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1984-04-19 第101回国会 衆議院 社会労働委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年四月十九日(木曜日)     午前十時二分開議  出席委員  委員長 有馬 元治君   理事  愛知 和男君 理事 稲垣 実男君   理事  今井  勇君 理事 丹羽 雄哉君   理事  池端 清一君 理事 村山 富市君   理事 平石磨作太郎君 理事 塩田  晋君       伊吹 文明君    稲村 利幸君       小沢 辰男君    古賀  誠君       斉藤滋与史君    自見庄三郎君       谷垣 禎一君    友納 武人君       中野 四郎君    西山敬次郎君       野呂 昭彦君    浜田卓二郎君       箕輪  登君    森下 元晴君       網岡  雄君    河野  正君       多賀谷眞稔君    竹村 泰子君       森井 忠良君    大橋 敏雄君       沼川 洋一君    橋本 文彦君       水谷  弘君    森本 晃司君       小渕 正義君    塚田 延充君       浦井  洋君    田中美智子君       菅  直人君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 渡部 恒三君  出席政府委員         内閣法制局第四         部長      工藤 敦夫君         厚生政務次官  湯川  宏君         厚生大臣官房長 幸田 正孝君         厚生大臣官房審         議官      新田 進治君         厚生大臣官房会         計算課長    黒木 武弘君         厚生省公衆衛生         局長      大池 眞澄君         厚生省公衆衛生         局老人保健部長 水田  努君         厚生省医務局長 吉崎 正義君         厚生省薬務局長 正木  馨君         厚生省保険局長 吉村  仁君         社会保険庁医療         保険部長    坂本 龍彦君  委員外出席者         大蔵省主計局主         計官      小村  武君         社会労働委員会         調査室長    石黒 善一君     ————————————— 委員の異動 四月十九日  辞任         補欠選任   森本 晃司君     水谷  弘君 同日  辞任         補欠選任   水谷  弘君     森本 晃司君     ————————————— 四月十九日  児童扶養手当法の一部を改正する法律案内閣  提出第四一号) 同日  被爆者援護法制定に関する請願浦井洋紹介  )(第二九二九号)  同(田中美智子紹介)(第二九三〇号)  医療保険改悪阻止等に関する請願柴田睦夫君  紹介)(第二九三一号)  医療保険年金制度改悪反対等に関する請願  外六件(山花貞夫紹介)(第二九三二号)  食品添加物規制緩和反対食品衛生行政の充  実強化に関する請願(林百郎君紹介)(第二九  三三号)  同(簑輪幸代紹介)(第二九三四号)  医療年金改悪反対充実改善に関する請願  (左近正男紹介)(第二九三五号)  同(田中克彦紹介)(第二九三六号)  同(多賀谷眞稔紹介)(第二九三七号)  同(中川利三郎紹介)(第二九三八号)  同(中林佳子紹介)(第二九三九号)  同(野間友一紹介)(第二九四〇号)  同(林百郎君紹介)(第二九四一号)  同(松浦利尚君紹介)(第二九四二号)  同(村山喜一紹介)(第二九四三号)  同(村山富市紹介)(第二九四四号)  同(元信堯君紹介)(第二九四五号)  同(矢山有作紹介)(第二九四六号)  同(山下八洲夫君紹介)(第二九四七号)  民間保育事業振興に関する請願(辻第一君紹介  )(第二九四八号)  同(野呂田芳成君紹介)(第二九四九号)  医療保険改悪反対充実改善に関する請願(柴  田睦夫紹介)(第二九五〇号)  医療保険医療供給体制改悪反対等に関する  請願外一件(柴田睦夫紹介)(第二九五一号  )  国立病院療養所統合等反対医療従事職員  の増員に関する請願串原義直紹介)(第二  九五二号)  腎疾患総合対策早期確立に関する請願(辻第  一君紹介)(第二九五三号)  社会福祉社会保障の拡充に関する請願柴田  睦夫紹介)(第二九五四号)  国民医療改善に関する請願(辻第一君紹介)  (第二九五五号)  医療保険改悪反対等に関する請願左近正男  君紹介)(第二九五六号)  同(正森成二君紹介)(第二九五七号)  同(三浦久君外一名紹介)(第二九五八号)  医療保険改悪反対充実に関する請願浦井  洋君紹介)(第二九五九号)  医療保険制度改悪反対等に関する請願(辻第  一君紹介)(第二九六〇号)  同(森井忠良紹介)(第二九六一号)  医療保険制度改悪反対充実改善に関する請  願(多賀谷眞稔紹介)(第二九六二号)  児童扶養手当制度改悪反対に関する請願辻一  彦君紹介)(第二九六三号)  同(簑輪幸代紹介)(第二九六四号)  社会保障福祉充実等に関する請願池田克  也君紹介)(第二九六五号)  医療保険抜本改悪反対に関する請願浦井洋  君紹介)(第二九六六号)  同(岡崎万寿秀紹介)(第二九六七号)  同(柴田睦夫紹介)(第二九六八号)  同(森井忠良紹介)(第二九六九号)  医療保険制度改善に関する請願外一件(伊藤  茂君紹介)(第二九七〇号)  同(岡崎万寿秀紹介)(第二九七一号)  同(加藤万吉紹介)(第二九七二号)  同(工藤晃紹介)(第二九七三号)  同(沢田広紹介)(第二九七四号)  同(柴田睦夫紹介)(第二九七五号)  同(不破哲三紹介)(第二九七六号)  同外一件(宮地正介紹介)(第二九七七号)  同外四件(森井忠良紹介)(第二九七八号)  医療保険制度抜本改悪反対に関する請願(柴  田睦夫紹介)(第二九七九号)  社会保障制度改悪反対に関する請願外八件  (森井忠良紹介)(第二九八〇号)  医療保険改悪食品添加物規制緩和反対に関す  る請願梅田勝紹介)(第二九八一号)  同(浦井洋紹介)(第二九八二号)  同(小沢和秋紹介)(第二九八三号)  同(岡崎万寿秀紹介)(第二九八四号)  同(工藤晃紹介)(第二九八五号)  同(佐藤祐弘紹介)(第二九八六号)  同(柴田睦夫紹介)(第二九八七号)  同(田中美智子紹介)(第二九八八号)  同(津川武一紹介)(第二九八九号)  同(中川利三郎紹介)(第二九九〇号)  同(中島武敏紹介)(第二九九一号)  同(中林佳子紹介)(第二九九二号)  同(野間友一紹介)(第二九九三号)  同(不破哲三紹介)(第二九九四号)  同(松本善明紹介)(第二九九五号)  同(三浦久紹介)(第二九九六号)  同(簑輪幸代紹介)(第二九九七号)  同(山原健二郎紹介)(第二九九八号)  医療保険全面制度改悪反対に関する請願(藤  田高敏紹介)(第二九九九号)  健康保険年金制度改悪反対に関する請願(河  野正紹介)(第三〇〇〇号)  同(沢田広紹介)(第三〇〇一号)  同(野口幸一紹介)(第三〇〇二号)  同(藤田高敏紹介)(第三〇〇三号)  同(簑輪幸代紹介)(第三〇〇四号)  同(宮地正介紹介)(第三〇〇五号)  同(村山富市紹介)(第三〇〇六号)  同(渡辺三郎紹介)(第三〇〇七号)  療術の制度化促進に関する請願大野潔紹介  )(第三〇〇八号)  同(齋藤邦吉紹介)(第三〇〇九号)  同外三件(野上徹紹介)(第三〇一〇号)  医療保険年金制度改悪反対に関する請願(  柴田睦夫紹介)(第三〇一一号)  原子爆弾被爆者等援護法制定に関する請願  (梅田勝紹介)(第三〇一二号)  同(浦井洋紹介)(第三〇一三号)  同(大野潔紹介)(第三〇一四号)  同(工藤晃紹介)(第三〇一五号)  同(田中美智子紹介)(第三〇一六号)  同(中島武敏紹介)(第三〇一七号)  同(中林佳子紹介)(第三〇一八号)  同(東中光雄紹介)(第三〇一九号)  同(不破哲三紹介)(第三〇二〇号)  同(松本善明紹介)(第三〇二一号)  同(三浦久紹介)(第三〇二二号)  仲裁定完全実施に関する請願伊藤茂紹介)  (第三〇二三号)  同(加藤万吉紹介)(第三〇二四号)  同(川崎寛治紹介)(第三〇二五号)  同(広瀬秀吉紹介)(第三〇二六号)  同(細谷昭雄紹介)(第三〇二七号)  同(横江金夫紹介)(第三〇二八号)  男女雇用平等法パート労働法制定に関する  請願外四件(大野潔紹介)(第三〇二九号)  原子爆弾被爆者等援護法制定に関する請願  (経塚幸夫紹介)(第三〇三〇号)  同(瀬崎博義紹介)(第三〇三一号)  同(辻第一君紹介)(第三〇三二号)  同(藤木洋子紹介)(第三〇三三号)  同(藤田スミ紹介)(第三〇三四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  健康保険法等の一部を改正する法律案内閣提  出第二二号)      ————◇—————
  2. 有馬元治

    有馬委員長 これより会議を開きます。  内閣提出健康保険法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。平石磨作太郎君。
  3. 平石磨作太郎

    平石委員 まず、厚生大臣お尋ねをいたします。  私たち人生にとりまして一番怖いものは何だろうかと考えてみますと、昔から地震、雷、火事、おやじ、こう言われている。ところが、一番怖いのはやはり病気だ。したがって、私どもは、少なくとも病気を願っておる者はおらない。何とか病気を防止し、そして健康で、元気で働こう、これがみんなの願いです。ところで、そういった願いにもかかわらず不時病気になった。まさに、この不時病気になるときに私たちが一番頼りになるものが、みんなで助け合うということ。そして、病気にかかることは、その家庭にとっては非常に悲惨であるし残酷なものなんだ。そうなると、ここでお互いに助け合いをしましょうかということに相なってくると思うのです。そしてそこには、いや、私はお金があるから自分でやります、連帯は嫌でございますという者もおるかもしれぬ。そういう中で、やはり力の弱い者も力の強い者も一緒になってお互いに防衛をし助け合う、こういうのが社会実態であろうと思うわけです。これは大臣も一応お認めをいただけるものと思うわけです。  そこで、私はそういうような社会実態を考えたときに、これはお互い社会連帯という形で相互扶助でやるだけでなしに、これは嫌な者もありあるいは一緒になろうという者もあるから、むしろ国の方でこういった一つ制度をつくっていく、そしてお互いにこのことについては国も力を合わせてこれらの問題に対処していこう、こういうことを考えるのが普通だと思うのですが、大臣のお言葉をいただきたい。
  4. 渡部恒三

    渡部国務大臣 先生指摘の御意見と、私も全く同じ意見でございます。
  5. 平石磨作太郎

    平石委員 そこで私は、そういうような社会実態の中から、国民皆さんのそういった生活の、いわゆる生きる権利といいますか、そういったことに国も力をかして守ってやろう。むしろ、お手伝いをし守るというよりも、さらに民生の安定、そして社会の安定を確保する意味からいっても、これらの国民のいわゆる働いて生存していくということについては国が責任を持っていこう。そしてそこに、皆さん権利としてこれを国家としても確保して、そういった悲惨な状態は少なくともこれを防止し生活権を確保していこう、こういうことが憲法の上にあらわれてきておるのではないか、このように思うのですが、大臣のお言葉をいただきたい。
  6. 渡部恒三

    渡部国務大臣 私は、社会保障というものは、国民皆さん方生活の不安をなからしめる、そのための基礎的な要件を国がいろいろの施策で行っていくことであると考えておりますから、まさに国民生活の中の不安ということになりますと、先ほどから先生お話しのように疾病の不安、これは非常に大きいものでありますから、その不安をなからしめるような条件をつくっていく、これは国の責任であると考えております。
  7. 平石磨作太郎

    平石委員 国の責任であるという今大臣のお言葉をいただいて、私は、まさにそのことが憲法二十五条にあらわれておる、そして社会保障の根拠となるもの、淵源となるものはまさにそこから来ておる、このように考えられるわけでございますが、今の大臣のお言葉法制局にもお聞きをしておきたいと思います。
  8. 工藤敦夫

    工藤政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生の御指摘があり、また厚生大臣からもお答えございましたように、憲法の二十五条、これはすべての国民が健康で文化的な最低限度生活を営む権利、こういうふうなことを規定してございまして、そういうふうに営むことができるように国政を運営していく、これが国の責務である、これを明らかにしたものだと私は思っております。
  9. 平石磨作太郎

    平石委員 国の責務を明らかにしたものである、こういうお言葉でございました。そこで私は、社会保障というものは憲法から出てきた国の一つ責任である、したがって、これは公的な制度である、こう位置づけができるわけでありまして、したがって、ここを起点として、これからの健康保険法改正については御質問を申し上げていきたいと思うわけです。  そこで、病気あるいは負傷、こういった個人が生活困窮に陥るいろいろな原因がございます。だが、そういった原因一つにまとめて公的なものとしての保険制度がここにてき上がっておる、こう位置づけられるわけです。  そこで、では一体何なのか。日本社会保障というのは一体何から、どのような手法で、どうしていったらいいのかということで、御案内のとおり、社会保障制度審議会昭和二十五年の十月十六日、社会福祉社会保障といった言葉を使って、これはそれまでの国民は聞いたことがなかった言葉である、そしてそれが憲法上の問題として、国の責務として、一つ社会保障の仕組みをしていく上においてどのようにしたらいいのかということを、この制度審が総理に勧告をいたしております。それを見てみますと、このように書いてございます。「日本国憲法第二十五条は、(1)すべて国民は健康で文化的な最低限度生活を営む権利を有する。(2)国は、すべての生活部面について社会福祉社会保障及び公衆衛生向上及び増進に努めなければならない。と規定している。これは国民には生存権があり、国家には生活保障の義務があるという意である。」こういうことですね。それから「社会保障制度審議会は、この憲法の理念と、この社会的事実の要請にこたえるためには、一日も早く統一ある社会保障制度を確立しなくてはならぬと考える。いわゆる社会保障制度とは、疾病負傷、分娩、廃疾、死亡、老齢、失業、多子その他の困窮原因に対し、保険的方法又は直接公の負担において経済保障の途を講じ、生活困窮に陥った者に対しては、国家扶助によって最低限度生活を保障するとともに、公衆衛生及び社会福祉向上を図り、もってすべての国民文化的社会成員たるに値する生活を営むことができるようにすることをいうのである。」、そして「このような生活保障責任国家にある。国家はこれに対する綜合的な企画をたて、これを政府及び公共団体を通じて民主的能率的に実施しなければならない。この制度は、もちろん、すべての国民を対象とし、公平と機会均等とを原則としなくてはならぬ。」こう書いてございます。したがって「社会保障制度審議会は上述の見地において、下記の如き社会保障制度案を作成した。」、これで社会保障というものの一つエリア一つ方法、手段、土俵ができ上がったわけです。これをスタートラインとし、これを土俵として、この中から、日本社会保障制度政府の行う社会保障制度として出発をし、今日に至った、これは御確認いただけましょうか。
  10. 渡部恒三

    渡部国務大臣 まさしく御高説のとおりでございます。
  11. 平石磨作太郎

    平石委員 そういったてりで出発をいたしたものでございますから、この国民の健康に直接かかわってくる健康保険法改正、これは今までの担当相である厚生大臣、そして関係機関の非常な努力の中に今日の発展を見てきました。そして、日本経済高度成長を迎え、さらにそういう中で社会保障エリアもだんだんと広まってきた。この保障するエリアがだんだんと広まってきたことも、それぞれの関係者努力であった。そして今、まさに十五兆円になんなんとする大きな健康保険に対する経費が必要である、ここまで発展をしてきたわけです。そしてこれから先、やはりこの制度維持発展をさせ、国民に対して保障する国家責任、そしてこれを維持発展さすために国民すべての者に責任がある、こういうように私は思うわけです。これからの健康保険ということを見たときに、どのようにしていくかということから今回のことが出てきておるようにも思うわけです。  そこで、今回の予算編成についていろいろ巷間言われております、まことに唐突であったと。今まで年金制度につきましては、やはりこれも社会保障一つとして、年金制度はこれからの高齢化社会を迎えての大きな問題でございます。これは長期展望に立って、二十一世紀を迎える日本社会保障の大きな一つの柱、これは当然のこととして、国民に向かって両三年来政府はいろいろと国民にPRをし、理解を求め、そして今日まで、国民の間においても、年金についてはそれなりの理解をされてきている。二十一世紀を迎える国家財政、あるいはお互いのこれからの将来を展望したときに、およその理解といいますか、政府の意図するものを受け入れようとする意思がそこには恐らく働いておるように私は思います。ところが、医療については全くそういうようなことがなかった。言葉はきついかもしれませんが、突如としてそのことが出てきたように思うわけです。今回の予算編成都合からこの健康保険法改正が出てきたということを巷間言われますが、大臣はいかがに思っておられるか。
  12. 渡部恒三

    渡部国務大臣 これは先生にお言葉を返して恐縮なのでございますけれども医療制度、特にこの健康保険制度に対して抜本的な思い切った改正をやれ、あるいは単に目先の小手先のことだけでない、中長期的な見通しに立った思い切った改革をやれ、こういう御意見は、この社会労働委員会でも昭和三十年代から幾たびか行われておることでありますし、例えばこの保険制度の一番大きな論点になっておる患者一部負担という思想についても、昭和四十年来から議論議論を重ねられてきておるものでありまして、私どもは、今回の健康保険案は、長い間のそれぞれの皆さま方の御意見、そういうものをお聞きしながら、二十一世紀の将来に揺るぎない健康保険制度をつくるのにはどうすればよいかということを考えに考え抜いたあげくに今回提出した案でございまして、これは決して唐突なものではございません。
  13. 平石磨作太郎

    平石委員 そこで、さらにお尋ねを申し上げますが、今の大臣のお言葉、それは所管大臣としてはそういったようなことであろうし、またそうあるべきことだと思うのです。ところが国民から見た場合、外から見た場合、そしてこの保障制度健康保険法によって受益しておる者から見たときは、そういう感じが出るわけです。したがって私は、大臣のそういうお言葉はございましたけれども国民の側から見たときは余りにも唐突であり、そして予算編成都合で出てきたんじゃないかというようなそしりは免れぬと思うのです。これは残念なことでありますけれども。  それと、この健康保険は単年度勝負です。年金については長期展望に立って、人生の長いサイクルの中でやっていくことでございますから、当然のこととしてそこにはそういう自覚も理解も働くのでございますが、健康保険医療の問題は単年度勝負、そうなりますと、私は、将来の展望をかけた、大臣がよく説明で言われます、今もおっしゃいました二十一世紀を迎えるに当たっての高齢化に対応するというこの御説明、結構なことでありますが、何か非常にそれが空虚に聞こえるわけです。それらに対してビジョンを持っていない、二十一世紀を迎える医療はこうあるんですよ、そういう一つビジョン、そして中長期展望に立ったそういったものがないまま、単年度、五十九年度予算編成の中でこれが行われるから、空虚に聞こえるということです。ビジョンにつきましては後からまたお話を申し上げますが、そこをまず御理解をいただいておきたいと思うのです。  さて、そこで今回の予算編成、いろいろと国家財政のこういった窮乏ということにつきましては、私も重々理解をいたしております。したがって、このままで放置していいのかどうかということは、良識ある国民はみんながそのことを心配をしておると私は思います。したがって、このことについて、大蔵省なりあるいは厚生省、特に予算編成責任を持つ大蔵省は、御案内のとおり経常的な経費一般会計につきましては非常な圧縮を加えておるわけです。そこでお伺いを申し上げたいことは、今まで厚生省は、昭和五十七年、財政的に大変な時代を迎えたときは、やはり大蔵省マイナスシーリングという中で、福祉水準は落としません、したがって予算操作の上において私どもはこの予算編成してまいりますということで、いろいろな予算操作が行われました。そして、それは一つ厚生年金特別会計への操り入れ、このことが延伸されたといいますか貸し付けたといいますか、戻す約束がありますか、ありますかと言って当時は大変国会で論議を重わたことでした。こういう一つ予算操作。それから国民健康保険会計に対する国庫負担の十一カ月予算、これも予算操作の中でやったことです。それから老齢福祉年金の十五年かかっての平準化、これも予算操作の中での福祉水準をダウンさせなくて知恵を絞ったところであったわけです。そういうことをなされてくるときに、私たち心配をし指摘を申し上げたことは、これはなるほどそうであるけれども、だんだんと問題を先送りをして傷口が大きくなるだけじゃないか、解決点を先に延ばしただけじゃないか、こういうことを御指摘を申し上げたことがあったわけでございます。そして後、こんなことを重ねておると予算編成はできなくなりますよということを御忠告を申し上げたわけです。そして、大蔵省からはマイナス五%のシーリング、これが出てきました。そして、さらにマイナス一〇%のシーリングという形が出てきたわけです。こうなりますと、このマイナスシーリングというのは非常な痛手を受ける。  そういう立場から考えたときに、大蔵省にお伺いをいたしますが、このマイナスシーリングというのが画一的に同じような圧力を持って、同じような財政ペースマイナスをやられますと、これは厚生省予算というのは御案内のとおり生活費です、あるいは生活関連費なんです。ほかの費目につきましては、これは事業を延伸をしていくということは可能でございます。ところが、厚生省厚生予算は少なくとも生活費であり生活関連費、きょうの生活に困ったというのを、マイナスシーリングですからちょっと待っておってくださいということはできません。このように切実に迫った、いわば国民生活に密着をした予算、これを同じような考え方でやられますと、厚生省は非常に大変な予算編成になってくるわけです。そういうことを御承知でしょうか、一言お伺いしたい。
  14. 小村武

    小村説明員 毎年、厳しい財政状況下で、シーリングで各省にいろいろ御協力をお願いしております。五十九年度におきましてもマイナスシーリングということで御協力をお願いしたわけでございますが、特に先生指摘の、厚生省におきましては年金成熟化に伴う増加、あるいは医療の自然増等がございます。私どもとしましては、各省一律マイナスシーリングの中で、厚生省につきましては、年金成熟化等の増加あるいは補充費途等が非常に多うございますので、補充費途等についてはマイナスの対象にしない等の措置を講じまして、五十九年度におきましては例えば二千八十八億円の、マイナスシーリング下におきましても増加のシーリング枠を設定したということでございます。
  15. 平石磨作太郎

    平石委員 マイナスの中であっても、この予算を見ましてもなるほどふえてはおります。これは絶対額的にはどうにもならないというところのあらわれだと思うのです。  そこで、そういう中で厚生省は、今回の予算編成において自主シーリングをやったわけですね。この自主シーリングの宿題は六子二百億。ざっと六千二百億円余りのマイナスシーリングの宿題を受けた、これが医療へかかってきた、こう私ども理解をしておるのです。ひとつそのことについて大臣のお言葉をいただきたい。
  16. 渡部恒三

    渡部国務大臣 これは先生非常に御勉強なさっておりますので、私どもが、今日の厳しいゼロシーリングあるいはマイナスシーリングという制約の中で、まさに先生指摘のように、生活費に直結するところの社会福祉のレベルを落とさないように予算を組むために、大変な苦労があるということに対する先生の御理解、これは大変ありがたいと私ども思っておるものでございます。今度の予算、五十九年度予算でも、厚生省予算九兆二千四百五十億、この中で医療費に対する支出が三兆九千億、また年金その他の手当に対する支出が三兆五千億、合わせて七兆四千億、ほぼ八〇%の予算先生指摘のように当然増していかなければ、国民生活に大変な影響を及ぼすものでございます。医療費はその非常に大きな役割を果たしておるわけでありますから、年々今日までのように医療費が増額していけば、国費をもっと余計出すか、あるいは国民皆さんの保険料負担を増額するか、あるいは受益者である患者の皆さんに一部御負担を願うか、この三つのうちいずれかを選択しなければなりません。  しかし、今御指摘のように、経済状態がどういうふうに変化するかわかりませんから断定的なことは申し上げられませんが、少なくとも当分の間、かつてのような高度成長経済というものが望めないとすれば、当分の間はやはりゼロシーリングというような厳しい制約の中で私ども予算を組んでいかなければなりません。そうしますと、これはやはり医療費を現在の低い経済成長、国民所得の伸びの程度に抑えていくという努力をしなければ、まさに、国民の不安をなからしめる、憲法上極めて重要な医療保険制度全体がパンクしてしまうという心配が出てくるわけであります。そこで、それなら医療保険の保険料率を今後引き上げることができるかということになりますと、先生、今、年金の話がございまして、私は先生年金に対する高い御見識に大変感服をしておったのでございますが、現在六・三人の現役が一人の老人を支え、いずれ極めて近い時代には四人の現役が一人の老人を支えることになるのでありますから、そうすると、残念ながら、年金の保険料率は、私どもどんなに工夫をしてみても将来は現行より上がらざるを得ません。そうしますと、現在の租税と社会保障負担はほぼ三六%と考えておりますが、年金負担はいずれふえざるを得ないのであります。そうすると、医療保険の保険料率を今後引き上げていくということはまず難しい、と言うよりは、年金や租税との関連の中で現行程度にとどめておくことが国民生活の安定、将来のために大事なことだ。そうすると、これは残念ながら、今まで被用者保険本人十割給付でこられた皆さんに大変恐縮でございますけれども、私ども国民全体の将来、また、この医療保険制度をどんな条件が来ても絶対に壊さないで国民疾病に対する不安をなからしめるというためには、やはり受益者である患者の皆さんに一部御負担願いたいという選択をとらざるを得なかったということを先生に御理解賜りたいと思います。
  17. 平石磨作太郎

    平石委員 大臣の苦衷はよくわかりました。  そこで、自主マイナスシーリングをやったわけですが、厚生省が今日まで予算操作の中でやってきたけれども、結局今回は制度に切り込まざるを得なかった、制度に切り込んできた、そういったことはもう既に予想されておったことです。前々から指摘をしてあったわけです。そして、今日のような情勢になったということについてはやはりそれなりの責任もありますけれども、それはそれとして、今後の問題として、この間の大蔵大臣の答弁を見てみますと、六十年の予算編成においても同じくマイナスシーリングをやらざるを得ない、こういうことを答弁している。  ここに新聞がございますが、「マイナスシーリング三年連続」「大蔵省、早くも検討開始」、こういうことが出ております。この内容を見てみますと、これからのマイナス幅はやはり一〇%にならざるを得ない。そして大蔵省としたら、要調整額としての不足額を何とか少なくするために一般歳出を切り込む。その方法としては「行財政の守備範囲を見直し、既存の制度・施策について引き続き改革を行う。特に補助金は徹底的に見直し、整理合理化を行う」、こういうことです。そうなりますと、来年の予算編成は今から大変なことだと思うのですよ。大蔵省は、ここの新聞にあるように、また大蔵大臣が答弁の中で、来年もマイナスシーリングをやらざるを得ない、こういうことを言われておりますが、ひとつお話を承りたい。
  18. 小村武

    小村説明員 私どもとしましては五十九年度予算が先日やっと成立したばかりでございまして、具体的な検討ということにつきましてはいましばらく勉強させていただきたいと存じますが、いずれにいたしましても、厳しい財政状況というのは変わっていないという認識でございます。
  19. 平石磨作太郎

    平石委員 そこで私は申し上げておきたいのですが、仮にこの新聞にありますように「守備範囲を見直し、既存の制度・施策について引き続き改革を行う」、こういうことがマイナス一〇%シーリングの中で再びまた同じように六十年度かかってくるということになりますと、もう予算が組めません。まさに国家責任であり、社会保障制度維持発展していかねばならない責務を負うた予算が、大変な事態になってこようかと思う。厚生大臣のお言葉をいただきたい。
  20. 渡部恒三

    渡部国務大臣 先ほども私、答弁申し上げましたように、五十九年度予算を考えてもほぼ八〇%のものがどうしても増額が避けられない内容のもの、またこれから高齢化が進んでいけば伸びざるを得ないもの、そういうものが含まれておるわけでありますから、ゼロシーリングというような条件の中で、これからの社会福祉のレベルを落とさないようにして、本当に困った人たち予算を軽減することのないようにしていく予算を組んでいくことは、非常に大変なことである。そういう意味では、今先生が私ども予算について御心配してくださっていることをありがたいな、こう聞いておったのでありますけれども、私ども政府の立場でありますから、そういう極めて困難な厳しい不可能と思われる条件の中でも、ゼロシーリングと言われる与えられた条件の中で、社会福祉のために必要なる予算は確保していかなければならないので、そのために今頭を痛めておるところでございます。
  21. 平石磨作太郎

    平石委員 私は、厚生大臣をなじっておるのではありませんが、これからの社会保障、そして厚生省予算について、こういう財政情勢の中では大変心配だから申し上げておるのです。したがって、同じようなマイナスがかかってきたときに六十年度予算責任を持って組めるのかということ。もう一つは、これからさらに制度に切り込むということにでも相なりますと、もう大変なことになってきます。そういう意味で、先のことを考えて申し上げて御忠告しておるわけです。したがって、担当大臣として、六十年度予算編成に当たっては相当な覚悟と決意を持って社会保障を守る、厚生省予算だけは守っていくというかたい決意を私は要請したいわけです。そのことを一言。
  22. 渡部恒三

    渡部国務大臣 今まで数々御指摘ありましたように、まことに厳しい条件の中でございますが、その厳しい条件の中で、本当にお困りの皆さん方予算あるいは年金医療といったような、国民生活に直結する重要な予算、こういうものはやはり必要なぎりぎりの線は確保しなければならないわけでありますから、これを確保するために全力を尽くして努力をしたいと思います。
  23. 平石磨作太郎

    平石委員 大臣、ひとつ頑張っていただきたいと思います。  そこで具体的に入らせていただきますが、今回の改正案を見て率直に感ずることを申し上げてみたいと思うのであります。  この予算編成に当たって、これからの問題にかかわってくることですが、林前厚生大臣が、昨年の予算概算要求のときに、「今後の医療政策——視点と方向」という一つの指針を出されております。この指針の中に、これからの医療はこういう方向に行くんだろうかなというものが出ておる。そのことが今度の予算、さらに制度の問題、そして今回改正案として提案されましたものの裏づけになってきておるのではないかという気がいたします。  そこで、まず給付の切り下げ、国庫負担の削減、患者負担の増大、これが制度への切り込みです。この三つが改正の骨子となっておりますが、一つ心配なことは、この中で出てまいりました退職者医療に、今まで出しておりました国庫負担がゼロになったということです。それからもう一つ、従来は差額ベッドあるいは差額個室の室料の問題等、いわば私生子として取り扱っておったものが認知されてきた。そのため、我々が、そして厚生省も従来から努力をしてきたことが、あの高度医療という形の中で歯どめをかけておかなければならないということが、今後しり抜けになってきては困るという心配がある。今回やろうとするものには合理性もございますから一概に否定はいたしませんが、その点の心配があります。  そうすると、私はこの前も申し上げましたが、これはアルファベットのUの字で言うと、こちらの出口の方がそういう形になりますと本体を二割落とす、こうなりますとUの字がこちらへぐっと出てくる。財政が大変でございますということでまた本体を七割に落とす、またこちらへすっと出てくる。こんなことになれば社会保障というものが形骸化されてしまう。そして自由診療の方向に入るという一つ心配がある。これが、今回私が三つを挙げた一つの理由になるわけです。  そこで、社会保障制度審議会昭和三十七年に勧告を出しております。この勧告の中でも言われておることは、社会の変遷とともに社会保障にもいろいろな問題が出てきておる、これは見直し、再編をしていかねばならぬ。そして、そのことについてはこれから新しい時代に対応する社会保障のあり方、組み方、このことの提言がなされております。それにはやはり、長期ビジョンを立てて行っていくべきであるという一つの方向が出ておるようです。そういう意味から考えたときに、我が党の参議院における質問の中で、ビジョンについて大臣にお答えをしていただいております。これは検討をしております、こういうことです。ここに「福祉社会トータルプラン」という本があって、これに健康を確保するビジョン長期計画が書いてございます。これは十年前の話です。それはどういうことかと申しますと、まず健康確保のためには予防と治療、予防に重点を入れ、治療に当たっては、みんな国民が等しく負担を分け合いましょう、あるいは給付も同じような給付にしましょう、こういったビジョンが出ておるわけですが、大臣、これをお知りでしょうか。
  24. 渡部恒三

    渡部国務大臣 これからの国民の健康を守る、こういう立場で、その一つが今の健康保険の問題でございますが、これだけではございませんから、今後特に健康診断等を強化して、まず病気にかからない予防とか、あるいは健康な国民を若いうちからつくっていくとか、老人の問題とか、いろいろございます。先生からも、前々から、そういう意味で幅広い立場での国民の健康を守るための長期的な具体的なビジョンを示せという御指摘をちょうだいし、私も当然である、もっともであると考えておりますので、今先生指摘の問題等も含めて、一生懸命勉強させていただいているところでございます。
  25. 平石磨作太郎

    平石委員 これはなぜ私が申し上げるかと申しますと、やはり長期展望に立てということが一つ、そして高齢化へ向かって一つの対応を示すのは予防に力を入れてほしいということ、これは日本でもいろいろな町村で行われておるところがございます。そういったところの実績を見ましても、医療費が非常にダウンしてきておるわけです、お互いに健康になりますから、病気にならぬわけですから。これを長期展望の中で確立をしていかねばならぬ。ただ給付を下げることだけが、保険制度を維持し、国民の健康を維持するということには相ならぬと思うのです。そのことを申し上げたいわけです。だから、両々相まってこそ初めて健全な保険制度にも発展をしていくわけですから、そういう意味で、特に予防につきましては地域健康管理システムとしての共同保健計画、これはお医者さんとか行政の方とか保健婦さんとか、関係者お互いの協議をもって保健計画を推進していく、そしてそれを取り巻く住民組織といったものによって——私どもは、高知県の野市町で行っておるような、そして大臣から保健文化賞をいただいたあの町村の方法を参考にして申し上げておるわけですが、そのことがまさにこのトータルプランの中に出ておるわけでして、まず病気にならないことを考えて、そして、給付費を下げることだけで事終われりということでないようにしてほしいという意味で申し上げておるわけです。そして、これからの二十一世紀に対応する医療の本当にあるべき姿を示してほしい。これはいつごろ示されますか。
  26. 渡部恒三

    渡部国務大臣 私も先生のお考えとほぼ同感の考え方を持っておりまして、今、先生からお示しいただいた貴重な御意見等を十分参考としまして、今国民の健康を守るための長期プラン、青写真とでも申しますか、こういう基本的な厚生省の考え方を鋭意まとめるように努めておりますので、この委員会で各党の先生方の御意見もちょうだいして、そういう御意見もこれからの健康づくり長期ビジョンのための参考にさせていただきたい、こういう私の考え方から、この委員会で各党の皆様方の御意見を一応承った後に、委員長また各党の皆さんと御相談をいただいて、私の考えをお示ししたいと考えております。
  27. 平石磨作太郎

    平石委員 そこで、先ほど申し上げました国庫負担金がゼロになったこと、これは一言論議をしておかないと、今後の問題もございますので、触れてみたいと思うのです。  国の責任において、生存権を確保するために国が行うところのこういった社会保障制度、そしてその中の社会保険、こういうことで、ただ単に、お互い連帯でやってください、こういうことだけではないと思うのですね。お互いにやってくださいということになると、これはもう相互的にやるというのになれば私保険です。これは生命保険会社あたりがよくやっておりますが、これはそれなりのものでして、したがって少なくとも強制加入はしない。強制加入をやって、国民が等しく生活困窮に陥る原因お互いの力でなくしていこう、それは国の責任なんだということが憲法に示されて、法制局からも確認をいただいた。そして、今日まで発展してきた保障制度の中ではそれなりの国庫負担、国庫補助が出ておるわけです。だから、三者力を合わせて発展をし今日まで来た。ところが、今の財政情勢を反映したのかどうかは知りませんが、マイナスシーリングから出てきたことかどうかはわかりませんが、少なくとも六千二百億という、国家予算一般会計をいわゆる自主捻出をしたような形から、退職者医療という制度が新たに創設される。こういう御説明を今まで聞いておるんですが、新たにできるこの制度には国庫負担が全くない。これは、これからの制度全般を考えたときに、将来だんだんとこういうものから国は手を引いていくのではなかろうか、こういう危惧が出てくるわけです。このことについて一言。
  28. 渡部恒三

    渡部国務大臣 先生に御理解を賜りたいと思いますのは、今回創設させていただく退職者医療は、国保を窓口としていろいろ御協力をちょうだいいたしますけれども、しかし、この退職者医療は被用者保険の範疇に入っております。言うならば、全国的に手を広げた健康保険というべきものでありましょう。現在の被用者保険の財政状態は国庫の補助を必要とする状態にないということで、国庫の支出がない、こういうふうに御了解を賜りたいと思います。
  29. 吉村仁

    ○吉村政府委員 恐らく、先生の御質問は、退職者医療制度についての国庫負担を入れないという今回の政策を例にとられまして、今後社会保険からだんだん国庫負担を削減し、社会保険の保険料だけでずっとやっていくような方向をおまえたちはとるのではないか、こういう御趣旨の御質問であろうかと思うのでありますが、私ども、現在退職者医療制度国庫負担を入れなかった理由につきましては、今厚生大臣が御説明を申し上げたとおりでございます。退職者医療につきましては、国庫負担を入れる必要がないと判断をしたから国庫負担をしていない、こういうことでございますが、三十七年の制度審議会の答申にもございますように、社会保険方式をとったにしましても、各制度間に財政力の格差がある、その格差を埋めるような国庫負担というものは当然国の責任としてすべきではないか、こういうことで勧告をいただいておるわけでございます。したがって、私どもも、医療保険という社会保険方式をとりましても、制度間に財政力の格差があるような状態におきましては、その財政力を調整するための国庫負担は今も必要でございますし、今後も必要なんであろう、この考え方は変わっておりません。
  30. 平石磨作太郎

    平石委員 従来の国家が関与することは、そういう制度を開きましたよ、公平にやってくださいよということだけでなしに、管理運営をする中で、お金の面でも関与していくのだ、こういうことはやはり従来どおり変わりはないんだ、こうおっしゃるわけですから、私はその点は理解をしておきたいと思います。  そこで、今局長が御答弁になりましたが、大臣の答弁にもありましたが、いわゆる組合健保、そういったところで働いていらっしゃる方はもともとここの人だからということですが、これが政管健保へ来た人の場合はやはり一六・四%あるわけです。それを従来からももらっておったわけです。そして今度は国保へ移ってきた、あるいは組合健保からぽんと行く場合もある、いろいろあるわけですけれども、そこらあたりはひとつこれからの論議にはなりましょうが、やはり国庫負担、国庫補助というものは応分のものほかかわっていかねばならぬということだけは確認をしておきたいと思うのですが、もう一度お話しをいただきたい。
  31. 吉村仁

    ○吉村政府委員 今回の退職者医療制度というのは、私どもは、本質的に被用者保険のサイドの制度であると考えております。ただ、事務の問題あるいは管理の問題から、国民健康保険の窓口といいますか、国民健康保険の中でそういう処理をするのが最も能率的であり、便宜であるという観点から、風民健康保険の中に入れておるわけでございますが、本質的には被用者保険サイドの問題である。そしてその費用というのは被用者保険のサイドからの拠出金で賄おう、こういうわけでございます。そして、その拠出金を出す被用者保険の財政力というものを考えてみますと、これはもちろん政管健保と組合健保の間には財政力格差がございますが、その被用者保険グループ全体として考えますならば、これは退職者医療制度の費用を十分賄うに足る能力を持っておる、したがって、そういうグループに対して国庫負担を入れる必要があるかどうかということになりますと、私ども国庫負担を入れる必要はない、こういうように判断をしておるわけでございます。
  32. 平石磨作太郎

    平石委員 これはまた、見解の相違で、いろいろと論議が長引きますので、ここで打ち切っておきます。そこで進めさせていただきますが、これはまた、まだ質問はきょう限りではございませんので、後へ残しておきます。  今回の改正を見たときに、さっき三つの骨子を申し上げたわけですが、私は余り急ぐ必要はない、こう感じておるわけです。いわゆる保険会計は黒字に転換をしてきたということがいただいております数字の中でわかった。したがって、四十九年から五十四年までの累積赤も、五年の償還の予定が二年、三年で仕上がるというような状況で、非常に努力が見えておるわけですが、この推移をもうちょっと見守る必要があるのではないかということ。これは適正化について相当な御努力があったと思うのですが、そういうことで医療費もいわゆる伸びが鈍化をしてきた。これは数字では国民所得の範囲内に入ってきた。今までは国民所得の三倍上がったときもありますし、あるいは二倍といったような二けた台の医療費の伸びでありましたが、一けたになり、国民所得の伸びの範囲内におさまり出した、こういうことが見えておるわけです。そういうことを考え、黒字に転換をしたということを見たときに、給付の引き下げはもうちょっと今の推移を見る必要がある、このような気がするわけでございます。したがって、私どもはそういう立場で、この健康保険法というものが余りにも制度切り込みが早いのではないかというような気がしておるわけでございます。  そこで、今までの保険会計、あるいは社会保障としての保険のエリアがずっとふえてきたということを考えてみますと、一方、今回の改正によりまして、国庫負担は非常な減額になるが、自己負担、いわゆる一部負担という問題が大きく出てきておる、こういうことも数字の上から明らかになっておるわけです。そういうことから考えたときに、私は、その前にむしろ適正化の問題があるのではないか、だからパイを小さくするといったら語弊がありますけれども、適正な医療が行われてこそ、そしてそれをどう負担していくかという問題は次に出てこなければならぬ、こう思うわけです。  したがって、適正についてお話を伺ってみたいのです。適正、適正化、こうよく言われる。私たちも言っておるのですが、適正とは一体どういうことを適正というのか、お教えをいただきたい。
  33. 吉村仁

    ○吉村政府委員 なかなか難しい御質問なんでありますが、私どもは、医療費の適正化という場合に二つの角度から問題を考えております。  一つはマクロの視点と申しましょうか、そういう観点から医療費を考えますと、やはり医療費というのは健康水準と非常に関係がございますから、健康水準を十分保つような医療費でなければならないとか、あるいは、これを国民負担するわけでありますから、その費用の負担の能力との関係というようなものからも考えなければならぬでしょう。それからまた、全体としましては、医療費というのは医師の所得、技術料、医療機関の経営の安定というものと非常に密接な関係を持つ費用でございますので、やはり健全な医療経営というものが保たれるようなものでなければならぬとか、医師の技術料というものを十分尊重したものでなければならぬ、そういうマクロ的な視点から考えた適正というものを考えていかなければならぬというのが一つの視点でございます。  それからもう一つの視点としては、これはミクロの視点と申しますか、そういう観点から考えますと、やはり現在の医学医術の水準、医学常識に従った医療であって、かつ、患者の症状あるいは患者の状態に適切な対応をする医療というものが適正な医療であり、そのために支払われるものが適正な医療費であろうと思います。  したがって、医療費の適正化といいました場合に、やはり今申し上げましたような二つの視点から適正化というものを考えていきたい、私どもはそう考えております。  したがって、具体的に申しますならば、医療費の適正化のために診療報酬の合理化あるいは診療報酬体系の見直し、こういうことも適正化の具体的な政策になってまいると思いますし、また、個々の診療行為についての指導監査だとか審査だとか、そういうものを通じて個々の診療レベルにおける医療費の適正化を図るという政策もとる必要がある、そういう両々相まって全体としての医療費の適正化を図っていきたい、こう考えておる次第でございます。
  34. 平石磨作太郎

    平石委員 適正化につきましても概括的にお伺いをしましたが、これもまた後からやらしていただくことにいたします。  それから、国保について一つ願いを申し上げたいのですが、今、国保の同じ座の中に退職者医療の方がおられる、それからまたお年寄りの方もこの中におる。今まで国保会計は、いわばしんどかったといいますかうるさかったといいますか、体質的に非常に弱い点があった。しかも有病率の高い人たちがおった、低所得の方々が比較的多かった。これに体質の弱いところがありましたので、大変なことが続いたわけです。それを、老人は老人保健法によって一応処理される、そして今回、退職された方々をまた別建にしようということで、これからは比較的荷が軽くなるんだ。ところが、座は同じ国保によるのですから、結局国保の被保険者は、八割の給付をもらえる退職者医療の方と、十割の給付のある七十歳以上のお年寄りの方と、そして自営業、農業、漁民といったような方々が七割、こうなっている。同じ座の中にそういった格差が持ち込まれておるわけです。これはいかがなものでしょうね。非常に複雑な構成に相なってきたが、果たしてこれが、やむを得ぬのかもわかりませんけれども、どうもこれからの運営に当たって、国保の保険料を同じように負担して、そういう給付の格差の違うものが中に同席しておるということ、どうなんでしょうね。
  35. 吉村仁

    ○吉村政府委員 おっしゃるとおり、同じ市町村の住民で、老人保健法の適用を受けている人は十割、それから今度の退職者医療の適用を受ける人は八割、そして、普通と言っては悪いですが、従来の国民健康保険の方々は七割という格差が出る、これは御指摘のとおりでございます。ただ、老人保健につきましてはこれは別の制度でございますので、問題は、国民健康保険という枠の中で片や八割、片や七割、こういう格差が生ずるのがやはり問題ではないか、こういうように御指摘を賜ることになっておるわけであります。  先ほど将来ビジョンというようなことが話題になりましたが、私どもは、やはり将来の給付水準というのは全体的に八割程度のところで物事を考えていってはどうだろうかという考えを持っております。したがっていずれその格差は解消されるものだ、したがって、それまでの間の過渡的な格差の存在ということで、これは目をつぶらざるを得ないというように考えておるわけであります。ただ、そういうことをいたしましたにしましても、退職者医療制度の適用を受けるのは四千万の市町村国保の被保険者のうちの四百万、一割でございます。したがって、その一割の方々について八割の給付をしたからといって、制度がむちゃくちゃに複雑になるというようなことはないのではないかと私どもは考えております。
  36. 平石磨作太郎

    平石委員 その構成比を私、この間ちょっと調べてみましたが、今御答弁にありましたように、退職者が一〇%、老人が一一%、合わせて二一%ぐらいの者が含まれておるように伺ったわけです。局長のおっしゃるように心配がなければいいですけれども、同じような保険料を負担するわけですから、同じ保険料を負担しておいて隣の人は八割給付、もう一つ隣の人は十割給付、私は七割。まさに今の日本の各制度における給付の格差がそのままここへ出てきた、こういった形のものになっておるわけですよ。そうすると、今答弁の中にもありましたが、最前申し上げました、少なくとも国民が同じ給付で同じ負担で、これが私どもの目指すビジョンの、そして保険制度のあり方なんです。いわば、今までのそれぞればらばらに不整合に制度ができてきたものが、そのままここへ集約されてきた。これは放置できないのじゃないか。うまくいくとは思います、心配はないと思います、わずか二一%ぐらいですからということだけで済まされる問題ではない、私はこのように思うわけです。  したがって、私は、また党のこれへ戻るのではないのですけれども、私どもの考える医療というのは、今それぞれの保険制度が抱えておる今申し上げたようないろいろな格差、少なくともこれの統合を図って、強い者も弱い者も国民が等しく、力のある者もおれは嫌だという人も一緒になって、社会保障、保険はこれらを包まなければならぬ。こういう意味から、医療の面では等しく給付を受け等しく負担をする、こういうことを目指しておるわけです。したがって、私どもの基本政策としては、そういった医療保険制度の統合と一緒に、被保険者は一割を負担する、給付は九割だ、こういう一つの基本政策を持っております。  そういう意味から考えたときに、今回の改正案を見ると、高いところだけ押しつける、下の歯どめがありません。まさにそれが国保へあらわれてきておるわけです。この国保をそのまま、何とかいくでありましょうという期待のもとに、この格差を国保に集めておくわけに私はいかぬと思う。そうすると、下の、ミニマムと言ったらおかしいのですけれども、国が社会保障と保険で保障すべき給付の最低がないままに十割を落とす、これは私は反対です。少なくとも一つの将来ビジョンを描いた中での、国保については何年にあるいは何カ年で、そういった一つビジョンを私どもは描きましたが、大体何カ年計画でそのようにしていきます、こういうものが示されなければこの国保の解決にはならない、こう思うのですが、いかがです。
  37. 吉村仁

    ○吉村政府委員 まことにお説のとおりだと私は思います。したがって、私どもは、将来の目標というものを一応八割程度のところに置いてはどうかという考えを持っております。いずれ、大臣が申し上げました長期ビジョン厚生省長期ビジョンというような中でそれは明らかにしたいと思いますが、現在のところは、私どもの頭の中にあるものを申し上げますと八割程度のことを考えております。したがって、八割の線に次第に集約をしていく必要がある。今回の本人の給付率の引き下げにつきましても、やはりそれに向かう第一段階であるというように私どもは考えておるわけでございます。そして、国保の中の退職者については少なくとも八割という水準へ持っていく、将来国保の被保険者についても八割程度の給付という線に持っていく、こういうような長期的な展望というものを頭の中に描いておるわけでございます。
  38. 平石磨作太郎

    平石委員 そこで、国保がこういう各給付階層のものと今は同席をしなくても、私はこの六千二百億というマイナスシーリングの中を見てみますと、これは私の計算ですけれども、私どもの目指すものは八割ではないのですけれども、直ちに八割に引き上げるとしての所要額、それから国庫負担、これを見ますと、国庫負担は満年度で子九百九十億です。ざっと二千億です。こうしますと、退職者医療で国が国庫負担をゼロにしたものが二千三百五十五億、これをそのまま振りかえて、今まで医療費の四五%は国保へ入っておったのですから、退職者がその中に今もおるのですから、それへは四五%が入っておった、これから考えたときに、二千三百五十五億をそのままに置けば、ざっと二千億で自営業者あるいは農村の人たち、こういうものも今回の改正で一挙に八割になるのじゃないですか。どうです。
  39. 吉村仁

    ○吉村政府委員 数字からいいますと大体そのとおりだと思います。そのままにしておく財政力があるかどうかが私ども問題にしておるところでございまして、私どもそれができるのなら、それは必ずしも不可能な数字ではないと思います。しかしそのこと自体ができるんだろうか、こう考えましたときに非常に困難だ、こういうことでございます。数字でおっしゃられるならば、数字は大体そういうことだろうと思います。
  40. 平石磨作太郎

    平石委員 ここで強く申し上げておきたいのですが、今の局長の答弁ですが、来年もマイナスシーリングをやると大蔵は言っておるのですよ。今年六千二百億を自主マイナスで捻出をしたのです。だから、今年はその中でやろうとしたらできることであった。これは確認をした。ところが、その状況であればいいのですがと、こういう局長の条件がついているわけですね。今年できなかったことが、次のマイナスシーリングを大蔵に言われたときに、そういう八割に上げる機会が出てきますか。少なくとも七割、八割、十割というものをここへいつまでも一緒にはおけませんぞ。そして、最低ラインは今局長の答弁で言うと少なくとも八割に平準化したい、八割に平準化したい希望は持っておるけれども、果たして財政の都合でそれが近々できるものかどうか。少なくとも財政再建には六十五年まで云々ということが大蔵省の中期計画には出ております。これも見さしてもらっております。大変な不足類、要調整額があるようです。こういう情勢の中で八割へという局長のものが、今せずにして、果たして先になってできるかどうか、見込みありがとうか、もう一言。
  41. 吉村仁

    ○吉村政府委員 先生の御指摘は、八割給付をするために国庫負担をそれだけふやせばできるではないか、こういう御議論なわけであります。私どもは、八割給付にするのを必ずしも国庫負担によって八割給付にするかどうか、これは別途検討をすべき問題であろうと思います。例えば財政調整というような方法もございましょう。それから統合ということも観念論としてはあり得るわけでございます。したがって、国庫負担をふやすことによって八割給付をすぐやれ、これがなかなかできない、今の国家財政では難しいのではないか、こういうことを申し上げておるわけでございます。したがって、八割給付の目標を掲げそれに進んでいくために、国庫財政が非常に好転をして国庫負担でできるのならそれは一番幸せかもしれません。しかし、もし国庫負担でそれができないというときには、別の方法だっていろいろ考えてみるべきではないかというように私どもは考えておるのであります。
  42. 平石磨作太郎

    平石委員 一概に国だけが負担を持てとは私も言っておりません。ただ、国の今まで出ておったものが退職者医療でゼロになったから、全部国庫へ引き上げたから、今まで出ておったものを国庫へ戻す形にしてしまったから、私は国庫負担のところで論議をしておるわけです。だから、一概に国庫負担だけで七割を八割にしてくださいよ、私はこれを求めておるものではないのですよ。そこの関連での質問でございます。財政的な面においては大変な時代であるが、早くやってもらわないと、今はここへ全部しわ寄せが集中してしまった。こういうことで、これは政府が経営するものでなし、市町村が経営するものですから、まあ何とかいくでしょうというような安易な気持ちでは困るということです。この点を強く申し上げておきたいと思うのです。これはどうせ、大臣の先ほどの答弁にありました、後から出てくるいわゆるビジョンの中で解決するかもわかりませんので、これ以上は申しませんが、強く申し上げておきたいと思うわけです。  そこで、国保についても一緒に御質問を申し上げますが、今まで国保については医療費の四五%、ところが、これからは給付費の五〇%ということで結局従来の国庫補助が三八・五%に実質ダウン、こういう形になるわけです。これは退職者の医療費が要らなくなるからそれに見合うものとして、保険料の引き上げは行わず、保険料には影響なしに給付費という形でその五〇%を見るのです、こういうことです。これはわからぬでもありませんが、政府が行っていくものでなし、直接の経営責任政府にない。そして標準的には認めておりますけれども、個々まちまちには、それぞれの経営団体、地方団体でその足らざるところは一般会計から特別会計へ繰り入れをする、そういったような操作を重ねながら何とかかんとか、保険料についてもなるべく抑えて苦労しておるわけです。  ところで、そういう中で退職者か一〇%、老人保健が一一%という今の構成比率でございましたが、これは町村によってまちまちです。退職者のおるところは非常に荷が軽くなる。過疎地域のようなところはまず退職者はおらぬと思います。そうなりますと、今回の退職者医療をやったことでそれほど保険会計好転の兆しは出てきません。影響が出てこない。いろいろまちまちなところで、財政調整交付金を五%から一〇%にふやしておるが、これでいけるのかどうなのか。そして国保の課長は、保険料にははね返りはございません、こういうことを言っておられるようです。そのようにいけば結構なんですけれども、三〇%おるところは非常に荷が軽くなります。これは結構いくでしょう。ゼロのところは全く影響がない。それへぱっと落とされるということになりますと非常に難しい問題が出てまいります。そこらを一言お答えをいただきたい。
  43. 吉村仁

    ○吉村政府委員 確かに本当に大丈夫か、こう言われると、神様でないわけでございますので、なかなか大丈夫だと言えません。それは結局、現在の医療費というのが自由医療、お医者さんも診療は自由、それから患者の方も、どの医療機関にかかるか、開業医さんにかかってもいいし、大学病院へ真っすぐ行ってもいいわけでございまして、両方の面で自由な医療になっております。したがって医療費の予測はなかなか難しい。それから、出来高払い方式でございますのでこれもまた医療費の予測は非常に難しいわけでございますが、私どもは、そういう中におきまして、過去の経験あるいは実績をもとにして本当に真剣にはじいたつもりであります。したがって、これがびた一文狂わないかとおっしゃられると、私も胸をたたいて、確信が持てます、こう言うわけにはまいりませんが、ほぼ確信を持った数字であるというように私どもは思っておるわけでございます。そこで、そういう数字を基礎にして保険料を引き上げる必要はないかと、こういうことで私どもは保険料の引き上げは必要でないことを確信しております。  それからもう一つ、財政調整交付金一〇%の枠で、退職者がいろいろばらついておる市町村間の財政調整が本当に可能か、こういう御心配でございますが、私ども一〇%の財政調整交付金があれば大体いける、こういう確信を持っておる次第でございます。
  44. 平石磨作太郎

    平石委員 今、局長の答弁で医療費の問題がありました。二・五%、これは適正化の問題で私は論じようと思っておるんですよ。今私が御質問申し上げたのは、構成比が全国では大体一〇%です。こういう構成で一並びに見ておるけれども、それぞれの保険団体は地方でばらばらにやっておるのですから、その構成が三〇%も退職者がおるという、いわば都市型の地域ではそういう者がたくさんおるでしょう。それから田舎の辺地の場合は、こちらで働いておって、いわゆる退職をせられて田舎へ帰るかといいますと、途中の生活の便利のいいところへ、地方であっても都市型のところへ新たな家を構えてそこへ住まいをする、こういうことになって、田舎の辺地の方は退職者が少ない。そういうばらつきの中でいけますかということですね。だから、平均が一〇%ですから、三〇%も退職者がおるところは国保会計はうんと荷が軽まるわけです。全然いないところは国庫補助だけに落とされて三八・五%、そして退職者医療制度に影響はない、こうなる。ここを聞いておるわけです。
  45. 吉村仁

    ○吉村政府委員 私もそういう御答弁を申し上げたつもりなのでございますが、財政調整交付金の幅というのが、五十八年度医療費の五%であったものを今度は給付費の一〇%でございますが、約二倍にしておるわけでございます。したがって、その財政調整交付金の配分を通じて、今先生指摘のように、三〇%の退職者が出たところあるいは全く退職者がいなかったところ、そういうところで退職者医療を実施したための影響の度合いというのは違うわけでございますが、それは財政調整交付金の配分を通じてそのばらつきかげんを是正していきたい、こう申したわけでございます。
  46. 平石磨作太郎

    平石委員 これは特に国保組合、こういう国保組合というのは大工さんとかこういったものがやっておるわけですが、ほとんどこの方たちはいわば自営なんですね。もともと退職者がいないわけです。だから、こういう退職者のいない国保組合がある。それから、そういう組合でない一般の国保の場合は辺地には退職者がいない。ここのところで、保険料にはね返りはございません、影響はございませんという運営をやる、こういう方針ですから、そこらで一般会計を投入しなければ維持ができないというような事態が生じたときにどうするか、そういう不安を持っているわけです。地方の団体は不安を持っておりますので、もしそういうことになれば、いわゆる財政調整交付金を増額するとか、あるいはやり方を変えるとか、最初だからわかりませんけれども、まずやってみて、もし保険料を上げなければならない、あるいは一般会計から投入をしなければならぬ、こういった市町村が出たときはひとつ考慮してもらわなければ困る、それは考慮する、こういうことですね。そこをもう一言お願いをいたします。
  47. 吉村仁

    ○吉村政府委員 私ども、先ほど申し上げましたように、確信を持っておるのでございますがそれはあくまで確信にすぎないだけで、実際にどういう状態が起こるか、これは予測しがたいところでございます。したがって、今先生指摘のような事態が起こりました場合には、やはり弾力的に対処せざるを得ない、こういうふうに思っております。
  48. 平石磨作太郎

    平石委員 そこでもう一言、国保についてお聞きしておきたいのですが、今度保険料の最高が三十五万になりますね。これは大変だと私は思うのですよ。これはいわゆる標準報酬が被用者保険の場合は七十一万になる。それで国保の場合も三十五万を最高限に、ぐんと引き上げたのです、二十八万円から。今の保険料もみんなが大変だと言って払っているわけですね。だから、これが三十五万になりますとこれは負担が大変なことになるのです。この被保険者の七十一万に上げたということの論議もしたいのですけれども時間がありませんが、それの半分だ。事業負担がないから大体その半分程度ということで、これも三十六万円を三十五万円にしておる、こういうことだそうですけれども、これはちょっと高い。そして一方、七十一万の標準報酬月額のいわゆる被用者保険の方々は給付が違うわけです。国保の場合は七割ですから、七割でもってその半分でございますということでこられましても、これは大変な負担がかかるのですから、そこを何とかもうちょっと、保険会計へ国庫補助をするなりして、今のようなダウンをさせずに、これへの影響を緩和する方法ができぬものかどうか。これは要請をしておきます。     〔委員長退席、今井委員長代理着席〕  そこで、今度は医療の適正化というところへまた戻ってきます。  大阪の中野診療所、この間、私も新聞で見ました。新聞によりますと、この中野診療所について「乱診乱療ケタ外れ」こういうことが出ております。こういうことが事実とするならば、大阪府は取り消しを決定したようですから恐らく事実だと思いますが、そういうようなことはまさに日本保険制度を破壊するものだと思う、言葉はきついかもわかりませんが。だから、関係するお医者さん、診療側のお医者さんも、そして受診する被保険者も、国も、みんなが力を合わせてこの制度は守って発展させていかなければならぬ、そういう中に、一部とはいえこういうようなことが出てくるということはまことに残念だ。これはどういうところに原因があるのだろうかということを新聞その他で見てみますと、やはり出来高払いということが、非常に日本医療発展させ、そして自由な診療ができる、保険制度の中では自由な診療ができるけれども、これは一面非常にメリットなんです、これはメリットであって、このことをどうのこうのは言いませんけれども、その中でやはり両刃の剣であって、濃厚診療をするという場合に、あなたのは濃厚診療ですよ、こう言うことがちょっと難しい。言えない。そういう状況の中でこれが出てくるわけです。だから、医師会にこういうことが起きないように自主的にもやっていただかなければならぬ、私はこう思うわけですが、この適正化については、今局長さんは多方面にわたっての適正ということを言われたが、私は診療に限ってひとつお話を進めていきたいと思うわけです。  そこで、今回提案がなされておるようですが、医療法、これはまさに日本医療の基本法になるわけですが、不十分ではありますけれども出てきたようです。そこでの論議にもなりますけれども、診療というものに対する適正化あるいは監査さらには審査の強化、そして顧問医の設置、こういったものが対策としては出てきておりますが、一番根本になってくるのはやはり濃厚診療、この医療の内容に足を踏み込むのか踏み込まないのか。これは、今まで富士見病院もございましたし、あちこちでありましたが、住民から訴えが出てきた。おかしいな、何とかしてほしいという訴えが六回にわたって、あの富士見産婦人科病院のときには市の窓口に上がっておる。そういう訴えを聞きながら、どうにもならない。あのときの審査でも、厚生省は調査に行っておりますけれども、水道の蛇口を見たり帳簿を見た、こういうことだそうです。これは診療の中身にまで立ち入れない、そういった限界があるのですけれども、この出来高払いという中にはそういう点で自粛をいただかなければならぬ問題が出てくる。そして、それは医の倫理なり、お医者さんの良識に担保された出来高払いです。ところが私が考えてみるのに、お医者さんの医の倫理と言われるそういったものの前に、いわゆる世間の常識がある。この世間の常識とお医者さんの医の倫理、医の良識。この出来高払いは結構なことだが、これはお医者さんの良識を担保に仕上がっておるのですが、我々が外から見たときに、国民の良識があると思うのです、医に対する良識が。この医に対する良識とお医者さんの良識というものに、全部のお医者さんのことを私は言ってはおりませんよ、今ここへ例に挙げた新聞報道、一部の医者ですけれども。だから、多くのお医者さんは世間の良識とお医者さんの良識とが一体になってやっておると思うのですよ。そしてこういうようなものが出てくるのは、いわば世間の良識から外れたそういうものではなかろうか。ここで、私は、診療ということについてその世間の良識をまとめるというか代行するというか、それは行政だと思うのです。もう一般の国民には手が届かないところなんです。そこを、診療について初めて、中野病院が乱診乱療という出来高払いの中にある一面を見てこういう処分がなされたようですが、これから医の内容に踏み込むのか踏み込まないのか、そしてここを見つけるのにはどうして見つけていくのか、ここらあたりをひとつお答えをいただきたい。
  49. 吉村仁

    ○吉村政府委員 医療の内容は非常に難しいわけでございます。現在、我が国の医療制度というものは医師の自由裁量権というものを保障しておるわけでございますので、個々の医師が行う診療の中身というのは、医師の倫理観と医師の医学常識、医学知識あるいは医学上の経験、そういうものに依存せざるを得ないわけでございます。したがって、濃厚診療あるいは過剰診療に対して疑問を持って監査をする、こういうのは医師のいわば心と技そのものにメスを入れるということになるわけでございます。それがなかなか難しいプロセスに相なります。その医療がその患者にとって最も適正であったかどうか、妥当であったかということを判定するわけでございますので、いろいろと論争が上がります。そこで非常に難しいわけで、今先生がおっしゃられましたような国民サイドの常識というものもそれは必要でございましょうが、私どもはむしろ、専門家から見た医療の適否というものを信頼するのが一番いいのではないか。例えばそれは常識的に見て、中野診療所につきましても常識的に非常に高い診療費であることはだれが見てもわかるのでありますが、それではどこが適正な水準なんだということになると、これは素人ではなかなか判断ができない、やはり専門家の力に頼るよりほかはないということで、私どもは、一つの、試みとしまして、今回顧問医師というものをつくりまして、そして、その顧問医師と一緒に行って監査をして、医学論争を経て今回の措置をとったわけであります。そういう方向というものは私どもも今後もとっていきたい。それが医療の中身にまで立ち入ることになるのかどうかということになりますと、私はやはり一部は立ち入らざるを得ない、こういうことになると思います。  それからもう一つ、そういう方向をとると同時に、やはり先生がおっしゃいましたように、常識的に非常に高い請求をしておる診療所、保険医療機関については、保険医療機関の再指定をしない、そういう方向をやはりとるべきだ。それは医療の中身が適正かどうかというようなことよりも、やはり常識的に見てそういう著しく高い診療報酬の請求をしておるような医療機関とは保険の契約を結ばない、こういうことが一つの方向ではないか。したがって、私どもは、五十九年度におきましては、顧問医師団というものをつくって、そういう医療の個々の中身につきまして専門的な検討をしていただくという方向を一つとると同時に、今回の健康保険改正法案にも盛り込んでおりますが、そういう著しく過剰な診療をする、濃厚な診療をするような保険医療機関とは指定の契約をしない、こういうことができるような規定を置いておるわけでございます。やはり、外から行く場合と中から行く場合と両々でやっていくよりほかはないというようなのが私どもの考え方でございます。
  50. 平石磨作太郎

    平石委員 社会保険審議会でもこれが論議されておるようです。したがって、今回の改正案に対する社会保険審議会の答申の中でも、「医療費の適正化対策については、更に一層の充実強化を図られたい。」、「保険医療機関の指定の見直し、高額レセプトの審査強化等については、基本的には了承する。」、そして今局長のおっしゃったこと、これは一応了承されております。なお、傾向的な過剰診療の認定基準の設定が困難、これは私は、やはりあの富士見産婦人科病院のときにも論議をしましたが、医療の内容に踏み込むということは行政としてやるべきことでない。ただ、保険法による保険医さんが保険患者に保険治療をした、だから、自由診療の場合ならそれはお医者さんと患者さんとの話で、信頼関係そのものでもうお任せができるわけですが、保険法による保険医さんが保険患者に保険治療をする、こういうサイドからこの問題を見なければならぬのですから、そうすると、やはり私は、お医者さんの領域である自由な診療、これには踏み込みはできないけれども、今局長が言った今度つくろうとしておるこの顧問医、富士見のときにもいろいろ医療専門官がおりましたが、この医療専門官は、これはどっちかといったら、主治医が診療しておるものをそこへ行って評価するということは、技術屋さんのお医者さんではあるけれども、患者の手を握っておるものでなし、なかなか難しい。それで、今度顧問医が中央において、恐らくレセプトを見てそこの判断をする場合に、現実に作動できるかな、こういうような心配もあります。したがって、私は、聖域には入るべきではないが、ここの表現にもありますように、被保険者側委員は、過剰診療の認定基準の設定を賛成、こうやっておる。いわば世間の常識と医の常識というものが何とか合致するような方向に、ここの問題としてそれが論じられておるのではないか、こういう気がしたから申し上げておるのですが、ひとつ再指定の取り消し、またこういうものが出るのを防ぐためにも、厳格にお願いをしたいと思うわけです。  それから私は、この医療の適正ということについては、これに関連をしまして、あの六子二百億の中で千八百億何がしの適正化というものが予定されておるわけです。これはできるのかなという心配がちょっとあるのですが。そしてそれに基づいて今までの、いわゆる医療費の伸びが落ちてはきましたけれども、今年七・二%上がる予定のものを二・五にしておるわけです。これはあの適正化で幾ら、何で幾らと、国庫負担のサイドですから、そういったものがなかった場合、果たしてこれが保険料に影響なしにいけるのかどうかな。相当確信を持っていますと先ほど答弁がございましたが、もう一度確認をしておきたいと思うのです。
  51. 吉村仁

    ○吉村政府委員 私ども、何も対策をしなかったならば七・二%伸びるように予測をしております。そして、今回の対策をいろいろすることによって二・五%におさまるという計算をしておるわけでございますが、問題は子八百億の医療費適正化が本当にできるのかどうか、こういう御指摘でございます。ただ、私ども、千八百億のうちの約八百億、七百六十六億につきましては、これは薬価基準を引き下げ、そして診療報酬の改定をしたその差でございますので、これはもう既に三月一日から実施をいたしておるわけでございます。したがって、残る一千億ばかりの適正化の措置ができるのかどうかということになると思いますが、私どもは最大の努力をしてこの効果を上げるようにいたしたい、こう考えておる次第でございます。
  52. 平石磨作太郎

    平石委員 最大の努力をして効果を上げるようにしておるということはいいんですが、そこで、これからも内容には踏み込めないけれども、先ほど申し上げた厚生大臣の指針の原則、五原則ですね。この中に出ておるものが医療標準、標準医療ということが出ておるわけです。いわゆる医療標準というのは一つの制限を、いわば昔のような制限医療をするつもりなのか、あるいは診療行為そのものに一つの規格品といいますかそういったものをつくっていく、そして、自由にはできるのだけれどもこの規格の中で診療行為をしてくださいよ、こういうものを予想しておるのかどうか。これは、そのまま今後改正をされてから以降の医療にそういったものが出てくるのであれば、出来高払い方式に影響が出てくる。この方式の見直し等の問題がその先にはあるというような気がする日ここをひとつ。
  53. 吉村仁

    ○吉村政府委員 今回の改正案で私ども医療標準というものは考えておらないわけでございます。ただ、先ほど御指摘の、林前厚生大臣の「視点と方向」の中に一つのサゼスチョンとして医療標準というものが挙がっておるわけでございますが、私ども、今先生のお話しをお聞きいたしまして、その医療標準を仮につくったといたしまして、その標準から外れる医療には全部給付しない、こういうことをしたとすればこれは制限診療になるだろう、こういうように思います。しかし、一応医療のスタンダードとしてそういうものを決めておいて、個々の患者の症状その他に応じて、具体的な事例については、一応スタンダードに即して行うけれども、実際上は弾力的な運用をする、こういうような形で医療標準というものを設定し運用されるならば、これは制限診療ではないんではないか、こういうように考えます。  特に、昭和二十年代に結核の医療基準というのが決められたわけでございます。そして、大体我が国の結核の医療というのはそのスタンダードに従って行われた。それが結核医療の指針にもなり、また実地の臨床をされる医師の一つの教育、と言っては語弊があるかもわかりませんが、教育にもなり、そして、我が国の結核医療水準を高からしめた経験があるわけであります。しかし、その結核の医療基準というのは、もうこれしかやってはいけないということではなしに、やはり一つのスタンダードであった。そういうものを私どもは頭に描いておるわけでございます。  したがって、それを役所がつくるかあるいは専門学術団体がおつくりになるか、そこはまた一つの重要なところでございまして、私どもは役所ではつくるべきでない、あるいはつくることは不適当だ、むしろ学術専門団体にお任せするのがよろしいのではないか、こういうように考えておるわけでございます。
  54. 平石磨作太郎

    平石委員 時間が来ましたので中途になりましたが、これから医師の診療報酬の不正請求とかいろんな処分の問題、それが件数としてどのような状況になってきておるか。過去四、五年前からどのような状況であるのか。そういった取り消しの問題、処分の問題、あるいは医療通知の問題、こういったことを適正化の一つの手段として、過去の経過を見ながらまだお伺いをしたいのでありますが、時間が参りましたので、これはまた後へ残すということで、さらに適正化については話し合いをさせてもらいたい。  最後に、大臣ひとつ、今二時間にわたって質疑をいたしましたが、大変な問題を抱えながらの今回の提案です。そして大臣が、二十一世紀を目指す大きな大改革である、こういう自負を持っての御提案でありますが、やはりそれには、質問の中で申し上げたように、ビジョンを抱いて将来を描かないと何か空虚に聞こえるわけでして、五十九年度だけの勝負のような気がしますので、そこらあたりを含めてひとつ大臣のこれからの決意、これをお聞かせいただいて終わらせてもらいます。
  55. 渡部恒三

    渡部国務大臣 私も、平石先生の二時間にわたる質疑の中での御見識を承っておりまして、大変ありがたいことに、ほぼ私と同じ考えだな。(発言する者あり)ただ、私は厚生大臣という置かれた立場がございますし、また先生は野党の立場で、私と先生が立場が変わったら、恐らく先生と同じような御質問を私もするかもしれないというようなことを考えておったのであります。前にも私、お答えしたことがあるのですけれども、それぞれそのときそのときの運命がございまして、私は、たまたまこの被用者保険本人の十割給付を今度は一部御負担を願わなければならない時期に厚生大臣に就任いたしまして、光栄でもあり苦労もしておるのでありますが、やはり私は、ある時期、今度は国保の皆さん方、今七〇%の方を八〇%に給付を上げる時期が必ずやってくると思います。今おしかりを受けましたが、私は、ここで苦労させられる以上、七〇%を八〇%にするときの厚生大臣にもさせてもらいたいなと思うのでありますけれども。(笑声)  ただ、財政上大変厳しい状態で、一番国民の皆様に御理解いただくには、被用者保険は一部御負担願いたい、そのかわり今一番恵まれない条件にある国保の七割の方は八割に上げましょうという改正案を出せば、もっともっと幅広く御理解をいただけるだろうと私は思うのですが、厳しい財政の中で後先がずれてしまったわけであります。  社会保障というものは、本来、この国に生まれ、この国にまじめに働くすべての人が同じ条件で給付を受けるべきものである。これは先生と私と全く同意見でございますので、私もそういう方向というものを考えて、これだけの大きな法案を通していただくのでありますから、私ども政府としても、先生方の今の御意見を肝に銘じて、今後二十一世紀に向かって国民の健康を守っていく、厚生省はこういう考えで医療行政をやりたい、そういう青写真を先生方の御意見を十分尊重しながら示して、またそれを実現するように今後努力をしてまいりたいと思います。
  56. 平石磨作太郎

    平石委員 では、終わります。
  57. 今井勇

    ○今井委員長代理 この際、関連質疑を許します。水谷弘君。
  58. 水谷弘

    水谷委員 関連して御質問をいたします。  適正な医療が行われていなければならないという観点から、私は、毎日のように大変ショッキングな実態が明らかにされてきております報徳会宇都宮病院の問題に限って、御質問をいたします。  きょうの新聞の報道でも「死亡患者を違法解剖」「無資格で脳を標本に」院長の指示で「看護婦らも執刀」、このようなかなりはっきりした疑いが伝えられております。リンチ殺人事件の容疑で逮捕者を出し、また無資格診療においても院長の指示を受けて行ったとの容疑でこれもまた逮捕者を出し、そのほかに数々の乱脈な診療が行われている、全く驚くべき劣悪な医療実態が明らかになってきているわけでありますが、この宇都宮病院の問題がここまで発展してきた原因厚生大臣はどのようにお考えになっていらっしゃるか、初めにお伺いいたします。
  59. 渡部恒三

    渡部国務大臣 大変遺憾な事案でございまして、これは我が国の今の精神障害者対策の問題等もいろいろございましょうが、また今日まで新聞等に報ぜられている事実、また私どもが調査した実態等を考えますと、この宇都宮病院の院長というものの特殊な性格とか、これはいろいろな理由があると思います。一つのものに断定できるものではありませんが、大変残念なことですが、これで終わったかと思うと、我々ちょっと常識では考えられないような新たな事態が次々と出てくるということで、私どもは、この事件はここで終わったということでまだ考えないで、今後なおさらに真相を徹底的に究明していきまして、その全体を把握した中で、これらの因果関係、原因、そういうものを総合的に勉強して、二度とこういう事件が起こらないような施策を立ててまいりたいと思いますが、真相の究明がこれで終わったという段階でまだございませんので、今後なお一層真相の究明に努力してまいって、今後に遺憾ない施策を立ててまいりたいと思います。
  60. 水谷弘

    水谷委員 この問題は、もちろん、全く我々では想像のできない院長の欠陥的なところから起きてきたことが根本でありますけれども、ここまで来るまでどうしてこのままにしてきたのかという、素朴な皆さん方のお感じというのはまずそこにあるわけであります。  そこで、責任と言ってはなんですが、今の大臣の御答弁のように、大臣も毎日びっくりされているような問題でありまして、厚生省責任をどう感ずるかということを質問するのは不適当かもしれませんが、しかし国民から見れば、ここまで問題を放置してきたその責任厚生省は一体どう感じているのか、そのことはどうしても私からお尋ねをしなければならないと思います。大臣、もう一言。
  61. 渡部恒三

    渡部国務大臣 このような事態が起こり、国民皆さんにも大変御心配をおかけすることについて、私ども責任を痛感しております。その責任をどういうふうにしてあらわすんだということであれば、今回の事態を徹底的に究明して、もう二度とこういう宇都宮病院のような事件がこの国に起こらないようにできる限りの対策を立て、処置をしていくということがその責任にこたえる道であろうと思っております。
  62. 水谷弘

    水谷委員 私ども公明党では、去る三月三十一日、報徳会宇都宮病院に関する調査団を組みまして、県当局に、立入検査の結果等について事情を聴取いたしました。ちょうど数日前に警察の手が入りまして、伝えられるところによりますと、トラックで五台ほどの証拠書類等が押収をされ、病院が通常の状態ではなかったものですから、我々は病院にも事情を聴取したいという考えで実は参ったのでございますが、院長は不在、そこで院長代理に、立ち話でございましたが種々いろいろ事情を聴取してまいりました。それらを踏まえて、若干具体的な問題について御質問をいたします。  昭和五十五年以来宇都宮病院に対する医療監視が行われてきているわけですが、その経過とそれから改善勧告、どのような改善勧告を与えられたか、それに対して病院がどのように改善を行ったか、その点について各年ごとに報告をいただきたい。
  63. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 昭和五十五年度から五十八年度までの各年度医療監視でございますが、年度ごとにというお話してございましたが、五十五年度におきましては、医師が標準に照らしまして八名の不足、薬剤師が一名の不足、看護職員が四十四人の不足、それから、定床よりか超えて入院しております者が五十四人でございました。五十六年度におきましては、医師不足六、薬剤師二、看護職員三十、超過入院三十六でございました。五十七年度におきましては、医師不足五、薬剤師はなし、標準に満ちておりました。看護職員が二十一の不足、超過入院はございませんでした。五十八年度におきましては、医師不足が六、薬剤師は標準を満たしておりました。看護職員の不足が五十八、それから超過入院が十八、このような結果になっております。  そこで、栃木県当局は、こういう指摘を行いまして、その改善について指導をしてきたところでございますが、特に五十七年、五十八年度におきましては、病院側から改善計画書を提出させるなどの措置をとって強力に指導いたしたのでございますけれども、結果として、改善されておらないことはまことに遺憾なことであると考えております。
  64. 水谷弘

    水谷委員 一般的にお尋ねしますが、医療監視の実施方法はどのような形で行われているのか、お答えください。
  65. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 一般的には、医療を確保いたしますためにその標準を監視しておるのでございますが、方法といたしましては、県本庁、保健所の医療監視員が、病院につきましては毎年一回立ち入りをいたしまして、職員名簿、出勤簿、各種の記録等の書類を点検するほか、実地に職員の勤務状況、構造設備の状況、清潔保持の状況等を調査するのが一般的でございます。栃木県におきましてもこのような方法で行っておるという報告を受けております。
  66. 水谷弘

    水谷委員 医療法においては必要と認めたときというふうになっていると思いますが、年一回の立入検査、実際は非常に事務的な形で行われている。いわゆる目的を達するためにしっかりと検査をするという姿勢がどうも見られない、ただ行って調べて帰ってきた、このような感じが見受けられてならないわけであります。  なぜそのように申し上げるかといいますと、今御報告をいただきましたように、宇都宮病院の五十八年の医療監視の結果、医師不足が六名、看護職員の不足が五十八名、超過入院が十八名、これは五十八年でこの結果が出たわけです。それで、今回問題になってから三月の十四日、二十二日、二十三日、二十四日と立入検査を行いました。そこで出てきた医療従事者の不足数、どれだけ不足しているか、医師が十四名、看護職員が八十五名です。五十八年の立入検査が行われて、その後三年も五年もたっているわけではないのです。今回の立入検査は、問題がここまで大きくなりましたし、検査する方も覚悟を決めておやりになったはずです。それで、今まで簡単に見てきた名簿だとか出勤簿を厳正に照らし合わせて、非常勤の医師も常勤換算をぴしっとやって実態を明らかにして、浮かんできたのが五十八年の監査で医師不足六名のものが十四名も不足、倍以上になっている。看護職員の五十八名が八十五名も不足。ですから、私が申し上げたいのは、問題が発覚してから大騒ぎをして、年一回の立入検査ではこのような事務的なことをするということは許されない。と同時に、今回これだけはっきりした検査ができたということは、常にやろうと思えばできることであると考えるわけであります。なぜこういう相違がわずかの期間の間に見られるのか、お答えをいただきたいと思います。
  67. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 五十八年の検査は七月であったと存じますが、確かに御指摘ございましたように、今回の事件の発覚後の医療監視の結果と大幅な違いを来しております。この職員数の異なっておる事情につきましては実は正確には把握し切れておらない状況にございますけれども、事件発覚後に一部の職員が退職したということも一因であろうと考えられます。なお、お話しの中で、通常の医療監視で非常勤職員の常勤換算等の話がございましたが、この点につきましてはきちんとやっておるわけでございます。  なお、先ほど大臣もお答えになりましたけれども、このことを一つの契機といたしまして、お話しもございましたように、特に違反を繰り返しておりますとかそういう事例につきましては、よく今度の件を分析をいたしまして、有効な方法を真剣に検討してまいりたいと考えておるところでございます。
  68. 水谷弘

    水谷委員 私が心配しているのは、あらゆる医療機関においていろいろな事情があります。努力してもなかなか、医師不足という実態から、そう簡単にお医者さんをお呼びすることができないということも事実であります。しかし、この宇都宮病院に限ってどこにもその努力の形跡が見当たらない。どうかひとつ、今後も徹底してよくお調べをいただいて万全の措置を講じていただきたいと思います。  先ほど平石委員からも、直正な医療という問題で、お医者さんの考え方と国民の共通して持っている考え方がぴしっとした形で適合すれば適正な医療ということが言われる、というような御趣旨がございました。今回、この問題で、私は冒頭にも申し上げましたけれども、広く国民皆さんの中にある問題は、ここまで来る前に相当いろいろな情報が入っていただろう、そういう情報を完全に無視してきたのじゃないか。宇都宮病院、あそこは非常に問題だぞ。また同業の医師の中にも、あそこはちょっとおかしいのじゃないか、こういうような声があった。さらにまた、五十五年から四年間で、四十九件も病院の実態を訴える患者の相談があったと言われる。こういう大事な問題、大事な声をおろそかにしているところに、行政は何をやっているのだという指摘が起きてくるわけであります。そういう意味で、厚生省としては、今後全国的に——このような問題が起きるような病院が私は二度とあってはならないし、ないことを願っておるのです。しかし、また起きてからではもう取り返しがつかない、大臣がおやめになったくらいでは済まないのだ、そういう重大な問題、人命にかかわる人道上の本当に最も重要な問題であります。先ほど中野病院の話もあり、富士見産婦人科病院の話もございましたが、やはりもう少し大地に耳をつけるような姿勢で、乱診乱療をやっているのじゃないかという情報が入ったときには的確に対応するとか、また大体付近ではわかるのです。あそこがおかしいぞ、大体そういう声が起きてしばらくたってどかっと問題が起きてくる。だから、その間に手当てをしていれば防げた問題がいっぱいある。そういうことから、いろいろな医療施設に対して常に問題意識を持って、これは決してすべてを疑ってかかるという意味ではございません。本当にこれはごくごく例外中の例外だと私も思っておりますが、姿勢としてはそういう姿勢で、しっかり情報を収集し、そして問題意識を持って対応していくべきだと考えますが、いかがでございましょう。
  69. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 お話しのとおりだと存じます。医療監視の実効を上げますために、いろいろな医療相談でございますとか、お話しにもございました苦情等に基づきまして、関連部局との連絡をよくしていくことが今後一層必要であろうと考えております。今後とも、住民や関係者からの情報収集に努めまして、疑わしいと思われるところにつきましては特に厳格な医療監視を行うなど、実効のある措置を講ずることを真剣に検討してまいりたいと考えております。
  70. 水谷弘

    水谷委員 県が立入検査を行った、問題点がある、勧告した、それが数年間にわたって継続している、こういうことについて県から報告を受けたときに、厚生省は一体どういうふうな対応をされるのですか。また、してこられたのですか。今のことに関連して。
  71. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 先ほどもお答え申し上げましたけれども、本件につきまして、長い経過にわたって繰り返し改善勧告がなされてまいりましたことは、まことに遺憾なことであると考えております。病院に対しましていろいろ指導を行い、特に先ほども申し上げましたけれども、五十七年、五十八年におきましては改善計画書の提出を求めておるのでありますけれども、実効が上がらなかったのはまことに遺憾である。今後は、先ほど来お話しもございましたし、私どももお答え申し上げましたように、実効の上がるような方法を真剣に、特にこういう繰り返しておるようなところにつきましては検討してまいりたいと思っております。
  72. 水谷弘

    水谷委員 ぜひそれはしっかりと取り組んでいただきたいと思います。  この事件で知事が記者会見をいたしまして、その中で、過去何度も県は改善勧告を与えてきた、しかし馬耳東風だと怒りを込めて言っておられるわけです。県の責任の部分もたくさんございます。厚生省に全面的責任があると申し上げているのではない。しかし、県が一生懸命やってもどうにもならないものは、そのために厚生省があるのですから、そういう点では、今後、県からいろいろな報告があってただ聞きおくという態度ではなくて、真剣に取り組んでいただきたい、お願いをいたします。  それから、宇都宮病院において現在まで精神衛生鑑定医によって実地審査をしていただいているわけであります。鑑定医の皆様には大変な御苦労をおかけして、あらゆることを犠牲にして今回取り組んでいただいていることに対して私も敬意を表しているところでありますが、きょうまでのこの審査の結果を教えていただきたい。
  73. 大池眞澄

    ○大池政府委員 お答え申し上げます。  県におきまして四月十日から、ただいまお話しがございましたように、県下の精神衛生鑑定医の全面的な協力によりまして、法に基づく鑑定医を派遣いたしまして実地審査を実施しておるところでございます。  まず措置入院患者から実地審査に着手しているわけでございますが、これまでに百六名の鑑定が行われております。その結果は、措置入院を継続する必要があると判定されました者が三十一名でございます。次に、措置入院を継続する必要はないが、引き続き入院を要するものという判定が六十四名でございます。それから、入院を要しないという判断の下されました者が十名おります。判断が保留されておる者がその他一名ということで、これは四月十八日現在ということで県から報告をいただいている状況でございます。
  74. 水谷弘

    水谷委員 大変な実態が明らかになってまいりました。きょうの新聞の報道によりますと、十六歳から二十年間も、この人は医療不要者という鑑定医の結果が出てきたが、二十年間も病院に閉じ込められっ放しだった。また、ここではっきりしてきたのは、百六名のうち措置入院が必要だと鑑定の結果が出されたのが三十一名、七割措置入院の必要はない、これは大変な事実でございます。いろいろな努力によって措置入院の数が全国的にだんだん減少してきている、そういう中でこれは極端な姿でございます。そこで、今回措置入院の解除、同意入院はいいとしても、いわゆる通院に切りかえて退院にできるというのが十名出ておるわけでございますが、出てきたこの結果に対して厚生省はどのような指導をしていかれるつもりか。
  75. 大池眞澄

    ○大池政府委員 実地審査の結果に対処するまず何よりも大切なことは、これらの患者さん方の医療並びに保護が確保されるということが最も重要な点であると心得ておるわけでございまして、県もそういう立場に立ちまして今対処を検討しているところでございます。  まず、措置入院の継続が不要という判断をいただいている患者さんにつきましては、法に基づく措置解除が当然行われるわけでございます。その後、それぞれの個別の患者さんについて、特に御指摘のございましたように在宅医療が可能という判断をされた方々につきまして、その医療の確保の方法、家族の方々あるいは患者さんについて、場合によりましては福祉事務所の関係機関等との連携も密接にとりながら、それぞれの個別の患者さんごとに最も適切な処置を行う必要があるということで、今取り組んでおるところでございます。
  76. 水谷弘

    水谷委員 現在、この百六名のうち少なくとも九十五名は、措置、同意はいずれにしても、あの病院で治療を加えなければならぬということでございます。病院の中にいる患者さん、それからまたその御家族、部外者がいろいろな問題で騒ぐ、一番その中で大変な苦しみをしていらっしゃるのは患者さんであり御家族であろう、そういうことを考えますと、例えばPタイルの上に毛布を敷いて患者を寝かせていたとかこういう現状の改革、大至急改めなければならないことを真っ先にこれはやらなければならない。そして、この病院の中に安心して患者が治療の供給を受けられるようなそういう体制をしいてあげなければならない、これが一番大きな問題だと私は思います。  そこでお尋ねをしたいのは、三月十四円に、実は調査、立入検査をされたときには患者の数が九百四十四名おったわけです。それが四月十日現在で七百七十一名に減っております。わずか一カ月の間に百七十三名という患者がいなくなっている。退院をした患者の中からいろいろな問題が起きておる。ここで具体的に申し上げませんが起きておる。ですから、これはよほどしっかりした対応をしていきませんと、思っていないような次の問題がまた起きないという保証はない。そういう意味では、ひとつより真剣に、いわゆる事実の究明だけではなくて、どうしていったら優良な医療供給ができるか、そういうことについて真剣にひとつお取り組みをいただきたい。いかがでございましょう。
  77. 大池眞澄

    ○大池政府委員 ただいま先生指摘のとおりだと私どもも考えておるわけでございます。一つの事柄についての両面性を確かに有している大変難しい問題かと思いますが、その点につきまして、行政当局におきましても、三月、既に病院の管理者に対しまして、患者さんの転院あるいは退院に当たっては、その行き先の確保という点を強く強調して指導に当たってきたところでございます。現在実施しております実地審査に基づく仮に今後退院あるいは転院というようなケースにつきましても、御指摘のような点を十分配慮しながら、個々のケースについてきめ細かく適切な対応をするように、県ともども指導してまいりたいと思います。
  78. 水谷弘

    水谷委員 ぜひそれはお願いをいたします。  そこで、四月十日現在の医師七名、それから看護職員五十九名と報告をいただいておりますが、この医師七名、看護職員五十九名という医療従事者数に見合う適正な患者数というのは一体何名になるのでしょうか。
  79. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 医師数七人から見ますところの標準の入院患者数は三百四十八人でございます。それからまた、看護婦等職員五十九人から見ますところの標準の入院患者数は三百五十四人でございます。
  80. 水谷弘

    水谷委員 いわゆる医療従事者数から逆に考えていった場合の超過をしている入院患者の数は相当になるわけでございますね。単純に計算して倍以上になっている。私、栃木県の人間でございまして、本当に何とか早くこういう現状に対応してもらいたい。大変な問題です。いわゆる行政処分とか、資格をどうするとか、それからその処分なんというのは、こんなのはまず地元の問題として後でも構わぬ。現在いると百七十一、医者が倍いなければいけないのに、これだけもう現実にいるわけです。これを何とかせにゃいかぬ。これは県だけに任しておいたのではとてもできないだろう。精神衛生鑑定医の皆さんや県の精神科医の皆さんは、もう自分のところの問題のように真剣にお取り組みをいただいておりますし、県も一生懸命努力をしている姿はよく私もわかっております。しかし、やはり厚生省のお立場で、今後、倍以上になっているこの現実にどういうふうに対応していただけるか、伺いたいのであります。
  81. 大池眞澄

    ○大池政府委員 御指摘のように、この現状に対処するために県も今一生懸命検討をしているところでございます。また、県内の関係医療機関と随時相談を進めている最中であると承知しておるわけでございますが、私ども厚生省という立場におきましても、県とよく密接な連携をとりながら、県の段階におきまして、例えばほかの県との関係におきましていろいろと国の援助を求めるというような段階が参りましたら、国としても目いっぱいそういう努力をしたいと考えております。現実には、七百名おられる患者さんの中で五百名余が栃木県下の方々でございますので、やはり県内での適切な対応ということが中心になろうかと思うわけでございますが、また今後の対応におきましては、よく県と連携をとってまいりたいと思っております。
  82. 水谷弘

    水谷委員 県内のほかの病院では、今もうほとんど満床という状況でございます。この患者さんたちは、本当に安心して医療を受けられるという考えのもとに宇都宮病院に今入院をされてきたわけであります。医療というのは供給独占というふうにも言われておりまして、これは病院なり医師が完全に抱えて、安心して加療して、そして社会へ復帰して立派に更生をされていく、そういう使命を持っているわけです。そういう観点から今の御答弁もございましたが、さらに、これは各県にまたがる問題でございますので、お話しては今五百名くらいが栃木県、そうしますと二百数十名というのは隣接県、他県からおいでになっていらっしゃいます。栃木県の現状は今申し上げたように非常に満床というような実態でございますけれども、茨城とか埼玉とか群馬、大臣の地元の福島とか、そういう隣接県に対して、そちらからお見えになっていらっしゃる方で話し合いがついて、転院をしてもいい、こういう御本人または御家族の間でいろいろそういう結論が出た場合、または通院にそれが振りかえられる場合とか、いろいろな方向が今後煮詰められていくと思います。しかし、これは県同士でただ働きかけただけではとても対応ができない、そういう問題でございますので、大臣にはぜひひとつ特段の対応をお願いしたいと思いますが、いかがでございましょう。
  83. 渡部恒三

    渡部国務大臣 今、先生から宇都宮病院の問題について大変御心配をいただいて、まだこれからの適切な具体策等をここで承りましたが、これは非常に難しい問題でございまして、私ども一般常識から考えますと、あれだけ大きく新聞、テレビ等で報道されたのでありますから、一番先に患者の家族の皆さん心配されて引き取りに来るとか、あるいは我々のところにその施策を要望してくるとかいうことが考えられるのでありますが、そういうアクションが意外に少なくて、国民全部の皆さんから御心配をいただいておるというところに、この精神病院の対策というものの難しさ、しかも、そういう立場の中で、あの精神病院に入っておられる方の基本的人権を守ってあげなければならないという、我々の非常に大きな大事な使命ということを痛感させられておったのであります。  もとより、先生指摘のように、栃木県でできた事件でありますけれども、栃木県だけで解決できる問題でございません。今先生からいろいろ承った御意見等を十分参考にさせていただきながら、これは厚生省を挙げてその対策に取り組んでまいりたいと存じます。
  84. 水谷弘

    水谷委員 私どもが調査に参りましてもなかなか踏み込めない部分がございます。厚生省も、現地へ県が立入検査をした結果をいろいろ聴取をなさっているようでございますが、県の報告をお聞きになるという形じゃなくて、積極的に現地に乗り込んでいろいろな問題を処理をしていただきたい。患者にとってみればこれは災害みたいなものです。大災害が起きている。生命の危険にさらされているわけであります。これは中身を調査して善処するというような問題とはちょっと性質が違います。どうかひとつ早急に現地へおいでいただいて、さらに徹底した実態を把握すると同時に、適切な県に対する指導、また、今協力をしていただいている多数の機関の皆様方にもお願いをしていただいたり、御苦労でしょうけれどもぜひお願いをしたいと思うのです。大臣、ひとつよろしくお願いします。
  85. 渡部恒三

    渡部国務大臣 先生からの御意見十分に承って、これから、今申し上げましたような、厚生省はもとより、必要があれば栃木県の隣接県等の御協力をいただくとか、あらゆる知恵を絞りまして、一日も早く、入院しておる患者の皆さん方の人権に御心配をいただかないような方途を講ずるように努めてまいりたいと思います。
  86. 水谷弘

    水谷委員 以上で終わります。
  87. 今井勇

    ○今井委員長代理 この際、暫時休憩いたします。     午後零時四十五分休憩      ————◇—————     午後二時四十二分開議
  88. 有馬元治

    有馬委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。沼川洋一君。
  89. 沼川洋一

    ○沼川委員 まず、ちょっと大臣に確認をしておきたいと思いますが、午前中我が党の平石委員から質問がありました中で、公明党の医療保険に対する抜本的、基本的な考え方の大臣の受けとめ方がどうも違っているのじゃないか。要するに、私どもがトータルプランの中で今まで言ってまいりました基本的な考え方というのは、御案内のとおり、各保険制度間における負担と給付の不均衡の是正、すなわち、制度間の統合の方途としては、地域保険、職域保険を統合して、それぞれ財政調整を行って、給付についてはそれを前提として九割、これが我が党の基本的な考え方なのですけれども、先ほどどうも御答弁の中で、基本的には全く同じでありますとしきりに八割を強調されておりましたが、その辺ひとつ誤解のないようにお願いしたいと思います。
  90. 渡部恒三

    渡部国務大臣 私が先ほど平石先生と考えがほぼ共通すると申し上げましたのは、社会保障の方向として、国民すべてが同じような給付を受けるようにしたいということでは意見が一致したわけでございまして、そこが私どもは今八割ということを申し上げておりますが、先生の方は九割。これは、今の財政の責任を背負っておる政府の立場と、それから先生の方は野党の立場でございますので、そこは違うと思うのですが、やはり基本的な考え方、目標は同じでないか、こういうことを申し上げたわけでございます。
  91. 沼川洋一

    ○沼川委員 どうも誤解されている面もあるみたいですけれども、今回一割負担が導入されていますが、我が党の主張は、一割負担を言うならば、まず制度間において本人、家族の九割給付を前提にして九割を言ったらどうですか、そういう見方からしていますので、余り似ていると言われるとちょっと困るわけです。大体、根本的には違いますので、ひとつよく御理解をいただきたいと思います。  そこで、まず大臣にお伺いしておきたいと思いますけれども、今回の健康保険法の一部を改正する法律案について既に代表質問で私も大臣に申し上げたわけでありますけれども、私が本会議指摘をしましたとおり、この内容についていろいろな説明をされておりますが、はっきり言いますと、マイナスシーリングという予算の中で割り当てられた六千二百億円をいかに消化するかという、財政対策面で追い詰められた予算であることは間違いないのじゃないか。そして、最も取りやすい患者負担の増大という形、あるいは国庫負担の削減、こういう形で今回提案されているのが、どうですか大臣、率直に言って今回の改正の趣旨じゃございませんか。
  92. 渡部恒三

    渡部国務大臣 我々の内閣は今「増税なき財政再建」ということを至上命令にしておりまして、したがって、予算編成の際は、ゼロシーリングあるいはマイナスシーリングという厳しい条件の中にありますから、我々の予算編成はそういう一つの大きなフレームの中で行われることは間違いございません。  ただ、私が幾たびか申し上げておるのは、今回の医療改革の中で患者の皆さん方に一割の御負担をお願いするというのは、単に財政対策だけでなくて、国民皆さんから御要望をちょうだいしておる医療費の適正化というものを推進するために、患者の皆さん方にかかった医療費をわかっていただくとか、あるいは一割負担ということによって被保険者の本人の皆さんに毎日毎日の健康の自己管理に努めていただくとか、そういう多面的な要素があるので、単に財政対策だけではございません、こういうことを申し上げておるわけです。
  93. 沼川洋一

    ○沼川委員 要するに、財政対策だけではないけれども、ほとんどが財政対策の上から出発した、そんなふうにも受けとめてもいいわけですね。  そこで、この論議をしておっても始まりませんので、昨年の九月十二日に、「医療保険制度の改革に向かって  五十九年度概算要求の考え方」というのを厚生省で出されております。これをずっと読んでみますと、特にその中で、医療費は今後とも国民所得を上回るという考え方に立って、患者負担という制度改革が出てきているわけです。その医療費の適正化というのは、大体どこならば適正化という一つの目安としているのか。厚生省では国民所得の枠内に抑える、これは一つの政策目標といいますか、原理原則として今まで考えられてきたことだと受けとめてよろしいでしょうか。
  94. 渡部恒三

    渡部国務大臣 これも幾たびか申し上げておりますように、大体経済成長が現在程度に将来続くという予測の中で、医療費の伸びを国民所得の伸びの範囲にとどめる、つまり、皆さんからちょうだいする保険料を、率で言えば現行の保険料率程度にとどめていきたいというのが私ども願いでございます。
  95. 沼川洋一

    ○沼川委員 ちょっとよくわからぬのですけれども、それは努力目標ですか。一つの政策目標なのですか。原理原則なのですか。その点をはっきり言ってください。
  96. 吉村仁

    ○吉村政府委員 私どもは原理原則だとは考えておりません。政策目標だと考えておるわけでございます。
  97. 沼川洋一

    ○沼川委員 そこで、結局、与党議員の方からも指摘があった問題ですけれども、五十九年度国民所得の伸びが推計では大体六・四%、医療費の伸びが二・五%、これはいわば国民所得の伸びに対してその枠内に完全におさまっているわけです。言ってみれば鈍化しているわけです。吉村局長は、改正をしないと医療費は七・二%の伸びで十五兆五子六百億円、改正すれば二・五%の伸びで十四兆八千八百億円、すなわち六千八百億円の抑制ができる、こういう説明をされておりますが、この言葉をそのままかりて、言い方をかえて説明しますと、本人負担分とその波及効果を考えて大体一千四百億ということをここでおっしゃっておりました。大体一%だ。そうなると医療費の適正化対策を進めていけば、一割負担をしなくても医療費の伸びは、プラス一%ですから二・五プラス一%で三・五%の伸びとなります。ということは、この負担を導入しなくてもちゃんと国民所得の枠内におさまっておるわけですね。そういう点で、原理原則じゃないとおっしゃいましたけれども厚生省はやはり国民の健康と命を預かる大事な行政庁ですから、当然、財政対策は厳しい、そういう中でも、やはり将来の方向性というか政策の目標というか、こういったものは、きちっとしたものを踏まえて対処しなければならぬ大事な行政庁だと私は思います。そういう点で、どうも何かこういった原理原則みたいなのがはっきりしていない。一〇%という上からの至上命令が来れば、いとも簡単にそういう基本計画が壊れてしまう。大臣に言わせれば非常に運が悪いという言葉で表現されていますけれども、運が悪いという言葉の根底には、本当はこれはけしからぬと思われているんじゃないですか、大臣
  98. 渡部恒三

    渡部国務大臣 これは全くそのようなことはございません。私は、やはり今後の、国民皆さん方が常に安心してお医者さんにかかれる、あるいは重い病気のときには入院できる、そういう保険制度というものを将来に揺るぎないものにするためには、やはり被用者保険の皆さん方にも、現在零細な商工業の皆さんあるいは農民の皆さんは三割の御負担をなさっておるのでありますから、大変恐縮でございますが被用者保険の皆さん方にも今回当面一割、次に二割という御負担をちょうだいすることが、やはり我が国の医療制度を将来にわたって揺るぎないものにするものであり、また、国民皆さんからこれはたびたび御指摘を賜っておるところの濃厚診療とか、そういうものを排除して、医療費の適正化を行うための大変大事な政策であるということでお願いをいたしております。
  99. 沼川洋一

    ○沼川委員 それでは、ちょっと医療費を取り巻く環境の変化として非常に鈍化してきている、そういう流れを知るために、一つの具体例として政管健保の例を引いてみたいと思います。  御案内のように、この政管健保というのはこれまで三K赤字の一つとして非常に騒がれてきたわけでございます。これは社会保険庁がまとめた五十五年、五十六年の政管健保の決算がございますけれども、五十五年度決算では五百二十八億円の赤字見込みであったのが、三百二十五億円にとどまった。要するに二百三億円の財政好転を示しております。また、五十六年度決算を見ますと、五十七年度予算編成時には二百八十五億円の黒字の見込みであったのが、四百八十四億円の財政好転となって実に七百六十九億円の黒字を生んでおるわけです。これは見込み後の行政努力によるものなのか、それとも見込みの誤差なのか、どうでしょうか。ちょっとこの辺の御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  100. 坂本龍彦

    ○坂本政府委員 今御指摘がございました政府管掌健康保険の収支状況の数字の比較でございますが、先生がおっしゃいました予算編成時見込みと決算の二つの数字でございます。予算編成時見込みと申しますのは、例えば、今御指摘のありました五十五年度について申しますと、五十六年度予算編成する時点、すなわち五十五年の暮れの時点における五十五年度の収支見込みでございます。これは五十五年度の三月から八月までの前半の実績を見まして、さらに過去三年の推移も含めまして残り半年分の推計をいたしまして見込みを出しております。結局決算をいたしましたところが、今御指摘のありましたように大分好転をした、こういう結果が出ております。  これにつきまして、一つは、大体、今申しましたように、半年分の実績と過去三年の実績とを勘案して後半の分を推計いたしますので、医療費というものの性質上、ある程度変動要因もございまして、ずれが出てくるというものもございます。そのほかに、やはり年度後半にまいりますと、二月、三月のインフルエンザの流行というものも年によっていろいろ状況が違うわけでございますので、インフルエンザが流行しても医療費の支出に困らないように、ある程度の余裕を持った見込みをしているということもございます。そういったときにインフルエンザの流行がなかったということになりますと、その分だけ財政が楽になるという点もございます。  そういった要素と、さらに、最近におきましては私ども医療費適正化の行政努力を力を入れてやっておりますので、そういった面も、これは数字でどのくらいというのもなかなかお示しするのも困難でございますが、そういったこともあわせまして、国民皆さんの間に健康管理意識等も定着してまいった。そういういろいろな要素が合わさって、今御指摘のあったような結果が出てきたのではないかというように考えております。
  101. 沼川洋一

    ○沼川委員 いろいろお聞きしましたけれども、要するに医療費は思ったほど伸びなかったということですね。インフルエンザが余りはやらなかったとかいろいろ理由もあるようですけれども、結果的に見ますと医療費は思ったほどは伸びなかった。ですから、言ってみれば、政管健保の流れを見ていきますと、もう一つ、私もなるほどと思った、一つの注目する数字があるわけですが、ただ単なる財政の額だけで見ないで、収支率の比率の上から見ますと、これは例えば五十年は三百十二億の赤字です。五十一年はさらに五百六十一億の赤字が出ていますが、この収支率の比率からいきますと、五十年が二・一、それから五十一年が二・二、そしてさらに五十二年に百五十三億の赤字を出していますけれども〇・八。ずっと収支率の比率を見ていきますと、かって社会保険庁が、五十二年ないし五十三年の当時に、幾らか黒字に移ったあの時点で、一生懸命政管健保の赤字基調は変わらないと盛んにおっしゃっていた当時ですが、実は収支率からいけばもう好転の兆しはそのときからあったわけですよ。きのうきょうじゃないわけです。そういう形で、今回、先ほど言いましたように決算において大きな黒字を出しておるわけでございますけれども、そういうような面も考えていきますと、冒頭に申し上げましたように、国民所得の伸び以内におさまる、こういう傾向は今後しばらく続くのではないか、鈍化の傾向というのは明らかに、突然起こったのではなくて、ここ何年かのそういう傾向をたどってきた中で、今後もやはり医療費は鈍化していくんではないか、こういうふうに私は見ることができるのではないかと思うのです。もしそうならば、何も慌てて今一割負担を導入しなければならぬという財政上差し迫ったような理由というのは、非常に説明に迫力がないように感じますけれども、どうでしょう。
  102. 吉村仁

    ○吉村政府委員 確かに、政管健保の赤字の状態というのは好転をしておることは事実であります。ただ、私ども、将来長い目で見ましたときに、医療費の基調が今先生が御指摘のように変化したのかどうか、ここは非常に重要なところなんでありますが、私ども医療費の伸びの基調は変化をしていない、こういうように考えております。その理由といたしましては、やはり老人人口がふえる、これはどうしても避けがたい事実でございます。それから疾病構造を見ましても、慢性病が非常にふえている。これは治らない病気でありますので医療費は必ずふえていく。それから医学医術は必ず進歩をしていきます。それからまた、最近の医療費の傾向でうかがえるように、病院医療費が非常にふえておる。つまり開業医さんのところへ行くか大病院へ行くかという選択を患者がした場合に、大病院の方に走る傾向が強くなっておるのではないかと思うのでありますが、そういう病院医療への傾斜というようなもの、あるいは今後医療従事者というものはふえていきます。したがって、そういう要因から考えますと医療費の伸びが鈍化をするという要素は一つもないわけでございまして、中長期的に考えますと、私どもの推計によりますと医療費は必ず国民所得の伸びよりも少し高い伸び率で伸びるのではないか。  ただ、そうすると五十八年度、五十九年度医療費の伸びをどう考えるか。確かに国民所得より低くなっております。それは私どもがいろいろ政策の手を打ったというのが一つの重要な要因になっておろうと思います。過去の経験からいいましても、医療費がある一定のレベルで伸びてきて若干鈍化をするということはございます。しかしそれからまた同じような傾向で伸びるというのが、私どもの過去の実績からも把握しておる現象でありまして、私どもは、何らかの政策の手を打たない限り、医療費の伸びは国民所得の伸びよりも高い伸び率を示すであろうという確信に近い予測をしておるわけでございます。
  103. 沼川洋一

    ○沼川委員 吉村局長の御説明ですから、一応今の御説明、受けとめていきたいと思いますが、かつての政管健保のときも全くそうでしたけれども、先ほども指摘しましたように、五十二年、好転の兆しがある中でも一生懸命おっしゃったわけです、これはもう赤字基調は変わらないと力説されました。そして、五十五年にはもう三K赤字と騒ぐほどのことはない。また今回の医療費の伸びについても、厚生省サイドでは、医療費が毎年一兆円伸びる、確かにそういうペースでは来ていました。こういうことを言っては何ですけれども、  一兆円伸びる、一兆円伸びるとオオカミ少年みたいに言ってこられた割には、意外やそういう鈍化の兆しが出てきた。単年度だけではわからぬでしょうが、今後の推移を長い目で見なければならぬでしょうけれども、今の時点では鈍化していることは間違いないわけです。  ですから、私に言わせれば、そういうときだからこそ、かねがね言われてきた適正化の問題、こういう問題を徹底して、医療費をむやみやたらに高騰させてきたその元凶と言われるようなものに徹底したメスを入れて適正化対策をやる、これが私は政治の常道だと思いますし、政策面でいつでも選択順位だと思うのです。ですから、こういった社会保障費なんかの場合、いつもそうですけれども、財源の捻出にそれこそ血のにじむようないろいろな努力をする。いろいろなところに取り残しかないような全力を挙げた適正化対策をやる。大体、負担というのは、それでもどうにもならぬというときに持ち出すのが政治の一つのルールではないかと思います。そういう面で、まだあれも足りない、これも足りないという適正化の問題が、国民皆さんからいろいろ指摘してあるのにもかかわらず、そういう問題をさておいて、いきなりまず一番最初から負担を言う、こういう考え方はちょっとおかしいのじゃないかと思いますが、どうですか。
  104. 渡部恒三

    渡部国務大臣 毎年一兆円伸びる、そういうことになっては大変ですから、医療費の適正化を進めなければならない、こういうことで、これは先生方のいろいろの御支援もあります。また先生方に激励されて、厚生省としても、医療費の適正化のために、審査体制の強化であるとかいろいろやりまして、その結果医療費の伸びがダウンしてきたのでありますから、これは、言ってきたことと違ったということでも、違い方が褒めていただいていい違い方だと思うのです。  そこで、もうここまで医療費の逓減が進んでおるのだからもうあの一割負担はやらなくてもいいんじゃないか、これもまたちょっと気が早過ぎるのじゃないかなと思いますので、せっかく今、前のままでいきますと一兆円ずつ医療費が伸びていって大変なことになる、それが先生方の御協力によって、また私どもも一生懸命頑張りまして、逓減化していい方向に進んでいるのですから、これをやはり二十一世紀に向かって定着させなければならぬ。その定着させるのには、この機会を逸しないで、せっかくいいところに来たのですから、ここで一割負担の導入というものを認めていただくと、この医療費の適正化というものが将来にわたって適正化する方向に進んでいく、やはり今がこれをやる時期ではないかと思うのでございます。
  105. 沼川洋一

    ○沼川委員 大臣からお話しを承ったわけですが、一割負担を力説されますけれども国民から見れば、残念ながらそういう考え方はあんまり受け入れられてないわけです。今のこの健康保険改正をめぐっていろいろな国民サイドの要望がございますが、その中で、私も大勢の方に接して一番に出てくるのが、不正不当のむだ金に徹底してメスを入れろ、厚生省はどこまでやっているのだ、まだまだ本当に隠された問題がありますよという、これに対する厳しい批判がまずございます。  それからもう一つは、これはまた後で御質問申し上げますけれども、薬剤費の問題がございます。何で日本はこんなに薬代のウエートが高いのか、こういう問題を適正化しろという問題がまず前提としてたくさんあるのです。大臣がここで一割負担と力説されても、今回のこの法案について見る限りは、恐らくその辺に、前提条件となるようなそういう整備をもっとやってもらいたいという声の方がむしろ強くて、負担に賛成という声は少ないのじゃないかと思いますよ。これは、これ以上やっていってもまた平行線をたどりますし、やる時間も十分ございますので、また別の角度からひとつやらしていただきたいと思います。  そこで、薬の問題についていろいろとお尋ねをしてみたいと思います。  外国では、薬剤費の問題といいますと、大体医療の中の一部だ、保険の中の一部だというようなとらえ方があります。日本でもそういうとらえ方がありますけれども日本の場合は薬づけという言葉が、現在の日本医療のゆがみ、あるいは抜きがたい体質を表現するところの常套の言葉となってしまっているわけです。そういった中で見ますと、日本医療問題というのは薬剤費の問題であって、もっと言葉をかえて言うと薬価問題である、こう言ってもいいのじゃないかと思います。  この前もこの委員会指摘があっておりましたけれども、最近確定した数字の上からいきますと、たしか五十七年度ですか薬剤費の比率が三四・一%。これは過去の例からずっと見ていきますと、四・六%も減少するということは確かに実に四年ぶりですね。下がった下がったと大騒ぎをする向きもありますけれども、私に言わせれば、この三四・一%そのものが諸外国に比べて異常じゃないか、こう思いますが、どうでしょうか。
  106. 吉村仁

    ○吉村政府委員 薬剤費の割合についての比較というのは比較的難しい問題なんでありますが、それにいたしましても三四%余りの薬剤費という比率は、諸外国に比べて高いことは事実でございます。
  107. 沼川洋一

    ○沼川委員 ここでちょっとお尋ねしたいわけです。  これは厚生省からいただいた資料で、国民一人当りの医療費ですけれども、五十二年が八万六千九百円、五十四年が九万四千三百円、五十五年が十万二千三百円、五十六年が十万九千二百円、こういうふうになっておりますけれども、薬剤費の比率も出ていますので掛ければ大まかなあれはわかるのじゃないかと思いますが、それだけでは見えぬ部分もありますのでちょっとお尋ねしてみたいのですが、例えば五十六年度が十万九千二百円と出ています。この中で薬代というのは大体幾らぐらいございますか。
  108. 吉村仁

    ○吉村政府委員 薬剤費の比率を掛けて単純に計算をいたしますと、三万八千五百円でございます。
  109. 沼川洋一

    ○沼川委員 大臣にちょっとお尋ねしたいと思います。  この前も答弁の中でおっしゃっておりましたが、大臣は非常に農政問題通でもあると伺っておりますが、今国民一人の米代は大体お幾らか、御存じですか。
  110. 渡部恒三

    渡部国務大臣 国民一人の計算はしたことはありませんが、六十キロですと一万七千円程度だと思いますが、全体で三兆円ぐらいですか。薬の方が米代金より多いことは間違いございません。
  111. 沼川洋一

    ○沼川委員 大変失礼な質問をして申しわけございませんが、ベテランの大臣でございますので恐らく御存じだと思いましたが、これは今もおっしゃったように、標準米ですけれども、五十七年で二万七千円、薬は単純計算ですが三万八千円、主食のお米よりか薬代が多い、こういう事実。ひところ、日本人は薬を飲んでいるのじゃない、あれは食べているのだという表現がありました。馬に食わせるほど食わせているという表現もありましたが、最近は、象に食わせるほど食わせていると、これだけあればそう言われるのもなるほどなと思います。いろいろな面から薬代が多過ぎる、ただ単純に外国と比べられない難しさがありますので、私のそういう比較をここに出すことができないのは残念ですけれども、きちっと比べて見れば、こういう部分的な問題を取り上げてもどうも薬というのは多過ぎるのじゃないか。したがって、適正化対策の中でこの問題に対する取り組み、現在は薬価基準の引き下げということだけで対応されておりますけれども、御案内のように、ここ三年間で薬価基準が一番引き下げられたのが五十七年の一八・六%、そして五十八年に四・九%、五十九年に一六・六%、言ってみれば三年間に四〇・一%引き下げたわけですから、業界あたりからも、アリ地獄の底が見え出したとかそういう相当厳しい声が聞かれること自体、これに対する取り組みが、確かに今まで以上に何か一つの効果があったのじゃないかという感じは受けております。ただ問題は、薬価基準を幾ら引き下げても薬価差がゼロとなることは絶対ないわけですから、ずっと過去から振り返ってみると、薬価基準の引き下げ、何とかして実勢価格に近づけようとするけれども、この実勢価格が薬価基準になったときにはまた次の実勢価格ができている、このイタチごっこはいつまでも続いていくのじゃないかと思います。  そこでお尋ねしたいのですが、薬価基準の性格づけといいますか基本的な考え方といいますか、もっと言葉をかえて言いますと将来構想といいますか、何か薬価基準自体を今後どういうふうに性格づけて考えていかれるのか、その辺をお尋ねしてみたいと思うのです。
  112. 吉村仁

    ○吉村政府委員 まず、現在の薬価基準の性格について申し上げます。  現在の薬価基準は、保険の診療報酬を支払うに当たりまして薬の価格はどうして支払うか、それは購入価格で支払うということが点数表に書いてあるわけです。購入価格ですから、医療機関が購入した価格をそのままお支払いしましょうというのが現在の規定でございます。したがって、現在の薬価基準というのは、その医療機関が買う薬の購入価格を定めるものである。したがって、本当と言えば、各医療機関で購入する価格は全部違うはずでありますから、個々に決めなければならぬということも言えるわけですが、それでは社会保険の大量的な事務処理に適さないということで、ある一定の算定方式を用いまして購入価格そのものを厚生大臣が定めておる、これが現在の薬価基準でございます。したがって、現在の薬価基準の性格は、医療機関の購入価格をある一定の基準で定めたものであると思います。  今度は将来の問題でありますが、社会保険の医療費は、私どもはかかった費用を補てんをするという立場に立ては、今の体制を変える必要はない、性格を変える必要はない。したがって、医療機関が購入した価格が実態に合うように、かつ、医療機関が購入した薬の費用の補てんができるように価格を定めていけばよろしいのではないか。これが私ども保険の診療報酬を扱う場合の立場でございます。
  113. 沼川洋一

    ○沼川委員 そこで、ちょっと端的に聞いてみたいと思います。  薬価基準は非常に難しい問題であるだけにまた問題も多いわけですが、要するに医療機関が薬価差を要求せざるを得ないような状況が、この前も大臣と論議しました例の出来高払い制度の中ではどうしてもあるわけです。ですから、最近薬価基準が大幅に引き下げられますと、変な話ですが、医療機関の内部からも、薬でもうかる時代は終わった、こういう声を私も随分聞きます。しかし、出来高払い制度がある以上は薬でもうかるということはなくならぬのじゃないかという一面もございます。現に、薬価基準の引き下げ後まだ価格が決まらないために、全国の医療機関で、品物は納入されていますけれども値段が決まらぬということで、恐らく一年くらいまたかかるのじゃないかと思って心配しています。これも後からまたちょっとお尋ねしたいと思っておりますけれども。それで、医療機関の内部には潜在技術料という言葉が公然とまかり通っております。薬を大量に保管するとなると、消耗とか管理とかいろいろな目に見えない費用も確かにあると私は思います。したがって、薬価差益があったっていいじゃないか、そういう意味から潜在技術料という言葉が通っていると思うのですが、こういう実態については厚生省ではどのようにお考えになっておりますか。
  114. 吉村仁

    ○吉村政府委員 確かに実際に購入する価格と薬価基準の間に差があることは事実でありますし、その薬価差を潜在技術料だと称する言い方もあることは事実であります。それで、非常に技術的に言いますならば、保険の立場からいえば購入したその実費を払う、あるいは、その実費に若干廃棄料だとかいろいろ保存のための費用だとかもかかるわけですから、それをプラスしたぐらいの価格を払えばよろしい、こういう考え方もあると思います。  ただ、現在の場合は、先生御承知のように、全体の薬の購入価格を調べまして、九〇%バルクラインなり八一%バルクラインなりで価格を決めておる。したがって、そのバルクラインの引き方あるいは薬価調査の仕方、そういうものによって価格差が生じ、それが医療機関の潜在技術料として経営費の一部あるいは所得の一部になっておる、これは否定できないと思います。
  115. 沼川洋一

    ○沼川委員 そこで、これは国民サイドに立った素朴な質問ですが、要するに薬価差益があるとするならば、これは当然、健康保険制度の中ですから、保険料、税金で払われているそういう制度から生まれる利益なのですから、もし差益があるとするならば、その差益は患者である国民に還元されなければならないはずなのに、せめてその保険点数の引き下げとなってそういう形で返ってくるものなのに、それが医療機関の懐の中に入ってしまう、これはおかしいのじゃないか。こういう非常に素朴な疑問ですが、事実ですから申し上げた。こういう問題に対してどういう見方で対処されていかれるのですか。
  116. 正木馨

    ○正木政府委員 先生案内のように、薬価基準につきましては薬価調査をいたしまして、今回で申しますと、四月の取引分について五月に全販売サイド、それから医療機関は抽出で行いましたが、実勢の薬価調査を行う、それから他計調査を継続的に実施いたしまして、実際に取引が行われている価格を把握いたしまして薬価基準に反映していくということで、適正な実施を行うというのが基本になっておるわけでございます。
  117. 沼川洋一

    ○沼川委員 今回の薬価調査の一つ出発となりました、中央社会保険医療協議会の答申がもとで行われたと思います。ちょっと、今その薬価調査の話が出ましたので伺っておきたいと思いますけれども、この中で、改定のやり方として全包装による加重平均値の乖離の大きい品目、要するに今回は乖離の大きい品目については八一%バルクラインでなさったわけですね。その乖離の大きいという目安は大体どれくらいと見たらいいのでしょうか。
  118. 吉村仁

    ○吉村政府委員 今先生指摘のように、私どもばらつきの多いものについては八一%のバルクラインで薬価を算定したことは事実でございます。ただ、なぜ八一%でやるかというと、一〇%をカットオフして九〇%バルクラインを引いて八一%になるわけでございますが、九〇%バルクラインだと、一〇%だけ支配すれば価格を維持することができるラインになるわけでございます。しかし、そのばらつきが多い医薬品というのはいろいろな形で競争しておりまして、薬価基準との乖離が甚だしくなる、そういうことで一〇%分だけをカットして、残りについて九〇%バルクラインを引く、こういうことをしたわけであります。  今、何%ぐらいのばらつきでおまえたちはやっておるのだという御質問ですが、それをここで公表いたしますとまた価格の操作が可能になるわけでございまして、この席で具体的な数値を公表するのは御勘弁のほどをお願いいたしたいと思います。
  119. 沼川洋一

    ○沼川委員 その辺よくわかりますので、それ以上申し上げないつもりでございます。  先ほど将来展望というか性格づけというか、そういう面で質問したのですが、御案内のとおり、薬価基準については厚生省の中の二局二課でなさっておるわけです。要するに、調査の面は業務局の経済課でなさっている、そして基準を定めるのは保険局の医療課でなさっている。ところが、業務局の立場と保険局の立場と全然違うわけですね。新薬あたりを収載する場合の折衝をなさるのはむしろ経済課の方ですから。ですから、薬価基準の持つ性格が二面あると思うのです。私の言うことが正しいかどうか知りませんが、薬価をどんどん切り下げていく、下げるということはメーカーに相当打撃を与えるわけですから、そのかわり新薬については高い値段で収載するという、御褒美と言っていいかお返しと言っていいか、そういう形になっているのじゃないかと思います。要するに、経済課の分野は言ってみれば産業育成、どうしてもそういう政策をとらざるを得ない。ところが、保険局になってきますと、保険財政という中で考えていかなければならぬ面が強いのではないかと思います。したがって、今までの過去の例からいきますと、薬価基準ができ上がるときに新薬が非常に高い値段で収載されてきたという経緯がありますが、現在みたいにこれだけ財政が厳しくなって保険財政自体が大きな問題になってくると、果たしてそういう産業政策という面で考えた薬価基準でいいのかどうか、こういう問題の転換期を今迎えているような感じも受けるわけです。この点についてはどうでしょう。
  120. 正木馨

    ○正木政府委員 薬価基準が幾らで決まるかというのは、もちろん製薬メーカーの経営に大きな影響を持つものでございます。ただ、薬価基準の性格は先ほど保険局長がお話しをしたとおりでありまして、先生おっしゃいますように医薬品メーカー、医薬品産業が国民医療なり健康を守っていくために非常に重要な産業である、これを健全な形で伸ばしていかなければいかぬ、それは一体どういう形でやっていくのかという場合に、薬価基準というものが主流をなすということであってはならないと思います。医薬品産業に対する政策を今後どう進めていくのか、医薬品産業も今後どういう形で進んでいくのかということが基本になければならないと思います。  国民皆保険後、医薬品が非常に伸びてまいりましたということで、これまで、我が国の医薬品産業というのは、国内市場の拡張に依存しておったということが事実あったと思います。しかし、今日、医薬品市場のパイというものはこれ以上大きくなっていかないという中で、それじゃ大事な医薬品産業を今後どうしていくのだという問題がございます。  そこで、五十七年の九月に医薬品産業の政策懇談会というものを発足させまして、これは関係者も多数入りまして議論をしておるわけでございますが、テーマとしては、例えば研究開発の基盤整備であるとか、海外進出の問題であるとか、バイオテクノロジーという先端産業に向かってどうするのかという問題、あるいは単に医療用医薬品だけではなくて、一般の消費者は手近なところで切れ味のいい安全な薬を求めるという機運も高まってきておりますので、そういう面で大衆薬についての改めた見直し問題をどうするのかとか、いろいろなテーマがございます。そういった点を十分議論してもらう、そして産業政策という面に立って、研究開発の促進であるとか、新薬の推進であるとかいうものを進めていく施策をあわせて講じていかなければならない、これはまさに先生おっしゃるとおりだと思うのです。
  121. 沼川洋一

    ○沼川委員 要するに今申し上げたように、医療保険という公共財政からの観点と産業の発展という観点が同じ厚生省の中にある。ですから、本来ならばこれは産業政策ですから通産省あたりがそういう企業の育成をやるのが、財政とか財投とかそういう形で発展を促していくというのが筋道なんでしょうけれども、やはり生命関連の産業ということで厚生省で全部見ていらっしゃる。何かその辺の考え方の比重というかバランスというか、私が先ほど申し上げたかったのは、一面では財政面で薬価をもっと下げろ、薬代は多過ぎる、そうなるとどうしてもそういう面に集中した対策をとらざるを得ない。後でちょっと逆の例を一つ出しますけれども、今度はこれをやり過ぎると、特に一番弱い卸あたりがもろに被害を受けて、そういう一つの複雑な流通面の上から倒産が出てきたり、いろいろなそういう問題が出てくる。どっちに力を入れるかとなると、今この国会ではむしろ財政という面に焦点が当たっているし、私も本来から言えば、健康保険という中ではそういう面で思い切った薬剤のむだを省いていくという施策に力を入れていただきたいと思いますが、先ほども業務局長がおっしゃったように、一面では、経済課を窓口として産業政策みたいなそういう中での育成もやらざるを得ない。ですから、そういう面では薬価基準が両面の役割を今まで果たしてきたということも私は言えると思いますが、その辺にも何か転換期が来ているように思いますし、今後の対策についてはまだ十分その辺もひとつ御検討をいただきたいと思うのです。  そこで一つ、これはもう全く薬価基準の引き下げから起こった問題なのですけれども、愛知県の医薬品卸協同組合が、上部団体であるところの日本医薬品卸業連合会に対して、「医療制度及び薬価調査について」と題して、具体的には特に行政当局へ五項目の申し入れをなさっておるわけです。  一つには、「薬価基準の大幅な引き下げ時期の再検討」、恐らくこれの時期というのは、下げるのだったら年度末でなくて、年度末は避けてほしいという、こういった御要望が中にあるようです。また、率についても大幅にぼっと下げるのではなくて、部分的なそういう比率を考えてやってほしいというのは、そういう意味でのこれは要望だと思います。  それから「没論理的流通管理のチェック強化の規制」、これはもう薬業界の流通体系というのは御承知と思いますけれども、普通はメーカーの仕切り値があって、卸が仕入れて、建て値制でそこにマージンが幾らか乗っかって薬品がさばかれていく、これが大体常道なんですが、大臣、恐らく御承知と思いますが、薬の流通機構というのは全然そうなっていません。割り引き、値引きとか、あるいはマージン、そういうのがあって、結局は、今みたいな薬価がこんなにずっと引き下げられていきますと、お医者さん、要するに医療機関とメーカーの間に挾まれて、率直に言って一番苦しいのは卸屋さんじゃないかと思うのです。ある人が馬にニンジンという言葉で表現しましたが、とにかく販売拡張をやらなければマージンはもらえない。そういう窮状に立っているけれども、メーカーは案外困っているときは全然構ってくれない。ところが、病院に薬を納入したが、代金はさっぱり決まらない。恐らくこれは一年以上またかかるでしょう。メーカーには支払いをしなければならぬ。医療機関からお金をもらって初めて支払いができるわけですが、その間は待っておられないということから、恐らくそういう中から出てきた一つの要望書だと思います。  三番目には「卸企業の保護育成策」、四番目に今私が言いました「国公立及びその他の医療機関からの支払いの迅速化と指導等」について、五番目に「薬価基準制度の抜本的改正」、この五項目が出ているわけです。  ですから、先ほどから言いますように、言ってみれば財政対策という面からの薬価基準の引き下げによって、経済対策という面で非常に厳しい状況が今度はこちらに出てきている。こういう問題について、これは当然業務局の方の所管だと思いますが、私も、本当ならば公取に来ていただいてちょっとと思いましたけれども、そこまで言う問題じゃないだろうと思いまして一応お尋ねするわけでございますが、こういう問題に今後どう対処されていくのか。下手すると、恐らくこういう傾向が全国的に出てくるのじゃないかとじ配しています、今みたいな流れでいきますと。この辺についてはどうでしょう。
  122. 正木馨

    ○正木政府委員 先生おっしゃいますように、医療肝医薬品の流通というものは非常に複雑になっております。おっしゃいますように、仕切り価格があり、値引き保証が行われ、そしてリベートといったような形で、一般の商品流通とは変わった形でずっと行われておりますということが一つ。  もう一つは、製薬メー力ーと卸の関係でありますが、前近代的と言うとなんでございますが、きちっとした契約に基づいた関係にないというのが大部分を占めておる。大部分と言うと語弊があるかもしれませんが、多いという実情もございます。  そういった医薬品流通の中で今回の薬価基準の改定が行われ、三年続いた薬価改定で一六・六%、これは製薬メー力ーにとっても非常に深刻な問題になっていることも事実でございます。ということは、実際に当たる卸について、卸が医療機関と製薬メーカーとの間に立って非常に苦慮しているという面があることも事実でございます。  そこで、今後こういった問題をどうとらえていくのかということでございますが、現在の薬価基準制度というものは、市場価格を適切につかんでそれを反映させていくということがやはり基本になっておるわけでございますので、そういう点については十分理解してもらう。これは卸も製薬メーカーも医療機関も十分理解してもらうということがまず大事だと思います。  それから、現在行われております流通問題について近代化を図っていくという面での努力も必要だと思います。そういうことで、現在医薬品流通の近代化協議会でも議論をされておりますし、それからまた、公正取引競争規約といったもの、これはメーカーと医療機関との関係を主としたものでございますが、こういったものの適切な実施というものを踏まえまして、今後の医薬品流通の前進を図るように努めていかなければならないというふうに思っております。
  123. 沼川洋一

    ○沼川委員 特にこの中で、今後の薬価調査にはもう協力できぬというような趣旨がうたわれています。例えば最近の薬価調査は、もちろん白計調査、他計調査をなさっているわけですが、以前は本調査という場合には相手に書いてもらった。ところが、最近はコンピューターの時代ですから、いきなりコンピューターのテープを持っていかれる。そこまで協力しているのだから、実際はたしかコンピューターのテープで七割ぐらいで、あとは相手に書いて出させる、そういう中の調査だと私は一応承っておりますけれども、言ってみれば、コンピューターを出しているのだから底値まで持っていかれているのだ、そこまで協力していると、今度は嫌というほど首を締められる。だからもうこれ以上薬価調査の協力はできぬ、こういうような窮状がうたわれております。やはり卸と言ったっていろいろあるわけですから、大体中小企業が非常に多い。そういう中で、むしろメーカーはまだまだ余裕はあると私は思います、はっきり言って。やはりこういう問題になってくると、その谷間で医療機関とメーカーに挾まれて、こういう状況は恐らく卸の中には今後出てくるのじゃないかと思います。  ですから、私が先ほどからお聞きしますのは、経済という面、産業の育成という面での薬価基準、片一方は財政という面でむだな薬を省いていく、そういう二面性のある薬価基準をどういう位置づけをするかということを、やはり本当に考えていく必要があるのじゃないかということを申し上げたいわけです。このことがこの中にも出ております。薬価基準の改正という要望の中で、経済原則を前提として改正してくださいと。経済原則を前提としてということは、余りカットするなということでしょう。ところが、財政対策として今我々がこの保険財政の中でやらなければならぬことは、やはり薬のむだを省かなければならぬ。これはやはり国民の要望でもありますし、こういった問題は非常に難しい問題かと思いますが、やはり流通自体が、先ほどからおっしゃったように、同じ販売リベートといったって単品リベート、総合リベート、そういう非常に難しいいろいろ複雑な流通の実態がございますし、今後、業務局の方でもその辺はよく御承知だと思いますので、対策等についてはお願いをしてまいりたいと思います。  時間が余りありませんのであと一つ、二つ、薬価基準でお尋ねしたいと思いますが、銘柄別収載について毎回いろいろと意見が出てまいります。一つは、銘柄別収載というのは中小のゾロメーカ一の圧迫につながるとか、あるいは、いい面では医療費を大幅に圧縮できるということで、かつては統一限定方式、こういうのをとっていらっしゃったこともあるし、現在は銘柄別方式になっているわけですけれども、今度の薬価改定でいろいろ過去に問題になった薬を見ていきますと、例えばセファレキシンの製剤をちょっと薬価基準の中から取り出してみますと、相変わらずAランク、Bランク、Cランク、同効の薬でそういった値段のランクがはっきりあります。今度も予算委員会でも一つ指摘があったのですが、大学病院等で高い薬を使っている、医療費を節減するためにも安いのを使え、同じ効き目があるんだったらそれを使え、そうしたら医療費が浮くという指摘もあります。また反面、銘柄という面で、先発品としてのそういう面も確かに見てやらなければならぬでしょう。今回はいろいろ批判があったけれども銘柄別収載となっていますが、これは今後とも続けていかれるのでしょうか。     〔委員長退席、稲垣委員長代理着席〕
  124. 吉村仁

    ○吉村政府委員 御指摘のように、銘柄別収載方式につきましては今言われましたような欠陥があることは事実であります。ただ、銘柄別薬価基準は五十一年度から採用して今日に至っておるわけであります。それまでは統一限定方式であったわけでありますが、統一限定方式には統一限定方式のまた欠陥があったわけでありまして、それを是正するために銘柄別方式に変えた。これが今日までの経過なんでありますが、私ども、それぞれ銘柄別には銘柄別の欠陥もあるけれども長所もある、それから統一限定には長所ももちろんありますが短所もあるということで、両者のいいところを取り上げたような方式はないものかということでいろいろ検討しております。ただ、なかなか難しい問題がたくさんございましてまだ踏み切っていないのでありますが、今回三月一日から薬価基準の改正をいたしましたが、その改定におきましては少なくとも銘柄間の格差を縮小させる、こういう措置だけは一応の暫定的な措置としてとっております。だけれども、それは言ってみればびほう的な措置にとどまるわけでありまして、もう少し根本的にいい制度はないものだろうかということを考えておるわけで、いろいろと勉強はしておりますが結論を得るに至っておりません。
  125. 沼川洋一

    ○沼川委員 時間が余りないのでもう一つだけ。  試供品の問題がいろいろと問題になっていまして、これについては、メーカーが何項目かの自主規制をつくって自粛もなされてきた一面もありますけれども、残念ながら罰則も何もないものですから、そういうものがあっても試供品の問題がいろいろなところで問題になりました。ある人に言わせると、医薬品の中の五%くらいあるのじゃないか、これがなくなれば相当医療費が節減できるという指摘もございました。そういったことから、今回厚生省で、そういった試供品の規約といいますか規則といいますか、そういうのをおつくりになってたしか七月から発足させるということでございますが、今度は、そういうのを防ぐ意味で罰則規定とか、もうちょっとしっかりした、きちっとしたものができるのでしょうか。
  126. 正木馨

    ○正木政府委員 おっしゃるとおりサンプル、試供品を中心としました公正競争規約、これはことしの三月に公正取引委員会の認定を受けまして七月から実施される予定になっております。この規約は、医薬品業界が自主的に検討いたしまして公正取引委員会に認定を申請したものでございますが、現在その施行規則についても検討が進められ、公正取引委員会に承認申請中でございます。  この規約は七月から実施されるわけでございますが、試供品、それから海外旅行の招待であるとか、過度のおみやげ等の景品等の制限といったようなものを盛り込んでおるわけでございますが、その提供量とかいろいろな規定が設けられておりまして、その違反に対しましては、この公正競争規約に参加した事業者で構成する公正取引協議会というのがございまして、その公正取引協議会で、もし違反がありました場合には調査の上警告をする、それから違約金の賦課をする、それから除名処分をするといった担保の規定も十分設けられておるわけでございます。
  127. 沼川洋一

    ○沼川委員 時間がございませんので、また次の機会に質問させていただきたいと思います。  最後に、午前中も我が党の平石議員から質問があったことでございますが、大阪における中野医師の問題をめぐって先般厳罰主義で臨まれた、私もこれは当然だと思います。ただ一つお聞きしたいのは、ああいった保険医療機関の取り消しは、言ってみれば不当の問題では恐らく初めてのケースじゃなかったかと思いますが、そういう一つの断を下された判断基準というのが何かあったと思いますが、それをお聞かせいただきたいと思います。
  128. 吉村仁

    ○吉村政府委員 平均の何倍であるから濃厚診療だというように、しゃくし定規な基準を持っておるわけではございませんが、中野診療所の場合には余りにも平均とかけ離れた数値であったものですから、我々としては監査をしたわけであります。
  129. 沼川洋一

    ○沼川委員 非常に残念だと思いますが、最近はこういった医師の不正記事を見てももう驚かぬようになった、そういうことを言う人がおります。というのは、しょっちゅうこんなに出たんじゃどうしようもないのです。しかし、これはやはり大きな問題だと思います。前回私も指摘をいたしまして、時間がなくてちょっと言い足りなかった点もございますので、ちょっとお尋ねしてみたいと思います。  厚生省では医療機関に対する監査の方向を二十九年に打ち出していますね。それが三十五年に医師会、歯科医師会、それから厚生省と日医との協定書となって、監査はいけない、指導をやりなさい、こういうふうにぐっと後退してしまったわけですが、これはどういう理由があったのでしょうか。
  130. 吉村仁

    ○吉村政府委員 いろいろな事情があったわけでありますが、やはり医療を担当する担当者とのトラブルというようなものを避ける意味合いから、そういう形で実施をする方が円滑にいくのではないか、こういうことから、少なくとも関係団体と十分話し合いをして立ち会いを求める。特に、役所の監査官だけでお医者さんのところへ乗り込みますと、やはりお医者さんの方としてもなかなか監査を受けるというようなことにはふなれな場合もございます。したがって、弁護士と言っては変でございますが、ある程度お医者さんの立場に立って監査官に代弁をしてやるとかいうような、介添人といいますか弁護人といいますか、そういう立場の人がやはりおられる方が監査がスムーズにいく、こういうことは否めないと思います。
  131. 沼川洋一

    ○沼川委員 特に、今回のこの中野医師の例を見ますと、きのうきょうじゃないのですね。大阪でNHKという言葉がはやっておったそうですが、大臣御存じですか。テレビのNHKじゃありませんよ。
  132. 渡部恒三

    渡部国務大臣 残念ながら、私、それを今保険局長から聞いたところです。
  133. 沼川洋一

    ○沼川委員 それぐらい有名な方なんです、この方は。Nとは中野さんのイニシアルなんですよ。あとHKはよくわかりませんけれども、もうNHKといえば問題のある人というふうに、町の中でもうわさのあった医師です。しかも、いろいろと患者からの訴えもあったはずです。しかも、この方は四年前、たしか参議院で、水虫に脳波のテストをしたということで追及されている医師ですよ。問題はもう既に四年前にあるのです。それが何で、今にならなければこういう処分が受けられないのか。ですから、処分するのはもう当たり前ですけれども、問題発見が遅過ぎるのです。そういう意味で、今の体制では、指導をやりなさいというそういう体制だからこそ、こういう問題が四年もかかってやっとわかる。そして、何かのケースがあるたびに、ずっと前のやつが必ず出てくるのです。ですから、やはりここらで、今回のこの法案提出に当たって、一割負担は後でいいですから、まず絶対やってほしいのがあるのです。それはこういう問題のけじめをつけてほしいのです。やはり通告程度で監査ができるというような、そういうけじめをつける時代が来ていると思います。三十五年のあの協定書が交わされた当時と現在では、財政事情も医療を取り巻く環境も全然違っています。高度経済成長時代には、医療が少々伸びても問題にもなりませんでしたし、また財政で穴埋めもすることができました。また国民の目も、その時代はそんなに厳しいものではなかったと思います。今低成長になって非常に財政も厳しい、そういう中でこういう不正がある、しかも監査もできない、そういう制度が今なお残っている。三十五年ですよ。あれから何年たっていますか。もうやはり今の視点に立ってこういう制度は変えなければならぬ。本当を言えばこれは自主的にやっていただきたいと思うのですね。自浄作用を促していらっしゃることも知っていますし、医師会でも盛んにそれは徹底されています。ところが、残念ながら末端には浸透していないというのがこれは現状じゃないかと思います。ならばやはり、この医療で一番大事な基本は患者と医師の信頼関係です。これが今失われつつあります。またもう一方では、大臣が言われるような出来高払い制度も、こういう問題が続くと、みずからを崩壊させていくというそういう問題も出てまいります。したがいまして、むしろ、こういう指導監査をやるというようなそういう制度に変えていくということも、私としては、医師会みずからもそういう面で協力しようという姿勢を見せられることが、国民と患者の信頼を取り戻す一番の入り口になるのじゃないかと思います。  現に、私も何人がお医者さんのお友達がおりますが、まじめなお医者さんほど、こういう問題はきちっとやった方がいい、かえってその方がいいのだ、こういう声があることも私は承知いたしております。したがいまして、時間がありませんのでこの問題を余り細かく詰められませんが、ぜひひとつ今国会の会期中に、やはり何らかの形でこのけじめだけはもっとぴしっとつけていただきたいと思います。  それから、もう一つ要望がございます。余り罰則が厳しいとおっしゃるかもしれませんが、不正の事件は、言ってみればこれは刑事事件に該当するものなんです。ですから、保険医療機関の取り消しくらいじゃなまぬるいのじゃないかと思いますよ。ライセンス剥奪ぐらいやったっておかしくないのです。やはりそれぐらいの厳しい姿勢というのがある面ではなからぬと、やり過ぎるとすぐ制限医療と言われるけれども、しかし余りにもこの問題が、この前も指摘しましたように、医療費の問題をまじめに論議しようとする入り口で、いつもこの問題が混線さしてしまうわけです。そういう問題はやはりきちっとしたけじめを大臣、ぜひひとつつけていただきたいと思いますが、いかがでしょう。
  134. 渡部恒三

    渡部国務大臣 私、今先生のお話しを聞いておりまして、これは先生には御迷惑がしれませんが、全く同感でございます。本当にこれは、私もかねがね考えておりましたけれども、現在の自由診療と出来高払い制度、これはやはり医学の発展、また自由診療を守っていかなければならないのですけれども、それを守るためにもこそ不正請求など断じてあってはならないわけであります。  医師会の皆さん方の良識に期待すると同時に、やはり厚生省としても、今のようになまぬるいというような御指摘をちょうだいしておるのはこれは我々大変恐縮なのでありますから、今の沼川先生の話、私、聞いておって大変感銘いたしました。この御意見をこれから行政に反映させて、やはり患者から信頼される医師、また不正など絶対に行われないこれからの医療というものを確立するために、厚生省としてやるべきことは勇敢にやらなければならないということで、これから督励してやってまいりたいと思います。  まあ、あと一言多いといっておしかりを受けるかもしれませんが、最近、私のところに来られる医師の皆さん方は、大臣、ぜひ一割負担をやってもらいたい、こう言うのです。どうしてなんですか、こう言うと、これは我々まじめにやっている医者が、何かああいうことが新聞に出るたびに、我々まで何か不正なことをやっているのじゃないかというふうに患者から疑われて非常にいやだ、一割負担ができれば、患者に医療費がわかってもらえば、まじめに一生懸命やっていることを患者にわかってもらって患者から信頼されるので、これは不正をなくするためにもやってくれなどとも言われておることも、あわせて申し上げたいと思います。
  135. 沼川洋一

    ○沼川委員 いや、もうせっかく全面的に評価しようかと思ったのですが、どうも最後の一言があって素直に評価できないわけですけれども大臣、今の問題に対しては非常に誠意ある御答弁をいただきましたので、一半の期待があると思います、渡部大臣、何かやってくれそうだと。どうかひとつ、そういう意味でもしっかり取り組んでいただきたいと思います。  そこで、今の問題にも一割の問題が出たので、また私もちょっと思い出して、関連して申し上げるわけですが、医療費の中身を見ますと、確かに全体的に薬代は下がる傾向はありますけれども、本人の要するに十割給付の場合の患者と、それから七割、八割の方と、濃厚診療の度合いが違うわけです。これははっきり数字も出ておりますし、吉村局長も何回もこの場でお認めになったとおりですが、確かに、特に歯科の場合なんか投薬、注射で五七%高いとか、あるいは普通の医療の場合四二%とか、こういったように、要するに十割給付の患者の場合はどうしても濃厚診療という傾向がある。そういうことで、一割を導入するとなくなりますというような答弁がたしかこのあれであっておったと思いますが、これは効果があるかもしれませんけれども、それは本末転倒ですよ。もともとそういう傾向があるならば、医師みずからの手でこれは直させるべき問題です。それを一割負担を導入してやるというのは、これはちょっと正攻法ではありませんよ。  そこで関連してお尋ねするわけですが、これは昨年の健保連の大会でお話が出ておった問題で、ちゃんとした人が話した問題ですから、私はそれだけ根拠のあるお話だと思って聞いたのですが、医療費について西高東低といいまして、西の方が高くて東が低い、せめて東京都ぐらいの医療費であるならば医療費が約六千億ぐらい浮くんだ、こういう指摘がありました。確かにこういう傾向があると私も思いますが、この点についてはどうでしょうか。
  136. 渡部恒三

    渡部国務大臣 これは、私は束の方の者ですから言いにくいわけですが、今先生から御指摘のことをいろいろな方から聞かせられまして、そんなことがあるべきはずもないわけですから、厳重によく調査させてみまして、ぜひそういうことの起こらないように努力をしてまいりたいと思います。
  137. 沼川洋一

    ○沼川委員 これはぜひ一遍調べてほしいと思います。そういう話が出ているわけですから、できたら一つ数字の上で……。  さっきの中野医師の話に移りますけれども、あの中野医師の場合だって、これはやはりひどいですね。西の方ですね、この方は。本人の平均が九万二千円ですよ。一部負担の家族の場合は平均が五万九千円です。やはり随分開きがあるし、西の方にそういう問題があるとするならば、何かひとつ対策を考えてほしいと思います。それについても審査体制とかそういう面で不備があるのかもしれませんし、あわせてそういう体制を強化するということも力を入れていただきたいと思います。  そこで、今度コンピューター導入を考えていらっしゃるわけですね、レセプトの審査の中でレインボーシステム。これは何か試験的に最初句県かに使うということですが、西が高いと言われるのだったら、まずそういうところこそ一番に使う必要があるのではないかと思いますが、その辺についてはどうでしょう。
  138. 吉村仁

    ○吉村政府委員 確かにコンピューターを導入する計画を持っております。西の方からやれ、こういう御意見につきましては御意見として承っておきます。  ただ私ども、コンピューターを導入して、コンピューターによって審査をする、そこに重点を置いておるわけではないのです。今のところは。やはり医療機関側からも、請求の事務というのは非常に煩雑だ、したがってコンピューターを入れるならば簡素化される。それから支払い基金の統計の整備はコンピューターを入れることによって十分できますし、さらに請求、支払いの仕事というのも迅速になる。それから保険者の方も、統計だとかあるいは医療費の通知だとか、いろいろな面でこれは非常にいい効果を持つことだということで進めていこうということで、コンピューターを入れたから、すぐコンピューターを使ってじゃかすか審査をして、西の方の医療費がその結果下がる、こういうことには相ならないと思います。
  139. 沼川洋一

    ○沼川委員 私も別に、コンピューターを入れたからといってそんな大きい期待を抱いているわけではありませんが、たまたまこういうのが問題になっているとき、試験的にどこの県を使おうかというようなお話だと聞いたものですから、西はどうですかと申し上げたわけでありまして、大きな期待を持っておりません。  それから、ここで特にこの前も言いました指導医療官の定員、これが全くゼロの県がまだ一県ございます。それから不足県が十七県、せめてこういう監視体制ぐらいは、大臣どうですか、ぴしっとした体制を整えてほしいと思います。それについてはやはりいろいろな給与面とかそういう問題もあるやに聞いておりますけれども、こういった医療専門官の給料、普通のお医者さん、例えば国立病院のお医者さんと比べてどのくらいなんですか。何か具体的な事例がありましたら教えてください。
  140. 吉村仁

    ○吉村政府委員 先生のような御指摘がございましたので、五十六年四月一日から、医療指導官は国立病院のお医者さんと同じ俸給表を適用する、従来は役所の一般の行政職の俸給表を適用しておったのでありますが、医療職の俸給表を適用することになって、若干の改善はされたところでございます。
  141. 沼川洋一

    ○沼川委員 御答弁を聞いてわかりましたが、非常になり手がいないという事情もわかります。確かにそういった給与面を改定されているとすれば、やはりいい人材を得るためには、これは何も金だけでいい人材が来るわけがありませんけれども、やはりこういう方の資格を給与面でもきちっとしたものにしてあげるということも大事だと思いますし、そういうことも権限とかそういうものに関連してくる大事な問題ではないかと思いますので、その欠員があるところはひとつぜひ今後また御検討いただいて、こういう監視体制が十分できるような体制をとっていただきたいと思います。中野医師の問題なんか、やはり自由裁量権という問題があって、保険医療機関の取り消しについても、けしからぬというような声が医師会内部にあるやにも聞いておりますけれども、これは私は当然の処置だと思いますし、きょう大臣の御決意を聞きましたので私もやはり安心しましたが、今後の医療制度をきちっとする意味でも、まず、そういう不当に医療費を暴騰させるという元凶についてはやはり思い切ったメスを入れていっていただきたい。  最後になって、またちょっと大臣意見の違うことを申し上げるわけですが、やはり今回の一割負担、これはやはり問題です。これはもう、私も本会議指摘しましたように、順序としては、将来の一つ医療保険のあるべき姿、ビジョンをまず具体的に示す。建物でいえば、こういう建物を建てますよ、それを建てるために整地をする、これが適正化だと思います。いろいろな不正の問題やらいろいろな薬剤の問題、たくさん問題がございます。それをきちっと整地する、この前提条件をまずぴしっとした上で、その上に負担の問題が出てくるのであればその負担の論議をもっとやる、そうすれば案外、同調まではできないかもしれませんけれども、それこそいい論議ができると思いますよ、大臣。ただ、負担をいきなり財政的見地から言われたのでは、健康保険そのものが国民の命と健康にかかわるというちょっと質の違うものであるだけに、財政的見地からだけいじっていけば、必ず将来に禍根を残すようなそういう問題が出てくることを私は実は心配いたします。ですから、きょうで終わりではありませんので、まだ審議がありますので、ぜひひとつその一割負担については再検討を促しまして、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
  142. 稲垣実男

    ○稲垣委員長代理 この際、関連質疑を許します。橋本文彦君。
  143. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 私は三月三十一日に、午前中に質問に立ちました水谷議員とともに、宇都宮病院に行ってまいりました。そして県の担当者、特に立入検査をしたメンバーと懇談してまいりました。そこでわかったことは、この病院は、昭和三十六年に設置されて以来四十五年ごろから、とかくのうわさがあった。五十年以降には患者の収容数が急激にふえてきた。そうこうしているうちに、五十一年度には議会でも問題になった。そういうように、とかく問題のある病院だった。「ある病院」という表現で追及があったけれども、県の方の対応は非常になまぬるかった。そしてさらに、立入検査に必要なメンバーが三人しかおらないので、手が足りないのだというような極めて不穏当な発言もありました。そういう中で、今回の事件がマスコミ等の報道によって初めて重たい腰を上げた。こういう動きが判明いたしました。  先ほども答弁がありましたように、三月十四日の立入検査では、九百二十床のところ九百四十四人が入院しておった。超過が二十四人もおった。それが四月十日では七百七十一、約二百名が減っておる、それから、やはり午前中の質問で、五十八年度における医師の不足数は六名だという答弁がありましたけれども、現実的には現在十四名の減がある。わずかな期間の間に医者がなぜこのように激減するのか。先ほど非常勤の医師を換算すると間違いがないという答弁がありましたけれども、これは恐らく単なるペーパー的な面での換算であって、一切実態に踏み込んでいないということだと思います。その三月十四日の県の検査では五十人の非常勤医師がおった。それを換算するとたったの二名にしかならない。こういうことがわかりました。  いずれにいたしましても、県の立入検査というのは年に一回しか行われていない。しかも極めて平板的な、表面的な、実態には何ら踏み込まない検査が行われておった。これがわかりました。この件について県の方から厚生省の方に具体的にどのような報告があったのか。先ほどの答弁を聞いておりますと、ただ医師が少ないとか、それに対して計画書を出させたとかいう点がありましたが、その前に、患者そのものが人権的な面からも救済を求めておった、こういうような声を厚生省は聞いておったのかおらなかったのか、まずお答え願います。
  144. 大池眞澄

    ○大池政府委員 今回の事件を契機といたしまして、県から事実聴取をいたしました節に、ただいま先生指摘のような、従事者の極度の不足等ももちろん報告を受けたわけでございます。  ただいま御指摘の、これまでの患者さんあるいはその家族、関係者の方からの問題提起等のことにつきましては、厚生省では事前には承っておりませんので、今回の事件を契機に、これまでの相談状況等の事実を掌握したというのが実態でございます。
  145. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 ところで、この宇都宮病院というのは全国的にも大きな病院ですね。簡単な資料なのですが、順位からすると、ベッド数では一応全国で第五番目に位置する。一番が京都の双岡病院、一千六百九十一ベッド。二番が浅香山病院、一子三百六十七。三番が都立の松沢病院、一千三百二十二。四番目が藍野病院、九百九十六。宇都宮病院が九百二十。こういうのが出ておるわけですけれども、それに対して、比較しやすい四番目の藍野病院と比較しますと、ここは九百十二人の入院患者がおる、そして何とここには四十人の医師がおる。ところがそれに比べて宇都宮病院は、同じようなベッド数、同じような入院患者がありながら、医師は三月十四日の立ち入りではわずか五名、四月十日では七名、こういうような極めてかけ離れた数字があるわけですので、いわゆる完璧な医療は行われてない。数値から見ても直ちに判断できると思うのですが、いかがでしょうか。
  146. 大池眞澄

    ○大池政府委員 御指摘のとおり、医師数の標準からの極度の不足から見まして、いろいろと医療上の問題点はあるというふうに認識しております。
  147. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 極めて少ない医師だった。このことは、本件の事件が発覚する前から把握しておりましたか。
  148. 大池眞澄

    ○大池政府委員 これまでの医療監視におきましてその都度強く指摘もし、指導もしてきた経緯は承知しております。
  149. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 そういう実態厚生省は知っておりながら、ただ草に改善勧告だけにとどまっておって、何ら具体的な手だてをしなかったというのはどういうことなのでしょうか。いわゆる精神病院における患者というものをどのように見ておるのか、大臣意見伺います。
  150. 大池眞澄

    ○大池政府委員 医療監視、立ち入りの業務をそれぞれの都道府県ごとに大変努力をしてもらっておるわけでございますし、逐次必要な指導を通達の形で、あるいは全国部長会、主管課長会等の席を通じましてその都度指導を行って努めてきているところでございます。  今回のような事件が起こりましたことは甚だ遺憾に存ずるわけでございますし、また、今回の事実を十分に究明いたしまして、改善を要すべき点についてはこれを重要な教訓として今後の指導にさらに強く反映させていきたい、かように考えておるところでございます。
  151. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 少ない医師の数で適正な医療ができるかどうかということにつきましては答弁がないわけですけれども、いずれにいたしましても、本件は厚生省あるいは県の立入検査でわかった問題ではなくて、あくまでも外部から告発があった、あるいはマスコミの報道があったということでここまで来たわけでして、何ら厚生省としては手だてをしてなかった。今、今後一生懸命再発を防ぎますと言っておりますけれども、その保証はあるのか、甚だ疑問であると思っております。  そこで、医療法に基づくところの立入検査は年一回しか行われていないわけですけれども、年一回というのはどういう根拠で出てきておるのか、これをまずお答え願います。
  152. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 医療法に基づきますところの立入検査でございますが、これは前回にもお答えしたことがございますけれども医療機関の水準を保ちますために、衛生状態でございますとか設備の状況でございますとか、あるいは定めておりますところの職員の水準でございますとか、そういうものに適合しておるかどうかを調査するのが主たる目的でございまして、大体普通の場合ですと年一回で足りるのではないか。標準的には病院については年一回、このようにしているわけでございます。
  153. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 ところで、病院に関する医師の配置基準は、一応五十二名で三人、その後十六名ふえるごとに一人ということですね。ところが精神病の場合には、特例としまして、厚生省事務次官の通知によりましてその三分の一でいい。つまり百五十六名で三名でよろしい。それから四十八名ふえるごとに一名ふえればいい。普通の病院に比べて、普通の病気に比べて三分の一のお医者さんで済む、こういうことになっております。ところが、現場の看護婦さんあるいは看護士さんの生の声を聞きますと、精神病院における治療というのは、薬づけや検査づけは一切役に立たない。まず医師との対話あるいは看護婦、看護士の激励が治療に最大の力を発揮しておる。そういう意味でどうしてもお医者さんの数が欲しい、あるいは看護婦、看護士の数が欲しい、こういう声を聞きます。そういうわけで、何ゆえに通常の病気の三分の一でいいのか、今回の事件を契機にこの三分の一という数値を見直す考えはあるかないか、お尋ねいたします。
  154. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 医療機関におきます職員配置の水準についてでございますけれども、御指摘のございましたように、一般の病院につきましては入院患者数はそのまま、外来患者数につきましては二・五で割りましたもの、その数が五十二人までは三人、五十二人以上は十六またはその端数を増すごとに一人を加えるわけでございます。精神病院につきましては、入院患者につきまして三で割っておるわけでございますが、これは病気の態様に応じまして、一般の病院とは異なりまして症状が固定している慢性病院である。おっしゃいますように精神病院も大変でございますけれども、脳外科の手術をいたしますとか心臓外科の手術をいたしますとか、そういうものと比べますとやはり慢性的な経過をとりますために、結核につきましてもそのように定めておりますが、今日の標準で適正な医療を行うことは可能であると考えております。  なお、御指摘にもございましたが、人員配置基準につきましては、我が国の医療供給体制の全体的な見直しを進めていく中で一つの検討課題であると考えておりまして、今後、病院、診療所のあり方を考慮しながら種々の観点から検討を進めてまいる所存でございます。
  155. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 ところで、全国的に精神病患者の数がふえつつある、老人性痴呆患者は別としましても、精神病患者の数がふえておる、大変憂慮すべき事態が来るのではないかと言われております。そういう中で、自殺あるいは他に害を及ぼすいわゆる自傷他害の患者、これは措置入院するわけですが、この数は減ってきておる。と同時に、通院患者はどんどんふえてきておる。これはどういう原因でこういうことになっているのか。つまり、強制的に入院させられている患者は減ってきているが通院患者はふえている。これをまず御説明いただきたいと思います。
  156. 大池眞澄

    ○大池政府委員 多数の要因がそれぞれの地域ごとにかみ合っておるわけでございますが、明確に言えますことは、一つには、精神医療におきますところのいろいろな治療方法の進歩、考え方の進歩がございまして、従前の閉鎖病棟に頼るというようなことから逐次開放病棟で、あるいはさらに地域におきます医療との連携、いわゆる地域ケアというような考え方の重視ということで、大きな流れとしてそういうような傾向が反映されているのではなかろうかと考えるわけでございます。  また一方で、地域におきます精神衛生センター、あるいは保健所におきますいろいろな精神衛生での予防活動というようなものも、逐次力をつけてきておるというようなことも反映しているのではなかろうかと考えております。
  157. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 措置入院患者につきましては、いろいろな努力の結果減っておるということがわかるのですが、通院患者がふえてきている、これはどういうことなんでしょうか。
  158. 大池眞澄

    ○大池政府委員 ただいま申し上げましたように、精神医療をすべて施設でというような、ちょっと極端な言い方でございますが、そういう昔のあり方から、逐次、地域におきます医療の展開というような流れが一つの大きな要因であろうと思います。それからもう一つは、そういった考え方を基盤に置きまして、精神衛生法におきまして通院医療に対する公費負担制度の導入というようなことも、それに対する一つのてこ入れになっているのではなかろうかと考えておるわけでございます。
  159. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 いわゆる措置入院患者については全額公費負担が導入されておる、聞くところによると毎月一人当たり十七万円前後が支払われている。それから通院患者には公費半額負担。ところが強制入院でもない、通院でもないいわゆる同意入院、この入院患者にはそういう公費の負担は一切ない、これはどういう意味から来ておるのでしょうか。
  160. 大池眞澄

    ○大池政府委員 第一点の措置入院患者についてでございますけれども、これはあくまでも本人、家族等の同意とは関係なく自傷他害のおそれということで、精神衛生法に基づいて強制的な措置を講ずるということでございますので、そのための医療と保護に要する経費は公費で全額を見るという、精神衛生法上の制度的な考え方の割り切りをしているわけでございます。  もう一つ、第二点の通院医療に対する公費負担でございますが、これは先ほど来申し上げておりますように、通院医療に対する助成的な配慮ということがありまして、一つの政策的な考え方として、精神衛生法に新たに取り入れたといういきさつに立ちまして、ただいま御指摘のような状況になっているわけでございます。
  161. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 ですから、同意入院の場合には何ら公費の負担がないのはどういうことかということです。よくわかるように説明願いたいのですが。
  162. 大池眞澄

    ○大池政府委員 繰り返しの説明で恐縮でございますけれども、措置入院につきましては自傷他害のおそれという点に着目しての制度的な割り切りでございますし、通院医療に対する公費負担は、地域医療への展開という政策的な配慮からする公費負担であるということでございます。
  163. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 同意入院の場合には一般的には通常の患者と同列に扱う、そう伺ってよろしいですか。  ところで、全国的に見ますと病院の数もふえておりますし、またそれに対するお医者さんの数もふえているわけですけれども、事精神病院に関しますと、その比率がどんどん低落化している。こういう現実が統計ではわかるわけなんですが、それでも、いわゆる精神病院だけの単科病院、これが五十七年度に九百九十七病院ある。恐らくもう子は超えているだろうと思うわけですが、これだけの病院がある。しかも医師数も、精神病院の医師は約八千人台、一病院当たり八人は優におられるという計算になるわけですけれども、看護士・婦の方も四万一千人、これから見ますと、四十一人ぐらいは一つの病院に看護士・婦さんがおる。そういう基準からしましてもこの宇都宮病院は明らかに少な過ぎる、一目瞭然なわけでございます。そういうデータがあるわけですので、もっともっと強力に当該の病院には指導していただきたい、こう思っております。  そういうわけで、この宇都宮病院を契機にいたしましてかかる実態が出たわけですけれども、他の精神病院あるいは精神病院以外の病院にも、こういう医師の不在、看護士・婦が少ないというようなことは、現在統計的に把握されておりますか。
  164. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 ただいますぐ手元にありますのが、先ほど御紹介のありました精神病院の大きなもの、五つの病院についてでございますけれども、調査時点は若干違いますが、それについて申し上げます。  ベッド数千六百、これは単科ではございませんで、一部若干一般病床も含んでおりますが、十全会京都双岡病院につきましては、例えば医師につきましては標準数三十二について現員三十六でございまして、四人超えております。ただ、この場合、ここは看護職員数につきましては標準数二百五十に対しまして現員が二百三十六でございまして、十四人標準より少のうございます。浅香山病院につきましては、医師四十五に対して三十三、これは十二人標準より少のうございます。看護職員につきましては標準二百二十八に対しまして三百三。都立松沢病院は、医師二十五に対しまして四十三、かなり多くなっております。また、看護職員につきましては百七十三に対して四百、これもかなり多くなっております。恒昭会藍野病院につきましては、医師は二十五に対して四十、看護職員百六十に対して百七十二でございまして、各病院について若干差はございますけれども、これは患者の態様その他によるのかと思いますが、御指摘にもございましたが、宇都宮病院のような例は例外と考えております。
  165. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 ところで、宇都宮病院の実地審査によりまして、午前中の答弁でも約七割が措置解除になった。これは聞くところによりますと、措置入院患者の中でも重症の度合いが高い方から調べておる、軽症の方は後回しになっておると伺っております。そうしますと、当初、つい二、三日前の新聞では六割が措置解除、きょうの御回答では一割アップの七割、このまま進んでいきますと、最終的には措置入院患者を全部実地審査しますと八割以上の措置解除が出るのじゃないか、こう思うわけです。これを見まして単純に計算しますと、約百二、三十名が措置解除になるだろう、一人当たり十七万円という公費負担を単純に掛けますと、一カ月で約二千万前後の金がむだ遣いされておる、そうすると一年間では二億を超す公費のむだ遣いがあった、こうなると思います。この宇都宮病院だけでも年間約二億のむだがあった。  そこで厚生省に聞きますが、今回このようにむだな医療をしておった、本来ならば強制入院させるべきでなかった人間がなっておった、全額公費負担制度でもって多額の金が毎月支払われていた、一切それはむだだったということがわかった現在、この大変な金額を宇都宮病院から回収するお考えはございますか。
  166. 大池眞澄

    ○大池政府委員 ただいまの御指摘でございますが、現在まだ措置患者全体について終わっておらない段階でございますので、どのくらいの割合になるかまだ私どもの予測を超えておりますけれども、少なくとも御指摘の点につきましては措置解除が即医療を要しないということでは必ずしもございませんで、ほとんどの方々は措置は要しないけれども入院医療を要する、こういう判断でございますので、御理解賜りたいと思います。  それからなお、今回、四月十日から着手しております実地審査という断面での病状の判定でございますので、それ以前の問題について技術的な掌握は非常に困難ということもございまして、御指摘の点については慎重に検討してみたいと思っております。
  167. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 そうすると、不正医療、乱脈医療のやり得、こう理解してよろしいですね。  ところで、措置入院患者が措置解除になれば、確かに医療の必要性はまだあります、だけれども、先ほどお話しのありましたようにいわゆる同意患者になるわけですね。そうすると一切公費の負担はなくなるわけです。今までずっと十七万円程度の費用が出ておったものが、措置解除になった瞬間からゼロ負担である。通院ならばまだ半額公費負担がある。こういう現実を目の前にしまして、先ほど同意入院にはなぜ公費負抑制度がないのかという点をお聞きしたわけですけれども、今回大量の同意入院患者が出るわけですが、それに対する医療補助という点ではどのようなお考えを持っておられますか。
  168. 大池眞澄

    ○大池政府委員 先ほど先生のお話しにもございましたように、同意入院につきましては、現行法の中で一般の医療の仕組みの保障があるわけでございます。健康保険等諸制度並びに、精神の分野におきましては生活保護も重要な位置づけになっております。
  169. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 精神病患者にも保険の適用がある、その保険の方でカバーされるだろう、こういう答えだと思います。  ところで、自傷他害のおそれのある措置患者については全額公費負担、それから通院の患者に対しては半額公費負担、同意入院については一切なし、こういう実情でございますけれども、そもそも精神病というものを他の病気と同列に考えでいいものかどうか。例えば、いわゆる伝染病ではこれは完璧にいかなる場合でも国費の負担でございます。大臣あるいは保険局長も前々の答弁で、病気というものは全部他からの影響のものとは言えない、まず自分にも責任がある、多少自己責任もあるのが病気というものだというところから、保険の一割負担ぐらいいいではないか、こういう論拠もあるわけですけれども、確かに胃が悪くなった、風邪をひいた、原因があります。突き詰めていきますと自己にも責任がある点もあるかもしれませんが、伝染病の場合には全くありません。では精神病はどうなのか。精神病の場合に、自分にも責任があるから、今回の改正でもし一割負担導入なれば精神病患者も当然一割負担だ、このようにお考えか。あるいは精神病患者のいわゆる特別な事情から一割負担は直ちに導入しない、あるいは検討するというような考えはございますでしょうか。
  170. 大池眞澄

    ○大池政府委員 ただいまの点でございますけれども、精神障害全体を一般の疾病と特に区分して、特別というふうには必ずしも考えられないわけでございまして、先ほど御指摘の措置患者につきましては、自傷他害のおそれというようなことから、本人の意思にかかわりなく入院いただく、しかしこれはあくまでも医療と保護という観点から行う精神衛生法上の措置でございますけれども、その点一般の疾病とは性格を異にするので、人権上の配慮その他、精神医療の非常に特別な配慮はもちろん必要でございますが、それをもってすべての精神障害、精神医療は別だということは必ずしも言えない。一般の疾病と区別なく考えるのが、やはり精神医療におきます近代的な方向でもあろうかと思うわけでございます。そのような観点に基本的には立っておるわけでございますが、健康保険法との関係におきましては、現在でも公費で負担をしておるわけでございますけれども、二足の所得以上の方々につきましては、その所得税額等に着目いたしまして費用を徴収するという仕組みが働いておりますし、それに対して保険の諸制度が、その費用徴収された部分についてそれぞれの制度に応じて働いておるわけでございます。その点に、今回の本人の一割負担ということが反映してくる部分は確かに出てこようかと思いますけれども、これは一般医療との共通の問題ということで私どもは対処したいと思っております。
  171. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 非常に古い資料で恐縮なんですが、昭和五十六年六月度における一カ月の統計なんです。これによりますと、通常の全病院のいわゆる診療報酬中に占める薬剤の割合というものを計算してみたのですが、約三三%がお薬に消えている。ところが精神病院に関しますと二二・九%、一カ月で断定するわけにいきませんけれども、薬剤を使う比率が非常に少ないわけです。そうしますと、全額に占めるウエートは、どうしてもお医者さんの診療そのものにウエートがかかってきておる。こういう点から見ましても、通常の病院の三分の一で精神病院は済むんだというこの考え方からしますと、大きな矛盾があると思うのです。薬に頼らない、検査も少ないという精神病院であるならば、どうしても人的要素が重要である、とすれば三分の一でいいんだという論拠はないのではないか、むしろ逆に精神病院の場合にはマン・ツー・マン方式みたいな形で医師をふやすべきではないか、医師が不可能であるならば看護婦あるいは看護士をふやすべきではないか、こう思いますが、いかがでしょうか。
  172. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 先ほどもお答え申し上げましたけれども、三で割りますのは入院患者についてだけでございまして、外来患者につきましては同じ数で割ることにしております。  確かに、おっしゃいましたように精神病は非常に難しい病気でございますが、慢性病でございます。結核も難しい病気ですけれども、これも慢性病でございまして、ちょっと繰り返しになりますが、やはり心臓外科とか脳外科とか、そういう普通の急性の病気と比べますと、入院患者につきましては少ない数でよろしいのではないかと今日考えておりまして、今の標準医師数で適正な医療が行われると考えておりますが、全体として、この標準数につきましては、これも先ほど申し上げましたけれども、これからの医療を考えていく上で再検討すべき一つのテーマであると思っております。
  173. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 最後に。行政というものはいつも先手、先手というのは非常に難しいわけでございまして、どうしても後手になることが多い。今回の宇都宮病院事件における今後の対策も完璧な後手行政だ、こう思うわけでございます。この中で解明できたことは、あくまでも精神病院の密室性あるいは閉鎖性ということが大きくクローズアップされまして、世間の人々も、精神病院というものは非常に恐しい、一回入ったらもう出られない、これが図らずも裏づけられた、こういうような認識を持っております。その中で、実地審査によりまして七割以上の措置解除が出るということになりますと、ますます病院に対する不信感というものが大きくなってきますし、一体精神病院は何をしているのだろうというような声も上がっているやに聞いております。  そこで、確かに医療法では立入検査あるいは今回のような実地審査がありますけれども、精神病がふえてくるという現在の状況においては、今までの状況とは違っておるわけですので、従来のパターンで行動するのではなくて、何か変わった方策で対処しなければいけないのじゃないかと思うわけです。そういうわけで、非常に原因のわからない病気、しかも偏見を持たれる病気、それが必然的に閉鎖性あるいは密室性ということにつながっていくと思いますけれども厚生大臣がいつも、厚生省国民の健康を守るんだ、国民の命を守るんだと言っておりますし、先ほども、安心した医療が受けられるようにするために今回の健保の改正をするんだという発言もございました。そういう中で、この不可解な非常に難しい精神病、どうしたら適切妥当な治療ができて、そして本来の目的でありますところの患者の治療、それから精神病の予防、これが重要でございます、これに今後どのように対処する考えがありますのか、大臣意見を聞きたいと思います。
  174. 渡部恒三

    渡部国務大臣 大変残念なことでございましたが、今回の宇都宮病院の問題は、私どもの今後の精神衛生政策に対して大きな警鐘を乱打してくれたと思っております。今まで先生からもいろいろの御指摘がありましたけれども、精神病という非常に特殊な、しかもその患者の基本的人権を守って差し上げるためにはいろいろと困難な技術的な問題等がある。今回の宇都宮病院問題をきっかけにしまして、こういう御心配を二度と起こすことのないように、今、私、残念ながら具体的にこういうふうな新しい方法をやりたいというところまでまだ勉強が達しておりませんし、また、この宇都宮病院そのものの問題が、これで終わったのかと思うと次にまた新しい問題が出てくるというふうに、まだこの真相の究明というものは一〇〇%に達しておりませんので、この問題の真相を究明しながら今後こういう方法でということを、これはぜひ先生方からも御意見をどんどん積極的にお聞かせいただいて、これをきっかけに私どもこれが対策に積極的に乗り出して、全国の都道府県の知事に対して、また関係者に対して、我々の考えてきた、これから考えに達していくところの施策を徹底するようにしてまいりたいと思います。
  175. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 図らずも宇都宮病院で乱診乱療が裏づけられまして、措置入院患者に対しまして膨大な費用が出費されておった、大変な国費のむだ遣い、税金のむだ遣いでございます。したがいまして、今回、医療保険が大変だとか、将来に向かってのいわゆる老人性社会だとか、そういう背景の中で抜本的に医療改正をするんだという御意見でございますけれども、まず弱い者をいじめるような一割負担導入は先の問題にしまして、今厚生省がなすべきことは、このように国民が納得できない医療が行われておるということ、こういう実態に鋭いメスを入れて、そこでいわゆる医療費の削減を図っていく、そういう努力をなさってから、その上で初めて国民理解を求めるべきじゃないか。したがって、今回の健保の改正は時期尚早である、このように私は思っております。ぜひとも、病院の医療実態厚生省、勇断を持って踏み込んでいただきたい、このように思っております。よろしくお願いいたします。  終わります。
  176. 稲垣実男

    ○稲垣委員長代理 小渕正義君。
  177. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 私は、本日は、今回の健康保険法の一部改正案に対しまして、制度のごく一般的な問題を中心にいたしまして御質問申し上げたいと思います。  専門的な分野はまた次の機会にお願いすることにいたしまして、まず最初に、このことは本会議の中でも取り上げられた問題でありますが、やはりもう一度ここから出発しなくてはいかぬと思いますのでお尋ねいたしますが、実は昨年の暮れの衆議院の総選挙の中で、中曽根首相は、今回の健康保険法改正については、広く国民関係者意見を聞いて見直しますということを、国民に公約されたのは天下の事実であります。昨年八月、厚生省が概算要求の中で、被用者保険本人二割負担という構想をぶち上げてから、いろいろなところでかなり大きな関心を呼び、波紋を呼んだ結果、最終的に去年の暮れ、総理みずからがもう一度関係者意見を聞きながら見直す、そういったことをおっしゃられたわけでありますが、それが、国民にそう公約されたにもかかわらず、一月の予算の中でそのまま取り入れられてしまったという意味では、どういう見直しが実際に行われたのか、国民にとってはまさにこれはやみの中であります。そういう意味で、真に国民に約束されたという以上、どのような形で見直し作業が進められてこのような結果になったのか、その経過を御説明いただきたいと思います。
  178. 渡部恒三

    渡部国務大臣 先生御承知のように、昨年の概算要求のときに厚生省でつくられた原案は、例えば五十九年度から二割負担をお願いするとか、あるいはこれは随分長い議論の中で、病院に入院する場合は、入院しなくても自宅におっても食べ物はいただくわけですから、食材費は本人の負担にすべきであるとか、あるいはビタミン等の薬剤はこれを保険の対象から外すとか、かなり厳しい内容のものを私は厚生大臣に就任して受け取ったのでありますが、総理から、幅広い立場に立って検討するようにということで、五十九年度から二割ちょうだいするというものを、五十九年、六十年は一割という緩和措置を講じたり、食材費はちょうだいしないということにしたり、あるいはビタミン等のいろいろ議論のありましたものもやはり保険の対象から外さないことにしょうとか、そういういろいろな手直しを総理の意向を酌んで行ったわけでございます。
  179. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 今大臣がおっしゃられたようなことで、厚生省は当初の思い切った案よりもかなり修正をしたと言われておるわけでありますが、確かに入院時の給食費の本人負担の問題、ビタミン剤の保険外適用とかその他、いろいろな項目を検討項目として出されておったのは十分私、承知しておりますが、そういったことをおっしゃられるならば、これはもう本会議の中でお尋ねしたのでありますが、そのように二割負担を一割負担にする、その他いろいろなものを一応今回は導入を見合わせるということにしたにもかかわらず、厚生省が試算した今回の国庫負担の削減という金額からいくならば、何ら大筋で変わらない金額が出されたということは非常に理解に苦しむわけであります。今大臣がおっしゃられたようないろいろな項目について、これだけ今回はそういうものは採用しなくしたんだということであるならば、当然それに納得できるような形として数字的に金額が出てこなければいかぬと私は思うのでありますが、今回保険財政の中で政府が削減しようとした金額は、当初思い切っていろいろなものをやろうとした金額と今回実施に踏み切った金額との間に余り差はない。ここらあたりからいきますならば、本当にそういうことの実のあるものとしてやられたのかどうか、そういう意味で非常に理解に苦しむわけでありますが、この点に対してはいかがでしょうか。
  180. 吉村仁

    ○吉村政府委員 概算要求の時点におきましては、確かに六千二百八十七億の国庫負担影響額を計上したわけであります。そして予算の段階では六千二百七十六億の国庫負担影響額でございますので、ほとんど差はございません。そういう意味におきましては総額は同じではないか、こういうことでございますが、中身につきましてはかなり違っておるわけでございます。  ただいま大臣が申しましたような事項につきましては、それぞれ国庫負担額の影響額がゼロになったり少なくなったりしておるわけでございますが、そのかわりに、私ども薬価基準の引き下げという措置をとっておるわけでございます。その分が概算要求の時点におきましては計上をしていなかった、それが予算編成の段階では薬価基準の引き下げ分が計上されて、結果、総額としては大体同じ額におさまった、こういうことでございます。
  181. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 今のお話しですが、具体的数字の中でのやりくりで、結果として総額は変わらなくても中味は違うんだと言われましても、国民の側から見ますならば、そういうものが一つも事前に出されない中で、ただ数字的に国として支出すべき金額が同じようであれば、やはりこれは何かキツネにつままれたような感じがするわけでありまして、単に机上における筆先だけでの、いろいろなやりとりの中でのものでしかないというようにどうしても受けとれるわけです。そういう意味で、我々は、中身においてはかなり苦労したんだと言われましても、それでは形としてどれだけの分が前の金額からこれだけの金額に変わったかということになりますと、ただ薬価基準の問題が新しく入ったので実質的には同じようになったんだと言っても、それでは納得できません。したがって、この点についてはもっと別の機会に、いろいろと資料をいただきながら御質問したいと思いますので、とりあえずこの問題はおきます。  大臣、こういう意見があるのです。現在の健康保険法で被用者は十割負担ということで、これは本人は、国というか保険者と契約して、そして保険金を納付しているわけです。これは一つの契約事項です。それを今度、本人は一割負担せよというように契約を変更するということは、そういう意味ではこれは明らかにそれぞれの被用者に対しての契約違反じゃないですか。もしそれが違反でないとするならば、政府としては、大臣としては、厚生省としては、だから法律を改めてこういうふうにするんだということでしょうけれども、それならばそれのごとく、少なくともある程度の一定の猶予期間を置いて、そして、被保険者たる国民のそれぞれの対象者に十分な理解と納得を得て初めて実施すべきじゃないか。それを被保険者の人たちには何らの相談もしないで、ただ法律で決めればいいんだということでは、これは明らかに契約違反じゃないか。こういう説もあるのですよ。本当にこういう説でひとつ裁判で争おうかという人たちもおられるのですよ。ですから、そういう点についてどうですか、そのために法律を改正してやろうとしていることはわかりますけれども、そうであればあるほど、被保険者たるべき被用者本人の人たちに対して、もっと理解と納得のできるような猶予期間というものを当然置いて実施すべきじゃないかと私は思うのですが、その点いかがですか。     〔稲垣委員長代理退席、今井委員長代理者着席〕
  182. 渡部恒三

    渡部国務大臣 お言葉を返すようで恐縮なのでありますけれども、これは国の法律によって行われる政策でございますから、私どもいろいろ検討させていただいて、それぞれの手続きをとって、国民皆さん方の代表である国会で法律の御審議をちょうだいして、これを成立させて行われれば、これは一つの政策の遂行になるということになるのでありまして、それが契約違反だということになりますと、今度は、できるだけ早く国保を七割の負担から八割にしようと私は思っているのですが、それも契約違反だとおしかりを受けることになるわけでありますから、そのためにここで先生方に御審議をちょうだいしているわけでありまして、国の一つの政策上の変更ということにはなると思いますが、国会で法律を通していただければ契約違反ということにはならないと思います。  なお、なぜ猶予期間を置かないで突然やるのかという御指摘でございますが、健康保険法に対する御意見は、昭和四十年代から各党間においても、またそれぞれの関係団体においてもいろいろ議論されておりまして、私も社会労働委員会における過去の審議の速記録等も読ませていただきましたが、幾たびか厚生省に対して、目先のその場しのぎのことでない、抜本的な改正をやれという御指摘は長い間ちょうだいをいたしておりまして、それらの今までの御指摘というものを尊重した中で行われる今回の改革案でございます。しかもこれは、いろいろ見方はございましょうが、社会保障制度審議会社会保険審議会、こういう機関での御審議も賜って今回提出したものでございますから、また、最初二割御負担をちょうだいするという案であったのも、今まで十割給付であったものが突然二割ということでは生活に激変をもたらして御迷惑をかけるだろうということで、二年間一割というような猶予期間をつくっておりますので、これらのことを御理解賜りたいと思います。
  183. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 かねがねから健保改正についての御意見があることはそれなりにわかりますが、被保険者、特に今回の対象になられる人約三千三百万人、この人たちから見ますならばまさに突如として出てきて、しかも七月には実施することになるわけですね。そういう意味では、少なくとも最低一年か一年半とかの猶予期間を置きながら、そして皆さんに十分御理解を得た中で実施するのが政治の常道ではないかと思うのです。そういう意味でお尋ねしたわけでありますが、先ほど申しましたような被保険者の中に根強いそういう意見もございます。したがいまして、そういうことも十分あるということを頭に置いていただきたいと思います。  それで、次にお尋ねいたしますが、この冊子は厚生省が出されたんでしょうかね。これは発行主不明なんです。一種の怪文書なんです。読めば、これは厚生省側で執筆したのに間違いないような内容なんです。全然心当たりございませんか。
  184. 吉村仁

    ○吉村政府委員 私どもでつくって配布したものでございます。
  185. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 要するに、発行のところが明確にされてないところに一つの問題があるわけでありますが、しかし中身を読みますと、「なぜ、いま医療保険を改革するのでしょうか」ということで、これは今までこれらの改正案を手がけた人でなければ書けぬような書き方で、わかりやすくよく書いてあるのです。  そこで、今回の改正は、要するにこれは、昭和三十六年度ですか全国民を保険の対象としてやろうということで、それぞれいろいろな制度が分立しておったにかかわらず、ともかく全国民をひとつ保険として包含しながらやろうということでスタートしたわけですね。そういう意味で制度間にかなりのアンバランスその他があります。そういういろいろ、負担の公平というような意味での問題点もあろうかと思いますが、今回改正されるまずスタートは、そういう制度のいろいろな不均衡を是正して負担の公平化、給付の公平化を図っていこうという一つのステップとして、今回の一割負担というものを、六十一年度から二割ですけれども、考えておるというふうにこれにもぴしゃっと書いてあるのです。だから、そういうことで間違いありませんかもう一度念のためにお尋ねいたします。
  186. 渡部恒三

    渡部国務大臣 これは、政府広報がありますように、私ども政府の立場でいろいろな施策を行おうとする場合、できるだけ国民皆さん方に御理解をちょうだいする、これは民主主義の原則でございますので、今私どもが、健康保険法改正が二十一世紀の安定した医療対策のためにぜひ必要であるということで、国会に改革案をお願いしているわけでありますから、そういう考え方をできるだけ多くの国民の関係の皆さんに知っていただきたい、被用者保険の本人の関係の皆さんにも知っていただきたいということで、私どもで出しております。
  187. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 そうであるならばあるほど、いろいろな方からも言われたと思いますが、将来のあるべきビジョンといいますか、それに向かって段階的にどのような方向でいくのか、少なくともその理念といいますか一つの考え方を持ちながら、そういう中で初めて、第一段階としてこういうような形でスタートするんだ、このようにやることが当然のやり方だったと思います。そういう将来構想はどうなるのか全然わからない、今の制度をどのような形でどのように統一されていこうとされているのか、そういうこともわからない。とにかく、ただがむしゃらに、今まで長い歴史がある、特に健康保険法の根幹にも触れるような被用者に対する一割負担というような問題だけをいきなりスタートさせるのは、余りにも拙速主義ではないかと私は思うわけでありますし、そういう意味では、本会議の中でもそれなりに現在検討中ということを言われておりましたが、私たちがこの問題を検討するからには、どうしてもその問題とのかかわり合いなしには結論を出せないと思います。そういう意味で、そういった構想その他、これからの全体的な我が国の保険財政のあり方、どのような方向で今後やっていこうとするのかという理念、そういうものをひとつ早急にお示しいただければと思いますが、その点いかがでしょうか。
  188. 渡部恒三

    渡部国務大臣 御指摘のとおりでございまして、私が幾たびもいろいろの場で、今回の健保改正の必要性をお願いしている一番の理由は、二十一世紀にわたる高齢化していく時代までの我が国の医療制度を揺るぎないものにするということでございますから、これは単にこの改正案だけでなくて、今後の我が国医療のあり方、あるいはこれからの適正規模の医師数はどれだけであるべきかとか、あるいは今の離島とか僻地の医療対策はどうあるべきであるかとか、あるいはたびたび先生方からも御指摘をいただいておりますホームドクター、あるいはその後の二次医療、三次医療をどう考えていくかとか、いろいろな問題がございますので、それらを総合した国民の健康を守るための将来像を、ぜひ先生方にもいろいろ御意見をちょうだいしながらつくっていかなければならないと考えて、今まで先生方からちょうだいした御指摘、御意見等を尊重させていただきながら私ども今鋭意つくっておるところでございますので、先生方からのお求めがございますれば、これは私どもの方で出して、ぜひこれからの審議の参考にしていただきたいと思っております。
  189. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 今回出されたそういう部分的なものだけでこの問題の議論をすることは、非常に危険だという感じもいたしますので、ぜひ早急に出されることをお願いいたしておきます。  次に、ちょっと具体的なことになりますが、昭和五十九年度国民医療費の伸びが国民所得の伸びを上回るかどうか、これは現在の段階における見通しとしてもう一度お尋ねいたします。  それから、先進諸国の医療費と比較した場合に我が国の医療費がどのような位置づけにあるか、ひとつ具体的数字としてお示しいただきたいと思います。  それから、これからまだしばらくは、医師の過剰時代だとか何だとか言われておりますが、医師や歯科医師等の今後の増加現象は、医療費の増大の一つの大きな要素になっていくのではないかという感じもするわけであります。  これらの点に対する御見解をいただきたいと思います。
  190. 吉村仁

    ○吉村政府委員 五十九年度における国民医療費の伸びが国民所得の伸びを上回るかどうかという御質問につきましては、五十九年度におきましては国民所得は六・四%ふえる、こういうことになっておりますが、国民医療費の方は二・五%の伸びと推計をしております。  また、先進諸国の医療費に比較して我が国の医療費はどうか、こういう御質問でございますが、その点に関しましては、いろいろ国によって制度が違いますので、社会保険方式をとっておる西ドイツ、フラン又と日本を比べてみますと、西ドイツは国民所得に対しまして一〇・二%、それからフランスは九・六%、日本が六・二%。これは一九八〇年、昭和五十五年の統計でございます。  それから、医師、歯科医師の増加は医療費の増大の要素となるかどうか、これはなるというように私どもは考えております。そして、医師の増加が医療費の伸びにどれくらいの寄与率を持つか、こういう点につきましてはなかなか難しいのでありますが、私どもは、医療費の伸びを一〇〇といたしまして三・四ぐらいの寄与率になる、こういうように推計しております。
  191. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 これもいろいろ言われたことだと思いますけれども、現在の我が国医療保険制度をそれぞれの制度別に見た場合、収支状況はかなり健全化の方向にきていることはこれはもう間違いないと思います。特にひところ問題になっておりましたが、政管健保については財政的には非常に好転しているような状況であります。このような推移を見ますならば、後しばらくそういった医療費の推移を見守りながら、この改革についても着手をされてよかったのではないか、こういうふうな感じがするわけであります。ここ一、二年を見ますとかなり収支状態は好転しつつありますから、もう少しそういったことを十分見きわめて、将来的な一つの方向をつくり出していくということが一番素直なやり方じゃないかと私は思うのでありますが、そのような時期にもかかわらず、あえてこのように急速、このような形で、非常に制度の基本に触れるような改革案を突如として出されたということは、余りにも財政上のつじつま合わせのみにとらわれ過ぎた、非常に将来展望を欠いた考えじゃないかという気がしてならないわけでありますが、この件に対する御見解をいただきたいと思います。
  192. 渡部恒三

    渡部国務大臣 医療費の逓減については御指摘のとおりでございまして、これは先生方の御協力によりまして老人保健法を通していただいたり、また先生方から激励を賜りまして、厚生省としては、審査体制の強化に努めるなど医療費の適正化、節減の努力をしてきました。そういうものの成果がようやく芽生えようとしておるのでありまして、これは大変ありがたいことでございますが、これをやはり将来にわたって定着化させていかなければなりません。ちょっとよくなったということで油断してもとに戻ってしまったのでは仕方がないわけでありますから、せっかく今いい方向に芽生えようとしておるのでありますから、これをより定着したものにしていかなければならないということで、私ども頑張っておることを御理解いただきたいと思うのでございます。  また、これは財政に全く関係ないということではありませんで、御承知のように、ゼロシーリングという状態の中で当分の間予算編成を我々はしなければならないわけであります。厚生省としてその例外というわけにはまいらないのが現実でございます。そういう中で、現在、国家予算の中で三兆九千億の医療費を出しておるわけでありますけれども予算というものは全体のバランスの中でできていくわけでありますから、これをこれ以上ふやしていくということが国民的な合意が得られるものだろうか。中小企業の予算を全部削ってしまって、あるいは農業の予算を全部削ってしまって、そして医療費の増額だけをお認めいただくということが国民的な合意が得られるものだろうかということになりますと、やはり私ども、今の状態では、三兆九千億という国家予算の中の医療費の支出というのが、厳しいゼロシーリング予算編成が続く限り、この辺が限度だろうということもひとつ御理解賜りたいと存じます。
  193. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 今の議論はそれぞれすれ違い議論ですから、また別の機会に譲ることにいたします。  今回の改正は、本人の負担増となり、早期受診を抑制することになるのではないか、このことが、大方の人が一番懸念されているところです。制度審においても、受診の抑制につながるということを指摘されているわけであります。そういう点で、我が国がいよいよこれから高齢化社会へといく中で、疾病構造がずっと変化する、こういう中における早期受診の抑制ということが、病気の慢性化をますます促進する方向になるのではないか。こういう点を皆さんが、関係者の方が一番御懸念なさっているところでありますが、厚生省は、早期受診の抑制にはつながらない、そういうことになりませんということをよく言われているようでありますし、これは、おたくが出したこれにもよくそのことがはっきり書いてあるわけでありますが、どう見でもやはり本人負担増は受診の抑制につながる。また、これをねらいにこういうことをやったのではないかと私どもは逆に思うわけでありますが、どうして早期受診の抑制にはならないという御判断なのか、ここらあたりの根拠についてもう少し御説明願いたいと思います。
  194. 吉村仁

    ○吉村政府委員 確かに、一部負担を実施すれば患者の受診行動にどういう影響を与えるかというのは非常に難しい問題でございます。したがって、私どもも受診率に全く影響がないと言うほど度胸はないわけでありますが、例えば、ビルの診療所あたりで二日酔いでちょっと注射をしてもらう、あるいは疲労したからちょっと薬をもらう、こういうような受診というのはあるいは少なくなるかもしれない、こういうように思いますが、本当に必要な受診というものが一割の負担で抑制されるか、こういうことになりますと、必要な受診というものは抑制されないのではないか。  その理由を申し上げますと、一つは、三割の一部負担のあります国民健康保険、それから家族は外来三割、入院二割でございます。これらの受診率と本人十割の受診率とを比較してみると、ほとんど差がございません。したがって、三割ですら受診率に差がないとすれば、一割の負担をしたからといって受診率に影響を及ぼすほどのことにはならないであろう、こういうように考えておるわけであります。したがって、私どもは、今回の改正で必要な受診の抑制を招くようなことはない、こういうように確信をしております。
  195. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 一部、そこらあたりのビルの診療所に、大手会社のサラリーマンが二日酔いに注射を打ちに来たからとかなんとかいうことで、何か健保組合の人は非常に甘い受診をしているような感じを持たれているようでありますが、統計的にも、この保険制度の中で、薬剤を一点当たり幾らですか、五十円でしたか、ともかく本人負担に切りかえたときのその後の経緯を見ると、受診率がそういう改正によって一、二年かなり落ちるわけです。落ちている数字が出ておるわけですね。それから老人保健は、医療・保健制度医療自助の中で、わずかなお金かもしれませんが、ああいった老人保健の場合に自己負担分を導入した際も、前と比較いたしますとやはり受診率が落ちている。明らかに統計的に数字が出ておるわけであります。したがって、そういう点からいいますと、どうしても受診の抑制につながるということは、これは間違いない事実だと我々は思うわけです。  それから、先ほどから三割負担の国保その他の例をとられておりましたが、問題は、勤労者の人たちは昼間は就業しておられるわけでありますから、受診といいますか、もちろんそれぞれの附属病院を持たれている会社はいいですが、そういうところでも、やはり昼間は就業して働いておられるから、少しぐらいのことでは受診しない。しかしながら、家族は一日ずっと家庭におられるわけでありますから、少しでも異常か何かをお感じになった場合には速やかに受診する。やはりそこらあたりも実は違いが逆にあるわけでありまして、そういう意味で、このたびのこういったものは、高齢化の方向にお互いがいくような社会の中で、早期の病気を少しそのまま潜在的にため込んでしまう、こういうような方向にどうしても行くのではないかという、非常に大きな懸念と不安があるわけであります。そういう点で、今の数字だけではどうしても納得できませんが、この点についていろいろ論争しても始まらぬと思いますが、もし今私が申し上げた点について何か御見解がありますならば、お聞かせいただきたいと思います。
  196. 吉村仁

    ○吉村政府委員 私が先ほど申し上げた資料は、医療保険における受診率についての統計から申し上げたわけでありますが、もう一つ国民健康調査というものを厚生省がやっております。それによりますと、病気になって医療機関にかかった者の比率、これが被用者保険の本人と家族と国保、年齢別に出ておりますが、病気になって医療機関にかかった者の比率というものは差がございません。年齢、階級ごとに差がございません。それから、医療機関にかからなかった理由。病気になって総数で八九・九%が医療機関にかかっておるわけであります。したがって一割はかかってないということになるわけですが、その一割の人について医療機関にかからなかった理由というのは、大した病気でないからというのが七〇%近くでございまして、いろいろな理由はありますが、費用がかかるからと、費用を心配してかからなかったというのは一・〇%にすぎません。したがって、一割ぐらいの負担によって必要な受診まで妨げられる、あるいは必要な受診までセーブしなければならぬ、こういうことはないのではないか。  それから、先生が先ほど、薬剤の一部負担をやったときに受診率が下がったではないか、こういうことをおっしゃいましたが、私どもはやはり、四十二年当時と五十九年の現在における国民生活水準というのは全く違っておるのではないか、医療費の負担ができないような生活水準ではない、こういうように思います。それから薬剤の一部負担は、まさに薬剤が乱用されるというそこに着目をしてかけたわけでございまして、私どもも、それは受診率が下がるのは当然であろう、乱用される部分にかけたわけですから、それはかけたことによる効果があらわれたのであろう、こういうように考えます。
  197. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 この問題でいろいろやりとりしても、一つの方向の中での議論になりませんので、また次の機会に譲ります。  次に、この医療については、国民に対しまして、いつでもどこでも必要な医療を提供できるということが厚生省の方針でありますし、また、そのようなことがよく言われているわけでありますが、実態が果たしてそのように、いつでも国民が望むところでどこでも必要な医療が受けられているかどうか。この現状認識が、厚生省としては、行政としてちょっと甘いのではないかという気がするわけでありますが、この件に関してはどのように思われておりますか。特に歯科医師、歯科関係になりますと、国民皆さん方はまだまだ不十分な中で受けられておるというように思いますし、そういう点で、国民の保険給付についてもまだまだ十分な満足はしていないという状況だと思います。  特に、私は長崎県でありますが、長崎県は御承知のように非常に離島が多うございます。離島が多いがゆえに、非常に離島には医師がおらない。例えば歯の治療をするだけでも、対馬あたりではわざわざ福岡まで行って、福岡に何日か泊まりながら治療を受けなければいかぬという実態があるわけであります。これは一つの例でありますが、まだまだ、国民がいつでもどこでも必要な医療を受けられるという体制にはない、こういう状況だと思いますが、そこらあたりに対する厚生省の御見解があれば承りたいと思います。
  198. 吉村仁

    ○吉村政府委員 いつでもどこでも必要な医療が受けられるというのは、医療保障制度の理想であろう、そして目標であろうと思います。  それで、現状はそうなっていない点があるのではないか。歯科の例をお挙げになりましたが、保険給付の内容が全部の医療をカバーしておらぬではないかというのが恐らく一つでございましょう。それからもう一つは、僻地・離島等に歯科医師がいないために都会地まで交通費を使って受診に行かなければならぬという医師の分布というようなもの、二点だと思います。  第一の点につきましては、私ども、現在の歯科医療につきましては、非常に高価な材料、例えば会合金だとか白金合金というようなもの、これは保険給付の対象にしておりません。また審美性、要するに美的な感覚というようなものに重点を置きました診療行為で、例えばメタルボンド等は保険の中に取り入れておりません。しかしながら、これを取り入れていないからといって、歯科診療が必要にして適正な給付を保障していないかという点になりますと、これは私どもは、そういう高価な材料あるいは審美性に重点を置いたような診療行為については、保険給付の中に入れなくてもまあ許していただけるのではないかというように考えております。  また、離島や僻地において歯科医師が不足しておるという点については、確かにそういう現実がございます。したがって、そういう地域に対しましては歯科医療の対策を推進していかねばならない地域でありますし、医務行政の立場で、僻地歯科巡回診療だとか離島の歯科巡回診療、過疎地威における歯科診療所の整備ということも努力をいたしておるわけでありまして、今後これらの施策を一層充実するということでその問題に対処していくべきである、こういうように考えております。
  199. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 次に、今回の改正案については、社会保障制度審議会社会保険審議会の答申の中でも、我が国の医療保険制度の根幹にかかわるものであり、慎重かつ広範な検討を行う必要があるにもかかわらず、極めて限られた審議期間で結論を見出すことが著しく困難であったと、これは審議会としては極めて異例とも言えるような指摘がされて答申が出されたわけでありますが、まさにこの点が、私どもといたしましても被保険者という立場から見ましても問題だと思うわけであります。そういう意味で、実は、老人保健法を成立させるまでに、たしか三年ぐらいかかってやっとあそこまででき上がっていったという経過がございます。過去の健康保険法改正に当たりましてはかなり慎重な期間があって、それぞれ一つのまとまったものになってきたという経過から見ますならば、今回は、このような制度の根幹に触れる余りにも重要な内容であり、より慎重に広範な立場から検討を行わなければいかぬにもかかわらず、そういう期間がなかった。そこまで何を急ぐのかということになるわけです。そういう意味で、私どもとしても、今回の改正案についてはそういったスタート自身がどうしても何か不純な感じがしてならないわけです。  まず、この問題の指摘に対して厚生省はどのような御見解をお持ちか、お尋ねいたします。
  200. 渡部恒三

    渡部国務大臣 今の先生の御指摘、私も反省するところがございます。本当はもっと早くこういう改革をやっておくべきだったろうと思います。しかし、なかなか政治というものは、国民皆さん方に御負担をお願いするとかそういうことは、やはり喜ばれないことでありますからずるずる延ばしてしまって、こういうせっぱ詰まったところでお願いしなければならないことになったことは、私ども反省しなければならないと思っております。  また、今お話しの社会保障制度審議会社会保険審議会で極めて短い審議時間しかなかった、こういう御指摘でございますが、今までの慣例を見ておりますと、政府予算案が決まって、そこで責任を持って審議をお願いできるということで審議をお願いするために、このようなことになって大変急いで御審議をいただかなければならなかったこと、これは大変恐縮に存じておるのでございます。  ただ、先生にお言葉を返して恐縮ですが、昔は何年もかかったからこれからも何年もかからなければならない、これは残念ながら私もお言葉を返すしかないのでありまして、やはりあしき慣例というものはどんどん直していった方がいいのでありまして、今や私どもは、年金にいたしましても保険にいたしましても、今この時期にやらなければならない。本当であれば三年か五年前にやっておくべきことだったのでありましょうけれども、今日もうぎりぎりのところでお願いしておるわけでございますので、ぜひ御審議を賜りたいと思います。
  201. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 前もどれくらいかかったからこれもそれに準じてやれという意味で言っておるんじゃないのですよ。今回のこの問題は、前回の保険制度の問題よりも幅が広く、非常に深い内容を持った、医療の改革につながる問題がありますから、実はそういった、審議会でさえ非常に慎重に討議すべきであったということを言っているわけでありますから、余り拙速に走らないでもっと十分時間をかけて、本当に国民合意の上でスタートさせるべきではないかという意味で実は聞いているわけであります。そういう形で考えましたなら、今大臣おっしゃられましたが、何がせっぱ詰まっておられるのですかね。せっぱ詰まった事情というのを、本当にぴんとくるように御説明いただきたいと思います。先ほども、まさにせっぱ詰まってどうにもならなかったということを言われたんでありますが、果たしてそのせっぱ詰まった事情というのは一体何なのか、もう一度お尋ねしたいのです。
  202. 渡部恒三

    渡部国務大臣 これは大きく分けますと二つ理由があると思います。  一つは、年々医療費が増大してまいりました。高度成長の時代、国民所得が年々大幅に増大しておるときであればこれは問題ないのでありますが、残念ながら最近の経済というものは低迷ぎみでありまして、大幅な年々の国民所得の増大というようなものは望めません。そういうことから、この医療保険制度というものを中長期的に展望をして安定したものにするためには、やはり医療費の増加というものをどんなことがあっても国民所得よりも低目に抑えるための、医療資の節減化というものをやらなければならない。  またもう一つは、率直に申し上げて、これは財政問題が関係ないものではありません。やはり私どもは「増税なき財政再建」というものを中曽根内閣の方針にしておるのでありますから、「増税なき財政再建」ということは、これから予算を大幅に伸ばすというようなことはできない、極めて限られた予算の中で赤字公債も償還していかなければならない。そういう中で、当分の間ゼロシーリングとかマイナスシーリングとかいう大変厳しい条件の中で予算を組んでいかなければならない。そのとき厚生省だけが例外になり得るか。医療費だけが例外になり得るか。私は厚生大臣の立場ですから、本当は医療費だけは例外にしてもらいたい、厚生省予算だけは例外にしていただきたい、これは厚生大臣としての気持ちでございますが、しかし、厚生省だけがあってこの国があるわけではございません。防衛もございますし、農業政策もございますし、中小企業対策もございます。そうすると、中小企業の予算を削って、農業の予算を削って、教育の予算を削って、医療費だけはふやすべきものだというのも、これも国民的な合意を得るのに困難であるということになりますと、今度の五十九年度で、それでも三兆九千億というお金、これは防衛予算をはるかに上回り、あるいは今までお金を使っていることの代表のように国民から思われておった農林省の予算をもはるかに上回る額でございますが、この三兆九千億の予算を来年度さらに増額をさせるというようなことは、なかなか国民皆さん方、全体のバランスの中でこれは困難でございますので、そういった財政的理由もございます。
  203. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 せっぱ詰まった事情をおっしゃられたわけでありますが、国民所得の伸びを医療費の伸びが五十九年度でも大きく下回ってくるような状況が推定されますし、また先ほど申しましたように、医療財政は、政管健保その他においてもそれぞれ財政事情は収支において逐次好転しておるような状況の中であります。そういうことから考えましても、あえて今、どうしてもせっぱ詰まった事情にはならぬわけであります。  あと一つ、財政的な見地から言われておりましたが、この点になりますと今の国の限られた予算の中でどう重点配分するかということになりますので、これはそれぞれの政策の選択の問題がありますので、あえてここでこの議論はいたしませんが、そういう意味で、私どもといたしましては、今回のこのような改正というのはまだまだすっきりと理解するに至らないということだけを申し上げておきたいと思います。  次に、今回の改正によりまして医療の窓口事務の事務量がかなり増大するのではないか。当然医療担当者は医療に専念すべきでありますが、今回窓口事務において一割徴収を行うということになりますれば、かなり事務量が増大する、そのことがまた医療費の諸経費の増につながる、このようなことになるのではないかと思うわけでありますが、この点についてはどのようにお考えですか、その点お尋ねいたします。
  204. 吉村仁

    ○吉村政府委員 先生指摘のように、確かに医療機関における窓口事務がふえることは事実でございます。ただ、既に国保、それから被用者保険家族等につきましては同じような事務を医療機関に御負担を願っておるわけでございます。したがって、総体的に言いますならば、被保険者本人というのは全国民のうちの約三分の一でございますので、三分の一の方々についての事務がふえるということになるわけでございます。本人の受診者は、一医療機関当たり一日平均しますと十四人くらいではないか、そういうように計算できるわけであります。本人の数というのも、診療科あるいは立地条件、例えばオフィス街におけるビル診療所といったところ等は異なると思いますが、平均してみますと大体十四人くらいのものでございますので、まあこの程度の事務負担の増ならば医療機関の御協力を得ることができるのではないか、こういうように考えている次第でございます。
  205. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 数字的に十四人程度とか言われましたが、要するに医療事務が増大する。しかも医療機関においては事務だけがふえるわけですね。特別扱っていくお金が、また保険のあれがふえるとかなんとかいうことはないわけですから、ただ事務だけがふえていくという形になり、そういう意味で、何らかのそういった経費増につながることがまたふえる。これに対する何らかの措置について、医療機関それぞれの事務の合理化等によって何とかやっていけるだろうという形で、そういったものについては何ら検討に値しないというふうにお思いなのかどうか。やはり何らかの形での検討をすべき事項になるのではないかという感じがするわけです。そういうことをきちっとしないことが、いろいろな変な問題を絡ませて膨らませて出てくる要因になりかねないのじゃないかという気もするわけでありますが、その点に対する御見解があったらひとつお伺いをいたしたいと思います。  それからあわせて、今回の改正の主な主張、厚生省が言われている大きな柱の中には負担の公平化と給付の平等、こういうことを非常に強調されているわけでありますが、今回のこの改革案によって、この負担の公平と給付の平等ということがどの程度進むというふうに認識されておるのか。この二つについて御見解をお示しいただきたいと思います。
  206. 吉村仁

    ○吉村政府委員 第一点の医療機関の事務量の問題でありますが、私ども医療機関の御協力を煩わしたい、こう思っております。  今先生が御指摘のように、もしこの事務の負担によって診療の内容がおかしくなる、診療時間に差しさわりが出る、その結果診療上の支障が起こる、こういうことがあるならば、その時点においてやはり考えなければならぬことかもしれませんが、私どもは、それほどの事務負担の増にはならないというように今は考えておるということでございます。  それから、第二点の給付の平等と負担の公平化がどれくらい進むのか、こういうことでございますが、私どもは、給付の面におきましては、将来の給付目標というものを大体八割程度の線に考えております。したがって給付の面で八割に近づいていく、本人の一割負担の導入もその第一段階だと考えておりますし、また、退職者医療の給付率も八割というようなことで考えておるわけでございます。したがって、次第に八割という将来目標に近づく第一歩を踏み出しておる、こういうように考えておるわけでございます。  それから、負担の面でございますが、私どもは、人生八十年型社会というものを想定いたしましたときに、世代間の負担の公平あるいはライフサイクルに応じた公平というようなものから考えまして、今回の改正におきまして退職者医療制度をつくったわけでありますが、これは負担の公平に一歩近づくものである、こういうように認識をしております。  また、標準報酬の上限の改正あるいは国保の保険税の限度額の改正等も、一応負担の限度額というものを国保におきましても被用者保険におきましても大体同じような水準にそろえたい、こういうことで、今申し上げました標準報酬の上限改定と国保の最高限度額の引き上げをしておるわけでございまして、負担の公平に一歩近づいておる、こういうように考えております。  また、日雇健康保険につきましては今回健康保険の体系に取り入れる、こういうようなことで、日雇健康保険を廃止いたしまして、より大きな健康保険の方に取り入れるというようなことで、一元化の線に沿っておる、こういうように考えておるわけでございます。  以上申し上げましたような諸点で、給付・負担の公平へ少しずつ歩み出しておるというように評価をしておるわけでございます。
  207. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 給付水準平準化といいますか公平化ということで、八割と言われましたが、現状でも平均いたしますと給付は八〇・三%ですから、これでは現行制度の中で何ら充実したものはなく、要するに、高いところをともかく下に下げてしまうということがより医療費の負担の公平、給付の平準化になるのだということでは、厚生省としては今の時代の中で余りにも後ろ向きでないかという気がするわけでありますが、この点はまた別の機会に譲ることといたします。  今負担の公平化ということで、標準報酬月額の引き上げもそういう意味で行うのだということを言われましたが、組合健保あたりは附加給付というものをいろいろ採用しているわけですね。この点についてはいろいろな質疑の中で、厚生省としては、附加給付のいろいろな問題については何ら制限その他、立ち入ることはしないというような意味のことを答弁されております。  組合健保と国保その他を見た場合には、それだけ附加給付ができるような組合健保はかなり財政的な余裕が違うわけであります。逆に言いますと、今度は標準報酬月額をあえて四十何万から七十何万かに引き上げることによって、また保険財政の増収になるわけですね。そうしますと、今でさえ保険料の平均においてもそれぞれの制度によってかなりの差があるのにかかわらず、また組合健保だけが保険料が高く徴収されることによって非常に高い増収につながる、附加給付がもっとどんどんやりやすくなる、こういう一面を今回はつくり出していくことになるわけですよ。負担の公平化という面だけ見るけれども、逆に今度は、給付水準面を見ましたら、そういった意味で比較したらますます大きな差が出てくる可能性が非常にある。そういう要素をつくり出していくということにもなる。そういう意味で、この問題はもっと見てもらわぬと、ただ負担の公平化ということだけで標準報酬月額を引き上げればいいということだけでは、もっと別な問題が大きく出てくるのじゃないか、こういうふうに思うわけであります。この点についての御見解がありましたらひとつお伺いしたいと思います。
  208. 吉村仁

    ○吉村政府委員 確かに御指摘のようなことが生ずる可能性があるわけでございますが、しからば附加給付は禁止する方がいいか、こういうことになりますと、理論的に言いますと附加給付というようなものは認めるべきでない、給付の公平という観点から言いますならば認めるべきでない、こういう理論になるわけでございますが、従来から附加給付というものは健康保険組合においてやっておられた制度でありますし、また現にやっておられる健保組合も多い、そういう実態を考えますならば、理論だけで公平化の措置に踏み切るということはやはりいかがなものだろうかというようなことで、附加給付は禁止するというような措置はとらなかったわけでございます。  私どもも、財政が豊かならば附加給付を幾らやってもいいんだ、こういうように考えているわけではございません。ただ、今回の措置で、もし保険料に余裕が生ずる健保組合ができるとすれば、それは料率を引き下げればよろしいわけでありまして、別に取らなくてもいい保険料まで取る、こういうことにはならないというように思っております。今回の措置によって、自分たちの法定給付はもちろん賄い、そして退職者医療に対する拠出もし、そしてなお余裕があれば附加給付というものをあえて禁止する必要はない、こういう考え方に立っておるわけでございます。
  209. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 まあこのことで議論するあれはありませんがね。  今言われたように、組合健保はそれじゃ保険料率を下げればいいじゃないかということは、また逆に、何のために負担の公平化ということで標準報酬月額の最高限度額を上げようとしたのかということと裏返しになる問題です。だから、これはもう単なる言葉のやりとりだけでは済まされない問題がありますが、そういういろいろな要因があるわけでありますから、ただ一面的なものだけ見て負担の公平化だどうだということだけではいかぬのじゃないかということで、一応御指摘だけ申し上げておきたいと思います。  それから、今回の改正案の中で、特に知事等が認可することによる特定承認保険医療機関の指定、この問題が新しく導入されようとしているわけでありますが、これは運用次第では、地域の医療機関にそれぞれ大きな格差を設けることになりはしないかという懸念が非常にあるわけでありますが、もう少しこのあたりの状況について御見解を聞かせていただきたいと思います。
  210. 吉村仁

    ○吉村政府委員 私ども、特定承認保険医療機関という制度をつくりましたのは、高度先端技術を行う医療機関において保険医療と保険外医療との調整を図ろう、こういう趣旨でつくったわけでございます。  そこで、特定承認保険医療機関というのはどういうものを対象にしておるか。私どもの頭に現在ありますのは、大学病院あるいはナショナルセンター的な専門治療を行う医療機関、そういうようなものが主たる対象になると考えております。したがって、特定承認保険医療機関という制度をつくれば、保険医療機関のほかにもう一つできるではないか、こういうことは確かに形式的にはそういうことでございますが、特定承認保険医療機関においても全部療養費払い、形式はそうでございますが、実質は代理請求というものを認めることによってほとんど療養の給付を行う、ただ高度先端技術の部分だけ患者の負担になる、こういう仕組みを考えておるわけでありまして、私どもの感じでは、保険医療機関の中に二つのランクを設けたというようには認識をしていないわけでありまして、ちょうど、保険医療機関の中でも特定の基準看護をやる医療機関については、特類の基準看護をやる医療機関、あるいは一類看護、二類看護というような区別がございますが、その程度の区別なのではないか、こういうように認識をしておるわけでございます。
  211. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 当局はそのような認識でしょうけれども、これを実際にどのような形で運用するか、その運用次第では、今私が申し上げましたように、いろいろな問題が発生し得る可能性が非常に強いと思うのです。だから、今のお話しでいきますと、例えば大学の附属病院みたいなああいう総合病院について何らかのそういった指定をする、少なくとも、市町村においてはそうたくさん指定することはあり得ないような、一つか二つか三つかわかりませんけれども、そのような性格のものしかそういったものには指定していかないという考え方なのかどうか。ただ、近代的ないろいろなエレクトロニクスを使ったような器械を導入しておればということで、いろいろなところで医療機関がそういう形になっていくということになると、またそこらあたりをどのようにするかというのは非常に問題だと思いますので、その点でお尋ねしたいわけであります。
  212. 吉村仁

    ○吉村政府委員 確かに、富士見病院が超音波の検査機器を入れたら特定承認保険医療機関にするか、こういう疑念はおありであると思います。私どもはそういうものを指定するつもりはございません。大学病院というものは、やはり高度先端技術をやるに値する陣容と設備を持っておるはずでございますので、そういう人的スタッフと設備を持っている医療機関を承認をする、こういうのが現在の考え方でございます。これにつきましてはまた中医協の御意見ももちろん聞いて定めたいと思っておりますが、各市町村ごとに一つずつ存在するというようなたくさんのものを考えておるわけではございません。大学病院なら八十七ぐらいでございますので、それと同じような機能を果たしている医療機関というのはそれほど多いものではない、このように考えておりまして、いずれにしましても、高度先端技術を行うにふさわしい陣容と設備を持っておる医療機関を、その医療機関に着目して承認をしたい。その医療機関が持っておる器械だけに着目して承認をする、こういう考えはございません。
  213. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 それでは時間が来ましたので、あと一つだけ最後にお尋ねします。  今回、新しく退職者医療制度を創設することになったわけでありますが、これはすべて組合健保、政管健保の拠出金によって賄うということで、一切国庫補助なし、国の責任を放棄した。いやしくも退職者医療制度を創設するからには、国としても何らかの形での面倒を見るべきではないかと思いますが、これを一切あなた任せにしてしまっているということについては、私は国の保健医療行政としては極めて遺憾だと思うのです。そういう意味で、今回なぜ国庫補助を導入しようとしないのかということと、あわせて、この退職者医療制度を創設することによって今日までの国の負担すべき費用がかなり削減されるわけです。その分をすべて全額と言わないにしても、もっと国保の内容を充実するような方向に向けるべきではないかという意見もあります。この二つについての御見解をお聞きして、時間が参りましたので私は同僚議員に後の質問を譲りますが、ひとつ大臣の御見解をお尋ねいたします。
  214. 渡部恒三

    渡部国務大臣 今回創設されるところの退職者医療制度、これは便宜的に国保の窓口をお借りしますけれども、被用者保険の範疇に入るものであります。  我が国の医療あるいは年金社会保険方式をとっておるわけでありますから、保険医療によって給付が賄われるのが相応でございます。しかしこれは、もろもろの条件によってどうしても足りないというものに国庫が負担しておるわけでありますけれども、幸いに現在の被用者保険というものは国庫の負担がなくても何とかやっていけるということで、国庫の負担を導入しておらないわけであります。  二番目に、それならそこでできた金を国保を充実することに使ったらどうだ、これは私も大変共鳴する御意見でございますが、残念ながら我が国の現在の財政状態がそこまでの余裕を許しておりませんので、将来そういう財政になったときは、できるだけそういう方向で進めたいと思っております。
  215. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 終わります。
  216. 今井勇

    ○今井委員長代理 この際、関連質疑を許します。塩田晋君。     〔今井委員長代理退席、委員長着席〕
  217. 塩田晋

    ○塩田委員 今回提出されております健康保険改正法案に対しまして、大臣に率直にお答えをいただきたいと思います。  まず、この改正法律案について大臣は心の底から改正であると考えておられますか。
  218. 渡部恒三

    渡部国務大臣 今日置かれたる我が国の経済条件、また今日置かれておる財政条件、また将来の急速にやってくる高齢化社会といったような社会的情勢の変化、そういう中で、私は、国民医療を中長期にわたって、さらに将来にわたって守っていくための最善の改革案であると考えております。
  219. 塩田晋

    ○塩田委員 最善の改革案であるということでございますが、その柱になっているものは何本があると思うのです。そのうちこれだけはというその最大の柱、これはどうしても通したいというのは何でございますか。
  220. 渡部恒三

    渡部国務大臣 これは何度か申し上げておりますように、総合的なものでありまして、医療費の適正化ということもございます。また負担の公平ということもございます。あるいは制度間の格差を是正するということもございますし、これはどれがどれだけがと言われるのは困難でありまして、全体の中でお願いしているわけでありますから、この改革案を全部お認めいただくことによって二十一世紀医療というものが揺るぎなきものになっていくのだというふうに御理解を賜りたいと思います。
  221. 塩田晋

    ○塩田委員 改正案の柱になるものは今言われましたように何本もあるわけでございます。その一本も抜くわけにいかぬ、あるいは手直しするわけにもいかぬ、全部が通らなければいつも言われます二十一世紀に向かっての医療を健全化することにならない、こういうお考えでございますか。
  222. 渡部恒三

    渡部国務大臣 幾たびも申し上げておりますように、現在置かれた条件の中で、私どもは、国民医療を総合的に守っていくための方策としてはこれ以外にないと、いろいろ知恵をめぐらしまして考えてまいりました。  ただ、私どもは、先生方から今までいろいろ御指摘いただいておりますように、この改革のために重い難病の方で病院にかかれなくなってしまうとか、低所得者の方でお医者さんにかかれなくなってしまうとか、そういうことについては、今後、与えられた条件の中で、私どもの枠の中でできる配慮はしていかなければならない、こう考えておりますが、法律の今回の改正案の柱は、どれ一本を抜いてもこれは成立するものでございません。
  223. 塩田晋

    ○塩田委員 何本がある中で一本も抜くわけにも手直しするわけにもいかない、こういうことでございますか。今までお話しを聞いておりますと、若干ニュアンスというものが出てきておるところがありますね。例えば高額療養費につきましては考えてもいいような発言が出てきそうな答弁もあるいはあったかと思うのでございます。また新聞、テレビ等の報道によりますと、いろいろな意見政府・与党の中に出ておる。例えば八割給付については法案の中は原則、本則で八割となっておりますが、二年間は一割負担、しかし、六十一年度以降も一割負担で九〇%給付だというような話もときに出ていることは大臣御存じのとおりでございます。またもっと極端には、自民党内部のある議員の方々が六十一年度からは十割に戻すのだ、カトレア会とかいう名前もちらっと出ておりましたけれども、そういう新聞報道が大々的にトップ記事で出たということも大臣、御存じだと思うのです。これについて今までの御答弁を聞いておりますと、大臣は、将来はいつか八割で全部統一できれば、そういうことができるときの大臣になってみたい、こういう心境を率直に言われたこともあるわけでございますが、この問題について大臣はどのようにお考えでございますか。
  224. 渡部恒三

    渡部国務大臣 最初にお断りしておきますが、私はまないたのコイでありますから、それを、考えてもよいなどという不遜な考えは毛頭持っておりません。私は厚生大臣として練りに練って、今回の改革案が与えられた条件の中では最高最善のものであるということで、原案のまま通していただくことが最も望ましいのでございますけれども、国会で御審議を賜っておるわけでございますから、この社会労働委員会で与野党の皆さん方が合意をしたことについては、喜んで従うか渋々従うかは別といたしまして、まないたのコイでありますから、この法律を成立させる、そのために与野党でこういうふうにしろと言われたことには従わざるを得なくなると思います。政党政治で、私も党人政治家でありますから、議会を、政党を尊重しなければならないということは人後に落ちないつもりでございます。  ただ、後で話のありました与党の中でいろいろの意見ということでありますが、今回の私どもが国会にお願いしている案は、何も厚生省で私の判断だけでつくったものでありません。多党のそれぞれの政策を審議する機関で御賛同を賜りまして出した案でございますから、政府・与党は全部私どもが出してある案に賛成していただいておるのでございます。ただ、今日の議会政治ということで、与党の皆さん方が、野党の皆さん方、民社党の皆さんに賛成していただく、公明党の皆さんに賛成していただく、あるいは社会党の皆さんにも賛成していただく、あるいは共産党の方も賛成していただけるものならそれでいいわけでありますが、そういうことのために、与党の方からこういうふうにしろというようなことがあれば、これは私は大臣として、与党があっての内閣でございますから、それには従わざるは得ないだろう、こう思っております。
  225. 塩田晋

    ○塩田委員 大臣の率直な御答弁をいただいたわけでございます。まさにそのとおりでございまして、国会におきまして与野党間に合意ができて、この社会労働委員会でここはこう直そうということがあれば、大臣は、先ほど言われたが、柱一本といえども抜くことはもちろん直すこともならぬ、ということではないという柔軟なお考えであるということがはっきりしたわけでございますので、そのように受けとめておきます。  しかも予算委員会、それから予算の修正問題が出たときに、御承知のとおり与野党で合意されたメモには、この健康保険法の取り扱い、内部については社会労働委員会の審議の結論に従って措置する、こうなっておりますね。ですから、大臣はそれをお述べになったことだと思います。別段どなたも御異論のないことだと思います。結構でございます。
  226. 渡部恒三

    渡部国務大臣 これは誤解があると困りますので……。  何度も私は申し上げておりますように、今度出しました改革案というものは総合的にできておるものでありますから、これは柱一本外してもうちは壊れてしまうわけでありますから、私どもは、この原案をそのままお認めいただくことが国民医療の将来のために最も望ましいということで、七重のひざを八重に折ってもお願いを申し上げたい気持ちでいっぱいでございますけれども、ただ、議会政治、政党政治でありますから、各党が一致しましてひとつ何かこうしろというときは、これは従わざるを得ないと思いますが、しかし、この葉そのものが何も厚生省だけで考えて出した案でなくて、与党の皆さん方には、十分尊重して、全員一致して、あらゆる機関を通じて御承認をいただいたのでありますから、与党の皆さんがこの柱を抜くはずはないというような甘えた気持ちで、国会の御意見に従います、こう申し上げておるわけでございます。
  227. 塩田晋

    ○塩田委員 大分見解が違うわけでございます。しかし、これは議論しておりましても果てしないと思います。決まったことは決まったことでやっていこうということで、今後臨みたいと思います。  今、最後に言われましたのは、政府・与党は一体として、この法案を提出するときは与党も手続に従って了承をとってあるんだ、これは当然そうでございましょう。閣議決定の上で出された法案でございますから、各閣僚も全員一致で賛成されたものと思います。しかしながら、本会議に出ました質疑応答、そしてまた、この社会労働委員会になりましてから与野党の政府に対する質問がある中で、与党の中にもかなりすばらしい意見があるものだ、さすがに自由民主党というのはその名のとおりまことに自由であるということを痛感したわけでございます。それは非常に結構なことだと思うのです。一つの線で最初から最後まで、どんな問題があっても縛り適して結論を押しつけるのではなくして、自由に考え、自由に考えているうちに、こういう問題があると指摘され、だから、政府答弁が我々見ておりましても本当にひやひやするような場面が出たわけでございまして、それは非常に結構なことだと思うのです。また、それほどに与党の中にもこの法案に対する相当な異論があるんだなということがはっきりしてまいりましたし、また、それ以上に我々は、この法案を区々検討すればするほど問題があるというふうに思うわけでございます。  そこで、会期は御承知のとおり五月二十三日でございます。あと一カ月ちょっとになってまいりましたですね。しかも連休を挾んでの問題でございますし、審議は、我々はこの重要法案については徹底的にやらなければならぬということで、毎回八時も九時にもなるまで審議を進めてきたわけでございます。審議は国民のためにしなければならない、意見は十分に開陳をし、政府にも御答弁をいただかなければならない、このように思ってここまできておるわけでございますが、このきょうという日から先を見ますと、あと審議回数というものは、従来の慣行の線によっていきますと三回しかないという状況になってきております。しかも与野党間で審議を尽くそうということで、時間はたっぷり、また材料もたっぷりあるわけでございます。  そこで大臣、本当にこの法案を会期内に通せるという見通してございますか、いかがでございますか。
  228. 渡部恒三

    渡部国務大臣 これは委員長に御質問いただく内容だろうと思いますが、ただ私どもは、国民のために、あすの日本医療を確実にするために、この法案をどうしても今国会で成立させていただかなければならない、そういう決意を持っておりますから、この審議を尽くすために、委員長から御命令がありますれば、夜の十二時まででも、あるいは土曜日でも、日曜日でも、いつでも、審議のためには私ども全員真心を尽くして先生方の審議におこたえしていく決意は持っておりますが、あとのことは、これは委員長の進行にお任せするしかございません。
  229. 塩田晋

    ○塩田委員 私は、客観的に見てこの会期内成立は非常に難しい情勢になってきているということを申し上げて、大臣の見通し、これをお聞きしたわけでございます。本当に危ないんじゃないですか。
  230. 渡部恒三

    渡部国務大臣 有馬委員長の国会運営の御手腕、またこの社会労働委員会の各党の理事皆さん方社会保障医療の将来に対するすばらしき御見識、また委員皆さん方のこの問題に対する熱意に私はかねてから敬服しておりまして、必ず会期内にこの法案を成立させていただけるものと確信をいたしております。
  231. 塩田晋

    ○塩田委員 この健康保険改革案につきましては、野党各党そろって、改正でなく改悪だという共通の結論を持って撤回を求めておるわけでございます。しかも、この健康保険に関係する当事者はほとんどが反対でございます。医療を実際行うお医者さん、日本医師会、日本歯科医師会を初め薬剤師会、いわゆる三師会もこぞって反対をしている。そして治療を受ける患者の皆さんも、一割、二割の負担はたえがたいということで反対しておる。そして、各種審議会にかけられたわけですが、これも短期間で極めて審議が不十分であるということを答申に書いてある。そして一本の結論が出ないから両論併記をしてある。しかも、併記された意見というのは非常に隔たっておるというのが今回の答申の特徴でございます。今までこういうことは余りなかったと思うのです。そのような中で、やはり改正でいいのだということで無理をして通されるよりは、大臣が常におっしゃいますように、国民負担と給付を公平にしていくその時期、そこまで待たれたらどうでしょうか。大臣は、やがては国民健保も七割を八割なりに上げていくのだ、こうおっしゃっておるわけですね。その時期まで、何年も先ということじゃなく早急に、そういうことを含めまして手をつける、そういう時期まで大臣にいていただきたいと思うのですが。これをまず今回は又トップして。いかがでございますか。
  232. 渡部恒三

    渡部国務大臣 これは被用者保険加入の本人の皆さん方には一割、今まで十割給付だったものを御負担願うのでございますから、これは被用者保険本人の立場に立ては御反対なさるのも無理からぬことでありまして、これは私ども御賛同をいただくようにお願いをするしかないのでありますが、しかしそれにしても、一割御負担はお願いしますけれども、そのことによって、今後、被用者保険の皆さんの保険料は、料率は将来にわたって上がらないで済むように私ども医療費の適正化に努力をするので、お医者さんにかかる人、かからない人いろいろありますが、全体としては被用者保険の皆さん方にも、医療費の伸びによってこれ以上負担がどんどんふえるようなことをしないためにこの改革案を出しておるので、ぜひ御理解をいただくように、私どもは頭を下げて、今日の厳しい条件の中で医療保険を将来確実なものにするために、これはお願いするしかございません。また、医師会、歯科医師会あるいは薬剤師会の皆さん方には、私どもが十分にお話しして、今日のこの改革案というものを素直に読んでいただければ、これは必ず御了承を得られるものと私は期待しておるのでございます。  そういうことから、これは先生の仰せでありますけれども、私どもこれを退くというようなことはできないのでありまして、賢明な塩田先生でありますから、ちゃんと心の中では、我々がこの保険法を通さなければ国がもたない、国民の将来がないということも必ず御理解いただけると私は期待し、信じておるのでございます。
  233. 塩田晋

    ○塩田委員 大臣のおっしゃることでございますから、何とか理解したいと思って日夜励んでおるわけでございますけれども、なかなか、見れば見るほど、研究すればするほど、これじゃいかぬという信念がむしろ強くなってくるわけでございまして、まことにやむを得ざるものがございます。  そこで、大臣、将来の医療がどのような形になるか、保険という技術を使ってできている現在の医療保険の保険料あるいは給付にわたりまして、全体の将来ビジョンがどのようになるのか。皆さんは、改正のときには、恐らくビジョンを描いた中で今回これをやらなければならぬというのが出てきたと思うのです。その将来ビジョンというものは単なる作文じゃなかろうと思います。こうしたい、ああしたいという言葉だけのものではビジョンにならないと思います。これには何年ということと、給付内容はどうなる、各保険の制度は皆違いますから、それがどうあるべきだという将来のビジョン皆さん方負担の公平とか官民格差の解消を言っておられますから、そういったものを含めた将来ビジョンというものが描かれてあると思うのですね。そのことについて大臣は、今までこの委員会で言及をされまして、そのときにはいつでも出しますということを言われました。有馬委員長のお許しがあればいつでも出します。きょうの御答弁では、各党一巡する質問、御意見を聞いた上で、考えて、その後に出します、こういうふうになってきておりますから、また大分先になったかとは思うのですけれども、この中長期の具体的な将来ビジョンはいつお出しになりますか。
  234. 渡部恒三

    渡部国務大臣 これは今までもお答えしておりましたとおり、各党の皆様方の社会労働委員会における御意見を一巡させていただきまして、その皆さん方の考え方も十分尊重しながら、今私どもの考え方もございますから、これらを十分に練り合わせまして、委員長から出せというお話があれば提出したいということで、今その成案を得るために鋭意努力をしておるところでございます。
  235. 塩田晋

    ○塩田委員 具体的に申し上げますと、この健康保険法改正法案の質問が各党一巡いたしますのが、早ければ来週でございますね。ですから、もちろん早い時期にでも出す用意をされると思いますね。これは二十六日になるかあるいはその先になるかわかりません。しかし、一番早い時期としてもそうなるだろう。となれば、あと一週間以内には成案を持って印刷をして、もちろん関係各省、関係のところに全部サインをもらって、合意の上に出されると思います。厚生省、関係するところ全般にわたりますから、これは共済組合の関係でいきますと各省にまたがりますし、やはりこれは合い議を要されるところが多いと思いますから、そういったものを全部詰められて、その結果、これを一週間以内に出されるということを今具体的におっしゃったと同じでございますが、そういうことでよろしゅうございますか。
  236. 渡部恒三

    渡部国務大臣 社会労働委員会における各党の先生方、今まで大体御意見を承ってまいったわけでございます。先生方がどういうことをお考えになっているかということを、それぞれの御見識を私はお聞かせいただいたわけであります。そこで、それぞれの先生方の御意見を拝聴したその上に立って、厚生省として、医療問題に対する将来の中長期ビジョン、これを出したいと私は申し上げておるのでありますが、これは法律とかそれとは違いますから、一つの青写真でございますから、例えば法律のごとく与党の御承認をちょうだいしてとか、あるいは内閣の御承認をちょうだいしてとか、そういう性質のものとは私は考えておりませんので、各党の御意見を聞いて、厚生省が、これからの医療問題に対しての一つの、どう考えるかという長期ビジョンをお示しする、そういう考えでございます。
  237. 塩田晋

    ○塩田委員 もちろん中長期ビジョンは、大臣がおっしゃいましたように法律ではございませんから、内閣法制局の法令の審査を受けて、各省会議をとって次官会議にかけて閣議にかける、こういうことは要らないことはわかります。しかしながら、今回の法律を出すについては、長期ビジョン全体、何年度にこうなるのだということが描かれた絵ですね。ビジョンそのもののうちのこの法律はここの部分なんだという。この法案は全体ではないですね、大改革でありますけれども医療保険の全体をこれで網羅しているのではなしに、これは一部ですね。ですから、全体はこうあるのだ、今回はそのうちのこの部分ですという位置づけが、この法律を幾ら読んでもわからないわけです。しかもそれは、厚生省だけでなしに各省にもまたがることだし、その上に立っての法律案ですから、その関係におきましては、法律案そのもののような手続はもちろんおっしゃるように要らないと思いますけれども、影響するところはかなり大きいし、ある意味では将来を縛るものになるわけですね。ですから、これについては単なるちらちらと書いた作文だとか数字を並べたようなものではないと思うのです。相当確たるもので、討議され、各党の意見も聞かれた上での集約されたものとして出てくると思うのですね。そういうものではございませんか。
  238. 渡部恒三

    渡部国務大臣 今後の医療のあり方、それの一つの青写真ということでありますから、もちろんこの健保法の改正案に盛り込んでおるものだけではございません。  例えば自由診療、出来高払い制度を将来にわたって守っていく。これが我が国の医療の進歩を促進し、我が国がわずか三十六年間に国民の平均寿命を三十歳近くも延ばしてきた大きな理由であるとするならば、やはりこの自由診療、出来高払い制度によって日本医療の進歩というものをますます促進していかなければなりません。  しかし、また一方、この委員会でたびたび御指摘をいただいているように、この制度の中では乱診乱療とか濃厚医療とかそういう御批判をいただくこともあるわけですから、そういうものを改善していかなければなりませんし、またこれは、塩田先生の党の塚本先生から最初に予算委員会で御質問をちょうだいいたしましたが、今後十年後、二十年後の医師、あるいは歯科医師、あるいは薬剤師、そういう者が今の医学部の定数では過剰になって将来心配になるのではないかとか、逆にまた、離島あるいは僻地、そういうところにはまだ医者が足りないので、国民皆さんがいつでも必要な医療をどこででも受けられるという体制にはまだ至っていない、こういう議論もあります。  そういうバランスの中で、医療機関の適正配置というものの将来はどう考えていくかとか、あるいはこの委員会でもたびたび御意見をちょうだいしておりますホームドクターの問題、あるいは一次医療から三次医療に至るまでの合理的な医療の配備とか、あるいは医療器械というものが余りにも過当に入っているために医療費が高くなってしまっておるので、これは組合的なもので購入したらどうかとか、きょうまでいろいろ、医療の将来のあり方について、それぞれの党のそれぞれの先生方から、我々まことに傾聴に値する御意見等も賜っておるのであります。  そういうような意見も十二分に盛り込む努力をして、将来の医療の健全なあり方というもの、また、いろいろ中間施設の問題とかそういう社会施設の配備というようなことでも御意見を賜っておりますので、それらのことも総合して、どこまでできるか、私どもできる限り、先生方から、こういう方向で行くのかと言っていただけるようなビジョンを示すように努力を続けてまいりたいと思います。
  239. 塩田晋

    ○塩田委員 近く提出されます中長期ビジョンにつきまして、大臣から、誠意ある、内容にかなり細々と入った御答弁がございました。そういった全般にわたる問題が、単に作文だけではなくして、数字の上でもこのような姿であるということを、現状と将来の姿をやはり数字を入れて、ぜひとも示していただきたいと思います。  今言われました出来高払い制を堅持するということにつきましては、私たちも基本的に賛成でございます。しかし、これにつきましてはいろいろと御議論があること、あるいは外国の制度につきましてもいろいろと参考にして議論がされていることは、御承知のとおりでございます。そういったものも含めまして、十分に内容を練り上げて、具体的に示していただきたいということをお願い申し上げます。  そこで、最も国民が、また今、当面この法案審議で問題になっておりますいわゆる給付率でございますね、自己負担二割とか一割という問題、これにつきまして、当然入ることと思いますが、いかがでございますか。
  240. 渡部恒三

    渡部国務大臣 これはたびたび答弁いたしておりますように、現行の制度の中で国民の給付を一つにしようということであれば、大体八割程度であろうというのが私どもの考えでございます。また、先生の方のは、拝見させていただきますと、八割八分ですか九割ですか、そういうようないろいろ御意見もあるようでありますが、私どもは八割程度、こういうふうに考えております。
  241. 塩田晋

    ○塩田委員 大臣、そこで今言われました八割という件でございますが、これは現在の各制度健康保険、共済、船員あるいは日雇あるいは国民健保、全部含めていわゆるガラガラポンとやれば八〇・二%になるということは、厚生省からもたびたび説明があるところでございます。これもやり方としては、財政調整だとかあるいは制度の一本化だとか、いろいろなやり方をしなければならない、今のままではもちろんならないわけでございます。いろいろな手を使わなければならぬということはわかりますが、まず、そういった現状ですら八〇・三ですね。それに変わるまず一番大どころの、十割給付の健康保険の本人分を八割に落とす、自己負担を二割つけるということから始めたところにこの法案の一番の問題点があり、これさえもとに戻れば、あとはかなり話ができる問題が多いと思うのでございますが、いかがですか。
  242. 渡部恒三

    渡部国務大臣 今のお話しですと、一割御負担を願うことを考え直せということでございますか、——それは申しわけありませんができません。
  243. 塩田晋

    ○塩田委員 私は筋道を言っておるのでございまして、例えば、現在全部合わせて八〇・三ですから、やり方としては、政府案で出しておられる十割を八割に落とすということから始めなくても、逆に七割を全部八割、そしてやがては、大臣がおっしゃるように十割を九割とかいうことも将来考えられるということにはならぬのですか。やり方を間違えたんじゃないでしょうか。
  244. 渡部恒三

    渡部国務大臣 この点は、先生の御意見を私、聞いて、なるほどと考えさせられることがございます。ですから、私はたびたび申しますように、本来は昭和四十年代から、あるいはもっとさかのぼれば三十年代から、医療保険の問題は、一時しのぎの改正でなくて将来を臨んでの思い切った抜本改正をやれ、こう言われてきたわけでありますから、本当は、私どもの先輩あるいは厚生省皆さんが五年前に、あるいは十年前に、まだ国家財政にかなり余裕のある時期にこれをやっておけれは、今先生おっしゃるように、国保の七割を八割にするというようなことから始めるとか、あるいはせめて被用者保険の皆さん方にも一割御負担をいただく、しかしまた一方、国保の給付を一割上げるというようなことで案を出せたであろうということは、私も反省させられるのでありますが、それがなかなか  何でもそうですけれども、これはある程度余裕がある時期にやっておくことが一番いいのですけれども国民皆さん方負担を求めるというようなことは政治家としてやはりばるべく回避したいという気持ちがありますから、本当はやっておくべきことだったのでしょうけれども、まだそれがやれなくてここまで来て、子やこれは待ったなしに、政治家がこのときこそ、国民皆さんの将来のために、一時的におしかりを受けても将来褒めていただけるようなことを、勇敢に勇気を持ってやらなければならないという時期に至ってしまった、こういうことを私は反省しておるのでございます。
  245. 塩田晋

    ○塩田委員 大臣もたびたび言われるのでございますが、このような財政が厳しいときに厚生大臣になって、まことに不幸であり不運であるとおっしゃっておるのでございますが、本当に不運であり不幸であるようにならないようにするために、将来ビジョンからいって、厚生省の立場からだけ見ても、行く道は、こういうような上からおろす、十割を八割に落とすようなことから始めなくて、大臣はまことに幸運な人だ、七割を八割に上げた、それだけをやれば、これはもう後世に残る大臣だ、大英断のことをやられたということになると思うのですね。これは今からでもやろうと思われればできないことない。いかがですか。
  246. 渡部恒三

    渡部国務大臣 そういうできるような条件に、今日置かれたる我が国の財政状態とか経済状態がないんだということは、もう塩田先生、ちゃんとわかっていらっしゃって私におっしゃっているのだろうと思うのですけれども、残念ながら、今日の厳しい財政条件の中ではそれがやりたくてもできないのであります。  しかし、私は幾たびもここで申し上げておりますように、本来、社会保障のあるべき姿というものは、国民のすべての人が同じような条件の給付を受ける、ましてや医療年金というようなものはそうであるべきだ、こういうことでありますから、今回、私は、被用者保険の皆さん方に一割御負担を願うというまことに申しわけないお願いをしておるわけでありますが、しかし、そのことは必ず五年、十年、十五年後には、あのとき厚生大臣、おまえよくやった、また、あのときああいう、国民皆さんに御負担をおかけして一時的にはおしかりを受けなければならない法案を、与野党の皆さん方が全員勇気を持ってよく通したと言って、大きく褒めていただけるような時代がまた来るでありましょうし、また、私もこれから長い政治生活をするつもりでありますから、今度は青写真を、私の、厚生大臣責任で将来方向というものを出すのでありますから、将来の夢としては、今に、今度は大蔵大臣になって、ひとつ予算厚生省にたっぷりつけて、医療保険にたっぷりつけて七割を八割にするとか、さらには将来総理大臣になるころは、経済をもっともっとよくして九割給付にしたいとか、そういう夢は今持っておりますけれども、今私がお願いすることは、大変厳しい状態ですので、ひとつ被用者保険の皆さん方に一割御負担をまげてお許し願いたいということをお願いしているわけでございます。
  247. 塩田晋

    ○塩田委員 残念ながら、御期待に沿えるような事態にはならないんじゃないかと思うのです。  大臣、これは与党質問の中でもはっきりしたことですけれども、七割を八割あるいは九割に上げていく、今むしろいい時期じゃないかと思うのです。といいますのは、これはもう何回も出ましたように、五十八年度の伸びが、前年の五十七年度七・八%の医療費の上昇に対しまして、対前年四・六%に落ちてきていますね。そして、五十八年度からGNPの伸びよりも下回ってきている。そして、さらに五十九年度は、この法律を通さなくても、二・五%でなくしてプラス一%しての三・五%だということが、この委員会ではっきり確認されましたね。このような二年続きで、GNPよりも伸びが鈍ってきているという事態になってきているわけです。これは絶好の機会じゃないでしょうか。この際に負担を強いるよりは、給付率を、大変な要望である国民健保の七割を上げていくという絶好の機会だと思うのです。かつてはGNPを上回る医療費の伸びがあったことは確かです。しかし今やそうではない。そういう時期に差しかかった厚生大臣でございますから、一大英断を持ってひとつ今回の案は見直して、時間をかけてでもこれは手直しをしてやっていただきたいと思うのです。いかがですか。
  248. 渡部恒三

    渡部国務大臣 大変申しわけないのでございますけれども、現在の我が国の経済情勢、そして今日置かれている財政条件等の中で、せっかくの先生の提案でございますが、今、国保の七割を八割に今度の国会で上げるような案を出すことは、まず不可能な状態にありますので、私どもが将来のビジョンというものを示して、それに向かって一生懸命努力していくということでお許しをちょうだいしたいと思います。
  249. 塩田晋

    ○塩田委員 今までは、毎年一兆円ふえてGNPの伸びを上回るから、何とか医療費を抑えなければならぬということで言ってこられたわけですが、今さっき申し上げましたように、最近二年度続いて下回ってきておる、伸び率がGNPより下回ってきているという段階になったら、今度は、国の財政がもちませんのでということでは我々は納得できないわけです。国の財政が厳しいことは我々も知っております。しかし、厚生省が、今年度予算で六千二百億円、もっとさらに詰めて言えば、適正化のいろいろな方策をやられて、法律の中に盛り込まれていない政策を実行されて千八百億円はできるということになれば、あとは四千四百億ですね。しかも我々は、予算修正の際には、ぎりぎりいろいろ工夫すれば、退職者医療制度の創設を政府の言われるようにやっても、あと二、三千億プラスすればできるという修正案を具体的にお示ししたはずでございます。三千億ぐらいは補正で、いずれ公務員給与ベースの問題だとかその他で、今年度補正が行われざるを得ない事態が来ると思います。そういったものとともに考えて、ここで大臣に頑張っていただければ、これは不可能な金額じゃないと私は思います。  なお言えば、前回、予算委員会の一般質問でも、大臣に御質問いたしましたときに私は申し上げたのですけれども、防衛費から、伸びが突出しているからこっちへ持ってこいということは決して言いません、何となれば国民福祉の基礎は国の防衛だ、今日の世界情勢、特に極東の情勢の中におけるソ連の軍備増強、こういう危険な状況の中では、必要なものはやはり防衛はしなければならぬという考えを申し上げて、そこから持ってこいとは私は言えない、言わない。しかしそれと同じぐらい、国内の安全、生活の安全、生活の防衛の面からは、これは本当に手直しをしないと、国民が本当に怒りに燃え、こんなことではどうにもならぬということで、国論を分けて亀裂を深めるような国内情勢をつくっては、本当にかえって国が危うくなる、そのようなことを二、三千億の問題ですべきじゃないのです。だから大臣は、この際、なおこれからも努力をされればできないことはないと思います。  なお言えば、私は、財政全般をわたりますと、まだまだ削ってもいいところがあるのじゃないかというところがいっぱいあります。補助金の見直しも臨調の線でやられましたけれども、補助金は全体でこれだけ削りましたと言われるが、しかしその大部分が健康保険厚生省の関係じゃないですか。そのほかでは逆にふえているところもあるというような補助金の削り方ですね。  それからまた、国鉄の問題にしましても、昨年度は七千二百億も一般会計、税金で一年間につき込み、また今年度も六千五百億円もつぎ込んで、なおかつ、一年間に一兆二、三千億円の赤字が出る。合わせて二兆円の赤字ですよ。こういうことを、これは国鉄一社でしょう、それに許しておいて、国民医療、しかもこれは病気で苦しんでいる者から余計取るというのですから、このような矛盾した行政をやるべきじゃない。私は、国のために、国民のために本当に厚生大臣は頑張ってもらわなければ重大な事態になる。これは下手しますと中曽根内閣の命取りになりますよ。これはそれほど重大な問題です。本当に一割取られて、二割取られて払うようになって、財布に響き、生活に響き、そして病気がなお進行するという状況があっちこっちで起こってきますよ。お医者さんは、医師だけで十七万でしょう。お医者さんが一年間に百人診られたら年間千七百万でしょう。その人たちが一斉にお医者さんと一緒になって、これはけしからぬという、もう身にしみて感ずるような事態が来るということ、これは中曽根内閣に対する、そしてその一番の責任者の渡部厚生大臣がけしからぬということになる。このような事態を本当に招いていいのかどうか。私は、中曽根さんを擁護するも擁護しないもありませんが、しかし、厚生大臣は中曽根内閣の重要閣僚でしょう。やはり中曽根大臣に、総理、これはいけませんということを本当に忠告して、二、三千億円をもらってくる。これはひとつぜひとも努力をしていただきたいと思います。いかがですか。
  250. 渡部恒三

    渡部国務大臣 中曽根内閣の将来まで御心配をいただいて本当にありがたいのでございますけれども、今の塩田先生のお話しは、厚生大臣でちょっと答えられる性格でないものも多いのでありますが、私の立場で申し上げられるのは、これは「増税なき財政再建」というのが我が内閣の基本方針でございます。したがって、この「増税なき財政再建」という中で、これから予算編成する場合は大変厳しい状態ですけれども、ゼロシーリングあるいはマイナスシーリングというような条件の中で予算編成が続くのでございます。  今度の五十九年度予算九兆二千四百五十億、これはお認めをいただいたわけでありますが、この予算は、今度の五十九年度予算の総額の中で、公債償還、地方財政計画等を取った今度の五十九年度予算の政策予算、ほぼ三十二兆円程度と思いますが、その二八%でございます。そのまた九兆二千四百五十億の予算の中で、医療費、これが三兆九千億でございます。こういうことになりますと、その枠の中で予算編成をしろ、こういうことになれば、今先生の御指摘のように、七割を八割にするというためには、生活保護の予算一兆円から半分取ってくるとか、あるいは年金等の手当、障害者の手当とか大事なものがいっぱいありますが、そういうものの中から取ってくるとか  こんなことは到底できるはずがございません。  そうなると、結局これは財政でできない、こういうことになりますと、今度は保険料率を上げる、こういうことになります。今の国保の保険料というものは、私も地方の出身の者でありますけれども、帰りますと、農家の皆さんや何かから、保険料が高い高い、こう言われておるのでありますから、この保険料をさらに引き上げるというようなことはなかなか困難でございます。  そういうことで、先生からの大変大事な御指摘でございますが、残念ながら今の場合そういうわけにまいりません。  先生、三千億程度取ってきたらどうだとおっしゃいますけれども、今度の予算で、財政再建ということを非常に大事にした予算でありながら、一兆円の公債減額ができないで、たしか六千二、三百億の公債の減額だと思います。財政再建を目玉にした中で六子三百億しかできない。またその半分を削ってしまえというような話でございますから、もちろん私は、厚生大臣として、社会保障予算を一銭一円でも余計取るように今後とも努力してまいりますが、全体の問題となりますと、これ以上のことは大蔵大臣に言っていただく以外に、申しわけありませんが、厚生大臣の範囲ではとてもお求めに応ずることはできないということを御了解いただきたいと思います。
  251. 塩田晋

    ○塩田委員 これは主管大臣厚生大臣でございますので、私は厚生大臣の御奮闘を求めておるわけでございます。ひとつ力いっぱい頑張って、私が申し上げたことをぜひともやっていただきたいと思います。  言葉は悪いかもわかりませんが、健康保険法案は中曽根内閣に仕掛けられた時限爆弾だ、これを通すことによって、中曽根内閣は、国民の怒りの中で爆発して消えてしまうということすら言う向きがあるのです。それほど重大な中身を持った、あるいは政争の具になっているのではないかと言われるぐらいのもので、したがってまた、中曽根内閣を何とか維持したいという自民党の中にも、今回は通すべきではないという意見があちこちでだんだんふえてきているということも聞くわけでございます。それほど重大な政治的な意味を持った、中曽根再選にもつながるような話が出るほど非常に生臭い問題、重大問題なんですね、これは。時限爆弾だと言われているものですから、それを預っておられる厚生大臣、よほどよく慎重に考えて二の問題を扱って、野党の意見にも、また与党の声なき声にも十分ひとつ耳を傾けていただいて、慎重にこれに対処していただきたいということをお願いしておきます。  時間がだんだん迫ってまいりましたので、大臣、一時間以上おつき合いいただきまして本当にありがとうございました。誠心誠意御答弁いただきました。  そこで局長にお伺いしますが、この政府案による一割負担あるいは二割負担というものが行われますと、医療費はどういうふうに推移していくかといいますと、一割なり二割の本人一部負担を導入することによりまして、医療費そのものにどのようなインパクト、衝撃が与えられるかというと、私はこの計算根拠は聞いておるのですが、しぼむのですね。その計算過程をちょっと説明してもらいたいのです。
  252. 吉村仁

    ○吉村政府委員 五十九年度医療費で計算をいたしますと、給付率の見直しによって四月一日から九割給付にするわけでございますが、千四百億円の節減になるわけでございます。  その中身、なぜそうなるかということででざいますが、今回の給付率の見直しによりまして、被用者保険本人の給付率は現在九八%でございます。定額の一部負担が二%でございますので九八%、それが九〇四%になる。九割なんでございますが、高額療養費の支給という要素が加味されますので九〇・四%になります。したがって給付率は九八%から九〇・四%に下がる、こういうことになるわけでございますが、その給付率が下がることによりまして、私ども長瀬係数、こう申しておりますが、給付率と節減の額、その総体的な大きさをあらわす係数でございますが、十割給付の場合を一とした場合に、九割の場合は〇・幾つになる、また八割給付の場合は〇・幾つになる、こういう係数でございます。今私どもが使いました数字は、(y=〇.784x2−〇.536x+〇.752)という関数でありますが、これによって計算をいたした結果、五十九年度七月実施で千四百億円の減少になる、こういうことでございます。
  253. 塩田晋

    ○塩田委員 かなり細かく御説明をいただいたわけでございますが、いわゆる長瀬係数の当否は問題あろうかと思いますが、一応今のところ、めどとしてはその係数を使うしかないと思います。この計算過程を見まして具体的にどのようなことが起こるかということでございますけれども、各人が診療所なりお医者さん、病院へ行って診療を受ける。そしてそこで一割なり二割を払う、こうなりますわ。その場合に、そういった係数の過程を見ますと、縮んでいくというのは、具体的にはどういうことが起こってそうなるのでしょうか。
  254. 吉村仁

    ○吉村政府委員 私ども、今回の一割患者負担によって医療費が節減する、こういうことを印しておりますが、たびたび繰り返して申し上げますように、受診率はそれほど影響がない、現在、本人と家族あるいは国保の被保険者、これは三割自己負視でございますが、その本人と家族または国保とを比べて何が違うかというと、一日当たりの診療費が違うわけでございます。その一口当たり診療費の中で何が違うかというと、投薬、注射、検査、この辺が違うわけでございます。したがって、私ども、本人と家族・国保とを比べて、一日当たり診療費がそれほど違わなければならないという合理的な根拠がどうも見出しがたい。したがって、その差というのは十割給付に伴う過剰診療だ、こう考える方がいいんではないか。いわゆる乱診乱療のことでございますが、やはりただだということになると診療費は上がる、これは人間のさがみたいなものではないかと私は思うのであります。そのただの場合にそういう診療費の違いが多くなる部分が、九割給付をやることによって減少する結果、総額として千四百億ばかりの医療費節減になる、こういうように考えております。
  255. 塩田晋

    ○塩田委員 局長は今非常に微妙な問題の御答弁をされたと思います。私はそういう考えがあるんじゃなかろうかなと思っておったのです。よく言われますのは、お医者さんが今回の一部自己負担に対して反対されるのは、患者からいろいろ苦情が出るから、あるいはまた収入が減るからお医者さんは反対しているんだ、こういうことが巷間、間々言われております。しかしそれは、私はそうでない、間違いだと思うのです。一割負担することによってお医者さんの懐は変わらないのです。これは一割負担した分も入るわけですから、出来高払い制度をとる限りは現在の状況が続くわけですから、これは変わらないと思うのです。だから、お医者さんが収入が減るから反対しているんだということでなくして、今局長が言われたところの微妙な、といいますのは乱診乱療、例えば患者が、そういう薬は要りませんとか、もう検査はこれぐらいにしてくれとか、あるいはその注射は要りませんとか、多過ぎるからとかいうことの行動があって、それがお医者さんに影響して、これが縮むのだというようなことであれば大変なことだ。私はそういうことはないと思うのです。何となれば、患者になってみれば非常に弱い立場です。病気をあるいはけがを一瞬も早く治したいという気持ちで、お医者さんのところへ行きますね。専門的知識を持った、技術を持ったお医者さんが診断してやられることには、全面的に信頼して、言われるとおりにすると思うのです。先生、その注射の本数は多いよ、この薬は多過ぎますよなんということを言える人は、また言う人はいないです。そんなことをやっておったら病気は治らないです。そういうことじゃないでしょう。
  256. 吉村仁

    ○吉村政府委員 そういうことなら医療費の適正化をすることはないわけでございまして、今千四百億と申しましたが、医療機関に入る収入がそれだけ減るのです。その分だけ医療費が節減されますから医療機関がその分だけかぶる、こういうことになる数字でございます。そうして、まあ、何も全国のお医者さんがそうだ、こういうことを申すつもりはございませんが、中野診療所のケースを取り上げてみますと、社会保険の家族の診療費を一〇〇といたしますと社会保険の本人、これは十割給付でございますが二三七、つまり二・三七倍、それから社会保険の家族ですが老人医療費で十割になった人、これは三・二一倍、そして社会保険の家族で老人保健の給付を受ける結果、十割給付に結果的になる人は三・五四倍、こういうことでございます。なぜ七割給付の家族と十割の本人、あるいは結果的に十割になる老人の医療費とがこれだけ差があるのだろうか。これを説明する理由が私どもはどうしても見出しがたい。十割の場合にはやはり十割らしい医療が行われておる、それが本当に健康のためになっておるかどうか、これは私どもは監査をして、それは過剰診療だという結論を得たわけでありますから、やはり過剰だったのであろう、私はこういうふうに思います。  したがって、十割給付というのはそういう診療行為を誘発する原因である、これは否定しがたいと私は思うのであります。それがもし全くその医療が正しいのだということになれば、私ども医療費の適正化をいろいろ努力をしてやっておるわけですが、そういうことをやる余地はない、こういうことになるはずだ、こういうように思っております。
  257. 塩田晋

    ○塩田委員 非常に重要なポイントに今参りました。今回の一割あるいは二割負担医療費の関係、お医者さんと患者の関係、これは一番重要なポイントの議論なんです。  大臣、この問題は引き続いて徹底してやらないといけないと思います。今言われました中野診療所だとか、あるいは宇都宮報徳会の問題とか、あちこちでいろいろ問題が起こりましたね。これは決して、患者が一割、二割負担したから、その痛みに耐えかねて、これらを指摘して問題が起こったわけじゃないですわ。皆さん方が、権威ある医療団をつくって、厚生省と府とがあるいは県とが一体になってこの問題にメスを入れて、法律改正なしに、一割、二割負担なしにやったことでしょう。そういうことですね。それでもやれるじゃないですか、そういう問題は摘発できます。  それから、今言われました被保険者本人と家族とのこの金額の差、これは今言われましたのとは私は見解が違います。お医者さんなんかとも患者ともいろいろ話をしても、今言われた認識ではこれは納得できません。違った考え方が十分成り立ちますので、これはまた改めて議論したいと思います。  以上で終わります。
  258. 有馬元治

    有馬委員長 次回は、来る二十四日火曜日午前九時三十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時二十八分散会