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1984-05-11 第101回国会 衆議院 決算委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年五月十一日(金曜日)     午後一時開議 出席委員   委員長 横山 利秋君    理事 近藤 元次君 理事 東家 嘉幸君    理事 井上 一成君 理事 新村 勝雄君    理事 貝沼 次郎君 理事 神田  厚君       塩崎  潤君    河野  正君       近江巳記夫君    玉城 栄一君       中川利三郎君    阿部 昭吾君  出席国務大臣         通商産業大臣 小此木彦三郎君  出席政府委員         文化庁次長   加戸 守行君         通商産業大臣官         房長      福川 伸次君         通商産業大臣官         房審議官    棚橋 祐治君         通商産業大臣官         房審議官    山田 勝久君         通商産業大臣官         房会計課長   山本 雅司君         通商産業省通商         政策局次長   村岡 茂生君         通商産業省貿易         局長      杉山  弘君         通商産業省立地         公害局長    石井 賢吾君         通商産業省機械         情報産業局次長 児玉 幸治君         工業技術院長  川田 裕郎君         資源エネルギー         庁長官     豊島  格君         資源エネルギー         庁長官官房審議         官       松田  泰君         資源エネルギー         庁石油部長   松尾 邦彦君         中小企業庁長官 中澤 忠義君  委員外出席者         科学技術庁原子         力局政策課政策         企画官     池田  要君         大蔵省主計局司         計課長     加藤 剛一君         文部省学術国際         局研究協力室長 西尾 理弘君         会計検査院事務         総局第四局審議         官       仁村  甫君         会計検査院事務         総局第五局審議         官       吉田 知徳君         中小企業金融公         庫総裁     荘   清君         中小企業信用保         険公庫総裁   谷敷  寛君         参  考  人         (石油公団理事)勝谷  保君         決算委員会調査         室長      石川 健一君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和五十六年度一般会計歳入歳出決算  昭和五十六年度特別会計歳入歳出決算  昭和五十六年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和五十六年度政府関係機関決算書  昭和五十六年度国有財産増減及び現在額総計算  書  昭和五十六年度国有財産無償貸付状況計算書  (通商産業省所管中小企業金融公庫中小企  業信用保険公庫)      ――――◇―――――
  2. 横山利秋

    横山委員長 これより会議を開きます。  昭和五十六年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は、通商産業省所管中小企業金融公庫及び中小企業信用保険公庫について審査を行います。  この際、お諮りいたします。  本件審査のため、本日、参考人として石油公団理事勝谷保君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 横山利秋

    横山委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――
  4. 横山利秋

  5. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 昭和五十六年度通商産業省所管歳入歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず、一般会計歳入歳出決算につきまして御説明いたします。  通商産業省主管歳入につきましては、歳入予算額は九十三億三千七十八万円余であります。  これに対しまして、収納済み歳入額は百四十三億五千六百六十二万円余でありまして、これを歳入予算額と比較いたしますと、五十億二千五百八十三万円余の増加となっております。  これは、アルコール専売事業特別会計から一般会計への納付金が予定より多かったこと等の理由によるものであります。  次に、通商産業省所管歳出につきましては、当初予算額は七千百九十三億三千八百四十三万円余でありますが、予算補正追加額八億六千八百二十万円余、予算補正修正減少額四十億六千二百三十三万円余、総理府等省庁所管から移しかえを受けた額百十六億六千百三十九万円余、前年度からの繰越額七十一億五千六百三十万円余、予備費使用額四億一千四百六十九万円余の増減がありましたので、歳出予算現額は七千三百五十三億七千六百六十九万円余となっております。  これに対しまして、支出済み歳出額は七千二百一億八千二百二万円余でありまして、その主なものといたしまして、エネルギー対策費三千三百四億九千百十万円余、中小企業対策費一千七百三十一億二千二万円余、科学技術振興費六百四十二億六千三百十二万円余、公共事業費二百二十億七千七百九十八万円余、経済協力費百二十五億七千二百七十二万円余等となっております。  この支出済み歳出額歳出予算現額との差額は百五十一億九千四百六十七万円余となっております。その差額のうち、翌年度へ繰り越しました額は六十三億四千百一万円余でありまして、不用となりました額は八十八億五千三百六十五万円余となっております。  次に、通商産業省所管の各特別会計決算について御説明いたします。  第一に、電源開発促進対策特別会計であります。まず、電源立地勘定であります。  収納済み歳入額は一千五十五億二千百六十四万円余、支出済み歳出額は五百十八億九千十万円余であります。  収納済み歳入額支出済み歳出額との差額は五百三十六億三千百五十四万円余でありまして、翌年度へ繰り越しました額は二百三十一億一千三百五十五万円余、剰余金は三百五億一千七百九十八万円余となっております。  次に、電源多様化勘定であります。  収納済み歳入額は一千百四十三億二千六百五十一万円余、支出済み歳出額は七百二十八億四千三百八十二万円余であります。  収納済み歳入額支出済み歳出額との差額は四百十四億八千二百六十八万円余でありまして、翌年度へ繰り越しました額は三百四億六千四百六十四万円余、剰余金は百十億一千八百四万円余となっております。  第二に、石炭並びに石油及び石油代替エネルギー対策特別会計であります。  まず、石炭勘定であります。  収納済み歳入額は一千四百四十五億四千六百十九万円余、支出済み歳出額は一千二百五十三億六千六百三十七万円余であります。  収納済み歳入額支出済み歳出額との差額は百九十一億七千九百八十二万円余でありまして、翌年度へ繰り越しました額は九十五億三千六百四十八万円余、剰余金は九十六億四千三百三十三万円余となっております。  次に、石油及び石油代替エネルギー勘定であります。  収納済み歳入額は三千八百九十九億八千五百三十六万円余、支出済み歳出額は三千四百五十四億八百三十九万円余であります。  収納済み歳入額支出済み歳出額との差額は四百四十五億七千六百九十七万円余でありまして、翌年度へ繰り越しました額は三百四億七千九百五十八万円余、剰余金は百四十億九千七百三十八万円余となっております。  第三に、アルコール専売事業特別会計であります。  収納済み歳入額は三百七十二億四千四百四十七万円余、支出済み歳出額は三百二億二千八百九十七万円余であります。  この会計損益計算上の利益は七十九億八万円余でありまして、期末資産増加相当額八億一千二百五十四万円余を控除した残額七十億八千七百五十四万円余を一般会計に納付いたしました。  第四に、輸出保険特別会計であります。  収納済み歳入額は一千八百五十八億三千九百七十八万円余、支出済み歳出額は四百二億三千五百四十六万円余であります。  第五に、機械類信用保険特別会計であります。  収納済み歳入額は九十一億五千五百二十九万円余、支出済み歳出額は二十七億九千三十四万円余であります。  なお、一般会計及び特別会計事業の詳細につきましては、お手元にお配りいたしております通商産業省所管昭和五十六年度歳入歳出決算概要説明書に記述してありますので、ごらんいただきたいと存じます。  最後に、五十六年度通商産業省所管決算につきまして、会計検査院から不当事項として二十三件の指摘を受けたものがありますことは、まことに遺憾に存じております。  これらの指摘された事項につきましては、直ちに指摘金額の全額を返還させる等、その是正、改善の措置を講じたところであります。  今後は、この種の事態の発生を未然に防止するため、より一層の指導監督を行い、かかる事態の絶滅に努力いたす所存でございます。  以上をもちまして、昭和五十六年度における通商産業省所管一般会計及び特別会計決算に関する御説明を終わります。  何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。
  6. 横山利秋

    横山委員長 次に、会計検査院当局から検査概要説明を求めます。仁村会計検査院第四局審議官
  7. 仁村甫

    ○仁村会計検査院説明員 昭和五十六年度通商産業省決算につきまして検査いたしました結果の概要説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項二十三件及び本院の指摘に基づき当局において改善処置を講じた事項一件であります。  まず、不当事項について説明いたします。  検査報告番号八六号から一〇七号までの二十二件は、中小企業設備近代化資金貸し付けが不当と認められるものであります。  これらは、中小企業者設備近代化に資するため無利子で融資する貸付金財源として国が都道府県に交付した中小企業設備近代化補助金に関するものでありまして、その貸し付け適否等について調査しましたところ、貸付対象設備貸付対象にならない既往年度に設置するなどしている者に対して貸し付けていたり、貸付対象設備貸付対象事業費より低額で設置している者に対して、貸付対象事業費どおり設置したとして貸し付けていたり、本資金貸し付けを受ける以前に中小企業金融公庫から資金を借り入れている者に対して重複して貸し付けていたり、また、貸付対象設備を設置していなかった者に対して貸し付けていたりしていたものでありまして、いずれも貸し付け補助の目的に沿わない結果になっていると認められたものであります。  また、検査報告番号一〇八号は、休廃止鉱山鉱害防止補助事業実施及び経理が不当と認められるものであります。  これは、捨石鉱澤崩壊流出防止するため、廃止鉱山捨石堆積場表面保護工及び堆積場排水施設等工事費について、山形県に対し交付した補助金に関するものでありますが、現場の地質、地形、沢水流入状況等について十分調査を行い、適切なのり勾配排水施設を適切に設置して工事を施工し、堆積土安定性を確保すべきであったと認められるのに、これらに対する配慮を欠いたため、工事施行後数カ月を経ずし表面保護工は全面的に崩壊していたものであります。  次に、本院の指摘に基づき当局において改善処置を講じた事項について説明いたします。  これは、中小企業設備近代化資金貸付事業経理に関するものであります。  中小企業庁では、先ほどの不当事項の項で触れましたように、中小企業設備近代資金貸付事業実施している都道府県に対し、その貸し付けに必要な資金の一部として毎年度多額中小企業設備近代化補助金を交付しておりまして、都道府県ではこの補助金のほか都道府県からの繰入金、償還金などを貸付財源とし、特別会計を設けて貸付事業を行っております。  このたび、北海道ほか二十九都府県における貸付事業経理について調査いたしましたところ、貸付財源に係る収支実績について見ますと、事業計画すなわち資金計画でありますが、この計画策定に当たり償還金や前年度繰越金を過少に見込んでいることのほか、償還金等実績額計画額を大幅に上回っていることや貸付金実績額計画額を大幅に下回っていることが年度途中で判明しているのに、事業計画の見直しを行わないまま過大な国庫補助金を受けていたことなどのため毎年度多額の次年度繰越金を生じており、これに係る国庫補助金相当額当該年度貸付財源として有効に運用されていなかったり、貸付財源に充てることとなっている預金利息違約金等特定剰余金を適正に処理していなかったりなどしていて、貸付事業経理が適正に行われていないと認められましたので、当局の見解をただしましたところ、中小企業庁では、本件国庫補助金交付庁である通商産業局等及び都道府県に対してそれぞれ通達を発し、業務適正化及び指導監督の徹底を図るとともに、五十七年度予算執行分からその実効を確保する処置をとるなどして、本件補助事業の適正を期するよう処置を講じたものであります。  以上をもって概要説明を終わります。
  8. 横山利秋

  9. 吉田知徳

    吉田会計検査院説明員 昭和五十六年度中小企業金融公庫及び中小企業信用保険公庫決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
  10. 横山利秋

  11. 荘清

    荘説明員 昭和五十六年度における中小企業金融公庫業務について御説明申し上げます。  当公庫昭和五十六年度貸付計画は一兆九千八百八十六億円と定められました。  これに対し、中小企業者に対しては前年度実績に比較して八・〇%増に相当する一兆九千六百九十億八千七百五万円の貸し付けを行ったほか、設備貸与機関に対しては百六十九億千二百八十三万円余、中小企業投資育成株式会社に対しては二十四億円の貸し付けを行い、総額では一兆九千八百八十三億九千九百八十八万円余の貸付実績となりました。  中小企業者に対する貸付契約額のうち、設備資金は四三・八%に相当する八千六百七十億九千五百三十五万円、運転資金は五六・二%に相当する一兆千百三十六億九千四十万円となっており、また、直接貸し付けは五〇・四%に相当する九千九百七十六億三百万円(二万三千三百三十五件)、代理貸し付けは四九・六%に相当する九千八百三十一億八千二百七十五万円(六万三千三百二十八件)となっております。  年度末総貸付残高は四兆九千七百十二億八千九百十二万円余でありまして、前年度末に比較して五千百十八億七千五百五十七万円余、一一・五%の増加となっております。  貸付金延滞状況につきましては、昭和五十六年度末におきまして弁済期限を六カ月以上経過した元金延滞額は五百三十五億四千九百五万円余でありまして、このうち一年以上のものは四百六十八億七千四百六十七万円余、総貸付残高の〇・九%となっております。  昭和五十六年度融資に当たりましては、国内需要の不振により景気の回復がおくれるなど厳しい経営環境の中に置かれている中小企業者に対し、その事業基盤の強化に資する資金について積極的に対処してまいりました。  また、中小企業者石油代替エネルギーの利用を促進するための貸付制度を新設したほか、省エネルギー貸付制度中小企業団地等貸付制度の拡充を図る等、中小企業者経営の維持、安定のための資金についてきめ細かい配慮を払ってまいりました。  さらに、中小企業近代化促進法に基づく構造改善事業に必要な資金流通機構近代化合理化のために必要な資金及び産業公害防止、産業安全の確保等のために必要な資金についても配慮してまいりました。  なお、昭和五十六年度におきましては、中小企業者の一層の利便に資するため、東京都豊島区に池袋出張所を新設するとともに、熱田出張所を支店に昇格させました。  次に、当公庫昭和五十六年度収入支出決算及び損益計算について申し上げます。  収入支出決算について申し上げますと、貸付金利息等収入済み額は三千六百七十二億九百九十万円余、支払い利息等支出済み額は三千七百八十三億九千百七十万円余となりました。  損益計算について申し上げますと、貸付金利息収入等の総益金は四千五百三十五億六千五百二十五万円余、借入金利息事務費業務委託費等の総損金は四千五百三十五億六千五百二十五万円余となりました。この結果、利益金は生じなかったので国庫納付はいたしませんでした。  以上をもちまして昭和五十六年度における中小企業金融公庫業務概況についての御説明を終わります。
  12. 横山利秋

  13. 谷敷寛

    谷敷説明員 中小企業信用保険公庫昭和五十六年度業務概況につきまして御説明申し上げます。  昭和五十六年度におきましては、国の一般会計から、保険事業の円滑な運営を図るための原資として、保険準備基金三百億円、信用保証協会保証活動円滑化を図るための原資として、融資基金三百二十五億円、合計六百二十五億円の出資が行われました。  まず、保険事業について見ますと、公庫が全国五十二の信用保証協会との間に締結いたしました保険契約に基づく保険引き受けは、件数で百二万五千件余、金額で五兆一千五百五十三億三千五百二十二万円余になっており、これを前年度に比較いたしますと、金額で〇・七%の増加になっております。  この結果、昭和五十六年度末の保険引き受け残高は、件数で二百三万三千件余、金額で十兆二千五百十五億八千五百二十八万円余となっております。  なお、保険金支払いは一千三百三十九億七千八百八十四万円余になりまして、これを前年度に比較いたしますと、九%の増加になっております。  一方、信用保証協会に対する融資事業につきましては、昭和五十六年度に国の一般会計から新たに出資されました三百二十五億円及び既往貸し付けに係る回収金等一千五百九十九億二千七百万円、合計一千九百二十四億二千七百万円をもちまして、長期貸し付け一千八百五十一億七千七百万円、短期貸し付け二億円、合計一千八百五十三億七千七百万円の貸し付けを行いました。  この結果、昭和五十六年度末における貸付残高は二千五百九億五千万円になっております。  次に、収入支出及び損益概況について申し上げます。  まず、収入支出について申し上げますと、収入済み額は一千三億九千四百六十四万円余、支出済み額は一千三百六十八億八千九百六十三万円余でありまして、差し引き三百六十四億九千四百九十九万円余の支出超過になっております。  損益計算につきましては、さらに支払い備金等整理を行いました結果、総利益は一千百七十億一千七百九十六万円、総損失は一千五百四十七億三百五十七万円余となり、差し引き三百七十六億八千五百六十万円余の損失金を生じました。  この損失金は、中小企業信用保険公庫法及び同法施行令の規定に基づき、保険準備基金を減額して整理いたしております。  以上、簡単でございますが、昭和五十六年度業務概況につきまして御説明申し上げた次第であります。
  14. 横山利秋

    横山委員長 これにて説明は終わりました。     ―――――――――――――
  15. 横山利秋

    横山委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。新村勝雄君。
  16. 新村勝雄

    新村(勝)委員 最初に、大臣会計検査院にお伺いしますが、五十六年度決算通商産業省についての検査概要の中に、貸付金処理が適正でなかった、あるいは補助金処理が適正でなかったという指摘があるわけです。これらの執行については、いずれも地方自治体都道府県を経由して資金が流れるのが原則だと思います。そういうことになりますと、やはり検査院が御努力をされると同時に、地方自治体監査委員あるいは地方自治体当局にもこういったことのないような十分の防止策をとるような配慮をしてもらわなければ、万全を期することはできないと思いますが、そういう点で、従来どのように地方団体と連絡をとっておられますか。  それから、これがほとんど毎年同じような性質の指摘事項があるわけですけれども、大臣は、これからこういったものを防止する何か特別の御決意なりあるいは方策なりがございますか。
  17. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 会計検査院から不当事項として二十三件の指摘を受けたものがありまして、まことに遺憾でございますということを先ほど申し上げたのでございますが、今後もこのようなことのないように厳重に注意いたす所在でございます。
  18. 仁村甫

    ○仁村会計検査院説明員 通産省関係補助金は、他省補助金に比べて決して少ないというわけではございませんので、私ども、先ほど検査結果の概要でも御説明いたしましたとおり、毎年度例えば「中小企業設備近代化資金の貸付けが不当と認められるもの」というふうなものを中心に掲記しているわけでございます。こういうふうに毎年掲記しているものについては、是正されるよう内部監査機構の十分な活用をお願いしたいというふうに思っておりますし、また、それによって私どもの検査も効果的に行えるのじゃないか。当局指導監督を十分にお願いするとともに、内部機関のチェックが十分できるような体制を期待したいというふうに考えております。
  19. 新村勝雄

    新村(勝)委員 地方団体協力も求めながら、こういった間違いを防止する努力をぜひお願いしたいと思います。  次に、石油及び石油代替エネルギー勘定の問題でお伺いします。  まずこの五十六年度決算書の百十三ページに石油代替エネルギー対策費というのがありまして、そこの項目は前年度繰越額が六十四億千七百六十二万あるわけですが、それで、五十六年度予算を合わせた額が予算でありますけれども、五十六年の未使用が三百二十六億三千七百八十六万というふうに半分以上未使用になっているわけです。その備考欄には注記がございます。半分以上の予算を残しているということはちょっと不適当、ちょっとどころではなく大変不適当でありますが、その注記には、日米独共同による石炭液化実用化プロジェクト実施が中止された、このために残ったんだということになっております。これはなぜ中止されたわけですか。
  20. 豊島格

    豊島政府委員 先生御指摘石炭液化事業と申しますのは、アメリカSRCⅡという計画がございまして、これに日本ドイツが一緒になりましてやっておったわけでございます。ところが、その計画自身の六千トン級のデモンストレーションプラントをつくるということでございますが、非常に金額が大きくなりまして、最近のエネルギー情勢等から申しまして、今すぐやるのはどうかということで、アメリカ側で中止になるという事態が生じたわけでございます。したがいまして、日本もそれまで必要な経費は出すことになっていましたけれども、そのプラント建設等に関する計画につきまして、計画自身が中止されるということで、不用といいますか、実際上支出しなくてよくなった、こういうことでございます。
  21. 新村勝雄

    新村(勝)委員 そうすると、そういう事態は全く予見できなかったわけですか。
  22. 豊島格

    豊島政府委員 御承知のように、エネルギー情勢は最近非常に変わっておりますけれども、当時のSRC計画日本が参加する時点では、アメリカも非常に熱心でございましたし、さらに、ドイツもこれに加わるということで切迫感が非常にあったわけでございますが、そういう情勢から若干変わってきたということでございます。石炭液化事業そのものにつきましては、二〇〇〇年前後を目指しましてやらなくてはいけないわけですが、そういうスケジュールが少しおくれるということもありましたし、それから、金額自身も非常に大きくなるということでございまして、共同開発事業に参加する時点においては当然やれるということであったわけですが、事態が変更になったという、特にアメリカの政策も少し変わったということでございまして、事前に予測はできなかったわけでございます。
  23. 新村勝雄

    新村(勝)委員 今も言われたように、長期的には石油資源は制限があるわけでして、エネルギー対策というのは長期の展望のもとにその計画をつくっていかなければ、石油の需給が逼迫してから手を打ったのでは遅いわけでありますから、今石油の需給が緩んでいるといいましても、中東情勢が一変すれば、いつまた前あるいはそれ以上になるかもわからない情勢なので、こういった問題については、目先の変化だけにとらわれずに長期的な計画が必要だと思います。  そこで、石炭液化事業については、この計画は一応おやめになったということでありますけれども、将来どういう構想を持っているのか、それを一応お伺いします。
  24. 豊島格

    豊島政府委員 先生御指摘のように、石油情勢というのは、短期的にも中東情勢がございますし、中長期的には必ずタイトになるということで、いずれ流体燃料としての石炭液化ということはどうしても必要なプロジェクトであろう、こう考えておるわけでございます。  現在日本で進めております石炭液化事業は二つございまして、一つは、豪州、オーストラリアとの共同事業としてやっております褐炭液化の事業でございまして、これは今五十トンのパイロットプラントを建設中でございます。  それから、もう一つは、歴青炭につきましては、これまで三つの方式で、非常に小さなプラントですが、一トンから二トンぐらいのそういうプラントで、いわばPDUといいますか、実験的な研究開発を進めておったわけですが、五十九年度からパイロットプラントといいますか、二百五十トンのパイロットプラントの基本設計に入るということでございまして、そういう基礎的研究をまた続けるということになっております。それの後で、先ほど申しましたようなデモンストレーションプラントといいますか、実用化に近い段階は、その研究が終わってからそのときのエネルギー情勢を考えながらまた進めていく、こういうことになろうかと思います。
  25. 新村勝雄

    新村(勝)委員 次に、石油の備蓄の問題ですが、政府は当初六十三年三千万キロリットルという目標のもとに備蓄計画を立てているようでありますけれども、これもやはり最近石油事情の変化によって見直すということのようでありますが、この計画はどうなっておりますか。
  26. 豊島格

    豊島政府委員 国家備蓄を三千万キロリットル達成するという当初の目的、六十三年度が目標の年度でございますから、最近の石油情勢の変化にもかかわらず、中長期的な観点あるいは中東の緊急事態に備えるということで、大体当初目的どおり進めるということにいたしております。  ただ、基地の建設につきましては、若干財政的な問題もございますし、それから、今民間タンクも若干余っているというようなことで、これを一時的に有効活用するということも考えておりまして、これは一、二年おくれるということはやむを得ないかと思いますが、備蓄自身は六十三年度まで予定どおり進めることといたしております。
  27. 新村勝雄

    新村(勝)委員 それで、政府はことし石油税を引き上げましたね。これは九月から三・五を四・七にするということでありますが、その一方で一般会計にはこのエネルギー勘定からまだ約四千億程度の貸しがあるわけですが、そういったこととあわせて石油税の引き上げは妥当ではないという意見が強いわけですが、そういった面でのお考えはどうであるのか、また、これだけの増税によって末端価格がどの程度の影響を受け谷のか、その見通しを伺います。
  28. 豊島格

    豊島政府委員 石油対策、それから石油代替エネルギー対策につきましては、中長期的な観点から計画的かつ着実に進めていかなくちゃいけないということでございまして、そういうことから申しますと、やはり中長期的に安定した財源が要るということでございます。  そこで、石油税でございますけれども、御承知のように、昨年の三月に原油価格がバレル五ドル下がるということで、非常に大幅な減収があったわけでございまして、こういうことではとてもエネルギー対策の円滑な推進ができないということでございます。  そこで、今御指摘のございました五千億ばかりの特別会計の繰入未済額があるじゃないか、これをそのままにして上げたのはどうかという御質問かと存じますが、今申し上げましだように、中長期的な観点に立ちますと、経費の方を重点化し効率化して歳出も相当カットするということをいたし、それから、未済額を繰り入れるとしましても、やはりこの先五年とか十年を考えた場合においては、相当な予算不足、財源不足が生じる、こういうことになったわけでございます。  したがいまして、こういう情勢ございますので、私どもとしましては、厳しい財政状況にあるということでございますが、石油税収の繰入未済額ですね、特別会計への繰り入れられてない部分五千億について最大限取り崩すことを前提として、それで不足する分について税の引き上げをお願いしたわけでございます。なお、具体的な数字について申しますと、五十八年度は六百四十億円、五十九年度は六百七十億円の取り崩しということになっております。  それから、末端価格でございますが、今度一・二%の税率を上げたわけでございます。これによってキロリッター当たり大体六百円ぐらいのはね返りがあるんじゃないか。これは石油の油種によりまして、また、価格自身が市場で決まるということになっておりますので、正確には申し上げられませんが、例えばガソリン一リッター百五十円ぐらいといたしますと、その中で大体〇・六円ぐらいということでございましょうか、そういうことかと存じます。
  29. 新村勝雄

    新村(勝)委員 それから、備蓄ですけれども、現在は地上のタンクあるいはまたタンカーでやっておるようでありますが、地上あるいは海上の備蓄というのは、万一の有事ということはまず考えるべきではないですけれども、自然災害にも弱いあるいは周辺に対する環境上の影響もあるということで、西欧等では地下備蓄がかなり行われているということでありますが、日本ではいろいろ問題があるということも聞いております。この地下備蓄については全く考えていないのか、あるいはこの点についての御配慮があるかどうか、それを伺います。
  30. 豊島格

    豊島政府委員 海上備蓄と陸上備蓄とございますが、外国の場合、地下備蓄が行われているものの代表的な例は、岩塩のような自然にあるそういうところへ入れておるというケースも多いかと思いますが、若干日本には地質上のそういうことが可能なような土地はないのじゃないかと思います。ただし、先生御指摘のように、地下備蓄ということも非常に大事でございますので、現在、全国で三地点につきまして、地下備蓄のフィージビリティースタディーを行っておるわけでございまして、それにつきまして、そのうち幾つやるかということは今申し上げかねますが、今後それにつきましても検討していくということといたしております。
  31. 新村勝雄

    新村(勝)委員 それから、この石油の備蓄に関連をしまして、これは地上のタンクの場合ですが、そのタンクの所在市町村に交付金が出ているわけです。その所在市町村とすると、環境の問題あるいは防災、消防施設の問題等について、これがあることによって自治体の財政負担が実質的にあるいは潜在的にふえることは事実であります。こういうことを配慮されて立地対策等の交付金が出されておるわけでありますけれども、この制度については、やはりそういった今申し上げたようなこともありまして、ぜひ今後とも堅持をしていただきたいと思うのですけれども、大臣にもひとつこのお考えを伺います。
  32. 豊島格

    豊島政府委員 石油貯蔵施設の立地対策のための交付金というのがございまして、先生今おっしゃいましたように、このタンクをつくることに伴いまして、地方自治団体で安全とか防災等についての財政負担もあろうかと思いますが、そういうものを軽減する見地から設けられたということでございます。  それで、この制度自身については毎年見直してやっておるわけでございますが、財政事情といいますか、石油の特会もなかなか苦しい事情でございますが、地方公共団体といいますか、自治体の御意向というのを十分考えて、御趣旨に沿うように、堅持するといいますか、今後すぐやめるということではなくて、自治体の御要請をよく聞いて今後とも進めていきたい、こう考えております。
  33. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 長官の申しましたとおり、財政が非常に困難な時期ではございますけれども、地方自治体の要望等を聞きまして、これを進めていかなければならないことが当然でございます。
  34. 新村勝雄

    新村(勝)委員 ぜひそうお願いしたいと思います。  次に、輸出保険の問題ですけれども、この制度が最近、後進国、この保険が必要な対象国の経済が悪化あるいは停滞をしておりまして、その関係でいわゆる繰り延べが続出をしておる。こういう中で、この輸出保険会計が現状においてはかなり悪化をしているということを聞いております。この現在の保険財政の状況をどうお考えになるのか。これは、それだけが穴があいてしまったということではないですけれども、それだけいろいろな意味で財政を圧迫することにもなりますが、現在の保険財政の現状認識、これをまず伺います。
  35. 杉山弘

    ○杉山政府委員 ただいまお尋ねのございました輸出保険特別会計の現状について申し上げたいと存じますが、ただいま御指摘のございましたように、ここ数年間のうちに発展途上国の債務累積問題というのがかなり顕在化してまいりまして、対外的な支払いができないために債務の繰り延べの要請をする国が著しくふえてきております。現在、我が国は十五カ国に対しまして債務繰り延べに応じておるわけでございますが、御案内のように、債務繰り延べに応じますと、輸出保険上は支払い遅延、すなわち事故という扱いになりますので、保険の契約者に対して保険金支払いをしなければいけないということでございまして、この支払い保険金の額が非常にふえております。まだ完全な収支の締めは行われておりませんが、五十八年度について見ますと、保険金支払いは約九百五十億円ぐらいになるのではなかろうかと思われます。そのうち、ただいま申し上げました債務繰り延べに応じたための保険金支払いというのが約七百三十億円くらい、残りが一般の保険事故、こういう感じになるわけでございまして、そのために、保険会計の単年度の収支では三百億円弱ほどの損失ということになっております。五十九年度には、この保険金支払い額、それから単年度収支の欠損の額というものもかなり大きなものになるというふうに考えられておりまして、現在私どもが考えておりますところでは、保険金支払いは約二千七百億円、そのうち債務繰り延べに応じるための保険金支払いが約二千五十億円という感じでございまして、単年度の収支では二千億円弱の赤字を計上せざるを得ない、こういうことでございます。  ただ、単年度の収支につきましてはただいま申し上げたようなことでございますが、これも既に御案内のとおり、債務繰り延べの場合には、通常の当所の支払い期日をおくれて支払う、こういうことになっておりまして、これは国と国との間で約束を交わすものでございますから、その新しい繰り延べ措置に伴って新しい償還の時期には一応返ってくるものというふうに期待がされるわけでございまして、支払いが行われますと、そこで輸出保険特別会計といたしましては、回収金という形で輸出業者からこれを回収するわけでございますので、そういうことをあわせて考えてみますと、単年度の収支では赤字は出ておりますけれども、長期的に考えますと、現時点でまだ輸出保険特別会計の収支のバランスが崩れている、こういうこととは考えておりません。ただ、一時期に支払いが集中をいたしますので、そのための資金繰りがつきません。輸出保険特別会計、五十八年度末では約一千百億円ぐらいの支払い準備金を持って年度を越すことを予定をしているわけでございますが、五十九年度、先ほど申し上げましたような多額保険金支払いをいたしますためには、五十九年度へ持ち越しました支払い準備金だけでは足りませんので、この点の資金繰りは資金運用部特別会計から借り入れをする、こういうことで考えておりまして、借り入れの額は、予算書にも計上されておりますように千百四十四億円というものを予定しておるわけでございます。
  36. 新村勝雄

    新村(勝)委員 今のお話の筋はわかるのですけれども、五十九年度保険金歳出予算は二千六百八十五億ですから、これでもちょっと足りないくらいの支払いが出るわけですね。それと、長期的にはこれは回収されれば別に国損にはならないわけですけれども、そういう理屈はわかるのですが、これは別の形における対象国に対する借款供与みたいな形になっていると思うのですね、ストレートではないけれども、結果的には。ですから、その間における資金繰りですけれども、資金繰りとはいっても、通産省さんがそれだけお金を持っているわけではありませんし、この会計にそれだけの蓄積があるわけじゃなくて、やはり大蔵省から、資金運用部なり何なりから借り入れをしなければならないということですから、その分だけ資金運用部に資金の圧迫を与えるわけで、一般のほかの行政に必要なあるいはほかの政策に必要な資金に対する圧迫を、これは多少なりとも与えるわけです。こういう状態が長く続いていきますと、かなりの圧迫を与えることになるのではないかと思いますけれども、その辺の財政投融資資金との関係、それからほかの政策資金との競合等については、今のところまだ大したことないと思いますけれども、これが続くとそういうことになりかねないのですが、その点の御配慮はいかがですか。
  37. 杉山弘

    ○杉山政府委員 御指摘の点で、保険会計資金運用部会計から借り入れをいたしますと、資金運用部の他の資金用途にも影響を与えるのではないかということでございますが、この点は資金運用部特別会計を担当している大蔵省からお答えをいただくのが適当かと存じますが、私どもの一応の判断といたしましては、今回千百四十四億円の借り入れを予定をいたしておりますけれども、これは資金運用部特別会計の財政投融資計画に上がってくる長期の資金をお借りするということではなくて、短期の資金をお借りをするということにいたしておりますので、この点、今直ちに他の資金運用部特別会計資金繰りに重大な支障を生ずる、こういうものではないのではなかろうかというふうに判断をいたしているわけでございます。  それから、こういった事態がどのくらい続くのかという御質問もあったやに存じますが、この点につきまして確たることを申し上げるわけにはまいりませんけれども、原因となっております発展途上国の債務累積問題というものにつきましても、当面危機的な状況は回避されたというのが一般的な認識でございますし、最近、御案内のように、世界経済全体に明るさが見えてきておりますし、それに伴いまして一次産品価格の上昇籍債務累積国にとりまして明るい動きも出てきております。そういうことで、これ以上債務累積国がさらに増加をし、保険特別会計支払いがどんどんさらに雪だるま式にふえてくるということにはなりませんかと申しまして、五十九年度で済むという話ではありませんが。私どもの見通しにおきましては、五十九年度から数年度間にわたりましては支払いが、先ほど申し上げました五十九年度の水準程度のものを続けざるを得ないとは思いますが、これがさらに極度にふえていくということにはならなくて済むのではないか、かように考えている次第でございます。
  38. 新村勝雄

    新村(勝)委員 これはもちろん貿易立国である日本の国策でありますが、同時にまた、輸出業界あるいは輸出産業に対する手厚い保護政策でもあるわけでありますけれども、こういう状況の中で、心配がないというようなお答えがされておりますけれども、保険料率の再検討なんかはこの際する必要はありませんか。お考えはありませんか。
  39. 杉山弘

    ○杉山政府委員 輸出保険特別会計も法律上収支相償ということで一応保険金支払いは保険料の収入をもって償うということにされておりますが、これは先ほど申し上げましたように、ある特定の年度をとっての判断でなくてもよろしいというふうに私ども理解をいたしておりまして、債務繰り延べの場合は、通常でございますと七、八年間もとの支払い期日を繰り延べる、こういうことになりますが、そういう期間をとって考えてみますと、先ほど御答弁申し上げましたように、輸出保険特別会計の収支バランスが著しく崩れているわけではない、こういう判断でございますので、今直ちに保険料の引き上げということをやらなくてもよろしいのではないかというように考えております。  ただ、保険料の引き上げにつきましては、これも御案内と存じますが、五十八年の四月から平均約四割の引き上げも既に実施しているところでございますし、それからさらに、債務繰り延べには至りませんでも、外貨収支のバランスが崩れている国等もございまして、そういったカントリーリスクの高まっている国につきましては、保険引き受けをします際に、地域差料率というのをつくりまして、リスクの大小に応じて保険料をかげんいたしておりまして、そういうリスクの高い国につきましては、通常の料率よりは高い料率をちょうだいして保険契約をお引き受けするというようなこともやっておりますので、こういったことにつきましては今後ともより機動的にやってまいりまして、若干なりとも保険収支の改善の面に役立たせるようにはいたしたい、こういうように考えておるわけでございます。
  40. 新村勝雄

    新村(勝)委員 それと、国の資金を借りる、これはもちろん利息がつくわけですけれども、それと繰り延べの利息、これも取るわけでしょうけれども、場合によっては逆ざやということも考えられるわけでしょうし、時には国損があらわれることもあると思いますね。それと、この運営費についても相当の費用がかかるわけですから、また再引き上げということも難しいでしょうけれども、そういった面で他の施策との均衡を失しないような運営をひとつお願いしたいと思うわけです。  次の問題は、原子力発電に伴う廃棄物の問題でありますが、原子力発電所が発足をしましてから古いものは既に二十年近くたつと思いますけれども、これらの発電所が三十年ないし四十年たつともう使えなくなる、廃棄をしなければならないという事態が来るわけですが、その場合には撤去をするという問題に関連をして、放射性物質の処理をどうするかという大きな問題がありますけれども、この問題について、まず、原子力発電所、これの撤去に伴う処理、廃棄物の処理の仕方、これを伺いたいと思います。
  41. 松田泰

    ○松田政府委員 先生お尋ねになりました、いわゆる原子炉の廃炉に伴う廃棄物の処分問題でございますが、もちろん、廃炉となって生じますさまざまの放射能レベルの廃棄物につきまして、これは原則的には、現在運転中に出てまいりますいわゆる低レベルの廃棄物と大体同じものでございますが、むしろそれよりも、建物、基礎等のコンクリートのように、ほとんど放射能レベルがございませんけれども量が非常に大きいというようなものが出る、それから、一部中の機器等の解体のようにやや放射性の高いものがあるというような点が特色があるかと思いますが、基本的には、現在運転中に出てまいります廃棄物処理とは変わるところはございません。  ただ、大量に出ます量のものをどこに置いておくか、あるいはどういう処分をするかという点につきましては、現在考えております方式といたしましては、まず、廃止措置後一定期間、放射能レベルが減衰するまで何らかの形で管理しながら期間を置く。その管理の仕方につきましても、例えば人が近づけないように遮へいをしてしまうとか、あるいはもっと簡単な通常の運転に近い形で管理するとか、いろいろな方法が考えられますけれども、そういったさまざまな管理をした後、これを解体いたしましてどこかの処分場に持っていくということになるわけでございます。  我が国におきましては、原子力委員会で検討されました一つの方針がございまして、具体的な方法はこれから詰めるわけでございますが、基本的には、原子力発電所のようなサイトはあともう一度再利用するということを考えるべきである。したがいまして、何らかの形で解体して撤去することを基本にするということは一応決まっております。ただし、それを具体的にどうするのか、これにはいろいろな費用がかかります。その費用をどうするのかというような点につきましては、現在、通産省におきまして、いわゆる総合エネルギー調査会の中の原子力部会の中に廃炉につきましての検討会を設けておりまして、鋭意検討しておるところでございます。具体的に、廃炉の必要が起きます期間はまだあと約十年ぐらいどんなに早くてもございますので、それまでには十分具体的な対策及び技術の開発が進むものと考えております。
  42. 新村勝雄

    新村(勝)委員 廃炉の問題ですけれども、まだ十年あるということですけれども、十年ぐらいはたちまち経過してしまいますし、十年ぐらいの余裕を見ながら万全の検討措置をしていかなければ、間際になってからでは間に合わないわけであります。それらについて廃炉部会でも検討されていると聞きますけれども、これから最初の廃炉という事態が起こるのは大体いつごろであるのか。それから、方法についても、遮へいという方法あるいは解体という方法、いろいろあるそうでございますけれども、費用の問題が伴ってまいりまして、費用によって電力料金にもやがては響いてくる、こういう問題がありますので、経済性と安全性を十分考えながら、両面から検討しなければいけない問題だと思いますけれども、それらについてもう少し具体的な政府の指導方針をお示しをいただきたい。
  43. 松田泰

    ○松田政府委員 最初の御質問でございますが、発電所の問題であるというふうに理解いたしまして御答弁いたしたいと思います。  日本におきます原子力発電所は、先生御存じのように、東海にございますいわゆるコールダーホール、英国から導入いたしましたガス炉が最も古いものでございまして、この発電所はあと何年使うかということになるわけでございます。法定の耐用年数は別にございまして、実際物理的な寿命といいますのは、俗に三十年とかあるいはもっと使えるとかいうふうに言われておりますが、物理的には、これをよく保修していけばかなりの期間使えるということは当然わかるわけでございますが、その辺の判断は、経済的な、コストのかかりぐあいその他から見てある程度判断されるものでございまして、一概にはまだわからないと思います。そういう意味で、この原子力発電所があと何年使えるか、どんなに見ても十数年あるいはもっと使えるかもしれないというふうには考えておるわけでございます。  それから、具体的な廃炉の仕方の問題でございますが、技術的にはどういうふうに解体するか、あるいはできるだけ被曝をしないような作業をするにはどういった道具を使えばいいかというようなことは、今いろいろ開発されているところでございまして、具体的には、まず原子力研究所におきまして、JPDRと言われております動力試験炉を現在解体の実験に使って研究しているのがございます。  それから、通産省関係におきますと、原子力工学試験センターというところに委託費を出しまして、さまざまな解体技術についての研究をやらせているというのがございます。  これは個別の解体技術でございますが、プラント全体に対しましては、先ほど先生もちょっとお触れになりましたように、これを密閉管理と称しまして、燃料あるいは制御棒といったような非常に放射能を持っているところだけを取り出しまして、そのほかのものは人が容易に近づけないように管理するというふうなやり方もございますし、あるいは、もう少し建物等も壊しまして、原子炉周りの方だけを遮へいしてしまうという遮へい隔離というような方法もございます。  それから、一番急ぎます場合には、即時解体してしまうというような方法があるわけでございますが、どの方法が一番、経済的に見ましてあるいは作業員の被曝の状況を見まして、あるいは廃棄物の処分の方法等から考えて妥当であるかというようなことを、今それぞれ先ほど申し上げました総合エネルギー調査会の部会等で比較検討しているという状況でございます。
  44. 新村勝雄

    新村(勝)委員 次に、常時出ている廃棄物があるわけですが、そのうちで特に危険と言われている核燃料から出るいわゆる高レベル廃棄物、これは量は少ないけれども、処理には万全の注意を必要とする、また廃棄物として処理をするには大変厄介な品物です。それともう一つは低レベルと二つあると思うのですけれども、この高レベルについては、現在処理の技術が完全に確立をしているのかどうか。それからまた、その処理をしたその品物をどこへどういうふうに管理をするかという問題があるわけですけれども、まず高レベルの廃棄物の処理の方法について伺います。
  45. 池田要

    ○池田説明員 お答え申し上げます。  初めに御質問がございました高レベルの廃棄物の問題でございますけれども、私ども、こういった廃棄物の対策につきましては、原子力委員会が策定しました原子力開発利用の長期計画に基づきまして施策を進めておるわけでございますけれども、高レベルの廃棄物につきましては、そもそもその発生する場所と申しますか、その内容についてちょっとつけ加えさせていただきたいと思います。  原子炉の廃止といったことから出てまいりますものは、先ほど御説明もございましたように、これは通常の運転、管理に伴って出ますような、いわゆる低レベルの廃棄物と同じように処理をするということを考えたのでございますが、高レベルの廃棄物と申しますのは、使用済み燃料の再処理ということから出てまいりまして、現在、御高承のとおり、我が国におきましても再処理工場が一つございます。東海村に動力炉・核燃料開発事業団が運転をしてございまして、ここで既に高レベル廃棄物の処理につきましても実際に事業者として取り組んでいるわけでございます。現在、これまで百七十四トンほどの使用済み燃料を処理いたしまして、出ました廃棄物につきましては、高レベルの廃棄物は工場内の廃棄タンクに安全に保管しております。これにつきましては、今後ガラス固化といったことで安定な形態に固化するという技術を開発を進めておりまして、基本的な考え方としましては、これを固化した上で、一時的にと申しますのは、三十年ないし五十年ぐらい熱を冷やしながら貯蔵する。その後でしかるべく地層処分を行うというような考え方でございます。  この処理技術につきましても、現在、東海村の再処理工場を中心にいたしまして、既にその処理のプラントにつきましては設計研究が進められておりまして、このパイロットプラントを近々建設しようという段取りになっております。  なお、この固化技術につきましては、我が国と同じ方法につきましては、フランス等におきまして、もう既に六年ぐらい前から技術を実施をしようとプラントも動いているところでございまして、基本的に同じような考え方のもとに技術開発を進めているところでございます。  なお、もう一つ御質問がございました低レベルの廃棄物につきましても、現在、先ほど申しました長期計画に基づきまして進められております施策について申し上げたいと思いますが、基本的には、最終的に海洋処分とそれから陸地処分とをあわせて行おうという考えでございます。現在は敷地内の貯蔵施設に安全に貯蔵してございまして、貯蔵容量にも十分余裕はございますけれども、最終的にそういう方向が考えられておりまして、海洋処分につきましては、もう既に所要の調査研究でございますとか、関係法令の整備、それから、この海洋処分につきましては国際的な約束にのっとって行う必要がございまして、例えばロンドン条約の加盟でございますとか、そういう必要な手続も終えてございまして、現在は試験的海洋処分を行おうということにつきまして、一層内外の関係者の理解を得ようという努力を進めているところでございます。  なお、もう一つの陸地処分につきましては、現在、日本原子力研究所等を中心にいたしまして、その安全評価手法の整備につきまして試験研究、ディスカスを進めているところでございまして、できるだけ早い時期に本格的な処分を行おうということを考えております。  ただ、その前段階といたしまして、現在こういった廃棄物につきましては、敷地内の施設に安全に貯蔵しているわけでございますけれども、まずこういった発電所と――発電所ばかりではございません、研究施設等いろいろございますけれども、そういった廃棄物を集中的に長期的に管理できるような施設に貯蔵しようという考え方は、原子力委員会の長期計画でもとられておりまして、これにつきましては、できるだけ早い時期に実施を図るということで取り組んでいるところでございます。
  46. 新村勝雄

    新村(勝)委員 高レベルについては、処理をして保管をしておくということですが、一定の年限が来たらしかるべく処理をするということですけれども、しかるべくというのはどういうことであるのか、その辺の明確なお考えをお聞きしたいわけです。  それから、低レベルにしても、海洋処分にしても陸地処分にしても、これは場所が非常に難しいわけです。海洋の場合には対外的な問題も起こってくるし、また、陸地処分にしても住民との関係が起こってくるわけでありますけれども、そういう調整をどうされるのか。特に高レベルについて、一定の年限後しかるべくという、そのしかるべくというのはどういうことであるか、もう一回伺います。
  47. 池田要

    ○池田説明員 お答え申し上げます。  先ほど御説明申し上げましたように、まず、一時的に貯蔵する必要がございます。その後どうするかという御質問でございますが、先ほど申しました長期計画におきましても、この点につきましては、当面、地層中の処分に重点を置いて進めようということが考えられてございます。このための処分の技術につきましては、昭和七十五年以降できるだけ早い時期に確立しようということを目標にいたしまして、日本原子力研究所あるいは動力炉・核燃料開発事業団等を中心にいたしまして調査研究等を進めているところでございます。現在まで、全国的に各種地層の調査でございますとか基礎的な調査を進めている段階でございまして、近々その次の段階と申しますか、より具体的に進める方法につきましても、現在、原子力委員会の放射性廃棄物対策専門部会におきまして、具体化につきまして審議検討が行われているところでございます。
  48. 新村勝雄

    新村(勝)委員 次に、先端技術開発の問題ですけれども、日本は資源がなくて貿易立国、そしてまた技術立国ともいうべき立場にあるわけですけれども、技術貿易、特に新しい技術を開発をしていくということが必要でありますが、この技術貿易、特許出願等は、その国の科学技術に関する研究開発活動の水準を反映しており、したがって、これらに関する統計は、技術水準、技術開発の力をあらわす重要な指標と考えられると言われておりますが、現状を見ますと、五十七年度の我が国の技術貿易について見てみますと、輸出が千三百十三億、輸入が四千四百七十四億で、依然として輸入がはるかに多いということでありまして、この状況ではいけないわけで、これを逆転をしていかなければいけないと思いますが、そういう面で通産省としては、先端技術を中心とする日本の技術をどうこれから開発をしていくのか。やはり世界をリードする技術力を蓄えていかなければいけないと思うのですけれども、現在でも、一部のICとかあるいは一部の分野については世界一流だと言われておりますけれども、全体としては、やはりまだ輸入に対して輸出が少ないという実態にあるわけですけれども、この現状認識はどうですか。
  49. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 具体的な問題につきましては政府委員から答弁いたさせますが、委員おっしゃるとおり、資源小国である日本といたしましては、持続的に経済を発展させる、あるいは経済を活性化させるためには、技術開発がどうしても必要であることは言うまでもございません。世界的に見ましても、先端技術の開発というものは非常に盛んである中に、近時日本は先端技術開発の創出国というような立場であることもまた期待されているわけでございまして、通産省といたしましては、今後この先端技術の開発を大いに意欲的に進めてまいる所存でございます。具体的には政府委員から答弁させます。
  50. 川田裕郎

    ○川田政府委員 先生御指摘のとおり、現在日本におきましては、先端技術が最近相当進んでおりますけれども、それは技術導入並びに生産技術の面におきまして主として進んでおるということでございまして、先進国間における技術貿易につきましては、先生御指摘のとおりまだ日本は十分ではないという状態でございます。
  51. 新村勝雄

    新村(勝)委員 そこで、先端技術、特に独創的な先端技術を開発するという点については、通産省だけではなくて、教育の基本的な考え方にも関連をしてまいりますし、また通産を初めとする行政のあり方にも関連をしてくるわけでありますけれども、この独創性ということについて、ノーベル賞学者である江崎玲於奈氏が極めてすぐれた見識を示しておられるわけでありますので、若干の引用をさせていただきたいわけであります。  江崎さんは、「異質の文明が接触するとき、紛争が避け難いことは歴史の教えるところである。私は、日本が必ずしも西欧に対決するような文明を作ったとは思わないが、西欧文明に挑戦するような要素を持っていることは否定出来ない。例えば、日本の工業製品の世界市場における際立った成功、そして貿易摩擦などは、その一つの表れと見ることが出来る。」こういうことを言っているわけです。日本の輸出ドライブあるいは貿易立国ということでありますけれども、それが極端な自己本位になると、日本文明と外国文明との摩擦というような形で出てくるのではないかというふうに江崎さんは言っておるわけですけれども、これが現在の日本の貿易摩擦の一つの側面をとらえているものではないかと思うわけです。  それから、なお、江崎さんはこういうこと直言っておるわけです。「教育面を考えても、アメリカでは独立した個性、各自、判断力、創造力を備えることを強調されるが、わが国では小さいときから、他人への思いやり、素直な心、和、気くばりの大切さが教えられる。個性は抑えられ、グループ環境の中で役割を果たす人材が育てられるのである。」アメリカでは個性を尊重して、そこから独創的な文明なり発明なりができていく。日本ではグループ活動は得意だけれども、ですから、外国の先進的なものを摂取をして、それを同化する能力は非常にすぐれているけれども、最も先端的な独創力においては欠けるところがあるんだというようなことを江崎さんは言っておられるわけです。  例えばコンピューターにしても、最初に発見してつくったのはアメリカであって、それを摂取をしてアメリカをしのぐような力になったのは日本の力であるけれども、やはり根本的な点において独創力が欠けるのではないかということで、日本人は、集団方式にはなれている、競争には強いけれども、創造能力は残念ながら欠けているというようなことを江崎さんはおっしゃっておるわけです。これは非常に示唆に富む分析ではないかと思うのです。  そうして、「端的にいえば、目標を設定して、それに邁進する集団方式は、経済価値を持つ物質的所産を作り出すには都合よいのであるが、学術、芸術などにおける価値的所産を生むには過ぎないといえる。」こう江崎さんは言っておられるわけでありますけれども、これは日本人の欠点の痛いところをついておられるのだと思うのです。  そういう点で、まだ日本は世界の最先端を行くところまでは行ってないというふうに考えられるわけで、それらについては、これから通産省の御指導等も必要であると思いますし、また文部省の教育の基本的なスタンスにも触れる問題ではないかと思うのです。  別の面からそういった点を見まして、これはこれによって日本人の独創性を判断するということにはならないとは思いますけれども、ノーベル賞を受けた学者の数、これを各分野ごとに見てみますと、物理学でも化学でも生理学でも、残念ながら日本は五番以内に入っていない。物理学はアメリカが四十七、イギリスが二十一、ドイツが十四、フランスが九、ソ連が七。化学ではアメリカが二十六、ドイツが二十四、イギリスが二十一、フランスが六というふうになっておりますし、生理学においてもアメリカが五十八、イギリスが十九、ドイツが十一、フランスが七、こういうことで、現在の段階では、まだ残念ながら先端技術の開拓という点では一歩譲るのではないか。そこの根本は、やはり日本における日本の伝統的な考え方、あるいは教育のあり方、社会のあり方にあるんだということを江崎さんは言っておられますけれども、こういった問題は、今問題になっておる教育改革ということにも関係があるのではないかと思いますけれども、こういった問題について通産大臣はどうお考えであるのか、まず大臣のお考えを伺いたいと思います。
  52. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 今生きている日本人の分類をすれば、依然として戦中派、戦後派、戦前派と分けられると思うのでありますけれども、私などはどちらかと言えば戦前派と戦中派のあいのこぐらいの教育を受けた者でございますが、そういう時代は、確かに日本というもの、あるいは日本人は、芸術においても文化において章あるいは科学においても、模倣する民族だということをよく言われ、また教育の中にも、先生方がよくそういうようなことを言ったことをよく覚えております。しかし、戦後においては、教育のあり方あるいは教育の方法というものは一変して、個性を尊重するような教育というものに変革したことは、私は事実だと思うのでございます。私と私の子供たちを比較してみましても、全く個性教育というあり方が変革しまして、そのような中で、個性教育を重んずる教育というものにおいては、日本は確かに後進国であると思うのでございます。したがいまして、現在のところは技術革新という面において多少おくれているかもしれませんけれども、戦後の卓越したその分野での教育というものが、そのような個性を尊重する教育というものが効果を発揮して、いずれは非常に英知ある日本の民族が、技術開発の面においても堂々と世界の先進国の位置を獲得するであろうという希望を私は持っております。
  53. 新村勝雄

    新村(勝)委員 大臣のお考えで、ひとつその方向に指導願いたいと思います。  それから、この問題については、文部省からおいでをいただいておりますけれども、文部省のときにお伺いすることにして、きょうは時間がありませんので、せっかくおいでをいただきましたけれども、この次にお願いしたいと思います。  終わります。
  54. 横山利秋

  55. 近江巳記夫

    ○近江委員 大臣は、近々OECDの方にお見えになる御予定と聞いております。河本さん、安倍さん、そして小此木さんと、大物閣僚が行かれるわけであります。OECDに我が国も加入いたしまして満二十歳、非常に意義ある年に行かれるわけでございまして、御承知のように、今アメリカあるいはまたECを初めといたしまして、貿易摩擦の問題等非常に厳しい国際的な環境があるわけでございます。当然そうしたこともお話しになろうかと思うわけでございますが、我が国はやはり先進国の中で非常に黒字が突出しておる。そういう点では非常に注目を集めておるわけでございます。そういう点で、相当ないろいろな腹づもりをして向こうに行かれると思うのでございますが、まず、どういう腹づもりといいますか、その辺をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  56. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 個人的なことを申し上げて恐縮でございますが、長くごじっこんにしていただいておる近江議員から過分なお言葉をもって御激励いただきまして、まことに恐縮でございます。  日本とEC委員会の閣僚会議あるいはOECDの閣僚理事会に出席のために、私は十二日から十九日までベルギー及びフランスを訪問いたす予定でございますが、日本とEC委員会閣僚会議は、世界の貿易問題、あるいは日本とECとの関係、幅広い議題につきまして、閣僚レベルで自由な意見交換を行うものでございまして、今回が第一回目でございます。この会議は、日本とECの関係の緊密化、あるいは世界貿易の活性化に対する日本とECとの協力につきまして意見交換するまたとないよい機会であると私は考えるのでございます。この会議の協議を通じまして、相互理解の増進、あるいは日本とEC関係の一層の改善等に貢献いたしてまいる所存でございます。さらに、OECDの閣僚理事会は、世界経済の回復傾向の中で開催されまして、景気回復をより一層確実なものにしなければならない、あるいは金融、貿易及び開発、そしてさらに、そのために国際貿易であるとか持続的成長の達成であるとか、そういうことを議題にいたしまして、閣僚間で活発な討議が行われる予定でございます。私といたしましては、自由貿易体制の維持と強化、あるいは積極的産業調整等を通じた世界経済の活性化、あるいは発展途上国の債務累積問題への対応、さらには新ラウンドの推進等が重要である、こういう認識のもとにこれらの会議出席いたす所存でございます。
  57. 近江巳記夫

    ○近江委員 非常に大きなテーマで話し合われるわけでございます。この一つ一つのテーマというものは極めて深い問題でございますし、なかなかそうした問題を一つ一つやっていきましても、時間の問題があろうかと思いますので、ちょっと具体的にお聞きしてみたいと思いますが、二国間のいわゆる自主規制というような問題につきましては、これは絶えずOECDにおきましては、保護主義的な傾向がある、こういうことでそうした批判があったわけでございます。これは一例でございますが、我が国とアメリカの自動車の自主規制の問題がございます。これなどは、先般、二階堂自民党さんの副総裁の方から継続するんだというお話もあったようでございますが、これは一つの具体例でございますけれども、こういう問題については、大臣としては、特に所管大臣でございますし、どのようにお考えでございますか。
  58. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 世界経済の活性化を促すためには、何といたしましても自由貿易というものを維持し、これを推進していかなければならないことは言うまでもございません。その国その国によって難しい問題を国内に抱えているとは申せ、やはり基本的には自由貿易を推進していかなければならない、世界のあらゆる国家がこの考え方を抱かなければならないものと思うのでございます。確かに、日本アメリカの自動車の問題等々先ごろございましたけれども、これはまだ八四年の問題が始まったばかりでございまして、我が党の幹部が二、三の発言をしたことは事実でございますが、私自身真意を確かめましたところ、それらの問題は、今後集中豪雨的な自動車の輸出というものがあってはならない、やはりこのような時代には節度ある対外経済対策ということを考えれば、やはり調和ある、秩序ある輸出をしなければならないのであるということが真意であったということを聞いて、私安心いたした次第でございます。
  59. 近江巳記夫

    ○近江委員 それでちょっとわかったわけでございますが、EC諸国とアメリカとのそうした空気といいますか、今まで何回か折衝されておるわけでございますが、何かECの方がちょっといら立ちがあるように思うわけですね。何となしに、日本アメリカとのそういう関係の方が政府の対応というものがどうも強いという嫌いがあるのじゃないかと思うのですけれども、大臣としてはどのように受けとめていらっしゃいますか。
  60. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 それは、単純に日本アメリカ日本とECとの距離の問題もございましょうし、あるいはそういうような歴史的沿革の中から、人間の交流というものが、片方は厚く片方は薄いという事情もあったかもしれないのでございます。しかし、近ごろは日本とECの人的な交流というものも盛んでございまして、実は私もお昼にECのトルン委員長と三十分ばかり会ってお話ししてきたばかりのところでございますが、やはり今後はこのようなお互いの人的な交流というものを盛んにして、お互いに何回も会って何回も自由に活発に議論を行うということが、案外日本とECとの摩擦というものが、もしもあるとするならば、それが解決される一番の要素ではないかということを話し合って、お互いに同感であるということを語り合ってまいりましたのですが、私は、そのような努力を我々が行うことによって、例えば製品輸入を促進することもできるだろうし、産業協力もこれを推進することができることであると確信いたした次第でございます。
  61. 近江巳記夫

    ○近江委員 確かに、そういうコミュニケーションというのは一番大事だと思います。ECの方で非常に強く言っておりますのは、やっぱり製品輸入、これは一つの具体的な目玉として非常に要求しておるように思うわけですが、これは特に所管大臣とされて、製品輸入というのは非常にそういうように向こうが要求しておるわけですけれども、我が国としてはどういう努力を現在なさっておられるわけですか。
  62. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 先ごろドイツ博が行われたということは近江委員もよく御承知のことと思いますが、あのような大きな意味での見本市的な催し、ああいうことが製品輸入に私は不可欠のものであると思うのでございます。日本もECも、お互いに我が方が輸入する、向こうが輸出するということであるならば、やはりお互いが努力しなければならない。このような努力が今まで欠けていたことは事実でございまして、日本といたしましても、ついこの間、四月二十七日に対外経済政策の新しい発表をいたしたのでございますが、その中におきましても、通産省といたしましては、ジェトロの活動をもっと盛んにする、あるいは通産省の省内に、製品輸入に関して外国と積極的に話し合うあるいは研究し合う、略称STEPというものを設けまして、製品輸入等に今後万全を期して、これを活発化を期するということを考えておる次第でございます。
  63. 近江巳記夫

    ○近江委員 この機会にひとつ我が国の立場もよく伝えてきてもらいたいと思うのです。確かにそういう黒字という点から見れば、何かこっちに負い目があるように思うわけでございますが、EC諸国にしたって逆にいろいろなそういう制限があると思うのですね。こういう点、どのようにお考えになっていらっしゃるか、こういうことはまた閣僚会議で直言うべきことは言われるのか、少しお聞きしたいと思います。
  64. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 私は、今年初めから、四極貿易大臣会合あるいは先ごろ行われましたソウルの国際貿易研究セミナー等におきまして、かなり日本の立場として、日本の通産大臣として、向こうの言うこともよく聞いてまいりましたし、また、向こうに対して言いたいことも活発に言ったと思っております。例えば製品輸入にいたしましても、日本の品物がよいから出るのであって、やはりEC諸国においてもそのような努力と宣伝をすることによって、我が国もそれを輸入する意欲がかき立てられる。お互いの努力というものがお互いの目的をかなえさせることである。今後経済の発展のために、お互いがさような力を出し合っていこうではないかと常に言ってきたわけでございますが、やはり物事を外国の人に遠慮して言わないというようなことが、私はむしろ結果として一番まずいことを起こしてしまうのではないかということをつくづく感じてきた次第でございます。
  65. 近江巳記夫

    ○近江委員 それは、ひとつ言うべきことはきちっと言って、よく交歓していただきたい、このように思います。  それから、先般、私は本委員会で、これは河本さんのときだと思いますが、お聞きしたのですけれども、アメリカ各州におきますユニタリータックスの問題ですけれども、これは一部報道されておるわけでございますけれども、大分向こうの方もそれを廃止の方向に傾きつつある、しかし州によって違うというようなことも報道されておるわけでございますけれども、これは今、現状でどういうように改善されてきつつあるのか、現状についてお伺いしたいと思うのです。
  66. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 通産省といたしましては、私だけでなしに事務方の大幹部、幹部を問わず、ユニタリータックスの問題につきましては、あらゆる機会をとらえてアメリカ側に対しまして、このような制度というものは日本の直接投資を阻害する大きな要因であるということを訴え続けてきたのでございます。私が一番最近アメリカのブロック貿易代表と会いましたのは、四月十五日のソウルでの個別会談でございましたけれども、そのときにも私は、このユニタリータックスの問題は日本の直接投資を阻害する一番大きな要因である、何とかこれを適切な解決をしていただけないかと要望いたしたところ、そのときブロック代表が、一カ月ないしは四十五日の間に改善の方向を示すということを約束してくれたわけでございます。事実、連邦政府が州政府に対してこのような改善の方向を指示するような形の言明をいたしたのでございますけれども、ユニタリータックスは何分にも州法でございますので、これがどのような効果があるものであるか、にわかには断じがたいのでございますけれども、そのような改善の方向をアメリカ政府が出したということは事実であると私どもは考えております。
  67. 近江巳記夫

    ○近江委員 これは今後も引き続いてやっぱり強く主張していくべき問題であろうかと思います。  それから、今度の会議におきましても、今大臣からもお話ございましたように、途上国の負債の問題ですね。これは今八千百億ドルぐらいになるのではないかと世銀の白書でも指摘しておるわけでございます。非常に大きな額になってきておるわけでございますが、我が国として、この問題あと少し具体的にお聞きしたいと思いますが、この問題についてはどのようにお考えですか。
  68. 村岡茂生

    ○村岡政府委員 LDCの債務累積問題につきましては、私どもは去年に比べましてやや先行きについて愁眉を開いた段階ではないかというぐあいに考えております。もちろん、先生御指摘のように、累積額そのものは毎年累増しつつあり、八千億ドルを超える水準になってまいったわけでございます。私どもとしては、長期的にこれを見ます場合には、LDCが自助努力をもちまして、特に貿易面において活路を開いていく、先進国はそのような面においてLDCを助けるということが最も肝要だと思います。中短期的におきましては、このような努力をいたしますLDCに対して、つなぎその他金融面で各種の検討を加えていかなければならない、こう考えておるわけでございます。
  69. 近江巳記夫

    ○近江委員 私は、これは八千百億ドルというのを大体申し上げたわけですけれども、政府で今大体どのくらいとつかんでいらっしゃるのか。それから、我が国の輸出保険に関係ある国々の累積債務はどれぐらいあるのですか。
  70. 村岡茂生

    ○村岡政府委員 申しわけございません、具体的な数字を手元に持っておりません。後ほど先生にお届けしたいと思います。  まず、第一点の、債務累積額に関しまして、一昨年の統計によりますと六千億ドル台であると承知しておりますが、予測によりますと、本年末におきまして八千億ドルを超える可能性があるというぐあいに理解しております。
  71. 近江巳記夫

    ○近江委員 二つ目の質問は、どのぐらいあるかとお聞きしておることは、御承知のように、この輸出保険、これはもうパンクしかけていますね。ですから、私これをお聞きしておるわけでございまして、これは社会党の先生からもさっきちょっとお触れになっておられたわけでございますけれども、非常に大きな額になろうかと思うのです。それは、直ちにそんなことは調べたらすぐわかるはずですから、すぐに報告してもらって。  この対策はどうされるのですか。輸出保険、このままでいけばパンクの状態ですね。
  72. 村岡茂生

    ○村岡政府委員 輸出保険の経営が非常に困難をきわめておるというのは御案内のとおりでございまして、とりあえず短期的には、本年度一千百四十四億だったと思いますが、財投借り入れを実現いたしましてやってまいるのでありますが、これらの国々、特にLDC諸国の国々の立ち直りというものを我々としては強く期待しながら運営してまいりたい、こう思っております。  また、同時に、こういう諸困難を抱えた債務累積国に対しまして、どのような――今まで私どもはかなり厳密な独立採算制に基づく政策を実行してまいってきたわけでございますが、これらの国々がうまく運営されていくように、かつまた、同時に、ひいては輸出保険の運営もスムーズにいくような方策について検討を進めてまいりたい、このように考えております。
  73. 近江巳記夫

    ○近江委員 それは確かにおっしゃるとおりだと思うのですけれども、ちょっと抽象論だと思うのですね。債務国に対する我が国の対応として、これは言いにくい点もあろうかと思いますけれども、もう少し突っ込んで、基本的にどういう対処をなさっていくのですか。すぐデータ、今出してもらうわけですけれども。これは債務国に基本的にどういう対処をなさるのですか。あと幾らでもぽんぽん貸すとか、どういうように――何かその基本をお考えになっておるわけでしょう。
  74. 村岡茂生

    ○村岡政府委員 まだここで御紹介申し上げるほどの検討は進んでおらないというのが現状でございますが、非常にラフな個人的な見解を申し上げますならば、債務累積国を、非常に見込みがあるといいますか、自助努力がすぐれておると申しますか、そういう国に特に着目いたしまして、そこの短期債務について輸出保険の窓口を再びあけていく、早い段階にあけていくということを検討したらどうかということを中心的なテーマにして、今後検討を進めてまいりたいと考えております。
  75. 近江巳記夫

    ○近江委員 これは非常にまた大事な問題だと思いますし、少し政府部内で一遍よく検討なさっておいた方がいいと思うのですね。それは個々のケースになってくれば非常に公に話しにくい問題はあろうかと思いますけれども、十分ひとつよくこれは検討してください。  それから、一つは石油の問題でございますが、政府備蓄、昭和六十三年度三千万キロリットルとなさっているわけでございますが、現在約半分ぐらいまで来ておるわけですね。ところが、当初お立てになった案のときには大体一日当たり百万キロリットル、現在は五十四万キロリットルですか、非常に大幅に減ってきていますね。そうしますと、現在民間備蓄で九十四日、国家備蓄で二十六日と、計百二十日あるわけですね。今後この三千万キロリットルという目標でずっといかれますと、資金需要というのは大体、いろいろなことを入れて約三兆円。そうすると、年間、利子だけでもこれは四千五百億という金が要るのですね。現実に四千五百億といいますと非常に大きな金でございまして、例えば通産省がやっている石油及び石油代替エネルギー勘定、これの総額が約四千五百億ですね。それに、こういう使用量というものはそのように減ってきているわけなんですね。今のこういう財政の厳しい中で、確かにそれは備蓄をしておけば国民は安心するから、それはいいことはいいのですけれども、その辺のめどというのは非常に難しいところなんですが、これについては十分な検討をされているわけですか。
  76. 豊島格

    豊島政府委員 先生御指摘のように、国家備蓄を最初に考えますときは、大体九十日民間備蓄をやる、それを超えて大体西欧並みといいますか、百二十日ぐらいを目標ということでございますから、三千万キロリットル、大体三十日ということであったということは事実でございます。しかし、最近で五十四万キロに減っておるということになりますと、九十日に対してさらに五十三日ですか、百四十三日分ぐらいになるということになるわけでございます。  しかし、最近のエネルギー情勢を見ますと、特に中東情勢も非常に不安であるという状況から見まして、日本のエネルギー供給構造、大体諸外国では四〇%台が石油でございますが、日本の場合は六割をまだ超えておるということでございまして、中東依存度も七割ということで、そういう意味では、そういう中東なんかのホルムズが封鎖されるというようなことになれば、一番危険性といいますか被害が大きいということでございます。  それで、西欧は果たしてどうなっているかといいますと、大体欧米の平均、IEAで百六十七日今もうやっておるわけでございまして、一番脆弱な日本が三千万キロリットルをやってもまだ百四十三日分。これはIEA方式でいいますと、一割ぐらいデッドストックがございますので、計算しますと、合わせると百二十八日ということでございまして、そんな観点から、昨年行われました総合エネルギー調査会におきます政策の総点検でも、やはりそういう諸般の情勢を見れば、この三千万キロリットルは当初予定どおりやらなくてはいけない、こういう結論が出ておるわけでございます。  なお、国際的にもIEAの会議の場等で、特に五十八年の五月のIEAの閣僚会議では、石油についてはエネルギー輸入の大宗を占めるということで十分な備蓄を今後とも持たなくてはいけないということを言われておりますし、その前の年のIEAの対日審査でも、日本は高度に輸入エネルギーに依存しておるということで、日本経済の安全性を高めるためにも備蓄はさらに増加すべきである、こういう国際的な要請ということもございまして、先ほど申し上げましたような総点検の結果も踏まえて、やはり三千万キロリットルはやっていかなくてはいけない、このように考えておるわけでございます。
  77. 近江巳記夫

    ○近江委員 それは政府としてそういう基本方針でなさっておられるわけでございますから、いずれにいたしましても、そういう状況変化が起きた場合、十分たたいた上で、よく再検討した上でこういくならいこう、それはいいのですけれども、ただ、時代のいろいろ変わる影響があっても、変化があっても、もう決めたことはそのままだ、これはやはりちょっと時代に合わないと思うのですね。十分そういうように審議をされて検討の上であるということになら結構だと思います。  それから、きょうはちょっと中小企業のことを次にお聞きしたいと思いますが、大臣も出身が中小企業の出身の方でございますし、我が国経済を支える根本的なそういう大事な立場にあるのが中小企業でございます。中小企業の重要さについてはもう大臣十分身にしみて御承知のとおりでございますから申し上げませんけれども、御承知のように、アメリカは昨年初めて中小企業白書を出しておりますね。ECにおきましては中小企業年と銘打ちまして、またことしはオランダで中小企業サミットをやるわけですね。我が国は大阪で昨年やったわけでございますが、そういう中で、こういう中小企業というものは非常に見直しをされてきておるということは、やはり何といいますか、身軽さといいますか、状況の変化に対応してスピーディーな、そういう小回りがきく、そういうような非常に特色があるわけでございまして、従来、世界的な規模、そういう中で多国籍企業が非常に大きな基盤を張っておったわけでございますが、そういう中からも中小企業というものが非常に見直しされてきておるわけですね。これは世界的な傾向になっておるわけです。ところが、大臣がいろいろ対大蔵の折衝で苦労されたと思うのですけれども、総額的にいけば五十九年度予算というのはマイナスになっておるわけですな。そういう点で、これは我々としては非常に遺憾に思うわけです。この点につきましては、最高の責任者としてひとつ大臣はどう思われますか。
  78. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 確かに、中小企業対策費は昨年に比べて数字的に多少減額されたことは事実でございます。しかし一面、通産省の一般会計予算全体を眺めるときに、中小企業対策費は、石油特会を除けばあとの半分が中小企業向けのものでございまして、財政が非常に厳しい中で我々は要求額のほほ満額は獲得したということを御理解願いたいと思うのでございます。
  79. 近江巳記夫

    ○近江委員 そういうことで、世界的にそういう中小企業というものに焦点が当たってきていますし、我が国の施策というのは、御承知のように、いろいろの状況を勘案してかなりそういう政策というものをお立てになっておる、これは外国が注目しておるところでございます。しかし、それが本当にうまく活用できているかというようなことになってきますと、やはりPR不足であるとか、制度はあるけれども利用されてないという面が非常に多いと思うんですね。今後そういう点の充実はうんとやっていただきたいと思うのです。  例えば、私たちもこれは商工委員会でつくったわけでございますけれども、マル経資金ですね。これを一つ見てみましても、貸付規模五千五百億、この融資状況を見ますと、五十七年度が四千七十六億で七四・一%、五十八年度四千百四十一億で七五・三%、こういう状況で一〇〇%消化できてないんですね。特に、従業員数五人以下の枠、これは貸付規模四千六百億円の消化率というのが五十七年度八八・六%、五十八年度七八・四%。それから、従業員数六人から二十人の枠、これが貸付規模が九百億でございますが、これの消化率が五十七年度五九・三%、五十八年度五九・二%と低いわけですね。これは一つの事例でございますけれども、なぜ消化できないのですか。これは当時、商工会を初めといたしまして非常に希望が強かったんですね。それでもこういう消化率なんですね。これはひとつ具体例として聞かせてほしいと思うのです。
  80. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 お答え申し上げます。  いわゆるマル経資金、小企業等経営改善資金でございますが、これは零細な小規模企業を対象といたしまして非常に有効にワークしておるというふうに私ども認識しております。確かに、数字的にこの充足率と申しますか、予算の消化につきましては、五十六年、五十七年と若干七〇%台に低迷いたしまして、五十八年度につきましては七五%の消化率でございました。これは、やはり基本的には五十六、五十七年度というところが非常に景気が低迷いたしまして、設備資金のみならず短期の運転資金につきましても、小規模企業者がその資金需要自体非常に落ち込んだというところに基本的な原因がございまして、五十八年度につきましては、五十七年度を上回る実績を示しておるわけでございます。この条件につきましては逐年改善をしておりまして、もちろん消化の促進に努めたいというふうに考えております。現に景気が非常に好調でございました五十五年度につきましては九四%というようなところまで率が進んでおりまして、その後増額をしたということもありまして、この消化が若干落ち込んでおります。ただ、五十九年度につきましては、設備資金の限度額を三百五十万円から四百万円に増額いたしまして、これも小規模企業者の非常に強い要望でございますけれども、そういうもろもろの条件改善をいたしておりますし、また、景気の動向も設備投資を中心に回復しておりますので、五十九年度のこのマル経資金の達成率というものは相当上向くであろうというふうに予想しておる次第でございます。
  81. 近江巳記夫

    ○近江委員 いろいろこの制度あるわけですけれども、確かに、まだ実際に借りるそういう状況というのは、手続等がいろいろ難しいわけですね。そういう点では、ひとつ常にそういう指導をよく徹底をしていただきたい、このように思うのです。  それから、例えば小規模企業対策でございますけれども、臨調答申におきまして、「経営指導員設置基準を見直し、設置定数の削減を図るとともに、増員を抑制する。」また「研修事業等各種事業に対する補助については、対象を限定するとともに、会費収入及び手数料収入増加等商工会及び商工会議所の自助努力を促すことにより、総額を抑制する。」こういうふうに来ているわけですね。この臨調の、それは確かに悪いところばかりはないわけですけれども、特に中小企業とか小規模企業の問題につきまして、こういう指導員の増員を抑制するとかいう臨調の方針というものはどんなものですか。
  82. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 全体的に厳しい財政事情も反映いたしますし、また、行政の効率化という点から申しまして、私ども行政当局としては、この臨調答申を尊重することは当然でございます。  具体的な例として指摘されました経営指導員によります経営改善事業、この指導員の設置定数の削減等でございますけれども、これは、現状でそれぞれ各地区におきます小規模事業者の数の実態あるいはそのニーズの実態を今調査しておりまして、この削減につきましては、設置定数の見直しということで現在検討中でございます。それから、増員の抑制という問題でございますけれども、全体的に状況は厳しいわけでございますけれども、経営指導員の必要性あるいはこの有効な運用ということをあわせて考慮しながら、しかし、増員につきましては、五十七年度以降も五十一名、五十八年度二十三名、五十九年度は十八名というふうに、必要な増員につきましてもこれを確保しておるという状況でございます。
  83. 近江巳記夫

    ○近江委員 中小企業の対策につきましては、大臣もよくそういう点を見きわめていただきまして、ひとつ一層の充実をお願いしたいと思うのです。  これはまたもう一つの事例でございますが、中小企業倒産防止共済制度の問題でございます。これは五十八年十一月の行政監察局の調査結果の報告書でございますが、こういう資料等も目を通してまいりますると、本制度発足当時の見通し、それからまた実績を見ますと、五十三年から五十七年度、共済契約者数、当初見通しというのは七十万件になっていますね。ところが、実績は五万五千五百件なんですよ。これは余りにも格段の差があるのですな。ですから、私が申し上げたように、中小企業の制度というのはたくさんある、よその国にないものをつくっていらっしゃるわけですけれども、現実にそういう制度はっくったけれども、実際のそこに生きでない、そういう点が多々見受けられるわけですね。これはどういう理由ですか。
  84. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 先生がただいま挙げられました当初計画というものは、この倒産防止共済制度に関します法律の制定当時の見通しではなかったかと思います。その後、法改正も含めまして、この倒産防止共済の活用につきましては、PRも含めましていろいろな努力をしておる次第でございます。  最近の趨勢で申しますと、五十八年度につきましては、銀行の取り扱いということも始めました関係から、前年比五割以上の増加をしておるという状況でございますし、また、この一月以降の加入率は、前年同期を七二%上回るという、非常に急速な伸びを示しておるわけでございます。累計で申しますと、加入累計で六万九千件加入しておりまして、貸し付けもその約三分の一でございます二万三千件というものが貸し付けられて、貸付金額では一千八億円という実績を示しております。確かに、当初の冒頭の計画に対しましては依然としてこれを下回っておるということでございますけれども、個々のケースをよく見てみますと、連鎖倒産の防止に対しまして非常に有効にワークしておるということが一方で言えるわけでございまして、私どもといたしましては、なおこの制度のPRも含めまして、小規模企業者あるいは中小企業者の加入促進に努めてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  85. 近江巳記夫

    ○近江委員 例えば、この共済制度の加入促進のために、掛金の助成措置をとっている自治体があるのですね。日立、それから日向市、一年間掛金の一〇%の補助をやっておるのです。こういうような、今あなたがおっしゃったような銀行ですか、そういう方法もあるでしょう。やはりいろいろそういう知恵を働かせて、関係各省なり、いろいろな制度をつくった以上、ひとつもう少し知恵を働かせてもらいたいと思いますね。どうですか。
  86. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 倒産共済制度でございますので、共済加入者の数を極力増加させるということが、この制度の有効活用あるいは運営の安定という面で有効であるということは、もう御指摘のとおりでございます。  この法律は、五年ごとに見直すということになっておりまして、昭和六十年度、すなわち来年度はその見直しの年になっております。既に、私どもといたしましても、共済制度の基本的な枠組み等につきまして、どういう点を直せばより有効に作動するかということを検討を開始しておるわけでございますけれども、既に始めておりますPRの事業、あるいは各中小企業団体の活用、金融機関の活用という現行の運用強化とあわせまして、制度自体の枠組みにつきましては十分これを強化改善するということで、来年度の法律改正案として御提出申し上げたいというふうに考えておるわけでございます。
  87. 近江巳記夫

    ○近江委員 今長官からお話がありましたので、十分ひとつそういう点を踏まえて、非常に有効に生きるそういう制度をするための法改正をひとつやっていただきたい、このように思います。  それから、中小企業の悩みというのはいっぱいありますけれども、仕事がない、こういう悩みが非常に大きいわけでございますが、官公需の問題、私はこれはもう常にずっと、非常に地味な問題ですけれども、予算委員会におきましても何回もこれを取り上げ、やってまいりました。そういうことで、徐々にこの比率というものが上がってきておるわけでございますが、昭和四十一年の官公需法制定当時、中小企業向けの発注割合、これは五〇%にするというのが当面の目標であったと聞いておるわけでございますが、現在、やはりまだ三七・三%ですか、そういう状況なんですね。これは通産大臣のもと、中小企業庁長官がペアとなって各省庁に働きかけ、そういう効果を上げてきておられるわけでございますが、やはり五〇%ぐらい早く到達するように力を入れてもらいたい、このように思うのです。この目標達成に対する大臣また中小企業庁長官の決意なり見通しについて、ひとつお伺いしたいと思います。
  88. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 官公需の中小企業向け発注率の確保というのは非常に重要な問題でございます。従来も、例年関係各省と十分な協議をしながら、その比率の向上に努めてきたわけでございますけれども、私どもといたしましては、三七・三%という率を少しでも前進させたいというふうに考えております。  ただ、大型予算と申しますか、予算全体が厳しい中で大規模プロジェクトの割合がだんだんふえておるというようなこともございまして、なかなかこの率を一挙に引き上げるということは容易なことではございません。ただ、官公需適格組合の増加とか、あるいは中小企業向け指定品目の増加というような制度の改善を含めて、比率の上昇に努めてまいりたいと思っております。三七%余というのは、国と国の機関の発注比率でございまして、官公需法の中に規定されております努力目標としての地方公共団体の発注比率を含めますと、全体で六割既に中小企業向けに発注されているという実績がございます。私どもといたしましては、地方公共団体、国、国の機関というものを総合いたしまして、中小企業向け発注比率を高めてまいりたいと思います。  五十九年度の比率の策定につきましても既に作業に入っておりまして、春早々に、各主要官庁の官房長あるいは会計課長にお集まりいただいて、極力この目標を高めるということで、既に要請をしております。七月をめどといたしまして、五十九年度の目標比率を定めてまいりたいというふうに考えております。
  89. 近江巳記夫

    ○近江委員 この五〇%という目標を設定いたしまして、中期計画といいますか、この年度にはこれだけ引き上げる、この年度はこれだけ引き上げる、そしてまた、いわゆる行政監察というのをしょっちゅうやって、なぜあなたの省は達成できないかということを、絶えず責任持って厳しくその点を指摘してやっていくということ、やはりその都度その都度、何とか私たちは努力しているんですがという、同じことの繰り返しがあるんですよ。ですから、そういう中期計画といいますか、そういうものをお立てになって、通産省中小企業庁が責任持って各省庁を督促していく、督励していく、そういう目標設定と、それに達する努力といいますか、そういうものがないと、その都度その都度委員会で、私ども努力しているんですがという応酬であってはならぬと思うのですね。そういう計画をお立てになる意思はありませんか。
  90. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 近江委員の御趣旨と申しますか、お気持ちは私どもも同じくしておるということだと思います。ただ、私どもこの目標率と申しますか、目標の額と率につきましては、実際にこれは実効あるものでなければいけないというふうに考えておりまして、各省ごとにそれぞれ相当きめ細かい予算の発注の計画をつくって、それぞれの年次におきまして計画を決めておるわけでございます。また、各年次で予算の内容が変化いたします。必ずしも中小企業にはそもそも発注できないような大型プロジェクトというものも最近はウエートがふえております。したがいまして、長期計画あるいは中期計画というものを設定いたしましても、予算の性格あるいは各省の予算の中身によりまして、それが実行ができないということもあり得るわけでございまして、私どもとしては、これを年々引き上げていくということで、実績を上げてまいりたいと思っております。  過去の数字を見ましても、先生が先ほど指摘されましたように、趨勢として着実に中小企業向けの発注比率が高まっておるわけでございまして、関係各省の努力とその意欲について御評価をいただきたいというふうに考えております。
  91. 近江巳記夫

    ○近江委員 大臣は非常にまじめな人であるということは私はよく知っておるわけでございますが、中小企業の倒産が小此木大臣のときに史上最悪を記録してしまったわけですね。いろいろ原因はあろうかと思うのですけれども、一万九千百五十五件というのは戦後最高です。確かに、一千万円以上というのは、二十年もたっているわけですからそういう点でそこにはいろいろな皆さんのお声もあろうかと思いますけれども、そこまでの史上最悪の記録を示しておるわけですね。また、今までのデータを見ましても、三月、四月もこれは史上最悪ですね。その原因はいろいろあろうかと思うのですが、最高のときの長官、また大臣は、どういうわけでこれだけの倒産が起きたか、どういうようにお考えですか。
  92. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 倒産の傾向と申しますか、内容を見てまいりますと、業種的に申しますと建設業と小売業が六割以上を占めております。中小企業が非常に依存しております土木建設、あるいは個人消費という内需の大宗を占めております分野が、全体は景気回復をしておりますけれども、その部分につきましては、もう一つ力強さに欠けるという状況が、五十八年度を通じまして現在まで来ておるわけでございます。したがいまして、この倒産の主要原因が、建設、小売業を中心といたしまして販売不振、受注不振といういわゆる不況型の倒産に見られるということが、倒産のレベルが高い最大の原因だと思います。やはり長期不況の影響を受けまして、中小企業の中でも、体力を消耗しまして景気回復のめどが先に見えながら息切れ倒産をするというタイプが最近の不況の主原因ではないかというふうに見ておるわけでございまして、こういう状況が長く続くということは、中小企業にとりまして非常に寒心にたえないところでございますので、私どもとしては、もろもろの倒産防止対策を金融面あるいは相談事業の充実という点から手当てをしておるということでございます。輸出の好調あるいは内需の回復という景気のトレンドが回復するに従って、この倒産も平準化してくると申しますか、落ちついてくるということを心から期待しておるわけでございます。
  93. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 私が別の仕事をしておるときには、法案の成立率がかつて最高の率を上げたのでございますが、通産大臣となりまして、倒産件数中小企業に関して非常に多くなったということは、非常に不運なことだと思っております。しかし、不運と言っては非常に恐縮な話でございまして、今後このような深刻な中小企業の倒産ということを厳粛に受けとめて、何らかの措置を考えなければならないと思っております。  過日も全国通産局長会議を開いて、北海道から沖縄に至るまでの局長の報告を聞いたのでございますが、確かに、日本経済というものは、テンポは非常に遅いけれども回復基調にある、しかしながら、地域的には非常にばらつきがあって、今も中小企業庁長官がお答えいたしましたように、建設業、小売業を中心としてまだまだ景気がいい状況ではないということ等を聞いたわけでございますが、今後、さまざまな倒産対策あるいは中小企業対策等をもっともっと啓蒙しながら、これを推進して万全を期していく所存でございます。
  94. 近江巳記夫

    ○近江委員 先ほど申し上げました官公需のそうした中小企業向けの発注を初めといたしまして、諸制度のPR、また実際の手続の簡素化であるとか、中小企業政策の総点検をされて、実機にそれが有効に働くように持っていっていただく、こういうことをフル活動することによって相当な成果が上がってくるのではないか。根本的には、内需喚起の拡大、政府の一体となった取り組みが必要かと思いますが、そういう点で、十分中小企業をよくフォローしていただきまして、その対策の充実に力を注いでいただきたい、このように思います。  もう少し時間がありますので、お聞きしたいと思いますが、新燃料油開発技術研究組合というのがあるわけでございます。これは通産省が研究開発補助をやっておるわけでございますけれども、麦わらであるとか木材から低コストでアルコール燃料をつくる量産技術の開発に世界で初めて成功したということが報道をされているわけでございます。これの簡単な報告と、今後この成果というものはどのように生かされていくのか、こういうことは非常にいいことだと思いますので、ちょっとお聞きしておきたいと思います。
  95. 松尾邦彦

    ○松尾政府委員 ただいま御質問の新燃料油の技術開発につきましては、かねてから石油にかわる新しい燃料の技術開発を進める一環といたしまして研究開発に取り組んでいるわけでございます。先般新聞にも若干報道がございましたけれども、まだ開発の緒についたばかりではございますけれども、将来石油にかわるべき燃料として、今後時間をかけて、民間の総力を結集しながら、何か成果が上がるように着実な進展を見るよう、年々の予算で考えてまいりたいと思っております。現在の段階では、今後の開発にまだ相当期間を要するものかと思いますので、その成果を見届けるにつきましては、ある程度長い時間をかけて取り組んでいくことにいたしたいと考えております。
  96. 近江巳記夫

    ○近江委員 何か抽象的な報告であったように思いますが、補助金を出して、国民が非常に注目しているようなことについては、ロケットじゃないけれども、またさらに二弾、三弾という取り組みもあるわけですね。それを通産省の皆さんは、ただ担当が別だというんじゃなくして、十分ひとつよく注目をしてバックアップをしていただきたい、このように思うわけでございます。  世代電子計算機基本技術開発促進補助金は、第四世代のあれが五十四年から五十八年、予算総額が二百三十五億、補助率五〇%、こうなっておるわけでございますが、これはほぼ成功しておると思うのですね。これだけ補助金も出しておるわけでございますが、この出した分の収益納付というのにつきましてはどういうふうになっているのですか。  それから、同じように、電子計算機新機種開発補助金、四十七年度から五年間、補助総額五百七十五億、補助率五〇%、これは電子計算機メーカー六社ですね。こういう収益納付というのは大体どういうふうになっているのですか。
  97. 児玉幸治

    ○児玉政府委員 先生御指摘のございました第一の方の、新世代のコンピューターにつきましては、収益納付は五十九年度から始まることになっております。  それから、第二点の、電子計算機の新機種の補助金でございますけれども、これは昭和四十七年から五十一年まで補助金を交付いたしまして、五十二年から五十六年まで収益納付をさせまして、その収益納付額は四十三億円でございます。こちらの方はそういうことで実績が出ておりますが、第一の方の制度につきましてはこれからのことでございます。
  98. 近江巳記夫

    ○近江委員 今あなたがおっしゃったのは第五世代のコンピューター開発でしょう。第四世代はもう終わっているのと違いますか。五十四年度から五十八年度ですよ。
  99. 児玉幸治

    ○児玉政府委員 第四世代のコンピューターの開発がそういうことで終了いたしまして、収益納付の始まるのが五十九年度からということでございます。
  100. 近江巳記夫

    ○近江委員 超LSI研究組合補助金、これは五十一年から五十五年ですね。これはどうなっていますか。
  101. 児玉幸治

    ○児玉政府委員 超LSIの開発費の補助金につきましては、昭和五十一年度から五十四年度まで四年間にわたりまして補助金を交付いたしました。その成果が企業化されるのを見ながらということでございまして、昭和五十八年度から六十二年度までの五年間にわたりまして収益納付をさせることにいたしております。したがいまして、五十八年度分についての手続が始まるわけでございますが、ちょうど五十八年度が終了したところでございまして、具体的な手続はこれから始まるわけでございます。
  102. 近江巳記夫

    ○近江委員 こういう研究開発というものにつきましては、やはり今後は一層力を入れていく必要があろうか、このように思うわけでございますが、確かに、今情報化の時代の中で、電電法案等も国会で審議されているわけでございますけれども、特にまた通産関係にかかわってくる問題も非常に多いわけでございますが、特に通信回線の利用、ソフトウェアの保護、あるいはまたコンピューターセキュリティーの確立、こういうことが非常に大きな課題になろうかと思うわけでございます。しかし、見ておりますと、役所同士の縄張り争いといいますか、そういうことで非常に放置されておるというか、進まないケースが多々あるわけですね。こういう点は、ひとつ各省でよく話し合われて、国民の利益ということをベースに今後やっていただきたい、このように思うわけです。  例えば、プログラム保護法というのは、これは文化庁との間で何かもめておるように聞いておるわけですが、現状についてひとつ報告をしていただきたいと思います。また、見通しについてもお聞きしたいと思います。
  103. 児玉幸治

    ○児玉政府委員 コンピュータープログラムの保護をどういうふうにしていくかということにつきましては、昨年の二月以来、産業構造審議会の中で検討をしていただきまして、昨年末答申をいただいたわけでございます。これに基づきまして、新しい法制でコンピュータープログラムのよりよい保護を図るためにプログラム権法、これは仮称でございますけれども、そういった形の法律をつくりたいということで関係方面の調整を進めておることは、近江先生まさに御承知のところでございます。しかしながら、私どもの考えておる事柄につきましては、一面においては米国との間に、また国内におきましては、先生御指摘のように文化庁との間で意見に相違がございます。したがいまして、このプログラムという非常に大事な問題につきましてどういう制度をつくるかということにつきましては、これはじっくり時間をかけて、間違いのない、いい制度をつくらなければならないという観点から、それぞれに議論を現在続けているところでございます。文化庁との折衝も、そういうことで事務的に非常に丹念に話を進めているところでございます。ただ、先ほども申し上げましたように、コンピュータープログラムの権利というものは、私権の設定にかかわる大事な法律でございますので、時間をかけてこれから事務的に十分調整を進めてまいりたいと思っております。
  104. 近江巳記夫

    ○近江委員 一つの法案をつくるということは、確かに、今のようなこういう日進月歩の時代でございますから非常に難しい、よくわかります。わかるだけに、また真剣にお取り組みをいただきまして、国民の納得のできる、時代のニーズに合った、そういう中でひとつそういう政策というものを進めてもらいたいと思います。それが、何となしに見ておりますと、ともすれば、縄張り争いであるとか、一つの壁にぶつかると進まないというようなことが非常に多いわけですね。そういう点、十分な、まとめ役といいますか、通産省というところはやはりそういう役所の性格があるわけですね。ですから、そういうまとめ役といいますか、そういう点では大いに小此木大臣に期待するところが大であるわけです。今後ひとつうんと努力をしていただきたい。最後に、大臣から、今後のそういう時代に乗っていく通産省最高幹部としての決意をお聞きして、終わりたいと思います。
  105. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 過般、二、三の問題でもって、通産省が他の省庁と縄張り争いというようなことをおもしろおかしく新聞等に書き立てられたことは確かに事実でございますが、真実はそれほど醜い縄張り争いというふうなことではございませんで、やはり真剣に通産省が他の省庁と調整のために努力した、あるいは国家、国民の利益を考えて真剣にこの正しいやり方を追求したということでございまして、近江委員におかれては、その通産省の真意というものをぜひ温かく御理解願いたいのでございます。産業経済振興全般を預かる通産省といたしましては、今後、自由な気概を持って、日本の産業振興のために大いに働く決意であることも御理解願いたいと思います。
  106. 横山利秋

    横山委員長 この際、先ほどの近江委員質疑に関し、杉山貿易局長から発言を求められておりますので、これを許します。
  107. 杉山弘

    ○杉山政府委員 先ほど近江先生から輸出保険問題について御質問ございまして、通政局の村岡次長からお答えをしたところでございますが、若干私から補足して御説明を申し上げたいと存じます。  まず、お尋ねのございました発展途上国の債務累積額でございますが、御指摘があったと伺っておりますが、昨年末で八千百億ドルございまして、八二年末に比べますと約四百五十億ドルぐらいふえているようでございます。こういった最近の発展途上国の債務累積問題に端を発しまして、輸出保険特別会計、御指摘のように赤字傾向になってきております。  その現状、見通しについて御説明を申し上げますと、輸出保険特別会計、最近では昭和五十七年度に単年度収支で六十億円の赤字を計上いたしました。これが最近におきましては単年度の収支の赤字化した最初でございまして、五十八年度では二百九十億円、五十九年度は約千九百五十億円ということで二千億円弱の赤字になる見込みでございます。  将来の問題につきましては、発展途上国の債務累積問題につきましても、危機的な状況を脱したというふうに言われておりますし、世界経済、一次産品価格の問題等々、発展途上国にとりまして若干最近は好転の兆しを見せております。そのほか輸出保険の場合には、やはり期間別に見ますと、現在に近いところほど債務累積が多くて、将来になりますほど責任残高というのはだんだん小さくなるものでございます。そういうことを考えますと、私ども今一応想定しておりますところは、五十九年度の単年度収支で約二千億円弱の赤字というものが一応ピークで、六十年度以降は、もちろん赤字でございますが、その赤字幅は徐々に小さくなっていくものというふうに期待をいたしておるわけでございます。  ただいま申し上げましたように、単年度収支では赤字でございますが、この債務繰り延べに伴います輸出保険の保険金支払いは、通常の場合と異なりまして、国と国との約束で新しい返済計画に従って各国返してまいりますので、各国から返済をしてまいりますと、それが輸出保険特別会計には回収金という形で収入に上がってまいります。そういうことを考えますと、単年度の収支は赤字でございますが、中長期的に考えますと、決して今現在で輸出保険特別会計の収支採算基盤が失われている、こういうふうには考えられませんので、とりあえず、当面のところは、まだ保険料の引き上げといったような抜本的な対応によらずとも、資金繰りの問題として処理が可能ではないか、かように考えているわけでございます。  それから、第三点のお尋ねがあったと承知しております、こういったリスケ国に対する輸出保険の引き受け態度の問題でございまして、従来輸出保険は、債務累積国のリスケジュールが決まりますと一切お引き受けをしないというような態度をとっておりました。債務累積国は、現在では輸入を抑えできるだけ輸出を伸ばすという格好で国際収支の改善努力をいたしておりますが、これは国内の緊縮をベースにいたしておりまして、こういった状態はなかなか長く続かないということ、それから、先ほど申し上げました八千億ドル以上に上ります累積債務の返済をできるだけやっていくためには、発展途上国にとりましてもやはり国際収支の拡大均衡ということが必要だろうと思います。そういう観点から、最近では、諸外国の輸出保険機関を含めまして、リスケジュールがあったからといって直ちに保険を一切引き受けをストップする、こういう態度はいかがなものか、こういう反省が出てきているようでございまして、こういう点を参考にしながら、私どもも、保険の収支相償の原則と相矛盾しない限りにおいて、できるだけ従来の引き受け態度を見直しまして、債務累積国の経済発展に輸出保険の面でもできるだけ協力をする、こういう方向で考えていきたいと思いまして、現在部内においてその具体策を検討中のところでございます。  以上、簡単でございますが、補足して御説明させていただきます。
  108. 近江巳記夫

    ○近江委員 終わります。
  109. 横山利秋

    横山委員長 神田厚君。     〔委員長退席、新村(勝)委員長代理着席〕
  110. 神田厚

    ○神田委員 通産省所管の問題につきまして御質問を申し上げます。  まず、最初に、五月九日の経済審議会におきまして、一九九〇年代をにらんだ長期的な立場から民間設備投資を盛り上げるような誘導策を真剣に考える必要がある、こういう意見が大勢を占めたと聞いておりますが、私どももこの意見に賛成であります。  そこで、通産省も民間設備投資の問題を持っておりますが、民間設備投資の今後の動向についてどのような見通しを持っておりますか。また、民間設備投資を盛り上げるために新たな施策を検討する考えはありますか。いかがでありますか。
  111. 山田勝久

    ○山田(勝)政府委員 民間設備投資の現状でございますけれども、昨年秋以降、民間の各機関の調査結果が、以前に調査したものよりは上方修正されております。また、最近通産省が調査いたしました結果によりましても、五十九年度におきましては、一部の産業を除きましてほとんどの業種で設備投資額を増加させるという計画が出ておりまして、全体として持ち直しの動向にあると認識してございます。  まさに、先生御指摘のように、設備投資というものは、内需中心の経済成長を図るとの観点が一つございますけれども、それのみならず、今後、中長期的観点からも我が国の産業の活力を維持し、その長期的な発展基盤を形成していく、こういう目的のために非常に重要な役割が期待されているものでございます。一政府といたしましても、このような観点に立ちまして、民間設備投資を増加させていく、そういうことを目途といたしまして、エネルギー利用効率化の投資促進税制、あるいは中小企業におきます先端技術を体化した設備投資を進めるいわゆるメカトロ税制というものを講ずる施策を行ったわけでございます。今後も、このような設備投資の回復基調、これが定着していくように、そして経済の動向を見きわめながら、適切な経済運営を行っていくことが必要と考えておりまして、先ほど申し上げました税制の効果というものが出てまいる、このように見ておるわけでございます。
  112. 神田厚

    ○神田委員 そのほかで新たな施策というものを検討する、こういう考え方はありますか。
  113. 山田勝久

    ○山田(勝)政府委員 ただいま申し上げましたように、先般この税制措置が動き始めたばかりでございます。せっかくの税制でございますので、これを適切に運用し、その効果が出てまいるように努める、これが私どもが現在行っていく方針でございます。
  114. 神田厚

    ○神田委員 経済審議会の席上、河本経済企画庁長官は、「日米間の大幅な貿易不均衡の改善や我が国の財政再建を進める上で、新たな内需振興策が必要になっている」と発言していると聞いておりますが、通産省としては、新たな内需振興策の必要性についてどういうふうな見解をお持ちでありましょうか。
  115. 山田勝久

    ○山田(勝)政府委員 私どもといたしましても、貿易不均衡の改善等の観点、非常に重要でございます。内需を中心とした景気回復を一層確実なものとし、そして製品輸入を増大させていく、これが必要と考えておるわけでございます。そのために、五十九年度予算におきましても、先ほど御答弁の中に出てまいりました設備投資減税のほかに、所得税の減税も行いましたし、あるいは各種の規制緩和を行うことによりまして、公共的事業分野へ民間の活力を導入するということも行っておるわけでございます。  それから、金利の引き下げ、これが設備投資を誘発するということも考えられますので、先般来、公定歩合の引き下げでございますとか、あるいは長期プライムレートの引き下げでございますとか、こういうことを行ってまいったわけでございます。  それから、五十九年度の上半期につきましての公共事業の内需振興という関係から見まして、各地域の経済情勢に十分配慮しながら、公共事業を機動的にかつ弾力的に施行していくという方針を、先般、四月十七日でございましたか、決定をしたところでございます。各般の内需振興策というものを現在講じたところでございますので、今後につきましても、経済の動向を注意深く見守りながら、引き続き適切かつ円滑に、機動的に経済運営を行っていくというところでございます。
  116. 神田厚

    ○神田委員 次に、新素材開発促進法の制定問題についてお尋ねをいたします。  新素材産業は将来我が国を支える一分野になると期待されているわけでありますが、政府として今後積極的に助成していくための法制化を行う考え方がありますか。その背景を含めて御説明をいただきたいと思います。
  117. 山田勝久

    ○山田(勝)政府委員 まさに、先生御指摘のとおり、新素材は非常に重要な産業となっていくものでございます。従来の素材にはない特性あるいは機能というものがございます。そして、電子機器、宇宙、航空機、海洋開発、エネルギー開発などの技術先端分野の発展のかぎを握るものでございます。また、同時に、新しい生産プロセスあるいは新製品を開発することによりまして、既存の産業を活性化し、高度化するということに効果がございます。それから、新素材産業というものが一つの先端技術産業分野を形成していく、こういうぐあいにいろいろな波及効果も含めまして重要な産業になっていくわけでございます。  しかし、現在はまだ胎動期、草創期と言っていいかと思いますけれども、これをさらに産業として進めていくための技術開発、この辺が現在の課題でございます。研究開発、そのための人材、それからでき上がる素材というものが受容されていくように評価をする、いろいろな解決すべき課題が多うございます。このためにこれまで行ってきております新素材の研究開発、例えば次世代産業技術開発制度というので行っておりますけれども、これはもとよりでございますが、現在これからどんな課題があるか調査検討を行っているところでございまして、その調査検討をしていく中で、先生御指摘の、これは非常に重要なんだ、これから伸ばしていくためにはどうしたらいいかということの対応策を検討してまいる所存でございます。
  118. 神田厚

    ○神田委員 そうしますと、法律として積極助成を行うための法制化という問題についてはどういうふうにお考えでありますか。
  119. 山田勝久

    ○山田(勝)政府委員 ただいま申し上げましたように、現在どのような課題があるか調査検討中でありまして、どう対応していったらいいか、いろいろな方策があるかと思います。したがいまして、現段階では法制化をする、しないということも含めまして、どういった方策が一番いいだろうかということを検討している段階でございます。
  120. 神田厚

    ○神田委員 それでは、この新素材の市場について将来的にどのような規模あるいはどのような程度に見込んでおりますか。
  121. 山田勝久

    ○山田(勝)政府委員 新素材を若干分類してみますると、一つが高機能性高分子材料というものでございます。これは軽くまた強度が強い、そういった構造材料のようなものでございます。それから、第二番目がファインセラミックスでございます。これはICの基板あるいは自動車用のエンジンなどに利用されます。それから三番目が新金属材料でございまして、アモルファス金属でございますとか、あるいは超電導合金などに使われるものでございます。最後に、第四番目が複合材料、宇宙、航空、自動車部材などの分野に利用されるわけでございます。  こういった新素材は、その実用化に伴いまして、この新素材の市場だけではなくて、その生産過程において中間投入する、そういった原材料も市場が拡大する、あるいは新素材を利用し内部にはめ込んだ新製品を拡大するといった面で直接間接に波及効果がございます。  今、一定の前提条件で紀元二〇〇〇年という時期に一体どのくらいであるか、この間試算をいたしたところ、純粋な新素材製品というものでは五兆四千億円という試算が出たわけでございます。しかし、関連の素材を含めますと十兆二千億円ということになりますし、先ほどのこれを使った製品が出てくる波及効果と呼びます、こういったものも全部ひっくるめますと、実は六十三兆円というのが紀元二〇〇〇年における新素材及びその関連市場であるというふうに試算をいたしております。
  122. 神田厚

    ○神田委員 民間のシンクタンクであります三菱総研等の試算によりますと、二〇〇〇年までの拡大需要は先端技術二十兆円、技術波及六十兆円、こういうふうになっております。新素材のほかにほかの先端技術、例えばバイオテクノロジーあるいはエレクトロニクス、通信等の将来の市場規模を考えていきますと、どんなふうな形になるでありましょうか。
  123. 山田勝久

    ○山田(勝)政府委員 民間のシンクタンク、例えば三菱総研が試算をしているものもございます。また、私どもも、先生御指摘のような新素材以外のバイオテクノロジーあるいはエレクトロニクスも一部試算を得ておりますけれども、いろいろの計算のやり方によりまして違ってくるわけでございます。例えば、バイオテクノロジーにつきましては、工業技術院の委託によりまして民間の研究機関が行った計算結果によりますと、化学工業における新プロセスの実現、あるいは新しい医薬品の製造によりまして、ちょうど西暦二〇〇〇年、先ほどの数字と同じ時点でございますけれども、四兆円から七兆円という数字が出てございます。それから、エレクトロニクス関係でございますけれども、これは関連業界の試算でございますけれども、二〇〇〇年の数字はちょっと出ておりませんが、一九九〇年におきましてその市場規模は二十兆円でございます。ただ、今まで述べましたこの金額は大体におきまして昭和五十六年ぐらいの固定価格でございますので、物価の調整はまたする必要があろうかと思います。いずれにせよ、先端技術産業にどのような産業を含めるかということもございますし、また、実用化の速度というものがユーザーの動向に大きく作用されますので、ある一定の前提を含めた数字であるということを御了承願いたいと思います。
  124. 神田厚

    ○神田委員 新素材技術開発のように、ほかの先端技術についても積極的な助成策をとるべきであるというふうに考えておりますが、その辺につきましてはどういうふうにお考えでありますか。
  125. 山田勝久

    ○山田(勝)政府委員 高度先端技術の開発は、これからの日本の産業構造の高度化、知識集約化、あるいは日本という国の性格上資源小国でございますので、これからは創造的な技術立国として立っていかなければならない。あるいは国際社会における日本の立場を考えますと、こういう技術開発ということによりまして、世界あるいは国際的な社会に貢献していくという役割もあろうかと思います。したがいまして、通産省といたしまして、こういった先端技術の開発というものは、私どもの政策上非常に大きなトップランキングのものでございます。  さて、これらの先端技術の研究開発は、本当を言いますと、通産省もやっておるわけでございますけれども、民間主体というウエートが高こうございます。そのバランスをとりながら、どういうところを政府が行い、どういうところを民間の活力でやるべきかという問題が一つございます。私どもの分担するところでは、リスクが大きい、あるいは開発期間が長い、あるいは莫大な資金を要して、民間にゆだねるのみでは円滑な研究開発が期しがたいというようなところに政府の役割が大きいのではないかと思います。  また、技術開発の段階では、基礎的なものの状況では政府の役割が大きくなってくるのではないかと思います。日本だけではなくて、米国その他欧州各国も政府がこういった面での大きな役割を持っておりますので、私ども今後とも政府が積極的に研究開発政策を行っていくというふうに考えておるわけでございます。  先ほどの新素材を初めとして、八〇年代から二十一世紀にかけまして大きな技術革新のうねりが参ります。こうした状況下で、中長期的に見まして、先端技術というものに対する政府の役割を認識し、かかる観点から、今後とも積極的に技術開発政策を行っていきたいと思っている次第でございます。
  126. 神田厚

    ○神田委員 審議官の答弁で大体方向としてわかってきましたが、大臣は、この新素材問題、さらには、新素材のほかの先端技術の助成問題についてどういうふうにお考えでありますか。
  127. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 新しい時代に即して新素材の技術開発が何といっても必要でございますし、また、先端技術の開発といたしましても、通産省としてはこれを開発推進していかなければならないことは言うまでもございません。当面、通産省が新しい時代に処しても技術開発を推進するということを第一の目標として、これを行ってまいる所存でございます。
  128. 神田厚

    ○神田委員 次に、半導体問題について二、三、質問をいたします。  現在、半導体の世界的な供給不足のもとで、半導体業界の設備投資が大変活発になっております。しかしながら、業界の間では一九八六年時点での供給過剰を指摘をしている向きがありまして、生産過剰によるいろんな問題が心配をされております。ところで、そこで政府は、この半導体の生産能力の増大並びに世界の半導体需要の半分を占める米国の景気動向をどのように見ておりますか。また、その結果、供給過剰が将来生じるというような考え方にお立ちでありましょうか。いかがでありましょうか。
  129. 村岡茂生

    ○村岡政府委員 まず、第一の、米国経済の状況について簡単にお話し申し上げたいと思います。  現在米国経済は、個人消費、住宅投資、設備投資、こういう各面の伸びを中心にいたしまして、全般的に非常に強い勢いで伸びてまいっております。GNPの実質成長率は、八四年の第一・四半期におきまして年率換算で八・三%、米国では余り考えられないほど強い勢いで伸びてまいっております。八四年年間を通じましても五・九%、こういう勢いで伸びるものと予想されております。  今後の見通しでございますが、先生御指摘のように、こんなに速いスピードで伸び続けることはないのではないかということを示す幾つかの指標が出ております。例えば鉱工業生産指数でございますが、この三月には、二月に一・〇に対しまして〇・四ということに若干下回ってきておりますけれども、一般的には、スピードはやや遅くなりますものの、年内は少なくとも拡大が続いていくと思われております。さらに、経済政策の運営が適切に行われますれば、来年に入ってからもこのような拡大基調は、ある程度スピードは鈍化いたしましても伸びが継続されるというぐあいに期待されております。
  130. 児玉幸治

    ○児玉政府委員 半導体をめぐりますアメリカのマーケットにつきましては、ただいま村岡通商政策局次長から御説明をいたしたとおりでございます。翻って、我が国においてこの半導体産業はどういうふうな状況であろうかということでございますが、御承知のように、急激な技術革新によりまして、需要のすそ野が急速に拡大をしつつございます。そういうことを背景として、半導体産業はこのところ趨勢的に大変順調な発展を続けているわけでございます。現在、世界的には需給が非常に逼迫しているということもございまして、先ほど先生が懸念を表明されたわけでございますけれども、設備投資も大変活発に行われていることは事実でございます。ただ、確かに、例えば八三年度につきましても設備投資は我が国におきましても大体三千六百億円ぐらいの投資が行われる見込みでございますけれども、一見大きな金額のように見えますが、ここ数年、これから先の需要の伸びを業界なりに判断して設備投資をいたしているわけでございまして、その範囲におきましては、それなりの考え方に基づくものではないかというふうに考えられるわけでございます。  それでは、今後どういうふうに見ていくかということでございますが、先ほど来国についての話にも出てまいりましたように、一時的には多少需給について緩む時期があるいはあるかもしれないわけでございます。しかしながら、中長期的に見ますと、この半導体の需要というものはまだまだ安定的に拡大を続けていくものと期待されるわけでございます。そうした意味におきましては、基本的には、そういう拡大基調の環境のもとにおきまして企業家が投資に関する意思決定を、あらゆる情報を織り込みながら行っていくということになるわけでございまして、いわば市場メカニズムをベースにしながら、需給についてはおのずから調整がされていくものではなかろうかというふうに私は考えている次第でございます。
  131. 神田厚

    ○神田委員 そうしますと、需給安定についての方策というのは特に現時点におきまして考えていない、必要がないというような御判断でありましょうか。
  132. 児玉幸治

    ○児玉政府委員 私どもといたしましては、今急に需給のバランスについて大きな変動が起きるというふうには考えていないわけでございます。実は、先般ハワイで先端産業の作業部会がございまして、たまたまそのときに日米両国の半導体関係の業界の人たちの話を聞く機会がございました。どちらの方も将来、ここ数年につきましては非常に強気の見方をいたしております。ただ反面、過去におきまして、やはりそうは言っても需要が伸びなかった時期、かなり設備投資が過大な感じがした時期があったわけでございまして、そういう経験も踏まえながら、現在行っております設備投資については、かなり慎重な配慮をしながら進んでいるように見受けられるわけでございます。したがって、そういう意味におきまして、これから先の需給をかなり慎重な配慮も行いながら投資決定を進めているという意味におきまして、産業界の設備投資の動向を私としては見守っていきたいと思うわけでございます。  ただ、そうは言いましても、神田先生御指摘のように、半導体産業というのは非常に重要な産業でございまして、言うなればエレクトロニクス産業の米、さらに言えばハイテク産業分野の非常に基盤的な産業でございます。したがいまして、その健全な発展が今後どういうふうに図られていくかという点につきましては、私どもといたしましても、その動向を十分に注視いたしまして、対応を誤らないようにしてまいりたいと思っております。
  133. 神田厚

    ○神田委員 次に、ニューメディアの育成問題について御質問を申し上げます。  データ通信業など情報通信産業の基盤整備と育成に向けまして、通産省は今後どのように取り組んでいく方針かをお伺いをしたいのでありますが、まず第一に、情報産業の将来展望並びに財政、税制面からの育成策について、通産省は今後本格的な検討に着手をすべきではないかと考えますが、通産省は、昨年十二月の産構審情報産業部会の答申を踏まえ、今後法制化を含めた検討を行う考えがあるのかどうか、御説明をいただきたいと思います。     〔新村(勝)委員長代理退席、委員長着席〕
  134. 児玉幸治

    ○児玉政府委員 ただいま御質問にもございましたように、昨年の十二月に産業構造審議会情報産業部会の方から中間答申をちょうだいいたしておりまして、その中で、高度情報化社会の実現に向けましてニューメディアが果たす役割についていろいろな指摘をいたしているわけでございますが、そのための基盤的な条件を分析いたしまして、六つの課題を指摘いたしております。第一は技術開発の推進、第二にインフラストラクチャーの整備、第三に制度的な基盤の整備、第四にニューメディア関連産業の基盤の整備、第五にニューメディアの導入に伴うインパクトへの対応、最後に国際的な展開を推進していくということでございます。  私どもといたしましては、この中間答申を受けまして、例えば、第五世代コンピューターの研究開発といったような先進的な技術開発、さらには、地域の産業社会ニーズに即応いたしましたニューメディアコミュニティーの形成ないしは中小企業の情報化の推進、あるいはソフトウェアの法的保護のあり方の検討等々、高度情報化社会を構築するための総合的な施策を強力に推進していこうとしているところでございます。  このような基本路線に従いまして、今後とも健全な情報化の推進を図るためにさらに積極的に取り組んでまいりたいと思っております。
  135. 神田厚

    ○神田委員 情報産業の発展を図るためには、データベースの確立が緊急の緊要の課題でありますが、我が国のデータベースの形成は欧米諸国に比べまして著しく立ちおくれていると言われております。このため、国際的に一方的な情報の流れを生むなどの問題もあり、今後政府はデータベースの形成の促進に本格的に取り組むべきであると考えますが、いかが対処なさいますか。
  136. 児玉幸治

    ○児玉政府委員 情報産業全体の発展の中でデータベースに関する部門がおくれておりますことにつきましては、先生御指摘のとおりでございまして、私どもといたしましては、データベースといった情報提供サービスの分野の充実を図っていくことが、今後大変重要であると考えております。昨年の十二月の産業構造審議会の中間答申におきましても、データベースなどの情報提供サービス業の充実をすることが大変重要であるということが指摘されているところでございます。  通産省といたしましては、既に昭和五十七年度から、各種のデータベースの所在を明らかにするためにデータベース台帳をつくりまして、これを広く一般の閲覧に供し、さらにはパンフレットを作成して広報を図る等の努力をいたしておりますが、さらに、今年度からは新たに、データベース情報提供サービスの整備振興を図るために、どのような分野に具体的にどのような需要があるのかといった調査を行うこととしているところでございます。さらに、ことしの四月から新たに産業構造審議会の情報産業部会に情報提供サービス振興小委員会を設置することといたしました。この委員会におきましては、データベースなど情報提供サービスの充実強化のためのもろもろの課題の検討を行いつつございまして、今後この検討を踏まえてデータベースの形成の促進に積極的に取り組んでまいる所存でございます。  なお、民間におきましても、データベースの重要性についての認識が高まってまいりまして、ことしの四月、先般、財団法人データベース振興センターが設立されたところでございます。私どもといたしましては、この団体の活動も今後積極的に支援してまいり、データベースについても施策の一層の充実を図ってまいりたいと思っております。
  137. 神田厚

    ○神田委員 次に、エネルギー問題でありますが、まず最初に、石油問題であります。  五月から元売ガソリンの値下げが行われたわけでありますが、末端の小売段階では早くも乱売の様相が出始めているようであります。こうした流通段階を含めた石油産業の体質の改善は、基本的には業界の自主努力が前提であるわけでありますが、政府としてもその誘導に努める必要があると考えておりますけれども、今後石油産業の再編成を進めていく上で、政府は業界の体質強化にどのように取り組んでいく方針でありますか。
  138. 豊島格

    豊島政府委員 石油産業は、今後のエネルギーの大宗というのはやはり当面石油でございますので、それの安定供給を図るためにどうしてもしっかりした産業になってもらわなくちゃいけないということでございまして、これまでも設備処理の問題あるいは設備の高度化に対する方向づけ等を行っておりましたが、何といっても、元売が集約化をいたしまして、企業の枠を超えた合理化、効率化をやっていかなくちゃいけないということで、それを進めていくということでございます。そもそもこういう業界の集約化という問題は、御承知のように、自主的な努力というのが大前提となっているわけでございますが、それだけではなかなか難しい面もあるということで、自主的努力を前提としながらも、これに対して、例えば政策的な投融資の問題、あるいは設備許可におけるやり方の問題等々で側面からこの集約化を進めていく、こういう政策誘導をやっていきたいというふうに考えておりますが、具体的な方法についてはまだこれから検討していくということでございます。
  139. 神田厚

    ○神田委員 通産大臣にお聞きしますが、この石油産業の再編成を進めていく上での業界の体質強化について、大臣はどのようにお考えであるのか。また同時に、元売ガソリンの値下げに関しまして、小売段階での値下げについての行政的な指導をなさる考えがあるのかどうか。いかがでありますか。
  140. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 これはあくまでも民間の考え方を基本的に尊重することが第一でございますけれども、元売においても流通段階においても過当競争的な体質のある石油産業、しかも、現下の厳しい環境にある石油産業が、いずれの段階においても集約化というようなことを進めていくとするならば、通産省としては、これを指導し、支援してまいることがよかろうかと考える次第であります。
  141. 神田厚

    ○神田委員 ガソリンの値下げの問題はいかがですか。
  142. 豊島格

    豊島政府委員 ガソリンにつきましては、御承知のように、しょっちゅう乱売ということがあるというのがこれまでの状況でございます。  それはいろいろ原因もあると思いますが、一つ大きな問題は、やはり元売が拡販をすることがあるといいましょうか、乱売をした後の事後調整といいまして、仕切り価格を後で調整するということが非常に大きな問題となっているわけです。したがって、これをやめないことにはなかなか流通段階での乱売競争がなくならないということでございまして、このいわば悪しき慣習をやめるということが基本であろうかと思います。まあしかし、それはそれとして、そういうことをやってもやはり流通段階での過当競争ということは必ずしも全部なくなるわけじゃないということでございます。何といっても、流通段階の過当競争体質ということについては、構造改善をやっていくよりしょうがないのじゃないかということでございます。  揮発油販売業者につきましては、昨年十一月から中小企業近代化促進法に基づく構造改善を行うべき業種として政令で指定いたしておりまして、それに基づいて構造改善事業を進めるということでございますが、同時に、先般、流通問題につきまして欧米に調査団を派遣いたしまして、その実態も十分見てきてもらったわけでございまして、そういうことを踏まえて、現在、流通業におけるビジョンづくりというものを長期的な観点から検討しておる。その結果を待って同時に構造改善を進めていきたい、こういうふうに考えております。
  143. 神田厚

    ○神田委員 元売の値下げに関連して、小売の値下げを指導するかどうかという問題についてはいかがでありますか。
  144. 豊島格

    豊島政府委員 ガソリンの値段というものはいわば市場で決まるわけでございまして、これまでも、従来御承知のように仕切り価格のいかんにかかわらずかなり下がっているという状況でございます。  そこで、今回元売が仕切り価格を下げるということをしたわけでございますが、これは御承知のように、為替がかなり円高になってきた、最近またちょっと円安に戻っております、そういう事態を踏まえて仕切り価格を下げたということでございますが、既にそれに先行してかなり下がっておるようなのも実態でございます。必ずしも、仕切り価格を今回元売が下げたからといって、末端の小売業に対してその分だけ下げろ、こういう指導はする必要はないのじゃないかというふうに考えております。
  145. 神田厚

    ○神田委員 最後に、日米のエネルギー協力問題につきまして御質問申し上げます。  昨年十一月、日米エネルギー作業部会が日米エネルギー協力について共同声明を発表したわけであります。その中でいろいろ述べられておりますが、米国産のLNG、石炭の輸入は、我が国のエネルギー供給の多角化並びに日米エネルギー協力の推進の観点から我が国としても積極的に対応すべきだと思っておりますが、政府の基本方針はいかがでありますか。  また、来週、米国産エネルギーの輸入について調査協議をするため、ミッションが訪米すると聞いておりますが、日米間においてどのような協議が進められるのか、その見通しをお聞かせいただきたい。
  146. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 まず、LNG及び石炭につきましての個々のエネルギー貿易は、民間企業の自主的判断に基づいて行われるということが基本でございます。我が国の石炭の需給は、昨今の大幅なエネルギー需要の低迷によりまして、一九九〇年ごろまでの需要につきましては既に契約した分で手当て済みであることは御承知のとおりでございます。さらに、LNGにつきましても、やはり一九九〇年代前半はその需要に見合う供給はほぼ手当て済みの状況でございます。  しかし、政府といたしましても、日米間のエネルギー貿易の健全な発展というものは、我が国のエネルギー供給源の多角化、これに資するものと考えておりまして、このような観点から、既に昨年十一月に日米エネルギー作業部会から共同政策表明の提言がなされているところでございます。今後とも、その共同政策表明に示された線に沿いまして、長期的な観点に立って両国に稗益する協力を促進するための方途を検討する所存でございます。  残余の部分につきましては、政府委員から答弁させます。
  147. 豊島格

    豊島政府委員 昨年十一月の日米エネルギー。ワーキング・グループの共同声明に基づきまして、我が国の主要な石炭ユーザー、鉄鋼、電力、セメント等の代表が来週出発するわけでございます。  そこで、何が議論されるかということでございますが、石炭の需給関係について現状認識というのが一つあると思います。そういうものが一つあると思いますが、そういうことに対する理解を深めるとともに、中長期的な観点に立った石炭貿易の拡大の可能性、それから、米国炭というのは非常に高いわけですが、これをいかにして価格を低減させるかというスタディーをどのようにして行うのか、行えるのかというようなことにつきまして、率直な意見の交換が行われるということになろうかと思いますが、どのように進むかはこの話し合いの結果を待って判断したいと思います。
  148. 神田厚

    ○神田委員 終わります。
  149. 横山利秋

    横山委員長 井上一成君。
  150. 井上一成

    ○井上(一)委員 最初に、私は、行特委員会あるいは予算委員会あるいはせんだっての決算委員会等で、石油公団が中心となった北極石油とカナダのドーム石油に対するいわゆる資金供与方式による融資について何点かの質問をしてまいりました。まず、ごく簡単に、この契約がなされた背景も含めて、当事者、我が日本側の当事者そしてカナダ側の当事者、さらには北極石油を設立する前段での担当者、当事者、そして政府として、カナダとのいわゆるボーフォート海域での石油開発事業についての話し合い、それはいつどなたがカナダのどなたとどういうような話し合いを持たれたのか、わかりやすく要領よくそのプロセスをここでまず説明を求めたいと思います。
  151. 勝谷保

    ○勝谷参考人 先生の申されたように要領よく答え得るかどうか、大変じくじたるものがございますが、精いっぱいお答え申し上げますと、まず、ドーム・プロジェクトの成立までの経緯、その背景でございますが、昭和五十三年の三月にドーム・ペトロリアム社から経団連に対しまして、北極海における同社保有鉱区での探鉱開発への日本側参加に対するプロポーザルが提出されました。経団連から公団に対しまして協力要請がございました。その後二年にわたる交渉を経まして、五十五年八月、石油公団とドーム・ペトロリアムの間で資金供与方式によるボーフォート海域での参加につきまして基本合意に達しました。これを受けまして、五十六年二月、石油公団と民間四十四社の出資によりまして北極石油株式会社が設立を見たわけでございます。二月十六日に北極石油株式会社とドーム・ペトロリアム社、ドーム・カナダ社との間で正式契約の調印がなされたわけでございます。  この契約に至るまで日本側のどのような者が中心になって本件を進めたかという第二の御質問の点でございますが、先ほど申しました五十五年八月の基本合意締結及び契約の骨子の決定までの段階では、いろいろの折衝が各段階で行われました。先生十分御存じのことでございますが、日本側は石油公団のそれぞれの組織の担当の理事がおります。この担当の理事は、カナダを担当し得る地域の担当理事、それに全体を掌握しております総務担当理事、それに副総裁、総裁等が加わりまして、ドーム社側は社長、担当副社長が代表として交渉を行ってまいりました。したがいまして、石油公団とカナダ側との基本合意が締結されますまでは、公団の担当理事が中心になりまして、ドーム社の社長、副社長と進めてまいりました。そして、基本合意に達しました以降は、五十六年二月、先ほど申しましたような北極石油が設立されましたので、契約の最終チェックと調印は、北極石油経営陣、社長とその他重役が一致いたしましてドーム社の経営陣と契約を結んだわけでございます。  契約の内容を特徴的に申し上げますならば……
  152. 井上一成

    ○井上(一)委員 ちょっと待って、そこまでは聞いておらぬ。まだ契約の内容にまでは入っておりませんよ、質問は。当事者はだれだ、担当理事、担当理事というだけの話であって、担当理事はどなたであって、そうした背景というのは、ただ単に話し合い――現地調査もなされたことであろうし、現地からの事情も日本側の窓口として十分聞かれた方がいらっしゃるわけです。そして、私が今言っているように、政府間での話し合いはこの問題についてはなされなかったのかあるいはなされたのか、まずそういう背景が石油公団を中心に北極石油設立に踏み切らせた、こういう流れであるわけです。肝心なことは一つも答弁なさっていらっしゃらない。契約の問題についてはその後で尋ねます。
  153. 勝谷保

    ○勝谷参考人 先ほども申しましたように、担当者は、その当時の地域を掌握しておりました担当理事と総括の担当理事が中心になって、相手方の社長並びに副社長と折衝を進めてまいりました。当時の総務担当理事は江口理事、地域担当理事は矢部理事でございますし、ドーム社は、社長がリチャーズ、担当副社長がフォーセスという方でございますが、このほかにも、その他の理事協力をいたしております。  さらに、この契約調印の五十六年二月までの間に数度にわたりまして石油公団が調査団、交渉団を派遣いたしましたが、その間、石油公団からカナダ政府の関係者に対しましてどのような援助がドーム社になされるのかというようなことについて情報調査をいたしたことがございますが、政府と政府の間で交渉を持たれたということは報告を受けておりません。
  154. 井上一成

    ○井上(一)委員 それじゃ、契約の内容を私はぜひ明らかにしてもらいたいと思う。そういう意味でも、ここで契約書のコピーを私は御提出をいただきたい。恐らくあなた方は北極石油とドーム石油との私企業における契約書であって、公にできない、こういうことをおっしゃるかもわからぬ。そんなことで公にできないほど契約内容がずさんであるという、裏を返せば――委員長、ぜひ契約書の提出を理事会で諮って、このことは非常に大きな問題をはらんでいると思いますので、お願いしたい。提出をするという約束があればそれは別だけれども、恐らくそういうお答えはないだろうと思う、あなた方は。だから、契約書のコピーを提出を願いたい。  なお、今回問題になっている四億カナダ・ドルに対する資金供与の条件等について、私はここで契約をどのようにされたかお聞きをしたい。
  155. 勝谷保

    ○勝谷参考人 まず、北極石油とドーム社との契約概況について御説明申し上げます。  締結日、発効日は昭和五十六年二月十六日でございます。契約方式は資金供与方式でございます。契約の当事者は、第一当事者がドーム・ペトロリアム社及びドーム・カナダ社、契約上両社を合わせてドーム社と総称いたしております。この両社は北極石油に対しまして連帯不可分債務を負うことになっております。第二当事者は北極石油株式会社でございます。オペレーターはドーム社でございます。  契約期間は、北極右池株式会社が本基本契約に基づく債権、原油購入権またはその他の利権をドーム社に対して有している期間ということになっております。  経費の負担方法でございますが、探鉱段階において四億カナダ・ドルの探鉱ローンを供与する。その内訳は、一九八〇年にドーム・ペトロリアム社が実施いたしました探鉱作業に対しまして一億七千五百万カナダ・ドル、一九八一年以降行います探鉱作業に対して二億二千五百万ドルを供与するという方式でございます。  さらに、開発段階におきましては、ドーム社が負担する開発費の一〇ないし二〇%の資金を開発ローンとして供与する権利を保有するということになっております。  原油の配分方法等につきましては、北極石油は、供与資金の元金の返済額、報酬及び利子額と同等の原油取得権を持つ、また開発資金の供与率に応じた原油の購入権を持つということになっております。  なお、先ほど申されました契約書の提出の件でございますが、私どもが本契約書の写しを北極石油株式会社から入手しておりますのは、投融資を行う際の審査のためでございまして、本契約書の提出は目的外使用となりますので、公団といたしましては、これを提出することができないということを先生に申し上げたわけでございます。  さらに、本契約書は北極石油とドーム社との間の私契約でございますため、両社の同意がない限り、私どもからは提出できないわけでございます。  さらに、つけ加えさせていただきますならば、契約上の諸条件を外部に明らかにすることが今後外国との契約交渉上不利になるおそれ等もございますので、先ほど申しましたのが契約の主たる内容すべてでございますので、御了承を賜りたいということでございます。
  156. 井上一成

    ○井上(一)委員 勝谷参考人、答えにはなってないのですよ。あなたは無難な答弁でということで今概要説明されているわけです。そんなことではこの問題は解決できないと私は思う。  それで、限られた時間できょう質問をするわけですから、さっきも申し上げたように、政府間同士での話し合いはないという、いわゆる契約をするという直接的な行為、あるいは北極石油を、窓口の会社をつくる、そういう直接的な行為はないにしても、背景的なもの、そういうものはやはりあるわけなんですね。当時、カナダの資源というものは、資源保護の理由からいわゆる禁輸措置をとられていたことは御承知でしょう。だから、カナダ政府として、余剰分だけしかこれを外に持ち出しができない、そういうカナダの政治情勢、経済情勢を踏まえた中で、これは資金供与方式に形態も変わったわけなんでしょう。さっき経団連からの話のときは、当初そういう契約の形態ではなかった。そこらも抜けているわけです。私は、そんなことを今ここで一々確認をする時間がないので、本当は、そういう資金供与方式に踏み切った大きな要因は一体何なんですか、どういう背景なんですか。そして、本当に、政府間での話というのは、決定権はないけれども、やはり背景があり、両国が北極海石油の開発事業について積極的に取り組んでいこう、そういう合意が、究極北極石油の設立につながった、こういうふうに私は思っているのです。私の指摘をしていることが全く否定できるのか。そういう話も背景としてやはり契約を結ぶ一つのファクターである、そういうことでないと、僕はおかしいと思うのですよ。いかがなんですか。もう一度これは聞いておきます。
  157. 勝谷保

    ○勝谷参考人 先ほど答弁申し上げましたように、日本とカナダの関係、これが経済、外交的に密接な関係にあるということが本件を見回した背景にあることは何人も否定をし得ないと思いますが、私どもが交渉を進めましたときは、あくまでも、ドームという株式会社と日本との間で、世界の油の事情が極めて緊迫化しておるときに、よりいい条件で日本側は契約を結びたい、カナダ側はカナダ側によりいい条件で契約を結びたいという折衝が持たれておりました。特に、既にドーム社が北極海で探鉱に成功した油田開発になる可能性のある、出油を見ている地域を対象地域に含めるかどうかということが一つの争点になりました。現時点から考えると大したことではなかったかもしれませんが、当時においては、ぜひ油を日本に持ってきたい、そして契約をした以上は油が手に入るようにしたいということで、既に掘って出油を見ている地域を対象にしたい。これをするのならば、既に掘っておる、一九八〇年の分ですけれども、金一億七千五百万ドルを出しなさい、そうすればその地域を入れてあげます、こういうふうな条件がございましたので、鋭意、担当理事が中心となりまして、最後は総裁も出向きましたけれども、向こうの社長、副社長と折衝いたした。その間に、先生おっしゃるように、カナダ政府の担当局長にも伺いを立てたり、状況を把握したりするような行為を担当理事がいたしております。  政府と政府の間で本件が交渉の対象になったということは、残念ながら聞いておりません。
  158. 井上一成

    ○井上(一)委員 一億七千五百万カナダ・ドルの融資の対象になったいわゆる八〇年度のドーム石油、出油を見たという、今お答えになったと思います。これは確認をされたわけですか。どなたが確認をされ、そしてそれはいつの時点で、そして現在はそれじゃそれはどうなっているのか。
  159. 勝谷保

    ○勝谷参考人 実は、当初経団連からの要請があって、石油公団とカナダのドームとの間で交渉を持っております際に、ちょうどあれは先生御存じのように夏でないと探鉱活動に入れません、夏で探鉱活動に入りましたので、交渉中断ということになりました。そして、その中断の間は何かというと、全社を挙げてそのボーフォートの石油の探鉱に向かうということでございました。その休んでいる間に、実は探鉱の結果、出油を見たわけでございまして、これはカナダ政府もその発表を認めているもので、公表されておりました。当時ニュースとして出たものでございます。一時ドームの株価が大いに上がった事件がございました。それを背景に向こうは非常に強気になる。我が方もそういう地域をぜひ対象地域にいたしたいということでございました。
  160. 井上一成

    ○井上(一)委員 私は、カナダのニュースを聞いているんじゃないんですよ。我が方の調査団なり、担当理事が、どなたか別として、だれが確認をした。現在はそれじゃ成功なのか。この一億七千五百万ドルが検査院からも指摘をされているわけです。非常に大きな問題です。カナダ側のニュースというのは、別に信用するしないじゃなく、やはり確認を我が石油公団の側はどなたがしたのか。
  161. 勝谷保

    ○勝谷参考人 担当理事を含めまして、当時その情報をつかんでおりましたが、その後そのようなデータを現在は入手をいたしております。技術委員会でも検討してまいりました。したがいまして、現時点で先生にこのときのこれだということを申し上げるだけの材料を持ってきておりませんけれども、私どもとしては、当時出油を見た鉱区がこことここであるというデータを持っております。いずれ先生のところには提出できると思います。
  162. 井上一成

    ○井上(一)委員 それじゃ、それは今どうなんですか。一億七千五百万カナダ・ドルを融資したその鉱区に対して、じゃ、今油が出るんですか、出ているんですか。
  163. 勝谷保

    ○勝谷参考人 一応油は出ておりますが、御存じのような世界の油価の状況でございますので、当時考えておりましたような油の値段が急上昇しておりますならば恐らく開発に向かい得たと思いますけれども、現時点のような状態では、膨大な設備投資をして油田にするまでの採算はとれない。したがって、油はありますけれども、商業生産を現時点でするほどの状態ではないということではないでしょうか。
  164. 井上一成

    ○井上(一)委員 それは失敗なんだね。それが失敗で、何回か今まで答弁をされてきた中で、繰り返してドーム石油に対しての北極石油はスリムになっていくんだ。私は、そこに油があります、いやありませんという論議よりも、やはり融資をしたことに対する投資効果の問題、それは失敗だということ、これはもう何回も言っているし、あなた方も認めざるを得ない状況にあるわけです。油が商業ベースで、その油価の問題で、じゃ油価の国際価格は何ぼだったらそこから持ってこられるのですか、何ぼだったら。
  165. 勝谷保

    ○勝谷参考人 油価が幾らになったらその油田を開発できるという資料を今用意しておりませんので、先生に御答弁できないのは残念でございますが、当時の状況では、挙げて油を世界的に求めている日本の状況では、その油を、油価があのような状態で緊迫し、上がっていくという状態ならば、油田に建設できるであろうという前提でおりました。したがいまして、それを契約の対象にするということは、契約交渉の極めて重要なファクターであったわけでございます。先生おっしゃるように幾らならできるかというのは計算をして、私どもの方で見通しがあると思いますから、計算を至急さしまして、御説明をさしていただきたいと思います。
  166. 井上一成

    ○井上(一)委員 いずれ契約書の全文のコピーを、私は、融資をする前段でやはり参考資料としてあなた方はとったということで、融資の一つの……。それじゃ、この融資は失敗であるということはもう何回も繰り返しされているので、多くをここで申し上げませんが、資金供与方式というのは、普通のファームアウト、ファームイン、そういう方式とどう違うんですか。そしてどんなメリットがそこにあるんですか。
  167. 勝谷保

    ○勝谷参考人 先生御案内のように、油の探鉱をいたします投融資の形態といたしましては、PS契約いわゆるサービスコントラクト方式のほかに、利権供与の契約とかリース契約とか鉱業権取得等々とあわせまして、数は比較的少のうございますけれども融資買油方式がございます。これは必要な資金を相手側に供与いたしまして、その見返りとして油を引き取るわけでございますが、その引き取り方についても、形態によって少々の差はございます。しかし、基本は、先ほどの契約の状態で申しましたような元本と報酬と金利を油でいただくという形式のものでございます。ただ、ドームの方式は、もし油が出ないときは元本のみは金でもらうということになっております。
  168. 井上一成

    ○井上(一)委員 金利は幾らにこの契約はされておったんですか、報酬は。
  169. 勝谷保

    ○勝谷参考人 一応一六%を目安にいたしておりました。
  170. 井上一成

    ○井上(一)委員 一六%を目安にし、かつこの投資効果が出なかった場合、それは元金だけが返ってくる、こういうことですね。その日本円にして七百七十億円、これはいつ返ってくる。いつから返してもらう。もし出なかった場合、いつからいつまでを期間となさっていらっしゃるんですか。
  171. 勝谷保

    ○勝谷参考人 油が出なかったときは、二〇三〇年までに元金を返すということになっております。
  172. 井上一成

    ○井上(一)委員 五十年。この間、仮に七百七十億円の元金が一六%のいわゆる金利計算の中で五十年間運用されていった、どのくらいの数字になるでしょうか。
  173. 勝谷保

    ○勝谷参考人 一六%というのは、私どもが、油が出て、その油が売れまして、そこで一六%の報酬を取るということでございますので、これを据え置いて、一六%で二〇三〇年どうなるかという数字は、実は実際としては余り意味がございませんけれども、計算上いたしてみました。これをい、たしてみますと、百二十八兆四千五百億円ということになります。しかし、通常のこういう金の運用というのは、先生御存じのように、十年物の長期国債レートが年率七%でございます。これを二〇三〇年に計算いたしますと、二兆二千六百四十八億円ということになるわけでございます。さらに、十兆円というような目標を置いて計算をしますと、大体一〇%の年率の利子率ではないかという気がいたします。したがいまして、もし成功いたしますれば百二十八兆円のものが、最後に出るのではなくて、最初から出ていくわけですが、その間には油が来て波及効果がございますから、経済的には非常な波及効果を及ぼしてうまくいくという希望を私どもは抱いておったわけでございます。先生のおっしゃる計算上のものについては、やはり七%ぐらいに回せば二兆二千六百四十八億円ぐらいになるという計算が、仮の計算でございますが出ております。
  174. 井上一成

    ○井上(一)委員 大きくは百二十八兆円の損失である。それだけに見合って曲として返ってくる、そういうことを期待して投資を決定したわけでしょう。そして、仮にもっと低い利回りの中で単純な計算をしても二兆円からの損失だ。私は非常にこれは大変なことだと思うのです。決めたことが結果こういう――まあ出れば、百二十八兆ですからすごい倍率です。これこそ一発屋のやる仕事ですよ。リスクを負わなければいけないという。リスクの全くない開発というものは考えられない。しかし、いかに小さくしていくか、いかに少なくしていくか、そういうことを考えれば、これは経済情勢の成長率が何%云々ということを抜いてもこうだ。政府が常に言う経済成長の見通し、そういうことを考えていけば、二兆はおろか五兆も十兆も実質的に経済効果としてはマイナスを与えたことになる、こういうふうに私は思っておるのです。いや、そう言っておって、半年先に油を出します、来年の夏に油が出るのですという自信がおありなら、百二十八兆円にしてみせますというなら、それは僕は本当に敬服します。しかし、そういう意味で、これは大失敗をし、なおかつ何兆円という莫大な経済的な、試算ではありますけれども実質的に損失。この契約を決定をした、資金供与方式に決定をした責任は非常に大である。  これは前回も質問をして、今までに何カ所かのプロジェクトを実はやられたわけですね。不成功であったプロジェクト、私がここに資料としてもらっておるのは二十二社あるわけです。この二十二社の中で、資金供与方式でのプロジェクトはどこなんでしょうか。
  175. 勝谷保

    ○勝谷参考人 御提出しております二十二社の中には資金供与方式のものはございません。  先生、大変恐縮でございますが、先ほどの百二十八兆というのは仮の計算の、たまたま据え置いて一六%、二〇三〇年ということでございますので、もし油が出れば、出た段階から私どもが油は引き取って販売し、生産に入って経済活動の中へ入っていくわけでございますから、仮に計算した数字でございますことを念のために申し上げます。
  176. 井上一成

    ○井上(一)委員 契約書がそういうことになっているんだから、百二十八兆円の池を。だから、少々高うても、あなた方がさっき、きょうは言えないということですから、契約では国際価格がこれぐらいであれば引き取れるのだ、今の国際価格では引き取れないのだというような答えのようにも受けとめられるから、何かまだ期待を持ってはるのと違うやろか、そんなばかなことあなた方言ったらだめだ。  二つ問題がある。一つは、こういうばかな契約をした責任、そして一億七千五百万カナダ・ドルを投資の対象に入れたその資金使途、これにも問題がある。なぜこの資金供与方式をとったか、そして七百七十億円の金を損したか。今言う二十二社、不成功なプロジェクトは二十二社あります。それは北海石油も失敗しています。しかし、二十二社全部入れたって八百億ぐらいなんですよ。石油公団の損失というのは七百七十億でしょう。ドーム一社と二十二社とのプロジェクトですよ。ドーム一社で七百七十億。こんな形態をとらなければいけなかった背景を、要因を、原因をはっきりとしてもらわなければいけない。これは責任は非常に大きいものがあります。  そして、この北極石油に出資をしている四十四社の企業に対しては、公団はどういうような語をなさっているのか。石油公団が大株主ですから、六〇%持っているのだから、そういう中でどういう話をなさっているのか。また、私の承知する範囲内では、出資企業もいろいろとこのプロジェクトには問題があったということを指摘していらっしゃる方がいるわけなんです。そういう問題指摘があったのかなかったのか、そのことも聞いておきたいと思う。
  177. 勝谷保

    ○勝谷参考人 このドーム・プロジェクト発足の際に、石油公団は各方面の業界に働きかけをいたしました。まず石油開発分野、それから石油精製分野、造船業界等に働きかけまして、設立発起人グループを形成いたしたわけでございます。関連業界に呼びかけを行いました結果、民間四十四社の出資参加を得たわけでございます。  ボーフォート海の石油開発に特に関心のある石油開発、石油精製、造船、この造船等につきましては北極海での将来の船の技術につきまして非常に関心を持っておりまして、さらに商社、こういうふうな各分野の各社がこのプロジェクトの説明を受けまして、趣旨に賛成をされまして、先ほど冒頭申し上げましたように、経団連からの呼びかけで全日本産業界挙げての最初の受けとめがございましたので、皆さん十分御理解をいただいて参画されたというように聞いております。  当初、四十四社は無理に引き込んだのではなくて、このほかにもたくさん会社はあるわけでございます。四十四社が率先して入られたと私どもは聞いております。  ただ、一般問題として先生がおっしゃるようなことがありますれば重要なことでございますので、私ども、最近におきましては特にそういうことを留意いたしまして、ごく最近の珠江沖の石油開発につきましてはごく限られた人たち、しかもその間でいかなることがあっても相互に一心同体としてやるという形でおやりいただいておる実情があることを、あわせ御報告申し上げておきます。
  178. 井上一成

    ○井上(一)委員 時間がないので、私の方からさっき二十二社と申し上げたのですが、これは石油公団からの資料で、不成功プロジェクト、いわゆる完全に失敗であったという。まだ見通しがつけられないプロジェクトは何件かあるのではないだろうか、こう思うのです。それはこれ以外に今何件ぐらい……。
  179. 勝谷保

    ○勝谷参考人 ただいままで、五十八年の年度末でございますが、全体で八十件に投融資をいたしておりまして、失敗といいますか、清算をいたしましたのが、先ほど、先生のお手元にございます二十二社でございます。成功といいますか、もう会社として生産をいたしまして事業活動を営んでおりますのが十七社。そして、三十六社が実は今のところどうなるかという実態で、鋭意努力をしておるということでございます。この三十六社の中には、ただいま御審議をいただいておりますドームも入っておりますれば、その他いま少しで成功の直前のものもあるということでございます。このほかに債務保証のみをいたしておりますものがあるわけでございまして、これが五社あるわけでございます。これは探鉱段階には関与いたしておりませんで、生産段階から債務保証に入ったというものでございます。
  180. 井上一成

    ○井上(一)委員 ここで、大臣に見解を聞きたいのです。今の質疑でおわかりのように、ドーム石油のこの問題につきましては、非常に大失敗であるというか、大変なことだ。こういうことが、今財政再建だと言われたりあるいはいろいろと行政改革だとか言われている折に、今までこういうのは余り表に出なかったわけですね。二十二社で八百億、一社で同じ七百七十億、形態も非常に大きなリスクを背負わされて契約をしている。常識的な判断として好ましかったのか好ましくなかったのかということ、これは好ましくないと思われるわけなんです。日の丸原油がどうしても欲しいという、その国益を考えた考えは理解はいたしますが、一体こんなことが許されるのであろうか、こう思うのです。特に、ドームとの契約には、どうも常識で理解ができない不思議なところがたくさんあり過ぎる。今お答えをいただいている勝谷理事についても、当時の担当者でありませんので、本当はつらい答弁をなさっていらっしゃると僕は思うのです。大臣、ひとつここで大臣のお考えというか見解というか、今聞いていただいて率直にどう受けとめられたか、ちょっと聞かしてほしいと思います。
  181. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 石油探鉱開発というものは常に大きなリスクが伴うということは否定し得ないことでございます。しかしながら、資源の全く乏しい我が国といたしましては、このリスクにあえて挑戦しなければならない。今もあることもおわかりいただけると思うのでございます。このプロジェクトにいたしましても、当初はかなりいろいろな意味で夢を持たせる計画であったことでございましょうけれども、大変遺憾なことに、このプロジェクトが、現時点で見る限りは全く残念な状況であるということは、私ははっきり申し上げることができると思うのでございます。私といたしましては、今後石油公団に対しまして厳正な指導をいたしまして、今後方遺漏なきを期するように監督したいと存じます。
  182. 井上一成

    ○井上(一)委員 時間が余りありませんが、石油公団に、ドーム石油の現在の会社経営の状態を率直に言ってどう把握していらっしゃるか。私は、非常に苦しい資金繰りの中で苦しい経営状態だ、こう認識しているのですが、どういうふうに石油公団は御認識を持っていらっしゃるのか。
  183. 勝谷保

    ○勝谷参考人 先回も私どもの総裁が申し上げましたように、ドーム石油の現状というのは非常に同情すべき状態にあるということを私どもは認識いたしております。ただ、社長も交代いたしまして、ことしの初め社長もごあいさつに見えられまして、種々議論をいたしたのでございますが、ボーフォートの問題につきましては今後も引き続いてやるという情熱を持っていらっしゃいますし、ドーム再建計画につきましては、一歩一歩前進を見つつあるというのが実情でございます。決して楽観は許せませんけれども、改善の方向に向かいつつあるのではないかということでございます。私ども、夏が参りますので、さらにこの再建計画が進みますとともに、一方私どもと最も関係の深いボーフォートの探鉱が必ず進められますので、成果が上がることを期待しておるという実情でございます。
  184. 井上一成

    ○井上(一)委員 厳しい状況の中で期待をする、五十年間ゆっくり期待をしたらいいというようなわけにいかぬのですよ。やっぱり物事には一定の決断というか判断というのは必要であるわけで、あなた方はそういう意味では非常に、この委員会だけ終えたらいいと、そうは思っていらっしゃるかどうか知りませんが、どうも、契約書は出されへん。しかし、私の言いたいこともわかってくれていると思うし、あなたの答弁も苦しい答弁をしているのは聞きづろうて、本当にかわいそうで、こんなことを言うたら本当に失敬だけれども、それは勝谷理事に申しわけないと私は思うところもあるのだけれども、しかし、あなたの先輩がやったんやからね、これは。石油公団がやったんやから、後を受けてやっぱりしょうがない。このドーム石油がまた新たなプロジェクトを考え、あるいは新たなプロジェクトが起こってきた場合に、これは失敗したけれどもこれはうまいこといくんやと、現在そんなことがあるわけなんですね。LNGの問題ではそういうふうになっている。きょうは時間がないからLNGの問題については質問をしません。そして一億七千五百万カナダ・ドルのこの問題、検査院指摘をしたこの問題についても、きょうは時間がないから私は差し控えます。しかし、きょう明らかになったのは、五十年で百二十八兆円もの原油がパアになってしまって、元金をそのまま低利に回しておっても二兆や三兆の金になるのに、今度二〇三〇年にもらうのがたったの七百七十億円、何かプロジェクトをやる場合に、輸銀融資石油公団が債務保証しなければいかぬですね。ここまで言えば、LNGの問題ではないだろうか、こう推測がつくわけだ、ドーム石油と。だから、こういうボーフォート海の石油での大失敗、今度はLNGでひとつ一もうけをして何とかこれでと、ドーム石油は今はこないになっていますから、その場合の資金調達あるいはそれに対する石油公団の安易な対応は、私は絶対許されないと思うのですよ。だから、次の機会に譲ろうと思いますが、ドームが行おうとするプロジェクトに対して、石油公団は厳しい対応あるいは本当に的確な対応をとってもらいたいと、私は強く要望したい。それで、具体的に、今言ったように、資金調達等の問題についての輸銀融資等については、債務保証なんというようなばかなことはしませんね、そんなことは考えておりませんねということをやっぱり僕はここでちょっと聞いておきたくなったので、きょう聞くつもりじゃなかったのですが、いかがですか。
  185. 勝谷保

    ○勝谷参考人 先生の御質問にトタに答えなくて恐縮でございますが、先回もお答え申し上げておりますように、四億カナダ・ドルが既に融資済みでございます。くどくど申して恐縮でございます。しかし、今後の開発資金、これはLNGとは関係ないボーフォートの開発資金につきましては、何度も通産省もお答えになりましたし、石油公団でもお答えしておりますように、ドーム社の経営が完全に立ち直りまして、今後の探鉱活動なり、世界の油価の推移等が好転いたしますまでは、あらゆる角度から見て採算性に確信が得られるという状況でない限り、追加融資はいたさないということを言明をいたしております。ただ、LNGの問題は私どもの方で決める対象ではございませんで、これはあくまでも御方針が決まった段階で、正式の申し出があったときに、私どもの方で債務保証の対象にするかどうかということを決めるわけでございます。したがいまして、今はLNGの問題については公団は全然検討をいたしていない、申し込みもまだないということでございます。  何度もくどうございますけれども、先ほどの百二十八兆円というのは、たまたま二〇三〇年までに仮に計算した一六%の数字でございますので、先生お含みをいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
  186. 井上一成

    ○井上(一)委員 私は、今回のこの契約の責任というのは、当事者、あるいはもう当事者は今はおらない、ほかのプロジェクトの役員に天下っているわけなんです。これは大臣、五十年も待てないということはみんながわかっていますから、一定のひとつここ一年以内とかこの夏場とか、失敗は失敗なんですけれども、私はやはりこれは責任を明確にする、石油公団としては明確にしなければいけない、こう思うのです。こんなことで、はい済みませんでしたというのじゃなく、やはりここは責任が明確にされなければいけない。そういう意味で、これは総裁に質問したかったのですが、きょういらっしゃらないわけです。担当の理事に責任を、あなた当事者でもなかったのだから、後を今受け継いで苦労してはるわけです。それに責任とれというのは、これは言う方が無理だ。私は、これはやはり石油公団総裁がこの問題について、一定時期に一定の方針を、本当にドームに対する公団としてのきっちりしたけじめをつけるべきだ、そのことが責任を明らかにすることだ、こういうふうに思っているわけなんです。  大臣、自分の地位が云々ということじゃなく、かすかな、もうそれこそ煙も立たぬような五十年先まで、いやまだ期待していますなんていう、そんな苦しい答弁をやめて、あかんならあかん、あかんということは言われているんだけれども、今後については、この前、大臣もオプションの資金は出さないということを明言されているわけだけれども、起こり得るプロジェクトですね、これからまだ正式にそういうプロジェクトの申請があったとかなかったとかじゃないわけです。ドームについては、石油公団としては債務保証も含めて厳しいけじめで対応していくべきだ、こう思うのですが、大臣いかがでしょうか。
  187. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 今の時点で井上委員の言葉に断定的な返事ができませんが、考えてみましょう。
  188. 井上一成

    ○井上(一)委員 最後に、私は委員長に、先ほどもお願いしましたように契約書、これはひとつ理事会に諮って、提出を願いたい。大臣の方がお考えをいただくというお答えでありますので、公団にこれ以上の質問はきょうは終えます。この問題については、さらに次の機会をとらえて続けて問題点を尋ねていきたい、こう思います。  以上です。
  189. 横山利秋

    横山委員長 御要望の線は理事会に相談をいたします。  中川利三郎君。
  190. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 テクノポリスの問題につきまして、まず文部省にお聞きをしたいと思います。  テクノポリスの重要な柱の一つの中に産学協同の問題がございます。文部省が五十八年五月十一日に出したこの産学協同の取り扱い規定といいますか、「民間等との共同研究の取扱いについて」という文書でございますが、この中にはいろんな今の問題点が、私は、大学院の運営についての、大学のあり方についての問題があるように存じておるわけでありますが、例えばその第三項の(2)で申しますと、「民関機関等は、共同研究遂行のために、」「国立学校が負担するもののほか、特に必要となる謝金、旅費、消耕品費等の直接的な経費を負担するものとする」、こう書いてありますね。  そこで、私はお聞きしたいのは、現在、大学の校費予算が五十七年以降すっとふえていない。そういうことで、各教官の旅費だとか消耗品費などは実質的にどんどん減らされているわけでありますね。例えば教授の年間旅費でございますが、秋田大学の例で申しますと、五十七年度一人当たり十万円でございました。ところが五十八年度は九万五千二十円、五%の減少となっているわけであります。このように旅費などを文教費で減らしておきながら、民間などとの産学協同を行えば旅費が出てくる。そのほか謝金も出る。こうなれば、研究者といえども、極めて魅力的なものになって、結局研究費欲しさに飛びつく可能性が非常に多いということになると思うのですね。こうなりますと、予算での研究内容に対するコントロール、こういうものを図ることになると思いますが、この点についてはいかがです。簡単にお答えいただきたいと思います。
  191. 西尾理弘

    ○西尾説明員 お答えいたします。  五十八年度に発足しましたこの民間等との共同研究の制度は、大学の教官が、自主的に主体的にみずからの研究活動の中で民間等の研究をやれば、なお一層みずからの研究活動を進められるというような課題があった場合に、それについて相手側民間機関の研究者と一緒になって研究するというものでございまして、あくまでも大学の主体性、自主性というものを尊重した上でこの制度を運用するということで行っているものでございまして、ただ単に研究費の補充を得たいがためにこの共同研究制度を運用するということとはなっていないわけでございまして、現にこの共同研究の制度で大学において共同研究の計画がなされる場合には、学内のしかるべき審議組織がありまして、その審議組織の中でオーケーとなったものが計画として承認され、なお実施に移されるということになっておりまして、教官個々の恣意的な形でこの共同研究を行うということにもなっていないという実情でございます。
  192. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 私が聞いたのは、恣意的だとか自発的だとか、そういうことを聞いたんじゃなしに、産学協同をやればそういうお金が出るということは、教育自体を産学協同の中でコントロールすることになるのではないか。これはゆゆしい問題だということを聞いたんですよ。  同時に、次にお聞きしますが、同じこの取り扱い規定の中にはこう書いてあるんですね。「国立学校は、」「直接経費の一部を負担するに当たり、既定経費以外に特に予算措置を必要とする場合には、別途共同研究経費の配分を申請することができる」、こう書いてあるんですね。ここでは、共同研究を組んだものに対してだけ経費を出すことになりますので、特別扱いをし、それにお金を出すことになりますね。大学のあり方、研究の仕方そのものから見ましても、こういう問題は一体どう考えたらいいでしょうか。簡単に答えてください、簡単に。三十分しかないのですから。
  193. 西尾理弘

    ○西尾説明員 大学は、現在工学部等を中心にいたしまして、そのみずからの学術研究を進める場合に、民間等の研究レベルが上がっている関係もありまして、民間等との連携協力を図った方が大学自体の研究活動を一層進展できるというような状況もこれありまして、大学の先生方の中には、産学連携ということでみずからの研究活動を進めたいということで、それを学内でも認めていこうじゃないかという雰囲気が出ておりまして、何も産学協同によって大学が主体性を侵されて、民間等のコントロールのもとに大学の研究活動が阻害されるというようなこととはなっていないと我々は認識しております。
  194. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 特別扱いを実際にすることになっておるのでしょう、今のこのおたくの条項を見ましても。共同研究したものに対してだけはそういう特別な扱いをすることは事実でしょう。何だかんだと言ってそれに理由をつけただけのあなたの御答弁じゃないですか。  その次に、三番目に私が聞きたいのは、「共同研究の受入れの決定等」という五項目目の文章がございますね。「共同研究の受入れは、民間機関等の申請に基づいて当該国立学校の長が決定すること。」こう書いてありますね。当該国立学校の長が決定するのですね。私は、大学でのこういう研究というのは、研究者が決定するのじゃなくて学長が決めるということはあってはならないことだと思うのですよ。これでは、学内組織である教授会だとか研究協議機関に全く関係なしに、最高責任者である国立学校の長が決定するという上からの決定になるわけでありますね。これでは、大学の現在の自主性、こういうものを当然のことながら破壊するものにつながると思いますが、いかがですか。
  195. 西尾理弘

    ○西尾説明員 お手元の資料の第六番目の項目をごらんいただきたいと思いますが、国立学校の長がこの共同研究の受け入れを決定するに際しましては、先生方の自主的運営になっておる審議組織、既存の教授会を活用するとか、あるいは新しくこのための審議組織を設けるというようなことで、今、各大学、この共同研究をやろうとする大学は整備しておりますが、そこでの自主的、自発的な審議の結果、これは本学として共同研究をやるにふさわしいという結論が出たものについて学長が自動的に承認する、あるいは場合によっては、自分の研究領域であれば相当の判断を加えて承認するということになっておりまして、上からのダイレクトのコントロールによって共同研究が決まるという仕組みにはなっておりません。
  196. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 あなた、第六項の「学内組織の整備」を見れば、教授会だとか研究協議機関に当然諮ることになっているようなことを言っておりますが、六項「学内組織の整備」「国立学校の長は、共同研究の受入れの決定を適切に行うため、共同研究の受入れ等共同研究の実施に必要な事項審議するための学内組織を整備する」ということで書いてあるのですよ。それと読み合わせいたしましても、学内機関、組織と協議の上で受け入れることを決めるとは受け取ることはできない内容じゃないですか。この点についても私は重大な疑問があると思うのですね。  特に、今二、三申し上げましたが、この取り扱い規定の全体を通じて、民間機関の内容を審議するというか、性格を規制する条項がないわけですね。ですから、このことは、民間機関に名をかりた軍事産業や研究機関を排除する手だてが全くない、そういう取り扱い規定になっていますね。こういうことでは、テクノポリスの研究開発が産学協同どころか産軍学協同が容易に進行できるように仕組まれているということがこの取り扱い規定の内容だと思いますが、この点についてはいかがですか。簡単に答えてください。
  197. 西尾理弘

    ○西尾説明員 我々、大学の学術研究は、先生も御存じのとおり、各研究者の自発性、自主性によって、本当の真理の探求、現象の解明という学問研究の興味、それを求めてやっていくということでございまして、およそ軍事を直接の目的とする研究が行われるというようなことは考えられないという認識でございます。そして、この共同研究のそれぞれのテーマにつきましては、大学におかれまして、その大学の本来の使命を踏まえて精選していくわけでございまして、民間機関等の相手方につきましても、研究内容によっては、それは妥当じゃないのじゃないかというような結論が出ようということもありますので、決してダイレクトな形での軍事研究がこれによって行われるというふうには我々は認識しておりません。
  198. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 あなた方が認識しようがしまいが、今の情勢はどういう情勢だということをあなたは考えているのですか。今の情勢そのものから考えるならば、そういうことは絶対あり得ないことだ、産軍学協同なんということはあり得ない、こうおっしゃるけれども、当然あり得ないという前提が今どんどんなし崩しに変えられていくことは、これは別に憲法の解釈改憲、明文改憲、いろいろな状況を見るだけでも、それ一つを見ても非常に明らかだと思うのです。そうだったら、なぜ、あり得ないというようなことの断定ではなくて、実際、そういう軍事研究機関がこういう研究成果をねらっているということも事実ですからね、歯どめは少なくともかけるべきだ、そういう条項を設けたらどうですか。
  199. 西尾理弘

    ○西尾説明員 私らの方は、大学に対して、学内で共同研究受け入れの審議組織をつくる際に、その組織での審議、運営の基準というようなものについては具体的には指定しておりませんが、各大学におかれまして、大学の基本的性格、本来の使命を踏まえて、適切にこの審議機関を運用していただきたいということを口頭でも指導しておりますし、大学におかれましてもそれは当然のことと受けとめておる状況でございます。
  200. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 つまり、大学の自主性に任せるということですね。だから問題があるのですよ。それは時間の関係がありますけれども、後で証明していきたいと思います。  十一項「研究成果の公表」、これは「共同研究による研究成果の公表の時期・方法について、必要な場合には、国立学校の長は民間機関等との間で適切に定めるものとすること。」こう書いてあります。つまり、依頼者の同意がなければこれは発表してはならないということだと思うのですね。  両者の適切な協議などと書いてありますが、こういうことで秋田大学の学長は、昨年、組合との交渉の席上、研究当事者に任せるなんということを発言しています。企業と結びついた研究に内容発表の自由が保障されるかということですね。すべて、だれが考えたって社内秘にされるのは当然でありまして、研究者が結局身売りすることになると思うのです。この公表について、国立大学というのは当然公表の責任があるわけでありまして、自主、公開、民主ですね、これは大学の持つ生命とも言うべき基本原則である自主、公開、民主、この根幹を突き崩すものと私は考えますが、この点はいかがですか。
  201. 西尾理弘

    ○西尾説明員 この十一項の趣旨でございますが、この背景には、先生御指摘のとおり、大学の学術研究の成果というのは当然公表を前提とされるべきものでございまして、それは各大学において十分配慮がされているところでございますが、たまたまある特定の研究成果、例えば特許に値するような発明が出た場合に、特許の申請時期までちょっと待つというようなことがあった場合に、こういう適切な公表の時期、方法について相互に定めるということでございまして、決して公表の原則を侵すような形での取り決めを行うということではございません。そういう形で運用させております。
  202. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 だったら、ちゃんとあなたの方で書けばいいでしょう。つまり、運用の実際問題とすれば、これは必ず相手の承諾がなければ発表はできないことになるのですよ。当事者のあれの中で決めろということですからね。あなたの答弁は、全く靴の外から足をかくようなもので、そういう点では、私は納得できません。  同時に、今秋田県の中でも、これは全国的な問題でありますけれども、秋田県の中でもテクノ指定に対していろいろな動きが出ておるわけでありますが、特に八三年十二月十五日付朝日新聞の秋田版でございまして、きょう残念ながらそれを持ってこなかったのですけれども、この写しだけ来ておりますが、梅津さんという秋田大学の学長さんが学長再任に際しての談話の中でこう言っているのですね。「また、テクノポリス構想などに示されている「産学提携」について「国立大学としての立場は守らなければならないが、私は大いに進めるべきだと思う」」こう書いてあります。国立大学のあるべき立場、これは教育基本法、憲法を踏まえた教育の最高学府としての立場ですから、当然内容的なものがあろうと思うのですが、そういう立場がありながら産学協同をどんどん進めていくということは、明らかに矛盾じゃありませんか。私は、大学の自主性、そういうものを根本から、つまり臨調路線の中に変えていく、そういう重大な画期であるというふうに今理解しているわけでありますが、この点について御見解を簡単に御説明いただきたいと思います。
  203. 西尾理弘

    ○西尾説明員 先ほどもちょっと触れましたが、現在大学の研究内容を見ますと、分野によっては民間等の研究所で行われておる本当の意味での研究水準の方がまさるとも劣らないものが出てきておるというような状況がありまして、大学があくまでも自主的に主体的に、そういった分野でみずからも刺激を受けながら相手の研究活動にも寄与できるというものがあればこれを取り上げていくというのがこの共同研究の趣旨でございまして、大学の主体性、自主性というものはいささかも侵されないようにこれを運用していこうということで、各大学の事務当局にもお話ししておりますし、先生方の間にもそういう議論で対応されているという認識でございます。
  204. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 私はどの答弁に対しても、今非常に、そういう臨調、行革のあるいは教育改革のそういう一連の動きの中でこういう取り扱い規定が出されてきたということを、この側面を全然触れないで、見逃して何だかんだ言ったって通るものじゃないと思うのですが、その問題だけ触れておれば時間がなくなりますので、秋田のテクノポリスについてお伺いしたいと思います。  通産省にお聞きしますが、二月に第一次指定がございました。秋田のテクノポリスはそれから漏れまして、そのかわり今月の末でしたか、恐らく追加指定の予定だと聞いておるわけでありますが、そこで、お聞きしたいことは、二月の指定には漏れたのだ、条件が満たされないということで。ところが、あれからまず何カ月になりましたか、わずかしかなっていませんね。このわずかの間に指定漏れから今度は指定に入る、そういう状況の変化が一体何なのか。私の目から見ますと、私、地元秋田ですから、何も変わっちゃいないように思うわけであります。どこがどういうところで条件が満たされるようになったのですか。
  205. 石井賢吾

    ○石井政府委員 全地域十四地域の承認申請が昨年の十一月にあったわけでございますが、この全地域にかかわりまして承認の前に、テクノポリスのスタートを切る前に解決をしていただくべき課題というものを二月十日に全地域に示したわけでございます。したがいまして、その課題が解決できた地域につきましては逐次承認をするということになっておりまして、二月十日に課題を示しまして、最初に三月の下旬に九地域が課題への回答を寄せまして、それを各省協議の上で承認をするという運びになったわけでございますが、秋田に関しましては、二つ課題をお示ししたわけでございまして、この二つの課題への回答をこれまで準備をしてこられたということでございます。
  206. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 だから、私が聞いたのは、今月末か何かに指定するということはちゃんと新聞に書いておるんですよ。だから、どこにどういう変化があってこの短い間にそういう資格ができたのか、このことに何らお答えなしに何だかんだその経過を話したってしょうがないと思うのだな。ただ、私、残念ながら時間が非常に足りないので、だけれども一言そこのところをはっきり答えてください。一言で結構です。
  207. 石井賢吾

    ○石井政府委員 先ほど申し上げましたように、課題への回答が整備できたところ、これを承認するという段取りで進めておるわけでございまして、秋田について具体的に申し上げれば二点ございます。技術高度化利用のための支援体制の整備を図っていただきたい、これは特に地域、地元企業にかかわります技術研究開発を支援する体制を整えていただくことが第一。それから第二に、内陸の工業用地につきましては、先生の方が御承知かと思いますが、五所野の西部、これはもう完売されておりますので、内陸工業適地がないという状況でございますので、これにつきましての工業用地の整備を推進してもらいたいという二つの課題をお示しし、それに対する対応態勢を整えてきたということでございます。
  208. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 そうすれば、つまり文書の整備次第だという、その文書がおくれたということになるのだな、中身じゃなしに。県のそういう素案なり計画のそういうものの整備がおくれたということ、そういうことだと私は理解しているわけです。  同時に、誤解のないようにちょっとお断りしておきたいことは、先端技術産業の開発が本当に地域の経済あるいは雇用の発展に寄与する方向で行われることは歓迎すべきことだと私は思っているのですよ。しかし、これが逆の場合の罪深さというものになりますと、まさに取り返しのつかないことになる、だから申し上げておるのであります。  その点でさらにお聞きしたいことでありますが、この開発促進法の前段の一番大事なところにも、「この法律は、工業の集積の程度が著しく高い地域」云々ということを書いてある。そこで、今秋田テクノポリスの地域の集中的な中心になっているのは五所野という地域でありますが、そこにどのような著しく高度な企業が集中しているのか、私、秋田にいてあそこを毎日通っていますが、全然わからないのですよ。お答えいただきたいと思います。
  209. 石井賢吾

    ○石井政府委員 工業集積の大きさを見ます場合には、テクノポリスの圏域というものが設定されておりますが、その圏域内の企業の集積を見るわけでございます。その意味で申し上げれば、秋田に関しましては、これは五十五年の数字を使っておりますが、二千九百億弱の工業集積があるわけでございます。それに加えまして、先ほど申し上げましたように、五所野西部等の完売につながりました企業誘致がエレクトロニクスを中心にして進んでおるわけでありますが、そういったものを判断をいたしまして、相当の集積があるという判断をしたわけでございます。
  210. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 そこのかじ屋も工場ですよ。そこの鋳物屋も工場ですよ。ところが、今問題になっているのはそういう工業集積じゃないのでしょう。先端産業で、エレクトロニクスだか何だか舌の回らないような名前の、いわば高度に発達したそういう半導体産業だとかそういうものが中心ですよ。そういうものは、私、毎日秋田の中で生活しておりますが、二千九百億あるとおっしゃるけれども、そういう面から見れば二十九もないでしよう。五つもないのじゃないのですか。私はそう思いますね。現に五所野に張りついているのはNEC秋田というやつです。一つですね。圏域には例えば秋田電子というのがありますよ。しかし、例えばこのNEC秋田を一つ見ましても、これは研究開発部門、つまり誘導効果をずらっと波及させるような、そういう推進力のあるものは全くないのですね。秋田電子もありませんね。しかも、NECというのは主力は熊本県ですね。しかも、秋田のNECというのは山形のまた系列に入った全くローカル工場だ。そういう状況で何だかんだ言っていることが私は非常にわからないのだな。  それから、あなたの方のこの法律の要件の中に、例えば水の確保、これが容易に取得できることなんてことを書いてありますね。この地域に、その一番中心のところに水が出ますか。水は出ないのですよ。NECは井戸を何回も掘ったけれども、水が出ないために、今秋田市では市民の負担で年間八千万円上水道でやらせているのですよ。工業用水は恐らく将来できるでしょう。それまでは、何年になるかわかりませんけれども、地元が負担して、つまり誘致したツケが、詰め腹を切らされたという格好になりましょうか、そういう格好で、最先端を行く有力企業に対して、不況にあえぐ、今まんま食われないような状態に落ち込んでいる農民、漁民あるいは市民、そういう大方が水道料金を負担してあげているんだよな。そのくせ、テクノポリスには、雪と調和した都市づくりだということを言っていますな。せんだっての大雪でどうだったかというと、まさに全然、そのうち雪が解けるからということで何ら対策をとられないということで、もう県民、市民から大変な不満を浴びてきた、これが実態なんですね。  そこで、質問の時間もありませんから申し上げますと、そのほかたくさん問題があるわけですが、おっしゃるとおり、この二つの課題、それをやらなければいかぬというので、実態を無視――無視と言うと語弊がありますけれども、秋田県の置かれた条件あるいはその実態、現状そのもの、いろいろなものを、それを一足飛びに背伸びしたような格好で、若干、二つの課題を遂行するために、私から見れば暴走しておる嫌いがあると思うのですね。つまり、実際どうも何もマッチしていないのです。  これは、考えていただけばすぐわかるけれども、私だけじゃないのですね。手元に、せんだっての八四年三月九日、魁新報という地元の新聞に「県議会記者席」というものがありまして、秋田県会の報告があるのですよ。その一節にはこういうことが響いてあるのですね。「「エレクトロ・メカトロニクス、新材料など先端技術分野での産業を興す」という開発計画に対し、委員側は」つまり県会議員の委員さんですね、「口々に「しんきろうを見ているような話」」というのだ。皆さんは現実の問題だというけれども、県会議員さんは、これは「しんきろうを見ているような話」だと言っているのですよ。あり得べからざるそういう認識だということははっきりしているでしょう。それから、「産・学・官共同研究による技術開発というが、現実は到底無理」と言っているのですよ。それから、「十四候補地全部が指定されるなら、どこも指定されないのと同じこと」だなんということを言っておるのですね。  私は秋田に毎日暮らしているものですから、今、エレクトロだかメカトロだかバイオテクノロジーたかと、いっぱい英語の名前を言いますけれども、その現実と今の状況と、あなた方が後で罪深いことをしたなと言うようなことにならないようにしてもらいたいわけでありますけれども、そのために私が最後にお聞きしたいことは、先端産業が、そういう一生懸命背伸びしてやれば次々に来てくれるのかということ、その責任は一体だれが負うのだということ、国が負うのですか。ここをはっきりして、私は県民に知らせてあげたいと思うのですよ。お答えください。
  211. 石井賢吾

    ○石井政府委員 秋田に関しまして、企業誘致ということで申し上げますと、先ほどの工業集積を六十五年度までにどれだけ伸ばすか、そのうちに、先端技術産業の導入企業に幾らそれを期待するかというようなことで、いろいろ計画数値が出されておるわけでございますが、その計画からいたしましても、既にその計画の約半分が導入済みあるいはもう約束済みという実態でございます。そういう意味におきまして、私は十分に期待できるものというふうに判断をいたしておるわけでございますが、少なくとも、テクノポリスというのは、この法律でも御承知のように、あくまでも地域の産業の技術発展のための枠組みでございますので、その遂行は地元が行うということでございます。
  212. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 つまり、これは県民の税金その他の犠牲で一種のばくちをやるようなもので、住民にバラ色の幻想を振りまいて、私がさっきも言いましたように、国は実際そういう制度になっていないから責任を負わないわけだ、地域住民が頭をひねってうまくやれということでしょう、簡単に言えば。こうなりますと、あの秋田の新産都市、秋田湾大規模工業開発、当時、私県会議員をしておりまして、もうかね太鼓のはやし立て方でありましたけれども、見事に皆失敗して、その帳面つけをだれもしりをぬぐう人がいなかった。総括もしていない。全部が経済情勢の変化ということでほおかぶりしているのですよ。そうして、今また、今度は目先を変えて、テクノポリスだ、国はこれこれの条件を整備すればやってあげるのだということですから、もう我先にそういうのに飛びつくような、まさに異常な状態というと失礼で、私は怒られるかもわかりませんが……。  そこで、私は、その秋田県の実態や条件やそういうものを飛び越えたこういう暴走の気配について、重ねて国に聞くわけでありますが、あなた方は、指定する以上は、指定したということについての国の責任は免れないだろうと思うのですね。秋田のこうした現実、条件の中で、国は何を担保にどのような確信を持ってその責任を果たそうとしているのか。先ほどの答弁がそれだというような言い方では、私は納得できないと思うのですよ。最後に、大変恐縮ですが、通産大臣から、この点についてお答えいただければ大変ありがたいと思います。
  213. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 今も局長が答弁いたしましたように、テクノポリス構想の基本は、あくまでも地域が主体的あるいは技術的に開発を進めていくということが根本でございます。お話を聞いておりますと、あたかも地域でそのことをほとんど望んでいないようを言い方をなされますけれども、このテクノポリスの問題について、私が大臣就任以来、何人の方々が地域の開発のために、地域の興隆のために陳情に来られたか、ところによっては与野党挙げて、代議士の方々が私のところに非常な熱意を持って陳情に来られた、来られなかった方は共産党の代議士ぐらいなものでございまして、ほとんどの与野党込めた代議士が陳情に来られた。そういうことは、地域がいかにこのことについて熱望を持っているかということの証拠でございまして、いかに陳情に来られても、通産省といたしましてはその指定について厳正なやり方を行ったことでございますが、この間の事情を十分御理解願いたいと私は考えます。
  214. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 最後の言葉ですが、これは確かに秋田県の人が、実態が示されていないものですから、まさにあの新産や大規模工業開発と同じように、今非常に苦しいものですから、そういうものを見せられればすぐ飛びつくような、つまりそこまで現状は苦しい立場に置かれているということの裏返しとして、各党ずっとやっていると思うのですよ。行かないのは共産党だけだと言うが、まさに共産党だけで、これはなぜかと言いますと、あの新産都市のときにも私は県会議員で、反対したのは私だけでした。私の言うとおりになりました。大規模工業開発も、反対したのは私だけでした。そうして、現実は私の言うとおりの状態になったということをつけ加えて、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  215. 横山利秋

    横山委員長 次回は、来る十八日金曜日午前九時四十五分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十八分散会