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伊藤(昌)
委員 我が国の危険な傾向は、このごろばかに左翼の風潮が強くなってまいりまして、暴力革命的な影は潜めましたけれ
ども、反米親ソ、反
政府、権利の主張など、特にどこの国の国民かわからない
日本人が大分生まれてきておるように感じます。
我が国の伝統を断ち切る風潮が続いたからであります。
日本人教育の大切な問題は、文化、伝統の後世への伝達。歴史には栄光もあれば屈辱もあります。その重みに耐える民族が、時代を超えて生き続けていくのに必要な連続性とか統一性をつくり上げる、この大切なことが、左翼風潮によって断ち切られてしまっているのであります。
日本の将来はこのままではまことに危険と感じます。
本論の前文として聞いていただきたいのですが、このごろの小中高等学校の社会科の学習指導要領もとうとう日教組型に変えられてしまいました。社会国家発展のために尽くす心を養うように教科書に書きなさいよ、これが削除。天皇の敬愛をよく子供
たちに教えなさいよ、これが削除。家族の恩愛を大切にする教育をしなさいよ、これも削除。例えば家族問題を取り上げますと、家族、兄弟といえ
ども、家族の恩愛よりも個人個人の権利の方が大切ですよという教え方。民主政治は独裁政治よりもすぐれておるということを教えなさいよ、これも削除。マルクス・レーニン主義の方がよいですよ、そんな書き方をされておるのであります。日米安保条約巻き込まれ論、自衛隊は憲法違反、純粋な子供
たちにこんな教育をして、果たしてその子供が大きくなって公務員などになった場合に、本当に
日本の国のためを考える人間として育つであろうか。今のような左翼傾向の強い役所の中をまず改めていきませんと、それに輪をかけたように、将来の
日本の行政の中に憂うべきものができるのではないかと感ずるものであります。
大臣、これからの
質疑は政治問題としてさせていただきたい。大臣は、今は行政の長でありますが、本体は政治家でありますので、政治家としての議論をしていただきたいのであります。もちろん、我々代議士は国民の厳粛な信託を受けておりますので、憲法についても国民にわかりやすい素直な解説にしたい。ひねくれた、わかりにくい憲法解釈ではなりません。しかし、今や立法府や行
政府の憲法の取り扱いは、非常にわかりにくいものにしてしまいました。その一つは、今の立法府、行
政府の一部は、憲法を自分の都合のよいところだけをとって、護憲護憲と言っておるのであります。
さて、公務員の基本姿勢に入りますけれ
ども、まず、文部省が文教
委員会に提出した
資料、すなわち「日教組が社会主義革命に参加している団体と自ら
規定していると受けとられる
資料」がここにあるのでありますが、これと同類の
資料が、大臣の
総理府からも、裁判所、法務省からも、
厚生省、通産省、運輸省、
労働省、人事院からも出されなければならないと私は考えます。なぜならば、これらの省の職員団体、
労働組合は日教組と同じような国公労連というマルクス主義思想によって貫かれた
運動方針を持った政治団体であるからであります。
その
運動方針は、まず階級闘争、それから独占資本打倒という、共産党宣言の中にしかない思想、行動によって形づくられているのであります。共産党宣言の中には主なものが三つありますが、時間がありませんから、その中の一つ、独占資本説、すなわち一握りの資本家が
労働者を搾取する。九十何%という貧しい
労働者が階級闘争によって資本家を倒す、そして資本主義社会は崩壊をする。これが独占資本説でありましょう。それと同じことが国公労連の
運動方針になっているのであります。
まず、法秩序の元締めである裁判所の
労働組合は、一万八千人の職員の中で一万五千人が国公労連加盟であります。裁判所の
労働組合が共産系の
労働組合でありまするから、国民はこれを聞けばびっくりするでありましょう。
そこで、
運動方針の速記録を朗読させていただきますが、
日本資本主義の構造的矛盾、生産と消費の矛盾、自由民主党
政府はファッショ、独占資本本位の支配体制を強固なものにする、「独占資本と
政府は、レーガン戦略への加担など対米従属をいっそう強めながら、」「軍事力増強それ自体が独占資本にとっての膨大な利潤の対象となっている」「全民労協の発足により、
民間労組の右翼再編に布石をうった独占資本の次の攻撃の標的は、官公
労働運動」である。「国家の財政と機構を独占資本の
思いのままに利用しつくしていくためにも、彼らは官公
労働運動の右翼的な変質を必要としています。独占資本の同盟軍である同盟が、」「官公
労働運動の体質改善をかかげていることは、こうした
政府・独占資本の動きと軌を一つにするもの」である。そして、宇佐見同盟
会長を批判して、次に「全民労協を発足させた右翼的潮流は、労資一体化路線をいっそう強めて」いる。労資一体化路線を強めていることを批判しておるのでありますから、労資協調に反対をする階級闘争至上主義ということが理解できるのです。「現代版「
産業報国会」をめざす労資協調路線では、」と、大臣、
産業報国会まで出てきます。
産業報国会というのは、戦争中の治安維持法をまだ忘れていない証拠。「
政府・独占資本を政治的に包囲していく国民的な戦線をつくりあげ、」これはマルクスの、一握りの独占資本を多くの
労働者が包囲して倒すという、共産党宣言に書かれていることと全く同一であります。「
労働四団体共闘が、
労働運動の右傾化とも結びついて政治戦線のうえでも、臨調行革断行を主張する民社・公明党を」社会党も「含む反共野党共闘を国会内で」推進した、こう書かれているところを見ますると、これは明らかに共産党の
労働組合である。共産党か共産主義か知りませんが、他の政党を全部ぼろくそに言っておるのですから。これも
運動方針に書かれておることであります。
そこで、階級闘争、それから独占資本打倒、反自民、そのほかの政党をすべて批判しておる。一体これが憲法を遵守する人
たちの
運動方針であろうか。
時間がありませんからまとめて御質問をいたしまするけれ
ども、公務員任用時の服務の宣誓というもの、公務員は憲法を遵守する、これは任意
規定ではなくて強行
規定であります。公務員の一番大切な思想がこの憲法遵守であります。憲法が唱えているところの
我が国の体制というものは一体何か、
日本国憲法の体制というものは何かということを、管理者が職員の人
たちによく指導をしておかないから、こういうおかしな
運動方針があちこちに生まれてくるのではないかと憂えるものです。
憲法思想の中で重要な制度思想は、政治制度思想と経済制度思想であります。思想を離れて制度はない。憲法自体が思想であります。共産主義国家と全く違った政治、経済、文化、哲学思想であります。
日本国憲法の政治制度は議会制民主主義。複数の政党が言論で闘いながら多数決によって協調をしていくという議会制民主主義。経済制度は修正資本主義。憲法十四条、二十九条であり、これは、共産国家の一党独裁、全体主義政治制度でもなく、生産手段を国有にする共産主義経済制度と異なる。これと憲法一条天皇象徴、この三つが
我が国の憲法の体制であると私は理解をいたします。この一つでも外せば
我が国は革命につながる、こういう体制をよく公務員に理解させておかなければならないと思うのです。
さて、憲法第十四条法のもとに平等、社会的身分によって差別されない。例えば資本家であるとか
労働者であるとかによって憲法は差別しない。官庁においても管理者であるとか
一般職員であるとかによって、その社会的身分によって差別しない。すなわち平等に扱う。平等に扱うには、まず双方が協調
関係になければ平等に扱えないと
思います。それが逆に、今のように敵対的に対立をしておったんでは、平等に扱おうとしても平等に扱えないじゃありませんか。資本家が
労働者を虐げてもいけないし、逆に
労働者が資本家を倒す敵対的階級闘争思想というものは、
我が国の憲法では認めておらない。
皆様、公立の小学校でも中学校でも高等学校でも行ってみてください。日教組が、おれ
たち教師は
労働者である、団結をして資本家を倒せ。資本主義を思想とする
政府が任命しておる教育
委員会に反対、文部省に反対、校長先生に反対。校長、教頭はたった一人、二人。多数によって、学校はとうとう日教組によって管理されてしまって、こんなだらしのない義務教育に化してしまったのじゃないでしょうか。この理念というものは明らかに階級闘争理念であります。
さて、この十四条というものは、わかりやすく言うならば労使協調思想。また、憲法二十九条
財産権、これは資本主義の思想であります。それと十四条をあわせると、明らかに労使協調、修正資本主義、この考え方は間違っておらない。労使協調、修正資本主義、すべて協調していくということがこの十四条にあるにもかかわらず、階級闘争、独占資本打倒。これが
日本国憲法の思想を遵守しておる職員の行動であると認める人はどうかしておると私は思うのでありますが、この憲法十四条のみで結構ですから、ひとつ大臣の御所見をちょうだいできますでしょうか。