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1984-03-02 第101回国会 衆議院 外務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年三月二日(金曜日)     午前十時一分開議 出席委員   委員長 中島源太郎君    理事 石川 要三君 理事 野上  徹君    理事 浜田卓二郎君 理事 山下 元利君    理事 高沢 寅男君 理事 土井たか子君    理事 古川 雅司君 理事 河村  勝君       鍵田忠三郎君    鯨岡 兵輔君       近藤 元次君    西山敬次郎君       野中 広務君    町村 信孝君       与謝野 馨君    井上 普方君       岡田 春夫君    小林  進君       玉城 栄一君    渡部 一郎君       木下敬之助君    岡崎万寿秀君       瀬長亀次郎君  出席国務大臣         外 務 大 臣 安倍晋太郎君  出席政府委員         外務政務次官  北川 石松君         外務省アジア局         長       橋本  恕君         外務省北米局長 北村  汎君         外務省欧亜局長 西山 健彦君         外務省中近東ア         フリカ局長   波多野敬雄君         外務省経済協力         局長      柳  健一君         外務省条約局長 小和田 恒君         外務省国際連合         局長      山田 中正君  委員外出席者         厚生省援護局業         務第一課長   森山喜久雄君         通商産業省貿易         局為替金融課長 植松  敏君         通商産業省機械         情報産業局航空         機武器課長   渡辺  修君         外務委員会調査         室長      伊藤 政雄君     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 中島源太郎

    中島委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鯨岡兵輔君。
  3. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 私は、時間がないですから五点ほど先に質問をして、後で一括して丁寧に御答弁をいただきたい。  まず最初は、御答弁いただかなくていいのですが、委員長世界情勢はだれでもわかっているように非常に厳しい。それで、外相もこれを御心配になってしばしば外国へ出かけていかれる。まことに御苦労なことだと思いますが、選挙が終わって三カ月、この厳しい国際情勢、しかもその中にあって日本立場は非常に重要だと思われるのですが、外務委員会国際情勢はきょう初めて、国際情勢に対して議会が熱心でないと思われたって仕方がない。もう少し国際情勢に対して議会外務省もともに、国民外交ですから、熱心でなければならぬと思いますが、これは御答弁要りませんが、何か御感想があったらお聞かせいただきたいと思います。  米ソ両国による核軍縮会議は、人類の運命をかけたものであるにかかわらず余り真剣に行われていないのではないか、私はこんなふうに思うのです。去年の暮れに重要な会議二つともだめになってしまった。そして、いまだ再開のめどがついていない。そしてその間米ソ両国の核の配備はどんどん進んでいる。これは非常に危険な状態だと思う。このことに対して日本は何もできないんだろうか。全然日本ではやる手はないということなんだろうか。私はこの点について外務大臣にお聞かせをいただきたい。  次は、アメリカの著名な政治家の中で公然と次のようなことを言う人がいる。レーガン大統領及びその周辺はどうやら米ソ両国による核大戦争があってもアメリカは生き残れるとこのごろ思っているのではないだろうか。これはアメリカの著名な政治家の言なんです。これほどばかげた、そして恐ろしい考えというものはないとその人は言っている。私もそう思う。ついこのごろのレーガン大統領及びその周辺の言動はちょっとニュアンスが変わってきた。それは選挙を前にしてのことだろうと私は思うのですが、その前のレーガン大統領及びその周辺の強気はどうやらそのアメリカの著名な政治家の言っていることを裏づけているのではないだろうか。外務大臣、この点についてどうお考えになりますか。  次の問題は、これは外務省も御承知でしょうが、アメリカ及びソ連科学者の集団が大変研究をしてレポートを発表している。それは新聞にも報道されておりますが、もし米ソ両国による核大戦争が起こったら一体どうなるだろうか。詳細を申し上げている時間がありませんが、伝えられるところによると、北半球で十一億の人が即死する。同じく北半球において十一億の人がけがをする、あるいは大けがをして間もなく死ぬ。残った人たちは、地球は一億年前の状態に戻って気温が零下三十度とか四十度とかになってあらゆる生物の生存を許さない、こういうことを言っている。  核戦争恐怖をまき散らしているのはアメリカソ連なんだ。そのアメリカソ連がそういうことを言っている。広島だの長崎という痛ましい経験を持つ我が国が、元凶がそんなことを言っている時代に何も言わないでいていいのだろうか。そういうことを元凶である人たちが言うのもどういうつもりで言っているんだかわからないが、そこまで言われているのに、この経験を持つ日本が、日本政府が、あるいは日本国民が、余りおとなしいというのはおかしいのじゃないか、どういうふうに考えているのだろうかと思うのですが、外務大臣はどういうふうにお考えになるか、その点についてもお答えをいただきたい。  次の問題は、私ごとを言って悪いですが、私ごとというか私のことじゃないのですが、外務大臣の岳父である岸元総理大臣総理大臣のときに、日本外交方針というものを極めて明確にされたのです。それは三つある。国連中心主義ということと、西欧諸国との連携ということと、アジア一員としての立場日本は堅持するという、この三つです。そして岸総理はその三つをしばしば極めて熱心に言われた。佐藤さんも総理大臣のときに何回となく、日本はどこの国とも仲よくするのだ、そして国連中心主義でやっていくのだ、こういうことを言っていた。その外交方針というのは紛れもなく日本国憲法にのっとる外交方針であったのです。  どうも近ごろ、国連中心主義ということを日本外務省は言わない。どういうわけなんだろうか、国連中心主義ではなくなったのだろうか、国連軽視ではないのだろうかとさえ思われる。この間、施政方針演説中曽根総理大臣演説をなさいましたが、その中に国連という言葉は一言もない。外務大臣お話の中にはさすがにありましたが、字面で言えば一行半です。一行半だからどうとかというのじゃないのですけれども、やはり国連というものに対してどう考えているのか、私はこの点について明らかに外務大臣から承りたい。この国連最後のよりどころだもの。それは国連現状を認識しないで言っているわけじゃないです。国連現状は理想と反して現実はなかなか容易ならざるものがあることはよくわかりますが、それにしても、この恐怖におののく人類危機に際して最後のよりどころは国連だもの。かつて国連中心主義をうたい、国連こそ最後のよりどころだと言っていた日本外交国連を今どう考えているのか。私は、外務省全体が国連というものを重要視していく気構えがとみに薄らいでいると思う。  それから、もう一つ方針は、アジア一員とか、西欧諸国との連携とかということを岸さんは言われた。それは今でもつながっていると私は思う。思うけれども、それはみんなすべてアメリカというものを通してやっている。日本独自の考えというよりは、アメリカというものを通じてそれを考えているというのではないだろうか。そうすれば、日本外交方針が大きく変わったと言わざるを得ない。その点について外務大臣の確固とした御方針、この国の外交方針というものを明らかにしていただきたい、こう思うわけであります。  私は最後に、これは質問ということにならないかもしれませんが、アメリカはちょっと国連を軽視しているのじゃないかなと思うのです。それはアメリカの気持ちもわからないわけじゃない。わからないわけじゃないが、先ほどから申し上げるように、国連こそがこの人類危機を救う最後のよりどころだと思えば、アメリカのような大国国連を軽視することは残念でならない。かつてILOを脱退してまた入ったけれども、今度はユネスコから、こんなものはだめだというので脱退するとか言われている。このことは国連というものの基盤を揺るがすような大問題になるのではないだろうか。もしも日本アメリカと今後とも仲よくしていこうというならば、これらのアメリカの間違った考え方について、日本アメリカに対して忠告をしなければならぬ。友情として、それは間違えていますということを言わなければならぬと私は思うのですが、そんなことを言ったろうか、あるいはそのことについてどう考えているだろうか。私に与えられた時間は御答弁をまぜて二十分ですから、これで私の質問は終わります。
  4. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今鯨岡さんから、いろいろと御意見を交えて御質問がございました。これに対して私から、時間の制約もありますので簡単にお答えをいたします。  まず、外務委員会がもっと国際情勢国際問題等について活発に論議をすべきである、まさにそのとおりでございます。国際情勢が非常な勢いで動いておる厳しいこの時でございますから、やはり議会役割、特に国際問題、国際情勢について議会が大きく熱心に討議するということは極めて大事であると思います。外務省としても、私としましても、こうした議会の御要請におこたえをして、できるだけ努めてまいりたいと考えております。  それから、核軍縮について日本は何をなすべきかということでございます。  御承知のように、残念ながら米ソ間が今冷たい状況にありますし、INFあるいはSTARTといった核軍縮の、せっかくのこれまでの交渉が中断をしているということでございまして、これは世界の今後を考えますときに、極めて憂慮にたえないわけでございます。中断したものが決裂ということになれば、これは核軍縮じゃなくて一挙に核軍拡方向へ進むわけでございますから、我々としては何としても中断した交渉再開をされることを心から期待をし、またその動きがあることも事実であります。  ただ、私は今の米ソ状況から見ますと、ソ連は新しい政権チェルネンコ政権ができて、今権力確立段階に入っておると思いますし、そしてチェルネンコ政権アメリカとの間の対話を決して求めておらないわけではない。これはチェルネンコ書記長演説、グロムイコさんと私は会談をしましたり、そうしたことを踏まえて判断をしても、対話とかあるいはまた核軍縮交渉ということを考えてないわけじゃないと思うわけでありますが、まだまだ米ソ間の状況がそこまで熟していないということ。それからもう一つは、やはりアメリカで今大統領選挙がこれから火を噴こうという段階で、そういうアメリカ姿勢等も見ておるということだろうと思います。一方におきまして、アメリカは確かにチェルネンコ体制に対して対話再開を呼びかけておるわけでございます。これはレーガン政権としては相当熱心に呼びかけておるというふうに私は判断をしておりますが、まだやはり再開する機は熟していない。だから当分の間これは無理じゃないかと思っております。問題は、やはり時間がかかっても再開はさせるということであろうと思いますし、再開をさせて、そしてこの交渉を成功裏に結実させるということではないだろうか。  そういう中で、日本は何もできないじゃないか、一体何ができるかということでありますが、やはり今の日本としては、平和そして軍縮というのが世界の平和のために最も大事なことでありますから、日本平和外交、これまで進めてきたこういう基本路線に従って積極的に核軍縮に対しては取り組んでいかなければならぬし、また訴えていかなければならぬ。国連が大きな舞台ですが、国連中心にして、日本がそうした核軍縮交渉再開に向かって大いにアピールするということは当然であります。同時にまた、日本アメリカとは非常に深い友好関係にあります。したがって、アメリカとの関係の中で、アメリカに対しても核軍縮交渉再開についての話し合いをしながら、アメリカに対して積極的な呼びかけを行うように、絶えず我々としてはアメリカに対しても要望いたしてきておるわけであります。あるいはまたソ連とは非常に冷たい関係にありますけれども、しかし対話を進めながら、ソ連に対してもやはり核軍縮再開に向かってソ連が積極的な動きをなすことを真剣に求めていかなければならない。三月十二、十三日には高級事務レベル会談をやることになっておりますが、まず第一に我々は東西関係、特に米ソ関係、その中における核軍縮交渉再開ソ連に強く呼びかけたい、こういうふうに考えております。  あるいは東欧との関係も、日本体制は違いますが、外交の面においては比較的親しい関係にあります。東欧諸国を通じての働きかけもしなければならぬし、あるいはまた中国を通じての、中国との話し合いによって世界に呼びかけるとか、いろいろこれからも外交活動はやっていかなければならぬ。それはそれなりに、日本の国際的な発言力というものは相当強くなってきておると思います。それだけに日本役割を果たすということは、ある意味においては相当できるのではないか、私はそういうふうに考えておるわけであります。  それからアメリカの一部に、米ソ戦争があってもアメリカが生き残れるのではないか、そういうことを考えておる人たちがおるのではないだろうか、こういうようなお話でありますが、私はそういう意見をまだ聞いたことがございませんが、戦争をやれば勝たなければならぬと考え人たちがもちろんおるでしょう。当然のことでありますが、しかし米ソ正面衝突をして、今の世界米ソに存在するところの核が全面的に使われるということになったら、米ソ両国国民はもちろんのこと、世界じゅうの人類が絶滅していくであろうことは火を見るよりも明らかではないか、私はそういうふうに思うわけであります。したがって、何としてもやはり戦争は防止しなければならぬし、恐らくレーガン大統領にしてもあるいはまたチェルネンコ書記長にしても、戦争をしようなんということは毛頭考えていないと思います。そういうことをすれば世界地球の終わりだと考えておるでしょうから、そのための努力を今重ねておるわけでございます。しかし、私はそういう全面的な戦争というものは考えられないのですが、地域的な紛争というものは随所に起こっております。そして、それは縮小するよりは拡大の方向にすら動いておるわけでございますから、我々は決して油断はできないわけでございまして、戦争をしようとは思っていなくても、何の機会でこれが戦争に拡大していくかもしれない。これがこれまでの戦争の歴史ですから、そういうことを踏まえながら、やはり戦争防止、そして軍縮の実行のために努力していかなければならない、こういうふうに思うわけでございます。  また、核軍縮とかあるいはまた核絶滅運動、そういうものに対する日本やあるいは国民動きが弱いのではないか、こういうふうなお話でございますが、私は決してそうではないと思います。日本政府としましても、国連におきましては積極的に核実験停止決議案とか日本のイニシアチブでそうした核に対する日本立場を表明する決議を何回か提案をして今日に至っておりますし、同時にまた、広島長崎県民レベルといいますか、広島長崎中心とした国民レベル会議中心にして、国連総会等では核軍縮あるいは核廃絶についてのアピールが行われておるわけでございます。日本が何としても広島長崎において最初の原爆の被爆国であります。これは最初にして最後にしなければならぬわけでございます。そういう意味において、日本はこれからも国連あるいは世界に対してやっていかなければならぬ。  ただ、非核運動というのが、私はやはりただ一方に偏るということであってはならないのではないか。やはり世界的な規模といいますか、イデオロギーを超えたものでなければ、真の非核反核運動ではないのではないかと私は思うわけでございます。そういう意味において、もっとやはり反核運動非核運動というのが世界的規模において、イデオロギーを超えた立場において行われることを期待をし、そういう中で日本はやはり積極的な役割を果たしていく時代に入ってきておる、こういうふうに思うわけであります。  それから、国連の問題につきましては、これはもう日本はずっと国連重視の政策をとり続けて、外交をとり続けて今日に至っております。決して国連というものを無視し、軽視するという今の日本立場ではございません。ただ、残念ながら国連の地位というものが非常に低下をしている、地盤沈下を起こしていることは事実であります。我々はやはり、せっかく戦後再び戦争をしないという決意の中で、世界人類一つの英知を絞って国連というものをつくったのですから、この国連をさらに力をつけて、そして世界平和維持のための最も強力な機能を果たしてもらいたいというのは、もうひとり日本だけの念願ではないと思うのですが、残念ながら大国のエゴといいますか、ああした安保理における拒否権、ああいう存在、制度もあって国連世界における平和維持機能を十分果たしていない。ですから、地域紛争が盛んにいろいろと各地で生じております。そして拡大する傾向にありますが、国連がこれに対してほとんど何らの働きをしていないということは、最近我々は極めて残念に思っております。しかし、これは何としても我々はこのまま放置しておいてはいけない。やはり国連機能を強化する、特に平和維持機能を強化するために、国連でもデクエヤル総長中心にしていろいろと検討を進めておりますが、日本もやはり平和国家、あるいは平和外交を推進する立場におきまして、国連の力をもっと強化すべく積極的に努力を傾けてまいりたいと思うわけでございます。  アメリカが最近は特に国連に対して冷たい態度をとっております。お話のようにユネスコからも脱退するということを宣言しております。あるいはまたUNCTADからも場合によっては脱退しようかということを言うアメリカの有力な人たちもおるわけでございます。この傾向は極めて残念で、私はアメリカの要人と、指導者と会うたびに、やはりそうした国連に対しては不満も随分あるだろう、しかしやはり国連とそういうふうに対決をするとか、あるいは国連を無視する、国連の有力な機関から脱退するということになったら、一体世界のこれからの平和と安定というものに対して、何がこれからほかに新しいものとしてやっていけるだろうか、アメリカ国連をつくったんじゃないか、そのアメリカがみずから国連に対してそういう対決姿勢をとるということは、アメリカ自身を非常にまずい立場に追い込むので、何としてもそういうことはやめてほしいということを要望しております。ユネスコは脱退するということを宣言しておりますが、日本は残って、そして何とかまたアメリカが再び帰ってくるような努力をしたい。やはりアメリカにはアメリカなり理由もあるわけですから、残念に思いますけれども、ユネスコにまた復帰できるような、かつてILOでもそうでしたが、復活できるような努力日本が果たしていかなければならない。そういう意味においては、アメリカ国連との間に立って日本の果たす役割というものもまたあるのではないだろうか、こういうふうな感じも私は率直に持っておるわけでございます。  いずれにしても、やはり国連を重視した、国連中心世界政治あるいは平和が推進されていくような時代を迎えるために、日本としてもこれからも努力を傾けていきたい、こういうふうに思っております。
  5. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 時間が参りましたのでこれで終わりますが、最後外務大臣の、国連中心主義我が国外交方針は少しも変わっていない、このお話を非常にうれしく承りました。  ただ、それに基づく行動というものが伴わなければ、これはただ口頭禅に終わってしまうので、せっかく諸国にこれだけの力ができてきたのですから、いろんな方法で国連中心主義という、この最後のよりどころである国連人類の将来のために強固にするため全力を挙げてやっていただきたい、このことをお願いして私の質問を終わります。
  6. 中島源太郎

    中島委員長 次に、小林道君。
  7. 小林進

    小林(進)委員 限られた時間でございますので、私は項目だけ挙げて御答弁をいただきたいと思うのでございます。  一つは、予算委員会における中曽根総理発言に対する外務大臣の御所見、これは後で言います。第二番目は、素朴な質問ですが、米ソは一体なぜ戦わなければならぬのか、これは国民はちっともわからない。これをひとつ国民にわかるようにお教えいただきたい。第三番目は、日ソもそうなんです。ソ連が何か日本を今にも侵略してくるような危険性ありだとか、あるいは膨張国家だとかいろいろ言うが、日本国民の側から見ると、一体日本ソ連の間に相戦わなければならない理由はどこにあるかわからない。四つ目は、去年の九月起こった大韓航空のいわゆるソ連軍事機による撃墜の問題であります。これも国民はわからない。何で入ってはならないソ連のいわゆる航空路線民間航空機が入っていったのか、素朴な国民の側から見れば、どうも落としたソ連が悪い、悪いと日本政府も言っているけれども、人のうちへ土足でけって入ってきたものを撃墜するというのも正当防衛の一環じゃないか。通っちゃならない車道を通っていれば、ひかれたからといって車道を通った者にもやはり落ち度があるだろう。しかし、これがいわゆる大韓航空機の問題になると、当たり前の理屈が通っていない。これはどういうことなのか。それから五番目は、これもラングーンにおける全斗煥大統領以下閣僚の狙撃事件、これは北朝鮮がやったのだかどうかまだ結論も出ていない。こういうことについて。あとはシーレーンのことも聞いて、シーレーンというものが本当に日本防衛力で防げるのか、ナンセンスだという声も随分ありますが、数え上げていけば切りがない。  第一問から問題を提起いたしていきますと、これは予算委員会で、うちの代表の質問で、今年度の世界をこれほど動乱に陥れているものは米ソなんだから、ここへ日本が少し調停的な役割を果たすような余地はないか、これは人類が皆考えていることなんだ、こんな恐ろしい軍拡競争にだれかが軍配を入れる者はないかということで、どうですか中曽根さん、その役割はと言ったら、中曽根さんは、いや日米安保条約があるからそういうような調停役中曽根総理大臣としてはできない、こういうことを言ってはっきり断っている。この見解に対して安倍外務大臣は一体どうお考えになるか。  これに対しては、ここにおられる我が党の高沢委員が前の国会のこの委員会園田さんに質問をした。これに対して園田外務大臣は、前総理鈴木さんは平和外交、終始これに一貫することを主張された。園田さんは、これを全方位外交という言葉で表現された。そして帰するところは、鈴木総理も私も同じであって、全方位外交平和外交も同じなんですと答えている。それじゃ、鈴木総理の言われる世界の平和とは何だということに対して園田さんは次のように言っているんです。すなわち、言葉をかえて言えば、米ソを戦わせない、戦わせてはならないことなんですと。今や世界の平和は一に米ソ二つの超大国にかかっているんです。ここに問題があるんだから、これを戦わせないことに平和外交、全方位外交中心があるのだと言い、そのために園田氏は、自分の国を小さい国と言って、日本は小さい国であるけれども、軍備を縮小し、そして両国が低い水準で均衡を保つという方向へ行くよう日本外交の全精力を注がなければならぬという園田哲学を説明しているわけです。これは、鈴木総理の哲学でもあるわけです。以上から見て、ニュアンスはみんな違うのですね、中曽根外交園田外交鈴木外交。それぞれ違っている。  さて、ここで安倍外交は一体どういう哲学を示してくれるか、私はお聞きしたい、こういう問題に対して。  私は、安倍さんは外務大臣になって中東外交と同時にどうもソ連外交に大変力を入れて、しばしば話をしよう、なるべく話をするチャンスを設けようということでやっていることを非常に立派だと思う。前進していると見ているのです。何か三月も最高事務会議をおやりになるというが、この問題に関連して、外交というものは、そんなに素直に話のできる国に話をしに行くのは外交じゃない、一番難しい国、一番距離の離れている国に近づいてしばしば話し合いをするというのが外交の真髄でなければならぬと私は思うのだが、安倍外交は、アメリカなんか向かなくたって、むしろ一番難しいソ連へ一番力を注ぐべきだと思うのであって、最高会議だのサミットへ行って話をするとか、葬式に行って話をするとかということのほかに、いわゆるソ連日本との間に定期の会議を持たれる、それは事務レベルでもいいが、定期的に話があろうとなかろうと、一年に五回でも六回でもいい、定期にひとつ話をしようというグラウンドを設定されたらどうかというのが第一問です。  それから、第二間ですが、専門家はだれも言っているんだな。米ソの間で戦う理由政治的にも軍事的にも何にもないと外交の専門家は言うんですよ。それを、なぜあれだけエキサイトして軍拡競争を続けているか。そこには別の理論があるのではないか。その別の理論というのは何かというと軍産複合体、いわゆる軍需産業との結びつきでね、ここから圧力が来ているんだというのでありますが、私はこのことに対しましては、余りこれを言っていると時間がなくなりますけれども、これはアメリカの民主党の、四十七年ニクソンと一緒に大統領選挙を争ったマクガバン元上院議員が、レーガンは、ソ連に対し軍事的優位を確立すればソ連は劣勢に追い込まれるから軍縮交渉を有利に進めることができるという発想に立っている、これはもう間違いありませんね、しかし実際はどうかと言えば、実際にはソ連はいわゆる核軍備削減交渉、INFをむしろおりてしまったじゃないか、STARTの交渉からもおりてしまったじゃないか、これは全くレーガンの見込み違いであるということはこれで明らかになっている、こういうこと空言われているのでございます。  また、飛び飛びに言いますが、マクガバン氏はこういうことも言っている。今も民主党の大統領の予備選挙に出ているようですね。彼は言っている。私が一番疑問に思っていることは、だれがアメリカを攻撃してくるかということだ、ソ連にしても、アメリカを攻めて何の得があるだろうか、また西ヨーロッパを攻めてくるだろうか、アフガニスタンやポーランドの側を見れば、西側への攻撃が物理的にも不可能であることは明白だ、東欧衛星諸国との連携を維持するだけでソ連は手いっぱいだというのが現実だと思う、米ソ戦わなければならない理由一つもない、こう言っている。これはアメリカの最も良識ある政治家。これはマクガバンだけではありません。例の元の国防長官のマクナマラも同じような発想です。これに対して日本の外相安倍さんもどうもソ連はワル、危険なる国家であるという懸念を表明するとあなたは演説で言っておられる。防衛庁は、潜在的な脅威がやはりソ連にある、こういう見解に立っておる。これは国民はどうしても理解できない。国民にわかるようにお聞かせを願いたい。これは第二問です。  第三問は、日本ソ連との関係だ。ソ連日本を攻撃してくる根拠は一体何ですか。外務大臣の御意見は今私は聞いたんだが、同じくアメリカのマクガバンもそうですが、どうしても理解できないのは、日米両政府日本の防衛計画の強化を提唱しているのがわからぬと言っている。一体だれの脅威から日本を守れというのか、攻めてくるのはソ連中国か、現実には日本を攻撃してくるという根拠は何にもないではないかというんだね。北方領土とおっしゃるかもしれません。北方領土はサンフランシスコ会議の後だから四十年も続いている問題で、今始まったことじゃない。あるいはアフガニスタンだ、ベトナムだというけれども、こんなものは日本関係がない。これは、日本ソ連が攻撃してくる原因にはなりもしない。これをひとつ国民にわかりやすく教えてもらわなければならない。  ただ、私は、驚くべきことはこれなんですな。これは法眼元外務次官、これは今外務省の顧問でしょう。外務省は、事務次官をやった者は顧問にしているからね。これはやめたかどうか知らぬが。これは出たばかりなんで図書館にないから町に行って買ってきた。この中には「アメリカ日本付近を固めれば、ソ連日本を攻めることはできなくなる。これに対してソ連は、日本に反米運動を起こそうとするかも知れない。さしあたり石橋社会党は、事実上その先発隊の役割を担っているように見える。その非武装中立論という、世界が不思議がる珍妙な議論でもって。」こう言って我が党の委員長を誹謗しながら、そしてまた「わが国は日米安保条約を強化して、自らを守る努力をしなければ、ソ連の餌食にならない保障はない。」と言っている。  それで、その次、これは資料要求するのですよ。「英国の国際戦略研究所は」、そんな研究所があるかどうかわからぬけれども、「最近ソ連は、北海道北部に侵寇する危険ありと観測している。」と言う。これは資料を要求しますよ。つまり宗谷海峡の航行を遮断されぬために北海道の北部にソ連は侵寇をしてくる、攻めてくるという危険がある。「ソ連から見れば、カムチャツカ南端のぺトロハバロフスクとウラジオの両軍港の連結が最も重要であり、これが日本の支配下にあれば、日本海のソ連艦隊は半分は袋のネズミと化する。」そこで「英戦略研究所の推論は正しいと思われる。」だからソ連日本の北、北海道北部に攻めてくるのは正しいと思われる。そして、今「ソ連側はその時の準備を着々進めている」のである、こういうことを言っている。これに対して日本外務省あるいは日本政府はどういう見解をお持ちになっておるのか、これが三番目。  時間がありませんから急ぎますが、第四は、先ほども言いました大韓航空機の撃墜事件、二百六十九名のいわゆる非武装の民間航空機を落としたのはけしからぬ、私もそう思います。私も落としたのはけしからぬと思うが、その前に、通ってはならないところをなぜ通ったか、問題はやはりそこから解明していかなければならないと私は思うのでありますが、その点は少しも日本政府外務省も問題を明らかにしていただけない。いただけないのみならず、これは賠償問題は一体どうなっているのか、落とされた二百六十九名のこの大きな被害者に対する賠償問題は一体どうなっているのか。  それに関係いたしまして、これは私がとったニュースなんですが、KAL○○七便は、落とされた大韓航空の飛行機ですよ、これは西独のルフトハンザ航空から中古の飛行機をKALが買い入れたものであって、耐用年数を超えている古物だというのだ。つまり、それをいつでもスクラップにしていい状況にあったそのKALは、これに保険を掛けていた。すでにイギリスの保険会社から機体分として約六十五億円も保険金を取っている。なおかつ、貨物などで九百八十億円も保険金をもらうことが予定せられているというのだ。これはもう支払われているかもしれないのだ。大韓航空はこれほどちゃんと手際よく保険を掛け、保険金も手に入れているというところだ、こういう中古の飛行機に。金は取ったが、一体被害者に対して保険金を払ったのか払わないのか。何かそんなところにも疑えば実に生臭い疑念がわいてくるのであって、これが一つ大韓航空に対する私ども国民の素朴な疑いです。  なおかつ、大韓航空機が飛んではならないカムチャッカ、オホーツクからソ連領を飛んでいるときに、日本の情報だけはうんととった。それで日本は全部それを発表したが、日本よりもっと精巧な情報網を持っているアメリカがこの大韓航空の侵犯事故に対する情報を今まで一つも公開しないのは一体どういう理由なんですか。ソ連の方は、KALはアメリカのスパイ機だ云々と言うけれども、もっと日本より正確な情報をとっているべきアメリカが我々の前にその情報を公開しないのは、これはいたずらにアメリカが仕組んだ策謀ではないかと疑いを深めることになるが、この点はどうなっているか。  それから第五番目は、ラングーンのいわゆる爆破事件です。本当に北朝鮮がやったのか。やったのであるとすれば、これからの北、南、それから中国を入れた三国の交渉問題、これに対してアメリカは、アメリカと南北朝鮮の三国の交渉中国も入れて四カ国でやれと言った、あなたは今度は日本ソ連も入れて六カ国で南北朝鮮問題の話し合いをしようと言っているけれども、こういう問題の進展状況にはやはりこれがはっきりしなければ将来困難だと私は思いますので、この点もひとつ聞かせていただきたい。  もう時間が来ましたからやめますが、あわせて、シーレーン、千海里などということも夢物語だ、あんなものはむだな浪費であって、そんなことで日本の航海や物資の輸送が守られる道理がないじゃないか、そういう声もありますが、これについてもひとつお伺いをいたしたいと思います。
  8. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今いろいろと御質問がございました。順次お答えを申し上げます。  まず、米ソ関係ですが、御承知のようなINF交渉あるいはまたSTARTの交渉が中断をしてしまったということは、世界の平和という立場からいくと極めて残念至極でございます。私どもは、何としても核軍縮交渉再開をされることを念願し、そのために日本外交努力を惜しんではならない、こういうふうに思っておるわけでございます。もしこの核軍縮交渉が決裂をするというようなことになりましたら、それでなくても核軍拡方向へ進んでおるのが一挙にさらに勢いが増大をして、世界の平和を大変危機的な状況に追い込めてしまう。そういうことを考えるにつけても、やはり中断をした核軍縮交渉をまず再開させることであろうと思うわけであります。  米国も、今度のソ連チェルネンコ政権ができまして、ブッシュ副大統領をアンドロポフ書記長の葬儀に送りましたが、そのときチェルネンコさんとの会談等を見ておりますと、この核軍縮交渉再開したい、米ソ対話を進めたいということを正式に申し入れております。レーガン大統領も教書であるとかテレビの演説等で盛んにこれを強調しておるわけでありますから、米国もそういう方向でこれから進めようということであろうと思います。  問題はソ連ですが、ソ連も、チェルネンコ体制ができまして、そのチェルネンコ書記長演説であるとかグロムイコ外相の演説等を拝見しておりますと、これまたやはり東西間の対話米ソ対話というものも進めなければならないという基本的な考え方ははっきりと打ち出しておるわけでございますから、私は、米ソ両国とも今の関係をこれ以上悪くしようというような方向には動いていないのじゃないだろうか、こういうように思っております。  ただ、ソ連も今チェルネンコ体制が権力をいわゆる確立する段階でありましょうし、アメリカアメリカ大統領選挙の真っ最中でございますから、そういうふうに米ソ関係を悪くしようと両国は思っていないようですが、しかし、今ここで一挙に対話を進めて、そして中断された核軍縮交渉再開するというところまでは一挙に持っていけないということであろうと思うわけでございますが、我々としてはそういう中にあって、日本日本なりの努力をこれからも重ねて、米ソ対話が進んでいく、核軍縮再開が行われるように外交努力というものをしていかなければならない、こういうふうに考えておるわけです。  それから、日ソにつきましては、御承知のように大変冷たい関係にあります。特に大韓航空機撃墜事件以来というものは極めて冷え切っておったわけでございます。私も外務大臣に再任をされまして、やはり日ソ関係は、お互いに隣国である、このままではいけないのじゃないか、何とか打開する道、関係改善の道はないだろうか、そういうふうに実は思って、ひとつそのための努力はしてみたい、こういうふうに考えておったわけでございますが、そういう中でアンドロポフ書記長が亡くなられて、政府を代表して葬儀に参列をいたしました。そういうことでその時期にグロムイコ外相とお目にかかることができたわけであります。四十分ばかり会談をいたしました。もちろん日ソ間には領土問題、私も領土問題を主張したわけであります。領土問題を解決することによって初めて日ソの平和条約が締結をされ、そこに真の日ソの友好平和が生まれるのじゃないか、ですから、まずやはり領土問題をテーブルに乗せようじゃないかということを主張したわけでありますが、残念ながらこれに対してグロムイコ外相は、領土問題は我が方の考え方はもう決定しておる、決まっておる、こういうことで日本考え方とは真っ向から今対立をしておる。あるいはまた極東の情勢につきましても、日本立場ソ連立場とは、またその認識が相対立しておることは申し上げるまでもないわけでございますが、そうした対立点ははっきりしておるわけですが、一面においてやはり日本ソ連は隣国同士であるし、同時にまた、ソ連は超大国である。日本もまた世界の中では最近経済的にも非常に大きな力を持ち、政治的な面においても発言権を持ってきたので、やはりこの際、隣国同士のソ連日本がお互いに国際情勢、さらにまた二国間の問題についてとにかく話し合う機会をこれからどんどん持つということは、世界の平和、そして日ソ間にとっても大事なことじゃないかということを私は強調いたしたわけですが、これに対してはグロムイコ外相も、まさにそのとおりだ、お互いに対立点はあるとしても二国間の対話はやはり必要だ、世界情勢も含めた対話も必要だということで意見が一致しました。その結果、高級事務レベル会議を早めて、三月の十二日、十三日に開くということを決定をいたしたわけでございます。その他文化交流、経済交流あるいは人的交流、そういう面について官民あわせて推進をしていこう、こういう点も一応の合意を見たわけでございます。  残念ながら日ソ間には、基本的には今の領土問題という大きな対立があります。あるいはまた我々は、ソ連の極東における最近の軍備の拡張と軍事力の増強というものに対しては極めて残念に思っておるわけでございまして、今小林委員は、ソ連日本を攻めてくる理由は何もないじゃないかと言われましたが、我々日本ソ連を攻めていく理由は全くないわけで、私はグロムイコさんにも、ソ連は非常に軍事力を強化されておるけれども、しかし日本ソ連に対しては何らの脅威ではないではないですかということを力説したわけでございます。  いずれにいたしましても、いろいろ対立はありますが、しかし外交関係があるわけでありますし、そうしてこれからの世界情勢において、やはり対話あるいはまた軍縮というものを進めていくためには、日ソ間のパイプを広げていくという努力は必要じゃないか、私はこういうふうに考えて、これは難しい中で、日本の主張は維持しながら今後ともひとつ進めてまいりたいと考えておるわけであります。  それからそれに関連して、法眼さんの著書、私もまだ読んでおりませんけれども、御説明がございましたが、法眼さんはかつて外務省の次官をしておりましたが、今顧問ではございません。自由に意見を述べたいということで顧問はやめられましたので、それは御説明、御報告しておきます。  それから大韓航空機の問題については、これはICAOでいろいろと調査をしております。残念ながら、まだ真相が完全に明らかになっていないということでありますが、ICAOの調査は比較晦客観的である。日本にも調査団を送って徹底的に調べました。あるいはアメリカにも送って調べたわけでありますが、このICAOの調査団の報告書ができ上がっております。このICAOの調査団の報告書によりますと、大韓航空機のスパイ説あるいは故意説等が明らかに否定をされておりまして、航空機器への人力ミスとか、あるいはまた航行方式の選択ミスの可能性が示唆をされておるということでございますが、真相は、全部一人残らずああいうふうに亡くなってしまわれたわけでございますし、日本としてもこれに対する決め手はないわけですけれども、しかし我々としては、あの大韓航空機で犠牲になられた二十八人の日本人の遺族の皆さんの補償に対しましては、政府として側面的にこれから努力も重ねてまいりたい、こういうふうに考えておるわけであります。  それからラングーン事件につきましては、非常に遺憾な事件でございましたが、この事件の真相については、ビルマは正式に国の発表として、政府として、ビルマのラングーンにおけるテロ事件は、これは北朝鮮の政府がこれに絡んでおるものであるということをはっきり断定をして発表いたしております。裁判も終わりまして、それぞれ犯人が処分されるという段階になっておるというふうに聞いておるわけでございます。そういう中で、朝鮮半島をめぐる緊張が南北間でラングーン事件以来高まってきておるわけでございますが、我々としては、この南北の緊張緩和はやはり極めて重要である、こういうふうに思っております。北朝鮮から三者会談の構想が打ち出され、さらにまたアメリカから四者会談の構想が打ち出され、さらにまたこれにソ連日本も加えたらどうだという六者会談という構想も出ておるわけでございますが、私たちは、やはり今の南北問の緊張の中で、いわゆる緊張緩和のためのそうした動きが出ておるということは極めていいことだと歓迎しております。ただ問題は、三者会談にしても四者会談にしても六者会談にしても、今の客観情勢からするとなかなか困難な点があります。そういう中で、私たち政府としては、まず、やはり基本的には南北の両当事国がとにかく話し合う、対話をする、話し合ってそこで一つ方向を打ち出すということがまず基本として大事じゃないかということを日本政府としては主張をいたしておるわけでございます。しかし、そうしたいろいろな動きに対しては、私は、これは南北の緊張を緩和する一つのいい動きとして歓迎し、また日本としてのそのための努力といいますか、協力はしていかなければならない、そういうふうにも思っておるわけであります。  大体以上でございます。
  9. 小林進

    小林(進)委員 それでは、ちょっと一言……。もうこれで時間ですからね。  外務大臣お話で、何とはなしにふんわりと、中曽根外交とは少しニュアンスが違うということはわかったような気はいたしますけれども、今言われた、やはり今年度は、これは要望ですから、対ソ連外交、これは何といってもやはり数の多い方がいいのですから、話し合いは数を多くやってもらいたい。それからいま一つは、北朝鮮と言ったのは私は略したのでありまして、朝鮮民主主義人民共和国とも、私どもが被害を与えた国であることは変わりがない、南の方だけ賠償金を払って北には払わないなんてばかなことが今行われていることは許されるべきではありません。これも両国一つにするという考えで大いにこの外交を進展さしてもらいたい。  最後でありますけれども、この法眼の百七十九ページですか、顧問でないとおっしゃればなんですが、これはいやしくも我が党の石橋君だけじゃない、我が党並びに我が党を支持する国民。非武装中立論というものは大変高く評価されて支持されている。これは世界的にも評価されておるさなかに、かつては外務省事務次官であり顧問でもあった人が、ソ連日本侵略の先発的役割を担っていると見えるなどと言うことは、公党並びに公党の委員長に対する重大な侮辱だと私は思っている。この問題で外務大臣にもお聞きしたいのだが、予算委員会でもうちの石橋委員長中曽根首相と討論をしたときにも、終局的には人類の絶対的な平和は私も石橋さん、同じです。それは非武装だ。武器、武装一つない絶対的な平和はこの中曽根においてもあなたに劣るものではないと言って、そういう意味においては非武装絶対主義というものを彼も認めている。中立というのは全方位外交で、これは園田外務大臣も言っている。何がこれがナンセンスの主張であるか。ただそこに至るアイ・エヌ・ジー、段階中曽根氏と石橋氏は違うだけの話であって、同じ高ねの花を見んかという、高ねの花を見ることは同じでそこに至る道が違うだけだということを彼らも言っているにもかかわらず、かつて外務省の——あなたにこの考えがあるとすれば大変な問題だと私は思っているのでありますが、こういう点に対して外務大臣、顧問じゃないから責任はないとかなんとかおっしゃるかもしれませんけれども、あなたの我が委員長に対する法眼発言に対する所見をひとつ承って、私の質問を終わりたいと思います。
  10. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 法眼さんは顧問を辞任されまして自由人としての立場でその本に自分の意見を述べられたものである、こういうふうに理解をしております。  なおまた、それぞれの党には党の理論というのがあります。また政府政府考え方があります。最終的に判断するのは国民であろう、こういうふうに考えるわけであります。
  11. 小林進

    小林(進)委員 それじゃ終わります。
  12. 中島源太郎

    中島委員長 次に、土井たか子君。
  13. 土井たか子

    ○土井委員 五十八年一月十四日に当時の内閣官房長官後藤田長官の談話がございました。また、十一月八日には交換公文が取り交わされております。そこで武器輸出三原則に変更が出てまいっておりますが、きょうは基本的なことをひとつお尋ねしたいと思うのです。  今予算委員会が開かれておりますけれども、去る二月十六日にこの問題を取り上げて、我が党の大田議議員の方からの質問もございましたが、その二月十六日の会議録を見ましてもどうもわからぬことが多いのです。これもあわせてただいまから聞きせていただきたい、このようにまず申し上げます。  さて、一月十四日の後藤田官房長官談話にございます「防衛分野における技術」というのは一体どんなことを指しますか。
  14. 北村汎

    ○北村政府委員 お答え申し上げます。  防衛分野における技術と申しますのは、日本の場合は武器技術とそれ以外のいわゆる汎用技術と言われておって、防衛に関連する技術ということを総称して防衛分野における技術というふうに申し上げております。
  15. 土井たか子

    ○土井委員 わかりました。「対米武器技術供与についての内閣官房長官談話」の中に言う「防衛分野における技術」は今おっしゃったとおりですね。武器技術と汎用技術と両方全部含めてこれは問題にされているというふうにまずここで理解をいたします。  さて、十一月八日の交換公文でございますが、この中ではまず決定事項がずっとあって、それに従って了解事項が書かれているという順序になります。言うまでもなく交換公文ですから約束事でございます。日本に義務が生じます。この決定事項の中身を見てまいりまして、その中にいうところの、「日本政府は、武器技術以外の防衛分野における技術」と言っている「武器技術以外の防衛分野における技術」というのは何を指していますか。どういうことですか。
  16. 北村汎

    ○北村政府委員 武器技術以外の防衛分野における技術といいますと、これは防衛分野における汎用技術ということでございます。
  17. 土井たか子

    ○土井委員 汎用技術ですね。その後に出てまいります「防衛分野における技術のアメリカ合衆国に対する供与を歓迎します。」と言っているこの「防衛分野における技術」というのは何なのですか。
  18. 北村汎

    ○北村政府委員 これは先ほど申し上げましたように、武器技術とそれから汎用技術を総称して防衛分野における技術ということでございます。
  19. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、さらに具体的にその決定に従って了解事項が決められているわけですが、了解事項の2の(1)、そこの部分について少しお尋ねを進めてみましょう。  JMTCを設置するということがここで決められておりますが、このJMTCが討議することができるとここにされております「防衛分野における技術」というのはどういうことなんですか。
  20. 北村汎

    ○北村政府委員 このJMTCの場において対米武器技術供与の実施に関することがいろいろ協議されるわけでございます。したがいまして、その場に出てまいりますのは、防衛分野における技術という話が出てくると思います。先ほども委員の御質問に対し私が答えましたが、防衛分野における技術という言葉は防衛に関連する技術を総称したわけでございますが、日本の場合、武器輸出三原則というものがあって、またそれに応じた行政上、法律上の仕分けというものができておりますので、武器技術という非常に特別な概念が日本にはあるわけでございます。ところが、アメリカ側にはそういう概念はなくて、アメリカ側は防衛分野における技術、英語でディフェンス・リレーテッド・テクノロジー、向こうはこういう言葉で総称しておりますが、日本は制度上武器技術という極めて狭い範囲の、限定された概念がございます。そこで、アメリカ側といろいろ武器技術の供与を話し合いますときには、アメリカ側は一般に防衛分野における技術というところで話をしてまいるわけでございます。例えばアメリカがこういう技術を日本かち提供してほしいということをJMTCで話をしましたときに、それは日本側から見ますと、あるものはそれは武器技術という分野に属する、あるものはそうでないかもしれません、すなわち汎用技術であるかもしれない。そこの仕分けはアメリカ側ではできないわけでございます。ですから、日本側が、これは武器技術ですよ、これはそうではありません、こういう識別をいたしまして、アメリカ側にもいろいろ教えてやる、こういうことで、ここのところはそういうことが行われるという趣旨でございます。
  21. 土井たか子

    ○土井委員 識別について教えてやる、それは結構なのですが、「防衛分野における技術のアメリカ合衆国に対する供与を歓迎します。」と言っているその中身は、広義における技術であるということを先ほど言われたわけで、武器技術も汎用技術もこの中には含まれるということを先ほど言われたわけですから、その決定事項に従って約束事の了解の中身を決めていっていることについて今聞いているわけなのです。したがって、今の御答弁からすると、「防衛分野における技術」に関してJMTCが取り扱う中身は、武器技術もあれば汎用技術もある、こういう格好になるわけですね。
  22. 北村汎

    ○北村政府委員 今回の取り決めは、あくまでも日本からアメリカに武器技術を供与するというその仕組みを書いたものでございます。したがいまして、JMTCという機関も、これもいわゆる武器技術を日本から出すに当たってアメリカ側といろいろ協議をする場でございます。しかし、先ほど申し上げましたように、アメリカ側における防衛分野における技術という概念とそれから日本側におけるあれとは、そういう意味で違っておりますので、当然そこで武器技術以外の話が出ることもある。しかし、JMTCが討議の対象としておりますのは、これはあくまでも武器技術でございまして、汎用技術をも含めてここで取り扱うということではございません。
  23. 土井たか子

    ○土井委員 汎用技術を除外するという担保と申しますか、客観的にそういうことになっているという示しはどこでつけられますか。先ほどから聞いてくると、ここに言うところの「防衛分野における技術」というのは広義における技術であるというお答えがあったわけです。したがって、アメリカ側からすれば、当然のことながら、武器は言うまでもない、汎用技術も含めて日本と討議しようという格好になるだろうと思います。この2の(1)に言うところの「協議を必要とするすべての事項に関する」という規定、適当な場合にはこの事項に関して討議することができる、こうなっているのですから、「必要とするすべての事項」の中に、アメリカ側がそういうふうに認識してきたって何の不思議はない。今の御答弁からしたって、それは言えると思うのです。このことに対して、どういう示しをつけるのです。
  24. 北村汎

    ○北村政府委員 今、委員御指摘の取り決めの2項の(3)の中に「JMTCは、特に、供与されるべき武器技術を識別するに当たっての協議機関として機能する。」ということがございます。このJMTCというのは、日本からアメリカに出す武器技術について、その実施に関して、すべての事項について何でも協議できるわけでございます。協議の場でございますけれども、ここに書いてありますように、「特に、供与されるべき武器技術を識別するに当たっての協議機関として機能する。」この取り決め自体が、これは武器技術を日本からアメリカに出すに当たっての仕組み、大枠、フレームワークをつくったものでございますので、あくまでもこの取り決めの対象は武器技術であって、汎用技術ではない。しかし、協議の場でございますから、そこでアメリカ側が、ある技術を欲しいと言う場合に、その技術が日本側から見れば汎用技術だということがあり得ると思うのです。そのときは、これは汎用技術です、汎用技術だからこれは供与は自由です、武器技術の場合は日本委員部において自主的にこれを判断して出すか出さないかを決定するんだ、こういうことをそこで識別するわけでございます。
  25. 土井たか子

    ○土井委員 先ほどのお答えからすると、少しそこのところがあいまいだったわけですが、そうすると、汎用技術の問題がここで取り上げる討議の対象となってきた場合も、JMTCの場所で日本側としては一切これを討議の対象とはしない、こういうことになるわけですか、一切しないと。
  26. 北村汎

    ○北村政府委員 先ほども申し上げましたように、JMTCの日本委員部は、ある武器技術をアメリカに供与することがしかるべきであるかどうかという決定をいたすわけでございます。汎用技術につきましては、これはそういう決定の対象ではないわけでございます。したがいまして、汎用技術というものはJMTCでの供与に関する討議の対象にはならないわけでございます。先ほど申し上げましたように、アメリカが言ってきた技術が、たまたまこれは汎用技術であるという場合には、これは汎用技術ですよと言ってアメリカ側に教えてやるということはございますけれども、汎用技術について、JMTCがこれを供与する、しないというような、そういうようなことは一切いたさないわけでございます。
  27. 土井たか子

    ○土井委員 非公式で今まで、こういうふうな技術というものを日本から供与してもらえまいかということ空言ってきていることがあるでしょう。非公式でこういうもの空言ってきておりますということは恐らくおっしゃらないだろうと思いますけれども、非公式で、こういう技術が欲しいということをアメリカ側から言ってきている事実はありますね。
  28. 植松敏

    ○植松説明員 お答えいたします。  今御指摘の点でございますけれども、私ども具体的に、こういう技術について欲しいとかいうことは、要請を受けている事実はございません。
  29. 土井たか子

    ○土井委員 具体的にこういう技術についてということじゃなしに、非公式に、こういうふうな技術について考えてみてもらえまいかというふうな要請というものがあったということは言えるでしょう。
  30. 植松敏

    ○植松説明員 政府といたしましては、アメリカ側から具体的に特定の技術について要請というのは受けておりません。
  31. 土井たか子

    ○土井委員 政府というのは、どうもおっしゃっている意味がよくわからないんだけれども、公式というふうにそれは読みかえることができるのかなと思いながら今私は聞いているのですが、先ほどから非公式でと言っているのです。
  32. 植松敏

    ○植松説明員 非公式にも政府として特にそういうことは聞いておりません。
  33. 土井たか子

    ○土井委員 例えば高速コンピューターとか超LSIとか光ファイバーとか、そういう先端技術、それから電波吸収フェライトとか音声認識装置とかCUC、そういう問題は、先ほどからおっしゃった識別からするとどっちに入るのですか。
  34. 中島源太郎

    中島委員長 渡辺航空機武器課長
  35. 土井たか子

    ○土井委員 ちょっと待ってください、委員長。さっきアメリカ局長が答えられましたから、アメリカ局長に答えていただきましょう。
  36. 北村汎

    ○北村政府委員 私どもは技術の具体的なものについての知識を持っておりませんし、またその技術の具体的なものが、技術というのは本当に千差万別でございますので、具体的にそのものが出てきたところで、これはどちらに属するかという識別が行われるんだと思いますが、日本側のJMTC委員部には通産省、防衛庁それから外務省の代表者が出るということになっておりますので、そういう場合に、そういう具体的な識別は外務省としてはいたしかねるわけで、それはやはり関係当局の方でなされるものだと思います。
  37. 土井たか子

    ○土井委員 それは非常におかしな答弁ですな。これははっきりしておいていただかぬと、ここのところが非常におかしくなってくる部分が出てきやしませんか。本来汎用技術であるものがJMTCで取り扱われて、MDA協定に基づいて取り扱われるということになっていくと、これは先ほどの御答弁からすると武器技術になるのですね。これは武器技術しか取り扱いませんとおっしゃっているのだから。汎用技術と武器技術ということの仕分けというのは一体どこでするのですかと言ったら、JMTCでございます、こうなるのでしょう。そのJMTCで本来汎用技術であるものが取り扱われて、そして取り扱われた上でMSA協定に基づいてそれはどんどんとアメリカに供与するかっこうになるわけですから。供与するものはすべて武器技術であるということを逆に言うと、本来は汎用技術であるものもそこで武器技術に転化するという可能性は十分に出てくる。だから、その仕分けについて、これは先ほど来言うように、どこでどういうふうな担保があるのですかと私は聞いた。識別するに当たっての協議機関としてJMTCは機能するから大丈夫でございますというふうな答弁アメリカ局長はこの約束事項の中の条文を引っ張り出しておっしゃるけれども、この識別についてさっぱりわからないのですよ。
  38. 植松敏

    ○植松説明員 若干議論をクリアにするために申し上げますと、先生御案内のとおり、武器輸出三原則あるいはそれに準じます技術についてでございますが、現在、その対象になりますものというのは武器専用の技術でございます。汎用か専用がという判断基準というのは、前々からも申しておりますように、武器というのは、武器として特有の機能を発揮し得るために、その耐久性でございますとか精度だとか、そういった面におきまして民生用のものとは違った特殊な性能が必要とされる、そういうことで、実際にその製造等に当たりましては、専らそのために用いられる技術、そういうものを武器技術といたしまして、武器技術あるいは武器輸出三原則等の対象にしておるわけでございます。  今回JMTCで問題にいたしましたものは、武器技術あるいは武器輸出三原則の対象になりますものにつきましては、従来外為法の運用におきましても三原則に照らして厳正に運用しておったという観点から、武器技術に該当するものにつきましてはそういった制約があった。その中で、日米安保体制の効果的な運用との兼ね合いからどういうふうにこれの調整を図るかということで、特別に武器技術に該当するものが含まれております場合にはJMTCにかけまして、さらにこの取り決め、さらに実施細目取り決めと慎重な手続を経て、また我が国側が自主的な判断をその中でしていくという過程において慎重な手続を経て特に供与の道を開くということで、JMTCその他この了解事項ができたという経緯がございます。
  39. 土井たか子

    ○土井委員 通産省、あなた、私が今聞いているのは、この交換公文について聞いているのです。武器専用技術と交換公文のどこに書いてあるのです。勝手な用語を勝手に使ってしゃべらないでください。非常に混乱を来します。言っていることの意味が全然通じなくなる。よろしいか。武器技術に関連するものとあなたはおっしゃった。それは一体何です。そんなものは全然ここにも書いてありませんよ。そういう勝手な説明は私は不要です。  さて、アメリカ局長が先ほどから答弁されているのだからまた聞きますけれども、アメリカ局長、先ほど私が聞いたことに対してどうお答えになります。
  40. 北村汎

    ○北村政府委員 先ほども御答弁いたしましたように、今回の取り決めは日本から武器技術をアメリカに供与する場合の仕組みを決めた取り決めでございますので、そうしてこれは、一月十四日の決定にもありますように、日本アメリカに対して武器技術を提供する場合にはあくまでもMDAの枠の中で行うということでございます。そういうものは武器技術に限っておるわけでございまして、汎用技術がMDAの枠の中で取り扱われて、そしてそれがアメリカに供与されるというような、そういう制限を課されることはございません。汎用技術は以前からもまた去年の一月十四日以後もずっと自由に出せるわけでございますから、今回の取り決めによって今まで自由であった汎用技術が武器技術と一緒になって今度MDAの枠の中で一つの制限を課せられる、そういうようなことはないわけでございます。
  41. 土井たか子

    ○土井委員 汎用技術については、これは民間技術ですからね。民間が民間で交流するとかということについては政府政府の今回の約束事は本来関係ない、これはおっしゃるとおりなんです。だから私は、その点についてのけじめというのが、今の条文を見た場合に、防衛分野における技術というのは武器技術と汎用技術と両方指すとあなたはおっしゃっているのだから、したがって汎用技術もこの中に入れてJMTCで問題にするというふうに当初の御答弁からするとなるのです。だから、その辺のけじめをどういうふうにはっきりさせていくかということは非常に大事なんです。いまの御答弁からすると、汎用技術に対しては一切JMTCのここで取り上げる対象ではないということをはっきりさせるためにも公表する必要があるのです。国民がそれを知る機会がなければ困りますよ。そうでしょう。汎用技術について、これをJMTCで取り上げられて、勝手にアメリカとの間で供与するということを約束されている、国民は何も知らない、これでは困るのです。もういいかげん武器輸出三原則というのは変質させられているのですから、こんなあほな話はないのです。だからこの辺のけじめからすると、あなたは先日の二月十六日の予算委員会の席では、できる限り公表したい、公表していきたいというふうな御答弁なんです。どういうふうに公表するのですか。
  42. 北村汎

    ○北村政府委員 今、まだその具体的な武器技術の供与要請がアメリカからございません事態におきまして、実施細目取り決めというものもまだ結ばれたことはないわけでございますが、実施細目取り決めというものを当局間において結びます場合、この取りきめ自体につきましては、この間の予算委員会でも御説明しましたように、これはいろいろ安全保障上の考慮から基本的には公表し得る性格のものではないと考えられるけれども、対米武器技術供与がどのように行われているかということについてアメリカ側と協議をいたしまして、公表できる範囲内において公表をいたすということをいま考えておりまして、アメリカ側といろいろ協議をしておるところでございます。
  43. 土井たか子

    ○土井委員 さっぱりわからない、それは。従来も実施細目取り決めについて知らせていただきたい、公表すべきであるということを外務委員会で何遍言ったかわからない。そうすると、その結果こういう半ぺらが一枚手元に提示されたわけです。これを見ると、「取極本文及び附属書は、米側当局との間で公表しないこととしているので、提出は差し控えさせて頂きたい。」これが結論ですよ。今回はいままで差し控えてきた部分についても公表するということで努力する、こうなんですな。そうですか。
  44. 北村汎

    ○北村政府委員 今までアメリカから日本に供与されました武器あるいは武器技術について両当局間で結ばれました実施細目取り決めにつきましては、その概要が公表されておるわけでございます。たとえばP3C、あるいはF15、そういうものを日本側がアメリカからシステムを提供されたときに結んだ実施細目取り決めの概要は公表されておりまして、これはその実施細目取り決めを結んだ防衛庁の当局がこれを作成して公表しております。
  45. 土井たか子

    ○土井委員 そういうことを今私は聞いているわけではないのです。これからのことを聞いているんですよ。  それでアメリカ局長、さっきもあなたがお答えになったとおり、防衛分野における技術に対する理解は、アメリカ側は兵器技術と汎用技術と両方、恐らく考えて出てくるんです、これははっきり。日本側が今回の交換公文による取り決めで、兵器技術に限る、武器技術に限る、こうなるわけでしょう。この間に違いがあるんです。したがって、その違いということをはっきり示すということを何らかしていただかなければ困るのです。今回のこの交換公文の中の了解事項の二号一項で言うところの中身というのは、先ほど来繰り返し言うように、わかるようにしてもらわぬと困るのです。汎用技術は一切含まない、日本側の理解としてはですね。そしてJMTCでも汎用技術は取り上げない、問題にしないとおっしゃっているんだから、それをはっきりしていただかなければならぬ。それはしたがって、公表するという方法をどのようにしていくかということについてもはっきり聞かしておいていただかなければならぬのです。  ここでひとつ、アメリカ局長に言っても非常にあいまいになるであろうと思いつつ、私は指摘したいことがある。「どういう技術をどういうふうにアメリカ側に提供したかということは、これはある程度今までも実施細目取り決めの概要は公表したことはございます。」こうあなたは答えられているんです、二月十六日の予算委員会。これはむちゃくちゃじゃないですか。日本側からアメリカ側に今まで提供した技術があるんですか。そうなると武器輸出三原則違反ですよ、これはまず第一に。当外務委員会でこういうことを聞いたら、今までそれはゼロですと、日本側からアメリカ側に提供したというのはゼロでございます。これはきっぱり言い続けてこられたことに対してもうそをついたことになる。  その次に、「これはある程度今までも実施細目取り決めの概要は公表したことはございます。」私はそんな資料を見たこともなければ聞いたこともありませんよ。出してくださいと言ったって出せませんと言うんだから。せいぜい出してきたのが、先ほど読んだところの「提出は差し控えさせて頂きたい。」これに尽きるのです。したがって、先日私がこの局長答弁を見てびっくり仰天して、外務省に強く資料要求した。ここに、今まで公表されたらしいから実施細目取り決めをひとつ出してください、概要を出してほしい、おかしいじゃありませんかと言って執拗に要求したら、やっとのことで持ってこられたのはこれです。これは何ですか。AHISヘリコプターシステムとか、F15とか、P3Cの了解覚書要旨、こんなもの関係ないですよ。人をごまかすのもいいかげんにしてほしいと思うのです。この答弁はどうなるんです。こんなことをやっていてこれから先、私がきょう聞いたところの、一体防衛分野における技術に対して一切汎用技術というのは含まないということに対してのあかしはつけられないですよ、こんなこと言いながら。どうです局長、はっきりしてもらいましよう。
  46. 北村汎

    ○北村政府委員 ただいま土井委員から御指摘のありました、二月十六日の予算委員会での私の答弁の御指摘のところは、確かにこれは少し考えが先に走っていまして、言葉が抜けております。ただ、その前の私の答弁、一回行っております。すぐその直前でございますけれども、そこを見ていただきますと、アメリカに対する武器技術の供与というのはこれからの問題であって、細目取り決めもこれから結んでいく問題である、そういうことで、私は、ちょっと読みますと、「実施細目取り決めの締結あるいはその方式などにつきましては、これからアメリカ側と協議の上決定するわけでございますが、先ほどから御説明しておりますように、どういう技術がどういうふうに提供されるか、いわばこれは実施細目取り決めの内容でございましょう。そういうものにつきましてどの程度明らかにしていけるかについてアメリカ側と協議をし、その結果、明らかにできるものを明らかにしていく、こういうことでございます。」という答弁をしました後、また大出委員の御質問がありまして、私が「どういう技術をどういうふうにアメリカ側に提供したかということ」についてというのは、これは一つの未来完了の形で申し上げまして、次に「ある程度今までも実施細目取り決めの概要は公表したことはございます。」というのは、ここは私は非常に考えが先に飛びましてまことに恐縮でございますが、これは今までアメリカから日本に武器あるいは武器技術が提供されたときの実施細目取り決めは、その概要が公表されているものがあるということを頭に置いて言ったものですから、まことにそういう意味でここの文章をとりますと、そういうことであいまいでございますので、その点は私はおわびいたしますが、その前の文章をずっとお読みいただきますと、これは日本からアメリカに出すこれからの武器技術供与について語っておるということでございます。
  47. 土井たか子

    ○土井委員 あなた英語は上手かもしらぬが、日本語はまるでなっていないと言わなければならない。  今のは、これからのことを言っているんじゃないですよ。もう一度言いましょうか。「どういう技術をどういうふうにアメリカ側に提供したかということは、これはある程度今までも実施細目取り決めの概要は公表したことはございます。」これは過去形なんです。これからのことじゃないじゃないですか。言いわけはもういいかげんにやめなさい。これは事実関係につきまして間違ったことをあなたは明らかに言ったのです。訂正をしてもらわなければならぬ、この部分については。よろしゅうございますか。訂正をするか、これは事実でございますか、認める、二つしかないです。そのうちの一つですよ。これを認めるんだったら細目取り決めを出してもらいましょう。日本側からアメリカに提供した技術が今までにもあるという事実を認めてもらいましょう。そうでないのならば、これを訂正してもらわねと困る。予算委員会に行って訂正してもらわねと困るのです。よろしいか。これは予算委員会の場所での答弁なんです。どうですか、これをはっきりしてもらいましよう。
  48. 北村汎

    ○北村政府委員 先ほども私は、その前の答弁におきましてこういう言葉を使っております。「アメリカとの間では、この問題についてはまだ結論を出しておりませんし、」そこで、少し飛ばしますが、「取り決め全部を公表するということはできないものかと思いますけれども、どういう供与がどの程度というふうに行われたかということについて」というふうに、「行われた」というように、ここは過去のようにとれますけれども、これは未来完了でありまして、未来においてどういう供与がどういうふうに行われたかということについて、アメリカ側とこれから協議をしていくつもりでございますということを前に言っておりますので、その同じような表現が出てまいりました。  ただ、今先生の御指摘ございましたように、ここの部分だけをとりますと私の言葉足らずでございますので、これはアメリカ側に今後どういう技術がどういうふうに提供されるかということについてはという意味一つと、それから実施細目取り決めの概要が公表されておるのは、これはアメリカから従来日本がもらったということについて、ここのところは言葉が抜けておりますので、しかるべき措置をとらせていただきたいと思います。
  49. 土井たか子

    ○土井委員 あなたは何でもあいまいにすれば済むと思ったら、わけが違いますよ。今ここできっぱりと、どうしたいということをはっきり言ってもらいましょう。そうでないと私はここで引き下がれない。よろしいか、これはいいかげんなことじゃないのですよ。また予算はとまりますよ。
  50. 中島源太郎

    中島委員長 北村北米局長に申し上げますが、文法上的確に御答弁をいただきたいと思います。
  51. 北村汎

    ○北村政府委員 確かに御指摘の部分だけを読みますと誤解を招くおそれがありますのですが、その全体の答弁を読んでいただきますと、私が申し上げましたのは、これからアメリカ側に提供される武器について実施細目取り決めをどういうふうに扱うかということについて答弁をしておるわけでございまして、その点は舌足らずではございましたけれども、全体の答弁を読んでいただければ、その点は明らかになると思います。
  52. 土井たか子

    ○土井委員 それで、どうするのですか。
  53. 中島源太郎

    中島委員長 土井君に申し上げますが、質疑時間が来ておりますので、簡潔に願います。
  54. 土井たか子

    ○土井委員 それは舌足らずとか誤解を生ずる表現とか、そんな問題じゃないですよ、これは。よろしいですか。  それでは、委員長に申し上げます。後、理事会でひとつ文書を私示しますから、今申し上げていることが一体間違ったことを言っているかどうかということは、当外務委員会でぜひ御討議願いますよ。  しきりに局長はああいう言い逃れをしようという格好が見えるわけですが、これはちょっとおかしいと言わざるを得ない。外務大臣、聞いておられてどう思われます。外務大臣
  55. 中島源太郎

    中島委員長 土井君に申し上げますが、質疑時間が切れておりますので、お願いします。
  56. 土井たか子

    ○土井委員 わかっております。  それでは最後に、外務大臣せっかく御出席で、これは最初国際情勢ですから、一問だけ簡単に聞いて、イエス、ノーで答えていただきたいと思います。  六月に中曽根総理がロンドンで開かれるサミットに出席される前か後にフランスを訪問されて、ミッテラン大統領と歓談されるときに、フランス側が武器技術輸出に対して、これを議題として日本に要請するやに伝えられておりますが、もう既にアメリカに対して武器輸出三原則を、修正ではなくて修悪しちゃったのです、日本は。したがって、日本の武器技術の供与に道を開いたということにフランスは非常に関心を持っている。しかも、日米両国でこの高度の武器技術について独占する状況が生ずることに対して、フランスやイギリスやドイツというのが非常な懸念を持つ、危険視するということも出てくる。日本は西側陣営だということの強調をずっとしているわけですから、こういう要請が出てくるのでしよう。どうされるのです、これ。
  57. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはもう極めてはっきりしております。日米の場合は、日米安保条約というのがありますから、こうした特別な武器技術についての供与の道を開いたわけでありますが、その他の国につきましては、あくまでも武器輸出三原則を堅持してまいります。
  58. 土井たか子

    ○土井委員 委員長、それでは私はこれで質問を終わりますが、さっきの取り扱い方はどのようになさいますかをひとつ聞かしていただいて、私終えます。
  59. 中島源太郎

    中島委員長 土井君の発言の件に関しましては、理事会で協議いたしたいと存じます。
  60. 土井たか子

    ○土井委員 ありがとうございました。  終わります。
  61. 中島源太郎

    中島委員長 次に、渡部一郎君。
  62. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 ただいまの同僚議員の御発言につきまして絡むわけでございますが、武器技術の移転に関する行政取り決めは、その内容からして国会に提出されるのが至当だと私は考えております。といいますのは、昭和四十九年二月二十日、外務委員会におきまして条約の国会提出に関する政府見解が外務大臣から表明されました。憲法第七十三条三号に言う条約というものは、単にこれは国会で事前あるいは事後に条約が審査されるべきことを決めたものでございますが、ここで言う条約は、単に条約というものだけではないのではないかという問題が提起されたわけであります。その結果として、何が憲法で言う条約で、何が憲法で言う条約でないのか、非常に大きな論戦が行われたところであり、私もその論議をした一人でございます。  そのときの最後の文章を私は今手にしているわけでございますが、早口で申しますと、こういうことが書かれております。「国会承認条約の第一のカテゴリーとしては、いわゆる法律事項を含む国際約束があげられます。憲法第四十一条は、国会は国の唯一の立法機関である旨定めております。したがって、右の憲法の規定に基づく国会の立法権にかかわるような約束を内容として含む国際約束の締結には当然国会の承認が必要であります。ここでいう国会の立法権にかかわるような約束を内容として含む国際約束とは、具体的には、当該国際約束の締結によって、新たな立法措置の必要があるか、あるいは既存の国内法の維持の必要があるという意味において、国会の審議をお願いし承認を得ておく必要があるものをさすものであり、」云々と書かれておりまして、この規定によりますと、私の見るところ、明らかに国会提出を要するものだと考えられるわけであります。  第二に、「財政事項を含む国際約束も国会承認条約に該当」すると書かれております。「憲法第八十五条は、「国費を支出し、又は国が債務を負担するには、国會の議決に基づくことを必要とする。」旨定めております。したがって右の憲法の規定に基づき、すでに予算または法律で認められている以上に財政支出義務を負う国際約束の締結には国会の承認が得られなくてはなりません。」とあります。技術移転に関しては、さまざまな行政上の費用が拠出されることは明らかであり、これがこの内容に当たるかどうかは論議を要するところではなかろうかと私は思います。  また、この決定の三番目に、「第三のカテゴリーとして、ただいま申し上げたような法律事項または財政事項を含まなくとも、わが国と相手国との間あるいは国家間一般の基本的な関係を法的に規定するという意味において政治的に重要な国際約束であって、それゆえに、発効のために批准が要件とされているものも国会承認条約として取り扱われるべきものであります。」私は、ここのところの内容の中で、両国関係を律する極めて重要な武器輸出禁止という国のルールとも言うべきものを一部変更するに至ったこの内容は、国会へ提出して論議をするのが至当ではなかったかと、今までこうして提出されている政府見解に基づいて疑問を抱いているものであります。これについていかがお考えか、まずお尋ねいたします。
  63. 小和田恒

    ○小和田政府委員 お答えいたします。  ただいま渡部委員から御指摘のありました経緯につきましては、委員が御指摘のとおり昭和四十九年にこの問題が外務委員会において討議の対象になりました。その結果といたしまして、いま渡部委員から御指摘のあったような内容を含みます大平外務大臣答弁があったわけでございます。  ただ、この取り決めがそれでは大平外務大臣答弁にある国会提出条約との関連においてどういう位置づけになるかということにつきましては、この取り決めは国会の承認を得た国内法の範囲内で実施し得るという内容のものを取り決めたものでございまして、ここで先ほど御指摘のありましたような法律事項あるいは財政事項を含むような国際約束ではない。  それから三番目に、第三のカテゴリーについて御指摘がございましたが、これは「わが国と相手国との間あるいは国家間一般の基本的な関係を法的に規定するという意味において政治的に重要な国際約束であって、それゆえに、発効のために批准が要件とされているもの」ということでございまして、今度の取り決めはそういう批准条約ではないということで、政府といたしましては、これは行政取り決めとして憲法第七十三条第二号に言うところの外交関係の処理というものの一環として締結し得るものである、こういう考え方で処理をしたわけでございます。
  64. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 ただいまの条約局長の御答弁につきましては、私は、今後議論をしたいテーマでありまして、この答弁には到底承服しがたいところでございます。  土井たか子議員の御質疑にありましたように、一つのテーマ、決められている細目についてすらこれほどの論議が起こっているところであり、これは十分の討議をしなければならぬことであることは明らかであります。したがって、私としてはこの取り決めの国会提出を要求いたしますが、少なくとも、それでないという立場にお立ちになるかならならぬかは別といたしまして、小委員会をつくって議論するか、あるいはこの問題について集中審議をされることを望みたいと思いますが、委員長、いかがでございましょうか。
  65. 中島源太郎

    中島委員長 今後の協議につきましては、御発言でございますので、後刻理事会で協議させていただきたいと存じます。
  66. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 この問題につきましては、ここのところ、甚だ遺憾空言い方ではございますが、中曽根総理御就任以来、我が国外交姿勢の右傾化と申しますか軍事化と申しますか、その方向というのは極めて険悪な方向に向かいつつあり、私どもは多くの歯どめと点検が必要ではないかと思います。当外務委員会がこうしたそれこそ目玉ともいうべき条約について論議をすることなく、今回提出された条約のように与党も野党も余り大した論議を要しない条約だけをわざわざ本委員会にのせることによって目くらましをするというようなことは到底許しがたいことではないか。国政の大方向を論じる以上は、むしろこうしたテーマこそ、当委員会の各委員の率直にして大胆な質疑応答を展開する上において、日本の国政の方向はいかにあるべきかと議論することが妥当ではないのか、私はかように思うわけであり、委員長に重ねて、こうした問題につきまして論議の場を与えていただきたい。どうしてもできないとあれば、我々は条約の審議を差しとめてでもこの論議を先行させなければならないとまで思い詰めているわけであり、適切な御処置をお願いしたいと思うのでございますが、いかがでございましょうか。
  67. 中島源太郎

    中島委員長 せっかくの御発言でございますので再度お答えいたしますが、御趣旨に沿いまして、後刻理事会で協議をさせていただきます。
  68. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私は、それではいわゆる中国における残留孤児の問題について申し上げたいと思います。  最近のテレビにおいて報道されている残留孤児問題、日本国民の心ある人の胸をかきむしるテーマでございますが、この問題の扱いにつきまして、多くの胸の痛みを感じるのは私一人ではないと存じます。率直に申しまして、わざわざ日本に呼んでくるのに当たりまして非常に少数の人しか呼ばない、そしてその少数の人々がもうそろそろ老齢化して記憶も不確かである、受け入れる日本側の旧家族はもう全く意識が絶えるか絶えないかの寸前まで追い詰められているのに、まだ依然として年間五、六十名のペースでゆっくりとこの措置が行われようとしている。日本人の情感からいって、この問題をこのようなペースで行うということは許されないのではないかと考えるわけであります。  今日まで何名がこうした形で毎年毎年来ているのか、今までの数字を挙げ、そして現在調査しなければならない中国残留孤児と思われる人の在中国メンバーの数字は何名ぐらいあり、そしてそれをこのペースでやれば処理をするのに何十年かかるか、率直にまず数字からお述べをいただきたい。
  69. 森山喜久雄

    ○森山説明員 中国残留孤児の数でございますが、現在まで厚生省の方に肉親を捜してほしいという依頼が孤児から直接ございます件数は、千五百二十五件でございます。そのうち、今までに判明いたしましたのが七百七名でございます。ただ、これは今五十名の方がいらっしゃって肉親調査をやっておりまして十七名判明しておりますが、これは入っておりません。したがいまして、調査中が八百十八名ということになるわけでございます。  それで、この調査自体は日中の国交が回復して以来ずっと継続してやっておるわけでございますが、昭和五十六年から、現在やっておりますような孤児の方を日本にお呼びして直接調査をやるというのを始めました。これが前回までで二百十二人の方をお呼びいたしまして百三十六人が判明しております。率でいいますと六四%ぐらいになりますか。この方法が非常に効果的でございますので、今後もこの調査中心にやっていきたいということでございます。  ただいま実施しておりますが、第五回目でございまして、五十名でございます。本年度は、昨年の十二月に六十名、それから現在五十名と、百十名お呼びしたわけでございますが、先生今おっしゃいましたように関係者も老齢化しておるという現状でございますので、来年はぜひ百八十名実施したいということで考えております。
  70. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 ゆっくり議論してもいいけれども、そういうように問題をわざわざわからなくするよう空言い方をするんだったら、私も言いようがあるのです。第一次の来日は四十七、第二次の来日は六十、第三次が四十五、第四次が六十でしょう、そうでしょう。そして合計二百十二でしょう。それでそのうちの約六割が見つかって、まだ八百十八名残っているというのでしょう。そして毎月毎月五人から十人ずつ北京の大使館にはいろいろな情報が寄せられておるのでしょう。そうしたら、今ある八百十八を毎年やるとしても六十人ずつでは十四年かかるではないか。こういうのを緩慢な虐殺というんだ。国家主権によるところの怠慢というものが民衆に対して打撃を与える典型的な例じゃないの。僕はこれは日本政府けが悪いと言っているんじゃないよ、間違ってもらっては困るけれども。日中両当事者、両政府がそういう人情の機微に的確にこたえないというこのスピードののろさ、これが中国にいる残留孤児たちの神経をかきむしり、そして不適切な対応になっているということ空言っているわけです。何でこんなのろいスピードでやるのか、何でこんなのろくやらなければいけないのか、外務省や厚生省の優秀な官僚機能が山ほどあるのに、民衆に奉仕する姿勢がどうして出てこないのか、そこのところを伺いたい。
  71. 森山喜久雄

    ○森山説明員 ただいま申し上げましたように訪日調査というのを五十六年から始めました関係もございまして、判明率が非常に低かったわけでございますけれども、実は厚生省といたしましては、百八十人のペースをもっと前からやろうということで計画はしておったわけでございますけれども、いろいろな問題がございましてそれが実施できず、ことしも百八十人が百十人しかできなかったという結果になったわけでございます。ただ、今先生おっしゃいましたように八百人余りございますけれども、これは今のペースでいきますと十年かかるというようにおっしゃいましたけれども、そんなにかからないと私は思うのでございます。ただ、この調査は非常にきめ細かくやるものですから、一遍に大量の人を呼んでやるということはできないわけでございます。それで、この方法だけで調査をやるということは確かに時期もかかりますので、例えば厚生省の職員を現地に派遣いたしまして孤児のビデオ撮りをやってくる、そういうものを全国的に流すというような方法も中国側にお願いをして実施して、何とかこの方法を促進していきたいというふうに考えておるわけでございます。
  72. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 大臣、お聞きのような調子でやれば、これは厚生省を代表して言われるわけじゃなくて、森山第一課長としては、現在の仕事について説明したにすぎない。それで、森山さんは政策委員ではないから既存のルール、既存のデータについて今一生懸命報告をされたにすぎない。それを私は叱咤するわけにはいかないわけで、厚生省に文句を言うわけにいかないわけですね。どうしても外務大臣あるいは外務省の皆さんにお答えをいただかなければならない。これはいかに考えてもスピードがのろ過ぎて、現実にある数字に対応しないというところがもう明らかですね。  先日、日本にいる外人記者クラブの諸君と懇談するチャンスがあったら、日本人はサディストだと言うわけですね。なぜサディストなのか。引き取るなら引き取るで早く引き取ればいいではないか、引き取らないのなら引き取らないで明確にすればいいではないか、引き取るのと引き取らないの宙ぶらりんで、NHKで「おしん」のドラマをやっているけれども、「おしん」のドラマと同じように、国民がそれを泣いてリフレッシュメントしておるのではなかろうか、こういう皮肉というか、何とも言えない批評を私は聞いたことを思い出すわけであります。  こんな五、六十名規模で長々とやっている、そして日本に連れてきたら、最後調査の何人かは必ず調査おくれで泣きながら別れていく。そして、滞在期間はわずかに一週間にしかすぎない。そして、その人たちは涙を流しながら別れていく。それをテレビで映して国民が泣いてみせる。そして、こうした問題を放置していく。そして、関係者がみんな緩慢に死んでいくのを待つ。そして、皆殺しをしたら解決をする。これは虐殺ですな、こういうやり方というものは。むしろ調査人数が少ないなら調査人数が少ないのを増員すればいいのだし、増員することができないのならば関係機関に費用を出して委嘱すればいいのだし、中国関係に対して四千億も五千億も経済協力をする実力が我が国にある以上、こうした日中関係の大きな傷跡について処理する費用がないとは私は言うことはできないと思うのです。問題は、交渉能力の問題であり、交渉する精神の問題であり、交渉する気迫の問題であると私は思います。私は、中国側にも責任があるということをこの際、付言しておきまして、この問題に対して各局でもっと知恵を出されたらどうなのか。例えば、先日の新聞報道によれば、残留孤児で中国日本籍を取得して、中国人が自分で日本籍を取得して日本に帰ってきて、そして自分の肉親を捜したケースまで報告されている。司法の道の中にもこうしたルールがある。行政の道の中にも既存のルールがある。あるいは民間団体でも手伝おうという人の余力もあるが、日本政府がもっとそうしたところを取りまとめ、交渉する責任者として登場しなければならないし、このようなレベルを抜本的に変えなければいけない、けたが違うのではないかと私は申し上げておるのです。六十名じゃなくて六百名を、千名ではなくて一万名を処理できないはずがないではありませんか。終戦当時の日本において、引揚者の行方不明者あるいは戦災孤児の行方不明者を当時のNHKは全力を挙げて放送し、年間三万ないし五万という放送を行い続けた実績があるではありませんか。それなのにこのレベルでとどまっている。そんなばかな話はない。行政は民衆の苦悩に奉仕しなければいけない。私はそれは千古の鉄則だと思う。こうしたものについて、今後態度を改めて新たな交渉をする気がおありなのかどうか、私は伺いたい。
  73. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 この問題につきましては、中国も何とか早く解決をしたいということで、中国政府を初めとしまして大変協力をしてくれております。これは日本政府として心から感謝をいたしておるわけでございます。同時にまた、日本政府も、厚生省を中心努力を重ねてきておるわけでございます。それなりの成果は上がっておるわけでございますが、今渡部さんの御指摘のように、我々が見ておりましても本当に歯がゆいような感じがするわけでございまして、やはりもっと満腔の気持ちを持って、日本に帰りたい、生きているうちに両親に会いたい、こういう多くの、まだ残っておる孤児の諸君の期待にこたえて、やはり日本政府としてもできるだけのことをしていかなければならないと私も思うわけでございまして、これはどういうことができるか、外務省だけの問題ではありませんが、各省とも話をいたしまして、この孤児問題の解決のために努力を重ねていかなければならない、こういうふうに私も存じております。
  74. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 重ねて申しますけれども、教科書問題のあった前後、日中間で孤児問題について協議あるいは交渉が途絶した時期がございます。その際に、厚生省あるいは法務省と協力されて中国側とこの問題に対する協議をなさっておられましたけれども、依然として口上書あるいは協定のような取り決めはできていないと承っておりますが、この交渉はどうなっておられるのか。
  75. 橋本恕

    ○橋本(恕)政府委員 御指摘の点につきましては、最近ようやく話し合いがまとまりまして、間もなく口上書の形で公式の合意書を作成し、これを公表する運びになっております。
  76. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 その際はどれぐらいの規模で、人数を今のランクよりもはるかに引き上げる余地のあるような交渉終結になっているのでしょうか、いないのでしょうか。
  77. 橋本恕

    ○橋本(恕)政府委員 先ほど大臣が御答弁申し上げましたとおりに、この問題につきましては、中国側も積極的かつ好意的に日本政府に協力してくれるという基本方針がまずそこにうたわれまして、それからもう一つの問題は、いわゆる日本人孤児が日本に引き揚げてこられる、あるいは一時帰朝にしろ引き揚げてこられるという問題に関連いたしまして、新たな悲劇を中国の側において、つまりそれまでずっと長いこと中国人として中国人の社会に溶け込んで生活しておられた方がいなくなった場合に、今度は逆に中国側において残された方々が不幸にならないように、そういう点を十分に配慮するというような、このもう一つの重要な要素が、やはり双方の協力によって問題化しないようにということが重要な骨子でございまして、ただいま先生が御指摘のような、いまだ身元が明らかになっておりません八百十八名の方々について具体的に何をするということは、この合意の文書にうたわれておりませんが、気持ちの上におきましては、これは日中双方で方向として一日も早く解決するという精神がうたわれているというふうに了解しております。
  78. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私は、新たな悲劇という言葉で、中国側に発生した養父母と孤児との関係を律せられて表明されているのは、中国政府が問題をよく認識をされていると敬意を表したいと思いますが、日本側に引き取ったところのこうした孤児が日本社会になじむための受け入れ態勢というものがない。インドシナ難民に対しては相当規模のシステムが存在するのに、中国のこうした孤児たちに対しては適切な機関がない。これは新たなる悲劇が日々発生していることではないかと思うのです。  もう一つは、中国に存在している日系中国人の扱いの問題であります。私は、前大戦において猛然たる引き揚げを日本政府が強行したのは、諸外国の圧力もあっただろうけれども、住民に与えた打撃というのは大変なものであったと思います。引き揚げるのも気の毒だったし、引き揚げなかったのも気の毒だったという意味で申し上げているわけでありますが、この中国にいる日本人の権益はしばしば守られていない。文化大革命のときは元日系人であったというだけで大々的な抑圧措置がとられたことは、すでに報道されているとおりであります。こうした問題についても、新たなる悲劇が誕生しないように、別の意味の悲劇が誕生しないように配慮をするところが日本政府としてなければならない。この二つの問題を指摘するわけでございますが、いかがでしょうか。
  79. 橋本恕

    ○橋本(恕)政府委員 先生ただいま御指摘の点は全く同感でございまして、特に中国にいろいろな事情で残留することになりました日本人の方々につきましては、これはかねて御承知のとおりに在外邦人を保護するということは外務省の在外公館に課せられました重要な使命でございますので、特に中国におきましても、大使館、総領事館を中心に、先生御指摘のような第二の悲劇が起こらないように、今後とも十分に努力し、かつ気をつけてまいりたいと考えております。
  80. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私は中国籍を持った中国在留日本人の存在と日本籍を持っている中国在留日本人の問題とは話が別だとは思います。しかし、その両者に対して日本の大使館は適切な処置をおとりになっているとは見えない。私はその意味で、在留邦人の権益あるいは中国籍の在中国日本人の権益についても十分な目配りをお願いしなければならないと思いますが、いかがですか。
  81. 橋本恕

    ○橋本(恕)政府委員 これは釈迦に説法でございますが、先生御承知のとおりに最近の日中関係はまれに見る極めて良好な関係にございまするし、それから先ほど安倍大臣も御指摘になりましたとおりに、この問題につきましては中国政府も心から協力するという姿勢をとっておりますので、したがいまして、中国におきまして純粋に日本人であり日本国籍を保持している方々のほか、先生御指摘の中国人、両親、つまり血液は日本人でありながらも中国の国籍を取得して中国人として残留している方々につきましても、現在の極めて良好に推移しております日中関係を前提といたしまして、中国側当局と十分相談をいたしまして、その方々が先生のお言葉をかりますと第二の悲劇とならないように、今後とも努力してまいりたいと考えております。
  82. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 先日の予算委員会中曽根総理は、残留孤児という名称は私は気に入らないと発言され、新しい名称をと何か思いつきを述べられました。ところが、その後で答弁された外務大臣は、途端にまた残留孤児という名前を連呼して答弁されました。御両者の中でアイデアについては差のあるのはわかりますが、私も残留孤児というのが余り適切な表現ではないと思います。ということは残留している孤児というよりも、第一にこの方々はもう成人であります。そしてこの方々は、原則として中国籍を取っておられる方と無国籍状態にある方とあるいは日本籍を期待しかつ皆さんに承認され明示的にあるいは暗示的に日本籍を取得されている方と、三通りが今日本に帰りつつあるいは照会をしつつある状況であります。そうすると、残留孤児などという名称で問題を扱うことは余り適切ではない。特に、中国籍を持たれている方に対してこれは余り適切な問題ではないのではないか、私はそう思うわけであります。したがって、総理とも御相談の上、こうした問題の扱いを、思いつきではなくきちんと名称からそろえていただきたい。その名称をそろえるという作業の中で、法務、外務、厚生、三省のお打ち合わせの凝縮された内容が出てくるのだろうと私は思います。  それからもう一つ、このたび三月に総理は訪中されると伺っております。そして恐らくそれに外務大臣もあるいは外務省の高官も訪中されると思いますけれども、その際、中国の養父母に対する何らかの意見の表明あるいは感謝というものがあってしかるべきだろうと私は思いますし、中国側がその問題を非常に強烈に気にしている以上、それに対する適切な何らかの措置が要るのではないか、口頭だけでは難しい時代になったのではないか、こう考えるわけであります。私は、この問題の措置は大変難しいけれども、日中関係に心を通わせるという意味では、扱いこそ丁寧に十分に考慮されるなら非常に良好なテーマになるのではないかと考えるわけでありまして、この二点につきまして大臣にきちんとした御配慮をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  83. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 残留弧児問題につきまして、今お話しのように残留弧児と今まで言い続けておるけれども、中曽根総理も言っておるように残留邦人、同胞とかそういう形にむしろ切りかえた方が自然ではないか、妥当ではないか、こういう御意見でございます。そういう意見総理を初めあるわけでございまして、しかしこれは関係方面で協議をしてコンセンサスをつくるのがいいのじゃないか、こういうふうに思いますので、今の御意見は私も同感でございます。関係省庁とも相談をいたしまして、政府としての統一した方針を打ち出さなければならない、こういうふうに思います。  それから、この問題について、中国側に対して、総理が訪中するに当たって日本がどういう対応をするかということでございます。日本政府は、総理を初め、我々もこの問題についての中国側の処理に対しましては大変感謝をいたしております。これはしばしば表明をいたしておるわけでございますが、せっかくの総理の訪中でございますので、この点についてもしかるべく十分に頭に置いて、総理とも相談をいたしまして対応をしていきたい、こういうふうに思います。
  84. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 ありがとうございました。以上です。
  85. 中島源太郎

    中島委員長 次に、河村勝君。
  86. 河村勝

    ○河村委員 きょう私は主として日ソ関係、特にソ連に対する経済制裁に関する問題をお尋ねするつもりでありますが、その前に、今、アメリカに対する武器技術供与の新しくできた取り決めについて同僚議員から質問がございましたが、それについて一、二お尋ねをいたします。  先ほどからの御説明で、この取り決めは、武器技術のみに限って、武器技術以外の防衛分野における技術、汎用技術、これについてはこの取り決めに含まれていないということはわかりました。それにもかかわらずこの取り決めの交換公文の中には、最初の項目の方で、この関連で、日本政府は、武器技術以外の防衛分野における技術の日本国からアメリカ合衆国に対する供与が、これまで原則的に自由だった、それはさらに促進されることとなりましょうというようなことをわざわざここに書いた理由はどういうわけですか。
  87. 北村汎

    ○北村政府委員 これは昨年の一月十四日に出されました日本側の「対米武器技術供与についての官房長官談話」にもございますように、「我が国としても、防衛分野における米国との技術の相互交流を図ることが、日米安保体制の効果的運用を確保する上で極めて重要となっている。」こういう認識に基づきまして、防衛分野における技術と申しますのは、これは武器技術をも含めて防衛分野における技術を総称してのことでございますが、そういうもの全部が相互に交流されることは、日米安保体制の効果的運用を確保する上で望ましい、重要であるということが基本的な認識となって、そういう認識に立てば、今後そういう交流が促進されるであろうという見通しを述べたものでございます。
  88. 河村勝

    ○河村委員 こういう取り決めで見通しを述べるというのは余り常識的ではないので、政府がこれについて何らかの責任を負うというのが取り決めの性質であろうと思います。ところがここに「関係当事者の発意に基づき」と書いてありますけれども、これは当然日本側は民間企業ですね。そうですね。
  89. 北村汎

    ○北村政府委員 汎用技術の持ち主は民間企業であると思います。
  90. 河村勝

    ○河村委員 この汎用技術の供与というのは、さっきから問題になったように、武器技術との区別がつきにくくて、そして場合によっては、さっきから議論のように、それが正式な取り決め以外の自由な通路で出ていってしまうという問題もあるかもしれないけれども、同時に、汎用技術をどんどん技術輸出するということは日本企業にとっては必ずしもいいことばかりではないわけですね。これはむしろ日本の大事な先端技術がどんどんアメリカに防衛関係技術という理由で流出をして、それが一般の産業分野に使われてしまう、それによって結局は被害が日本にかかってくることもあるわけですね。だから、そういうものを一体わざわざ政府の名でこれを促進されよう——多分ですが、そうすればやはり政府としてはこれに積極的に介入をして慫慂するという義務がおのずからアメリカに対しては生ずるはずだと思うけれども、その点はどうお考えなんですか。
  91. 北村汎

    ○北村政府委員 御指摘の文言は取り決めの前文に書かれてあるところでございまして、これは対米移転というものの促進ということについて決して日本政府アメリカに対して義務を持つということを定めたものではございません。  それからまた、民間の企業が持っております汎用技術、あるいは武器技術についてもそうでございますけれども、それをアメリカに供与するか否かは、まず基本的にその民間企業の同意が必要であるということでございますので、政府が嫌がる民間企業の技術をアメリカに出すというようなことを行うということにはならないわけでございます。
  92. 河村勝

    ○河村委員 もう一点お尋ねしておきます。  これは恐らくまだ細目取り決めができてないんだからわからないという御返事なんだろうと思いますけれども、さっき公開するかしないかで問題になったこの取り決めの中の項目に「各政府は、MDA協定に従って受ける援助を両政府が満足するような方法で」云々と書いてありますね。第四の(b)項ですね。この「両政府が満足するような方法で平和及び安全保障を促進するため効果的に使用する」ということについては、その後で「他の目的のため転用してはならない。」ということまで書いてあるのですが、一体これはどういうことを頭に置いてつくった取り決めなんですか。
  93. 北村汎

    ○北村政府委員 この第四項の(a)、(b)、(c)は、MDA協定、この取り決めの基本になっておりますMDA協定の中に書いてあることをそのままこちらに持ってきて、これは念のためにこういう歯どめがかかっておる。すなわち、(a)項は国連憲章に矛盾するような使用をしてはならない。それから、(b)項は安全保障を促進するため効果的に使用するものであって、他の目的に使用してはならない。それから、(c)は第三国に移転する場合には必ず供与国の事前の同意を得なければならない。この三つの歯どめがMDA協定の中に書かれてあるわけでございます。同じ文章でございますが、それを一応念のために、強調する意味でここに移して持ってきておるわけでございます。
  94. 河村勝

    ○河村委員 そうすると、その中で「両政府が満足するような方法」、マナーと書いてあるけれども、これは一体どういう意味なんですか。
  95. 北村汎

    ○北村政府委員 これはやはり、MDA協定に従って受ける援助を両政府が、まさに文字どおり満足するような方法で平和及び安全保障に効果的に使用するということで、要するに両政府の意図に反しない方法でということであろうと思いますが、特に「満足するような方法で」というのはどういう意味であるかということは別に具体的にはないわけでございますが、文字どおり私どもは解しております。
  96. 河村勝

    ○河村委員 それじゃこの問題はこれでやめますから、どうぞ帰ってもらって結構です。  外務大臣にお尋ねしますが、イラン・イラク戦争、昨今いろいろな報道が飛び交いまして非常に混乱、報道が混乱しておるのか中身が混乱しておるのかわかりませんが、イランが国境を越えて大規模な進攻を始めたというニュースが入った後で、日本側にとって直接的にはバンダルホメイニが爆撃されて、IJPCが爆撃の被害を受けた。それから昨今はカーグ島の爆撃があったというようなことで、これは後で否定する報道もある。これはもし本当ならばホルムズ海峡封鎖にもつながるような大問題になりますが、外務大臣はイラン・イラク問題については特に関心を持って、また日本両国友好関係にあるというところから働く余地があるわけですね。両国を訪問したり何かしてかなり緊密な体制をとっておられるはずだと思いますが、一体今、この報道で混乱した情勢というのはどういうふうに見ているのか、またどういう情報を持っておられるのか、その辺のところは、あなたはどうお考えですか。
  97. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 イラン・イラクの戦争には、私極めて重大な関心を持っておりまして、我が政府としてもあらゆる情報を収集しておるわけでございますが、すべて明確になっているわけではございません。不明な点も随分ありますけれども、しかし全体的に見ると、まだ非常な危惧はありますけれども、今の両国の衝突の状況は一挙に拡大をして大戦争に突入し第三国がこれに介入する、こういうふうな事態まで差し迫ってはいないというふうな感じでございます。  例えば、カーグ島に対してイラクが爆撃した、攻撃したという報道があったわけでございます。これに対しまして、政府としていろいろと情報を確認いたしましたところ、カーグ島の石油の積み出しは順調に行われておる。何か攻撃はあったかもしれないけれども、非常に軽微なものであった、こういうことで、イラクとして本格的なカーグ島の爆撃には踏み切っていない。イラクは三百機以上の飛行機を持っているわけですから、やるとすれば徹底的な攻撃ができるはずですが、それにはまだ踏み切っていない、こういうふうに判断をするわけであります。  また、イランも国境を越えてイラクに攻撃をかけておるわけでございますが、これもいろいろな状況から、イラクの領土に入っているという面はあるようでありますけれども、しかし、大攻勢といいますか、イラクを屈服させるほどのそういう大規模な攻勢というところまでまだいっているようにも見受けませんわけで、今のところではいろいろと情報が飛び交っておりますが、私たちの入手した限りの情報、そしてまたこれを中心とする分析からすれば、まだ危惧は残っておりますけれども、しかし破局的な状況にいく事態ではないんじゃないか。そして、例えばホルムズ海峡封鎖なんというのが一番大変な事態ですが、そういうところにはまだまだいくような状況ではない。  ですから、そういう間にあって日本としましても、イラン、イラクに対しまして紛争の拡大をやめるために、エスカレーションを防ぐためのこれから外交努力を今後も積極的に続けてまいりたい。これまでもやってまいりましてそれなりの成果が上がったと思いますが、さらに日本としての役割を果たしていかなければならない、こういうふうに考えております。
  98. 河村勝

    ○河村委員 外交努力をおやりになってある程度効果があるということでありますが、これは、多少でも具体的にどのような効果があったというようなそういう事実が一体あるんですか。  それともう一つ。たしか大分前の報道で、あなたは、イラン、イラク両国外務大臣日本に招致をして、そこで直接の対話ができないまでも間接対話といいますか、そういうような方法で何らかの糸口をつかむ努力をしたいというようなこと空言われたという、私は落選中だったから直接聞いたことはないのですけれども、聞きましたが、一体その辺のところはあなたはどういう行動をとりつつあるのか、それをひとつ聞かせてください。
  99. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 少なくともイラン、イラクとの関係、特にイランとの関係で、これは西側諸国はほとんどパイプがないわけですが、日本の場合は非常に関係がいいわけで、特に、私が参りまして政治的パイプもつくってまいりました。これのパイプは相当拡大をしております。また、イラクとの間でも十分な意思の疎通が行われておるわけで、いろいろ問題のときには、イラン、イラクとも詳細に日本政府に対して外交チャンネルを通じて情報の交換あるいはまた説明等をお互いにしておるわけでございます。そういう中で、例えばIJPCなんかについてもイラクが当初攻撃をするということを事前に日本だけに通報してまいりました。これは大変だというわけで日本が強力に働きかけまして、この攻撃を阻止するといいますか、一時見合わせるというふうな成果は確実に上がったことは事実であります。その他、イランのいわゆる自制を求め、あるいはイラクの自制を求めるための日本外交努力はずっと重ねております。例えば中島審議官を私が外務大臣になりましてから派遣をいたしまして、イランの政府外務大臣を初め政府指導者と中島審議官が会いまして、日本の持っておるいろいろな情報も伝えて自制を強く求めた。これもやはりイランをしてその後の情勢判断、そしてまた自制、そういうところにつながっていっているのじゃないだろうか、私はそういうふうに思っておるわけでございます。もちろん日本が仲介とか調停とか、そういう役割を果たす立場にはないわけでありますが、しかし、日本の持っておる特殊な、イラン、イラク両方にいいという関係だけは大いに活用して紛争の解決のために貢献をしていく、平和な環境をつくるために貢献をしていく、こういうことで努力を重ねております。これは日本の国際的役割一つだと思って努力を重ねておるわけでございます。  なお、その一環として両国外務大臣にも実は訪日を求めております。両方の外務大臣とも大体快諾をしておるわけですが、いまの状況で時期については多少微妙な問題があるわけでございます。いずれまた時期がはっきりすれば発表することもできるのじゃないか、こういうふうに考えております。
  100. 河村勝

    ○河村委員 イラン・イラク問題というのは先進国の中で日本けが持つ有利な立場があるのですから、ひとつせっかく御努力をいただきたいと思います。  そこで、対ソ関係の問題なんですが、先般アンドロポフ書記長の葬儀の際に行かれてグロムイコ外相とお話しになった。その報告はさっきも聞きましたから、もう一遍お尋ねをいたしません。ああいう際ですから、そう具体的な話ができる状態でもないでしょうから、それ以上期待することは無理でしょうが、しかし、どういう政権ができるにせよ、チェルネンコ政権というのがどういうような性格を持つか別として、ああいう種類の国の場合には最高首脳がかわる時期というのは何らかの転換のきっかけになるという一般的な原則、原則まではいかないけれども、傾向みたいなものがあるわけですから、そのチャンスをつかんで、米ソ間のことももちろんでありますけれども、日ソ間のこともできることはやるということが必要だろうと私は思うのです。ソ連という国は、こっちがやわらかい姿勢をとったから相手もやわらかくなるという国じゃございませんから、当然領土問題あるいはソ連の極東に対する軍事力の増強、そういうことに対しては毅然たる姿勢で臨んでいかなければなりませんけれども、相互の利害の一致できるような、主として経済問題でありましょうけれども、そうした問題についてはやれることはやっていくという態度が必要であろうと思いますが、外務大臣は一体どうお考えですか。
  101. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日ソ関係につきましては、おっしゃるように領土問題、それから極東におけるソ連の軍備増強の問題といった基本的に対立する問題を控えておるわけでございまして、本当に日ソが和解といいますか、友好関係を確立していくには、私はやはり何といいましても領土問題を解決することが大前提だと思うわけでございます。残念ながらソ連はそれに応じようとしないわけでございます。いずれの日かテーブルに着いて論議をする、そこまでは持っていかなければならぬ、こういうふうに思うわけでございますが、まだ道遠しという感じがするわけでございますが、しかし、それはそれとして、対立は対立として、やはり日ソは隣国関係にあるわけでございますから、今までの冷たい関係をそのままほっておくということは世界の緊張緩和あるいは日ソ間の将来というものを考えるときに決して得策ではない。したがって、やはり対話の道を、主張すべきことは毅然として主張しながら対話の道はやはり拡大をしていくということが大事だろうと思うわけで、そういう意味でグロムイコ外相にも今度日本に来るのが順番ですから強く求めたわけですが、まだまだ条件が整ってないということで消極的でございました。しかし、グロムイコ外相とも対話は進めていくということについては意見の合意を見まして、高級事務レベル会談も早々と設置することにしましたし、あるいはまた経済、文化、人的交流という面についてもこれから拡大していこうということで大体話は合意したわけでございます。文化関係につきましても映画祭を今やっておりますが、これなんかも両国の映画祭を行うことも大体合意に達しつつあるわけで、それから日本議会ソ連の最高会議との議員の交流というのもだんだんと機が熟しておる、こういうことでございますから、私どもは、米ソがああした核軍縮等で中断をしておる、そういう時代だけに、やはりいろいろな面で交流、対話というものを進めていく必要があるということで、これからも努力をしてまいりたい、こういうふうに思います。
  102. 河村勝

    ○河村委員 近年の日ソ貿易の傾向を見ますと、年々減る一方ですね。これは日本が余りソ連から買う物がないということがあるでしょうけれども、そればかりではなくて、どうもヨーロッパ向けに少し傾斜をしているのではないかという傾向が見られるように思うのですね。アフガニスタン侵攻以来、ソ連に対する経済制裁をやっておりますが、だんだん全般的に骨抜きになりつつあるように思うけれども、どうも日本の場合、少しまじめにやり過ぎて損をしている面があるのではないかという気がするわけですね。もちろん西側協調は非常に大事でありますけれども、日本けがばかを見るという手はないわけですね。一体今日本の対ソ連経済制裁というのは何をやっておって、どの程度の効果を上げているのですか。
  103. 西山健彦

    西山政府委員 まず第一に、貿易に関してでございますが、先生御指摘のとおり、確かに一九八三年について見ますと、貿易が輸出入総額で往復約二三・四%前年と比べて減っております。しかしながら、これは八三年に起こりました現象でございまして、実はその前年の八二年は非常に大きな額を記録しているわけでございます。いわゆるアフガン措置というものがとられましたのは八〇年以来でございますので、必ずしもその措置の結果、そういうことになったというふうには言えないかと存じます。現実に減少しました理由を見ましても、その理由は、政治的な理由というよりはむしろ経済的な理由によって説明される部分が多いのではないかと思われます。  他方、第二の御質問でございます我が国の対ソ措置でございますけれども、これには正確に申しますと二種類ございまして、アフガン問題をめぐっての対ソ措置及びその後のポーランドをめぐっての対ソ措置とあるわけでございます。  第一のアフガン対ソ措置につきましては、対ソ公的信用供与についてはケース・バイ・ケースで慎重に検討の上対処する、並びに公的人物交流についてはケース・バイ・ケースで慎重に対応、それからココムにおける高度技術の対ソ輸出の規制につき西側諸国と協力、さらにモスクワ・オリンピック不参加ということがございましたが、それがアフガン措置でございます。  他方、ポーランドをめぐっての対ソ措置につきましては、科学技術協力委員会の開催には当面応じない、日ソ貿易年次協議の開催には当面応じない、在日通商代表部等の拡充については当面検討しない、ソ連買い付けミッションの本邦在留期間の延長については慎重に検討という一つのまとめられる柱がございまして、そのほかに政府としては他の西側諸国のとる措置を損なうことのないように配慮する、さらに国連等種々の国際機関においても他の西側諸国と協調しつつ適切な行動をとっていく、さもにアフガン対ソ措置は維持する。おおむねこういうことになっているわけでございます。  最後のどれだけ効果を上げたかという御質問でございますが、これは我々といたしましては、西側がこういう態度を協調してとったことによって、ソ連があのような行動に出る場合には、それに強い反応があるということを示し得た、そういう意味で効果があったというふうに考えております。
  104. 河村勝

    ○河村委員 現実にアメリカは去年新穀物協定を結んで、一番効き目のある穀物のソ連に対する輸出を新しく決めてしまったし、石油掘削技術の一番高度なものを供与したりやっておるわけですね。イギリスはまた、最近の情報ではICI、インペリアル・ケミカル・インダストリー、あそこが天然ガスをソ連から持ってくるということの見返りに、飼料用の化学合成たんぱくを供与する。これはソ連にとっては大変のどから手が出るようなものですね、穀物不足に悩んでいますから。こういうものをやっているという情報がございます。私は新聞報道等で確認しているだけだけれども、大体これも本当だろうと思うのです。そういうようにほかがどんどん自由化しているのにこっちだけでやっているというのは、どう考えても余り利口でないので、この辺でもって余り拘束を受けずにやるように腹を決めてやったらどうか、こう考えるのですが、いかがでしょう。
  105. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 対ソ制裁措置は、今局長から説明しましたように、アフガニスタンの問題が起こる、あるいはまたさらにポーランドの問題が起こるということで、西側が協調してあの措置を行ったわけでございます。それなりの成果はあったと思うわけですが、しかしこれは最近の状況を見ますと、ソ連も新しい政権ができて新しい展開が起こるかもしれない、アメリカ対話を呼びかけている、こういう状況にあります。我々としては何としても米ソが雪解けといいますか、東西が緊張緩和することが一番期待されるわけでございますから、そうして一つの機運も出ているわけですから、こうした今の対ソ措置の枠組みは、日本だけで決められないので、西側全体で決めていかなければなりませんし、枠組みが大きく変わるとは思いませんから、今すぐこれがどうこうなるというふうにも思いませんが、しかし、これからの米ソ状況東西関係というものを見ながら、これは弾力的に対応をしていかなければならぬ。そして西側全体で対処をしていくべき問題である、こういうように判断をしております。
  106. 河村勝

    ○河村委員 約束事ですから、約束そのものをやめるというのは、これは当然国際的な協議の上でやらなければいかぬでしょうけれども、実際だんだん空洞化して、ほかの方は勝手なことをやっているのに、日本だけ守っているというばかなことはないわけですね。その辺が少し何か妙に遠慮してばかを見ているような感じが強いわけですね。ところが当のアメリカ自体がさっき申し上げたようなことなんですから、ひとつこの辺のところは当然踏み切ってほしい。私はこれを強く要請しておきます。  時間がなくなってしまいましたので一つだけ要請しておきますが、さっき三月の十二、三日に高級事務レベル会議を繰り上げてやるというお話でしたね。その際に、ソ連に抑留されている漁船の問題が一つあるのです。  昨年の八月に色丹島の沖合いの漁場で沖合い底びき網漁船が、領海侵犯の疑いで拿捕されておる。これは、事実は本当は非常に疑問だと私は思いますけれども、とにかく抑留されておって、いまだに機関長、漁労長が抑留されたままで、留守宅は今非常な苦労をしておる。同時に他にも、未確認でありますけれども、六名ほどの漁民がやはり抑留されて帰ってこないのが昨年からことしにかけてございます。高級事務レベル会議というのは、さっき主たる目的についてのお話がございましたが、当面こういう問題があるのですから、ひとつ何とかこれを、こういう時期でありますから、問題を提起して、具体的な解決をしてほしい、そう思うのですが、大臣、いかがです。
  107. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今の御質問、御要請等も十分踏まえて、高級事務レベル会談に臨みたい、こういうふうに思いますが、政府は、北方四島周辺水域における拿捕事件発生に際しましては、その都度ソ連政府に対して厳重に抗議もし、北方領土問題に関するわが国の立場を明確にするとともに、拿捕漁船及び乗組員の即時釈放の申し入れを行ってきております。また、抑留されている漁民の方々についても、その即時釈放について、機会あるごとソ連に申し入れを行ってきているわけでございまして、そういう立場で対応してまいる考えてあります。
  108. 河村勝

    ○河村委員 終わります。
  109. 中島源太郎

    中島委員長 次に、岡崎万寿秀君。
  110. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 私は、まず核兵器廃絶の問題について、政府の姿勢についてお伺いいたします。  御承知のように、十一月に来日されましたレーガン大統領は、この国会で核兵器の廃絶問題について言及されたわけです。この発言に注目しました我が党の宮本議長は、ことしの一月、レーガン大統領とアンドロポフ当時のソ連共産党書記長に書簡を送って、いろいろな意見立場の違いはあっても、核戦争阻止、核兵器廃絶の問題について緊急の提言を行ったわけでありますが、その書簡に対して、二月八日付でアンドロポフ・ソ連共産党書記長から、これは亡くなる直前でございましたけれども、返書が参りまして、そういう、核戦争阻止、核兵器完全禁止という人類的課題について、私も完全に同意するという旨の返書でありました。一方、レーガン大統領の一般教書を見ましても、この中で、ソ連国民に呼びかけるという形で、核兵器廃絶問題について、その方が一層いいんだということ空言っております。     〔委員長退席、石川委員長代理着席〕  米ソ核両大国の首脳がそれぞれ核廃絶の問題を口にし始めたということは、私は非常に新しい事態であると思うのです。核軍拡競争が非常に重大な局面、危険な局面を迎えている今日、この問題についてやはり注目する必要があると思います。先ほど鯨岡さんの質問に答えて核軍縮交渉の問題については言及されましたけれども、しかし、やはり根源的には核廃絶の問題が一層緊急の問題になってきておりますし、国会の決議もございます。この見地に立って、世界ただ一つ被爆国日本政府として、この際、はっきりした外交的なイニシアチブをとる必要があるのじゃないか、そのことについて、安倍外相、いかがでございましようか。
  111. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今御指摘ございましたように、我が国広島など原爆でああした体験を受けておるわけでございます。何としてもあの惨禍を再び人類が受けるということだけは避けなければならぬ、これは国民的願望でもあるわけでありまして、これまでも核廃絶については国連総会等におきまして日本立場を強く主張しております。あるいはまた、広島とか長崎とか、都市を中心とする国民規模での世界的な要請も行われておるわけでございまして、現実的には、残念ながら核保有国は、米ソ中心にして世界に存在をしておる、そしてむしろ核兵器は拡大をしている、こういう状況にあるわけでございますが、戦争を防止して平和を確立する、核の惨禍を再び人類がこうむらないためにも、これはやはりこれから最大の目標として努力をしていかなければならぬ課題であろうと思います。そういう中で日本もあらゆる努力をこれからも傾注してまいる考えてあります。
  112. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 この問題は、一昨年五月の国会決議も全会一致でございましたが、単なる将来の目標じゃなくて、当面の課題として提起しておるわけでございますので、あらゆる手段というのは具体的にお聞きしたいわけでございますが、やはり積極的な姿勢で政府も臨んでいただきたいというふうに考えるわけです。  それに関して、三月に予定しております日ソ協議ですね。ここでは、ソ連に対して、SS20の極東からの撤去について話し合いが行われるというふうに存じますが、一方では、アメリカのトマホーク巡航核ミサイルが太平洋艦隊に配備されるという事態が進んでいますし、そういう状況の中でのソ連への折衝の際に、ソ連の極東の核だけノーで、アメリカの極東への配備はイエスという姿勢では説得力がないと思うのです。したがって、ソ連であろうとアメリカであろうと、日本及び極東における核配備についてはノーと言える、そういう姿勢で臨む必要があると思いますが、これについて、外相、いかがでございましょうか。
  113. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 核廃絶にいたしましても、核軍縮にいたしましても、やはり世界が、特に米ソ両国が同じ立場に立って両方で水準を下げていく、そして最終的には核廃絶というところに持っていく必要があるのじゃないかと思うわけでありまして、一方だけに核廃絶を求め、あるいはまた核軍縮を求めてもそれは現実的でない。やはり核を強力に持っておるところのあの超大国がお互いに水準を低くしていくという努力がまずスタートでなければならぬと思うわけでございます。     〔石川委員長代理退席、委員長着席〕  そういう中にあって、残念ながらソ連がSS20を極東部に展開をしている。百八あったのが百二十五からさらに百四十四にまで拡大しよう、こういう状況にあることは極めて遺憾であるわけでございます。この点については日本としても、何のためにSS20の配備なのか、この高級事務レベル会談でも我々日本考えを主張しなければならぬと思うわけでございます。まず今配備しているソ連のSS20といったそうした核を極東からなくしていく、ゼロオプション、これが一番大事なことでありまして、それがやはりINF交渉をめぐっての大きな目標でなければならない、私はこういうふうに考えておるわけであります。
  114. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 米ソ双方に対して核兵器ノーの姿勢が必要だと思います。  二つ目の問題として、ビキニ被災事件に関して、これもまた基本的姿勢をお伺いしたいのですが、御承知のとおりきのう三月一日は、太平洋ビキニ環礁でアメリカの水爆実験が行われて日本の第五福竜丸が被災をして三十周年に当たるわけです。この結果、二十三名の乗組員が被災しましたし、死の灰をかぶったわけですし、無線長の久保山愛吉さんは、原水爆の犠牲は自分を最後にしてほしいと言い残して亡くなられたわけでございます。  ところが、この問題について二月二十五日付で日本二つの全国紙がアメリカの国防総省筋の文書をスクープいたしました。これは、アメリカの危険区域の設定が本来は東から西の方に風が吹いているという前提でつくられていたにもかかわらず、西から東の方に風向きが変わった、この風向きが変わったということを無視して実験を強行した結果、危険区域外にいた第五福竜丸が被災したんだという事実を挙げているわけでございますが、これは非常に重要な問題であろうと思います。この件について、日本政府は事実を知っていたのかどうか、そういう報告をアメリカ側から受けていたのかどうか、この点についてお伺いいたします。
  115. 北村汎

    ○北村政府委員 御指摘の文書は最近報道されたところでございますが、報道によりますと、八二年四月に機密解除された米国防原子力庁の文書というふうにされております。この文書につきまして現在私ども米側に確認中でございます。  いずれにいたしましても、本件に関する補償問題は一九五五年一月四日付の日米間の交換公文によって決着しておるわけでございます。
  116. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 こういう重大な事実をはっきりさせないで交換公文を結んだこと自体に問題があると思うのです。公表されたアメリカ政府の正式文書によりましても、核開発優先、軍事目的優先のために余りにも人命が軽視されている。これは福竜丸の乗組員もそうですが、マーシャル群島諸島の人々もそうなんです。こういう許せない人道上の問題があったにもかかわらず、これは議事録を調べますと、事件直後、昭和二十九年三月十八日の衆議院の外務委員会でございますが、政府委員の方は、アメリカ側の過失があったと認められるとすれば、アメリカ側に損害補償なりを要求するということは国際慣習上当然であるというふうに答えていましたけれども、だんだんこの姿勢が変わってまいりまして、当時の岡崎外相の場合は、アメリカの水爆実験に協力するというふうな姿勢に変わり、結局は、昭和三十年一月四日の今言われた交換公文では責任問題はあいまいにしたまま二百万ドルぐらいの補償金だけでけりをつけているわけです。ここに問題があると私は考えるわけです。こういう重大な問題が隠され、そういう前提の上に立った交換公文、これは私たちは見直す必要があると思いますし、改めてこの問題でアメリカ側に事実の説明を求めるとともに、またその加害責任についてもはっきりさせる必要があると思いますが、この点、安倍外相、いかがでございましょうか。
  117. 北村汎

    ○北村政府委員 先ほど御答弁いたしましたように、現在この文書について私どもは米側に確認中でございます。それをまず見て検討することが第一かと思います。
  118. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 確認中ということですので、それは確認した上でのことになると思いますが、しかしこれは、発表されました一般新聞の責任においても相当確度の高いアメリカ政府文書であることは事実なんです。それを見ましても、やはり重大な問題が隠されたまま交換公文でけりがつけられた。これは、三十年たった今日もなお遺族や被害者の人々に対して、やはりこの事実が明らかになった上は、政府としてもはっきりした謝罪の意思を表明し、またアメリカに対してもその加害責任を明確にする必要があると思います。最後になりますが、安倍外相、この問題についての基本的姿勢はいかがでございましょうか。
  119. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今局長が申したとおり、やはりまず文書について確認しておりますから、この文書の内容についての事実をまず明らかにするということが第一だと思います。
  120. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 それでいいわけですが、その第一のその次の問題については、明らかになった場合はどうするかということを聞いているわけでございますが、それは明らかになってからでないと言えないわけですか。
  121. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは政府としてはやはり確認をした上でないと何にも申し上げる段階ではございません。
  122. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 事実であるとするならば、責任ある態度をおとりになるかどうか、それについて最後に一言。
  123. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いまアメリカ政府に照会中でございますから、その返答を待って決めたいと思います。
  124. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 終わります。
  125. 中島源太郎

    中島委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時六分散会