運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1984-05-09 第101回国会 衆議院 外務委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年五月九日(水曜日)     午前十時三十一分開講 出席委員   委員長 中島源太郎君    理事 石川 要三君 理事 野上  徹君    理事 浜田卓二郎君 理事 山下 元利君    理事 高沢 寅男君 理事 土井たか子君    理事 河村  勝君       鍵田忠三郎君    近藤 元次君       佐藤 一郎君    仲村 正治君       西山敬次郎君    野中 広務君       原田昇左右君    町村 信孝君       井上 普方君    岡田 春夫君       河上 民雄君    小林  進君       玉城 栄一君    渡部 一郎君       瀨長亀次郎君  出席国務大臣         外 務 大 臣 安倍晋太郎君  出席政府委員         防衛庁防衛局長 矢崎 新二君         防衛施設庁長官 塩田  章君         外務大臣官房長 枝村 純郎君         外務大臣官房審         議官      山下新太郎君         外務大臣官房審         議官      都甲 岳洋君         外務大臣官房外         務参事官    斉藤 邦彦君         外務省アジア局         長       橋本  恕君         外務省条約局長 小和田 恒君         外務省国際連合         局長      山田 中正君         外務省情報文化         局長      三宅 和助君  委員外出席者         沖縄開発庁総務         局総務課長   勝又 博明君         外務大臣官房外         務参事官    大鷹 市郎君         運輸省航空局首         席安全監察官  石井 俊一君         海上保安庁警備         救難部救難課長 茅根 滋男君         外務委員会調査         室長      高橋 文雄君     ――――――――――――― 委員の異動五月九日  辞任         補欠選任   宮澤 喜一君     原田昇左右君 同日  辞任         補欠選任   原田昇左右君     宮澤 喜一君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ――――◇―――――
  2. 中島源太郎

    中島委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。仲村正治君。
  3. 仲村正治

    仲村委員 私は、移民として外国に移住した日本人子弟教育の問題についてお伺いをしたいと思いますけれども、この問題について外務省がどのようにかかわっているか、またどのようにかかわられるのかということについてまずお尋ねをしたいと思うわけでございます。  国土の狭い我が国としては、七つの海に雄飛しよう、五大州が我が家だというような合い言葉で、明治三十年代から昭和の十二、三年まで、また戦後は昭和三十年代から外国への移民が国策として奨励されてきたわけでございます。最初移民に行った方々からするともう七、八十年もたっているわけでございますけれども、この移民地の国情によって、発展している国に行った方はそれだけ幸せになっただろうと思いますけれども、しかし移民をした国が衰退した国であれば、それだけ惨めな状態生活を送っているという人が少なくないわけでございます。幸せな生活をしている人たちについて別に申し上げることもなかろうかと思いますけれども、南米の中で、特にボリビアに行っている方々の近況を調査したところ、日本人子弟教育が非常に問題であるというふうなことが指摘されているわけでございます。  戦後ボリビアの国に行っている日本人は、日本人籍を持ったままの永住者が約三千五百人、ボリビア籍を持った日系人が約七千人、合計して一万五百人ぐらいの日本人がいると言われておりますが、戦前に行った方々それなりに各分野に進出していると言われておりますけれども、戦後はむしろユダヤ人とかあるいはドイツ人が、日本人が活躍していた舞台にかわってやっているというような状況でございまして、どちらかというと、戦後は日本人は少し衰退したというようなことが言われております。特に戦後行った、移民した人たちは、経済基盤も弱い上にその生活環境も非常に不整備の中で生活をしている状況でございまして、この教育問題が非常に憂慮すべき事態である、こういうふうなことが指摘されているわけであります。  十年ぐらい前までは、日本人が集団して移住している地域では、日本人学生生徒が大体八○%ぐらい、現地ボリビア人が大体二〇%ぐらいというような割合の学校であったようでございますが、最近、現地ボリビア人日本人移住地の周辺に集まってまいりまして、逆に現地ボリビア人が六〇%、日本人が四〇%というような状況になっている。必然に児童生徒現地化してしまった、いわゆる土人化してしまって、学習態度と申しましょうか、そういう点で非常に憂慮すべき状態になっているという結果が出ておりますけれども、そういった点について、外務省としては調査なり、あるいはその状況を知っておられるのか、もし知っておられるとすると、どういう対処の仕方をなされているのか、お答えをいただきたいと思います。
  4. 大鷹市郎

    大鷹説明員 お答え申し上げます。  ボリビアのサンタクルス州には、サンフアンそれからオキナワという二つの移住地がございまして、両移住地に約二千名の日系移住者とその子弟が居住しておりますところ、これら移住者子弟に対する教育が非常な問題になっているということは、私どももつとに認識しております。  その両移住地のうちのサンフアン移住地につきましては、従来公立小中学校のみがございましたけれども、昨年の三月から、主として日系子弟を対象とする私立小中学校を、分離して設立いたしまして、より充実した教育を受けられる体制を整えております。そのサンフアン移住地におきましては、従来の公立学校及び今回の私立小中学校双方に対しまして、JICAが施設、教材の供与や教師の謝金等援助しておりまして、今後とも援助継続充実を図っていく所存でございます。  また、オキナワ移住地公立小中学校に対しましても、JICAからこれまで同様の援助を行ってきておりまして、今後サンフアン私立校と同様に継続充実を図ってまいりたいと思っております。  なお、現地の一部居住者の間には、日系私立の中高校を設立すべしとの意見があることも承知しておりますけれども現地の大使の意見ども聞きました結果、外務省としましては、移住者子弟教育は、現時点ではむしろ初等教育に重点が置かれるべきでありまして、既存小中学校に対するこれまでの援助を強化することが現実的であるかと考えております。
  5. 仲村正治

    仲村委員 確かに、政府としてもJICAを通じてそれらの方々への経済あるいは教育援助をしているかもしれませんけれども、ここに一九八一年の、サンフアン教育委員の野田氏という方の言でございますけれども、以前日系人は、アメリカでもブラジルでも非常に優秀であった、こういうことが定評であったけれども、一九八一年にサンフアン高校で二十四名も留年者が出た、これはなぜそうなるかと言えば、まずスペイン語語学能力が非常に低い、こういうことが言われておりまして、それと、もうほとんど現地化されて、いわゆる現地方々の惰性になれてしまって、勉強しようとする意欲がなくなってくる、こういうことが指摘されておりまして、サンフアンの、スペイン語平均点が五十四点、数学、これもスペイン語によるものでございますが四十点。ドイツ人学校では、七十六点、これがスペイン語平均点、それからスペイン語による数学平均点が六十五点。比較にならないのです、日本人の行っている学校の点数が低いわけです。特にそういう中でも、オキナワ・コロニー第一、第二、これも極端に悪い状況でございます。これらの生徒は、家庭では普通、日本語を使うわけです。学校ではスペイン語で教えるものですから、それが理解することができないというようなことも大きな原因になっていようかと思いますけれども、そういう、向こうの公立学校教育をさせるだけでは日本人としての子弟教育が十分できないのじゃないかという心配をいたしておりますけれども、何とか、国としてこれら日系人教育のために特殊の学校をつくるとかという方法はないものかどうか、その辺をお聞かせいただきたいと思います。
  6. 大鷹市郎

    大鷹説明員 お答え申し上げます。  今御指摘報告書、私どもも研究さしていただいておりますけれども、要するに私立の中高校を設立するという問題でございますが、そのような学校をつくることにつきましては、まずもって地元移住地それなりの機運がなければならないと考えますところ、これまで大使館を通じて行いましたアンケートあるいはインタビュー等調査の結果では、移住者方々の側に必ずしもまだそのような強い意向が見られないということでございます。  また、私立高校を設立するという問題に関しましては、実際に学校が設立された場合でもどれくらいの子弟の方が入学されることになるか、また、学校の創設となりましては、当然ながらボリビア政府当局の事前の了解ないし協力が必要となりますので、この点の見通しも立てる必要がございます。  また、先ほど申し上げましたように、さらに当面必要とされておりますのはむしろ初等教育充実ではないかと思われること等の問題点がございます。私どもとしましては、これらの諸点を十分に見きわめまして、その時点でいかなる援助が必要であるか、さらに検討してまいりたいと思っております。
  7. 仲村正治

    仲村委員 この件は、ここに調査した資料がございますけれども、これからいたしますと、本当にこのまま放置してはならないということを痛感いたしておりますので、外務省としても調査をしてそれに対処していかれるように希望するものであります。  次に、日米安保条約に関連して、外務省運輸省防衛庁にそれぞれ質問をいたしたいと思います。  沖縄本島北部海域ACMI航空機戦技訓練評価装置設置することについて防衛庁あるいは運輸省米軍との間で調整をしてきているようでございますけれども、御承知のように沖縄米軍基地は、復帰当時、全国の米軍基地の五三%も存在している、それが住民生活に非常に不安を与え、また県の振興開発の上でも大きな障害になっていることは申し上げるまでもございません。そういう立場から県民としては基地の整理、縮小、統合は不可欠の問題であると考えているわけでございますが、そういうところに新たにACMI訓練空域設置するということは、県民にとって非常に不安な気持ちでございます。そういう意味で、この問題がどのように今進行しているのか、これはどうしても設置しなければならないものであるのか、この点について御説明願いたいと思います。
  8. 山下新太郎

    山下(新)政府委員 お答え申し上げます。  ただいまお話しございましたACMIでございますけれども、この問題は昭和五十六年にアメリカ側からの要請があったわけでございます。それ以降、私どもといたしましては、民間航空機運航の安全を確保することはむろん必要でございまして、十分それに留意しながら関係当局、すなわち御指摘のとおり航空局を中心として検討が行われているというふうに理解している次第でございます。  また、ACMI空域設定に当たりましては、この空域設定の際に、総面積におきましてはACMI空域以上の広さの既存米軍訓練空域が新たに削減されるということが予定されているようでございます。具体的にどの訓練空域がどれだけ削減されるかにつきましては、技術的な問題もございまして、現在関係当局検討中というふうに承知している次第でございます。  いずれにいたしましても、外務省といたしましては、本件につきまして安保条約上の必要性航空交通管制上の安全、さらには地元方々への影響といった問題をいろいろと配慮いたしまして、日米双方が納得のいく形で調整が図られるべきである、こういうふうに考えている次第でございます。
  9. 仲村正治

    仲村委員 御承知のように沖縄県の軍用地面積は県土の一二%に及んでおります。そして海域空域もこういう形で全部訓練空域設定されておりまして、そういうところに新たにACMI海域設定されるということについて、これは民間航空機あるいは船舶の航行に非常に支障を来すのじゃないかという不安があるのは当然のことでございます。したがいまして、どうしてもその設置はやむを得ないということであれば、現在、南北大東島に行く航空路ホテルホテル水域及び空域それからマイクマイク水域及び空域という訓練空域に挟まれた狭いところから飛行を続けているわけでございますが、その地域積乱雲がよく発生する地域でございますけれども、限られた航路帯を飛ばなくちゃならぬということで、危険を目して積乱雲の中に突っ込んでいかなくちゃならない、そういう状態運航を続けているような状況でございますので、何としてもACMI設置しなければならぬということであれば、既設部分から何としても縮小してもらって、民間航空機の安全の確保が図れるようにしてもらいたい、こういうことでございます。それが一点でございます。  もう一つ伊平屋伊是名の島の方に空港をつくってくれという要請がたびたび出されておりますけれども、これも伊江島訓練空域に阻害されて空港設置ができないということになっておりますが、これも一部を削れば空港設置ができるわけでございますので、そういった点についてどのように米軍との話し合いをしているのか、その辺についてお尋ねをしたいと思います。
  10. 石井俊一

    石井説明員 お答え申し上げます。  まず第一点の南大東へ参ります航空路のお話でございます。先生今御指摘のとおりホテルホテル空域マイクマイク空域の間にはR83という航空路が現在敷かれております。これにつきましては、現在の航空路は幅十マイルのいわゆる古い型の航空路でございます。現在ACMI空域設定するに当たりまして私ども技術的にいろいろ検討を重ねているわけでございますけれども、この航空路につきましてもいわゆる最新型のVOR航空路に一応再編成をする。そういたしますれば、今先生いろいろ御指摘航行の安全上の問題につきましてはさらに飛躍的に確保できるということで、米軍いろいろ話をいたしまして、このVOR航空路に再編成するに当たりまして、必要な訓練空域は削減するということにつきまして米軍は基本的に了解をしております。もちろん最終的には合同委員会でもってこれが決まるわけでございますけれども、現在、私ども技術的な検討の段階におきましては基本的に了承しております。  それから、第二点の伊平屋伊是名空港設置したときに、那覇と両空港の間の飛行経路あるいは出発、進入に関しまして、現在伊江島上空にございます訓練空域が邪魔になるんではなかろうかという御指摘でございますけれども、これにっきましても過去何回かいわゆる関係者の方が運輸省の方に一応陳情に見えております。しかし、最近、この三、四年間は正式に県当局の方から空港設置についての御要望がございませんけれども、もちろん私ども、実際に空港設置いたします場合には地方公共団体、この場合は沖縄県の方から正式の要望を受けまして、いろいろ地形、気象あるいは空域あるいは使用空港会社等の要素を十分加味いたしまして検討するわけでございます。この中にもちろん今先生指摘空域の問題が入っているわけでございますから、私ども過去いろいろ非公式に米軍とも話を進めております。そして米軍も、もし正式に伊平屋伊是名空港設置するという要望が出れば、運輸省からの要望に対して十分協力はすると申しておりますので、私ども具体的な要望が出てまいりました暁には十分米軍の方にその申し入れを行いまして、民間航空機が安全かつ効率的な運航ができますよう十分な配慮をしたいというふうに考えております。
  11. 仲村正治

    仲村委員 ただいま南北大東島への民間航空機航路帯が非常に狭いということでかねがね地元住民から要望の出ていた点については、今回のACMI設置に関連して、既設部分からある程度縮小していく、そして民間航空機の安全を確保するというようなことでございますので、ぜひともそういう方向で実現をしていただきたい。  もう一点の伊平屋伊是名空港につきましては、県としても今伊平屋空港設置しようという前提調査を進めておりますので、何としても伊江島訓練空域が縮小されない限り空港設置はできないわけでございますので、これはひとつ早急に実現をしていただくように要望して、この問題については終わりたいと思っております。  次に、日中問題に関連してお尋ねをしたいと思います。  今日日中関係は、両国の国の体制の違いやあるいは政治形態の相違はあるにいたしましても、国交回復後、両国政府並びに両国民の相互信頼の上に立って順調な足取りで進められていることは実に喜ばしいことでございますけれども、しかし日中間の問題がすべて解決したということではございません。鄧小平さんは日中国交回復に当たって、小異を残して大同で進もうといったようなことを言われたわけでございますが、お体に似合わず本当に大人という感を実感として持ったわけでございますけれども、時あたかも沖縄県の尖閣列島海域海底油田があるというようなことで、その開発問題がいろいろクローズアップされたために、両国においてその領有権主張がなされたわけでございます。このときに鄧小平さんは、この議論は子孫に譲ろう、こういうことで棚上げの状態になっているわけでございますが、この尖閣列島について我が国としてどういう考え方を持っているのか、その点をひとつ外務大臣からお聞かせいただきたいと思っております。
  12. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 尖閣列島我が国固有領土であることは疑いのないところでありまして、我が国は従来より同諸島を有効に支配をしております。なお、尖閣諸島地域開発につきましてはこれが専ら尖閣諸島に対する我が国有効支配を誇示することを目的とするようなものととられかねないようなことについては慎重に対処する必要がある、こういうふうに考えております。
  13. 仲村正治

    仲村委員 この地域沖縄県石垣市の字登野城二三九〇から二三九四番までの地番がちゃんと打たれているわけでございまして、以前は古賀さんという方の所有地であったわけですが、その一部が最近粟原さんという方に売買されているわけであります。その中でも国有地が一筆ある、こういうことでございますので、今外務大臣がおっしゃったように、これがれっきとした我が国領土であるということには疑う余地もないと考えておりますので、中国に遠慮してかどうか知りませんけれども、この海底油田開発の問題が今全く触れられないような状態になっておりますが、この点を、領土権を明確にしないと恐らく開発計画は進められないのではないかという点から、非常に心配をいたしておるわけでございますけれども、もし開発の件でいろいろと申請者が出るというような事態になれば、政府としてはそのような対処の仕方をしてもらえるのかどうか、その点をひとつ明確にしていただきたいと思います。
  14. 橋本恕

    橋本(恕)政府委員 先ほど外務大臣から御答弁されましたとおりに、また先生からも御指摘ございましたとおりに、この尖閣列島我が国固有領土であるということは明々白々でございます。したがいまして、この事実、それからもう一つは、先ほども大臣がお触れになりましたけれども、また先生も御指摘になりましたとおりに、日中間は現在かつて見ないほどの非常に友好関係にございますので、この日中友好協力関係を阻害しないという一つ前提、それからこの尖閣諸島があくまでも我が国固有領土であるという大原則、前提をうまく組み合わせながら、この地域資源開発につきましても、中国側とも協力すべきは協力し、また我が国立場主張すべきところは主張する、こういうことでまいりたいと思います。
  15. 仲村正治

    仲村委員 資源のない我が国でこういった海底油田があるというふうに専門家方々から指摘をされているわけでございますので、そういったことに積極的に取り組んでいけるように、やはり領土権主張を明確にしていくべきだというふうに考えているわけでございますが、現在の御答弁からいたしまして、政府もそのように考えておられるので、ぜひとも機会あるごとに中国との、子々孫々にその議論を譲ろうということでなしに、早急に明確な結論を出していただきたい、こういうふうなことを申し上げておきたいと思います。  次に、先ほどの米軍訓練空域との関連もあろうかと思いますが、沖縄復帰の際に米軍台湾政府との間に決められておった防空識別圏、これがちょうど沖縄県の与那国島の上から通っておるわけでございます。したがいまして、与那国空港に離発着する民間航空機がちょっとでも台湾ADIZの内側にずれてしまえば、台湾側からスクランブルをかけられるというような状況があると言われております。先般私が与那国島に行ったときに、町長からも、また有志の方々からも、こういうことが過去に二、三度あったので、ぜひともこの防空識別圏線引きを直してもらいたいというような要請を受けたわけでございますが、これについて外務省として、この実情をどのように考えておられるのか、御説明を願いたいと思います。
  16. 橋本恕

    橋本(恕)政府委員 先生指摘のとおりに、台湾防空識別圏とそれから日本防空識別圏との境界線が確かに与那国島上空を通っております。そこで、御指摘のような問題が理論的にあろうかと思いますが、私ども防衛庁それから運輸省当局から聞いておりますところでは、台湾の空軍によるところのスクランブルをかけられたという報告を受けていない、こういうふうに聞いております。  しかしながら、先生がただいま御指摘のように、現にそこに住んでおられる方が心配しておられるわけでございますから、なお改めて運輸省航空当局あるいは防衛庁関係当局とも相談しながら、事実関係調査を急ぎまして、もし仮にそのような事実があったし、また今後もあり得るとすれば、これは外交上の問題としてどのように対処していくかということを関係当局とよく相談して方針を決めたい、このように考えております。
  17. 仲村正治

    仲村委員 時間がありませんので急ぎますけれども、このラインはちょうど与那国島の真上から通っておるわけでございますが、台湾としても、この線から入ってくれば不法侵入だということでスクランブルをかけるよというようなことでの線引きがなされているものだと思うわけであります。そういう点から何としても我が国領土の上から他の国のそういう線が引かれているということは、どう考えてみても不合理な問題だと考えておりますので、これは国交のない台湾とどういう形で話し合うのかはよくわかりませんけれども、それの是正をしていただきたい、こういうふうに思うわけであります。  今与那国空港滑走路八百メートルでございますが、そこにはDHCという十九名乗りの飛行機が今運航しておりますが、それを千五百メートルにしてYSに変更しようということになります。そうすると、勢い旋回範囲も非常に広がっていきますので、今私が申し上げたような危険が増大するということは、もう目に見えて明らかでございますので、何としてもこの防空識別圏の変更について台湾政府の方と話し合ってもらいたい、こういうふうに考えておりますけれども、この点についてどうでしょうか。
  18. 橋本恕

    橋本(恕)政府委員 現在私ども承知しておりますところでは、南西航空飛行機与那国島に発着しておるというふうに伺っておりますが、この南西航空飛行機は、台湾側防空識別圏からではなくて日本側防空識別圏、つまり東側から空港に進入して着陸している、こういうように伺っております。しかしながら、せっかくの先生の御指摘でございますし、現に住んでおられる方々心配しておられるようでございますから、先ほど申し上げましたとおりなおよく調査を進めまして、問題が起こらないように対処方針を考えたい、このように御了解をいただきたいと思います。
  19. 仲村正治

    仲村委員 時間がありませんので、以上で終わります。
  20. 中島源太郎

    中島委員長 次に、小林道君。
  21. 小林進

    ○小林(進)委員 外務大臣にお伺いいたしますけれども、今朝の新聞によりますと、ソ連はオリンピック不参加を国内オリンピック委員会の声明の形で発表したというのでありますが、突然この報道に接しまして、私どもはあらゆる機会を利用して東西の対立を緩和し軍縮平和の方向へ持っていっていただきたいという悲願を持っているわけでありますけれども、またこのオリンピック等を通じて米ソあるいは東西の対立がさらに激しくなるのではないかというふうな危惧の念を覚えて大変びっくりしているわけでございます。これに対する外務大臣政府の考え方をまずお伺いをしてみたいと思うのであります。
  22. 三宅和助

    ○三宅政府委員 外務大臣が御答弁する前に、事実関係だけ一言申し上げます。  実は、先般スイスにおきましてオリンピックの緊急理事会が開かれまして、そこでの一応の決定は、ソ連のオリンピック委員会がオリンピック憲章のもとでロサンゼルス・オリンピックに参加するとのかたい決意を強調したということで、かなりいい方向に一度は進んでいたわけでございます。また、ソ連の国内委員会が五月の末に参加するかしないかを決めるということになっていたわけでございますが、急速、今回参加しないんだという決定を行われまして、実は我々もどういう動機でこの早い段階でなったかということにつきましては今情報を収集中でございますが、全体としては非常に残念であるという気持ちでおります。
  23. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私も最終的にはソ連はオリンピックに参加するんじゃないかという期待を持っておったわけでございますが、ソ連の国内オリンピック委員会が不参加ということを決めたということで非常に残念で仕方がありません。しかし、その辺の実態がどういうことか情報を収集してみたいと思っておりますし、また日本のオリンピック委員会もこの問題についてきょうじゅうにいろいろと協議をする、こういうふうに承っておるわけでございます。いずれにしても事態を見守りながら、しかしこれが事実であるならば大変遺憾なことであると考えております。
  24. 小林進

    ○小林(進)委員 今までの御答弁で、唐突として不参加の声明をしたことの理由はまだ明らかでないとおっしゃるけれども、新聞の報ずるところによれば、何かオリンピックの憲章にアメリカが違反をしているとか、あるいはロスにおいてソ連の選手の安全が保たれないとか、あるいはロスにおいてソ連側に対して早くアメリカに亡命せよというふうな団体があって亡命工作を依然として続けているとか、いろいろの情報がソ連側から流れているわけでありますが、これに対して、アメリカの一部でしょうけれどもアメリカ民間人ですか、よくわかりませんが、ソ連がレーガンの大統領選挙に何といいますか、阻害というわけにはいきませんけれども、不利な条件をつくろうというレーガン当選を阻止するための一つのデモンストレーション、そういう運動であるかもしれぬというようなことをアメリカでは解釈している。いろいろと意見が分かれているわけでありますが、情報文化局長、これは早くその理由を明らかにして後で知らしてもらいますが、外務大臣にここでお願いしたいことは、政府がどういう態度に出られるか非常に心配しているわけです。  私は、この席上で外務大臣にもしばしば繰り返してお願いをしていることは、あらゆる機会を通じて米ソの間を近づける、話し合いに入る、あるいは軍縮の方向へ進めるための調整役というか、調整役までいかぬでも、そっちの方向で努力をしてもらいたいということを重ね重ね言ってきたわけでございます。言ってきたわけでございますが、この際、また四年前のモスクワのオリンピックみたいに、アメリカがどうも右向けと言ったからこっちも右向いて、モスクワのオリンピックには不参加を決めたなどという、そういう短絡な行動ではなしに、先ほどあなた言われました、むしろ参加をしないということは大変遺憾であるというふうな御意思の発表もあったのでありますが、その本音に従って今度は両国の間をうまく情報をとりながら調整をとるという姿勢で、ソ連もロスのオリンピックに参加するような方向へ、外務大臣御努力願わなければいかぬ。順序としては、今局長が言ったように、ソ連側の意向も外務省がよくキャッチをせられて、それをもって今度はアメリカに、そのソ連側の考えを通じながらお互いにそういう頑固頑迷なことを言わないで、改めるところは改め、折れるところは折れて、両国手を握ってロスのオリンピックを成功させる方向へ持っていくように、外務大臣のちょうどいい出番だと僕は思っているのですよ。外務大臣がこれをやっていただけるかどうか、ひとつお聞きをしておきたいと思うのであります。
  25. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ソ連が参加しないというのが間違いないのかどうか、情報をいろいろと収集してみたいと思いますが、しかし突然ソ連が参加しないという決定をしたという背景がよくわかりませんし、また今そういうふうな世界の情勢でもないように思います。と同時に、またソ連が参加しないと、関係国等にも非常に影響が出てくるわけで、せっかくの民族の祭典といいますか、世界の祭典が意味をなさなくなってくるわけでありますから、日本としましても世界全部が、特にソ連が参加をするように、これから情報を収集しながら、できるだけの外交努力もしなければならぬと思いますし、しかし本来はオリンピック委員会の問題であろうと思います。恐らくJOC、日本オリンピック委員会としてもきょうじゅうにいろいろ対策を協議するということでありますが、ソ連の参加を重ねて呼びかけるということになっていくのではないだろうか、そして政府としてはこれをバックアップしてまいりたい、こういうふうに思います。
  26. 小林進

    ○小林(進)委員 確かにこの問題の舞台は政府じゃありませんよね。それぞれの委員会等あるいはJOC、IOC等の問題でもございますけれども、合いみじくも大臣がおっしゃったように、これはこのままいきますと、東欧圏は参加しません。ソ連が参加しなければ東ドイツを初めあの圏内の人たちは入らない。ロスのオリンピックは、だれも予想するようにソ連が一位で二位は東独じゃないかという、こういう一、二位の強いところが全部参加しなければ、まことにどうもうらぶれたオリンピックになるし、同時に東西の対立がそのためにさらに激化していくというその傷口も広がっていくわけでありまして、いずれの面からいいましても好ましい姿ではありません。ありませんから、これは中曽根さんには私は言わないのですよ。あなたと中曽根さんとちょっと外交のニュアンスが違うのだ。これはおれは非常にとうとく見るのですよ。  あなた方今度は、話は余分になるけれども、インドやパキスタンにのこのこ中曽根さんについていって何が何やらわからないような、外務大臣は外交の哲学とイデオロギーがなければいかぬ。中曽根さんは常にソ連を視点に置いて均衡と抑止なんと言っては敵対、対立を強化していくことに中曽根内閣の本質を出そうとするけれども、その点、あなたは軍縮の方向へ間違いのない道を歩んでいられたということで、この点を私は期待しているのですよ。中曽根さんと同じようにいつでも力の均衡と抑止のための何とかということをやられたのではとても我々はたまらないのでありますが、その意味においてもこのオリンピックです。  ソ連とアメリカが今この問題で対立しているが、これまたあなたがお出になれば確かにうまくいく見通しも私はあると思う。また、ソ連は断じてやらないと言っているのじゃないのです。今のところはどうも参加できないと言っているのであって、何か条件をひとつ緩和なりふさいでくれれば参加してもいいというニュアンスもあるのでありますから、ひとつあなたから特に御努力を願って、大きくは東西の傷口を治す、小さくてもオリンピックの精神、これはイデオロギーのものではありません、思想信条のものではないのだ。そういうオリンピック精神を高揚する意味においても両国の緩和、参加をできるように御努力願いたい、いかがでございましょう。いま一度御決意のほどを承って、次に移りたいと思います。
  27. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ソ連がぜひともオリンピックに参加をするように恐らくJOCもきょうじゅうには態度を決めるということでありまして、ソ連の参加を呼びかけるのじゃないかと思いますが、日本政府としてもJOCがもしそういう方向で態度を決めたら外交的にバックアップしたい、そういうふうに思います。
  28. 小林進

    ○小林(進)委員 それではいま一歩進んで、ソ連に呼びかけてソ連の意向、腹のうちもよく聞くところまで努力をしていただきたいと思いますが、それも希望いたしておきまして、次の問題に移ります。  実は、アメリカの前の太平洋軍司令官ロング氏が、下院の外交委員会アジア・太平洋問題小委員の対日公聴会で証言をいたしまして、日米間で最大の焦点となっている海上交通、シーレーン防衛の問題に関連をいたしまして、有事の際の宗谷、津軽、対馬の三海峡封鎖は日本の任務である、日本の責任であるということを断言し、また日本はこの三海峡に機雷敷設等の能力も持っているという見解を発表したわけでありまして、そのためには、海上封鎖に必要な費用、日本が分担して海上封鎖をするわけですが、機雷敷設だけで二十億ドルないし三十億ドル、日本円にして四千五百億円から六千八百億円になろう、そのようなことをやり得る能力は日本は十分にあるんだと、数字を示して説明をしたというのでございます。  大臣も御承知のとおり、ロング氏は五十八年の七月に退役をされたばかりの軍人なんです。そして、日本アメリカの防衛構想づくりにもずっと直接参画をしてこられた方なんだ。でありまするから、この発言は非常に重要であると見なくちゃいけません。普通の人の発言と違うのであります。そこで、私どもは瞬間に大変なことだと思って取り上げると同時に、去年の一月十七日ですか、アメリカヘ行った中曽根首相がいわゆる日本列島不沈艦あるいは三海峡封鎖論をおやりになって日本国民に非常に大きな衝撃を与えたことと、この問題は完全に関連をしているのじゃないかということを考えざるを得なかったわけでございます。  この問題について、外務大臣あるいは防衛庁からきちっとした御意見を承りたいのでございますが、ロング氏は公聴会でなお言葉を継いで、シーレーン防衛は、日本じゃありません、米国の最大の貿易対象地域である東北アジアヘの交通確保だ、シーレーンは米国の利益にも欠くべからざる条件であるということを言って、今まで日本政府日本の専守防衛のためのシーレーン防衛だということをごまかすように言っておられましたけれどもアメリカのロング氏は下院の公聴会において、シーレーンは米国のために必要なんだということを明らかにされているわけでございます。ここにも日本政府説明と重大なる食い違いがあるのじゃないか、この点も明らかにしておいていただきたいと思う。  次に、シーレーン防衛のためには海峡封鎖が軍事的に有用なんだ、非常に必要なんだということを述べるとともに、この三海峡を封鎖することは極めて難しい、だから日本基地や、基地というのは三海峡だけじゃありませんよ、日本の国内の基地や自衛隊の支援を欠かすことができない、三海峡を封鎖するためには日本の国内におけるすべての基地と自衛隊の支援を受けなければならない、こういうことを説明しているわけです。これは一体日本の専守防衛とどういう関係があるか。これはアメリカのために自衛隊も支援をしてくれ、基地アメリカの利益のために提供してくれという言葉なんだ。この点を我々はどう解釈すればいいのか、この二点教えてもらいたい。  それから、日本が独自の力で海峡封鎖を行うだけの能力をつけることは日本が表明した、こう言っているのです。日本が表明したということは日本政府が表明した、日本政府が表明したということは中曽根さんが約束したということなんだ、こういうふうにロング氏はアメリカの議会で説明している。三峡は、日本が能力もありますし、日本が責任を持って役割を分担をいたしますということを表明したと言っている。これほど明白なことはないのでありますから、表明をしたというそれは速記録なり文書なりが政府はあるはずだから、これを今私どもに示してもらいたい。これは自衛隊の中にあるのか外務省にあるのかわかりませんが、日本が表明しだということを明確にしているのでありますから、その明確にしたものをひとつ我々に示してもらいたいと思うのでございます。まだ質問ありますけれども、以上の三点についてまず答弁をお願いいたしたいと思うわけでございます。
  29. 山下新太郎

    山下(新)政府委員 小林先生指摘の第一点につきまして御答弁させていただきたいと思います。  先生指摘になられましたのは、前太平洋軍司令官ロング提督、この方が確かに、五月三日でございますが、アメリカの下院外交委員会アジア・太平洋小委員会におきまして対日問題の公聴会がありまして、そこで御指摘のような証言が行われたというふうに私どもも理解いたしております。延言と申しましても、実はロング前司令竹は冒頭のステートメントなんかをおやりになったようでございますが、それに対しましてソラーズ小委員長の方から質疑が行われたようでございます。その中で我が国のシーレーン防衛に絡んでの発言が行われたというふうに理解している次第でございます。  ただ、私どもがこういうことを知りましたのは実は新聞報道その他からでございまして、調べましたところ、応答部分に関する議事録はいまだできていない次第でございます。そこで正確にはどんな発言をロング前司令官がおやりになったのか実は承知していない次第でございます。したがいまして、恐縮なのでございますが、その発言の中身に関しまして具体的なコメントをすることはできれば差し控えさせていただきたいと考える次第でございます。  一般的に受けます印象だけを申し上げますと、この発言は抑止力を向上するという観点から海峡防備の能力等につきまして我が国の自衛力の整備に対するロング前司令官の期待を表明されたものだ、こういうふうに受けとめている次第でございます。
  30. 小林進

    ○小林(進)委員 あなた方は何でもうまくごまかせればそれでいいと思っているが、それじゃ防衛庁にお伺いしますけれども、これは私はわからぬから素直に聞くのだが、シーレーンの問題についてロング前司令官は、「「シーレーン防衛」の意義について「米国が現在のような前方展開戦略をとり続けるなら、有事の際にシーレーンを確保しておくことは軍事的に不可欠である」と述べた。」とあるんだが、前方展開戦略なんて言うと私どもはわからないのですが、これは一口に言ってどういう戦略なんですか、ちょっと教えてください。
  31. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 御承知のようにアメリカはグローバルな安全保障という面を重視しておるわけでございますが、その機能を果たしていくためにいろいろな軍事力を持っておるわけでございます。その際に本土に軍事力を持っていることは当然でありますけれども、本土を離れまして本土以外の遠い地域におきまして戦力を展開をして全体としての抑止力というものを構成しよう、そういう考え方をとっているようでございます。その本土を離れて遠い地域において軍事力を展開するという意味で前方に展開する、前方展開戦略、そういうふうな言い方を従来してい谷と承知いたしております。
  32. 小林進

    ○小林(進)委員 そこで、そういう戦略も含めて、三海峡を日本に封鎖させるし、その能力もあり、日本もまた、政府もこれをやるということを表明したというところまで言っているのでありますから、私は、日本政府アメリカ政府との間に三海峡防衛に関しては相当込み入った具体的な話が全部できていると思うのです。であると思いまするから、今までアメリカと話をしてきて、例えば三海峡をどのときに共同で、どこをどこで分担をするか、どういう作戦要領でいくのか、そういうことをひとつここで具体的にお聞かせを願いたいと思います。国民はこれ非常に恐れているのですから具体的にお示しを願いたい。まさかロング大将がある日突然何にも日本関係のないことを思いつくままにアメリカの責任ある会議でしゃべったわけじゃないでしょうから、相当日本政府との間にきちっとした話し合いも、性格もできていると思うのでありますから、その点をひとつお聞かせを願いたい。
  33. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 我が国の自衛隊が出動いたします場合と申しますのは、これはあくまでも我が国が武力攻撃を受けた、いわゆる有事の際でございまして、そういう際に我が国を防衛するために必要最小限度の範囲内で場合によりまして海峡防備の作戦もやるということは、これはいろいろな作戦の一環としてあり得ることでございます。  そういった日本が攻撃を受けた場合の日本の防衛の活動をどうやってやっていくかということにつきましては日米の政府間でかねてからいろいろ協議をしてきた経緯がございます。それは現在既に御承知のとおりと思いますが、五十三年十一月に日米の両国間でいわゆるガイドラインというものを合意をしておるわけでございます。その中で日本有事の場合にどういった作戦を実施していくか、日米両国がどういうふうに動くかということを書いてございます。  それによりますと、基本的な作戦構想といたしまして、「自衛隊は主として日本の領域及びその周辺海空域において防勢作戦を行い、米軍は自衛隊の行う作戦を支援する。米軍は、また、自衛隊の能力の及ばない機能を補完するための作戦を実施する。」という基本的な原則が書いてございまして、さらに、その個別の問題としましてブレークダウンしたところで海上作戦について書いてございます。この中で日米共同で実施するということを書いた後に、「海上自衛隊は、日本の重要な港湾及び海峡の防備のための作戦並びに周辺海域における対潜作戦、船舶の保護のための作戦その他の作戦を主体となって実施する。」というふうに述べております。それに続きまして、「米海軍部隊は、海上自衛隊の行う作戦を支援し、及び機動打撃力を有する任務部隊の使用を伴うような作戦を含め、侵攻兵力を撃退するための作戦を実施する。」こういうことを書いておるわけでございまして、要するに海上作戦は、いろいろな作戦を通じまして海上自衛隊が主体、それから米海軍がそれを支援し、その他機動打撃力等をやる、こういうことを決めておるのが日米間の基本的な合意でございます。
  34. 小林進

    ○小林(進)委員 委員長、今言われたそのガイドラインを全部資料にして出すように言ってください。時間がありませんからお願いいたします。――委員長、わかりましたね。委員長、あなたに言っているんだ。そんな行政官の方に向かなくたってよろしい。あなたは立法府の親方じゃないですか。あなたは私に責任を持てばいいんであって、大委員長じゃありませんか、権威を持ちなさいよ。  それで言うんだが、シーレーンというのは僕は平行する線かと思ったんだ。そうしたら海峡封鎖なんだ。その封鎖の目的はどこにあるのか。それはソ連の極東艦隊、四つの連合艦隊の中でウラジオストクにおけるソ連艦隊が一番大きいと言われる。これを日本海の中に封鎖をして、いわゆる太平洋に出ていけない、西インド洋あるいは中近東等に世界的な戦略をアメリカが展開するときにはこのソ連の艦隊を日本海に封鎖しよう。それからいま一つ、何かカムチャツカにおけるペトロパブロフスクの海軍も切断をして、これは一緒になって大きな戦略態勢をつくれないようにやろう。これは大変なことですよ。これは旅順港の封鎖なんというものじゃない、大変なものである。これをやられるということが明らかになれば、ソ連は黙って見ていますか。こういうような三海峡封鎖が作戦的に実施されたときにソ連はどういう対応に出るか、ちょっとこれを聞いておきましょう。外務大臣、これぐらいは戦略、戦術の問題だから、外務大臣に聞かなくては。
  35. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本の自衛隊が行動する場合は日本有事の際しかないわけですから、日本の有事の際に、日本の自衛隊がいわゆる憲法、個別的自衛権の範囲内において行動を起こす、こういうことです。
  36. 小林進

    ○小林(進)委員 その有事の際などという抽象論が、一体社会に通じますか。有事の際だとか均衡力だとか抑止力なんというのは、戦争を挑発し、戦争をやるための言葉なんだ。かつては、あなたも経験あるだろうけれども、東洋平和のためならば。満州国は日本の生命線だ。今など、満州、東北区は日本の生命線だなんと言う者は一人もいなくなった。あのときに中国の東北区が我が日本の生命線だということで国民を戦争に駆り立てたのと同じ今の言葉なんだ。一体、いつが平時でいつが有事なんです。有事に備えるというのが平時に準備することだから、結局、有事に備えて平時のうちに三海峡封鎖のいわゆる爆弾をちゃんと抱えるということなんでありまするから、これはもう恐るべき戦争の開始ですよ。  時間がないからこれは全く弱ってしまうのですけれども、これはちょっと防衛庁に聞いておきますが、航空自衛隊は大型輸送機C130Hに最新の機雷投下の装置を取りつけるという計画を今検討し、何か実施に移されているということを承っておりますが、これはいかがですか。これはアメリカの機雷ですよ。三海峡に敷設する、機雷を投下する、そういう装置を今おつくりになっているということを承って、いわゆるロング将軍のその言葉を具体的にもう実施する段階にお入りになっているということも聞いておるが、これはいかがでございますか。
  37. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 航空自衛隊におきまして、航空輸送力の増強のために、御指摘のC130Hの整備を今やっているのは事実でございます。しかし、現在、このC130Hに機雷の搭載用の機器を装備するというような具体的な計画は持っていないわけでございます。  ただ、一般的に言いまして、海峡防備のためのいろいろな作戦としては、航空機、艦艇、潜水艦等を使用する作戦ももちろんあるわけでございますが、その中で、機雷を敷設するということも必要に応じて考えなければならない問題であるということは事実でございます。したがって、そういった機雷敷設能力を将来においてどういう形でさらに進めていくかという問題が別途あることは事実でございますけれども、現在、御指摘のような具体的な計画を持っている段階ではございません。
  38. 小林進

    ○小林(進)委員 まだ現在は具体的に進めていないということをおっしゃったのでございますが、その言葉は聞いておきます。  何しろ時間がありませんから、これは外務大臣にもお話ししますけれども、あなたも私も、子供の、小さいときは、日露戦争――私も生まれていなかった、それは八十年も前ですからな。けれども、私は小学校に行ったときには、日露戦争の旅順封鎖、あの旅順港におけるソ連の艦隊を封鎖するということで、あの軍艦、機雷じゃないけれども敷設した。その敷設して引き揚げるときに、杉野兵曹長というのの姿が見えないというので、有名な広瀬中佐が杉野はいずこ、杉野はいずこと言っている、私はあの歌を歌わせられて、小学校の時代に一生懸命に育ってきた。あなたも歌ったでしょう、軍神広瀬中佐。しかし、あのときは旅順港の封鎖でもせいぜい広瀬中佐や杉野兵曹長の戦死で済んだけれども、今度は、この三海峡の封鎖になったら、日本は全滅ですぞ。  それは中曽根さんが言うように、なるほど日本列島不沈艦だ、国土は沈まぬだろうけれども、その上に生きている人間はもとより、生きとし生けるものは、この原爆の戦いの中に全部戦死しなくちゃいけない。だからこそ、このロングの下院における証言を聞いたときに国民は震え上がったのですよ。戦争は始まるのですか、こんなことをやられたら、もはやそれ自体が戦争の突入じゃありませんか、これは朝となく腕となく私のところへ電話が鳴り響いた。こんな恐ろしいことを中曽根さんが去年の一月に言われた、日本列島不沈艦、三海峡を封鎖すると言われたことが、いみじくもアメリカの議会の中で証明をされた。大体、大変なことはみんなアメリカの議会から出てくる。五十一年のあのロッキードも、アメリカの議会のチャーチ委員会から出てきたように、こういうような恐ろしい日本の運命を決することは皆アメリカから出てくるのだが、これは重大問題でございますので、時間がないですがこれは残念ながらやっていますけれども、こういうことをひとつ国民の前に真相を明らかにして、国民の憂いをなくすようにしてもらわなくてはいけません。これで、質問は後日にとどめておくのです、用意したものの半分もやっていないものですから。  ただ、いま一つ、これに関係してまた、国民が挙げて大騒ぎをしておるものにトマホークの問題がありますね。これも今、ほんの三分ばかりでひとつあれしますが、トマホークのこの配置の問題についても、これもアメリカだ。我々、今国民が挙げて心配しているときに、米上院のデュレンバーガー、マサイアス、これは全部共和党の議員です。この共和党の議員が、アメリカの上院の三日の本会議において、海上・海中発射型の核弾頭巡航、ミサイル、トマホークの配備中止を求める動議を提出した。ところがこれを受けて、下院でもまた、共和党の議員が同様の動議を提出する予定で作業を進めているというのだが、両議員は、この動議の中で、いわゆる核弾頭トマホーク配備反対の理由として、一つは、核弾頭型と非核型との区別ができず検証ができない。それから二番目には、米ソ核軍縮交渉への障害となる。三番目には、トマホーク搭載の米艦船が外国の港に寄港した場合に、核が搭載されたか非核だかという論議を呼ぶ、論証することが不可能だ。それから、トマホークはソ連領土の一〇%しか射程に入らないが、ソ連のSSN21は米領土の七五%を標的にでき、米国に不利だ。こういうような条件を挙げて、これはいわゆる搭載すべきではないという動議を今アメリカの上院に、また下院に提出する準備をしているというのだな。  こういう中にあって、一体日本政府はどうなっているんだ。「核弾頭つき巡航ミサイルトマホークは、この六月から攻撃型原潜ロサンゼルス、スタージョン両級、戦艦ニュージャージーなどに配備されることになっている。攻撃型原潜はすでにひんぱんに日本に寄港しており、ニュージャージーの日本寄港もいずれは現実化するとみられ、その際には核持ち込み問題が焦点となる。」その焦点となるときに「日本政府は「米国から事前協議の通告がなければ、核持ち込みはない」との立場をとっている。」トマホークはいわゆる非核弾頭もあるから、米軍艦が核の搭載がしてあるのかしてないかということを証明はできないから、アメリカの方が核を搭載してまいりましたと言わない限りは、日本政府は核は搭載しないものと判断をして入港を認める態度であるというふうに報道している。これは天下の一大事ですよ。外務大臣、こういう態度でお臨みになるのでございますか。これでおやりになるのですか。このまま事前協議の申し込みのないものはさっさと日本の港に入れるのですか。トマホークを積んだのを入れるのですか。どうぞひとつお聞かせください。
  39. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 トマホークをアメリカの軍艦が配備するというのは、アメリカのいわゆる世界戦略といいますか、対ソ戦略といいますか、そういう面から要請にこたえたものであろう、こういうふうに理解をしておるわけですが、このトマホークは核と非核と両用があるわけですから、日本にトマホークを積んで艦船が入ってくる場合は、日米安保条約、その関連規定、さらに日本の非核三原則という建前がありますから、そういう日本立場というものはアメリカも十分理解しておりますし、これは核は持って入らない。核を持って入るときは事前協議の対象ですから、その場合は日本は常にノーということでありますから、これまでの日米安保条約、その関連規定、日米間の信頼関係から見て、日本には核は持ち込まない、こういうことでございますので、そしてまたトマホークについては核と非核両用あるわけですから、もし日本にトマホークを搭載して艦船が入ったとすれば、それは非核である、こういうことでございます。
  40. 小林進

    ○小林(進)委員 今私が聞いたことをあなたは繰り返しているのです。大臣、私が今言ったとおりなんです。両方あるが、核弾頭をつけてきたかこないか、これは一体だれが見るのですか。一方的なアメリカの言い分だけを日本は聞いて、アメリカの言い分だけに従うというのでしょう。こんな屈辱なやり方があるかと私は言っている。  サケ・マスだってそうじゃないか。ソ連は日本の船にちゃんと約束どおりに入るか入らないか監視船をつけるという。まして日本人の命に関するようなものなんだ。これに監視船をつけて一つ一つの弾道弾を、トマホークに核があるかないか、それくらいは監査せしめるくらいの要求をアメリカに言ったっていいじゃないですか。何でアメリカさんのおっしゃることが一から一〇〇%正しい、中曽根さんじゃないけれども、ソ連のやることは一から一〇〇%悪い。まるで理屈も何もつかないそういう物の判断で国民の命をさらしものにされることは断じて了承できませんが、もう時間が来たからやめ、やめと言うものでありますから、残念ながらこれでやめます。残余の質問はいずれまた改めてひとつやらせてもらいます。  これで終わります。
  41. 中島源太郎

    中島委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時四十四分休憩      ――――◇―――――     午後一時三分開講
  42. 中島源太郎

    中島委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。井上普方君。
  43. 井上普方

    ○井上(普)委員 あるいは次元が低い問題かもしれませんけれども、ひとつお伺いいたしておきたい。  今世の中を非常に騒がしておる問題で「疑惑の銃弾」なるものがある。ところがこれは、五十六年に三浦さんなる人の奥さんがロサンゼルスで事故が起こって半身不随になった、あるいは植物人間になったというので、当時アメリカの軍用機で日本へ奥さんが、一美さんという人が運ばれたのでございますが、このアメリカ軍の病院機の費用は一体だれがどういうようにして払ったのですか、ひとつお伺いいたしたい。
  44. 山下新太郎

    山下(新)政府委員 ただいま御指摘米軍機による輸送のあれでございますが、詳細承知いたしておりませんが、米軍が好意を持ってやってくれたのではないかと思います。
  45. 井上普方

    ○井上(普)委員 くれたのではないか、こう言うのだが、それで違っておったらどうなるのですか。外務省の役人の中に、それの世話をした人がおる。だれかわかりますか。そして常識からして、アメリカの軍用機を使った場合、費用を払っておるはずです。事実、アメリカの新聞記事によると、アメリカ側ははっきり三千九百五十五ドル日本政府が支払ったと言っていると新聞は伝えておる。どういうようにして払ったのですか。それは間違いなのか、どうなんですか。
  46. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 私、その件については承知いたしておりません。ただいま好意によってと申し上げましたのは、いずれにせよ米軍機をそういう目的のために使うということは、本来の米軍の任務、目的にやや外れることでございますので、好意によったということで、費用の点までは私どもよく承知いたしておりません。
  47. 井上普方

    ○井上(普)委員 記録保管室の担当官ケント・キルストラ空軍少佐は、文書はある、三千九百五十五ドルも支払い済みである、こう言っておるのですが、それはわからないのですか。しかし、それではアメリカ軍の飛行機を使わす交渉はだれがなさったのですか。
  48. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 私ども、ただいま手元に全く資料を持っておりません。あるいは出先の領事館が広い意味での在留邦人保護の一環として何らかの折衝に当たったということは想像できるわけでございますけれども、申しわけございませんが、手元に資料がございません。
  49. 井上普方

    ○井上(普)委員 しかし、この問題については、いわゆるジャーナリストはかなり外務省にそのことについて伺っておるはずです。ところが、それにつきましては、外務省の当時担当した人たちは言を左右にして逃げ回っておるというのが実情じゃありませんか。そこまで、枝村官房長あるいはまた北米局に対して聞きに来た人は一人もおりませんか。
  50. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 私に関します限り、その件について報導関係者その他から問い合わせを受けたことは一切ございません。
  51. 井上普方

    ○井上(普)委員 C141ですかをチャーターしたが、三千九百五十五ドル、金額までわかっているのです。そして、これに対して向こうが好意的にやってくれたというのであれば、日本外務省はまことにお世話になったと言ってアメリカ空軍に対して感謝状でも出したのですか。あなたが好意でなかったかと言うのであれば、それだけの好意をやっていただいたら、ありがとうございましたと言って一音ぐらいのあいさつじゃ済まぬと思う。恐らく感謝状ぐらい出しただろうと思う。それも記憶がありませんか。わずか三年前のことだ。そして、あれだけ大きく新聞に美談だ、美談だといって載ったことだ。感謝状を出した覚えはないのですか。
  52. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 感謝状を出したということについては記憶もございませんし、聞いたこともございません。
  53. 井上普方

    ○井上(普)委員 それじゃ、それだけの好意で感謝状も出しておらなんだら、お金を払ったんだなと思うのが、これが当たり前の話、世の中の通例じゃありませんか。その金はだれが払ったのかそれさえ知らずに、外務省というのはよくまあともかくアメリカにお世話になるものですな。
  54. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 一般論といたしまして、我が国の在留邦人保護のために、外国の機関の応援を求めたり協力を求めたりということはあるわけでございまして、それで、その都度事の軽重その他によりまして、口頭による謝意を表明することもございますれば、あるいは電報、文書による謝意を表則するということもあろうかと思います。ただ、この件につきましては、先ほど来申し上げておりますように、私どもただいまこの場では十分な情報、資料を持っていないということでございます。
  55. 井上普方

    ○井上(普)委員 伝えられるところによると、この三千九百五十五ドルというのは金額までわかっておる。しかし、それについてお調べになっていないというのだから、これはすぐにわかると思いますので、次の機会には御報告願いたい。  続きまして、このごろ盛んに物騒な問題がたくさん起こりまして、きょうの新聞を見ますと、オリンピックにソ連も参加しないというような問題が起こっておるやに承っておりますが、まことに緊張緩和は、ひどいものだなという感をいたしておるのであります。  そこで、先般も新聞記事によりますと、アメリカ陸軍は日本に対しての緊急展開の必要に備えて重装備を北海道にあらかじめ事前配備したいというような計画があって、日本側に打診中である、こういうことが伝えられておりますが、これは事実でございますか。どうでございます。
  56. 山下新太郎

    山下(新)政府委員 お答え申し上げます。  御指摘の報道は四月二十九日付の朝日新聞の朝刊かと思いますが、アメリカ側から日本政府に対しまして、北海道に兵器を備蓄するといったようなことにつきまして打診が行われたということはございません。
  57. 井上普方

    ○井上(普)委員 そうしますと、これは全くの誤報である、こう私どもは受け取ってよろしゅうございますな。
  58. 山下新太郎

    山下(新)政府委員 先ほど申し上げましたように、そのような事実はないわけでございます。
  59. 井上普方

    ○井上(普)委員 まことに結構なことだと思います。しかしながら、一たん新聞情報が出されますというと、後でやがてそのことがあらわれてくることが間々ある。このときに備えまして私どもも今から質問をしておかなければ、こう思いますので、お伺いいたすのであります。  そのさきに、先般の予算委員会におきまして中曽根総理は、安保条約を軍事同盟である、こう規定いたしました。公式に認めたと私は思います。そして、安保条約は従来言われてきたように片務条約ではなくて双務条約であり、対称性を持っているということを総理大臣外務大臣の前で言明になったことは事実でございますな。  そこで、お伺いするのだが、今までは我々国民に対しましては、日米安保条約というのは片務性を持っているんだと盛んに言われておったのであります。何せ昭和三十五年の安保条約の改定以来、そのことだけで終始してまいったと思うのでありますが、この間の予算委員会におきましては、双務的で対称的な性格を持っておるんだ、こう言ったのを、私は初めてではないかと思う。でございますので、外務省はこの安保条約につきまして、今まで、片務性のみである、こう申してきた手前がございますから、今文での解釈をどういうように変更されるのかお答えを賜りたいと同時に、この条約に対しまして、実務的な考え方からどのようにお考えになっておられるのか、お伺いいたしたいのであります。
  60. 山下新太郎

    山下(新)政府委員 ただいま御指摘の、安保条約が双務的か片務的かという点でございますが、政府が一貫して申し上げているところは、私の理解する限りでは以下のとおりではないかと思います。  御承知のとおり、第五条におきまして、日米の両締約国は、「日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が」云々、こうありまして、その際に「自国の憲法上の規定及び手続に従って」云々という規定があるわけでございます。この文言でおわかりいただけますとおり、武力攻撃の対象になるのは「日本国の施政の下にある領域」という形であるわけでございます。したがいまして、例えば日本の比較的そばであります太平洋のグアムなりハワイなりに武力攻撃があった場合に、わが方といたしましては五条に基づく一定の措置をとる必要は全くない、想定されていないということであるわけでございます。その意味におきましては片務的であると言わざるを得ないわけでございます。  ところが、この次の条項、第六条でございますけれども、ここに「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、」とありまして、その目的のために米国は軍隊を我が国内に駐留させることが許されているという形になっているわけでございます。こういう形で駐留し得る権限をアメリカに認めているということも踏まえまして、五条と六条を総合的にとらえますと、その意味で必ずしも、片務的と申しますか、そうではない双務的な面もある、それなりのバランスがそこでとられている、こういう趣旨で総理は先般おっしゃったんだと理解している次第でございます。  今申し上げましたのは、従前来一貫して私どもが御答弁申し上げているラインでございます。
  61. 井上普方

    ○井上(普)委員 それは前からわかっておる事柄であります。しかしながら、この問題につきましては今までは、安倍外務大臣の岳父である岸総理の時代から、安保条約は今度は片務性なんだということを盛んに強調されてきたことは私ども国民の耳に新しいところでありますが、突如として総理大臣が、片務条約ではない、先ほども言われたように施設の提供や――それからもう一つ言っていますな、事前協議で日本アメリカに相当な協力をなし得るんだから、双務的で対称性を持つ要素を持っているんだ、こういうことを中曽根総理大臣は言われたんであります。全く解釈が、まあ百八十度とは申しませんが、九十度ぐらい変わってきていると思うのでありますが、安倍外務大臣、いかがお考えになりますか。
  62. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私も、安保条約が改正されまして今日に至る段階におきまして、この安保条約というものは双務性を持っておる、こういうふうに思っております。というのは、先ほどから説明をしましたように、日本が有事の際にはアメリカがこれを守る、そのかわりに日本アメリカに対して基地あるいは施設を提供する、こういう義務を負うわけでございますから、お互いに双務的なものである、こういう解釈です。
  63. 井上普方

    ○井上(普)委員 今まで抽象的にそう言ってきたんですよ。あなたのお父さんの議事録、私も読んできた。みんな、片務性があるんだから今度は大丈夫なんでございますと、条約改定のときから一貫してずっとおっしゃってきたのであります。条約の条文については今おっしゃるとおり、その当時から変わっていない。ただ、ここで双務性があるんだというようなことをおっしゃったのは中曽根総理が初めてであります。私も記録を調べてきたんだ。  そういう面で、アメリカの世界戦略の中に日本が巻き込まれるおそれがある。いや、もう既に巻き込まれているんだと私は思うのであります。再三にわたりまして西側の一員であるという立場を、特にここ三、四年の間は日本は西側の一員であるという言葉を使われておるのでありますが、西側というのは一体何なんだろう。地政学的に西側と言うのじゃなくて、西側という言葉自体も定義をはっきりさせなければいかぬということを櫻内外務大臣の当時から私は申してございましたが、アメリカの世界戦略の中に組み込まれた国々を西側と言っておるのではないだろうか、こういう気がいたしてならないのでありますが、あなたはこの西側という言葉はどういうようにおとりになっておるのか、外務大臣の御見解を承りたい。
  64. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私たちが西側の一員ということを言いますのは、自由陣営の一員、ヨーロッパ、アメリカが中心となったいわゆる自由陣営を構成しております、日本も自由主義、民主主義というのが国の基調でございます。そしてまた、同じような立場の先進国である、そういう意味でいわゆる自由陣営の一員ということを言っておるわけであります。
  65. 井上普方

    ○井上(普)委員 自由陣営というのはどういうことなんですか。それがわからない。自由主義経済をとっておる国々ということですか。どうなんです。
  66. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 自由陣営の一員というのは、世界には三つのグループがあるんじゃないかと思います。一つはソ連を中心とします共産主義陣営とも言えるわけですし、あるいは東のグループとも言えるグループがあるでしょうし、あるいはまた、先般私たちが訪問いたしましたインド、パキスタンといった非同盟を中心とする非同盟グループ、そしてもう一つは、アメリカあるいはまたヨーロッパ、そして日本を中心とするところの自由陣営、世界はいわば三つのグループに分かれておると言ってもいいんじゃないかと思いますが、日本はその中にあっては明らかに自由陣営の一員である、こういうことであります。
  67. 井上普方

    ○井上(普)委員 そうすると、今安倍外務大臣が自由陣営とおっしゃるのは、北大西洋条約に加盟しておる国々と、さらにはまた、極東においては日韓、日米両軍事同盟に入っておる国々と考えていいんですか。どうなんです。
  68. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは同盟関係は別にいたしまして、今申し上げましたような三つのグループの中で、アメリカあるいはまたヨーロッパ、日本を中心にしたグループが西側の陣営あるいはまた自由陣営というカテゴリーの中に入るんじゃないかと私は思います。もちろんヨーロッパにおきましてはNATOという集団安全保障体制もありますし、また日米には日米安保条約があることはもうそのとおりであります。
  69. 井上普方

    ○井上(普)委員 そのカテゴリーに入るんだというような非常に漠然とした言い方では、私ども了解できないのであります。自由陣営ということは、漠然としたものとして考えるよりも政治的に考えるならば、アメリカを中心とした軍事同盟を結んでおる国々を自由陣営とおっしゃっておるんではなかろうか、私にはそう感じられてならないのであります。  しからばお伺いしますが、スウェーデンあるいはまたフィンランドを一体どのようなグループの中に入れるとお考えになっているのです。
  70. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は、やはりスイスとかスウェーデンとかフィンランドとかそういう国々は民主主義を持った国ですが、これらの国々も、もちろんNATOにも入っておりませんし、あるいはまた軍事同盟を他国とも結んでない中立主義を標榜しておりますが、そういう国々も広い意味でいわば自由陣営といってもいいんじゃないか、自由、そして民主主義という同じ共通の価値観を持っている国々の集まりですから、それは自由陣営だと思います。
  71. 井上普方

    ○井上(普)委員 それはいかにも自由陣営、自由主義経済をとっておる。しかしながら、フィンランドは、あなた方は自由陣営として考えておられるのですか、これはどうなんです。フィンランドを本当にそう考えられておるのか。それじゃ、自由陣営の中で、かの国々はどういうような役割を果たしているのです。どうなんです。
  72. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は、役割を果たすとか果たさないとか、軍事的な同盟を結んでいるとか結んでないとか、そういう意味ではなくて、やはり自由陣営というのは自由主義あるいは民主主義、そうした同じ共通の価値観を持った国の集まりがいわゆる自由陣営である、そういう国々を総称して自由陣営という、そういう意味においてはフィンランドも広い意味では自由な陣営の中の一員ではないか、こういうふうに思います。
  73. 井上普方

    ○井上(普)委員 そこで、ここらあたりが非常にあいまいもことしているのであります。自由陣営を守るために西側諸国は団結しなければならぬ、こう盛んにおっしゃる。しかし、こういうような国々もある。私は、日本もそういうスウェーデンであるとかああいう国の姿に持っていかなければいかぬと思っております。しかしここで軽々に自民党の諸君は、あるいは政府当局は、西側の一員として防衛努力をしなければいかぬということを盛んにおっしゃる、私は不思議でならない。どういうわけでやらなければならないのか。それが突き詰めていけばNATO軍事同盟並びにアメリカを中心とする極東のアジアにおける軍事同盟を結んでおる国々、それを総称して西側陣営と言っておるんじゃなかろうかというのが国民の考え方にほかならないのであります。  あなたのおっしゃるのは、カテゴリーがどうも違ってきている。自由主義であり、あるいは民主主義を持っておる、価値観を同じゅうする国々が西側陣営だ、あるいは自由主義陣営だ、こうおっしゃる。しかし実際に日本が西側の一員として行動いたしておりますのは、アメリカを中心とするかなめとして、軍事同盟を結んでおる国々と行動をしておる、これがあなたの言う西側じゃないかと私らには思われる。すなわち、あなたの今おっしゃられる非同盟諸国もあるのであれば、大きい意味において、非同盟と社会主義グループと自由主義グループという三つに分けるのであれば、これはスウェーデンも入るんじゃないですか、こういうことになってくる、どうです。
  74. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 何か日本が西側といいますか、いわゆる自由主義陣営の軍事同盟の一翼になっておるんだ、あるいはなろうとしているんだ、こういうふうなちょっと偏見ですかを持っておられるような感じがしてならないのですが、日本の場合は、あくまでも憲法に基づきます日本の国の基本というのは、専守防衛に徹しているわけですし、非核三原則を厳守している、この日本の姿勢、そして戦争はやらない、あくまでも軍事大国にならない、こういう日本の国の基本というものは、どんなことがあってもゆるがせにすることはできない。  そういう中で日本は、日米間で安全保障条約も結んでおるわけでございます。これはあくまでも日本の平和と安全のためでありまして、日本はしたがってアメリカ以外の国々とは軍事的な同盟を結ぶ考えは毛頭ありませんし、あるいはまた、武器だとかそういうものについても第三国に対してこれを供与しないということは、日本の平和外交の一つの方針としてはっきり打ち出して今日に至っておるわけでありますから、おっしゃるように日本は西側陣営の一員であるし、あるいは自由陣営の一員でありますが、日本一つのユニークな、ある意味においては平和国家としての道を歩んできているし、そしてこれからも歩んでいかなければならない、こういうふうに考えておるわけでございますから、お話のような、日本がそういう西側の軍事的な組織といいますか軍事グループに組み込まれていく、例えばNATOにコミットしていく、こういうことはあり得ないわけですし、今後ともそういうことはないということは断言してはばかりません。
  75. 井上普方

    ○井上(普)委員 問題をすりかえられたら困る。日本が戦争に巻き込まれたら困るし、平和憲法を守り抜かなければならないというのは当たり前の話なんだ。また、非核三原則を持っているというのも当たり前の話で、我々はそれを世界に誇示しながら、日本主張に世界各国を引き入れていって、そして世界平和を実現しなければならない。しかし、不幸にしまして、安倍外務大臣がいみじくも言われましたが、私は今日本が軍事グループの中に組み込まれておる感じがしてならないのであります。非同盟で行くべきだと私は思いますけれども、それはあなた方と私どもとの考え方の相違でございます。しかしながら、この軍事グループの中に組み込まれないような努力をしなければならないと私は思う。  そこで、先般も総理並びに外務大臣はパキスタンに行かれて、あそこでえらい経済援助をお約束になった。皆さん方、難民を前にして、難民がある限りはひとつ経済援助をいたしますというお約束をなさったようであります。これがまたソ連当局を非常に刺激をいたしまして、そして今対日攻撃が盛んに行われておることは御存じのとおりであります。日本経済援助それ自体も、第三者として見るのじゃなくて、やはり西側の一員、すなわち私どもから言うと日米あるいは西欧諸国の軍事グループの一員としてこういう経済援助が行われておるのじゃなかろうか、このような感じがいたしてならないのでございますが、安倍外務大臣はどのようにお考えになっておられるのか、ひとつその点をお伺いいたしたいのです。
  76. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 我が国は、開発途上国に対しましては御承知のように積極的な経済援助をしております。今度の予算も、大変財政が厳しい中でODAの予算は九・七%というふうに伸ばしていただいたわけでございますが、これはやはり日本が世界の中で日本の役割を果たしていかなければならぬ、国際責任を日本は分担していかなければならぬということで経済援助政策を推進しております。  そして、このODA予算は倍増を目標にして今日に至っているわけですが、このODA、経済協力の基本は、あくまでも相互依存と人道主義、この二つの立場を貫いて行っておるわけでございます。したがって、この経済援助は、さっきちらっとおっしゃいましたが、例えばアメリカの軍事的色彩を持った援助、そういうものとつながっているわけでも何でもない。日本日本の独自の経済援助を実行しているわけで、アフガニスタンの難民に対する援助も、我々日本としてストレートの援助ではありませんで国際機関を通じての援助でございまして、恐らくアフガニスタンへの援助アメリカに次いで日本は第二番目くらいになっているのじゃないか。それほど日本は今日、難民対策に対しては世界的にも熱心な立場をとっているわけでございます。これはまた日本の国際責任の一つであろう、こういうふうに私は考えます。
  77. 井上普方

    ○井上(普)委員 あなたのおっしゃるように経済援助がまともに行われておるなら、私はこういう質問をいたさない。例えて申しますならば、トルコに対する経済援助を、アメリカがやってくれと言ったらやったじゃありませんか。これはあなたが外務大臣のとき以前ですが、そういうことをやっているのですよ。これを私どもは申すのです。アメリカ側から強く要求せられたならば経済援助であろうが何であろうがやっていく、そういう姿勢に対して、私らは、軍事グループに組み込まれておるのではないかという危惧の念をさらに強くいたしておるのであります。トルコの援助はどうなっていますか。
  78. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 確かにトルコに対しましては、トルコが非常に債務累積で、あるいは、いわゆる自由陣営の一員であります。もちろん、政体は軍事的な色彩、軍事国家的な色彩があることは事実ですが、NATOの中にも入っているし、いわば自由陣営の一員、そういうトルコが非常に債務累積、借金で困っている、民生が非常に追い詰められておるというようなこともありまして、日本は人道的な立場からこれを支援をしておる、こういうふうに私は承知をしております。
  79. 井上普方

    ○井上(普)委員 そこが問題なんだ。今、はしなくもおっしゃった、トルコはNATOに入っているから自由陣営だ。あれが自由陣営とだれが考えます、あの軍事政権のもとで。ただ、ソ連と接しておる、今までの自由主義陣営に取り込まなければならないという考え方からあの経済援助をやっておるのじゃありませんか。あなたが今もちょっとおっしゃった、NATOに入っているからあれは自由陣営だ、我々のグループだと私には聞こえたのでありますが、ここらあたりに問題がある。経済援助にしてもしかりです。どうでございますか。
  80. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 さっきトルコの説明をしたのは、トルコの立場説明したわけでありまして、トルコが経済的に非常に苦しい立場にある。日本経済援助の対象となり得る国でございますから、これに援助をしているわけですが、大体、西独に次いで日本が二番目の供与国になっておりますから、トルコに対しては日本も相当協力しておるということであります。
  81. 井上普方

    ○井上(普)委員 これは人道上の立場からとおっしゃいますが、トルコに人道上の立場はどこにあるのです。しかも、トルコに経済援助を頼まれたのは、アメリカから頼まれたのでしょう。累積債務国だから、こうおっしゃいますが、累積債務国は中南米には幾らでもある。例えばキューバがそうです。キューバにはなぜ経済協力を渡さないのです。微々たるものじゃありませんか。  私はここで質問したことがある。そうすると、外務省のお役人は、いやあの国は中進国だと言う。そうかいなということで調べてみたら、何だ途上国なんだ。そういうように矛盾に満ち満ちた経済援助を今までも日本はやってきておる。しかも、それが五年間で倍増する、こういう公約を中曽根さんは諸外国でもなさっておる。とするならば、五年間だからあと二年間、やはりこの二十数%の伸びをやっていくおつもりなのか、この点、ひとつお伺いしたいのです。
  82. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本経済援助は全体の七割が――ODAについていえばアジアですから、アジアを中心に日本援助しておるわけです。それは、やはり日本がアジアの一国であるという立場を踏まえた政策を貫いていることを御理解いただきたいと思います。  それから、ODAの倍増計画につきましてはこれまでも予算の面では努力を続けております。今回も、五十九年度では九・七%という防衛費を超えた予算の増額をお願いをしたわけでございます。しかし、ODAの実質的な伸びはむしろマイナスというところになっておるわけでございます。これはやはり円とドルの関係であるとか、あるいはまた国際機関だとか、あるいは国連機関だとか、そういう多国間の機関に対する拠出が、日本のせいでなくて、その他の要因によりまして大きく削られる、こういうこともありまして、実質的にはむしろ今マイナスになっているということでございますが、予算面においては伸ばしておるわけであります。  しかし、こういう状況でいきましても、五年間で倍増しようと思えば、少なくとも予算の面においては来年度からは二〇%以上ぐらいの伸びを確保しないと倍増できないわけでございますので、これは今の財政で大変厳しい状況でありますが、やはりODAの倍増計画というのは国際的にも打ち出している日本の方針でありますし、我々は何とかこれを実現するために努力をしていかなければならない、こういうふうに考えておるわけです。
  83. 井上普方

    ○井上(普)委員 外務大臣、トルコがアジア、それは地図の上ではそういうことになるでしょうが、あれをアジアの一員だから日本経済援助をやらなければいかぬというのはちょっといただけぬのじゃございませんか。もうそういう牽強付会の言はやめましょうや。アメリカから言われて、あなた、出したんじゃありませんか。これから経済協力をさらに伸ばすことについては私どもも賛成いたします。しかしながら、それはやはりアジアというものを中心に考えなければならないと私は思うのです。いわんや中国との間の借款を見てみましても、あの国にあれだけ大きな被害を与えておきながら賠償金も出してない。私は中国へ行くときにいつも政治家の一員として後ろめたさを感じながら参ります。せめて中国に対して十分な経済援助をやるべきだ、これが今我々に課せられた任務だと思いながらあの国へ参ります。しかし、ここらあたりの伸び率は努力はされておるようでございますけれども、まだまだ中国の皆さん方の御納得のいくような、満足のいくような経済援助がなされていないことを私は甚だ遺憾に存じております。  そしてまた、アジアの諸国民に対しましても我々はもっともっと経済援助をしなければならない。しかし、向こうさんの方、発展途上国を見ましても、実は私自身も一つの考え方を持っております。先般、インドへ人口問題の会議で参りました際に、ドイツのシュミット前首相が来られまして言いたいことをどんどんと言った。すなわち、発展途上国並びに累積債務国がなぜ軍備拡大に狂奔するのだ、少なくとも軍縮の方向に走るべきじゃないのだろうか、リードをとるべきじゃないのだろうかということを言われるし、さらにはまた経済的な自立、本当に自立のための経済援助を西欧側に求めたらどうかという厳しい意見を発展途上国を前にして堂々とシュミット前首相はしゃべったのであります。私は思わずこれには拍手をした。しかし、次の日の新聞記事を見てみると、シュミットさんのその演説はここから先出ておらなかった。そして、福田赳夫さんのわずか七分間ぐらいの当たりさわりのない演説は堂々と載っておったのであります。こういうようなことを日本の政治家としては堂々と途上国に対しても要求しなければいかぬ、表明しなければいかぬ、それが今の日本の外交には欠けておるのじゃなかろうか、このように感じられてならないのであります。  いずれにいたしましても、もう時間が参りましたのでこの程度にしておきますが、日本の外交が、今はしなくも言われたように、軍事グループに組み込まれないように、アメリカの世界戦略の中に組み込まれることが我々一番怖いことだと私は考える次第なのであります。そしてまた、それを禁じておるのが日本憲法であることをお忘れなく今後外交をやっていただきますよう強く要求いたしまして、質問を終わります。
  84. 中島源太郎

    中島委員長 井上普方君の先ほどの御質問に対し、枝村官房長から発言を求められております。枝村官房長。
  85. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 先ほど手元に資料がございませんで、また私の官房長就任前の事件でございまして十分な御答弁ができませんで申しわけございませんでした。その間の経緯につきまして、当時の記録を当たって御報告申し上げます。  三浦一美さんにつきましては、当初民間航空機によって本邦に移送するということも考えられていたわけでございますけれども、容態が大変悪化いたしましたために、病院側から、これは民間航空機ではだめだ、設備の整った米軍の病院機を使わないといけないのじゃないか、こういう示唆があったわけでございます。そこで、三浦夫人の家族の方から、外務省アメリカ側とかけ合ってそういう移送の手配ができるように協力してくれないか、こういう御依頼がございました。先ほど来申し上げておりますように、在留邦人保護の一環といたしまして、在米大使館を通じ米国国務省領事部にそのことを依頼いたしまして、それが実現したわけでございます。  それで、御質問の費用でございますが、米貨三千九百五十五ドル、これは五十七年六月にアメリカ側から請求が参りまして、これは三浦和義氏自身によりまして支払われておりまして、一九八二年七月九日付で米空軍省の担当者から領収証が来ております。その写しが私どものファイルにも入っておるわけでございます。というのが費用に関する経緯でございます。  どうも失礼いたしました。
  86. 中島源太郎

    中島委員長 次に、玉城栄一君。     〔委員長退席、浜田(卓)委員長代理着席〕
  87. 玉城栄一

    ○玉城委員 午前中にも御質疑があったわけでありますが、今回のソ連側のロス・オリンピック不参加態度表明について外務大臣の考え方を改めて伺っておきたいわけでありますが、午前中大臣は、大変遺憾なことであり残念なことである、よってJOC、日本オリンピック委員会の態度をバックアップしていきたいし、外交努力をしていきたいということをおっしゃっておられたわけでありますが、これはそういう世界的なスポーツの精神からしまして、JOCにしましてもソ連側の参加を強く求める態度をとることは当然だと思うわけでありますから、具体的にどういうふうなバックアップ、外交努力をされるのか、その辺をお伺いしておきたいと思います。
  88. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 我々はまだ正式な情報はキャッチしておりませんが、しかし大体間違いないと思っております。ソ連のオリンピック委員会が参加しない、こういうことでありまして、これに対して日本のオリンピック委員会も今協議をしております。恐らく私と同じように大変残念であるし、そしてぜひともソ連が思い直して参加するように再考を求めるといった姿勢が出てくるのではないだろうかと私は思っておるわけでございます。そして、JOCとしても世界的にソ連の参加を呼びかける動きを行うのではないだろうかと思いますし、その際には外交の面からこの動きを積極的にバックアップしてまいりたいと思いますし、また、これから我々ソ連当局と接触する機会もあるわけでございますから、そうした外交ルートを通じましても何とかソ連がオリンピックに参加をするようにソ連に対しても要請をしてまいりたい。今ソ連がどうしてもボイコットするという客観的な情勢あるいは背景というものはないんじゃないか、私はこういうふうに思っておるわけでございます。そういう意味で非常に残念であり遺憾であると同時に、ソ連がもう一回思い直して参加するように働きかけたい、こういうふうに思います。
  89. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、今回のソ連側のロス・オリンピック不参加態度表明ということについては東欧諸国と密接な協議の結果であるということも表明しておるわけですが、そういうことになりますと、東欧諸国並びにソ連に近い社会主義諸国、あるいは第三世界の国々の一部等がソ連と同一歩調をとることは当然考えられるわけでありますが、そういうことについては外務省の御認識はいかがでしょうか。
  90. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 オリンピックの問題ですから、これは外務省として直接取り扱うという問題ではないと思います。オリンピック委員会の問題でありますけれども、しかし我々は、やはり外交責任を持っておる立場としましてできるだけ多くの国々がオリンピックに参加するように、この事態を何とか乗り切るべく日本日本なりに外交当局としての努力もいろいろとやらなければならない、こういうふうに思います。
  91. 玉城栄一

    ○玉城委員 今回のソ連側のそういう態度表明というものは、現在の米ソ関係のあり方について大きな不満がソ連側にあってこういう態度に出たのではないかということが考えられるわけであります。不幸にしてそういう態度表明のとおり東欧諸国含めて不参加ということになりますと、さらにより一層米ソ関係が悪化していくということは当然考えられると思うのですね。ですから、大臣とされてもそういう不幸な結果にならないように最善を尽くして、本来のオリンピックの祭典にふさわしい参加を強く求められ谷努力をしていただきたいということを要望をいたしたい。  次の質問に移りますが、レーガン米大統領の今回の中国訪問についての外務省の認識をお伺いしておきたいわけであります。  今回のレーガン訪中ということによって、中国あるいは朝鮮半島等アジア情勢について何かさま変わりしてきているような感じもする、あるいはそういう指摘をする向きもあるわけでありますが、レーガン訪中という事態についての外務省の御認識をお聞かせをいただきたいと思います。
  92. 橋本恕

    橋本(恕)政府委員 ちょうどたまたまゆうべ、中国の国務委員、これは副総理に当たりますが、外交担当の国務委員の姫鵬飛さんが大臣と懇談されまして、その席におきまして、中国側から見ても今度のレーガン大統領の訪中は大変成功であったという趣旨のことを大臣に述べられましたし、またアメリカ側は御承知のとおりにシュルツさんがわざわざ日本に来られまして、ちょうど大臣もそれから総理もお留守中だったものですから、藤波官房長官に概略御説明になりまして、そこでアメリカ側から見ましても今度のレーガン大統領の訪中は成功であった、こういうことでございます。  御承知のとおり、日本は幸いにしてアメリカ中国双方と非常に友好関係でございまして、もし逆の場合、つまり日本として非常に仲のいい米中両国が非常に冷たい関係あるいは悪い関係に向かうということは日本にとっても甚だ困ることでございます。結果はこのように米中両国協力関係友好関係がもっと深まったという意味において日本として評価できるところだろう、こういうふうに日本としてもよかったという率直な感じを持っておるところでございます。  それから、後段の御質問の朝鮮半島をめぐる情勢につきましては、確かにレーガン大統領、シュルツ長官の中国訪問の際に、中国側首脳部と相当時間をかけまして朝鮮半島をめぐる情勢並びに今後どうすればいいかということを議論されたことは事実でございます。私どもが理解しております限りにおきましては、米中首脳会談におきまして、朝鮮半島について米中双方ともどんなことがあっても戦争を起こしてはならぬ、あそこにおける緊張緩和を何としてもそれぞれの立場で努力してなし遂げていこうという点については意見の完全なる一致を見た。ただ、残念ながら方法論におきまして、私ども理解するところでは、基本的には米側は、つまりレーガン大統領並びにシュルツ長官は、南北朝鮮の当事者による直接の会談が一番望ましいんだ、それに役に立つならばいわゆる四者会談ということを説明されたし、それから中国側首脳はそれに対しまして、北朝鮮の提唱するところの三者会談には理があるということで強く支持する意図を表明したということでございまして、それ以上に今までの我々の了解と違うような話し合いが行われたということは承知しておりません。
  93. 玉城栄一

    ○玉城委員 米中間におきましては、レーガン大統領の台湾問題に対する姿勢について中国側は容認できないという態度を持ちながら、今おっしゃいましたように双方それぞれ成功であったというようなことであります。  そこで私、この機会にお伺いしておきたいのは、従来の中国外交方針にいささか変化を来しつつあるのではないかということ、今回のレーガン訪中という問題も見ながら中国外交の基本的な方針というものに変化の兆しがある、そういう指摘をする向きもあるわけですが、橋本さんはいかがですか。
  94. 橋本恕

    橋本(恕)政府委員 率直に申し上げまして、私は中国の外交基本政策に変化があるとは考えておりませんで、中国の対ソ、対米、対日、それからいわゆる第三世界に対する関係その他もろもろひっくるめまして、中国の原則的な立場は変化はないと考えております。  ただ、手法におきまして、私はここ数年来における中国外交の一つの変化として注目しておりますのは、一言で言いますと、柔軟性といいますか、現実的な視点に立つ。つまり中国の原則、基本的立場は断固として変えませんが、しかしながらその基本的な外交方針、政策を実際に適用していく場合、その過程におきまして相手の立場、それから国際情勢の見方を現実的視野からよく見て柔軟な対応をしていく、こういう点の変化はあろうかと存じます。
  95. 玉城栄一

    ○玉城委員 中国としましては近代化というものを進める、その一つに国防の充実、装備の近代化ということからすれば、アメリカからもいろいろ物も買わなければならぬし、資本も導入しなければならぬ、そういうことがあるわけですから、今おっしゃるように原則はずっと変わらないが、対応の仕方によって柔軟で現実的であるといろいろおっしゃっておられるわけですがね。それで、今回のレーガン訪中ということによって、米中が対ソ、いわゆる米中戦略的協力といいますか、そういうことができ上がったんだというふうに指摘する向きもありますが、いかがですか。
  96. 橋本恕

    橋本(恕)政府委員 中国のソ連に対する態度でございますが、これも米中首脳会談においてもそういう説明がありましたし、また昨夜、姫鵬飛国務委員の安倍外務大臣に対する説明の中にも出てまいりましたし、また三月に中曽根総理、安倍外務大臣が訪中されて中国側首脳と会談されたときにも出てまいりましたが、中国側説明は一貫しておりまして、いわゆる三つの困難、三つの障害というものについて、ソ連側に対して徹底的に弾劾していくという基本原則は絶対に変えません、しかしながらそれはそれとして、ソ連との間でいわゆる実務的な関係、例えば貿易でありますとか人の往来というものは双方納得ずくで少しずつ拡大してまいります、現にアルヒポフソ連第一副首相が近く中国を公式訪問しますが、それにつきましても中国側説明は、これはこれで貿易、経済協力その他についてちゃんと話をします、しかし、政治的な面における中ソの大きな改善ということは、これは望む方が無理である、こういう趣旨の説明を一貫して行っております。
  97. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、鄧小平主任がレーガン大統領の軍事増強政策を支持するということが報道されているわけですが、いかがですか。     〔浜田(卓)委員長代理退席、委員長着席〕
  98. 橋本恕

    橋本(恕)政府委員 この発言は、実は私どもも気になる発言でございまして、確認いたしました。中国の公式筋、権威筋、どちらでもよろしいのですが、信頼できる筋からの説明によりますと、鄧小平顧問委員会主任がレーガン大統領に言ったのはこういうことなんですと、これはそめ中国側の権威筋の説明そのままでございますが、ソ連の軍事力増強に対応してアメリカが軍事力を増強するということは理解できます、ただし、他の第三国に脅威を与えるようなことはしないでください、これが中国の考え方ですということを鄧小平氏がレーガン大統領に率直に言ったというふうに私どもは聞いております。
  99. 玉城栄一

    ○玉城委員 従来、中国というのは世界平和の脅威の源泉は超大国の米ソの軍事増強政策であり、その勢力争いが源泉であるというような主張をしてきたわけですが、いわゆるレーガン大統領の軍事増強政策を理解するということになりますと、ちょっと従来の主張と変わってきている、いわゆる修正されてきたというふうに受け取られる面もあるわけですが、そのように受け取っていいわけですか。
  100. 橋本恕

    橋本(恕)政府委員 先ほども御答弁申し上げましたが、中国は米ソ両超大国に対して、特に軍事力増強その他、いわゆる覇権主義、これには絶対反対という原則、建前は現在もおろしておりません。しかしながら、先ほど申し上げましたけれども、現実的な対応を考えた場合に、ソ連とアメリカと二つを比べた場合に、いずれがより危険であるか、いずれが世界の平和にとってより危険であるかという認識においては、中国は極めて現実的な認識をしておる、こういうことであろうかと存じます。
  101. 玉城栄一

    ○玉城委員 これも報道ですけれども中国側としては、アメリカのF16戦闘爆撃機ですか、それを購入したいという意向があるというようなことも報道にあるわけですが、その点はいかがでしょうか。
  102. 橋本恕

    橋本(恕)政府委員 御承知のとおりに、これは先生が先ほど指摘されましたが、米中間には基本的には前々から台湾問題という厄介な問題が一つ。それから高度技術移転の問題と二つございました。あとの台湾問題の方はともかくといたしまして、高度技術移転の方は、米中間でかなり話が進んでおります。現に一つの例といたしまして、姫鵬飛国務委員が安倍大臣にゆうべ話しておりましたけれども、今度レーガン訪中のときに米中原子力協定が仮調印されたということを初めといたしまして、その他の高度技術移転の面においてかなり進んだ話し合いが行われておるし、今後もなお話が進んでいくと思います。それの一環といたしまして、軍事技術あるいは武器技術についてもこれまで話が相当ございましたし、今後もまた話が進んでいくというふうに私ども理解しております。ただし、ただいま先生指摘の爆撃機については、爆撃機そのものにつきましては、米中間で話し合いが行われているということは、私どもは聞いておりません。
  103. 玉城栄一

    ○玉城委員 聞いていないということは、そういう事実もあるかもしれませんね。それ以上はまあ……。  もう一つは、これも報道なのですが、アメリカの第七艦隊が中国寄港、いわゆる大連に寄港したいというような話し合いもなされているやの報道もあるわけですが、その点はいかがですか。
  104. 橋本恕

    橋本(恕)政府委員 この点につきましても、先ほどと同様に、私といたしましては、第七艦隊の大連港寄港という問題は、全く聞いていないと答えるしかないのですが、ここから先申し上げていいかどうかわかりませんが、私は、現在の米中ソ三国の関係を考えますと、そう簡単にあり得る話ではないのではないかというのが私の率直な感想でございます。
  105. 玉城栄一

    ○玉城委員 今の第七艦隊の問題についても、第七艦隊といいますと、極東海域をパトロールして有事に備えて相当の戦力を持った機動部隊であるわけですから、そういう第七艦隊が社会主義国の中国の大連に寄港するというようなことは、そういう報道を見まして、こんなこともあり得るのかなどいう感じが率直にするわけですがね。橋本さんは今、そういうことはあり得ないというような感じのことをおっしゃったわけですが、そのように理解しておいていいわけですね。
  106. 橋本恕

    橋本(恕)政府委員 大変持って回った答弁をいたしましたので、この際、もっと率直に私の感じを申し上げますと、ただいま、ずっと遠い先のことは別といたしまして、現在の米中関係の諸状況、それからソ連をも入れました米中ソ三国の関係あるいは極東情勢などの背景を考えますと、率直に申しまして、私は、現在の段階では、中国が大連に第七艦隊を迎え入れる、そこで便宜を提供するというところまで見るのはちょっと時期が早過ぎるといいますか、現在の段階ではそういうことはないというふうに私は考えております。
  107. 玉城栄一

    ○玉城委員 こういう問題は、余り突っ込んでお伺いしにくい問題なんですが、さっきもお伺いしましたように、ロス・オリンピックへのソ連側の不参加態度表明等から、現在の米ソのあり方等についてかかわりもあると思うわけですね。ですから、ソ連側にもいろいろ問題があることを前提にしましても、不必要にソ連を刺激するような情勢づくりがされていくということは余り好ましいことではない、こう思うわけです。それで今レーガン訪中をお伺いしているわけでありますが、大臣の御所見をお伺いしておきたいと思います。
  108. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 レーガンの訪中がソ連を刺激してオリンピック不参加、こういうことになったとは私は思っておりません。米中の関係からすればそろそろ米国の大統領が行く時期でもありますし、先般趙紫陽首相がアメリカを訪問したその答礼に行ったわけでありますし、そしてアメリカの世界戦略ということから見ましても、米中関係を進めるということはそれなりアメリカにとってもプラスですし、また中国にとっても、中ソ関係がなかなか進展しない、こういう中でアメリカとの関係を改善していく、そしてアメリカの高度技術を中国に入れる、こういう面においても、中国にとって近代化を進める上においても非常なプラスの面があります。そういう点で今回のレーガン訪中というものに自然な形でつながっていったんだろう、こういうふうに判断をいたしております。そしてそれなりの成果を両国とも上げた、こういうふうに考えます。
  109. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで質問をまた変えますが、先ほども質疑が出ておったわけですが、アメリカ側が北海道に兵器を備蓄したいというような報道があって、正式な話が政府にあったことはないというようなお話もあったわけです。きょうは北村さんでなしに山下さんがいらっしゃっていますが、私、先月の十一日のこの委員会で例の沖縄に配備されている特殊部隊についてお伺いしたのですけれども、私のお聞きする質問に一向に的確な答えが出ないものですから、きょうはきちっと答えておいていただきたいわけです。  北村さんの会議録を何回読みましても、なぜ今沖縄にこういう特殊部隊が配置されたのかということについて局長の御答弁は、いや自分は、こういう想像でおっしゃって、また米側にそういうことを聞いたこともないというようなことで一向に説得力のある答えが返ってこないものですから、改めて山下議官にお伺いしたいわけですが、そのテーマで、なぜ今沖縄にあの特殊部隊が配置されているのか、その理由をわかるように説明していただきたいと思います。
  110. 山下新太郎

    山下(新)政府委員 米国の特殊部隊がなぜ沖縄にこの時点で配備されるのかというのが御質問でございますが、まず第一点のなぜの方でございます。アメリカ国防省が昨年出しました例えば国防報告を読みましても、いろいろな事態対処し得る部隊ということでこの特殊部隊の存在が必要である、これを強化する必要がある、こういう認識が去年の国防報告に例えば出てきているわけでございます。それを受けまして、先般発表されました国防報告におきましてもその重要性に関する認識を反映した予算処置がとられるようでございます。その一環といたしまして一個大隊を沖縄に配備するということになったと思われるわけでございます。  それではなぜ沖縄なのかという第二点目でございますが、私どもアメリカ側と、この特殊部隊の配備に関する通報等を受けました際に、意見交換等をした際受けた印象でございますけれども、大体二、三点にまとめ得るのではないかと思います。第一点でございますが、日本及びその周辺地域には現在アメリカの陸軍の特殊部隊が配備されていないわけで、先ほど申し上げましたような特殊部隊に対するアメリカ側の認識からいいまして、まずこの地域に配備することが必要ではなかろうかという判断があったと思われるわけでございます。  その次に、トリイの通信施設に御承知のとおり先般来最初の部隊が入ったわけでございますけれども、トリイの現在の施設から現在存在しております部隊が徐々に撤去されるという計画がございます。その結果、このトリイ通信施設を現在おります部隊にかわって特殊部隊が使うことができるという事情があるわけでございます。もう一つ考えられますものといたしましては、沖縄にはそのほかキャンプ・ハンセンあるいは北部訓練場を初めといたしまして訓練のための施設があるという事情も存在しているのではないかと思われる次第でございます。
  111. 玉城栄一

    ○玉城委員 いや、ですから私が申し上げていますのは、それは皆様方の想像なんでしょう。意見交換をしたとさっきおっしゃいましたが、アメリカ側はちゃんとそういうことを言っているわけですか。それともそう皆さん方が思う、想像してそういうことではなかろうかということなんですか。その辺ははっきりしておいていただきたいのです。
  112. 山下新太郎

    山下(新)政府委員 先ほど申し上げましたように、アメリカとこの件につきましての意見交換を行ったわけでございますが、その際私どもアメリカ側から聞いた話から受け取ったところが先ほどの点でございます。
  113. 玉城栄一

    ○玉城委員 ただ、こういう特殊部隊ですから、その配置についてもっと基本的な理由があると思うのですね。軍事機密であるというのでそれ以上言えないというのであれば、それはそれとして理由として成り立つと思うのですが、そういう面はいかがですか。
  114. 山下新太郎

    山下(新)政府委員 御指摘のとおり特殊部隊も当然のことながら軍隊の一部でございまして、いろいろ軍隊の動きにかかわる機密があり得るかと思いますけれども、私どもといたしまして、この部隊がこの時点で日本に配備されるということはそれなりに意味があると考えまして、かつまたそれを断る理由もございません、むしろ歓迎すべきと申しますか抑止力を高める意味もございますので、そういうことであれしたわけでございます。
  115. 玉城栄一

    ○玉城委員 大変乱不満なんですよ。ほかの質問もありますのでこれ以上伺いませんけれども、もうそういうお答えはこれまでに北村さんから何回も伺っているわけです。いやしくも国権の最高機関である国会において何回も質議されていることですから、きちっとアメリカ側に問い合わせをしておくべきだと私は思うのですよ。きちっと確かめもしない話を想像でここでやたらとおっしゃっておりますけれども、私はこれは問題だと思うのです。そういう理由は今まで聞きました。それで納得できないということです。今、この特殊部隊の沖縄配置については特殊の任務を持った軍事機密的なものもあるということで理由ははっきり言えないということならば、きょうはこの問題はこれ以上質疑を交わす時間がございませんので……。  それでは質問を変えまして、大臣もお疲れのようですが、ぜひこれは大臣にもごらんいただきたいと思うわけです。きょうは午前中にも小林先生からお話がありましたとおり、総理は大変タカ派的なところがありますが、安倍大臣は例えばイラン・イラク戦争問題に大変努力をして内外から大きく評価されていらっしゃるわけでありますし、いよいよ安倍大臣のような方が日本の最高責任者になること、これまた大きな期待をされるところだと思うわけです。そこで、太平洋戦争の際、我が国唯一の悲惨な地上戦が沖縄で展開されたわけですが、その沖縄戦の記録フィルムが、アメリカの国立公文書館に百八十八本アメリカが写した記録フィルムがあるそうです。そのうちから十二本、これは沖縄戦記録フィルム一フィート運動の会という沖縄民間団体が取り寄せまして、最近沖縄でテレビでそのフィルムが放映されたのです。私も見ましたけれども県民の間に大変反響がありまして、大変戦争の悲惨さというものが、これは言葉とかあるいは文字ではあらわせない、いわゆみ異常な、戦争という極限状態における人間のすさまじさといいますか、壮絶さといいますか、そういうものが生々と出ているフィルムなんですが、この団体もできるだけこのフィルムをいろいろな団体に公開して見せたいというようなことであります。  そこで一点、これは外務省のどなたかで結構なんですが、お伺いしておきたいことは、五十七年にこの委員会で、そういう沖縄戦の資料も含めて米側の沖縄占領当時の資料を我が国に取り寄せるべきではないかという質疑に対して、当時の浅尾局長さんは、最善の努力をして貴重なそういう資料は取り寄せたいというような御答弁があったわけであります。  そこで、このフィルム、先ほど百八十八本中十二本と申し上げましたけれども、百八十八本沖縄戦に関するフィルムだと言われておるわけでありますから、そういうものが取り寄せられるように外務省としても最大の便宜を図っていくべきではないか、このフィルムだけではありませんけれども、まずその点からお伺いをしておきます。
  116. 山下新太郎

    山下(新)政府委員 玉城先生指摘の一フィート運動が沖縄において行われていることは、私どもよく知っているわけでございます。私ども承知しておりますところでは、沖縄県の有志の方々が、まさに先生がおっしゃったとおり、子孫に戦争の悲惨さ、戦後沖縄が歩んだ道、これを伝えるために寄附金を集められてアメリカが撮影したフィルムを手に入れてテレビで流しておられる。承知しておりますところによりますと、琉球放送テレビと沖縄テレビだそうでございます。  私どもといたしまして、先ほど申し上げましたように純粋の民間運動としておやりになっていると理解しているわけでございますが、もし関係方々から何らかの要請をいただきましたら、どういうことが外務省としてできるか検討させていただきたい、こう考えている次第でございます。
  117. 玉城栄一

    ○玉城委員 いや、私が伺っていますのは、このフィルムについて百八十八本中十二本は取り寄せた、あとまだたくさんあるわけです。そういうものが取り寄せられるように外務省としても、これは民間団体がやっておりますから皆さんが表に出るわけにはいかないと思うのです。とにかくどういう形にしろ、それをバックアップあるいは便宜を、最大努力をするということもおっしゃっているわけですから、すべきではないかということを伺っているわけです。
  118. 山下新太郎

    山下(新)政府委員 関係のこの運動をおやりになっておられる方々からぜひ一度お話を伺って、その上で私ども検討させていただきたい、こう思う次第でございます。できることはしたいと思っております。
  119. 玉城栄一

    ○玉城委員 これまた委員長に御要望しておきたいのですが、先ほど小林先生もおっしゃっておられましたが、ぜひこの外務委員会としてもこれを理事会で検討していただきたいのです。調査室かどこかに指示されて、ぜひこのフィルムを見る機会を持っていただきたいということを委員長に申し上げたいのですが、いかがでしょうか。
  120. 中島源太郎

    中島委員長 玉城委員の御発言につきましては、理事会で鋭意検討いたします。
  121. 玉城栄一

    ○玉城委員 今度は大臣にも、先ほど申し上げましたとおりぜひこのフィルムを見る機会を、大変御多忙は存じた上でのお話ですが、いかがでしょうか。
  122. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 そういう機会があればぜひとも見たいと思います。
  123. 玉城栄一

    ○玉城委員 私も、これは地元でもありますので、そういう機会をぜひつくるように努力してまいりたいと思います。  そこで、この問題は一応これでいいのですが、山下さん、このフィルムだけじゃないのです。いろいろな公文書もたくさんあります。いろいろな資料があるわけです。五十七年に私はこの委員会でこの問題をお伺いしたのですが、その後の進展がどうなっているか。とりあえず、沖縄関係することでもありますので沖縄開発庁が直接タッチしていらっしゃると思いますので、その点その後どういう状況にあるのか、御説明をいただきたいと思います。
  124. 勝又博明

    ○勝又説明員 先生の御質問の沖縄政府のいわゆるUSCAR文書と申します資料の収集につきましては、その後私ども沖縄開発庁と国立国会図書館とが御相談申し上げましたところ、国立国会図書館の専門的な知識経験を生かした収集というものが一番適当であるということでございまして、今後において国立国会図書館がUSCAR文書の収集について検討していくということに相なっているわけでございます。  ただ、米国の国内法制上の問題もございますし、かつは米国公文書館に収集されておりますUSCAR文書の整理の問題等もございまして、まだ現在具体的な収集計画は完備しておりませんが、現在国立国会図書館が行っておりますいわゆるスキャップ文書の収集が終わりますのが昭和六十四年と聞いておりますが、それが完了次第、次なる民政府資料の収集計画の樹立について検討していくというふうに聞いておるわけでございます。  なお、私ども沖縄開発庁といたしましては、この国立国会図書館の資料の収集に当たりましては、できるだけの協力をいたしてまいりたい、かように考えております。
  125. 玉城栄一

    ○玉城委員 今、開発庁としては国立国会図書館と協力しながらやっていく。これは外務省もやはり外交ルートを通してやらなくてはならぬ面も当然出てくると思いますので、最後に山下さん、ひとつお答えをいただきたいのです。
  126. 山下新太郎

    山下(新)政府委員 今、沖縄開発庁の方から御答弁があったような経緯で、現在のところ国会図書館において本件を実施するべく考えているという状況でございます。ただ、国会図書館サイドの仕事の順序と申しますか、それがございまして、スキャップ関係を先にやって、それが済んでからこれに取りかかるということのようで一ございます。  なお、国会図書館におかれてはアメリカ側関係機関との間での事実上の接触等も既にやっておられるものと理解はいたしておりますが、向こう側にもいろいろ事情があるようでございます。無論、外務省といたしましては、国会図書館が具体的に収集を始められるという段階になりましたならば、必要に応じましてアメリカ政府に対しましても折衝する等適宜御協力したい、こう考えている次第でございます。
  127. 玉城栄一

    ○玉城委員 以上です。
  128. 中島源太郎

    中島委員長 次に、河村勝君。
  129. 河村勝

    ○河村委員 一般的な国際情勢についての質問の前に、一つだけSAR条約の批准の問題についてお尋ねをいたします。  このSAR条約は一九七九年に国際海事機構、IMOで採択された条約で、海上捜索救難に関する国際条約というものであります。この名前のとおり、国際的な海難救助の共同組織をつくって海難に万全を期そうという内容であります。  これは十五カ国以上批准をしますと発効することになっておりまして、既にフランス、イギリス、アメリカ、西ドイツ、カナダ、スウェーデン、オーストラリアその他十四カ国が批准をしておって、あと一つ批准をすれば発効するというところまで来ているわけです。中国もソ連も既に批准を前提にして署名をしております。ところが、世界有数の海運国で、世界の七つの海を常時航海する船があって、世界じゅうでいろいろ厄介になっている日本が、この条約にまだ批准の手続すら外務省ではとっていない。甚だ不審であります。一体なぜ批准の手続をとろうとしていないのか、それを伺いたい。
  130. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 今先生から御指摘いただきました条約、先生仰せになりましたとおり、海上の遭難者の救難救護を目的といたしまして、各国の捜索救難機関の国際協力を増進するというものでございますので、海運国家でございます我が国といたしまして、基本的には早い機会に締結すべきもの、そのように心得ております。  先生指摘になりましたように、この条約、五年前に作成されまして、いまだ発効に至っておりません。あと一カ国の批准があった後、十ニカ月で発効するということでございます。ただ、我が国の場合、協力いたします相手、一番関心がございます相手は、太平洋のアジア、大洋州の諸国でございますが、太平洋に面しております部分につきましては、現在のところ手続を終えましたのはカナダとアメリカだけでございます。したがいまして、アジアの諸地域の動向、こういうものも勘案しつつ、また、この条約を実施するに当たりましての我が国体制整備というものも勘案しつつ、ただ、基本的には先ほど申し上げましたように、早い機会に締結する、こういう線で検討を進めてまいりたい、かように考えております。
  131. 河村勝

    ○河村委員 アメリカとカナダは既に批准をしている。それで、あと一カ国批准すれば発効するというのに日本が周りの気配をうかがってもじもじしているというのは、一体何か特別な理由があるのですか。
  132. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 先ほど申し上げましたように、特別の理由があるというわけではございません。ただ、この条約が発効いたしました場合に、実効的にそれが動くためには、主として我が国立場から見ますと、アジア諸国の動向ということが重要でございますので、その動向も見きわめつつ、他方、我が国の海上保安庁におかれましても、先ほど申しましたように、早い機会に入りたいという御意向で種々御検討いただいておりますので、その検討と相まって、先ほどから繰り返し申し上げておりますように、早い機会に締結するという線で進めていきたいと思っております。
  133. 河村勝

    ○河村委員 アジア諸国の動向というけれども、これは救難体制ですよ。海難救助ですよ。何でそれで周りの動向をうかがう必要があるのです。それとも――海上保安庁来ておりますか。日本じゃこういう条約を批准しても救難体制がとても間に合わないという理由でもあるのですか。
  134. 茅根滋男

    ○茅根説明員 実際に海上におきましてサーチ・アンド・レスキューの業務を担当しております海上保安庁といたしましては、このSAR条約が発効するまでに何とか加入をされることが望ましいというふうに考えておりまして、現在、外務省さんと密接な連携を保って作業を進めております。また、SAR条約の精神にのっとりまして、米国とかフィリピン、韓国等の隣接のサーチ・アンド・レスキューを担当する機関と実務的な話し合いを継続してやっております。そういうことでございます。
  135. 河村勝

    ○河村委員 それは当然、発効してから周辺諸国と相談して、新しい体制づくりをするわけでしょう。ですから、それからやればよろしいので、日本自体として能力がないというわけではないでしょう。その点はちょっとはっきりさせてもらいたい。
  136. 茅根滋男

    ○茅根説明員 SAR条約を批准されますと、当然のことながら広大なSAR区域というものを持ちます関係上、現在、大蔵省さんにもお願いいたしまして、広域哨戒体制の整備を鋭意進めております。したがいまして、体制整備の方も着々と進んでおるというふうに御理解いただければ結構と思います。そのほか、このSAR条約の規定にございます船位通報制度等も六十年の十月に発足させるべく、現在体制整備を進めているところでございます。
  137. 河村勝

    ○河村委員 外務大臣、今お聞きになったように、日本の救難体制に欠陥があるわけじゃない、日本の救難体制は世界でも一流の力を備えているわけなんですから、あろうはずがないのですね。何だか知らない、それでもまだ周りをうかがってアジア諸国の動向とかなんとか言っておりますが、おかしいと思いませんか。大臣、この条約、初めて聞くでしょうけれども、おかしいでしょう。そう思いませんか。ひとつ早速に批准の手続をとったらいかがです。ほかがもう一カ国、ソビエトか中国が批准をして、それじゃといって日本がやるんじゃ、みっともないじゃないですか。いかがなんです。
  138. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 我が国の捜索救難の能力につきましては、先ほど海上保安庁の方から御答弁あったとおりでございます。条約の有無にかかわらず、日本としてはやるべきことであろうと思います。ただ、この条約が主として目的といたしますのは、地域協力と申しますか、この新しくできる条約の枠内でそれぞれの国の捜索救難当局との協力関係をつくるのが目的でございますので、先ほど海上保安庁の方からもお話しございましたように、現在既にその可能性を非公式に種々お話しいただいておるということでございまして、そういう見通しをある程度持った上で、ただ基本的には、繰り返し申し上げておりますが、早い機会にやりたいということで対処いたしたいと思います。
  139. 河村勝

    ○河村委員 だけれども、海上保安庁はいいと言っているのですよ。外務省がなぜいけないと言うのです。その辺がちっともわからない。この問題でこんなに時間をとるとは私は夢にも思わなかった。こんなの事務当局に任せておくのもおかしいでしょう。外務大臣、これ、批准手続をとりますとおっしゃるべきだと私は思います。日本のメンツにもかかわることです。御答弁をいただきたい。
  140. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今初めて聞くお話ですけれども、早速調べまして、もう時期が来ておるということならば早速批准の手続はとらなきゃならぬ、こういうふうに思います。
  141. 河村勝

    ○河村委員 いつまでもこの問題を議論しているのはやめますけれども、ならばじゃなくて、もう体制はできているのですから、くれぐれもみっともない結果に終わらないようにやってください。要請をしておきます。  イラン・イラク紛争の問題ですが、私は前にもここで申し上げたように、あなたがこのイラン・イラク問題の戦争の解決に何らかの役割を果たしたいとやっておられるのに、大変評価している一人です。ですから、それが順調に行くことを期待をしておったのですけれども、この一両日ぐらいの新聞報道で見ますと、外務省の波多野中東局長がイラクを訪問し、それからイランを訪問した、その結果の報道があるのですけれども、イラクの外務大臣日本の調停工作は極めて近視眼的であるという批判をしておる。次いで、五日にイラクに行って六日にイランを訪ねたところが面会を拒否されて、その日のうちに退去を命ぜられたわけじゃないでしょうけれども、全然話もできないで帰ってきてしまった。「門前払い」、こういう見出しになっていますけれども、私は事実がそうであれば、せっかくやっている努力がこんなことでとんざするというのは本当に嘆かわしいことだと思いますが、実際はどうなんですか。
  142. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 実際は大分誤解があると思います。波多野局長をイラクに派遣をしたことはそのとおりなんですが、これはイランのベラヤチ外相が日本に来まして、我々イラン・イラク戦争について随分話をいたしました。その内容等につきましてもやはりイラクにいろいろと伝える必要がある、イランにその際自制を求めましたので、イラクに戦争拡大の自制も求めよう、こういうことでイラクに派遣をいたしました。その際、イラクに行く以上はイランにも寄っていきたいということで、それは結構じゃないかということにして、イランにその旨通報したのですが、イランは別に入国されることに対しては何ら自分たちはこれに対して反対、賛成と言う立場ではないけれども、ちょうどイランには選挙がされているようですが、選挙の真っ最中であるし、そういう時期にイラクに行って、イランにまたすぐ来るということになると、いかにも調停工作、仲介工作に日本が動き回っているという印象をイランに非常に強く与えるということは、今選挙もやっているし^イランとしても戦争も遂行しているし、そういう中でこれは大変そういう印象を与えるのはまずいので、自分たちとしては会うわけにはいかない。そこで、できれば一たん日本に引き揚げていただいて、そこで改めて我々が招待をしますから、ひとつおいでいただきたい、そのときは大歓迎します、こういうことであったわけですが、波多野局長は、やはりイラクとの話し合いの結果、イランの要人には会えなくても野村大使には会って、そしてどうしても伝えたいことがある、こういうことで初めからイランの要人に会えないということはわかっておったわけですが、あえてイランに入りまして、そして野村大使に会って帰ってきたわけでありますから、別にイランから門前払いを食ったとか、そういう筋合いのものでは全然ありません。また、いずれこちらに帰ってきましたら、私は機を見てイランは訪問させたい、こういうふうに思っております。
  143. 河村勝

    ○河村委員 もう一つの、イラクの外務大臣日本の調停のやり方というのは近視眼的だと言ったと伝えられておりますが、その点は一体どうなんですか。
  144. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは日本がどちらかというとイラン寄りを示しているというふうな気持ちをイラクの外相が持っているのではないか、私はそういうふうに思っております。例えば国連の調査団を我々が支持するとか、そういうことをしたものですから、あるいはまたベラヤチ外相を日本に呼んで、これは私はイラクがむしろ評価していると思うのです、実際は。湾内のいわゆる安全航行を我々は強く主張したわけですから、これはイラクとしては評価していると思いますが、イラクとしてはしかし日本が非常に大きな国である、そして経済力もある、そういう中でイランから膨大な石油を購入している、そういう点もやはりイラクにとりましては、どちらかというとイラン寄りであるし、また経済関係もむしろイラクよりはイランの方が深い関係を持っている、こういうふうな感じが多少あるのではないだろうかと思うわけです。  そこでこの二十二日ですか、今度はイラクの外相とクウェートの外相がやってくることになりました。これはイラン・イラク戦争の早期終結を行うためにはやはり日本にも協力してほしいということであろうと思いますが、私はちょうどいい機会ですから、その際去年も会った仲ですし、日本が純粋にイラン・イラク戦争の終結というものを望んでいることはイラクも一番よく知っているわけですから、イラクの外相にも説明をして、日本はイラン・イラクに対して全く等距離といいますか、そういう立場で今平和解決に向かっての努力を重ねておるんだ、他意は全くないんだということを説明して、彼らにそれに対する理解を求め、そしてなおかつ戦争に対する自制を求めてまいりたい、こういうふうに思います。
  145. 河村勝

    ○河村委員 事情はわかりました。しかし、とにかくイラン、イラクは戦争の最中なんですから、それぞれ建前と本音というものは使い分けなければならぬでしょうし、その辺のところは日本も十分酌み取って、それで配慮していかないと、つまらないところからせっかくの努力がふいになるという危険性もあるのです。ぜひひとつ今度イラクの外相も来られるということであれば、当然両国ともに何らかの妥結の道を模索していることだけは事実なんでしょうから、大いにその点は配慮してやっていただきたい、それだけお願いをしておきます。  次にパキスタン、インドを訪問して帰られたばかりでありますが、パキスタンでアフガン難民のキャンプまで見に行かれたと聞いておりますが、そうであれば、あの難民地域を見て、ソ連のアフガニスタン侵略に伴うアフガニスタンの国内情勢、そういうものはおのずから難民キャンプを見ることによってわかってくるだろうと思いますが、どういう印象を受けたか、それをまず聞きたいと思います。
  146. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 パキスタンに参りました際に中曽根総理とともに、ペシャワルというアフガニスタンに近い都市の近辺に広大な難民キャンプがありますが、パキスタンには三百万人くらいアフガニスタン難民がおるわけですが、その中の大きな難民のキャンプに訪問いたしまして、そこで難民の指導者、千人近くおったのではないかと思いますが、指導者が集まっておられまして、そこで、ハク大統領も一緒でありましたが、中曽根総理大臣のあいさつとかあるいは指導者のあいさつが行われたわけでございます。私の印象としては、やはり難民の皆さんは本当にアフガニスタンの自由を求めて結束をしておる。そして、その気持ちは火のように燃えているというふうな感じを持ったわけでございます。ああいうイスラムの国ですから、婦人や子供は出てきません。男だけでありますから、それだけに、集まった空気というものはまさに戦士の集まりといったような感じで、アフガニスタンのソ連軍に対する反撃、憎しみというものが大変盛り上がったような感じがいたしました。ソ連としても、アフガニスタンに入っていってなかなか容易でないなという感じを持ったわけでございます。去年は、私ちょうどカンボジアの難民の訪問をタイでいたしまして、これがやはり四万人ぐらいおりましたが、これは婦人も子供も一緒でありました。そのときとは全く変わったような雰囲気で、とにかく先ほど申し上げました戦士の集まりといったような感じ、非常に戦闘意欲の旺盛な難民の集団、そういう感じを強く持った次第であります。
  147. 河村勝

    ○河村委員 戦士の集団という印象というと、単なる難民じゃなくて、そこからまたアフガニスタンに戻って反政府ゲリラ闘争に参加をしていく、そういうような集団になっておるということなんでしょうか。
  148. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 その辺はよくわかりませんが、みんなそれぞれ武器を与えてくれとか、そういうことも言っておるようですから、恐らく若い連中はどんどんアフガニスタンに入っていっているのじゃないかというふうに推測はいたしております。
  149. 河村勝

    ○河村委員 私、最近の報道で聞いておるのですが、欧州議会が最近アフガニスタンからのソ連の撤退の決議をした。ソ連はアフガニスタンを足場にして、それでKGB、KHAD、秘密警察ですね、こういうものの工作員が難民地域や北西部の辺境地域、それから特にバルチスタン州、アラビア海に面するところですね、こういうところに潜入をして、それで少数民族の分離運動というものをやっておるということを決議の中で述べている。私、原文は確認しておりませんが、そういう事実は外務省は確認をしておりますか。
  150. 橋本恕

    橋本(恕)政府委員 私どもも、先生指摘のような情報は確かにいろいろな方面から聞いたことはございます。ただ、現実にそのとおり正確であるかどうかにつきましては、私ども直接人を出して見に行ったわけでもございませんので、現在のところまだ確認はしておりませんが、確かに先生指摘のような情報は相当多く入手しております。
  151. 河村勝

    ○河村委員 大臣は、パキスタンに行かれて、そういう種類の話は全然聞きませんでしたか。
  152. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 相当国内において治安を乱すといいますか、そういう外国の勢力と組んだ動きがあるということは言っておりましたけれども、しかし、全体の治安情勢は比較的安定しておるということも同時に言っておりました。私も、わずか二、三日ですからはっきりしたことはつかめないのですが、全体的にはハク大統領の政権は安定をしておるのじゃないだろうか、こういうふうに思いました。
  153. 河村勝

    ○河村委員 一般的な常識として、アフガニスタンというものは資源も乏しいし、ソ連にとってそう魅力のある土地ではないはずですから、やはりアラビア海に出ていくというのは一番大きな魅力があることだけは間違いがないわけですね。だから私は、あり得ない話ではない、そういう想像をしているわけで、それでお尋ねしたわけですけれども、そこまで行っているかどうか、確認ができなければ、それで結構でございます。しかし注意をしておいていただきたい。  今度のパキスタン訪問での主たる議題がやはり経済協力になったと思いますが、先ほど、難民対策に対する援助は国際機関を通じてやっておるので、日本は二国間ではやっておらない、そういうお話でありましたが、この難民対策以外の経済協力についても論議されたんでしょう。一体どういう経過だったのですか。
  154. 橋本恕

    橋本(恕)政府委員 先ほど大臣から御答弁申し上げましたとおり、難民援助につきましては国連の機関、つまりUNHCR、国連難民高等弁務官事務所、このルートが一本、それからWFP、つまり世界食糧計画というものを通じて、これも国連の機関でございますが、援助している、こういうことでございます。これのほかに、これは前年度の例でございますが、三百億円、私正確な数字をちょっと失念しておりますが、三百数十億の円借款を供与しておりますし、それからそのほかに約九十億円の無償の援助を供与しております。ハク大統領から安倍外務大臣あるいは中曽根総理に対しまして、これらすべてに心から感謝するという深甚なるごあいさつがございまして、引き続きよろしくということで、日本政府の側から引き続きパキスタンの置かれた苦しい立場も十分理解、同情しながら今後とも誠意を持って対応してまいります、こういう話し合いが行われたわけでございます。
  155. 河村勝

    ○河村委員 先ほど外務大臣、発展途上国に対する援助の理念は相互依存と人道主義である、そのとおりだと私も思いますし、基本的にはそういう政略的な要素というのはない方が望ましいかもしれない。だけれども、私は、こういう不法な侵略によって周辺地域が不安定な状態に置かれているときに、そういう紛争がさらに新しい地域に拡大しないように防止するのはやはり日本としても考えなければならぬことだ。ですから、何もそういうことに遠慮することはないので、やはり経済の安定というのが紛争防止の一番大きな手段であり、それ以外に日本の力を用いる場はないのですから、ひとつそういう観点からも私はやってほしいと思います。  インドとカンボジアの問題も伺いたかったのですけれども、あと二、三分しかなくなってしまって。  インドについて、ガンジー首相と非常に緊密な会談もやって、それで南北問題について意見が一致しだというような報道がされていますが、極めて抽象的で、南北問題について一致といっても何のことかわからないのですが、一体何を意味するのか。いずれこれは総理大臣が外務委員会に見えるときもあるようですから直接伺おうかと思っておりますが、一体安倍外務大臣としてはどのような印象なり、この言葉の意味するものはどういうことであるのか、おわかりでしたらひとつお話しいただきたい。
  156. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 パキスタンとインド、隣国同士でありますが、国柄がもちろん違っておりますし、そうしてパキスタンは独立戦争で独立して、その後四回にわたってインドとも戦っておるということだけに、やはりインドとの間はいろいろと問題を抱えておるという印象は強く持ったわけでございます。そういう中で外交方針も違いまして、パキスタンはアメリカ中国と非常に深い関係にあります。それからまたアフガニスタンに対しては、難民を三百万人も抱えて、むしろそういう中でいわゆるゲリラ闘争を支援しているというふうな一面もあるわけでございますし、あるいはまたカンボジア問題等につきましても、自分の国が難民を抱えているだけに、いわゆる独立三派を支援しているという立場であります。  インドは非同盟のリーダーでありますが、しかしソ連とは非常に深い関係にある。それから、中国とは国境紛争が途絶えないということで非常な対立的な関係にあります。アメリカに対しても疎遠な関係にあるわけです。ですから、インドはアフガニスタンにおいてもカルマル政権を現在承認している、あるいはまたカンボジアにおいてはベトナムのヘン・サムリン政権を承認しているということで、パキスタン、日本立場とも全く違うわけなんです。しかし、そうした違った一面もありますけれども、南北問題、いわゆる開発途上国と先進国との対話協力というものを積極的に行って、要するに南の発展なくしては北の発展がない、よく日本が言っておりますが、それをインドはリーダーとして強く先進国に求めておる。そういう中で日本がまさに南北問題に一番理解のある国だというふうに見ておるわけでございます。そういう意味で、南北問題について日本との間で相協力してやろうということであります。  同時にまた、私は感じたのでありますが、ソ連の援助ばかり受けてインドの近代化はできない、そろそろこれまでどちらかというと疎遠になっておりました日本というものを見直して、日本協力というものを受けてこれからのインドの、七億以上の人口ですから、このインドの近代化を行いたいというガンジーさんの相当強い意思というものが出てきたというふうな感じを持ちまして、インドも相当日本に傾斜というか、日本に期待を始めたという感じを私は強く持ったわけであります。
  157. 河村勝

    ○河村委員 約束の時間ですから終わります。
  158. 中島源太郎

    中島委員長 次に、瀨長亀次郎君。
  159. 瀬長亀次郎

    ○瀨長委員 私、嘉手納基地の三七六戦略航空団のKC135、この問題についてお伺いしたいのですが、この部隊のKC135は嘉手納に常時何機いるのか、どういう任務を帯びているのか。これは簡潔に説明してください。
  160. 山下新太郎

    山下(新)政府委員 嘉手納に配備されておりますKC135は、アメリカの戦略空軍隷下の第九〇九空中給油スコードロンに所属しているものでございます。  飛行機の機数でございますが、私どもが知っております範囲では、たしか十五機ぐらいというふうに理解しております。
  161. 瀬長亀次郎

    ○瀨長委員 その十五機は、変動があって、常時四機はアンダーソン基地にいるB52戦略爆撃機、これに給油するという任務を帯びているということでありますが、この点はいかがですか。
  162. 山下新太郎

    山下(新)政府委員 約十五機のうち何機がB52の戦略関係の任務での給油に当たっているか、詳細は私ども承知してない次第でございます。
  163. 瀬長亀次郎

    ○瀨長委員 これは後で詰めますが、安保条約との関連で申し上げますが、直接戦闘作戦行動を行っている戦略爆撃機B52に対してKC135の給油は許されるかどうか。
  164. 山下新太郎

    山下(新)政府委員 安保条約六条の実施に関する交換公文で、御指摘のとおり戦闘作戦行動のための基地としての日本国内の施設及び区域の使用、これが事前協議の対象の一つになっているわけでございます。我が国基地から飛び立ちましたKC135がB52に空中で給油するということはこの戦闘作戦行動に直接当たると考えられませんので、事前協議の対象にはならないというのが従前来御答弁申し上げているところでございます。
  165. 瀬長亀次郎

    ○瀨長委員 これは七二年の例の沖縄国会における当時の福田外務大臣の答弁がそうなっております。地上給油、これは事前協議の対象になるが、空中給油、これは単なる給油であって割り切っておるといった答弁なんですね。  私、きょうお聞きしたいのは、あのときはベトナムに対しては核爆弾は積んでおりません。もちろんアメリカはベトナムに核爆弾を落とそうかどうかといった経過報告なんかが現在いろいろありますが、いずれにしてもそのときは核爆弾は積んでない。  そこでお聞きしたいのは、核爆弾を抱いて爆撃に向かう、もちろんこれは外務省は認めております。横田、嘉手納にはジャイアント・トーク・ステーション、いわゆるゴーサインを出す施設があるということは外務省は認めておりますが、この核爆弾を積んだ戦略爆撃機B52に対しても空中給油は事前協議の対象にならないという見解であるのかどうか、これははっきりさしていただきたい。
  166. 山下新太郎

    山下(新)政府委員 事前協議の対象になりますのは、先ほど申し上げました戦闘作戦行動の基地としての施設、区域の使用というほかにもう一つ、正確に申し上げますとあと二つでございますが、その二つのうちの一つが装備における重要な変更ということであるわけでございます。  装備における重要な変更として事前協議の対象になると従前来申し上げておりますのは、例の核の持ち込みでございます。B52が核を積んで我が国の施設、区域に入ることは、その限りにおきましては当然事前協議の対象になります。これが我が国に入ることなく空中を飛行している。そういうB52に対しまして、KC135が例えば嘉手納から飛び上がって空中給油をするということ、そのこと自体は、先ほど申し上げましたように少なくも論理の問題といたしましては事前協議の対象になりませんと考えている次第でございます。
  167. 瀬長亀次郎

    ○瀨長委員 今の答弁によりますと、核爆弾を積んだB52、これが相手国に向かってアンダーソン基地ならアンダーソン基地から出発しますね。このときに嘉手納基地にいるKC135が空中給油をする、これを安保条約上許されるのか、この点です。
  168. 山下新太郎

    山下(新)政府委員 安保条約上許されるものだと考えます。
  169. 瀬長亀次郎

    ○瀨長委員 そこで大臣にお聞きします。  今、いわゆる限定核戦争構想、これを中曽根政府は認めておる。六月からは第七艦隊にトマホーク、これも配備する。まさに不沈空母化、日本列島は核戦場になるような方向、これが現在の情勢である。これは三沢でも同じであり、沖縄でも同じである。そういった背景のもとで戦略爆撃機、B52がアンダーソン基地を出発する。これは給油支援態勢なしにはこの目的は達することができない。この場合、これをチェックする何らの措置もとらない。フリーにこのB52は飛んで行って爆弾を落とす。まさに核戦争に対して日本基地はその給油そのもので協力することになる。そうならないと思いますか。それともそれ自身は核の抑止力というふうにまた答えられるのですか。これはどうですか。
  170. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 我が国は非核三原則を厳守いたしますし、平和国家としての立場を今後とも貫いていかなければならぬ。そういう意味でアメリカが、もちろんアメリカの世界戦略としてトマホーク配備とかいろいろなことをやるでしょうけれども、少なくとも日本に入ってくる艦船の場合においては、これは御承知のように非核に限る、こういうことでございますから、その辺の御心配は要りません。
  171. 瀬長亀次郎

    ○瀨長委員 大臣、そういった核爆弾を積んだB52、これに対する給油、いわゆる支援態勢としての給油、これ抜きには爆弾投下はできないんですよ。いわゆる相互に関連する不可分の一つなのです、給油というのは。行くときであれ帰るときであれ、これに対して空中給油は――福田外務大臣のときとは違うんですよ。あのときは、空中は単なる給油であるということで、これは事前協議の対象にならぬという答えであるが、今問題にしているのは、核爆弾を積んでいるB52の問題を問題にしているわけです。これはアンダーソン基地ならアンダーソン基地から飛び立って、例えばですが、いわゆるジャイアント・トーク・ステーションからゴーサインを送る、その前に給油をするか、帰りに給油するかは別として、これに給油するということは、日本基地が核戦争に巻き込まれることを認める、こういう結論に達するのではないですか、大臣、いかがですか。
  172. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは山下議官が答弁したとおりだと思いますが、核爆弾を積んだ飛行機が、例えば日本に給油のために着陸するとかということになりますれば、それはもちろん事前協議の対象になるわけですから、これは日本としても認めるわけにはいかないわけですけれども、空中を飛んでおる場合において、これに対して給油する、しないという問題は、山下議官の言っているように事前協議の直接対象にならない、こういうふうに私は思います。
  173. 瀬長亀次郎

    ○瀨長委員 大臣の答弁の緒論というのですか、いわゆる普通の爆撃機じゃなしに、このB52には核爆弾を積んでいる。核爆弾を落としに行く。これを支援する態勢、これが今とられている。これは後で申し上げますが、これを支援することを、日本の嘉手納基地、これから給油機が飛んでいって給油していく。まさに核爆弾を投下する戦闘行為、これに協力している。巻き込まれるという危険がある。  私、その点で、この点ははっきりもう一遍答弁願いたいと思うんですよ。相手は核爆弾を抱えているんですよ。これに給油するわけです。そして給油することによって目的を果たさせる。その給油機は日本の嘉手納基地にあるKC欄、この問題を許すならば核戦場になることを認めることになる。そうなりませんか、大臣
  174. 山下新太郎

    山下(新)政府委員 今の御指摘の点でございますけれどもアメリカ側が考えておりますことは、どのような攻撃がございましても、これに対応し得る有効な態勢をとる、そういう態勢をとることによりまして抑止力をはっきりと強固なものにするという政策をとっているわけでございます。そういう観点から、戦略空軍を含めまして核抑止力を持っているというわけでございます。  御質問の点でございますが、伺っておりますと、抑止が破れた場合の事態を想定しておられるものと思われるわけでございますけれども、私どもといたしましては、核戦争に巻き込まれるとかそういうことを回避するという上でも、紛争を未然に防止する、そのために抑止力をより確固としたものにする必要があると考えているわけでございまして、このような観点から、日本といたしましては、我が国の平和と安全の確保のために安保体制を堅持していくという次第であるわけでございます。
  175. 瀬長亀次郎

    ○瀨長委員 逆じゃないんですか。戦争をしない、核戦争をしないというのが抑止力というわけでしょう、安全、平和のために。ところが、今私が話しているのは、B52が核爆弾を積んで戦闘行動に行って落とすんですよ。戦場になるんですよ。核戦争ですよ。この核戦争にならないように抑止はできないじゃないですか。核戦争抑止どころか、空中で給油して協力する。さあ爆弾を落としてこい、これがKC135の任務として今抱えている。これを、空中においては単なる補給ということでは、もう現在の皆さんの論理は通らないんですよ。もう核戦争になっているわけだ、爆弾を積んで落としに行くのだから。これに支援する。大臣、それでもいいわけですか。
  176. 山下新太郎

    山下(新)政府委員 仮に核戦争等になった場合に、有効にそれに対処し得る態勢をとっておくこと、それを普通私ども、抑止力だと理解いたしておりますが、そういう態勢をとることがむしろ核戦争を回避するというふうに考えるわけでございまして、例えばB52がグアムにおります。これとの関係で、確かに一部のものが、KC135が嘉手納におりまして、空中給油等をやることがあると思いますが、そのような態勢がとられ、かつ有効に作動するという状況にあること、これが、そのような現実に核爆弾を降らせるような事態を抑える、抑止するものである、こういうふうに考えているわけでございます。
  177. 瀬長亀次郎

    ○瀨長委員 これは理論のもてあそびで、戦争が始まっているのに、何の抑止か。核爆弾を積んで爆撃に行くわけなのです。そういったことで、今までの空中給油は単なる給油にすぎないから事前協議にならぬという論理では、もう既に抑止力論は破綻しているんですよ。  そういった意味で、後で結びで申し上げますが、これは戦争支援計画、KC135も入っております。これは三七六戦略航空団、これはKC欄が属するもの、この戦略空軍、いわゆるSACの支援計画です。この中には非常に詳しく書いてあるのですね。簡潔に申し上げますと、この部隊の第一義的任務として、嘉手納から、また嘉手納基地を通じて作戦行動をするすべての部隊のSAC、いわゆる戦略空軍緊急作戦にすべての必要な支援を準備しているという指摘がこれに行われております。これは非常に重要な問題で、まさに任務と性格の問題も書いてありますが、一般的にこのプランは第三七六戦略航空団、つまり嘉手納基地KC135の部隊の緊急戦争支援計画、これがここに具体的に書かれているわけです。いわゆる搭載、離発進、再出撃など準備のための一切のものを提供するということがこの中に書かれておる。  これで最初にお尋ねしたいのは、外務省としてこの内容がどんなものであるかということをよく調査検討してもらいたいと思いますが、いかがでしょうか。
  178. 山下新太郎

    山下(新)政府委員 瀨長委員指摘の報道は四月二十九日付の赤旗の記事かと存じますが、そこで御指摘のような報道があったことは私ども承知はいたしております。私どもといたしましては、報道にある米軍の指示文書については詳細承知をしていない次第でございますけれども、B52がおっしゃるとおり戦略任務を持っていることはもとより承知しているわけでございます。赤旗に報道されておりますアーキンというアメリカの核問題専門家と称する人でございますが、政府として一私人の発言に一々コメントすることは差し控えたいと考えております。
  179. 瀬長亀次郎

    ○瀨長委員 この問題をなぜ調査できないのか。これを調査するとどういう計画をしているか全部はっきりわかるのですよ。不安、疑惑が解かれてくる。これをなぜ調査しないのか、もう一遍はっきり言ってください。
  180. 山下新太郎

    山下(新)政府委員 先ほど申し上げましたように、アーキンと言われる一私人が行われた発言をコメントすることは私どもとしては控えたい、こう考えているからでございますが、実態的なあれといたしましては、先ほども申し上げましたけれどもアメリカとしてはいかなる攻撃に対しましても対応し得る有効な態勢をとることを抑止の基本に合しているわけでございまして、そのような観点から戦略空軍を含めまして核抑止力を保持しているということであるわけでございます。ただ問題は、核を積んだB52が日本に来るときには言うまでもなく事前協議の対象でございまして、従前来政府が申し上げておりますとおり必ずノーと言う、こういう立場をとっているわけでございます。
  181. 瀬長亀次郎

    ○瀨長委員 私はアーキンのことは一遍も言っていないのですよ。私の示しているこれは戦争支援計画、戦略空軍(SAC)の第三七六戦略航空団、KC135、これは士官用として出ているわけです。これを調査してほしいと言っているのですよ。アーキンのアの字も言ってないのですよ。何も赤旗なんという問題も一遍も言ってない。これはなぜ調査できないのですかと聞いている。これは調査すると言った方が早いですよ。
  182. 山下新太郎

    山下(新)政府委員 御指摘のような内容のことが書かれております記事につきまして私ども承知しましたのは、最初に申し上げましたとおり四月二十九日付の実は赤旗であったわけでございます。そこに書かれております内容は、先ほどから申し上げておりますようにウィリアム・アーキンという方が何か話をされたことが書かれているということなので先ほど来の答弁を申し上げている次第でございます。
  183. 瀬長亀次郎

    ○瀨長委員 時間が参りましたので最後の締めに移りますが、はぐらかすんだな。アーキンも赤旗もないのですよ。これは英文なんですよ。これを調べてくれと言っている。なぜ調べぬか。これもはっきり答え得ない。  そこで、最後に大臣の答弁も含めて、今までの質疑の中で一番明らかになったのは戦略爆撃機がアンダーソン基地へ飛んで核爆弾を抱いている、これに対しても日本の嘉手納基地から飛んでいくKC135か給油して支援態勢をとる、これを日本は許すどころか核戦争の構想に進んで巻き込まれるんだということがもう既に結論として出ておるわけなんです。抑止力じゃないのです。抑止力じゃどうにもならぬ核戦争という問題なんです。だから、その危険な進路、いわゆる核戦場になる進路を転換して、日米軍事同盟をなくして安全で平和な方向、これが日本の進路だと私は思うのです。大臣、どうです。一言。
  184. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 我が国我が国及び極東の平和と安全のために米軍我が国における駐留を認めておるわけです。したがって、米軍が今おっしゃった給油機を我が国に配備することは米軍機の効率的な運用に資するものでありまして、すなわち安保体制の抑止力を高めるものと考えるものでありまして、まさに安保条約というのは核戦争を行わない抑止力としての存在でございます。その核戦争を行わないための抑止力を高める意義を持つものである、こういうふうに考えております。
  185. 瀬長亀次郎

    ○瀨長委員 終わります。
  186. 中島源太郎

    中島委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時二十八分散会