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1984-07-17 第101回国会 衆議院 科学技術委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年七月十七日(火曜日)     午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 大野  潔君   理事 小宮山重四郎君 理事 笹山 登生君    理事 平沼 赳夫君 理事 与謝野 馨君    理事 大原  亨君 理事 渡部 行雄君    理事 小川新一郎君 理事 吉田 之久君       熊谷  弘君    保岡 興治君       小澤 克介君    松前  仰君       遠藤 和良君    小川  泰君       工藤  晃君    辻  一彦君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      岩動 道行君  出席政府委員         科学技術庁長官         官房長     安田 佳三君         科学技術庁計画         局長      赤羽 信久君         科学技術庁原子         力局長     中村 守孝君         科学技術庁原子         力安全局長   辻  栄一君  委員外出席者         国土庁土地局土         地利用調整課長 武智 敏夫君         国税庁直税部審         理室長     森田  衛君         運輸省海上技術         安全局技術課長 片岡 栄夫君         参  考  人         (日本原子力船         研究開発事業団         理事長)    井上啓次郎君         参  考  人         (日本原子力船         研究開発事業団         専務理事)   福永  博君         参  考  人         (日本原子力船         研究開発事業団         理事)     野澤 俊弥君         参  考  人         (日本原子力研         究所理事長) 天野  昇君         科学技術委員会         調査室長    曽根原幸雄君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  原子力開発利用とその安全確保に関する件  (原子力船むつ」問題)      ————◇—————
  2. 大野潔

    大野委員長 これより会議を開きます。  原子力開発利用とその安全確保に関する件、特に原子力船むつ」問題について調査を進めます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本件調査のため、本日、参考人として日本原子力船研究開発事業団理事長井上啓次郎君、同専務理事福永博君、同理事野澤俊弥君及び日本原子力研究所理事長天野昇君の出席を求め、意見を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 大野潔

    大野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  4. 大野潔

    大野委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。渡部行雄君。
  5. 渡部行雄

    渡部(行)委員 私は、今までに原子力船むつ」の問題については、参考人からの事情聴取やあるいは実際に原子力船むつ」を視察、調査をしたり、また当委員会で何回か議論をされてきたわけでございます。そういう意味で、もうこの辺で原子力船むつ」の取り扱いについて一定の方向を明らかにすることが大切だと思うわけであります。  そこで、今までの論点を整理してみますと、第一に原子力船開発研究必要性については争いのないところでありまして、おおむね一致してこれを推進すべきであるという主張でございます。そこで問題は、この原子力船開発研究を、原子力船むつ」によってその実験再開するか、それとも「むつ」を廃船にして、現在における最新情報もと陸上段階的に慎重な実験を重ねながら、確信を持ったところで洋上実験に移るべきであるという慎重論立場を採用するかという点でございます。  こういうことをつぶさに検討してまいりますと、まず「むつ」による再開派と申しますか、再実験継続してやるべきであるという方々の今日までの主な主張、その根拠となるところを大臣はどのように受けとめておられるか、今までの参考人主張やあるいは資料等によって得た大臣のお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  6. 岩動道行

    岩動国務大臣 基本的にまず申し上げたいと思いますが、日本原子力平和利用というものは長期的な観点から総合的に計画的に推進されてまいりました。また今後も当然そのような総合的、計画的な推進が必要であると思っております。  原子力船研究開発につきましても、ただいま御発言にもございましたが、私どもは、その必要性については資源のない日本、そして造船国家であるとかあるいは海運国家であるとか、そして貿易国家である、こういったことを総合的に考えますと、原子力開発政策一環として依然として原子力船研究開発は必要である、こういう認識を持っているところでございます。また今日までの多くの御議論もそのようなところにあったと思うのでございます。  そこで、長期的な観点からの原子力船開発につきましては、私どもはどのような方法であれこれを続けていく必要があると考えております。また、いろいろな専門家の御意見、そして国会での諸先生の御意見あるいは民間の御意見、あるいはそれぞれの政党の御意見等、貴重な御意見を十分に承ってまいりました。このようなことは私ども十分に傾聴すべきものとして伺ってまいりましたが、まだ最終的な結論を申し上げる段階ではございません。国会での御審議もまだ終わっていないわけでございます。あるいはまた、各方面の御意見も最終的な結論を出していただくという段階ではまだございません。いずれ近い機会に各方面からの結論もいただけるものと思っております。  いずれにいたしましても、「むつ」を使っての原子力船研究開発ということにつきましてはただいま申したような状態でございますので、私どもは、さらに各方面の御議論、御意見を踏まえまして最終的な結論政府としても出させていただきたい、かように考えているところでございます。そのような考え方でなおしばらく時日をおかしいただきたいと思っているところでございます。
  7. 渡部行雄

    渡部(行)委員 ただいまの大臣の御答弁は、結局まだ結論に達していない、決断を下す時期ではないという趣旨の御答弁でございましたが、一応この「むつ」をそのまま実験をやるかあるいはこれを廃船して新たな段階で見直していくか、このことについては各参考人なりそれぞれの立場でいろいろ資料が提出されてきたわけでございますから、この問題の所在と申しますか、どこにその二つの意見の分かれ道があるのか、ここを把握していただかないと整理のしょうがないと思うのです。そういう点で対立している根本の問題は一体どこなのか、これに対する御認識をお聞かせ願いたいと思います。
  8. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  「むつ」の取り扱いにつきましては、「むつ」の健全性安全性につきましてまだいろいろとこれから問題が起こるのではないかという御懸念、そういうことにも関連いたしまして、今後「むつ」を続けるということには多額の経費がかかるのではないかという点が、「むつ」の研究開発継続するということについて一つの大きな懸念材料になっているわけでございます。さらに、財源的に申しましても、関根浜の港を建設するということにつきまして、まだ大湊実験再開できるのではないかというような御意見も、研究継続に対しては一つの疑問として提示されておるのではないかと考えております。
  9. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そういうことでは答えになっていないのですね。私が言っているのは、科学技術立場でどこが争点になっているかということなんですよ。したがって、実験再開するという人はどういう確信もとでこれを進めるのか、これに反対する方々はどういう立場で反対するのか、その問題点が衝突し合っている接点を明らかにしないと、これは解決できないと思うのです。平行線になってしまうと思うのです。それをどう把握しておるかということです。
  10. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  「むつ」の研究開発をこれ以上継続すべきでないという御議論には、先ほど申しました「むつ」の健全性安全性に疑問を抱いておられる向きがあるということと、それから陸上実験というものを地道に積み上げて船の研究開発を進めた方が、もう「むつ」の炉が古くなっているということからしても健全な道ではないかという御主張がございますし、「むつ」によって得られるデータが限られたものであるなら、むしろ今きれいな、クリーンなうちに廃船する方が所要経費が少なくて済むのではないかということ、さらには廃船するとしても、先ほど申しましたように大湊で誠意を持って説得すれば十分やれるのではないか、したがって、関根浜の港などを設置しなくてもいいのではないかというような御議論もあったかと存じます。  一方、「むつ」の研究開発継続するという側に立ちますれば、「むつ」の健全性安全性につきましては、「むつ」はこれまで十分に遮へい改修さらには総点検を行い、その後の維持もきちっとやっておりますので、健全性は十分確認されておるし、実験再開に先立ちましての十分な点検ステップバイステップ実験によってその安全性というものは十分確保される。それから「むつ」の炉が古いということにつきましては、つくったときは時系列的に言えば古いかもしれませんが、それが備えている基本的性能につきましては、現在も原子力船の主流をなしておりますのが軽水炉でございますし、今得なければならない海上での特有の現象に対する能力、ビヘービア等につきましてのデータは十分得られるということでございます。大湊港の再母港化につきましては、従来のいきさつ並びに現地方々気持ちからしても全く不可能であり、五者協定を遵守して関根浜に回航する必要があるというようなことを申し上げておりますし、それからまた、研究開発継続することに反対の方々からは、外国の技術が非常に進んでいるのだから、その技術を導入したらよろしいではないか、今さら「むつ」の実験をしなくてもよろしいではないか、こういう御議論もあったかと思いますが、これにつきましても賛成の方々は、技術導入というものがそう簡単に受け入れられるものでもなく、そのベースになる技術というものはやはりちゃんと日本国内で自主的に確保しておく必要があるじゃないかというような御意見があったかと思います。  そのような論点が挙げられるかと思います。
  11. 渡部行雄

    渡部(行)委員 石油の枯渇とか将来の問題ではそれほど対立的なものはありませんが、今、遮へい改修原子炉部分安全性点検補修工事が終了したというところで確信を持っていると言われましたけれども、去る十二日の委員会における山川参考人発言の中に、「佐世保で修理、再点検、総点検ということがございましたけれども、そのときも、どうも放射線が漏れた、どこからどんなふうにして漏れたのか、これの科学的な解則をなさったというふうな形跡がない。非常に不十分な形で、臨時的に漂流している船のところで計測なさった、計測の機械も非常に不備であったということも伺っております。それじゃもう一度しっかりとした計測のできる環境の中で検討されて、どんな状況なのかお調べになったらいかがかということも、長崎県でつくりました安全性検討委員会というところにお招きいただきまして、政府委員の方、科学技術庁の方、原船事業団の方に科学者立場技術者立場として何度がお願いしたのでございますけれども、やはり安全信仰と申しますか、そういったことには耳を傾けていただけなかった。非常に残念でございます。」と主張しておられるわけでございます。やっていないのですよ。技術者から見ればやることをやっていない。その中でただ信仰しておる、神を信ずるような気持ちで大丈夫だろうと思っているだけのことなんです。これでは何の科学的根拠にもならないと私は思うのです。そのほか、山川参考人の明らかにしたのは非常に科学的に細部にわたって述べられております。時間がありませんから一々読みません。それはもう既にこの前の速記録を読めばわかることでございます。  そういうふうに専門家から出されたいろいろな問題点というものを、今度は逆に主張する専門家一つ一つそれに対する説得力ある答弁をすることが必要だろうと思うのです。ところが、いつもこの専門家同士がすれ違いをして、そしてそういう中で、一方では原子力船むつ」の再実験をやろうとしており、他方ではこれは日本科学全体に及ぼす重大な問題だと指摘しておる。こういうことについて、私は、科学技術庁はもっと真剣にこれを取り上げなければならないし、またそろそろ方向を明確に出す時期に来ておると思うのですが、その点は大臣いかがでしょうか。
  12. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  ただいま先生から先日の山川参考人のお話を引用されましたが、その際山川参考人がお話しになりました遮へい改修工事について科学的分析が加えられていないのではないかということにつきましては、「むつ」の放射線漏れが起こりました直後に中央から遮へい専門家、原研の研究者、それから設計に携わった技術者等専門家現地に派遣いたしまして、現地におきまして再び出力を上げまして各種測定を行い、各部放射線量測定を行う。そのデータもとに新しい計算コード等で解析をいたしまして、その後モックアップ試験等でその現象を確認し、改修等方法についても確認をしたということでございまして、その結果は専門家の御意見として政府検討委員会でも検討しておりましたし、その結果をさらにいわゆる大山委員会においても御検討いただいて、やはり中性子線ストリーミング現象による放射線漏れであるということを確認しておるわけでございます。我々としては、そういう専門家間の御議論は十分にいただき、いろいろな施策を現在まで進めてまいっておるわけでございまして、今後ともそういう科学技術的問題につきましては専門家の御意見を十分に拝聴してまいりたいと考えておる次第でございます。
  13. 渡部行雄

    渡部(行)委員 それでは、実験再開後に再び事故が発生した場合は一体その責任はだれにあるのか、ここを明確にしていただきたいと思います。
  14. 中村守孝

    中村(守)政府委員 原子力船むつ」につきましては、先ほど来申し上げましたように遮へい改修、安全総点検補修工事、その後の入念な維持管理ということで、現段階においてその健全性というものは確保されておるものと考えておるわけでございますが、実験再開というような場合になりますれば、実験再開に先立ちまして各種試験圧力容器開放点検あるいは冷態停止温態停止状態における機能試験等を行い、さらにそういうことで各部に異常ないということを十分にチェックをいたし、かつその出力上昇試験に当たりましては、当然のことながら、ゼロ出力から徐々に各段階各部性能等を確認しながら出力を上げていくということで、ステップバイステップで安全を確認していくということでございます。各部分につきましては、例えば各都の部分的なパーツにつきましては、若干異常があるようなことがこの点検の過程において見出されることは全くないとは言えないわけでございますが、そのような入念な点検チェックによって周辺に影響を与えるようなことはもとより、大きなトラブルを起こすことのないように万全を期してまいるということは当然のことでございます。まず、事故が起こったらどうするかというよりか、私どもといたしましては事故を起こさないということで、入念なステップバイステップによる点検、さらに試験、そういうものを積み上げてまいりたいと考えておる次第でございます。
  15. 渡部行雄

    渡部(行)委員 私はその場合の責任はだれにあるのかと聞いているのですよ。その責任はだれですか、大臣。——何で大臣が答えない。
  16. 中村守孝

    中村(守)政府委員 責任と申しましても一概になかなか言えない。どういうトラブルなりが起こったかということによって、その原因によって出てまいるわけでございますので、今の段階で想定できない状況についてお答えはいたしかねるということでございます。
  17. 渡部行雄

    渡部(行)委員 あなたが答える筋合いじゃないんだよ。この原子力船むつ」の再開決定して事故が発生した場合の責任はだれがとるのか、こういうことなんですよ。これは一事務局がやるべきじゃない。そしてあなたの答弁は、もう既に「むつ」の再実験開始決定したような論点に立っているんだね。大臣が全然まだ見当をつけていないのに事務局の方で「むつ」をそのまま継続実験していくような発言は、これは穏当でないですよ。大臣、ひとつこの責任所在を明らかにしてください。
  18. 岩動道行

    岩動国務大臣 まず御質問は、実験を開始して事故が起こったらその責任についてどうするかということでございますが、私が冒頭に申し上げましたように、「むつ」による試験研究をするのかしないのかという結論がまだ出ておりません。したがって、この段階継続前提とした責任問題を論ずるのはまだいささか早いのではないかと思います。ただ、そのような継続をするという決定をすること自身は私の責任であります。そして万全の体制で進むということも、私の責任において決定をすることでございます。
  19. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そこで、確かに今決めていないのだから、決めたことを仮定して言うのはおかしいかもしれません。しかし、一応これをやろうとして進めてきたことには間違いないわけで、そういうものを前提とした際に、万が一洋上事故が起こったと仮定した場合に、そのときの対策はどういうふうにお考えでしょうか。
  20. 井上啓次郎

    井上参考人 お答えいたします。  ただいまの御質問は、実験再開して、洋上出力上昇試験または実験航海をやる場合の故障の問題であろうかと思います。これは技術的に申しますと非常に予測もしがたいのですが、やり方としましては、洋上実験では二〇%以上を予定しております。したがいまして、故障という場合にはエンジンがとまるわけでございますので、その場合の用意としましては、船をチャーターして引き船ができるようなことも考えなければならないと思っております。
  21. 渡部行雄

    渡部(行)委員 時間がありませんから総括的に私の考え方を申し上げますと、今までの論議の中では、とても実験再開によって新たなデータを得ることは困難だろうと思います。しかも、全然事故を起こさないようにというその希望的観測はわかりますけれども、実際にそれに対する確信がありません。そしてまた、今までのこれを廃船すべきだという学者や技術者意見によれば、材料等に対しても相当の改良がなされてきている今日、できたのが今から十年前、設計を合わせると二十年前の原子炉によって実験をしても、そこから新しいデータは望めない、こういうことをはっきり言っておるわけでございます。したがって、急がば回れで、結果は世界最新の構造と材質を持った、そういう安全性が保証された原子力船を生み出すことの方がより重要であるという趣旨のことが述べられておりまして、私もこれに同感であります。  古いものから新しいデータを得るという試みはもう捨てて、むしろ少し遅くともゆっくりと陸上から新しいものをつくって、しかも今は材料革命が進んで、今から十年前と比べると問題にならないほど改良されておるわけですから、そういう世界の先端の情報を集めながら新しい実験に取り組み直す、そういうことを私は主張するものであります。  これに対する大臣の御所見を最後にお伺いいたしまして、時間が参りましたから私の質問を終わりたいと思います。
  22. 岩動道行

    岩動国務大臣 貴重な御意見として承りました。
  23. 渡部行雄

    渡部(行)委員 終わります。どうもありがとうございました。
  24. 大野潔

  25. 小澤克介

    小澤(克)委員 「むつ」に関連して、引き続いてお尋ねいたします。  まず先般、六月の二日から十七日というふうに聞いておりますが、科技庁の石渡事務次官海外出張のようでございますが、これはどういう目的で行かれたのでしょうか。
  26. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  今回の原子力船海外調査というのは、原子力船むつ」の取り扱いに関する検討一環として、海外におきます原子力船研究開発実情調査及び関係者との意見交換を行うという目的で行われたものでございまして、自由民主党の検討委員会検討政府意見も聞きつつ行うとされておりまして、海外調査に当たりましても事務次官党調査団に同行して、その調査のお手伝いをさせていただいたということでございます。
  27. 小澤克介

    小澤(克)委員 念のため伺いますが、これはもちろん官費による公的な出張ということですか。
  28. 中村守孝

    中村(守)政府委員 そうでございます。
  29. 小澤克介

    小澤(克)委員 解せないのですけれども、この時点で科学技術庁事務レベルのトップの方が改めて西ドイツ、フランスそれから米国と、ここに何か調査しなければならない事柄があったのでしょうか。
  30. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  もちろんいろいろな情報というものにつきましては得られるものは得ておりますが、やはり実地に参りまして実際の状況をつぶさに見、また向こうの方々の御意見をちょうだいするということが、この「むつ」という問題の大きさにかんがみまして必要であるという判断をいたしたわけでございます。
  31. 小澤克介

    小澤(克)委員 先ほど局長お答えにもちょっと出ましたけれども、これは端的に言って自民党党派遣調査団に同行した、こういうことになるわけですね。
  32. 中村守孝

    中村(守)政府委員 それも一つの大きな目的でございます。
  33. 小澤克介

    小澤(克)委員 この自民党調査団とは、日程あるいは調査先等も全く同一であったわけでございましょうか。
  34. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  必ずしもずっと御一緒ということではございません。
  35. 小澤克介

    小澤(克)委員 そうすると、具体的にはどういうところで一緒であったのか。
  36. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  自民党先生方が御調査なさったところには、原則として次官も御一緒いたしております。
  37. 小澤克介

    小澤(克)委員 まあ党派遣であろうと、特に国会議員がいろんな調査に赴くような場合に在外の国の行政機関にいろいろ御便宜を図っていただくというようなことはこれまでにもよくあることだろうと思いますし、それ自体結構なことだろうと思います。また、国内などで議員が何らかの調査に行くような場合に、お役人の方に同行願うということもないわけではないようですが、二週間以上に及ぶ海外出張党派遣調査団にずっと同行する、これはどう考えてもいかがかと思うし、またそのような国家予算の使い道というのにも問題があるのではないかと思うのですけれども、こういう海外出張というのも行政行為の一端だろうと思いますが、どういう法令上の根拠に基づいて行われたのでしょうか。
  38. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  原子力船むつ」の取り扱いの問題につきましては、科学技術庁が従来原子力政策一環として進めてまいった重要な施策でございますし、これにつきましての御議論国会を初め広く御議論されているときでございまして、科学技術庁としては非常に大きな問題でございますので、やはり念入りな調査実情の把握ということが非常に重要なことと考え、その調査に参加をしたということでございます。
  39. 小澤克介

    小澤(克)委員 行政行為でしょうから、どういう法令上の根拠によって行われたのか、重ねてお尋ねします。
  40. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  原子力政策の企画、立案、推進というのが科学技術庁一つの大きな仕事でございますので、その一環として行ったということでございます。
  41. 小澤克介

    小澤(克)委員 この点はこの程度にとどめますけれども自民党が公党としての一つの方針を出そうとして海外委員を派遣し、来月の二日にも結論を出そう、こういう重大な時期でございますので、そういう際に、若干の便宜を図るということであれば特に問題ないと思いますけれども、科技庁の事務レベルのトップの方が二週間これにべったり同行して、その間にいろいろ働きかけをしたというふうに伺っております。これは、考え方によっては公党に対する干渉にもなりかねない。また、こういうことに国家予算を使うというのも若干疑問があります。この点について疑問、疑惑を持たれないように、ひとつ御注意願いたいと思います。  次に、放射線漏れに起因しまして遮へい改修工事というのが行われたわけですけれども、これについての瑕疵の担保期間、これが先月末あたりで切れそうだというところまでせんだってお尋ねしたのですけれども、その後、この保証期間についてはどういう手当てがなされましたでしょうか。
  42. 井上啓次郎

    井上参考人 お答えいたします。  遮へい改修工事の瑕疵担保につきましては、先生の御指摘のように先月の二十九日に期限が切れますので、事業団といたしましては、相手であります三菱重工業及び石川島播磨重工業に対しまして期間延長を申し入れていまして、いろいろ紆余曲折がございましたが、結論的に申しますと一年間延長するということで合意に達しております。
  43. 小澤克介

    小澤(克)委員 遮へい工事を行う時点での契約で瑕疵担保の範囲等についていろいろな約束が行われたようですが、その内容そのままに一年間だけ延長した、こう伺ってよろしいですか。
  44. 井上啓次郎

    井上参考人 趣旨としましてはそのとおりでございます。
  45. 小澤克介

    小澤(克)委員 そこでお尋ねしますが、この瑕疵を担保する範囲は何らかの限定がございますでしょうか。
  46. 福永博

    福永参考人 先ほど先生がリファーなさいました契約書の瑕疵担保条項というのがございます。その担保の条項の中に責任の範囲といったものが書かれておるのでございます。
  47. 小澤克介

    小澤(克)委員 その内容なんですけれども、どういう範囲内で担保する、メーカー側が責任を持つということになっているのでしょうか。
  48. 福永博

    福永参考人 個々の問題はございますけれども、全般的に申し上げますと、今回の遮へい改修工事に当たりましては、基本設計それから遮へい性能に関する事柄、これは事業団がみずから実施いたしております。その事業団がみずから実施いたしました基本設計遮へい計算に基づきまして、三菱並びに石川島播磨でございますが、両メーカーは製作、設計をし、施工をしたわけでございます。したがいまして、それぞれに責任を持った範囲を担保しなければならないわけでございます。  結論的に申しますと、基本設計遮へい性能に関する事柄は当事業団、それからそれに基づく製作、施工に関する部分はメーカーというふうに考えているわけでございます。
  49. 小澤克介

    小澤(克)委員 私の方でちょっと拝見した資料によれば、「工事に経年変化による劣化、欠陥を除きかしが発見されたときはこという除外条項があるようですが、これはこのとおりですか。
  50. 福永博

    福永参考人 経年変化による劣化等ということは、先生御指摘のとおりでございます。
  51. 小澤克介

    小澤(克)委員 それで、その意味なんですけれども、これは補修工事に限定しての経年変化による劣化、欠陥なんでしょうか、それとも「むつ」建造時からの経年変化による劣化、欠陥、それらも含む意味なんでしょうか。
  52. 福永博

    福永参考人 これは遮へい改修補修工事でございますから、当然のことと存じますが遮へい改修に限定しての事柄だと考えております。
  53. 小澤克介

    小澤(克)委員 そうしますと、最初の契約では二十四カ月、要するに二年なんですね。今回また一年延びたということなんですが、二年や三年で経年変化による劣化、欠陥を生ずる、そんな補修工事というのがあり得るのでしょうかね。
  54. 福永博

    福永参考人 確かに先生お話しのように、二年間で経年劣化ということはまあ一般的には考えられないわけでございます。しかし、この補修工事をいたしました際に、若干ではありますけれども電気関係の計装とかそういうものがございます。それと話がやや理屈っぽくなりますが、通常一年という保証期間を設けるわけでございますけれども、それを二年にしたというような関係もありまして、一年より二年の方が経年変化というのはあるというようなことは理屈の上では言えるわけでございます。そういったことを想定しまして、通常契約書に盛り込まれる文言を盛り込みまして、メーカーの責任範囲をより明確にしたというふうに御理解願いたいと思います。
  55. 小澤克介

    小澤(克)委員 機械物ですから、生菓子じゃないのですから、二年や三年で経年変化というのはあり得ないのじゃないかと思いますし、もしその程度の危惧があるということになると大変なんじゃないかと思うのですけれども、本当に二年や三年で経年変化があり得るという想定に立ってこういう契約を結んだわけですか。
  56. 福永博

    福永参考人 ただいまも申し上げましたように、二年で経年変化というのは一般的には考えられないわけでございます。それで、ただいま申し上げましたように、むしろ一般的な契約の条項といったようなことで盛り込んであるわけでございまして、二年で経年変化するものあるいは経年劣化するものがあるからということを想定して書いているわけではございません。
  57. 小澤克介

    小澤(克)委員 それを聞いて若干安心しましたけれども、次に、先ほどのお答えにもありましたが、「基本設計の不備に基づくかし。」は、やはり除外といいますかメーカーは免責される、こういうことになっているようです。念のため伺いますが、この補修工事についての基本設計、これは事業団において行ったわけですね。事業団の責任においてということじゃなくて、実際の設計というその行動がまさに事業団側の人間によって行われたのでしょうか。
  58. 福永博

    福永参考人 基本設計を実施しましたのはもちろん事業団でございます。しかし、実施するにつきましては事業団がみずから実施いたしましたけれども、それにつきましては、例えば原子力究所でございますとか船舶技術究所でございますとか、そういった方面専門家方々のお知恵もおかりし、遮へい実験など実施いたします際は原子力究所の設備をお借りするというような形で進めてまいったものでございます。
  59. 小澤克介

    小澤(克)委員 「むつ」建造時においては、設計仕様書のたぐいをほとんどメーカー主導という形で行っていた。そういうことで、事業団にも責任があるというのが政府側の最終的な答弁でございましたけれども、今回についてはそういう補修工事に関してメーカー主導で行われたということはございませんでしょうね、念のために伺います。
  60. 福永博

    福永参考人 本船の工事を進めます際に、ただいま先生おっしゃいましたような、責任の明確化というものがはっきりしていないではないか、あるいは仕様書のたぐいがメーカー主導型になっておったではないか、いわゆる大山委員会でこういう御指摘があったわけでございます。そういう背景も踏まえまして、今回はただいま申し上げましたように、基本設計遮へい性能に関することは事業団、製作、施工に関することはメーカーということではっきりと責任を区分して、それぞれに責任を持つ、こういうことに取り計らったわけでございます。
  61. 小澤克介

    小澤(克)委員 質問しているのは責任所在じゃなくて、実際にメーカー主導という形で行ってはいないかと、こう聞いているわけです。
  62. 福永博

    福永参考人 ただいま申し上げましたように、事業団は基本設計遮へい性能についてみずから実施いたしました。
  63. 小澤克介

    小澤(克)委員 そうすると、基本設計については、仮に問題が起きた場合は事業団の責任である、そういうことが明確になったと思います。かつ、この点については契約上もメーカーには責任を問えない、そういうことだろうとお聞きいたします。  それから次に、先ほども出ました「遮蔽性能に関するかし。」これもどうなるのですか。基本的には事業団の責任、つまりメーカーは免責される、こういうことになるわけですか。
  64. 福永博

    福永参考人 先ほど来、私申し上げておりますように、遮へい性能に関してはメーカーは免責でございます。
  65. 小澤克介

    小澤(克)委員 遮へい性能のうちでも、ただし製作、施工の欠陥に起因する瑕疵はメーカーの責任の範囲内になるわけですね。
  66. 福永博

    福永参考人 製作、施工に関する部分はメーカーの責任でございます。
  67. 小澤克介

    小澤(克)委員 そうすると、製作、施工の欠陥を除いたその他の遮へい性能に関する瑕疵というのは、どういうことに起因する場合が想定されますでしょうか。
  68. 野澤俊弥

    野澤参考人 お答えいたします。  我が社の提起いたしました基本設計に基づいたとおりに物が所定の位置にきちっと座っている、それ以上の遮へい性能というのは事業団の責任である。ただしそれが、例えば運転中に物がずれたとかあるいは振動によって食い違いが生じたとか、そういうことによって、据えつけがうまくなかったものだからそういうことが起きたという場合にはメーカーの責任になるということでございます。
  69. 小澤克介

    小澤(克)委員 次に、シリコン遮へい体に関しては何か特に免責の範囲が決められているのでしょうか。
  70. 福永博

    福永参考人 シリコン遮へい体の場合には特記がございまして、「シリコン遮蔽体の施工に関しては、事業団が認めた施工法に基づき施工された場合のかじ。」これは免責するということが特記事項としてございます。
  71. 小澤克介

    小澤(克)委員 現実にこの遮へい工事に当たっては、シリコン遮へい体の施工については事業団が施工方法について指定をしたわけでしょうか。
  72. 福永博

    福永参考人 これは事業団が施工法について指定をして、その施工法に基づき施工されておる、こういうことでございます。
  73. 小澤克介

    小澤(克)委員 そうすると、事業団が認めたというか指定した施工法どおりに施工されていれば、逆に言うとその事業団が指定した施工法にもとっている点があればメーカー側の責任、こういうことになるわけですね。
  74. 福永博

    福永参考人 そのとおりでございます。
  75. 小澤克介

    小澤(克)委員 それから、支給品の不備については免責事例になっておりますか。
  76. 福永博

    福永参考人 事業団が支給しました支給品につきましても免責でございます。
  77. 小澤克介

    小澤(克)委員 事業団の方で支給した支給品というのは相当いろいろあるわけですか。
  78. 福永博

    福永参考人 IHI、三菱それぞれにつきまして、IHIの方は四件でございます。三菱の方につきましては数件ございます。
  79. 小澤克介

    小澤(克)委員 一年延びたということはそれ自体結構だと思いますけれども、余りにも免責の範囲が広くて、これでは実際にメーカーが責任を負うという場面が具体的になかなかイメージとして浮かばないのですが、どういう範囲になりますかね。
  80. 野澤俊弥

    野澤参考人 先ほどお答えしましたように、基本設計どおりに物が据えつけられておりましても、運転中に振動、動揺によってそれがずれたりギャップが広がったり、そういったような場合にはメーカーの責任になるということ」でございます。
  81. 小澤克介

    小澤(克)委員 基本的にはといいますか、いろいろな部品の取りつけ等の不備とかそういった施工の点を除けば、基本的には事業団の責任といいますか、メーカーには責任を追及できないということになろうかと思いますが、そういう理解でよろしいでしょうか。
  82. 井上啓次郎

    井上参考人 瑕疵担保という今の問題点で免責が多いじゃないかという御指摘でございますが、これは基本的には日本技術でございますが、非常に未経験のところ未開拓のところがかなりありまして、そういうふうな意味では、事業団が最初に基本設計をお出しして、特に方法論までお出ししてメーカーにお願いをしたわけでございます。したがいまして、その範囲というものは非常に限定されておる。先生の御指摘のとおりでございますけれども、これは事業団といたしましては、今お話がありましたような瑕疵がないということを信念を持って施工したと考えておるのでございまして、その点は今後の実験によって十分慎重にチェックをしていきたいと考えております。
  83. 小澤克介

    小澤(克)委員 一年延長ということでございますが、一年以内に実際に瑕疵が発見され得るような形での試験ということを当然想定しているわけでしょうか。
  84. 井上啓次郎

    井上参考人 遮へいの瑕疵を発見するということにつきましては、原子炉が連鎖反応を起こしまして中性子が出るということが前提でございます。したがいまして、そういう事態がない限りはその瑕疵担保の問題は起こらないわけでございまして、今先生御指摘の一年の間にそういうことがあるかということにつきましては、これは先生方も御存じのように「むつ」はどうあるべきかという全体計画が今後示されることでございまして、事業団としてはいかなる場合でもこれに対応するような態勢で進めたいと考えております。
  85. 小澤克介

    小澤(克)委員 この一年延長というのも暫定的なもの、こういうことになりましょうか。
  86. 井上啓次郎

    井上参考人 御指摘のとおりでございまして、同意書には、一年の期限が来ない前に誠意を持って協議をするということになっております。
  87. 小澤克介

    小澤(克)委員 この問題もこの程度にとどめますが、二年や三年で経年変化による劣化、こういうことをあらかじめ想定して、それについてはメーカーは責任を負わないとか、これで果たして補修工事の名に値するのかどうか大変疑問を持つわけです。実際に船に乗り組む方なんかは、こういう条項を見たら大変不安に思うのじゃないかと思うのです。先ほどのお話ではまあ実際にはあり得ないだろうということなんでそう伺っておきますが、非常に不安がぬぐえないということを指摘しておきたいと思います。  次に、関根浜の用地買収の件でございますが、防風林の補償ということで金銭の支払いがあった、これ自体は間違いないことでしょうね。
  88. 井上啓次郎

    井上参考人 防風林と申しますのはいわゆる共有地に植林されたものでございまして、ただいま御指摘のように立木補償金といたしまして五月四日、五千四百七十万円支払ったものでございます。
  89. 小澤克介

    小澤(克)委員 この防風林というのは何から何を守っているのか。まあ防風林ですから風から守っているのは当然だと思いますが、何を守っていた防風林なんでしょうか。
  90. 井上啓次郎

    井上参考人 御案内のように関根浜のあの土地は高台になっておりまして、一応、中にはいわゆる畑がございます。したがいまして、そういうものを保護するといいましょうか、潮風から守るという趣旨で植えられたものでございます。
  91. 小澤克介

    小澤(克)委員 そうすると、個々の立木の価値に着目して補償がなされたということではないわけですね。
  92. 福永博

    福永参考人 防風林でございますので、もともと防風を目的として植栽された。つまり言いかえますと、その木を将来用材として売却して利益を得る、こういうことではないわけだと思います。したがいまして、先生もごらんいただいたかと思いますが、ああいった厳しい自然条件で植栽するためには相当の費用がかかっておるであろうと判断できるわけでございます。その植栽に要した費用というものが積算の根拠になっているわけでございます。
  93. 小澤克介

    小澤(克)委員 念のために伺いますが、単有地に関しては立木補償ということで、これは一本幾らという形での補償が出ているわけですね。
  94. 福永博

    福永参考人 そのとおりでございます。
  95. 小澤克介

    小澤(克)委員 立木は本来、土地の定着物として土地所有権そのものに含まれているわけです。ただ、そうは言っても、用材としての取引価値があるものについて土地から離れて独立の経済価値があり、かつ取引される慣習があるものについては、土地とは違って法的な権利の客体になる。そういうわけですから、単有地の立木について一本幾らという補償をしたのはよくわかるのですが、防風林についてはそういった土地から離れた独立した経済的価値というのは見出せないのじゃないかと思うのですが、この点いかがでしょう。
  96. 福永博

    福永参考人 先ほど申し上げましたように、用材として売却して利益を得る、そういう経済的価値というものは防風林ですからないわけでございます。したがいまして、私どもの評価は防風という機能に着目した評価をしておる、こういうことでございます。
  97. 小澤克介

    小澤(克)委員 そうだとすれば、それは土地の機能そのものじゃないですか。
  98. 福永博

    福永参考人 土地と立木を先生がおっしゃいますように一体として売買する、こういうこともあるようではございますけれども、私どもが実施しておりますのは、他の公共事業等で行われております例に倣いまして、土地は土地、立木は立木ということでそれぞれに補償額を算定しておるわけでございます。
  99. 小澤克介

    小澤(克)委員 それは、結果そうしたというだけで、全然答えになっていないわけですね。  要するに、防風林としての機能に着目したということであれば、これは防風林用地というその土地の機能そのものなんですよ。畑地は畑地として経済的価値が評価されますし、市街地は市街地として評価されますし、防風林地帯は防風林地帯として経済的な価値が評価されますね。土地の機能そのものであれば、当然土地価格に含めて考えるのが当たり前じゃないかと思うのです。
  100. 福永博

    福永参考人 先生のような御意見もあり、またそういう取引も行われていることは事実であろうと思います。しかし私どもは、先ほど申し上げましたように、公共事業の一般の例に倣いまして実施したということでございます。
  101. 小澤克介

    小澤(克)委員 だから、その根拠を聞いているわけですよ。防風林としての土地から離れた独立の経済的価値がないのじゃないか。その辺についての御見解を伺っているわけです。
  102. 福永博

    福永参考人 ぴったりしたお答えになるかどうかわかりませんが、先ほど理事長からもお答えいたしましたけれども、この後背地と申しましょうか後ろ側にある土地を農地として活用しようというようなことで、当初防風林として地元で植林をなさったということでございます。したがいまして私どもは、繰り返すようでございますが、先ほど申し上げたような考え方で補償をしたということでございます。
  103. 小澤克介

    小澤(克)委員 結局、防風林の何に、どういう経済的価値に着目して取引をしたのですか。つまり、防風林代金の対価は一体何なのですか。
  104. 福永博

    福永参考人 現在の防風林の実態を私どもが委託いたしております土地開発公社が調査いたしまして、その実態が防風的な機能を十分果たしておる、こういうことで算定しているわけでございます。
  105. 小澤克介

    小澤(克)委員 ですから、その防風的な機能をどう経済的に評価して算定したのでしょうか。
  106. 福永博

    福永参考人 経済的な評価と申しますか、一本一本がどれくらいの木でどういう価値があるか、こういうことではございませんで、現場に植栽して育て上げるのにどれくらい費用がかかったであろうか、こういう計算をしたわけでございます。
  107. 小澤克介

    小澤(克)委員 そうすると、木を植えるのに要した費用、労賃や苗木の代金、そういうことから積算したわけですか。
  108. 福永博

    福永参考人 苗木や労賃の費用も当然そうでありましょうし、それから維持管理して育てていく、こういう費用も見ておるわけでございます。
  109. 小澤克介

    小澤(克)委員 先ほどお認めになったように、それを用材として伐採するという趣旨のものではないということになりますと、苗木を植えたりいろいろ労働をつぎ込んで防風林として育て上げたということは、そもそもとりもなおさず防風林としてのその土地の経済的価値がそれによって増した、こういうことになるわけでしょう。山を開墾して地方の豊かな畑をつくった、その畑は毎年農作物を産出する、そのことによってその土地の経済的価値が非常に増すわけですよ。毎年農産物をもたらす、そういうアウトプットがある。そのことを含めてその土地の経済的な価値が増し、評価されるわけですよ。防風林についても私は同じだと思いますよ。土地の価値そのものが経済的評価が増す。したがって、その土地を売買するに当たっては、防風林としての機能も含めて、さらにはそういう機能を有するに至ったこれまでのいろいろな労働等のつぎ込んだものも含めて、土地の価値そのものとして評価されるんじゃありませんか。
  110. 福永博

    福永参考人 先ほども申し上げましたけれども、そのようなお考えの方もあるわけでございます。しかし私どもが実施しましたのは、土地は更地として幾ら幾ら、立木は防風林あるいは普通の立木それぞれに、算定の仕方は違いますけれども算定した、一般的な公共事業の例に倣った、こういうことを先ほど来申し上げているわけでございます。
  111. 小澤克介

    小澤(克)委員 そうすると、逆に聞きましょう。土地代金として平米六百六十円ですか、これはどうやって算出したのでしょう。
  112. 福永博

    福永参考人 六百六十円と申しますのは山林原野の場合でございます。これは、鑑定士の鑑定評価をちょうだいしましたし、専門家である土地開発公社の意見、さらには県の御指導等も仰いで決めたわけでございます。
  113. 小澤克介

    小澤(克)委員 その鑑定ですけれども、当然この土地は防風林である、防風林という機能を果たしている土地であるということを前提に鑑定評価をした結果六百六十円、こういうことになったわけでしょう。
  114. 福永博

    福永参考人 鑑定評価に当たっては、当然現地に一番精通なさっている方が実施されたわけでございますから、そういう考え方も勘案してのことだと思います。
  115. 小澤克介

    小澤(克)委員 まさに防風林としての機能を前提に土地の評価をしているわけですよ。そのほかに防風林それ自体による補償というのは、私は根拠はないと思います。先ほどから言いましたように、本来土地の定着物ですから土地そのものなのですけれども、土地とは離れた経済的な価値があり、かつ土地とはやや離れて、例えば一山幾らの山林を売買するということはありますね、そういうふうな商習慣がある。そういうものについて土地と別個に評価する、これは私はあり得ることだと思いますけれども、伐採をして用材にするということの全くない防風林について、防風林として独立に評価し、その対価を払うということは、どう考えても理屈として成り立たぬと思うのですが、そう思いませんか。
  116. 福永博

    福永参考人 鑑定の問題かと思いますけれども、私ども考えておりますのは、先ほども申し上げましたが、土地は更地として考えて評価するわけでございます。それから、先生のようなお考え方もあるいはあるのかもしれませんが、先ほど申し上げましたように、公共事業の場合はたくさん地権者がいらっしゃいますから、不平等にならないように定着物を除いた更地の価格をまず求めまして、それと同じような条件にある土地については同一の価格でやろう、それで、定着物につきましてはそれぞれの実態に合わせた補償を算定する、こういうのが一般的でございまして、事業団の場合もこれに倣っている、こういうことでございます。
  117. 小澤克介

    小澤(克)委員 更地という用語は、意図的に極めてあいまいに使われておると思いますよ。更地というのは、上物がある場合、土地とは別の経済的価値があり別に取引される、典型的なものは建物ですけれども、そういうものがある場合に別々に評価するが、そういう建物がない状態を更地という。そもそも土地と建物が別々の物件として取引されるのは、日本が非常に特殊なんですよ。外国では土地と建物はそれ自体一つの物件です。それは余談になりますけれどもね。こういう地面に生えている木、しかも用材としての利用が予定されないもの、これがくっついていたって、それを含めて普通は更地というのじゃないですか。更地というのは土地に対する言葉じゃないですか。
  118. 福永博

    福永参考人 山林原野、もともとそういう状態だったのを、皆さんが防風林として植えられたわけでございます。それで、おっしゃるとおりに更地というのは確かに上物がないといいますかそういうものだと私も思います。その上物に当たるのが防風林として存在するわけでございまして、しかもそれを育て上げるに相当多額の費用がかかった、これを補償しようという考え方と思います。
  119. 小澤克介

    小澤(克)委員 水かけ論になりますけれども、防風林というような形で土地に植わっている木は上物とは言わぬのですよ。建物あるいは立木のように、土地とは別の経済的な価値があり別に取引される慣習のあるもの、これを上物と言うのだと思いますけれどもね。  それで、青森県の作成したある文書があるのですけれども、これによりますと、共有地についてはここでは立木補償と書いてあります。これは防風林補償のことだろうと思うのですけれども、共有者全員一律に平米当たり千二百六十六円、こう計算され、表に記入してあるわけです。これは、この取引を仲介した県としてもこういう認識だったんじゃないですか、平米当たり幾らという。失礼、県のことを聞いても違いますね。そういうふうに事業団としては認識していないでしょうか。
  120. 井上啓次郎

    井上参考人 ただいま先生の御指摘の県の算定ということは、私たちは関知していませんので内容はわかりませんが、そういうふうに一律の平均値で出す、算術計算ではそうでございますけれども、今の立木補償というのはクロマツでたしか四千本の補償だと承知しておりますが、そういうふうな薄味で、平均的な今の先生の御指摘の値段は、その辺からは出てこないと思います。
  121. 小澤克介

    小澤(克)委員 そうすると、具体的にはどういうふうに、だれに幾らというふうに支払われたのですか、この防風林補償分については。
  122. 福永博

    福永参考人 お答えする前にただいまの理事長の御説明をちょっと補足させていただきますが、立木の補償、防風林でございますが、算定しますときは、現実の林を一本一本調べて、それをもとにいたしまして林全体の評価をして総額を求めるわけでございます。それでこの場合は、土地開発公社が行いましたその算定によりますと、この立木の密度がある基準以上になっておるということで、結果的には立木が存在する土地の面積に比例するような形になっているわけでございます。  それから今のどういう形で支払ったかという御質問でございますが、二十五人の方に対しまして、その代表者の方に一括して支払っております。
  123. 小澤克介

    小澤(克)委員 代表者に支払ったと言いますが、地権者の代表者という意味だろうと思いますけれども、この地権者会というのは別に法人格があるわけでもないですから、各会員を代理して受領したということになるのじゃないでしょうか。
  124. 福永博

    福永参考人 ただいま先生、地権者会というような言葉でございましたが、これは地権者会ではございませんで、当該立木を持っている人たち二十五人の方がその代表の方に委任されまして、それで代表の方が一括受け取られた、こういうことでございます。
  125. 小澤克介

    小澤(克)委員 そうすると、あくまで委任の関係ですから、そのお金を受け取るべき人は各個人本人ですね。もちろんだれに幾らというふうにきちんと指定して渡したわけでしょうね。
  126. 福永博

    福永参考人 代金の受領をその代表の方が一括して委任されたわけでございます。そして、その配分につきましては、個々の方にどれだけ支払うというようなことについては、その代表の方が中でお取りまとめになっておると承知いたしております。
  127. 小澤克介

    小澤(克)委員 実際にどう分けたかは別として、これは委任関係ですから、直接個人と事業団との契約でしょう。だから、だれに幾ら支払うということは少なくとも事業団としては別碓になっていなきゃいかぬはずじゃないですか。
  128. 福永博

    福永参考人 事業団としては積算があるわけでございますから、個々のそれぞれの持ち主に対してお幾らという内訳の積算は持っております。
  129. 小澤克介

    小澤(克)委員 その積算ですが、平米幾らというふうに計算したのですか。
  130. 福永博

    福永参考人 防風林の算定につきましては先ほど申し上げたようなやり方でございまして、平米幾ら掛ける何万平米、こういうやり方ではございません。
  131. 小澤克介

    小澤(克)委員 では私の聞き違いでしょうか。先ほど、防風林の密度等を見て結局全体について幾らというふうに考えて面積で割った、こう聞いたのですが、違いますか。
  132. 福永博

    福永参考人 全体としての評価、それから一定の密度以上だから、こういうことで結果的にそうなると私は申し上げたつもりでございます。
  133. 小澤克介

    小澤(克)委員 ですから、結果的に平米幾らというふうに算出したのですか。
  134. 福永博

    福永参考人 総額が五千四百七十万ぐらいでございまして、対象になる面積が四万三千平米ぐらいでございます。割り算いたしますと千三百円弱ぐらいになろうかと存じます。
  135. 小澤克介

    小澤(克)委員 国土庁あるいは税務当局の御見解は後でまとめて伺いますので、次に、例の生活環境整備資金、これについて伺いますが、三千万支払われた、このことは事実ですね。
  136. 井上啓次郎

    井上参考人 三千万お払いいたしました。
  137. 小澤克介

    小澤(克)委員 これは何なんですか。何かの対価なんですか、それとも贈与なんですか。
  138. 福永博

    福永参考人 用地の買収につきましては、五十七年の九月ごろから始まったわけでございますけれども、翌五十八年の三月には地権者会というものができまして、交渉の窓口ということになっていただいて、この地権者会の協力を得ながら仕事を進めたわけでございます。  その交渉の過程で、地権者の方々から代替地を探す経費とか、あるいは土地の譲渡についての打ち合わせをするための費用とか、いろいろの要望が出てきておったわけでございます。それで事業団としましては、この土地の譲渡に伴って必要となる経費という地権者の要望の中には理解しなければいけないこともあると判断いたしまして、こういう地権者会の積極的な協力の姿勢におこたえするという意味で、本年の三月十九日でございますが、生活環境整備資金というものを三千万円地権者会に支払った、こういうことでございます。
  139. 小澤克介

    小澤(克)委員 そうすると、契約締結のための費用等を事業団側で払った、こういうことでしょうか。
  140. 福永博

    福永参考人 私どもが買収いたしました土地の売買の契約に関する費用、こういう御質問かと思いますが、その費用は別途払っております。  私が申し上げましたのは、代替地を探す費用とか、あるいは土地を譲渡するためにいろいろ打ち合わせをしなければいかぬだろう、こういうような経費について生活環境整備資金という名前で一括しまして支払ったということでございます。
  141. 小澤克介

    小澤(克)委員 打ち合わせ等の際に飲み食いしたということでしょうか。それがどうして生活環境整備になるんでしょうかね。
  142. 福永博

    福永参考人 代替地の選定ですとか、私が例示として申し上げました打ち合わせの費用、これには例えば遠隔地にいらっしゃる方も呼んで打ち合わせしなければいかぬだろう、あるいは相続の問題などもあるだろう、こういうようなことでございまして、生活環境整備資金というのがぴったりかというと私もそのとおりと必ずしも申し上げかねますが、そういう費用を一括いたしまして生活環境整備資金という名前を付したわけでございます。
  143. 小澤克介

    小澤(克)委員 受け取る側ではそういうふうには受け取ってないんですよ。これは参議院でも既に指摘されていますけれども、地権者会の会長さんが各会員にあてた文書で、「生活環境整備資金(名目上の肩書であり考え方としては税金相当分であります)」と、こうはっきり書いているんですがね。受け取った側がどういう認識で受け取ったか、契約当事者ですからある程度認識があるでしょう。こういう受けとめ方だったということは知らなかったんですか。
  144. 井上啓次郎

    井上参考人 ただいまのお話は私たちとしては関知しないところでございまして、今の地権者会に一括してお払いして、その中で善処してもらったということでございまして、その中身が税相当分とかそういうことでは全然ございません。したがいまして、今御指摘のような意味の地権者会の会長さんが出したということは、理解に苦しむところでございます。  なぜかなれば、地権者会の会長さんから理事長あてに、あるいは青森県の開発公社の理事長あてに、両名にあてて、今の生活整備資金を支出してもらいたいという要望書も出ているくらいでございまして、決してそういう税相当分というふうなものではございません。
  145. 小澤克介

    小澤(克)委員 要望書を出したことが税金相当分でないことの根拠にどうしてなるのか、ちょっと私理解できないんですけれども、その点はともかくとしまして、私がお尋ねしたのは、契約当事者である事業団として、受けとめる側としてはこういう認識だったということを御存じだったんではないですか、そう聞いているんです。事業団の見解を聞いているんじゃないんですがね。
  146. 福永博

    福永参考人 このお話といいましょうか報道といいましょうか、出まして、直接交渉しておるのは青森県の土地開発公社でございますけれども、私ども一緒になってやっておったわけでございまして、本件につきましても、その後開発公社を通じまして地権者会の会長さんあるいは役員の方、こういう方がどういう認識をお持ちになっておるかということでお伺いしてみましたところ、私どもが申し上げていることを十分御理解いただいているということでございます。
  147. 小澤克介

    小澤(克)委員 先ほど言った文書には「追伸」として、「今回の入金の算定基礎としては土地代金の三〇%であることを申し添えます。」計算するとちょうど三〇%になるんですよ。この生活整備資金をそれぞれ分配しているんですけれども、三〇%というのは、国税が長期譲渡で二五、六%ですか、それに地方税を含めて大体三〇%になる。ぴったり符合するんですね。こういうことはもう承知の上で払ったんでしょう。どうなんですか。
  148. 井上啓次郎

    井上参考人 土地を譲渡して税金を払うというのは、これは当然でございまして、私どもとして上乗せでそういうふうなものを出せるという立場じゃございません。これも先生御理解をいただけると思うんですが、とにかくそういうふうな計算は一部新聞でも報道されまして承知しておりますけれども、私たちとしましては、そういうふうな税金分を別に上乗せするという根拠はございませんので、その点はお話があったとしてもお断りするのが筋道でございます。
  149. 小澤克介

    小澤(克)委員 この生活環境整備資金の三千万というのは、先ほどその趣旨については伺ったんですけれども、事業団の見解は、いろいろ集まって相談したりするのに費用がかかっている、あるいは代替地を見つけるのは費用がかかっている、その分だということですが、その積算はどうやって積算したんですか、三千万というのは。
  150. 福永博

    福永参考人 先ほども申し上げましたけれども、地権者会からいろいろ要望がございまして、その中で、私どもも当然理解しなければいけないようなこともあったわけでございます。それで、地権者会との御相談の結果一つの合理的な線としてまとまったものではございますが、私どもとしましては、地権者会がいろいろ要望をおっしゃっておる、そういうケースについて、事業団なりに一つのケーススタディーをいたしまして、妥当性を判断して決定した、こういうことでございます。
  151. 小澤克介

    小澤(克)委員 だから、その積算を聞いているのですよ、どうやって積算をしたのかと。
  152. 福永博

    福永参考人 事業団が検討しました内容としましては、この資金によって手当てされるのが妥当と判断しました項目としては、代替地の選定というようなこと、それから部落の集会所を整備するというような経費、それから今後地権者の方が協力をしていただく、あるいは他の未買収の方々に対して説得をしていただく、こういうためには原子力に関する知識もいろいろ必要になるだろうということで、原子力に関する知識を修得するのに必要な経費、それから売買にかかわるもろもろの経費、それから地権者会の事務費、こういったような項目を考えていたわけでございます。
  153. 小澤克介

    小澤(克)委員 細かい積算、何が幾らということはどうもお示し願えないみたいなので、時間がなくなってしまいましたので、この件についてまず国土庁の方に伺いたいのですが、最初出ました防風林について、土地を離れた独立の経済的な価値のないものについて、土地の対価と別に補償するということはいかがなのでしょうか。国土利用計画法に言う地価には、これは含めるのでしょうか、含めないのでしょうか。
  154. 武智敏夫

    ○武智説明員 お答えいたします。  防風林の性格につきましては、今先生と事業団との間でやりとりされたような事情につきまして、県から報告を聞いておるところでございます。先ほど来、防風林の取り扱いにつきましては国土利用計画法との関連を意識されておるのじゃないかというふうにお見受けして聞いておったわけでございますが、御承知のとおり国土利用計画法と申しますのは、土地の投機的取引を防止する、ひいては適正な地価を形成すると同時に、合理的な土地利用を確保するというような観点で定められたものでございます。したがいまして、土地そのものにつきまして着目いたしておるわけでございます。これは法律的に申しますと、国土利用計画法の二十三条で、一定規模以上の土地取引をする場合には届け出が要るわけでございまして、まさに今回事業団が計画いたしておりますのは約二十一ヘクタール、全体的に見ますとそういうような施設でございます。したがいまして、個々の面積そのものは小さくとも、すべてにつきまして土地取引の届け出が要るわけでございますが、その際、国土法上は、土地と同時に建築物なりその他の工作物あるいは立木等につきましては、土地とは峻別して予定対価の額等を記載するように定められております。これは正確には、法律の二十三条を受けまして、例えば土地を取引します当事者とか土地の所在とかあるいは面積ですとか、あるいは所有権であるか賃借権であるかというようなことは法律事項で決まっておるわけでございますが、その他のことにつきましては総理府令で定められることになっておりまして、総理府令の四条を見ていただければわかりますが、いわゆる上物、例えば建築物があるとかあるいは立木があるとかといったような場合、防風林も立木の一つの変形だというふうに考えておりますけれども、そういうような運用をいたしております。したがいまして、今回の届けに関連いたしましても、土地代は幾ら、土地代以外については幾らということで、従来からもこれは全国的に取り扱っておるわけでございますが、本件の場合もそういうような取り扱いをいたしたところでございます。
  155. 小澤克介

    小澤(克)委員 上物として建物その他の建築物それから立木ということを挙げられましたが、そして防風林も立木の変形だ、こういう見解を今おっしゃいましたけれども、私は、これは全く的を外れていると思いますよ。素人はだませても、こういう言い方でごまかしちゃいかぬですよ。立木というのは土地の定着物で土地と一つの物件、何というのですか、不動産なんですけれども、しかし独立の価値がある。そして、我が国では一山の木を幾らというふうに独立して取引される慣習がある。そういうことから土地とは別に評価するということが行われていることは承知しておりますけれども、伐採して用材とする目的も何もないものを立木の変形だということで土地とは別に評価するということはあり得ないのじゃないですか。
  156. 武智敏夫

    ○武智説明員 お答えいたします。  通常の商取引におきましていろいろの取引形態があるということは御承知のとおりでございますが、国土利用計画法上の運用といいますか、法律上の解釈といたしましては、まさに土地は土地、更地の状態における土地ということでございまして、先ほどのお話にございました、例えば原野を開拓いたしまして畑にする等、いわば効用が増になるようなものにつきましては、これは当然に原野から畑になればその地価が上がるわけでございますが、いずれにしても土地は土地に着目いたしまして、その上物に例えば立木がある場合につきましては、それが防風林であるかあるいは経済的価値を有する一本一本の立木であるかは別としまして、まさに法律上の解釈としまして、下物の土地につきましてそれぞれ評価をし、その土地代が高いか安いかということをやるわけでございます。問題は、そういうことでやりますと、上物であります例えば建築物にいたしましてもあるいは立木にいたしましても、土地代を安く評価いたしまして上物を高く評価するというようなことで国土法の脱法行為が行われてはならぬというようなこともございまして、土地代は幾ら、上物は幾らというようなことを様式の中で掲げ上げまして、それで届け出をさして、それぞれ審査いたしまして、まさに土地代に対する転嫁がないかどうかというようなことを判断いたしておるわけでございます。あくまでも土地は土地、上物は上物ということで法律上もなっておるわけでございます。
  157. 小澤克介

    小澤(克)委員 長々とごまかしの答弁をしちゃいけませんよ。防風林というのは立木として扱えないのじゃないかと聞いているのですよ。おかしいのじゃないかと聞いているのです。土地とは別に独立の経済的価値のないものを立木という観念に含めること自体がおかしいのではないかと、そういう指摘を先ほどからしているんですけれども、それについての御見解を伺いたいのです。
  158. 武智敏夫

    ○武智説明員 お答えいたします。  先ほど立木ということでちょっと言葉足らずのところがございましたけれども、まさに省令でそれぞれ上物につきまして様式が定められておるわけでございまして、建築物等の工作物についてはその予定対価が幾らかということを掲げることになっておりますし、それから先ほど私、立木について申し上げましたが、実は木と竹ということを書いてありまして、木の場合は木が幾ら、竹の場合は竹が幾らというようなことで、要は上物は上物、下物は下物ということで評価することになっております。
  159. 小澤克介

    小澤(克)委員 だから、竹ならこれは切って使えるわけですよ、竹細工に。立木というのは独立の価値がないのじゃないか、これを伐採して利用することを予定している木や竹と一緒にすることはできないのじゃないかということを聞いているのですがね、どうなんですか。上物は上物、更地は更地というのはわかりますよ。だから、防風林には上物としての価値があるのか、あるいはそう評価することが国土法の適用上妥当なのか、それを伺っているのです。
  160. 武智敏夫

    ○武智説明員 お答えいたします。  公共事業をやる場合に、通常生ずる損失といたしまして、例えば移転料ですとか営業補償ですとか立木補償というようなことが一般的に認められておるわけでございます。立木につきましても、それは土地と分離して譲渡することが可能なことは先生御指摘のとおりでございますが、まさにこれらにつきましては公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱というのが定められておるわけでございまして、一般に立木の中には今問題になっております防風なり防雪の効用を有する立木も含むという解釈で行われてきておるわけでございます。我々はそういうことも前提にしながら、先ほど来同じようなお答えをいたして恐縮でございますけれども、下は下、まさに土地は土地そのものに着目し、上物は上物でそれぞれ分離して評価するというやり方をいたしております。
  161. 小澤克介

    小澤(克)委員 私は、防風林についてはこれを上物として独立した扱いをするのは間違いだと思いますよ。それだけ指摘しておきます。  税務当局にお尋ねします。防風林の補償というのが出ているようですけれども、これは税金上どういう扱いになっていますでしょうか。資産譲渡所得なんでしょうか、それとも一般の所得なんでしょうか、あるいは贈与なんでしょうか。
  162. 森田衛

    ○森田説明員 お答えいたします。  この関根浜の関係につきましては、個別事案に関することでございますので答弁は差し控えさせていただきますが、一般論として申し上げますと、土地の買収に関連いたしまして補償金等という名目で全員等が支払われていると認められる場合には、その名目にかかわらずその実態が土地の代金であると認められる場合には譲渡所得として課税するということになっております。
  163. 小澤克介

    小澤(克)委員 生活環境整備資金、これは何なんでしょうか。贈与なんでしょうか。贈与税を取るのでしょうか。
  164. 森田衛

    ○森田説明員 この点につきましても、個別の関根浜に関する事案でございますので答弁は差し控えさせていただきたいと思います。
  165. 小澤克介

    小澤(克)委員 一般論でいいです。先ほども趣旨としていろいろ説明がありました。やれ寄り集まりに金がかかるとか代替地が欲しいとか、それからまた何か部落の集会場整備の費用とか、そういう趣旨で支払われたということが明らかにされていますので、それを前提に、一般論で結構ですから、国税当局としてはどう解釈しますか。
  166. 森田衛

    ○森田説明員 お答えいたします。  先ほどお答えいたしましたように、その名目が何であれ、実態が土地の代金、代価ということで認められれば、譲渡所得ということで課税いたすわけでございます。  その場合に、例えば先ほどの共同の用地として実際に各地権者個人に金銭等が入っていないと認められるような場合につきましては、それは譲渡所得として課税はいたしておりません。その実態に即した課税をするということになっているわけでございます。
  167. 小澤克介

    小澤(克)委員 昨年の十二月二十六日に、本件の用地買収に関する税金についての税務研修会というのを開催して、講師としてむつ税務署の方が説明しているようですが、そういう事実はありますか。知らなければ知らぬでいいです。
  168. 森田衛

    ○森田説明員 ただいまのところ報告を受けておりません。
  169. 小澤克介

    小澤(克)委員 時間がわずかになりましたので最後に、原船の研究の基本的な方針について若干伺いたいと思います。  これはぜひ改めて御認識願いたいのですけれども、今般、原研法一部改正案が成立したわけです。これに伴いまして、これまで事業団法では、原子力船開発それ自体を事業団の目的としていたわけでございますが、今回の改正法によりますと、原研は原船開発のための研究を行う、これが目的とされたわけです。したがって、当然事業内容に大幅な変更がある。目的が違うわけですから変更があると見なければいけないと思うのですけれども、原船研究の基本方針について、これまでの開発ではなくて研究になったわけですから、どういう方針で研究をされるのか、これはひとつ大臣からお答え願いたいと思います。
  170. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  大臣からお答えする前に準備的に少し答えさせていただきたいと思いますが、原子力船研究開発につきましては、「むつ」の放射線漏れ以来、どのように「むつ」の研究開発を進めるかということでございまして、当初いわゆる原子力第一船として「むつ」を建造し、運航し、そして実験が終わった後はいろいろな実用的な用途にも供するというような建前で、原子力船開発事業団ができ、建造をしたわけでございます。したがいまして、実験が終われば他に原子力船も引き渡すという意味で、原子力船開発事業団法というのは時限立法で、十年の時限をつけた立法がなされたわけでございます。しかし、その後「むつ」の放射線漏れ以来いろいろな各界の御議論がございまして、やはり原子力船研究開発は、「むつ」からいきなり実用ということではなくて地道な研究が必要ではないか、こういう考え方になりまして、昭和五十五年の原船事業団法の改正に当たりましてそのような位置づけをし、原子力船研究開発事業団におきましても研究業務を行うということに。いたしたわけでございます。  現在、原子力委員会決定いたしております長期計画におきましても、「むつ」はあくまでも海上における実験データを取得するいわゆる実験船として成果をおさめる、それから同時に並行いたしまして、将来の小型の、信頼性、経済性のある炉の研究開発を進めるためにそれの試設計等を進めて、そういった試設計の結果も踏まえた上でその後の具体的な研究開発計画を決めていこう、こういう今のポジションでございまして、原子力究所原子力船研究開発事業団が統合されました後におきましても、原子力究所におきます事業というのは、原子力船むつ」に関すること、それから原子力船に関する基礎的な研究はもちろんでございますが、応用に関する研究ということで、そういう将来の経済性のある炉等につきましての研究開発を進めるということでございます。
  171. 小澤克介

    小澤(克)委員 時間がもうほとんどなくなりました。きょうわざわざ原研の方に参考人として来ていただいておりますので、原研の方に、来年度からは原研の責任において行うわけですから原子力船研究の基本的な姿勢を伺いたいのですけれども、まず研究機関としての役割に徹するお考えがあるかどうか。それから、とりわけ第一線の研究者意見を十分に酌んで研究を行う、そういう姿勢があるかどうか。それから、例えば形だけの研究では法則的事実についての新たな知見を修得するという意味がない、あるいは非常に希薄な格好だけの研究などということは研究者の良心としてやらない、そういう姿勢がおありになるかどうか伺いたいと思います。  それからついでに、現在予算の概算要求等がもう問題になっているわけですけれども、それが実行されるのは来年度からでございまして、そうなると、原研の責任において研究がなされるわけです。したがいまして、理段階から事業団とも連絡を密にして研究方針について連絡協議を行っているのじゃないかと思いますけれども、その辺の実態についても伺いたいと思います。
  172. 天野昇

    天野参考人 お答え申し上げます。  まず、私ども原研は本来研究を任務とする機関でございまして、過去におきましても、ちょうど今の「むつ」の原子炉と同規模の軽水炉JPDRを建設、運転した経験を持っております。また、最近十五年間は、最重点課題としまして軽水炉の安全性研究に取り組んでおります。これらの軽水炉についての技術的基盤を持っておりますので、その上で、これから将来に向けての舶用炉の研究開発を我々に任務として与えられたと考えております。当然研究機関でございますので、いわゆる基礎から積み上げる研究開発の基本的な姿勢の上で、今後この舶用炉の研究開発には取り組んでいきたいと思っております。  それから、研究開発を行うについて第一線の研究者意見を十分取り入れるかどうかという御質問だったかと思いますが、当然のことといたしまして、このような研究開発を行うときには第一線の研究者意見が最優先するものでございまして、そういう姿勢で進めていきたいと考えております。  それから、現在事業団との間で今後の計画について相談をしているかという御質問だったかと思いますが、まだ我々に統合が決まったばかりでございまして、今後事業団と十分相談してまいりたいと思っておりまして、現在のところはまだ手をつけておりません。  以上でお答えになったかどうか……。
  173. 小澤克介

    小澤(克)委員 時間が参りましたので、これで最後の質問とさせていただきます。  今、原研の方から大変はっきりした御見解を賜りまして、多少安心したわけでございます。先般第一線の研究者等の御意見を伺う機会があったわけですけれども、事業団から事務の引き継ぎを受けたって、そんなものは危なっかしくてできやしない、研究者の良心として全部洗い直して再点検しないと、とてもじゃないけど「むつ」をそのまま使っての研究などできぬ、こういうことをおっしゃっている方もおりました。そういうことも踏まえて、研究機関としての姿勢に徹していただきたい、要望をしておきたいと思います。  最後の質問でございますけれども、これは大臣お答えいただきたいのです。監督の最高責任者にある者として、今後の原子力船研究において、原研において研究ということに徹す谷研究がなされるように十分に監督されるお考えがあるかどうか。特に最近、ある党の首脳が「むつ」に関して、「むつ湾から一回外に出して実験航海して格好をつける」などとおっしゃっているということが報道されております。格好をつけるなどという研究は私はあり得ないと思います。本当に研究の名に値する研究を行うよう十分監督をする姿勢があるかどうか、大臣からお答えを願いまして、私の質問を終わりたいと思います。
  174. 岩動道行

    岩動国務大臣 先般国会の御審議を経て、原子力船研究開発事業団が日本原子力研究所に統合されることに国会の御議決をいただいて、これから来年の四月一日に向けて私どもは統合のためのいろいろな準備をし、また研究開発継続性を失わないように努力をしていかなければならないと思っております。  そういう中で、原研の中に新しい業務が加わったわけでございますから、その新しい業務については、当然原研の設立の趣旨、そしてその法律の意図を十分に体して行っていくべきものである、今後そのような基本的な方針で私どもは所管の研究機関に目を向けてまいりたいと思っております。
  175. 小澤克介

    小澤(克)委員 終わります。
  176. 大野潔

    大野委員長 午後二時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十六分休憩      ————◇—————     午後二時一分開議
  177. 大野潔

    大野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。遠藤和良君。
  178. 遠藤和良

    ○遠藤委員 最初に岩動長官にお伺いいたします。  長官はせんだって我が党の小川新一郎委員質問に答えまして、いわゆる原子力委員会委員長であり、科学技術庁長官としての立場から大変に明確な御答弁をいただきました。議事録を読みますと、「政治家が信念を持って進めたことがもしも実現できないときには、政治家としての出処進退があると思います。」大変重大な御決意でございます。この御決意について私ごとき若輩者がお伺いするのは僭越ではございますけれども、今後の「むつ」存廃の論議を見きわめる上で大変重大な問題でございますので、この長官の御決意が今も変わらないのか、また今後どのような事態が起きても変わらないものなのか、この再確認をさせていただきたいと思います。
  179. 岩動道行

    岩動国務大臣 先般の小川委員に対する答弁はそのとおりで、変わりはございません。  この委員会におきましても、原子力船必要性、そしてまた原子力委員会決定、あるいはまた国会でのいろいろな御論議、あるいはまたその他各方面の御意見、こういうものを十分に踏まえて対応するのが私どもの役割であり、また私個人の大臣としての信念はこのような基本的な方向で今後とも進んでまいりたいと思っております。御結論がどう出るかによって私がどのように対応するかということは、これから皆様方の御意見、各方面の御論議を十分ちょうだいした上で対応してまいりたいと思っておりますが、私の政治家としての信念は変わりはございません。
  180. 遠藤和良

    ○遠藤委員 大変な時期に長官になられまして、その御心境というものは推察するばかりでございますが、自民党科学技術部会が一時廃船決定をいたしまして、この論議が大変に沸騰しているわけでございます。先日の新聞報道によりますと、自民党の部会報告を受けた形で、自民党の首脳の発言といたしまして、「「むつ」一転、存続固まる」という報道がなされました。この報道につきまして、長官はどういう御印象で受けとめられておりますか。
  181. 岩動道行

    岩動国務大臣 新聞報道は新聞報道でございまして、私ども政府・与党の関係におきましては、自民党の中にいわゆる検討委員会が設けられまして、そして鋭意精力的に検討が続けられておる段階でございまして、まだ結論が出たという報告も伺っておりません。したがいまして、新聞報道は新聞報道として私は見たというだけでございます。
  182. 遠藤和良

    ○遠藤委員 自民党調査団は六月に西ドイツ、フランス、アメリカの三国を視察した結果を報告しておりますが、長官自身はこの報告をお聞きになっておりますか。  また、その報告の中で、いわゆる外国からの技術を入手することは大変に困難である、体系的なデータを三国から求めることはできないというふうな結論を出されたと伺っておりますけれども、この辺につきまして長官は報告を受けておるのでしょうか。
  183. 岩動道行

    岩動国務大臣 私の方の事務次官調査に行きましたので、事務次官からの報告は聞いております。  そういう中で、いろいろな新しく確認ができた幾つかの事項があったと思います。その中で外国の技術なり何かを導入したらどうかということについては、ドイツにおきましてはいろいろな事情で既に人も分散しておるし、資料も必ずしも十分には集まらないかもしれない、こういう話もございます。と同時に、やはり自分で、自分の船で直接実験をやってみなければだめなんだ、こういったような話が向こうからも出たということも聞いております。  また、フランスにおきましては、原子力船ではなくて原子力艦として防衛上の潜水艦を六隻つくって持っている、今は攻撃用のものについて研究開発を行っている、そういうようなことで、フランスからノーハウを出すということは軍事機密にもなるであろうから困難ではないだろうか、こういう印象を受けて帰ったということであります。  またアメリカにおきましては、当初から潜水艦あるいはいろいろな軍艦の推進力として開発をし、そして実際に使っているのであって、これは全部軍事機密に当たる、だからアメリカが出すというようなことは日本として期待はできない、こういうような印象を受けて帰ったというふうに報告を受けております。
  184. 遠藤和良

    ○遠藤委員 「むつ」の論議が行われるたびに、いわゆる完成された舶用原子炉を輸入してはどうかというふうな論議が行われるわけでございます。私はただいまの報告を聞いておりますと、やはりブラックボックスがあって、どうしても日本の国で自主的な開発をしていかなければ原子力船開発ということは到底不可能である、こういうふうに結論を出したような印象を受けるわけでございますが、このように承知していいのでしょうか。
  185. 岩動道行

    岩動国務大臣 調査結果につきましては、党の方がどのように報告をされ、そうしてこれをどのように検討委員会の中で活用すると申しまするか、それを踏まえてどのような結論を出すかということにつきましては、私はまだ承知をいたしておりません。いずれにしろ、先ほど申したような実情があって、外国からノーハウを持ってくるとかあるいは原子炉を買ってくるというようなことは現実問題としてはなかなか容易なことではない、こういう印象を持っているわけでございます。
  186. 遠藤和良

    ○遠藤委員 そこで、大変基本的なことをお聞きしまして恐縮でございますけれども、これまで長年行われてまいりました「むつ」の経過並びに今後の見通しを考えていきました際に、いわゆる原子力基本法に言う三原則ですね、自主、民主、公開という大事なこの三原則が「むつ」に関しては貫かれてきたと思いますか。この間も参考人質疑等でお聞きしますと、公開という形では、建前は公開であるが実質的には公開でない部分が随分あったのではないかというふうな意見があったわけでございます。この基本的な原子力政策の根本でございますが、「むつ」に関しては貫かれてきた、こういうふうに長官はお考えでしょうか。
  187. 中村守孝

    中村(守)政府委員 先生御指摘の自主、民主、公開の三原則、これは原子力基本法に定められていることを御指摘のことかと思いますが、原子力基本法では「民主的な運営の下に、自主的にこれを行うものとし、その成果を公開する」ということでございまして、原子力船むつ」の研究開発につきましては、当初から国内原子力船開発についての必要性議論があり、いろいろな計画案などが出され、民間でも議論され、そういったものを受けて原子力委員会でこの原子力船むつ」の開発の計画を定めるというようなことで進めてまいりましたし、その後におきましても、例えば放射線漏れの後は大山委員会における議論その他、原子力委員会の専門部会等での議論を踏まえつつ進めてまいっております。もちろん国会での御議論もとよりでございます。そういうことで、「むつ研究開発につきまして自主的、民主的に進めてきたということはもう疑いのないところかと思います。  公開の件でございますが、成果について公開をするということでございまして、これまで、「むつ」についてのいろいろな建造過程におきます実験あるいは経験等々につきましては、原子力船開発事業団におきます年報という形あるいは原子力船事業団技術報告書、略称してJNSレポートと言っておりますが、そういったものを刊行するとか年次報告会の開催というようなことで、従来やってきました調査研究の成果につきましては公表してきておるところでございまして、今後ともこの原子力基本法に基づく民主、自主、公開の原則のもと原子力船研究開発は進めてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  188. 遠藤和良

    ○遠藤委員 特に私は公開の原則についてお伺いしたいわけでございますが、ただいま存廃の議論が沸騰しているわけでございまして、こうした時期に存続か廃船かという判断材料を国民の前に公開をすべきである、こういう趣旨で私は前回も質問をさせていただきました。その折、長官はそれを約束されたわけでございます。また前回の法案の審議のときにも、附帯決議で「国民に論点を明示するよう努めこというふうにうたいました。ところが今、科学技術庁といたしまして、この「むつ」を存続すべきか廃船すべきかという判断材料がきちっと国民の前に公表されておらぬ、こういうふうに私は考えるわけでございますが、その辺はどういうふうにお考えでございますか。
  189. 岩動道行

    岩動国務大臣 まだ最終の結論を出すまでの段階になっていない。いろいろな国会での御審議あるいは我々所属する党での検討その他、各方面の御意見というものが出てまいってきてはおりますが、最終的にこれという筋道の立った経過的なものをまだ申し上げる段階ではないと思います。国会でこのように御審議をいただいていること自体が、先生方は国民の代表でいらっしゃいますから、極めて明らかに国民には審議の経過を通してかなり詳細におわかりになっていただいているのではないだろうか。これが自主、民主、公開の原則を貫いてきている私どもの姿勢でもあると思いますので、御理解をいただきたいと思います。
  190. 遠藤和良

    ○遠藤委員 それでありましたら、いわゆる国会に私は最低の判断材料として公表してもらいたいことがあるわけです。つまり一つは、存続するとすれば今後の実験計画はかくかくしかじかである、また必要な経費の総額はこれだけである、こういう計画。また、廃船するとすれば今後の段取りはこういうふうになります、必要な経費は幾らでございます、これだけは少なくとも私は最低限の判断材料として科学技術庁として公表していただきたいわけでございます。いかがでございましょうか。
  191. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  実は先生御指摘のように「むつ」を例えば存続する場合と申しましても、どういう形で「むつ」を存続させるかということについていろいろな考え方もあるわけでございます。そういうことで、現在「むつ」を存続させるとしたらどういう形があるかということを今まさに私どもとしても検討させていただいておりますので、ある計画を固定して、それについて幾ら幾らということを申し上げるということは数字がひとり歩きしますし、あたかも私どもがそれを私どもの計画としているかのようなことにもなりますし、そういうことでなかなかこの経費、今後の実験計画は幾らなんだということを一概に申せないわけでございます。廃船の場合につきましても、種々なやり方もございますのでそこら辺を検討しておるということでございますので、政府の方針としまして、各方面の御意見を承り、皆さん方の御意見を受けた上で、どういう形でいくべきだと判断した後におきまして、そういった点につきまして政府考え方としての数字をお示しし、いろいろな御批判、御議論国会を初めとしてしていただきたい、さように考えておる次第でございます。
  192. 遠藤和良

    ○遠藤委員 どのくらい経費が必要であるかという概算的なものは、やはり私は判断材料として示していただきたいと思うのですが、どうでしょうか。
  193. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  先ほども申し上げましたように、まさに計画のその金額が幾らくらいかかるかというそのもとになる計画自身がどうあるべきかということで検討していることでございますので、数字がどのくらいかかるかということをなかなか申し上げにくいわけでございます。  それでは全く数字がないのかということにつきましては、従来国会でも御議論いただき、御質問いただいた事業団の試算というものがあるわけでございますが、これにつきましては現在の実験航海の計画をもう少しコンパクトにして、いろいろ中身の濃い実験をすれば実験航海の期間も縮まるであろうし、それから港湾等の施設についても、その実験計画に合わせて見直しする必要があるだろうというようなことで、その費用を事業団の試算では千四十億と言っております。我々これを別にオーソライズしたわけでもございませんが、この数字を極力切り詰めるような形での検討というものは十分なし得るということで現在検討をしておるところでございます。
  194. 遠藤和良

    ○遠藤委員 参議院の科学技術特別委員会の議事録を見ますと、今まさにお話にあったような数字が出てまいりました。いわゆる存続するとすれば一千四十億円ぐらいであろう、廃船するとすれば四百億円ぐらいの経費を要すると原船事業団としてははじき出しておる。ところが科学技術庁としては、それは別に承知した金額ではない、こういうような御答弁であったように伺いますが、私はこれは大変ひきょうな言い方ではないかと思うのです。私は、この「むつ」の存廃についてはやはり科学技術庁として責任を持って対応していただかなければならない、こういうふうに考えます。したがいまして、公開の原則にのっとって自信を持って国民の前に、存続する場合はこのくらいの国費が必要でございます、あるいは廃船するとすればこういう段取りでこのくらいの金額になります、こういうものを材料として出していただかないことには議論が進まない、こういうふうに考えるわけでございますが、今のお話を聞いておりますと、何か判断材料自身も国民で考えてもらいたいというふうな感じに受けとめられるわけでございます。もうちょっとしっかりした判断材料を国民の代表である国会に公表すべきであると私は思いますが、いかがでございますか。
  195. 中村守孝

    中村(守)政府委員 たびたび申して恐縮でございますが、政府として存続するとすればこういう形で今後「むつ」の計画を進めたいということが固まれば、当然のことながらその数字を公にいたしまして御論議をいただくということでございまして、その際、存続するとするなら廃船の場合との比較において当然の議論になるということでございますので、それまでに廃船の問題につきましても、廃船するとすればこういう方法でということを当然なにしまして、逆に言いますと、政府としていいかげんなふらふらする数字でなくてお示しできるような段階になりましたならば、これを御提示いたしましていろいろ御議論をいただきたい。この「むつ」の計画なるものが最終的に正式に国のものとしてオーソライズされるまでには、まだ今後も来年度の予算編成、さらには国会における予算審議等々の場もございますので、そういう段階には当然のことながらそういう数字もお示しし得る。ただ、今の段階ではもしお示しするとしても非常に中途半端な形になりますし、私どもとして御提示して御批判を仰ぐというには、まともな数字としてとてもお出しできない。また逆に言うと、その数字を出せばその数字だけがひとり歩きをするというようなことでございますので、差し控えさせていただいておる次第でございます。
  196. 遠藤和良

    ○遠藤委員 委員長にお願いしたいわけでございますが、前回の小川新一郎委員質問の折にもこの問題が出てまいりまして、「本委員会、国民の、この問題の判断材料としての、今後の実験計画、予算計画、さらに継続する場合の実験計画と費用と手続はどうなるのか、また廃船する場合の費用、手続、問題点などはどうなるのか、この問題を当委員会に出していただいて、我々の納得のいく時点の中で、もう少し詰めの細かい議論もしたいと思っております。」こういう要望を委員長にしまして、委員長から「理事会で語らしていただきます。」こういうふうな御答弁がございました。ぜひこの問題について慎重な、また前進的なお取り組みをお願いしたいと思います。それから、今のお金の問題とともに存続のメリットとデメリット、廃船のメリットとデメリット、こういうものにつきましても資料をぜひいただきたいと思うわけでございます。要望にとどめておきます。  それから、技術的な問題を若干お伺いいたしますけれども、「むつ」の原子炉は既に旧式であるとの議論がございますが、どういうふうにお考えになりますか。
  197. 井上啓次郎

    井上参考人 「むつ」の原子炉につきまして旧式であるという御議論は、あちこちで私も聞いております。しかし、これをよく吟味してみますと、観点といいましょうか立論のポイントによりまして非常に違うわけでありまして、例えば陸上炉のいわゆるPWRと比較して古いじゃないかという議論もございます。またオット・ハーンと比べて、オット・ハーンは一体型である、「むつ」は分離型である、そういう観点から古いのじゃないか、こういう議論もございます。しかし、少なくとも舶用炉の加圧水型軽水炉という立場で言えば、「むつ」は分離型ではございますが、基本的には古いとは言えないと私は思います。特に経済性というものが陸上炉で究明されておりまして、もちろん安全性とか信頼性とか、そういうものも対象にはなっておりましたけれども、経済性という意味では規模が非常に大きくなりまして、今では百十万キロという大規模なものもございます。「むつ」で言えば三万六千キロワットでございますので、非常に差がございます。また被覆管にしましても、「むつ」はステンレスでございますけれども陸上炉ではジルカロイを使っておる等々、いろいろの面で違いはございますが、これは一にかかって「むつ」の原子炉の旧式とかあるいは新式という議論ではないと私は思います。特に事業団が希望しているこれからの出力上昇試験とかあるいは実験航海とか、そういうものを通じまして「むつ」の持っている技術データあるいは運転経験、これをぜひ持つことが私らに課せられた任務だと思っております。  そういう意味からいいまして、今申し上げたような意味で申し上げれば決して旧式とかいう立場じゃなくて、立派にデータがとり得る原子炉だということで御了解願いたいと思います。
  198. 遠藤和良

    ○遠藤委員 特に燃料棒についてお伺いしたいわけでございますが、もう時代の趨勢からいいますと既に丸棒タイプからいわゆるキャラメル型に変わりつつあると言われております。特に舶用炉のように出力は小さいですが負荷変動が大きいものに対しましては、燃料棒の形から変えていかなければならないのではないか。そういう観点からいきますと「むつ」の燃料棒はもはや時代おくれである、こういった議論があるわけでございますが、こういった科学者の声に対しましてどういうふうにお考えになりますか。
  199. 井上啓次郎

    井上参考人 ただいま先生の御指摘のキャラメル燃料、これは注目すべき燃料タイプだと思います。しかし現在の段階からいえば、フランスで陸上炉でこれを実験している段階でございまして、実用に供しているというのはまだ寡聞にして聞いておりません。したがいまして、今後の課題だと思っておりますし、特にキャラメル燃料につきましてはこれからの技術開発の中で重要なポイントになろうかと思いますが、この点の燃料の進歩といいましょうか、そういうものは当然今後の我が国における舶用炉の開発において十分検討され、評価され、進めるべきものだと考えております。
  200. 遠藤和良

    ○遠藤委員 船体の部分について技術的な安全性をお聞きしたいわけでございますが、遮へい工事をやりまして重量は三百五十トンほどふえているわけでございます。「むつ」の場合は原子炉部分に荷重が集中している独特な構造になっております。したがいまして、この重量の増加によりまして船体のいわゆるベンディング、曲げやねじれに対する安全性は確保してあるのでしょうか。クラック等が入る心配は全くないのか、あるいは重心またメタセンターの移動によりまして船の持つ復原能力というものは失われていないのか、こういった技術的な面をお伺いしたいと思います。そして、あの形の原子炉の大きさからいえばもっと重量の大きい大型の船にしなければ安全度が増せないのではないかという意見がございますけれども、現在の船体でそうした無理はないのかどうか、技術的な面をお伺いしたいと思います。
  201. 野澤俊弥

    野澤参考人 お答えいたします。  遮へい改修につきましては、基本設計段階さらには詳細設計段階におきまして、船体の重量増加に伴います船体強度あるいは復原性等に関しまして十分な確認がなされておりますことはもちろんでございますけれども、工事完了後におきましては、佐世保港におきまして運輸省並びに海事協会立ち会いのもとで重心を測定し、その結果に基づいて強度なりあるいは復原性についての再計算を行って、安全性が十分に確保されているということが確認されております。それから船体自体についての健全性につきましては、最近と申しましても佐世保出港直前でございますけれども、ドックに入りまして船体検査を受けた結果は極めて良好であったというふうに聞いております。  さらに、原子力船が一般の船舶に比べまして集中荷重が中心に集まり過ぎているという御指摘でございますけれども、当然「むつ」建造当初からこの対策として外板なりあるいは甲板の板厚あるいは内部部材の増強等を行っておりまして、縦強度、ねじれ、クラックに対しての心配はないものと考えております。なお、「むつ」は上甲板の開口部が小さいこともあわせ考えますと、強度ねじれについては相対的に強いという点も一言申し添えておきたいと思います。  したがいまして、原子力船というのは大きくしないと安全性が確保されないというものではございません。設計なりあるいは運航条件その他についての安全性は十分確保されているものと考えております。
  202. 遠藤和良

    ○遠藤委員 これは素人の議論になるかもわかりませんけれども、「むつ」は建造以来大変に年月がたっておるのでもうかなり寿命が来ておるのではないか、こういうことが廃船論の根拠になっているような議論をされておる嫌いがあると思います。それで確認の意味でお聞きしたいわけでございますけれども、「むつ」は既に老朽船なのでしょうか、それともまだ生まれたばかりで原子炉にほとんど火も入っていない新造船なのでしょうか。また、今後寿命があるとすれば大体どの程度余命といいますか、使っていけば使える価値があるのか。特に原子炉部分と船体部分に分けて寿命はどの程度見込まれるのか、この辺をお聞きしたいと思います。
  203. 野澤俊弥

    野澤参考人 原子炉は二十年の運転に耐えるように設計、製作されておりまして、そういう前提条件で安全審査を受けております。それから船体部分につきましても、寿命としては今後二十年以上は十分耐え得るものと考えております。  先ほど申しましたように、船体部分につきましては佐世保出港直前に入渠いたしまして船体検査を受けておりまして、ほぼ新品同様ということが確認されておりますし、原子炉は運転されておりませんが、その後入念な維持管理を行っておりますので、実態的には新品同様と考えております。
  204. 遠藤和良

    ○遠藤委員 それで安心いたしましたけれども、かなりもう既に老朽船であるというふうに巷間では伝えられておるわけでございまして、そういう議論を払拭する意味からも、「むつ」というのはまだできたてほやほや同然の船なんだという議論を公開をして大いにやっていくべきではないか、私はこういうふうに希望いたします。  それから原子力船の将来性の問題でございますけれども、これは運輸省にお伺いしたいわけでございます。  一時「むつ」を建造する計画のあったときにはバラ色の未来をいろいろと論議されたわけでございますが、今、世界の情勢から見ますとかなり後退をしておるように見受けられるわけでございます。特にサバンナ号とかオット・ハーン号に、いわゆる第二船の計画が全部ないわけですね。こういった客観情勢の変動、こういうものも「むつ」の将来を考える場合には十分に議論していかなければならない問題である、こういうように思うわけでございますが、いわゆる原子力船の将来性というものにつきまして運輸省はどのような見通しを立てておられるのか、お伺いしたいと思います。
  205. 片岡栄夫

    ○片岡説明員 お答えいたします。  ただいま原子力船の将来性についての御質問でございますが、実用化の見通しはどうだということだと思います。  まず技術面で申し上げますと、欧米先進諸国におきましては既にサバンナあるいはオット・ハーン、こういうものの実験航海を行いまして、そういうデータを取り入れた舶用炉の設計等も既に完了しておるというふうに我々聞いております。すなわち、技術的な面では原子力船実用化のための基礎的な技術基盤というものが既に確立されておる。あとは原子力船が経済的に在来船と競合し得るというふうな状態になるのを待っているのが現状だろうと思います。  それから経済面で申し上げますと、これは石油の価格と原子炉プラントのコスト、この二つが大きなファクターになっておるわけでございますが、確かに先生御指摘のように石油の需給というのは現在一時緩和状況にございまして、原子力船の実用化の時期というのがやや遠のいたという客観的な状況にございます。しかしながら、中長期的に考えますと、石油というのは資源に限りがございますので、いずれは値段が上がってくるというふうに考えられますし、また原子炉プラントのコストの面でございますが、これも今後研究開発を続けましてコストの低減を図っていくという努力をいたしますれば、石油価格の高騰と相まちまして原子力船の経済性というのはいずれ出てくる、経済的に有望なものになるというふうに我々考えています。  こういうふうな検討を踏まえまして、最近行われました実用化の見通しの報告書には、日本原子力産業会議原子力船懇談会が出しました報告書あるいは原子力委員会原子力船懇談会の報告書等がございますが、私どもといたしましてもこれら海運、造船、原子力専門家方々の御判断を踏まえまして、二十一世紀の初頭には原子力船実用化の経済環境は整うというふうに考えておる次第でございます。
  206. 遠藤和良

    ○遠藤委員 いわゆる客観的要因といいますか、例えば石油が枯渇した場合とか石油コストがもっと値上がりになった場合に原子力船時代が来るんだという論議では、私は国民の納得が得られないような気がするわけでございます。いわゆる原子力船の実用化という方向が他力本願と申しますか、何か石油が値上がることによって、なくなることによって来るんだという消極的な意味合いでその必要性を惹起するのではなくて、自力で原子力船時代を招来するという工夫をしていかなければいつまでたっても来ないのではないか、こういうような気がするわけでございます。そのためにやはり原子力船のコストダウンというものを考えていかなければならないのではないか、こう思うわけでございます。特に原子力発電の例がいい例でございまして、原子力発電がいろいろ言われて論議を醸したわけでございますが、今五軒に一軒が原子力の灯である、こういうふうに普及をしてまいった。その大きな原因はやはりコストの安さというものではないかと思うわけでございます。  そこでお伺いするわけでございますが、いわゆる安全性というものを低下させないでコストダウンできる具体的な方法といいますか、そういうふうなものがあるのでしょうか。そういう要素がどういうふうに見出せるものなのか、その辺を原船事業団の方に将来の問題としてお伺いしたいと思います。
  207. 野澤俊弥

    野澤参考人 お答えいたします。  ただいまの先生のお話にございましたように、今後の舶用炉の研究開発の目標というのは、安全性、信頼性にすぐれ、かつ経済性があるということが大目標になっているわけでございます。経済性の改善という観点からの研究開発というのはいろいろございますけれども安全性を損なわずに経済性を達成するためには、原子炉プラント自体のコストの低減のみでなく、船の運航を含めた総合的な見地から経済性の向上を図るということが必要でございます。  その技術的な内容を二、三拾ってみますと、まず原子炉自体の小型化、それから遮へいの最適設計によります重量の軽減、それから主なコンポーネントの配置の最適化によります舶用炉プラント全体としての小型軽量化、これが第一点でございます。そして炉心寿命の長期化、つまり長く燃料を燃すこと、それから機器プラントの信頼性向上などによります舶用炉プラントの稼働率の向上といったようなことが第二点として挙げられるかと思います。第三点としては、船の運航に伴う問題でございますけれども点検の自動化なり合理化なり、あるいは計算機制御技術開発などによります運転の省力化といったようなことが考えられるかと思います。  こういった課題は今後の研究開発の最重点の課題でございまして、今後の研究開発の結果によって十分経済性が向上する余地がたくさんあるというふうに考えております。これらは当然のことながら、「むつ」によります実験航海データというものも貴重な貢献をするものと考えております。
  208. 遠藤和良

    ○遠藤委員 造船業界並びに船主さんの業界では、原子力船の将来性というものについて、遠い将来においては大変に必要だけれども今すぐに投資の対象とは考えられない、こういうふうな御答弁でございました。一番最初出発しましたときには、原子力船の第一号は国でやるがいわゆる第二船、第三船は民間で行う、こういうふうな基本的な計画があったようでございますが、いわゆる「むつ」以降の実証船と申しますか第二「むつ」と申しますか、実用船の一歩手前の船でございますね、これも造船業界なり船主の方々は、国でぜひ行ってもらいたい、民間からはお金を出す用意はない、こういうふうな答えでございます。そういうふうなことを考えてまいりますと、「むつ」を継続するのにも一千四十億円でございますか、さらに実証船の段階についてもかなりの出費を伴いまして、そしていわゆる実用化というふうになってくるわけでございますが、今こうした経済の冷え切っておるときに、しかも行財政改革が行われておりますときに、一体そういう莫大な予算を捻出できる状態にあるのかどうか、この辺を科学技術庁に確認をしておきたいわけでございますが、いかがでございますか。
  209. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  原子力船むつ」の研究開発継続につきまして千四十億という数字をちょっと先生お示しになりましたが、先ほど私が申し上げましたのは、これは一つの試算として申し上げ、それを今極力圧縮するという立場検討いたしておりますので、念のためちょっと申させていただいたわけでございます。  今後の原子力船開発につきまして、「むつ」の第二船をどうするかということにつきましては、現段階政府として第二船というようなものを具体的に考えているわけではございません。当面は、将来の小型で信頼性が高く経済性のある舶用炉を開発していこう、そういうことで試設計を進めておる。その試設計の結果を待ってその後の研究開発計画を具体的にしようということでございますし、原子力船の実用化時期の見通しにつきましては二十一世紀に入ってからではなかろうか、こういう大方の見通しもございますので、まさに今後の原子力船研究開発はいきなりすぐに第二船というようなことではなくて、ステップバイステップで地道に研究開発を進めていくということが必要でございますので、ここ数年の間に第二船というようなことで、そのための予算が大変だということにはならないのではないかと思っておるわけでございます。  いずれにいたしましても、第二船をどうするかということはかなり先の話でございまして、そのときの経済的、社会的状況の変化とか研究開発の進展いかんというものを見きわめ、そのときに一体実証船をやはり国がやるのか、いや民間がやるのか、そこら辺はその段階に至ってから検討されるべきものでございまして、現在のところそこまでの原子力第二船についての考えはございません。
  210. 遠藤和良

    ○遠藤委員 研究開発というものは、やはりその成果が実用に供されるかどうかというところに大きな値打ちがあるわけでございまして、いわゆる国民の血税を使って研究するわけでございますから、単にそれは技術的な納得だとかそういうものだけで承知されるものではないわけでございます。したがって、今「むつ」をどうするかという議論も大事なわけでございますが、その「むつ」によって開発された技術、研究というものが将来具体的にどういうふうなステップを踏んで実用に供されるのか、そこら辺まで見通してかからなければ現在使ったお金は生きてこないわけでございます。私は、二十一世紀を考えるという言葉が最近よく言われているわけでございますが、やはりその辺の遠謀深慮を持ってこの問題を解決していかなければならない、こういうふうに主張をしたいわけでございます。  今甚だ先の話までお聞きしまして恐縮でございますが、これは現在の話でございます。「むつ」と並行してただいま研究が行われております舶用炉の設計でございますけれども、これを石川島播磨、三菱重工、日立造船に発注されておりますが、この研究設計はどの程度進んでおるのでしょうか。
  211. 野澤俊弥

    野澤参考人 お答えいたします。  事業団はただいま改良舶用炉の研究開発計画の第一段階といたしまして、経済性、信頼性のすぐれた舶用原子炉の概念の確立に必要な設計評価研究を昭和五十六年以降実施しております。  まず、その概念の確立のために必要な第一段階として試設計を進めている段階でございまして、五十六年度、五十七年度の両年度にわたりまして試設計設計スペックを固める作業をしてまいりまして、五十八年度に発注したものでございます。主なスペックといたしましては、熱出力百メガワット、軸出力三万馬力程度の改良型舶用炉プラントの設計を三菱重工、石川島播磨、日立造船の三社に委託したものでございます。これが今年三月に納入されておりまして、現在その内容につきまして事業団として詳細な比較検討を加えている段階でございます。  主なポイントを申し上げますと、三菱重工は半一体型の設計をしております。それから石川島播磨はフランスのテクニカアトム社との技術提携によりまして一体型の原子炉設計してまいりましたし、日立造船はインターアトム社との技術提携によりましてやはり一体型の設計をしてまいってきております。  これらの試設計は、第一段階として主として炉心及び主冷却系統の設計を行っているものでございまして、五十九年度さらに六十年度におきましては、プラント全体としての設計の取りまとめ及びそれらの動特性、安全解析を実施する予定にしているわけでございます。
  212. 遠藤和良

    ○遠藤委員 そういう試設計の後の計画というのは、今のところは全くないのでございますか。
  213. 野澤俊弥

    野澤参考人 ただいま申し上げましたように、試設計の第一段階は炉心及び主冷却系統の設計でございます。これを五十九年度、六十年度におきまして順次プラント全体に及ぼしてまいります。それで六十年度において試設計全般の作業が終わり、それのチェック・アンド・レビューの結果、改良舶用炉としての最適な炉型、炉概念というものを確立していきたいと考えております。それが済んだ次の段階は、改良舶用炉の概念設計という段階に進むことを考えております。
  214. 遠藤和良

    ○遠藤委員 岩動長官にお伺いしますけれども、参議院の審議の中でいろいろ将来の話が出てまいりまして、原子力船の持つ能力というものを存分に発揮できる実用船というのは一体どういうものだろうか、こういう話が出まして、空気、酸素を使わないいわゆる潜水船のようなものは大変に原子力船の特性を発揮できるのではないかというふうな話も出てまいります。それから、南極観測船を原子力船でつくってはどうかというふうなお話も出てまいりますが、私は国民の皆さんに御理解を得やすいためにも、原子力船というのは具体的にこういう方向でいくと大変に有利なんですよ、何も大型の砕氷タンカーでなければ原子力船としては通用しないんだという方向ではなくて、日本の国情に合った原子力船としての方向性というものを明示なさった方が理解を得やすいのではないかと思いますけれども、こういった考え方についてはどのようにお考えになりますか。
  215. 岩動道行

    岩動国務大臣 先ほど来、原子力船の経済性の問題そしてまた将来の見通しについては、政府委員あるいはまた運輸省の担当の方からお答えを申し上げたわけでございます。  そもそも原子力船考えた当時は、今世紀中には何隻か商船として要るんだ、大量輸送のために要るんだ、こういうことで出発をいたしたのですが、その後の経済状況の変化、産業構造の変化等によって、あるいはまた石油価格の問題等いろいろな観点から、今世紀中は当初考えたような原子力船は定量的には無理だろう、定性的にはやはり必要だろう、二十一世紀には必要になってくるだろう、これはたびたび申し上げておるところでございますが、これだけでは国民の皆さんも、それじゃなぜ舶用炉の研究をするのかということにもなろうかと思います。  それで、私は参議院でも申し上げたのでございますが、ただいま御指摘のように、潜水船というものは当初日本の船舶の人権威であります山県先生が、そういう原子力推進力を持った潜水船、つまり海の上を走ると抵抗が多くてむだが多い、水の中を潜るのが最も効率的な船の動かし方だ、こう権威のある先生がおっしゃっていまして、私の友人で船舶の専門家がおりますが、この専門家もそのようなことを私に話したこともございます。そういうようなことで、潜水艦ではなくて潜水船ということ、殊に最近は軽薄短小の先端技術を使ったものが動く時代になってきております。  あるいはまた、お話のありましたように南極観測のために「宗谷」から「ぶじ」、そして今「しらせ」という世界の最も進んだ砕氷能力を持つ観測船が建造されて、ことしから活動を開始しているわけでございますが、「しらせ」の後には原子力による船というものを、私は夢ではなくて現実に考えてもいいのではないだろうか。これはまだ子細に検討した結果を申し上げるのではございませんが、そういうことも今後の検討の課題として国民にもお話をして、そのようなことも検討していく時代ではないだろうか、私はこのように考えているわけでございます。  また、北極の油を持ってくるというときにも、ただいま運輸省の船舶技術究所におきましては砕氷船というものを検討しておりますが、その推進力は普通の油を使うことに今なっております。しかし、私がその研究所を訪れて専門家に、原子炉の船でやったらどうだろうかという話を聞いてみたところが、それは一つ考え方だ、こういう専門家のお話もございました。油を運んでくる途中でのろのろしておりますと油をどんどん食ってしまって運んでくる油がなくなってしまう、まことにポンチ絵みたいなものになってしまうおそれもあります。そういうようなことで、砕氷能力を持った、そして油を使わないでいけるような船は決して夢ではないと私は思うのであります。  なお、先般私どもの方の事務次官調査に参りました際に、ドイツのオット・ハーンについてこういう話があったと聞いております。それは、長距離大量輸送のためにドイツは研究開発をやってきた。そして、ドイツの場合には極東航路というものを考えておった。シンガポールまでは寄港地の了解が得られた。そこから先、終着点である日本についてはそのような了解が得られなかった。したがってドイツとしては、そのような原子力による大量の長距離輸送の船というものはちょっともう使いにくいな、こういうことでオット・ハーンというものが消えていった、こういうような話をしたということも聞いておるわけであります。そして、そのような大量のしかも高速の輸送船、商船というものは日本が必要ではないんだろうか、日本が一番世界の各地から、遠くからもそういうものを運んでくる国ではないんだろうか、こういうことは日本自身がお考えになることではないでしょうかというような話まであったと聞いております。  このようなことを私どもは十分に踏まえながら、国民の皆様方に、そしてまたもちろん国会先生方にも御理解をいただきながら対応してまいりたい、こう考えておるものであります。
  216. 遠藤和良

    ○遠藤委員 ただいま長官の大変に説得性のあるお話を伺いましたけれども、私は、「むつ」の存廃が大変大きな国民的関心になっておるときに、前向きの論議というのが少ないような気がするわけでございます。やはり科学技術庁として「むつ」はどうしても必要なんだ、日本の岡の科学技術行政、また原子力行政を推進するに当たってどうしてもなくてはならないんだという前向きの主張と申しますか、論議と申しますか、提言と申しますか、こういったものが私は余り提示されていないのではないか、こういうことを考えるわけでございます。したがいまして、今長官のお話を伺いまして、それにやはり肉づけ等を行いまして、ぜひきちっとした方向性と申しますか、同氏に納得をしていただけるものを提示する必要があるのではないかということを希望するものでございます。  また最後に、くどいようでございますけれども、今後の「むつ」の研究開発に対する姿勢の問題につきまして確認をさしていただきます。  これまでも「むつ」は、本来科学技術の問題として解決してこなければならない多くの問題をお金で解決してきたうらみがあるわけでございます。ここに「むつ」が漂流した原因があるという指摘が多くの識者、科学技術者の中にもあるわけでございまして、私もこの点については同感でございます。今後は、本当に科学技術の振興を真に憂える人々の意見を多く取り入れながら、いわゆる政治的な妥協ではなくて、科学技術本来の姿に立脚した判断によってこの「むつ」の問題を進めていただきたいわけでございます。  最後に、科学技術行政の最高責任者としての長官の御所感をお伺いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  217. 岩動道行

    岩動国務大臣 まず、私どもは深く反省をしなければならないと思っております。それは、昭和四十九年に「むつ」が外洋に出て放射線漏れを起こしたということ、このこと自体、科学的に見ますならば大したことはないということも言えるかと思いますが、しかしそういうことがあってはならないわけでございます。したがって私どもは、まず放射線漏れの修理、そして安全性をさらに確実なものにしてまいる、こういうことで今日まで努力をいたしてまいりました。また、このために、いわゆる大山委員会という専門家の極めて権威のある委員会で忌憚のない検討をしていただき、その御指摘をいただき、そして事業団の体制も御批判をいただきまして立て直しをいたし、それにこたえる人事も行ってまいったわけでございます。  一方、こういうことは何といいましても地元の御協力、御理解がなければなりません。そういうことで、地元の方の御理解に努力をいたしてまいりました。そういう中で、港については大湊から関根浜に移さざるを得なかった。これもやはり私どもは大変な努力をしてまいったつもりでございますが、最終的には関根浜に行く以外にはない。  そういうことで、かなりの経費がかかってきているわけでございますが、これからは、これを継続するという場合に先ほどからお話がありましたけれども、一千四十億という数字は一応事業団の方でやってみたいという計画の数字でございます。これは私どもが承認をしてそして予算要求するというような段階にはなっておらないわけでございます。今検討委員会でもいろいろやっておりますし、私どももまた、国会の御審議等を十分に踏まえて、やるとするならばどのようにして実験を行い、そのためにはどれだけの金を投入するのか。最小限度の経費でやらなければいけないということでございますので、もしも進めるといたしましても、一千億とかそういうお金ではなくて、かなり切り詰めた、そして効率的な予算というものを考えなければならない。まだ具体的な数字を申し上げる段階ではございませんが、私は厳しくこれに対応できるような、国民の批判にこたえられるような、そういう計画を検討するように事務当局には申しつけてあるわけでございます。  そういうようなことをやりながら、私は謙虚に国会の御審議、また各方面の御意見検討等を踏まえて、今後舶用原子炉の研究を中心として、将来に備えて日本の生きる道を確立してまいりたい。原子力平和利用の重要な一環として、先ほどもちょっと申しましたけれども、例えば南極というものはこれから人類にとって大変大事な場所でございます。そういうところに対しても日本が対応できるような船は何であるかということも踏まえながら、誤りのない道を探ってまいりたい、かように考えております。
  218. 遠藤和良

    ○遠藤委員 以上で終わります。大変にありがとうございました。
  219. 大野潔

    大野委員長 工藤晃君。
  220. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 まず、私は長官に、今伝えられている「むつ」存廃方針決定の手順について伺うわけでありますが、今自民党検討委員会検討をしていて、来月何日か自民党の方で決定する、例えば四役決定する。その場合、その内容はそのまま政府が受ける、そういうことですか長官。
  221. 中村守孝

    中村(守)政府委員 現在、自民党の中においても検討が進められておりますし、私どもの科技庁としてもいろいろ検討いたしております。  政府としては、自民党検討結果にさらに国会での御論議等も踏まえまして政府としての方針を決定する、こういうことでございます。
  222. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 今私、長官に伺ったわけですから、この後は長官に答えていただきたいと思うのです。  ではその場合、自民党政府与党でありますから、自民党と科技庁長官との間ではこの問題での検討協議というのは、もう決定が近いわけでありますから今続いていなければ、何か青天のへきれきの決定を出されて長官が慌てるということは考えられないことですが、そういうのは命ずっと連日あるいは非常に緊密にやっておられるのかどうか、その点だけ伺いたいと思います。
  223. 岩動道行

    岩動国務大臣 国会の御審議をまず踏まえながら結論を出さなければならないと思っております。また、そういうことを背景としながら、私どもは政権を預かっている政党でございます。したがいまして、政策決定は私ども責任においてしなければなりません。国会の御審議を十分に踏まえてやることは当然でございます。  したがいまして、ただいま自由民主党の中において「むつ」に関する検討委員会が毎週最低一回は開催をされております。そしてその検討の過程において、これは私どもと党との間で、政府意見を聞きながら検討を進める、こういうことになっておりまして、私どもの役所からも検討委員会には責任のある者が出席をしておる。特に私は、事が重大であるということで事務次官出席をさせて、隔意のない意見と十分なる検討をただいまも続けているという現状でございます。
  224. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 長官の今のお答えの前半、ちょっと伺っておりますと、何か政権政党としてと言って、長官の立場というよりも自民党立場みたいに聞かれたわけでありますけれども、ともかく協議しながらやっていくということなので、それならばもう一点伺いたいわけでありますが、そうすると八月の何日か決定するというのは、「むつ」を廃船にするとかあるいはこれまでの「むつ」を使っての実験計画を進めるという、これが大変中心問題だと思いますが、それを決めるのか。それとも先ほど来ちょっと伺っておりますと、事業団が出している一千億余りの計画というのは膨大だから、少しそれを削るような形で実験を続ける、例えばそういう形で答えを出そうとしているのか、その辺どうなんでしょうか。
  225. 岩動道行

    岩動国務大臣 基本的には、「むつ」による舶用炉の研究は続ける必要があるのか、あるいはやめるのか、これが中心課題でありまして、それで続けるという場合には、これだけのお金でやれるのか、やめるとしたならばどれだけの金がかかるのか、こういうことは次の問題になっているわけです。やるかやらないか、その必要性についての検討が中心であるということであります。
  226. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 その点はわかりました。そうすると、その場合、「むつ」存廃を決めるときに考えられることとして、原子力商船実用化の展望、それから技術上の問題で、安全性という点で順調に実験がやれるかどうかということに対する考慮、それからまた予想される費用、それによって得られる効果がどうかというその辺の比較、さらにまた、青森県民への政治的な配慮とか、場合によればサイクル基地との関係での配慮とか、幾つかのファクターが考えられるわけでありますが、長官としては、このうち何が一番重要だと考えられますか。
  227. 岩動道行

    岩動国務大臣 みんな大事だと思います。やはり条件が全部そろわなければ国民の納得を得られませんから、私はすべてが大事だと思います。そういう意味でおわかりいただけると思います。
  228. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 その点はその点でお答えいただいたと思いますけれども、そこで、それならば最初の原子力商船実用化の見通しなんですが、私は先ほど来長官のお話を聞いておりますと、もともとこの原子力船むつ」の計画が出てきたときは原子力商船の実用化が迫っているからということだったのですが、だんだん話が南極の砕氷船か何かどうも変わってきているように思えますし、それから潜水船というのも、貨物船としてつくられるならば、この前の参考人の御意見で言うと、鉱石とかそういうものは運ぶのに適さないだろうとか、いろいろあって非常に限られてくるわけでありますが、ともかくそういう議論ではなしに、原子力商船というものにもう一度議論を戻していく必要がある。というのは、特殊な船を一隻、二隻つくるためにこれだけの科学技術の予算を取ってということにまた戻ってくるんじゃないかと思いますので、やはり将来、原子力商船が実用化するであろうという見通しがかなりあるということが前提であるべきだという立場からこの問題を言うわけであります。  ともかく二十一世紀の初頭ということですが、実際率直に言って、二十一世紀の初頭とは大体二十年後あるいは三十年後、四十年後、五十年後、あるいはこれらの幅を持って言われているのか、もう少しそこのところを長官からも伺いたいと思います。
  229. 岩動道行

    岩動国務大臣 先ほど来申しておりますように、原子力船というものがスタートの場合においてはいわゆる商船、そして大量の物を高速で運ぶという一つの目標があって、しかもそれが今世紀中に何隻か必要になるんではないか、こういうことでスタートしたわけでございますが、その後、世界経済の変貌、産業構造の変化等によって、今世紀中はそういう当初の目標は遠のいたのではないか。しかし、必要であることは間違いないだろう。それが今世紀ではなくて次の世紀だろう。それから先、五年なのか十年なのか五十年先なのか私もまだ申し上げる段階ではございません。しかし一方、特殊船としての原子力の船、これについてはあるいは今世紀にも実用化が可能になるかもしれない。少なくとも二十一世紀の初頭ぐらいにはそういうものが商船に先んじて考えられることもないとは言えない。そういうようなことからも、私どもは舶用炉の研究開発は積極的に平和利用として進めてまいりたいと考えています。
  230. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 現実は、軍艦は原子力を使ったのは四百隻近く、そしてその他と言えばソ連が砕氷船一隻か二隻動かしているということでありまして、確かにそういう特殊船がつくられるというのは、現につくられているわけでありますから私はそれを否定しないわけでありますけれども、実際スタートは、少なくとも大型船は原子力商船に切りかわっていくだろう。それからもう一つは、やはりエネルギーで石油枯渇が起きるんじゃないか、それに備えようということが出発点だったんじゃないかと思うのですが、少し議論が変わってきたように僕には思えますね。  きょう、運輸省からも来ておられますが、やはり原子力商船実用化の時期は、政府として責任ある展望を示すのは科学技術庁か運輸省かというと、これは運輸省の方じゃないかと思いますので、ちょっと念のため伺いたいと思うのです。
  231. 片岡栄夫

    ○片岡説明員 運輸省といたしまして、海運それから造船業を所掌しておるわけでございますが、原子力船の展望につきましては、その経済性の見通しというのが一番問題になろうかと思うわけでございます。この経済性の見通しについては、まず石油の価格の動向とかあるいは原子炉のプラントのコストの動向とか、そういうふうなものが将来どうなるのかということを検討しなければいけないわけでございますが、石油価格はいずれは高騰するであろうという見通し、それから原子炉プラントについては、これから技術開発を行いまして、現在原子力船事業団でも三万馬力程度の舶用炉の研究開発を行っておるわけでございますが、原子炉プラントのコストの低減が図られるというような状況になれば、在来船に十分太刀打ちできる原子力船が将来はつくり得るだろう、こう考えておるわけでございます。  そういうふうな検討を踏まえまして、原子力委員会あるいは日本原子力産業会議等で実用化の見通しの時期を検討しておりますが、大体二十一世紀の初頭というふうに言っております。二十一世紀の初頭には経済環境が整うんではないか、こう言っております。そういうふうな専門家の御意見を踏まえまして、私どもも二十一世紀の初頭を目指して技術開発を続けていきたい、こう考えておる次第でございます。
  232. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 三万馬力以上の船が消費している石油消費量は、参議院の答弁を伺っても大体三%だと思いますので、石油消費量の三%を将来原子力船原子力のエネルギーで置きかえるという形をとると思うわけなんですが、実際これからのエネルギーの対策を考えていくときに、将来この三%を置きかえるために、我々が今ここで問題にしてきた安全基準がまだ確立してないのに「むつ」の実験をどんどんやるとか、そういう方向に進んでいいのだろうか。我々のエネルギーに対する将来の対策で三%を置きかえるということならば、それこそ産業構造の転換だとか陸上の運輸におけるさまざまなエネルギーのむだ、これは特にモータリゼーションと関係あるわけですが、そういうことによっても十分解決していくし、まして二十年、三十年、四十年、五十年ということならば、新しいエネルギーとしてそれこそ水素だとかあるいはいろいろあるでしょう、そういうものも考えられる時期になっていくわけなので、さっき私が言った二十年先か三十年先か五十年先かというのは非常に大事な問題だ。というのは、二十年先にどうしても完成しなければいけないというときのステップの踏み方と五十年先と違うというだけでなしに、そのときは全く今と経済的なあるいは国際政治上の諸関係がそれこそ変わってしまうわけでありますから、今の単なる延長ではそれはとてもできないわけなので、そもそもエネルギーが足りなくなる、この三%を何とか原子力船で置きかえなければならない、ゆえに今ともかく実験をやりましょうという発想は、私はとてもいただけないというふうに思うわけであります。  もっと極端な言い方をすると、それこそ仮に将来石油が枯渇するような時代には、三万馬力載せるタンカーに積む石油の方がなくなってしまったということではまた困るわけなので、そういうことのないようにしなければいけませんけれども、しかし化石燃料と一口に言いますが、石油資源というのはまだまだいろいろありますし、特に石炭ということになるとこれはあるわけですから、そう単純なことじゃないと思います。  なお、先ほど北極の油田ですか、そこから掘ってきて砕氷船でというお話がありましたけれども、これも今の北海油田というのは別に砕氷船で積み出しているわけでない。それからアラスカの石油を掘ったときも、アメリカで七年前か十年前、そういう検討がちょっとあったのですね。しかし、そんなのはとてもばからしい、やはりパイプがいいというのでパイプラインで運んでいるという事情もありますので、考えられないことじゃないけれども、何かそういうことだけのために今から用意しなければならないということとはちょっと違うというのが私の意見です。  もう一つ、これも原子力船むつ」を動かさなければいけない理由としてかなり挙げられたのですが、それによって原子力船の船員、乗務員の訓練をしなければいけないということがあったと思いますが、その辺はどうですか。これは事業団に伺います。
  233. 井上啓次郎

    井上参考人 乗員の訓練ということは、少なくとも原子力船が運航する上においては非常に大事なポイントでございます。したがいまして、今までも事業団は乗員訓練ということは十分配慮して計画を立て、実行してきておるわけでございます。  今、将来に向かって乗員の訓練はどうかという話でございますが、こういう長い期間にわたる技術開発というものについては、私、担当者として我田引水ではございませんけれども、ぜひその点は御理解願って、人、技術というものは一体でございますので、この点の配慮というものは長い目で見ていただきたいと思うのでございます。
  234. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 その点について、先ほど言いました実用化するときが三十年先、五十年先ということになったり、あるいは先ほどの答弁の中でも第二「むつ」はつくらないんだということになりますと、「むつ」に乗って訓練を受けた人が一体何歳ぐらいになったとき次の世代に教えられるかという問題にさえぶつかる、そういう性質の問題も実はあると思います。  そこでもう少し問題を進めたいのですが、私たち技術上の問題で安全を問題にするその一つは、先ほどもこの委員会で問題になりました責任の問題というので、メーカーがどこまで責任をとるのかとか、本当にとらせるようなことになっているのかどうかということになると、契約上見るとまことに心もとないということが現に起きたわけなんです。  そこでこの点だけ、これは単純なことなんですが、簡単に答えていただきたいと思うのです。十年前の海上での放射線漏れというのは、海上に出て非常に揺れが激しいとか、そういうまさに海洋の荒れた環境の中で初めて起きた事故だと私は思いませんが、そのとおり理解してよろしいですか。
  235. 井上啓次郎

    井上参考人 十年前に起こりました放射線漏れというのは、御存じのように出力上昇試験、一・四%の出力で起こったのでございまして、いわゆる実験中におけるトラブルとこちらは解釈いたしますが、しかし事は重大でございまして、その後改修及び総点検ということも実施しまして対応したわけでございます。  今先生の御指摘のような意味で、今後の技術開発上いろいろな問題を含んでいる、メーカーとの関係はどうかという質問でございますが、私の立場から強いて申し上げれば、これは未知のといいましょうか未踏の分野を開拓する技術開発でございます。したがいまして、その点におきましてはメーカーもまた未経験だ、事業団の担当のところも、一応は勉強はしておりますけれども未経験だ、そういう場合におけるこれからの取り組み方というのは、今までの実績を参考にしまして慎重に進むべきものだと私は考えております。
  236. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 メーカーも未経験、私たちも未経験、まことにお互いにかばい合っている姿としか思えないわけでございますが、大山委員会の報告においてさえ、当初から専門家の中にはもっと慎重にやるようにという意見があった。それを聞かなかった結果なんですよ。それを未経験という言葉だとかそういうことで繕っていくのはまことに私はよくないと思います。  例えばこういうことが考えられますね。大山委員会の報告にありますように、同じ炉を陸上試験してはどうかということがあった。その場合メーカーに、そういう実験をあるところまでやってそれで性能が確かめられたとき受け取ります、例えばそういう契約をやっておれば、さっき言ったように海上で特別波が荒くて起きたような事故じゃないですから、陸上でも同じ型なら同じような事故を起こしたわけでしょう。そうしたら、あのときの契約によりますと、炉の値段は二十六億七千万円ですか、この二十六億七千万円のものを引き取る前にもう一度メーカーに補修させ、全部設計をやり直させる、そうしてその確かめられたものを今度積むということになれば、まだ結果的に見ても非常に節約になったし、また本当は科学技術開発のあり方からすれば、当然のことをやらなかったということになるのじゃないですか。それを陸上で全然それこそ出力を出して実験しないままともかく載っけてしまって、十八カ月ですか保証期間か何かを過ぎたらもうだめだというまことに情けない姿になっていて、これは私は今も根本的に改善されていないと思うのです。だから今度起きたときどこがどう責任を負うかということも、当初と余り変わらない姿になっているとしか判断せざるを得ないわけなんです。  そこでもう一点伺いたいわけでありますが、安全性についての不安な点について参考人から幾つか指摘されましたが、私なりにまとめて言いますと三つありまして、陸上炉であっても加圧水型の炉、これは発電所でいろいろ事故を起こしてきた、そういう経過がありますね。その経過に沿って本当に「むつ」の加圧水型の炉の点検とか修理がやられたのだろうか、これが一つありますね。  もう一つは、陸上炉と違って舶用炉であるということから設計上の制約だとかいろいろ受けまして、果たして我が国は舶用炉の安全の基準というのができているのかな、それに基づいて総点検なるものがやられたのかな、これが二つ目ですね。  それから三つ目は、「むつ」の安全対策というけれども、海難事故が起きたときどうするか。それから、もちろん原子炉の方で何か事故が起きたときはどうか、これはあるかもしれない。これも大変いろいろ問題があるわけですが、その場合でも、これが同時に重なって起きたときの対応ができてないではないか。なかなか重大な問題が指摘されてきたと思いまして、これらどれ一つとしておろそかにすることはできないと思います。  私は一つだけ伺っておきたいのですが、これは原子力安全委員会で出している安全年報にも出ておりますが、我が国の原子力発電で、最近の時点で加圧水型の炉で、どういうタイプの事故が起きているのか、これについてお話しいただきたいと思います。
  237. 辻栄一

    ○辻政府委員 最近におけるPWR、加圧水型の原子炉トラブルの関係ですが、これまでのところは特に重要な事故が起きているわけではございません。定期検査の過程におきまして、幾つかの事故と目されるようなものが発見されている例はございます。その中におきましては、例えば蒸気発生器細管の渦電流探傷検査をやっております過程におきまして異常信号を発見して、そのために所要の対策を加えたというような問題でありますとか、あるいは同様に、定期検査中に制御棒クラスター案内管支持ピンの超音波探傷検査の結果、損傷が発見されたとか、こういったようなたぐいが主なものであろうかと存じております。
  238. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 余り大したことは起きてないというお話でありますけれども、私がここに持っている報告書の中でも、数としては大変多いし、例えば五十六年八月三十一日、九州電力玄海一号機、これは蒸気発生器細管の測定のとき損傷ありと。それから五十六年九月十四日、関西電力大飯一号機、蒸気発生器細管からの漏えい。そのほかいろいろありますけれども、見ると蒸気発生器細管の損傷というのが、例えば五十七年二月二十二日、関西電力高浜二号機、蒸気発生器細管の損傷。それから五十七年三月二十日、関西電力美浜一号機、やはり蒸気発生器細管からの漏えい。それから関西電力美浜二号機、これは五十七年四月二十七日、やはり蒸気発生器伝熱管に異常信号を発見。それから五十七年七月十九日、関西電力大飯二号機、やはり蒸気発生器、これは二次側ドレーン配管取り出し部付近からの水漏れというので、これはちょっと違うかと思いますが、しかし大体同じような場所ですね。五十七年七月二十日、関西電力大飯二号機、やはり蒸気発生器二次側ドレーン配管の取り出し部付近。  そういうのがずらっと出てくるわけですが、やはり加圧水型の炉は蒸気発生器細管での事故が大変多いというのはどういう理由が、専門技術的な立場からちょっと説明していただきたいと思います。
  239. 辻栄一

    ○辻政府委員 御指摘のように、先ほど私も御説明いたしましたけれども、蒸気発生器細管のトラブルが特に定期検査中に発見されていることが多いわけでございます。  この原因につきましては、原子力安全委員会においてもいろいろ検討してきたところでございますが、二次系の水質調整のための物質と原子炉運転中の高熱それから応力、こういったようなものの関連からの応力腐食割れではないかというふうに考えられておりまして、これまで諸般の対策がとられてきておるところでございます。  既にこれまで発見されたものにつきまして、主なところはこれに施栓をすることによって、また蒸気発生器細管の数が非常に多いわけでございまして、その一都にそういう亀裂が発生するということから、これに対しては施栓をして使わないようにする、それから二次系の水質を心配のないものに取りかえるというような対策をとって、これまでチェックをしてきております。定期検査の際に。おきましても、慎重に調査をしております結果、こういったトラブルが未然に発見されておるという状況でございます。これらの全体の傾向といたしましては、これまでのこういった諸対策によりまして、全般にその数量が減少の傾向にあるということでございます。
  240. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 それは燐酸ソーダを使ったということと関係あるというふうに聞いておりますけれども、「むつ」の場合も使っていたんじゃないですか。これは事業団の方から。
  241. 野澤俊弥

    野澤参考人 「むつ」は、当初の設計では二次系の水質管理に燐酸ソーダを使う設計になっておりましたが、現在はそれをヒドラジン処理に変えております。
  242. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 変えたけれども、残留燐酸ソーダがいろいろ影響あるんではないかという心配があることと、それから先ほど言いましたように、加圧水型の炉というのはかなり蒸気発生器の細管というところに集中的にいろいろ出てきて、たしか最近はメーカーの側も原発の側もいろいろ改良対策をとっているというんですけれども、「むつ」の封印したままの炉で、要するに遮へい工事だけやったという炉で、そういう陸上炉で起きたようなことから反省されて改良しなければいけない点の改良だとかあるいはチェックすべき点のチェックというのが本当に十分やられたのかなということがありますが、その点はどうなんですか。
  243. 野澤俊弥

    野澤参考人 今先生のおっしゃいました核封印と申しますのは、一次系の圧力容器の開放を指しているわけでございまして、ただいま問題になっております蒸気発生器は二次側でございますので、十分開放点検ができるわけでございます。現に「むつ」は、昭和五十五年の九月から十月にかけまして佐世保におきまして、試験方法としてはエディーカレント、つまり渦電流探傷試験という方法によって、パイプ一本一本についての健全性を十分確認しておりまして、何ら異常がございませんでした。
  244. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 いや、それはやはり実際に原子炉として発電所で出力上昇して、そこで起きている問題ですからね。それはちょっと話が通らないですよ。だから、私はわざと核封印というのはそういう意味で聞いたわけであって、一次系とか二次系というんじゃなしに、全体としてその発電炉を動かさない状態ですから、片一方は原発をどんどん動かしている中でそういう事故が起きているのと同等に見て、安全ですということにはならない。  それから先ほど申し上げましたように、次に舶用炉であるという問題等々の問題がありますが、これらは省略しまして、結局もう一つの問題は、これは先ほども問題になったことでありますけれども、やはり費用問題というのが非常に重要だと私は思います。そして今、存廃問題を決めるに当たって当然、今廃船すればどれだけ費用がかかるとか、あるいはこの程度の実験をして廃船すればこうなる、さらに、これまで原子力船懇談会が出したようなプログラムでやるとこれだけかかるとか、あるいは最近事業団が出していますところの二年間今の炉心でやってあと四年間炉心を改良してやったらこうなるとか、やはりそれを国民の前に出して、そして選択をしなければならない時期に来ているんですよ。というのは、さっき言ったように、緊急度からいっても何年先かわからない、どうも緊急度が薄れてきて、話が原子力商船の方から特殊船に移ってくるような状況もある。それで、実際に船一つのために新しい立派な港をつくった例というのは余りないと思うのですが、そういうこともやらなければならないという問題もある。こういうときに、これは国民の税金を使った研究開発なんですから、こうすればこれだけかかる、しかしそれは国民にこういう利益をもたらすということを責任を持って言えるようになってないと、政府としての責任ある対応にならないと私は思います。  そういうことで、いま一つ長官の方にそれをはっきりと示すことを求めますけれども、御答弁願いたいと思います。
  245. 岩動道行

    岩動国務大臣 ただいま国会の御審議もいただいておりまするし、また私ども政府・与党の関係で、党の方の検討委員会で早急に結論を出すための努力を鋭意いたしているところでございます。そういう中で政府意見を十分に申し上げるような機会もあるわけでございまして、私どもは、予算につきましても一千億という数字でこれを了承して今後もその線でいくというようなことは考えておりません。十分に国民の御理解が得られるような、批判にたえられるような、そういう予算をこれからもしなければいけない。特に先般砂統合の法案が成立をいたしましたので、原子力究所というものが、来年の四月からではございまするけれどもスタートするためにも、原研の意見考え方も十分にくみ入れて、よく相談をしてやっていかなければなりませんので、具体的な数字を今申し上げる段階ではございません。
  246. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 何か数字を示すと、こういうことをやりたいと思っているという判断をするんじゃなしに、そういうことから離れてもっと客観的に、こういう進め方をすればこうなるということで国民もこの論議に加わって、もちろん国会は加わっているわけでありますが、それで今どちらの方向をとるべきかという大変大事な判断材料になるということの御認識がないように思うわけですね。もとより今度は原研がやるわけでありますから、原研の皆さんの意見を聞いてやられなかったら大変なことになって、やれないわけでありますから、それは当然のことなんですけれども、少なくともこういうことは考えられる。  そういうことで、将来のシナリオとしてまだ十分考えられてないのは、こういうのは想像するだけでも嫌なことだと思いますけれども実験航海をしてもっと重大な事故が起きた場合に一体どこで修理ができるだろうかとか、関根浜に戻ってこられるだろうかということも含めて、どういう思わぬ出費が出るであろうかということまで考えて臨まないとやはり責任ある態度ではないと思います。そういう点で、再度この問題を長官に伺いたいと思います。
  247. 岩動道行

    岩動国務大臣 重ねて申し上げますが、検討中でございますので、具体的な数字はまだ申し上げるわけにはまいりません。また、将来何か大事故が起こるじゃないか、そうすればまた大変な出費になるのではないか、こういうお話でございますが、私どもはそのようなことのないように、安全性を最大に重要な課題としてこの問題に対応してまいります。
  248. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 時間がなくなりましたので私も質問を終わらなければなりませんけれども、やはり「むつ」を使ってのこれからの実験という計画はもうやめた方がいい、「むつ」は廃船すべきである、これからの原子力船のあり方とか舶用炉の研究開発のあり方をここでもう一度考え直す、立て直す、そういう大事な時期に来ていると思います。その私の結論だけ述べまして、私の質問を終わります。
  249. 大野潔

    大野委員長 辻一彦君。
  250. 辻一彦

    ○辻(一)委員 まず最初に、長官にお伺いします。  既にこの委員会で随分と「むつ」問題について論議をされてきまして、恐らくきょうあたりがその締めくくりになるのじゃないかと思うのでありますが、長い論議を通して、今存廃が問われているこの原子力船むつ」について行政の責任者として長官はどういう決意を持つか、考えを持つか、このことをまず初めに一言伺いたいと思います。
  251. 岩動道行

    岩動国務大臣 まず基本的なことを申し上げたいと思いますが、日本の地政学的な立場、資源のない日本、特にエネルギー資源というものに大変欠けている日本といたしましては、どうしても代替エネルギーとしての中心に原子力平和利用というものを置かなければいけないと思っております。しかし、油からこのような代替エネルギーに転換すると申しましてもなかなか容易ではございません。しかし、平和利用という立場から、私どもは特に原子力発電に重点を置いて、そして現在では既に二十六基、おおよそ二千万キロワット、稼働率、操業率と申しますか七二%、世界一の稼働率で安全運転が続けられておることは、御案内のとおりであります。国民のサイドから見ましても五軒に一軒は原子力の電力を使用している、四国に至っては二軒に一軒が原子力の電気を利用している、こういうような状態でございます。そういう中において、海運国家であり、造船国家であり、貿易国家である日本立場考えた場合には、どうしても舶用炉の研究開発が必要である。これは継続的に遅滞なく着実に研究開発を行っていくべきである、かように考えております。  そういう基本的な考え方の中において、私ども原子力船むつ」による研究開発を進めてまいったところでございますが、過去のいろいろな経緯、そしてまた国会を初め各方面のいろいろな御意見、御論議が起こってまいりました。したがいまして、これらの御意見、御論議あるいは地元との関係、地元とのお約束、さらにまた予算の執行におきましても会計検査院から大変大事な御指摘もいただいております。あれこれ総合勘案をいたしまして、私ども国会の御論議を中心としつつも、政権を預かる政党の意見というものは極めて重要でございますので、ただいまはその方の検討の結果も十分に踏まえて政府としての対応を誤りなく進めてまいりたい、かように考えているところでございます。  したがいまして、本日のこのような委員会でいろいろ貴重な御意見をちょうだいをいたしました。これらもまた政府・与党の関係において十分に反映させながら政府としての結論を出して、日本原子力平和利用の将来展望を見詰めながら対応を誤りなく進めてまいりたい、かように考えております。
  252. 辻一彦

    ○辻(一)委員 時間の点から、私はこの問題はそれをお伺いするのにとめて、今、米中原子力協定が大変難航しているということがここ数日報道されております。核拡散防止に対する追加保障をアメリカは求めてそれが難航している、こう言われておりますが、これについてその状況と、どうお考えになるのか、このことをまずお伺いしたい。
  253. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  米中の原子力協力協定につきましては、先般レーガン大統領が訪中されました際、これは四月三十日でございますが仮調印されまして、その際のプレスリリースによりますと、その後行政府内部の諸手続を経てアメリカの議会に提出され、しかるべき会期を経た後発効するということになっておったわけでございますが、現状で見ますと、いまだに政府から議会の方にそれが提出されていないという状況にございます。この間の事情につきましては、公式的なことがございませんのでなにでございますが、一部の新聞では議会からのクレームというようなことが言われておりますが、まだ議会には提出されておらないという現状でございますので、議会から正式にクレームをつけたということではないと思われます。
  254. 辻一彦

    ○辻(一)委員 現に新聞報道では、アメリカ自体が中国に対して追加保障を拡散防止について求めているというのですが、その点簡単で結構ですから一言。
  255. 中村守孝

    中村(守)政府委員 私どもやはり公的な発表でないとここで申し上げるわけにいかないのですが、国務省のヒューズ報道官が発表したところによりますと、「米国は協定の実施に係る事項につき中国側との完全な相互理解を確保するための所要の措置をとっている」、こういう言い方をしております。これ以上の詳しい内容につきましては、公式の発表がないものでございますので、ちょっとお答えしかねるわけでございます。
  256. 辻一彦

    ○辻(一)委員 確かにワシントン発の共同通信ではそうなっておりますが、さらに核拡散防止という点から追加保障を求める、それが中国との難航の原因になっているということがここに言われておりますが、その点についてはいかがですか。
  257. 中村守孝

    中村(守)政府委員 大変恐縮でございますが、アメリカ側の公式な発表がございませんので、私どもからちょっとお答えいたしかねます。
  258. 辻一彦

    ○辻(一)委員 よその国のことですから、それ以上は無理と思います。  それではもう一つ、期限が近く来ると言われる日米原子力協定についての交渉も、アメリカの方から規制強化が求められているために年内決着は断念せざるを得ないという報道がきょうの一部の新聞に出ておりますが、これについての状況はどうなんですか。
  259. 中村守孝

    中村(守)政府委員 先生御指摘の件は七月十六日付の新聞の報道かとも思いますが、我が国におきます再処理の取り扱いにつきましては、現行の日米間の協定におきまして日米間で共同決定をしなければ再処理ができないという格好になっておるわけであります。しかし、これをもっと長期的に解決したいという希望を日本側は持っておりまして、この問題につきましては、昭和五十六年の十月に日米共同声明を出しまして、日米両国が長期的な解決を昭和五十九年の十二月までに作成するという意図を有することが相互に確認されまして、これを受けて五十七年の六月に、当時の中川科学技術庁長官がアメリカに参りまして、包括同意方式による長期的な解決を図ることについて交渉を始めようじゃないか、こういうことで日米間で具体的な話し合いが始まったわけでございます。  しかしながらレーガン政権は、政権発足当時、友好国に対して核不拡散政策を従来のカーター政権のときよりもかなり緩い方向で対応してくれるような雰囲気であったわけでございますが、アメリカの国内法の核不拡散法によるいわば締めつけと申しましょうか、それが非常に厳しゅうございまして、それを背景としてアメリカ側としては日本側に対してのいろいろな要求を持ってきておるわけでございますが、日本立場としては、現行協定の枠の中でこの再処理に関します長期的な包括同意というものを確保したい、こういう立場にございます。  そういうことでございますので、双方の主張の調整ということにはちょっと時間がかかろうかと思いますが、基本的に辛抱強くこの問題は解決していかなければならない問題かと思っておるわけでございます。何分にも再処理問題の解決というのは、我が国の原子力発電を推進していく上におきまして極めて重要なことでございます。米国の理解が得られるよう粘り強くやってまいりたい、こういうぐあいに考えておるわけでございます。
  260. 辻一彦

    ○辻(一)委員 時間の点から余りその内容に詳しく入る余裕がありませんが、いずれにしても、アメリカはいろいろな形で規制強化を求めています。こういう中で、我が国と中国との原子力協定がかなりのところにこぎつけておる。私は日中間が理解し合って協力していくことが望ましいと思うのですが、アメリカのいろいろな動きに追随をしてというか、その動きを待って日本が判断をしてやっていくのか、あるいは日本が独自の立場でこの問題に対処するのか、どう考えるのか、そこらひとつ事務的な点と大臣の所信を聞きたい。
  261. 中村守孝

    中村(守)政府委員 日中原子力協力協定の問題につきまして、若干事務的なこれまでのこと等お答えさしていただきますと、昨年九月に第三回の日中閣僚会議がございまして、今後とも両国の原子力平和利用分野における協力を促進し発展させるということで話し合いを進めることについての合意が得られました。過去三回にわたって日中間で協力可能な分野、さらには協力協定の概要といったものについて意見の交換を行ってまいりました。  このような経緯を踏まえまして、具体的な協定案文をどのようにするかということで交渉を今後進めていくことになるわけでございます。もちろん日中間のことでございますので、日本としては日本の独自の考え方でこれに対応していくことは当然でございまして、日本としては各国に対してすべて共通でございますが、核を兵器に転用させない、あるいは原子力協力をやることによって他国の核兵器の増強に力をかすようなことはしないというのが基本的な立場でございますので、この線を確保するということでいろいろ具体的なことを検討しておるわけでございます。
  262. 辻一彦

    ○辻(一)委員 大事な問題ですので、長官からも所信をお伺いしたい。
  263. 岩動道行

    岩動国務大臣 まず、米中の関係については先ほど私どもの方からもお答えした程度でございまして、それはそれとして、私どもは日中間におきましては、できるだけ円満なうちに日本原子力政策にかなった姿で原子力に関する日中の協力協定というものを結ぶことは好ましいことである、かように考えております。  先般、秦山の原子力発電所に対する圧力容器の輸出につきましては、私ども原子力委員会決定しております。対外的にもやはり平和利用という保障を取りつけることによって初めでそのような輸出もよろしいではないか、こういうことで先般は話し合いがついたわけでございます。今後、基本的な協力協定につきましても、そのような基本精神をもとにして話し合いを続けてまいりたい、かように考えております。
  264. 辻一彦

    ○辻(一)委員 私は日中の友好という点も考えながら、また日本の大事な原則を一つ貫いて前進をすることを期待したい。努力をお願いします。  そこで、アメリカは日米原子力協定についていろんな意味の規制強化を求めておるようですが、我が国自体は原子力平和利用に自主、民主、公開の三原則があります。この自主の原則に照らし合わせて、アメリカのそういうような要求というか要請、これを一体どのように考えるか、この点いかがでしょう。
  265. 岩動道行

    岩動国務大臣 アメリカとの関係は大変大事な関係でございまして、特に再処理につきましては、日本立場平和利用に徹しております。そして日本からよそへ、先ほど申したように容器を輸出するとかあるいは機器の輸出、そしてまた協定を結ぶその場合でも、あくまでも平和利用という担保を取りつけながらやっていく。このことはアメリカもよくわかっていただいておると思いますが、なおこの上とも日本原子力平和利用の基本精神というものをよく理解をしていただきながら、再処理については少なくとも包括的な姿で今後やっていけるように、私はアメリカ政府との対応を続けてまいらなければならないと考えております。
  266. 辻一彦

    ○辻(一)委員 この前の参考人、青森県の副知事さんにここへ来ていただいたときにちょっと触れたのですけれども、長官はいらっしゃらなかったので、重ねてでありますがお伺いしたいと思うのです。  私は原子力開発、特に発電所を中心にした開発では、我が国はきせる開発論、いわゆるがん首と吸い口と胴体がありますが、がん首の濃縮ウラン、原料のところ、それから吸い口に当たる再処理、廃棄物は極めて細い、そして胴体だけが膨らんできた。そしてその二つのネックは、原料の濃縮ウランはアメリカとフランスに、さらに再処理は今フランス、イギリスに依存をしておる。こういう点からいうと、重要な二つの首の根を押さえられて、自主というのはなかなか難しいように思うのです。これだけ原子力開発が行われればいや応なしにこれに対処しなくてはならぬと思うのですが、この点についての基本的な考えはいかがでしょう。
  267. 岩動道行

    岩動国務大臣 大変大事な点の御指摘でございますが、私どもはやはり平和利用に徹しながら、それをアメリカを初め国際的に十分に認識をしていただき、そして日本の自主性というものを確立していくことが大変大事であると考えております。したがいまして、まず原料としてのウランの入手あるいはそのための開発、さらに濃縮の施設、そして再処理の施設、さらに廃棄物の処理、高レベルの廃棄物の処理、一貫していわゆる核燃料サイクルを確立する、これも日本の自主性を主体としながらすべてをやっていかなければならない。そういうために、いろいろな国に日本平和利用という原則を十分に理解をしてもらいながら、逐次そのような体制を確立してまいりたいと考えております。
  268. 辻一彦

    ○辻(一)委員 時間が来たようですが、ちょっと二、三点だけお願いしたいのです。  前に私は、参議院の方の国会派遣で一カ月ほど欧州の各国の原子力施設、政府関係を回ってきましたが、ドイツへ行くと、ドイツには岩塩層があるが、そこに廃棄物の最後の貯蔵、処理を期待してもらっては困る。イギリスは、ウィンズケールを核廃棄物の最終処理場にされても困る。フランスを含めて、まあ欧州はなべて自分の国で出したものは自分の国で始末しろ、極論すればこういう言い方をしておったと思うのです。その後時間がたちましたが、別にそれは変わりはないと思うのです。そうなると、我が国としてこれらの問題についてしっかりした対策を立てなければ、自主性を貫くにも貫けないと思う。  そこで、濃縮ウランそれから再処理、さらに廃棄物の処理等につきまして、民間がやるのも大事でありますが、国の責任がかなり大きいと私は思うのです。国の責任をどこまで、民間がどこまでという問題はあると思いますが、もう少し国が責任を持つべきではないかと思うのですけれども、この点はいかがでしょう。
  269. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  核燃料サイクルの自主性確保のための方策で、民間に任せるだけでなくて国が責任をとるべきではないかということにつきましての御質問でございますが、これまで、いわゆる我が国の自主技術をまず開発して、我が国の技術的基盤を高めて、これによって自主性の確保を図っていくということで、まずウラン濃縮につきましては、みずからの手によりまして動燃事業団が遠心分離法による技術開発をし、デモプラント、いわゆる実証プラントを建設する段階まで来ておるわけでございます。その先、商業用になる段階では、これはもう民間の手に渡してもよろしいのではないか。ただ、その後におきましても、経済性あるいは信頼性を向上するための技術開発については、国がやはりまた応援していかなければいけないだろうという問題があろうかと思います。  再処理につきましては、東海の再処理工場で、我が国としての技術の蓄積を図って民間で受け入れ得るような素地をつくるということで国の責任を果たしてまいったわけでございますし、今後とも民間の原燃サービスという会社で再処理工場の建設を進めることにいたしますが、その安全性の確保を初めといたしまして、まだまだ技術的な研究要素がございますので、そういったものにつきましては引き続き動燃事業団が応援をする。  さらにその再処理工場から出ます高レベルの廃棄物の処理処分、こういった問題につきましては、現在ガラス固化技術を動燃事業団で開発をいたしておりまして、やがてパイロットプラントを建設するような段階になろうかと思います。そういうことで確立した技術を民間に引き渡すという形で進めていく必要があろうかと思っておりますし、そのガラス固化で処理しましたもの、これは四、五十年ためた後に最終的に処分するわけでございますが、その最終的処分につきましては、今動燃事業団で全国的にいろいろな地質、地層についての調査を進めておるわけでございまして、これはかなり先のことでございますが、今我が国として、国内における有望な処分可能地、あるいは処分した場合のいろいろな周辺地盤に対する影響、安全に対する影響、そういったものについての技術開発を現在進めておるということでございます。  要は、民間事業に渡していくといいましても、それはいわば商業用としてのものでございまして、その周辺にわたる技術あるいは安全の確保、そういったものにつきましては国が責任を持って、特に安全の確保については責任を持ってやる。後は民間の事業が国際的な競争その他の点からも円滑に推進できるように、側面から民間事業を育て推進していく。そういうような形で支援を行っていくことを国の仕事として対応してまいっておるところでございます。
  270. 辻一彦

    ○辻(一)委員 これで終わりますが、いずれこの問題は別の機会にあるようでありますからそこに移すとして、最後に長官、このハイレベルの処理物は、岩塩帯にも狭めないし、深海投棄も難しいし、さりとて宇宙へ打ち上げるわけにもいかないし、陸上考えざるを得ないが、これはやはり国の責任でやらないとこの高レベルの一番最終の廃棄物はいかないんじゃないかと思いますので、この点は十分検討していただきたい。そのことについて一言伺って、終わります。
  271. 岩動道行

    岩動国務大臣 高レベルの放射性廃棄物の処理処分については大変重大であり、また、まだまだ研究開発をしなければならない分野でございます。したがいまして、動燃事業団におきましてはできればしかるべきところにそのような処理処分を研究する貯蔵研究センター、そういったようなものをつくってみたいということで今努力をいたしておりますが、私ども原子力委員会立場からも、そのような計画はぜひ地元の御理解をいただいて実現ができるように努力をしてまいりたいと思っております。
  272. 辻一彦

    ○辻(一)委員 いずれいたします。
  273. 大野潔

    大野委員長 これにて原子力船むつ」問題についての質疑は終わりました。     —————————————
  274. 大野潔

    大野委員長 この際、委員長から一言申し上げます。  本委員会におきましては、去る五月八日日本原子力研究所法の一部を改正する法律案に対する附帯決議の中で、政府に対し、原子力船むつ」の取り扱いについては、国会における審議を踏まえ、国民に論点を明示するよう努め、早期に公正妥当な結論を得るようにすべきことを決議したところであります。  その後、原子力船むつ」問題については、本委員会におきまして、政府及び関係機関に質疑を行い、また、青森県及びむつ市当局並びに学識経験者の参考人から意見を聴取し、さらに、原子力船むつ」の現地調査を行い、原子力船むつ」存廃問題等につき慎重な審議を行ってまいったところであります。  本委員会における議論は多岐にわたっておりますが、基本的な論点を取りまとめますと、次のとおりであります。  第一に、原子力船実用化の見通しと「むつ」による原子力船開発研究必要性  第二に、「むつ」に要する国の財政支出と「むつ」の役割  第三に、現在の「むつ」の健全性安全性及び炉型の評価  第四に、原子力船に関する外国技術導入の可否  第五に、「むつ」の存廃と原子力委員会決定及び青森五者協定との関係等の諸問題であります。  政府は、原子力船むつ」の取り扱いについては、これらの基本問題に関する本委員会の審議を踏まえ、我が国科学技術の適正な振興のため遺憾なきを期するよう、本委員会を代表して要請する次第であります。(拍手)  次回は、来る二十六日木曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時十五分散会