運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1984-03-26 第101回国会 衆議院 決算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年三月二十六日(月曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 横山 利秋君    理事 近藤 元次君 理事 白川 勝彦君    理事 谷  洋一君 理事 東家 嘉幸君    理事 新村 勝雄君 理事 貝沼 次郎君    理事 神田  厚君       榎本 和平君    小坂徳三郎君       塩崎  潤君    白浜 仁吉君       河野  正君    島田 琢郎君       城地 豊司君    玉城 栄一君       中林 佳子君    藤田 スミ君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      岩動 道行君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 上田  稔君  出席政府委員         科学技術庁長官         官房長     安田 佳三君         科学技術庁長官         官房会計課長  窪田  富君         科学技術庁計画         局長      赤羽 信久君         科学技術庁研究         調整局長    福島 公夫君         科学技術庁原子         力局長     中村 守孝君         科学技術庁原子         力安全局長   辻  栄一君         環境庁長官官房         長       加藤 陸美君         環境庁長官官房         審議官     大塩 敏樹君         環境庁長官官房         会計課長    廣重 博一君         環境庁企画調整         局長      正田 泰央君         環境庁自然保護         局長      山崎  圭君         環境庁大気保全         局長      林部  弘君         環境庁水質保全         局長      佐竹 五六君  委員外出席者         防衛施設庁施設         部施設対策第二         課長      杉本 康治君         環境庁水質保全         局土壌農薬課長 津田  隆君         法務省民事局参         事官      永井 紀昭君         外務省国際連合         局原子力課長  山田  広君         大蔵省主計局司         計課長     加藤 剛一君         大蔵省理財局国         有財産第一課長 田中 誠二君         大蔵省理財局特         別財産課長   根本 貞夫君         文部省大学局医         学教育課長   佐藤 國雄君         文部省体育局学         校保健課長   青柳  徹君         厚生省環境衛生         局水道環境部水         道整備課長   森下 忠幸君         厚生省環境衛生         局水道環境部環         境整備課長   小林 康彦君         農林水産省農林         水産技術会議事         務局整備課長  弘田 信之君         林野庁林政部長 甕   滋君         通商産業省機械         情報産業局電気         機器課長    広野 允士君         資源エネルギー         庁長官官房原子         力産業課長   大塚 和彦君         資源エネルギー         庁公益事業部原         子力発電安全審         査課長     末廣 恵雄君         資源エネルギー         庁公益事業部原         子力発電運転管         理室長     稲葉 裕俊君         海上保安庁警備         救難部海上公害         課長      伊美 克己君         建設省都市局下         水道部下水道企         画課長     黒川  弘君         会計検査院事務         総局第一局長  西川 和行君         参  考  人         (日本原子力船         研究開発事業団         理事長)    井上啓次郎君         参  考  人         (動力炉・核燃         料開発事業団理         事長)     吉田  登君         決算委員会調査         室長      石川 健一君     ――――――――――――― 委員の異動 三月八日  辞任         補欠選任   中川利三郎君     不破 哲三君 同月九日  辞任         補欠選任   近江巳記夫君     矢野 絢也君   玉城 栄一君     大久保直彦君   不破 哲三君     中川利三郎君 同月十日  辞任         補欠選任   城地 豊司君     岡田 利春君 同日  辞任         補欠選任   岡田 利春君     城地 豊司君 同月十三日  辞任         補欠選任   大久保直彦君     玉城 栄一君   矢野 絢也君     近江巳記夫君 同月二十六日  辞任         補欠選任   城地 豊司君     島田 琢郎君   中川利三郎君     藤田 スミ君 同日  辞任         補欠選任   島田 琢郎君     城地 豊司君   藤田 スミ君     中林 佳子君 同日  辞任         補欠選任   中林 佳子君     中川利三郎君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和五十六年度一般会計歳入歳出決算  昭和五十六年度特別会計歳入歳出決算  昭和五十六年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和五十六年度政府関係機関決算書  昭和五十六年度国有財産増減及び現在額総計算  書  昭和五十六年度国有財産無償貸付状況計算書  〔総理府所管環境庁科学技術庁)〕      ――――◇―――――
  2. 横山利秋

    横山委員長 これより会議を開きます。  昭和五十六年度決算外二件を一括して議題といたします。  ただいまの各件は、第九十八回国会に提出され、第百回国会で既に概要説明を聴取しておりますので、今回はお手元に配付の昭和五十六年度決算外二件の説明資料等によって御承知おきいただきたいと存じます。  本日は、まず、総理府所管環境庁について審査を行います。  まず、環境庁長官から概要説明を求めます。上田環境庁長官
  3. 上田稔

    上田国務大臣 環境庁昭和五十六年度歳出決算につきましてその概要を御説明申し上げます。  まず、昭和五十六年度の当初歳出予算額は、四百六十億一千三百八十八万円余でありましたが、これに予算補正修正減少額五億五千九百二十四万円余、予算移しかえ増加額六千百五十八万円余、予算移しかえ減少額三十一億五千二百三十二万円余、前年度からの繰越額六億三千三百九十六万円余、流用等減少額一億一千六百二十八万円余を増減いたしますと、昭和五十六年度歳出予算現額は、四百二十八億八千百五十七万円余となります。この予算現額に対し、支出済み歳出額四百二十二億四百五十二万円余、翌年度への繰越額一億三千八百三十八万円余、不用額五億三千八百六十六万円余となっております。  次に、支出済み歳出額の主なる費途につきまして、その大略を御説明申し上げます。  第一に、公害防止等調査研究関係経費といたしまして、五十九億四千百七十万円余を支出いたしました。これは、化学物質実態調査等を実施するための経費及び国立公害研究所国立水俣病研究センター運営等経費として支出したものであります。  第二に、自然公園関係経費といたしまして、五十一億一千三百九十二万円余を支出いたしました。これは、自然公園等における管理及び園地、博物展示施設長距離自然歩道等整備並びに渡り鳥の観測、絶滅のおそれのある鳥獣の保護対策等経費として支出したものであります。  第三に、環境庁一般事務経費といたしまして、三百十一億四千八百八十九万円余を支出いたしました。これは、公害防止を図るための施策推進に必要な調査費地方公共団体に対する各種補助金公害防止事業団及び公害健康被害補償協会に対する交付金環境行政に従事する職員の資質向上のための研修所運営費並び環境庁一般行政事務等経費として支出したものであります。  最後に、翌年度繰越額不用額について主なるものを御説明いたしますと、翌年度繰越額は、自然公園等施設整備費において、異常気象等によって事業の実施に不測の日時を要したこと等により年度内に完了しなかったものであります。  また、不用額は、公害健康被害補償協会事務費が予定を下回ったこと等により、公害健康被害補償協会補助金を要することが少なかったこと等のためであります。  以上簡単でありますが、昭和五十六年度決算概要を御説明申し上げました。  よろしく御審議のほどお願いを申し上げます。
  4. 横山利秋

    横山委員長 次に、会計検査院当局から検査の概要説明を求めます。西川会計検査院第一局長
  5. 西川和行

    西川会計検査院説明員 昭和五十六年度環境庁決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
  6. 横山利秋

    横山委員長 これにて説明の聴取は終わりました。     ―――――――――――――
  7. 横山利秋

    横山委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。河野正君。
  8. 河野正

    河野(正)委員 今、環境庁長官の方から趣旨の御説明がございました。また、会計検査院の方からは、五十六年度決算については大して異常はないということでございましたが、私はやはり、環境庁もそうでございますけれども一般的に言って行政対応というものがしばしばおくれる。これは単に環境庁に限りませずどの省庁においても言えるわけでありますが、ただ、私ども環境庁に対して関心を持っておりますのは、環境庁の諸問題に対します対応がおくれる。要するに行政の後追い、これでは結果的には自然が破壊され、あるいはまた国民の健康が破壊される、あるいはまたそのために国民の命というものが非常に重大な状態に置かれる、こういうことでございますから、したがって、私は、同じ行政の中でもやはり環境庁行政というものは一歩一歩先取りをしていく、こういうことにならなければならぬと思うわけです。それが環境庁長官姿勢でなければならぬわけでございますが、きょうは第一陣でございますから、環境行政に臨む長官姿勢について一言承っておきたいと思います。
  9. 上田稔

    上田国務大臣 お答えを申し上げます。  環境行政というのは、本当に先生お話のとおり、人間の生命にも、また非常にとうとい環境保全、こういうことに非常に影響のあるものでございます。と申しますか、それをやらなければいけないものでございますので、私は非常に力を入れてやらなければならないと考えておるものでございます。  先生お話のとおり、高度成長がございました時代におきましては、もう本当に考えてもいなかったような公害が発生をいたしまして、これは大変だということでこの後追いに実は追われたのでございます。しかしながら、その対策がだんだんと効を上げてまいりますとともに、また、先生お話のとおり、公害未然防止しなければいけない、こういうことに今なってきつつございまして、環境庁といたしましては今これに力を入れてやらせていただいておるところでございます。  特に例を挙げますと、地下水調査を最近はやっておりますが、これはまだ被害も出ておりませんけれども、これが被害を起こしたら大変だということで、地下水調査をやらせていただいておるのでございますが、そうしますとWHOの基準よりもはるかに下回っておりますけれども有害物質と思われるものが発見をされておりまして、その対策をすぐに立てさせていただいておるというのが実態でございます。また、そのほか化学物質の総点検というのもやらせていただいておるところでございます。それからまた、いろいろな面で、例えばスパイクタイヤがこのごろ問題になっておりますけれども、これもまた被害そのものは直接に出てきておりませんけれども被害の発生するおそれが十分にあるということで、その対策関係の各省の方々と御一緒になって今いろいろ研究をし、そして対策を立てつつあるところでございます。これから環境庁の方向は未然防止ということに全力を挙げていきたいというふうに考えております。
  10. 河野正

    河野(正)委員 長官からも一応の御見解を承ったわけでございますが、この自然の破壊とかあるいは公害病とかそういったものが、何といっても、環境庁が精力的に先取りをしていく、一歩一歩先に移っていくというようなこういう処置をいただかないと、一番顕著な例は、今長官からお話ございましたように、日本の経済が高度成長をしたその遺産物として、今日の公害病がありあるいは自然の破壊があるわけですから、そういう意味では、決して現在の状況は私は軽視してもらっては困ると思うのですね。例えば、私今ちょっと気になりましたのは、地下水についても調査をした、しかしながら今何ら大した被害状況はないというお話でございましたけれども、私はやはり、後ほどこれは触れますが、必ずしもそうではないと思うのですね。そういう前提に立って行政を行わなければ、地下水なら地下水被害が起こってきた、そこで手を打っても遅いのですよ。ですから、私は、そういう意味では、各省庁とも行政先取りということが必要でございますけれども環境庁は特に行政先取りということに誠意を持って積極的に推進していただかなければならぬ。与えられた時間が少ないものですから、そういう基本姿勢についてもいろいろお尋ねしたいことがございますけれども、そういう基本姿勢に基づいて、そして現在こういう問題がどうなっているのだ、そういう各論的な問題を二、三取り上げてきょうは長官の御見解を承りたい、こういうふうに思います。  そこで、いろいろございますけれども、今、一番問題となっておりますような具体的な事例というものを若干取り上げて、そして環境庁の今日まで行ってこられました対応、あるいは将来に対してどういう対応をしていくかというようなそういう将来の見通し、そういう点について二、三の点についてまずお尋ねをいたしたいと思います。  そこで、第一は、いわゆる水銀公害とも言われております、あるいは電池公害とも言われております、もちろんこれは予算委員会でも若干触れられておるようでございますけれども、しかし、外面をざっとなでて通ったというような状況でございますから、この問題を今地方自治体では非常に重要視しておるわけですね。そういう問題でもございますので、若干ひとつこの電池公害水銀公害という面について見解を承りたいと思います。  この乾電池いわゆる水銀公害、これはやはり何といっても中央ということでなくて全国に散らばっておるわけですから、そういった意味で、地方自治体環境対策というものが今大きな課題となっておるし、また、自治体の中では、特に乾電池公害、この問題に対して非常に敏感に今対応しつつあるという状況だと思います。これらの点について大臣の御所見をまず承っておきたいと思います。
  11. 上田稔

    上田国務大臣 お答え申し上げます。  先生の今御指摘のように、後追いであっては、もうこれは人命はかえられないわけでございますし、また環境もとどおりになかなかすることはできないというのが実態でございますから、未然防止ということが一番大切だと思うのでございます。また、今お話し水銀につきまして、水俣病が起こります前までは、私ども水銀というのは、無機水銀人体には影響ないのだ、こういうふうに実は考えておったのでございますが、これが有機水銀に変わることがあり、そしてまた、それがお魚なんかの体内に蓄積されて、そして人体被害を与えるというようなことも実際に被害が起こったのでございまして、こういうことであってはいけないということで、今、水銀使用していただいておりますいろいろなものにつきまして調査を進めておるのでございますが、特に乾電池に非常に水銀が使われておりますので、この水銀被害を起こさないかどうかということに今万全の注意を払っておるところでございます。
  12. 河野正

    河野(正)委員 調査は結構でございますけれども、しかし、今日、水銀の例えば大気中の汚染とかあるいは水の中の汚染とかそういうことが非常に強くあらわれるものですから、住民の福祉というようなことから地方自治体が今躍起になっておるわけですね。これは各県でいろいろな方法を模索しながらこの水銀公害をどうして守っていくかというようなことで鋭意努力をいたしておるわけでございますが、ところが、残念ながら国の役割というものが、今、長官調査をしておる、この調査をしておる間にこの被害というものはどんどん進んでいっておるわけですよね。そして、調査があって、そこでやっとこうすべきだという方針を国が示しましても、そのときにはたくさんなる犠牲者が出てくるということだと思うのです。  そこで、今申し上げますように、地方自治体はいろいろな方法試行錯誤で非常に大きな悩みを持っておる。ところが、この今の地方自治体が持っておるいろいろな試行錯誤、それに基づきまするいろいろな対応、それだけではとても解決するというようなことは望めないと私は思うのです。  そこで、それなら一体今の状況はどういうことかといいましたら、要するに、乾電池を回収するとかなんとかしなければ、それが結局焼却場に持ち込まれて、そして大気水銀汚染をされる、あるいはまた大地に埋めれば当然それが結局地下水汚染をもたらす、こういうことですから、一体どうやったら一番よろしいのか。そういう意味で、地方自治体というものがいろいろ努力はいたしておりますけれども、それなら一体国はどういう責任を分担するのか、その辺が明らかでないですね。今、長官の回答では、調査をしておる。調査をしておる間にどんどん汚染は進んでいるわけです。そこにまだ環境庁としていわゆる役割というものが明示されてない。それが一つです。  それからもう一つは、自治体が模索をしながらいろいろ対応をしておるけれども、佐賀県とかあるいは大阪、京都、神戸とかいろいろなところが暗中模索しながら努力をされておるわけですけれども、しかし、それがみんなてんでんばらばらなんですよね。そういうことで、この地方自治体処理方法がばらばらでは、全国的な問題ですから、当然統一して政府が指導しなければならぬというように私は思うわけですが、それも行われない。ですから、今一番大事なことは、それぞれ地域で地方自治体努力しておるわけですから、それを全国的な立場で環境庁指導方針を示していく、この姿勢がないと、どの方法が一番よろしいか、ある県ではこの方法が一番よろしいということでやってみた、ある県ではこの方法が一番よろしいと思ってやってきた、そういうまちまちな対応では、本当の乾電池公害に対しまする防止の目的を達成するわけにはまいらぬと思うのです。  そういう意味で、一体国はどういう役割を果たしていくのか、これをひとつ明らかにしていただきたい。
  13. 上田稔

    上田国務大臣 お答え申し上げます。  まず、乾電池の中の水銀でございますが、今、これの処分方法といたしましては、一般の御家庭のごみの中にまぜて捨てられるということが多いのでございます。そうなりますと、ごみを燃やして処分をしていただくというときに水銀は空中に散布される、こういうことになっておるのが多いのでございます。そうなりますと、大気中に水銀がまざりまして、そしてまた雨とともに落ちてくるということに相なりますので、大気中の水銀というものが大変恐ろしいということになるわけでございます。しかし、この調査をさせていただきますと、本当に微量なものでございますので、今現在ではまだそういう心配はないのでございますけれども乾電池使用がどんどんふえてまいりますと、これはやはり非常に危険が起こる可能性がありますので、未然防止という意味におきましてこの対策を立てなければいけないということでございます。  それで、環境庁といたしまして、通産省の方とも御連絡をいたしまして、乾電池使用済みのものを回収するという手を考え、また、資源保護の上においてもそれを何とかできないだろうかということで、今研究をしていただいておるところでございます。今先生お話しのとおり、各府県におきましても、水銀は恐ろしい、早く手を打ちたいということでいろいろ対策を立てていただいておりますけれども、やはり回収したものが資源化できるようにしていって処分をしていかないと、なかなか大変ではなかろうかと思っております。現在では地中に覆いをして埋めるという処分方法をとらせておりますが、早く対策を立てたいと考えております。
  14. 河野正

    河野(正)委員 先般も環境庁皆さん方といろいろ討議をしたわけですが、環境庁の認識というものがいささか不十分ではなかろうかと思うのです。大臣は直接関係のある部下からお聞きにならなければわからぬわけですけれども担当の局はどうもこの問題に対して非常に軽視をしておる。  例えば、今大気中の汚染は大したことはないというお話でございました。しかし、中には、ごみ焼却場から出てくる排ガスの中の水銀濃度測定いたしますと、瞬間的であるけれども大気一立方メートル当たり一ミリグラムないし多いときは五ミリグラム、こういう高濃度を記録したことがある。それは、瞬間的ということですからしょっちゅう出ているわけではないでしょう。しかし、WHO世界保健機構の決めた許容指針によりますると一立方メートル当たり〇・〇一五ミリグラムでございます。そういたしますと、今申し上げますように、瞬間的といえども多いときは三百三十倍もの水銀汚染というものがある、こういう資料も発表されておるわけですね。ですから、それは瞬間的なことではないか、しかし、瞬間的なことであっても、それだけ大気汚染されているのですよ。  ところが、どうも環境庁は大したことないのだというようなお説のようでございますけれども、私はやはり、それが特異の測定といっても、少なくともそういう測定値が出てきたならば、その値に対しては重大な関心を持つべきではないかと思うのですよ。ところが、その点どうも環境庁担当者側は非常に甘く見ていらっしゃる、こういう感じを持つわけです。WHO許容指針よりも非常に大きく濃度が高まっておるという事態も出てきておるということに対してどういう責任をお感じになっておるのか、ひとつ所見を承っておきたいと思います。
  15. 林部弘

    林部政府委員 お答えいたします。  先生の御指摘のように、焼却工場排煙中に、瞬間的と申しますか、非常に短い時間ピーク値があらわれておるという報告の事例はございます。ただ、WHO一つのクライテリアの中で示しておりますがイドラインというものは、そういうピークレベルのことというよりは、一般環境大気中の水準がこの程度に保たれていることが望ましいということで掲げている数字でございますので、私ども一般環境大気中の水銀レベルを全国的に相当数測定地点において測定をした実績も持っておるわけでございますが、そういう数値と比較をいたしますと、WHO指摘をして提案しておりますような一つのガイドラインに比べますと、日本の現在の一般環境大気水準というものは非常に低い段階にとどまっておる。したがって、私どもといたしましては、定期的に測定監視をしてその動きを追いかけていく、また、全国的な調査の中で特に局地的な汚染が問題になるようなところがあれば、そういうところに対して重点的な対策を考えていく必要があるという組み立て方で臨んでいるわけでございます。  先ほどから先生の御指摘の、環境庁は何をしておるのかということにつきましては、一言で申しますと、一般環境大気中の水銀レベルがどういうような状況で推移をしておるかということについて測定監視をしながら、一方においては、いろいろな科学的な知見あるいは先生から御指摘がありましたような測定事例等を踏まえて、特に問題になるような局地的な汚染問題があれば、それに対して具体的な対応策をとっていく、そういう形で今まで取り組んできているわけでございます。  確かに、御指摘のように、ピーク値で申しますと、時間的に申しますと非常に小さいものでございますけれども、相当高い濃度で空気中に水銀が都市の焼却工場の煙突から出ているということがございます。私どもの認識としては、それが一般環境大気中で拡散をしてどういうレベルにとどまっているかというそのレベルWHOのガイドラインの値と比較をしながら、環境の監視をしているというのが現在の状況でございます。
  16. 河野正

    河野(正)委員 私は、冒頭に申し上げましたように、環境庁行政先取りをしてもらわなければならぬということですから、今の局長の答弁では満足できないですね。というのは、例えば瞬間的であってもやはり汚染の度合いが非常に強い、濃度が高いということがあった場合には直ちにそれに対して対応する。それを、局部的だから全体の一般大気中の汚染ではないのだということで手をこまぬかれるから、いざ問題が起こったときにあれよあれよという間に大変な事態になる、こういうふうに思うのです。ですから、率直に言って、私が申し上げたそういう事例もございますから、我々はさらにそういう事例に対する対応を十分検討しなければならぬ、これなら話はわかるのですよ。ところが、我々がやってみたらまだ大したことはないのだ、だからそういうデータがあるとか出ておるけれども、それは私ども将来の参考事項だ、これでは私は納得できませんよ。こんなことで委員会で審議が終わったら、何のための委員会の審議がよくわからぬですよ。ですから、今の局長の答弁では納得できませんよ。
  17. 上田稔

    上田国務大臣 ただいまの蓄電池、乾電池に対する水銀の後の始末について、先生から非常に動きが悪いという御指摘をちょうだいをいたしたのでございます。私どもも、この乾電池使用されております水銀を、何とかして被害を起こさないようにこれを処分をしてもらうようにしなくちゃいけないということで、懸命になって今対策を考えておるのでございますが、何分これはやはりそういう乾電池をおつくりになったところにおいて研究をしていただかないと、なかなかこの処分というのが難しゅうございまして、焼いても空中に出ていく、地下に埋めておくということにおきましてもまだ心配がある、こういうことになってまいりますので、早くもとの資源を利用できるように研究をしていただかなくちゃいけない、こういうことで、実は通産の方とよく連絡をいたしまして、また、廃棄物として出てまいります各地方公共団体とも連絡をいたしまして、その収集方につきまして、またそれの処分方法につきまして今やらせておるところでございますので、どうぞひとつその点をお願いを申し上げたいと存ずる次第でございます。
  18. 河野正

    河野(正)委員 私は、地方自治体、業界は業界で、きょうは通産省おいででございますから御見解を聞いておきたいと思いますけれども、それぞれが対応をやっておるけれども、国がそれを統一的な指導をしないと、全部てんでんばらばらで、所期の目的が達成されないということで、国の責任分野というものが非常に不透明になっておるというふうに思うわけです。  そこで、この際、一言通産省からもこの乾電池の回収の問題について御見解を聞いて、この問題を取りまとめてひとつ結論にしたいと思います。
  19. 広野允士

    ○広野説明員 お答えいたします。  乾電池環境保全問題につきましては、乾電池の中に含まれております水銀量が非常に多いものにつきまして、これは水銀電池でございますけれども形はボタンのような形をしておりますからボタン電池と言っておりますが、ボタン電池の回収を行うように、これは将来の環境汚染未然防止という見地から業界が自主的に行うようになったものでございます。回収に当たりましては、消費者の皆様、また電器店ですとかカメラ店ですとか補聴器の取り扱い店等の関係業界、また地方自治体等に協力を仰ぎまして、回収箱というのを小売店に設けまして、そこに消費者の皆様方に持ってきていただいて、それを販売のルートを逆にたどりまして回収をしてまいるというような措置を行うものでございます。これによりましてボタン電池が回収されまして、環境汚染に対します負荷量と申しますか、そういうものが少なくなってまいればいいのではないかと思っておりまして、通産省としましても、業界のこのような動きに対して、自治体あるいは関係業界あるいはマスコミ等を通じまして協力要請をいたしまして、支援をしてまいりたいと思っておるわけでございます。
  20. 河野正

    河野(正)委員 そこで、自治体も今懸命にこの問題の対応努力をいたしておるわけでございますが、それなら、一体、今通産省の方から業界に対する協力の問題が出てまいりましたが、自治体が一生懸命努力をすればするだけ今度は業界の方が怠けてくる。どうせ自治体が一生懸命やっているのだから、そういうあれがあります。それからまた、財界では、要すれば業界との関係もあるわけでしょう、この廃棄物の処理の責任というものは自治体だ、こういう言い方をしておるわけですね。責任のなすり合いをしているのです。そして通産省の方では、ボタン型の最も水銀の多い電池の問題に対していろいろお話がありました。ところが、このボタン型というのは小さいのですよね。ですから、これが家庭の廃棄物とか大きれば、筒型のいわゆるマンガンとかアルカリ型の電池とか大きくなると、家庭でも始末に困るのですね。ところが、ボタン型は小さいでしょう。これが一番水銀が使われておるわけですね。ですから、いろいろ業界で、回収しますとおっしゃいましても、これが一番家庭で廃棄物として捨てられる。わざわざ回収に応じてそれから販売店まで持っていくということがなくて、むしろ小さいから。大きければ、持っていては家庭で始末に困るものですから、持っていこうか、そういうことで回収の面で一番問題の多いボタン型の電池が非常に難しい状況下に置かれておるわけですよ。こういうことを考えると、いろいろ方針は出されておるけれども、これは方針は出してもそれを実行しなければ意味がないのですね。そういう意味で、今の御答弁に対しましても、私はそれで業界が非常に大きな役割を果たしていくということには相ならぬと思うのです。  そこで、これは厚生省が指導されたのかあるいは環境庁が指導されたのかわかりませんけれども地方自治体への指導の中で、とにかく埋めなさい、いわゆる大地へ埋めなさい。だから、地方自治体としてもその方針で、埋めることに最善の努力をいたしております、市長さんがこういうような答弁をした議事録を私は実は持っておるわけです。ですから、これは正直言って私はそのまま聞いたわけではございませんが、政府の指導によって泥の中へ埋めるという方針をとっておるのです、こういう答弁です。それでは、片端から埋めたら一体どうなるのか。そういう意味で、私はやはり国の統一した指針というものが必要だ、こう思っておるわけです。  それから、先ほど長官がおっしゃったように、再処理をやる。北海道等ではやられているそうですが、これをやりますと、かなり金がかかるわけですね。埋めたりそれなりに始末するよりも大体十倍以上の経費がかかる、こういうことです。  ですから、私はこの際、業界にも問題があると思うのですね、これは当然自治体がやるべきだという。それは通産省の指導によって回収方に努力いたしますと言っておるけれども、裏の方では、それは業界のあれではない、地方自治体責任においてやるべきだ、こういう議論があるということですから、やはり私は、この際、対応がまちまちですから、そこで、国としてこうやるべきだという方針をまず示すべきではないかと思うのですね。そういう意味で、どういう指導をお示しになるのか、ひとつこれは締めくくりでございますから、長官の方からお答えをいただきたいと思います。
  21. 上田稔

    上田国務大臣 先生にお答え申し上げますが、実は五十九年の一月に、これは厚生省の方と通産省の方と両省から、局長名によりまして器具メーカーの方に通達が出されておるのでございますが、それによりまして、いろいろ工業会においてその対策を至急に立てなさい、こういうことでございます。それによりましてまた工業会の方、つまりメーカーの方でございますが、メーカーの方におきましてもその対策をいろいろと考えておりまして、特にボタン式のものは先生御心配のとおり非常にごみの中に紛れやすいのでございますが、また一面、使用しておられる方々は、それは装着するときに非常にわかりにくいという点もありまして、販売店の方へ持っていって、そしてかえてもらわれるということが多いのでございます。したがいまして、ボタン式のものはそういう意味で販売店に回収しやすいということもまたあるわけでございます。したがいまして、そういうことを利用してボタン式のものは回収をしていただく。  それから、アルカリ、マンガン電池でございますけれども、それにつきましては、水銀使用量をひとつ減らしていこう、こういうことも今検討をしておって、三年後には必ず減らします、こういうことでやっておりますという御回答も来ております。  それから、今埋め立てのお話が出ましたが、そういう使用済みのアルカリ、マンガン電池につきましては、さしあたって今のところは埋め立てをしていただきたい、ただし遮へいをしてそして埋め立てをしてもらいたいというふうなことを言ってきておりますので、それに基づいて今各府県の方、関係者の方にお願いをしておるところでございます。
  22. 河野正

    河野(正)委員 それでは、行政としては埋めなさいという指導ですか。
  23. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 使用済み乾電池につきましては、これは一般廃棄物になるわけでございまして、一般廃棄物につきましては、現在、廃棄物処理法の体系に基づきまして埋立処分をするような最終処分の基準が設けられております。今大臣からもお答えいたしましたように、埋立処分をするに当たりましては、遮水工を設ける、それから集水管を設ける、そして最後に除害設備をつける、こういうふうな安全装置がついておるわけでございまして、そのためもあろうかと思いますけれども、現在のところ、公共水域で私ども測定監視をやっておりますが、アルキル水銀はもちろん、総水銀につきましても検出されておらないわけでございます。  ただ、先生指摘のように、自治体によっては、さらに一歩進めた対策として分別回収をやる。そして、その分別回収をしたものについてどういう処分方法をするか、所によってはコンクリートで固めるというようなことをやっておるところもあるわけでございまして、かような点につきましては、この廃棄物処理法ができた当時は予想されなかった事態でございまして、この辺は、厚生省におかれまして、五十九年度からこれらの処分についての広域処理システムの研究を進められているというふうに伺っておりますので、その研究結果等を見守って、私どもも対処してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  24. 河野正

    河野(正)委員 本当に石橋をたたいたようなことでは行政先取りはできませんよ。研究の結果を待って、研究の結果を待ってですね。その間、地方自治体は暗中模索していろいろな方法を考えるわけですね。そして、今、厚生省の基準もあるので埋没をという話がありましたが、それが国の方針ですかと私は質問したのです。そうしたら、今の局長の話では、それが国の方針です。こうなりますと、業界に対して、できるだけ回収してもらう、そういう指導はなさらぬのですか。それを業界に任せておったって、財界ではそれは地方自治体責任だと言っているわけですよ。だから、地方自治体でも一生懸命やっているけれども、財界から地方自治体責任だと言われても我々は納得できぬという反発があるわけでしょう。だから、政府の指導としては、今の法的な規制その他によれば埋没をしなさいということであっても、それはいついろいろな問題が出てくるかわからぬでしょう。だから、埋没だけでなくて、ドラム缶に電池を入れて、それをコンクリート詰めにして、そしてそれがたくさんになったものだから、今置き場所がない、そういう地方自治体もあるわけでしょう。ですから、とにかく埋めなさい、そのことだけが政府方針であってはならぬと私は思うのですよ。今の局長の話では、大臣にかわってそれをおっしゃったが、大臣は一体どう考えておられますか。ひとつこれは、大臣が最高責任者ですから、大臣見解を承りたいと思うのです。
  25. 上田稔

    上田国務大臣 先生指摘乾電池処分でございますが、先ほどお答え申しましたように、ボタン式のものにつきましては、そういうふうに使用者が非常に装着がしにくいものですから、販売をしておる販売店に持ってきてつけてもらうということが多うございますので、そういうときに回収をする、そして製造業者の方に持っていってそれを処分していただく、こういうやり方をとらしていただいておるのでございますが、もう一つのアルカリ、マンガン電池の方は、装着を皆御家庭でおやりになりますので、したがいまして、これは一般ごみの中に入ってくる率が多いのでございます。一般ごみになりますと、先ほど先生の御指摘のように、燃やしますから空気中に水銀が散布されるというおそれが非常に大きい、こういうことになりますので、これはぜひとも別途回収をしていただくということで、厚生省の方ではそういうような御指導をいただいておるようでございます。一般の地方庁の方もそういうように考えておやりをいただく。ただ、それが集まってきたときに処分するのに、それを資源化することができるような方策がとれればこれはいいのでございますけれども、今のところは何分、通達が五十九年に出ておりますのですが、まだたっておりません。したがいまして、今先生お話のとおり、被覆をいたしまして、そしてとりあえず埋めていただくということをやっていただく。その間に、処分といいますか、資源化の方法というものを検討して、それを実現できるようにする。また、このアルカリ水銀電池の中の水銀の量を製造の過程におきまして減らしていくということを考えるというような方策を今とっておるところでございます。
  26. 河野正

    河野(正)委員 お尋ねしまして、お答えに対して非常に私の方が憂慮しておる。そういう意味では非常に納得しにくいわけですね。というのは、もちろんマンガンあるいはアルカリ電池というものは、水銀を使うと長もちするのですよ。だから、簡単に減らせ、減らせと言ったって、過当競争ですから、あの電池は長もちする、あの電池は長もちしないというような問題もあるわけですね。ですから、簡単に、そういう指導をすればよろしいのだという腹づもりではこの問題の抜本的解決にはならぬわけです。  それから、今のボタン型の電池ですけれども、子供のおもちゃがありますね。これは今あのおもちゃに使っているのですよ。それは、補聴器だとかあるいはカメラとか時計だとかいろいろなところに使いますけれども、今子供たちがおもちゃに使っていますよ。だから、あれに何と書いてあるかと言ったら、もし子供がなめたりしたら、こことここに電話しなさいと書いてあるでしょう。ですから、そういう危険性があるということは業界も知っているわけですね。ちゃんとあれに書いてありますよ。もし子供がなめたりなんかしたときには速やかにこことここに電話しなさいと書いてある。ですから、長官がおっしゃるような今の認識では私どもは納得できない。ここで少し反省してもらって、もう少し精力的にこの対策を推進するというような決意を聞かぬと、今のままではちょっと納得できない。
  27. 上田稔

    上田国務大臣 そういう乾電池における水銀は、これは被害が起こらないように今の施策を大いに進めておるところでございまして、五十九年度にそういう処置をとりましたのもその一端でございます。これからもさらにその強化をして、そうして水銀の害が起こらないようにいたしたいと決意をいたしております。
  28. 河野正

    河野(正)委員 まだまだ申し上げたいことがたくさんございますけれども、時間があと五分ということですから、ちょっと予定を変更しまして、いま一つ、下水道をめぐっての公害問題を取り上げて政府方針を承っておきたいと思います。そういう意味で、きょうは建設省からも御出席いただいておると思いますので。  時間がございませんから端的にしか言われぬわけですが、下水道終末処理場にふたがないのです。処理場というものが全国に大体三百カ所ぐらいあるのです。あれは三つの段階に分かれておるわけですが、一番最終段階で乾燥したいろいろな細菌が舞い上がっていくのです。施設内で大体六六%菌が浮いている。処理場周辺では五九%ですね。要するに細菌が浮遊しておるわけです。風によりましては一キロあるいはそれ以上菌が流れていくわけです。これについては政府の方では全然お気づきではなかったんじゃないでしょうか。その点いかがでしょうか。一応大臣の方からお答えいただいて、その後建設省。時間ございませんから端的にお答え願います。
  29. 黒川弘

    ○黒川説明員 今御指摘の下水道処理場周辺のそういった問題については、各公共団体から、特に周辺の住民の方々の健康に関していろいろな問題があるというような報告あるいは趣旨は今までのところ聞いておりません。
  30. 河野正

    河野(正)委員 地方からそういう問題が上がってこなければ建設省は善処されないわけですか。お答えください。
  31. 黒川弘

    ○黒川説明員 下水道の整備につきましては、トイレの水洗化とか水質の保全ということで、公共団体、住民の方々と一緒になって鋭意努力しているわけでございますけれども、基本的に、下水道をつくる場合にはどうしても処理場の設置ということが必要になってまいります。その際、当然いろいろな意味で地元の方々の御協力をいただかなければいけないわけでございまして、悪臭防止法などに規定されております各種のアンモニアガスとかあるいはメチルメルカプタン、そういったものについては十分な対応を行っておりますけれども、そのほか具体的に周辺環境としての雰囲気ということも非常に重要でございまして、処理場の設置に当たりましては、処理場の植樹あるいは芝生を張るというようなことで、環境面についても十分注意して対応しているところでございます。
  32. 河野正

    河野(正)委員 この細菌問題に対して、地元民の協力を受けるといったって受けようがないでしょう、細菌問題ですからね。悪臭とかなんとかというのは、においが強いですよ、何とかしてもらえぬですかという周辺の住民の要望等があって改善するけれども、細菌問題なんかは全然わからぬでしょう。全国三百カ所の下水道処理場の中でこういう事例があるのです。大腸菌が主なようですが、一番汚いところから舞い上がるわけです。その他の細菌というものもある。こういう事実を知っておられたのですか、どうですか。
  33. 黒川弘

    ○黒川説明員 建設省では、いろいろ周辺環境の問題等を含めまして、実は、日本とアメリカで下水処理技術に関する各種の意見交換会を定期的に行っております。昭和五十五年に東京で三日間ほど相互交換が行われましたが、その際、アメリカの環境保護庁の(河野(正)委員「ちょっと時間がないからいいです、答弁が全く外れてしまっておるから」と呼ぶ)健康影響研究所の方からそういう発表が、物理的な影響があるというあれがございましたけれども、健康等については、受けるおそれはほとんどないという報告を受けておりました。
  34. 河野正

    河野(正)委員 下水処理場の施設の改善をしなければ、今申し上げますように、大腸菌を初めとするいろんな細菌というものがその周辺あるいは風が吹けば一キロ以上まで浮遊しておる、この事実を知っておられるかどうですかと言っているのです。アメリカとかなんとかいう問題じゃないですよ。日本の問題ですよ。
  35. 黒川弘

    ○黒川説明員 大腸菌については、いわゆる水質等につきましても生活環境項目として規制されている項目でございまして、そういった影響といいましょうか、それとの因果関係…(河野(正)委員影響じゃないですよ、そういう事実があることを知っておるかどうかを聞いているのじゃないですか」と呼ぶ)大腸菌が物理的な意味大気の中に飛散しているものもあるということについては承知しております。
  36. 河野正

    河野(正)委員 それはどういう根拠によって御承知ですか。
  37. 黒川弘

    ○黒川説明員 先ほどのアメリカからの報告の中にそういった事柄も載っております。
  38. 河野正

    河野(正)委員 アメリカじゃないですよ。日本の終末処理場の、三百カ所全国にあるんですよ。それが、そこにふたがないために今のような細菌というものがどんどん浮遊しておる。それは目に見えぬ形で住民に対して被害を与えるわけでしょう。それを知っておったかどうかと聞いているのです。イエスかノーか言いなさい。
  39. 黒川弘

    ○黒川説明員 健康との関係では、そういったことで何か問題があるという報告は、先ほど申し上げたとおり受けておりません。
  40. 河野正

    河野(正)委員 健康と関係があるかないかじゃなくて、そういう細菌というものがうようよ大気中で浮遊しておるわけですから、そういう事例を知っておられたかどうかと聞いておるわけです。もう時間がないですから、それだけ答えてください、イエスかノーか。
  41. 横山利秋

    横山委員長 簡潔に答えてください。
  42. 黒川弘

    ○黒川説明員 先般の朝日新聞によりまして、大気中の一立方センチメートル当たり三十一個以上浮遊している場所が、先生先ほど御指摘の数字として掲載されております。
  43. 河野正

    河野(正)委員 掲載されておるのじゃなくて、そういう事実をお知りになったならば、どういう方針で今後臨んでいかなければならぬかということになるのです。ところが、全く今の建設省のお答えでは了解できません。これはいずれ私は別の機会にやりたいと思いますが、長官、ひとつその点について御見解をお聞きしておきたい。
  44. 上田稔

    上田国務大臣 ただいま建設省からいろいろお話がございましたが、大気中にそういう大腸菌が一部入って飛んでいくということは、これはもう十分考えられることでございますので、これに対する対策として、建設省ともよく御連絡をして決めていきたいと思いますが、建設省では、最近はそういうものの上を被覆して、その上を緑にしていくというようなことも考えてやっておるところも出てきておりますので、こういう対策をも考え、また、今までエアレーションといいまして空気に下水をさらすといいますか、そういうことによって細菌を殺していこうという方法も前はあったわけでございます。例えば三河島なんかは、たしかそういうようなやり方をとっておったと思うのですが、そういうことから、実は下水処理場というものをなるべく都市部から離していこうというようなことも前はとっておったのでございます。しかし、後で人口がふえてきて周辺にもお出になられたということもございますので、こういうようないろいろな対策を考えて私どもも一緒になってやらせていただきます。対策を立てます。
  45. 河野正

    河野(正)委員 きょうは非常に不十分です。不十分な点はいずれ後日再検討していただく、議論させていただくということで、あとは留保いたします。  終わります。
  46. 横山利秋

  47. 島田琢郎

    島田(琢)委員 今、国民的な期待といいますか、あるいはまた地球規模の問題としてとらえてもいい緑の問題というのが大変重要な課題になっております。私は、過般予算委員会でも緑の問題、特に山づくりの問題について政府側の対応の手ぬるさに対して厳しく追及をいたしました。しかし、どうも私が心配しております以上に我が国の山の現状というのは大変荒廃の方向に向かって進んでいる、こういうふうに見ることができるのではないか、こう思います。特に、国土の保全つまり環境保全という立場からいいますれば、緑の保護というのは環境庁の重要な責任であり対策でございましょう。特に、国有林野の保全とか育成という問題というのは、大変国民財産であり、また、我が国の今後の経済的な、あるいはまた国民生活にとって必要な水とか空気とか、あるいは環境の保護とかといったような側面から、公益的な機能という立場、こういうものをしっかりつくり上げていかなくてはならない、そういう対策というのが極めて緊急性を要する問題だと私は思うわけで、これはいささかもおろそかにすることは許されない、こう思うのです。  そういう立場で、国有林に対する環境庁の持っておりますお考え方、あるいは林野庁からもきょうは林政部長も見えておりますが、両方から今の国有林の問題に対しましての御見解をまず最初に伺っておきたい、こう思います。
  48. 上田稔

    上田国務大臣 お答えを申し上げます。  緑の保全ということにつきましては、本当に今地球の上において大変な問題になってきておりまして、環境庁といたしましては、これの保全には非常に力を入れて、そして世界各国と連絡をしながらやっていかなくてはいけない、こういうことで考えておるのでございます。  さて、今の御質問の、国有林野についてどうだということでございます。国有林野につきましては、実は私ども環境庁の分野になっております自然公園、つまり国立公園と国定公園また府県立の公園でございますが、そういう自然公園の中の四割ばかりがもう既に国有林でございます。その国有林に対しましては非常に制限をつけさせていただきまして、そしてこれをみだりに皆伐するというようなことのないように、それを保存していただけるように実はやらせていただいておるところでございますが、何分国有林の方、これは林野庁の方でございますが、おやりをいただいておりますので、そこと十分連絡をして、今先生の御注意のありますようなことが起こらないように、環境を十分に保護できるように、特に治水上の問題もございますので、そういう問題が起こらないように注意をしてやっておるところでございますし、これからもやらせていただぎます。
  49. 甕滋

    ○甕説明員 我が国の面積の七割が先生御承知のとおり森林でございまして、そのうち国有林が三割強を占めている現状にございます。また、その・置かれている地理的な条件からいたしましても、国有林が、国土の保全はもとよりでございますが、環境保全上重要な役割を果たしているものと認識をしております。そのため、その管理運営に当たりましては、計画的な森林施業を通じまして健全な森林の維持造成に努めているところでございますが、今後ともその方向で努力してまいるつもりでございます。
  50. 島田琢郎

    島田(琢)委員 国有林の置かれている現状は、私もこの前の予算委員会の総括で相当の時間をかけてお話をいたしましたし、環境庁長官は篤とその辺は御理解をいただいているものだと、こう思います。ぜひ、そうした山づくりの基本であります国有林が国民の期待にしっかりこたえる山づくりであってほしい。私は、人一倍国有林に対する心配を持っている一人だ、こう思っておるのであります。  そこで、国家財政が非常に悪化をしている、こういう状況のもとで、国有財産であります国有林というのは大変貴重な存在であること、これは疑う余地がありません。したがいまして、環境行政という立場からと、もう一つは我が国の経済的な側面、こういう両側面から見まして、先般も大臣お聞きだったと思いますが、国有林を現在の時価で見たら一体幾らぐらいあるか、こういう質問をいたしました。覚えていらっしゃるでしょうか。林野当局からは、二十五兆円という数字が、計数的に積み上げてまいりますとそれくらいの価値があると思っております、こういうふうに答弁がなされている。大変なものであります。一年の予算規模の半分二十五兆円、これくらいの価値を持っているわけでありますから、国有林というのは大切にしなければならぬ、言うまでもないことであります。  ところが、その払い下げや交換といったような事態で、思わない損を招くなどというような事態が発生をするということになりますれば、これは直ちに国家的な損失になるということになるわけであります。国民的な損失と言い直した方がいいでしょうか。それはあり得べからざることでありまして、そういう原則というものをきちっと踏まえて、いやしくも、国有林は国民財産であって、その払い下げや交換に当たって損をするなどというようなことは許されない、このように私は考えているのでありますが、この際、大蔵省から私の考え方に対して意見があれば聞かしてほしい、こう思います。
  51. 田中誠二

    ○田中説明員 お答え申し上げます。  国有財産は、先生もおっしゃるとおり、国民共有の資産であり、国の重要な財産でございますので、処分するに当たりましては、公平かつ適正に行われなければならないことになっております。大蔵省といたしましても、従来からこの点につきまして十分意を用いておりますが、今後とも適正に処理していきたい、こういうふうに思っております。
  52. 島田琢郎

    島田(琢)委員 ところで、最近の新聞紙面を大変にぎわしている事件がございます。つまり、五十億円というとてつもない使途不明金を出して、今社会的な責任が追及されております福島交通、とりわけ福島交通社長小針暦二氏の絡んだ問題というもの、これは、私は、今それぞれお答えいただきました大臣初め皆さんのお考えに対して大変逆行するものである、こういう考えを持っております。  その一つの例として、けさ朝日新聞にこんなに大きく出ました。これは大分古い話でありますけれども、当時、国有林と民有林の交換が行われた。あろうことか、そこに政治家が介在している。しかも、交換された山、つまり国有林の経営に属しております新潟県の山林は、その後は一つも手入れがされないばかりか荒れほうだい、こういう状態になっているのでありますが、この件についてお伺いをいたしたいと思います。
  53. 甕滋

    ○甕説明員 ただいま先生から御指摘がございました、けさの新聞にかかわる国有林の交換事案の件でございますが、これは、栃木県の那須にございます国有林と新潟県に所在します民有林との交換の事案で、昭和三十九年と四十年の二回にわたりまして前橋営林局で行われたものでございます。  交換で取得いたしました新潟の方の受け財産が四百二十五町九反六畝二十二歩、評価額で八千六百十八万六千百円でございます。これに対して、交換に供しました那須の方でございますが、渡し財産が三百七十町九反三畝十二歩、評価額八千七百九十九万九千七百円でございまして、交換差金が百八十一万三千六百円という記録になってございます。これは、新潟の方で取得いたしました受け財産が、奥地に所在するけれども造林地としても適地である、既存の国有林ともあわせ管理経営することができるということが判断されまして、また那須の方は、林地としての生産性が低いこともあり、国有林として管理経営する必要性が乏しい、こういう考え方からいたしまして本件の交換を行ったという経過でございます。  交換によりまして取得いたしました財産のその後の管理がずさんではないかというお話でございましたが、この受けました森林のおおむね半分がアカマツの人工林でございまして、半分がナラ、ブナ等の天然林の森林でございました。いずれも取得当時十年から二十年生の山でございまして、アカマツの人工林の方につきましては、下刈り、除伐等の手入れ作業を現在まで行ってきておりまして、また天然林の方も、天然林にふさわしい施業で今日まで管理運営をしてまいっているところでございます。
  54. 島田琢郎

    島田(琢)委員 けさの新聞の内容について、林政部長はほぼお認めになったわけであります。  実は、これは大分古いことになりますが、四十一年に参議院の決算委員会におきまして我が党の大森議員が取り上げまして、その後質問が保留になったまま今日に至っているわけであります。しかも、今林政部長が後段のところで述べられておりますが、交換された山の手入れが本当にあなたのおっしゃるような形になっているかと言えば、決してそうではない。  そもそも私が冒頭で、国有財産の問題でありますから、そこにいささかも損害をこうむるような事態があってはならぬ、こういうふうに主張いたしましたのに対して、大蔵省のこれを管理する課長も、そのとおりだと答えているわけであります。私は、今のような国有林の現状というものは、林政部長のような言い抜けで済まされる問題ではないと思うのです。しかも、等価交換。確かにおっしゃるとおり、ほぼ百八十万ほどの差でありますから、ほぼ等価交換である。表向きはそうでありますけれども、当時の関係者が新聞のインタビューに対して答えているこの交換に至るまでの経緯についても、私どもは、調査の結果ほぼ明らかだ、こういうふうに思っております。  そういたしますと、これは大変な問題を含んでいるというふうに思います。とりわけ交換された那須は、当時別荘のブームでありまして、大変な値上がりをすることが見込まれていた、あるいは有利な販売が考えられていた。そういう状況のもとで、驚くべきことに一坪、当時の売買で言えば一坪で、現在の三・三平米当たりでありますが、わずか六十数円で実は評価されている。ところが、その後この小針社長は、交換されたらすぐに藤和不動産へ総額九十億円で転売しているのであります。これはもちろん交換された国有地ばかりではありません、隣接する土地も含めての値段であります。しかし、このときの平均の坪単価というのは四千円であります。六十四、五円で買った土地を四千円で、何十年もたった後で売っているのじゃありません、半年か一年の間に転売している。つまり、売買が成立している以上は、その価値がここにあったということであります。それが見込めなかった、まさに大きな損害をここでこうむったわけであります。それは昔の、前任者や先輩のやったことだからおれら知らぬと言って済まされる話ではないと私は思います。単価で比較いたしましても、実に六十数倍という値段で、ほとんど一年以内にこれが売買されている。大変なもうけをしたということになる。それぐらいのことはやりかねない小針社長でありましょうけれども、逆に言えば、交換によって国が大損をしたということであります。  それは当時の九十億ですよ。今から二十年前の九十億ですから、今の円価値からいいますと恐らく数百億円になるのではないかと私は思う。取り返しのつかない国家的大損をたった一人の暗躍、あるいはその裏に随分たくさん政治家が介在していたようであります。こういうばかげたことが行われたという事実に対して、その後不思議なことに、いずれの当局からも、この問題に対するその後の扱いや結果について報告されていない。改めてここで国民的な疑惑にこたえる責任国会にある、こういう立場で私はこの問題を取り上げました。本当は予算委員会でこれを取り上げたかったのでありますが、私も事実関係調査に少し時間がかかりました。たまたま私が考えておりました疑惑に満ちた小針社長の周辺が最近社会的な話題になってまいりましたので、この機に私の調査の全貌について国会で明らかにすることによって、ぜひこの疑惑を解明したい、こう思ってきょうはこれを取り上げたわけでありますが、今林政部長が話しておりますアカマツの植えられている造林地というのは、当時の林野庁長官の答弁によりますと、大変成績がよくて、将来に対しても生産性向上の見通しが明るい地域である、こういうふうに断定しているのですね。ところが、現実はどうなっているかというと、まず荒れ果てた状態になっている、当時よりも変わり果てた現状になっている。これでは、当時大森議員の質問に対して答えている政府責任というものが一つも果たされていないばかりか、極めて無責任だということになると思うのです。許されることではないと思うのです。あなたの方はどういう事業計画をお持ちになっているかわかりませんが、私の調べた施業計画あるいは施業案によりましても、ほとんどこれに手が加えられている事実がない。加えられているとすれば、アカマツのところの雑木を少し切ってアカマツ林らしく見せかけるような施業が行われている。これが果たして施業計画によって行われたものかどうか私はわかりません。この辺のところは、その後のこの山の扱いについて、あるいはこの施業計画について、あるいは実際に事業を興したとすれば、何年にどのような事業を興しているのか、やっているのか、その点について後で資料として委員会に提出されるように、委員長にもお願いを申し上げておきたいと思います。  確かに少しばかり植林された形跡はございますが、ほとんど雑木林のままに放置されている。この現実に対してどうお考えになりますか。もう時間がありませんから一言で答えてください。
  55. 甕滋

    ○甕説明員 交換で取得いたしました森林の現況は、先ほどもちょっと触れましたが、取得時点で十年生から二十年生の人工林あるいは天然林でございました。おおむね二十年たっておりますので、三十年から四十年生の人工林につきましてはアカマツ、杉の二百六ヘクタール程度の現況でございまして、また天然林の方はコナラ、ブナを主体とする二百ヘクタールといった状況でございます。  資源の状況は普通ヘクタール当たりの蓄積で言っておりますが、八十八立方メートル、交換当時が七立方でございましたから、豪雪等の厳しい自然条件のもとにおきましてはまずまず順調な生育かとも思っております。また、天然林についても、交換当時の十一立方メートルから現在五十五立方メートル程度と蓄積が増加してございますが、いろいろ厳しい自然条件の場所でございますので、手入れ等につきまして難儀する点があるわけでございますが、林野庁としては、その保育、管理に当たって、適正な管理に心がけてまいったところでございます。  なお、その状況等につきましては、御要求がございましたので、後ほどお示ししたいと思っております。
  56. 島田琢郎

    島田(琢)委員 ところで、このけさの新聞で林野庁の関係者も証言をいたしております。先ほどの小針氏の裏工作といいますか、そういうものとこれは深い関連があるわけであります。この点については責任を持って答える義務があると私は思うのです。いかがですか。
  57. 甕滋

    ○甕説明員 けさの新聞にございましたような政治家の介入によります不当な交換ということにつきまして、先ほど先生がお触れになりました四十一年でございましたかの大森議員の御質問の際にも、当局の方から、それは全く知っていない、こういった答弁がございましたが、私どもとして、本日の記事も初めて読んだわけでございますけれども、関知していないところでございます。
  58. 島田琢郎

    島田(琢)委員 これだけのことが載ったのだから事実関係を明らかにする責任があると思うがどうだと聞いているのです。こういう事実はないというのですか。
  59. 甕滋

    ○甕説明員 きょうの新聞に具体的な関係者の名前も挙がっておりますので、私どもの方で話を聞いてみたいと思います。
  60. 島田琢郎

    島田(琢)委員 その結果は本委員会に報告されるよう、委員長、これもお取り計らいをいただきます。  さて、いいかげんな当時の答弁一つとっても極めてずさんなやり方がここに明らかになりました。今や行革だ、増税だと国民に大変負担をかけていかなければならぬと財政当局が言っているわけですね。そんなときに、こんな巨額な損失が実は生まれているわけであります。過去のものだと言って済まされる内容ではありません。こうした政府責任というのは私は厳しく追及されなければならぬと思う。  大蔵省、この損失、今までの経過、それからこの新聞に明らかになっている点、どのようにしようとお考えになっているか、その考えを聞かせてほしい、こう思います。
  61. 田中誠二

    ○田中説明員 今お話しになっておりますのは特別会計所属の国有財産でございますが、特別会計所属の国有財産の売り払いにつきましては、国有財産法第十四条の規定によりまして大蔵省に協議することになっております。それで、当時財務局がその件につきまして審査をし、当時問題ないということでお答えしたという経緯はございます。我々は国有財産の有効活用につきまして従来から各省庁に推進するように要請しているわけでございますけれども、国有財産の有効活用の見地から十分事情を聞きまして適切に対処したい、こういうふうに思っております。
  62. 島田琢郎

    島田(琢)委員 それでは、林野庁、それから大蔵省の今後の対応を見守りながら、この件は引き続き当決算委員会において真相の究明、それから疑惑の解明に全力を挙げて取り組んでいきたい、私はこう思いますので、特に農林、大蔵両省に積極的な協力をしてもらうことを心からお願いをしたいと思います。  なお、委員長にお願いがございますが、きょうのこの問題に対しまして、新聞紙上にも出ております何人かの証人あるいは参考人となるべき人たちがおります。私は、この際、この国民的な疑惑を解明するという責任が当委員会にあると思います。積極的にこれに対応するという姿勢をぜひ委員長のもとでおつくりいただきたい。そのためには、小針社長の証人喚問、あるいはこれに関係いたしました当時の関係者の参考人としての国会招致、この件についてぜひ実現できますように特段のお力添えをいただきたいと思うのですが、お願いできましょうか。
  63. 横山利秋

    横山委員長 先ほどの資料要求につきましては各省承知をいたしました。  ただいまの参考人等の御希望につきましては、理事会に諮りまして御相談をいたします。
  64. 島田琢郎

    島田(琢)委員 お願いして、本日はこれで終わりにいたします。
  65. 横山利秋

  66. 玉城栄一

    玉城委員 きょうは決算委員会で、環境庁決算について伺いたいわけでありますが、五十六年度決算環境庁不用額が諸謝金について出ております。これは多過ぎますので、その理由について伺いたいわけであります。  それで、五十六年度の諸謝金のうち不用額三千三百二十九万八千円、三二・一%。ところが、その前の五十五年度もやはり不用額が三千三百三十九万九千円、三二・九%。さらにその前の昭和五十四年度決算を見ましても、不用額は三千八百八十万六千円、三九・四%、約四〇%弱。このようにずっと毎年諸謝金について多額な不用額が出ているわけですが、それについての理由を伺いたいと思います。
  67. 廣重博一

    廣重政府委員 お答え申し上げます。  御指摘の諸謝金の環境庁昭和五十六年度分の金額で申し上げますと、環境庁全体で予算額が一億三百七十万円余でございまして、これに対しまして決算額が七千四十万円余ということでございますので、不用額が三千三百二十九万円余ということになってございます。  それで、環境庁では所管行政の性格から、環境保全のための各種施策の立案や基準づくりを行うなどのために、非常に広範な学問分野におきます専門的あるいは技術的な検討会を数多く開催する必要がございます。御指摘の諸謝金は、これらの会合に参加されます学識経験者の方々に対しましてお支払いしているものでございますが、実際には専門的な検討が予定どおりには進めがたくて、検討会の開催回数が当初計画を下回っております場合や、あるいは非常にお忙しい方々が多いために参加されます委員の数が予定より少なくなる場合等がございまして、不用額を生じているものでございます。  それで、五十七年度不用額でございますが、これは五十六年度に比較いたしまして減少はしておりますが、約二千八百九十八万円余の不用額を生じております。それから五十八年度につきましては、いまだ執行途上にありますので決算額は明らかではございませんが、いずれにしましても、適切な執行に今後とも努めてまいりたいと考えているところでございます。
  68. 玉城栄一

    玉城委員 その理由としまして、学者の諸先生方、予定どおり研究会とか検討会が開かれなかったとか、委員先生方が忙しくておいでにならなかったとか、それで毎年三分の一あるいは四分の一近い不用額を出しているわけですね。理由はそういうことですね。  環境庁として研究会それから検討会あるいは審議会というものを一体どれくらいのものを持っていらっしゃるのですか、ちょっと数をおっしゃってください。その数で、例えば五十六年度決算不用額が出ましたが、その全部の検討会、研究会の数のうち、予定は何回開くべきものが何回しか開かれなかったか、あるいは先生方が出るべきのが本来どれくらいだったけれどもどれだけ出席しなかったとか、それをちょっと説明してください。まず、その全体の数からはっきりした数をおっしゃってください。
  69. 廣重博一

    廣重政府委員 検討会の数でございますが、五十六年度環境庁で設置しておりますのが約百数十あろうかと思います、予算上はこれより若干多い形であったかと思いますが。それから、今御指摘のとおり、別途審議会もあるわけでございますが、これらを押しなべましてそれぞれ年間三回ないし四回が平均的かと思いますが、それらが若干ずつ場合によってものによって開催回数が少なくなっているとか、委員先生方が非常に御多忙で御参加になっていないものがある、こういったことが積み重なりまして御指摘の数に相なっているということでございます。
  70. 玉城栄一

    玉城委員 今、検討会、研究会百数十幾つかあるとおっしゃいましたね。そういういいかげんな数字でなくて、環境庁が持っていらっしゃる金なんですから、きちっと幾つあるのだ、そういうことをちゃんと把握していらっしゃらないから、こういう不用額が出てもそれに対する対応もいいかげんなものだと思うのです。それで、この場でなんでしょうから、研究会が幾つあり、検討会が幾つあり、審議会が幾つある、そのうち五十六年度の場合であればどれだけ開くべきであったものがとれだけしか開けなかった、そして、大変お忙しくていらっしゃらなかったという数でいいですから、この場合五十四年からずっと不用額が出ていますから、それを資料で出していただきたいと思うのですが、委員長、いかがでしょうか。
  71. 横山利秋

    横山委員長 会計課長、いいですか。どうぞ。
  72. 廣重博一

    廣重政府委員 膨大な作業を要する面もあろうかと思いますので、後ほど調べまして御報告させていただきたいと思います。
  73. 玉城栄一

    玉城委員 膨大にはならないでしょう。持っていらっしゃる数はわかるわけでしょう。五十六年度であれば何回しか開かなかったのだ、それを膨大な資料を調べなくちゃわからないのですか。
  74. 廣重博一

    廣重政府委員 正確を期するために実績をチェックさせていただきたいと思います。
  75. 玉城栄一

    玉城委員 それじゃ、ちょっとお伺いします。それはあなたでは御無理でしょうけれども環境庁の主宰していらっしゃる審議会、検討会、研究会は環境行政の中でどういう位置づけにあるのですか、それをおっしゃっていただきたいと思うのです。
  76. 加藤陸美

    加藤(陸)政府委員 お答えいたします。  環境庁におきましても、これは各省におきましてもよく似た形でございますが、中央公害対策審議会を初めといたしまして、瀬戸内審議会等ございますが、中央公害対策審議会は、御承知のとおり各部会構成になっておりまして、総人員八十名という大きな審議会でございます。したがいまして、その開催云々となりますと、各部会ごとの開催でカウントしなければならぬことになると思いますが、まずはそういう審議会、これは法律に基づいて環境行政の諸施策を御審議、御検討いただくものでございます。  それから、百数十と申し上げておりますのは、各行政分野、つまり大気あるいは水質あるいは自然保護それぞれの分野におきまして、さらには企画調整という総合調整的な業務もあるわけでございますが、これらの諸施策に関連いたしまして、あるいは総合的な検討もございますけれども、比較的数が多いのは、例えば地下水の問題につきましてその汚染状況調査等を現時点ではやっておるわけでございますが、こういう個々の分野につきまして、専門家の先生方、大学の先生とか各研究所の研究に携わっておられるその道の専門家あるいはお医者さん等をお願いして研究会を持っております。これは法律に基づくものではございません。専門的な御意見を賜る、あるいは御研究を教えていただくというようなものでございます。  したがいまして、その位置づけと先生は御質問でございますが、法律に基づく行政施策を策定していくについての前提となるような御意見、御答申をいただく審議会、それから、個々の施策にはもちろん関係はいたしますけれども有害物質が一体どの程度存在し、どの程度環境影響を与え、さらには人体影響がどの程度あるかというような問題について個別に御検討いただくのがその個々の検討会なり研究会でございます。位置づけとしては、そういうところでございます。
  77. 玉城栄一

    玉城委員 ですから、今おっしゃいましたように、法律に基づくものではないけれども環境行政を推進する立場からいろいろな専門家の方々の御意見を聞いて、その前提として、環境行政の土台、支えみたいなものですね。ですから、これは開いてもいいし開かなくてもいいというようなもの、三〇%ないし四〇%不用額を出しているこの結果からすると、これはどっちでもいいんだというような感じのものと受け取っていいのですか。
  78. 加藤陸美

    加藤(陸)政府委員 総体的に申し上げまして、先生の御指摘の開いてもいい開かなくてもいいというようなものではございません。これは明確にそうでございます。ただ、回数がその当該年度内に何回になるかというのは、これは予算等執行の関係でございまして、もう先生御専門でございまして釈迦に説法でございますが、年間この程度の回数が必要であろうという見積もりどおりに開かれるかというところが食い違いの原因でございます。その回数と、これは毎年あらかじめ予定されておるものについての審議、御検討というのももちろんございますが、御承知のとおり、環境問題につきましては、かつ、大気あるいは水あるいは自然保護の問題につきましては、その関係での特殊なといいますか、突発的など言った方がいいかもしれませんが、そういう種類の問題も出てまいります。それから、検討を続けていただきましても、例えば各学者の先生方にお願いしておるものにつきまして、それぞれ諸調査を踏まえて御審議、御検討いただくようなものもございます。調査の進行状況によっては、ある年に何回も開いても結論には直ちには達しない、翌年度にした方が効率的であるというようなケースも間々あるわけでございまして、この辺のところを御推察いただきたいと思います。
  79. 玉城栄一

    玉城委員 いろいろおっしゃっておりますけれども、結果としましては五十四年から、皆さんから出していただいたデータ上からしますと、不用額が相当額出ているわけですよ。したがって、それに伴って委員手当、委員旅費も不用額が出ていますね。ですから、そういうどっちでもいいというようなものではなくて、そういう必要性があって予算も組んでいらっしゃるわけですからね。  ところが、おっしゃいましたように、例えば中央公害対策審議会の委員にしましても、八十名とおっしゃいました。部会が七つないし八つ大きいのがありますね。一つの部会に所属している委員先生は二十三名で、あとの五十七名の先生方は複数ですよね。しかも、四つから七つの部会を担当していらっしゃる先生が十八名もいらっしゃるわけですね。これは我々素人から見ましても物理的に不可能な面がありますよ。それから、いろいろな委員先生方の名簿を二、三いただきましたけれども、どの委員会、検討会、研究会にしましても、これは国民生活に非常に重要な審議をして検討していただく委員会でなくてはならぬと思うのですが、その先生方というのは極めてお忙しい先生方ですね。ですから、これは不用額、開かれない、多忙というのは当然最初から予測できるわけでしょう。これはまさに有名無実というのではないですか。まさに環境行政怠慢だと私が指摘しても、これは皆さん方、返す言葉はないと思いますよ。  ですから、せっかく環境行政を支える位置づけとして非常に大事だとおっしゃるならば、それが本当に機能するように、出席できるような、そういうものをきちっとされた上で先生方にお願いする、そういうことをしていただかないと、毎年こういう状態で、そうしますと、これは私も非常に懸念しますけれども、財政当局からこれはもう削られていきますよ。しかし、環境行政非常に大事であるだけに、皆さん方しっかりやってもらいたいというのが私の質問の趣旨ですけれども、それはどうですか、簡単でいいですから。――長官からお答えいただきたい。今お留守だったのですが、諸謝金とかいろいろなものの不用額が毎年たくさん出ているのです。ですから、これは本当に機能するような検討会とかそういうものをきちんとやっていただきたいというのが私の質問の趣旨ですが、いかがですか。
  80. 上田稔

    上田国務大臣 お答え申し上げます。  この諸謝金の不用額を出しまして大変に申しわけございません。私どもも、非常に貴重な税金の中から、予算の中からちょうだいをいたしたものでございますから、その計画を十分に立ててやらしていただいておったところでございますが、五十六年度におきましては不用額を相当出しまして申しわけないのでございます。今後そういうことのないようにということで、十分にいろいろの調査を進めて、そして不用額の生じないようにさせていただきたいと念願をいたしております。どうぞよろしくお願いをいたします。
  81. 玉城栄一

    玉城委員 これは環境行政の非常に大事な部分だと思いますので、ぜひ機能するようによろしくお願いしたいと思います。  次の質問は、この間、大阪空港訴訟が十四年ぶりで全面和解成立をいたしたわけでありますが、環境行政担当される長官とされて所見を伺いたいと思います。
  82. 上田稔

    上田国務大臣 お答えを申し上げます。  三月十七日でございますが、大阪地方裁判所におきまして和解成立をしていただきました。環境庁といたしましても本当に喜ばしい、ありがたいことだと思っておるのでございます。また、夜の九時以降のダイヤにつきましては、運輸省の方におきまして、これを組まない、設定しないということをお決めいただいたのでございます。これも大変結構なことだと考えております。今後とも関係省庁と十分に連絡をいたしまして、そうして、環境基準の達成に努めていきたいと念願をいたしております。
  83. 玉城栄一

    玉城委員 そういうことで、航空機騒音というものが、その周辺地域に住む方々の生活権とか、生徒児童に対する学習権とか、いろいろなそういう侵害があるということをやはり裁判所側も国側も認めて和解ということになったと思うわけです。それで、今後、環境庁とされても、関係省庁と話し合いをして環境基準の達成に努めていきたい、こういうことでありますが、ほかにも航空機騒音訴訟が相当ありますね。それはどこどこであるのか、それをお伺いいたします。
  84. 林部弘

    林部政府委員 お答えいたします。  各地で訴訟が起こっておりまして、例えば自衛隊の関係で申しますと、小松基地、横田基地、厚木基地、嘉手納基地等において訴訟が起こっております。
  85. 玉城栄一

    玉城委員 局長さん、自衛隊並びに米軍も含まれておりますね、嘉手納ですから。航空機のそういう公害訴訟について、今の大阪以外も起きているわけでしょう。局長さんとしては、こういうことについてどのように考えていらっしやいますか。
  86. 林部弘

    林部政府委員 私どもといたしましては、直接この訴訟に参加をしている立場でございませんので、しかも現在いずれも裁判は係争中でございますので、裁判そのものについてのコメントは差し控えさせていただきたいと思うのでございますが、一般的に申し上げますれば、公害に関する紛争でございますから、できるだけ速やかに解決されることが望ましいというように考えております。
  87. 玉城栄一

    玉城委員 環境庁とされては、公害対策基本法第九条によって、「生活環境保全し、人の健康の保護に資するうえで維持することが望ましい航空機騒音に係る基準及びその達成期間」というものを示していらっしゃるわけですね。これは簡単でいいですから概略どういうことなのかおっしゃってください。
  88. 林部弘

    林部政府委員 航空機騒音につきましての環境基準の概要でございますが、これは公害対策基本法の第九条に基づくものでございます。これは御案内のとおりでございます。航空機騒音につきましては、四十八年の十二月二十七日に定められたものでございます。  その中身といたしましては、基準値と達成期間というものが飛行場の区分ごとに定められておるという形になっております。  それで、基準につきましては、地域類型というのがございまして、住宅地とそうでないところということで、類型によって七十Wと七十五Wという定めが一つございます。  それから、達成期間の方は、これは飛行場が一種とか二種とか三種とかいろいろございまして、御案内のようにそれぞれに応じて、「直ちに」、「五年以内」、「十年以内」、あるいは「十年をこえる期間内に可及的速やかに」、そういうような定め方でございまして、「十年以内」とか「十年をこえる期間内に可及的速やかに」というような期間の場合には、中間的な改善目標というものが定められておる。自衛隊関係は公共用の飛行場の区分に準じてそういった基準の達成維持に努める、そういう形になっております。
  89. 玉城栄一

    玉城委員 そういう基準を示しまして、環境庁とされてはいろいろ各地域の状況というものは当然見ていらっしゃると思うのですね。その達成状況というのは、今訴訟が起きていますね。おっしゃいました。どうでしょうか、皆さんの基準に当てはめて、その環境基準の達成状況あるいはその達成期間とか、あるいは超えている――超えているから当然訴訟が起こると私たち思いますが、どうですか。
  90. 林部弘

    林部政府委員 環境基準の達成状況につきましては、御指摘のように、特に自衛隊関係の飛行場で訴訟が起こっているのが多うございますが、なかなか達成ができないというのが現状でございます。  最近の達成状況につきましては、五十八年末時点での達成状況について現在調査の取りまとめ中でございまして、直近の数字はまだまとまっておりませんが、なかなか達成の難しい現状であるという状況でございます。
  91. 玉城栄一

    玉城委員 そこで、非常に具体的な問題で一カ所伺っておきたいのですが、沖縄の嘉手納の飛行場並びに普天間飛行場がありますね。この地域はどうでしょうか、皆さん方の基準に照らして。そして、それについても一般的に、例えば防衛施設庁なら防衛施設庁に対して環境庁としてはどういうアクションといいますかどういう対応をしていらっしゃるのか、それも含めてお伺いいたします。
  92. 林部弘

    林部政府委員 お尋ねの嘉手納飛行場と普天間飛行場の周辺の航空機騒音の現状でございますが、嘉手納飛行場につきましては、昭和五十八年十二月二十六日までに十年改善目標を達成するように努めることになっておりますし、普天間飛行場の方は、これはまた区分が違いまして、昭和五十三年の十二月二十六日までに達成するように努める、こういうことが前提になっているわけでございます。  これまでの測定の結果を見ますると、嘉手納飛行場の周辺におきましては、屋外で七十五Wを超える地域がなお広い範囲にございますし、したがって、屋外で十年改善目標は達成されていない状況と認められるわけでございます。また、普天間飛行場の周辺につきましては、一部の地域でございますが、七十五Wを超える地域が見られるわけでございますので、これも環境基準は達成されていないという状況でございます。  このようなことを踏まえまして私どもが防衛庁にどのように働きかけてきたかというお尋ねでございますが、当然のことながらお互いに連携をとりながらやってきているわけでございますけれども、具体的に要請というようなことでの働きかけといたしましては、五十三年のいわゆる五年改善目標達成時期にまだ十分に達成されていないということで、五十四年の二月時点で、できるだけ発生源対策あるいは周辺対策に御努力をいただきたいということで要請をいたしております。
  93. 玉城栄一

    玉城委員 今申し上げました普天間それから嘉手納については、環境庁とされては、その基準が達成されていない地域が広範にあるというようなことから、今おっしゃいました五十四年二月には防衛施設庁にその改善をするようにという要請をしてある。今度十年のものについて今取りまとめ中である。それはいつやるのですか。もう十年過ぎているわけでしょう。
  94. 林部弘

    林部政府委員 御指摘のように、もう五十八年十二月で時期が来ているわけでございますので、できるだけ早急にそういうような点についてまた改善の要請をしなければならないという状況があるわけでございますので、今実態について詳しく調査を取りまとめておりますので、できるだけ近い将来において御要請申し上げるという運びになろうかというふうに予想をいたしております。
  95. 玉城栄一

    玉城委員 近い将来といいましても、五十八年の、去年の暮れで十年はもう来ているわけでしょう。ことし、今はもう三月の下旬ですね。いつやるのですか、来月ですか、今月中にやるのですか、あるいは五月とか…。
  96. 林部弘

    林部政府委員 お答えいたします。  今月というのはちょっともう物理的に不可能かと思いますが、できるだけ速やかにそういう運びになりたいというふうに調整をいたしております。
  97. 玉城栄一

    玉城委員 防衛施設庁の方いらっしゃっていると思うのですが、先ほども環境庁から話がありました五十四年二月に改善要請というのを受けていらっしゃいますね。受けてどういう対策を講じていらっしゃるわけですか。時間がありませんから、簡単に。
  98. 杉本康治

    ○杉本説明員 お答え申し上げます。  環境庁の方から五十四年に勧告を受けているわけでございますけれども、自衛隊等の飛行場につきましては、音源対策、運航対策上なかなか難しい問題もございまして、住宅防音をすることによりまして屋内の環境保全に努めておるところでございます。
  99. 玉城栄一

    玉城委員 今、屋内の防音対策ということをおっしゃいましたけれども、これは屋内だけでなくて、環境庁から皆さん方への、勧告と今おっしゃいましたけれども、要請は、二項目目には、「環境基準は屋外で達成されること」、屋外ですよ。「屋外で達成されることを基本としていることから、音源対策・運航対策をできる限り促進すること。」とありますね。     〔委員長退席、新村(勝)委員長代理着席〕  そこで、爆音が余りにもひどいものですから、今、沖縄の嘉手納飛行場周辺、普天間飛行場周辺のことについて、関係する六市町村が爆音の騒音調査をした概略なんですが、長官、ちょっと聞いておいていただきたいのです。  日常的に非常にうるさいと全体の九七・三%が感じていらっしゃるし、騒音で夜寝つかれなくて目を覚ますというのが七〇・九%、それから電話が全く聞こえないというのが六一・九%、それからテレビ、ラジオ、ステレオ音声妨害が六〇・五%とか、家庭内、うちの中における会話が非常にできないというのが九三・六%とか、気がいらいらする、これは九五・一%とかいろいろある。これは普通の日常生活に関すること。それから、爆音がひどいために障害として耳鳴りだとか肩こりだとか疲労感だとかいろいろあります。それから今度は教育上の立場で、乳幼児の発育に悪い影響があると思っていらっしゃる方は九八・九%、それから就学児童に悪い影響がある九八・三%、妊産婦七四・四%、それからお年寄りや病人の方も一〇〇%、こんな騒音で大変だと感じているデータ、これは関係市町村が調べたものですけれども、そういう状況であるのです。これはごく最近のものですね。  ですから、長官環境庁設置法三条にもいろいろございますが、環境行政に携わっていらっしゃる立場からしまして、私が申し上げたところについて長官の御意見を伺いたいのですが、いかがですか。
  100. 上田稔

    上田国務大臣 飛行場の周辺につきましては、騒音並びに振動なんかで大変にお困りになっておられるということでございまして、これに対しては、何とか対策を立てて本当にそういう公害がなくなるようにしたいということで、私どもいろいろ基準をつくってきておるのでございますけれども、何分、現在航空機というのは交通上どうしても欠くことのできないものでございますし、また、駐留軍につきましては、やはり約束がございますので、これを全面的にやめてもらうというわけにはいきませんので、これの対策としていろいろ考えてやらせていただいておりますけれども、十年たってまだ達成ができないという状況でございますので、これは早く調査をしていただいてということで、残っている分がどれだけあるか、それに対してどういうふうにしていくかというようなことがございますので、その取りまとめを防衛庁の方と御相談をして今やっておるところでございますが、先ほど局長が御答弁申しましたように、まとまり次第すぐにこの対策、後の対策を発表させていただきたい、こういうふうに念願をいたしておるところでございます。
  101. 玉城栄一

    玉城委員 長官、航空機騒音というのは、民間航空機であろうが軍用機であろうが、米軍機であろうが自衛隊機であろうが、飛行機の騒音に関しては同じなんですよ。したがって、いろいろ法律がありますとおり、生活環境保全をし、人の健康に資するため云々、それは環境庁がされるというわけですから、そのために基準というものを設けていらっしゃるわけでしょう。それが達成されていない、あるいは守られていないということについて、長官関係省庁に厳しくおっしゃるべきだと思うのですが、いかがですか。
  102. 上田稔

    上田国務大臣 お答え申し上げます。  防衛庁に対しましても、また、いろいろ予算の面もございましょうが大蔵省に対しましても、その達成のために十分に施策を講じてもらうように私どもの方としてはやかましく申し上げたいと考えております。
  103. 玉城栄一

    玉城委員 防衛施設庁には、その対策の問題につきまして、屋内とか屋外とか、またいろいろな問題点もありますので、これは日を改めて質疑をさせていただきたいと思います。  文部省の方来ていらっしゃると思うのですが、今申し上げましたように、生徒児童に与える教育上の問題について最近関係団体がデータを測定しているわけですね。たしか、教室の窓をあけたときに六十五ホン以下が望ましい、それ以上は授業に差し支える、そういう基準があるやに承ったわけでありますが、その辺を御説明いただきたいと思うのです。
  104. 青柳徹

    ○青柳説明員 学校における教室の騒音につきましては、昭和三十九年六月に保健体育審議会の答申がございまして、その中で、教室内の騒音レベルにつきましては六十五ホン以下であることが望ましいというような線の御答申がございました。文部省では、これを参考といたしまして、各学校において実情に即した適切な措置がとられるようにということで、都道府県教育委員会その他関係者にお願いをしておるところでございます。
  105. 玉城栄一

    玉城委員 今その基準を参考にしていらっしゃる文部省の立場からしますと、例えばそれが八十ホンだとか九十ホン以上になる、そしてしばしば授業が中断されるということはどうですか。
  106. 青柳徹

    ○青柳説明員 一応の目安としまして六十五ホン以下というようなことでお願いをいたしておるわけでございます。それぞれの学校の実情に即しまして、防音装置なり何なり適切な措置をとっていただくというようなことで鋭意御指導し、お願いをしておるところでございます。
  107. 玉城栄一

    玉城委員 それはどこに対してですか。そういう音の発生源とか、それを管轄する役所等についても文部省としては一そこは全然やらない。その辺はどうなっていますか。
  108. 青柳徹

    ○青柳説明員 私どもの方では、都道府県の教育委員会、それからさらに学校を直接管理いたしております市町村教育委員会、そういった学校の設置者側にお願いをしておるわけでございます。もちろん、防衛施設庁を初め関係の方で財政的にいろいろな裏打ちをしていただいておるわけでございまして、そういうものを活用していただきながら学校の環境整備をお願いしていく、こういうことでございます。
  109. 玉城栄一

    玉城委員 現実にそういう八十ないし九十ホンという航空機騒音があって授業が中断されるという事態がしばしばあるというデータがあるわけですから、文部省とされても、そこの関係する学校についてよく実情を調べられて、その音の発生源を管轄する防衛施設庁に対して、これの対策をもっとしっかりやってもらいたいとか、文部省としては教育行政を預かる立場からそういうことをすべきだと思うのですが、いかがですか。
  110. 青柳徹

    ○青柳説明員 私どもの立場からしますと、そういうふうな措置をおとりいただくことを期待しておるわけでございます。
  111. 玉城栄一

    玉城委員 最後に、長官の御所見を伺いたいのです、この問題について。時間があと少ししかありませんので。  環境という、自然保護、これが非常に大事なことだと思うのですが、そういう立場から行政を預かる長官とされて、米軍基地あるいは自衛隊基地も含めて、これが環境保全ということと反することについては非常に重大な問題だと思うのです。それは、所管する役所はいろいろ違いますけれども環境については少なくとも長官の方がいろいろ物を言う立場にあると思うのです。ですから、環境行政ということと基地というものとの兼ね合いを長官はどのように考えていらっしゃるのでしょうか。
  112. 上田稔

    上田国務大臣 お答え申し上げます。  基地の問題、これは本当に大変な問題でございます。これは、日本が敗戦いたしまして、その後独立いたしたのでございますが、そういう経過がずっとございまして、その間にいろいろ条約を結び、そして日本の平和維持ということに対してのいろいろな条件から出てきたものでございますが、環境庁といたしましては、ぜひともその環境を守っていただくようにしていかなければいけないということで、これに対してできるだけのことはしていただくと同時に、また、日本としてできることはどうしてもやっていかなくてはいけない、こういうことから、基地対策と申しますかそういうことを防衛庁がおやりいただいておりますが、その対策の中に環境保全ということを考えて十分の対策を立ててもらいたい。騒音につきましても、基準をつくりまして、その基準の中に入るようにいろいろやっていただきたい、こういうことでお願いをしておりますが、今後もそれを早く達成していただくようにしていかなければならない、こういうことから、防衛庁に対して、またその予算の獲得について、国務大臣といたしましてもお願いをしていく決意でございます。どうぞよろしくお願いをいたします。
  113. 玉城栄一

    玉城委員 長官、これは二十一世紀に向けて非常に大事な行政を預かる立場とされて、ぜひ最善の努力をしていただきたいと思います。とともに、最初申し上げましたとおり、それだけに検討会とか研究会とかいろいろな大事な審議会を持っていらっしゃるのに、開かれないということはこれまた問題だと思いますので、ひとつその点もよろしくお願いいたしたいと思います。  最後に、海の汚染につきまして、我が国は周囲全部海ですから、しかも数多くの島々で我が国は成り立っているわけですね。ですから、海及びその資源というものは非常に重要な国民的な財産だと私は思うのです。それが汚染されつつある、最近またひどいということは非常に大問題でありますので、海上保安庁の方来ていらっしゃると思いますが、時間がありませんので、南西諸島海域のこれまでの油の汚染状況、その取り締まり、概略御報告いただきたいのですが。
  114. 伊美克己

    ○伊美説明員 お答え申し上げます。  我が国周辺海域におきます海洋汚染の発生状況につきましては、全国的に申し上げますと千件をちょっと超すような汚染が発生しております。ですが、四十八年をピークに漸減傾向にございます。また、特に南西諸島近海について申し上げますと、海洋汚染、もちろん何件か発生しておりますけれども、先ほど言いましたような傾向にございます。特に南西諸島について申し上げますと、廃油ポールの漂着が全国的な傾向に比べますと若干多いという関係がございまして、私ども、廃油ボールの漂流、漂着状況につきましては、国連で全世界海洋情報サービスシステムというのがございまして、我が国もこれに参加しておりますので、この国連の全世界海洋情報サービスシステムに定められた調査方法によって全国的に定期的な調査を実施しております。  洋上におきます廃油ボールの漂流状況につきましては、全国に十五の定線を設けまして毎月一回、また、沿岸に漂着いたします廃油ボールの状況につきましては、全国に二十七の定点を設けて、これは月二回でございます、調査をやっておるわけでございますが、沖縄周辺海域について申し上げますと、定線を二線、それから定点を四点設けておりまして、継続的に調査を実施しております。  この状況でございますけれども、洋上の漂流状況につきましては、五十八年の調査によりますと、一回当たりの油塊の採取量が百五ミリグラム、これはミリグラムの単位でございます。五十一年の千七百八ミリグラムをピークにいたしまして漸減傾向にございます。それから漂着の方でございますけれども、沖縄周辺に四定点ございまして、この定点におきます漂着の廃油ボール、五十八年の調査によりますと、一回当たり平均油塊の採取量が三百三十七グラム、こちらはグラムが単位でございます。この面につきましても、五十四年の千五百六十五グラムをピークにして漸減傾向にございます。そういった状況にあるわけでございます。  さて、先生御質問の、これらに対する海上保安庁の取り締まり状況ということでございますけれども、海上保安庁といたしましては、海洋汚染の発生する確率の高い、蓋然性の高い地域を重点に船艇、航空機を配備いたしまして、海洋汚染の監視、取り締まりに当たっております。特に沖縄を管轄しております十一管区本部につきましては、船艇が十五隻、航空機が七機配備されておりまして、またさらに、五十六年には管区本部に海上公害課を設置いたしましたし、さらに、隣接の第十管区本部等からも巡視船艇を派遣いたしまして、効率的な監視、取り締まりに努めておるところでございます。
  115. 玉城栄一

    玉城委員 時間が参りましたので、多々質問点ありますが、今の点は後日またよろしくお願いしたいと思います。
  116. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員長代理 次に、神田厚君。
  117. 神田厚

    ○神田委員 環境問題につきまして二、三御質問を申し上げます。  まず最初に、湖沼の水質汚濁が進んでさまざまな問題があるわけでありますが、湖沼におけるところの水質の現況というのはどういうふうになっておりますか。
  118. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 湖沼の水質の現状を、有機汚濁の総合的指標でございますCOD、化学的酸素要求量と申しますか、で見てまいりますと、その環境基準達成率は五十七年度で四一・七%でございます。これは河川の達成率の六五・三%あるいは海域の達成率の八一・三%に比較いたしまして著しく悪い状態にあるわけでございます。また一方、窒素とか燐とかを要因といたします富栄養化が著しく進行しておりまして、私ども、都道府県を通じまして情報収集したところによりましても、全国各地でアオコとか淡水赤潮が発生いたしまして、湖水を水源といたします水道にいわゆる異臭味等が発生しております。かような状況にあるわけでございます。
  119. 神田厚

    ○神田委員 四十九年からの統計を見ましても、海域あるいは河川、それぞれかなり改善をされているわけでありますが、湖沼に至りましては、五十七年におきますところの数値は四一・七%、四十九年の四一・九%より下がっているという状況でございますが、この原因はどういうふうにお考えになりますか。
  120. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 湖沼につきましては、御指摘のとおり五十六年から五十七年にかけて一%程度の低下を見ております。これはたまたまその年の気象条件というようなこともございますけれども、基本的に横ばいであって、河川、海域に対して著しく低いにもかかわらず改善を見ていないということでございまして、私どもも大変問題があろうかと思うわけでございますが、これは一つには湖沼そのものが大変水が停滞して汚れやすいというような特性を持っていること、それからまた、特に最近湖沼周辺の集水域におきまして人口がどんどん伸びていっている、その結果生活系の汚濁負荷が著しく増加しているにもかかわらず、遺憾ながら下水道の整備がそれに追いついていかない、そのために生活系汚濁負荷対策が率直に申し上げまして十分でないというようなところからこのような事態を生じているのではないか、かように考えている次第でございます。
  121. 神田厚

    ○神田委員 そういう現況にかんがみまして、湖沼水質保全特別措置法案を環境庁が今国会に提出をするということになっておりますが、その具体的な内容についてはどういうふうになっておりますか。
  122. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 いわゆる湖沼法案につきましては、明日の閣議決定を予定して現在手続を進めているところでございます。  この湖沼法案の内容につきましては、昨年五月に国会に御提出したものと同一内容でございますが、その概要を申し上げますと、次のとおりでございます。  第一点としては、国が湖沼水質保全の基本方針を定める。第二点といたしましては、内閣総理大臣は、都道府県知事の申し出に基づき水質の保全に係る施策を総合的に講ずる必要がある湖沼を指定湖沼として定める。第三点といたしましては、都道府県知事は、指定湖沼ごとに湖沼水質保全計画を定める。それから第四点といたしましては、その水質保全計画の定めるところによりまして、下水道の整備等の水質保全に資する事業の計画的な推進を図るほか、新増設の工場、事業場に対する汚濁負荷量の規制、小規模な浄化槽等に対する規制、それから畜舎等に対する構造、使用方法に関する規制等を行いまして、必要に応じて総量規制の導入を図るとともに、湖沼の自然環境の保護に努めることとしている次第でございます。
  123. 神田厚

    ○神田委員 この法案が仮に通過をして、そういう行政が実施をされるということになりますれば、現在の環境基準達成の状況から見て、将来的な見通しとしては、主要湖沼については大体どのくらいの見通しでどのくらいの改善が図られるというふうにお考えでありますか。
  124. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 この湖沼法案は、ただいま御説明いたしましたように、その内容の一つの柱といたしましては、国と地方公共団体のコンセンサスに基づいて各種対策を総合的に計画的に実施することにあるわけでございます。したがいまして、現在、対象湖沼としては十ないし二十程度のものを考えているわけでございますが、その環境基準の達成がどの程度図られるかという御質問につきましては、今後この法案を提出いたしまして、都道府県におきまして水質保全計画を立てる、その水質保全計画の内容ともかかわるわけでございますので、今直ちにどの程度の見通しを持っているかということはお答えすることは難しいわけでございます。
  125. 神田厚

    ○神田委員 それでは、同時に注目されております環境アセスメント法案の件でありますが、通産省との間でいろいろ話し合いが続けられておるというふうに聞いておりますが、長官といたしましては、環境アセスメント法案の取り扱いの問題についてはどういうふうにお考えでありますか。
  126. 上田稔

    上田国務大臣 お答え申し上げます。  アセスメントの法案でございますが、ただいま各省と折衝をいたしておりまして、もう一日も早くこの取りまとめをさしていただきたいと念願をいたしておるところでございます。  アセスは、国民の皆様方が、大きな事業あるいはプロジェクトをおやりになるときには必ずやってもらわなくちゃいけないというお考えをお持ちになっておられますし、また、事業をおやりになる方も、今そういう問題につきましてはやらなくちゃいけないというふうにお考えになっていただいておりまして、各府県におきましては、もうこの法律を待たずに、条例をおつくりになったりあるいは要綱をおつくりになっていただいておるのでございますが、これがまちまちでございますので、どうしても環境庁といたしましては、一つの大きなことの事業をやります場合に、あっちはこういうやり方、こっちはこういうやり方というようなことでは、これはもう大変にそこを来しますので、そういうことのないようにひとつやらしていただきたいということで、今懸命になってこの調整に努めておるところでございます。
  127. 神田厚

    ○神田委員 そうしますと、今国会にこれを提出するということで環境庁としては強い意思をお持ちでありますか。
  128. 上田稔

    上田国務大臣 そのとおりでございます。今国会にぜひとも提出をいたしたい、今懸命にやっております。
  129. 神田厚

    ○神田委員 さて次に、環境行政の問題につきまして、特に、環境庁調査によりましても、十年前の環境と現在の環境と比較をして十年前の方が環境がよかったという調査結果が出ているわけでありますが、こういう中でこれから先の環境行政というものをどういうふうにやっていくかという問題について二、三御質問を申し上げます。  最初に、快適環境、アメニティーづくり、これが各地方で盛んにやられておりますけれども、現状あるいは問題点、これはどういうふうになっておりますか、環境の質の向上を目指しております快適環境問題についてお答えいただきたいと思います。     〔新村(勝)委員長代理退席、委員長着席〕
  130. 正田泰央

    ○正田政府委員 最近、国民生活が向上したと申しますか、あるいは価値観の多様化というような事柄を背景にいたしまして、環境問題につきましての国民のニーズが大変次元が高いものになりつつございます。これは各種意識調査などで明らかでございますが、その内容を見ますると、単にこれまでのような環境汚染防止あるいは自然保護といったようなことにとどまらず、いわゆる快適な環境と申しますか、アメニティーを創造していきたいという考え方なり意識が日本国じゅうに起こりつつございます。  たまたま七年前にOECDが日本環境政策のカントリーレビューを行いましたが、その際も、日本公害防止については世界でも画期的な一つの進歩である、しかしながらアメニティーについてしっかりやるように、こういうようなお話がございました。そういうのを受けて、各地方で今、先生の御案内のような快適環境づくりのいろいろな手だてなり行政施策が展開されてきております。しかしながら、その内容を見ますると、例えば、都市の水に親しむ公園でございますとか、川辺に蛍を呼び戻すとか、あるいは歴史的な町並みを保存する、さらにまた市民参加の美化活動とか種々のものがございますが、やはり各地の取り組みが一般にまずノウハウの面で不足しております。また、快適な施設の整備といった点で、市民一人一人が自分たちの手で快適環境を創造していくという哲学なり考え方にやはり行政がうまくかみ合ってないといったような問題がございます。また、地域にもいろいろな問題がございまして、例えば特定地域だけに限られているとか、そんなような問題もございます。  そんなような問題を含めまして、私ども、従来研究を三年ほど重ねてまいりましたし、さらにまた、シンポジウムなどを前後四回実施してまいりましたが、それだけやっていたのでは仕方がないというような観点に立ちまして、あくまで公害を克服した上でなおかつレベルの高い環境を創造していくというようなことの具体的な手段はないものかということを考えまして、快適環境整備計画を策定いたします市町村に対しまして補助金を交付して、こうした取り組みに一定の方向を与えまして、環境づくりの輪を全国的規模に広げていきたいということを、五十九年度のただいまお願いしております予算で計画いたしておる次第でございます。
  131. 神田厚

    ○神田委員 ただいま答弁ありましたが、環境庁が五十九年度から快適環境、アメニティーづくりに積極的に取り組むということで予算も計上していると聞いておりますが、具体的にどのような施策を講じるのでありましょうか。
  132. 正田泰央

    ○正田政府委員 私ども考えております自然遊歩道といったような、野鳥の森づくりでございますとか、美しい海岸、バードサンクチュアリー、あるいは公共施設の景観の問題、あるいは歴史的建造物に対しまして計画を策定するわけでありますが、市町村のそういったものに対する市民参加を得た組織づくり、調査、意識調査あるいは協議会についてのマスタープランづくり、そういったものに対して、二十カ所ほどの市町村を対象に七百万円ほどの規模の補助金を交付したい、こういうふうに考えております。
  133. 神田厚

    ○神田委員 また、このアメニティーづくりと関連しまして、環境の快適性を高めるということにつきましては、身近な自然環境の保護や整備、こういうものも非常に大切だというふうに考えておりますが、建設省あるいはいろいろな官庁との関係の中で、環境庁は総合調整庁として役割を果たしていかなければならないと思っておりますが、その辺についてはどういうふうにお考えでありますか。
  134. 山崎圭

    ○山崎(圭)政府委員 お答え申し上げます。  ただいまの企画調整局長からの御答弁とも関連するわけでございますが、生活の質の向上を求めるという声は、当然のことながら、緑豊かな自然ということが大変大きな要素になるわけでございます。とりわけて、緑の喪失が際立っております市街地周辺のこういう方々にとりましては、身近な自然を保護する、あるいはより積極的に創造していく、こういう機運が高まっている。これを受けましてこういう行政分野が大変大事なことになっている、こういうふうに考えておるところであります。  そういうことで、私ども自然環境保全行政のいわば総合調整官庁としての役割を担っておるわけでございますが、建設省を初めとして関係省庁と連絡もとりながら、建設省所管の都市緑地保全法なりあるいは首都圏、近畿圏の近郊緑地保全法等の法律、こういうものによる諸制度が機能的、効・率的に運用されるようにお願いもし、また配慮もしている、こういう役割をしております。  ただ、私どもが、直接環境庁の自然保護行政の中でも手を出せる分野が幾つもあるわけでございまして、身近な自然の保護という分野におきましても、当然自然公園、国立、国定、県立自然公園の保全という大きなものもございまするけれども、そういうものに加えまして、例えば県立自然公園というような位置づけを考えてみますると、比較的市民の身近にある、こういう点に着目いたしまして、これは通称でございますが、ふるさと自然公園の整備、こういうものも積極的に助成措置を講じている。あるいはまた、大きく言えば都市公園の範疇に属すると思われます国民公園、例えば新宿御苑でありますとか皇居外苑あるいは京都御苑、こういうものの整備も当然のことながら進めておりますし、また、新たに緑化推進運動の一環といたしまして政府全体が取り組んでおります。その位置づけといたしましては、小鳥がさえずる森づくり運動を市町村が主体になってやっていただくようにお願いもしている。あるいはまた、五十九年度予算で認められました、今お願いしておりますものといたしましては、自然観察の森づくり、こういうものを身近な市街地においてつくっていこう、こういう事業も推進している、こういうようなことで、縁あるいは小さな動物、こういうものが一体になった身近な自然の創造、保全を図っていく、こういうことで考えていきたい、かように考えております。
  135. 神田厚

    ○神田委員 それでは、この問題で最後に、ナショナルトラストが最近話題になっておりますが、これに対しまして、国としてはこれをどういうふうに援助していくつもりなのか、この点につきまして…。
  136. 山崎圭

    ○山崎(圭)政府委員 ナショナルトラスト運動が我が国でもいろいろと話題にもなり、できておるわけでございます。イギリスにおきましては九十年の歴史があるというようなことでございまして、その示唆を受けまして、我が国におきましても、北海道の知床における知床百平方メートル運動でございますとか、先生も御存じだと思います、和歌山県の天神崎の市民の地主運動、こういうような名称で呼ばれております景勝地をあるいは身近な自然を買い取って、そしてそれを保全していこう、こういう運動でございます。こういう運動につきまして、私どもの基本的な考え方は、行政分野とは違います民間の自主的な運動ではございますが、自然保護を広く考える場合に、この国民一般の広がりの中でこういうものが保全されていく、守られていくということにつきましては大変意味のあるものだ、かように考えておるわけでございまして、一昨年でございますが、学者先生を中心とした専門家のお集まりをいただきまして、これに対してどうこの運動の発展を見ていくか、それに対してどう対応していくかというようなことを中心に御議論をしていただきまして、いわば提言的なものをおまとめいただきました。そういう提言の内容を踏まえまして、私どもも昨年来、こういうナショナルトラスト運動の趣旨の普及、啓蒙、これがまず何よりも基本的になければならない、こういうようなことで、地方公共団体にもいろいろと集まっていただきまして、趣旨の普及を図る、あるいは一般の広報紙、マスコミュニケーションにもお願いをする、こういうような努力を続けております。また、何といいましても地域的にこういう運動が起こっておりますので、地方公共団体がこれに積極的に取り組んでいただくようにという協力の要請もしている。こういうようなことで、基本は民間の自主的な運動でございまするから、民間の自発性、自立性を尊重しつつ、そういう活力を生かしながら、個別具体的には積極的に支援策をとっていきたい、これが基本的な考え方でございます。
  137. 神田厚

    ○神田委員 イギリスでは立法化されているわけでありますが、日本といたしましても、将来の立法に向けて検討していくというようなお考えはございますか。
  138. 山崎圭

    ○山崎(圭)政府委員 全般的に見まして、イギリスでは、おっしゃるとおりに立法化が進んでおるわけでございます。イギリスと日本との違いも多々ございまして、日本の方は五十年前から一応の法制度が国行政レベルとしてある。一方、民間運動についての助成的な法制度はイギリスの方が先行している、こういう彼我の違いがございますけれども、それと、基本的にはこの運動がまだ萌芽的な段階にある、こういうようなことでもございますが、この地域的な活動の現状というものを踏まえまして、今後の運動の全国的な発展の状況、こういうものをよく見定めた上で、引き続き立法化についても検討を進めてまいりたい、かように考えております。
  139. 神田厚

    ○神田委員 次に、地下水汚染問題、水道水の汚染問題につきまして御質問申し上げますが、昨年の環境庁調査によりまして、地下水汚染が極めて憂慮されているわけでありますが、その後、これらに対しまして環境庁は、本格的な汚染状況調査、あるいはその原因の一つであるというふうに考えております廃棄物の埋め立て処理場の実態調査、あるいは化学物質環境残留性等々について対策を立てていくというふうなことであったわけでありますが、これらの問題点はどういうふうになっておりますか。
  140. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 環境庁といたしましては、内外の文献等から見まして、五十七年度地下水について全国大都市を中心に十五都市において地下水汚染実態調査を実施してまいったわけでございますが、その結果は、先生のただいま御指摘ございましたように、トリクロロエチレン等の化学物質による広範な汚染が認められ、何らかの対策を検討する必要があるという判断に達したわけでございます。  環境庁といたしまして、まず第一番に実施いたしておりますのは、五十八年度におきまして引き続き、この高濃度汚染が検出されました井戸につきまして追跡調査を実施いたしまして、汚染機構、汚染原因等の把握に努めているところでございます。さらに、五十九年度におきましては、五十七年度が大体大都市を中心に調査を実施したものでございますので、地方中小都市についてほぼ同じような調査を実施するということにいたしております。  さらに、当面一番問題になっております水道用水につきましては、厚生省に申し入れをいたしましたところ、厚生省において直ちに検討に着手され、暫定水質基準として特に高濃度に検出されました三物質について目標値を定める、かような対策を講じてきたところでございまして、当面飲用水については国民の皆様方に御心配かけることはないと判断しておるわけでございます。  私どもといたしましては、先生ただいま御指摘のありました廃棄物問題との関連等を詰めるために、現在五十八年、五十九年と引き続いてさらに汚染機構、汚染原因等を詰めてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  141. 神田厚

    ○神田委員 厚生省に来ていただいておると思っておりますが、新聞等によりまして報道されておりますように、水道に新発がん物質が含まれているというような報道もありまして、この問題は大変看過できない問題であります。  そこで、未確認物質の問題を含めましてこれを新たに調査をするというお考えをお持ちでありますかどうか、この水道水の安全性について御質問申し上げます。
  142. 森下忠幸

    ○森下説明員 御説明申し上げます。  お尋ねの、先日報道されました有機ハロゲン化合物の関係の問題でございますけれども、水道中に新しい発がん物質が見つかった、こういうふうに仰されたわけでございますが、せんだって新聞に報道されました記事では、新しく開発された分析装置を用いまして、ある大学におきまして、水の中の有機ハロゲン化合物の全体の濃度を総括的にあらわす指標を用いまして分析した研究の結果に関するものであると思われるわけでございます。この指標によってあらわされます有機ハロゲン化合物の中には、トリハロメタンあるいはトリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の有機化合物質が確認されるわけでございますけれども、その一方、おっしゃるとおり現段階では未確認の物質もあるわけでございます。せんだっての研究の結果では、それぞれの物質の名称あるいはその量を明らかにすることができないわけでございます。したがいまして、今回新たな発がん物質が検出されるということではないわけでございます。  しかしながら、厚生省といたしましては、今後とも水道水の汚染を生ずるおそれのある化学物質につきましては、健康影響測定方法あるいは水道サイドにおきます低減対策などに関しまして知見の収集に努めるとともに、地下水汚染の動向等勘案いたしまして、必要に応じまして基準の見直しあるいは新たな水質基準を設定する等、水道水の安全性の確保のためにさらに万全を期してまいりたい、このように考えております。
  143. 神田厚

    ○神田委員 これは、水道水に地下水関係と河川の関係と両方ありますけれども、極めて健康にとりまして重要なものでありますから、環境庁及び厚生省におきまして、その安全性のために万全を尽くすように努力をしていただきたい。環境庁長官から一言ひとつ…。
  144. 上田稔

    上田国務大臣 お答え申し上げます。  先生の御指摘の点でございますが、環境庁といたしましても、これはもう十分に調査をして国民の皆様方に不安のないようにしていきたいと存じます。厚生省とも十分に連絡をとりましてやらしていただきます。
  145. 神田厚

    ○神田委員 終わります。
  146. 横山利秋

  147. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 先ほども問題になりましたが、私は乾電池問題に絞って御質問をしたいと思います。  廃棄される乾電池に含まれている水銀による環境汚染については、一部の研究者が早くから警告をしておりましたし、この乾電池の回収を提案もしておりました。昨年東京都の公害研究所がこれを裏づけるデータを発表して以来、全国的に乾電池、特に水銀を多く含むアルカリ電池あるいは水銀電池の回収処理が大変大きな問題になっております。この問題については、自治体レベルでの取り組みが大変早く、数多くの自治体が工夫と苦労を重ねながら今日まで自主的に回収を行ってまいりました。この乾電池による水銀汚染が、現在、先ほどの御説明にもありましたが、差し迫った問題ではないとしても、環境汚染未然防止という点から見ましたら、こうした自治体努力というのは大いに評価されるべきではなかろうか、こういうふうに考えるわけですが、まず、長官の御見解をお伺いしたいと思います。
  148. 上田稔

    上田国務大臣 お答え申し上げます。  先生の御指摘のとおり、乾電池の中に含まれております水銀、これが将来被害を与えるようなことを招来いたしますと大変なことになる、こういうことで、環境庁としても慎重にこれを今検討をいたしておるところでございます。現在ではなるほど被害はございませんが、乾電池使用は日を追うてふえてまいりますので、それの廃物と申しますか廃棄のときにそういうことの起こらないようにいたしたいと決意をいたしておるところでございます。
  149. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 この回収している自治体は、今、非常にその処理に頭を痛めているわけです。特に、非常に高い処理費を払って処理業者に委託している自治体もあります。また、コンクリート詰めにしたり、ドラム缶に入れて野積みをしている、こういうところもあります。しかし、一様に、どうしようかということで自治体関係者の間では、これはもう業者の責任ではなかろうか、そういう声も強いわけであります。このように自治体が自主的に回収したものに対してその処理が非常に困難になっているという状態の中では、業界としてもこれに一定の責任を負うのは当然ではなかろうか、こういうふうに思いますし、また、国としてもこの処理について考えていくべきではなかろうかと考えるわけですが、一体、業界をどういうふうに指導されるおつもりなのか。きょうは厚生省と通産省もお願いしているはずですが…。
  150. 小林康彦

    ○小林説明員 お答えいたします。  現在、廃棄物処理に伴いまして水銀によります環境汚染の問題は生じておりませんし、現在程度のレベルでございますと、現在のごみ処理の体系で支障が生ずるというふうには考えておりません。  ただ、一部の市町村におきまして、お話しのように、使用済み乾電池の回収処理を独自の判断で行っておられる市町村が幾つかございます。それらの際には、廃棄物処理法に定めます基準、考え方に基づきまして適正に処理されねばならない、こういうように考えております。  ただ、乾電池の生産量がふえ、使用量がふえてまいりますと、将来の問題として廃棄物処理でも対応できない事態が予想されますので、業界に対しまして自主的な活動を通産省ともども要請をいたしまして、現在その措置が進行中の状況でございますので、私どもといたしましては、その成果を見ながら、さらに、長期的な問題という形になりますと、昭和五十九年度から広域的な回収処理のあり方、あるいは関係者の役割分担のあり方を含めまして今後検討していきたい、このように考えております。
  151. 広野允士

    ○広野説明員 通産省としましても、乾電池の需要量が非常に伸びておりますので、そのうちでも、水銀使用しております水銀電池、ボタン電池につきまして、業界が自主的に、電器店等あるいはカメラ店、補聴器店等、全国に十一万店の小売店がございますが、そこに回収箱を設けまして、販売ルートを逆にたどるような形でボタン電池の回収をするという措置を業界がとるということでございます。  私ども通産省としましても、自治体あるいは消費者の皆様方、関係業界に広くPRをいたしまして、いろいろな協力を得まして、そういう回収運動が効果が上がるように支援してまいりたいと思っているわけでございます。
  152. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 御説明ですと、要するに、業界が当面の方策として示したのは、ボタン型というのですか、ボタン型電池を販売ルートから逆コースで回収をしていく、それから、将来アルカリ電池の水銀の含有量を減らしていくということなんですね。問題になっているのは、自治体が今回収をしているその処理の問題なんです。これは勝手に処理せよということなんですか。通産省、どうですか。
  153. 広野允士

    ○広野説明員 現在のところ、廃棄物処理法ということで、乾電池につきましては、一般消費者の方で使われておりますものにつきましては、自治体の方が回収いたしましてそれを処理をするということでございます。  また、先ほど申し上げましたボタン電池につきましては、販売ルートを逆にたどりまして、環境汚染未然防止という観点から業者の方が責任を持ってそれを廃棄物処理業者の方で処理をしてもらうという体制をとろうということでございます。
  154. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 今度の業界のやり方で、年間の生産量、これは一億二千六百万個とかいうふうに言われておりますけれども、そのボタン型電池の回収率は何%ぐらいだというふうに考えておられるわけですか。
  155. 広野允士

    ○広野説明員 これから実施をいたすわけでございまして、消費者の皆様、また販売店、関係業界、自治体の協力いかんによって、どのような効果が上がるかというのはその協力によって決まるわけでございまして、私ども全力を尽くしましてそういう効果が上がるように支援をしてまいりたいというふうに思っております。
  156. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 だけれども、最初に計画を立てられるとき、大体大まかこれぐらいは回収できるだろうという、その率というものは踏んでおられるのじゃないですか。それやったら全くやみくもでしょう。
  157. 広野允士

    ○広野説明員 現在のところ、電池によります国内流通量と申しますか水銀使用量と申しますか、そういうものにつきましては全体で五十五トンということでございます。そのうち、水銀電池は約四割の二十四トンというところを使用しておるわけでございまして、この部分が環境に負担を与えておるというおそれがございますので、この分を業界が自主的に回収をしようということでございます。
  158. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 いや、私の聞いている質問にちっとも答えてくださらないのですね。それは一〇〇%回収できるとでも思っていらっしゃるわけですか。対策で効果があるということだから聞いているのです。昭島市で回収奨励金制度というのを設けてやっておりましても、その回収率は五〇%なんです。そういうことから考えて、その二十四トンが全部回収できるというふうに考えておられるのかどうか。
  159. 広野允士

    ○広野説明員 これは各方面の協力を得ながら進めていかなければいけない問題だというふうに考えておりまして、自主回収の効果を上げるためには、消費者の皆様方あるいは小売店、それと自治体、マスコミ等の協力を得て周知徹底をしてもらってやっていくということでございますし、また、定期的にモニタリングをいたしまして、どれくらい効果が上がっているかということも調査をして推進をしていくということでございます。
  160. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 そういう言い方は大変無責任だと思うのです。この問題が世間で非常に問題になったときには、通産省は、業界を指導して、そしてボタン型電池は五十五トンの中で二十四トンまであるけれども、その約半分と踏んで、それは一〇〇%回収できる、残りについては三年後に業界がその水銀使用を三分の一に減らすので、合わせれば六分の一にまで減らすことができるんだ、こういうふうに宣伝されたのじゃないですか。私は、もちろん、その報道を見ましたときに、そんな簡単に算術どおりにいくものかというふうに思いましたけれども、えらい確信のない御答弁で、私びっくりします。また、それが本当に正直だというふうにも思わざるを得ないわけです。実際あなた任せのやり方じゃありませんか。  そして、今回の業界の対策というのにも私は大変疑問を持っています。これは一月の十一日付に、通産、厚生両省の要請に対して、業界かう間髪を入れず翌日にその対策が伝えられてきました。そうでしょう。そしてその対策というのは、先ほどの御説明にあったとおりなんです。だからもう一件落着というふうな伝えられ方がしたわけです。私はそのときにも、これは通産、厚生両省と日本電池・器具工業会の合作だというふうに思わざるを得なかったわけです。何と翌日にそんなにすっぱりした回答が出たものよというふうに思わざるを得なかったわけです。  同時に、こうした点を見ますと、今回の業界の対策は必ずしもけしからぬなんという立場じゃありませんよ、それはそれとして評価をするとしても、一方では、自治体独自の回収に対しては切り捨てというようになったのではなかろうか。すなわち、一〇〇%回収といったようなことを言われながら、そういう非現実的なことを前提にされながら、水銀使用量は六分の一になるからもうこれで十分だという言い方は、極言すれば、自治体が回収するなどと言っているようなことはもう余計なことであって、この自治体対策に対しては、業界も国の方もこれはもう切り捨ててしまうというふうに言っているとしか考えられないわけですが、この点はいかがでしょうか。
  161. 広野允士

    ○広野説明員 ボタン電池の回収あるいはアルカリ電池の水銀量の低下に関する研究等につきましては、従来から電池・器具工業会の方で検討を進めてきておったわけでございまして、私どもも、最近の乾電池、ボタン電池等の需要の伸びを考えまして、こういう対策をとるように要請をいたしましたところ、本年初めにそういう対策を講ずるという自主的な動きを報告してまいったわけでございます。私ども、これで一件落着というふうに考えておるわけではございませんで、回収の動き等よく見きわめながら、いろいろと指導等をしてまいりたいと考えております。
  162. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 そういう御説明は納得できないわけです。  それで、百歩譲ってそういうふうな対策が万事うまく進んでいったとしても、今の水銀使用量が六分の一に減るのは三年先の話なんですね。したがって、年間約十トンの水銀環境中に出ていくわけです。それは地中からであるかあるいは大気であるかわからないけれども、出ていくわけです。したがって、自治体はこれでは住民の不安が解決できないということで独自の対策をとられている。そういう回収は当然評価するべきものであると思いますが、環境行政上からいうと、この処理に国と業界が協力をしていく、一定の責任を果たすのは当然のことだと私は思うのですが、長官、いかがでしょうか。
  163. 上田稔

    上田国務大臣 お答え申し上げます。  今までは野放しになっておったのでございますが、通産と厚生省の方でも通達を出しまして、業界の方と一緒になって対策を今考えていただいておるところでございます。ボタン型については回収を決めていただいたのですが、先生お話しのとおり何%が返ってくるかが問題でございますが、今始めたところでございますので、さしあたってちょっと見込みが立たないわけでございます。しかし、回収された分だけは確かに減ってくることになりますし、その回収方法をさらに検討してパーセンテージを上げてもらうようにしていかなくちゃいけないと存ずるのでございます。環境庁といたしましても、それを見守りつつ、大気中に今出ております水銀の量を測定をいたしまして、そしてその対策を強化していくようにしていきたいと考えております。  なお、筒型の乾電池につきましては、これもひとつ対策を早く立ててもらわなければいけないということで、今やっていただいておるところでございます。
  164. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 先ほどから私は自治体のことについてどうするのかということを一生懸命聞いているはずですのに、一向にそれに対する御答弁がはっきりしないわけです。時間がありませんので、そのことは最後にお答えください。  同時に、今この問題に取り組んでいる自治体は、廃棄物処理法三条二項の規定に基づいて事業者の責任を厳しく指摘をしているわけです。通産、厚生両省は、今回の対策によって事業者の責任が十分果たされているのであって、したがって、自治体の収集したものは引き取る必要はないというお立場なんでしょう。だから、私が何度問うても自治体の問題については答えられようとしない。そういうことじゃないですか。問題になっているのは自治体が回収しているそれをどうするのだということで、そういう点では、私はあわせて最後に御答弁をいただきたいわけです。  同時に、この際、この三条二項で言う「適正な処理が困難」なもの、この定義が大変不明確なわけです。この定義を明確にして、これに対する事業者の責任をもっとはっきりさせていく、このことが非常に大事でなかろうか。そうしなければ、乾電池だけではなく、科学技術が発達している中でどんどん新しい廃棄物が生まれてくるわけです。それが一般廃棄物として、自治体にこの処理が全部押しつけられていくということになったら、自治体の方もこれは大変な問題です。そういう意味で、適正処理困難物という考え方を今の廃棄物処理法の中にぜひ盛り込んでいくべきではないかと考えます。この点で厚生省と、最後に長官自治体の先ほどの問題とあわせてお答えをいただきたいと思います。
  165. 小林康彦

    ○小林説明員 廃棄物の処理及び清掃に関する法律の三条二項にお話しの適正処理困難物についての規定がございます。適正な処理が困難とされております廃棄物につきましては、その性状が多様であること、処理の困難性に対する認識が関係者によりまして異なっていること、あるいは関係者が多いことなどの問題もございますので、広く意見を聞きつつ、かつ現在、生活環境審議会にこのための専門委員会が設置をされまして審議が進められておるという状況でございます。このため、適正な処理が困難とされています廃棄物の扱いにつきましては、審議会の検討結果を踏まえまして、御指摘の点も含めて引き続いて検討していきたいというふうに考えています。  なお、地方公共団体乾電池のみ分別をし、その処理あるいは保管をしております問題につきましては、それぞれの判断でおやりになっている事柄でございますので、現状といたしましては、それぞれの地方公共団体責任で処理をされるのが適当な事柄というふうに考えております。
  166. 上田稔

    上田国務大臣 ただいま厚生省から御見解が出ておりますが、結局、一般ごみの処理というのは、これが地方庁の責任ということに今まで法律上決まっておるのでございますが、地方庁の方では非常に心配して、筒型の乾電池、これは別にお集めをいただいておる。その処理について先生が御指摘のとおりいろいろな方法をとっておる。それに非常に金がかかるものですから、それをどうしたらいいかということが問題点であろうかと思うのでございます。また、その方法についてどうしたらいいだろうかということが問題点だと思うのでございます。それにつきまして厚生省の方では、最近に起こった問題でございますので今検討をしていただいておるということでございます。そうしますと、結局地方庁にどこから予算を持ってくるかということも、私は、これは検討事項の中に入ると思って、厚生省の方にその点も十分に御検討いただきたいとお願いをしておるところでございます。
  167. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 時間が参りましたのでこれで終わりますが、環境庁未然防止という立場を貫かれるなら、こうした問題を見過ごすことなく、やはり原点に戻ってもっと積極的な姿勢で取り組んでいただきたい。厚生省の方は、これが地方自治体の問題だということで問題を終わらせるのではなく、今後積極的に地方自治体の悩みに取り組んでいただきたいということを最後に重ねて要望して終わりたいと思います。     ―――――――――――――
  168. 横山利秋

    横山委員長 次に、総理府所管科学技術庁について審査を行います。  本件審査のため、本日、参考人として日本原子力船研究開発事業団理事長井上啓次郎君、動力炉・核燃料開発事業団理事長吉田登君、以上両君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  169. 横山利秋

    横山委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――
  170. 横山利秋

    横山委員長 それでは、まず、科学技術庁長官から概要説明を求めます。岩動科学技術庁長官
  171. 岩動道行

    岩動国務大臣 科学技術庁昭和五十六年度決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず、一般会計の歳出決算について申し上げます。  昭和五十六年度の当初歳出予算額は、三千八十七億一千四百七十一万円でありましたが、これに予算補正追加額十一億七千四百九十六万円余、予算補正修正減少額三十三億一千七百十二万円余、予算移しかえ増加額六千六百三十四万円余、予算移しかえ減少額三十三億五千六百二十四万円余、前年度からの繰越額六億九千百二十三万円余を増減いたしますと、昭和五十六年度歳出予算現額は、三千三十九億七千三百八十七万円余となります。この予算現額に対し、支出済み歳出額三千二十九億二千九百五十九万円余、翌年度への繰越額六億五千五百八十七万円余、不用額三億八千八百四十万円余となっております。  次に、支出済み歳出額の主なる費途についてその大略を御説明申し上げます。  第一に、原子力関係経費といたしまして一千七百二十億四千六百五万円余を支出いたしました。これは、動力炉・核燃料開発事業団における高速増殖炉及び新型転換炉の開発、ウラン資源の探鉱、ウラン濃縮技術の開発、日本原子力研究所における原子力施設の工学的安全研究、核融合の研究、多目的高温ガス炉の研究等の原子力関連試験研究及び各種原子炉の運転、日本原子力船研究開発事業団における原子力船「むつ」の遮へい改修及び安全性総点検に基づく補修工事、放射線医学総合研究所における放射線による障害防止及び放射線の医学的利用に関する調査研究、民間企業等に対する原子力に関する試験研究の委託、原子力安全行政の強化等原子力平和利用の促進を図るために支出したものであります。  第二に、宇宙開発関係経費といたしまして八百五十九億二千六百七十七万円余を支出いたしました。これは、宇宙開発事業団における人工衛星及びロケットの開発、打ち上げ及び追跡並びにこれらに必要な施設等の整備、航空宇宙技術研究所におけるロケット等に関する基礎的、先行的試験研究、種子島周辺漁業対策事業の助成等のために支出したものであります。  第三に、海洋開発関係経費といたしまして六十七億九千二百六十六万円余を支出いたしました。これは、海洋科学技術センターにおける深海潜水調査船の建造、潜水作業技術等の研究開発、関係省庁の協力により実施した黒潮の開発利用調査研究等のために支出したものであります。  第四に、試験研究機関関係経費といたしまして、当庁の附属試験研究機関のうち、航空宇宙技術研究所における短距離離着陸機の研究開発を初め、金属材料技術研究所、国立防災科学技術センター及び無機材質研究所における各種試験研究及びこれに関連する研究施設の整備等を行うための経費として百五十三億五千七百四十八万円余を支出いたしました。  第五に、我が国の科学技術振興に必要な重要研究業務の総合推進調整を実施するとともに、流動的な研究システムにより創造的な科学技術の推進を行うための科学技術振興調整費、研究公務員等の資質向上のための海外及び国内留学の経費、国際科学技術博覧会の開催準備のための経費、理化学研究所、日本科学技術情報センター及び新技術開発事業団の事業を行うための政府出資金及び補助金、科学技術庁一般行政費等の経費として二百二十八億六百六十万円余を支出いたしました。  次に、電源開発促進対策特別会計のうち、科学技術庁所掌分の歳出決算について申し上げます。  まず、電源立地勘定につきましては、昭和五十六年度歳出予算現額は、百三十億四千四百十八万円余であります。この予算現額に対し、支出済み歳出額七十三億五千百八十二万円余、翌年度への繰越額五十三億二千七百十二万円余、不用額三億六千五百二十三万円余となっております。  支出済み歳出額の主なる費途について申し上げますと、これは、電源立地促進を図るため、地方公共団体に対して交付する電源立地促進対策交付金及び電源立地特別交付金並びに原子力発電所等の施設設備の安全性を実証するための試験等を行うために支出したものであります。  次に、電源多様化勘定につきましては、昭和五十六年度歳出予算現額は、五百十三億二千三百八万円余であります。この予算現額に対し、支出済み歳出額三百二十七億二千七百二十四万円余、翌年度への繰越額百三十八億十五万円余、不用額四十七億九千五百六十七万円余となっております。  支出済み歳出額の主なる費途について申し上げますと、これは、石油代替エネルギーの中核たる原子力に係る技術開発の推進を図るため、動力炉・核燃料開発事業団における高速増殖原型炉の建設準備、新型転換炉原型炉の運転、使用済み核燃料の再処理関連技術開発等の事業に要する資金に充てるための政府出資金及び補助金並びに化学法ウラン濃縮技術の開発の助成等のために支出したものであります。  以上簡単でありますが、昭和五十六年度決算概要を御説明申し上げました。  よろしく御審議のほどお願い申し上げます。
  172. 横山利秋

    横山委員長 次に、会計検査院当局から検査の概要説明を求めます。西川会計検査院第一局長
  173. 西川和行

    西川会計検査院説明員 昭和五十六年度科学技術庁決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
  174. 横山利秋

    横山委員長 これにて説明の聴取は終わりました。     ―――――――――――――
  175. 横山利秋

    横山委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。新村勝雄君。
  176. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 科学技術庁におかれましては、その仕事の一環として、土地条件の物質循環機能との関連に関する調査というようなこともやっておられるわけでございます。これは資源調査所においてやっておられるわけでありまして、科学技術振興調整費というところから費用が出ておるわけでありますが、そこで、私は、土地条件の物質循環機能に関連をして、土地の土壌の汚染の問題についてまずひとつ伺いたいわけでございます。  土壌は、農地あるいはそれ以外の土壌、すべて人間の生活が営まれるその基盤をなすものでありまして、農地であると否とを問わず、極めて重要なわけでございます。土地状況を、化学的な性状を含めて土壌の条件を良好に保つということが、これは人間の生活上非常に大切なものであるわけでございます。  そこで、まず土壌の汚染に関しまして、その望ましい基準を定める必要があるのではないかと思うわけでありますが、まずその点を伺いたいわけでありますが、この点については公害対策基本法にも、「政府は、大気汚染、水質の汚濁、土壌の汚染及び騒音に係る環境上の条件について、それぞれ、人の健康を保護し、及び生活環境保全するうえで維持されることが望ましい基準を定めるものとする。」こうありますけれども、この基準は当然政府において定められていると思いますけれども、まずその点を伺います。
  177. 津田隆

    ○津田説明員 御指摘公害対策基本法によります土壌の環器基準につきましては、現在のところ設定されておりません。その理由といたしまして、土壌中の有害物質濃度と人の健康あるいは生活環境への影響につきまして知見が十分でない、あるいは土壌の種類が非常に多い、土地利用が複雑である、こういうことで現在設定できておりません。
  178. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 そうしますと、法にははっきりとこれを定めるということが規定をされておるわけですね。これは「土壌の汚染」とありますから、すべての土壌について、人間の生活との関連においてあるいは人の健康との関連において当然決定をしなければならない基準であると思いますけれども、そういう重要な事項がなぜ決められていないのか。
  179. 津田隆

    ○津田説明員 理由につきまして先ほど御説明いたしましたとおりでございますけれども、法律に規定されておりますので、それを十分念頭に置きながら調査研究は進めておるところでございます。
  180. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 これは理由にはならないわけでして、法にもちゃんと決めるということになっておりますし、これは政府に対する法の命ずるところでありますね。いろいろ難しい条件があるとはいっても、当然これは決めておかなければいけないし、また、先進的なところでは、自治体においては既にもうこういうことを決めておるのです。それにもかかわらず、公害についてあるいは国民の健康について最大の、そして究極的な責任を持つべきである政府が決めてないということは、大変行政の怠慢と言わざるを得ないのですけれども、この点について大臣はどうお考えですか。
  181. 津田隆

    ○津田説明員 環境庁からお答え申し上げておるわけでございますが、環境庁長官はただいまここにおりません。
  182. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 科学技術庁もこの点については所管の中に入っておるわけですよ。ですから、そういう点から、法の命ずる――これは政府が当然つくらなければいけないという、法律がそう命じているわけでしょう。それについてまだやっていないということについて、これは科学技術庁長官も無関係ではないわけです、科学技術庁の仕事の中にもあるわけでありますから。どういうお考えか、御所見をいただきたいと思います。
  183. 岩動道行

    岩動国務大臣 私どもの方では資源調査所というのがございまして、そちらの方の所管になっておると思いますが、ただいま私、御質問の点についてはあらかじめ準備がございませんので、必要とあれば後ほど御答弁をさしていただきたいと思います。
  184. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 科学技術庁のお仕事の一つでもあるわけですよ。土地条件の物質循環機能との関連に関する調査でありますから、これは、環境庁の所管でもあるでしょうけれども科学技術庁においても十分関心を持っていただきたいわけでありまして、ひとつ両方で協議をされて、こういう問題がありますので、長官も十分御留意をいただきたい、こう思うわけでございます。  そこで、実はこの問題に関して順次お伺いをいたしてまいりたいと思いますけれども、土地の問題についてまず大蔵省にお伺いをいたしますが、大蔵省は五十六年中に土地の買収、払い下げをどのくらいおやりになったか、件数、面積、金額について伺いたいと思います。
  185. 根本貞夫

    ○根本説明員 お答え申し上げます。  五十六年度の国有地の処分収入でございますけれども一般会計におきましては、大蔵省所管分といたしまして五百八十八億円でございます。それから、特待会計でございますけれども、これの大蔵省及び建設省所管の分が五百五十億円ということでございます。
  186. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 そこで、大蔵省は、国の財産、重要な土地の管理をなさっておるわけでありますけれども、先ほども申し上げたように、土地というのは、単なるそこに土地があって、物理的な形状を保持していればいいということではなくて、人間の生活と関係あるわけですから、その土地が人間の生活にとって良好な状態でなければいけないわけです。そういう面での管理、配慮が十分なされていなければいけないと思います。そういう観点からして、大蔵省は土地の買収、払い下げに当たって、その土地の土壌についてどういう状況であるのか、汚染をされているのかいないのか、汚染をされていればどういう処置をしなければいけないかということを、これは当然そういう観点からの配慮がなければならないと思いますけれども、そういうことの管理あるいは検査をしていらっしゃいますか。
  187. 根本貞夫

    ○根本説明員 お答え申し上げます。  今の点でございますけれども、現在までのところ、市街地における土壌汚染に関しまして国において基準がないところでございますので、国が土壌汚染された国有地を売り払う場合、必ずしも汚染土壌の除去費用について調べるということはやっていないわけでございます。しかしながら、現在問題となり得るようなケースといたしましての、東京都への国有地の売り払いに際しましては、原因者負担の原則が東京都において取り入れられているという状況にかんがみまして、小平市に所在いたします家畜衛生試験場跡地を東京都に高校用地として売り払う際には、土壌汚染処理費相当額を東京都とよく話し合いをしながら控除し売り払いをしたケースがあるということでございます。
  188. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 まだお伺いしていないところまでお答えになったのですけれども、順次お伺いしてまいります。  そうしますと、大蔵省さんでは、土地について汚染の有無等については全く調査もしていない、そういった観点からの管理はしていらっしゃらない、こういうことですか。
  189. 根本貞夫

    ○根本説明員 先ほど申しましたとおり、国の方で基準がないということでございますので、現在のところ、そこを調べてはいないというのが現状でございます。
  190. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 そこで、先ほど指摘をしたように、公害対策基本法にはちゃんと国が決めるべき基準として明記をしておるわけですね。ところが、それを国はやっていないというところからそういう不合理が出てくるわけですよ。国がこの基準を決めておれば、大蔵省さんも当然その基準に従って管理をするということになろうかと思いますけれども、それを決めていない。この決めていないことの怠慢はどこにあるのか。これは環境庁にあるのか科学技術庁にあるのか。恐らくこれは環境庁にあるのではないかと思いますけれども、そういう問題が出てくるし、そういう問題に伴って、トラブルとまではいかないにしても、問題が生まれてくるわけですね。  そこで、先ほど先回りしてお答えをいただきましたけれども、実は、大蔵省は東京都に対して、五十七年三月、五十六年度に農林省の家畜衛生試験場跡地を払い下げをしたわけですね。ところが、ここがかなりひどい汚染地であったということのため、国が処理の費用を負担して東京都に払い下げをした、こういう事実があるわけであります。  そこで、それに関連をして、この土地の評価の基準、同時に、処理費の算定の基準、方法、金額等をまずお示しをいただきたい。
  191. 根本貞夫

    ○根本説明員 一般的に国有地の評価につきまして申し上げますと、まず、相続税課税標準価格をもととした価格、固定資産税課税標準価格をもととした価格、それから、周辺の民間取引事例価格に比準した価格及び民間精通者の意見を総合勘案して客観的に決めているというところでございます。  それで、本件の売り払い価格は約二十八億三百万円と評価されておるわけでございますけれども、これは汚染土壌処理費六千八百九十万円を控除しております。そういうことでございます。
  192. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 御説明が大変簡単で要点を外しておりますけれども、処理費の算定の基準はどういうことですか。
  193. 根本貞夫

    ○根本説明員 評価につきましては先ほど申し上げましたとおりでございまして、これ以上の細かい内容につきましては、今後の契約に非常に影響するところでございまして、これ以上の評価の詳細については答弁を御勘弁願いたい、こう考えている次第なのでございます。
  194. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 そうしますと、国には汚染の基準が全くない。たまたまこれは東京都から指摘をされたのでやむを得ずやったけれども、その汚染処理の基準については言えない。言えないとおっしゃるけれども、これは基準がないんだから言えないと思いますね。こういう極めて行政上不都合なところが出てくるわけです。そうしますと、行政姿勢としては大変残念なわけでありまして、どういう基準でどういう算定方法でやったのかということが明らかにされなければ、これは公金ですから、売り払い代金の中から控除をしたとはいいましても、結果的には公金の支出でありますから、大変あいまいな御説明ですけれども、もう少しはっきりと、こういう根拠に従ってこういう基準で算定をしたんだという御説明がいただけませんか。
  195. 根本貞夫

    ○根本説明員 先ほど申しましたとおり、小平の家畜衛生試験場の売り払いに際しましては、土壌処理費として六千八百九十万円を控除しているところでございますけれども、この六千八百九十万円の内訳は直接工事費が約五千五百二十万円、その他経費約千三百六十万円であるということでございます。
  196. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 そうすると、その前にそういうことをしなければならない原因があるはずですけれども汚染状況、こういう状況があって、これを除去しなければならないということのためにこれだけ支出をしたということなんだと思いますが、その汚染状況はどういうことだったのですか。
  197. 横山利秋

    横山委員長 小出しに答弁しないで全部言ってしまってください、時間がないから。
  198. 根本貞夫

    ○根本説明員 これは東京都の方とよく相談しながら、東京都の方からいろいろな資料をとって決めたものでございます。
  199. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 東京都の方からいろいろな資料ということでは、これはちょっとわからないですよね。どういう汚染の内容であったのか、そして、その汚染を処理をするためにはどういう工事が必要であってどういう処理をしたのかということの御説明を実はいただきたいわけなんですが。
  200. 根本貞夫

    ○根本説明員 先ほど申しましたような内訳でもって、東京都の方で汚染土壌を七千五百五十立米処理したと聞いております。
  201. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 そうしますと、七千五百五十立米の土壌を処理をした、それだけでこれだけのお金を支払ったわけですか。これはちょっと理解できないですね。極めて厳しい大蔵省さんの日常の態度からしてもこれは全く理解できないわけですけれども、もう少し詳しくお話し願えませんか。
  202. 根本貞夫

    ○根本説明員 ただいま我が方で聞いておりますのはそこまででございますので、後ほど調べさせていただきましてからお答え申し上げたい、こう思っております。
  203. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 委員長にお願いしますが、それでは、この関連の資料を後で資料として出すようにお願いしたいのですが。
  204. 横山利秋

    横山委員長 わかりました。
  205. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 それでは、詳しい資料は後でぜひいただきたいと思います。  そこで、次の点をお伺いしたいのですが、この支払いの根拠でありますけれども、どういう根拠に基づいて支払いをされたか、まず伺います。
  206. 根本貞夫

    ○根本説明員 支払いでございますけれども、これは国有財産法に基づく普通財産取扱規則第五条九号によりまして、異例かつ重要なものについては普通財産処分に関し大蔵大臣の承認を得て処理しなければならない旨定められているわけでございます。  本件につきましては、水銀による環境汚染が社会的関心が極めて強いものであり、処理方針いかんによっては社会的反響が大きくなるおそれがあるものでございますので、汚染された土地について何らかの対応をせざるを得ないものと判断し、事案の内容が異例かつ重要なものに該当するものとして上記の規定を適用して処理したものでございます。  なお、当該処理による売り払い価格は上記の適切な手続を経てなされたものであり、財政法第九条に言う適正な対価に該当するものであると考えている次第でございます。
  207. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 異例、重要な理由がある、水銀の高度の汚染があるということですね。いや、この支出をしたことについてではなくて、そういう汚染されている土地、国有地、それを売却する場合には、これは国が汚染した場合には国が、あるいはそのほかの第三者が汚染した場合には第三者が、汚染者負担の原理に従って当然処理費を出すべきだというのが原則だと思います。そういう原則に従ってお出しになったんだと思いますけれども、その点をお伺いします。
  208. 根本貞夫

    ○根本説明員 支出いたしましたのは先ほどお答えしたような根拠に基づいてやったということでございます。
  209. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 いや、大蔵省の取り扱いの基準はそうであっても、その精神は汚染者負担の原則に従って支出したわけでしょう。
  210. 根本貞夫

    ○根本説明員 その点につきましては、まだ土壌汚染については環境庁の方で基準がつくられていないという現状にもございますので、我が方としては先ほどのような根拠に基づいて東京都とも相談してやったということで御了解願いたい、こう思っております。
  211. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 そうしますと、基準がないということは、これは大変困ったことなんですね。ほかにもこういう例が現在あるかもしれないし将来出てくるかもしれないわけですけれども、そのたびに、大蔵省の一方的な恣意に基づいて、あるいは相手との話し合いによって、そのときの状況によって処理をする、こういうことにならざるを得ないわけです。  そこで、お尋ねをするわけですけれども、これに類するケースがほかにもあると思いますね。また、現在これに類するケースが浮上しつつあるという事実も聞いておるわけですけれども、そういう場合にもやはり同じ方針なり考え方でおやりになりますか。
  212. 根本貞夫

    ○根本説明員 五十六年度までは小平の件だけだ、こう承知しているわけなんでございますけれども、今後土壌汚染のケースが出てきた場合、汚染の程度あるいは除去に要する費用の額等を勘案いたしまして、また売り払い相手方の意向をも十分に聴取した上、しかも今の小平の汚染の除去費用を控除したケースも参考にしながら適切に対処していきたい、こう考えている次第でございます。
  213. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 その程度とおっしゃいますけれども、程度には基準はない。基準はないということになれば、それを処理する必要がある場合については、これはすべて国が汚染した場合には国の責任において処理費を出す、こう理解していいわけですね。
  214. 根本貞夫

    ○根本説明員 お答え申し上げます。  現在のところ国の方に具体的な基準がないということもございますので、この場合の売り払い相手先でございます東京都、そこの環境基準等をも勘案しながら、かつ国の方の現在の姿勢というものを勘案しながら考えていきたい、こう考えております。
  215. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 そうしますと、これは国には基準がない、幸い東京都さんは先進的な地方団体として基準を設けていらっしゃる。そうしますと、相手が東京都の場合には東京都の基準を参考にしながら、参考にしながらというのはその基準に従ってということでしょうね。基準があるにもかかわらずこれを無視してというわけにはいかぬ。相手に基準がある場合、例えば東京都のように基準を持っているところについてはその基準を目安にしておやりになるということですね、今の御答弁は。それから、相手がそういう基準がない場合については東京都の基準を参照しながらおやりになる、こう理解してよろしいですか。
  216. 根本貞夫

    ○根本説明員 これは売り払う相手方にもよるわけでございますので、東京都の場合にはそういう形でやったということでございますけれども、後の方の、売り払い相手が、あるところないところいろいろあるわけでございますから、そのあたりをケース・バイ・ケースで判断しながらやっていきたい、こう考えております。
  217. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 大蔵省さんをいじめるわけでは決してございませんけれども、大蔵省大変苦しい御答弁をなさっておりますけれども、これもやはり国の方に基準がないということから来る問題ですよ。ですから、長官に最初お伺いしたのは、こういう問題が起こるからひとつ国の方でも基準をつくってもらわなければ困る、こういうことで注意を喚起申し上げたわけです。  本来の所管は環境庁ですので、環境庁では、ひとつもう一回お願いしますけれども、ぜひこの基準をつくっていただきたい。人体に対する影響がわからないとか、あるいは難しいと言ってしまえばそれまでであって、難しいところを克服して、やはり国民の健康を守るために努力するのが環境庁の本来の使命ですから、あらゆる万難を排しても基準をつくっていただきたいということを、もう一回お願いをいたします。
  218. 津田隆

    ○津田説明員 市街地の土壌汚染問題につきましては、市街地の土壌における重金属等の蓄積状況を把握しまして、その環境影響の機構などを解明することによりまして、土壌汚染の判定指針の策定、こういったことに資するための調査研究を現在進めておるところでございます。今後、この調査研究の充実を図ってまいりたいと思っております。
  219. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 公害対策基本法ができてから何年になりますか。いまだに決まっていない、研究中だ、大変行政対応の遅さを嘆くわけでありますけれども、ぜひひとつこれは科学技術庁長官もお力添えをいただいて、この基準をつくっていただきたいわけです。そうでないと今のような問題が次々に起こるわけでありますから、ぜひその点をお願いをいたしたいわけでございます。  そこで、先ほどの問題に戻りますけれども、これについては処理は東京都がやる、そして完了したらその処理の状況を文書で報告するということになっておるのですね。これは関東財務局長から東京都知事にあてた文書でありますけれども、「汚染土壌処理費相当額として当局が算定した額を売払価格から控除することとしたから、この旨回答する。なお、汚染土壌の処理については、東京都が行うこととし、処理完了後は、文書をもって報告願います。」こうありますね。なお、その後にこれは余計なことがくっついておるわけですけれども、「おって、今回の措置は、本件に限りやむを得ず認めるものであり、東京都の処理基準を一般的なものとして認めたものではないので、念のため」云々とあります。これは今の御答弁でこれがさらに確認をされたから結構なんですけれども、東京都が行った処理の報告がどんなふうになっていますか、お伺いします。
  220. 根本貞夫

    ○根本説明員 五十七年の十月に鈴木都知事の方から関東財務局長あてに、処理を完了したので報告しますというのを受け取っております。
  221. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 処理の報告は来ておりますね。その内容についても詳述をしたものが添付されておりますか。
  222. 横山利秋

    横山委員長 どうもあなたは小出しになさいますけれども、何回もやらないでさっと質問の要旨に答えてください。
  223. 根本貞夫

    ○根本説明員 これは一枚の紙でございまして、それだけでございます。
  224. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 処理の内容の報告がないわけですね。
  225. 根本貞夫

    ○根本説明員 そういうことでございます。
  226. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 ありますか。
  227. 根本貞夫

    ○根本説明員 それは特にございません。
  228. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 そこで、この問題はまだ後へ続くわけなんですけれども、そういうことで処理をして、そこへ高等学校ができたわけなんですが、その後の状況を検査したところが、水銀汚染が残っておる。そして、それは空気中における水銀の蒸気の濃度が健康を害する程度に達している、こういう調査があるわけなんです。これについては、東京都の方が権威のある調査所に依頼をしてその調査をしたところが、「日本における地球化学的な最低レベル〇・〇〇一水銀濃度までは到底下らないまでも、通常の都市生活者の生活環境での数値と見られている〇・〇五程度には低下するように努力すべきであろう」。それで、これをはるかに上回る水銀濃度、これは調査の地点がいろいろありますけれども、地点によっては最高一・八七、最低でも〇・三四、一を超える地点が半ばに達している、こういう調査があるわけなんです。都市生活者の生活環境に悪影響を及ぼさないというのが〇・〇五だということを言っております。で、かなり高い水銀濃度が検出をされた。こういうことで東京都の方では、これを除くためにさらに二百数十万の経費を出したということであります。  そうしますと、先ほどの御答弁によりますと、この第二次汚染を除去するための追加費用についても国が出すべきではないかと思いますが、その点はいかがですか。
  229. 根本貞夫

    ○根本説明員 国と東京都は、売買契約締結時、当該土地が水銀等で汚染されていること及び大気汚染もこの土壌から発生しているものであることをお互いが知って、合意の上で、国は都に対して土地価格から汚染土壌処理費相当額を控除して売り払ったものでございますので、国は、契約後に判明した大気汚染について都が支出した費用を国が負担すべきものではないと考えておるところでございます。
  230. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 これは最初の支払いが、そもそも国が汚染をした、その汚染責任においてその除去費用を出す、こういうことでしょう。そうしますと、この水銀汚染大気汚染というのもやはり原因は国にあるわけでありますから、国が当然出さなければいけないんだと思いますけれども、その点。  それから、農水省来ていらっしゃいますか。農水省にお伺いしますけれども、この土地は前に農水省がお使いになったところですね、家畜衛生試験場ですから。その当時の状況をちょっとお伺いしたいのですけれども、当時はまだこういうふうに公害等について余り難しくなかった時代ですから、それは今農水省の過去のことを責めてもいたし方ないのですけれども水銀ですからかなり昇  の汚染だと思いますけれども、その当時の状況をまずお伺いをしたいと思います。
  231. 弘田信之

    ○弘田説明員 お答えいたします。  家畜衛生試験場というのは、実は家畜の病気関係の国立の研究機関としては唯一のものでございます。病気関係研究をやるものですから、病原菌が万一にも外へ出ないようにということで、消毒を非常に徹底してやるということでまいってきております。消毒につきましては、家畜伝染病予防法とかその省令で相当厳密に規定されておりまして、その規定どおりに昇 を使って消毒を完全に実施した。ただし、この昇 を使うというのは昭和五十年に廃止されております。例の赤チン、マーキュロクロムなんかと一緒に使用を中止しております。したがいまして、五十年以降は使っておりません。それまで使った昇 、これは一番多かったのが家畜を収容している畜舎関係、こういう施設を消毒した、これが昇 でございますので、水銀が入っております。それから、今先生指摘されております水銀問題というのは、当時の昇 に入っておりました水銀が原因ではなかったんだろうかと考えております。
  232. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 家畜衛生試験場における水銀汚染というのは、明らかにこれは国がやったわけですよ。別に国が悪意を持ってやったとは言いませんけれども、結果的にはそういうことで水銀汚染が起こっておるわけです。そうしますと、原因者負担というのは今もう公害処理の原則だし、国がそういうふうに指導しているわけですから、そういう原則を確立したのは国ですから、国みずからがその原則を破るような行政はすべきでないと思います。そういう意味で、水銀の第二次汚染の費用についても、都から請求があれば国は支払いをせざるを得ないと思いますけれども、これはいかがですか。これは大臣にお伺いします。どうですか、そういう場合に。
  233. 岩動道行

    岩動国務大臣 私の所管とも余り考えられないのですが、先ほどからの御質疑の模様を伺っておりますと、やはり土壌汚染ということはそれを利用する人あるいは周辺の人には非常に大きな問題であると思います。したがって、まずその汚染の原因を発生させないということに、国有の土地でもそうでありまするし、あるいはこれが公共団体、私有地であってもそのような配慮が必要であろうと思います。と同時に、国がそのような土地を第三者に移転するという場合には、やはりそれなりの責任を持った対応をしていかなければならないということだと思います。  そしてまた、先ほど一律の何が基準を設けたらどうかという話も承っておりましたが、私それを伺っておりまして、全国的にそういう例が非常に多数あるという場合には、いろいろその土壌の汚染の原因とか程度であるとか、あるいはそれがいつまで続くのか、あるいは自然にそれが回復するのか、いろいろなケースが考えられるのではないかと思います。しかも、先ほど大蔵省の方からは、現実に国有財産としてそのような例は余り聞いてないということでございますれば、そういうケースが余り多くないとすれば、当面は、一律の基準を設けるよりは、やはりケース・バイ・ケースでこれに対応していくということが、現状に合ったそうしてまた適切な対処としてやっていけるのではないか、かように考えておるわけでございます。  いずれにいたしましても、公害ということは我々人類社会にとっては大変やっかいな問題でございまするから、そのような公害が発生しないやり方を慎重にまずしなければならないという認識に立って、それらに対してケース・バイ・ケースで対応していくということでないかと思います。  なお、科学技術庁といたしましては、直接公害についての所管をいたしておるわけではございませんが、そのような汚染を発生させるいろいろな原因の究明、いわば本体を究明するということについては、それぞれの所管の省庁においてそれぞれの研究機関もございますが、私どもは、総括してそのような重要な研究課題に対しては十分な協力をしていかなければならない、かように考えておるところでございます。
  234. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 大臣の前向きの御答弁は敬意を表しますが、先ほど関係がないとおっしゃいましたけれども、これは関係があるわけですよ。本来の所管は環境庁でしょうけれども科学技術庁におかれても、先ほど申し上げたように、資源調査所において土地条件と物質循環機能との関連に関する調査というようおこともやっていらっしゃいますので、ひとつ環境庁に御協力をいただいて、こういった問題についての合理的な解決に努力をしていただきたいと思います。  ただ、一つ気がかりなのは、ケース・バイ・ケースでやっていけばいいじゃないかということでありますけれども、こういう問題はこれからも決してないわけではないわけでありまして、もう一つ後でお伺いすることがあるのですが、それもやはり同じケースですけれども行政姿勢というのは、ケース・バイ・ケースというのは一番まずいわけでありまして、一つの基準をつくって、一般的な普遍的な原則をつくって、それに基づいて行政をやるというのが行政の鉄則だと思いますので、そういう意味では、一ケース・バイ・ケースというのは行政姿勢としては余りよろしくないのではないかということを実はお願いをしたいわけであります。  そこで、もう一つあるのですが、やはり同じケースでありますけれども、今、国との協議に入ろうとしておるやはり土地の問題でありますが、工業技術院、これは筑波学園都市に移転をしておりますが、この工業技術院の跡地がやはり水銀その他の汚染で問題になっている。この跡地も東京都が将来何かに使おうとして国に払い下げの申請をこれからしようというのですか、そういう土地のようでありますけれども、ここがやはりかなり高度の汚染地になっておるようであります。これも当然でありまして、工業技術の研究とかあるいは家畜の疫病の研究であるとか、そういう場所は当然消毒あるいは化学剤を使うわけでありますから、その土地が汚染をされるのは当然なわけであります。そういう点で、むしろ汚染されておる土地というのは国が所有をして保管をしておるところに多いのじゃないか、そういう研究所が国にはたくさんありますから。そういう点では決してそんなにまれなケースではない、これからもたびたび出てくるケースではないかと思います。現に工業技術院の跡地についても汚染が問題になっておるということでありますから、一日も早く基準をつくって、こういう問題についての合理的なだれにも納得のできる処理をすべきではないかと思います。  そこで、工業技術院の跡地についての問題でありますけれども、これについても家畜衛生試験場と同じ扱いでおやりになりますか。
  235. 根本貞夫

    ○根本説明員 今先生からお話がございました目黒の工業技術院の跡地につきましては、東京都からの強い要望を受けまして、清掃工場用地として東京都に処分を予定しているわけでございます。都は現在環境影響評価書案を縦覧中である、こう聞いております。それで、現在までのところ、汚染土壌の処理にかかる費用を売り払い価格から控除してもらいたいとの話はまだ来ておりませんけれども、今後都から正式に申し入れがございますれば、都の意向も十分に聴取の上、東京都と協議し、前例に従いまして土壌汚染処理費相当額を控除することといたしたい、こう考えております。
  236. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 この問題については、ぜひそういうことで前向きに処理を願いたいと思います。同時にまた、土壌の汚染についても、農地だけではなくて、一般的に土壌の汚染の基準をぜひ国において早急に決定を願いたいということをお願いをいたしておきます。  次の問題に移りまして、生命科学の点についてお伺いいたしますが、これは科学技術庁の本来のお仕事であると思います。生命科学、いわゆるライフサイエンスについては、戦後驚異的な発展をいたしまして、大変な想像もできないようなことが今行われておるわけでありますが、その中の一つに、人間の生命を、人為的にと言うとおかしいのですけれども、人の手をかすことによって人間の生命の発生に関与するというようなところまで生命科学が進歩をしておるわけであります。そして、この問題に関連をして、先ごろ徳島大学で無断で体外受精の実験をしたという問題がございます。この問題についての一連の経過と、それからその後の指導方針についてお伺いしたいと思います。
  237. 佐藤國雄

    ○佐藤説明員 お答えいたします。  徳島大学からの報告によりますと、体外受精の臨床研究に先立ちまして、五十七年三月から五十八年一月の間に大学の附属病院、それと徳島県内の三つの病院の協力のもとに体外受精の研究を行ったということを聞いております。その場合使用いたしました卵子でございますが、これは、今も申し上げました徳島大学医学部の附属病院、それから徳島県内の三病院で治療の目的で摘出した標本の卵巣、それから不妊症の方の診断の場合に得られた卵子でございまして、医学部附属病院における症例の多くにつきましては、患者の同意を得て採取したというふうに聞いているわけでございます。  なお、先生指摘の問題につきましては、確かに、体外受精という問題につきましては、医学、医療の先端を行くということで、一面では不妊症患者に対しまして極めて朗報である、こういう不妊症の治療法という面もあると同時に、他面におきましては生命と倫理にかかわる、こういうようなことで、非常に重要な問題でございます。そういう意味から、私どもとしては、倫理面から慎重を期すべきである、こういう考えに基づきまして、文部省としても、各大学に対しまして倫理委員会等の設置を求めて適切な対応方を求めていきたい、こういうふうに考えておるところでございます。
  238. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 徳島大学の例が示すように、この問題は、倫理的にも道徳的にも大変かかわりのある重要な問題であるわけであります。ところが、現在は徳島大学あるいは東北大学の学内の倫理規定、倫理規範、これに任せられているというのが実態だと思います。  大臣にお伺いしたいのですが、こういう人間の倫理にも触れる重要問題について、単に大学の内部機関に任せておくだけでいいのかどうか、行政が関与をする、微妙な問題ではありますけれども行政がこういう事態を放置をしておいていいのかどうかというような問題も含めて、この新しい生命科学の進歩についての御所見をいただきたいと思います。
  239. 岩動道行

    岩動国務大臣 ただいまお話のありました生命科学、いわゆるライフサイエンス、これは大変急速な進展を見ております。そして、先ほど文部省の方からも話がありましたように、例えば広い意味でのライフサイエンスの中に入ると思いますが、体外受精がいろいろ考える問題を提起しているということがあると思います。  いずれにいたしましても、このライフサイエンスそのものは、バイオテクノロジーを含めて、遺伝子の組みかえであるとか、あるいは細胞融合とか、そういうような極めて革新的な革命的な技術ができ上がってきておりまして、それが医療面において、あるいは薬品の分野において、あるいは農業の分野において、あるいは環境問題あるいは資源エネルギー、あらゆる分野で非常に大きな、人類に有用な役割を果たす面があると思います。と同時に、ただいま御指摘のような人間の生命にかかわる分野にまでこれが発展してきているということでございます。したがいまして、私どもは、このような新しいライフサイエンスに関する研究につきましては、科学技術会議等を通しまして一つの指針をつくって、そしてこれによっての研究をやるように指導をいたしてきておるわけでございます。  しかしながら、今提起されました体外受精あるいは卵子の貯蔵であるとか、あるいはもう既にアメリカ等においては受精卵の貯蔵とか、そういったようなところまで発達して、しかもそれを商売にするというようなことになってまいりますと、これは人類にとって果たしていいのかどうかという倫理観が出てまいります。と同時に、それぞれの国家、民族には宗教というものがございます。そういうような宗教の点から見ますと、例えば、キリスト教などを中心として一夫一妻制度というものが一つあります。あるいはイスラム教の社会においては一夫多妻という制度もございます。あるいはチベットにおきましては一妻多夫、こういうようなことがその社会では当然と申しますか、一つの社会を構成する基本にもなって、認められておる。したがいまして、人間の倫理、そして生命に対する考え方、非常にさまざまな面があると思います。したがいまして、これを一律に今何か基準を決めるということは、なかなか大事な問題で、そう簡単にはできないのではないだろうか。  先般、中曽根総理が提案をいたしまして、世界の一流の学者、これは医学者、分子生物学者、物理学者あるいは文化的識見の高い人、あるいは神学者、宗教者等々、広い分野で世界の一流の学者にお集まりをいただいて、箱根で会議をやりました。そして、生命科学と人間というテーマで非常に深い、幅の広い議論をしていただきました。当然結論というものは出てまいったわけではございませんが、引き続きこれは極めて重要な課題であるというので、来年はフランスでやろうという話し合いもできたようでございます。  いずれにいたしましても、これは私ども人間社会にとっては非常にかかわりの深い、そしてまた、その国の民族の長い歴史と伝統と文化、そして宗教、倫理観、こういうものを総合して考えていかなければならない。科学技術が進展をしましても、人間がおかしくなる、人間の尊厳が侵されるということは重大な問題でございますので、私は、研究の自由は損なってはいけない、しかし、その成果をどのように人間が活用するかということになりますならば、日本日本の宗教、倫理観、社会の動向、あらゆる面から十分慎重に検討していかなければいけない、これを危険なものに持っていくことは許されない、かように考えて、各方面の御意見を拝聴しながら、また、政府としても、関係省庁と十分な話し合いをしながら今後も慎重にこの問題に対応してまいりたい、かような基本的な考え方を持っているわけでございます。
  240. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 現在は過渡期でありますから、倫理の問題あるいは法的な問題でこれから解決をしなければいけないことがたくさんあると思います。ひとつ十分御研究をいただきたいわけであります。  もう一つ、法的な点で端的な御質問をいたしたいのですが、民法八百八十六条には「胎児の相続能力」ということがございますけれども、受精卵はここに言う「胎児」に相当するのかどうか、これをお聞きします。
  241. 永井紀昭

    ○永井説明員 民事上の観点から一言御説明を申し上げますと、従来、胎児というものは、懐胎はされているけれどもまだ出生じていないもの、こういうような定義づけがされてきたわけでございます。したがいまして、従来の考え方によりますと、要するに、胎内に入っていない受精卵はまだ胎児ではない、こういう解釈があろうかと思います。  しかし、この考え方は、御承知のとおり、体外受精がまだ予想されてないときの解釈でございますので、民法八百八十六条の立法趣旨その他から見ますと、もしその受精卵が子宮に着床して無事出産いたしましたときには、遡及的に受精のときから胎児と同じように権利能力を認める、こういう解釈があり得ようかと思います。若干解釈が分かれるところではあろうかと思います。
  242. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 わかりました。  次の問題をお伺いします。宇宙開発でございます。  最近科学技術庁において「宇宙開発政策大綱」が改訂されたようでございますが、これを拝見いたしますと、どうも自主開発よりは国際協力に重点を置く、国際協力、特に対米依存ということに重点を変えたのではないかというような印象もあるわけでありますが、スペースシャトルというような大プロジェクトについては、日本が独自にやることはなかなか難しいと思いますけれども、こういう面で、対米依存ではなくて対米協力の方向にいくことについてはやむを得ないにしても、宇宙開発というのは、現在は実験の段階ですけれども、将来は経済的な意味を持つ時期が来るのではないかということを考えると、対米依存だけでは済まないのではないかと思います。やはり自主開発を中心としてできる限り宇宙科学の発展を図るべきではないかと思いますが、宇宙開発については、日本は残念ながら現在がなりおくれているんじゃないかと思います。そういう点も含めまして長官の信念を伺いたいと思います。
  243. 岩動道行

    岩動国務大臣 日本の宇宙開発につきましては、宇宙開発委員会を中心としまして宇宙開発に対する政策の大綱、そしてまた毎年その計画というものを立てて進めてまいっております。  その基本の精神は、まず、平和利用ということが一つございます。そしてまた、これについては国会での御決議もございます。そういう基本的な立場に立ちながら、自主開発を主体としながら宇宙開発を進めてまいるということでございまして、今、御指摘のように、自主開発をいろいろ進めてまいっております。  しかしながら、やはりまだアメリカに依存する分野もかなりあるわけでございます。ロケットにつきましてはかなり自主開発部分がふえてきております。五〇%を超して、もう六〇%ぐらいまでは自主開発でやっていけるようになってきております。また、衛星自体の方になりますと、まだそこまではなかなかいっていないということで、アメリカの協力というものは非常に大事でございますが、いよいよ衛星の実用化時代に入ってまいりましたので、一層自主開発を進めなければならないということでございます。  ただいまお話しのありましたスペースシャトル、あるいは今回新たにアメリカのレーガン大統領が壮大な計画として宇宙ステーション、宇宙基地の計画を進める、これについては日本を初めヨーロッパの国にも協力を仰ぎたいという要請が正式に参っておるわけでございます。日本でもみずからがスペースシャトルあるいは宇宙基地というものをつくりたい気持ちはやまやまあるわけでございますが、技術的にもなかなかまだそこまでいっていないし、資金的にも、財政的に大変大きな経費を必要といたしますので、私どもはそのようなスペースシャトルあるいは宇宙基地計画というものに対してはアメリカに協力をしていく、そこに日本研究者なり技術者を送り込んで、そして協力しながらいろいろな宇宙での知見を獲得していく、こういう方向で今後も進めてまいりたいと思います。  もちろん、自前の一〇〇%のロケット、一〇〇%の衛星――通信衛星、放送衛星、資源探査等々、いろいろな分野で、人類にはもちろんのこと、また日本の将来の発展のためにも極めて大事な役割を果たす衛星そのものも、みずからの一〇〇%のものをつくりたいという念願を持ちつつ、しかし当面はアメリカの協力もいただきながら進めてまいる、これがただいまの基本的な私どもの考え方でございます。
  244. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 現在、直ちに宇宙基地を独自にというわけにはいかぬと思いますけれども、アメリカのプロジェクトの中には、軍事目的が不可分のものとしてやはり入っているのじゃないかと思います。日米一体の形で開発することは、そういう面での懸念が絶えずつきまとうわけでありますけれども、どういうふうにして軍事と非軍事とを画然と区別していくのか、区別することができるかどうか、そういった点はいかがですか。
  245. 福島公夫

    ○福島政府委員 お答え申し上げます。  スペースシャトルにつきましては、もちろんスペースシャトルを一回一回利用するわけでございますので、そこで実験をやる場合は純粋に日本だけでやっているわけでございます。  それから、宇宙基地計画につきましては、私どもも、先生方御存じのように、宇宙開発事業団法及び国会決議の精神というものにもとらないような形を整えろということで、レーガン大統領が一般教書で計画を打ち出したときから、十分この問題を取り上げて検討してまいりましたし、アメリカ側の方にもこの辺につきまして一番よく問いただしたわけでございますが、幸いにいたしまして、現在NASAが考えております宇宙基地計画は完全な民生用のものでございます。しかも、アメリカ側が考えておりますのは、いわゆるコアモジュールと言いますけれども、主体になるところはアメリカの技術でアメリカが全部つくっていく。そこヘヨーロッパあるいは日本がそれぞれつくった技術というものを、一例を挙げればそれが実験モジュールというような形になるわけでございますけれども、それを付加するという形で協力するという形になっております。したがいまして、万一アメリカ側でその技術というものが軍の方に使われるということがございましても、日本あるいはヨーロッパが付加した技術については切り離して使われるという形になるというふうに理解しております。したがいまして、そこで担保していこうというふうな考え方をしております。  それから、先ほど先生言われました、自分自身でも持った方がいいのではないかということは、これは当然のことではございますけれども、今回の政策大綱は、当面十五年間というものを見通して、その間の日本の技術水準及び資金の能力、そういうものを考えますと、我々としては、まず第一に大型のロケット、二トン級の静止衛星を打ち上げる大型のロケットの開発という方にその資金、技術を集中すべきである。国際協力できるものは、アメリカ側も要望しておりますので、そういったものについて国際協力のもとで進めていき、そういうところでなお技術というものを習得していきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  246. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 次に、宇宙とは逆というわけでもありませんが、深海の開発という問題がございますが、この問題についても日本は若干のおくれをとっているのではないか。世界の水準は既に深海九千メートル程度に達しておるというふうに聞いておりますが、日本の場合には四千ないし四千五、六百というところまでしかいっていないということでありますけれども、この深海底の開発あるいは潜水の技術についてはいかがですか。
  247. 福島公夫

    ○福島政府委員 お答えいたします。  先生指摘のとおり、深海の調査というのは非常に重要なものでございますが、こればかりは調査する手段を持たなければ何にもなりません。現在、日本では、海洋科学技術センターでしんかい二〇〇〇というものをつくって、二千メートルまでは人がそのまま潜って実際の調査をすることができるようになりました。しかし、世界の趨勢は、フランス及びアメリカは既に六千メートル級のものを建造中でございます。早ければ、来年度になりますが、今年中に完成していよいよ調査に入るということを聞いております。これはお金さえ出せばすぐできるというものではございません。したがいまして、私ども研究というものに着手したいということで、財政当局の方にお願いしまして、来年度予算でより深い高高度の潜水システムというものの研究に入ることになりましたので、まだ何年にそれができ上がるということは現在は確答できませんが、できるだけ早い時期により深いもの、例えば六千メートル級の調査船というものを建造したいと考えております。
  248. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 次に、廃棄物、特に放射性廃棄物の問題ですけれども、この問題については既にもう長い間論議をされておりますけれども、依然としてうまい解決の方法がないようであります。現在は低レベル、高レベルともに固定をして貯蔵しているというような状況のようでありますけれども、放射性廃棄物の処理の現状についてまず伺いたいと思います。
  249. 中村守孝

    ○中村(守)政府委員 お答えいたします。  放射性廃棄物につきましては、大きく分けまして低レベルと高レベルと二つの種類がございますが、我が国の原子力発電所等から出ます低レベル放射性廃棄物につきましては、現在原子力発電所の構内に保管されておるわけでございますが、五十八年九月末現在の数字で申しますと、二百リッタードラム缶に換算いたしまして約四十九万本ございます。  それから、一方の高レベル放射性廃棄物でございますが、これは当面は動力炉・核燃料開発事業団の東海再処理施設から出ますものでございますが、この施設から出ます高レベルのものは、現在までに使用済み燃料約百七十四トン処理をいたしておりまして、出た廃棄物の量が百五十八立米、これが厳重な管理のもとにその東海再処理施設の構内に保管されております。
  250. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 そうしますと、低レベル、高レベルともに一定のところに集積をして保管をしているということだと思いますけれども、これでは長期的な展望が全くないということでありまして、低レベルについては今後とも相当の一定のテンポでふえていくだろうし、また、原発の廃棄というようなことがありますけれども、将来はどうするのか。今のように保管をいつまでも続けるわけにはいかないと思いますけれども、その見通しはどうなんですか。
  251. 中村守孝

    ○中村(守)政府委員 お答えいたします。  低レベル放射性廃棄物の最終的な取り扱いでございますが、これにつきましては、陸地に埋設するかまたは海洋に投棄するという、いわゆる陸地処分、海洋処分、こう申しておりますが、二つの方法を併用していくということにいたしておりますが、その最終処分の形に至ります過程といたしまして、発電所の敷地外に長期的かつ集中的に貯蔵するいわゆる敷地外貯蔵ということを現在検討しつつあるところでございます。  高レベル廃棄物につきましては、現在は液体の状況のまま再処理施設の構内に貯蔵されておりますが、これはガラス固化という技術によりまして固化いたします。かなりな期間熱を放出いたしますので、かなりの期間は一応その再処理施設の構内に貯蔵いたしますが、いずれは地層深く埋設をするということでございます。ただ、地層深く埋設するまでの期間というのは四、五十年先のことでもございますし、そういうことで最終的な処分については、地質その他の影響等について現在いろいろな研究を進めている段階でございます。
  252. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 低レベルについて敷地外に貯蔵するということは、これは非常に問題があると思うのですね。前に海洋投棄というようなこともあって、これが例え公海上であっても、近辺の国から異議があった場合には強行できないだろうということがありますし、敷地外については問題があるだろうと思いますし、また、高レベルについて地下に埋設をするということについて、これは本当に国民的なコンセンサスが得られるかどうか、これも問題でありますが、敷地外ということになりますとどういうことが予想されますか。
  253. 中村守孝

    ○中村(守)政府委員 お答えいたします。  現在は、発電所の構内に倉庫風の建物をつくりまして、その倉庫風の建物の中にドラム缶に入れました放射性廃棄物が貯蔵されておる、こういう状態でございますが、幾つかの発電所からそういうドラム缶に詰め込まれた廃棄物を受け入れまして、これを集中的に一カ所で保管、貯蔵しようということでございます。  その貯蔵の方法につきましては、いろいろな方法がございますが、地上にコンクリートのピットを掘りまして、その中にドラム缶を埋め込んで安全に管理するという方法もございます。ここち辺の具体的な方法等につきまして、一つのビジョン的なものを私どもの方の勉強会でも検討いたしまして、そういう構想を今後具体化をしていこう、こういうことで進めておるわけでございまして、その敷地外貯蔵のサイト、立地をどこにするかというようなことにつきましては、現在財団法人の環境整備センターが全国的に立地調査をしておるという段階でございます。
  254. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 次に、早い原発は既に寿命が尽きようとしておるということだと思いますが、原発の廃棄、これによって相当多量の高レベル廃棄物が出るのではないかと思いますが、この処理の方法はどう考えておられますか。
  255. 中村守孝

    ○中村(守)政府委員 お答えいたします。  一つは、現在運転中の原子炉がいつ廃止になるかという点がございますが、原子力委員会の廃炉対策専門部会で大体御検討いただきましたところでは、発電所の寿命といたしましては三十年ないし四十年ぐらいあり得るのではないだろうか、こういうことが一つ見込まれておりまして、現在、そういう観点から考えますと、我が国で最初に廃炉を迎えるような原子力発電所は十数年先のことではないかと思われるわけでございます。  ただ、先生指摘のように、廃炉ということになりますれば、一時的に大量の廃棄物が出る。これは、機器類とかあるいはその周辺のコンクリート等々の廃棄物がたくさん出るわけでございますが、これらにつきましてはできる限り減容の処理を行いまして、出る放射性廃棄物量を少なくするということに努めることは当然でございますが、その最終的な処分方法につきましては、一般の廃棄物と同様な方法処分をするということを考えております。
  256. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 時間がありませんが、あと一問だけ。  科学万博が来年行われるわけでありますが、これについては万全の準備が進められておると思います。その中で特に問題になるのは、交通対策をどうするか、二千万人ですか、二千五百万ですかの観客をどう円滑に運ぶかという交通の問題があるわけであります。それからまた、閉会後のこの施設を将来とも科学の普及あるいは研究に使うべきではないかという意見もございますけれども、それらのこと。それから施設についても、万博用の施設を将来地元の発展のために残して活用してもらいたいというような意見もあるようでありますが、それらを含めてお答えをいただきたいと思います。
  257. 赤羽信久

    ○赤羽(信)政府委員 まず、交通対策でございますけれども、御指摘のように約二千万人を想定した入場者に対しまして、半分の一千万人が道路により、一千万人が鉄道により来ていただけるものという予測に立って準備をしております。  道路につきましては、既設の道路を整備いたしまして十分活用するのは当然でございますが、さらに常磐自動車道を延長いたしまして首都高速道路とつなげる、それから、会場周辺の道路を整備いたしまして混雑を緩和し、立体交差を進めるというようなことを考えているわけでございます。特に、高速道路のキャパシティーは非常に大きゅうございますので、その点では十分な能力かと思われますが、首都高速の能力を考えなければいけない、そのためにはできるだけウィークデーに早目に来ていただくということのPRに努めたいと思っております。  また、駐車場でございますけれども、団体のバスで来られます場合は、会場の中にすぐ入れて駐車できるようにいたします。いわゆるマイカーは、周辺の三地域に約二万四千台分の駐車場を予定いたしまして、現在工事を進めているところでございます。  鉄道につきましては、国鉄の常磐線がかなりの主力になる予定でございます。運輸省、国鉄等で現在検討されておりまして、大幅な輸送力の増強を考えておられます。  その次の問題といたしまして、常磐線の牛久駅と荒川沖駅の間に臨時駅を設置いたしまして、ここから約十三キロ会場までございますので、そこの輸送が問題でございます。現在では連節バスと称しておりますけれども、二台のバスをつなげたような大型バスを百台、それから一般のバスをさらに追加いたしまして、会場まで立体交差等でほとんど専用道路を走れるような対策を講じております。これによりまして、大型バスがちょうど電車一両の収容力がございますので、相当の電車が到着いたしましても円滑にバス輸送ができるように用意しているわけでございます。  それから、博覧会の跡でございますが、メイン会場の方は県の土地でございまして、将来工業団地としてお使いになるという予定と承っております。後々まで記念すべきものといたしまして、筑波学園都市の中央に第二会場的な意味でエキスポセンターというのがございますが、これは会期中はプラネタリウム、それから筑波学園都市の紹介ということに充てるわけでございますが、これは終わった後も有効に利用する予定でございまして、内容はさらに今後検討いたしますけれども、筑波研究学園都市の中心の会場としてふさわしいものに将来利用していこうという考えております。
  258. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 終わります。
  259. 横山利秋

  260. 貝沼次郎

    貝沼委員 きょうは五十六年度決算総理府所管科学技術庁の質問をさしていただきます。  それに際しまして、日本原子力船研究開発事業団の井上理事長並びに動力炉・核燃料開発事業団の吉田理事長に御出席をいただきまして、本当に感謝いたします。  そこで、時間が余りありませんので、私は単刀直入に質問をしてまいりたいと思います。  初めに、科学技術庁の方にお尋ねをいたします。  昭和五十六年度決算で、会計検査院より日本原子力研究所の関係で不当事項が出ておりますけれども、この点はどういう点であったのか、また、この問題点を科学技術庁はどのように受けとめておられるのか、この点をまず伺っておきたいと思います。
  261. 中村守孝

    ○中村(守)政府委員 お答えいたします。  昭和五十六年度決算におきまして、先生指摘のように、日本原子力研究所につきまして会計検査院の方から指摘いただきました事項が二件ございます。第一点は、核融合の臨界実験試験装置でございますJT60の実験棟の建屋の建設にかかわる件でございます。もう一点は、余裕金の運用にかかわる件でございます。いずれにいたしましても、この二件の御指摘を受けたことにつきましては、財政事情の非常に逼迫している折から、まことに遺憾なことであったと科技庁として考えておるわけでございます。  まず、JT60の実験棟建屋の建設工事にかかわります事項でございますが、これはその工事の施行に当たりましで、その建物に使用します鉄筋コンクリート用の棒鋼につきまして、棒材でございますが、原子力研究所といたしましては、質のよい高炉メーカーの製品を仕様として指定したわけでございます。これは電炉メーカーの製品と比較いたしますと割高なものでございますが、JIS規格の点においては両方とも同じようなものがございますので、会計検査院の方からは、割高な高炉メーカー製品を使わずに電炉メーカー製品を使うべきでなかったか、そうすれば七千四百七十万円ほどは節約になったはずである、こういう御指摘を受けたわけでございます。本件につきましては、御指摘を受けました後、日本原子力研究所につきましてはこの点反省いたしまして、関係者を厳重処分に処するとともに、再発防止のために原研の部内におきまして十分趣旨の徹底を図り、必要な処置を講じたところでございます。今後、当庁といたしましてもこのようなことのないように指導してまいる所存でございます。  それから、余裕金の運用につきましては、実は原子力研究所では従来定期預金などによる運用を行ってきたわけでございますが、最近は譲渡性預金によって運用することによってさらに利率を高く運用できるというようなことで、もっと運用の幅を広げて効率的な運用を図るようにしたらどうか、こういう御指摘会計検査院の方から受けたわけでございまして、日本原子力研究所におきましては、御指摘を受けました譲渡性預金によって運用するという方法も新しくつけ加えまして、そういう運用を既にやるようにいたしておる次第でございます。
  262. 貝沼次郎

    貝沼委員 ただいま説明のあったとおりでありますけれども、この根本的な問題は官庁と民間の大きな違いだと私は思います。民間の企業であれば、いかにして安く、効率よく、そして立派なものをつくるか、こういうことに力を入れるはずだと思います。ただ、官庁の場合は予算で決めたものをそのまま、それがむだになろうとどうしようと、とにかくそのままやっていく、こういうような発想がある以上、今その官庁の方針に従ってやった職員が厳重に処分されたといいますけれども、むしろ処分される方がおかしいのでありまして、私は考え方を変えなければならぬと思います。  そういう意味から、口では行革行革と言っておりますけれども、やはり各省庁その点はもっと心してかからなくちゃならぬと私は思いますが、長官、いかがですか。
  263. 岩動道行

    岩動国務大臣 御指摘のとおりでございまして、とかく役人は、予算がとれればそれを一〇〇%使い切ってしまうというのが役人の最もすぐれたやり方だという観念もございます。また、金利というものについての感覚がなかなか十分に行き届かない、こういうようなことは、行政官庁、さらにまた国の機関としても十分に留意をしなければならないことでございまして、会計検査院からの指摘はまことに適切な御指摘をいただいたわけで、私どもはこれからもそのような点については十分に反省をして、効率のよい予算使用ということに努めてまいりたいと考えております。
  264. 貝沼次郎

    貝沼委員 大臣から今そういう力強いお言葉をいただきましたけれども、私たちこれからずっと決算をやっていくわけでありますから、その実効が出るか出ないかはまたその都度指摘をさせていただきたいと思います。私はやはり根本的には親方日の丸の発想だと思うのです。科学技術庁という最も科学の先端を行くことをやっておるところが極めて科学的ではない。こういう点で私は指摘しておきたいと思います。  そこで、この科学技術庁関係の建物には非常に高度な判断を要する材料が使われます。そこで、岡山県の人形峠に計画されておりますウラン濃縮原型プラント、これについて今私どもは非常に関心が高いわけでございます。これも大変難しい建物だと思いますけれども、大きな建物でありますので、その辺をよく心してやらないと大変損失が出てくるのではないか、こう思っております。したがって、こういうことを生かして、今後この原型プラントの建設スケジュールというのがどういうふうになっておるのか、この点を動燃の理事長から御答弁を願いたいと思います。
  265. 吉田登

    ○吉田参考人 吉田でございます。  ただいま御質問のありましたウラン濃縮原型プラントの建設のことでありますが、五十九年度から土地造成に着手いたしまして、昭和六十二年度には一部運開、六十三年度には全面運開にいたしたいというふうに考えております。
  266. 貝沼次郎

    貝沼委員 これは事業計画だと思いますが、これをさらに細かくここで発表できないかということでございます。と申しますのは、地元では、こういう大きな事業というものがどれだけ地元の経済に影響を与えるか、メリットはどれだけあるのかというようなことで、非常に関心を持っております。また、非常に高級な判断を要する部分が多いわけでありますので、その点については大手の企業が入らなければならない部分もたくさんあると思います。しかし、せっかく地元でそれだけの事業が行われるのに地元には全然メリットがないのかというようなまた心配もありますので、その辺の割り振りといいますか、どういうふうに計画をし、考えておられるのか、できれば大体の予算額の目安までも示していただければ大変ありがたいと思うわけでありますが、御答弁をお願いいたします。
  267. 吉田登

    ○吉田参考人 ウラン濃縮原型プラントの建設は、現在では建設の諸準備を実施している段階にありまして、一部土地造成の設計ということを、先ほど言われましたけれども地元の業者の方に実施をしていただいております。このような工事の前提段階でありますので、地元企業はもとよりのこと企業全体の活用につきましてはまだ確定をいたしておりません。  ただ、先生が御指摘になりましたように、地元の企業を有効に使うということは、我々としても非常に重要なことだと考えております。しかし、先ほど先生も御指摘がありましたように、動燃事業団としても経済性ということも非常に重要視しておりまして、安全性と経済性ということを考えながら、この原型プラントが非常に特定の技術を持っておりますので、そういうことを総合に考慮いたしまして今の問題も決めていきたいというふうに思っております。  予算につきましては、総予算約六百数十億ということで現在検討を進めておる段階でございます。そういうことで我々といたしましても、非常に重要な工事でありますので念には念を入れて十分検討さしていただいておりますので、よろしくお願いしたいと思います。
  268. 貝沼次郎

    貝沼委員 地元の要求というものをひとつ十分に組み入れていただきまして、そして、間違っても地元から反発を食うようなことがないように私は要望しておきたいと思います。  それで、これに関連いたしまして科学技術庁の方にちょっとお尋ねいたしますが、電源三法との関係においてこの原型プラント建設立地につきまして大体どのくらいの交付金が考えられるのかというのがまた関心事でございます。これは核燃料サイクルの場合は単品でいろいろと計算をするそうでございますので、計算があるのか、それともまだそういうものは全然なされていないのか、五十九年度あるいは六十年度ぐらいまでも含めてひとつその感触を承りたいと思います。
  269. 中村守孝

    ○中村(守)政府委員 お答えいたします。  デモプラントの建設に際しまして電源三法の制度による立地交付金がどのくらい出るのか、こういう御質問かと思いますが、この点につきましては、いまだにデモプラントについての取り扱いを決めておりませんで、通産省、大蔵省と十分御相談しながら決めていく問題でございます。現在のところ未定でございます。
  270. 貝沼次郎

    貝沼委員 現在未定であっても、今後相談して決めるという場合に、これは地元からの要請というものが基本になっていろいろ相談があるというふうに受け取ってよろしいですか。
  271. 中村守孝

    ○中村(守)政府委員 お答えいたします。  この立地交付金を、例えば金額をどのくらいにするかということは、もう少し、地元の御意見をお聞きして決めるという性格のものとは違っておりますので、この点は、ほかのいろいろな原子力施設とのバランス、ほかには原子力発電所の交付金も決まっておりますし、あるいは実験炉とかそのほかの原子力関係研究施設についても既に過去における事例があるわけでございますが、そういったこととの見合いの上で検討しなければなりませんし、また、その地方の建設後に入ります固定資産税との関係等々、いろいろな要素を加味しながら検討しなければならない問題でございますので、今一概にこうなるだろうということを推測して申し上げるわけにはまいらないところでございます。     〔委員長退席、新村(勝)委員長代理着席〕
  272. 貝沼次郎

    貝沼委員 確認だけしておきたいと思いますが、この点についてはいままで検討してきたわけですか、それともこれから検討をするかしないかを決めるということですか、その辺のところをお願いします。
  273. 中村守孝

    ○中村(守)政府委員 私ども内々の検討はしてございますが、まだ大蔵省、通産省と検討を始めておりませんので、これから検討を関係各省と御相談申し上げる、こういうことでございます。
  274. 貝沼次郎

    貝沼委員 それじゃ、しつこいようですけれども、これから相談をするということは、例えば今年度くらいにある程度の話は煮詰めたい、そういうような希望はありますか。
  275. 中村守孝

    ○中村(守)政府委員 今土地造成その他は始めておりますが、実際の工事は来年度着工という形になりますので、今年中に関係各省との御相談を終えていきたいと思っております。
  276. 貝沼次郎

    貝沼委員 了解いたしました。ぜひともひとつ地元の意見なども参考にしながら進めていただきたいと思います。  それから、二番目の問題でありますが、先ほど話が出ておりました放射性廃棄物の処分の問題でございます。先ほどは高レベルの話が出ておりましたが、私は低レベルの問題で質問をしたいと思います。  先ほどの答弁の中にも、現在各発電所にドラム缶に入ってあるのが三十五万六千七百本ですか、これが五十八年十二月現在これだけのドラム缶が積んである。そうしてこの低レベルを何とかしなくてはならない、こういうことだと思います。ところが、先ほどの答弁でも、この処分の仕方には海洋投棄とそれから陸地の投棄がある、陸上の場合、原子力環境整備センター、財団法人でありますが、これが場所を探しております、こういう答弁がさっきございました。  そこで、場所を探しておるという答弁になるとちょっとややこしいのですね。私はあそこのところは聞き逃すことができません。と申しますのは、この財団法人原子力環境整備センターというのはどこをやったかといえば、岡山県川上部備中町、まあ成羽町にもちょっとまたがるわけでありますが、そこの金平鉱山、山宝石灰鉱山で研究調査をやったわけでございます。現在やっているわけです。先ほどの局長の答弁だと、場所を探しておるためにこれをやるというのであれば、これは実は大変な問題を含んでくるわけでありまして、この財団法人原子力環境整備センターというものが一体何の目的で研究調査をやられたのか、これははっきりしていただきたいと思うのです。
  277. 中村守孝

    ○中村(守)政府委員 先ほどお答えいたしました中で、原子力環境整備センターが立地の調査をしていると申し上げましたのは、敷地外貯蔵の施設、こういう方法が最終処分に歪みまでの間においてあり得るのじゃないか。これは先ほど申し上げましたように、地上に今の発電所にございます倉庫よりは非常に長期的にもつ恒久的な建物をつくってその中に納める、あるいはコンクリートのピットを掘ってその中に納めるとかということでございまして、最終処分とは異なるわけでございますが、そういうことについての立地を調査しておると申し上げたわけでございます。  先生ただいま御指摘の件は、岡山県の域内で原子力環境整備センターが調査を行っている件についての御質問かと思いますが、この調査は、いわゆる低レベル廃棄物を最終処分にする場合におけるデータを取得するために調査を行っておるわけでございます。御指摘の地点、山宝鉱山という石灰岩の鉱床におきまして、試験用の空洞を掘りまして、水がどのように浸透していくのか、あるいは岩盤内の圧力のかかり方がどういうことになっているかという基礎的なデータをとるわけでございまして、これは特定の地点のデータというよりは、石灰岩を有する鉱床においてはその特性がどうなるかということを一般的に調査するというためのものでございまして、特にそこを特定の地点と定めて立地調査をするためにボーリングをするとか、そういう性格のものとは違うわけでございます。
  278. 貝沼次郎

    貝沼委員 そういう答弁になると、私はちょっと言わなければいけないですね。先ほど私が言ったことは、場所を探しておるのではないということをはっきりしてもらわなければいけないのです。単なる基礎データをとっているにすぎないということでないとおかしくなるのです。それは環境整備センターと地元の各町との間に念書というのを交わしておるのですね。その念書には、「データ収集が目的であり、将来同鉱山を放射性廃棄物の処分地にしない。」とちゃんと書いてあるのですから、そこのところをはっきりしておいてもらわないとぐあいが悪い。ただ場所を探すためにそこへ行ったということではないわけでしょう。なぜ石灰岩のところにそんなものをやったんだということについても、石灰岩は水に溶けるわけですから、現在石灰岩が残っておるということは、水分がない、したがって、例えばそこに処分しても地下水影響を与えることはないだろう、あるいはそこに処分しても、そのわきに側溝やそういうものを考えたならば、水はその辺を通っていくから恐らく低レベルのものを浸すことはないであろう。しかし、その強度あるいはその穴を掘ったときの狭くなり方やら応力やらひずみやら、そういうものがどのぐらい耐えることができるかというようなことから、基礎データをとりたいのが本当なんでしょう。その辺のところをはっきりしておいてくれないと、ちょっとぐあいが悪いと私は思うのです。もう一度答弁お願いいたします。
  279. 中村守孝

    ○中村(守)政府委員 お答えいたします。  御指摘の山宝鉱山における原子力環境整備センターの調査は、今先生指摘なさったとおり、まったくそのとおりでございます。
  280. 貝沼次郎

    貝沼委員 そこで、この財団法人原子力環境整備センターが場所を探しておるという発想は本当にあるのですか。聞いておきたいと思います。     〔新村(勝)委員長代理退席、委員長着席〕
  281. 中村守孝

    ○中村(守)政府委員 お答えいたします。  環境整備センターは、電気事業者の委託を受けて、一方で、最終処分ということでなくても、いわゆる敷地外貯蔵の点も含めまして立地の調査もいたしておると聞いております。
  282. 貝沼次郎

    貝沼委員 明日岡山県の方は、この現地に参りまして、そうして現地調査を行うことになっておるわけでありますので、私は、そこできょうはっきりとした態度を公にしておいた方がよろしかろう、こう思ってこの質問をしておるわけであります。したがって、少なくとも何のために現地調査をするかというと、ここに持ってきて捨てるのではないか、ここが場所に決まるのではないかという心配があるからなんです。しかし、現在のところは基礎データをとるだけであり、しかもこれも九月には終わるわけですね。そういうようなところから、今そういうところに直接処分をするという考えはないというような安心できるような答弁をお願いしたいと思います。
  283. 中村守孝

    ○中村(守)政府委員 お答えいたします。  山宝鉱山についての調査環境整備センターが行っておりますが、実際の処分地等を決定いたしますのは最終的には電気事業者ということになるわけでございますが、山宝鉱山につきましては、電気事業者におきましても、この地を処分地とするという計画は持っていないと聞いております。
  284. 貝沼次郎

    貝沼委員 それは聞いておるだけの話でありますから、原子力委員長であります科学技術庁長官、どういうふうな感触でございますか。
  285. 岩動道行

    岩動国務大臣 今お話しのありました、山宝鉱山で原子力環境整備センターが基礎的な調査をするということは、そこを処分場とはしないという先ほど員沼委員が言われましたセンターと地元との念書というものがございます。私は、その念書は守られるものと理解をいたしております。そして、こういう廃棄物を出す電気事業者がまず第一義的にどこにどういうものを探して持っていくのかということはこれから検討されることだと思っておりますが、具体的にどこがどうという話は一切私どもは承知をいたしておりません。
  286. 貝沼次郎

    貝沼委員 そこで、地層処分の場合はいろいろな段階があるわけですね、高レベルでも低レベルでもあるわけです。初めにどういう地層、岩種が適しているのか、あるいは有効な地層の調査に入るのか、それからいろいろ模擬的にやってみるとか、こういう幾つもの段階を通って処分というものが決まっていくわけでございますけれども、今恐らく現場の方ではいろいろな調査、簡単なボーリングをやったりいろいろなことをやっているわけですけれども、どうでしょうか、この低レベルの廃棄物は地層処分ということがある程度決まったということなんでしょうか。また、決まったとすれば、その地層、岩種、これは花崗岩がいいのかそれとも石灰岩がいいのか、堆積層がいいのか、この辺の判断はついたのでしょうか。とにかく先ほどの答弁ですと、あと五十年くらいで全部処分する方向がもう決まるような非常にどんどん拍子の答弁が出ておりましたわけで、それだったら、少なくとも岩質の決定とかそういういろいろな方向というものはある程度決まっておるんじゃないかと私は思いますが、この点はいかがですか。
  287. 中村守孝

    ○中村(守)政府委員 お答えいたします。  低レベルの陸地処分につきましては、現在安全評価手法を整備中でございまして、今後は処分技術の実証のための試験的陸地処分の実施というようなことを経た上で、本格的な処分に移行していくよう努力していきたいということでございます。地層処分と申しますものは、むしろ低レベルでは地表での処分という形が主体になろうかと思いますが、地層処分の方は高レベルの放射性廃棄物のことでございまして、先生から御指摘ございましたが、先ほど私、四、五十年先になって地層に処分をするということを申し上げたわけでございますが、そういう意味で、地層中に処分することにつきましてはまだ時間もございますので、いろいろな地質について今調査しているということでございまして、まだどういう地層とかいうような具体的なことは決定したとかそういうことは全然ございません。
  288. 貝沼次郎

    貝沼委員 いや、先ほど大変調子のいい答弁が並んでおりましたので、相当進んだんだなと私思ったものですからちょっと聞いたわけでございます。  それから、長官に一言だけちょっと伺っておきたいと思います。  と申しますのは、中国との関係で、いよいよ今度長官が中国の方と原子力協定の問題でいろいろ話し合いをなさるような報道がされております。ところが、原子力協定となりますと、いろいろ問題があります。例えば、日中の原子力協定の締結というのは見込みがあるのかどうか、これが一つ。それから、それに伴って我が国は積極的に進めようという考え方かどうか。さらに、何か条件があるのか。アメリカだったら、アメリカから来たウランについてはすべて事前に協議しなければならないというような条項がついておりますけれども、中国との関係で何か条件はあるのか。今度中国は広東省に初めての原子力発電所を建設するそうであります。西側諸国からは資金的な問題やあるいは炉はフランスからとかタービンは米国とかというふうにいろいろ考えておるようでありますけれども、我が国はこれに何らかの関係をするのかどうか、この点について伺っておきたいと思います。
  289. 岩動道行

    岩動国務大臣 まず、日中の間での原子力協定でございますが、これはただいま交渉が進められております。そして、先般もその関係の一行が参りました。しかし、そのときにはまだ原子力協定そのものについての深い交渉が進んだというわけではございません。いずれ五月の末ごろにこの協定についての話し合いをまたしようということでございます。  むしろそのときの大きな話し合いは、原子炉容器をとりあえず向こうが秦山の発電所に使いたい、日本のものを輸出してくれないか、こういう話がございまして、そこで私どもは、これについては、あくまでも原子力の平和利用という基本的な理念、輸出についてもその理念を通していかなければいけないという基本的な考え方を持っておったわけでございます。そういうようなことで、日中の間でこの原子炉容器の輸出問題については大変やりとりがございました。ようやく原子力の平和利用という理念に立って、秦山に将来原子炉圧力容器の輸出をしましても、それは平和利用に限る、こういう一つの大きな話し合いができました。  一方、できたその発電所が運営されまして、そして出てくるものがプルトニウムである。それについても私どもは査察を申し入れたわけでございますが、そのことにつきましては、中国側は国家主権というような問題もございましていろいろ難航いたしましたが、実質的には、運営がされて出てきたものについての後の査察に類似するような格好で日本側が訪問するということで合意もできたわけでございまして、日本の平和利用という理念は確保されたと私どもは考えております。  それはそれといたしまして、基本的には原子力協定というものが必要でございますので、私どもはこれは進めてまいりたいと考えております。そういう中において、平和利用の問題がこの原子力協定でどのように確保されるかということは、これからの交渉で私どもは進めてまいりたいと考えております。
  290. 貝沼次郎

    貝沼委員 時間がなくなってまいりましたので、原子力船「むつ」の問題につきましてお尋ねをしたいと思います。  初めに、原子力船事業団の方は本当に「むつ」というものをこれから進めていこうという意気込みはあるのかないのか。今いろいろな説が出ておりますので、本家本元である事業団がどうなのか、これを私は伺っておきたいと思います。
  291. 井上啓次郎

    ○井上参考人 お答えいたします。  原子力船の開発につきましては、日本の将来にとって非常に大事なものという認識を持っておりまして、今先生の御指摘のように、私たちの開発はこれからも続けたいということで万全の体制をとっております。
  292. 貝沼次郎

    貝沼委員 それで、科学技術庁にちょっとお尋ねいたしますが、昭和五十八年度科学技術庁予算によりますと、新定係港の名前が出た予算がちゃんと計上されております、関根浜ですね。「新定係港」とちゃんと書いてある。ところが、五十九年度予算書を見ますとこの文字が消えております。そうして「新港関係」、こういうふうになっておりますね。これはなぜ消えたのですか。定係港にはしない考えですか。
  293. 中村守孝

    ○中村(守)政府委員 お答えいたします。  新港という言葉を用いましたのは、五十九年度予算案を政府・与党において検討しました際に、政府・与党の間で関根浜の港は「むつ」の今後の取り扱いのいかんにかかわらず建設をするということをお決めいただいたわけでございますが、その際に新港という言葉が使われました。それを踏襲している次第でございます。定係港にしないという意味ではございません。
  294. 貝沼次郎

    貝沼委員 それじゃ、定係港にするという意味ですか。
  295. 中村守孝

    ○中村(守)政府委員 いずれにいたしましても、「むつ」は現在大湊に仮停泊という状況でございまして、関根浜に港をつくってそこへ移すということが地元との話し合いでの条件になって、条件というかお約束になっておるわけでございます。したがいまして、私どもは関根浜に港をつくり、そこへ「むつ」を移して、「むつ」をその埠頭につなぐということにして、現在関根浜の港の工事についての準備を進めておるわけでございまして、既に「むつ」の埠頭としてつくる予定のところの護岸工事につきまして捨て石工事を始めたところでございます。
  296. 貝沼次郎

    貝沼委員 ですから、幾ら説明したって、要するに関根浜に移すというところまではあなたの説明はわかるのです。定係港になるのかならないのかというのが問題です。それがならなければ、また出ていかなければならぬのです。出ていかなければならぬのに、どうして金をかけなければならぬのか。定係港になるのかならないのか、はっきりしてもらいたい。
  297. 中村守孝

    ○中村(守)政府委員 定係港という言葉にはいろいろな意味がありますが、「むつ」を停泊させるという意味では停泊港でございます。
  298. 貝沼次郎

    貝沼委員 結局、定係港ということは何にも保証がないわけですね。五者協定では定係港という言葉がちゃんと出ておるのです。何で途中から変わったのですか。将来そこで「むつ」がやれるかやれないかわからぬようなところに金をかけることは決算上果たして得策かどうか、私は問題になると思うわけであります。したがって、このことを今聞いておるわけであります。もう時間がなくなりましたので、私もうこの問題は深く追及できませんが、はっきりしておきたいことは、当局はまだ「むつ」が安心して研究開発ができるような港は決めていないということだと思いますが、違いますか。
  299. 中村守孝

    ○中村(守)政府委員 関根浜の港につきましては、本年一月六日に岩動大臣に現地に行っていただきまして、現地の方とお話し合いをした際に、試験から始まって実験航海を終わって廃船に至るまで関根浜定係港において行うということについて、地元の代表の方々に基本的御了解を得ているところでございます。さらに、一月二十六日に政務次官が現地に参りまして、五十九年度予算の決定の経緯等につきまして十分地元の方々の御了解を得ておりますので、関根浜の港ができ、「むつ」の今後の実験計画を進めるということであれば、関根浜におきまして廃船に至るまでの一切ができるということになっていると考えております。
  300. 貝沼次郎

    貝沼委員 要するに、今の話は考えておるだけなんです。書いたものも何もない。ただ口約束です。今まで「むつ」の歴史は口約束とかそういう話ばかりなんです。したがって、今、理事長がおっしゃるように、本気になってやるなら政府はそれだけのものを示さなければなりません。それを示さないなら、事業団で働いておる従業員がかわいそうです。政府はもっとはっきりした態度をとってもらいたいと思います。長官、いかがですか。
  301. 岩動道行

    岩動国務大臣 「むつ」につきましては、日本は資源小国、海運国家、造船国家、そしてまた貿易国家でありますので、将来とも原子力船というものは必要である、そのために「むつ」によって舶用炉の研究開発を行うということで、私ども今日まで進んでまいりました。その中において、いわゆる地元の五者協定で、大湊から関根浜に原子力船「むつ」を移して、そこを根拠地として、試験研究、実験、そして廃船に至るまでの最終の知見を得るような計画で進めてまいりました。  ところが、五十九年度予算編成の段階におきまして、いろいろな御意見が各方面から出てまいりました。その結果、私どもは、まず、舶用炉の研究は必要である、これは続けるべきである。それから第二は、地元とのお約束は実行いたします、それは関根浜の港をつくるということであります。しかしながら、「むつ」によって舶用炉の研究開発を進めるかどうかは、党との話し合いによりまして本年の八月末を目途として検討してまいる、その結果によって私ども対応する、こういうことにいたしておるわけであります。  いずれにいたしましても、「むつ」の行く場所は関根浜であるというこの地元とのお約束を守ってまいりますので、「むつ」についての港は五十九年度においても最小限度工事を進めてまいる、こういうことで五十九年度予算編成が済んで、ただいま御審議をいただいておるところでございます。御理解をいただきたいと思います。
  302. 横山利秋

    横山委員長 神田厚君。
  303. 神田厚

    ○神田委員 五十六年度決算科学技術庁関係につきまして、二、三、御質問を申し上げます。  まず最初に、三月十三日に東京虎ノ門のニッショーホールで、日本原子力産業会議の年次大会が開かれました。大会あいさつの所信表明に立ちました有沢会長は、原子力発電の経済性を高めるための定期検査期間の短縮の問題、あるいは日中間の原子力協定についての問題、さらには原子力船「むつ」の問題等につきまして、その所信を表明いたしました。  その中で、まず原子力発電の経済性の問題につきまして、作業環境の改善や機械化、自動化で定期検査の期間を現行の九十日間から二カ月以内に短縮すべきであると発言し、それによりまして、百万キロワット級の原発の場合、三十年間に百億円を超える経費節減が可能になると、具体的な数字を挙げまして、この問題につきまして希望を表明されました。この点につきまして、この手続の問題が二カ月以内に短縮することができるのかどうか、通産省はその辺についてはどういうようにお考えでありますか。
  304. 稲葉裕俊

    ○稲葉説明員 お答え申し上げます。  原子力発電所の定期検査でございますが、これは電気事業法に基づきまして、定検の終了時期から十三カ月以内に行うということにされておりまして、現在ほぼ一年に一回の割合で実施されておるところでございます。この検査は国の検査でありますが、あわせて電気事業者みずからが自主保安の一環として、主要な機器、設備について点検を行うなど、トラブルの未然防止の徹底を図り、原子力発電所の安全性、信頼性の確保に努めているところでございます。定期検査の期間でございますけれども、これは原子炉の炉型あるいは設備の容量などによりまして異なりますが、標準的には三カ月程度でございます。  それで、我が国の原子力発電所の稼働率は、近年着実に向上してきておりまして、本年度では全国平均で七〇%を上回ることが予想されて、これは他の原子力発電先進国の中でも極めて良好な実績を示しておるわけでございます。今後、原子力発電が電力供給の主力になるにつれまして、原子力産業会議の有沢会長の発言にも見られますように、なお一層この稼働率を向上させていくことが必要で、このためにも、定期検査に要する期間の短縮を一層図っていくことが求められているわけであります。こういった情勢を踏まえまして、定期検査につきましては、運転実績などを見きわめつつ効率的に実施するよう努力してきたこともありまして、過去に比べますれば短縮されてきておりますが、今後とも原子力発電の安全確保に万全を期すという方針のもとで、電気事業者におきましては、定検の際の点検、保修といったものに関する作業手順の合理化などによって各種作業を効率的に実施することや、被曝の低減化とともに作業の効率化を図るための作業の自動化、遠隔化を推進すること、あるいは定検に要する作業員の計画的な確保といったことが電気事業者において図られていくように指導してまいりたいと思います。また、国の方といたしましては、運転実績などを踏まえた検査項目の合理化、あるいは被曝の低減化とともに作業の効率化を図るための自動検査機器、さらには作業用ロボットの開発など、こういったものを進めまして、定期検査の円滑かつ効率的な実施をさらに進めてまいりたいと考えております。
  305. 神田厚

    ○神田委員 科学技術庁は、原子力の安全性の問題その他の関係から、この問題をどういうふうにお考えでありますか。
  306. 辻栄一

    ○辻政府委員 この問題につきましては、原子力発電所の定期検査が、先ほど通産省の御説明にございましたように、電気事業法第四十七条に基づきまして通産省において慎重に進められているという状況でございまして、科学技術庁といたしましては、原子力安全委員会の事務局といたしましてこれにかかわっておるわけでございます。原子力安全委員会は、これまでもこういった問題につきましても、通産省から各原子力発電所の定期検査の報告を定期的に受けるなど調査審議を行っているところでございますが、先ほど通産省の説明のように、今後、定期検査に関しましてより効果的な実施のための見直しが行われるということでございますれば、必要に応じて、原子力安全委員会といたしましても報告を受け、安全確保上支障がないように検討してまいる、こういう立場でございます。
  307. 神田厚

    ○神田委員 次に、最近の原子力関係の諸問題につきまして、まず最初に、高速増殖炉の開発に関する問題について御質問を申し上げます。  高速増殖炉FBRは、現在使われている軽水炉の次の時代を背負う炉でありまして、ウラン資源を今より何十倍も利用しようとするものであるだけに、日本、アメリカ、欧州、ソ連、各国では、FBRの開発が非常に盛んに各国におきましてしのぎを削っている現状であります。この中で日米はややおくれをとっている、こういうふうに言われておりますけれども、各国のFBR開発の現状と将来計画はどうなっておりますか。
  308. 中村守孝

    ○中村(守)政府委員 お答えいたします。  高速増殖炉は、先生指摘のように、ウランを有効に利用するということで、いわば夢の原子炉とも言われているものでございまして、これは欧米先進国とも積極的に開発に取り組んでいるところでございます。我が国におきましては、高速増殖炉の開発は動力炉・核燃料開発事業団を中心に進めておりまして、既に実験炉「常陽」は順調な運転を行っておりますが、こういう経験をもとに出力二十八万キロワットの原型炉を建設すべく準備を進めておるところでございます。これは俗称「もんじゅ」と呼んでおるものでございますが、昭和六十五年度臨界を目指して、現在現地サイトにおいて準備工事が進められており、既に原子炉の設置許可もいただいておるものでございます。これに続く炉といたしましては、いわゆる実証炉というものを原型炉の成果を踏まえてつくっていくことが必要なわけでございますが、その計画につきましては、現在原子力委員会に設けられました高速増殖炉開発懇談会において基本的な考え方について検討を進めておるところでございます。  一方、米国におきましては、従来クリンチリバー計画と称する高速増殖炉の原型炉の建設計画を持っておりまして、それの準備が進められてきたわけでございますが、昨年これは中止に至りました。しかしながら、米国のエネルギー省によりますと、今後とも高速増殖炉の研究開発そのものは引き続き継続するということといたしておりまして、特に新しい概念を取り入れた高速増殖炉の開発及び高速増殖炉の核燃料サイクルの開発に重点を置くという方向で開発計画の見直しが行われておると聞いております。  それから欧州におきましては、一番進んでおるのはフランスでございまして、フェニックスと称する原型炉、これは電気出力二十八万キロワットでございます。これが既に運転中でございまして、この後に続く実証炉、これはスーパーフェニックスと呼んでおりますが、電気出力百三十万キロワットのものでございます。これが建設中でございまして、来年じゅうには運転を開始する予定でございます。  それから西ドイツにおきましては、実験炉が運転中でございまして、電気出力三十二万キロワットの原型炉につきまして、一九八八年ころの運転開始を目指しまして現在建設が進められておるという状況にございます。  それから英国は、電気出力二十七万キロの原型炉を既に建設して運転を行っておりますが、実証炉につきましては、フランス、西ドイツ、イタリー、ベルギー、こういった国と共同で国際協力によってその開発を進めていきたいということのように聞いております。  それからソ連につきましては、詳細な情報を入手できない状況にございますが、世界最大の高速増殖炉として六十万キロワットの原型炉が運転をしておる、さらにそれに続く実証炉の建設計画を持っているというように聞いておる次第でございます。
  309. 神田厚

    ○神田委員 そこで、米国の問題でありますが、完成目前まできたFBR原型炉クリンチリバーの建設を議会の反対で中止をせざるを得ない状態にある、こういうことであります。こういう事情を背景にとりまして、米国においては、日本の原型炉「もんじゅ」の建設計画への参加とクリンチリバー用に製作されました機器の日本向け輸出について打診をしてきている、こういうように聞いておりますが、その交渉の経緯はどのようになっておりますか。
  310. 中村守孝

    ○中村(守)政府委員 お答えいたします。  米国におきまして、御指摘のように、昨年十月の議会におきましてクリンチリバーの建設予算が認められなかったということから、同計画が中止されるという事態になったわけでございますが、これに伴いまして、昨年の末に米国エネルギー省から動力炉・核燃料開発事業団の方へ、製作済みのクリンチリバー用の機器の一部を「もんじゅ」に使えないかということで、その可能性についての打診があったということは事実でございますが、これを受けまして、現在動力炉・核燃料開発事業団において検討を進めておるわけでございますが、何分にもクリンチリバー用の機器は向こうの計画で向こうの地点に合うように、向こうのサイトに合うようにつくられておるものでございますから、我が国の「もんじゅ」と設計の概念とか機器の仕様というようなものが異なりまして、主要機器についてはこれを転用するということは極めて困難な状況にございまして、ごく一部の計測機器などで転用できるものがあるかどうかというような程度でございます。
  311. 神田厚

    ○神田委員 そういう形で、一つはやはりFBRの日米共同開発というような方向を米国の方でも模索をしているというか、打診をしてきているわけでありますが、政府としては、こういう高速増殖炉の日米共同開発というような問題については、そのメリットあるいはデメリット、また、その建設資金、機器の製作、研究開発分野等の分担のあり方、こういう問題については基本的にどういうお考えをお持ちでありますか。
  312. 中村守孝

    ○中村(守)政府委員 高速増殖炉の日米間の協力につきましては、これまでも日本サイドといたしましては動力炉・核燃料開発事業団が中心になって進めてまいっておりまして、安全性の研究はもちろんのこと、ナトリウムの取り扱い技術とかそのほかプラントの建設、運転を通じて得られます経験など、この高速増殖炉を建設していく上での基盤的、共通的な技術に関しましては、専門家会合を持つとかあるいは別途情報の交換をするなど、こういった形で研究協力を進めてきておるわけでございます。  ただ、具体的に特定の炉を両国で共同して建設するという形での開発の国際協力の進め方につきましては、現在のところまだ具体的に議論をする段階に至っておりません。我が国では未経験の分野でございまして、一般的に考えられる利害得失といいますと、当然のことながら、共同で開発すれば、資金とか人材とかというものが共用できて有効に利用が図れるという点はあろうかと思いますが、国際協力をする場合には、あくまでも我が国の主体性が確保されるということが前提でなければなりませんし、それから、各般の技術について日本の国内にも技術が残るような形で、いわゆる自主技術が日本の国内に醸成されるという形でございませんと、国際協力をしても日本側として得るものが少ないということにもなりますし、そこら辺が十分確保し得るかどうかといった点が問題になろうかと思うわけでございます。  そして、国際協力の基本方針につきましては、原子力委員会での考え方といたしまして、五十七年六月に策定された「原子力開発利用長期計画」の中でこの考え方が述べられております。すなわち、自主開発を補完し、全体として整合性をとりつつ、より積極的に進めるものとするというふうにされております。この考え方を受けまして、現在、原子力委員会の高速増殖炉開発懇談会におきまして、国際協力をどういうぐあいに進めていくか、重点分野をどういうところに置くか、こういったような具体的な進め方について検討を行っているところでございます。したがいまして、まだ資金等の分担をどうするというような形での共同開発に関する具体的な話に至っておりませんので、その考え方についてこの場で申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。
  313. 神田厚

    ○神田委員 次に、日中の原子力協力問題につきまして御質問を申し上げます。  まず、長官にお伺いをしたいのでありますが、中曽根総理の訪中の中でいろいろな問題が話し合われたのでありますが、日中の原子力協力問題についても話が及んだというふうに聞いておりますが、総理は、日中閣僚会議科学技術庁長官も加えたい、こういうような意向であるというように聞きましたが、御感想はいかがでありますか。
  314. 岩動道行

    岩動国務大臣 まず、今回、中曽根総理が中国を訪問しまして、非常に友好のうちに日中の協力が進められて、それが確認をされたということはまことに歓迎すべきことであると思います。  そういう中におきまして、科学技術の分野におきましても既に日中の間には科学技術協力協定というものができております。それによっていろいろなプロジェクトを私どもは今後とも強力に進めてまいりたい。また、そういう中において、特に原子力につきましては原子力の協力協定を結ぼうじゃないかということで、積極的に私どももこの協定を締結するために交渉をただいま続けているというわけでございます。  なお、その過程におきまして、先般、秦山の原子力発電所に対する圧力容器の輸出につきましては話し合いがつきまして、そして平和利用という保障が十分に確認ができましたので、お互いに話し合いがついている、こういうことでございまして、まことに、日本の基本的な原子力の平和利用という筋道の中において話が進んでおりますから、今後とも日中の原子力協力協定につきましても、平和利用という基本理念を生かしつつ話を進めてまいりたいと考えているところでございます。
  315. 神田厚

    ○神田委員 今回、中国の秦山の原子力発電所向けの機器輸出などにつきまして、中国の原子力協力について大変精力的な交渉の結果、一応の成果を得たといいますか、覚書の交換ができたわけでありますが、その中で特に問題になっておりましたところの平和利用の確認の問題でありますが、この問題につきましてはどういう形で交渉が行われ、どういう合意に達したのか、この点をお聞かせいただきたい。
  316. 中村守孝

    ○中村(守)政府委員 お答えいたします。  秦山に関します交渉につきましては、先般、三月十六日に書簡を交換するという形で最終的に決着を見たわけでございますが、この書簡の内容は、両国間の原子力分野の協力を平和的目的に限って推進することを目的として達した了解といたしまして、次の二点を明記しておるものでございます。第一は、「日本国から移転される原子炉圧力容器は秦山原子力発電所においてのみかつ平和的目的に限って利用され、また、いかなる方法によっても軍事的目的に利用されない」こと。それから第二に、「日本側の要求に応じ、日本関係者は、秦山原子力発電所により友好訪問するよう同発電所に招聘される」こととなっております。したがいまして、平和的目的に限って利用されるということについての中国側のかたい約束が得られておるわけでございますし、また、訪問という形でそれを確認できる、そういう手段が確保されたということを判断しておりまして、平和利用についての十分の確保ができたというぐあいに考えております。私どもとして、この平和目的を達するという基本的な考え方がここにうたわれることになりましたので、最終的合意に達した次第でございます。
  317. 神田厚

    ○神田委員 そういうことになりますと、いわゆる機器輸出の現実的な具体的な問題に移るわけでありますが、現在、米国企業、例えばウェスチングハウス社と技術提携しております日本の原子力機器メーカー、例えば三菱重工業等が中国に機器輸出する場合は、日米の企業間及び政府間でこのことについて問題になる、こういうことはありますでしょうか。通産省からまず初めにお聞きしたいと思います。
  318. 大塚和彦

    ○大塚説明員 お答えを申し上げます。  先生指摘になりましたように、本件につきましては、ただいま中村局長からも御答弁ございましたように、平和利用についての約束というものがしっかりできたわけでございますので、通産省といたしましても、輸出貿易管理令に基づいて輸出承認を行うということはほぼ条件が整ったと解釈しておりますが、御指摘のとおり、輸出者たる企業、これは三菱重工業でございますが、その企業が、アメリカの企業、これはウエスチングハウス社と、実は正確に申しますとあと一社ほどございますが、それとライセンスの技術援助契約の関係がございます。したがって、この対象となります原子炉の圧力容器が、ただいま想定しておりますのは再来年の九月ごろに現実に船積みされることになると想定しておりますが、そのころまでには少なくともウエスチングハウス社ないしもう一社から、はっきりと輸出してよろしいという承認を得る必要がございます。したがって、ただいま三菱重工業といたしましては既にこれらの企業と話し合いをいたしておりまして、ウエスチングハウス社及びその一社といたしましてはもうこの承認をするのに問題はないという答えをとっているそうでございます。残っておりますのは、あとアメリカ政府関係でその承認が得られるかどうかということでございますが、私どもが聞いておりますのは、三菱重工業といたしましては、ウエスチングハウス社等がこれについては承認がとれる見通しが十分ある、こう述べているそうでございます。したがって、御指摘のようないろいろな問題が起こるとは私どもは考えておりません。
  319. 神田厚

    ○神田委員 そうしますと、現実的な船積みというのは六十一年、中国の希望でありますか。
  320. 大塚和彦

    ○大塚説明員 おっしゃるとおりでございます。
  321. 神田厚

    ○神田委員 長官にお聞きしたいのでありますが、具体的にこの協力問題がこういう形で秦山の原子力発電所向けの機器輸出等を皮切りとして出発したわけでありますが、中国といたしましてはさらに何カ所かで原子力発電の建設等も予定をしている。こういう中で、日本といたしましては、これらの問題について機器輸出等を含めてどういうふうな態度でございますか。
  322. 岩動道行

    岩動国務大臣 まず、基本的には、私どもは、協定を結んだベースのもとで原子力発電が中国においても平和利用の中において中国のエネルギー源として役に立っていくことは大変喜ばしいことだと思っております。したがいまして、先般の秦山の問題はそういう協定ができる前の最初の協力の具体的な問題でございまして、したがって、協定ができる前にどういう平和利用の保障がとれるか、これが大変大事なポイントでございました。したがって、私どもは、まず原子力の平和利用という日本の基本理念を貫いておくということが一番大事であるというので、いろいろと交渉においては苦心をいたして、先ほど答弁申し上げましたように平和利用の保障が確実に得られたという状態でスタートいたしたわけでございます。したがいまして、今度は協定の方も、そういう一つの実績がございますから、私どもは十分に中国と話し合いをすれば、日本の平和利用という基本理念の中で原子力の協力協定というものは進むことができる、そういう中において日中の関係をさらに濃密にしていくことが大事である、かように考えておるところでございます。
  323. 神田厚

    ○神田委員 積極協力をしていく、こういうことですね。
  324. 岩動道行

    岩動国務大臣 そう考えております。
  325. 神田厚

    ○神田委員 先ほどもちょっと触れられましたが、この原子力協定の締結の見通し、期目的にどういう手順でなおこれを詰めていくのか、この辺はどうでございますか。
  326. 岩動道行

    岩動国務大臣 この点はまだ交渉中でもございますが、大体いい方向で話が進められるのではないかと思っております。中曽根総理と先方の首脳との話の中においてもこのようなことが話し合いがあったと聞いております。また四月の十日には、科学技術の方毅主任が日本においでになりまして、その際にもこのような話が出てくるかと思っておりますが、その際にも、私どもは先ほど申したような基本姿勢のもとで話し合いをしてまいりますならば、協定もそう遠くなく実を結んでいけるのではないだろうかと考えております。
  327. 神田厚

    ○神田委員 これで終わりますが、協定がきちんと早期に締結をされるように希望し、さらに、外務省もこの交渉に大変精力的に関与していただいたわけでありますが、本日、大臣答弁の方が先行しましたので、外務省から交渉経過を聞くまでに至りませんで大変申しわけありませんが、あと、がん問題を残しまして、質問を終わります。
  328. 横山利秋

  329. 中林佳子

    中林委員 私は、原子力発電所の安全性の問題について御質問をさせていただきますが、きょうは島根原子力発電所の問題に限ってお尋ねさせていただきたいと思います。  今、島根原発は二号炉の建設許可も徐々におりましていよいよ着工という段階にまで来ているわけですが、県民、とりわけ原発を抱えている鹿島町やその周辺の松江市民は、依然として一号炉を含める安全性の問題で多くの不安を持っております。その一つに、地震に対して一体どういうふうに対処するかという点でございますが、昨年五月十三日と十四日に松江市で第二次公開ヒアリングが行われました。そのときに日本科学者会議原子力問題研究委員長の赤塚夏樹先生が質問をされているわけですが、この質問の中身は、二号炉の耐震設計に使用された基準地震動の最大加速度、S1に三百ガル、S2に四百ガルを採用して、一号炉のS1が二百ガル、S2が三百ガルより厳しくなっているわけです。これは大変歓迎すべきことなわけですけれども、そうなりますと、当然一号炉の方は新基準を満足しているかという疑問を出していらっしゃるわけです。この問いに対しまして、通産省は、一号炉については検討もし、テストもし、新基準を満足している、こういう回答をしていらっしゃいます。  その検討した、いわばバックフィットしたデータ、これは通産省の方ではお持ちになっているのか、もしお持ちならば、科学者やあるいは地元の者がそのデータを見せてほしいと要望したらお出しになるのかどうか、この点をお伺いしたいと思います。
  330. 末廣恵雄

    ○末廣説明員 お答えいたします。  島根一号炉は昭和四十四年設置許可が行われたわけでございますが、その後昭和五十三年に耐震設計審査指針というものが策定されまして、二号炉はこの指針に基づいて設計が行われるわけです。したがいまして、そういったことから一号炉とそれから二号炉で、先生指摘のように耐震設計のいわゆる設計用の地震動というのが異なっております。ただ、この異なっておりますのは、指針は新しく策定されたということでいわゆる評価の方法が違っておるのでございまして、数値的に申し上げますと、今、先生お話しになりました、例えばS2でいいますと三百ガルが四百ガルということではなくて、実際に地震動を入れます場所が違っておりますので、具体的には一・一倍と申しますか、一割程度二号炉の方が大きくなっているということになります。  私どもは、島根二号炉の安全審査の過程におきまして、この二号炉の設計用地震動が、既に許可を受けております運転中の一号炉の設計用地震動とこういったぐあいに若干差があるということはわかっておりましたので、これに伴う一号炉の安全性につきましては、法律の手続ということではなくて安全の確認を行っております。  具体的には、私どもといたしましては、従来から原子力発電の安全確保には念には念を入れるという観点から安全規制行政をやってきているわけですが、御指摘の点につきましては、まず設置者であります中国電力におきまして検討が行われたわけでございます。通産省としましても、念のためその内容について説明を求めまして、一号炉の安全性は現状で十分確保されるということを確認しております。したがいまして、この安全性の確認と申しますのは、法令によりますいわゆる設置許可申請書が出てまいりまして、それに基づいて審査をやるといったものではございませんで、あくまで念のために実施したものでございますので、本来の安全審査と異なりまして、その内容につきまして取りまとめた資料はございません。
  331. 中林佳子

    中林委員 要するに、そのデータは中国電力会社側が計算したものを念のために見たものであるし、通産省としては持っていないというお答えだと思うのですね。これであれば、一体住民あるいは科学者などがもっと科学的に検討しようと思えばどうすればよいのでしょうか。要するに、そういう手順は法律で決められていないから、それは公表しなくてもいいのだというお考えなのでしょうか。
  332. 末廣恵雄

    ○末廣説明員 本件のような安全性のチェックにつきましては、念のためやるということで、一義的には設置者でチェックしておりますが、島根におきます公開ヒヤリングにおきましても、地元の方から御質問もございましたので、その内容につきましては私どもとしては時間の許す限り御説明申し上げたところでございます。
  333. 中林佳子

    中林委員 私もあのやりとりは存じておりますけれども、ただ口頭で五割までしかなっていないので大丈夫だとかおっしゃってみても、あの場で納得がいく住民がどれだけいるでしょう。地震科学者などがそれなりのデータに基づいてよく検討を加えなければ、本当に基準を満たしているのかどうかという判断はできないと思うわけです。そういう意味で、私は、もしも通産省があくまでもこれは電力会社側の企業の問題であるということで片づけられるならば、原子力基本法の趣旨そのものに違反するのではないかと思うわけです。  この問題で論議しても、通産省側は見せない、ないということでございますので始まらないと思うわけですが、この公開ヒヤリングの席で赤塚先生もデータの要求をなさっておられます。そのときに通産省がこう答えていらっしゃるわけですね。原子力安全委員会から要請があれば説明する、こういうふうにおっしゃっているわけですが、原子力安全委員会は通産省に対して説明を要請されるおつもりなのでしょうか。
  334. 辻栄一

    ○辻政府委員 原子力安全委員会は、この問題については特に通産省から資料を求めて説明を受ける必要はないというふうに判断をいたしております。
  335. 中林佳子

    中林委員 私は、今の御答弁、本当に原子力安全委員会とは一体何をするところかということに再び疑問を抱かざるを得ないわけですね。  「原子力安全委員会の当面の施策について」というのが五十三年に発表になっております。私それのコピーをここに持っていますが、その中で、「当面の重要施策」という項目の中にこう書いてあるのですよ。「当委員会は、行政庁の行う設置許可等に関する安全審査について、最新の科学技術的知見に基づいて客観的立場から再審査(ダブルチェック)する。」「特に①既に設置の許可等の行われた施設と異なる基本設計の採用②新しい基準又は実験研究データの適用」以上の「安全上の重要事項を中心に審議する。」こういうようなことが書かれてあるわけです。ダブルチェックをする、新基準になった場合はバックフィットのこともちゃんとやるのだというふうに書いてあるわけですけれども、安全委員会の方も通産省の方に特別説明を求めない。法で特別こういうことは決められていないからおやりにならないのかもわかりませんけれども、原子力安全委員会の役割、当面の任務ということから考えれば、これははるかに違うことになっているのではないかと思うわけですが、その点いかがでしょうか。
  336. 辻栄一

    ○辻政府委員 お言葉をお返しするようでございますが、実は原子力安全委員会のつくりました施策におきまして、資料の公開あるいは新しい基準による検討ということを申しておりますのは、新しい施設の安全審査に関してこういうぐあいにやっていく、その重点審議事項はこういう点であるということをまとめたものでございます。  このバックフィットの問題につきましては、いろいろの問題があるわけでございますが、基本的には、これまでの安全審査におきまして慎重な審査が行われてきておったものでございますから、原則的にバックフィットをするということは考えてはおりませんで、特に重要なものが出てきて検討する必要があるという場合については、その辺の検討もするという扱いになっておるわけでございます。  以上でございます。
  337. 中林佳子

    中林委員 この地震の問題は非常に重要な問題であると私は思います。ましてや、新しい施設についてというようなお話でしたけれども、この新しい基準が一号炉と二号炉の間で、地震だとか気象だとか、つまり、どちらの場合にも同じような条件で当てはまる、その場合、新基準を採用したというときには、この新基準によって、既に許可され設置されている一号炉が安全なのかどうなのか、これを検討していくということは、当然原子力安全委員会でおやりにならなければならない国民に対する任務だというふうに私は思うわけです。ですから、それを通産省側に求めないということは原子力安全委員会の任務放棄だと言わざるを得ないわけですけれども、いかがでしょうか。
  338. 辻栄一

    ○辻政府委員 まず、問題の重要性と実際の具体的な問題の関連について、先ほど御指摘の赤塚さんの考え方に若干誤解があるのではないかというふうに思われますので、私ども見解を申し上げさせていただきます。(中林委員「そんなことは聞いてないですよ、任務放棄かどうかという話だけです」と呼ぶ)  実はこの問題は、島根二号炉の安全審査に用いられました耐震設計審査指針は、設計の基礎となります地震の想定の仕方やその地震によって生じます地震動の与え方等につきまして改定を行ったものでございますけれども、これは耐震設計を最近の科学技術的知見から見てより合理的なものにすることをねらいとしたもので、この指針が従来に比べて厳しくなったかどうかという点については一概に言えないものでございます。  先ほど、赤塚氏御指摘の地震動が一号炉は三百ガルである、あるいは二号炉は四百ガルであるといった数値によって適用しているという話が公開ヒヤリングの席においても出たわけでございますけれども、これらの値につきましても、新しい基準、古い基準によってそれぞれその設計のときに与えます地震動を与える場所が異なっているところの数値でございまして、元来これを単純に比較することができない数値なのでございます。  島根の原子力発電所の場合につきましては、通産省が第二次公開ヒヤリングで御説明しておりますとおり、これを同一の場所で比べてみました場合には地震動の大きさが約一割の増になるということでございまして、この程度の増は設計上の安全余裕度の中で十分吸収されるものである、通産省もそのように説明しておりまして、安全上問題になることはないということでございます。  島根原子力発電所の今回の安全審査や第二次公開ヒアリングにおきましては、この二号炉の増設に関する安全審査を行っているわけでございまして、一号炉はその対象となっておらないということと、それから今通産省も、私も申し上げましたとおり、安全上問題となるような特に重要なことというふうには考えられませんので、安全委員会として、特段一号炉の耐震上の問題を取り上げて確認することはないという判断をされたものでございます。
  339. 中林佳子

    中林委員 今御回答になったことはもう十分私どもも聞いているわけですけれども、しかし、住民としては、新基準を適用したときの一号炉の安全性の問題については、データが出ない限りどうとも言えないということで大変不安を感じております。この問題で時間をとっていればもう終わってしまいますので次に移りますけれども、まさに原子力基本法そのものを無視しておやりになっていると言わざるを得ないということだけ指摘しておきます。  次に、放射性廃棄物の問題についてお尋ねするわけですけれども、現在低レベル廃棄物はドラム缶に詰められておりまして、島根原発の場合は二万七百九十一本、実は倉庫にたまっております。これは今三号倉庫までできておりますが、昨年の日本海中部地震のような事態が起きれば、実はこの低レベルの廃棄物のドラム缶の第一号倉庫は大変低いところにあるわけなんです。だから、そういうような、昨年のような事態が起きた場合安全なのかどうか、その点についてお伺いします。
  340. 末廣恵雄

    ○末廣説明員 廃棄物の貯蔵庫につきましても、ほかの原子力関係の施設と同様に、一定の基準に基づいて十分安全性を確認しております。
  341. 中林佳子

    中林委員 今のお答えですけれども、本当に、日本海中部地震のようなことが起きて津波が襲えばもう完全に一号倉庫は波にのまれてしまうということで、もしドラム缶が海中にほうり出されれば大変危険な状況にあると言わざるを得ないわけです。そういう意味では、今、日本じゅうにドラム缶がたまりにたまって、何十万本とあるというふうに聞いております。また、その処理の方向もいまだに決まっていないということで、原発を抱えている地元では大変不安を感じております。  次に、質問さしていただきますけれども、次は使用済み燃料の問題でございます。一号炉は六年分、使用済み燃料がプールにたまるように設計されております。しかし、今度の二号炉は十六年分ためられるようになっているわけですね。今、東海の再処理工場も再開の見通しというのが非常に暗いというふうに聞いておりますし、また、イギリスやフランスヘ再処理を頼んで運んでいるけれども、イギリスやフランスもまだ計画中であったり建設中であったりというふうにも聞いているわけです。そういう意味では、十六年分ぐらいため込んでおけばそのうちに再処理の見通しができるという見込みでこれだけの年数をためられるようになっているのかどうか、再処理の見通しについてお伺いしたいと思います。
  342. 末廣恵雄

    ○末廣説明員 安全審査の段階におきまして、使用済み燃料プールの容量につきましては、今後の再処理計画との兼ね合いにおきまして支障ないことを確認しております。
  343. 中林佳子

    中林委員 もう少し具体的に、どのように大丈夫なのかということ、これをお答えいただかなければ、今の答弁で、今までだって原子力発電所は安全だ安全だと言葉だけでおっしゃったわけですが、今は使用済み燃料の問題でどこの国も困っているという状況でございます。そういう意味で、日本の本当に、こうなれば見通しがあるんだというような御回答をいただかなければ、とても原発を抱える立地県あるいは周辺の住民にとっては、安心して原子力発電所の周辺に住むことさえできないのではないのでしょうか。
  344. 中村守孝

    ○中村(守)政府委員 使用済み燃料の再処理の今後の見通しについての御質問かと思いますが、現在、東海村にございます動力炉・核燃料開発事業団の再処理工場につきましては、現在は操業を一時中断しておりますが、来年の一月ごろには操業再開ができるというめどが立っておりまして、現在、国産技術による新溶解槽の据えつけ準備等を行っておるわけでございます。  それから、外国への再処理の委託でございますが、これにつきましては、英国のBNFL、核燃料公社及びフランスの燃料公社、COGEMA、こういった会社と電気事業者との間で合計約四千六百トンの再処理委託契約を締結いたしておりますので、国内の再処理工場の処理能力を上回って生ずる再処理需要につきましては、当分の間こういった海外への再処理を委託するという形で対応していくわけでございますが、本来、核燃料サイクルは国内において完結するというのが一つの原則でございまして、このため民間による商業規模の第二再処理工場を建設するということで準備を進めておりまして、日本原子燃料サービス株式会社が五十五年に設立されたわけでございます。現在、日本国内に立地点を求めるべく調査をしておりますが、これの建設によりまして、先ほど申しました外国との再処理委託契約が切れるころには、この第二再処理工場によりましてその後の需要を賄っていく、そういう考え方で計画を進めております。
  345. 中林佳子

    中林委員 最後に、一問だけ大臣にお伺いしたいのですけれども、当初は原子力発電所は発電の分野の安全性の問題で随分論議がされてまいりました。このように十年以上もたってまいりますと、使用済み燃料の問題だとかあるいは廃炉の問題だとか、いろいろ進んでいけばいくに従って、原発を抱えている住民は不安な材料がより一層増してくる。再処理工場の問題でも、科学者に言わせれば、到底無理だろうとおっしゃるし、商業の原子力発電所の研究が非常に盛んなアメリカでさえも、再処理工場は今は運転をしない、操業しないという状況になっているわけなんです。ですから、本当にそういう再処理工場あるいは今後廃炉の問題も含めて研究が確立され安全性が確立されないのに、どんどん原発の増設を認可していくのは間違ったやり方ではないかと私は思わざるを得ないわけですけれども大臣のお考えはいかがでしょうか。
  346. 岩動道行

    岩動国務大臣 日本の原子力の平和利用は、安全性を最大の前提として今日まで進めてまいりました。おかげさまで現在二十五基、およそ千八百万キロワット、そして日本の電力の二〇%を賄うまでになっております。しかも、その操業率は七〇%程度に、世界でも最も高能率の発電を誇るまでになっております。そして安全性が確保されております。しかし、これからの大きな課題は、このような発電所の安全性をさらに確かなものにしていくことと同時に、核燃料サイクルを確立して、そういう中において、それぞれの段階における安全性もまた極めて大事でございます。かような意味におきまして、私どもは、それぞれの段階における核燃料サイクルの確立と安全性を第一として、さらに深く広く研究を進めてまいりたいと考えております。
  347. 中林佳子

    中林委員 終わります。
  348. 横山利秋

    横山委員長 次回は、来る二十九日木曜日午前九時四十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時三十一分散会