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1984-05-09 第101回国会 衆議院 決算委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年五月九日(水曜日)     午前十時五分間議 出席委員   委員長 横山 利秋君    理事 近藤 元次君 理事 白川 勝彦君    理事 谷  洋一君 理事 東家 嘉幸君    理事 井上 一成君 理事 新村 勝雄君    理事 貝沼 次郎君 理事 神田  厚君       榎本 和平君    小坂徳三郎君       桜井  新君    塩崎  潤君       澁谷 直藏君    白浜 仁吉君       松野 頼三君    渡辺 秀央君       河野  正君    城地 豊司君       近江巳記夫君    玉城 栄一君       日笠 勝之君    中川利三郎君       藤木 洋子君    阿部 昭吾君       江田 五月君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 竹下  登君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     田川 誠一君  出席政府委員         人事院総裁   内海  倫君         人事院事務総局         給与局長    斧 誠之助君         内閣総理大臣官         房会計課長         兼内閣参事官  渡辺  尚君         警察庁長官官房         長       太田 壽郎君         警察庁長官官房         会計課長    立花 昌雄君         警察庁刑事局長 金澤 昭雄君         警察庁刑事局保         安部長     鈴木 良一君         警察庁交通局長 久本 禮一君         大蔵大臣官房総         務審議官    吉田 正輝君         大蔵大臣官房審         議官      水野  勝君         大蔵省主計局次         長       的場 順三君         大蔵省理財局次         長       吉居 時哉君         大蔵省銀行局長 宮本 保孝君         国税庁直税部長 渡辺 幸則君         自治大臣官房長 矢野浩一郎君         自治大臣官房会         計課長     桝原 勝美君         自治省行政局長 大林 勝臣君         自治省行政局公         務員部長    中島 忠能君         自治省行政局選         挙部長     岩田  脩君         自治省財政局長 石原 信雄君         消防庁長官   砂子田 隆君  委員外出席者         警察庁警察局人         事課長     城内 康光君         警察庁刑事局保         安部保安課経済         調査官     清島 傳生君         法務省刑事局刑         事課長     北島 敬介君         法務省主計局司         計課長     加藤 剛一君         厚生省医務局指         導助成課長   柳沢健一郎君         厚生省薬務局企         画課長     岸本 正裕君         厚生省薬務局安         全課長     小宮 宏宣君         会計検査院事務         総局次長    佐藤 雅信君         会計検査院事務         総局第一局長  西川 和行君         会計検査院事務         総局第五局長  中村  清君         公営企業金融公         庫総裁     首藤  堯君         決算委員会調査         室長      石川 健一君     ――――――――――――― 委員の異動 五月九日  辞任         補欠選任   天野 光晴君     渡辺 秀央君   近江巳記夫君     日笠 勝之君   中川利三郎君     藤木 洋子君   阿部 昭吾君     江田 五月君 同日  辞任         補欠選任   渡辺 秀央君     天野 光晴君   日笠 勝之君     近江巳記夫君   藤木 洋子君     中川利三郎君   江田 五月君     阿部 昭吾君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和五十六年度一般会計予備費使  用総調書及び各省庁所管使用調  書(その2)  昭和五十六年度特別会計予備費使  用総調書及び各省庁所管使用調  書(その2)  昭和五十六年度特別会計予算総則  第十一条に基づく経費増額調書  及び各省庁所管経費増額調書  (その2)  昭和五十七年度一般会計予備費使  用総調書及び各省庁所管使用調  書  昭和五十七年度特別会計予算総則  第十一条に基づく経費増額調書  及び各省庁所管経費増額調書承諾を求める  の件)  昭和五十六年度決算調整資金からの歳入組入れ  に関する調書承諾を求めるの件)  昭和五十六年度一般会計国庫債務負担行為総調  書(その2)  昭和五十六年度一般会計歳入歳出決算  昭和五十六年度特別会計歳入歳出決算  昭和五十六年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和五十六年度政府関係機関決算書  昭和五十六年度国有財産増減及び現在額総計算  書  昭和五十六年度国有財産無償貸付状況計算書  〔総理府所管警察庁)、自治省所管公営企  業金融公庫〕      ――――◇―――――
  2. 横山利秋

    横山委員長 これより会議を開きます。  昭和五十六年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その2)、昭和五十六年度特別会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その2)、昭和五十六年度特別会計予算総則第十一条に基づく経費増額調書及び各省庁所管経費増額調書(その2)、以上三件の承諾を求めるの件、昭和五十七年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書昭和五十七年度特別会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書昭和五十七年度特別会計予算総則第十一条に基づく経費増額調書及び各省庁所管経費増額調書、以上三件の承諾を求めるの件、昭和五十六年度決算調整資金からの歳入組入れに関する調書承諾を求めるの件、及び昭和五十六年度一般会計国庫債務負担行為総調書(その2)、以上の各件を一括して議題といたします。  大蔵大臣から各件について趣旨の説明を求めます。竹下大蔵大臣
  3. 竹下登

    竹下国務大臣 ただいま議題となりました昭和五十六年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用湖書(その2)外二件、昭和五十七年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書外二件、並びに昭和五十六年度決算調整資金からの歳入組入れに関する調書事後承諾を求める件、並びに昭和五十六年度一般会計国庫債務負担行為総調書(その2)の報告に関する件につきまして、その概要を御説明申し上げます。  初めに、昭和五十六年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その2)外二件並びに昭和五十七年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書外二件につきまして御説明申し上げます。  まず、昭和五十六年度一般会計予備費予算額一千六百四十二億円のうち、昭和五十六年五月一日から同年十二月二十五日までの間において使用決定いたしました四百三十四億四千四百八十八万円余につきましては、既に第九十六回国会において御承諾を得たところであります。  その後、昭和五十七年一月二十六日から同年三月三十日までの間において使用決定いたしました金額は、九点八十四億七千六百八十七万円余であります。  その内訳は、災害対策費として、農林水産業共同利用施設災害復旧に必要な経費及び災害による廃棄物処理事業に必要な経費の二件、その他の経費として、国民健康保険事業に対する国庫負担金不足を補うために必要な経費等の十九件であります。  次に、昭和五十六年度各特別会計予備費予算総額三兆七千六百五十一億四千六百八十七万円余のうち、昭和五十六年十二月八日から同年十二月十五日までの間において使用決定いたしました十二億五千七万円余につきましては、既に第九十六回国会において御承諾を得たところであります。  その後、昭和五十七年二月二十六日から同年三月三十日までの間において使用決定いたしました金額は、七百三十七億四千四百九十五万円余であります。  その内訳は、食糧管理特別会計輸入食糧管理勘定における調整勘定繰り入れに必要な経費等特別会計の十件であります。  次に、昭和五十六年度特別会計予算総則第十一条の規定により、昭和五十六年九月十八日から同年十二月十五日までの間において経費増額決定いたしました八十五億九千四百二十五万円につきましては、既に第九十六回国会において御承諾を得たところであります。  その後、昭和五十七年三月三十日に経費増額決定いたしました金額は、三百三十三億七千七百九十万円余であります。  これは、郵便貯金特別会計における支払い利子に必要な経費増額であります。  次に、昭和五十七年度一般会計予備費予算額二千三百億円のうち、昭和五十七年五月二十五日から昭和五十八年三月二十五日までの間において使用決定いたしました金額は、一千二百二十五億八百四十三万円余であります。  その内訳は、災害対策費として、河川等災害復旧事業に必要な経費等の十八件、その他の経費として、雇用保険求職者給付に対する国庫負担金不足を補うために必要な経費等の二十九件であります。  次に、昭和五十七年度各特別会計予備費予算総額四兆一千五百七十四億九千六百七十六万円余のうち、昭和五十七年十月十九日から昭和五十八年三月三十日までの間において使用決定いたしました金額は、一千三百八十六億二千九百三十二万円余であります。  その内訳は、食糧管理特別会計輸入食糧管理勘定における調整勘定繰り入れに必要な経費等特別会計の十四件であります。  次に、昭和五十七年度特別会計予算総則第十一条の規定により、昭和五十七年九月二十四日から昭和五十八年三月三十日までの間において経費増額決定いたしました金額は、七百五十七億四千六百六十三万円余であります。  その内訳は、郵便貯金特別会計における支払い利子に必要な経費増額等特別会計の七件であります。  次いで、昭和五十六年度決算調整資金からの歳入組入れに関する調書につきまして御説明申し上げます。  昭和五十六年度におきましては、予見しがたい租税収入減少等により、一般会計歳入歳出決算上二兆四千九百四十八億九百九十五万円余の不足が生ずることとなりましたので、決算調整資金に関する法律第七条第一項の規定により、当該決算上の不足額を補てんするため、決算調整資金から同額を一般会計歳入に組み入れて、昭和五十六年度の一般会計歳入歳出決算を行っております。  この決算上の不足額は、決算調整資金に関する法律施行令第一条の規定により計算いたした額でありまして、決算調整資金に関する法律第七条第一項の規定の適用前における昭和五十六年度の一般会計収納済み歳入額四十四兆九千四百八十五億二千七百五十六万円余が、昭和五十六年度の一般会計において財政法第六条に規定する剰余金を全く生じないものとして算定した場合に得られるべき歳入の額に相当する額四十七兆四千四百三十三億三千七百五十一万円余に不足する額に相当する額であります。  また、この決算上の不足額を補てんするため決算調整資金から一般会計歳入に組み入れる際の決算調整資金に属する現金は二千四百二十三億千七百二十三万円余であって、決算上の不足額に二兆二千五百二十四億九千二百七十一万円余不足していたため、決算調整資金に関する法律附則第二条第一項の規定により、当該不足していた額を国債整理基金から決算調整資金繰り入れた後、同資金から一般会計歳入に組み入れております。  なお、この国債整理基金から決算調整資金繰り入れた額二兆二千五百二十四億九千二百七十一万円余に相当する金額につきましては、決算調整資金に関する法律附則第二条第三項及び第四項の規定により、昭和五十八年度予算に計上して一般会計から決算調整資金繰り入れた後、同資金から国債整理基金に繰り戻しております。  以上が、昭和五十六年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その2)外二件、昭和五十七年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書外二件並びに昭和五十六年度決算調整資金からの歳入組入れに関する調書事後承諾を求める件の概要であります。  何とぞ御審議の上、速やかに御承諾くださいますようお願い申し上げます。  次に、昭和五十六年度一般会計国庫債務負担行為総調書(その2)の報告に関する件につきまして御説明申し上げます。  昭和五十六年度一般会計におきまして、財政法第十五条第二項の規定により、災害復旧その他緊急の必要がある場合に国が債務を負担する行為をすることができる限度額一千億円のうち、総額四億六千万円を限度として閣議決定を経た債務負担行為につきましては、既に第九十六回国会に御報告したところであります。  その後、昭和五十六年発生河川等災害復旧事業費補助につきまして、昭和五十七年三月五日の閣議決定を経て、総額百五十六億二千七百万円を限度として債務負担行為をすることといたしました。  以上が、昭和五十六年度一般会計国庫債務負担行為総調書(その2)の報告に関する件の概要であります。
  4. 横山利秋

    横山委員長 これにて説明は終わりました。     ―――――――――――――
  5. 横山利秋

    横山委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。新村勝雄君。
  6. 新村勝雄

    新村(勝)委員 まず、国債整理基金から決算調整資金に二兆二千五百二十四億円余を繰り入れて五十六年度の決算を済ませたわけでありますが、調整資金国債整理基金の現在額は幾らありますか。
  7. 的場順三

    的場政府委員 決算調整資金の現在額はゼロでございます。それから、国債整理基金の前年度末の現在高は――ちょっとお待ちいただけますか。すぐ調べてお答えいたします。
  8. 新村勝雄

    新村(勝)委員 すぐわかりますか。
  9. 的場順三

    的場政府委員 五十八年度末の数字、今すぐ調べますが、五十九年度末の予定で一兆七千九百億でございます。
  10. 新村勝雄

    新村(勝)委員 そうしますと、五十六年度決算不足額予想外の巨額に達したということで、国債整理基金から決算調整資金に組み入れをし、さらにそれをもって埋めたということでありまして、その結果として、現在なお決算調整資金はゼロだ、このときに全部使ってしまったからゼロなわけですが、そして国債整理基金についても、まだ五十六年度末の穴埋めをする前の状況には回復していないということでありますね。ですから、五十六年度の予想外歳入欠陥の痛手が依然として大きく残っているということでありますけれども、これは予測しがたい歳入減ということでありますけれども、財政運営からすると、これは極めて遺憾な事態でありまして、特に財政運営については、一貫性と同時に激変をできるだけ避けていかなければいけないわけでありますけれども、そういう面からいって大変遺憾な事態になったわけでありますが、この決算調整資金が現在ゼロ、これでは、将来、ここまでいかないにしてもある程度の調整資金を必要とする場合にどうにもならない。また、国債整理基金についても、別の基金、別の会計のものを食ってしまったわけですから、またそれを回復していないということでありますから、これを回復するのはいつであるのか。それからまた、決算調整資金については、将来そういう事態が起こった場合の用意としての調整資金の備蓄といいますか、用意をどうするのかということでございますが、それをお伺いします。
  11. 的場順三

    的場政府委員 先ほど五十八年度末の数字を申し上げませんでしたが、実績は二兆五千八百八十七億でございます。  それから、五十六年度決算のために決算調整資金国債整理基金から繰り入れました二兆二千五百二十四億につきましては、五十八年度の当初予算国債整理基金に結果的に返るように決算調整資金組み入れを行っておりますので、その部分は返っております。  それから、もう一つは、決算調整資金制度というのは、御指摘のとおり、避けがたい歳入不足等に対応するために、決算不測事態が起こったときに備えるためのものでございますから、本来この資金お金があるのが当然でございますけれども、現在のような大変厳しい財政状況でございますので、仮に決算調整資金予算繰り入れをいたすといたしましても、これはやはり特例公債財源として発行せざるを得ないということでございますので、決算調整資金には現在金がないわけでございます。ただ、先ほど申し上げましたように、国債整理基金には五十九年度末で一兆七千億強のお金がございますので、通常予見できるような軽微な歳入過不足が生じました場合には、これをもって対応できるというふうに考えておりますし、その前にまず何よりも一番大事なことは、先生指摘のとおり、そういう五十六年度のようなことはもちろんのこと、軽微な歳入歳出過不足が起こらないように慎重に財政運営を行っていくことが極めて大事であるというふうに認識しておりますので、財政当局といたしましても、各省とも十分御相談の上、今後とも一層適切かつ慎重な財政運営に努めていくということにいたしたいと思っています。
  12. 新村勝雄

    新村(勝)委員 決算調整資金は現在ゼロ、それから国債整理基金については五十八年度で繰り戻しをしたということでありますけれども、そのために五十八年度の予算編成にかなり障害になったことは事実でありまして、それによって財政運営がかなり害されているということは事実としてあるわけですね。ですから、こういう事態は絶対に将来繰り返されないような財政運営が必要なわけであります。  それからまた、決算調整資金の現在額ゼロということでありまして、これを積み立てるとすれば、また赤字国債だということではなく、財政運営工夫予算編成工夫によって一定の額をここへ戻すということが必要だと思いますが、財政がどうにもならない、だからこれ以上何かをするには赤字公債よりほかないんだという発想が、現在の赤字公債を含めた国債百十兆円という事態を招いたわけでありまして、こういうどうしてもなければならない基金については、財政運営工夫によってその資金を生み出していかなければいけない。少なくとも、一定の額がなければならないところを、不測事態によってゼロになってしまったわけですから、それをなるべく早くもとに復していかなければならない。それを復すには、赤字公債だということでは全く芸がない話でありますから、そうじゃなくて、財政創意工夫の中で回復していかなければいけないと思いますが、それはどうなんでしょう。
  13. 的場順三

    的場政府委員 御指摘のとおりでございます。決算調整資金に組み入れる制度上の方法としては、一つ剰余金が発生いたしましたときに、国債整理基金償還財源として繰り入れる二分の一を除いた額を組み入れる、あるいは場合に応じて予算繰り入れをするということになっております。  ただ、必要な資金でございますから、できるだけ工夫をして積み立てを行うことが至当であるということは、先生指摘のとおりでございますけれども、何分大変厳しい財政状況であり、各省各庁にも相当な御苦労といろいろな工夫をお願いしている段階でございますので、今後十分に検討いたしますけれども、現段階財政当局の立場からいいますと、やはり特例公債の発行をできるだけ減らすということが第一義でございますので、その辺を勘案しなから十分検討させていただきます。  ただ、直ちに現段階工夫をして相当な金額が積み立てられるかどうかということを考えますと、かなり難しい面があるかと思いますけれども、これは今後十分に工夫することにさせていただきたいと思います。
  14. 新村勝雄

    新村(勝)委員 この点についてはひとつできるだけの知恵を絞って、ゼロという状態をいつまでも続けることは大変遺憾でありますから、お願いしたいと思うわけです。  そこで、五十六年度の決算で約二兆五千億の欠陥を生じた。これは不測事態だと言われておりますけれども、不測には違いありません。まさか予算を編成するときにこれだけの赤字予想したわけじゃないでしょうからこれは不測事態でしょうけれども、不測不測としても、そんなに、天変地異があったわけじゃないわけですから、どこにそういう原因があったとお考えですか。
  15. 的場順三

    的場政府委員 五十六年度の決算におきまして大幅な不足が生じたということは、御指摘のとおり、財政当局としても大変残念なのでございます。  この原因、いろいろございますけれども、一つは、石油危機に伴う世界経済の停滞が予想以上に長期化して、その回復がおくれたことを背景といたしまして、企業生産活動や消費が伸び悩んだことによるものではなかろうかというふうに考えております。  このような予見しがたい経済情勢の推移による租税収入不足等により生じました不足に対応するために、決算調整資金による制度があるわけでございますので、それによって切り抜けたということでございますが、先ほども申し上げましたように、今後も世界経済、内外の動向を十分に見守りながら財政運営に慎重を期してまいりたいと思います。
  16. 新村勝雄

    新村(勝)委員 二兆五千億の不足が生じたということ、これは一口に言って歳入が思うように入らなかった、税収が思うようにいかなかったということですね。  それで、五十六年度の予算審議を今読んでみますと、そのときに当時の高橋政府委員のお答えで、そのときの見込みでは自然増収が四兆四千九百億くらいあるだろう、その内訳としては所得税が二兆七千六百九十億、法人税が一兆二千二百四十億、その他の税金が四千九百七十億程度ある、これはかたいところだということだったわけですね。これに対する見当が狂ったということですか。その見当がどこでどういうふうに狂ったのか、それを伺いたいのです。
  17. 的場順三

    的場政府委員 予算編成時に税収をできるだけ正確に見積もるということはもちろん財政当局の仕事でありますので、そのときどきの経済情勢等を十分に見きわめながら、政府経済見通し等を考えて予算の積算をしたわけでございますけれども、やはり先ほど申し上げましたように、石油危機に伴う景気の回復がはかばかしくなかった、そのために直接税を中心として思うとおりの税収が上がらなかったということでございますから、結果的に言いますと、先生指摘のとおりでございます。
  18. 新村勝雄

    新村(勝)委員 ですから、税目ごと政府予想を立てられたわけですけれども、税目ごとにどこが狂ったのかということをもう少し詳しくお話しできませんか。
  19. 的場順三

    的場政府委員 昭和五十六年度の例えば源泉所得税の当初予算額は九兆九千億と見積もっておりました。途中補正を行いまして、その補正で千二百八十九億の減額を行っておりますが、決算額は九兆三千三百七十三億で、補正後に比べてもさらに四千三百三十八億減ったということでございます。  それから、申告所得税につきましては、当初予算額で三兆一千七百九十億の見通しを立てておりましたが、補正で八十五億減額いたしておりますが、その減額後に対し、さらに決算では五千二百七十四億減りまして、結果的に二兆六千四百三十一億にとどまったということでございます。  それから、法人税は十兆三千五百二十億と見積もっておりましたが、これが結果的に一兆五千二百九十五億減りまして、決算額では八兆八千二百二十五億にとどまったということでございまして、全体として、その他の税収増収額あるいは不足額を通算いたしますと、一般会計の全体としては二兆八千七百九十五億減るということでございます。
  20. 新村勝雄

    新村(勝)委員 そうしますと、どの税目も皆狂っているわけですけれども、税収予想の狂ったのは、これは経済成長もゼロ成長じゃなかったわけですね、一定の成長を低成長ではあるけれどもやっていたわけですから。そうしますと、税収予想の狂いというのは、弾性値の設定に適切でないものがあったのか、あるいは経済活動を見誤ったのか。ただ、あのときの経済活動は見誤るほど、予想で最低と最高の幅はそれほど考えられる状況ではなかったと思いますね。それから、経済成長、経済活動についても、予算審議段階における政府説明なんかと実績とでは、経済全体、GNP、それからその内容等についてもそれほど狂わないと思いますね。税収だけが狂ったというふうな印象を受けるわけですけれども、そこらの御説明、いかがですか。
  21. 的場順三

    的場政府委員 財政当局の一員ではございますが、税収見通しの専門家ではございませんけれども、御指摘の点を考えてみますと、一つは経済見通しにも狂いがあったんだと思います。例えば、税収に一番大きな影響があるのは名目GNPでございますけれども、これは当初予算を編成いたしますときの経済見通しは、名目GNPを九・一%というふうに見込んでおりましたが、これが実績で五・五%に落ちておるということでございますから、税収の増減額からいきますと、このGNPに弾性値を掛けるわけでございますから、相当大きく響いてくるのではないかと思います。それから、弾性値自身、これはちょっと今手元に資料がございませんけれども、恐らく下がっていると思われます。したがいまして、先ほど来申し上げておりますように、石油ショックに伴う景気変動が一つの大きな要因であると思いますが、財政当局として十分そういうことを含めて税収見通しを正確にできるように今後は努めたいと思っております。
  22. 新村勝雄

    新村(勝)委員 そこで、財政再建、これは当時から財政再連の必要性は強く叫ばれていたわけでありますけれども、特にこれが本当に深刻に骨身にしみて感じられるのは五十六年あたりからですか。  そこで、財政再建に対する基本的な考え方、これは大臣がいらっしゃらないのですけれども、基本的にはどういうものであるのか。今までの経過をずっと見てみますと、財政需要が毎年生じできます。ところが、財政需要に対して、財政需要を検討してこれを抑えるということよりは、財政需要が起こったその都度、安易な赤字国債に依存していた、こういうことが言えるんだと思うのです。現在がなりその姿勢が改まっております。こういうことで五十五、六年ごろまでは推移してきたということが言えると思うのですが、世界各国ともオイルショックによる財政危機に見舞われておるわけですけれども、世界各国、先進国の対応の仕方がかなり違うように思うわけです。日本はどっちかというとアメリカ型。日米の対応の仕方、それから西ドイツの対応の仕方、これは大変違いますね。日米は、安易にと言うと失礼ですけれども、安易に赤字国債に依存しておるというのが日米のタイプ。それから、西ドイツのタイプは、財政危機ということが予想される場合には、かなり特別の立法等もつくって歳出の切り捨てあるいは政策の変更をやっておるというふうに聞いております。ですから、日本は、どっちかというと情勢に追随をする。それからまた、財政の需要に対しては、その財政需要を切るということあるいは財政需要の内容を検討するということではなくて、金が足りないんだから仕方がないということで国債に依存してきた、こういうことが一口に言えるのではないかと思うのです。  そういう点で、これは大臣に後で伺いたいのですが、財政再建に対する基本的なスタンスが今問われているんじゃないかと思いますけれども、その点については次長、どうお考えですか。
  23. 的場順三

    的場政府委員 大変基本的なお話でございますので、本来、大臣がおられましたら大臣からお答えすべきことかと思いますが、先生指摘のとおり、第一次、第二次にわたる強烈な石油ショックの影響を受けまして、世界各国とも相当な経済的、財政的困難に陥ったわけでございます。  我が国の場合、まず経済的困難を回避するため、当初、財政が態勢を立て直すよりも前に経済情勢をうまく新しい事態に即応させるという面が中心になりまして、若干歳出の削減ということに力点が置かれるのがおくれたという面は御指摘のとおりかと思います。しかし、そうはいっても、結局財源が、オイルショックに伴って税収不足するということから財源不足が生じているわけでございますから、赤字公債特例公債に依存せざるを得ない状況になっていっているということがございまして、五十五年度以降、特別に我々も蔵出の削減ということを考えまして、形の上では特例公債依存体質からの脱却、それから全体としての公債依存度をできるだけ低くするということが当面の目標でございますけれども、それはまず歳出の削減から始める必要があるということで臨調等の御答申をいただき、各省にも相当無理なお願いをしながら歳出削減に努力しておるところでございます。  今後とも、経済との調和を図る必要はあるかと思いますけれども、新しい社会経済の進展に即応して財政が十分な対応力を回復するためにも、当面はぜひ特例公債から早い機会に脱却することが必要ということを念頭に置きまして、財政運営を行っていく所存でございます。
  24. 新村勝雄

    新村(勝)委員 入るをはかって出るを制すということがありますけれども、そういう思想は日本の財政には余りないんですね。余りなくて、情勢に流されてきたという傾向がどうも強いんです。最近は若干、政府も深刻に考えているようですけれども。これはもう少し早く入るをはかる考え方に徹していれば、もう少し財政危機の進行をとめることができたのではないかという気がするわけであります。しかし、財政とそれから一般国民経済とのつながりが非常に密接ですから、赤字国債を徹底的に抑えて縮小財政にすることのメリット、デメリットがあります。それと、そのことから来る国民経済への影響ということがありますので、これは一概には言えないと思いますけれども、基本的にはこれからの大蔵省の方針として、入るをはかって出るを制すということにするのか、それとも、不足財源についてはある程度やむを得ないということであるのか、基本的な方向を伺っておきたいと思います。
  25. 的場順三

    的場政府委員 大変難しい、かつ本質的な御質問でございますが、量出制入の原則か量入制出の原則かというのは、財政学の基本的なことを申し上げて恐縮でございますけれども、財政本来の姿からいきますと、やはり量出制入の原則であって、家計と同じような量入制出の原則をそのまま適用するのは難しい面があるかと私は思います。  ただし、先生も御指摘のとおり、今後の変貌する社会経済情勢財政が弾力的かつ柔軟に対応していくためには、財政の健全性を回復するというのが急務でございますので、「一九八〇年代経済社会の展望と指針」にもございますように、六十五年までに特例公債から脱却するとともに、全体としての公債依存度をできるだけ引き下げるということをまず念頭に置きまして、基本的には歳出について各省に一段と努力をお願いするという方向で行きたいと思っております。
  26. 新村勝雄

    新村(勝)委員 ひとつ今後とも財政再建に御努力をいただきたいと思います。  時間がありませんので、具体的にはあと一つ、二つ伺います。厚生省おいでになっていますね。  毎年、予備費の中にスモンの訴訟の和解に関する費用が出ているわけです。毎年大体同じくらいの額で出ているわけなんですが、これは当初予算に予見できないのか。正確ではないにしてもある程度の予見ができないのか。それから、スモン訴訟については現在どういうことになっているのか。過去の実績、将来の見通し、これを伺いたいと思います。
  27. 岸本正裕

    ○岸本説明員 お答えを申し上げます。  まず、第一点の、スモンの関係の予算につきまして、当初予算に計上できないのかという御質問でございましたけれども、私どもといたしましては、スモンの和解というものは、係属する裁判所の審理の状況でございますとか、裁判所が委嘱している鑑定結果報告状況、これらを踏まえた原告と被告間での個別協議の状況等不確定な要素が多いために、これを当初見積もりを行うということが極めて困難だというふうに考えているわけでございます。  また、厚生省の予算の中で流用するというようなことにつきましては、和解金というものの総額はかなり巨額なものでございまして、例えば五十六年度では約五十二億円、五十七年度では二十九億円ということになっております。また、財源に余裕が極めてないわけでございますし、その上余裕があるかどうかわからない年度当初からそのような支出をしなければいけないというようなこともございますので、当初に計上する、また流用するということはできないというふうに考えているわけでございます。  それから、第二点の、スモン和解の現状と将来の見通しについてでございますが、スモン訴訟の提訴患者数は五月八日現在で六千四百三十四人でございます。裁判所の尽力を得まして、これまでに提訴患者に対して九六%、鑑定によりスモンであることが明らかとなった患者数に対して九八%に当たります六千百七十六人の患者との間に和解が終了しておりまして、全体として順調に推移していると考えておるわけでございます。  なお、残されました患者につきましても、裁判上の和解により解決するという基本方針のもとに、私どもといたしましては、裁判所の判断に従い一日も早く解決が図られるように努力を続けていきたいと考えております。(新村(勝)委員「未解決の人数は何人になっていますか、残っている人」と呼ぶ)五月八日現在で提訴患者数が六千四百三十四人でございます。それで和解が終了した患者数が六千百七十六人でございます。残りはその差になるわけでございますが……。
  28. 新村勝雄

    新村(勝)委員 わかりました。  あと一つは、特会の使用残が非常に多いのですね。外国為替資金、それから年金勘定、国民年金勘定、業務勘定、それから国内米管理勘定というような残が非常に多いのですけれども、この主なものについての理由をちょっと伺います。すぐわからなければ、後で書面で下さい。
  29. 的場順三

    的場政府委員 各特別会計の予備費は、その予見しがたい経費不足に充てるためにそれぞれの特別会計法等に基づきまして計上されているものでございますが、今御指摘の個々の特別会計についてどういう事情があったのかということにつきましては、私ちょっとすぐに全部をお答えするわけにいきませんので、各省からまた改めて御説明させていただくということでいかがでございましょうか。
  30. 新村勝雄

    新村(勝)委員 後でいいです。  終わります。
  31. 横山利秋

    横山委員長 貝沼次郎君。
  32. 貝沼次郎

    貝沼委員 予備費について初めに質疑をしておきたいと思います。  まず、予備費の内容について簡単に御説明願いたいと思います。
  33. 的場順三

    的場政府委員 五十七年度の予備費について申し上げますと、災害関係が三百九十六億三千二百万、そのうち公共事業の災害関係が三百六十五億八千七百万、その他官庁施設費が三十億四千五百万、それから災害関係以外の一般経費でございますが、義務的経費の追加で六百六十一億九百万、その他が百六十七億六千七百万でございまして、その他の主なものを申し上げますと、退職手当が七十八億二千三百万、スモン訴訟における和解履行経費が二十八億六千六百万等でございます。
  34. 貝沼次郎

    貝沼委員 そこで、大蔵省にちょっとお尋ねをいたします。  予備費の額でありますが、今の使ったものについて私はまあしょうがないかなという感じはいたします。いたしますが、予備費の設定の仕方なんですけれども、昭和五十四年度予算から六年間、三千五百億、これはもう全然変わりませんね。予算規模が多くなろうと少なくなろうと、予備費の枠だけは三千五百億。こういうふうに三千五百億でなければならないというのは何か理由があるのですか。
  35. 的場順三

    的場政府委員 予備費というのは、もう御承知のとおり、従来から先生から何度も御指摘いただいておりますとおり、財政法二十四条に基づきまして「予備費として相当と認める金額を、」「歳出予算に計上することができる。」ということになっておりますので、具体的にどういう積算根拠があってどうだということがあるわけでは必ずしもございませんが、「予見し難い予算不足に充てる」という性格上、もともと特別な基準があるということでもございません。ただ、今御指摘ございましたように、五十四年は三千五百億のほかに公共事業等予備費が若干ございましたけれども、五十五年度以降は三千五百億でございますが、全体としての一般会計予算規模に対する計上割合であるとか流動的な諸般の事情等を総合的に勘案して、「相当と認める金額」ということで、三千五百億を計上させていただいておるわけでございます。
  36. 貝沼次郎

    貝沼委員 まあ余り意味がないということですね。ただ従来そうだからそうつけた。こういうことはいつまでもやっていることじゃないと私は思うのです。なぜそういうことを私が言うかと申しますと、三千五百億の予備費を見込んでおいて、そして、例えば五十六年度ですと、月別に使用額をずっと出していきますと、四月から十二月まで約二百六十五億円、全体の七・六%です。そして、ここで十二月二十二日補正予算閣議決定を行いまして、千八百五十八億円の減額をするわけですね。それから、五十七年度を見ましても、四月から十月まで、この十月というのは補正予算閣議了解をする時期でありますから、このときまで二十一億円で〇・六%しか使っていない。ところが、この時期になると一千二百億円の減額をするのです。三千五百億円を組んでおいて、まだ〇・六%とか六%しか使っていない段階で半分近くを補正にぽおんと持っていってしまう。いかに予見しがたいといっても、何が起こるかわからないから三千五百億組んでおきながら、ほんのちょっと使っただけで、あとはもうこれは恐らく結構でしょうというので補正予算の方にすぱんと半分も持っていくやり方が実は毎年続いておるわけですね。したがって、そういう面から考えると、この三千五百億円というのは一体何だ。補正財源ではないのか。補正財源を組むために三千五百億というものを多目に見ておるのではないのか。じゃ、補正予算を組んだ後、予備費が足りなくなったケースがあるかというと、これまたないというようなことを考えると、必ずしも三千五百億でなければならないという理由のないことはもうとっくの昔にわかるはずなんですね。それがいまだに改められないで、三千五百億円を、それこそどういう信条か知りませんが、守り通しておるという大蔵省の姿勢は不思議でならないと私は思いますが、この点はいかがですか。
  37. 的場順三

    的場政府委員 五十六年度予備費につきましては、補正をいたします際に、千八百五十八億減額いたしておりますし、五十七年度も千二百億の減額を行っております。それは御指摘のとおりでございます。  本来、予算というものは、一年間の財政需要を全部見込みまして、予算編成時に過不足なく見通しが立てられれば、これは理想的かと思いますが、やはりその年の経過とともに予見しなかったことが出てくる、あるいはその積算の中に追加的な事項、変更事項が出てくるということがあって、執行上どうしても追加をしたり減額をしたりせざるを得なくなることが間々ございます。そこで、そのために三千五百億の予備費を、予見しがたい予算不足に充てるため、経費不足に充てるため設けているわけでございますが、年度の前半よりは後半に予備費が出ていくというのは、一つは、我が国の地理的あるいは気象的な特性がございまして、予備費を考えております経費の大宗は災害でございます。したがいまして、災害は、最近は地震とか雪害等もございますけれども、アジアモンスーン地帯に属しているということがございまして、夏以降の台風による被害が主たるものでございまして、どうしても支出の時期が秋以降になる。秋以降になるときに改めてその年度の追加的な財政需要がどの程度あるかを計算いたしますと、予備費の枠をはみ出て、どうも補正予算をお願いする必要が出てくるわけでございます。本来、予備費というのは包括的にその範囲内で使ってもいいよという国会の御議決をいただいている経費でございますが、補正予算というのは、一つ一つ事項に分からまして、その事項についての適否を御判断いただくという本来の予算の姿での御審議をお願いするわけでございますから、補正予算の際に改めて、本来なら予備費で支出すべき性格のもの、あるいは補正を組まなければ予備費で充てざるを得ないものについても補正に計上するわけでございますから、それに見合う額としてある程度の予備費の減額を行う。改めてその時点で、それ以降の予備費というのは一体幾らぐらいあれば足りるかということを考えて、そういった措置をとらしていただくわけでございますのて、当初漫然と三千五百億という予備費を計上して結局その補正財源に使うということではないというふうに、大変申しわけない、お言葉を返すようでありますけれども、我々は考えておるわけでございます。
  38. 貝沼次郎

    貝沼委員 あなたが幾ら説明されても、事実がこうだ。特別意味はない、だけれども三千五百億つけてきておる。あなたの言うように、予見しがたいことが、何が起こるかわからないから三千五百億つけておるわけでしょう。そうして、まだほんのちょっと、六%とか〇・六%とか使った段階で、すぱんと補正を組んで、半分ぐらいやってしまう。大体、予備費というのは、事前議決の原則からいきますと、予算委員会できちっと審議をして予算を組む、これが正しいわけです。だけれども、そういう予見し得ないものが起こるだろうというので予備費が組んであるわけですから、したがって、予備費の額は理想的には少ないほどいいわけです。事前議決の原則からいけばそうなるわけですよ。それが余りにも多過ぎると言うのです。三千五百億ぽおんと出しておいて、そして途中から――それは補正予算ですから審議もするでしょう、あなたがおっしゃるようにいろいろやるんだけれども、毎年同じことを繰り返している。それだったら、すぐそんなに見えるような補正であるなら、もっと本予算のときにきちっと見通しを立てて努力すべきであるし、三千五百億をそのまま守り通していかなければならぬ理由は何もないのじゃないか。これは検討すべきときに来たのではないかと私は考えておるわけでございます。それで質問しておるわけですが、いかがですか。
  39. 的場順三

    的場政府委員 予備費の額は一体幾らが適当かという御議論でございまして、三千五百億という額を率で見てまいりますと、一般会計の規模がわずかでありますが全体としてはふえておりますので、比率はかなり小さくなっております。五十九年度予算では〇・六七%ぐらいになっていると思いますが、できるだけ予備費の計上額についても慎重を期すべきことは御指摘のとおりでございます。全体としての財政予算編成の中で考えていくべきことであろうと思いますが、なかなか、先ほども申し上げましたように、先々のことを見込むということも難しゅうございますので、よく検討いたします。三千五百億というのが大き過ぎるという御指摘については、補正との関連がございますが、補正の関連は先ほど申し上げたとおりでございますので、一つの基準ではないかというふうに考えておりますけれども、なお勉強させていただきたいと思います。
  40. 貝沼次郎

    貝沼委員 補正との関連があるというのは、私はあなたの口からは聞きたくなかったわけです。予備費を組むとき補正のことを考えられたのではたまったものじゃないですね。補正なんかないんだ、予備費でやるんだという姿勢で出るわけでしょう。ところが、いろんなことが起こってきて補正がやむなく出てくることであって、予備費を組むときに補正を考えておるのならこれは予算がおかしくなるのですから、その辺をひとつ注意していただきたいと思います。  それから、もう一つ各省庁の予算の中で退職手当予算というのがあります。この退職手当予算を、私は細かく聞くわけではありませんが、ずっと各省見てみたのです。そうすると、例えば運輸省とか会計検査院とかは非常に予算額が足りなくて、予備費使用額、流用額というのがありまして、大変予算不足して大騒ぎしておるわけです。かと思うと、余るところもあるわけです。どういうところが余っているかというと、三年連続で何億ずつ余っておるところが、内閣官房であるとか人事院とか経済企画庁とか、あるいは文部省であるとか厚生省とか労働省、建設省、自治省というように、随分と不用額が出ているところもあるわけです。大体同じような考え方で予算を組んでいくのでしょうけれども、どうしてこのように各省庁についてばらつきが多いのでしょうか。その点は大蔵省としてはどういうふうにお考えですか。
  41. 的場順三

    的場政府委員 一つは、六十年の三月三十一日から定年制が施行されますので、今後ある程度状況は変わってくるかと思われますけれども、従来は公務員につきまして判検事、自衛官等を除きまして定年制がなかったこと等もございまして、必要な退職手当額の正確な見積もりを行うことがなかなか困難であったという事情は確かにございます。退職手当は、御指摘のとおり義務的経費でございますので、実態の把握に明るい各省の要求をできるだけ尊重するということで従来から積算を行ってきたところでございまして、当初の積算と実行上に差が出てくるというのは、各省それぞれに御事情があることであろうと思います。  それから、今後、先ほど申し上げましたように、六十年の三月三十一日より国家公務員の定年制が、以降実施されますので、大きな狂いが出てくることは余りないのではないかというふうに考えております。しかし、いずれにいたしましても、先生指摘のとおり、多額の予備費を退職手当で使用するとかあるいはほかに流用財源として用いるということは、こういう財政事情のときでございますから決して好ましいことではございませんので、各省ともよく御相談し、退職手当の積算内訳について十分今後とも努力してまいりたい、検討したいと思います。
  42. 貝沼次郎

    貝沼委員 そういうふうに、従来、ただ何となくと言っては大変失礼ですけれども計算されておる予算額というものを、もう一度検討してみる時期ではないか。なお、これが本日ここで議論されたことが次の予算編成に生かされなければならないと考えておるわけでありますので、ぜひそれをひとつ生かすように御研究願いたいと思います。簡単に答弁をお願いします。
  43. 的場順三

    的場政府委員 御指摘のとおりでございますので、本委員会の御指摘のあった点について十分予算編成のときに生かせるよう工夫をしてみたいと思います。各省とよく話し合います。
  44. 貝沼次郎

    貝沼委員 それで、先ほど予備費の使用の内容につきまして、説明の中にスモン訴訟における和解履行経費ということがございました。  そこで、このスモンに関しましては、私、岡山県倉敷の出身でありますが、私の近くにはスモンの方がたくさんいらっしゃいます。どれくらいおるかと申しますと、これはもう井原市などは非常に多い。当時井原市民病院にスモンの方がたくさん入ったために、井原スモン病院と言われたくらいたくさんおるわけでございます。例えば、岡山市では五十人、井原市で四十二人とか、倉敷市で二十五人、津山市が十三人、芳井町が十人、笠岡市七人、湯原町七人、新見市六人、そのほかおりますから、たくさんおるわけでございます。  ところが、こういう方々に会いましていろいろとお話を聞いてみました。先般は、ス連協で出しておりますビデオ「ノーモア・スモン」というのができておりますが、これも私の知っておる方々が映っておりましたので、本当に涙なくては見れないようなビデオでございます。これも見させていただきましたり、いろいろやったのですが、とにかくここまで、和解のところまでは来たけれども、しかし現実問題としてこういう方々から見ると、行政はなまぬるい、もうちょっと考えていただきたいというのが切々たる願いでございました。これとても、自分たちが不注意でやったことではないわけですね。日本の医学を信じ、その医者を信じて、そしてお医者さんの出す薬を飲んで薬害にかかっておるわけでありますから、日本の医学、医療というものを信じたがために冒された病気なんですね。こういうようなことを考えて、本当に医者を信じて起こったことが残念だということをきのうも言っておりました。こういうようなところから、ぜひともひとつ、きょうはスモンが話題になっておりますので、今後この対策を少し進めてもらわなくてはいけないということでちょっと質問をさせていただくわけでございます。  まず、四、五分間整理をさせていただきたいと思いますが、簡単に答弁をお願いしたいと思います。これは恐らく厚生省になると思いますが、このスモンの問題は、一体原因というのはどこであったのか、これをまず整理しておきます。
  45. 岸本正裕

    ○岸本説明員 スモンにつきましては、昭和三十年代から発生をいたしまして、三十年代の後半から急増してきたということでございます。当時は原因不明の奇病とされたわけでございまして、症状は腹痛とか下痢等の腹部症状、それからしびれ感等の神経症状を呈しますほか、歩行障害、視力障害等を伴います難治性の疾患であるわけでございます。  この原因でございますけれども、ウイルス説なども唱えられたわけでございますけれども、昭和四十五年にキノホルム説というものが提唱され、昭和四十七年には、厚生省の委託により設置いたしましたスモン調査研究協議会におきまして、スモンはキノホルムの服用によるという報告が出されたわけでございまして、これが定説ということになっているのかと思います。
  46. 貝沼次郎

    貝沼委員 キノホルムは新潟大学の椿教授が主張して、私も新潟大学なものですから、キノホルム説とそれから岡大のウイルス説と両方に挟まれて本当に困ったことがあるのですけれども、しかし、ウイルス説というのはスモンの方に物すごいインパクトを与えましたね。離婚問題から、大体つき合いをしなくなりました。そういう社会問題がたくさんありまして、非常に問題であったのですが、キノホルムに落ちつきまして現在まで至っておるわけであります。ただ、これは行政庁としてどれだけの責任があるのか、あるいは製薬会社の責任、この責任の分担はどういうぐあいになるのですか。
  47. 岸本正裕

    ○岸本説明員 御承知のとおり、行政庁といたしましては、薬を製造いたします場合にその有効性と安全性を厳しくチェックをいたしまして、その有用性ということに着目をいたしまして、製造を承認するか否かを決定いたしているわけでございます。  御承知のように、製薬企業というものがございまして、そこが製造し、世の中に薬の有用性をもって、国民の健康の増進でありますとか、生命の維持増進ということに非常に大きな役割を果たしてきていることは事実でございますが、薬というものは、何といいましてもある意味で人体にとって異物でございまして、副作用というものが大なり小なり避けられない宿命を持っているわけでございます。  私どもの責任ということに関しましては、第一義的にはこういう薬を世に出している企業側にあると考えておりますが、法的責任はさておきまして、国の場合には、こういう新薬の承認を厳しくチェックをして承認をしているというところから、行政上の責任を感じているわけでございます。現在の裁判上の和解におきましては、国の責任は三分の一、企業側の責任が三分の二、こういう裁判所の判断がございまして、我々といたしましてはそれに従っているというところでございます。
  48. 貝沼次郎

    貝沼委員 時間がありませんから進みますが、それだけの責任があるのならそれだけの対応があってしかるべきだという話をこれからするわけでございます。一つ一つ挙げていったら時間がありませんので、幾つかお願いしたいと思います。  現実に今スモンの方はいろいろな治療に通っておるわけでございます。しかし、先ほどお話がありましたように、足がしびれる、重症になると目が見えなくなってきて動けなくなるというようなところまであるわけですから、はりとかきゅうとか中国ばりとかいろいろ――これでは、スモンに対するはり、きゅう、マッサージ治療研究事業、十分の十が国庫補助になっておりますが、この事業があるにもかかわらず、はり、きゅうの一回についての単価が非常に安いわけです。九百円とか、初回だけ千三百円とか、こういうふうに安いことが一つ。それからもう一つは、交通、要するに歩行が困難ですからそこへ行くのが非常に難しいということ。そういう問題がありまして、スモンの方々も、場合によっては自分たちでパスを仕立ててもマッサージとかそういうものをして歩こうかというような提案までも出ておるようでありますが、まず、厚生省としては、こういう単価の問題について、少し上げてやるという考えはないかどうか、検討はしないかどうか、さらに、こういう方々がもう少し通えるような、そういう状況は何か検討されるのかどうか、その点を伺っておきたいと思います。
  49. 岸本正裕

    ○岸本説明員 スモンの問題につきましては、被害者の方々の一日も早く救済されますように、私どもも行政上一生懸命努力をいたしているところでございます。早期和解の実現を目指すとともに、いわゆる恒久対策というものをあわせて行ってきているわけでございます。その恒久対策の中で、今先生の御質問にございましたように一、はり、きゅう等の施術の公費負担を行っているわけでございます。  この公費負担につきましては、スモンの患者の方々に対しましては、一般の社会保険の適用より一歩進めまして、特定疾患の治療研究の一環として五十三年の十二月から実施をいたしてきているわけでございますけれども、その単価につきましては、横並びという関係もございます、他制度との調整という問題もございますので、私どもの段階だけで改善をするということはなかなか難しい問題があるわけでございますが、内容等につきましては、例えば回数の問題とか、先生の御指摘の交通費の問題――これは他制度でもそういうことはないのではないかと思いますし、また、そういう健康を管理するために健康管理手当というようなことで対応させていただいているわけでございまして、その辺を御了解をいただきたいと考えているわけでございます。私どもといたしましては、恒久対策の充実という観点からは、いろいろの面で難しい問題がございますけれども、検討は続けたいと思っております。
  50. 貝沼次郎

    貝沼委員 先ほど申し上げましたように、これは本人が不注意でかかった病気ではないのです。そこがほかのことと違うところでありますから、ひとつその点をよく考えて対処していただきたいと思います。  それから、こういう方々もだんだん高齢化してまいりまして、その高齢化と老人医療との関係においてやはり問題が出てきております。それから介護手当の問題も出てきておりますので、この辺もお考えがあれば後でちょっと答弁してもらいたいと思います。  それから、もう一つ困難なのは、手続が非常に時間がかかるということなんです。私も今くどくど言っておれませんが、とにかく、申請をしてから患者のところにお金が渡るまで何カ月もかかるわけです。ところが、実際は一カ月何回もはり、きゅうをやったりして、現実に金はかかる。そういうことで、もっと手続を簡単にしてもらえないのかということが切々たる要望でございました。  それから、自分の足が悪いものですから、自分の家に出張して治療してもらおうと考えると、これまた何千円もかかって非常に難しい。したがって、その辺のところをもう少しきめ細かく対策をしていただきたい、こういう要望がございましたので、簡単にお答え願います。
  51. 岸本正裕

    ○岸本説明員 介護の問題につきましては、五十九年の予算で、五十九年の四月から、従来の月額三万三千六百円を三万五千八百円というふうに引き上げているところでございます。  それから、はり、きゅう等の手続でもう少し簡素化ができないかという御指摘でございますけれども、いろいろの関係部局とも相談をしてみたいと思います。
  52. 貝沼次郎

    貝沼委員 それから、医薬品副作用被害救済基金というのが五十五年五月にできておるわけでございます。薬の副作用の被害を受けた人の救済の基金でございます。ところが、どういうわけかこれが余り使われていないのですね。できた当初は、厚生省は恐らくいろいろな条件を勘案いたしまして年間約二千件ぐらい請求件数があるだろうと予想しておったようでありますが、四年後、五十八年二月現在の資料でありますが、ここまでで二百二件しかないのですね。そのうちの百六件というのは支給が決定しておりますが、当時まだ二十七件については不支給、取り下げ、残りの五十九件というのは中央薬事審議会で審査中、こういう状況でございました。その後進んでおると思いますが、いずれにいたしましても、ここに問題があるのは、なぜこんなに予想を下回るほど少ないのか。PRが少ないのかどうか。それからもう一つは、これも請求手続が非常に難しいのですね、請求書並びに医師の診断書、投薬証明書とか。そして三カ月ないし四カ月かかるわけですね。こういうことが災いしておると思いますが、これについて当局はどう考えるのかということ。それからさらに、拠出金を使わないものですからだぶつきが起こっておりまして、メーカーの負担率がだんだん減ってきていますね。どういうふうに考えてこのパーセントが減ってきているのか私不思議でありますが、売上高の〇・一%から〇・〇三%まで下がって、五十七年四月には〇・〇一%に再引き下げが行われております。  こういうように、せっかくの制度ができておっても使われていない。そうして、これは患者の方の声でありますが、申請したくても、副作用かどうかの判定の決め手になる投薬証明書がなければ不可能である。医師は証明書を出すことで自分の医療上のミスの証拠を握られはしないかと恐れる。とにかくかかわり合いたくない。うちで出した薬で薬害になるわけがない、そう言っておる人がたくさんおるそうであります。厚生省や基金は、こうした制度上の問題点をはっきりと見据え、改善措置を講じてほしい、これがスモンの方の意見でございますけれども、この意見に対しての答弁を伺っておきたいと思います。
  53. 岸本正裕

    ○岸本説明員 基金の実績は、先生の御指摘のとおりに、当初予定いたしました件数よりは相当下回っておることは事実でございます。  なぜ少ないのかという御指摘でございますけれども、いろいろな要因があろうかと思いますが、一つには、この基金が発足いたしました五十五年五月、この発足の背景となりましたスモンを初めとしますいろいろな副作用被害の実態、そういうものがございましたので、その後行政当局といたしまして、薬の安全対策、特に承認時の安全対策というものに非常に力点を置いた行政を進めてきておるわけでございます。そういうこともございまして、その後の発生件数というものは幸いにして少なくなってきている。これは第一点としてあるのではないかと思います。  そのほか、先生の御指摘ございましたような手続面の簡素化という課題もあろうかと思うのでございますが、この基金の問題、薬の副作用被害の問題につきましては、一番のキーポイントは、何と申し上げましても因果関係、その服用した薬と被害との関係でございまして、この因果関係を簡素化し過ぎるというか、することによって、結局後で審査に手間取るというようなことがあっては、救済がかえって遅くなる、おくれをとるという関係もございます。でございますので、必要にして十分な因果関係の立証ができるような手続を最初にとっていただくということが必要なわけでございまして、私どもといたしましては、そういう観点から、なお、今のものでもっと簡素化できるところがないかどうか、これは真剣に検討してまいりたいと思うわけでございます。  三点目の、積立金の率についての御指摘がございましたけれども、これは第一点で申し上げましたように、件数が少なくなっているという背景がございまして、これは将来起こるかもしれない副作用被害を安定的に救済するという観点から積み立てを行っているわけでございまして、今のところ、そういうことが起こってはならないわけでございますけれども、将来万一発生した場合に安定的な給付ができるということについてはまだ不十分な額ではないかというふうに考えているわけでございます。
  54. 貝沼次郎

    貝沼委員 薬害の問題は実は深刻でありまして、今始まったことではないんですね。戦時中からある。私はいつか国会で議論したことがありますが、旧軍隊が負傷した兵士に対してトロトラストという造影剤を使っておるわけです。これは放射性物質でございます。それが戦後三十年もたった現在肝臓がんが出ているわけですね。しかし、あなたにそれをやったと言うことはできないわけですね。それを言うと、本人に死刑を宣告したようなことになってしまいまして、治療もしてやりたいが何もできない、そういう実情があるわけでございます。  それから、そのほか、私が申し上げるまでもなくいろいろあるわけでございますが、今回また大きく問題になってきておりますのが消炎鎮痛剤、要するにリューマチとかああいう痛がる人に使う鎮痛剤でございます。フェニルブタゾンとかいろいろございます。ブタゾリジンとかタンデリールとかボルタレンとか、こういうのがよく言われておるわけです。そのほかにも、鎮痛剤というのは大体よくないものでありますから、本当はまだ問題があるのですが、特にこの三つにつきましては、予算委員会でも議論がございましたし、政府の方も対応にかなり急いでおるようでございます。  そこで、私は、そのいきさつをくどくど申し上げる時間がありませんから、簡単に質問だけいたします。  まず、この消炎鎮痛剤、例えば、米国では既に公衆市民保健研究グループが一万四百人ほどの死亡原因、こういうふうに指摘しておりますし、あるいはチバガイギーの内部資料によりましても、副作用が一万八百八十一例ありまして、死亡一千百八十二人、日本で十八人、こういうふうなことまでも今出てきておるわけでございます。そして、こういうようなことが例えばあのスモンの確認書にいろいろと書かれておるわけですけれども、その精神が生かされていないのじゃないかということです。と同時に、これは薬事法六十九条、副作用の死亡例などを知ったときは三十日以内に厚生大臣に報告しなければならないとなっておりますが、これがどうもなかった。知らなかったのか、なかったのか、ここが今まだはっきりしておりません。フェニルブタゾンの効能書きというのがあるのですけれども、それには四十二年一月六日に「BCPの毒性」という研究論文が出ておりまして、この研究論文、田辺堅三郎さんのものでありますが、それによると、いろいろと詳しいことが出ております。毒性についてはっきりと「この三葉の中で最もフェニルブタゾンの致死性は強い」というふうにこの効能書きに書いてあるぐらいですから、知らなかったはずはないと私は思います。  それから、さらに、日本で五十二年七月に再評価が行われたわけです。ところが、イギリスでは、その一カ月前にイギリスの医師会雑誌の中で、副作用報告として死亡者が出ただけで三十九人、そのほかに死亡者中二つの薬剤に関係ありとされただけでも二百五十四人も死亡例が報告されています。この医師会雑誌については厚生省としては無関心の雑誌なのかというとそうではありませんね。これはスモン訴訟の中で業務局安全課はこういう発言をしています。「この雑誌は安全課で定期的に見てチェックをしている」、こういう雑誌でございます。したがいまして、恐らく知らなかったことはなかったのではないか。これは私見ておりませんからはっきりわかりませんが、そういうふうになると、六十九条でこれを大臣に報告しなければならないとしておる条項に抵触しないのかどうか。この辺のところの発言がまだ厚生省から出ておりませんので、私この際、はっきりと承っておきたいと思います。  それから、薬事法七十七条の二に、製薬会社は薬局、病院、あるいはずっと行きまして、医薬関係者に対し、医薬品の有効性及び安全性に関する事項その他適正な使用のために必要な情報を提供するよう努めなければならないということが定められておりまして、さらに、八十七条では罰則として十万円以下の罰金まで定められておるわけでありますが、少なくとも厚生省はこういう条文に忠実であると思いますので、どういう見解をおとりになっておるのか、御答弁願いたいと思います。
  55. 小宮宏宣

    ○小宮説明員 先生指摘の消炎鎮痛剤、特に具体的には今のフェニルブタゾン、オキシフェンブタゾンの点について御指摘があったわけでございますが、消炎鎮痛剤につきましても、厚生省の方におきまして、従来から副作用モニター制度、あるいは先ほど指摘になりました医薬品再評価等におきまして、薬事審議会でいろいろ検討し、使用上の注意の改正あるいは適用の制限その他の処置を講じてきているわけでございます。  今回問題になりましたのは、この薬がスイスのチバガイギー社で世界的に百三十カ国ぐらいで売られておりまして、過去三十年ぐらいそういう多くの国で販売されておったわけでございますが、それらの世界各国で売られておりました状況の中で集められました副作用情報が明らかになったということで、厚生省の方でもそれを重視して、資料の入手その他について早急な手を打ったわけでございます。その情報を早急に集めまして、薬事審議会の副作用調査会でいろいろ検討していただいたわけでございますが、その際には、この二つの薬につきまして製造販売の中止ということも含めて慎重審議をお願いしたわけでございますが、この薬でなければ効かない患者さんもおられるというような御意見もございまして、薬事審議会では極めて限定された範囲でのみ使用を認めるのが適当であるというふうな御意見をいただいたわけでございます。そこで、厚生省といたしましては、その意見に基づきまして、適応症の限定あるいは投与期間を一週間以内にするというような、極めて限定的厳しい処置として制限をするような処置を講じたわけでございます。なお、今回処置いたしましたのは、フェニルブタゾンとオキシフェンブタゾン、それと関連いたしますスキシブゾン等の製剤について処置をいたしたわけでございますが、あわせて、薬事審議会の方の御意見もございまして、先生指摘のとおり、消炎鎮痛剤全般についていろいろ副作用の強いものもございますので、そういうものについての見直しを図っていくということで御意見をいただいておりまして、現在厚生省の方で鋭意検討を行っておるところでございます。  なお、先生指摘の薬事法の報告義務との関連でございますけれども、この薬事法六十九条の報告義務につきましては、昭和五十四年に法改正がございまして、昭和五十五年の四月からこの条文を適用するということになっておりまして、昭和五十五年四月以降に新しい副作用あるいは重篤な副作用症例を知ったときにはその報告をしなければいけないというような形になっておりまして、御指摘の五十二年の英国の医学雑誌については、私ども雑誌のそういう情報自体は一般的に把握しておるわけでございますけれども、薬事法の報告義務という形で企業に課したというわけではございません。ただ、今回、日本チバガイギー社の副作用情報の報告を見ますと、スイスチバガイギー社で集めました資料の中で単に症例を集計したというだけの内容のものでございますので、必ずしも六十九条の法律の条文に該当するかどうかという点については非常に解釈が難しいわけでございますけれども、厚生省といたしましては、副作用情報をできるだけ幅広く収集するという点でチバガイギー社の対応に不備があったということで厳重な注意をし、当該会社に対して副作用情報の収集管理体制の改善を指示したわけでございます。
  56. 貝沼次郎

    貝沼委員 厚生省がそういうふうに態度を決めたわけですから、私はそれはないよりはいいと思いますが、しかし、ちょっとなまぬるいという感じはぬぐえませんね。例えば、先ほど私、言おうと思って言わなかったのですが、米国では既にFDAが一月末に公聴会を開いたり、あるいはノルウェーはブタゾリジン及びタンゲリールについて四月一日から発売禁止することを正式に決定しておるし、これをWHOにも報告をしておりますね。また、英国内でも昨年末から従来の使用を見直す動きが出て、この二月二十八日に両薬を禁止しています。ところが、日本人だけは本当に強いのかどうか知りませんが、今のお話ですと大変日本人は体が強いように承りますが、なぜこういうふうに思い切って疑わしいものをきちっとやめることができないのか、この辺、私は非常に不満です。  それから、さらに、例えば今ほかの鎮痛剤についても調査をするという話がありましたけれども、ある大学教授でございますが、鎮痛剤の副作用ワーストスリーというのを列挙しています。胃腸障害では一番がクリタナック製剤、二番がアスピリン系製剤、三番がインドメサシン系製剤、それから腎臓障害は、フェニルブタゾン系、二番目がオキシフェンブタゾン系、三番がピロキシカム系製剤、それから肝臓障害でもやはり出ております。血液障害とかいろいろなのが出ておるわけであります。肝臓障害の例ではベノキサプロフェンがアメリカを初め全世界で一九八三年後半に発売禁止をしておるわけです。こういうふうにいろいろなものがあるわけでございますから、この際、徹底的にこれを調査して、国民の不安を取り除くように、間違いのないようにしていただきたいと思います。  例えば、薬ではありませんが、生活用品の場合ですといろいろやかましいものがありまして、損害賠償制度ができております。例えば優良住宅部品認定制度なんというのがあって、これに従わない場合は相当罰則もありますし、それからSTマークとかいろいろあって、HAPIマーク制度なんというのは、人身事故等が起こった場合は最高一億円というような罰則まで定めてあるのですけれども、事、薬になるとどうもその辺のところがはっきりわからない。  試みに、製薬会社がこの薬を売ってどれだけもうけているか、売り上げを見てみますと、一年間に二億とか四億とかという売り上げ、生産高になっているわけです。こういうようなことを考えると、どうも厚生省は製薬会社に対して腰が弱いのではないか、もっと国民サイドに立って薬事行政をきちっとやっていただきたい、こういうのが声でございますけれども、これについて御答弁を願いたいと思います。
  57. 小宮宏宣

    ○小宮説明員 最初に、フェニルブタゾン、オキシフェンブタゾンの処置について若干御説明申し上げたいと思います。  この薬につきましては、いろいろな副作用が従来から報告されておりますし、今回も世界各国の集計した解析資料からも、血液障害、消化器障害、肝臓障害等いろいろな副作用が報告されているのは先生指摘のとおりでございます。ただ、薬事審議会におきます専門家のいろいろな御審議の中で、この二つの薬が慢性関節リューマチとか硬直性脊椎炎とか、非常に激痛を伴う疾患を適応症に持っておりまして、どうしてもこの二つの薬でなければ効かない場合もあるというような御指摘もございまして、極めて限定的ではございますけれども、先ほど申し上げました処置を講じたというようなことでございます。  ちなみに、諸外国の処置状況先生からも御指摘がございましたが、現在アメリカは検討中でございます。イギリスにつきましては、フェニルブタゾンについてはその適応症を制限する、オキシフェンブタゾンについては禁止すべきであるという意見が出ておりますけれども、まだ最終的な結論は出されていないという状況でございます。そのほか、西ドイツとかイタリア、スイス、オーストリア、オーストラリア、そういうような国々につきましては、ほぼ日本と同様に適応症を制限し、使用期間も短縮して認めるというようなことで暫定的な処置がとられておりまして、日本だけが特段その処置が甘いというような状況ではないと思っておるわけでございます。  なお、消炎鎮痛剤全般の問題につきましては、現在、見直すということで行われておりますけれども、先ほど指摘のベノキサプロフェンにつきましては、イギリスとかアメリカで回収の問題が出たわけでございますが、幸いなことに日本では製造、販売がなされていなかったということで、特段の処置はとっておりません。  いずれにいたしましても、先生指摘のとおり、この消炎鎮痛剤を含めまして、医薬品の安全性問題につきましては業務行政の重点事項として我々も非常に努力しておるわけでございますが、昭和五十四年の薬事法改正でいろいろな法律的な整備もなされておりますので、その線に沿って今後とも一生懸命やっていきたいと思っております。
  58. 貝沼次郎

    貝沼委員 時間があと二分しかありませんので、最後に、一問だけ伺っておきたいと思います。  遺族の救済問題を前向きにやるということでありますが、どういうふうにやるのかということです。もう一つは、外国人が日本に来て治療を受ける場合がありますが、禁止されておるような国の方に対しては日本はそういう医薬品は使うのかどうか。この二点でございます。
  59. 岸本正裕

    ○岸本説明員 大変失礼でございますが、先生の御趣旨、はっきりわからないところがあったのでございますが、先生の遺族の救済という御趣旨は、フェニルブタゾンとかオキシフェンブタゾンとかの薬害についての遺族のことでございますか。(貝沼委員「そうです」と呼ぶ)私ども、医薬品の副作用情報を広く集めまして、その情報に基づいて今後の当該薬のあり方を進めて改善していくということになっているわけでございまして、この副作用情報を広く集めることと個別の遺族の救済とはなかなか直接的に結びつきにくい仕組みでございます。仕組みというよりか、本質的に結びつきにくい面を持っているわけでございます。そういう形で、両剤の副作用の被害で本当に苦しんでいらっしゃる方々につきましては、大変お気の毒なことでございまして、何らかの形で救済が図られるべきだというふうに考えるわけでございます。ただし、基本的には、個々の事案に応じまして民事上の問題として被害者と製薬企業との間で解決していただく事柄でございまして、厚生省といたしましては、必要に応じまして製薬企業に対して適切な指導をしてまいる所存でございます。  それから、先ほども話題に出ました昭和五十五年五月一日に発足いたしました医薬品副作用被害救済基金でございますが、因果関係がはっきりしているけれども民事上の責任を問い得ないという場合につきましては、この救済基金の救済の対象にしていきたいと考えております。
  60. 貝沼次郎

    貝沼委員 終わります。
  61. 横山利秋

    横山委員長 神田厚君。
  62. 神田厚

    ○神田委員 まず最初に、財政問題について御質問申し上げます。  国債発行の問題がいろいろと論議され、大蔵省の中におきましても検討されていると聞いておりますが、そのうちでまず最初に、赤字国債の借りかえ問題につきまして、大蔵省におきまして新たなルールづくりを行うことが検討されていると聞いておりますが、その実情はどういうふうになっておりますか。
  63. 的場順三

    的場政府委員 御指摘特例公債の借換債を発行する場合、その具体的な償還方法についてどうするかというお尋ねでございます。  本件につきましては、さしあたり最小限、既に確立しております四条公債と同様の方法によりたいと思っておりますが、毎年度の財政事情を勘案した上、できるだけ速やかにその残高を減少させることが必要でございますので、その方で努力をすることが必要だと思っておりますが、なお幅広い角度から引き続き検討を進めてまいりたいと思っております。
  64. 神田厚

    ○神田委員 国債の償還額は六十年度以降急増する、こういうふうに言われておりますし、そういう計算が成り立つわけでありますが、特例法で発行されました赤字国債の償還は六十年度にどのぐらいになりますか。
  65. 的場順三

    的場政府委員 六十年度で二兆二千八百億の予定でございます。
  66. 神田厚

    ○神田委員 対しまして、国債整理基金の積み立ての内容はどのようになっておりますか。五十九年度末の基金残高の見通しはどのぐらいになっておりますか。
  67. 吉居時哉

    吉居政府委員 五十九年度末の国債整理基金の残高の見込みでございますけれども、一兆七千九百億円という見込みになっております。
  68. 神田厚

    ○神田委員 大変窮屈な内容になっているわけでありまして、そういうところから、この赤字国債の償還も、建設国債同様に借換債を発行して借金を繰り延べざるを得ないというような状況になってきているというふうに思っておりますが、特に大蔵省の中におきまして、国債借換問題懇談会、こういう機関の意見を聞いた上で、新しい借りかえのルールを確立する、こういうことであるようでありますが、この国債借換問題懇談会の意見の内容というのはどういうふうになっておりますか。
  69. 吉居時哉

    吉居政府委員 今お話のありましたように、六十年度からは五十年度以降に大量に発行されました国債の償還や借りかえが本格化するわけでございます。さらに、特例国債につきましても借換債の発行を行うということになりますと、借換債の発行額の一層の増加が見込まれるわけでありますが、こうした大量の国債の償還、またこれに伴う借換債の発行、消化ということを円滑に行っていくことが、今後の私どもの国債管理施策における重要な課題だという認識を持っているわけです。  そこで、この六十年度以降の借換債の消化の方策につきまして、現在、学識経験者あるいは市中の関係者といった方々による国債借換問題懇談会におきまして種々検討を行っていただいているところでございます。この懇談会における議論をも踏まえまして、今後借換債の円滑な消化を図っていきたい、こう思っておるわけでございます。  この懇談会の議論の内容という点につきましては、実はメンバーの方々の率直な御意見をいただいているわけでありまして、したがって、非公開とさせていただいているところでございます。しかも、まだ現在御議論をいただいております最中でもございますので、現段階におきまして、この懇談会の議論の内容について具体的に申し上げるということにつきましては差し控えさせていただきたい、かように存じます。
  70. 神田厚

    ○神田委員 そうしますと、この懇談会のいわゆる取りまとめというのは、大体いつごろ懇談会の内容の取りまとめができるとお考えでありますか。
  71. 吉居時哉

    吉居政府委員 今後の段取りあるいは意見の取りまとめといったことの時期のめどを、今はっきりと決めているわけではございませんけれども、先ほども御説明申し上げましたように、六十年度には国債の償還、借りかえが本格化するという時期に当たりますので、そういうことを十分念頭に置きながら、これからの議論の展開なども見ながら、メンバーの方々とも相談しながら、その取りまとめの時期等について判断をしていきたい、かように思っておりますけれども、なるべく早く取りまとめが行われることになりますならば、それにこしたことはない、かように考えております。
  72. 神田厚

    ○神田委員 六十年度予算との関係もあるわけですから、おのずからその期間というのは、概算要求を出す段階までというような、今から言えばごく近い時期に取りまとめをする、こういうことでしょうか。
  73. 吉居時哉

    吉居政府委員 現在まさに御議論をいただいている最中でございますので、いつまでにということを言う段階ではございませんけれども、今のお話にございますような状況もありますので、なるべく早く取りまとめていただきたい、かように考えております。
  74. 神田厚

    ○神田委員 懇談会の議論の中でもあるいは一つの大きな意見として出ているかと思うのでありますが、短期国債の発行の問題が有力視されてきている、こういうふうに聞いておりますが、この短期国債の発行問題についてはどういうふうにお考えになっておりますか。
  75. 吉居時哉

    吉居政府委員 六十年度以降の大量の国債の償還、借りかえを円滑に進めていくという必要があるわけでございますが、そのためにもできる限り投資家のニーズに合ったさまざまの種類の国債を発行していく必要があろうかと思っているわけです。そういう観点からも、短期国債の発行ということは一つの検討課題と考えておりまして、今後、財政面あるいは金融面等さまざまな観点から十分に検討してまいりたい、かように考えております。
  76. 神田厚

    ○神田委員 短期国債を発行していくという方向がかなり有力だということでありますが、いろいろ問題もあるし、大変大事な問題でもあるのでありますが、どういう方法、形でこれを発行するのか、さらには、その発行条件等についてはどういう考え方を持っているのか、その辺はいかがでございますか。
  77. 吉居時哉

    吉居政府委員 短期国債につきましては、一つの検討課題というふうには認識しておりますけれども、まだまだ詰めなければならない問題、検討しなければならない観点、多々あるわけでございまして、現在その具体的な検討を行っているわけではございません。したがいまして、発行方式等今御指摘ありましたような点につきましても、具体案があるわけではございません。
  78. 神田厚

    ○神田委員 この短期国債につきましては、どういうところが大事な検討の問題になっておりますか。大蔵省として考えておりますところの問題点というのはどういうところでありますか。
  79. 吉居時哉

    吉居政府委員 まだ検討を詰めているという段階では実はないわけでございまして、今後、短期国債ということを検討するに当たりましては、やはり財政面に与える影響あるいは金融面に与える影響、もろもろの点について検討していかなければならないのではないか、かように考えております。
  80. 神田厚

    ○神田委員 さらに、シンジケート団方式による引き受けというものは今後も存続をしていく、その方向はどうでありますか。
  81. 吉居時哉

    吉居政府委員 五十九年度の発行計画によりますと、十二兆六千八百億円中半分以上の額につきましてシ団の引き受けを予定している、こういうように、現在シ団による引き受けが大変重要な地位を占めているということは、今御指摘のとおりでございます。私どもは、今後、国債の借りかえという時期を迎えるわけでありますけれども、何といいましても、この安定的かつ円滑な国債の消化を図ることが第一であろうと思っております。そういう意味で、今後ともシ団による引き受けということにつきましては、やはり重要な地位を占めるものではないかというふうに考えております。
  82. 神田厚

    ○神田委員 今ちょっとお触れになりましたが、シェアの問題では、いわゆる公募入札、運用部の引き受け、シ団の引き受けとあるわけでありますが、シ団引き受けのシェア問題等についてはどういうふうにお考えになりますか。
  83. 吉居時哉

    吉居政府委員 今の御質問の趣旨が、現在の国債引き受けシンジケート団を構成しております各メンバーの間のシェアの問題ということでありますとすれば、現在までも折に触れまして、シ団の中におきまして自主的に適正な引き受けシェアということを決めてきて、時折改定しておる、こういう状況でございます。今後におきましても、シ団の問題ではありますけれども、メンバーの引き受け能力という点にふさわしいようなシェアの改定ということが今後もあるいは行われるのではないか、こういうふうに考えております。
  84. 神田厚

    ○神田委員 全体の問題で、借換債の引き受けの部分について、いわゆるシ団の引き受けのシェアは現行のような形が続くのかどうか、こういうことですが、どうですか。
  85. 吉居時哉

    吉居政府委員 今後、借換債の円滑な消化ということをどういうふうにしていくかということは、まさに現在借換懇談会において御議論をいただいているわけでございまして、借換債の今後の円滑な消化のために、シ団がどういうふうな地位を占めるか、またそれがどの程度のシェアを占めるかというようなことにつきましては、現在まだはっきりとしたようなそういう方向が出ていないので、これからまた検討課題だというように考えております。
  86. 神田厚

    ○神田委員 それでは、引き受けシンジケートの問題につきまして、これをシ団を分割をして銀行と証券に分けるというようなことについて検討されているというふうに報道されておりますが、これらの問題についてはどういうふうになっておりますか。御説明をいただきたいと思います。
  87. 吉居時哉

    吉居政府委員 まず、結論としまして、そういうようなことを私どもとして検討しているというような事実はございません。先ほどから申し上げておりますように、国債の大量発行下においては安定的、円滑な国債の消化ということを図るのが何よりも肝要でございますけれども、今のお話のように、例えば銀行のシ団と証券のシ団というような複数のシ団を競争させるという考え方もあるいはあるかもしれませんけれども、仮にそうする場合に、一方のシ団と合意をしたような条件で果たして別の方のシ団とも同様に合意ができるかといったような問題も実は考えられます。そうなれば、必要な発行量を円滑に確保できるかどうかという問題も実は起こってくるわけでございます。私どもとしましては、現在のこのシ団の構成で円満に運営されることを実は期待しているわけでございます。
  88. 神田厚

    ○神田委員 そうしますと、シェアの問題、先ほどちょっとお答えいただきましたが、銀行、証券、それぞれ現在程度の形で行っていくのかどうか。この辺については、また新たな形で何らかの指導をするというような考えがあるのかどうか。その辺はいかがでありますか。
  89. 吉居時哉

    吉居政府委員 銀行団と証券団、銀行と証券ですが、それぞれシ団の中でどの程度のシェアで引き受けるかという点につきましては、それぞれの間でもって話し合いがなされておりまして、五十九年度におきましても話し合いがついておる、こういう状況のように聞いております。したがいまして、いつも銀行側と証券側が固定的な率でシ団の中でもって引き受けるというわけでは必ずしもないわけでございまして、それぞれの業界で話し合って決められる、こういうものだと理解しております。
  90. 神田厚

    ○神田委員 次に、無税国債問題でありますが、無税国債の発行の問題について二、三発言がされているわけであります。この無税国債の問題につきましては、現在どういうふうに発行問題をお考えでありますか。
  91. 吉居時哉

    吉居政府委員 たびたび申し上げますように、国債の大量発行下において円滑な消化を図るためには、国債の種類あるいは発行方式の多様化を図るということが必要であり、現在までも行ってきているところでございます。  国債の多様化という点につきましては、市場のニーズを勘案いたしまして、円滑な消化を行うという観点に立ちまして、今後ともそういう問題を検討すべきだと考えておるわけでございますが、今の御指摘の無税国債という点につきましては、税制上の問題あるいは金融市場への影響等基本的な問題がありますので、これは慎重な対応を要する問題だというふうに考えております。いずれにしましても、現在、無税国債を導入するといったような考え方は持っておりません。
  92. 神田厚

    ○神田委員 ことしの夏をめどに、大蔵省がマル優を含む利子配当課税を全面的に見直すというような考え方があるというふうに聞いておりますが、この利子配当課税を全面的に見直すという作業は、現在進んでおりますか。いかがでありますか。
  93. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 御指摘のように、ことし一月の政府の税制調査会の答申におきましても、現在の利子配当課税の問題につきましては、できればことしの夏ごろまでに結論を得るように検討すべきであるというふうな答申をいただいておるわけでございます。そうした方向に従いまして、私ども現在内部でいろいろ検討をしており、また税制調査会でも御結論をいただけるように御検討をお願いしなければならない、このように考えておるわけでございます。  ただ、具体的な問題につきましては、なおこれからの検討課題でございますので、現在、こうした方向でとか、こうした問題はこうした処理方針でというところまではいってはいないわけでございます。
  94. 神田厚

    ○神田委員 いずれにしろ、ことしの夏をめどに、そういう問題について、利子配当課税の全面見直しを行うということですね。
  95. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 利子配当課税の問題につきましては、五十五年度改正におきましてグリーンカード制度といったものが制度化されておるわけでございますが、これが五十八年度税制改正で三年間延期されておるわけでございます。その期限からいたしまして、六十年度改正におきましては、何らかの方向はいずれにしても出さなければいけない段階にあるわけでございますが、その内容につきましては、現行制度の全面的見直しなのか、あるいはその中でのさまざまな手直しなのか、これらの点につきましては、今後の税制調査会の御検討にまつというところでございます。
  96. 神田厚

    ○神田委員 次に、六十年度予算との関係につきまして御質問をいたしますが、大蔵大臣閣議その他で、六十年度予算についても非常に厳しい状況だということで、マイナスシーリングを示唆しているわけでありますが、大蔵省当局の考え方はどうでありましょうか。
  97. 的場順三

    的場政府委員 財政改革を推進し、その対応力の回復を図ることは、我が国の将来の安定と発展のために緊要な国民的課題でございます。六十五年度までに、特例公債依存体質からの脱却と、公債依存度の引き下げに努めるという努力目標に向けて、毎年度最大限の努力をするということは御承知のとおりでございます。  六十年度予算につきましても、こういった方向で努力をする必要があると思いますが、六十年度のシーリングの問題につきましては、まだ五十九年度予算が成立したところでございますし、今後十分に勉強して各省にお願いをしたいと考えております。ただ、基本的な方向は、先般の予算成立の際、大臣が述べられましたように、六十年度の概算要求限度額につきましても、厳しいものにせざるを得ないというふうに考えております。
  98. 神田厚

    ○神田委員 大蔵省が二月に作成した「財政の中期展望」によりますと、六十年度の歳出見込みと歳入見込みの差は大変大きいものがあるわけであります。したがいまして、そういう歳出歳入のギャップから見れば、当然にしてマイナスシーリングが必至だというような情勢である、こう考えております。御案内のように、昨年は一〇%のマイナスシーリングを行ったわけでありますが、こういう「中期展望」から見ていきますと、やはり一〇%程度あるいはそれ以上のマイナスシーリングの可能性が強いというふうに考えますが、その辺はいかがでありますか。
  99. 的場順三

    的場政府委員 「財政の中期展望」にもございますように、要調整額は非常に巨額なものとなっております。これを具体的な予算編成段階では吸収していく必要がございます。ただ、先ほども申し上げましたように、来年度のシーリングについて具体的にどの程度のものにするのかということは、諸般の状況等をこれから勘案しまして、部内でよく検討するという段階でございまして、現段階でマイマス一〇%以上とかあるいは具体的な数字を決めているわけではございません。基本的には、先ほどお答えいたしましたように、各省にまた御協力をお願いせざるを得ない状況であるということでございます。
  100. 神田厚

    ○神田委員 昨年は、マイナスシーリングでもありましたけれども、別枠扱いということで防衛費、人件費、開発援助費等々があったわけでありますが、六十年度予算におきましてやはり同じような考え方に立つのでありましょうか。
  101. 的場順三

    的場政府委員 五十九年度予算までのシーリングの設定に当たりまして、御指摘のようなそれぞれやむを得ない事項につきまして例外扱いというような項目を設けているのは事実でございます。ただ、予算というのは、非常に厳しくなってまいりますと、原則的に一律に痛みを分かち合うということも必要でございますし、さりとて例外が全くなくて済むかという問題もこれまたございます。したがいまして、その辺も含めまして、全体のマイナスあるいは具体的な数字をどうするかということとの関連で、これから検討させていただきたいと考えております。
  102. 神田厚

    ○神田委員 この「中期展望」によりますと、歳入と歳出の見込みの差は約三兆八千七百億円ということでありますね。このギャップを埋めるために大蔵省としてはどういうことを考えていくわけですか。
  103. 的場順三

    的場政府委員 大変大きな差額があることは御指摘のとおりでございますが、これは歳出と歳入のギャップでございますから、歳出のできるだけの節減、合理化を図るということが一つでございます。  それから、その歳入の方についても、例えば税収見通しがどうなるかということとの関連がございますけれども、税の見通しがどうなるか、あるいは税外収入についてもいろいろ工夫する余地がないかどうかというような、もろもろの歳出歳入全般を含めて考えていくべきことであろうと思いますが、私ども主計局は、むしろ歳出のサイドでございますので、私たちの立場としては、各省には大変申しわけない次第でございますが、やはり従来と同様、歳出の削減という面で御協力をいただき、できるだけ歳出面で節減、合理化を図ってギャップを埋めていく努力をいたしたいと考えております。
  104. 神田厚

    ○神田委員 いろいろな考え方がある中で、行財政の改革、さらには補助金の整理統合、見直し、合理化、それから公共料金の値上げ、租税負担の検討、税外収入の増収策というようなことが言われておりますが、特に公共料金等の問題はどういうふうに考えておりますか。
  105. 的場順三

    的場政府委員 公共料金の問題は、これは具体的にはこれからの問題でございまして、六十年度予算編成段階で、ときどきの物価事情、全体の経済状況等を見て考えるわけでございますが、原則的に考えますと、受益者負担という制度で、本来受益する人がそのかかる費用を負担していただくというのが一番適当な方法ではないかというふうに私どもは考えておりますので、それらを含め検討させていただきたいと思っております。
  106. 神田厚

    ○神田委員 当然にして、国債償還のための国債整理基金への定率繰り入れはストップということですね。
  107. 的場順三

    的場政府委員 国債整理基金への定率繰り入れにつきましては、ここ三年間定率繰り入れをストップしております。六十年度以降どういうふうにするかということにつきましては、これは歳出の面から見ますと、定率繰り入れをストップすれば、それだけ六十年度の当面の歳出需要は減るわけでございますが、別に償還の問題がございます。したがいまして、全体の予算編成の中でこれから真剣に検討していくべき問題でございまして、ただいまどうするということについて予断を持っているわけではございません。
  108. 神田厚

    ○神田委員 次に、公共投資の問題につきまして御質問いたします。  公共投資の上期の執行については、前倒しということで決められたわけでありますが、経済企画庁等も指摘をしておりますように、下期の執行がやはり一つの大きなかぎになるわけでありまして、景気浮揚の効果を持たせて、さらに景気を刺激するためには、前倒しの発注だけでは十分でない。これは、既に五十六年、五十七年におきましても前倒しをかなりしたけれども、下期の追加が極めて不十分だったために、下期において景気の足を引っ張った、上期においてはかなり景気刺激をするのだけれども、下期において景気の足を引っ張るというようなことが繰り返されたわけであります。そういう轍を踏んではならないということで、下期の執行についても十分確保、つまり追加等の問題が明らかにならなければならないと思っておりますが、この点についてはどういうふうに考えておりますか。
  109. 的場順三

    的場政府委員 上半期の公共事業の執行につきましては、基本方針として、上半期においては内需の振興に資するような執行を行うこととし、景気の動向に応じて機動的、弾力的な施行を推進するものとするということを、既に閣議決定をいただいているところでございます。大蔵大臣の記者会見における発言で、七〇%を若干超えるだろうという発言をされておりますが、先生の御質問は、下期についてどうするのだ、こういうお話でございます。  最近の全体の景気状況を見ますと、生産、出荷や企業収益等の動向を中心に顕著な改善が見られ、国内民需を中心に景気は着実に回復の過程をたどりつつあるというふうに見られます。また、物価の安定傾向を背景として、今後とも国内民需を中心とした安定的な経済成長を達成していくものと考えられます。したがいまして、景気の面ではそういう状況でございます。  一方、我が国の財政はかつてない窮状にございまして、御承知のとおりでございます。財政改革を推進するため、五十九年度予算においても歳出の節減、合理化を徹底し、公債の減額に努めたところでございます。こうした厳しい状況下にございまして、財政に積極的な景気浮揚の効果を期待することは、私は困難ではないかというふうに考えております。ただ、そうは言っても、五十九年度予算におきましても、一般公共事業の事業費につきまして、民間資金の活用等により前年度を上回る水準を確保するなど、種々の工夫を凝らして景気にも配慮しているところでございます。さきに申し上げました四月十七日の「五十九年度上半期における公共事業等の事業施行等について」で、「内需の振興に資するような執行を行うこととし、景気の動向に応じて機動的・弾力的な施行を推進する」こととしているところでございますので、下半期について現段階で追加するというふうなことは必要ないのではないかというふうに考えております。
  110. 神田厚

    ○神田委員 五十六年、五十七年も、結局最終的には下半期の追加が十分でなかったということで、せっかく前倒ししながら実績が上がらなかったという状況があったわけでありますから、私も、この時点でどういうふうに判断するかということはともかくといたしまして、やはり下半期におきます追加確保を大蔵省としても真剣に考えてほしいと思っております。この問題については、大蔵省の方の考え方が現時点におきましてそういうことでありますれば、私は同じような過ちをまた繰り返すことがないように十二分な検討をすべきであるということを申し上げておきたいと思っております。  それから、次に、投資減税の問題でありますが、経済企画庁経済研究所の指摘がありますが、我が国のマクロの経済政策の運営におきましては、民間設備投資の促進が大きな課題になっているわけであります。この投資減税につきましては、私どももこれを強く要求をしているわけでありますが、大幅な投資減税の早急な実施を要望しておりますが、大蔵省としましては、どういうふうにお考えでありますか。
  111. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 投資減税につきましては、従来からその効果、財源等も考えまして、また対象となる設備につきましても重点を絞って所要の措置を講じてきているところでございます。昭和五十九年度税制改正におきましては、エネルギー利用の効率化に資する投資促進税制、中小企業の事業の高度化等に資する投資促進税制、それから、テクノポリス関係の地域的なものではございますが、その関係の投資促進税制、こうした三本の柱をもって今年度措置をいたしたところでございまして、こうした措置は現在の厳しい財政事情のもとでは目いっぱいの措置ではないか、こういうふうに考えておりますので、そうした点を御理解いただきたいと思うわけでございます。
  112. 神田厚

    ○神田委員 時間がありませんので、最後に、単身赴任者の課税軽減措置の問題について御質問申し上げます。  現在、単身赴任者の問題が非常に大きく社会問題になってきておりますが、その中で、単身赴任者に対しましては、ほとんどの企業が単身赴任手当、別居手当あるいは一時帰省の交通費を支給しておりますが、単身赴任手当はもとより旅費手当に対しましても、業務出張とは異なるという観点から、給与所得として全面課税されているわけであります。こういうことでありますので、単身赴任者の経済内容は非常に悪くなっておりまして、そういう意味では、単身赴任者の課税の問題につきまして、例えば一時帰省の交通費については全額非課税とすべきである、あるいは単身赴任手当につきましても、一定額の単身赴任手当控除を創設すべきであると考えておりますが、この点についてどういうふうにお考えでありますか。
  113. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 給与所得者の御取得になります給与、報酬、こういったものは主としては職務の性質、内容に応じたものではございますが、その中には生活給的な手当や勤務地の特殊性に基づきました手当も支給されることはあるわけでございます。こうしたものは税制上はすべて給与、手当の一環として給与所得として課税をさせていただいておるわけでございます。国家公務員の例で見ましても、家賃の支払いに充てますところの住居手当とか、寒冷地におきまして暖房費に充てるものとして支給される寒冷地手当とか、こういったものも生活上実費として使われるものではございますけれども、すべて給与の一形態ということで課税をさせていただいておるわけでございます。そのほか、公務員の例をとりますと、離島や僻地で勤務される場合の僻地手当あるいは人口過密な地区での調整手当、こういったものも生活の実費といったものと関連が深いわけでございますけれども、すべて給与として吸わさせていただいておるわけでございます。  御指摘のように、単身赴任者につきまして帰省旅費が出る、これが実費として支給されるという面はあるわけでございますけれども、そうしたものが非常に必要なものであることはわかる。しかしながら、必要であるものでありますだけに、それを支給される企業と、支給はされなくても、そうしたもとで帰郷されておられる方もおるわけでございますし、また、そうしたものを別途手当として支給される企業もあれば、そうした事情があるということで給与水準を高めて支給されている企業もあるといったところからいたしますと、そういったものを非課税にしたり控除をつくることは、税制上はこれまたかえって不公平を招くという議論もあるわけでございます。そうした点も含めていろいろ考えますと、勤務地を含めました、勤務条件を含めたいろいろな報酬というものは、税制としては給与として観念させていただきまして、給与所得として課税をさせていただくのが公平ではないかと考えておるわけでございまして、税制調査会の答申におきましても、こうしたもろもろの特殊の手当につきまして控除を設けたり一部非課税にするというのは、基準も難しいし、また内容的に見ましても、ただいま申し上げましたような事情から困難、かえって不公平を招く場合もあるというふうな御指摘もあるわけでございますので、御指摘ではございますけれども、また、いろいろ内部で勉強はいたしてはおるわけでございますが、私どもとしては、控除の新設、非課税といった点はどうもいかがなものかというのが私どもの現在の考え方でございます。
  114. 神田厚

    ○神田委員 きょうは時間がありませんからこれでやめますが、ひとつ前向きにこの問題につきましても御検討をお願いしたいと思います。  これで終わります。
  115. 横山利秋

  116. 藤木洋子

    藤木委員 厚生省がまとめた五十八年度全国母子世帯等調査では、離婚による母子世帯が急増していることが明らかになっております。私は、この社会的背景にサラ金の蔓延があることを、私のところに送られたはがきの一つを紹介して指摘をいたします。   私は五十一年夏、たび重なる夫のギャンブル狂いのため、サラ金に追われ、家を出ました。死ぬ覚悟でした。そのとき子供は四歳と二歳でした。けれど〝子供は神仏からの預かりもの〟という言葉を思い起こし、私の人生は終わった、子供のために生きようと心に決め、今日まで頑張ってきました。渡部厚相は安易な離婚に歯どめをと言われますが、男社会の中で別れるというのは口に出せない過酷な事情があるのです。ましてや田舎で偏見があり、それでもなお生きるために別れなくてはならないことだってあるのです。   子供だけは明るく立派にと自分を励まし励ましの毎日の生活でした。裁判所でもギャンブルの借金を抱えた主人からは、養育費など取れないと言われ、児童扶養手当の制度にどれほど助けられたかわかりません。おかげさまで子供はこの春中一と小四になります。どうか子供たちの健全な育成のために手をかしてください。というものです。  私は、国の財政難を理由にこのような母子家庭の生活を脅かす児童扶養手当の削減を今、政府が行おうとしているのを許すことができません。むしろ、母子家庭を急増させている離婚の要因の一つ、サラ金禍、サラ金悲劇を一掃するためのあらゆる手だてを尽くして家庭破壊を救うことが、ひいては国の財政をも抑える近道だと考えるものです。  さて、サラ金悲劇、サラ金犯罪が、なぜサラ金二法施行後も後を絶たないのでしょうか。その理由は何だとお考えでしょうか。大蔵省、お願いいたします。
  117. 宮本保孝

    ○宮本(保)政府委員 サラ金に関する事件の原因といたしましては借りる方と貸す方と双方に問題があるのではないかと思われるわけでございますが、特に貸す方側について申し上げますと、やはり業者のモラルの問題が一番大きい問題じゃないかと思っておるわけでございまして、経営姿勢というものについて厳しく対処していかなければいけないという感じがございます。  同時に、従来、法規制が余り十分でなかったという点もございまして、昨年の十一月一日からは、国会で御審議の上、いわゆるサラ金二法が施行になっておるわけでございまして、私どもといたしましては、この法律、完全なものとは言えませんけれども、できるだけこの法律の実効を期するような行政を着実に進めてまいりたい、こう思っておるところでございます。
  118. 藤木洋子

    藤木委員 サラ金苦による悲劇、犯罪の原因は、過重債務そのものより、むしろ強引な取り立てにあると見るべきだと思います。  そこで、サラ金悲劇の最大の原因になっている取り立て方法にあらわれている新たな手口、知能犯的手法についてお尋ねをいたします。  初めの例は、支払いを迫る催告書とともに裁判所の支払い命令を同封して送りつけたケースです。  この例の支払い命令について、本物かどうか、私は最高裁判所に照会してみました。そして、昨日、四つの理由、第一に、「右正本の事件番号として九三八三号とあるが福岡簡裁が昭和五九年(本年)に受理した事件は五八一〇件であって、九三八三件に達していない。」第二に、「支払命令の日と仮執行宣言の日は、二週間以上はなれているはずであるのに、同日となっている。」第三に、「右正本には当事者目録が欠けており、また別紙との契印がもれている。」第四に、「昭和五六年から同五八年までの三年の間に福岡簡裁が事件番号九三八三号として発した支払命令の内容とは当事者名等が異っており、右正本は、福岡簡裁が発したものではない。」この四つの理由で、「御照会の支払命令の正本は、福岡簡裁で作成したものではない。」という結論をいただきました。  とすれば、業者側がこれを作成したと見なければなりません。あたかも裁判所が支払いを命じているかのような装いを凝らして、債務者をだまし、取り立てることをねらったものと言えるのではないでしょうか。これを行った業者は、詐欺、公文書偽造の疑いが濃いと思いますが、法務省の御見解はいかがですか。
  119. 北島敬介

    ○北島説明員 お尋ねの点につきましては、具体的な事実関係が必ずしも明らかでございませんので、犯罪の成否という点については、的確なお答えをいたしかねるわけでございますが、裁判所名義あるいは裁判所書記官名義の文書を何ら権限のない者が勝手に作成したということでございますと、その点において公文書偽造の成否、公文書偽造に当たるかどうかということが具体的事実関係に照らして問題になろうかと存じます。  また、取り立ての方法がけしからぬではないかという観点からいたしますと、先ほどもお話に出てまいりました貸金業の規制等に関する法律の取り立て方法の規制、それに債務者を著しく困惑させるような手段、方法というものも挙げてございますので、事実関係がそういう取り立て方法に当たるかどうか、そういうことが一応問題になろうか、かように存じます。
  120. 藤木洋子

    藤木委員 いずれにしましても、これは極めて問題になるという御見解を示していただきました。  もう一つの事例をお示しいたします。これは、債務者にあらかじめ訴訟に訴える旨の訴状を送りつけた上で、後日、強制執行予告通知書なるものを送り、脅迫するケースです。  読み上げてみますと、「強制執行予告通知書」、あて名がございまして、  前略、先般貴殿に対し裁判所を通じて再三再四の督促にもかかわらず貴殿の借財に対する返済意志ならびに誠意すらないことを遺憾に存じます。貴殿のその非人道的な態度を当社としては容認することは出来ません。従って別添執行正本写しにより法律的制裁と、今後貴殿の信用に対する全金融機関への情報提供により今後の一切の取引の停止等、社会的制裁を仰ぎ、債務不履行の及ぼす影響の深い認識をして頂きます。尚、強制執行期日を昭和五九年三月一〇日と定めましたので当日はなるべく御在宅頂きますようお願い申し上げます。不在の場合は執行官立あいのもとで施錠の崩壊を致しますのであしからず。  以上念のため申し添えます。                  以 上    昭和五九年二月二二日          株式会社 日本プロミス捺印がございまして、「強制執行部」となっております。  まさに驚くべきことを言っております。この日本プロミスから取り立てに遭っている奥さんの御主人はがんで入院中でありました。奥さんは、相次ぐ取り立てに自宅におれなくなって行方がわからなくなっております。残された息子さんも家を出てしまい、一家離散している状態になっているそうです。  通知書で言う「別添執行正本写し」には、「債権者は債務者に対しこの債務名義により強制執行をすることができる。」とありますが、本文書もまた公文書が偽造されていることが明らかで、極めて悪質な行為です。このような行為は、公文書偽造はもちろん、詐欺、恐喝に当たるものではないでしょうか。法務省の御見解を伺います。
  121. 北島敬介

    ○北島説明員 おおむね先ほどの事例に対してお答えしたのと同様ということになろうかと思いますが、要するに、具体的事実関係いかんによる、事実関係いかんによっては、何らかの犯罪を構成する可能性もあり得るということかと存じます。
  122. 藤木洋子

    藤木委員 この通知書ですが、「貴殿のその非人道的な態度」が容認できないなどと言っていますけれども、非人道的なのは日本プロミスではないでしょうか。まさに逆です。しかも、この中で、借金を返さなければ「社会的制裁を仰ぎ、債務不履行の及ぼす影響の深い認識」をしていただく、つまり、どんな目に遭うか思い知らせてやるということを述べています。これが恐喝でなくて何でしょうか。私はこのようなことに対する厳正な措置を望むものです。  続いて、大蔵省にお尋ねをします。  初めの例は、サラ金業者の目新信販が行ったものです。この業者は、本店が福岡にあり、八十九店舗を持つ資本金二億円、従業員五百三十五人という中堅業者ですが、現在福岡財務局に貸金業者登録申請を出していると聞いております。これに対してどのように対処するおつもりか、お述べをいただきたいと思います。
  123. 宮本保孝

    ○宮本(保)政府委員 本件につきましては、事実関係がまだはっきりいたしておりませんが、きょう先生御提示の内容につきまして、当該会社から事情を聴取する、場合によりましては立入検査もするということで対処いたしたいと思います。もし法律に違反するような行為があれば、登録は受け付けるはずはございませんし、しかるべき法律に基づく処置をいたしたいと考えております。
  124. 藤木洋子

    藤木委員 この業者は過去二回福岡県の庶民金融業協会に対しても加入申請を行ったということですけれども、資格審査ではねられたと聞いております。同業者に言わせますと、あそこを協会に入れれば協会の信用が落ちる、同業者の間でも鼻つまみ的な存在になっているわけですね。このような業者を野放しにしておいてサラ金悲劇をなくすことはできないと思います。今、銀行局長が厳正に臨まれるような御回答をされましたので、ぜひ実行していただきますように強く御要望を申し上げておきます。  もう一つの例ですが、これはサラ金業者の日本プロミスの場合なんです。この取り立て行為を二月段階で行っていた業者が、三月三十日には大蔵省の登録済み業者となっているのですね。これはどういうわけなのか、お答えをいただきたいと思います。
  125. 宮本保孝

    ○宮本(保)政府委員 登録済みの時点で、そういうような行為があったことにつきましてあるいは行政当局が把握していなかったのかもしれません。その点につきましては、先ほどと同じように、当該会社からの事情聴取、必要があれば立入検査等によりまして事実関係を確かめた上で、しかるべき措置をとりたい、こう思っております。
  126. 藤木洋子

    藤木委員 先ほどの法務省の一般的見解から推察いたしましても、事実関係が明らかになれば、当然、銀行局長のおっしゃるような厳正な措置で臨む、立入調査を行ってでもということは求められると思います。ぜひともそれは実行していただくようにかたく申し上げておきます。  これは、貸金業法第二十一条の「取立て行為の規制」「人を威迫し又はその私生活若しくは業務の平穏を害するような言動により、その者を困惑させてはならない。」ということに明らかに違反しているわけですね。監督、指導権、あらゆる行使を行っていただいて、断固として厳正な措置をとることを重ねて求めるものです。  さて、次に、警察庁に対してお伺いをいたしますが、今の二つのケースについてですが、警察は厳正な措置をとるということをお約束いただけますでしょうか。
  127. 清島傳生

    ○清島説明員 事実関係が明らかでありませんので、もし法に違反しているということであれば、厳正な措置をとるということだろうと思います。
  128. 藤木洋子

    藤木委員 告訴があれば、その場合は断固として厳正な措置をとっていただきたいというふうに思いますが、その点はいかがですか。
  129. 清島傳生

    ○清島説明員 告訴等が適法になされるということであれば、当然これは捜査をすることになろうかと思います。
  130. 藤木洋子

    藤木委員 では、次に、ことしに入りましてわずか四カ月足らずの間に、兵庫県の現職警官による銀行強盗事件が相次いで発生するという、まさに前代未聞の不祥事に言い知れぬ恐りを私は抑えることができないわけです。不信感もいよいよ募る一方なんですが、警察庁は兵庫県警に対し特命監察を行いました。どのような監察を行ったのか、お知らせをいただきたいと思います。
  131. 城内康光

    ○城内説明員 お答えします。  今回の特命監察は、昨年来各都道府県警察が規律の刷新に格別の努力を払っているさなかに、本年三月一日、四月二十四日と再度にわたり兵庫県の警察官が銀行強盗事件を行ったことから、警察庁におきましても事態を深刻に受けとめ、その原因、問題の所在等について直接把握し、再発防止に資するため行ったものであります。この結果を踏まえて、近く本人を指導監督すべき立場にあった各級幹部に対し厳正な処分を行うことにしております。  今回の特命監察の結果につきましては、現在詳細を分析しているところでありますが、何といいましても、今回の事案は、本人らが無計画な生活設計をして、自己の収入に照らして不相応な借金をし、自宅を購入し、その上ギャンブルや費用のかかる趣味にのめり込むなどしてサラ金を利用するに至り、そのあげく返済に窮して思慮分別を失い犯罪を行ったということが挙げられるのでありまして、何と申しましても個人の資質に問題があると思われます。  また、三月一日に発生しました不祥事案後、各種の再発防止策をとっていたにもかかわらず、本人がサラ金から多額の借金を重ね、経済的に崩壊状態であったことを上部が把握できなかったこと、住宅を購入する際の資金の調達やその返済についての細かい指導が行われていなかったことなどの問題点も把握されておりまして、警察庁としましては、こうした反省点を踏まえて、各種施策の一層の徹底を図ってまいる所存であります。
  132. 藤木洋子

    藤木委員 今、個人の責任をかなり問われるような御回答をいただいたわけですけれども、サラ金業者と警察の間に何らかの癒着の疑いを持たれたようなことはありませんでしたか、その点はいかがですか。
  133. 城内康光

    ○城内説明員 お答えします。  そのようなことは承知しておりません。
  134. 藤木洋子

    藤木委員 姫路署の保安課長は、兵庫県庶民金融業協会西播支部第六期定期総会に出席をされ、祝辞を述べておられます。サラ金業界との親交のもとで、部下に対してどのような理由をもってサラ金に近づくなと指導したところで、説得力を持たないのは当たり前じゃないでしょうか。サラ金利用の実態調査はもちろんですが、サラ金業界との癒着の疑いに対してもメスを入れ、勇断を振るって腐敗の根源に立ち至る指導、これを貫いていただかない限り、警察の自浄作用に何一つ期待することはできません、この点での御決意と今後の対策についてお述べをいただきたいと思います。
  135. 清島傳生

    ○清島説明員 ただいま姫路署の件でお話がございましたので、この件について私の方から答弁をいたしたいと思いますが、警察といたしましては、サラ金に通じて犯罪の取り締まりあるいはいろいろな苦情相談などの各種の施策を行っているわけでありますが、サラ金被害を防止するために、貸し金業者あるいは御質問の金融業協会等に対しましても、呼び出すなり出向くなりして必要な警告、指導、啓発を行っておるところであります。姫路署の例におきましても、出席者はいろいろな高金利事犯が後を絶たない、あるいは大規模な預かり金事犯等があるということで、庶民金融業協会が中心になって遵法営業の指導を徹底されるようにということで啓蒙をしておるということでございます。
  136. 藤木洋子

    藤木委員 ぜひ、今のお答えにございました調査は徹底してお進めをいただきまして、一切そのような業者とのかかわりを断ち切って、襟を正して、ひとつ綱紀粛正に努めていただきたい。そして、警察の信用を国民の間に回復をしていただきたいということを強く希望いたします。  いずれにいたしましても、このようなサラ金悲劇が後を絶たないことの背景に、この無法な取り立てが野放しにされている点を強調したいと私は思います。実際に、尼崎の西警察署などでもそうですけれども、被害者が泣き込んでいっても全く取り合わない、こういった例も出ております。ですから、そのような被害者に対しては、みずからの警察官の中から被害者を出すということだけではなくて、本当に懇切丁寧な窓口を開いて対応をしていただきたい。そのことをも重ねて申し上げます。  特に、今申し上げました福岡の事例にいたしましても、兵庫県の事例にいたしましても、県警の対応が非常に悪いのです。これはどちらにも共通していることなんです。国民の声に耳をかさないという全く高圧的なやり方で、親切に対応しない。しかし、警察当局は、サラ金被害に遭った方は警察へぜひお越しください、こういう無法な取り立てがあった場合には警察にというような広報もお出しになっていらっしゃるわけですから、その辺いかがでしょうか、そういった庶民からの訴えがあった場合には親切に対応していただけるでしょうか。
  137. 清島傳生

    ○清島説明員 警察におきましては、困り事相談あるいは家事相談等の窓口を設けまして、さらには、県によってサラ金一一〇番という専用電話を設けるなどいたしまして、各種のサラ金に関する苦情相談に応じているところでございます。私どもに報告のあった事例等を見ましても、これら相談につきましては、親切に指導、助言をする、あるいは親身になって解決を図るように努めている様子が見受けられるわけでありまして、また、相談に来た事例で、法律違反ということがありますと、当然に検挙もいたしておりますし、状況によってはサラ金業者に対する指導、警告ということもいたしておりまして、適切に対処しておるというふうに考えております。
  138. 藤木洋子

    藤木委員 一つ具体例でお伺いいたします。  例えば、サラ金業者から追われて、夜九時以降の取り立てに遭っているが助けてくれと助けを求めた場合に、警官が、夜九時に行っていなければ十一時に行くのは当たり前ではないかと答えるのは正しい態度ですか。
  139. 清島傳生

    ○清島説明員 一一〇番なり相談があった場合には素早く対処すべきだと思います。
  140. 藤木洋子

    藤木委員 今の事例は正しい態度ですか。そのように答えてもいいわけですか。これは尼崎の西署で実際にあった例です。夜九時に行っていなければ十一時にサラ金業者が訪ねていくというのも当たり前だ、こう言って、その相談者を追い返す態度は、警官として正しい態度ですか。
  141. 清島傳生

    ○清島説明員 先生お話しの件につきましては、私ども事実関係がよくわかりませんので、何ともお答えいたしかねます。
  142. 藤木洋子

    藤木委員 これは一般的に言ってどうですか。実際にはサラ金二法施行以後に起こっている問題です。
  143. 清島傳生

    ○清島説明員 先生、具体的な事案として申し上げておりますので、私どもも具体的な事実関係がよくわかりませんので何とも答弁いたしかねます。
  144. 藤木洋子

    藤木委員 それでは、尼崎西署はぜひ御調査をいただきたいと思いますが、その点はいかがでしょうか、御調査の約束をしていただけますか。
  145. 清島傳生

    ○清島説明員 照会してみたいと思います。
  146. 藤木洋子

    藤木委員 これは必ず行っていただきたいと思います。私が開いております生活相談所に訪ねてこられた被害者からの訴えでございます。このような対応をどこの出先や署におきましても一切行わせないように、厳正な措置をお願いいたします。そして、サラ金被害をなくすためのあらゆる手だてを講じて御奮闘くださるように、最後に強く希望を述べまして、私の質問を終わります。
  147. 横山利秋

    横山委員長 これにて各件の質疑は終了いたしました。  この際、午後一時十五分まで休憩いたします。     午後零時五十六分休憩      ――――◇―――――     午後一時十八分開議
  148. 横山利秋

    横山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和五十六年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その2)外二件の承諾を求めるの件、昭和五十七年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書外二件の承諾を求めるの件、及び昭和五十六年度決算調整資金からの歳入組入れに関する調書承諾を求めるの件について、一括して討論に入ります。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。白川勝彦君。
  149. 白川勝彦

    ○白川委員 私は、自由民主党・新自由国民連合を代表いたしまして、ただいま議題となりました予備費使用調書及び各省庁所管使用調書、並びに決算調整資金からの歳入組入れに関する調書等の承諾を求めるの件について、賛成の意を表したいと存じます。  歳出に見積もった経費不足を生じた場合、または全然見積もらなかった新たな経費を必要とするようになった場合に、それが重要なことであれば臨時国会を召集して補正予算を提出して措置するのが適当であります。しかし、国会を召集してまで措置する必要のないような経費で、予見しがたい予算不足については、何らかの措置を講じなければならないのであります。この不足を補うために、憲法、財政法上、内閣の責任において支出できる予備費の制度が定められているわけであります。  すなわち、昭和五十六年度一般会計予備費使用調書(その2)の使用総額は九百八十四億七千六百八十七万五千円で、その主なものは、国民健康保険事業に対する国庫負担金不足を補うために必要な経費六百九十一億一千三百三十六万一千円、生活保護費の不足を補うために必要な経費百四十八億五千九百七十九万五千円等となっております。  また、特別会計予備費使用調書(その2)の使用総額は、食糧管理特別会計外六特別会計の合計で七百三十七億四千四百九十五万八千円となっております。  さらに、特別会計予算総則第十一条に基づく経費増額調書(その2)の経費増額総額は、郵便貯金特別会計三百三十三億七千七百九十万三千円となっております。  次に、昭和五十七年度一般会計予備費使用調書使用総額は一千二百二十五億八百四十三万一千円で、その主なものは、雇用保険求職者給付に対する国庫負担金不足を補うために必要な経費三百二十七億一千十四万四千円、河川等災害復旧事業に必要な経費二百三億八千四百五万六千円等となっております。  また、特別会計予備費使用調書使用総額は、労働保険特別会計外九特別会計の合計で一千三百八十六億二千九百三十二万六千円となっております。  さらに、特別会計予算総則第十一条に基づく経費増額調書経費増額総額は、治水特別会計外四特別会計の合計で七百五十七億四千六百六十三万七千円となっております。  これら予備費の使用は、いずれも予見しがたい予算不足を補うための経費と認められます。  ただし、使用決定の際にはなるべく既定経費の洗い直しを行い、流用するなど格段の配慮を望みます。  なお、昭和五十六年度決算調整資金からの歳入組入れに関する調書の組み入れ額は二兆四千九百四十八億九百九十五万円余となっております。これは、予見しがたい経済情勢の推移による租税収入不足等により昭和五十六年度一般会計歳入歳出決算において決算上の不足を生じたため、決算調整資金に関する法律に基づき処理されたものであることから、やむを得ない措置であると思われます。  以上をもって、予備費の使用調書及び決算調整資金からの歳入組入れに関する調書等について賛成の討論といたします。
  150. 横山利秋

  151. 新村勝雄

    新村(勝)委員 私は、日本社会党・護憲共同を代表して、ただいま議題となりました昭和五十六年度決算調整資金からの歳入組入れに関する調書昭和五十六年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その2)外二件、並びに昭和五十七年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書外二件に対して、不承諾の意思を表明いたします。  初めに、昭和五十六年度決算調整資金からの歳入組入れに関する調書承諾しない理由を申し述べます。  昭和五十六年度一般会計決算において二兆四千九百四十八億円もの巨額の不足を生じさせたことに対し、我が党は政府の重大な責任を改めて問うものであります。この決算上の不足は自民党政府の誤った経済財政運営の直接の帰結であります。  我が党は、昭和五十六年度予算編成に際して、軍事費の削減、所得税の減税、福祉教育の充実によって国民生活を守り、第二次石油危機後の不況を克服するよう要求しました。  しかし、自民党内閣は、財政再建元年と称して、軍事費の突出、大衆増税、福祉抑制を行い、不況を長期化、深刻化させたのであります。これが大幅な五十六年度歳入欠陥を生じさせた最大の要因であります。加えて、同年度補正予算において税収の減収額を意図的に過少に見込み、その場を取り繕い、責任を回避したことにあるのです。この歳入組み入れは、昭和五十八年度予算において補てん繰り戻しのための歳出を要することになり、大きな財政負担と国民生活のための経費削減を招いたのであります。このような昭和五十六年度決算調整資金からの歳入組み入れを承諾することはできません。  次に、昭和五十六年度一般会計予備費使用調書等六件を承諾しない理由を述べます。  予備費の多くは、災害復旧、社会保障関係費、退職手当等の経費に充てられており、これらは承諾できるものであります。  しかし、予備費使用の中には、次のような承諾できないものがあります。  中曽根総理は昨年一月の訪米において、不沈空母、四海峡封鎖などと不見識かつ危険きわまりない発言を繰り返し、日米軍事同盟の強化と我が国の軍備拡大を約束し、日本の安全とアジアの平和を危うくする要因をつくったのであり、我が党はこの訪米を承認することはできません。  引き続きスモン訴訟の和解に要する経費が予備費から支出されておりますが、我が党が一昨年に指摘したとおり、予算の編成時に予見されるこのような経費は、当初予算に計上し、国は患者に対して和解、謝罪の意思を明確にすべきであります。  特別会計の予備費において相変わらず多額の不用額が生じており、適正を欠くものと言わねばなりません。五十六年度において特別会計予備費予算総額三兆七千六百五十一億円のうち使用されたのはわずか二%の七百五十億円であり、残りの九八%は使用残高となっているのであります。五十七年度も同様であります。予備費の中には、外国為替資金、厚生年金、国民年金、食糧管理、労働保険など必要なものが多くあることは認めますが、予備費予算は、実情に即した額を計上し、財政民主主義の原則を守るべきであります。  以上の理由により、昭和五十六年度決算調整資金からの組入れに関する調書外六件に対し、不承諾の意思を表明し、反対討論を終わります。
  152. 横山利秋

    横山委員長 貝沼次郎君。
  153. 貝沼次郎

    貝沼委員 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりました予備費使用調書及び各省庁所管使用調書等の承諾を求めるの件について、不承諾の意思を表明するものであります。  我が党は、これまで予備費使用については財政国会議決主義の原則にかんがみ、予備費使用の基本的かつ重大な問題を指摘してきたのでありますが、政府は依然として姿勢を改めようとはせず、極めて遺憾と言わざるを得ません。  以下、予備費設定に関して基本的問題を指摘しておきます。  第一は、予備費が本来の目的から大きく離れてきていることであります。予備費の額を見ましても、昭和五十四年度以来実に六年間にわたり三千五百億円と決まっております。事前議決の原則から見れば、額は少ないほど理想のはずでありますが、ここにマンネリがうかがえるのであります。そして、さらに問題なことは、毎年予算の半額近くが補正予算減額されております。このことは、予備費が補正予算財源として当初より当てにして組まれておるように見受けられることなど、きめ細かい配慮が必要と考えるからであります。よって、政府の見直しを強く要求したいのであります。  第二は、スモン訴訟における和解の履行に必要な経費についてであります。  そもそも、スモンは薬事行政上重大な問題であり、国の姿勢が問われるのでありますが、残念ながら、そのとき主義的で、政策の後始末に使われている感が強く残ります。また、今後薬害が起こらないための教訓でもなければなりません。しかし、患者救済の実態は、まだまだ不十分であり、今後きめ細かく対応されなければなりません。  また、このときに消炎鎮痛剤など不気味な薬害が問題となってまいりましたが、スモンの二の舞を断じて踏んではなりません。予見しがたくて出費したなどとならぬよう対応すべきでありますが、政府の答弁を聞く限り、まだまだ不安が残り、安全の確証が得られたとは思えないのであります。かかる点から、予備費についてはさらなる検討を要求せざるを得ません。  以上、不承諾の意を表明し、反対討論といたします。
  154. 横山利秋

    横山委員長 神田厚君。
  155. 神田厚

    ○神田委員 私は、民社党・国民連合を代表し、ただいま議題となりました昭和五十六年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その2)、昭和五十六年度特別会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その2)、昭和五十六年度特別会計予算総則第十一条に基づく経費増額調書及び各省庁所管経費増額調書(その2)、昭和五十七年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書昭和五十七年度特別会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書、及び昭和五十七年度特別会計予算総則第十一条に基づく経費増額調書及び各省庁所管経費増額調書承諾を求めるの件について賛成の意を表し、昭和五十六年度決算調整資金からの歳入組入れに関する調書承諾を求めるの件については反対の意を表します。  昭和五十六年度一般会計予備費の大宗は、退職手当の不足を補うために必要な経費であり、やむを得ないものであるとともに、スモン訴訟における和解の履行に必要な経費、結核医療費補助金などに必要な経費等使用目的を逸脱していないと考えます。同年度の特別会計も、代替エネルギーの促進、電源立地対策、年金保険、医療保険、労働保険の給付金に必要な経費などであり、当然の経費と思われます。  昭和五十七年度一般会計及び特別会計予備費の使用状況全般については、突発的災害の復旧に要する費用、訴訟における和解の履行に要する経費、補欠選挙に要した費用等、特に使用目的からかけ離れているとは認められません。したがって、それらを承諾いたします。  しかし、昭和五十六年度決算調整資金からの歳入組入れに関する調書については、政府財政運営の失政から約二兆五千億円の歳入欠陥が生じ、その不足額決算調整資金から組み入れたものであり、そうした財政運営を行った政府の責任は極めて重大であります。この見地から、この調書については承諾できないのであります。  最後に、国費が正しく有効に活用されるよう一層の配慮を希望するとともに、政府の経済財政運営を縮小均衡型から我が党が主張する拡大均衡型経済財政運営へと転換することを強く要求し、討論を終わります。
  156. 横山利秋

  157. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 私は、日本共産党・革新共同を代表し、ただいま議題となりました予備費等承諾案件のうち、昭和五十六年度一般会計予備費使用調書(その2)、昭和五十七年度一般会計予備費使用調書、同特別会計経費増額調書の三件、及び昭和五十六年度決算調整資金からの歳入組入れに関する調書について、不承諾の意を表明いたします。  予備費使用調書でありますが、これらの予備費使用等の主なものは、災害経費、退職手当、スモン等賠償金、社会保障関係費、選挙経費、農業者年金助成経費などであり、その使用目的、予備費使用の理由はおおむね妥当なものであり、承諾できるものが多数であります。  しかしながら、本予備費使用等のうちには、我が党が認めることができないものが含まれております。例えば、総理の訪米についてであります。昨年一月の訪米で、総理は日米首脳会談で、日米は運命共同体との認識を述べ、日本列島不沈空母化路線を公然と表明するなど、日米軍事同盟の攻守同盟化に事実上乗り出したものであり、今年度予算における軍事費の突出など、アメリカの圧力のままに日本国民を果てしない軍拡路線に縛りつけることは今や明白であります。このような予備費支出は断じて認められないものであります。  昭和五十六年度決算調整資金からの歳入組入れに関する調書でありますが、昭和五十六年度の一般会計歳入不足は、政府が過大な税収見積もりの上に立つ粉飾予算を組み、大企業向け景気対策、大軍備増強を行う一方で、実質大増税、福祉削減など国民生活に犠牲を押しつけた結果の消費不況の深刻化、巨額の税収不足によって生じたものであり、政府財政経済政策の失政によるものであります。  また、決算調整資金制度そのものが会計年度独立の原則を侵すものであり、一般会計の多年度調整と放漫財政を進めるもとであるとともに、国会の事前承認を要しない財政民主主義を侵害するものであり、認めることはできません。  以上のような不当な予備費使用を含むこれらの調書承諾することに我が党は反対であります。  昭和五十六年度特別会計予備費使用調書(その2)、昭和五十六年度特別会計経費増額調書(その2)及び昭和五十七年度特別会計予備費使用調書の三件は、支払い利子等の義務経費等々であり、使用目的、予備費使用等の理由に特に問題がないと認められるので承諾いたします。  以上で討論を終わります。
  158. 横山利秋

    横山委員長 これにて討論は終局いたしました。     ―――――――――――――
  159. 横山利秋

    横山委員長 これより採決に入ります。  昭和五十六年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その2)、昭和五十七年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書、及び昭和五十七年度特別会計予算総則第十一条に基づく経費増額調書及び各省庁所管経費増額調書、以上三件について採決いたします。  三件はそれぞれ承諾を与えるべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  160. 横山利秋

    横山委員長 起立多数。よって、三件は承諾を与えるべきものと決しました。  次に、昭和五十六年度特別会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その2)、昭和五十六年度特別会計予算総則第十一条に基づく経費増額調書及び各省庁所管経費増額調書(その2)、及び昭和五十七年度特別会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書、以上三件について採決いたします。  三件はそれぞれ承諾を与えるべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  161. 横山利秋

    横山委員長 起立多数。よって、三件は承諾を与えるべきものと決しました。  次に、昭和五十六年度決算調整資金からの歳入組入れに関する調書について採決いたします。  本件は承諾を与えるべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  162. 横山利秋

    横山委員長 起立多数。よって、本件は承諾を与えるべきものと決しました。  次に、昭和五十六年度一般会計国庫債務負担行為総調書(その2)について討論に入るのでありますが、討論の申し出もございませんので、直ちに採決に入ります。  昭和五十六年度一般会計国庫債務負担行為総調書(その2)について採決いたします。  本件は異議がないと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  163. 横山利秋

    横山委員長 起立総員。よって、本件は異議がないと決しました。  なお、ただいま議決いたしました各件についての委員報告書の作成につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  164. 横山利秋

    横山委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕      ――――◇―――――
  165. 横山利秋

    横山委員長 次に、昭和五十六年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は、総理府所管警察庁自治省所管及び公営企業金融公庫について審査を行います。  まず、総理府所管中警審庁及び自治省所管について概要説明を求めます。田川国務大臣。
  166. 田川誠一

    ○田川国務大臣 昭和五十六年度の警察庁関係の歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  昭和五十六年度の歳出予算現額は、一千五百四十八億七千二百七十七万円余でありまして、支出済み歳出額は、一千五百三十二億七千六百九十七万円余であります。  この差額十五億九千五百七十九万円余のうち、翌年度へ繰り越した額は、六億一千三百四十二万円であります。これは、設計に関する諸条件または用地の関係等により工事等が遅延したため、年度内支出を完了することができなかったものであります。  また、不用となった額は、九億八千二百三十七万円余であります。これは、犯罪被害給付金の支給対象者が少なかったので犯罪被害給付金を要することが少なかったこと等のためであります。  次に、支出済み歳出額の主な費途について、その大略を御説明申し上げます。  第一に、警察庁経費として九百十億一千七百九十一万円余を支出いたしました。これは、警察庁自体の経費及び都道府県警察に要する経費のうち警察法の規定に基づき国庫が支弁する経費として支出したものであります。  第二に、千葉県警察新東京国際空港警備隊の経費として五十一億二千五百八十二万円余を支出いたしました。これは、千葉県警察新東京国際空港警備隊が新東京国際空港に係る警備活動を実施するために要する経費として支出したものであります。  第三に、船舶建造費として三億八千四百六十八万円余を支出いたしました。これは、警察活動に必要な警察用船舶の建造に要する経費として支出したものであります。  第四に、科学警察研究所の経費として七億五千四百六十六万円余を支出いたしました。これは、科学捜査、防犯及び交通についての研究、調査等のための経費として支出したものであります。  第五に、皇宮警察本部の経費として四十五億九千六百四万円余を支出いたしました。これは、皇宮警察の職員の給与、皇居の警備、行幸啓の警衛等のための経費として支出したものであります。  第六に、警察庁施設費として三十六億三千百三十二万円余を支出いたしました。これは、警察庁関係の施設を整備するための経費として支出したものであります。  第七に、都道府県警察費補助の経費として四百七十七億一千三百六十九万円余を支出いたしました。これは、警察法に定めるところにより、都道府県警察に要する経費の一部を補助する経費として支出したものであります。  第八に、他省庁からの予算の移しかえを受けた経費は、科学技術庁からの科学技術振興調整費として二千七十五万円余、同じく国立機関原子力試験研究費として九百三十九万円余、環境庁からの国立機関公害防止等試験研究費として一千三百七十六万円余、国土庁からの災害対策総合推進調整費として八百九十一万円余をそれぞれ支出したものであります。  以上、警察庁関係の歳出決算について御説明申し上げました。何とぞよろしく御審議のほどお願いいたします。  続いて、昭和五十六年度自治省所管決算概要説明いたします。  一般会計の歳出決算につきましては、歳出予算現額は、当初予算額八兆九千七十三億九百六万円余、予算補正追加額三千六十七万円余、予算補正修正減少額四百五十億九千六百六十六万円余、総理府所管から移しかえを受けた額四千二百六万円余、前年度繰越額二億六千三百万円、予備費使用額十億七千五百八十一万円余、合計八兆八千六百三十六億二千三百九十四万円余でありまして、これに対して、支出済み歳出額は八兆八千三百六十七億七千百二十三万円余で、差額二百六十八億五千二百七十万円余を生じましたが、この差額のうち翌年度繰越額は一億円、不用額は二百六十七億五千二百七十万円余であります。  以下、支出済み歳出額の主なものにつきまして御説明申し上げます。  まず、地方交付税交付金でありますが、歳出予算現額は八兆三百九十五億五千二百万円、支出済み歳出額は八兆三百九十五億五千二百万円でありまして、全額支出済みであります。この経費は、交付税及び譲与税配付金特別会計法に基づき、昭和五十六年度の所得税法人税及び酒税の収入見込み額のそれぞれ百分の三十二に相当する金額の合算額を、交付税及び譲与税配付金特別会計繰り入れたものであります。  次に、臨時地方特例交付金でありますが、歳出予算現額は一千三百六億円、支出済み歳出額は一千三百六億円でありまして、全額支出済みであります。この経費は、昭和五十六年度の地方財政状況を考慮し、その健全な運営に資するための特例措置として、地方交付税法等の一部を改正する法律に基づき、交付税及び譲与税配付金特別会計繰り入れたものであります。  次に、交付税及び譲与税配付金特別会計借入金等利子財源繰り入れでありますが、歳出予算現額は五千五百二十四億七千五百万円、支出済み歳出額は五千二百六十四億二千七百一万円余、不用額は二百六十億四千七百九十八万円余となっておりまして、この経費は、交付税及び譲与税配付金特別会計法に基づく、借入金等の利子の支払いに充てるため必要な金額を、交付税及び譲与税配付金特別会計繰り入れたものであります。  不用額を生じましたのは、一時借入金の利率の引き下げに伴い、一時借入金の利子の支払いが少なかったこと等によるものであります。  次に、交通安全対策特別交付金でありますが、歳出予算現額は四百二十三億四百十万円余、支出済み歳出額は四百二十三億四百十万円余でありまして、全額支出済みであります。この経費は、交通安全対策の一環として、反則金に係る収入額に相当する金額を、道路交通安全施設の設置に要する費用に充てさせるため、都道府県及び市町村に対し、交通安全対策特別交付金として交付したものであります。  次に、地方債元利助成費でありますが、歳出予算現額は百二十三億二千六百五十五万円余、支出済み歳出額は百二十二億五千六百三十四万円余、不用額は七千二十一万円余となっておりまして、この経費は、新産業都市の建設及び工業整備特別地域等の整備に係る地方債の特別調整分に対する利子補給金として、道府県に対し、交付したもの等であります。  次に、地方公営企業助成費でありますが、歳出予算現額は三百二十七億八千九百二十六万円余、支出済み歳出額は三百二十七億八十七万円余、不用額は八千八百三十八万円余となっておりまして、この経費は、公営地下鉄事業特例債の利子に係る助成金として、地方公共団体に対し、交付したもの等であります。  次に、国有提供施設等所在市町村助成交付金でありますが、歳出予算現額は百九十九億五千万円、支出済み歳出額は百九十九億五千万円でありまして、全額支出済みであります。  次に、施設等所在市町村調整交付金でありますが、歳出予算現額は五十二億円、支出済み歳出額は五十二億円でありまして、全額支出済みであります。前述の経費及びこの経費は、米軍及び自衛隊が使用する国有提供施設等の所在する都及び市町村に対し、交付したものであります。  次に、衆議院議員及参議院議員補欠等選挙費でありますが、歳出予算現額は十億七千五百八十一万円余、支出済み歳出額は十億七千四百三十九万円余、不用額は百四十一万円余となっておりまして、この経費は、参議院議員補欠選挙の執行に要したもので予備費を使用したものであります。  次に、消防施設等整備費補助でありますが、歳出予算現額は百五十四億四千八百十一万円余、支出済み歳出額は百五十三億九百一万円余、不用額は一億三千九百十万円余となっておりまして、この経費は、消防施設等の整備に要する経費の一部を関係地方公共団体に対し、補助するために要したものであります。  以上が一般会計歳出決算概要であります。  次に、交付税及び譲与税配付金特別会計決算につきましては、歳入予算額は、当初予算額十七兆四百五十二億一千三百四十一万円余、予算補正追加額四百三十九億六千八百万円、予算補正修正減少額四百三十九億六千八百万円、合計十七兆四百五十二億一千三百四十一万円余でありまして、これに対し、収納済み歳入額は十七兆四千九十一億一千八百十四万円余となっております。  また、歳出予算現額は、当初予算額十七兆四百五十二億一千三百四十一万円余、前年度繰越額三千七百四億七千七百二十四万円、合計十七兆四千百五十六億九千六十五万円余でありまして、これに対し、支出済み歳出額は十七兆三千八百六十億九千百五十七万円余、不用額は二百九十五億九千九百八万円余であります。  また、不用額を生じましたのは、特別とん税の収入が少なかったので、特別とん譲与税譲与金を要することが少なかったこと及び一時借入金の利率の引き下げに伴い、一時借入金の利子の支払いが少なかったこと等によるものであります。  支出済み歳出額の主なものは、第一に、地方交付税交付金八兆七千百六十六億一千九百三十三万円余でありまして、これは、地方団体の基準財政需要額が基準財政収入額を超える場合にその財源不足額に応じて必要な財源を、また災害その他特別な財政需要等に対し必要な財源を、それぞれ地方団体に交付したものであります。第二に、地方譲与税譲与金四千四百五十九億六千五百二十一万円余でありますが、これは、地方道路譲与税譲与金、石油ガス譲与税譲与金、航空機燃料譲与税譲与金、自動車重量譲与税譲与金及び特別とん譲与税譲与金として、関係地方公共団体に譲与したものであります。  なお、昭和五十六年度決算につきまして、会計検査院から普通交付税の算定について不当事項等の御指摘を受けましたことは、まことに遺憾に存じます。  普通交付税については、その配分の公正を確保するため種々の努力を重ねているところでありますが、今後は、このようなことのないよう、さらに指導の徹底を図り、普通交付税算定の適正化に万全を期する所存であります。  以上、昭和五十六年度自治省所管決算概要を御説明申し上げました。  何とぞよろしく御審議のほどをお願い申し上げます。
  167. 横山利秋

    横山委員長 次に、会計検査院当局から検査の概要説明を求めます。佐藤会計検査院事務総局次長
  168. 佐藤雅信

    ○佐藤会計検査院説明員 昭和五十六年度警察庁決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
  169. 横山利秋

    横山委員長 次に、西川会計検査院第一局長
  170. 西川和行

    ○西川会計検査院説明員 昭和五十六年度自治省の決算につきまして検査いたしました結果の概要説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項一件及び意見を表示しまたは処置を要求した事項一件であります。  まず、不当事項について説明いたします。  これは、大阪府羽曳野市に係る市民税の所得割並びに固定資産税のうち土地及び家屋の基準税額の算定が誤っていて、普通交付税が過大に交付されていたものであります。  市民税の所得割の基準税額につきましては、市町村税課税状況調をもとに大阪府が算定するものでありますが、羽曳野市では市財務規則による調定伝票とは別に保有していた裏帳簿により実際の市民税額を把握しておりましたのに、これよりも過少な数値を課税状況調に計上しておりまして、府ではこの課税状況調の審査及び交付税検査が十分でなかったため、この事実を看過し、基準税額を過少に算定していたものであります。  固定資産税のうち土地及び家屋の基準税額につきましては、固定資産税の概要調書等に記載されている数値を基礎として所定の方式によりそれぞれ算定するものであります。同市では四十九年度から概要調書作成のための基礎資料を電子計算機により出力していましたが、この出力数値と前年度概要調書の数値との間に大きな隔たりがありましたので、前年度概要調書の数値を適宜増減して、事実と相違した各年度の概要調書を作成していたばかりでなく、交付税の額の算定に用いる資料にその数値を記載したり、これをさらに下回る数値を記載したりしていたものであります。しかし、府の交付税特別検査により、一部については錯誤措置がとられましたが、この特別検査は不十分であり、本院の検査の結果、なお基準税額が過少に算定されていたことが判明したものであります。  次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項について説明いたします。  これは、地方交付税交付金のうち普通交付税に関するものであります。  交付税は財政需要額が財政収入額を超える地方団体に対し、公平にその超過額を補てんすることを目途として交付されるものでありますが、本院で市町に交付された交付税について調査しましたところ、配分の基準となる財源不足額を算定するに際しまして、基準財政需要額及び基準財政収入額の算定の基礎となる数値が適正でなかったものが多数見受けられ、交付税の額の算定が適切でないと認められたものであります。  したがいまして、自治省におきまして、都道府県をして、市町村の交付税事務担当者等に対する関係法令についての認識と理解を高めるような研修を行い、関係各課との連絡調整の緊密化を図るなどして、市町村に適正な基礎数値の把握を行わせ、都道府県に対しては、交付税の額の算定に用いる資料等についての審査及び交付税検査の充実強化を図るなどさせ、自治省におきましても、交付税の額の算定に用いる基礎数値の取り扱いに関する規定の整備を行うなどして、交付税の額の算定事務の適正化を図り、もって交付税の公平な配分を目途とする交付税制度のより一層適正な運用を期するよう求めたものであります。  以上をもって概要説明を終わります。
  171. 横山利秋

    横山委員長 次に、中村会計検査院第五局長
  172. 中村清

    ○中村会計検査院説明員 昭和五十六年度公営企業金融公庫の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
  173. 横山利秋

    横山委員長 次に、公営企業金融公庫当局から資金計画、事業計画について説明を求めます。首藤公営企業金融公庫総裁
  174. 首藤堯

    ○首藤説明員 公営企業金融公庫の昭和五十六年度の業務概況について御説明申し上げます。  昭和五十六年度における貸付計画額は当初一兆千七百二十八億円でありました。  これに対し貸付実行額は一兆二千七十九億八百二十万円であり、前年度と比較して一九%の増になっております。  一方、この原資としては、産業投資特別会計からの出資金七億円、公営企業債券の発行による収入等一兆二千七十二億八百二十万円を充てたのでございます。  なお、当年度における元利金の回収額は四千九百五十六億七千九百六十九万円余でありまして、延滞となっているものはございません。  貸付実行額の内訳は、地方公共団体の営む上水道事業、下水道事業等に対するもの七千四百九十九億三千九百十万円、公営住宅事業及び臨時地方道整備事業等に対するもの四千五百十三億三千六百十万円、地方道路公社及び土地開発公社に対するもの六十六億三千三百万円となっております。  以上により、当年度末における貸付残高は五兆七千七百六十一億二千三百四十九万円余になり、前年度末残高と比較して二三%の増になったのでございます。  以上のほか、短期貸し付けとして三百三十億四千四十万円の貸し付けを行いました。  また、農林漁業金融公庫から委託を受けて公有林整備事業及び草地開発事業に対し二百四十六億三千六百五十万円の貸し付けを実行しました。  このため、受託貸し付けの当年度末における貸付残高は二千八億七千二百三十七万円余になっております。  次に、当年度における公営企業債券の発行額は一兆千七百八十七億九千万円でありまして、このうち公募債が九千八百三十一億三千万円、縁故債が千九百五十六億六千万円であります。  なお、縁故債のうち三百九十一億三千万円は低利の債券を発行いたしました。  次に、公営企業健全化基金について申し上げますと、当年度における公営競技納付金の収入額三百四十六億八千百六十九万円余を基金に充てました。一方、当年度における地方債の利子の軽減に要する費用を基金の運用益によって補てんし、なお不足する額百十五億千五百六十六万円余に相当する基金を取り崩しました。  この結果、当年度末における基金総額は二千三百五億三千七百九十四万円余になりました。  次に、収入、支出の状況について申し上げますと、収入済み額は、収入予算額四千十億千六百四十九万円余に対し三千九百四十八億三千二百六十二万円余、支出済み額は、支出予算額四千百五十六億二千二十三万円余に対し四千九十四億七千九百三十九万円余でありました。  また、損益の状況でございますが、貸付金利息等の利益金総額四千二百六十二億六子七百十五万円余に対し、債券利息及び事務費等の損失金総額四千百八十億九千七百九十八万円余でありまして、差し引き八十一億六千九百十六万円余を債券発行差金等の償却に充当いたしましたので、利益金は生じておりません。  以上、昭和五十六年度公営企業金融公庫の業務の概要について御説明申し上げました。  何とぞよろしく御審議の程をお願い申し上げます。
  175. 横山利秋

    横山委員長 これにて説明は終わりました。     ―――――――――――――
  176. 横山利秋

    横山委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。河野正君。
  177. 河野正

    ○河野(正)委員 我が国の治安というものは国際的にも高く評価されておるところでございます。しかし、最近諸外国の治安も非常に厳しい状況をもたらしてまいりました。そこで、国民が日夜安心をして生活をするためには、やはりこの警察関係の諸君の積極的な努力と国民の警察官に対しまする信頼感、こういうものが当然重なっていかなければならぬと思うわけでございます。  時間の制約がございまして、多くを申し上げることはできませんけれども、非常に残念なことには、最近警官の倫理というものが非常に乱れてきた、こういう状況があることは御案内のとおりでございます。既に五月七日には警察庁が兵庫県警を特別監察をするという状況も出てまいりました。そこで、最近、私どもは非常に憂慮をいたしておるわけでございますけれども、先月大阪の銀行に押し入った猟銃強盗が兵庫県警の巡査長であった。あるいはまた、兵庫県警の警部補が大阪の銀行に対しましてモデルガンで強盗に入った。しかも、この事件は警察官が勤務中に起こした、こういう異常の事態がございます。また一方では、発砲した、こういう悪質な状況もございます。  そこで、今日まで警察が国の治安あるいは安寧秩序のために努力することについては我々は歩といたしますけれども、最近の実情、そういった状況、といいますよりむしろ異常な事態というものが生じてきているわけです。そういう意味で、私は、今日の状況を見る場合に、兵庫県警に対しまする特別監察もございまするが、単に兵庫県、大阪ということではなくて、警察のあり方、やはりいいものはいい、しかし悪いものは悪いものとして信賞必罰、この際断固たる決意というものが必要ではなかろうか、こういうふうに考えるわけでございますが、その点いかがでしょうか。
  178. 田川誠一

    ○田川国務大臣 警察官、警察職員は、一般の公務員とは違いまして、より以上の厳しい規律と高い倫理観を持たなければならないものでございます。それが、おっしゃったように、最近二回も連続しまして銀行強盗事件を起こしたということは、もうこれは論外のことでございまして、関係者にとりましては大変大きな衝撃でございます。私は、こうした事件がまじめにやっている一般の警察官の士気に影響して、治安の任務に悪い影響を及ぼすということを非常に憂慮をしておりますし、また、一般国民の警察官に対する信頼感が失われるということも大きなことであると思います。  そういう意味で、事件が起こりましてから、国家公安委員会はもちろん、警察庁長官初め、根本的に警察の管理体制、職員の生活指導、こういうものを見直していかなければならないということで、長官以下も大阪へ飛びましたし、また、根本的にいろいろな問題を洗い直していこうということで、鋭意努力をしております。もちろん、河野さんおっしゃられたように信賞必罰、恐らく近いうちに何らかの措置も発表されると思いますけれども、そうしたこともやらなければなりません。警察官の社会というのは、一般から見ますと閉鎖的とよく言われまして、こうした特殊な組織でございますから、心配事があっても他人に気楽に相談するということがなかなかしにくいところでございます。そうしたことも含めて根本的に検討をし、再びこういうことが起こらないように、私ども全力を挙げて努力をしてまいる所存でございます。
  179. 河野正

    ○河野(正)委員 多くの警察官が真摯に国の治安維持のために努力していることについては私ども多とするわけです。しかし、九仭の功を一賛に欠くといいますか、最近のようなショッキングな出来事が引き続いて発生をするということは、やはり今後国民の警察官に対しまする信頼感というものが失われていくわけですから、今、田川自治大臣からもお答えがあったように、ここで断固たる対応をしていただかなければならぬのではなかろうか。  そういうことで、時間がございませんから、むしろ私の方から意見を先に申し述べてまいるようなことになると思いますが、今回の問題も、強盗事件、これは大変なことだということで、警察官としても綱紀粛正、こういうものをお互いに誓い合った。それが舌の根も乾かぬうちに、またぞろこういった事件が起こってきた。このことは、一説では警察機構の中の構造的な欠陥があるのじゃないか。そうすると、精神教育だけではこの問題を防止するわけにはいかぬ。構造的欠陥がある場合には、構造的欠陥というものを正していかなければならぬ、こういうふうに思うわけですが、その点、いかがでしょうか。
  180. 田川誠一

    ○田川国務大臣 先ほどちょっと触れましたように、他の組織とは非常に違っている面もございまして、特殊な一つの組織体でございます。そうして、非常に厳しい規律も要求される組織でございますから、管理の面、生活指導の面というところがなかなか行き届かない面がございます。私は、今回の事件を契機にして、内部だけでなく外から見た意見というものも取り入れながら、今御指摘のような構造的な面も考えていかなければならない、見直していかなければならないと思っておるわけでございます。しかし、一般的には犯罪の検挙率も世界に比して非常にいいし、まじめにやっている人は日夜努力をしているわけでございまして、そういういい面を生かしながら内部の検討を今後やっていかなければならない、このように思っております。
  181. 河野正

    ○河野(正)委員 やはり国民の信頼感を維持しないと、例えば、最近も福岡県の久留米市で警察官が犯人を射殺した、過剰防衛じゃないか。これが日ごろ信頼感があれば、誤解がどうかわかりませんよ、これは調査するということで、わかりませんが、そういういたずらな誤解も生じないで済んだのではなかろうか、こういう感じもするわけでございます。  そこで、今大臣がおっしゃったように、管理の面あるいは生活指導の面でという場合に、一番問題になるのは派出所勤務ですね。これは偉い人がおって、例えば、家庭内にこういう心配があるだとかあるいはこういう悩みがあるだとか、そういうことで上司に訴えるという機会も少なかろうし、今度の事件もそういう派出所勤務の人に事件を起こさせたという具体的な例が出ておるわけですから、そういう意味で構造的欠陥ということで申し上げましたが、どうも管理の面あるいは生活指導の面で、この派出所機構というものが一体――これは当然、住民としてはもう派出所機構というものがあって直接住民と接しながら治安を守ってもらうということは必要だと思いますが、このあり方いかんによっては、今申し上げますように、どうも悩みを持っておるけれども悩みを訴える上司がおらぬとかなんとかいうようなことで、それが、ちりも積もってああいった不祥事件に立ち至るというふうな状況があるのではなかろうか、こういうふうに考えるわけです。  そこで、時間がございませんから進んでまいりますが、今度の大阪あるいは兵庫の事件を見てまいりましても、一つ共通した背景というものがあるわけですね。それは何かというと、例えば、住宅ローンあるいはマイカーあるいは遊び過ぎてサラ金から膨大な金を借りる、そういうような側面があって、それが結果的にはあの不祥事件に発展をしておるというような共通した点があるわけですね。そうなりますと、やはりプライバシーの問題もあるから、あなたは幾らサラ金から金を借りておるのだ――これは大体調べられたそうですけれども、プライバシーの問題があるから、したがって余り深く立ち入ることはできなかった。そうしたら、警察官一人で八百万も金を借りておったということが後でわかった。それならそれなりに、事前に指導するようなチャンスがあれば一番よかっただろうと思うわけですが、どうも今度の事件の背景を見ると、そういった共通した背景というものがあるのではなかろうか。主として今申し上げますように借金の問題ですね。そういう場合に、上司がよろしく生活指導するというようなことになれば、そういう点もあるいは回避できたのではなかろうかという気もするわけですが、それは結果論ですけれどもね。  ですから、今後、構造的欠陥があるというならば、一つはやはり派出所機構、その存廃は別として、機構の問題、それからまた、これは警察官に限らず一般でも、今サラ金から金を借りて親子心中したりいろいろな事件が起こっておるわけですから、何も警察官に限ったことはございませんけれども、ただ、警察官というものはやはり特殊な立場にいるわけですね。住民の信頼を得なければならぬという立場がある。そういう意味で、警察官の場合はそういう私生活に対しまする生活指導というものが強化されなければならぬのじゃなかろうかというふうに考えますが、その点いかがでしょうか。
  182. 太田壽郎

    ○太田政府委員 派出所勤務の警察官は、仕事を行います場合に、今お話しのように独立して、直接上司の目の下でやるという状況ではございませんけれども、現在の派出所制度というものが、さっきお話がございましたような日本の治安を維持している非常に根底的な要素になっているわけでございます。現に諸外国におきましても、こういう制度を導入したいというようなことで、我が国の方に関係者を派遣して、それを導入しつつあるところもあるような状況でございます。したがいまして、派出所制度そのものにつきましては、これはやはりそのいいところを認めてもっと積極的に進めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。  ただ、そこに勤務いたします警察官の問題につきまして、先ほど指摘ございましたような兵庫県の二度にわたる現職警察官の強盗事件を引き起こしたというようなことは、もうまことに遺憾なことであるということで、この問題につきましては特別監察等も行いまして、原因の究明ということにも力を注ぎ、再発防止にさらに力を尽くしてまいりたいというふうに考えているところでございますが、住宅ローン等でマイホームを建て、あるいはマイカーを持っている人も警察官の中にかなり多くいるわけでございますが、それが強盗事件を引き起こすまで追い詰められるというようなケースは実にまれなことでございまして、かなり個人的な特性といいますか、個人の問題ということも非常に大きいのではないかというふうに考えておりますけれども、職場環境の問題というようなことにつきましても、真摯にメスを入れて、お互い同士強いきずなで結ばれました人間関係を確立して、職務上のことはもちろんですが、私生活上の問題についても、困難とか悩みなんかをお互い同士で話し合う、あるいは上司にも相談し合える、そういう雰囲気づくりにはさらに力を尽くしてまいりたいと考えておるところでございます。
  183. 河野正

    ○河野(正)委員 今お答え願いましたように、私どもは、派出所を廃止するとかいう意味ではなくて、今の状態では心の悩みとかいろいろな苦痛というものを直接訴えて解決するというような状況にないのではなかろうか。したがって、この派出所というものに住民が非常に期待をしておるし、むしろ今団地では派出所をつくってくれというような運動が多いわけですから、その点は私どももそうだとは思いますが、ただ、その場合に、一般の署と違って課長がおるわけじゃありませんし、今警部か警部補までいらっしゃるところもあるようですが、なかなか生活指導まで行き届かぬ。ですから、その辺は何とか今後検討の余地があるのじゃなかろうかという気がいたしますので、私の方からあえてそういう意見を申し上げておるわけでございます。  それから、そういった問題に対して、警察庁も確固たる立場で今後警察官の教育、指導に当たっていただかなければならぬと思うわけです。いま一つは、警察が採用するに当たってある程度チェックをする。今企業においても非常に慎重なあれをやっているようです。随分前に起こりました日本航空の羽田の墜落事件なんか見ましても、専門家でないものですから、結局心身症だ、あれは専門家から見ますと明らかに分裂症なんです。非常に難しいけれども、そういうチェックが適切に行われなかった、それがああいう大事故につながっているわけです。ですから、警察官も大量新規採用ということになるわけでしょうから、その辺の問題はなかなか難しいと思うが、入ってきてからの生活指導、教育、そういうものが重大であることもそのとおり。それから、今申し上げましたように、心の悩みがある、周囲にいろいろな悩みがある、だけれどもなかなかそれを訴える場所がないというような問題もありましょう。それからもう一つ、採用する際のチェック機関がある意味においてはかなり重要な意義を持つのじゃなかろうか、私はこういうふうに思います。大体この三つが整えば、それから先起こったらこれは不可抗力的でしょうからどうにもならぬと思いますが、その辺いかがでしょうか。
  184. 太田壽郎

    ○太田政府委員 警察官の採用時の適格性のチェックの問題でございますが、御指摘のように、警察でもかつて非常に苦い事件がございまして、それを契機に、採用する者についての心理的な適性検査をいろいろな形でやっているのが実情でございます。県によって違いますけれども、二種類ないし三種類のそういう意味の心理検査を経ましてそれで採用している、チェックをいたしているという状況でございます。  それから、最近では、例えば五十八年度の例で申し上げますと、大体八・二倍の競争率ということで、過去十年間で最高という状況になっておりますが、多数の応募者を得まして、その中から心理的な適格性の検査も経まして適任者を採用し、それをしっかりと教育していく。入りましてからの教育、これは申すまでもないことでございますけれども、一人一人の警察官に使命感と奉仕の精神を持って職務に当たることをよくたたき込むということを基本にいたしております。  それで、私生活の面におきましても、廉潔を旨としてみずからを厳しく律していくということを徹底させていく。私生活の面につきましては、先ほどもお話がございましたが、プライバシーの問題等もございますけれども、国民の警察に対するこの非常に厚い信頼というものを今後とも維持していくためには、プライバシーのそういう面の多少の制約といいますか、そういうものもやむを得ないのではないかということで、的確な生活指導が行われるよう取り組んでまいりたいと考えておるところでございます。
  185. 河野正

    ○河野(正)委員 時間がございませんので結びますが、今回の兵庫県警の問題にいたしましても大阪府警の問題にいたしましてもそうですが、単にそれぞれの県警の問題でない、全国警察官の倫理がどう確立されるかというところに根本的な問題があると思うのです。そういう意味で、全国二十一万五千人の警察官だそうですが、ぜひひとつ国民の信頼を高めるために、また実際日本の警察は質が高いわけですから、大臣としてもその使命感、職業倫理の確立のためにさらに一層の努力をお願いしたい。そこで、ひとつ見解を承っておきたいと思います。
  186. 田川誠一

    ○田川国務大臣 ただいま河野さんの述べられました御意見も含めて、各方面の御意見を参酌しながら、日本の警察の威信を高めるように、また国民の信頼を保っていくように、また警察官の士気を阻喪させないように、今後一生懸命努力してまいる所存でございます。
  187. 河野正

    ○河野(正)委員 最後に、一言だけお尋ねしたいと思いますのは、今マスコミでも週刊誌でも、とにかくカラスの泣かぬ日はあっても例のロス三浦事件が出てこぬ日はない。そこで、国民が今あれを聞いておって、これだけいろいろな情報があるのに警察は一体何をしているのだ、こういう素朴な意見があるのはそのとおりです。そういった意味で、私どもどういう状況になっているかわかりませんけれども、一説では、アメリカの司法省から捜査共助法の発動があって、日本の警察に対してもひとつ協力してもらいたい、お互いにやろうじゃないか。そこで、新聞マスコミの議論を聞きますと、この共助法が要請されると事件は一挙に解決するであろうといって、国民はテレビを見たり新聞を見たりして一喜一憂しながら非常に関心を持っているのです。ですから、一体これはどういうことになっているのか、日本の警察の信頼感を高める意味においてもお答えいただいた方が結構だと思いますが……。
  188. 金澤昭雄

    ○金澤政府委員 いわゆるロス事件と言われるものでございますが、昨年の十一月に白石千鶴子さんの捜索願いが山口県警の方に出されまして、それ以来、山口県警、警視庁におきまして白石千鶴子さんの足取り調査を行っておったわけでございますけれども、御案内のとおり、五十四年の三月に日本を出国しましてアメリカに渡ったということで、それ以来行方がわからなかったというわけでございます。ことしの三月に入りまして、ロサンゼルス市警の方から、遺体を確認したということで、白石千鶴子さんの事件につきましては、現在ロサンゼルス市警が捜査を鋭意やっておるというふうに承知をいたしておるわけでございます。もう一つの、三浦夫妻のロサンゼルス市内におきます強盗被害事件につきましても、ロサンゼルス市警が捜査をやっておるというふうに承知しております。  国際捜査共助法に従いまして私どもの方に捜査共助依頼要請が参ったかどうかということにつきましては、これは相手国の捜査の内容にもわたりますので、それについて確たる御返事はできないわけでございますけれども、一般論として申し上げますと、捜査共助の要請があれば、日本警察としましては当然全力を尽くして共助を行うというつもりでございます。  また、この二つの事件、いずれも日本人が被害に遭っておりますし、国内の関心も非常に高い事件でございますので、私どもとしても、最大の関心を持ってアメリカの捜査に現在いろいろな意味で協力をしつつある。今後もできるだけの協力をし、また、国内でできる調査につきましては、警視庁初め全力を尽くして現在やっておりますし今後もやっていく、こういうことでございます。
  189. 河野正

    ○河野(正)委員 最後になりましたが、これは興味本位でお尋ねするのじゃなくて、日本の警察というものはある意味では非常に優秀であるし、それからまた、もう毎日毎日テレビや新聞に載るわけですからね。国民は、一体どうしているんだというような気持ちも非常に強いと思うので、今刑事局長からお答えいただいたように、できるだけ早くお互いに協力して、この問題に終止符を打って、やはり日本の警察だ、立派な警察だ、そういうような国民の信頼度を高めていただくという意味で私は取り上げておるわけですから、さらにひとつ万全の対応をしていただきますように、大臣、ちょっと一言。それで終わりますから。
  190. 田川誠一

    ○田川国務大臣 国民の信頼を高めていくように今後とも努力をしてまいります。
  191. 河野正

    ○河野(正)委員 以上です。
  192. 横山利秋

  193. 新村勝雄

    新村(勝)委員 最初に、五十六年度決算の自治省についての検査の概要の中に、交付税の申請に当たって不正があったという指摘が検査院からされておるわけであります。それから、このほかにも、自治体が補助金の交付申請等で不正に事実を記載をして不当な補助金の交付を受けているということが時々あるわけでありますけれども、こういう事態は自治体の権威を損なうということ、それからまた、住民の自治体に対する信頼を損なうというようなことで、行政の秩序を乱すということだけではなくて、やはり道義的な問題からもこれは軽視できないという気がするわけであります。  そういう点で、まず、大臣に、こういう問題をこれから絶滅をするための、絶対にこういう事態を起こさないための、この際何らかのお考えがあるかどうか、伺います。
  194. 田川誠一

    ○田川国務大臣 地方に、財政秩序を乱すような事件も時々御指摘を受けておりますが、そういうようなことのないように強力に指導をしてまいるつもりでございます。
  195. 新村勝雄

    新村(勝)委員 検査院にお伺いしますけれども、たまたまこういう事態指摘をされておりますが、こういう方面の調査についてはこれからどういうお考えでやっていかれますか。特に、国や自治体が不正を犯すということについては、極力事前に防止をしなければいけないことでありますけれども、それらについてのお考えを伺います。
  196. 西川和行

    ○西川会計検査院説明員 地方自治体のただいまお話しのような財政秩序を維持する、こういう点についてどういうふうに検査院は見ていくかというお話でございますが、これは従来からも私ども会計検査院でやっておりますが、例えば、補助金あるいはそういった交付税というものの検査におきまして、それがよく法律を守り補助の目的を達するようにしていく、適正にそれが行われていくということについて、自治省がよく監督されていくということもよく調べておるわけでございます。
  197. 新村勝雄

    新村(勝)委員 今後こういうことのないように、大臣それからまた検査院におかれましても、ひとつ厳しく御指導いただきたいと思います。  次に、衆議院の定数是正の問題でありますけれども、これは大臣の御所管でありますし、今、関係地域だけではなくて、国民の関心もこれに集まっておるわけであります。また、後半国会一つの重要案件でもあろうと思いますけれども、この問題について、まず、大臣の基本的な御見解なり御方針があれば、ひとつ伺いたいと思います。
  198. 田川誠一

    ○田川国務大臣 衆議院の議員定数の不均衡につきましては、御承知のように、最高裁から違憲状態として指摘をされ、判決が出ております。こういう状態をこのままにしていくわけにはまいりませんで、これは単に一政府、一政党の問題ではない、国会全体の問題でもございますし、一刻も早くこのような不均衡の状態を是正しなければならない、こうした立場から、数カ月前から定数是正について政府・与党あるいは各党にいろいろお話し合いをさせていただいているわけでございます。  議員の定数の問題は、各政党、各議員の政治生命にもかかわる問題でございますので、できるだけ各党各会派の御理解を受けて定数の是正の問題を解決していかなければならないと思っております。  私どもとしては、できるだけ早く各党各会派の御意見をまとめさせていただく、こういうことで鋭意努力をしているところでございます。
  199. 新村勝雄

    新村(勝)委員 この問題は議員の運命に直接かかわるわけでありまして、定数が減ると予想される地域の方々には大変お気の毒というか、難しい事態でありますけれども、しかし、このままにしておくこともできないわけでありますから、これをやはり各党あるいは国会の良識によって克服をしなければいけないと思うわけであります。  また、大臣は、かねてからこの定数是正について一定の見識をお持ちでありまして、まず、基本的なお考えを伺いたいのですけれども、今、世上の議員、これは国会だけではなくて地方議会も含めて、議員の数を減らせという世論もあることは事実であります。そして、地方議会においては大分減らしておるところもあるわけでありますけれども、国会においてこれを減らすということはなかなか大変でありましょう。現状を維持しながら定数是正をするだけでも大変なわけでありますから、これを減らすということは今の段階では難しいと思いますけれども、少なくとも五百十一名を維持するということが一つの原則になると思いますね。  それから、我々は、現在の選挙制度の中核というか、根幹であるところの中選挙区制の維持ということですね。三名から五名、奄美の一名という例外がありますけれども、三、四、五の中選挙区を維持するということが一つの原則になっている、現在の制度の根幹になっていると思いますが、この二つの点について大臣の御見解はいかがですか。
  200. 田川誠一

    ○田川国務大臣 総定数の問題でございますが、世論の多くは、中央地方を通じて議員の数が多過ぎるじゃないかという声も随分ございますし、行政改革の立場から立法府も簡素化をやれという声もございます。そういう声の中で、今定数を是正する場合に増員によって定数のアンバランスを是正するということは常識的にできない。今新村さんがおっしゃったとおりでございまして、できることなら少し減らすぐらいのことをやるべきではあると思いますけれども、そうは言ってもなかなか簡単にいきません。そういう意味で、少なくとも現行定数の枠の中で是正していくべきであおということが大体国会の集約された御意見ではないか、このように見ておりますし、私も減らすことはあってもふやすことはできないと思っているわけでございます。また、現行の中選挙区を維持していくという意見も、大体各党で合意されている問題ではないか。そういう意味で、今新村さんおっしゃった意見と私も大体同意見でございまして、こういう方向でやるべきではないか。しかし、先ほど来申し上げましたように、何といっても各党各会派、議員の皆さんに直接かかわりのあることでございますから、ひとつなるべく皆さんの御意見に従って意見をまとめていっていただきたい、こういう考えでおるわけでございます。
  201. 新村勝雄

    新村(勝)委員 これは議員のことでありますから、各党の合意ということが望ましいわけでありますけれども、やはり所管大臣として、原則に基づいた一つの指導性を発揮されるということも必要だと思うのですが、その点についてはいかがですか。
  202. 田川誠一

    ○田川国務大臣 今申し上げましたように、全体としては各党各会派の御意見を集約してやっていただきたい。こういう前提のもとに私の考え方を申し上げれば、大体、新村さんおっしゃったように、現行の中選挙区の中でまた定数はふやすようなことはしないでアンバランスを是正していくべきである、こういう考えております。  それでは、どの程度の案でやっていくべきかということでございますけれども、これは今非常に微妙な段階で、各党と話し合いが行われているように承っておりますので、例えば二・五倍でやるとか二倍でやるとか、あるいは何人案でやるとかというふうな考え方については、今ここで私が自分の意見を申し上げることはいかがなものかと思いますので、ひとつ御了承をいただきたいのでございます。
  203. 新村勝雄

    新村(勝)委員 大臣のおっしゃることもごもっともで、今大臣がここで具体的なことをおっしゃることは無理だと思いますけれども、とにかく現状のままでいきますと、仮に解散、総選挙になって公示をした場合に、あるいは解散、総選挙で公示が予想される場合に、これは明らかに違憲の事態だということで、有権者から選挙の公示を差しとめる仮処分の申請が出た場合にはどうなるのかという問題もありますし、また、仮に選挙をしてしまった後で裁判所の違憲判決が出されるというようなことも十分考えられる。恐らくこのままでいけば違憲判決が出ると思うのですけれども、こういう事態でありますから、どうしても避けて通れないわけです。しかし、いろいろと見解の相違も現在あるようですから、そういったことについては、ひとつ所管大臣として十分指導性を発揮され、また、各党の合意が得られるような側面からのお力をいただきたいと思うわけでございます。  次は、やはり財政問題であります。地方財政のけじめ、つまり国と地方自治体、あるいは県と市町村の地方自治体同士の財政負担のけじめ、これはきちっとしていかなければいけないと思うのですけれども、残念ながら、この問題は古くして新しい問題でありまして、戦後の地方自治体の窮迫の時代、ややもすれば、国が地方自治体にあるいは同じ地方自治体の中でも都道府県が市町村に負担を転嫁するという事実があったわけです。これは財政が窮迫していた時代ですから勢いそういうことにもなるのでしょうけれども、現在もまだそういう事態が残っておるわけですよ。ですから、これは大臣の御指導でそういうことのないように願いたいわけです。  その一番顕著な例は、高等学校の建設費を関係市町村に転嫁する、こういうことがいまなお行われているということですね。この問題については何回も自治省さんの方から指導の通達が出されておるのですけれども、これが守られていないわけですね。それとまた、自治省の指導なり回答なりが必ずしも一貫してないという事実があるわけです。  そこで、昭和四十年の地方団体から自治省に対する照会について自治省は、その負担が、PTAとかあるいは部落会とか自治会とか、そういうところへ市町村が負担を申しつけて、そういう形で市町村が負担をするのは違法だけれども、市町村が一般財源をもって自主的に寄附するものは違法ではない、こういう回答をしていますね。ところが、昭和五十九年一月三十一日、自治省財政財政課長さんの通達によりますと、「都道府県と市町村との間の経費の負担関係の適正化についても一層その徹底を図るべきであり、特に、都道府県立高等学校の建設に際し、いまだに用地の無償提供等市町村にその経費の一部を負担させている事例が見受けられるが、このような措置は一切行うべきでない。」こういう通達を出しておられるわけですけれども、現在の自治省の公式見解としてはこれでよろしいわけですか。
  204. 石原信雄

    ○石原政府委員 高等学校の建設費に関する都道府県と市町村の負担のあり方については、ただいま先生が述べられました通達の考え方のとおりでございます。
  205. 新村勝雄

    新村(勝)委員 そうしますと、この前の昭和四十年の時代と現在では方針が違ってきているということですか。
  206. 石原信雄

    ○石原政府委員 その四十年の行政実例は地方財政法の解釈に関連しての問題であろうと思いますが、地方財政法規定の仕方として、二十七条に、都道府県の事業によって利益がある場合に市町村に負担をさせることができる、その中で、高等学校についてはこれを除くということに三十八年の改正でなりましたから、負担金として徴収することはできないわけです。それから、同じく地方財政法の二十八条の二にいわゆる負担転嫁の禁止についての規定が置かれまして、その具体的な細目として、教育行政などについての基本的な施設に要する経費を住民に負担転嫁することはいけない、それは違法であるということをはっきり規定しておりますので、そのことについて述べたのであろうと思います。ですから、その行政実例が、そういうことが違法であるということの反対解釈として、都道府県の高等学校の建設に要する経費を市町村に負担させていいということを意味しているわけではございません。要するに、住民に負担転嫁することは、地方財政法に明文の規定がございますから、違法であるということを述べたのであろうと思います。  いずれにいたしましても、昭和三十八年の地方財政法の改正以来、私どもの考え方は一貫して、都道府県と市町村との事務の分担、財源の配分、こういう関係からいたしまして、都道府県立の高等学校に要する経費について市町村に負担を求めることは、地方財政法の考え方に沿わない、不適当である、こういう考え方を持っております。
  207. 新村勝雄

    新村(勝)委員 そうしますと、確かめますが、それは、市町村を経由して出す場合には、その内容がどうであっても、一般財源から市町村が予算に組んで出そうが、あるいはその所管というかその地域のPTA等に負担をさせて出そうが、いずれの場合でも一切いけない、好ましくない、こういうことですか。
  208. 石原信雄

    ○石原政府委員 都道府県立の高等学校に要する経費について市町村が経費を自主的に負担することは、その財源が一般財源であっても適当でないと私どもは考えております。
  209. 新村勝雄

    新村(勝)委員 そうしますと、はっきりしたわけですけれども、その自治省の指導方針に反する事実が今なおあるわけなんですが、それについてはつかんでいらっしゃいますか。
  210. 石原信雄

    ○石原政府委員 かつていわゆる高校急増問題が非常に深刻であった時代において、全国的に都道府県立の高等学校の建設費について市町村に負担を求める傾向がありまして、そういったことを背景にして、三十八年の法律改正も行われたわけであります。私どもはその当時、法律改正をバックにいたしまして強力に負担関係の適正化を指導いたしました。最近は、高等学校建設費に対する財源措置も、例えば高等学校施設の整備事業債などを別枠で設けておりまして、申請があればこれに対して適切に対応するという体制をとっておりますので、全国的にはこの問題はほぼ解決しているのではないかと私は考えております。  ただ、確かに一部の団体に、いろいろな形で依然としてそういう事実があるという点は承知しております。全貌を必ずしも正確につかんでいるわけではありませんが、依然としてそういう事実があるということは承知しております。これらにつきましては、やはり形はどうであれ、地方財政法の考え方に沿わないものでありますから、これを厳にやめてもらいたい、適正化してほしいということを、これまでも機会あるごとに指導してきているところでありますが、一部の団体についてなおそういった事実があることでもありますので、今後ともその絶滅を期して指導を強化してまいりたいと考えております。
  211. 新村勝雄

    新村(勝)委員 大臣、これは首都圏の有力な県であるわけです。人口五百万、六百万という有数の雄県です。そういうところでこういうことが残っておるということは非常に残念なわけで、名前は挙げませんが、御存じだと思います。ですから、そういうことのないようにぜひ御指導をいただきたいと思います。  それから、もう一つは、今自治省さんは、地方財政の再建という見地からでしょうけれども、かなり強力に自治体を指導されているわけですね。自治体というのは、本来、名前のとおり、みずから律するという自律性を強調していかなければいけないわけでございまして、国が自治体の基本的な点にまで触れて御指導をなさるということは、必ずしも自治の精神に沿わないわけでありますが、最近またそういう傾向が大分強くなっておりまして、例えばその中の一つですけれども、地方債を自治省さんが操作をなさる。自治省さんの気に食わないというか方針に沿わない団体については、起債を削減をする、抑制をするというような事実があるようであります。それについては既に、千葉県、東京都、大阪とか、各地においてそういう事実があらわれておりますけれども、まず、大臣のこの問題についての基本的なお考えを伺いたいと思います。
  212. 田川誠一

    ○田川国務大臣 新村さんがおっしゃった自治省が気に食わない団体にどうこうという、そういうことは毛頭ございませんで、恐らく、国家公務員に比較して非常に高い給与をお出しになっている地方自治体に対して、自治省が、これは高過ぎるじゃないか、適正な給与にすべきではないかというような指導をしていることをおっしゃっているのではないかと思います。  これについては、財政局長から具体的に申し上げますが、私から簡単に申し上げますれば、国家公務員よりも非常に高い給与を出している自治体については、これは自治体がそうおやりになっているのですから、我々からこれを権力をもってやめさせるというわけにはなかなかいかない。しかし、そういうような自治体は財政が裕福だから高給与を出してやっているわけでございます。ですから、そういう自治体に対しては、財政が豊かであるという認識を自治省が持って、例えば起債の許可を求める場合にはそれ相応の対応をしていくというのが自治省の態度でございまして、最近自治省から各地方団体に対して通達を出したわけでございます。  地方起債でもって自治省が対応するというのは、起債も一つの限られた資金の枠でございますから、自治体の職員も幹部もともにこの厳しい地方財政の中で一生懸命努力をしているわけでございますから、そういう団体と、地方公務員に相当な給与をお払いになっている財政の豊かである地方団体との間に対しては、それは違った対応をしなければ不公平になるというのが自治省の態度でありまして、決して自治省が気に食わないとかというようなことではないわけでございます。財政局長から答弁をさせます。
  213. 石原信雄

    ○石原政府委員 五十八年度の地方債の許可に当たりまして、一般単独事業及び特別地方債のうちの厚生福祉関係の事業債について、一部の団体、具体的には昭和五十六年に給与適正化のための是正計画を御提出いただいております団体の中で、五十八年度までにその計画について適正な是正措置が講じられなかった団体について、申請された地方債の一部について抑制措置を講じた次第であります。これにつきましては、その適正化計画について一定の基準を設けて、その基準に該当するだけの適正化措置のなかった団体については、ただいま大臣から御答弁申し上げましたように、その団体の財政状態がそれだけの余裕があるといいましょうか、そういう状態にあるということ、さらには、将来のことを考えますと、その団体の将来の償還能力というものを考える場合に人件費の実態がどうなっているかとか非常に大きな影響のある問題でもありますので、私どもは、許可方針の中の財政状況を判断する要素として給与の適正化の状態を取り上げて抑制措置を講じた次第であります。こういった措置を講じざるを得なかったということは、最近の地方財政のいろいろな厳しい環境、あるいは地方行政のあり方に対する一般世論の動向、こういったものを総合勘案して、このような措置を講じた次第でございます。
  214. 新村勝雄

    新村(勝)委員 時間ですから終わりますけれども、自治省に気に食わないという言葉は、気に食わないということじゃなくて、自治省が権力的に国の方針に合わない自治体に対して権力をもって支配をしようとすることはまずいのじゃないかということを言いたかったわけです。もちろん、自治体といえども全部税金で賄っているわけですから、住民の感情あるいは住民の所得を十分考慮しながら公務員の給与も決めていかなければいけないし、退職手当も決めていかなければいけないと思います。そういう自治体の良識は要請されるわけですけれども、同時に、国が権力をもって自治体を支配するというような思想もこれまたいけないわけでありますから、そういうことではなくて別の方面で自治体に対する指導助言をしていただいて、自治体があるべき姿にできる限り近づくような御指導を大臣からお願いしたい、こういうことでございます。よろしくお願いします。  終わります。
  215. 横山利秋

    横山委員長 井上一成君。
  216. 井上一成

    ○井上(一)委員 人事院は、直接的には国家公務員の給与について勧告を行っていくという役割を持っているわけです。この勧告内容は地方公務員についても準用されていく、さらには、それだけにとどまらず、各省庁の所管するさまざまな施設の措置費等の改定や私立大学の授業料などの改定にも連動しているのが事実であります。いわば、その及ぼす影響の範囲は極めて大きいわけであります。人事院として、いわゆる人事院勧告が持つこのような社会的影響力の範囲、ひいては我が国の経済への波及的効果、特に景気の安定的な回復に及ぼすインパクトについてどのような認識を持っていらっしゃるのか、まず総裁に承っておきたいと思います。
  217. 内海倫

    ○内海政府委員 今お話しのありましたような、人事院の行います勧告が特別職の給与とか地方公務員の給与等に影響を与えておるということは当然あり得るであろうと承知しておりますし、また、今お話しのありましたその他の施設等にまで及ぶかどうかということの是非の問題は別にしまして、私どももかなり広範な影響があることは考えざるを得ないと思います。しかし、本来人事院の勧告というものは、五十数万の国家公務員を対象にしてその適正な給与を得るというところに目的があるわけでございますので、実際にいろいろなところに影響があるということとは別個に、私どもの人事院勧告の目的あるいはそのための作業というものは非常に極限された公務員の給与というところにあることも、あわせて申し上げておきたいと思います。
  218. 井上一成

    ○井上(一)委員 直接的には国家公務員の適正な給与を勧告していく、しかし、今私が言ったように、私立大学の授業料の改定にまで影響を及ぼしているという事実をしっかりと認識してもらわなければいけないし、そのことにおいてあるいは他の省庁の措置費等の改定にまで連動している、これは御認識をいただいているということよくわかりました。  それで、一昨年、昨年と、政府の方針で人勧が残念ながら見送られたりあるいは不完全な形での実施しができ得なかった、一説には、これによって我が国の経済に及ぼした影響、景気回復に及ぼした影響、マイナス面が非常に大である、こういうことが言われているわけです。こういうことについてもどう御認識をしているのか、さっきは経済に及ぼしたインパクトはどうなんだと言ったのですけれども、それに対してのお答えはなく、いわゆる直接的な役割と波及する役割の認識はお認めになったのですが、景気対策を含めて国民の生活全体に及ぼす影響も人事院の勧告は非常に大なるものがある、そういうことについて総裁の認識を聞いておきたいと思います。
  219. 内海倫

    ○内海政府委員 甚だ無責任な言い方になるかもしれませんけれども、人事院勧告がいろいろな面で影響を与え、今お話しのありましたように、経済の上にも影響を与えておるということは考えられる問題でございますが、ただ、どのようにあるいはどういう形で、さらにどういうふうな量で影響を与えておるかということになりますと、おのずからそれぞれの官庁その他によって掌握さるべきもの、こう思います。ただ、私どもとしてはそういうことも当然あるであろうという認識はいたします。しかし、繰り返して申しますけれども、それは結果の一つの現象でございまして、だから私どもが人事院勧告の際にそういうことを勧告の上に考慮してしなければならないというふうなものではなく、やはり給与に関する勧告というものは、厳しい給与の実態調査の上で出していくもの、こういうふうに考えておりますので、その点もあわせて御理解をいただきたい。
  220. 井上一成

    ○井上(一)委員 それでは、給与についてのことに若干触れて質問をします。  現在、人事院規則で給与法が決められていく。その給与法の十一条の三に調整手当の支給に関する地域区分が定められているわけです。人事院はこれまで、国の機関が存在する地域に限り別表により地域の指定を行ってきたわけであります。しかし、今も申し上げたように、人事院勧告が及ぼす影響の大きさから見て、この地域区分のあり方についても今日的に見直す必要があるのではないか。この地域の指定は、基本的には昭和四十五年に行われたものが今日まで踏襲されている。しかし、その後の各地域の実態は大変大きく変化をしている。地域の変貌のみならず、人事院勧告が及ぼす影響の範囲の拡大によって、例えば当時国の機関が存在せず、人事院規則では地域の指定を受けていなかった地域においても、これに準拠する必要から大きな矛盾を生じている地域が出てきているというのが今日的な実情だと思うわけです。そういう御認識は十分持っていらっしゃると思いますが、いかがでしょうか。御認識について聞いておきたいと思います。
  221. 斧誠之助

    ○斧政府委員 現在の調整手当の支給地域区分は、実は古い勤務地手当時代の地域区分をそのまま引き継いでおるわけでございます。これは昭和二十六年、その後一部変更はありましたが、三十二年には暫定手当になりまして、それ以後変わっていないわけでございます。その間に地域事情は大変変化をいたしましてい確かに現在調整手当の支給地域としては矛盾を生じているという地域が存在しておる、これは私たちも認識しているところでございます。
  222. 井上一成

    ○井上(一)委員 矛盾を生じているということを御認識になっている、そういうことであれば非常に話が早いわけです。やはりこの矛盾を解消していかなければいけないのではないだろうか。私の調査では、たしかこの調整手当というのは、昭和四十二年の暫定手当の変更に当たって、本院の内閣委員会なり地方行政委員会で、当時としては、支給地の区分をさしあたり現状を変更すべきではないという附帯決議が行われているわけですね。この変更すべきではないというのは、暫定手当から調整手当への変更に当たって、従来暫定手当を受けていたものが不利益をこうむるようなことがあってはならないというのがその決議の趣旨なんですね。これは私は議事録も持っておりますし、そういうことであります。さしあたりということがもう既に十七年もたっているという今日、そういうことは、今くどく申し上げる必要はないわけでありますけれども、例えば一例を大阪府の府下にとって申し上げれば、大阪市を中心にほとんどの都市が、人事院規則では一定の、いわゆる特甲地となって調整手当が支給されている。ところが、四十五年、この法律が制定された当時は、国の機関いわゆる官署がないということで無指定地域であった。つまり調整手当というものは全然支給されてない。しかし、今申し上げたように、地域の変貌があってまさにそれは特甲地域の中で真ん中にぽつんとゼロ地域ができる。こんな矛盾したことは、官署の有無にかかわらず今日的な判断としては見直す、これは妥当な手だてだと私は思っているわけです。これについてはただ単に調整手当あるいは給与法の問題だけで処理されるものでなく、先ほども冒頭に申し上げたように、いわゆる人事院の調整手当に関する規則に準拠して算定される例えば老人ホームとか保育所、さらには精薄児の施設等の措置費について著しい不利益をこうむるわけですね。いわば、そういうことにおける一定の地域的な差別をその自治体に対して与えたことに結果としてなるわけですね。こういうことは公平、公正な行政の対応からすれば見直していくべきであり、行政改革なんというものは、まさにそういうことを加味した中で正しく効果ある行政を推し進めていくべきである、こういうのが私のお聞きをしたい点であります。こういう点について、著しい不利益をこうむるというようなことはどうしても理解ができないし、できるだけ早くこの不合理を是正すべきではないだろうか、直ちに見直しを行うべきである、私はこういう見解を持っているのですが、人事院のお考えを聞かしていただきたい、このように思います。
  223. 斧誠之助

    ○斧政府委員 現在調整手当に至りますまでの地域給の変遷につきましては、先生十分御存じのとおりで、大変失礼かと思いますが若干説明をさせていただきます。  勤務地手当から暫定手当に移りましたが、このときは勤務地手当時代に若干地域の修正ということが議題に上りまして大変混乱を起こした。そういうことで、もう地域はいじらない、暫定的に置いておくという考え方が非常にありまして、暫定手当というところに移行したわけでございます。その後逐次繰り入れ措置等も行われまして、二段階だけ残りまして、四十二年に実はその二段階を都市手当という形にしたらどうかということで人事院は勧告を申し上げたわけでございます。その際も、人事院の考え方の中に若干地域をいじるという内容のものも含まれておりましたために、地域をいじるということはまた非常な問題になるではないかということで、国会その他種々検討いただきまして、調整手当という形に変貌したわけでございます。そのときに附帯決議がつきまして、「差し当り現状を変更せざるよう」、こういうことになったわけでございます。  そういう過去の経緯からいきますと、地域を変更するということになりますとあるいは見直しを行うということになりますと、新たに適用されるところ、それから従来適用されていたけれども事情が変わったではないか、何らかの切り下げとかあるいは取り消しという措置、そういうものも話題になってくるということで、なかなか地域のことに手を触れるというのは問題が複雑で難しい、慎重に対処せざるを得ないということでまいっておるわけでございます。  しかし、先ほども申し上げましたように、確かに大都市周辺では矛盾した地域が出てくる。都市は一体化しまして、行政の主体は違っておりましてもほとんど同一経済圏の中であるというようなことで、公務員間にアンバランスが生ずる。これは是正しなくちゃいかぬということで、実は官署指定という手法によってその是正を行っておるわけでございます。官署指定ということでございますので、たまたま国の官署がない、そういう地域につきましては指定が行われないという結果に相なっておりまして、そういう地域に仮に国の官署が設置されるということがありました場合は、そういう大都市周辺の問題はその時点でひとつ解決を図りたい。  なお、調整手当そのものにつきましても、先生おっしゃいましたように、事情の変化に伴ういわば助成適用の原則、そこへ立ち返って見直すべきではないかということはごもっともでございまして、そのための資料集めというのは実は毎年のようにやっておるわけです。どういうことを基準にという基準資料というのがなかなか特定しがたいということもありまして、現在なお引き続き検討させていただきたい、こういう考え方でございます。
  224. 井上一成

    ○井上(一)委員 調整手当というものの法の趣旨、何も人事院規則の調整手当の項に官署が存在するから云々じゃないんだよ。当時の議事録を見ても、ちゃんとここでその決議を受けて、「新設される調整手当は、民間における賃金、物価及び生計費が特に高い地域で、人事院規則で定める地域に在勤する職員に支給される」ものである、こういうふうに書かれて、いわばその特定地域に対する生活給というものの位置づけがこの調整手当なんですよ。官署があるとかないとかいうのは、まあ官署があるというのは都市ということにその当時としては一つのめどとして、目安として一定の尺度に用いられた。でも、このときには、人事院規則の当時の案の内容も十分よくわからないし、具体的な尺度でその格付をするということもなかなか難しいんだ。いわば、今までの受けていた恩恵というか、そのこと自体に支障がないように、そういうことを特段配慮しなさいといって私がさっき指摘したようにね。  それで、例えばいろいろと私は、これは自治省の主管でありますけれども、交付税の問題だとか、さっき指摘をした厚生省の保育所の措置費だとか、あるいは老人ホーム、精薄児施設、その他生活保護の問題だってそうでしょう。そういうことはちゃんと、例えば人事院の地区指定がゼロ地域であったとしても、一級地として生活保護にはそういう配慮がなされているとか、あるいは、その他の官署に準ずる施設等に対しては準拠した手だてをしているとか、私の申し上げたいのは、いわゆる人事院の指定区分に準拠して措置費等が算定されるんだ、そういうことに不合理があってはいけない、仮に国の機関、官署が存在しない場合でも、今私が指摘したような明らかな不合理がそこに存在するとなれば、総合調整的機能としても一日も早い見直しを行っていくべきである、こういう強い意見を私は持っているわけです。特に、先ほども申し上げたように、極端な不合理を受けている自治体に対しての配慮というものは当然なされてしかるべきではないだろうか。むしろ、省庁の方がより積極的に取り組んでいらっしゃるわけですけれども、人事院としては一歩おくれているのではないだろうか、私はこういうとり方をしているわけです。  ここで、ひとつ田川大臣に、これは本来は人事院がそういうことを適正にきちっとしていかなければいけないんです。直接的には、国家公務員の適正な給与を決めていくということが大きな役割である。しかし、地方自治体に対する、むだなことをすれば、自治省としても厳しくそういうことをしてはいけない、不当な行為をしてはいけないというようなことは私は当然だと思うのです。それはそれで厳しくというか正しく指導されつつ、片面におけるこういうような不合理は一日も早く是正をするように自治省としても対応してもらいたい。自治省単独ですべてお決めになるというわけにはまいりませんが、自治大臣としての御見解をひとつここで承っておきたい、こういうふうに思います。
  225. 田川誠一

    ○田川国務大臣 地方によって非常に不均衡な状態が存在をしているとすれば、そういうことをできるだけ是正していくように私どもも配慮していかなければならない、このように思っております。
  226. 井上一成

    ○井上(一)委員 総裁にもう一度ここで……。もう時間がないから、具体的に多くの事例を申し上げなくても十分担当の給与局長も御認識なんです。総裁、一遍にすべてが解決するなんということは、望ましいけれどもなかなか難しい点もおありでしょうけれども、一つ一つ不合理を正すために、六十年を待つんだとか、六十一年を待つんだとか、一定の定期的な見直しまでこれをほっておくのではなくて、できる範囲で、できるところから一日も早くこういう是正に取り組まれる御決意をひとつお聞かせいただきたい、こういうふうに思います。
  227. 内海倫

    ○内海政府委員 大変貴重な御意見を承っておりますが、在来人事院の考えております、あるいは人事院のこれに対する考え方というものは、先ほど給与局長から御答弁申し上げたとおりでございますが、ただいまの御意見あるいは自治大臣の御所見等も踏まえまして、また人事院としましてもいろいろ研究はしていきたい、こういうふうに思います。
  228. 井上一成

    ○井上(一)委員 まだまだ質問する機会はありますから、きょうは余り時間がありませんので、私は人事院の問題についてはこれで終えますが、今後の人事院の努力を期待をしたい、見守りながら、この推移についてはまだ次の機会にその経過を踏まえて質疑を考えていきたい、こういうふうに思います。  そこで、今度は自治大臣にお伺いをいたしますが、政府自身は、先ごろ景気回復の促進を図るということで公共事業の上期集中発注の方針を決定されたわけです。私は、このことは非常に結構なことなんですけれども、実態は絵にかいたもちになるのではないだろうか。いろいろと問題点がそこにある。  まず、第一に、七〇%をめどとする上期集中発注の方針の実質的効果について自治省としてどういうふうにとらえていらっしゃるのだろうか。通常、単年度事業については年度内の完成を目指すとすれば、これは少なくとも上半期に発注をするわけでありますから、別に仰々しく最気回復の促進のために上半期集中なんて言わぬでも、それが単独事業であれば当然上半期に集中するのが自然体。しかし、でき得ない。公共事業に一は国の直轄する事業と地方自治体が行う公共事業があるわけでありますけれども、地方自治体の場合は補助事業あるいは単独事業を含めてです。しかし、地方自治体の行う公共事業は量的にも金額的にもそれ相応なウエートがある、私はこういう認識をしているわけです。ところが、地方の事業に対する事業の認定あるいは補助金等の内示が国から都道府県を通して末端の市町村へ行くまでには一定の期間が必要であります。ごく最近は早くなりつつあります。しかし、遅い場合には九月ぐらいになってしまう場合があるし、そういうことになると、実際に上期集中なんということは実質的に不可能になるわけなんです。  そういうことから、交付申請、特に内示に基づく交付申請、交付決定以前の発注は厳に慎むようにとの指導が自治省からなされているわけです。それを正しくその指導に従って守っていったら、そういう自治体の忠実な取り組みの中では、上期の集中発注の方針があっても、何ぼ政府がそういうようなことを言ったって、末端では身動きができないというのが実態だ。そういうことで、かけ声だけかけたってこれは何にもならぬじゃないか、絵にかいたもちだというのは極端かもわからぬけれども、そういうことではないだろうか。むしろ、政府が本気で上期集中発注の方針を貫いていただくならば、内示だとか交付決定等の手続をもっと早い時期に行い、さらにはそういうことをよりスムーズに簡素化していくことも一つの方法ではないだろうか。  さらに、地方公共団体が公共事業をやる場合には、当然起債の問題、起債申請が起こってくるわけであります。この許可については、原則的には年度末、いやもっと早いのだけれども、実態的には年度末ぎりぎり、とりわけさっきのお話、前の同僚委員の質問の中で、国家公務員に準じない高額な、裕福な都市に対して地方公務員の給与の支給ということを一つの尺度にとって、起債制限というのですか、起債の許認可の問題で一定の自治省の見解を持っている。私はきょうはそのことに、触れるのではないのです。起債の許可の通知が、上期発注という大方針であるなら、もっと早い時期に政府が市町村の立場に立って、自治省を通して十分な配慮をしていただけないものであろうか。そういうことが我が国の嫌気を回復し、安定し、長期景気安定策に通ずるのではないだろうか。ただでさえ五十年以降の地方自治体の財政の危機、これは原因は私が申し上げなくても、超過負担の累積なり地方交付税制度の機能不全などによって地方財政の実態が非常に厳しい。そういうところから、地方単独事業等も含めて、地方債の活用等も景気回復に非常に役立つという今日的な実情の中で、上期集中発注という政府の大方針、大号令というものに対して自治省の何か水を差すような実態ではないでしょうか。いや、別に水を差すということではありませんが、どうもその大号令に本当に皆、政府、自治省統一して全部すべてが合うておるのだろうか。  特にきょうは、私は具体的に、自治省が地方自治体に対する起債の許可なり補助金の内示の告示なり、そういう実務的な問題を通して、大臣にこういう実情でございますよと、大臣はこれは十分お知りでないと思うのです、大臣がこんなことを一々知っておったら局長は必要ないのだから。だから、実態はそういうことだから、自治省しっかり頑張って、大蔵にもこういう実情を、本当に政府がそういう気持ちなら、もっと自治省が仕事がしやすいように、地方自治体が仕事がしやすいように特段の配慮をすべきだということを、今度大臣は閣議の中で申し上げてもらえばいいわけであります。大臣の見解を聞いて私の質問を終えます。
  229. 田川誠一

    ○田川国務大臣 地方自治体に対する思いやりの御意見をいただきまして、大変ありがとうございました。  先般閣議決定いたしました基本方針に基づきまして、私どもとしても、地方起債の面で機動的、弾力的に何らかの措置をいたしたつもりでございまして、これからも地方の経済の活性化のために、できるだけ地方の実情に合うように努力をしてまいります。
  230. 井上一成

    ○井上(一)委員 今後の自治術の御努力を期待して、私の質問を終えます。
  231. 横山利秋

    横山委員長 貝沼次郎君
  232. 貝沼次郎

    貝沼委員 きょうは、自治省並びに警察関係の分野にわたりまして質問させていただきたいと思います。  きょうも先ほど話が田でおりましたけれども、私どもが信頼しなければならないし、また信頼されなければならない非常に特殊な立場、環境にある警察関係の不祥事件が出ております。私は、こういう不祥事件をこういう場で根掘り葉掘りやるということは、我が国の治安という立場から考えて、信頼が回復するかどうかということを考えたときに、警察当局というのは調べることにかけてもまた自浄能力においても非常にたけておると思っておりますし、それから、いろいろな立場の方もおると同時に、大半の警察官は非常に熱心にまじめにその職務に励んでおるというようなことを考えたときに、今まではもちろんいろいろ問題があったにしても、それはそれで自浄作用でもってきちっとやっていただいて、綱紀粛正をきちっとやっていただいて、そして今後どうするか、今後そういうことが起こらないようにどうするか、こういうことがむしろ非常に大事なんではないかと思っておるわけでございます。  したがいまして、今までの不祥事をどう受けとめて、さらに今後どう対処しようとなさるのか、この点について警察庁並びに自治大臣の見解を伺っておきたいと思います。     〔委員長退席、新村(勝)委員長代理着席〕
  233. 田川誠一

    ○田川国務大臣 大変思いやりのある、警察に御理解の深い御発言をいただきまして、かえって恐縮に存じている次第でございます。第一線で日夜一生懸命活躍している警察官が今の貝沼さんの御発言をどんなにか力強く感じているか存じません。  やはり普通の公務員と違った、治安を守る警察の職員でございますから、たとえ二十数万人の中には不心得な者がいても当たり前だというようなことは決して言える義理ではございませんで、一人でも不心得な者を出してはいけない、そういうつもりで私ども今後に処してまいりたいと思っております。  これからどういうふうにしていかなければならないかということは、警察庁国家公安委員会それぞれ従来に増して見直しを図っていくつもりでございます。特に、先ほども申し上げましたように、一般の組織と違った非常に規律を求められている組織でございますから、例えば管理の面で、悩み事があったらもう少し気楽に相談ができるような雰囲気をつくっていくことも考えていかなければならない。また、管理の面でもう少し検討できないか、こういうことをこれから根本的にいろいろな意見を求めながら検討をしていくつもりでございます。  特に、私が心配をしておりますのは、貝沼さんもおっしゃったように、警察官の士気が阻喪をするということは日本の治安に非常に大きな影響を及ぼしますので、一般警察官の、第一線にいる警察官の職員の士気をもっと上げていくということも十分留意をしていかなければなりません。そうして、国民の警察に対する信頼感をますます強くしていくことを目標に、今後いろいろな面でひとつ根本的に見直しを図っていく、こういう努力をしていくつもりでございます。
  234. 太田壽郎

    ○太田政府委員 ただいま大臣からお示しがありましたような方針を受けまして、私ども、各般にわたりましてこれからきめ細かくさらに対策を進めてまいりたい。基本的には、やはり人事管理の徹底という点が一つあろうかと思います。これは、厳正な規律を保持していくということが一つの柱でございますが、身上監督の徹底というような問題とあわせまして、明るい職場づくりといいますか、そういう問題につきましてももう一回十分見直してまいりたいと考えております。  それから、先ほどもちょっと別な機会に申し上げたところでございますが、職業倫理の確立と連帯意識の高揚と申しますか、そういう点につきましても、今まで、最初の警察学校に入りましたときはもちろんでございますが、署に出ましてからも、機会をとらえていろいろな形で徹底を図ってきたところでございますが、このやり方等についてもさらに工夫してまいりたい。  それから、今回のいろいろな事案を通じて今反省をしているところでございますけれども、福利厚生面といいますか、そういう面につきましても、広い意味の士気高揚対策の一環という面も兼ねまして、さらに徹底をしてまいりたいと考えておるところでございます。
  235. 貝沼次郎

    貝沼委員 警察官の実態といいますか、こういうものは私も幾つか知っておるつもりでございます。私のところなどは気楽なせいか、よく遊びに来る人が割と多いわけですけれども、話を聞いてみますと、大体使命感ですね。銭金ではとてもできることではない。使命感でやっておる。しかも、若い警察官の人たちはほとんど、自分の生まれたところから離れて遠いところでやっているわけです。殊に過疎の人が多いですね。  そして、例えば警察の慰霊祭というのが毎年あると思いますが、かつて浅間山荘事件などがありまして、向こうは実弾で来る、警察官は、人命尊重から素手で行かなくちゃいけないというようなことで、やられる。そうして殉職をするわけですが、そういう慰霊祭の現場などでは、若い奥さんが乳飲み子であるとかあるいは小さな子供の手を引いて参列をしておる。実際どういう人たちが殉職をしておるのかと調べてみましたら、五十四年以来、ほとんど二十六歳とか二十八歳とか、まあたまに五十二歳とかというのがありますけれども、二十代、三十代が圧倒的に多い。ということは、こういう人たちは命をかけてやっているわけですね。  そして、こういう人たちに対して、それではどれだけの報いで報いられているのか、要するに身分保障ができているのかということを考えると、これまたまことに冷ややかなものなんですね。賞じゅつ金が一千三百万円ですね。特別賞じゅつ金というのが一千五百万円というふうになりましたけれども、今、交通事故に遭ったって、一千三百万とか一千五百万というのはちょっとありませんね。しかも、一千五百万といったって、これはさっと出るわけではありませんで、上官の命令に従って、命に危険があるということをわかった上で行って、さらに命を落とした場合、しかもそれで何の落ち度もなかったという場合に一千五百万でありまして、そこに少しばかりの落ち度があれば、これは減額制でありますから引かれていくわけですね。  そういうようなことから考えまして、私は、これでは優秀な警察官はちょっと寄りにくい。今ちょっと殉職の話をしましたけれども、そのほかに、例えば警察官で官舎へ入っている方もいらっしゃいますが、子供が学校へ行くわけですね。そうすると、警察官の子供だからというのでやっぱり随分と特別に扱われるわけですね。子供の仲間からいろいろと言われる。これは税務署の署員の子供などもそうなんですね。それから、必然的に警察官同士の宿舎になるわけですから、そうすると、上司との関係で、奥様方は、きょうは着る物がどうとか履く物がどうとか、非常に難しい問題があるわけです。自分が勝手なところへ行って生活するということができない。さらに、定年になっても再就職が難しい。税務署であれば特別試験を受けて税理士になれるという道が開かれておるわけでありますけれども、警察官の場合には特別そういうものはどうも見当たらない。再就職ということを考えても非常に難しい。それから、私の知っておる、これは私服刑事でありますが、我が家に真っすぐ帰ることができない。何か尾行されておるような気がして、それでぐるぐる意味のないところを回って、さっと我が家に入るというようなことを何年か繰り返しておるうちにだんだんノイローゼになってしまったという人を、事実私は知っております。そんなようなところから、今大多数の警察官が使命感に燃えて一生懸命やっておるわけでありますけれども、今後の問題として、人材登用のためにはその待遇というものを考える必要があるのではないか、それも給与というわけにいかないでしょうから、今申し上げましたように、例えば賞じゅつ金の増額というようなことを検討すべきではないかと思うのです。賞じゅつ金につきましては、私の調査した範囲では、五十一年以来恐らく変わっていないと思うわけでありますけれども、この辺はいかがなものですか。
  236. 太田壽郎

    ○太田政府委員 賞じゅつ金につきましては、ただいま先生のお話しのとおり、過去五回ばかり種類あるいは金額の改善が行われたことがございますが、昭和五十一年の改正以来現在まで、特別な変更はないという状況でございます。
  237. 貝沼次郎

    貝沼委員 そういうわけで、五十一年からというと、ことしはもう五十九年でありますからかなりたっておる。それで、命をかけて一千三百万ということは、余りにもそれは時代に合わない、こういうふうに考えるわけでございます。     〔新村(勝)委員長代理退席、委員長着席〕  実は、この警察庁の賞じゅつ金の規則によって右倣えしていきますのが消防庁関係です。消防関係でも、かつて広島県の呉市にある灰ヶ峰というところで山火事がございました。大体山陽、瀬戸内というのは山火事が名物みたいになっているくらい多いわけですけれども、そこへ出かけていく消防士というのは何を持っていくかというと、近代的なものは何もない。かまど、あとなたとか縄とか、そういうものを持っていくんですね。ところが、火が飛び火して下の方につきますと、山のてっぺんに上がっていく火のスピードというのは大体四十キロないし六十キロ・パーアワー、一時間にそれくらい、自動車みたいなスピードで上がっていくので、とてもとても逃げれるものではありませんね。そういうところで、呉ではたくさんの消防士が焼け死にました。このとき私も一回、賞じゅつ金を何とかしなければならぬということを主張したことはありますけれども、そういう関係であちこち影響するわけでありますから、この際、私はきょうはたくさん申しませんが、賞じゅつ金を見直す、増額する方向でひとつ御検討いただきたい、こういうふうに思うわけでございます。警察庁並びにその応援の立場で自治大臣、両方からひとつ御答弁をお願いしたいと思います。
  238. 太田壽郎

    ○太田政府委員 非常に財政事情が厳しい中ではございますけれども、ただいまいろいろ仰せがございましたような方向に従いまして、十分検討してまいりたいというふうに考えております。
  239. 砂子田隆

    ○砂子田政府委員 消防職団員のことに関しまして大変思いやりのあるお言葉をいただきまして、恐縮に存じます。  賞じゅつ金の問題は、やはり今後の消防職団員の士気高揚という点からも大変大事な制度でございまして、今警察の方からもお答えをいたしたようでありますが、関係省庁との間で十分協議をして、検討していきたいと存じております。
  240. 田川誠一

    ○田川国務大臣 大変ありがたいお言葉でございまして、来年度の予算編成一つの機会に、大変厳しい財政状態ですけれども、こうしたことをこのままにしていくわけにはまいりませんので、私どももできるだけ額を引き上げるように努力をしてまいりたいと思っております。また、こうした問題はお金だけのことではございませんで、役目柄とはいえ、生命の危険を冒して国民のために守り抜いてもらう職員のことについては、あらゆる面でもう少し何か報償的なことも考えていきたいと思っております。
  241. 貝沼次郎

    貝沼委員 ぜひひとつお願いしたいと思います。  なお、これは答弁は求めませんが、今の賞じゅつ金の別表などを見てみますと、「特に抜群の功労があり一般の模範となると認められるもの」と「抜群の功労があり一般の模範となると認められるもの」ということで、「特に」という言葉があるだけでランクがあるわけですね。その次は、「特に顕著な」というのと「多大の」ということで減額されていくわけですね。「特に」というのはどういうところが特になのかわかりませんけれども、こういうところを余り厳しくやらないように、命を落とした人は帰ってくるわけでないのですから、ただ遺族が大変なんですから、その点をひとつ希望しておきたいと思います。  それから、次の問題は、救急医療の問題でございます。  予算委員会のときにも救急医療を少しばかりやったのですが、時間がなくてできませんでした。あのときにヘリコプターの医療体制をもうやらなくてはいけないのじゃないかという議論をいたしまして、自治大臣からも、時宜にかなったものだろうという御答弁をいただいておるわけでございます。  このヘリコプターの場合に、例えばヘリコプターはどこにでもおりられないじゃないかというようなことを言われたり、あるいは無線で連絡をとるのは難しいというようなことを言われたりしますけれども、この点はまず問題はないようですね。場所は前もって言っておくことができますし、無線もまずまずできるようでございます。これは私、郵政並びに運輸省と詰めてみましたので、この点はよろしいのじゃないかと思います。  そこで、これから話題に入るわけですが、病院とかそういうものができておっても、あるいは救急のお医者さんがおっても、実際運ばれていって、その病気にかなったお医者さんがおるかどうか、ここのところが実は問題なんですね。私も一度赤坂の宿舎から救急で運ばれたことがありますので、救急に大変関心を持っておるわけですけれども、今救急医療で一番問題になっておるのは、厚生省で考えておりますいわゆる初期救急医療体制、こういうところではないかと私は思うのです。この初期救急医療体制についてどういうふうに考えておられるか、まず、これを御説明願いたいと思います。
  242. 柳沢健一郎

    ○柳沢説明員 救急医療対策についてでございますけれども、厚生省といたしましては、昭和五十二年度に策定いたしました年次計画に基づきまして、初期救急医療体制、それから二次、さらには三次の救急医療体制の整備を図っているところでございます。そしてさらに、救急医療情報センター等を含めまして、体系的な整備を推進してまいっているところでございます。  ただいま先生指摘の初期救急医療体制と申しますと、休日、夜間の急患センターでありますとか、あるいは在宅当番医制というようなことになろうかと存じますけれども、休日、夜間の急患センターについては、現在全国で、人口五万以上の市に一カ所、あるいは四十万以上の市につきましては二十万ごとに一カ所というような整備目標で整備を進めておりまして、全国に四百六十カ所の整備をいたしたところでございます。  さらにはまた、在宅当番医制といたしましては、その地域の郡市医師会ごとに在宅当番医制を実施いたしておりまして、現在全国七百三十五地区におきまして在宅当番医制が実施されているところでございます。
  243. 貝沼次郎

    貝沼委員 大変一生懸命やっていらっしゃることはわかるわけでありますが、しかし、現場ではまだまだ足りないというのが実情でございます。  例えば、大変恐縮ですけれども、私倉敷に住んでおりますが、倉敷の市内でも例えば児島とか、あるいは宇野港のある玉野市とか、こういうところで脳内出血を起こせばまず助からないと言われているわけですね。なぜ助からないかというと、児島には脳外科の医者がいないからですね。消防関係でいろいろ救急体制はできておるわけですけれども、その病気に合った、それにこたえられるお医者さんがいないと困るわけですね。  今もお話がありましたように、夜間の分、これが一番問題になってくると思います。これはあるお医者さんの話でありますが、夜間の医療は統一的に国家的規模で取り組むべき事業と強調したい、国民の健康増進の一環として総合的システム化を図り、早急に実行すべきである、そのおくれを地方団体、医師個人の責任に帰するのはおかしい、こういう意見を述べておる人がおります。確かに、夜間に、一番近い救急病院に運ばれて、そして応急手当てができる、こういうことが非常に大事なことだと思うわけでございます。例えば、ヨーロッパ関係のいろいろな救急の調査を見ましても、数秒、数分が勝負であるという結果が幾つも出ておりますので、この夜間におるお医者さんの養成、どういう名前で言うのか、私は救急医というふうに言いたいと思いますが、あるいは臨床研修医と言うのが正しいのか、オールマイティーと言うのが正しいのかわかりませんが、とにかく何でも来い、目が飛び出ていようと、頭がどうなっていようと、足が折れていようと、お産であろうと、何でも来なさい、あしたの朝まではきちっと面倒見てあげます、こういうオールマイティーのお医者さんが非常に望まれるのじゃないかと思います。どういう病人を担ぎ込んでも大丈夫だというところは総合病院しかありませんけれども、総合病院をあちこちにどんどん建てるということはまず不可能なことであり、過疎地は特に不可能なことであります。したがいまして、そういうオールマイティーのお医者さんを養成することが急務ではないかと考えておるわけでございます。  これはどこもやっていないかというと、実はそうではありませんで、自治医大ではこのオールマイティーをねらって、たくさんの臨床研修をやって、そしていろいろな過疎地に行って僻地医療に従事して、非常に好感を持たれておるわけでございます。かえって都会の方がそういうオールマイティーがおらない。私どもの倉敷に川崎医科大学というのがございますが、ここの病院ではそういうオールマイティーのいわゆる救急医というものを養成しておるわけですね。したがって、ここに担ぎ込めばどういうものでも大体処置してくれる、こういうふうになっており、非常に助かるわけであります。いわゆるプライマリーケアの段階でこういうオールマイティーのお医者さんを養成すること、これは非常に急務だと思いますので、これに対して何らかの方法で、今厚生省もやっておるようでありますけれども、その実情、そしてそれは果たしてどこまで期待できるものなのかということを御説明願いたいと思います。
  244. 柳沢健一郎

    ○柳沢説明員 先生指摘のような脳内出血というような、放っておくと生命の危険に即及ぶ非常に重篤な患者につきましては、やはりそれ専門の医療機関が必要であろうというような観点から、現在、厚生省といたしましては、人口百万について大体一カ所の割合で、脳神経外科であるとか、あるいは心筋梗塞のようなそういう心臓病であるとか、あるいは交通外傷であるとか、あるいはおっしゃったような脳内出血であるとか、そういったような高度の診療機能を有する救命救急センターの整備を進めているところでございます。  御指摘になられましたように、岡山の地域で申しますならば、川崎医科大学あるいは岡山県日赤病院というようなものがあるわけでございまして、例えば児島地区でもって脳内出血のような患者が発生した場合には即川崎医科大学の方において治療ができるというようなことが整備できるようにということでもって、現在全国に整備をいたしておりまして、それが現在、この三月末で全国八十六カ所にふえてきております。これにつきましては今後とも整備を図ってまいり、そしておっしゃるような、何でも来い、中心はそういったような交通外傷あるいは脳内出血あるいは心筋梗塞といったようなことになろうかと思いますけれども、それを含めて何でも来いというような、そういう重篤な患者を扱う救命救急センターというものをさらに整備していかなければならないかと存じます。  それから、なお、そういったような医療を担当する医師の養成と申しますか、研修と申しますか、そういうことにつきましても、厚生省といたしましては、専門医の養成のために、脳神経外科であるとか麻酔科でありますとか循環器科、あるいは小児科の医師を対象にいたしまして、さらにはまた、全国の救急告示病院の医師を対象とする救急医療の研修というのを毎年実施しているところでございます。これらにつきましても今後とも充実に努めてまいりたいと考えております。
  245. 貝沼次郎

    貝沼委員 ただいま御答弁がありましたように、確かに一生懸命やっていらっしゃるんですけれども、ただ、それは医師の選択に任せられておるわけですね。したがって、一つだけ選んでおる人もいれば、二つだけ選んでいる人もいる。あるいは今のように、外科と麻酔だけ選んでいるとか、こういうように、何が来ても大丈夫というのは、どれだけやっておれば大体大丈夫なのか、自治医大あたりで研究はしたのでしょうけれども、少なくともそういう幾つかのものを、臨床研修をちゃんと受けて、私は処置できますと――お医者さんですから全部一応はやって、それから国家試験を受けて、なおかつその後で臨床等でノーハウを身につけて、外科とか内科とか決まるんだそうですから……。話によりますと、二年とか二年半徹底的にそういう臨床の研修を受ければほとんどのものに対処することができるのだということを聞きましたので、少なくともこの科とこの科とこの科だけはやってなくちゃならぬとか、そういうようなコースをつくって、そして、この人は救急医としてもう十分ですというような何か資格と言っては語弊がありますけれども、一つの証明みたいなものが持てるようになれば、その人はどこへ行っても恐らく救急医として重宝がられるのではないか、こう考えるわけでございます。そういうことは簡単にできることじゃありませんから難しいでしょうけれども、例えばそういうふうな発想もあっていいのではないか、こう思うわけです。  それから、都内、市内においては、市民病院あるいはいろいろな大きな病院でそういうことはできますけれども、今度は過疎地、僻地、島、こういうところになりますと、どうしても飛んでいかざるを得ません。そういうことになってきますと、いよいよヘリコプター救急、こういうことが出てくると思いますが、しかし、これは大変維持費がかかりますので、自治体はなかなか難しい顔をしているわけです。少なくともまずこの医師の養成、これをいろいろな角度からひとつ御研究いただいて、そしてなおかつ充実できるように希望しておきたい、こういうふうに思うわけでございます。大臣、いかがでございますか。大臣も大変熱心にやっておられたわけですから。
  246. 田川誠一

    ○田川国務大臣 ヘリコプターの利用につきましては、前にも御質問がございまして私から御答弁申し上げました。離島あるいは僻地、こういうところの救急医療に対しては、大変必要なことでございますし、私どもも何とかそうした面ももっと拡充をしていかなければならないと思っております。また、災害についても同様でございまして、横浜その他大都市ではこういうものを持っておりますけれども、まだまだ十分ではございません。今後一層努力をして、ひとつ充実をしていきたいと思っております。ただ、今まで成功している例では、自衛隊のヘリコプターを利用して急患を運んで間に合わせておるというような例もございますし、足りない点は関係方面との連絡を密にして万全を期していくように努力をしてまいりたいと思っております。  自治医科大学についてのお話がございましたけれども、私どももそうした精神を取り入れて教育の万全を図っていくように関係者に申しておきたい、このように思っております。
  247. 貝沼次郎

    貝沼委員 最後に、一点だけ厚生省の方に御要望しておきたいと思います。  それは、消防とも関係をしてくるわけですが、救急で救急車を呼んで、救急車がそこに着いて、病人を見て、これはどういう病気であるかということを判断できるのは医者でなければできませんね。消防署員は定められたところに敏速にそれを運ぶということしかないわけですけれども、動かしていいのか、動かしてはいけないのかという判断もまた医者でなければできません。したがって、医者が飛んでいけば一番いいのでしょうけれども、そういうわけにもいきませんので、医者ではないが、病名の判断はできないにしても、動かしていいとかあるいは応急の態勢のとれる立場の人の養成、これが私は非常に大事なのじゃないかと思います。どういう名前のものになるか、外国ではいろいろやっているようですけれども、日本の場合は医師の国家試験というものがありますから非常に難しいと思いますけれども、その辺のところをひとつ御検討していただけないだろうか、こういうふうに希望を述べたいわけでございます。これは希望だけにとどめて、質問を終わりたいと思います。
  248. 横山利秋

    横山委員長 神田厚君。
  249. 神田厚

    ○神田委員 自治省と警察庁関係につきまして御質問を申し上げます。  最初に、青少年非行問題について御質問申し上げますが、最近の青少年非行の増加の状況はどういうふうになっておりましょうか。
  250. 鈴木良一

    ○鈴木(良)政府委員 お答えいたします。  最近の少年非行の状況でございますが、現在戦後第三のピークを迎えておるわけでございます。昨年刑法犯で補導されました少年の数は十九万六千七百人余りでございまして、十年前の一・八倍に達しております。そして、五十五年以降戦後最悪の記録を続けておりますが、これが昨年まで四年連続しておるという状況でございます。  内容的に申しますと、中学生による非行が多発しておりまして、低年齢化の傾向が大変著しくなっております。また、女子の非行が大変ふえております。それから、校内暴力等の、特に教師に対する暴力事件等がふえておるという状況でございます。  一方、少年の健全な育成を阻害する風俗環境も悪化の傾向にございまして、少年非行の情勢というのは、予断を許さない情勢にあるということだと思います。
  251. 神田厚

    ○神田委員 触法少年を含めると刑法犯の約半数以上が二十歳以下の青少年が占めるということであります。犯罪の低年齢化が最近の顕著な傾向となっておりますが、警察はこのような傾向をどういうふうに見ておりますか。
  252. 鈴木良一

    ○鈴木(良)政府委員 御指摘のとおり、昨年の刑法犯少年と刑法犯の触法少年として補導された者は二十六万人余りでございまして、全刑法犯の検挙補導人員の五二%を占めておる状況でございます。少年の関係は、先ほど申しましたように非常に低年齢化をしておりまして、低年齢になるほど、少年の場合は心身ともに未成熟でありますし、また環境の影響も受けやすいということでございまして、そういう意味で大変非行にも走りやすい一面も出ておる。しかし、また同時に、初期の段階ということで、非行行為を行いましても健全な姿に戻る可能性も高いものだというふうに考えておりますので、私どもといたしましては、早期に非行を発見して補導する、あるいは環境の改善に努める、また、非行少年につきましては、少年の特性に十分配意した適切な処分を行ってまいりたい、かように努めておるところでございます。
  253. 神田厚

    ○神田委員 これまで警察庁が取り扱った青少年非行の事件の中で、家庭に問題があったとすれば、どういうケースが多かったのか、あるいは学校側に問題があったものについては、同じようにどういうケースが特徴的であったのか、さらには、地域社会を含めまして社会環境に問題があったものについては、どのような特徴があったのか。
  254. 鈴木良一

    ○鈴木(良)政府委員 家庭の問題といたしましては、一般に、核家族化が進むあるいは共稼ぎの家庭が大変ふえておるということで、家庭の教育機能が低下をしておるということが指摘されておるわけでございまして、一昨年の五十七年に当庁で分析いたしました刑法犯少年の家庭を見ますと、五六%余りが、母親がいないかあるいは外で働いていて家にはいないという、いわゆる母親不在の家庭でございます。また、四〇%以上が、その保護者が放任、干渉し過ぎあるいは気まぐれ等、大変家庭教育上に問題がある家庭であることがわかっております。具体的な例といたしますと、やや極端な例でございますが、父親が覚せい剤使用の常習者で受刑中である、母親もパートとして働いておる、子供に対して全く放任という状況で、中学二年生の男子が親に失望をして教師に対する校内暴力に走っていたという事件がございます。  学校についてのお尋ねでございますけれども、やはり少年たちが楽しい学校生活が送れるということになりますと非行防止が図れるわけでございますが、学校が楽しくないという状況が出てまいりますと、これが大変問題になってくるわけでございます。  例えば、例で申しますと、高校生がクラスの仲間にいじめられて登校しないという状況にあった、担当の先生から登校しなさいという電話があった、学校がなくなれば登校しなくてもよい、こういうふうに考えて校舎に放火をした、あるいはまた、部活動の練習を病気で休んだ、そしたら仲間からずる休みするな、こう言われた、それで怒って校舎に放火したというようなケースもあります。また、教師に対する暴力事件を見てみますと、一昨年のデータで見ますと、約四分の三が、番長グループ等の校内不良グループである、学校がおもしろくないという形で、やや落ちこぼれ的な形になっておる学生であるということが出ております。  社会環境の問題のお尋ねでございますが、これは地域の粗暴集団がゲームセンターや喫茶店等をたまり場といたしまして、連続して浮浪者の殺傷事件を引き起こしたという例が昨年もございましたし、また、女子中学生が少女向けの雑誌に刺激をされまして、小遣い銭欲しさからラブホテルを利用して十回にわたって売春をしていたという事例がことしもございます。そういうことで、環境が享楽的な施設も非常に増加をいたしておりますし、また大変誤った性的知識を与えるような出版物等もはんらんしておるということで、そういう社会環境の悪化が陰に陽に心身ともに未成熟な少年少女に対して有害な影響を与えているという状況が見られるところでございます。
  255. 神田厚

    ○神田委員 また、もう一つ、学校関係では、卒業式などに学校が警察官の導入を依頼するケースがあるわけでありますが、どういう学校がこのような依頼のケースになっているのか、また、警察の目から見て、校内暴力が多発している学校と校内暴力のない学校とのこの二つを比較した場合、基本的にどういう問題点というか、違いがあるのか、いろいろ事例を取り扱ったと思うのでありますが、どういうふうに考えておりますか。
  256. 鈴木良一

    ○鈴木(良)政府委員 卒業期に警察官を導入するという学校にはいろいろございまして、中には学校の手に余るという校内暴力が発生したために警察官を導入するという学校もございますけれども、必ずしもすべてがそういう状況で行っているわけではございません。やはり学校と警察との連絡が密接に行われておりまして、相互の話し合いで、卒業時のトラブルを防止しようという観点から学校側からそういう要請があるというような形で行っているものもあるわけでございまして、ちょっと一概には言いにくいものではないかというふうに感じられます。  それから、校内暴力の多発校と全く発生しない学校との関係、どういうふうなところであろうかということでございますが、学校全体の問題必ずしも私どもの立場から申し上げるところではないわけでございますけれども、一般的に申しますと、平生から非常に警察の方と密接な連携を保って具体的な情報交換あるいは対策等を協議をしているということで、学校全体がそういう対策に積極的に取り組んでおるという学校は、校内暴力の抑止に大変効果を上げているというふうに承知をしているところでございます。
  257. 神田厚

    ○神田委員 また、青少年をめぐる社会環境の悪化が非行の増大に結びついていると言われておりますが、有害図書と青少年非行との因果関係はあるのかどうか、さらに、性産業の野方図なはんらんが青少年非行に具体的にどのように結びついているのか、さらには、自動販売機の影響はどうか、それぞれ事例を取り扱っていると思うのでありますが、お答え願います。
  258. 鈴木良一

    ○鈴木(良)政府委員 まず、有害図書類の問題でございますけれども、最近、少年の性感情を著しく刺激し、あるいは粗暴性を助長するおそれのある内容の図書類が目立っておったわけでございます。その影響を受けたと見られる性犯罪も多発をいたしております。一例といたしまして、昨年の四月某県で起きた事案でございますが、中学三年生の十四歳の子供が、自動販売機で購入したポルノ雑誌を見て女性に深い関心を抱くようになるということで、通行中の若い女性を襲って強姦致傷あるいは強制わいせつ等十二件の性犯罪を敢行していたというようなケースもございます。  セックス産業についてのお尋ねでございますが、警察が、少年の福祉を害する犯罪、大人が子供を食い物にする犯罪ということでございますが、そういうものを検挙した事例の中でも、いわゆるトルコぶろのほかに、最近新しく出ておりますのぞき劇場だとか、個室マッサージだとか、あるいはデートクラブ等のそういう営業所で子供たちが働かされておる事例がありまして、それからまた、モーテルだとかラブホテル等が女子少年の性非行の行われる場所としてかなり使われておるということが判明しているような状況でありまして、大変問題があると考えておるわけでございます。  自動販売機の問題でございますけれども、喫煙、飲酒、有害図書等を持って補導される少年の中には、自動販売機から購入した者が相当数見られるところでありまして、今、業者にも夜間はそういうものを使わないというようなことを要請したり、あるいは地域の住民がそういう有害図書類の自販機を撤去する運動を行うなどの対策が現在とられておるような状況でございます。
  259. 神田厚

    ○神田委員 大変深刻な社会問題になっているわけでありますが、青少年非行の問題につきまして直接事件としてこれを扱っている警察庁におきましても、青少年非行防止の具体策を当然にしてつくり上げていかなければならないと思うわけでありますが、警察庁として、青少年非行防止のために当面何が最も必要で、どういう対策を講ずべきであると考えておるのか、この点をお聞きしたいのでありますが、その前に、自治大臣も非常に青少年問題について御関心をお持ちであると聞いておりますが、現在社会問題としてかなり深刻になっておりますこういう問題につきまして、どういうふうにお考えになり、どういうふうなこれを是正するための方策といいますかお考えをお持ちでありますか。
  260. 田川誠一

    ○田川国務大臣 最近の少年非行の情勢を見ますと、質も量もともに極めて心配な状況でございまして、また、少年を取り巻く社会環境も悪化の一途をたどっているわけでございます。こうした状態に対処するには、単に取り締まりをするだけではなくて、家庭の面でも、あるいは学校教育の面でも、地域の社会教育の面でも、ともに少年を守る努力をしていかなければならないと思っております。私どもとしては、警察の立場から、少年を取り巻く環境の悪いところをできるだけ直していかなければならない。今度国会に風俗営業に関する法律を出させていただき、これから御審議をいただくわけでございますけれども、これも、従来は青少年が平気で入っていける、未成年の者が行ってはならないようなところが自由に行かれるというような場所が幾つもあった。こういうところは制限をして、子供たちをそうしたところへ行かせない、そういうこともやらなければならない。こういうことで、これは国会の皆さん方からもいろいろ御助言がございまして、そうした御意見を踏まえて、この際、青少年を取り巻く環境を少し整備していかなければいかぬ、このように考えているわけでございます。
  261. 鈴木良一

    ○鈴木(良)政府委員 大臣からお話がございましたわけでございますが、少年の補導活動あるいは少年の福祉を害する犯罪の取り締まりという諸活動は、さらに積極的に推進していかなければならぬと思います。先ほどもちょっと申しましたような形で、少年の特性に合った指導を今後とも続けてまいりたい、こう考えております。  さらに、社会との連帯感、あるいは社会のルールを体験的に学んでもらって、少年自身の規範意識や忍耐心を高めるということも必要であると考えております。そういうことで、少年の社会参加活動あるいは柔剣道等のスポーツ活動につきましても、学校、家庭等と密接な連携を保ちながら、今後とも積極的に推進してまいりたい、かように考えております。
  262. 神田厚

    ○神田委員 次に、覚せい剤問題について二、三御質問いたします。  覚せい剤事犯が、検挙件数、検挙人員とも四十年代後半以降増加傾向が続いているわけでございますが、この汚染度が高まっている原因は一体どういうところにあるのか、また、その汚染状況はどの程度なのか、あるいは、検挙件数、検挙人員とも増加傾向にあるのに対しまして、覚せい剤の押収量が五十五年をピークといたしまして減少傾向にあるというのはどういうことなのか、さらには、覚せい刑事犯についても少年の検挙人員の増加傾向が見られ、しかも女子の増加傾向が著しいわけでありますが、その原因は一体どういうところにあり、その媒体としてどういうものがそこに存在しているのか、あるいは、暴力団からの覚せい剤の押収状況を見ますと、全押収量の二分の一近くを占め、最大の活動資金となっているわけでありますが、覚せい剤入手資金を得るために引き起こされる少年非行が大変増加し、懸念されているわけでありまして、どういう対策をとっていくのか、さらには、我が国で乱用されている覚せい剤の大部分が海外から密輸入されていると聞きますが、その実態、対策はどういうようにするのか、また、暴力団が覚せい剤の密売ルートを支配し、不正の利益を稼いでいると聞いておりますが、その実態、対策をどうするのか、それぞれにつきましてお答えをいただきたいと思います。
  263. 鈴木良一

    ○鈴木(良)政府委員 まず、覚せい刑事犯の検挙件数、人員等が一貫して増加を続けて、汚染が広まっている状況でございますけれども、御説のとおり、四十五年以降一貫して増加を続けておりましたけれども、ここ二、三年増加傾向は鈍化いたしまして、ただ、鈍化したものの高原状態にあるわけでございまして、昨年の検挙人員は二万三千人を数え、一昨年とほぼ同様の高水準にあるということでございます。  この要因でございますけれども、やはり社会の享楽的風潮を反映してと見られるわけでございますが、特に、先ほどもお話がありましたように、暴力団が覚せい剤を最大の資金源としておるということ、それから、乱用者が自分の使用分の費用を捻出するために身近な者に乱用を勧めていくという形で巻き込んでいくということ、それから、お話がありましたように、供給源が海外にあるために取り締まり上供給ルートの根絶がなかなか困難であるという状況、それから、覚せい剤の乱用の害悪に対する認識がまだ必ずしも国民の間に浸透していないというような状況があるのではないかと思います。また、御説のとおり、最近覚せい剤の押収量が若干減っておるわけでございますが、これは、摘発を免れるために、密輸をするものが非常に小口に分けて、しかも短時日に取引をするなど、大変潜在化、巧妙化の傾向があるわけでございまして、そういうものが押収量の減少につながっていると考えられるわけでございますが、私どもといたしましては、捜査の手法に一層の工夫をこらして努力してまいりたいと考えております。  それから、子供の関係がふえている問題でございますけれども、これは四十五年には三十三人ということで少年が全検挙者の二%程度でございました。ところが、以後どんどんふえまして、昨年は全検挙率の一一・四%に当たる二千六百人余りということになっております。特に女子少年の増加が著しいということでございます。女子にふえていきます理由は、家出中に暴力団等から勧められて乱用するケース、あるいは暴走族等の友人知人から勧められて乱用するケースというのが多く見られておるわけでございます。しかも、女子の場合には、暴力団員が少女売春等の少年少女を食い物にする犯罪を行うことが多いわけでございますが、そういうところで覚せい剤が乱用されていくということがあるわけでございまして、少女の福祉犯被害の増加と大変大きな関連を持っているということが言えるわけでございます。  それから、覚せい剤が大部分海外から密輸されているという状況でございますが、これはお説のとおりでございまして、日本に密輸されるもののほとんどは韓国、台湾、香港等から輸入されておるという状況でございます。昨年の例で申しますと、仕出し国が判明した分だけでございますが、韓国からのものが七五%、台湾のものが二五%となっております。これは関係諸国との捜査協力が不可欠であるということで、この面に力を尽くしておるところでございます。  それから、暴力団が密売ルートを支配しておるという状況でございますけれども、これはお説のとおりでございまして、多種多様な手段で密輸入されたものが東京、大阪等の大都市圏の卸元に集まりまして、そういうところから各地の密売組織に流されていく、そして何段階もの密売人の手を経て末端乱用者の手に渡っていくというような状況にあります。そして、これが暴力団の資金源として有効でありますのは、末端価格が密輸価格の数十倍にも上るわけでございまして、少量の取引で大変莫大な利益が得られる、また、こういう犯罪は組織を必要とする犯罪であるということから、非常に暴力団の資金源になりやすいという状況があるわけでございます。昨年の例でいきましても、件数で一万七千七百件余り、人員で一万六再人余りということでございまして、全検挙者の四六%弱が暴力団が扱っておるというようなことでございます。私どもといたしましては、暴力団の取り締まり担当部門と密接な連携を持ちながら、その計画的な取り締まりを行っておるという状況でございます。
  264. 神田厚

    ○神田委員 時間がありませんので、自治省に機関委仕事務の問題について通告をしておりましたが、一点だけちょっとお伺いをしたいと思うのであります。  地方公共団体の事務の中で、国の法令等によりますところの地方公共団体に対しまして機関委任をされている事務が大変多いわけであります。これらの中で、特に情報公開との関係でお聞きをしたいのでありますが、現在、各地方公共団体で情報公開条例が制定をされておりますが、情報公開条例の中で機関委任事務にかかわる情報の取り扱いというのはどういうふうになっておりますか。
  265. 大林勝臣

    ○大林政府委員 情報公開を行います場合に、機関委任事務に関する文書、これを対象とすることができるかどうかにつきましては、従来からいろいろ議論があったわけでありますけれども、私どもといたしましては、文書の管理そのものというのは、機関委任事務であろうが固有事務であろうが、これは団体の事務である。ただ、機関委任事務の処理後の文書ということになりました場合に、特にやはり主務大臣の方から、その内容によりましては、公開を差し控えてもらいたいとか、差し控えるべきだ、こういった指示があって除外されるもの、こういうものにつきましては、情報公開の対象としては除外せざるを得ないのではないだろうか。それ以外のものにつきましては、すべて情報公開の対象となる、こういう考え方をとっております。
  266. 神田厚

    ○神田委員 大臣にお伺いしますが、機関委任事務の指揮監督権は国にあるわけであります。事務取り扱い権限は地方団体の長に委任されておるわけでありまして、その実態は地方が掌握をしておる、こういう状況であるわけです。それで、個人のプライバシーあるいは防衛機密、企業秘密などにかかわる事務を除きまして、機関委任事務といえども国及び都道府県の委任に基づいて情報公開の対象となるように、自治省は各省庁に求めていくべきだというふうに考えておりますが、いかがでありますか。
  267. 大林勝臣

    ○大林政府委員 機関委任事務というのは、現在は法律の上では国の事務、こういうことになっております。したがいまして、現在、地方団体が地方の事務について、機関委任事務を含めて情報公開をやっておりますけれども、先ほど申し上げましたように、主務大臣から特別の指示があるものについては除外して公開しておるような状況でございます。したがいまして、問題は、国の事務全体の中で情報公開を行います上で、プライバシーその他秘密の問題、そういったものも総合勘案しまして、どういうものを除外するかということがポイントになってくるであろうと思います。現在、臨調答申を受けて行政管理庁におきまして、いろいろこういった問題を研究されておる最中でありますし、本日の御意見は十分そういったところにもお伝えしてまいりたい、こう考えております。
  268. 神田厚

    ○神田委員 大臣の方はどういうお考えでありますか。
  269. 田川誠一

    ○田川国務大臣 大変貴重な御意見でございまして、私どももできるだけ御主張に沿うように各省庁にも伝えてまいりたい、このように思っております。
  270. 神田厚

    ○神田委員 終わります。
  271. 横山利秋

  272. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 警察の交通指導というか交通取り締まりについて、そのあり方についてお聞きしたいのでありますが、道交法第一条の趣旨、あるいは何度か警察庁自身が通達を出したりしたこともございますし、国会等の答弁もございますが、それらの主なことは、やはり交通安全といいますか事故防止、このことが何よりの主眼になると思うのでありますが、一面、そのことは、悪質だとか無謀運転だとか、こういう違反は論外といたしまして、一般のドライバーの場合、何でも取り締まり、検挙だということよりも、指導が重点だ、こういうふうに考えてよろしいかどうか。まず最初に、よろしいかどうかということだけで、どっちかということをお答えいただきたいと思います。
  273. 久本禮一

    ○久本政府委員 御指摘のとおり、交通指導も取り締まりも、交通安全の確保を図るための警察官の街頭活動でございます。時と場所、態様に応じて指導、取り締まりを有効に組み合わせて執行するのが本目的にかなうゆえんであると考えております。
  274. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 いわばその趣旨、そういういろいろなこれまでの国会、道交法その他によりますと、悪質なもの、無謀なもの、こういうたちの悪いドライバーについては、積極的な取り締まりをするのは当然でありますが、一般に対して、その主眼というものは指導が重点だというふうに理解してよろしいかということを聞いたのでありますから、その点、もう一回お答えいただきたいと思います。
  275. 久本禮一

    ○久本政府委員 一般的に申し上げまして、できるだけ指導を図るということが望ましいことは言うまでもないところでございます。
  276. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 それで、指導が望ましいということでありますが、実際は、おたくからいただいた「交通違反態様刈取締り状況(五十年~五十八年)」、このデータを拝見いたしましたが、例えば五十七年は千二百三十万人が検挙されていますね。五十八年の統計を見ますと千三百十五万四千人ですね。つまり、全国のドライバーが今四千八百万人と言われていますが、その三人に一人、三人ちょっとに一人がほとんど警察に検挙されている。そういう状況ですね。  同時に、交通反則金の方を見てみますならば、これは毎年ずっといろいろなあれがありますけれども、五十六年、五十七年、五十八年の三年を見ますと、予算額として計上したものよりも決算額の方が多いですね。例えば五十八年、去年の状況を見ますと、交通反則納付金というのが五百六十一億五千七百万円が予算額でございましたが、皆さんの決算の見込みとして出している数字は六百十四億二千五百万円でございますね。つまり、指導だ何だと言って、国会でもいろいろな大臣の方方が、じゅんじゅんと諭すのだ、悪質なものは別だなんということを言いながら、取り締まり、検挙、こういうものをどんどんやっているということですね。したがって、いろいろな通達なんか出されているにかかわらず、今もって違反の中で一番多いのは最高速度、スピード違反ですね。白昼天下の警察官がこそこそと茂みの中へ隠れたり、いわゆるネズミ取りですね、忍者まがいのそういうものが堂々とやられているというような問題があるわけであります。中には、そのための人権侵犯の疑いあるいは問題になったこともございますけれども、こういう状況を見ますならば、これは取り締まりのための取り締まりじゃないかと、かつて何回もこの点を指摘されているにもかかわらず、末端では一向に直っていないじゃないか。恐らく警察官自体にノルマを課せられているのじゃないか、こうまで勘ぐりたくなるわけでありますが、この点についての御見解はいかがでしょうか。
  277. 久本禮一

    ○久本政府委員 先生指摘のとおり、全国の交通警察による交通取り締まりの件数は最近増加の傾向にございます。ただ、最近の交通情勢が、昭和五十三年を底にいたしまして増勢傾向に向かっておる。その背後には、かなり一般のドライバーのモラルの問題等もあるということでございまして、安全のためには総合的な施策が必要でございますが、その一環としてやはり必要な取り締まりを強化するということは、現在の交通情勢ではやむを得ないと考えまして、そのように運用しているところでございます。  ただ、取り締まりの件数のみが出てまいりますが、その背後には、これを支える多くの指導の件数の上に取り締まりの件数があるということでございまして、取り締まりだけがふえるということではございませんので、街頭におきましては、一般の警察官が通常の取り締まりに至らざる指導をもかなり広範囲に行っている、その上に立っての取り締まり件数の増加であるというふうに御了解をいただきたいのでございます。
  278. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 千三百万人検挙され、その上にもまだあるということで、その部分が指導に当たる。恐らく全ドライバーが何らかの格好で警察とのかかわりをそういう形で持たせられている、こういうことだと思いますが、私、先ほどお聞きしたことは、恐らく今のようなやり方、こういう状況数字が冷厳に示しているわけですが、警官が一種の目標といいますかノルマといいますか、基準みたいなものを持たせられているから、こういうひどい状態になっているのじゃないかと思いますが、この点はどうなんですか。
  279. 久本禮一

    ○久本政府委員 交通取り締まりに個々の警察官にノルマを課してこれの達成を要求する、そういうことはございません。交通取り締まりの適正を図る上から見てもそういうことは望ましくないと考えております。ただ、道路交通情勢の中で、トータル的な取り締まり件数あるいはその内容の増減と交通事故の増減との間には相関関係があるというのが一般的に理解をされておる傾向でございます。したがいまして、そういった傾向の中から、どのような取り締まり運用の方針が望ましいかということを、数量的に一つ見通しを立てましてこれを指導するということはあるわけでございまして、これはむしろ適正な取り締まりの逆用を内容的にも量的にも担保するために必要であると考えております。したがいまして、そういう点についての合理的な管理をしていくということを指示指導はいたしておりますけれども、それは個個の警察官にノルマを課するといったようなものでは断じてないというふうに信じているところでございます。
  280. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 交通取り締まりが多ければ多いほど事故が減る、そういうお話でございましたが、取り締まりがこんなに多くなっても、死傷者の累計を見ますならば、私資料を持っておりますが、死傷者全体で去年は六十五万人ですよ。どんどん多くなってきているということですね。このことは改めて論議したいと思いますが、あなたは今、ノルマは絶対課していない、こういうお話でございましたが、ここに富岡義正という方の道路交通法違反問題の裁判の記録がございます。きょう私それを写してまいりましたが、これは千葉県の松戸簡易裁判所で審理したものでございまして、昭和五十五年十月十三日の第二回公判から五十六年七月十三日第七回公判の期間、千葉県警交通機動隊柏分駐隊所属の今野晃警察官を証人尋問、こういうことの中の一部でありまして、証人尋問の内容を申しますと、簡単でありますが要点のところを読みます。弁護人は畑江博司という弁護人でありますが、   弁護人 交通機動隊に入隊して以来交通違反を毎月平均して四十件検挙しているそうですが、間違いありませんか。  今野 平均してそうです。  弁護人 何件検挙したかは成績になりますね。  今野 成績というより目標です。  弁護人 目標何件というのがあるわけですか。  今野 これは私が機動隊に入る前からありました。現在月四十件です。  弁護人 四十件に満たないとき、上から注意か何か受けないですか。  今野 来月からは目標に向かってがんばってくれと言われることはあります。こういうことなんですね。  あなたはそういうものは一切ないとおっしゃいましたが、弁護人の尋問に対しまして明白に裁判でこの警官が答えているわけですが、これは正直過ぎて困ったことを言ってくれたな、こういうことになるのでしょうか。
  281. 久本禮一

    ○久本政府委員 ただいまお示しの内容につきましては私どもも委細を承知しておりませんので、その点につきましてはお答えを申し上げかねますが、一般的に申し上げますと、今お示しの文言の範囲で考えますならば、それは、交通の取り締まりの適正なあり方につきまして、それは目安を持ってやるものであるということについての話し方の行き違いではあるまいかというふうに私は考えております。先ほど申し上げましたように、ただ適当にその場その場で取り締まりをやればいいということではございませんので、交通はやはりトータル的な広がりと流れがあるものでございますから、その中で有効に指導取り締まりが機能するためには、適正な管理が必要であると考えておるところでございます。
  282. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 実際目標が設定されていることを公判延で末端の警官が証言しているという事実は隠せないと思うのですね。なぜこういうことになるのか。これは、あの通達の中で、決して姿を隠して、通称ネズミ取りといいますね、ああいうことはやっちゃいけないんだということを言いながら、一方、警察の部内で検挙実績評価制度というのがありますね、どんどん検挙してそれを実績として評価する制度です。ですから、一方ではこういうことがあってはいけないと言いながら、一方ではそういうものがあるから、巡査も人間ですから、成績を上げなければいかぬということで違反を押しつけてみたりいろいろなことをやることになると思うのです。少なくとも通達の趣旨に沿うならば、まして指導が事故防止の重点であるというなら、検挙実績評価制度を断ち切らなければ、その通達の趣旨、国会決議の趣旨が生きてこないのじゃないか、こう思いますが、この点については、大臣、いかがお考えでしょうか。
  283. 田川誠一

    ○田川国務大臣 私は、指導と検挙と両方相まってやらないと、交通の安全というのは全うできないと思うのです。検挙が多いから取り締まり主義だということは言えないと思います。検挙が多いというのは交通違反がそれだけ多いということですから、検挙は検挙でぴしぴしやっていかなければ違反が絶えないと思うのです。  それから、人の見えないところでスピード違反の取り締まりをやるということは当然のことでございまして、交通道徳を守らない人が、警官がいるところではちゃんと規則を守っていて、いないところではスピード違反をやって平気でいるというようなことは、直していかなければならぬ。交通違反がなぜふえるかということは、基本を守らない、取り締まりのあるところだけ守る、こういうところに交通違反が出、規則違反が出るから交通事故がふえる、これが私の考え方でございます。
  284. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 今、国家公安委員長のお話ございましたが、やはり検挙実績評価制度を断ち切らなければ、通達や国会決議の趣旨に沿うようにならないということですね。これはだれが言っているかというと、おたくの昭和四十四年当時の交通指導課長をした、つまり通達を出したときの責任者ですね、竹岡勝美さん。後から防衛庁の官房長になりましたね。この方が、「制服警察官に姿を隠すなど指示し、警告指導や歩行者の保護活動の積極化を望む以上、検挙実績評価制度は断ち切らねばならない。」こうはっきりおっしゃっているのです。これは「警察時報」の四十四年十一月の彼の論文です。こういうことをはっきり警察の内部で言っているのですよ。今、公安委員長、突然の質問でああいう御答弁になったと解釈いたしますけれども、その点はいかがですか。
  285. 久本禮一

    ○久本政府委員 交通指導取り締まりは、現在このように自動車交通が普及しているわけでございますから、多くの国民の自動車利用に密接な関係がございます。したがいまして、いろいろな考え方、いろいろな議論があって当然でございまして、私どもは、そういう点も踏まえ、かつ両院で決議されました内容等も十分に踏まえまして、交通指導取り締まりの運用をする責任があると考えておるところでございまして、その後の運用につきましてもそういった趣旨を踏まえて実施しているという考えでございます。  ただ、具体的な指導取り締まりは、交通量がふえ事故がふえてくるに従いましていろいろな態様がございます。その態様に有効に対応するということが交通指導取り締まりの機能を確保するゆえんであると考えまして、その範囲内で適正な取り締まりの実施に努めているところでございます。
  286. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 竹岡論文によりますと、四十四年通達の趣旨は一体何なのか、その趣旨のところにこう書いてあるのですよ。「外勤警察官、交通外勤警察官など個々の制服警察官が日常勤務を通じて行なう交通指導取締りには、姿を隠して行なうような方法は、明確に一切これはとらないことにした。」これが第一番に書かれている文言なんですね。このことはあなたが一番おわかりなんですね。ですから、今もネズミ取りが平然と行われ、白昼天下の公務員、警察官がああいう格好をしているのはおかしいと私は思うのですが、これは皆さんこれからもどんどん意表をついてやるというのですか。
  287. 久本禮一

    ○久本政府委員 交通警察とドライバーの信頼関係から考えまして、姿を見せずにやるという取り締まりをせずに済めば、それにこしたことはないと考えております。ただ、具体的な取り締まりのやり方といたしまして、そういった形が取り締まりの効用を確保するために望ましいという場合もございます。したがいまして、個々の警察官の判断で適宜隠れてやるということにつきましては十分に戒めておりますけれども、この点について計画的に十分に幹部が掌握し、その必要性等を考えて実施をするというものにつきましては、部内におきましても、それまでだめだというふうに指導しているわけではございません。したがいまして、今後もその辺につきましての判断と選択を十分適正に行うことによりまして、批判を招かないような運用をしてまいりたいと考えております。
  288. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 交通行政の一番の基本は属民の協力を得ることだ、信頼を得ることだと、何回も大臣答弁にありますよね。警察庁長官の答弁にもありますね。時と場合によってはネズミ取りをやっても国民の信頼を得るとあなたはお考えなわけですね。  私は、先ほど何回も言いましたけれども、竹岡さんもこう言っているのですよ。今そういうことをやらないかわりに、これからのやり方としては、「これを補なうものとして悪質違反の検挙を主目的とする刑事的な取締り方法を幹部の指揮掌握の下に行なう計画的集中的な方法」、こういうものでやらなければいけないという代案をちゃんと示しているのです。  ところが、今のあなたのようなやり方がどういうことになっているかというと、例えば、私ここに写真を四枚持ってきております。小さくて皆さんおわかりにならないと思うのですが、去年の五月三日、憲法記念日、京都の丸太町通りで、ちょうど御所と向かいに地方裁判所があります。御所のあの石垣の茂みの中に警察官が隠れて入って、そしてレーダーを道路に出して、それに毛布をかぶせている。これはすごいんですよ。しかも、このときは公開取り締まり中なんです。公開のときにやぶの中に隠れて、しかも憲法記念日のその日にそういう格好なんです。  そこで、お伺いしますが、これは本当に奇怪な状況であります。まあ後でこの格好を見てください。こういうことで一体いいのかという問題もありましょうけれども、やはり警察の威信ということを考えましたならば、これは大変問題がある。特にレーダーに毛布をかぶせて相手の正しい電波が捕捉できるのですか。電波というものは当然曲がっていくでしょう。いろいろなものに反射するわけです。例えば、そばに構築物があるとかあるいはガソリンスタンドがあるとか、駐車場があるとか標識があるとか、いろいろ道路が坂であるとかなんとかいうことによっても電波の反射は違うのです。ですから、あなた方は絶対唯一の証拠としていつもレーダーが正確だと言うのですが、どこの世界にレーダーに毛布をかぶせて、ここに写真がありますけれども、レーダーはいろいろな条件で必ずしも正確な電波を捕捉することはできないはずなんです。だから、学者、専門家に言わせますと、今のマイクロ波式のあれについては非常に疑問を持っている方々がたくさんいらっしゃるということですね。しかし、警察の証拠がレーダーが唯一絶対の証拠になって、国民の側から何一つそれを反撃することができない。私は時間がないから全部言いますが、皆さん方が情報公開をしておらないものですから、いつも国民が泣き寝入りする。しかしながら、裁判その他であなた方が、正確なものが敗れた事例は何回もあるわけです。こうなりますならば、この問題については、警察庁が独自に科学警察研究所に頼んで絶対だと太鼓判を押してもらったということでなしに、国民の信頼と納得を得るためには、当然のことながら、やはり第三者的なレーダーに対する信頼性ですね、本当にどういう状況の中でどうなのかということは改めてそういう機関をつくって検討する、情報を公開する、こういうことでなければ筋が通らないと私は思うのですけれども、最後に、この点について公安委員長の御意見をお伺いしたいと存じます。
  289. 久本禮一

    ○久本政府委員 取り締まり機器の正常な機能の確認とその保持につきましては、警察庁といたしましては、科学警察研究所の専門家その他の専門家を交えましていろいろ検討をし一線に紹介をする。一線ではそれぞれの責任におきまして、必要な地元における調整連絡あるいは確認等も経て機器を利用しているということでございます。したがいまして、この点につきましては、機器の取り扱い方を含めまして、一線は十分にその辺は適正に努力をしているはずでございますが、これは先生の御指摘をまつまでもなく、一般国民に変なものを使っておるという誤解を招かないような努力は絶えずしていかなければならないと考えております。
  290. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 時間がありませんので私の質問はこれでやめますが、ずっと今までの経過、質問のやりとりの中で、国会決議なり皆さん自身がおやりになったその趣旨が、末端へ参りますと、全く違った受け取り方、見方が往々にしてあるということについて、改めて機会を見てまだ後日質問させていただきたいと思いまして、きょうはこれでおしまいにします。ありがとうございました。
  291. 横山利秋

    横山委員長 次回は、来る十一日金曜日午後零時四十五分理事会、午後一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時七分散会