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1984-07-20 第101回国会 衆議院 決算委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年七月二十日(金曜日)     午前十時三分開議 出席委員   委員長 横山 利秋君    理事 近藤 元次君 理事 白川 勝彦君    理事 東家 嘉幸君 理事 森下 元晴君    理事 井上 一成君 理事 新村 勝雄君    理事 貝沼 次郎君 理事 神田  厚君       榎本 和平君    近江巳記夫君       滝沢 幸助君    中川利三郎君       阿部 昭吾君  出席国務大臣         外 務 大 臣 安倍晋太郎君  出席政府委員         総務庁長官官房         交通安全対策室         長       波多 秀夫君         外務大臣官房長 北村  汎君         外務大臣官房外         務報道官    三宅 和助君         外務大臣官房審         議官      都甲 岳洋君         外務大臣官房会         計課長     林  貞行君         外務大臣官房領         事移住部長   谷田 正躬君         外務省アジア局         長       後藤 利雄君         外務省北米局長 栗山 尚一君         財務省中南米局         長       堂ノ脇光朗君         外務省欧亜局長 西山 健彦君         外務省中近東ア         フリカ局長   波多野敬雄君         外務省経済局次         長       恩田  宗君         外務省経済協力         局長      藤田 公郎君         外務省条約局長 小和田 恒君         外務省国際連合         局長      山田 中正君  委員外出席者         防衛庁防衛局調         査第二課長   太田 洋次君         防衛庁教育訓練         局訓練課長   上田 秀明君         防衛施設庁総務         部施設調査官  平   晃君         法務省刑事局総         務課長     堀田  力君         大蔵省主計局司         計課長     西沢  裕君         会計検査院事務         総局第一局長  西川 和行君         会見検査院事務         総局第五局長  秋本 勝彦君         決算委員会調査         室長      大谷  強君     ――――――――――――― 委員異動 七月十三日  辞任         補欠選任   谷  洋一君     森下 元晴君 同月二十日  辞任         補欠選任   塚本 三郎君     滝沢 幸助君 同日  辞任         補欠選任   滝沢 幸助君     塚本 三郎君 同日  理事谷洋一君同月十三日委員辞任につき、その  補欠として森下元晴君が理事に当選した。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  昭和五十六年度一般会計歳入歳出決算  昭和五十六年度特別会計歳入歳出決算  昭和五十六年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和五十六年度政府関係機関決算書  昭和五十六年度国有財産増減及び現在額総計算  書  昭和五十六年度国有財産無償貸付状況計算書  (外務省所管)      ――――◇―――――
  2. 横山利秋

    横山委員長 これより会議を開きます。  この際、理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い、現在理事が一名欠員になっております。これよりその補欠選任を行いたいと存じますが、これは、先例によりまして、委員長において指名することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 横山利秋

    横山委員長 御異議なしと認めます。よって、森下元晴君を理事に指名いたします。      ――――◇―――――
  4. 横山利秋

    横山委員長 次に、昭和五十六年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は、外務省所管について審査を行います。  まず、外務大臣から概要説明を求めます。安倍外務大臣
  5. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 昭和五十六年度外務省所管一般会計歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  歳出予算現額は三千四百三億五千四百八十二万円余でありまして、支出済み歳出額は二千八百八十七億二千七百八十二万円余、翌年度繰越額は四百七十二億二千八百六十二万円余、不用額は四十三億九千八百二十五万円余であります。  歳出予算現額の内訳は、歳出予算額三千九十九億九千七百五十三万円余、前年度繰越額三百三億五千七百二十八万円余でありまして、前年度から繰り越したものの内訳は、経済開発等援助費二百九十八億五百八十万円余、在外公館施設費五億五千百四十七万円余であります。  支出済み歳出額の主なものは、エネルギー対策のため国際原子力機関に対し同機関の憲章に基づく分担金及び拠出金として二十一億四千五百八十八万円余、並びに各種国際機関に対する分担金等として四十九億五千七百九十七万円余。  次に、経済協力一環として青年海外協力隊派遣開発調査センター協力機材供与保健医療協力農林業協力開発技術協力開発協力専門家養成確保等の事業、アジア諸国等開発途上国に対する経済開発援助及び国連開発計画等の多数国間経済技術協力のための拠出等に要した経費二千億一千九百七十一万円余であります。  次に、翌年度繰越額について申し上げますと、財政法第十四条の三第一項の規定による明許繰り越しのものは四百七十二億二千八百六十二万円余でありまして、その内訳は、経済開発等援助費四百七十二億二千八百六十二万円余であります。  不用額の主なものは、外務本省の項で通信専用料の値下げがあったこと、経済協力費の項で経済開発等援助費の一部が諸般の事情により使用できなかったこと、国際分担金その他諸費の項で為替相場の変動に伴い、経済協力国際機関等拠出金を要することが少なかったこと、並びに在外公館の項では、職員諸手当を要することが少なかったこと等のためであります。
  6. 横山利秋

  7. 西川和行

    西川会計検査院説明員 昭和五十六年度外務省決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
  8. 横山利秋

    横山委員長 これにて説明は終わりました。     ―――――――――――――
  9. 横山利秋

    横山委員長 これより質疑に入ります。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。井上一成君。
  10. 井上一成

    井上(一)委員 まず最初に、私は、外務大臣韓国あるいはASEANと大変お忙しい外交日程をこなしていらっしゃることに御苦労さまと労をねぎらっておきたいと思います。  さて韓国を訪問されて、李外相との会談で、現在韓国で拘禁されている在日韓国人政治犯について話し合われたということでございますが、先方はどういう御意向であったのか、最初に聞いておきたいと思います。
  11. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 先般韓国を訪問いたしまして、李韓国外相会談をいたしました際に、今お話がありました在日韓国人韓国におきまして保安法その他に違反するということで処罰を受けております。この点につきましては、実は李外相に対しまして、これは韓国国内法の問題であるかもしれないが、しかし、日本に長くおる在留韓国人のまた問題でもあり、この件については日本における親戚友人その他の皆さんから私に対しまして、韓国政府に対して人道的配慮を強く求めるように要請の陳情を受けておりまして、これは内政上の問題ではあるけれども人道上の問題でもあるので、韓国政府におかれましてもひとつ人道上の観点から配慮していただきたいということを申し入れたわけでございます。  これに対しまして李外相は、今の安倍外相のお申し出については留意する、こういう御返事でございました。
  12. 井上一成

    井上(一)委員 韓国側は今お答えになられた外務大臣の御提示に対して留意する。もちろん韓国国内法の問題でもあり、我が方がこのことについて決定的な詰めを持つことにはならぬと思うのですが、今外務大臣も言われたように、韓国人親戚あるいは友人、多くの人たちが今回の安倍外務大臣の訪韓については強い期待を持っていらっしゃったと思うのです。むしろ全大統領訪日を前に光復節などの機会がありますから、そういう機会をとらえて政治犯に対して何らかの配慮がなされるようにしていただきたい、そういう期待がそこにあっただろうと思うのです。  この結果はもうすぐ大統領日本を訪問されますから明らかになるわけでありますけれども、そういう関係者の強い期待人道的立場に立つ配慮というものに十分にこたえられる十分な意思表明安倍外務大臣はしてきたんだ、そういうふうにお考えでいらっしゃるかどうか。留意するということはどれくらいの範囲を意味している言葉なのか、人道的立場に立った配慮から釈放の考えまで示されたというか示唆されたというか、そういうふうに受けとめられるのかどうか。私は安倍外務大臣の御努力に対しては本当に御苦労さまでございますということを申し上げたいわけなんですが、そういう留意という言葉の中には、今申し上げたような、そこまで含めた韓国側配慮期待できるんだ、こういうふうに受けとめられるのかどうか、もう一度この点について聞いておきたいと思います。
  13. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 この問題につきましては、少なくとも二国の外相間の話し合いで持ち出した話でございますし、また我が方の要請でございます。したがって、これまでも事務当局間ではいろいろと話もしたわけですが、外相レベルで話をしたわけですから、それはその背景にそれだけの強い我が国としての人道的な立場ではもちろんありますけれども、また人道的な要請ではありますけれども、政府としての気持ちが出ておるわけでございますし、その重さというものは私はやはり韓国も受けとめていただきたいと思っております。韓国外相が留意すると言われました。それ以上のことは言われませんでしたが、日本のそうした外務大臣というレベル外相が持ち出したということについては、韓国側としてもそれなり配慮は加えていただけるものであろうと私は期待を強くいたしておるわけでございます。
  14. 井上一成

    井上(一)委員 事務レベルでなく、いわゆる外相会議の中で我が国の強い意思を表明された、こういうことで大いに期待をするのだということでございますが、大変重ねて恐縮ですけれども、日韓両国の今日の外交友好上の観点からも、その要請にはあるいは重い意思表示にはこたえていただけるという強い受けとめ方をされていますね、されていらっしゃるわけですね。
  15. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いつどういうふうな形で、どういうふうにしてもらいたいというようなことは、これは韓国のいわゆる内政上の問題ですから、そこまで立ち至って日本が申し入れるわけにいきませんし、具体的に申し入れる立場にもないわけでございます。しかし、日韓関係がここまでよくなってきておる、そうして全斗煥大統領訪日をされる、こういう背景の中で日本外務大臣としての要請をいたしたわけでございますし、それなり韓国側としてもこの日韓関係の空気というものを反映された人道的な配慮というものが行われることを私は期待をいたしておるわけでございます。
  16. 井上一成

    井上(一)委員 次に、せんだって南太平洋、インド洋防衛のかなめである豪州、ニュージーランド米国、三国安全保障条約通称ANZUS条約、その一翼を担うニュージーランド核兵器の一時持ち込み禁止選挙公約に掲げて戦い、かつ勝利し、ロンギ氏率いる労働党政権が誕生した、このことについて、報道によれば米国は大きな衝撃を受けているということでありますが、我が国政府としてはロンギ氏率いる労働党政権誕生をどのように見ていらっしゃるのか、その点について大臣からお聞きをしたいと思います。
  17. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 このニュージーランドの総選挙の結果労働党がいわば大勝したわけでございますが、これはニュージーランド国民の民主的な選挙を通じての判定でございますし、日本としてはニュージーランド国民判断というものを今後とも尊重して、今度新しくできる政権ともこれまでどおり、あるいはさらにこれ以上の友好関係を持続していかなければならぬ。労働党政権も、日本との関係は、前政権の時代からの友好関係、それを引き続いて維持していくということを明確に言っておるわけであります。
  18. 井上一成

    井上(一)委員 ニュージーランド国民反核立場に立つロンギ氏率いる労働党を勝利させたことは私たち社会党にとっても非常に喜ばしいことであると同時に、ニュージーランド国民の選択は非常に賢明であったというふうに私は思うわけであります。我が国も核軍縮を求める国家として労働党政権連携してその友好関係を深めていくべきではないだろうか、こういうふうに私は思うわけです。ひとつ安倍外務大臣の御所見を承っておきたいと思います。
  19. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本立場は先ほど申し上げましたが、ニュージーランドにどういう政権が生まれようと、ニュージーランドという国とのこれまでの友好関係を深めていきたいということでありますし、労働党政権が生まれましたが、この政権日本との友好関係を堅持するという姿勢でございますので、これまでのニュージーランド我が国との関係にはいささかも不安はない、こういうふうに判断をしております。それぞれの国の防衛政策とかあるいは外交政策、それはそれなりの独自のものがあるわけでございますから、そういう中にあって両国間の関係は変わらない、私はこういうふうに思います。
  20. 井上一成

    井上(一)委員 さらに強い連携を深めていく、そういうお考えを私は尋ねているわけなんですが、その点についてはどうなんでしょうか。
  21. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 両国間で連携を深めていけるところは、これはお互いの国、両国合意に達すればそれなりに深めていくことは、これはもう同じ太平洋・アジア国家でございますから当然のことじゃないか、こういうふうに思います。
  22. 井上一成

    井上(一)委員 ニュージーランド労働党はその政策、特に核に対する政策について核兵器積載艦船入港は絶対認められない、こういうふうに公約をし、政策に掲げているわけです。御承知のように、我が国非核原則政策、これは核兵器積載艦船寄港事前協議前提としているわけなんです。事前協議があればそれは拒否をする、ノーと言う、これは何回か国会答弁も繰り返されているわけです。核兵器積載艦船寄港させないという点では、ニュージーランド労働党政策あるいは我が国非核原則政策、いわゆる核を持ち込ませないという点では同じであると私は思うわけでありますが、大臣はどうお考えになりますか。
  23. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 確かに労働党反核政策を主要な基本政策にしておりますし、選挙でもキャンペーンしたということは私もよく承知しております。ただ、ここで労働党政権ができまして今間もなくでありますし、そしてニュージーランド先ほどお話しANZUS条約にも入っておるわけですから、労働党政権として、政府として、これから今の核積載艦入港だとかそういう問題をANZUS条約義務条項との関連でどういうふうに進めていくのか。これは労働党政策ははっきりしていますが、政権として、政府としてこれからどういうふうに対応するのか、まだその辺のところをはっきり見定めておらないわけでございます。この辺のところは見守っていきたいと思います。
  24. 井上一成

    井上(一)委員 いわゆる政権党として今後どういう対応をされるかということを見守っていきたい、私はそのことは横へ置いて、ニュージーランド労働党政策我が国非核原則とは、核の持ち込みを拒否する、ノーだと言うことについては同じであるんだ、こういうふうに私は思っている。大臣、その点はどうなんでしょうか。
  25. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 非核原則というのはまさに世界の中ですばらしい原則であると私は思いますが、そうした核を持ち込ませないということについては労働党も強く主張しておりますから、その点については日本と全く同じであろう。ただ、非核原則という形のものであるかどうか詳細に調べておりませんが、今お話しのように、少なくとも核積載艦国内に入れない、こういうことを労働党として主張しておりましたから、この点については日本と同じ主張であろうと思います。
  26. 井上一成

    井上(一)委員 核を持ち込ませないということについては同じだ。それじゃどこが違うんだろうか。これはどこか違うわけでしょう。どこが違う。全くすべてが一緒だと思われておられるのか。核を持ち込ませないということについては同じであるけれども、ニュージーランド労働党政策我が国政策との違いはどこなんでしょうか。
  27. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 労働党政策としては、今の反核という線を非常に強く打ち出しておる、こういうふうに承知しておるわけなんですが、私たちが今注目しているのは、労働党政権を取ったこの段階で、今の労働党政権が現実のこれからの政治面でどういうふうに政策を進めていくかというところに我々は非常な注目をいたしておるわけでございまして、政策としては、労働党政策反核であるし、核を持ち込ませない、これはもう極めて明確じゃないか、こういうように思います。
  28. 井上一成

    井上(一)委員 まだちょっと十二分ではありませんけれども、それはまた後に置きましょう。  それじゃ、シュルツ国務長官が、米艦船自由寄港米国安全保障上絶対必要だ、あるいはまた、ほかの米高官筋は、寄港を制限しあるいは拒否する姿勢を崩さなければ米国ANZUS条約を廃棄する。いわば条約存在意義がないというような発言をされているということが報道されているわけです。いわゆる不自由な制限のある寄港安保支障がある、こういう報道がされているんですが、大臣は御承知でしょうか。
  29. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 報道承知しております。ただ、その報道がどこまで公式的なものであるかということについてはもっと事実を明らかにする必要があると思いますが、しかしアメリカが、やはりANZUSが必要であるし、あるいはまた米国艦船ニュージーランドの諸港への入港は必要である、こういうふうに考えておることは十分判断できることである、私はこういうふうに思います。
  30. 井上一成

    井上(一)委員 我が国アメリカ核兵器積載艦船寄港ができないわけですね。そのことはアメリカ安全保障障害にならない、そういうふうに認識をされているのか。あるいは伝えられるシュルツ国務長官のそういう発想に立たれているのか。今までずっと国会答弁で、核積載艦船寄港は認めないんだという、事前協議がある、そういう手続論はあります。手続論はありますけれども、そのことはいわば不自由な寄港というとらえ方になるわけですけれども、アメリカ安全保障上そういうことは障害になっていると思うのか、ならないと認識しているのか、どちらでしょうか。
  31. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日米安保条約でいわゆる事前協議条項というものが存在しているわけでございますし、それはやはり日本非核原則というものを背景にしてこの事前協議条項というものが運用されなければならぬことは当然でございます。その点についてはアメリカ側日本立場というものを十分承知しておる、そして日米信頼関係のもとにこの事前協議制運用されておるし、そういうことでございますから、アメリカ核持ち込みというのは、これはもう事前協議にかかわるわけですし、事前協議にかかった場合は日本ノーと言うことは内外にはっきりと明らかにしておりますから、したがって、アメリカの核を持ち込んだ艦船入港ということは事前協議なしにはあり得ないというのが政府の解釈でございますし、これは日米間でかたく守られておる、こういうふうに私は確信をいたしております。
  32. 井上一成

    井上(一)委員 大臣、私の聞いているのは、核兵器積載艦寄港我が国には制限されているわけですね、そのことはアメリカ安全保障上、障害にはならないという認識なのか、どうなんだということを聞いているのです。
  33. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは障害になるとかならないとかいう問題以前の日本基本原則でございますし、そういう立場でこの安保条約というものが生まれ、その中で事前協議条項というものが制度化されておる、こういうふうに私は考えております。
  34. 井上一成

    井上(一)委員 大臣、くどいようだけれども、私の聞いているのは、アメリカ安全保障上、我が国核兵器積載艦寄港できないということは障害になっているのか、なっていないのか、これは大臣の見解を聞いているわけです。非核原則運用の問題だとか、それはもう何回か議論されているわけですから。どうなんですか。
  35. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 アメリカ安全保障という立場で、アメリカ世界戦略というのを私は持っていると思います。アメリカはその一環としての日米安保条約運用あるいは日米協力というのは、これは当然考えておる面はあると思いますけれども、しかし、この核の入港の問題については、アメリカもたとえ安全保障上、これが必要であると考えたとしても、この問題についてはアメリカとしてはもうアンタッチャブルである。これは日米間で約束できておるのですから、それ以上進める問題ではないというふうにアメリカ認識をしておる、こういうふうに私は思います。
  36. 井上一成

    井上(一)委員 日本非核原則については十分に理解をしているのだ、こういうことだと思うのですね。だから、そこまで入り込んだ話については相互が合意しているのだ、こういうことのお答えだと思うのです。そのことがいい悪いは別において、そのことの議論じゃなくして、日本核兵器積載艦寄港があり得ないということはアメリカ安全保障上、障害になっているのでしょうか、なっていないのでしょうかと、こういうことについての認識を僕は大臣に聞いているわけなんですよ。どうもそのことについてお答えがないのですよね。何かアメリカからこの非核原則について、そんなことをされたら困るのだ、アメリカ安全保障上、そんな不自由な、制限された寄港なんというのはもう困るのだというような話も内々あったのかどうか、あったとは言わないでしょうけれども。アメリカ日本に対しては核を積載した艦船寄港はしなくてもアメリカ安全保障上十分支障がないのだという認識で、我が国合意をして、そういう認識に立っているのかどうか一それはどうなんですか。
  37. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 アメリカ日米安保条約を結んでおりますし、これは事前協議条項というのがあるし、非核原則というものも日本にあるということは十分承知しておりますから、アメリカ安全保障上、そうした日本立場というものを十分理解し、そして安全保障上、アメリカ日本に核の持ち込みをしてまで安全保障を守らなければならぬ、アメリカ安全保障を確保しなければならぬという考え方は全くないと私は思っております。
  38. 井上一成

    井上(一)委員 確認をします。  それじゃ日本の今我々が国是としての非核原則、そのことについて、アメリカ核積載艦寄港を拒否されている、そのことはアメリカ安全保障支障がない、日本政府はこういう認識ですね。
  39. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 支障がないとかあるとかというのがよくわかりませんけれども、アメリカはそういうことを前提にしてアメリカ安全保障というのは考えておる、日本核持ち込みができないということを前提にしてアメリカ安全保障というのは考えておる、こういうふうに私は思っております。
  40. 井上一成

    井上(一)委員 アメリカはそう考えている。じゃ、あなたはどう考えているのですか、支障があるかないかわからぬけれどもなんて。あると思っているのですか、あなたは。支障があると思っていらっしゃるの、支障がないと認識をされているのですか、どっちなんですか。
  41. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 アメリカ支障があるかないかというのは、これは私の考えることじゃなくてアメリカ考えることじゃないかと思いますけれども、しかし、アメリカも今、核を持ち込もうとしたって持ち込めないから、そういう持ち込めないということを前提にしてアメリカはやはりアメリカ安全保障とかあるいは世界戦略というのを立てておるのじゃないか、また立てざるを得ない、こういうふうに私は判断をするわけです。
  42. 井上一成

    井上(一)委員 アメリカ判断を聞いているのじゃないのですよ。アメリカ判断に対して日本外務大臣はどう判断しているのか。アメリカ支障があると思っているんだけれども、日本とのそういう話し合いがあるものだから、事前協議ノーを言われるんだから、仕方なくこれは守っているんだ、どうかわかりませんけれども、そういうふうな認識なのか、いや、日本核積載艦寄港しなくてもアメリカ安全保障には支障ないんだ、こういうふうに認識されているのか、どっちなんですか。私はアメリカのことを聞いているのじゃない、日本外務大臣として、日本政府としてはアメリカ認識に対してどういう認識をしているのか、そういうことなんですよ。
  43. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私が言えるのは、日本非核原則というものを持っておりますし、安保条約というのをアメリカとの間に結んでおる、そしてその中で事前協議というのがあるわけですね。そういう中で日本としては少なくとも日本の平和と安全を守っていく、そういう立場からすれば、アメリカのいわゆる核積載艦入港というものは、これは日本の平和と安全を守る上において、非核原則という立場から、これは必要ないことであって、日本の平和と安全というものはあくまでも日本の独自の判断、同時にまた安保条約の効果的運用というものによって守っていかれる、安保条約の効果的運用の中にあって核の積載艦の入港というようなことは全く考えていない、こういうことです。
  44. 井上一成

    井上(一)委員 ということは、日米安保アメリカ安全保障日本安全保障についても、核積載艦寄港でき得ないということについては支障がない、こういうことですね。
  45. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本は今の日本非核原則といういわば国是というものがあるわけですから、そういうものに従って日本安全保障日本の平和と安全というものはそういう大前提の中で進められておる、そういう中でのこの安保条約運用であるし、それで十分である、こういうふうに私は思っております。
  46. 井上一成

    井上(一)委員 大臣、僕の尋ねている趣旨をあなたわかっていて、そらしているわけね。だから、日本安全保障上はそれは非核原則があるから、アメリカ安全保障上、それについてはどうなんです。
  47. 横山利秋

    横山委員長 委員長からちょっと申し上げますが、今の発言のように、双方わかっておってすれ違いを何回も続けておるような気がするのですが、委員長からちょっと確認をいたしますが、大臣のおっしゃるのは、事前協議がある、その事前協議について、核持ち込みの場合は日本政府は常にノーと言うとはっきりおっしゃいました。質問者の趣旨は、ノーということについてアメリカもきちんといかなる場合も断られることを了承しておるか、了承した立場においてアメリカ安全保障政策が行われていると解釈してよろしいか、言うならばこういう質問のようですね。どうですか。
  48. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 よくわかりました。全く委員長のおっしゃるとおりであります。
  49. 井上一成

    井上(一)委員 ちょっと大臣、豪州、ニュージーランドアメリカ、この三国の安全保障条約、いわゆるANZUSについては、アメリカシュルツ国務長官の発言のように核積載艦寄港が制限されもことは支障があるんだ、自由な寄港ができないということであれば安全保障支障があるんだ、こういうふうに言っているのです。我が国安保では支障がない、私の支障があるのかないのかという質問に対して、あなたは今まで我が国はということをしきりと言う。安保のかかわりで核の寄港拒否は我が国安全保障支障がないというように今まで言われてきたのだけれども、この点も先ほど委員長の仰せのとおりだ、いわゆるアメリカも含めて我が国に対しては支障がないんだと言う。日米安保非核原則にのっとって核持ち込みができない、核の持ち込みができないことはANZUS非核原則も同じなのです。ところが片一方のニュージーランドでは支障があって困ると言っておるわけです。我が国では支障がないという判断に立っているわけなんです。そうしたらこれは明らかに違うわけなんですよ。同じ同盟国というのでしょうか、安全保障を結んでいる国の中で違うわけなんです。どこが違うのか、こういうことを聞きたいわけなんですよ。  だから、それ以前にもう一度くどいようだけれども、アメリカ安全保障の上からも我が国安全保障の上からも、我が国に対する核積載艦寄港を拒否することは支障がないという私の認識に間違いがないかどうか、私の認識と同じなのかどうか、この点についても重ねて答弁をしてほしいと思います。
  50. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 だんだん話がはっきりしてまいりました。今のANZUS安保条約とは基本的に違うと思います。日米安保条約というのは、ANZUSとは違いまして日本非核原則というものが大原則にありまして、それを踏まえたいわゆる事前協議条項というのがれっきとして存在をしておるわけでございます。そうしてそれはアメリカも十分織り込み済みで、いわばアメリカ安全保障といいますかアメリカ世界戦略というものが打ち立てられておる、私はそういうふうに理解をしております。したがってアメリカにとりましては、アメリカ安全保障上今の事前協議条項がある以上は、アメリカの核の艦船入港というようなものはこれは支障にはなり得ない、アメリカとしては当然そういうふうに判断をしておる、私はこういうふうに思います。また同時に、今の日米安保の上からのアメリカのいわゆる日本との関係に対する考え方とANZUSという条約背景にしたアメリカニュージーランドに対する考え方とは違うし、また違ってしかるべきではないか、私はこういうふうに思っております。
  51. 井上一成

    井上(一)委員 では、さっきから聞いておるけれども、どこが違うのですか。
  52. 横山利秋

    横山委員長 どなたか条約上の専門家の方がANZUSとの違いをはっきりさせたらいかがですか。
  53. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は非常にわかりやすく言っているつもりなんですが、今のニュージーランドアメリカとの関係につきましては、これは新しい政権がどういう態度に出るかということがまだ明らかになっていないわけです。労働党のいわゆる政策というのははっきりしていますけれども、政権についた労働党がそれではANZUS運用あるいはまた核積載艦入港問題、そういうものに対してどういう姿勢をとるかということははっきりしていないし、そしてまた日本として、今そういうものがはっきりしていない状況においてそうしたアメリカニュージーランドとの問題についてコメントするということは差し控えたい、こういうふうに思うわけです。
  54. 井上一成

    井上(一)委員 それでは私はその違いというのを少し指摘をしておきます。  ニュージーランド労働党は核の有無を明らかにせよ、こういうふうに言っているわけです。核を積んでいるのか積んでいないのか明らかにせい、それで積んでないということをアメリカ側が言えば寄港は認めるけれども、この艦船核兵器を積載しているということであればノーだ。我が国は先ほどからしきりと言われるが事前協議があればノーと言うのだ、こういうことなのです。ここが違うわけです。結果において同じなんだけれども、その手続が違う、手続が違うというよりは対応が違う。  私はそれでは逆に尋ねますが、事前協議がない、それは核積載艦でない、そういうふうに日米間の信頼、相互理解でそうなっているのだとあなた方はしきりと言う。しかし必ずしも核なしとは限らないのではないだろうか、事前協議がないから核積載をしていないということにはならない、こういうことだと思うのです。しかし、そこは日米間の相互信頼、友好関係ということで事前協議がないのだから積んでないであろう、こう思っているのだということで繰り返してこられた。これは大きな違いです。私は、事前協議がなくても必ずしも核なしとは限らないのじゃないか、こういうことをちょっと大臣に聞きたいわけです。
  55. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはしばしば答弁いたしましたように、事前協議がない場合は核持ち込みということはあり得ないということです。これは日米安保条約、その関連規定において事前協議条項というのがはっきり制度化されておりますし、そしてお互いに条約を守る、条約というのは守らなければいけないわけで、お互いに誠意を持ってこれを守るということは日米間においてかたく合意されたことであります。またアメリカ日本非核原則というものを認める、これを尊重するということもはっきり言っておりますから、したがって事前協議がない場合においては核の持ち込みというものはあり得ないというのが私の日本政府としての見解でございます。
  56. 井上一成

    井上(一)委員 それでは核がないことを確認をなされた、あるいは確認しようとしたのかどうか。ニュージーランド労働党はそれを問いただす、核の有無を明らかにさせる。我が国は今言うようにそうではないわけです。これは一昨日ですか当衆議院の外務委員会で、核が積載をされていれば当然事前協議の対象となる、これは何回も言われてきたわけです。事前協議がない場合には核がないこととして入港を受け入れるのだというふうに外務大臣が答弁されたというふうに私は承知しておるのです。核がないこととしてなんというのは、あなた、勝手にひとり思っているだけであって、ないこととしてと、あるいはしきりと日米間の相互信頼だ、信頼関係の中でそう理解しているのだ、核がないこととしてアメリカを信頼するのだ、私はむしろ、確認がなされていないということ、ここに我が国の対応とニュージーランド労働党の対応と大きな違いがある。  それでは、逆に、日本寄港している船に核兵器を積載しているかどうかということを、安倍外務大臣は尋ねることができますか。念を入れて、そういうことをアメリカに対して聞きただすことがあなたはできますか、どうなんです。
  57. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 アメリカが核を積載をして入港する場合には、アメリカ事前協議にかけなければならぬという安保条約上の義務がアメリカ政府にあるわけですから、その義務を怠って、かけないで入港なんということは安保条約違反になりますし、安保条約の根底を覆すことになるわけで、また、日米関係の信頼の基本を壊すことになるわけですから、日米間においては、そういうことはあり得ない。これはあり得ないわけでありますから、したがって、日本入港しておる艦船においては核の存在はないということを私ははっきりと断言できます。
  58. 井上一成

    井上(一)委員 いや、あなたは断言する、私はそういうことを聞くことがあなたはできるのか、できないのか、尋ねることができるのですか、できないのですか、どうなんですか。
  59. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは日本としましては、尋ねる必要はないというお答えにならざるを得ないわけでありまして、実際入港した艦船に対しまして、そういう確認をする必要はないと私は思っております。それは、事前協議制度というものがあって、入ってくる場合、アメリカは義務があるわけですから、そういう義務を怠って入るということはあり得ないわけですから、したがって、入ってきた船に対して、そういう有無というようなことを確認する必要はない。これは日米間において事前協議条項は忠実に守られておる、こういうふうに判断をし、信頼をしておるからであります。
  60. 井上一成

    井上(一)委員 問いただすことはできないのでしょう。あなた方は信頼だとか相互理解だとか、そういう言葉お答えになられるけれども、私は、問いただすことはできへん、そういうことなんです。やはりそのことに問題がある。  どういう問題があるのか。特に日米間でトランジット、一時寄港についてはいわゆる事前協議の対象である、事前協議で諮るべき寄港ですね、そういう事前協議で諮るべき持ち込みの対象に当たらないという理解をお互いに内々しているのじゃないか。これはライシャワーさんの発言なんかでも随分明らかになっているわけですけれども、一時寄港事前協議の対象の範疇にはないのだ、当たらないのだというような理解をされているのではないか、こういうふうに思うのですが、この点はいかがですか。
  61. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これも安保条約日本の国会で、我が国の国会で論議される段階からずっと問題にされたことでございますが、これに対して、日本政府は、終始一貫をいたしましてトランジットは事前協議の対象になる、こういうことでお答えをいたしておるわけでございまして、この根拠としましては、例えば藤山・マッカーサー口頭了解であるとか、あるいはまた岸・ハーター交換公文というのが、その論拠として、政府として答弁をいたしておるわけであります。
  62. 井上一成

    井上(一)委員 この問題については、国民の中でもいろいろと深い疑惑を持つ人がたくさんいらっしゃるわけなんです。大臣、その事前協議がないということは、核がないこととしてとらえているのか、私は、ないこととしてというのはどうもひっかかるわけです。そういう答弁をなさったということを聞いて、ないこととしてでは、そんなものは勝手にそんなことをしてもろうたら困るわけです。あるかないか確かめますかと言ったって、それもあなたはできないわけです。ただ、相互信頼、信頼と言っているだけ。これはどうですか、ないこととして、そういう発言があったのだけれども、あなたが勝手に決められはったって、これはしようがおまへんで、だからもっときっちりと、物事は一つ一つはっきりしていった方がいいのじゃないか、こう思うのですが、どうでしょうか。
  63. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は、ないこととしてという、とりようによっては非常に中途半端な答えということになりますと、これは疑惑を招くことになりますから、ここではっきりその点は取り消さしていただかなければならぬと思いますが、私がいつも言っていることは、日米信頼関係安保条約事前協議制度、さらに非核原則、そういうものからして、アメリカの核の持ち込みというのは、事前協議なしにはあり得ないということを常に言っておるわけでございます。
  64. 井上一成

    井上(一)委員 政府間同士での相互理解だとか信頼だというようなことで政治はやっていけないと思いますから、国民の十分な理解も必要なわけですね。今の状況であれば、さっき僕が指摘をするニュージーランド労働党我が国政府の対応というのは、結果は同じであったとしても、非常に両極端な形で位置づけられるし、そこでやはり国民の信頼を取り戻すためにも、あるいは国民に十分な理解を求めるためにも、核兵器の積載可能な艦船入港に当たっては、ニュージャージーがどうであろうとかあるいは原潜がどうであるとかいうこと、ただ単にそういうことだけでなく、やはり核兵器積載可能な艦船すべてについては、疑惑が持たれる場合が往々にしてあるわけなんですね。そういうことをきっちり、そういう疑惑を払拭するためにも、この際、それらの積載可能な艦船入港する場合、寄港する場合には随時協議をすべきである。随時協議はできるのでありますから、そのためにそういうなにがあるわけでありますから、そういうことが必要ではないだろうか。そのことによって、より両国の友好が深まり、信頼が強まっていく。だからやはりすることはきっちりされた方が、さっき私が確認ができるのですか、問うたことがあるのですかと言ったって、あなた、答えられないわけです。だから、やはり随時協議、疑惑が持たれるような艦船入港については随時協議をしていく、こういうことが必要ではないか。ニュージャージーだからする、この船だからする、そういうことでなく、疑惑が持たれる艦船に対しては、今後随時協議をして、相互理解を深めていく必要があるのではないだろうか、こういうことを私は申し上げたいわけです、お聞きしたいわけですが、この点はいかがでございましょうか。
  65. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 政府としまして安保条約の建前、非核原則、そういう国是からして、日米間において、アメリカの核の持ち込みはあり得ないということを口を酸っぱくして申し上げて、国民の理解を求めておるわけでございますが、しかし、今おっしゃいましたように、国民の一部で疑惑が依然としてあることも、これは客観的に認めざるを得ないし、また野党の皆さんがそれに対して、政府の答弁で納得されないということもこれは事実でございます。私はやはり日米間は信頼関係というものでつながっていかなければならぬと思いますし、条約というものは、結ばれた以上はやはりきちっとお互いに守っていかなければならぬ、こういうふうに思います。  したがって、こうした核の問題につきまして、国民の中でいろいろと不信が高まっていく、あるいはまた議会の中でいろいろと論議が高まっていく、そういう際には、安保条約の信頼性というものを取り戻すためにも、アメリカに対して、日本は今は非核原則がありますよ、お互いに条約は守っていきましょう、また条約の中で事前協議条項というものがあります、こういうことを一般的な形で日米間で話し合う。これはおっしゃいました随時協議という形をとるわけでございますが、それは私は必要だと思います。  去年、実は私がマンスフィールド大使を呼びまして、あの三沢のファントム、三沢の基地の問題、それからエンタープライズの問題、ちょうど井上委員の質問が端緒になったわけですが、それを踏まえてマンスフィールド大使と今の問題について一般的に話し合いをして、そしてマンスフィールド大使から、非核原則があることはよくわかっています、これは尊重します、日米安保条約関連規定もお互いに守っていかなければなりません、遵守します、そして事前協議条項というものもこれは制度として守っていかなければなりません、こういうお答えがあったわけであります。ただ、アメリカの、要するに核の有無についてはこれを明らかにしないというアメリカの国の基本方針については理解をしていただきたい、こういうこともあったわけでありますし、一般的に四条に基づいての日米間の協議は私はいたしたわけでございます。  私は、やはりそうした、今申し上げましたような機運といいますか空気があって、どうしても国民に理解を求めるというようなときは、場合によっては必要であるという認識は持っておるわけでございますが、それではいつやるかというようなことについては、今の段階において何も考えてはおりません。去年はそれをやったことは御承知のとおりでございます。
  66. 井上一成

    井上(一)委員 私は、いつ具体的にこういうことについて、この艦船についてあるいはこの問題について随時協議に入れということでなく、先ほどから、アメリカ側持ち込みについては事前協議があるからその事前協議がなければ持ち込みはないんだ、こういう理解だと。逆に私は、日本側の十分な国民の理解を深めるためにも、得るためにも、今申し上げたように、核兵器積載の可能な艦船寄港、戦闘機も含めてですよ、そういう場合には、非核原則に抵触するのではないかという疑惑を持たれるようなときには随時協議を持つべきである、こう思うわけです。そういう考えに今後持っていかれるのかどうか。この船は核兵器を積載しているからこれはどうだこうだという、核兵器積載の可能な艦船あるいはその他の戦闘機も含めて、そういうものの配備、寄港等について随時協議をすべきである、こういうふうに思うのです。  重ねてお聞きしますが、やはりそのことが日米両国の信頼を深めることであり友好を増すことだ、こういうふうに思うのですよ。随時協議というのは、我が方からの一定の対応策として当然とるべきである。もちろん、事前協議アメリカ側のそのことも信頼をしていく、こういうことですが、我が方の対応として、事前協議というのは大いに持つべきであり、活用していくべきではないだろうか。このことについて、大臣、もう一度しっかりと聞かせてほしい。
  67. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 一つ一つの艦船につきましてアメリカ政府と話し合いをするというふうな考え方は持っておりませんけれども、しかし、去年もやりましたような一般的な形でのアメリカとの話し合いということは、やはり状況に応じてはやらなければならない、やることが結局日米安保条約の信頼性を確保することにもつながっていく、私はそういうふうに解釈をしておるわけでございます。そういう意味において、政府としましても、そういう時期が来ればこれはやります、こういうふうにお答えを申し上げる次第であります。
  68. 井上一成

    井上(一)委員 これは大変、ニュージーランド労働党政権の誕生と関連して、私は、当初連携を深める、あるいは友好関係を深めると。あなたは、恐らく背景として、ニュージーランドもオーストラリアのように、政権をとったら若干それは軌道修正をされて、運用上少しはアメリカの思惑の中に包摂されていくというか、なっていくであろうと。  私は、そのために条約があるのですから、そのこと云々はきょうは議論しませんが、やはり我が国国民に十分な理解を深めるためにそういう随時協議も必要だ。そのときが来るまでというのは、それは寄港がなければ、何もきょうやあしたの問題ではないわけですけれども、やはりそういう姿勢を持つべきである。さらには、ニュージーランド労働党政権との友好関係を深めていく中で、この問題は今後非常に大きな問題になろう、だから、外務省の対応というのはきっちりと、毅然としていかなければいけない、私はこういうふうに思うのです。  いろいろ質問があるので、その次に、これはちょっと外務省マターだけではないわけですけれども、御承知のように我が国では、米の輸入でいろいろ現在問題になっているわけなんです。今回韓国から十五万トンの輸入に話し合いがついたわけでありますが、このことについてちょっと外務省に尋ねておきたいわけであります。  我が国に食管会計があるように、韓国にも食管会計があると思うのですが、それはどういう会計処理がなされているのでしょうか。
  69. 後藤利雄

    ○後藤(利)政府委員 お答えいたします。  本件は、詳細は食糧庁の担当でございますけれども、私どもの承知する限りでは、現金償還は国際価格で行われておりますが、現物償還の場合は、三倍以上の韓国国内価格にて米を買い入れる必要があり、追加的な財政負担となっていると承知しております。
  70. 井上一成

    井上(一)委員 私の聞いていることの答弁にはなっていないわけです、食糧庁の所管だとか。外務省は、韓国在外公館を持っていろいろな情報を収集し、十分韓国等の国情というものは理解しているわけでしょう。そういう日本の食管会計に当たる特別会計があるのかどうかということを私は聞いているわけなんです。  じゃ続いて、そういうのがあるのかどうか、私はあるということを承知しているわけですが……。現在、韓国の米の国内価格はトン当たりどれぐらいしているのでしょうか。
  71. 後藤利雄

    ○後藤(利)政府委員 恐れ入ります。ただいまちょっと手持ちの資料がございませんので、後ほど調べましてお答えさせていただきます。
  72. 井上一成

    井上(一)委員 全く韓国国内価格も承知していないなんて一それでは今さっきちょっと答えられた国際価格はどれほどで、そしてそういう特別会計があるのかどうかということ。
  73. 後藤利雄

    ○後藤(利)政府委員 その件もまとめて調べましてお答えさせていただきます。
  74. 井上一成

    井上(一)委員 そういうことを一つ一つ答えて私が質問をしていくわけですから、そんなまとめて――大臣、やはり韓国のいわゆる社会情勢というものを大統領訪日を直前にして外務省アジア局が十二分に承知していないということでは僕は困ると思うのですよ。どうしましょうか、これは答えられる時間を待ちましょう。
  75. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはちょっと韓国米についての御質問があるということがわかっておれば、その辺の資料は用意しておったと思いますけれども、突然なことで、しかし国会の答弁ですからやはり正確を期さなければなりませんし、資料は右から左にすぐでも取り寄せることができると思っております。
  76. 井上一成

    井上(一)委員 外務大臣、今、日本国内政策として米の問題は大きな問題なんですよ。特に韓国から輸入するということ、これまたいろいろな意味での問題があるわけなんですね。そういうことについて外務省が、前段で通告があるない、そんなことは別ですよ、国会の中でそういう議論に答えられないということは、韓国に対する取り組みというのは外務省が十分でないと私は思う。そんなこと言いわけになりませんよ。これは、委員長、質問に答えられないということですから、私の方もそれは答えられるまで待たせていただく、こういうことにしましょう。
  77. 横山利秋

    横山委員長 暫時お待ちを願います。
  78. 井上一成

    井上(一)委員 それじゃ、きょうは本会議もありますし、この問題、だから、答えられる時期が来たら合図をしていただいたら私の方で質問を切りかえます。  きょうは私はアフリカの問題について少し当委員会で議論をしてみたい、こういうふうに思うわけです。  今アフリカは人口の三分の一に当たる一億五千万人もの人々が飢えに直面しているという非常に重大な社会情勢であり、二千万人が餓死の危機にさらされている。そういう今日のアフリカの状態、新聞等でアフリカ問題が各方面から特集を組んで報道されております。そういうことも含めて、今まさにアフリカ――ことしは外務大臣はアフリカの年にしたいのだ、そういうようなこともおっしゃっていらっしゃるし、いろいろと外務省の中でもアフリカ問題に対する取り組み、それはそれなりに評価をしていきますが、現状をどういうふうに認識していらっしゃるのか、そういうことについて、そしてまたどういう把握をしていらっしゃるのか、そういう点についてまず聞いておきたい、こう思います。
  79. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 国連の食糧農業機関、いわゆるFAO及び世界食糧計画が本年二月に発表した報告書によれば、アフリカ諸国中特に食糧不足の著しいのは二十四カ国でありまして、総計百三十万トンの追加的援助が必要とされております。また、国連事務総長は、アフリカ全体で約一億五千万人が飢餓ないし栄養失調の危機にさらされている旨報告しております。干ばつの深刻な地域は、西アフリカ、東アフリカ、南部アフリカの広範囲にわたっており、例えばエチオピアでは約五百万人の被災者が出ており、またモザンビークでは推定七万人から十万人の餓死者が出ておる、こういうふうに承知をいたしております。  そういうことで、アフリカは深刻な危機にさらされておる、日本もこれに対して積極的にやはり救援活動をしなければならぬということで、最近も食糧援助等を行っておるわけでございますし、ことしは大体一億ドル以上の食糧援助を行う予定をいたしております。これまで日本のやはり経済協力の主力はアジアでございましたけれども、同時にアフリカに対しましても、もちろん協力をしておりましたけれども、こういうふうな深刻な状況になってみれば、日本としてのできるだけのやはり援助はしなければならない、そういうように私は強く感じておるわけであります。
  80. 井上一成

    井上(一)委員 アフリカの飢餓の大きな要因は食糧不足が最大の原因である、そういうことが大きな要因であるわけです。政府はこの食糧不足に対してことしはどういう取り組みをされようとしているのか。さらに、食糧不足の原因はいろいろな条件が重なり合って起きだと思うのですが、我が国政府は、どういう要因が重なり合って食糧不足が生じたのか、そういう点についてはどういうふうな認識をされているのか、そのことも聞いておきたいと思います。
  81. 藤田公郎

    ○藤田(公)政府委員 まず先生の第一の御質問の政府としての行っております努力いかんということにつきましてお答えいたします。  ただいま大臣から御説明いたしましたように、極めて深刻な食糧不足の状況ということにかんがみまして、先生御承知のように、我が国はケネディ・ラウンド関係の食糧援助という形での無償供与、無償援助を毎年行っておりますが、五十六年度以降は我が国の行っておりますケネディ・ラウンド食糧援助の全体の四割から五割、これをアフリカに振り向けております。特に五十八年度におきましては、二国間のケネディ・ラウンド食糧援助に加えまして、いわゆる被災民に対する援助、災害的な援助の利用とか、WFP、世界食糧計画を経由しましての援助等を行いまして、金額で申しますと百七十五億円相当の援助を行っております。  この中にはケネディ・ラウンドの食糧援助に加えまして、アフリカの諸国の食糧の増産を促しますために、農機具でございますとか、農薬ですとか、肥料ですとか、いわゆる食糧増産を助けるための援助というものも含まれております。本五十九年度におきましても、より深刻化しております状況にかんがみまして、現在までのところ、閣議の決定を得ました金額では、百四十七億円相当がアフリカ地域に供与されることになっております。  以上でございます。
  82. 井上一成

    井上(一)委員 食糧不足の要因は、何にあると思っていらっしゃるのですか。
  83. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 お答え申し上げます。  先般、第十回世界食糧理事会が開かれまして、その場でアフリカの食糧危機の問題につきまして、各国でいろいろな審議が行われました。その結果、結論と勧告というものが採択されたわけでございますが、その中で今先生御指摘ございましたアフリカの食糧不足の原因、これは例えば一九七〇年代を見ますと、アフリカの食糧生産の伸びが年一・五%でございますが、人口の伸びが二・九%になっております。そういう問題につきまして、やはり開発途上国自身の政策上の失敗、不適切な食糧政策、経済政策があったという反省がございました。  それから今の点と関連するわけでございますが、アフリカ諸国の自助努力が欠けていた点がある。すなわち、食糧生産から分配を含む総合的な戦略が欠けておったとか、農民に対して増産のインセンティブを与えるような政策、特に価格政策でございますが、それの導入が欠けておったとか、また人的資源の開発、人づくりの点に重点が置かれていない点があった、こういうふうな欠陥があったということが理解されております。
  84. 井上一成

    井上(一)委員 私は、アフリカ政策については非常に貧弱だと思って、きょうは特にアフリカの問題を取り上げたのですが、またその答弁を聞いておってもまことに貧弱だし、実態の把握というのか、やはり背景というものは、もっと外務省承知をしなければいけないんじゃないだろ、つか、私はこう思うのです。  私自身は、報道等あるいは私なりの認識では、食糧不足というのは必ずしも自然現象、いわゆる干ばつだけではない。もちろん三年続きの干ばつも大きな主要因にはなっていますけれども、ジンバブエの南部なんかは逆に干ばつはひどかったけれども、餓死していく人たちはそれに比べてまだ少ない。地方行政組織が発達しているためであるのだ、こういうことが言われているわけです。例えば先進国が食糧援助をしていく、その食糧援助で救済が可能な国民、いわゆるアフリカの人たちもいらっしゃるわけですけれども、しかし、輸送事情はどうなんだろうか、あるいは治安問題はどうだろうか、地方住民に対する把握の不十分な点がいわゆる飢えで死んでいく人たちが絶えないのではないか、こういうふうにやはり反省をしなければいけないのではないだろうか。もちろんさっき言われた農業政策のあり方等は、それはそれなりに指摘をされる面もあろうかと思います。だから、そういうあらゆる条件が重なり合って今回の食糧飢餓が発生している、起こっている。むしろ飢えは人為的な現象だと言う人たちもいらっしゃるわけなんです。しかし、それも今私が指摘したような要因を考えてみれば、本当にそういう面もあるのではないだろうか。干ばつがなくても、農業政策の貧困さ等も、土壌の問題もありますが、そういうことを含めて食糧危機は起こったであろう、こういうふうに指摘している人たちもいらっしゃるわけです。そういうことを政府は十分理解しているのか、それに対してどういう手当てを加えようとしているのか、そういう点についてお答えがないわけなんですが、いかがでございましょうか。
  85. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今お話しがございましたようなアフリカの状況、私は大きな原因はお話しの点も随分あるんじゃないか、干ばつもありますけれども、また一面においては政治に問題もあるようにも思います。また、エチオピア等でも内乱も続いておる、そういうふうな状況等もあるわけでございます。  こうしたアフリカの状況は、私はヨーロッパでも聞いたわけでございますが、アフリカではほとんどの国が植民地から独立をして大変結構であったけれども、国民の状況はむしろ植民地時代よりは悪くなっておるところもあるというふうなことを先進国の中で言う人たちもおるような始末でございますし、このような状況が続けば大変なことになると私も憂慮をいたしております。もちろんこうしたアフリカに対しまして、先進国を初めとしまして積極的な支援の手は伸ばしておるわけでございますが、やはり日本としましても、これだけの経済的な力を持ってきたわけでございますし、したがって、アフリカに対しましては積極的な協力をしていかなければならぬということで、今無償援助であるとかあるいはまた食糧援助であるとか、相当きめ細かに計画を立てて実は行っております。そして、年々これを増額しております。この点につきましては、アフリカの国々も日本の努力、協力を非常に評価をし、そしてまた、その支援をさらに強く求めておる、こういうことでございます。
  86. 井上一成

    井上(一)委員 サミットを初めとし、アフリカ問題を取り上げた国際会議が強く求められ、また開催をされているわけなんです。例えば民主主義の諸価値に関する宣言第五項には「世界中の飢餓及び貧困と闘う」という決意を表明しており、それはそれなりに理念としては正しい。しかし、サミットで果たして、飢餓の援助といってもいわゆる現実の援助は東西対立の中での戦略を重視している、そういうふうにとられるのではないだろうか、そういう点はどうなのか、あるいは国民の支持を失った政権でさえ西側に属するというだけでてこ入れをしているケースも少なくないというふうに僕は聞くのですけれども、そういう点はどうなのか。やはりそういうことを明らかにしながらアフリカの問題と正しく対応していくべきだ、こう思うのです。人口問題も先ほど話がありましたが、それはまた今お聞きをしているお答えを聞きながら後で触れていきたい、こう思うのですが、いかがでございましょうか。
  87. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 アフリカ、特にジンバブエを初めとするああいう国々を取り巻く国々、そういう中では東西の対立というものが非常に深刻な影を投げて、それがまた国民の困窮というものにもつながっておる、いわばイデオロギーの犠牲になっておるという点もなきにしもあらずだと思います。  そういう中で一番大事なことは、国民の生活を安定することじゃないだろうかと私は思っておりまして、人道的な立場日本の援助の基本をなしておるわけでございますから、日本の場合は、そうしたアフリカの政治の深刻さという中で悩んでおる国民に対しては、別にこれは東であるとか西であるとかそういうことじゃなくて、やはり人道的な立場で積極的な支援というものは行っていかなければならない、また、日本がそうすることによって日本に対する信頼も大変高まっておる、こういうふうに考えておるわけでございます。
  88. 井上一成

    井上(一)委員 私は、質問をする中で、例えば今の東西、いわゆる西側に属している、そういうことだけで国民の支援を得られない政権に対してもてこ入れをしている、そういう国があるのではないだろうか。我が国人道的な立場に立って、そういうことはあくまでも人道的立場での配慮で援助していくんだ。世界的に見てそれは西側に属する、政治的なそういう枠組みの中で援助問題が行われているようなことはないだろうか、こんなことも聞いているわけなんです。だから、もう少し私の質問に対して的確に答えていただかないと困る。  ロンドン・サミットの経済宣言の十項に述べていることは、具体的に何をしようと言われているのか。特に世銀の特別行動計画というのがあるのですが、これは何をしようというのか、説明をいただきたい、こういうふうに思うわけです。  さらに一九七四年の国連世界食糧評議会の会議の中で十年間で世界から飢えをなくしていくんだということであったわけです。その目標は達成不可能となって、今世紀最悪と言われるアフリカの飢餓の中で、そういう状況の中で六月十一日から十五日までエチオピアの首都アジスアベバで第十回のいわゆる国連世界食糧評議会が開催されたわけです。ここでどのようなことが採択され、あるいは今申し上げたように十年で目標達成が不可能となったアフリカの飢餓の状況をどのように訴えられ、またどのように決せられていったのか、そういう点についても説明を願いたい、こういうふうに思います。
  89. 恩田宗

    ○恩田政府委員 ロンドン経済宣言第十項において「我々は、」というのは各国でございますが、「アフリカのいくつかの地域における貧困と早魃という危急の問題に大きな懸念を有する。」こう書きまして、引き続き、先生の御指摘になりました「世界銀行により準備されているアフリカのための特別行動計画」とありますが、この行動計画は現在世銀、IDA事務局において準備されているものでございまして、今年九月の開発委員会に提出される準備中のものでございます。この準備中の行動計画に対してロンドン・サミット加盟国が非常に注目し、重視している、できるだけこの報告を待った上で、これに基づいた行動をとろう、こういうことであろうかというふうに考えております。
  90. 井上一成

    井上(一)委員 さらに私は、先ほどもお話があったように食糧自給率の問題、これは非常に低いということは事実であります。しかし、これもまたどういう要因であろうか。植民地時代にいわゆる利潤の上がる換金作物ですね、コーヒーとか落花生、それは支配をしている国にとっての一つの政策、そういうものの栽培が重視されていた。そういうことを考えれば、今の農業政策は悪いんだとかいいんだということは一概に言い切れない。あるいはまた逆に、さっきも少し指摘しましたけれども、東西の世界経済体制が南北格差を構造的に組み入れているんだ、そういうことも言ってばかりはいられない。食糧自給の達成のために、あるいはそれぞれのアフリカ諸国が自助努力が必要であるということはお互いに認められているわけですけれども、そのために我が国政府を含めた先進国はどのようなことをしなければならない、特に我が国はどのようなことをしなければならないと思っていらっしゃるのか、そういう点についてひとつ聞かしてほしい。  さらに、自助努力をしない国に例えば経済援助などの救済はしないというような立場をとっては、これは決してよろしくない、こういうふうに私は思うわけです。農業政策の失敗について自己批判をせよといったってそう簡単にすぐに変わるべきものでもないし、そういう意味では、むしろ自助努力を啓蒙しながら、さらに経済援助などの救済を食糧援助を含めて行っていくべきである、こういうことを私は思うわけですけれども、まず日本を含む先進国の対応、何をなすべきなのか、そういうことも含めて聞かしてほしい、こう思います。
  91. 波多野敬雄

    ○波多野政府委員 アフリカの食糧危機の原因につきましては、先ほど政府委員から御答弁申し上げましたけれども、先生の言われるように、確かに飢餓問題を救うために食糧援助だけでこの問題を解決しようというのは非常に難しいと思います。やはり総合的な援助計画、これは場合によってはアドバイザーなどを送ることによって相手国政府の経済計画にも必要があれば立ち入るということが望ましいのではないかと思います。  日本のアフリカに対する援助計画は、一九七二年、今から十二年前には政府の援助全体の一%にしかすぎなかったわけでございます。一%という極めてわずかな額だったわけでございますけれども、一九八二年、それから十年後には政府援助全体の一一%までふえております。比率にして十一倍、しかもその間に日本の援助総額が五倍以上にふえましたので、絶対額にいたしますと五十数倍にふえているわけでございます。ということで、日本のアフリカに対する援助は、食糧に限らず、政府援助全体として見ます場合に相当の改善を見つつあると言ってよろしいのではないかと思います。  援助と並んで今、我々がアフリカについてやりたいと思っておりますことは、アフリカに対する認識を強めることでございます。我々がアフリカをよく知ることでございます。そして場合によってはアフリカにも日本をよく知ってもらうことでございます。この目的のためにできる限り人事交流を盛んにいたしたいと思いまして、アフリカからは、最近の例を挙げましても、政府の賓客といたしまして、象牙海岸、ナイジェリア、ニジェール、モザンビーク等の外務大臣を正式招待いたしまして、また近くアフリカから元首を国賓として呼ぶことも計画しております。また、九月の末から一カ月間をアフリカ月間と名づけまして、日本国内でアフリカに関する行事を集中的に行いたいと思っております。そういうことを通じまして、政府を初めとして日本人みんながアフリカをよく知る、それを通じて将来はアフリカとの交流、アフリカに対する援助もだんだんと効果的なものができるようになっていくのではないだろうかということを期待している次第でございます。
  92. 井上一成

    井上(一)委員 いろいろ説明をいただいたわけですけれども、アフリカの年と位置づける割に、食糧とその援助計画というのでしょうか、援助額あるいは増産援助も含めて前年度と比べて余りふえていない。まして世界全体の食糧援助の中でのシェアが飛躍的に拡大したということでもなさそうだと私は受けとめるのですが、その点はいかがですか。
  93. 藤田公郎

    ○藤田(公)政府委員 食糧援助全体の総額ということになりますと、先ほど申し上げましたケネディ・ラウンドに関連します食糧援助の世界の目標、一千万トンということで目標が定められておりまして、そのもとで各国が食糧援助を行っているわけでございますが、ただいま先生御指摘は、最近のアフリカに対する援助はどうだ、各国の援助はどうだという御質問かと言います。  先ほどちょっと触れられました、サミットの機会に各国のアフリカに対して表明されました援助をざっと御説明申し上げますと、米国は六十四万トン、金額にしまして二億六千万ドル程度になりますが、これを既にプレッジ済みでございまして、さらにこれに加えて九千万ドルに当たります二十一・六万トンの追加援助を議会に上程中である
  94. 井上一成

    井上(一)委員 私は、わが国の対前年度比と世界全体のシェアを聞いているのだ。対前年度比は幾らか。私は、我が国のアフリカに対する食糧援助を通し、さらにはいわゆるアフリカ外交を強めていくという姿勢の割に、予算等では余り十分な手だてがなされていないのではないかと思うので、そういうことを聞いているわけなんです。アフリカ外交を強化する方針であるということはさっきから何回も言われているわけだけれども、それはアフリカの飢餓に対する援助を機会に起こったと思うのです。しかし、前年比で余り伸びていないように僕は承知するので、そういう点についてはどうなんでしょうか、少な過ぎるのじゃないだろうか。
  95. 藤田公郎

    ○藤田(公)政府委員 我が国について見ますと、例えば五十五年度のアフリカに対します食糧援助でございますが、円ベースで申しますと八十三億七千万円であったものが、五十六年度には百四十五億六千万円、倍とまではまいりませんがほぼそれに近い増加をいたしております。五十七年度には百五十億円、それから五十八年度には百七十五億一千万円、先ほどちょっと申し上げました数字でございます。本年は御承知のように、まだ完結しておりませんけれども、ただいままで閣議決定を下しましたものが百六十一億五千万円ということで、今後のことは、今年度どのくらいまで伸ばせるか不明でございますけれども、増加の趨勢にあることははっきり申し上げられるかと思います。
  96. 井上一成

    井上(一)委員 次に進めますが、余り去年に比べて  五十五年から言われたけれども、ことしはアフリカの年だと言っている割に対応が非常に十分でない、こういうふうに私は指摘をしているわけなんです。まだこれからの大臣の取り組みを僕は期待をしていきたい、こう思うわけです。  それから、さっきもアフリカの食糧不足の一つの原因として人口問題に触れられたわけです。しかし、私は、人口問題を真剣に考えなければならないというそのことについては同じ見解を持ちます。  そこで、ちょっとアフリカ問題からそれるかもわかりませんけれども、八月にメキシコで開催される国連人口会議、それに提出するアメリカの人口政策を実は新聞で読んだわけです。それによるとアメリカは「今後、家族計画の一環として人工妊娠中絶を認めている国際機関への資金援助を中止する」という強硬姿勢政策のようであるわけです。もしこれが事実であるならば、国連人口活動基金やロンドンにある国際家族計画基金のアメリカの資金援助はなくなってしまうわけでありますから、会の運営に困ってしまうのではないだろうか。この報道されたアメリカ政策発表は事実なのかどうか、それに対して外務省の見解はどうなのか、この点についてちょっと聞いておきたいと思います。
  97. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 お答え申し上げます。  先生御指摘のようにアメリカは八月の国際人口会議におきまして、米国としては人口政策の手段として人工妊娠中絶を行うのは反対である、したがって、米国が拠出する援助資金はそのための目的に使われてはならない。また、民間の団体で人工中絶を行っておる団体に対しては米国は拠出をしない、こういうことを明確に述べるということを言っております。そして、私ども承知いたしておりますところでは、米国は現在米国の援助資金の中でそのような人工中絶の計画に使われたものかどうかを調査中であるというふうに聞いております。  なお国連人口基金でございますが、これは私ども人口基金の方から同基金の活動の中で人工中絶を含むものは全くないという保証を得ております。アメリカも国連の人口活動基金がそういう人工中絶に使われないという保証があれば従来どおりの資金供与をする、こういうことを申しております。なお、先生御指摘のございましたロンドンの国際家族計画連盟につきましては、現在そのような計画が含まれたものがあるのかどうかを調査中でございます。
  98. 井上一成

    井上(一)委員 国連人口活動基金には、ことしはたしか四千万ドルですか、我が国も拠出をするわけですから、アメリカに次いでの資金援助国であるわけです。こういうアメリカ政策に対してどのような見解を我が国は持っているのか、そういうことについて聞いておきたいと思います。
  99. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 私どもも人工中絶というものを人口政策一環として用いることは母性の保護の見地からも好ましくないという見解が世界じゅうで広く行われておりますし、米国のそのような立場も十分理解し得ることだと思っております。先ほど御答弁申し上げましたように、国連人口基金の方につきましてはそういう計画はないということでございます。ロンドンの方につきましては、事情調査の上態度を決めたいと思っております。
  100. 井上一成

    井上(一)委員 さらに続けたいわけですが、どうなんですか、さっきからそういつまでも待てる問題じゃないんだし――できましたか。それじゃ委員長、先ほどの質問に対してお答えをいただき、それを聞いてまた質問したいと思います。
  101. 後藤利雄

    ○後藤(利)政府委員 大変お待たせして済みません。おわびいたします。  ただいま国際価格はトン当たり二百三十五ドル、円にしまして大体六万三千円と承知しております。これに対しまして韓国国内価格は、韓国はいわゆる政府で正式に発表しておりませんが、大体私どものとらえた数字はトン当たり八百二十から三十ドル、円にして約二十万円というように理解しております。  それから現物で償還するには糧穀管理特別会計、これは農水産部が担当しておりますが、ここから今度お金を出す、こういうことのようでございます。
  102. 井上一成

    井上(一)委員 我が国が過去に供与した米については、今まで返還が一部なされているわけです。今までの返還については、これは国際標準価格で返してもらっていた。当初は現物の返済だったわけですが、我が国の事情で中途で現金返済になったわけですけれども、返済価格は国際標準価格で返してもらっていたということに間違いないでしょうか。
  103. 後藤利雄

    ○後藤(利)政府委員 間違いございません。
  104. 井上一成

    井上(一)委員 今回いわゆる供与しておった六十三万トンのうちからの残余の分についてさらにその中から十五万トン、韓国は今回わが国に現物で返済することによって、今説明があった韓国の糧穀会計、日本の食管会計ですね、ここに国内価格八百二十ドルから国際価格二百三十五ドルですか、これをざっと引いたら差額が五百八十五ドルですか、これはいわゆる逆ざやが生じますね。
  105. 後藤利雄

    ○後藤(利)政府委員 お答えいたします。  逆ざやが生ずることは確かでございますが、この逆ざやをどういうように処理するかということは、韓国政府が財政の問題として韓国政府の中で処理したいというように私どもは理解しております。
  106. 井上一成

    井上(一)委員 ちょっと外務省にこれは聞きたいわけです。まあ大臣に聞きたいのですけれども、いわゆる韓国の糧穀会計に大きな穴があく。莫大な九千万ドルからの穴になるわけですけれども、これは韓国国内のいわゆる財政処理で、我が国関係ないんだ、こういうふうにお考えなんでしょうか。韓国に対して非常に大きな迷惑、いわゆる韓国財政にとって大きな穴をあける、そのことについて外務大臣はいかが御認識を持ち、どのような考え方に立っていらっしゃいますか。
  107. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 この問題につきましては、実は韓国側が大変日本の今の状況というものを配慮してくれまして、十五万トンの返還ということになったわけでございます。韓国外相に対して私は韓国のそうした努力に謝意を表したわけでございますが、韓国外務大臣からは、実は韓国が困っておったとき、我々が一番困っておったときに日本から大変な配慮をいただいたので、日本が困っておるときに韓国がこうしたお返しをすることは韓国としては当然のことであるということで我々としても努力をいたしました、こういうふうな御返事でございました。韓国側でも十五万トンを返還するということにつきましては相当いろいろな問題もあったようでございますが、これまでのいきさつからこれだけの決断をされたものということで私は謝意を表したわけでございます。その逆ざやとかそういう問題をどういうふうにされるのかそこまで私承知しておりません。韓国の問題として韓国側で処理されるもの、こういうふうに考えております。
  108. 井上一成

    井上(一)委員 韓国が困ったときに我が国から援助をし供与した、今回は我が国が困っておるから韓国が助けよう、そのことにおいて韓国が逆ざやで大きな赤字を生じる、こういうことですね。もし私の理解に間違いがあれば訂正してください、大臣日本が困っておるから韓国の糧穀会計にざっと九千万ドル以上の赤字があくが、あえて協力しよう、こういうことに受けとめているということですね。
  109. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 その逆ざやの点は私は実は承知しておりませんが、事務当局にそこのところは明らかにさせなければならぬと思いますけれども、韓国外相が私の謝意の表明に対して答えたのは、韓国が困ったときにとにかく日本からあれだけの米を送っていただいたので大変ありがたかった、日本が今日お困りだから韓国としても無理をしてでも日本に対して協力するのはこれは当然のことであります、こういう御返事でございました。それ以上の韓国国内でお話のような問題がどうだこうだということは、私にはその説明はなかったわけであります。
  110. 井上一成

    井上(一)委員 今の説明を聞いて逆ざやがどれだけになったかということは、外務大臣承知いただけましたね。十五万トンの逆ざやで韓国がどれくらいの赤字を背負うことになるのか、正確に計算して外務省は答えてください。
  111. 後藤利雄

    ○後藤(利)政府委員 逆ざやを計算いたしますと、数字的には約九千六百万ドル程度になると思います。  それから、先ほど先生も御指摘いただきましたように、もともとこれは現物返還でありましたのを金銭によって返還してきていただいておるということで、今回またその契約に基づいて、協議に基づきまして現物で返していただくというのが今回の経緯でございます。
  112. 井上一成

    井上(一)委員 外務大臣、困っておるときに貸してくれたんだし、我が国が困っておるときにそれに協力してくれた、これはお互いの協力関係だ、今度は韓国に困っておるときに返してもらったんだから、あえて逆ざやを負担させたんだから、それではやはり我が国もまた韓国が困ったときには何らかの形で御協力をいたしましょう、こういうことを大臣としては持たれますね、いや、もうこれはこれでしまいやねん、この前貸したときに向こうが世話になったということやから今度返してくれはったんや、これでもう一件しまいです、赤字が出ようが韓国がどれだけどう負担を持とうが、そんなことはもうしまいですというんじゃなく、またという。
  113. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは隣国でありますし、これだけ親善関係友好関係にあるのですから、お互いに持ちつ持たれつで協力し合うことは、米の問題だけに限らず一般的にそういうことを我々はお互いに努力し合うべきじゃないか、こういうふうに思います。
  114. 井上一成

    井上(一)委員 そういうことで私が案じたいのは、この赤字補てんに対して何らかいわゆる見返りが話の中ではないということでありますが、今後起こり得るのではないだろうか。それは一つの借款という形になって、新しい借款が、あるいは過去における借款の中での取り組みが、このことで十二分に配慮されてくるような結果が生まれてくるのじゃないだろうかという危惧を持つわけです。そんなことは外務大臣、いかがでございましょうか。一切そんなことはせぬと言って責任を持ってお答えができるのか。いやいや外相会議ではそういう話はなかったけれども、また出さなかったけれども、それはまた今後韓国との話し合いの中でひょっとしたら新しく生まれてくる可能性だってあるのだというふうにお考えなのか、いかがですか。
  115. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 実務当局でいろいろと交渉してこの問題決着したわけでありますが、外相レベルでは私から、韓国からこういうことをしてもらってありがとうと丁重な謝意を表したことに対して、韓国外相が、それはもう過去日本から米を送ってもらって困ったとき大変助けてもらったんだから、日本が今お困りのときお返しするのはもう当然のことです、こういう話だけでございまして、そういう意味において、この米の十五万トンの返還問題というのは非常にきれいな形で決着がついたのじゃないか、私はこういうふうに思います。
  116. 井上一成

    井上(一)委員 いや、そこまではさっきからあなたが答弁しているから私はよくわかっているわけです。お世話になった、だから今度お世話する。こういうことで、一回投げたボールがこっちへ返ったんだから、向こうが困ったときにはまたボールを投げてあげようというようなお気持ちを持っていらっしゃるのか、いやもうこれはこれでしまいやねん、赤字が出ようが何しようがもうそんなことは韓国の問題だという認識に立っていらっしゃるのか、いやまた韓国が困ったときには協力したいのだ、こういうふうにこれは何も米の問題だけじゃありませんよ、すべての問題を含めて。
  117. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 この問題に関しては決着したと思っておりますが、しかし日韓関係においてはやはりお互いに困ったときは助け合う、こういうことがこれまでも行われてきましたし、今後とも行われることは隣国同士でございますから当然じゃないか、こういうふうに思います。
  118. 井上一成

    井上(一)委員 米の十五万トンのいわゆる返還あるいは輸入に対してのこの十五万トンの問題についてはけりがついた。しかしその背景として、あるいは残るものとして心情的も含めて、やはりお世話になったんだから何らかの今後の配慮というものを大臣は含みとしてお持ちなのかどうか、それを聞いておきたいのです。
  119. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 お米の問題につきましては、私から感謝の気持ちを伝えたわけでございます。そしてこれはまたそれなりにけりがついたわけでございますから、これが後を引くということはないと私は思います。ただ日韓関係としてこれは持ちつ持たれつで、やはり隣国として韓国が困っているときには日本は助ける、また日本が困っているときは韓国からの協力も得なければならぬ場合もある、これは隣国同士としては将来ともそういうことはあり得るのじゃないか、こういうふうに私は思います。
  120. 井上一成

    井上(一)委員 では、今回の米の問題については莫大な赤字を背負わしたけれども、この問題はもう赤字補てん的な対応は政府としてはやらない、こういうことですか。
  121. 後藤利雄

    ○後藤(利)政府委員 お答えさせていただきます。  私先ほどお答えさせていただきましたように、この件は契約の範囲内でもともと現物返還をもらうというものでありましたのが、そのときの需給事情にかんがみまして金銭により返還をしてもらったということでございます。したがいまして、その契約の範囲内において、今回のようにもともとの原点に返りまして現物返還に変わったわけでございますので、これはあくまでも韓国の中での財政の問題として韓国が処理していただいたということでございますので、それに対する感謝の気持ちとそれ以外との関係は、先ほど大臣お答えいたしたとおりだと私も理解しております。
  122. 井上一成

    井上(一)委員 それはそういう答えはさっきもしているわけです。しかし、我が国は金で返してもらうということになれば、国際標準価格で返してもらうのでしょう。今度は米で返してもらうわけでしょう。そしたら、韓国でのトン当たりの価格というのは八百二十ドルから三十ドルだ。本来金で返してもろうたらこれは二百三十五ドルなんでしょう。その差額というのはあるでしょう。その差額は何ぼですか。計算したらわかるのですよ。それもよう言えないんだよ。韓国としては実質的にそれは損失になるわけです。韓国の糧穀会計の中ではそれは損失になるわけです。それは韓国で処理されるのですから、感謝の意を表しただけです、あなた方は本当にそれだけで日韓の友好だとか、いや協力関係だというようなことは言い切れるのか。もっと本音の話をしなければだめだよ。私の言っているのは、その差額はまさに九千万ドル超えるんじゃないか。韓国は実質的にそれだけは損失だ。その赤字補てんというか、何かそれに対してお返しの気持ちを持っているんでしょうか、持っていませんのですかと、そのことを聞いているわけで、大臣、これはそういうことなんですよ。それで、いや持っていなければ持っていない、これはこれでしまいなんだ、こういうことならそのとおりお答えをいただければいいわけです。  あなたはさっきから、これはけりをつけたんだとおっしゃっているわけです。けりをつけたけれども、金でもらっているときと現物でもらっているときの差額というものは、韓国にとっては今言う九千万ドルから実質的な損失になるのですよ。そのことは理解できますね。それで、御苦労さまです、ありがとうございましたという、それだけでおしまいにしてしまうんだということならそういうふうにおっしゃったらいいし、間違いおまへんなと私は念を押しますけれども、いやいや、そういう含みは持ちながら今後の経済協力を進めていきたいんだ、具体的にどうということは問題にはならなかったとか、これは何なのか僕は大臣のお考えを聞かしてほしい。
  123. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 韓国で今米の差額でどういう損失が起きたか、そしてそれをどういうふうに財政的に処理されたかということについては、私は実はつまびらかにしておりませんでしたが、しかし、これは私は韓国の財政上の問題として韓国自身が自分の国の立場で適当に処理されたものである、こういうふうに理解しております。少なくとも日本韓国の間の十五万トンの米の問題については、これはもう完全にけりがついたものである、こういうふうに思うわけでございます。ですから、この問題が後を引くというふうなことではございません。しかし、日韓関係でお互いに助け合う、こういう気持ちは大事じゃないか。韓国外相が表明されたのも、かつて助けてもらったんだから今度協力するのは当然だ、この気持ちを表明されたものである、こういうふうに理解しております。
  124. 井上一成

    井上(一)委員 それで、この問題について赤字補てんは考えないと間違いなく言い切れますね。そういうことは一切けりがついて、向こうがどれだけの赤字を背負おうが、そんなことは一切関係ないんだ。これは今まで貸したことに対するそれだけの向こうの謝礼というのでしょうか、お礼を含めたなにで、そういうことについては一切の補てんはしないということが外務大臣言い切れますか。
  125. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 米の十五万トンの返還につきましては日韓関係において完全にけりがついた問題である、こういうふうに理解をいたしております。
  126. 井上一成

    井上(一)委員 くどいようなんですけれども、今までずっと日本経済協力をしているわけなんです、その行為に対してまたぞろ――またぞろと言えばなんでございますが、これが何らかの形を変えてそういうことが起こり得るんではないだろうかということを私は予測して申し上げているわけです。そんなことはしませんというなら、そういうふうにはっきりお答えをいただきたい。米の問題がけりがついたというのは、金でもらっていたのをいわゆる現物でもらうことにした、それの一応のけりはついた、こういう認識だと思うのですが、きょうはそのことについては議論はしません。だから、そのことから起こる韓国側の損失というものをどう受けとめて、これに対して我が国は今後どういうふうな対応をすべきであろうかということを、協力の状況も踏まえて私は尋ねているわけです。もう一度お答えをいただきたいと思います。
  127. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 韓国の財政上どういうふうに処理されたかというのは韓国の問題でありまして、米の返還についてはもう完全にけりがついたということであります。したがって、そうした韓国の財政上の問題がまた日本に対して何かはね返ってくるというふうなことはあり得ない、こういうふうに私は理解をいたしております。ただ、日韓関係において全体的に協力関係を推進していくということは大事な課題であって、我が国政府としては親善友好を拡大していくという意味において、今後とも韓国に対してのいろいろな面の協力はしなければならぬ、私はこういうように思います。
  128. 井上一成

    井上(一)委員 それじゃ時間もありませんので、これはけりがついたということですが、今回の韓国側の対応も含めて、さらに協力関係を深めていくという中には、今回逆に日本がお世話になったんだという意識はそこに潜在している、こういうふうに理解してよろしいでしょうか。一
  129. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 一つ一つのことをとらえて今後の問題をどうこうということではなくて、やはり全体的な日韓の立場、日韓の協力関係というものを踏まえての今後の対応でなければならない、こういうふうに思うわけでございます。昨年も中曽根総理の訪韓によりまして思い切った経済協力もしておるわけでございますし、今後とも日韓関係でいろいろな問題が起こってくるわけでしょうから、そういうものに対して、日韓が隣国である、親善関係である、そしてそれを強化するという立場から全体的に判断して日本の対韓政策を進めたい、こういうふうに思うわけです。
  130. 井上一成

    井上(一)委員 それじゃこの問題は、時間の関係できょうはこれまでにしておきます。  さらに、先ほどのアフリカの問題に戻してもう二、三質問をしたいと思うのですが、外務省がせんだって外務省の中近東アフリカ局長室で節食ランチの会という、非常に善意の行為を始めたことには私は心から拍手を送りたいと思うのです。ただお願いしておきたいことは、立ち消えするようなことのないようにずっと今後とも続けていただける御努力を願っておきたい。  私は、あらゆる意味でアフリカ問題を我が国国民にも理解を深めるために、アフリカ展あるいはアフリカに関連するいろいろな催しが行われるわけでありますけれども、むしろそれは情的なとらえ方で、かわいそうだ、気の毒だという善意だけで終えてしまっては実を結ばないのではないだろうか、実はそういうふうにも思うわけです。そういう点から、あらゆる人たちがこのアフリカ問題に理解をし、かつその中に飛び込んでもらうという意味で、ボランティアの人たちの活動というものも見逃してはいけない。現在、私の知る限りではアフリカに対するボランティアのグループも非常に少ないということでありますし、他の先進国に比べてそのボランティアの人たちの現地における生活というものは、非常に疲れ切っているというのでしょうか、極限に達しているように報道されているわけであります。あらゆる宗教団体を初めとしたあらゆるボランティアの活動が見られるわけでありますけれども、そういう活動を支える政府姿勢というのは見られないのではないだろうか、資金援助も含めて、今後ボランティア活動というのでしょうか、プロボランティアというのでしょうか、そういう強い要請があると思うのですが、政府の見解を聞いておきたい、こう思います。
  131. 藤田公郎

    ○藤田(公)政府委員 ただいまアフリカで特に飢餓面における救援活動に活躍しておられる民間ボランティア団体は、私どもの承知しております限りで五団体ございまして、日本ユニセフ協会、立正佼成会、それから毎日新聞東京社会事業団、ジャパン・ボランティア・センター、それから「二十四時間テレビ」チャリティー委員会、この五つでございます。  ただいま先生御指摘のとおり、私どもといたしましても、アフリカにおきまして、種々の民間ボランティアが飢餓民の食糧援助ですとか、農村開発等々の面で有意義な活動を行っておられるということにかんがみまして、できる限り支援の姿勢をとってまいりたいと考えております。ちなみに、ただいま申し上げました団体のうちのジャパン・ボランティア・センターはソマリアで活動をしておられるわけでございますけれども、この団体に対しましては、UNHCR、国連の難民救済高等弁務官に対する我が国の拠出からこのボランティアに対して一定額の資金が配賦されているというふうに承知しております。なおちなみに、ただいま民間のボランティアのことのみお触れになりましたが、我が国のいわゆる政府ベースのボランティアともいうべき青年海外協力隊は現在、外に出ております千百名のうちの半分近い四百三十四名がアフリカで活躍をいたしておりますので、これも申し添えさしていただきます。
  132. 井上一成

    井上(一)委員 あと、時間がありませんので、実は経済協力問題についてお聞きしたかったわけなんです。そこで、このことについて私は一問だけちょっと聞いておきたいことがあるわけなんです。  我が国経済協力のあり方について基本的に考え直すべき時期が来ているのではないだろうか。余りにも実態というものは、国民の税金を本当に有効かつ適切な効果あるプロジェクトに運用されていっているだろうかということをつぶさに見直していく必要があろう、私はこういう認識に立っています。  それで、きょうはもう多くをお聞きすることはできませんが、ボリビアに対しての円借款、この中でいわゆるボリビアの国際空港、ビルビル国際空港ですね、この問題については以前からいろいろな疑惑が論じられているわけでありますが、当初資金協力の要請があったのはいつなのか、そのことをまず聞いておきたいと思います。
  133. 藤田公郎

    ○藤田(公)政府委員 お答え申し上げます。  ビルビル空港というものを旧サンタクルス空港にかわりましてつくるという大統領令というものが一九七六年、昭和五十一年でございますが、その十二月十七日に出まして、翌一九七七年一月にボリビア政府より我が国に対しまして資金協力及び技術協力の要請が参りました。
  134. 井上一成

    井上(一)委員 私の承知している中で、一九七八年二月二十四日ボリビア政府より借款要請が行われた。そうすると、今お答えのあった、一九七七年一月ボリビア政府より資金協力及び技術協力要請があった――一月のいつでしょうか。そうすると、翌年の二月二十四日のボリビア政府よりの借款要請は何のための要請なのか、この点はいかがですか。
  135. 藤田公郎

    ○藤田(公)政府委員 ただいま先生が御指摘のように、一九七八年二月二十四日ボリビア政府より借款要請が、ボリビアの外務省よりございました。これも事実でございます。これは再度の要請でございまして、先ほど申し上げましたように、一九七七年一月、今ちょっと日時は確かめておりますが、一月に資金協力及び技術協力を要請越しまして、翌二月我が方がまずこの技術協力の要請にこたえまして、国際協力事業団による事前調査及び本格調査を実施し、この事前調査が二月から、本格調査が五月から行われまして、七七年十一月に、ドラフトレポートと称しておりますが、報告書草案というものをボリビア政府側に提出したわけでございます。これを踏まえまして一九七八年二月、再度ボリビア政府から我が方に対して借款を要請越した、こういう状況であったと承知しております。
  136. 井上一成

    井上(一)委員 このことは、当時の関係者からも事情を聞かしていただいて、そしてその中で具体的な問題を明らかにしていくべきではなかろうかと私は思うわけです。とりわけ経済協力基金等の関係者も含めて、あるいは会計検査院がどういう実態調査を進められたか、そういうことも含めて私は当委員会に参考人として関係者の招聘をお願いをしたい、こういうふうに委員長にお願いをしますので、よろしくお取り計らいを願いたいと思います。
  137. 横山利秋

    横山委員長 後刻理事会で協議をいたします。
  138. 井上一成

    井上(一)委員 それじゃ、きょうはもう時間が参りましたので、私の質問はこれで終えます。
  139. 横山利秋

    横山委員長 新村勝雄君。
  140. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 大臣にお伺いをいたしますが、全斗煥大統領訪日に関連をして、天皇陛下との会談の際のお言葉の問題が今内外の注目を浴びております。  この問題に関して、おとといの韓国外務委員会懇談会において、全大統領訪日の際日本側から納得のできる謝罪が得られない場合は大統領訪日が逆作用を起こすこともあるのではないか、こういう質問に対して李外相は、日本の植民地統治について日本政府が適切な措置をとるものと信じていると述べるとともに、安倍外相との会談でその点については確認をしておる、こういうことを言われたという報道があるわけであります。これはこの訪日の第一の目的は天皇との会談で植民地統治に対して天皇が陳謝をするということにあることを意味しておるということですね。それで、外務大臣も全大統領訪日がそういう意味がある、そういう目的であるというふうに認識をされているのかどうか。
  141. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 全斗煥大統領は、国賓として我が国を訪問する予定でありまして、宮中におかれても国賓に対する通常の行事が行われることになるわけでございますが、天皇陛下がいかなるお言葉をお述べになるかということにつきましては、事前に政府当局としてあれこれ見通しを述べるということは差し控えさせていただきたいと思います。また、一般にこの問題について韓国内において関心が高いということは承知をいたしておるわけでございますが、本件は韓国政府と話し合う筋合いのものではない、こういうふうに理解をいたしております。
  142. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 韓国側日本側から納得のできる謝罪が得られない場合は逆作用を起こすこともある、これは韓国政府の正式の発言ではないかもしれませんけれども、そういうことが論議の中で言われたということであれば、天皇の善言葉が当然大変に政治的な意味を持ってくるということでありますけれども、その点大臣はどうお考えですか。
  143. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 確かに天皇のお言葉が関心を持たれておるということはそのとおりであろうと思いますが、この点につきましては、先ほども申し上げましたように今政府として立ち入ってとやかく言うべきではない、そういう点については差し控えさせていただきたいと思いますし、あるいはまたお言葉について日韓双方で話し合うというような筋合いではない、私はこういうふうに理解をいたしております。
  144. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 この問題について外相会談で確認し合っているのか、どういう話し合いが行われたのか、この点をお伺いします。どういう言葉というその言葉の具体的なものじゃなくて、そういうことをやるということが外相会談で出たのかどうかということですね。
  145. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 外相会談では一切出ませんでした。また、日本としましてもこの問題は一切両国間で話し合う筋合いではない、こういうふうに考えて臨んだわけでございまして、そのとおりこの外相会議の議題とは一切ならなかったのであります。
  146. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 しかし、今までの慣例あるいは今回の大統領との会見においてそういう場面がある、そういう意味のお言葉が出るということは予定されておりますか。
  147. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは宮中の行事でございますが、いつも国賓がお見えになるときは天皇陛下と会見もございますし、また晩さん会のスピーチ等もあるわけでございます。そのような慣例に従って全斗煥大統領の場合もこの宮中行事が行われるもの、こういうふうに考えております。
  148. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 今回の場合、事前に韓国あるいは日本でもこの問題について大変新聞等で取り上げられている、注目を集めているということについてはこれは他の元首との会見の場合とは違う何らかの状況があるのではないかと思うわけです。その認識大臣いかがですか。
  149. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今回の全斗煥大統領訪日は、やはり日韓のこれまでの非常に長い、また一面においては複雑な歴史的な関係もあったわけでありまして、戦後韓国が独立して、そして日韓関係にもまたいろいろの問題が起こりまして、二十年前に正常化したわけでございますが、大統領としては初めての訪日でございますから、それなりに重い意味がある、こういうふうに考えております。
  150. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 大韓民国、全斗煥氏が代表される政府は朝鮮半島全体を代表するものではないと思いますが、代表する範囲はどこですか。
  151. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは国交正常化のときの解釈のとおり、日本としましては、もちろん韓国の管轄権の及ぶ範囲内である、こういうように考えております。
  152. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 そこで天皇と大統領とが会見をされる、そのときの天皇の善言葉、これは憲法の国事行為に当たるわけですか。そしてそれは憲法七条の一号から十号のどれに該当するわけでしょうか。
  153. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 天皇陛下が国賓等に対してお言葉を述べられるという行為は、憲法第七条に規定する国事行為ではございませんが、純然たる私的行為でもなく、いわゆる公的な行為に当たるものであります。したがって最終的には国政全般に対して責任を負っている内閣が責任を持つ、こういうことになります。
  154. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 天皇の国事行為は七条で網羅してあるわけで、一号から十号までそのいずれかになるわけだと思うのですが、公的な行動であって、それ以外であり得る場合もあるのですか。
  155. 小和田恒

    ○小和田政府委員 本来法制局がお答えすべき問題だと思いますが、若干テクニカルでございますので、私どもが外務省として理解しているところを私から申し上げます。  御承知のように、憲法第七条に天皇は次に掲げる国事行為を行うということで列挙してございまして、国事行為はそれに限るわけでございます。他方憲法第一条に天皇は日本国の象徴であるという規定がございまして、象徴たる地位に伴って陛下が行われるような公的な性格を持った行為というものは当然にあり得るであろう、こういうことでありまして、第七条に掲げる国事行為以外の天皇の行為というものは、純粋に私人として行われる私的な行為と、それから公的な性格を持った行為という二つがあろうということでございます。先ほど外務大臣お答えいたしましたのは、その公的な性格の行為に当たる面があろうということを申し上げたわけでございます。
  156. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 そうしますと、七条に列記をしておる行為、それ以外にも、象徴としては公的な行為があり得るということになりますと、それは七条の規定以外にも多種多様の行動があり得るということになりますけれども、そうなると、これは七条の規定そのものが何かあいまいになってくるということにはなりませんか。
  157. 小和田恒

    ○小和田政府委員 委員承知のとおり、憲法は第四条で「天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する機能を有しない。」こういうことになっておりますので、御指摘になりましたように、天皇が一般的な形で国政に関与するということはあり得ないというのが憲法の建前でございます。  他方、第七条は、ここに掲げました第一号から第十号までの事柄については、これを国事に関する行為として、天皇が、内閣の助言と承認により、国民のために行うということが明文で規定されているわけでございます。したがって、御指摘になりましたように、国事行為というものはここに掲げられているものに尽きているわけでございます。  他方、さっきも申しましたように、第一条で「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴」であるという規定がございますので、そのことに伴って、例えば外国の元首とお会いになるというようなケースが典型的なケースであろうと思いますけれども、そういう第一条の象徴たる地位に基づいて天皇が行われる若干の行為につきましては、これは全くの私的な行為というふうに考えることは適当ではない。したがって、この日本国の象徴たる地位に基づく、そういう一つの公的な地位に基づく公的な行為であるというのが政府が従来から御説明しているところでございます。
  158. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 そうしますと、七条の規定以外にも、具体的な行為ということになれば無限にあり得るということですね。そうなってくると、七条の規定そのものが、意味が薄れてくるということにもなるわけです。  それからまた、それとは別に、その場合の行為はすべて政治的な行為には及ばない、国事行為ということですから。そのことについては、政府は十分に補佐を申し上げなければならないはずですね。国事行為、政治の範疇に入らないということについての補佐をしなければいけないわけでありますけれども、全大統領訪日に関する問題については、内外の論調、特に韓国期待韓国が非常に期待をしておるわけですね。こういうことからして、これは明らかに政治的な意味を持ってきておるわけです。こういうことについて、大臣はどうお考えであるかということですね。もう既に政治的なものとして扱われておるわけですから、これについてどう思っておられますか。
  159. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 先ほど、条約局長も答弁しましたし、私も答弁しましたように、天皇の、国賓を遇されるに当たっての善言葉は、公的行為ということで、最終的には内閣が責任を持つわけでございますから、したがって、内閣としましても、この天皇の、国賓を処遇されるに当たりましてのいろいろの参考の資料等につきましては、これは十分、天皇のお手元に差し上げておるわけでございます。これまでもそうしておりますし、今度の場合ももちろんそうなるわけであります。最終的な責任は、もちろん内閣がこれを持つ、こういうことであります。
  160. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 そうしますと、この問題については、今内外で注目を浴びておる、論議をされておるということでありますけれども、政治的な意味は全くない、また、そういう目でも見られていないというようにお考えになりますか。
  161. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 政治的なというのは極めて漠然としておりますが、いずれにしても、公的なお言葉である、お言葉が公的な行為である、公的なものであるということは、私、何回も答弁したとおりであります。その限りにおいて、天皇のお言葉に対して政府が内閣として責任を持つことになる、こういうことを申し上げているわけであります。
  162. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 いや、政治的な性格を持たないかどうか、政治的な性格を持つということになれば、これは国事行為ではなくなってしまいますから、その点なんですけれども、既に政治的な行為として、あるいは政治的な性格を持つものとして内外から見られておるわけですよ。その点についてはどうでしょうか。
  163. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは天皇の憲法上の地位というのは明確になっておりますし、天皇のお言葉というのが国政上のいわゆる行為ではない、こういうことはそのとおりであります。
  164. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 そうすると、今のこの具体的な問題については、政治的な色彩はない、性格もない、そうも見られていない。そしてまた、韓国がそういう期待をしても、それは、そういうことについてはおこたえできない、それに対応はできない、こういうことですか。
  165. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはどういうふうなとらえ方をするかは、そうした人たちの問題でありまして、例えば天皇のお言葉、かつて中国の鄧小平主任との間に交わされたお言葉もあります。あるいはまた、フォード元大統領が現職でお見えになったときの天皇のお言葉もあるわけでございますし、それはそれなりに各国がそれなりのとらえ方をするわけでございますが、しかし、これがおっしゃるような天皇のいわゆる国事行為といったものではございませんし、公的なものではあってもいわゆる国政に関する行為、こういうことでもないということであります。重さはもちろん、いろいろな意味で非常に重い響きというものを、これは持っておることは、今申し上げましたいろいろな事例からも明らかでございますが、その性格は国事行為でもありませんし、あるいは国政上の行為でもない、こういうことでございます。もちろん公的な行為であることははっきりしておりますし、その限りにおいて内閣が責任を持つということも、しばしば申し上げたとおりであります。
  166. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 そうすると、両者は同じ元首でありますから、訪問を受けたということになりますと、今度は天皇の答礼ということは考えられますか。
  167. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今回の全斗煥大統領訪日は、昨年の一月に中曽根総理が正式に韓国を訪問した際に、中曽根総理が招請をした、その招請に基づいて大統領訪日ということになったわけでございます。大統領という立場韓国における元首の立場にあられるわけでありますが、しかし、日本の天皇は大統領と比較の立場に立ついわゆる元首という立場ではないわけでございます。もちろん憲法上の象徴ではございますけれども、元首という立場にはないわけでございます。ですから、そういう意味での答礼とかそういうことは直接つながらないと私は思います。
  168. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 天皇は元首ではないということですね。そうなると、儀礼的に、元首ではないにしても象徴ですから、中曽根さんが全大統領と同じ格というわけにはいかないでしょう。やはり両者の格ということになれば、天皇対大統領ということになるでしょう。その場合に、どうぞ私どもの方へも来てくださいと言った場合に答礼をされるのかどうか、また、それをしていただくように補佐をするのかどうかということです。
  169. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 外国から元首がお見えになる場合に、もちろん天皇陛下にお目にかかられるわけであります。その際、いわゆる元首から天皇陛下に対する御招待があることもこれまでしばしばありましたし、また、それにこたえて陛下が訪問されたこともかってあるわけでございます。  今回全斗煥大統領日本を訪問されて、この点についてどういうふうにされるのか、それは大統領のお考えの問題であって、我々がこれに対してとやかく言うことではないと思うわけでございますし、また先ほど申し上げましたように、大統領は元首でございますが、天皇陛下は憲法上の象徴でございます。政治について全責任を持つ者はこれは総理大臣、こういうことになっておるわけでございます。
  170. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 外交というのはやはり均衡を必要とすると思いますね。それを無視すれば、一方とは親しくなっても一方からは不快な感を抱かれる、一方が極めて親密になれば一方は敵とは言わないまでも離反していくということが言えると思うのですけれども、そういう意味から、全大統領訪日ということに対応して、やはり朝鮮民主主義人民共和国、北朝鮮に対しても何らかの配慮があるのかどうか、あるいはまたそれを今後の外交の構想の中にお入れになるのかどうか。
  171. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 北朝鮮と日本との間においては外交関係がないわけでございますから、そういう意味において、この全斗煥大統領訪日関係して、北朝鮮との問題をどうするこうするというふうな考えは持っておりません。
  172. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 時間ですから、その続きは午後にお願いします。
  173. 横山利秋

    横山委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時五十三分休憩      ――――◇―――――     午後二時九分開議
  174. 井上一成

    井上(一)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。新村勝雄君。
  175. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 大臣にお伺いしますが、北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国とは国交がないわけでありますけれども、国交がなくてもこれは長い間の外交あるいは政治の歴史の中で全く交流の外だというわけにはいかないと思います。ですから、国交がないけれども、国交がないという事態に対してこれからどういうふうに考えていくのか、それを伺います。
  176. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 国交は持っておりませんが、もちろん敵意を持っているわけではありませんし、民間の交流等は続いて今日に至っておるわけであります。
  177. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 政府としては何らかの交流があるかどうか。
  178. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ちょっと御質問が理解できませんが、もう一度。
  179. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 政府としては、朝鮮民主主義人民共和国に対して何らかの配慮、それから将来に対して何らかの行動を起こすというお考えがあるのかどうかです。
  180. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 政府としましては、北朝鮮に対しましては国交もありません。そして今の段階においてこの政策を変えようとは考えておらないわけでございます。しかし、民間の交流が行われておることは長い歴史の中でそれなりの意義はある、こういうふうに理解をしておりますし、また同時に将来につきましては、朝鮮半島の緊張緩和が進み、そして南北の民族が統一されるような方向に進むことは、朝鮮半島のみでなくアジアの平和と安定のためにも大変喜ばしいことであるというふうに考えております。日本としましては、そうした朝鮮半島の緊張緩和のためにできるだけの協力はしなければならない、こういうふうに考えております。
  181. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 そうすると、平和的な将来の統一、これが望ましい、またそれについての環境づくりなり、側面からそういう状況をつくっていくということについての努力なり配慮なりはされますか。
  182. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 平和的な統一は望ましいと思いますし、緊張緩和のための今お話しのような環境づくり、側面的な協力はやはりしていきたいものである、こういうふうに思っておるわけであります。
  183. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 それで、当面何もやらないというお話ですけれども、ラングーン事件については、政府は制裁措置をとっておるわけですね。何もやらないのではなくて、事件ということがありますけれども、マイナスの行動を――これはマイナスの行動ですね、されたわけですけれども、この事件は国際的な事件であって、国内の事件と違ってその実態を把握することが非常に難しい事件じゃないかと思うのですね。また、これがどういう形で、だれが行ったかということについても、正確な事実に基づく立証はされていないというような中でこういうことが政府の行動として行われたわけでありまして、この制裁措置について、現在見直しをするというようなことはありませんか。
  184. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ラングーン事件につきましては、日本政府はその実態を直接把握しているわけではございませんが、しかしビルマが国の権威にかけてこの事件を裁き、そしてこの背後には北朝鮮が国として存在しておるという判断を下しまして、そして北朝鮮とは国交を断つ、こういうことにいたしたわけでございます。したがって、日本としてはビルマのそうした措置、そしてラングーン事件の背後には北朝鮮政府が存在している、こういうことはまことに残念なことである、そしてこれは批判されなければならない、糾弾されなければならないものであるという判断のもとに、実は北朝鮮に対しまして一連の措置を官房長官の談話という形でとったような次第でございます。その措置は現在に至るまでも続けてきております。
  185. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 この措置をいつまでも続けるのか、あるいはどういうことになれば、どういう状況になれば解除するのか、その見通しはどうですか。
  186. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今この措置を解除するという考えを持っておらないわけでございますが、私は外務大臣としまして、先ほどから申し述べましたように、朝鮮半島の緊張緩和が進むことを心から期待もいたしております。そのためのお手伝いもしたいと考えておりますし、今の状況、情勢は、南北間のスポーツ交渉であるとか、北朝鮮の提案をしている三者会談であるとか、アメリカがこれにこたえている四者会談であるとか、いろいろな緊張緩和の方策についてのあるいは方式についての動きが出ておるわけでございます。これは一つのいい傾向である、いい状況に今来ておると実は判断をいたしておるわけでございます。これからそうした事態が確実に進んでいくことを心から期待をし、そういう点で今注目をいたしておる次第であります。
  187. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 そうすると、直接の国対国の外交ルート以外のいろいろなスポーツの交流であるとかほかの要因を積み重ねていって、ある一定の時期に来れば解除する、あるいはまたそれ以上のアクションを起こす、こういうことですか。
  188. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはもちろんいつまでもというわけでもありません。いわばこの事件に対する日本の非常な遺憾の意を込めての措置でございまして、今後状況が変わってきて、この措置が解除されるような事態になることを念願をいたしております。
  189. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 もう一つは、日本と第二次大戦で、太平洋戦争で戦争をした相手、アメリカであるとかイギリスあるいはその他の諸国、それに対する関係と朝鮮に対する関係とは違いますね。朝鮮は南北ともに戦争の相手ではなかったわけですね。ただ、日本が統治をした、韓民族、朝鮮民族の意思に反して半ば強制的にその両国を併合した過程は、これは武力だけではないと思います。一応外交的なルート、外交的な手続をとったとは思いますけれども、明らかにこれは韓民族、朝鮮民族の意思に反した支配が行われたことは事実でありますね。  この支配したという事実、それからそれに対する反省は日本政府も行ったということでありますけれども、その間における支配、植民地的な支配をしていた時代に起こった問題についての回復、例えば政治犯に対する名誉回復であるとかこういったことについてはまだ行われていないようでありますけれども、そういうお考えはありませんか。これは南とか北とかということじゃなくて朝鮮に対する支配の時代の、朝鮮が独立した後においては不当であったという事態に対する回復措置はされますか。
  190. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 戦争が終わりまして南北が分断をしまして、そして朝鮮事変が起こる、そういう状況の後で日韓の国交がスタートを切ったわけで、日韓のいわゆる基本条約によって国交が回復されたわけでございます。その段階では、当時の椎名外相等も韓国に参りまして、そして日本の統治の時代等を振り返っての反省の発言もいたしております。同時にまた日本韓国との間においては、少なくともこの国交回復の条約の成立によってこれまでの関係をいわば清算をして新しいスタートを切ろう、こういうことでこの条約成立を機に今日まで国交が続いておるわけでございますが、そうした段階にあっていろいろの、我が国の責任者もかつての日本の統治時代を振り返って反省の言葉を述べております。中曽根総理が昨年一月に韓国を訪問しましたときにもそういう趣旨の発言もいたしておるわけでございます。これは韓国との関係において発言をしておるわけでございますが、しかし、もちろんこの背後には朝鮮民族全体に対する日本の反省、日本人としての反省も込められておる、こういうふうに私は理解をいたしております。
  191. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 具体的にお伺いしますが、日本統治時代の政治犯、そういう人たちの名誉回復というようなことは考慮の中に入っておりますか。
  192. 小和田恒

    ○小和田政府委員 具体的な問題につきましては、個々のケースに当たってもう少し詳しく調べる必要があるかと思いますが、一般的に申し上げますと、委員承知のように、一九六五年に日韓国交正常化をいたしましたときに日本韓国関係は一応基本関係条約及び請求権処理の協定によって処理したわけでございますけれども、それでカバーされない地域、つまり北朝鮮の部分については白紙で残っておるわけでございますので、広い意味での請求権に該当するような問題でありますれば、その範囲の問題として残っておるということになるだろうと思います。
  193. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 それは、そういう経済的な問題ではなくて、朝鮮を支配していた当時の政治犯、例えば安重根という人がいますね。これは伊藤公を暗殺したわけですけれども、これは単なる殺人とは違う政治犯でしょう。そういう人たちを含めた政治犯に対して日本がその名誉回復をする、あるいはそういう声明をする、これは超法規的な、刑法とかそういったところに実定法には規定してないと思いますけれども、こういう措置をする考えがあるかどうかということです。
  194. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 名誉回復とかそういう措置は具体的な形ではとられていないわけです。韓国におきましては安重根氏は英雄になっておるわけですけれども、少なくとも日本においてはそういう措置はとられていないわけですが、しかし少なくとも日韓国交正常化に伴いまして、過去のことにつきましては、やはりこれはお互いに両国間の問題は処理できた、処理したという判断のもとに、解釈のもとに条約によって国交がスタートしたわけでございますから、その限りにおいては過去のいろいろな問題がこれはもう完全に水に流したと言えるものじゃないと思います。私はやはり日本はそうした日韓関係だけではなくて、日本と朝鮮民族との重い歴史の傷跡というものを担いながら、日本人はこれからもやはり進んでいかなければならぬ、こういうふうに思うわけでございますが、しかし少なくとも形の上においてはそういう問題は一応は解決済みになっておる。心の中では、条約ができたからといって、あるいは全斗煥大統領日本に来られたからといって、それでもってすべてがもう水に流れる、解消するというものではないわけで、その歴史というものはいつまでも日本民族、韓国民族の中で残っていくものであります。我々は常に反省をしながらそういう問題に、これからの日韓問題あるいは朝鮮半島の問題に対応していかなければならぬ、こういうふうに私は思っております。
  195. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 もう一回伺いますが、日本が統治、支配をしたということから起こってきた、当時は犯罪とされたこと、いわゆる政治犯、これについてはやはり水に流すということは、別の言葉で言えばそういう人たちに対する名誉回復をするんだ、あるいはそういう気持ちを持ってやったんだというそういう気持ちがあるのかどうかですね。過去のことは忘れる、過去のことは水に流すということの中には、そういう意味をも含めておるのかどうか。統治、支配から起こってきたところの問題については、そういう政治犯の名誉も含めて回復をしたい、あるいは回復をしようという日本政府の気持ちがあるのかどうか、そういう法的な二足の手続がとられないにしても、そういう気持ちがあるのかどうか、それをお伺いしたい。
  196. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 要するに、過去に対する日本の反省というものに基づいて日韓の条約両国交渉の結果生まれたわけでございますから、そういう反省という中に過去のいろいろの歴史というものももちろん踏まえておるわけでございます。ですから法的に回復とか回復でないとかいうことではないとしても、一応形の上ではここら辺のところは処理されたということではありますが、しかし私が言っているのは、ただそういう形の上で決着がついたというだけで、それで完全に何もかもすべて決着がついたということではないと思うのです。法的な問題だけが処理されたからといって、日韓関係がすべて過去の関係が完全に清算されたということではない。やはり日韓の歴史というものは非常に重い歴史、その歴史を我々はこれからも背負っていかなければならぬ。これはやはり日本人として当然のことではないか。そういう歴史を背負いながら、反省をしながらこれからも進んでいくのが日本のこれからの行く道ではないだろうか、そういうふうに私は考えて発言をいたしておるわけであります。
  197. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 大臣の御答弁はどっちにもとれるので困るのですが、わかりませんけれどもわかりました。  次に、かねて米軍からミッドウェーの艦載機の訓練場を提供してもらいたいという強い要求があるわけです。去る五月十一日にワインバーガー国防長官が来日をしたときもこの懸案の問題について強く政府要請があったということを聞いておるわけであります。そうして、この問題については防衛施設庁が予算を取って今まで既に一年半、二年近くも調査をされておるわけでありますが、その間、巷間伝えられるところがありまして、三宅島に決まったとかどこに決まりそうだというようないろいろなうわさがあったわけでありますけれども、まだ明らかな情報には接していないわけであります。この問題についてのその後の経過はどうなっているのか、また調査の結果はどうであったのか、それを伺います。
  198. 平晃

    ○平説明員 厚木飛行場におきまして実施しております艦載機の着陸訓練、これは米軍のパイロットの練度維持のために必要不可欠のものであるということ、また日米安保体制の効果的運用面からも欠くべからざるものであるということでございますが、一方厚木の周辺住民に与えている騒音影響も大変大きなものがあるということで、私ども五十八年度から調査費を計上していただきまして、まず既存の飛行場についてこのような所要の訓練ができるかどうかの調査、それから新設飛行場について適地の調査、それからまた、これは地元の大和市長さんから御提案のあった問題でございますけれども海上の浮体滑走路の設置というような点について、これは技術資料の収集という面から行っておりますけれども、従来このようなあらゆる角度から調査検討を続けてまいりました。残念ながら、今のところ具体的に解決の見通しは得ていないというのが実情でございます。
  199. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 この問題は政府も苦慮されていると思いますが、首都圏内の既設飛行場をこの目的に新たに使用するというのは、これは少なくともそういうところはないのではないか。例えば下総基地という飛行場がありますけれども、この周辺の住民からは、今まで約十五万名程度のぜひそういうことは勘弁してもらいたいという反対署名が出ておるわけでありますが、ほかの飛行場でも恐らく首都圏内の既設飛行場ではこの目的に使用されるところはまずないのではないか。そういう点で政府が苦慮されていることについては十分わかるわけでありますけれども、住民の立場からすればとても我慢のできる問題ではない、こういうことだと思うのですね。  そこで、かねてから防衛施設庁あるいは防衛庁で言っておられる分散使用、現在使っておるところをほかで分散して負担してもらうんだという分散使用という考え方があるのですけれども、この分散使用という考え方は依然としてお持ちなんですか。
  200. 平晃

    ○平説明員 先ほどもお答え申し上げましたとおり、既設の飛行場の使用というものと新たに新設飛行場をつくるための適地の調査とあわせて検討しておりますけれども、今具体的な見通しは得ていないということでございまして、いずれの方法でやるか、既設の飛行場について地元にいろいろ反対の御意見があることは十分承知しておりますけれども、これをあきらめて新設の飛行場一本でやるというような結論を出すという段階にもまだ至っていない、そういうことでございます。
  201. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 この問題については防衛庁あるいは防衛施設庁さんが一番よく事情は御存じのはずでございますが、既設の飛行場を使うことはほとんど絶対と言っていいくらい不可能だと思うのです。これは大臣考えになっても、だれがお考えになってもそうですよ。ですから、そういうことはまずあきらめられた方がいいのじゃないか。ただいろいろの事情があるわけでありますから、これを絶対にやらぬわけにはいかぬでしょうから、それはほかの方法でやる以外にないということを早く見切りをつけていただいた方がいいのではないかと思うわけですが、その問題についていつごろまでに結論を出すのか。結論は、既に既設の飛行場ではとてもお受けできないというその結論はもう地元の状況からして出ているのじゃないかと思います。ですから、それらを踏まえていつ結論をお出しになるのか、これを伺います。
  202. 平晃

    ○平説明員 米側からは各般のレベル会談等におきまして代替施設の提供を強く要請されておりますし、私どもの立場から申し上げましても、厚木の騒音問題を今のまま放置できないということで、できるだけ早く代替施設の取得という問題を解決したいと精力的にやっているわけでございますけれども、現在のところ具体的な見通しはない。したがいまして、いつまでにこの問題を解決するということも現段階では申し上げられないというのが実情でございます。
  203. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 大臣にお伺いというよりもお願いですが、この問題は、既設の飛行場を使うということについてはもう全く不可能ですね。ですから、首都圏内の既設の飛行場を使うことは考慮の外に置いて、ほかの方法でやっていただく以外にはないと思います。そうでないと、これはどんな事態になるかわかりませんし、また日米関係にも悪い影響を及ぼすことにもなりますので、既設の飛行場は使わない、米軍の要求がどうしても断ることができないのであるとすれば別の方法でやるという方針に転換をいただきたいと思うのですけれども、大臣はいかがですか。
  204. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 本件につきましては、今施設庁から答弁がありましたようにいろいろと検討、努力をしておられるわけでありますが、まだ具体的な結論は出てないということであります。私はこの事件、訓練に伴う騒音問題に十分留意をしながら、また米軍パイロットの訓練がその練度の維持の向上、ひいては日米安保条約の効果的運用のために必要欠くべからざるものであるということにも留意しつつ、本件問題についてはできるだけ早く解決案が見出されることを期待いたしておるわけであります。
  205. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 米軍の練度の維持については否定するわけではありませんが、首都圏内の既設の飛行場を使うことはまず不可能だということをはっきり御認識をいただきたいわけです。  それからもう一つ。新しい事態ですけれども、首都圏内の飛行場の一つ、海上自衛隊の下総基地に最近新しい飛行機が飛来をしまして、そこで訓練をしておるという事態があるわけですが、地元ではこれが米軍使用の前ぶれではないかということで大変心配しておるわけです。これは聞くところによりますと、八戸飛行場から訓練に来ておるということのようでありますが、その訓練が今までの訓練と全く違う。今までは朝飛び立って昼ごろ帰る、また午後の分は昼ごろ飛び立って夕方帰るということで、日中は余り騒音がない。ところが八戸から来た飛行機の訓練は一日じゅう訓練をしていて大変困るということなわけです。  そこで、地元の住民がぜひそれはやめてもらいたいというお願いを基地の司令に申し入れたところが、そういうことは受け付けられないということで、まず受け付けられない、完全に門前払いを食っておるということなんですけれども、これは訓練がどうあるべきかということの前にやねり住民のそういう要請は聞くべきではないか。あるいはどうしてもそういう訓練をしなければならないんならならないように、その理由を説明すればいいのですけれども、理由も説明しない、要望も聞かない、最初から門前払いということでは大変困るわけですね。そういう点についてひとつ住民の希望は聞いてもらって、どうしてもだめならだめでそこで説明すればいいわけなんですから、そういう門前払いということは大変困るのですけれども、それはどういう事情になっておりますか。
  206. 上田秀明

    ○上田説明員 御説明いたします。  下総には従前より下総教育航空群の部隊が所在しておるわけでございますが、海上自衛隊の八戸に所在しております第二航空群のP2Jでございますけれども、これが現在八戸の飛行場が滑走路等の改修工事のために閉鎖されておるという状況でございますので、今年の六月から約半年の間、一部、約十機程度でございますが、下総基地に臨時に移動いたしまして、そこを根拠として各種の訓練を行っているところでございます。  したがいまして、若干航空の交通量、離発着回数等がふえているところは御指摘のとおりでございますが、この件につきましては五月の段階で、東京防衛施設局の千葉事務所長から、沼南町とか鎌ケ谷市とか白井町とか、そういう関連の市町村に事前に御連絡を申し上げて、こうこうこういう事情であるから御了解を賜りたいということで御了承を得ているという事情にございます。また、基地の下総教育航空群、下総航空基地隊司令からも関連の各位に御連絡をしたところでございます。しかしながら、実際にこの訓練が開始されますと、先生御指摘のとおり、教育隊の訓練と違いまして、第二航空群は第一線の部隊でございますので、訓練並びに哨戒任務に出たり、あるいは災害出動の際の任務に出たりいたしますので、飛行の形態が今までの教育隊の部隊より若干異なっておることはこれまた事実でございます。  こういうようなことから、住民の方々から、あるいは電話等にて基地の方に、騒音が何とかならぬかとかいろいろなお尋ねやお申し入れがあるということも承知しておりますが……(新村(勝)委員「時間がないですから、住民の要望を聞くかどうか、それからそれに対して説明をしてくれるかどうか、その点を特に」と呼ぶ)住民の方々からいろいろな御意見が出された場合に、できるだけこれに対応じるということは部隊に指示してあるところでございますが、いろいろなお立場がございますので、そのお立場にあるいは回答内容が沿えないというようなことはあるかと存じますけれども、原則といたしまして、いろんなお申し出は受け付けて極力御説明するようにということにはさしてございます。
  207. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 そうしますと、原則としては住民の要望は聞く、それからまた住民に対する説明もする。司令が立場上まずければ、それは施設庁でもいいし防衛庁でもいいわけですよ。そういう人がいるでしょうから、しかるべき人がいるでしょうから、とにかく住民の要望は聞く、それから住民に対して説明するということをひとつお約束をいただきたい。
  208. 上田秀明

    ○上田説明員 事情等を御説明するということは極力やらなければいけませんので、その点はよく説明させるようにいたしますが、内容そのものについてはあるいは御要望におこたえできない点があろうかとも存じます。
  209. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 内容が軍機というか機密に属するということであればやむを得ないのですけれども、それ以外のことについてはひとつ住民によく説明をして、納得を得る努力をしてもらいたい。門前払いは絶対にしないように特にお願いします。それはいいですね。それをひとつ。
  210. 上田秀明

    ○上田説明員 繰り返しになりますけれども、各種の御要望をいただいたときにいろいろと対応にあるいは不適切なところがあったかも存じませんけれども、可能な限り住民の各位の申し入れ等について適切に対応するようにさせてまいりたいと思います。
  211. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 終わります。
  212. 井上一成

    井上(一)委員長代理 近江巳記夫君。
  213. 近江巳記夫

    ○近江委員 外務大臣、それからまた政府委員の皆さんに対しまして、当面する外交問題につきまして若干の問題を質問していきたいと思っております。  まず最初にお聞きしたい問題は、今いよいよ来年度の予算をめぐりまして従来のシーリングから今回は概算要求基準、こういうものに変更した、こういうことが伝えられておるわけでございますが、そういう相違というのがどういうものであるのか、これは必ずしも明確にはなっておらないわけでございますけれども、いずれにいたしましても厳しい財政事情に入っておるわけであります。こういう中にありまして非常に問題になっておりますのは防衛費の問題でございますが、今年度予算におきましては、防衛費は二兆九千三百四十六億、これは八月の人勧とまたこの実施いかんにおきましてはGNP一%、これを超えるのではないかというような危惧も問題になっておるわけでございます。この防衛費の伸び率というものを見てまいりますと、大臣も御承知のように、他の施策というものとは非常に異常な突出というものが見られるわけでございまして、六・五五%増という数値、これは毎年非常に問題になってきておるわけでございます。  そこで、アメリカ政府としまして我が国に対してここ数年来、防衛費をもっと増額すべきである、こういうような要求をしてきておる。これはいろいろと伝えられておるわけでございますけれども、また一方におきまして、国民のいわゆる防衛費増に対する不安というもの、これは非常に高まっておるわけでございまして、緊迫いたしておりますこういう財政事情という問題もあるわけでございますけれども、外務大臣といたしまして、来年度の防衛費につきましてどういうようなお考えを持っていらっしゃるのか。まず基本的に大臣のお考えというものを承りたいと思います。
  214. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 我が国としましては、「防衛計画の大綱」に定められた防衛力の水準をできるだけ早く達成するべく防衛力整備に努力をしているところでございます。目標を「防衛計画の大綱」に置いておるわけでございますが、来年度の予算につきましてどうするかという点についてはこれからの問題で、今実は各省ともそうでございますが、各省と大蔵省で概算要求等の標準額について今詰めをいたしておりまして、防衛庁としてもそうした検討作業を行っているもの、こういうふうに判断しておりますが、来年度予算について今ここで外務大臣として私が防衛予算について述べることは差し控えたい、しかし、今、日本の防衛力の整備の目標というものを「防衛計画の大綱」の実現に置いておる、そのために我々は努力をこれまで重ねてきておるというのは、そのとおりであります。
  215. 近江巳記夫

    ○近江委員 恐らくアメリカ側といたしましては、今年度程度の防衛費の伸びというものを期待しているのではないかというようなことがよく言われておるわけでございますが、大臣として、このアメリカ側のそうした期待といいますか、日本に対する期待ですね、あるいは要求と言いかえてもいいかもわかりませんけれども、こういう点につきましては、どういうように受けとめていらっしゃるのか、お伺いしたいと思います。
  216. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 米国政府としましては、現在の非常に厳しい国際情勢のもとで、みずからも非常に困難な財政問題を抱えております。そうした中にもかかわらず、アメリカ自身としては防衛努力を行ってきておるわけでございます。そういうことですから、我が国を含めて他の西側の諸国に対しても一層の防衛努力を行うことを期待していることは、これはもう御承知のとおりでございます。  また、安保条約上、我が国に対する武力攻撃が発生したときは、アメリカ日本を守る、防衛する立場にあるわけでございます。したがって、我が国の防衛努力について関心あるいは期待を有することは、これはもう自然なことであると考えておりまして、我が国としましては、今後とも我が国外交の基調である日米関係の一層の発展を図るという意味で、かかる米国の関心及び期待等について留意する必要があるが、我が国の防衛努力については憲法及び基本的な防衛政策に従って、あくまでも自主的に行っていくというのが我が国の基本的な姿勢でございます。
  217. 近江巳記夫

    ○近江委員 大蔵省では来年度予算のいわゆる焦点の一つになっております、先ほどから問題にしております防衛費の取り扱いにつきまして、前年度化四%増程度に抑える、こういう基本方針を固めだということが伝えられておるわけですが、先ほど大臣もおっしゃったように、アメリカ日本の防衛予算に非常に大きな関心を持っておるというお話でもございます。今まで予算の編成のそうした姿を見ておりますと、防衛摩擦というような表現も使われたことがあるように思うわけでございます。  そうしますと、この対米関係におきまして、大蔵省が言うように前年度化四%増の防衛費について安倍大臣はどういうように思っていらっしゃいますか。
  218. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 まだ大蔵省が来年度の防衛予算についてどういう具体的な取り組みをいたしておるのか、私は承知いたしておりませんが、まあ大蔵省の立場からいえば、財政再建を貫くということで、防衛費その他あらゆる予算について聖域は認めないということで、これは当然財政当局としてはそういう姿勢のもとに予算編成に臨んでくるのじゃないか。しかし、これは大蔵省、財政当局の考え方であって、予算そのものはこれから各省と相談をし、政府全体で検討もし、また政府と自民党との協議もあって最終的に決定をされるべきものである、こういうふうに考えます。
  219. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうすると、この防衛費をいわゆる特別扱いにせずに抑制をする、こういうことになってきますと、大臣としては、この日米関係支障といいますか、その辺につきまして窓口として一番いろいろと苦慮されるのじゃないかと思いますが、それはどうなんですか。
  220. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはこれからの予算編成の過程においていろいろと相談、検討が行われ、その結果予算が決まるわけですから、これを見なければもちろん判断ができないわけでございますが、大蔵省としてこれは防衛費といえども聖域でないという立場で臨むことはこれまでもそのとおりでございましたけれども、しかし最終的には、いろいろな経過を経て五十九年度予算も六・五五%伸びる、こういうことになったわけでございます。したがって、この防衛費の問題について、来年度予算、今始まろうとしておるところでありますから、この結果を見ないと何とも言えない。しかし、言えることは、アメリカ期待していることは、これはもう事実であります。  これは先ほど申し上げたとおりでありますが、しかし、日本の予算、日本の防衛予算は、これはもちろん日本が自主的に決めるべき問題でございまして、その結果に基づいて日本アメリカに対して説明もすることは当然であろうと思うわけでございます。しかし、そうした自主的な判断で決めるわけでございますが、アメリカのそうした期待を留意するということは、日米関係日米安保関係から見まして先ほど申し上げましたように当然のことではないかというふうに思うわけでございまして、問題はそれからでございまして、これからの動き、これからの経過、そういうものを見て、結果が出てきてからのことであろう、そういうふうに思います。
  221. 近江巳記夫

    ○近江委員 毎回、この概算要求のときあるいは実際の予算編成、こういう場合にアメリカのそういう要求というものは国民の目には非常に映るわけですね。今、大臣は留意するという表現でおっしゃったわけですが、しかし、これは国民の目から見まして非常にのまされておる、これだけ厳しい財政状況の中にあって防衛費だけは聖域扱いにしておるじゃないかという極めてシビアな見方がやはりあるわけなんですね。そういうことでやはり、私たちとしましては、大臣がおっしゃった我が国独自の自主的な考えに基づきまして、そして全体にバランスを見ていただく、こういう姿勢が一番大事だと思うのですね。  ですから、そういう点におきまして、いよいよこの夏のそういう概算要求の時期に入ってきまして、今、大臣のそういう見解をお聞きしておるわけでございますが、そこで、アメリカ側といたしましては、日本に防衛力の増強、防衛費の増加というのを求めてきておるわけでございますけれども、アジア・太平洋での米軍の肩がわりを求めておるのか、あるいはまた対ソ戦略上、日本の軍事力増強が必要と考えておるのか。現在でも自衛隊はかなり有数の能力を世界的には持っておる、防衛支出も決して少なくはないはずなんですね。したがいまして、米側として防衛面で日本に何を求めておるのかということなんですね。これは外務大臣として、この点をどういうように判断をされておるわけですか。
  222. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は、アメリカは国際情勢が非常に厳しい中にあって、そして自分の国自体も大変な財政赤字というものを抱えておる、それにもかかわらず防衛力、国防力というものを非常に充実しておるわけでありまして、それはアメリカなりのやはり自国の防衛とともに世界平和に寄与しなければならない、こういう判断であろうと思うわけでございます。同時にまたアメリカとしてはソ連が非常な防衛力、国防力の充実をしてきておるというのもその判断の基礎にあると思うわけでございます。したがって、アメリカがそういう苦しい中で国防力というものを充実しているだけに、アメリカの同盟国のNATO諸国あるいはまた安保条約を結んでおる日本アメリカがここまで国防力を充実しているのですから、やはりそれなりに防衛力を充実してほしい、そういう期待を持っていることは当然のことでありまして、これはアメリカの議会もしばしば表明しておりますし、アメリカ政府も表明しておるわけであります。  また日本については、安保条約を結んでおる、そしてもし日本が侵略を受けた場合は米国日本を防衛しなければならぬ義務がここに発生をしておる、こういう立場から見ても、やはり日本の防衛力をもっと強化してほしい、そしてみずからの国はみずから守るという体制をつくってほしい、あるいはまた日本日米安保条約というものをもっと効果的に運用できるような体制をつくってほしい、こういう期待アメリカが持つことも自然であり、当然ではないかと思うわけでございます。そしてそうしたアメリカ期待感というものは、しばしば日本に対しても表明をされてきておるわけでございます。これはまさにアメリカ期待感であります。それに対して日本は、そうしたアメリカ立場安保条約を結んでおるだけに理解できるわけでございますし、日本もまた自国の安全と平和を確保するという立場、また安保条約を効果的に運用するという立場からそれなりの努力をしなければならぬと思うわけでございます。しかし、予算等についてはあくまでも日本の自主的な判断で決定するわけでございまして、決してアメリカの肩がわりであるとかあるいはまたアメリカに強制されて予算を増額するとか、そういう筋のものではないということを申し上げる次第であります。
  223. 近江巳記夫

    ○近江委員 予算に関連しまして、問題がちょっと違うようでございますけれども、一つお聞きしておきたいと思います。  政府開発援助の問題でございますが、これはマスコミ等でも非常に問題だということで取り上げられておられるようでございますけれども、これは我が国も対外的に約束されてきておるわけです。今日の厳しい財政状況ということは十分わかるわけでございますが、当事者である外務大臣として本当に今一番大きな問題であろうかと思います。この問題につきまして、今後どのように対処していかれるのか、お伺いしたいと思います。
  224. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ODA予算につきましては、これはこれまで充実してまいりました。そしてこれを五年間で倍増しようということで努力を重ねておるわけでございまして、これはやはり日本の平和外交を推進するためには最も強力ないわば武器であります。そしてまた日本は、今日の世界情勢の中における日本の役割というものを考えますと、一のODAを通じて開発途上国に協力するという一とが最も大事ではないか、私はこういうふうに思っております。そのために外務省としても、最重点をODA予算の獲得、特に倍増に向けておるわけでございまして、来年度予算につきましては今いろいろと折衝しておりますが、相当思い切った予算の獲得をしないと倍増計画が達成できないということで今努力を重ねておる、こういうところであります。
  225. 近江巳記夫

    ○近江委員 これはなかなか外務省だけではいかない大きな問題でございますが、我が国も厳しいわけですけれども、対外的な約束ということもございますので、ひとつ努力をしてもらいたい、このように思います。  それから今日米関係というのは非常に厳しい緊張の状況というものが続いておるわけでございますが、特に軍拡競争というものにつきましては、これは非常に暑い八月、また我々思い起こすわけでございますが、非常に憂慮すべき状態になっておるわけでございます。この米軍のいわゆる核つきトマホークの配備の問題でございますが、これはもう我が国にとりましても、アジア全体にとりましても非常に重要なかかわり合いを持つ問題でございます。  そこで一、二点お伺いしたいと思うわけでございます。  この核つき巡航ミサイルの太平洋艦隊への配備、これはアジアでの米ソ間の核軍拡競争を激化させる、このように非常に懸念をするわけでございます。そこで米側ではこの核つきトマホークの配備によって日本周辺の核抑止力が高まるとしておるわけでございますが、政府も同じ認識に立っておられるかどうか、これが一点であります。  それから日本の周辺、アジアでの米ソ核軍拡競争の激化になるという心配が非常にあるわけでございますが、この点については政府はどのように考えておられるか、この二点についてお伺いしたいと思います。
  226. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 アメリカ世界戦略上やはりアメリカの国防あるいはまた太平洋の安全というものを前提としましてトマホークを艦船に配備する、こういうことを決定いたしておりまして、核つきトマホークあるいはまた非核トマホークが配備されつつある、こういうふうに承知をいたしておるわけでございますが、これはやはり一面におきましてはソ連の極東におけるSS20の大量な展開あるいはまた空軍、海軍力の増強、そういうものに対抗する意図があるのではないか、こうも判断されるわけでございます。こうしたことで緊迫するということは決して好ましいことではないわけでございます。しかし今日の現実の国際情勢から見ると、太平洋の平和と安全を図っていくという立場から見て、このトマホークの配備というのはいわゆる抑止力を高めていくということでやむを得ない措置であろう、こういうふうに我々は見ておるわけであります。
  227. 近江巳記夫

    ○近江委員 抑止力が高まる、そして決していいことではないけれども、そういう米ソの厳しい状況というものが高まってくるだろう、こういうことですね。そういうことに関しまして国民が今非常に不安にまた敏感に感じておるわけでございます。ソ連でもこのSS20が現在百四十四基ですか極東に配置されておると言われております。さらに、巡航ミサイル、SSNX21を開発しておる。これはトマホークと同じ射程、性能を持っておる。早ければことしの夏、配備が開始されるのじゃないか、このように米海軍筋の報道がされておるわけでございますが、外務省としては、どういうような情報をお持ちですか。
  228. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 お答え申し上げます。  私どもが承知しておる限りにおきましては、本年四月に公表されました米国防長官の「ソ連の軍事力」という報告書の中で、御指摘のSSNX21が開発されているということで、これはソ連の長距離巡航ミサイルの一種ということが指摘されております。そして、ことし中には多分運用可能になるだろうということを予測しておりますけれども、私どもはそれ以上の情報をただいま持ち合わせておらない次第でございます。
  229. 近江巳記夫

    ○近江委員 今のところは、つかんでいらっしゃるのは大体そういうことですか。  こういう問題というのはエスカレートするわけですね。SS20が配備されているから、またこれに対抗上トマホークを配備するのだ、そうしたら、トマホークを配備するから、またそれに対抗する、こういう、どちらともエスカレートをしていくという状況、これは日本を取り巻く状況というのは非常に厳しい、緊張したものになってくるわけでございます。  今回のこの核トマホークの配備に対抗しまして、今ソ連も極東でのSS20、核戦力の増強というものが進められつつある。それで、先ほど情報がございましたように、そういう開発も行われておる。現時点で、ソ連のアジアでの核戦力というものにつきまして、外務省としてはどこまで把握して、分析をされておるのか、ひとつお伺いしたいと思います。
  230. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 お答え申し上げます。  一九六〇年代以来、ソ連が極東において通常戦力、核戦力ともに非常に戦力を強化しているということは御承知のとおりでございまして、全体として大体四分の一から三分の一ぐらいの兵力が極東に配備されているのではないかと言われておりますけれども、その中におきまして、戦略核戦力といたしましては、ICBM、それに戦略爆撃機がシベリア鉄道沿線を中心に配備されているということ、それからSLBM、これは潜水艦に配備されている弾道弾でございますが、それはオホーツク海を中心に展開されているというふうに聞いております。     〔井上(一)委員長代理退席、新村(勝)委員     長代理着席〕それぞれが近代化されつつあるというのが現在の状況だと思います。  それから先生が先ほど御指摘の中距離戦力といたしましては、ここ数年来、特にSS20が配備強化を見ておりまして、現在ではSS20百三十五基、これが近い将来に百五十三基になるということを聞いておりますし、それから核攻撃可能な戦闘機バックファイアが八十機配備されているというのが、私どもが承知している極東における核戦力の配備状況でございます。
  231. 近江巳記夫

    ○近江委員 この七月五日に公表されました米下院歳出委員会軍事小委員会での公聴会記録によりますと、年度別核つきトマホークの装備艦船の数も示されておるわけですが、八三年度に戦艦一隻に配備というふうになっておるわけでございますが、これは現在の米軍の状況から見ますと、戦艦ニュージャージーにいわゆる核つきトマホークが既に配備されているということを示しておるのじゃないか、このように言われておるわけですが、これは外務省はどういう判断をしておられますか。
  232. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 御指摘の新聞に報じられました、いわゆる核つきトマホークの装備艦船の数という表につきましては、これは私どもの方で調べましたところでは、新聞にも一応そのとおりには出ておりますが、米下院の軍事小委員会の公聴会の記録であるということでございまして、ここに掲げられております表は、現実に核弾頭つきのトマホークを装備する艦船ではなくて、そのようなトマホークを装備する能力のある艦船を年度別、クラス別に表示したものである、このように承知しております。したがいまして、委員御指摘のように、八三年に戦艦一隻というふうになっておりまして、これは当然のことながらニュージャージーということでございますが、これはあくまでもニュージャージーがトマホークを装備する能力を付与されるということでございまして、それと、現実に核弾頭つきトマホークがニュージャージーに搭載されるということとは、一応別問題であるというふうに承知しております。
  233. 近江巳記夫

    ○近江委員 この核つきのトマホーク積載能力を持って日本寄港する可能性のある艦艇は四十一隻に上がるということが、米海軍の公式見解で明らかにされておるわけです。そうしますと、こうした新しい事態で、今までアメリカの基本方針としては核の有無ということは明らかにしない、こういう従来の立場からしますと、日本へのいわゆる核つきトマホークの持ち込み寄港というものは事実上ノーチェックということになってしまうのじゃないか、このように思うのですね。そうしますと、我々国会でも常に決議をし、問題にしておりますのは、いわゆる国是として非核原則、これが守られておるかどうかということを常に我々は言っておるわけでございますが、この点が非常に疑問になるわけでございます。結局、アメリカ次第、アメリカを信頼するしかないということになりまして、国是といえども、そういうような信頼するしかないというような形に放置されるわけでございます。この辺につきまして、外務大臣はどういうふうにお考えになっているのか、やむを得ないと考えておられるのかどうか、ひとつ真剣に御答弁いただきたいと思います。
  234. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 御承知のように、安保条約では事前協議制度があります。そしてアメリカが核を持ち込む場合には事前協議の対象になるわけでございます。そしてこれは必ずアメリカとしては、日本に対して協議をかけなければならぬという義務がアメリカはあるわけでございます。そして日米間には、御承知のような、条約を守るというお互いの約束があります。また日米間の安保条約及び日米の基本的な信頼関係というものがあるわけでございます。  したがって、アメリカが核を持ち込む場合に、こうした条約を守らないで事前協議制度を無視して持ち込むということは、これはもうあり得ないわけでございます。したがって、我々としては、アメリカが核を持ち込むに当たっては事前協議にこれはかけてくる。しかし、日本の場合は、もしそれをかけた場合においては、これはノーと言うということは、国会の内外において明らかにいたしておるわけでございますから、したがって、こういう立場から、アメリカ核持ち込みというものはあり得ないというのが政府判断であります。
  235. 近江巳記夫

    ○近江委員 それだけの能力を持った艦艇が日本にどんどん寄港をしてくる。これに対して、政府はそういうように、向こうから事前協議がないからということで今答弁があったわけでございますが、しかし、そうすると、これに対してソ連などはどういうように判断するかという問題ですね。これは国民も、政府はそういう見解であるけれども、現実にそれだけ能力を持った艦艇が寄港してくる、実際に本当にないのかというような、これはもう依然としてぬぐい去ることのできない疑問があるわけでございます。  そういうようなことからいきますと、そういうようにおっしゃっていることが国際的に通用するかどうかということなんです。状況からいきますると、ソ連では、恐らく日本米国核兵器の基地化しているというような口実をまた与えて、さらにまたソ連の核戦力の増強をさせていく、こういうような一段とエスカレートの口実になるのではないかと思うわけでございます。今後、これに対して大臣としては、先ほども答弁なさっているわけですけれども、そういう状況をどうしていけばいいとお思いですか。
  236. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 我が国としましては、日米安保体制を基軸として我が国の平和と安全を確保することとしているわけでありますが、日米安保体制に基づき我が国における米軍の駐留を認め、米国艦船我が国寄港等を認めることは、日米安保体制の信頼性を高め、その抑止力を確保するゆえんであると考えております。  ソ連は、極東地域におきましても一貫した軍事力の増強を継続しております。また、みずからも大規模な核戦力を保有しておるわけでありますが、米国として、かかるソ連の一貫した軍事力の増強にかんがみ、みずからの抑止力の信頼性の確保のための種々の努力を行っていることについては、我が国としても理解できるわけであります。また、このような軍事力の増強を行っているソ連が、我が国日米安保体制を堅持していることについて、これをみずからの口実に利用するといういわれはないものと考えております。  なお、我が国としては、従来から述べているとおり、米国による我が国への核の持ち込みについてはこれは拒否することは、しばしば申し上げているとおりであります。また、我が国非核原則は、これはもう内外に周知徹底されているところであると考えております。
  237. 近江巳記夫

    ○近江委員 一般的な問題でございますけれども、米ソいずれにしましても、日本の領空を巡航ミサイルが通過するということは領空侵犯ということになるのかどうか、まず政府の見解をお伺いしたいと思います。
  238. 小和田恒

    ○小和田政府委員 ただいまの御指摘のような事態が具体的にどういう状況のもとで起こるのかということが明らかでございません段階で、全く仮定の問題について余り厳格なことを申し上げるのはいかがかと思いますけれども、極めて一般論として申し上げますれば、我が国の領空というのは我が国の主権が完全に及んでいる空域でございますから、そこに、ある国が巡航ミサイルを飛ばしてそれに侵入する、あるいはそういう形で戦闘行為を行うということは、我が国の主権を侵す行為になりますので、我が国としては認められない、国際法上認められないことであるというふうに認識しております。
  239. 近江巳記夫

    ○近江委員 もちろんこれは一般的なことをお伺いしておるわけですが、スウェーデンの国防次官は、航空機であれ潜水艦であれ、また東からのであれ西からのであれ、スウェーデン領の侵犯は許さない、こういうように言明しているわけですね。今政府委員の方が、侵犯である、認められないということを明確におっしゃったわけでございます。  これは、あくまでこういう防衛論議というのは仮定からするわけです。実際にこんなものがあればそれこそ終わりの問題ですから、仮定ということでどうかということじゃないのですね。ですから、一般論としてこれはお聞きしておるわけでございますが、例えば米軍が太平洋から核トマホークを発射して、日本の領空、領海を通過して日本海へ抜ける、こういうようなコースをとる場合は、当然こんなことがあればしまいですけれども、一般論として、事前協議の対象となるかどうか、これはどうなんですか。
  240. 小和田恒

    ○小和田政府委員 先ほどもお答えいたしましたように、一般論として、我が国の領空を我が国の許可なしに通行して巡航ミサイルが飛ぶというようなことは、我が国の主権の侵犯になるわけでございます。したがいまして、具体的なケースを仮定に基づいていろいろ議論いたしますと、いろいろ誤解を生んだりすることがございますので、余り特定の国についてどこがどうというようなことについては、申し上げることは差し控えたいと思いますけれども、一般的に申し上げますれば、巡航ミサイルが我が国の上空を許可なしに飛ぶというようなことについては、そもそも安保条約であるとか事前協議とかいう以前の問題として、一般国際法上領空の侵犯になるということは先ほど申し上げたとおりでございますので、我が国として認められないところであるというふうに考えております。
  241. 近江巳記夫

    ○近江委員 認められないということであれば、それに対する対応ということは当然きちっといろいろお考えになると思いますが、一応政府の態度というのはわかりました。  それからこれも関連する問題ですが、ニュージーランドにおきまして労働党選挙の結果政権に返り咲くことになったわけでございますが、労働党は、核積載米艦船寄港を拒否するとともに、米政府が核の有無を明らかにしない方針を変更しないのであればすべての米軍艦の寄港を拒否する、こういう態度を明確にしておるということが伝えられておるわけですね。そうしますと、我が国もこれは国是として非核原則を厳として堅持しておるわけでございます。そういう点から、これは非常に参考になる一つの態度ではないかと思うわけでございます。これに対しましてアメリカ政府は、ANZUSの廃棄もあり得る、こういう意向を示しておる、このように言われているわけですね。  これは我が国にも非常に深い関係が出てくるものですからお聞きしておるのですが、この問題に関しまして政府としてはどういう認識と情報を持っていらっしゃるのか、お伺いしたいと思います。
  242. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 お答え申し上げます。  御承知のように、ニュージーランド労働党がさきの総選挙のキャンペーンの際に、核問題についてのいろいろな政策を表明したことは事実でございます。例えば領土及び領海の非核地帯化、それからニュージーランドへの核兵器搭載艦及び原子力推進艦の訪問禁止等々の政策を表明したことは承知しておりますが、しかし私どもとしては、これは党としての政策を示したものであって、これがニュージーランド労働党政権の座につくことになった際の政権そのものの政策であるというふうにはまだ承知いたしておりません。  ちなみにロンギニュージーランド労働党党首は昨年の七月に、核兵器を搭載していないとの了解のもとにのみ外国艦船ニュージーランドへの寄港を認めるということを言ったことがございます。そのようなステートメントを発出しているということは承知しておりますけれども、これにつきましても、外国艦船核兵器搭載の有無について確認が得られない限り入港を拒否するという政策方針を表明したものであるのかどうか、その辺についてまだ必ずしも明確になっていないというふうに考えております。
  243. 近江巳記夫

    ○近江委員 それは党の見解であって、政権という立場からいくとそこに柔軟性が出てくるのじゃないかというような今大体のお話であったように思いますが、いずれにしましてもニュージーランドとしてもやはりそういう非常に厳しい姿勢で今後やっていくことは十分考えられるわけですね。ところが、我が国の場合は何か非核原則もなし崩し的に、国民の大きな疑惑の中で常に推移しておる、何かもやがかかったような状況であるということが言えるのじゃないかと思うのですね。それで、これも仮定と言えば仮定かもわかりませんが、もし我が国政府が核積載米艦船寄港を拒否すると同時に、米艦船核兵器を積んでいるかどうかを明確にしない限り、すべての米軍艦船寄港を拒否するということを表明したとしたならば、アメリカ日米安保条約を廃棄するということを言い出す可能性も、このニュージーランドの例からいきますとそういうことになるのじゃないかと思うのですが、このニュージーランドの例から見まして、このことについては政府としてはどういうようにお考えですか。
  244. 小和田恒

    ○小和田政府委員 先ほど欧亜局審議官お答えいたしましたように、ニュージーランドANZUSの場合にどういうことであるのかということについて事実関係を私ども正確に承知しておりませんし、いずれにしてもANZUSの問題はアメリカと豪州、ニュージーランド関係でございますので、我が国としてコメントすることは差し控えたいと思いますが、今委員が御質問になったこととの関連で一つだけ申し上げるといたしますと、日米安保条約は、委員承知のとおり、我が国我が国の同意なしに核を持ち込むことは認めないという大前提我が国非核原則という基本原則前提にいたしまして現在の日米安保条約はできているわけでございます。アメリカはそういう我が国立場を理解した上で、これに基づいて事前協議条項を含む現在の日米安保条約というものができているわけでございます。  したがいまして、今度のANZUSの場合に、伝えられますようにニュージーランド政府の交代によって政策を変更する、その変更した政策に対してアメリカがどういうふうに対応するかという問題と、既に我が国の一貫した政策としてアメリカ側に周知徹底せしめており、アメリカがそのことを前提にして安保条約の枠組みをつくっております日米安保体制の場合とはおのずから違うのではなかろうかというふうに考えております。
  245. 近江巳記夫

    ○近江委員 それは核がないということを明言させるということと大分違いますね。そうでしょう。米軍が核がないと先方から明言するということと意味が違うでしょう。その辺については同じだとお思いなんですか。
  246. 小和田恒

    ○小和田政府委員 先ほども申し上げましたように、日米安保条約の体制のもとでは、日本が、アメリカが核の持ち込みを希望する場合には事前協議という制度によって日本側に対して協議を持ちかけてこなければならないという義務を負わせて、そういう義務を前提にした条約の仕組みができているわけでございます。したがいまして、日本側から申しますれば、そういうアメリカに対して明確な国際法上の義務を課しているものについて、アメリカがそういう義務を果たすという前提で行動するというのは当然でございますし、したがって、核を持ち込んでいないだろうなというようなことについて日本側からアメリカに提起するというのは適当ではございませんし、他方、日本側から見ましてアメリカが核を持ち込むことは認めないよということは既に第六条の実施に関する交換公文の制度の中に明確に示されていることでございますので、アメリカとしては当然そういう前提で行動している、こういうことになっているわけでございます。したがいまして、今委員が御質問になりました仮定の問題というのは、実はニュージーランドの場合については新しい問題として今後出てくるかどうかわかりませんけれども、日米安保条約に関してはそういう形では問題は起こり得ない。つまり、アメリカは必ず持ち込むときには事前協議の制度によって日本側に対して相談をしてくる義務があるわけでございますので、日本側から念を押すまでもなく、アメリカとしては黙って持ち込んではいけないということが条約上明確になっているケースであろうというふうに考えております。
  247. 近江巳記夫

    ○近江委員 ANZUS条約を見ますと、その前文におきまして、米国が沖縄、日本国内周辺に軍隊を駐留させることがあることに留意し、このように明確に書かれておるわけです。これはいろいろ私も調べてみましたところ、日本が再び軍国主義復活による侵略を米軍の駐留によって防止する、こういう意味から盛り込まれたというような話もあるわけです。ところが、この意味は今日的に大きく変化してきておると思うのですね。すなわち、このANZUS条約日米安保条約とまさに連動するということを明示しておるのではないか、非常に大きな疑惑がここに上がってきておるわけであります。この米軍の日本駐留がANZUS前提になっているのではないか、こういうことも言われているわけです。まず、この点から政府の見解をお伺いしたいと思います。
  248. 小和田恒

    ○小和田政府委員 ANZUS条約が前文において今委員が御指摘になりましたような表現を用いていることはそのとおりでございます。この条約は、御承知のとおり、一九五一年九月一日にサンフランシスコで署名された条約でございますので、サンフランシスコ平和条約、それから旧日米安保条約とほとんど時を同じくしてつくられているということから、当然このANZUS条約をつくります段階におきまして、米国が当時の琉球、現在の沖縄に軍隊を維持するということ、そこに行政上の責任を有するということ、それからさらには、平和条約の発効の結果として日本国を占領していた米軍というものがその存在を解消して、その後日本国内及びその周辺に軍隊を駐留させる可能性があるということは、ANZUS条約を締結するに当たって一つ事実関係として予想されていたことであろうというふうに考えます。  ただ、そのことは、この前文に書いてありますように、事実としてそういう状況が現に存在している、あるいはそういう状況が生ずる可能性があるということを事実問題として留意しておるということを前文に述べているにとどまるわけでございまして、ANZUS条約自体は、委員承知のとおり、この中でその三国、つまり豪州とニュージーランドアメリカ、この三国の間における集団的及び個別的自衛権に基づく集団的安全保障の取り決めであるというふうに御理解いただきたいと思います。
  249. 近江巳記夫

    ○近江委員 御理解いただきたいといっても、やはり状況が非常に疑問に思う事柄がたくさん出てきているのですね。例えばリムパック84では、御承知のように全くオーストラリア、ニュージーランドアメリカ日本ですね、こういう演習に参加しておる。実態的には日米安保ANZUS条約との連動という形にこれはなっておるわけですね。このANZUS条約に米軍の日本駐留がこのように明記されておる、こういうことを考えますと、これはいわゆるANZUS条約日米安保の連動という新たな大きな疑惑というものが非常に盛り上がってきておるわけです。  この点について政府としては、ただこのまま今の解釈のままで通していくのか、何らかの国民に対する明確な釈明といいますかあるいは説明をなさるのか。こういうリムパック84等の実態を見ておりますと、こういう事実の積み重ねというものが結局集団自衛権の行使につながっていくんじゃないか。こういう点については憲法に抵触してくる非常に大きな問題になるわけでございまして、実態的に見てこういう非常に大きな疑惑があるわけですから、それに対してはどう答弁されるのですか。
  250. 小和田恒

    ○小和田政府委員 国際法及び条約の見地から一言だけ御説明しておきたいと思います。  先ほどもちょっと申しましたように、豪州、ニュージーランドアメリカ合衆国の間の三国の安全保障条約としてのANZUS条約というものは、この三国の間においていずれかの締約国に対する武力攻撃が自国の平和及び安全を危うくするものである、したがってその危険に対処するように行動するというのが骨子になっておりまして、したがってこの三国の間においての集団的及び個別的な自衛権に基づく集団安全保障の取り決めであるわけです。他方、日米安保条約は、従来から政府説明しておりますように、我が国の領域に対する武力攻撃があったときに我が国を防衛するために我が国は個別的自衛権を行使し、米国が集団的自衛権を行使して日本の防衛に当たる、こういう趣旨の条約でございますので、この二つの条約が連動するということは実際には考えられないわけでございます。  もちろんアメリカ立場からいたしますと、アメリカは、ANZUSによって豪州、ニュージーランドとの間に三国間の集団安全保障取り決めを結んでおりますほかに、例えば米比の取り決めであるとかあるいは米韓の取り決めでありますとか、いろいろ二国間の取り決めをそれぞれの国との間に結んでいることは事実でございますが、これはいずれもアメリカと対象となっております当該国との間の集団的安全保障の取り決めてございまして、それぞれがそれぞれの規定の枠内において集団的自衛権の行使という態様で動くわけでございます。日本の場合につきましては、先ほども申し上げましたとおり、我が国に対する武力攻撃があったときにのみ日米安保条約というものが発動するわけでございます。この第五条に基づく共同対処という規定は我が国に対する武力攻撃があったときにのみ発動する規定でございますので、これとANZUSとが連動するということは条約論、国際法の問題としては生じ得ないということを申し上げておきたいと思います。
  251. 近江巳記夫

    ○近江委員 先ほど申し上げましたように、このリムパック84、実態的には非常にそこに疑問が生ずるような行動がここにとられておるわけですね。集団的自衛権の行使につながるこういうような演習行動、こういう今大きな一つの疑問が出てきておるわけですから、これについてはやはり自重すべきじゃないかと私は思うのです。それと同時に、政府としてはやはり国会でこういう答弁が行われておるわけでございますか、きちっと機会を見て何らかの見解表明といいますか、明確なそうしたことをしなければいけないんじゃないかと思うのですけれども、いかがですか。
  252. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 リムパックへの我が海上自衛隊の参加につきましては、従来からしばしば政府側から御答弁申し上げておりますとおりでございまして、これは確かに豪州、ニュージーランド、あるいはほかにもカナダというような国も演習に参加はしておりますけれども、この演習の目的と申しますのは、あくまでも自衛隊の戦術技量の向上を図るためのものであるということでございまして、いわゆる集団的自衛権の行使を前提としたような演習ではない。したがいまして、憲法上の建前から申しましてもそういうものに抵触する性格のものではないということは、従来からしばしば政府側から御説明申し上げているとおりでございまして、したがいまして、リムパックへの自衛隊の参加という点につきまして委員御懸念のような点は毛頭ないというふうに考えております。
  253. 近江巳記夫

    ○近江委員 先ほど申し上げましたように、このANZUS日米安保条約とのいわゆる連動という疑惑というものはやはり依然としてあるわけですね。ですから、この辺につきまして、私先ほど申し上げましたように、明確に日本政府としてきちっとした見解をお出しになるべきだと思うのです。今答弁いただいておりますけれども、もう一度この点につきまして大臣から御答弁いただきたいと思うのです。
  254. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ANZUS安保条約というのは全く連動してないというふうに私は理解をしておりますし、ですから、その点について説明をする必要はない、こういうふうに思います。
  255. 近江巳記夫

    ○近江委員 説明する必要はないと言って、今私が質問してそういう政府の答弁が返ってきているわけですけれども、このANZUS条約で「琉球において軍隊を維持し、かつ、行政上の責任を有し、及び日本国との平和条約が効力を生じたときには、日本地域における平和と安全の維持を資するために日本国内及びその周辺に軍隊を駐留させることがあることに留意し、」と頭に来ているのですね。これで安保ANZUSは何の関係もないのですか。現実にリムパックのこれだって行われているわけでしょう。現実にそういう疑惑というものがここに生まれてきているわけですから、それに対して、ただ口頭でそんなことありませんと言うだけでは、言った、言わないの応酬で終わりますね。
  256. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは先ほど条約局長説明をしましたように、ANZUSが生まれるまでにはサンフランシスコ平和条約あるいはまたそれまでの日本と第二次大戦、そういういろいろの経過というのがあってそういう中で生まれたという歴史的な背景というのはあると思いますけれども、ANZUSそのものの条約日米安保条約というものは何も相関関係というものはない。日本安保条約というものはあくまでも日本アメリカとの条約でありますし、そして日本は個別的自衛権のもとにこれに参加しているわけでありますし、ANZUSニュージーランドアメリカ、オーストラリア、この三国の安保条約でありますから、これはそういう意味では日本安保条約とは相関関係というのはないと私は思います。また、その後の国際情勢というのは非常に変わってきておりますし、そしてANZUSに参加している三国そして日本、これは今国際的にも非常に良好な関係にあるわけでございますが、日本をそうしたANZUSができる過程の中で一つの対象としているとかそういうものはあったとしても、今やそういう状況というものは全く変化しておる、こういうことがはっきり言えるというふうに私は思います。
  257. 近江巳記夫

    ○近江委員 非常に誤解が出てきておりますし、今後そういうリムパック84のような行動につきましては慎重にやるべきでありますし、そして国民のそういう疑惑というものにつきましてはきちっとした説明をした上で納得を得るような、そういう態度であってもらいたい、このように思います。よろしいですか。今後はそのようにしていただけますか。
  258. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本のリムパック参加にしても、あくまでも日本の場合は個別的自衛権に基づいて、その範囲内においての参加であるし協力でありますから、これはもしそうした疑問等があれば、日本の建前、立場というものは明快にいたしまして理解を求めていきたい、こういうふうに思います。
  259. 近江巳記夫

    ○近江委員 大臣、ちょっと何か歯が痛いというようなお話でありますけれども、もうちょっと我慢してください。私も歯が痛い。歯が痛い者同士でひとつ、そこでまたかみ合いができるかもわかりませんから。  この六月一四日、中曽根総理はサミット出席前の党首会談の際、もう既に大臣も聞いていらっしゃると思いますが、核兵器の使用は核保有国の勝手である旨の発言をされた。その後、勝手とは言っていないとそのように取り消しをされておられるわけでありますが、その意味として、核兵器を使うかどうかは核保有国が選択することである、これを条約で縛るのは核保有国の主権を縛ることで内政干渉のおそれがある、こういう意味のことをおっしゃっているわけですね。これは政府の公式見解ですか。このことに関しまして外務大臣としてはどういう見解をお持ちですか。
  260. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 中曽根総理が核兵器の使用は核保有国の勝手であるという発言をしたという報道があったわけですが、その後中曽根総理から、そういう発言はしていないという言明があったわけですし、総理が発言してないと言うわけですから、その限りにおいては私は問題にするまでもないのじゃないかと思うわけであります。  やはり核兵器というのは大変な、これが使われれば人類滅亡に結びつく恐るべき兵器でありますから、核を持っている国も持たない国も、核が使われないようにあらゆる努力を重ねていく、努力をするということは当然のことじゃないか、こういうふうに思うわけであります。
  261. 近江巳記夫

    ○近江委員 総理はそのように文言を修正されているわけですけれども、おっしゃった意図、意味自体は非常にいろいろと問題があったような、そういう発言をされているわけですね。  そこで三つ大臣にお聞きしたいと思いますが、核兵器保有国は核兵器を使う権利はあるのかどうかということが一つ。第二点は、核兵器の使用ということは条約によっても規制できない、そういうものであると考えておられるのかどうか。第三点は、条約によって核兵器の使用を規制することは、絶対に主権侵害や内政干渉になるというのが政府の見解であるのかどうか。以上三点についてお伺いしたいと思います。
  262. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今の御質問につきましては、国際法上の問題も含めてのことでございますので、条約局長からまず答弁をさせます。
  263. 小和田恒

    ○小和田政府委員 一般論として、今委員が御質問になりましたことについて国際法上どういう考え方になるかということについて申し上げたいと思います。  まず、核兵器保有国は核兵器を使う権利があるのかということでございますが、御承知のように、国連憲章のもとでは武力の行使というものは一般的に禁止されているわけでございます。したがいまして、国違憲章二条四項に該当するような武力の行使は、核兵器を用いる場合であろうとなかろうと許されないということは、国連憲章上の明確な義務であって、その義務は核兵器保有国についても適用がある、こういうことをまず第一点として申し上げたいと思います。  ただ、これも委員承知のとおり、自衛権の行使の場合、国連憲章第五十一条に基づいて自衛権を行使する権利というものは、これはまた国連加盟国を含めすべての主権国家の権利でございますので、そういう自衛権の行使ということになってまいりますと、その自衛権の行使はどういう武器に限定されなければならないという規則は、現在の国際法上は、特定の既に禁止されている武器の使用の場合を除きますとそういう限定はないわけでございます。  この核兵器が現在の実定国際法に違反するか、こういうことになりますと、もちろんこの核兵器というものは非常に大量の破壊を伴うという面から、国際法の考え方の根底になっております基本思想の一つであります人道主義というような見地から申しますと、その精神に合致しないということは申せると思いますけれども、残念ながら、現在の段階で核兵器の使用が実定国際法上禁止されておるかということになりますと、そうは言えないということにならざるを得ませんので、その意味におきましては、核兵器の使用についての現在の国際法上の規定から考えて許される範囲というものはおのずから出てこざるを得ないというふうに考えます。  それから条約によっても規制できないかということでございますが、もちろん条約によって核兵器の使用を規制するということは理論的にはあり得るわけで、現に、御承知のとおり国連の軍縮委員会その他の場におきまして、核兵器の使用を抑制するあるいは禁止するという方向で国際的な努力が続けられているわけでございますけれども、今までのところその努力がまだ実を結んでいないというのが実態であろうと考えます。  それから第三番目の、条約核兵器の使用を規制することが主権侵害や内政干渉になるのかという御質問でございますが、これは前提がはっきりいたしませんと一般的な形でお答えすることが非常に難しいと思いますけれども、もちろん、核兵器を持っている国がみずからの自由意思によってその核兵器の使用を抑止するということは、その国自身が自分自身に対して規制を課すわけでございますから、したがってそういう意味で内政干渉であるとかあるいは主権侵害であるとかいうようなことにはならないと思います。他方、他国がこの第三国に対して、第三国の意思に反して核兵器の使用を禁止するというようなことになってまいりますと、これは国際法上の評価はまたおのずから別なものになるであろうというふうに考えます。  いずれにいたしましても、一般論を離れて中曽根総理の御発言との関連で申しますならば、先ほど外務大臣が御答弁いたしましたように、総理御自身がこのことについて、その内容について正確ではない、そういうことを言ったわけではないということを言っておられますので、総理の発言との関連においてこの問題を解釈することは差し控えたいと思います。
  264. 近江巳記夫

    ○近江委員 これは中曽根総理が発言したということで安倍さんの御意見を聞いておるわけでございますが、一九六三年十二月七日、東京地裁いわゆる下田判決で、原子爆弾の投下は国際法違反である、こう認定も下しているわけですね。我が国は全世界で初めて広島、長崎の被爆の経験をしているわけです。そういう点からいきますと、やはり中曽根総理の発言というものは、打ち消しはされていますけれども、極めて不穏当な発言であった、国民の感情を逆なでにしておる、こう言っても過言ではないと私は思うわけでございます。  そういう点で、政府、特に外務大臣は最もそういう大事な立場にいらっしゃるわけでございます。そういう点で、核兵器の使用は国際法違反というこの下田判決も出ておるわけでございますので、明確なそういう立場に立たれるべきだと思うのです。これについて安倍大臣からお伺いしたいと思います。
  265. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今、核に関する御質問に対しまして条約局長からお答えをいたしたわけでございますが、いずれにいたしましても、日本世界で初めて原爆の洗礼を受けた国であります。二度と再びこうした核が用いられてはならない、こういう悲願を込めて非核原則というものを国是として堅持しておるわけでございますので、そういう立場から、日本としては世界に対して核軍縮、さらに核の最終的な絶滅に向かってあらゆる努力を重ねていかなければならない、日本のそれはそれなりの大きな平和国家としての立場である、こういうふうに私は考えております。
  266. 近江巳記夫

    ○近江委員 何かちょっとはぐらかされたように思うわけでございます。  もう一度明確にしておきたいのですが、いずれにしましても、核兵器の使用は国際法違反だ、これはただその条約の文言とかそういうことじゃなくして、あらゆる意味で言い切って差し支えない問題だと私は思うのですよ。いかがですか。
  267. 小和田恒

    ○小和田政府委員 先ほど御答弁の際ちょっと触れた点でございますけれども、核兵器の使用は、この兵器が非常に絶大な破壊力、殺傷力を持っているという点で、国際法の根底にありますところの基本思想の一つである人道主義の精神には合致しないものであるということは明確であると思います。ただ、現在の段階において厳格に国際法上の問題として申しますならば、国連憲章を含め実定国際法が核兵器の使用を禁じている、現在既に核兵器の使用は禁じられておるということであるかといいますと、現在の諸国家の法的な認識でありますとか、あるいは国際法学者の学説でありますとかというものを総合して考えて、実定国際法に違反するという法的認識が国際社会で固まっているかということになるとそうは言えないというのが実態であると思いますし、それが従来からの政府の見解でございます。  先ほど下田判決について言及がございましたので一言申し上げたいと思いますが、委員が御指摘になりましたように、確かにこの下田判決におきましては「広島、長崎両市に対する原子爆弾による爆撃は、無防守都市に対する無差別爆撃として、当時の国際法からみて、違法な戦闘行為であると解するのが相当である。」という判示がございます。ただ、御承知のとおり、この事件は、原爆投下によって被害を受けたという原告が、国が平和条約を締結したことによってアメリカに対する損害賠償請求権を失った、したがって国家賠償法に基づく損害賠償ないしは憲法に基づく損失補償をすべきであるというのが事案でございますが、この判決自体におきましては国が勝訴をいたしまして、裁判所は原告に損害賠償請求権なしという判決を下したわけでございます。  したがって、国といたしましては、この下田判決におきます裁判所の認定、つまり核兵器の使用は国際法違反であるという認定については政府の見解と異なるという事情はございましたけれども、訴訟法上国が勝ったという状況の中で、国がこれ以上この点を争うことが許されないということでそのままになっておるということでございまして、政府立場は、先ほど申し上げたとおり基本的な考え方として、人道主義の点からいろいろ問題があるけれども、実定国際法の問題として現に既に核兵器が禁止されておるかということになるとそうは言えない、であるからこそまた、この核兵器を禁止するために軍縮委員会その他の場において国際的な努力が重ねられているということであるということを御理解いただきたいと思います。
  268. 近江巳記夫

    ○近江委員 あなたのおっしゃっているのは本当に法文上の解釈といいますか、しかし、先ほども申し上げたように、我が国としては唯一の被爆国でもあるわけです。そういう一連のことからしまして、中曽根総理の発言は非常にまずいし、国民感情を本当に知らない。また政府としては、先ほども人道上という立場での解釈もあったわけですが、当然そこに立脚をして、こうした国際世論といいますかそういうことを高めていく努力をうんとするべきだと私は思うのです。それを特に強く要望しておきます。大臣、ちょっと一言答えてください。
  269. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 核兵器の使用が国際法違反であるかどうか、この点については今条約局長が答弁しましたように、国際法が核兵器の使用を禁じているかといえばそこまで言えないというのが、国際法のいわば解釈からいえばそうでありますけれども、しかし核兵器というのは、使ってしまえばもうその国だけではなくて恐らく世界人類の破滅につながっていくわけでございますから、国際法も何もないわけであります。そういう意味では、やはり人類の絶滅につながる恐るべき兵器でありますから、日本としてもああした洗礼を受けたわけですし、あくまでも人道的な立場に立って今おっしゃるように、世界に向かって核兵器の絶滅に向かって努力していかなければならない、これが日本の平和外交を推進する立場である、私はこういうふうに思っております。
  270. 近江巳記夫

    ○近江委員 安倍さん、時間は二十分ほど要るわけですか。私は持ち時間が四時二十九分まであるのですよ。歯医者へ行くから時間をいただきたいということをおっしゃっているから……(安倍国務大臣「いえ大丈夫です」と呼ぶ)そうですか、大丈夫なんですね。いや、人道上の問題ですからね。(安倍国務大臣人道上大丈夫です」と呼ぶ)本当に大丈夫なんですね。  それでは次に、韓国あるいは朝鮮半島の問題についてちょっとお伺いしたいと思います。  いよいよこの九月に全斗煥大統領が来日されるわけでございますが、これは日韓国交正常化以来初めてのことなんです。そこで、折衝の要に当たられました安倍さんとしては、初めての訪日、この意義につきましてどのように考えておられるか、まず初めにお伺いしたいと思います。
  271. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 先般韓国を訪問しまして、李韓国外相と話をいたしました。そして全斗煥大統領訪日がいわば正式に決まったわけでございます。九月の初旬においでになるということでございます。これは韓国のいわば歴史始まって以来のことでございます。日韓が隣国でありながら大統領の訪問もこれまでなかったということは、まさに異例とも言うべきでございますが、それなりにやはり歴史というものの複雑さといいますかそういう面が背景にあったわけでございますが、ようやく日韓間においても関係の改善が進み、そして過去に執着するよりは未来に向かって新しい関係を開こう、こういう全斗煥大統領の意向もあって今回の訪問につながったわけで、すべてがこれで解消するというわけではありませんが、この訪問を機に新しい気持ちといいますか立場日韓関係のこれからのスタートを切っていかなければならない、そういう非常に意味のある重要な、歴史的な訪問である、私はこういうふうに理解をいたしておるわけであります。
  272. 近江巳記夫

    ○近江委員 そこで、首脳会談でどういうことが議題になってくるのですか。いろいろと言われておりますが、差し支えない限り……。
  273. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 一応おいでになることは決まったわけでございますが、首脳会談等もちろん行われるわけでございますけれども、その内容等については正式にまだ何も打ち合わせていないわけでありまして、お互いに政府で決定してから、これらの問題等は外交ルートを通じましていろいろと協議をしてまいりたいと考えております。
  274. 近江巳記夫

    ○近江委員 それはそのとおりでございますが、いろいろ議題、項目といいますか、だれが見たって特にこういうことが大事だなという問題があるわけですから、今安倍さんの頭にあるその辺のところをひとつ御答弁いただきたいと思うのです。
  275. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 やはり今から予測することは大変難しいわけですが、一般的に言えば、二国間の問題あるいは朝鮮半島の情勢についての論議であるとか、アジア、さらに世界情勢、いわゆる二国間と国際情勢、こういう点が議題の根幹になる、こういうふうに私は思っております。
  276. 近江巳記夫

    ○近江委員 この朝鮮半島の緊張緩和の問題につきましては、三者会談、これは北側の提案ということになっておりますが、韓国は当事者間の話し合いということでありまして、依然として枠組みをどうするかという範囲を出ておらないわけでございます。  先般、私は予算委員会でも安倍さんにこの点はお伺いしたことがあるわけでございますが、日本政府として、朝鮮半島の緊張緩和のために今後どういうようにやっていこうとなさっておるのか。我が国として果たすべき役割にどういうものがあるかという問題があるわけですが、これにつきましては大臣はどのようにお考えですか。
  277. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本政府としましては、朝鮮半島の緊張緩和が進むことが日本の平和と安定だけではなくてアジアの平和と安定のためにも最も望ましいことである、こういうふうに思いますし、そのための環境づくりにも努力をしなければならぬと思うわけでございます。しかし、そうした緊張緩和を進め、そして一挙に南北の関係が調整されるというためには、基本としては韓国と北朝鮮の両当事国が話し合うということが最も大事ではないか、こういうふうに思っておるわけでございます。これは、韓国政府もそういうことを申しております。これに対して北朝鮮は、三者会談で、北朝鮮、アメリカ、そして韓国で話し合おう、アメリカは、三者会談ということなら中国も入れて四者会談ではどうか、こういうふうな提案をいたしておるわけでございます。我々はあくまでも両当事国が話し合うということから出発すべきではないか、こういうふうに思っておりますが、いろいろな構想が出ております。これは緊張を激化するわけではなくて、緊張を緩和する方向でこの構想が動いておるわけですから、それなりに大変結構なことではないか、こういうふうに判断をいたしておるわけでございます。  日本としましては、今後ともそうしたいろいろの動きを見詰めながら、協力すべき点があれば協力をしていきたい。日本が今朝鮮半島の緊張緩和で具体的に協力するということになれば、例えば中国と韓国との非政治面での関係改善に日本としても多少動いてきたわけでございまして、それなりの一つの役割は果たしつつあるわけでございますし、これからもそうしたことをやっていける状況になれば動いてみたい、こういうふうに思っております。
  278. 近江巳記夫

    ○近江委員 大臣もその問題は真剣に、よくお考えになっていらっしゃると思います。  そこで、我が国政府としては韓国とは非常に緊密な関係にあるわけですね。朝鮮民主主義人民共和国との間を見ますと、これはだれが見ても極めて閉鎖的な間柄ということになっておるわけでございますが、北側との間でも対話の促進であるとか関係改善に取り組んでいっても決しておかしくもありませんし、これが即日本が朝鮮半島の安定という点に大きく寄与していくことにつながるのじゃないか、このようにも私は思うわけでございます。この点の我が国の態度自体、北に対しては余り前進がない、その理由といいますか、政府立場をお聞かせいただきたいと思うのです。
  279. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 政府としましては北朝鮮との間では公的な関係を持ってないわけでございますし、そうした姿勢また政策はこれまでも変化ありませんでしたし、今後もこれを変えようという考えはありません。しかし、民間の関係というものは時には非常に密接になり、時には非常に冷却するということもあるわけでございますが、ずっと続いてきておるわけでございます。そして、それはそれなりに朝鮮半島の緊張緩和、そういう面に役割を果たしておるのではないかというふうに思っておるわけでございます。
  280. 近江巳記夫

    ○近江委員 北側は、例えば金日成主席の訪ソの際、対日批判というものを抑制しておる。あるいは五月三十日来日しましたシアヌーク大統領は、金日成主席が日本との関係を何らかの形で樹立したい、こういう伝言をしておる。あるいは七月四日に訪中された宮澤元官房長官に対して呉学謙外相は、日本との関係改善を望んでいるという北の立場を伝えているわけです。こういうように、向こうも改善したいという姿勢が見られるわけですね。全斗煥大統領の来日を控えまして、この時期に外務大臣としては非常に言いにくい点もあろうかと思うわけでございますけれども、韓国とはうんと仲よくしているわけですから、本当に、これからの日本の平和、そして朝鮮半島の平和、安定、いろいろなことを考えていったときに、我が国立場としてはそういう北側との対話、関係改善というものを考えていかなければいけないのじゃないかと私は思うわけです。当然大統領訪日の際には外相レベルでの日韓会談も開かれる、このように思うわけでございますけれども、そういう際にも韓国側の理解を求められることもあるでしょう。北との対話促進といいますか、それをやるにつきましてそういう状況づくりも非常に大事であろうかと思うわけでございますが、その点大臣の今後の努力をぜひしてもらいたい、このように思うわけです。  そこで、先ほど民間レベルでは活発なそういう動きもあるということをおっしゃっていたわけですが、今回、日朝友好議員連盟が朝日友好親善協会に対して、民間漁業協定締結交渉の東京会談開催のために訪日代表団派遣を求める招請状を送付した、こういうふうに伝えられておるわけですが、北朝鮮代表団の入国について入国申請があれば受け入れる方針であるのかどうか。それからもう一つは、民間漁業協定交渉の東京会談を成功させるために政府側は側面的に支援する考えがあるかどうか。この二点につきましてお伺いしたいと思います。
  281. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日朝漁業問題は、我が国の零細漁民の生計にかかわる問題でありまして、政府としても、日朝民間漁業暫定合意再開に向けて日朝の民間当事者による話し合いが行われることを望んでいるわけでございますが、いずれにいたしましても、北朝鮮からの入国につきましては、具体的申請を待ってケース・バイ・ケースで決定することといたしておるわけでございます。日朝議連において招請状を送付した、こういうことも聞いておりますが、北朝鮮側がこれにどういうふうに対応するのか、そういうことも見ながら対応してまいりたい、こういうふうに思っております。
  282. 近江巳記夫

    ○近江委員 政府は、朝鮮民主主義人民共和国からの公務員の入国停止や民間人の入国審査も厳重にする、ラングーン事件以来制裁措置を続けておられるわけでございますが、これはいつまで続けられるか、またこれが解除されるには何らかの条件が必要と考えていらっしゃるのかどうか、いかなる事態、条件が満たされればこの制裁措置を解除する方針なのか、ひとつ具体的にお伺いしたいと思います。
  283. 後藤利雄

    ○後藤(利)政府委員 お答えいたします。  具体的にどういう事態が起きた場合に昨年十一月の官房長官談話の内容を変更するかという問題でございますが、これは現時点で具体的な期限あるいは条件ということを申し上げるのは大変難しゅうございます。あえて現時点で申し上げれば、北朝鮮の今後の行動あるいは朝鮮半島全体の緊張緩和をめぐる動きというもの等諸般の状況を勘案いたしまして、本件について今後検討してまいりたいということでございます。
  284. 近江巳記夫

    ○近江委員 事務レベルでのお話ありましたけれども、これは政治的な要素も非常に大事でございますから、大臣としてはどのようにお考えですか。
  285. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今この措置をやめるということは考えておりませんが、いつまでもというわけにいきませんし、今局長が言うように全体的に情勢を見て、そういう事態というふうに政府認識したときは、これは解除しなければならないと思うわけでございます。しかし、今ここで時期がいつだとかそういうことを言う段階ではございません。
  286. 近江巳記夫

    ○近江委員 我が国としては常に周辺諸国の平和安定に一層努力をしていく立場で、すべて物事を前向きに検討していくべきである、このように思います。そういう点大臣も十分認識していただきたいと思います。  それで、もう時間ありませんから、あと一問だけお伺いしますが、大臣韓国を訪問されました際、韓国側から、在日韓国人の待遇改善問題で指紋押捺免除あるいは外国人登録証の携帯義務の免除が提起されたということを聞いておるわけですが、この問題の経緯はどういうものであったのか、また大統領訪日の際、外相レベルの話し合いの議題の一つになるのか、この点をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  287. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 在日韓国人の待遇改善の問題でございますが、これは日本政府としましてもこれまで努力を重ねてまいりました。社会福祉の問題にしてもあるいはまた教育の問題にしても相当改善が進んだ、こういうふうに思っておるわけでございます。ただ、指紋押捺の問題あるいはまた証明書携帯の問題につきましては、在日韓国人からもあるいは韓国政府からも非常に要望が強いわけでございます。しかし、この点につきましては日本としてもなかなかこうした要望にこたえるわけにはまいらない。と申しますのは、こうした指紋押捺等の外国人に対する措置は日本だけがとっておるわけじゃなくて、先進国を初めとして世界で相当な国々がこうした措置はとっておるわけでございます。ですから、在日韓国人に対して特別な差別待遇をするとかそういうことではないわけでございます。国際的にそういう措置をとっておるわけであります。  また、日本の場合におきましては、治安を確保するという面からもこの措置をとらざるを得ない、この基本を変えることはできないというのが、外務省判断というよりは治安当局、法務省の判断でございます。したがって、これは非常に難しい問題である。基本を変えることはできない。しかし、せっかくの要望でもあるし要請でもありますから、いろいろ改善のために話し合いはしましょう、しかしなかなか基本を変えることはできませんということは今度の会談の際にも日本立場をるる説明をいたした次第でございます。韓国側はこれでもって決して了承したということではないと思いますし、あるいは首脳会談で出てくるかもしれない、韓国としても非常に重要視しておる議題ではありますけれども、しかし日本は、今申し上げましたようなこの基本を変えられないという立場を今後とも変えるわけにはいかないということでございます。
  288. 近江巳記夫

    ○近江委員 終わります。
  289. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員長代理 神田厚君。
  290. 神田厚

    ○神田委員 決算外務省管轄の問題につきまして御質問を申し上げます。  まず最初に、大臣に二、三御質問を申し上げたいのであります。  イラン・イラク戦争の問題でありますが、和平の兆しが見えそうでなかなか見えない。こういう状況の中で安倍外務大臣、その問題について大変精力的に御努力をなさっているというふうに伺っておりますが、和平の努力が現在どういうふうになされているのか、その点についてお聞かせをいただきたいと思います。
  291. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 イラン・イラク戦争につきましては、私も重大な関心を持ち、日本としてもでき得る限りの努力をして、この戦争の拡大防止あるいは和平への環境をつくるためにやってきておるわけでございます。それなりの成果も上げておると私は思っております。特に日本の努力によりまして、イラン、イラクの外相日本に見えるというようなこともあって、イラン、イラクとの間には相当大きい政治的パイプも生まれておるわけでございます。今後ともこのパイプは十分活用しながら、この戦争の拡大防止、平和へ向かって努力を傾けたいと思っております。  現在は、国連の事務総長のあっせんによりまして、部分的な陸上戦闘の停止案が両国に受け入れられまして、そして両国に対しまして国連から調査団が派遣をされて、そうした部分停戦が守られておるということについて今調査を進めておるということでございます。  陸上の方は一応そういうふうなことで具体的に停戦の状況が続いているやに聞いておりますが、しかしペルシャ湾においては、御案内のようにカーグ島周辺においてイラクの船舶攻撃が行われる、あるいはまた、一方においてイランの空軍によるところのペルシャ湾上における攻撃も報復攻撃として行われるということで、戦争は全体的に見て大きく拡大をするというふうな差し迫った状況には今ないとしても、この戦争がやむ、停戦に持ち込まれるというふうな情勢にもなかなかないわけでございます。  そういう中で、いろいろこれからも我々は努力もし、また関係国とも相談をしながら何とか   両国とも相当戦争で疲れております。そしてイラクの方は停戦を望んでおる。イランが停戦に応じないということでありますが、イランの方も相当日本は説得しておりますが、その他の国々からいろいろと要請が行われまして、イラン自体もまた戦争の将来というものに対していろいろと検討もし判断もしておるようでございますので、こういうイランの動きが出てくれば、この戦争の和平への動きというのは一挙に出てくるのではないか。日本はそういう中でできるだけひとつ具体的な努力を傾けてまいりたい、こういうふうに存じております。
  292. 神田厚

    ○神田委員 その具体的な努力の内容に入るわけでありますが、サミットにおきまして中曽根総理が、紛争解決の核心は、当事国の独立を傷つけない方法で双方の継戦能力を減殺させるように持っていくことだ、こういうふうに言っているということでありまして、これを受けまして、外務省も武器輸出の自制の働きかけ等について検討し、関係当事者各国につきましてそれらの働きかけの具体的な検討を始めたというふうに言われておりますが、この点はどういうことなのか、どういう方向をおとりになるおつもりなのか。  さらにもう一つは国連の決議案でありますが、イランがなかなか決議に応じないという状況の中でイランが停戦決議に応じられるような、そういう環境づくりについても働きかけを開始をした、こういうふうに聞いておりますが、その二点についてどういうふうなお考えでありますか。
  293. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 イランが国連の決議であるとかあるいはまた国連の努力に対しては、これまではなかなか冷たい回答をしておったわけでございますけれども、デクエヤル事務総長の調停にも応じたわけでありますし、最近では国連に対しても働きかけよう、イランの立場を十分理解させようという、イラン自身に変化があったわけであります。これはイランが国連に対して働きかけるべきである、国連との関係を大事にしていくべきだということを日本もしょっちゅう言っておったわけです。私もベラヤチ外相にもそういうことは言ったわけでございます。そういう効果があったかどうかは別にいたしまして、最近は国連を重視するという姿勢に変わってきたことは大変結構なことではないかと思いますし、そうなれば国連を舞台にしての和平への動きというものが具体的に実を結ぶ可能性も出てこないではない、こういうふうに思っておるわけでございます。  同時にまた、確かに、今言われましたようにイランもイラクも武器は全部外国からと言ってもいいわけでございますので、両国に対する武器の供給がとまれば戦争は縮小していくわけでございますから、この武器の輸出、提供を自制をするといいますか、とめていくということが戦争の終結に最も具体的に効果を上げる。それについては、日本両国に対してもちろん武器は売っておりません、供給してない国でございますから、日本立場としては一番言いやすいわけでございますので、国連総会等におきましても、国連当局に対しましてあるいはまた関係国に対しましても、こうした立場からの自制を求める外交努力は積極的にやってまいりたい、こういうふうに考えております。
  294. 神田厚

    ○神田委員 以下、あと事務当局の方に御質問を申し上げたいと思っております。  それでは、イラン・イラク戦争の現況につきましてちょっと説明をいただきたいのでありますが……。
  295. 波多野敬雄

    ○波多野政府委員 戦況の現状について御報告いたします。  陸上戦闘は、目下のところ両国とも国境沿いに大軍を集結した状況のまま戦闘を開始するに至っておりません。近い将来、果たしてイランから大攻勢が行われるかどうかという点については、各国ともなかなか判断が一致しないわけでございますけれども、一般的な見方といたしましては、イランがたとえ大攻勢をかけたとしても、それによってバスラを占領するとか、バスラ・バグダッド街道を切断するとかいうような事態にはならないのではないだろうか。従来の経緯を振り返ってみますと、イランの人海作戦がイラクの最新式の武器によって撃退されるというパターンが続いておりますけれども、これが大きく変わるようなことにはならないのではないだろうか。そういうことになりますと、またイランの方としても、それじゃ、そういう必ずしも勝算のない大攻勢をかけることは少なくとも時期尚早なのではないだろうかという判断がイラン側にもあるのではないかと考えます。  他方、海上におきましては、イラクのタンカー攻撃が続いてはおりますけれども、これも割合に自制されたペースで攻撃が行われている。他方、イランによる報復攻撃もこれまた相当に自制されたものがあるという意味において、決して平和は到来していない、また到来する機も熟していないけれども攻撃はエスカレートしていない、そしてそのエスカレートしていないについては及ばずながら日本も若干の貢献をしているつもりであると考える次第でございます。
  296. 神田厚

    ○神田委員 お互いに自制をしているということでありますが、先ほど大臣に話をしました武器輸出の自制の働きかけの問題も大変重要であるわけでありまして、大臣から答弁がありましたが、関係各国に対する働きかけというのは具体的にどんなふうな方法でこれが行われるように考えられますか。
  297. 波多野敬雄

    ○波多野政府委員 考えられる方法といたしましては、国連に働きかけ、国連をして各国に呼びかけさせる方法と日本が主要な武器輸出国に直接働きかける方法とあるかと思いますけれども、第二の方法、日本が各国に直接働きかける方法についてはまだ検討を進めておりません。  と申しますのは、主な武器供与国が共産圏であるというところに問題がございまして、例えば北朝鮮が従来イランに対する最大の武器供与国だったわけでございますけれども、北朝鮮に対してどのような働きかけがなし得るか、またどのような働きかけが効果的であり得るかという点についてはなかなか難しい問題があると思いますし、またソ連のイラクに対する武器供与が、イラクが受けております武器供与の五〇%以上に当たるという事実からしても、果たしてソ連にどのような話し合いができるであろうかという点についても今後の検討課題になると思います。
  298. 神田厚

    ○神田委員 続いて全斗煥大統領訪日問題で二、三御質問を申し上げます。  まず、韓団側が今回の訪日の意義につきましては、両国の未来を開くこととともに過去への反省を確認することとしているわけでありますが、政府としてこの過去への反省の問題というのはどういうふうにこたえるおつもりでありますか。
  299. 後藤利雄

    ○後藤(利)政府委員 あるいは大臣お答えすべき問題かもしれませんけれども、過去の反省というのは一つの出来事、一つの言葉で行われるものではなくて、やはり毎日の両国関係のつき合いにおいて行われるものであろうというように私は考えております。したがいまして、今回大統領が来られるということになりまして、最近、特に昨年の一月の中曽根総理訪韓以来両国関係が極めて良好に、かつ順調に推移してきたわけでございますので、今回の韓国大統領訪日というのは  韓国大統領の初めての日本への公式訪問でございます。むしろこういうのが今までなかったということが不自然なようなことでございますので、こういう公式訪問を通じまして、今後の隣国としての協力関係を不動、かつ成熟させていきたいという契機になるものと信じております。先日安倍外務大臣が訪韓されまして全斗煥大統領に表敬いたしましたときも、全斗煥大統領より、韓国としては過去よりもむしろ未来に向けてひとつ新しい日韓関係、韓日関係を定立したいというのが自分のみならず韓国国民全体の願いであるということでございますので、今回の全斗煥大統領訪日については、私どもそのような意義で受けとめて対処したい、こう考えております。
  300. 神田厚

    ○神田委員 韓国李外相日本人記者との会見で、大統領に対する天皇陛下のお言葉によって過去への反省に決着をつけたいという希望をしたということでありますが、政府は、この問題について参議院の外務委員会並びに衆議院の外務委員会等々でかなりいろいろな意見が出ているわけでありますが、どういうふうに基本的にお考えでありますか。
  301. 後藤利雄

    ○後藤(利)政府委員 天皇陛下のお言葉という問題につきましては、外務大臣がいろいろな機会に御報告いたしておりますように、むしろこれは日本政府自身の問題でございまして、この点韓国政府ととにかく話し合って云々すべき筋合いでないという点は韓国サイドも理解しております。したがいまして、全斗煥大統領が来られますれば、もちろん宮中におきまして国賓に対する通常の行事が行われるわけでございますけれども、天皇陛下がいかなる善言葉を述べられるかという点につきましては、現時点であれこれ見通しを述べることよりも、むしろこの御会見におきましては、先ほどから問題が出ておりますように天皇陛下が国政に関与することはないわけでございますので、具体的ケースについてどうお述べになるかという点についてただいま政府当局が事前に見通しを述べることは差し控えたい、こう考えております。
  302. 神田厚

    ○神田委員 今回の全斗煥大統領訪日に対しまして、北朝鮮あるいは中国、ソ連などは訪日決定に対してどのような態度をとっておりますか。
  303. 後藤利雄

    ○後藤(利)政府委員 いわゆる公式的な報道は聞いておりません。ただ、私どもの承知する限り、例えば七月十二日付北朝鮮の労働新聞では次のように論評しております。全斗煥大統領訪日は、日本韓国との間の政治的、経済的、軍事的結託を強化するためのものであり、いわゆる米日韓三角軍事同盟結成を完成させようとしているレーガン政権の要求によるものであるという論評は、北朝鮮の新町に出たというように承知しております。  中国につきましては、先般の安倍大臣の訪韓の結果として全斗煥大統領訪日が実現の運びとなったこと及び一部の野党にこれに反対の空気があるという事実報道は行っておりますけれども、直接の論評は行っておりません。  なお、報道でございますけれども、中国の外交部のスポークスマンは日本特派員の質問に答えて、これは日本と南朝鮮、中国は南朝鮮と呼んでおりますけれども、南朝鮮の問題であり、我々としてコメントを特に発表するつもりはないと述べたと承知しております。
  304. 神田厚

    ○神田委員 北朝鮮は、さきに来日しましたカンボジアのシアヌーク殿下を初めさまざまなルートを通じて、日本との関係改善を求めているわけでありますが、政府がこれに対してもう少し積極的にこたえてほしいという要望もあるわけであります。経済、文化、大事などの交流拡大についてどういう考え方を持っておりますか。
  305. 後藤利雄

    ○後藤(利)政府委員 北朝鮮と日本との関係という点では、私ども政府といたしましては、朝鮮半島のバランス及び韓国との友好関係の維持というものをまず踏まえつつ、貿易、経済、文化等の分野において交流は維持していきたいということを続けておるわけでございます。
  306. 神田厚

    ○神田委員 警備上の問題が大変心配をされておりますが、特にそういう面において外務省としてはどういうふうな対応をなさるおつもりでありますか。
  307. 後藤利雄

    ○後藤(利)政府委員 警備の問題につきましては、もちろん警備当局が主たる主管でございまして、ただいま警備当局といたしては鋭意最大の努力を、警備に万全の準備を払っているというように私は承知をしております。
  308. 神田厚

    ○神田委員 次に、極東に配備されました大型の、大変さまざまな問題を含んでおりますソ連の超大型揚陸艦配備問題で御質問申し上げます。  防衛庁も来ておると思うのでありますが、このアレクセイ・コスイギン配備の事実確認はしておりますか。
  309. 太田洋次

    ○太田説明員 お答えします。  先生御指摘の船は、ソ連の商船隊に属しまするいわゆるラッシュ船と呼ばれますアレクセイ・コスイギン号のことでありますが、これが七月上旬、極東に回航されたことは承知しております。
  310. 神田厚

    ○神田委員 このアレクセイ・コスイギンの機能及び配備の目的等についてはどういうふうに考えておりますか。
  311. 太田洋次

    ○太田説明員 このラッシュ船の性能等につきまして私どもが承知しているのは、次のとおりでございます。  排水量が約六万二千トン、それから一般的にこの船に八十隻程度のはしけを載せられる、これでもって本船から港湾の方に物を運ぶというはしけでございます。それからコンテナでございますと、約一千五百個のコンテナを載せられるというふうに承知しております。  これが極東に回航されました目的については必ずしも明らかでございませんけれども、同船の機能は、一般的に極東方面に所在します港湾施設で不備なところがございますので、そういうところへ貨物、物資等を輸送し、あるいは陸揚げするというような目的でこの船が使われておるものというふうに考えております。
  312. 神田厚

    ○神田委員 この艦船の軍事転用の可能性はどうなのか。また軍事転用された場合の影響というのはどんなふうにありますか。
  313. 太田洋次

    ○太田説明員 お答えします。  この船舶はソ連の商船隊に属しておりますけれども、有事の際に、そのほかの商船がそうでございますように、軍用にも転用される可能性も排除できません。仮に軍事用に転用されました場合は、先ほど船の性能について御説明しましたけれども、物資、貨物の輸送、陸揚げはもちろんできるわけでございますので、そういう意味でこの方面での輸送、それから揚陸能力、そういう意味での一般的な支援能力は高まるという意味で私どもは注目しております。
  314. 神田厚

    ○神田委員 それから外務省に、トマホークの核装備ということで極東の軍事バランスとの関係は、これはどういうふうに考えられますか。
  315. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 委員、御承知のように、極東地域におきますソ連軍の兵力というものは、近年顕著な増強を見ておる次第でございまして、御承知のとおり、SS20につきましては、百三十五基というような数字が言われておりますし、バックファイアについても約八十機というような数字が言われております。  それから、特にソ連の太平洋艦隊の増強というものが極めて著しいものがあって、現在ではその太平洋艦隊の兵力というのは約八百隻、百六十万トン程度というようなことを言われておりますが、そういうソ連の全般的な太平洋あるいは極東におきます軍事力の増強というものに対応する一つの手段として、アメリカがトマホーク巡航ミサイルというものを、これは委員承知のように核、非核両用でございますが、そういう通常弾頭つきの巡航ミサイルと核弾頭つきの巡航ミサイルというものを展開しようというふうに至ったというふうに承知しております。特に巡航トマホークミサイルの艦艇配備につきましては、先般ワインバーガー国防長官が東京に参りました際にも演説の中で申しておりますが、その主たる目的は、アメリカの海軍の艦艇の数の上でのソ連に対する劣勢、第七艦隊について申し上げれば、アメリカの第七艦隊は現在約七十五隻というふうに言われておりますが、先ほど申し上げましたようなソ連の太平洋におきます軍事力というものに対応いたしますには、現在の第七艦隊の艦艇数というものが少ない、そういう認識の上に立って、そういう艦艇数の数的な劣勢を補うために配備を計画をしておる、こういうふうに理解いたしております。
  316. 神田厚

    ○神田委員 時間がありませんので、あと二、三問、ASEAN問題で質問をいたします。  カンボジア問題に関する日本の提案、これはかなり実現性が低くて認識が甘いという批判がありますが、外務省はどういうふうに考えておりますか。
  317. 後藤利雄

    ○後藤(利)政府委員 ASEAN拡大外相会議におきまして安倍大臣から、ただいま委員御指摘の三項目を提案いたしましたのですけれども、ASEAN拡大外相会議の議長国でありますインドネシアのモフタル外務大臣より、ASEANアピールに対する具体的な協力内容を示すものとして、ASEAN諸国を代表してこれに謝意の表明がありましたし、また他のASEAN各国からもそれぞれ同じような発言もございましたし、ASEANの拡大外相会議に出席しております米国、カナダ等よりも、前向きな提案であると高い評価を受けております。
  318. 神田厚

    ○神田委員 いろいろとこの問題については批判もあることは、外務省としても承知はしているのでありましょうけれども、私どもが考えておりますところは、そもそも政府は、どういう状況になればベトナムがカンボジアから撤兵するというふうに考えているのか。一方で、反ベトナムの三派連合を支援をしながら、もう一方でベトナムの撤兵を前提とした平和提案を行うということが非常に矛盾に満ちでいると考えるのでありますが、この辺はどうでありますか。
  319. 後藤利雄

    ○後藤(利)政府委員 先生の御指摘のように、率直に申し上げまして、現状においてベトナム軍がカンボジアから撤退する状況というものは、そう簡単には考えられないわけでございます。特に一挙にベトナム軍が撤退するというようなことはもちろん不可能でございましょう。その意味では、部分的な撤退からでも始めるということが現実的な状況かと私は考えております。その意味で、昨年の九月のASEANアピールというのは、部分的な撤退というものをまず前提にした一つのアピールでございまして、その意味では非常に現実的な一つの提案をしたものとして私どもは評価したわけでございます。ベトナム自体も、この部分的撤退という問題あるいはASEANアピール自体も、討議をする場合の一つの提案として考えていこうというようなことを言っておりますので、私どもといたしましては、なるほどあした、あさってに解決する問題ではないかもしれませんけれども、関係諸国が粘り強い努力を行って、ひとつそういう状況になることに協力してまいりたい、その関連であの三提案を行ったということでございます。
  320. 神田厚

    ○神田委員 また、これはちょっと議論が続くのですが、時間が来ましたので、これで終わります。
  321. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員長代理 次に、滝沢幸助君。
  322. 滝沢幸助

    滝沢委員 安倍外務大臣、御苦労さまです。今、日本があらゆる意味で非常に大事なとき、もちろん国際関係におきましては特段と多事多難というときに、前内閣以来外務大臣の要職をお務めいただきまして、各国に赴かれまして日本外交の道を開いていっていただきますことに敬意を表さしていただきます。  ところで大臣、あなたは今申し上げたとおり前鈴木内閣以来外務大臣として、また、たびたびにわたりこの要職につかれまして御苦労されているわけでありますが、一方また自民党はニューリーダーという言葉、どなたがあなたに冠した言葉かは知りませんけれども、とにかくにも将来日本国の宰相として国政を担当されようという気構えと実力とに満ちて頑張っていらっしゃることと思いますけれども、なればこそ、ここに私は、私の外交というものについての基本的なる日ごろの考えを御参考までに申し上げながら、あなたの御見解、御決意のほどを承ってみたい、このように思うわけでございます。  実は私は、一国の外交が円満、かつ強力に展開されるためには、一つには残念なことながら現実はその国の軍事力、そしてもう一つは経済の力、そして加えてその外交に当たる、この場合はあなた、外務大臣でございますけれども、その後ろに強力にして積極的に、かつ建設的な国民世論の背景という、この三つがそろって初めて真に力強き外交が展開されるもの、中曽根総理大臣は英語の達者なお方と承っておりますけれども、達者にこしたことはないでありましょうけれども、その衝に当たられる大臣、外交官の外国語が達者だとかテクニックがいかんというようなことで外交が展開されるものではありませんで、さっき申し上げたとおり、国の力の背景国民世論の背景があって、初めて私はその目的が達せられるものと信じて疑わないものでございます。ところが、しかしこの日本は御存じのごとく憲法によりまして軍備の力は制限されてございます。これはしかしいかんともなしがたい現実でございますけれども、一面日本の経済は戦後アメリカに次ぐ大きなる力を蓄えてまいったことでありまして、結構なことであります。  しかし、一番大事なること、国民の世論があなたの外交を積極的に支援しているという状況には遺憾ながらまいっていないわけでありますよ。論語の中で孔子が「やむを得ずんば兵を去る」こうおっしゃった。日本が今日それでありましょう。しかし次に何を去るといったら、経済を去る、こうおっしゃった。最後まで孔子が去ることを許さないのは政治に対する国民の信頼でございました。ところが今日、今申し上げましたとおり、国論、政治に対する信頼というものが失われている。特に私は大臣が、それはあなただけではなくて、歴代の大臣等が国を出て外国に施されるときにいろいろな妨害があったり非難があったり、いろいろの新聞の非難中傷もあったり、また帰ってこられるときにも国民が御苦労さんという状況になっていない、非常に残念なことだと思うのです。こういうことで私はあなたの御苦労はひときわなるものがあると思うのでありますが、私のこの日ごろの所信を、初めてあなたに質問の機会を与えられましたので申し上げさしていただいたわけであります。御感想と申しますか、外交の衝に当たっての御苦労のほどをひとつ披瀝してちょうだいできればありがたい幸せでございます。
  323. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今おっしゃいました点について私も同感するところ多々あるわけでございます。やはり外交というものは、その国の運命を決するものでございますから、極めて大事なものであるというふうに存じております。特に日本のように、軍事力というものを拡大することができないという国柄からすれば、まさに外交によってこの日本の平和と安定を確保するとともに、世界に対して貢献をしていかなければならない、こういうふうに思っております。そういう意味で外交の役割というものはますます大事になってきておると思います。  私も一昨年の就任以来今日まで一年九カ月になるわけでございますが、その中で非常に感じましたことは、やはり世界の中で今日本という存在が日々重くなってきておるということでございます。発言力も強くなりました。同時にまた国際的責任というものも重くなっておるわけでございます。今回もASEANの拡大外相会議に参りましたけれども、やはりまず拡大外相会議で、日本外務大臣からひとつ基調演説をしてほしいというふうなことで私が始めるということでございます。  事ほどさように、日本の存在は重くなっております。これはやはり日本の非常な経済力が強大になってきたということが根本であろうと思うわけでございますが、同時にまた、これまで我々の先輩が日本の平和外交を世界の中で着実に展開をしてきた、その日本の平和外交の努力というものが世界にも理解されるようになったのではないかと思っておるわけでございます。世界の情勢というもの、ますます厳しい状況が続いております。そういう中で日本のこれからの役割もますます重要になってくると思いますし、責任を持って今後の役割を果たしてまいる決意でございます。
  324. 滝沢幸助

    滝沢委員 どうも高邁なるお考えを承りまして、敬意を表します。  ところで、まさにおっしゃっていただきましたとおり、今日の我が国は、外交を円満に展開する以外には立国の道はないわけでございます。経済、大変豊かなりといえども、原料、材料ともにほとんどない、また国土は狭いというところの経済でありますから、まさに平和外交を堅持する以外には道はないわけで、御苦労なことでございます。  そこで大臣、私は提案と申しますか、お願いがあるのであります。これは総理大臣にもどうぞおっしゃってちょうだいしたいと思うのでありますけれども、私は、日本の総理大臣ないしはまた、これはあなたも含めて、もっとテレビ等を通じて国民に国の大きなる方針について、これを勇気を持って、しかも時間をかけて直接に語りかけてほしい。これはアメリカ大統領等は、歴代よくやっておりますね。ですから、どうかひとつ総理大臣にもそのようなテレビの時間をとってちょうだいしたいが、あなたも、例えば外国に外交問題をひっ提げて出ていかれるに先立っては、私はこういう問題をひっ提げてこういう国際会議に出て、こういうことを主張してまいろうとしておる、しかしなかなか困難なこともあろうが、国民の皆さん、どうかひとつ成功するように祈って待っていてくださいというような語りかけをしていただきたい。そして、帰ってこられましたら、そのことはこのように申し述べたけれども、結果はこのようなことになったというぐあいにおっしゃっていただいたならば、国民は野党を支持する者といえども国を愛せざる者はないわけでありますから、これは大きな協力の体制を実現することができると思うのでありますが、いかがでありますか、やってくださいますか。
  325. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 総理大臣も私もそうですが、外国に出かける前にはテレビ、新聞と会見もいたします。これは新聞、テレビ等で報道もされるわけでありますし、帰ってから、またそういうチャンスを持つわけでございまして、ちゃんと見ている人は見てくれているわけでございます。しかし、アメリカ等に比べると、日本の場合は政治家がそうしたテレビ等に登場する機会は比較的少ないとも思われます。アメリカなんかはテレビを、いわば時間を買って出ていくわけでございます。我々はテレビの方から要請があって出演をするわけでございます。そういう点では少ないわけでございますが、しかし国民との対話といいますか、国民日本の外交を理解してもらうということは極めて大事だと思います。  私は外交というのはただ政府だけの外交ではないと思います。外交というのはもっと国民に基盤を置いたものでなければならない、いわゆる国民外交でなければならぬと思います。そういう意味では、日本の外交のあり方をもっと国民に知ってもらって、そして国民から支持されることが極めて大事でございますから、そういう点は今後とも努めてまいりたいと思います。
  326. 滝沢幸助

    滝沢委員 そのようにどうぞひとつお願いいたします。  そこで、話は全く違うのでありますが、中国にもたびたび赴かれておりますが、今日の中国と日本との立場において不幸なる出来事とされているのが南京の虐殺と言われる事件でございました。こういうことについて話題に上ったことはございますか。
  327. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は何回か中国に参りましたけれども、その問題が直接会談の論議に上ったことはございません。しかし、教科書問題等が起こりまして、中国側から非常な批判を受け、その結果、官房長官の談話ということで、日本の反省、そして措置、今後誠意を持って対処するということでこの問題が決着した経緯があることは御案内のとおりでございます。
  328. 滝沢幸助

    滝沢委員 くしくもおっしゃっていただきました。今、私は文教委員会においてもそのことをただしてまいったのであります。  今おっしゃいましたとおり、昭和五十七年六月二十六日以来、中国並びに韓国から歴史教科書の記載をめぐっていろいろの抗議が参りまして、前鈴木内閣の宮澤官房長官等が、最初のうちは、いや日本の教科書は間違っていないんだということをせっかくおっしゃっていたのでありますけれども、たびたびの強力なる抗議に、我々は屈したという言葉を使わせていただいているわけでありますが、屈したのではない、理解したのだということで、これも敗戦と終戦みたいな話でありますけれども、いずれにしましても、おっしゃるように官房長官の談話をもってこれに終止符を打ち、文部省は後からこれを追認する形において教科書検定の基準を改めたのでございます。先ほど私は文教委員会において、その形というものは、つまり教育のことを決定することは国家の主権であるから、これを外交ルートの、外交の方はいろいろないわばテクニックもあり妥協もございますから、それを受けて追認する形で教科書検定の大綱方針が変わることは結果的に主権を侵害されたことになるのじゃないかということを申し上げてきたのであります。  時間がなにでありますから、はしょって一緒に承らせていただきますけれども、このほど拓殖大学の田中正明とおっしゃる先生が「南京虐殺事件の虚構」と題する御本をお書きになりました。その出版記念会にも私は赴いてまいりました。これには奥野元文部大臣、宇野宗佑先生など、きら星のごとくお見えになりまして、しかも、あの戦争で実際の経験をなさった、いわゆる南京虐殺をやったと言われる兵隊さん方もたくさんおいでになりまして、この事件はなかったことであると、これは清瀬一郎先生も本に書いていらっしゃいますけれども、東京裁判、これはもちろん軍事裁判で二審も三審もなかったのでございますが、その裁判におけるでっち上げであるとおっしゃっているわけであります。  そこでこれに対して、あなたに聞いても仕方がありませんけれども、もしも今後このようなことが裁判ないしは学説の中で実証されてくるようなことがありましたら、あの戦争で命を失いました二百万と言われる、また中国関係だけでも五十万を下らない我々の先輩、要するに祖国に命をささげたあの名誉ある帝国軍人のために、この名誉回復のことをひとつ外交ルートにおいてなさっていただけますか。
  329. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 教科書問題で今お話しのような事件等もいろいろと論議がありまして、今おっしゃるようにそういう事実はなかったという議論もございましたし、あるいはそういう事実があったという議論もあったように承知いたしております。歴史の真実を追求していかなければならないわけでございますし、事実は一つしかないわけでございますから、そういう問題につきましても、日本は戦争の反省として事実を明らかにする努力は重ねていかなければならぬと思うわけでございます。  教科書問題につきましては、これは官房長官談話に基づく外交交渉におきまして外交上の決着はいたしたわけでございます。あとは、日本政府が官房長官談話に基づいて日本政府独自の自主的な判断で検定基準等についていろいろの正確な論議、そして記述が行われるような努力が今日まで続けられておる、日本政府としては官房長官談話を誠意を持って実施面で検定等に生かしておる、こういうふうに私は理解をいたしておるわけであります。
  330. 滝沢幸助

    滝沢委員 大臣、今私が最後に、もしもこの著書等をめぐり、またその実戦に参加した方々が私たちは虐殺等はいたしておりませんということを叫んでおるわけでありますから、これが裁判その他学界の論争等の結果、それはなかったのである、これはやはり東京裁判をめぐる一つの虚構であるということが実証されましたときには、外交ルートを通じてかの護国の英霊のために名誉回復の措置を中国等に向かってなさっていただけますかと御質問申し上げたことでありますが、これに対して一言コメントを願いたいと存じます。
  331. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 こうした歴史上の事件につきましては、あらゆる角度から事実を確かめなければならないと私は思っております。そして、この事件が起こったのは日本ではありません。日本が侵入といいますか侵略いたしまして戦争が起こっておりました中国において起こったわけでございますから、その事件が起こったか起こってないかということも含めて、これは日本日本としての考証あるいは事実の究明が徹底的に行われる、それはそれなりに私は歴史の事実を追求するという面、真実を追求する面からいえば当然であろうと思うわけでございますし、また同時に、日本だけで果たしてこれが客観的に決着がつくものか、やはりもっと広い舞台でこういう問題が論議され、そして決着されるべきものか、この辺のところは一つの問題ではないだろうか。そして、もちろん事実は一つでございましょうから、真実は一つでございましょうから、そうしたあらゆる客観的な面からこの問題が明らかになったら、それはそれなりの対応というものが生まれてくるのは当然のことであろうと思うわけであります。
  332. 滝沢幸助

    滝沢委員 かく私が申し上げるのは、こういうことに決着がつくのには時間がかかりましょうから、そのときあなたがなお外務大臣でいらっしゃるかどうかはわかりませんけれども、しかし一党の総裁、一国の総理を目指され、また国民の多くもそういうこともあらんと期待している方であるものでありますから、以上のようなことを聞かさせていただいたわけでございます。  そこで、実は北方領土返還のこの交渉は吉として先が見えないようなことでございまして、私たちが非常にこれを憂えているわけでございますけれども、これが円満に進まぬ、ガンという言葉はどうか知りませんけれども、ネックというものは那辺にありましょうか。しかも、将来の展望もあわせてお聞かせいただければありがたいことでございます。
  333. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 北方四島は、歴史的にも条約の上からもこれはもう明白に日本の領土であることは今さら申し上げるまでもないわけでございます。この辺につきましては、日ソの国交回復が行われたときの鳩山元総理、当時の総理とフルシチョフ第一書記との間でも論議が交わされまして、そして国交正常化に当たりましては、要するに両国間で決着がつかないで継続案件として残したままで正常化をいたしたわけでございます。したがって、その当時はソ連も北方四島というものはいずれともはっきりしない、ソ連は自分の領土であるというふうに主張したとしてもとにかく国際的にはっきりしないということで継続案件にしたわけでありますし、あるいはまた、田中内閣のときの田中・ブレジネフ会談におきましても、共同宣言でこの領土問題を留保するという形で残ってきたわけでございますが、残念ながら今日の段階においては、ソ連は既に領土問題は決着済みである、こういう姿勢をとっておるわけでございます。  ソ連の姿勢といいますか、領土に対する態度が全く変わったということは極めて残念に思っております。同時に、この領土に対する支配権を強めて、そして最近ではこれを軍事基地化している、ミグ23の基地化しているということは、これは日ソの関係の改善を将来に向けてなさなければならないという立場から見ましても極めて残念至極でございまして、日本はしばしばソ連に対して領土問題について交渉を呼びかけまして、実は私もことしの二月にモスクワにアンドロポフ書記長の葬儀に出かけまして、その際グロムイコ外相会談した際にこの領土問題を提起をいたしたわけでございます。そして、とにかくテーブルに着いて日ソ双方で話をしようじゃないか、こういうことを言ったわけでございますが、この点についてグロムイコ外相の理解ある返事を得ることができませんで、極めて残念でございます。今の状況からいえば、ソ連は解決済みだということで、日本のそうしたたび重なる提案には到底応じようとしないわけでございますが、しかし、これは何としても日本の領土でありますし、この領土の返還は国民的な悲願でございますから、そしてこれだけの国民運動も盛り上がっておるわけでございますから、私たちはこれからも日ソ間において粘り強く腰を据えて領土返還交渉を進めてまいりたい。いかに時間がかかろうとも、これが日本の領土となるまでは運動を続け、そして交渉を続けなければならない、そういうふうに考えておるわけであります。
  334. 滝沢幸助

    滝沢委員 先ほど申し上げましたように、あなたは今後将来に向かって、肩書はどうあろうと日本国政にとりまして大きな役割を果たされると存じまするので、どうぞひとつこの北方領土返還のこの民族の叫びに対して大きな努力をなされますようにお願いを申し上げたいと思います。  最後に、先ほど大臣が席をお外しになりました後に我が党の神田先生より聞いていただいたことでございますが、大臣が席においでになりませんでしたし、私からも重ねて一言だけ承らさせていただきますけれども、韓国の全斗煥大統領日本においでいただく、まことにこれは結構なことでございます。しかし、そのとき、天皇陛下にお会いいただきまするときの天皇陛下のお言葉をめぐりまして、実は朝日新聞が六月十九日に書きまして、これがいわば、言葉はいろいろございますが、要するにあの不幸な時代についてのことを触れていただくというようなふうに読む者には読めるような書き方がなされているわけであります。そして、先ごろ参議院におきまして各党の質問の中にもこれが出まして、そして大臣お答えをいただいているわけでございます。しかし、そこの中で宮内庁側の答えに、外務省から資料をもらい、各方面の意見を聞いて、総合的判断で練っていきたい、つまり天皇陛下のお言葉を練っていきたい、その原稿を苦労してこれからつくりたいというふうにお答えになったようなニュアンスなんでありますが、これはいかがでございますか。
  335. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いろいろの国の元首が国賓として日本においでになる場合に、天皇陛下との間で会見が行われますし、あるいはまた晩さん会で天皇陛下のスピーチがあるわけでございます。そうした行事に当たりましては、外務省としましては宮内庁に対しまして、おいでになる元首につきましてのいろいろな資料を提供をいたしております。その提供した資料に基づいてお言葉が出される、こういうふうに私どもは理解をいたしておるわけでございまして、今回の場合も、全斗煥大統領がお見えになることが決まったわけでございますが、外務省としてもいろいろな角度から資料を今準備をいたしておりまして、これは宮内庁に提出をいたしまして、そして慣例によりまして、そうした資料等を踏まえて天皇陛下のお言葉がある、こういうふうに理解をいたしておるわけでございますが、これは先ほどから申し上げたと思いますが、天皇陛下のお言葉は、これは憲法第七条の国事行為ではございません。しかし私的なお言葉でもありません。いわば公的なものでございまして、この天皇陛下のお言葉につきましては内閣がすべて責任を持つものである、こういうふうに我々は承知をいたしております。
  336. 滝沢幸助

    滝沢委員 時間でありますからこれで終わらせていただきますが、どうかひとつ大臣、その御会見のときに天皇陛下が、文言のいかんにかかわらずいわば謝罪なさるような形ではなく御配慮をいただきたい、そういう資料を提供いただきたい、このお願いを申し上げまして、先ほど申し上げましたようなことで、ひとつ今後方強き外交を展開されて日本の繁栄と平和のために貢献していただきまするように祈念いたしまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  337. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員長代理 次に、中川利三郎君。
  338. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 初めに、核問題と随時協議のことでお聞きするのでありますが、核兵器の搭載可能な米艦船日本寄港問題については午前中の本委員会の論議にもあったようでありますが、外務省日米安保条約第四条に基づく随時協議を日本側から求めることを明らかにしました。その随時協議について具体的にお聞きしたいのでありますが、日米安保条約で言うところの随時協議では一体核の持ち込みノーであると言えるのかどうか、また核の有無についても確認できるのかどうか、この点を端的に明らかにしていただきたいと思います。
  339. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 ただいま委員の御質問の趣旨を必ずしも正確に理解できたかどうか、大変申しわけございませんが、核兵器持ち込みに対してノーと言えるかという御質問は、核兵器持ち込みは、これは御承知のとおり随時協議という以前の事前協議そのものの問題でございまして、事前協議が行われればノーと言うということは従来から累次政府が申し上げていることでございますので、これはあくまでも事前協議の枠内での我が国の対応の問題であるというふうに理解いたします。
  340. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 ですから、私が聞いたのは、今の答弁でも答えているようでありますが、随時協議では核の持ち込みについてはノーと言うことができるのかどうかということ、核の有無について確認できるかどうかということですね。あなたは事前協議で向こうから言ってこない限りこうだと言っておりますが、そういう答弁ではなくて、この点について随時協議ではどうかということについて一言お答えいただきたいと思うのです。
  341. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 事前協議に関連する問題につきまして、これはいかなる問題であろうとも条約の実施に関して随時協議をすることができるということが安保条約の第四条に書いてあるわけでございますから、事前協議に関連する問題一般についてそれが何であろうとももちろん四条の随時協議の枠内でアメリカと話をするということは可能でございます。ただ、核兵器持ち込みの問題につきましては、繰り返しになりまして恐縮でございますが、これはそもそもアメリカ側事前協議をしてくるという条約上の義務があるということでございますから、それに対応するものとして六条の実施に関する交換公文の枠内で対応する、これが政府が従来から申し上げていることでございます。
  342. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 大臣、私聞いたのは-意味はわかるのですよ。つまり第六条の事前協議はもうしり抜けだということははっきりしてますね。第四条の随時協議、これは日本から発言できるわけでありまして、過去三回皆さんはやっているわけでありますが、だからこの中身の力といいますか、どれだけのものかということに今国民は関心を持っているわけであります。  そういう点で大臣にお聞きしたいのは、そういう場合は、ノーということを言える場ではない、こういうことですね。あるいは核の有無について確認できるかどうか、そういうことはできないのだということですね。大臣、どうですか、一言で……。
  343. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 核の持ち込みについては、具体的には事前協議という制度があるわけですから、この制度によって運用されるわけですが、いわゆる随時協議については、一般論としまして、日本非核政策立場あるいはまた両国安保条約あるいはその関連規定は守っていきましょうという確認、そういうものをやっていくわけでありまして、個々の艦船についてどうだとか、イエスとかノーとか、そういうことをやる場ではないわけであります。
  344. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 わかりました。  そうしますと、結局第六条の事前協議以外は、そういう核の存在のあれは、アメリカから言ってくるまでは何もないということになりますね。その限りは随時協議に過大な国民期待があるということは全く一場の夢だ、そういうことも明らかになったわけであります。  御承知のように、日本にはさまざまな米軍の核部隊と兵器が持ち込まれていることは周知のことでありますが、その上巡航核ミサイル搭載可能艦の日本寄港も当然だといって政府は認めようとしていますね。おまけに、きのう新聞にありましたようにSH3シーキングまで日本に持ち込ませる、こういうことになりますと、日本全土が核づけ状態、そういうひどいものになると思うわけでありますが、こういう状態の中でも決して核の心配はないのだ、事前協議がないからそうなんだ、これでお通しなさるおつもりなんですね。
  345. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 中川さんは何か幻想に基づいて物を言っておられるような気がしてならないのですが、日本アメリカとの間には安保条約もあります。そして事前協議という確固とした制度がありまして、アメリカは核を持ち込むときは事前協議にかけなければならないわけですから、事前協議にかけない場合は核でないわけでございまして、これは日米間で安保条約、関連規定を守りましょうということでかたく約束をして、そしてその間には信頼関係によって日米関係というのは存在しているわけでございますし、その信頼関係が失われ、そして事前協議なしに核が持ち込まれるということになりましたら、いわゆる安保条約というものの存在価値がなくなるわけでございますから、今の日米信頼関係、そして事前協議条項、そういうものがある限りにおいてはそういう心配はありませんし、今お話しのように核が日本にうようよしているということは全く幻想にすぎないということであります。
  346. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 私は、政府・自民党がまさに今の情勢に対する、アメリカを一方的に信頼する全く幻想にすぎない状況、国民の不安を不安として感じない、そういう状況があるということを逆に指摘したいと思うのですけれども、この問題でずっと論議するつもりはありませんので、次に移らしていただきます。  二番目はユネスコの問題でありますが、「国連教育科学文化機関(ユネスコ)がいま、国際政治の波間で揺れている。」これは七月十一日の朝日新聞の解説記事の冒頭の文句でありますけれども、アメリカ政府はかねて通告どおりことしいっぱいでユネスコから脱退する運びだと聞いているのでありますが、外務大臣の所信はどうですか。
  347. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 我が国は昨年十一月米国に対し、ユネスコからの脱退については慎重に対応するよう申し入れを行いましたが、さらに脱退通告後一度ならず外交ルートを通じ米国に対して本件に関する我が国の見解を伝え、米国がユネスコにとどまるように働きかけてきたわけでございますが、今の状況ではアメリカが脱退をするというふうに判断をいたしておるわけであります。
  348. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 なぜアメリカが脱退するのか、この十一日付の解説記事によりますと、「「世界の警察官」を任じてきた米国にとっては、一番多額の分担金(全体の二五%)を出しているのに、安全保障理事会のような拒否権もなく、各国平等の一票しか持たないのでは運営も思うにまかせない。加えて第三世界の独自性を重んじる考え方ばかりが強調されることに、いらだちを募らせてきた。」こういうことを新聞は書いているわけでありますね。御承知のように、ユネスコの加盟国は現在百六十一カ国ですね。六〇年代に入りまして、主としてアフリカ、アジア、アラブ、太平洋地域の新興独立国の加盟が相次いだのでありますけれども、国連機構の中で第三世界の発言権が強まるということは、世界の趨勢として当然避けられないことだと思うのですね。それを、自分の思いどおりにならないと、気に入らないから脱退だ、こういうことでは、国連精神からも、国際協調のマナー、ルールからも大きく外れた勝手なやり方だと私は思うわけであります。そういう点について先ほど安倍さんから、いろいろ説得したけれども、なかなか大変であった、こういうお話でございますけれども、そうであれば、今後が大変だろうと私は思うのです。なぜかといいますと、アメリカが脱退だ、イギリスも脱退するかどうかわかりませんが、警告を出していますね。こういう格好でやりますと、特に資金の全体の二五%をアメリカが出しているわけでありますから、これが脱退すれば、たちまちユネスコそのものが運営に支障を来して大変なことになってしまうということですね。ですから、アメリカもそこがねらいだと思いますけれども、これはユネスコだけに向けられるおどかしてはなくて、第三世界の発言権が強まった国連とその機構全体に対する見せしめ的要素ですね、おどかしですね。そういうふうな意味合いを持っていると思いますが、外務大臣はいかがでございましょうか。
  349. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 米国は脱退理由として、第一に、ユネスコの政治化傾向、これは本来の権限分野を超えた政治問題の取り上げ方をしている、こういうことです。それから二番目に、自由社会への敵対姿勢、三番目に予算の無制限な膨張、三点を挙げておるわけでございます。これは、日本としましても、全く理由ないわけではない、アメリカの挙げておる理由にうなずかれるものもあると思っております。昨日も、ユネスコの事務総長がお見えになりましたので、私は率直に、やはり政治化傾向があるのじゃないか、文化、教育の機関であるから、これを排していくということはやはり大事なことじゃないかということを申し上げたわけでございます。  そうした理由でアメリカが脱退を通告したわけでありまして、後に続く国がないように我々は念願をしておるわけでございます。アメリカは脱退しましたけれども、この点についてはアメリカアメリカなりの理由もあるし、それは確かにうなずかれる点もあるが、日本としてはやはりとどまって、そしてユネスコの今アメリカが指摘するような問題点があるとするならば、これを改善して、またアメリカが復帰するというための努力をしていきたい。したがって、日本としてはとどまって、ユネスコにそうしたアメリカが指摘するようないろいろの問題点がもしあるならば、これの改善のために努力を重ねてまいりたい、こういうふうに思っております。
  350. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 ここで政治論を闘わせる気持ちはありませんけれども、政治化傾向と言うが、つまりユネスコだから、文化、教育、科学、こういう問題をやっていればいいんだ、しかし、やはり政治化というのは、一種の平和問題だとか軍縮問題、こういうものが出されるということが気に入らないというのでしょう。しかし、教育、文化、科学技術、こういうものを守るためには平和だとか軍縮というのはかえがけのないもので、発展途上国のみならず、その根底にあるものはそれでなければならないわけですね。ましてや、発展途上国の発言力が強くなったからそれが自由社会に敵対するんだというような発想というのは、私はいささかおかしいと思うのですね。いずれにいたしましても、こういうことは大臣はもう少し説得して、ユネスコだけでなくて国連機構の全体にかかわることですから、ひとつやってもらわなければならないと思います。  実は、七月十六日から九日間にわたりまして、仙台市を中心に初めて民間ユネスコ運動の世界大会が開かれて、きょうも開かれているはずであります。これは七十カ国以上から約二百五十人の外国人、三千人を超える日本人、そういう方々が日本で初めて大きい大会を開いているのですね。ところで一方、政府がユネスコにどういう対応をしているかを見ますと、例えば安倍さんが今おっしゃったように、アメリカの言い分もわからないことはないんだ、非常に同情的でありますけれども、このことは、全体として日本政府がユネスコに冷たくなっているように私は感じてならないのでございます。  例えば、加川隆明ユネスコ執行委員政府代表ですね、この方はどう言っているかといいますと、七月十一日の朝日新聞の中にありますけれども、一問一答でありますが、こうおっしゃっているのですね。「教育、文化、科学といったテーマは、どうしても外交、防衛のような政治性の強い問題の陰に隠れがちだ。日本の国際化とともにユネスコに対する姿勢は先細りになった」これはやはり傾聴に値する言葉だと思うのですよ。同時に、外務省にいたしましても、ユネスコ加盟当初は外務省の省内に単独の課がありましたね。今は課はもちろんありませんし、専属の人はたった一人、こういう状態なんですね。こういうことを一例として見ましても、やはり日本の国際化とともにユネスコに対する姿勢がおかしい、こういうことは言えると思うのですね。  ですから、私は、せっかく安倍さんがああいうふうにおっしゃっておりますけれども、形を変えて、アメリカのレーガン政権の脱退理由にありますような調子に歩調を合わせてやろうというような方向もほの見えるわけでありますが、こういうことになりますと、西側全体がユネスコを揺さぶる、そういう批判は免れないだろうと思います。これは私の憶測でなければ幸いでありますが、そのためにも政府は今こそ、例えば資金その他でもアメリカが抜けるわけですから、当然いろいろな格好でその分も降りかかってくると思いますけれども、私は最大の貢献を今こそすべきだ。人も金も出すべきだ。従来のように、スリーピング、居眠りだとか、スマイル、微笑だとか、サイレント、沈黙の三Sが日本の代表のあり方だなんという、そういう力のない、影の薄いやり方でなくて、積極的に打って出るべきだ。同時に、アメリカに対しても脱退しないようにいま一層働きかけるべきだと思いますが、この点についての大臣の御所見をいただきたいと思います。
  351. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本は、仙台におけるユネスコ協会を初め、ユネスコ運動に当たってはいわば草分けの国でありますし、非常にユネスコ運動は盛んです。そういう意味で、ユネスコに対しては積極的に貢献をしておりますし、その姿勢は変わらないわけでございます。したがって、アメリカが脱退したからといって日本がこれに追随して脱退するという考えも持っておりませんし、むしろアメリカに思いとどまったらどうですかということを我々は要請もしたわけであります。  しかし、ユネスコにおいてもやはり問題がないわけではない。アメリカが言っているような問題が全然ないわけではないと私は思っている。ですから過度の政治化というのはいろいろと問題が起こって、そしてこれがまた他国の脱退等を誘引することになっては困るから、もっとユネスコ本部の改善が必要であるということも同時にあわせて主張しているわけでございます。日本としてはこれからもユネスコ運動に対しては熱心に努力、貢献をしたいと思いますし、そういう中で体質を改善して、そうしてアメリカが帰ってくることを期待もし、今後ともそれに向かって努力もしてまいりたい、こういうふうに思っております。
  352. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 それでは次の問題に移らせていただきます。  フィリピンのマルコス大統領の最大の政敵であったアキノ元上院議員の暗殺問題、あれが去年の八月二十一日でありますから、やがて一年目を迎えようとしています。あの事件は世界的に衝撃を与えましたけれども、同時に多くの教訓や反省を残したと思うのです。その一つに経済問題があると思うのですわ。マルコスさんのフィリピン政府は御承知のように一貫して経済成長政策をとってまいりましたが、その問題が、本質は国民の要求や幸せというもののために頑張る方向でなくて、現政権への不平や不満、批判に対しては徹底した弾圧、強権、つまり治安維持機構の強化拡大という格好で、今マルコス王朝と言われるような一部の特権階級がのさばっている、こういうところに問題の根源があるということも指摘されているところであります。日本政府といたしましてもこの問題は、フィリピンに対しまして膨大な海外援助を出しておるわけでありまして、開発途上国の援助のあり方も改めて問いかけてきているとは思いますけれども、このアキノさんの暗殺問題に絡んで、簡単で結構ですから大臣の御所見を伺いたいと思います。
  353. 後藤利雄

    ○後藤(利)政府委員 お答えいたします。  このアキノ暗殺事件に対する私ども政府の見解でございますけれども、この事件はそもそもフィリピンの国内問題でございますし、既に調査委員会が調査を開始していることでもありますので、コメントは差し控えたいと思います。フィリピン側は、単に犯人を確定するための証拠収集等に関しまして捜査共助を要請してきておりますので、私どもとしてはその国際捜査共助法に基づきまして可能な協力をするということで対応しております。
  354. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 私の質問したこととピント外れで、この次お聞きしようということを先にお答えいただきましたね、あなた。私先ほど大臣に基本的な見解をお聞きしたつもりでありますが、時間の関係がありますから省略します。  今お話ありましたように、国際捜査共助法によってフィリピン政府からこの事件に関して、アキノ氏を連行した兵隊さんらの声紋鑑定などの正式要請日本政府にあったということだと思うのですが、この要請はいつありましたか。
  355. 後藤利雄

    ○後藤(利)政府委員 具体的な日付につきましては、お答えを御勘弁願いたいと思います。
  356. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 御勘弁いただきたいと言うけれども、私きのう外務省を呼んでお話をお聞きしたのですよ。こういうことでした。第一回目の要請があったのがことしの一月十三日です。これはアキノ氏暗殺に関連して、関係する邦人に対し事情聴取をされたいというような趣旨ですね。第二回目はことしの五月ですね。アキノ氏を連行した兵士らの声紋鑑定の要請だ、こういうふうにきのう私はお聞きしたわけでありますが、あなたはその点は答えられないと言う。こういうことは別に何ということないんじゃないですか。  そこで、私はお答えできる許容量の範囲内だと思うのですよ。ですから、日本についてそういう鑑定要請がきたとするならば、その兵士らの録音テープも一緒に届いた、こういうことだろうと思いますが、そうですね。
  357. 後藤利雄

    ○後藤(利)政府委員 声紋鑑定の要請がありましたことは事実でございます。
  358. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 それでは法務省にお伺いします。  邦人に対する事情聴取、声紋の鑑定、前段の関係も、きのう外務省お話ししたことですから事実だと思いますので、邦人に対する事情聴取をしたというその邦人の中には、アキノ氏と同じ飛行機に同乗した若宮さん、あるいは暗殺当時の模様を撮影した民間テレビ局のビデオに基づいて音声鑑定した日本音響研究所の鈴木松美所長も含まれているのかどうか、この点を法務省にお聞きしたいと思います。
  359. 堀田力

    ○堀田説明員 先ほど御答弁されておりますとおり、邦人の事情聴取はいたしておりますが、その内容がどういうものであったかということは、外国の捜査の秘密にかかわることでございますので、私どもといたしましては確認することはできない、こういう立場でございます。
  360. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 外国の捜査の秘密にかかわることだと言いながら、フィリピン政府は、日本に国際捜査共助のあれをやったということを発表しているんじゃありませんか。  お答えできないということでありますが、それではこの件はどうでしょう。ことしの二月十四日から二月二十四日にかけましてアグラバ委員会、つまり真相究明委員会が日本へ訪ねてきていますわ。そのとき我が国捜査当局に、アキノ氏と同じ飛行機に乗った日本人乗客らに事情聴取するなど依頼したようでありますが、その依頼の中には日本音響研究所の鈴木所長が行った声紋分析鑑定の供与が含まれておりますか。これは別に、二月段階の日本へ来たときの問題でありますから、この点はお答えできると思いますが、いかがでございましょう。
  361. 堀田力

    ○堀田説明員 二月段階につきましては事情聴取に絞られておったというふうに理解しております。
  362. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 事情聴取に絞られておった。つまり、私がいまお聞きしたようなその事情聴取を依頼された相手方として日本音響研究所の鈴木さんが含まれていたかどうかということについて聞いたわけでありますから、この点はどうですか。
  363. 堀田力

    ○堀田説明員 先ほどお答え申し上げましたとおり、これは、どういう人たちに接触し、どういう人たちからどういうことを聞いたかということは、それを明らかにいたしますと外国側の捜査に影響するおそれがあるということで、捜査共助を受けました側といたしましてはそこを明らかにできないということが国際的な立場でもあろうかと思いますので、答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
  364. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 なぜ私くどくど聞くかというと、民間で鈴木さんの音響研究所のあの結果発表というものは、最新というか最高の科学技術を駆使して、しかも、あれを撮影したのはTBS、それからアメリカの放送局、二つしかないはずですけれども、それを最高権威あるものだと私信じているわけであります。なぜ聞くかといいますと、フィリピン政府から、アグラバ委員会だって一定の限界を持っているわけでありますから、来た録音テープそのものがそれ以外のものであったとするならば、つくられたものであるとするならば、これは大変なことになると思うのですね。そういうおそれがなしとしないから私はお聞きしているわけであります。ですから、鈴木さんが手がけたものとは違うテープのおそれがないのかどうかということ、この点については、政府間のあれですから答える限りでないと言うかもわかりませんが、あれこれ考えて、せっかくそういうものがありながら、わざわざ日本政府に声紋鑑定を依頼してくるということはどういうことなのかということで、いささか合点がいかない点があるわけでありましてお聞きしているわけでありますが、同じような答えが返ってもしようがないので、その点について、それらを踏まえて外務大臣に私、お聞きしたいと思うのです。  真相究明委員会の調査がいよいよ大詰めを迎えているということはおわかりのとおりだと思いますが、アキノ氏暗殺に軍が関係したと思わせる証言がこの間次々に新聞報道でも出ているわけでありますね。例えば三月二十七日の公聴会では、犯人とされたガルマンはアキノ氏が射殺される前に既に死亡していたとか、六月七日、訪米中のアグラバ委員会の事情聴取に対して元フィリピンの特殊情報の兵隊さんが、軍の幹部からかつて二回にわたってアキノ氏を暗殺するよう命令された、こういう証言が次から次に出ていますね。また、あの当時証言に関連したいろいろな人々が次から次に死んで、死体となって出てきていることも新聞に報道されましたね。また、鈴木日本音響研究所長が六月二十九日に、アキノ氏射殺に使われたけん銃は軍当局の発表したものとは全く違うことや、一発目の銃声は、アキノ氏らがタラップの下から四、五段目を歩いていたときに発射された可能性が強いなど、テープの分析を行っているわけであります。安倍さんは外務大臣でありますから、こうした問題に非常に関心が強いと思いますけれども、この点についてどうお考えなのか、御所見をいただきたいと思います。
  365. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は、アキノ事件につきましては真相が明らかになることを望んでおりますが、何といっても外国の事件でございますから、これに関連してとやかく言うことは外務大臣として慎まなければならぬ、こういうふうに思っております。
  366. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 大臣、もちろんあなたのおっしゃるように、究明委員会の調査結果にまたなければならないのは当然です。しかし、もし、声紋鑑定の結果、アキノ暗殺に政府が関与した、こういうことが明らかになれば、これは外国の事件だと言って済まされないと思うのです。まさに重大な問題だと思うわけでありますけれども、レーガン政府でさえも事件直後に最も強い表現で、可能な限りこれを糾弾する、こう声明を発しているほどであるわけであります。そういう点で、今のところ予測を出ませんけれども、そういう実態が明らかにされたならば、対フィリピン外交に何らか影響すると当然思うのでありますが、そういう点についてはいかがお考えでしょうか。
  367. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 何分にも外国の事件でございますから、予測を加えたり、あるいはコメントすることは差し控えなければならない、こういうふうに思っています。
  368. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 外国の事件でも、日本は膨大な海外援助、経済援助をやっていますね、そして今声紋鑑定を日本政府に依頼してきているわけですね、外務省へ。外務省から法務省、警察庁、こう行っているわけでありますけれども、こういうつながりの中で、これはコメントできないということでいいだろうかということが私はひとつ考えられるわけでありますが、そういう状況がもはや真近に迫っている、こういうことだと思うのです。お答えできなければできないで結構ですけれども、こうなりますと、経済協力の中止だけでなくて、外交全般も縮小せざるを得ないような、そういう重大なところに持っていかれる筋合いの重さのある事件だと私は思っているのでありますが、この点については答弁は要りません。時間の関係もございますから、次の問題に移らせていただきます。  それはアパルトヘイトに対する政府の態度の問題ですね。アパルトヘイトというのは、御承知のとおり、南アフリカのあの人種隔離政策といいますか差別政策といいますか、こういうことに対する問題をお聞きするのでありますが、自民党は、六月六日、党内に日本・南アフリカ友好議員連盟を発足させていますね。会長は二階堂副総裁、幹事長は石原慎太郎さん、こういうメンバーをそろえているわけでありますけれども 自民党員である安倍外務大臣はこれを歓迎する 場ですか、それともこれを好ましくないという 場でございますか、国連のいろいろな決議や要請もありますように、そういうものを踏まえてどうお考えになっているか、お聞きしたいと思うのです。
  369. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 外務大臣としてはっきり申し上げます。  我が国は、南アのアパルトヘイト政策に強く反対し、従来より一貫して国連等の場においてこの基本的態度を表明してきており、南アに対しては、同政策をできるだけ早く撤廃し、基本的人権と自由を尊重するよう、あらゆる機会をとらえて訴えております。  なお、南アとの関係につきましては、我が国は領事関係にとどめ、外交関係は有してない、こういうことであります。
  370. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 安倍さんに私が聞いたのは、あなたの党内に日本・南ア友好議員連盟が偉い人たちが集まってつくられているわけですよ。しかも、新聞の見出しを見ますと、「南アと国交正常化図る」こういう見出しですね。ですから、あなた自身は、今おっしゃるのは、好ましくない、政府全体の意向としては表明されましたが、あなたの足元でこういうものが発足していることについて、あなたは、同じ自民党員としてどういう見解を持っていらっしゃるのかということを聞いているのです。
  371. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は外務大臣としてこの場に立っておりますから、外務大臣としてお答えするわけであります。  なお、我が党においていろいろの、南ア議員連盟の動きがある、結成されたということについても承知をいたしておりますが、我が党は非常に幅の広い政党でありまして、いろいろの議員連盟がありますし、それは党としての議員連盟というよりは、それぞれの議員の個人的な集まりとしての議員連盟ですから、それはそれなり政府がとやかく言う筋合いではない。政府は、毅然として今申し上げましたような筋をとって、アパルトヘイト政策には反対をいたしておるわけであります。
  372. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 いやしくも、日本のそういう外交方針を推進する立場であるあなたが、それに背くようなそういう友好議員連盟ができたら、それは党内にはいろいろな考えがあるからしようがないんだということではなしに、当然それに対して注意するなり勧告をするなりが私はあなたの基本的な任務じゃないかと思うのですが、ここでの論議もまた長くなりますから省略しますが、そう思います。  ところで、この南アフリカ共和国は、アメリカ政府の支援、そういうものを背景にいたしまして、モザンビークと不可侵善隣条約などを結んだりして、周辺国への外交平和攻勢といいますか和平攻勢といいますか、そういうものをかけていますけれども、それがこのアパルトヘイト、人種隔離差別政策に対してどういう影響をもたらしているのか、その評価をちょっとお聞きしたいと思うのです。
  373. 波多野敬雄

    ○波多野政府委員 モザンビークのチサノ外務大臣を、モザンビークが南アと不可侵条約を結んだ直後に日本に招待いたしまして、安倍大臣、チサノ外務大臣、長時間会談いたしましたけれども、そのときの先方の説明といたしましては、モザンビークとしては、あくまでアパルトヘイトには反対する、しかし、それはそれとして、不可侵条約を結び、それによってモザンビークとしてはみずからの経済繁栄を図っていくのだ、すなわち、この不可侵条約は決して南アから強制されたものではなくて、モザンビークとしてみずからの利益のために選んだ道なんであるということをるる説明しておりました。我々といたしましても、モザンビークが自発的にそういう選択をされた場合には特に反対する立場にはないと思います。
  374. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 いろいろな和平攻勢の演出をしておりますけれども、実際はどういう状態になっているかということであります。これは四月一日の毎日新聞でありますけれども、南アの黒人の指導者で例のソウェト十人委員会の議長をしているモトラナ博士の談話が出ているのですが「黒人は悲しんでいる 不可侵・善隣条約は脅し」だと言っているのです。しかも「南ア及び米国など諸外国は条約を歓迎し高い評価を与えようとしている。しかし南アの黒人は一人として喜ぶところか、みんな悲しんでいる。南ア政府がしたことは弱い立場にある近隣諸国を脅し、差別の現状を認めさせたことだ。」と言っているのです。また、黒人解放のために反アパルトヘイト運動の南アの女性リーダーとして有名なダンカンという方がおりますけれども、この人はこう言っているのです。大変なことだと思うのですが「南アが進めている和平攻勢の結果、対南ア制裁、投資禁止、ボイコットなどの話は弱まり、立ち消えになるだろう。」と言っているのです。つまり、問題は、南ア政府のこの政策が何ら変化していないにもかかわらず、逆にそういうポーズの中でいろいろな面が、国連決議、要請その他にある規制そのものが弱まる。そうしてはならないと思うのですけれども、これについて外務大臣の御見解を聞かせていただきたいと思います。
  375. 波多野敬雄

    ○波多野政府委員 我が国といたしましては、外交関係は持たず領事関係にとどめる。それから南アに対しましては直接投資を認めない。さらに南アとの間でスポーツ、教育、文化の分野における交流を制限する。さらには国連の武器禁輸決議を厳守するというような基本方針を今後とも堅持していく所存でございます。
  376. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 今御答弁がありましたけれども、全く反対のことを日本はやっておるのではないですか。ここに八三年十月三十一日の毎日新聞がございますが、「色あせた対南ア交流禁止方針」「「日本芸術祭」が幕」こういう見出しの記事があります。ヨハネスブルグで日本の民間団体共催による日本芸術祭というものが開かれて大々的にやったというのです。そのこともおかしいわけですが、これに対して、さすがに領事は公式には出られなくて次席領事を非公式に派遣した、総領事はお忍びで見に行った、こういうことです。今の答弁の限りで見ますならば、外務省は、これは当然やめさせるべきだというのはあたりまえじゃありませんか。その姿勢が問題だと思うのでございますけれども、今経済関係についてもいろいろ制約することに努めているというお話でございます。  それならばお聞きいたしますが、一九七二年九月十日現在で、私が調査した時点では南アに駐在員、出張所を置いている日本の企業は五十二ありました。今幾つかといいますと六十二ではないですか。間違いですか。
  377. 波多野敬雄

    ○波多野政府委員 最初のアートフェスティバルでございますけれども、これは外務省と全く関係のない芸術海外交流会という組織がスポンサーしたものでございまして、現地の総領事館はこれへの参加を断っております。ただし、どういうものが行われているかを見ておく必要もあるので、総領事館の館員一名がここを視察した事実はございます。  次に、駐在員事務所の数でございますけれども、現在六十二でございます。
  378. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 日本外交の基本方針は、先ほどお話がありましたように、そういう経済的な交流なりいろいろなものについては、国連のそういう決議、要請の趣旨に従う、先ほど安倍大臣からもそういう御発言があったばかりでありますけれども、民間だから何をやってもいいんだ、それをやるのをわかっておったら当然規制するなり勧告するなりするというのが筋じゃないですか。  同時に後段の問題ですが、日本の企業の現地駐在員はどんどんふえているんだな。これも趣旨に反するし、同時に私が聞きたいのは、貿易の関係なんですね。一九八〇年から南アフリカと日本の貿易量はどんどんふえて、今詳しく言う時間もございませんけれども、一つの例をとって申しますと、一九八一年、八二年では、南アにとって輸出国としては日本が第一位です。輸入国としては第四位ですね。総額でいつでも八〇年三位、八二年四位。総額に占める割合も八〇年七・四%、八一年八・九%、八二年は九・五%、どんどんふえて、先ほど安倍大臣の言ったようなそういう傾向は全く見られないわけであります。これは言っていることとやっていることと全く違うということにならないでしょうか、いかがですか。
  379. 波多野敬雄

    ○波多野政府委員 資源希少国であります我が国といたしましては、貿易関係等の実務関係は維持していかざるを得ないと思います。
  380. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 あなたはそうおっしゃるけれども、貿易自体も国連決議の中でそういう日本の主要な貿易国として指摘されたところなんですね。同時に、そういう方向じゃいけないということは、例えば昭和五十四年五月二十四日の参議院の外務委員会の質疑の中で、当時の政府委員は「特に貿易を著しく増加せしめないという配慮は当然日本にも要請をされておるという認識のもとに、そのような発言も国連でしておるわけでございます。」と言っているのですよ。亡くなった園田直さん、外務大臣当時、何とおっしゃっているかというと、これは昭和五十四年三月一日、衆議院の決算委員会です。ここでは「一方には南アに対する関係は逐次縮小していって、世界の世論に訴えていきたいと考えておるところでございます。」どの発言を見ましても、先ほどの御答弁のような趣旨には受け取ることが全くできないわけでありまして、むしろ逆方向へ行っているということは明らかだと思うのです。  そういう点で、私は最後に、外務大臣にお聞きするのでありますが、やはりあなたの先ほどの答弁と実態がこれだけ違うのですから、そういう趣旨に沿った、例えば低い方に縮小する方向に努力していくのが国際的義務でもあり、また日本の責任でもあると思うのでございますけれども、この点について外務大臣から最後の御答弁をいただきたいと思います。
  381. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 南アフリカに対する我が国の基本姿勢は変わらないわけでありまして、アパルトヘイト政策に対しては強く反対し、今後も反対は続けていくわけです。そういう中でいろいろと制限をいたしております。これは外交関係を持っておりませんし、あるいはまた経済面でも本邦企業による現地法人設立等の対南ア直接投資を認めてない、こういうふうにいろいろと制限はいたしておるわけでございますが、しかし我が国も自由な国でありますから、いろいろの企業等が外へ出ていくこと、それはその企業の危険負担の中で出ていくわけでございますから、それまで抑えるということはなかなか困難でございます。しかし、基本は変えてない。今後とも続けていきますが、先ほどモザンビークの話も出ましたけれども、最近南アが多少アパルトヘイト政策を緩和するという機運といいますか、方向も出つつあるような感じもしないわけではない。やはり日本、さらに世界が今後とも南アに対してアパルトヘイト政策を強く非難し続ければ南アの方向もだんだん変わってくるのではないか、こういうふうに思うわけであります。最終的にはやはりこれを変えさせるというのが目的でございますし、日本はそういう中で粘り強くこれには対応をしてまいりたいと思います。  さっき議員連盟の話も出ました。議員連盟も、今すぐここで南アと国交回復しろということではなくて、やはり南アのアパルトヘイト政策に対してはこれを変えるべきだという考え方は持っておられるものである。ですから、そういうものを変えさせながら南アとの交際をしていこう、こういう趣旨ではないだろうか、こういうふうに判断もいたしておるわけでございますが、いずれにしても、政府は、先ほどから申し上げましたような南アに対する基本方針は今後とも貫いていく考えであります。
  382. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 基本方針はそれでも、実際はその反対のことをやっている。このことは、逆に南アを力づけ、勇気づけ、もっとひどいそうしたアパルトヘイト政策を進行させることに力をかす結果となっているということ。したがって、そういうなし崩しでどうだということではなくて、やはりもっと強い決意ではっきりしなければならないということを重ねて申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  383. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員長代理 次回は、来る八月七日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時二十二分散会