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1984-10-30 第101回国会 衆議院 決算委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年十月三十日(火曜日)     午前十時三十分開議 出席委員   委員長 横山 利秋君    理事 近藤 元次君 理事 白川 勝彦君    理事 東家 嘉幸君 理事 森下 元晴君    理事 井上 一成君 理事 新村 勝雄君    理事 貝沼 次郎君 理事 神田  厚君       榎本 和平君    河野  正君       城地 豊司君    細谷 昭雄君       元信  堯君    近江巳記夫君       玉城 栄一君    中川利三郎君       阿部 昭吾君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 竹下  登君  委員外出席者         人事院総裁   内海  倫君         警察庁刑事局捜         査第二課長   藤原  享君         警察庁刑事局捜         査第二課長   上野 浩靖君         経済企画庁調整         局調整課長   西藤  冲君         法務省刑事局参         事官      馬場 俊行君         外務省中近東ア         フリカ局長   三宅 和助君         大蔵大臣官房会         計課長     朝比奈秀夫君         大蔵大臣官房総         務審議官    北村 恭二君         大蔵大臣官房審         議官      門田  実君         大蔵省主計局次         長       保田  博君         大蔵省主計局司         計課長     西沢  裕君         大蔵省主税局長 梅澤 節男君         大蔵省関既局長 矢澤富太郎君         大蔵省理財局次         長       亀井 敬之君         大蔵省理財局次         長       中田 一男君         大蔵省銀行局長 吉田 正輝君         大蔵省銀行局保         険部長     加茂 文治君         大蔵省国際金融         局長      行天 豊雄君         国税庁税部長 冨尾 一郎君         国税庁調査査察         部長      村本 久夫君         農林水産省食品         流通局食品油脂         課長      増田 正尚君         通商産業省機械         情報産業局自動         車課長     黒田 直樹君         中小企業庁小規         模企業部参事官 小川 忠夫君         運輸省地域交通         局自動車保障課         長       福島 義章君         労働大臣官房参         事官      竹村  毅君         建設省河川局河         川計画課長   陣内 孝雄君         建設省道路局道         路総務課長   真嶋 一男君         建設省住宅局市         街地建築課長  久保 敏行君         自治省行政局行         政課長     片山虎之助君         会見検査院事務         総局第一局長  西川 和行君         会計検査院事務         総局第三局長  小川 一哉君         会計検査院事務         総局第五局長  秋本 勝彦君         日本専売公社総         裁       長岡  實君         国民金融公庫総         裁       田中  敬君         日本開発銀行総         裁       吉瀬 維哉君         日本輸出入銀行         総裁      大倉 真隆君         決算委員会調査         室長      大谷  強君     ――――――――――――― 委員の異動 十月三十日  辞任         補欠選任   河野  正君     元信  堯君   城地 豊司君     細谷 昭雄君 同日  辞任         補欠選任   細谷 昭雄君     城地 豊司君   元信  堯君     河野  正君     ――――――――――――― 八月八日    昭和五十六年度一般会計歳入歳出決算    昭和五十六年度特別会計歳入歳出決算  一、昭和五十六年度国税収納金整理資金受払計    算書    昭和五十六年度政府関係機関決算書  二、昭和五十六年度国有財産増減及び現在額総    計算書  三、昭和五十六年度国有財産無償貸付状況総計    算書    昭和五十七年度一般会計歳入歳出決算    昭和五十七年度特別会計歳入歳出決算  四、昭和五十七年度国税収納金整理資金受払計    算書    昭和五十七年度政府関係機関決算書  五、昭和五十七年度国有財産増減及び現在額総    計算書。  六、昭和五十七年度国有財産無償貸付状況総計    算書    昭和五十八年度一般会計予備    費使用調書及び各省庁所    管使用調書(その1)    昭和五十八年度特別会計予備  七、費使用調書及び各庁各庁所 (承諾を求    管使用調書(その1)    めるの件)    昭和五十八年度特別会計予算    総則第十一条に基づく経費増    額総調書及び各省庁所管経    費増額調書(その1)  八、歳入歳出実況に関する件  九、国有財産増減及び現況に関する件  一〇、政府関係機関の経理に関する件  一一、国が資本金出資している法人会計に     関する件  一二、国又は公社が直接又は間接に補助金、奨     励金、助成金等を交付し又は貸付金、損     失補償等財政援助を与えているものの     会計に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和五十六年度一般会計歳入歳出決算  昭和五十六年度特別会計歳入歳出決算  昭和五十六年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和五十六年度政府関係機関決算書  昭和五十六年度国有財産増減及び現在額総計算  書  昭和五十六年度国有財産無償貸付状況総計算書  (大蔵省所管日本専売公社国民金融公庫、  日本開発銀行日本輸出入銀行)  派遣委員からの報告聴取      ――――◇―――――
  2. 横山利秋

    横山委員長 これより会議を開きます。  本委員会は、歳入歳出実況等に関する調査のため、去る十月三日から五日までの三日間、愛知県、岐阜県及び長野県に委員を派遣いたしました。  その調査概要につきまして、便宜、本店から御報告申し上げます。  派遣委員は、近藤元次君、森下元晴君、貝沼次郎君、神田厚君、中川利三郎君及び阿部昭吾君並びに私の都合七名であります。  なお、長野県においては、林吾郎議員が現地参加されました。  調査箇所及び視察箇所は、名古屋通商産業局トヨタ自動車株式会社堤工場三菱重工業株式会社名古屋航空機製作所小牧南工場日本道路公団名古屋管理局多治見管理事務所長野営林局上松営林署、諏訪、上田及び松本の各営林署管内国有林赤沢自然休養林及び箕輪町であります。  次に、調査概要について申し上げます。  第一日目の十月三日は、午前八時に東京を出発し、名古屋到着後、名古屋通商産業局へ赴き、宇賀局長から管内における経済動向ファインセラミックス産業育成振興東海環状テクノベルト構想及び歳入歳出決算等について説明を聴取いたしました。  次に、トヨタ自動車株式会社に赴き、トヨタ会館において、豊田取締役会長から人材育成対策創意工夫提案制度及び生産・販売など会社の概況説明と、自動車産業長期的発展のために技術開発が必要であり、その施策として投資減税の要望がなされました。その後、ビスタ、コロナなどの乗用車を生産している堤工場内のボディー及び組み立ての各工場を視察いたしました。  次いで、三菱重工業株式会社名古屋航空機製作所小牧南工場へ赴き、山田航空機製作所長から製作所概況説明を、また広中防衛庁装備局航空機課長から防衛庁三菱重工業との戦闘機ヘリコプター等契約状況説明を聴取いたしました。その後、要撃戦闘機F15、F4、高等練習機T2などの製造、修理が行われている工場を視察いたしました。  第二日目の十月四日は、宿泊所を午前八時三十分に出発し、日本道路公団名古屋管理局多治見管理事務所に赴き、織方管理局長から管内概要及び多治見管理事務所管内交通量及び料金収入などの説明を聴取いたしました。  次に、長野営林局上松営林署に赴き、角館営林局長から管内概要歳入歳出決算状況及び木曽谷国有林概要を、上松営林署長から管内概要説明を聴取いたしました。  また、角館局長から去る九月十四日に木曽御岳山付近震源地として発生した長野西部地震被害状況及びビデオテープにより生々しい被災地状況説明が行われました。  なお、木曽町村会及び木曽木材工業協同組合の各代表から公共土木施設林業関係の災害の早期復旧などの陳情が行われました。  また、地震発生時に、営林署の職員二百五十三名が御岳山中において作業中であったが、山の地形などの熟知により、全員無事に下山したとのことであります。震源地に近い王滝村においては、二十数名の死亡者を出したとのことでありますが、死亡した方々の御冥福を心からお祈りいたします。  次に、樹齢二百年から四百年の木曽ヒノキを主とする天然林から成る日本大美林の一つである赤沢自然休養林を視察いたしました。  第三日目の十月五日は、箕輪町へ行く予定でありましたが、時間等の都合により、急遽宿泊所において桑沢町長から町の概況会計検査院指摘事項内容及びその後の措置状況について説明を聴取いたしました。  次いで、東俣国有林七島八島ケ原湿原和田山国有林を視察し、三日間の日程を完了して、松本から無事帰京いたしました。  これらの調査結果を集約すると以下の通りであります。  一、名古屋通商産業局昭和五十七年度決算歳出は、一般、特別両会計を合わせて百四十七億一千七百万円余であり、これを項目別に見ると、補助金等が百二十五億五百万円余、人件費が十八億一千四百万円余と補助金等が大部分を占めている。  この補助金のうち、設備近代化に必要な資金の調達が困難な中小企業者に対して、必要な資金の二分の一以内を無利子貸し付け中小企業設備近代化資金貸し付けが、昭和五十四年度から五十七年度の四年間、会計検査院から指摘を受けている。  今後は、かかる指摘を受けることのないように適切な指導を行うべきである。  二、日本道路公団昭和五十七年度損益について見ると、収益が七千百三十五億円余、費用が七千二百七十六億円余であり、損失が百四十億円余計上されている。  しかるに、最近の東名高速道路において通行券の交換による不正通行が行われている。  その損害額は、年間五十億円と予測されており、利用者の不公平の解消、収入確保のためにも、不正通行防止対策を早急に行う必要がある。  三、国有林野事業財政事情は、近年、外材の影響などにより木材価格の下落、低迷の状況にあり、収入は、伸び悩みの傾向にある。一方、支出は、硬直的な諸経費増加などにより増大しており、その収支は、悪化する状況となっている。  これに対処するために、昭和七十二年度までに収支の均衡を回復するなど経営健全化を確立することを目標として、昭和五十九年に策定された国有林野事業改善に関する計画を着実に実施するとともに、国民的要請が高まっている水源涵養保安林自然休養林などの公益的機能に要する諸経費一般会計からの繰り入れの措置を講ずるなど、国有林野事業経営健全化に努めるべきである。  四、箕輪町においては、国庫補助事業起債対象事業等の実施に当たり、事業費の上乗せ、対象外事業架空事業事業実績として、それに係る財源財産収入雑収入などに受け入れ、他事業等財源として運用していたことを会計検査院により指摘されている。  監督官庁、県及び町においては、この事態の原因を調査し、改善対策を講ずるとともに、今後は、補助金適正化法などに違反することのないように一、補助事業等を実施すべきである。  以上が委員派遣報告でございます。  この際、お諮りいたします。  ただいま報告いたしました内容の詳細につきましては、これを調査報告書として本日の委員会議録に参照掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 横山利秋

    横山委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――     〔報告書本号末尾に掲載〕      ――――◇―――――
  4. 横山利秋

    横山委員長 昭和五十六年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は、大蔵省所管日本専売公社国民金融公庫日本開発銀行及び日本輸出入銀行について審査を行います。  まず、大蔵大臣から概要説明を求めます。竹下大蔵大臣
  5. 竹下登

    竹下国務大臣 昭和五十六年度大蔵省主管一般会計歳入決算並び大蔵省所管一般会計歳出決算、各特別会計歳入歳出決算及び各政府関係機関決算書につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず、一般会計歳入決算につきまして申し上げます。  昭和五十六年度収納済み歳入額は四十五兆八千四百九十三億六百八万円余でありまして、これを歳入予算額と比較いたしますと三千八百三十四億九千四百五十九万円余の増加となっております。  以下、歳入決算のうち主な事項につきましてその概要を申し上げます。  第一に、租税及び印紙収入でありますが、その決算額は二十七兆九千五百三十一億九千六百六十一万円余で、これを予算額と比較いたしますと二兆七千八百二十四億三百三十八万円余の減少となっております。これは所得税及び法人税等において課税額伸びが見込みを下回ったこと等によるものであります。  第二に、公債金でありますが、その決算額は十二兆八千九百九十八億八千五百五十万円余で、これを予算額と比較いたしますと一億千四百四十九万円余の減少となっております。これは公債の発行が予定より少なかったことによるものであります。  第三に、決算調整資金受け入れでありますが、その決算額は二兆四千九百四十八億九百九十五万円余で、これは昭和五十六年度において予見しがたい租税収入減少等により、一般会計歳入歳出決算上不足が生ずることとなったので、決算調整資金から当該不足する額に相当する額を受け入れたものであります。  以上のほか専売納付金七千八百三億九百七十九万円余、官業益金及び官業収入五十七億七千五百二十六万円余、政府資産整理収入七百三十五億七千六百十六万円余、雑収入一兆六十一億千百十五万円余、前年度剰余金受け入れ六千三百五十六億四千百六十五万円余となっております。  次に、一般会計歳出決算につきまして申し上げます。  昭和五十六年度歳出予算現額は七兆五千三百二十四億四百二十四万円余でありまして、支出済み歳出額は七兆四千八百億二千九百六十一万円余、翌年度繰越額は二百八十四億九百五十二万円余でありまして、差し引き、不用額は二百三十九億六千五百十万円余となっております。  以下、歳出決算のうち主な事項につきまして、その概要を申し上げます。  第一に、国債費につきましては、国債整理基金特別会計へ繰り入れるため六兆六千五百四十二億三千九百八十三万円余を支出いたしましたが、これは一般会計の負担に属する国債、借入金の償還及び利子筆の支払い並びにこれらの事務取扱費財源に充てるためのものであります。  第二に、政府出資につきましては千九百七十五億円を支出いたしましたが、これは海外経済協力基金等への出資であります。  第三に、経済協力費につきましては三百三十億七百二十一万円余を支出いたしましたが、これは開発途上国等に対する食糧増産等援助等のためのものであります。  この支出のほか食糧増産等援助費につきましては、相手国国内事情等のため二百五十九億六千九百三十万円余が翌年度繰り越しとなっております。  以上申し述べました経費のほか科学的財務管理調査費国家公務員共済組合連合会等助成費国庫受け入れ預託金利子公務員宿舎施設費特殊対外債務等処理費国際金融公社出資特定国有財産整備費特定国有財産整備諸費及び国民生活安定対策等経済政策推進費として九百三十六億二千四百二十六万円余並びに一般行政を処理するための経費として五千十六億五千八百二十九万円余を支出いたしました。  なお、以上の支出のほか公務員宿舎施設費につきましては、二十四億四千二十二万円余が翌年度繰り越しとなっております。  次に、各特別会計歳入歳出決算につきまして、その概要を申し上げます。  まず、造幣局特別会計におきまして収納済み歳入額は百九十六億千三百十三万円余、支出済み歳出額は百九十五億八千八百九十二万円余でありまして、損益計算上の利益は千五百四十三万円余であります。  この会計の主な事業である補助貨幣製造につきましては、三十二億枚、額面金額にして千九十四億八千万円を製造し、その全額を発行いたしました。  次に、印刷局特別会計におきまして収納済み歳入額は六百二十億九千百四十三万円余、支出済み歳出額は五百六十一億二十一万円余でありまして、損益計算上の利益は八十一億六十九万円余であります。  この会計の主な事業である日本銀行券製造につきましては、三十三億三千万枚、額面金額にして十兆二千百億円を製造し、その全量を日本銀行に引き渡しました。  以上申し述べました各特別会計のほか、資金運用部国債整理基金外国為替資金産業投資地震保険及び特定国有財産整備の各特別会計歳入歳出決算内容につきましては、特別会計歳入歳出決算によって御了承願いたいと存じます。  最後に、各政府関係機関決算書につきまして、その概要を申し上げます。  まず、国民金融公庫につきましては、収入済み額は三千四百三十五億千八百五十九万円余、支出済み額は三千四百七十八億百八十万円余でありまして、損益計算上の損益はありません。  この公庫貸し付けは百四万件余、金額にして二兆五千六百五十二億八千二百二十万円余でありまして、これを当初の予定に比較いたしますと二千二百九十五億千七百七十九万円余の減少となっております。  このほか住宅金融公庫農林漁業金融公庫中小企業金融公庫北海道東北開発公庫公営企業金融公庫中小企業信用保険公庫医療金融公庫、環境衛生金融公庫沖縄振興開発金融公庫日本開発銀行及び日本輸出入銀行決算内容につきましては、それぞれの決算書によって御了承願いたいと存じます。  以上が昭和五十六年度における大蔵省関係決算概要であります。これらの詳細につきましては、さきに提出しております昭和五十六年度歳入決算明細書及び各省庁歳出決算報告書等によって御了承願いたいと存じます。  なお、会計検査院検査の結果、不当事項として税務署における租税徴収に当たり過不足があったこと等の御指摘を受けましたことは、まことに遺憾にたえないところであります。これらにつきましては、すべて徴収決定等適切な措置を講じましたが、今後一層事務合理化改善に務めたいと存じます。  何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。  次に、昭和五十六年度日本専売公社収入支出決算書につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず、たばこ事業概況につきまして申し上げます。  昭和五十六年度製造たばこ販売数量は三千百三十七億本余、金額にして二兆四千二百三十二億四千八百四十九万円余であり、予定に比較いたしますと、数量において四十二億本余、金額にして五百二十九億七千九百四十一万円余の増加となっております。  また、葉たばこの購入数量は二十二万二千トン余、金額にして三千二百八十一億千四百五十一万円余であり、予定に比較いたしますと、数量において二万トン余、金額にして五百三十六億五千七百七十二万円余の減少となっております。  次に、塩事業概況につきまして申し上げます。  昭和五十六年度塩販売数量は、一般用塩百五十一万三千トン余、ソーダ用塩万百八十万六千トン余、金額にして合計八百八十四億千九百四十三万円余であり、予定に比較いたしますと、数量において百八十八万四千トン余、金額にして二百六億三千四百二万円余の減少となっております。  また、塩の購入数量は、国内塩百万二千トン余、輸入塩六百三十五万八千トン余、金額にして合計六百二十億四千六百十二万円余であり、予定に比較いたしますと、数量において百八十八万四千トン余、金額にして二百十二億八千七百三十五万円余の減少となっております。  次に、決算内容につきまして御説明申し上げます。  まず、収入支出につきまして申し上げます。  昭和五十六年度における収入済み額は二兆五千百六十五億千六百九十九万円余であり、収入予算額二兆四千八百四十二億五千四百八十九万円余に比較いたしますと三百二十二億六千二百十万円余の増加となっております。  これに対しまして支出済み額は二兆四千四百二十五億五千八百八十六万円余、翌年度繰り越した額は二百七十八億七千七百三十七万円余、合計二兆四千七百四億三千六百二十四万日余であり、支出予算現額二兆五千六百八十五億八千六百三十万円余に比較いたしますと、差し引き、不用額は九百八十一億五千六万円余となっております。  次に、損益計算につきまして申し上げます。  総収益二兆五千二百七億六千百五万円余から総損失二兆三千八百四十三億八千五百二十三万円余を控除した利益は千三百六十三億七千五百八十一万円余であります。この利益は、日本専売公社法第四十三条の十三の二第一項の規定により全額利益積立金として積み立てております。  最後に、専売納付金につきまして申し上げます。  専売納付金は、小売人等に売り渡した製造たばこにつき小売定価数量を乗じて得た額に納付金率を乗じて得た額から、納付したたばこ消費税の額を控除した額七千八百三億九百七十九万円余であり、予定額七千五百七十八億六千四百八十七万円余に比較いたしますと二百二十四億四千四百九十一万円余の増加となっております。以上が、昭和五十六年度日本専売公社決算概要であります。  何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。
  6. 横山利秋

  7. 西川和行

    西川会計検査院説明員 昭和五十六年度大蔵省決算につきまして検査いたしました結果の概要説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項三件及び本院の指摘に基づき当局において改善処置を講じた事項一件であります。  まず、不当事項について説明いたします。  検査報告番号一号は、租税徴収に当たり、徴収額過不足があったものであります。  麹町税務署ほか百九十税務署で、租税徴収するに当たって、納税者申告書などにおいて所得金額税額計算を誤っているのにこれをそのまま見過ごしていたり、申告内容調査法令適用の検討が十分でなかったため所得計算における経費の額や税額計算を誤っていたり、課税資料の収集、活用が的確でなかったため課税すべき所得を把握していなかったりしていたことによって生じたものであります。  また、検査報告番号二号は、租税債権の保全について処置当を得ないため徴収の機会を失したものであります。  神戸税関で酒税の滞納処分に当たって、滞納者資産に対する差し押さえの効果がないなど滞納税額徴収が極めて困難な状態にあるにもかかわらず、収納確保について特段の配慮を払わなかったため、滞納者税務署に対して法人税の還付を請求しているのを見過ごし、還付請求権相当額について滞納税額収納に充てるべき機会を失したものであります。  また、検査報告番号三号は、職員の不正行為による損害を生じたものであります。  茂原税務署で国税の収納事務に従事している職員が、国税収納金として収納した現金の一部を日本銀行に払い込まないで領得したものであります。  なお、本件については、昭和五十七年十月末までに損害額のうち少額が返納されております。  次に、本院の指摘に基づき当局において改善処置を講じた事項について説明いたします。  これは電子計算機の出力用紙のレイアウトに関するものであります。  国税庁では、電子計算機の運用に当たりまして、所得税確定申告書などの帳票を一列に印刷して、出力用紙としていましたが、これを二列に印刷した出力用紙にいたしますと、まずこれらの帳票に印字するラインプリンターの使用時間が減少しますので、外注していた印字業務を部内で処理することができますとともに印刷経費が節減されるなど経済的であると認められましたので、当局の見解をただしましたところ、国税庁では五十七年八月以降逐次所得税確定申告書などの帳票を二列に印刷した出力用紙を作成するなど所要の処置を講じたものであります。  以上をもって概要説明を終わります。
  8. 横山利秋

    横山委員長 次に、秋本会計検査院第五局長
  9. 秋本勝彦

    ○秋本会計検査院説明員 昭和五十六年度日本専売公社国民金融公庫日本開発銀行及び日本輸出入銀行決算につきまして検査をいたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
  10. 横山利秋

    横山委員長 次に、日本専売公社国民金融公庫日本開発銀行及び日本輸出入銀行当局資金計画並びに事業計画等についての説明を求めるのでありますが、便宜これを省略し、本日の委員会議録に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  11. 横山利秋

    横山委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――    昭和五十六年度日本専売公社決算および業務の概要  昭和五十六年度日本専売公社決算及び業務の概要を御説明申し上げます。  まず、収入支出決算について申し上げますと、収入済み額は二兆五千百六十五億一千六百九十九万円余、支出済み額は二兆四千四百二十五億五千八百八十六万円余でありまして、差し引き収入超過は七百三十九億五千八百十三万円余となりました。  これを損益計算面から申し上げますと、総収益は二兆五千二百七億六千百五万円余、総損失は二兆三千八百四十三億八千五百二十三万円余、差し引き純利益は一千三百六十三億七千五百八十一万円余となっております。  これを、たばこ事業及び塩事業について、それぞれの概要を区分して御説明申し上げます。  まず、たばこ事業でございますが、昭和五十六年度製造たばこ販売数量は三千百三十七億本余でありまして、これは予定に比べ四十二億本余、また前年度に対しては四十五億本余、それぞれ増加となっております。  たばこ販売面におきましては、キャビン85、マイルドセブン等の販売促進活動を積極的に進めてまいりました結果、前年度に対し数量で一・五%、売上高で四・一%の増加となりました。  また、たばこ製造面におきましては、たばこ工場製造設備改善と作業の効率化によって生産性の向上を図り、あわせて供給の円滑化に努めてまいりました。  以上の結果、損益計算におきましては、総売上高は二兆四千二百三十三億九千四百五十六万円余、売上原価は六千三百五十三億三千七百六万円余、差し引き売上総利益は一兆七千八百八十億五千七百四十九万円余となり、これから販売費及び一般管理費一千五百二十七億二百五十六万円余、営業外損益三十八億二千三百七十三万円余、専売納付金七千八百三億九百七十九万円余、たばこ消費税七千百九十八億九千四百八十六万円余を控除した純利益は一千三百十三億二千六百五十四万円余となりました。これは予定に比べ六百二十四億八万円余の増加、また前年度に対しては百七十八億三千七百五十二万円余の減少となっております。  なお、専売納付金予定に比べ二百二十四億四千四百九十一万円余の増加、また前年度に対しては二百七十七億七千五百五十三万円余の減少となっております。  次に、塩事業について申し上げますと、昭和五十六年度塩販売数量一般用塩で百五十一万トン余、ソーダ用塩で五百八十万トン余、合計七百三十一万トン余でありまして、これは予定に比べ百八十八万トン余、また前年度に対しては九十五万トン余、それぞれ減少となっております。  以上の結果、損益計算におきましては、総売上高は八百八十四億一千九百四十三万円余、売上原価は六百六十七億三千四百十二万円余、差し引き売上総利益は二百十六億八千五百三十万円余となり、これから販売費及び一般管理費百六十六億二千四百六十九万円余、営業外損益一千百三十四万円余を控除した純利益は五十億四千九百二十七万円余となりました。これは予定に比べ四十一億五千五百七十一万円余、また前年度に対しては百十七億六千百四十一万円余、それぞれ増加となっております。  塩事業の純利益が前年度に対し増加いたしましたのは、昭和五十六年五月一日に実施いたしました一般用塩の売り渡し価格の改定によりまして、一般用塩売上高が増加したこと等によるものであります。  なお、昭和五十六年度決算検査報告におきまして、会計検査院より不当事項として指摘を受けたものはございませんでしたが、今後とも予算の効率的運用等につきましてなお一層の意を用い、事業の運営を図ってまいりたいと存じます。  以上簡単でございますが、昭和五十六年度決算及び業務の概要について御説明申し上げました。  何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。     …………………………………    昭和五十六年度業務概況               国民金融公庫  国民金融公庫昭和五十六年度の業務の概況について御説明申し上げます。  昭和五十六年度の我が国経済は、国内需要の伸び悩みや輸出の増勢鈍化により総じて低調に推移しました。その中で中小企業は、個人消費の伸び悩みや住宅投資の停滞の影響を大きく受け、生産、販売ともに停滞気味に推移し、その経営環境は依然として厳しい状況にありました。  このような状況に置かれた中小企業者に対して、当公庫は、貸付限度の引き上げ等により中小企業金融の円滑化のために積極的に対処するとともに、石巻、玉出、呉の三支店を新設しまして、中小企業者のために一層の便宜を図ってまいりました。  昭和五十六年度貸し付けにつきましては、当初計画二兆七千九百四十八億円に対しまして、前年度に比べ一・九%増の二兆五千六百五十二億八千二百二十万円余の実行をいたしました。  貸し付け種類別に貸し付けの実績を申し上げますと、普通貸し付けは七十三万五千件余、二兆三千八百三十四億五千七百四十一万円、恩給担保貸し付けは二十三万二千件余、一千四百七十二億六千八十四万円余、記各国債担保貸し付けは九十三件、一千十八万円余、進学資金貸し付けは七万八千件余、三百四十億四千百五十三万円余となりました。  なお、普通貸し付け貸し付け実績の中には、生鮮食料品等小売業近代化資金貸し付け、流通近代化資金貸し付け等の特別貸し付けが二万件余、七百十六億七十一万円、小企業等経営改善資金貸付が二十万九千件余、四千二百三十億五千四百九十万円含まれております。  一方、五十六年度において貸付金の回収が二兆一千八百四十億一千四百四十七万円余、滞貨償却が三十一億九千百八十万円余ありましたので、五十六年度末現在の総貸し付け残高は二百七十一万一千件余、四兆四千百二十六億三千七百九十八万円余となりました。  前年度末残高に比べますと、件数が十二万二千件余の増加金額が三千七百八十億七千五百九十一万円余の増加となり、これを率で見ますと、件数で四・七%の増加金額で九・四%の増加となりました。  貸付金の延滞状況は、五十六年度末において延滞後六カ月以上経過したものが九百八十億四千三十六万円余でありまして、前年度末に比べ二百三十五億二千三百六十六万円余の増加となっております。総貸付金残高に対する割合は二・二%であり、前年度の一・八%に比べ〇・四ポイント増加しております。  昭和五十六年度貸し付けに要した資金は二兆五千六百四十五億九千五万円余でありまして、その原資は、資金運用部からの借入金一兆七千八百八十一億円、簡易生命保険及び郵便年金特別会計からの借入金七百二十億円、一般会計からの借入金二百三十五億円のほか貸付回収金等六千八百九億九千五万円余をもってこれに充てました。  環境衛生金融公庫からの受託業務につきましては、五十六年度における貸し付けの実績は八万九千件余、二千七十五億五千七百六万円、回収額は、一千七百五十二億八街九十八万円余となり、五十六年度末貸付残高は四十五万一千件余、六千六百二十一億五千九百八十六万円余となっております。  最後に、五十六年度収入支出決算及び損益計算について申し上げます。  まず、収入支出決算について申し上げますと、収入済み額は三千四百三十五億一千八百五十九万円余、支出済み額は三千四百七十八億百八十万円余となりました。  次に、損益計算について申し上げますと、貸付金利息等の総益金は三千八百七十九億四千百四十四万円余、借入金利息、事務費、滞貨償却引当金繰り入れ等の総損金は三千八百七十九億四千百四十四万円余となりました。この結果、利益金は生じなかったので国庫納付はいたしませんでした。  以上をもちまして昭和五十六年度の業務概況の御説明を終わらせていただきます。     …………………………………    日本開発銀行昭和五十六年度の業務概要  昭和五十六年度における日本開発銀行の業務の概要について御説明申し上げます。  一、まず、五十六年度資金の運用計画は、当初計画一兆七百七十五億円を予定しておりました。これに対し五十六年度中の運用額は、貸付実行額が一兆七百七十五億八百万円となっております。  これの項目別内訳は、資源エネルギー四千九億三千五百万円、技術振興九百六十一億二千万円、海運一千二百八十二億八千百万円、都市開発一千四百四十億六千万円、地方開発一千五百六十億五百万円、国民生活改善一千百七十六億九千五百万円、その他三百四十四億一千二百万円であります。  以上の五十六年度の運用額の原資といたしましては、資金運用部資金からの借入金七千八百七十億円と貸付回収金等二千九百五億八百万円をもってこれに充てました。  二、次に、五十六年度貸し付け運用の特色を申し上げますと、  (1)資源エネルギーについては、新たに既設石油火力の熱源の転換のための融資を行うとともに原子力発電推進のための融資、石油の民族系企業育成強化を図るための融資、石油及びLPG備蓄タンクに対する融資、水力発電・液化ガス発電等電源多様化を図るための融資、石油代替エネルギーの利用の促進のための融資のほか、資源エネルギーの有効利用と産業の省資源・省エネルギー等を促進するための融資を積極的に行ったこと  (2)技術振興については、我が国自主技術の開発促進及び技術水準の向上を図るため、引き続き国産技術振興融資、電子計算振興融資等を行ったこと。  (3)海運については、貿易物資の安定的輸送確保の観点から計画造船による外航船舶の建造に対し引き続き融資を行ったこと  (4)都市開発については、都市交通の整備改善、市街地の開発整備及び流通機構の近代化に寄与する事業等に対する融資を引き続き拡充したこと  (5)地方開発については、九州、四国、中国、北陸の四地方の開発のため融資を引き続き強化するとともに、地方都市圏の機能整備、地方適地産業の育成、工業の適正配置の促進について特に留意したこと。  (6)国民生活改善については、環境保全の観点から公審防止の推進を図るとともに、ビル防災等の推進のための安全対策設備に対する融資、都市ガスの高圧、高カロリー化設備に対する融資及び食品供給体制の近代化のための融資を行ったこと  (7)その他については、引き続き「工場分散」、「海洋開発」及び「福祉関連機器振興」等の融資を行ったことなどがあげられます。  三、次に、五十六年度における既往貸し付けの回収は、外貨貸付金の回収二十一億五千二百四十六万円余を含めまして五千六百七億八千六百万円余となっております。  なお、五十六年度は四百六十九万円余の貸付金の債権償却を行い、この結果、五十六年度末における貸付残高は、国内資金貸し付け五兆九千三十五億百七十八万円余、外貨貸し付け三十三億四百八十五万円余の合計五兆九千六十八億六百六十四万円余となりました。  貸付金の延滞状況につきましては、昭和五十六年度末におきまして弁済期限を六カ月以上経過した元金延滞額は三百七十三億六十万円余で、前年度末に比して三十三億三千七百五十万円余の増加となっております。貸付残高に対する割合は、〇・六%となっております。  四、また、五十六年度において外貨債務の保証を行いました額は、航空に対する二百四十億二千六百六十二万円余であり、年度末保証残高は二千四百四億一千九百七十二万円余となっております。  五、最後に、五十六年度決算概要について説明いたしますと、五百三十八億一千九百五十六万円余の純利益を計上し、このうち二百九十五億三千四百三万円余を法定準備金として積み立て、残額二百四十二億八千五百五十三万円余を国庫へ納付いたしました。  以上、五十六年度における日本開発銀行の業務の内容につきまして御説明申し上げた次第でございます。     …………………………………    日本輸出入銀行昭和五十六年度業務概況  一、昭和五十六年度における日本輸出入銀行の業務状況につき概要を御説明申し上げます。  まず、昭和五十六年度年度当初の事業計画において一兆三百億円の貸し付け予定いたしました。これに対し昭和五十六年度の貸付額の実績は一兆一千四百五十二億九千百三十万円余で、年度当初の事業計画における貸し付け予定額を一一%ほど上回りました。なお、この昭和五十六年度の貸付額を昭和五十五年度の貸付額八千二百六十七億三千二百六十六万円余に比較いたしますと三九%程度の増加となっております。  以下、昭和五十六年度の貸付額の内訳につきまして、金融種類別に前年度との比較において申し述べます。  まず、輸出資金貸し付けは五千九百六十四億四千六百九十五万円で、昭和五十五年度の四千百四十五億八千四十万円に対し一千八百十八億六千六百五十五万円の増加となりました。これは、船舶輸出に対する貸し付け、プラント輸出に対する貸し付けがともに好調に推移したことによるものであります。  次に、輸入に必要な資金貸し付けは一千二十二億七千二百八十四万円余で、昭和五十五年度の九十七億四百九万円余に対し九百二十五億六千八百七十五万円余の増加となりました。このように輸入に必要な資金貸し付け増加したのは、資源の開発輸入に係る大型案件の貸し付けが行われたことによるものであります。  また、海外投資資金貸し付けは二千三十三億九千七百五十万円となり、昭和五十五年度の一千九百七億七百万円に対し荷二十六億九千五十万円の増加となりました。  このほか、外国政府等に対する直接借款に係る貸し付けは二千四百三十一億七千四百一万円余で、昭和五十五年度の二千百十七億四千百十七万円余に対し三百十四億三千二百八十四万円余の増加となりました。  以上の結果、昭和五十六年度末の貸付残高は五兆五千四百五十五億六千二百十二万円余となっております。  なお、この貸付残高のうち、弁済期限を六カ月以上経過した元金延滞額は四億五千三万円となっております。  昭和五十六年度の貸付資金の原資といたしましては、産業投資特別会計からの出資金百五十億円、資金運用部資金からの借入金一兆百三十億円のほか自己資金等一千百七十二億九千百三十万円余をもってこれに充てました。  以上申し述べました業務の運営により昭和五十六年度一般勘定の損益計算上における利益は四千三百三十三億七千百五十九万円余、これに対し損失は四千六十五億一千二百二万円余となりました。  この結果、昭和五十六年度一般勘定利益金は二百六十八億五千九百五十六万円余となり、法令の定めるところに従い、これを全額法定準備金として積み立てました。  なお、既往のインドネシア債務救済措置の実施に関する業務につきましては、日本輸出入銀行法による貸付金の利息の特例等に関する法律により一般の業務と区分して特別の勘定を設けて経理することといたしておりますが、昭和五十六年度の特別勘定の損益計算上二億一千四百三十六万円余の利益金を生じ、法令の定めるところに従い、これを全額同勘定の積立金として積み立てました。  二、以上、昭和五十六年度における日本輸出入銀行の業務の概況につき御説明申し上げました。     ―――――――――――――
  12. 横山利秋

    横山委員長 これにて説明は終わりました。     ―――――――――――――
  13. 横山利秋

    横山委員長 これより質疑に入ります。  まず、私から一言政府にお伺いいたします。  去る八月七日の本委員会において、委員長の私から政府に対する要望事項を申し上げました。  その第一点は、会計検査院職員の処遇改善に関し、会計検査院調査官及び調査官補に対し、一般職員の給与法の規定に基づく俸給の調整額を設けるよう大蔵省及び人事院がその措置をとられることを要望した点であります。  重ねて申し上げるまでもなく、会計検査院調査官等が行う検査業務は広範な分野にわたって知識経験を必要とする勤務の特殊性を有し、しかもその遂行には極めて厳しい困難性を伴うものであります。この問題については、かねてから会計検査院職員の処遇改善についての国会決議を踏まえ、政府当局におかれても十分認識の上で御検討が進められていることとは存じますが、その趣旨に従い、先般本委員会において俸給の調整額の新設の実現方を強く要望したのであります。  さてそこで、この問題について政府当局がどのように対処されているか、本委員会に対して答弁をいただきたいのでありますが、まず、人事院においては、決算委員会の要望を踏まえてこの問題にどのような検討を行ってきたか、その結果どうなっているか、実現可能な目途、時期はいつになるのかについて答弁を求めます。  次いで、大蔵省においては会計検査院からの予算要求に対して現在どのように取り組んでおられるか、その状況について答弁を求めます。  第二点は、来年五月、会計検査院が主催し、東京で開催する最高会計検査機関アジア地域機構総会について、その所要経費につき特段の予算措置を講ずることを要望した点であります。  この会議は、アジア地域諸国の公会計検査の分野における知識と経験の交換の場であり、相互の理解と協力の促進が国際交流に大きく寄与するものであることから、その重要性にかんがみ、所要の予算措置が図られるよう本委員会として強く要望したところであります。この問題に関し、大蔵省におかれては、この総会の重要性を十分認識されていることと思いますが、会計検査院の予算要求に対して、どのように取り組み、どのような努力が払われているのか、またその見通しはどうなっているかについて答弁を求めます。  まず、内海人事院総裁
  14. 内海倫

    ○内海説明員 ただいまの委員長の御見解に御答弁を申し上げます。  会計検査業務の重要性につきましては、人事院といたしましても十分に認識いたしておりますし、当委員会の御決議やあるいは会計検査院当局の要望等の御趣旨に従い、従来から検査業務に携わります職員の職務の専門性等につきましては、調査官や調査官補の等級格付に配慮し、また実地検査業務につきましては、その困難性を認め、会計実地検査手当を新設し、その改善に努める等調査官等の処遇改善にはできる限りの努力を払ってまいったところであります。  俸給の調整額制度につきましては、ただいま委員長からいろいろ御意見をいただきましたが、目下検討を進めております給与制度全般の見直し作業の中で、現在調整額を支給されている官職の全体的な見直しを行っているところでありまして、会計検査院調査官等に対する調整額の新設問題につきましても、それとあわせて判断をしてまいることが適当ではないかと考えており、見直しのめどのつきました段階で早急に結論を得られるよう努力してまいりたいと考えておりますので、何とぞ人事院のこれらの考え方等について御了解をいただきたいと存じます。
  15. 横山利秋

  16. 竹下登

    竹下国務大臣 委員長の八月七日の当委員会における御要望につきましてお答えいたします。  会計検査院職員に係る俸給の調整額新設の御要求につきましては、ただいま人事院総裁から御説明がありましたが、人事院における検討を待って財政当局として検討してまいりたいと存じております。  次に、最高会計検査機関アジア地域機構の総会の開催に関する所要の措置につきましては、現在検討を行っているところでございます。
  17. 横山利秋

    横山委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井上一成君。
  18. 井上一成

    ○井上(一)委員 私は、まず大蔵大臣に冒頭お尋ねをしておきたいのでありますが、全国民を人質にして社会への挑戦ともいうべきグリコ・森永事件に対しての、大蔵大臣のこの犯罪行為に対する認識を聞かせていただきたいと思います。
  19. 竹下登

    竹下国務大臣 このグリコ・森永事件についての政治家としての私の認識は、今井上委員から全国民を対象とした最も過酷な犯罪であるという認識の上に立っております。したがって、これが国民世論全体の協力の中で速やかに解決されることを心から願っておる一人であります。  大蔵大臣としての立場から申しますならば、いわば下請も含めて森永等の企業に対する経営の、なかんずく金融面という方向ではなかろうか。幸い今日の時点におきまして、下請等を含め、いわば金融面からこれらに対して金融不安とかあるいは経営不安とかという状態がまだ報告等として上がってきていないことに幾らか心を休めておるところであります。
  20. 井上一成

    ○井上(一)委員 さらに捜査当局にお聞きをしたいのでありますが、犯人逮捕のために当局が全力を傾注している、そのことについては一定の評価をしたいわけでありますが、このグリコ・森永事件は現在どういう状況になっているのか、ここで尋ねておきたいと思います。
  21. 藤原享

    ○藤原説明員 お尋ねのグリコ・森永事件、警察庁指定第百十四号事件でございますが、この事件の現状でございますが、この事件は御承知のように、三月十八日夜、江崎グリコ社長を誘拐して以後、同社に対します放火等の一連の事件が発生したわけでございますが、六月末一たん犯人グループよりの犯行中止声明が出まして、そのまま一時おさまっていたような時期があったわけでございますが、その後九月中旬に至りまして犯人グループが今度は森永製菓株式会社に対して全員を要求する脅迫文を送達した。さらに、その送達後十月七日から二十二日にかけまして京阪神、名古屋、東京で青酸入りの森永製品などを店頭に混在させる等の犯行を行っているところでございます。  警察といたしましては、これらの犯行に対処するため全力を挙げてこの犯人検挙に取り組んでいるところでございますが、このために、捜査と並行いたしまして、スーパー、デパート等に対する菓子売り場等を中心にいたしました警戒強化等に努めますとともに、その捜査につきましても、関係府県警察が一体となりまして遺留品等の解明とかあるいは各種情報に基づく不審者の捜査とか、また特別巡回連絡、こういったことを中心に実施いたしておるところでございます。  この捜査は、そういったことで、非常に膨大な捜査の量を必要とするものでございますし、またその困難性といたしまして、例えば毒入り危険等の予告シールが森永製品以外にも発見されたこと、また複数犯であるため犯人像が絞り切れないなどの点もございまして、長期化いたしているところでございます。今後この捜査に全警察の総力を挙げまして全力を尽くす所存でございますが、今後とも国民の皆様方の御協力をいただき、一日も早く犯人の検挙にこぎつけたいというふうに考えております。
  22. 井上一成

    ○井上(一)委員 今の答弁でグリコ・森永以外にもシールが張られていたという事実があったわけでありますね。
  23. 藤原享

    ○藤原説明員 お尋ねの点でございますが、森永製品以外にもシールが張られていたのが発見されております。
  24. 井上一成

    ○井上(一)委員 さらに一部マスコミでは、グリコから森永に標的が変わった時点で企業との裏取引があったのではないだろうか、こういう報道がなされているわけでありますが、この点についてはどういう状況であるのか、このことも聞いておきたいと思います。
  25. 藤原享

    ○藤原説明員 お尋ねの点につきまして会社側と警察とは逐一連絡をとっておりまして、犯人側の要求に対処いたしておるところでございますが、御指摘のような裏取引はないと確信いたしております。
  26. 井上一成

    ○井上(一)委員 裏取引がないということは、企業がそれだけ警察に対して全幅の信頼を置いている、また我が国の警察はそれだけの信頼を得るに足る日ごろからの市民警察としての第一線での警察官の精進が企業にいわゆる裏取引を拒否させるだけの自信を与えている、私はそういうふうにも理解できるわけであります。そういうことは警察と市民との深い協力関係の上に成り立っている、そういう根拠等を考慮の中で、それじゃ警察が持つ情報をもっともっと市民に公開をし、市民ぐるみ、いわゆる国民ぐるみでこの凶悪な行為を犯している犯人逮捕への道を求めるべきではないだろうか。そういう意味で今日までの当局の情報公開が後手後手になっている、そういう懸念を持つわけでありますが、その点についてはいかがでございましょうか。
  27. 藤原享

    ○藤原説明員 情報公開が後手後手ではないかとのことでございますが、結果的にそのような御批判を受けているところでございますが、これらの捜査資料の公開につきましては慎重に検討、対処してきたところでございます。御指摘の公開の対応につきましては、今後とも市民各位の御協力が十分得られるよう積極的に努力を重ねてまいりたいというふうに考えております。
  28. 井上一成

    ○井上(一)委員 情報公開に積極的に取り組んで、市民の協力を得ながら犯人逮捕に全力を傾注していただきたい、私はこういうふうに思います。  さらに自動車ナンバー三六八四ですね、この自動車が、犯人の一連の行動の中でこの三六八四の自動車ナンバーが出てきたわけでありますけれども、犯人の車と断定できるのかどうか、あるいはどの時点でこのナンバーを掌握されたのか、この点についても聞いておきたいと思います。
  29. 藤原享

    ○藤原説明員 三六八四の自動車ナンバーが犯人の車と断定できるのかという御質問でございますが、事実関係を申し上げますと、六月二日、犯人が取引場所に指定してまいりました摂津市の焼き肉店、たしか大同門という名前であったと記憶いたしておりますが、それと現金授受の場所として指定がありました場所の付近を通過した地点、この二カ所の地点で不完全な車両ナンバーをチェックしておるという事実がございます。そういうことで、私どもはこの関係について一応捜査を行っておるということでございます。
  30. 井上一成

    ○井上(一)委員 さらに、犯人からの脅迫状は今までに何社に来ているのか、このこともひとつここで明らかにしていただきたいと思います。
  31. 藤原享

    ○藤原説明員 御質問の脅迫状は十月初旬ごろ「社長え」という形でタイプで打たれた脅迫状のことであろうと思いますが、この関係の脅迫状について私どもが承知いたしておりますのは、全国で二十七社にこれが送られてきておるという形でございます。
  32. 井上一成

    ○井上(一)委員 私は冒頭にも申し上げたように、国民全体を人質にした無差別殺人にエスカレートしていく、まさに社会不安を引き起こしているこの問題については、当局の今後の犯人逮捕への一層の努力を強く期待したい、このように思います。  さらに、関係省庁の見解をここで問うておきたいわけでありますけれども、今回のこの問題は食品業界に大きな問題を投げかけ、そのことは大変な社会問題になっているわけであります。食品業界に働く人たちの不安解消も含めた、あるいは雇用の面も含めた対応策は一体いかがなものなのか、このことについても私はぜひここでただしておきたいと思うのです。
  33. 竹村毅

    ○竹村説明員 さきのグリコ事件では、江崎グリコ株式会社及びグリコ栄養食品株式会社における生産量の減少に伴いまして関連下請中小企業にも影響が及んだことから、従来大型倒産に限られていた雇用調整助成金の指定事業主の指定基準というものをこのグリコ事件を契機に改正しております。そしてこの両社を雇用保険法に基づく指定事業主として指定いたしまして、雇用調整助成金の利用にふりまして関連下請中小企業におきます労働者の失業の予防を図ったところでございます。  今回の森永事件におきましてもパートタイマーを中心にして現在でも従業員の自宅待機等の雇用上の影響が出ておりますので、今後この事件の進展によりまして雇用不安が一層深刻化するということも考えられますので、これら森永及びその関連中小企業におきます実情を把握するとともに、雇用不安の解消と失業の予防に努めるという観点から、森永製菓株式会社に対しましても江崎グリコ等の場合と同様に指定事業主として早急に指定できるよう現在検討を進めているところでございます。
  34. 井上一成

    ○井上(一)委員 さらにこの問題は、流通機構にも混乱を生じさせ、大変な問題になっているわけであります。とりわけ販売店の中での小売店、菓子類を主として販売する小売店に大きな打撃を与えているわけであります。そういう意味で、販売店、とりわけ小売店の営業を保護する、生活を守っていくという観点からの対応策がとられているのかどうか、あるいは今後とろうとしているのかどうか、この点についてもひとつ聞いておきたいと思います。
  35. 増田正尚

    ○増田説明員 今回の事件は、流通中の食品に毒物を混入したということ、それから森永に対する脅迫を確実なものにするために、流通業界に対しても森永製品を扱うなという脅迫を行うなど、これまでにない犯罪でございまして、流通業界におきましても、森永製品をやむを得ず引き揚げざるを得ない立場に追いやられているわけでございます。  こうした事件の性格から、私どもといたしましては事件の解決のために犯人の早期逮捕を心から願っておるわけでございますけれども、農林水産省といたしましても、この問題は一企業の問題ではなくて、食品の生産流通の秩序全体にかかわる問題となっているという理解に立ちまして、まず森永製菓を少しでも支援していくことが重要だと判断いたしまして、当面の緊急措置として、同社の行っております職域チーム販売等に対して協力していくこととし、また他の省庁等にも協力要請を行っているところでございます。今後とも、事態の推移を見ながら、森永製菓、流通業界と緊密な連携をとりながら、流通業界の混乱を少しでも小さくするよう努力してまいりたいと考えております。
  36. 井上一成

    ○井上(一)委員 当面、グリコ、森永に対する救援措置はとられているわけでありますが、さっき警察庁の方からお答えがあったように、それ以外の弱小メーカーも含めて、具体的にはシールが張られていたという事実があったわけでありますから、食品業界全体が対象になり、それはそれを消費する国民全体がねらわれているということであり、私はここで販売業界、販売店に対する対応策、とりわけ小売店に対する保護ということも考えていくべきではないだろうかというふうに思うのです。このことについてはいかがなんですか。
  37. 増田正尚

    ○増田説明員 先生の御指摘のように、この問題は単に菓子だけの問題ではなくて、全体にかかわる問題だというふうに私どもとして理解いたしております。今後につきましても、森永製品だけではなくて、菓子全体の売り上げにも影響が出てきているというような状況もございますので、流通業界の影響等について実情の把握に努めて、事態の推移に応じまして、他省庁とも協議しつつ、所要の措置を検討してまいりたいというふうに考えております。
  38. 井上一成

    ○井上(一)委員 各省庁間の連絡会議というのでしょうか、対応策についての連絡等は随時やられているのでしょうか。
  39. 増田正尚

    ○増田説明員 この事件につきまして私どもといたしまして、まず事件の性格上厚生省とも連絡をいたしておりますし、それから通産省、大蔵省、労働省等にも必要に応じて御相談をするということでいろいろと検討策等を考えてまいりたいというふうに思っております。
  40. 井上一成

    ○井上(一)委員 まとまった組織としてそういうものをつくられているのですか。
  41. 増田正尚

    ○増田説明員 今のところ必要に応じ随時行っているということで、まとまったものとしてまだ設けられておりません。
  42. 井上一成

    ○井上(一)委員 大蔵大臣にお尋ねをしたいと思うのです。  この問題は、社会不安あるいはいわゆる国民生活への危機、さらにはあらゆる意味で社会全体がパニック状況、あるいはもうどういう表現をしても言い尽くせないほどの許しがたい犯罪行為であるわけなのです。まさに一省庁、犯人を逮捕すべき警察庁の問題だとか、あるいは食品業界の対応策としての農林あるいは通産の問題だ、そういうとらえ方でなく、政府が一体となってそのまとめ役というか、窓口もきちっとつくって、国民全体で防犯体制というか防御体制をより強固にし、すきを与えないようにあらゆる情報を交換しながらこのグリコ、森永犯人逮捕への対応を進めていくべきである。危機管理大臣という担当大臣が置かれた。まさにそういう意味では、政府が主管大臣を先頭にこの問題に取り組むべき必要があるのではないだろうか。  ニューリーダーであり、閣内における有力な閣僚でいらっしゃる大蔵大臣が中曽根総理に進言をし、かつまた大臣の冒頭の認識に立つならば、まさに閣議等で発議をして、国、政府挙げてこの犯人逮捕への対応策を検討し、かつ実践すべきである。犯人逮捕は警察に任せておけばいいのだ、あるいは食品業界の問題は農林や通産に任せておけばいいのだという問題で済ませるような事犯ではない、こういう強い認識を持つのです。ひとつ大蔵大臣の御所見をお聞きし、今後大蔵大臣の積極的な政府への働きかけを期待したいわけでありますが、いかがなものでございましょうか。
  43. 竹下登

    竹下国務大臣 正確な日にちは忘れましたが、先般の閣議におきまして中曽根総理大臣から、席上、各閣僚に対しての御指示がございました。その御指示をまつまでもなく当然私どもといたしましても配慮していかなければならぬ問題として、私の守備の範囲内においては信用問題、金融問題等についての情報収集等をいたしておったわけであります。その後私が総理に概要を御説明申し上げましたところ、総理の御発言の趣旨も、今井上委員の御発言がありましたように、そうした発言がこういう国会の場等において行われることが、すなわち森永、グリコのいわば労使を含めた企業全体に対して精神的サポートを行うことであると同時に、国民全体に対する支援体制の環境をつくるという意味において効果があったという御認識ではなかったかというふうに私は御報告の際に感じたわけであります。  確かに捜査の問題につきましては専門的、機密、場合によっては公開、いろいろな手法があろうかと思いますので、捜査そのものに対しては、私どもは情報提供等々を必要に応じて申し上げるという立場でございましょうが、全体としてこれに対応していくかどうかという問題については、私にここで所見を求められましても、私もにわかにこれに対してかくすべきであるという自信を持ったお答えをするだけの準備がございません。したがって、私が今なすべきことは、今井上委員が本委員会において発言されましたその考え方は私どもも決して否定するものでもございませんし、そういう御発言そのものを総理に正確にお伝えして、その上の判断の問題ではなかろうか。趣旨そのものは私が素直にお伝えすべき問題であるというふうに認識をさせていただきました。
  44. 井上一成

    ○井上(一)委員 一日も早い問題解決、犯人逮捕へ向けてすべての力を結集していただき、私たちもその努力をしたい、こういうふうに思いますし、大きな社会不安を引き起こしているこの問題に対する対応をぜひ大臣から総理にも進言していただきたい、こういうふうに思います。  次に、私は自動車保険、とりわけ任意保険について質問をいたしたいと思うのです。  七月から保険料の改定がなされ、それぞれの保険会社がいろいろと営業努力をしているわけでありますけれども、その中で特に大阪を中心として新規引き受け、あるいは事故者の契約継続をストップさせるなど、若年層にはもう今まで契約引き受けについては一定の厳しい規制があったようでございますが、それらの若年層だけでなく、広く引き受け規制が強まっているという実情があるわけでありますが、これは大変大きな社会問題であると私は考えるわけです。大蔵当局はこのような事実を承知しているのかどうか、このことについてお尋ねをしたいと思います。
  45. 加茂文治

    ○加茂説明員 当局といたしましては、このような問題につきましてはかねてから関心を持って調査をしてきたところでございますが、一部に御指摘のような事実があることは調査の中で判明してきております。
  46. 井上一成

    ○井上(一)委員 そういう事実が判明しているということですが、いわゆる調査の過程で判明したその引き受け規制を強化しているものの中で、どういう点が問題があるのか。あるいは引き受けに当たって保険会社が作成されるマニュアルについても大蔵当局は承知をしているのかどうか。あるいはそういう手引書というのでしょうか、そういうものにも問題がないのかどうか。こういう点についてはいかがなんでしょうか。
  47. 加茂文治

    ○加茂説明員 保険会社の公共的性格あるいは保険による被害者救済という観点から問題があり、好ましくないと考えております。また、マニュアルにも一部行き過ぎがあることは問題であり、大変遺憾だと考えております。
  48. 井上一成

    ○井上(一)委員 問題があり、遺憾であると。あるいは保険の性格からしても、私の調査によればいわゆるマニュアル、手引書の中に非常に問題の多い事項があり過ぎる、こういうふうに私も思うのです。そういうことはどういう影響を及ぼしているかと言えば、保険代理店、さらには社員、外務員というのですか、そういう人たちが自分たちの仕事が非常に制約を受けている、そういう加入規制の強化のために。それはひいてはみずからの生活の問題、生活権の問題にも絡んでくる、このことにも問題がある、大きく影響を及ぼしているということになるわけですが、その点についてはどういう御認識に立っていらっしゃるのですか。
  49. 横山利秋

    横山委員長 加茂保険部長、もう少し詳しく言ってください。あなたの言っていることは何が問題なのかよくわかりません。
  50. 加茂文治

    ○加茂説明員 引き受け規制が強まり、契約の締結が円滑に行われなくなるということは、代理店や社員、外務員の生活権とも絡む問題であると考えております。契約の締結が円滑に行くように指導してまいりたいと考えております。
  51. 井上一成

    ○井上(一)委員 私の調査によればもうほとんどの人が新規加入ができないような厳しい手引をつくっているわけでありますし、ひどい手引書によればとんでもない条件を、あるいはまさに人権にかかわる問題も含めて厳しい加入要件をつくって規制を強化している。これはまことにもってけしからぬ話であります。損害保険会社の企業性というものについては私も十分理解をします。だからとりわけ事故率の問題等について、保険料でのいわゆる割り増し、割引という点についての配慮等はやむを得ないとしても、企業の企業性は理解しながらも、このような引き受け規制の強化というのはまことにもってけしからぬ話であり、まさに行き過ぎである。当局調査の段階で行き過ぎを認めているわけでありますから、今後、これらの行き過ぎた保険会社に対する指導監督というのですか、そういうことについてどういうように対応をなさろうとしているのか、聞いておきたいと思います。
  52. 加茂文治

    ○加茂説明員 調査の中で判明いたしました行き過ぎにつきましては、必要な是正を図るよう損害保険会社を強く指導監督してまいりたいと考えております。
  53. 井上一成

    ○井上(一)委員 そのことは、強く指導監督をしていくということは、私が指摘した手引書等も含めて、いわゆる任意保険のすべての新規加入あるいは継続加入に対しての指導ということであるわけですね。遺憾なマニュアルの間違った点については直ちに是正をする、そういうことも含めてですね。
  54. 加茂文治

    ○加茂説明員 ただいま先生がおっしゃったとおりのことでございます。よろしく。
  55. 井上一成

    ○井上(一)委員 私は、この点については当局の強い監督指導ということを見守って、さらにその後において結果を見て、また質問をいたします。  続いて大蔵大臣にお尋ねをしたいのですが、大臣、五十九年度人勧をどのように取り扱うか、どのようなお考えを持っていらっしゃるのか、この点についてひとつ聞いておきたいと思います。
  56. 竹下登

    竹下国務大臣 まず一つには、財政当局としての立場から申し上げることにいたします。  人事院勧告制度尊重の基本精神、これは変わりがございません。それから一方、国家財政全体の見地から現在の財政事情等を考慮いたしますならば、多額の財源を必要といたします人事院勧告の取り扱いについては、私どもの財政当局の立場からすれば厳しい姿勢でこれに臨まざるを得ないというふうに考えております。  しかし、いずれにいたしましても、勧告の取り扱いは、国政全般との関連を考慮して給与関係閣僚会議において慎重に今検討中という段階であります。徐々に話をいたしておるところでございますが、従来の経験あるいは慣例等からいたしましても、できるだけ早い機会に結論を得なければならない段階に来ておるという認識をいたしております。
  57. 井上一成

    ○井上(一)委員 それでは、防衛費の対GNP一%枠と人勧の決定、この絡みでひとつ所信を聞いておきます。さらに、九月十九日に経企庁が中期経済見通しを発表したわけですけれども、この経済見通しと一%枠との関係をどう把握していらっしゃるのか、この点についても聞いておきたいと思います。
  58. 竹下登

    竹下国務大臣 まず人事院勧告そのものの精神からいきますならば、私は人事院勧告そのものの取り扱いの前提としてのこの防衛費の一%問題というものが、まず防衛費の一%問題ありきという形で議論を進めるものではないという基礎認識には立っております。しかしながら、いわゆる一%というものが結果として堅持できるかどうか、こういうことには関心を払わざるを得ないわけでございます。それで、実際問題GNPの推移あるいはベアの取り扱い等について見通しを述べるということになりますと、先国会でたびたびお答えいたしておりますように、なかなか変動するものでございますから難しい点はございますが、五十一年の三木内閣の防衛費に関する閣議決定の方針は、これを守っていくということには変わりございません。これは人勧という問題とは別にその問題は確かに存在しておるという認識の上に立っておるわけでございます。  そこで、この問題といわゆる経済見通しの問題でございますが、私どもは経済見通しにつきましては、本格的な見通しの改正というのは普通十二月にやるわけであります。したがって、議論もいたしましたが、経済企画庁独自の見解でもって、やはり国民の、いわば経済運営とかそういうことの参考に資するために、絶えず発表した方がいいじゃないか、これも私は一理あると思いますので、経済企画庁独自で、いわば名目見通し、実質見通しの改定が、見直しの発表が行われておるわけであります。  したがって、その見直しでいきますと、四千億ぐらいたしかGNP自体が上方修正されるということになるわけであります。が、今の場合、その見通しというものが絶対のものであるという前提の上に立って、さて、すき間がどれぐらいあるかという議論をするには、私は、事ほどさように政府全体も絶対とは言えないといいますと、その議論をするときにはやはり当初の見通しの上に立って議論すべきものかというようなことも内々では議論をいたしておるところでございますけれども、やはりGNP比自身は動きますし、まず人勧ということよりも別の時点で、防衛費が一%を超えないという三木内閣の方針はそのまま堅持しておるという前提の上に立って議論を進めようというような考え方で今おることは事実でございます。したがって、経済企画庁独自とはいえ、あの見通しはおおむねそう違っておるとは私どもも理解しておりませんが、名目成長率、実質成長率とも、我々の考えとそう離れておるとは決して思いませんが、それがトタでGNPに結びついて、それをそのまま確定さすかどうかという取り扱いになるともう少し慎重にならざるを得ない、こういうのが実情でございます。
  59. 井上一成

    ○井上(一)委員 中曽根総理も先国会では、この一%枠は全力を尽くして守るのだということを国会で約束されているわけです。経済見通しと絡んでの話ではなく、三木内閣のその一%枠内という閣議決定あるいはこの評価ですね、これは来年度予算に向けても大蔵大臣としては引き続いてその評価を堅持し、その考えに立って予算編成に取り組まれる、こういうふうに理解してよろしいでしょうか。
  60. 竹下登

    竹下国務大臣 やはり昭和五十一年の三木内閣の方針を堅持しておるという姿勢の上に立って、六十年度予算においても、今委員指摘のとおりの姿勢で対応すべきものだというふうに考えております。
  61. 井上一成

    ○井上(一)委員 ここで念を押したというのは、この一%枠を撤廃しようという動きも一部にあるわけでありますので、あえて私は大蔵大臣にお尋ねをしたわけであります。  さらに、私は、単身赴任減税の問題について、ぜひ大臣のお考えを聞かしていただきたいわけであります。  既に六十年度税制改正に関する要望事項として労働省が挙げております、単身赴任者に支給される帰宅旅費及び別居手当に対する非課税措置を創設してほしい、この問題でありますが、これはもう労働省が第一項目として最優先して挙げているわけでありますし、大蔵当局が当然これは尊重されると思うわけでありますが、いわゆるサラリーマンが長年強く要望してきたことであり、むしろ政府部内からも声が上がっている、こういう観点からもぜひ実施をすべきである。今ここでどういうお答えがいただけるか、必ず確約ということじゃなく、私は、これは恐らく来年度の予算委員会の中でも大きな課題になろうと思うのです。あえて前もって大蔵大臣に、労働省が最優先し、さらには大蔵大臣もこのことを念頭に置いて予算編成に取り組まれる、単身赴任の減税についての、いわゆる非課税措置についてどういう御認識、御見解を持っていらっしゃるか、お聞きしておきたいと思います。
  62. 竹下登

    竹下国務大臣 まず、私どもが一応お手本といたします。応といいますか、一応という言葉は適当でありませんが、まずお手本といたします税の問題に対処する一つの基準は、税制調査会の中期答申、これが一つあります。そこでもいろいろ議論をちょうだいしたわけでございますが、「そもそも様々な国民の生活態様の中から特定の条件や特定の家計支出を抜き出して、税制上しん酌するにはおのずから限界がある」、したがって、客観的基準を見出すことは非常に困難だ、「新規の特別控除を創設することは適当でない」という答申を中期答申としていただいておるわけであります。  確かに、税の非課税措置という問題になりますと、例えて申しますならば、住居手当とかあるいは暖房費に充てます寒冷地手当等も、これは生活上、実費として費消されるものでありますけれども、給与支給の一形態であるという意味において、それらも全部課税対象に今はなっておるわけであります。したがって、一方、やはり単身赴任の問題は雇用政策の中で解決すべきだ、税の中ではなかなかなじまないというような議論も確かにございます。  そこで、私どもといたしましては、税制調査会でまた今審議していただいているわけでございますが、こういう国会等の議論を正確にお伝えをして、それを参考に供して、まず議論をしていただこう。が、確かに寒冷地手当の問題をどうするかとか、やはりこれは言ってみれば、雇用政策の中で解決すべきものじゃないか、いや支給されておる企業もあれば、支給されていない企業もあるじゃないか、そういういろいろな議論がありますということだけを紹介しておいて、正確に税調に今の御議論はお伝えすべきものではないかというふうに考えております。
  63. 井上一成

    ○井上(一)委員 今までの考え方としては、雇用制度の範囲内でとか雇用制度の中でと言う。しかし、そのことにおいて所得税率が引き上げられる、手当支給によって、むしろ税制度の中で検討する段階に入っている、私はこういうふうに思うのです。だから、正確にお伝えするということでございますけれども、むしろ大臣、これはやはりぜひ実現に向けて、労働省もやはりそれを第一優先に挙げているわけでしょう。閣内でそういう意見があるということですから、ひとつこの点についてはもう一度強く真剣に配慮していくという御意思を私はどうしても大臣から表明していただきたい、こういうふうに思うのです。
  64. 竹下登

    竹下国務大臣 税当局としては、バイブルでもございませんが、昨年いただいた中期答申というものが一応あります。税制理論の中からそれを取り出す議論というのは、そういう立場に立てはなかなかしにくい議論でございます。国会でもたびたび御議論があるところでありますが、したがって、今井上委員おっしゃいました、税制度の中でもう一度検討してみると。私も、これは正確にお伝えいたしましょう、こう申しているわけであります。この問題につきましては、予算編成の過程で最終的には政府一体で決めなければならぬ問題でございますが、いわば雇用政策上の問題と税制の問題というのは、本当はまだ基本論から議論のあるところでありまして、概念的におっしゃっている意味は私にも理解できる問題でございますが、それの扱いは、いわば何らかの税制上の特別措置を行うという前提で閣内でこれから議論してみますというところまで、税当局の立場からすれば踏み込めないというのが現状でございます。
  65. 井上一成

    ○井上(一)委員 次に、大蔵省昭和六十年度予算編成に当たって地方への補助金を大幅カットするという方針を出したわけですが、自治省はこれに対して、財政負担を地方公共団体に転嫁する、そういうことは一切反対であるということで素早く申し入れをされているわけであります。地方六団体はもとよりすべての地方自治体が反対をし、ひいてはこれは国民全体が反対であるという認識を政府、大蔵当局が真剣に受けとめて、地方とは協力、協同関係を維持していきたい、国と地方は車の両輪だ、そういうことを常々口癖のようにおっしゃっている政府当局が今度はいわばめちゃくちゃな補助率カットを打ち出したということは、非常に理に反するというか、現状に反するものである、そういう意味で自治省の見解をどういうふうに大蔵当局は受けとめて、どう対処をされようとしているのか、この点をひとつ聞いておきたい。  さらに、今回の対象経費は義務教育、社会保障等の基幹的な行政にかかわる国庫補助負担金であるわけでございますし、これは法律補助によるものが大半なのですね。これらの補助負担金は国と地方団体の負担区分が法律であらかじめ定められておる、そういう意味からいけば、むしろ補助金というより国にとって負担が義務づけられている負担金である、こういうように私は指摘をし、認識をしているわけです。これは、一方的なカットは地方財政法の第二条に抵触すると私は思うのですよ。地方公共団体の自主的、自律性のある事務事業の実態を無視したまさに暴挙である。憲法で保障された地方自治の本旨あるいはこれを受けた地方自治法、地方財政法、国庫負担を義務づけた義務教育諸学校施設費国庫負担法、生活保護法など各関係法令の制定趣旨との関係を大蔵省は一体どういうふうに考えているのか。むしろ一種の財政ファッショである。この財政ファッショを許すわけにはいかない。そういう意味で今回の大蔵省の考えというものはどうも理解できないし、乱暴きわまりないものである、そういう強い認識を私は持っているのですが、大臣からこのことについての見解を聞いておきたい、こう思うのです。
  66. 竹下登

    竹下国務大臣 井上委員のおっしゃいましたように、私どもが常々申し上げておりますのは、国と地方は、言ってみれば公経済を支える車の両輪であるという認識の上に立って今日までもその都度協議協調しながら予算編成あるいは地財計画等に当たってきたわけであります。  今日の問題につきましては、私どもといたしましては、要するに、ことしの場合におきましてもいわゆる概算要求基準の設定をぎりぎりと、いろいろな議論がございますが、経常部門で三角の一〇%、投資部門で三角の五%という基準を設定したわけであります。そうすると、各省庁におかれて、言ってみればその枠内でいろいろな工夫がなされるわけです。その工夫の一つとしていわば制度、施策の根本にさかのぼってこの負担分をも含めていろいろな検討がなされ、それが概算要求基準の枠内で八月末に提出されたというのが現状でございます。  今おっしゃいますとおりに、補助金というもののおおむね八〇%は法律補助でございます。そしてまた、別の考え方で地方自治体を通っていくものが八〇%、こういうことになります。そうして公共事業と文教と社会保障、これを含めますと、これまたちょうど八〇%になるわけでございますから、それぞれ八〇%が組み込まれてまいりますと、確かに今おっしゃった法律補助に基づくものが非常に多い。さようしからば、その時点では双方の協議によってこのものはやはり負担を変えていくことが適切だという合意に達したならば、これは法律改正もお願いしなければならぬものも出てくるだろう。やはり厳しい財政事情の中でございますので、公経済、車の両輪たるものが最終的には協議をしながら各省の要求に対応していく、こういう各省それぞれといわば地方公共団体、それを代表される自治省、そして大蔵省との最終的な協議にはなるであろう。あらかじめ国負担は地方にこれをいわば強制するというファッショ的考え方で対応してはならないという考えは基本的に持ちながらも、現実的に厳しい概算要求基準の中で出てきたものの中には今先生の御指摘なすったようなものが出ているということは事実であります。最初は二者協議でございましょうが、最終的には三者協議等において、制度、施策の根本にさかのぼって結論を出していかなければならぬことであろうというふうな考え方であります。
  67. 井上一成

    ○井上(一)委員 私は、いわゆる財政上の運用で補助負担にしているわけであるので、少し考え方がおかしいということをまず指摘したわけです。まさに負担金であるのをあたかも政府の裁量で補助していく、そんな考え方を持ってもらうとこれは間違いである、今回の大蔵省の見解というのはそれこそ財政ファッショだ、こういうふうに指摘したわけです。  それじゃ、今回の補助負担金の一律カットでどんなところが問題になるのか。生活保護費、児童保護措置費あるいは精神薄弱者援護措置費、身体障害児の援護費、老人福祉施設保護数、身体障害者更生医療等給付費、いわゆる社会的弱者に対する社会保障の関係がその中心になっているわけなのです。こういう大蔵が考えるようなことをすればまさに地方が財政的に行き詰まっていく、その行き詰まったことは、そこに住むいわゆる弱い人たちに対して大きなしわ寄せ、社会的弱者を切り捨てていかざるを得ない、そういうことにつながっていくのではないだろうか、僕はそう考えるわけです。まさに社会的弱者に対する生きる権利というものが保障され得ない、そういうような予算編成の方針というのは真っ向から否定しなければいけないし、誤った考え方である。  十年も十五年も前には、弱者の生きる権利を保障していくために地方が新しい制度をどんどんつくってそれが国の制度に切り変わっていった、そういう歴史的な背景もあるわけなんです。そういうことを考えれば、地方の先行的な行政の果たしてきた役割も十分評価しながら、国がこれからも福祉国家としての定着により努力をしていかなければいけないと思うのです。十五年前の福祉は今日はもう当たり前の、いわば当然の行政になってきているわけなんです。思いやり行政じゃないのですよ。そういうことから考えたら、まさにこの時期に大蔵が考えている国庫補助負担金の補助率カットというものは、社会の流れに逆行するし、まさに財政ファッショきわまりない悪い考え方だ、法の無視。さっき、両者が話し合いをして法改正云々と言われましたけれども、そういうこともやらずに一方的に今回の一律カットの問題は、弱者切り捨て、そして大蔵ファッショの最たるものだ。  大臣、そういう意味でこの問題は許しがたい方針だと私は思うのですよ。何もこれは厚生省だとか、いや何省だということだけじゃない。そういう意味で大蔵大臣もう一度、私の指摘したこと、そして何を私たちは考えていかなければいけないか。法を無視して、法で決められた国が負担すべきその負担金を、両者が話し合いしながら予算の枠内でということでこれは決まっていくわけでしょう。そういう意味からひとつぜひ思いとどまるように、自治省の要望、申し入れ、地方公共団体の強い反対を十分認識してもらって、善処方を特にお願いをしておきたい、こう思うのです。大臣からのお考えを、そして私のこの考えに対しての大臣の認識をさらにここで聞いておきたい、こういうふうに思います。
  68. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる社会保障制度、施策、それが予算の支出を伴ってきた、まあ経過的には確かに御指摘なさいましたように地方自治体等が、ある程度の余裕のある自治体からではあったといたしましても、一つの知恵によってなされたものを、これはいい制度だから国全体に普及徹底さすべきだ、こういうことから国の施策となって、それが今日、福祉政策の一環として実施に移されておるという経過をたどっておるものも私はたくさんあるというふうに思うものであります。基本的には私どもは、やはり今の国の財政事情というものが今年度末には実に百二十二兆になります。百二十二兆と言えば、仮に六十年間で十年間に六分の一ずつ償還し、七%の金利を考えましたならば、三百九十兆というものを後世の納税者の負担にゆだねるということになるという、財政を預かる者としては、税金の先食いであり、そしてまた後世へのツケ回してあるという点において一番心を痛めるところであります。  したがって、そういう異例に厳しい状態にあります中で、これから国家財政が対応力を回復を図っていかなければならぬということになりますと、歳出面のいわばカットということにももちろん意を注がなければならぬ、と同時に、そうなりますと、ぎりぎりいってまいりますと、やはり既存の制度、施策についてもその根源にさかのぼった議論をしていかなければならぬというところに、今御指摘を受けましたところのいわゆる補助率のカットの問題、言いかえますならば国と地方との負担、分担の率の改定の問題、こういうものが議論として出る環境にあることは事実であります。従来も財政再建期間中という前提のもとに行革特例法についてそのことをお願いをしたこともあるわけであります。  私どもとしては、今の国の財政がぎりぎりのところまで来たという事実認識の上に立って、国民次元の理解と協力を求めながら制度、施策の根本にさかのぼり、これは自立自助の範囲内でやるべきものだ、これはやはり地方自治体が中心にやるべきものだ、これはまさに国そのものが手がけるべきものだという、いわば負担分任というような点にまでさかのぼって議論をしていこうという状態の中で、今の御指摘なさいましたような問題が厳しい概算要求基準の中で出てきたわけでございますので、これから私どもは関係方面との議論を詰めて結論を出していかなきゃならぬ課題だというふうに考えておるところでございます。当然、地方自治に携わって今日まで築き上げられた井上委員の立場、あえてその立場のみに立っておっしゃっているとは思いませんが、そうした方面からは今のような厳しい御指摘が出るであろうということもやはり覚悟をして、私どももそれ以上の理解を求めていく努力をしなければならぬのではなかろうかという心境であります。
  69. 井上一成

    ○井上(一)委員 この問題については、またいずれかの機会にさらに詳しく質疑を続けたいと思います。  私はせんだって、アフリカ、ケニアの国を訪ねて、アフリカの人たちが今、愛と平和と統一を旗印に世界平和に全力で取り組んでいる。我が国も及ばずながらアフリカ月間をつくって、政府全体がアフリカへの援助に努力をしている。こういう状況の中で、私は南アフリカとの問題についてひとつぜひ聞いておきたいと思うのです。  御承知のように南アフリカの人種隔離政策、いわゆるアパルトヘイト政策、このアパルトヘイトに対しては我が国も反対をしてきているわけです。ところが今回、南アフリカからの航空協定の締結の申し入れがあったように聞き及んでいるわけでありますけれども、このことについて申し入れがあったのか、あるいはこの航空協定の申し入れに対してどういうように対応しようとしているのか。この点についてぜひ聞いておきたいと思うわけであります。
  70. 三宅和助

    ○三宅説明員 お答えいたします。  まず、南アの政府の方からは、航空協定の締結の交渉の申し入れは公式にも非公式にも最近ございません。ただ、南ア航空機の乗り入れにつきましては非公式に打診があったという事実が最近ございます。  それに対しまして、まず航空協定の方でございますが、政府としては現下の情勢下では締結することをいずれにせよ考えておりません。それからなお、乗り入れにつきましても、非公式打診に対しまして、嚥下の情勢下にはできないということをはっき勝係者に非公式ながら伝えでございます。
  71. 井上一成

    ○井上(一)委員 さらに私はもう一点、先ほども指摘したように、アパルトヘイトを非難して、外交関係は結ばずに国連での種々の非難決議に同調してきたわけでありますけれども、経済面では希少金属の輸入先としてアメリカに次いで我が国は貿易相手国になっているというのが現状であるわけです。このことは先ほどから私が指摘している南アの人種隔離政策、いわゆるアパルトヘイト政策に対してやはり厳しい一定の反省を求める。そういう意味からも本当に我が国の経済面、いわゆるダミーを含めて、そういう関係がいいのかどうか。これはひとつ大蔵大臣、特に大手企業が合弁的な、ダミー的な手法で南アに対する貿易を深めつつあるわけでありますけれども、この点についてはどういう認識を持っていらっしゃるのか、大臣から聞かしていただきたいと思います。
  72. 三宅和助

    ○三宅説明員 現在、政府といたしましては、まず直接投資など現地法人の設立を含めまして許可してないという状況でございます。貿易関係につきましても、貿易関係はございますが、この一年、いわば平衡状態でございまして、少なくとも直接投資その他につきましては、政府の方としてはこれを許可してないという状況でございます。
  73. 井上一成

    ○井上(一)委員 ナミビアからの地下資源輸入は、一九七四年の九月二十七日の国連ナミビア理事会制定のいわゆる「ナミビアの天然資源に関する布告」において地下資源輸入を禁止しているわけであります。昨年三月の外務省発行の「アフリカ便覧」によると、ナミビアからの地下資源輸入の事実が記載されているわけなんです。この事実は国連ナミビア理事会代表団来日の際に外務省も認められたわけです。同理事会は外務省に善処を求めたわけであります。その後外務省はそれじゃいかなる対応をしたのか。ひとつこの点について具体的に聞いておきましょう。
  74. 三宅和助

    ○三宅説明員 ナミビアに関しましては、国連決議に従いまして、独立につきまして日本政府としてもこれを支援しているということは先生御案内のとおりでございますが、ナミビアからの輸入につきましては、わずかながらでございますが、現在輸入を続けております。ただ、この問題につきましては、別途今ナミビアの解放団体である南西アフリカ人民組織と南ア政府との間で停戦に向けて事態が進展しつつあるということで、事態の進展を我々は注意深く見守っている状況でございます。
  75. 井上一成

    ○井上(一)委員 大蔵大臣、基本的な問題としてここで確認をしておきたいのですが、南アに対するアパルトヘイト政策の非難決議に我が国は加わっているわけでありまして、いわゆる人種隔離政策を改めさせなければいけないし、そういう政策というものは否定していかなければいけないわけでありますから、これはもう人権の問題を含めて、世界の平和を含めて、大臣としてやはり今後も南アに対する対応というものについては変わりなく厳しい対応を堅持されるというお考えをお持ちであると思うのですが、ここで重ねて私は確認をしておきたい、こう思うのです。
  76. 竹下登

    竹下国務大臣 いわば外務省でお決めになった方針を閣議において確認するという立場においては、私もそうした問題に対して無縁の立場にあるわけではございません。したがって、私どもといたしましては、従来からこの外務省のとっておられる方針、そしてそれを確認しておる政府の立場というものを基調として堅持すべきものであるというふうに考えます。
  77. 井上一成

    ○井上(一)委員 私の与えられた時間が参りましたので、最後に一問だけ。  大蔵大臣、いわゆる国宝に指定された重要文化財にあなたはごく最近触れられたというか、見られた機会があるのかどうか。我が国には文化財として非常に優秀なものがたくさんあるわけでありまして、それの保存には十分な配慮が必要である。さらに反面、多くの人にその文化財を見ていただけるようないわゆる公開、保存と公開、公開をすることによって保存に影響が出るわけでありますけれども、十分な予算措置を講じながら文化財への保護に気を配っていくべきである、こういうふうに私は思うのです。そして、一人でも多くの人にすぐれた文化財を知ってもらうということも大事でありますから、そういうこともどんどん機会をつくっていく。そのための予算措置というもの――防衛費云々、防衛費突出、防衛費に相当な予算を食っているということは僕はここでは多くを語りません。八百年も千年も前の日本の優秀な文化財を多くの人に見ていただく機会をつくる、そしてそれが長く保存されるようなそういう財政援助、どんどんそういうところに予算を配慮していくべきである、こういうふうに思うのです。  最後になりましたが、この一問を質問して、私の質問を終えたいと思うのです。大臣からのお答えをいただきたいと思います。
  78. 竹下登

    竹下国務大臣 文化財の保護、またはこれを可能な限り国民に公開する、そうした施策の重要性、あるいはたまたま私と井上委員と同じ、これは個人の立場で阿弥陀堂の修復とかそういう問題に対する税制上指定寄附の措置とかそういういろいろなことがございますが、その重要性については私も井上委員と同じ考え方であるわけであります。ただ、予算という問題になりますと、私は文化財そのものから見た専門家ではございませんので、恐らく今日の段階におきましては概算要求に伴い、それを担当主計局で念査を始めたばかりじゃないか、こういう状態でありますが、その御意見そのものは、私も肯定をいたします。
  79. 井上一成

    ○井上(一)委員 終わります。
  80. 横山利秋

  81. 細谷昭雄

    細谷(昭)委員 去る十月四日の参議院の決算委員会におきまして、我が党の目黒議員より指摘がありました秋田駅前中央地区市街地再開発事業にかかわる税務調査について国税庁にお尋ねをしたい、こう思います。  まず最初に、大法人の重点調査体制、これがこの四日の決算委員会で御答弁がありましたけれども、この一環として株式会社大成建設の実地調査を五十九年度中、つまり今年度中に行ったものかどうか、まずこれをお伺いしたいと思います。  と申しますのは、このことはこの事業をめぐる裏金云々、この疑惑の根源になっておるというだけに、できるだけこれは結果の公表ということをやるべきじゃないか、こんな考え方からお尋ねするのであります。
  82. 村本久夫

    ○村本説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生からもお話がございましたが、国税庁といたしましては、大法人に対します調査につきましては重点調査体制をとっております。特にその中でも規模が大きい大法人につきましては、国税局の特別国税調査官というのが所掌しておりまして、毎年のように徹底した調査を行う、しかも投入する人員、日数、そうしたものも相当なものを投入してやっているということで御理解をいただきたいと思う次第でございます。
  83. 細谷昭雄

    細谷(昭)委員 それはこの前の四日の議事録にもあるわけです。私が聞いているのはそうじゃなくて、具体的に五十九年度中、大成建設を実地調査をやったことがあるのかどうか、端的にお伺いしたいと思うわけです。
  84. 村本久夫

    ○村本説明員 個々の法人につきまして調査をしたかどうかということにつきまして直接お答え申し上げますことは差し控えさせていただきたいと思いますが、先ほど申し上げました御答弁によりまして御賢察いただければと思う次第でございます。
  85. 細谷昭雄

    細谷(昭)委員 恐らく部長がお話しなのは守秘義務ということにあるのではないか、こう思います。私はこの守秘義務といった問題について、ひとつ議論をしたいというように思います。  お伺いするところ、大臣は途中で御所用のために退席されるということでございますので、これについては大臣からもお伺いしますので、ひとつお答え願いたいと思うのです。  まず第一に、公務員の職務上知り得た秘密については、これは当然個人の権利を守るという観点からすると厳しく守らなければならない、私もそう思うわけであります。しかし、これはプライベートな人権を守るという立場からでありまして、常に国民に第一線で接触されております公務員の皆さん方は個々人の個々の問題については当然秘密を守らなければならないと思うのですが、国税当局が全体としてつかんだ情報、これを同じく守秘義務という形で論ずるということは、これは情報の矮小化でありますし、国民の知る権利と著しく背馳する問題でございます。行政当局でつかんだ情報というのはその集積でございますが、あくまでも守秘義務というのは公務員個人の知り得た問題、そして行政当局がつかんだいろんな情報というのは最大限これは国民の知る権利に奉仕しなければならない。  ですから、現在情報公開制度というのが要望されておりますし、必要であるわけであります。税務当局があくまでもこの前の参議院と同じ守秘義務ということで大成建設そのものの実地調査をしたのかどうかさえも明らかにしないということになりますと、これは社会が持っておる今回の事件に絡む疑惑というものを解明できないという社会正義上不公平な問題になるわけであります。こういう議論というのは今までしたことがないと思うのですが、あえて私は守秘義務とは一体何なのか、このことについて論じたいと思うわけでありますので、まず最初に国税庁長官からこの問題についての考え方をお聞きしたいと思うわけであります。
  86. 冨尾一郎

    ○冨尾説明員 お答えをいたします。  先生がただいまおっしゃいました守秘義務の問題につきましては、実は私どもとして、税務当局としては二つの守秘義務があるということをまず冒頭申し上げさしていただきたいと思います。  一つは、公務員一般の国家公務員法に規定されております守秘義務がございますが、実はそれ以外に税務職員には各税法に基づく守秘義務がございます。なぜ税法に一般国家公務員の守秘義務のほかに、さらにそれよりも罰則の重い守秘義務が設けられておるかという趣旨につきましては、僭越でございますが、私どもの理解を申し上げさしていただきますと、私どもが行っております税務調査というものは、原則として一般納税者の御協力と御理解をいただきながらやらせていただく任意調査でございます。したがいまして、納税者の方から納税者の企業の実態なり経営内容なり収益状況というものをきちんと説明していただくためには、納税者が私どもに説明された事柄につきましては決して他言をしないという意味での守秘義務ということで、納税者に率直に私どもにありのままの姿をお話ししていただく、このような建前で税務調査が円滑に行われるということが確保されているんだというふうに理解をさせていただいております。  したがいまして、私どもとしては、税務当局に対しては企業の内容、税務調査の関係でどのようなことを申し上げても決してこれは他言されない、そういう信頼のもとに税務調査を進めさせていただいておりますし、私どもとしては税法上の守秘義務も加わっておりますので、一般的に個別問題についての調査内容につきましては申し上げられない、御答弁を差し控えさせていただくということが従来からの一貫した私どもの考え方でございますので、御理解いただきたいと思います。  情報公開との関連ということをおっしゃいましたが、基本的に私どもとしては税務調査の上でそういうふうな一般よりも重い守秘義務が課せられているということを御理解いただきたいということでございます。
  87. 細谷昭雄

    細谷(昭)委員 それでは具体的にお聞きしたいのです。こういう問題なんです。秋田南税務署というのは、これは国税庁長官の監督下にある役所でございます。この秋田南税務署の徴税官がこの八月に本事業に同意しない境田さんという人に裏金が渡っておるということを指摘し、あなたは申告漏れでありますよということで、この境田さんという人は八月三十一日付で商税務署に追加納税をしておるわけであります。私は、個人に対してそのほかに幾ら幾らだれに渡したのかということを今国税庁の長官に明らかにせよと言っているのではありません。そのことは守秘義務だと思います。しかしながら、商税務署としてこの一連の申告漏れを指摘しながら、総額何億円について追加徴税をしたとか、こういうことを税務当局が公表したりそういう情報を提供したりすることは徴税官の守秘義務とは私は別問題であるというふうに思うわけであります。  つまり政府の政治的な、行政的な判断というものは当然あるわけでありまして、このような疑惑の根源になっておるのがその裏金である。この裏金について具体的にそういう調査をしたことがあるのかどうか。これを言えないということになりますと、今言った徴税というその職務を国民の知る権利よりも優先させるということになるわけであります。私は、そうじゃない、どちらもいわばバランスをとるという、そういう公平な観点というのが国税庁といえども必要であるというふうに思いますし、ましてやこういう疑惑の根源になっておるこの大成建設の裏金の問題でありますので、当然これは知る権利を我々が持っておるわけであります。あったのかないのか、そういう調査をしたことがあるのかどうなのか、これさえも言えないということになりますと、国民の知る権利を徴税官の特別な地位というか立場でこれを黙視するといいますか、国民の権利というのを認めないということになるわけでありまして、極めて不合理な、不公平なことじゃないか、私はこういうふうに思いますが、大蔵大臣、これはどうしても大蔵省自体としても公平な原則からしてその事実を認めるべきじゃないか、私はこういうふうに思うのですが、いかがですか。
  88. 竹下登

    竹下国務大臣 あるいは若干正確を欠くかもしれませんが、そもそも議会制民主主義、そこに情報公開、それからその根源になりますのは、今委員指摘になりました、知る権利と知らす義務というのが二つ存在しております。それともう一つ絡みますのは、国政調査権と守秘義務、この問題がもう一つ絡むわけであります。  元来、じゃ守秘の対象とは何ぞやということになりますと、いわば外交機密とそれから人秘――人事の秘密、それから二重にかかっているのが税務上の守秘義務、三つがよく議論されるところでございます。なかんずく税務の問題につきますと、すべての国民が正直であって、その申告に基づいて納税して、ちょうだいするという立場をとっておることも事実でございます、法律によっていろいろな規制する行為はございますにいたしましても。したがって、税務上個々の問題に対しては、個だけでなくそれに関連する第三者等々にも関連することがございますので、なかんずく税務上の守秘義務というのは二重にかかっておるという感じからして、間々、守秘義務論争について、税務上はこの程度までは言ってもいいじゃないかとかいう議論がよくなされるところであります。  それはその都度の判断で、どこまで言えるか言えないかの問題は出てくる問題でございますが、やはり税務上の個別案件ということになりますと、第三者をもインタルードした公開のようなことになった場合、申告制度、自主申告自体を基本に持っておる我が国の税制からいいますならば、それはより厳しくなるというのが現実でございますので、その点は、よく国会でも議論があります、私はこのように申告いたしておりますということを言ったことに対しても、その内容はかくかくでございますと言って税務当局からそれを出すことができないというような立場と同じようなことではないかな、私は具体的な問題に熟知しておりませんので、その事案そのものを詳しく知りませんので、歯切れのいい答弁ではございませんが、そういう範疇に属するものではなかろうかという事実であると私は理解しております。
  89. 細谷昭雄

    細谷(昭)委員 今の守秘義務そのものはいろいろな議論があると思うのですが、具体的に今大臣がお話しのとおり、例えば大成建設そのものの税務調査をしたのかどうかということを端的に私は聞いているわけです。そのこと自体が決して、今言った自主申告するという建前でいわばしたのかしないのかということを答えることまで制限するとは私は思えないわけであります。  同時に、今言った都市再開発法の事業に関しまして、いろいろな個々の人に対する申告漏れについて、それは具体的に調査をしているわけですよ。私たちもそれは全部握っているわけです。もう御本人からこういうふうに、いろいろな点の証書、受領書、徴税されたそういう通知書を全部持っているわけですよ。私たちはもう、やったという事実はわかっているのですが、にもかかわらず、今大臣が言うように極めて矮小化された形の守秘義務、こういう形でやるとすれば、税務当局はどんなことでも、こういう疑惑の根源になっておってもそれは知らぬふりをしているということになりますと、私どもは、まさにこれは、それに隠れてどうもそういう大きな企業のうわさのある金についても口をつぐんで何ら言えない、要するにこれは大企業擁護になるのじゃないか、こんなふうな短絡した考え方を持つかもしれない。むしろそちらの方が危険じゃないかと思うのですが、その点で私たちは議論しているわけであります。  しかし、さっき部長は、この前の議事録を眼光紙背に徹すれば我々は調査していますよ、それを御理解してくださいというふうに言わんばかりの答弁でありましたので、この議論はまた次の機会に議論したいと思うのですが、税務当局は、どうかひとつ守秘義務ということに隠れないで、全体としてのこれは公の権利を保障するという観点で、もう少し大臣にそういう疑惑についてはお答え願いたい、このことを強く要望したいと思うわけであります。  大臣、もう結構です。  次に、建設省にお伺いしたいと思います。  この事業は都市再開発法に準拠して実施されておるわけでありますが、お聞きしたいと思いますのは、昭和四十四年六月に成立しましたこの法律の運用を建設省はどんな考え方、指導をされておるのか、つまりこの再開発法の理念といいますか、これについてお伺いしたいと思うわけであります。  なぜこう言いますかというと、この事業の中には、国それから県、市町村というふうに、多額の補助金を取り扱う事業であります。しかも地域の利害というのが大変複雑に絡むということにかんがみ、参議院を通過する際、これは附帯決議を付しておるわけでありまして、慎重、公正な運用というのを行政府に対し国会が注文をつけているわけでありますので、特にその点をお聞きしたいと思うわけであります。
  90. 久保敏行

    ○久保説明員 お尋ねの点でございますが、市街地再開発事業は、市街地の土地の合理的な利用でございますとか高度利用でございますとか都市機能の更新を図るために行われるものでございまして、我が国の都市の状況から見ましてこの種の事業が必要である、こういうふうに考えられておるものでございます。  先生、お話がございましたように、地権者、居住者、こうした方々にとりまして、この事業に含まれますと大変大きな変動等がございますので、事業の執行に当たりましてその点十分配慮しなければならない、このようなことになるわけでございます。したがいまして、法定の手続に入る前に、説明会の開催をいたします等によりまして、法律の趣旨でございますとか事業内容等につきまして関係権利者に十分周知徹底をさせるということ、そういたしまして事業に対する協力、理解を得るということが一つ必要であろうと思います。  それから自分の持っておられる権利あるいは資金というものが非常に零細であるために、市街地再開発事業による新しいビルに必ずしも入れない、こういう方も間々ございますので、こういう方々に対します補償等の救済措置についても十分配慮する必要がある。  それからこの事業の施行者として組合というものがあるわけでございますが、組合が事業を行うに当たりましては、組合員の大多数の合意が得られると申しますか、そういうような上で事業が進められるように、こういうことを私ども指導いたしておるわけでございます。
  91. 細谷昭雄

    細谷(昭)委員 具体的に、ここに組合の定款がございます。この定款は、建設省でサンプルをつくられまして、それに基づいて一応制定したというように聞いておりますが、今お話しのとおりの配慮を十二分にしておるとはちょっと考えにくいわけであります。  もう一つは、理事会というのは大変大きな権限を持っておる。この理事会の代表権を持っておる理事長、これに対する監督責任というのがどうも理事会であるように考えますけれども、大変に大きな権限を持っておる割合に、そういうチェック機関というのが十分でないというふうに私は見受けるわけであります。問題は、こういう定款によって運用される。三分の二というのがいわば補助金でございます。国民の税金であります。しかも大変な何百億という金が使われておるというこの事業の中で、やはり基準になる定款というのが極めて重要な役割を果たしておるというふうに思いますので、この定款にそういう今お話しのとおりの趣旨、附帯決議で考えられております零細なものを十分に考慮するように、弱者をいわば十二分に慎重に配慮しなさいという附帯決議の精神、ないしはこういう補助金というものを運用するという場合の理事会並びに理事長に対するチェック、こういったものをどういうふうなお考えでやっておられるのか、この点についてもお聞きしたいと思います。
  92. 久保敏行

    ○久保説明員 お尋ねの定款の件でございますが、これは法律に基づきまして、組合ができるときにはこういう定款がなければ組合が設立てきない、こういう認可の対象になっておりますし、この定款に違反した場合には、県知事の監督、処分等が法律により行われる、こういう仕組みになっておるわけでございます。具体の組合の定款につきましては、それぞれの各地の組合が自分の御判断でお決めになるわけでございますが、建設省といたしましては、法制定当時、初期の段階に指導の必要があろうということで、標準の定款の案というものをつくりまして、円滑な運営に努めてきた、こういうことでございます。  先生の御質問では、この組合の運営等について、必ずしも定款で十分でないのではないかというようなお話だったと思いますが、法律上でも役員の選任でありますとか、職務でありますとか等については必要な規定がございますし、それから零細権利者の件につきましては、必ずしも定款に規定はございませんが、法律の趣旨それから事業の執行という面で、円滑な事業執行のために、零細権利者のための床をふやす方法でありますとか、あるいは公的住宅に入居させる場合のあっせんとかいうような措置は講じておるところでございます。
  93. 細谷昭雄

    細谷(昭)委員 この定款の、私が運用上もっと配慮しなければいけないと言いますのは、ほとんどが過半数の議決というふうになっておりまして、三分の二条項というのはほとんどございません。私はそういう点で、確かに実際一般的には過半数で成立する、過半数で議決を得られるということはわかりますけれども、事の問題、事の性質上、三分の二条項というのはもっと厳しい規制というのがあっていいのではないか、こんなふうにも思うわけでありまして、問題はこういう定款の不備ということがこういう事件を招く一つの原因になるんじゃないか、こんなふうに危惧をするのでお話をしておるわけであります。  そこで、具体的にもう一つ聞きますが、ここに工事請負規程というのがございます。この工事請負規程によりますと、随意契約がございまして、この随意契約によって、今回はやっておるわけであります。そこでこの工事請負契約の中で随意契約のできる場合として、急施または軽易、こういうものがありますが、こういう急施、軽易というのは、一般的にどんな場合を指すのか、簡単明瞭にお答え願いたいと思うわけです。
  94. 久保敏行

    ○久保説明員 御質問の急施ということでございますが、競争入札に付するに必要な目時等が、この事業のスケジュール等から見て間に合わない、こういう判断をされるような場合がこれに当たるのではないかと思います。それから軽易なものにつきましては請負額等が少額なものを指す、このように考えております。
  95. 細谷昭雄

    細谷(昭)委員 自治省にお聞きしたいと思うのです。  地方自治法にも二百三十四条に地方自治体の随意契約が定められておるわけでありますが、これは非常に厳格に運用されておるわけであります。  そこで、同じ急施ないしは軽易、これの地方自治法上の規制についてお知らせ願いたいと思います。
  96. 片山虎之助

    ○片山説明員 お答えいたします。  地方団体が契約を結ぶ場合は、一般競争入札が原則でございますけれども、先生御指摘のように、特別の場合には随意契約もできるようになっております。随意契約の要件は、自治法施行令の百六十七条の二に七号まで書いてございますが、その中に、御指摘のように、軽易なものあるいは緊急上必要なものというものがございます。軽易なものにつきましては、契約の種類ごとに額をきちっと決めておりまして、例えば工事の場合には都道府県なら二百五十万円以下で規則で定める額の範囲ならよろしい、緊急の必要の場合というのは、これは解釈でございますけれども、今当方で言っておりますのは、天災地変や突発事故発生時等における緊急の必要がある場合、こういうふうに解釈いたしておるわけでございます。
  97. 細谷昭雄

    細谷(昭)委員 ただいま建設省並びに自治省から、かなり随意契約というのはいろいろな規制がありまして、一般的にはこれは原則とすべきでない、原則はあくまでも競争入札、本当に軽易で、しかも本当に緊急なときというふうに規定されておるわけです。  そこでお聞きしたいと思うのですが、この秋田駅前中央地区開発事業及び会計に対しまして、十月二十五日に九名の組合員から、法第百二十五条に基づいて検査請求が秋田県知事に対して出されておるわけであります。同時に、同じような趣旨で臨時組合総会を開催すべきであるという要求が、組合長といいますか、理事長にやはり出されておるわけであります。昭和四十四年の同法施行以来初のケースだと思いますけれども、そこに指摘されております六項目の疑問に対しまして、この前の十月四日の目黒委員指摘後どう調査されたのか、これを端的にお伺いしたいと思います。
  98. 久保敏行

    ○久保説明員 ただいま先生のお話がございましたように、十月二十何日か付で、法律に基づく検査請求並びに組合の総会の招集の申し出があった、こういうふうに県の方から私ども聞いております。これにつきまして、法律上の検査請求につきましては、知事が検査をしなければならない、このようになると思いますので、私どもとしては、県がその検査に取り組むのを、推移を見守っておる、こういう状況でございます。
  99. 細谷昭雄

    細谷(昭)委員 これは知事の監督事項であるということでございますが、私はこれは国権の委任事項であるというふうに思いますし、建設省もその責めを免れることはできないのじゃないか、こんなふうに考えております。  なお、この問題につきましては、来る地方行政委員会において同僚議員が取り上げることにしておりますので、割愛したいと思います。いずれ建設省としては、こういうふうな請求が出ておるということを十分にお考えになって対処していただきたいと強く要望したいと思います。  次に、今随意契約の規制についていろいろ問題がございましたが、大成建設との随意契約がこのたびの疑惑の焦点であります。したがって、その解明というのは非常に重要であります。竹中工務店という具体的な競争相手が存在をし、指名を願っておったという中で、総額六十八億円とも言われております随意契約ができるという仕組み自体もおかしいし、それをやった理事長も当然問題になるのが世間の常識であります。  そこで、私は端的に、もしもこの随意契約が理事会に事前に――事前という意味は文字どおりちゃんとそういうルールを踏んでという意味で、事後でありません、事前に語らずに結んだ場合。第二は、競争相手が存在をし、指名の働きかけが具体的にある状況の中でこういう随意契約が成立するのかどうか、許されるのかどうか。第三は、こうした安易な随意契約は組合員全体の利益の保障という立場から理事長の背任行為にならないのかどうか。  この三つについて、まず建設当局の端的なお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  100. 久保敏行

    ○久保説明員 有力な競争相手があるのに随意契約が行えるかというようなお話がございましたが、急施を要する場合に随契を行ったわけでございますので、これは有力な企業があったかどうかということが判断材料ではなかったのではないか、このように思っております。  それから理事会の議を経ないで契約ができるかというようなことについては、定款上そういうことにはなっておらないというふうに判断いたしております。  それからそれが結果的に背任行為になるかどうかというようなお尋ねがあったかと思うわけでございますが、再開発法上に特別に背任に関する規定はございません。したがって、私どもがお答えするのはどうかと思いますけれども、理事長さんがやられた結果が、他人を利するためであるとかいう意思を持ってやられたとか、あるいは組合に本当に損害を与えたということになれば、それに該当する場合があるのではないだろうか。これは事実かどうか私ども存じておりませんけれども、一般的にはそのようなことになるのではないかというふうに考えております。
  101. 細谷昭雄

    細谷(昭)委員 大変申しわけありません、時間が参りましたので、一括してお尋ねしたいと思うのです。法務省と警察庁と会計検査院の皆さん方にお伺いしたいと思います。  十月四日の参議院の決算委員会における目黒委員指摘については、皆さん方御案内のとおりでございます。したがって、法務当局としてその後どういうふうに対処されたのか。警察当局としましても、これは一日も早い解明が地元で大変待たれておるわけでありまして、重大な関心を持たれておるという刑事局長のお話でございますが、その後どういうふうに具体化しておるのか。そして会計検査院にもお願いしたいと思いますが、前回の御答弁では極めてまだるっこしいといいますか悠長なふうに私たち受け取ったわけでございます。会計検査院の人員が非常に足りないということは重々承知しておりますけれども、やはりこれは十分緊急に対処する問題ではないかと思いますので、大変申しわけございませんが、この三省の端的な御答弁をお願い申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。
  102. 馬場俊行

    ○馬場説明員 お答え申し上げます。  今回の問題につきましては、既にマスコミ等でいろいろ報道されておるわけでございますし、国会でも種々御論議されておるということでございます。さらに警察御当局におかれましても、かねてから情報収集その他の調査活動を行っておられるということでございまして、法務当局といたしましても、前に刑事局長が申しましたように、この問題について関心を持って事態の推移を十分注目しておるといったところでございます。  今後におきまして具体的な犯罪の嫌疑が出たというような場合においては、適正に対処してまいるものと理解しておるわけでございます。
  103. 上野浩靖

    ○上野説明員 お答えいたします。  御指摘の件につきましては、新聞報道、国会論議等を踏まえて必要な情報収集等調査を行っておるところでございます。しかしながら、現在までのところ刑罰法令に触れるような事実を把握しているとの報告は参っておりません。  なお、今後刑罰法令に触れるような事案がございましたならば、適切に処理することは当然のことでございます。
  104. 小川一哉

    小川会計検査院説明員 本件駅前開発事業につきましては、過日の参議院決算委員会の御指摘もございまして、世上関心を引いているところでございますので、会計検査院としても国庫補助金、本事業に関して交付された国庫補助事業の経理に関する資料の収集を始めておりますので、できるだけ早い時期に検査をしたい、かように考えております。
  105. 細谷昭雄

    細谷(昭)委員 どうもありがとうございました。
  106. 横山利秋

    横山委員長 この際、午後一時十分まで休憩いたします。     午後零時五十六分休憩      ――――◇―――――     午後一時十二分開議
  107. 横山利秋

    横山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。元信堯君
  108. 元信堯

    元信委員 まず大蔵省国税庁に承りますが、最近特殊法人、公益法人に適正に課税すべきだということが広範囲に言われているわけでございます。宗教法人などがそのやり玉に上がっておるようでございます。あるいは労働組合等への課税ということも検討されているようでございますが、私は、この際、政府の外郭団体たる公益法人の経理の実態にも問題があるのじゃないか、非営利の法人ということで税制面では全然問題になっておらぬようでございますけれども、この事業の中身にも問題があるのじゃないか、こういうふうに思うわけですが、まずこの点基本的に大蔵省国税当局、どういうふうにお考えになり、さらにまた実態をどういうふうに把握されておるのか、その辺から伺いたいと思います。
  109. 冨尾一郎

    ○冨尾説明員 私ども国税当局といたしましては、社団法人や財団法人などの公益法人につきましては、収益事業、これは法人税法の施行令で決まっておりますが、これで特掲をされております収益事業を営んで、そこから所得が生じている場合には法人税が課税される、こういうことになっております。したがいまして、収益事業を営んでおります公益法人などに対しましては、従来からその申告の内容につきまして十分検討いたし、必要に応じまして実地調査等を行ないまして、課税の適正に努めるという方針で対処いたしております。  また、これらの収益事業を営んでいる法人以外にもそういう収益事業をやっていない公益法人もあるわけでございますが、これらはいずれもほとんどの場合に給与の支払いなどがございます。この給与の支払いを行います場合には、所得税の源泉徴収義務がございますので、私どもとしてはそのようなケースも含めて公益法人につきましては、公益法人の役員などに対する給与の支払いに対して適正な源泉徴収が行われているか、また役員等に対する個人的な経費法人が負担しているようなことはないかというようなことで所得税の源泉課税という面を通しまして課税を適正に行うように調査等に努めている、このような方針で対処いたしております。
  110. 元信堯

    元信委員 収益事業を営んでおるところから申告があればそれは検査する、これは当然だと思いますが、今のお話でございますと、問題は、我が方は公益事業ばかりであって収益事業をやっておらぬというところに対して、源泉徴収の義務があるからその源泉徴収あるいは役員の報酬等を通じてその事業の中身も把握できるということだと思いますが、しかしその源泉徴収だけを通じて事業全体を把握するということについてはかなり困難もあると思いますし、それから全事業所に対して税務当局の能力の問題といいますか、そういう問題もありまして、実態としていえば必ずしも全部が全部適正にいっていないのではないかと思っておるわけなんです。  後からちょっと例を挙げて申し上げたいと思いますが、こういう公益法人収益事業をやっていない一やっていると言えば、それは今おっしゃったように検査の対象になるのでしょうが、なっていないというところについて見直してみる必要があるのじゃないか、こういうふうに思いますが、そういう公益法人の経理といいますか、事業内容について、最終的に責任のある官庁はどこだというふうにお考えでしょうか。
  111. 冨尾一郎

    ○冨尾説明員 税務当局といたしましては、公益法人につきましては、それが収益事業を営んで法人税の納税義務があるという場合に、課税の対象としてこれを取り上げ、適正な課税を求めるということが基本でございまして、公益法人会計全般につきましては、私どもといたしましては、それぞれの公益法人の設立につきまして所管をされておる各省庁で御検査なり監督をされておられるのではないか、かように考えております。
  112. 元信堯

    元信委員 こういうことなんですよ。それは経理全般についてはおっしゃるとおりだと思いますが、いろいろやっている事業、これが収益事業であるのかどうか、つまり公益法人たるに、非課税にするにふさわしい事業であるかどうかという判断は、そういう監督官庁でできるかどうかということなんですね。国税庁としては、これは収益事業だと言ってきた分については、お話しのように検査をするということですが、言ってこなかった分については、監督官庁だってわからぬと思うのです。そうすると、そこのところが、実際には収益事業でありながら、収益が上がっていながら、それが課税の対象になっておらぬというケースがあるのじゃないかなと思うのですが、今の御答弁ですと、そこのところは結局言うならばエアポケット的になって、向こうから言ってこなきゃわからない、こういう実態にあるわけですか。
  113. 冨尾一郎

    ○冨尾説明員 私どもといたしましては、公益法人等に対しましては、申告をされておられる法人は当然でございますが、おられないところにつきましても、そういう法人の活動されておられるということについては、どういう活動をされておられますかというお尋ねを随時出すなどいたしまして、収益事業の有無等につきましては、日ごろから関心を持って情報収集等を行っておりますので、そういう形で、公益法人収益事業を営んでおるという場合には、たとえ申告がなくても私どもの方からアプローチをし、調査等を行って、もし所得を生じているということであれば、改めて事後ではございますが、申告をしていただく等の措置を求めるということで対処いたしております。
  114. 元信堯

    元信委員 一つ例を挙げて申しますから、ちょっとまた御見解でもあれば承れれば幸いだと思います。  建設省の河川計画課の所掌になると思いますが、社団法人淡水生物研究所という団体がございます。まず、この団体の設立の目的と事業内容、そして今どういう活動をしておるか、今申しました収益事業、そういうことをやっているのかどうか、このことについて承りたいと思います。
  115. 陣内孝雄

    ○陣内説明員 お答えいたします。  淡水生物研究所は、目的といたしまして、「河川環境の保全及び河川の整備等に関する生物学的水質調査研究及び生物学的環境アセスメント調査研究等を行うとともに、生物学的水質調査の技術を普及・向上させることによって国土の保全に寄与し、もって国民生活の向上に貢献すること」となっております。  また事業内容は、「(1)河川環境の保全及び河川の整備等に関する生物学的水質調査 (2)河川の整備等に関する生物学的環境アセスメント調査 (3)河川環境の保全に関する生物学的水質調査の技術者の養成 (4)河川環境の保全に係る生物学的水質調査・研究に関する国際協力 (5)河川環境の保全等に係る生物学的調査・研究に関しての関係行政機関に対しての協力(6)河川環境の保全等に係る生物学的調査・研究に関する資料の収集・公表及び各種研究業績の発表 (7)その他、本所の目的を達成するために必要な事業」となっております。このような事業をいろいろな形で実施しております。
  116. 元信堯

    元信委員 具体的にどういう活動をしているかということについてもお答えをいただくようにお願いしたつもりでございます。  と申しますのは、今お読み上げになったのは定款だと思いますが、その定款に定められている、言うならば本来の活動と、それからそのほかいろいろな官庁からの委託事業などたくさんやっておるようでございますが、その事業の内訳について御答弁ください。
  117. 陣内孝雄

    ○陣内説明員 国内における生物学的水質階級地図作成のための河川調査等を自主的に行って、これらの成果を踏まえて国、県等の環境整備事業に生かしていくための基礎資料の作成、一般住民による水生生物から見た簡易水質調査の活動に対する指導、協力等を行うとともに、機関誌等による発表を行っております。また、河川の保全、整備に関する国際活動の一環として現地調査、国際会議への協力を行っております。さらに、国、県等の研修会等への講師を派遣し、河川にかかわる技術者に対する教育などにより技術力の向上に寄与する活動を行っております。
  118. 元信堯

    元信委員 研究所ですから、研究成果をどういうふうに流布するかということが一番大きな目的になると思うのですね。機関誌を発行しているようにさっきのお話でございましたけれども、発行状況について御説明ください。
  119. 陣内孝雄

    ○陣内説明員 淡水研究所では、設立後、機関誌「淡水生物」を第十三号から三十三号、四十号、四十一号と発行しております。第三十四号から三十九号については、まだ初校ゲラ刷りの段階であると聞いております。
  120. 元信堯

    元信委員 これらの図書は、当然国会図書館に寄贈されておると思いますが、いかがでしょうか。
  121. 陣内孝雄

    ○陣内説明員 発行部数は通常二百部、必要に応じて増し刷りするということになっておりまして、その際の配付先といたしましては、国会図書館も含まれております。
  122. 元信堯

    元信委員 どういうふうにお調べになったか知りません。私、きのう国会図書館に問い合わせたら、さようなものは収蔵されておらぬというような答弁でございましたから、改めてお調べをいただきたいと思います。――国会図書館に聞きましたか。
  123. 陣内孝雄

    ○陣内説明員 確認しておりません。
  124. 元信堯

    元信委員 後ほど確認して、報告されるように求めます。  今答弁がありましたように、十三から三十三まで出して、三十四から三十九までは欠にして、四十、四十一を出すというようなことは、普通の学術論文を掲載する雑誌ではあり得ないことであるということをまず指摘しておきたいと思いますね。そんなことは聞いたことがない。そんな飛び飛びに発行する雑誌なんというようなものは、研究雑誌としてはあり得ませんし、大体二百部とかという部数も非常に少ないし、私ども承知をしておるところによりますと、部外でこの雑誌を手に入れるということは極めて難しい。研究所に要請をしても、容易にもらえない、こういう状態になっている。ですから、この研究所が本来の設立目的に沿って活動していることについては非常に疑問があるということを申し上げておきたいと思います。  それから次に、最近の決算、五十八年度決算の中に占める今おっしゃった本来事業といいますか、例えば研究費を出すとか委託でやるもののほかに、研究所プロパーでやるものというのは、事業費ベースで見てどれくらいの割合になっているのでしょうか。
  125. 陣内孝雄

    ○陣内説明員 公益事業といたしましては、自主的研究、機関誌の発行、国際会議における協力、研究活動等を行っておりますが、ただいま御質問いただきました件につきましては、数字を持ち合わしておりません。
  126. 元信堯

    元信委員 通告してあるのだから、そういうふうに答弁してくれなければ困るのですな。  それでは、設立以来の事業収益、どんなふうに推移しているものですか。これは決算書がありますから、それから容易に計算できると思います。お願いしておいたはずでございますから、ひとつ御答弁ください。――三十分しかないのだから、早くやってください。
  127. 陣内孝雄

    ○陣内説明員 公益法人は営利を目的とするものではございませんけれども、決算において利益を生ずることがございます。その利益は、公益法人の目的のために公正に使用されるべきものでございまして、そのように使用されておれば問題ないと考えております。このような観点から見た場合に、昭和五十六年度以前における事業運営は、既に実施いたしました法人検査において、問題がないと判断いたしております。  五十七年度以降につきましては、本年十一月に予定している法人検査で十分検査してまいりたいと考えております。
  128. 元信堯

    元信委員 さんざん探してそんな答弁じゃ仕方がないでしょう。どれぐらい利益があるか、計算すればわかることですから、それを聞いたのですが、要するに計算資料が手元にないということですか。それならそれで、はっきりそう言ってください。
  129. 陣内孝雄

    ○陣内説明員 利益というのが、課税対象の利益という意味では、手元にございません。
  130. 元信堯

    元信委員 課税対象であるかないかなんということは、何も言ってないでしょう。私が言っているのは、こういう公益法人決算というのは、損益対照表という形では出てまいりませんね。ですから、それを計算し直してみると、損益という形で出るから、一体この研究所はどれぐらいもうかっているかということがわかるので、それを計算してみてはどうですかと言っているのですが、これもあらかじめ通告しているのだけれども、計算してこない。こういうやり方はまことに不届きだと思うが、じゃ、しようがないから、僕が計算した結果を申し上げましょう。  五十三年が百五十九万円です。その次の五十四年が三千四百万何がし、五十五年が一千二百万、五十六年が三千五百万、五十七年が一千二百万で、五十八年が二千五百万と、細かい数字はまた後から挙げます。どういうふうに計算すればいいかということも教えて差し上げられると思いますが、これぐらいもうかっているわけなんです。公益法人としてこれだけのお金がもうかっておって、しかもそれを今課長がおっしゃるように、公共の目的のために処分されたかというと、必ずしもそうじゃないのですね。これらの益金の処分は、私どもの調査によれば、使用されておらない不動産の購入、すなわち東京と大阪にマンションを二月ずつ購入して、理事者の身内の者が住んでおる、こういう話だそうでございますが、そういうふうに処分をされておる。見る見るうちに資産がふえていく。これはあなた方のお手元にあります資産の対照表でも出てまいりますね。そういうふうになっているわけです。  ですから、この研究所の経理を見てみますと、べらぼうにもうかる。その原因は何かということに興味がいくわけでございますが、この研究所は、建設省と大部分の仕事を契約しているわけでございますが、建設省、どういう契約の方式をとっていますか。
  131. 陣内孝雄

    ○陣内説明員 河川の環境というものは新しい分野の調査でございます。したがいまして、そういう調査の性格からいたしまして随意契約方式を採用しております。
  132. 元信堯

    元信委員 新しいと言いますけれども、河川の環境なんというのは別に最近始まったわけじゃないんです。建設省では今まで環境問題を重視してこなかったから、そういうことを思うのかもしれませんが、一般にアセスメントでありますとか環境調査であるとかというようなことは既に事業として、分野として確立をしておるわけです。ですから、何も私どもは随意契約でやる必要はないというふうに思います。随契でやっておればこそこういうべらぼうな利益というものが出てくるんじゃないか、こういうふうに指摘をせざるを得ないわけであります。  そこで、ちょっともとへ戻って伺いますが、この研究所、社団法人でございますから、機開会議として総会、理事会等を開催しなきゃなりません。そこで理事の選任等をしなければならないわけでございますが、こういうものが今まで適法にされているという、そういう認識でございますか。
  133. 陣内孝雄

    ○陣内説明員 これまで実施した法人検査では、総会、理事会等の会議の運営は定款に基づき行われておりまして、特に問題はないと判断しております。
  134. 元信堯

    元信委員 さっきの話へ戻りますが、このように随意契約方式でやって、しかもこれが非常に収益を上げるというような形になっておりますと、当然今度はその仕事の中身の方に問題が行くわけであります。私もこんなにもうかるのはどういう仕事ぶりであるかと思いまして、幾つかの調査の成果品といいますか、それを取り寄せてみまして、いろいろ眺めてみました。何せ専門的なものでございますから、ここで一々言うのも何でございますが、一例として淀川上流域環境調査報告書というのを、これは建設省からお借りをいたしまして、写しをつくって精査をしてみました。中身に深く触れるのはやめたいと思いますが、私全部データを自分で計算して当たり直してみて驚いたことは、自然度というものを計算をするわけでありますが、その自然度は全体に見て木津川と桂川の値が小さいのが目につくがというのですが、計算した値は実はその逆で、むしろ大きいというのがこの報告書を素直に読めばそういうふうに読める。こういうことを一体どういうふうに思われますか。
  135. 陣内孝雄

    ○陣内説明員 昭和五十八年度の淀川上流域環境調査業務の報告書の中の、御指摘になりました植生から見た河川敷の自然度を説明する記述の中で、木津川と桂川の値が大きいと書くべきところを小さいと書いてあるなどの間違いがございます。この箇所の前後を読んでみますと明らかに間違っているということがわかりますが、検査時またその後において確認されたものを含めまして正誤表を添付させ、利用に当たって支障のないように措置きしております。また、検査については検査官を任命して、発注者側の調査職員、受注者側の管理技術者立ち会いのもとに、問題が生じないように努めているものでございますけれども、今後このようなことが生じないよう十分注意してまいりたいと考えております。
  136. 元信堯

    元信委員 正誤表をつけると言うが、僕が言って初めてそういうことがわかったというふうに僕は認識をしているわけです。私が拝見をしまして、それから正誤表をつけたから何にも差し支えがないなんということはあり得ないです。本来は、そんな外部の人間がこれを読んで間違いを見つけるんじゃなくて、当然納品のときにそれぐらいのことはわからないと、何のために検収をしているのかということにもなりかねぬというふうに私ども思うわけであります。もっときちんとやってもらいたいと思うのです。  もう一つこの淀川上流域環境調査報告書に問題があると僕は思うのですが、全体の契約をしたときの見積もりの中に現地調査費というのが、金額は大したことはないが入っておる。しかし、その調査報告書を読んだ眼力では現地調査は全くこれ必要もないし、やってもおらぬというふうに読めるのですね。一体現地調査をやったのかどうか、その辺どうなんです。
  137. 陣内孝雄

    ○陣内説明員 本調査では現地調査が必要なために、昭和五十八年度においても昭和五十七年度の現地調査を補完するため、淀川の三川合流部の植生調査を実施することといたしまして積算しておりまして、その成果につきましては植生図として受け取っております。
  138. 元信堯

    元信委員 報告書の中にそんな植生図なんというのは入ってないわけですね。大体この報告書を成果品としておさめるために調査を委託したのに、それに入ってこないようなものというのは僕は話が違うと思いますね。
  139. 陣内孝雄

    ○陣内説明員 この植生図というのは縮尺五千分の一にかくというかなり大きなものでございまして、契約時におきまして一部を提出するということで契約がなされておりまして、これは現地の事務所において検収し、保管しているものでございます。
  140. 元信堯

    元信委員 これ以外の報告書を見てもいろいろ問題が多いわけです。最近、ここに私「淡水魚」第十号というのを持ってまいりました。それの写しはこの前差し上げておいたからごらんになったかと思いますが、この研究所の所長さんの書かれた本について、随分誤りが多いといいますか、無断転載が多いというか、そういう指摘もされているわけです。これは建設省の中ではそんなことをどういうふうに評価されているか知りませんが、学界の中ではこういうことはかなり言われているわけなんですね。  こういうところについて随契でどんどん無警戒に仕事を出していって、そしてその査収ぶりも今私が指摘をいたしましたようにかなり甘い。そういう明らかな誤りというのが査収段階で建設省じゃ見抜けない。しかも、その結果としてだと思いますが、莫大な利益を上げて、これを不要不急の資産にどんどん転化していく、そうやって利益を内部に蓄積していく。こういうやり方については建設省の監督責任というものがありはせぬかと私は思うのですが、いかがでしょう。
  141. 陣内孝雄

    ○陣内説明員 河川環境に関する調査は、先ほど申し上げましたように極めて新しい分野の研究であり、高度な専門的知識と豊富な経験が必要でございます。社団法人淡水生物研究所は河川及び湖沼に関する生態調査を専門分野として昭和五十一年に設立され、主として近畿地方を中心に生物から見た水質調査や自然環境調査など、長年にわたり多くの実績を上げ、それらの河川や湖沼について高度な専門的知識と豊富な経験を備えております。なお、河川環境に関する調査はいろいろな専門的知識を必要とする学際的要素も強いので、学識経験者等の幅広い指導助言を受けやすい社団法人が適している、かように判断しておりまして、同法人と随意契約方式でこれまで調査を進めてまいったわけでございます。  ただいま御指摘になりました所長個人に対する学問的評価につきましては、私どもはこの場では差し控えさしていただきたいと思います。  なお、収益の点につきましては、これらの事業を行うに必要な不動産の取得等が総会の議決において認められておるというようなことでございますので、適正な業務の運営がなされているというふうに私ども判断しておる次第でございます。
  142. 元信堯

    元信委員 最後のところも、これだけもうかっておって不動産をどんどん取得をする、それが研究所の事業の遂行に必要だ、こういうようなお話ですが、大阪の研究所が何で東京にマンションを買わにゃならぬのか、ここらのところは普通じゃ理解できぬわけですね。内部で適正に議決をされておるといっても、建設省は監督官庁としてあるわけですから、内々でやったことに、はあ、さようですかと言っていただけでは、やはり我々は納得できないと思うのです。  そこで、この前伺いますところによると、ことしの十一月に改めて監査があるというようなお話です。今、何も問題がないというようなお話ですが、例えば本店所在地などについても、前々からの監査で今の所長の自宅になっているのが全然実態に合いませんから、そういうことについても改善方を指導しているはずですけれども、これも何も改善されていませんね。それから今この研究所の中でもこんなふうですから、内紛といいますか人事面での問題も起きておりまして、半分ぐらいの理事が除名をされるとか異様な事態になっているわけであります。それの議決権行使のやり方についても、出席してない人が、書面出席もしてないのに議決権を行使したというようなことに我々は聞いておるわけでございますが、そういうことを含めて、この次の監査では少ししっかり監査をしてもらいたいと思います。あなたの方では収益計算もできぬそうでありますけれども、よく御研究になればそういうことはできると思いますから、研究所の経理の状態、それからさっき国税庁からもお話がありましたが、私どもの聞いているところによれば研究所の費用と理事長の個人的な費用が混同されているという例も非常にたくさんあるようでございますし、私どももその資料も持っておるわけでございます。ですから、この研究所についてぜひひとつことしの監査では私どもがすっきり納得のいくような監査をなさって、また機会を改めてその結果を承りたいと思いますので、ぜひそういうふうにお願いしておきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  143. 陣内孝雄

    ○陣内説明員 今回の研究所における諸問題は、もともと研究所内部の問題と思われますので、本質的には研究所において解決すべきものであると考えておりますけれども、本年の十一月に当該研究所の法人検査を行うこととしておりますので、御指摘のような問題があれば、当研究所の事業運営が適正に行われますよう指導監督してまいる考えでございます。
  144. 元信堯

    元信委員 適正な検査をお願いをいたしまして、終わりたいと思います。ありがとうございました。
  145. 横山利秋

    横山委員長 建設省、ちょっと委員長が聞いておりまして、委員の具体的な指摘に対して、大局的に申しますと、あなたの方はまるっきり、円満な、適正な事業運営がされておるというような趣旨で、これは非常に食い違いが甚だしいので、ちょっと理解に苦しむのですが、今の最後のあなたのお話のように十分ひとつ監督をしてください。
  146. 元信堯

    元信委員 事前通告についてはよく勉強してきてくださいよ。
  147. 横山利秋

    横山委員長 次に、新村勝雄君。
  148. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 大臣にお伺いをいたします。  大変大ざっぱな話になりますけれども、経済の基本的な仕組みについてまずお伺いをしたいのです。  経済には公共経済と自由経済あるいは市場経済というものがあるわけですけれども、我が国におけるこの二つの経済の分野を比較をしてみますと、大変不均衡だという印象を受けるわけです。まず、日本経済の全体を考えてみますと、ここのところ数年、三%以上の成長を遂げておるわけでございます。しかも、石油ショック時においてマイナス成長ですかが一年あったきりで、あとはいずれもプラスの成長を遂げ、自由世界が極めて石油ショックに苦しんでいた時代にも三%程度の成長を遂げておる。そして、ことしは景気の回復によって五%を超えるであろうという見込みでございます。しかも、失業率も自由世界の中では一番低い。現在で二・六%、実数にしましても百五十七万でありますから、日本経済というのは極めて好調であると言って差し支えないと思うのですが、こういう状況の中で財政だけが極めて悪い。国の債務といいますか国債の累積は百十兆を超える。しかも地方財政においても大体その程度の累積債務があるわけでありまして、こういう公共経済における非常な財政の困窮といいますか困難な状況が続いておるわけでありますけれども、一方、日本経済全体としては非常に好調である。しかも貿易黒字も、毎年巨額の黒字を重ねておる。そしてことしの末には大体六百億ドル程度のネットの対外債権を持つに至るであろう。八五年の末には一千億ドルを超えて、アメリカを追い越すであろう。こういうように日本経済全体としては非常に好調である。それに比較をして財政が極めて悪い。これはどこにその原因があるのかということですけれども、この点について、まず大臣の御見解を伺いたいと思います。
  149. 竹下登

    竹下国務大臣 私も、委員の御指摘は大体そのとおりだと、率直にそう思うわけであります。  されば、その原因はどこにあるか。結局、私考えてみますと、昭和三十九年度予算までは御案内のように公債は一銭も発行しておりません。四十年度に二千億発行したその背景は、まさにオリンピックの翌年の戦後最大の不況のときだと思うのであります。それが即効薬の役目を果たしまして、四十九年まではまだ建設国債だけでございます。トータルが九兆七千億、五十年から赤字国債がそれに加わりまして、今年度末で予想されるのが百二十二兆、こういうことになろうかと思うのでございます。  したがって、その公債発行は、まあ百二十二兆として、そのうちの九兆七千億までが四十九年までであるといたしますならば、やはり一つは、四十六年から七年にかけましたドルショックというもの、それから八年の暮れから九年にかけました第一次石油ショックというものの中で、一体国際競争力はどうなるかというときに、国民の負担はとにかく現状のままにして公債発行、五十年には赤字公債の発行に踏み切るわけでございますから、それによってこれに対応しようということがきっかけであったと思うのであります。そうして今日まで赤字公債をも含めて増発に増発を重ねて百二十二兆になる。だから、五十年までが十兆で、それから後が百十兆、大ざっぱに言えばそういうことであろうと思うのであります。  したがって、やはりそのときに将来を展望して、財政自身が歳出をもっと厳しくする必要もあったかと思うのであります。しかし、また逆に、なぜ今日までこのように赤字公債の発行をも許容し得る状態に我が園のなかんずく貯蓄があったかということになりますと、結局、どの先進国に比べましても一人当たりにしてみますと三倍の貯蓄率があります。その国民の勤勉性と貯蓄意欲に支えられて公債も発行できたのじゃないかというふうに私は思うわけであります。  したがって、その都度公債発行が結局民間の体力を大きくダウンさせないで財政がそれを背負ってきたという限りにおいて、私はすべてが悪であったとは思いませんけれども、やはり一本立ちできる体制に経済自身があるという認識の際には、今の場合六十五年まで少なくとも赤字公債財源とすることはやめよう、そしてその後、計算をしますと大体昭和六十五年で赤字公債財源としないようになりますと、昭和六十五年百六十五兆の残高になりまして、非常に大ざっぱでございますけれども、百兆が建設、六十五兆が赤字国債の残高が残る。それを今度は、いわゆる後世の納税者の負担をどうして減していくかということが六十五年以後の第二期の大きな目標じゃないかなと私は思っております。  したがって、経済自身が、ほかの国に比べればどの国からも本当に驚くほど順調に推移しておる今日、それをある意味においては財政が肩がわりしておったという一面もあるのじゃなかろうか。したがって、それはその都度、私は大変な悪政であったとは必ずしも思いません。が、その累積の限度が来たときには、やはり成長等もかつての高度経済成長を望むべくもない今日でございますが、安定成長の中でお互いが減量経営なり、あるいは成長率に対するある種の意識転換とでも申しましょうか、三%とか五%、ことしは五・三の改定見通しもございますけれども、そういうのが普通で、かつての一〇%が望むべくもないという意識転換も必要じゃないかな、こんな感じがしております。ただ、五十六年、五十七年の二カ年の問題をとってみますと、これはまた別の意味で大きな世界同時不況が原因ではなかったか、こんな感じもいたしておるところであります。  非常に正確な答弁にはなりませんけれども、平素私が感じておることを申し上げたわけであります。
  150. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 大臣のおっしゃるとおり、大体そうだと思うんですね。ということは、今大臣のおっしゃったことは、要するに財政の犠牲において日本経済を強化したということをおっしゃっておるのですが、まことにそのとおりですね。しかしそれでいいのかどうかという議論が一つあるわけでありまして、今アメリカは財政それから国際収支ともに大赤字ですね。これは両方とも赤字。と言うよりは、アメリカの場合には、詳しくは知りませんけれども、むしろ投資減税とか所得税減税をやって財政赤字を故意につくったわけではないのでしょうけれども、政策的には結果として財政赤字ができる。それと同時に、またそのことが国際収支の悪化にもつながっていくわけでしょうけれども、その両方の均衡が赤字という点ではとれているわけですね、両方とも赤字ですから。  ところが日本の場合には、対外的な貿易収支であるとか資本収支であるとかというのは非常に好調である。むしろ外国からは経済侵略ではないかと言われるほどに円が強くなっているわけですね。その反面財政が、今大臣がおっしゃるように非常に、実際は窮迫じゃないと思いますけれども、形の上では赤字がふえているということですから、一口に言って、大臣がおっしゃったとおり財政の犠牲において日本経済を強化した、そのとおりだと思いますね。それがいいか悪いかという問題が一つあるわけでありまして、やはり公共経済と市場経済とはつり合いがとれていなければいけないのではないかというふうに私は考えているのです。  というのは、公共経済における赤字の累積というのは時点を異にした、時点ごとの国民負担の不均衡を生ずる。あるいはさらに大きく言えば世代間の不均衡を生ずる心配が大いにあるわけです。そのために中央の会計にしても地方の会計にしても単年度主義というのが確立をされておるわけですね。単年度収支を均衡さして国民のニーズにこたえ得る諸事業をやっていくというのが原則ですから、そういう点からすると、単年度主義にはなっているけれども、単年度主義を破って大幅に財政赤字を累積してきたということ、これは意図的であるかどうかわかりませんけれども、財政政策としては極めてこれは邪道であろう。あるいはまた我々からすれば、これは意図していると否とを問わず財政政策の大失敗であったと言わざるを得ないと思うのですけれども、いかがでしょうか。
  151. 竹下登

    竹下国務大臣 今おっしゃいました、一つ私も同感でございますのは、世代間のなんといいますか、世代間抗争とまではいきませんが、そういう感じが出つつあるんじゃないかという感じが私もいたしております。  今アメリカ経済の問題をお話しになりましたが、アメリカ経済も確かに両方とも赤字でございます。が、アメリカ経済の場合と日本経済の場合のいわゆる貿易収支、経常収支の問題については、ある意味においては構造的なものもあるんじゃないかなと思いますが、日本がいいものをつくりますから余計売れるということで構造的な問題があると思いますが、それに見合うものがちょうど資本の流出という形で、資本収支でアメリカなり中進国なりに行っておりますだけに、そういう意味においても資本提供国としての役割を果たしているというふうにも受けとめられます。  だが、しかしながら、今度は財政を見ますと、アメリカもそれは言えることでございますが、なかんずく日本の場合、結局公債政策というのは税金の先食いでございます。したがって、それがふえればふえるほど、私の計算で仮に昭和六十五年を百六十五兆といたしますと、それを六十年の間に十年間に六分の一ずつ返して、七%の金利で計算しますと五百十兆になるわけです。だから五百十兆を後世代の納税者にツケを回すというのはまさに世代間の不均衡が出てくる。今の者はそのサービスを受け、そして後世代はサービスが受けられない状態にまで負担を多くする、こういう論理が成り立つと思います。ただ、この間レーガンさんとモンデールさんの討論会を聞いておりまして、アメリカの新聞記者が評価しておりましたが、私どもも考えなければいかぬと思いますのは、私自身も国民の一人でありますが、物価そして税金の高い安い、あるいは景気がいい悪い、これは非常に肌でわかる。ところが、財政赤字というのは自分が金を借りておるわけではございませんから、結論から言うと、本当にそれが高金利をもたらして企業経営に重圧が物すごくやってくるという事態にならぬとなかなかわかりかねるというときに、私はこれから一生懸命でPRしなければならぬ問題だと思います。  そこで私は、単年度主義で歳出に見合うものが歳入、それが租税を中心とするものにおいていただける状態に持っていく、財政の原点に帰るというのはそういうものではないかな。いささか私事にわたりますが、大平内閣のとき私が大蔵大臣をしているときに、大平さんが恐らく赤字公債発行のときの大蔵大臣という認識からでございましょうか、何か後世に物すごい財政家としてやってはならないことをしたというような表現のことをアーウー言いながらおっしゃっておりましたが、実際そんなことじゃないかな。これは客観的に見てそうでありますし、今その責任者として中へ入っておると、ますますそんな気がいたして、幼い胸を痛めておるということでございます。
  152. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 今のお話のように、大平さんの考え方は財政史上後世の史家が評価すると思いますよ。  それで繰り返しますけれども、公経済とそれから市場経済とは均衡をとらなければいけないと思うのですよ。ところが今大変な不均衡である。これを世代間の不均衡を来さないという意味からも、大臣ひとつ真剣に取り組んでいただきたいと思うのです。  次の問題がありますから、その問題は以上にいたします。  それで五十六年度決算に関係してまいりますけれども、五十六年度日本経済というのは、同時にまた五十六年度日本の財政というのは、一つのターニングポイントであったのではないかなと思うのです。それは五十六年度において、政府が経済見積もりあるいは税収見積もりにとんでもない過ちを犯したということが一つあります。そのことが一つの契機になって、それまで五十九年度財政赤字脱却を政府は国会に対しても国民に対しても公約をしていたわけですけれども、事実上五十六年度の見積もりのまずさといいますか、見積もりの誤りによって、この公約が根本から崩壊してしまった、こういう年だったと思うのですね。そういう意味で、五十六年度決算というのは、非常に日本の財政の流れから見ても一つのターニングポイントではなかったかと思うわけです。  今申し上げたことは、五十六年度の予算の編成のときに十分予見できたにもかかわらず、政府はあえてその間違いを犯した、現在の大蔵大臣ではございません、そのときは渡辺さんですけれども。しかし同じ自民党の大蔵大臣ですから、現在の大臣も責任を負っていただかなければならないと思いますけれども……。そういうことで五十六年度の世界経済及び日本経済というのは決して上昇期にはなかったわけです。OECD等の予測によっても、あるいは民間の経済機関によっても、政府の見積もりをいずれも下回っておったわけですよ。ところが、このような状況を無視して過大な見積もりをしたというところから、決算においてとんでもない誤りをしなければならなかったもとをつくったわけなんですね。  五十六年の予算の編成をする当時においては、失業率も前年よりは上回っておったわけですね、前年よりも○・一%上回っておった。それから世界経済も決して好調ではなかった。こういう中において、政府は成長率を実質で五・三%と見たわけです。ところが実際には三・三%、この狂いのために年末における二兆五千億程度のギャップを生じた。この二兆五千億を国債整理基金から一実際はこの国債整理基金は使うべきじゃないのですね、こういうときは。国債整理基金国債整理基金ですから、決算の赤字に埋めるべきではないのですけれども、決算調整資金を全部使っても、これは到底及びもつかないということで、国債整理基金から二兆二千五百二十五億、これを全部かっぱらってようやくそのギャップを埋めた、こういうことなんですね。そして、このとき使った決算調整資金は、このときに使われたのが二千四百二十三億ですけれども、これを使いっ放しでその後これを補充してないわけですね、現在も補充してないと思います。それから、国債整理基金についても、このとき使った二兆二千五百二十五億、これは次の年度で補充をしたようですけれども、五十七、五十八、五十九と三年度にわたって繰り入れを停止をしておるわけですね。  こういうわけで、一方では決算調整資金法が全く死法化している、実際に制度がありながら金はゼロだ。それから国債整理基金についても、毎年繰り入れをしなければいけないものを三年度にわたってゼロだということで、両方の制度を無視しているわけですよね、こういう現在の状態を大臣はどうお考えであるのか、まずそれを伺います。
  153. 竹下登

    竹下国務大臣 今御指摘のとおりでございます。  とにかく今あなたのときじゃなかったとおっしゃいましたが、本当に私五十四年、五十五年、いいときに、自然増収のあるときにやらしてもらっておる。五十六年、五十七年休んでおりまして、五十八年、五十九年、ささやかながらまた剰余金の出るときに遭遇しておりまして、これは私人としてみずからの立場を考えれば、そういう意味においては五十六年、五十七年、財政担当者は本当に大変だったなといつでもそう思うわけであります。ちょうど私がやっていないときでありましたが、しかし、あのときに今御指摘のような国際同時不況というような問題から決算上の不足額がありまして、それを補正のときにもまだそこまでは、減額補正しましたもののそこまでは読み切れないで、結局決算調整資金による補てんというもので二兆四千九百四十八億ということをやりました。その決算調整資金の自己財源は、御案内のとおり二千四百二十三億で、国債整理基金からの振りかえ使用分を二兆二千五百二十五億で穴埋めしたということでございます。補正でなしにやった。  そこで元来、決算調整資金というのは予見しがたい決算不足に備えるため必要なものということで考えられるわけでございますから、これは私は、ただ現在の財政事情のもとで可能な限り特例公債の発行の減縮を行おうというのが最重要課題であるというときに、結果としては、仮に色はついておりませんけれども、決算調整資金に自己財源を積み立てるということは、またそれだけ一方で赤字公債財源として積み立てるという状態になりますだけに、今日積み立てる状態は困難だという状態にあるわけであります、これは決算調整資金の問題でございますが。したがって、やはりそのときの経済情勢や税収動向を見ながら、総合的にそのことは判断すべきである。だから今は赤字公債をさらに増発して決算調整資金に入れておくという余裕は、きょうの時点ではないと言わざるを得ない。  さようしからば、今度は国債整理基金の問題でございますが、これは先生御指摘のとおり、いろいろな議論があります。国債整理基金にも積むということは、結果としてそれは赤字国債をそれだけ余計出して積んでおることになりはしないか、だからあれは積むべきものじゃない、その都度予算繰り入れでやるべきだという議論もございます。そこでこの問題は、国会等の議論も踏まえて、ああして財制審でしっぽりと議論をしてもらいまして、結論から「基本的には現行の減債制度の仕組みはこれを維持するのが適当であるが、財政状況等により一時これを停止するなどの措置をとることもやむを得ない」という考え方を示されたわけであります。そういうやむを得ないという考え方のもとに、今御指摘のとおり三年間これを積まないで来て、そこでさてということになりますと、いわば六十年、なかんずく六十一年から本格的な公債の償還期が束になって参るわけです。五十年からああして赤字公債にまで踏み切ったのが、ちょうど償還期が参りますから、したがってあれを空っぽに一空っぽという表現はおかしいのですが、私は六十年度以後は入れないでおくということは、なかんずく六十一年を見た場合に、それはやはりもう一遍原点に返って、減債制度というものは、その根幹は維持すべきであるという御指摘の線に返さなければいかぬ環境に今来ているんじゃないかな、こういうことで部内で、それこそ十二月までにこの問題、与野党協議等も通じて御議論をいただいて最終的な結論を出さなければいかぬというふうに考えております。
  154. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 この問題は、先ほどの問題とあわせて、議論は尽きないのですけれども、もう一つ別の問題をお伺いしたいと思います。  それは、六十年度の予算の編成に入っておると思いますけれども、その際に、最近の大臣の御発言にもありますけれども、現在でもまだ要調整額が二兆五千億程度あるというふうなお言葉をどこかで見ましたけれども、この点についてはどうでしょうか。現在の時点で要調整額がどのくらいあるのか、それから要調整額をどういう形で処理されるのか。
  155. 保田博

    ○保田説明員 御質問にお答えいたします。  現在、六十年度予算の編成作業中でございますが、要調整額は、先生御指摘のように、各省から提出されました概算要求を前提として、それから中期展望でお示しいたしました歳入を前提といたしますと、要調整額すなわち歳入の見込み額と歳出の見込み額の差が二兆四千六百億、それからそれプラス、実は人事院勧告の実施に伴う経費がそれに加算される、そういう巨額の要調整額があるわけでございます。  この要調整額を消すことが予算編成上の当然の前提になるわけでございますが、現在のところは概算要求として出されました厳しい各省歳出予算の要求をさらに切り詰めるということを基本といたしまして、歳出歳入の両面にわたって洗いざらい検討を進めておるわけであります。今後なお二カ月あるいはそれを上回ることになるかもしれませんが、厳しい予算編成を続けて、工夫をするわけでございます。来年度の経済見通し、それを前提とした税収の見通しもまだ定かではございませんし、歳入、税外収入の見込みも立っていないというようなことでありますので、まだ星雲状態ではございますけれども、基本的には歳出をカットすることによってできるだけ借金に頼ることなく要調整額を消してまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  156. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 そうしますと、赤字国債は発行しなくて済む、こう考えてよろしいわけですか。
  157. 保田博

    ○保田説明員 現在の歳出と歳入の構造からいたしまして、特例公債に依存しないで来年度予算編成ができるという状況ではございません。それで、五十九年度予算に比べまして新規の赤字公債の発行額をできるだけ少なくするということを基本といたしております。
  158. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 赤字国債については、特例公債についてはできるだけひとつ出さないようにお願いしたいと思うのです。  それから、それに関連して、重大といいますか大きな要素となると思いますけれども、日本の景気の見通し、それからさらにそれに大きな影響を及ぼすアメリカの経済ですね。アメリカの経済が極めて好調であるということが言われておりましたけれども、ここのところちょっとおかしいということがいろいろ言われておりますが、それらの見通し、それからそれに関連する日本の景気の見通しについてひとつ簡単にお願いします。
  159. 西藤冲

    ○西藤説明員 私は、国内の景気の見通しについてのお答えでありますけれども、六十年度の経済見通しにつきましては、今後予算の進み方あるいは今御指摘ありましたアメリカ経済など海外の経済状況を見ながら、これから関係省庁と相談しながら検討していくという段階でございますので、まだこの時点では確固たることは申し上げられない時点でございます。
  160. 竹下登

    竹下国務大臣 先生おっしゃる見通し、政治家としての御質問に対してでございましょうから、経済企画庁として恐らく数値等に基づいてということになりますと困難でございましょうから、私の方から政治家としてのお答えをいたします。  米国経済は昨年から本年前半にかけまして急速な景気回復からいわゆる拡大局面に移行したと見られておるというのは常識でございます。その後、今おっしゃったように、今年後半に入って成長率はやや鈍化。しかしながら、鈍化しつつも、ほかの諸指標を見ますと引き続き着実な拡大は遂げておる。上期のように数値が急激なという状態は確かになくなっておりますが、着実な拡大は続けておるというふうに見られると思うわけであります。そこで、いわゆる八五年、向こうは暦年で見ますが、大ざっぱに同じことといたしまして、安定的な成長を持続するという見方が一般論としては強いわけであります。  それで我が国経済も、米国経済拡大が減速、ダウンをいたしますと、輸出の伸びはやはりダウンをすると見なければならぬと思っております。したがって、経済成長のテンポはある程度落ちましても、緩やかではございますが、今見ますと、設備投資にしましてもあるいは個人消費等も拡大が続くという数値の傾向が出ておりますから、国内民需を中心とする景気拡大は六十年度もそれなりに継続していくのではなかろうかというのが一般論としての見方ではなかろうかなというふうに私どもは考えております。  それから、先ほど保田主計局次長からお答えしました問題について一つだけつけ加えますと、赤字公債減額、精いっぱいしろ、そういう趣旨で、私どもが今要調整額をはじきました中には、一兆円だけ五十九年の当初よりは減らすという前提で歳入財源を見ておりますことをつけ加えさしていただきます。その一兆円の根拠はどこにあるかとおっしゃいますと、六十五年までに機械的にやりますと一兆八百億ずつやればなくなるという理屈でアバウト一兆円というので見込んでおりますし、それから税収の方も、機械的に六・五%の名目成長と見まして、それに十年間の弾性値の一・一を掛けた仮定計算でお示しした分をベースに置いて出た要調整額ということでございますので、今もなお昨年度よりも一兆円は下回っておるが、赤字公債を六十年度も前提に置いて要調整額というものをお示ししておるということでございますので、さらにそれを縮めていく努力は精いっぱいしなきゃいかぬことだと、これは政治論としてもそういうふうに思っております。
  161. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 ひとつ財政の健全化に向かって大臣の御健闘を期待します。  少し変わった、別の質問でありますけれども、実は会計検査の問題であります。これは決算委員会理事会で提起をされ、また委員長も特にこの点については提起をされておる問題でありますけれども、御承知のように会計検査というのは、立法、司法、行政、それに会計検査院と、三権に対して独立の四権ともいうべき会計検査院がありまして、そこでやっておるわけであります。同時にまた、各省庁の中にも内部監査という制度、規定があるわけですね。それで各省庁でやっておるわけなんですが、この各省庁における内部監査とそれから会計検査院検査、両々相まって初めて完璧を期することができるのじゃないかと思うのです。そういう趣旨で、各省庁にも設置をされていると思いますけれども、それが必ずしも完全に機能していないようでございます。  これは、先般調査室で調査をされましたその結果でありますので、その結果について五点ほどお伺いをいたしたいと思います。  その一つは、各省庁は会計監査を組織令において会計課、経理課等の所掌としている。監査担当者が会計課等の職員であることもあって、監査人としての客観的立場で強力に監査業務を進めがたい面もあるものと考えるが、これはどうであるか。  その次は、監査組織上の責任者は会計経理の執行責任者でもあるところの担当課長が任命されているが、会計監査組織を会計経理執行組織と分離すべきではないかということが二つですね。  その次は、監査実施上の実際の責任者はその課に属する監査室長、監査官、課長補佐等の者がこれに充てられている場合が多いが、会計監査組織の長の地位を上げるべきではないか。  四つとして、監査対象箇所数に比べて専任の監査要員が少ないため、監査担当外の職員が時に応じて応援として会計監査に当たっている省庁が多いようであるが、専任の会計監査要員を確保して内部監査の充実を図るべきではないか。  五として、監査報告書は大臣に提出をし、決算が国会に提出される際に決算書の参照として報告できないものか。  以上の五点についてお伺いをいたします。
  162. 朝比奈秀夫

    ○朝比奈説明員 御答弁を申し上げます。  先生の御指摘の最初の点は大蔵省の内部監査についてでございますが、大蔵省の組織令におきまして、大臣官房会計課におきまして予算の執行及び内部会計監査を会計課が担当しております。しかしながら、実際の会計監査担当者は予算執行事務そのものからは完全に分離しておりまして、会計監査専担として任命され、可能な限り客観的な立場において監査を実施いたしております。  御指摘の第二点でございますが、内部監査の組織をどのようなものとするかという点につきましては、政府全体の問題かもしれませんが、私どもといたしましては、現状においてこのような監査の充実のために最大限の努力を払っておりまして、現在の組織あるいはやり方で特に不都合を生じていないと考えております。  先生御指摘の第三点、担当者の地位をもう少し上げたらどうかという御指摘がございますが、それも一つのお考え方だと思います。大蔵省におきましては、先生の御質問のような趣旨と同じ考え方に基づきまして、昭和五十五年に、従来ありました会計監査官の上に上席会計監査官というものを設置いたしました。現在はこの体制のもとに内部監査の充実に最大限の努力を続けておりまして、そういう状況でございます。  第四点といたしまして、専任の監査要員をもう少し確保してほしい、こういう御質問でございますが、確かに監査要員をさらに増員するということは望ましいと考えてはおりますが、現状で各般の制約の範囲内で最大限監査の実施あるいは実効の確保ということに努力している次第でございます。
  163. 保田博

    ○保田説明員 最後の御質問にお答えいたします。  内部監査の報告書を国会に提出してはどうかという御質問でございますけれども、内部監査と申しますのは、各省各庁におきまして予算の適正かつ効率的な執行、それから会計事務にかかわる違法または不当な行為の防止、是正といったことに資する、さらにはまた、会計事務の指導といったような観点もあわせ目的といたしておるわけでございます。そういった内部監査の性格からいたしまして、これを常例的に決算書に添付して国会に御提出するということはいかがなものかというふうに考えております。ただ、もちろんこのことは、特別の御必要がございまして内部監査の状況説明しろというような御要望がございましたときに、これをお断りするといったような性質のものではございません。必要があれば、もちろん御説明はさせていただく、そういうことでございます。
  164. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 この点に関して、大臣、何か御所見はありませんか。
  165. 竹下登

    竹下国務大臣 保田次長からお答えをいたしましたとおり、大蔵省としましても、内部会計監査は会計事務の適正かつ効率的な執行を図ることを目的として実施しているというのが実情でございます。したがって、今後とも内部会計監査の重要性にかんがみまして、ただいまの御質問の趣旨を踏まえ、行政機構の簡素化――一方、行政機構の簡素化にも留意しなければなりませんし、そういうことにも留意しながらも内部監査の充実には可能な限り努力をしてまいりたい、このように考えております。
  166. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 終わります。
  167. 横山利秋

  168. 近江巳記夫

    ○近江委員 まず初めにお伺いしたいと思いますのは、現時点におきますいわゆる景気をどのように分析、また掌握、認識されているか、まずお伺いしたいと思います。     〔委員長退席、井上(一)委員長代理着席〕
  169. 西藤冲

    ○西藤説明員 御案内のように、景気回復が始まりましてから、最初は輸出主導型の回復でございまして、次第に企業部門にもその景気回復の恩恵が加わりまして、設備投資を中心にかなり拡大をしてきたわけでございます。現在はそういう企業部門が好調になってきた段階でございますが、家計部門につきましてはやや回復がおくれておりますけれども、次第に緩やかな増加を示しているという状況であろうかと思います。  今後につきましては、家計部門につきましても緩やかな回復が期待されまして、内需は順調に拡大をしていくであろう。一方、輸出につきましては、アメリカ経済の拡大のテンポが低下していくということもありまして、やや増勢が鈍化いたしまして、したがいまして内需中心の景気の拡大が続いていくのではないかというふうに見ております。
  170. 近江巳記夫

    ○近江委員 政府の認識としては、景気回復はほぼなだらかな線で上昇しておる、こうした御認識のようでございます。しかし、特に中小企業の実態というものを見てまいりましたときに、今年度、一月から九月期までに一万五千三百八十九件の倒産を数えております。金額にいたしまして二兆七千二百五億、大変な数値を示しております。戦後最悪の記録というのは昨年の倒産件数一万九千百五十五件。また、金額にいたしまして最悪の記録は昭和五十二年の二兆九千七百八十億。こういう状況からいたしますると、五十九年度は倒産件数二万件、そして金額にして三兆円を突破することは、ほぼ間違いないのじゃないだろうか。これは東京商工リサーチを初めとした各調査機関もそういう見方をしておるわけですが、政府としては中小企業の倒産をどのように見ていらっしゃいますか。
  171. 小川忠夫

    小川説明員 中小企業の倒産につきましては、先生今御指摘になりましたように、昨年来非常に増加を示しておりまして、ことしに入りましても依然高水準で推移してございます。この九月には前年同月を若干下回りましたが、これから年末にかけまして、例年季節的な要因もございまして、増加するおそれがございます。その点、私ども懸念しておるわけでございます。
  172. 近江巳記夫

    ○近江委員 特に年末にかけまして、これは毎年のデータを見ましても非常に著しい数値、また倒産金額も出るわけでございますし、このままの推移でいけば、私が今非常に心配してお聞きしております、件数にして二万件、金額にして三兆円の突破ということは必至なんですか、どうなんですか。
  173. 小川忠夫

    小川説明員 現在までわかっている数字は九月まででございます。あと十月、十一月、十二月と残ってございますが、今、先生御指摘になりましたように、例年この十月、十一月あるいは十二月は、倒産水準が季節的に高くなるときでございます。したがいまして、倒産の予測自体はなかなか難しゅうございますが、九月までの動向を勘案いたしますと、年間を通じまして昨年を上回るような倒産件数になる懸念もあるというように私どもは認識しております。
  174. 近江巳記夫

    ○近江委員 昨年の倒産件数が一万九千百五十五件。過去のデータをずっと見ましても、十月、十一月、十二月というのは、千五百件、千六百件とほとんど全部千五百件以上です。このベースでいきますと、あなたがおっしゃったように、件数にして戦後最悪の昨年の記録を更新する。また金額も、もう既に二兆七千二百五億ですから、今までのそういう分析からして昭和五十二年の二兆九千七百八十億を突破するわけですか。どうですか。
  175. 小川忠夫

    小川説明員 民間の調査機関の調査によりますと、先生が今おっしゃいましたとおりでございまして、金額的にもことしは非常に大きな負債額になっておるという状況でございますので、これからまた年末にかけて、その辺の増加というのが懸念されているわけでございます。
  176. 近江巳記夫

    ○近江委員 民間の調査機関によればと、あなた、前口上を入れていらっしゃるわけですけれども、中小企業庁というのは、中小企業のそういう動向については完璧に把握なさっているわけですよ。ですから、そういう文言は要らないと私は思う。政府として、今年度は倒産件数においても金額においても戦後最悪の記録になるだろう、そういう心配をされているのでしょう。その辺、はっきりしてくださいよ。どうなんですか。
  177. 小川忠夫

    小川説明員 調査自体は調査機関が全国的にカバーをして調査しておる。私どもも、倒産の件数あるいは金額につきましては、一応それをベースに政策的な判断の基礎にしておるという状況でございますが、中小企業庁といたしましても、そのほかのいろいろな調査なりを踏まえまして、同様な危惧の念を持っておるわけでございます。
  178. 近江巳記夫

    ○近江委員 民間の調査機関また中小企業庁を中心とした政府の認識も一致いたしまして、今年度は倒産件数あるいは金額ともに戦後最悪の記録を更新しようとしておるわけでございます。これはゆゆしき問題でございまして、こうした非常事態に立ち至った原因について、どのように分析されておりますか。
  179. 小川忠夫

    小川説明員 昨年の年初来の倒産の動向を分析いたしますと、業種的には建設業あるいは小売関係それから一部のサービス業、こういったところが特に倒産の増加が著しくなっています。私どもといたしましては、昨年来の倒産の著増の原因につきましては、住宅投資等の不振あるいは小売業等における内需関係が伸び悩んでおる、それに伴います販売不振、こういったところが原因の中心ではないか、こういうふうに考えております。
  180. 近江巳記夫

    ○近江委員 今、内需不振というものが非常に大きな原因を占めておるという御答弁があったわけでございます。確かに今日まで景気は全体としては回復基調にある、こういう答弁でありましたが、牽引力になったのは輸出、またそれに関連する業界。こういうふうに業界によって非常にばらつきがある。今おっしゃったように、特に建設業等を中心として非常に大変な業界もあるわけですし、地域によりまして、これまた非常にばらつきがあるわけでございます。特に公共事業等に依存しておる各地域につきましては本当に仕事もないというような状況でございまして、結局それがトータルとして、こういうふうに中小企業の倒産が続出してきておると言えるのではないかと思うのです。  そこで、いよいよ年末、また今後年度末を迎えるわけでございますけれども、中小企業対策についてどのように考えておられるか。特にまた金融面等につきましては大蔵省から聞きたいと思いますが、全体の対策として中小企業庁はどのように考えていますか。
  181. 小川忠夫

    小川説明員 先生御指摘のような倒産の状況等も踏まえまして、これから年末にかけて特に中小企業対策を機動的に運用していく必要がある。特に倒産防止対策といたしましては、中小企業金融公庫等の政府系金融機関による倒産対策貸付制度、これにつきましても、私どもはこの十一月からまた半年間延長することを決めてございます。それから中小企業信用保険法に基づく倒産関連特例保証制度あるいは倒産防止共済事業、さらには各地の主要な商工会議所あるいは商工会の連合会に設置してございます倒産防止特別相談事業、こういった各般の施策を機動的に運用してまいりたい、基本的にはこう考えております。特に、これから年末にかけましては、金融面での対策が重要であると考えております。後ほどまた大蔵省の方からお答えがあると思いますが、昨日、長期プライムレートの低下に応じまして、政府系の中小企業金融機関の基準金利につきましても〇・三%引き下げて七・六%としたところでございますが、今後とも、中小企業の資金調達の動向等を踏まえまして、十分な貸付資金枠の確保あるいは貸出手続の迅速化、さらには個別企業の実情に応じた既往債務の返済猶予等、年末対策に遺漏なきよう努めてまいる考えでございます。
  182. 近江巳記夫

    ○近江委員 竹下大蔵大臣にお聞きします。  先ほど中小企業庁から御答弁があったわけでございますが、今年は倒産件数、金額ともに戦後最悪の事態に立ち至るであろう、これは政府のほぼ一致した認識ではないかと思うわけです。そういうことで、景気は回復基調にあると言いながら現実にこういう大きなひずみが出てきておるわけでございます。この事態に対しての大蔵大臣の認識と、そしてまた特に大蔵省とされては、特に最近私たちも各地域からいろいろな陳情をお聞きするわけですが、選別融資が非常に強まってきておる、依然として歩積み両建ても非常に強まってきておる、こういう状況でございます。当然大蔵省としては政府系の金融機関また保証協会、いろいろなところに原資を提供されておるわけでございますし、特にこの年末の対策などというものは大蔵省のそうした緊急措置というものが非常に大きな救済のてこになるわけでございます。こうしたことを踏まえまして大蔵大臣のお考え、また今後の対策につきましてお考えを承りたいと思います。
  183. 竹下登

    竹下国務大臣 あるいは具体的な問題について事務当局から補足しなければならぬかと思うのでございますが、確かに倒産件数、経済の規模が大きくなっておりますから、いわゆる危機ラインというものもかつてに比べれば若干上がっておるではないかというふうにも思われますが、決して好ましい傾向であるとは思っておりません。なかんずく、御指摘なさいましたように、業種別、規模別、地域別、この三つの景況感の相違があると思っております。  業種別におきましては、御指摘のとおり、輸出産業ないしこれに関連する産業等は確かに好況でございます。そしてまた構造的に再編等をやむなくしなければならない面の業種は、また別個の対策を立てていかなければならぬと思っております。それからなかんずく建設業は、いろいろ議論がございますが、私が建設大臣をしておりました当時から比べれば倍以上になって、今たしか五十二万業者がございます。ちょうど、たばこの小売店の数が二十六万でございますから、それの倍ある。そういうところにも若干の問題はあろうかと思いますが、総じてそういう業種間の格差につきましては、なかんずく公共事業の問題は、今おっしゃいましたように業種間と同時に地域別の両方の面を持っておるわけでありますので、過般の、昨年度の補正の執行から今年にかけまして、公共事業等の、いわゆる鉱工業生産指数ともう一つの指数、ちょっと忘れましたが、それらをかみ合わせて若干の地域的配慮による配分が行われておるというふうに私は承っておるところでございます。  したがって、中小企業庁の方から、なかんずく年末を控えた場合の中小企業金融ないしそれに関連する施策についてのお答えがございましたが、私どもといたしましても、土曜日発表いたしまして月曜日から、すなわちきのうから長プラが〇・三%下がるという状態にございますので、それが政府関係機関にも連動いたしますし、そして金融全体はある程度緩んでおるという状態でございますので、年末に対する金融措置については万遺漏なきを期さなければならないし、期せる状態にあるというふうに私は考えております。  しかし、御指摘のございました選別融資の問題あるいは歩積み両建ての問題等につきましては、そういう事態の発生は従来とも注意してまいったわけでございますけれども、なかんずく金融の自由化等の趨勢にある今日でございますので、私どもとしては一層厳正に指導してまいらなければならぬ課題である、このように認識をいたしておるところであります。
  184. 近江巳記夫

    ○近江委員 大臣は総括的に御答弁いただいたわけでございますが、事務当局から、いわゆる政府系の金融公庫等に対しても、年末に対してはこういう対策を打った、また選別融資等についてはこういう通達を出した、実際のそうしたいろいろな指導なり対策というものをなさっておると思うわけでございますが、それについてお伺いしたいと思います。     〔井上(一)委員長代理退席、委員長着席〕
  185. 北村恭二

    ○北村説明員 先生今お尋ねのとおり、例年、年末におきましては中小企業等の資金繰りが大変急迫する時期でもございます。したがいまして、例年、量的な面におきましても、年末対策ということで政府機関等におきまして一定の量を確保するというような枠をつくって対処するということにしております。当然のことながら、民間等におきましてもそういった配慮をするわけでございまして、大蔵省といたしましても、年末に向けてそういった対策の指導ということを例年やっておりまして、今年につきましてもそういった現状、事態というのを十分認識しながら適切な対策を講じたいというふうに考えております。
  186. 近江巳記夫

    ○近江委員 まだ答弁が抽象論ですね。今のことは例年しておるからというような答弁だけですよ。今、これだけの非常事態を迎えておるわけでしょう。例年やっておりますからというような同じ対策でいいんですか。これだけの非常事態を迎えておるんであるから、大蔵省としてはこういう非常態勢をとって対策を立てておる、そのために事務局に聞いておるのでしょう。抽象論では大臣の答弁と変わらぬじゃないですか。
  187. 北村恭二

    ○北村説明員 現状の経済動向の認識等につきましては、先ほど来、全体の経済動向の姿、その中にあって地域別とか業種別とかいろいろ跛行性が見られるといったようなことを十分大蔵省として認識しておるところでございますけれども、現状においてまだ具体的にそういった対策をどういうふうにということでお答えできる段階にはちょっとございません。いずれにいたしましても、事態の推移を見ながら適切に対処していきたいということでお答えにさせていただきたいと思うわけでございます。
  188. 近江巳記夫

    ○近江委員 中小企業庁は、いわゆる実際にパックアップをしてもらうのは大蔵省でしょう。大蔵省がまだその事態を完全に把握を――あさってからもう十一月ですよ。通産、大蔵両省ともそんなのんびりしたことでいいんですか。どうなっているんですか。要するに皆さん方の認識がいいかげんだから私は言っているんですよ。皆さん方に日本経済の底辺を支える中小零細企業が本当に大事だということがあるならば、両省は当然十一月に入るまでに完全な調整をやって、しかるべき対策をとるということをきちっとしておくべきですよ。
  189. 竹下登

    竹下国務大臣 たまたまきょうは銀行局関係者が来ていないものでございますから、正確な数字等とそれから期日等を把握した者がおりませんが、一般的に申しまして、いわゆる私どもから申しますと年末金融対策、いわば倒産件数、倒産金額等が戦後最高になるというときに、それが予測されておるならばもっと前広に年末金融等のめどもつけて対応すべきじゃないか、こういう御趣旨であろうと思っております。  具体的に年末金融の量的な面について相談するのは恐らくもう少し先であろうと思っておりますが、私どもが現在把握しておる状態の中におきましては、年末金融の量的支援については、さらに追加措置をするにいたしましても、十分その余裕はあるという状態と認識をしておるわけでございます、一般論としての金融が緩んでおるということからしてでございますが。したがって、年末に例えば政府関係三機関にどれだけの量的な手当てをするかという問題につきましては、両省間で議論をしておるという段階では恐らくちょっと今時期的には早いんではなかろうか、こういう、私のこれは感じを申し上げただけでございますが、適当な機会に担当省、担当局から、整理いたしましてお手元へ届けるなりお答えをするなりすることは結構だと思っております。
  190. 近江巳記夫

    ○近江委員 大臣おっしゃいましたように、いわゆる量的には確保できる。ところが、これだけ倒産が激増しできますと、私が申し上げたように選別融資なんというものは一段と今厳しくなってきているのですよ。量があるから、それじゃ中小企業に貸すか。貸さないのですよ。そういういろんな状況に今なってきている。そういうときに、当然民間はそういうように指導してもらうと同時に、第一次的に出動するのはやはり政府系でしょう。そういうところに対する対策だって具体的な答弁は出ないでしょう、これだけの額を用意しておりますとか。それで足らない場合もこういうことを用意もしていますと、何にも具体的な答弁が出ないじゃないですか。両省でそこで相談しているのだから、わかっている分一遍答えて保ください。
  191. 小川忠夫

    小川説明員 政府系の中小企業金融機関の貸し出しの規模でございますが、この十月から十二月までにつきましては一兆九千九十億円、これは対前年の同四半期比でいきますと一一二・三%になりますが、これを確保する考えでございます。
  192. 近江巳記夫

    ○近江委員 保証協会であるとか一連のそういう関連のところもあるわけですから、十分な対策をひとつ立ててもらいたいと思うのですね。  また、倒産救済制度等も、これをただ制度があるというのじゃなくして、実際の適用ということになると、とにかく制度があるけれども、非常にひこ難しいいろんなことで実際に適用されないというケースがよくあるわけですよ。こういう点を本当に救済していくという立場に立って、そういう運用という点につきましても十分ひとつ力を入れてもらいたい、このように思うわけです。  それから民間金融機関もこれはきちっと指導するのですか。
  193. 北村恭二

    ○北村説明員 民間の金融機関につきましては、常日ごろから金融機関に対して、融資に当たってそういった中小企業に対する配慮といったような点について十分考えるようにということは指導しておりますが、また、そのときそのときの経済動向等に応じまして、時期を見てそういった指導をこれからもやっていきたいというふうに考えております。
  194. 近江巳記夫

    ○近江委員 今のも私に言わせると抽象論ですよ。今までやってますから、また同じようにやりますと……。こういう非常事態なのだから通産省も大蔵省も、これだけの非常事態を迎えているのですから、両省が本当に真剣になってこの対策をひとつやっていただきたい、このように思います。竹下大臣、いかがですか。
  195. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる大型倒産がございますと、それはどのような対応策を行ったかということが報道機関等でも明らかにされ、目に見えるわけであります。が、中小企業倒産というものにつきましては、確かに、この企業に対しては社会的不安がどのように出るからこういう措置をやったというようなことを国会等でも私どもも、私の記憶の中では御報告したりしたことがございません。したがって、今近江委員の御指摘というのは、少なくとも中小企業が数において、そして額において戦後最大の倒産件数を数える今日、物の見方によっては、かつての倒産と質的な内容は違うにいたしましても、その数値で見る限りにおいてもっと真剣にこれを受けとめて、そしてそれに対しての、まあ私どもの方で言うならば年末金融等方遺漏なきような具体的な協議を行い、そのような指導をすべきである、こういう御趣旨であろうと思いますが、その御趣旨を体して私どもも年末金融等遺漏なきを期していきたい、このように思っております。  申しわけないことでございますが、銀行局来ておらなかったものですから、正確な数値とか通達とかいうことについて直ちにお答えする余裕がなかったことをおわびを申し上げます。
  196. 近江巳記夫

    ○近江委員 私の質問はまだしばらくあるわけですから、銀行局をすぐ呼んで、私の質問が終わるまでに追加の答弁をさしてください。  それで、こういう倒産が非常に増加してきておる根本的な原因は、やはり輸出依存型の、そういうことで日本経済の運営ということをやってきた、結局内需喚起という対策というものが非常に欠けておったと私は思うのですよ。例えば減税にいたしましても減税を上回る増税をやる、あるいは公共事業のカット、あるいはまた人勧も抑制をする、こういう中で個人消費も伸びない。あるいはまた官公需の中小企業向けの配分につきましてもほとんど前年とは変わらないというような、当然予想されることに対する対策というものが講じられてこなかった。そういう大きな背景があると私は思うのです。これは政府全体の責任であると私は思うのです。  ですから、そういう点で、これはひとつ竹下大蔵大臣からも閣議でも一遍諮ってもらって、戦後最悪の記録をつくろうとしておる今日、こういう対策でいいのかどうか、ぜひひとつ俎上に上げていただきたいと思うのですが、いかがですか。
  197. 竹下登

    竹下国務大臣 いわば中小企業の倒産対策ということになると、閣議で私が発言するよりも、きょう委員の御質問を私も承り、また通商産業省も承っておりますので、それを上に上げまして、そういう形の中から議論を展開した方が適切ではなかろうかと思いますが、御趣旨は私も十分に理解をさしていただいたところであります。
  198. 近江巳記夫

    ○近江委員 じゃ、ひとつ政府挙げてこの対策に取り組んでいただきたい、このように思います。  きょうは時間を同僚と二つに割っておりますので、時間が余りありません。ですから、私が聞く項目というのはそういうことで非常に飛び飛びみたいな形で、脈絡という点からいきますと離れておるようでございますが、簡潔にお答えいただきたいと思うのです。  一つは、毎年の予算編成でございますけれども、いわゆる概算要求枠、これが基準ということに変更しておるわけですが、一律削減方式というものが現実は変わってないわけですね。そういう中で、結局、例えば地方自治体に対する補助金の一律カットであるとか、こういうことになってまいります。当然自治省からそうした方針というものがまた出てくる、こういう予算編成のあり方自体が、私は、一律削減方式ということからそういう大きな問題が出てきておると思います。福祉や教育や、本当に私たちの国民生活に一番密着するそういうところにしわ寄せが非常に今出てきておる。地方自治体は当然のことながら――そういうことで、私はこの来年の予算編成、もうそろそろ、ずっと夏以降からかかっていらっしゃるわけでございますけれども、こういう現状をかんがみて、やはりその考え方というものを変えていかなければいけないんじゃないか、このように思うわけでございます。  それでまた、予算編成も政府はまあ年内にやりたいと言っていますが、自民党では金丸総務会長などは、年明けだというようなことも伝えられておるわけですが、これは大蔵大臣、どうなさるおつもりですか。
  199. 竹下登

    竹下国務大臣 予算編成の時期といたしましては、これはいつも議論のあるところでありますが、財政法によれば、年内に「提出するのを常例とする。」と書かれてあります。しかしながら、これは第一次世界大戦のときの一年以外、明治以来一回もないことでございますが、そういう条文があるぐらいでございますから、私どもといたしましては、年内編成ということで対応して、もろもろの準備を進めていかなきゃならぬというふうに考えております。  ただ、金丸総務会長の御発言の趣旨を承ってみますと、いわば国会のプロの立場から、年内、国会が諸般の法律等を審議するために稼働する場合、事実上物理的に難しい問題が出やしないかという一つの懸念を発表しただけであるということでございまして、やはり政府・与党にいたしましても、年内に提出するということは、これはできませんけれども、そういう趣旨を体して、年内編成に向かって財政当局としては各般にわたる準備を進めていかなきゃならないという考え方の上に立っております。
  200. 近江巳記夫

    ○近江委員 それからちょっともとへ戻りますが、この倒産問題ですけれども、グリコ・森永事件で、森永が九割減産、来月売上高も七割減と、こういうようにマスコミでも報道されておるわけですね。中小企業等も相当関連があると思うんですが、こういう状況にかんがみて、大蔵省としては具体的な対策を考えていらっしゃいますか。
  201. 竹下登

    竹下国務大臣 先般閣議で総理から、この事件は社会全体がサポートすべきであるというお考え方から、各省そのつかさつかさによって対応することを可能な限り検討をすべきであるということで、私の守備範囲になりますと、いわゆる金融不安とかあるいは経営不安とかいうものを起こす場合の金融措置についての問題でございますが、現在私どもが情報を得た段階においては、心配は、下請中小企業等も含めて、金融面からする心配はないという情報を得ておることを、私も総理にも報告しておきました。  総理の御発言は、ある意味においてモラルサポートとでも申しますか、そういう考え方の上に立たれた問題であろう。が、今おっしゃいましたような新聞紙上等で報道されておるようなパートの問題とか、いろんなこと等も私どもも承知していないわけじゃございませんが、私の所管の中においては、金融の観点から見ました場合、現在不安な問題は存在していないというふうな情報を得ております。
  202. 近江巳記夫

    ○近江委員 しかし、それは現時点のことでございますので、十分な対策をひとつ講じてあげていただきたい、このように思います。  それで、もう余り時間がないのですけれども、今年度は一兆円の所得減税をやった。しかし、それを上回る増税がいろんな形であったわけでございます。国民は、大幅な所得減税をしてもらいたいと強い願望を持っております。これに対して、来年度、大臣としてどのようにお考えか。  それからまた、反面、OA機器を初めとして、少なくとも一千億以上に上る間接税の導入を大蔵省は考えているんじゃないか、非常に疑心暗鬼のそういう気持ちが国民の間に高まってきております。ですから、それはぜひやめていただきたい。もっと大胆な行政改革をやることによって、そうしたことは導入する必要がない、私はこのように思うわけでございます。  まず、この二点につきましてどのようにお考えか、承りたいと思います。
  203. 竹下登

    竹下国務大臣 まず所得税の問題でございますが、今御指摘なさいましたように、五十九年度において、初年度ベースで八千七百億円、住民税を含めれば一兆千八百億円の大幅減税を行ったばかりでありますので、今の、現在の財政事情を考慮いたしますと、さらに減税を行うという環境にあるとは私どもは残念ながら認識をいたしておりません。  それから、いわゆる間接税等の問題でございますが、この六十年度税制改正ということになるわけでありますが、今後の財政事情等を踏まえて検討すべき問題であって、具体的なことを申し上げる段階にはございません。  で、今の税制調査会の中期答申におきましても、この歳出の抑制努力と並行して、歳入面においても社会経済情勢の変化に対応して税制をより公平かつ適正なものとするよう、税制のあり方について検討を行うことが適切な税収を確保するため最も必要であるとされておりますので、絶えずこれは見直すための検討は続けていかなければならぬわけでございますが、税というものは負担及び税体系のあり方、これは究極的には国民の合意と選択によるものでございますので、国会で行われたこのような、本日のような議論等を正確に政府税制調査会の方へ御報告申し上げ、そこで議論をしてもらって、そしてコンセンサスを得て、その中で私どもはそれぞれ対応していく、こういうことになろうかと思いますので、あらかじめ予見を持ってこの税には手をつけませんとか、あるいはこれをやりますとかという性格のものではない。いましばらく財政状態の推移とかを見守って、そして国会等の議論を正確に税調に報告し、その議論をまって対応すべきものであるというふうに考えておるところであります。
  204. 近江巳記夫

    ○近江委員 時間がありませんので、単発的にお聞きしていきます。  人勧の問題は、これは国家公務員、地方公務員、関連を含めまして、本当にこの二年間に続くいわゆる抑制ということにつきましては、もう大変なこれは生活の状態が厳しい状態になっております。そういう点で、これはもういよいよ決着の段階に来たと私は思いますし、六・四四%、これについてどういうように-何といいましても、財政当局の意向というものがやはり一番大事なことでございます。基本的にというか、いよいよもう放置しておく段階じゃないと思います。大臣はどのようにこれをなさるのか、ひとつお伺いしたいと思います。
  205. 竹下登

    竹下国務大臣 これは究極的には、勧告の取り扱いにつきましては国政全般との関連を考慮しながら給与関係閣僚会議において決める、こういう筋になっております。したがって、給与関係閣僚会議も過去開き、今日なお検討しておるという段階でございます。したがって、私はやはり例年の例等も考えますと、可能な限り早く結論を得なきゃならぬという考え方の上に立っております。  そこで、その中の財政当局としての私の立場から申しますならば、人事院勧告制度尊重の基本精神には変わりはございません。が、現下の財政事情等を考慮しましたならば、多額の財源を要する人事院勧告の取り扱いについて、財政当局としては厳しい姿勢でこれに臨まなければならぬという立場にあることを素直に申し上げておきます。
  206. 近江巳記夫

    ○近江委員 厳しい姿勢で臨むとおっしゃっておるわけですが、そういうことを聞けば公務員の皆さんは余計心配になるわけですよ。ですから、いわゆる二%、これはもう当然のことながら、残りの四・四%ですね、これはどうなさるのですか。当然最終は政府全体でお決めになるのですけれども、竹下大臣としては公務員の皆さんを思ってどのようになさるのですか。もう少し率直におっしゃってください。
  207. 竹下登

    竹下国務大臣 おっしゃる意味が私も政治家としては理解できることでございますが、いわゆる積み残し分というのを分離して議論するということは、観念的に、前にやっていないんだからその積み残しが残っておるという議論はあるわけでございますが、年々詳細な比較をしながら決められていくものでございますので、いわゆる積み残し分を分離して議論をするということは、現実の議論の中では非常に難しい問題ではないかというふうに私は考えております。あくまでも四月現在における官民の給与較差をその都度の調査で一本の率で示す、こういうことになっておるわけであるから、そのような窮屈なことを申し上げたわけでございます。  したがって、私どもといたしましては、政府全体で国政全般との関連で決めるわけでございますが、最大限の努力をいたすという基本方針の中に、私は財政当局としての立場で厳しくこれに臨まざるを得ないという域を、なかなかそれを、そののりを越したお答えをするということは、給与担当閣僚でもありませんので、ちょっとお答えをしかねる問題でございますが、先生がいわゆる積み残し分という意味で頭に描いていらっしゃる問題は、私の問題意識にはございますが、厳密に言うと積み残し分として分離して議論をするということは建前上は難しい問題ではなかろうかというふうに、やはり給与担当閣僚でございませんので、ちょっと歯切れは憩うなりますけれども、本当に今明日にでも決着を得るように精いっぱい努力はしなきゃならぬと思っておるところでございます。
  208. 近江巳記夫

    ○近江委員 時間がありませんので終わりますが、この人勧の扱いにつきましては完全実施をぜひともひとつやっていただきたい。ひとつ竹下大蔵大臣に政府を代表して、私は強くこれを要望いたしておきます。勧告六・四四、これをひとつぜひ実行されるように政府に強く要望いたしておきます。時間がありませんので、終わります。  あと、それでは銀行局は資料をぜひ届けてください。  それから、あと我が党の玉城議員が沖縄の読谷を初めとした用地問題で質問いたしますが、これは私がかつて予算委員会でこの問題を取り上げました。その後、当時福田総理でございましたが、よく調査をして白紙に戻す、調査した上でと、こうした御答弁がございましたが、いまだにこれがそのままになっておるわけでございます。具体的なその後の調査に基づいて玉城議員が質問いたします。そういうことで、これは長い経過のある問題である、こういうようにひとつ認識をしていただきまして、きょうは一歩大きく前進する政府の誠意ある御答弁をされるよう強く要望いたして、私の質問を終わりたいと思います。
  209. 横山利秋

    横山委員長 玉城栄一君。
  210. 玉城栄一

    ○玉城委員 最初に、委員長に御了解をいただいておきたいのですが、私の質疑の途中に、質疑が理解しやすいように、その都度、ちょっと資料を委員部の方から当局の方に、また委員長の方にもお配りしたいと思いますので、どうぞ御了解をいだいておきたいと思います。
  211. 横山利秋

    横山委員長 はい、どうぞ。
  212. 玉城栄一

    ○玉城委員 今、我が党の近江議員からもお話がありましたとおり、大臣、これは我が党がかかわりまして、沖縄の旧軍、現在国有地扱いになっている問題なんですが、もう七年ぐらいになるわけですね。ですから、これはもう本当に、そろそろこの問題は決着一まさに遅きに失する問題だと思うわけです。質疑の途中でちょっとお留守をされるやに伺っておりますが、できるだけ短く、きょうはぜひ大臣にお聞きいただきたいと思う点が多々ございますので、御配慮をよろしくお願いしたいと思います。  最初に、これは事務当局の方に、お伺いしたいのですが、本年の二月、私は大蔵省から沖縄県下所在の国有地に関する資料の提出を求めたのでありますが、御提出いただいた資料の中に十四件の未利用地の所在地、数量、台帳価格を表示した資料がありました。特にその中から、資料のナンバー八ですね、沖縄県勝連町津堅津堅原一一九四-一-コウの台帳価格二十五万五千円の土地を取り上げて、沖特委で一回、本決算委員会で一回、この土地は未利用ではなくてこうこうこういうふうに利用されているという実態を示して、国有財産当局に質問をいたしましたが、その際、私が幾らこの土地は現状ではこういうふうになっていると何回申し上げましても、当局は、「私どもの承知している限りでは、未利用の状態にあると考えております。」とおっしゃっております。しかし、私がついに、答弁された当時の課長さんに「あなたの責任問題になりますよ。」と警告をいたしましたら、「未利用と考えておりますけれども、現地の機関を通じまして、今どういうぐあいになっているか、調べてみたいと存じます。」と答えておられるわけです。会議録にもちゃんと載っておるわけです。その後どういう調べをされたか、その調査の結果、この土地の状況はどうであったか、そのことに限って、まず最初にお答えをいただきたいと思います。
  213. 中田一男

    ○中田説明員 お答え申し上げます。  まず冒頭に、日ごろ玉城先生からは沖縄の軍用地の問題につきまして、現地の情勢ですとか、いろいろな事情につきまして貴重な情報、御示唆をいただいておりまして、この点につきまして厚くお礼を申し上げたいと存じます。  ただいま御指摘の中頭部勝連町津堅原の土地でございますが、実は二月七日に提出いたしました資料につきまして、先生に御説明するのが我々の方は非常に不十分な点がございました。そのために御指摘の所在地にある土地については、未利用地になっておるけれども利用されておるではないかという御指摘があったことは事実でございます。  実は、国有財産を整理いたしますときに、沖縄には大きな施設が全部で二十七ございます。主要なものでも十八ございますけれども、その施設の一つことに一つの口座として、まず総括をしております。そしてその口座の所在地ということで、一応代表的な所在地を一つ掲げてやっておりまして、実際には筆がたくさんございますればその所在地が幾つも分かれておるわけでございますが、一つの口座に対して一つの所在地でもってあらわすという形で一応整理しておりますものですから、二月七日に提出いたしました資料につきましては、読谷の飛行場についてその利用ごとに三カ所に出てくるわけでございますが、三カ所とも同じ所在地で表示されておったわけでございます。また勝連の場合も、実はこの代表的な所在地につきましては、貸付地ということで現状は確かに利用されておりました。その点、私どもも十分御説明をいたしておらなかったものですから、この所在地そのものは未利用地であるかのような御説明をいたしまして、この点はまことに申しわけないと存じております。  この番号八で表示いたしました三千八十八平方メートルは実は二筆に分かれておりまして、勝連町の津堅仲原八百八十六番地というのと、同町の津堅桃原六百二十二番地ほかというのの二区画でございまして、これは現在も未利用の状態でございます。ただ、資料を提出しましたときの所在地につきましては、おっしゃるとおり貸付地で利用されておる状況であったということでございます。
  214. 玉城栄一

    ○玉城委員 私も時間が限られておりますので、端的にひとつお答えをいただきたいのですが、今の問題に関連しまして、皆さん方の二月七日に提出されましたこの未利用地の十四件、今の件について言いますと、その面積はおっしゃったように三千八十八平米ですね。ところが、土地登記簿謄本を取り寄せまして面積を比較しますと、四千八百三十九平米。それからもう一つ、今の十四件の中にあります読谷村楚辺中止原二四七九、これはナンバー十一ですね。これについてもこちらで謄本を取り寄せて面積を比べますと、謄本の面積に大きな違いがあるわけです。この二つの理由を簡単におっしゃっていただきたいのです。
  215. 中田一男

    ○中田説明員 今御指摘の謄本をとれば面積が違うとおっしゃいましたのも、先ほど私が御説明しましたと同じ原因に基づくものでございまして、謄本では資料に提出しました所在地、つまり代表的なところで一カ所対応させておりますが、その所在地の面積が挙がっておるんだと思います。私がただいまお答えしました二つの筆、これを合わせた未利用地は三千八十八平方メートルでございます。つまり謄本の場所と未利用と私どもが指摘しておる場所が実質的に違っておるというところに原因があろうかと存じます。
  216. 玉城栄一

    ○玉城委員 ですから、皆さん方が先ほどからおっしゃっています二月七日提出のこの未利用地提出資料十四件では「所在地」となっているんですよ。私たちはこれに基づいて、未利用地というものですから実態も調べてみたら、この番地のところとはいろいろ違うのですね。面積も違えばいろんなものが違う、一体これはどういうことでこうなっているのですか。
  217. 中田一男

    ○中田説明員 先ほど申しましたとおり、各施設の大きなものにつきましては筆がたくさんございまして、所在地がその筆に対応しておるわけでございますが、一応総括といたしましては、一つの口座に一つの所在地を対応して全体を代表さしておるというような扱いになってございます。したがいまして、二月に提出いたしましたときに、その「所在地」と書きましたのは未利用地という区分になっておりましたので、非常に誤解を与えて、私どもの説明も不十分であったと反省をいたしておるわけでございますが、その施設の所在地がそこには挙がっておりまして、未利用地そのものの所在地じゃなかったというところに原因があったわけでございます。
  218. 玉城栄一

    ○玉城委員 ですから、そういういいかげんな資料を出されて、しかも今未利用地というのは、代表的な地番をこれに書いてあるのであって、この所在地ではないのだ、そういうことをおっしゃっておられるわけですね。しかも前のこの決算委員会、沖特委員会においても、この国有財産台帳の土地に関する記入が今おっしゃった代表的な地番で行われておる、それをそのまま所在地と勘違いして資料として提出をし、二度にわたる委員会での説明も、当時の課長さんもそのことを知らずに答弁していた。その答弁に対して私は詳細な追及を行ったわけでありますが、その結果、国有財産台帳の記帳の仕方がこういうふうになっていたことに気づいたというふうに考えてよろしいですか。最初からそうであったら、どうしてあの二回の委員会で皆さん方は今のような説明がなされなかったのですか。私たちはその出された資料に基づいて実態調査を行っているわけですね。ところが今ごろそんな釈明みたいなことをおっしゃっても、これは大変な迷惑どころか、重大問題ですよ。
  219. 中田一男

    ○中田説明員 施設を代表させる所在地でもって整理しておる、総括しておるということは当時も存じておったわけでございますが、まさに説明の不足といいますか、そういう点で御迷惑をおかけしたことはまことに申しわけないと存じます。
  220. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、国有地の台帳の記入の仕方は、所在地は代表地番でよろしいという規則にはなっていないと私は思いますが、いかがですか。
  221. 中田一男

    ○中田説明員 現在の国有財産の記載につきまして、筆が幾つも分かれている場合にはその中の主要なものを一つ挙げて整理すればいいというふうになっておると理解しております。
  222. 玉城栄一

    ○玉城委員 皆さん方は代表的な地番とかなんとかと先ほどからおっしゃっておりますけれども、大臣、これは大変な迷惑どころか、惑わされたといいますか、出された資料に振り回されたといいますか、しかも二回の委員会でそのことを答弁される当時の課長さんは何ら説明もないままに今のような話が初めてこういう席で出てくるわけですね。大臣、これはひとつ釈明していただきたいです。
  223. 竹下登

    竹下国務大臣 経過を簡単に聞いただけでございますので、正確であるかどうか。確かにそのときにお答えしたことにつきましては、いわゆる資料の説明を、いわばB欄ですべきものをA欄で突っぱねたお答えをしたことが誤解を招いた、したがってそれは取り消して謹んでおわびを申し上げることである、こういう認識を今したばかりでございます。
  224. 玉城栄一

    ○玉城委員 大臣もよくおわかりなのかどうか、これは時間がございませんので……。  それで、今の大蔵省の出した未利用地の資料のナンバー十一、読谷村楚辺中止原二四七九ほか一件についてもあのとき質疑を交わしたわけですが、この読谷村の二四七九番地も代表地番であって、これは所在地を示す地番ではないわけですね。
  225. 中田一男

    ○中田説明員 そのとおりでございます。
  226. 玉城栄一

    ○玉城委員 そうしますと、それでは、ほかにこの十一の読谷村の未利用地の所在地番はどうなってますか。
  227. 中田一男

    ○中田説明員 読谷村の未利用地の所在地は中頭部読谷村字伊良皆西後原六百九十七番地となって為ります。
  228. 玉城栄一

    ○玉城委員 そうしますと、今中田さんがおっしゃられた沖縄県中郡部読谷村字伊良皆西後原六百九十七番地は、これは未利用の国有地というふうになるわけですね。
  229. 中田一男

    ○中田説明員 そのように承知しております。
  230. 玉城栄一

    ○玉城委員 それではよく聞いてください、中田さん。大臣、今行かれたのですが、これは大臣にぜひ聞いておいていただきたいのですが……
  231. 横山利秋

    横山委員長 ちょっと出かけました。
  232. 玉城栄一

    ○玉城委員 先ほどのは間違いありませんか、中田さん。もう一回確認しておきますよ。
  233. 中田一男

    ○中田説明員 現地で調べていただいた調査の結果を受けておりますが、現状は未利用地であるというふうに聞いております。
  234. 玉城栄一

    ○玉城委員 国有地の未利用地ということですね。  そこで、委員長も、大蔵省から五十三年に出ています沖縄の旧軍用地の報告書という、それの四番、ちょっと線を引いてありますのでごらんいただきたいのですが、そこで昭和五十三年四月十七日大蔵省より衆議院予算委員会に「沖縄における旧軍買収地について」という報告書が提出されました。この報告書は、旧軍が買収したという物的証拠は何にもないが、大蔵省は買収したものと断定するという極めて乱暴な報告書であります。その中の三、「米国治政下における所有権認定作業」という項目がありますが、それには、一番下の欄の方にありますが、「いったん国有地として証明書が交付された後、巡回裁判の結果所有権が民間人に認定された事例がある。」という記述がありますが、これは国有地になったについては、米国軍政下ではあったが、所有権認定作業も、またその後巡回裁判もあって、極めて民主的に公正に国有地になったものだという大蔵省の主張を裏づけるたった一つの事例なんですね。その事例の所有権者と地番をおっしゃっていただきたいと思います。
  235. 中田一男

    ○中田説明員 今の事例に当たろうかと思いますが、所有権者は上間清子さん、地番は沖縄県中郡部読谷村字伊良皆西後原六百九十七番地でございます。
  236. 玉城栄一

    ○玉城委員 中田さん、今おっしゃっていることは大変大事な問題です。もう一回ずっと確認していきますけれども、私は我が党の先ほどの近江巳記夫議員とともに、大蔵省報告書が提出された五十三年四月十七日と同日付で、先ほどからお配りしてありますこの報告書に対する質問主意書を提出いたしました。が、その質問事項の一つとして、巡回裁判の結果所有権が民間人に認定された事例の所有権者名と地番を示すことを内閣に求めたのでありますが、その答弁書は五十三年四月二十五日に出てまいりました。そこには「所有権者 上間清子」ですね。それから「地番 沖縄県中郡部読谷村字伊良皆西後原六百九十七番」とあります、それを読んでいただければ。  ところが、未利用地の十四件の中の、先ほどおっしゃいましたでしょう、同じ番地のところ、皆さん方はあれは国有地であると言う。これでは先ほども確認したなには民有地と、こういうことになるのですか、同じ土地が。それをわかりやすく説明していただきたいのです。
  237. 中田一男

    ○中田説明員 お答え申し上げます。  実は先ほど読み上げました所在地にございます土地につきましては、昭和二十六年四月一日読谷村長から日本政府所有地として土地所有権証明書が交付されておりまして、国有地として書かれておったわけでございます。そのときの面積は三千九百四十三・八〇平方メートルございました。その後四十一年十一月二十四日に、そのうちの二千二百八十平方メートルにつきまして上間清子さんから所有権が自分のものであるという申し立てがあり、巡回裁判所でそれが認められた。そこで、同一地番にあります土地のうち、二千二百八十平米につきましては上間さん名義になっております。そして残りの千六百六十三・八〇平米については、国有地として私どもは管理いたしておるわけでございます。
  238. 玉城栄一

    ○玉城委員 今の御説明では、この六百九十七番地で、今おっしゃった面積の半分は上間さん、その面積の相応する分ですね。また相応する分は国有地と、こういうことですか、同じ六百九十七番地。
  239. 中田一男

    ○中田説明員 さようでございます。
  240. 玉城栄一

    ○玉城委員 それたらあなた方は非常に紛らわしいことを資料に出してありますね。地図をよくごらんになってください。先ほどの皆さん方から出された地図です。ちょうど真ん中に、これはちょっとアメリカ合衆国のような地形になっているのですが、右の端の方です、ちょうどニューヨークあたりですか、ここが六百九十七番地ですね。この土地は、おっしゃった面積の部分は国有地、おっしゃった面積の部分はいわゆる民有地、こういう意味ですか、間違いありませんか。
  241. 中田一男

    ○中田説明員 お答えいたします。  先ほどのような事情で一部が民有地というふうに認定されまして、それを登記いたしますときには、登記官の職権によりまして六百九十七番の一という地番を設定いたしましたので、正確に申し上げれば、民有地は六百九十七の一番ということで、国有地の方は六百九十七番ということになろうかと思いますが、いずれにいたしましても、西後原の六百九十七番地にございます千六百九十四平米の土地は国有地ということで管理いたしております。
  242. 玉城栄一

    ○玉城委員 そういうことであるならば、皆さん方政府の出した、内閣の出したこの答弁書になぜそう書かないのですか。これにはどこを見てもそんなことを書いてありませんよ。六百九十七番地。一とも何とも書いてありませんよ。  しかも、これまた皆さん方が出したこの資料にも六百九十七、これは上間清子さんの土地。政府の答弁書ですよ。総理大臣の責任で出された答弁書ですよ。これは大蔵省が出してきた資料ですよ。同じ六百九十七番地ですよ。どうしてこういう六百九十七番地が一方が国有地、一方が民有地、そういうことになるのですか、ちゃんと説明してください。
  243. 中田一男

    ○中田説明員 もと六百九十七番地に一筆の土地であったものが、そのうちの一部について所有権の主張がなされまして、それが認められたものですから、その部分が民有地になり、残りは国有地に残ったということでございます。
  244. 玉城栄一

    ○玉城委員 これは非常に大事な問題です。私たちは皆さん方が出している、五十三年に当時の衆議院予算委員会に出した沖縄の旧軍用地についての報告書、これはインチキだ、でたらめだ、そういう不信感すら持たざるを得ないのです。これは登記簿上はどうなっていますか。
  245. 中田一男

    ○中田説明員 お答えいたします。  先ほども御答弁いたしましたとおり、そういう六百九十七番地の土地が分筆されまして、登記に持っていきましたときに登記所の書記官が職権で六百九十七の一番として登記をしておると聞いております。
  246. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこでいいかげんなことをおっしゃらないでください。登記簿上は県有地になっているのですよ。では、ちょっと時間もありませんので、それ釈明あるなら……。
  247. 中田一男

    ○中田説明員 私が今御説明しましたのは民有地になった方の土地についてでございます。国有地だと私どもが主張しております土地の登記簿の方では、所有者は沖縄県という名義になっております。
  248. 玉城栄一

    ○玉城委員 ですから、旧軍の土地を国有地として皆さん方が無理にこうしてきた経過と結果がこういういろいろなずさんな問題を抱えているのです。それをぜひ私指摘したいのです。  それで、一体この国有財産台帳にはどういうふうに記載されているのか。これは当然見たいというのは私たちの切なる希望です。それで、旧読谷の関係地主の方々の代表二十四名の方々が署名捺印しまして、ぜひその国有財産台帳を見せてくれという要請文が来ていますけれども、――大臣なかなかいらっしゃらないですね。こういう台帳の記入の仕方、非常に不明瞭な部分、国有地なのか県有地なのか民有地なのかさっぱりわからない。出してきている皆さん方の資料あるいは正式に政府が出している答弁書、書いてあることと実態が全然違っている。こういうことからして、国有財産台帳をぜひ見せてもらいたいという関係者の要請文があります。お配りしてありますから、ちょっとこれを読ませていただきます。     国有財産台帳の閲覧について  国有財産台帳は売払いとか貸付とか私契約に属するものがあるので、相手方の立場を尊重して公開しないとの大蔵省の意向でありますが、私達旧読谷飛行場用地の旧地主は沖縄の本土復帰以来、旧陸軍が対価を払って取得したものではないとの事実に立脚し、能う限りの証拠等を挙げて政府に返還を迫ってまいりました。  昭和五十二年三月、時の福田内閣総理大臣は、国会で「よく調べて国有財産台帳から消すべきものは消す」との答弁をなさいました。これをうけて国有財産当局昭和五十三年四月に調査結果を発表しました。その報告書では、沖縄本島には売買が行なわれたことを証明する物的証拠は何ら発見できなかったが、宮古、八重山等の離島の事例から類推して旧読谷飛行場用地も国有地となったと認定されました。  旧読谷飛行場用地に関しては、売買契約、金銭の授受がなかったという事実経過からして、国有財産台帳への記載内容について問題があると私共は考えます。さらに、私達は、旧読谷飛行場の旧地主という立場に立たされているものであります。したがって、本件土地に関する唯一の私契約の相手方だと言わねばなりません。  国有財産当局が私契約の相手方の立場を尊重されるといわれるならば、我々のこの要請を了とされて、相手方である我々の立場を尊重していただきたいのであります。  我々旧地主は玉城栄一代議士を通して台帳の閲覧をしていただきたく、署名なつ印を添えて依頼を致しました。  大蔵大臣におかれましては、この真意をよくお汲みとりの上、すみやかに、台帳閲覧が実現しますよう部内に御指示賜わりますよう要請するものであります。大臣がいらっしゃらないから、これは後でよく読んでいただいて……。何かお答えありますか。
  249. 中田一男

    ○中田説明員 要請文につきましては、後ほど大臣によくお伝えいたしたいと思います。
  250. 玉城栄一

    ○玉城委員 委員長、この国有地扱いになっている沖縄の旧軍のいろいろな土地の問題につきましては、いろいろな経過がありまして、ずさんな問題があるわけですね。そういう意味で国有財産台帳をぜひその部分について見せてくれという要請を大蔵省当局にやっているわけですが、ぜひ委員長とされましても、何とかそれを実現するようなことでお願いしたいわけですが……。
  251. 横山利秋

    横山委員長 中田次長に伺いますが、台帳の閲覧というのはあなたの判断でできないのですか。
  252. 中田一男

    ○中田説明員 お答えさしていただきます。  国有財産台帳につきましては、従来からその閲覧というお話が決算委員会でも出ておるわけでございます。私ども、これは国有財産の管理、処分の適正を期するために必要な重要な帳簿だとして政府部内で活用しておるわけですが、執務上の利用というものを優先しておるものですから、そこには売り払いですとか貸し付けですとか私契約に属するような事項等も記載されておりまして、したがいまして、国有財産台帳そのものを公開するということは困難だということで、従来からこれは御勘弁いただいておるわけでございます。しかしながら、国有財産台帳に記載してございます内容で、そういうことには関係ない、開示してもいいではないかというものにつきましては、いろいろ御質問があったり資料要求があったりするたびに、調製いたしまして御説明はさしていただいております。  また、一般的には、昭和五十二年以降、普通財産につきましても、国有財産現在額口座別調書というのを公開はいたしております。それで不十分なところは、先ほど申しましたように、それぞれ御指摘がございますれば、御説明はさしていただきたいと存じます。
  253. 玉城栄一

    ○玉城委員 大臣に、よろしいでしょうか、お留守でありましたので……。  大事なところを大臣の御見解をぜひ承りたかったわけですが、実は、旧軍のある一部の土地が、私たち質問主意書を出しまして、それに対する政府答弁書では、これは上間清子という民間の人の土地であります、こういうふうになっているわけです。ところがまた、大蔵省が出してきている資料の中では、これは国有地です、同じ土地が国有の未利用地ですというふうに出てきているわけです。しかも土地登記簿を見ますと県有地というふうに、もう何が何だかわからない。こういう状態がありまして、一体旧軍用地に関する部分は国有財産台帳にどのように記載されているのかということを、関係者の方々が署名捺印をして、先ほど要請書も読みましたけれども、ぜひ見たい、見せてくれ。これは例えば、私はお嫁に行ってないけれども相手方の戸籍に私が載っていると言われている、それは当然嫁さん側としては、一体どうなっているんでしょうか、その戸籍は、それを見せてくれと言うことは当然の話でして、それを見せられないとおっしゃるわけです。それ以外のことは見ていいのだとおっしゃるのですね。それではこれは納得いかないのは当然じゃないでしょうか。大臣、御見解をぜひ前向きでお願いしたいと思います。
  254. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる国有財産台帳は公開しないという理由は恐らくるる申し述べたのじゃないかと思いますが、国政調査権の発動の一つでございますね、先生からの御質問というものは。したがって、これに最高度こたえなければならぬということと今の従来からの趣旨との調和点でございますから、現実問題として、質問者である先生に、委員長のお許しも得て、御理解をいただけるような措置を私どもの方でとらしていただく、こういうことまでは私の責任で今お答えできるのじゃないかというふうに考えます。
  255. 玉城栄一

    ○玉城委員 大臣がその措置をとりたいということをおっしゃいましたので、ぜひ実現するように強く要望しておきます。  先ほどから出ております十四件の未利用地なんですけれども、沖縄県下の旧軍用地の未利用地はほかにはございませんか。今問題になっている読谷村所在の未利用地は、読谷村字伊良皆西後原六九七以外にはもうないのですね。あるのですか。あれば、その所在はどこですか、おっしゃってください。
  256. 中田一男

    ○中田説明員 お答えいたします。  私どもが未利用地として把握しておりますものは十四件でございます。ただ、実際に使われておりません、例えばがけ地のようなものは未利用ではありますけれども、これは利用困難というような分類で別途分類しておるものはございますけれども、未利用ということで分類しておりますのはこの十四件でございます。
  257. 玉城栄一

    ○玉城委員 それでは五十三年四月三十日、米軍への提供を解除した読谷村字座喜味喜名田原二〇八〇番地、同じく伊良皆西原六二一の一番地ほか合計十筆の八十七・七ヘクタールの地区は、大蔵省の言い方からすれば国有地ではないのですか。どうですか。まずその点。
  258. 中田一男

    ○中田説明員 実は、ただいま私の手元に先生御指摘の土地についての現状をあれする資料がございませんので、調べてお答えさせていただきたいと思います。
  259. 玉城栄一

    ○玉城委員 資料はないのじゃなくて、先ほどから私が資料を用意して配ってあるのです。この地図をごらんになってください。この地図のいわゆる右側の方は、今申し上げたとおり五十三年四月三十日に米軍提供を解除した、これは国有地じゃないのですかと聞いているわけですよ。
  260. 中田一男

    ○中田説明員 五十三年四月三十日に米軍から返還された土地は国有地でございます。
  261. 玉城栄一

    ○玉城委員 これは未利用地なんですか。
  262. 中田一男

    ○中田説明員 これは、私どもの整理では使用承認というふうな分類で整理しておりまして、未利用という扱いにはしておりません。
  263. 玉城栄一

    ○玉城委員 使用承認とは何ですか。
  264. 中田一男

    ○中田説明員 米軍に提供しました財産が戻ってまいりまして、それを原状復帰して私どもが引き継ぎを受けるということになるわけでございますが、実はまだ原状復帰という状況になっておらないということもございまして、いまだに全体を使用承認、つまり防衛施設庁の方でまだ管理をしていただいている形ということで処理しておるものでございます。
  265. 玉城栄一

    ○玉城委員 とにかくわけのわからぬことをおっしゃらないで、五十三年にこの土地は返還されていますよ。ところが、未利用地というものも資料に出てこないし――中田さん、時間もございませんので、この点は詳しく資料で報告をしていただきたいのですね。  それで、最後大蔵大臣に御所見をお伺いしたいわけです。  沖縄の旧軍用地、今まで国有地扱いになって、いろいろな問題が発生しております。したがいまして、沖縄はこれから二十一世紀に向けて――土地というのは非常に大事ですね。これはひとつ大臣も沖縄については大変詳しく御存じであります。この国有地問題をやはり決着をつける。本当に遅いぐらいだと思うのですね。そういう立場から大臣の御所見をぜひ伺いたいと思います。
  266. 竹下登

    竹下国務大臣 私が、五十四年十一月二十八日の参議院決算委員会において、私どもの基本線に沿って、地元地方公共団体等から振興開発計画にのっとった利用計画を出していただければ、関係省庁と協議し、読谷村等地元の意向を十分尊重して、沖縄振興開発特別措置法、国有財産法等に沿ってできる限り早く地元地方公共団体に対して払い下げの処理を行いたいと考えておりますという答弁をした事実が個別問題としてはございます。  全体的な問題といたしましては、ちょうど沖縄返還のとき私は内閣官房長官でございまして、そのときからのいろいろな歴史的経過が多少私の頭の中にも整理されて残っておりますが、確かに長い期間、いわゆる未解決の問題とかいろいろあるという事実も承知しておりますので、本委員会あるいは沖縄特別委員会でもございました議論等々を踏まえた上で、恐らく国有財産当局としてのお答えをしておると思いますが、先生が問題を調査して解決されていくための御努力に対して資料とかもろもろの協力をするということは、なお一層十分対応していかなければならぬことだというふうに考えております。
  267. 玉城栄一

    ○玉城委員 今大臣がおっしゃられました五十四年のときの政府のお答えも十分我々は承知をしておるわけですね。ところが、今五十九年ですから、一向にこの問題の解決への進展がない。しかも日を重ねれば重ねるほど大蔵省当局の方々も大変今苦悩していらっしゃるわけです。この問題は、まだまだ問題点があります。五十三年に返還された土地もそのままの状態で何年になりますか、六年近く使用承認とか何かわけのわからぬ形で、大事な国有地ですよ、一体どういう管理をしているのか、いろいろな問題もあります。また先ほども指摘しましたとおり、一つの土地が、国有地だと大蔵省は言い、政府答弁書では、これは民有地だと言い、実際の登記簿は県有地になっている、こんなでたらめな、だから先ほどから台帳を見せなさいと言っても、それは先ほど大臣が前向きにおっしゃいましたので、それには大いに期待しております。  いずれにしても、そういうこの場限りのことではもう済まされない。置けば置くほど大蔵省事務当局は大変苦境に立たされることは明らかだ。まだまだ問題はいろいろあります。このままいけばまた出します。しかもその六年間、施設庁は何もしてないでしょう。皆さんは施設庁に預けたままと言いますけれども、国の大事な財産である土地を、そんな、お互いに施設庁だ、大蔵省だ、どうのこうのとわけのわからぬことで置いておいていいのかどうか、皆さん方の言う国有地ならばですよ。ですから、これは一日も早くその土地を本来あるべき姿に戻す一層の努力を強く要望いたしまして、質問を終わります。
  268. 横山利秋

    横山委員長 先ほどの近江君の質疑に対し、銀行局長から答弁を求めます。吉田銀行局長
  269. 吉田正輝

    ○吉田説明員 先ほど手違いによりまして御答弁できなかった件につきまして答弁させていただきます。  御質問は、年末金融についての政府金融機関、民間金融機関の中小企業に対する資金確保についての指導ぶりということのように承知しております。  まず、政府系金融機関でございますけれども、昨年は、年末には一兆六千五百二十五億を政府系金融機関の国民金融公庫中小企業金融公庫、商工組合中央金庫としまして、第三・四半期の年末対策として、資金枠一兆六千五百二十五億を用意してございましたが、今年につきましては、これを一兆九千九十億といたしまして、前年実績比の一二・三%増を目標としております。現段階ではこれで中小企業の年末融資に十分こたえ得るものと考えております。全体の年度計画のシェアでこの三公庫について申しますと、年度の総貸付量の中で三三・三%を年末金融に充てる予定でございます。  これで今申しましたように十分こたえ得るものと考えておりますけれども、私どもといたしましては、例年銀行局長と中小企業庁長官から十一月中にはこの三公庫あてに各地域、各業種の実情を十分考慮して適時適切な貸し出しが行われるようより一層の配慮を払うよう通達などを出して指導しておるわけでございます。私どもといたしましては、このような方向で政府系金融機関を指導してまいりたい、かように考えておるわけでございます。  それから、民間金融機関の年末融資の対応ぶりでございますけれども、例年十一月の初句ごろでございますけれども、例えば全国銀行協会あるいは相互銀行協会あるいは信用金庫協会等におきまして傘下の会員の銀行等に対しまして中小企業の年末対策について指導しておるわけでございます、もちろん私どもはその背後にございまして、これを指導しているわけでございますけれども。例えば全銀協にいたしましては、量的には昨年度の目標額を三兆三千億にしております。まだ最終決定は見ておりませんが、今年度につきましては、この増加目標額でございますけれども四兆円を大幅に上回るような心づもりのように聞いております。私どもこの方向で指導してまいりたい、かように考えておるわけでございます。なお、相銀、信金等につきましても、昨年よりはこれを上回るような増加目標額で傘下を指導する方向でございます。  このような方向でございます上に、先生御承知のとおり、長期国債金利などの債券市況が好調でございます。御承知のとおり二十九日に政府系金融機関は貸出基準金利を〇・三%下げた次第でございますが、これが先ほど申し上げました三公庫の基準金利として適用されること、なお日本銀行等も金融緩和で量的にも十分なマネーサプライを行っていること、約定平均金利も漸次下がりつつある傾向がなお持続されていること等で、一般に景況、業種等でばらつきなどもございますけれども、このような対策並びに金利動向等に配意しながら、私どもといたしましてはなお十分に注視してまいりたい、かように考えているわけでございます。
  270. 横山利秋

    横山委員長 次に、神田厚君。
  271. 神田厚

    神田委員 大蔵省関係につきまして御質問を申し上げます。  まず最初に、来年度予算編成の問題につきまして大蔵大臣にお伺いをいたします。予算編成の時期は年内編成を一つのめどとして考えられていると思うのでありますが、この年内編成ができるのかどうか、そのところをちょっと御説明いただきたいと思います。
  272. 竹下登

    竹下国務大臣 私どもといたしましては、財政法に十二月中に提出するのを常例とすると書いてありますが、そのことは明治以来ただの一回しかやったことないという話でございますけれども、そういう法律にもあります限りにおいて、少なくとも年内編成を行うという心組みで諸般の準備を進めておるということでございます。国会の模様等を推測すると難しいじゃないか、こういう議論がございますが、これはまた国会のプロの議論でございますので、それを初めから財政当局が念頭に置くことではないじゃないかというふうに考えております。
  273. 神田厚

    神田委員 大蔵省としては年内編成を行うということでありますね。  それでは少し具体的な問題について触れさせていただきます。  まず、各省庁から提出されました来年度予算の概算要求の総額は、五十九年度予算と比べまして八・二%増の五十四兆七千五百億円であるわけでありますが、このうち国債費の中に含まれている五十八年度決算剰余金などは五十九年度補正予算で処理することになりますので、現時点での歳出要求額は五十四兆三千八百億円だと言われております。歳入額は未定でありますが、大蔵省の試算どおりだと五十一兆九千二百億円しかないわけでありますから、差し引き二兆四千六百億円の要調整額が見込まれていることになるわけであります。そこで、大蔵省一般歳出を要求額よりさらに圧縮する方針だと言われておりますが、どのような歳出削減を図るのか、その基本的な考え方をお答えいただきたいと思います。
  274. 竹下登

    竹下国務大臣 六十年度の要調整額二兆四千六百億円について基本的にどう考えるかということでございます。確かに五十九年度予算審議の際お出しいたしました中期展望の試算によりますと、歳入面が六・五%に弾性値一・一を掛けた税を土台として計算いたしておるわけでございます。したがって、今おっしゃったとおりになるのでございます。私どもといたしましては、まずはさらに歳出の抑制に努める必要があると考えます。概算要求基準がああして昭和三十六年でございましたか、プラス五〇%を天井とするというところからずっと長い間の歴史をたどってマイナスになり、五十九年度が一〇%、五%、それを六十年度に同じ基準でもって概算要求基準をつくったわけでございますだけに、これをさらに圧縮するということになると確かに厳しいものがございます。したがって、今後は歳入歳出両面にわたる各般の努力を行った上で、この予算編成過程を通じて予算の姿が浮かび上がってくるわけでございますので、現時点で具体的に予測される要調整額を数字の上でこれはこのような措置をします、これはこのような措置をしますということを申し上げる段階にはまだないというふうにお答えせざるを得ないわけであります。  したがって、八月末概算要求が出ました、これを今念査しておる最中でございますので、これからの作業を見守りながら最終的には決断しなければいかぬわけでございますから、そのときの経過を見守って、とりあえずは私も見守っていきますが、神田先生にもそういう推移をとりあえずは見守っていただかないと、今の場合要調整額の中身の仕切りについて申し上げるだけの自信も、また準備もいたしていないというのが率直な私の立場であります。
  275. 神田厚

    神田委員 現在そういう経過の途中でありますから、大臣がおっしゃられることもわかるのでありますが、もうちょっと具体的な方向についてお示しをいただかないといけないと思うのであります。例えば公共事業や文教などの一般歳出、今年度は〇・九%増ということでありましたが、これらについての考え方はどうなのか、あるいは国債費等についての考え方はどうなのか、この辺についてはどういうふうにお考えになりますか。
  276. 竹下登

    竹下国務大臣 予算編成過程でございますので、概算要求というものは各省の責任において出しておりますので、各省ともそれは必要欠くべからざるものであるからこそ要求なすっておるわけでございますし、したがって、それを念査の段階で、私から個別的にこのものはよくて、このものは一年待っていただきたいとか御遠慮いただきたいとかという言葉を申し述べる時期ではなかろうというふうに思っております。  ただ、私自身、いわゆる財源としてのこの公債発行の問題につきましては、今日少なくともその試算の中でお示ししておるものも六十五年までに赤字国債をゼロとする均等割よりちょっと低い一兆円というのを考えてお示ししておる、おおむね均等平均のものをお示ししておるわけでございますから、やはりその目標に従ってこの赤字公債財源とすることについては、初めに一兆円の減額ありきというこのスローガンを打ち立てたわけではございませんけれども、やはり赤字公債財源とすることに対しては、可能な限り減す努力をしていかなければならぬというふうに考えております。  それから、恐らく国債整理基金の問題、一つ御念頭にあるのではなかろうかと思うのでございますが、御案内のとおりでございます。三年間いわば繰り入れを停止しております。が、いわゆる赤字公債に踏み切りました五十年以降の大量発行時における償還期が参りますので、そういうことも勘案いたしますと同時に、いま一つ、財政制度審議会で国会の議論を報告して建議をいただいた「基本的には現行の減債制度の仕組みはこれを維持するのが適当」だという趣旨をも踏まえて考えますと、それに償還期がやってくるということを考えますと、今までのような、過去三年やったようなやり方は難しいのではなかろうかというようなことが考えられる現状のお答えできる範囲ではなかろうかというふうに私は考えております。
  277. 神田厚

    神田委員 国債の問題が出ましたので関連してお伺いします。  そうしますと、来年度においても赤字国債の一兆円減額は貫徹をする、こういう方針で臨むということでありますか。さらには、過去三年間やってきた方法ではちょっとまずいということでありますならば、新たにどういう方法をお考えでありますか。その二点をお示しいただきたいと思います。
  278. 竹下登

    竹下国務大臣 私が大蔵大臣をしておりました五十五年度の予算編成のときにまず一兆円の減額ありきということでやりまして、結果としてそれは可能でありました。だが、五十六年にまず二兆円の減額ありきでやりましたが、それは結果としては決算調整資金等から埋め戻しをしなければならぬほどの二年度にわたるところの大変な財政状態でありました。したがって、今動いております五十九年度予算におきましても、初めに一兆円の減額ありきということを私はようやらなかったわけです。結果として五千数百億の減額にとどまったわけであります。  したがって、私どもは、予算編成してみてやはり初めに一兆円の減額ありき、これも一つの手法だと思いますが、結果として出たものがそれないしそれ以上に到達する方が一番いいかなというような考え方もございますし、可能な限りの減額をするということはもちろん方針として決まっておりますが、初めに一兆円の減額ありきという決め方で進むかどうか、これはスローガンみたいなものではございますけれども、それに対しては今明快にお答えするだけの心の準備が率直に言ってできておりません。
  279. 神田厚

    神田委員 それでは、一般歳出問題で概算要求の際のマイナス枠の例外とされました防衛費、エネルギー関係費、これら六項目に対しても聖域はないという方針で臨むという大蔵当局の声が聞こえてくるわけでありますが、大臣といたしましてどういうふうにお考えでありますか。
  280. 竹下登

    竹下国務大臣 五%ないしは一〇%削減の対象外の経費というものでそれぞれ概算要求がなされたものが、今御指摘のありましたもろもろの項目でございます。しかし、それも概算要求のときにある程度の話し合いはいたしましたが、だからといってそれを聖域とすることは全く考えないで、さらに念査して、可能な限りの歳出抑制の方向で今日も作業を進められておるというのが実情であると考えております。
  281. 神田厚

    神田委員 そうしますと、また一般項目におきまして社会福祉あるいは補助金の多い分野につきましては、地方自治体の高率補助を見直す、こういうふうなことが言われておりますが、この点についてもこういう考えでよろしいわけでありますか。
  282. 竹下登

    竹下国務大臣 私どもがいわゆる制度、施策の根源にまでさかのぼって、そして自立自助の範疇でやるべきこと、あるいは地方においてやるべきこと、国でやるべきこと、そうした分野調整をもしながらこれに対応していかなければならぬ、さすればその中でいわゆる負担の問題についての、今おっしゃいました国家財政からいえば補助金削減というようなことも出てくると私は思うのであります。ただ、それを一律にこのような方針でとあえて申しませんのは、いわば各省がそれぞれの専門でございますから、その省で概算要求基準の中で工夫して今出された段階であります。その出されたものの中には補助率が変わっていくものも出されておるわけでございますので、その原局とまず私ども、そして私どもとまた自治省、そういうような協議が今後濃密に行われていくという経過になるのではなかろうかというふうに考えられます。
  283. 神田厚

    神田委員 お話を聞いておりましても、財政運営が非常に厳しい状況であります。そういうことでありますれば、当然といたしましてその不足分をどういう形で補うかという問題があるわけであります。この点につきましては、いわゆる増税という形でその不足財源が考えられているということでありますが、この点につきましてはどういうふうにお考えでありますか。
  284. 竹下登

    竹下国務大臣 結局この要調整額をどうするか。歳出削減が、負担増か、あるいは公債の増発か、三つになろうかと思います。あるいはその組み合わせかということにもなろうかと思うのでありますが、私どもといたしましては、まずぎりぎりいっぱいの歳出削減をやってみよう、そしてその中に、いわゆる国会の議論を通じながら、最終的には国民の選択にゆだねることではなかろうか。が、いわゆる税調等の答申にもございますように、公平適正な税制というものももとより歳入面において念頭に置きながらやらなければならぬ。しかし、中曽根総理が申し上げますように、いわゆる財政改革のてことしての「増税なき財政再建」という旗をおろしたわけじゃございませんので、これはいきなり増税をして埋めようと思いますという姿勢にあるわけではもちろんございません。
  285. 神田厚

    神田委員 しかしながら、財源不足を来さないだけの削減、切り込みということはなかなかできないだろうと思うのでありますね。したがって、その削減がある程度しかできないということになれば、当然にして不足分は増税で補わなければいけないというような考え方に立たれるのでありましょうか。その辺はどうでありますか。
  286. 竹下登

    竹下国務大臣 申しましたように、少なくともその要調整額の、どれだけ縮まっていくか、ぎりぎり縮めて、なおそこに財源不足があるときは、もちろん私どもはそれを赤字公債によって補てんするという安易な考え方に立ってはおりません。ただ、しかしながら、六十年度の税収見積もりもまだできたわけではございませんが、それらの見積もりをしながらぎりぎり要調整額とかがどうなるかという問題もやはり今後の課題でございますので、短絡的に足らざるを増税という形でこれに対応していくということはとってはならぬではないか。ただ、一方歳入としての税制の公平感、そうしたものからの見直しは絶えず行っていきましても、それは税制そのものの見直しであって、歳入の不足分の補てんとしてそれを直ちに短絡的にとらまえていってはいけないという考え方に立っております。
  287. 神田厚

    神田委員 昨年の暮れの選挙の公約でも減税問題が一つの選挙公約でありましたが、政府におきましては減税を上回る増税で国民に報いたというようなことがあったわけであります。したがって、私はやはり、増税問題につきましては、大蔵省当局といたしまして、安易に増税によることなく健全な財政運営をしっかりと確立してほしいということを強く要望したいと思うのでありますが、再度大臣の御見解をいただきます。
  288. 竹下登

    竹下国務大臣 苦しいだけに安易に増税を考えてはいけない、あくまでも税の公正確保のための見直しはあり得ても、安易に歳入不足に対する財源として増税を意識するということに対しては厳に戒めるべきことである、やはり私どもは、可能な限り健全財政主義に近づいていくための国民の御理解を得る努力をしながらも、まずはやはり歳出抑制というところから取りかかっていかなければならぬ、大変厳しい選択の幅でございますけれども、そういう姿勢で取り組まざるを得ない。最終的には受益者も国民、負担するのもまた国民という考え方に立って判断をしなければならぬと思っております。
  289. 神田厚

    神田委員 そういう問題の中で、税の自然増収問題が当然出てくるわけでありますが、今年度の税収見込みにつきまして、経済企画庁が今年度の名目成長率を当初の五・九%から六・五%に修正した、あるいは日銀の調査では企業の経常利益が今年度は前年度比一四・三%増、こういうことになっております。大幅増益になることなどから、一兆円程度の自然増収が出るとの見方が各方面でなされておるわけであります。  大蔵大臣は、さきに講演の中で、八月までの実績ではほぼ当初予算の見積もりどおり進んでいる、今後法人税がもっとふえると見る向きがあるが、大きな伸びを期待できない、こういうふうに述べておりますけれども、今年度税収の見通しにつきましての見解をお伺いしたいと思います。
  290. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに私は、今神田委員がおっしゃいましたような講演をしたことがございます。御案内のとおりでございます。五十九年度八月で見ますときにまだ三割にも満たないわけでございます。したがって、それをこの予算の伸びの六・九に比べますと七・〇でございます。すなわち〇・一%でございますから、〇・一%というのは、そのとおり伸びたといたしますと、三十兆なら三百億、こういうことになるわけであります。私どもが苦し紛れに、よく国会で答弁しても、税収の誤差はどれくらいまで認められるかと言われるときに、神田委員もお聞きになっておったことがあろうかと思いますが、一%は誤差のうちだと言ったことがございますが、その一%じゃなく〇・一%ということしか、今日の伸び率から言うと、そのままいったとしてもその程度であるということ。それから、かなり積み上げて歳入見積もりいたしておりますので、私は、言えることは、現在でも、歳入欠陥が心配ですということは言わなくていいという状態ではなかろうかと。だから、今試みに一兆円というお言葉をお使いになりましたが、そういうような世に言われるような大きな自然増収を期待する環境には全くないというのが現状ではなかろうかというふうに思っております。     〔委員長退席、新村(勝)委員長代理着席〕 あるいは、この中身の問題につきまして酒が落ち込んでおりますとか、そういうようないろいろな問題もございますが、要は、所得税あるいはその他、最終的に法人税、これがどれだけ伸びるかということになりますと、かなり多目に当初見積もっておりますので、税収そのものにはね返る場合には、具体的ないろいろなケースを見ましても、そう大きな期待をすることはできないのが現実ではなかろうかというふうに考えておるところであります。
  291. 神田厚

    神田委員 また、中期展望におきまして来年度の税収伸び率を七・二%、こういうことにしておりますが、来年度の税収予測はどういうふうになっておりますか。
  292. 梅澤節男

    ○梅澤説明員 既にお示ししてございます中期展望におきましては、ただいま委員が御指摘になりましたように、マクロ的な観点から名目成長率六・五、弾性値一・一、伸び率で申しまして七・一%強の前提で六十年度の自然増収を一応機械計算としてお示ししたわけでございますけれども、現実の六十年度の予算編成の作業の過程におきましては、各税目ごとに――もちろんマクロの経済動向等も勘案することは事実でございますけれども、各税目ごとに五十九年度の課税実績、それからそれぞれの税目ごとに積み上げて計算をするという作業を実はこれから始めるわけでございます。六十年度の経済見通しにつきましても現在まだ企画庁の方でも計数を出しておられないような状況でございますので、六十年度の税収の状況につきまして申し上げられる段階に至りますまではなお一月、あるいは二月近く作業の期間を見なければならないという状況でございます。
  293. 神田厚

    神田委員 これは個別の質問項目として申し上げておりませんでしたが、過日、十月二十五日に当面する政策課題につきまして政府・自民党と民社党との間で政策協議を行いました。この政策協議の中で、特に経済財政運営につきまして、あるいは来年度の予算編成に関する諸問題につきまして政策協議をしたわけであります。その中で私どもは、積極経済政策と行財政改革の同時並行的推進ということを来年度予算編成の基本方針として御説明を申し上げ、私どもの主張を申し上げたわけであります。  その第一番の問題は、所得減税に対する考え方であります。この問題につきましては、私どもは、所得税減税、これは国、地方を合わせまして約一兆円程度の所得税減税を行うべきであるということで、その詳細の内容につきまして御理解を求めました。  一つは、所得税減税約五千五百億円、これは給与所得控除の一雄四万円引き上げ、基礎、配偶者、扶養控除の各二万円引き上げ、これで約五千五百億円ということであります。  二番目に、住民税減税約一千七百億円、これは、基礎、配偶者、扶養控除の各二万円引き上げ。以上の結果、夫婦子二人世帯の課税最低限は、所得税二百五十四万七千円、現行二百三十五万七千円であります。住民税二百三万九千円、現行百八十八万八千円、非課税限度額二百万円となっております。  さらに、政策減税といたしまして約三千三百億円。一番目に「単身赴任減税 別居手当、帰宅旅費の非課税化」、二番目に「住宅減税 民間住宅ローンの返済額に対する所得控除制度の創設」、三番目に「年金減税 老年者年金特別控除額の引き上げと対象年齢の引き下げ」、四番目に「教育減税 教育費控除制度の創設」、五番目に「パート・内職減税 パートの非課税限度額の百万円への引き上げと内職に対する必要経費率の拡大」、六番目に「退職所得減税 退職所得控除の算出基礎額の引き上げ」、七番目に「その他」といたしまして、「物価調整税制や企業年金所得控除制度などの創設についても検討すること。」  以上で「約一兆円程度の所得減税を行うこと。」ということを政府・自民党との政策協議に提案をして、検討をお願いをしているところであります。大蔵大臣の御所見をお伺いしたいと存じます。     〔新村(勝)委員長代理退席、委員長着席〕
  294. 竹下登

    竹下国務大臣 公党と公党とのこれからの協議に予見を挟むということはやはり差し控えるべきであろうというふうに考えておりますが、私ども財政当局の立場とし、そして税制調査会の御議論等を承っておりますならば、いわば一兆円の減税をやったばかりでございます。したがって、今日その所得減税を行って、まあ拡大均衡の問題はもう少し後送りにいたしました議論といたしましても、それによって生ずる歳入の不足を赤字公債でもって埋めていくということは今日の時点で考えられないだけに、所得減税をやり得るという環境が整っておるとは財政当局としては今日考えていないところでございます。  一つ一つの問題につきましては、単身赴任の問題等は、率直に言って、雇用政策の中で本来は考えられるべきものではなかろうか。特別なものを抜き出して減税措置をやります場合、されば寒冷地手当はどうか、されば扶養手当もどうかとか、そういうことがございますので、その点は非常に難しいという、昨年度にいただいた税調の答申の中にも入っておるわけであります。また、教育減税の問題につきましても、その問題はたびたび議論をされるところでありますが、いわばみずからは大学へ行かないで働いておる人、高卒で働いていらっしゃる人の所得税があって、一方、大学へ進学していらっしゃる人の家族から減税措置が行われていくことに対する問題意識の提起とか、そういうものもなされておりますだけに、個々の問題にわたってもそのままを税調に正確にお伝えしますが、それらの御議論を得た上で、最終的には私どもがその中でどの選択肢を選ぶか、こういうことにもなりましょうし、ただ、一方、政党政治の中で公党と公党との政策協議が行われておるということについては十分問題意識は持っていなきゃならぬということであろうというふうに私は考えております。
  295. 神田厚

    神田委員 この政策協議は十六項目にわたっているわけでありますが、もう一点だけ大臣のお考えを聞きたい問題は、投資減税であります。  「中小企業振興、先端技術開発促進などのため、三千億円程度の投資減税を実施すること。また、法定耐用年数の大幅短縮及び中小企業承継税制の抜本的改正を行うこと。このため、技術開発促進法及び中小企業技術高度化法を制定すること。」法律制定にも及んだ言及をしておりますけれども、投資減税の考え方につきまして、特に大臣の御見解を聞きたいのであります。
  296. 竹下登

    竹下国務大臣 この投資減税、いわば大きくとらまえました投資減税というものについては、その費用と効果ということが容易に捕捉しがたいという、これは税調等の答申にもございますように、いわば企業責任の中において先を見通しながら投資をしたものであるのか、あるいはこの減税措置があったから投資したものであるのかという区分というものは非常に難しい点がございます。したがって、これを限定いたしまして、今年度税制において三つのことが行われたわけでございますが、例えば今御指摘ありました耐用年数にいたしましても、事実問題といたしまして、いわばその耐用年数とそして陳腐化の問題を合理的に考えながら行われるべきものであって、ただそれを政策税制としてのみとらえるべきものではないという考え方も税調等の答申にも書かれてあるところでございます。したがいまして、漠然たる投資減税ということに対しましては、私どもは税調の答申にも基づいて非常に慎重でございます。これもまた五十九年度税制でやったばかりである。その効果も見定めなければならない課題である。  なお、中小企業のいわゆる承継税制の問題につきましても、この株式評価の問題等、これも手をつけたばかりでございますので、やはりその推移をまずは見守るべき段階ではなかろうかというふうに考えるわけでございます。  ただ、何回も申しますように、公党と公党との協議が行われておるという事実を私どもがないがしろにするとか、そういう考え方で申し上げておるわけではございません。いわば税調の答申等の趣旨をそのままここで申し上げておるというふうに御理解を賜りたいと思います。
  297. 神田厚

    神田委員 私どもはやはり減税の効果というものを非常に重要に考えておりますので、そういう意味では、所得税減税あるいはアメリカの経済復興に大変役に立ったと言われております投資減税等々の問題につきまして、大蔵省当局の前向きな対応を期待したいと思います。  なお、この問題は、大臣おっしゃいますように、公党間での政策協議の対象になっておりますので、引き続きその機関におきまして御検討されるようにお願いをしたい、こういうふうに考えております。  あと、ちょっと医療費控除の問題につきまして御質問申し上げたいのでありますが、サラリーマン家庭を中心に利用が急増しております所得税の医療費控除制度につきまして、大蔵省は六十年度税制改正で控除対象となる医療費の最低支払い額を引き上げ、対象者を絞ることを検討していると伝えられております。医療費の上昇に伴い同制度による還付件数が急増し、税務署の大きな事務負担となっているためで、現在一世帯当たり年間五万円を超える医療費を払うと控除が受けられますものを、七万から十万円に引き上げよう、こういう考え方があるようであります。医療費の負担につきましては、さきの健保法の改革によりまして被用者本人に一割負担が導入されたばかりであり、このような改正は納税者にダブルパンチとなることでありますので、慎重に対応していただきたい、こういうことでありますが、いかがでありますか。
  298. 梅澤節男

    ○梅澤説明員 医療費の足切り限度額につきましては、ただいま委員が御指摘になりましたように、現在五万円という限度額が定められております。この限度額が定められまして、既に十年近くの年月を経過しているわけでございますが、実は昨年十一月にいただきました税制調査会の中期答申では、その後における医療費の支出の水準とか、あるいは税務当局におきます事務の簡素化の観点からの還付申告の処理の問題というような観に着目いたしまして、限度額を中長期的には実態に即して引き上げる方向で検討すべきであるという答申をいただいております。  これはあくまで中長期的な視点からの御指摘でございまして、私どももこの答申に即しましていろいろ検討しておるわけでございますが、さしあたり六十年度の税制改正でいかに臨むかというのは、実はこれからの検討課題でございまして、本日の時点におきまして、六十年度の税制改正でこれをいかに対応するかということを、私ども税制当局としてお答えする段階でないということにつきまして御了承賜りたいと思います。
  299. 神田厚

    神田委員 時間がありませんので、次の問題に進みます。  自賠責保険関係について御質問申し上げます。  政府は、自賠責保険収支の悪化を理由に保険料率の引き上げを検討されているわけでありますが、五十八年度予算において、自賠責特会の運用益から二千五百六十億円もの多額の金を一般会計に繰り入れている現状であります。このことは自賠責保険制度の趣旨を著しく逸脱している上に、二千五石六十億円の償還が行われないまま保険料率の引き上げを行うと言われましても、ドライバーにとりましては絶対に納得できるものではないと思うのでありますが、政府はこの点どういうふうに考えておりますか。
  300. 加茂文治

    ○加茂説明員 自動車損害賠償責任再保険特別会計は、保険金支払いまでの時間的余裕等から発生した運用益を積立金として保有しておりますが、五十八年度予算におきましては、厳しい一般会計財政事情にかんがみ、財源確保のための特別措置の一環として累積運用益の一部につきまして、二分の一でございますが、次のとおり一般会計に繰り入れたところでございます。つまり保険勘定分二千五百億円、保障勘定分六十億円、合計二千五百六十億円でございます。ただ自賠責保険の運用益につきましては、最終的には保険契約者の利益のために活用することが望ましいと考えております。しかしながら、保険契約者のために活用する場合におきましても、自賠責特会の資金構成等から見て当面直ちにその全額を必要とするものではないので、後日一般会計から繰り戻すことを前提として五十八年度に繰り入れを行ったところでございます。
  301. 神田厚

    神田委員 ですから、こういうことで一般会計に繰り入れながら、つまり自賠責保険収支が悪化をしたからといって、保険料の引き上げを検討するということは筋違いではないか、こう言っているわけでありますが、この点の説明はいかがでしょうか。
  302. 加茂文治

    ○加茂説明員 一般会計への繰入金相当額二千五百六十億円につきましては、後日予算の定めるところによりまして一般会計から自賠責特会に繰り戻すこととなっております。
  303. 神田厚

    神田委員 運輸省は今後この二千五百六十億円の取り扱い、これをどういうようにするのですか。
  304. 福島義章

    ○福島説明員 ただいま保険部長から御答弁がございましたように、私どもとしましても、自賠特会からの累積運用益の一部につきまして一般会計へ繰り入れしましたことにつきましては、五十八年度限りの臨時異例の措置、また後日確実に返還されるということを条件といたしましてやむを得ないというふうに判断したものでございます。ただ、この繰入金につきましては、六十一年度から七年間にわたりまして分割して返済されるということになっておりますので、その具体的な取り扱いにつきましては、今後その線に沿いまして検討してまいりたいというふうに考えております。
  305. 神田厚

    神田委員 五十三年の自賠責審議会におきまして、「将来の収支改善のための財源として留保しておくこと」のほか、救急医療体制の整備、交通事故防止対策に限定して、かつ効果的に活用していくべきであるという答申がおるわけであります。この答申の趣旨からしますと、二千五百六十億円もの貸し付けは、この答申の趣旨に反しているというふうに考えますが、この点はいかがでありますか。
  306. 加茂文治

    ○加茂説明員 五十三年六月の自賠責保険審議会の答申では、自賠責保険の滞留資金の運用益の使途につきまして、「将来の収支改善のための財源として留保しておくことを考慮するほか、救急医療体制の整備及び交通事故防止対策等」へ効率的に活用すべき旨の指摘がされておるわけでございます。しかしながら、五十八年度におきます一般会計の繰り入れ措置は、運用益を保険契約者のために活用するとしても、当面直ちにその全額を必要とするものではないことから、後日一般会計から繰り戻すことを前提として行ったものでございまして、この答申の趣旨に反するものではないと考えておるわけでございます。
  307. 神田厚

    神田委員 そういう答弁には納得できませんが、時間の関係もありますので、押し問答していても仕方がありませんから、前へ進みます。  自賠責特会の運用益は、五十八年度末で幾らぐらいになりますか。
  308. 保田博

    ○保田説明員 五十八年度末の累積運用益でござ、いますが、五十八年度一般会計へ繰り入れられました金額を含めまして五千七百五十九億円、それから保障勘定につきましても、同じく百五十七億円ということになっております。
  309. 神田厚

    神田委員 我々の方の数字と少し違いますけれども、約六千億以上の運用益が出ているわけであります。  ところで、自賠責保険収支昭和五十三年度から単年度で赤字になっているわけでありますが、単年度支払い超過分は、今日までの滞留資金運用益で埋め合わされるべきであるというふうに考えますが、いかがでありますか。
  310. 加茂文治

    ○加茂説明員 自賠責保険の単年度収支は、五十三契約年度契約分以降赤字となっておりまして、またその赤字幅は拡大傾向にございます。これは保険料率が四十四年十一月は来据え置かれておること、またこの間物価、賃金水準の上昇や保険金の支払い限度額並びに支払い基準の改定等により給付内容が大幅に改善されてきたこと、また近年交通事故が増加傾向にあること等の要因によるものでございます。  自動車保険料率算定会は五十九年度検証、これは五十八年度までの実績値に基づきまして実施いたしておりますが、この五十九年度検証によりますと、五十九年度契約及び六十年度契約の損害率は、単年度で見ましておのおの約一三四%、一三七%でございまして、五十九年度契約分までの累積赤字は約四千八百億円に達する見込みになっております。このように保険料率の引き上げ等の収支改善策が早急に必要な状況にございますために、自賠責保険審議会に審議をお願いしているところでございます。審議会において保険料率の引き上げが審議される際には、単年度収支の赤字及び累積赤字の解消や支払い限度額の見直し等の問題のほか、御指摘のように、一般会計繰り入れ分を含めます累積運用益の活用によりまして、保険料の引き上げ幅を抑制することも検討することになっております。
  311. 神田厚

    神田委員 したがって、私どもといたしましては、今日までの滞留資金運用益があるわけでありますから、それによって埋め合わせることによりまして、自賠責の保険の料率を引き上げることには反対であります。  もともと自賠責保険制度は、全体の内容収支状況、支払い保険金の算出根拠などにおきまして全般的に不明瞭な部分が多く、国民には実にわかりにくい制度となっているわけであります。これらの不明瞭な部分を明らかにすべきであると思いますが、いかがでありますか。
  312. 加茂文治

    ○加茂説明員 自賠責保険は、自動車の運行につきまして保険契約の締結が強制されるものでございます。保険責任の六割を運輸省の自賠責特別会計に再保険し、残りの四割を損保会社が受け持つ制度でございます。  収支状況につきましては、先ほど申し上げましたように、五十九年度契約分までの累積の赤字は約四千八百億円に達する見込みとなっております。支払い保険金につきましては、実際に支払われた金額の確定しているものはその金額を計上しております。しかしながら、自賠責保険の場合には、保険金は契約締結後五年間前後にわたって支払われていくため、実績値の得られないものにつきましては、平均支払い保険金及び支払い件数を推計して計算しております。平均支払い保険金は慰謝料、休業損害、治療関係費等から構成されますが、物価、賃金の上昇によりますこれらの支払い単価の上昇を勘案して推計しております。支払い件数につきましては、事故率により推計をしております。現在、障害及び後遺障害の事故率は上昇傾向にございますが、これらの将来の事故率は横ばいに見るなど、かた目の予測を行っているところでございます。
  313. 神田厚

    神田委員 通り一遍の説明で納得するわけにいきませんが、時間の関係で次に進みます。  医療機関との問題が大変出てくるわけでありますが、この医療のチェック機構体制、これを少し真剣に考える必要があると思うのであります。この点についてはどういう御見解を持っておりますか。
  314. 加茂文治

    ○加茂説明員 先生御指摘のように、医療費につきましてはいろいろな問題がございます。現在医療費適正化の対策といたしまして、自動車保険料率算定会の出先機関であります調査事務所、全国に六十九カ所ございますが、この調査事務所におきましては、医療費調査担当者が置かれ、保険金請求の際に添付されます診療報酬明細書のチェックを行っております。また、高額請求事案あるいは濃厚過剰事案と思われるものにつきましては、顧問医の助言を得ながら直接医療機関に照会、改善依頼を行う等により医療費の適正化に努めておるところでございます。  しかしながら、医療費適正化についてはいろいろ問題がございますのでその適正化の方策につきまして今後さらに自賠責審議会において論議される予定になっております。先生御指摘の点も含めて検討をお願いしていくことといたしたいと考えております。
  315. 神田厚

    神田委員 さらに、自賠責保険は強制加入の準税金的なものでありますから、保険契約者の負担の軽減を図るためにもほかの生命保険、損害保険と同様に自賠責保険料、任意保険料につきましても所得控除の対象とすべきである、このように考えますが、いかがですか。
  316. 梅澤節男

    ○梅澤説明員 自動車の場合、事業用の自動車の場合でございますと、事業所得計算上これは必要経費として損金経理をされるわけでございますが、いわゆる自家用車ということになりますと、これはいわば自動車を維持する経費の一種でございますから、経費の性質としては家計たる所得処分の性格を持っておる経費でございます。したがいまして、個人の課税上の所得計算上、これを所得控除するには性格上なじまないのではないか。ちなみに、例えば年収の全く同じサラリーマンを想定いたしました場合、自動車を持っている人と持っていない人で税負担の水準がたちまち違ってまいるわけでありますから、そういったバランスの観点から見ましても、これは所得控除の対象としてはなじまないものではないかというのが私どもの考え方でございます。
  317. 神田厚

    神田委員 自動車の税金がこのように世界で一番高くなってしまっているような状況の中では、自動車にかかってきている税金はこの自賠責だけではないわけでありますから、そういう意味では所得控除の対象とすべきだという主張にもやはりきちんと耳を傾けてもらわないといけない、こう思っております。  この自賠責の関係では最後でありますが、自賠責保険の問題で、任意保険と同様に分割払い制度を導入してほしいという声が非常に多いわけでありますけれども、この点はいかがでありますか。簡単で結構であります。
  318. 加茂文治

    ○加茂説明員 自賠責保険は、被害者救済の見地から無保険者を出さないという趣旨で車検制度にリンクをした車単位の保険となっております。  分割払い制度を導入した場合には、不払いがありました場合には、通常の保険取り扱いとしては免責または解除ということになり、その結果無保険者を生み、被害者救済にもとるというような種種の問題がございますので、現段階では分割払い制度の導入は難しいと考えております。
  319. 神田厚

    神田委員 この問題はなお時間をかけまして、今後引き続き問題としていきたいと思っておりますが、最後にこの関係で、いわゆる重量税問題につきまして御質問を申し上げます。  道路特定財源は、道路予算が抑制されているために自動車重量税がいわゆるオーバーフローを生じているわけであります。その額は、昭和五十七年、五十八年、五十九年度の総計で四千百億円余りとなっております。本来自動車重量税は、地方譲与分二五%を除いた残り七五%の八〇%を道路整備に充てるものとする約束がなされておりました。ところが、公共事業予算抑制のため道路関係予算が抑制されて、いわゆるオーバーフロー分が五十七、五十八、五十九年度とほかに流用されることになっております。まず、本来道路整備に充てられる財源であるから、ほかに流用された分は速やかに道路財源に充てるべきだと考えますが、大蔵省はどう考えるか。  さらに、今のまま公共事業予算が抑制されるのであれば、税率を本則に戻すなり、自動車重量税がきちんと道路整備の財源に充てられるように地方譲与分二五%の引き上げの検討が必要ではないかと思うのでありますが、いかがでありますか。時間の関係で、ひとつ要点を要領よくお願いいたします。
  320. 保田博

    ○保田説明員 五十七年度以降の予算におきまして道路財源のいわゆるオーバーフローの問題が生じております。その金額は先生御指摘のとおりでございます。  六十年度予算編成におきましてこの問題をどう扱うかという御質問でございますけれども、これにつきましては、歳出面における道路の予算規模を幾らにするかという問題が一方でございます。他方でまた、揮発油税あるいは自動車重量税につきましては、現在の特例期限が六十年の三月あるいは四月で切れることになるわけでございます。したがって、そのいわゆる道路特定財源がどれほど見込めるかといった点が、また現在の時点では不明確であるということでございます。  この問題につきましては、概算要求の際におきましても、予算編成のときに改めてこれを検討するということになっておりまして、いずれにいたしましてもこのオーバーフロー問題は、来年度予算編成の際の非常に大きな問題点でございますけれども、道路整備の必要性あるいは万般の財源事情といったようなものを考慮しながら、今後慎重に検討を進めてまいりたいと考えております。現時点におきましてどういう対処方針を持っておるかということについてお答えできる段階ではないということを御理解いただきたいと思います。
  321. 真嶋一男

    ○真嶋説明員 昭和五十八年度を初年度といたします第九次道路整備五カ年計画につきましては、建設省といたしましては、現行の税制を前提といたしまして必要な財源の相当部分を道路特定財源によって確保するという考えで策定をいたしております。自動車重量税につきましても、今後とも道路特定財源としての原則に従いまして運用を行い、同税の国分の税収の八割相当額は全額を道路整備特別会計に繰り入れる必要があるというふうに考えているところでございまして、地方への譲与割合を変えるということは考えておりません。
  322. 神田厚

    神田委員 最後に、大臣に御質問を申し上げますが、ただいま自動車関係の税金につきまして御質問をいたしました。御案内のとおり、五十九年度末には自動車取得税、地方道路税、揮発油税、軽油引取税、自動車重量税の自動車関係諸税が暫定税率の期限切れとなるわけであります。そして私どもは、現在、自動車諸税が世界一高いという状況の中で、この自動車諸税に対するユーザーの不公平負担が非常に強いという考え方を持っております。そして自動車に対する増税は大衆課税の強化にほかならない、こういう立場から自動車関係諸税の増税に強く反対をしているところであります。全日本自動車産業労働組合総連合会を初め、自動車関係業界から自動車関係諸税の増税に強い反対陣借を受けておりますので、大蔵大臣におきましては、何とぞこの自動車関係諾税の増税問題に対しましては、増税をしないという形でひとつ断固たる措置をお願いいたしたいと思うのでありますが、いかがでありますか。
  323. 竹下登

    竹下国務大臣 自動車関係諸税の問題につきましては、かつて自動車がその便益性、あるいはもっと前は、いわば奢侈品の中に入っておった時代もそれはあるかもしれません。私が国会へ出ましたときの年間自動車生産台数が四万五千台当時から見れば、それは確かにその便益性のみならず大衆性という状態に来ておることは事実であります。したがって、自動車労連はもとより、業界から毎年この問題についての私どもに対する御意見が寄せられておることは事実であります。  ただ、個別税目なものでございますから、税制全体を広範な立場から御審議いただいておる税調等の御審議前にあらかじめ予見を申し上げることは、やはり差し控えるべきではなかろうかというふうに考えておるところでございます。税の問題ということになりますと、やはりそういう手順を踏むわけでございますから、そういう御意見のあったことは正確に税調に伝えつつも結論は税調の答申をいただいて、その中から選択していき、そして各党協議とかそういう中で議論していただく課題でございますので、予見をもって今お答えすることについては御容赦をいただきたいと思っております。
  324. 神田厚

    神田委員 強く要望いたしまして、質問を終わります。
  325. 横山利秋

  326. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 ただいま同僚議員から自動車重量税の問題で御質問ございましたが、私の手元に一枚の注文書がございます。これは日本自動車ユーザーユニオンから持ち込まれましたものの一つでございますが、この注文書の中には神奈川県座間市の関根菊枝さんという方が五十八年の九月三日町田市のケーユー商事、町田市では中古車販売業界のトップ業者と言われているわけでありますが、ここから中古車を購入したわけでありまして、その注文書であります。その際、既に前の所有者が支払っておりました車検のときの例の重量税を、今度次の車検までの期間だということで不当に二重取りされた、こういうことで五十九年三月に町田警察署長に被害届を出して捜査を要請しているわけであります。  警察庁にお聞きしますが、この件の捜査はどうなっていますか。
  327. 上野浩靖

    ○上野説明員 お答えいたします。  ただいま御指摘の件につきましては、先生おっしゃいましたように、現在警視庁におきまして被害届を受理いたしまして、捜査中でございます。
  328. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 関根さんのお話によりますと、捜査中だとおっしゃいますけれども、例えば七月二十六日午前十時ごろ、この町田署の杉沢さんという署員の方から御連絡がありまして、こう言っているのですね。これは関根さんの手記のコピーでございますが、「杉沢さんは、色々な中古車センターに電話で聞いて見たが、どこでもそういうやり方で」つまり二重取りですね、「それが今の中古車センターのやり方だから関根さんの出した件は通らないと言われました。」こう言われているのですね。そこで、関根さんは納得しないで、「それでは重量税は国の税金なので納税証明書は見せられますかと聞いた所黙ってしまったので、税金は必ず受領書があるわけですから、重量税を払ったという証明を見せて下さい。」こういうことまで質問していらっしゃるのです。これはその手記でございます。  いずれにいたしましても、この問題については御承知かとは思いますけれども、例えば昭和五七年第八九八五号ということで、東京地方裁判所民事第三十一部い係でも同様の問題がございまして、もうこれでそういうのは通らないのだということで引っ込めている、すぐ金を返している。これは詐欺まがいだというようなことで、そういう事例もあるわけでありますが、このやり方自体、警察の今の御答弁も私納得できない、捜査中なんということでごまかしているような感じもするんです。つまり業界ぐるみでやられまして、警察も見逃しているのが実態だと思うのです。  通産省に私はお聞きしますが、中古車販売業界全体がこうした税金をごまかして高く売りつけている、詐欺的商法じゃないかと私は思うのですね。なぜならばこういう言い分もあるわけです。前の人からの車代に重量税の分がちゃんと含まれているんだなんという言い方もあるようでありますが、明らかにこの注文書を見ますと、「法定費用内訳」つまりそうした自動車会社が税務署にかわって税金を納める、その中にちゃんと書いてあるのであって、その分をちゃんと、前に買ったときに車両代に含まれているんだなんというようなことは、これはあくまでも商売上の車両代であって、明らかに二重取りだと思うのですね。そういう点で大変な詐欺的商法だと私は思いますが、通産省の御意見はどうですか。
  329. 黒田直樹

    ○黒田説明員 中古車の下取り及び販売の際に、車検残のあるものにつきまして、それ相応に高く売買されるのが商慣行の実態であると承知いたしております。  御指摘の重量税につきましても、車検残期間がまだあります場合には、新しく購入したユーザーが当該期間は重量税を支払わなくても運転できるという意味におきましてもメリットを受けるわけでございまして、結果として商品価値がその分だけ上がったといたしましても、これをもって直ちに不合理だということにはならないのではないかと考えております。  ただ、表示方法にいろいろな適否の問題はあろうかと思いますが、そういう車検残のある中古車につきまして、表示の仕方、いろいろあろうかとは思いますけれども、そのことだけをもって重量税の二重取りだということには直ちにはならないのではないかと考えております。
  330. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 その重量税の部分を含めて高く買ったなら、それは当然車両代に含まれるべきものなんですね。重量税をまたまた取るということの根拠にならないと思うのですね。しかし、この注文書を見ますと、明らかに業者が税務署の代行をして徴税事務をやっているのですよ、「法定費用内訳」とちゃんと書いてあるわけですから。  そうすると、私お聞きしますが、大蔵省、ひとつお答えいただきたいのですが、そういう格好でやられたお金、こういうものは納税として大蔵省の懐に入ったことはありますか。
  331. 梅澤節男

    ○梅澤説明員 自動車重量税はいわば権利創設税ということでございまして、車検の際、届出自動車の場合は届け出でございますが、そのときに納税義務といいますか課税原因が発生するわけでございます。そのときに印紙納付されておるわけでございます。
  332. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 どういうことですか。つまり入ったことはないということですか。中古車のそういうのは税金として入ったことはありますか。
  333. 梅澤節男

    ○梅澤説明員 御質問の趣旨が、今委員が問題にされております中古市場で車が売買される場合に、法定費用でございますか、仕切り書に何かそういう表示があるという問題であるといたしますと、私ども、中古市場価格の形成あるいは取引の実態をつまびらかにしないわけでございますけれども、先ほどの通産省の御説明では、それは商慣習の問題のようでございます。したがいまして、今、委員がおっしゃいましたその費用が納税されておるということ、これは常識で考えてそういうことはあり得ません。
  334. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 まず一つ、その金は税収として全く入っていないということが明らかになりましたね。もう一つは商習慣だ。つまりこんなでたらめな商慣習を許しておる、それは一体何だということなんですね。  先ほども言いましたとおり、そういう裁判の事例もありますが、私の手元には、日本自動車ユーザーユニオンから手に入れました例えば合意書だとか、いろいろな文句をつけて金を取り返したのです。文句をつけた場合はほとんど皆取り返している。根拠がないということなんですね。それが業界の常識としてまかり通るならば、むしろ大変なことだと思うのですね。  なぜかといいますと、中古業界というのは年間四百万台と言っていますね。しかも、それに一万や一万何千円を取るということになれば、そういう税金として納めるものだという名目で、いわばユーザーの無知につけ込んでそういうものを取るとするならば、これは四百億円ですね。こういうことをやるということは何としても理解できないことであります。  本日ただいま、自販連と中販連というところから私は正式の回答をいただいたのですよ。自販連の法規対策委員会の宮本氏という人はこう言っているのですよ。「重量税は車の重さにかかる税金で、分納は認められておらず、還付制度もない払い切りの税金。これを中古車売買時に徴収されることはないし、またそのようなことがあってはならない。」自販連でさえもこう言っているのですよ。市販連でさえも「車検残相当の重量税分を、法定費用や重量税の名目でユーザーからとるのは正しくないので、苦情があればやめるよう業者を指導する。」きょう公式に私のところにこういう回答が来ているのですね。  なぜこういうものがまかり通っているのかということを私、いるいろ懸念して調べてみると、これまで問題になりながら改善されないその背景は一体何だろうということを見ますならば、例えば中古車議員連盟というものがございますが、その会長は竹下さん、あなたですよ。事務局長には小渕恵三さん、これは前の大蔵委員長ですね。それが居座っていると言えば言い過ぎでありますが、こうした詐欺まがいの商法をかばい、実態としてユーザ一を泣かしている、高い中古車の押しつけを許しているというような状況ですね。しかも、こういうものに対して商慣習という名前で許すなんていうことは、私は二重にも三重にもあなたの責任もあるのじゃないかと思うのです。  まして今日、例えばこれは週刊ポスト十月五日号、「高すぎる中古車価格を」ということで、あなたの写真もついて週刊誌が大きく書いているのですね。しかも、この中には、五千億円市場をめぐって市販連とあなたとのそういう関係だとか、それに対抗する日本信販系とのもう一つの泥沼のような、渦巻く戦いの状況なんかを生き生きと書いているのですが、こういうことを見ましても、私は、大蔵大臣は当然これにしかるべきちゃんとした方針を立ててやらなければならないと思うのですが、大臣の見解をお求めいたします。
  335. 竹下登

    竹下国務大臣 ちょっと今の問題について、私も、決して中川委員の発言が悪いからという意味ではございませんが、ちょっと実態、はかりかねておりますので、今の重量税の問題につきましては、これは主税局長のお答えの線を出た答弁をする用意はいたしておりません。  それから私のことに関しては、中古車の問題、たしか荒松さんが御健在の折に、コンピューターシステムでもって全国のどこにどういう車があるかというようなことを何か統合する問題とか、それから保険の問題であったと思いますが、そういうことで相談を受けたことがございます、もう十年も前の話でございますけれども。もとより、その後たびたび閣僚に就任しておりますが、閣僚に就任した際は必ず兼職禁止で一切の役職をやめておりますので、現時点においてはその問題とのかかわりはございません。
  336. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 自販連でさえも、もう一つはこう言っているのですよ。きようの回答です。「ディーラーで重量税をとっているところはないと思うが、」非常に苦しい言い方ですね。「ユーザーから重量税をとられているという苦情があれば、正しくないのでやめるよう指導するし、ユーザーに返すよう指導する。」つまりおたく方の回答は、それよりまだ後退しているのですよ。こういうことでいいかということを改めて申し上げまして、次の問題に入らせていただきます。  次は、午前中にもいろいろ話が出ました秋田駅前の中央地区再開発事業をめぐる問題についてお聞きするのでありますが、前段を省略しまして、この事業の特命発注を受けた大成建設が裏金を出して市民の中でも大きい問題になっているということは御承知だと思うのですね。  国税庁にお聞きするのでありますが、大成建設から出された裏金、大成建設ではこれを損金扱いにしておるように私は見ておるわけでありますが、この大成建設の税務調査と、それから裏金を受け取った側の税務調査は終わっているのかどうかということですね。  あわせて、この事業に参画した元請、下請企業らを含めまして金の流れ、そういう面での税務調査を行っているのかどうか、この点について簡潔に申し述べていただきたいと思います。
  337. 村本久夫

    ○村本説明員 お答えをいたします。  ただいま御質問の点につきまして、個々の調査の点につきましては答弁を差し控えたいと思います。  一般的に申し上げますと、私ども調査をいたします場合、いわゆる大規模な法人に対しましては相当な人員、日数を投下いたしまして徹底した調査をいたしておりますし、またその調査内容等につきましても、国会等で御論議いただきました事柄あるいは新聞等で取り上げられました事柄、さらには私どものそのほかの内部情報、そういうようなものを総合し、また申告書等も勘案をしながら極力徹底した調査を行っている、そういうような状況にあるわけでございます。  なお、その際、下請業者等、取引先等につきましても、当該法人調査を行いますに当たりまして必要であると思われる場合にはそういったところに対しましても調査を行う、そういうようなことでやっておる次第でございます。
  338. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 これまで国会で論議された経緯では単なる裏金でございましたが、私は新たに元請、下請の企業の全体を含めての金の流れのことをお話ししたら、それを含めての調査だ、しかし守秘義務云々ということでもございましたので、そういう点を十分念頭に入れて調査していただきたいと思うわけでありますね。  ところで、今回のこの問題について、先ほども若干問題になりましたが、明らかにされていないことがございます。それは、この開発組合の定款の第五十二条でありますが、「工事を請負に付する場合においては、あらかじめ総会の同意」云々とありますね。例えば「急施を要する工事又は軽易な工事について」そういう場合でも「理事会の決定を経て随意契約によることができる。」と書いてあるのですね。ところが私は、この担当理事その他いろいろな方々の証言によりますと、理事会の決定さえもこれが事後承認であるということですね。このことは明らかに定款違反であり、不当なものではないかと思うのですが、建設省の見解を聞きたいと思います。
  339. 久保敏行

    ○久保説明員 定款に定められました理事会の議を経ないで契約が仮に本当に行われたといたしますれば、その定款の違反になると思いますが、事実そのようであったかどうかについて私ども正確には存じていないわけでございます。県からの報告によりますと、組合の定款それから組合が持っております工事請負規程、こういうものによりまして理事会の議を経て契約をした、このように私どもは聞いておるわけでございます。
  340. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 理事会の決定というのは事後承認、それさえも事後承認ですね。こういうふうに契約しだからそれを承認してくれ、こういうことが実態だと言われているわけです、証言によれば。ですから、これは今の御答弁にもありましたが、きちっとその点も含めて明らかにしていただきたいと思うのですね。  同時に、問題なことは、このような総事業費百十何億この大成一社に特命発注した分だけでも八十数億という大変な工事ですね。ところが、これは五十九年十月二十七日の地元の河北新報でありますが、「正式発注以前に裏金五千万円 補償額不満の数人に 大成理事会以前に決定済み」、こういうショッキングな問題が出されたわけであります。つまり大成建設に特命発注する以前に既に大成の方から裏金が出されているということですね。五十七年五月十一日の組合の理事会で大成建設に特命発注することが決まったわけです。ところがそれ以前の五十七年四月十二日、まだ大成に行くかわからない、どこへ行くかもわからない、そういう状況の中で裏金を受け取った方がいるのですよ。その御本人は、名前を出しても差し支えないということですから、ここで申し上げますが、かめや洋服店を経営している住吉栄司さんという方であります。私、その方の帳簿をコピーして今持ってまいっております。  この方は、五十七年四月十二日、組合事務所に呼ばれまして、秋田銀行馬口労町支店発行の小切手一千百万円を受け取っています。この小切手の裏書きは斉藤太吉という名前が書かれていたわけでありますが、小切手を渡された際「この金はどこから出たかは言われません」、そう言って渡されたと言っております。しかも、ここのところを聞いていただきたいのでありますが、その席上には組合の副理事長である佐々木長範氏、会計担当の宮崎氏、そしてアール・アイ・エー建築綜合研究所の敦賀氏という人が立ち会っておったということですね。ちなみにこのアール・アイ・エーとは何ぞやと申しますと、これは大成建設系の設計コンサルタント会社で、この事業はもともとこのアール・アイ・エーと竹中工務店系の環境開発研究所の二社がジョイントで調査設計しておったものでありますけれども、これも事前に入っているということですね。  ですから、建設省と法務省に私お聞きしたいのでありますけれども、この事業を発注する以前に既に裏金が流され、しかもこの事業調査設計をしたアール・アイ・エーの関係者、それから組合の幹部、理事者ですね、そういう連中が立ち会っていたということはおかしいじゃないかということですね。既に大成に特命発注するという前提で裏金が流された、そういう可能性が強いということですね。組合幹部のこのような行為というものは、都市再開発法の第百四十条及び第百四十一条に該当するのではないかということです。また大成建設の担当者は、正式契約が結ばれる前に裏金を渡しているわけでありますから、この行為は刑法上の何がしかの罪に触れるのではないかと思いますが、この点についてお答えいただきたいと思います。
  341. 久保敏行

    ○久保説明員 先生が今御指摘になりました事柄につきまして、その事実につきましては私ども正確には存じていないわけでございます。また県からの報告でも、そのような事実は今まで私どもは聞いていないわけでございます。  したがいまして、今後、県当局等の調査結果等によってこの件についての事実が明らかになるとすれば、それに伴って措置をとるとかとらないということになるのじゃないかと思うわけでございます。仮に先生のおっしゃるようなことがあったとして、それが法律上の罰則規定等に当たらないか、特に都市再開発法に規定してございます法律百四十条及び百四十一条、これは贈収賄の規定でございますが、この適用についてどうなのかということでございますが、これにつきましては、事実関係は明らかではございませんけれども、仮に金銭の授受があったといたしましても、その金銭の性格でございますとか、まただれからだれが受け取ったというようなことなどによりまして適用が決まるもの、このように考えておるわけでございます。
  342. 馬場俊行

    ○馬場説明員 お答えいたします。  御質問は二つあったかと思います。  まず、都市再開発法におきます贈収賄罪の成立いかん、こういうお話でございますけれども、現在の時点におきましては、本件につきます具体的な事実関係が明確ではございませんので、特定の犯罪が成立するとかしないとかということについて申し上げられる状況ではないわけでございます。ただ、一般論として申し上げますれば、先ほど建設省の方からもお話がございましたように、市街地再開発組合の役員その他一定の身分を有します者がその職務に関連いたしまして金品を収受したといったようなことがあります場合には、都市再開発法百四十条の収賄罪が成立ということも十分あり得ようかと思われますし、またその相手方、つまり金品を供与した側につきましても、百四十一条の贈賄罪が成立するといったような場合があり得ようかと思うわけでございます。  それから第二点の刑法上何らかの犯罪になるのではないか、こういうお尋ねでございますけれども、これにつきましても、恐縮でございますが、具体的な事実関係が明確でございませんので、断定的にこういう犯罪が成立するということは申し上げかねるわけでございます。ただ、同じように一般論で申し上げますと、こういった組合の役職員、刑法上の言葉で言いますれば、他人のために事務を処理する任務を有する者その他一定の者が自分の利益とかあるいは第三者の利益を図るといったような目的を有するような場合に、自分の利益を図るといったようなことで、任務に背きまして、会社あるいは本件でいいますと組合に損害を与えたといったようなケースの場合には刑法の背任罪が成立する余地があろうか、かように考える次第でございます。
  343. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 この問題は調べれば調べるほど奇々怪々といいますか、泥沼のような不可解な部分がどんどん出てくるわけでありますが、その例として、今度は別の方ですが、裏金をもらったAさんという人の話をお聞きしたわけであります。  このAさんというのは、五十八年三月三十日、佐々木副理事長の自宅に呼ばれて行った。その席には先ほどのアール・アイ・エーの敦賀氏それからブローカーというか仲介をした新興住宅の伊藤氏、そういう方々がおって、その場で正規の補償金二千二百四十八万円余を二枚の小切手でもらい、その他に裏金として五百万円の小切手をもらっています。Aさんは、その足で銀行に行って小切手を換金したと言っております。私、Aさんの預金通帳そのものをコピーしてまいりまして、ここに用意してございますけれども、ところが問題はその後でございまして、ことしの三月十五日確定申告の際に税務署からこう言われたのです。正規の補償金及び裏金合わせておまえさんは二千七百四十八万二千円余と休業補償追加分として百八十四万三千円余をもらっている、そう指摘されたのですね。ところがAさんは税務署から指摘された休業補償の追加分など全くもらっていないのですよ。  そこで、税務署の帰りに組合事務所に寄りまして、税務署指摘されたことをそのとおり言いましたところ、組合の請求伝票を見せられまして、確かにその中にはAさんの休業補償費追加分として百八十四万円余の伝票はあったが、本人はその額はもらっていないと主張して、結論が出ないでそのまま帰っています。そこで本人は帰った後、銀行通帳を見たところ、その額は記載されていなかったということでございまして、この普通預金の通帳のあれを見ましても、その額は記載されていないのです。Aさんは、再開発でもらった補償費については一冊の通帳にして、小切手でもらえば換金し、銀行に預金することにしているわけであります。  またこのことについて他の組合員に聞いたところ、休業補償金の追加分は該当者の銀行口座に振り込まれるのが一般的なやり方だ、こういうことでありましたりここにはっきりこうして見ましても、この銀行のそれを見ましても、裏金の五百万円、それから正規の補償のお金、これはあるけれども、その百八十四万何がしという休業補償費の追加分がないのですよね。こういう奇怪な問題もあるということをひとつ指摘したいわけであります。  それから補償費の関係ではさらに問題になるような点もございまして、五十八年四月三十日の理事会の席上で追加補償費として二億円の原資が組まれているのですね。その中には広場の整備費の費目から流用した形跡がうかがえるのです。ちょっとその点を申し上げますと、追加補償費二億円の内訳を見ますと、一億三千四百六万四千円、これが二億円の中の追加補償分、広場整備費追加分として六千五百九十三万六千円、合計二億の案が提示されているのです。その資料も私今ここに手元に持っているわけであります。五十八年四月三十日の理事会では二億円の内訳としてそういう金額計算になっているのです。  ところがそれからわずかしか日がたたない五月十九日の組合総会では、広場整備費追加分がどこへいったか、消えてしまっているのですね。二億円の追加補償費の案だけが計上されているわけであります。御案内かどうか知りませんが、この広場の整備費には国からの補助金二千三十九万九千円が出されているのです。そうなれば、追加補償として出した二億円の中には広場整備費が流用された可能性もあるということですね。まさに補助金の目的外利用の疑いもあり、都市再開発法の第百四十六条三号に該当してくるのではないか。会計検査院はこの点について早期に調べるべきだ。今までいろいろなお答えをいただきましたが、まだ実態を掌握してない、まだ知らない、そこまでわからないというようなことでやられてきましたけれども、会計検査院は今こそ早期にやらなければならないのじゃないかと私は思うのですが、いかがでありましょうか。
  344. 小川一哉

    小川会計検査院説明員 お答えいたします。本件駅前再開発事業の問題につきましては、先生からも貴重なサゼスチョンをいただいたこともございますし、また国会でも再三にわたり御指摘をいただくなど、世上の関心事でもございますので、本院といたしましても、既にこの駅前開発事業に関しまして交付されました国庫補助金に関する資料の収集を始めでございます。これらを踏まえまして、できるだけ早い時期に検査をいたしたい、かように考えております。
  345. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 できるだけ早い、この前の答弁では来年ということを言っていましたが、来年という概念には二つあると思う。来年一月も来年です。年度がわりの四月も来年です。そうすると今私の了解しているのは、できるだけ早いというのは一月を想定する、私はそれより早い方を望んでいるわけでありますが、そういうことでいいですね。
  346. 小川一哉

    小川会計検査院説明員 検査にはいろいろ適当な時期もございます。それに収集をいたしました資料の整理、それから秋田県は特に寒冷地でございますので雪の関係もございます。これらを踏まえまして、最も検査に適当な時期で早い時期と考えております。
  347. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 ぜひとも早くやっていただきたいと思います。  警察庁にお聞きしますが、私が今まで指摘したように、裏金一つとってみてもいろいろ問題があるわけですね。地元の秋田署ではことしの九月十三日、木村勝之助刑事官の名前で、加賀屋豊治、佐々木長範正副理事長、境田俊一、島田何がし、伊藤吉雄、本金、そういう関係者の各口座に対して、五十七年一月四日から五十九年五月三十一日の期間、大成建設秋田営業所からお金が振り込まれているかどうか口座照会を行っていると聞いておるわけであります。また各組合員に対して事情聴取を行い、調書をとっていると関係者から聞いているのでありますが、これらのことを見ますと、警察もかなりの関心を持って今回の問題を見ていると思うのですけれども、どの辺までいっているのか、そこら辺お答えいただければありがたいと思います。
  348. 上野浩靖

    ○上野説明員 お答えいたします。  現在警察におきましては、この問題につきまして必要な情報収集と調査を行っているところでございますので、具体的な答弁につきましては差し控えさせていただきたいと思います。
  349. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 いずれ私の言ったことについて、十分ひとつ県民が納得するように捜査していただきたいと思うわけであります。  さらに、非常に大きい問題だ、むしろこれが本当の問題じゃないかと思うようなことがあるわけであります。今回の事業に関連して地元選出の国会議員が関与していたとうわさされていることでございます。既に新聞でもその地元選出の政治家が実名で出されておるわけでありますが、この政治家が工事の発注に対し助言を与え、大成建設に特命発注された、こういう報道がはっきり出されているわけでありますね。工事そのものが、最初は組合でも指名競争入札のつもりでおった、一週間でひっくり返った、天の声があったと言っているわけですね。それも、実名を挙げた天の声の話も新聞にちゃんと出ているわけでありますが、私どもの調査ではこの大成建設に特命発注、一社だけ特命ですから、それだけ我々から見れば大変な利権だと思うのですね。  そのほかに、旧金座街の解体工事を行った際、下々の話になって恐縮でありますが、この工事を受注した佐幸組という組がございまして、二千三百万円で契約したものであるにかかわらず、実際はその中から千百万円の上納金、つまり裏金というのですね、それが強制されまして、千二百万円の代金しか支払ってもらえなかった。そういうことで関係者から証言もいただいております。この旧金座街の解体工事につきましては、五十八年八月二十五日から九月末の期間にやられたものでありますが、五十八年度国債で八百三万四千円の国の補助が出されているのです。だから補助金の一部が上納されている疑いもあるわけでありまして、警察庁はこれらの問題も含めてきちっと対応すべきであると思うわけでありますが、この点については同様な答えしか返ってこないと思いますので、事実関係を指摘しておくにとどめる次第でございます。  そこでもう一つ、この政治家絡みの奇怪な問題は、私どもの調査によりますと、この事業に関連して二つのトンネル会社が介在している疑いが強いということです。その二社というのは、一つが北日本通商株式会社、ここに定款、登記簿謄本、全部用意してあります。もう一つは有限会社平和ビル用材という会社であります。いずれも秋田の会社で、今指摘しました政治家の系列会社と地元では見られております。  ちなみに、この北日本通商の取締役というのは、その中に清水重明さんという方がおりまして、これは男鹿市の船越で清水組という建設会社を経営している方で、この清水組はこの政治家に対しまして五十七年二月から十二月にかけて合計百十万円、五十八年八十四万円、この政治家の政治団体である地域経済研究会に寄附をしている、そういう関係なんですね。もう一つの平和ビル用材、この会社に至っては、組合が設立されたのが五十六年二月ですが、それと符節を合わせたように五十六年十月二十九日に発足した会社でありまして、この政治家の秘書でありました前田金作さんという方が取締役として名前を連ねています。  今回の調査で、この中で奇怪なことは、ある生コンの会社の人から話を聞いたのでありますが、この会社は、これまで大成建設の秋田での仕事ではほとんど生コンを一〇〇%納入しておった。ところが今回は大成建設は、ある事情があるからということで、全体としては三万五千立方メートル、時価四億から五億円と言われる資材量の五分の一程度にしてくれ、それしか買うことができないのだ、ある事情があるのだ、こう言われたわけですね。しかも、この五分の一につきましても、大成に納入する前に北日本通商をトンネルとして通してくれということですね。ましてそのほかに、同じセメントを使うなら日鉄セメントを使わなければだめなんだということでありまして、この北日本通商の川上社長というのは組合の佐々木副理事長の親友である、そういう関係もあるわけであります。つまり生コンだけについて言っても、北日本通商が大成と納入会社の間に入ってピンはねしていた疑いが非常に強いということです。結局この会社は、日鉄セメントを取り扱っていないということを理由に、最後の望みであった五分の一の納入も御破算になりまして、さきに指摘した政治家の系列会社、男鹿市にある新秋北生コンだとか男鹿電化生コンなどが北日本通商を通して大成建設に納入したという大変な事実があるわけであります。ある民間の信用ある調査によりますと、北日本通商はこの駅前再開発事業で業績が大変好転した。  そこで私は法務省にお聞きしたいのでおりますが、これらのトンネル会社を通して政治家に金が流れ、なおかつ政治資金規正法に基づく届け出がなされていなければ、職務上の地位を利用した不正な報酬であり、刑法のわいろの性格になると思うが、この点についてはどうお考えになるのか、このことです。
  350. 馬場俊行

    ○馬場説明員 お尋ねの点につきましては、先ほど来申し上げておりますように、私どもといたしましては、具体的な事実関係が明確でございませんので、わいろ罪に当たるか、その他の犯罪に当たるかについてはお答えを差し控えさせていただきたいと思うわけでございます。  ただ、一般論として申し上げますと、公務員一般につきまして、その職務に関連しましてその者がわいろを収受したといったような場合には、当然のことでございますけれども、贈収賄が成立するといったようなことになろうかと思われるわけでございます。
  351. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 そこで、私は委員長にお願いするのでございますが、やはりこの問題の真相の解明を県民が圧倒的に願っているわけでありますので、真相を解明するために再開発組合の加賀屋豊治、佐々木長範の正副理事長、大成建設東北支店長の高荷宏、アール・アイ・エー建築綜合研究所の営業担当理事である敦賀整一、平和ビル用材の取締役前田金作、新興住宅代表取締役伊藤吉雄の各氏を参考人として国会に呼びたいと思いますが、委員長、お取り計らいをよろしくお願いしたいと思います。
  352. 横山利秋

    横山委員長 理事会に諮りまして協議いたしましょう。
  353. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 ありがとうございます。  そして大変恐縮でございますが、委員長の時間の都合もあるのを承知しておりますし、私も今質問を二、三省略した点もございますけれども、最後に一つだけまとめて申し上げますのでお許しいただきたいと思います。きょうは関係者も傍聴に入っていますので、どうかお願い申し上げます。  今の前段の問題については参考人を後日呼ぶことを理事会で相談することになりましたが、最後に、税務署による税務調査のあり方についてお聞きしたいのであります。  さきの国会で所得税法改悪などによって、例えば申告納税制度そのものも大きく風穴をあけられ、最近そうした風潮に便乗したかのような税務署職員による職権乱用、人権侵害の問題も目立ってきております。この事例もお隣の千葉東税務署管内で起こった問題の一つでありますが、市原市五井というところに割烹満寿多という夫婦二人でやっている小さな飲み屋がございます。去る六月十二日夜、この店に二人の客があらわれて、ビール三本、お通し二つ、刺身盛り合わせ二、ハマグリ一、イカバター焼き一、合計七千八百五十円を飲んで領収書をとって帰ったわけであります。それから間もない夜の八時半ごろ、まあはしごでしょうね、先ほどの二人と今度はもう一人ふえて三人で同じ町内にあるスナック「セーヌ」というところにあらわれまして、ここではおれたちはトヨタカローラのセールスマンだというふれ込みでボトルをキープし、カラオケを歌って大騒ぎをし、さらには店の女の子とダンスに打ち興じて、最初は十時ごろになれば帰ると言っておったのが、それやこれやで遅くなって、そのときの飲み代二万六千六百四十円の領収書をとって終電車で帰っていったわけであります。私、ここにそのときのボトルを持ってきてあるのです。その大変なボトルがこれでありますが、ここに「板見」と書いてあるのです。この「板見」というのは、板倉統括官という方がおられるわけですが、「板」と書いて「倉」と書こうとして、はっと「板見」と偽名を使ったわけであります。これがそのときのボトルで、ほぼ全部あけられているわけであります。  問題はその後でありまして、まず前段の割烹満寿多の一件でありますが、六月十九日、同東税務署第五部門担当の木之村なる署員があらわれまして、おまえさんのところの利益率は六二%になっているから、過去三年間にさかのぼって五十七万円の修正申告をしろ、おまえさんがそうしなくてもこちらとして更正決定するということを言ったので、その根拠を示せと言いましたところ、部下に命じて調べさせたと言いまして六月十二日夜の署員二名による先ほどの領収書を出して、証拠はこれだと言ったのであります。それから次のスナック「セーヌ」の一件の方は、六月十四日、同じく同税務署木之村署員が来まして、この「セーヌ」での飲めや歌えのどんちゃん騒ぎのときの領収書を振りかざして、同じように過去三年間の修正申告を迫ったものであります。  この問題は、その後、重税反対千葉県中央地区実行委員会でも問題として取り上げられ、再三にわたって同税務署に対する抗議あるいは申し入れとなり、さらには国税庁に対する申し入れにまで発展し、地元の新聞にも報道されているのであります。  質問を一気にまとめて言いますので、お聞き取りをいただきたいと思います。  国税庁にお聞きしたい。納税者の協力を得て行われる税務行政が、逆に納税者をだまし討ちにする全くのおとり調査が行われたこと、そして領収書を部下にとらして修正申告を迫っている点で、公務で行われたことは皆さんも税務署自体が認めているわけでありますが、公金を使って深夜までどんちゃん騒ぎをして、あれは仕事だったでは世間に通るかどうかということです。税務調査の行き過ぎだと思いますが、この点に対する見解。  それから「税務運営方針」、五十一年四月一日国税庁でも「調査方法等の改善」として専らやり方についてちゃんと書いてあるわけです。その中には「税務調査は、その公益的必要性と納税者の私的利益の保護との衡量において社会通念上相当と認められる範囲内で、」云々とあるわけです。ところが実態は、納税者当局の考え方を的確に話すどころか、専ら接触したのはホステスだけであるわけです。法律的にもおかしいし、聞いたことがない事件だ、こう言っているのでありますが、この点に対する見解。  最後に、こうしたことが組織的に行われている点で、これを命令した者、参加した者を厳しく処分すべきであり、国民に納得のいく処置をとるべきだと思うのですが、この点についての御見解をいただきたいと思います。
  354. 冨尾一郎

    ○冨尾説明員 お答えいたします。  先生御指摘の千葉東税務署におきます調査に関連をしてまず申し上げたいと思いますが、私どもが税務調査を行っておりますのは、本来適正な納税を実現するためでございまして、このためにはいろいろな調査手法を使ってやっているわけでございます。基本的には、納税者の御協力のもとに帳簿等を見せていただき、それに基づいて調査するというのが基本でございますが、帳簿を提示していただけない場合とか帳簿がない場合等で、納税者の方の事業内容につきまして正確な把握ができない場合には、私どもとしてはその営業の実態を把握するために、いろいろな手法を用いまして情報収集するということがございます。  この一つの方法といたしまして、身分を明らかにせずに納税者の店舗を訪れまして、いわばお客として店に入りまして、そして事業の実態を把握するということも私どもは考えておりまして、これにつきましては許容された情報収集の一つの形態であるというふうに考えております。先生はこれをおとり調査ということで御指摘になりましたけれども、私どもとしては、いわゆるおとり調査というのは、犯罪捜査の場合におきまして一種のトリックを用いて相手に違法な行為をさせる、そして逮捕するというような場合がおとり捜査ではないかと思っておりますが、私どもの場合には、これをやったことによりまして納税者の方々に違法な行為をさせるという点は一点もございません。あくまでも納税者の情報収集、お店の実態を把握するということの調査でございまして、これとはおのずから性格を異にするというふうに私どもとしては考えております。  このように、私どもとしてはできるだけ納税者の方々の御理解と御協力を得ながら税務調査を進め、適正公平な課税の実現に努めてまいりたいと思いますが、調査に当たりましては、納税者に接します以上、きちっとした品位を持ち納税者と信頼関係に立った上で調査するということでございまして、この点につきましては、今後とも職員を指導し、いやしくも納税者の方々から御批判のないように努めてまいりたいというふうに考えております。よろしく御協力をお願いいたします。
  355. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 ちょっとあなた、冗談じゃないですよ。この二店ともあらかじめ税務署がおたくの店は調査しますよということを前提にして、調査中ということを明らかにしている店なんです。それに対してそんなことをするということはいいかげんも甚だしいことであります。  大蔵大臣最後でありますが、こういうやり方が合法的な範囲に入るのかどうか、あなたの御見解を伺って、私の質問を終わらせていただきます。
  356. 竹下登

    竹下国務大臣 事の真相を把握しているわけでもございませんし、今先生のお話を聞いただけで私がコメントする立場にはない、御理解をいただきたいと思います。
  357. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 終わります。
  358. 横山利秋

    横山委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後六時散会      ――――◇―――――