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1984-08-01 第101回国会 衆議院 外務委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年八月一日(水曜日)     午後零時三十四分開議 出席委員   委員長 中島源太郎君    理事 石川 要三君 理事 野上  徹君    理事 浜田卓二郎君 理事 山下 元利君    理事 高沢 寅男君 理事 土井たか子君    理事 古川 雅司君 理事 河村  勝君       鯨岡 兵輔君    仲村 正治君       西山敬次郎君    野中 広務君       町村 信孝君    岡田 春夫君       河上 民雄君    小林  進君       八木  昇君    玉城 栄一君       渡部 一郎君    木下敬之助君       岡崎万寿秀君  出席国務大臣         外 務 大 臣 安倍晋太郎君  出席政府委員         外務大臣官房審         議官      山下新太郎君         外務省アジア局         長       後藤 利雄君         外務省北米局長 栗山 尚一君         外務省中南米局         長       堂ノ脇光朗君         外務省欧亜局長 西山 健彦君         外務省中近東ア         フリカ局長   波多野敬雄君         外務省経済局長 村田 良平君         外務省経済協力         局長      藤田 公郎君         外務省条約局長 小和田 恒君         外務省国際連合         局長      山田 中正君         外務省情報調査         局長      岡崎 久彦君  委員外出席者         水産庁振興部沖         合課長     中村 晃次君         水産庁海洋漁業         部長      中島 圭一君         水産庁海洋漁業         部参事官    長田 綏男君         通商産業省通商         政策局北アジア         課長      久禮 彦治君         外務委員会調査         室長      高橋 文雄君     ――――――――――――― 委員の異動 八月一日  辞任         補欠選任   渡部 一郎君     西中  清君 同日  辞任         補欠選任   西中  清君     渡部 一郎君     ――――――――――――― 七月十九日  朝鮮民主主義人民共和国へ帰還した日本人妻の  里帰り実現に関する請願中島衛紹介)(第  八〇三四号)  同(鳩山邦夫紹介)(第八〇三五号)  同(福田一紹介)(第八〇三六号)  核巡航ミサイル・トマホーク米太平洋艦隊艦  船への配備日本寄港反対等に関する請願(田  中美智子紹介)(第八〇三七号)  同(不破哲三紹介)(第八〇三八号) 同月二十日  朝鮮民主主義人民共和国へ帰還した日本人妻の  里帰り実現に関する請願伊藤宗一郎紹介)  (第八二九八号)同月二十三日  核巡航ミサイル・トマホーク米太平洋艦隊艦  船への配備日本寄港反対等に関する請願外三  件(岡崎万寿秀紹介)(第八四四〇号)  同(野間友一紹介)(第八四四一号)  同(東中光雄紹介)(第八四四二号) 同月二十四日  核巡航ミサイル・トマホーク米太平洋艦隊艦  船への配備日本寄港反対等に関する請願(野  間友一紹介)(第八七四六号) 同月二十六日  朝鮮民主主義人民共和国へ帰還した日本人妻の  里帰り実現に関する請願永末英一紹介)(  第八八三九号)  旧樺太在住朝鮮人訪日実現に関する請願(江  田五月君紹介)(第八九〇四号)  世界連邦実現等に関する請願五十嵐広三君  紹介)(第八九四一号)同月二十七日  世界連邦実現等に関する請願森田景一君紹  介)(第九〇一四号)  旧樺太在住朝鮮人訪日実現に関する請願(山  口敏夫紹介)(第九〇一五号)  同(正木良明紹介)(第九〇七三号) 同月三十日  旧樺太在住朝鮮人訪日実現に関する請願外一  件(高沢寅男紹介)(第九一八五号)  同(渡部一郎紹介)(第九一八六号)  同(渡辺朗紹介)(第九一八七号)  同(岡田利春紹介)(第九二六八号)  同(多賀谷眞稔紹介)(第九二六九号)  世界連邦実現等に関する請願嶋崎譲紹介  )(第九二六七号) 八月一日  世界連邦実現等に関する請願佐藤敬治君紹  介)(第九三八五号)  同(木下敬之助紹介)(第九四四八号)  旧樺太在住朝鮮人訪日実現に関する請願(竹  村泰子紹介)(第九四一三号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ――――◇―――――
  2. 中島源太郎

    中島委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。土井たか子君。
  3. 土井たか子

    土井委員 本日は、我が党の石橋政嗣委員長も傍聴に見えておられますが、私ども河上高沢両議員とひとつ力を合わせて分担をいたしまして、それぞれ手に持ちましたことをここに持ってまいりまして、質問をさせていただくという機会にいたします。  安倍外務大臣におかれましては、先日ジュネーブ軍縮会議出席をされまして、我が国外務大臣としては初めて日本外交の中で、軍縮政策について具体的な提案を一つの決断として表示されたということが大変注目を集めているわけでありますが、その会議出席をされた直後記者会見で、世界平和維持のために、核による均衡論だけに安住しているのは危険だ、核軍縮核廃絶に結びつけていくアプローチが必要だと思うという趣旨のことをお話しになったようであります。これは、国民には大変関心事でございまして、中曽根さんとちょっと違う、安倍外務大臣に対しては期待が持てるというふうなまなざしで、外務大臣のこの記者会見での御意見に対しましては歓迎をしている向きがただいま非常に動いていることも、大臣、はっきり御承知のところであろうと思います。  本来、抑止均衡論で核問題を取り扱っていくという立場に立てば、核の軍拡しかないということが現実国際情勢のなかでは動いていっているということは、疑う余地がもう既にございません。特に太平洋につきまして、この六月以後、アメリカはトマホークを配備するということが事実上決定をされて、刻々とそれが具体的に進行しつつございますし、一方、ソビエト側はSSNX21の配備をするということもはっきりとしているわけであります。したがいまして、太平洋上が核の火薬庫のようになる。うじゃうじゃと核が配備される。日本のこれに対する対応がどのようなものであるかということが、大変大きな問題として問われているわけでありまして、今のままでありますならば歯どめがないということもはっきり言わねばなりません。  大臣とされましては、非核原則国是として遵守するという姿勢を既におっしゃってきているわけでありますから、かのジュネーブ軍縮会議で述べられたこと、後の記者会見でお述べになったことから、今回のこの太平洋上が核の火薬庫になりつつあるという状況に対応して、具体的にどのようなことをお考えになっていらっしゃるかということをまずお尋ねしたいと思います。
  4. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 残念ながら、核の均衡というのが現実的には今日の平和を維持していると言えないことはないわけです。しかし、そういうふうな現実情勢の中ではありますけれども、我々としては核廃絶という最終的な理想を失ってはならないと思いますし、特に今、米ソ間でINFとかSTARTとかいう核軍縮交渉中絶中断をしておるわけでございます。これは、これまでの米ソの歴史の中でも大変珍しいケースで、中絶中断をしているということは大変危険だと私は思っております。そういう中で我々としては、INFとかSTARTとか、そうした交渉が一日も早く再開をされるように米ソ両国に対して働きかけをしなければならない、同時に、今の軍縮会議等において日本の主張をはっきりと述べまして、そして世界の世論をつくっていかなければならない、このまま放置しておりましたら大変困難な状況になるということを私感じまして、そういう発言をしたわけでございます。  ですから、私の発言というのは、記者会見で言いましたのは確かにそのとおりでございます。抑止とか均衡論とか、そういうものによって現実世界の平和が維持されておるということは言えるかもしれないけれども、しかし、そうしたことだけに安住しているということは、現在、既にそうした核軍縮交渉中断をしているという状況にあるわけですから、これは大変危険なことになる可能性も持っておるということを認識しなければならぬという意味で、言ったわけでございます。  なお、太平洋におきましても、御承知のように極東におけるこの数年来といいますか、ソ連のINF、いわゆるSS20の配備増強あるいはまた陸海空軍増強等が顕著に見られるわけであります。また、これに対しまして、アメリカとしてもこれに対抗するというふうな意味もあると思いますが、世界戦略対ソ戦略を進めるという意味における太平洋軍事力強化ということも、当然行われておると見なければならぬわけでございます。そういう意味では、今の太平洋におきましても、むしろ平静といいますか、平和の方向、静かな方向事態が動いているというよりは、困難な厳しい方向事態が動いておる、こういうふうに認識をせざるを得ないと私どもも思っております。
  5. 土井たか子

    土井委員 今外務大臣のおっしゃったのは、現実のいろいろな情勢に対する御認識の問題だったと思うのですが、ただ、INF削減交渉であるとかSTARTに対してうまくいっていないということを憂慮しながら、これがうまくいくことを期待するというのみであっては、これはちょっと違うと思うのですね。  この秋を目指して、宮澤さんは軍事大国にならないということを、中曽根さんとは私はちょっと違いますよという意味で最近しきりに言われております。それに対して安倍外務大臣の場合には、創造的外交論というのを提唱されつつあるやに私たちは聞いているわけでありますが、外交は受け身ではいけないとして、創造的外交を打ち出そうというところに安倍外務大臣の本領がおありになるというふうに私たちは見ているわけです。何といっても、この秋に向けての安倍外務大臣のそれに対しての問いかけというのは、非常に大きな問題だ、重大だというふうに私は思っているわけであります。  中曽根さんは、事あるたびごとに核を必要悪として今日まで考えられてきている。そこで、安倍外務大臣お尋ねをしたいと思うのですが、最近、非核武装地帯とか非核武装政策というのがいろいろと取りざたをされる、これが必要であるということも提唱をされてきている。この非核武装についての条件というのは、国連でもいろいろ討議される機会がございますけれども非核武装条件はどういうことだというふうに外務大臣はお考えでございますか。
  6. 岡崎久彦

    岡崎政府委員 現在、実効的な非核武装地帯と言えるものは、典型的なものは中南米であると存じております。この場合は、東西正面から非常に遠く離れているということと、同時にまた、その東西正面関連する通常兵器及び核兵器両方の紛争の可能性が極めて小さいという特殊な環境にあると存じております。
  7. 土井たか子

    土井委員 今のは、条件は何かとお尋ねしたのにお答えになっていないと思うのですが、それじゃ外務大臣にちょっとお尋ねしましょう。  我が国は、非核武装国であるというふうに言えますかどうですか。そのように御認識をなすっていらっしゃるかどうか。非核武装国と言えると私は思っているのですが、いかがですか。
  8. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 我が国は、いわゆる核は非核原則国是としておるわけですから、そういう立場からいけば、もちろん核で武装するということはあり得ないわけであります。
  9. 土井たか子

    土井委員 そうすると、核で武装するということはあり得ないイコール非核武装国、このようになるわけでありますけれども、これはそのとおりに考えてよろしゅうございますね。非核武装国でしょう、日本は。
  10. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 非核というのはそのとおりだと思いますが、武装国というのはどういうふうに解釈するか。我々は非核ではありますけれども非核の中で自衛力は維持しているわけですね。そういう意味において、核武装はもちろんしない、これは当然のことであります、しかし、同時に自衛力はこれを維持する、こういう立場でございます。
  11. 土井たか子

    土井委員 これは大臣非核というのと武装というのを分離しておっしゃるからおかしいのであって、非核武装国というふうに素直にこれは考える必要があるのじゃないか。どうです、この点は。非核武装国でしょう、そういう点から言えば。
  12. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 核武装をしないという意味では、もちろん非核武装国、こういうことです。
  13. 土井たか子

    土井委員 そういうことから言えばそれははっきり言えるというように、外務大臣おっしゃるとおりだと思うのです。  さあそこで、先日来、具体的には日米安保条約の中でこの核に対する取り扱いがどういうふうになされるべきかという問題を、私は六月二十日の当外務委員会質問をしたわけです。ところが、その後いろいろな場所でこれに対して取り上げられてまいりまして、いろいろな答弁が相次いでいるわけですが、外務委員会があってからこの方、初めて私はこの問題に対してまた質問をするわけですから、具体的にその後いろいろ外務省として御答弁になったこともお尋ねの中で取り上げながら、ひとつ質問をさせていただきます。  質問に先立ってちょっと申し上げますけれども外務省政府委員の皆さん、私はいいかげんな答弁はお断りしたいと思うのです。答弁責任を持ってもらわなければ困る。答弁を一たんやれば、それはその場限りで、次はまたそれとはまるで矛盾したいいかげんなことを言ったってまたその場限り、というような答弁を繰り返してやられたんじゃどうにもならぬです。やはり外務省答弁というのは責任を持っていただく、一貫したものである、このことをひとつはっきりしていただきますよ。よろしいですか。  それで、まず私が問題にしたいのは、六月二十九日の沖縄及び北方問題に関する特別委員会の席における外務省側答弁でございます。その中で、小和田条約局長の御答弁。これは私、間違いないように議事録を持ってまいりましたから、その部分について議事録によって申し上げますけれども事前協議に対して、「アメリカから言ってくるのが建前であろうというのが政府考え方でございまして、これは安保条約を審議した昭和三十五年の安保国会におきましても、岸総理大臣藤山外務大臣等からその趣旨答弁があったと承知しております。」こういうふうに述べられております。  私どもは、三人それぞれ手分けをいたしまして、議事録に対して調べを進めました。そこで、小和田さんにお尋ねをしたいのです。私、きょうここにその三十五年の安保国会当時の会議録を国会図書館から借りて持ってまいりましたから、このときに「岸総理大臣藤山外務大臣等からその趣旨答弁があった」と言われているその答弁中身、それは何年何月何日のどこの委員会でだれの質問に対する答弁としてこういう答弁があったかということを明示してください。私、ここで開いてそれを調べてみますから。
  14. 小和田恒

    小和田政府委員 お答えいたします。  私が沖縄及び北方問題特別委員会答弁をいたしましたときに申し上げました、岸総理大臣藤山外務大臣の御答弁でその趣旨のことを申し上げておりますと申し上げましたのは、次の発言でございます。  岸総理大臣につきましては、昭和三十五年二月二十九日衆議院予算委員会における岸国務大臣答弁でございます。それから藤山外務大臣につきましては、昭和三十五年四月二十八日衆議院安保特別委員会における外務大臣答弁でございます。
  15. 土井たか子

    土井委員 その岸総理大臣の二月二十九日の答弁というのは、そこで一体どういうことをおっしゃっているのですか。
  16. 小和田恒

    小和田政府委員 関連部分をお読みするのが一番正確かと思いますので、申し上げますが、  問題の事前協議にかけておる三点というものは、従来論議の上から見まして、これらの重要な事項アメリカが一存にきめて、そうしてそれを実現し得るということに、現行条約 これは旧安保条約でございますが、  現行条約においてはなっておる。しかるにやはりこういう重要な問題、日本日本及び極東安全保障について独自に考えるところの意見というものを、これらの重要な事項の上に反映させなければいけないということが、従来の国民感情でもあり、要望でもあり、また今回の改定にあたりましてもわれわれが主張してきたところでございまして、従ってこれらの事項が、従来アメリカが単独の意思で実現できたものを、事前日本側協議して、日本側意見を聞いてこれを実行するということにいたしたわけでございます。従ってその場合に、アメリカ側から相談があり協議があった場合において、日本日本の自主的な立場で、それをよろしいといって承認する場合と、日本立場から、これは望ましくない、また日本国民感情なり国民要望をそのまま現わせば、これを拒否すべきものであるといった場合におきましては、これに対してノーと言う場合が出てくるわけでございます。 云々というところでございます。
  17. 土井たか子

    土井委員 今の御答弁のままだと、事前協議に対して日本側から向こうに聞くということを否定されているとは考えられない御答弁ですね。聞くということが、日本側として、権利としてあるということまでも否定されているという趣旨には聞こえてこないのですよ、今の御答弁を承った限りでは。  そうしてもう一つ、それでは藤山外務大臣の方の御答弁というのをひとつ言ってみてください。
  18. 小和田恒

    小和田政府委員 藤山外務大臣答弁について具体的な箇所を申し上げます前に、土井委員指摘されました第一の点について一言申し上げたいと思います。  確かに、日本側から提起することはできないということを明示的に岸国務大臣答弁として述べておられるということではございません。私が申し上げましたのは、それからその後の委員会での政府側答弁で申し上げておりますのは、この安保条約のもとにおける事前協議制度というものは、事柄性格上、義務を負っておるアメリカ側から申し出てくるのが建前である、そういう仕組みになっておりますということを申し上げまして、そういう趣旨において岸総理大臣答弁、あるいは藤山外務大臣答弁があるということを申し上げたわけでございます。  第二の藤山外務大臣答弁でございますが、同じように関連部分を読み上げますと、  従いまして、アメリカが何かそういうようなときにはごまかしていくのだということでは、どんな条約を結び、どんな約束をいたしましたって、それは同じでございます。でありますから、午前中の議論とも同じように、アメリカは、やはりそういう約束をしました以上は、その任務の履行にあたって、自分たちがはっきりそれを申してくることは当然だと思います。それが前提でなければなりません。 云々という箇所でございます。
  19. 土井たか子

    土井委員 今からいろいろ申し上げますけれども、同じそのときに藤山外務大臣の御答弁では、「しかし、ある部隊がこういうことを言っているが、そういうものを持っているのかということを聞くことを妨げるわけでは毛頭ございません。」ということも言われているわけです。したがいまして、そういうことからすれば、今のは外務省としては、都合のいいところだけのつまみ食いみたいなことをおっしゃっているけれども、それにもかかわらず、日本側からアメリカ側に聞きただすということの権利があるということをはっきり否定はされていない。  あなたはよく建前建前というのをおっしゃいますが、建前とあなたがおっしゃっているその中身がよくわからないのです。条約でどのように決めているかということを正確に認識することが建前の始まりだと思うのだけれども、その辺についてはさっぱりすっぽ抜けた格好で、実際問題アメリカから言ってくるということが建前でございましょう、こういうことに終始しておられるのだけれども条約の第六条における事前協議中身については終始一貫、今までずっと議事録を調べてみましたけれども日本側アメリカ側に対して問いただすということを否定しているという答弁は、ただの一つもないですよ。  ところが、さらに小和田局長に申し上げたいのだけれども、「第六条の事前協議という制度そのものについて、厳格な意味で申しますれば、事柄性格アメリカ側から日本側相談を持ちかけるべき筋合いの話であるという趣旨で、政府は従来から一貫してそういう答弁をしてきておる。」こういう答弁をされているのです。どうして、一貫してそんな答弁をされていると言えるのですか。これは、議事録によって私は今読んでいるのだから、間違いのないあなたの発言なんです。そうして、そのあげくの果てに、同じ六月二十九日の沖特の御答弁の中で、「昭和四十三年の衆議院外務委員会で従来の見解とも合わせて統一的な考え方を示しているということがございます。」こう言われているのですが、この四十三年の外務委員会というのは、開いているのは一回ではございません。そうして、この問題を討議しているのも一回ではございません。しかも、調べてみたら、統一見解なるものはございませんよ。何年何月、当外務委員会においてのどういう答弁を指して、あなたとしてはこんなことをおっしゃっているのか、ひとつはっきりさせていただきたいと思います。
  20. 小和田恒

    小和田政府委員 先ほど土井委員から、昭和三十六年の中川条約局長答弁あるいはその後の大平外相答弁等について御指摘があったわけでございます。そういう答弁があったという事実、これはその後の国会答弁におきましても、私どもの方からそういう事実がございますということは認めておるわけでございます。  ただ、私がその後の今土井委員が御指摘になった答弁で申し上げましたのは、昭和四十三年三月六日の外務委員会において、当時の高辻法制局長官が、それらの今土井委員から御指摘のありましたような中川答弁等をも踏まえまして、その上で政府考え方をまとめて説明をしておるという事実がございますので、そのことを申し上げたわけでございます。
  21. 土井たか子

    土井委員 四十二年三月六日の外務委員会における高辻答弁を指して今御指摘になっているのですが、そのときの高辻さんの答弁を、ここにこのように持ってきているのですけれども、これはどう読んでもそういう趣旨の御答弁ではないのです。「事前協議申し出事前協議中身運用といいますか、どうもそれは少し怪しいからそういうことをやることをひとつ運用考えたらどうかというような種類のことは、むろんできると思います。」ということもおっしゃっているのですよ、高辻さんはあなたが御指摘のそのときの答弁の中で。したがって、これを統一見解とおっしゃるのだったら、できるという統一見解です。日本側からむしろ事前協議に対して言い出すことができる、問いただすことができるという意味統一見解なのですが、そのように言っていいですね。
  22. 小和田恒

    小和田政府委員 正確を期しますために高辻政府委員答弁関連部分をお読みいたしますが、高辻政府委員はまずこういうふうに述べているわけでございます。   この点について、事前協議というものが日本側からも申し入れができるのかというのが問題の焦点でございますが、それにつきましては、たしか安保条約審議の際に、藤山大臣も、事柄の性質上、それはアメリカから事前協議そのものとしては申し出てくるのが筋であるということをおっしゃったように私思うのでありますが、しかし、その後に御指摘のような答弁がありますことも、私も長く関係しておりますのでよく承知しております。それで、答弁はむろん同じでなければおかしいというのは言うまでもないのでございますが、私どもが最初から考えておりましたのは、いま間違いがあったら恐縮でございますけれども、私の知る限りでは、藤山さんの安保条約審議の際の御答弁に確かにあったと思いますが、それがやはり正しいと私は思うのです。 これが私がこの前の委員会で申し上げました政府側としての考え方をまとめて答弁しておるという点でございます。  さらに引き続きまして、高辻長官は次のように答弁しております。   その理由は何かと申しますと、端的には交換公文に出ておりますように、「日本政府との事前協議の主題とする。」「コンサルテーション ウイズ ザ ガバメント オブ ジャパン」というように、明文上はそれがあるからと決して申すわけではございませんが、事柄性格といたしまして、配置の重要な変更とか装備における重要な変更とかいうことをしますのは、心がけるというか、意図しますのは、これはアメリカそのものでありまして、やはり事前協議の場に入ってくるのは、アメリカ事前協議、そのものの制度の中での協議と申しますか、それはアメリカ申し出るのが筋ではなかろうか。それが交換公文の中では、いま申したように、「日本政府との事前協議の主題とする。」というふうな言い方になっておるのだろうと私は思います。  その後、今土井委員が御指摘になりました結びの点について申し上げますと、高辻政府委員は、そんなわけで、今後も法制上の見地はどうかということを、事前協議そのもの協議の申し入れといいますか、主題とすることについてだけといいますれば、それは事柄性格上やはりその意図を持つアメリカ政府ではないかというふうに考えるわけでございます。しかし、そのことは、事前協議申し出事前協議中身運用といいますか、どうもそれは少し怪しいからそういうことをやることをひとつ運用考えたらどうかというような種類のことは、むろんできると思います。これは四条を引用してもよろしゅうございますし、四条でなければできないというようなしろものでもないと思いますが、むろん四条と申し上げて差しつかえないと思います。 こういうふうに述べているわけでございます。  この点について一言だけ補足をいたしますと、ここで高辻長官が申しておりますように、あくまでも安保条約の六条の実施に関する交換公文に基づきます事前協議、厳密な意味での事前協議というものは、具体的な個別のケースがありましたときに、そういうことを提案するアメリカ側から申し出てくるというのが事柄性格上当然である、それが条約建前であるということを申し上げておるわけでございます。  しかし、そういうこととの関連において、事前協議運用の問題について、これを具体的にどうするこうするというようなことについて、運用の問題として一般的に取り上げることは、安保条約の四条のもとで日米両国は条約の実施に関して随時に協議をすることができることになっているわけでございますから、それは四条の問題として可能であろうということは従来から私自身も答弁しておりますし、政府側答弁しているところでございまして、高辻長官が答弁しておりますのもまさに、四条ということでなければならないとは思わないけれども、むろん四条と申し上げても差し支えないと思いますというふうに答弁しているわけで、そのことを私はお答えをしてきたつもりでございます。
  23. 土井たか子

    土井委員 実にこの当時の高辻さんは、何をおっしゃっているのかわからぬような答弁になっているのです。最後は、四条と六条がごっちゃごちゃになったような答弁になってしまっているのですね。今問題にしているのは、六条の事前協議の問題なんですよ。その六条の事前協議の問題でおっしゃっている部分については、それ以前には、藤山外務大臣日米安保条約を審議するための特別委員会答弁ども引き合いに出しながら答弁をされておりますけれども、結局それは最後のところが大事な部分ではないかと思って、さっきここで私はその点を指摘をしたわけです。  よろしゅうございますか。「そのことは、事前協議申し出事前協議中身運用といいますか、どうもそれは少し怪しいからそういうことをやることをひとつ運用考えたらどうかというような種類のことは、むろんできると思います。」こう言われているのです。これは四条の問題じゃなく六条の問題として述べられて、後四条も、それはそのことに対してできないとは言えないというややこしい発言があるから、ここでこんがらかるわけでありますけれども、ここを区分けして、六条ということだけで今聞いているわけです。整理してくださいよ。  そうすると、これからしたら、日本側アメリカ側に問いただすということに対しては否定されてないという結論になるんじゃないのですか。ここで取り扱われている、前提に置かれている藤山さんの外務大臣としての御答弁の中にも、これは具体的に三十五年四月二十八日の答弁で、「ある部隊がこういうことを言っているが、そういうものを持っているのかということを聞くことを妨げるわけでは毛頭ございません。」とおっしゃっているのです。具体的なことをアメリカ側にそうなのかどうなのかということを聞くことを妨げるわけでは毛頭ございませんと答えられているのですよ。  そういうことからすれば、あなたがこの六月二十九日に、「昭和四十三年の衆議院外務委員会で従来の見解とも合わせて統一的な考え方を示しているということがございます。」とおっしゃっているのです。統一的な見解にはならないというふうに私は認識をしておりましたが、きょうの答弁では高辻さんのその見解を統一的見解だとおっしゃるのだから、それを言うならばこうなりますがね。今私が申し上げたとおり、つまり事前協議について、日本側アメリカに問いただすということを否定されていない。いかがですか、これははっきりしておいていただかないと。あなたの答弁を聞いていると、どうもよくわからぬ答弁なんです。突き詰めて考えていったら、具体的に調べてみたらこういうことになる。
  24. 小和田恒

    小和田政府委員 繰り返しになって恐縮でございますけれども、今委員が御指摘になりました高辻政府委員答弁は、若干省略はいたしましたが、大筋において私が先ほど読み上げたのはかなり公平な再現であろうと思います。  そこで問題は、その最後の部分をどう解釈するかということであろうと思いますが、土井委員はここで、これがまさに個別的、具体的な案件がありまして、そこでアメリカの核の持ち込みということが問題になったときに、その事前協議を第六条の実施に関する交換公文の問題として日本側から提起できるということを高辻長官が述べておるのではないか、こういう御疑念であろうかと思います。  私が先ほど来申し上げておりますのは、高辻長官自身が四条ということを言っておりますように――もう一度もとに戻りますが、高辻長官の答弁というものは、全体として見ますと、具体的なケースについては、厳密な意味での事前協議の対象になるような事柄については第六条の実施に関する交換公文で処理する、その場合にそれはアメリカ側から言ってくるのが筋である、事柄性格といたしましてそれはそういうものであるということを述べているわけでございます。  その上で、「事前協議申し出事前協議中身運用といいますか、どうもそれは少し怪しいからそういうことをやることをひとつ運用考えたらどうかというような種類のことは、むろんできると思います。」これは四条と申し上げても差し支えない、こういうふうに答弁しておるわけでございますので、ここで述べております高辻長官の発言というものは、事前協議制度運用の問題として、四条、つまり随時協議の対象として事前協議運用の問題を取り上げることはもちろん可能である、こういうことを言っているというふうに解釈しているわけでございます。
  25. 土井たか子

    土井委員 るるおっしゃいますが、これは、言ってくるか言ってこないかという実態の問題と、安保条約第六条に言うところの事前協議中身に対しての解釈、理解と、ひとつはっきり区分けしてくださいよ。あたかも、事前協議の中で何もできないようなことを今おっしゃっているがごとくに聞こえてくるような御答弁になっておりますが、それはそうじゃないので、条約の第六条の事前協議に対してのその中身は具体的に日本側からアメリカ側に問いただすことができる、そういうことはいわば日本側権利としてあるというふうな趣旨のことが、今までずっと一貫して答弁の中では出てきているのです。  急に条約局長はここで統一見解なるもの、これは用語としてお使いになっているわけですが、今まで四十三年の衆議院外務委員会での高辻さんの答弁を称して、統一的な考え方なんというふうな認識政府としてお出しになった時代がないのです。初めてあなたがおっしゃったのですが、これはどうですか。あなたが勝手にそうお考えになって、統一的な見解だというふうにおっしゃったのですか。
  26. 小和田恒

    小和田政府委員 土井委員がただいま非常に正確に御指摘になりましたように、私は政府の統一的な考え方を申し上げだということを申し上げたわけです。私自身、今ここでそのときの私自身の答弁の記録を持っておりませんので、正確な表現は覚えておりませんけれども、私が申し上げたのは、政府のこの問題についての統一的な考え方をそこで申し上げておるということを申し上げたわけで、専門的な技術的な用語として政府統一見解が出ておるという、そういう表現で申し上げてはいないわけです。  しかしながら、考え方として、それが政府考え方を統一的にまとめたものであるということの実態につきましては、私は私の責任においてそういう発言をいたしましたが、土井委員も御指摘になりましたように、例えば昭和三十六年の中川条約局長答弁と見方によっては若干ずれているというふうに考えられる、解釈されかねないような発言もございまして、それがその後の委員会の討議の過程において問題にされた。そういう事態を踏まえまして、先ほど申し上げましたように高辻法制局長官自身が、そういう答弁が過去にあるということは自分は承知しておる、しかし政府考え方はこういうことなんだということで申し上げておるわけでございます。従来の考え方が、いろいろ発言が行われている、そういうものを踏まえて政府考え方はこうであるということを統一的にまとめて申し上げておるということでございますので、私は統一的な考え方をそこで述べたというふうに申し上げたわけでございます。
  27. 土井たか子

    土井委員 それは、局長が統一的な考え方ということをおっしゃるのは勝手でありますけれども、それならば、同じ外務委員会で一週間たった後、つまり四十三年の三月十三日、今度は三木外務大臣の御答弁で、日本側からアメリカに対して事前協議申し出はできるという御答弁が出ているのです。同じくさらに四十三年五月二十二日、三木外務大臣は同趣旨の、申し出日本側からできるという答弁を繰り返し述べられているのです。統一的な考え方は、一週間たって外務大臣の御答弁によって違ってきているのですがね、あなたのおっしゃるようなことは。それを称してどうして統一的な考え方と言えるのですか。
  28. 小和田恒

    小和田政府委員 お答えいたします。  今土井委員が御指摘になりました幾つかの答弁のすべてを私は正確に把握したかどうか疑問でございますけれども、とりあえず五月二十二日の衆議院外務委員会における三木国務大臣答弁というのがございますので、これをそのまま読み上げます。  三木外務大臣答弁は次のようになっております。   これは、発議権は、事前協議をやってくれと  いうことを四条によって日本が言うことはでき  る。向こうは六条によって事前協議をやろうと  いうことを言うことはできる。こういうこと  で、それを発議権と申しますか、日本がやろう  じゃないかということを発議権と言ったらもの  ものしいですけれども、四条によって日本がひ  とつ事前協議をやろうじゃないかということを  申し出ることは可能であります。四条は日本か  ら、六条はアメリカから、しかし、その権利と  いうことになれば、六条ということになるでし  ょうね。というのが、今御指摘の三木外務大臣答弁だと思います。  この内容は、今私が申し上げましたように、事前協議申し出というものは、六条の規定に従ってアメリカ側が言ってくるのだという立場に立っておりまして、そのことを明確にした上で、日本は四条に基づく権利があるのであるから、この事前協議の問題をも含めて、四条のもとにおける協議というものは日本からやれるということを述べた趣旨でございます。私が従来から申し上げておりますのは、厳格な意味での事前協議という制度、つまり安保条約第六条の実施に関する交換公文のもとで定められております事前協議制度というものは、事柄性格アメリカ側から言ってくるべき筋合いのものである、こういうことを申し上げておるわけでございまして、その点は三木外務大臣答弁においても違っていないと考えております。
  29. 土井たか子

    土井委員 アメリカ側から言ってくる筋合いのものであると、筋合いとか建前ということをしきりにあなたおっしゃるのですけれども、それは実態について言ってくるか言ってこないかという問題を今私、言っているのじゃありません。よろしゅうございますか。六条に言うところの事前協議について日本側アメリカ側申し出る、発議をすることが認められているということが、いろいろとこの答弁を見ていくとはっきり出ているのです。その点を私は言っているわけですよ。  今の御指摘の五月二十二日の前に先立って、ここを出すのを忌避されたのかもしれませんけれども、同じ外務委員会で三月の十三日、三木外務大臣は非常にはっきりこれは答弁をされておりますよ。「日本申し出て。どうも。日本とすれば、事前協議の条項に関連をするような事態の変化がある、だから、事前協議をやってもらいたいという申し出はできます。」と、こう言われているのです、答弁で。  そうすると、先ほど「四十三年の衆議院外務委員会で従来の見解とも合わせて統一的な考え方を示している」と言われた高辻さんの発言というのは、統一的じゃないじゃないですか。高辻さんの発言考え方に従って統一的に今までやってきている、さも一貫しているとあなたおっしゃいますけれども、そうじゃないじゃないですか。むしろ一貫していると言うならば、日本側アメリカ側に対して事前協議ということで提起をする、申し出る、発議をする権利があるということを否定していないという意味で一貫していますよ。そういうことになると思います。したがって、あなたのこのときの御答弁というのは、ここの点は不正確であるということになりますが、いかがです。
  30. 小和田恒

    小和田政府委員 事態を正確にするために若干整理して申し上げたいと思いますが、委員が先ほど御指摘になりました三月十三日の答弁というものは私も持っております。先ほどはちょっと日付を聞き落としましたので申し上げなかったわけであります。ただ、この三木外務大臣答弁というものも、これを読んでまいりますと、要するに第六条の事前協議アメリカ申し出によるんだということは、非常にはっきりと三木外務大臣自体答弁で言っておられるわけであります。  そこで、私が前から申し上げておりますのは、事前協議という制度、第六条の実施に関する交換公文のもとにおける事前協議という制度は、アメリカが義務を負っておる、つまり安保条約のもとにおいてアメリカが一定の行動の自由を認められておるけれども、その認められている行動の自由に対して日本側が制約をかける、日本側の同意なしにそういうことをやってもらっては困る、そういうことをやりたいときには日本側協議をしてください、こういう建前でできているのがこの事前協議制度の仕組みでございますから、その仕組みのもとにおいて、アメリカ側としてそういうことをやりたいときには、具体的、個別的なケースがあってアメリカ側がそういうことをやりたいという状況になりましたときに、アメリカから日本側に持ちかけてくるというのが、この安保条約第六条及び第六条の実施に関する交換公文のもとにおける事前協議制度の法的な仕組みであるということを申し上げているわけでございます。  それと同時に、私が、これも従来から申し上げているつもりでございますけれども、第四条のもとにおいて事前協議制度の問題をも含めてこの運用の問題について日米間で話し合うということは、制度上は何ら妨げられておらないということを申し上げているつもりでございます。  ただ、一言だけつけ加えて申し上げたいと思いますけれども、これは安倍外務大臣答弁があったと思いますが、そういう四条の随時協議のもとにおいて、それでは個別的、具体的なケースについて、日本側から事前協議制度のもとでその対象になるような具体的な問題を提起することが適当であるかどうかという問題につきましては、これはアメリカが核持ち込みに関連して、安保条約及びその関連取り決め上の義務を誠実に履行するということを累次保証しているということ、それから日米間の安保条約体制に基づく信頼関係のもとで、アメリカがそういうことをきちっと守ります、誠実に守るということを約束しておるという状況の中において、日米間の信頼関係が大前提になるような条約のもとにおいてそういう仕組みが存在して、その仕組みをアメリカはきちっと誠実に守っております、今後も守っていきますということを約束していて、しかも、その約束どおりに実行していると政府考えているような状況のもとにおいて、アメリカが何も言ってこないにもかかわらず、それはあなたは守っていないんじゃありませんかというような、我が国からアメリカ条約上の義務不履行を前提にするような形でこの問題について具体的なケースについて取り上げるということは、本来の基本的な条約の精神、それから日米両国間の信頼関係ということから考えて、適切でもなければまた必要でもないということを外務大臣から御答弁申し上げているわけだと私は承知しております。ただ、これは実は条約解釈そのものの問題ではございませんでしたので、私自身はこの点について発言を差し控えてきたわけでございます。
  31. 土井たか子

    土井委員 今は随時協議の問題を問題にしているわけじゃないのですから、あくまで事前協議について。そうすると条約局長は、この第六条の事前協議について日本側から言い出すことに対しては、条約解釈からすれば否定をされていないわけですね。この点、はっきりしていただきましょう。実態の問題はいいですよ。実態について言ってくるか言ってこないかという問題はいいです。それについては、アメリカ側が実はということを言ってくることもあるでしょう、また言ってこないこともあるでしょう。日本側が、それに対して問いただすということができなくて何で協議ですか。この事前協議の法的な解釈。日本としては、アメリカに対して申し出る、発議をするという権利があることを否定はなさっていないのですね。どうです、この点をはっきりしていただきましょう。  もし、そのことを否定なさるのなら、先ほどから言っている四十三年三月十三日の三木外務大臣の御答弁をあなた自身は曲げることになりますよ。否定することになります。実にはっきりした答弁ですもの。その前の質問のところから読んでいただくと一層はっきりすると思う。  帆足委員質問は、「第六条の事前協議事項日本側もまた申し出ることができるというふうに私どもは解釈しておりますが、そういう意味における事前協議ということもあり得るものではあるまいか、こういうお尋ねです。」ということにこの質問はなっているのですね。そうすると三木外務大臣は、先ほど申し上げたとおり、「日本とすれば、事前協議の条項に関連をするような事態の変化がある、だから、事前協議をやってもらいたいという申し出はできます。」という御答弁になっているのですから、どうですか。
  32. 小和田恒

    小和田政府委員 先ほど来御答弁申し上げているわけでございますが、委員が今御指摘になっております三木外務大臣答弁は、極めて明確に、第六条の問題はアメリカ側から申し出てくるものである、日本側権利というものは第四条によって確保されておる、こういうことを申し上げているわけでございまして、私が先ほど来申し上げていることあるいは従来国会において答弁申し上げていることとの間に違いはないというふうに、私は理解しております。
  33. 土井たか子

    土井委員 それはおかしいですね。それであなた自身はどうなんです。条文解釈からすれば、六条に従って日本側から申し出ることができる、そういうふうに考えていられるわけですか。
  34. 小和田恒

    小和田政府委員 たびたび繰り返しで恐縮でございますけれども、私は、高辻法制局長官答弁あるいは先ほど来申し上げておりますような三木外務大臣答弁条約上の法律解釈としては正しい解釈である、つまり第六条の問題、第六条の実施に関する交換公文というものは権利を定めている規定ではございませんで、第六条の実施に関しては事前協議をしなければならない義務が存在しておるということを規定している取り決めでございまして、その義務は、アメリカが具体的にそういう行動をとろうとするときに、そういうことをとりたいがよろしいかということで日本側に対して協議を申し入れてくる義務がある、そういう義務はアメリカについて存在している義務である、こういう考え方でございます。
  35. 土井たか子

    土井委員 その義務を履行することに対しては、問いただされてそれを履行する場合もあるということだろうと思うのです。したがって、日本側アメリカに対して問いただすことをあなたは否定されていないというふうに理解していいですな。
  36. 小和田恒

    小和田政府委員 たびたび繰り返しになりますが、第六条はあくまでも米国の義務、この事前協議の対象になるような事柄日本側に対して提示をする側の義務を規定している規定でございます。それ以上のものでもなければ、それ以下のものでもないということでございます。
  37. 土井たか子

    土井委員 したがって、その義務を履行するのについて、繰り返しになりますけれども日本側から問いただすということを受けた上で義務を履行するということもある、それは具体的に言えるでしょう。そうでないと義務じゃないですよ、義務という言葉を使われるのだったら。
  38. 小和田恒

    小和田政府委員 先ほど来申し上げておりますように、米国は義務を負っているわけでございます。したがって、明確にその義務違反があったというようなケースにつきましては、日本側としては当然この義務違反あるいは義務の不履行ということを問題にできると思います。しかしながら、先ほど来申し上げましたように、私どもは米国がこの条項に違反しておる、義務違反を行っているという考え方には立っておりませんし、アメリカもまたそういう義務違反は一切行っていない、誠実にこの義務を履行しておる、こういうことを言っておるわけでございますから、そのことに尽きておるというふうに考えます。
  39. 土井たか子

    土井委員 それは政治的配慮というものじゃないですか、あなたがおっしゃっておるのは。条文そのものに対して、どのように解釈をし理解するかとは全く別次元ですよ。政治的配慮でもって、条約の中で何を言っているかということに対していろいろと取捨選択をしてもらっては困る。条約についてはまず正確に、どのように認識するかということから出発をしていくのが、順当な順序というものじゃないですか。あなたの答弁は、その辺は非常に作為的であるということを言わざるを得ません。したがって、先日来の御答弁も非常にあいまいな答弁だと私は思ってこれを読んでおります。調べれば調べるほど、先ほど申し上げたとおり、答弁については、日本側からアメリカに対して事前協議ということで問いただすことができるということが、今までは一貫した答弁の線として出てきておる。  さあそこで、安倍外務大臣に申し上げますが、先日私がこのことをお尋ねしたら、重大な問題であるので検討して考えさせていただくというままになって、きょうの外務委員会なんです。その間、今取り上げております、六月二十九日の沖特での外務大臣の御答弁中身を見てまいりますと、「日本からも申し出ができるということについても、政府がその後訂正をしておりまして、最終的な今日の統一した政府見解としては、事前協議についてはあくまでもアメリカの要請を待って、アメリカ申し出によってこれを行う、こういうことに統一しているわけであります。」こういうふうにお答えになっておるのですが、「訂正をしておりまして」とおっしゃるその政府の訂正は、いつ、どこで、どんな形であったのでございますか。
  40. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは、先ほどから条約局長がるる申し上げておりますように高辻答弁ですね。高辻答弁がいわば政府のこれまでの答弁を総括いたしました統一的な答弁、こういうふうに考えております。
  41. 土井たか子

    土井委員 それは、条約局長と恐らく御相談の上でのお考えであったんであろうというふうに思います。外務大臣、それならば申し上げますけれども、その後の外務委員会における三木外務大臣あるいは愛知外務大臣の御答弁は、ちょっと高辻答弁と違いますよ。そうして、外務大臣おっしゃるのならば、その高辻答弁をどういうわけで訂正をされたのですか、これをひとつお尋ねします。
  42. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 訂正というと正確でないかもしれませんが、統一的な見解政府としては述べたということでありまして、私もそれが政府の統一した考え方と解釈であると理解をするわけです。というのは、条約局長がしばしば申し上げましたように、事前協議につきましては、これはあくまでも米国の義務によって行われるべき筋合いのものであって、配置における重要な変更、装備における重要な変更とかはアメリカが行うものですから、アメリカがそれに関して申し出ることは当然のことである、それが事前協議条項としてはアメリカの義務ということではっきり打ち出されておる、私はそういうふうに解釈をしておるわけです。
  43. 土井たか子

    土井委員 それでは、お尋ねしたいことを二点申し上げましょう。  事前協議としてアメリカ側が言い出すのが義務であると条約のどこに書いてありますか。第六条の事前協議の口頭了解のどこに書いてありますか。これは非常に大事な問題ですよ。単に、日本側が勝手に言って済む問題じゃないのです。アメリカがどのように理解しているかというのは、相互間でそういうことに対して確認をしないと、日本側はそれは言えない話です。どこにそういうふうに書いてありますか、御明示ください。これが一つ。  訂正と言われるのだったら、それ以前の政府の解釈が間違っておったのですか。例えば、中川条約局長をこの前出しました。志賀防衛庁長官の発言を出しました。大平外務大臣の御答弁については出さなかったけれども、同趣旨の御答弁をされておりますが、これら全部、それ以前のそういう御発言は間違いだったのですか。  この二点について、はっきりお答えください。
  44. 小和田恒

    小和田政府委員 先ほど来申し上げておりますように、高辻法制局長官昭和四十三年に政府考え方をお示しするに当たりましては、従来の中川条約局長答弁あるいは大平外務大臣答弁等を踏まえまして、こういう考え方政府考え方であるということを申しておるわけでございます。  その内容は先ほど申し上げたとおりで繰り返しませんけれども、それが政府の統一的な考え方であって、その後もこの問題につきましては、佐藤総理大臣でありますとか愛知外務大臣でありますとか、いろいろな答弁にそういうラインが一貫して述べられておるということを申し上げているわけでございます。  それで、それは第六条実施の交換公文のどこに書いてあるのだという御質問でございますけれども、それは事前協議制度の法律的な意味合いから申しましてそういうものであるということを申し上げているわけで、このことは第六条実施の交換公文の内容から極めて明らかである。つまり、先ほどの繰り返しで恐縮でありますけれども事前協議制度というものは、日米安保条約のもとにおきまして、日本に駐留する米軍が一定の行動の自由というものを認められておる。その行動をするに当たって、日本側として、日本立場からこれに対して一定の条件を付することが必要であると考え事柄が三つございます。  その三つの事柄については、原則的にアメリカが行動の自由を持っておるけれども、それについては日本側協議をしてもらわなければ困る、こういう考え方に立ちまして、先ほど岸総理大臣答弁を読み上げましたときに申し上げましたように、そういうものについては日本側が自主的な判断をするんだ、こういうことを申しておるわけでございます。それが事前協議制度に関する交換公文の趣旨でございますから、そういう建前、本来の事柄性格上、これはそういうことを実際にやろうとする側が申し出てくるのが筋であるということを申し上げているわけでございます。これは政治的な判断として申し上げているのではございませんで、条約の解釈として法理的に言ってそういうものであるということだけに限定をして、私は答弁しているつもりでございます。
  45. 土井たか子

    土井委員 局長は、言えば言うほど矛盾したことを平気な顔をして白々しくおっしゃるのです。今の御答弁を承っていても、一貫して中川条約局長の御答弁を踏まえた上での高辻発言だとおっしゃるのですが、中川条約局長は、明確に双方からいろいろ問いただすことができるということを答えられているのです。事前協議に対して、日本から言い出すことができるということを答えられているのです。双方からそれに対しては聞くことが考えられるということを言われているのですよ。それを踏まえてとおっしゃるのだったら、それをあなたは是認するということにならざるを得ない。しかも、るる後々説明をされる必要はないようなことをくどくどとおっしゃっている。  したがって小和田条約局長は、そういうことからすれば、今外務大臣に成りかわって、政府がその後訂正をされたということについて、訂正ということの中身についての説明をされたんでありましょうけれども、今までの政府答弁をひっくり返した形であなたはそういうことをいろいろおっしゃるのですか。中川条約局長意見を踏まえた上ならば、日本側からも事前協議に対してアメリカに問いただすことができるということを是認するという立場ですよ、あくまで。  外務大臣いかがです。訂正ということからすると、外務大臣はそれ以前の意見というのは間違っていたというふうな御認識の上で、ああいう表現を答弁の中でお使いになり、そういう御認識で物をおっしゃったのかどうか。
  46. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私の基本的な考えを申し上げますが、我が国は、日米安保条約に基づき、米軍により我が国における施設、区域の使用を認めておりますが、米軍の一定の行動に対しては、これが我が国の意思に反して行われることのないよう、我が国との事前協議にかかわらしめております。すなわち、安保条約第六条の実施に関する交換公文により、米国は配置における重要な変更、装備における重要な変更及び戦闘作戦行動のための基地としての日本国内の施設、区域の使用については、我が国事前協議することを義務づけられておる。このように事前協議制度は、米軍の行動に一定の規制を加えることを目的として設けられておるものでございます。  したがって、事前協議は、米国がこれらの行動をとろうとする場合に、事前協議我が国に対して行わなければならないことを義務づけたものであって、かかる性格上、米側から提起されることが建前考えられ、我が方から米側に対して事前協議を行うという筋合いの問題ではありません。この点については、交換公文が日本政府との事前協議の主題とすると定めていることにもあらわれております。  以上の点については、先ほどからいろいろとございましたが、安保条約の審議を行いました昭和三十五年四月二十八日の衆議院日米安保条約特別委員会におきまして、当時の藤山外務大臣答弁によって政府としての有権的な解釈が明らかにされておるところでございます。  なお、御指摘がございました過去の答弁につきましては、政府見解の真意につきまして、昭和四十三年三月六日の衆議院外務委員会における穂積議員の質疑を初め、何回か提起された経緯があるわけでございますが、その際政府側から、事前協議事柄性格上、米側が申し出るものであるとの政府の統一的な考え方を明らかにしております。この考え方は、その後、政府が一貫して示しておるところでございます。  これが今日までの政府の基本的な立場でありますし、また、先ほど条約局長も申し上げましたような条約の厳粛な解釈である、私もそういうふうに解釈しております。
  47. 土井たか子

    土井委員 外務大臣外務省のお役人が書いてこられた文章を、この外務委員会で一貫した統一的な見解だといってただ読まれるだけでここは済むわけじゃないのですよ。きょうは、今までの議事録についてそれぞれ読んできたのです。統一的な見解になってないじゃないですか。一貫したものじゃないじゃないですか。今までの一貫した統一的見解というのならば、アメリカの義務履行について日本が問いただすということを認めている。日本が問いただすということを否定していない、こういうことが答弁の中では出てきますよ。にじみ出ているのです。外務大臣の秋は大変注目を集めている。中曽根さんとは一味違うというところをはっきりしてもらわなければならない。いかがですか、こういうことについては、そんなお役人の書いてきた文章ではない、外務大臣自身が外務大臣のハートでしっかり責任を持って答えてみてください。
  48. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはお役人が書いてきた文章と言いますが、私も一緒になりまして、外務大臣としての答弁として統一した考え方を申し上げたわけですから、今申し上げたのが正確な表現ですが、私は何回も申し上げておりますように、第六条による事前協議は、あくまでも申し出アメリカの義務によるものであるというふうに理解をしておりますし、これは安保条約が国会に初めてかかった藤山外務大臣答弁においても明らかになっておる、先ほど申し上げたとおりであります。  その後、国会の質疑の中でいろいろと多少の混乱があったと私は思います。それは議事録で私も見てそういうふうに思います。しかし、高辻答弁においてそれは政府の統一的な考え方として示された、私はこういうふうに理解をしている。そして、その高辻答弁が今日の政府答弁の根幹である、そういうふうに私は思っております。条約局長もそういうふうに答弁をしている。したがって私の見解も、あくまでもこの事前協議は我が方から申し入れる筋合いのものではなくて、アメリカ申し出なければならない義務を負ったものである、そういうふうに考えておるわけでございます。なお、そうした義務は、あくまでも日米安保条約を守るという両国のかたい信頼関係にのっとって、立脚して行われるものであることは当然でございます。
  49. 土井たか子

    土井委員 一貫した統一的というのは正確だとおっしゃいますが、それはそうなっていないことは今の御答弁の中で、一時混乱した時期があったがということもおっしゃっている。一時混乱というのは、つまり中川答弁のあたりを指しておっしゃっているのですか。そうして、今までアメリカ側の一方的な義務だということをはっきり言った答弁はないのですよ。今初めてこの席でおっしゃっているのです。それがどうして一貫した統一的見解なのですか。今までそういう答弁はないですよ。このことを外務大臣にはっきり申し上げたい、どうですか。
  50. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは、あくまでも日本が申し入れる筋合いではなくてアメリカ側申し出る筋合いのものだ、そしてこの事前協議条項の生まれたときの状況あるいはまた安保条約におけるそのあり方あるいはまた交換公文等から見ても、これは明らかにアメリカに義務づけられたものである、こういうふうに私ははっきりと理解をいたしております。
  51. 中島源太郎

    中島委員長 次に、河上民雄君。
  52. 河上民雄

    河上委員 今、いわゆる事前協議の問題でいろいろ論議がありましたので、それに関連して少し確認をさしていただきたいと思います。  今、大臣みずから、これまでの答弁に若干の混乱の時期があったというようなお話もありましたので、それだけに正確に確認をしていきたいと思うのであります。まず、非常に簡単なことですけれども事前協議というのはあるわけですが、これは日米間でどのレベルで行われると考えられているか。
  53. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 事前協議がどのレベルで行われるかということについては、特段の定めはございません。従来から申し上げているところでございますが、これは外交チャネルで行われる場合もあるであろうし、あるいは既存の例えば安保協議委員会というようなものもそのような場として一応設けられておりますので、そういう場で行われるということもあり得るであろう、したがって、特定のチャンネル、特定のレベルで行われるということには決まっておりません。
  54. 河上民雄

    河上委員 今、特段の定めはないということでありますけれども、日米安保特別委員会昭和三十五年四月二十八日の会議録によりますと、当時の岸総理大臣は次のように答えております。「日本の場合におきましては常に総理であります。アメリカの場合におきましても、その問題についてはアメリカ政府を代表する大統領である。ただ、大統領の委任を受けていかなる問題を大使がやるかというような問題はございましょうけれども、」云々として、日本側は総理、「われわれが相手に考えておるのはアメリカの大統領、」こういうふうにはっきり答えておられますが、一体今の御答弁といかがな関係に相なりましょう。
  55. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 ただいま河上先生御指摘答弁は私も記憶しております。先ほど私が申し上げましたのは、あくまでも事前協議、具体的なチャンネルの問題として申し上げたわけでございまして、事前協議が仮に行われた場合に、それに対して我が方としていかに対応するかという判断、決定の責任は内閣総理大臣が行うものであるということで、先ほど河上委員の御指摘になりました答弁はそういう趣旨のものであると理解しております。
  56. 河上民雄

    河上委員 では確認をいたしますが、日本側は総理大臣であってアメリカ側アメリカ大統領、このように考えアメリカ側制度上全く問題はないというふうに理解してよろしいですか。
  57. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 要するに、このような事前協議にかかわるような問題は、当然国と国との間、政府政府との間の問題でございますので、日本側においては、当然のことながらそういう高次元の判断をされる立場にあるのは内閣総理大臣である。アメリカ側の内部の制度については私は知悉いたしませんが、アメリカの行政府を代表するものはアメリカの大統領である。そういう意味で、片やアメリカは大統領、我が方は内閣総理大臣、そういうふうに御理解いただいてよろしいかと思います。
  58. 河上民雄

    河上委員 今、アメリカの行政府の仕組みについては知悉していないとおっしゃったのですが、これはぜひ確認をしていただきたいと思います。確かにアメリカ大統領であるというふうに我々は今確認をいたしますけれども、全く間違いないですね。
  59. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 実際の申し出をしてくるチャンネルとしまして、先方が大統領であらねばならないかというアメリカの行政府の手続上の問題から申し上げれば、私は必ずしもそういうことではなかろうというふうに考えるわけでございます。当然外交チャネルの話というのは、事前協議の問題を離れましても一般論としても申し上げられると思いますが、国務長官と外務大臣の間で行われる場合も十分あり得るわけでございます。ただ、このような問題につきましてはやはり国と国、政府政府の間の問題でございますから、我が方につきましては事柄の重要性にかんがみ、先ほど申し上げましたように判断をする責任は内閣総理大臣にあるということを当時の総理が御答弁されておられますし、それはそういう筋合いのものであろうと私どもも理解しております。  先方がそれを申し出るについて、大統領であるかどうかという具体的な事務的な手続の問題については私はつまびらかにいたしませんが、アメリカの行政府を代表するものは大統領でありますし、軍の最高司令官であるものは大統領でありますから、実質的にはアメリカ側責任者は大統領であるということは明らかであろうと思います。
  60. 河上民雄

    河上委員 それでは事前協議の問題、イニシアチブがアメリカにあるのか日本にあるのかということは非常に重要なことなので、先ほど来土井委員がやられたわけでございますけれども事前協議の対象の問題でございます。それについてちょっと確認をしておきたいのでありますけれども、御案内のとおり一九六八年四月二十五日外務省発表の「日米安保条約上の事前協議について」という文書がございまして、その中で「日本政府は、次のような場合に日米安保条約上の事前協議が行なわれるものと了解している。」そして、一、二、三とありますけれども、その二の点ですね。「「装備における重要な変更」の場合」というのがございます。ここに「核弾頭及び中・長距離ミサイルの持込み並びにそれらの基地の建設」というのがございますが、この三つはそれぞれ全く独立した項目であるのか、そのかかわり方というものについてはどのように理解しておられますか。
  61. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 御質問趣旨を必ずしも私理解したかどうかわかりませんが、書いてありますことは、今委員指摘のように、一つは「核弾頭及び中・長距離ミサイルの持込み」それがA、Bとして「それらの基地の建設」、そのいずれもが事前協議の対象になる、こういうことでございます。
  62. 河上民雄

    河上委員 同じく昭和三十五年当時、藤山外務大臣が次のように言っておられるのでありますけれども、「核兵器及び中、長距離ミサイル、つまり運搬用と申しますか、及びその発射基地に対する装置、そういうものが事前協議の対象になります。」こう述べておりますが、この答弁は今も変わっておりませんか。
  63. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 変わっておりません。
  64. 河上民雄

    河上委員 そうしますと、この場合の中長距離ミサイルという点については、これは運搬用というふうに定義いたしておりますけれども、この場合の中長距離ミサイルというのは核弾頭を装着したものをいうのか、それとも核弾頭を運搬し得る能力を持ったものというふうに理解されますか。
  65. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 その点につきましては従来から申し上げているところでございますけれども、ここで申します中長距離ミサイルというのは核弾頭運搬用の中長距離ミサイル、すなわち俗な言葉で言いますと核専用のいわゆるICBM、IRBMというようなものを従来答弁で申し上げておりますが、核兵器、当然核弾頭が装着されることによって兵器として使われるということが明らかな核専用の中長距離ミサイルというものを念頭に置いたものである、こういうことでございます。
  66. 河上民雄

    河上委員 重ねてお伺いしますけれども、その場合核弾頭が装着されていなくても、明らかに核弾頭を装着して発射できる中長距離ミサイル――もし核弾頭が初めからついておれば、三つ挙げた項目の第一の点で既に事前協議の対象になるわけでございますね。したがって、核弾頭が現実には装着されていない、将来装着されるという状態のものであっても、これは事前協議の対象になると理解すべきだと思いますが、いかがですか。
  67. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 ただいま御質問の点につきましては、従来からこの点についても御答弁申し上げているところでございますけれども、御承知のようにこの「装備における重要な変更」というのは、あくまでも核兵器の持ち込みについて、日本政府の意思に反してアメリカがそういう行動をとることがないようにということでできた取り決めでございますから、ここに申しております「核弾頭及び中・長距離ミサイルの持込み」というのも、あくまでも核兵器としての中長距離ミサイルということでございまして、俗に核、非核両用というような兵器で、核弾頭が装置されれば核兵器である、通常兵器としても使用できる、もしそういうようなミサイルがあるとすれば、そのミサイル自身の日本への持ち込みというものは事前協議の対象にはならない。  ここで言っております「中・長距離ミサイル」というのは、あくまでも核弾頭を装着しなければ兵器としては使用できない、そういう核専用の中長距離ミサイルというものを当然念頭に置いて了解されているものである、これは従来から政府が御答弁申し上げているとおりでございます。
  68. 河上民雄

    河上委員 そういたしますと、ミサイルが先に持ち込まれて、後からいよいよ緊急事態ということで核弾頭も装着して、それでいつでも実戦用にしていくという態勢を仮にとるとすれば、その場合ミサイルの持ち込みについてはこれはフリーパスということですか。明らかに核専用のミサイルであるけれども、今は平時だから、まだ緊急事態でないから核弾頭はつけないという状態の中長距離ミサイルの持ち込みは、もうフリーパスということですか。
  69. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 私が申し上げていることは従来からしばしば議論になりましたところでありまして、別に中長距離ミサイルに限りませず、核、非核両用の兵器というのは、いろいろとアメリカは保有しておるわけであります。それで、その場合に核、非核両用の兵器につきましては、核弾頭そのもので事前協議は押えてあるので、したがって核弾頭を装着して核兵器として使用することもできるし、通常兵器としても使用することができる、そういうような兵器の日本への持ち込みについてはこれは事前協議の対象にはならない。そもそも事前協議趣旨からいって、そのようなものは事前協議の対象にはならない。  したがって、事前協議の対象になるものは、あくまでも一つは核弾頭、もう一つは核弾頭を装着しなければおよそ兵器として使う意味がない、できない核専用の兵器、すなわちここで言う「中・長距離ミサイル」、こういうことでございます。
  70. 河上民雄

    河上委員 今の御答弁を仮に認めたといたしましても、核、非核両用のミサイルというのは、要するに核弾頭を装着するか普通の火薬を装着するかの違いはありますけれども、装着しない限りは兵器にはならないということになるわけですね。そういう点からいえば、これは将来核用に使うかあるいは非核で使うかということは、アメリカの最高戦略だと思うのです。そうして、もし核、非核両用のミサイルはフリーパスだということになりますと、その第一段階は先にフリーパスになってしまう。  確かに核弾頭をつけるかどうかで、そこで事前協議でチェックできると言うかもしれませんけれども、それならばこの三つを並列して項目として並べている意味がなくなってしまう。今のお話だと、何か核、非核両用という言葉で事前協議の第二項目、「装備における重要な変更」という規定は雲散霧消しちゃう。これは非常に重大な問題だと私は思うのです。  今トマホークが、まさにそういうことで現実問題となってきているわけですね。これは単なる理屈でそう言っているのじゃないのです。あなたの御答弁だと、核、非核両用であるということで事実上、装備における重要なる変更は事前協議の対象であるというこの項目は、ほとんど無意味になってしまう。ほとんどというか、全く無意味になってしまう。ですから、これは運搬用であるということですよね。しかも、核弾頭を装着したら兵器になる運搬用であるという先ほどの定義からいえば、核、非核両用でまだ核弾頭が装着されていない状態というのは、まさにあなたがさっき挙げた第二項目の定義に合致するのじゃないですか。
  71. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 この「装備における重要な変更」というものを事前協議の対象にしました趣旨は、委員よく御承知のとおり、先ほど私が申し上げましたが、核兵器の日本への持ち込みについては、我が国の同意なくしてアメリカが勝手にそれを行うことはできないということを条約上の仕組みとして確保しようとしたものでございます。  そこで、核兵器とは何かということになるわけでございますが、これは御承知のとおり、もう安保国会以前にも、核兵器とは何かという御質問が国会でもありまして、当時の政府の核兵器とは何ぞやという理解について資料として国会に提出したことがあるというふうに承知しております。その中でも当時、委員も御記憶と思いますが、オネストジョンというのがアメリカの兵器でございましたが、「オネストジョンのように核・非核両弾頭を装着できるものは、核弾頭を装着した場合は核兵器であるが、核弾頭を装着しない場合は非核兵器である。」それから別項としまして「ICBM、IRBMのように本来的に核弾頭が装着されるものは核兵器である。」こういうふうに御説明申し上げておりまして、この認識は、政府としては現在も変わっておらないというふうに私は理解しております。  さらに一言補足させていただきますと、核、非核両用の兵器、核弾頭を装着できる兵器であるからといって、日本への導入を例えば安保条約の上で規制するということになりますれば、これは米軍の装備というものに対して、我が方が意図している以上の重大な制約を課するということに当然結果としてなるわけでございまして、我が方の趣旨は、あくまでも核兵器の日本への持ち込みについては、これは日本政府の意思に反してアメリカが勝手に行うようなことがあってはならないということで、そのような歯どめと申しますか、条約上の担保を事前協議でやっておるわけでございますから、それ以上の制約をアメリカに課する、すなわち核弾頭を装着できるような兵器であるということをもって、そうした兵器を日本に持ち込んでくることを事前協議の対象にするということは、これは政府が従来から一度も考えていないことでございます。
  72. 河上民雄

    河上委員 今の御答弁ですと、核兵器及び中長距離ミサイルそれからその基地という三つ並べる必要は全くないということで、第一項目だけですべてできるということですね。だから、今の解釈は大変おかしいと思うのです。しかし、かつて帆足計委員安保条約審議のころ、どうも事前協議というのは乙女の祈りのようなものじゃないかと批判したことがあるのですけれども、あれから乙女も大分熟年に達して、きょうの答弁は甚だどうも不明確、老獪で、要するにやぼなことは聞いてくれるなという感じの答弁で、これから東北アジアにヨーロッパと同じような核の網の目ができようとしているとき、私は、これは非常に重大な問題だと思っております。  なお、もう少し追及したいと思いますけれども、もう時間があれでございますので一つだけ伺います。英国の空母インビンシブルの艦艇寄港許可をイギリスの外務次官が日本側に求めたという新聞の報道がありますけれども、これは事実でございましょうか、それをひとつ伺いたい。
  73. 西山健彦

    西山政府委員 お答え申し上げます。  これは、イギリスのルース外務担当国務大臣が毎日新聞とのインタビューにおいて語ったと言われているものでございますけれども、同大臣が実際に話しております内容をバーベータムの記録でもって見ますと、同大臣が言おうとしていたことは、イギリスは日英関係に非常に大きな重要性を与えている、あらゆる分野において両国関係の友好的な発展を望みたい、そういう枠組みの中において両国間の艦船が相互親善訪問するということは自然のことではないか、したがって、将来においてそういう機会が生まれることを望んでいる、そういう趣旨のことを言ったわけでございます。ただいま先生がおっしゃいましたように、インビンシブルという特定の船の入港を求めているということではないと承知いたしております。
  74. 河上民雄

    河上委員 終わります。
  75. 中島源太郎

    中島委員長 次に、高沢寅男君。
  76. 高沢寅男

    高沢委員 先ほど土井委員から、事前協議の問題でいろいろお尋ねいたしました。  それで、最初に外務大臣にお願いいたしたいのですが、核の持ち込みあるいは重大な米軍の配置の変更、それから日本から極東地区への出動、こういう三つのケースについては事前協議をする、これはアメリカ側の義務であると非常にはっきりきょうお答えがあったわけですが、そのアメリカ側の義務であるということは、我が日本政府は今そういうお答えがありましたが、アメリカ側は果たして義務として認識をしているのかどうか、これが第一。  それから第二には、認識をしているとすれば、アメリカの義務であるということをいつ、日本のだれとアメリカのだれがそういう取り決めをされたのか。それは文書の取り決めになっているのか、あるいは口頭の取り決めであるか、この辺をきちんときょうは確認をしたいと思います。大臣、いかがでしょうか。
  77. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 この事前協議につきましては、これを求める義務はアメリカにあるというのが政府の解釈でありまして、このことはまさに岸・ハーター交換公文にその根源が求められる、そういうふうに解釈をいたしております。
  78. 高沢寅男

    高沢委員 岸・ハーター交換公文は私もここに持っておりますが、ここには、そういう協議をすることはアメリカの義務であるというふうなことは全然書いてないんですよ。したがって、私たちは、岸・ハーター交換公文のこの字義どおりにもし受けとめるとすれば、当然日本からも協議を求める権利がある。そして、アメリカはまた協議を求める義務がある。両面に私たちは見るわけですが、とにかくこの交換公文にはそんなことは書いてない。そうすると、はっきりと明文でアメリカの義務であるということをどこの文書で、あるいはまただれとだれがいつ、これをはっきりさせてもらわないと、この委員会でただ言い放しで終わっちゃうということですから、はっきり聞かせてください。
  79. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 事前協議を行うことがアメリカの義務であるということは交換公文の上からも明らかであることは、先ほど大臣から申し上げましたし、条約局長も御答弁申し上げたところでございますが、アメリカもそのように理解しておるということは交換公文の文言上からも極めて明瞭だろうと思います。  アメリカがそのように理解しておるということについての二、三の例を申し上げますと、高沢委員も御承知のとおりに、従来、例えばラロック発言でございますとかそういう場合におきまして、アメリカ側立場見解というものの表明がございます。ラロック発言の場合、当時の我が方の安川在米大使に対しますインガソル国務長官代理によって伝えられました米国政府見解をごらんいただきましても、そこに、米国政府は相互協力及び安全保障条約並びにこれに関連する諸取り決めに基づく日本に対する約束を誠実に遵守してきているということを言っております。  同様の表現は、その後、例えばライシャワー発言問題との関連でございました当時の園田外務大臣とマンスフィールド大使の会談のときにも、当時のインガソル国務長官代理との会談の際に表明されたアメリカ政府見解が何ら変わってないということを述べております。そのような安保条約及び関連取り決めに基づく日本に対する約束を誠実に遵守している、今後も遵守する意向だということは、アメリカは累次言っております。なぜそのようなことを言っておるかということになれば、それは交換公文の事前協議趣旨アメリカがそのように理解しておるということの当然の帰結だろうと思います。
  80. 高沢寅男

    高沢委員 今粟山局長がいろいろ説明されたのは、あなたが七月十八日のこの外務委員会で公明党の古川委員に対するお答えの中でも、そういう問題は四条の随時協議で我々過去にラロックのときにやりました、ライシャワー発言のときにやりました、去年はエンタープライズで安倍外務大臣やりました、そういう説明があったことで私は承知しております。しかし、これは事前協議事項ではなくて、こちら側からすれば四条の随時協議事項として聞いたんだ、こういうふうなあなたの説明であったわけです。外務大臣の説明であったわけですね。  そこで、もう時間がありませんから、これに関連して少しまとめてお尋ねしますが、六月二十日の当外務委員会で、事前協議はこちらからできない、こう盛んにあなた方言われるから、それならばひとつ随時協議で聞いたらどうだ、こうお聞きしたところが、いや、事前協議の対象になるような核の問題は、それを飛び越えて随時協議でやるのはいかがか、そういうことはいたしません、こう答えた。ところが今度は、七月十八日の当外務委員会では、古川委員に対する、お答えで、いや、随時協議でもやりましたし、これからもやります。こういうことになりますと、私に対する六月二十日のお答えは全く間違いであったというのか、あるいはうそをつかれたというのか。うそと言っては大変失礼かもしれませんが、これははっきりこの場で訂正していただきたいということが一つです。  それからもう一つは、さてそれではそういう問題を四条の随時協議でやるとしても、果たして実態的に、具体的にタニーという原子力潜水艦には核があるのかないのか、ニュージャージーにはあるのかないのかというふうなお尋ねを一体されているかどうか、この辺のお尋ねの内容は一体どうなんでしょうか、それをお聞きしたいと思います。大臣、ひとつよろしく。
  81. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私が答弁しましたのは、アメリカが義務として事前協議にかけてこなきゃならぬ個別の問題については、六条の事前協議条項によって処理されるべきものである、随時協議については、いわゆる事前協議の運営等について随時協議するということは、これは一般的にできるんじゃないか、できるということを私は言っておるわけであります。したがって、私も今栗山局長の説明で思い出したわけでございますが、昨年私がマンスフィールド大使と行いました協議は、まさに四条によるところの随時協議でありますし、そしてその内容は、いわば事前協議の運営についての内容であると言ってもよかったんじゃないかと思うわけであります。そしてアメリカは、いわゆる安保条約、その関連規定を守ります、遵守します、事前協議条項はきちんと守りますということを、その席上において一般的に表明をいたしておるわけでじざいます。それは日本も確認を、これまでも何回も一般的にしてきておるわけでございますから、その限りにおいては私が申し上げたことは一貫しておるのじゃないか、こういうふうに考えておるわけでございます。  それからニュージャージーは、まだ入るとか入らぬとか、公式にも非公式にも何も出ておりませんが、いわゆる事前協議というのは日米安保条約の根幹とも言うべきものでありますし、日本非核原則を持っておるということは天下に明らかでございます。そして、この事前協議はあくまでも守られなきゃならぬ。それは条約が前提にありますし、条約が守られなければ二国間の信頼関係というのは根底から崩れるわけでございますから、日米関係にはそれだけの信頼関係は確固として存在しているというふうに私は思っております。したがって我々は、事前協議を経ずして核の持ち込みなどということは到底あり得ない、今の日米安保条約、その信頼関係から見てそれはあり得ない、こういうふうにかたく信じておるわけでございます。  しかし、これまでもそうでございましたが、国会において野党の皆さん方からそれは守られてないのじゃないか、核つきで入っている可能性があるんじゃないかという疑問も出される、あるいは国民の一部でやはりそういう声が出ておるわけであります。特に、今回トマホーク問題が表へ出まして、そうなると世論あるいは議会、いろいろと議論が起こってくるのは当然でございます。そういう際に、我々は安保条約をこれから守っていかなきゃならぬという立場に立ち、同時にまた、その基礎となる日米の信頼関係を確保していかなきゃならぬということになりますと、やはりそうしたいろいろの疑問に対して日米間でちゃんとけじめをつけておく必要があるんじゃないか。  そこで今後、場合によっては昨年行ったようないわゆる四条によるところの随時協議を行って、一般的に日米間で安保条約並びにその関連規定あるいはまた事前協議条項は守りますということを確認し合うことが必要になった場合はこれを行います、こういうことで言っておるわけです。そして、ニュージャージーの入港というふうなときにおいては、恐らくいろいろと国民世論あるいは議会の中で問題が相当出てくるでありましょうから、そういう際はやはり安保条約を守りましょう、日米間の信頼関係を確固として維持していきましょうという形の話はしなきゃならぬのじゃないか、こういうふうに私は思っているわけであります。
  82. 高沢寅男

    高沢委員 そういたしますと、つまり六条の事前協議の条項をアメリカに厳格に守らせるためにこちらがやり得る手は、今の外務大臣の御説明では、四条の随時協議でそういうことをアメリカ側に念を押し、申し入れをするということだと思いますが、ただ、そうすると、例えば外務大臣のマンスフィールド大使とのお話も、何かエンタープライズが来る、日本には非核原則がありますよ、これを忘れないでください、するとマンスフィールド大使は、わかってます、わかってます、御心配なく、こんなやりとりじゃないかと思います。これは、そう言っては失礼ですが、こちらの言い方は子供の使いだ、相手の答え方は子供だましだということじゃないかと私は思うのですよ。そして、あのエンタープライズとかああいうものが入ってくるとき、核がないなんて一体だれが思いますか。  このことは、繰り返し言いましたからこれ以上言いませんが、そういうふうなことが現に行われていて、もし後で核があることがわかったら、先ほど小和田局長のあれでは、アメリカはそういうことはちゃんと守るはずになっておる、しかし守らなかったら抗議する、こう言っていますが、守らなかったときに抗議するったって、もうそのとき日本が現に戦争に入っているというふうなことになったときに抗議と言ったって、とても間に合わないでしょう。私は、そういう意味において、この事前協議という事項をわざわざ設けてアメリカに義務として守らせるというのは、日本がかりそめにも戦争に巻き込まれることがあってはいけないという立場からこれは出てきておることだと思いますが、そうであるとすれば、疑わしいこと、これは危ないなということはどんどんこちらからアメリカに言って、そして事前協議をすべきじゃないか、核がないことを明らかにさせろということを次々と我が方から言うのが日本政府の当然の立場じゃないか、こう思います。  この点、その運用の、そういうふうな第四条と第六条の相互関連運用というのも、形式的にただ第四条でも言っていますよと、我々に対するアリバイづくりのようなやり方じゃなくて、本当に中身のある、第四条協議によって六条条項を本当にアメリカに守らせるということの中身のある活動を外務省の活動としてすべきだ。その決意と、それにはこうやりますということを、私は外務大臣からお聞きしたいと思います。
  83. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 疑ってかかるのと信頼してかかるのと、基本的に差があると思いますね。やはり日米関係でこれだけ安保条約という条約を結んでいるわけですから。条約というのは、お互いが守らなければ条約意味をなしませんし、一方これはもう根底が崩れるわけです。やはり条約の根底は、お互いに遵守するというところであろうと思うわけですね。その点は、日米関係にはそうした日米安保条約、それを守ろうというお互いの信頼感というものが確固としてあるわけでありますし、その中で事前協議条項というものは義務規定として、アメリカがもし核を持ち込む場合においては、日本に対して事前協議にかけなければならない責任と義務が存在しているわけです。これは条約上あるわけですから、したがって条約をお互いに守るという立場からすれば、やはりアメリカは義務を履行しなければならぬわけで、いわゆる事前協議にかけずしてアメリカが核の持ち込みをするということはあり得ないというのが我々の見解ですし、それは危ない、それは非常に疑問だ、そういうことを果たして信用できるかというのが皆さん方の見解だろうと思います。その辺にはっきりした差があるわけなんです。  それからもう一つは、しかしそうはいっても、政府としても国民の平和と安全に対して責任を持つわけですから、これはやはり国民の中であるいは国会の中でいろいろと疑問が出れば、一般的な形においてアメリカに念を押すといいますか、確認をする、お互いの原則を確認し合う、そして条約の遵守規定というものをお互いに確認し合う、信頼性をお互いに確認し合うというのが、やはり国民の皆さんに安心感を与える、理解してもらうという意味においても必要だということで実は時々やってきておるわけで、去年はエンタープライズとかあるいは三沢のF16の基地を建設するというふうなことに関連をしてそういう議論がわっと出てきたものですから、私がマンスフィールド大使とその四条によるところの随時協議を行ったわけでありますし、今後ともこの四条によるところの随時協議は、国民に対する一つの理解を求め、また国民の皆さんに安心してもらうためにも時に応じてこれはやらなければならないことであろう、こういうふうに私は思っております。
  84. 高沢寅男

    高沢委員 もう時間が来ましたから、私はこの一問で終わります。その終わるに当たって、今外務大臣、信頼関係と非常に言われました。もう断じて絶対アメリカを信頼しておる、こうおっしゃったわけですが、そのアメリカのライシャワー大使がかつて日本の大平外務大臣に対して、あなた方はアメリカを信頼している信頼しているとそればかり言ってくれては困る、アメリカにしてみれば、核を持ったアメリカの軍艦が日本に寄港する、日本の領海を通過する、そのくらいのことは当然で、現にやっているのだ、それを、信頼してます、アメリカ責任というだけにかぶせてくれては困る、寄港や通過はいいのだということを日本政府だって言うべきだということを言っているのでありまして、外務大臣がそれほどアメリカさんを御信頼申し上げていると言ったって、大体相手がそういうふうに考えていない相手だということをまず私は指摘をしたいと思うのです。  そういたしますと、先ほどの、事前協議アメリカの義務である、どこでだれとだれがと言ったところが、岸・ハーター交換公文、これしか出てこない。そうであるとすれば我々社会党も、適当な時期、適当なルートを経て、アメリカに対して事前協議を義務と見ているかどうかということをひとつただしたい、こう思います。これはひとつ大臣に対して、我々の立場として通告しておきます。  その上で最後のお尋ねでありますが、この四条の協議は日米安保協議委員会でやることになっていますね。つまり、外交ルートでやるのと日米安保協議委員会でやるのと、二つの場がありますということは従来もずっと御説明があったわけですから。  例えばけさの新聞で報道されました、アメリカの下院歳出委員会に出された資料によると、アメリカ極東地域で六万人も死傷者の出るような戦争を想定しておる、そうなったときに、横須賀にある米海軍の病院では、ベッドが足りなくてとても間に合わぬというような議論もアメリカ議会では出ておるということでありますが、こういうふうな極東における重大な戦争の事態アメリカが想定しておる。これが一体日米安保協議委員会の話題になったことがあるのかどうか、これを一つお尋ねします。  それからもう一つお尋ねは、アメリカを信頼すると言いますが、アメリカがもしソビエトに向かって核トマホークを発射するとき、日本列島の東側、太平洋側からソ連に向かって撃つ。二千五百キロ飛びますからね、銚子沖から撃ったって十分ウラジオストクに届きます。そういうものをもし撃つときに、これは公海上から撃ちますからね、アメリカ日本に対して事前協議する必要はない、公海上から撃つのだ、こういうふうな立場をとるかもしれない。そういうときに、アメリカの核トマホークは日本の上を通ってずっとウラジオへ飛んでいきます。これはもう事前協議に明らかに違反ですね。そういうふうな事態が起きたときに、これは抗議したってもう間に合わぬでしょう。そういうときは我が日本自衛隊は、日本の領空を無断で飛んでいくこの核トマホークを撃墜する、こういう措置をとるのかどうか。スウェーデンは撃墜すると言っています。日本もそういう措置をとるのかどうか、この点についての大臣のしかとした所見をお尋ねをいたしまして、最後の質問にします。
  85. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 やはり日米間は信頼関係が大事であると思いますし、特に条約日本だけ守るということじゃなくてアメリカにも守ってもらわなければならない、私はそういうふうにかたく信じているわけであります。  また、我々は戦争というものは想定しないわけでございますし、いわゆる日米安保条約あるいは日本自衛力の充実というのは、あくまでも戦争に対する抑止力という意味で我々これをとらえておるわけでございます。  同時にまた、核の持ち込みについては、もうこれまで政府がしばしば申し上げましたように、いわゆる有事であると否とを問わず、これはあくまでも事前協議の対象になる。その場合に日本はノーであるということは、申し上げているとおりであります。  なお、アメリカの議会での今御指摘のありました演習ですか、そういう問題については局長から答弁させます。
  86. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 安保協議委員会がいわゆる四条協議一つの場であるということは御指摘のとおりでございます。  他方、御質問がありました新聞報道の資料につきましては、アメリカの議会の資料ということで私どもまだ委細承知しておりませんし、それからまたこのような問題について、先ほど、日米安保協議委員会の場で過去において話し合われたことがあるかという御質問があったように理解いたしましたが、そのような話し合いが、そのような何か戦争を前提としたシナリオについて安保協議委員会で話し合われたというようなことは、全くございません。
  87. 高沢寅男

    高沢委員 撃墜するのですか、無断で飛んでいくトマホークは。
  88. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 トマホークの問題については従来から、以前に御質問がありまして、政府側答弁があったというように私記憶しておりますが、これはそのようなことを全く仮定の議論として議論することはいかがかというふうに存じますけれども、全く仮定の問題として、いわば一般的に申し上げれば、日本の領空を第三国であるアメリカが戦闘行為に使うということに結果的になろうかと思いますが、そのようなことが我が国の了解なくして行われるということはそもそもあり得ず、そのような問題はそもそも事前協議以前の問題であるというふうに政府の方から御答弁申し上げていると承知しております。
  89. 高沢寅男

    高沢委員 この問題はまだ聞きたいのですが、しかしもう時間が来ました。他党に御迷惑になりますから、終わります。いずれまた、改めてやりたいと思います。
  90. 中島源太郎

    中島委員長 次に、渡部一郎君。
  91. 渡部一郎

    渡部(一)委員 私は、本日、日本と中国の間のさまざまな経済問題につきまして、まとめてお尋ねをしたいと存じます。  六月の末、第二回の日中民間人会議が北京で開かれたわけでございますが、私はその際、メンバーの一人として参加させていただきました。この会合におきましては、中国側から非常に多くの示唆に富む、また率直な中国事情の開陳がございましたし、また、私どもも日中友好という立場から、さまざまな問題につきまして率直な議論を行いました。そして、その結果出てまいりましたのは、日中間の経済協力が特に第二段階に突入しており、その間における両者のさまざまな紛争が放置できないレベルにまでなっているという深刻な認識でございました。そこで、私はきょう具体的な例も交えながら、この民間人会議の成果も踏まえつつ、御質問をしたいと考えるわけでございます。  本日、議場に配付していただきましたのは、東京にあります東京コスモス電機株式会社と中国との交流についてのペーパーが配付されております。この会社は日中友好に極めて熱心であり、その立場から中国に電子部品の工場を進出させるため、さまざまなルートを通して努力を続けたのでありますが、製造プラントの見積もり約五十件を提出しながら、また、中国各地からの代表との交流は三十回を超えながら、一件も成約することなく、十一年間に中国との交流を通じて必要とした直接経費だけでも一億円、また八十二件に上る技術資料、製造プラント見積もり及び工場近代化改造計画書に含まれている技術ノーハウは、金額に換算すると約八・二億円に上ると述べているのであります。  この会社は、資本金が五億二千五百万円であり、従業員約五百名の日本で言う中企業でございまして、このような会社がこれだけ多くの負担に耐えながら中国との友好をなし遂げようとした実績は驚くべきことであります。しかしながら、その結果はさらにひどいものでございまして、報われなかった努力の累積として多くの反省と見直しを彼らは率直に述べているわけであります。  従来、中国との間でさまざまな問題点を生じた会社が、これほど率直にペーパーにしてみずからの立場を主張されたことは前例を見ないところでございますので、私は当該社長のお許しも得まして、本資料を当委員会に配付した上、外務省にもあるいは通産省にも提出し、十分の御検討にあずかりたいと思った次第でございます。よろしくどうぞお願いしたいと存じます。  本日、将来の日本と中国のために、みずからの会社の犠牲を顧みることなく、こうした問題を率直に述べられた勇敢な民間企業の誠意にこたえるためにも、問題点を一応総ざらいにした上、適切な対応を政府にお願いしたいと私は思いまして、質問するところでございます。したがいまして、率直にして十分の御返答を賜りたいと存じます。  まず外務省お尋ねいたしますが、中国の内外政策における最近の大変化と申しますならば、何と申しましてもこの五年半前から続いております対外経済開放政策であろうかと思います。経済特区あるいはその後に対外経済開放区を十四カ所も設けるというような大々的な対外経済開放政策というもの、その位置づけを我が国としてどう考えておられるのか、まずお尋ねをしたいと存じます。
  92. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 中国は、御承知のように四つの近代化を目指して、国を挙げて取り組んでおるわけでございます。特に今お話しのような経済につきましては、開放経済体制を進めることに非常なエネルギーを集中いたしておりますし、それなりの成果は上がってきておると私は見ております。  特に、今お話がありましたようないわゆる経済特区につきましては、深センであるとか珠海等を初めとしてこれから四つつくっていこうということで、これは私も中曽根総理と三月に中国を訪問したときに鄧小平主席からもみずからお話聞いたわけですが、この特区を対外的な経済交流の窓口あるいはまた海外からの投資の窓口にして、ここでもって中国経済の将来に向かっての新しい展望を切り開いていきたいということで、投資の保護であるとかあるいはまた技術に対する誘致を積極的に進めるとか、この特区についてはいろいろな優遇策も講じて対外的な面を強化していきたい、こういうことで、これはこれからの問題であろうと思いますが、そうしたことがこれからの中国経済にどういう影響を与えるか、今までのところは全体的に見て順調にいっておるのではないかというふうに存じております。  日本の場合、特に政府の協力だけではなくて民間の投資を強く求めておられるわけでございまして、そういう点につきましては政府としましても民間の団体に対しまして、日中関係のこれからの繁栄を進める意味におきましても、あるいはまた中国がやっておるところの経済開放体制というものが日本の投資をある意味においては非常に求めておる、こういうことについても今理解を求め、そうした民間と中国との関係の強化のためにいろいろと勧奨といいますか奨励といいますか、そういう措置を行っておるわけであります。
  93. 渡部一郎

    渡部(一)委員 一九七八年以来近代化政策をとり続けてきた中国が一九七九年から経済特区を創設されて、外国の資金、外国の経験、外国の技術を導入しなければならないと踏み切り、本年に至って十四の経済開発区を設けてきた。そして、全人代を開いてこれを最重要事項とみなした、こういう状況に現在なっていると思います。こういう状況に対して外務省はいかなる認識を有し、いかなる政策をもって臨んでおられるのか、この認識と評価について承りたいのであります。
  94. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 やはり中国はアジアにおける非常に大きなウエートを持っておるわけでございますし、中国の平和と安定はアジアの平和と安定につながっていくわけでございます。特に日本との関係からいきましても、中国がこれから安定して発展をしていくということは日本の将来にとりましても欠くことのできないことであろう、そういうふうに認識をしております。したがって、今中国でとられておるところのそうした経済開放対策というものは、アジア全体にとりましても極めて望ましい方向である、そして日本にとりましても今後の提携関係、協力関係を考える場合に、これまた極めて望ましい体制である、こういうふうに思っております。
  95. 渡部一郎

    渡部(一)委員 余り気取らぬで私聞いてみるわけですが、そうすると大臣は、一部の保守的な方々にあるような意見、つまり中国を余り強国にすると日本はかえって将来問題が起こるぞというような意見にはくみしないで、中国の国家の基礎づくり、国づくりというものに対しては、日本とアジアの平和あるいは両国の緊密な協力と発展にとってこれは非常によいことだ、むしろ協力していくべきだ、経済交流はいいことだというふうにお考えなのでございますか。
  96. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 中国でもお話聞いたわけですが、今の中国の、例えばGNPは一人当たり二百五十ドル、こういうことでございます。日本と比べますと、まさに大きな隔たりがあるわけであります。その目標を二十一世紀には千ドルというところに置いておる。そのための経済の近代化あるいは経済開放体制を進めていくということでございますし、そういう意味におきましても、今置かれている中国の経済的現状というものを見ますときに、日本が中国の経済に対して官民ともに協力をしていくということは、むしろこれは日中関係だけでなくてアジア全体の平和と安定に資するものであるということを私は確信をいたしております。
  97. 渡部一郎

    渡部(一)委員 中国は、日本の企業の進出、特に最近は大企業から中小企業の進出を強く望んでいると聞いておるわけでございますが、外務省としては、長期的な日中友好協力の観点から日本企業の対中進出をどのように評価されているか、承りたいと存じます。
  98. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今中国との関係におきましては、国と国との間の経済協力関係というのは非常にうまくいっておると思います。ところが、日本の民間と中国との間の経済関係は必ずしもそう順調ではない。これは民間の投資一つをとってみましても、中国側が指摘しておりますが、まだまだ低いレベルにある。そういうところに中国側は四つの特区と十四の経済開発区を設けて、そして日本の民間企業の投資であるとかあるいはまた融資であるとか、そういうものを求めておるわけでございます。私は、これからそうした民間の交流がだんだん進んできて、そして特区、開発区を中心といたしまして、日中間の政府関係だけじゃなくて民間の経済の交流の幅が大きく広がっていくというのは、我々としてもこれは非常に期待できることであるし、また日中両国のためにもいいことじゃないか、そういうふうに考えております。
  99. 渡部一郎

    渡部(一)委員 非常に素直に質問しておるので、大臣安心してお答えください。さっきから非常に不安そうにお答えになっているのですが、きょうは非常に素直な質問をしておりますから。  次に、日本企業の対中進出の過程において種々の困難が生じていると承知しておりますけれども、これは外務省として具体的な例について十分掌握されておるかどうか、お尋ねをいたします。
  100. 後藤利雄

    ○後藤(利)政府委員 お答えいたします。  ただいま委員の御指摘のいろいろな問題点につきましては、私どももかねてより注視しておりまして、本省及び在外公館におきましても、個々の関係企業に対しましてヒアリング調査等を実施するなどしまして、実態の把握に努めております。  具体的に私どもが行いましたのは、東京におきましては、ことしに入りましてから既に合弁進出企業を中心といたしまして、数十社に対しまして面接方式による事情聴取を実施しておりますし、また在外公館におきましても、現地の日系企業に対しましてヒアリング調査を実施しております。  その観点で、先ほど委員から御提出いただきました東京コスモス電機株式会社の資料は、私どもにとって大変有意義であろうと思います。私、斜め読みさせていただきましたけれども、具体的に実際に民間の経済交流と申しましても、個々の企業については大変御苦労があるという点をここに非常に子細に書いてありますので、今後この点も一つの例として研究、勉強させていただきたいと思っております。
  101. 渡部一郎

    渡部(一)委員 外務省としては、こうした中国との関係においてさまざまな困難が生じているという現実をいろいろ御研究いただいていることは高く評価するわけでございますが、これを今後いかにして解決していくおつもりであるか、今のところの御計画あるいはお考え等ありましたら聞かしていただきたいと思います。
  102. 後藤利雄

    ○後藤(利)政府委員 具体的には個々の企業の、ただいま申し上げましたようなヒアリング等を通じまして、個々の問題点をよく詰めて考えたいと思いますが、私ども承知しております具体的な問題点ということになりますと、特に対中進出に当たりまして逢着する問題点としては、例えば中国国内におきまする販売制限がやや厳しい、あるいは許認可手続が非常に煩雑であるとか、同じ条件について複数企業に引き合いを出す、いわゆる三者引き合いが多いとか、経営権の制限、あるいは国内部品や国内産原材料を優先的に使用する義務を課するとかというような点があることを承知しておりますので、私どもといたしましては、例えば投資保護協定交渉を促進する等いたしまして、中国側におきます法体系の整備あるいは投資環境の一層の整備が重要であるということをいろいろな機会指摘してきておりますけれども、既に中曽根総理あるいは安倍大臣からも中国に行かれましたときに御指摘いただいておりますが、今後ともそれを続けてまいりたいというように考えております。このようなことで、民間の交流をさらに促進するという点ではあらゆる機会を利用して中国側の注意を喚起したい、こう考えております。
  103. 渡部一郎

    渡部(一)委員 私は、ここでちょっとただいまの御答弁関連してお触れするわけでございますが、法制の未整備につきまして御注意を喚起したいと存じます。  中国側の御説明によりますと、現在立法機関で審査中の法律としては渉外経済契約法、合作経営企業法、今年じゅうに作成が完了する法律は外資企業法、対外貿易管理法、現在作成中で二年以内に公布される法律としては民法、公司組織法、税関法、海商法、こうした法律が示されておる。特に、合作経営企業法及び会社法に当たる公司組織法の公布というものは、私どもにとりまして非常に多くの注目を集めているところでございます。私は、これらについて審議の過程に内政干渉するのはいかがかと存じますけれども、率直に言いまして、我が国のルールから見て余りにもかけ離れた議論が行われているようならば、現実認識の問題で中国側に現状の認識をお願いする、率直に忠告をするあるいは助言をするというようなこともあってしかるべきかと存じますが、私の認識あるいはそのような意見に対してどうお考えか、お答えをいただきたい。
  104. 後藤利雄

    ○後藤(利)政府委員 お答えいたします。  今委員から、大変いろいろな法制、法体系の整備、未整備の問題につきましての御指摘がございました。この点につきましても、私どもはそういう問題点があることは承知しております。これにつきましては、私がこういうことを申し上げますと大変口幅ったいのでございますけれども、やはり日中友好の関係というのは、こういう問題について私ども考え方を忌憚なく先方に伝える、もちろん内政干渉に当たってはいけないわけでございますが、その範囲内において語り合える、指摘し合える、注意できるというのが本当の友好関係だろうと思います。その範囲内において、今御指摘のような問題についてこれから私ども先方とよく話し合っていきたい、こう思っております。
  105. 渡部一郎

    渡部(一)委員 大変いい御答弁をいただきまして安心しているところでございます。後藤局長もお触れになりましたけれども、合弁企業法実施条例第百条で、合弁期間は原則として十年ないし三十年という規定があるようでございます。現場で交渉された方を見ますとさらに短くて、十年以内に資本を全部回収して、日本の進出企業は中国から引き揚げていただきたいというようなことが公然と言われているわけでございまして、対外的には、インドネシアを除いて、合弁期間に期限を設けるというケースは少ないのだそうでございますが、日本側企業にとってはほとんど理解しがたいルールであるというふうに思われるわけでございます。こうしたことについては、外務省のペーパーによりますと、しばしば注意を喚起せられているようでもございますけれども、これはただに注意を喚起するにとどまらず、重大事項でございますから、もう少し早く適切な意見を表明されることが必要ではないか。  また、国内市場の問題につきましては、中国側から、同条例の第六十条において、国内販売は先進的技術や輸入代替製品に限っているというふうに指定されており、日本側は、とてもではないけれども品物を中国国内で売ることができない、売るのは特別の恩恵措置というふうになっておるため、日本の中小企業は特に禁止的な制約というふうに受け取っており、中国進出をためらう重大な案件になっておる、こう私は理解しているわけでございます。この点につきましても、率直にお話をされることが必要ではないかと考えるのでございますが、いかがでございましょうか。
  106. 後藤利雄

    ○後藤(利)政府委員 お答えいたします。  合弁期間の問題につきましては、ただいま委員が御指摘のような問題点があることは承知しておりまして、私どもも、可能な限りの機会にこの点を指摘しております。これにつきましては、中国側は、延長が可能であるという説明を各地方で行い、必ずしも法律に縛られないということは言っております。おりますけれども現実問題として今のような御指摘がございますので、私どもとしては、もう少し強くこれをいろいろな機会にあれして、ただ口だけではなくて、実際にそういう延長が可能であるという事態にさらに一層努力させていただきたいと思います。     〔委員長退席、石川委員長代理着席〕  それから、国内市場の未開放の問題で、ただいま先生から実施条例第六十条の問題の御指摘がありましたけれども、これにつきましても、性急な輸出義務づけは長期的な観点からも改善が望ましいということを私どもも申しまして、先方もそれについては一応は理解しております。しかし、理解するということでとどまらないで、私どもとしては、今の先生のような御指摘についてさらに先方に強く当たってみたい、こう考えております。
  107. 渡部一郎

    渡部(一)委員 このコスモス電機のペーパーの中から申すわけでございますが、この中に明らかにさっき申されました三者引き合い、向こう側の表現で言えば対比三家というルールがございます。これは、技術の提供、見積もり、それから相談、工場診断などというものが続いた後、最後の入札のペーパーを全部日本側で用意した後に、そのペーパーを先方は全然別の会社、その会社も含めてではありますが、三つの会社にばらまいてしまう、そうしておいて、それを対比三家と称しているわけでございます。これは、入札の際に、一つの会社に入札を頼めば、お粗末な技術、高い商品を引き受けるという中国側の考えから出ているものであって、そのルールそのものを否定する必要はないのでございますが、工場進出の場合には、最初に工場診断とかノーハウの提供とか設計図面をするとか、その部分はむしろ対比三家の後に行われるべき性質のものであります。  したがって、日本の中小企業は、この東京コスモス電機によらず、技術のノーハウを完全に提供した後、ペーパーまでこんなにつくり上げて、何億円もかけてペーパーをつくり上げた後に、対比三家と称してその部分が全部公開されてしまう、そうするとノーハウも外側にばれてしまう、しかもほかの会社に自分の手の内がばらされてしまう。この対比三家のルールは、むしろ技術ノーハウを総トータルして提供する以前に対比三家を行うべきではないかというのが、日本の中小企業の工場経営者から強く強く表明されているところでございまして、この辺については基本的原則にかかわりますので、一件ずつ処理する限界を超えており、何らかの御指導と御援助をお願いしたいと思うのでございますが、いかがでしょうか。
  108. 後藤利雄

    ○後藤(利)政府委員 ただいま、私みたいなある意味で素人な者に、先生に大変細かい点を教えていただきましてありがとうございました。  御指摘のように、一件一件の問題ではなくて、中国への民間交流の一つの資本進出あるいは貿易提携という点について、これが一件のみにかかわらずすべての案件にかかわる問題だという御指摘をよく拝聴いたしましたので、これを一つの例としまして、全体的な問題としてさらに勉強させていただきまして、善処させていただきたいと思っております。
  109. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今このペーパーを拝見しまして、随分東京コスモス電機は辛抱強くやられたものだと思うわけでありますが、それだけ努力をされたにもかかわらずなかなか成果が上がらなかったということは非常に残念に思います。随分中国からいろいろな方が見えておりますし、行っておられるようでありますし、何回か仕事の成約寸前までいっているようですが、不調に終わっている。こういう例は、恐らくこの会社だけではないと私は思います。  やはり基本的には、日中関係をよくしたいと両国当事者それぞれ思いながらも、どうしてもお互いに体制が違う面もありますし、なかなか歯車が合わない点が随分あるのじゃないかと思うわけで、特に民間の場合は中国の方で――日本の場合は国が民間を保護するわけじゃないですから、裸で行くわけですから、それだけに中国の方でも投資保護とかそういうものをちゃんとやってもらわないと、中国でも盛んに来い来いと言われますけれども、またそういう日本の中小企業界にも中国へ出ていこうという機運は非常にあると思います。  ただ、利益追求というだけじゃなくて、日中関係というものを考えながら出ていって仕事して友好を深めたい、そういう気持ちも根底には随分あるように私は思うわけですが、そういう面を実りあらしめるためには、民間はこれからですから、経済特区なんかにもこれから中国が求めているような日本の中小企業が出ていくわけですから、そしてまた中国は日本に対して、我々にも言いたいことは言ってくださいということも言っておられるわけですから、こうした経験に基づく問題点は率直に中国にもひとつ申し入れをして、中国にももっと日本の企業を受け入れやすいような態勢をつくってもらわなければならぬと思いますし、また日本の企業にもこうした点について、いろいろとこれから中国とやる上において反省材料として、いろいろと参考にしてもらいたいものだと私も率直に思うわけでございます。  これだけのことを本当に根気強くやられて何もできなかったというのは、大変私もお気の毒に思いますけれども、しかしこれが何かの契機になって、一つの参考資料として、教訓として何らかここで論議することが、これからの日中関係、民間交流に大きなプラスになることを心から期待するわけでございます。
  110. 渡部一郎

    渡部(一)委員 今、大臣に総まとめを既に言っていただきましたので、私、これからもう少し細かい議論をしようと思いましたけれども、途中でちょっと遮断しまして、大臣の今の御意見、私は非常に賛成であります。確かに民間企業が孤軍奮闘して、体制の違う国のシステムと正面から一つずつが体当たりしていく、まるで戦艦にボートが一つずつ体当たりするみたいなやり方というのは、余り賢明じゃないと私も思います。そこで、ある程度基本的なルールのところは日本政府あるいは日本政府にかわる関係機関が交渉してしまう、そして今度こういうルールになりましたよということを日本側に周知徹底さす、それを土台に交渉するということがあった方が楽なのではないか。  行くところ行くところが、一つずつ初めから全部やる。みんな対比三家で一回やる、みんな労働者の給与の問題で一回やる、みんな国産品で一回やる、みんな国内販売制限で一回やる、同じことを全部繰り返しておる、これをまとめて交渉していただけないか、中小企業の皆さん方の声を代弁して申しますとそういうことになるわけであります。それを外務省がやるのか通産省がやるのか、私は何もここで指定しているわけではございません。また、ジェトロがやるか何がやるかということを申し上げているわけでもないのでございますが、しかるべき部局である程度は交渉していただいて、その結論を国民に、企業家たちに教えていただけないかと思うのでございますが、いかがでしょうか。
  111. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は、まことにすばらしい御意見だと思います。日本の企業が、特に中小企業がこれから中国との連携を目指して出ていくわけでしょうが、一つ一つ出ていって同じような苦労をして、壁にぶつかってはね返ってやりに行くよりは、今おっしゃるように中国では組織は一つになっているわけですから、日本もそうしたインフォメーションといいますか、いろいろの中国側の法制にしても、あるいはまた企業に対するいろいろの税制だとかその他のあり方等にしても、やはりこれはまとめて知らせて、そして準備をして取り組んでいくということが今最も必要じゃないか。そうしないと、今おっしゃるようなことでだんだんと問題があちらにもこちらにもできてしまうと、せっかくの日中のいい関係に水が入ってしまうということにもなりかねないわけでございます。  大企業を見ておりますと、大企業はそれだけの力を持っておりますから、大企業だけで中国の政府とぶつかって、いろいろと失敗もしながら、しかし成果もどんどんずっと上げてきておるわけですが、中小企業はそれだけの失敗をしてもう一回はね返していくだけの力というのはないわけですから、今おっしゃるように、外務省か通産省が、あるいは商工会議所とかジェトロになりますか、そういうものを全体的にまとめていろいろと指導し、また場合によっては中国側と折衝することが必要であるということは私も痛感しますし、痛感するだけでなくて、私も政府の一員でございますから、こうした今の御意見を踏まえて、早速関係省庁、通産省等とも連絡をとって、どういう方法がいいかひとつ検討してみたい、そうしてまた渡部委員にもその検討についてお諮りをいたしたい、こういうふうに思います。
  112. 渡部一郎

    渡部(一)委員 今の大臣の御発言は、まさに画期的な三重丸をつけていいようなすばらしい御発言でございまして、こういうのが日中友好を実質的に進め、日本の企業を発展せしめるすばらしい発言なんです。さすがに嘱望される方だけのことはあると私は思う。本当に高く高く評価したいと思います。私のこの評価を絶望させないように、今後の実質的な御発展をぜひぜひお願いしたいと思うわけでございます。きょう、そんなに大臣が積極的におっしゃると後質問がなくなるぐらいでございますが、通産省の方にお見えいただいておりますので、通産省の方にもちょっとお尋ねをしたいと存じます。  現在の対中国貿易投資の現状というのはどうなっておるか、また現在のトラブルに対して貿易投資を円滑に進ませるためにどうしたらいいか、通産省の御方針、そんなところをまずお尋ねしたいと思います。
  113. 久禮彦治

    久禮説明員 中国と日本の貿易につきましては、一九七二年の国交回復、正常化以来、ほぼ順調に発展してまいっておりまして、昨年の日本から中国への輸出は四十九億ドル、輸入が五十一億ドルと、往復でちょうど百億ドルになっております。これに比べまして投資の方は、今までの中国の条件が非常に厳し過ぎたことが大きな原因かと思いますけれども、それほど進展しておりませんで、ことしの六月末の中国の認可ベースで十二件程度であろうかというふうに把握しております。  いろいろトラブルがあってどう考えておるかという御質問でございますが、御承知のとおり、貿易につきましても投資につきましても、この主役をなすのは民間企業でございます。民間企業が貿易、投資を行う際に、中国との関係においていろいろと困ったこと、不満があることも事実でございます。今までお話に出ておりますように、法律が未整備であるとか、また交渉相手が不明確であるとか、非常に複雑多肢にわたり時間がかかり過ぎるとか、それから条件が厳し過ぎるとか、特に技術につきまして評価を十分にしてくれないといったような不満を私どもも聞いておるところでございます。私どもといたしましても中国側に、なお投資を進めるためには一般的にこういう不満があることを承知してもらいたい、もっと条件日本側の企業が投資しやすいような環境に画していただきたいということは、要望しているところでございます。  なお、日本の企業にも一言お願いしたいのでありますけれども、中国はどうも個々の商売におきましては非常にシビアな国であると言われておりますので、潜在的なマーケットとして尊重されるのは当然でございますけれども、そういう点、個別の商売におきましては非常に冷静で実務的な対応をしていく方が、結局のところ、長い目で見てお互いにうまくいくのではないかというふうに考えております。
  114. 渡部一郎

    渡部(一)委員 通産省の方にまた伺いますが、我が国企業にとりましても、中国に対して貿易、投資を行う場合に情報が不足だとか、そうしたことが中心になって非常にトラブルを生じているというケースが多くあると聞いておるわけでございますが、本省としても、民間企業に対して情報の提供、アドバイスを行ったり、相談窓口を設けたりすることをもう少し積極的に行うべきではないか。どういうお考えでやっておられるか、その辺を伺いたいと思います。
  115. 久禮彦治

    久禮説明員 御指摘の点は確かに事実でございまして、中国自身が開放経済体制に入ったのがまだ最近でございますし、また、その条件等もどんどんと変わっていっているというようなことがございまして、的確な情報を中小企業の方々まで十分に流通させるということはなかなか難しい点がございます。私どもは通産省で中国を担当しておりますので、北アジア課に御相談いただければ専門機関を御紹介したり、また一般的な情報につきましては私ども自身がお答えできると思います。  また、民間で専門機関と言えますのは、例えば私どもが所管しております財団法人の日中経済協会の中にはことし四月から合作・合弁相談室というものを設けておりまして、ジョイントベンチャーに関する一般的な情報また個別の相談にあずかっております。日中経済協会は関西に支部がございますので、関西の方はそちらにお伺いいただければと思います。  また、貿易問題につきましては、一般的にジェトロが中国室というものを抱えておりまして、情報を整備しております。ジェトロは、地方に二十八の貿易情報センターがございますので、そちらにお伺いいただければと思います。  それから、一般的な制度、金融、税制といったような問題につきましては、アジア経済研究所においてもお答えできるかと思います。  それから、金融問題でございますと、輸銀とか経済協力基金とか財団法人の海外貿易開発協会におきまして一定の情報を蓄積しておりまして、既に御相談に応じておるような状況でございます。  また、中国自身、国際信託投資公司という組織がございまして、日本日本事務所というものを抱えております。直接連絡いただいてもよろしゅうございますし、また最初に御紹介いたしました財団法人の日中経済協会が提携をしておりますので、こちらを通じてでも御相談いただけるかと思います。  それから一般的に、日本の大きな商社、大きな銀行、これらはほとんどが中国に専門家を派遣したり情報を蓄積したりしておりまして、ある意味ではこういう方々も、先生御指摘の情報の流通とかコンサルタント的な役割を期待できるのではないかと思っております。     〔石川委員長代理退席、委員長着席〕
  116. 渡部一郎

    渡部(一)委員 なお、日本の各地に存在する商工会議所、こうしたものは中小企業庁の所管と承っておりますが、本省からも御指示をいただきたいと実は思っております。既に商工会議所を中心として対中接触を開始しているところもありますし、これらのところでは意外にノーハウ、実績、ニュース等が少なくて、困惑しているやに見えるわけでございます。日本の中小企業が生な形で対外的に進出をして問題が相談されてくるというのは、商工会議所始まって以来のケースだと思いますし、こうしたことにも御指導いただけないか。また、国貿促などを初めとする日本の有志民間人の組織も、非常に大きなノーハウを積み上げられているところでございますから、こうしたところとも連携をしていただきたいと重ねて思うのでございますが、いかがでございますか。
  117. 久禮彦治

    久禮説明員 御指摘の点につきましては、日本商工会議所についてまずお答えいたしますけれども、この組織に対しましては、先月中国の張勁大国家経済委員会の主任、これは大臣でございますが、五島会頭を表敬訪問されました際に、商工会議の中に中小企業を主たる対象といたしまして対中国投資の相談窓口をつくってほしいという要望をいたしまして、会頭の方から、ことしじゅうにそういう窓口をつくりたいということをお答えになったというふうに聞いております。現在、準備中であるようでございます。  なお、先生御指摘のその他さまざま専門機関がございますので、これらも総合的に力を発揮していくようにしたいと思います。
  118. 渡部一郎

    渡部(一)委員 先ほど外務大臣がお答えになったところでございますが、我が国の民間企業が一つずつ中国との間で貿易、投資についてぶつかっておるいろいろな壁のような諸制度あるいは問題点に対して、外務大臣は関係省庁とも協力して、何らかの交渉、何らかの取り決めをすることによって、こうした問題の突破口を見出したいというまとめをしていただきましたけれども、通産省としても積極的に中国側に改善を求め、各省庁とももちろん御相談してこうしたことに取り組んでいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  119. 久禮彦治

    久禮説明員 日中の貿易も、百億ドルを超えてまいりまして三けたの時代に入っているわけでございますから、もうきれいごとではなかなか進まないと思います。御指摘のとおり、率直にお互いに問題点を指摘し合って、長期的な発展を願っていくということがあるべき姿ではないかと思います。  私どもも今まで、高級事務レベル会議とか向こうの大臣を招待いたしましたときとかあらゆる機会を通じまして、また投資環境調査団を派遣してその成果についてこちらから発表するとかいうような機会を通じまして、さまざまなことを指摘し、要望してまいったわけでございますが、きょうたまたま外務大臣からもそういう方針を伺いまして、私どもといたしましても外務省相談しながら、今後とも十分に日本側から見た問題点を先方にぶつけていきたいと思っております。
  120. 渡部一郎

    渡部(一)委員 大臣、私は途中で申し上げようと思ったのですけれども、ここの手に持っているのは、東京コスモス電機が入札したたった一冊の書類であります。これは完成された書類であります。厚みが約一寸ございます。何も厚みと目方でおどかそうというつもりでは毛頭ございませんけれども、こういうものが三十冊も四十冊もつくられた。そしてその会社に、今やニメートルにも上るような資料の山が積み上げてある。全部むなしい結論に終わったというその思いが底からこみ上げてくる。気をつけなければいけないのは、日本の企業は、立場の違いは多少はあるとしても、日中友好に伝統的に非常に熱心である。しかし、こういうものが全部、しくじったな、そしてこの中のノーハウは取られちゃったなという気持ちで、これをむなしい気持ちで見なければならない。そう見詰めておられる書類をちょっと預かってきて、お見せしようと私は思ったのです。  それは、大企業は自分で処理することができるけれども、中小企業に与えた影響は、そういう日本国民の世論の背景を揺るがすものになりかねない。そして、日本がせっかく日中間の正常化をなし遂げて、極東における安定と平和について一つのプリンシプルができ上がりつつあるとき、非常に危険な様相を呈するのではないかと思うわけであります。  先ほども仰せになったことでございますが、今後も御努力をいただきまして、日本国民が日中間の貿易について、これはいいぞ、なかなかいいなという感じを持ってそれを評価できるような時代をつくっていただけないかな。それは、中国側にとってもそうであるかもしれないけれども日本国民側のこうした感情というものが日中間を太綱にしていく、平和と安定をさらに強固なものにしていくことになろうかと思うのです。先ほど、せっかくの御発言もあったことでございますので、特に重ねてこの問題についてお計らいをいただきたいと思うのでございますが、最後に一言お願いしたいと思います。
  121. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いろいろと御指摘がございましたことは、まさにこれから日中関係を考える場合に注意しなければならない眼目であろうと思います。日中関係を発展させなければなりませんし、日本としても経済的な面で官民にわたっての協力体制をつくっていかなければならぬわけですが、しかし、そのためにも日中でお互いに言うべきことはきちっと言っていろいろな壁を突き破って、そして将来にわたって非常に円満に交流が進むような体制に持っていかなければならぬ。政府としましても、先ほどから通産省からも答弁しておりましたように、こうした問題につきましては、今後とも中国に対しましても積極的にひとついろいろな問題を指摘し、また中国側も言いたいことがあるでしょうから、これの解決のためにそういう点は率直に話し合いをして道を開いていきたい、こういうふうに思います。
  122. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それでは、中国との関係の貿易、投資に関する質問は、これで終わりにさせていただきたいと思います。  最後にアメリカとの関係で、合算課税の問題について伺いたいと存じます。  ユニタリータックス、日本語で言う合算課税につきましては、日米間の貿易交渉の最大のテーマと最近はなったように聞いているわけでございますが、最近の新聞報道によりますと、オレゴン州においてようやく合算課税を見直そうという話が生じたかのごとくでございます。現在の交渉の進展状況、この合算課税を運用しているところの州、そしてそれらの実態等につきまして、残りの時間でお尋ねをしたいと思うわけでございます。  まず、現状はどうなっているか、そしてこれについての交渉の進捗状況はどうか、その辺のところをお尋ねしたいと存じます。
  123. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 現在合算課税を実施しております州は十二州に上るわけでございますが、政府といたしましては昨年以来特に力を入れまして、これの撤廃を連邦レベル及び州レベルにおいて働きかけてきたわけでございます。その結果、今先生御指摘のように、オレゴン州においては非常に望ましい働きがございまして、一昨日オレゴン州の特別議会におきまして、従来から審議しておりました州の税法改正案の審議で、圧倒的な多数をもちまして新しい税法ができたわけでございまして、これによって合算課税は廃止されるということになりました。この具体的な実施は明後年の一月からでございます。  今のところ、こういう法律が成立したのはオレゴン州だけでございますが、フロリダとかカリフォルニアそれからインディアナといったような州におきまして似たような動きがございます。したがいまして政府といたしましては、先般経団連からもこの件に関するミッションが出ておりますけれども、官民一緒になりましてアメリカの連邦、州レベルで引き続き強く働きかけていきたい、こういうふうに考えております。
  124. 渡部一郎

    渡部(一)委員 この問題につきましては、目下強力に働きかけをせられているところとは存じますけれども、こういう問題についてはやはり何回も何回も交渉されることが必要だと存じます。大臣におかれましても、日米間の重要な課題として引き続き積極的に推進していただくよう、お願いしたいと存じます。
  125. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ユニタリータックスはまさに保護的な措置でありまして、これがもし拡大するようなことになりますれば日米間の、特に日本からの投資、合弁というようなものに大きくブレーキがかかっていくわけでございますし、今いろいろとアメリカの中央政府におきましても、レーガン大統領初めリーガン財務長官等が努力をしておりますし、また各州も今お話しのような努力をして、カリフォルニア州でもこれからいよいよ審議が始まるというふうに聞いておりますが、日本としてもやはりユニタリータックスの撤廃のために、これからアメリカ側にはあらゆる機会を通じまして積極的に働きかけてまいりたい、こういうふうに思います。
  126. 渡部一郎

    渡部(一)委員 私はこの際、最後に提案だけ申し上げて質問を終わりたいと思いますが、アメリカ側における各州というのは日本の県とは大変に違って、一つの国家としての気風を備えているのが特色であります。したがって、ワシントンにいる大使に訓令してこうした交渉をするというだけではなく、本省から直接移動大使、特派大使、あるいは通産省とも協力されて財政に明るい、そして英語でしゃべれる、彼らのハートをよくつかむことのできる人を派遣して、面接州議会あるいは州知事と交渉するということがあらねばいけないのではないか、むしろ中央政府から交渉するということは、彼らのプライドを傷つけたり、あるいは余計なせんさくをさせる可能性が極めて高いのではないかという感じを私はひどく受けたわけであります。  それは十数年前、自動車の問題で非常に大きな騒動が起こった際に、私がゴールドウォーターさんという方に向こうでお会いいたしました際、彼が開口一番、トヨタ自動車はすばらしい、トヨタ自動車はワンダフル、修繕が一番早い、料金は格安と大演説をされる。どうしてなのかと思いましたら、彼の選挙区において、日本の有力な退職された外交官と個人的な関係がおありになった。また、その地域において同社との間で個人的な顧問契約が結ばれておって、当人は大変元気よく日本の一企業のために奮闘されて、その州だけ自動車の輸入禁止などということについてはオミットするような行動までとっておられて、非常に効果が上がっておった。  私はそれを見まして、向こうからいえば規模は日本国と同じようなものでございますから、相当巨大な州でございますし、軍隊まで持っているのがアメリカの州でございますから、国家的に交渉するというのではなくて、その州に対して直接働きかけるという面をこの際強化していただくということも、またアメリカ外交のある局面を開くという意味で非常に効果的なのではないか。  私は、大使が一人でカバーし切れないなと思う国が世界じゅうで何カ所かあるわけでございますが、アメリカは確かに大使一人でカバーさせるには大き過ぎ、そして力もあり過ぎる。この意味では、数人の大使が組んでやるような形もとらなければいけないんじゃないかとふだん思っているわけでございますが、この際、数人の特派大使とかその他のそうしたルールをアメリカ大陸に対してはとられるということも、またあわせて御考慮をいただくといかがか、提案を含めて私の質問の終わりとさせていただきます。
  127. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 確かにおっしゃるようにアメリカの行政機構からいいますと、ただワシントンだけに行って問題が片づくわけではありませんし、やはり各州の権限は強大ですから、特にユニタリータックス等については、各州にいろいろと直接アプローチする必要がある。これは政府も、もちろん外務省もやらなければなりませんが、同時に民間の、今も盛田ミッションとか行っておりますけれども、そうした民間の努力というものにも期待もしたいと思いますし、また議会等も、国会なんかでもそうしたワシントンということでなくてやはり各州に時々行ってもらって、日本の実情あるいは話、意見交換していただくということは、大変な成果をこれまでも上げてきておるわけですから必要だと思います。  なお、外務省に限って言えば、大使だけではなかなかカバーできないという面がございまして、今お話しのようなもっと機動的に動ける体制というものが必要であろうと思いますし、いろいろと検討してみたいと思います。
  128. 渡部一郎

    渡部(一)委員 ありがとうございました。
  129. 中島源太郎

    中島委員長 次に、河村勝君。
  130. 河村勝

    ○河村委員 安倍外務大臣は、先ほども話が出ましたけれども、創造する外交ですか、創造的外交というのか知りませんが、というものを提唱されたそうでございます。何か総裁公選を若干意識されたような発言だそうでありますが、仮に意識されたとしても、動機はともかく、私は大変いいことだと思っております。日本がこれだけ経済大国になったんですから、政治、外交についていつまでも受け身でいるわけにはいかない。ですから、現在のようにいろんな種類の紛争や国際的な行き詰まりがありますから、それを打開するためにイニシアチブをとろうという行動は、私は非常によいことだと思います。  イラン・イラク戦争の調停は、事柄の性質上ちょっと難し過ぎるのと、ただ両方に友好関係を持つというだけではなかなかそううまくいかないので、これはなかなか実効が上がらないというのは仕方がないと思いますが、先般六月にジュネーブ軍縮会議で核実験停止についての一つの提案をなさった。それと、その後七月にASEANの拡大外相会議で、カンボジア問題についてこれまた一つの提案をなさったというのは、私は非常に高く評価をしております。  ただ、提案をしたから、格好よく花火のように打ち上げたらそれで終わりだというのでは何にもならないわけで、それが最終的にできるかできないかは別としましても、後トレースしていけるということでなければならぬと思います。それについては、私は二つ条件があると思うのです。一つは、そういう提案が受け入れられるだけの国際環境が、下地があるかどうか、そういう条件があるかどうか、もう一つは、日本がイニシアチブをとるために何らかの切り札、カード、そういうものがなければならないんだと思いますが、あなたはどうお考えになっていますか。
  131. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私も、一昨年の暮れに外務大臣になりまして一年九カ月やらしていただいておるわけでありますが、多くの世界の指導者に会い、また世界各国を回りまして痛切に思うのは、やはり日本発言権が非常に強くなってきておる、日本の存在が非常に重くなってきております。それだけに、また日本の国際的役割も重くなってきたと思うわけであります。やはり日本としては、これから国際場裏においてそうした役割を積極的に果たしていく、特に世界の平和に対して果たしていくということが必要ではないだろうかということを痛感をしておるわけであります。そうしてまた、これは今の世界情勢から見ますと、なかなかアメリカではできないあるいはソ連でもできないというふうな役割が平和に関してある、こういうふうに思っております。そういうところにやはり目を向けて積極的に進めていく、これを称して創造的外交と言っておるわけですが、やらなければならないと思っておるわけであります。  そういう中で、例えば先ほどお話しのような軍縮問題につきましても、これまで日本は、核軍縮についてはいわゆる核実験の全面禁止だけをうたい上げておりました。これは、なかなか諸外国がこれに具体的に乗ってこないという面がございました。外務省相談をいたしまして、今度初めて軍縮会議に出まして、そうしてステップ・バイ・ステップの方式で、最終的には全面的な核実験禁止ですが、やはりそこに至る過程で具体的に可能性のある方策を打ち出して、これを演説をしたわけでございます。それはそれなりに私は、各国の評価を得たと思っております。今いろいろと日本の提案をめぐりまして委員会をつくるかどうか検討が進められておる、こういうふうに聞いております。  あるいはまた、カンボジア問題につきましても三項目の提案をいたしたわけでございますが、これはASEAN諸国の支持だけではなくて、ベトナムも場合によってはこれを評価する可能性もあるのではないか、そういう判断のもとにこの提案をいたした次第でございます。これからの問題であろうと思うわけでございますが、これはやはり日本世界の中で、我々日本人が考えている以上に相当大きい存在になっているので、その存在というもの、これはもちろん経済的な力がそのバックにあるわけでございましょうし、あるいはまた、日本がある意味においては軍事大国にならない、そうして政治的な野心も持たない、そういうところに日本一つの役割というものが期待をされておる、こういう面もあるんじゃないかと私は思うわけです。やはりそれなりの日本のバーゲニングパワーを活用して、世界平和のために何らかの役割を果たしていく必要があるということを痛感し、そのための努力を重ねてまいりたい、こういうふうに思っております。
  132. 河村勝

    ○河村委員 この核実験停止の方の外務大臣の提案を受けて、七月二十六日に今井大使が、同様軍縮委員会において外務大臣の提案を具体化をする一つとして作業文書を提案をして、それで核実験禁止の作業部会を設置するという提案をなさったそうでございますが、一体その推移はどうなっておりますか。
  133. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 先ほど大臣から御答弁ございましたように、核実験の全面禁止に至る筋道の一つの過程として、ステップ・バイ・ステップ方式を御提案いただいたわけでございますが、それを軍縮会議の枠内で議論をいたしまして何とか実現したい、こういうのが私どもの希望でございまして、今開かれております軍縮委員会の中に、本年はいまだ核実験禁止に関する作業部会が設置されておりませんが、それを早急に設置すること、その設置された作業部会の枠内におきまして、今先生お話ございましたように、我が方の提案を審議する場を設けてほしい、その場におきましては、我が方の考えといたしましては、現在の多国間の検証能力で検証できる段階というものをまず検討し、その後、多国間の検証能力をもっと高める方法を検討する、さらにこの全過程について今後どのように検討していったらいいかというふうなものを恒常的に審議を続けられるようなメカニズムと申しますか、場も欲しい、そういう提案をいたしました。現在のところ、例えばベルギーでございますとかイタリー、西独、オーストラリア等から、非常に関心がある提案であるという反応が寄せられております。
  134. 河村勝

    ○河村委員 外務大臣は、あなたの演説の中で、今話の出た検証能力向上のために、我が国の持つ高度の地震探知技術を提供する用意があるということを述べておられます。私は、これが一つのカードだろうと思うのですが、日本の地震探知技術によって核爆発の探知能力、一体何キロトンまでならわかるとかいう能力をあなたは御存じですか。
  135. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 先生御指摘のように、我が国の地震探知技術は非常に発達いたしておりますので、軍縮会議におきましても、従来から地震専門家アドホックグループというのがございますが、そこに専門家を送っていろいろ貢献いたしておるわけでございます。核実験の探知につきましては、日本の地震探知網は本来自然の地震用に向けられたものでございますので、日本一国のみではできませんで、やはり各国の協力が必要でございます。そういう探知網が世界じゅうに張りめぐらされる必要があるわけでございますが、今先生のどの程度までわかるかという御質問、非常に一般的に申し上げますと、大体十キロトンから二十キロトン程度の爆発を探知することができる能力になっております。ただ、これは一般的に申しました場合でございまして、現実に爆発が起こりましたときに、その核実験が行われました場所の地質でございますとか、その実験のやり方とかいろいろなことが十分わかりませんと、正確にキロトン数を確定するわけにはまいりません。
  136. 河村勝

    ○河村委員 今井大使が発言をされたその一番最後に、地震探知ネットワーク改善のため具体的にいかなる措置が必要かにつき、我が国はもう一つの作業文書を提出することを検討中であるということを述べておりますが、これは一体何を言っているのですか。
  137. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 お答え申し上げます。  先ほど少し触れさせていただきました軍縮会議の中での地震専門家アドホックグループというのがございまして、多国間の地震探知網のネットワークをつくり上げることによりまして探知の能力を高めること、それからその多国間のネットワーク間の連動を高めること、そういう検討をいたしておるわけでございますが、そういう関係の審議に貢献できるような技術的な部門の我が方の知識と申しますか、それを現在気象庁の方と相談させていただいておりまして、近い将来技術的な作業文書を提出したい、このように考えております。
  138. 河村勝

    ○河村委員 まだ始まったばかりですが、これはもし成功すれば非常に意味のあることになりますから、私ももう少し見守っていきたいと思います。大いに努力をしていただきたいと思います。  カンボジア問題の方ですけれども、私は安倍外務大臣発言された中身を見ました。そうしますと、言っておられることがもう少し具体的な、あるいは日本として何をやるかという提案があるかと思ったのですけれども、昨年九月のASEAN外相共同アピールを評価している、そのアピールの実現のために協力しているとは書いてございますが、その中身を見ますと、ただタイ・カンボジア国境地帯からのベトナム軍の部分的撤退をした場合に、そこに平和維持部隊を投入したらその経費は負担をします、それから、その部分で選挙をやればその監視要員を派遣したり輸送手段を提供します、それから、平和になったら大いに経済交流に努力します。専ら金の方だけで、これをどう持っていこうという発想がないのが大変物足りないのですね。  日本は、戦後の経済復興をやり得る非常に大きな力を持っていますから、これが一つのカードであることは間違いありませんが、同時に中国とも話し得る体制にある。今、一体現実にカンボジアの情勢というものが、クメール三派の勢力、ポル・ポト、ソン・サン、シアヌーク、それとベトナム軍との間の力のバランスがどうなっておって、そしてこのままもしベトナム軍が撤退したらヘン・サムリン軍はすぐ崩壊するであろうというふうに言われておりますが、そろそろベトナムの方も相当経済的負担机が大きくてつらい思いをしている。ですから、もしこの際中国が、ソ連もありますけれども、特に中国がこの話に乗る可能性があれば極めて具体的な前進が可能になるのですね。その辺を一体外務大臣はどうお考えになっていますか。
  139. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 カンボジア問題に対しましては、日本の基本方針としては、やはりカンボジアにあくまでも自主独立政権ができる、それからベトナム軍隊が撤兵するということでありますし、そうした立場でASEANを支持し、また三派を支持しておるわけでございますが、ただ支持しているだけではいかぬ、やはり平和を具体的に進める上において何らか日本が役割を果たす時代が来たということで、実はこの三項目の提案をしたわけであります。しかし、日本が仲介とか調停に入る立場じゃない。これはASEAN諸国も、日本がそこまで踏み込んで出ていくということに対してはやはり警戒的だと私は思います。したがって、むしろASEANの努力にさらに推進力をつける、こういう役割が日本の役制じゃないか。  そういうことで、ASEANの外相が去年の秋会合をして出したアピールというのが、我々が見ておりましても、部分撤退それから平和維持部隊の導入さらにまた全面撤兵というところに段階的にいく一つの具体的な、現実的な平和回復の道筋につながるんじゃないか、こういうふうに判断もしましたし、またこのASEAN外相のアピールに対してベトナムが拒否していない、ノーと言っていないというところにみそがあるわけで、ベトナムもこのASEANのアピールに対しては、別に肯定はしていませんけれども否定もしてないというところに、ベトナムにとっての何かの可能性も見込まれるのじゃないかということで、それならこれはアピールに推進力をつけるということで、実は三項目を提案をしたわけであります。  これは、提案したときはASEANの諸国も相当評価をしましたし、アメリカのシュルツ国務長官も、日本がこれは最後までやるとなると大変物入りな話ですねと言われたわけでありまして、これが実行されるということになれば日本も相当腰を据えた協力をしなければならぬわけでございます。しかし、私は、やはり平和のためにはそれだけの協力はすることも当然じゃないか、こういうふうに思ってそうした提案をしたわけでございますが、今のところは中国はこれに対して、日本がこれを通知しましたときはその通知に対しては感謝をし、日本のこの努力は評価する、こういう立場でございます。ベトナムの方は、わざわざ知らしてくれたということに対しては感謝するということでございまして、それ以上のコメントが出ておりません。  ただベトナムの新聞では、平和を金で買うつもりかというようなむしろ拒否的な反応が出ておりますが、しかし私のキャッチした範囲内では、ベトナムの政府の感触はもっと違っておるのじゃないかというふうな感じも持っておるわけで、この提案が最終的にどうなりますか。この提案というのは、ASEAN外相のアピールが前提でこの提案ですが、これがどういうふうに受け入れられるか。これからがそろそろ雨季で、政治の舞台に入っていきますから、そしてまた国連総会もありますし、いろいろと動きが出てくるのじゃないか、そういうふうに思いますし、日本もそういう中でこれを具体的に提案したわけですから、この問題に対しまして積極的に動いてみたい。これはASEANとの関係だけじゃなくてベトナムとの関係、中国との関係においても動いてみたい、こういうふうに思っておるわけであります。
  140. 河村勝

    ○河村委員 日本が直接に動くのはASEAN側の警戒があるというお話でしたけれども、ASEANもなかなか微妙で、タイ、マレーシアとインドネシアとではかなり意見の開きもあって、ASEAN内部だけでもってまとめていくというのは骨なんですね。ですから私は、実際は日本の動きを期待していると思うし、中国も、先般日中民間人会議等がありまして私も参りまして、安全保障問題の分科会でこの問題を取り上げて議論をいたしましたけれども、ポル・ポト軍の撤退という言葉を使いますと非常に強い拒否反応があるのです。ですけれども自分たちはポル・ポト派を応援しているのじゃなくて、シアヌーク、ソン・サン、それからポル・ポト派ひっくるめた民主カンボジア政府を我々は支持しているのだということを非常に強調するわけですね。同時に、非同盟中立の国をカンボジアにつくり上げる、それについては全く異存がないわけですね。  ちょっと時間が短いので、途中はしょるものですからわかりにくいかもしれませんが、段階的なベトナム軍の撤退、同時にクメール三派の軍隊をなくして自由選挙をやってその結果に従う。結果が非同盟中立の国になるのが望ましいということについては、大体変わらないわけですね。ですから、私は十分に可能性があると思うのですよ。ですから、日本がもうちょっと積極的に出る必要があるし、ベトナム自身も、今の経済状況から見れば、このままいったらもうタイ、マレーシアと格段の相違のある、一番貧乏な国になってしまう可能性もあるわけですからね。私は、今非常によい条件が熟しつつあるというふうに思うわけです。ですから、ぜひこの点、そう憶病にならずに積極的に出てほしいと思うのですが、いかがですか。
  141. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本も平和回復のためには、積極的に動くべきところは動かなければならぬと思いますが、ASEANとの関係も非常に緊密な連絡をとっておりますし、ASEANを支持しているわけですが、微妙な問題もあるわけでございますし、そういう点もやはり心がけなければならぬと思います。  それから、問題はやはりベトナムだと思うのです。ベトナムの背後には御存じのようにソ連もあるわけで、ベトナムと中国が対決をしている。中国の方はある程度ASEAN、それから三派と同じ考え方で進んでいくわけですから、比較的話がしやすいわけですが、ベトナムをどういうふうに説得するかというところに問題もあると思うわけでございますし、そしていろいろと、シアヌークさんがこの前日本に来ましたときに、ただ三派だけで政府をつくるということじゃなくて、もっとヘン・サムリンも入れた若い政府というものから出発した方がいいのじゃないか、ベトナムを全く無視してカンボジアが独立するなんということは考えられないというのがシアヌークさんの考え方でございましたし……。しかし、そこまでASEANの考え方はいっておりません。その辺をどういうふうにするか。  インドネシアは、御承知のようにスハルトさんがむしろシアヌークさんと同じような考え方を示したことは御案内のとおりでございますから、その辺のところを、全体的に見て動きが相当出ておると思いますので、日本としましても三つの項目を提案しました以上は、そうした動きを十分とらえながらこれからの外交努力を積極的にやってみたい。特に、ベトナムとの間も日本は関係が切れておりませんから、正式な外交関係があるわけで、大使も置いておりますし、ですから、外交政策としては三派を支持しASEANを支持しておりますが、ベトナムともそういう正常な関係を持っておりますから、我々はそういう面も、この際やはり日本の独自な動きとしてある程度のことができる可能性はあるのじゃないか、このように思って、せっかく努力をする考えでございます。
  142. 河村勝

    ○河村委員 もちろん、ベトナムを無視してできる話じゃなくて、ベトナムの安全保障というのは後の一番大きな問題だと思いますが、きょうは時間がございませんのでこの問題はこれで打ち切りたいと思いますが、ぜひとも努力をしていただきたいと思います。  二、三、最近起こった具体的な問題について、かいつまんで御質問いたします。  二カ月ばかり前に、国際捕鯨委員会に臨むに当たって、もうだんだんと捕鯨の枠が小さくなって、IWCのこれまでの経緯から見ると今度もまた大削減されてどうにもならなくなるのじゃないかということを申し上げて、外務省としての努力をお願いをいたしましたが、結果は、残念ながら南半球のミンククジラの捕鯨粋前年対比三六・五%削減ですね。もうほとんど一船団も成り立たなくなるような状況に相なっております。  ここまで来たらきれいごとを言っていてもだめでございますから、現実に国際捕鯨委員会の構成メンバーというのが、これはもう外務大臣も御承知のように、本当に科学的な検討がなされるような雰囲気ではなくて、小さい、名も知らないような国が、その国の代表とも思われない外国人を代表に送って、多数で、ただ鯨がかわいそうというグループの後押しをして、それでだんだん日本を、ソ連もそうでありますけれども、つぶしにかかるという格好でありますから、この辺でとにかく、全面禁止に対する異議の申し立ては既にやっておりますけれども、この削減決定に対しても異議申し立てをして、それでフリーハンドをまず持つということがこの際とりあえずとるべき手段ではないかと思いますが、いかがお考えですか。
  143. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私も、このIWCの決定は非常に残念だと思います。反捕鯨国の圧力で我が国等の捕鯨国の利益が完全に無視されたということで、極めて遺憾であると思います。また、鯨資源の保存と合理的利用を目的とする国際機関であるところのIWCの機能についても、疑問を持たざるを得ないわけであります。  政府は、国際間の問題は一定のルールに基づく秩序のある解決が図られるべきであるとの基本的立場から、今後ともIWCの正常化につきましてこれまで以上に粘り強い外交を展開していくとともに、今次のIWC決定は我が国捕鯨産業の存続を危うくするものであることにもかんがみまして、米国を初めとする諸外国の理解を得ながら、同決定に対する対応策を、異議申し立ての可能性を含めて慎重に検討していく考えでございます。場合によっては、これは異議申し立てもやらざるを得ないということも踏まえながら、検討してまいりたいと思います。
  144. 河村勝

    ○河村委員 きょう、水産庁から来ていただいていると思いますが、ちょうどけさの新聞を見たら、捕鯨問題検討会という水産庁長官の私的諮問機関で、もう商業捕鯨はあきらめて調査捕鯨に転換をする、調査に必要な鯨だけとって、それはまた同時に、とった鯨は売ったり買ったりするし食べもするというような、ちょっと意図不明のような答申が出ております。今、異議申し立てぐらいやって、少しフリーハンドを持って頑張らなければ打開できないような時期に、何か文面だけを見ると、もうあきらめましたという感じのものが出てきておりますが、これは一体どうするつもりでございますか。
  145. 中島圭一

    中島説明員 お答え申し上げます。  捕鯨問題検討会につきましては、これは実は昨年十月に水産庁長官の委嘱を受けまして、今後の我が国捕鯨のあり方につきまして、捕鯨問題は非常に広範な問題を含んでおりますので、幅広い観点から検討を行うということで、各界の有識者にお集まりいただきまして設置されたものでございます。その後七回にわたる会合を経まして、「我が国捕鯨の今後のあり方について」という報告書が取りまとめられまして、昨日長官に対して報告が行われたわけであります。  この報告書におきましては、IWCによります商業捕鯨モラトリアムの決定が科学的根拠を欠く等条約上の正当性がないこと、あるいは我が国におきます捕鯨、特に我が国国民にとりまして非常に長い歴史を有しております食習慣とか、特定地域社会及び関係者に対する捕鯨の重要性とか資源調査の必要性というようなことから、捕鯨をやめる理由はないとしまして、政府に対して捕鯨存続のための一層の努力を求めているわけであります。  ただし、商業捕鯨禁止を求めている国が非常に多数を占めているという現状、それから米国が我が国に対しまして、北洋におきます米国の二百海里水域内の漁獲割り当ての問題と捕鯨問題をリンクさせまして、強硬な態度で迫っているというような厳しい国際環境にかんがみまして、モラトリアム発効後の捕鯨の存続のための方策としまして、一つは、南氷洋捕鯨につきましては資源調査を目的とする科学的な調査捕鯨活動を実施する、そういうことで関係国の理解を求めるということ、それから沿岸捕鯨につきましては、社会的、経済的、文化的にも地域住民の生活に必要不可欠なものであるという点につきまして関係国の理解を求めていくということ、こういう捕鯨存続のための方策を検討するように提言しているわけでございます。  私どもとしましては、この報告は、現在の非常に厳しい国際環境のもとにおきまして、今後の方策についての一つの貴重な示唆をいただいたものというふうに考えられるわけでございます。今後十分これを参考とさせていただきまして、特に関係の深い米国あるいはその他主要関係国との協議を通じまして、我が国の南氷洋また沿岸捕鯨のいずれにつきましても何らかの形で捕鯨が存続し得るように、最善の努力を払いたいというふうに考えているところでございます。
  146. 河村勝

    ○河村委員 そうすると、形は商業捕鯨はやめたということにはなっているけれども、こういうような形でアメリカとの折衝をやって、アメリカ自身もこのIWCの行き方については少しひど過ぎるじゃないかというような感じを持っているようでありますから、あるいは交渉は成り立つのかもしれないが、そうなれば、従来の実績ぐらいのものは調査のために捕獲をして、それを従来どおりの使用目的に向けることができる、そう考えているわけですか。
  147. 中島圭一

    中島説明員 私ども日本政府としましては、商業捕鯨モラトリアムにつきまして一昨年あったわけでございますが、これには我が国立場を留保するという観点で異議申し立てを行っているわけでありまして、この立場自体は現在も変更してないわけでございます。ただ、この報告にもございますように、北洋水域の問題とも絡みまして、また捕鯨問題が非常に感情的な問題にもなっているという点で、非常に困難な問題になっているわけでございますが、そういう中で、厳しい国際環境の中でともかく何らかの形で捕鯨の存続を図るということで最善の努力をしたいと思いまして、まず米国と十分協議をして、我が国立場について理解を求めるように強力な折衝をいたしたいというふうに思います。
  148. 河村勝

    ○河村委員 大事な駆け引きの上で難しい時期なんですから、ひとつ水産庁だけで独走しないで、外務省と十分連絡をとって、最善の措置をとってほしいとお願いをしておきます。  もう一つ、去る二十八日に第三十六八千代丸という漁船が北朝鮮の監視船によって拿捕されて、船長が射撃によってけがをしたという報道がなされておりましたが、けさの新聞を見ますと、その船長は死亡したということと、北朝鮮の軍事境界線内に入ってきたもので、停船を要求したけれども引き続き逃走したものだから、威嚇射撃をした後、この船を拿捕したという報道がなされております。現に、これは清津の港に抑留されているようでございますが、この情報は外務省は御存じでありますか。また、威嚇射撃というのは、本来目標に向けて撃つのが威嚇射撃ではなくて目標を外して撃つのが威嚇射撃ですね。非武装の漁船でありますから、これをねらって撃つというのは国際法的に見て明らかに違法だと思いますが、その辺一体外務省はどう考えてどう対処されようとしておられるか。国交がない国だから難しいところがあるけれども、どうなされるつもりか、伺いたいと思います。
  149. 後藤利雄

    ○後藤(利)政府委員 お答えいたします。  この三十六八千代丸の問題でございますが、先生今御指摘のように、二十八日の真夜中にどうも北朝鮮側の警備艇に銃撃、拿捕されたというニュースが入りまして以来、私どもも大変心配いたしまして、日本赤十字を通じまして事実関係の究明に努力をしてきたわけでございます。しかるところ、それに対する公式的な返答がないままに推移しまして、本日午前一時過ぎに、朝鮮赤十字会より日本赤十字に次のような入電があったわけでございます。報道されておりますけれども、ただいま御質問でもございましたので、一応朝鮮赤十字会発の日本赤十字社あての電報の要点、今の御質問関連する部分だけを取り上げつつ事実関係を申し上げます。  七月の二十八日午前零時十分ごろ、日常業務についておった朝鮮人民軍の海上警備隊が、北緯四十一度三十二分五秒、東経百三十一度二十一分の、先方の言うとおり申し上げますと、軍事境界線内に不法侵入した正体不明の船舶を発見した。そこでそれを取り締まろうとしたところ、海上警備艇の要求に応じないまま我が警備艇に衝突し、警備艇を損傷させる、これまた先方の言葉ですが、無礼な行為をした後逃亡しようとした。我が警備艇は、重ねて停船信号を同船舶に送り停船を要求したが、それに応ぜず逃亡を試み続けた。そこで、我が北朝鮮側の海上警備艇は自衛的措置として曳光弾をもって警告を発したが、同船は逃亡しようとしたため、我が警備艇が威嚇射撃した後拿捕した次第である。拿捕した後調査によると、それが日本漁船の第三十六八千代丸であったということが判明し、行泊船長は我が海上警備艇からの射撃により死亡した。船長が亡くなったことは遺憾である。同船は現在清津港に停泊中であり、ほかの乗組員は我が当局、北朝鮮側の人道的措置により元気である。必要な調査後しかるべき措置を講ずる。  こういうのが、先方が日赤にきょう午前一時ごろ発電してきました内容でございます。これにつきまして私どもといたしましては、本当にどういう状態であの事件が起きたのかという事実関係と申しましょうか、真相究明にまず努めることが第一かと思っております。この関連で、きょう午前六時過ぎに日本赤十字より改めまして朝鮮赤十字会に、遺体と乗務員が早期に帰国できるようにすることを含め、適切な人道措置を要請するという内容の電報を打ったというのが事実関係でございます。
  150. 河村勝

    ○河村委員 持ち時間がなくなりましたからこれで終わりますが、なおこの問題の今後の解決に努力をお願いいたします。  それと、一つだけ大臣にお願いしておきますが、最近イラン・イラク戦争のさなかで日本の船がペルシャ湾に依然として危険を冒して入っておるわけですね。カーグ島付近は参りませんけれども、イランの、攻撃する海域を通らないと入れないものですから、その危険な地域を冒してペルシャ湾に入っているわけです。ところが、どうも外務省の情報が遅くて不明確で非常に心細いことが多いという苦情が海員の仲間からあります。外務省も手がないところで大変かもしれないけれども、そういう危険地域が現に存して、外務省だけの力でなくて方々の力を寄せ合わせれば、商社とかその他を使ってやればかなりの正確な情報もとれるのでしょうから、ひとつ、危険を冒して石油をとるために行っている船員の人命のことを考えて、一段と外務省としての努力をお願いしたい、それをお願いをしておきます。  これで終わります。
  151. 中島源太郎

    中島委員長 次に、岡崎万寿秀君。
  152. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 私は、国会の請暇を得まして、七月の十六日から約十日間ニカラグアを中心に中米を訪問、視察してまいりました。その間、メキシコ、ニカラグア、コスタリカの日本大使館にはいろいろと御厄介になりましたし、また、大使その他の外交官の方のレクチャーなども受けました。私は、この目でつぶさに中米特にニカラグアを見まして、ここには明らかな、アメリカの独立宣言に反する国際的な不正義が存在するということを非常に実感してまいったわけです。そういう気持ちで帰りましたところ、安倍外務大臣創造的外交諭を展開されているということを聞きましたので、きょうは、その外交諭なるものが今のニカラグア情勢との関連でどういう中身を持つものか、率直にお伺いしたいと考えます。まずニカラグアの情勢でございますけれども、この秋の大統領選挙、共和党のレーガン、民主党のモンデール、このニカラグア問題は一つの重要な争点になっているわけです。明らかな情勢の評価の食い違いがあります。  御承知のように、今レーガン政権はニカラグアにさまざまな軍事干渉を加えていまして、昨年来カリブ海あるいは太平洋岸で、さらに地上におきましても軍事演習も行い、また、反政府ゲリラにはさまざまな支援を与えて軍事干渉を行っていることは国際的にもよく知られています。それから、いろいろな経済封鎖も一層その度を強めている状況なんです。それだけではなくて、ニカラグアの国家再建評議会のダニエル・オルテガ議長の記者会見によりますと、空母ケネディも今近海に追っているし、直接ニカラグアに対する空襲やあるいは海兵隊などによる攻撃の危険も強まっている。私は、中米の日本外交官にもこういう問題についても率直に聞きましたところ、やはり公算大という意見を複数の方から耳にいたしました。私は、非常に懸念しているわけでございます。     〔委員長退席、石川委員長代理着席〕 アメリカの経済誌のビジネスウイークによりましても、世論調査の結果ですが、今アメリカではレーガンの中米介入によって第二のベトナムになる危険性があるということを答えた人が、何と国民の六三%に上っているわけですね。  こういう緊迫した、そして非常に重大な情勢を迎えているニカラグア問題について、今政府、安倍外相はどういう認識をされているのか、最初に率直に御意見を聞かしてもらいたいと思います。
  153. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 実情につきましては局長から答弁させますが、ニカラグアは今不幸な内戦が続いておるということで、大変これらの中米全体の状況を悪くしておるというふうに思いますし、特にまた、この背後に米ソ両国の影も差しておるというような感じも率直に言ってしないわけでもありません。私は、この中米情勢が安定するということは、やはり世界平和のためにも極めて大事であろうと思います。そういう意味で、コンタドーラ・グループが決議案を出しておりますが、この決議案を日本は支持しておりまして、中米が、これはニカラグアだけではなくてエルサルバドルもそうですが、平和的に紛争が解決されるということを心から念願をしておるわけであります。
  154. 堂ノ脇光朗

    ○堂ノ脇政府委員 ただいま大臣から御説明申し上げたとおりでございまして、中米の情勢は、主として社会的不公正、経済的貧困ということから極めて不安定化しておるわけでございますが、その中にございまして、最近エルサルバドルでも大統領選挙がございましたし、また先生御指摘のとおりニカラグアでも、アメリカの大統領選挙の直前でございますけれども選挙をやるということ、他方、アメリカの国務長官もニカラグアに赴きまして、オルテガと会見する、そして平和的な解決の問題を話し合うということでございまして、このような傾向が続くことが好ましいわけでございます。そしてまた、このような傾向を助長するためにコンタドーラ諸国がいろいろな努力を行っておりまして、我が国としましても安倍大臣が、このコンタドーラ・グループの努力を支持するという声明を昨年七月に発表しているわけでございます。
  155. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 ニカラグア情勢につきまして、紛争問題を話し合いによって解決するというコンタドーラ・グループなどの姿勢は必要だと思いますし、それはレーガン大統領も言っていることなんですね。私は、今非常に緊迫した状況をかぎつけました。このニカラグアを、昨年のグレナダ侵攻のような事態にしてはいけないということを強く感じているわけです。  そこで、グレナダ問題に対する政府外交姿勢ですが、まだ当時でしたので、中曽根総理自身もアメリカのグレナダ介入については理解ができるというふうにも答えていましたし、我が党の野間議員の質問主意書に対して政府答弁書は、国際法上合法と認められるというふうに答弁を寄せられましたが、これは現在でも同じ見解なのかどうか、お伺いしたいと思います。
  156. 小和田恒

    小和田政府委員 従来から申し上げておりますように、グレナダへの米軍の出兵につきましては、その事実関係でございますとかそれを取り巻く状況でございますとかというようなことにつきまして、我が国は当事国でございませんので一〇〇%承知しているわけではないわけでございます。したがいまして、政府が従来から申し上げておりますのは、アメリカ側がその状況につきまして説明しているところ、それからその出兵の法律的な根拠について述べているところ、そういうものを前提にして判断いたしますれば、それはそれなりに理解できるところであるということを申し上げておるわけでございます。     〔石川委員長代理退席、委員長着席〕
  157. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 すべてがアメリカの言い分を前提にということなんですね。外務省はどこの国の外務省だと言いたくなるのですが、国連憲章の第二条四項、これは、すべての加盟国というのは武力による威嚇あるいは武力の行使をしてはいけないということをはっきり書いてあるわけなので、アメリカの行為は明らかな国連憲章違反だと思うのです。そういう姿勢を日本政府も持ってもらいたいというふうに思うわけなんです。アメリカ自身が、中米・カリブ海地域にいつまでも裏庭意識、勢力圏意識を持っている点がございまして、レーガン大統領が、自分の気に入らない政府がこの地域に生まれたから、ここに軍事干渉したり政府を転覆したりすることは、国際法上からも国際正義の上からも、許されない行為だというふうに思うのです。  イギリスのサッチャー首相自身も、十一月三十日でございましたか、レーガン大統領のこういう行為については公然と非難をしているわけです。新聞にも載っていましたが、西側諸国は共産独裁政権ができることを好まない。しかし、主権ある独立国で、我々が好まないことが起こったからといって、その国にずるずると入り込んでいって軍事力で干渉することはできない。私は、共産独裁政権というのは一つの評価でしょうし、それはそれとしましても、これは一つの民族自決権に対する容認する姿勢があると思うのです。日本外務省もこういう姿勢に立てないものですか。ちょっとグレナダ問題について、アメリカが言ったから、アメリカの言い分を聞くならば、それを前提にするならば理解できるという姿勢ではなくて、同じ西側の一員であったにしても、少なくともサッチャー首相のように、主権国に対する干渉は許されないことなんだ、自分の気に入らない政府だからといって干渉は許されない、こういう姿勢をはっきりとれませんか。
  158. 小和田恒

    小和田政府委員 先ほどの私の答弁につきまして若干誤解を生じたようでございますので、改めて誤解を解いていただきたいと思います。  私が申し上げておりますのは、アメリカがそう言っておりますので日本もそういうふうに判断しておるということを申し上げたわけではございません。私が申し上げましたのは、一番最初に断りましたように、これは何分日本が当事国ではない事態でございますし、私どもが正確に事実関係を把握しているわけではない、こういうことをお断りした上で、アメリカ側はそういうふうに説明をしておる、そこでアメリカ側の説明を前提とするならば、そういう考え方というものは法的には理解できるところであるということを申し上げたわけでございまして、内容については詳細を差し控えますけれどもアメリカが主張しております点は二つございまして、一つは、東カリブ海の諸国機構というものがございまして、それが出兵、援助というものをとることについて集団的な決定を行ったということが一つ。それからグレナダにおきましては、御承知のとおり首相が殺害されるという状況の中で大変な混乱が生じまして、法律的に申しますと、あそこに英国のクイーンを代表しておりますところの総督が法的な元首になるわけでございますけれども、その元首から援助の要請があった。したがいまして、主権国家の正統な政府を代表する法的な立場にありますところの元首が援助を要請したので、それに基づいて入った、こういうことでございますので、そういうことが事実でありますならば、正統政府の正式な援助要請に基づいて出兵することは、現在の国連憲章のもとにおいても十分認められていることでございますので、そうであるならば、それはそれなりに理解し得るところであるという法的な立場を申し上げたわけでございます。
  159. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 これはもうしばしば聞いていることでありまして、アメリカの言い分をここで繰り返されてもしようがないと思うのです。当事国でないという点ではイギリスも同じなんですよ。同じ当事国でないイギリスのサッチャー総理が、はっきりと民族自決権を容認する立場に立ってアメリカを非難しているわけですね。日本政府も、少なくともそのくらいの姿勢は、気概は持ってほしいというふうに要望しておきたいと思うのです。  それで、ニカラグアに対する機雷封鎖の問題にもさかのぼってみたいと思うのですが、私は、五月十一日の当委員会において、国際司法裁判所の判決、これはアメリカは機雷封鎖を撤去すべしという判決でございましたが、この問題について政府質問いたしました。安倍外相も、事実がはっきりしないという状況も言われましたし、それから一般的には懸念を表明しているということはしばしば答弁されているところでございましたが、しかし、この問題はもうはっきりしてまいりました。私も、中米の複数の外交官から、これはCIAがやったのです、CIAが機雷を運んで、アンチ・サンディニスタのゲリラがランチであちこち敷設したのだ、これは国際的にも自明のことだというふうにどなたもはっきり言っているのですね。アメリカの議会の中でもそういうふうになっているわけなんで、いつまでも事実がはっきりしない、そういうことで国際的な不正義を容認するようなことは、日本外交としても許されないというふうに思うのですね。  そういう点で、日本外務省当局としてあるいは安倍外務大臣としましても、今日の時点でこの問題をどう判断されているのか、はっきりした態度を述べていただきたいと思います。
  160. 堂ノ脇光朗

    ○堂ノ脇政府委員 お答えいたします。  ニカラグアの機雷封鎖に関しましては、機雷自体をいかなる状況のもとで、だれが、どのようにして設置したかといった点については、依然として明らかになっていないわけでございまして、ただいま先生がおっしゃいましたような報道とか、そういうことを言われる方もございますけれどもアメリカ政府自身はそのようなことは否定しているわけでございます。
  161. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 全く情けなくなりますね、そういう答弁は本当に情けないと思います。  安倍外務大臣は、四月二十五日の当委員会での答弁の中で、国連憲章に反することや国際正義に反することについては、日本としてはそれなりに対応するとおっしゃいました。これが前向きの答弁ならば非常に結構だと私は思いますが、同時にまた創造的外交論と言えば、これまでと違うという意味なんでしょう。そういう創造的な立場に立って、現在の世界政治の中で民族の自決権、国家主権の問題についてどう判断されるのか。  私は、グレナダの問題、ニカラグアの機雷封鎖の問題を述べました。余りアメリカをかばい過ぎることはないと思いますよ。はっきり是は是、非は非とするのが今の民主主義の立場だと思いますが、そういう見地から安倍外務大臣自身はどうお考えなのか、直接お聞きしたいと思います。
  162. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 それは確かに、アメリカがやっていることでも悪いことは悪い、いいことはいいと言わなければならぬと思います。例えば内政干渉というようなことは、どういう国がやっても悪いに決まっていますね。しかしグレナダの問題は、内政に介入した、主権に介入したという立場はあったとしても、国際的な約束事でやっておるというふうに理解をするわけです。アメリカの説明がそうである以上は、我々もこれは理解できると思います。またニカラグアにつきましても、本来あそこに内乱といいますか、そういうものが起こってきておるという状況にあるわけでございますし、アメリカ政府が直接介入しているとも私は思っておりません。ですから、この辺のところはもう少し実態がわからなければ判断のしようがないわけですね。これは、機雷の事件についても同じことであろうと思うわけであります。  いずれにしても私は、中南米のニカラグアにしてもエルサルバドルにしても、ああした内乱状態が続いておるということは極めて残念でありますし、こうした国の紛争が一日も早く平和的な話し合いで解決されることを念願しておるわけで、そのためにコンタドーラ・グループを支持しておる、こういうことでございます。
  163. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 今、大統領選挙をめぐってモンデール氏などは、ニカラグアヘの米軍を百日以内に撤退する必要があるというふうに主張していますし、これに対してレーガンの陣営は、レーガン自身がそうなんですが、ニカラグア政府というのはエルサルバドルを破壊する全体主義国家である、アメリカはそこの市民を援助する責任があるということなどを言っているように報道されているわけです。私も現地の外交官に聞きましたけれども、エルサルバドルに対してニカラグアが援助しているという物質的な証拠は何一つないんです。レーガンが言っているだけなんですね。そして、サンディニスタ政権というのは複数政党主義をとっていまして、十一月四日の総選挙では七つの政党が立候補して、自由な選挙をやろう、今のような非常事態の中でも国防に関すること以外においては言論、集会の自由を認めてやろうという方向をとっています。そして、何もソ連とかキューバの陰ではなくて、非同盟中立の政策を貫こうということを私は直接聞いてきたわけです。  こういうサンディニスタ政権、ニカラグアの人民政府に対して、いかなる口実を設けても軍事干渉する理由はないと思うのです。こういう事態に対して日本政府としましても、サッチャー首相ではありませんけれどもアメリカ外交が民族自決の立場からいってもちょっとおかしいんじゃないか、武力干渉はどういうことがあってもすべきじゃないということを率直に言うべきじゃないかと思います。安倍外務大臣、先ほど民族自決の問題についても触れていただけませんでしたので、それも含めて、日本外務大臣として、アメリカの民族自決を踏みにじるような武力干渉行為は同意できない、世界平和のためにもそうしないでほしいということをレーガンさんにもはっきり言うべきじゃないかと思いますが、どうでしょうか。
  164. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 民族自決というのは正しいことである、民族自決は支持されなければならぬと思います。そういう意味で、もちろん主権に対して介入するということは、国際法的に見ましても違反する行為であることは申すまでもないわけであります。ただ、今の中米の情勢がそうした割り切った解釈ができるかどうか、いろいろと問題をはらんでおるのではないか、こういうふうに思います。  一面においては、確かにアメリカの憂慮というものがいろいろな面に出ておることも事実でしょうが、また半面、キューバとかそういう国の動きというのも前面に出ているというふうなこともありまして、ただアメリカの主権干渉である、侵入である、主権を踏みにじる行為であるというふうに、一概には言い切れないものが私はあるように思うわけです。これは、あの周辺の国の考え方を聞いてみても大体そうです。ですから周辺の国は、むしろコンタドーラ・グループの決議によって話し合いでも解決ができるんだから、それをすべきだということを強く主張しておる、こういうふうに私は受け取っておるわけでございます。
  165. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 交渉による解決というのは必要だと思います。そしてまたニカラグア政府自身も、そのような対応で努力をしているわけなんです。しかし、交渉による解決という姿勢を捨ててもしアメリカが軍事介入をするならば、今外相が言われたように、はっきりした民族自決権に対する侵害だと思うのですね。そういう行為をすべきではないということを国際世論としても絶えず高めていく必要があると思うのです。  今のような軍事脅迫、そして直接介入の危険も懸念されている状況の中で、日本の外相としてどういう姿勢をおとりになるのか、まだちょっとすっきりしない点がありますけれども、その辺のところを、もうひとつ明快な態度をお願いしたいと思います。
  166. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 先般もシュルツ国務長官がニカラグアを訪問しまして、せっかくオルテガ執政委首席委員と会っていろいろと交渉をしておるということでございますから、こうした直接的なアメリカとニカラグアの交渉等が実る可能性も十分あるんじゃないか。さらに、コンタドーラ・グループの積極的な平和への努力というものも行われるわけでありまして、そういうものが今後実を結ぶことを私は期待いたしておるわけです。  ちょうど今もホンジュラスの外務大臣日本に来ておるわけでございますが、外務大臣の話を聞いてみましても、このニカラグア問題は、これからいろいろと平和攻勢を周辺の国として続けていくので、平和裏に解決する可能性はある、そのために最大の努力をしたいということを述べておりました。
  167. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 現地の日本外交たちは、アメリカとニカラグアの交渉なんというのは全く話にならぬと言っているのです。レーガンそのものがこういう聖域を認めないという立場に立っているのですから、この答弁というのはいただけないと思います。  時間がありませんから、先に進みます。  経済問題ですけれどもアメリカのポーリング博士などノーベル賞受賞者四人の呼びかけで、ノルウェーの貨物船ですけれども、ニカラグアへ平和と連帯の船を送る計画が進んでいまして、これにはノルウェー政府が二百三十万ドル、スウェーデン政府が三十五万ドルを供給、食糧や医療品、あるいは紙や肥料など送る計画が進んでいるそうでございますが、日本政府としても、人道的な見地からもこうしたニカラグア政府、人々に対して援助をする用意がないのかどうか、この辺ちょっとお聞きしたいと思います。
  168. 堂ノ脇光朗

    ○堂ノ脇政府委員 中米に対する我が国の経済援助でございますが、やはりこの地域の経済的なおくれというものが政治的な不安定化の大きな要因となっておりますので、そういう観点から、この地域の経済発展、民生向上等にこれまでも協力してきているわけでございまして、ニカラグアに対しましても、一昨年でございますか、人道的な見地から水害援助というものを行っております。
  169. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 水害援助は赤十字でやったのでしょう。事実を見ましてもニカラグアには、革命の起こった年、一九七九年には五百四十九万ドルの援助をしている。ところが、それから三年たった一九八二年には、二十八万ドルに著しく減少しているのですね。それから隣のホンジュラス、ここは御承知のようにレーガン戦略によってニカラグア干渉の拠点になっている国ですが、一九七九年には四百九万ドルだったのですが、八二年には六百四十五万ドルに増大しているのですよ。両国は、人口や面積、GNP、国民一人当たりのGNPがほぼ同じなんですね。何でこんな差別があるのか、これははっきり答弁してもらいたいと思うのです。
  170. 堂ノ脇光朗

    ○堂ノ脇政府委員 ホンジュラスに対しましては、従来から円借款を初め、いろいろな有償、無償の技術協力などを行っておりますが、ニカラグアにおきましては、御承知のとおり七九年に政変がございまして、その後内政の安定化に努力をしているという状態でございます。また、先ほど先生も御指摘のような若干のゲリラの活動といったものもございますし、必然的に援助の対応も若干限られてきているということはございますけれども、その差が出てきたこと自体は、そういう政治情勢の違いということによるかと思います。
  171. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 政治情勢の違いだけでは言えない著しい差があるのですね。私は八三年度の数字を要求しましたけれども、できていないというのですね。もう八月ですよ。昭和六十年度の概算要求は、もう既に政府開発援助としては、ことし同様一一・四%アップで外務省は出しているのでしょう。概算要求は出すけれども実績を示さないというのは、これはどういうことなんです。概算でもいいですから、ニカラグアとホンジュラス、今私は挙げました。一九八三年は前年に比べてふえているのか減っているのか。細かい数字が出ないのでしたら、方向だけでもはっきり述べてもらいたいと思うのです。
  172. 藤田公郎

    ○藤田(公)政府委員 ただいまの御質問の実績の数字でございますけれども、先生御承知のように、実績は暦年で締めましてDACに報告を行っているわけでございますが、毎年の慣例から申しますと、大体二、三月ぐらいから各関係機関に対しまして実際の報告を外務省が徴しまして、集計作業を行いまして、四月ないし五月にその集計を終わってDACに報告し、それで五月の末ぐらいに報告する、こういう形をとっております。国別及び地域別の集計は、先般御要望がございましたが、恐らくあと十日程度で国別の詳細なものができ上がるかと思っております。  それから第二の御質問の、ホンジュラスとニカラグアに対する援助実績はどうなっているかということでございますが、ホンジュラスにつきましては、この実績はまだ出てないわけでございますけれども、昨年の約束ベースで申しますと、恐らくは増加しているのではないかと思われます。それからニカラグアにつきましては、先ほど中南米局長から御説明申し上げましたように、八二年度は水害援助ということで、円ベースで申しますと一千百四十五万円が出ておりますけれども、昨年は技術協力中心ということになっておりまして、この技術協力の数字が出てきませんのではっきりしたことは申し上げられませんが、恐らくは減少しているのではないかと思われます。  以上です。
  173. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 八二年も著しく差があるかと思いましたが、八三年はもっと開いている、これが実態なんですよ。安倍外相自身も、この政府開発援助につきましては、民生安定、福祉向上のために、人道的見地からやるということをしばしば述べられておるわけですね。これがこの趣旨に合いますか、明らかな差別じゃございませんか。こういうことをやってはいかぬと思うのですよ。こうやるからこそ、日本の国家予算を割いている政府の開発援助が、レーガン戦略に沿ってその補完的役割を果たしていると言われても仕方がないことになっていると思うのです。時間がないので残念ですけれども、事は国際政治に関することなんです。小さい地域、小さな国であっても、この問題については私たちは真剣に考えなければいけないと思います。  問題は二つあると思うのです。一つは、レーガンの外交に追随してニカラグア人民の民族自決権を侵害する、そういう干渉政策にいつまでも協力していくのかどうか。それとも、民族の自主自決の立場を尊重して、是は是とし非は非として、ニカラグアヘの差別外交を改めて、しかるべく経済技術援助もやっていく。どちらをとるかということなんですね。ニカラグアは非常に重大な情勢に入っていると私は思います。そのときだけに、日本政府の選択が問われていると思うのです。創造的外交論の安倍外相、どちらをお選びになるのか。何か中間のあいまいなところじゃなくて、外交というのはあいまいだと言わずに、はっきりどっちかだと思いますよ。この辺を述べてもらいたいと思います。
  174. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ニカラグアで一日も早く紛争が終結をして、平和の日がやってくることを心から期待をしております。そのために日本としては、コンタドーラ・グループの決議を支持する立場外交を進めてまいりたい、こういうふうに思います。  なお、援助の点につきましては、経済協力局長も申し上げましたように、日本の場合はあくまでも人道、相互依存、これが援助の基本原則でございまして、これまでもずっとそういう基本原則を貫いてやってまいりましたし、今後とも貫く考えでございます。ただ、紛争地帯等につきましては、援助するということはなかなか困難であるということで、紛争地域等についてはどうしてもその辺が難しくなっているのは御承知のとおりであります。
  175. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 最後ですが、一つだけ。  安倍さん、紛争地域だという理由ですけれども、しかし著しく差別されているのですね、私は数字を挙げましたけれども。紛争地域といいながら、実際上は十一月四日には自由選挙が行われて、そして国民の選択があるわけです。隣のホンジュラスとニカラグア、こんなに差別は妥当じゃないと思うのです。差別という言葉が妥当でなければ、人道的見地からニカラグアに対してもしかるべき配慮をするということを、これは安倍さん、最後ですけれども、もう一回御答弁願いたいと思います。
  176. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 やはり援助の基本はあくまでも崩さない、人道的立場、相互依存、そういうことでこれからの援助政策は進めてまいりたい、中米についてもそういうことであります。
  177. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 じゃ、もう時間が来たのでやめますよ。終わりましょう。
  178. 中島源太郎

    中島委員長 次に、野上徹君。
  179. 野上徹

    ○野上委員 本日も、先ほど来安倍大臣創造的外交ということが再三言われておりますけれども、確かに世界の平和と繁栄のためにこれから日本が積極的に国際社会の中で果たしていかなければならない役割、そういったものを考えるときに、まさに安倍大臣創造的外交というのは、これからの日本外交の前途に一つの方針を開いたことになるような気がしてならないわけであります。  例えば、私が目の当たりにしたクリエーティブな面ということを例に挙げますと、昨年八月に中近東へ、イラン、イラクの戦いの真っただ中に日本外務大臣として初めて乗り込んでいって、いわゆる外務大臣として日本の中近東の外交のルートをそこに開いた。また、イラン、イラクの外務大臣日本へ来た。そして、この秋に開かれる国連において、大臣はこの両国への武器輸出を抑制しよう、こういう提案をなさる、こういうことであります。これなどはまさに、日本外交がこれまで見せなかった非常に積極的なグリエーティブな面だ、こう思うわけでありますが、この創造的外交なるものを平和と繁栄という面にこれからどのように具体的に展開なさろうとするのか、その理念についてお聞きしたいと思います。
  180. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私が創造的外交と言ったのは、これからの日本外交は今までのような受け身ではなくて、もっと能動的でなければならないという気持ちを込めて言っておるわけであります。私も、外務大臣をやりまして一年数カ月ですが、二十一回外国に出張し、多くの国際的な指導者にも会いまして非常に感じたことは、日本の存在が世界の中で日増しに重くなってきている、発言権も強くなっておりますし、国際的な役割も非常に期待されるようになってきた。そこで、今までのような日本外交のあり方では国際社会で浮いてしまうのじゃないか、もっと国際社会から信頼されるような外交というものを進めていかなければならない。  そして、今世界情勢は決して安定していない、ある意味においては非常に危険な状況にある、その中で日本が取り組んでいかなければならないのは平和外交の面であります。そういうことで、日本外交の道というのは、アメリカにもできない、ソ連にもできない、日本でなければできないというふうな面の外交方向というものがいろいろと出てきたと思っております。これを積極的にやり抜いていくということが世界の期待にこたえ、世界の信頼をつなぎ、そして日本が国際社会においてこれからも堂々として生きていけることになるのじゃないか、こういうふうに思っております。  しかし、日本の場合は、もちろん基本的な外交の姿勢というのはあるわけでございます。いわばこの外交原則というのは、御承知のように自由主義国家群の一員としてアメリカとの間の基軸関係を強化していく、さらにまたヨーロッパ諸国との連帯関係を拡大していく、そうした日米欧の関係の強化、連帯、さらにまたアジアの一国としてのアジア外交を積極的に推進するということももちろんでありますし、さらにまたソ連を初めとする東側の国との協調とか対話を進めていくということも、これまで日本外交の歩いてきた道ですし、これからもこの道は原則として守って進めていかなければならぬと思います。  そうした基本的な原則は守りながら、その上に立って今の日本の国際的な発言力を踏まえて、アメリカにできない、ソ連にできないというふうな積極的な平和外交、これは具体的に言えば、今お話がありましたようなイラン・イラク外交なんかもその一つに入るのじゃないかと私は思っておるわけでございます。これは、自由国家群の中でイラン、イラクと物の言える、両方とも非常に親しくつき合っている国は日本だけと言っても過言でないわけですから、そういう中でイラン、イラクの平和解決へ向かって日本が何らかの役割を果たしていく。  私は、戦争が拡大しないで今日何とか保っておるのは、日本の役割というのがある程度あったのじゃないか、こういうふうに思いますし、あるいは軍縮の面におきましても、先ほどからお話がありましたような全面核実験禁止といった理想論を掲げておりましたが、検証可能な核実験禁止措置から、さらに全面的な核実験禁止という方向へ具体的なアプローチをしていくということも、一つの新しいやり方であるとも思いますし、あるいはカンボジアに対する三提案、あるいはまた中国と韓国との間の非政治面の交流といった面について、これは中国も韓国もそれぞれ両国が直接的にアプローチできないという中で、日本がそれなりに動いた役割というのは相当あったのじゃないか、こういうことなんかが朝鮮半島の緊張緩和にはこれから何らかの役割を果たしていくのじゃないかと思うわけです。  そういう意味で、これから日本が積極的に日本でなければなかなかできないような役割を果たしていく、これこそまさに創造的といいますか、クリエーティブな外交ではないだろうか、そういうことを言っておるわけでございまして、全体的には先ほど申し上げましたように世界の中の役割を果たしていく、それもただ受動的な姿勢じゃなくて能動的に果たしていかなければならぬ、そういう時代に来たという認識で今取り組んでおるわけであります。
  181. 野上徹

    ○野上委員 今の大臣のお話にもあったのですけれども岡崎委員は今ニカラグアの問題で言われましたけれども、私も先般アメリカの民主党大会に行ってまいりました。この大会で決定した民主党のプラットホームの中に、いわゆる米ソの「対話再開のため、ソ連指導者と早期に首脳会談および、これに続く年次・定期首脳会談開催を提案する。」こういう項目があるわけであります。同時にまた、「あらゆる核兵器の実験・製造・配備について、相互の包括的な検証を可能にし得る凍結交渉に進むべきである。」つまり、平和とそれを裏づける核軍縮のためのネゴシエーションをこれから積極的に進めるべきだという、政策綱領としてそれを決めたわけでありますけれども、この点に関しまして大臣の御所見を伺いたいと思います。
  182. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 御承知のように、とにかく今米ソ関係が、特に核軍縮問題につきましては凍結している、交渉中断しているという状況にありまして、我々として世界の平和という立場から見ると大変危なっかしい状況にあります。これは、アメリカの大統領選挙が終わったらまた再開するだろうという見通しもありますけれども、しかし果たしてそういうことで楽観できるかどうか、決してそうでもないような感じもします。  九月十八日に、御承知のような宇宙軍縮についての米ソの話し合いが行われるかもしれない、こういう情報もあるわけでございますが、しかし、最近ではそのことも非常に悲観的になっておるようでございまして、そういうことから見ますと、我々はやはり世界の平和というものを考えますと、何といいましても米ソがテーブルに着いて、軍縮、特に核軍縮交渉について話し合いをするということが絶対に必要じゃないか。  そういう状況をつくり出すために、日本を初め努力もしていかなければなりませんし、一番理想とするところは、今民主党が言っているような米ソの首脳が直接会うということ、これは世界平和を進める上においては大変すばらしいことであると思いますけれども、果たしてそういう状況が熟しているかどうかということになりますと、なかなかそうでもないのじゃないか。アメリカのいわゆる民主党という党の綱領ですし、我々が日本政府立場でいろいろとこれに対してコメントするということは差し控えなければなりませんけれども、しかし、とにかく核軍縮交渉を進める、米ソが首脳会談をやるということは、これは日本としてもそういう事態が生まれることについては心から念願もし、また期待もするところであります。
  183. 野上徹

    ○野上委員 大臣に対する質問はこれで最後にいたしますが、先ほど河村委員からお尋ねもありましたけれども、ほんの少しだったものですから、私は少し突っ込んでお聞きをしたいわけですが、石川県のイカ釣り漁船の第三十六八千代丸の拿捕、そしてまた行泊船長が死亡したというニュースがけさ未明に入ってきたわけであります。最初は負傷だというニュースが、今度は死亡ということになったわけです。これは、報道の方も余り大きく扱っておりませんけれども、私は、これは大変な問題だと思うのであります。  同時にまた、この事件の前の十六日に、実は私の地元であります富山県の新湊漁協の第七十七心祐丸、これは我が地元のイカ釣り漁船なんでありますけれども、この漁船が昨日釈放されて帰ってまいりました。七百八十三万円ですか、それだけの罰金を払って帰ってきたということで、私は花棚船長やあるいはこの新湊漁協の組合長に電話で話を聞いたのですけれども、まあ彼らの結論は、そこが入ってはいけない領域だということはわかっている、しかし生活ということを考えた上で入っていかざるを得ないのだ、ついつい入ってしまうのだ、こういうようなことでありますけれども、とにかく、かつてあった民間漁業協定を早急に復活してもらいたい、そういう努力を国としてもしてもらいたいと切実な声を上げていたわけであります。昨日の参議院の外務委員会大臣は遺憾の意を表明されておられますけれども、新たにこの死亡という一つの大きなニュースがそこに加わってきた。この時点において、大臣の御所見をお聞かせいただけたらと思います。
  184. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 第三十六八千代丸が銃撃を受け、連行され、そして船長が銃撃の結果死亡したというニュースはまことに暗いニュースでありまして、我々といたしましても非常に遺憾でありますし、残念であります。具体的に実情がどういう状況であったのか、つまびらかにしません。今、日赤を通じまして、この問題について真相を明らかにすべく努力をしておるわけでございますが、果たして軍事ラインを越えたのかどうか、そういう点もはっきりしなければならぬと思います。実情がはっきりしない前に、政府責任者としてこれに対して物を言うというのは非常に難しいわけでありますが、しかし、少なくともこの第三十六八千代丸は漁船でありますから、無防備であることは間違いないわけですね。ですから、そういう船を、無防備の船というのがわかっていながら、こういう違反というのが前提にあったとしても、これを銃撃するということは納得ができないわけであります。  この点については真相を明らかにして、政府の対応も明らかにしたい。その上に立って、政府立場も表明したいと思うわけでございますが、同時にまた、今まだ遺体も北鮮にありますし、また乗組員も今抑留されておるという状況でございますから、まず、そうした抑留船員とかあるいは船とか遺体とかいうものを引き取る、そのための努力をしなければならぬ。それには、残念ながら国交がないわけですから、日赤を通じまして努力をしていただく以外にないわけで、政府としても、まさに国交がないだけに、今直接的な努力をすることができないのを非常に残念に思っておるわけでございます。しかし、日赤の努力によって一日も早く真相が解明されて、そして遺体、船員あるいはまた船が日本に帰ってくることを心から望んでおるわけであります。
  185. 野上徹

    ○野上委員 これは大臣にお答えいただかなくて結構でございますけれども、今後創造的外交ということで積極的に能動的にやっていくんだ、やるべきこともきちっとやるけれども、そのかわり言うべきことも言わしてもらう、これは安倍大臣一つの基本的な姿勢だと私はかねがね伺っているわけですけれども、まあ国交がないからといって、丸腰の日本人同胞が海域を侵したというだけでこういうふうにして撃ち殺されるということに対しましては、私は、きちっと言うべきことを言っていただきたいなあという気持ちがしてならないわけでございます。  この点についてひとつ水産庁にお伺いしたいと思いますけれども、民間漁業協定が五十七年の六月に期限切れになってから今日までに、五十七年に十一隻、五十八年に三隻、五十九年、ことしは八月になって、八月だけで既に五隻、こういうふうに相次いでいるわけであります。この点について、この水域はソ連とのダブル水域になっている。そして聞くところによりますと、ソ連との間には、いわゆるそこに入ってもよろしいという許可証をもらっている、そういう九百隻を超えるイカ漁船、九百八十隻ですかがいる。そうなってまいりますと、このイカ漁船がこれからこういうような水域に入っていって、今回のような事件を引き起こす可能性が非常にこれからもあるのじゃないかというような気がしてならないわけであります。これに対しまして、水産庁は漁協に対しましてどのような行政指導といいましょうか、注意をしているのか、その点についてお聞かせ願いたいと思います。
  186. 中村晃次

    ○中村説明員 お答えいたします。  御承知のとおり、現在、北朝鮮海域に接続しております日本海はイカ釣り漁業の最盛期になっておりまして、ほぼ三十トン以上の中型船だけでも八百隻程度は日本海全域で操業しているというような状況でございます。これらの船が北朝鮮水域に入るというようなことになりますと不測の事態を生じかねないということで、私ども常々機会あるごとに関係業界に対しまして、北朝鮮水域での操業自粛ということを重ねて注意してきたわけでございます。また、日本海には水産庁の監視船が常時出ておりますので、これらの船から毎日定時連絡を各漁船にやっておりますが、こういうものを通じましてまた操業自粛の指導をしているというような状況があったわけでございます。  ところが、残念なことに七月に入りまして、先生おっしゃったようにこれで五隻目の拿捕が出て、さらには銃撃というような最悪の事態に立ち至ったわけでございますので、水産庁といたしましては、昨日、七月三十一日付をもちまして、長官名で、関係する各都道府県知事及び全国のイカ釣り団体でございます全国沖合いかつり漁業協会というところに対しまして、特段の操業指導を行うように通達を出しでございます。  また、今後ともこのような不祥事の生じないように、水産庁といたしまして特段の指導を強化してまいりたいというふうに考えております。
  187. 野上徹

    ○野上委員 五十七年六月に期限切れとなった日朝民間漁業協定でありますけれども、これは何年ごろに協定が発効して、そしてこれがこれから再度協定ということにはならないのでしょうか。ここら辺について、水産庁のわかっている範囲内でのことをお伺いしたいと思います。
  188. 長田綏男

    ○長田説明員 お答えします。  これは、五十二年の七月に北朝鮮が二百海里経済水域設定を発表いたしまして、その後、国交がないこともございまして、日朝友好促進議員連盟の先生方が中心になりまして五十二年九月に暫定的な民間合意ができたわけでございます。それが、五十七年六月の末でそれまで延長しておりました暫定合意が切れて、その後今まで合意ができてないというふうに承知しております。
  189. 野上徹

    ○野上委員 先ほども言及しましたけれども、要するに、漁民はとにかくこの協定を一日も早く復活してもらいたい、これが祈るような気持ちなんですね。そしてこの協定があれば、こういうような憂うべき事件が起きないで済むわけであります。しかも、そこにはソ連の水域、二百海里とダブっているけれども、ソ連は許可証を出しているわけですから、そこへ行って安全に操業できるというわけであります。これを何とか復活さしてもらいたい、こういうことでありますが、この復活の道は、ただいま言われたように国交はありませんから、この日朝友好議連と北朝鮮の間で、向こうの組合か政府か知りませんけれども、そこと橋渡しを議連の方でする以外に手はないものなんだろうか、民間レベルで、漁協同士でこういうようなことはもうどうにもできないのだろうか、こういう疑問を持つわけなんですが、再度お尋ねいたします。
  190. 長田綏男

    ○長田説明員 お答えいたします。  私ども水産庁といたしましても、漁場が拡大されるのは、非常に強い、漁業者と同じ気持ちでございますが、今国交がないために、先ほど申し上げました日朝友好促進議員連盟や漁業者の団体でございます日朝漁場協議会、それから関係省庁と絶えず密接に情報交換、相談等してまいっておる次第でございます。私ども、今までそれらの話の中から承知しておりますのは、日朝漁業協議会といった団体はございますが、やはり日朝友好促進議員連盟が正面に出ないと、なかなか民間同士ではできないのが実情だというふうに承っております。
  191. 野上徹

    ○野上委員 そうすると、水産庁と日朝友好議連とは絶えず連絡を取り合っていると思うのですけれども、この友好議連の考え方、まあ東京会談がお流れになってしまったといういきさつもありますけれども、この見通しみたいなものをどんなふうに議連は持っているか、水産庁が把握しているだけでも聞かしていただきたいと思います。
  192. 長田綏男

    ○長田説明員 これは、私がお答えするのはどうかという感じもいたしますが、私ども聞いておる範囲では、今のような情勢で日朝友好促進議員連盟の方も何らかの取っかかりを得たいということで、いろいろ御検討されているというふうに伺っております。
  193. 野上徹

    ○野上委員 最後に。この事件というのは、国際上の点からも大変問題があるし、人道上の面で大変問題があると私は思うし、漁民にとってもこの協定を一刻も早く復活してやらなければ、漁民もかわいそうだ、苦しいだろう、そういう思いもありますし、大変重要な問題だと受けとめているわけですが、水産庁としては、あるいは外務省としてこの問題をどういうふうに受けとめているのか、再度お聞きして質問を終わりたいと思います。
  194. 後藤利雄

    ○後藤(利)政府委員 お答えいたします。  今回の事件は大変悲しいというか、非常に遺憾な事件でございます。こういうことが再び起きないようにどうしたらいいかという点につきましては、率直に申し上げますと、北朝鮮とは国交がないという点で一つの限界があるわけでございます。願わくは、外務大臣もたびたび御答弁いたされておりますように、ただいま中断しております民間漁業協定の交渉が再開されるということが、こういう不祥事を非常に防ぐということかと思っております。もちろん、そういう交渉が実際に行われるということになりました場合のいろいろ入国の問題等につきましては、再三お話ししておりますようにその時点において考えさしていただく、こういうことでございます。
  195. 長田綏男

    ○長田説明員 私どもも、今のアジア局長の申されたことと同じでございまして、一刻も早く再開できるように願っております。
  196. 野上徹

    ○野上委員 とにかくこれは、この協定を復活させるか、あるいはそこに日本の漁船を近づけさせないような手段をとる以外に、そこに行けば向こうはこういうふうに撃ってくるわけですから、どちらかをしないとこういう痛ましい事件が再発しないとも限らないわけでありまして、関係省庁がこれからその二つの道のどちらを選ぶのか私はわかりませんけれども、願わくは、協定の一日も早い復活に向かっての御努力をお願いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  197. 中島源太郎

    中島委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十一分散会