 今の御答弁、これは議事録に書いてありますけれども、大変なことですよ。  読み上げますと「調剤とは、一定の処方に従って二種以上の薬品を配合し、または一種の薬品を使用し、特定人の特定の疾病に対する薬剤を調剤する行為を言う」、こういうことなんです。特定のしかも二種以上の薬をやるといういずれの要件も、これはあなたが言った状況はこの状況に来ているわけです。ぴったり合っているわけですよ。そうだとするならばこれは明らかに調剤の本質部分ですよ。どうですか。
  132. 正木馨

    ○正木政府委員 繰り返すようでございますが、この混注というのは、既に処方せんによりまして調剤済みの二以上の薬が患者に提供される、投与される、その投与するときに、用法の問題として混合するということで、これは一般の錠剤につきまして、先生の方がお詳しいのであれでございますが、Aの薬とBの錠剤、これを実際に投与する場合に、両方一緒に出されるというのと法律的な意味合いにおいては違いがないんじゃないかというふうに私ども考えるわけでございます。
  133. 網岡雄

    ○網岡委員 時間がたってきますからあれですが、これで最後にしますけれども、二種以上の液剤を調剤をするのは、混合するのは、どこでやっているかというと看護婦の詰所ですよ。そして、だれがやっているかといったら看護婦ですよ。混合する行為はこれは明らかに調剤ですよ、混合するのですから。注射を打つ行為はこれは看護婦の仕事であるかもしれない。しかし、その前に混合する行為は看護婦がやっているわけですよ。これは明らかに調剤行為であることは間違いない。どこの病院に行っても例外なしにそうやっているのです。日本国じゅうそうやっているわけです。これは断じて調剤の本質行為であることは間違いございませんよ。  それから局長、混合注射で事故が六例あるのです。そのうち二例、側管輸液によって死亡事故らしきことが起きているということを御存じですか。
  134. 新田進治

    ○新田政府委員 お答えします。  今、先生御案内の注射による事故でございます。側管注射による事故というのは、今定かに記録を持っておりませんが、当然そういう事故は起こり得る、こういうふうに考えております。
  135. 網岡雄

    ○網岡委員 起こり得るという仮定じゃなくて、もう既に起こっているのですよ。ナウゼリンという注射薬がありますが、ナウゼリンで側管によってやったときに沈殿するわけです。配合変化が起きるわけです。その沈殿物がすぐ血液の中に入って、血液が詰まって亡くなった方が二例あるわけです。だから、ここに私は持っておりますが、ナウゼリンの薬の注射に対しては注意をして、今後側管はしないようにということで注意事項が書いてありますが、こういう事故がこれからも頻繁に起きるわけですよ。それをチェックが打てるというのは、やはり薬剤師でなければできないわけなんですよ。薬剤師でもこれは一〇〇%やれるかやれぬかわからぬですが、しかし今の状況よりもよくなることは間違いない。しかも本質の調剤行為であるということから見ますならば、混合注射の扱いというものは、これは厚生省が今後その運営については十分にしかも厳格に処理をしてもらいたい、対策を講じてもらいたいということを要望しますけれども、御答弁いただきたいと思います。
  136. 正木馨

    ○正木政府委員 先生おっしゃいますように、そういうことによって事故があってはこれは大変なことでございます。先生の御指摘以外にも、例えば混合時の細菌汚染を避けるといったようなこと、これは医療従事者にとって当然の責務でございます。そういった事故をなくすというためには、その投与の仕方についての医師の指示も大事だと思います。  将来の課題としては、医療の現場において、それぞれの専門性を生かしたような適切な運営がされるような形態を目指していかなければならないというふうに思っております。
  137. 網岡雄

    ○網岡委員 業務局長から御答弁がありましたように、臨床調剤ということを各病院における一つの方向として、国が国立病院の段階で前向きに検討をされていくように、今の状況でいきますと、薬剤師は配置が非常に少ないのです。だから、まず国立病院において臨床調剤の薬剤師が配置できるような体制を、早急に大臣の手でルートを敷いていただくようにやっていただきたいと思うのですが、大臣の所信を承りたいのです。
  138. 渡部恒三

    渡部国務大臣 専門家の立場で、網岡先生から大変貴重な御意見をちょうだいいたしまして、私もこれは非常に大事なことだという認識を今持っております。まさしく薬は人の命を左右する問題でありますから、これは専門家の薬剤師の方ができるだけやっていただくようにするのが望ましいのは当然でございまして、そういう方向に向かって指導をしてまいりたいと思います。
  139. 網岡雄

    ○網岡委員 それでは次に、最近問題になっています群馬県上毛病院での医療事故に関する点について、質問をしてまいりたいというふうに思います。  上毛病院は、一部新聞によりますと、臨床検査技師である事務長が、上毛病院の院長であります中沢院長の指示により、長年にわたってレントゲン撮影をやっていた。これについては、群馬県衛生部の立入調査の際にも、事務長及び中沢病院院長はやっていた事実を認めているというふうに仄聞をいたしておりますが、まずこの点が認められているかどうかということをお尋ねをいたします。  なお、私どもが聞いております証言者の言によりますと、五十八年度は毎月平均五十人程度、一年間に六百人を撮影した。また、男性患者については機械的に三カ月に一度の撮影をしていたということが新聞にも報道されていますし、私どもも証言を賜っておるわけでございますが、この点について厚生省はどう把握されているのか。  また、昭和五十年ごろ、検査技師見習いという女子職員が採血、脳波検査、心電図測定、エックス線撮影などをやっていたとの証言がありますけれども、これらの実態はいずれも保助看法、診療放射線技師及び診療エックス線技師法に抵触をする内容であると思うのでございますが、この点についてどのような調査をやっておみえになるか、結果がわかっておったら御答弁をいただきたいというふうに思います。
  140. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 まず、前段のレントゲン撮影についてでございますけれどもお話しにございましたように、群馬県の立入検査の際に、院長が、事情聴取におきまして、事務長がレントゲン撮影を行っていたという発言をいたしております。しかしながら、無資格者である事務長がレントゲン撮影を行ったと認められる物的証拠が実は認められませんでした。  なお、詳細につきまして、群馬県を通じて調査を行って実態の把握をいたしまして、厳正に対処してまいりたいと考えております。  後段のお話してございますけれども、今申し上げましたように、現在の時点では無資格診療に関しまして事実の詳細を把握し切れておらないのでございますけれども、脳波と心電図検査につきましては臨床検査技師が行っているという報告を受けております。しかしながら、ただいまも申し上げましたように、無資格診療ということは非常に重大な事柄でございますので、なお事実の究明に努めて厳正に対処してまいる所存でございます。
  141. 網岡雄

    ○網岡委員 五十年ごろからこういうことになっておりますから、ある時点では有資格者がいたかもしれませんけれども、かなり長期にわたっておりますから、局長、これはもう一遍立ち入りをやるわけですね。どうでしょう。
  142. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 重大な問題でございますので、実態の究明はぜひとも図らなければなりません。したがいまして、さらに立入検査を行うことになろうと存じております。
  143. 網岡雄

    ○網岡委員 それでは立ち入りをされるということでございますから、これらの点についてはもう一度正確に事情聴取をされるなり調べられて、特に撮影なんかは患者が顔を見ていると思うのでございます。したがって、院長なり事務長だけに聞いておれば同じ答えしか返ってこないと思いますので、ぜひひとつ患者に聞き取りをしていただくような、そういう多角的な調査をしていただくことによって真相の究明を図っていただきたいということを要望します。  それから二つ目の問題は、医師と看護職員の必要数が満たされていないということが新聞でも報道されていますし、私の手元に来ている資料でも、後で具体的に質問をしてまいりたいと思いますけれども医療従事者の不足というものが事実出ています。これについて群馬県なり厚生省は一体どういうチェックを今までなさってきたか。特に質問をいたしますけれども、五十九年の五月になって医療法人の認可を受けておみえになります。これは過去三年ぐらいにわたっての調査結果の資料を見ると、医師が足らないあるいは薬剤師が足らないという状況になっておるわけでございますが、そういうものは当然群馬県の衛生部も医療監査をやって知っておみえになるわけでございますから、しかも受付の窓口は、人は違うかもしれませんが同じところだということであれば、条件を満たしていなかったということはわかっているはずでございますので、医療法人の認可をおろす際にそれは欠格条項の一つとして当てはまるのではないか。つまり、良心的に誠意を持って持続的に医療法人としての役割を果たす病院の経営がやっていけるかどうか、人格的な評価の点で私は重要な判定の一つになると思うのでございますが、その辺の判定というものはなされているのでございましょうか。
  144. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 御指摘のございましたように、当該病院につきましては五十四年、五十五年、五十六年、五十七年と多少でこぼこはございますけれども、医師及び看護婦の不足がございました。ところがこの五十八年の医療監視におきましては、医師につきましては標準数、看護婦につきましてはプラス三、こういうふうに県では判断をしたわけでございます。ところが、今回の件に関連をいたしましてさらに詳細なる調査をいたしましたところ、当時は県は名簿と免許証の写しでチェックをしておったのでございますが、去る六月八日と九日の立入検査の際に、給与台帳とか源泉徴収票とかそういうものも参酌いたしまして、詳細に点検をいたしましたところ不足をしておった、こういう事実がわかったわけでございます。これはどうもまことに遺憾なことでございまして、県に対しましても厳重な指導をしたところでございますけれども、今後こういうことのありませんように、医療従事者の充足状況の検査に当たりましては、出勤簿とか源泉徴収票等給与関係書類その他、できる限りの手段によりまして可能な限り実態を把握するよう医療監視講習会等の場を通じて指導の徹底を図る、あるいは通知を出して注意を喚起する、そういうふうに徹底を図ってまいる所存でございます。
  145. 網岡雄

    ○網岡委員 そのことに関連をしてくると思うのでございますが、同じく新聞の報道によりますと、ことしを基準にいたしまして数年以上前から退職した看護職員の名前が使われて、そして年間数人から十数人の幽霊職員をどう言いましょうかつくっていた、こういうことが新聞で報道されておりますと同時に、タイムカードなんかも女の事務員さんに二枚刻印といいますかタイムレコーダーを押させて、そしてあたかも人数がおるというふうに見せるような偽装工作をやっていたということが報道されていますし、薬剤師も一応二名おるというふうにきのうの調査の結果によりますと出ておるわけでございますが、しかし新聞の報ずるところによりますと、昭和五十年から五十六年までの六年間これは一人もいなかった、こういう新聞の報道があるわけでございます。一人でもおればいいのですけれども、二人いるところが全然ゼロということになりますとこれは事はちょっと重大でございますが、これらについてもひとつ監視が、局長自身今おっしゃったように六月八日と九日で初めて不足している事態を知った、こういうことでございますから、ぜひひとつこれは再度立入調査をされて綿密に一遍点検をしていただきたい。一応報告されているものも、私は今の段階では全部疑ってかかるということをしないと真相の究明が図れないんじゃないかというふうに思いますので、その点はぜひひとつそういうことで厳重な立入調査をやっていただきたいということを思うわけでございますけれども、その点どうなんでしょう。
  146. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 先ほどもお答え申し上げましたけれども、無資格者による診療、極めて重大なことでございますし、医療調査の際に虚偽のことを申し述べる、これまたまことに許しがたいことであろうかと存じます。お話しにございましたように真相、全貌を明らかにするために全力を挙げる所存でございます。
  147. 網岡雄

    ○網岡委員 次に移りますが、田中病院でも宇都宮病院でもあったわけでございますけれども、不審死の事故、つまり自殺とかそういうような事故が、新聞の報道するところによりますと、これまた何件かあるように報道されているわけでございます。  例えば五月二十八日の朝、同病院の第一病棟保護室で、当直の看護士が八十九歳になる男の患者が死亡しているのを発見、首つりの疑いが強いと見て中沢院長に報告をしたところ、同院長は、死因は冠不全であるということで死亡診断書を書いて、警察には届けなかった。また五十年ごろ、三十歳ぐらいの男性患者が、病棟の中のトイレットで自分のベルトを使って首つり自殺をした。首についている跡から見て、病死ではなくて自殺であるということが十分状況から見て言えるというふうに思えるのであるけれども、しかし病院長は心臓マッサージを三回程度行っただけで、八時五十分に死亡した、こういうことで虚偽の報告をしたんだというふうに、当時看護士であった職員からの証言ということで新聞に報道されておるわけでございますが、これらの一連の死因操作について、もし報ずるところのとおりであるとするならば、これは刑法百六十条にも抵触をするような非常に重大な犯罪行為にもなるわけでございますけれども、この点についての厚生省、県の調査は今の時点で一体どうなっているのか、この辺も一遍明らかにしていただきたいと思います。
  148. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 当該病院に関する事件の端緒となりました八十九歳の方の件についてでございますけれども、六月八日と九日に院長と死亡者の家族等からの事情聴取を行うとともに、診療録、死亡診断書等の調査を行ったのでございます。院長は、お話しにもございましたように冠不全であった、こういう主張をいたしております。また家族の談話では、死体に外傷その他一切の不審はなかった、こうしておるわけでございます。それからまた、今申し上げました診療録、死亡診断書調査等によりましても、死因が自殺であるという証拠はつかめなかったという現状でございます。
  149. 網岡雄

    ○網岡委員 一応報告がそういうふうにあるようではございますが、冒頭の無資格診療の点では院長みずからもが証言をしておる、こういう事実から言いましても、局長からも既に答弁が出ておりますけれども、立入調査をするわけでございますから、さらにこれは患者などにも聞き取り調査をやっていただいて、そして真相究明をさらに一層図っていただきたいということを要望する次第でございます。  次に、一つの上毛病院の問題点の柱とも言うべきものだと思うのでございますが、株式会社上毛センター、それから幸栄不動産株式会社、トンネル会社と思われるような節のあるこの二つの会社が設立をされております。これは問題点は、一つは、前橋市下大島町五百六十九番地の一、それから幸栄不動産も同じく五百六十九番地の一ということで、全部住所が一致しています。しかもこの住所は、冒頭言いました法人中沢会の上毛病院の住所と全く符合、一致いたしております。そういうことになりますと、上毛病院の中に上毛センターと幸栄不動産があった、登記がありますけれども、登記の面からいきますとこういうことになるわけであります。そうなりますと、医療法の四十二条の規定によりますと、御案内のように四十二条の規定は、一つは「医療関係者の養成又は再教育」、それから「医学又は歯学に関する研究所の設置」、三つ目が「第三十九条第一項に規定する診療所以外の診療所の開設」、それから、恐らくこの場合該当するとすれば四番目だと思うのでございますが、「その他保健衛生に関する業務」を行う、これが医療法四十二条に定められた四つの条件でございます。そうなりますと、問題の上毛センターなり幸栄不動産の業務は、調べてまいりますと、幸栄不動産の場合は名前のとおり「不動産貸付業」、二つ目に「不動産売買業」、三つ目が「前各号に附帯する一切の業務」、こういうことになっておりまして、事業の内容、目的から見ますと完全に不動産業であることは間違いないわけであります。  上毛センターの場合の事業目的は、一つは「医療機器の賃貸借」、二つ目が「飲食業」をやるということになっています。三つ目が「食料品の仕入れ及び販売」、四つ目が「一般雑貨の仕入れ及び販売」、五つ目は「不動産の賃貸借及び管理業務」、六つ目が「寝具の賃貸借」、七つ目は「保険請求事務業務」、これは恐らく診療報酬の関係の業務をつかさどるという意味だと思うのでございます。八つ目が「その他前名号に附帯する一切の業務」ということで、八つの上毛センターの事業目的が書いてありますが、これを具体的に私の頭の中で想定していきますと、全部病院の中の業務がそのまま代行されているというふうに思われてならないわけでございます。医療機器はずばり、飲食業は食堂というふうに当てはめていきますと、病院がそっくりそのままはまる。こういうことになるといたしますならば、これは上毛病院のダミーであるということが言えると思うのでございますけれども、どうだろうか。  それから、さらにそれを裏づけをいたしますように、医療法人中沢会の役員一覧表と幸栄不動産の役員一覧表、それから上毛センターの役員一覧表というものが手元にございますけれども、まず上毛病院の役員一覧表で見ますと、敬称は略しますが、理事長は中沢精二と言われる方で病院長、理事中沢幸子、同じく理事中沢真弓、理事小野浩一、監事長井定光ということになっております。幸栄不動産の場合は、今度は院長の娘さんである小野恭子という人が代表取締役になっておりまして、取締役は院長である中沢精二、同じく取締役が奥さんであります中沢幸子、中沢健一、監査役は赤田敏子。そして、上毛センターは代表取締役が院長であり理事長である中沢精二、取締役は奥さんであります中沢幸子、取締役中沢健一、中沢真弓、小野恭子というふうになっておりまして、内訳といいますか子細に調べてみますと、病院と幸栄不動産と上毛センターの三つの施設に役員として名前を連ねておりますのは、中沢精二、奥さんの中沢幸子さん、この二人です。そして、三つのうちの二つの施設の役員に名前を連ねておりますのは娘婿さんであります小野浩一さん、中沢健一、中沢真弓、小野恭子、これは娘さんだそうでございますが、そういうことでございます。  こういう状況から言いますと、完全に中沢家族のメンバーで三つの施設の重要な役員がたらい回しに回されている、こういうことが言えるわけでございます。こうなりますと、もう完全に、上毛病院の脱税行為を図るための一つのトンネル会社であると客観的には思わざるを得ないところでございます。きょう国税局にも聞いたわけでございますが、もし仮に、私が今言いましたような想定をした状態にそのままそっくりはまるとするならば、脱税行為ということも成立をする、こういうふうに言われておるわけでございますが、これらの点につきましても、四十二条の規定にある医療行為以外のことが病院で行われているわけでございますから、この部分はきのうの説明によりますと入れかいという説明がございましたが、実態から言って四十二条違反の行為がそこに行われておることはほぼ明確でございますので、この点についてもきちっと立入調査をやっていただいて明らかにしていただきたいと思うわけでございますが、その点はどうでございましょうか。
  150. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 四十二条の関係でございますけれども、私どもが現在報告を受けております範囲では、当該医療法人は、株式会社幸栄不動産が病棟と看護婦寮を所有しておりまして、これを借りている、こういうことでございます。  それから、上毛センターの方との関係は今のところまだつまびらかにできておりません。これが医療法人の運営上適正を欠くかどうか、現在県におきまして調査中でございます。先生もちょっとお触れになりましたけれども、法人が別でございますのでなかなか難しい面がございますが、できる限り実態を明らかにするように努力をいたす所存でございます。
  151. 網岡雄

    ○網岡委員 この上毛や幸栄の場合は看板が出ていなければ事業の実体がない、端的に言いますと外見上そういうことになると思うのです。それから看板を上げておれば四十二条に抵触をする、こういう関係になると思うのでございまして、その辺を踏まえながら県において調査をしていただくようにぜひその方向でやっていただきたいと思います。  それから次に、時間がもうあと三分くらいしかございませんので質問をそれまでに、まとめていきたいと思います。  きのう厚生省から調査の結果が出ました。私、これを見ておりまして感じましたことは、病院で事故があって傷を受けた人が全部で四十二件あります。昭和五十六年から五十九年三月十日まで、その四年間のうちで、四十二件のうち転倒でない、転んだ事故でない人はわずか九件です。あとの三十三件は全部転倒です。転んでおるのです。転んで傷をした、こういう事故が起きておるわけでございます。ここで私が感じますことは、転んだ事故が多いことから見まして、この病院に構造上何か欠陥があるんじゃないだろうか、病院としてはふさわしくない。私は現場を見ておりませんからわかりませんが、恐らく継ぎ足し継ぎ足しをやってきたのでしょうから、したがって構造上医療施設にふさわしくない状況になっているという点が一つあるのではないかと思うのでございますが、立入調査の段階でこれははっきり見ていただきたい。  それから二つ目は、医療従事者の不足が調査の結果出ているわけでございますが、とにかく四十二件中三十三件も転んで事故を起こしていることが多いということは、看護士または看護婦を初めといたします医療従事者が非常に少ない、極端に少ない。つまり極端に言いますと医療従事者が全然おらなくて、病院の中にいるのは患者ばかりであった。そういう状況があるということがこの転倒事故を起こしている大きな原因ではないかというふうに私には思われてならないわけでございます。この辺のところをひとつ医療監視の中で十分見ていただきたい。  それから第三番目には、これは確実に言えることでございますが、この病院医療に対する姿勢といたしまして、患者に対する思いやりがないということだけはもう何人も否定することはできないと思うのでございますが、立入調査をやられるわけでございますから、これらのことについてひとつ十分見ていっていただきたいということをお願い申し上げます。  それから、これは大臣質問をいたしますけれども、宇都宮事件、それから田中事件、それから今度の上毛事件、それから中央には上がっておりませんが、この種の事柄というのは医療機関の中で精神病院が一番多いと私は思うのでございます。厚生省は年次的に医療監視をやっておみえになるわけでございますから、その医療監視の中で、医療従事者の不足とかあるいは事故とかいうものが多い病院というのは一体精神病院はどのくらいの位置にあるのか、恐らくトップじゃないかというふうに私は勘で感ずるわけでございますが、それらの実態はどう把握されているのか御答弁いただきたいわけでございます。  それから、宇都宮にしても田中にしても上毛病院にしても、人は違っておりますけれども、大体事件の内容は同じなんでございます。版で押したように同じになっている。つまりこれは、裏を返すと、日本における精神病院の平均値じゃないだろうか、言っては悪いけれども、大体こんなふうな実態ではないだろうかというふうに思われてならないわけでございます。したがって、精神病院という医療機関の立場からいいまして非常に重要でございますから、この際ひとつ、厚生省といたしましては、角度を変えて抜本的に精神病院について一斉点検、一斉調査をやるような、これは一年でできぬかもわかりませんが、二年とかあるいは三年というような短期間に全病院調査するということをこの際やるべきじゃないかというふうに私は思うのでございますが、厚生大臣、この点はどうでしょうか。
  152. 渡部恒三

    渡部国務大臣 精神病院についての先生の御指摘、これは一々ごもっともなことばかりでございます。残念ながら宇都宮病院を契機にして次に田中病院、上毛病院と、私どもはこういうことはあってはならないと思っておったようなことが、次々に現実の問題としてさらけ出されております。したがって、こういうことが二度と起こらないように、それにはまず実態をできるだけ究明して、真相を把握してその対策を立てることが何よりも大事なことでございますので、先生指摘のような問題について、これは全国の病院の中にあってはならないことでありますから、真相解明のための実態調査をする方向に指導してまいりたいと思います。
  153. 網岡雄

    ○網岡委員 とにかく全国的に調査をされる、こういう御答弁でございますから、これはぜひひとつ重点的に調査をされるようにお願いを申し上げたいというふうに思います。  それから、先ほどの答弁の中で、薬袋の書記について答弁が私のものと食い違っております。これは私は自信を持っておりますけれども、御調査をいただいて、後できちっとはっきりしていただきたい。  それから、混合注射の問題についても答弁が私のものとは全く食い違っているわけでございまして、この食い違いのままになれば重大な医療事故を起こすことになるわけでございますから、そのことを踏まえながら厚生省も十分調査をされて、本委員会において調査内容を明らかにするようにしていただきたいということを要求をして、質問を終わりたいと思います。  最後に、警察の関係の方がおいでになっておりますので、今まで私が上毛病院について事実を述べましたけれども、これから立入調査に入っていくわけでございますね。その中で逐一事実も明らになってくる部分もあるわけでございますけれども、その場合に刑法上抵触するような問題があるときには、間髪入れず所定の行動をとっていただくようなことをしていただくことが精神病院の健全化、明朗化というものにつながっていくと思うのでございます。この点についてどういう御判断をお持ちになっているかお伺いいたします。
  154. 竹内隆

    ○竹内説明員 お尋ねの件につきましては警察といたしましても関心を持っております。群馬県警の方でいろいろ情報収集をいたしておりまして、違法行為があれば厳正に対処いたしたいと存じております。
  155. 網岡雄

    ○網岡委員 終わります。
  156. 有馬元治

    有馬委員長 大橋敏雄君。
  157. 大橋敏雄

    ○大橋委員 私は、厚生行政の最大の、最高の着任者である渡部大臣と、できるだけお話をしたいというように思います。  実は、医療保険制度の抜本的改革という問題は、非常に古くてまた新しい問題だと思うのです。と申しますのは、私が国会に初めて参りましたのは今から十七、八年前になりますが、昭和四十二年ですが、そのころから医療保険の抜本改正、抜本改正ともう耳にたこができました。しかし現実はまだ未完成ですね。そういう意味では新しい問題だということであります。  先ほども申し上げましたように昭和四十二年末ですね。これも政管健保の保険財政がたしか二千億円の累積赤字になるということで、これは大変だ、破局的状態になるのだということから急速臨時特例法案というのが提案されるのですね。それはやはり保険料の引き上げあるいは一部負担の問題でございました。忘れもしませんが、これが与野党の最大の激突法案になったのです。対決法案なんてものじゃないのです。激突法案です。もう自民党さんも問答無用ということで強行採決をなさいましたですね。そういうことがあってこの委員会でも乱闘がありました。私はまさか国会へ来てあんな乱闘をするとは夢にも思っておりませんでした。それを経験もいたしました。  そういうことで、その後も健康保険は毎回毎回出てくるたびに何かが起こるといいますか、実は健保国会という臨時国会では社会党さんの首脳部の方が更迭されるという問題までも発生いたしました。その後医師会の保険医総辞退などというような問題まで起こったわけですよ。というのは、この健康保険というものはもう因縁法案だ、とにかく宿命法案だ、このように思われるようになってしまったわけですね。  確かに保険者、そして被保険者、医療機関、医師ですね、その三者の利害が真っ向から対立します。そしてその影響が大きい、その波及も大変なものです。それだけにこれは重大な問題ですから、確かに慎重審議をしなければなりません。しかし、慎重審議をするのは大事なことでありますけれども、この健保がかかりますと、それがちょうどのどにつかえて通らないみたいに、後の厚生行政も足踏み状態になるわけですよ。私は、野党の立場からではございますが、この事態については胸を痛めてまいりました。  今回も、この医療保険の問題についてもうかなりの論議が尽くされてきました。もうこの辺で大臣も英断を下すべきじゃないかと思うのですよ。もう野党の主張もはっきりしてきたことだし、もうこの辺であきらめてこれを捨てるか出直すか、さもなければ修正という話でしょうけれども、今マスコミで伝えられているところ、あるいはきょう何か自民党さんの方から我が党にはある修正の内容が示されたようでございますが、ああいう内容ではとてもとても我々は賛成できません。というのは、やはり抜本改正というからには国民が納得いくような、その名に恥ずかしくないような内容にならねばなりません。したがいまして、我が党の理事をやっております平石理事が、冒頭からそのことを言ってきたでしょう。ただ医療の問題だけじゃないぞ、予防、いわゆる保健、管理、あるいはリハビリテーション、この医療の周辺も含めて根本的に見直すべきである。また医療制度だって、今九種類に分立し、ばらばらです。これも統合していくべきではないか。特に、今までは政管健保のことばかりが大体問題になってきたのですけれども、今回は多少違ってきました。そういうことで平石議員は、とにかく国保の皆さんは踏んだりけったりではないか、今度の国庫補助の削減の中では言うならば国保からだけですよ。しかも七割給付、三割負担というまさに踏んだりけったりで、国保については全く対処されていない、とんでもないじゃないかということで今日まで来たわけです。  そういうわけで、まず大臣のこの辺に対する英断を聞いておきたいと思います。
  158. 渡部恒三

    渡部国務大臣 大橋先生から厚生行政全般について御心配を賜りまして、大変ありがたいことだと存じております。特に、この健保法は国民の健康を守っていく極めて重要な法案でございますので、ぜひ一日も早く成立させていただくように、これは残念ながら大臣ではどうにもなりませんので、この席をおかりしまして、委員長初め各党の先生方に伏してお願いを申し上げたいと存じます。また、国保の皆さん方に対して大変温かいお気持ちをちょうだいして、これも私も全く同感でございます。ただ、現在の財政状態で今すぐというわけにはとてもまいりませんので、この国会で、私は、六十年代の後半のできるだけ早い時期に御要望に沿うように努力したいということを申し上げておるわけでございます。  また、この委員会で平石先生から、医療保険制度というものは国民全体の健康を守っていくビジョン、その中にあるべきものでないかという御指摘を賜りまして、私はこれも本当にもっともな御意見であるというふうに傾聴をいたしましたので、それから厚生省の方を督励して全力を傾注しまして、平石先生の御期待というよりはこの社労の委員会の皆さん方の御期待にこたえるように、厚生省としての医療ビジョンを作成した次第でございますので、社労の皆さん方に対する私どもの熱意というものも御理解いただきまして、どうぞ、国民の健康を守るために一日も早くこの法案を成立させていただくように御審議を賜りたいと思います。
  159. 大橋敏雄

    ○大橋委員 従来の健康保険の審議といえば大体政管健保の財政対策だったのですが、今度は確かに、大臣のお言葉をおかりすれば、二十一世紀を目指した長期的な視野に立った根本的な改革案であります、こういうことでございますけれども、結局は五十九年度予算のゼロシーリングに対する国庫負担の削減法案だ、こういうことで出てきておるわけですよ。そういうことから各野党がこれを厳しく追及したわけですね。そうしましたら、ちょうど証文の出しおくれみたいではございますけれども、やっと「今後の医療政策の基本的方向」という中長期構想を示されたわけです。私は、この将来構想を提示なさったということはこれは一歩前進だ、こう受けとめて差し支えないと思っております。  しかし、その内容なんですけれども医療保険制度ごとに異なる給付率を昭和六十年代後半に八割程度に統一する、あるいはプライマリーケア重視の医療機能保のネットワーク化、あるいは医師、歯科医師数の六十年以降の見直し、医療と薬剤、すなわち医薬分業の基盤づくり、生涯を通じた健康づくり、医療供給体制の整備、将来にわたる医療規模の適正化、広い範囲にわたっていろいろと示されてきているわけでございますが、残念ながらこれはみんな抽象的なんですね。とにかく、いつどういう年次にどういうふうに、こうやってああやってという具体性に欠けておるわけです。非常に食い足りない思いですね。  ということで、実はきのう、きょうの新聞報道等を見てまいりますと、これは自民党さんの動きではございますが、まるで健康保険法案というのは医師会のものであるかのような印象を受ける報道があるのですよ。つまりきのうですかに医師会の代議員会が開かれております。その代議員会が開かれたならば修正案を野党に示し打診するんだとか、もっとひどいのは、この一割負担の問題を了解してもらうために診療報酬の見直しをやるんだ、あたかも法案成立のための裏取引をしたかのような報道がなされているわけです。もしこれが事実ならばこれは許しがたい問題だと思うのです。政府・与党一体と言われますが、大臣もやはり同じようなお考えですか。この点ちょっと聞かせてください。     〔委員長退席、愛知委員長代理着席〕
  160. 渡部恒三

    渡部国務大臣 私はこの委員会でもたびたび申し上げておるのでございますけれども、この法案を成立させるためには、今回の法改正によって一割の御負担をちょうだいしなければならない三千万人の被用者保険加入者の皆さん方に、ぜひ御理解を賜りたいということを私はたびたびにわたってお願いをしておるわけでございます。これは、もとより、国民の健康を守る立場の第一線に立って働いておる医療関係皆さん方にも御理解を賜りたいと思っております。  ただ、先生誤解をいただいては困りますのでこの際明確にしておきたいと思いますのは、診療報酬の問題は、大臣が中医協に御相談申し上げて、中医協にお願いして進めていく問題で、議会の議決事項ではございません。ただ、国会を私ども行政の立場で尊重していくのは当然でございますから、この国会でも幾たびか、きょうの議論の中にも随分とありましたけれども、診療報酬の中で技術というものに対する評価が、今日の検査づけとか薬づけとかいろいろな問題を起こしておるのではないかとかいろいろな議論がありますし、また中医協でもいろいろ議論が行われておりますので、この診療報酬というのも極めて重要な問題であります。国民の中で随分大きな声として技術料というものの見直しを考えるべきではないかという御意見がございますので、これらの問題はこれから私どもぜひ真剣に取り組んでまいりたいと考えておるのでありまして、このことは別に今回の改正法案が成立するとかしないとかいうこととは関係ございません。
  161. 大橋敏雄

    ○大橋委員 理論的にはそうでしょうけれども、要するに医師会の了解をとらない限りはちょっと難しいぞ、そのためにはとにかく医師会が常に言っている診療報酬の引き上げ、これをやることが最高の手段ではないか、このように思っているのではないか、それが各新聞報道の内容を見ての感じなんです。私は、今大臣がおっしゃったとおり、診療報酬の見直しというものはそういう立場で取引されるようなことでやるべきものではない、これを主張したいわけですよ。  先ほども社会党の先生が、薬の問題、技術の問題に関して大変な議論をしていらっしゃいました。つまり先ほどの論議も、医者の技術と薬というもの、これは分離すべきであるということです。そして医者の報酬というものは、薬剤に依存しないでいける状態に決めていくのが正しい診療報酬のあり方であろう、こう思うわけです。ですから、そういう大事な問題を今のような取引の立場でやってもらっては困るということを言いたいわけです。と同時に、今の医者の診療報酬が一体適当なのかあるいは高いのか安いのか、どう思われているのだろうか、まず中医協に諮られる前に大臣としてその辺はどういうふうにお考えなのか、私は聞いておきたいのです。
  162. 渡部恒三

    渡部国務大臣 これは大変難しい御質問でございますが、私もいろいろ医療従事者の皆さんから、こういうものは幾らだ、ああいうものは幾らになっているというようなことを個別にお聞きしますと、これは安いな、こんな安い値段でよく頑張ってやってくれるな、こう思うこともございます。しかし、また一方、これは全体の中では、御案内のように医師の所得というものは他の職業の方々に比べて決して低いものでもございませんので、そういう点では一概に今の医療費が高過ぎるあるいは安過ぎると断定することは難しいだろうと思いますが、個別に一つ一つ取り上げてこれを私の常識の中で考えると、これはちょっと安過ぎるのじゃないかというようなものがあることも事実でございます。
  163. 大橋敏雄

    ○大橋委員 今の大臣お話しによれば、安いか高いか非常に判断の難しいところではあるけれども、現在の医者の所得の状況からいくと、所得番付など見ていきますと確かに低い方ではない、非常に適当な状況にあるのではないかという感じも受ける、しかし個々に見ていけば確かにこれはまだ問題があろうかと思うという話がありました。私もその点については別に反論はいたしません。しかし、医薬分業というのはずっと前から言われてきました。法律にもうたわれておりますが、しかしこれは実態的には骨抜き状態になってきているわけです。  そこで、先ほども申しましたように医者の技術料というものの正しい評価、これは当然、行われねばなりません。というのは、薬剤もとにかくどんどん薬価基準が改正されていっておりますし、従来の薬依存の診療報酬というような考え方の時代は去った、私はそういう意味から、適正に診療報酬を見直す必要があるということを主張したい。しかし、今言った取引のような状態の中で進むことについては断じて反対していきます。  そこで、時間も限りがありますので聞きますけれども、将来構想の中に医薬分業の基盤づくりという一項があるのです。これは一体どういうことを考えてのことか、お答え願いたいと思います。
  164. 正木馨

    ○正木政府委員 医薬分業はかねてよりの課題であるわけでございますが、先生も御指摘のように、先般厚生省が出しました「今後の医療政策の基本的方向について」という厚生省試案の中でも、「医薬分業の基盤づくりの促進」というものを明確にうたっております。その基盤づくりの促進というのは具体的にはどういうことかというお尋ねだと思います。  私、この医薬分業の本旨というものを考えますと、やはり医師が診断、治療の専門家としての機能を十二分に果たしていく、それから薬剤師というのは調剤の専門家としての機能を果たしていくということが基本にあるわけでございますが、我が国の長い歴史があるために、漸次進展はしてまいりましたけれども、率直に言ってまだ不十分だ。  そこで第一に、基盤づくりという点につきましては医師、歯科医師、薬剤師、その関係者の基本的な合意と理解というものが必要だと思います。それが第一点でございます。そういうことで、具体的な問題といたしましては、なかなか難しかったわけでございますが、幸いにいたしまして、昨年、医薬分業推進懇談会というのが三師会の代表と有識者をもって構成されるということで、具体的に議論をしていこうということが一つでございます。それからもう一つは、国民の皆さん方に医薬分業の本質をよく理解していただくということで、基盤づくりの第二としては、この制度についての趣旨の徹底、PRと申しますかそういうことが必要だと思います。それから第三点には、やはりその基盤づくりとしまして、薬局の処方せんの受け入れ態勢を強化していくということが必要だと思います。そういうことで、かねてより実施をしております調剤センターとか検査センターの整備の促進、これを今後とも力を入れていかなければならない。幾つか申し上げましたが、そういうことが基本にあろうかと思っております。
  165. 大橋敏雄

    ○大橋委員 先ほどの社会党さんの質問にもありましたように、やはり薬と医者の技術とは分離して、薬は薬なりのいろいろな問題がございます、そういうことから医薬分業というものが法律にもうたわれて、実際はもう実現しなければならない年数がたっているわけです。医薬分業、これも耳にたこができております。どうか、名実ともにそれが実効ある行政指導をぜひお願いしたいということです。  それから、新聞報道等では修正の内容が言われているわけでございますが、高額療養費の限度額を今度五万一千から五万四千に引き上げる、これはもともと我々は反対です。我々は、これは反対するのみならず、要するに中身、高額療養費を受ける条件、内容を見直すべきだとむしろ思うのですよ。引き上げを据え置くのはもともとですよ。つまり今は暦月といいますか、その月に五万一千を超えたもののみ恩恵があるわけですね。あるいは一人に限られているわけですから、家族で五万一千を超えても一人分がそう出なければ恩恵に浴さない、こういう状況にあります。むしろ私は高額療養費の内容の再検討、見直しが必要ではないか、こう思うのですが、いかがですか。
  166. 渡部恒三

    渡部国務大臣 先生からいろいろお話しがありましたが、私ども政府の立場では、今回提出しておる法案がベストのものであるという考え提出しておりますので、これはぜひ原案のまま成立をさせていただくことを願っておるのでございますが、ただ、申し上げておりますように、私どもは、この法案を成立させていただくことによって、健全なサラリーマン家庭の皆さんが病人を続出することによって家計が破壊されるというようなことはあってはならないし、そういうことはないという信念でこの法案を出しておりますので、各党の皆様方からそういう問題でいろいろなお考えをちょうだいしたりお知恵を出していただければ、これには謙虚な気持ちで対処してまいりたい、こう思っております。
  167. 大橋敏雄

    ○大橋委員 今の高額療養費の内容はぜひとも見直す必要があるのではないかと私は考えるわけです。同時に、今の組合健保、これはもともと、今回の法案には附加給付がなかったと思うのですが、法案にはというよりも、経過的には取られるところだったのですけれども、入りました。私は、豊かな余裕のある財政ですからそれをあえて反対はしません。しかしながら、政管健保も前は大変だったのですけれども、今は黒字になったわけですよ。ですから、そういう意味では組合健保と同じように附加給付ができるような状況になったところもあるのじゃないか、そういうできるところは政管健保だってやったらいいのじゃないか、こう思うのですが、いかがですか。
  168. 渡部恒三

    渡部国務大臣 私どもは、先ほども申し上げましたように、今法案を提出しておりまして、でき得ればぜひ私どもが出した内容をそのままお認めちょうだいしたいと考えておりますので、今私の念頭にはそのようなことを考えていないわけでございます。
  169. 大橋敏雄

    ○大橋委員 我が党の平石議員が主張しておりました国保給付を八割にすると仮になったとすれば、組合の被保険者の家族の方とはまた逆差別もできますから、そういうことも踏まえての私の提案ですから、これはしっかりと頭の中に入れておいていただきたい。  さて、将来構想の中におきまして、健保の一元化がうたわれているわけですね。二割負担云々は私も頭から賛成できるものじゃございませんけれども、九割給付・一割負担の問題について、条件が整えばということで平石理事もずっと審議をしてきたわけですね。つまりこれがあくまでも前提条件でありますが、いずれにいたしましても、一元化の方向を打ち出したという厚生省のその態度は、言うならば我が党の構想に一歩近づいてきたな、こういう意味で私も評価したいと思っておるのです。しかし、その一元化のあり方といいますか、各制度間に何らかの共通項を求めていわゆる部分的な一元化を図ろうとしているのじゃないかな、こう思うのですね。例えば老人保健法ができるときに、各保険制度の中における老人医療費を何とか調整しようではないかということで、老人保健法はそういう部分では一元化されたわけですね。そういう意味の一元化ではないのかなという危惧を抱くものでございます。国民が期待しております統合一元化というものは、国民皆保険体制の名にふさわしい、負担も給付もばらばらになっております制度間の不均衡、格差是正、これを根本的に解消するという統合一元化のことでございまして、といっても白紙に絵をかいていくような統合の内容などというものはまず考えられません。実際的ではございません。しかし、各制度を段階的に統合していくことは可能だと私は思うのですね。我々はそういうふうに考えているわけでございますが、そうしたいわゆる本当の意味の制度間の統合の考え厚生省にあるのかどうか、お尋ねしたいと思います。
  170. 渡部恒三

    渡部国務大臣 これは私もたびたび申し上げておるのでありますけれども、社会保障というものは、やはり本来国民が同じような条件で給付を受けるべきだろうと思います。やはり国民の健康を守る医療保険というものが、ある人は三割の負担しなければならない、ある人はただでやるというような形がそのまま続いていくことは望ましくない、この点では大橋先生と私の考え方は全く同じ考えだろうと思います。ただ、被用者保険、健康保険、これは今日までいろいろな経緯あるいは歴史、そういうものがございますから、それを今までの経緯を一切無視して一度にこの制度を一つにしてしまうというようなことは、現実的に極めて困難なことでございます。そういうことから、まず第一の理想として、私どもは八割ということにめどを置いて、できるだけ早い機会に国民のこの医療保険における恩恵、その給付率というものが同じようになる方向に努めてまいりたいと思っておるわけでございます。これも先生のお考えとほぼ近いと思っております。ただ、先生の方は九割給付で一割負担、私どもは八割給付で二割負担ということに将来構想のめどを置いておるところが違うのでありますが、しかし、これも調べてみますと、現在の高額療養費の制度の適用、また難病に対する公費負担、老人医療に対するほぼ全額の負担、こういうものを全部トータルして考えますと、国民の皆様方全体としてはほぼ九割程度の給付を行い、一割負担という程度になっておりますので、これも先生考え方の方に私どもも一生懸命近づける努力をしておるというふうに御理解いただいて結構だろうと思います。
  171. 大橋敏雄

    ○大橋委員 我々公明党は、生意気なようでございますが、予算の裏づけのある総合政策といいますか、社会福祉トータルプランというのを、今から約十年まではなりませんか、提案したわけですよ。その中に医療政策の具体的な統合計画を示しておりますけれども、被用者保険と地域保険の二系列化です。これに老人保険の別建てを加えまして、いわゆる三本立て構想でございます。その被用者保険も段階的に例えば各種共済組合保険の一元化を図る、あるいは組合保険と政管健保、日雇健保、日雇健保は今度吸収されますけれども、こういう被用者保険をまた一元化していく、こういうのが具体化された段階で、船員保険も、これは総合保険でございますので、それぞれ内容を分離いたしまして統合していくのだ。また地域保険、いわゆる国保ですね。国保も事業主体を市町村から漸次県単位に、そしてさらにはブロック単位に移行して一本化を目指す、こういうふうな考え方をもう既に示しておるわけです。厚生省にはこのような制度の具体的な統合の考えがあるのかということが一つですね。  それからまた、保険料負担の改善といたしましても、我が党は、まず相互扶助、それから応能負担の原則を土台にいたしまして、被保険者の労使折半となっております理行の負担割台ですね、これも見直したい、こういう考えでございます。あるいは地域保険も個人負担と国、地方自治体等の割合も改善をしていきたい。そしてまた、今言われておりました給付の問題につきましても、これは被用者保険もそして地域保険もすべてが本人・家族とも一律九割給付、これはすべてがきれいに整理された段階だということですよ。しかし、軽症患者あるいは中程度疾病、つまりこれは範囲は別途決めるわけでございますが、これには一部負担の導入もやむを得ないのじゃないか。ただし、重症あるいは低所得者層の患者に対してはあくまでも十割給付を実質的に給付していく、こうした予算を裏づけた政策を提案しているわけでございます。  先ほど大臣は、公明党さんの考えに極めて近い方向で進んでいるはずだが、こうおっしゃるわけでございますが、今もう既に実施されております老人保健法、あるいは今度提案されております二階建て年金構想による将来構想の年金法案、これはこの下敷きといいますか、これを提案したのは不肖我が公明党でありました。つまり公明党の考え方というのは実現の可能性があるのですという意味で、今、私は、そのほかのこともたくさんあるのですけれども、一番関係のあるところを申し上げたわけでありますが、この辺の大臣の御見解を伺っておきたいと思います。
  172. 渡部恒三

    渡部国務大臣 昭和五十八年に示されました公明党の八三年基本政策の中で、私どもに関する問題についての御見識、大変傾聴に値するものだと私どもは拝見させていただいております。しかも、特に、今先生からお話しのありましたように、公明党の皆さんが野党という立場にありながら現実認識の中で患者一部負担がやむを得ないものであるというふうに決断されたすばらしい御意識というものに、私どもはこうべを垂れておるのでございます。  ただ、私と先生との考え方の中で、方向は全く同じだと私は思うのですが、先生は「統合」という最終的な理想像を示されておるわけであります。私ども現実に厚生行政を担当しておりますと、これは大きな将来の夢として描いておるのでございますが、現在までの保険組合のそれぞれの長い歴史あるいは経緯、そういうものを尊重し、またその方々に今極めて重要な保険業務を担当していただいておるわけでありますから、この人たち考え方を一切考慮に入れないで、今統合一本化という方向を出すわけにもこれはまいりませんので、先生は一つの理想、その理想に向かって私どもは二段階方式と申しますか、まずはひとつ国民の負担、患者の負担、また健保の給付率、これはぜひ、農民の方も商工業の方も自由業の方も被用者保険の方も、みんな同じような給付と負担の公平を図ってまいりたいと考えておるわけでございます。
  173. 大橋敏雄

    ○大橋委員 それでは、時間の関係で次に移ります。  今から申し上げる問題は、多少技術的な問題も入りますので必ずしも大臣でなくても結構です。  高度先端医療に関しまして、療養費支給制度の改正が今度図られようとしているわけですけれども、現在は、診療の中に健康保険の適用になっていない部分が含まれますと原則として診療費全体が自己負担となるわけですね。このような状態の中で、最先端の高度医療技術等が開発されましても、その医療が保険の適用にならない限りは診療費全体が全額自己負担ということになるわけでございまして、医療費が高額になり過ぎるということから経済的に恵まれた人たちのみが受けられるという受療に制限がかかるという傾向になる、こういう点を、厚生省も、少しでも解消したいということで出されてきた今回の高度先端医療にかかわる療養費支給制度の改正であろうかと思うわけであります。一見、現行制度の隘路をカバーする合理的、漸進的改善策に見えるわけでございますが、国民の中には大変疑問を抱いている者が少なくございません。  と申しますのは、従来例外的に認められてまいりました入院などの保険外負担、これがもたらしたさまざまな弊害を経験した多くの国民は、今回の措置は、従来の保険外負担の弊害をさらに助長し、自由診療、差額徴収の拡大となるんではないか、健康保険制度の目的を大きく変質させていくのみならず、国民や患者の財力の差によって医療機会の格差を生ずることにならないか、こういう不安を抱いているわけでございますが、まずそれに対する御見解を承っておきたいと思います。
  174. 吉村仁

    ○吉村政府委員 私ども、今回提案を申し上げております特定療養費制度は、先生指摘のように新しい医療技術の出現、これは今後相当出てくると思われるわけでありますが、そういう新しい高度医療とそれから保険診療との調和を図ろう、こういうことでございまして、これをやることによって、現在保険の中に取り入れられております必要にして適正な医療というものの幅を縮小していこうというものではございません。私どもは今後とも、保険診療としては必要にして適正な医療というものを保険の中に取り入れていく、そして国民に必要な医療は必ず保険で給付をする、こういう基本的な扱いは従来と同じであります。  ただし、今までは、先生指摘のように、何かちょっと保険で認められないものが入っておると全額自費になる。そこのところを全額自費にしないで、保険診療で見られる部分は保険診療で見る。そして保険診療に取り入れられていない部分だけを自己負担にしようということでございますので、今よりはるかに前進をするんではないか、こう思っております。
  175. 大橋敏雄

    ○大橋委員 今の説明を聞いてまいりますと、高度先端医療そのものはこれは保険がきかない状態にあるけれども、そのほかの部分はできるだけ保険がきくようにするんだ、厚生省の資料を見れば「基礎部分」という言葉が出ているんですけれども、今言いましたように、一口に言えば先端医療技術そのものはだめです、しかしほかは全部保険がきくんだ、こういうふうに理解してよろしいんですか。
  176. 吉村仁

    ○吉村政府委員 そのとおりでございます。  それで、具体的に申し上げますと、今回例えばがんの場合の温熱療法みたいなものを高度先端技術として指定しよう、こう考えておるんですが、その温熱療法をやる場合に必要なものとしては診察料、レントゲン診断、それから検査、処置、手術、入院、それから投薬等が必要で、その上に温熱療法をやる。従来はその費用が全部保険外自己負担になっておったんですが、今回の改正から診察料、レントゲン診断、検査、処置、手術、入院料、薬剤料、これは保険で給付をいたします。ただ、がんの温熱療法の部分だけは自己負担になります。したがって国民のためになる、私はこう思います。
  177. 大橋敏雄

    ○大橋委員 高度先端医療の承認基準、あるいは差額徴収については中医協の意見を聞いて決定するということになっているようでございますが、「高度医療特別サービス」ということが表現されているんですけれども、具体的にはこれはどんなものを指しているんだろうか。実は先般、私は歯医者のお医者さんとしばらく懇談をしたわけですが、ああいう専門家の方でさえも大変な疑問を抱いておられました。そういうことで、今から何点か歯医者さんの疑問として私は聞きますので、そのつもりで答えていただきたいと思います。  その第一は、歯科医療に関しまして、高度先端医療というものをどのように位置づけられようとしているのかという問題でございます。それから、歯科医療技術は日進月歩である、一般的な施療、診療そのものが高度な医療技術と思っている。したがって、今回厚生省が措置しようとする高度先端医療というものは一体どういうものを指しているんだろうか、そういう疑問でございました。どうでしょうか。
  178. 吉村仁

    ○吉村政府委員 歯科の場合で申し上げますと、例えばレーザー光線による 蝕の治療だとかセラミック等でできております人工歯根、そういうものを頭の中に描いております。具体的に何と何を先端技術にするか、これは私どもやはり中医協でもって具体的に決めていこうと思いますが、私どもの頭の中に今あるのはそういうものでございます。
  179. 大橋敏雄

    ○大橋委員 私は素人なものだから、歯医者さんとお話ししていてもわからぬことだらけだったわけでございますけれども、歯医者さんが言わんとするのは、我々が今やっている診療というものは非常に高度な技術を要しておるんですよ。また日進月歩、次から次と新しいそういう問題が出てきております。そういうことになれば、高度先端医療というものはまさに歯科医師界の医療ではないだろうか、そういうふうに我々は自負しているんだけれども、今回の厚生省が示そうとしている問題を基礎に置けば、現在自分らがやっている高度医療は言うならば低度医療ということになるんでしょうかね、こういう話があったんです。私はもう返事に困りましてね。これはどういうことになるんですか。
  180. 吉村仁

    ○吉村政府委員 私も余り説得力のある説明ができるかどうか自信がないのでありますが、現在の保健の歯科医師というのが、先生が今おっしゃいましたように、非常に低い部分、本当に現在行われておる歯科医療のうちの一部しか保険に取り入れてないのだ、そうは思いません。ただ、歯科の場合には、材料を貴金属を使う部分がかなりございまして、貴金属を使うような分野につきましては保険給付外にしている部分がございます。これは、私は、一種の保険における歯科診療でございますので、そういうぜいたくなもの、あるいは審美性、美しくあることを目的とするような診療、そういうものはやはり保険診療から除いてもいいんではないか。そこら辺は少し医科の場合と違うところはあろうかと思いますが、現在の保険に取り入れられている医療が、近代的な歯科医療というものを全く排除して、前近代的な医療だというようには思いません。
  181. 大橋敏雄

    ○大橋委員 それでは、特定の医療機関は都道府県の承認だ、こういうふうになっていると思うんですけれども、この承認の基準設定というものは一体どういうものなんだろうか、全然わかりませんねという疑問が出ておりました。その点と、承認とは、申請すれば即認定というふうに理解していいのかという問題でございました。その点についてお願いします。
  182. 吉村仁

    ○吉村政府委員 特定承認医療機関の承認要件につきましては、これは中医協で御審議を願いたいと思っておりますが、私どもは、施設それから陣容、あるいは技術についての実績等の要件を具体的に決めまして、承認基準をつくりたいと思っております。そして申請をして、その条件に該当するならば承認をいたします。
  183. 大橋敏雄

    ○大橋委員 要するに、今さっき話しましたように、歯科医の皆さんは大変な高度な医療をやっているんだ。それにまたさらに高度先端技術医療かんという言葉が出てきた。どこでどういうふうに区切られるのかなというのが、やはり正直な疑問でございました。これは専門的な問題ですから私がここで幾ら論議しても結論に至らないと思いますけれども、そういう医者の疑問点だけはしっかり知っておっていただきたいと思います。  そこで、先ほどの申請すればそのまま認定されるというふうに理解していいのかという点ですけれども、これをお願いします。
  184. 吉村仁

    ○吉村政府委員 もちろん審査をいたしまして、承認の要件に合致すればこれは承認いたします。
  185. 大橋敏雄

    ○大橋委員 ということですから、その承認の認定基準というものをやはり早い時期にしっかり公表していただきたいということです。  それから、とにかく国民は自由に医療機関を選ぶ権利があるのだ、特定されるということは選択の自由を阻害して医療機関格差を生じていく原因になるんではないかな、こういうふうな不安が大変に出ておりましたが、この点についていかがですか。
  186. 吉村仁

    ○吉村政府委員 私は、医療機関を選択する自由というのは全く変わらないと思います。従来でも差額徴収というものがございましたし、また、従来は何か保険外の診療をやっておれば全体が実診療になっておったわけでありまして、そういう時代でも患者の医療機関を選ぶ自由というものは確保されておったわけでございますので、今回の改正によってその自由が制限されるとか縮小されるとかということは全くないというように思います。
  187. 大橋敏雄

    ○大橋委員 そこで、お医者さんの疑問は、今回言われている特定医療機関の対象の中に歯科診療も含まれるのだろうか、これは単純な質問でございましたけれども、私は、それは含まれるのじゃないですかと言ってしまったわけですよ。そこで医者が言われたことは、商科医の大多数は民間の診療所です、それが特定されるということになると、その地域に幾らもある歯科医の中に格差が出てくるような感じになる、これは地域医療機関の存立を混乱させることになるのじゃないか、また健全な推進を阻むことになるのじゃないか、こういうお話しがあったのですけれども、これはどのように理解したらいいですか。
  188. 吉村仁

    ○吉村政府委員 承認の仕方にもよるのかもわかりませんが、私は、今回の高度先端医療の方は、例えば大学病院だとかあるいはそれに近いような方の病院というものが指定されるようになるだろう。それからもう一つ、特定のサービスあるいは特定の金属の使用等についての差額徴収というのは、これはもう全医療機関がほとんどできる、こういうことになるわけでありますので、歯科診療の場合にある特定の地域において非常に格差ができて、A医療機関は特定承認機関、B医療機関はそうではないというのがある町にたくさんできる、そういうようなことは余り予想をしておりません。高度先端技術の方の承認医療機関は極めて少数になるのではないか、こういうように思います。それから、金属の差額徴収をするとかあるいは特別の治療材料みたいなものについての差額徴収をする医療機関というのは、これは地域においてもたくさん生ずる、こういうことになるのだと思います。
  189. 大橋敏雄

    ○大橋委員 もう一つ非常に重要な疑問だと思うのですけれども、承認基準あるいは差額徴収等、中医協の意見を聞いてお決めになるということでございますが、これは歯科医療における材料差額に相当するのではないか、こういうふうに言っておりました。  そこで聞きたい問題点というのは、自由診療にかかわる部分まで中医協が審議をするということになると思うわけでございますが、要するにそういうことになれば、従来の中医協のあり方を見直すということになるのですかねと、こういうことなんですよ。というのは、中医協というものは医療保険にかかわる部分を審議するものでありまして、自粛診療部分についてまで踏み込むということはまさに越権的な審議ではないか、今度は中医協のあり方が変わるのですかねという重要な疑問が出ておりました。この点はどうですか。
  190. 吉村仁

    ○吉村政府委員 中医協の所掌事務を追加しておるという意味におきましては、従来の中医協よりも権限が拡大をされておる、これは事実でございます。  ただ、保険給付といい、自由診療、保険外診療の部分給付といい、裏腹の関係になるわけですね。同じ医療でここまでは保険医療だ、ここからは保険給付外だというわけですから、そこは裏腹の関係になるわけでありますので、中医協でそこは議論をしていただいても一向に差し支えないのではないか。それから、現に差額ベッドあるいは金属の差額徴収等については全く保険給付とは関係ない部分ですが、これは現実に中医協でもっていろいろな議論が出て、中医協の議論を通じて私どもは対処をしておるわけでございまして、そういう意味からいいましても、別に唐突に中医協の権限を広げ、そして本来中医協で扱うべきものでないものを中医協で扱ってもらう、こういうことにはならないというように考えております。
  191. 大橋敏雄

    ○大橋委員 ということは、結局自由診療と保険診療との線引きをやるということに理解していいのですね。  それじゃ次に移りますが、歯科医療に関しまして最後になるのですけれども厚生省は、保険診療にかかわる給付につきましては通常必要とする診療という指導をとってきておるわけでございますけれども、歯科医療の医学医術の進歩というものは大変目覚ましいものだ、通常必要と思われる診療がかなりあるわけだけれども、保険に導入されてないというのがたくさんある。普通の医科といいますか、それと歯科とはそういう意味でも大変な開きがあるのだ。一般の医科の方は保険給付が相当に進んでいる。歯科の方は保険給付が非常に限られておる。まさに、今回の高度先端医療技術云々というような制度は、医科と歯科の格差をいよいよ開いていくようにしていくんじゃないか、こういう疑問でございましたが、いかがですか。
  192. 吉村仁

    ○吉村政府委員 たびたび申し上げましたように、保険診療と保険外診療との調整を図ろうといつ制度でございますので、今おっしゃられるように医科の場合はその両者の開きが少ないけれども、歯科の場合はその両者の差が広いから、これを認めればますます歯科においては保険診療部分というのが狭くなっていくんではないかという危惧は私は当たらないと思います。私ども繰り返し言いますように、保険診療として必要でありかつ適切な診療につきましては、保険に取り入れていくという姿勢は従来と同じように崩しておりませんので、それはどんどん取り入れていく。しかし、どうしても取り入れ切れないようなものについて、これは差額徴収あるいは特定療養費制度を利用してその部分だけを患者負担にしていただこうというわけですから、格差が広がるというようには思えません。それからまた、格差が広がるようですと、中医協でもってひとつそれは議論をしていただければ、そういう不公平がもし生ずるとしましても十分是正の機会はある、私はこういうように考えております。
  193. 大橋敏雄

    ○大橋委員 もう時間が目前に迫りましたので、最後的になるのですが、実は医療費の適正化、合理化問題があらゆる立場から今日まで論議されてきたわけですね。合理化あるいはむだの排除、これは非常に重要な問題でございますが、一体何がむだなのかということは、医学的見地に立った場合と保険経済の立場から見た場合は必ずしも一致しないというのですよね。私はこれは非常に大事な意見だと思って聞いてきたわけでございますが、保険財政の立場からのみ合理化を強行していく余り、肝心な重要な医療サービス面までに悪影響を及ぼすようなことになっては大変だと、私は特段の配慮を要請するところでございますけれども、例えば医療保険制度の改革が、仮に今度一部負担等が導入されたと仮定しましょう。そうしますと、当然医療機関の窓口というものは徴収事務等が複雑化、煩雑化してくるわけですね。そのために大事なお医者さんの手がとられたり、あるいは計算ミスがあってみたりというような問題が生じてくるのではないか。したがいまして、一面ではそういう合理化を図っていかなきゃなりませんか、むだを排除していかねばなりませんけれども、そういう肝心な医療サービス面にそのしわ寄せがいかないように、その窓口徴収事務等についても私は特段の工夫、配慮が必要じゃないか、こう思うのですけれども、いかがですか。
  194. 吉村仁

    ○吉村政府委員 おっしゃるとおりでございまして、医療機関の事務の軽減にはいろいろな配慮をする必要があろうかと思います。ただ、事務量の負担の軽減の基礎は、やはり現在の診療報酬の点数表にあるのだろうというように私は思っております。したがって、診療報酬の合理化ということもあわせてやっていく必要があるというように考えております。単に窓口の事務だけをどうする、こうするというような問題のほかに、今申し上げましたようなことも考えていかなきゃならぬ。また、今後コンピューターの導入というようなことも考えていく必要があろうかと思います。
  195. 大橋敏雄

    ○大橋委員 いずれにいたしましても、肝心の医者の手がそういうことに煩わされて、患者に対するサービスが低下しないように、その点は篤と要望をいたしておきます。  そこで、よく濃厚診療だとかあるいは計算ミスというのが指摘をされまして、つまり患者に払い戻しをしなきゃならぬにもかかわらずそれができていないという問題が、ついこの前の新聞でも報処されました。たまたま私が見ましたその記事は、国民健康保険ですけれども本人・家族とも七割給付である、三割を負担させられている、そういうことで、病院の診療所の窓口では自己負担分を請求されれば請求されたとおりに支払ってくる。ところが、その後国保連合会などでそれを審査したところが、これは間違いがある、濃厚診療だ、あるいは計算ミスだ、こういうことで減額査定されて、患者の負担金が当然減少されねばならないというにもかかわらずそれが放置されているという問題ですね。これは私は許されないと思うのですよ。今度窓口事務が非常に煩雑になることも予想されますので、こういう問題が起きた場合はこうするんだという明確なルールを確立していただきたい、こう思うのですけれども、最後に、大臣のお気持ちを聞かしていただきたいと思います。
  196. 渡部恒三

    渡部国務大臣 考え方先生と全く同様でございます。今回の改正案を成立させていただくことによって、直接患者を診ておる医師の皆さん方の事務量が煩雑になって、患者のサービスが少なくなるというようなことのないような配慮は、あとう限り努めてまいりたいと思います。  また、二番目の問題について、これも全く先生のお説のとおりなのでございますが、事務的にまた現実的にこれは可能なもの、またやらなければならないもの、この程度なら許しておいていただいていいではないかというような点がありますので、今後検討を続けてまいりたいと思います。
  197. 大橋敏雄

    ○大橋委員 私は、もう時間があと五分かと思っておったら、五時まではいいのだと書いてある。まだ十五分ほどあるようですから、済みませんがもう少し続けさしていただきます。  高齢化社会あるいは疾病構造の変化、医療技術の前進等々によりまして医療費の増高というものが、ある程度の増高というものは当然だと思いますが、医療費規模が国民の負担能力を上回って増加し続けるという我が国の医療費のあり方は、これはもう異常と言わなければなりません。私も国民所得の範囲内にとどめるべき努力あるいは対策が必要だ、こう思うわけでございますが、お聞きしたいことは、国民医療費の伸び、保険給付と国民所得のギャップ、これをどの程度を認められるのか、言うならば国民の負担の限界といいますか、これをどう考えておられるのか、この辺をお聞きしたいと思います。
  198. 吉村仁

    ○吉村政府委員 私ども医療費の伸びというものを国民所得の伸び程度にとどめたい、こういう気持ちを持っております。それは、毎年度必ず国民所得の伸び以下でないといかない、こういうことを毎年毎年きっちりとするということを考えておるわけではございません。また、それもできることではございません。自由診療のもと、あるいは現物給付のもと、そして出来高払い方式でございますので、そうきっちりできるはずはない。ある場合には国民所得の伸びを上回る場合もあるでしょうし、低まるときもあるでしょう。だけれども、中長期的に見まして国民所得の伸びというようなものの程度にとどめたい、こういうことでございます。  それはどういうことかといいますと、結局国民所得の中で医療に対する保険料率というものをこれ以上上げたくない、こういうことでございまして、現在国民所得に対して租税、それから社会保障負担率というのは三五%、それを中身を分けてみますと、二五%が租税負担率、そして五%がざっと医療に関する負担率、それから五%が年金の負担率、ざっと言いますとそういうことでございます。その三五が幾らぐらいになるか、こういいますと、年金だけを取り上げてみましても現在の二倍半ぐらいにはなる、こういうことでございますので、年金の負担率というものは国民所得に対して、今の五の二倍半ぐらいですから一二、三ぐらいにはなるであろう。そういたしますと、租税の二五、医療の五をこのままにしておきましても、全体の租税、社会保障負担率というのは四二、三になるだろう。臨調の答申では、諸外国のように、西欧先進国のようにこの租税並びに社会保障負担率というのが五〇になっちゃいけないんだ、これは社会の活力を失うから、まあせいぜい四五あるいは四二、三のところが適当なんではないかというような、臨調の委員先生方の考え方としてはそういうところが頭の中にある。そういたしますと、先ほどの例で言いますと、もう医療保険についての保険料を上げる余地はない、今のままで五でいっても、年金の保険料を上げて全体としては四二、三になっちゃう、こういうことでございますので、私どもは、国民所得の伸びの範囲内に医療費を抑えるならば、医療費に対する保険料の負担も国民所得の伸びの範囲内におさまる、そうすれば医療に関する社会保障負担率というものを上げる必要はない、したがって全体的にうまくいくんではないか、こういう大ざっぱな考え方でございます。
  199. 大橋敏雄

    ○大橋委員 今の御説明によりますと、いわゆる租税がもう二五だ、現在年金は五だけれども、将来見通していくと一二ないしは一三になる。そうすると、現在の医療の五は大体現状程度でいかない限りは、合わせた負担というものは大変な率になるというようなお話したと思うわけでございますが、そうして見ますと、先般厚生省提出されておりました資料の中に、「無理のない国民負担」ということで、現在国民一人当たりの医療費というものは昭和五十八年度で十二万余円である。あるいは夫婦子供二人の平均家庭では約五十万になっている。それを率で見ていくと、労使の保険料が五四%、いわゆる税金が国と地方を合わせて三五%、自己負担が一一%、このようになっている、こういう状況の中であって、現在が精いっぱいではないかというふうな内容で示されているわけでございますが、そうなってきた場合に、じゃどこをどう省いていけばいいのかということになっていくわけですね。その点についてはどうお考えですか。
  200. 吉村仁

    ○吉村政府委員 まず、医療費の中のむだな部分というのはこれは徹底的に排除する必要があろう、こう思います。それから、医療費を投入いたしましても余り日本人の健康の水準を上げることにならないような、そういう部門に幾ら投入しても私はこれはむだだというように思います。それから、むしろ将来の健康の水準を引き上げるようなものについては、これは若干の投入をしたからといって、将来の効果というものがあらわれるわけですから、そういうものは投入すべきだろうというように思います。  私ども、今回の提案をいたしまして、医療費の適正化については徹底的にこれは今後も進めてまいります。けさからの話しにもございましたような、先ほどからのお話にありましたような薬価基準の適正化、それから薬剤使用の適正化、こういうようなものもどんどん進めていく、そして本当に技術が報われるような医療費の構成にしていく、こういうことでひとつ診療報酬なり薬価基準の適正化の路線というものを進めてまいります。また、指導監査というようなものを通じまして、本当に濃厚診療だとかむだな診療だとかいうものはこれはやはりなくしていく必要がある、そうして審査等につきましても厳正に対処をする、こういうことで医療費の適正化を図りたいと思いますし、また、定率の一部負担をやることがひとつ医療費についてのコスト意識も持たせますし、自分の健康についての自覚も高めますし、それから医療費が幾らかかったかということがわかるということを通じまして、医療費についての透明度みたいなものを高める。そして効率化される。私は本当にそういう効果があるというように信じておるわけであります。  したがって、この定率一部負担をやることによって医療費の適正化、そして、先ほど申し上げましたような医療費の伸びを国民所得の伸びの程度にとどめる一つの有力な手段になるのではないか、こういうように考えておるわけであります。
  201. 大橋敏雄

    ○大橋委員 厚生省は初め、医療政策の中長期ビジョン等も示さないまま、被用者本人の給付を削減するということを全面的に打ち出してきましたね。そういうことで、医療費の抑制手段というものを国民あるいは患者の方に求めてきた。そこに実は大きな問題があったわけです。  今もお話しがあっておりますように、一割を負担させることによっていろいろな効果が出てくるのではないかということですけれども、要するに一割負担をさせることによる受診抑制といいますか、こういうねらいがあるのではないかと思うわけでございますが、私がそのことをやっぱり心配しまして、いろいろと調査をしてみたんですが、昭和二十九年度から昭和五十八年度の約三十年間ですけれども、これにおける医療費の伸びを見てみますと実に六十倍でございました。国民所得の伸びは三十倍。これに比べまして受診率はわずか三・四倍なんですよね。ということは、一割負担による受診抑制をねらったというそのねらいがあったということであるならば、私はこれは的外れだ、こういうふうに思うのでございますが、どうなんですか。
  202. 吉村仁

    ○吉村政府委員 私どもは、一部負担を課することによって受診率が大きく影響を受ける、こういうことはないというように思っておりますし、一部負担、小さな一部負担で影響を受けるような受診率なら、まあ若干受けたからといって健康や生命に影響するものではないというように私は思うのでありますが、したがって受診率には影響はない。ただ、投薬や注射等につきましてはその量というようなものが縮小をされる、こういうように思います。ですから、医療費全体の量は私は減ると思いますが、受診率に影響があるというようには考えていないわけです。
  203. 大橋敏雄

    ○大橋委員 じゃ、もう最後になりますので大臣にお尋ねしますが、今、局長は、受診率云々という問題ではないと言うからには、じゃ一割負担をさした場合に社会全体に対するメリットというものはどういうものか、こういうようなものをもっとはっきりさせてもらいたいですね。これが出てこない限りは国民は納得せぬですよ。大変に失礼な言い方になるかもしれませんが、今回の改革案というものは、最初に申し上げました医療保険制度の抜本的改革という立場からは極めてあいまいな内容での提案であった、こういうことを強く指摘をして、私の質問を終わります。  最後に、大臣から一言。
  204. 渡部恒三

    渡部国務大臣 今お話しがありましたように、この一割負担をお願いすることによって必要な受診は妨げるようなことはない。ただ、今まで過剰診療であるとか薬づけであるとか検査づけであるとか濃厚診療とか、いろいろ言われてまいりましたが、やはり患者の皆さんがそれぞれ健康の自己管理に努力され、医療費というものが明らかになり、医療費の適正化ということには非常に役に立つものだと考えております。  また、大きな意味で、このことによって国民全体でどういうふうに役に立つんだというお話してありますが、これは、この一割負担を通していただくことによって、二十一世紀の将来にまで、被用者保険加入者の皆さん方の保険料率をこれ以上上げないで済む、これは非常に大事なことでありますが、租税負担、また社会保障負担、これは積極政治が行われることによって、積極行政が行われることによってどんどんふえていくのはやむを得ないのでありますが、これが五〇%を超えるというようなことになったのでは、働く人たちの生きがい、働くことによっての活性化ということを考えますと、やはり租税負担にもあるいは社会保障負担にもおのずから限界がある。二十一世紀の将来にわたって高齢化社会が行われる中で、しかも医療保険というものの制度を持続しながらなおかつ社会の活性化を保っていく、大きな意味では国民の皆さん全体にとっての負担をできるだけ軽くする、これによって患者の皆さん方に一部御負担はお願いするけれども、保険料率は上げないし、また、同じ国民の租税負担によって行われるところの国からの財政をどんどんどんどん入れていくというようなこともなくて済むようにということでございますので、一部御負担をいただく患者の皆さん方には大変恐縮でございますが、全体としては、被用者保険加入者の皆さん方にも国民全体にとってもこれは必ず役に立っていくということを、私ども確信をいたしておりますので、先生にも御賛同をお願いしたいと思います。
  205. 大橋敏雄

    ○大橋委員 終わります。
  206. 愛知和男

    ○愛知委員長代理 塩田晋君。
  207. 塩田晋

    ○塩田委員 中曽根内閣の命運がかかっておると言われております健康保険法の改正法案につきまして、大臣の率直な御意見、御答弁をいただきたいと思います。  私たちは、この社会労働委員会におきましてかなりの時間をかけて審議をいたしてまいりました。政府側の御答弁をいただくにつれて、なお一層、私たちの基本的な態度、これはかたくならざるを得ない。現在の政府の原案に固執される限り、私たちはこれに賛同するわけに、まいりません。ぜひとも今日は、この法案を撤回をされまして出直しをしていただきたい、この委員会を通じて審議されました内容を踏まえて再検討されまして、出し直してもらいたい、これが民社党の基本的立場でございますので、最初に申し上げておきたいと思います。  また、我々といたしましては、反対のための反対、何でも反対という立場をとっておりません。現代の国民の医療につきましていろいろな問題が山積しておる。その問題を一つ一つ建設的に、また責任を分かち合いながらこれを解決していくという意欲を持っておるわけでございます。したがいまして、我々が指摘いたしました問題点につきましては、十分に謙虚にこれを再検討していただきまして、ぜひとも出し直すときは大修正をして出していただきたい。国民の部部分が納得のいくようなものにして出し直していただきたい。このことを強く要望するものでございます。  その理由につきましては、もう再三ここで申し上げましたので改めて申し上げませんけれども、今回の法案は、国民医療をいかにするかという長期ビジョンの上に立っての改正案ではない。財政調整がまず前提にされておる改正案であり、そして当面のつじつま合わせ、金あるいは数字のつじつま合わせということにすぎないというものでございますので、我々は反対である。また、国民大衆に自己負担を強いるものだという内容が柱でございます。したがいまして、こういったところから強く反対をして撤回を求めるものでございます。     〔愛知委員長代理退席、委員長着席〕  なお、これについての修正の話も与党からきょう提案されておりますけれども、一部我々の要望してきた点を入れてはおるといいましても、大部分のものにつきましては、これを納得できるものではございません。大臣といたしましてこの法案を撤回をして出し直すという御意思があるかないか、これを改めて確認をしておきたいのでございます。そして、なお、修正、大修正というものにつきましてどのようにお考えか、改めて確認をしたいと思います。お答え願います。
  208. 渡部恒三

    渡部国務大臣 お言葉を返して大変恐縮でございますが、私どもは、今日我が国が置かれておる現状、経済の高度成長も将来望めませんし、また、国の財政が大変厳しい状態にあることは先生御案内のとおりであります。また、御案内のように高齢化社会というものが足音立てて近づいてまいります。そういう現状認識の中で、二十一世紀の将来にわたってまで、国民の皆さんが安心して健康を守っていくこの皆保険制度というものを持続していくためには、何としてもこの健康保険制度の改革が極めて緊急な課題であるということで、今回の改正案を出しております。  この改正案は、負担と給付の公平化を図り、この国会でも幾たびか望まれておるところの医療費の適正化を進め、しかも、今後二十一世紀にわたって現在の医療保険の保険料率を上げないで済むという方向の中で、患者の皆さん方に定率で一部御負担をお願いするということでありますが、この一部御負担についても、そのことによって健全なサラリーマン家庭の家計が破壊されたり生活が破壊されたりすることのないように、十分に私どもこれは十分に考え抜いて出しておる法案でございますので、どうぞ私どもが出しておる政府原案どおりひとつ成立させていただくように、国民の健康を守っていかなければならない厚生大臣として、私はぜひこれは御了承を賜りたいと思います。
  209. 塩田晋

    ○塩田委員 今この段階に至りましても、なお政府原案に固執をして態度を変えられない厚生大臣のお立場、これに対しまして我々はあくまでも反対をし、この法案の撤回を強く求めるものでございます。国民の良識を代表し、知性と勇気の民社党が、今、社会党、公明党とともにこの法案に強く反対しているということを、ひとつなぜかということをよく考えていただきたいと思います。反省をお願いする次第でございます。  そこで、現在健康保険法案に対しまして国民各層が非常な関心を持ち、医療関係者を初めといたしまして各種団体、サラリーマン、勤労者、ほとんどの人がこの法案に対しまして反対の意思を表明いたしております。この状況につきましては、厚生省当局も十分に把握をしておられると思います。  現在、国民医療につきましては多くの問題が山積しておる、課題を抱えておる、そして国民各層からいろいろな要請があるということは御存じのとおりでありまして、厚生省はそういった課題、要請をどのように把握しておられるか、これに対してどう対処しようとしておられるか、各個別に御説明をいただきたいと思います。
  210. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 三師会を初めといたしますいろいろな医療関係者団体、患者の団体におきましては、それぞれの性格に応じましていろいろな課題を有し、また厚生行政に対しましても各種の要望か寄せられておるところでございます。まず患者団体でございますけれども、これは何といっても、一番の御期待は、原因を解明いたしまして治療方法を開発するということであろうかと存じます。二番目には、やはり医療費の患者負担の軽減であろうかと存じます。  三師会てございますけれども、ちょっとこれは甚だ申し上げにくいのでございますが、御審議をいただいておりますところの健康保険法の一部改正につきましては、どうも賛成ではないようであります。そのほか、診療報酬につきましては技術料を適正に評価すること等々ございます。医師数、歯科医師数、薬剤師数を抑制することなどがございます。特徴あるものといたしましては、日本歯科医師会では歯科医師の卒後研修、卒後の臨床研修の制度を確立すべきである、こういう御意見をお持ちであります。また薬剤師会では、薬剤師の質の向上をもっと図らなければいかぬ、医薬分業を推進すべきである、こういう御意見をお持ちでございます。  また病院団体は、特徴あるものといたしましては医療従事者の確保ということを言っておられますが、その中で准看の制度というものを堅持すべきである、こういう御意見でございます。一方、日本看護協会では、看護教育の充実とともに准看護婦制度は廃止すべきである、こういう御意見でございます。  幾つか事例を申し上げましたように、各団体の性格に応じましていろいろ多様でございます。場合によっては反対の御意見もあるのでございますが、これはそれぞれの団体の立場から、我が国の医療のより適正なる普及向上を期待する、そういう趣旨に基づいたものであると私どもは理解いたしておりまして、厚生省といたしましても、今後これらの団体等の意見に十分耳を傾けまして、医療行政の推進に努めてまいる所存でございます。
  211. 塩田晋

    ○塩田委員 今、各種団体あるいは国民各層のこの健保法案あるいは国民医療制度に対する課題あるいはこれに対する要望、こういうものの厚生省で把握しておられるものについての御説明があり、その態度表明があったわけでございますが、もう少し、このほかに例えば柔道整復師、歯科技工士、レントゲン技師あるいはマッサージ療術関係、こういったところからどういう要望があり、どう対処しようとしておられるか、お伺いします。
  212. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 柔道整復師会におかれましては、養成施設の新増設というのは抑制すべきであるなどの御意見をお持ちでございます。  日本歯科技工士会におかれましては、歯科技工料金というものを点数化すべきである、歯科技工士養成所の短大化を図るべきであるというような御意見をお持ちでございます。  日本鍼灸マッサージ師会におかれましては、無資格あんま業の取り締まり、養成施設の新増設の抑制などの御意見をお持ちでございます。  それで、これらに対する対応でございますけれども、先ほども申し上げましたが、それぞれの立場からの貴重な御意見でございます。なかなか難しいものもございますけれども、できるだけ御意見を聞きまして対処してまいりたい所存でございます。
  213. 塩田晋

    ○塩田委員 国民各層、医療サービスを受ける側からの各種の要望、また医療に従事する関係者皆さん方のいろいろな御要望が強く出ているわけでございます。こういった問題につきまして、真剣にこの課題解決のために取り組んでいただきたいと思います。厚生大臣、いかがでございますか。
  214. 渡部恒三

    渡部国務大臣 今政府委員からお話しのありました医療関係の組織や団体のそれぞれの立場で求められておる私どもに対する意見、これは傾聴すべきものはできるだけ傾聴し、そして実現するように努力してまいりたいと思います。  ただ、全体の政治の中で、やはりどのような立派な組織あるいは集団、これは地域でもやはり地域地域だけのことを、あるいは一つの組織や集団はその集団の皆さん方だけの問題で物を考えますから、それぞれの人たち要望は当然でありますが、国全体の問題になりますと、これは私ども政治家でありますから、時には勇を奮って、反対の御意見をちょうだいしておる問題でも、政治家というものは、二十一世紀の将来について、場合によっては毀誉褒貶を捨てても国民のためにやるべきことはやらなけれはならないのでありますから、これは御容赦を賜りたいと思います。
  215. 塩田晋

    ○塩田委員 いろいろな要望がありますが、その中でも、この委員会でたびたび議論をされ、また大臣御自身も最近発言をされた問題で、医師、歯科医師の強い関心事であります診療報酬の単価アップにつきまして、大臣はどのように対処されますか、お伺いいたします。
  216. 渡部恒三

    渡部国務大臣 診療報酬の問題については、この委員会でもたびたび貴重な御意見をちょうだいしております。ある人に言わせれば、現在の技術料についての評価が低過ぎるために、逆に結果としては薬づけ医療とかあるいは検査づけ医療というような悪い方向に行っておるのではないかというような御議論等もございます。いずれにしましても、やはりこの辺で、診療報酬費というものを技術料の評価という中で見直すべきでないかという大方の意見でございますので、これは中医協で、そういうための学問的な、専門的な立場で御検討をいただいておりますので、この御検討の推移を見ながら、私どももやはり、二十一世紀の将来の医療というものが求めておる医師の努力というもの、医師のすぐれたる資質というものが認められるような方向に努力をしていかなければならないと考えております。
  217. 塩田晋

    ○塩田委員 大臣は、この問題につきましては前向きの御答弁でございます。しかるべきときには一大決断をして、この問題に大胆に取り組んでいただきたい、このように強く要望いたします。  病気あるいは療養の不安をなくする医療保障の確立を私たちは求めておるところでございます。山積する課題、今まで説明のございましたものはもちろん解決に最大努力をしていただきたいと思いますが、なお触れられておられないところにつきまして私は特に申し上げたいと思います。  我が国の医療保険の最大の欠陥は、これが制度内あるいは制度間におきまして保険給付に大きな格差がある、また保険料負担におきましても格差があるということでございます。この格差の解消、これがやはり将来ビジョンを持って明確に国民の合意を得られる形で描かれなければならない、そして、それに向かっての国民総力挙げての努力が必要だと思います。細かいことになりますといろいろとございます。出産手当金にいたしましても、傷病手当金の給付率を見ましても、共済八割、健保六割、国保はない、こういった大きな格差もあるわけでございます。  また、現在の大きな医療問題の一つは、医療費が著しく増高をしてきているという中で、これをいかにして適正な水準にするかということであり、適正な医療サービスが行われる、また保険の給付が行われるということでございました。その適正化のためにはいろいろなやり方があると思うのです。厚生省の御説明を聞きますと、患者に一割負担してもらえば医療費の適正化が図られるのだ、乱診乱療が防げるのだ、こういう御説明でございますが、言うならば患者はお医者さんに対しましてまないたの上のコイという形で、それこそ裸になって今からすべてを預けるという中で、お医者さんのいわゆる仁術、人間に対する限りない愛情と尊敬の中で医療が行われる、そういう患者と医師との間のすぐれた人間関係、信頼関係の上に医療サービスが行われる、その上に、出来高払い制度を含めまして現在の医療制度が成り立っておると私は思うのでございます。したがって、大部分の方はそういった良心の上に立ってこれをやっていただいておる、信頼関係ができている、その中で国民の十五兆円になんなんとする医療費が支出され、医療サービスが行われている、このように思うのでございますが、残念ながら、目に余る乱診乱療ということも中にはあるわけでございます。  これにつきましては、参考人の意見聴取をした際にもお尋ねいたしましたが、医師代表の方からも、率直にそれを認められて、不心得者に対しては自浄努力をしなければならない、このことを発言されました。また、それとともに、厚生省といたしましても、やはり権威ある、いわゆる医療Gメンといいますか、審査機構というものを確立して、機能を充実していくということがぜひとも必要であると思うわけでございます。  また同時に、保険外の負担というものがかなり家計を圧迫している。特に差額ベッドとかあるいは付添看護料といった、そのほかにも雑費がいろいろ要ります。これは大変な家計の負担でございます。保険で見てもらえないものがたくさんあるわけでございまして、本当に一家で病人を出して、特に長期入院患者を出した場合には大変な家計の圧迫であり、この生活苦はまさに金銭だけでなくして心労が重なってくるものでございます。こういった問題が残されております。  また、国民皆保険体制というにもかかわりませず、緊急医療の体制が未整備であるとかあるいは無医地域がまだ存在している。東京都の中にもあるぐらいです、離島等におきましてもう本当に全国各地を見ますと無医地区がある。それから各地の病院におきましても、看護婦が足らない、なり手がない、こういった問題がますますひどくなってくるわけでございますから、こういった問題にやはり対処しなければならない問題がございます。  それから、数えれば数限りないものがございます。難病患者として苦しんでおる人たち、血友病を初めといたしまして幾つもの難病で悩んでおられる方、この人たちの苦しみというものは本当に国として何とか対策をしなければならない、こういう問題が残っております。  また、医師の養成の見直し、たびたびここでも問題になりましたし、我が党の塚本書記長が予算委員会でも早くから取り上げて、この問題について要請をしてきています。そして将来の医療体制、医師の養成というものにつきまして今から早く手を打っておかないと取り返しがつかなくなるし、そしてまた、地域での医療体制をどう確保するか、いろいろな問題がまだまだ山積しておるわけでございます。  その中におきまして、今回の非常に性急な、内容が国民各層にも受け入れられない、野党の各党もこれは困るという自己負担を導入した、財政調整を主たる目的としたような現在の政府提案でございますので、我々は強くこれに反対しておるわけでございます。この点をひとつぜひともよくよく御理解をいただきたい、こう思うのでございますが、いかがでございますか。
  218. 渡部恒三

    渡部国務大臣 先生の御指摘、一つ一つ大変ごもっともな御意見であり、私ども国民の健康を守る医療行政を担当する立場で、できるだけそのことを尊重しながらこれを実現していかなければならないと考えております。  ただ、またお言葉を返すようになりますが、そのこととこの健保法の改正案の問題は別の問題でありまして、むしろ私どもは、先生がそういう御指摘になられるようないろんな問題を考慮しながら、国民の健康を守るための医療行政というものをより充実させるために、今回の改正案を提出し、できるだけ早く成立させていただくようにお願いしているわけでございます。
  219. 塩田晋

    ○塩田委員 今回の改正案の一番大きな柱でありますところの定率の自己負担、被用者保険本人の自己負担、これにつきましてかなり細かく私も本委員会で追及をしてまいりました。改めて確認をしておきたいと思いますが、定率の自己負担を導入された理由、これをまとめて局長からお答えいただきたいと思います。
  220. 吉村仁

    ○吉村政府委員 私どもは、一つは、将来全国民の給付率を等しくしたい、こう思っております。今回の本人についての定率一部負担の導入はそれへの第一ステップだ、こう考えております。それが第一でございます。  第二は、現在の一部負担ではなかなか医療費の総額がわからない、そして医療費についてのコスト意識というものが高くならない、また医療費全体についての透明度というものが必ずしも高くない、そういう欠点がございます。そういうものを是正するのは定率一部負担が一番よろしいのではないかというのが第二の理由であります。  それから第三は、今後の保険料の引き上げというようなものを考えましたときに、定率一部負担を入れるならば保険料の引き上げというのがそれほど大きくならない、そして保険料率は引き上げる必要はないのではないか、こういうような観点がございます。  それから第四番目といたしましては、やはりみずからの健康はみずからが守るという健康についての自覚というようなもの、そういう意識を高くすることができる、そういうような理由から今回の定率一部負担の導入を提案しておるわけでございます。
  221. 塩田晋

    ○塩田委員 それでは、定額でなくて定率でなければ今のような目的が達せられないのでございますか。
  222. 吉村仁

    ○吉村政府委員 私は達せられないというように思っております。
  223. 塩田晋

    ○塩田委員 老人保健の審議をいたしましたときに、あれは定額でもそういった目的は達せられるということの御説明があったと思います。  それから、コスト意識という面では一割というのはわかります。十倍すれば金額はわかるわけですね。また計算も簡単だし、まあだれでもできる。これが二割になりますと、五倍するというのはそう簡単に計算できません。また十倍して二で割らなければいけないとかそういう問題がありますが、コスト意識ということは相当大きなウエートを持っておるわけでございますか。
  224. 吉村仁

    ○吉村政府委員 定率と定額の違いというのは、やはりコスト意識を持って医療費の効率化に資するかどうか、そこが一番の違いではないかと私どもは思っておるわけでございます。  定額の一部負担では、きょう幾らの医療費がかかったかというのは絶対にわからない。定率だと、確かに二割だと五倍で、すぐ簡単には出ないとは申しますものの、五倍すればきょうの医療費はわかる。それはもう自明のことでございますが、定額の一部負担であると、きょう私についての医療費が幾らかかったかというのは絶対にわからない、そこが違うと思います。したがってコスト意識の喚起、医療費の効率化につながる道としては定率の一部負担の方が効果がある、こういうように思います。
  225. 塩田晋

    ○塩田委員 先ほど言われました四点、その最後のところにあった問題ですけれども、それは定額でも同じじゃないですか。また、老人保健法のときには定額で、これが抑制につながるんだというお話しがあったと思います。払う側から言いますと、定率よりは定額の方が生活設計といいますかめどが立ちやすい。病院に行くにも幾ら持っていけばそれでいいんだというめどが立ちますね。定率の場合はわかりませんね。いかがですか。
  226. 吉村仁

    ○吉村政府委員 それはそのとおりだと思います。
  227. 塩田晋

    ○塩田委員 そこで私は、先ほどから申し上げておりますように、今回の法案の一番の柱である自己負担一割を撤回してもらいたいということを言っておるわけでございますが、この撤回した場合にどのような影響が出るか。特に財政的な面としてどのような影響が出てくるか。これは国庫負担だけを見ますと二百九十三億円ですね。この波及効果その他がいろいろとどういうふうになっていくのか、取り上げた場合。いや、私は撤回を要求しておるわけです。撤回した場合ですね。
  228. 吉村仁

    ○吉村政府委員 まず、医療費は千四百億ばかりふえる計算になります。それから保険料は二千八百十億ふえることに相なります。それから国庫負担は二百九十三億ふえる、こういうことになります。そして患者負担は千七百億減る、こういうことになります。定率の一部負担をやめれば、今言いましたようなことになるわけでございます。
  229. 塩田晋

    ○塩田委員 保険料が二千八百億円ふえるというのは、波及効果から来る問題でございましょう。
  230. 吉村仁

    ○吉村政府委員 それだけではございませんで、給付費が十割の場合は十割分についての保険料を取らなければならぬ、こういうことになりますし、九割の場合は、医療費そのものが圧縮されると同時に、その圧縮された医療費の九割を医療給付にすればよろしいわけですから、それだけ保険料が減る、こういうことになるわけでございます。
  231. 塩田晋

    ○塩田委員 患者負担が千七百億円減り、初診料八百円の分が現行のままになりますと、どれくらいの影響が出ますか。
  232. 吉村仁

    ○吉村政府委員 今申し上げました数字は、現行の場合と九割給付にした場合の比較をしておるわけでございます。ですから、仮にもとに戻して考えるとすれば、七百六十一億の患者負担であった、現行のままでいけば七百六十一億の患者負担。それが今回九割給付で改正をいたしますと二千四百六十二億の患者負担になる。したがって増加額が千七百億ということでございます。
  233. 塩田晋

    ○塩田委員 この点はどういう影響があるかということにつきましては、保険料あるいは医療費についてのふえ方につきまして問題はあると思いますが、これ以上の議論の時間がございませんので、この辺にしておきたいと思います。いずれにいたしましても、何らかの財政的な措置をすればこの一割負担が避けられるということでございます。金額についてはまだまだ検討の余地があると思いますが、私は減ると思います。  次に、高額療養費制度についてでございますが、これの根拠は何でございますか。法令上の根拠です。
  234. 吉村仁

    ○吉村政府委員 法律の根拠は健康保険法の四十四条の三でございますし、高額療養費制度を創設した趣旨は、家族や国保の場合には三割負担あるいは二割負担でございますので、二割分が非常に大きな額になる場合もある。それを一定限度で頭打ちにしようというのが高額療養費制度の趣旨でございます。
  235. 塩田晋

    ○塩田委員 これは健康保険法の関係、国民健康保険の関係、両方ございますね。  そこで、この高額療養費制度というのは大臣の権限で金額が決められるということでございますが、これが創設されたのはいつでございますか。
  236. 吉村仁

    ○吉村政府委員 昭和四十八年の十月からでございます。
  237. 塩田晋

    ○塩田委員 その四十八年の十月には本人の自己負担はゼロですね。それから被用者保険の家族につきましては、七割、八割の給付率ですから二割、三割の負担がある。国民健保につきましては三割という自己負担があるわけですね。それで当時は、医療費が月に五十万かかろうと百万かかろうとこれは払っておったわけです。払っておったけれども、この創設された四十八年の十月からは、当時は三万円ですか、三万円が最高額でそれ以上は保険で見ます、こういうふうになったわけですね。これは大変な善政であり、患者にとっては高額の療養費を負担してもらえるということで大変喜ばれたものだと思うのです。そうですね、それでよろしゅうございますか。
  238. 吉村仁

    ○吉村政府委員 大朗報だったと思います。
  239. 塩田晋

    ○塩田委員 ところで、この高額療養費制度は、現行の制度の中におきまして、これは被用者保険におきましては家族、もちろん国民健保は本人・家族ともこれがすっぽり適用されると同時に、被用者保険の本人も適用されておりますね、現在の高額療養費制度は。
  240. 吉村仁

    ○吉村政府委員 低所得被保険者の場合の一部負担というのが一万五千円でございまして、本人の場合には、この低所得者の場合に一万五千円を超える場合には適用をされる、こういうことに法制上はなっております。
  241. 塩田晋

    ○塩田委員 今一万五千円と初診料の八百円を加えれば一万五千八百円、これがある場合には出てきますね、低所得者の場合。
  242. 吉村仁

    ○吉村政府委員 そのとおりでございます。
  243. 塩田晋

    ○塩田委員 そこで、高額療養費につきまして四十八年に創設されたときは、今申し上げましたように大変喜ばれた。確かに大変な医療費の負担の軽減だったと思うのですね。ところが、今回の場合これは本人が入っていますね。被用者保険の大人が入っているということを今確認しました。今回は一割負担という政府原案ですと、これはもろに本人にかかりますね。件数、多くなりますね。どれくらいの件数になりますか。現在の制度のもとでは本人は幾ら、この法改正のもとに一割負担の場合はどれくらいを見込んでいるか、これは予算上見たはずです。幾らですか。
  244. 吉村仁

    ○吉村政府委員 しばらく時間をかしていただきたいと思います。
  245. 塩田晋

    ○塩田委員 数字は後から出していただいて結構ですが、現在はほとんどない。しかし、制度的にはありますし、ないとは言えない。何人かあります。あるはずですね。しかし、今度の一割なり二割負担となってきますとこれが相当な件数になり、相当な金額になるということはお認めになりますか。
  246. 吉村仁

    ○吉村政府委員 それほど私どもは相当な金額になるとは思っておりません。例えば五十七年度における政府管掌の健康保険について、高額療養費の支給額というのは四百八十億ぐらいでございます。したがって、これは大体ざっと言いまして、家族についての高額療養費の支給がほとんどを占めていると思います。で、現在、家族と本人というのは政府管掌においては大体同じぐらいの数字でございます。したがって、もし五十七年度並みでいきまして高額療養費支給額を考えましても、まあ四百八十億円を給付費として上回ることはないように私どもは思います。
  247. 塩田晋

    ○塩田委員 この点は、四十八年の制度開設のときと今回の適用の仕方から見まして件数はふえる、そして例えば現行の五万一千円のままとした場合に、改正は五万四千円ですね、そうした場合に、今までは本人はゼロですが、月に五万四千ということは、これは一年間療養した人は年間六十五万になるでしょう。ゼロの負担であったものが一挙に、この法律が成立すれば六十五万も払わなければならない。言うならばこれは新たな税金ですね。実際払わなければならない。これは大変なことじゃないですか。
  248. 吉村仁

    ○吉村政府委員 それは確かに大変なことであることは事実だと思いますし、今まで払わなかったものを払うという意味においてはそれは大変なことだと思います。それは従来家族の場合でもそれだけの負担をしておるわけでありますから、本人について新たにそういう事態になるというだけでございます。
  249. 塩田晋

    ○塩田委員 私はそこを申し上げておるのです。四十八年のときは今まで何百万、何千万――何千万はそんなに件数としてないかもわかりませんが、何十万、何百万と払っておった人が、これが当時三万円ですから最高三十六万円で済むようになったのです。いいですか、非常な軽減でしょう。ところが今回の場合は、ゼロであった人が六十五万払わなければならないという新たな支出をしなければならない。しかも家計の主たる者が寝込んでしまってこれを払わなければならないという、そこは大変な違いですよ。同じ高額療養費の制度だといっても大変な違いだということです。おわかりでしょう。
  250. 吉村仁

    ○吉村政府委員 よくわかります。ただ、要するに定率の一部負担を今度課した場合に、例えば百万円の医療費がかかった場合には十万円の負担になる。したがってそれを五万四千円で打ちどめにしたい、こういうのがこの制度の目的でございます。確かに家族の場合は三割を全部負担しておったのを、高額療養費制度を設けたことによって一部負担の頭打ちを設けて、これは家族にとって大朗報であったであろうと私は思います。  それから、今度本人について一割をやるということは、これはひとつ先ほど申し上げましたような趣旨で一割の負担をお願いをしたい、こう思っておるわけですが、最近いろいろな医療費が高くなっておりまして、百万円かかるとかあるいは二百万円かかる、あるいは一千万円かかるような場合もございます。その一割ということになれば、一千万かかる場合には百万円の一部負担になってしまう、それを五万四千円で限度を打ちどめにいたしたいということがこの趣旨なんでございます。
  251. 塩田晋

    ○塩田委員 今私が申し上げましたことを大臣、篤と考えていただきたいと思うのです。ここは大きい問題点です。私は、できれば現在の高額療養費制度、この法令の根拠も聞きましたが、本人、が入っておるというのを本人をとるべきだと思うのです。本人をとりまして、そして現在の患者負担ゼロというところから考え直すこと、少なくとも八百円の初診料、これを払っているところを出発点に考え直さないとこれは国民に対する大変な負担増なんですね。一割とか二割の問題を突き詰めて高額療養費で考えますと、一挙に年額六十五万という大変な負担になるということ、前と違うということですね。これをひとつ篤と考えていただきたいと思います。  もう一つ、最後にお尋ねしたいと思います。  現在高額の療養費、月間一番多いのは一体どれくらいの金額がかかっていますか。
  252. 吉村仁

    ○吉村政府委員 月最高で、はっきり覚えておりませんが二千万円以上のはあると思います。ただ、その具体的な例はちょっと持ち合わせておりませんが、健保連の調査によりますと、五百万円以上でも二百三十件になっております。それから政府管掌で申し上げますと、二百万円以上は年間件数が一万二千件と推定をされております。
  253. 塩田晋

    ○塩田委員 今御説明があったとおりでございまして、私の調べたところによりますと一千万、二千万を超えているものはかなりある。そして、今言われましたように五百万円を超えているものは二百三十、二百万円を超えているものは六千四百三十四件ですね。本人になりますとこれが加わるわけです。そして、例えば一千万円としましょう。一千万円とした場合は、一割の現在の法案あるいはまた二割ということになりますとどれぐらいの本人負担が要るか、これは計算していただけばすぐわかることで、一千万円なら月に百万円を払わなければならないのですね。これは高額療養費でということでございますが、新たな負担になるということ。  しかも、この高額療養費制度というのは五万四千円なり五万一千円以上は払わなくていいというのじゃないですね。一たん一割なり二割は払わなければならぬのです。家計の主たる担当者でしょう、被用者保険の本人というのは。その本人が倒れた、入院した。そして、医療費が一千万かかれば百万払わなければならない。払わないといけないんですよ。二百万円の人は二十万円払わなければならぬ。その金策に家計の主たる担当者が寝込んだ場合には走り回れないでしょう。家族の場合は二割、三割の負担をまた家計の主たる担当者、勤労者、サラリーマンは走り回って集めてくるわけでしょう。それでサラ金に走ったりして大変なことになるかもわからない。その金策をしないといかぬ。しかも本人、世帯主が寝込んでしまったら、金策をだれがやるんですか。これは大変なことです。大変な社会問題になりますよ。その金策をどうするんですか。世帯更生資金を借りるということも言われますが、これはもう低所得者層で条件が厳しいですね。二百万、百万、あるいは何十万という金を調達しなければ高額療養費にもかかれない。御承知のとおり高額療養費は三カ月後に償還されるんですね。払わなければ償還してくれないのです。金策を一体だれがやるんですか。そういうローン制度がありますか。サラ金にまたかかるんですか。病気になって寝込んでいる人が金策を考えなければならぬというような悲惨なことを強いるんですか。この点お伺いいたしまして、善処を求めて、質問を終わります。
  254. 吉村仁

    ○吉村政府委員 従来から高額療養費は償還払い、こういうことになっておりまして、例えば公費負担医療制度の適用だとか、あるいは世帯更生資金の貸し付けたとか、あるいは地方公共団体によります貸付事業も随分普及をしておるようでございます。私ども、確かに今先生指摘のような事態が起こらないということは申し上げません。しかし、現在国民生活調査一般的な世帯で貯蓄額一世帯当たり六百万円というような数字もあるわけでございまして、いろいろな方法を講ずることによって、金策に駆けずり回って家計が破壊をするというような事態というのは非常に少ないのではないかというように私どもは思っております。
  255. 塩田晋

    ○塩田委員 これは大問題です。終わります。
  256. 有馬元治

    有馬委員長 浦井洋君。
  257. 浦井洋

    ○浦井委員 まず委員長にお断りしておきたいのですが、四月段階で健康保険のいわゆる改正案なるものを審議するときに、我々はまだまだ不服でありますけれども、当面社労委員一人当たり二時間半という枠を決めて、与野党がその限りでは合意したわけであります。我が党の残り時間は一時間五十五分でありまして、きょう私が三十五分を消化いたしますから残りは一時間二十分ですかになるわけであります。そういうことで、私は残り時間一時間五十五分を消化するということで、きょうは質問をしたいと思うわけであります。  そこで、これは保険局長か、もし御存じなければ説明員の方でも結構でありますが、乙表の場合初診料というのは何点といいますか、何円といいますか、幾らなんですか。
  258. 吉村仁

    ○吉村政府委員 百三十五点、千三百五十円でございます。
  259. 浦井洋

    ○浦井委員 今も大臣は、技術料を評価して診療報酬を上げるべきときに来ておる、そういうようなことを言われたわけでありますけれども、技術料ということになりますと、初診料とか再診料ということがストレートに今のところに結びつくわけでありますが、これは中医協マターだと言われてしまえばそうでありますが、大臣、やはりこれは考慮せざるを得ぬのでしょうね。そうしますと、今保険局長が言われましたように千三百五十円が上がるだろうと思いますが、どうでしょうか。
  260. 吉村仁

    ○吉村政府委員 中医協の問題でございますので、今即答は避けたいと思います。
  261. 浦井洋

    ○浦井委員 そういうお答えだろうと思うのです。  そこで、私、架空の数字を申し上げてみたいのですけれども、一日の診療費が千五百円以下という場合、今保険局長お答えになりましたように初診料が千三百五十円でありますから、もうあと百五十円しか残らぬわけですよね。そうしますと、一日の診療費が千五百円ということであれば、初診の場合にはそういうケースというのはほとんどあり得ないというふうに思ってよいでしょうか。
  262. 吉村仁

    ○吉村政府委員 千五百円というのはどういう意味を持つのかよくわかりませんが、初診を受けた場合にはあと百五十円ですから、何らの治療が行われないで初診の診察だけでおさまった場合にはそうでございましょうが、何か薬をもらうとか検査を受けた場合には千五百円は超えると思います。
  263. 浦井洋

    ○浦井委員 そうすると、こんなデータはないですか。初診時の一回の診療費の額が千五百円以下だという、何か比率みたいな数字はないですか。
  264. 吉村仁

    ○吉村政府委員 今持ち合わせておりませんが、少し調べてみたいと思います。
  265. 浦井洋

    ○浦井委員 そうすると、これは大体常識的に考えて、一回の診療費が千五百円で、しかもその中で初診の場合は初診料が繰り返しになりますけれども千三百五十円ということになりますと、ほとんど初診の場合に一日の診療費が千五百円以下だということはあり得ないというふうに私は断定してもよいと思うのです。逆に今度は、その次の問題は再診の場合にもこれはほとんどないでしょうね。ほとんどないと思います。この点はどうでしょうか。
  266. 吉村仁

    ○吉村政府委員 再診の場合にはかなりたくさんあるのではないか。診療科によって違うかもわかりませんが、例えば歯科の場合だとか耳鼻科あるいは眼科、そういうようなところではかなり多いのではないか。診療科によってかなりばらつきがあると思います。
  267. 浦井洋

    ○浦井委員 再診の場合、千五百円以下はどれぐらいの比率であるものなんでしょうか。
  268. 吉村仁

    ○吉村政府委員 今手元に資料を持っておりませんが、ざっとした言い方を許していただけるとすれば、一月一件当たりの金額が約一万一千円から二千円ぐらいでございます。そして診療実日数が三・五日ぐらいですから、一万二千円を三・五で割りますと、一日当たりの診療費は平均しますと大体三千円ぐらいで、一月一万一千円から二千円になる、こういう計算になると思うのです。したがって一日当たりの平均は三千円、それの半分が千五百円ですから、半分だとは申しませんが、平均的に言いますならば大体そういうふうな見当ではないかと思います。
  269. 浦井洋

    ○浦井委員 保険局長は目の子計算みたいな格好で言われたわけですが、余り数字はお持ちでないような感じでございます。これは保険局の皆さんも御承知だと思いますけれども、内科の再診料が六十五点、それから外科系の再診料が三十八点、こういうことですね。そして内科で少し簡単に診察をいたしまして、検尿をしたということで二十五点、合わせますと九十点。皆さん方の出されておるいわゆる改正案でいきますと、自己負担は一割とすればこの場合には九十円ということになるわけであります。それから今度は外科の場合で言えば、再診料が三十八点、指を一本けがをしてガーゼの交換の処置をしたということで十二点、合計五十点。これも皆さん方の出されておるいわゆる改正案では自己負担は五十円、こういうことになるわけですね。そうすると、これは百円よりは安いことは事実です。そういうことですね、この額は。
  270. 吉村仁

    ○吉村政府委員 千円以下であれば百円より必ず安くなる、そして千円から千五百円までだと百円の方が一割より安くなる、こういうことになるのだと思います。  それから、先ほどの先生の御質問について、資料を取り寄せましたので正確に申し上げます。一日当たりの診療費が千五百円以下の件数のパーセンテージでございますが、二〇・八%でございます。
  271. 浦井洋

    ○浦井委員 そういうことで、私が架空の数字を百円というようなことを一つ頭に置きながらお話しをしたわけでありますけれども、よく考えていただきたいと思うのであります。  そこで、少し用意してきたものに入りたいと思うのですが、国保の問題でありますけれども、国保の保険料の収納率が非常に悪い、年々落ちてきておるということで、厚生省は収納率向上三カ年計画、三年たてば九五%に持っていきたい、こういうことでありますけれども、四十八年をピークにいたしまして何でこう年々低下しておるのか。これはやはり保険局長ですか。
  272. 吉村仁

    ○吉村政府委員 国保税の収納率が低下している原因といたしましては、一つは源泉徴収制度がないということであります。それから、都市化が進んでおりまして、都市部を中心に被保険者の把握というのがなかなか困難になっております。そしてそのために保険料の徴収も困難となっております。それから医療費の伸びが所得の伸びを上回る、こういうことで保険料の賦課額が年々高くなっている。こういうようなことから、国保税の収納率が低下しておるのではないかと推測をしております。
  273. 浦井洋

    ○浦井委員 いろいろ斜めぐらいから見られた答えが返ってくるわけでありますが、要するに保険料がずんと高くなってきておる。過去この十年ぐらいの間を見ますと、国民所得の伸びが二倍であるのに保険料は大体四・○何倍というような格好になっておるわけで、国保の保険料は高いという声はちまたに満ち満ちておるわけで、やはりそれが収納率を悪くした原因だろうと私は思うのです。  そこで皆さん方は、今回具体的な対策として「被保険者証の更新・検認時において、制度の趣旨の説明、支払履行の確認及び徴収を行う。」、こういうことを例示をされておるわけでありますけれども、私はこの方針でどんどん進みますといろいろな弊害が起こると思うわけであります。  例えば、私が住んでおります神戸で申し上げますと、あるかなり大きな団地でありますけれども、須磨区の名谷支所というところがあるのですが、そこに五千二百世帯おられる、そして七百五十世帯が滞納をしておられるということで、昨年の十二月一日に、更新時に滞納者が行きますと、保険証をお渡ししません、国保の窓口に出頭しなさいというようなはがきも来たし、なかなか渡してくれぬということであります。窓口で滞納を全額払わないと保険証を渡さぬというようなことが続発をいたしておるわけで、こういう行き過ぎたペナルティといいますか、こういうことが横行をするのではないか、このように私は危惧をするわけであります。  例えば具体的に申し上げますと、十万円滞納しておる方が一、二万円持っていったところが、保険証はもらえなかったというような話であるとか、あるいは全額を持ってきておらなかったのでその一部分のお金さえ受け取ってもらえなかったとか、非常に厳しいことを言われて、持っていったお金も出しそびれてしまったということで怒って帰る人がおるわけであります。これはよく見られる例でありまして、こういうケースを発生させてはならぬというふうに思うわけであります。  それで、保険証をたとえ交付しても、分割払いをしますという誓約書を書かせてみたり、あるいは有効期限の短縮を行ったりというようなことで、保険料の高さあるいはそれの滞納分の収納のひどさという点で大問題になっておるわけでありますけれども、こういうようなことが果たして許されるのかどうか。だから、よほど注意してやらなければならぬのではないかというふうに私は思うのですが、どうですか。
  274. 吉村仁

    ○吉村政府委員 今の制度では、保険料を納めないということを理由に被保険者証を交付しないということはできないことになっております。ただ保険料の徴収について市町村は一生懸命努力をしておるわけでございまして、国民健康保険といいましても、やはりこれは被保険者全体の相互扶助のシステムでございますので、保険料の徴収について努力をする、その窓口で保険料を納めなければ被保険者証を交付しないと言ったとすればこれは私は行き過ぎだと思いますが、いろいろな形で保険料の納付について指導をし、協力を得るという努力は市町村がやっても許されることではないか、こういうように思います。やはり権利と義務というものは相対応するものだ、こういうことで両町村の努力もひとつ温かい目で見てやっていただきたい、こう思います。
  275. 浦井洋

    ○浦井委員 こういう滞納をなくする、収納率を上げることを真の意味でやるためには、保険料が適正でなければならぬ、払えるような保険料でなければならぬ、こういうことだと私は思うわけであります。ところが、先ほどからもいろいろとお話しがありましたように、今回のあなた方の出されたいわゆる改正案は、五十九年度のベースで申し上げると、これはもういろいろ言われておりますが、国民健康保険の国庫補助率を医療費ベースで四五%から三八・五%に引き下げる、これによって国庫負担の軽減が千七百四十五億浮いてくる。それで、退職者医療制度の創設による国保の負担減が九百九十億だ。こういうことになるわけでありますから、それを差し引きますと七百五十億、もう明らかに国庫負担の減になるわけであります。そうなりますと、あなた方は、これはそういうことにはなりませんと言われるかもわかりませんが、国保の保険料の値上げに市町村の方はストレートに結びつかざるを得ぬじゃないですか。どうですか。
  276. 吉村仁

    ○吉村政府委員 私ども、今回の国庫補助率の引き下げは、退職者医療制度を創設することによって退職者に関する医療費の負担というのは市町村はしなくてもいい、こういうことになるわけでございますし、また従来、退職者についての保険料は、退職者自身の所得の関係もございまして、若い人たちがその分を負担をしておった、こういう事実がございます。その退職者についての保険料の負担、若い人たちの保険料の負担が要らなくなるわけでございますので、国庫補助率を削減をした、こういうことでございまして、私どもこういう国庫補助の削減をしたからといって保険料の負担水準が上がる、こういうようには考えておりません。
  277. 浦井洋

    ○浦井委員 上がるとは考えておらないというように言われますけれども、あなたのところの国保課長さんは、ある雑誌での対談でこんなことを言われておるんです。「補助率の引き下げられた分が、全部退職者医療で賄われるんだというのは、これはそういう姿になっておりません。私どもがいっているのは従来のような保険料水準-ある程度毎年上がってきているわけですが-それをさらに加速しなきゃならぬというふうなことには、なんとか医療費適正化なりなんなりの努力をしていけば、しないで済むような国庫補助であるという説明になるわけでして、したがってそこは決して楽でございませんが、やはり努力していかないと、また穴があきかねないところはそこなんでございます。」、こういうふうに発言をされておられるわけであります。これはやっぱり上がりまっせということを予告しておられるのではないですか、いろいろ言われても。
  278. 吉村仁

    ○吉村政府委員 そういうつもりで言ったのではないと思います。私どもは、今申し上げましたように、退職者医療制度だけで国庫補助の削減をしておるわけではございませんで、従来、退職者の医療費について若い人たちが持っておった保険料が必要でなくなる、その分は自分たちの医療のための保険給付に回すことができる余力になるわけでございますので、保険料の引き上げをしなくても十分賄い切れる、こういうことでございます。やはり現実に医療費は動くわけですから、そして、まあこれは予測でございますので、それは実際問題として国保課長のような心配-国保課長はやはり国保財政についての直接の当面の責任者でありますので、そういう心配というものをするのはまた当然だと思います。
  279. 浦井洋

    ○浦井委員 やはり、問わず語らずのうちに保険局長は、こういうふうなことを虚構をつくってみたところで、国保の保険料は今後とも上がる可能性はあるんだということを、おのずから告白をされたというふうに私は受け取っておきたいと思うのであります。そこで、もう一つの問題は、今度は低所得世帯に対する保険料軽減措置に対する軽減費交付金、これが今度は補助率が十割から八割になるというようなことになりますと、これは市町村国保の場合、市町村はやっぱり制限を強めていかざるを得ぬということになるわけで、とにかくあなた方がどう言われようとも、これはこういう一連の事態を通じて、国保に入っておられる弱者の方々にとっては非常に大きな負担になるということを私は指摘をし、やっぱり国庫負担の削減というようなことはやめるべきだということを言っておきたいと思います。そこでもう一つ、国保の問題に関連をして、これは全体でありますけれども厚生省の方は、この間、いわゆる「今後の医療政策の基本的方向」ということで、中長期ビジョンと俗に言われておるものを出してこられたわけでありますが、そこで、これは医療保険の項を除いては大体厚生白書のエッセンスのようなものであるし、医療保険の項についても余り新味はない。強いて言えば、医療保険全体の給付率を六十年代の後半に八割程度に統一したいというようなところでありますが、その八割程度でなにしたいということで、その負担はどうするかということを見てみますと、財政調整の問題が大きく浮かび上がってくるわけであります。これをやっぱりてこにされる。将来この国保を八割にするに当たって、一体国保負担はどういうふうにされるわけですか。それとも国庫負担はなるべく減らしていって、そして財政調整でうまいことやっていきたい、ややアバウトな問い方でありますけれども、どう思われますか。どういうふうに考えておられますか。
  280. 吉村仁

    ○吉村政府委員 将来、私どもは、全医療保険について一元化の措置を講じてまいりたいと思っております。その一元化をする際に何を財源として一元化をするか、これはいろいろな方法があると思います。保険料を引き上げるというのも一つのやり方であることは間違いございません。それから、全体としての財政調整をやっていくというのも一つのやり方でございます。また、国庫に余裕があるならば国庫補助金でもって調整をしていくというのも一つの方法でございましょう。したがって、その時点における財政状況なりあるいは財政調整についての世論といいますかそういうようなもの、そういうことをいろいろ勘案してそのときに判断をしなければならない問題であろうと思います。
  281. 浦井洋

    ○浦井委員 保険料を上げるということは余り考慮の中には入れておられないわけですか。
  282. 吉村仁

    ○吉村政府委員 私どもは保険料というものについては余り上げたくない、こういうことで対処をしておるつもりでございます。
  283. 浦井洋

    ○浦井委員 やはり老人保健法でかなり味をしめられたわけでありますから、今回の案では、やはり国保の国庫負担を削減するために退職者医療制度をつくろうというように私は思いますから、今度は退職者医療をやろうということで、財政調整かこれから主な柱になるのでしょうね、今の厚生省考え方からいけば。
  284. 吉村仁

    ○吉村政府委員 負担の公平という観点から何が一番いい方法がというものをこれから考えてまいります。
  285. 浦井洋

    ○浦井委員 余りはっきり特定しては言われないわけでありますが、そこで、それなら財政調整ということになれば、今度の「今後の医療政策の基本的方向」というので見ますと、全医療保険を何とか統合していきたいというようなことであります。そうすると組合管掌と政府管掌をやり、それで今度は被用者保険と国保とを財政調整するというようなことになるわけでありますが、一体具体的にやれるのかどうか、本当に真剣に考えておられるのですか。
  286. 吉村仁

    ○吉村政府委員 真剣に考えたがゆえに長期ビジョンとして打ち出したわけであります。
  287. 浦井洋

    ○浦井委員 これは少し理屈っぽい話になりますけれども、今私が挙げたようなものはやはり公的医療保険でやる。そこで、それは公的医療保険でやると同時に、社会保険ということで保険原理というものもやはり貫くということになるのだろうと思うわけです。そうしますと国民の層を機能的、階層的に分類する、グルーピングというような作業がどうしても必要になってまいります。なかなか簡単には全部一括してやれないものであります。そこに、その階層のありようあるいは一つのグループの社会保険なら社会保険の財政状況なんかを見ながら、どこかで調達をしたものを投入をするというようなことでやらなければ、簡単にこのAとBを合わせて財政調整をやって、今度はそのA、BをCと財政調整をする、そうなると、これはかなりはっきりしたイメージ、はっきりした考え方を持って臨まなければ、この間発表された六十年代後半に八割給付を確保するというようなことは、まさに給付の点で絵にかいたもちに終わってしまうのではないか、このように私は指摘をしたいのでありますけれども、何かやれる自信がありますか。
  288. 吉村仁

    ○吉村政府委員 いろいろやり方はあろうかと思いますが、いずれにいたしましても、医療費というのは、保険料と国庫負担と患者負担で賄うわけでございますので、保険料率を上げない方向で、あるいは国庫負担というものもやはりなかなか今後無理があると思いますので、そういう全体的な視野の中で、財政調整なりあるいは一元化なりあるいは統合というようなことまで考えていかなきゃならぬときが来るかもしれないというように思っております。
  289. 浦井洋

    ○浦井委員 だんだん保険局長のお話が核心に近づいてきたわけであります。  私、保険料を上げよとは言ってないんですよ。保険料は上げない方向でいきたい、そして国庫負担もこれ以上はふやさない、できたら減らそうということになりますと、先ほどから再々言っておるように、老人保健法なり今度の退職者医療制度というようなかっこうで、結局水の高さから低きに流れるようなかっこうで財政調整をやるというような形にならざるを得ないのではないか。  そうすると、例えばそれを強行したらどうなるかということでありますけれども、今度は、組合管掌健康保険と政管健保とを統合すると、負担は重くなって、給付のレベルの低い方にずうっと流れていくわけでありますから、組合管掌の方から附加給付がなくなってみたり、あるいは労使の負担割合が今の実質六・四ぐらいから五・五ぐらいになったり、逆に、それをもしやれたとしても、被用者保険と国保とが財政調整するということになりますと、今度は被用者保険が国保並みにだあっと下がっていく。そうすると、しまいに、極端に言えば国保のように使用者負担がもう全くなくなってしまうというようなかっこうになるかもわからぬし、そうなれば、まさに公的医療保険としては用をなさぬようになってしまう。そうすると、私がこの前の質問で申し上げたように、どんどんと生命保険資本がシェアを広げようとしておりますから、民間保険がばっこをいたしまして、そしてもうアメリカの医療のようなかっこうでの非常な弊害が出てくるのではないか、私はこのことを非常に恐れておるわけであります。だから、そういう点で、そんな危惧はないのかという点をまず問うておきたいと思う。
  290. 吉村仁

    ○吉村政府委員 公的医療保険がカバーすべき分野を民間保険が肩がわりをするのではないかという御心配でございますが、私どもはそうするつもりはございません。
  291. 浦井洋

    ○浦井委員 しかし保険局長、先ほどの質問者の質問に答えて、自由診療と保険医療との区分けというようなものは中医協でやってもらわなければなりませんというようなことを言われておるわけで、特に医療担当者の中からは、公的医療保険の地位の低下が今度のあなた方のいわゆる改正案の中で起こらないかということを、非常に危惧をされておるわけであります。  私は、きょうは国保の財政調整の問題を一例として取り上げてみたわけで、前回は特定医療費の問題を取り上げました。いずれにしても、あなた方が出されておる今度のいわゆる改正案なるものというのは非常に危険な意図を持っておる。これは別に医療法の改正をやらなくても、今度の改正案なるものを通じて日本医療制度を大きく根源から揺るがすものになるのではないか、私はこのことを強く指摘をしたいわけであります。だから、そういう点で、このいわゆる改正案なるものは、もう四の五の、修正云々というようなことでなしに、大臣に最後に要望したいのでありますけれども大臣、男ならと言うとまた御婦人にしかられますけれども、これはもう潔く撤回をして出直してくるという決意の披瀝を大臣にぜひ要望して、私の質問を終わりたいと思います。
  292. 渡部恒三

    渡部国務大臣 今回御審議をお願いしておるこの改正案を通していただきませんと、将来の医療保険が非常に危険になりますので、どうぞ素直に、私どもありのままのことを申し上げてお願いをしておりますので、お言葉を返して大変恐縮でございますが、今回の改正案を成立させていただくようにお願いを申し上げます。     〔委員長退席、丹羽(雄)委員長代理     着席〕
  293. 浦井洋

    ○浦井委員 終わります。だめであります。
  294. 丹羽雄哉

    ○丹羽(雄)委員長代理 野呂昭彦君。
  295. 野呂昭彦

    ○野呂委員 今回の健康保険法の改正は制度始まって以来の大改正と言われているわけでありますが、私も、大臣がいつも言われておりますように、二十一世紀の揺るぎない医療保険制度の確立に向けて、これはもう避けて通ることのできないものだと考えておるわけでございます。  この健保法の審議も、四月十二日に我が党の丹羽委員質問に始まりまして、もう既に十分に三カ月近く質疑を行ってきたわけでございます。その間に大方の問題も出し尽くされてきたという感じがいたしておりまして、大詰めの段階を迎えたという気がいたしておるわけでございます。  大臣には大変お疲れのところでございますが、本法案、そしてさきに出されました長期ビジョンなどに関連して、時間もそうあるわけではございませんが、若干質問をいたしてまいりたいと思うわけでございます。  それで、まず、高額療養費の支給制度についてお伺いをいたしてまいります。  この問題は、もう既に多く議論をされてきたわけでございますが、これは私も、既に議論の中にありましたように、自己負担の限度額の問題というよりも、やはり医療機関単位、暦月単位、個人単位という現行の制度からくる問題が大きいのではないかな、そういう気がいたしております。家族内で複数の人が重病に陥ったときに、負担の増大というものも大変であります。それと同時に、健康保険の本人の場合には、会社等で、例えば給料も、長期に休職ということになりますと四割カットされるというようなこともございまして、収入の方もカットされるということがあるわけでございます。保険の本質からいきましても、通常だれでも負担のできるものは自分で払ってください、しかし大変な負担のときには保険がかわって払いましょう、これが本来の保険のあるべき姿であるかと思うわけです。  こういうことから考えますと、この制度については速やかに改善していくべきではないかな、特にビジョンの方では六十年以降というふうなことになっておりますけれども、私は、ぜひ速やかに改善をしていけるのではないだろうか、そんなことも考えておりまして、まずその辺からお聞きをいたしてまいりたいと思います。
  296. 渡部恒三

    渡部国務大臣 この委員会でもたびたび申し上げておりますように、今回の改革案、これは二十一世紀の国民の健康を守るために是が非でも成立をさせていただかなければなりません。しかし、この改革案が成立することによって、平均的なサラリーマン家庭の皆さん方が、重い病気にかかって生活が破壊されるというようなことはあってはならないことだと私は考えておりますので、今野呂先生から高額療養費の問題についてもいろいろ御心配を賜り、具体的な問題で御勉強いただいておりますことは、与党あっての政府であり、国会あっての政府でありますから、野呂先生、与党の中で、また野党の皆さんと相談して、いろいろサラリーマン家庭の皆さんが困らないための知恵を出していただければ、素直に謙虚にこれに耳を傾け、誠実にこれを実行するように努力してまいりたいと思います。
  297. 野呂昭彦

    ○野呂委員 大臣の前向きの御答弁だと思います。ぜひひとつ今後ともよろしくお考えあわせをいただきたいと思います。  次に、退職者医療制度の創設ということでございますが、この退職者医療制度、サラリーマンのOBの医療費を現役のサラリーマンがカバーしていく、そういう点では、世代間の連帯あるいは現状の不公平、不合理といった点を解消していくという点では大変評価をされる大きな柱となっているものだと思うのです。ただ、これは既に当委員会でも指摘をされておりますが、今後人口が大変高齢化していくに従いまして対象者が毎年毎年増加する傾向にある。したがって、被用者保険の負担というものも相当ふえてくる心配があるわけであります。そういう状況のもとでは負担の調整が必要となる時期が来るのではないだろうか、そういう心配が多くされておるところでございます。そういったことについての御見解と、  それから、この制度は窓口としては国保が扱う、しかしお金は組合保険の方から出すということであります。国保が窓口となるということにつきましては、やはりそこに自分のところの金を出すわけではないからということで、その運営努力というものが、これは健康保険等におきましては、組合保険におきましてはその運営努力というものも認めていかなければならないと思うのですが、そういう面では今回国保の方の運営努力というものが怠りがちになりはしないだろうか、そういう心配もしないわけではないわけであります。そういう意味で、窓口となる国保の方の運営努力についてどのように運営努力を求めていかれるのか、そういったことについてお伺いをいたします。
  298. 吉村仁

    ○吉村政府委員 まず、退職者医療への拠出金の問題でありますが、私ども五十九年度で退職者医療制度の財源を計算してみますと、千分の五・七ぐらいの所要料率になるわけでございます。しかし、三十年先、これが一番ピークになるのではないかと思っておりますが、そのピーク時におきましても千分の九・八ぐらいでございます。したがって三十年間で千分の四上がることになるわけでございますが、これくらいの負担ならば不可能ではないというように考えております。なお、今後退職者の定年退職の年齢等もやはり延長をされるような予測も立ちますし、いろいろな観点から考えまして、将来の退職者医療についての拠出金、これを負担し切れなくなるというような予測は持っておりません。  それから第二の、国保の運営の問題でございますが、私ども退職者医療制度を実施するに出たりまして国保の経営努力については十分督励なしていくつもりでございますし、また、交付金の策定あるいは交付金の減額措置等を通じまして、国保における収入と支出の両面にわたる適正な運営を担保してまいりたいと思います。また、国民健康保険の運営に関しまして国保運営協議会というものがございますが、この市町村レベルにおける国保運営協議会に拠出者の代表を参加させることによりまして、拠出者の意向が国保の経営に反映されるようにいたしたい。いろいろな手を論じて、国保が退職者医療制度の運営について無責任にならないような手だてを講じてまいりたいと考えております。
  299. 野呂昭彦

    ○野呂委員 質問内容がまた変わりますが、次に、特定療養費のことについてお聞きをいたしてまいります。  今回の改正案で、一月二十五日に社会保険審議会への諮問書が出されておりますが、そのときには「特定承認医療機関」という言葉で「保険」という字が入っていないのですが、今回出されておる法案には「特定承認保険医療機関」といって「保険」という字が入っておるわけでございます。これがなぜ入っておるのか、その理由をお聞きいたしたいと思います。
  300. 吉村仁

    ○吉村政府委員 確かに先生指摘のように、当初は「特定承認医療機関」、こういう名称でございましたが、保険を担当する医療機関にいろいろな種別をつくるのは問題ではないか、こういうような御意見がございまして、この「特定承認医療機関」に対しましても保険医療機関に関する規定を全部適用する、こういうようにしたわけでございます。したがって、保険医療機関に関する規定というものが全部適用になるのならば「特定承認保険医療機関」という名称の方が適当ではないか、こういうことで改めたものでございます。
  301. 野呂昭彦

    ○野呂委員 「保険」という字が入るのと入らないのとではその性格が違ってくるのではないだろうか。その諮問案の方では、基本的には、自由診療の機関であってそれで高度の医療を提供しているところが、申請によって都道府県知事の承認を受けたものについては、保険診療の範囲までは療養費払い制度で認めるというものであったわけですけれども、やはりその内容もそれで変更してきたのじゃないかということについて、どうも関係方面への十分な認識というものが得られていないのではないか、そういう心配をいたすわけであります。  その療養費の中で、高度な医療の基準というものについては中医協で定めていくというようなことになっておりますが、高度とか先端とかいうものをどういうふうに判断をしていくのか。例えばCTスキャンなどは保険で取り扱えるということでかなり普及をしてきたわけでありますが、その適用の仕方によって、今まで指摘されておるとおり、難病等への新技術の適用が困難になったり、あるいは医療の新技術の開発とかあるいは医学の発達に水を差すことになりはしないだろうか、そういう不安があります。その辺のことについて御答弁をお願いいたします。
  302. 吉村仁

    ○吉村政府委員 私ども、高度先端技術というのは、一応学界等の評価を経て、その技術の有効性あるいは効率性、それからまだ全国的に普及をしておらないのですが、今後普及する可能性がある、そういう普及の確立過程と申しますか、そういう過程にある技術、そして現在まだ保険に取り入れられてないような技術を対象にして高度先端技術、こういうように言っておるわけでございます。  先生指摘のCTスキャンというものも、初めはイギリスから一台か二台入って、それがだんだん普及をしていったわけであります。したがって、どの段階でそれを保険診療の中に入れるか、こういう問題はあると思いますが、例えば一台、二台あるいは十台くらいしか入ってない段階では、これは保険の未適用の技術ということになるんだろうと思うわけでありまして、そういう普及過程にあるものに着目して、それと保険診療との調整を図ろう、こういうものでございます。  それのやり方いかんによっては御指摘のように医学の進歩を妨げることになるんではないか、こういう御指摘でございますが、私どもは、むしろその診療についての一部の費用について保険が持つということを通じて、むしろ普及を早めていくんではないか、そして医学医術の進歩を支えることになるんではないか、こういうようにむしろ積極的に考えております。  ただ、御心配の向きは、恐らく大学病院等だけに限定をした場合に民間の活力みたいなものが阻害をされていくんではないかという御心配があるというように思います。その辺は中医協でもって承認基準をつくる場合にいろいろ検討をして、民間の活力というようなものが失われるようなことがないような基準をつくってまいりたいと思います。
  303. 野呂昭彦

    ○野呂委員 そういう不安が現実にならないように、ひとつ今後さらに御努力をお願いを申し上げる次第です。  それから、さきのビジョンでも示されておりますこれからの医療保険制度の展望とか方向づけということについてでありますが、六十年代後半に給付率を八割程度で統一するということになっておりますが、それに向かっての具体的な手順をどういうふうに考えておられるのか、そしてまた、所要の財源の手当て等をどうするおつもりなのか、具体的にお伺いをいたします。
  304. 吉村仁

    ○吉村政府委員 今回お示しをいたしましたものは、将来の医療保険制度の一元化を図る、こういう政策目標を示した、こういうものでございまして、財政面も含めましてその手順等具体的な方策につきましては今後検討を重ねていく、こういうものでございまして、現段階におきまして、一元化に向けての手順、財源の手当て等についての具体的な方策は持ち合わせておりません。
  305. 野呂昭彦

    ○野呂委員 具体的なものというものはこれからにいたしましても、統一をしていく際に、老人保健の対象となっておる老人の給付率についてはどう取り扱われるおつもりなのか、その点についてお伺いをいたします。
  306. 水田努

    ○水田政府委員 お答え申し上げます。  当委員会で大臣からもお答え申し上げておりますように、八割程度に統一する中に老人保健は含めておりません。
  307. 野呂昭彦

    ○野呂委員 次に、医療養成の問題等につきまして、これは大変重要な問題であると思います。これは単に数の問題についてだけでなく、ビジョンでも言っておりますように、よいホームドクターの育成だとか、あるいはプライマリーケア教育の充実、医学教育、卒後研修の充実強化等を図る必要があり、このことが患者から信頼されるよい医療を育て、また本当の医療費の適正化に通ずるものではないかと思うわけです。しかし、信頼関係という面で見ていきますと、一部の医療機関や医師によりますところの相続く不祥事あるいは不正行為等によりまして、その信頼関係というものが著しく損なわれたり、あるいはまた、その医療システムの中で医師と患者の触れ合いや対話の不足などというようなことも指摘をされておるわけであります。医師と患者の信頼関係がよくならないとまた医療もよくならないのではないか、そういう面につきましてその対策をお聞きいたします。
  308. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 お話しのございました点、基本的に同感でございます。将来の医師数を検討するに当たりましては、単に数だけではなくて、望ましい姿を想定することが必要であろうと考えております。お話しにもございましたプライマリーケアや生涯教育の充実につきましては、厚生省といたしましても、かねてから、卒後の臨床研修を通じあるいは地域医療研修センターというものの整備を通しまして、努力をしておるところでございます。また、プライマリーケアの担い手としての家庭医の育成は、最も大事でありますところの医師と患者との信頼関係をしっかりしたものにする、こういう意味からも極めて重要であると考えておりまして、今後制度面、養成面から検討を行う考えでございます。そして、このプライマリーケアの充実とあわせまして、地域医療計画を策定し、地域医療のシステム化を推進することによって的確な医療を効率的に行っていく、こういう体制を整えてまいりたいと考えておるところでございます。
  309. 野呂昭彦

    ○野呂委員 次に、レセプト処理のことについてお聞きをいたしてまいります。今、膨大な医療費が被保険者の保険料、そして税金、それと事業主などの保険料で賄われておるわけであります。この大切なお金が事務経費、そのための労力費に多くを費やされているとすると、本来の保険としてのメリットは少なくなってしまうわけであります。その意味で、レセプトの処理数が年間八億二千万枚、これがための保険医療機関や支払基金あるいは保険者における事務量、労力というものは大変なものでありますし、また実際の審査時間が七秒というようなことも、これも非効率きわまりない、限界を超えたものであるというふうに思うわけであります。また、医者などの貴重な時間がそれで費やされるということになりますと、大事な診療のための時間も奪ってしまうというようなことでございます。  厚生省は、コンピューターによりますところのレセプト処理システムの導入について、今年度から順次拡大をしていくということにしておるわけでございますが、今後いつごろまでにどの程度整備をいたしていくのか。それと、そのことによりまして医療費や医療事務の合理化にどのような効果があると見込んでおられるのか、その辺についてお願いします。
  310. 吉村仁

    ○吉村政府委員 私どもは、医療の世界へのコンピューターの導入は非常におくれておる、他の分野と比べまして非常におくれておるんではないか、こういうように思っております。そこで、私ども診療報酬の請求支払い事務を迅速かつ円滑に処理するためにコンピューターを導入をしたい、こういう計画を立てておるわけでございますが、いろいろ医療機関側の状況、支払い機関側の状況等を勘案いたしますと、やはり十年くらいの期間は必要なんではないか。全国的に全面的に実施するためには十年くらいの期間が必要なんではないか、こういうように考えております。  そしてどういう効果があるのか、こういうことでございますが、やはり今後医療の件数というものもかなりふえてまいると思いますので、保険医療機関においては、少なくとも将来にわたる人件費の抑制というようなものは可能になろうと思いますし、また、請求事務等に手が省けるとすれば、医師の本来の業務に専念をする時間というものがふえるのであろうというような効果が期待できます。また、支払い機関におきましては、人件費の抑制、探査の効率化等の効果があろうかと思います。また、保険者におきましては、被保険者のレセプトの管理というようなものも確実にできることになりますし、また、そういう余力をもちまして健康増進対策等についての活用というようなものが可能になるのではないか。私どもはコンピューターによる直接の効果というものはそういうように考えておりますが、医療機関にコンピューターが入ることによって、医療経営の合理化その他の点にも十分資することができるのだろうというように期待をしておるわけでございます。
  311. 野呂昭彦

    ○野呂委員 このコンピューター化の分野というものは、私ども見ていましても、ほかの産業あるいはほかのいろんな事業等から比較して大変おくれておるように思います。早急に、十年というめどよりももっと早く実現できるように、できれば御努力をいただきたいとお願いを申し上げておく次第でございます。  それで、今回のこの長期ビジョンについては、いろんなこれまでの議論等聞いておりましても、もっと具体的に突っ込んだものを期待した向きもあったように思うのであります。しかし、今の議論の中では、このビジョンにあるとおり、これまで指摘されたいろんな問題を整理いたしまして、今後の改革の方向づけとかあるいは展望を明らかにしようとしている、その内容、今はこのくらいのことしか厚生省も示せないのではないだろうか、そういうふうに思います。  しかし、私は、今回の改正案というものは、二十一世紀に向けての揺るぎない保健医療制度の確立への大きな節目になるものだと考えております。いつも大臣が言われておりますように、二十一世紀の健康で生き生きとした福祉社会の実現を図る、そういうためにも、私は、この長期ビジョンをひとつもっと発展をさしていく、そして関係方面ともこれはもう十分に御協議をいただいた上で、これは私の思いつき的なことでございますが、二十一世紀を目指す健康づくり基本法といったようなそういったものを近い将来につくっていってはどうだろうか、その中で健康政策の理念、目標というようなものや、あるいは人口の高齢化や疾病の構造変化などに対応した保健医療制度のあり方を決め、あるいはまた医療保険制度の位置づけを決めていく。そして、国民とかあるいは医療担当者、国、地方公共団体が健康づくりにそれぞれがどのような責務を持っておるのか、そういうあり方などをもっと明確に示されていってはどうなのかな、こういうふうに考えておりまして、こういう健康づくり基本法案みたいな考えにつきまして大臣のひとつお考えを伺いたいわけであります。
  312. 渡部恒三

    渡部国務大臣 野呂先生指摘の二十一世紀に向かっての国民の健康づくりのための基本法をつくってはどうか、これはすばらしい見識だと思います。  振り返ってみますと、今まで私どもは、戦後だけ振り返ってみても、伝染病をなくす、あるいは結核をなくす、次々と我々の生命をむしばんできた病気を克服して、今、今世紀最大の人類に対する大きな病気だと言われるがんの克服、これは中曽根総理を先頭にして取り組んでおるわけでありますけれども、やはりこれからは、今度は、病気を克服することももちろん大事でありますけれども、病気にかからない、もっと言うなら、これは、私ども戦後三十九年の間に病気を克服して、三十年も平均寿命を伸ばしてきたわけでありますけれども、これからは死ぬまで元気な生きがいを持って暮らしていける、そういう元気な人間をつくっていった方が幸せなので、そういう幅広い立場に立って、心身ともに健康な人間をこれから生涯をかけてつくっていく、こういうような施策をこれからつくっていくのは極めて重要なことだと考えております。
  313. 野呂昭彦

    ○野呂委員 ひとつ大臣の今のお気持ちで、これからの二十一世紀の健康づくりになお一層お励みをいただくことをお願いを申し上げます。  最後の質問をさせていただきます。  審議も大変進んでまいりまして大詰めを迎えようとしておる今、この健保法の議論というものは、どうも一部負担の導入の是非に議論が集中し過ぎの感がいたします。しかし、大臣がいつも言われるように、これからの二十一世紀に向けての人生八十年時代にふさわしい、揺るぎない保健医療制度の確立のためにも、医療費の規模の適正化と、給付と負担の公平化というこの問題の本質をとらえて、一歩も二歩も前進していかなければならない、そういうときにあるわけであります。だんだん国民の理解も得られつつある段階ではないかなと思うのでありますけれども、それでも健保の本人にとりてみれば負担がふえるということを喜ぶはずはありませんし、あるいは医療関係者の方にとりましてもそれぞれの立場からそれぞれのお考えがあるわけであります。そんなことで大変なことであり、大臣も、いつもにこにこされておりながらも、時には神妙になったり時には厳しい顔になられて、本当に御苦労なことだと思うのです。こういう大詰めで修正の話なども出ておるわけでありますが、(発言する者あり)
  314. 丹羽雄哉

    ○丹羽(雄)委員長代理 静粛に願います。
  315. 野呂昭彦

    ○野呂委員 ひとつ大臣の御決意というものを最後にお伺いいたしまして、あと我が党の伊吹委員にかわらせていただきたいと思います。
  316. 渡部恒三

    渡部国務大臣 おかげさまでこの改革案、二十一世紀の国民の健康を守っていくためにどうしても成立させなければならないという私ども考え方が、幅広く良識ある国民の皆さん方に御理解をいただきつつございます。まじめにこの法案を検討していただき、我々の話を素直に聞いていただければ、これは決して、一時的には被用者保険本人皆さんに一割の御負担を求めることでございますけれども、長い目で考えていただければ結局それが、それぞれの皆さん方の健康の自己管理に努力をされることとなり、また被用者保険本人皆さんが毎月支払っておる保険料を上げないで済むようになり、長い目で見れば、結局被用者保険本人皆さん方にとってもまた国民全体にとってもこの改革案が必要なものであり、ためになるものであるということを必ず御理解をいただけると思いますので、私も力いっぱい御理解をいただくように努力してまいりますので、先生の御協力をお願いいたします。
  317. 野呂昭彦

    ○野呂委員 それでは終わります。
  318. 丹羽雄哉

    ○丹羽(雄)委員長代理 伊吹文明君。
  319. 伊吹文明

    ○伊吹委員 四月十二日に我が党の同僚である丹羽議員の質問がございまして、既に三カ月近くがたちました。私は、自由民主党の締めくくりといたしまして大臣質問をさせていただきたいと思います。(「締めくくりじゃないよ」と呼ぶ者あり)自由民主党の締めくくりとして答弁を求める次第でございます。(発言する者あり)
  320. 丹羽雄哉

    ○丹羽(雄)委員長代理 静粛に願います。
  321. 伊吹文明

    ○伊吹委員 日本は、御承知のようにGNPが自由諸国で第二位になりました。国富もいまだ不十分でございますが、随分充実してまいりました。男子は七十五歳、女子は八十歳、世界有数の長寿国の仲間入りをいたしております。このような長寿国になったのはなぜか。言うまでもなく、自由経済と自由貿易体制の上に自助自立、勤勉な国民の資質が咲かせた経済成長の結果、生活水準が上がったからにほかなりません。そして、この生活水準の向上の上に財政が安定して、そして医療保険や年金制度、福祉の制度が充実してきた、これが世界有数の長寿国になったゆえんのものであろうかと思います。そして、今その基礎的な条件がやや揺らいできております。  例えばオイルショックがございました。保護貿易が台頭してまいりました。そしてまた、他人の汗を当てにして自助の気持ちが失われるようになってきたのも残念ながら事実でございます。私たちの稼ぎを自分で使わずに政府に預けてしまうということもだんだん多くなってまいりました。高齢化社会に近づきつつある現在、働き手七人に対してお年寄りは一人でございますが、しかし二十一世紀には三・三人に一人というふうに言われております。当然医療費もふえてまいりましょう。そしてまた、働き手の負担はふえてくることも当然でございます。四十年に一兆円でございました医療費は、現在十五兆円になっております。そして、今問題になっております国民健康保険の赤字額は現在二兆円になっております。そしてまた、年金の補助について私たちは二兆四千億のお金を使っております。これは政府のお金ではございません。私たちの税金でございます。私たちが稼いで政府に納めておる税金でございます。  歴史のこの大きな流れの中で今を的確にとらえて、そして大臣お得意の二十一世紀に誤りなきを期す、これが政治家としての当然の役割だろうと私は思います。長寿のお年寄りに、老後の生きる苦しみを感じて生きてもらってはいけないわけでして、日本という国に生きていてよかったな、こういう生きる楽しみを持って老後を生きてもらわなければいけない。今、厚生省、つまり国民の生命、そして安全、そしてまた社会福祉を預かっていらっしゃる厚生大臣の立場からいけば、一番大きな問題は医療保険制度というものを永続をさせる、これが国民の長寿国である現在の状況を守っていくということだろうと思うのです。  こういう状況からいきまして、現在私たちにはいろいろな医療保険制度がございます。組合健保もあれば政管健保もあります。国民健康保険もありますが、現在健保と国保について、高齢化社会を迎えて、このままで将来安定した医療サービスが提供されると思っておられるかどうか、大臣のまず基本的な認識を伺いたいと思います。
  322. 渡部恒三

    渡部国務大臣 これは非常に大事な問題だと思います。  実は私は地方の出身であります。つい前ごろまでは私たちの周辺の人はほとんど国保加入者でございました。ところがこの前、厚生大臣になって国に帰りまして周辺の人と話をしておりますと、国保加入だと思っておった方がほとんど健保、被用者保険加入になっておるわけであります。第一次産業から第二次産業に日本の経済は急速に進んでおります。また農村の都市化現象が進んでおります。そうしますとどうしても、近来、いわゆる二次産業部門で収入を上げられる方はどんどん被用者保険の方に移ってまいりまして、いわゆる生産性の低い産業分野で働いている人が国保に残っていくという状態になっておりますから、これはやはりいずれかの時期に、そういう基本的な問題を考え、客観的な条件の変化というものを考えながら、やはり社会保障というものは国民全体がお互いに弱い者を強い者が助け合い、少しでも恵まれる人は恵まれない人たちに互譲の精神をもって支えていくというものでありますから、これは考えていかなければならないことだと思っております。
  323. 伊吹文明

    ○伊吹委員 どうも今のお話を伺っていると、健保はまあまあ何とかいくが国保は非常に難しい、こういうことのようですが、実は国民の三七%はこの国民健康保険に頼って健康を守っておるわけですが、保険局長にちょっと伺いたいのですが、今の大臣答弁で、国保が非常に難しい状況になってきているということですが、国保の運営が非常に苦しくなっておる原因といいますか、こういうものをもう少し掘り下げて御説明をいただきたい。
  324. 吉村仁

    ○吉村政府委員 国保と健保を比較いたしますと、国保の加入者というのは、職のない人あるいは五人未満事業所の被用者、そういう方々が多いわけでございまして、つまり低所得者の方が多いという構造になっている点が第一点でございます。  それから、大体被用者保険の現役をやめて国保に加入するというような方々も多いわけでございまして、高年齢層が健保に比べて多い、こういうことが第二だと思います。     〔丹羽(雄)委員長代理退席、委員長着席〕  それから、第三番目といたしまして、今大臣からもちょっとお触れになりましたように、産業構造の変化等に伴いまして、被用者保険の方に加入する方々が従来国保の方のうちでも多くなった。そうすると国保に残っておる人というのは、例えば病弱者で働きたくても働けない人が多くなる。こういうようなことで、国保の加入者の体質というものが、将来の国保の財政を支えていくのに難しい体質の方々だ、こういうことが原因であろうと思います。
  325. 伊吹文明

    ○伊吹委員 そういたしますと、日本の現在の繁栄を築き上げていただいたお年寄りであるとか比較的所得の少ない方、こういう方々が国保におられて、そしてこの国保が合成り立たない、こういうことですね。そういたしますと、医療費のむだというものがあればこれはいろいろなやり方で医療費を抑えていかなければいけないわけですが、どうも今伺っていると、構造的に、国保というものが成り立たない。保険というのは、私たち百人のうち一人が病気になれば、大変な医療費がその一人にかかってまいりますので、これは大変だからということで、百人が集まって百分の一ずつ負担をして、そしてグループとしてそれに備えておこう、こういうのが保険の本来の趣旨だろうと思います。国民健康保険、政府管掌健康保険、そして組合健康保険、みんな「保険」がついているのはその趣旨だろうと思うのですが、保険のそもそものこのような原理原則からいけば、健保は現在黒字になっておるわけですね、黒字になっておる人たちに自己負担を強いるということはおかしいんじゃないか、こういう御意見あるいは御批判があることは私もよく存じております。しかし、今非常にお元気でかつ収入が多くてそしてお医者様にかからない健康な方々は保険料が安くなって、なおかつ黒字だ、自己負担もないんだ、こういう人たちに手をつけちゃいかぬということになると、そこには政治というものが存在しないと私は思うのです。そこには強者の論理しか存在しない。後ほど詳しくこの点について伺いたいのですけれども、私たちは、国保の現状だけを取り上げて考えれば、国保の保険料を引き上げるか、それとも私たちが汗と脂で稼ぎ出した税金からこれをさらに穴埋めをするか、それとも今局長のおっしゃった、お気の毒な方々に、既に三割を払っておられる方々にさらに自己負担を強いるかしか方法がないわけで、この保険の論理をあくまで貫き通していけば、そこには強者の論理以外の何物もない、政治というものの存在する値打ちがないと私は思うのですが、この点についていかがですか。
  326. 吉村仁

    ○吉村政府委員 政治のお話は大臣からしていただくといたしまして、確かに伊吹先生がおっしゃいますように、保険の原理原則だけで貫くならばそういうことに相なるわけでございまして、私ども現在、その保険原理というものを一方で考えながら、昭和三十六年に国民皆保険をやった時点で、その保険の原理原則、あるいはそれから自然的に生じてくる強者の原理原則というようなものが変質を余儀なくされたのではないか、それが国民皆保険政策であったのではないか、こういうように考えておるわけでございます。
  327. 伊吹文明

    ○伊吹委員 今の点について大臣の御見解を伺いたいのですが。
  328. 渡部恒三

    渡部国務大臣 これはいつも私は申し上げておるのですが、社会保障制度の基本的な考え方が、やはり強い人は弱い人を助け、そして国民が全部同じような給付を受けられるようにする、それこそが社会保障のまさに、崇高な理想であって、おれの方は強いから一切弱い者を助けたくないということでは社会保障は成り立たないと思います。
  329. 伊吹文明

    ○伊吹委員 今のことについてもう少し掘り下げて伺いたいのですが、国保は現在三割の自己負担を取っております。そして健保については、本人は自己負担なしで、入院、通院の違いはございますが、家族については二割、三割の自己負担を取っている。この国保と健保の財源の構成と、それから給付は財源のおのおのの何%ずつになっておるか、これを教えていただきたい。
  330. 吉村仁

    ○吉村政府委員 まず政管健保につきましては、全体の給付率が八九・八%でございます。そしてそのうち保険料が七四・六、そして国庫負担が一五・二%になります。それから組合健保は、給付率が九一・一%でございまして、保険料が九一・〇、国庫負担は〇・一%、これは事務費等の関係もあると思いますし、また給付費の十三億がこれに該当するのだと思います。そして国保でございますが、全体の給付率が七七・九%でございまして、保険料が三三・○、それから国庫負担が四四・九、こういう割合になっております。
  331. 伊吹文明

    ○伊吹委員 それではもう一つ伺いたいのですが、健保と国保の加入者の一人当たりの平均収入と、一人当たりの医療費の推移を教えていただきたい。
  332. 吉村仁

    ○吉村政府委員 世帯当たりの平均収入または平均標準報酬の月額につきまして、四十年を一〇〇といたしました場合に、五十七年の指数は、政府管掌では七一七、健保組合は七二九、国保は五五七に相当いたします。それから、一人当たりの医療費を同様に比較いたしまして、四十年を一〇〇といたしますと、五十七年の指数は政府管掌健康保険は九七七、組合は七八一、これに対しまして国保は一六六二、こういうように相なっております。
  333. 伊吹文明

    ○伊吹委員 もう一つ数字を伺いたいのですが、患者負担と本人の保険料負担を合わせた部分の所得に占める割合を、健保、国保、それぞれについて教えてください。
  334. 吉村仁

    ○吉村政府委員 所得につきまして、政管と組合の所得は一応標準報酬から推計をいたしまして申し上げます。  政府管掌健康保険につきましては六・一%でございます。患者負担が一・一%、保険料が五・〇%でございます。組合健保は三・五%、患者負担が〇・六%、保険料が二・九%でございます。国民健康保険につきましては八・〇%でございまして、患者負担は二・七%、保険料が五・三%、こういう姿になっております。
  335. 伊吹文明

    ○伊吹委員 大臣、今の数字で具体的におわかりになっておると思うのですが、国保の加入者というのは極めて厳しい立場に追い込まれておりますね。老人の方であるとか農民の方であるとか商店主だとか、皆さんは額に汗をして一生懸命働いているまじめな日本人であり、そして日本の現在をつくってきた人たちでございます。しかし、この人たちが既に三割負担をしながらも、なおかつ、今保険局長の言った数字でおわかりのように、健康保険に入っておる人たちよりも恵まれない状態になっておる。しかも、この方々の二兆円の赤字を私たちの税金で埋めておるということもこれまた事実でございます。そして一番最初に申し上げたように、保険を扱っていらっしゃる、国民の福祉を扱っていらっしゃる厚生大臣の一番大きなお仕事の一つは、医療保険を永続させていくということだろうと思うのです。私たちはこの問題を考えていくときに、公平とは何かということをやはりひとつ考えないといけない。保険の制度として確立をしておるからそれに手をつけちゃいけないというのも一つの考えてありますし、私たちの税金をもうこれ以上とても入れられないからどうしようか。昔、所得が一部の方々に非常に偏っていたときは、その人たちから所得税を取って、そして広く多くの人たちに渡すというのも一つの公平観でございました。しかし、最初に申し上げたように、どんどんどんどん政府の役割が大きくなってまいりますと、中堅サラリーマンからどんどんどんどん今税金が取られております。私たちとして、もうこれ以上税金取られちゃかなわない、何とか自分のことはできるだけ自分でやっていこうではないか、自助自立という考えも一つの公平観として出ております。大臣、これは非常に大切な問題だと思うのですが、これからあらゆる問題についてこの公平観ということはつきまとってまいります。野党の同僚の皆様方もそれぞれ御自分の公平観を持っていらっしゃる。自民党は自民党の公平観を持っている。そして、その公平観をどうしてコンセンサスを得て、日本の時代が刻々と変わっていく日本の社会の中での共通の公平観としていくか、これが一番大きな問題だと思うのですが、大臣の政治家としての御見解を伺いたい。
  336. 渡部恒三

    渡部国務大臣 大変難かしい質問だと思います。  公平というのは、そもそも平等で偏りのないことということになっておりますが、これは何もかもそんなら全部平等にするのかということになれば、これはまた公平というものは、その人の能力とか努力とか、それがやはりそれなりに評価されていくという面がなければ、これは社会の活力というものが生まれてまいりません。そういう意味では、やはり私は、その人その人の能力や努力がやっぱりそのとおりに評価され、汗を流して働いた者が報いられるということと、また同時に、憲法が言っておるように、この国に生まれた国民の皆さんがすべて生活していくことができるような政治というのが近代政治の方向でございますから、これらの調和をどこに求めていくかということが、今後の政治の大きな課題だろうと思います。
  337. 伊吹文明

    ○伊吹委員 今回の、この退職者医療制度の創設を柱といたしました健康保険法の改正法案というのは、今の質疑で御理解いただいたように、所得が極めて低く現在働けない人、あるいは所得が極めて低い方々、こういう方にこれ以上の負担を強いることなく、かつまた、私たち増税感に悩んでおる一般の国民にこれ以上の負担感を与えることなく、まあ御負担をいただく方々には大変恐縮ですが、持てる者と持たざる者との間の調和を図っていく、こういう法案の骨子だろうと思うのです。したがって、黒字の健康保険組合の方々には大変私は申しわけないことではあるけれども医療保険制度を永続させていくために、そして日本が世界第一であるこの長寿国の地位を保っていくために、やはりどうしてもやり抜かなければいけない問題だと思います。この問題を処理するためには、やはり医療に従事しておられる方々意見も十分厚生省としても聞いていただかなければいけないけれども、原点はやはり国民であるということをひとつ御認識をいただいて、今後のこの保険法案の改正に当たっていただきたい、こう思います。  そして次に、医療に従事しておられる方々と十分お話をしていただく必要があると私は思うのですが、まず本人の一割負担の導入というものが受診抑制になるんだ、こういう御批判が非常に多うございます。どのような事態になると保険局長考えておられるのか。つまり受診抑制という言葉に、受診の回数が減るというものと医療費が効率化されるという意味と二つの意味があろうと思うのですが、そのあたりの、一割の自己負担の導入に伴う医療費の推移について保険局長の見通しをお伺いしたいと思います。
  338. 吉村仁

    ○吉村政府委員 私は、受診率が下がる、こういうようには予測をしておりません。なぜならば、現在家族は入院八割、外来七割でございますし、それから国民健康保険は外来、入院とも七割でございます。そのグループの受診率とそれから十割給付の本人というグループの受診率とはほとんど材がございません。したがって、給付率を下げることによって受診率が変動をするという要素は非常に少ないというように考えております。したがって、今回の一部負担の導入によりまして、むしろ、一日当たりの診療費というものが適正化をされるということを通じまして医療費の効率化が進むものと考えております。
  339. 伊吹文明

    ○伊吹委員 私は、この問題について、私の同僚である自見委員や、また参議院の私の同僚である大浜議員、あるいは関口議員ともいろいろなお話をいたしました。今の御答弁の中にあった効率化という言葉にはいろんな意味が含まれておろうかと思いますが、一部に確かに乱診乱療というような部分があろうかと思うのです。もし局長の御答弁どおりであるとするならば、一部負担によってそのようなものが抑えられる。しかし、私は率直に言って、そのような医療をしておられる医師の方というのは本当の一握りだろうと思うのです。私は、私の地元に帰りまして医師会、歯科医師会の方ともよくお話をいたしますが、九九%の方は今の制度のもとではとても苦しい、経営がなかなか大変だということをおっしゃる方もおられる。もし保険局長のおっしゃるとおりであるとするならば、そこで何がしかの余裕が出た診療報酬といいますか医療費というものを、本当にまじめにやっておられるお医者様に還元をすべきだ、私はこう思います。  大臣は何か、委員会の外でいろいろなお話があって、この前若干のおしかりがあったようでございますけれども、例えば初診料であるとかあるいは再診料であるとか処方せん料であるとか、こういうお医者さんの技術を正当に今後の診療報酬の改定の際に評価するならば、まじめにやっておられるお医者様の収入は必ずふえる、そうじゃない方の収入は、これは一%もおられないと私は思うが、だから厚生省にも私は率直にお願いしておきたいけれども、新聞種になるようなお医者さんをスケープゴートにしてこの法律を通そうというようなことが万が一にもあっては、私は非常に困ると思うのです。だから、そういう方々の収入は減るのは当然でございます。しかし、まじめなお医者さんに報いるためには診療報酬を改定して、私が今申し上げたような技術料を中心とした点数の配分をすべきだと思うのですが、この点について大臣、いかがですか。
  340. 渡部恒三

    渡部国務大臣 私は、政治が一番心がけなければならないのは、正直者がばかを見ることであってはならない、また、積極的に我々が心がけなければならないのは正直者が報いられる、すぐれたる者が報いられるということでございまして、今伊吹先生から御指摘の、診療報酬費の見直しということに私が真剣に取り組もうとしておるのも全くその考えからでありまして、中医協でも今御心配をちょうだいしておりますが、私どもも、すぐれたる技術を持った医師が、また患者を愛してまじめに、誠実に、一生懸命やっておるこの国の大部分の医師の皆さん方が納得していただけるような診療報酬の見直しというものに真剣に取り組んでまいりたいと思います。
  341. 伊吹文明

    ○伊吹委員 国民が病気になったときに本当に困るのは、この一割、二割の定率の負担ということももちろんあろうかと思いますけれども、そのほかに、例えば主婦の方が入院をされたということになればこれはたちどころに家政婦さんを頼まざるを得ないとか、御夫婦ともども入院をしておられるような方も非常に多いわけですね。こういう保険外の費用がかなりあると私は思うのです。こうしたものについて、将来、入院給付金的なものを保険の中に組み込むお考えはございますか。
  342. 吉村仁

    ○吉村政府委員 先生指摘のような事態が生じましたときに、本当に入院給付金のような制度があってそれによって家政婦を雇うとか、そういうことができれば非常にいい制度であることはこれは間違いございません。私どももそれは考え方として賛成しないわけではございませんが、それを現在の公的医療保険でやるのがいいのかどうか、そこを少し検討をさせていただきたい、こういうように考えます。
  343. 伊吹文明

    ○伊吹委員 その問題については将来の検討課題ということですが、今回の改正案の中にある高額の療養費の限度の引き上げ、五万四千円、せめてこのあたりは何とか現行にとめおくのが今申し上げたようなことからもいいのじゃないか、私はこう思いますので、これはひとつ要望として申し上げておきたい。  それから、特定療養費の支給制度がございますが、これは御承知のように特定承認保険医療機関に先端技術を、医療の技術をゆだねるということでございますけれども、これは先ほど私の同僚の野呂議員からも御質問がありましたが、こういうことをやりますと先端高度医療の普及をかえって阻むのじゃないかという意見があることは確かだと思うのです、極めてこれは限定をされますからね。それで、すべての保険機関に先端医療部分の取り扱いを広げるという考えはございますか。
  344. 吉村仁

    ○吉村政府委員 ただいまのところ、私どもは、特定承認保険医療機関として指定するものは、施設の設備、それから陣容等についてかなり厳格な要件を考えておるわけでございますが、確かに先生指摘のように、何も大学病院とか、がんセンターだけで先端技術をやっておるわけではございません。民間の医療機関においてもそういうことをやっておる医療機関はあるわけでございまして、この辺はひとつ中医協の議論でいろいろ検討をさせていただきたい、こういうように思います。私どもとして、民間の医療機関に認めないということは考えておりません。ただ、スタートの仕方をどうしようかということに御理解を願いたいと思います。
  345. 伊吹文明

    ○伊吹委員 それでは、歯科の差額徴収のことについて伺いたいのですが、この歯科の差額徴収というのは、五十一年七月三十一日で実質的に廃止されたことは厚生省も御存じのとおりだと思います。これは、治療を受けた後でなければ差額が一体幾らになるのかというのはよくわからない、こういうような批判がいろいろあったというふうに聞いております。しかし宇宙工学、宇宙科学が発達をして、いろいろな特殊な材料が出てきたりいろいろなことがございますから、もう少し、今回の特定療養費支給制度の導入に伴って歯科の問題について言えば、材料費差額を何らかの形で公示をして、そして材料によってまた技術料の点数も少しずつ変えるというような制度を、将来の保険の診療報酬を改定される場合に私はひとつ考えていただきたい。もちろんこれは、幾らかかるかということを何らかの形で歯科医師に公示をしてもらう必要はあると思うのですが、この点については保険局長、いかがですか。
  346. 吉村仁

    ○吉村政府委員 歯科の材料差額についての金額の表示の問題でありますが、私ども、この法案を通していただいた暁においては、料金の公示を義務づけることにしております。  それから、その場合に、御指摘のように材料によって技術料に差を設けるべきではないか。これは確かに御指摘のような考えが非常に歯科医師の間にも多いわけでございますが、そのやり方を間違ったがゆえに、五十一年七月三十一日で従来の差額徴収を廃止する、こういうようなことになったわけでございまして、少しその辺の経緯も踏まえまして、中医協で十分審議をしていただくようにいたしたいと思います。
  347. 伊吹文明

    ○伊吹委員 退職者医療制度の創設は、市町村の国保には適用されると思うのですが国保組合には適用されない、こういうことになっておりますが、この理解で間違いありませんね。
  348. 吉村仁

    ○吉村政府委員 間違いございません。
  349. 伊吹文明

    ○伊吹委員 それでは厚生省に一つ要望しておきたいのですが、国保への補助金というのが市町村国保と国保組合一本で削減をされておりますので、組合の国保の方々は、退職者医療制度の創設に伴って健保からの繰り入れのない国保組合では、補助金が従来どおりもらえないと大変なことになるのではないか、こういう心配があるのですが、この辺いかがですか。
  350. 吉村仁

    ○吉村政府委員 確かに国保の予算書におきましては、市町村国保と国保組合一本で計上しておりますので減ったような形になっておりますが、中身について申し上げますと、国保組合につきましては五十八年度が千百九億円、総額がそうでございます。そして五十九年度は千百七十四億円、約五・九%ぐらいふやしてございます。
  351. 伊吹文明

    ○伊吹委員 時間も参りましたので私の質問を終わりたいと思いますが、最後に、大臣に申し上げておきたいのですが、日本の政治の歴史を見まして、高橋是清でも小村壽太郎でも、そのとき非常に苦難な立場に立たれた政治家、国民の大多数というものは現状を変えるのはなかなかこわいですからね、そういうときに苦難に立たれた政治家というのは、後で確かに大きく評価をされております。大臣は今苦難に立たれておらない。この法案に賛成の人もたくさんいるのですから、毅然として御提案の基本を私は守っていただきたい。ただ、今申し上げたようにいろいろ問題点もございますから、関係者と十分お話しの上、アフターケアを間違いなくやっていただきたい、こう思います。ありがとうございました。
  352. 有馬元治

    有馬委員長 次回は、来る七月三日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時五十二分散会