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1984-05-08 第101回国会 衆議院 外務委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年五月八日(火曜日)     午前十時一分開議 出席委員   委員長 中島源太郎君    理事 石川 要三君 理事 野上  徹君    理事 浜田卓二郎君 理事 山下 元利君    理事 高沢 寅男君 理事 土井たか子君    理事 古川 雅司君 理事 河村  勝君       浦野 烋興君    奥田 幹生君       鍵田忠三郎君    鯨岡 兵輔君       佐藤 一郎君    仲村 正治君       西山敬次郎君    野中 広務君       町村 信孝君    岡田 利春君       岡田 春夫君    河上 民雄君       小林  進君    斎藤  実君       玉城 栄一君    渡部 一郎君       木下敬之助君    津川 武一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 安倍晋太郎君  出席政府委員         外務大臣官房審         議官      山下新太郎君         外務大臣官房審         議官      都甲 岳洋君         外務大臣官房外         務参事官    斉藤 邦彦君         外務省欧亜局長 西山 健彦君         外務省条約局長 小和田 恒君         水産庁次長   尾島 雄一君  委員外出席者         外務大臣官房調         査企画部長   岡崎 久彦君         外務委員会調査         室長      高橋 文雄君     ————————————— 委員の異動 五月八日  辞任        補欠選任   近藤 元次君    浦野 烋興君   宮澤 喜一君    奥田 幹生君   岡田 春夫君    岡田 利春君   玉城 栄一君    斎藤  実君   岡崎万寿秀君    津川 武一君 同日  辞任        補欠選任   浦野 烋興君    近藤 元次君   奥田 幹生君    宮澤 喜一君   岡田 利春君    岡田 春夫君   斎藤  実君    玉城 栄一君   津川 武一君    岡崎万寿秀君     ————————————— 五月八日  北西太平洋における千九百八十四年の日本国の  さけます漁獲手続及び条件に関する議定  書の締結について承認を求めるの件(条約第一  二号)同月七日  朝鮮民主主義人民共和国へ帰還した日本人妻の  里帰り促進等に関する請願小澤潔紹介)(  第四〇一五号)  同(粕谷茂紹介)(第四〇一六号)  同(工藤巖紹介)(第四〇一七号)同月八日  朝鮮民主主義人民共和国へ帰還した日本人妻の  里帰り促進等に関する請願小沢貞孝紹介)  (第四〇五六号)  同(友納武人紹介)(第四〇五七号)  同(武藤嘉文紹介)(第四〇五八号)  同(石川要三紹介)(第四二六九号)  同(小泉純一郎紹介)(第四二七〇号)  同(山崎拓紹介)(第四二七一号)  同(山崎武三郎紹介)(第四二七二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  北西太平洋における千九百八十四年の日本国の  さけます漁獲手続及び条件に関する議定  書の締結について承認を求めるの件(条約第一  二号)      ————◇—————
  2. 中島源太郎

    中島委員長 これより会議を開きます。  本日付託になりました北西太平洋における千九百八十四年の日本国さけます漁獲手続及び条件に関する議定書締結について承認を求めるの件を議題といたします。  まず、政府より提案理由説明を聴取いたします外務大臣安倍晋太郎君。     —————————————  北西太平洋における千九百八十四年の日本国の   さけます漁獲手続及び条件に関する議   定書締結について承認を求めるの件     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ただいま議題となりました北西太平洋における千九百八十四年の日本国さけます漁獲手続及び条件に関する議定書締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  政府は、昭和五十三年四月二十一日にモスクワで署名された漁業分野における協力に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定に基づき、北西太平洋距岸二百海里水域外側水域における本年の日本国さけます漁獲手続及び条件を定める議定書締結するため、本年四月二十日以来、モスクワにおいて、ソ連邦政府交渉を行ってまいりました。その結果、五月七日にモスクワで、我が方高島駐ソ大使先方カーメンツェフ漁業大臣との間でこの議定書の署名が行われた次第であります。  この議定書は、北西太平洋距岸二百海里水域外側水域における本年の日本国サケマス漁獲について、漁獲量、禁漁区、漁期、議定書の規定に違反した場合の取り締まりの手続等を定めております。なお、本年の北西太平洋ソ連邦距岸二百海里水域外側水域における年間総漁獲量は、四万トンとなっております。  この議定書締結により、北洋漁業において重要な地位を占めるサケマス漁業操業を本年においても継続し得ることとなりました。  よって、ここに、この議定書締結について御承認を求める次第であります。  何とぞ御審議の上、本件につき速やかに御承認あらんことを希望いたします
  4. 中島源太郎

    中島委員長 これにて提案理由説明は終わりました。     —————————————
  5. 中島源太郎

    中島委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します町村信孝君。
  6. 町村信孝

    町村委員 ただいま大臣から御説明のありました日ソサケ・マスの件でございますが、大臣は、インド、パキスタン公式訪問を終えられて御帰国後、直ちにまたこの日ソ問題ということで、大変御苦労さまだと心から考えておるところでございます。  この日ソサケ・マスの話に入る前に、日ソ関係全般につきまして、既に類似の議論のあったところではございますけれども、若干伺っておきたいと思います。  私、北海道を基盤とするものでございますけれどもソ連という非常に大きな隣国が北海道の隣にございまして、この日ソ関係を少しでもいいものにしたいと考えておりますのは、北海道民であればだれしもが願うところでもありますし、また、これは日本全体でもそうであろうというふうに考えるわけでございます。ただ、領土問題を初めといたしまして日ソ関係が特にここ四、五年間非常に厳しい状態が続いている。こういった状態に対応して、ことしの二月、安倍大臣訪ソをされまして御葬儀に参列された。そして向こうの外務大臣との間で、対話をより活発化していくといったことで基本的な合意ができたわけでございます。そして、それに基づきまして三月には中島外審訪ソをされ、さらに連休中に西山欧亜局長訪ソされた、こういうふうに伺っているわけでございます西山局長モスクワからお帰りになったばかりと聞いておりますけれども、今回の訪ソで、特に日ソ間の対話の強化という観点からどういうことが具体的に話し合われたのか、この点についてまずお伺いをしておきたいと思います
  7. 西山健彦

    西山政府委員 お答え申し上げます。  今般の訪ソの主目的は、先生指摘のとおり、本年の二月の日ソ外相会談におきまして安倍グロムイコ外相間の対話拡大に関する合意ができましたことを踏まえまして、日ソ間の対話の具体的なプログラムの段取りをつくるということでございました。そこで、五日の午前、外務省カピッツァ次官及びソロビヨフ極東第二部長と種々会談をいたしました結果、具体的には次のような点について合意いたした次第でございます。  第一点は、日ソ租税条約交渉、これは通算三回目に当たるわけなんでございますが、しばらく中断しておりましたのを六月四日から七日までの四日間モスクワにおいて開催する。第二点、国連に関する日ソ間の局長レベルでの意見交換を八月二十日から三十日に至る期問に一日ないし二日東京で行う。第三、中東に関する日ソ間の局長レベルでの意見交換を六月の下旬に開催する。これは場所につきましてはさらにもう少し詰めることになっております。第四点といたしましては、映画祭でございまして、まず日本映画祭を九月十九日から十月三日までの間にモスクワ、レニングラード、ナホトカにおいて二日間ずつ開くというものでございます。それからさらに第五点といたしまして、政府間の貿易経済協議、これを昨年に引き続きましてことしの秋、東京で開催する。  以上五点でございますが、これに加えまして特に重要な点といたしまして、日ソ両国外務大臣国連総会出席機会をとらえまして、ことしの秋ニューヨーク日ソ外相会議を開催したい、カピッツァ次官との会談の席上、双方がそういう期待を表明いたしました。  以上のような点が具体的なプログラムでございます。  申し上げるまでもなく、日ソ間には北方領土問題を含む原則的な非常に難しい問題がございまして、日ソ関係は一朝一夕に改善されていくというものではございませんけれども、右に申し述べましたような実務的な、動かし得る案件についてはこれを動かして、対話維持拡大を図りまして、我が国国際社会における重要性、したがって日ソ関係進展必要性ということをソ連側にそういうチャネルを通じて認識せしめる、それで諸懸案の解決のために少しでも有利な環境ソ連との間に醸成してまいりたい、かように考える次第でございます
  8. 町村信孝

    町村委員 非常に幅広い分野での交流がこれから秋にかけて行われようとしておる、大変結構なことだろうと思います。特に、九月の国連総会安倍外務大臣グロムイコ外相との間で外相会談も開催される予定で、大いにその成果にも期待をしたいというふうに考えております。ただ、この場合、やはり両国間に基本的な領土問題があるといったことは私どもとしては常に認識をして日ソ間の交流というものを考えていかなければいけない、やはり対話といっても無原則対話ではまずい、原則というものを常に踏まえて行うべきである、こういうふうに考えるわけでございます。  そういうことからしますと、例えばつい先般、実は、四月の半ばでございますけれども日ソ間で、日ソ極東北海道友好交流会議というものがハバロフスクで開催されたわけでございます。これには先方も含め約三百人の各界各層の方が参加をされたということでございまして、地方ベースでの交流活発化という意味では注目を集めたわけでございます。ただ、私その結果である共同文書その他を見たわけでございますけれども、どうも参加者の構成がやや偏りがあったのじゃないだろうか。こんなことも一つの原因がなと思われますが、最初の試みでございますから直ちに評価を下したくはないわけでございますが、その共同文書などを見ますと一方的にアメリカを非難するような、そんな文言が共同文書の中に入っている等で、必ずしも原則をきちんと踏まえた上での議論なんだろうかといったような懸念を呼ぶような合意というものが両国間で、地方を中心としたベースで結ばれたということも実はございまして、日ソ間の対話促進といってもなかなか難しい面があるのだなあということを痛感するわけでございますが、もし外務省の方で先般の会議について何らかの評価というものをお持ちであればこの際あわせて伺っておきたいと存じます
  9. 西山健彦

    西山政府委員 ただいま先生からお話のございましたハバロフスク会議につきましては、私どももそういうものが開催されたということは存じております。  基本的に申し上げますと、ソ連との間で友好交流経済漁業等々の分野で幅広い意見交換が行われる、こういうことは、日ソ間の相互理解を増進する、そういう観点からも望ましいことであるというふうには考えております。しかしながら、私どもがその際特に関係の方々にお願いもし、強調申し上げた点は、こうした交流はそれがソ連との間の友好親善目的とするという限りにおいて大変結構なことなのでございますけれども北方領土問題等日ソ間に存在する基本的な問題を回避するようなものであってはならない、こうした見解相違する問題についても忌憚なく意見を述べ合っていただいて真の相互理解ができ上がるようなものであってほしいということを申し上げた次第でございます。  今回のハバロフスク会議それ自体につきましては、まだ日本側代表団から詳しい御報告を受けているわけでもございませんので、正式な評価等を申し述べるのは現在の時点では差し控えたいと存じますけれども、仄聞するところによれば、北方領土のような問題につきましても率直な意見交換が行われたというふうにも伺っておりますので、そうであれば結構なことであったというふうに考えております
  10. 町村信孝

    町村委員 原理原則ははっきりした上で大いに交流を進めるということであろうというふうに思います。ただ、北海道一つ特殊性というのは、そういったソ連とのやりとりがいわば直ちに北海道に住んでいる人あるいは北海道でいろいろな企業経営をしている人たちの生活に影響する面もありますので、外交と内政とのバランスというのが非常に難しいと思いますし、また、そのバランスをとって外務省の方でもその辺の外交を進めていただきたい、こういうふうに思うわけでございます。  そこで、今次サケマス交渉でございます。  交渉結果につきましてはただいま外務大臣から御報告をいただいたとおりでございまして、こちらから参りました水産庁長官あるいは現地の大使初め皆さん大変御苦労された結果であろうということで、こういう皆さん方の御労苦に対しても心から敬意を表したいと存じておるわけでございますが、今回の交渉の結果を政府として一言で言うとどのように評価されているのか、この点を伺っておきたいと思います
  11. 尾島雄一

    尾島政府委員 今次の交渉におきましては、実はソ連側資源回復が非常におくれているという点並びに我が国の漁船の大量違反問題、こういうようなことを非常に重要視いたしまして、クォータの大幅削減あるいは日本監視船に対して六隻に増隻をしてソ連監督官の乗船を強硬に主張いたしました。これを非常に譲らないという姿勢をとったために交渉は極めて難航いたしたわけでございます。  しかしながら、ただいまお話がありましたとおり、水産庁長官以下代表団が極力前年並みの操業条件に近づけるよう粘り強く交渉を行った結果、ソ連側からは譲歩を引き出すことができて、我が国サケマス漁業の維持安定のためにぎりぎりの内容で妥結することができたということは一応の評価を得られるものと考えておる次第でございます
  12. 町村信孝

    町村委員 大変な御努力成果であったと思いますが、やはり結果は大変厳しかったというふうに実は私どもは受けとめているわけでございます。特に、このサケマス漁業に大きく依存している北海道の漁民の人にとりましてはその影響が著しい、こういうふうに地元皆さんは受けとめているようでございます。  今御説明もあったように、この資源評価という問題でどうも基本的な食い違いがあるようでございます日本側資源量はかなり回復している、あるいは回復途上にある、こういう評価をしているのに対して、ソ連はいやまだである、こういったような評価の大きな違いがあるようでございますが、その辺の違い、もうちょっと言うと、ソ連側資源評価というものについて水産庁はどのように考えておられるのか、その点を伺いたいと思います
  13. 尾島雄一

    尾島政府委員 今回の交渉におきまして日ソ資源見解相違というのは非常にあったわけでございますが、ただ、昭和五十九年のサケマス全体の資源量ということにつきましては、実は日ソ両国とも近年並びに五十七年の資源水準を若干上回るということでは意見一致を見たわけでございます。しかしながら、その内容でございまして、個々の魚種につきましては日ソ双方見解が異なっておりまして、我が国はベニとかシロとかマスノスケ、こういうすべての主要魚種について資源増加傾向にあるというぐあいに判断をしておるのに対しまして、ソ連側は、マス類につきましては資源増加はしているということは評価するけれども、その他の魚種につきましては低い水準であるということの見解相違があるわけでございます。  もう一点、ソ連側はさらに、今言いましたような主張の根拠といたしまして、できるだけ速やかに昭和十年代前半の非常に豊度の高かった資源水準に早急に引き上げるべきであるという考え方を基本的に持っておるわけでございまして、このために海上捕獲というものを極力抑えていくべきであるという主張であります他方我が国といたしましては、現存する漁業実態を考慮いたしまして現実的な方法資源豊度を高めていく、こういう考え方でおるわけでございまして、そういうことで極力早急に資源回復を図るというようなソ連側見解と、若干緩やかに漁業実態を考慮しつつ資源豊度を高めていこうという我が国との基本的な見解というものは相違しているわけでございまして、このような考え方につきましては、科学者会議等今後もございますので、引き続きできる限り粘り強く双方意見一致を見るように努力をしていきたいというぐあいに考えておる次第でございます
  14. 町村信孝

    町村委員 どうもお話を伺っておりますと、日本側から見ますと、ソ連がかなり意識的に低い資源評価というものをしようとしているのではないだろうか、こういうような受けとめ方ができるわけでございまして、いずれにいたしましても何らかの方法で、今度科学者同士の会合もあるということでございますけれども日ソ双方が納得できるような形での共同調査というものでも行いまして、共同で、納得したデータに基づいて、それでは将来の漁獲高をどうしていこうかといったような方法で今後の漁獲量を決めていかないと、毎年毎年いわば生産的でない、相当消耗する交渉が行われる、それも足して二で割る式の余り生産的でないような形の交渉が行われざるを得ないのじゃないだろうかというふうに思われます。今後、ソ連のそういった意識的な態度も問題があるわけでございますが、それを打ち破るためにも何らかの方法で、共同で調査して、共同データに基づいて合理的な結論を導くような御努力をしていただきたい、これは要望する次第でございます。  時間もなくなりましたので、最後に一点だけ大臣にお伺いしたいと思います。  実は、先月、札幌で「一日外務省」というのが開催されまして、地元でも大変評判がよかったわけでございます参加者の多くがあの会議は非常によかったという評価をされていたようでございますが、今後、ソ連との実務関係、先ほど局長からお話があったように、かなり多面的に進められるということでございますけれども、今後のソ連との関係、なかんずく漁業関係をどういうふうにお進めになろうとしているのか、外務大臣から最後一言だけ御見解を承りたいと思います
  15. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ソ連との最近の関係、特に対話促進につきましては、先ほど西山局長から答弁いたしましたように、局長訪ソによりまして具体的にこれから行っていくわけでございまして、我々はそうした対話を通じて関係改善を図っていきたいと考えております。  しかし、何といいましても、先ほどからお話しのように日ソ間には根本的に領土問題が存在をいたしております。同時にまた、ソ連極東における非常な軍事力の増強というのも目立っておる情勢にあるわけでございます。そうした厳しい状況下でありますだけに、対話もいろいろな面で難しい点も出てくるかと思うわけでございます。しかし、今の東西関係米ソ関係世界情勢というものを考え、さらにこれからの日ソの将来というものを考えますと、情勢が厳しければ厳しいだけに対話は進めていかなければならない、こういうふうに考えておるわけでございます。  我々としては、領土問題等については毅然として日本の方針を貫くという決意のもとに、腰を据えてこれらの問題に取り組むとともに、対話の面につきましてもできるだけこれを進めて関係改善を図って、そして最終的には領土回復して、日ソ平和条約締結されるべく努力を傾けてまいりたい、こういうふうに考えております
  16. 町村信孝

    町村委員 今次の交渉に携われた皆さんの大変な御努力に重ねて敬意を表しまして、私の質問を終わりたいと思います
  17. 中島源太郎

    中島委員長 次に、岡田利春君。
  18. 岡田利春

    岡田(利)委員 サケマス問題の質問に入る前に、二、三外務省にお伺いいたしたいと思います。  去る四月二十五日の参議院外交総合安保特別委員会における議員の質問に対する岡崎調査企画部長発言が報道されておるわけであります。まだ参議院の方は議事録ができ上がっていないのでありますけれども、仄聞するところによりますと、この委員会において岡崎部長外務省見解として述べた点について非常に重要な問題が含まれておるのではないかと私は思うわけです。  概略申し上げますと、アメリカの国防総省も日本だけを目標にするソ連攻撃はあり得ないという証言があるということに対しては、日米安保体制が堅持されておる限り、日本だけへの攻撃はないという意味だ、こういう見解が第一点に述べられています。第二点は、米ソ戦争に巻き込まれる以外に日本には有事はないのではないかという質問に対して、米ソ世界戦争になれば、日本の意図、政策と無関係日本戦略的環境から巻き込まれることになる、こういう見解を述べられておるわけです。そして第三点として、三海峡封鎖論ソ連攻撃を誘発するのではないのかという問いに対して、海峡封鎖の理論的な可能性だけで、ソ連日本行動関係なく北海道の北部を侵略するなどの行動に出ることができる、こう明白な見解が述べられておるわけです。  極めて重要な発言だと私は思うのですが、この機会外務大臣から、これらの問題について外務省としての見解を明確に伺っておきたい、こう思います
  19. 岡崎久彦

    岡崎説明員 御指摘答弁でございますけれども、第一点の安保条約がある限り日本が単独に攻撃されることはないということは、これはその場で申し上げましたけれども、まずないと申し上げましたので、完全にないとかそういうことは申し上げておりませんので、普通、常識的に考えて、日本とそれからもう一つの外国との間に、アメリカとの戦争を賭してまでその国が日本攻撃しなけりゃならないというような重大な二国間懸案というものは、まずないんじゃないか、そういう発言でございます。新聞には「ない」と言ってございますけれども、その場で明らかにまずないというふうに申し上げております。  それから、その次の北海道侵攻可能性でございますけれども、これは実はそのたびにジェーン年鑑を引用しております。一九八三年—八四年のジェーン年鑑の記述によりますと、「戦争の最中に最もあり得そうな行動は、ソ連水陸両用部隊北海道の北方を占領することであろう。」というふうに書いでございます。実はこれは昨年の夏出たジェーンでございますけれども、その後、四月十四日のジェーンディフェンスウイークリーでは、「戦時においてはソ連北海道の一部または全部を占領しようというふうに試みるであろう。」そういうふうに書いでございます。これを引用しまして、こういう理論的可能性があるということを理論的に御説明したまででございます。  外務省公式見解はいかがかという御質問でございますけれども、これは戦争形態とか侵略の形態というものは千差万別でございまして、予測の限りではございません。したがって、外務省公式見解で必ずこうなるとか、そういうようなことを言い得べき性質のものでもございません。
  20. 岡田利春

    岡田(利)委員 外務大臣は今の岡崎部長説明についてどうお考えになりますか。
  21. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 岡崎部長答弁ジェーン年鑑を引用した答弁であろうと思うわけでありまして、今岡崎部長が申し上げましたようにジェーン年鑑等によればそういう点は指摘をされておるということです。しかし、日本に対する侵略といったようなものについては、これは千差万別いろいろとあるわけでございますし、今直ちにそれじゃ北海道がそうした侵略の危機にあるかといえば、そういうことではない、こういうふうに考えております
  22. 岡田利春

    岡田(利)委員 そうしますと、外務省は今のソ連極東軍は日本を侵略する意図あるいは能力、もちろん北海道へ侵攻するとなれば上陸用舟艇その他の態勢がなければならぬし、そういう意味では装備そのものにも問題があることは極めて常識的であるわけです。そういう点については、では、現時点でどう判断をされていますか。
  23. 岡崎久彦

    岡崎説明員 これは、たびたびむしろ防衛庁から御答弁申し上げているとおりでございますけれども、近年の極東ソ連軍の増強ぶりは著しいものがございまして、我が国の安全に対する潜在的脅威の増大であるということは何度か申し上げているところでございます
  24. 岡田利春

    岡田(利)委員 そうしますと、日本の場合日本列島でありますから、そういう意味では、我々の得ている情報では、いわば上陸用舟艇をもって北海道なら北海道に、日本に上陸作戦を展開するという能力はない、このように我々は承知をいたしておるわけです。これは外務省や防衛庁は別な情報があるかもしれません。いわばそういう面と連動して、どうも岡崎発言というものは——今日、外務省自体が、外務大臣が、日ソ対話を進めていこう、関係改善をしていこうという一連の中でこういう発言が行われる。そういう意味では、ジェーン年鑑の引用かもしらぬけれども外交官としては不適当ではないか、こういう発言は不適切ではないか、こう言わざるを得ないわけですよ。そういう私の指摘に対してあなたはどうお考えになりますか。
  25. 岡崎久彦

    岡崎説明員 情勢判断というものはあくまでも客観、妥当なものでなければならぬ。これは客観、妥当な情勢判断を認めた上で日ソ友好親善を図る、これが外交の正道でございまして、事実関係やあるいは既に公表されている事実を隠してまで、隠さなければ友好親善ができない、これは本当の友好親善ではない、そういうふうに考えております
  26. 岡田利春

    岡田(利)委員 私が聞いているのは、どうもあなたの答弁は違うのですけれども、そういう一連の外交方針の中で、こういう問題についてあなたが国会で答弁をされた。しかも、ジェーン年鑑を引用して答弁された。そのことは、このジェーン年鑑の示しているものが現実可能性がある、こうあなたは理解の上で引用をされたとしか言いようがないと思うのですね。そうならばなお問題になってくるわけですよ。
  27. 岡崎久彦

    岡崎説明員 ジェーン年鑑というものは非常に保守的な雑誌でございまして、そう突拍子なことは書かない雑誌なんでございます。それで、これは実は一昨年ごろのアメリカの下院の公聴会ぐらいからそういう話がいろいろ出てまいりました。実はそれ以前の公聴会の記録を見ますと、そういう可能性はないという証言が断然多いのでございます。ところが、一昨年の公聴会ぐらいから、そういう可能性があるという証言がたくさん出てまいりました。これは別に我々がそう思っているとか思っていないというよりも、世界の戦略家の言っていることがだんだんこの方向になびいてきている、これは非常に客観的事実でございまして、これはもうあちこちに、議事録にも出ておりますし、それから現にプリントされて出ておりますので、これを無視して、隠してまで外交を進める、これはむしろ正しい方法ではないと私は思います。現実をはっきり見詰めた上で、これについて何ら偏見のない客観的な判断をいたしました上で、あくまでも日ソ友好を図る、これが正道であろうと存じております
  28. 岡田利春

    岡田(利)委員 時間がありませんし、主題が違いますからあれなんですが、だが、あなたがこの発言をしたときに、外務省の各セクションの反響はどうだったですか。極めて不適切であるという声が省内に上がったことは否めない事実でしょう。一度発言したことだから、あなた方はそれぞれ大臣もかばう答弁をしておりますけれども、非常に不適切な発言である、答弁であるということが省内でも問題になっているという情報も我々はあるわけであります。そういう点で、私はいずれまた別な機会議論することとしまして、時間がありませんから、一連の外交の趨勢の中でやはり慎重な発言がとられなければならないということをまず指摘をしておきたい、こう思います。  次に、欧亜局長、先ほど質問に答えておりますから、ただ一点だけ伺っておきますけれどもハバロフスクにおける抑留漁民に外務省は公式に面会をする、向こうの同意を得た、したがって近く面会をするということが報道されておりますが、この点について説明を願いたいということが一つ。  同時に、抑留漁民と家族との通信の往来について問題がしばしばあるわけです。我々も外務省にも言うのですけれども、なかなかうまくいってないのですね。また、先般もソ連に行って、この点については厳重に申し入れをしました。ハバロフスクの刑務所の所長についても、これは重大問題であるということで抗議をしました。これは普通に通信ができるのであるという説明がありましたけれども、こういう点についても、我々自体問題にしているのでありますが、どうも音信が適切に往復できない。例えば裁判が確定するのは、国後なら国後の裁判所でもって確定する。それからどこかの刑務所に行くわけですね。裁判の確定したときには外務省に返事が来るわけですよ。通知が来る。だが、その後の追跡について、犯罪人だという面もあるのかもしれませんけれども、今までは外務省の方も動向の把握については余り熱心でなかったと私は思うのです。そういうことで、家族の依頼を受けて我々もそういう点についてしばしば努力をしてまいっておるわけであります。  したがって、今の前段の問題と後段の問題を含めて、欧亜局長からひとつ御答弁願いたいと思います
  29. 西山健彦

    西山政府委員 抑留されておられる漁夫の方々に我が方の大使館員が面会をするということは、これは実は条約上の我が方の権利でございまして、かねがねそれを申し入れてきたわけでございます。非常に強く申し入れてきたわけでございます。ところが、向こう側がなかなかいい返事をよこさなかったわけなのでございますけれども、今回、対話プログラムを設定しているその過程でもってその話に言及しましたところ、向こうが、この点については善意でもって直ちに措置をとろうということで、私が滞在しておりますその日のうちに、五月十九日に大使館員との面会を認めようという返事をよこした次第でございます。したがいまして、これは一つのいいニュースであったというふうに考えておるわけでございます。  先生が御指摘になりました家族との文通でございますけれども、確かに我々もそれは努力しておりますが、先方の国情その他の理由でなかなかそれが思うようにまいりません。しかしながら、今回、館員が面会いたします折に、家族の方のお手紙等は持参いたしてお届けする、そういう措置を考えたいと思っております。  それから、裁判の成り行きについての先生の御指摘の点につきましても、これもかねがねいろいろと苦労をしておるのでございますけれども、なかなか思うようにいかないというのが、正直に申し上げまして私どもの感触なのでございます
  30. 岡田利春

    岡田(利)委員 先般、ハバロフスクに参りまして、八名の漁民と一人十五分間くらいずつの面接をいたしてまいりましたけれども、すこぶる健康で、家族その他からの品物の差し入れ、手紙その他もお届けいたしたわけであります。ぜひ今言った、特に後半の問題は、管理の責任者、所長がおるわけでありますから、そういう当局とさらに十分話を詰めていただきたいということを申し上げておきたいと思います。  次に、サケマス交渉の問題についてでありますけれども、今年は初めから厳しい交渉になる、欧亜局長も札幌で、「一日外務省」があったときに発言もされておるわけです。日本側として、今次サケマス漁業交渉に臨むに当たって、どういう点でどういう厳しさがあるという認識に立ってこの交渉を開始されたのか、まずその点を承っておきたいと思います
  31. 尾島雄一

    尾島政府委員 本年の日ソサケ・マス漁業交渉は、まず交渉は例年よりも非常に大幅に開始がおくれて、四月二十日に相なりました。二十一日から実は双方が提案を行ってやったわけでございますが、やはり資源評価の問題、それから昨年、一昨年と続きました、いろいろと取り締まりに対する不満あるいは違反問題、こういうこと等が非常に大きく影響いたしまして、日本側は実は当初四万五千トンの漁獲量を、また操業水域につきましても転換の提案をいたしたわけでございますが、ソ連側はとにかく資源回復のおくれが非常にあるということと違反問題等から、三万五千トンというぐあいに大幅に日本の従来の漁獲量を削減した。また監視船も六隻にふやしてソ連監督官が乗船するということで、経過としては非常に厳しい対立の応酬があったわけでございます。  このような局面を打開するために水産庁長官訪ソしたりいたしましたが、交渉が非常に難航いたしまして、結局四月に交渉を妥結することができませんで、五月にずれ込んだということでございます日本側としては極力日本の前年並みの操業条件に近づけるように粘り強く交渉したわけでございますが、ようやくソ連側も歩み寄りを見せて今月の五日に妥結に至ったわけで、先ほど申しましたような資源問題と取り締まり問題ということが大きな争点であったというぐあいに考えておる次第でございます
  32. 岡田利春

    岡田(利)委員 今述べられた理由は私もそうだと思うのですが、さらに、昨年末の日ソ、ソ日の漁業協定で六年間続いてきたクォータが五万トン減ったわけですね。率にすると六・六%になるわけです。今度のサケマスは率にすると六・二%になるわけでしょう。だから、資源論の面からいっても、趨勢としてこのクォータの問題が問題になるということは当初から予想されることが当たり前だと思うのですね。そういう予想ができたのではないか。私はそういう点もつけ加えておかなければならない問題点だと思うのです。  同時にまた、ソ連の場合には二月二十八日に、今までの漁業専管水域をエコノミックゾーンとしての新しい幹部会令を決めて三月一日から実施をされた。これが一体どうなってくるのか、そのことによって交渉がおくれたのかどうなのかという問題も実はあったことは事実だろうと思うのです。したがって、今度の交渉を通じて、ソ連側が従来の漁業専管水城二百海里から経済水域二百海里に新しく幹部会令を施行されたということについて、漁業交渉上従来と特に変わった点があったのかなかったのか、この点を承っておきたいと思います
  33. 尾島雄一

    尾島政府委員 本年の二月二十八日、ソ連経済水域に関する新幹部会令を実は発表いたしたわけでございますサケマスを含む遡河性の魚種の保存及び漁業の規制につきましては大筋では旧幹部会令と異なるところはなく、今回の交渉において新幹部会令の発布が特に影響を及ぼしたということは実は考えていないわけでございます。  以上でございます
  34. 岡田利春

    岡田(利)委員 そこで、昨年問題になった我が国の中型サケマス船の違反操業であります。二百九隻でありますが、この違反操業を分析すると、業界が勝手にできる違反操業でしょうか。ソ連の監視のためのオブザーバーが四隻の船に乗っておるわけですね。しかも水産庁からも、北海道の道庁からも監視船が出ておるわけですよ。どうも昨年だけでもないようですね。これを私なりで分析してみますと、いわば業界も道庁も政府もぐるみではないのか。知らないでできる違反操業ではないわけです、極めて緻密に組まれておるわけですから。こう言わざるを得ないのですけれども、私がこう言うとどういう説明をしていただけるでしようか。
  35. 尾島雄一

    尾島政府委員 その問題につきましては、実は一昨年漁期に、太平洋の中型のサケマス業界が水産庁の監視船に乗船しておりますソ連のオブザーバーの目をくらますために、二十八隻の調査船をおとりとして操業水域操業させて残りの漁船を違反操業させた、こういう情報が実は昨年六月報道されたわけでございます。このために、私たち水産庁といたしましては直ちに関係者から事実関係を聴取いたしましたが、関係者によりますと、太平洋の中型サケマス業界は、現行の操業水域におきましては未成熟魚が非常に多いという点、それから漁場形成状況が余りよくないということで操業水域を北の方に拡大してほしいという要望を持っておりまして、これらの事実につきまして業界自身がみずからデータを得るために二十八隻の漁船を調査船として漁場調査を行わせだというのが実態であるというぐあいに申しておるわけでございまして、これをおとりとして組織的に違反操業したものではないというぐあいに申しております。  また、事実一昨年の漁期におきましては、あの操業水域の中で日ソ双方の監視船によりまして七十六隻にも及ぶ臨検が実は行われておりまして、また操業禁止区域におきましても日ソ双方の監視船が取り締まりを行っているわけでございまして、調査船二十八隻をおとりとして操業させておいて、ほかの漁船全部を操業禁止区域で操業させるという事実は現実的にはないものというぐあいに私たち考えております。  いずれにいたしましても、この問題は日ソ間の漁業関係だけではなくて、国際信義にもかかわる問題でありますので、実は昨年六月、関係業界に対しまして、このような疑惑を生ずるような調査船を中止するよう指示したところでございます。また道庁とかいろいろなところもそういうことに関係しているのではないかという御指摘がありますが、ただいま申し述べましたとおり、日本側の監視船は十分な取り締まりを現にやっておりまして、また違反漁船につきましても停泊処分を科しているところでございまして、御指摘のような事実はございません。
  36. 岡田利春

    岡田(利)委員 一番最後だけ「ございません」と極めて明快に述べられたような気がするのです。  この問題でここで余り詳しいやりとりは私もどうかと思いますからやめますけれども、やはり情勢の変化に対して日本側の対応がおくれているのではないのか、私はそういう気がしてならないのであります。例えば、四万トンあるいは四万二千五百トンのクォータを母船式あるいは中部流し網、小型、日本サケマス、はえ縄、それぞれに分けるわけですね。そういう全体の構図を見ても、どうも今の徐々に変化している北洋サケマス漁業に対応する体制になっていない。ここに問題があるわけであります。そういう点を考えないで幾ら違反をするなと言っても、線引きが明確にされているわけではありませんし、レーダーでわかるわけでありますから、なかなかそうならないのではないのか。その結果国際不信を招くのではないのか。そして結局遡河性のサケマス漁業がむしろ沖取りができないという結果にみずから追い込まれてくるのではないのか、私はこういう心配をするのであります。そういう意味で、そろそろ沖取りサケマス漁業に対する対応の仕方についても十分これから検討すべきだという意見をまず述べておきますので、ぜひ今後検討願いたい、かように思います。  そこで、次の質問でありますけれども、今次交渉で漁場の交換という問題が出ているわけですね。二百海里以前は四八以南流し網と言ったわけですが、現在は四四以南の流し網ということになっておるわけであります。そういう意味で、漁場の転換が行われて大体もう六年になっておるわけであります。この機会に漁場の交換という問題が持ち出されたということは、政治的に判断しますと相当根回しが行われておったのではないのか、こう言わざるを得ないわけであります。したがって、政府交渉として政府がこの漁場交換問題を前面に出されたという意味においては、情勢について何らかの可能な判断があったのではないのか、こう思うのですけれども、この点についてはどういう判断で漁場の交換協議をなされたのか、承っておきたいと思います
  37. 尾島雄一

    尾島政府委員 ことしの交渉につきましては、日本側から——ソ連系のサケマスは、実は春から秋にかけて体重並びに体長を増加しながら北緯四十四度以南の方から北上するという資源の生態があるわけでございます。したがいまして、この操業水域を北方へ転換するということになりますと、現在の水域漁獲しているサケマスと同じ系統のサケマスを体重、体長とも増加した状態漁獲することになるわけでございまして、このことは、例えば同じトン数の漁獲をするにしても尾数は少なくなるということで、これは未成魚を成魚で漁獲するということにもつながりまして、資源保護上非常に有効である、それから資源の利用の点から見ても有効であるというぐあいに我々は判断しておるわけでございます。  またさらに、日本の国内におきます大型の魚類は、サケマスにつきましては魚の値段が高くなりまして、その分漁業者の経営の改善にもつながってくるということになりますので、そのような操業水域の転換を実は働きかけたわけでございます。  我が方といたしましては、日本の科学調査船のデータに基づきましてこのような主張を行ったものでございまして、ことしは実現はできなかったわけでございますが、本年じゅうにもこの問題を含む資源問題につきまして日ソの科学者会議の場を設けるということに相なりましたので、この会議を通じまして日ソの科学者の意思の疎通、それから意見の交換等を通じまして、明年以降にこの漁場の転換問題が実現するように今後とも努力いたしていきたいというぐあいに考えておる次第でございます
  38. 岡田利春

    岡田(利)委員 そうしますと、この漁場交換の専門家会議、なお今度の交渉の中で日ソ漁業協力協定についても話し合いが行われるということに承っているわけですが、これらは今年どういう日程で話し合いが行われていくのか、いかがでしょうか。
  39. 尾島雄一

    尾島政府委員 日程につきましては、まだ今決めておりませんで、双方の都合のいい時期に外交ルートで決めていこうということでやっていきたいというぐあいに考えておるわけでございます
  40. 岡田利春

    岡田(利)委員 これらの今私が指摘した問題と日ソ間の漁業協定の長期協定化、この問題が課題として残っているわけです。当然、山村訪ソに当たって、これらの問題と関連して日程が決められ、大臣訪ソされるものと考えるのが常識だと思うのですが、この点は次長から答弁を聞くのは無理でしょうか。
  41. 尾島雄一

    尾島政府委員 昨年の日ソ、ソ日交渉とか本年のサケマス交渉等の経緯から見まして、ソ連側の態度が一段と厳しくなっているということも事実でございまして、日ソ漁業関係につきましても今後とも安定に努力する必要があるわけでございます。これまでもこの問題につきましては、両国大臣の協議を通じて日ソ漁業関係に種々の問題の解決が図られてきた経緯もございますから、これからも大臣訪ソを通じて日ソ漁業関係のより一層の改善が図られるように努力していきたいというぐあいに考えております
  42. 岡田利春

    岡田(利)委員 中川農林水産大臣時代は、漁業協力協定の締結に当たって訪ソしていますね。渡辺農林大臣もその節目に訪ソしているわけですよ。したがって、今回、山村農林水産大臣訪ソをするということになれば、今指摘したような問題点も当然にらんで当たられるべきではないかと思いますので御質問申し上げたという点を申し上げておきたいと思います。  そこで、違反と魚価の問題ということが常に裏腹の関係にあるわけですね。魚価が安ければ採算がとれない、とれないから量を余計とらなければならない、それには違反操業もやむを得ないというような論理になっているのではないかと私は思うのです。そういう点から判断しまして、一体中型の採算ラインというのはどこなのか、小型の場合どこなのか、いろいろ言われているわけですよ。水産庁としては当然経営内容について的確に判断されておると思いますから、その採算ラインというのはどう見ているのかという点が第一点。  第二点は、最近のサケマス市況について、特に沖取りの市況についてどう見ているか。私の資料では、昨年末に比べてシロが大体キロ千五百円、したがって二五%アップ、小売で百二十円から二百円、こういう趨勢に、現行は価格の水準がある、こう理解しておるのですが、この点についていかがでしょうか。
  43. 尾島雄一

    尾島政府委員 最近のサケマスの魚価の動きについて御説明申し上げたいと思います。  まず、サケマスの価格は五十七年から越年在庫が非常に多くなったり、アメリカの豊漁を反映して輸入量が非常に増大して九万九千トンと前年に引き続き非常に高い水準であったわけでございまして、また秋ザケの来遊量が非常に豊富であった、過去最高であったわけでございまして、少なくとも昨年、五十八年のサケマスの一般的な魚価というのは前年、五十七年を二、三割方下回った水準で推移しているというデータがあるわけでございます。  なお、このサケマスに限らず、五十八年というのは実はほかの魚も日本の魚価全体が全般的に前年を下回りまして、このことがサケマスの価格の低迷にも一つの原因をもたらしたんだというぐあいに判断しておるわけでございます。ことしに入ってからやや回復をいたしておりますが、総じて見ましても、やはり昨年同期よりも価格は下回っているということでございまして、先ほど先生おっしゃいましたシロがキロ千五百円ということでございますが、私は東京中央卸売市場で見てみましても、母船のシロがそれよりも若干まだ下回っているのではないかというぐあいに考えておる次第でございます
  44. 岡田利春

    岡田(利)委員 前段はどうなんですか、中型漁船の採算ライン、小型の漁船の採算ライン。私から言いますと、一応言われておるのは、五十七年で中型の場合には金額で一億八千万、小型は五千万水揚げがないと採算ラインを割る、こう言っているわけですよ。だけれども、私はどうも内容を検討するとそうでもないのではないかという気がするものですから、これは水産庁は当然関心があるわけですから、これはおわかりでしょう、どうなんですか。
  45. 尾島雄一

    尾島政府委員 サケマス漁業者の経営状態というのは、その形態によって非常に区々でございまして、全般的に見て日本漁業全体から見た場合には我々といたしましてほかの漁業種類、例えばカツオ・マグロ漁業とか以西底びきとかその他の底びき等から比較しますと、悪い状態であるとは言えないと思っております。  昨年につきましては、特に魚価が、私、先ほど申し上げましたように非常に低迷したということもございまして、一部漁業者については赤字を余儀なくされたことは事実であると思います。ただ、今先生おっしゃった数字等につきましては、もちろん漁業経営自体が採算点というのはあるわけでございますが、それぞれの漁業者というのはみんなサケマスがせいぜい二カ月でございまして、その他の兼業業種によってかなり全体の経営というものにつきましては、例えばカツオ・マグロと兼業しているとか、あるいはイカ流しと兼業しているとかサンマを引き続きやるとかということによりまして、経営採算というのはサケマスだけを見て考えるのか、それとも全体の一年間のサイクルを見て漁業経営として考えていくかということによってかなり相違があるわけでございまして、必ずしも一律平均的に見ることは難しい問題であるというぐあいに思っております
  46. 岡田利春

    岡田(利)委員 時間がありませんから、もう一問で終わります。  今次交渉を振り返ってみて、いろいろな要因があったわけでありますが、先ほども交渉が始まる前の厳しい問題点についていろいろ説明もあり、私の方からもまた意見を申し上げたわけです。政府としては、いわば四万トン、二千五百トンのクォータが減った、協力費がそのまま据え置きですから、それだけ協力費が実質は上がったことになるわけですね。オブザーバーが一名ふえたということになるわけでありますけれども、昨年からの経緯にかんがみて、今次の交渉を振り返ってみて、日本側主張は貫き通せなかったけれども、まあまあのところで食いとめて妥結に持ち込むことができたという判断、そして漁場の問題等については引き続き専門家で継続協議をすることになった、そういうものをトータルで言えばまあまあ食いとめることができたという判断なのか、それとも、この交渉については政府としては大変大きな後退であった、こう判断をされるのか、その評価について伺いたいと思います
  47. 尾島雄一

    尾島政府委員 今回の交渉の厳しさは、新聞等いろいろ出たとおりでございまして、私たちといたしましても、早期妥結を願う立場からも非常に憂慮していたわけでございます。  ソ連側資源問題と、それから違反問題で非常に厳しかったということでございます。総じて、しかし、当初三万五千トンの漁獲であり、しかもその三万五千トンの協力費に換算しますと四十四億五千万円という非常に膨大に協力費も増高するようなことでございましたが、これもようやく四万トンで、四十二億五千万ということでおおむね落ちつきの線を得たのではないか。そういうことで、四万トンを切らなかったということでは、サケマス漁業のぎりぎりの経営を維持することができたというぐあいに一応評価している次第でございます
  48. 岡田利春

    岡田(利)委員 終わります
  49. 中島源太郎

    中島委員長 次に、斎藤実君。
  50. 斎藤実

    斎藤(実)委員 このたびの交渉については、大変悪条件の中で交渉に当たられた担当者について敬意を表するわけでございますが、国民の側から見ればやはり納得しがたい問題もございますので、順次これから御質問をいたしたいと思うのですが、まず外務大臣に最初にお尋ねをいたします。本年の日ソサケ・マス漁業交渉はようやく五月五日に妥結をいたしましたが、この交渉開始は例年より一週間以上もおくれておるわけでございまして、毎年恒例の五月一日出漁も大きくずれ込んでしまいました。過去六年続いた漁獲量割り当て四万二千五百トンが四万トンに削減をされる等、妥結の内容は極めて厳しいものがある。関係漁民の経営が逼迫をしている現状から見て、まことに残念な事態になったわけでございますが、例年の漁業交渉に比べて今回の交渉が厳しかったのは一体どういうことでこのような結果になったのか、大臣からお伺いしたいと思います
  51. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今回交渉がおくれたことについてソ連ソ連側の、それも技術的理由により交渉開始をおくらせざるを得なかった、こういうふうに説明をしておりますが、それ以上の理由は明らかにしないところであります。  なお、今回の交渉は、先ほどから水産庁からいろいろと御説明がありましたように、我が方としても非常な努力をしましたけれども、大変厳しい内容になったことは御案内のとおりでございまして、特に交渉に当たりましては、当初ソ連側漁獲量漁業協力費及び取り締まり問題を中心とする具体的な規制措置をめぐる問題について厳しい態度で臨んできたわけでございます。そういう中で、最終的には漁獲量を一定量削減せざるを得なかった、その他の規制措置につきましてはほぼ昨年並みに、漁業協力費についても昨年と同じに落ちついたということでございます内容としては非常に厳しいものでありますが、交渉努力はそれなりに報われたのではないか、こういうふうに考えております
  52. 斎藤実

    斎藤(実)委員 割り当て量は減らされた、しかも協力金は前年度並み、しかも出漁が十日以上もおくれた、これはいろいろな面で影響が出てくると思います。そこで交渉の妥結がおくれた結果、太平洋中型流し網あるいは太平洋小型流し網、これらの漁船の出漁が大変おくれたということでいろいろな面でその影響が考えられるわけでございます。このおくれた期間だけ乗組員を確保しておかなければならないという問題、それから係船費用の経費がかさむという問題、また値段のよいベニ、シロ等が漁区外に北上してしまうということを考えますと、水産庁としては出漁遅延の影響があらわれるだろうということは十分お考えであろうと思うのですが、この辺についてどういう影響が起きるか、お考えを伺いたいと思います
  53. 尾島雄一

    尾島政府委員 交渉の開始が大幅におくれて、また交渉が難航いたしまして、その結果五月一日の出漁が実現しなかったということにつきましては我々といたしましても非常に残念に思っている次第でございます交渉団としては早期出漁を目指して交渉に臨んできたところでございますし、またこのような出漁の遅延によりましてどのような影響が出てくるかということにつきましては、実はこれからの出漁と漁海況との関係がどういうぐあいになるかということは、実は予測につきましては非常に困難なわけでございます。ただ、問題の太平洋小型サケマス漁業につきましては、ことしは例年になく沿岸の方の水温が、要するに沿岸域における水温が例年よりも非常に冷たくて、沖合に行くに従って平年並みになってくる、こういう調査船の最近の結果が出てきておりますので、場合によってはこの冷水帯の張り出していることでもありまして、出漁のおくれた影響というものにつきましては、若干漁期もおくれるということもあるいは期待できるのではないかということで、これはやってみなければわからぬことでございますが、我々といたしましては、十分の予測というものは困難でありますが、現在そのような評価をしている次第でございます
  54. 斎藤実

    斎藤(実)委員 割り当て量が削減された、それから出漁の期間がおくれたということについての今後の対応についてはまだ後ほど伺いたいと思うのですが、割り当てが減ったということについての対応について私はお尋ねしたいと思うのです。  昭和五十三年以降昨年まで、豊漁年それから不漁年を問わず四万二千五百トンでずっと推移してまいりましたが、今回の割り当て量四万トンということで、協定締結以来初めて削減されたわけであります。一説によりますと、ソ連側資源状況の悪化ということが、強くこのような結果になったというふうに言われておるわけですが、日ソ両国間の科学者の間でこういう結果についてどういう論議をされたのか、伺いたいと思います
  55. 尾島雄一

    尾島政府委員 今回の漁業交渉におきまして一番大きな争点になったのは、確かに資源評価日ソ間の食い違いであるという点が大きな問題でございました。  実は、両方の資源評価につきましては、サケマス全体の資源量ということにつきましては、日ソ両国とも近年の資源水準というのは若干ずつ上回ってきているという評価をやっている、この点については一致した意見なわけでございます。ただ、相違いたします点は、それぞれの魚種ごとによって相違いたしておりまして、日本側見解といたしましては、ベニとかシロとかマスノスケとかこういう魚種全体について資源増加傾向を認めているということに対しまして、ソ連側は、マス類については資源増加は認めているけれども、それ以外の魚種については衰退状態にあるということで、魚種ごとの見解が著しく相違いたしておるという点が第一点あるわけでございます。  それから、資源評価の問題でもう一点相違いたしますのは、ソ連側は、できるだけ速やかに昭和十年代の豊度の高かった資源状態回復すべきであるという考えを有しておるわけでございますが、我が国の方といたしましては、既に沖取り漁業があるわけでございまして、その漁業実態を考慮しながら現実的な方法資源豊度を高めていく必要があるだろう、言ってみますと、極力早急に資源回復すべきであるというソ連側と、漁業実態を考慮しながら現実的な方法豊度を高めていかなければならぬという方法論の問題に著しく相違があるわけでございまして、こういう問題が一番大きな、今回の交渉資源見解の相異なる点が出たわけでございまして、これらにつきましても実は毎年二回、秋とそれから四月の二回にわたってそれぞれ科学者の会議が持たれて資源評価というものをやっておるわけでございますが、今後ともこのような会議を通じまして十分ソ連側の科学者と日本側の科学者との間の意見の疎通もしくは共通の意見が出てくることを大いに我々としても期待しているところでございます
  56. 斎藤実

    斎藤(実)委員 割り当て量の四万トンの国内配分についてでありますが、母船式、中型、小型、日本海はえ縄、流し、各漁業にどういう配分をするのか伺いたいと思うのですが、これだけ割り当てが減ったわけですから、従来の実績どおりではなくて、経営状況をよく見て割り当てをすべきではないかと思うわけでありますが、特に経営規模の零細な小型サケマス漁業については削減をしないようにすべきだと思うのですが、いかがですか。
  57. 尾島雄一

    尾島政府委員 漁獲割り当て量が減ったわけでございまして、これの再配分をどのようにするかということにつきましては、関係する五団体、五種類の漁業種類がございまして、母船式のサケマス漁業、それから太平洋の中型のサケマス流し網漁業、それから太平洋小型サケマス流し網漁業、それから日本海のサケマス流し網漁業、それから日本海のサケマスのはえ縄漁業、この五漁種があるわけでございますが、それらの漁種が納得するような方向で対処いたしたいと思って現在調整検討中でございます
  58. 斎藤実

    斎藤(実)委員 先ほど水産庁答弁で、割り当て量が削減をされた、出漁も十日以上延びたということについてどういう影響が出るかは推測しかねるという答弁がございましたが、これはだれが見ましても、割り当てが減った、しかも協力金は前年並みだ、出漁がおくれたということで、これは当然影響が出ることは間違いないと私は思うのですが、期待どおりの漁獲ができない場合、政府はどういう処置をとられるのか、お答えいただきたいと思うのです。
  59. 尾島雄一

    尾島政府委員 実は従来とも操業期間があるわけでございますが、その操業期間の範囲内で、実は終期までクォータを十分満たしていることでございまして、我々といたしましては、その漁期がおくれたことが結果的に漁獲量に影響するということは、これは終期になってみなければわからないことでございます。したがいまして、今後ともそのような問題につきましては、それらの結果を踏まえて対処できることがあったら対処してまいりたいというぐあいに考えております
  60. 斎藤実

    斎藤(実)委員 結果を見て対処すべきものは対処するということは、影響が出た場合は補償処置を考えるということですか。
  61. 尾島雄一

    尾島政府委員 済みません。ちょっと質問内容を聞き漏らしたのでございますが……。
  62. 斎藤実

    斎藤(実)委員 割り当てが減った、それから出漁が延びたということで、私は、当然影響を受けるだろう、こう質問したのですが、あなたは、結果を見なければわからぬという答弁です。ですから、これは当然影響を受ける、そのときに漁民に対して補償措置をとるべきではないかという質問をしたのですが、その御答弁を……。
  63. 尾島雄一

    尾島政府委員 再度同じような回答になるわけでございますが、結果を見た上でそのようなことについての対処をしなければならぬ問題だと思っております
  64. 斎藤実

    斎藤(実)委員 それじゃ水産庁にお尋ねをしますが、今回の交渉は、きょうは農林大臣も長官もいらっしゃいませんけれども、あなた、代表して答弁してください。今回の交渉は成功だったのか、あるいは失敗だったのか、御答弁いただきたい。
  65. 尾島雄一

    尾島政府委員 今回の結果だけを見ますと、確かに前年よりもいろいろな意味で問題を持っていると思います。ただ、ソ連が当初提案していた線を非常に固執いたした点から見ますと、我が方としては四万トンの水揚げ量を確保することができたことと、それから漁業協力費につきましても四十二億五千万という線を何とか維持をできたということにつきまして、非常に厳しい状況の中であったが、我々といたしましてはやむを得なかったというぐあいに評価をいたしている次第でございます
  66. 斎藤実

    斎藤(実)委員 それじゃ漁業協力費についてお尋ねしますが、ことしの漁業協力費は昨年と同じなんですね。四十二億五千万円に決まった。私、試算をしてみますと、一キロの魚をとるのに百六円、一匹百三十円を支払ったことになる。漁業協力費四十二億五千万円の根拠は一体どこから出ているのか。高いじゃないか。と申しますのは、割り当て量が減って協力費が同じだということは一体どういうことなんです。  そこでサケマス漁業協力事業の仕組みを見ますと、対ソ協力費の財源を日ソ漁業協力基金と日ソ漁業協力事業特別会計に分けているわけです。協力基金の四分の三を国が出しているわけです。昭和五十五年以来国の補助金は十六億九千九百万円、約十七億ですが、ずっと据え置かれているわけです。漁業協力費の引き上げはそのまま漁業者の負担の増大につながることになるわけでございます。そこで、現在のサケマス魚価低迷の中の漁業経営を考えた場合に、政府助成のある協力基金の額をふやして漁業者の負担軽減を図るべきではないか、当然こういうふうにすべきではないかと思うのですが、いかがですか。
  67. 尾島雄一

    尾島政府委員 日ソ漁業協力費の計算方法は、ソ連側は自国のサケマス資源の維持、再生産費用につきまして日ソ漁獲量比に応じまして負担すべきであるということを主張しているわけでございます。しかし我が方といたしましては、漁業協力費というのは当然我が国に対し十分な操業条件を与えるというソ連側の特別な配慮に見合うべき数字であるという点が第一点、それからもう一つは、ソ連側の計算方法では日本漁業者の負担能力の問題を全然勘案されてないという点等ございまして、日本側といたしましてはソ連側の計算方法は受け入れられないという姿勢を実はとっておるわけでございます。事実、今回の交渉におきましても、ソ連側はこのような計算方法によりまして漁業協力費を負担すべきと主張したところでございますが、現在のクォータが四万トンということでございますと、当初の計算からいきますと四十九億円程度に相当する漁業協力費を支払わなければならぬというところでございましたが、ソ連側の譲歩をかち取って協力費を前年同の四十二億五千万ということでとどめたということでございますが、こういうことで非常に厳しい、先ほど先生のおっしゃったとおりサケマスの魚価も低迷しておることでもございまして、そういう意味では非常に厳しい条件であると思うわけでございますが、まあぎりぎりのところで——これから経営の安定のために経費の節減、例えば船をできるだけ長期に使用することによってできるだけ経費を節減するとか、あるいは漁網とかいろいろな漁具、資材の購入につきましても協会とかこういう組織を利用した共同購入というようなこととか、いろいろなことで経費の節減を図りながら経営の合理化を進めながらやっていただくことを我々としては期待しておるところでございます
  68. 斎藤実

    斎藤(実)委員 確かに協力費は我が国の漁民が漁業をやるための漁場を提供するということ、それから資材をソ連に提供するということで協力費ができているわけですが、これはいろいろな面で状況を勘案しまして極めて弱腰でなかったかというふうに私は考えるわけでございます。  そこで、この漁業協力費は一九七八年以降一九八三年までの間にどれだけ我が国ソ連に提供したかということを調べてみましたら、二百十億一千万円の資材をソ連に提供しておるわけでございます。一方、我が国の五十九年度予算の中でサケマスふ化放流事業費を見ますと三十二億四千万円になっておるわけでございます漁業協力費はこれを上回っているわけです。我が国の放流事業の結果はこの五年間でサケの来遊量が倍増しておるわけでございまして、昭和五十三年度は一千六百二十万尾、五十七年度は二千八百四十万尾。こういうことを考えますと、漁業協力の結果が漁獲割り当て量に反映した漁業協力費にすべきではなかったのか、これはどうしても私は納得できない問題でございますので、いかなる交渉をされたのか伺いたい。
  69. 尾島雄一

    尾島政府委員 先生指摘の点につきましては、先ほど来交渉の経過につきまして御説明申し上げて、結果として四十二億五千万という協力費になったということを申し上げておるわけでございますが、その中におきまして国が負担すべき金額につきましてもぎりぎりの線で実は援助をいたしておるわけでございまして、最近の国の財政事情等から見ましてもこの四十二億五千万というのはやはりぎりぎりの線というところではないかというぐあいに考えておる次第でございます
  70. 斎藤実

    斎藤(実)委員 もう一点お尋ねしますが、漁業協力費は日本側漁業用の資材設備を現物給与しておるわけでございますが、当初十七億六千万円で、二年連続して四十二億五千万円、二倍近くはね上がっている。しかも漁獲量を減らした上で協力費を据え置いだということは事実上の値上げになるし、漁業者の負担はそれだけ重くなり経営を圧迫することになる。協力費のうち十七億円は国民の税金です。水産庁は協力費と漁獲量の関連についてもっと合理的な算定方法を確立して、明確な根拠に基づいてこれから交渉すべきではないかと思いますが、いかがですか。
  71. 尾島雄一

    尾島政府委員 漁獲量、クォータの数量、それに伴う漁業協力費というのはお互いに相関連している問題でございまして、その点につきましても、実は私たちの方でこれからの漁獲数量の切り込みをできるだけ少なくするという配慮のもとと、それからこの漁業協力費をできるだけ増大させないということとのバランスにあるわけでございます。それともう一点は、漁業者の負担能力というものを十分見きわめた上で今後とも対処をしてまいりたいというぐあいに考えております
  72. 斎藤実

    斎藤(実)委員 今回の交渉の背景にはソ連の最高幹部会令の影響があるのではないかというふうに言われておるわけでございますが、この交渉が難航した理由の一つとして、一説には、今年三月からソ連経済水域に関する最高幹部会令が施行されまして、関連規則の再検討が行われたためだというふうにも言われておるわけでございますが、この新しい最高幹部会令を見ますと、遡河性魚種についてソ連は自国の経済水域外全体についても管轄権を及ぼす、こういうふうになっているわけでございまして、従来は外国の二百海里内は除く、こうなっておるわけでございますが、それと比べてみますと、サケマス漁業についての考え方が大きく変わったのではないかというふうに考えるわけですが、いかがですか。
  73. 小和田恒

    ○小和田政府委員 ただいま斎藤委員が御指摘になりました点は、確かに今度の最高会議幹部会令の中で、サケマス類、遡河性の魚種につきまして特別の規定が置かれているわけでございます。この内容は、この前採択されました国連海洋法条約の第六十六条にサケマス類についての規定がございますけれども、大体そのラインを踏襲したもので、傾向としては、近年国際的に強まっておりますいわゆる母川国主義の傾向を反映しているわけでございます。その意味におきまして、日本から見ると厳しくなりつつあるそういう国際環境を反映したものであるというふうに言うことはできると思います。  ただ、今度の交渉におきましては、御承知のように、この幹部会令を実際に具体的な規則にいたします大臣会議決定はまだ出ておりませんので、今度の交渉におきまして、そういう立場から、ソ連側がこの幹部会令の立場を具体的に反映した主張を行ったということではなくて、そういう一般的な背景はございますけれども、今度の交渉につきましては、あくまでも従来どおりの枠内におきまして交渉を行った。ただ、先ほど来水産庁から御指摘がありましたように、資源論の評価の問題それから違反の問題というようなことが非常に大きく反映をして、交渉が非常に厳しくなったということであろうというふうに理解しております
  74. 斎藤実

    斎藤(実)委員 今度の最高幹部会令が今後我が国サケマス漁業の継続にどういう影響が出てくるのか、あるいはさらに、日ソ、ソ日の入漁関係の影響等、今後の見通しについて伺いたいと思います
  75. 小和田恒

    ○小和田政府委員 現段階におきまして、今後の見通しについて的確に申し上げることは若干困難かと思いますけれども、先ほど来委員も御指摘になりましたように、私が申し上げました国連海洋法条約に反映されている考え方というものが国際的に非常に強くなってきておりますので、そういう状況の中で、我が国の遠洋漁業一般、特にサケマス漁業についての立場というものはますます厳しいものになっていくであろうということは予想されるところでございます。ただ、それにもかかわらず、この国連海洋法条約の第六十六条におきましても、非沿岸国で、サケマスをとっている国の経済的混乱を引き起こしてはならないという規定、それから規制措置その他については非沿岸国と十分協議をしてやっていくようにという規定がございますので、そういう立場に立って、我が国としてもこの日本の伝統的な利益を守るために最大限の努力を重ねていくということで、日ソ交渉を今後続けていくということになろうと考えております
  76. 斎藤実

    斎藤(実)委員 最後に、外務大臣にお尋ねしますが、今度の日ソサケ・マス漁業交渉を通じても大変厳しいソ連側の態度でございまして、なお我が国ソ連については北方問題もまだ未解決だということで、外務大臣も大変苦労されていると思うのですが、この厳しい日ソ関係外務大臣としてこれからどういう手だてで日ソの友好といいます外交交渉を進めていくのか、伺いたいと思います
  77. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 確かに、日ソ関係領土問題が基本的に横たわっておりますし、さらに極東におけるソ連軍の増強というようなこともありまして、大変厳しい状況にありますが、しかし何といってもソ連日本の隣国でありますし、厳しければ厳しいだけにやはり対話は進めていかなければならない、こういうことで、先般も西山局長訪ソさせまして、これからの対話のスケジュールについて話し合いをいたしました。ソ連としましても、情勢の厳しさの中で対話は進めようという考え方は共通のものを持っておりまして、これから秋にかけての一連の対話を続行していくということについては両国合意を見まして、この秋の国連総会には私とグロムイコ外相会談もセットされる、こういうことになったわけでございます。  我々としては、こうした厳しい情勢であるだけにやはり対話は進めていきまして、この漁業交渉、これも日ソ間で伝統的、歴史的にこれまで話し合いによって解決されてきたわけであります。今回は非常に厳しい情勢の中でこの決着を見たわけでございますが、さらに、この点については山村農水大臣訪ソの意思を持っておられる。また、ソ連からも招請があるということでございますので、山村大臣にも行ってもらって、そして今後の日ソ漁業の枠組みについて、毎年毎年ということじゃなくて、もっとやはり長期的なサイドで解決できないかどうか、その方途をぜひともひとつ探っていただきたい。なかなか厳しいとは思いますが、そういうことで努力をしていただきたいものである。外務大臣外務大臣として全体的な対話の道を求めて努力をしてまいりたい、こういうふうに思います
  78. 斎藤実

    斎藤(実)委員 以上で終わります
  79. 中島源太郎

    中島委員長 次に、河村勝君。
  80. 河村勝

    ○河村委員 大変厳しい環境の中で大変御苦労されたと思います。しかし、今まで議論されたように、内容を聞けば聞くほど厳しい内容であって、一体今後どういうふうになるかということについて大きな懸念を持たざるを得ません。そういう意味で、今後の問題を含めて若干質問をしたいと思います。  初めに、さっき外務大臣から、今度の交渉が四月二十日と異例におくれてスタートしたということについて、なぜおくれたかという説明がありましたが、よく聞き取れなかったのですけれども、何と言われたのですか。
  81. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはつまびらかにはわからないのですが、ソ連側説明によると、技術的な理由によっておくれた、こういうことになっておるわけであります
  82. 河村勝

    ○河村委員 これは外務大臣じゃおわかりでないでしょうが、外務省なり、むしろ水産庁の方でしょう。技術的におくれたというのは一体どういうことなんです。それだけしか言わないのですか。
  83. 尾島雄一

    尾島政府委員 交渉開始が著しくおくれたという理由については、実はソ連側から何の回答もないので、私たちとしてはよくわからないというのが実態でありますが、一部では、ソ連の科学者のデータの準備がおくれたのではないかというようなことも一つ指摘する向きもあるのでございますので、そういうようなことでおくれたということもあり得るというぐあいに考えるわけでございます
  84. 河村勝

    ○河村委員 五月一日から漁期が始まるという期限があるのですから、外交交渉としては非常に異例のことですね。それがあいまいなままで、どうかわからぬということで入るというのは実に弱い立場で、本当はそういうことじゃ困ると思うけれども、とにかく済んでしまったことですから、これから二度と同じことを繰り返さないような配慮をしてほしい、それを要請しておきます。  さっき幹部会令の新旧の相違について若干話が出ておりましたが、これは、変わったのが一体強くなったのか弱くなったのか、読んでみただけではよくわからない。しかし、非常に疑問に思うのは、今までの幹部会令で、二百海里以内の「主権的権利を行使する。」この「権利は、回遊水域における遡河性魚類にも及ぶ」ということで、「主権的権利を行使する。」という非常に強い表現にはなっております。けれども、さっきも話が出たように、他の国の漁業専管水域には適用しない、こういうことになっているにもかかわらず、これまで日本の二百海里以内の、北海道周辺の日本海、太平洋のサケマス漁獲についてまで規制の対象として交渉しているというのは、これはどういうことなのですか。
  85. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 御指摘のとおり、従来の漁業水域に関する幹部会令におきましては、他国の漁業水域に入ったサケマスについてのソ連の管轄権の規定は、他国の経済水域に入ったサケマスについては除くという規定があったわけでございます。それが、今度の経済水域に関します幹部会令におきましてはこの規定が落ちております。したがいまして、この限りにおきまして、今度の経済水域に関する幹部会令は違ってきているわけでございますけれども、具体的にソ連が何を考えているのかという点につきましては、この経済水域に関する幹部会令を実施するための大臣会議決定がまだできておりませんので、具体的にどういう事態を彼らが考えているのかというのはまだはっきりしていないところでございます。  その次のお尋ねの、なぜ日本漁業水域内におけるサケマスまでこの取り決めの対象になっているかというお尋ねでございますが、建前といたしましては、この議定書は公海におけるサケマス漁業について定めたものでございます。したがいまして、法律的には日本漁業水域内におきますサケマス漁獲、これは直接の対象でないわけでございますけれども日本日本漁業水域内で漁獲しておりますサケマスの大きな部分、これがソ連の川で生まれるサケであるということ、それから従来の日ソ間の漁業に関する協力関係、こういうものを考慮に入れまして、日本側の全体のサケマス漁獲量というものを議定書に記して、直接の法的規制の対象ではございませんけれども、これをソ連との協議の上で決定して漁獲を行っているという事情でございます
  86. 河村勝

    ○河村委員 そうしますと、総体の四万トンの中でも、日本の二百海里以内の漁獲並びにアメリカの二百海里以内の水域も入っていますね。この双方で一万八千トン、この分についてはソ連との約束事はあっても、それは一種の自主規制であって法的な拘束力はない、こういうことになるわけですか。
  87. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 自主規制という言葉が適当かどうかは別といたしまして、純粋に法的な意味での拘束力がないという点は御指摘のとおりでございます
  88. 河村勝

    ○河村委員 そうしますと、今度の漁業協力金の問題ですが、四十二億五千万、これは約五%漁獲量が削減されたのだから、それだけでもかなり上積みになっておりますが、それと、昨年とことしと、ルーブルと円ないしはドルと円と言ってもいいのかもしれないけれども、為替レートは大きく変わっていますね。昨年は円は多分二百七十円かそこらであったろうと思うが、現在は二百二十円ぐらいでしょう。それを換算したら、四十二億五千万というけれども、実際は六十億ぐらいの協力金を払っているということになりはしませんか。
  89. 尾島雄一

    尾島政府委員 漁業協力費につきましては、ソ連側サケマス資源の再生産をするためのソ連が支出している経費は、実は四千七百万ルーブルということを言っておりますが、日本側日ソ漁獲量比に応じてこれに負担することが、クォータを与える不可欠の条件だというぐあいにソ連主張いたしております。この主張をそのままにのむといたしますと、クォータが、ソ連が当初提案しております三万五千トンである場合には、約四十四億五千万円、それからクォータが決定いたしました四万トンでございますと四十九億円というぐあいに漁業協力費の支出が行われなければならぬということでございまして、これは、このような主張には、日本サケマス漁業の経営が今悪化しておるような状態でございまして、非常に困難だということで、現在前年並みで四十二億五千万、一漁獲量は減りましたけれども、四十二億五千万という形で、実は妥協がされたわけでございまして、この点については私たちとしても確かに漁業者に対する負担が多くなったと言わざるを得ないと思っております。  しかし、このクォータが減少したにもかかわらず、漁業協力費が前年並みになったということで、その負担の増加というものにつきましては漁業者の方々に、いろいろと漁業経営の経営努力をしていただかなければならぬ、例えば漁船の更新期間を延長するとか、漁具、漁網とかこういうものにつきましての一括購入をしていく等によりまして、経営の合理化、経営の努力を払って乗り越えていっていただくように実は期待しておるということでございます
  90. 河村勝

    ○河村委員 私の質問に対する答えになっていませんが、昨年の四月時点とことしの四月時点とでルーブルと円の交換レートは幾らですか。どう違っていますか。
  91. 尾島雄一

    尾島政府委員 円とルーブルの換算につきましては、昨年の漁業協力費の換算率は一ルーブル三百四十二円でございまして、ことしは三百十一円ということで円が強くなっていることは事実でございます
  92. 河村勝

    ○河村委員 何かぼそぼそと言われたので数字がはっきりしなかったけれども、昨年が三百四十二円、ことしが三百十一円。およそこういう金額を決めるときには……(発言する者あり)そっちから何か雑音が入ったけれども、レートは時々変わるけれども、こういう交渉事を決めるときには、交換レートが確定していなければ額は決められないはずだ。そうすると、三百四十二円対三百十一円ということになると、少なくとも一割五分、一五%まではいかないけれども、一二、三%実質的にふえている。漁獲量が減った分が五%、結局二〇%近く余計の協力金をソ連に払っている、こういう事実は間違いありませんね。
  93. 尾島雄一

    尾島政府委員 円が高くなっている分だけ我々の支出は逆に抑えられるということに相なると思います。なお、漁獲が減った分は、それだけ単価が上がったということで、お互いに相殺することになるのではないかと思っております
  94. 河村勝

    ○河村委員 どうも都合の悪いときになると返事がぼそぼそとやられるので、聞き取れなくて困るのですけれども。ですから、結局二割以上高いのですよ。私はそういうことをごまかすべきじゃないと思う。力関係で押しつけられたのなら押しつけられたでもいい。だけれども、去年と同額でございます漁獲量が減った分だけ少し割が悪いだけですというような説明をするというのは、私は誠実さを欠いていると思う。  それでこの漁業協力金、一応日本円でいきましてこれはキロ当たりは幾らになります。キロ当たりの負担、総漁獲量を対象にして。
  95. 尾島雄一

    尾島政府委員 キロ当たり約百六円でございます
  96. 河村勝

    ○河村委員 百六円ですね。今さっき魚価の話が、東京卸売市場の価格の話が出ましたけれども、この百六円と実際比較するのは東京卸売市場の値段じゃないのでしょう。これは少なくとも現場、浜相場というのですか、その辺の漁民あるいは現場の仲買かな、その辺の手取りとの比較になると思うのだけれども、その辺でいくと一体どういうことになるのですか。
  97. 尾島雄一

    尾島政府委員 現在の魚価は非常に低迷をいたしておりますが、産地価格ということで平均魚価が、これはあらゆる魚種を大体平均をいたしておりまして、約五百十八円、キログラム当たりということでございますので、百六円ということになりますと約二割程度ということに相なります
  98. 河村勝

    ○河村委員 五百十八円に対して百六円の負担ですね。これで採算がとれたらおかしいくらいだと思うのですが、さっきはマグロとかカツオとかその他兼業をやっておって、サケマスはその一部であるから一概には経営、採算は議論できないというお話であったのですけれども、一体サケマス漁業だけを考えて、これで採算とれるのですか、本当に、どうなんでしょう。
  99. 尾島雄一

    尾島政府委員 サケマス漁業は、実は昨年の五十八年は日本の魚が全体的に魚価が低迷いたしました関係で二割ないし三割程度の魚価低落があって、経営体によっては確かに経営が非常に困難であったという点があるわけでございますが、一般的に見まして、日本漁業種類の中ではサケマス漁業というのは比較的健全な漁業であるわけでございます。現在のような非常に厳しい漁獲量制限と、それからこの漁業協力費というものにつきまして、できるだけ我々としてもその経営が圧迫されないような形でぎりぎりの交渉をいたしまして、今の交渉の結果になっている。経営がぎりぎりやっていける限界のところで、一応我々としてもこのように考慮をいたしておる次第でございます
  100. 河村勝

    ○河村委員 去年もぎりぎり、ことしも大分負担が多くなったけれどもぎりぎり。結局身を削って何とかもっていくということになるのだろうと思うのですけれども。もしこれでこの漁業交渉を仮に放棄をして考えると、公海だけの沖取りだと二万二千トンでしょう。そうすると四十二億五千万、キロ当たり二百円以上、これは大体払う結果になってしまって、およそばからしい話になりますね。この話は後にしましょう。  資源状態について議論が分かれて、それで総体の資源水準は上回っているけれどもサケは減っているのだというソ連側見解で物別れになっている、さっきこういう説明でしたね。この資源状態議論する場合に、年に二回科学者会議を開くというお話であるけれども、一体毎年科学者会議を開いておいて共通の評価の物差しというのはないのですか。それで議論していても仕方がないと思いますが、いかがでしょう。
  101. 尾島雄一

    尾島政府委員 資源評価見解につきましては、毎年少なくとも春と秋ぐらいに二回資源評価というものを科学者同士で実はやっているわけでございます。その中でもお互いにデータを交換し合いまして、日ソ間で、漁獲統計あるいは生物の統計、例えば体長、分布、それから魚体の重量、生殖腺の成熟度合いとか、そのような生物学的な諸資料と、それから地域的な漁獲量並びに漁獲努力量に比較した単位当たり漁獲量がどのように推移するかということについて、実はそれぞれデータを持ち合ってやっているわけでございますが、やはりデータとして、我が国の方でとっているデータ日本漁獲を基礎といたしておりますし、ソ連の方は主として母川に回帰をした物についてそれの資源解析をしているというような立場上の問題もございまして、なかなか意見一致を見ないというのが現実でございます。できるだけ、その間におきましても共通のデータでお互いに進めていくというようなことも今後とも必要になってくるというぐあいに考えておりまして、今回、幸いにしてことしじゅうに適当な機会資源を含めた科学者会議を実施するということもございますので、このサケマスについての意見交換を十分いたしてみたいというぐあいに考えておる次第でございます。  なお先ほどちょっと、私産地価格が五百十八円と申し上げましたが、実はこれは生換算いたしているわけでございまして、現実に北洋物で産地水揚げの価格は、釧路市場での価格でいきますと、おおむねシロザケを中心に申しますと約九百円程度でございます。種類によって違います。例えばベニザケの場合は千八百円とかいろいろ違うので、一応シロザケを中心にして考えますと、キロ当たり約九百円ということでございますので、御訂正をお願いしたいと思います
  102. 河村勝

    ○河村委員 漁場転換の問題についてもやはりこういう資源評価、これの問題が絡んでくるんだろうと思うのですけれども、先ほどの御説明でも北緯四十四度以南の場合には魚体が小さい、北に上っていくに従って魚が大きくなるから、資源の保護から言っても有効利用の面から言っても転換した方が適切であるという日本主張をなさったというお話でありますが、そういう日本主張の事実というものはソ連側でも認めているのですか。
  103. 尾島雄一

    尾島政府委員 サケマスの生態といたしまして、河川に遡河をする以前には索餌回遊を含めて徐々に産卵回遊の方に行くわけでございますので、母川に近づくに従って魚体が大きくなり体重も増加していくということについては、ソ連側も実は認めておるわけでございます。ただ、問題になりますのは、魚道を著しくそこでふさいで遡河を非常に阻害するという点が一つの焦点としてあるわけでございまして、これにつきましても我々としては、いろいろ手段方法というものは、ある一定の期間、例えばある区域については禁止にしておくとか、いろいろな条件で十分資源が母川に回帰できるような形にすることができるというような主張も実はいたしておるわけでございますが、その点についてなかなか合意が得られないということでございます
  104. 河村勝

    ○河村委員 サケマスの国内消費量全体の中で、日本の沿岸でとるもの、それから輸入するもの、それに今回対象になっております北洋漁業でとるもの、この数量の割合はどういうふうになっておりますか。
  105. 尾島雄一

    尾島政府委員 サケマスにつきましては、まず国内で定置で漁獲されるもの、あるいは北洋で沖取りされるもの、あるいは輸入によるものということで供給がなされておるわけでございますサケマスの北洋の漁獲物は、実はここ数年四万二千トンということでほぼ横ばいで推移しておるわけでございますが、沿岸の定置を主体にいたしましての漁獲分につきましては、昭和五十五年が七万七千トンでございましたが、昨年、五十八年には十一万六千トンと増加しております。また輸入につきましても、実は五十五年が約三万九千トンでございましたが、五十七年には十万八千トン、五十八年には九万九千トンと若干落ちつきを見せておるものの、従来から見ますと、かなりそれぞれの供給が増加しているということでございます
  106. 河村勝

    ○河村委員 もし漁業交渉で規制をされなければ、日本の二百海里以内のサケマスを自由にとれるという考えに立ちますと、そうすると、この北洋でとれるサケマスの量というものは、大体国内沿岸でとれるのが十一万五千トン、輸入が十万トン、そして公海でとれる分が二万二千トンということになりますと、国内消費だけを考えれば、実質的には大勢に影響あるほどの漁獲ではない、そういうことになりますね。そういうことでしようか。
  107. 尾島雄一

    尾島政府委員 確かに先生おっしゃるとおり、数量的に見る限りではウエートというのは小さいと考えざるを得ません。ただ、日本の北洋サケマス漁業は、従来非常に伝統的な我が国の国民が開発した漁場でございますし、またそういう意味でも水産物を自前で供給していくということについては大きなウエートを持っていかなければならぬし、さらに国内供給ということで、現在沿岸定置では漁獲できないようなベニとかギンとかスケとか、こういう比較的高級のサケマス類漁獲の対象にもし得るという点ではこれからも重要な問題ではないか。また、地域産業にとりましても、これを取り巻く漁業従事者あるいは地域における漁業を取り巻く関連産業等も考慮いたしますと、極めて重要なものであると思いますし、我々としても、これからも大いにこれらの維持安定のためには努力していかなければならぬと思っております
  108. 河村勝

    ○河村委員 漁民それから関連業者の生活、将来を考えれば極めて重大であることは私も十分承知しております。ただ、これからのことを考えますと、ますます厳しくなってくる。きょうはアメリカのことも少し聞きたかったのですけれども、時間がなくなってお聞きする時間がないのですけれども、総体として厳しくなることは予測されることですから、それに対する何か切り札を持たなければ交渉もなかなかうまくいかない。ただじり貧で、だんだん減らしていくというのはどうも私は能がないような気がするのです。何か対抗手段はないかということ。  今、ベニとかギンとかマスノスケとか、国内でとれない、しかも値段も高いもの、そういうものが大事であるというお話がございましたが、むしろそのように限定してこれから漁獲量を決めていくというようなやり方の方が利口なんじゃないですか。これは非常に重大な問題で、私も返事ができると思いませんが、また具体的にそういうことが技術的に可能かどうかも私にはわかりませんけれども、種類別の漁獲量を決めているくらいですから、できないことはないだろうと思う。だから何かそういう対抗措置も考えた方が利口じゃないか。  今、ソ連に四十二億五千万払っている。サケマスのふ化放流に国内でかけている予算が今年度の予算で三十三億円ですね。だから、国内のサケマス放流にかけるお金よりもソ連に出す金の方が多いんです。どう考えてもばからしいような気がするのです。  私は、この話は非常に言いにくくて、うっかりすると漁民を無視したり関連事業者を無視するような言い方にとられることを私は非常に恐れるのです。しかし、やはり外交というのは何らかの切り札あるいは対抗手段を持たないとなかなか窮屈になる。一体そういったことを頭に置いておられるかどうか、これからどうするつもりなのか、これは後で外務大臣にもちょっと。これは、ソ連だけではなくて、アメリカますます厳しくなるでしょう。インドネシアに至っては、まるきり二百海里以内を認めないという状態でしょう。今後一体日本としてどう取り組むかというのは大きな問題だと思うので、それをお尋ねして、質問を終わりたいと思います
  109. 尾島雄一

    尾島政府委員 二百海里になりまして、日ソの間に日ソ漁業協力協定に基づくサケマス議定書という形式でサケマス漁獲、沖取りをやっているわけでございますが、本質的に実はソ連側は基本的な態度として、サケマスの沖取りは全面的に禁止すべきであるという主張をいたしておるわけでございます。しかし、我が国は伝統的な北洋漁場を開拓し、そして多くの漁業者が依存しておる、それからかつ、先ほども申し上げましたように、地域産業としてのウエートも非常に高いという事実を考慮いたしますと、これからの非常に厳しい環境ではあるとは私は思いますが、日本漁業の沖取りというものについての維持存続は十分今後とも、ソ連側との間で資源的な見解のお互いの理解をすることによって実施していくことが可能であろうと思うわけでございまして、そのような立場からも、私たちといたしましては、今後とも日ソサケマス漁業につきましては永続的に維持できるように努力してまいりたいと思っている次第でございます
  110. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ひとりソ連のみではなくて、アメリカその他の国々との間でもこれからの漁業外交というのは非常に厳しくなると思うわけです。特に専管水域二百海里だけではなくて海洋法で二百海里の経済水域という方向が進んでおる、こういう状況ではこれも覚悟しなければならぬと思うわけですが、そういう中で我が国外交も全体的にソ連との間でも対話を進めて言うべきことはきちっと言う、そしてその中で筋を通して決着を求めるという努力を重ねていけばそれなりの成果を得ることができる、私はこういうふうに考えています
  111. 河村勝

    ○河村委員 終わります
  112. 中島源太郎

    中島委員長 次に、津川武一君。
  113. 津川武一

    津川委員 今度のサケマス交渉外務省皆さん水産庁皆さんが主観的に一生懸命頑張ったことは私も多といたします。しかし、客観的には強く押されて後退した、この事実を遺憾と思う、これが私であります。しかし、議定書に決まった内容が実施がおくれておる現状からいって私たちもこれに承認を与えるものでございます。  そこで、日ソサケマス交渉の基本的態度は何としても領土問題でございます。歯舞、色丹、国後、択捉は言うまでもなく、千島全島を日本に返還させて日本専管の二百海里領域を広めていくこと、これが根本解決の一つ。第二番目には、北西太平洋日本海で戦争があっては元も子もなくなってしまいますので、その地域を絶対に平和の海として確保していかなければならぬこと。三つ目には、日ソの友好を思い切って積極的に進めていくことでございますが、きょうはこの問題については触れるだけにして、若干の提案を含めて質問を展開さしていただきます。  そこで、第一の問題は漁業外交でございます。五月一日から出漁をする、四月二十日に協議をやる、そして結果として五月五日に妥結した、これでは外交やっている暇も何にもない。外交はかなり厳密なものであって長時間をかけてやらなければならぬ。ときによると、冷却期間を置いてやらなければならぬ。そこで、例えば三月に交渉をやる、こっちで主導権を握って交渉の時期を申し入れる、三月に両方出し合って一定のデータがそろったときに若干の期間を置いて四月に最終的な決着を見る、こんなふうな外交でなければならない、私はこう思うのです。この点どう考えておるのか。五月一日からの出漁になりますが、四月中に出漁したことがございます。気温によっても違いますけれども、四月下旬の終わる時期から始まってこそ寒暖の差を超えて安心した出漁ができるのでございまして、この点をまず外交姿勢として伺わせていただきたい。  外交姿勢の第二の問題は、例えばオレンジ、牛肉の自由化、枠拡大は二年半交渉しております。農業団体がかなり立ち上がって国民的な世論が起きておる。今度のサケマスでも国民的な世論というものをバックにできなかったのかな、漁業交渉における国民的な外交、もちろん外務省皆さん専門家だから、その点でやりましょうけれども、こういう立場が必要でないのかな、こう思っているわけであります。この二点でお答え願います
  114. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 お答え申し上げます。  サケマス交渉につきましては、私どもも五月一日が漁期の開始時期であるということを重々念頭に置いてソ連側と毎年やってきておりまして、ことしも早い段階から三月中にソ連側に対して早く交渉を開始したいということを申し入れていたわけでございます。その開始につきまして再三にわたってソ連側に督促いたしましたけれども、通例ですと四月の五日ごろ、一番遅くても今までは十三日だったわけでございますけれども、ことしにつきましては先ほど来御説明申し上げておりますように四月二十日ということで、おくれたことを非常に残念に思っておるわけでございますけれども、この間の事情につきましてはソ連側から技術的な問題として説明があったとおりでございます。  私どもとしては、今後ともサケマスの問題については漁期があり、漁民の生活がこの漁期にかかっているということを十分に念頭に置いてソ連側との交渉を行っていきたいと考えております
  115. 津川武一

    津川委員 一つには、一定の交渉をやって冷却期を置いて国民にも判定してもらって最終的に詰める、いきなり四月二十日から五月五日までの間に、おしりに火がついている状態の中で決めるからこういうことになっている。  もう一つは、五月一日からでなくて、四月の末から出漁するという交渉です、これも必要なんです。
  116. 尾島雄一

    尾島政府委員 漁期の始期が五月一日ではなしに、むしろ四月にさかのぼったらいかがかという御指摘のようでございます。かつて二百海里以前には四月三十日から出漁ということでやっていた経緯があるわけでございますが、一九七八年、日ソ漁業協力協定が締結されて以来昨年までは漁期は五月一日からということに相なっているわけでございます。これには若干の生物的な問題もあると思います。と申しますのは、四月中におきましてはサケマスの分布が比較的薄いという問題、それから漁獲に当たっても比較的小型魚が混獲されるという問題から魚価が安くなったりしまして、資源保護上も若干問題があるということもありまして、したがいましてこれを余り早めていくことは必ずしも得策ではないのではないかというように考えておりますが、ことしのようにこういうぐあいにおくれることはまさに異例でございまして、我々といたしましても、先ほど外務省からのお話がありましたように、三月からでも交渉したいということで数回にわたって申し入れをしていたわけでございますが、先ほどのような技術的な諸問題ということでおくれざるを得なかったということで非常に残念に思っている次第でございます
  117. 津川武一

    津川委員 専門家の外交と並んで国民的な外交ということを申し上げましたが、返事がないので、また次の機会に別なこととあわせて質問するとして、今度は漁区の問題。  この問題で、漁区の返還を求めたこと、八度以南を要求したこと、これは非常によかったと私は思います。屈することなく必ずやり続けなければならない大きな課題であり、私たちもそのことでは応援を惜しまないつもりでございます。  そこで、事は面倒な資源の問題になっておりますが、どう見ても資源回復している。あの北洋に出漁している漁船は資源回復が顕著であるとまで言っている。さらに、国産のサケマスの回帰で資源がかなり回復していることも常識なんです。さらに、私たちの専門家はソ連に行ってサケマスの養増殖の援助もしている、アドバイスもしている、指導もしている、こういう形の資源を、国民外交を要求したが、国民の前にもっと明らかにしていかなければならぬ。  今度の資源の問題で科学者会議ですぐ年内に審議するということ、これは非常によかったと思う。そこで、これにはかなり重点を置いてとことん取り組まなければならない。今申し上げたような現状と四十八度以南でどんな状態にあるかも明らかにしていかなければならない。そして日本の技術者会議の専門家の研究をもっと進めていく、学会にも発表する、国民の中でもシンポジウムを開くなど、特に農業ではFAOがございます漁業でも国際的な検討の中で資源の問題を明らかにしていく、こういうことが今回は間に合わなかったけれども、これからことしのうちに科学者会議を開くというから、そういう立場でやるべきだと思うのです。この点で皆さんの御意見を聞かせていただくと同時に、同じ意味において外交も、こういう国民的な外交を展開すべきだと思うのでございます。この二点、答えていただきます
  118. 尾島雄一

    尾島政府委員 前段の資源問題についてのお答えを申し上げます。  ことしの交渉におきまして、実は操業水域の転換を要望したわけでございますが、遺憾ながら実現を見るに至らなかったということでございますが、これにつきましての基本的な相違点というのは、先生指摘のとおりの資源問題であったわけでございます。したがいまして、この資源問題につきまして、日本の科学者、ソ連の科学者がことし、お互いに都合のいい時期に会合を持ちまして、サケマス資源の特に漁場の転換というものも含めた資源問題を十分検討する機会をつくりたいというぐあいに考えて合意をしたところでございまして、これを通じまして資源研究に関する科学者の相互の理解を深めて、来年以降実現に向けて足がかりとして役立つように努力してまいりたいと思っております。  ただ、その資源評価というものは、日本資源学者、それからソ連資源学者いずれも自国の漁業漁獲統計を主体にして、ソ連は比較的母川海域の親魚必要量をどの程度見るかということを中心にして考えますし、日本の場合は今後の資源漁獲努力量に対する漁獲がどのようにふえていくかということを中心に考えていくような点、かなり方法論上の相違もございますので、その辺のところ十分かみ合うような形の資源会議ということでやってもらいたいと思っている次第でございます
  119. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 先生の御指摘の点につきましては、確かにサケマス交渉といいましても、日本国民の食卓全体にかかわる交渉でございますし、皆様の納得のいくような形で全体的な交渉がまとめられなければならないという点は御指摘のとおりだろうと思います。そういう意味では私どもとしましても、広く国民の方々から御理解を得て交渉を進めるような方途をいろいろな形で考えていきたいし、それから交渉の経過はできるだけ詳しく皆様に御説明していくという責務がある、このように考えております
  120. 津川武一

    津川委員 そこで資源の問題ですが、ソ連の側は計画経済をやって昭和十年の段階に戻そうとする。日本の方は漁業家の経済を考えてまたやっている。ここでは学問でなくなる。そこで、純粋に資源がどうなっているかということを論議する、これはお互いにやっていてもなかなか解決できない。そこで国際的な批判を、FAO的なものを、漁業の場で国際的な論議が起きれば、ここで私たちは資源問題を本当の意味で解決できる、時間がないのでこのことを要求して進めていきます。  その資源の中で一番高い、一番おいしいベニザケ、これは日本の川で放流できないか、養殖できないかという問題なんです。これはソ連の方でしかできないのです。ソ連の川で育って、ソ連の湖で育って、それから流れていく。そこで、ソ連のこの養殖を指導している日本の立場で、卵を持ってこられるから、日本の川で、日本の湖で一定の時期放して、そして河川の入り口のところでやって日本の川にベニザケを上らせるという技術があれば、資源の問題がかなり解決される。この研究もやっているそうでございますが、ここに研究の重点を向けてやったならば、問題の解決にまた大きく寄与すると思っております水産庁答弁を求めます
  121. 尾島雄一

    尾島政府委員 日本は、ベニザケの分布、回遊という点からいたしますと、実は南限に位置しているということでございまして、現在の日本資源量といううのは極めて少ないわけでございます。ただベニザケは、今先生指摘のとおり非常に高品質でかつ価格も高いということでありますので、現在日本サケマスのふ化放流技術というのは、シロザケを中心にいたしましてかなり高度な水準に達しているわけでございますので、このシロザケで成功した技術をベニザケにも応用して進めていこうということで考えておるわけでございまして、現実に技術的にもいろいろ研究をいたしております。  その中で若干の問題点がございまして、ベニザケは降海、海に下るまでの間、非常に長い間淡水生活をするという特性があるわけでございます。したがいまして、その間、河川にいる間非常に減耗するという特性がございますので、それをカバーするために、我が国では今のところふ化場等において一年間飼育を継続してやることによりまして、降海型の幼魚までに育て上げて、それを海におろすということを実験的に実はやっておりまして、これも技術的に若干成功しておりますが、問題点も多うございます。急病問題とか、いろいろな病気が発生して、なかなか一年間の飼育というのが不足するとかあるいはそういう水系に恵まれていないとかいろいろな条件があるわけでございますが、これらにつきましても十分予算の確保をしながら今の技術を応用して進めてまいりたいと思っております
  122. 津川武一

    津川委員 ベニザケの試験研究にもっと予算をつけるように、安倍外務大臣もひとつ骨を折ってもらうよう要求して質問を続けていきます。  そこで、日本海のサケマスのはえ縄でございますが、日本海の真ん中がこれまたサケマスのいい漁場なんです。ソ連の方から二百海里引く。日本の方から二百海里引く。共通点がある。そこの中心線よりこっちは我々が行ける。向こうは向こう側の領域になる。中心点も中心線も必ずしも明確でない。四十八度という線、百七十度という線ははっきり地球儀に書いてあるからわかるわけです。そこで、こっち側が自分の中心線の内だと思っていても向こうはそうじゃないといって追いかけてくる。つかまると怖いものだから逃げる。この間なんかも、向こうの監視船が一隻来たら日本のはえ縄が百隻逃げている。この点をはっきり明確にして、彼我の間に、漁民に明確にさせていただいて、しばらくの間海上保安庁がいてここが中心線である、ここが中心点であるということを明確にしていかないと、安心して操業ができなくなっております。これが日本海におけるはえ縄の一つの問題。  もう一つは、日本海の真ん中に来るサケは魚体が小さくなっている。全体に資源がふえている中にどうしてこうなっているかについて、だれもわからない。資源研究官に聞いてもわからないと言うのです。この点を、資源確保のために明らかにしていただきたいということ。  こんな格好の資源が減るのと、もう一つは協力費。今十九トン一隻で十四万円。運動費を四、五万円入れると二十万になる。日本海で日米の陸、海、空の合同演習が始まってから非常に景気がよくない。十九トン一隻で出ていくと四百五十万円の経費、収量は三百五十万、この中に二十万近い協力費があります。そこで、この協力費の軽減などもひっくるめて今質問をしたことにお答えいただきながら、日本海におけるはえ縄のサケマス漁業振興策についてお答え願います
  123. 尾島雄一

    尾島政府委員 日本海のマスは主としてカラフトマスでございますが、カラフトマスの回遊から見ますと、日本沿岸からソ連水域に行くに従いまして体重並びに体長が増加していく傾向があるわけでございます。したがいまして、二百海里以前につきましては、かなり北方方面まで参りまして向こうの水域でも漁獲をしていた関係で魚体も大きなものがあったわけでございますが、二百海里以後、日本水域におきまして操業いたしておる関係上、魚体はどうしても小さくならざるを得ないというのが現実のようでございます。  なお、魚体が小さくなってくる一つの要因としては、最近、日本海にイワシが非常に増大いたしております。お互いにえさとしては競合する関係にございまして、そういう関係サケマスの、特にカラフトマスの餌料であるプランクトンをイワシの方が非常にたくさん食うというある学説もあるくらいでございまして、その辺の競合関係というものも一つの説であろうと思っております。  なお、はえ縄の振興ということになりますと、はえ縄だけで生計が立つものではございませんで、結局、はえ縄を中心といたしまして一年間のローテーションをどのような漁業で支えていくかということが一番大きな問題になろうかと思っておりますので、その漁業を中心にして今後の裏作といいますか、兼業のあり方というものも十分検討していきたいというぐあいに考えております
  124. 津川武一

    津川委員 時間が来たようですのでこれで終わりますが、日本海のはえ縄のことは農水委員会でもう少しやるとして、最後に、今度あすかあさって小型の船が出ていきます。そうすると、十日あれば帰ってきます。この魚価がどうなるかということでかなり先ほどから問題になった点は決まると思いますので、外務省としても水産庁としても、これは注意を喚起していって必要な処置を講ずることを求めて質問を終わらせていただきます
  125. 中島源太郎

    中島委員長 これにて本件に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  126. 中島源太郎

    中島委員長 これより本件に対する討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  127. 中島源太郎

    中島委員長 起立総員。よって本件は承認すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  128. 中島源太郎

    中島委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  129. 中島源太郎

    中島委員長 次回は、明九日水曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時三十四分散会