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1984-07-18 第101回国会 衆議院 外務委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年七月十八日(水曜日)     午前十時三十一分開議 出席委員   委員長 中島源太郎君    理事 石川 要三君 理事 浜田卓二郎君    理事 山下 元利君 理事 高沢 寅男君    理事 古川 雅司君       鍵田忠三郎君    鯨岡 兵輔君       仲村 正治君    西山敬次郎君       野中 広務君    町村 信孝君       河上 民雄君    小林  進君       八木  昇君    玉城 栄一君       木下敬之助君    瀨長亀次郎君  出席国務大臣         外 務 大 臣 安倍晋太郎君  出席政府委員         防衛施設庁施設         部長      千秋  健君         外務省アジア局         長       後藤 利雄君         外務省北米局長 栗山 尚一君         外務省中南米局         長       堂ノ脇光朗君         外務省欧亜局長 西山 健彦君         外務省経済協力         局長      藤田 公郎君         外務省条約局長 小和田 恒君         外務省国際連合         局長      山田 中正君         外務省情報調査         局長      岡崎 久彦君  委員外出席者         防衛庁教育訓練         局訓練課長   上田 秀明君         防衛施設庁施設         部連絡調整官  田中  滋君         法務省入国管理         局登録課長   黒木 忠正君         運輸省国際運         輸・観光局国際         協力課長    相原  力君         運輸省航空局技         術部運航課長  赤尾 旺之君         運輸省航空局管         制保安部管制課         長       小山 昌夫君         外務委員会調査         室長      高橋 文雄君     ――――――――――――― 委員の異動 七月四日  辞任         補欠選任   鍵田忠三郎君     今井  勇君   近藤 元次君     稻葉  修君   仲村 正治君     河野 洋平君   西山敬次郎君     渡辺 栄一君 同日  辞任         補欠選任   稻葉  修君     近藤 元次君   今井  勇君     鍵田忠三郎君   河野 洋平君     仲村 正治君   渡辺 栄一君     西山敬次郎君 同月十一日  辞任         補欠選任   鍵田忠三郎君     森  美秀君   近藤 元次君     塩島  大君 同日  辞任         補欠選任   塩島  大君     近藤 元次君   森  美秀君     鍵田忠三郎君 同月十二日  辞任         補欠選任   鍵田忠三郎君     今井  勇君   近藤 元次君     長谷川四郎君 同日  辞任         補欠選任   今井  勇君     鍵田忠三郎君   長谷川四郎君     近藤 元次君     ――――――――――――― 六月二十五日  婦人に対するあらゆる形態差別撤廃に関す  る条約早期批准等に関する請願河上民雄君  紹介)(第六八六一号) 七月二日  核巡航ミサイル・トマホークアジア、太平洋  配備反対等に関する請願藤田高敏紹介)(  第七〇三三号)  世界連邦実現等に関する請願土井たか子君  紹介)(第七〇三四号)  婦人に対するあらゆる形態差別撤廃に関す  る条約早期批准等に関する請願河上民雄君  紹介)(第七〇八三号)  核巡航ミサイル・トマホーク米太平洋艦隊艦  船への配備日本寄港反対等に関する請願(浦  井洋紹介)(第七一一八号)  同(田中美智子紹介)(第七一一九号)  同(辻第一君紹介)(第七一二〇号)  同(中林佳子紹介)(第七一二一号)  同(藤木洋子紹介)(第七一二二号) 同月六日  核巡航ミサイル・トマホーク米太平洋艦隊艦  船への配備日本寄港反対等に関する請願(浦  井洋紹介)(第七二三七号)  同(不破哲三紹介)(第七二三八号) 同月十日  朝鮮民主主義人民共和国へ帰還した日本人妻の  里帰り促進等に関する請願箕輪登紹介)(  第七三八〇号)  婦人に対するあらゆる形態差別撤廃に関す  る条約早期批准等に関する請願河上民雄君  紹介)(第七四四四号)  同(河上民雄紹介)(第七五一二号)  世界連邦実現等に関する請願河村勝紹介  )(第七四四五号) 同月十三日  核巡航ミサイル・トマホーク米太平洋艦隊艦  船への配備日本寄港反対等に関する請願(梅  田勝紹介)(第七七四九号)  婦人に対するあらゆる形態差別撤廃に関す  る条約早期批准等に関する請願河上民雄君  紹介)(第七七五〇号) 同月十七日  核巡航ミサイル・トマホーク米太平洋艦隊艦  船への配備日本寄港反対等に関する請願(梅  田勝紹介)(第七八九〇号)  同(小沢和秋紹介)(第七八九一号)  同(経塚幸夫紹介)(第七八九二号)  同(柴田睦夫紹介)(第七八九三号)  同(瀬崎博義紹介)(第七八九四号)  同(辻第一君紹介)(第七八九五号)  同(野間友一紹介)(第七八九六号)  同(不破哲三紹介)(第七八九七号)  同(藤木洋子紹介)(第七八九八号)  同(藤田スミ紹介)(第七八九九号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 七月三日  人種差別撤廃条約早期批准に関する陳情書外  四件(第三二  九号)  婦人に対するあらゆる形態差別撤廃に関す  る条約早期批准に関する陳情書外一件  (第  三三〇号)  核巡航ミサイル・トマホーク装備米艦船日本  寄港反対等に関する陳情書外三件  (第三三一  号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ――――◇―――――
  2. 中島源太郎

    中島委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。河上民雄君。
  3. 河上民雄

    河上委員 先般、安倍外務大臣韓国訪問されて、日韓外相会談を行われて帰国をされたわけでございますが、それに関連しまして幾つかの御質問をしたいと思います。時間がかなり限られているようでございますので、前置きは抜きにしてお伺いしたいことを幾つか申し上げたいと思います。  まず最初にお伺いいたしたいのは、日韓外相会談で一応合意を見たといいますか、そういう点の中で全斗煥大統領訪日ということがあるわけでございますけれども、全斗煥大統領訪日につきまして外務大臣としてはどういうような受けとめ方をしておるかを伺いたいのでございます。韓国の東亜日報では、全斗煥大統領訪日について社説と解説を掲げて、過去の不幸な歴史を清算する転機としてすべての国民が期待をかけている、こういうふうに述べておりますし、多くのマスコミは新しい日韓関係づくりの第一歩というふうに報道しておるやに伝えられておりますが、外務大臣は今回の全斗煥大統領訪日につきまして、これが新しい時代を開くものというふうに受けとめておられるのか、それとも韓国大統領訪日という一つの儀礼的な儀典上のイベントとして受けとめておられるのか、その点お伺いしたいと思います。
  4. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 先般の日韓外相会談で、日韓双方が今秋全斗煥大統領来日を実現すべく努力すること、及び韓国大統領の初の日本公式訪問両国の一層強固な友好協力関係を象徴する歴史的な出来事であることにつきまして、意見の一致を見たわけであります。また私より、日本政府大統領来日を歓迎し、これを成功させるために全力を尽くす旨、改めて表明をいたしました。同時に、日韓双方は、具体的日取りは今後外交ルートで打ち合わせることに合意をした次第でございます。私も日本外務大臣といたしまして、韓国大統領を戦後初めて日本に迎える、日韓国交回復して二十年たって初めてここに迎えるということはまさに日韓双方にとって歴史的な出来事である、こういうふうに認識しておりますし、韓国も官民挙げて大統領訪日を非常に重大な出来事である、こういうふうに評価をいたしておるように感ずるわけであります。
  5. 河上民雄

    河上委員 今外務大臣は、歴史的な一つイベントである、そしてこれから新しい関係時代に入るというようなことを言われたのですが、新しい時代、新時代というものの内容はそれではどういうふうに考えられますか。
  6. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 全斗煥大統領も私との会見において、韓国国民は非常に賢明であって、自分の今回の訪日については過去は問わない、これから未来に向かっての日韓関係を構築していく訪日である、こういうふうに韓国国民も認識しておる、こういうことでありました。これは大統領自身判断、認識でもあろうと思うわけでございますが、私も、このような大統領の今回の日本訪問に寄せる考え方、御判断というものを日本も大事にこれは踏まえて、そして日韓関係をこれから、今非常に安定をしておりますが、さらにこれを将来に向かって安定不動なものに進めていく大きな契機になる、こういうふうに思っております。これでもってすべてが解決するというわけじゃないですが、しかし、これからは過去というよりは将来に向かっての日韓関係の発展をこの訪日によって進めていく一つのスタートになり得るもの、こういうふうに考えておるわけです。
  7. 河上民雄

    河上委員 外務大臣は、先ほど日韓国交回復後二十年をまさに経ようとしてというようなお話がありましたが、日韓基本条約批准の際、国会特に衆議院の外務委員会でもいろいろ論議がなされたわけでございますが、その際、両国政府解釈が十分調わないうちに発効したという経緯があるわけであります。幾つかあるわけでございますけれども、その中で一番重要なことは第二条ですね。「千九百十年八月二十二日以前に大日本帝国大韓帝国との間で締結されたすべての条約及び協定は、もはや無効であることが確認される。」この第二条の「無効であることが確認される。」という「無効」というのはいつからかということに関しまして、韓国は、一九一〇年八月二十二日の日韓併合の日からというふうに解釈した。それに対しまして日本側は、サンフランシスコ条約、対日講和条約以降というふうに解釈した。こういうふうに、いろいろな議論が当時の議事録を見ますとありますけれども、少なくともこう大きく食い違っておったわけであります。  そして第三条、これも「大韓民国政府は、国際連合総会決議第百九十五号(Ⅲ)に明らかに示されているとおりの朝鮮にある唯一の合法的な政府であることが確認される。」こういうふうになりましたが、この点につきましても、韓国側は、韓国管轄権は全朝鮮に及ぶ、そして朝鮮民主主義人民共和国とはこれをもって国交を結び得ないのだというふうに理解をいたしましたのに対しまして、日本の当時の佐藤総理あるいは椎名外相は、それは将来の問題であり、韓国管轄権国連決議において限定されたように朝鮮半島の南半分に限定せられる、こういう理解でこの条約が発足したというふうに我々も考えているわけでございますけれども、外務省外務大臣は今日においてもそれは変わっていないとお考えでしょうか。
  8. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今河上さんの御意見のとおりに外務省としても考えておりますし、外務大臣としてもそのように判断しております。
  9. 河上民雄

    河上委員 そういたしますと、日本側はそのとおり、当時つまり今から二十年前と少しも変わっていない。それじゃ韓国側は、この二十年間にこの解釈において変化があったのかどうか、これを伺いたいと思います。
  10. 小和田恒

    小和田政府委員 お答えいたします。  韓国側姿勢がどうであるかということにつきましては、別途お答えした方が適当かと思いますが、先ほど大臣お答えになったことに補足をいたしまして、状況をちょっと御説明しておきたいと思います。  河上委員が御指摘になりましたように、一九六五年の日韓国交正常化の際におきまして、基本関係条約ができた状況の中で双方立場がそれぞれ主張されたということは御指摘のとおりでございます。そういう双方立場交渉の土台にいたしまして基本関係条約ができ上がったわけで、御承知のとおり、条約は両当事者の合意に基づいてできておるわけでございますから、そこに書かれております限りにおきましては、日韓両国の間に一つ合意ができ上がったということでございます。  第二条について申しますならば、確かにそれがどの時点から無効であったかということにつきましては、私自身交渉に参加いたしましたけれども、交渉過程におきましていろいろと議論が闘わされたことは事実でございますが、最終的な結論といたしましては、とにかく現在においてはもはや無効となっておるということについて双方意思合致がある、その合致がある限度のこと、双方意思合致があることを条文に書こうということで、あの条文ができ上がったという経緯がございます。  それから第三条につきまして、確かに当時管轄権がどこまで及ぶのかということにつきまして、日本側韓国側との間で交渉過程において議論が闘わされたわけでございますけれども、最終的な落ちつき方としては、いずれにしても国連総会決議第百九十五号が一番客観的な基準と申しますか、メルクマールでございますので、そのことについては日本韓国双方異存がない。その内容が何であるかということは、これはそもそも国連決議の問題であるから、国連決議の有権的な解釈権を持っておる国連が最終的に決める話である。  日本側解釈としては、先ほど河上委員が御指摘になったような解釈、つまり第百九十五号決議に書いてございますように、自由な選挙が行われ朝鮮人民の大多数が居住している地域、すなわち三十八度線以南地域であるというのが国連意思であったのが我が方の立場でございましたし、現在もその立場に変わりない。韓国が、その国連決議第百九十五号を現在どういうふうに解釈しているか、理解しているかということは、私の所管ではございませんけれども、少なくともこれは国連決議であるから、国連自身がどういうふうに有権的に解釈するかということが解釈基準であるということについては、日韓双方意思合致があったわけでございます。
  11. 河上民雄

    河上委員 今、日本側解釈といいますか、そしてこの条約合意するときのお互いのここまでは合意するという了解の範囲がかなりはっきりしたように思うのでありますが、韓国側が第二条及び第三条について主張したことは取り下げたわけではなくて、留保したままそういう合意しやすい点で合意したというふうに理解してよろしいわけですか、そして今なおその点において態度は変わっていないというふうに理解してよろしいでしょうか。
  12. 後藤利雄

    後藤(利)政府委員 お答えいたします。  韓国側立場は、今先生がお話しのとおり、当初の韓国側立場をそのまま維持しているものと私どもは理解しております。変わっておらないと思っております。
  13. 河上民雄

    河上委員 そういたしますと、第三条に「朝鮮にある唯一の合法的な政府である」と書いてありますけれども、この「朝鮮」というのは朝鮮全体を意味するというふうに日本側理解されておりますか。
  14. 小和田恒

    小和田政府委員 基本関係条約第三条に規定しておりますように、国連総会決議第百九十五号に明示されているような意味での朝鮮にある唯一合法政府ということで、そういう修飾をつけた上で、ここで言っている「朝鮮」は全朝鮮を指すというふうに理解しております。
  15. 河上民雄

    河上委員 いずれにせよ、今から二十年前の基本条約の討議の際に、野党あるいは自民党、与党を含めてでありますが、国会委員政府委員との間にいろいろなやりとりがありました中で、次の点は大体間違いないことだと思うのであります。  ここに規定されております朝鮮独立という場合は、朝鮮半島全体にかかわるものである。それから、この条約における韓国管轄権というものについては、日本側としては当時は三十八度線、その後朝鮮戦争後の状況休戦ラインということになっておりますが、いずれにせよ南半分であるというふうに理解しておる。さらに三番目としては、韓国側解釈のいかんにかかわらず、日本側としては朝鮮半島の北半分に一つのオーソリティーが存在しておって、それとの関係決着済みではなくて将来の問題として残されている。当時、こういうふうに理解したと確認してよろしいわけでございますか。
  16. 小和田恒

    小和田政府委員 今おっしゃったとおりでございます。
  17. 河上民雄

    河上委員 それではお伺いいたしたいのでありますけれども、韓国マスコミあるいは政府の一部から記者会見等を通じてうかがわれる一つの世論というのは、韓国側は新しい時代日韓関係というものの内容一つとして、日本が過去の関係を改めて強く反省することを期待しているように受け取れるのでございます。そして、現に中曽根総理が就任早々韓国訪問した際、例の四十億ドル決着合意をするというようなことをいたしましたと同時に、会談の際の夕食会などで日韓両国の不幸な歴史を厳粛に受けとめねばならないというようなことが強く述べられているわけでございまして、謝罪というか、いわゆる日帝三十六年の植民地支配に対する謝罪というのが新しい日韓関係の、新時代一つ内容になっているように受け取れるのでありますけれども、外務大臣はやはりそのように理解しておられますか。
  18. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日韓関係には過去において非常に不幸な歴史を我々は持ちましたし、そういう意味日本立場から見ますと反省もしなければならぬ点も多々あるわけでございますが、日韓の正式な国交は二十年前の基本条約出発をしたわけでございまして、その限りにおいては、その時点で問題は、将来に向かって国交が回復されて今日に至っておるということであります。ただ、道義的には今お話しのように、我々としてはいろいろと反省をしなければならない面もないとは言えないわけでございます。そういう中で、今回大統領日本に初めてお見えになるということでございます。それは大統領も言っておられるように、過去にはとらわれないでこれから未来に向かって出発する一つ契機にしたいということでございますから、我々も今回の大統領訪日をむしろ日本韓国の将来に向かっての出発点としてとらえてここで成功させたい、こういうふうに思っております。
  19. 河上民雄

    河上委員 外務大臣としては、朝鮮に対する日帝三十六年の植民地支配についての謝罪は、椎名外務大臣のあの基本条約調印前の訪韓のときでなされているというふうに見ておられるのか、その後、今度は中曽根総理訪韓されたときにそこで改めてなされたというふうに見るのか、あるいは、今回いろいろ伝えられるようないわゆる天皇のお言葉問題というのが今起きているようでありますけれども、こういうことで決着がつくというふうに考えておるのか、そこをもう一度伺います。
  20. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日韓関係は、これは正式にはもちろん日韓国交回復したときの基本条約において、新しい日韓歴史が始まったと解釈をすべきじゃないかと私は思うわけでございます。しかし、道義的といいますか、そういう面においては、これはどこの時点において決着がついたということは言えないのじゃないか。これは椎名さんが外務大臣として、当時率直な心境を吐露されたことは我々もよく承知もいたしておりますし、韓国国民もそれに対して非常に評価をしたことでございます。また中曽根総理が、初めての日本総理大臣としての公式な訪問心境を吐露された、これも韓国政府評価を得たことも事実でありますが、いずれにしてもこうした日韓の間の条約とか大使の交換だとかあるいはまた大統領訪日日本総理大臣訪韓、そういうことだけによってすべてが解決するというふうな問題ではないだろう、それはやはり歴史の中でも残っていく、また日本としては、これは一つ日本歴史の傷跡として今後とも反省していかなければならない課題であろうと思うわけで、これでもって全部決着した、すべてが解決したというふうなとらえ方をすべきではない、私はこういうふうに思っております。
  21. 河上民雄

    河上委員 先ほど、私は外務省にも確認をさしていただいたのでありますが、日韓基本条約日本国会における審議の過程で明らかになりましたように、この条約で言われている独立というのは朝鮮半島全体ということであるとしますならば、いわゆる日帝三十六年の植民地支配に対する謝罪というのは朝鮮半島全体になされるべきではないか。そうなりますると、朝鮮民主主義人民共和国との関係が将来――今、将来の問題というように言われてからもう二十年たっているわけですけれども、将来そうした問題が起こった場合には、当然朝鮮半島全体に対する謝罪というものが考えられるのではないかと思いますが、いかがでございますか。
  22. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今回は韓国の――先ほどからお話がありましたように、韓国朝鮮半島全体を管轄しているわけじゃありません。韓国の支配している地域というのは、三十八度線といいますか休戦ラインをもって区切られておる、そのいわゆる管轄権韓国が有しておる、その韓国大統領日本がお迎えをする、こういうことでございますし、そういう立場において日本韓国国家元首として歓迎をしなければならぬ、こういうことであろうと私は思います。
  23. 河上民雄

    河上委員 今私が申しましたのは、将来朝鮮半島全体に対する謝罪という問題が残っておるのではないか、そういうことが残っておること自体が、何かすっきりしない大きな背景ではないかというように私は思うのでありますけれども、それについてのお答えは今ちょっと残念ながらなかったのですが、いかがでございますか。
  24. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 この問題はこれからだって、やはり我々といわゆる朝鮮民族との間では、過去の歴史というものは我々背負い続けていくわけですから、残っていく問題だというふうに認識して対処しなければならない、私はこういうふうに思っております。
  25. 河上民雄

    河上委員 実は私、手元に、小さなレポートですが、コリア・レポートというのを手にいたしておりますが、それによりますると、韓国側は、大統領天皇会見した際天皇訪韓を要請するプランを練っているというふうに伝えられておるわけでございますけれども、そういうような事実があるのか、また、もしそういうことになりました場合、日本政府としてはどうするおつもりか。
  26. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 そういう問題について韓国政府と打ち合わせたことは一切ございません。韓国政府大統領がどういうふうにお考えになっているかということは、訪日されてのことであろうと思います。その時点において、今お話しのような問題は日本政府として考えればいいことじゃないか、こういうふうに思います。
  27. 河上民雄

    河上委員 先般の新聞の報道によりますと、韓国訪問安倍外務大臣滞在先ソウル市内のホテルで同行記者団との共同インタビューに応じまして、その中で、対北朝鮮について何らかの対応を模索したい、朝鮮民主主義人民共和国北朝鮮が非常に柔軟な姿勢で臨んでいるように最近のいろいろなニュースから判断されるので、その点を非常に注目しているというような御発言があったように聞いておりますけれども、朝鮮民主主義人民共和国との関係改善につきまして、外務大臣は今どのようにお考えでいらっしゃいますか。
  28. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は韓国政府にも述べたわけでありますが、日本北朝鮮との関係は、これは国交を持っておりませんし、今これを持つということを考えてない。また、北朝鮮との基本的な政策を変えるという考えは持ってないということを申したわけでございますが、同時に、私は、朝鮮半島緊張緩和というものは日本として強く望んでおるし、そのための環境づくりには、日本としても今後とも努力をしていきたい。  同時にまた、今北朝鮮が、金日成主席のソ連訪問、東欧訪問等を通じて我々が入手した情報では、対日姿勢が最近非常に柔軟になっておるというふうな判断を我々としては持っておるんだ。これは我々としては、北朝鮮のこれが本当かどうかという点には問題があるけれども、そういう一つの動きといいますか、柔軟な姿勢をとっておるということに対しては自分たち日本としては注目しておる、こういうことを実は韓国政府にも日本判断として伝えましたし、同時にまた記者会見においても、そういう私の認識を明らかにした次第であります。
  29. 河上民雄

    河上委員 外務大臣は、こういう問題につきまして中国側から、この前宮澤さんに対しても先方の意向というものを伝えてきているわけでございますし、何らかのアクションを起こすお気持ちは今ございませんか。
  30. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今、全斗煥大統領日本政府は招待しておりましてお見えになるわけでありますから、これを歓迎をし、成功裏に送り出さなければならぬということで頭はいっぱいでございます。もちろん、北朝鮮との関係においても、そうした北朝鮮の変化というものには注目をしておりますし、また同時に、中国のいろいろの努力に対しても、我々はそれなりの評価をいたしておるわけでございますが、これは先の長い問題でもあろうと思いますし、そういう観点から我々としては対処してまいりたい、こういうふうに考えておるわけです。
  31. 河上民雄

    河上委員 外務省の方にもお伺いしたいのでありますけれども、今、朝鮮民主主義人民共和国を承認している日本近辺の国、つまり東北アジアそれから東南アジアの国々の中で、朝鮮民主主義人民共和国を承認している国と大韓民国を承認している国をいろいろ比較しますと、むしろ朝鮮民主主義人民共和国を承認している国の数の方が多いくらいでございます。例えばASEAN諸国でも、朝鮮民主主義人民共和国を承認してないのはフィリピンだけという状況でございます。加えまして、近くフランスがミッテラン政権のもとで朝鮮民主主義人民共和国を承認する。私は、これは非常に具体的にピョンヤンでそういう話を、ミッテラン大統領が選挙に臨む直前にピョンヤンを訪問したときのいろいろな話からそのように確信をしておるわけでございますけれども、いよいよその時期が近づいているという報道もあるわけでございますが、外務省ではそういう情報をどのように理解しておられるか。また、そういう事態が起きた場合には日本政府として、政府はよく日本は西側の一員と言うのでありますけれども、西側の一員として一体どういうふうに対応するつもりか、その点をお伺いしたい。
  32. 後藤利雄

    後藤(利)政府委員 お答えします。  フランス政府北朝鮮承認の問題は、確かに一時報道はされておりますけれども、フランス政府として正式にそういうことを決定したということは承知しておりません。
  33. 河上民雄

    河上委員 余り時間がございませんのであれですけれども、私は、ミッテラン――当時は野党の党首でありましたけれども、ミッテラン氏がピョンヤンに来たときの話を向こうで聞きまして、大統領に当選した場合の一つの政治のプログラム、外交上のプログラムとしてそれがはっきりと入っておるのでありまして、私は必ずそういうときが来ると思います。  最後に、指紋押捺問題で一言だけちょっとお伺いしたいのでありますけれども、朝鮮半島との関係考える場合に、いわゆる日帝三十六年という植民地支配に対する反省ということが非常によく言われるわけです。しかし、それはどういう形であるかといえば、我々が奪ったものを返す、もとへ戻すということではないかと思うのです。そういう点から見ますると、私はこの指紋押捺問題についても、これは基本的に考え直さなければならない時期が来ている、このように思うのです。この点は外務大臣も、直接の所管じゃないかもしれませんが、先ほど言われたように、政治、経済、文化、いろいろな社会的な物の見方を含めての一つ反省が必要だという点から、ぜひこの指紋押捺問題が非常に大きな人権侵害であるということを十分理解してやっていかなければいかぬと思うのであります。  来年、登録の更新が三十五万人にも上るということでございますけれども、今、指紋押捺拒否者は四十名になっておって、裁判は八人行われております。私も、非常に親しい方が一人二人、そういうことになっておりますので関係しておりますけれども、これは三十五万人の中に指紋押捺拒否者がたくさん出てきたら一体どうするのか。法務省、いかがですか。
  34. 黒木忠正

    ○黒木説明員 先生お話しのように来年は、私どもは約三十七万人ぐらいと予想しておりますけれども、在日外国人の登録の確認申請が行われることになっております。現在、指紋押捺拒否を続けている人は三十二名おりまして、在日外国人の中の一部の人たちは、来年の確認申請に際して自分たちも指紋押捺を拒否するというようなことを言っている人があるようでございますけれども、少なくとも我が国は法治国家でありますし、それから指紋問題につきましては、一昨年のこの国会におきまして外国人登録法を改正いたしました際にも十分御審議いただいて、それで指紋制度は残す、存置するということで改正いただいた法律でございますので、私どもとしては、法治国家において公然と法律に反するというようなことが行われることはゆゆしい問題であると考えておりますし、外国人団体に対しましては、そのような不心得と申しますか、法にあえて挑戦するようなことはしないようにということをかねて申し上げているような次第でございます。
  35. 河上民雄

    河上委員 もう時間が参りまして、私はこれで終わりたいと思いますけれども、外務大臣に特に申し上げたいことは、何といいましても、やはり痛みを与えた方は余り自覚がないわけでして、何でこれが人権侵害になるのか、これはもう法務省の課長さんから何度そういう答弁をいただいたかわからないのですけれども、奪われる方、痛めつけられる方は大変なことなんでございます。そこから出発しないと、朝鮮半島の問題というのは永遠に日本人の我々のあり方の中から消えていかないと私は思うのであります。  それからもう一つは、日韓基本条約審議の際に問題になりましたように、我々が今問題解決をしなければならぬのはやはり朝鮮半島全体であるということですね。その一部だけと結びついて、他を敵視する、無視することは許されないということを強く申し上げまして、それに対して一言だけ御返事いただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  36. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今おっしゃる点につきましては、私もいろいろ気持ちの上においてはよくわかるわけでございまして、これから日韓関係の将来を考える場合にも、そうした基本的な一つ考え方、認識というものが、日韓関係さらにまた朝鮮半島全体との関係をよくする上においても非常に大事ではないか、私もそのように考えます。
  37. 河上民雄

    河上委員 では、終わります。
  38. 中島源太郎

    中島委員長 この際、関連質疑の申し出がありますので、これを許します。小林進君。
  39. 小林進

    ○小林(進)委員 関連質問で十分だけ与えられましたので、結論だけひとつ申し上げます。  一つは、これはけさの新聞を見て、きのうの参議院の外務委員会における全斗煥大統領訪日の問題について、天皇のお言葉というのが出ていた。その中に「米、中の場合とは異なることもある」などといって、何か天皇に特別の発言をしてもらうような、こういう雰囲気が出ておるのであります。私は、これは非常に重大問題だと思いまして、理屈を言っていると時間がなくなりますから結論だけ申し上げますが、天皇は本来政治のらち外にある、だから、レーガンが来ようと鄧小平が来ようとサッチャーが来ようと、戦争に関係するこういう問題については何も発言はない、またないのが当たり前であります。しかし、今度韓国大統領が来ることについては、天皇に何かこの戦争に関する発言を求めているような、こういう非常識な風潮があるのでありますが、私は重大問題だと思います。しかも、これに対してきのうの外務大臣の答弁を新聞で見ると、どうもあいまいなようであります。天皇に対しては、こういう問題に対してはきちっとらち外に置いてもらって、いやしくも、ましてやどうも遺憾の意を表するとかわびるというような、国民にもそうとられるような疑いを持たせないように、ひとつきちっとした態度で臨んでもらいたいと思うのであります。これが一つであります。いかがでございましょうか。
  40. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは、きちっとした態度で臨んでおります。天皇のお言葉につきまして、いろいろと議会等でも話が出ておるわけでございます。また、マスコミ等でも報ぜられておりますが、この点につきましては、今ここで政府としてその内容について述べるということは筋違いのことでありますし、あるいはまた日韓間で話をするということも全く筋の通らない話であります。したがって、これは韓国との会談におきましても一切話が出なかったということでございます。  なお、天皇陛下が国賓等に対してお言葉をお述べになるわけですが、この行為は憲法七条に規定する国事行為ではありませんが、また純然たる私的な行為でもありません。いわゆる公的な行為というものに当たるわけでございます。したがって、最終的には国政全般に対して責任を持っておる内閣が責任を持つことになる、こういうふうに理解をしております。
  41. 小林進

    ○小林(進)委員 その解釈でよろしいのです。よろしいから、なおさら天皇国民に対してあるいは韓国に対して誤解を持たせるようなことのないように、ひとつきちっとしていただきたい。  なお、私は時間がないからあれですけれども、今の河上質問に対しましても、何か韓国に対してまだ道義的責任があるようなお話だが、あなたがおっしゃるとおり二十年前に我々は日韓条約を結んで、わびるべきことはわびて有償、無償の賠償もやった、どこの国よりも韓国に一番余計わび証文を出しているのです。あれだけの大きな侵略戦争をやられた中国には、一銭の賠償も一寸の領土も取られていない、全部帳消しだ。韓国は、これは戦争じゃないんだ、植民地政策のいい悪いの問題なんだ。植民地政策と言えば、同じ植民地政策を台湾にやったけれども、台湾は今まで我が日本に対して、これほど執拗なわびをよこせの謝れの、あるいはまだ天皇さんに対して物を言えとかというような要望は一つもない。これは植民地政策に関する問題ですよ。戦争とは別個なんだ。そういうこともひとつきちっと区別をしていただいて、いつまでたっても執拗におわびごとだけしなければならぬというような、そういうへっぴり腰な外交はやめてもらいたい、これが一つであります。  それから二番目、十分ですから申し上げますけれども、同じくきのうの参議院でありまするが、カンボジア問題に対してあなたは、ベトナム軍の撤退を求めて、撤退をすればそれに従って順次資金の協力もしよう、あるいは撤退した地域に対しては資材の協力もしようなど、段階的な撤退を認めているようだけれども、これは国連決議に反しますよ。国連決議は二回もしているが、ベトナム軍の不当な侵略なんだから完全に撤退しなさい、撤退しなければというのが国連決議なんです。そんな中で部分的に撤退した分だけは協力するなんて言えば、いかにも不当な侵略を我が日本が認めたような、国際の協定や条約にも違反するような疑いを持たれますから、この点はひとつきちっとしていただきたい。  これは私ども、中国の民間人会議に行って口をきわめて言った。不当な侵略を認めるようなことは、国際正義にも反しまするし哲学にも反する、外交にも反する、これはやめてもらわなければいかぬ。完全に撤退した、後はどうするか、カンボジア問題に対して外務大臣はいろいろ言っておられまするけれども、これはカンボジアの国自身が自主的、民主的に決める問題である。撤退した後の情勢はカンボジア国民判断に任せればいいことであって、こんなことまで余分なことを言う必要はないと思います。カンボジアの自主性、民主性に任すべきだと私は思います。どうぞこの点ひとつ誤解のないように、大臣の御答弁を聞いておきたいと思います。
  42. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 まず第一に日韓関係でありますが、これはおっしゃるように、二十年前の日韓基本条約が締結をされた、そして正式な国交が始まった、こういう時点において、いわゆる外交上あるいはまた条約的には、日韓関係というのは過去の問題を含めて決着したということであります。  ただ、私が言っているのは、それが条約あるいは外交的には決着したとしても、我々は昔の歴史を背負っておる国民として、気持ちの上では韓国あるいはまたいわゆる朝鮮人といいますか朝鮮半島の問題については、一つ反省の気持ちを持っていくことが、むしろこれから朝鮮半島全体あるいはまた韓国との関係をより発展せしめるゆえんになるんじゃないか、こういうことを言っておるわけでありまして、条約的あるいは外交的に言えば、これはもう国交が回復した時点においてけじめがついたということは言えるわけでございます。  それから、今のカンボジアに関する日本の三提案は、ベトナムのカンボジアからの完全撤兵を求めるための日本の協力の姿勢を述べたわけです。日本はこれまでASEANの外交政策を支持して、そして三派を中心としてカンボジアに自主独立政権ができることを心から念願してまいったわけでありますが、しかし日本がカンボジアの自主独立政権樹立のため、さらにはまたベトナム軍の完全撤兵のためにもっと積極的な姿勢を示すべきである、こういうふうに考えて、実は昨年のASEANの外相のアピール、これが国連決議に基づいて最終的なベトナム軍の撤兵を求める一つの現実的な可能性を含んだアピールである、だからこのアピールを実現させることがカンボジアの独立、そしてベトナム軍の完全撤兵につながるというふうな認識で実は三提案をしたわけでありますから、我々の提案というのはあくまでも最終的にベトナム軍の完全撤兵、そしてカンボジアの自主独立を目指してのものであるということを御理解をいただきたいと思います。
  43. 小林進

    ○小林(進)委員 大臣の御発言の真意はそこにあるのかもしれませんけれども、あの発言自体に対しては、まず中国が非常に疑問を持っております。そういう不当な侵略を、段階的にもやればそれを認めようということは国際正義に反する。だから大臣の発言に対しては、中国並びにその周辺の国は相当の疑問を持っているということを大臣に申し上げておきたいと思います。  やめると言いますからこれでやめますが、六月十二日のジュネーブにおける軍縮会議であなたはいいことを言われた。ここにも記録がありますから一言言うのだが、それは、世界の平和は何よりも米ソの二つの国の指導者の掌中にある。これは、あなたにしては実に立派な発言ですよ。そのとおりなんだ。今まではどうも一方的にソ連を非難した。日米安保に縛られて、アメリカに対する批判というものは日本政府は非常に少なかったけれども、初めてあなたは対等の立場で二つの国の責任を追及された。これがいいのだよ、非常にいいのだ。私は褒めようと思ったのだけれども、しかし政治というものは言葉じゃない、ゼスチャーじゃない、政治は行動なのだから、これだけ言ったからにはこれを具体的に行動に示してもらわなければならぬ。あなたの発言を一体どう行動に示す意向なのか、示されたのか、これを聞いておいて私の質問を終わることにいたします、関連質問でありますから。
  44. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 確かに演説は、演説しっ放しでは意味がないと思うので、後フォローアップをしておりまして、段階的な核実験禁止を提案しておりますが、今まさにその我が国の提案につきまして各国で議論を進めていただいておる、各国のある程度の評価もいただいておるので、これをさらに前進をさせるためにひとつ一層頑張りたい、こういうふうに思います。
  45. 小林進

    ○小林(進)委員 関連ですから、これで終わります。
  46. 中島源太郎

    中島委員長 次に、高沢寅男君。
  47. 高沢寅男

    ○高沢委員 ただいま小林委員から、カンボジア問題の外務大臣の三項目提案のお尋ねがありました。私も、それを受けてまずお尋ねしたいと思います。  あの三項目提案について、ASEANの諸国はその会議で皆承知しておられるわけですが、中国なりあるいはベトナム、これらの国に外交上のルートを通じてあの提案を説明される、相手の態度を求めるというふうな措置をとられたかどうか、いかがでしょう。
  48. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 あのASEANの拡大外相会議では説明をいたしまして、ASEAN諸国はもちろんでございますが、アメリカ、カナダ、オーストラリアあるいはニュージーランド等の支持を得ました。同時に、これは大事な提案でございますから、中国とベトナムにも、提案すると同時に外交ルートを通じまして説明をいたしました。中国は、この提案を感謝しそして評価する、こういうことであったと報告を受けておりますし、またベトナムにつきましては、現地の大使を通じまして説明をさせましたが、日本がとにかくこの提案をベトナムにまず知らせてくれたということについてはありがとう、こういうことで、その後この提案自体に対する評価等については触れていない、こういうふうに聞いております。
  49. 高沢寅男

    ○高沢委員 ベトナムが外務大臣の三項目提案を聞いた、それに対して、では彼らはどういう態度や方針を出してくるかは、いわばこれからの問題ということになろうかと思いますが、それとの関連で、ベトナム軍がカンボジアから完全に撤退する、そのときにはカンボジアに一種の民族和解政府というものが実現するというふうなことに当然なるだろう、そういうことを見通して提案されている、こう思います。ただ、現実にあのカンボジアで、あの歴史を含めて、ポル・ポト派を含めたそういう民族和解の政府が果たしてできるとお考えなのかどうか、その辺の三項目提案の実現の見通しについては、大臣はどのようにお考えですか。
  50. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本としましては、カンボジアに自主独立政権ができるにはどういう方法が最も具体性があるか、現実性があるかということについては、かねてからいろいろと検討もしたわけでございます。そして、そのために日本としては協力もしなければならぬ、こういうふうに判断をしておったわけでございますが、昨年、実は御承知のASEANの外相のアピールというのが出されたわけでございます。これは、いわばカンボジアの段階的な平和回復あるいはまたベトナム軍の撤兵、そしてカンボジアにおける自主独立政権の樹立、こういう方式でございますし、選挙あるいはまたいわゆる国際監視軍の設置、そういうものも含めたアピールが出されたわけで、これは我々詳細に検討した結果、やはりこのアピールというのは非常に現実性を持っておるのじゃないかというふうに判断をしたわけでありますし、同時にまた、このアピールに対しまして、最近もインドシナ三国の外相会議等も行われて見解が出されておりますが、このアピールに対してインドシナ三国、ベトナムが否定をしていない、こういうこともあって、これなら可能性としては道はあるのじゃないか、これを実現させることに日本がひとつ手をかす、推進力になり得たら、日本としてもカンボジア問題に具体的に貢献することにつながるという判断で、実は三つの提案ということで提出をいたしました。  これは各国ともいろいろと検討したようでございますが、このアピールを実現するための非常な推進力となる、非常な支えとなるということでASEAN諸国が特に評価をしていただいて、そして日本の努力をたたえていただいたようなわけでございます。我々は、このASEANの評価が出ましたけれども、問題は、いまお話しのベトナムがこれをどういうふうに評価をするかということに問題があると思いますが、我々としても、せっかくベトナムとの間にも外交ルートがあるわけですから、その外交ルートを通じましてベトナムに対しても日本立場を率直にそして十分説明をして、ベトナム側の理解も求めていきたい、こういうふうに思います。
  51. 高沢寅男

    ○高沢委員 私の見るところでは、ごく端的に言えば、ASEAN側のこのカンボジア問題の解決の仕方は、まずベトナムは撤兵せよ、そしてその後でいろいろな処理をするという、これは一種の入り口論です。ベトナム側に言わせれば、まずポル・ポト派に対する中国の援助をやめる、そうすれば撤退するのだ、これは出口論です。その入り口論、出口論というのはいかにも水と油のような関係かもしらぬが、しかし本当に話し合う意思があれば、どこかで必ず折り合うということになろうと私は思います。その折り合うために、我が国政府としていろいろな役割をひとつ発揮しよう、今度の外務大臣の三項目提案というのは、そういう一つの意図を持って出されたものじゃないかと私は思いますが、その点ではひとつ今後ともそういう御努力をお願いしたい、こう思います。  時間の関係で次へ進みますが、防衛施設庁、見えておりますね。施設庁にひとつお尋ねしたいのは、これはことしの六月末ですが、アメリカの下院が一九八五年の軍事建設歳出法案というものを可決、決定した。その際に、そこに一つの条件のようなものがついていて、その軍事建設歳出法案の中身としては、三沢基地へF16を配備するというふうなことがその中に含まれているわけですが、それをやるには、今度は日本が昭和六十年度の予算を組むが、その六十年度の予算で昭和五十九年度の三沢基地建設の施設関係の予算よりずっと大きな予算を組むようでなければF16の配備は凍結するという、一種の条件つきといいますか、そういうふうな下院の決定であった、こういうニュースの報道があります。  これは一つは、報道が事実かどうかということ。それからそれに関連しまして、三沢の基地の施設整備の五十九年度の予算はどのくらいの額であったのか。それから、それとの関係で今度は、六十年度の予算編成はこれからでありますが、アメリカの言うような、五十九年度をずっと上回るような施設整備の予算を要求される、そういう施設庁のお考えかどうか。その辺のところを、全体をひとつまとめて御説明願いたいと思います。
  52. 千秋健

    ○千秋政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生御指摘の、米下院におきます審議の状況でございますが、これにつきましては私どももそういう情報を聞いておりまして、先生御指摘のとおりでございます。  それで、私どもの五十九年度、今年度のF16関係の、三沢におきます提供施設整備費でございますが、これは歳出予算で六十四億五千四百万円を計上しております。その中身の主なものは、家族住宅二百四十八戸、隊舎四棟、その他消音装置等の施設整備でございます。  それで、六十年度につきましてのお話でございますが、私ども、概算要求につきましてこれから検討するということでございまして、この施設整備費につきましては、毎回申し上げておりますが、毎年度、米側の施設の状況、また私どもの財政状況、いろいろ勘案しまして、自主的にこちらで決めてまいりますので、そういう米側の議会におきます情報等についても留意はしておりますが、これから私どもで検討して決定してまいりたい、こういうふうに考えております。
  53. 高沢寅男

    ○高沢委員 今の防衛施設庁のお答えに関連して、私は、ここで外務大臣にひとつ政治的な判断としてお尋ねするのですが、こういうふうな六十年度の予算で、三沢の基地の施設整備にもっとたくさん予算をつけなければF16が行くのは凍結するぞというようなアメリカ側の決め方は、もちろん来てくれなければ我々としては結構だ、こういう考えですけれども、いずれにせよそういうふうな決め方は大変な内政干渉というか、日本政府の予算編成に対する非常に恐喝的な態度だと私は思いますが、大臣、これは政治的にどのように御判断なさるか。そういうふうなアメリカの予算の決定の仕方や日本に対する政策要求の仕方は、まことに不当であるということになるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  54. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 アメリカの下院の歳出委員会で、日本の昭和六十年度予算において、F16三沢配備計画関連経費が昭和五十九年度予算中の在日米軍施設改善関連経費の水準を超える追加分として含まれているとの通知が歳出委員会になされない場合には、使用を禁止するとの条件が設定されておるということは承知をしております。  また、上院における法案においてはこのような条件は付されておらないわけでございますが、御指摘の下院のこうした修正案の動向については、今後の推移を見守っていく必要があると思います。いずれにしましても、政府は、予算の編成については政府の自主的な判断によって決めるわけでございますし、あくまでも地位協定の範囲内で、自主的立場で対処していくという所存でありまして、この方針には全く変更はありません。
  55. 高沢寅男

    ○高沢委員 今、いわゆる予算編成のマイナスシーリングということが大変問題になっておりますし、私たちとしては、それこそ軍事関係の予算も聖域ではない、マイナスシーリングをやるならこれも大いに減らすべきだ、こういうような立場でやっておりますが、三沢の基地整備についても、アメリカ側の態度がどうであれ、これはひとつ毅然とした態度で予算編成に当たっていただきたいということを要望したいと思います。  次に、リムパックの問題で、これもまた防衛庁に、上田訓練課長ですか、ひとつお尋ねをいたしたいと思います。  リムパックの軍事演習参加はことしで三回目であるということで、私の見るところでは、一回目、二回目、三回目と、だんだん参加する我が国の軍艦の数もふえてきた、飛行機の数もふえてきた、兵員の数もふえてきた、こういう経過をたどっておると思いますが、ことしはどのくらいの隻数の軍艦あるいは飛行機あるいは人員がこの演習に参加したのか、それをまずお尋ねします。
  56. 上田秀明

    ○上田説明員 御説明いたします。  本年のリムパック84には、海上自衛隊から護衛艦「くらま」「あさかぜ」「さわかぜ」「はつゆき」「しらゆき」の五隻、それから航空機といたしましては、対潜哨戒機P3C四機及びP2J四機、計八機が参加しております。合計の人員でございますが、約千四百名でございます。
  57. 高沢寅男

    ○高沢委員 それでは、ことしのそれとの対比で、第一回目は何隻、何機、人員はどのくらい、その対比を見たいと思いますが、第一回目はどうでしたか。
  58. 上田秀明

    ○上田説明員 リムパック80、第一回目に参加したものでございますが、海上自衛隊から護衛艦「ひえい」及び「あまつかぜ」の二隻でございます。それから、航空機は対潜哨戒機P2J八機でございます。人員は約六百九十名でございます。
  59. 高沢寅男

    ○高沢委員 先ほど言いましたように、回を重ねるごとに日本の参加の規模が大きくなってくる、こういうふうなことでありますが、この新聞の報道等によれば、アメリカは最大の兵力で参加しているわけですが、そのアメリカは別として、あとの豪州やニュージーランドあるいはカナダ、こうしたリムパックに参加した国の軍艦や飛行機や人員の数に比べて、もうことしは日本が一番大きくなった、こういうふうに言われておるわけですが、その辺の比較はどうですか。
  60. 上田秀明

    ○上田説明員 今年のリムパック84に参加いたしました各国の参加状況は、米国から艦艇六十五隻、航空機二百二十二機でございます。カナダからは艦艇、駆逐艦等四隻、航空機はCP140オーロラ等五機でございます。それからオーストラリアからは駆逐艦等艦艇五隻、航空機はP3C三機。ニュージーランドからはフリゲート艦カンタベリー一隻、航空機はP3B二機でございます。
  61. 高沢寅男

    ○高沢委員 今の御説明で概略わかりましたが、確かに豪州やニュージーランドやカナダに比べて日本の参加の兵力がそれよりも大きいという段階へ既に来ておる、こういうことになったと思います。これは私の考えでは、リムパックの五カ国の合同演習であるとはいっても、その中で日米関係というのが実際上の中軸の役割を果たすという段階まで来ている、こう思うわけです。これは私の判断です。そうなってきて、これから二年後にまたある、さらに二年後にまたある、こういうふうに進んでいったときに、このリムパックに参加する日本の自衛隊の規模は一体どこまで大きくなっていくのか、そして太平洋地域全体における日本の自衛隊の果たす軍事的役割はどこまで大きくなっていくのか、私は言うならば限界がないという感じがするのですが、この辺は防衛庁としてはどういう将来への判断を持っておられるか、お尋ねしたいと思います。
  62. 上田秀明

    ○上田説明員 本年のリムパック84には、ただいま申し上げましたとおり護衛艦五隻、航空機につきましては、機種がP3Cに変わってはまいりましたけれども従前より八機でございます。護衛艦の方は五隻参加させたわけでございますが、これは従前の参加が、例えば80のときは護衛艦二隻、82のときは護衛艦三隻でございましたけれども、今回の参加五隻というのは、一つの護衛隊群としての行動、部隊レベルの行動ができる一つの最低のユニットという考えでございまして、これを参加せしめることによって、個艦の戦技の向上とともに一つの部隊としての戦技向上に役立つという観点から今回は参加させたわけでございますが、今後のリムパックがどういうふうになってまいりますか承知しておりませんので、今後の点につきましては方針は未定であるということでございます。
  63. 高沢寅男

    ○高沢委員 確かに訓練課長さんに、今後のことをこうすると言えと言っても無理かと思いますが、この辺は国務大臣として、今後のこうしたリムパックの合同演習はどんどん日本の参加が大きくなっていくということで果たしていいのか、大臣の御所見いかがでしょう。
  64. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 先ほどから御説明もございましたが、このリムパックは、米海軍第三艦隊が計画をして外国艦艇等の参加を得て実施している総合的な訓練の一つでありまして、その目的は、参加艦艇等の艦隊レベルでの能力評価を行い、個々の戦闘場面における戦闘技術の向上を図るものでありまして、特定の国を仮想敵国として行われる訓練ではないと承知しております。  いずれにしましても、本件訓練において海上自衛隊が行う訓練は、我が国の個別的自衛権の行使を前提としたものであり、集団的自衛権の行使を前提として訓練を行うということは考えない、そういう意味において、憲法の枠内あるいはまた日米安保条約の枠内において行っておるものである、こういうふうに承知しております。
  65. 高沢寅男

    ○高沢委員 大臣、今リムパックについての用意された想定問答のお答えを全部述べられたわけですが、ただ今度の演習では、これも報道によれば、アメリカの空母エンタープライズを護衛するという形で日本の護衛艦五隻がそういう護衛行動に参加しておる、こう聞いているわけです。そして、その場合には、今度は敵が攻めてくるのに対して我が方の軍をいかに防衛するかというそういう想定でやっていて、敵の方は何かオレンジというふうな部隊になって、我が方はブルーになって、そのオレンジの方はアメリカ軍、それに豪州、ニュージーランド、カナダというようなところ、我が方はアメリカと日本というような組み合わせでやっておるというふうに聞いておりますが、オレンジの方のあらわす標識は、旗にかまとつちと星がある。これは、だれが見たってソ連を意味するようなオレンジの旗で、そのマークで敵味方の、相手が攻撃してくるのをいかにして排除するか、撃沈するかという演習もされた、こう聞いておりますが、そういう実態であった、こう見て間違いないですか、いかがでしょう。
  66. 上田秀明

    ○上田説明員 ことしのリムパックは五月十四日から六月二十八日まで行われたわけでございますが、いろいろな段階がございます。その段階のうちの一つ、第二の段階で、サンジエゴからハワイにかけて艦艇が移動して訓練を行ったわけでございますが、その際、対抗形式の訓練を行っております。参加艦艇等がブルーとオレンジに分かれて訓練を行っております。海上自衛隊の部隊は、米海軍とともにブルーに属しておりました。他の国々がどういう属し方をしておったかということについては、直接的に関係しておりませんのでつまびらかにしないところでございます。  ちなみに、今先生御指摘のように、オレンジの方の旗が云々という御議論があったわけでございますが、たしか先般、七月四日の参議院外交・総合安保持でも御議論があったかと思いますが、その点につきまして防衛庁から米海軍に確認をいたしましたところ、かまとハンマーがデザインされている標示ないし標識を今回のリムパック84の際に使用した事実はないという回答を得ているところでございます。
  67. 高沢寅男

    ○高沢委員 それでは、標識はそういうことはなかったということですから、それはそれとしてお聞きをいたしましょう。  ただ大臣、今のようなあり方は、日米安保のアメリカが日本を守るという趣旨とははるかに違って、日本の護衛艦がアメリカのエンタープライズを守る、こういう段階になって、その訓練、演習が行われている、こう思うわけです。これはもう物事が逆になっておる、こう思うわけです。いわゆるシーレーンの論議もまた、実態はまさにそういうものではないかと私は思います。  そういたしますと、この場合は、やはりアメリカなりこの演習参加の各国は、いざというときの相手はソ連である、こういう想定に立って、そしていかにして各国のいわば連合艦隊が共同の行動をとるかという演習であるとすれば、私は、その事柄自体がもう集団自衛権発動の訓練であるし、明らかに仮想敵国を想定して、それに対する戦闘の場面を想定した演習、訓練であると言わざるを得ないと思います。本来、このリムパックについて政府が繰り返し、先ほど大臣もずっと述べられましたが、そういうものではない、個別自衛権の立場で戦闘の技量向上のための訓練をしているのだという御説明ですが、とてもとてもそういう説明では通らぬ段階へ来ておる、こう考えるわけですが、いかがでしょう、大臣
  68. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは防衛庁の説明のとおり、やはり日本のリムパック参加はあくまでも個別的自衛権の範囲内、同時にまた、安保条約のいわゆる効果的運用という立場で参加しておる、その大きな枠組みを超えるものではない、こういうふうに理解しております。
  69. 高沢寅男

    ○高沢委員 では大臣、このことはいかがですか。御承知のとおり中曽根総理はこう言われましたね。アメリカの核トマホークを積載した軍艦、それと我が国の自衛隊が共同行動の訓練をする、これは公海上ならば可能である、公海上ならば非核三原則に抵触しない、こういうことを言われたわけですが、これがもし戦艦ニュージャージーがやってくる、ニュージャージーは間違いなく核トマホークを積載しておる、そのニュージャージーと日本の護衛艦が今言ったようなある海域において、ソビエトの海軍と戦うという一つの想定に立って戦闘訓練が行われる、我が国の護衛艦がニュージャージーを護衛する、こういうふうな場面が出てきたとき、これは個別的自衛権で、ただ単なる技量の向上のためにやってますということで済むのかどうか。大臣、御見解いかがですか。
  70. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いろいろと演習の態様というのはあると思いますけれども、いずれにいたしましても、我が国のそうした演習というのは有事の際に備えての対処、演習でございますし、それも、あくまでも私は先ほどから申し上げましたような個別的自衛権の範囲内において行わなければなりませんし、あるいはまた、安保条約の効果的運用という立場で行っていくわけでございますから、それを超えるということはあり得ないわけでございます。
  71. 高沢寅男

    ○高沢委員 私は、もう明らかに超えている、こういう立場でお尋ねをしているわけですが、仮に二年後またリムパックがある、日本の自衛隊が参加する、今度はリムパックのアメリカの中心はエンタープライズやカール・ビンソンだったわけですが、二年後に行ってみたらそこにはニュージャージーがいて、そのニュージャージーを含めて護衛の戦闘訓練が行われるというようになってもそれでも結構だ、こういうお考えですか、いかがですか。
  72. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 二年後どうなるかということは、私も外務大臣として想定できる問題じゃありませんし、今おっしゃるようにニュージャージーが核装備の能力は持っているとしても、果たして核を積むかどうかということはこれは別問題であります。いずれにしても、いろいろの軍艦だとか艦艇が出動するでしょうけれども、それはことしのリムパックの延長線上で、日本としてもあくまでも個別的自衛権の中で参加するわけでございますから、それを超えるということはあり得ないし、またあるべきことでもない、こういうふうに思います。
  73. 高沢寅男

    ○高沢委員 何をお尋ねしてものれんに腕押しで、言葉のやりとりは平行線で私も大変むなしい気がいたします。しかし、そのむなしい間に現実はどんどん進んでおる、これを私は恐れるのですよ。現実がどんどん進んでいって、何か一つの間違いから何かがどうなったということを私は恐れるから、お尋ねするわけです。  それじゃ、もう一つだけこれに関連して。米韓のチームスピリット訓練は毎年行われていますね。これに我が国の自衛隊も今度は共同して参加するというふうなことはゆめゆめあるまいと思いますが、そういうことは一体あり得るのか、絶対にないということなのか、いかがでしょうか。
  74. 上田秀明

    ○上田説明員 御指摘のチームスピリットは、韓国防衛を念頭に置いて米軍と韓国軍とで行われる演習訓練であるというふうに承知しております。したがいまして、我が国の自衛隊がそのような目的を持った訓練、演習に参加するということはございません。
  75. 高沢寅男

    ○高沢委員 わかりました。その韓国防衛ということ、それに我が国の自衛隊が参加することになれば、どう見ても集団自衛権ということになるから、これはありません、こういうお答えだったと思います。それでは三海峡封鎖、これは中曽根総理はアメリカに行って、いざというときはやると言っているのです。その三海峡封鎖の中には、明らかに対馬海峡があるわけです。対馬海峡の封鎖はいざというときはやる、こう中曽根総理は言っておりますが、しかしそれをやるには、日本の自衛隊のワンサイドゲームではできないと思うのです。対岸の相手側の韓国の軍隊との共同行動でなければこの対馬海峡の封鎖は有効的にはできない、こうなってくると、こういう共同訓練を日本韓国の軍隊との間でやるということは果たしてあり得るのか、あるのか、いかがでしょう。
  76. 上田秀明

    ○上田説明員 自衛隊は、防衛庁設置法六条十二項の規定がございまして、「所掌事務の遂行に必要な教育訓練を行うこと。」というものによりまして、外国との共同訓練を含めましていろいろな教育訓練を行ってきているわけでございます。したがいまして、単にそこだけを見ますれば、いかなる国との共同訓練も可能ということになりますけれども、そのような御答弁も申し上げているところでございますけれども、今度は現実にどのような訓練を行うことが今申し上げました自衛隊の所掌事務の遂行に必要かというような観点を勘案して、なおかつ訓練内容その他を勘案してまいりまして、さらには政治的な判断というようなものが加わってくることになっておりますので、韓国の軍と日本の自衛隊が共同訓練をするということについては全く考えられておりません。
  77. 高沢寅男

    ○高沢委員 これを私はもう一度だめ押しをしてみたいと思いますが、初めてリムパックへ日本が参加するということになったときに随分国会で論議されたわけです。そのときに、今上田課長、あなたの言った我が国の自衛隊の所掌事務の遂行に必要な訓練には参加するのだ、ただし、必要な所掌事務といってもそれにはおのずから限界があり範囲がある、じゃその限界とは何だ、こういうやりとりがありまして、当時の防衛庁の佐々参事官が国会の答弁の中で二つのケースを具体例として挙げている。明らかにある国を仮想敵として、それに対して戦うという訓練に参加することは所掌事務の範囲を超えておる、あるいはまた核戦争に参加する、核兵器を持ってやるというふうな戦いの訓練に参加する、これも所掌事務の範囲を超えておる、こういうふうな答えをしておるわけですが、この答え方については今でもそのとおりであるというふうにお考えかどうか、いかがですか。
  78. 上田秀明

    ○上田説明員 先ほど申し上げましたように、所掌事務の遂行ということになりますと日本防衛ということでございますので、日本防衛に必要な例えばアメリカとの共同訓練、この際、日本有事の際の想定を仮に立てましていろいろな共同訓練を陸海空とも行っていることは、御承知のとおりでございます。他方、それと離れまして、特定の国を守るとかあるいは特定の国から攻撃があったとかというようなことを想定して行う訓練、これは行えないということは従前から御答弁しているとおりでございます。  それから核の問題でございますけれども、リムパックはもともと通常兵器による訓練でございます。自衛隊の方の訓練では、核をみずからが使用するというような訓練は一切行っていないわけでございまして、この点については変わっておりません。
  79. 高沢寅男

    ○高沢委員 そうすると外務大臣、もう一度戻りますが、先ほどの中曽根総理の、それが公海上であるならば核トマホークを装備したアメリカの軍艦と日本の自衛隊が共同訓練をやってもいいんだというお答えは、今の核を想定した戦争、実際発射するのはアメリカかもしらぬけれども、その発射するアメリカの軍艦を日本の自衛隊が護衛する、共同行動をとる、これはやっていいんだというのは、今の上田課長のお答えから見ても重大な逸脱ではないか、私はこう思いますが、いかがですか。大臣の御見解をお願いします。
  80. 小和田恒

    小和田政府委員 先ほど基本的な考え方につきまして大臣からお答えしたわけでございますが、要するに、日米安保条約第五条に基づいて、我が国に対する武力攻撃があったというような事態にどういうふうに対処するかという見地から自衛隊が訓練を行って練度を高めておくということは当然許される、これは我が国の個別的な自衛権の行使というものを前提にした訓練行動である、こういう前提から出発しているわけでございます。その場合に、我が国といたしましては、日米安保条約第五条にはっきりと書いてございますように、自国の憲法上の規定及び手続に従ってどういう共同対処行動をとるのだということでございますので、自衛隊は当然個別的自衛権の範囲内だけで行動するということになるわけですが、他方アメリカは、第五条に基づいて集団的自衛権の行使として我が国の防衛に参加するわけで、我が国に対する武力攻撃に対する共同対処というような事態を想定いたしまして、そういう事態における共同対処のあり方がどうなるかという意味での訓練ということを考えますと、米艦に対する攻撃があった場合に、我が国が我が国の個別的自衛権の行使としてそれに対する防衛を行うことができる、こういうことを先ほど大臣が申し上げたわけでございます。  そういう前提から申しますと、公海上においてアメリカが日本を防衛するために共同対処を行う態様のあり方というものは、あるいはその武器がどういうものであるかということは、これはアメリカ側の防衛の問題でございまして、我が国としては、アメリカ側の軍艦がたとえ核兵器を装備しておろうと、あるいは通常兵器を装備したものであろうと、とにかく第五条に想定しているような我が国に対する武力攻撃があったときに我が国が日本を守るために何をするか、その見地から日本を一緒に守っておる米艦をどういうふうに防護するかという問題でございますので、先ほど委員が御指摘になったような中曽根総理の答弁になったのだ、こういうふうに理解しているわけでございます。
  81. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今、条約局長が詳細に答弁したとおりであると思います。
  82. 高沢寅男

    ○高沢委員 それでは、もう時間が来ましたので、最後に一言見解を表明して終わります。  先般、つい最近のニュースで、ベトナム戦争の北爆の一番のきっかけになったトンキン湾事件は、何かベトナムの水雷艇がアメリカの軍艦に攻撃をかけた、そこでアメリカはベトナムをやったんだ、こう言われてきた。あれが全くのでっち上げであって、ああいうことは全くなかったということが最近になって明らかになってきたわけですね。こういうふうに見ますと、相手がやったからやるんだという話が、実はやらないのにこっちからやっておいて、そして一つのあれをつくり上げるというふうなことがしょっちゅう戦争の場合にはあるわけであって、殊にアメリカの今の基本的な戦略がいわゆる同時多発戦略ですから、仮にヨーロッパや中東で何か起きたときに、アジアでは何もないけれどももう始めるというふうな事態が実際にあり得る。  そのときに、日本の自衛隊がそれと一緒に参加するということになれば、もうそのときは個別的自衛権とか集団的自衛権とか論議している暇もない。そのときはたちまち日本は、自分の意思とは別に事実上のソビエトを相手にする核戦争に参加するというふうな事態になる。私は、こういうことになってはいかぬという立場で、いろいろそのための歯どめとして、これは困るじゃないか、これはやめるべきだということでお尋ねしているわけでありまして、そういう点からすれば、きょうの私の質問に対して政府側の答弁は大変不満足であると言わざるを得ないと思います。しかし、そういう見解を表明いたしまして、今後ともそういう危険性がない方向で、我々もやりますが、皆さんもぜひひとつ御努力をお願いしたいと要望しまして、終わります。
  83. 中島源太郎

    中島委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時四分休憩      ――――◇―――――     午後一時二分開議
  84. 中島源太郎

    中島委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。玉城栄一君。
  85. 玉城栄一

    ○玉城委員 私は、米軍基地の被害の問題について二点ほどお伺いしたいわけでありますが、その前に、大変突然で大臣に恐縮でありますが、沖縄の方言にワッターチャスガという言葉があるわけです。このワッターというのは、私たち、我々はという意味ですね。チャスガというのは、一体どうすればいいか、そういうような意味なんですね。ワッターチャスガというのは、一体我々はどうすればいいのか、いわゆる一種のやりきれなさといいますか、あるいはもどかしさといいますか、あるいは悲哀も込めて、ある面では怒りも込めて、一体どうすればいいのか、こういう感覚を表現した言葉なんです。  もう大臣も御案内のとおり、在日米軍基地の五三%が一県に集中的に存在している。したがって、日常的に事故が続出する。何回もこの委員会でも取り上げてきているわけでありますが、いわゆる演習、事故、そして抗議、さらにまた演習、事故、抗議、こういうパターンの繰り返しなんですね。そのたびに、米軍側にしましても政府にしましても、二度とこういうことはしない、注意する、そういうことを常におっしゃるわけですけれども、また裏切られる。そういう意味で、さっき申し上げましたワッターチャスガという、地元の住民はそういう言葉を口にするわけですね。どうでしょうか。そのワッターチャスガという、やりきれなさ、もどかしさ、あるいは悲哀といいますか、怒りといいますか、あるいはせっぱ詰まったそういう感覚を表現するこの言葉について、大臣としてどういうふうにお感じになるのか、お伺いいたします。
  86. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 沖縄の昔からの独特の方言であろうと思いますが、現実の沖縄の姿も、まさにワッターチャスガに表現されているような気持ちをやはり持たれる方も随分あると思うわけであります。しかし、同時にまた、沖縄に米軍基地が存在する、そのことによって日本の平和と安全が確保されるということにつながっていくわけでございまして、日本政府としましては、何とかしてそうした沖縄の県民の皆様方の理解を得、また問題が起こったときはそれを積極的に解決していく、やはりそのための政策、施策等も行っていかなければならない。この辺はまさに非常にきめの細かい対策をとって、そうした気持ちが全体的に蔓延しないように努力をしていかなければならない、それがまた政治の責任でもあらう、こういうふうに考えております。
  87. 玉城栄一

    ○玉城委員 今申し上げましたワッターチャスガという言葉、沖縄の持つ一つの苦悩を端的に表現している言葉でもありますので、ぜひひとつ大臣も覚えておいていただきたい、このように思います。  それで、具体的にちょっとお伺いしたいのですが、その前に運輸省の方に、航空法上、航空機が民間の上空を飛行する場合、一定の高度についての規制があると思うのですが、その点を御説明いただきたいと思います。
  88. 赤尾旺之

    ○赤尾説明員 お答えいたします。  飛行中の航空機が事故を起こした場合に、できるだけ損害の少ない地点に不時着をするなどの応急措置がとれるような余裕を持った高度で飛ぶように、パイロットに対して最低安全高度の規制というものをしております。具体的に申しますと、航空法第八十一条によりますと、「航空機は、離陸又は着陸を行う場合を除いて、地上又は水上の人又は物件の安全及び航空機の安全を考慮して」一定の「高度以下の高度で飛行してはならない。」と規定されておりまして、これを受けまして航空法施行規則第百七十四条におきまして、まず、有視界飛行で飛ぶ航空機につきましては、飛行中、その動力装置が停止した場合におきましても、「地上又は水上の人又は物件に危険を及ぼすことなく着陸できる高度」とされております。  さらに具体的に、人または家屋の密集中の上空にありましては、当該機を中心といたしまして水平距離六百メートル、この「範囲内の最も高い障害物の上端から三百メートルの高度」。次に、それほど人口が稠密でないところ、まばらなところですとか大海ですとか砂漠、こういったものにつきましての規制につきましては、地上の状況によりまして違いますけれども、「地表面又は水面から百五十メートル以上の高度」もしくは「人又は物件から百五十メートル以上の距離を保って飛行することのできる高度」、こういったもののうち、いずれか高い高度で飛ばなければならないという規制をしております。
  89. 玉城栄一

    ○玉城委員 ただいまの航空法上、人または物件の安全のためには、高度を一定に規制する、住宅密集地域においては三百メートルだ、こういうお話ですね。その規制に違反して飛ぶ飛行機が、もしその民間の住宅に被害を与える場合はどうなるのですか。
  90. 赤尾旺之

    ○赤尾説明員 当該機が管制圏などを飛びまして、直接管制機関と交信がある場合、そしてこの航空機を管制塔あるいはレーダーなどを使いまして認定できる場合は注意をして、高く上がりなさい、こう言うこともできますけれども、それ以外、非常に遠いところはなかなか航空機を特定できないのが現状でありますけれども、法の規則によりますと、これに違反したものにつきまして罰則の適用がございます。
  91. 玉城栄一

    ○玉城委員 罰則の適用並びにその被害者に対するいろんな問題も出てくると思いますね。  そこで、今度は外務省の方に伺いたいのですが、栗山さん、今度北米局長になられて、またよろしくお願いしたいのですが、今月の五日に沖縄の読谷村で米軍の大型ヘリが超低空で飛行しまして、民家の庭木だとかあるいは室内の散乱とか、そういう事故が起きているわけですが、その事実関係を御報告いただきたいのです。
  92. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 事実関係につきましては、先ほど玉城委員の方からお話ありましたように、私どもの方で承知しておりますところは、七月五日の十二時五十分ごろ、沖縄の第三六海兵グループに所属しております大型ヘリ中隊のヘリコプターが、人員輸送のためトリイ通信施設内のヘリポートに着陸する際に、通常とっております海上からのコースとは異なった陸上の民間地域の上空から進入したため、その際生じました風圧によって下の民家の庭木等に損傷を与えた、こういう事件であるというふうに承知しております。
  93. 玉城栄一

    ○玉城委員 今人員輸送とおっしゃいましたけれども、どういう人員輸送なのか、お伺いいたします。
  94. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 どういう人員輸送であったかということにつきましては、そういう米軍の具体的な行動でございますので、私どもの方としましては承知しておりません。
  95. 玉城栄一

    ○玉城委員 これは、この委員会でもこれまで取り上げてきましたけれども、例の悪名高いグリーンベレーというのですね。その輸送の際にこういう事故を起こしている、こういうことなんですが、先ほどもありましたとおり、そういう民間に被害を与えるような超低空で大型ヘリが飛行するということは不法行為じゃないのですか。
  96. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 厳密な意味での不法行為であるかどうかということについては、にわかにちょっと申し上げかねますが、もちろん、一般的なそういう安全というものを考慮して飛行しなければいけないということは、これは米軍といえども当然のことでございますので、本件の事故の発生につきましては、私どもの方も非常に遺憾なことであったというふうに考えておりますし、米軍側におきましても、私ども承知しておりますところでは、既に現地におきまして、米軍の当局者の方から遺憾の意の表明があったというふうに伺っております。
  97. 玉城栄一

    ○玉城委員 もう一つ、この点の確認をしておきたいのですが、これは少なくとも合法的な行為とは言えませんね。その点、いかがでしょうか。
  98. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 これはちょっと一般論として申し上げさしていただきたいのでございますが、委員承知のように航空法の関係につきましては、米軍に対しては特例法がございまして、いろいろな面におきまして航空法の適用除外ということがございますので、先ほど私が、厳密な意味でアメリカの今回の行動が不法行為であるかということについてはちょっと申し上げかねるということを申し上げましたのは、そういうことが念頭にあって申し上げたわけでございます。  ただ、他方におきまして、そういう航空法の適用除外になっておる米軍といえども、一般的な安全上の考慮というものは十分守りながら行動しなければいけないということ、これまた事実でございますので、そういう意味から申し上げまして、今回のような事件が発生した、通常であれば海から入ってくるはずのものが、異なる進路をとって低く入ってきたためにそういうヘリの下にある民家に損害を与えたということは、非常に遺憾なことであるというふうに考える次第でございます。
  99. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、私最初に申し上げましたとおり、沖縄の言葉でワッターチャスガということを申し上げたのは、一つはここにあるわけですね。事故が起こる、遺憾の意を表明する、また事故が起こる、こういうパターンは、外務省が本当に主権国家として、外国軍隊が主権者である国民に被害を与えていることについて、本気になって米側に対してきちっとやっているのか、それをやっているけれどもそういう事故を起こすというのは、結局これはなめられているのか、あるいはそんな事故はやむを得ない、そういう感覚でいらっしゃるのか、それはいかがですか。
  100. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 沖縄の県民の方々に、米軍の存在、駐留しておるということに伴いましていろいろな面で御苦労をおかけしておる、あるいは御迷惑をおかけしておるということは、政府としても十分認識しておるところでございます。したがいまして、今回のような事件を含めまして、一般的に米軍が当然要求されるところの規律、住民の生活等に対するいろいろな安全への考慮ということも含めまして、この種の事故が起こらないように行動してもらわなければならないということは、十分政府としては外務省としても認識しておる次第でございますし、従来からも折に触れて必要な都度、米軍に対しましては外務省の方も注意を喚起する等、必要な措置をとってきておる次第でございます。  決して、そういうことはやむを得ないというふうに思っているわけでもございませんし、私どもといたしましてはそういう意味におきまして、米軍の方も、そういうことに注意を払って行動しなければならないということ自体は十分認識しておるというふうに確信しておるわけでございますが、にもかかわりませず、時折こういう非常に遺憾な事故が起こるということは極めて残念なことである、今後とも必要な措置、申し入れということは繰り返し米軍側に対しても申し入れて、アメリカ側も誠意を持ってこの種の事故が再発しないように、厳に軍の中の必要な措置はとってもらうということは必要だろうというふうに考えております。
  101. 玉城栄一

    ○玉城委員 これまでも私、委員会でも口酸っぱく申し上げてきましたけれども、条約があるから、協定があるから、あるいは日米運命共同体であるからとかという論理で、そのために国民が常時、時折とおっしゃいますけれども、日常茶飯事的にそういう事故による被害を受けるということは許されないと思うのです。問題は、やはり外務省の基本的なそういう姿勢に私は問題があると思うのです。ですから、さっき申し上げましたワッターチャスガという、いわゆるやりきれなさ、もどかしさ、せっぱ詰まった気持ち、そういう感覚をこの言葉で表現している。ぜひ、栗山さんも覚えておいていただきたいと思うのです。  もう一つ、今度は同じ沖縄の宮古島空港なんですが、この空港は米軍に提供した空港なんでしょうか。いかがですか。
  102. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 宮古島の空港につきましては、米軍に提供した施設、区域ではございません。
  103. 玉城栄一

    ○玉城委員 これは純然たる民間空港なんですね。その民間空港に、これは前にも取り上げましたけれども今度は五月五日、六月三十日、七月二日、十一日、四回にわたって普天間基地からのP3C対潜哨戒機が、この滑走路上一時間内外にわたって何回もローパスするのですね。こういう訓練をやっているのですね。そういうことは許されますか。
  104. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 ただいま委員の方から御質問がありました米軍の対潜哨戒機の行動につきましては、実は私どもごく最近に至るまで承知しておりませんでしたので、目下、どういう目的で何を実際にやったのかということについて照会中でございます。
  105. 玉城栄一

    ○玉城委員 栗山さんちょっと、それはきのうもちゃんと質問として申し上げてあるのですよ。まだ照会中というのはどういうことですか。きょうは十八日でしょう。ずっと前に起きた事件を今照会中というのはどういうことなんですか。ですから、そういう事実について、純然たる民間飛行場で米軍機がローパスというような訓練を行うことはできないでしょう、さっき申し上げた何回も、あるいは一時間内外にわたって。
  106. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 私は、今委員がおっしゃったような行動を現実に哨戒機がどういうふうにやったのかということについて、具体的に承知しておらないわけでございます。したがいまして、目下米軍に照会をして、至急どういうことをやったのか教えてくれということを申し入れておるところでございます。  一般論で申し上げれば、もちろん施設、区域として提供していないところで米軍機が本格的な訓練飛行をやるというようなことは、そもそも地位協定で予想をされてないことでございますので、そのこと自体もちろん問題があろうかと思いますが、果たして訓練をしたのか何をしたのかということ自体が、目下の段階では私どもの方としましては事実関係を把握しておりませんので、現在の段階で米軍機がやったことができるかできないかというようなことについての確定的な判断はちょっと申し上げかねる、こういうことでございます。
  107. 玉城栄一

    ○玉城委員 これは一般論としても答えられないのですか。純然たる民間飛行場の滑走路で米軍用機が何回もこういうローパスの訓練をする。それは一日だけでなくて何回も何日も、これは日にちは切れているわけですけれども。今の話は別にしても、そういうことはできないのでしょう。
  108. 小和田恒

    小和田政府委員 一般論についてのお尋ねでございますので私から申し上げますが、できるかできないかということについて一般的に申し上げることは非常に難しいと思います。もちろん原則的には、委員承知のように施設、区域を米軍の目的のために提供しているわけでございますから、その施設、区域内において行うことができ、かつそこで行うことが期待されているような種類の訓練ないしは行動を、その外でとることは適当ではないということは言えると思います。しかし、じゃそれ以外のところで一切米軍は行動できないのかということになりますと、その行動の個々のケースの具体的な対応、それを取り巻く状況というようなものによる面があろうかというふうに考えております。
  109. 玉城栄一

    ○玉城委員 訓練には提供できませんよ。  それで大臣に最後にお伺いしておきたいわけですが、この空港は島であるわけですが、離島ですから飛行機は住民の足ですね。最近夏場で観光客がたくさん出入りするわけです。その空港でそういうP3Cという大きな対潜哨戒機がローパスという訓練を何回も行うということ。大臣の地元の純然たる民間空港ですが、宇部空港へ来てそういうことが行われ得るのか、私はそういうことはできないと思いますが、いかがですか。
  110. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 現場の感覚がないものですから的確なお答えになるかどうかわかりませんが、一般的には今条約局長が答弁したとおりだと思います。施設、区域以外でそういうことをやってはいけないということでもない、その辺はやはりケース・バイ・ケースで判断しなければならない問題であろう、こういうふうに思います。
  111. 玉城栄一

    ○玉城委員 時間が参りましたので、先ほども申し上げましたとおり、我が国は主権を持つ独立国家として、たとえ条約があろうともそういう外国軍隊が、さっきも一つの例として申し上げましたが民間航空機であればちゃんと規制がある、それをはみ出してやって被害を与える、あるいは今申し上げました民間空港の滑走路で軍用機がそういう訓練を行う、そんな勝手なことを許してはいけない、それは外務省の基本的な姿勢に問題がある、そういうことを指摘して、ワッターチャスガという住民の言葉はそこから出てくるわけですから、ひとつその点を強く要望して終わります。
  112. 中島源太郎

    中島委員長 次に、古川雅司君。
  113. 古川雅司

    ○古川委員 安倍外務大臣に若干の質問をいたします。端的に御答弁をいただきたいと思います。  ポスト中曽根の資格を十分お持ちになる自民党のニューリーダーのお一人として、安倍外務大臣は二十回を超える一連の外遊に一段落をつけられまして、安倍外交にますます自信をお深めになったとされております。外務省内部はもちろん、各国でも評価は非常に高いということで、これは私も存じているところでありますが、一方には、安倍外交も中曽根首相の陰に隠れるケースが多いという指摘があるのも事実でございます。突然で大変失礼でございますが、秋の政局に向けて大臣は御自身で安倍外交を何点くらいに自己評価をしておられるか、御答弁をいただきたいと思います。
  114. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 特に安倍外交というものがあるわけではございませんし、中曽根内閣の外交の責任者としまして、内閣一体という立場中曽根総理に協力しながら日本の外交を進めておるわけでございますが、私も一年八カ月ほど外務大臣をやらしていただいておりまして、歴代の外務大臣の中では最も長い一人でございます。  その間全力を傾けて仕事をしてまいったわけでございますが、今非常に感ずることは、日本の世界における存在というものが日増しに重くなっているということを私は肌でもって痛感いたしております。これは一面においては、発言権が強くなったということであると思います。また同時に、国際的責任も重くなったということになると思うわけでございまして、今回もASEANの拡大外相会議に参りまして、域内の外相が六人、域外の外相が六人、もちろんその中にはアメリカあるいはカナダという国々も出席したわけでございますが、そうした全体会議で政治情勢、カンボジア問題について真っ先に意見を求められるのは日本でありまして、私から三項目の提案をいたした次第でございます。  そのように、アジアにおいてもそうですが、世界においても日本立場は重くなり、日本の発言が重くとられるようになってきたということは、それなりに日本が力をつけてきておるということであるし、日本外交がそれなりの成果を上げてきておることではないかと思うわけでございます。同時に、それだけにまたこれからも責任が非常に重くなったということを痛感いたしておるわけでございます。  特に、日本が平和外交を展開しておる、進めておるという積極的な立場で世界の平和に貢献しなければならぬということで、例えばイラン・イラク紛争に対しましてもいろいろと努力をしてまいりました。あるいは平和と軍縮の問題、特に軍縮の問題につきましても、軍縮会議等に出席をいたしまして日本の提案もいたしたような次第でございます。今後ともこうした日本の外交路線は、世界のためにますます大事なことであると認識しております。
  115. 古川雅司

    ○古川委員 自己評価の採点はおつけにならなかったわけでございますが、今の御所信を伺った上で、以下順次質問を進めてまいります。  まず最初に、去る六月四日、サミットを前に総理が核兵器使用は核保有国の勝手だと発言をいたしまして物議を醸し、その後御自身は否定をしておりますが、核兵器を使うかどうかは核保有国が選択することであり、これを条約で縛るのは核保有国の主権を縛ることで内政干渉のおそれがあるということを総理は述べているわけでございます。これは核被爆を受けた広島、長崎はもちろん、日本国民として耐えがたい発言でありまして、被爆国の総理として、多少本音とはいえ極めて不用意、不適切であると言わざるを得ないのでありますが、外務大臣としてはこの発言、この問題についてどう認識していらっしゃいますか。
  116. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 総理大臣が具体的にどういう言葉で言われたか、私も承知しておりません。核兵器を使うのは勝手だということについては、総理大臣みずから否定されておりますからそういうことはないと思います。  核というのは使うためにあるわけじゃなくて、まさに抑止力として存在しているわけであると私は思います。これを使ったら、世界じゅうが終わりになるということはみんな知っておるわけでございますから、そういう立場で核を持っている国も核を持たない国も核兵器の問題には対処していかなければならない。いずれにしても、核の軍縮を進め、そして最後には核兵器の絶滅を図っていくというのが政治の目標でなければならないと思います。そうしなければ、世界の平和が本当に安定してもたらされないというふうに私は信じております。
  117. 古川雅司

    ○古川委員 総理は発言をしておいて後に否定をしていらっしゃるわけですが、外務大臣は外国の首脳に物を言うお立場でいらっしゃいまして、これは外相にとっても非常に重要な問題であると思いますので改めてお伺いするわけでございますが、一つは、核兵器保有国は核兵器を使用する権利があるというふうにお考えかどうか。二番目に、核兵器の使用を国際条約によって規制することは全くできないというお考えかどうか。三番目に、条約によって核兵器使用を規制するということは総理の発言のように主権侵害であるとか内政干渉に当たるのかどうか。この辺、政府の御見解をお聞きしておきたいと思います。
  118. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 核の問題につきましては、それぞれの国が、持っておる国は特に慎重に対応していかなければならぬと私は思います。持っているだけに、慎重に対応していかなければならぬと思います。  そして、核を使わないというようなことは各国の合意があって初めてできるわけで、一方的に核を使わないと言っても相手の国が約束をきちっとしない、そうなるならば意味のない約束になるわけでございます。核を持っている国に、核に対しては使用しないという全くのコンセンサスといいますか話し合いが生まれなければ、意味のないことになると思っておるわけです。  核をつくっておる国は、それなりに自国の防衛という立場から核をつくっておるわけでございますが、しかし、その核が使われればもうおしまいになる、世界じゅうが終わりになるということは、核を持っておる国は特に承知しておるし、今の核兵器の威力から見てそういう認識は当然あるであろう。ですから、権利であるとか権利でないと言うのは少し言い過ぎといいますか、そういう言い方をするには核の存在は余りにも大きいと私は思っております。
  119. 古川雅司

    ○古川委員 くどいようでありますが、総理の核兵器の使用は核保有国の勝手であるという発言は、少なくとも広島または長崎を初め全国の国民の皆さんにはそう響いたわけでございまして、大変な衝撃を受けたわけでございます。今の大臣の御答弁を伺っておりますと、どうしても核兵器を保有している国々の論理が中心であって、核兵器を保有していない日本立場、その主張というのは、まだまだ非常に弱いのではないかという感じを強く受けるわけでございますけれども、この点はいかがでございましょうか。
  120. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 核を持っておればそれだけの、核を持っておる国の論理というのがあるわけでございますが、核を持たない国にも核に対する発言権というものは当然あるわけでございます。  いずれにいたしましても、核が使われるということは世界じゅうの悲劇につながっていくわけでございますから、核を持つ国も持たない国もともに協議して、核の軍縮から最終的には核の絶滅というところに持っていかなければならない。核軍縮会議等が開かれておる、あるいは国連等で核の問題が論議されるのも、世界的な課題、まさに宇宙の課題として、これは取り上げられておるというふうに私は思うわけであります。
  121. 古川雅司

    ○古川委員 時間の関係で十分理解し得ないわけでございますが、いずれにいたしましても、ことしもまた核被爆から三十九回目の節目を迎えるわけでございます。広島に米ソ首脳を招いて軍縮に関する会議を開催せよという声が従前からあるわけでございますが、しかし、米ソの首脳が会談すること自体、現実には極めて至難であることはよくわかっております。  そこで、まず新ジュネーブ軍縮委員会のもとで会議に関与している事務局長やスタッフの方々を、日本政府が広島、長崎に招聘して原子爆弾の被害の悲惨さを見ていただき、今後の軍縮論議に役立ててはどうかということを御提案申し上げたいのですけれども、いかがでございましょうか。八三年度国連軍縮フェローシップ計画というのがございますけれども、これは特に開発途上国における軍縮に関する専門家を育成するために設置されたものでございまして、それとはまた性格を多少異にしたものとしてぜひ実現していただきたいと申し上げるのですが、いかがでございますか。
  122. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 先生御指摘のように、広島、長崎の被爆の実情を世界の方々に正確に知っていただくことは、非常に重要なことだと思っております。ジュネーブの軍縮会議の代表の方々、事務局の方々、それを特にお招きするという計画を現在のところは持っておりませんが、ただ、軍縮会議に出ておられる方々は非常に関心を持っておられまして、先般もオーストラリアの軍縮代表が来られまして広島へ行かれました。八月にも、スウェーデンの首席代表がお見えになりまして広島へ行かれます。そういうふうな便宜供与、私どもできる限りのお手伝いをいたしております。  また、先生のお話にございました軍縮フェローシップ、これは各国の、必ずしも開発途上国に限りませんで、若い外交官の軍縮問題に対する知識を普及するための計画でございますが、昨年広島、長崎への訪問を実施いたしまして、二十五名の方に来ていただきました。大変強い印象を持ってお帰りいただきました。本年も九月に、二十五名の方に再び広島、長崎を訪問していただきたいと現在準備中でございます。
  123. 古川雅司

    ○古川委員 大臣の御所見をお伺いしておきたいと思います。
  124. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 鈴木総理の提案によりまして若手の外交官等を毎年招待をしておるわけですが、軍縮会議のメンバーにつきましても、特別にまとめて招待する、こういう計画は持っておりませんけれども、しかし広島あるいは長崎に訪問していただくということは、核軍縮の問題、核兵器の問題を考える場合に、それなりの意義があると私は思っております。したがって、軍縮会議のメンバーが日本においでになるときは、外務省としましても十分な御接待をいたしまして、長崎あるいは広島等を見ていただくように便宜を計らっておるわけであります。
  125. 古川雅司

    ○古川委員 重ねてまたお伺いするわけでございますが、軍縮会議のメンバーがおいでになるときはというのではなくて、政府が積極的に一つの計画を立てて、そのプランに乗って、大臣がおっしゃるとおり、まとまってでなくて結構です、個々の国で結構でございます、個々の方々で結構でございます、順次お呼びをして、広島のまた長崎の実情を見ていただく、見ていただいた上で軍縮を現実的に議論をしていただく、そういう思いを込めて御提案申し上げているのですが、いかがでございましょうか。
  126. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 先ほど申し上げましたように、まとめて軍縮会議のメンバーを呼ぶというふうな計画はありませんけれども、外務省にもいわゆる招待外交の予算もありますし、その予算等を有効に使って、軍縮に結びつくもの等についてはこれを行っておるわけでございますから、これはスケジュールとしては考えておりませんけれども、しかしこれから我々としては全般的に判断をしながら、特に日本に招待をして、そして広島、長崎等をやはり見ていただいた方がいいという判断に立つ場合は、それなりの招待外交をするという必要もあるだろう、こういうふうに思います。
  127. 古川雅司

    ○古川委員 もう少し詳しくお伺いしたいのでありますが、残念ですが先へ進みます。  米国防総省のアーミテージ次官補が、七月十二日、日本マスコミとの会見で、戦艦ニュージャージー四万五千トンの日本寄港問題について、ニュージャージーはアメリカが太平洋防衛にかけるかたい決意のシンボルであるとして、日本への寄港を強く求めました。それが単なるフラッグショーイング、いわゆる公式寄港以上の大きな意味を持つというふうに述べておりました。同次官補は、ニュージャージーの日本寄港は理にかなったことだとして、米軍としては非常に重視していることを明らかにいたしました。  政府としては、戦艦ニュージャージーの日本寄港を米側から要請を受けたとき、これにどのような態度で臨むのかということは、先般来の国会議論もございますけれども、これは重要かつ深刻な問題でありまして、アーミテージ次官補の発言を待つまでもなく、安倍外相が、核持ち込みに関し事前協議を提案するのは米国の日本に対する義務である、したがって米国が事前協議を経ないで核を持ち込むことはあり得ないということをこれまで述べてこられた、その根拠が大きく揺らいでいるのではないか、このように思うのでございますが、大臣、いかがです。
  128. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 米国の艦船が我が国の港湾に入港する、これは日米安保条約立場から見て、日本はこれを受け入れる責任といいますか、義務もあるわけでございますが、しかしその艦船において、何回も答弁しておるように、これが核を持っておるという場合につきましては、これは事前協議の条項がありまして、アメリカは日本に対して協議をかけなければならない、こういうはっきりした規定があるわけでございます。したがって日本としましては、この事前協議をかけない場合においてはアメリカの艦船において核はない、こういう判断のもとに日本が安保条約の建前に沿ってこれを受け入れておるということでございますし、私は、日米の安保条約あるいはその関連規定はお互いに守るという日米信頼の関係において、これに違反するということはこれまでもあり得なかったし、今後もないというふうに確信をいたしております。
  129. 古川雅司

    ○古川委員 戦艦ニュージャージーの日本への寄港につきましては、ただいまの大臣の御答弁を伺っておりましても、政府としては原則的に受け入れるというふうに受け取らざるを得ないわけでございますけれども、けさほどの高沢委員の質問に、ニュージャージーの核装備は別問題という表現も使っていらっしゃるわけでございます。その核装備についてでありますが、米国防総省は六月二十七日、米海軍艦船への海上発射中距離ミサイル・トマホーク、この積載を発表いたしました。七月五日公表された米下院歳出委員会軍事小委員会の公聴会の記録によりましても、年度別核つきトマホーク装備艦船数を示しているわけです。この中で、八三年度に戦艦一隻に核つきトマホーク積載ということになっているわけです。これは米軍の現状から見て、明らかに核つきトマホーク積載の戦艦ニュージャージーということに結論づけざるを得ないわけでありますが、同小委員会公聴会記録からもニュージャージーの核つきトマホーク積載ということは明らかになっているわけでございますが、この点についてはいかがでございますか。
  130. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 ただいま古川委員の御指摘の、国防省がアメリカの下院歳出委員会の国防小委員会に質問に答えまして出した配備計画書なるものについて、ちょっと事実関係を御説明申し上げたいと思います。  新聞に報じられました表は、私ども公聴会の記録に当たってみまして、それからその内容につきまして念のためにアメリカ側にも確認したところでございますが、ここに掲げられております表なるものは、核弾頭つきトマホークの搭載能力を付与される艦艇のクラス別、年度別の表であるということでございまして、ここに掲げられているクラスの船に実際に核弾頭つきのトマホークが搭載されるかどうかということとは全く別個の問題である、このように理解しております。
  131. 古川雅司

    ○古川委員 戦艦ニュージャージーが核つきでトマホークを常時配備さしていると見るのが、これは軍事上既に常識になっているわけでございます。ニュージャージーの日本寄港の事実というのは、これはもう核つきトマホークの日本持ち込みにならざるを得ない。しかも、ニュージャージーに核つきトマホークが配備されていないという確証は全くないわけであります。こうした現実から見て、非核三原則の立場から日本寄港を断るのが当然ではないか、こう考えられるわけでございますが、大臣はこの点をどう判断していらっしゃいますか。
  132. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 まだ、このニュージャージーが日本に寄港する、こういうアメリカ政府の公式的な、非公式的な通報は全くありませんから、今ここでこの問題について具体的にお答えをすることは少し性急に過ぎると思いますけれども、しかし、先ほど申し上げましたように、ニュージャージーも含めてアメリカの艦船が日本に入港しようというときは日本は安保条約上これを受け入れる、こういう基本でございますから、ニュージャージーといえどもそうした申し込みがあればこれは受け入れる。  ただ問題は、核を持って入港ということになれば、これはもう明らかに事前協議の対象にならなければならぬわけで、アメリカが事前協議なしに入港をするということはあり得ない、これが安保条約上のまさに原則でございます。
  133. 古川雅司

    ○古川委員 少々時間が過ぎておりますが、ひとつお許しをいただきたいと思います。  このトマホークの日本基地への寄港は、絶えずこうして核持ち込みの疑惑がつきまとっているわけであります。米海軍の公式見解でも、核つきトマホーク積載能力を持っているということ、また将来に寄港する可能性のある艦船は四十一隻以上ということも既に明らかにされているわけでございまして、核つきトマホークの実戦配備という新しい事態を迎えて、米側から事前協議がない限り日本への持ち込みはない、そういうことで果たして非核三原則が守れるのかどうか、これは大いに疑問であります。  一方、トマホーク積載という新段階を迎えて、アメリカへの非核三原則確認をこのニュージャージーの寄港だけに限定しようという意図さえ読み取れるわけでございますが、これは条約上の問題とは別に、これだけ国民に大きな疑惑を与えている以上、何らかの明確な政治的な方法で、核持ち込みはしない、またはっきり、させないというふうに国民の疑惑にこたえなければならないと思うのですが、外務大臣、この点いかがお考えですか。
  134. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日米間には、この安保条約をお互いに守ろう、そしてまたアメリカも、日本の非核三原則を十分尊重するという約束といいますか、そういう話し合いは、これまでも何回か行われました。  私も去年、マンスフィールド大使を呼びまして日本立場を説明いたしました。核に対しましては、日本国民が非常に神経質にこれを受けとめざるを得ないわけで、いろいろと国会で疑問が提出をされておる、また国民の中からも疑義が持たれておる。ですから、こういう際にやはり日本立場をはっきりしておきますということで、一般的に日本の非核三原則の立場、そして事前協議のあり方、あるいは安保条約についての日本の見解、そういうものを述べまして、これに対しましてマンスフィールド大使も、安保条約の関連規定はアメリカとしても遵守していく、さらにまた、日本国民の抱いておる感じというのは自分もよく承知をいたしておる、日本の非核三原則はこれを尊重しますということを述べておるわけでございまして、去年はそういう意味での話し合いをいたしたわけでございます。  今後また、国民の間にいろいろと疑惑が高まってくる、あるいは国会で多くの問題が提起をされる、そして、これからの日本とアメリカとの信頼関係をさらにはっきり確認をする必要がある、こういうような状況になったときには、一般的な意味で、アメリカ当局との間にそうした話し合いをすることも必要であろうと私は思うわけでございますが、それではいつやるかということについては今何も考えておらないわけであります。
  135. 古川雅司

    ○古川委員 最後に伺いますが、これは決して遠い先の将来のことではなくて、現実の重大な問題だと思うわけであります。これは単なる疑惑だけではなくて、国民の中に一つの大きな危機感もあると考えられます。ニュージャージーの日本寄港を認めるということは、そのまま第三国例えばソ連などに、日本は米国の核持ち込みを認めているじゃないかという口実を与えるのではないか、これも非常に大きな問題だと思うわけです。核はついてない、核は装備していないのだという米側の説明だけではそうした危機感はぬぐえないわけでありまして、トマホークは外見上、核つきあるいは非核の区別が全くつかない。二月十四日の衆議院予算委員会中曽根総理は、非核であることを確認した上で入港を認めるというふうに答弁をしておりますが、これは実際問題として確認は無理であります。結局そうなりますと、核つきあるいは非核ということも含めて、まとめてどっちでも結構ということになってしまうのではないか。  今の大臣の御答弁を伺っておりますと、いわゆる核持ち込みについての事前協議、日米安保条約第六条に基づく協議は日本には提案権はない、またその意思はないという感じを非常に強く受けるわけです。これは申すまでもなく、日本からも発議できるという政府国会答弁がかつてありました。しかし、これはその後訂正をして、米国からの申し入れだけで行うという姿勢に変わって、それを一貫しておられるわけでございます。そうしてみますと、いわゆる第四条に基づく随時協議でできるというのがこれまでの政府見解でございますが、最後に結論としてお伺いいたしますけれども、この核持ち込みの疑惑について安保条約第四条に基づいて日本側から随時協議を行う、そういう意思があるかどうか、あるいは第四条に基づく随時協議というものがこれまで何回行われたのかということも含めて、御答弁をいただきたいと思うのであります。  いずれにいたしましても、ニュージャージーが核つきトマホーク積載艦船である、その日本寄港問題は深刻にこれを受けとめていただかなければならない、そのことを強く求めまして、最後の質問にさせていただきます。
  136. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 条約というのは、これはお互いに守る意思がなければ条約の効果というものはないわけでありますし、あるいはまた、お互いに信頼関係がなければ条約を結んでも意味がないわけですが、日米間にはまさに深い信頼関係、いわゆる同盟関係に基づきまして安保条約というものが存在をしておりますし、したがって安保条約はお互いに厳重に守られておる、こういうのが政府の終始一貫変わらざる見解でございます。  したがって、その限りにおいては、核の持ち込みに対しては事前協議という厳然たる安保条約上の規定がありますから、今まで安保条約の事前協議を受けたことはないということは核の持ち込みはあり得なかったということにもなるわけでございまして、政府としては、非核三原則をこれからも遵守していく、国是ともいうべき非核三原則を守り貫いていく、そしてアメリカもこれを尊重し、また日米間には深い信頼関係によって安保条約が堅持される、こういうことでございます。したがって、今後ともいろいろの艦船等が日本に入港する場合もありましょうが、少なくとも事前協議条項がありますから、アメリカがこうした条項を無視して日本に核を持って入港することはないということは、私は政府の責任者として断言をいたす次第でございます。  なお、私がさきに答弁をいたしましたのは、政府としてはそうしたはっきりした考え方を持っておるわけでございますが、しかし、国会でもしばしば野党の皆さんからも、こうした核持ち込みの疑惑があるのではないかということで問題を提起されるわけでございますし、また、国民の間にもいろいろとそういう議論が出てくるということになりますと、やはり日米の信頼関係を損なうことにもなりかねません。したがって政府としましては、時に応じて、第四条によって、去年私が行ったようなアメリカの大使を呼んで一般的にこうした日米間の問題点を明らかにして確認をし合う、こういうことをやっておるわけでございます。  これまで何回やっておるかというふうな問題につきましては、政府委員から答弁をいたさせます。
  137. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 四条に基づくいわゆる随時協議と申しますのは、非常に範囲が応うございますので、これは過去において何回行われたかという御質問に対して、厳密に何回とちょっと申し上げかねる次第でございますけれども、核の持ち込みの問題との関連で申し上げれば、御承知のように、昭和四十九年当時のいわゆるラロック発言というのがございまして、それとの関連で日米間にやりとりが行われましたことが一回。それから昭和五十六年に、当時の園田外務大臣とマンスフィールド大使との間に、やはり同じような問題でやりとりがございました。それから、先ほど大臣の方から御説明がありました昨年の安倍外務大臣とマンスフィールド大使とのやりとり、そういうようなものが核の持ち込みの問題との関連では典型的なケースということで申し上げられると思います。
  138. 古川雅司

    ○古川委員 終わります。
  139. 中島源太郎

    中島委員長 次に、木下敬之助君。
  140. 木下敬之助

    ○木下委員 外務大臣、ASEAN拡大外相会議に御出席、まことに御苦労さまでございます。  まず、カンボジア問題に関し三項目構想の具体案を提示する等、意欲的な努力をされてこられましたことに敬意を表しまして、質問に入りたいと思います。  今回の会議において、太平洋協力の問題に対するASEANの認識はどのようなものであったか、また、今後この問題についてASEAN諸国はどのように対処していこうとしているのか、お伺いいたします。
  141. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今度のASEAN拡大外相会議で、「太平洋の将来」という議題で各国の考え方についてそれぞれ説明といいますか、各国が立場を表明したわけでございますが、これは実は今回の拡大外相会議の議長国であるインドネシアのモフタル外相が、太平洋の将来といった問題について議論をお互いにしてみたい、それが太平洋に面している国が将来お互いに発展するためにも必要なことではないか、太平洋の将来という立場からこれはぜひとも議論したい、こういうことでイニシアチブをとられまして、そしてそれに応じて各国がそれぞれの立場を表明したわけでございます。  これはやはり二十一世紀にかけて、アジア・太平洋地域というものは世界の中で最もダイナミックな地域として、まさに世界の中心がアジア・太平洋地域に移ってくるといういわば認識が世界にあるわけでございまして、そういう意味ではまさに当を得た議題の設定であったと私は思います。各国ともそれぞれの立場で論じまして、そしてその限りにおいては非常に有意義であった、特に、人づくりの問題についてある程度の議論が煮詰まったということは大きく評価されてしかるべきである、私はこういうふうに思います。
  142. 木下敬之助

    ○木下委員 日本としては、この太平洋協力あるいは環太平洋構想についてはどのような認識を持ち、また今後どのような方針で臨んでいくのか、お伺いいたします。
  143. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 我が国としましても、先ほど申し上げましたように、これからの二十一世紀にかけての非常な活力のある地域はやはりアジア・太平洋地域ではないか、こういうふうに考えております。したがって、日本においても環太平洋構想であるとか太平洋開発構想であるとか、いろいろな構想も生まれておるわけでございますが、政府として具体的にこれに取り組んだということはないわけでございます。今回、ASEAN拡大外相会議というフレームではありますけれども、この問題が議論されたということは大変結構なことであるし、これは一回限りでなくて、今後ともこの議題については論議していく必要がある。  ただ問題は、太平洋の将来といいましても、ASEANに、拡大外相会議に参加している国々だけではありませんで、韓国も非常に熱心な考えを持っておりますし、あるいはまた中国にも太平洋に面している国としての考え方もあるでしょうし、あるいは南米の地域も太平洋に面しておる。そういうことで、これはただASEAN拡大外相会議だけで独占をする議題ではないわけですから、そういう中で論議をしながら中長期的に将来にわたって問題を煮詰めていく、そういう中でコンセンサスが生まれて、できるものはこれを進めていくということが必要であろうというふうに思っております。
  144. 木下敬之助

    ○木下委員 ただいまお伺いいたしました太平洋協力に大きく関係すると思われますもので、現在まだ世間一般的にはなじみの少ない言葉でございますが、アジアポート構想というものが現実に始動しつつある、このように聞いております。本構想に大いに関心を持つものの一人といたしまして、本日はそのアウトラインにつきまして若干の質問をいたしたいと思います。  まず、アジアポート構想というものが出てくるに至った経緯、並びに本構想が具体的に何を目的として考えられているのか、その概要についてお伺いいたします。
  145. 堂ノ脇光朗

    ○堂ノ脇政府委員 お答えいたします。  アジアポート構想と申しますのは、わかりやすく申しますと、ヨーロッパではロッテルダムがユーロポートと言われるように、アジアに主として中南米諸国からの物資の集積箇所としての大港湾を建設するという構想でございまして、これはブラジル側が非常に熱心でございますが、現在でも日本の鉄鉱石の四分の一程度をブラジルから輸入しているわけでございますけれども、将来これがもっとふえていく。そしてまたブラジルは、将来の世界の食糧補給国としまして発展する可能性がある。他方ブラジルなど中南米諸国は、アジア地域から石炭とかほかの輸入するものもある、石油も輸入したい。そういうことで、運賃の効率化ということも図りまして、そういう港湾を建設してほしいということが基本にございまして、そういうことからアジアポート構想というものが数年来議論されている次第でございます。
  146. 木下敬之助

    ○木下委員 ただいま御説明をいただきました本構想は、我が国にとって総合安全保障上の意義、対外経済上の意義等々から、積極的に取り組むべき構想であると思います。しかし、当然のことながら長期的に取り組んでいかなければならない案件であり、具体像についても未定の要素も多いわけでございますから、本構想が実現した暁には日本及びアジア諸国にとってどのような効果が期待できるとお考えになっておられるのか、お伺いいたします。
  147. 堂ノ脇光朗

    ○堂ノ脇政府委員 お答えいたします。  我が国にとりましては、食糧あるいは鉄鉱石などの基礎物資の供給の確保あるいは輸入先の多元化ということに役立つわけでございますし、またアジア諸国にとりましても、その輸出の拡大といった面で非常にプラスになる面があるのじゃなかろうかというふうに考えております。
  148. 木下敬之助

    ○木下委員 本構想には現在運輸省のみが取り組んでいるようでございますが、運輸省が本構想に取り組むことになった理由をお聞かせいただきたいと思います。
  149. 相原力

    ○相原説明員 御説明申し上げます。  いわゆるアジアポート構想につきましては、その実現に至るまでには種々検討すべき条件が多いわけでございます。この構想の内容から見ますと、例えば生産地から積み出し地に至るまでの鉄道あるいは港湾あるいは道路、それから流通施設等、いわゆる輸送回路整備と言っておりますが、そういった整備、それからその港湾からいわゆるアジアポート、アジア地域の港までの大型船による第一次輸送、それからそのアジアポートにおける中継基地としてのあり方の問題、それから中継基地から最終需要地への二次輸送の問題ということで、生産地から最終需要地までの全体輸送システムの整備改善がその構想の中心をなすものというふうに考えております。したがいまして、国際物流分野におきます国際運輸協力案件の一つといたしまして、長期的な問題として取り組んでいこうというのが運輸省の今の基本的な考え方でございます。
  150. 木下敬之助

    ○木下委員 本年度の運輸省予算に調査委託費として約千七百万円が計上されていますが、これはどういった内容について調査を委託されるのか、お伺いいたします。
  151. 相原力

    ○相原説明員 御説明申し上げます。  先ほど来もお話がございましたとおり、アジアポート構想につきましてはまだ具体像について非常に未確定な要素もあると考えておりますので、今年度の調査の第一点としましては、そのいわゆるアジアポート構想の具体的、明確なイメージを形成したいということで、既にある程度の資料もございますので、その辺の既存の資料あるいは構想等を分析いたしまして、アジアポートという概念、意義の整理を行うのが第一点と考えております。  第二点といたしましては、アジアポート構想が対象としております品目、穀物とか鉄鉱石がございますが、その品目の国際的な需給の状況、見通し、それからそれらの海上輸送における現状と課題点等を検討するというのが第二点でございます。  それから第三点といたしまして、いわゆるアジアポートとして備えるべきいろいろな機能が考えられるわけでございますが、中継基地としての機能、備蓄基地としての機能、それから場合によっては加工する機能というのが考えられますが、その辺の具体的な内容、それからそういうものが成立するための諸条件を検討したいということでございます。  最後に、それらを総合的な観点からとらえまして、この構想が成立していくために、長期的に輸送改善を図っていくべき課題等について検討するというのが、今年度の主要な調査対象でございます。
  152. 木下敬之助

    ○木下委員 そういった調査を委託される団体は財団法人国際開発センター、このように聞いておりますが、この団体の性格というのはどういったものなのか、また委託された調査に十分対応できるような体制、人材、スタッフ等はそろっているところなのか、この点についてお伺いいたします。
  153. 相原力

    ○相原説明員 御説明申し上げます。  運輸省が今年度やっております調査は、御指摘の財団法人国際開発センターに委託しておるわけでございますが、本国際開発センターは、運輸省、外務省を初め六省庁の共管する財団法人、公益法人でございまして、発展途上国の開発計画に関連する総合的な調査研究等を行うということを主たる事業にしている団体でございます。  本件のアジアポート構想に関する問題につきましては、先ほど御説明申し上げましたように、生産地から消費地に至る輸送システム全般の整備改善を中心とする構想でございます。したがいまして、地域経済、開発経済等の視点も含めました総合的な検討を行うことが必要というふうに考えております。そういうことで、本件調査を委託しております国際開発センターは、従来の運輸省の国際協力案件につきましても、国際協力に関する総合的経済調査あるいは地域総合開発計画調査等につきまして豊富な経験、知識を持っておる実績がございますので、このセンターに委託するというふうに考えたわけでございます。  なお、実際の調査を進めていくに当たりましては、もちろん具体的な海運の問題、港湾の問題、それから造船等、非常に専門的分野にわたるかと思われます。これらの専門的分野につきましては、その都度精通しました専門家ないし調査機関等の協力を得て進めるということで我々としてもセンターを指導してまいりたい、このように考えております。
  154. 木下敬之助

    ○木下委員 本構想に対する調査費は本年度初めて予算化されたわけでありますが、最終的な調査報告書が作成されるのは、これはいろいろ多方面にわたった調査でございましょうから、一年くらいの短時間では到底期待できない、このように考えますが、いつごろまでに調査結果の報告がされる見通しでございましょうか。中間的調査報告の作成のめど、最終的調査報告の作成のめどを何年ごろと想定して調査に取りかかっておられるのか、お伺いいたします。
  155. 相原力

    ○相原説明員 御説明申し上げます。  御質問の趣旨が、いわゆるアジアポート構想につきまして、その具体的な建設計画の策定とか工事着手を結論づけるような意味での最終報告書ということでございますと、先生御指摘のとおり、一年とか二年という短期間ではその結論を得るのは到底不可能ではないかというふうに考えております。  運輸省といたしまして、このアジアポート構想というのは二十一世紀を目指した非常に長期的なプロジェクトであるというふうにとらえておりまして、長期的視点に立って、この構想の実現可能性があるかどうかということについて検討する、またある場合には、現状では不足していると思われる条件等について、今後短期的にはどうするか、あるいは中期的、長期的にはどのような施策を講じていったらいいかというような方向づけを得るということを主眼に置きまして調査を行っておるわけでございますが、その意味での調査の結論を取りまとめるには数年程度は要するのではないかと考えております。  なお、今年度の調査は現在実施しておるわけでございますが、その結果が得られた時点では、より具体的な見通しが出るのではないかというふうに考えております。
  156. 木下敬之助

    ○木下委員 こういった大事な大きな構想に対して、一年限りの調査に基づいた報告で結論を出すというのではなくて、将来への国家的見地に立った結論を期待する国民の一人としまして、この際、政府の本構想に対する基本的な姿勢の一端をお伺いするということで、当然六十年度以降の調査費の予算化についても考慮されていると思われますが、どうでしょうか。
  157. 相原力

    ○相原説明員 御承知のとおり、予算要求作業は今部内で検討している最中でございますが、我々といたしましては、先生御指摘のとおり、短期間ではなかなか調査結果が得られるものと思っておりませんので、引き続き調査を進めてまいりたいと考えております。
  158. 木下敬之助

    ○木下委員 ところで、本年五月二十三日から二十七日までフィゲイレド・ブラジル大統領が国賓として来日されました際、政府は、セラード地域の農業開発計画に三百四十九億円を融資することを約束したとの報道がございました。ブラジル側からは、アジアポート構想に関して何らかの協力要請はその際になかったのか、お伺いいたしたいと思います。
  159. 堂ノ脇光朗

    ○堂ノ脇政府委員 お答えいたします。  ただいま先生御指摘のとおり、五月の末にブラジルのフィゲイレド大統領来日されまして、国際情勢あるいは二国間の諸問題につきまして、総理大臣大統領の間で、あるいは外務大臣同士の間でいろいろ話し合われたわけでございます。その話し合われました一つの問題が、先ほど御指摘のございましたセラード農業開発計画でございまして、この計画は、セラードと申しますブラジルの将来農耕に適した土地になる広大な地域がございまして、そこの土地の改良、酸性の土を酸性でなくしていくことによって農業生産を上げるという計画でございまして、七九年以来行ってまいりました試験事業の結果、成績が非常によかった。それに対する日本の協力に対してブラジル側も非常に感謝いたしておりまして、結果がよかったのでさらにこれを拡大してほしいということから、このたび十五万ヘクタールにつきまして追加的にセラード開発事業を行う、そのための費用の半額を日本側が負担するということで、先ほど御指摘のございましたような資金協力が行われたわけでございます。セラードでとれます農産物は大豆とかトウモロコシ、小麦などでございまして、これがセラード全域に広げられていくということになりますと、疑いもなく世界の食糧供給基地となっていくことが見込まれているということでございます。  他方、アジアポート構想につきましては、大統領訪日の際に、この問題につきましても日本側も関心を示しまして、特に中曽根総理のフィゲイレド大統領歓迎午さん会の際に総理の方からも、これは大変に雄大な構想である、日本としても引き続きこの問題について話していきたいという趣旨のことを言われたわけでございまして、実際の会談におきましても大体そのような日本側の関心の表示、両国間のこの問題についての引き続いての協議ということが確認されたということでございます。
  160. 木下敬之助

    ○木下委員 ブラジル側から、アジアポート構想に関しての要請というのは何か具体的にあったのですか。
  161. 堂ノ脇光朗

    ○堂ノ脇政府委員 先ほど運輸省の方からもお答えございましたとおり、日本側としてはアジアポート構想につきましては既に研究を行っているわけでございまして、ブラジル側からは、このアジアポート構想について引き続き日本側も関心を示してほしいという意向が表明されたということでございます。
  162. 木下敬之助

    ○木下委員 それから、ただいま言われましたブラジル大統領と総理の午さん会、この席で今のような発言があったということを私も聞いておりました。そんな長いものじゃないと思いますので、ぜひ原文どおりお読みいただけませんか。
  163. 堂ノ脇光朗

    ○堂ノ脇政府委員 御質問の箇所は、総理の午さん会での演説の中で次のとおりでございます。「さらに私は、貴国が太平洋・アジア地域についての関心を深め、アジアポートのごとき雄大な構想の検討を進められていることを歓迎いたします。こうした構想の実現は、アジアと中南米の二十一世紀における発展にとって重要な意味を持つものとなるでありましょう。」以上でございます。
  164. 木下敬之助

    ○木下委員 総理がこういった御発言をなさっておるということは、政府の積極的推進への表明と受け取ってよろしいでしょうか。
  165. 堂ノ脇光朗

    ○堂ノ脇政府委員 このような総理の演説に示されております日本政府考え方は、アジアポート構想に対する関心、それから引き続き、この問題につきましてブラジル側と話し合っていきたいという姿勢でございます。
  166. 木下敬之助

    ○木下委員 外務大臣は、この総理の答弁じゃなくて、大臣御自身はこの問題、どのように思われますか。大臣は、これからの将来を嘱望されている方で私も期待いたしておりますから、どうぞよろしくお答えをお願いいたします。
  167. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私も、アジアポート構想というのは雄大で、これからの二十一世紀を考えるときに非常に野心的な注目すべきプロジェクトではないかと思います。ブラジルの要人の諸君と話し合っても、ブラジルでも非常に強い関心を持っておりますし、また日本にポートを置くということがブラジルと日本、そしてアジアをつなぐ大変すばらしい役割につながってくる、こういうことも言っておりますし、私も地球が非常に狭くなっているということを痛感をしておる一人でありますが、そういう中で、こういう構想等は決して夢物語みたいなものじゃなくて本当に現実性を持った構想であるし、そういうことによって日本の将来というものも開けてくる道であろう、こういうふうに考えておるわけでございます。したがって、私自身もこうした構想の実現のためには努力をしたいと思います。
  168. 木下敬之助

    ○木下委員 現在、本構想について取り組んでいるのは運輸省のみでありますが、総理の前向きなスピーチもあることですし、主体は別としても、関係省庁間から成るプロジェクトチームを設置して調査に当たらせるということがいいのではないかと思いますが、いかがでしょう。
  169. 堂ノ脇光朗

    ○堂ノ脇政府委員 先ほど運輸省からも答弁ございましたとおり、現在、アジアポート構想の研究というものが既に行われておりますが、その結果を待ちまして、いずれは先生御指摘のような関係省庁間のプロジェクトチームというものが必要になるかと思いますが、まだ現段階ではそこまで話は具体化しておりません。
  170. 木下敬之助

    ○木下委員 先ではぜひそういった形で取り組んでいただきたいと思います。調査の出るまでも関係省庁たくさんあると思いますので、よく連携してやられることを望みます。  次に、本構想の裏側の面といいますか側面といいますか、こういったものを理解するための重要な問題として、このアジアポート構想と言われるものがブラジル政府から提案されるに至った背景についてお伺いいたしたいと思います。いろいろあるでしょうが、その概略の御説明をお願いいたします。
  171. 堂ノ脇光朗

    ○堂ノ脇政府委員 ブラジルでは、国家的な事業として国内産業の開発を行っておりまして、その一つが鉄鉱石の生産、鋼鉄の生産といった鉄鋼関係の事業でございます。もう一つは、先ほどから話題になっております農業開発でございます。  それで、ブラジルには例えばカラジャスという鉱山がございますが、そこには世界の十分の一の埋蔵量がある。ただ、その鉱山から港までの鉄道がまず建設される必要があるといったことが現状でございまして、そういう状況の中で、ブラジルのリオドーセといった開発公社が、いずれはブラジルの鉄鉱石、農産物の輸出が非常に伸びていく可能性がある、その販路はどうしても食糧の必要になるアジアである、そして非常に遠距離であることから、運賃の効率を上げるといった意味からアジアに物資の集積、港湾施設が必要である。他方、帰り船で、アジアからブラジルの必要としている石炭とか石油を運ぶことによって効率化を図る、こういった構想が出てきたと承知しております。  そのような構想が開始されたのが七〇年代の後半である、そして先ほどお話の出ました我が国の国際開発センターとか運輸省との間で話し合いが行われてきた、あるいは首脳間の会談の際にも話題になるようになってきたというのが従来の経緯でございます。
  172. 木下敬之助

    ○木下委員 今出てきたいろいろなことについて、もうちょっと詳しく進捗状況等をお伺いいたしたいと思います。  先ほど順調に進んでいるように言われておりましたセラード地域の農業開発計画、この開発状況、また今後の開発計画等についてお伺いいたします。
  173. 堂ノ脇光朗

    ○堂ノ脇政府委員 セラード地域はブラジルの面積の五分の一ぐらいを占めておりまして、一億八千万ヘクタールと言われておりますが、その面積自体、日本の五倍ぐらいある。この地域はアマゾン地域よりも若干南にございまして、これまではセラードというところは荒廃して閉ざされた土地で、だれもそこに住めないと言われていたわけでございますが、そこの酸性土壌の改良によって非常に有望な農耕地になるということがわかってまいりまして、この開発の面では我が国が当初の七〇年代の初めごろから非常に協力してまいったわけでございます。  そして七六年に合意ができまして、七九年からまずパイロット事業として六万ヘクタール、と申しますと山手線の内側ぐらいの広さだそうでございますが、そこで実験的に土壌改良を行ってみたところが、大豆、小麦が非常に豊作であったということから、さらに、若干離れた地域、セラード地区の別の地域でも同じような実験をしてほしい、また既に実験の成功した周辺でももう少し拡大してやってもらいたい、ブラジル側としては、できれば五十万ヘクタール程度についてさらに日本の協力をお願いしたいという話でございました。  しかし、一挙にそう大規模な事業に日本が協力するということにつきましては日本側の財政的な制約もございますし、とりあえず十五万ヘクタールについて拡大事業に協力するということになりまして、御承知のとおりブラジルは経済状態が決してよくございませんし、外貨事情も苦しいわけでございますけれども、長期的には食糧の自給、輸出につながる非常に有望な事業でございますので、このたびこれに協力するということが合意されたわけでございます。
  174. 木下敬之助

    ○木下委員 カラジャス鉄鉱山開発計画の方はどういう状況でしょうか。また、港湾、鉄道等の輸出回廊の整備状況についてもお伺いいたします。
  175. 堂ノ脇光朗

    ○堂ノ脇政府委員 カラジャスでございますが、カラジャスには鉄の含有率六六%という非常に高度の鉄鉱石がございまして、世界じゅうのそのような高度の鉄鉱石というのは九九%ぐらいがこのカラジャスに埋蔵されている。豪州の鉄鉱石も間に合わないと言われるわけでございます。埋蔵量はおよそ百八十億トンでございまして、我が国だけでこれを使うとして、現在の使い方から申しますと百八十年はかかると言われるほどに有望なところでございますが、何分にも八百キロほど内陸にございまして、まず鉄道を建設し、そして港湾を建設する必要があるということから、カラジャス開発は始まっております。我が国としましては、カラジャス開発につきまして五億ドルの経済協力を、いろいろな形での協力を行っているという実情でございます。  また鉄道の建設も、七割程度でございますか、現在完成しておりまして、八六年には鉄鉱石を五百万トン産出する、そして八八年からは二千五百万トン、やがて九〇年ごろからは三千五百万トンということが予定されておりまして、我が国はそのうち一千万トンを引き取るということになっております。  ブラジルには、このほかツバロンというところがございまして、そこの鉄鉱石につきましても我が国は以前から開発に協力しまして、現在、日本の鉄鉱石の輸入は主としてこのツバロンの方を通じて行われているという状況でございます。  ブラジル側の積み出し港としましては、いわばアジアポートのブラジル側の港になるわけでございますが、一つはこのツバロン製鉄所のそばのツバロン港というのがございまして、ここではツバロンの関連の製品あるいはその背後にございますセラードの農産品の輸出を扱う。それから、カラジャスの方につきましては、カラジャスから海岸までの鉄道ができますと、その鉄道の終点の近くのサンルイス市からちょっと離れたところに、イタキという港をつくる計画がございます。あともう一つ、パラナ州というのがツバロンよりもう少し南にございまして、そこは従来から大豆の輸出積み出し港になっておりますが、このパラナ州の港までの鉄道といったものも開発の対象になっているということでございまして、そのような若干のブラジル国内の輸出回廊の整備ということが、現在進捗あるいは完成しつつあるという状況でございます。
  176. 木下敬之助

    ○木下委員 最後に、このアジアポート構想と大きくかかわり合ってくると思われます第二パナマ運河構想に対しても質問をいたしたいのですが、いささか時間がございませんので、次の三点についてお答えをいただきたいと思います。  まず要点だけで、この第二パナマ運河構想の概要と、それから来日中のバルレタ・パナマ次期大統領に総理が協力を約束した、こういう新聞記事もきょう見ましたが、我が国の基本姿勢、そして大分先の話と思いますけれども、大まかな見通し等についてお答えをいただきたいと思います。
  177. 堂ノ脇光朗

    ○堂ノ脇政府委員 お答えいたします。  第二パナマ運河構想は七〇年代の後半から取り上げられている問題でございまして、現在のパナマ運河の通航量あるいは幅とか耐用年数といったことを考えますと、これは早晩満杯になると申しましょうか、パンク状態になるということで、この運河をさらに改造して拡大するか、あるいは新しいいわゆる海面式運河をつくるかといったことが第二パナマ運河構想でございまして、そういった問題を調査するための調査委員会を設置しようではないかということで、現在、日本とパナマ、米国の三国が事前の打ち合わせを行っているということでございます。  この事前の打ち合わせがうまく進みますと、恐らく来年度じゅうにも調査委員会を発足させて、そして三、四年ぐらいの調査の結果、代替案でございますね、第二運河をつくるのかあるいは現行運河を改良するのか、どういうものが一番経済的にも財政的にもそして工学的にも、いろいろな意味で適切かという結論を出すはずでございます。
  178. 木下敬之助

    ○木下委員 時間が参りましたので、これで質問を終わります。
  179. 中島源太郎

    中島委員長 次に、瀨長亀次郎君。
  180. 瀬長亀次郎

    ○瀨長委員 私、六月二十九日の沖特委でも質問しましたが、きょうはアルトラブ問題とACMI問題、いわゆる空域の問題について質問します。  最初に、日本有事でない、極東有事の場合、グアムのアンダーソン基地を発進した、しかも有事の場合だから核爆弾を搭載したB52G戦略爆撃機が日本が管轄する飛行情報区、これはFIRと言っておりますが、これを通過する際に、アルトラブの管制上の便宜を日本政府は与えることができるのかどうか、これは運輸省から最初に答えてもらいます。
  181. 小山昌夫

    ○小山説明員 お答え申し上げます。  米軍から事前に十分な時間の余裕を持って調整のあった場合には、アルトラブを与えるということは可能でございます。
  182. 瀬長亀次郎

    ○瀨長委員 これは重大なことだと思いますが、今申し上げましたのは極東有事の場合ですから、アメリカが第三国に対して事を構えた場合、B52が核爆弾を搭載して向かう途中にこのアルトラブの管制上の便宜を、しかも私が言っているのは領空内じゃないのですよ、外ですよ、それを今のお話ではアメリカから通知があればできるということですか。どんな通知があればできるのですか。
  183. 小山昌夫

    ○小山説明員 通常、米軍からアルトラブの要請が事前にあって、この調整をいたしまして、管制上可能な場合にはアルトラブを認めることができることとなっております。
  184. 瀬長亀次郎

    ○瀨長委員 そうなりますと、今の管制官、それから乗員、日本乗員組合があってパイロットその他ありますが、そういったのがどういうことになるのか。私が申し上げているのは、今申し上げておるようないわゆる飛行情報区、これを通っていくので、そのときに現在の条約上の範囲でアメリカに便宜を与えることができるということになりますと核戦争に直接加担するということになると思うのだが、どうなんですか。
  185. 小山昌夫

    ○小山説明員 お答え申し上げます。  運輸省の管制上の立場から申し上げますと、事前に通知または指示等がない限り、管制官はその航空機が核を搭載しているかどうかということを確認することはできませんので、通常の業務として行うより仕方がないわけでございます。
  186. 瀬長亀次郎

    ○瀨長委員 アメリカは核はあるともないとも言わないというのが政府の答弁ですね。ですから、極東有事の場合だから、核を搭載したB52が通過する場合、今のような状況で、管制官に対して、公務員に対して、あなた方それをやれと言えますか。私の言っているのは核搭載機なんですよ、B52G型。どうなんですか。
  187. 小山昌夫

    ○小山説明員 お答え申し上げます。  運輸省としましては、純粋に管制技術上の立場で業務を行っておりますので、その航空機が核を搭載しているかどうかということはわからないのでございます。
  188. 瀬長亀次郎

    ○瀨長委員 この問題は外務大臣にも関係するので、外務大臣はこの前アルトラブを御存じじゃなかったので勉強してくださいと私は言いましたが、もう勉強されておわかりだと思いますので端的に聞きますが、この前は、領空内を通る場合には、当然のことながら事前協議があり非核三原則がある、そういうことで御答弁になった。今、私は領空外の問題を聞いている。大臣は領空内のときの答弁をなさった。今度は領空外に今申し上げましたようなB52が、本当に有事の場合、核を搭載してアンダーソン基地を発進して向かっていくという場合に、現在の条約、協定、合意事項でこれが処理できるかどうか。大臣お答え願います。
  189. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 先ほどから政府委員が答弁をいたしておりますように、便宜を図り得ることもあり得るということであります。
  190. 瀬長亀次郎

    ○瀨長委員 そうなりますと、今肯定的な答弁ですね。アンダーソン基地からB52がやってくる、これは戦争ですから核爆弾を搭載している、爆撃に向かう。これに対して、外務大臣としては便宜を与えるということになりますと、核戦争だから、管制官、乗員の人々を初めとして日本国民を直接核戦争に巻き込む、加担するということになると思うのですが、どうなんですか。
  191. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 核戦争に加担するというお言葉がございましたけれども、私どもの考え方を申し上げますと、我が国に駐留しておる米軍のみならず西太平洋に展開しておる米軍、これはB52を含めましてのことでございますが、B52を含めまして西太平洋に展開しておる米軍の存在というものは、核戦争を起こすために存在しておるということではございませんで、これまで累次申し上げておりますように、あくまでも戦争を防止する抑止力としての存在ということで理解しておりますし、安保条約、地位協定に基づいて米軍に与えられますところの各種の便宜供与と申しますものも、あくまでもそういう性質、抑止力としての米軍の存在というものを確保する、安保体制の効果的運用を図るということを申し上げておりますが、そういうものもあくまでも抑止力を維持するためのものということでございますので、核戦争を起こすあるいは核戦争に加担するという考え方は、私ども毛頭とっておらないわけでございます。
  192. 瀬長亀次郎

    ○瀨長委員 抑止力はきかないような状態を私は言っているんですよ。核戦争のためにB52は爆撃に向かうのでしよう、核兵器を搭載して、核爆弾を搭載して。そのときに日本政府がそれに便宜を与えるということ自体は、核爆撃に向かう、B52たから当然のことながら核爆撃、はっきり言えば核戦争、これに協力加担するということに結論はなると思うのですね、どんな言い回しをしようが。核はあるともないとも言わぬ。だからB52が来る場合に、核爆弾を積んでいますよなんということを日本政府に言わぬでしょう。そういうことを十分御存じのはずである。この前は、領空内は非核三原則、事前協議で処理された。現在は領空外を言っている。領空外もこの非核三原則、当てはまるのですか。安倍大臣、答えてください。
  193. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 領空外は、これは日本の領空の外ですから……。
  194. 瀬長亀次郎

    ○瀨長委員 安倍大臣、だんだん矛盾が来ましたね。この場合は領空外。領空内は事前協議、非核三原則で十分説明できるのですね。領空外はできないでしょう、非核三原則は。参事官ですか、今だれか話されましたが、そういったからくりではもう説明ができないところを私は聞いておるのですよ。現在、普通であればあれはまさか実弾を持って飛んで回ったりしないと思うのですが、模擬かあるいは積まないかならよう通る。今具体的な話をしているのは、アンダーソン基地から核爆弾を搭載したB52G型、これが通る場合、領空外の話なんです。これは非核三原則では話にならぬ。大臣、いかがですか。
  195. 小和田恒

    小和田政府委員 日米安保条約のもとにおける仕組みの問題に触れますので、一言御説明したいと思いますが、御承知のように、日米安保条約によりまして米軍は……
  196. 瀬長亀次郎

    ○瀨長委員 今の説明はやめてください。時間がありませんから、その説明でしたら御答弁はよろしゅうございますから。領空内はちゃんと説明された。私は、領空外をこの非核三原則で説明できるのかどうかを大臣に聞いているのであって、あなたがずっと説明されると時間がだんだんなくなってしまう。
  197. 小和田恒

    小和田政府委員 簡単に御説明いたします。  領空内の場合には、非核三原則ないしは事前協議の適用がございますけれども、領空外の場合にはその適用はございませんので、したがって事前協議の問題は生じてこないわけです。  他方、今御指摘のアルトラブの問題というのは、これは地位協定第六条に基づきまして、合同委員会合意に従って米軍機が安保条約及び関連規定の目的に従って行動する場合に関連して、その行動の必要性から一時的に空域を留保する、こういう性格のものでございますから、今委員が想定されておられるような状況においても、安保条約の枠内においてそういう通航は認められるであろう、こういうことを申し上げておるわけでございます。
  198. 瀬長亀次郎

    ○瀨長委員 これは大変な答弁ですよ。領空内じゃない、領空外を核爆弾を搭載したB52が通る場合にどうするかという問題、現在の状況ではこれは処理できないですよ。非核三原則、事前協議、これではできないから大臣の明快な、あるいはそういった場合拒否するなら拒否する、B52の特定の問題であるので答弁できないならできない、いずれかでしょう。簡単でいいですから、安倍大臣の御答弁をお願いします。
  199. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 領空の中におきましては、これはこの前も答弁いたしましたように、核を搭載した航空機が入ってくるときは、もちろん有事の際といえども事前協議の対象になるということですね。  今お話しなのは領空外のことなんですが、領空外においてもいわゆる極東有事という場合があり得るわけでございまして、今そのときを想定されていることだと思いますが、そういうときに、日米安保条約の枠内において日本が便宜供与をやるということはあり得るわけでございます。これは、日米安保条約の枠内でアジアの安定と日本の安全のために、そういうことはあり得るというのが、安保条約上の解釈であるというふうに理解をいたしております。
  200. 瀬長亀次郎

    ○瀨長委員 再び聞きますが、日米安保条約の精神ということを拡大して今答弁されましたが、問題は、核爆弾を積んでB52が爆撃に行くということに便宜を与える。便宜を与えること自体が核戦争、核爆撃に協力加担するということになることは当然じゃないですか。領空内じゃない、領空外なんだからもっと拡大していく。そうなると、これは極東だけじゃなしに、西側有事の場合にも、またまた拡大してこの答弁がされるおそれもなきにしもあらずである。ですから、今申し上げました領空外の場合はじきに矛盾してくるんですね、大臣が一番最初におっしゃったように。そういった場合、これを完全に拒否するとはっきり答弁できますか。
  201. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは先ほどから何回も答弁しておるように、日本の場合に安保条約に基づいて事前協議の対象になるのは、あくまでも領空の中、領空内ということであります。
  202. 瀬長亀次郎

    ○瀨長委員 結局、領空外の場合にはもう手も足も出ないが、便宜は与える、現在の安保条約解釈上。こうなると、日本政府はアメリカのたくらむ核戦争に協力するという結論になっているわけなんだ。これは重大な答弁だと思うのです。領空外、これもまた協力する、便宜を与えるという拡大解釈をやっている。これはまさに国民に対する挑戦だ、平和に対する挑戦である、私はそう思います。  これは後でもいろいろ関連しますので、次、ACMIの問題についてお聞きいたします。  このACMIについて、民間航空分科委員会はアメリカと既に合意に達しているのかどうか。一言でいいから、合意に達しているなら達している、達していないなら達していない、達しておればいつ合同委員会を開く見通しがあるのかどうか、これをお答え願いたいと思います。
  203. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 お答え申し上げます。  分科会のレベルではほぼ原則的な合意に達したというふうには承知しておりますが、合同委員会をいつ開くかということにつきましては、現在の段階ではまだ決まっておりません。
  204. 瀬長亀次郎

    ○瀨長委員 合意に達したというからには安全であるということでありますから、私、その点、この前は新しくACMIに与える空域が四千平方キロメーターと言った。これだけでは足らないからそのお隣にあるホテル・ホテル空域、これも一部は使うということの答弁でしたが、このホテル・ホテル空域の一部というのは何平方キロメーターであるか。加えて、ACMIの使う範囲を説明してください。
  205. 田中滋

    田中説明員 ACMI設置に伴いまして必要とされる空域につきましては、沖永良部東南東の公海上で既に現在ありますホテル・ホテル訓練区域の一部を含む高度三千フィートから六万フィートまでの区域、この中で文字どおり航空機戦技訓練を安全かつ効率的に実施するわけでありますが、それに必要とする一定の広さの区域ということでございまして、実際とのように運用するかにつきましては詳細は承知しておりません。
  206. 瀬長亀次郎

    ○瀨長委員 それで、その範囲もわからぬということだな。四千平方キロメートルでは足らないから、ホテル・ホテル空域まで使う。この前の答弁です。このホテル・ホテル空域まで使うという部分は、何平方キロメートルかということを聞いているわけなのです。それもわからないのですか。それもわからないで答弁したのですか。一部なら一部。そうなると、一部が百平方キロメートルであれば加えればわかるでしょう、その空域が。もちろん、高度もある、面積もある。わからないのですか。
  207. 田中滋

    田中説明員 今御質問のありました既設のホテル・ホテル訓練区域は、文字どおり米側の専用訓練区域としまして提供中でございまして、そこをも一部米側は使いましてACMIの訓練を将来行うという計画でございます。
  208. 瀬長亀次郎

    ○瀨長委員 具体的には面積まで全然知らないのだな。  それで次に、関連するので、米国とその同盟国、このうちでACMIが設置されているのはどこどこか、説明してください。米国なら米国内に、どこどこの基地に幾つ、同盟国はどこにあると。さらに最後は日本
  209. 田中滋

    田中説明員 私どもが承知しておるところによりますと、現在ACMIを設置し運用しておりますのは、アメリカ合衆国に六カ所、そのほかにイタリア、韓国、カナダにそれぞれ一カ所、計九カ所と聞いております。
  210. 瀬長亀次郎

    ○瀨長委員 イタリアはどこにあるのですか、韓国はどこにあるのですか。
  211. 田中滋

    田中説明員 イタリアはサルジニア近辺、それから韓国の場合には鳥山近辺と聞いております。
  212. 瀬長亀次郎

    ○瀨長委員 ここが、日本は十番目になるのですか。  それで、核心に触れますが、この空域が設定される、そのときに何機編隊でどういう形で空域に行くか、機数を一言ってください。
  213. 田中滋

    田中説明員 ACMIは、文字どおり航空機対航空機の訓練システムでございますが、技術的に何機までできるかは別としまして、実際上複数機で訓練を行うこととなると思われますが、具体的に何機で同時に行うかにつきましては、現在、在日米軍の方で検討中であると聞いております。
  214. 瀬長亀次郎

    ○瀨長委員 それでは、機数についてはわからぬ、わからないままに合意に達している。今のところ何機かはわからぬ、例えば二機編隊で行くのか。  じゃ、次に聞きますが、戦闘機はどこの基地を発進するのですか。
  215. 田中滋

    田中説明員 主としまして、嘉手納飛行場に配備されている米国空軍機であると承知しております。
  216. 瀬長亀次郎

    ○瀨長委員 機種はどういう機種ですか、F15だけじゃないでしょう。
  217. 田中滋

    田中説明員 嘉手納空軍基地に配備されております戦技訓練を必要とする航空機からしまして、F15戦闘機と思われます。
  218. 瀬長亀次郎

    ○瀨長委員 F15だけであるのか。あるいは韓国で現に行われているあの機種の問題がありますが、理解はF15だけであるのか。もう一遍言ってください。
  219. 田中滋

    田中説明員 嘉手納飛行場に配備されております在日米空軍のF15戦闘機、及び一部は必要に応じまして在日米海軍機あるいは海兵隊機が、このACMIシステムを使いまして戦技訓練を行う可能性はあると考えております。
  220. 瀬長亀次郎

    ○瀨長委員 朝鮮鳥山ではF4、F5、F15、それから今度三沢に配備される、今烏山にあるF16、この機種が参加するということが書いてあるのですが、これは御承知ですか。
  221. 田中滋

    田中説明員 今お尋ねにありました件につきましては、私どもとしましては承知しておりません。
  222. 瀬長亀次郎

    ○瀨長委員 ですから、今申し上げましたようにACMIの範囲、これもぼやっとしてわからない。それから、参加する機数もわからない。それから機種、これもF15だろうということだ、あるいは若干プラス一がある。これで合意しようというのだな。  もう一つ、いよいよACMIが開始された場合に、米軍は通告しますか、しませんか、答えてください。いつやると通告するかどうか。
  223. 田中滋

    田中説明員 現在のところ、米側の空軍もしくは海軍機の専用訓練空域としまして、例えば沖縄北部訓練空域あるいはホテル・ホテル訓練区域あるいは沖縄南部訓練空域とありますが、そういうところにおきまして従来あるいは現在行われております在日米軍機による戦技訓練につきまして、それと全く同じような手続が踏まれるものと解しております。
  224. 瀬長亀次郎

    ○瀨長委員 じゃ、通告はしますね、あしたならあした、何時からと。これは何時間前に通告するのですか。これは実に速いのですよ。あれはマッハ二・五とか大変な速度なんだ。だから、これを二時間ぐらい前に通告するということじゃ問題にならないんだな。時間は、何時間前に通告するのですか。
  225. 小山昌夫

    ○小山説明員 お答え申し上げます。  通常の米軍の訓練空域でございますと、取り決めを行いまして、前日に、大体使用するというようなことで連絡を受けております。しかしながら、ACMIにつきましては、まだそこまでの細かい取り決めは終わっておりません。
  226. 瀬長亀次郎

    ○瀨長委員 もう一つ、これは危険なので聞いておきますが、発進基地は今嘉手納だろうと言った。ところで、発進基地でACMI空域との間を行き来する軍用機の数だな、回数、一日に一体どのくらい予定しているのか。これは危険度がどういうものであるか、はっきりするから聞いているのです。空域というのは中身がわかりにくいんだな。陸の基地は金網を張りますね。金網の中で戦闘訓練をやるわけだ。だから今申し上げましたように、ACMI空域との間を行き来する軍用機の数と回数、一日にどのぐらいになるのか説明を受けているはずだ。ACMI及びホテル・ホテル空域を行き来する、これを説明してください。
  227. 小山昌夫

    ○小山説明員 お答え申し上げます。  私どもは折衝の過程で米軍から聞いているところによりますと、いろいろとまだ使用方法については検討もしているようでございますが、少なくとも大量の航空機を一遍に投入するということはあり得ない、極めて少ない数を繰り返して何回か行うというように聞いております。
  228. 瀬長亀次郎

    ○瀨長委員 時間が参りましたので、大臣に最後に締めの御答弁をお願いしたいと思いますが、今御承知のように、分科委員会でも検討は終わりだというのだけれども、ちっとも検討を終えていないんだな。危険なんだ。私が聞いた範囲もぼやっとしている。四千平方キロメートル新しくやる。ホテル・ホテル空域一部を使う。一部は何平方キロ、これもわからぬ、機数もわからぬ、機種もわからぬ、通知もあいまいだというような危険な状態であるので、この空域、新しくACMIを設置するという空域は、これは否定すべきである、拒否すべきである。  空というのは、非常にわかりにくいんですよ。陸の基地はわかるが、空の基地は非常にわかりにくいのです。だから民間、今の管制官、乗員の人々、さらに含めて全国民の安全を守るために、この危険な状態、具体的に言うとちっとも答え得ないんだ。こういった状態の中で進められているのが、ACMIの今の折衝過程なのです。もう具体的に危険である。防衛庁など警告がありますと、漁業組合の組合長の承認を受けると言ってやっているんですね。大臣、こういった状況の中でありますから、日米合同委員会などを開いてACMIを拒否すべきである。今私が聞いたあのイタリア、同盟国でもイタリアぐらいですよ。あのコルシカの隣にあるサルジニア、あれは島なのです。こういったようなところで、なぜ日本か。ねらわれている。そういう意味で、この危険な空域、ACMI空域をアメリカに与えるということを拒否すべきであると考えますが、大臣の御所見を伺いたいと思います。
  229. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今お話しのACMIは、米国側から受けている説明によりますると、F15パイロットの練度の向上及び維持のためには必要不可欠である、その設置は、米側においても優先度の極めて高いものであるということでございまして、したがって当省としましては、安保条約上の必要性あるいは航空交通管制上の安全、さらにまた地元住民等への影響等にも配慮しながら、日米双方にとって納得のいく形で調整が図られるべきである、こういうふうに考えております。
  230. 瀬長亀次郎

    ○瀨長委員 焦点をそらさぬでくださいよ。今運輸省、外務省が説明した。危険なんですよ。何もわかっていない。わかっていないままで進められているのが現在の折衝過程なのです。大臣、あのF15、16も使うということも言われている。これだったら大変なことになる。しかも、マッハ二・五というのは、あの速度は大変ですよ。そういったような中でちっとも具体的に答えることができない状況であるので、私、大臣にもう一遍申し上げますが、この点も民間の安全にはなっていないんだ、今の段階では。危険なんだ。みずから危険であることを証明している。そういった点を積極的な姿勢国民の民間航空の安全を基本にして進めてほしいと思いますが、最後に、大臣いかがですか。
  231. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今お話しのように、また私が答弁いたしましたように、これは米側にとっても極めて優先度の高い問題でございます。しかし、いわゆる安全の問題とかそういうことを考えれば、やはり調整をしなければならない点もある、こういうふうに思っております。そういう点につきましては、日米双方で調整をする必要がある、そういうふうに考えます。
  232. 瀬長亀次郎

    ○瀨長委員 これで終わります。
  233. 中島源太郎

    中島委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時十七分散会