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1984-05-18 第101回国会 衆議院 決算委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年五月十八日(金曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 横山 利秋君    理事 近藤 元次君 理事 白川 勝彦君    理事 谷  洋一君 理事 東家 嘉幸君    理事 井上 一成君 理事 新村 勝雄君    理事 貝沼 次郎君 理事 神田  厚君       小坂徳三郎君    塩崎  潤君       城地 豊司君    近江巳記夫君       玉城 栄一君    伊藤 昌弘君       中川利三郎君    阿部 昭吾君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (内閣官房長官)藤波 孝生君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖縄開発庁長         官)      中西 一郎君  出席政府委員         内閣官房内閣審         議室長         兼内閣総理大臣           官房審議室長  禿河 徹映君         内閣法制局第一           部長      前田 正道君         国防会議事務局           長       伊藤 圭一君         内閣総理大臣官         房会計課長         兼内閣参事官  渡辺  尚君         内閣総理大臣官         房管理室長   菊池 貞二君         総理府賞勲局長 柳川 成顕君         総理府人事局長 藤井 良二君         青年対策本部         次長      瀧澤 博三君         北方対策本部審         議官         兼内閣総理大臣         官房総務審議官 橋本  豊君         警察庁長官官房         会計課長    立花 昌雄君         行政管理庁長官         官房会計課長  前山  勇君         北海道開発庁予         算課長     平岡 哲也君         経済企画庁長官         官房会計課長  遠山 仁人君         科学技術庁長官         会計課長    窪田  富君         環境庁長官官房         会計課長    廣重 博一君         沖縄開発庁総務         局長      関  通彰君         沖縄開発庁総務         局会計課長   大岩  武君         沖縄開発庁振興         局長      藤仲 貞一君         国土庁長官官房         会計課長    安達 五郎君         法務大臣官房会         計課長     村田  恒君         外務大臣官房審         議官      都甲 岳洋君         外務大臣官房会         計課長     林  貞行君         外務省情報文化         局長      三宅 和助君         大蔵大臣官房会         計課長     渡邊 敬之君         大蔵省主計局次         長       的場 順三君         大蔵省銀行局長 宮本 保孝君         文部大臣官房会         計課長     國分 正明君         厚生大臣官房会         計課長     黒木 武弘君         厚生省援護局長 入江  慧君         農林水産大臣官         房経理課長   岩崎 充利君         通商産業大臣官         房会計課長   山本 雅司君         運輸大臣官房会         計課長     宮本 春樹君         郵政大臣官房経         理部長     高橋 幸男君         労働大臣官房会         計課長     若林 之矩君         建設大臣官房会         計課長     牧野  徹君         自治大臣官房会         計課長     桝原 勝美君  委員外出席者         首席内閣参事官 森  幸男君         インドシナ難民         対策連絡調整会         議事務局長   飯島 光雄君         防衛経理局工         務課長     及川 康男君         大蔵省主計局主         計監査官    成田 幹彦君         大蔵省理財局国         有財産第二課長 藤川 鉄馬君         文部省初等中等         教育局教科書検         定課長     小埜寺直巳君         農林水産省構造         改善局農政部長 羽多  實君         運輸省航空局管         制保安部管制課         長       小山 昌夫君         運輸省航空事故         調査委員会事務         局総務課長   堀井  毅君         労働省職業安定         局業務指導課長 鹿野  茂君         建設大臣官房官         庁営繕部長   渡辺  滋君         会計検査院事務         総局第一局長  西川 和行君         会計検査院事務         総局第三局長  秋本 勝彦君         会計検査院事務         総局第五局長  中村  清君         沖縄振興開発金         融公庫理事長  岩瀬 義郎君         決算委員会調査         室長      石川 健一君     ————————————— 委員の異動 五月十八日  辞任         補欠選任   塚本 三郎君     伊藤 昌弘君 同日  辞任         補欠選任   伊藤 昌弘君     塚本 三郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十六年度一般会計歳入歳出決算  昭和五十六年度特別会計歳入歳出決算  昭和五十六年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和五十六年度政府関係機関決算書  昭和五十六年度国有財産増減及び現在額総計算  書  昭和五十六年度国有財産無償貸付状況計算書  〔内閣所管総理府所管総理本府、沖縄開発  庁)、沖縄振興開発金融公庫〕  歳入歳出の実況に関する件(各省各庁等所属建  築物の電気料金問題)      ————◇—————
  2. 横山利秋

    横山委員長 これより会議を開きます。  昭和五十六年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は、総理府所管総理本府等、沖縄開発庁及び沖縄振興開発金融公庫について審査を行います。  まず、中西国務大臣から総理本府等及び沖縄開発庁について概要説明を求めます。中西国務大臣
  3. 中西一郎

    中西国務大臣 昭和五十六年度における総理府所管一般会計歳入歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  総理府主管歳入につきまして、歳入予算額は七百五十七億一千五百七十六万円余でありまして、これを収納済み歳入額八百三十一億七百七十九万円余に比較しますと、七十三億九千二百二万円余の増加となっております。  次に、総理府所管歳出につきまして、歳出予算現額は五兆三千九百四十二億五千五百十八万円余でありまして、支出済み歳出額は五兆三千三百六億三千五百六十万円余であります。  この支出済み歳出額歳出予算現額に比較いたしますと、六百三十六億一千九百五十八万円余の差額を生じます。  この差額のうち翌年度繰越額は五百五十二億三百二十四万円余であり、不用額は八十四億一千六百三十三万円余であります。  総理府所管歳出決算のうち、警察庁行政管理庁北海道開発庁、防衛庁、経済企画庁科学技術庁環境庁沖縄開発庁及び国土庁については、各担当大臣から御説明申し上げることになっておりますので、これを除く部局、すなわち、総理府本府、公正取引委員会公害等調整委員会及び宮内庁関係について申し上げますと、歳出予算現額は一兆七千八十三億四千百二万円余でありまして、これを支出済み歳出額一兆六千九百二十億八千四百三十八万円余に比較いたしますと、百六十二億五千六百六十三万円余の差額を生じます。  この差額のうち翌年度繰越額は百六十一億五千二百五十七万円余であり、不用額は一億四百六万円余であります。  翌年度繰越額は、恩給費でありまして、これは文官等恩給及び旧軍人遺族等恩給の請求の遅延及び履歴等調査確認不測日数を要したため、年度内支出を終わらなかったものであります。  また、不用額は、人件費等を要することが少なかったため、不用となったものであります。  以上をもちまして、決算概要説明を終わります。  何とぞよろしく御審議のほどお願いいたします。  次いで、昭和五十六年度における沖縄開発庁歳出決算につきまして、その概要を御説明いたします。  沖縄開発庁歳出予算現額は一千二百二十億九千百四万円余でありまして、このうち、支出済み歳出額は一千百七十一億五千八百八十五万円余、翌年度へ繰り越した額は四十六億五千五百二十三万円余、不用となった額は二億七千六百九十六万円余であります。  まず、歳出予算現額につきましては、当初予算額二千百七十三億三千二百六十二万円余、予算補正追加額一億一千五百八十八万円余、予算補正修正減少額二億四千六百五十四万円余、予算移しかえ増加額二千四十三万円余、予算移しかえ減少額一千十一億九千十四万円余、前年度繰越額六十億五千八百八十万円を増減しまして一千二百二十億九千百四万円余となったものであります。  支出済み歳出額の主なものは、沖縄振興開発のための財源として、道路整備特別会計治水特別会計国有林野事業特別会計港湾整備特別会計及び空港整備特別会計へ繰り入れた経費一千三億五千七百七十一万円余であります。  次に、翌年度へ繰り越した額四十六億五千五百二十三万円余は、道路整備特別会計において、用地の関係補償処理の困難、計画及び設計に関する諸条件により、事業の実施に不測日数を要したため、同特別会計への繰り入れが年度内に完了しなかったこと等によるものであります。  また、不用となった二億七千六百九十六万円余は、退職手当必要額予定を下回ったこと等により生じたものであります。  以上をもちまして、昭和五十六年度沖縄開発庁決算概要説明を終わります。  何とぞよろしく御審議のほどお願いいたします。
  4. 横山利秋

    横山委員長 次に、会計検査院当局から検査の概要説明を求めます。西川会計検査院第一局長
  5. 西川和行

    西川会計検査院説明員 昭和五十六年度総理府所管決算のうち、歳入並びに総理本府、公正取引委員会公害等調整委員会及び宮内庁関係歳出につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
  6. 横山利秋

  7. 秋本勝彦

    秋本会計検査院説明員 昭和五十六年度沖縄開発庁決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
  8. 横山利秋

  9. 中村清

    中村会計検査院説明員 昭和五十六年度沖縄振興開発金融公庫決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
  10. 横山利秋

  11. 岩瀬義郎

    岩瀬説明員 昭和五十六年度沖縄振興開発金融公庫業務概況について御説明申し上げます。  沖縄振興開発金融公庫は、沖縄における産業開発を促進するため、長期資金を供給すること等により、一般金融機関が行う金融及び民間の投資を補完し、または奨励するとともに、沖縄国民大衆、住宅を必要とする者、農林漁業者中小企業者、病院その他の医療施設を開設する者、環境衛生関係営業者等に対する資金で、一般金融機関が融通することを困難とするものを融通し、もって沖縄における経済の振興及び社会の開発に資することを目的とするものであります。  昭和五十六年度事業計画は、当初貸し付けとして千四百億円、出資として四億円、合計千四百四億円を予定しておりました。  この計画に対する実績は、出資については実績がなく、貸付契約額が千百二十四億八千万円余となっております。  次に、貸付残高について御説明申し上げます。  昭和五十五年度末の貸付残高は五千七百七十七億七千万円余でありましたが、昭和五十六年度中に貸し付けを千百三十九億三千万円余行い、回収が五百二十九億九千万円余ありましたので、昭和五十六年度末においては六千三百八十七億一千万円余となっております。  なお、貸付金延滞状況につきましては、昭和五十六年度末におきまして弁済期限を六カ月以上経過した元金延滞額は六十六億円余でありまして、このうち一年以上のものは六十一億三千万円余となっております。  次に、昭和五十六年度収入支出決算について御説明申し上げます。  収入済み額は四百二十六億五千万円余でありまして、これを収入予算額四百二十五億円余に比較いたしますと、一億五千万円余の増加となっております。この増加いたしました主な理由は、運用収入等予定より多かったためであります。  支出済み額は四百三十五億四千万円余でありまして、これを支出予算額四百五十三億六千万円余に比較いたしますと、十八億一千万円余の減少となっております。これは借入金利息等予定より少なかったためであります。  最後に、昭和五十六年度における損益計算について御説明申し上げます。  貸付金利息等の総利益は五百十六億八千万円余、借入金利息等の総損失は五百十二億七千万円余となり、差し引き四億円余の利益金を生じました。  この利益金は、本土産米穀資金特別勘定利益金でありますので、沖縄振興開発金融公庫法施行令附則第四条第二項の規定により同勘定積立金として積み立てることとし、国庫納付金は生じませんでした。  以上が昭和五十六年度における沖縄振興開発金融公庫業務概況であります。  何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。
  12. 横山利秋

    横山委員長 これにて説明は終わりました。     —————————————
  13. 横山利秋

    横山委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。東家嘉幸君。
  14. 東家嘉幸

    東家委員 ただいまより質問させていただきます。  本日は、戦後のシベリア抑留者の補償問題についてお尋ねしたいと思います。  この問題は、既に衆参両院内閣委員会等におきまして数回にわたり論じられてまいりましたが、今回は、責任政党たる自民党としての立場を踏まえ、また、私自身が十八歳のときにシベリア抑留された体験者の一人として、また補償要求運動をしておられる数多くの同志方々の声を代弁するためにも質問させていただきたいと思います。  その前に、最初からこの問題に携わってまいりました者として、これまでの経過を振り返ってみたいと思います。  この補償要求運動は、昭和四十九年に九州の佐賀県に始まり、我々の同志である相沢英之議員会長を務める全国戦後強制抑留者補償要求推進協議会会員約七万名でございますが、これが中心となって、関係方面に対し今日まで精力的に陳情を続けてまいりました。しかしながら、昨今の我が国財政事情等の悪化により、その運動の道のりは非常に長く険しいものであります。  既に戦後四十年近く経過し、会員平均年齢も七十歳を超え、お亡くなりになられる方も年々増加していると聞いております。あの極寒の地にて生死の境をさまよいながら強制労働に服せられた苦しみは、体験した者でなければわからぬ、筆舌に尽くしがたい苦労がありました。また、留守家族方々御苦労も並み大抵のものではなかったと思うと、胸が詰まる思いでございます。これらの御苦労に対し、今日まで政府より何の処置もとられなかったという事実について、私にはどうしても納得がいかず、このゆゆしき大問題に対し早急に何らかの処遇改善を図らなければという思いで私はいっぱいでございます。  幸い、責任政党である我が自民党において多くの賛同者を得、齋藤邦吉議員会長に戦後強制抑留者処遇改善に関する議員連盟を結成いたし、党幹部並びに政府に対し精力的な要望を続けてまいったのであります。この議員連盟の二百数十名の先生方の熱心な御尽力により、党の内閣部会においても正式な議題として取り上げていただくことになりました。当時の愛野部会長のもと、数十回にわたる白熱の議論を重ねてまいりました。それに、この問題につきましては、ここの委員長席におられる横山委員長を初め、野党の先生方の御協力も賜り、党派を超えて一日も早く解決しなければならないとの声が高まっております。  そうして、悪戦苦闘の末、昭和五十七年度政府予算において、総理府に初めて検討経費を計上していただき、民間の有識者の先生方にて戦後処理問題懇談会を発足し、精力的に調査検討していただいているところでございます。そうして、いよいよ待ちに待った懇談会検討結果が近日中にまとまる運びとなり、この問題にとって最も重要な局面を迎えることとなりました。この時期に当たり、関係者を代表して、関係各位に対し率直にお尋ねしたいと思いますので、これまでの経過等を十分にかんがみ、適切なる御答弁をいただきたいと思うわけでございます。  まず初めに、外務省お尋ね申し上げますが、シベリア抑留され、強制労働させられたということの事実について、ポツダム宣言等を踏まえた国際法上の見地よりどのような見解をお持ちでございましょうか。
  15. 都甲岳洋

    都甲政府委員 お答え申し上げます。  私どもも、シベリア抑留されて御苦労された方々のことに思いをいたしますと、非常に胸の痛む思いがいたしますけれども、これを国際法的に見てみますと、当時の国際法の上からいって、捕虜を捕らえた場所から別の場所に移して若干の期間抑留するということ自体が違法だということは必ずしも言えないと思うわけでございますけれどもポツダム宣言におきましては、第九項に「日本国軍隊ハ完全ニ武装解除セラレタル後各自ノ家庭ニ復帰シ平和的且生産的ノ生活営ムノ機会ヲ得シメラルベシ」ということが定められておりまして、我が国はこのポツダム宣言条項を受諾した上で終戦に応じたわけでございますから、このような規定からいたしましても、少なくとも、犯罪人の処罰というような事情がなくて、そのような正当な理由がなくて行われた抑留というものは、これは国際法、このようなポツダム宣言条項に全く違反するものであろうというふうに解しております。  それから、特にシベリア抑留されました日本将兵等についての取り扱いにつきまして、これまた国際法上いろいろな問題があったというふうに考えております。  それから、さらに、一般方々シベリアにおいて抑留生活をされた方が大勢おられますけれども、このような方々シベリアに強制的に送られるというようなことにつきましては、人道上、国際法上、さらに問題が多いというふうに感じております。
  16. 東家嘉幸

    東家委員 私もお答えのとおりと思います。ポツダム宣言の中に「日本国軍隊ハ完全ニ武装解除セラレタル後各自ノ家庭ニ復帰シ平和的且生産的ノ生活営ムノ機会ヲ得シメラルベシ」ということになっているわけですから、このことはソビエトポツダム宣言に違反した、国際法上違反であるということは明らかであるわけでございます。  次に、また、同じく外務省お尋ねしますが、私のいろいろと調査したところによりますと、昭和二十年八月十九日、ソ連領ジャリコーワというところにおいて、極東ソビエト軍司令官ワシレフスキー元帥関東軍参謀長秦彦三郎中将との間で、日ソ停戦協定に関する協議が行われ、その席上で日本兵抑留労働に従事させるかどうかについて話し合いがなされたと聞いております。このことについてお尋ねをいたします。
  17. 都甲岳洋

    都甲政府委員 お答え申し上げます。  昭和二十年八月十九日に御指摘の協定ジャリコーワという場所におきまして秦中将ワシレフスキー元帥との間で締結されたということは事実のようでございますが、この協定内容武装解除について取り決めたものだと承知しております。会談内容につきましては、資料が必ずしも残っておりませんので正確なことがわかりませんけれども、少なくともこの協定の中には、そのような抑留予定するような条項は全く存在してないようでございまして、むしろ、武装解除の手続であるとか、その武装解除に至るまでの間どのように治安を維持するかとか、このような問題を定めた協定であるということが資料によってうかがわれる次第でございます。したがいまして、先ほどのようなポツダム宣言におきまして日本国軍隊の祖国への復帰を期待しているという事情からいたしましても、このような協定長期抑留を予想するような話し合い会談で行われたということはないというふうに考えております。
  18. 東家嘉幸

    東家委員 私もソビエト抑留中に聞かされたことでございますけれども関東軍との話し合いの中に、また日本政府との話し合い了解のもとに、あんたたち抑留労働させているんだということがソビエト側の言い分です。だから、あなたたちを七年間ソ連復興のために働かすのだ、それは一応了解のもとであるということをソビエト側は主張していたわけです。我々、シベリアにおいても、なぜ不当な強制労働をさすのかということの抗議をしているわけです。そういうことに対し、当時そういうふうな答えをしているわけです。だから、この問題を今さら取り上げてどうということではございませんけれども、いずれにいたしましても、あのような惨事が起きたということは、ソビエト側違法行為であったろうということだけは、重ねてこの場で私は申し上げておきたいと思うわけでございます。  次に、厚生省お尋ねいたしますが、ソ連に連行された方々数字、なおまた、シベリア収容所の数はどのくらいあったのか、抑留された者の数はどのくらいあったのか、それらの方々抑留期間はどのくらいに及んでいたのか、よければその平均と最高と最低の期間を教えていただきたい。また、抑留中非常に多くの方が亡くなられましたが、一体どのくらいの方が死亡されたのでございましょうか。ソ連側ソ連において何名死亡したということを言っているのか、日本側調査は何名であるのか、なおまた、戦争終結後にもかかわらず、なぜそれだけ多くの方々がお亡くなりになられたかということ、その原因は何であったのかということ、今まとめて四点についてお尋ねしたいと思います。
  19. 入江慧

    入江政府委員 四点についてお尋ねでございます。  最初に、抑留者の総数でございますけれども、私ども帰還者、帰ってこられた方々証言等から把握しております数字は約五十七万五千名ということになっておりまして、これらの方々は、ソ連領の全地域と一部は外蒙地域、これらの地域の約七土地区、約千二百カ所の収容所に分散配置されていたというふうに承知しております。  次に、抑留期間でございますが、これは長い方、短い方いろいろあるわけでございますが、一番短い方で一年くらい、長い方は十年にも及んでおると聞いておりますが、大多数の方は五年以内に帰還されておられます。  次に、抑留中の死亡者でございますけれども、やはり帰還者証言等から私どもが死亡処理した数字は約五万五千名ということになっておりますが、お尋ねソ連側が何名と言っているかという点については私ども承知しておりません。  最後に、抑留者がなぜ死亡されたかという原因でございますけれども、御承知のように、大変寒い地域で、居住条件あるいは食糧不足というような条件のもとで、炭鉱とか森林伐採鉄道建設、道路工事件業と大変な強制労働に従事されたために栄養失調に陥られた、あるいは伝染病、結核その他の病気にかかられた方、あるいは作業中に負傷したというようなことが原因になったと思われるわけでございまして、入ソ直後から冬を越えまして翌年の春までにただいま申し上げた方々の大多数の者が死亡したというふうに私ども承知をしております。
  20. 東家嘉幸

    東家委員 ソ連側収容所を管轄しているわけですから、どれだけ死んだかということはソ連側が掌握しておらねばならないことですね。じゃ、ソ連側に何名死にましたかということをお尋ねになられたことがあるのですか。
  21. 入江慧

    入江政府委員 お話しのように、ソ連側の方が正確な数字を把握しておるはずでございますけれども、私どもとしましては、先ほど申し上げましたように、帰還者等の証言を通じて把握しておりまして、厚生省としてはソ連側に確認したことはございません。
  22. 東家嘉幸

    東家委員 じゃ、外務省お尋ねいたします。
  23. 都甲岳洋

    都甲政府委員 お答え申し上げます。  外務省の方といたしましては、例えば、昭和二十六年に国連の事務総長に対しまして二回にわたって書簡を送りまして、抑留者についての実態、それからその早期返還を申し入れたことがございますけれども、そのようなときにソ連側資料を明確にするようにということを求めた事実はございます。(東家委員「何名ですか」と呼ぶ)それに対してソ連側から、当時はまだ国交回復前でございましたので明確な回答が来ていない……(東家委員「その以後は」と呼ぶ)それ以後は、ソ連側から明確に死亡の数を明らかにしてきたという事実はないと承知をしております。
  24. 東家嘉幸

    東家委員 私どもの聞くところによりますと、ソ連側は、死亡者は三千三百名、それから、皆さん方が引き揚げてこられた皆さん方にお尋ねした五万五千人というのは的確な数字ではないと私は思います。行方不明者等も含めますと十二、三万名の方々が死んだと我々団体の方としては考えているわけです。また、あれだけの抑留者を抱えるソ連側が、全く死亡者数字も発表しない、なおまた、外務省は何名亡くなったかということすらも的確にソ連側と連絡をとっていないということは、お亡くなりになられた方々、遺族のこと等も踏まえたときに、もう少し外務省としても、今からでもいいですから、責任ある調査を願いたいと思います。  次に、農林水産省にお尋ね申し上げますが、極寒の中に、食糧も満足に与えられず、栄養失調のために極度に衰弱した体での重労働は、余りにも悲惨なものでございました。私の体験でございますけれども、冬は木の皮をかじり、春先の草の芽が吹くころともなると争って草を食べて何とか生き延びてまいりました。馬などの動物であれば毒草との見分けがつきますけれども、不幸なことに人間はそれができないのです。だから、毒草を食べたために頭がおかしくなって死んだ方もたくさんおられるわけです。そのような苦難の日々を耐え忍び、一日も早く日本に帰りたいと思って頑張っているころ、日本では農地解放が施行されて、数多くの農家出身の抑留者は、帰ってみたら不在を理由に耕す農地をも取られてしまっていたのです。  ここに、ほんのその一例として、新潟の方の訴えの手紙があります。長文の手紙でございますので、ほんの一部だけを読ませていただきます。   私は二十一年六月に父親に亡くなられ、当時私は抑留中でございました。父親の死後一ケ月後の七月、農地法の施行により私が長年に亘り耕作して来た先祖伝来の農地が一と方もなく他人の(小作者)手元に渡り、私が引揚げ帰宅致した時は私の喰べる食糧すらなく、家内が日夜どんなに苦労と不自由な生活を送ったか今でも私は忘れられません。しかも其の農地は、私が召集令状により十九年一月二十日新発田連隊入隊のため、私が帰る迄での約束にて小作者達に預けてやった土地が僅か二、三年後の農地法により全農地一丁五反歩が全部没収され、しかも僅か一反歩(三〇○坪)八〇〇円−九〇〇円にて解放され、自分達の食べる食糧すらないありさまになってしまいました。ということの、長文の手紙でございますけれども訴えが来ているわけでございますが、そうした農地解放のときに、シベリア抑留されている不在地主のこと等も踏まえてこういう処置をとられたのかどうか、農林省にお尋ねをいたします。
  25. 羽多實

    羽多説明員 お答えいたします。  農地改革におきます小作地の買収に当たりまして、ただいまの御質問のような、小作地の地主の方が、これはシベリア抑留に限りませんが、終戦前の召集という事情によりまして不在地主となった場合、そういう場合であっても、それを不在地主として取り扱うということは非常に不合理でございますので、その地主の方は在対地主として扱うということで、法律、政令によりましてそういう扱いをしておったわけでございます。したがいまして、そういうことはないということで処理をしてまいったわけでございますが、しかしながら、戦後の非常な混乱期でもございまして、そのような方が不在地主として買収されたというような事実がもし仮にあったといたしますと、まことに遺憾でございまして、抑留者方々に対してまことに申しわけないことと存じております。
  26. 東家嘉幸

    東家委員 そのほかにもシベリア抑留されたために起こった悲劇は数知れませんが、時間の関係上、余り多くは申し上げることができません。  今度、厚生省お尋ねいたしますが、戦後一日も早く復興しなければならない苦難の時期に、家族の大黒柱である御主人を何年間も抑留にとられ、苦労を強いられた留守家族に対し、その当時政府はどのような処置をおとりになられたのか、お尋ね申し上げます。
  27. 入江慧

    入江政府委員 留守家族方々に対する援護でございますが、昭和二十八年八月一日前におきましては、軍人軍属の方々につきましては、未復員者給与法というのがございまして、これに基づきまして、また、軍人軍属以外の一般邦人でシベリア抑留された方々には、いわゆる特別未帰還者ということでございまして、ただいま申し上げた未復員者給与法の規定を準用した特別未帰還者給与法によりまして、内地に残されております扶養親族に対して俸給及び扶養手当を支給したわけでございます。  当時の額を御参考までに申し上げますと、二十六年当時で俸給月額が千円、扶養手当月額が六千円、物価指数で処理いたしますと、それぞれ五千七百七十円、三千四百六十二円ということになっております。  二十八年八月一日以降には未帰還者留守家族等援護法というのができまして、やはり同様に留守家族手当が支給されたわけでございます。この額は、留守家族のうち先順位者の方々は月額二千百円、ほかに留守家族がおられる場合には一人当たり四百円というのが支給されておるわけでございます。これを物価指数で処理しますと、五十八年度価格で約一万八百十五円、その次の順位の方は二千六十円というふうになっております。
  28. 東家嘉幸

    東家委員 今の私の質問に対しての答えの中には、私は大変不満を持っているわけでございます。というのは、的確にそれが行われていなかったという事実がたくさんあるわけでございます。そのことについてはもう四十年前のことでございますから申し上げませんけれども、やはり支給を受けてないというところがかなり、半分近くはあるのではないだろうかと私は聞いております。  なおまた、参考までに申し上げますけれどもソ連から引き揚げてまいりますときに、舞鶴で復員証明書とともにいろいろな名目で酒、たばこ、それから、みそ、しょうゆ、マッチ、手ぬぐい、そういうものを含めて支給されたわけでございます。その金額を今の物価指数で換算してみますと、約六万八百六十一円ですね。四年も五年もそういう環境のもとで重労働を強いられた人たちが、国家のために働いた人が、舞鶴へ上陸するときはたったの六万円です。それは日本の当時の事情からしてもやむを得なかったことかもしれませんけれども、いずれにいたしましても、このような処遇しか受けることができなかったということの事実だけはひとつ長官の方もよくお酌み取り願いたいと思うわけでございます。  次に、厚生省お尋ね申し上げます。  私ごとで恐縮ですが、さきに申し上げましたとおり、抑留中は私は十八歳の青年でした。一日も早く帰国して学校へ行きたいと思っておりましたが、復員後栄養失調等の後遺症に悩まされ、社会復帰がかなり私もおくれました。しかし、私などはまだ若かったので比較的スムーズに復帰できた方でございますが、年齢の高かった方々御苦労は大変だったと聞いております。中にはシベリア帰りということで職場からも敬遠され、とうとう復職できなかった方も多くいらっしゃるわけです。そうした事実を踏まえ、厚生省の方はどのようにこのことについてお考えでございますか、お尋ねを申し上げます。
  29. 入江慧

    入江政府委員 ただいまお話がありましたように、シベリア抑留された方々の帰国後の日本社会への定着ということは大変御苦労があったというふうに私どもも考えております。政府としましては、これらの引揚者に対しまして、被服とか日用品等の応急援護物資の支給あるいは援護金の支給等の応急援護を行いましたほか、定着先におきましては、引揚者住宅の供給、生業資金の融資、抑留中にかかられた傷病に対する医療給付等の援護施策を講じてまいったわけでございます。  なお、先ほどの御質問に対しまして、私、昭和二十六年当時の扶養手当月額六千円と申し上げましたが、これは六百円の誤りでございまして、訂正させていただきたいと思います。
  30. 東家嘉幸

    東家委員 いずれにいたしましても、留守家族に対しては一万円そこそこの手当であったわけです。それもまた、もらってない人が大分いるわけです。なおまた、今、住宅手当ての問題、いろいろなことをしたかのごとく聞こえるようにおっしゃられましたけれども、じゃ、その当時抑留者のためにどれだけの国の支出があったのか。おわかりでなかったらそれでいいですけれども、そういう恩典を受けた人というのはほんの一握りの人なんです。大部分の人が、大半の人たちがそういう恩恵は受けていないわけです。復員後にそういう特別の処置を受けなかったということについては、今さらここでどうというわけではないわけでございます。だから、そういうことがあったということを踏まえてのことだからということを私は基本に今話を進めていることでございますので、長官、何度も申し上げますように、ひとつよく私の切々たる訴えを、どうか耳を深く深く傾けていただきたいと思うわけでございます。  次に、外務省お尋ねいたします。  同じ敗戦国であるドイツ、イタリー、フランス、特にドイツの場合を例にとりまして、このシベリア抑留者のドイツ兵士は、私どもとともに同じ収容所に、ともにした地域もあるわけでございます。その同じ戦争捕虜として苦労したドイツの皆さん方は、一九五四年に戦争捕虜補償法というものがドイツにおいては制定されて、そして、私ども調査では的確な補償がなされているわけでございます。どういう政府補償がなされたのか、簡単でもいいですからお聞かせ願いたいと思います。
  31. 都甲岳洋

    都甲政府委員 先生御指摘の西ドイツの例について御説明申し上げます。  御指摘のように、一九五四年に戦争捕虜補償法というものができておりまして、その法律によりまして、軍事または準軍事的職務のゆえに捕虜となり外国に抑留されたドイツ人に対しまして、外国の抑留期間に応じて一定の補償金が支払われたということになっております。その細かいことは省略いたしますけれども、全体といたしまして申請者数が百八十四万人いたようでございまして、それに対して十四億七千二百万ドイツマルクの支払いがなされ、一人当たりの平均の補償額が八百ドイツマルク、これは約八万円に相当するというふうに承知しております。
  32. 東家嘉幸

    東家委員 じゃ、今の物価指数で、今の金で換算しますと幾らですか。
  33. 都甲岳洋

    都甲政府委員 これは一九八〇年までの数字でございまして、それまでの平均をとりますと八百ドイツマルクでございまして、一ドイツマルクを大ざっぱに百円と換算いたしますと大体八万円ぐらいになるのではないかということで、現在の額での数字を申し上げた次第でございます。
  34. 東家嘉幸

    東家委員 支給された金額はそうかもしれませんが、しかし、そのほかにいろいろな別の手当てをしておりますね。住宅手当てをするとか住宅をつくる資金を貸し出すとか、いろいろなそういう別な手当てをやっております。そのことについて、じゃ、どういう処置をとっているのか。
  35. 都甲岳洋

    都甲政府委員 この法律自体は、先ほども申し上げましたように、年限に応じまして、初めは低く、それから年限が高くなるに従って一月ごとの補助金額が高くなるという仕組みで運営されておりまして、抑留期間中の補償のみを取り上げたものでございます。  その他の件につきまして、余り詳細は承知しておりませんけれども、戦争捕虜、戦争捕虜の寡婦を対象にして、これのための住居の確保であるとか、あるいは生活補助、貸し付け等、困難な状況を緩和するためのいろいろな援助措置がとられたというふうに承知をいたしております。
  36. 東家嘉幸

    東家委員 いずれにいたしましても、そうした十分な金額の代償というものは、そう私はここでとっているわけではございませんけれども、しかし、そういう苦労なさった方に補償した国もある。しかし日本は的確な処置はとってないということになりますと、やはり日本も、この経済大国になった今日の状況から踏まえて、当然考えてやるべきことだと私は思うわけでございます。  中西総務長官にお尋ねいたしますが、我々がソ連によってこうむった抑留強制労働ポツダム宣言に違反した不法なものであったことは明確でございます。したがって、当然我々にはそのはかり知れない損害に対し賠償を求める権利があると思いますが、その労働補償の請求は、ソ連に対してすべきなのか、日本政府に対してすべきなのか、どちらにすべきものでしょうか、まずお尋ねを申し上げます。
  37. 禿河徹映

    禿河政府委員 私の方から法律論的な立場から御答弁をさせていただきたいと存じますが、今御指摘がございましたとおり、ソ連によります日本人の将兵等抑留強制労働ということは、ポツダム宣言並びに国際法に違反しておるわけであります。そういう事実であることは否定できないところだと私どもも存じております。  ただ、この強制抑留に係ります請求権の問題につきましては、日本ソ連政府間の問題として見ました場合には、日ソ共同宣言の第六項によりまして、戦争の結果として生じたすべての請求権を相互に放棄するというふうにうたわれておりまして、政府間の問題といたしましてはそういうことで処理がなされておるわけでございます。ただ、日ソ共同宣言の規定によります請求権の放棄は、これは国自身の請求権、これは放棄しておるわけでございますが、それを除きますと、いわゆる外交保護権の放棄でございまして、日本国民が個人として有します請求権まで放棄いたしたものではないというのが従来からの政府の見解でございます。そういう意味合いにおきまして、個人としての請求権、これは残っておるということが言えるかと思います。  ただ、この抑留された方々日本政府との関係について申しますと、いろいろ御苦労をされ、お気の毒な目に遭われたことは私どもよくわかるのでございますが、それはやはりいわゆる戦争損害の一種に属するものでございまして、法律論といたしましては、これに対して日本政府が補償する義務があるというようには考えていない、これが従来からの政府の見解でございます。  そういう法律論でございますが、御承知のとおり、現在戦後処理問題懇談会におきまして、他の二つの大きな問題とあわせまして、このシベリア抑留者に対します戦後処理の問題につきましていろいろと御検討を願っておる、こういうことでございます。
  38. 東家嘉幸

    東家委員 仮に我々はソ連に請求権があったとしても、個々の力ではどうにもなりませんし、なおまた、平和条約においてお互いに賠償要求はやらないというようなことで解決がなされているということからすれば、今のお答えの中には、個人的問題は別個だと言われても、それは国対国の問題で、我々が個人個人でソ連に要求できるものではございません。そういう観点からいたしますと、やはりこの問題については、当時そうした平和条約をお結びになるとき、かくかくしかじかのものが残っているんだ、これは事実だ、だからこの問題についてはひとつ補償をしてほしいというようなこと等に、外務省としてももっと突っ込んだ、そうした御苦労をなされた皆さん方の立場を踏まえて、国の責任のもとにもっと検討すべきではなかったろうかと実は私は思うわけでございますけれども、この問題はもうこれ以上突っ込んだ御質問はいたしません。このことについては私は不満を残しながらも、この質問は終わらせていただきますが、戦後処理問題の中には、戦時中の問題と終戦後の問題とがあると思います。前者につきましてはいろいろな問題が取り残されておりますが、いずれも戦争という非常事態のもとで起きた問題ではありますが、私が今申し上げておる後者の問題は、戦争終了後の平和時に起きた問題であります。そういう観点からいたしますと、戦後処理町題は終了したということではありますけれども、おのずから性格並びに解釈の仕方等が違ってくるのは当然だと思っております。これまでの政府の見解によれば、既に戦後処理についてはすべて終了したということをお聞きしますが、ただいま申し上げます戦時中の問題とシベリア問題についてはいまだ何らかの措置もされておらず、まことに遺憾なことだと思います。このことについて、大変恐縮でございますけれども、総務長官の御意見をひとつ聞かせていただけますならばと思います。
  39. 中西一郎

    中西国務大臣 お話しの問題につきましては、実はシベリア抑留者についても、御承知のとおり、今、戦後処理問題懇談会で、恐らくきょうで二十三回目か四回目の会合をしていただくわけでございまして、大変熱心に御審議をいただいておるところであります。そういった中からの私の理解でございますが、戦争中のことではなかったことはもうそのとおりでございますけれども、戦争という異常な事態があって、それに引き続いて起こった問題である。先生自身の個人的な御苦労もお察ししますし、五十万人余の人たち御苦労についても心を痛めるところでございます。  ただ、申し上げましたように、これは戦後処理問題という中で処理されておりますので、そこの定義がどうであるということを別にしまして、私ども懇談会の御議論の進むことを期待いたしておるところでございます。今この段階でどういうふうな御意見が出てくるかということは予断をするわけにもまいりません。非常に真剣な議論をしていただいておるということで、その結論が出ましたならば、私どももできるだけ早く結論を出すような努力をしなければならない。その際には、各党それぞれ御関心でございますので、大勢の方々とも御相談いたしたい、かように考えておるところでございます。
  40. 東家嘉幸

    東家委員 総務長官という立場では、そういう懇談会の皆さん方に調査してほしいということで依頼している以上、長官がどうこうということを今ここでおっしゃることはなかなか難しいことだと思います。しかし、長官が、今、心情的にはということの言葉がございましたけれども、私どもは、その結論が懇談会の皆さん方にもよく理解していただき、なおまた、総理府にも十分理解していただいて、そして、ただいままで私が申し上げましたことがどうかひとつ実りある結論となりますよう、心からお願い申し上げる次第でございます。  また、最後になりますけれども、文部省来ておられますか。——文部省の方にお尋ねいたしますが、中国の孤児等の問題もさることながら、シベリア問題は、今まで私が申し上げましたように大変な悲劇であり、惨事であったわけでございます。このようなことは小中学校、高校、いずれかの教科書に歴史の一ページとして何らか残すべきことだと思いますけれども、今載っているのですか、どうですか。ちょっとお尋ねします。
  41. 小埜寺直巳

    ○小埜寺説明員 お答えいたします。  高等学校の「日本史」の教科書に次のような記述がございます。シベリア抑留に関してでございますけれども、「復員と引揚げ」という見出しで書いてございます。   とりわけ悲惨だったのは旧満州国地域の居留民で、彼らのうち飢えと病気で死んだものも少なくない。ソ連に降伏した五十万以上の軍人や居留民はシベリア収容所に移送され、厳寒のなかで何年間も強制労働に従事させられて、五万人以上の人命が失われた。ソ連からの引揚げはもっともおくれ、最終的には一九五七(昭和三十二)年ころまでかかった。こういう記述の教科書がございます。しかし、シベリア抑留につきまして全く記述のない教科書のあるのも事実でございます。
  42. 東家嘉幸

    東家委員 教科書によって違いがあるのはもうよく承知いたしておりますが、いずれにいたしましても、今後、平和のためにも、また我々の子々孫々に至るまでこういう問題が二度と起きてはならないという意味からも、どうかぜひ全教科書に載せることができるように、今の制度もよく承知いたしておりますけれども、文部省としてもぜひ努めていただきたいと思うわけでございます。  最後に、厚生省お尋ねいたしますが、遺骨収集については今日までソ連に対しどのような交渉をされ、そしてまた、どのように取り組もうと思っておられるのか、お尋ねを申します。
  43. 入江慧

    入江政府委員 ソ連邦で亡くなられた方々の遺骨収集でございますけれども、日ソ国交回復後も機会あるごとにソ連側に申し入れているわけでございますが、残念ながら今まであちらから受け入れるという回答が来ていないのは大変遺憾に考えております。外交ルートを通じまして、向こうから受け入れるということの連絡がございますれば、私どもとしても、可及的速やかに遺骨収集をするために必要な措置を講じてまいりたいというふうに考えております。
  44. 東家嘉幸

    東家委員 我々抑留者にとってみますと、本当に死の叫びを——家に帰りたい、栄養失調で、小便がとまらなくなる、たらたら垂れ流しになる、そうすると二、三日後には死んでしまうのです。そういう方々が次々に毎日のように、冬ともなると凍ったまま放置する。そしてあの凍りついた土を掘り起こして、それも浅くしか振れない。その中にどれだけの人たちが一緒に埋められたか。その現場のところに一日も早く私たちも行って、そして線香の一本でも上げてやりたいという気持ちでいっぱいなんです。家族にとってみれば、そういう悲惨なことを復員者の皆さん方から聞かされ、一日千秋の思いで、せめて遺骨でも持ち帰りたいという悲願があると思うのです。今ソ連に二十カ所ぐらい、日本の観光向けの立派な墓があります。それは観光向けじゃないですか。たった二十カ所そこら。千カ所の収容所があったのです。そういうところにどれだけの人たちが埋もれているか。余り私もソ連を刺激したくはないのですけれどもソ連側も人道的に、そのような犠牲者を出した立場からしましても、これはもう少し外務省厚生省も真剣になって、そして遺骨収集のことについては取り組んでいただきたい。補償のこともきょう申し上げましたけれども、このようなことは金がそうかかるわけではない、とにかくもっと真剣になって、南方等の遺骨収集には随分力を尽くされたでしょう。それは制度も違うソ連の国であるから難しい問題もありましょう。どうかひとつこの点についての、最後外務省厚生省の決意のほどをお聞かせ願いたいと思います。
  45. 入江慧

    入江政府委員 厚生省といたしましては、今後とも外交ルートを通じまして、遺骨収集等を受け入れてもらうよう申し入れまして、それを受け入れていただいた暁には、こちらとしてはできるだけ早く遺骨収集の措置を講じてまいりたいというふうに考えます。
  46. 都甲岳洋

    都甲政府委員 外務省といたしましても、昭和三十二年以来何度がにわたりまして遺骨収集の問題をソ連側に提起しておりまして、人道的な見地から配慮するようにということを重ねて強く申してきたわけでございますけれども、先方は、この問題につきましては終始一貫して、立入禁止区域の問題があるとかいろいろな理由を挙げまして、前向きな姿勢を示していないということは非常に遺憾に思っております。しかし、私どもといたしましても、この問題は御遺族の方々にとって長年、年がたてば忘れられるようなものではないと感じますので、今後ともあらゆる機会にこの問題を取り上げて、ソ連側とさらに折衝を重ねていきたい、そういうふうに思っております。
  47. 東家嘉幸

    東家委員 これで質問を終わりますけれども外務省厚生省、それぞれ社会党においても自民党においても、日ソ親善協会、いろいろな機関がございます。ただ役所だけのことで対応するのじゃなくて、そういう機関を通じてもっと、それは軍事上の問題があることもよく承知いたしております。しかし、やはりそれは国際政治に依頼をするとか、私はいろいろな方法があると思います。先ほどから私は真剣な気持ちでお願いを申し上げたことでございますから、どうか、ただ通り一遍のきょうだけの、このきょうの答えで終わる、これで済んだということじゃなく、私の訴えを真剣になってひとつ両省取り組んでいただきたい。なおまた、総理府においても、そういう点につきましても何かとひとつ今後とも御協力をいただくことをお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  48. 横山利秋

    横山委員長 白川勝彦君。
  49. 白川勝彦

    ○白川委員 残り時間が非常に少ないものですから、いっぱい質問したいことがあったのですが、別の機会に譲るといたしまして、私、厚生省総理府の方にそれぞれ一点だけお伺いをいたしたいと思います。時間もございませんので、私の方で先に質問いたしますので、一緒に御答弁をいただきたいと思います。  私は、東家先生とたまたま当選が同期であったというようなことで、東家先生の体験などを通じてシベリア問題についていろいろと御教示をいただくうちに、私も、この問題は戦後の問題である、戦前の問題ということでのお答えあるいは対処の仕方では済まないという意を大変強くいたしたわけでございます。そんなことで、政府に対してシベリア抑留補償要求をされておられる全抑協の方々と何回かお話をする機会があるのでございますけれども、その際に、私が大変感銘をし、また感心をするのは、シベリア抑留体験者それぞれの方々は、みずからが筆舌に尽くしがたいような苦労をされたにもかかわらず、自分たちのことよりもまず先に、あの極寒の地で亡くなられた戦友たちあるいは同胞たちのことをいつも話すということなのであります。これが昔かたぎというのでしょうか、明治かたぎあるいは同胞愛というのかもわかりませんけれども、何としても、極寒の地に満足な墓標も立てられないまま埋葬された同胞たちの墓参を、まず現地においてなしたい、そして遺骨収集をしたいという強い希望がいつも寄せられているわけであります。ところが、この死亡した数ということすら実は相当の開きがあるということなのであります。死亡された後どうするかということは大変大事なことなんでございますが、それよりも、一体何人ぐらいが死なれたのかということに関しても実は諸説があります。先ほど厚生省は、東家議員に対するお答えの中でも五万五千名という一つの数字が出ているわけでございますけれども、一説によりますれば、とてもそんな数ではおさまらないだろう、こういう説も多々あるわけでございます。厚生省が、シベリア抑留中に亡くなられたあるいはソ連抑留中に亡くなられた方々が五万五千名というのは、どういう根拠で推定をされたのか、この辺のことをつまびらかに御答弁をいただきたいと思うのであります。  私が聞いた範囲においては、抑留された総数というのは、どうも最後までわからなかったようだというふうなのであります。ソ連側ももちろん発表していない。帰還された方は舞鶴に来たわけでございますから、これはわかっておる。そうすると、抑留された総数がわからないものですから、帰還された方とその間の差を全部死亡とみなすか、それともそうでないのかという根本的な問題があると思うのですが、厚生省の算定の仕方は、総数はわからない、しかし帰還された方々の証言をもとに、また軍票あるいは未帰還者届というような、政府側にこういう人たち抑留されたらしいというような資料等を突き合わせて、五万五千名というようなものを推定され、この五万五千名については逆に氏名が相当わかっておるというふうにお聞きしているわけでございます。それはそれで非常な御苦労の結果確定された数だと思うわけでございますが、これは幾つかの体験の文集などにも載っておりますけれども、例えば帰還者の証言の中から死亡者を確認したと言っておりますが、収容間近、そして収容されて時間がなかったために、あるいはお互いにまだ疲れていたりいろんな理由があって、何県出身の何のたれべえというのをお互いに名のらないうちに死亡された方も多数おられる、こういう話も随所に聞くわけでございます。そういたしますと、厚生省帰還者からいろいろ証言を得るにも、そういう場合というのは、何県の何のたれべえというのは出てこないわけでございます。そういたしますと、そういう方々というのは、厚生省のようなやり方の中からは死亡者として確認されないという、論理的に当然そういうふうなことになるのではないかというような気もするわけでございます。そんな中の話に、当然、そうやって亡くなられた方の埋葬は自分たちでやったのだけれども、一番悲しかったのは、自分が埋葬する人が何県の何という人かもわからないまま埋葬したというような例もあるわけでございます。そういたしますと、謹言者の証言を寄せ集め、ほかの資料と対照して氏名を確定するという方法だけで全部わかったというふうに果たして言い切れるのだろうかという疑問がどうしても残るわけでございます。  それから、もう一つでございますが、これは厚生省が出している資料でございますが、病弱等のため入ソ後満州等に送られた者の数が四万七千名いると資料の中にも書かれているわけでございます。今東家議員のお話にもあったとおり、病弱者でないと判断されて抑留されて労働された人でも相当数が亡くなられたわけでございます。とてもではないが労働させるわけにはいかないというのは相当病弱していたわけでございます。そういう方々を再度満州に移送するといっても、これまた一日や二日で帰される状態でない移送だったと思うわけでございますから、この四万七千名の方を移送する途中においても、当然のことながら相当数が死亡されたということもあり得るわけでございますし、あるいは、生きて満州の地に移送されたとしても、満州の地だって混乱のさなかであったわけでございますし、十分な引き受け態勢もあったわけではないから、そこにおいて死亡されて日本まで帰還できなかったという人も当然いらっしゃるわけでございます。私は、これらもシベリア抑留に伴う死亡、当然こう扱わなければならないと思うわけでございます。  私は、このことについてどう答弁せよと申し上げているのではございません。これからは総理府に対する御要望なわけでございますけれども、少なくとも六十万人プラス十万から二十万の幅のある日本人が強制的にソ連抑留され、相当の死亡数が出たわけでございます。こういうことについて、援護局が援護という立場からのいろいろな事実確定という資料をつくられたわけでございますけれども、このシベリア抑留という我が日本民族にとって初めての体験で、しかも二度とあってはならないこういう体験について、政府のしかるべき機関で、もしやるとしたらこれは総理府の管轄かなと思うのでございますが、こういうような実態調査が一度としてなされたことがないわけでございます。今、戦後処理懇で補償をどうすべきかという検討がなされているようでございますが、この点について、例えばどういう強制労働がなされたのかというようなことを当然調査されていると思いますけれども、まだ生存者がいるわけでございます。努力をするならば、ソ連側からも事情聴取についてもある程度の協力が得られるかもわかりません。あらゆる努力をして、シベリア抑留の問題については、日本国民がソ連の管轄下に入ったときから帰還に至るまでの全部の経過について、日本政府において、相当の費用を要するかもわからないけれども、一度は実態調査がどうしても必要なんではないかと思うわけでございます。こういう点について、総理府としてそういうようなお考えはないのか。この二点をそれぞれ厚生省総理府の方にお聞きをしたいと思うのでございます。残余の質問は後の機会に回します。
  50. 禿河徹映

    禿河政府委員 戦後処理問題懇談会におきまして、シベリア抑留者の問題、いろいろ御検討いただくに当たりまして、今御指摘がございましたような実態の把握ということをやる必要があるということ、そのとおりだと思っておりまして、私どもも、できるだけその実態につきまして懇談会の各メンバーの先生方にも御理解いただこうということで、関係省庁、特に厚生省を中心といたしまして、その辺の実態の説明等をお願いしたわけでございます。ただ、今お話がございましたとおり、なかなかその実態というものが、ソ連側は公表しないとかいうふうなこともありまして、完全な何万何千何百何十何人というふうな数字の把握が現実問題として現在できていない、こういう状態でございます。  懇談会におきましては、そういう実態につきまして、関係省庁のいろいろヒアリングを行いまして、全体の姿の把握に努めてまいったわけでございますし、また、民間関係団体の方々からの御意見を拝聴いたします場合にも、その団体なりに把握されております実態の御説明もあったわけでございます。  そういうことを踏まえまして、この懇談会におきましては、そういう総体の姿を踏まえて今御議論をいただいて、このシベリア抑留者問題に対しまして、どういうふうに政府は取り組むべきであるかということの御検討をお願いしておる、こういう段階でございます。この懇談会の御意見が出ました段階におきまして、その中身にもよるかと思いますけれども、さらに個別、具体的な実態調査政府として行う必要があるかどうかということにつきましては、その出ました内容等に応じまして、私ども関係省庁とも十分協議をさせていただきたい、かように考える次第でございます。
  51. 入江慧

    入江政府委員 最初の、死亡者の数の確認の問題でございますが、今お話がありましたように、五万五千名の大部分の方々は死亡された方と一緒に行動された方の証言に基づいて確認しておるわけでございますが、その他証言は得られませんでしたけれども、当時の状況等からシベリアで亡くなられたという公算が非常に強い方につきましては、戦時死亡宣告というような措置で確認した方々が若干名含まれております。ただ、お話のありましたように、当時の状況からいいまして、すべて確認できているかということになりますと、大変な混乱であったわけでございますから、確認漏れの方々はおられたと思います。そういう方々についてこれから確認するということも非常に厳しいと思いますけれども、さらに関係者方々のお話等を聞きながら努力してまいりたいと考えます。  次に、お墓の状況、だれが埋葬されているかという点でございますけれども、あちらの方で亡くなられたお墓の状況がどうなっているかとか、あるいはお墓にお参りしたいというのは関係御遺族の非常に強い御要望でございまして、私どもといたしましては、三十三年以降、ソ連政府に対しまして、それに関連する資料の提供をお願いしてきたわけでございます。これに対しまして、ソ連側から、三十四年から四十九年にかけまして、五回にわたりまして、二十六カ所の日本人墓地と、そこに埋葬されておられる三千九百五十七名の名簿の通報があったわけでございます。  厚生省といたしましては、この通報のありました墓地につきまして、三十六年から五十一年まで七回にわたって墓参を実行したわけでございますけれども、その際に、それぞれの墓標に打たれている番号を墓地台帳で確認いたしまして、そこに埋葬されている方々の氏名は確認してまいった、現在のところ、そういう状況になっております。
  52. 白川勝彦

    ○白川委員 終わります。
  53. 横山利秋

    横山委員長 新村勝雄君。
  54. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 私は、太平洋戦争後の国際状況の中で、難民という今まで日本が余り経験しなかった新しい事態が起こってきておるわけでありますが、この問題について幾つかのお尋ねをしたいと思います。  この問題について、日本政府は真剣に前向きに取り組んでおられるとは思いますけれども、何しろ初めての経験ではあるし、また、欧米の国とは受け入れの基盤あるいは社会情勢が違うというようなこともありまして、必ずしも難民の受け入れについてスムーズに、あるいは他の国民の苦しみを実際に定住という形で救っていくという点については、立ちおくれが見られるわけであります。まず、大臣から、この難民の受け入れ問題についての基本的な考え方をお伺いをいたしたいと思います。
  55. 飯島光雄

    ○飯島説明員 我が国といたしましても、難民受け入れという国際的な責務を十分に自覚いたしまして、鋭意積極的に難民を受け入れるべく努力を続けているところでございます。
  56. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 それではお答えにならないわけでありまして、後で伺ってまいりますけれども政府がこの問題について努力をされていることはわかるのですけれども、その受け入れの定住者の数あるいは受け入れ態勢、それから受け入れてからの例えば日本語教育の問題であるとか、日本の社会に定住をする場合の予備的な教育であるとか訓練であるとか、そういう面について必ずしも十分でないわけですね。そういった問題を含めて基本的な姿勢を大臣からお伺いしたいと思うわけです。
  57. 中西一郎

    中西国務大臣 お話しの点につきましては、諸外国もいろいろやっておる、積極的に受け入れておるような国もたくさんある。我が国の人口からいうと、受け入れておる数は極めて少ない、国力からいっても少ない、また処遇についても十分でないというようなことは、国際的に先進諸国との関係で比較してみると、もっと視野を広げてやっていいのではないかという議論も大変多いわけでございます。そういったことについては十分理解をするわけでございますが、日本語の難しさとか、あるいは日本の社会の特殊性といいますか、そういったようなことで、せっかくこちらで受け入れた方がまた外国へ出ていくというようなケースもなくはないようでございます。  いずれにいたしましても、これからの日本というのは世界の中の日本ということでもございますし、総理も国際国家というようなことを言っておられます。また、アジアの中での地位も責任が大変重大であるということでもございます。そういったもろもろのことを踏まえて考えますと、関係各省ともよく理解を深めた上で、世界的な日本に対する期待というものもあると思いますので、一層こたえていくように努力をいたしたいと思います。
  58. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 この難民の問題というのは、太平洋戦争、第二次大戦後に出てきた特殊な問題だと思いますし、今後のことを考えてまいりますと、まだ当分続くのではないかというような危惧もされておるわけです。ところが、我が国においては、実際に難民を引き受けて定住をさせるということにも努力されておるようでありますが、それよりも、むしろこの問題について国連等に費用を出してその方で役割を果たしていこうというような考え方もあるやに感じられるわけであります。そういう面での経済的な負担はかなりなさっておるようであります。要するに、この問題は、日本が今後国際社会で国際的な信頼とそして人道に基づいた外交を展開していく上においては、他民族の苦難を救済していく、また国際間の応分な責任を果たしていくということがなければ、国際社会の中で、それこそ本当の名誉ある地位を保持することが難しくなるわけでありますから、そういう立場でこれからこの問題を考えていただかなければいけないと思いますが、一部には、日本は単一民族であって単一民族の連綿たる歴史を持っておる、そういうことから、あるいはまた、悪く言えば、島国意識といいますか、そういうことから、異民族に対する考え方には、意識の底に他民族に対する差別意識があるのではないか、こういうような指摘もされておるわけであります。国際的にもそういう指摘があるようであります。そういう指摘を受けるようでは、やはり国際間における名誉ある地位を確立する大きな障害にもなりますし、また人道的にもこれはよろしくないわけであります。先ほども戦時あるいは戦後の問題等が論議されましたけれども、こういう中で、戦時、戦後を問わず、あるいは平和な時代を問わず、その基礎に置くべきものはやはり人道主義であると思うのです。人道主義に反するようなことは必ず国際間においても指弾されるわけでありますから、この問題について、日本は決してマイナスの実績を持っておるということではございませんし、プラスの実績を持っておるわけでありますけれども、そのプラスの実績を積み重ねていくその積み重ね方が問題でありまして、単に経済的な負担をすればいいということではなくて、実際に困っている異民族をできる限り日本の社会が受け入れていくという気持ち、それから態勢が必要なわけなんですね。ところが、国連等に負担金は相当出していながら、実際にこれを受け入れ、教育をし、日本社会が吸収していく、同化していくという面での努力が、していらっしゃるとは思いますけれども実績が不十分だということですね。  そこで、もう少し詳しくその基本的な考えと、それから現在どういう施策が行われているか、あるいは今後どういう施策をやっていくのかということについて御答弁いただきたい。
  59. 飯島光雄

    ○飯島説明員 ただいま委員御指摘の、お金を出すばかりでなくて、具体的に難民の受け入れについて日本はどのくらいやっているのかという点でございますが、現在まで我が国インドシナ難民を受け入れた総数は四千九百六名でございます。そのうち定住を認めた総数は三千百七十三名でございます。  それから、受け入れ対策に当たっての我が国の特徴といたしましては、まず、ボートピープルがございますが、このボートピープルは日本船または日本向けの外国船が海上で救助した場合には無条件日本に受け入れております。この点が欧米諸国の受け入れと全く違う、我が国独自の貢献でございまして、もちろん欧米諸国は数は非常に定住受け入れをしてくださっておりますけれども、ボートピープルを直接受け入れるということは地理的な関係もありまして、やっておりません。言うなれば、欧米諸国はそれぞれの国の受け入れ基準に従いましてその受け入れ基準に合った難民を受け入れているわけでございますけれども我が国は、このボートピープルという全く選択の余地もなく海上で救われた者は皆受け入れているわけでございます。これが一つでございます。  それ以外に、欧米諸国と同じように、インドシナ三国に滞留しております難民を積極的に迎え入れまして、定住させているわけでございます。定住受け入れと一時庇護的な受け入れ、この二つを兼ね合わせて我が国はやっているという点で非常に特徴があると思うわけでございます。今後ともこの方針を続けていくつもりでございます。  他方、欧米諸国は今まで非常にたくさん受け入れていただきましたけれども、最近、委員御承知のとおり、いわゆる受け入れ疲れ、難民疲れという現象もございまして、非常に受け入れを厳しくしている状況でございます。他方、我が国はこれまでいろいろな試行錯誤を続けてまいりましたけれども、おかげさまで一応難民受け入れの態勢も整いつつありますので、今後とも、今までの実績を踏まえまして積極的にこの二つの役割を果たしつつ、もちろん資金的協力も続けると思うのでございますけれども、独自の難民受け入れの役割を果たしていきたいと思っている次第でございます。
  60. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 定住したのが三千百七十三名ということですけれども、これは人口に比例しましても、欧米に比較すると二けた違いますね。アメリカ等においては二けた、スイスとか欧米諸国でも二けたの負担をしておるわけですから、御努力は評価しますけれども実績は上がっていないというのが実態だと思います。  そこで、受け入れ後の施設ですけれども、これについても最近まで、現在もそうだと思いますが、政府の施設ではなくて日本赤十字社あるいは民間の宗教団体、カリタス・ジャパンだとか天理教だとか、こういうところに依存しておるわけですが、政府がもっと積極的に施設をつくり、定住の準備段階としての教育をするというような、直接政府がおやりになるという姿勢が必要だと思いますけれども、その点はいかがでしょうか。
  61. 飯島光雄

    ○飯島説明員 難民受け入れは、欧米諸国もすべてそうでございますが、国を挙げての問題でございまして、政府民間ともに協力し合ってやっていってこそ初めて本当に実のある受け入れができると存じております。そういう観点から、我が国におきましても、政府はもちろん、委員御指摘の日赤、カリタス・ジャパン、それから立正佼成会、天理教の方々、非常に積極的に御協力いただきまして、政府民間一体となって非常に緊密な連絡協力のもとに、できる限り円滑な難民受け入れを進めているわけでございます。  具体的に申し上げますと、ボートピープルが入ってまいりますと、大村難民一時レセプション・センターというところに入りまして、ここで初歩的な生活指導、健康診断それから治療を行いまして、二、三カ月の間滞留の面倒、お世話をしまして、それから日赤その他の民間の施設に一時的に預かっていただいているわけでございます。そこで一時預かりまして、将来の身の振り方をどうするのかということを十分に難民に聞きまして、日本に定住を希望するのであれば、政府が経営しております定住促進センター、これは大和と姫路にあるわけでございますが、ボートピープルの場合は主として姫路の定住促進センターに移しまして、そこで日本語教育、職業訓練あるいは生活指導、職業紹介等をいたしまして、定住のできるような準備を整えた上で社会に送り出すということをやっております。  それ以外、先ほど申しました積極的に我が国から出かけていって、インドシナ諸国に滞留して困っている難民も受け入れているわけですが、これは直接定住のために受け入れまして、大和にあります定住促進センターに入れまして、ここで定住のための諸準備を施して社会に送り出すということでございます。  ただ、委員御指摘の、民間の施設に長く滞留しているという点でございますけれども、確かにこれは、先ほども申しましたように、欧米諸国は既に受け入れをだんだん厳しくしておるものですから、日本に来たボートピープルのうちで、本当は欧米諸国に行きたいのだけれども行けない、欧米諸国が受け入れないために行けない、かといって日本にはまだ定住したくないという人たちがかなりおりまして、そういう人がだんだんと民間施設に残ってしまうわけでございます。そこで、民間施設に過重の御負担をかけるのは申しわけありませんから、委員御承知と存じますが、昨年品川の国際救援センターをつくりまして、民間施設でお世話になっている難民で、なかなか日本定住の希望もない、かといって第三国は受け入れないという状況のために長期滞留している者を、できるだけ国際救援センターに受け入れまして、ここで自活に必要な所要の支援をいたしましてできる限り自活させるようにしているわけでございます。
  62. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 赤十字あるいは宗教団体が大きな役割を果たしているわけですけれども、宗教団体は宗教団体ということで国から補助金がもらえないというような事情もあるようですね。こういうことをなぜ国がおやりにならないのかという疑問を持つわけです。  それから、一時日本が引き受けをして難民センターに入るわけですが、日本に定住をする希望が非常に少ない。特に難民を多数受け入れ定住させる積極的必要はないわけですけれども、なぜ日本が嫌われるかという問題です。これについてはいろいろの状況があると思いますが、その理由は何であるのか。  それから、日本語教育、例えば日本の社会に定住をするための予備段階として日本語教育をされておるようですけれども、この教育がわずか三カ月で一期終わるということだそうでありますけれども、語系の違う言葉を三カ月でマスターするなんということはとてもできないわけです。一つの言葉をマスターするには、特殊の才能がある人は別としても、三年も五年もかかるわけです。それを三カ月で日本語教育をするというのは大変お粗末ではないかと思います。それから、その他の定住希望者に対する日本社会に同化をしていくための予備的な訓練なり教育については欠けるところがあるのではないかという気がするのですけれども、その点お伺いします。
  63. 飯島光雄

    ○飯島説明員 まず、委員後でおっしゃいました日本語の点が非常にはっきりした問題でございますのでお答えいたしてみますと、確かに委員御指摘のとおり、現在三カ月の日本語教育をやっておるわけでございますが、三カ月の日本語教育じゃとても十分じゃないじゃないかという御意見はあちこちからいただいているわけでございます。しかしながら、それならばどのくらいの時間をかければ本当に十分なのかということになりますと、これは難民自体の個々の方々生活背景だとか、生活環境だとか、今までの教育水準、それから能力の差等、いろいろな不確定要素もたくさんございますものですから、専門家の方々でもどのくらいやればいいという点については必ずしも明確な御意見をいただいているわけではございません。他方、大方の専門家の方々の一致した御意見としましては、難民の方々日本語を習得するのは、結局、基本的には、日本の社会に現実に生活して働きながら、あるいは子供さんの場合は学びながら次第に身につけていくのが基本的な筋道なのであって、施設での日本語教育というのはそういう基本的な日本語習得の大きな過程の中の、進めるに当たって最初にそれができるような最小限の手がかり、足がかり、必要最小限の基礎をつくってやるのだ、これをすべきなのだという点でございます。そういう日本語習得の長い過程の中での基本的な最小限の基礎づくりという点からいいますと、今難民の置かれている具体的な施設の状況、どのくらいそこの施設に入っておられるかという時間的な期間その他の具体的な状況に応じまして、やり方を非常に効率的にすることによって、ある程度基礎づくりという点では役割を果たせるのじゃないかというのが専門家の方々の御意見でございます。そういう観点に立ちまして、三カ月間集中的に効率的に基礎づくりをお手伝いするということでやっているわけでございまして、そういう観点から見ましたら、必ずしもそれで決定的に不十分だということでもないと思っております。  また、さらに、実際にはタイの難民キャンプにいる段階から、日本に受け入れる予定の難民に対しましては初歩的な三カ月の日本語教育をやっておりまして、それを日本に来た段階で引き続きまして三カ月の集中的な教育をやっている、こういうことでございますので、その両方を有機的に結びつけまして、実際は六カ月の初歩的な基礎的な日本語教育をやっているというのが実情でございます。  それから、なぜ難民は日本に定住することを嫌うのかという点でございますが、これは、嫌うというよりも欧米諸国の方に行きたがっているということでございまして、それはなぜかといいますと、推測するほかはないのでございますけれども、何といいましても、これまで我が国とインドシナ諸国との関係というものは、第二次大戦の一時期を除きましては必ずしも深くはなかった、浅い関係であった。これに対しまして欧米諸国は、植民地その他の歴史もございますように、非常に長い歴史的、文化的、社会的なつながりを持っていたという基本的な違いがございます。したがって、また、欧米諸国にはインドシナ三国の居留民といいますか、難民の形でももちろん行っています、それ以前から留学生その他いろいろ行っています。そういう居留民の層、コミュニティーの層がかなりある、したがって行きやすい点もあると存じます。また、そういう歴史的、文化的なつながりがあったために、自由だとか、豊かな社会だとか、欧米文化ということに対する彼らの非常なあこがれというのがまだございまして、残念ながら我が国に対してはそれほどまだなじみがなかったという点もございますし、それから言葉の点でも、欧米諸国とのそういう昔からのつながりということから、英語、フランス語に対する親しみといいますか、なじみやすさというものを彼らは持っておりまして、ベトナム語なんかも今でもローマ字でございますし、そういうようなことからも入りやすい。こういったいろいろな社会的、文化的、歴史的な要因が重なりまして、日本よりも比較的欧米に行きたがっているということだろうと思うわけでございます。
  64. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 最後に、大臣にお伺いしますけれども日本がこれから国際社会の中で名誉ある地位を占めていくためには、やはりこういった問題についても積極的に前向きに取り組む必要があると思いますが、大臣のこの問題に対する御決意をひとつ伺いたいと思います。
  65. 中西一郎

    中西国務大臣 お話のとおりだと思います。いろいろ関係省庁は多いのでございますが、内閣官房を中心にしましていろいろ努力をしてきておりますが、なお一層の努力をしなければならない、かように思います。
  66. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 次の問題ですが、栄典についてお伺いしたいと思います。  栄典、これは勲章、位、その他褒章というのがございますけれども、その中で勲章の問題をお伺いしたいのです。  世界の主要先進諸国の中で勲章のない国というのはございますか。
  67. 柳川成顕

    ○柳川政府委員 相当数あると思われますが、ちょっと現在のところ資料を持っておりませんので、つまびらかにいたしておりません。
  68. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 諸外国には普通勲章というのはあるのでしょうし、また、勲章を否定する気持ちはありませんけれども、栄典制度の運用についても、旧憲法時代と新憲法の現代とではその運用の仕方に違いがあってもいいのではないか、あるいはむしろあるべきではないかというような気もするわけであります。  そこで、まずお伺いしたいのですが、日本には文化勲章、それから勲八等から一等までの勲章、そのほかに褒章というものがございます。そして、勲章の等級の一等から八等の中には、旭日章の系統、それから宝冠章と瑞宝章というのがあるわけですね。  そこで、旭日章というのは女子にも授与するのですか。
  69. 柳川成顕

    ○柳川政府委員 女子の場合は旭日章にかわるものとして宝冠章を出しております。
  70. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 瑞宝章というのは男女にわたって授与される。男子については瑞宝章よりも同じ等級の中でも一段いいランクのものについては旭日章、それから、男子の旭日章に相当するものは女子では宝冠章だということですね。そうすると、旭日章は女子には授与できない。そして、瑞宝章は八等から一等までございますが、宝冠章もやはり八等から一等まであるわけですね。そうすると、勲一等宝冠章というのは勲一等旭日大綬章に当たるわけだと思いますね。そうしますと、女子については旭日桐花大綬章あるいは大勲位菊花大綬章、大勲位菊花章頸飾に当たる勲章はないということになりますね。そうですか。
  71. 柳川成顕

    ○柳川政府委員 ございません。
  72. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 そうしますと、女子については勲一等瑞宝章、さらに一段高い勲一等宝冠章がある。それ以上はないということですね。ということになりますと、女子については男子の旭日桐花大綬章あるいは大勲位菊花章頸飾あるいは菊花大綬章がないということになると、これは旧憲法時代あるいは前の時代の男尊女卑という考え方がここに出ているのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  73. 柳川成顕

    ○柳川政府委員 宝冠章は勲一等までございまして、その上に先生の御指摘のように三つございますが、それがないというのは女子にないというわけではございませんで、別に男尊女卑ということにはならないと思います。
  74. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 ですから、旭日桐花大綬章あるいは大勲位菊花大綬章あるいは菊花章頸飾は女子には授与されないのかということです。
  75. 柳川成顕

    ○柳川政府委員 我が国では皇后陛下が宝冠一等でございますが、女性の外国君主の場合には、今御指摘のございました上の勲章が出ている例はございます。
  76. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 ですから、日本人に対する叙勲についてはこれは明らかに男女の差別があるということですね。例えば皇后あるいは皇太子妃というような方でも勲一等宝冠章どまりでしょう。そうでしょう。先日お亡くなりになった永野重雄さんは勲一等旭日桐花大綬章、ですから、勲一等宝冠章よりも上でしょう。そういうふうにいわば男尊女卑の考え方がこの叙勲の中にあらわれていると言わざるを得ないですよね。だから、そういう叙勲の運用は全く旧憲法時代の思想ではないかと思うのですが、大臣いかがですか。
  77. 中西一郎

    中西国務大臣 そのこと自身について余り勉強したことはございませんが、今お話を伺っておって問題の所在はよくわかりました。ただ、我々としましては栄典について学識経験者の意見を聞くというようなことをずっとやっております。そういった仕組みになっていますので、学識経験者の御意見もよく伺わなければならないテーマであるということで対処してまいりたいと思います。
  78. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 皇后陛下よりも永野重雄さんの方が勲章は上だということは、そういう矛盾があらわれてくるわけですけれども、これはやはり前の時代の男尊女卑の思想、勲章の制度の中にそういう思想がやはり流れているというふうに思わざるを得ないわけですね。そこを大臣、ひとつお心にとめておいていただきたいのですよ。現在の叙勲の制度にはそういう矛盾があるということですね。それをひとつ覚えておいていただきたいのです。いいですか。  それから、もう一つ、ほかの叙勲の基本的な方針といいますか基準といいますか、これについても、勲八等から一等までありますけれども、その各等級のうちで、ちょっと言い方が悪いのですけれども、低い等級の勲章については、例えば八等とか七等、こういう勲章をもらう方々というのは、いわゆる孝子節婦あるいは郵便事業に長く郵便配達として尽力をされた、あるいは灯台守として努力をされた、こういう人たちが七等、八等をもらうんですね。そうでしょう。ということは、そういう意味では、この七等、八等の運用については功労のある人に授与するということで、その考え方はいいと思うのです。ところが、一等、二等、三等あたりの上級勲章については、もちろんもらう人は功績もあるでしょうが、功績よりはむしろ年功序列、一定の職についていて、その職に何年ついていたかという年功序列的な考え方が濃いわけですよ。どうですか。そういう傾向があるんですよ。ですから、そういう点について、これはけちをつけるわけじゃありませんよ。これはそういう立派な地位についている、しかも長くついている人はそれぞれ功績があったということは考えられますけれども、しかし、そういういわば年功序列的な色彩が強い、こういう運用についてはいかがなものか。現在でも、それを否定するという意味じゃありませんけれども、叙勲についても年功序列だけではなくてやはり実質的な功績を評価すべきではないかという気がするわけでありますけれども、いかがでしょうか。    〔委員長退席、井上(一)委員長代理着席〕
  79. 柳川成顕

    ○柳川政府委員 叙勲の功績評価でございますけれども、その候補者の生涯の功績を総合評価いたしまして、一等から八等まで、八等は実際は春秋叙勲では運用いたしておりませんから七等までになりますが、叙勲を決定いたしておるのでございまして、年功序列と言われましたが、年数というのは評価の非常に重要な基準にはなりますが、実際の叙勲の実施に当たりましては、いろいろな功績を総合評価するということで行っておりまして、一等の場合も七等の場合も変わりはないということでございます。
  80. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 そういうことで、女性と男性との間の叙勲について制度的に矛盾があるということが一つありますよね。それから、もう一つは、功績の評価と年功序列をどう見るかという問題があると思うんですよ。そこで、そういうことをやはり今後の叙勲の運用について、ひとつこの点についてお心にとめていただきたいと思うわけです。  それから、上級勲章は、現在ではほとんどが一定の特定の職についたかどうか、それからその職に何年いたかどうかという評価だけですけれども、そうではなくて、功績の評価ということも同時に考えなければならないと思うのです。  それで、これは一つの例ですけれども、ノーベル賞受賞者は世界的な大学者ですけれども、ノーベル賞を受けた人でもやはり旭一程度で終わっている。私の考えからすると、これは桐花大綬章があるいは大勲位ぐらいでもいいのじゃないかというような気もするわけですけれどもね。そういう功績の実質的な評価ということについてもこれからひとつ御配慮をいただきたいということをお願いいたしたいと思います。  時間が参りましたので、あと二つの項目がありましたけれども、改めてお伺いをいたしたいと思います。  終わります。
  81. 井上一成

    ○井上(一)委員長代理 玉城栄一君。
  82. 玉城栄一

    ○玉城委員 五十六年度総理府並びに沖縄開発庁決算についてお伺いいたしたいのですが、一番目に大臣のお考えを伺っておきたいのは、七月一日付で総務庁が新しく行革の一環として発足するわけでありますが、これは従来の総理府から大幅に分割されて、行政管理庁と統合して総務庁という新しい役所が誕生していくわけであります。この問題で私たちが非常に関心がありますのは、沖縄開発庁長官人事がどういうふうになっていくのかということが、これはまた今後の沖縄振興開発という立場から非常に大きな関心を持たざるを得ないわけですね。大臣も今総理府長官それから沖縄開発庁長官を兼任していらっしゃいますので、ちょっとお答えにくい質問になろうかと思うのですが、現職とされて、沖縄開発庁長官とされまして、日夜、沖縄の今後の振興開発をどうしようかと御苦労していらっしゃるという立場から、どういう形になった方が望ましいのかということを伺いたいわけです。残る総理府内閣官房長官の直属になっていくわけですね。沖縄開発庁もそういう形になるのか。いろいろなことが考えられるわけですが、長官はどのように考えていらっしゃいますか。
  83. 中西一郎

    中西国務大臣 まことにお答えにくい問題の御提起でございますが、まだ何も決まっていないということでございます。といって、結論的には沖縄開発庁の皆さん方なりあるいは沖縄県民の多くの方々、それから、私は実はこういう考えを持っているのです。沖縄の問題というのは、四十七都道府県のうちの一つの県の問題でもあるのですけれども、そういった観点よりも、日本民族全体が沖縄県に対していかなる意識を持ち、いかなる関心を持ち、そしてどんな応援をしようと思うのかという、全国民的な課題という性格もある、かように思います。そんなことを思うのでございますが、だからといって、今すぐここで、沖縄開発庁を担当する大臣はだれがいいかとおっしゃられましても、これは総理大臣にお任せするよりしょうがないのでございます。
  84. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、これは私なりに考えまして、従来の総理府はもう大幅に新総務庁という役所に移っていきますし、また残る面がありますね。総理府長官というポストはいずれにしてもなくなるわけです。それで、沖縄開発庁が何か宙ぶらりんになっていったらえらいことになるという危倶が非常にするわけですね。一つは、残る総理府と同じように、あるいは沖縄開発庁も官房長官の直属になっていくのか、これが一つですね。あるいは、新しく総務庁ができ上がって、その新総務長官が沖縄開発庁長官を兼任するのか、これが二つ。それから、国土開発という面から、国土庁長官が北海道開発庁長官を兼ねていますから、国土庁長官が沖縄開発庁長官も兼任するのか、これまた三つ。あるいは、いろいろな公共事業が多いということから建設大臣が兼任するとか、これが四つ目。あるいは、無任所大臣というのが例えば仮に誕生したとしまして、その無任所大臣が沖縄開発庁長官を兼任するのか、これが五つ目。あるいはもう一つ、あくまでも沖縄開発庁長官という専任の長官が誕生していくのか。大体この六つぐらいじゃないか、いろいろ考えてみたらこう考えられるわけですね。そういうことで、いかがですか、六つのどういうパターンになりそうな感じになりますか。
  85. 中西一郎

    中西国務大臣 私は三つぐらいかなと思っておったら、六つ御指摘がありましたが、確かに考えられなくはございません。そのうちどれが一番いいかというようなことも、これは総理大臣がお決めになるのですけれども、やはり今の沖縄の現状に一番即した形をおとり願いたいものだ、かように思います。
  86. 玉城栄一

    ○玉城委員 まあ、最初にお断りしましたように、大変お答えにくいということは申し上げているわけですが、やはり沖縄振興というこれから大事なことをやらなくちゃならない沖縄開発庁という役所の存在意義の重要性という立場から、あえてお答えにくいことを承知の上でお伺いしているわけです。  それで、新しい総務庁という役所、これは行政管理庁総理府の相当部分が合併してでき上がるわけですね。従来の総理府と新総務庁という役所は性格が当然違いますね、行政管理庁がそっくり入ってくるわけですから。これは時代の流れということからしまして、やはり行革推進の本部みたいな、センターみたいな形になろうと思うわけですね。そういう総務庁という役所、その責任者の長官が沖縄開発庁長官を兼任するということは、従来の総理府と新総務庁という役所の性格が相当変わりますので、これはちょっと好ましくないと思いますが、いかがでしょうか。
  87. 中西一郎

    中西国務大臣 何といいますか、私の理解だとお聞き取りいただきたいのですが、新しい総務庁というのは、言ってみれば、会社でいいますと総務部的な役割じゃないか。その総務部が、いろいろな事業部、各省があるわけでございますが、各省庁とは違った意味で総務部的な仕事をする。今、先生自身は、行政改革ということが一つの柱になる役所であるがゆえに、沖縄開発庁をそこへ持っていくというのは、こういうお言葉はなかったですけれども危険だというようなお気持ちもその裏にあるのではないかと思うのです。しかし、そのことは、政府全体、内閣全体として沖縄開発庁というものの存在意義に非常に大きなウエートを置いて考えておる現状でございますし、第二次振計というようなものも抱えておる。将来を展望しますと、一番初めに少し申し上げましたが、四十七都道府県のうちの一つだという観点だけでない、新しい沖縄の位置づけというようなことが国民的な課題になっていくのじゃないか、私自身はむしろそう持っていきたいと実は思っております。そういうようなもろもろのことを踏まえて、これは総理大臣にお考えいただけるものだと思うわけでございます。
  88. 玉城栄一

    ○玉城委員 閣僚の人事は当然総理がなさることであります。ですけれども、これは七月一日ですからもう一カ月余しかないので、中曽根総理もそろそろそういう構想を練っていらっしゃるのじゃないかと思うのです。  そういうことを前提にしまして、この沖縄開発庁という役所のあり方と同時に、沖縄振興開発という立場からこの委員会でこの問題を取り上げているわけであります。非常に、行革のあらしといいますかそういう中で、沖縄開発庁が、大臣の御努力等もありまして存在意義が非常に大事である、今おっしゃるように、国民的課題として、四十七都道府県の一ということではなくというようなことからしまして、この役所をどうしても存続しようということでありますから、それだけにやはり考えられることは、これはこういう機会に専任の長官を置いた方がむしろいいのではないか、あるいはまた次善の策、いろいろ考えられますけれども、そういう点、いかがでしょうか。
  89. 中西一郎

    中西国務大臣 これもまことにお答えしにくいのでございます。まあ北海道開発庁というのもございます。そういったような観点から考えると、先生御指摘のようなことも考えられなくはない着眼点であろうと思います。  いずれにいたしましても、繰り返すようで恐縮でございますが、総理大臣自身のお考えになることでございますし、お考えになるに当たってはいろいろ意見も聞かれることだと存じます。その結論を待ちたいと思います。
  90. 玉城栄一

    ○玉城委員 機会がありますときには総理にも、沖縄開発庁という役所の存在の持つ意義の大きいという立場から、重大な考慮を払っていただきたいということを長官からも御進言をいただきたいと思います。これは中曽根総理が沖縄問題に取り組む姿勢というものがまさにこの人事で試され、また注目されている点でありますので、ひとつよろしくお願いします。  では、質問を変えまして、運輸省の方、いらっしゃっていると思いますが、先月の十九日に沖縄の那覇空港で、日本アジア航空のDC8機の事故がありましたが、その事故の概要について御報告いただきたいのです。
  91. 堀井毅

    ○堀井説明員 御説明申し上げます。  今先生がおっしゃいました日本アジア航空のダグラス式DC8型は、アジア航空の定期二九二便といたしまして、台北の中正国際空港を離陸しまして那覇空港に向かいました。乗客百二十三名、乗組員、機長を含めまして八名でございましたが、十二時十七分ごろ那覇空港の着陸誘導管制と交信いたしまして着陸進入中、途中で雨が激しくなり、着陸指示灯に第二エンジンを接触しまして、進入復行いたしました。それで、地上からその損壊状況を確認を受けるために低空飛行いたしまして、その確認を得た後、着陸可能と判断しまして、十三時四分に着陸いたしました。機体は、第二エンジンと左側のフラップというところを損壊いたしましたけれども、乗員、乗客には全く異状はございませんでした。  ただいまのところ、持ち帰りました飛行記録装置とか音声記録装置の解析を進めておりますけれども、機長初め関係者の口述等、それから気象情報などを検討しまして、原因究明のための調査を進めておるところでございます。
  92. 玉城栄一

    ○玉城委員 今の事故について、この真相の究明、結論が出るのは大体いつごろになるのですか。
  93. 堀井毅

    ○堀井説明員 先ほど申し上げましたように、種々の記録装置それから情報等を詳細に解析しておりますので、ただいまのところいつと申し上げられる段階にございません。
  94. 玉城栄一

    ○玉城委員 これは運輸省とされては、航空事故調査委員会という機関があって、航空機事故について調査しておる、相当時間がかかるということも伺っているわけですが、今の段階は全体の調査の入り口みたいなものだと思うのです。  ただ、ここでなぜ私がこの問題を言いますかというと、もう一回運輸省の方にお伺いしたいのですが、沖縄の那覇空港は非常に危険性があるということについて、これまでも私たちは何回も国会でも指摘をしてきましたし、また、前の地時運輸大臣も確かに那覇空港は危険性があるという認識をちゃんと表明しておられて、いろいろ自衛隊の事故とかありまして、言われている空港なんです。それで、今回こういう事故が起きましたので、沖縄空域にはいろいろな制約があって、那覇空港に進入あるいは出発というのですか、そういうものにいろいろな制約があるわけですが、その概要について御説明いただきたいのです。
  95. 小山昌夫

    ○小山説明員 お答えいたします。  那覇空港に近接しまして、その北東に嘉手納飛行場、それから普天間飛行場の二つの軍の飛行場がございまして、これらの二つの飛行場から出発しまた進入する航空機は、那覇空港周辺の上空を通過するようになっております。そして、通常、那覇空港から離陸しまたは着陸する航空機は、これらから出発または進入する航空機より低い空域を那覇空港の出発進入用として使用いたしております。これはふくそうする航空交通の安全を確保するために決められた方式でございまして、特にこれらの近接した空港の位置関係、それからこれらの空港、飛行場に離発着する航空機の機種等の絶技術的な問題をいろいろと検討しましてとられている管制上の方式でございます。  したがいまして、特に軍だからといって優先をしたために那覇の方は低く飛んでいるということではございません。この意味におきまして、私どもは航空交通の安全の確保という意味でとっておるというぐあいに理解いたしております。  また、那覇、嘉手納等の進入管制業務と申しますか、これらの三飛行場の進入管制は米軍が行っておりますが、しかしながら、管制業務は民も軍も一応国際航空機構の基準に準拠した方式で行っておりますので、私どもは、この点につきまして、特に軍の航空機だからといって民間に影響を与えるようなことはないというぐあいに考えております。    〔井上(一)委員長代理退席、委員長着席〕
  96. 玉城栄一

    ○玉城委員 いろいろな制約、飛行コースだとか高度の制約とか、それは安全確保のためであるということですけれども、結論としてこういう事故が起きているということから私は申し上げているわけです。  その前に、さっきの事故の件ですが、そういう航空機事故を調査する場合、事故が起こったいろいろな原因について、我々素人で考えられるのは、例えばパイロットのミスであるとか、管制のミス、あるいは航空機自体の計器に故障があったとか、気象上の問題、そんなものが思い浮かぶわけですが、例えばパイロットのミスでこういう事故が起きた場合、パイロットに与えた心理的肉体的影響というものにはいろいろな要因があると思うのですが、当然そういうものも含めて真相究明の調査をされるわけでしょう。
  97. 堀井毅

    ○堀井説明員 お答えいたします。  今先生がおっしゃいましたように、原因にはいろいろなケースが考えられますけれども、背景に至るまでも調査して原因を追求するということでございます。
  98. 玉城栄一

    ○玉城委員 だから、私が申し上げた精神的、心理的とか肉体的とかいうパイロット自体に与えるいろいろな要因というものが当然事故を起こす、そういう事故がなぜ起きたかという背景、原因とか要因あるいは条件とかいうものも含めて調査されるわけでしょう。
  99. 堀井毅

    ○堀井説明員 おっしゃるとおりでございます。
  100. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、那覇空港。米軍専用空域、ウォーニングエリアと言うのですか、これがありまして、しかも、また今度は臨時に米軍専用のそういう排他的な空域、アルトラブがやたらとできる。そういうものをくぐりながら那覇空港に向かって、そして進入していきますが、進入していく前の十五マイルないし二十マイルは千フィートという高度で抑えられていって、そして着陸していく。あるいは出発の場合も同様で、十五マイルないし二十マイルが千フィートという高度で抑えられていくということですね、確認しましょう。
  101. 小山昌夫

    ○小山説明員 お答えいたします。  進入または出発につきまして、十五マイルぐらいから航空交通の状況により通常は千フィートでずっと行きます。着陸または出発のときは、出発しましてからしばらく千フィートで高度を抑えられております。
  102. 玉城栄一

    ○玉城委員 そういう空港は国内にほかにどこにありますか。
  103. 小山昌夫

    ○小山説明員 お答えします。  全国の空港には標準進入方式または標準出発経路というものが設けられておりますが、空港の隣接または航空路の関係、それから地形その他騒音対策上の問題等から、ほとんどの空港におきましてこれらの方式は高度の制限等を受ける場合がございます。例えば、高度をある一定区間抑えて、ほかの障害がなくなった場合に高度を上げるとか、もしくはある一定の高度を飛んでいてある一定のところから初めて降下するというような状況がございます。しかしながら、那覇空港のようにかなり遠いところから千フィートでずっと入るというようなケースはございません。
  104. 玉城栄一

    ○玉城委員 進入、出発時そういう十五マイル千フィートで抑えられているところは国内にはない。パイロットの方々から伺ったわけですが、世界にもそういうことは余りないそうですね。  このパイロットの方々から伺いますと、出発して千フィートで高度が抑えられて飛ばざるを得ないというのは、例えば自動車で言いますと、ちょうどギアを一にして吹かして、なかなかスピードを出せないような状況で行くのと似たような感じで、パイロットが神経も非常に使うし負担が重いということをおっしゃっておるわけです。これは降下する場合も同じだということですが、そういう点は否定されますか。
  105. 小山昌夫

    ○小山説明員 お答えいたします。  先ほど申し上げましたように、那覇の近辺の空港、嘉手納、普天間と三空港が非常に近接しているために、管制上の処置としてやむを得ずこのような方式をそれぞれとって安全確保を円滑にしておるわけでございますが、出発の場合に千フィートである一定の地点まで持っていくということにつきましては、パイロットではございませんけれども、この点は特段に支障はないというぐあいに考えております。特に交通状況の許す場合にはそのまま上昇させることもあり得ます。  それから、着陸の場合でございますが、千フィートでずっと海の上を低く飛んで、そしてある程度のところへ来て降下するということでございますけれども、この場合も、決して望ましい姿とは考えておりません、しかしながら、特に安全上問題があるということでもございません。
  106. 玉城栄一

    ○玉城委員 ですから、それは飛行機のパイロット、操縦士、それは飛行機を操縦するのですから、そういうことは仕事だから当然と言えば当然ですけれども、結局、そういう千フィートということを、上昇にしろ着陸する場合にしても、その一定距離抑えられているということは、パイロットにはそれだけの余分な負担が加わるということは事実ですね、安全上どうのこうのと言うけれども。パイロットの話を伺いましたが、巡航高度というのですか、二万五千フィートから三万七千フィートまでずっと行くのに、十五分ぐらい上昇してぐっと行けるというんですね。ところが、一たん上がって千フィートでぐっと抑えられて、しばらくこういうふうにして行く、それからさあっと行くというのは相当の負担がかかる。なぜ千フィートかというと、これは嘉手納飛行場、それから普天間飛行場、米軍は二千フィートだ。千フイートより二千フィートの方が負担は軽い、こういうことを言っていますね。いかがですか。
  107. 小山昌夫

    ○小山説明員 お答えいたします。  通常の進入コースの場合に、大体二千フィートまたは千五百フィートである程度のところまで来て、さらに降下するというようなこともございますので、当然千フィートより二千フィートの方が負担は軽いと思います。
  108. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、さっき申し上げましたように、沖縄空域というのは飛行コース上いろいろな制約がございまして、米軍専用空域等、臨時にまた設定されて、最近またACMIとかいろいろなものができ、そういうことで今度は、今申し上げていますように、進入にしても出発にしても高度が抑えられているということで、パイロットには非常に負担がかかる。そういう中で、降下時に急に悪天候が重なりますと、パイロットとしても大変戸惑うというのですか、瞬間的に、ジェットですからね、非常に事故が起こる危険性というのがある、こういうふうに言っていますけれども、いかがですか。
  109. 小山昌夫

    ○小山説明員 お答えいたします。  当日は管制の着陸誘導管制業務ということで誘導していたわけでございます。これは通常千五百フィートぐらいで、グライドパスといいますか、降下角度に入って、それからおりるわけでございますが、那覇の場合は、先生おっしゃるとおり、千フィートで降下角度に入るというようなことでございます。しかしながら、最終の進入コースは大体四マイルから四マイル半ぐらいございますので、それに乗ってずっとおりてきたということで、そういう意味で、ある一定のところからは同じような方式で入ってきているということでございます。
  110. 玉城栄一

    ○玉城委員 いずれにしましても、あなた何か今言っていますけれども、先月のDC8の事故というのは、今度これからやるんでしょう。今入り口だというのですから、なぜこういう事故が起きたかということを真相を調査する段階ですから、余り結論めいたことをあなたはおっしゃらないで、私の申し上げているようなこともこれは調査の対象としてやらなければいかぬわけでしょう。
  111. 小山昌夫

    ○小山説明員 先生のおっしゃるとおりでございます。
  112. 玉城栄一

    ○玉城委員 長官どこへ行かれたのですか。これが最後ですが……。
  113. 横山利秋

    横山委員長 トイレです。
  114. 玉城栄一

    ○玉城委員 それでは大蔵省の方に伺いますが、今長官にこの問題の結論を伺いたいわけですが、大蔵省には国有地の問題、先月の二十五日沖特委で申し上げましたが、ペンディングになっているものがありますので、それを伺いたいわけでありますが、今長官が来ましたので、長官の方に、話の続きで……。  長官、今運輸省といろいろ質疑を交わしたのは那覇空港の先月の事故の仲なんですが、飛行上いろいろな制約がある。パイロットもそういうことを言っておるわけですね。ですから、この那覇空港については今度の事故でさらに危険性が浮き彫りにされた、このように思っているわけです。先月のこの事故にしましても、乗客百二十三名ですか、乗務員合わせて百三十一名、これは着陸のときに、大臣も御存じと思いますが、急に悪天候が重なりまして、もう一メートルあれば滑走路の前の岸壁に激突していた。運輸省の方も、これはラッキーであったから助かったと言うんですね。ちょうど時計が四時半ですか、針を指しますね、それから七時半、こういう状態だというんですね。三時と九時の状態というのは完全に事故が起きている状態。それぐらい、助かったのは本当にラッキーであった、そういうことを言っているわけです。ですから、指摘して、我々も聞きましたとおり、空港について非常に危険性があるということでありますので、大臣とされても、運輸省あるいは防衛庁あるいは外務省関係省庁に、こういう那覇空港の安全性についてやはり協議をしてもらうように、機会あるときにはぜひ要望していただく必要があると思うのですが、いかがでしょうか。
  115. 中西一郎

    中西国務大臣 当然のことでございます。各省庁それぞれ留意はしておると思うのですが、事故が起こったら大変でございますから、十分配意してまいりたいと思います。
  116. 玉城栄一

    ○玉城委員 さっきの件、大蔵省。  一つ大蔵省に伺いたいのは、皆さんからいただきました沖縄の国有地、上位百件のうちの資料をいただきました。その中にあります沖縄の勝連町津堅原二九四−一、面積三千八十八平方メートル、これは大蔵省の皆さんが出しました資料によりますと、未利用の理由は、利用困難である、こういう理由づけで出てきていますが、現在その皆さんの国有地の実態はどうなっていますか、御説明いただきたいと思います。
  117. 藤川鉄馬

    ○藤川説明員 お答え申し上げます。  沖縄県所在の旧軍関係の未利用地の中でもって勝連町津堅原の三千八十八平米の土地がございますけれども、これは現在未利用の状態にあると私ども承知しております。
  118. 玉城栄一

    ○玉城委員 それはそうなっていないんですよ。実際は住宅が建っていたり、それからネギの栽培のためのビニールハウス、そういうものに使われていますね。いかがですか。
  119. 藤川鉄馬

    ○藤川説明員 私どもの承知している限りでは、未利用の状態にあると考えております。
  120. 玉城栄一

    ○玉城委員 国有地の管理というのは法律に基づいて極めて適正に行われなくちゃいけないのは、これは当然ですね。私ども調査では、ちゃんとそういうふうに使われているんですよ。それを利用困難で未利用というようなとんでもない理由をつけて資料を出している。どういうことですか。いいかげんな資料の出し方というのはあなたの責任問題になりますよ。
  121. 藤川鉄馬

    ○藤川説明員 先ほども申し上げましたとおり、私ども承知している限りでは未利用と考えておりますけれども、現地の機関を通じまして、今どういうぐあいになっているか、調べてみたいと存じます。
  122. 玉城栄一

    ○玉城委員 それじゃ、さらにもう一つ。沖縄の伊江村字東江上ユプシ原三七一九の一万百九十八平方メートルについても未利用と皆さん方資料を出してありますね。実態はどうなっていますか。
  123. 藤川鉄馬

    ○藤川説明員 これも私どもの承知するところでは、国頭部伊江村に所在する未利用地におきましては、一部隣接耕作者によって使用されている様子があるようであります。
  124. 玉城栄一

    ○玉城委員 未利用というのは、あなた、どういう意味ですか。説明してください。
  125. 藤川鉄馬

    ○藤川説明員 国有財産を管理する上で、私ども、土地の現況あるいは利用状況などから、部内の管理をする上でいろいろな財産の区分をしております。その中で未利用地としては、現在利用されていない財産を未利用地と言っております。
  126. 玉城栄一

    ○玉城委員 あなた、未利用ということと、さっきは一部使われている様子であるというようなことをおっしゃいましたね。これは、あなたとまた別の機会にいろいろお話し合いしたいと思うのですが、皆さん方が私たちにくれる資料、そして説明するのと、実態とが相当にかけ離れているのですよ。ですから、国有財産を管理する大蔵省として、そんなことでいいのかどうかという問題が出てくる。  それで、これは長官に伺いたいのですが、この前の沖特でも長官もお聞きになって御存じのとおり、沖縄には旧軍取得の土地が現在国有地としてあるわけですね。その土地の取得に特殊な経緯があったわけです。そういうことに伴って、関係地主は国に対して土地に関する不信感が相当ある。同時に、沖縄は御存じのとおり狭いということで、土地の利用は非常に大事である。ですから、こういう国有地を未利用ということで置いておくということはどういうことかというような意味の御質問を申し上げてきたわけですが、今も大蔵省の方から答えがありましたとおり、実態については正確な把握というのはされていないような感じがするわけですね、いろいろな御説明等からしまして。これはお聞きになっておいて結構です。  そこで、もう一つ、この前の委員会で、皆さんの国有財産台帳の面積と実態とは面積が違うはずですよということを申し上げましたね。その結果についてお答えいただきたいと思います。
  127. 藤川鉄馬

    ○藤川説明員 旧読谷飛行場跡地などの、沖縄県に所在する旧軍用財産に係る国有財産台帳の数量は、沖縄県の本土復帰に伴いまして米国民政府から引き継いだ数量でもって登録をしているところであります。その後、国土調査法に基づく地籍調査あるいは位置、境界の明確化作業が行われた地区におきましては、当該地籍調査あるいは位置、境界明確化作業の結果に基づいて国有財産台帳を訂正することとしております。  旧読谷飛行場跡地につきましては、防衛施設庁におきまして地籍明確化作業が行われまして、国有地につきましては、一部未認証地を除きまして、約三十二万平方メートル増加いたしまして、国有財産台帳の訂正をその後行っております。  また、那覇市大嶺後原の点につきましても、これは現在那覇の防衛施設局に使用承認をしている財産でございますけれども、当地も防衛施設庁によって地籍明確化作業が行われまして、この結果、当該部門の国有地につきましては七万二千平米から十五万七千平米というぐあいに訂正をしております。
  128. 玉城栄一

    ○玉城委員 七万二千から十五万七千というのは相当な面積の違いですね。今おっしゃっている訂正したというのはいつなんですか。皆さん方が私たちに出した資料との関連はどうなりますか。
  129. 藤川鉄馬

    ○藤川説明員 提出を申し上げたのはことしの一月の時点でございまして、修正をいたしましたのは三月の時点でございます。
  130. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、三月の時点で、地籍明確化作業に基づいて新しい面積が確定した、その確定したことによって国有財産台帳を修正した、こういうことですね。その地籍明確化作業をするときに、先ほど申し上げましたこの読谷については関係地主会が相当の協力をしたと思いますが、その点いかがでしょうか、確認をしておきたいのです。
  131. 藤川鉄馬

    ○藤川説明員 読谷の地籍明確化作業、これは先ほども申し上げましたとおり、防衛施設庁を実施機関として行われたものでありますが、国におきましても土地所有者の立場としてこれに参画をいたしまして、もとより地籍明確化のためにはそれぞれの関係の地主さんの協力がなければできないことでありまして、その意味で相互に協力をし合い、感謝をするものであります。
  132. 玉城栄一

    ○玉城委員 時間が参りましたので、最後に長官に伺いたいわけでありますが、今の旧軍用地に絡む国有地の問題につきましては、あとまだたくさんございますので、これからも大蔵省とも詰めて話し合いをしていきたいと思いますが、長官に最後にお伺いをしておきたいのは、国有財産の管理は適正でなければならない。しかし、沖縄の国有地取得の特殊事情からして、真の適正管理は地元への土地還元を前提にしなければ期することができないと思います。難しい問題もあるいはあるかもしれませんが、この国有地の管理状況の抜本的解決の努力をしていかなくてはならないと思います。長官とされても、ぜひその御努力を要望しておきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  133. 中西一郎

    中西国務大臣 十分努力をしてまいります。
  134. 玉城栄一

    ○玉城委員 以上です。
  135. 横山利秋

    横山委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時三十八分休憩      ————◇—————     午後一時二十分開議
  136. 横山利秋

    横山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。伊藤昌弘君。
  137. 伊藤昌弘

    伊藤(昌)委員 我が国の危険な傾向は、このごろばかに左翼の風潮が強くなってまいりまして、暴力革命的な影は潜めましたけれども、反米親ソ、反政府、権利の主張など、特にどこの国の国民かわからない日本人が大分生まれてきておるように感じます。我が国の伝統を断ち切る風潮が続いたからであります。日本人教育の大切な問題は、文化、伝統の後世への伝達。歴史には栄光もあれば屈辱もあります。その重みに耐える民族が、時代を超えて生き続けていくのに必要な連続性とか統一性をつくり上げる、この大切なことが、左翼風潮によって断ち切られてしまっているのであります。日本の将来はこのままではまことに危険と感じます。  本論の前文として聞いていただきたいのですが、このごろの小中高等学校の社会科の学習指導要領もとうとう日教組型に変えられてしまいました。社会国家発展のために尽くす心を養うように教科書に書きなさいよ、これが削除。天皇の敬愛をよく子供たちに教えなさいよ、これが削除。家族の恩愛を大切にする教育をしなさいよ、これも削除。例えば家族問題を取り上げますと、家族、兄弟といえども、家族の恩愛よりも個人個人の権利の方が大切ですよという教え方。民主政治は独裁政治よりもすぐれておるということを教えなさいよ、これも削除。マルクス・レーニン主義の方がよいですよ、そんな書き方をされておるのであります。日米安保条約巻き込まれ論、自衛隊は憲法違反、純粋な子供たちにこんな教育をして、果たしてその子供が大きくなって公務員などになった場合に、本当に日本の国のためを考える人間として育つであろうか。今のような左翼傾向の強い役所の中をまず改めていきませんと、それに輪をかけたように、将来の日本の行政の中に憂うべきものができるのではないかと感ずるものであります。  大臣、これからの質疑は政治問題としてさせていただきたい。大臣は、今は行政の長でありますが、本体は政治家でありますので、政治家としての議論をしていただきたいのであります。もちろん、我々代議士は国民の厳粛な信託を受けておりますので、憲法についても国民にわかりやすい素直な解説にしたい。ひねくれた、わかりにくい憲法解釈ではなりません。しかし、今や立法府や行政府の憲法の取り扱いは、非常にわかりにくいものにしてしまいました。その一つは、今の立法府、行政府の一部は、憲法を自分の都合のよいところだけをとって、護憲護憲と言っておるのであります。  さて、公務員の基本姿勢に入りますけれども、まず、文部省が文教委員会に提出した資料、すなわち「日教組が社会主義革命に参加している団体と自ら規定していると受けとられる資料」がここにあるのでありますが、これと同類の資料が、大臣の総理府からも、裁判所、法務省からも、厚生省、通産省、運輸省、労働省、人事院からも出されなければならないと私は考えます。なぜならば、これらの省の職員団体、労働組合は日教組と同じような国公労連というマルクス主義思想によって貫かれた運動方針を持った政治団体であるからであります。  その運動方針は、まず階級闘争、それから独占資本打倒という、共産党宣言の中にしかない思想、行動によって形づくられているのであります。共産党宣言の中には主なものが三つありますが、時間がありませんから、その中の一つ、独占資本説、すなわち一握りの資本家が労働者を搾取する。九十何%という貧しい労働者が階級闘争によって資本家を倒す、そして資本主義社会は崩壊をする。これが独占資本説でありましょう。それと同じことが国公労連の運動方針になっているのであります。  まず、法秩序の元締めである裁判所の労働組合は、一万八千人の職員の中で一万五千人が国公労連加盟であります。裁判所の労働組合が共産系の労働組合でありまするから、国民はこれを聞けばびっくりするでありましょう。  そこで、運動方針の速記録を朗読させていただきますが、日本資本主義の構造的矛盾、生産と消費の矛盾、自由民主党政府はファッショ、独占資本本位の支配体制を強固なものにする、「独占資本と政府は、レーガン戦略への加担など対米従属をいっそう強めながら、」「軍事力増強それ自体が独占資本にとっての膨大な利潤の対象となっている」「全民労協の発足により、民間労組の右翼再編に布石をうった独占資本の次の攻撃の標的は、官公労働運動」である。「国家の財政と機構を独占資本の思いのままに利用しつくしていくためにも、彼らは官公労働運動の右翼的な変質を必要としています。独占資本の同盟軍である同盟が、」「官公労働運動の体質改善をかかげていることは、こうした政府・独占資本の動きと軌を一つにするもの」である。そして、宇佐見同盟会長を批判して、次に「全民労協を発足させた右翼的潮流は、労資一体化路線をいっそう強めて」いる。労資一体化路線を強めていることを批判しておるのでありますから、労資協調に反対をする階級闘争至上主義ということが理解できるのです。「現代版「産業報国会」をめざす労資協調路線では、」と、大臣、産業報国会まで出てきます。産業報国会というのは、戦争中の治安維持法をまだ忘れていない証拠。「政府・独占資本を政治的に包囲していく国民的な戦線をつくりあげ、」これはマルクスの、一握りの独占資本を多くの労働者が包囲して倒すという、共産党宣言に書かれていることと全く同一であります。「労働四団体共闘が、労働運動の右傾化とも結びついて政治戦線のうえでも、臨調行革断行を主張する民社・公明党を」社会党も「含む反共野党共闘を国会内で」推進した、こう書かれているところを見ますると、これは明らかに共産党の労働組合である。共産党か共産主義か知りませんが、他の政党を全部ぼろくそに言っておるのですから。これも運動方針に書かれておることであります。  そこで、階級闘争、それから独占資本打倒、反自民、そのほかの政党をすべて批判しておる。一体これが憲法を遵守する人たち運動方針であろうか。  時間がありませんからまとめて御質問をいたしまするけれども、公務員任用時の服務の宣誓というもの、公務員は憲法を遵守する、これは任意規定ではなくて強行規定であります。公務員の一番大切な思想がこの憲法遵守であります。憲法が唱えているところの我が国の体制というものは一体何か、日本国憲法の体制というものは何かということを、管理者が職員の人たちによく指導をしておかないから、こういうおかしな運動方針があちこちに生まれてくるのではないかと憂えるものです。  憲法思想の中で重要な制度思想は、政治制度思想と経済制度思想であります。思想を離れて制度はない。憲法自体が思想であります。共産主義国家と全く違った政治、経済、文化、哲学思想であります。日本国憲法の政治制度は議会制民主主義。複数の政党が言論で闘いながら多数決によって協調をしていくという議会制民主主義。経済制度は修正資本主義。憲法十四条、二十九条であり、これは、共産国家の一党独裁、全体主義政治制度でもなく、生産手段を国有にする共産主義経済制度と異なる。これと憲法一条天皇象徴、この三つが我が国の憲法の体制であると私は理解をいたします。この一つでも外せば我が国は革命につながる、こういう体制をよく公務員に理解させておかなければならないと思うのです。  さて、憲法第十四条法のもとに平等、社会的身分によって差別されない。例えば資本家であるとか労働者であるとかによって憲法は差別しない。官庁においても管理者であるとか一般職員であるとかによって、その社会的身分によって差別しない。すなわち平等に扱う。平等に扱うには、まず双方が協調関係になければ平等に扱えないと思います。それが逆に、今のように敵対的に対立をしておったんでは、平等に扱おうとしても平等に扱えないじゃありませんか。資本家が労働者を虐げてもいけないし、逆に労働者が資本家を倒す敵対的階級闘争思想というものは、我が国の憲法では認めておらない。  皆様、公立の小学校でも中学校でも高等学校でも行ってみてください。日教組が、おれたち教師は労働者である、団結をして資本家を倒せ。資本主義を思想とする政府が任命しておる教育委員会に反対、文部省に反対、校長先生に反対。校長、教頭はたった一人、二人。多数によって、学校はとうとう日教組によって管理されてしまって、こんなだらしのない義務教育に化してしまったのじゃないでしょうか。この理念というものは明らかに階級闘争理念であります。  さて、この十四条というものは、わかりやすく言うならば労使協調思想。また、憲法二十九条財産権、これは資本主義の思想であります。それと十四条をあわせると、明らかに労使協調、修正資本主義、この考え方は間違っておらない。労使協調、修正資本主義、すべて協調していくということがこの十四条にあるにもかかわらず、階級闘争、独占資本打倒。これが日本国憲法の思想を遵守しておる職員の行動であると認める人はどうかしておると私は思うのでありますが、この憲法十四条のみで結構ですから、ひとつ大臣の御所見をちょうだいできますでしょうか。
  138. 藤井良二

    ○藤井(良)政府委員 お答えいたします。  憲法十四条は法のもとの平等を定めておりますけれども、最高裁も判示しておりますように、同条は人種、宗教、男女の性、職業、社会的身分等の差異に基づいて、あるいは特権を有し、あるいは特別に不利益な待遇を与えてはならぬという大原則を示したものと考えます。  お尋ねの階級闘争の意味するところは必ずしも明確ではございませんけれども、憲法は国と国民との関係を規律するものでございまして、憲法十四条は国が国民をいわれなく差別することを禁じた趣旨のものと考えております。
  139. 伊藤昌弘

    伊藤(昌)委員 そんなおかしな答弁では困るのです。とってつけたようで、何が何だかわからない。要するに国民にわかりやすく解釈していく、それが憲法です。憲法というものは高度な人たちのものではありません。学校を出ていない人だってこの憲法がわからなければいかぬ。これはどなたが聞いても、私の今しゃべった内容と、あなた様の話した内容を国民に聞かせれば、それは伊藤昌弘の言う方がわかりやすいですよと恐らくだれでも言うだろうと思うのです。もう少し検討をしていただきたい。あやふやな解釈の仕方ですとわかりにくいし、そんな答弁では職員の憲法教育できませんよ。  さて、憲法十五条、公務員は全体の奉仕者であって、特定階級の一部の奉仕者であってはならない、これは政治的中立性を意味しておるものです。例えば自由民主党だけの奉仕者であってはならないし、社会党だけの奉仕者であってはならない、これが政治的中立。国家公務員法九十六条は、国民全体の奉仕者であって、公共の利益のために勤務しなければならないとなっている。  国家公務員法百二条第三項は、公務員は政党の役員にはなれない。しかし、政党員となることは原則的に認めていると考えてもよいと思うのです。しかし、その加入政党が排他的政党——排他的政党というのは敵対的階級闘争、すなわち特定階級にだけ奉仕する政策綱領を持つ政党と私は解釈しているが、この運動方針見たってそう見えるでしょう。こういう政党に公務員が加入した場合には、公務員たる地位と政党員たる資格とが両立しなくなるのは憲法に照らして明らかであります。このような政党に加入した場合は、いきなりやりなさいと言うわけじゃないですよ、憲法、国家公務員法に照らして、公務員として当然厳格に言えば失格となる。これは国家公務員法第三十八条第五号、第七十六条に照らして明らかであります。  このように、公務員はひとつきちんと規律をしておかなければなりません。私は非公務員にはこんなことを申し上げません。日本の憲法を共産主義の憲法にしたければどんどん演説をしてすればいい。しかし、我が日本国憲法、そしてその他の法律に照らした場合には、公務員だけはきちっとした規制があるのでありまするから、それを守っていかなければならない。このことは国民が考えればだれでもそう感ずると思うのであります。大体裁判所の労働組合の運動方針がこれですもの。まず階級闘争、それから独占資本打倒、そんなことはかり書いてある。一体日本の国というのはどういうことですかね。外国にこんなのがあるんでしょうかね、大臣。まあこれは御答弁なさらなくても結構ですが、これはひど過ぎる。  そこで、もう少し厳しく申し上げるならば、任命時に憲法を守る心構えがないのに偽って宣誓したことがわかった場合には、その任命行為は無効などの法律問題が生ずるでございましょう。また、任命時は宣誓の心構えであったけれども、任命後その心が変わって、特定階級だけのための排他的奉仕の心を持つようになった場合には、公務員としての適格性を欠く者とこれは認めなければなりません。その行為が外部的に判断できるようになった場合は失格という問題が生ずるのは当然な理であろうと私は思うのです。私は、この処分行為をすぐ採用しにくいことはわかってはおりまするけれども、憲法遵守なら、この考え方は必要な考え方であると信じます。公務員の適格性の調査と憲法の指導をしなければなりません。これを今のように避けてあいまいにしておくということは、管理者の職務怠慢と言われてもいたし方ないと私は考えます。  そこで、お尋ねをいたしまするが、国公労連の運動方針は、憲法に反する敵対的階級闘争、独占資本打倒、反政府、反社会、反民社、反公明、当然反憲法の疑いが大いにありと私は考えまするが、答弁しにくいかもわかりませんが、ひとつ政治家中西代議士として御所見をいただきたい。はっきり言えなければ、伊藤昌弘の考えはよく理解できるでも結構でありますが、ひとつお考え方を述べていただきとう存じます。
  140. 中西一郎

    中西国務大臣 委員長が今、国務大臣とおっしゃいましたが、そのとおりでございまして、個人の意見を申し上げる場合でもやはり責任ある立場が重なってまいります。  お話しの運動方針、御指摘がございましたので目を通させていただきました。また、先ほど来いろいろ先生おっしゃっておりますような大きな流れについては、私自身、選挙運動あるいは立会演説では似たようなことを言ったこともある。そんな先生ほど詳しく勉強していませんが、大筋については同様のようなことを、あるいはいろいろな労働組合について申し上げたこともあります。そういうことを考えますと、先生が言っておられるようなことの流れについては頭から否定するわけにはいかない問題がたくさん含まれておると思います。といって、現実に裁判所ですかの労働組合についての言及がございました。しかし、この問題は、私は加入、脱退自由というようなことだけが理由ではないと思うのですが、日本人というのは割に大ざっぱに物を考えて加入する、組合費を払う、そんな気分のある民族ではないか。きりきり詰めて、ヨーロッパ的な理論に拘束されての行動とはちょっと違う行動をするというようなことがございますので、といって全部を是認するわけではございませんが、やはり国家公務員法違反というような行動があれば対処していかなければならないのは当然のことであろう、かように思います。
  141. 伊藤昌弘

    伊藤(昌)委員 本当のことをおっしゃってくださった。私が日教組の先生に、あなたの組合の倫理綱領は知っていますかと言うと、私は知りませんと言う。先生たる者が自分の入っている労働組合の倫理綱領がわからないで入るのですか。それと同じことなんですね。だからこそ、憲法教育をしてください、国家公務員教育をしっかりしてくださいということを私は申し上げたいのでございます。採用するときに憲法を遵守するという強行規定に宣誓をさせているのだから、その後のことは、きちっと指導するということは管理者として当然であると思うのです。  そこで、また答弁しにくいでしょうけれども、階級闘争だとか独占資本というのは共産党宣言の中にしかないのです。同盟の労働組合はそんなこと書いてないのです。同盟の労働組合は、労使協調でありまするから、日本国憲法の思想を持ったものでありまするから、こんなことを書いてあるのは共産党宣言と日本の左翼の労働組合だけでございます。  そこで、この階級闘争とか独占資本打倒という思想というものは、自由主義の思想ではなくて、共産主義の思想、階級闘争、それから独占資本打倒、これは自由主義のどこにも書いてないのです。そう考えていくと、今の日本国憲法というものは自由主義の憲法なのか共産主義の憲法なのか、これだけでもひとつお答えをいただけませんでしょうか。  だれにも気兼ねはないと私は思うのですが、どうして日本政府は、特に自由民主党は、この国公労連のに書いてあるようにファッショ、ファッショ——自民党はファッショじゃない、このごろはもうおとなしくて、野党に気兼ねばかりしておるのです。昭和四十年、前の自由民主党はそうじゃなかったと思う。あの岸内閣のころ、一つの政党であれだけの大事業をやってのけた。今度の臨調の問題だって、私が考えるにそうですよ。これだけの教育大改革をするのだったら、政党政治のもとであるならば、自由民主党だけで本当の教育改革というものの草案をつくって、そして、在野の意見を聞きたければ審議会でもつくって聞くというのじゃなければ、政府はただ国民の意見を聞きたい、聞きたいと言って、何にも持ちもしないで、臨時教育審議会のようなものに諮問をしていく、これは政党政治家の姿勢ではないと私は思うのです。何ではっきりしたことをこのごろは政府のお偉いさんは言わなくなったのか、不思議でならないのです。だれに気兼ねをして、だれに遠慮をして正しいことを言おうとなさらないのか、感じているのは私一人ではないと思う。私は二十三年間自由民主党でありましたから、そして東京都会議員を経験して、代議士に出るに当たりまして民社党に移ったわけです。移ったわけをここで述べる必要はありませんけれども、ひとつ、今の日本国憲法というものは自由主義の憲法なのか共産主義の憲法なのか、つまらぬことをお聞きして申しわけないですが、そこらのところはきちっとしておきませんと、憲法教育はできはしないと思うのですが、大臣、いかがでございましょうか。
  142. 中西一郎

    中西国務大臣 主義というのは、それぞれ思想、信条の自由を憲法が保障しています。ただ、日本国憲法を今こうして見ておるのですけれども、前文というのがございます。この中には「わが国全土にわたって自由のもたらす恵沢を確保し、」というような文言も入っております。そういった意味では、先生おっしゃる自由というものを標榜しておる憲法であると申し上げてもいいと思います。またそう申し上げるのが妥当であろうと思います。
  143. 伊藤昌弘

    伊藤(昌)委員 経済制度も政治制度も共産主義一党独裁、全体主義国家とは全く異なった政治、経済制度でありまするから、これをしっかり職員に指導をしていただきたいと思うのです。  最後に、これも困ったものだ。これは日教組の規定、規約だけじゃないと思うのです。国公労連にもありましたが、大会で統一決定をした行動をとって、そして国家公務員法違反に問われて犯罪者となった者に対しては、組合員がみんなでお金を出して救援をする。その金額が日教組は一年間に百六十億円、百七十億円という大きなもの。考えてみますると、最初から法律違反とわかっておることを大会で決定をする、そんな公務員がどこの世界にあるのでしょうかね。ですから、労働組合だからといって野放しにしておいて、日本の国の憲法の自分の都合のいいところだけ思想の自由——私はこれを思想の自由音痴と言っているのです。こんなことで大国、民主主義国家と言い得るであろうか、その政府と言い得るであろうか。  私が今申し上げましたのは、公務員の基本姿勢がぐらついておってどうするかという考え方で質疑をさせていただいた次第です。ひとつもう一度お考えください。このままでは将来心配です。ということは、さきに申し上げましたように、小中高等学校の教育内容というものは、反米親ソ、反政府、権利の主張、純粋な子供がこういう教育を受けてきて、それらがこれから十年後に公務員になったりいろいろな社会に出ていくのでありますから、政治は将来をしっかり考えて、そして改むべきところは早く改めていくという姿勢が必要であろうと思って質疑をさせていただいた次第でございます。  以上をもって私の質問を終わります。ありがとうございました。      ————◇—————
  144. 横山利秋

    横山委員長 次に、歳入歳出の実況に関する件について調査に入ります。  委員長から申し上げます。  各省各庁等の電気需給契約の改善については、昭和五十二年度ないし五十四年度当時、会計検査院が検査報告において、不適切な契約のために電気料金が不経済に支払われている事態を指摘しており、また、昭和五十六年の通常国会では衆参両院決算委員会でこの問題が取り上げられ、官房長官及び大蔵大臣が、政府部内にその趣旨が十分徹底するよう督励する旨述べておられますが、後程申し上げますように、まだその成果が上がっているとは申せない情勢であります。  一方、この会計検査院の指摘を契機として、積極的に電気料金の節減を図っている地方公共団体もあるのであります。  決算委員会といたしましては、このような状況並びに現下の財政事情等に顧み、この問題に関する最近の実情等を調査する必要性を痛感し、去る三月二十九日における当委員理事会の決定に基づき、決算委員会調査室をして実態調査をいたさせました。  調査対象は、無作為抽出法により、各省庁等の数で三十二カ所、建築物の数で百九十カ所を選定し、調査は、文章をもって調査項目に回答を求める方式により、さらに数カ所については回答資料内容確認等のため、現地調査をいたしました。  なお、この際申し上げておきますが、各省庁等においては、御多用中にもかかわらず本調査のために御協力いただきまして、ありがとうございました。  右の調査に基づき、本十八日の決算委員理事会の決定を経て、ただいま当決算委員長から各省庁等に対して申し上げる要望事項は、次のとおりであります。  一、今回、当決算委員会においては、各省各庁等の電気需給契約の改善等に資するため、契約電力と使用電力量等について実態調査を行ったが、その結果、調査対象百九十カ所について、契約電力の変更その他により節減可能と見られる電気料金は、おおむね二億八千十一万円ないし三億四百八十七万円と推定される。その事項別内訳は、  (一) 契約電力の変更によって節減できる額一億五千三百十九万円ないし一億七千七百九十五万円  (二)デマンド監視装置を設置することによって節減できる額九千七百四万円  (三)力率の改善によって節減できる額二千三百七十八万円  (四)その他によるもの六百十万円であります。  なお、この調査結果をもってすれば、全国の各省各庁等所属建築物の総点検によって、実に莫大な額に及ぶ電気料金の節減が可能であると判断される。  これは、当該建築物の建設当時における需要電力量の過大見積もりをそのまま放置しておいたこと、必要電力量に応じた適正な契約電力変更の措置をとらなかったこと及びその他の電気料金節減のためのきめの細かい積極的な改善努力が十分でなかったこと等によるものと思われる。  したがって、各省各庁等においては、常に当該建築物の使用電力量の推移に着目し、電力の使用量が少なくなった場合には、最大需要電力の動向を見きわめた上、契約電力変更の処置を講ずる等電気料金の節減に十分配意し、今後いやしくも会計検査院の指摘を受けることがないよう努力されたい。  二、官、民の建物を問わず、契約電力と電力の使用実績との間に生じているギャップは、その建物の設計段階で厳格、適正な点検をすれば未然に防止できるとされている。  現在、官庁の建築物に関する電力関係の設計基準というものは設けられていないようであるが、当初から適切な電力需給契約がなされていれば、冗費を省き合理的な処理がなされるものと思考されるので、政府はこの基準の作成について十分検討されたい。  三、今回の調査項目に対する回答の中で、例えば、デマンド監視装置の導入、冷暖房装置等の合理化、省エネルギー改修工事の実施等により、現在よりもさらに使用電力量の節減を図りたい旨の建設的意見を述べている省庁等がかなり見受けられるが、これらは力率の改善措置とともに、いずれも電気料金節減のための有力な手段である。  現在の窮迫した財政状況のもとでは、官庁営繕費に振り向けられる予算枠にもおのずと限界があろうと思われるが、これらの工事費は、通常の場合、前述の契約電力の変更に伴うものをも含め、おおむねその工事の完了に伴って節減が可能となる電気料金一両年度分で賄われるとされている。いわば元を取ってなお余りある結果をもたらすことになるので、これらの予算要求については特段の配慮をされたい。  四、冒頭で述べたとおり、地方公共団体の一部においても電気料金の節減対策を強力に推進している例があるが、たまたま今回の調査に関連して把握した事例は次のとおりである。  (一) 愛知県名古屋市の場合  市立中学校十五校(運動場に夜間照明施設のあるもの)について昭和五十八年契約を変更し、年間約六百五十一万円の節減が可能となった。  (二) 長野県松本市の場合  市立小、中学校三十三校について調査した結果、昭和五十六年十四校について契約を変更し、年間千三十八万円の節減が可能となった。  (三) 東京都品川区の場合  昭和五十八年十二月、区立小中学校五十三校のうち三校について調査したところ、契約電力を二〇%程度縮小変更できることが判明した。他の五十校についても同様の結果が得られれば、年間約二千万円の節約が可能と見込まれている。  以上三例を通じ、契約変更に伴う改修工事費は、おおむね電気料金の節減額一年分ないし二年分で償還される実情にある。  なお、上述の一校当たりの平均節減額をもとにして、全国の小、中学校のうち、国、公立のもの(総数三万五千二百六十七校)に限ってその節減可能額を試算しても、百億円余と推定されるので、自治省並びに文部省当局の今後における適切な対応を要望したい。  五、最近は石油の需給も緩和の方向にあるが、エネルギー供給構造の脆弱な我が国としては、一時的な緩和といった事態に影響されることなく、省エネルギー政策を一貫して着実に推進する必要がある。  しかして、単に電力関係にとどまらず、国民各層に健全な省エネルギー意識の一層の定着化を図るためには、各省各庁が率先して上述のような対応策を実施し、絶えざる見直しを行うべきである。特にこれからエネルギー需要の増大する夏季を迎えるに当たり、各省各庁の一層の努力を期待するものである。  なお、各省各庁は、地方部局にも以上申し述べた趣旨を周知徹底するとともに、その所管する公社公団等の特殊法人等に対しても同様の措置をとるよう指導されたい。また地方公共団体に対しても同様である。  六、本要望事項に対しては、しかるべき時期に政府当局からその講じた措置について当委員会に報告をされたい。  以上であります。     —————————————
  145. 横山利秋

    横山委員長 そこで、この際、この要望事項に関しまして、委員長から政府側に若干お尋ねをいたしたいと思います。  まず、初めに、官房長官にお伺いいたしますが、今回、当決算委員会がこのような調査を行うに至った背景、経緯並びに要望の内容は、ただいまお聞き取りのとおりであります。冒頭に申し述べましたように、五十六年の衆参両院決算委員会で政府は、趣旨が十分徹底するよう督励する旨答弁しておられますが、現状ではまだ徹底した実践がなされていもとは思われません。  各省庁のまとめ役たる官房長官として、先ほど来私が申し上げましたことを、どのように受けとめられ、また今後どのように対処されるおつもりか、お伺いいたしたいのであります。
  146. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 政府といたしましては、従来から予算の適正かつ効率的な執行に資しますために、会計検査院の御指摘事項や国会の審議事項などを十分活用するように予算執行の責に任ずる各省各庁等に対しまして要請をいたしまして、そして、各省各庁等におきましても、文書による通達あるいはいろいろな会議、そして職員の研修等の機会を通じまして、所属関係職員等にその趣旨の徹底を図ってきたところでございます。  しかし、本日、ただいま委員長が御朗読になりましたような御指摘を受けるに至りましたことはまことに遺憾に存じ、かつ政府の取りまとめ役をいたしておる者といたしまして責任を痛感をいたしておる次第でございます。  政府といたしましては、ただいまの御要請について、各省各庁等におきまして調査検討などを行いまして、できる限り電気需給契約の改善等が図られますように一層の努力を図ってまいる所存でございます。  なお、ただいまの御要請の最後にございました、しかるべき時期に政府から当委員会に対して報告をするようにということにつきましては、しかるべき時期に御報告を申し上げるようにいたしたい、このように考える次第でございます。
  147. 横山利秋

    横山委員長 次に、会計検査院にお伺いをいたします。  昭和五十二年度以降、各省庁等の電気需給契約の改善に関して検査をされ、不適切な事態を指摘された結果、かなりの省庁等で改善措置がとられ、またそのことが刺激となって、地方公共団体においても行革の一環として積極的な対応がなされており、会計検査院の投じた一石が大きな波紋を呼んでおりますが、先ほど申し上げましたように、まだまだ残念ながら遺憾な点がございます。財政窮迫の折から、不経済な経費の支払いが行われないよう、一層の奮起と御協力をお願いいたしたいと存じますが、御所見をお伺いをいたします。
  148. 西川和行

    西川会計検査院説明員 各省庁等の電気需給契約に関しましては、昭和五十二年度以降の私どもの指摘を踏まえまして、各省庁等におきまして自主的にそれぞれ改善措置がとられたものと考えておりましたが、ただいまの委員長のお話によりますと、なお幾つかの改善を要する問題点もあるようでございますので、会計検査院といたしましては、今後とも御指摘の点に十分留意して検査してまいる所存でございます。
  149. 横山利秋

    横山委員長 次に、大蔵省にお伺いをいたします。  電力料金の改善措置を実施したくても、予算をつけてもらえないために実現できないという省庁がかなりあるようであります。今回の調査でも、昭和五十五年度以来予算要求をしており、これが認められれば九百六十万円の経費節減ができると申している事例があります。この種の支出は、経費の出しっ放しでなく見返りのメリットがあるわけですから、この問題は優先的に取り計らっていただきたいと思います。大蔵省の見解をお伺いします。
  150. 的場順三

    ○的場政府委員 御指摘のとおり、経費の節減合理化、効率的使用というのは、財政当局にとりましても緊急の課題であると認識しております。  具体的なお話がございましたが、この具体的なお話につきましては、今後の予算編成におきまして、各省庁から要求がございますれば、十分にその内容を念査し、短期的な費用効果分析にとどまらず、長期的な費用効果分析もあわせて行いまして、十分に検討いたしたいと思います。
  151. 横山利秋

    横山委員長 最後に、建設省にお伺いいたします。  要望の二で申し上げましたが、従前はともかく、窮迫した財政事情の中で電気の需給契約の改善についてこれだけ関心が集まっている現状に即して、電気設備の設置に関し、何らかの基準を設けるのが至当と思われますが、御所見をお伺いいたします。
  152. 渡辺滋

    渡辺説明員 お答えいたします。  建設省では、官庁施設の電気設備の設計基準として「建築設備工事設計要領」というものを定めており、時代の趨勢を勘案しながら改定を行って、適正な設計に資しておるところでございます。  一方、電力需給契約は、所管の各省庁で個々に電力会社と契約を行っているものでございますので、官庁営繕としては、統一的基準をつくるということは困難がございます。が、適切な電力需給契約がなされますように必要な資料の整備を図ってまいりたいと考えております。      ————◇—————
  153. 横山利秋

    横山委員長 次に、昭和五十六年度決算外二件を一括して議題といたします。  内閣所管について審査を行います。  まず、内閣官房長官から概要説明を求めます。藤波内閣官房長官
  154. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 昭和五十六年度における内閣所管一般会計歳入歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  内閣主管の歳入につきまして、歳入予算額は一千三百九十三万円余でありまして、これを収納済み歳入額一千四百十三万円余に比較いたしますと、十九万円余の増加となっております。  次に、内閣所管歳出につきまして、歳出予算現額は百四億七千百四十三万円余でありまして、これを支出済み歳出額百億三千五十一万円余に比較いたしますと、四億四千九十二万円余の差額を生じますが、これは人件費等を要することが少なかったため、不用となったものであります。  以上をもちまして、決算概要説明を終わります。  何とぞよろしく御審議のほどお願いいたします。
  155. 横山利秋

    横山委員長 次に、会計検査院当局から検査の概要説明を求めます。西川会計検査院第一局長
  156. 西川和行

    西川会計検査院説明員 昭和五十六年度内閣の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
  157. 横山利秋

    横山委員長 これにて説明は終わりました。     —————————————
  158. 横山利秋

    横山委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。新村勝雄君。
  159. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 私、最近世上の、社会の問題になっておりますいわゆるサラ金の問題について御質問したいと思います。  いわゆるサラリーマン金融については、先般、法の制定あるいは改正がありまして、社会的に認知をされた、こういうことでありますけれども、その後一向に社会的な弊害というものが減らない。むしろ増加の傾向にあるわけでありまして、最近の調査によりましても、自殺あるいは家出、個人的な破産というような多くの社会的な弊害を惹起しておるわけであります。  そこで、まず大蔵省にお伺いしますが、この問題の直接の監督は大蔵省さんにあると思いますが、今年二月の大蔵省の発表によりますと、金融機関のサラ金業者への融資額は五千六億、関連会社への間接投資は五千二十六億、合計して一兆円を超す資金一般金融機関からサラ金に流れておるということでありますけれども、この辺の事情についてまずお伺いしたいと思います。
  160. 宮本保孝

    宮本(保)政府委員 サラリーマン金融に関しましては、私どもといたしましても、いろいろ去年以来非常に大きな問題がございましたので、三月、九月末、両時点で去年から報告をとるようにいたしておるわけでございまして、特に金融機関を通じますサラ金業者への融資額について、今先生御指摘のとおりの数字になっておるわけでございます。  ただ、私どもといたしましては、去年の五月にやはりサラ金への融資については自粛すべきであるということで通達を出しまして以来、顕著な減少というようなことはないのでございますけれども、ほとんど貸し出しの増加額はとまっているような状況でございまして、今御指摘の直接融資につきましても、三月に比べますと七、八十億ほど減っておりますし、また間接融資につきましては、約九百億ほど減少するということでございまして、一応金融機関からのサラ金向けの融資は、通達によりまして自粛傾向が出ておるのではないかというふうに考えております。
  161. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 それと、サラ金業というのが社会の批判を浴びておるわけでありますけれども、こういった状況の中で経営そのものがかなり悪化をしているということが言われております。サラ金大手四社の昨年末の決算は、貸し倒れ損失が七百七十八億、融資残高に対する比率が六・八%であって、前年のそれに比較をして七倍ないし八倍になっておるということですね。貸し付けの残高もやは旦二〇・九%伸びておりますけれども、前年の一四三・三%という伸びに比較すると大幅に鈍化しておるわけです。  ちなみに、アメリカの大手サラ金と言っているかどうかわかりませんが、同種の企業、ベニシャル・コーポレーションというのがあるそうですけれども、これの決算によりますと、貸し倒れ損失率は残高に対して二・一%程度だということで、この程度ならば健全と言えるかどうかわかりませんけれども、米国大手に比較すると大変な悪い状況であるわけですね。  しかし、一兆円の融資を民間から吸い上げてこれを運用しているわけでありますから、これがもしサラ金業が崩壊をするようなことになると一般の預金者に大変な影響が及ぶわけでありますけれども、一体この一兆円融資の担保はどういうものであるのか。それから、今刻々と悪化をしているわけでありますけれども、この事態を大蔵省はどうごらんになっているのか。それから、この事態に対してこれからどういうふうに指導をされていこうとなさるのか。
  162. 宮本保孝

    宮本(保)政府委員 今、まず担保でございますけれども、一番大きな担保は、いわゆるサラリーマン金融会社が個人に貸し付けております貸付債権を担保にとっておりますのが四七・七%でございます。その次が人的な保証で貸しておりますのが一四・三%、次が不動産の一一・七というふうな状況になっております。  それから、最近のサラ金業界の経営状況でございますが、御指摘のとおり経営悪化が見られるわけでございまして、私どもも、サラ金業者につきましてはその実態が表面に出てきているのかなという感じがいたしております。特に貸金業法が施行されました後、取り立て行為がかなり緩和されてきているというようなこととか、あるいは先ほど申し上げました金融機関の融資がとまっておるというようなこととか、あるいは従来大手の場合でございますと、中小の方から借りさせましてそれで返済に充てる、そんなようなこともやっていたようでございますが、そういうふうなこともできなくなってきたというようなことも聞いておりますし、いずれにいたしましても、今先生御指摘のように、貸し倒れ率が四社で七%近い率でございますので、かなり大きな額になっていると思います。  ただ、こういう状況でございますけれども金融機関がサラ金に融資するに当たりましては、確かに担保の問題等もございますけれども、相手先の貸金業者の経営の実態とか、あるいはそれぞれ担保につきましても、貸国債権では非常に担保力がないではないかというような御指摘もございますけれども、経営者自体がしかるべき判断をいたしまして貸し付けをしているわけでございまして、そういう意味におきましては、貸し倒れ率が高くなったから直ちにそれが金融機関の経営に響きまして預金者に迷惑をかけるというようなことはないのではないかというふうに思っております。また、去年の五月に私どもが出しました通達におきましても、いわゆる金融機関の経営の健全性、預金者保護という点については十分留意すべきだということで、サラ金向け融資を仮にやる場合にも、その辺のところはみずから適正な判断をして善処するように通達は出しておるところでございます。
  163. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 担保の最大のものが貸付債権であるということですね。もちろん貸付債権というのは、実体があると言えばあるわけですけれども、しかし一方、業界の経営が厳しくなって、例えば先ほど申し上げたように貸し倒れが目立ってふえておるということになれば、貸付債権の内容そのものが非常に悪化しているということですから、決して楽観はできないのではないか。それと、現在のような傾向がもしも続くとすれば、貸付残高は停滞をしていて貸し倒れが次第にふえていく、こういう傾向も予想されるわけであります。そういったわけで、大蔵省さんのもう少しきちっとした指導方針がないと安心していられる状況ではないのではないかと思うのですが、その点いかがでしょうか。  それから、貸し倒れの中身としてはいろいろなことを言われておりますが、各本社から支店に対してノルマを課して、それを達成するために苦し紛れに架空の借り受け人等をつくって、それが経営の一つの擬制というか金融業の擬制的な形をつくり出している、またそれが犯罪にもつながっていく、こういうことが言われておるわけですね。そして、現在は、若干の新規参入あるいは業者の貸し込み、貸し付け競争などで架空取引や不良債権が比較的目立たない状況だと言われておりますが、一たん金融が引き締まる、あるいは金融情勢の変化があるということになりますと、こういう擬制的な形や不健全経営が一挙に顕在化するということもありますので、決して楽観はできない。それと、貸し倒れが融資残高に対して六・八なんというのは、これだけでも正常な金融ではないはずですね。ですから、それらを考えた場合に、もっともっと厳しい態度で、預金者保護という見地から指導なさるべきではないかと思いますが、もう一回お願いします。
  164. 宮本保孝

    宮本(保)政府委員 ごもっともな御指摘ばかりでございますが、貸付債権を担保にとっている点は確かに問題ではあるわけでございます。ただ、何せサラ金業者の場合にはしかるべき担保は実は余りないという点が実態なわけでございまして、次善の策としてそういうふうな担保をとっているのではないかと思われるわけでございます。ただ、一般金融機関の融資の問題といたしまして、貸し倒れが発生いたします場合に、大口債権の貸し倒れが金融機関の経営にとりましては一番危険なことでございまして、比較的小口に分散されている場合の資産状況は、大口が不良化する場合に比べますと深刻さは少し薄いのではないかというようなことが一般に言われております。また一方で、危ないというので金融機関がサラ金業者への融資を急激に引き揚げたりいたしますと、かえって金融を混乱させる面もございますので、その辺は金融機関といたしましてはややジレンマのところではないかと思いますが、そこはバランスをとって融資といいますか、そういう取引を改善していくべきじゃないかと思っております。  それから、ノルマを課したりあるいはそのために架空貸し出しをするなんということはもってのほかでございますので、その辺は今後十分注意をしてまいりたいと思います。  いずれにいたしましても、貸金業二法が施行されてまだ半年でございます。私どもといたしましては、まず、登録事務に万全を期することと、それから、検査もかなり充実いたしたいと思っておりますし、現在までに、半年でございますけれども、大蔵省と都道府県とで約五千件近い検査も実施いたしておるわけでございます。また、最近、都道府県に一つずつ協会をつくるようにいたしておりますけれども、今までの庶民金融業協会から貸金業協会に変わるわけでありますが、それの改組も今十七、八の都道府県で発足しておりまして、最終的には全国の貸金業協会もできる、その協会を通じて十分指導もするというようなことで、貸金業二法の適正な執行にますます努めることによりまして、今御指摘のような点につきまして我々なりに対応してまいりたい、こう思っております。
  165. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 担保は貸付債権ということなんですけれども金融の原則は、やはり担保は経済財貨、経済財を担保にするというのが原則でしょうね。ところが、サラ金の場合には、サラ金業者が個々のサラリーマンならサラリーマンに貸し付けをする場合でも、その担保はやはりその人の社会的地位とかあるいはサラリーマンとしての——サラリーマンの持っている財産ではなくて、何といいますか、正常な金融の原則ではなくて、その人の例えば公務員なら公務員という社会的地位というようなものでまさか返さないというわけにいくまいとか、あるいはその人が毎月定収があるとか、あるいはやめれば退職金がもらえるとかというような、そういう金融業の担保とはしがたいあるいはすべきでないものを一つの質にとって金を貸すということですね。ですから、金融の原則からは大変外れたやり方を初めからやっておるわけですね。そういうことで、サラ金業者が持っている貸付債権そのものがもう既に経済財貨を対象とする担保ではないわけですから、それをさらにほかの銀行なり金融会社が融資する担保としてとるということは、これは全く経済行為、特に金融の原則を全く踏み外したやり方ではないかと思います。そういう点で、貸付債権があるから担保があるんだということは大変安易な考えじゃないかと思いますけれども、それはいかがでしょうか。
  166. 宮本保孝

    宮本(保)政府委員 これも御指摘のとおりでございますが、ただ、そうはいいましても、個人の持つ信用力というのは、特別に財産があるとか不動産があるというなら別でございますけれども一般的には個人は素手でございますが、そこで、やはりサラリーマン金融が健全化していくためには、あるいは円滑に機能していくためには、個人信用に関します情報が集まることが大切でございまして、大手のサラ金とか中堅のサラ金などがみずから共同いたしまして情報機関などもかなり持っているようでございまして、そういう意味におきまして、現在のサラ金業者がつくっております信用情報機関というのは割とワークするといいますか、相当正確な情報が集積されているような機関もあるようでございます。私どもといたしましては、こういう個人信用情報がもっと大同団結するような形で発展していくことによりまして、健全なサラ金融資が行われることを期待しているわけでございまして、この点につきましては、業界などもいろいろ指導しながら、そういう個人信用情報センターみたいなものの充実に努めてまいってサラ金融資の健全化を図ってまいりたい、こう思っております。
  167. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 先ほど申し上げたように、サラ金の実態というのは金融あるいは経済行為の原則から外れているというふうに私は思うのです。ところが、それがいつの間にか一兆円産業、数兆円産業に急膨張したということについては、これはやはり大蔵省あるいは政府としてもちょっと油断し過ぎたのではないかと思っているのです。そこで、サラ金業者の授信業務、授信の原則等についても再検討すべきではないかと思いますし、また、先般サラ金二法が新しく制定されあるいは改正されておりますけれども、サラ金業というものに対する抜本的な見直し、これをいつまでもこのまま続けていくのか、それとも根本的に体質改善を迫っていくのかという、そこらあたりの決意をすべきではないかと思うのですけれども、大臣、その点はいかがでしょうか。
  168. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 先生御指摘のように、サラ金に関するいろいろな事件が頻発いたしておりまして、大きな社会問題になっておるところでございます。先般も閣議でもこの問題が取り上げられまして、各大臣から御意見が述べられたところであります。いろいろな理由があると思いますけれども、債権者の方、債務者の方両方に問題がありましょう。しかし、貸す方からいきますと、やはりモラルの問題が一つありますし、もう一つは、少しおくれた感がございますけれども、法令の整備などができていなくてこれまで規制が十分でなかったというところもあったのではないかということについては、大いに反省もし、そのために法令の整備を進めてきたところでございます。まだ二法が成立をいたしまして、それぞれ法令を整備して進めてきておるところでございますので、当面は、先般の閣議でも大蔵大臣からそのような発言がありましたように、この二法の行く方というものを、厳正にこの法を執行していくことによりまして業界のあり方についてもいろいろ行政指導もしていくようにいたしたい、こういうふうな姿勢で今おるところでございますので、しばらくその行政の努力を見守りながら進めていくようにいたしたい、このように考えておる次第でございます。
  169. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 時間がなくなりましたから以上でやめますけれども、要するに、一口で申し上げて、サラ金というのは資本主義の一つのメカニズムの中で資本主義の法則に従って伸びてきたものではないということです。これはまさに資本主義のあだ花といいますか、人の心理の弱点につけ込んで伸びてきたものであって、資本主義のメカニズムではないわけです。言い過ぎかもしれませんが、まさに虚構、あるいは詐術と言うと怒られますけれども、そういったことから出てきておるわけであって、健全な資本主義の発展ということからしてもこれは決してプラスではないということですから、サラ金二法ができたということで安心することなく、さらにこれを十分検討していただいて、国民に迷惑のかからないようにひとつ頑張っていただきたいと思います。  終わります。
  170. 横山利秋

    横山委員長 井上一成君。
  171. 井上一成

    ○井上(一)委員 まず、最初に、私はオリンピック問題について官房長官からお聞きをしておきたいと思います。  今回、ソ連を初めとするロサンゼルス・オリンピックに対する不参加国、とりわけソ連がロス・オリンピックに対する不参加の決定をしたその真意は何なのか、官房長官としてどういう御認識を持っていらっしゃるのか、まずその点からお聞きしたいと思います。
  172. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 今日の世界がアメリカを中心とする西側とソ連を中心とする共産圏との間でそれそれ勢力が拮抗をいたしまして今日に至っておるということは、私ども理解をいたしておりますし、先生御高承のところでございます。  そういった中で、世界がロス・オリンピックをぜひ成功させたい、すべてのIOC加盟国が参加をして盛大な国際スポーツの祭典にしたい、こういうふうに念願をしてきたところでございますが、急速ソ連が不参加を決定し、また関係東欧諸国に不参加をするという国が相次いでおりますことは、スポーツという世界のあり方から考えまして、この中にいわゆる政治的な考え方が入って参加なり不参加なりということが決められることになったものと考えまして、まことに残念なことと遺憾に存じておるところでございます。かつてはモスクワにおけるオリンピックに関しましていろいろな動きがあったわけでございますけれども、今日またロス・オリンピックに対してこういった一連の動きになっておりますことは、非常に残念なことと考えておる次第でございます。
  173. 井上一成

    ○井上(一)委員 政治の分野だけに限らず、スポーツの分野の中にまでいわゆる東西の関係が持ち込まれてきたという認識は、まさにそうだと思いますし、あってはならないことが現実の問題として起こっているということです。さらに今、東西の不信感が緩和される方向に向くのではなく、逆な方向になりつつあるのではないか、我が国の外交が果たす役割は、少しでも東西関係を緊張緩和させていこうということに役立っていかなければいけないと思うのです。  そのソ連とアメリカとの、オリンピック委員会等の中で、組織委員会の中でどんな交渉を持たれたのか、日本政府としてはそういうことも十分御承知なのかどうか、そういう点はいかがでございますか。
  174. 三宅和助

    ○三宅政府委員 本件につきましては、IOCその他の国内委員会を通じまして状況の報告を受けておりますが、とりわけ四月二十四日IOCの緊急理事会が開かれまして、そのときの模様につきましては、一応その段階におきましては、オリンピック憲章が尊重されるならばソ連はロス・オリンピックに参加するという共同声明が出ております。ソ連の国内委員会はオリンピック憲章のもとでロス・オリンピックに参加するかたい意思を強調したというようなこと、それから、例えばIDカードその他につきましても今後オリンピック憲章に従って解決されるということで、一応この段階では原則的には話し合いがいい方向に行っていた。その後も、いろいろな状況につきましては、いろいろなレベルで情報が参っております。
  175. 井上一成

    ○井上(一)委員 いろいろなレベルで情報が参っておるということですが、どんなレベルでどんな情報が入っておるのか。  アメリカのレーガン大統領はこの問題についての打開へは行動せずというふうに報道されておりますし、我が国政府は、外務省ソ連参加については在日ソ連大使館の参事官にソ連が参加することを希望するということを伝えたということでありますが、それだけの行動なのか、それ以外にもソ連に対してのあるいはアメリカに対してもの何らかのアクションがとられたのか、その点についてはいかがですか。
  176. 三宅和助

    ○三宅政府委員 いろいろの情報と申しましても、本件につきましては、基本的にIOC及びロスの組織委員長、さらには各国内のオリンピック委員会のいろいろな関係者につきまして公式、非公式の情報を得ているということでございます。  それから、第二の御質問の点につきましては、外務省情報文化局の市岡審議官が、かねてから外務大臣が国会等の場で明らかにしております日本政府の立場をソ連側に伝達したということでございまして、これは二つの点から成っております。第一点は、ソ連オリンピック委員会が関係者による努力が続けられている中で突然ロス・オリンピック大会に不参加の決定をしたことは非常に残念であるということ。第二点は、オリンピック大会はすべてのIOC加盟国の参加を得て開催されることが望ましく、ソ連がロス・オリンピック大会に参加することを希望するということを、もう既に明らかにした日本政府の立場というものをソ連側の文化担当の参事官にお伝えしたということでございます。  それから、なお、それ以外ではどういうようなアクションがあり得るのかという御質問でございますが、現在のところ、特に大きな進展がない限りにおきましてはこれ以上の措置を考えておりません。
  177. 井上一成

    ○井上(一)委員 官房長官に。私は四年前を振り返るべきではないだろうかと思うのです。四年前に我が国はどういう対応をなしたのか。今、三宅局長は、すべての国が参加した中でのまさに平和のシンボルをオリンピックに位置づけているわけです。東西関係が非常に厳しい状況の中で、我が国が四年前を振り返って、本当に何を言うことができるのか、何が言えるのか、どういう行動がとれるのか、こういうことなんです。そういう点に立って、東西緊張という国際情勢がオリンピックを真のオリンピック精神に位置づけない現実の問題としてあらわれておる。官房長官、四年前を振り返って、今いかが思いをいたされるか、この点について聞きたいと思うのです。
  178. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 オリンピック大会は、本来、スポーツを通じてよりよき、より平和な世界の建設に助力し、国際親善をつくり出すことを目的として開催されるものでございまして、オリンピック大会が開催されます国の政府はとりわけ強くオリンピック精神の遵守を求められておるところでございます。そういったものを中心にいたしまして、オリンピックの精神、オリンピックの輪が広がって大会が成功していく、こう思うのでございます。  四年前に、モスクワ・オリンピックに不参加という事態になりまして、先生の御質問はそのことの御指摘であろうかと思うのでございます。私も当時労働大臣をいたしておりまして、モスクワ・オリンピックに参加するかどうかという閣議で、外務大臣、文部大臣を中心にいたしまして非常な苦悩のひとときがございました。ちょうどそのときはソ連のアフガニスタンヘの軍事介入が国際世論の非常に厳しい非難の中で行われて、しかもそれが長期化をするという構えがございまして、非常に憂慮すべき国際情勢であった。そんな中でモスクワ・オリンピックヘの参加、不参加の態度が迫られていったということになっていたのでございます。そういった状況のもとで、当時、政府としては、モスクワ大会に選手団を参加させることが望ましくないというふうに判断をいたしまして、その旨の政府見解を発表したものでございまして、またその判断に基づきまして、日本オリンピック委員会が最終的には不参加を決める、判断をするという事態に移ったのでございました。それでもなお参加すべきではないかと、当時、純粋にスポーツを愛し、スポーツを通じて平和な世界を築こうとお考えになった日本国民の方々もたくさんいたというふうに、私率直に思います。スポーツというものは本来そうあるべきものだというふうに思っておりますが、当時の国際世論、ソ連の態度等を考えて、やむを得なかったかな、今でもなおそんな思いが去来をいたしておるところでございます。  しかし、本来は、オリンピックの大会というものは、何回も申し上げますように、そのほかの政治や経済やすべてのことが行き詰まっても、純粋に、世界の中でスポーツだとか、文化、芸術、学術などというものの交流というのは非常に盛大に行われる、しかも非常に厳しい状況になっても世界からそういう新しい平和への動きがまた高まってくるというようなものであるべきだろう、こう考えておりまして、四年前にとりました態度はやむを得なかったのでございますけれども、今度のロス・オリンピックヘのソ連を初めとする各国の不参加ということを目の前にいたしますと、やはり世界の動きとこのスポーツというものとの関係というのは非常に難しいな、今、外務大臣臨時代理をいたしておりますので、余り軽々なことは言えませんけれども、非常に難しいものだなという思いに今駆られておるところでございます。
  179. 井上一成

    ○井上(一)委員 四年前にアフガン侵攻けしからぬというのは、そのこと自身は僕もけしからぬと思いますよ、内政干渉、主権侵害。それじゃ、今、中南米に起こっている問題に対してアメリカはどうしているんだ。ソ連はそれを云々と言う。まあ一言で、あなたの認識が国際情勢、東西間の問題だという認識、これは僕も共通しているんですよ。それじゃ、これをどうほぐしていくか。あるいは、先に向かつて我が国はどういうふうに取り組んでいかなければいけないか。失礼な言い方ですけれども、四年前に日本の不参加を決定した人たち、あるいはむしろ日本政府も含めて、今回のオリンピックに対してソ連を非難する、そういうことは内心恥ずかしい思いをするのではないか、私はそう思っているのです。逆に言うと、スポーツだけが国際情勢から遊離した中で、平和だ平和だなんて言ったって、こんなもの虚構だと私は思う。だから、そういう意味からすれば、まさに本当に世界の平和をつくり上げるためにこのスポーツにいかに有効適切な対応をしていくかということが大事である。  そうしたら、四年先ほどうなんや。四年先が心配ですよ、ソウル・オリンピック。この四年先のソウル・オリンピックに今回のソ連の不参加というものはどう影響するんだろうか。官房長官、今、外務大臣臨時代理ですね。外交というものは難しい。しかし、平和をつくり上げていくというこの道は与野党一致しているんですよ。これは変わりっこないんだ。手段、方法をどう持っていくかということだけですからね。私はこの点について、むしろ、外務大臣に聞くよりも、内閣のまとめ役である官房長官に聞きたい。ロス・オリンピックへのソ連の不参加は四年先に波及するのではないか。政治情勢、国際情勢が非常に背景にあり、それが左右する、そういうことになると四年先はいかがですかと非常に危惧をし心配をしている。官房長官の御認識。今回のことは非常に影響を及ぼす、私はそう思うのですが、官房長官はいかがでしょうか。
  180. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 今回のロス・オリンピックに対するソ連などを初めとする各国の不参加の決定は、恐らく今日の時点における国際情勢についてのいろいろな考え方があるだろうとは思いますけれども、それを少しさかのぼれば、やはりモスクワ・オリンピックのときに不参加になったということを頭に置いて今回の一連の決定がなされたということをよく言われる向きがございまして、そのことも確かにどこかで大きな影響があるんだろうなということは、当然推測できるところでございます。いろいろそういったことを考えてみますと、四年先、ソウル・オリンピックの状況を今から予測をすることは非常に困難でございますけれども、そういった世界の政治、経済情勢の中で、オリンピックの運命と申しましょうか、スポーツの置かれておる状況というのでございましょうか、だんだん折り重なっていろいろな影響をそれぞれもたらし合っていくのではないかということにつきましては、非常に心配をいたしておる、先生の御認識と同じである、こう申し上げたいと思うのでございます。しかし、開催地がどこでありましょうとも、やはり回を重ねてだんだんとIOC参加国がすべて参加して盛大なオリンピックになっていく、そういう世界をつくっていくようにしなければならない、このように考える次第でございます。
  181. 井上一成

    ○井上(一)委員 これはイギリスの有力紙であるタイムズも、ソウル・オリンピックをソ連がボイコットするおそれが強まっているというふうに報じているわけです。そうなれば、オリンピックそのものが破壊してしまうというか、その意義が薄らいでしまう、なくなってしまう、滅亡してしまう。それなら、できることならば成功して、世界のすべての国がソウルに結集してほしいと私も願いたいわけですね。願いたいんだけれども、今から四年先の問題を非常に軽々に論ずるわけにはいきませんけれども、国際情勢が非常に大きくオリンピックを左右していくということを思うときに、やはりそこにはいわゆる朝鮮半島における緊張ということも考えられるわけです。  それじゃ、ひとつ、そういうことをできるだけ避けるためにも、さらには、今後そういう問題、国際情勢によってオリンピックに参加する、参加しない、そういうことのないようにどうしていったらいいだろうか。これはやはり軍事緊張地帯での開催というのは、いつどんなときにでも問題が起こるのではないだろうか、私はこういう認識を持つのです。まず、官房長官に、私のそういう認識と同じ立場に——先ほどのお答えでもわかるのですが、これはソウルということを抜きにして、いついかなるときでも軍事緊張地帯での開催というのは非常に問題があり、不参加国が生じやすい状況にある、こういう認識なんですが、官房長官、いかがですか。
  182. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 IOCの参加国でどこでオリンピックを開催するかということは決めていくわけでございますから、なかなかそのことにコメントすることも非常に難しい立場にございますけれども、軍事的に紛争が起こりやすい地域などについては参加、不参加などの問題が非常に起こりやすいということは、一般的には言えると思うのでございます。今度のロス・オリンピック不参加の問題が起こりまして以来、いろいろな角度からいろいろな意見が出されておりますが、それらを参考にしてもそんな感じがいたすのでございます。
  183. 井上一成

    ○井上(一)委員 そこで、これは当面というか将来的にも一つの問題提起としては考えるに値する、私はこう思うのですが、先ほど指摘をしたように、ロス・オリンピックのボイコットが東側陣営の中でふえつつあるという状況の中にあって、ソウルのオリンピックの危惧される状況、そういう中で、ギリシャをオリンピック競技の恒久的なホームグラウンドにというカラマンリス・ギリシャ大統領の悲願——悲願というのですか、かなり現実味を帯びてきたのではないだろうか。これはレーガン大統領も、報道でありますけれども、その意に近いというふうに報じられておるわけなんです。むしろ、今後のいろいろな国際情勢を抜きにした、それこそそこを一つの平和の拠点にできる、そういう意味からも、ギリシャでの開催問題、オリンピック発祥の地であるギリシャ、これは私は思考するに値すると思うのですよ。これは日本の官房長官がそうしましょうと言ったってできる問題ではないわけです。総理大臣がそうしましょうと言ったってできる問題ではない。しかし、流れから考えて、そして、今後こういう流れがよりふくそう化しないためにも、レーガンが言ったことだったら中曽根さんはよっしゃと言いはるかもわからぬけれども、私はそういう発想で物を言っているのじゃなくして、オリンピックの開催はずっとギリシャなんだ、そのことにそれぞれの国が経済的にも協力をしていく、あるいはあらゆる意味で協力をしていくという、どうなんでしょうか、ギリシャでのオリンピック開催ということは。私の認識、さらにはギリシャ大統領の提起されている問題、一考に値するんじやありませんか、官房長官。
  184. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 ソウルのオリンピックにつきましては、これはもう決定をしておるわけでございますので、どうしても成功させなければいかぬ。むしろ、ソウルが適当か不適当かということよりも、ソウルの成功のためにみんなが力を合わせることが大切であるということをまず一つ申し上げておきたいと思います。  それから、ロス・オリンピック不参加の問題が起こりまして以来、ただいま御指摘がございましたギリシャ大統領の話でありますとか、特に、レーガン大統領も記者会見で、ギリシャに帰る、アテネを恒久地として考えるということも十分考えなければなるまいというようなお話が出たことや、それから、IOCの事務局長であったと思いますが、これからは超大国でのオリンピックはもう難しくなったというような趣旨の発言をしたりいたしております。いろいろなことを考えてみまして、不参加問題が起こりました以後、日本の国内におきましても、私どもいろいろな人にお目にかかるといろいろな話題が出ますが、結局はアテネに帰れということかなという話は、いろいろな方がよくお考えになって発言をしたりなさっております。オリンピックの開催地が世界の各国を回るということの意味もまた非常に深いものがあると思いますので、そのことはそれなりに意義がある。しかし、ギリシャに帰るというのも一つの有力な意見としてこれから浮上してくるのではないだろうか、そんなふうにも思うのでございます。  いずれにいたしましても、IOCを初め関係者の間での御議論がどんなふうに進んでいくか。御指摘がございましたように、中曽根総理大臣がそうだと言っても、特に官房長官がこうだと言っても、それで決まるわけではありませんけれども一般的な話としてそういう議論というのはこれからもよく話題になろう、そのことと、結局、スポーツ関係者の御議論の煮詰まりを見ていくということか、こんなふうに思うのでございます。
  185. 井上一成

    ○井上(一)委員 官房長官、別に強制してあなたに答弁を求めるわけじゃないのですが、冒頭にお答えになられたソウルのオリンピックを成功させたい、これは私も同感でございます。だから、さっき、またぞろ朝鮮半島における軍事緊張でソ連の不参加ということが起こり得るのではないかという危惧を持っているという見通しを含めて、認識を聞いたのですよ。答えにくいかもわからぬけれども、それは今さっきお答えになられた。  私は、やっぱりアテネが恒久的なオリンピック開催地、これは非常に考えるべきことである。そして、そのことが、東西関係の緊張を緩和させ、一時的な休戦の役割を果たしたということになれば、これはなおさら非常に喜ばしいことである。それがさらに進んで、永久的に東西関係がスポーツを通して政治的にも友好関係が保たれる、主義主張は別としても、国の取り組みは別としても、そういう意味では国の実態がどういう状況であろうとも世界の中で友好関係が広まっていく、そういうことは好ましいことであり、オリンピックの開催地をアテネにすることが何らかの意味合いで役立つと私は思うのです。  官房長官、これはどうですか。あなたが言ったから決められるものでないということはお互いにわかっているのだし、いやスポーツ関係者が、いやだれがということではなく、官房長官個人としてはどない思ってはりまんねん、こう私は今質問しているけれども、私どもと全く一緒やねんとお考えなのか、いやここはちょっと違うねん、ぐるっと回ることの方が意義があんねんということなら、また次に、回るためには、開催する国は金が要ってかなわぬ、資金を用達するためにはどんなことをしなければいかぬかという問題が起こってくるわけです。そういうことから後の質問は控えますが、官房長官個人として、閣議でこんなものは決定する問題じゃないし、あなたが言ったからといって世論がどう沸き上がるかは別です。私は今言ったような意見だけれども、官房長官、どうですか。いやあ全く一緒やと言ったら、一緒に神よう提唱していったらいいと思うのですよ、アテネへ帰れ、それが世界平和のためやと言って。そういうことですが、それはどうですか。
  186. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 形式上はIOCを中心とするスポーツ関係者でお決めになることでございます。そのことが一つございます。  それから、官房長官が言ったからといって別にそれで動くわけでもないというのは、極めてありがたい、気楽に物が言えるのでありがたいわけでございますが、私個人としての意見を言えば、こういうふうになったときには原点に返るのがいいと思うのです。世の中何でもそうでございますけれども、行き詰まったら原点へ返る——今が行き詰まっておるかどうかは別として、そういう心配がある場合にはアテネに帰れ、ギリシャを恒久地にするというのは非常に有力な一つの案だろう、このように考えております。
  187. 井上一成

    ○井上(一)委員 いや、結構でございます。私も、物事に迷ったときには原点に戻って、それからまた一生懸命頑張っていくべきだ、そう思うのです。  そこで、さっき、開催地は各国を回っていくということで、名古屋市も、日本もソウルと立候補を競い合って一生懸命頑張りはったけれども、負けてしまった。そのことは別にして、今回のロス・オリンピックが非常に非難をされている一つの問題点があるわけですね。それは、ロス・オリンピック組織委員会が商業主義ではないか、オリンピックの聖火の問題について、オリンピック憲章の六十二条に、オリンピック聖火を商業広告に利用してはならないというようにちゃんと決められているわけなんですけれども、これを金で売ったわけですね。そのためにギリシャはむくれてしまう。私は、買った方も——普通、あれを持って走るというのは、聖火ランナーになるなんというようなことはなかなかできませんよ。しかし、今回はそれを金でできるわけなんです。部分的ですけれども日本のある人が買ったわけです。これは、ばっと持って走りたいというやじ馬根性が旺盛だ。やじ馬根性という言葉がいいかどうかちょっと別にして、ひとつようしという、そういう単純な発想も決して——それだけをとらえて云々したくないのですけれども、売る方があるから買う方があるんです。売らなければ買わないわけです。しかし、ロス・オリンピック組織委員会が売り、そしてそれに飛びついた。とこや、日本や、まさにエコノミックアニマルだといって世界の非難を受けてきた日本がまたわっと飛びついていく。商業主義的なそういうところに乗ることが日米の友好関係あるいはオリンピックを成功さすようなことにはならぬ。どうも商業主義的な今回のロス・オリンピック、とりわけ放映料なんかも非常に高いという、いろんなことが伝えられています。こんなこともやはり原点に戻れば、ロス・オリンピック組織委員会の対応というものがどうも商業主義的なにおいがする、こういうように私は思うのです。これは、そうでありますということはあなたもお答えしにくいでしょう。買った者が悪いのか売った者が悪いのか、売る人があるから買ったんや、飛びついたのは日本の企業、何かどうも一つの漫画みたいなものですわ。ひとつ官房長官、どう受けとめられ、どういう感想を持たれるのか。いや金が要るからしょうがないねん、そんなお考えに立つのか。私は、聖火を商業化してはいかぬ、金で聖火ランナーをつくってはいかぬと思うのです。ひとつここはどうですか、もう一点だけ。金を出したら聖火ランナーになれるねん、こんなことがオリンピックの精神ですか。官房長官、それこそさっき言ったように、もう素直に、あなたの思うままにお答えしてください。これは外務大臣の代理で、非常に難しいから、自分の答弁が日米外交に影響せぬやろかというようなそんな心配しないで、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  188. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 先生の御質問が非常に上手なので、どうしてもそちらの方へ答えないとぐあいが悪いかというような感じがさっきからいたしておりますが、大会によりましていろいろな運営の仕方があるのだろうと思います。これはスポーツの大会でも、文化や芸術の大会の場合でもそうですけれども、例えばバッジを売るとか手帳を売ったりしながら大会運営の経費を捻出するというようなことはよくあることでございます。今度の場合も、日本人が聖火リレーを金で買ったという表現も、確かにそういうふうな見方で見ますとそうですけれども、どうしてもこれに参加をしたいと思っていた、とてもこれは参加できないものだと思っていたら参加する道が開かれた、気がついてみたら、これはお金を出すことであったというので、参加したいという方が主になりまして、そして結果としてお金を出すということで参加をしたということであるならば、今お話しのように、売る方がどうか、買う方がどうかということの議論も、それぞれの立場でまた考え方はあるのかというふうに思うのでございます。  この種の大会をやろうと思いますと、いろいろな施設を整えたり歓迎態勢をとったりするのに、オリンピック委員会としても財政はなかなか大変なことなのだろうという意味で想像はできるところでございます。だから、聖火リレーなどという——特に日本人は潔癖でございますし、考え方が非常に純粋といいますかそういう感じで見ますので、できればそういうふうなスポーツの祭典の場合には、お金で聖火リレーのランナーを買うなどということでなしに、きれいにやれればその方がいいのだろうなというふうには一般的には思います。  しかし、大会には大会運営委員会の考え方もやはりあることでございましょうから、前半は私個人の考え方でございますけれども、それぞれ主催者としての考え方もあるのかなということを、後半少し申し上げさせていただきたいと思います。
  189. 井上一成

    ○井上(一)委員 官房長官、人それぞれ人によって考え方が変わり、あるいはその人の考え方があっていいと思うのです。それが民主主義であり、世の中であり、ばらつきがあっていいと私は思う。しかし、金ですべてが解決できる——僕も含めて、聖火ランナーになりたいなという気持ちはありますよ。しかし、金を出せば、金さえ出せば問題が解決するんだ。それこそ毎日の練習を積み重ねてオリンピック選手になり、あるいは聖火ランナーになった。これは非常に頑張りを、意欲を持たす一つの教育だと私は思うのですよ。あなた方は、教育改革だと中曽根さんが言って、一生懸命やっているわけですが、こんなものは教育にならぬよ、金を出して物が解決できるなんというのは。私はそこが問題だと思う。売る方も悪い。買った人は、売る人が売るから買ったんや。しかし、世界のほかの国から見れば、日本は金持ちである、聖火ランナーまで金を出して手に入れた、こんなことで日本の信頼、心からの信頼、心からの友情というか心からのつき合いはできぬのですよ。もっともっと恵まれない途上国で一生懸命——今命を捨てていくという子供、今こうして私があなたに質問しているこの瞬間でも赤ちゃんが死んでいくのでしょう。予防注射すら受けることができない。そんな中で何の教育、何の教えを中曽根内閣は考えておるのか。だから、私は胸を張って、すべてのことを金で解決する、そんな世の中はつくりたくないんだ、そういう教育をやりたいんだというのが私の理念であり、そのことを邪魔するものには私は頑として闘っていかなければいけない、こう思っているのですよ。形の上ではないし、格好の問題ではない。好意ある考えで買ったかもわからない。私は決して買った人を責めたくはない。責めたくはないけれども、そういう物の考え方が定着する世の中を私は恐れているわけです。そういう物の考え方が世の中に定着した場合に、金のない者はどうなるねん、困っている者はどうなるねん、こういうことなんですよ。そういうことを私は申し上げたいので、やはりこういう話をしておかなければいけないので、買った人が悪い、けしからぬ、そういうことじゃないのですよ。むしろ事情がある、仮にどんな事情があろうとも、聖火ランナーを金で手当てをするなんというのは間違った考え方、そんな考え方を我が国は持ちませんよ、中曽根内閣はそんな考え方を持たないのですよというくらいのはっきりした回答があって、それでまさに教育改革に取り組む中曽根内閣だ、こういうふうに思うのですよ。金ですべてが解決すると言ったらおかしいけれども、金さえあれば何でも、そういう考え方をひとつ——ここで教育の問題を議論しようとは思いませんでしたが、あなたのお考えは、前半は別としても、後半、そういうことじゃよくないので、やはりよくないことはよくない、悪いというか、好ましくないことは好ましくないとして毅然とアメリカに言える、そういう関係が日米友好なんですよ。言いなりになることは友好じゃありませんよ。官房長官、もう一度その点について、ひとつきっちりと、それは余り好ましくない、よろしくないというお考えか、それでもなおかつしょうがないとおっしゃるのか、もう一度お答えしてください。
  190. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 すべてが金で買える、すべては金で動いていくという世の中の風潮というのはよろしくない。文明史的に見てそういう風潮があるならこれを改革していかなければいかぬ。これはまさに教育改革の大きな課題の一つだろうと思うのでございます。正しい心、美しい心、あるいは優しい心、清い心、いわゆる心が生き生きと生きていく、動いていく、そういった世の中でなければいかぬ。中曽根内閣は、「たくましい文化と福祉の国」をつくろうということを標榜いたしまして、努力をしていこうと思っておるところでございます。あくまでも主催国、主催のオリンピック委員会の権限に属することでございますので、これを批判することは控えたいと思いますが、そういった聖火ランナーも金で買えるというような具体的な話の中で、世の中がすべて金で動いていくんだ、金さえあればということでいくんだ、しかもスポーツの行事でそういうような考え方が支配していくんだというようなことの空気ができていくような、そういう一つの具体的な事実として、聖火ランナーにいわゆるお金で参加できるということがあるとするなら、非常に残念なことだというふうに、感想としては思っておる次第でございます。
  191. 井上一成

    ○井上(一)委員 あと余り時間がありませんし、通告をしておった他の質問もあるわけです。このオリンピックの問題については、四年ごとにちょうどオリンピックの年はアメリカの大統領の改選時で、選挙政策で大統領候補者もいろいろな思惑がある。どうもそういう意味では、先ほどからの質疑の中で私が申し上げてきたことも今後十分考慮の上で、国際情勢の緊張を緩和させるためにひとつ御努力をいただきたい、こういうふうに思います。  続いて、官房長官にもう一つ、防衛予算のGNP一%枠を超えよう、その見直しという質疑をしたかったのですが、あと余り時間がありません。  それで、午前中に予定をしておった沖縄振興開発金融公庫の貸付状況、これも時間がありませんので、他の政府資金貸付残高あるいは延滞状況等に比較して、沖縄振興開発金融公庫の延滞比率が非常に大きい。もとより沖縄振興開発は大いに進めるべきであり、本土におくれをとらないように、公共投資はもとより、振興対策は大いに取り組んでほしいということは前段として申し上げておきますけれども、だからといって、政府資金がばかでっかく延滞、延納し、ひどいのはもうめちゃくちゃな額、一億円以上の額を延滞してなおかつ回収見込みがないというような状況があるわけです。  それで、五十六年度末においては延滞金額が総額どういう状況であり、そのうち五年以上の延滞金額は、件数は何件で総額はどれくらいか、聞いておきたいと思います。
  192. 岩瀬義郎

    岩瀬説明員 御指摘の延滞総額は、件数にいたしまして二千六百二十五件、六十九億九千九百万円でございますが、その中で、元金五千万円以上一億円未満のものにつきましては二十一件、十三億六千二百万円、元金が一億円以上のものが十件ございまして、これが二十億六千二百万円。この五千万円以上を合計いたしますと三十一件、三十四億二千四百万円でございます。    〔委員長退席、新村(勝)委員長代理着席〕
  193. 井上一成

    ○井上(一)委員 とりわけ特定の企業、例えば関連企業として、代表者は一緒であり、そして二つの会社で資金を調達して、焦げついて、倒産をして、今日も非常に資金回収がおくれているというところがあるわけですね。ここで固有名詞を挙げることは差し控えたいと思いますが、競売にかけたり、あるいは実質的な欠損額、回収不能と見られる金額は、それはどれくらいを予定していますかと言ったって、これこれですとは答えがはね返ってこぬと思うけれども、もう回収見込みが立たぬというのは何件で、その貸出額は幾らですか。
  194. 岩瀬義郎

    岩瀬説明員 金額的にどれが回収不能に最終的になるかということにつきましては、我々公庫といたしましては、あくまで最後まで債権の回収に努めなければなりませんので、これをあらかじめ予測することは困難でございまして、現在大型の滞納をしておりますものはかなりございますけれども、それにつきましてもかなりいろいろなバラエティーがございまして、中には、倒産をいたしましたが、再建をしてさらに返済を続けてくれているものもございますので、先生の御指摘の点を金額にまとめるというのはなかなか困難かと思います。
  195. 井上一成

    ○井上(一)委員 このことはまた次の機会をとらえてもう少し具体的に質問をしたいと思います。  官房長官、行革、財政改革だという中で、政府資金が的確な運用がなされていないという一つの事例を私は指摘したかったわけです。今の質疑では十分理解もいただけないと思いますけれども、相当な金額が焦げついている。一人の人が二つの会社とか三つの会社の代表者になって、この会社からも借り、この会社からも借り、五千万も一億以上も借りているわけです。そして一つが倒産してしまう。それは回収は不能だ。今は五十万毎月もらっているか、あるいはどういう状況がわかりませんけれども、どうもそこには、政府資金の一つの借り方、貸し方として問題点がある。沖縄に鉄軌道が入らないのは米軍の基地があるためだし、いろいろな意味で沖縄は取り残されている分野が多いわけです。空域だって、私が指摘したように、日本の主権が十分そこに確立されていない、そういう状況なんですが、そのことはきょうは尋ねる時間がありませんので多くを言いません。住宅金融公庫だとかそこらに比較して、比率でいけば焦げつきが非常に多いということなんです。  それと、私は前回の委員会でも指摘をしてきたのですけれども、石油公団がカナダのドーム石油に対して七百七十億円の金を資金供与して焦げついているわけなんです。この間、もしそれが生かされておるとしたら、百二十八兆円からの原油が我が国に見返りとして返ってくる。ところが、今日はもちろんそんなことは返るはずがないわけですけれども……。ただ単に金を預けておいても二兆や三兆の金になってしまうわけです。それは二〇三〇年になって初めて、その会社があれば、ドーム石油が倒産をせんとちゃんと残っておれば、元金だけ返る。こんなばかな契約をして本当に——国民には行政改革や、いや財政再建やと言って厳しいことを言っておきながら、片側で漏れているところが多分たくさんあるのです。  官房長官、このドーム石油のことについても御存じなのか、報告を受けているのか。これは予算委員会でも僕はやっていますけれども、どういうふうに内閣として今後——石油公団が一枚加わって民間の北極石油というのをつくって、それを窓口にして金を貸しているわけです。この間も契約書を出しなさいと言ったら、民間ベースの契約書は提出することは……、そんなばかなことを国会で答えているわけなんです。官房長官にきょう、このドーム石油の問題についての認識、あるいはこういうむだな金の使い方についての認識、どういうふうに対応していくか、そういうことを聞いておきたい、こういうふうに思います。
  196. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 御指摘のカナダ・ドーム社問題でございますが、石油の探鉱開発は極めてリスクが大きいものです。しかし、エネルギー資源に乏しい我が国としては、リスクが大きいとはいえ、あえて挑戦せざるを得ないという運命も持っておるわけでございます。しかし、カナダ北極海ドーム・プロジェクトにつきましては、当時は技術評価等、最善の努力を尽くしたものと思いますけれども、現時点で見る限り、満足すべき成果が上がっていない、非常に残念な状況になっておる、こういうふうに認識をいたしておるわけでございます。いろいろ予算委員会等で御質問に対して通産大臣からもお答えをしてきておるところでございますが、今後ドーム社の経営が完全に立ち直り、かつ、このプロジェクトの採算可能性に確たる見通しが立たない限り、開発資金の供与を行うということはしないという方針でなければいかぬ、こう通産大臣がお答えしたように私ども考えておる次第でございます。  公団の業務運営につきましては、通産省が監督をしているところでございますけれども、今後とも厳正な指導を通じまして、その業務に遺漏のないよう、公団の目的を果たすように十分注目もし、また努力もしていくように、その努力を喚起をしていかなければいかぬ、こんなふうに考えておる次第でございます。  なお、先ほど御指摘のございました沖縄の公庫の問題につきまして、先生御指摘のように、沖縄という土地柄いろいろな事情があることだろうとは思いますけれども、公庫としての性格上、資金が一部に偏るあるいはそれが焦げつくということでは公庫の所期の目的を達せられないわけでございますから、今後とも公庫とも十分連絡をとりまして、所期の目的を達成していくように指導をしてまいりたい、このように考える次第でございます。
  197. 井上一成

    ○井上(一)委員 もう一言だけ。ドーム石油については、通産大臣の答弁は、今お答えになられたこともその筋に乗っているわけなんですけれども、私はきょう官房長官に聞きたかったのは、中曽根内閣として日の丸原油の必要に気持ちが走るということはもうよくわかっているのだけれども、中曽根内閣としてドーム石油についてどのようにけつをふいていくのか、どう後じまいをしていくのか、このことなんです。僕はこれは非常に大きな問題だと思うんです。そういう決意を実は聞きたかったのです。まだ十分なレクチャーを受けていらっしゃらないようなにおいでもあるし、感じもするわけです。だから、通産サイドだけの意見とか、そういうものはもう聞いているわけです。中曽根内閣として、日本政府として、石油公団の今回のドームとの契約、これについてはどういうふうに取り組もうとなさっていらっしゃるのか、それを聞きたかったのですが、どうですか。
  198. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 公団としてこの問題を今後どう進めていくかということについていろいろ努力もいたしているところだろうと思いますし、それを指導しております通産省としてもいろいろ検討しておることと思いますが、政府としてどう取り組むかということにつきましては、さらに検討させていただきまして、しかるべき機会にお答えを申し上げるようにいたしたい、こう考える次第でございます。
  199. 井上一成

    ○井上(一)委員 終わります。
  200. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員長代理 次に、貝沼次郎君。
  201. 貝沼次郎

    貝沼委員 時間が限られておりますので、簡潔にお尋ねをし、また簡潔な答弁をお願いをしたいと思います。  まず初めに、会計検査院の院法改正問題。これが随分前から問題になっております。簡単に申し上げますと、まず、ロッキード事件の反省から、昭和五十二年以来、会計検査院の権限を拡充すべきであるという議論が出ておりまして、そして五十三年衆参両院において、会計検査院の権限拡充についての与野党一致しての委員会並びに本会議で決議が行われておるはずであります。これを受けて昭和五十三年、当時福田総理大臣は、検査院の問題であるから検査院から成案を得てその上で考えよう、こういうお言葉が出ておりました。そうして昭和五十四年、それを受けまして会計検査院の方から、たたき台でありますが、法律案を作成して内閣に提出をしておるわけでございます。  しかし、その後、いまだにこの改正案については出る気配がございません。つまり、立法府では衆議院七回、参議院で五回にわたって権限強化を求める決議をしてきたわけでありますが、その実が上がっていない、これが現状でございます。  今まで政府の答弁を見できますと、院の決議は尊重する、具体化するとき公権力の介入の仕方などで党内の意見に相違があるので議論の収れんを待ちたい、あるいは今後とも精力的に詰めていく、これが五十三年から五十九年までずっと続いてきた答弁でございます。  そこで、一方、今度は五十六年七月には、内閣官房副長官名で関係各省事務次官に対しまして、いわゆる肩越し検査の通達、翁通達が出されておるわけでございます。これは内容を簡単にかいつまんで見ますと、幾らか語弊があるかもしれませんが、会計検査院から提示された案のままでは内閣として法改正を提案することは困難である。要するに、やる気がちょっとないということですね。それから、院法改正問題では、会計検査院と関係省庁との間で引き続き検討してください。さらに、各省庁は、所管する政府関係金融機関に対し、肩越し検査への協力あるいは調査依頼への協力について慫慂して協力に努めよ、こういうような内容だろうと私見ておるわけでございます。  そして、今年、参議院の予算委員会で我が党の峯山議員が質問いたしましたときに、官房長官は、院法改正は自由な企業活動に対する公権力の過剰な介入のおそれがある。もう一つは、融資先に対して恐れを抱かせる、恐怖心を与える。よって、政策金融が有効に機能しなくなるおそれがあるというところから、院法改正を提案することは困難である。これは通達の域を出ておりません。だが——だがというのはそれができないからしたがってという意味だろうと思いますが、検査院の意見を聞いて、検査実施上の改善策の検討をもってその意見に沿いたい旨の答弁があったと思います。また、必要と認めるときはというのは、受ける側ではなく検査をする側で検討するように考えていきたい。それに関係してもし必要ならば翁通達の見直しをもしてみたいというような答弁が出たと私は見ております。ところが、会計検査院長はこれをベターと評価したように承っております。  そこで、質問でございますが、これだけ院で問題にしてきたことにどうしてこうも長く時間がかかるのか、そして、内閣はなぜこれを素直に受けることができないのか。尊重するという言葉の割には出てきたものがないのではないかという感じがいたします。  そこで、大体二つの問題があると思います。それは、国会、特に両院において決議されたことについて、内閣というのはそれをどのように受けとめなければならないのかという問題があると思います。私、時間がありませんから今まとめておりますけれども、これについては法制局の方から答弁をしていただきたいと思います。  もう一点は、改善策はやるということでありますけれども、この通達が出てから大変やりよくなった面もあるというふうに会計検査院長は参議院で御発言をなさっておるようでありますが、通達を出す以前と以後、これによってやりよくなったという具体的な数字を示していただきたい。  さらに、改善をしなければならないということは、会計検査をしたいけれども申し出てもできないところがあるから問題になっておるわけであります。したがって、今まで申し出てなおかつ会計検査できなかったというのはどれぐらいあったのか。改善策というのは、個別にその都度その都度相談をするというのであれば、大体どういうところが対象になるのか。この点を会計検査院の方から承りたいと思いますし、なお、官房長官からは、先ほど官房長官の答弁を私がいつまんで申し上げましたけれども、そういう国会決議をどのように受けとめておられるか。それから、改善策を提案されておるわけでありますから、その改善策の中で、例えば住宅金融公庫とか沖縄振興開発金融公庫は法律によって定められておりますので問題はないと思いますが、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫、北海道東北開発公庫、公営企業金融公庫、医療金融公庫、環境衛生金融公庫、それから日本開発銀行、日本輸出入銀行、これらについて具体的にどのようにお考えになっておるか、御答弁をいただきたいと思います。
  202. 前田正道

    ○前田(正)政府委員 国会決議の法的性格につきまして、一般論としてお答え申し上げます。  申し上げるまでもなく、国会は国権の最高機関でございますから、政府が国会の意思として示されました国会決議の趣旨を尊重して行政を遂行すべきことは当然のことでございます。その意味におきまして、政府は、国会決議、正確に申しますれば、国会を構成される衆議院または参議院の決議の趣旨の実現に努力すべきいわば政治的な責務を負うものと考えます。ただ、理論的に申し上げますと、国会決議につきましては、法律の場合と同様な意味での法的拘束力まではないものと考えております。
  203. 中村清

    中村会計検査院説明員 五十六年七月のいわゆる翁通達以後どのように変わったかという先生の御質問でございますけれども、従来肩越し検査を実施していないあるいはほとんど実施していない政府関係金融機関につきましては、翁通達以降も、実際の検査に当たりましては、その実地検査を行う主任官は、検査の徹底を期するためにぜひ検査に協力してほしいということを繰り返し打診してきているところでございますが、実際に肩越し検査を実施したという例はございません。しかしながら、この通達以降これら金融機関におきましては、資料の整備を一層充実させたり、本院の要求により貸付先に問い合わせを行ったりなどしまして、それに基づいて本院に説明するという方法をとっておりまして、その協力の度合いは一歩進んだというふうに私どもは理解しておるわけでございます。  それから、先ほどお話しございました去る四月十日の参議院予算委員会における官房長官の御答弁でございますけれども、その後、検査の協力につきまして若干の進展はあるというふうな心証は持っておりますけれども、何分にも日が浅いということもありまして、今後の検査に当たりまして、個別具体的な事態について、官房長官の御答弁の趣旨が生かされるということを期待しているところでございます。
  204. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 院の決議をどう考えるかということにつきましては、政府が院の決議を尊重してこれを遵守して進むという立場に立たなければならぬことは言うまでもありません。そういう考え方で拳々服膺して進んでいくようにいたしておるところでございます。  ただ、院の御決議を実際に政府の施策として、行政として進めてまいります場合に、具体個別にわたりますと、それぞれ行政としてこなしていかなければならぬ部分もございますが、そういった場合には、院の決議の精神をよく尊重いたしまして、それが生かされていくように努力しなければいかぬ、こう考える次第でございます。  御指摘のございました公庫についてどう考えるかにつきましては、政府委員からお答えをさせるようにいたしたいと思います。
  205. 森幸男

    ○森説明員 先生から御指摘のございました政府関係金融機関の具体的な実態につきましては、私どもは必ずしも詳細には承知しておりませんけれども、今先生が挙げられました政府関係金融機関も含めまして、これまでに一番問題があるというふうに伺っておりましたのは、肩越し検査の必要性の判断というところに問題があるのではないかというふうに承知をいたしております。  今後は、会計検査院の方と政府関係金融機関の方でその必要性につきまして若干意見の食い違いがあるというような場合には、政府関係金融機関を所管いたしております省庁にも、間に入ってと申しますか、その適正な検査が円滑に行われるように監督官庁の立場で当該金融機関を指導するというようなことにつきましても実施してまいりたいというふうな考え方でおります。これは、先般官房長官が参議院の予算委員会で「例えば」ということで申し上げた趣旨と同じでございますが、そういう方向に沿ってその趣旨が生かされるように、これからも努力してまいりたいと思っております。
  206. 貝沼次郎

    貝沼委員 今、私は、具体的に名前を申し上げましたけれども、ただいまの答弁を聞きまして、この改善策というものは、それらについて会計検査院とその都度相談をする、その可能性はあると一では、答弁してください。
  207. 森幸男

    ○森説明員 具体的な問題が出てまいりました場合には、会計検査院とその当該金融機関を所管いたします。その省庁との間で具体的に話が行われるものというふうに考えております。
  208. 貝沼次郎

    貝沼委員 それでは進みませんね。きょうは時間がありませんからできませんけれども、従来から何にも出ておりません。検査院長がベターであると評価しましたけれども、それだけの話だったら恐らくこれは進まないですね。具体的に会計検査院から出てきた場合は、なるべくそれに沿うように前向きの姿勢でいくというような方向がなければ何もベターなんかでない、こういうふうに私考えます。ぜひそういう方向でいくようにしていただきたいと思います。もう時間がありませんから、これは要望しておきます。  それから、もう一点は、これは官房長官でございますが、五月十三日の新聞に、官房長官は田中元総理大臣と都内で会談したことが報道されております。そうして、その中で物騒なことを言っているのですね。田中元首相は、健保の話でありますが、「修正することなく、原案通り成立させるべきだ。場合によっては強行してもいいのではないか」、こう決断を促しておると書いてあるわけであります。話によりますと、どうも長官はそこには行っていないというような話もあるようでありますけれども、行っていないという記事もありませんし、そうでないという報道もありません、打ち消しもありません。そういう関係から、いわゆる総裁声明の田中元首相の政治的影響を一切排除するというお約束と非常にかかわってまいりますので、この点についてひとつ御意見を伺いたいと思います。              ・
  209. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 先生もそうであろうと思いますが、私も政治家でございますので、いろいろな人に会っていろいろな話をするという機会がございます。しかも、会う場合には、個人的な資格の場合や公の仕事として会う場合、これはいろいろございます。その中で、事実関係を隠すとかうそを言ったりすることは許されないと思いますので、田中さんに会ったという事実はございます。ございますけれども、今御指摘がございましたように、その場で政局の運営であるとかあるいは具体的な国会の対策であるとかといったようなことは話題になりませんでして、大部分は田中さんの長い生涯の思い出話に終始した、そういう機会があったことは率直に申し上げておきたいと思います。ただ、繰り返すようでございますが、こうやったらいいだろうとか、ああいうふうに政治を進めるべきだというふうな話は一切ありませんでした。そのことも明確に申し上げておきたいと思います。
  210. 貝沼次郎

    貝沼委員 今、政治倫理が問われておるときでございますので、私はこの記事を非常に関心を持って見たわけでございます。長官が就任のときの「新閣僚焦点インタビュー」というのを見ましても、「田中さんの指示で左右されたとは思っていないし、これからもありません」、こう言っております。私はそれを信じておるわけでありますので、確認をさせていただいたわけでございます。  それから、もう一点は、国防会議の問題でありますが、先般国防会議において五九中業が了承された、こういうふうに報道されております。了承というのはどういう意味なのか私よくわからないので、この際教えていただきたいと思うのです。要するに、これは内部的な資料だと言っておるのですけれども、中期にわたる計画を国防会議にかけることは結構ですけれども、了承というのは、後年負担を認めた上で了承というのか、それとも、あなた方それだけ考えるのは勝手に考えなさい、だけれども予算はまた知りませんよというようなことか、総理大臣や大蔵大臣という最高のメンバーのそろっておるところでの了承というのは一体どういう意味を持っておるのか、それを伺っておきたいと思います。これが一点。  それから、もう一点は、国防会議のメンバーでございます。これは正式メンバーは、内閣総理大臣、それから外務大臣、大蔵大臣、防衛庁長官、経済企画庁長官、こうですね。それからさらに、六条において、「議長は、必要があると認めるときは、関係の国務大臣、統合幕僚会議議長その他の関係者会議に出席させ、意見を述べさせることができる。」こういうふうにあるわけでございます。これは内閣総理大臣官房会計課で出した図表でございますけれども、どういうわけか、これは六条の規定があるにもかかわらず統幕議長が入っておりません。そうして、正式メンバーの中に通産大臣、科学技術庁長官内閣法制局長官、内閣官房長官国防会議事務局長、こういう人が入っておるわけですね。この六条の規定政府発行のこの図面と合わないわけですね。一体これはどういうことでしょうか、この二点、お願いします。
  211. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 ただいま御質問がございましたまず最初の一点、報告を受け了承するというのはどういう意味がということでございますが、もともと五九中業というのは防衛庁が予算を要求する際の基礎資料になる性格のものでございます。したがって、防衛庁の内部資料でございましたので、最初の五三中業というものは国防会議にも報告をいたしませんでした。ところが、御存じのように、これがアメリカと日本との間でいろいろなハイレベルの議論なんかにも出てくるようになりましたので、防衛庁の見積もりであるけれども、国防会議において報告をさせるのが適当であろうというのが五六中業のときの鈴木内閣の御判断でございました。しかし、これは政府計画ではございません。したがって、国防会議に諮問して決定するような性格のものではないだろう。そこで、防衛庁が現時点においてこれから五年間どういうような形で防衛力を整備していくかということについて報告を受け、そして、その線に沿って概算要求をして防衛力整備に努力してよろしい。しかし、それがそのとおりにいくかどうかというのは、これは閣議決定にございますように、毎年度の予算を決めますときの主要事項ということで決定するということになっているわけでございます。したがいまして、六十二条で言う総理大臣が国防の重要事項として諮問する事項というふうには理解していないわけでございます。これが第一点でございます。    〔新村(勝)委員長代理退席、委員長着席〕  メンバーの件でございますが、統幕議長はもちろん国防会議に出席をいたしますときには、六条に基づきまして出席をいたしているわけでございます。この予算書に出ておりますメンバーの中に例示してないというのはこういう経緯があるからでございます。国防会議が発足いたしましたときに、いわゆる正規の議員以外にどういう人々を出席させるのが適当であろうかという御議論がございました。運営するに当たって、御存じのように、国防会議が防衛力整備長期計画を中心に過去において議論をしてまいったわけでございます。したがいまして、正規の議員のほかに、例えば生産の関係で通産大臣、あるいはまた科学技術の関係科学技術庁長官、このお二人の大臣は常時出ていただくのが適当ではないかということで、六条に基づいて常時出ていただくということになったわけでございます。そのほかに、官房長官はこの会議の司会をなさいます。それから法制局長官は、法制的な立場で意見を述べる機会が非常に多いだろうということ、それから国防会議の事務局長は、国防会議の事務をする任務を持っておりますから常時出席させるべきだろうということで、今申し上げました人々は常時出るというふうに当初の国防会議で合意を見ております。したがいまして、それが説明的な図の中に出ているのでございまして、統幕議長を初め関係各省の次官あるいはまた局長、そういう人々が必要に応じて随時出席しているわけでございますが、それも当然六条によって出ているわけでございますけれども、その例示の中にあえて入れなかったのは、常時出席していないというだけのことでございます。ただ、御存じのように、統幕議長につきましてはいろいろ国会等でも御議論がございましたので、五十二年以降は常時御出席をお願いして、そのときどきに応じて専門的な御意見を伺っているというのが実態でございます。
  212. 貝沼次郎

    貝沼委員 時間がなくなりましたけれども、せっかくですから一分くらいお願いしたいと思います。  精神薄弱者の雇用率の設定の問題を先日取り上げまして、それでその作業がその後進んでおると思いますので、その進捗について簡単に御報告願いたいと思います。
  213. 鹿野茂

    ○鹿野説明員 御指摘ございました精神薄弱者に対します雇用率の適用問題につきましては、雇用率制度を適用するための前提となる諸条件や方法論について研究会で検討しようということで、五月末には第一回の研究会が開催されますように現在委員の人選等の準備を進めているところでございます。(貝沼委員「研究会の名前」と呼ぶ)この研究会の名前でございますが、精神薄弱者雇用対策研究会ということで、いわば職業安定局長の私的諮問機関という性格になろうかと思うわけでございます。
  214. 貝沼次郎

    貝沼委員 終わります。
  215. 横山利秋

  216. 伊藤昌弘

    伊藤(昌)委員 過日、最高裁の幹部に会いまして、役人になるときに憲法を遵守いたしますという、これは強制規定であるにもかかわらず、役人になってしまうと反憲法運動を平気でやっている、これは憲法教育が足りないのじゃないか、十分にやっていないのじゃないか、これを改めなければいけないでしょう、こう尋ねたところが、その最高裁の大幹部は、それは我々が言うと大変なことになる、これは伊藤さん、政治の問題として論議をしていただかなければならないときだと思いますよ、こういう話を受けたのであります。そもそも憲法というものは、わかりにくいものでなくてわかりやすいものだと思うのです。学校を出ていない者にもわかるようなものが憲法であるはずでございます。  そこで、裁判所の労働組合を見ますると、一万八千名の職員の中で一万五千名によって組織されておるのが全司法、この労働組合の上部団体は国公労連。この国公労連の労働組合の運動方針を見ますと、まず驚いたことには、最初から最後まで階級闘争、階級闘争、それから独占資本打倒、こんなことはかり書いてある。そうかと思うと、自由民主党をファッショの政党だと書いてみたり、民社党それから公明党、このごろは社会党まで批判をしておって、そしてこれらの政党が反共の行動をとっておる、こんなことまで書かれてある。これが憲法を遵守する役人の職員団体、労働組合であるかと思うと、国民の側から見ますると何が何だかさっぱりわからない。我々、国民の厳粛な信託によって選ばれたところの国会議員は、何ごとも国民にわかりやすくしてあげなくてはいかぬ。私は国会議員としてこのままじゃ困るのですね。ところが、政府高官の方々とこれについての憲法論議をいたしますると、まず口を閉ざしてしまいまして答えようとしない。そして的の外れたお答えしかない。これでは全く困るのでございます。  そこで、官房長官にもあらかじめ詳細に質問通告いたしましたけれども、国公労連の運動方針は憲法を遵守した役人による運動方針であるかどうか、これをひとつ率直にわかりやすくお答えいただきたいのであります。
  217. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 国家公務員たる者が憲法を尊重し遵守していかなければいかぬということは憲法に定められておるところで当然のことでございます。したがいまして、新たに職員になる場合に公務員としての宣誓をいたしまして、全体の奉仕者としての国家公務員としての立場を十分に自覚をして進んでいくように教育もし、かつその気持ちが継続されて職務を遂行していくようにそれぞれの職場においてお互いに戒め合って進んできておることは言うまでもありませんし、そのことが弛緩しないようにやはり絶えず努力をしてまいらなければならぬ、こう思っておるところでございます。  御指摘のございます日本国家公務員労働組合連合会、国公労連の運動方針をどう考えるかという御質問でございますが、この運動方針をどう読むかというのは、立場によりまして、読む者の目、考え方によりましていろいろな考え方はあろう、こう思うのでございますが、憲法に思想の自由言論の自由が保障されておりまして、その中でのことでございますので、まさに憲法を大事にするという立場から考えましても、この運動方針について私の立場でコメントすることはこの際は差し控えさせていただきたい。それぞれの立場でいろいろなお考え方はあろうということだけ申し上げておきたいと思うのでございます。
  218. 伊藤昌弘

    伊藤(昌)委員 今、官房長官のおっしゃるのは、非公務員ならばそれでいいと思うのです。思想の自由であります。ところが、公務員は公務員としての一つの大きな規制があるわけです。その規制は何かというと、憲法を守るという規制であります。一般の人は憲法を守らなくてもいいのです。そして、国民は共産主義の憲法に改正しようという運動を起こしても構いません。役人はそうではありません、そう憲法に書いてあるわけですから。これについてどうお考えになりますか。
  219. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 国家公務員が憲法を遵守して進まなければならぬということにつきましては、お説のとおりでございます。(伊藤(昌)委員「思想の自由」と呼ぶ)憲法に思想の自由、言論の自由がございますから、そのことの中でそれぞれ自由を行使するということもまたこれ自由として認められておることであります。したがいまして、憲法を守っていく、尊重していくのは当然でございますけれども、それぞれの考え方、個人個人の考え方を表現する自由あるいはいろいろなことを考える自由というのは、憲法のもとで保障されておって自由である、こう申し上げなければならぬと思うのでございます。
  220. 伊藤昌弘

    伊藤(昌)委員 それでは、公務員が階級闘争の運動をしたり、それから独占資本打倒という運動をしたり、それでも許すのですか。
  221. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 それぞれ憲法あるいは国家公務員法によりまして、自由もありますと同時に、全体の奉仕者としておのずからとるべき態度ということにつきましてもそれぞれ枠組みはあるわけでございます。良識に基づいて、憲法あるいは国家公務員法の考え方に基づいて、それぞれ仕事が執行されあるいは公務員としての自覚を持ってお進みいただくことをぜひお願いしたい、こう考える次第でございます。
  222. 伊藤昌弘

    伊藤(昌)委員 官房長官がおっしゃっているのは、思想の自由音痴と言われてもいたし方ないのです。今の日本国憲法というものは、これは共産主義の憲法じゃないのですね。共産主義運動をしたければ、役人をやめて一般国民になって堂々とおやりになればよいわけです。  今の憲法の体制というものを申し上げるならば、まず憲法第十四条は、法のもとに平等であって社会的身分によって差別されないと書いてあるわけです。社会的身分によって差別されないということは何かといいますと、例えば役人の管理者であろうと一般職員であろうとその身分によっては差別しない、労働者であるとか資本家であるとかという身分によっては差別しない、すなわちお互いが協調し合いながら仲よくやっていきましょうというのが日本国憲法の十四条の一つの精神であります。それは昔は資本家が労働者を虐げても余り文句はなかったです。ところが今はそうじゃないですよ。したがいまして、逆におれたち労働者が結束して資本家を倒すというような姿勢で臨んでは、これは平等に扱えないです。やはり、例えば労使の間なら労使協調、これが社会的身分によって差別されないという憲法の精神であるはずです。それがなかったら、十四条は何が何だかさっぱりわからない。  それから、憲法十五条だってそうでしょう。役人は「全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない。」と言っている。その役人が自民党をぼろくそに言ったり、民社党をぼろくそに言ったり、公明党を批判をしたり、このごろは社会党まで批判をしておる。この国公労連の運動方針にちゃんと書いてあるのです。これでは、一部の奉仕者であって全体の奉仕者ではないということになるじゃありませんか。  憲法十四条、十五条に照らしても、この国公労連の運動方針というものは、役人としての運動方針としては明らかに誤りであり、国民の側から見て、これはおかしいなと私の解説を聞けば国民は思うに決まっておるですよ。このごろの政府の高官の方々は、なぜこういうことがきちんとおっしゃれないのか。  今の日本国憲法と共産主義の憲法は全然違うのですもの。日本国憲法の体制というものの一つは、お釈迦様にお話をするようなものになるけれども、政治制度というものは議会制民主主義。複数の政党がお互いに言い合いながら多数決によって協調していく、これが議会制民主主義の政治制度。一党独裁の国は、全体主義ですから、こんなものはない。経済制度で言うならば、労使協調の修正資本主義が日本国憲法の一つの経済制度の体制じゃありませんか。そのかわり共産主義国家へ行けば、生産計画というものは、国有ということになっているから、全然日本の国の体制とは政治経済制度は違うわけでございます。  その日本国憲法を守るのが役人ですよ。その役人の運動方針なり倫理綱領に、革命を起こしかねないような倫理綱領や運動方針を持っておるならば、それを正していくというのが管理者の責務じゃありませんか。  官房長官は、何のときでしたかね、「日教組が社会主義革命に参加している団体と自ら規定していると受けとられる資料」というものを文部省が衆議院の文教委員会にお出しになったですね。何でああいうことがはっきりその他においては言えないのかと思うのですね。あのときは文部大臣はどなたでしたかね。あの精神を持って、日教組という労働組合はこういう労働組合ですよ、国公労連の運動方針はこれだからこういう考え方が言えますねというものをはっきりお出しいただかないと、国民の側からするとこれはわからない。  官房長官は、この国公労連の運動方針を見て、これは憲法を遵守した運動方針だと本当にお考えになるんですか。今まで大臣二人ほどお尋ねいたしましたけれども、いずれも答えが出てこない。最後に、ひとつ官房長官のお考えを承りたい。この国公労連の運動方針というものは、本当に憲法を守る人たちによってつくられている運動方針だととってもよろしいかどうか、恐れ入りますが……。
  223. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 憲法の問題あるいは公務員のあり方についての先生のただいまのお考えを傾聴させていただいたところでございます。私ども今後よく勉強させていただきたい、こう思っておる次第でございます。  憲法の第十五条には、公務員が全体の奉仕者である旨を規定をいたしますとともに、一般職の国家公務員につきまして、国家公務員法第百二条におきまして、法令で許容しているもの以外の政治的行為は、勤務時間の内外を問わず禁止をしているところでございます。また、他方、職員団体は、国家公務員法によりまして、職員が主として勤務条件の維持改善を図ることを目的として認められているものでありますが、そのことが職員に法令で許容されていない政治的行為を認める趣旨でないことは当然のことでございます。したがって、職員団体に所属している国家公務員が憲法及び法令に違反した行動をした場合には、関係法令に照らして厳正に対処していくという方針で従来も進んできておるところでございます。国家公務員という全体の奉仕者としての仕事を進めてまいります場合に、おのずから枠組みがあるということは今申し上げたところでございます。ただ、一人一人の人間、国民として言論の自由、思想の自由が与えられておるわけでございまして、グループとしていろんな意見を持つということにつきまして、ここでそのことが憲法違反であるかどうかといったことについて御意見を申し上げることは差し控えたい、こう申し上げておるところでございます。
  224. 伊藤昌弘

    伊藤(昌)委員 国公労連の運動方針について答弁できないですか。
  225. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 国公労連の運動方針につきましては詳しく勉強いたしておりませんので、大変申しわけありませんが、今後よく勉強させていただきたい、こう考える次第でございます。
  226. 伊藤昌弘

    伊藤(昌)委員 これで終わりますが、それでは恐れ入りますが、もう一度しっかり勉強していただきまして、もう少し、ひとつ時間を一時間ぐらいとってじっくりとやらせていただく機会を待ち望んでおりますので、きょうはこのくらいにさせていただきます。  委員長、ありがとうございました。
  227. 横山利秋

  228. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 本日、当委員会で国公労連、全司法労働組合の運動方針の内容について質問した委員がございます。この質問は、憲法の思想、信条の自由、結社の自由、労働者の団結権の各条項を全く無視した発言であると思います。  改めて官房長官にお聞きしますが、日本国民は、何人も思想、言論、集会、結社の自由が認められていると思うが、どうか。何人も共産主義、科学的社会主義を信ずることや日本共産党に入党することなど全く自由であると思うが、どうですか。
  229. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 当委員会におきましていろいろ御質疑があったところでございます。御指摘のように、憲法におきまして思想の自由あるいは言論の自由が保障されている、そういう自由を一人一人の国民が持ってけるというふうに私はお答えをしたところでございます。  ただ、御質問の趣旨は、国家公務員としてそういういろいろな考え方を持つことがどうかという御指摘でございましたので、よく勉強させていただく、こうお答えをしたところでございます。
  230. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 国家公務員であれ労働者には団結権が認められており、労働組合を自由につくることができるし、また、労働組合がどのような運動方針を持とうとしても、憲法上、団結権の範囲内で全く自由だと考えますが、いかがですか。
  231. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 今申し上げましたように、表現の自由、思想の自由あるいは言論の自由といったものが憲法のもとで保障されておる、そのことをお答えいたしたいと思います。
  232. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 それでは、次に移らせていただきます。  中曽根内閣の政治姿勢についてお聞きします。  中曽根首相は、総選挙での敗北の結果、政権維持を図るために、十二月二十四日総裁声明を発表いたしました。声明は、自民党敗北の最も大きい原因として、いわゆる田中問題のけじめが明確でなかったこと、政治倫理への取り組みについて国民に不満を与えたことを認めるとともに、今後の政治の方向としていわゆる田中氏の政治的影響を一切排除すると述べております。このことについて中曽根首相は、ことしの一月十七日の我が党の不破委員長との党首会談で、この総裁声明について、党内向けの文書か国民に対する公約かとただされたのに対しまして、総裁声明は党内外向けのものだ、国民に対してのけじめはいずれやると回答しております。  そこで、官房長官にお聞きいたしますが、今でもこの姿勢にお変わりありませんね。
  233. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 変わりはありません。
  234. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 そうしますと、ここに、ことしの一月十二日、第二次中曽根内閣の発足のときの「新閣僚焦点インタビュー」というあなたに対するインタビューの記事のコピーがありますが、ここの中で、田中元首相の影響排除について、マスコミのインタビューに対してあなたが言っている言葉は、いろいろ前段はありますけれども、「ただ田中派は多数の議席を持っているから、政治を左右しやすいんですね。要所要所を占めていた、ということを指していうなら、今度は幹事長も官房長官もそうでなくなっている。それは頭に置かずにいけるんじゃないか、」つまり、幹事長も官房長官も田中派でないから、そのことは全く心配要らないんだということをおっしゃっているわけでありますね。  ところが、そう言いながら、さきの人事で二階堂さんが副総裁に就任になりましたね。そうしますと、総裁声明からいっても、また、あなたがマスコミに対して言明したことともいろいろ矛盾が出てくると思いますが、あなたのお考えはいかがでありましょうか。
  235. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 総選挙後、総裁が声明を発しまして、お話しのように、党首会談におきまして不破委員長に対して、党の内外に向かって声明したものであるというふうにお答えしたことも、私も現場におりましてそのように存じておるところでございます。政治倫理を大切にして、清潔な党風を築いて進むというふうに総裁声明に書いてありますように、その後、国会における自由民主党は、いわゆる政倫協、政治倫理協議会の発足に向かって努力をし、そして閣僚が資産公開をいたしまして、そういった清潔な、政治倫理を大切にする気風を振起しながら進むというふうに努力をしてきているところでございます。  二階堂副総裁の問題は、あくまでも自由民主党の人事でございますので、官房長官である私がお答えをすることはいかがかと思いますが、政府と与党という関係でもございますから、これは党の問題ですとお答えするのもいかにもそっけない感じがいたしますので、少し申し上げますと、第一次中曽根内閣のときに幹事長として二階堂さんが御努力になってこられまして、党内の取りまとめや政策の推進に大変な努力をしてこられたところでございます。問題は、総裁声明に書いてあります田中色というものが何であるかということにまさに尽きると思うのですが、それが、二階堂さんが副総裁に就任することあるいは従来田中さんのグループとしてきた人が閣僚の中に入っていること、それらが一つ一つ全部田中色だというふうに指摘を受けるといたしますと、それはまさに田中色の政治だ、こう言われかねないと思うのでございますけれども、従来グループをつくって木曜クラブとして進んでこられて、二階堂さんがその会長を務めておられる、大勢の国会議員が所属をしてグループとして活動をしておられる、幹事長としても非常に大きな足跡を残された、そういったグループの代表である二階堂さんに副総裁御就任をお願いして、党の円満な団結と発展のために働いていただくということになっておりますのは、自民党の党内で考えておりますとそれは田中色というのではないのではないか、二階堂さんという政治家の政治的な長い間の経験や、あるいは内閣の中あるいは自民党の中で活躍をしてこられた、そういう足跡やお人柄というものに対して、党内で非常に深い尊敬の念が払われておりまして、そういう意味で二階堂副総裁就任になった、こう私どもは考えておるわけでございます。それは田中色が大きく前へ出たということではないという認識に実は立っておるのでございます。
  236. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 お願いいたしますが、私の質問時間は非常に少のうございますので、簡単にしていただきたいのです。  しかし、あなたはここで、要所要所を今まで占めておったということを指して言うならば、今度はそうじゃないのだ、幹事長もいない、官房長官もいないじゃないかということを言っているのですね。その後、いわば田中さんと一心同体、田中派の会長さんが入って、これは田中色の影響排除と関係ないなんてことは非常に苦しい弁明に国民は聞こえるだろうと思いますね。  そこでお伺いしますが、先ほどの公明党さんの御質問の中にありましたが、あなたは今月の九日に都内の料理屋で田中元首相と約二時間ほどお会いになっておりますけれども、その会合は、官房長官、あなたの方からひそかに持ちかけたものだということを大概の公の新聞は伝えているわけでありますが、それは事実ですか。
  237. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 先ほどの御質問に対しましても、会ったという事実につきましては、そういう事実があったということを御報告申し上げたところでございます。特にその場合は、官房長官としてよりも個人的な立場で会ったわけでございますが、どういう形でどちらが呼びかけて会ったかというようなことは全くプライベートなことに属するかと思いますので、お答えを申し上げることはお許しをいただきたいと思います。
  238. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 新聞によれば、ひそかにあなたの方から持ちかけたなんて書いている新聞もございますね。あなたの御答弁は、個人的な立場でお会いしたんだ、それぞれ中曽根派はだれだれ、田中派はだれだれ含めて。わかりました。しかし、今田中問題をどうするかというのはこの国会の中でも大変問題になっておるのですね。特に、これだけ国民的批判が出ておる中で、あなたは内閣の顔だ、内閣を代表する顔であり、いわば大番頭役でもあるあなたが、官房長官が、自分から音頭をとって会合の席を設けるということは問題だと私は思うのです。  同時に、新聞の報道するところによれば、この会合で中曽根再選支持の意向を示したということもどの新聞も伝えていますね。つまり、その会合はプライベートだと言いながら、実際はそういう政治絡みの生臭い、あなたにとって、中曽根派にとっては非常に有利な状況に展開している。ですから、私は、総裁声明であれだけ田中氏の政治的影響を一切排除するとうたい、この声明が党の内外向けたと言いながら、こういう事態について、改めてあなたの見解をお伺いしたいと思います。
  239. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 総選挙後に発せられました総裁声明の精神を体して政治の運営に当たっていかなければならぬ、このように常に肝に銘じて活動しておるところでございます。
  240. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 肝に銘じているにしては、私は、非常に軽率なあなたのそういう動静というか、田中影響排除をあれだけ言いながら。その点を厳重に指摘しておきたいと思うのですね。  同時に、都内の料理屋で複数で田中さんを接待したとなれば、相当のお金がかかると思うのですね、けちけちしたようなことを言うようでありますけれども。そのつけ、つまり請求書は恐らく内閣官房様となっておたくの方へ回ると思いますけれども、それは通常、内閣官房機密費と言われるのですが、予算項目上は報償費ということになっているようでありますが、そこから支払われるものだと思いますが、いかがでございますか。
  241. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 公私を明確にして進んできておるところでございます。報償費の中身が何であるかということについで申し上げることはお許しをいただきたいと思います。
  242. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 公私を明確にしておるというならば、何の費目あるいはどういう、交際費なのか、あなたのポケットマネーなのか、その点を明らかにする必要があると思うのですね。この点、私は報償費だと思っておりますが、いかがでありましょうか。
  243. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 公私を明確にして処理をいたしておるつもりでございます。
  244. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 費目を明らかにしない、交際費も言わない、公私を明確にしているというだけの話でありまして、実態は、それについて御説明がないようでありますが、この辺は客観的に見ますならば、公私を明らかにしたかどうかは別にして——まあしたでしょう、恐らく。いずれそういう費目から払われているから答えられない、私はそう思います。  いずれにいたしましても、ここにこういう本がございます。これは「東京赤坂・某高級料亭・玄関番の極秘メモ」だ。「夜に蠢く政治家たち」というやつですね。これは赤坂の料亭大野の下足番小高正志氏の日記でございまして、昭和五十六年の十一月エール出版から出されたものでございますね、ごらんになったと思いますが。これは五十三年一月から十一月にかけて料亭大野への予約台帳をもとにして書かれた日記でございます。これによりますと、いろいろな資料を私持っておりますが、当時官房長官、あなたの先輩ですが、しかも外務大臣、今あなたは外務大臣臨時代理でございますが、その当時の安倍官房長官、あるいは官房副長官であった森さん、それに清水秘書官が利用した回数は、私の調査だけでも三十回以上も大野を利用しているのですね。ところで、当時の安倍官房長官が持っていた、いろいろな政治団体、あの人は持っていらっしゃいますが、私全部調べてみました。五十三年度分の収支報告書でも料亭大野へ行ったという支払いは一件もありません。そうしますと、こういう費用は実際は報償費の支出以外は考えられないわけでありますが、同時に、小高氏自身、この著者自身が我々の調査に対しまして、請求書は内閣官房に送ったと証言しております。  国民の血税がこのような使われ方をしていることについて、あなたは安倍さんではございませんけれども、そういう立場にいらっしゃるので改めて私はお聞きをしたいと思うのであります。
  245. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 私はその本を読んでおりませんので、具体的な事実関係というのはわかりません。安倍官房長官時代に安倍さんがどういうふうになさったかということは、私も当人でありませんのでよくわかりませんが、やはり政治家である立場の者といたしまして想像できるのは、公私は明確にしてお進みになってこられたであろう、このように考える次第でございます。特に、今お話が出ました報償費につきましては、これも従来ずっとそういう立場で来ておりますが、具体的にその中身について申し上げることは差し控えさせていただいて今日に至っておる、こういうことを申し上げておきたいと存じます。
  246. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 内閣官房には報償費もあれば交際費もありますね。その他謝金もありますね。諸謝金、お礼金ですね。交際費でそういうものに使えばいろいろまた差しさわりが出ますね。謝金もあるけれども、それにも該当しないという、そういうあいまいなものがこういう状態になってダーティーな部分に使われているということですね。  あなたが今、公私のけじめはつけているはずだから云々と言って、しかし内容は勘弁してくれ、こういうことでありますが、親ガメ子ガメという言葉がございますけれども、この小高さんの記録によりますと、総理秘書官ブループも、この同じ一月から十一月の間に三十七回もこの大野で芸者を呼んで飲み、マージャンなどをしていますね。その一覧表もございます。この費用もすべて請求書に内閣官房様とあて名を書いて送ったと証言しておりますね。一介の公務員がポケットマネーでこんな遊びができるわけはありませんね。  そこで、会計検査院に私はお聞きしますが、内閣官房報償費からこうした費用も出ていたのではありませんか。この点だけ答えてください。余計なことは要りませんよ。
  247. 西川和行

    西川会計検査院説明員 とにかく古い話でございますので、この種の経理処理に関します原資料、これはともかく私どもの方には持っておりませんし、一般的に申しますならば、内閣官房において整理されておるものでございますので、この種の問題につきましては、経理当局である内閣官房の方に御確認いただきたいと思います。
  248. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 いよいよもって何やら怪しげなる報償費の実体が出てきたわけでありますが、会計検査院も、それは古いからわからないのじゃないのですね。その取り扱い上の問題がいわば聖域だから触れられないということですね。  そこで、私は、国民の血税である予算の浪費をなくし、その支出を明らかにすることは、本当の意味の行革の前提であると思うのですね。同時に、いわば原点なんです。ところが、内閣のおひざ元である内閣官房予算の中に当事者以外はだれもわからない予算項目があるということです。これが報償費でございますが、五十九年度予算で、これは前年に引き続いて十四億二千九百万一千円となっていますね。これはある物好きな人が計算したら、三百六十五日、日曜や祭日その他を除けば一日五百万の金になるそうでありますけれども……。  そこで、読売新聞の前の政治部次長をしておりました森岸生さん、この方が「首相官邸の秘密」という本を書いておりますね。ここで報償費のことについてはこう書いているのですね。「新聞の二面下段に首相の毎日の動静を伝える欄がある。」「この欄に時々、「国会議員が訪米旅行のあいさつに二分間、首相と会った」などの記録がのることがある。このような外国旅行のあいさつにわざわざ首相執務室を訪れた議員の多くは、帰りぎわに官房長官室にも立ち寄る場合が多い。機密費から出される餞別をもらうためである。」そして「執務室でわずか二、三分、首相と会ったその足で、いそいそと官房長官室へ入り、しばらくたってニコニコ顔で出て行く議員の姿を、何回も目撃している。」こういうリアルな表現で書いてあるわけでありますけれども、こういうことになれば、あなたが発表したくないという心も非常にわかるわけでありますけれども、どうお感じとりになりますか。
  249. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 国会議員の方が外国へお出かけになる場合には、日本政府の考え方なりをしっかり踏まえてお出かけになる、打ち合わせをして行ってくれよといっていろいろ相談をしてお出かけになるというようなことで、首相官邸へお見えになる機会は多うございます。しかし、入ってくるときにいそいそして、二、三分でそそくさとにこにこ笑って出ていくというのは、本として書かれたものでありまして、私、官房長官をやっておりますけれども、余りそんな経験を持っておりませんが、首相官邸というのはいろいろみんなが出入りされて、そして、総理を中心にいたしましていろいろ相談をして進んでいく、これは与野党を通じてそういうふうな形で進んでいくことが望ましい、こう考えておる次第でございます。
  250. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 あなたが何と言ったって、公私のけじめはつけていると言うだけで、しかし、その中身については全く口がかたいわけであります。だから、あなたが官房長官になってからにこにこして出てくる人はいないかどうか、私は見ておりませんからわかりませんけれども、そうすると、これまでもそういうことはなかったと、それは否定するのですか。
  251. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 報償費は、国が国の仕事を円滑に推進するため、その状況に応じ最も適当と考えられる方法により機動的に使用される経費であり、例えば、一国の総理として、広く内政、外交の円滑な推進を図る上において、これに関し功労、協力及び努力があった者等に対し、その労苦に報い、さらに、そのような寄与を奨励することが望ましいと思われる場合において、その状況に応じ最も適当な方法で支出しているものである、これが内閣官房の報償費についての考え方でございます。  こういう考え方で官房長官として執行してきておる次第でございますし、また、先ほど御答弁がございましたけれども、毎年度会計検査院の検査も受けて、それぞれの担当者が責任を持って今申し上げたような報償費の目的に沿うように執行いたしておる、これだけお答えを申し上げておきたいと思う次第でございます。
  252. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 報償費の目的に沿うように使っているんだとおっしゃいますけれども、第三者的な、国民的な——税金を使うわけですから、第三者的には、どういう基準でどうなるのかという内容は全然だれにもわからない、それで血税がいろいろな格好で使われていく可能性は十分考えられると思うのですね。あなただってそう思うのじゃないですか。ほかのいろいろな予算の使い道については、全部証拠書類を出して会計検査院の点検を受ける、証拠書類を出していろいろ調査を受けるということになっておりますが、ここだけは、あなたは会計検査院がやっておるとおっしゃるけれども、やり方にもいろいろありまして、簡易証明だけでありますね。  そういう点で、私が先ほどお聞きしたことは、例えば外遊する、あるいは赤坂に飲みに行く、先ほど大野と言ったのはほんの一例でありまして、証拠があるから申し上げたのでありまして、どんなに夜に赴いているかこれはわかったものじゃないというのが国民の一般的な感じでありますね。そういう点で、そういう場合に使ったことがあるいは使うことが報償費に全くなかったのかどうか、これを否定できるのかどうか、このことを私は先ほど聞いたのでありまして、あなたは、それをお答えにならないで、国がどうだ、適時適切にその状況に応じてと、こういうような言い方をしましたけれども、そういうことは否定できますか。
  253. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 今申し上げましたような報償費の使途に準じまして、それぞれ適正に運用いたしてきておるところでございます。
  254. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 だから、具体的に私は聞いたわけでありますね。秘書官や秘書グループでさえもそういう格好でお金をつけ回してきている。あるいは前の安倍さんでも、ほかのいろいろな政治団体も一件もないのですね。そうすると、どこが出どころなのかということが当然あるわけですから、そういうことが否定できるのか。そういうことはありませんと、そういうふうに使っておらないと、はっきり断言できるのかどうかを私は今具体的にお聞きしたつもりでありますけれども、あなたは、その点については全く言をはぐらかすというか、一般原則的な抽象論を述べていらっしゃるように、その限りではすれ違いに終わる可能性が非常にあるわけでありますので、それを否定できますかどうかということで私はお聞きしたのでありますから、この点にはっきりとお答えいただければありがたいと存じます。
  255. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 具体的に肯定したり否定したりいたしますことは、中身を申し上げることになりますので……。ずっと今申し上げましたような報償費の使途の適正な運用を心がけていくということで、歴代官房長官は十分留意をして進んできておるところでございます。例えばということで申し上げましたように、一国の総理として、広く内政、外交の円滑な推進を図る上において最も効果的に使用していく、運用していくというようなことで、今申し上げたとおりでございます。先生から先ほど来御注意をいただいておりますように、国民の血税がみだりに飲み食いなどに使われるというようなことのないように、今後も十分留意をして進んでまいりたい、このようにお答えを申し上げておきたいと存じます。
  256. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 今の核問題だな、肯定も否定もしないなんというのは。何というか、恐らく最高のシークレットですね、今の話の中から私が判断したところによりますと。そういう金が十四億円以上ある。大体、例えばあなたの、いわゆる国のために功労あると。なぜ功労ある人を堂々と表彰できないのか。なぜ一定の寄与をした人を、それは報賞金なり謝金があるわけですから、交際費でやってもそれは当然できるはずですよ。謝金でやってもできるはずですね。まして、国がそういうふうに認めだということを国家的立場で皆さんに知らせることは、私は、政府の官房として国民に理解を得る大きいやり方だと思うのです。国の事務だとか事業などと言うこと自体がおかしいと思うのですね。国の発展のために尽くしてきたというのは国民すべてでございまして、報償費でやるとするならば、圧倒的多数の国民にこそ出さなければならないものだ。言ってみますと、結局、この性格は、そのときどきの内閣が自分の政権を維持するための極めて政治的な使われ方をしているのじゃなかろうか、こういう結論を導き出さなければならないと私は思うのです。  行革と言うならば、まずすぐにも、むだの最たるものであるこの報償費をなくすべきだ、このように思うのでございますが、これについての御所見をいただきたいと思います。
  257. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 先ほど来お答えをいたしましたように、国が国の仕事を円滑に推進するために報償費を設けてこれを運用していくということで、代々内閣がこの措置をとってきておるところでございます。例えばこういうようなと申し上げますといいのですけれども、それは中身にわたることになりますので、やはり円滑に推進をいたしますために従来も中身を申し上げずにきておるようなことでございまして、今後とも国が国の施策を円滑に推進するように運用してまいりたい、このように考える次第でございます。
  258. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 最後でありますが、国の仕事を円滑にするために国民に隠れてちょこちょこやる、そういう円滑というものは果たして妥当なものかどうか、この点、私は非常に疑問を持っておるのでございます。しかし、以上、大体わかりましたのでやめますけれども、はなはだ遺憾だと思います。  終わります。
  259. 横山利秋

    横山委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時三十九分散会