○高木参考人 高木でございます。
私、事務局の方からいろいろな御質問がございまして、それに対して、東北地方で
地震予知の研究観測のネットをつくって今第一線で研究観測を続けている立場で、きょうは図面を用意しましたから、それに基づいて、例えば
地震予知の現状あるいは予算あるいはこのたびの
王滝村の
地震と東海地方の
地震についてのことについて、直接的あるいは間接的な
説明でお答えをしようと思っています。
まず第一に、このような日本列島がある図面をごらんいただきます。これは
昭和元年から昨年まで日本列島及びその周辺に起こりました
マグニチュードが七以上、あるいは内陸の場合には
マグニチュードが六クラスでございましても
被害のあった
地震の分布図でございます。分布図と申しましても、小さなマルになっていますけれ
ども、この図は約一カ月間
余震が伴ったところを面積として楕円であらわしているわけです。強いて言いますと、そこの場所は大
地震によって破壊された領域が平面に投影されたものと考えていただければよろしいわけです。それから、右の方に線状になった黒いところは千島海溝、日本海溝、伊豆マリアナ海溝、及び日本海にある黒いところは日本海盆、それから、この南側にある黒いところは四国海盆でございます。
これを見ますと、過去たった五十八年間に日本列島にはこれだけの
地震が起こっております。かつ、この海溝沿い、例えば太平洋の沿岸に沿っては巨大
地震が北海道から九州までこのようなタイプで起こっているわけです。この場合に、我々はこれを海の
地震と申しておりますけれ
ども、これに関しましては後で申し上げますが、先ほど浅田参考人が申し上げましたようにかなりはっきりした知識がございます。
それに対しまして、これは年代が書いてございますけれ
ども、内陸にぽつぽつ起こっている
地震がございます。一見しまして、この五十八年で圧倒的に、太平洋側の
地震に比べて内陸あるいは日本海の
地震は少のうございます。しかも、太平洋の方では、例えば日向灘あるいは三陸沖に関しましてはこの五十八年間に何回も何回も繰り返して同じ場所に
地震が起こっているにもかかわらず、内陸の場合にはそれぞれのテリトリーで、自分の場所をわきまえて、同じところに起こっておりません。これは非常に重大な事実でございます。
ただ、このような問題に関しまして、たった五十八年でございますけれ
ども、これを見ましてすぐ誤解を招くことは困りますからちょっと御指摘しますけれ
ども、内陸に関しましてはいかにも
地震が少ないように見えますけれ
ども、過去四百年間さかのぼってみますと、これ以外に滋賀県とか、これに
長野県が入っていませんが、
長野、東京、神奈川、京都、奈良、和歌山、秋田、このようなところには相当内陸
地震が発生しております。そのことに関しては後で御
説明申し上げます。
次の
ページに行って上の図を見ていただきます。これは東北地方の北緯三十九度から四十度にかけて昨年一年間に発生した
地震を、東西の鉛直断面にカットして深さごとにどのように
地震が起こっているかということを平面的ではなくて南側から鉛直に見た図でございます。そうしますと、これを見てすぐおわかりのように、東北地方の内陸では、私たち地殻と申しておりますけれ
ども、割合に浅いところに直下に
地震が起こっています。その
地震は内陸直下ばかりでなく日本海沿岸あるいは日本海の外側はるか沖合にもはみ出て起こっております。それ以外に、驚くべきことに、太平洋の、一番右側が日本海溝でございますけれ
ども、その日本海溝から日本列島に向かって
地震がだんだん深く発生していることがわかります。これを我々は深発
地震面と言っていますけれ
ども、この面が、実は別な測定から最近わかりましたけれ
ども、上の物質と下の物質が全く違うのだ、いわゆるプレート——
皆さん最近よくテレビや何かで聞かされることと
思いますけれ
ども、プレートと申しまして、太平洋のプレートが日本列島に潜り込んでくる、まさに境界でございます。ここにプレートと申しますのは、本当にプレートかどうか、まだはっきりわかりません。しかし、
説明には非常にわかりやすい言葉でございますから、あるいは概念的な意味でプレートという言葉を使っていますけれ
ども、上面が一つの境界がございまして、そこにも
地震が発生しているということがわかっております。
さらに、
昭和五十三年、宮城県沖
地震が発生しました。その下の図は、その発生の過程を一年前から六カ月後くらいの割合でどのように宮城県沖
地震の前にその周辺で
地震活動があったかということを調べた図がこれでございます。そうしますと、驚くべきことに、
地震が発生する手前になります——下から二番目の図でございますけれ
ども、左が平面図、右が鉛直断面図でございますけれ
ども、大
地震が発生する直前になりますと、今申し上げましたプレートの境界に
地震が集中して、
最後に、一番下の図でございますけれ
ども、まさにこのプレートの境界に大
地震が発生しているわけです。これで、先ほど浅田先生が申し上げましたように、海の
地震に関しては相当、定性的のみならず、定量的によくわかってきました。
これはどういうことかといいますと、一九六五年前後にかけて世界的にプレートという概念が出てきまして、それに対してたまたま
地震予知の
事業が日本の国で始まりまして、
昭和四十九年から
地震予知の予算を非常にふやしていただいて、山の中の観測点からも無線あるいは有線のテレメーターによって集中観測ができる、それによって非常に精度の高い観測がされるためにこういう結果を出したと思っております。このようなことが現在の海の
地震に関する背景として東海地方の
地震予知を実行しようということに大きくつながっていると考えております。
次に、また前の図面に戻っていただきますけれ
ども、その図面に、北海道から東北地方を通って関東地方に線が引っ張ってあります。その線が日本海の方に伸びておりますけれ
ども、それぞれ百キロメーターとか二百キロメーターという数字が打ってあります。これは今申し上げました太平洋の岩石圏、プレートが日本列島に潜ってきている深さの、等深線でございます。だから、日本列島はこのような大きな岩石圏に押されているというのがこの図からはっきりおわかりになると
思います。
同時に、伊豆マリアナの海溝から関東地方、それから東海あるいは和歌山あるいは四国、それから九州の日向灘、その辺を通じましてフィリピン海プレートというのがございます。それもやはり太平洋プレートと同じように、今度はほぼ北側に日本列島に押し寄せてくるわけです。現在その先端がどこであるかということはまだ研究の途中でございますけれ
ども、大まかのことはわかっております。そういうような力によって内陸が、いろいろそういう太平洋プレートそれからフィリピン海プレートの外力によってそれぞれレスポンスしまして、応力が集中して
地震が起こっているわけです。
そうしますと、大変問題なことは、内陸の
地震に関して起こるメカニズムが海の
地震に比べてまだよくわからないことがある。それから、そこにございますように繰り返す
地震の回数が、一千年以上、一周期と申しますか、そういうのが一千年以上で有史以来のデータではなかなかわからないことが多い。そうしますと、太平洋のように繰り返し起こっているからそこは危ないのだということではなくて、むしろ今まで起こらないところが危ないという、逆な立場になる可能性もあるわけです。そういうような難しさがございます。
それから、直下での
地震でございますから、
マグニチュードが小さくても
被害が起こる、そういうことを考えなければいけない。そうしますと、小さな
地震に関しましては異常が出る範囲が非常に小そうございますから、観測点密度を徹底的に小さくしなければいけない。そうすると、非常に多量の観測点が必要である。それからもう一つは、
被害が大きいということは人間が住んでいることと直結します。そうしますと、観測そのものに対して人工的な擾乱が多うございますから、観測が非常に難しい。と申しますよりも、普通の観測に比べて非常にいろいろな高級な手段が必要となる。そういうようなことから、内陸の
地震に関しましてはなかなか問題点がございます。それで、予算を考えますと、まず観測点をふやすと同時に、そういう基礎のことをはっきり研究を進めない限りは、内陸のことに関してはなかなか難しいだろうと思っております。
最後に、東海地方との
関係につきましては、先ほどの浅田先生と同じような見解でございまして、内陸ということと東海地方のこと、この図で見てもすぐおわかりでございますけれ
ども、全く直接
関係するとは
思いませんが、長い目で見れば
関係があるといっても間違いないと
思います。しかし、我々は、東海地方に関しては現在ある観測網で監視観測しておりますから、その観測をさらに着実にしていただくことをこいねがっております。
以上でございます。