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1984-06-26 第101回国会 衆議院 科学技術委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年六月二十六日(火曜日)     午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 大野  潔君   理事 小宮山重四郎君 理事 笹山 登生君    理事 平沼 赳夫君 理事 大原  亨君    理事 渡部 行雄君 理事 小川新一郎君    理事 吉田 之久君       岸田 文武君    櫻内 義雄君       保岡 興治君    小澤 克介君       松前  仰君    村山 喜一君       遠藤 和良君    小川  泰君       工藤  晃君    辻  一彦君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      岩動 道行君  出席政府委員         科学技術庁長官         官房長     安田 佳三君         科学技術庁長官         官房審議官   堀内 昭雄君         科学技術庁長官         官房会計課長  窪田  富君         科学技術庁計画         局長      赤羽 信久君         科学技術庁研究         調整局長    福島 公夫君         科学技術庁振興         局長      村野啓一郎君         科学技術庁原子         力局長     中村 守孝君         科学技術庁原子         力安全局長   辻  栄一君  委員外出席者         環境庁企画調整         局環境保健部保         健調査室長   海老原 格君         環境庁水質保全         局水質管理課長 杉戸 大作君         厚生省環境衛生         局食品衛生課長 玉木  武君         厚生省環境衛生         局食品化学課長 市川 和孝君         厚生省環境衛生         局水道環境部水         道整備課長   森下 忠幸君         厚生省環境衛生         局水道環境部環         境整備課長   小林 康彦君         厚生省薬務局安         全課長     小宮 宏宣君         農林水産省農蚕         園芸局植物防疫         課長      管原 敏夫君         通商産業省産業         政策局産業組織         政策室長    藤島 安之君         通商産業省産業         政策局産業構造         課長      細川  恒君         通商産業省基礎         産業局総務課バ         イオインダスト         リー室長    田中 正躬君         通商産業省基礎         産業局化学品安         全課長     山浦 時生君         工業技術院総務         部技術調査課長 佐々木宜彦君         資源エネルギー         庁長官官房原子         力産業課長   大塚 和彦君         中小企業庁計画         部計画課長   林  昭彦君         参  考  人         (宇宙開発事業         団副理事長)  園山 重道君         科学技術委員会         調査室長    曽根原幸雄君     ――――――――――――― 委員の異動 五月十五日  辞任         補欠選任   岸田 文武君     稲村 利幸君   熊谷  弘君     友納 武人君   保利 耕輔君     中野 四郎君   保岡 興治君     藤本 孝雄君 同日  辞任         補欠選任   稲村 利幸君     岸田 文武君   友納 武人君     熊谷  弘君   中野 四郎君     保利 耕輔君   藤本 孝雄君     保岡 興治君     ――――――――――――― 五月十六日  日本原子力船研究開発事業団の解散に関する法  律案本岡昭次君外二名提出、参法第一二号)  (予) 同月十二日  放射線被曝線量基準緩和反対等に関する請願  (上田卓三紹介)(第五〇一四号)  同(矢山有作紹介)(第五〇一五号) 同月十四日  放射線被曝線量基準緩和反対等に関する請願外  一件(土井たか子紹介)(第五一一三号) 同月十五日  放射線被曝線量基準緩和反対等に関する請願  (竹村泰子紹介)(第五七九五号) 六月十五日  放射線被曝線量基準緩和反対等に関する請願  (大原亨紹介)(第六六三一号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  委員派遣承認申請に関する件  参考人出頭要求に関する件  科学技術振興基本施策に関する件      ――――◇―――――
  2. 大野潔

    大野委員長 これより会議を開きます。  科学技術振興基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。渡部行雄君。
  3. 渡部行雄

    渡部(行)委員 まず私は、科学技術というものを人類全体の立場に立ってとらえた場合、一体我々はここから何を見出すべきであろうか、またどのような共通性普遍性を見出したらよいだろうかと思うのであります。  本来、科学は、世界はもちろん宇宙間に存在するあらゆるものを対象として、合理性実証性基礎とした認識活動であり、技術はその実践実証のための応用であり方法であると思うのであります。したがって、科学技術は本来超歴史的であり、超民族的で、また超階級的であると思うのであります。なぜならば、科学としての認識活動とその応用実践方法は、歴史民族階級の差異なく自由に選択し共有することを拒まないからであります。  そこで、私が申し上げたいことは、科学技術に携わる人々またその政策実行者はもちろん、すべての人類は、常に科学技術の成果が全人類の平和のために、また幸せと豊かさと文化発展のために寄与しなければならないという考え方を、すべての人類思想にまで高めるべきであるという点であります。  以上の点について、長官の御見解を承りたいと思います。
  4. 岩動道行

    岩動国務大臣 お答えをいたします。  大変科学技術についての基本的な哲学的な御見解をお示しいただきましたが、まさに私も科学そして技術人類のためにあるものであって、そのために人間が使われるというようなものであってはならない、こういう基本的な認識を持ってこれからも科学技術振興を図っていかなければならないと考えております。特に、真理探求というような面におきましては、基礎科学はいわば国境がないと申しても差し支えないと思います。戦争のさなかにおいても、ある国のすぐれた科学真理が発見された場合には、それが直ちに戦っている相手の国にも伝わり、そしてそれがさらにすべての国、すべての人類に立派に役に立つような、そういう超国家的な存在であるという認識も、私は同様であると思います。  そういう中におきまして科学技術、それは科学真理探求をすればそれによって技術が進み、技術が進むことによって科学が進むという相関関係があり、そしてこれが人類のためのものであって、決して科学技術が最終の目的ではなくて、やはり人類の平和と繁栄のためにこれが使われていかなければならない。科学技術も、人間が考え、人間がつくり、そして人間が使っていくものであって、でき上がった機械やいろいろなものによって人間が使われるということであってはならない、科学技術というものは人類のために、そして山界の平和のためにこれを活用していかなければならない、そういうような基本的な認識を持って、今後とも日本科学技術振興を図っていくべきものと考えているところであります。
  5. 渡部行雄

    渡部(行)委員 ただいまのお答えにもありましたように、元来科学技術のあるべき姿といたしましては、まさに今長官が言われたとおりであり、私も前述したとおりだと思っております。  しかし現実には、科学技術それ自体が歴史的社会的実践の中で発展したものであり、その対象とする課題についても、原則的には無限定でありますが、実際にはその時代社会制度国家政策、イデオロギーなどと結びついて、一定の制約や条件のもとに採用され実践されますから、それには当然に歴史性民族性階級化等がかかわってくるわけであります。そこで、この原則性現実性矛盾が起こり、つまり本来、人類の平和と豊かさと文化進歩のために寄与すべきはずの科学技術が、今や戦争の担い手として全世界を恐怖のるつぼと化しているのであります。恐らくまともな人間である限り、核戦争を望んでいる者は世界じゅうに一人もいないと思います。しかるに現実は、地球を全滅させるほどの核がつくられているではありませんか。これほど重大な矛盾と倒錯した論理はなかろうと思うのであります。したがって私は、科学技術を論ずるに際してまず大切なことは、科学技術に対する我々の思想態度の確認が前提されなければならないと思うのであります。  そこで、長官はこのもろ刃の剣のような科学技術のつかを握っておられる地位立場にあられるのでございますから、これらの問題についてどのように考え、今後どのようにそのもろ刃の剣をお使いになろうとしているのか、お聞かせ願いたいのであります。
  6. 岩動道行

    岩動国務大臣 科学技術人類の平和と繁栄のために使われていかなければならないという基本的な認識は同じでございます。  そこで、科学技術進歩発達をいたしてまいって、特に原子力いわゆる核の問題につきましては、これが人類の有用な面に使われているうちはよろしいのでありますが、核兵器というような恐るべきものの方に使われてまいりますと、これは人類の破滅にもつながってまいります。そういう意味において、ただいまもろ刃の剣というお言葉があったと思うのでありますが、この点につきましては、私どもはあくまでも核兵器の絶滅に向かって努力をしていかなければなりません。したがって、日本においてはいわゆる非核三原則というものを持っております。そういう中において日本は、原子力平和利用に徹して、今後とも人類に最も有用な、そして資源のない日本としては大事なエネルギー源として、あるいは放射性同位元素いわゆるアイソトープ等医療用に薬用に、あるいは農業用工業用にこれを十分に活用していかなければならないと思っております。  また、こういう意味におきましては、生物科学有害性というものが問題になってくると思います。これにつきましても私どもは、生命科学遺伝子工学というものが発達をしてまいりますと、そこにやはり有益性有毒性有害性というものを十分に考えて対応していかなければならないと考えます。そういう意味におきまして、中曽根総理も「生命科学人間」というテーマでサミットに呼びかけ、そして本年の三月には、箱根で世界最初の最も重大な問題に挑戦をして、世界の共感をいただいたわけであります。  そのようなことから、余談になりますが、昨日はジョンズホプキンズ大学から名誉学位をもらう。これも生命科学人間、そこには進んだ科学技術人間尊厳を侵してはならない、人間尊厳性基本として科学を進めていかなければならない、こういう高邁な考え方から講演をされた、それが世界的にも評価をされて、そのような名誉学位をもらわれた。このことは、私ども自由民主党はもちろんのこと、日本国家を挙げてこのような問題に取り組んでいき、そしてそのような基本的な思想のもとに今後の科学技術を進めていかなければならない。  そういう意味におきまして、科学技術が進めば進むほど有益性有害性との両面がございますので、私どもはこの有益性方向に向かって、有害性有毒性のものは極力これを抑え、あるいは世界的にも、あるいは日本の場合におきましても、科学技術会議等でその使用については十分な規制をしながら活用してまいる、こういう基本的な方向で今後とも進んでまいりたいと考えております。
  7. 渡部行雄

    渡部(行)委員 今私がこういう議論をあえて行うのは、科学技術の持つ純粋な性質と人間生命尊厳さを結びつけて、これを世界平和の保証にしたいからであります。  そこで私は、私の主張の援用として申し上げたいことは、去る五月九日から十一日までアウグスブルクで第一回国際ハイデッガー会議が開催された際のシルマッハー博士の発表された一文であります。それは、  技術の展開は今やハイデッガーのような「文化批判」的な技術批判で済むようななまやさしいものではなくなり、人類生存の危機がだれの目にも明らかとなり、同時に技術なくしては人類生存がもはや不可能になったという、絶対的な矛盾に直面している。このような状況では、私たちの一人ひとりが人類世界の全体に対する責任を知り、その自覚において「生のための技術」に技術全体を転換することが必須の課題になると、言うのである。しかし、死と同時に生の享受をも意味する技術的世界のなかにあって、私たちはどのように全体に対する責任を自覚できるのか。こういうふうに書かれておるわけであります。哲学者ならずとも、我々政治家は一層この問題と真正面から取り組まなければならない責任があると思うのであります。  そこで長官は、日本国民特に科学技術に携わる人々に対して、科学する思想態度をどういうお考えのもとに今後御指導なさるおつもりか、教えていただきたいと思います。私は科学哲学する態度姿勢が欲しいと思うのでありますが、いかがなものでしょうか。
  8. 岩動道行

    岩動国務大臣 大変高邁な御意見でございます。  近代科学技術が極めて理論的に、客観的に欧米で進んでまいりました。そのことは純粋理論であり、純粋なメカニックの世界でございました。そして、産業革命から今日の原子力、極微の世界から宇宙世界にまで広がった科学技術、そういうときに、従来私ども考え方科学哲学か、科学宗教かというような対立的な考え方でこの何世紀かを過ごしてきたと思います。しかし、今日このように進んだ科学技術世界は、人間生命にかかわり、人間尊厳にかかわり、また人類の新しい文明と文化にかかわるような時代になってまいったと思います。そういう意味におきまして、私はもう今日は、そしてこれからは、科学哲学か、科学宗教かという対立的な考え方ではなくて、科学宗教科学哲学、そういうかかわり合いを持って科学技術というものを考えていかなければいけない、私は、そこに人間という基本的な尊厳を求めていかなければならない、かように考えているところであります。
  9. 渡部行雄

    渡部(行)委員 大変御理解ある御答弁に感謝いたしますが、そこで問題は、今当面私たちは何をなすべきかということであります。  世界は今各地で戦闘が続き、インドやアフリカでは餓死者が続出し、とうとい人命が毎日数多く失われているのであります。私は、国会議員として国の最高機関にありながら、現実に効果的なことは何一つしてあげられないのであります。このじれったさをいかんともしがたいのであります。全世界科学技術者の中で、その四分の一が軍事研究開発に従事し、年間六兆ドルを超えるお金が軍事費に使われていると言われております。もし人間の英知がこの莫大な人的、物的、知的資源むだ遣いをやめさせて、これを飢餓と貧困に苦しんでいる人々に分け与えたならば、すばらしい世界がやってくると思うのであります。  そこで、私が提案したいことは、第一に、日本良心的科学者が集まってつくられた第五回科学者京都会議の声明を支持し、これを全世界的規模発展させるよう援助することであります。第二には、七月から八月にかけて行われるシーリングで、アメリカから買い入れる戦闘機を一機二機減らしても、科学技術関係費をふやすことに全力を挙げることであります。私は、早晩使えなくなるような戦闘機よりも、次の時代を担う設計図やノーハウをつくる方がはるかに価値あるものと思うからであります。第三には、科学技術軍事転用全力を挙げて防止することであります。  以上の提案に対し、長官の御所見をお伺いいたします。
  10. 岩動道行

    岩動国務大臣 先般、京都で行われました科学者京都会議提言につきましては、私も拝見をいたしました。大変立派な御提言であると思っております。  ただ問題は、現実を見ながら私ども政治政策を行っていかなければならない、こういう立場にあることも御理解いただけると思います。したがって、理想に向かって私どもは進むことは当然でございます。先ほど来私が申し上げましたことは理想であり、そしてまた政治家は、また国政を進める者は、それに向かって最大の努力をしていくことが責務であろうと思っております。そういう意味におきまして、京都会議というものの御提言は極めて貴重なものであったと思います。しかしながら、私ども現実もまた見詰めていかなければならない。  そういう意味におきまして、そのような御提言を十分に念頭に置きながら、やはり日本国民の経済、社会発展のために科学技術というものを十分に活用してまいらなければいけない。今後ともそのようなことを念頭に置き、理想を持ちながら、現実を無視するわけにはいきませんので、それらを踏まえつつ、その現実理想に向かって進めていくような政策を今後とも進めてまいりたいと考えております。
  11. 渡部行雄

    渡部(行)委員 私も、長官のお立場現実にどういうものであるかということを知らないわけではありません。ぜひひとつ、現実現実としながらも、常にそれが一歩でも二歩でも理想に向かって近づいていくようなお心がけをお願いしたいと思います。  次に、若干具体的な問題に移りますが、それは、アメリカ科学行政日本科学行政の違いについてであります。すなわち、アメリカでは、科学技術全般について五年ごとに総括をやり、分析をし、五年先を見通して科学技術の立体的というか体系的推進を図っているのでありますが、これに対して日本は、どちらかというと産業先行型で場当たり式推進という感じがしないわけではありません。例えば家電やロボット開発などと海洋開発とを比べてみますと、これは非常に進んでおる分野とおくれておる分野が一目瞭然であるわけです。これはほんの一例でございます。  その点アメリカでは、科学全般をへいげいしながら、その分野別に持っている問題点を的確に把握して、常に世界のリーダーとしての地位を守ろうと必死になっている姿がうかがわれるのであります。それは、全米研究会議が出している「科学技術 これからの5年間」という本を読めばよくわかるのであります。非常に要領よく、難しい問題でもわかりやすい言葉で書かれ、大変よくまとまっておりまして、その上多くの示唆に富んでおります。私は大変感動いたしました。日本では、あのような試みはいまだ一度もなかったと思うのであります。  一方、科学技術庁編集協力して発行しておる「プロメテウス」を読んでいると、いつの間にか日本世界一になったような錯覚に陥ってしまうのであります。それはちょうど戦後成金が指しゅうに金の指輪やプラチナの指輪をはめて得意になっている姿を思い出させるのであります。もっといぶし銀のように渋く素朴な編集をお願いしたいと思います。  このように対比して考えた場合、日本こそ多くの問題を抱えており、まだまだやらなければならないことが山積しておるわけでございますから、そのやらねばならぬというところにもっと力を入れていただきたいのであります。特に基礎科学分野については、長期展望に立って、腰をじっくり据えてやっていただきたいと思います。科学はちょうどピラミッドのようなもので、頂点を高くしようと考えるならば、一番下の底面積を広げ、しっかりとさせることから始めなければならないという点であります。長官の御所見を承りたいと思います。
  12. 岩動道行

    岩動国務大臣 日本科学技術、これは私は極めてすぐれた地位にまで進んでまいったと思っております。しかし、うぬぼれているわけではございません。導入型の日本科学技術が、ようやく追いつき追い越せの段階に入って、やはりこれからは独創性のある科学技術世界に入っていかなければならない。このことは言われてからもう既に久しいわけでございますが、さらに私ども基礎科学を重点的に考えながら、そういう基盤のもとに創造性の豊かな科学技術発展させなければならない。したがいまして、欧米を初めいろいろな国の科学技術のあり方、現状、これもやはり模範としなければなりませんし、そのようなものを踏まえながら独創性の豊かな科学技術にどんどん進んでいかなければならない。そういうことで、私どももいろいろな具体的な施策も行ってまいっておるところでございます。  我が庁が発行しております雑誌編集姿勢についてのお話がございましたが、私どもは決して卑下することなく、現実現実として客観的に見詰めながら、日本科学技術現状そして未来というものをこの雑誌を通して国民に御理解をいただくような考え方で進めてきております。今後ともそのように謙虚に、若い青少年が、今後日本民族の生きていく道はこの科学技術の道であるということの認識をさらに強く持つように指導もしてまいりたいし、国民理解もいただいてまいりたいと考えているところであります。  このようなことを基本として進めてまいりますが、具体的なアメリカとの関係につきましては、担当の局長から御説明を申し上げたいと思います。
  13. 赤羽信久

    赤羽(信)政府委員 確かに御指摘のとおり、アメリカが総合的な科学技術政策をとっておるという点、そのとおりだと思います。特によく言われることでございますけれども、かつては欧州でつくられたシーズがアメリカへ行って実用化されるという時代があったわけでございますが。それでは本当に力強い技術もつくれないし世界に対するリーダーシップもとれないということで、あえて政策的に基礎研究に重点を置いた政策をとっておる。その結果、アメリカ科学技術研究費の中に占めます政府負担割合も四割以上と、相当の支出をしているわけでございます。  我が国も、御指摘のとおり追いつく段階からいよいよ自主的な研究開発に向かう段階ということでございまして、基礎研究を含めた総合的な政策が必要でございます。ただいま科学技術会議におきましては、十年後を見通し、さらに将来を考えた長期計画という包括的な政策の方針を十一号の諮問として検討しておるところでございまして、近く答申が出される予定になっております。財政厳しい折から、アメリカのようにすぐに多額の国家支出をふやすということは無理にいたしましても、効率化を図りながら御指摘のように基礎研究に基づく独創性豊かな科学技術へ持っていくという施策、それからさらに今後ソフト化に向かうとか人間に対する調和が大事といったことを総合いたしました新しい科学技術政策というものを鋭意検討中なわけでございます。
  14. 渡部行雄

    渡部(行)委員 ただいま大臣が言われました、日本科学は確かに戦後著しい進歩を遂げていることは争う余地のないところだと思います。しかし、進んでいるものは非常に進んでいるが、科学総体として見た場合に、これが完全なあるいは理想に近い進み方だろうか、将来に耐えられる進み方だろうか、こういうふうに考えますと、私はいささか不安があるのであります。  というのは、科学技術に対する政治の取り組み方でございます。ゼロシーリングという中で、一方軍事費はどんどんと増大していくけれども科学技術関係費はそれに比べると非常に少ない増加しか見られない。増加しても非常に少ない。私は、そういう顕在的な軍備という形で国防力を考えるよりは、むしろ潜在的な科学技術の力を先行させることによってその国の力というもの、威信というものが全世界に認められていくものと考えるわけです。そういう点での科学行政というものが必要ではないだろうか。  また、この「プロメテウス」の編集についても、確かにこれに当たっておられる方は真剣に取り組んでおられると思いますけれども、非常に成功した部分だけの取り上げ方が多過ぎて、どこに欠陥があり、どういう失敗をしたかという反省の点の触れ方が少ないのじゃなかろうか。そういう点での日本科学技術全体に対する総体的な把握が、どうしても不十分になっていくような気がしてならないわけであります。そういう点で、私は先ほど、このアメリカがつくった「科学技術これからの5年間」というすばらしい本と対比しながら感じたことを申し上げたわけであります。どなたでも結構です。
  15. 赤羽信久

    赤羽(信)政府委員 ゼロシーリングのもとで予算をということは、ただいま申し上げましたように、我が国の科学技術投資が民間に比べて政府が少ないという現実がございまして、これをさらにふやす努力をいろいろな形でしなければならないと考えております。それと同時に、いかに有効に使うかということが非常に重要でございまして、ただいま申し上げました科学技術会議におきましても、このバランスのとれた投資と使い方についての議論もしておるところでございます。  さらに、我が国の科学技術現状、将来をわかりやすく把握するという問題でございます。この方法としましては、一つは、科学技術白書を毎年編さんしておるわけでございます。毎年の動向を述べるだけでなくて、各年それぞれのトピックと申しますか特集と申しますか、テーマを設けまして、それぞれの角度から我が国の科学技術現状を掘り下げて検討するということをやっておるわけでございます。まだ手法的に未熟な点もございまして、御指摘のような十分な成果は上げておらないかもしれませんが、例えばことしでございますと、情報化社会に向けての科学技術のあり方という点を検討したわけでございます。さらに御指導をいただきまして、一年一年違った角度からとらえながら、我が国の科学技術現状問題点を浮き彫りにしてまいりたいと考えております。  また、科学技術会議におきまして、先ほど申し上げました十年後を見通しました総合計画というのを書いておりますが、ここでも、短いものではございますけれども、非常に膨大な作業の結果あらわれました我が国の現在の問題点、今後進むであろう二十一世紀へ向かっての科学技術のあり方、そしてそれに対しまして必要な政策というものを総合的に検討いたしまして、近く答申される予定でございます。ここでは、創造性それから人間との調和それから国際的に通用する体制、そういったものを三本柱にいたしまして、高齢化社会とかソフト化の進む新しい時代に向けての政策のあり方を述べる予定になっておるところでございます。答申を受けますと、さらにそれの具体化へ向かって努力をしてまいる所存でございます。
  16. 渡部行雄

    渡部(行)委員 次に、これから本当に大事な分野は何かということについてお伺いいたしますが、私は、何と申しましても、無限の空間と無限の可能性を秘めている宇宙開発と、その次に広く大きな可能性を持っている海洋開発ではないかと思うのであります。  ところが、日本はこの宇宙開発と海洋開発を一番おろそかにしているのではないかと思うのであります。なぜかと申しますと、日本宇宙開発予算を国民総生産に対する割合で考えた場合、アメリカと比較すると、アメリカは国防省関係分を含めて〇・三四%であります。これに対して日本は〇・〇四%、アメリカの八分の一足らずであります。金額にすれば約二十分の一にしかなりません。また海洋開発にいたしましてもそうですが、例えば「しんかい二〇〇〇」が建造されたときは、既にフランスでは六千メートルの深さを克服していたのであります。  このようにおくれて出発したものが先に出発しているものに追いつき、また追い越すためには、先を走るものより大きな馬力を持たなければならないことぐらい、だれにもわかる理屈だろうと思うのであります。しかるに我が国の予算は、先を走っているものよりはるかに少ない予算で、どうして肩を並べていくことができるでしょうか。その対策と申しますか、これに対する長官のお考えを明らかにしていただきたいと思います。
  17. 岩動道行

    岩動国務大臣 まず、先ほど御質問の中に、日本科学技術に対する予算についての言及がございました。私どもは、赤字財政を脱却し、そして行財政改革を強力に進めてまいるという国民的な課題を抱えておるわけであります。そういう中において「増税なき財政再建」、したがって財政は非常に厳しい、ゼロシーリングからマイナスシーリングへと予算の編成は大きく変化をして、国民にも厳しい理解を求めていかなければならない時代になっていることは御案内のとおりでございます。  そういう中におきましても、五十九年度予算を取り上げましても、まず独立国家としての防衛予算、また平和外交、協力外交という観点から日本が果たす国際的な立場から対外経済協力の予算、そしてエネルギー資源のない日本としてエネルギー対策の予算、さらに資源のない日本としてあるのは人材であり頭脳であります。科学技術であります。こういう観点から、我々政府におきましては、防衛、対外経済協力、エネルギー、そして科学技術というものは、聖域という言葉はふさわしくございませんけれども、マイナスシーリングではなくて、むしろこれは国家的な立場から伸ばしていくということで予算編成をして、国会の御議決もいただいておるわけでございます。したがいまして科学技術予算も、マイナスシーリングの中でも、わずかではございましたがふやすことができているわけでございます。今後とも私は、この姿勢を強く政府の中においても御理解をいただいて進んでまいりたいと考えているわけでございます。  そういう中において、宇宙の問題についてお話がございました。確かに日本宇宙開発はおくれております。おくれておりますが、ただこれを手をこまぬいているわけではございません。先般宇宙政策に対する計画大綱を改定いたしました。そして、日本の国力、技術の力、そういうものを総合勘案いたしまして、まず自主技術開発路線を堅持するということを前提としながら、日本技術あるいは財政的な立場から国際協力でやった方がよろしいという分野については、これを整理、区分をいたしたわけであります。  そこで、スペースシャトル、有人宇宙の問題そして宇宙基地計画、こういうものについては私どもは協力をしてやっていくという基本的な政策でこれからも進んでまいります。したがいまして、アメリカとの予算の比較は極めて大きな隔たりはございまするが、最大限の努力を払って今後とも私どもは無限の可能性を持つ宇宙に挑戦をする気構えをさらに強く進めてまいりたい。このことにつきましては、今後とも国会の諸先生の強力な御支援と御協力をお願いを申し上げたいと思うのであります。ヨーロッパにおきましても、一国ではなかなかやれないということで、ESAというヨーロッパ共同体が共同して宇宙開発計画を進めている、こういう実情にもあるわけでございます。  また海洋は、日本が海洋国家であり、海洋を開発することによって国土の大きな拡張となり、あるいはまた秘められた海底資源の開発、水産資源の開発、さらにまた日本の地震国家の解明にも役に立つという非常に重要な分野でございます。既に「しんかい二〇〇〇」の活動がおかげさまで開始をいたして成果を上げつつあります。あるいは三百メートルの水深まで作業のできる海中作業船も、先般命名式も終わり、来年の五月からは具体的な活動に入る時代になってまいりました。しかし、まだまだ足りないのは「しんかい六〇〇〇」への挑戦でございます。これにつきましては、私どもは今後の予算の面におきましても重点項目として力を入れてまいりたいと思っているところでございます。この上とも国会の皆様方の御理解と御支援を心からこの機会にもお願いを申し上げたいと思う次第でございます。
  18. 渡部行雄

    渡部(行)委員 ただいま長官お答えにありました、つまり財政赤字で首が回らないというような趣旨のお言葉でありましたが、私は、赤字だから我慢すればいいのかという問題を考える必要があるのではないかと思っております。ある場合には、さらに赤字を大きくしても投資しなければならない重要な時期があるかと思います。私はそういう点で、今の日本科学技術というのは、今投資しておかなければ将来ますます困っていくのではないだろうか、あるいは希望が持てなくなっていくのではないだろうか、こんなふうに心配するものであります。  つまり、この赤字財政下の経済というものを我々は細かに考えてみる必要があるのではないだろうか。今我々が大きな赤字をつくっても、それが将来すばらしいノーハウの開発となり科学技術の開発となって、そしてやがてそれらが価値の高い商品となって海外に出回るときには、私は、今日の赤字などはそれほど気にする必要はないのではないか、こんなふうに思うわけであります。まあこのことはもっと専門的に議論する必要があるかと思いますが、きょうは時間もありませんので、一応赤字財政下であっても、その中で積極的な経済運営のあり方というものを探求する必要があるということを強調しておきたいと思います。  そこで、宇宙開発の問題でありますが、今のうちは一国で衛星を打ち上げたりいろいろやっておっても、やがては相当大規模な国際協力というものが要請されてくるのではないかと私は思います。そういうことを考えますと、今度アメリカが発表しておる宇宙基地の計画に対して、日本はどういう形で参加していこうとしておるのか、またこれらに対して、将来の見通しを立てながらその参加の方法なりあるいは次の段階等も考えておかなければならないと思いますが、その点についての長官の御見解、あるいは事務当局でも構いませんから、詳しくお願いしたいと思います。
  19. 福島公夫

    ○福島政府委員 お答えいたします。  宇宙基地計画につきましては、先生御高承のとおりベッグズ長官が参りまして、国際協力ということで我が国にも勧誘に参ったわけでございます。その後、先日行われましたロンドンのサミットにおきましても米国の方から提案がございまして、サミット各国はこれを注意深く受け取りましょうということで、来年のサミットのときにはアメリカから各国の参加状況について報告するというようなことで合意されております。  この問題につきましては、急に言われても、国際協力というものはやはりそれぞれの国の財政事情もございますので、すぐ、はい幾ら金が出せますとか、どうやりますということはなかなか言えるものではないと思いますが、我々といたしましては、先生御指摘のとおり宇宙基地計画というのは宇宙開発の中でもかなり重要な分野を占めるものである、しかも将来二十一世紀を踏まえての一つの大きな日本の財産になるものだという考えを持っておりますので、担当部局におきましてはこれを本当に慎重に取り扱う必要があろうということで、再三再四にわたりまして私ども担当者をアメリカの方の会議にも参加させまして、向こうの情報をもらうと同時に、日本側の参加する場合の考え方等打ち合わせを進めております。最終的には、宇宙開発委員会の御指導のもと、財政当局の合意を得て、参加の形態あるいは参加方法というものを決めていきたいと考えております。
  20. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そうすると、宇宙開発計画そのものの全体の予算はどのくらいになろうとしておるのか、また、その中で日本が分担する経費はどのくらいが予想されるのか、その辺についてひとつ。  それからもう一つは、参加したいという意思で動いておられるのはわかりますが、そこで参加するおつもりなのかどうか。その辺をやはりある程度はっきりしないと、せっかく今まで動いたのがむだになるようなことでは困ると思いますから、その辺明らかにしていただきたいと思います。
  21. 福島公夫

    ○福島政府委員 お答えいたします。  アメリカのNASAの計画によりますと、アメリカは約八十億ドルでございますか、二兆円ということでございます。これはNASAが支出するNASAの計画でございまして、NASAとしては、日本あるいはヨーロッパ、カナダ等、その外数としての参加を希望しているようでございます。これは、日本側がどのくらい負担できるかということはまた別でございますけれどもアメリカ側が日本及びヨーロッパに対して期待しているのは、例えば一〇%とかあるいはヨーロッパの二〇%とかという数字がちらほら出ております。それを換算しますと、一〇%だったら二千億円ということになるわけでございます。それで、二〇%といえば四千億円という話になるわけでございます。  まあ実際にどのくらい、どういう形で参加できるのか、これは非常に難しい問題でございまして、息子が大事なことだから大学に入りたいと言っても、親が金がないから入れないと言われればなかなか入れるものではございませんので、この辺よく親と相談して決めないと、どの大学へどのくらいで入れるかということだと思いますけれども、我々生徒の立場からすると、大学に入りたいという意思は持っているわけでございます。そういうことで、そういうつもりでいろいろ準備作業は進めておるということでございます。
  22. 渡部行雄

    渡部(行)委員 その御意思は十分わかりました。  そこで、この参加の仕方でございます。今回はアメリカが主体になって、アメリカのイニシアチブのもとにやらざるを得ないのは十分わかります。しかし、それに甘えてはならないと私は思うのです。やがては日本のイニシアチブのもとで計画したものに各国の参加を求める、そういう一つの構想もだんだん心の中に燃やしてもいいのではないか、こんなふうに考えます。そういう点で、今回のNASAのやる宇宙基地計画のイニシアチブ、これは明瞭でございますが、今後そういう点についての科学技術庁考え方をお聞かせ願いたいと思います。
  23. 福島公夫

    ○福島政府委員 お答えいたします。  先生御指摘のとおり、日本が参加する場合でも非常に多くの金と多くの頭脳というものを費やすわけでございますので、いたずらにアメリカのイニシアチブ、アメリカの中に吸収されるような形で参加するということは得策でないと我々は考えております。同じ宇宙基地の中でいろいろな、アメリカではモジュールという言葉を使っておりますが、我々は実験棟や何かの棟というのを使っておりますけれどもアメリカの方式、ヨーロッパの方式、日本の方式、それぞれその得意の分野があるのではないか。もちろんこれは参加が決まっているわけじゃございませんし、どういう形で参加するかというのは最終的には宇宙開発委員会の御指導で決めていくわけでございますけれども、事務当局がいろいろの方面と検討している中では、日本の最も得意とする分野、例えばエレクトロニクスというものは日本は非常に進んでいるから、人間が行って一々作業するよりは、マガジンポン式に突っ込んでセットすればどんどん実験が行われるというような、そういった日本独特のものがあるのではないか。あるいはマニピュレーター、ロボットにつきましては、日本はかなり世界をリードしているということもございます。ただ、もちろん宇宙のような無重力あるいは真空状態でどうやるかという経験はまだないわけでございますけれども、そういう方面には日本独特のものも発揮できるのではないかというようなことを頭に描きながら、どういう形のものにしていくか。もちろんこれは、国立の研究機関あるいは大学それから最終的には一番大きなユーザーになる民間、そういうところの希望も聞きながらいろいろ考えていきたいと考えております。
  24. 渡部行雄

    渡部(行)委員 次に、新しい超電導現象の発見についてお伺いいたします。  科学技術振興調整費ニュース第六号に出ておるのでございますが、それによりますと、「科学技術庁金属材料技術研究所は超高圧力下での超電導現象の測定技術に関する研究を実施しているが、このたび、従来の超電導現象とは真なるメカニズムによるものと考えられる新しい超電導現象を把えることに成功した。この成果は、室温においても超電導を示す夢の物質を探究するひとつの足がかりになるものと期待される。」こういうふうに述べられておりますが、この「夢の物質」というのはどういうものを期待しておられるのか、少し具体的に御説明願いたいと思います。
  25. 福島公夫

    ○福島政府委員 お答えいたします。  本日、先生の御質問の趣旨をちょっと取り違えていたために勉強をしてまいらなかったのでございますけれども、非常に難しい問題のようでございます。  ただ、今までの超電導現象というのは、BCS理論といいまして、要するに極低温に持っていくと急激に電気抵抗が減るということで、私どもが今までやっている、例えば磁気浮上の問題とかあるいは原子力研究所の方で研究しております超電導マグネットとかそういったものにつきましては、みんな極低温ということでやってきたわけでございますが、たまたまこの極限技術というものが非常に重要だということで超高圧を与えてやっておりましたら、たしか黒燐というものに圧力を加えていったところ、分子と分子の間がちょうどトンネルのような状態、すき間があくような現象が起こって、そこを全く抵抗なしに電気が流れるという現象が発見された。  これは、聞くところによりますと、期待してやった実験ではなかったのでございますが、発明とか発見とかいうものはそういうものでございまして、新しい現象がそこで起きた。このときには、たしか十万気圧ぐらいの圧力でございますか、相当な圧力を加えたと聞いておりますけれども、この新しい論理に基づきますと、極低温にせず常温で、しかも圧力も常圧の状態でもこの超電導現象が起こる可能性が出てきたという意味で、もしこれが進んでいけばノーベル賞級の発見ではないかと言われております。  大変素人っぽい答弁になりまして勉強不足で申しわけございませんが、そんなことのようでございます。
  26. 渡部行雄

    渡部(行)委員 これは、質問をとりに来たときにその中身を余り言わなかった私が悪いのかもしれません。  そこで、もう一つお伺いしますが、こういうふうに後の方で書いてあるのです。  本研究で示した新しいメカニズムによる超電導現象は、励起子のもつエネルギーがフォノンのもつエネルギーの十~百倍もあることから、理論的にはTcが室温以上に達する可能性のある画期的なものである。仮りに、この室温における超電導が実現されるようなことがあれば、現在、超電導を利用する場合に最も問題となっている液体ヘリウムによる冷却を必要としなくなり、核融合炉用の超電導磁石の実用化も一挙に現実性を帯びることになろうし、超電導現象を利用した磁気浮上列車、ジョセフソン・コンピュータ、超電導電子顕微鏡、超電導NMR-CTばかりでなく、あらゆる技術分野に測り知れないインパクトを与えることとなろう。こういうふうに書かれておるわけですが、一体、このことで核融合にどのくらい近づいてきておるのか、その辺の一つの予測といいますかお考えと、それからこのインパクトというものの大きさ、これについてひとつ御説明願いたいと思います。
  27. 福島公夫

    ○福島政府委員 お答えいたします。  大変難しい御質問なんでございますけれども、核融合につきましては、私どもの方で現在の核融合の技術がどこまで進んでいるかということを御答弁する立場にはないのでございますが、この超電導磁石という形では、今回発見された現象というのは相当の超高圧力下の問題でございまして、圧力を加えない段階ではまだそういった現象が起こってないわけでございます。ただ理論的に、先ほど先生も申されましたように、室温度、常温以上のところでそういう現象が起こる可能性が出てきた、これからそういったものを設計してそういう素材がいつ得られるかということの研究に進んでいくのではないかと考えております。  もしそういうことになりますと、ヘリウムを使った極低温というのは非常に金がかかりますし設備が大きくなりますし、扱いも大変難しいということで、経済的にも非常に高いものになる。これがなくなれば一挙にいろいろなものが解決されるということで、これはもう相当大きなインパクト、ここにも書いてございますように、本当にはかり切れないインパクトということじゃないかと考えております。
  28. 渡部行雄

    渡部(行)委員 次には、センサー技術問題点と将来展望についてお伺いいたします。  その一つは、この調整費ニュースの第五号によりますと、このセンサーは、人間で言うならば五感に相当する役割を果たすものでございますが、このニュースの三ページに「航空機を中心とする交通・運輸や宇宙開発、資源・海洋等の先端技術分野では「遅れ」が目立つ。我が国におけるセンサー研究開発問題点のひとつとみることができる」と書いてあります。  このおくれを取り戻すためには今どのような対策を講じておられるのか、またこの将来についてお伺いいたします。
  29. 福島公夫

    ○福島政府委員 お答えいたします。  先生御指摘のとおり、いわゆる先端技術分野についてのセンサーがおくれておるということは、そのセンサーを使用するもとの技術分野がおくれているものについてやはりおくれをとっているということだろうと思います。  センサーというのは、先生も御指摘のように、人間に例えれば五感に相当するものでございまして、非常に広範囲にわたったものでございます。そういうことで、非常に一般に使われるようになっております家庭用電気機器等に使われているセンサーについては、日本技術世界のトップレベルを行っているというふうになっておりますけれども、航空機とか宇宙、あるいは特に今開発をしております海洋観測衛星MOS1用のものとかあるいは地球資源探査衛星ERS1というようなものに用いられるセンサーのようなもの、あるいは衛星そのものの姿勢制御に用いられます太陽センサーあるいは地球センサーといったようなものについては、今までの経験が非常に乏しかったためにかなりおくれているということでございますが、これは言うなれば宇宙開発にとっても非常に重要なキーテクノロジーということでございますので、我々としてはこの辺についてできるだけの努力をしていきたいということでございまして、科学技術庁といたしましても、振興調整費を用いたリモートセンシング用のセンサーとか、あるいはNASDAで行っております海温海色走査放射計の研究とか、あるいはアクティブマイクロ波センサーの試作試験とか、また通産省におきましても、海中超音波三次元撮像システムとかあるいは嗅覚・味覚受容器模倣型ケミカルセンサーに関する研究というように、そのすべての分野について全部やるということはなかなか許されませんけれども、かなり重要と思われる部分については鋭意今研究を進めているところでございます。  また、センサーの良否はその商品の性能にもかかわりますので、民間の研究機関においても非常に力を入れて進められておりますし、私ども政府全体の研究につきましては、見積もり調整の段階におきまして、あるいは足らざるものは科学技術振興調整費を用いまして今後とも進めていきたいと考えております。
  30. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そこで、このニュースの四ページに「センサー開発における技術課題を大きく分けると、新たな特性の実現と長寿命化や再現性といった信頼性の確保のふたつが挙げられる。」こう書いてあります。この二つの技術課題に今後どのように取り組んでその具体的な対策を講じようとしておられるのか、その辺について御説明をお願いしたいと思います。
  31. 福島公夫

    ○福島政府委員 お答えいたします。  この「センサー技術現状及び将来展望に関する調査」というのは、実は五十七年に、科学技術庁長官の諮問機関でございます航空・電子等技術審議会というのがございまして、そこでセンサー技術というものが非常に重要な技術だという答申を受けまして、我々としてこれは重要技術分野の一つであるということで認識しまして、それでは一体、現状どうなっているのかということで、センサーの専門家を対象に、これは約七百六十名の専門家を対象にしまして、約四百名近くの回答を得たんだろうと思いますけれども、専門家だけを対象にしまして現状と将来ということを調べたわけでございます。  その目的とするところは、まさに現状はどうであるということと将来どうやったらよろしいのか、問題点はどこにあるのかということを把握して、それをそれぞれの担当部局において政策に結びつけていこうということでやったわけでございますが、実は、ただいまの先生の御指摘のような点につきまして、現在直ちにこういうふうな政策でやっていきますという方針はまだ出ておりませんけれども、先ほども申し上げましたように、各省から出てくる研究の見積もり調整の段階及び科学技術振興調整費を用いて足らざるものを補うという形で進めていきたい、今後の問題と考えております。
  32. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そこで、技術水準についてでございますが、今もちょっと触れられましたように、専門家によるアンケート調査で十年後の見通しについてやられたようでございますが、これによりますと、十年後にどうなるかという質問に対して、十年後はおくれるだろうという答えが今の約二倍、二倍強ですね。こういうふうに大きく出ておりますし、また同等だというのが現在の三五・四%に対して二八・二%、先行するというのが現在の三五・二%に対して十年先は一四%、それから不明と無回答が非常に多くなってきておるようでございます。  こういうふうに見てまいりますと、決して先行き明るい見通してはないのではないかというふうに思うのですが、これに対する一つの対策、指導というか、そういうものをどういうふうにお考えでしょうか。
  33. 福島公夫

    ○福島政府委員 お答えいたします。  先生御指摘のとおり、専門家の先行きの見通しというのは多少暗い形になっております。これは、一つには専門家だけを対象としたこともあったと思いますけれども現状はある意味では、実用の段階に入った例えば家庭用の機器とか産業界で使われているセンサーとかといったものについては、かなり日本の水準というのは世界的なレベルに達しておるし、そういったものについては今後とも何とかやっていけるだろうという考えを持っておるわけでございますけれども、先ほど取り上げられました宇宙開発の関係とか交通運輸の問題とかといったところについては、今日でも非常におくれをとっておるし、今後このままいけば、恐らく追いつくどころかますます離されてしまうのではないかという専門家の不安だと我々考えています。  そういうことで、このままほうっておいてはいけないということがこの調査の結果わかったということは我々にとっては非常に大きな収穫でございまして、これを踏まえましてやはりセンサーに関する研究開発は大いに進めていきたいと考えております。恐らく各省庁にもこの報告を渡しておりますし、我々自身も、特に宇宙開発は私どもやっておるわけでございますので、このセンサー類についての開発を強力に進めていこうということで具体化を進めているところでございます。
  34. 渡部行雄

    渡部(行)委員 だんだんコンピューターやロボットが人間に近づいてきておると言われておりますが、そういう中でセンサーの果たす役割というものは非常に重要だと思います。どうかひとつ、専門家が先行き非常に不安を抱いているようですから、そういう点ではもっとこれに対する期待を持たせるような方法で御指導を願いたいと思います。  次に、創造科学技術推進制度というものができておるようでございますが、一つは、この中身についての御説明と、今後技術革新をしていく中でこれを大きな目玉として進めるお考えなのかどうか、その辺をお聞かせ願いたいと思います。
  35. 村野啓一郎

    ○村野政府委員 お答え申し上げます。  創造科学技術推進制度でございますが、これは、昭和五十六年からスタートいたしました新しいシステムに基づきます科学技術の開発制度でございます。  御存じのように、日本科学技術応用面は進んでおる、あるいは特定の研究所では非常に進むということでございますけれども基礎的にはなかなかそれだけの評価を受けておらない。また、いわゆる研究者が一つの研究所なり大学なりに閉じこもってしまってなかなか流動性がないということを打破するために、五十六年度から特定の先端的なテーマにつきまして、プロジェクトリーダーという、これは立派な学者の方を選びまして、その方に研究を委託するわけでございます。それによりまして、その先生は若手の学者を集めまして特定のプロジェクトを大いに推進するということで、既に六つのプロジェクトが昨年までにスタートしておりまして、ことし新たにまた一つ追加されております。  最初、五十六年のときには四プロジェクト、これは大体物理系のものが多うございまして、例えば完全結晶でございますとか超微粒子でございますとかあるいはファインポリマーでございますとか、そういった、物質でも例えば超微粒子と申しますと、非常に小さいところまで、数ミクロンまで分解いたしますと、物質の機能が全く変わってくるというようなことがわかってきているわけでございます。それは一例でございますが、そのほかそのたぐいの、今までの科学では得られなかったような知見を新しい創造科学制度によって今開発しているということでございます。実は五十六年にスタートいたしましたものは、この制度は五年で一応の切りをつけていくということでございますので、既にその途中まで来ているものがございまして、これにつきましては、例えば昨年あるところで研究発表いたしましたが、大変反響を呼んだということがございます。まだ最終に至ったものはございませんけれども、そういった研究の過程で出てまいりますいろいろな知見、成果を大いに次の技術開発に役立ててまいりたいと思っております。  それから、ただいま物理系のものだけ申し上げましたが、生物系につきましては、例えばバイオホロニクスというような、人間の個と全体という非常に哲学的な要素も含んでおりますが、生物の機能の特殊性をとらえた問題、あるいは人間の脳の中の働きを追求いたします生物情報伝達といった問題、さらに、ことしスタートいたしました課題は、特殊環境微生物と申しまして、非常に高温あるいは高圧のもとでもちゃんと生きておる微生物がございます。そのメカニズムなどを研究いたしますとまた新たな生物の機能もわかりますし、それを応用いたしました薬品等々もつくれるといったことがございますので、この創造科学技術制度をただいま申しましたような新しい技術開発の制度としまして大いに盛り上げてまいりたいというわけでございます。
  36. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そこで、この制度は五年ごとに切りをつけると言われましたが、五年過ぎたその次はどういうふうになさるおつもりなのか、伺いたいと思います。
  37. 村野啓一郎

    ○村野政府委員 研究開発も、長く同じものを続けておりますととかくマンネリになりますので、一応五年ということで切りをつけるつもりでこの制度がスタートしたわけでございまして、現在まだ五年たったものはございませんけれども、五年たった段階でこれを評価をいたしまして、いろいろな成果が出てまいりますので、これはさらに継続をすべきだということでありますれば、また別のプロジェクトといたしましてそれを遂行することもございましょうし、またこれ以上やってもむだだと思われるものはそこで打ち切るといった仕分けをいたしまして、新しい段階技術開発に結びつけていきたいと思っているわけでございます。具体的にどうするかは、五年目が参りますプロジェクトに応じまして逐次考えてまいりたいと思うわけでございます。
  38. 渡部行雄

    渡部(行)委員 次に、行政改革と科学技術振興の問題についてでありますが、行政改革の本旨は、むだを省いて効率的な成果を上げるというところにあるわけです。そこで、官民分担の考え方についてお伺いいたします。  ここに「国は、行政事務に関連するもののほか、民間の研究開発努力に待つことのできないものを中心に、研究開発を行うべきである。」そして民間の能力の活用をどんどんと掘り起こしていきたい。また「大学は主として基礎的学術研究、国立研究所等は主として、行政上の必要に基づくものこういうふうに書かれているわけです。  これから非常に財政が逼迫しているという条件の中で一番心配されるのは、大型プロジェクトに対する予算が相当圧迫されるのではないかということが一つであります。それから二番目に心配されるのは、結局、財政が赤字なんだから我慢しろということで、一律削減とかあるいは削減されないまでも一律に抑制されるとなると、今度は、小さな部門を担当するところはもう吹っ飛んでしまうという危険性があるわけでございます。そこで、一線の方々は一生懸命、真剣にやっておるのでございますから、こういう人々に失望を与えないように、希望の持てるような対策を考えていただきたい、私はこういうふうに思いますが、その点についてひとつお答えを願いたいと思います。
  39. 安田佳三

    ○安田政府委員 科学技術が重要だということは、先ほど来大臣初めるる申し上げましたので、説明を省略させていただきますが、これを実行するに当たりまして、ただいま先生が御指摘になりましたように、どういうやり方によってやるかということに関しまして、民間の活力といいますか能力を活用するということが重要であり、かつ大学においては基礎的な部門を実施し、そして国立機関等におきましては行政上の必要に基づくもの、さらには、民間等においては実施し得ないような基盤的なもの、あるいは非常に長期の期間、多額の金額を要するようなプロジェクトを実施するというような形で実施しているわけでございます。  そこで、現在財政的な面からの制約が非常に強くなっている折から、やはりどうしても大型のプロジェクトにつきましてもこれをできるだけ節約するようにという要請もございますし、またあるいはシーリング等に見られますように、ある程度の一律的な制約というものも加わってくるかと存じます。  しかし、私どもといたしましては、科学技術が将来に向かっての重要な施策であり、先行的、継続的に実施しなければならないというものでありますだけに、大型のプロジェクトにつきましても、当初予定されました計画をできるだけ守っていくように努力をしてまいりますとともに、例えば基礎的な研究など比較的小さな研究につきましても、これを一律に減らすということでなしに、必要なところにはできるだけ資金を充当する等の措置を講じながら、御指摘のありましたような問題点が生じないようにできるだけ努力してまいりたいと考えております。
  40. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そこで、大型プロジェクトに対する優先順序というのはどんなふうになっておるでしょうか。
  41. 安田佳三

    ○安田政府委員 大型プロジェクトと申しましてもいろいろあろうかと思いますし、また、その大型プロジェクトの研究実施のやり方につきましてもいろいろな計画が立てられておると思います。私どもといたしましては、それぞれのプロジェクトの重要性とともに、研究実施のやり方、手順等につきましての計画を勘案しながら、その与えられた資金的な枠の中でどれが最も緊急を要するかということを個別に判断して対処してまいる所存でございます。
  42. 渡部行雄

    渡部(行)委員 次には、エネルギー問題でお伺いいたします。  水力、火力、原子力、地熱、太陽熱、核融合その他いろいろとあると思いますが、中でも、特に二十一世紀以降を支える主力エネルギーというものを考えた際にどのようなエネルギーが予想されますか。その辺の見通しについてお伺いしたいと思います。
  43. 赤羽信久

    赤羽(信)政府委員 現在我が国は石油依存度が非常に高いという問題を抱えておりまして、中東情勢も含めあるいは資源の将来の可能性を含めて、石油依存度を下げ石油代替エネルギーを開発していくということが非常に重要な課題とされておることは御承知のとおりでございます。ただ、エネルギーにつきましては、エネルギーの産出とそれから消費、それぞれ条件があるわけでございまして、石油のように共通性、時と場所を選ばないものがなかなか得られないということに対して今後考えていかなければならないわけでございます。  その点では、一つには資源の豊富だと言われる石炭につきまして考えなければいけない。ただし、これは我が国に資源がないので運びやすい形での液化というようなことが研究開発課題になるわけでございます。それに対しまして、非常に大きいまとまったエネルギーが得られる可能性として、原子力がやはり一番量的には大事なものではないかと政府の計画としては考えておるわけでございます。その中でも、長期的に考えますとウラン資源の問題がございますので、核燃料サイクルを確立し、さらに効率のよろしい高速増殖炉等の新しい炉に進んでいくことによって、ウラン資源の限界を打破していくということが重要でございますし、さらに資源的制約の少ない核融合へと広げていくという方向が大事かと思われます。  それから、御指摘のいわゆる自然エネルギーでございますが、これは一般的には密度が薄いあるいは地域的に偏りがあるということでございますので、再生可能であり多くの場合クリーンであるという点で非常に重要なものでございますけれども、やはり産出の場所と消費の場所の関係を考えまして、適切な規模でローカルに使用するという観点から可能な限り利用していくということになるかと思われます。  このように、それぞれバランスをとった総合的なエネルギー開発が重要というのが、目下のエネルギーに関します方針でございます。
  44. 渡部行雄

    渡部(行)委員 将来ウラン資源とか核融合に非常に期待されておるようでございます。  そこで私は、ことしの三月二十三日号の朝日ジャーナルを見て、一体どっちを信頼していいのかなと迷っておるのですが、これは「スリーマイル島事故から五年」ということで原発に未来はなくなった!?」という大きな見出しで書かれておるわけでございます。これによりますと、アメリカやフランスやイギリスにおいても計画進行中のものをもう完成間近にしてやめざるを得なくなったとか、あるいはフランスが日本の廃棄物の再処理を全然していないというようなことから、いろいろと問題指摘があるようでございます。そして、放射性物質の人間社会に及ぼす悪影響というものについても述べられておるわけですが、そういうもろもろの問題については解決できる目安というものがあるでしょうか。  今重要なことは、国民の中にはやはりこの原子力というものの及ぼす将来についての悪影響、こういうものについて非常に不安があると私は思います。例えば、アサガオの花を実験してそれに問題が生じたとか、あるいはアメリカのジョン・ウェインが死んだのは実は放射性物質を運んだときの影響だとか、いろいろとささやかれておるわけでございます。そういう問題に今国民は不安と動揺を示しておるわけですが、こういう科学的な現象、科学的な問題については、科学技術庁科学的にこれを処理する、科学的に答えてやる、そして国民に安心を与えるという責任があるだろうと思います。もしその確信がないならば、それはあくまでも実験の域に閉じ込めておいて、そして確信ができて初めて実用化していくということにしていかないと、これはやはり人道に対する冒涜になるのではないか、こんなふうに考えますので、お答えを願いたいと思います。
  45. 中村守孝

    ○中村(守)政府委員 お答えいたします。  三月二十三日付の朝日ジャーナルに先生御指摘のような記事がございます。この記事では、アメリカにおきます原子力発電所がキャンセルに次ぐキャンセルということで、いわば原子力発電所に希望がなくなったから何か減っていくというような印象を与えるような感がいたしますが、さらにバックエンド体制といいますか、廃棄物の処理処分あるいは再処理技術、こういうものが未確立であるということでアメリカの再処理工場が閉鎖に至ったとか、あるいはアメリカでの廃棄物の輸送に当たってその州の方で反対があったとか、そういう記事、あるいはTMI、スリーマイルアイランドの事故、さらにはそれらに類似する各種の事故例等が述べられておりまして、原子力発電所の事故というものが、日本で考えられあるいは行政府の方で説明している以上に深刻なものであるという感の御説明等がるる述べられておるわけでございます。  この点につきましては、かなりいわば悲観的なサイドに立った事実関係というものを列記した感がいたすわけでございまして、例えばアメリカのキャンセルが相次ぐということにつきましても、初めのときに大量の発注がございまして、その後、やや電力需要の減少等に応じてキャンセルされるものも出てきた。あるいは各種の事故等に基づいて、安全規制というものについてのNRCの考え方等から改造を命ぜられる等によりまして、資金がふえた。その資金負担に耐えられなくなってキャンセルをしたという例もございます。  しかし、こういった発電所のキャンセルにつきましては、原子力発電所については約十年間に百基ほどキャンセルされたといいますが、これは原子力発電所だけじゃございませんで、例えば石炭火力につきましても、アメリカの場合、この同じ期間に四十基ほどキャンセルされているという事実もまたあるわけでございます。それから、このキャンセルの事情につきましては、資金的な面、電力会社の脆弱性等々、我が国の国情とかなり異なっておる。それから、エネルギー資源的に見ましても、石炭を豊富に抱えているというアメリカの事情等々がございまして、我が国と事情をかなり異にする点がございますし、単に我が国のみならず、ヨーロッパにおきましては、フランス等におきまして非常に意欲的な原子力発電の計画が進められておるというような実態もあるわけでございます。  それから、バックエンド対策につきましては、確かに我が国におきましても、現在、廃棄物の最終的な処分あるいは高レベル廃液のガラス固化されたものの最終処分、そういったものにつきましてまだ実証的に国民の皆様にお示しし得るという段階にないというような事情はあるわけでございますが、既にフランス等におきましては、ガラス固化についての技術を実用化いたしておりますし、それから、低レベルの廃棄物の処分につきましても、現実にフランス等では地下に埋設をするというような形で進めております。私どもも、これらのものにつきまして技術的展望なしに原子力発電計画を進めているわけではございませんで、技術的展望を持ち、またそれに必要な、国民の皆様に安全性についてお示しし得るだけの材料を整えるということで、現在研究開発を進めております。  海洋投棄につきましては、既に、海洋に投棄しても実際に容器が破損して拡散しても安全であるというところまでの厳密なチェック等も施した上で、試験投棄は安全であるという評価の上に進めるということをしておるわけでございますが、その点につきましては、なかなかに一般の方々の御理解を得られないということもございまして、現在はこういった一般の方の御理解を得るための努力と、さらにはそれを国際的なコンセンサスのもとで進めるということで、世界各国の専門家等がこの検討を進めておりますので、そういった場に積極的に活動をしておるということでございます。  さらには、ガラス固化の問題につきましても、動力炉・核燃料開発事業団、原子力研究所でそれぞれ研究を進めておりまして、そのパイロットプラントの建設について十分なデータを集め、近くそういうものにも着手し得る段階にまで技術的に我が国自身の技術も向上しております。既にそれらについてはフランスにおいても実用化されておるところでございます。  それから、各種の事故につきましては、今後の発電所の安全管理の面で十分に反映をしていくべきことは反映していくということで、運転員の訓練あるいは施設の改善というようなものについては十分努めておりますし、今や、我が国の安全研究というものにつきましては、非常に世界的な評価を得て、世界各国から原子力研究所に共同研究が申し込まれているというような実情にもあるわけでございます。私どもも、いたずらに原子力発電をやみくもに推進するということではもちろんございませんで、明確な技術的展望のもとにこれを進めているところでございます。  何分にも、資源的な事情におきましては非常にエネルギー資源に乏しい我が国でございますので、この原子力発電につきましては、今後とも人類の英知を活用して、皆様方に少なくとも安全といった面でいろいろな不安を持たれないよう技術の向上を図り、国民生活、福祉の向上のために原子力を積極的に活用していきたいと思っているわけでございます。もちろん、朝日ジャーナル等に掲載されました各種の事例につきましては、そういう原子力発電を進める上でのいわば反省材料といいましょうか、一つの警鐘といいましょうか、そういう意味で、これは安全である安全であると思い込めば、そこに危険の落とし穴があるということは事実でございますので、一つの警鐘として十分踏まえつつ、慎重に原子力発電の開発というものを一歩一歩進めてまいりたい、そう考えておる次第でございます。
  46. 渡部行雄

    渡部(行)委員 これは非常に重要な問題ですので、実はもっと深く掘り下げたいと思っておったわけですが、時間があと五分しかありませんので、きょう通産省を呼んでおりますから、その点について質問をしたいと思います。  今通産省では、先端技術についての技術開発基盤整備法案というものを用意していると新聞に出ておるわけでございますが、この法案の概要の御説明と、これが考えられた一つの背景をお伺いしたいと思います。  と申しますのは、こういう技術開発基盤整備法というような名前をちょっと見ますと、これは科学技術庁の管轄じゃないかなと思えるようなものであり、また実際に今科学技術庁と通産省の間で進められておる多くの研究開発や実験などを見ましても、非常にその辺が画然としていないじゃないか、入り組んでいて、何か科学技術庁がやるものまで通産省が手をつけているような感じがするわけで、その辺の科学技術庁と通産省との関係というものについてもただしたいと思っておったのですが、何しろ時間がありません。そういうことをひとつ考えの上、御説明願いたいと思います。
  47. 佐々木宜彦

    ○佐々木説明員 御説明申し上げます。  先生御指摘の先端産業技術基盤整備法の新聞報道でございますが、現在通商産業省におきましては、技術開発の重要性にかんがみまして、昭和六十年度の新政策の重点項目の一つとして、その推進施策について幅広く検討しておるところでございますが、まだその結論を得る段階には至っておらず、報道されましたような法律制定の方針を固めた事実はございません。すなわち、現時点では、六十年度の新政策に向けましていかなる方針で臨むか、まだ内部でいろいろその可能性を含めて検討しておるところでございまして、現段階では十分御説明できる状況に至っていないということで、御理解と御容赦をいただきたいと存じます。
  48. 渡部行雄

    渡部(行)委員 これはまだそれほど固まってはっきりしたものでもありませんから、これに対する質問はこのくらいにして、時間が参りましたので、最後に長官にお伺いいたします。  一方において、科学技術は本当に予想をはるかに超えて進歩しておる部分もあるかと思うと、他方において、この地球上の環境はどんどんと汚染され、そして悪化の一途をたどっておるというのが現実であります。例えば、サハラ砂漠の周辺やあるいはヒマラヤの南の地域等では、新しくどんどんと砂漠化が進んでおり、年間六万四千平方キロも砂漠になっていると言われております。さらに、世界で最も森林資源のあるアマゾン流域やあるいはボルネオなどでも、伐採が進んで緑がだんだん少なくなっていくと大変心配されておるわけでありますが、科学技術もやはりそういう問題を常に顧みながら大事にして、そして人間の住む生活環境というものを壊さないで、むしろその環境をよりよくしていくための一つの手段として考えていただきたいと思います。  したがいまして、さきに大臣が言われたいわゆるよいものをとって憩いものは捨てていく、このことをやはり勇気を持ってやっていただきたいと思いますので、大臣の所信のほどをお伺いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  49. 岩動道行

    岩動国務大臣 万般、科学技術基本的な問題についての貴重な御意見、御提言等を承りまして、大変私どもも、今後の日本科学技術あるいは国際的に協調していく基本的な方向を、さらに強く人類のためという大きな目的に向かって進めてまいりたいと思っております。  今御指摘の砂漠化の問題あるいは熱帯林の伐採による環境の変化、あるいはまたヨーロッパにおいての酸性雨の問題等、国際的な大きな課題がたくさんございます。サミットにおいても、このような問題が十分に討議され、国際協力のもとで科学技術を十分に駆使して、入間のための科学技術でありますならば、人間が住む地球の環境の保全ということも極めて重要な課題でございますので、今後とも十分な努力をしてまいりたいと思っております。そのためには、やはりサミットだけで果たしてよろしいのかどうか。科学技術担当の責任ある大臣が一党に会してこのような問題を検討し、そしてそれを科学技術研究者に渡していく、そしてまたその成果を我々は政治的な判断のもとに国際的な立場で進めてまいる、こういう場を持つことが適当ではないだろうか。そのことがただいまのお考えにも沿うことであり、また世界人類のためにも役に立つことではないか、私はかようにも考えておりますので、今後ともそういうような基本的な方向で、日本科学技術人類のため、そして日本の将来の発展のために努力をしてまいりたいと思っております。
  50. 渡部行雄

    渡部(行)委員 どうもありがとうございました。  終わります。
  51. 大野潔

    大野委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時二十五分休憩      ――――◇―――――     午後三時十六分開議
  52. 大野潔

    大野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、委員派遣承認申請に関する件についてお諮りいたします。  原子力船「むつ」について、本委員会から委員を派遣し、その実情を調査するため、議長に対し、委員派遣承認申請をしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  53. 大野潔

    大野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、派遣委員の人選、派遣期間等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  54. 大野潔

    大野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ――――◇―――――
  55. 大野潔

    大野委員長 科学技術振興基本施策に関する件について引き続き調査を進めます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本件調査のため、本日、参考人として宇宙開発事業団副理事長園山重道君の出席を求め、意見を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  56. 大野潔

    大野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――
  57. 大野潔

    大野委員長 質疑を続行いたします。遠藤和良君。
  58. 遠藤和良

    ○遠藤委員 催奇形性、発がん性などの人体への影響を指摘されている猛毒のダイオキシンを含む除草剤が山中に埋められておりまして、大量に流出していたことが先ほど明らかにされました。私もこの件につきましては、愛媛県の津島町まで視察に参りまして、この日で実態を調査してまいったところでございます。既にこの林野庁関係の問題につきましては農水委員会等で取り上げられておりますし、我が党の申し出に対しまして、林野庁長官がみずから現地に行くと約束されておると聞いております。したがいまして、林野庁長官が一日も早く現地に参りまして、早急な処理を行うよう希望するにとどめまして、私は別の観点からこのダイオキシンの問題を本委員会で取り上げまして、若干の質問をさしていただきたいと思っております。  既に長官も御存じのように、ダイオキシンは人類がこの山でつくった史上最悪の毒性を有する合成有機化合物であると言われております。その急性毒性は、体重一キログラム当たり一マイクログラム、つまり百万分の一グラム以下で実験動物の致死量となるほどでございます。このダイオキシンを含む2・4・5T系の除草剤は、周知のとおりアメリカが十数年間にわたりましてベトナムで枯れ葉剤として使用してまいりました。この戦争では単に森林に散布するだけではなく、人間を殺傷する化学兵器として一九六九年から三年間だけで約七十九万人の人々に直接振りかけたとされております。あるいは第二次世界大戦中に対日本の上陸作戦を想定してアメリカが国を挙げて研究開発をした化学兵器としての側面も持っていると言われております。ベトナム戦争が終わって既に十数年になるわけでございますが、いまだに死産、流産、重度の障害児の多発など、ベトナムは言うに及ばず、枯れ葉剤汚染はアメリカ本土にまで広がっている現状でございます。ミスリー州のタイムズビーチでは、生産工場の廃棄物のために八百世帯、二千人が町ぐるみで移転いたしました。ニューヨーク州北部のラバカルナでも、あるいはイタリアのセベソでも、同様の事件が起こっております。  最近、そのダイオキシンが清掃工場のいわゆるごみ処理場の焼却炉から放出されていることがわかりまして、さらに、水田に散布されている除草剤MOの中にも不純物として含まれていたことが報告されているわけでございます。このダイオキシンの問題で大変に私たちの身近な環境まで汚染されているようになっているわけでございますが、基本的なことからちょっとお伺いしたいと思います。  まず、このダイオキシンの毒性についての研究及び毒性を発揮するメカニズムの解明というものは、これまで各省庁におきましてどのように行ってまいりましたか。また今後どのような対策を講じていく計画でございますか。ちょっとお伺いしたいと思います。
  59. 福島公夫

    ○福島政府委員 お答えいたします。  ダイオキシンの毒性及びそのメカニズムにつきましては、科学技術庁としては特に研究を行っておりません。各省庁の方についてはそれぞれお答えいただけると思っております。
  60. 山浦時生

    ○山浦説明員 お答えいたします。  ダイオキシンの問題につきましては、いろいろなものから検出されますとかそういった分析の実績というのは数年前からあらわれてきておりますが、ダイオキシンそのものの取り扱いが非常に難しいという観点から、いわゆるメカニズムとかあるいは毒性の発現機作、そういったものについての研究は緒についたばかりでございます。私どもといたしましては、今そういった世界的ないろいろなデータを注意深く集めていろいろと調べている段階でございます。
  61. 小林康彦

    ○小林説明員 厚生省におきましては、ごみの焼却に際しましてダイオキシンが発生する可能性が報道されましたため、廃棄物の適正処理の確保の観点から、昨年十二月より学識経験者による専門家会議において、現状の評価及び今後の対応策について検討を行い、五月末にその報告が取りまとめられたところでございます。  ごみの焼却処理に伴い、一般住民及び作業に従事する職員への影響については、健康影響が見出せないレベルであったこと、ごみの焼却に伴って発生する焼却灰等の埋立処分に関しては現行法令の基準に従い適切に実施することが必要であることなどの結論が得られ、報告されております。厚生省では、この報告に沿いまして、ごみ焼却処理及び焼却灰等の埋立処分に当たっては廃棄物処理法に規定する基準の遵守を徹底することなど、地方公共団体あて指導しているところでございます。
  62. 遠藤和良

    ○遠藤委員 昭和四十八年に施行された化学物質の審査製造等規制法、いわゆる化審法でございますが、こういう法律がございます。この法律は、いわゆるPCBで問題を起こさないということでつくられた法律でございまして、この法律によりまして、いわゆるカネミ油症の原因となったPCB等が特定化学物質に指定されまして、製造、輸入などに厳しい制限が加えられてきたわけでございます。しかし、今こうしてPCB以上に危険な化学物質であるいわゆる2・3・7・8ダイオキシン等が出てまいりまして、この法律では規制できないものが今後も出てくるという可能性が生まれたわけでございます。  そこでお伺いしたいわけでございますが、この法律そのものをもう少し網の目を細かくするとか、こういう予測できない危険な化学物質が今後も出てこないために現行法を改正するあるいは新たな法律をつくる、そんな必要性があると思うわけでございますが、いかがでございますか。
  63. 山浦時生

    ○山浦説明員 化学物質審査規制法、昭和四十八年に成立いたしまして四十九年の四月から施行されているわけでございますが、この法律の目的は、難分解性等の性状を有して環境汚染経由で人体に対して障害を及ぼす、こういったものの事前防止というのが目的でございますが、その規制の観点というのは、化学工業薬品としての製造、輸入及び使用でございます。  そういったことで、現在までにPCB類似の化学物質につきまして七物質を特定化学物質ということで厳しく規制しているわけでございますが、ダイオキシンにつきましては、法律が制定された当時製造ないし輸入されていたいわゆる既存化学物質の中に入っておりません。つまり、歴史上ダイオキシンが工業薬品を目的としてつくられたという実績はございません。それから、法律制定以降新たに開発され商業化される物質につきましては、新規化学物質ということで事前審査をしているわけでございますが、今まで二千件以上の物質が出ているわけでございますが、その中にダイオキシンはございません。今後そのようなものが出てきた場合には、慎重に審査をするということになろうかと思います。
  64. 海老原格

    ○海老原説明員 お答え申し上げます。  今も通産省の方からお話がありましたとおり、現在使用されています化学物質につきましては非常に数が多い、数万点あるというふうに言われておりますけれども、環境庁におきましては、こういった化合物が環境中に放出された場合の安全性を確認して、化学物質によります環境汚染の未然防止を図る、こういうことは非常に重要なことだろうというふうに考えておりまして、昭和五十四年度から化学物質の環境安全性総点検調査という体系をしき、体系的かつ効率的にそれらの化学物質につきましての調査点検を行ってきております。現在まで約五百の化学物質につきまして、もちろんこの中には今先生が御指摘になりましたようなダイオキシン関連の物質も含まれておりますけれども、約五百の化学物質につきまして環境中の残留性をチェックしてきているところでございます。また、化学物質の生態系に及ぼす影響を調査、評価するための手法開発等につきましても着手し、実施してきているところでございます。
  65. 遠藤和良

    ○遠藤委員 アメリカの法律でございますが、有害物質規制法、いわゆるトスカ法と訳されておりますが、ございます。この法律と日本のただいま問題になりましたいわゆる化審法を対比して考えますと、アメリカの法律の場合は、あらゆる化学物質を包括的に規制できるという時点があるように思われます。日本の場合は、各種の規制が関係省庁別に縦割りになっているような弊害があるのではないか。これでは大変責任が不明確になりまして、必ず規制に漏れる化学物質が出るのではないか、こういうことが懸念されるわけでございます。この対比の資料等もいただいておりますけれども、今後日本の法律をさらに整足をいたしまして、今後予見できない化学物質があらわれるような心配があるわけでございますので、そういうものを十分に取り締まれるような法律につくり直していく、こういう考え方はおありでしょうか。
  66. 山浦時生

    ○山浦説明員 お答えいたします。  ただいま御指摘のトスカでございますが、これは一九七七年一月一日から施行された法律でございます。これは主として、今先生おっしゃいましたように包括的な規制ということでございますが、特に力点を置いておりますのは、労働安全それから発がん性の問題に力点を置いております。  一方、化学物質審査規制法は昭和四十八年にできたわけでございますが、これは当時既にありましたいろいろな法律、伝統のあるいろいろな法律がございますが、そういった法律だけではカバーできないすき間といいますか、そういったものを補充するために、二重規制というものを避けるような細心の注意を払いつつできました法律でございます。この法律は、環境経由で人の健康を損なう、平たく言いますといわゆる食物連鎖ということでございますが、これは日本の国の風土と申しますか、そういったものに適合した形の構成となっております。  アメリカの方式が日本に適当かどうかというようなことにつきましては、法律に対する考え方とか社会的ないろいろな物の考え方、コンセンサス、いろいろな要因がございまして、必ずしも直ちにそういった考え方を適用することが適当かどうかということは現在何とも申し上げられませんけれども、新しいいろいろな問題に対処すべく外国、アメリカのみならずヨーロッパ等の法律を研究しながら、適切に対処できるように研究をしてきております。今後いろいろな情勢の変化によりましてどのようにも対応できるような研究は、今後とも続けてまいりたいと考えております。
  67. 遠藤和良

    ○遠藤委員 国民の側から申し上げますと、有害な化学物質というのは今後も際限なく出てくる心配があるわけです。現実の法律の規制では、製造目的を有した工業製品等の規制は十分にできるわけでございますけれども、いわゆるダイオキシン等は、除草剤をつくるという目的のもとで副産物として出てくる産物ですね。こういうものに対する規制というものは、現行法ではかなり難しいわけでございます。したがいまして、国民の目から見てそういう有害な物質が世の中に出ないための法整備というものをぜひともやっていただかなくてはならないと思うわけでございますが、その辺の姿勢といいますか、方向性としてはいかがなものでございますか。
  68. 山浦時生

    ○山浦説明員 副産物の問題でございますが、大体化学製品の中には、ごく微量まで含めますと非常にたくさんの不純物が含まれております。それで、法律の目的といたしましては製品を規制するということでございますので、この不純物は規制の対象となっておうません。これはアメリカのトスカでも同様でございます。それからヨーロッパの法律でも同様でございます。  これはなぜかと申しますと、不純物をその親となる製品と同じレベルで試験をするためには、いわゆるそのサンプルを大量に確保しなければならぬとか、それから分離をしなければならぬとか、そういう技術的に非常に困難な問題があります。また、費用の面からいっても非常に膨大なものになるということで、どこでも一応新製品といいますか、そのもとの製品を規制しているわけでございますが、いろいろ文献、データ等によりまして、あらかじめ危険が予想できる場合にはこういった不純物についても現在でもチェックしております。  そういったことで、遺憾のないようにしておりますが、今のところ化学物質審査規制法の審査、運用においてそういった不純物で有害なものが出てきているという実績はまだございません。
  69. 遠藤和良

    ○遠藤委員 今後、有機物質、無機物質につきまして、既存の物質を含め新しい物質がどんどんとつくられていく状況にあるわけでございますが、そういう中で、いわゆる第二のダイオキシンを防ぐために各省庁ではどういうふうな対策を講じていきますか、ちょっと確認をしたいと思います。
  70. 山浦時生

    ○山浦説明員 化学物質審査規制法の運用自体、既存化学物質の点検それから新化学物質の審査ということがそういった第二のダイオキシンあるいはPCBを防止する一つの手だてとなっているわけでございますが、世界的に見ますと、現在化学物質というのは、アメリカのCASいわゆるケミカル・アブストラクツ・サービスというところで登録されている物質として六百万という非常に大きな数がございます。こういったものをいわゆる化学物質審査規制法に基づく試験のみによって把握するということはいろいろな意味で困難でございますので、現在世界的に発達しておりますデータベースを利用いたしまして、いろいろな情報を多角的に集めつつ、適切に使っていくという方針でおります。
  71. 管原敏夫

    ○管原説明員 お答えいたします。  農薬につきましては、これは農薬取締法で農林水産大臣が登録したもののみを使うというような仕組みになっておるわけでございますが、その際、農薬につきましては製造法から見ましてダイオキシンが含まれるおそれがあると思うものにつきましてはすべてダイオキシンの有無について検査しているわけでございます。したがいまして、現在登録しておるものにつきましては2・3・7・8PCDDの含まれているものは全然ございません。また、ただいまお話のございました不純物等につきましては、農薬の場合はその原料でございます原体について慢性毒性試験等動物実験による毒性検査をしておりまして、そういう面からいたしましてトータルとして安全であろうというふうな仕組みにしておるわけでございます。
  72. 海老原格

    ○海老原説明員 お答え申し上げます。  環境庁といたしましても、ダイオキシンのように非意図的に生成されます有害物質につきまして、環境汚染を未然に防止するという立場から、これにどう取り組んでいったらいいかということは確かに検討すべき重要な課題であるというふうに考えておるところでございます。こういう問題につきましては、いろいろと法制度の面から見ても非常に難しいところでもございますので、今の段階といたしましては、どう取り組むべきかについて検討しておるということでございます。
  73. 遠藤和良

    ○遠藤委員 いろいろ各省庁の今後の対策をお伺いしたわけでございますが、私ここで一つ提言があるわけでございます。  一つは、この化学物質を予見をいたしましてあるいは対策を行う手法としてバイオテクノロジーを活用する研究はどうかということでございます。今、国の各種の研究機関におきましては微生物や高等動物の組織培養を行っておるわけでございますが、こうしたものを活用いたしまして、今後大量につくられてまいりますいわゆる毒性物質、有機化合物がまさに毒性があるかどうかというものを予知する研究でございます。こういった研究を科学技術庁としてはどういうふうに考えておられるか。あわせて、バイオテクノロジーを使いました発がん物質の研究なども、これは大変な研究の意味があるのではないか、こういうふうに思いますが、各省庁ではそういうものに対しましてどういうふうな計画をお持ちでございましょうか、お伺いします。
  74. 赤羽信久

    赤羽(信)政府委員 御指摘のとおり、微生物を用いますと毒性がわかるという研究が進んでまいりつつございます。いわゆる急性毒性につきましては、これは生きた生物を使えばよろしいわけでございますが、晩発効果のあるもの、慢性毒性、そういったものにつきましては大型の動物ではたくさんの試験がしにくい。そこで先般、この四月でございますが、科学技術会議が諮問第十号に対する答申といたしまして「ライフサイエンスにおける先導的・基盤的技術研究開発基本計画について」という答申をしたところでございますが、この答申では、ライフサイエンスの先導的なものあるいは共通基盤的なもの、その研究を今後どう進めるかということの総合計画を述べておるわけでございますが、その中の一つの項目としまして、まさに御指摘の問題を提起しております。例としましては催奇形性あるいは発がん性、そういったものについて非常に感受性が高い微生物を見つけ出す、あるいはつくり出す、さらに環境汚染モニターになるような生物とか、さらに進みますと環境を浄化するような微生物、そういったものまで含めて研究テーマとして挙げておるわけでございます。  もちろん、これらの方法は一つの簡便法でございますから、最終判定に十分なとまではいかなくても、ともかくたくさんの物質を短期に手軽に検査できるということでございますので、各省庁に対します総合計画の提示という形をとっておりますが、科学技術庁自身もそうでございますし、各省庁と連携を保ちながらこの研究を特に重点を置いて進めてまいりたいと考えておるところでございます。
  75. 田中正躬

    ○田中説明員 今の御質問にお答えをいたしますと、化学物質のこういう安全性とか環境対策というようなことはバイオテクノロジーの重要な応用分野の一つでございまして、通産省といたしましては、筑波にございます微生物工業技術研究所というところでこういう安全環境対策に関する研究を継続中でございます。今後ともこういう分野におけるバイオテクノロジーの活用ということは、先ほど科学技術会議の答申にもありましたように、通産省といたしましても鋭意やっていきたいというふうに考えております。
  76. 小宮宏宣

    ○小宮説明員 お答えいたします。  厚生省におきましても国立がんセンター等でいろいろ発がん性試験をやっておりまして、伝統的には動物実験で慢性毒性試験による発がん性試験ということで衛生試験所あるいは国立がんセンターその他国立の機関等を利用して行っておるわけでございますが、それ以外に先生御指摘のようにいろいろ微生物を使いまして簡易に発がん性の予備的な治験をやるというような方法もいろいろ工夫されておりますので、そういう面で厚生省の方でも新しい技術応用した発がん性試験、そういうものの開発に心がけていきたいというふうに思っております。
  77. 遠藤和良

    ○遠藤委員 大変前向きな回答をいただきましてうれしく思います。  科学技術庁では、既にこういう研究に対しましていわゆる科学技術振興調整費を活用した研究は行いましたか。ちょっと確認いたします。
  78. 福島公夫

    ○福島政府委員 お答えいたします。  振興調整費としては特に取り上げておりません。
  79. 遠藤和良

    ○遠藤委員 一九七二年にストックホルム国連人間環境会議、ここでも有害物質や廃棄物の管理は今後取り組むべき重要課題のトップである、こういうふうに挙げられているわけでございます。世界人々がそれだけの問題意識を持っている大変に人類的な重要課題であるわけでございます。  今、各省庁の取り組み、また今後の考え方等伺ったわけでございますが、このいわゆる人類的な重要課題に取り組むに当たって、現在の体制では十分に対応できるのかどうかということが甚だ心配になってくるわけでございます。私思いますのに、科学技術庁所管の科学技術振興調整費というのがございますけれども、この科学技術振興調整費というのはいわゆる経済性を追求する学問の研究、技術の開発、そういった方向ばかりではなくて、科学技術というものは人類的重要課題に取り組む、いわゆる人間生命をどう守っていくかという視点からも考えていかなければいけないと思うわけでございます。したがいまして、このダイオキシン等に見られますような有害物質の研究につきまして、人間生命を守るという立場から、いわゆる産学官から優秀な人材の方々を選びましてプロジェクトチームを組んで研究を行っていく、それに科学技術振興調整費を活用していく、こういうお考えはないかどうか、長官にお伺いしたいと思います。
  80. 福島公夫

    ○福島政府委員 お答えいたします。  元来、農薬、医薬品等の化学物質の廃棄物の処理あるいはこういうものに係る安全性の確保というのは、それぞれの当該物質及びその処理にかかわる所管の官庁が責任を持って現在進めているわけでございますけれども科学技術庁としましては、研究の推進というもの、積極的な調整ということも預かっておりますので、私どもも各省庁からのいろいろな御意見というものを伺ってからいろいろと検討したいと考えております。  ただ一つだけ例を申し上げますと、振興調整費の前身であった特別研究促進調整費におきましては、これは緊急課題ということで、PCBに関しては各省庁と相談のもとで実施しております。今回の問題については、まだ各省庁から具体的な相談というものを受けておりませんが、今後そういう話がございましたら検討してみたいと考えております。
  81. 遠藤和良

    ○遠藤委員 確かに第一義的には各省庁で研究すべき問題ではないかと思いますけれども、大変に各省庁にわたる問題でもあるわけです。きょうお伺いいたしましても、各省庁からお答えがありましたように、これはどうしても各省庁縦断をいたしまして研究しなければいけない人類的な課題ではないだろうか、こういうふうに考えるわけでございまして、そういう意味で大臣の所感をちょっとお伺いしたいと思うわけでございます。
  82. 岩動道行

    岩動国務大臣 先ほど来政府関係省庁からお答えを申し上げておりますように、有害あるいは毒性の化学物質は非常に多岐にわたって思わざるところにぽかっと出てきたりしておりますので、これをつかまえることがなかなか難しい、最初からこれだと決めつけてやっていくような物質でないことが一つ特徴であろうかと思います。しかし、あちらこちらにこのような問題が起こってきて、しかも極めて毒性の強い、人間生命にかかわる非常に重大な問題でございますので、私ども科学技術会議で示された方針に十分にのっとりまして、科学技術行政の総合的な役所として今後とも関係省庁とよく連絡をとり、そしてそのような有害な物質が出現した場合には速やかに対応して研究を行ってまいる、このようにして対応したいと思っております。
  83. 遠藤和良

    ○遠藤委員 大変前向きな御答弁をいただきましてありがとうございます。  国際間の問題につきまして若干お伺いをいたします。  毒性物質の情報交換につきまして、国際的なシステムでどういうふうなものがあるか。一つは国連があると思いますが、国連並びにWHOではどういうふうなシステムで情報の交換が行われているのか、また日本の方からも情報を提供しておるのか、その辺をお伺いしたいと思います。
  84. 小宮宏宣

    ○小宮説明員 お答えいたします。  現在、国際機関で実施しております毒性物質に関する情報交換制度といたしましては、先生御指摘のように国連の国連環境計画というプログラムの中で有害物質登録制度という制度等がございます。またWHOの方では、WHOを中心としまして実施しておりますのが国際化学物質安全性計画事業という事業でございます。  最初の国連で行っております国際有害物質登録制度につきましては、一九七六年にこの制度が設けられまして、有害物質に関するデータ、特に生産量とか人とか生物への影響あるいは環境中への分布の状況、そういうような関連のデータを集中的に管理いたしまして、それを各国に情報としてフィードバックするというようなことで制度が運営されております。  それからもう一つ、WHOで行っております国際化学物質安全性計画事業でございますが、これは化学物質が人の健康に及ぼす影響を評価するということで一九八〇年に設置されたものでございますが、各物質ごとに環境、保健への影響のクライテリアを作成していく、あるいは各種安全性の評価方法を確立するというようなことで、個々の物質ごとに加盟国が分担して作業するというような形で行っておるわけでございます。  この二つの制度につきましては、国内の協力機関としまして厚生省の国立衛生試験所が指名されておりまして、この国連の事業及びWHOの事業に積極的に協力を行っておるという状況でございます。
  85. 遠藤和良

    ○遠藤委員 愛媛大学の立川流教授に私も会いましてお伺いしたわけでございますが、同教授の指摘によりますと、ダイオキシンはいわゆる除草剤ばかりではなくて、ごみ焼却場からも検出された、あるいは一般の健康人の血液中からも検出された、こういうふうに大変我々の身近な環境の中にまで汚染が広がっているようでございます。  そこでお伺いいたしますが、私たちにとって傘ともいえます水道の水、これは大丈夫なんでしょうか。特に最近有機塩素系の化合物が水道の水に含まれているという情報もございますが、その辺のことをお知らせ願いたいと思います。
  86. 森下忠幸

    ○森下説明員 御説明申し上げます。  水道では御承知のように塩素の消毒をいたしておるわけでございますが、塩素を用いますのは、消毒の効果が蛇口の方まで持続するということでやっております。古くは水道は、先生御承知のように、緩速砂ろ過というので、水をゆっくりと砂でこしておりまして、砂の中にあります微生物の力で水の中の有害物を除去しておったということでございますが、最近では、敷地の関係もございますし大量に水を使うということもございまして、急速ろ過という形に変わっております。それと同時に、水源の方が大分汚染しておるというふうなことで、この塩素を最後の仕上げの消毒ということのほかに原水の方に、前の方に塩素をかなり大量に入れるというふうなことで、そのことが実はトリハロメタンと言われております有機塩素化合物を生成するということが報告されておるわけでございます。  厚生省もこの実態につきまして昭和五十一年ごろからずっと調査しておりましたが、これについては、浄水場の中で塩素を入れるためにこういう物質ができるということでありますから、浄水場の中で今度はこれをできるだけつくらないようにコントロールするということで制御目標値というものを定めまして、これは昭和五十六年三月でございますけれども、これに沿ってすべての水道事業がこの基準値、数値を申し上げますと〇・一ミリグラム・パー・リットルでございますけれども、これ以下になるように浄水場の制御をする、または水質検査も定期的にやるということをやっております。五十六年に全国のほとんどの浄水場について調査をいたしましたけれども、このとき残念ながら五カ所について制御目標値を超える浄水場がございまして、これにつきましては水源を変えるとか塩素注入点を変えるとか、あるいは活性炭の処理をあわせて用いるとかということで対処いたしました。それ以降、五十七年、五十八年、これらのすべての事業体につきまして調査をし報告させておりますけれども、現在のところ、この目標値を下回っておるところであります。
  87. 遠藤和良

    ○遠藤委員 最近水道の水を洗浄する機械というものが市販されておりまして、それは大変売れ行きもいいそうでございます。逆に言うと、それだけ水道の水が汚れている、こういうことにもなるのではないかと思うのでございます。また、これは管轄が違うかもわかりませんけれども、いわゆるマンションとかビルのタンクに一度貯水いたしまして、それから各部屋に配る水道、こういうものが大変に汚染をしておるというふうに言われておりまして、水が随分と汚れておる。それもただ有害という域にとどまらず、本当に人間の命にかかわる化学物質を含んでおる心配が出ているわけでございます。ぜひ水道の水を守ってもらいたいと思うわけでございますが、今ちょっと話がありましたが、もともとの川、湖、いわゆる水源地自体が汚染しているのでという話がありました。こちらの方はどういうふうになっているのでしょうか。
  88. 杉戸大作

    ○杉戸説明員 お答えいたします。  水道水源の約七〇%程度が河川とか湖沼などの表流水に依存しているところでございまして、このために、環境庁といたしましても、この公共用水域の水質保全を図ることは極めて重要であるという認識をいたしておるところでございます。  先ほど厚生省の方からも御説明ございましたように、トリハロメタンの生成、それは原因としては河川の有機質が問題でございます。特にそのような河川の浄化ということには私どもいろいろ対策を講じておるところでございますが、まず第一に、公害対策基本法の中で、公共用水域の水質汚濁に係ります環境上の条件につきまして、人の健康を保護し生活環境を保全する上で維持することが望ましいというその環境基準、これを定めておりまして、全国で約三千ほどの水域につきまして、有害物質それから生活環境の保全に関する基準などを定めておるところでございます。これは行政上の目標でございます。  それからもう一つ、公共用水域につきまして、水質保全を図るために、水質汚濁防止法に基づきまして、特定事業場からの排水でございます、公共用水域に排出される水につきましての排出規制を実施しておりまして、現在カドミウムとか水銀などの八物質とそれからpHとかCODなど十二項目につきまして排出基準が設定されておりまして、それにつきましては、各事業場等に対しまして排水基準を遵守するための措置がいろいろと講じられているところでございます。  今後とも、その水質汚濁防止法の厳正な運用を図ってまいる、そういうことと同時に、新しいそういう化学物質などにつきましても、厚生省を初め関係各方面との連携のもとに、実態の把握や情報の収集など行いまして、検討し、さらに水道の水源を初めといたします公共用水域の水質汚濁の防止に万全を期してまいりたいという所存でございます。
  89. 遠藤和良

    ○遠藤委員 水の方はこの程度にいたしまして、薬のことをお伺いしたいと思います。  先ほどの立川流先生は、今後毒性物質として大変心配なのは薬である、いわゆる薬というのはそれ自体化学物質でございますから、治療させる反面、人間生命を脅かす両刃の剣を持っている、こういう問題提起でございます。  そこで、私お尋ねしたいのは、薬と薬の重複作用ですね、重複使用、これによりまして新たな有害物質が出てくる心配があるのではないかと思うわけでございます。今ちまたでは、いわゆる薬づけということが言われておりますが、薬をたくさん飲むことによりまして、おなかの中で薬と薬が反応しまして新たな有害物質、予見できない有害物質が出てくる心配がある、こういうことに対しては国は研究をしておるのかどうか、それをお伺いしたいわけです。
  90. 小宮宏宣

    ○小宮説明員 お答えいたします。  ただいま先生御指摘がありました、薬を服用した場合に胃の中でどういう変化が起こるか、あるいは体内でどのように変化を起こして溝性作用を示すかというようなことは、基本的には医薬品を開発する際に製薬企業の方で動物試験とかあるいは臨床試験等をやりまして、一応確認するということを行っております。それ以外に、市販されました後、やはり二種以上の薬を服用いたしますと相互作用ということで、お互いに作用を強くしたりあるいは作用を減弱するというようなことがございます。そういうようなことで、薬の相互作用その他の安全性につきましては、厚生省の方では国立衛生試験所、あるいは大学の研究機関、あるいは薬物の相互作用でございますと病院等でも薬の安全性情報の検討という形で、いろいろ研究が行われているわけでございます。  そういうような情報につきましては、厚生省の方で現在いろいろ医薬品のモニター制度とかあるいは薬事法で企業に対して副作用の報告をさせる義務を課しておりまして、そういうような観点から薬物の相互作用あるいは副作用、発がん性も含めてそういうような情報をいろいろ集めさせまして、薬事審議会で個々に検討して対応していくというような形で行っております。現実に、幾つかの薬で二つ以上飲みますと作用が強くなるというようなことも指摘されまして、そういうものにつきましては薬の説明書にそういうような情報を記載してユーザーの注意を喚起するというような措置もとっているわけでございます。今後とも、そういうようなことで、臨床上患者の状態によりましては二種以上の薬を使うというケースもいろいろあるわけでございますので、そういう点については、薬物の相互作用という観点から私ども引き続き情報の収集、研究を続けまして、医薬品の安全対策という点で万全を期していきたいというふうに考えております。
  91. 遠藤和良

    ○遠藤委員 製薬会社は薬の副作用までは研究すると思いますけれども、自分のところでつくった薬とよその製薬会社でつくった薬とが一緒になりまして変な有害物質を出す、そこまでは研究せぬと思うのですね。これは製薬会社にそこまで研究を義務づけて薬として認定するのか、あるいはそういった研究は国が行う、こういうことなんでしょうか。その辺、きちっとした見解をお聞きしたいと思います。
  92. 小宮宏宣

    ○小宮説明員 お答えいたします。  薬を開発する際に、開発される薬についての体の中に入ってどういう変化を起こすかという点につきましては、製薬企業の方でいろいろ動物実験とかあるいは臨床試験等で詳しく調べて行うということでございますが、先生御指摘のように、幾つかの薬を組み合わせて服用した場合にそれがどういう影響を及ぼすかというのは、実際に市場に出て臨床上使われてきたときにいろいろ組み合わせが起こってくるわけでございますので、なかなか一製薬企業の段階でそれを調べるということが難しい状況にございます。  そういうことで、私ども医薬品の副作用情報の収集に当たりまして、幾つかの薬を組み合わせて使った場合に副作用が起こるというようないろいろなケースがございまして、そういうようなものを国内の副作用情報という形で収集しておりますし、外国でもそういうような薬物相互作用という形で情報の収集が行われておりますので、そういうものを総合的に情報収集し、薬事審議会でも検討いたしまして、先ほど申し上げましたように、ある薬とある薬を組み合わせた場合には副作用が強くなるとかあるいは効果が強過ぎてしまうとか、そういうようないろいろな注意書きなり、用いる場合の留意事項等を積極的にユーザーに情報として伝達するというような形で薬物相互作用の問題は対応している現状でございます。
  93. 遠藤和良

    ○遠藤委員 文明の進歩というものは、私ども人類に多大の夢と喜びを与えてきたわけでございますが、その反面、こういったダイオキシン等に代表されるようないわゆる有毒な物質が突然あらわれる、こういった意外な落とし穴もあったわけでございます。そのためにも、科学技術行政というものは大変にバランスのとれた感覚で行っていかなければいけないと私は思います。単にいわゆる経済性のみを追求する、利便性のみを追求する科学ではなくて、やはり人間生命を守り、人間生命尊厳を守っていくという立場科学をとらえていかなければならない、またそういった面の科学も大変に大切にしていかなければならない問題であると思うわけでございます。それで私は、科学技術庁政策基本として、こういった意味での人間を守る科学といったものも重要な仕事の一つであるという認識をぜひともこの際していただきたいわけでございます。  そして、今るるお聞きしてまいりましたが、いわゆるダイオキシン、人間がつくった史上最悪の毒性を持ったこういう物質の研究というものは、諸外国に比べまして我が国は大変に立ちおくれておると指摘されております。早急な総合的な研究体制が望まれるわけでございますけれども科学技術庁としてはこういったものに積極的な音頭をとって行っていく、こういうお気持ちでございましょうか。長官の御所感をいただきたいと思います。
  94. 岩動道行

    岩動国務大臣 科学技術そのものは最終の目的ではなくて、それは人間生命そして人間尊厳そして人間が平和で豊かに暮らしていくための方法であり手段であると思います。したがいまして、私どもは、今後ともそのような人間のための科学技術人類のための科学技術、そういう基本的な姿勢でこれからも科学技術の正しい振興を図っていかなければならないと考えておるわけでございます。  経済性の追求ももちろん大事であります。科学技術進歩によって国民の生活、日本の経済の活性化あるいはひいては地球人類の平和と繁栄のために役に立つ重要な分野であることは申すまでもございません。しかし、今中したように一つの手段であり方法であって、目的は人類であると思います。人間の命であると思います。人間尊厳であると思います。そういうことでこれからも対処してまいりますが、したがって、ただいま御指摘のようなダイオキシン等の極めて毒性の強いものについては、私どもは緊張してそして速やかに対応するような即応性ある科学技術の研究も政府を挙げて努力をしてまいりたいと考えております。
  95. 遠藤和良

    ○遠藤委員 話を全く変えまして、宇宙基地計画への参加問題についてお伺いいたします。  「翼のある風景」という雑誌に福島局長の随筆が載っておりました。私、拝読させていただきまして、その中でこういうことが書かれておりました。  日本として参加する方法は三つある。ゴルフに例えてみると第一の方法はゴルフ場の建設に参加することである。アメリカは一八ホールのコースとクラブハウスや駐車場、あるいは宿泊施設も作るから、日本はせめて九ホールのコースだけ作らないかと呼びかけられているわけである。つまりゴルフ場のオーナーの一人として参加することであり、これは政府の役割であろう。もちろん日本が参加しなくても立派なゴルフ場はできることになっている。  第二の方法はゴルフ場の会員になる方法である。クラブハウス等共通施設を建設する際に分担金を納めることになる。当然のことながら会員はプレーする際には優先的に、しかも、安いグリーンフィーで済むことになる。これは国の機関だけでなく、民間企業も可能である。  第三の方法はいわゆるビジターである。グリーンフィーは高いが、利用回数を考えて決めることになろう。こういう三つの方法というものを大変わかりやすく書いていらっしゃるわけでございますが、今日本としてはこの三つの方法のどれを選択していこうというお考えなのか、お伺いしたいと思います。
  96. 福島公夫

    ○福島政府委員 お答えいたします。  大変な拙文が目にとまりまして大変恐縮でございますけれども、私ども段階では、はっきり言いまして、どういう形で参加するかということはまだ決まっているわけではございません。これは今後宇宙開発委員会の御指導のもと、もちろん政府内部で、これは財政当局も含めて、我々としてはどこまでそれに金を使えるのかという問題と、その金を使っただけの効果がどれだけあるのかという問題をよく究明し、さらに国立の研究機関あるいは大学、ひいては民間のユーザーたちの意見を聞きながら決めていかなくてはならないと考えております。  私どもとしては、科学技術庁という立場では、これは二十一世紀を踏まえての非常に重要な一つの投資であるということを考えておりますし、また、これは日本だけでやろうと思ってもいつでもできるものではない、一つのチャンスであるということを考えておりまして、できることならば参加したいということで、事務レベルで検討を進めているわけでございます。したがいまして、そのために必要な情報等は、しばしばアメリカのNASAの方に担当者も行きまして、いろいろと情報入手に努めておるわけでございます。残念ながら、今の段階でどの形で参加するかということは、なかなかお答えするあれにはございません。むしろそういった特質をよく考えて、国全体で考えていくことというふうに考えております。
  97. 遠藤和良

    ○遠藤委員 この随筆を読む限りにおきましては、国としては第一のゴルフ場の建設に参加する、民間はゴルフ場の会員になってもらいたい、こういうふうに読めるわけでございますけれども、そう判断してよろしいでしょうか。
  98. 福島公夫

    ○福島政府委員 お答えいたします。  これは一つの例で申し上げたわけでございますし、本当にどういう形で参加するかということを現在お答えできないということは、先ほど申し上げたわけでございます。ただ、こういった一つの宇宙基地をつくるということは、考えてみますと、宇宙に研究団地あるいは工業団地というようなものを造成するという考え方じゃないかと思いますので、こういったものは、従来から考えれば国が責任を持ってやるものじゃないかなという感じがいたします。その造成された研究団地あるいは工業団地を利用する段階では、国もあれば民間もあるという形ではないかと考えておりますし、これは随分まだ先の、実利用までの時間がかかる問題でございますので、私どもとしましては、もし参加するということになったときに、やはり政府がかなり中心的なものとなってやっていかなくてはいけないのではないかと考えておるわけでございます。
  99. 遠藤和良

    ○遠藤委員 新聞報道によりますと、民間のグループがこの宇宙基地参加に本腰を入れたというふうな報道がありまずけれども、この具体的な実情はどうなのでしょうか。
  100. 福島公夫

    ○福島政府委員 お答えいたします。  新聞にはかなり正しく報道されておりまして、現在、経団連も非常に熱心にやっていただいております。したがいまして、来月になりますと、経団連主催でユーザーに対する説明会を持ちたいというような考えも持っているようでございます。なお、三井グループ及び三菱グループ、これは本当は民間団体全体がということもあろうと思いますが、経団連ですと非常に大きな企業だけということもございますし、本当のユーザーというのはかなり意欲的な先行投資を行う中堅企業も含まれるということもございまして、三井グループ、三菱グループというところから先頭を切ってユーザーの啓蒙をやっていただいたわけでございます。これが、我々が期待していた以上に意外に反響が大きく、新聞に報道されるに至りますと、三井、三菱以外のグループもその会に参加したいということを申し出ているそうでございまして、第二回、第三回の会合、研究会が今後も引き続き行われると聞いております。もちろん私どもも、この宇宙基地計画を進めるに当たっては、一番大きなユーザーである民間企業が最終的にどう考えるかということが大事でございますので、この辺のユーザーの動きを注意深く見守っていきたいと考えております。
  101. 遠藤和良

    ○遠藤委員 さきにいわゆる放送衛星あるいは気象衛星の故障が続きまして、やはり国産の技術を開発しておかねばならないということが見直されているわけでございます。その一方でこうした宇宙基地計画があるわけでございまして、日本宇宙技術というものを自主技術で習得していくためには失敗を恐れてはいけないわけでございますし、お金も人材も必要になってくるわけでございます。この自主技術の開発という側面と今回のこうした米国の宇宙基地計画に参加するという形の政策選択のあり方、これをどう調和させていくかということが、日本宇宙政策にとって大変重要な選択肢になるのではないかと思います。  そこで、長官にお伺いいたすわけでございますが、もう一回国産技術というものを自主技術で開発していく、こういうことが宇宙政策大綱等でも言われておりますが、予算の配分といったらおかしいわけでございますが、そういう面をどういうふうにお考えになっていくのか。要するに、国産技術開発の方を重点にするのかあるいは宇宙基地計画に参加する方を重点に置くのか、その辺の考え方をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  102. 岩動道行

    岩動国務大臣 日本宇宙開発関係は、どちらかと言えば国際的におくれていることは現実でございます。そこで、従来の宇宙開発計画を先般改定して、いろいろな分野を整理いたしました。そして、まず、日本の財政の許す限り、自主開発技術をもって今世紀中には五十個程度の衛星を打ち上げていこう、ロケットも大型化していこう、こういう基本的な方策を立てました。したがいまして、先般来放送衛星あるいは気象衛星で故障が起こって、直ちにその修復のため、原因究明のためにいろいろな手だてを講じ、あるいは委員会に特別の対策委員会もつくって、私どもは原因の究明と修復のために鋭意努力をいたしておりますが、自前のものでないだけに、これがなかなか時間がかかっております。究明ができない部分もあろうかと思うのであります。そういう観点からも、私どもは、まず自主開発を主体として大綱に決められた路線を着実に実行してまいる、そのために国家あるいは民間の資金も十分に活用していくことが大事な一つの基本路線であろうと思います。  と同時に、私どもが大綱をつくるときに、有人宇宙の計画等につきましては、日本技術と財政力からは容易ではない、これは協力によってやっていこうという政策も大綱において決めたわけでございます。したがって、いずれに重点を置くかということを問われますならば、いずれにも重点を置いていかなければいけない。しかし宇宙基地計画につきましては、正式に日本のモジュールをつくるということになりますと、大変巨額な資金が必要であります。また年月もかかるわけでございまするから、その辺はこれからの日本の経済と財政の状況をよくにらんで前向きに参加の方向を検討してまいりたい、かように考えております。
  103. 遠藤和良

    ○遠藤委員 以上で終わります。ありがとうございました。
  104. 大野潔

    大野委員長 吉田之久君。
  105. 吉田之久

    ○吉田委員 私は、科学技術の諸問題について、特に当面する技術革新の促進の諸方策について若干の質問をいたしたいと思います。  先端技術などの技術開発の促進は我が国の産業、経済の発展に不可欠であります。また、欧米各国も官民協調して技術開発を進める傾向を強めておりますけれども技術開発の中には巨額の研究開発費と長い研究期間を要するものが多くあります。したがって、政府としても、技術開発を進める面でこの両面にわたって強力に促進する方策を確立すべきだと考えます。この観点から、以下の諸点につきまして、まず通産省の御見解をただしたいと思います。  問題の一つは、先端技術研究開発は、資金負担から見て企業間の協力が欠かせず、独禁政策の適用を弾力化する方策をECにおいては検討していると聞いておりますけれども政府はどのような情報を得ておられますか。また、これに対して我が国においても同様の観点から独禁政策を見直す考え方はあるのかないのか、まずお伺いいたしたいと思います。
  106. 藤島安之

    ○藤島説明員 お答え申し上げます。  ECでは、共同研究開発が経済的、技術進歩に貢献するとともにEC企業の競争力を高めるという考え方で、従来からも共同研究開発につきましては非常に好意的な態度をとってきたところでございますけれども、昨年の十月に、共同研究開発につきましては、ECの競争法でありますローマ条約の第八十五条第一項、これは共同行為を禁止している規定でございますが、その適用除外とするというEC委員会の規則の案を発表しております。  その内容は、私ども理解するところでは、要点を申し上げますと次の三つであろうかと思います。第一は、製品原型のプロトタイプあるいは実験工場、デモンストレーションプラントというものでございますが、そうした段階までの共同研究開発については適用除外とするというのが第一点でございます。第二点は、中小企業の場合につきましては共同で製造するという段階までも適用除外する、こういうものでございます。第三点は、しかしながら、関連分野の上位企業が多く参加するような共同研究開発につきましては、協定の内容をEC委員会に届け出てもらう、こういうものでございます。  EC委員会としては、加盟国の競争当局の職員から成ります諮問委員会の審議を経て、この規則案を年内には正式決定をして来年一月から適用したい、こういうふうに考えていると承知しております。  次に、我が国の独禁法との関係についての御指摘でございますけれども日本の独占禁止法は一定の取引分野すなわち商品市場における競争制限を問題とする、こういうふうになっておりまして、商品化された段階における競争制限というのは問題になるわけでございますけれども、それ以前の共同研究開発については通常独店禁止法上の問題は生じないと考えられるわけでございます。したがいまして、我が国におきまして独占禁止法が共同研究開発の阻害要因になっているということはないのではなかろうかと考えております。しかしながら、もしこのような問題がありますれば、私どもとしても公正取引委員会と十分連絡をとりながら問題が生じないような形で処理してまいりたい、このように考えております。
  107. 吉田之久

    ○吉田委員 EC諸国と我が国との独禁法の中身につきまして若干の相違があるようでございます。その点では今の御答弁は一応了解できますけれども、しかし、EC独禁政策の最高責任者であるアンドリーゼンEC委員会委員は、「「先端技術研究開発は資金負担からみて企業間の協力が欠かせず、独禁政策面からも新たな対応が必要になる」と指摘、UNICE(欧州経団連)などの意見を聞いたうえで、七月中にEC委案をまとめる段取りであることを明らかにした。」こういうことで、かなりEC諸国も独禁政策の適用を弾力化することによって欧州企業の競争力を強化しようと図っていることは事実のようでございます。したがって、こういうものを横に見ながら、我が国においてなお国際競争上で十分な条件を保持するためになさなければならない点がありとするならば、その辺は慎重に検討をされて、必要に応じて的確な措置を講ぜられなければならないと思いますので、さらにひとつ御検討を煩わしておきたいと思います。  次に、中小企業庁のベンチャービジネス研究会がまとめた中間報告としては、ベンチャービジネス、研究開発型中小企業の振興方策を提言しており、我が党も基本的にこの点については評価するものでありますけれども政府としてはいつをめどに振興のための法律案を国会に提出される方針でありますか、伺っておきたいと思います。
  108. 林昭彦

    ○林説明員 ベンチャービジネスというのは、新しい技術を活用いたしまして事業を拡大しております企業家精神旺盛な、そういう企業であると考えられますので、この振興というのは我が国の中小企業全体の活性化に通ずる、またそれは我が国経済の活力の維持向上に大きく貢献すると私ども考えているわけでございます。  こういう観点から、今先生御発言ございましたように、昨年十月に中小企業庁長官の諮問機関といたしましてベンチャービジネス研究会というものを設置いたしまして、ベンチャービジネスの現状問題点、さらに今後どういう政策対応をしたらいいのかというようなことを検討してまいったわけでございますが、今月十八日に一応その研究会の中間報告が行われたわけでございます。私どもとしては、この中間報告を踏まえまして、いろいろ提言もございますので今後のベンチャービジネス振興政策のあり方を検討していきたいと考えておりますが、その際、中小企業におきます技術開発活動の促進が一つの大きな焦点になろうかと思っております。その関連で検討の結果法律が必要であるという結論に達せば、そういうものを六十年度の施策として国会へ提出するということもいたさなければいけないかと考えているところでございます。
  109. 吉田之久

    ○吉田委員 まず何か非常にあいまいな感じで、六十年度にはそういうものもつくれればつくった方がいいのかというような感じの答弁としか受け取れないわけなんでございますけれども、そういう段階なのか。あるいは、はっきりはまだ言明できないかもしれませんけれども、かなり強い意思を持ってベンチャービジネスを育成する促進法というものをつくろうとする準備を続けていらっしゃるのか、もう少し明快なお答えをいただきたいと思うのです。  同時に、そういう法案をつくるとするならば、ベンチャー企業の範囲をどのように設定されようとするのか。かなり中小企業の方でもこういう動きについては敏感でございまして、今もお話ありましたように、非常に意欲的な新技術や高度な知識を踏まえて成長が見込まれる分野、多少未知の危険はあるけれども、そういうものに積極的に進出していこうと考えている企業、こういうふうに解釈いたしますと、かなり広範多岐にわたる範囲とも受け取れるわけであります。しかし、新聞等で拝見いたしますところでは、通産省は今のところ、エレクトロニクス、メカトロニクス、新素材、バイオテクノロジー、コンピューター・ソフトウエアシステム技術の五分野を考えており、合わせて三千ないし五千社が認定されると見ているというような報道もございます。その辺のところを、もう少し考え方を明確にお示しいただきたいと思います。
  110. 林昭彦

    ○林説明員 法律を制定する必要があるのかどうかということについては、六月十八日に報告書をちょうだいしたところでございますので、現在はっきり、法律を制定しなければ報告書で示された振興というものができないのかどうかということについて結論を得ておりませんので、私どもとして明言をする段階にはないかというふうに思っております。ただ、そういうベンチャービジネス振興という観点だけでなくて、中小企業全般の技術レベルを上げるということがひいてはベンチャービジネスの振興につながるのではないかというような提言もございますので、私どもとしてはもう少し幅広く検討をしてみようかということでございます。  それから、ベンチャービジネスの定義について御質問ございましたけれども、これはなかなかこれという定義が、いろいろな政策あるいは今後やっていきます具体的な政策ということごとに違ってくるんではないかというのが私ども考え方でもあり、またこの報告書にも付言されておるわけでございまして、規模とかあるいは研究開発指向度とか、あるいはどのぐらいその企業が設立されてから時間がたっているかというようなこと、あるいはその企業が独立性があるのかないのか、いろいろな基準というのがあると思いますけれども、私どもとしては、実際の政策を適用する場合にその政策ごとにそのような基準をいろいろ組み合わせた形で、その政策に即した定義というものを考えていきたいというふうに考えております。  それからもう一つ、どういう技術をもって振興すべきベンチャービジネスの分野とするかという御質問が最後にあったかと思いますけれども、これについてはできるだけ幅広く考えていきたい。技術そのものの開発にとどまらずに、その利用あるいは改善ということも含めた形で考えてまいりたいというふうに思っております。
  111. 吉田之久

    ○吉田委員 かなり幅広く検討していきたいという意欲をお持ちのようでございますが、特に私がこの際申し上げておきたいのは、今はやりの花形の、先ほど申しましたようないわゆる先端産業、これを開発促進していくことは極めて重要ではありますけれども、しかしもっと中小企業で、地味な分野ではありますけれども、真剣に改良あるいは新技術の導入を検討している部門もかなりあると思うのです。例えば、かわらでありますとか、プラスチックでありますとか、製材でありますとか、そういう分野の真剣な努力も見捨てられないようにやってもらわないと、ただ時代の流行を追うだけの企業、それだけが華やかに展開していって、将来総合的に見て大変アンバランスなものになることはやはり危険なことだと思うのです。この点につきまして重ねて御答弁をいただきたい。
  112. 林昭彦

    ○林説明員 お答えいたします。  幅広い技術を助成の対象にするようにという御指摘でございますが、先ほど申し上げましたとおり、私どもとしてはその技術分野というのは幅広く取り上げていきたいというふうに考えております。ただ、そこに何らかの新規性があるとか、あるいはベンチャービジネスという一般的なものには必ずしもとらわれる必要はないかと思うのですけれども、何らかの政策対象になるということは最低限必要かと思いますが、技術を新しい技術ということで非常に狭く考えなければいけないということではないというふうに理解をしておるところでございます。
  113. 吉田之久

    ○吉田委員 それから、先ほど渡部委員も御指摘になりましたが、技術開発基盤整備法案、これができるのではないかというような報道が最近流れましたけれども、先ほどの答弁では、まだそういう確たる方針はございませんというような答弁であったと思います。ところで、六十年に機情法、特定機械情報産業振興臨時措置法が切れるわけでございますね。そこから先、これをつなぐ意味でも何らかの新しい法案が用意されなければならないと思うわけなんですけれども、そのことについて、この機惜法との関連で、政府はこれからの技術開発基盤をどう整備していこうと考えられておるのかということを承っておきたいと思います。
  114. 細川恒

    ○細川説明員 御指摘技術開発の重要性につきましては私どもひとしく認識をしておるものでございまして、来年度の新政策の検討の段階に現在ございます。そういう意味におきまして、その技術開発の推進のあり方につきまして現在幅広い角度からいろいろと検討しておるという状態でございます。  御指摘の機情法でございますが、機情法に至りますまでの一連の立法措置、それが我が国の機械情報産業の健全な発展に果たしてまいりました役割は非常に大きかったと我々も考えておりますが、今日の機械情報産業の国内的あるいは国際的な地位というものを考えますと、現行の機情法そのものの必要性というのは担当薄れてきておるのではないかというふうに考えておりまして、基本的にはその延長の必要性というものはないかというふうに考えております。  いずれにいたしましても、御指摘の点につきましては、繰り返しになりますが、現在いろいろな角度から幅広く検討いたしておるという状態でございます。
  115. 吉田之久

    ○吉田委員 では、機情法はもう一定の成果をおさめ、その使命は終わったというような御説明でございますけれども、果たしてそう言い切れるのかどうかという点が私どもにとってはよくわかりません。  それから、この報道によりますと、先ほど申しましたように、マイクロエレクトロニクスを初め、バイオテクノロジーその他先端技術の開発は、巨額の研究開発費と長い研究期間がかかる。民間企業のリスクも大きい。だから、政府としては税制、金融面などで優遇措置をとり、また、民間活力を引き出すために、そういう新しい基盤整備法というものを考え出すのではないだろうか。あわせて、ベンチャービジネス振興策も盛り込むこととしており、二十一世紀に向けての我が国の産業振興政策基本法的な性格を持つ法案をつくろうとしていると考えられる。こういう報道でありますが、そこで伺いたい点は、もしもそうだとするならば、先ほどのベンチャービジネスの振興と我々が新しく望まれると考えている基盤整備法とは、何らかの意味でリンクするのかどうか、まずその辺をお聞かせいただきたいと思います。
  116. 細川恒

    ○細川説明員 技術開発政策上、御指摘のような課題があろうと我々考えておりますが、どのような形で課題に取り組むのが一番よろしいかということにつきましては現在検討中でございますので、ベンチャービジネスとの関係につきましても、なお検討中ということで御理解いただければ幸いでございます。
  117. 吉田之久

    ○吉田委員 検討中ばかりで、ちょっとこれ以上聞きようもないわけなんですが、長官、検討中だけでは困るわけでございまして、これは通産省の仕事の方に属するものだと思いますけれども、ひとつ科学技術庁長官としても十分その辺よく連絡をとられまして、なるべく考え方を固めてくださること、急いでいただきたいと思います。  次に、科学技術庁と通産省と両方にお聞きしたいと思うのでございます。  来年度の概算要求に向けて財政当局はマイナスシーリングを強調いたしておりますけれども、仮にそうだとするならば、新規の先端技術開発を初め、現在継続中の創造科学技術推進制度、これは科技庁に属するもの、そして次世代産業基盤技術研究開発制度、これは通産省に属するものと聞いておりますけれども、そういう制度に支障が出かねないと思うのです。技術開発を進めるために、通産省や科学技術庁は概算要求に向けてどう対処されようとするのか、また先端技術開発を促進するために先端技術特別会計を創設するお考えはないかということについてお伺いいたします。
  118. 安田佳三

    ○安田政府委員 我が国の経済社会の将来における発展のためには先端技術開発が極めて重要であるということは、先生御指摘のとおりでございます。科学技術庁としましては、例えば、ただいま先生御指摘のような創造科学技術推進制度あるいは科学技術振興調整費など、今まで厳しい財政事情下におきましても予算額の増大ということに努めてまいりました。  御指摘の六十年度予算についででございますが、現在はまだその総枠のあり方が決まってないという段階でございますし、また財政事情が極めて厳しいというふうに言われている中ではございますが、科学技術庁としましては、極力所要額の確保というものに努力してまいりたいというふうに考えているところでございます。  また、特別会計を創設したらいかがであるかというお問い合わせでございますが、特別会計の創設ということになりますと幾つかの要件がございまして、例えば特定の歳入をもって特定の歳出に充てる等とか、そういう制限がございます。したがいまして、歳入の対象をどこに求めるかということなど非常に難しい点もございます。したがいまして、御意見のような特別会計を創設するということはかなり困難であると言わざるを得ません。しかし、せっかくの先生の御示唆もございますし、また科学技術振興を図るという見地から、今後、状況の推移を見ながら、そのようなことが可能かどうかにつきましては勉強を続けてまいりたいというふうに考えております。
  119. 佐々木宜彦

    ○佐々木説明員 御説明申し上げます。  ただいまの科学技術庁の御答弁と通産省も同じ立場でございますが、通産省は従来から技術開発を積極的に推進しておるところでございますけれども、昭和六十年度の概算要求等についても、私ども技術開発を最重点項目の一つとして現在鋭意検討を進めておるところでございます。
  120. 吉田之久

    ○吉田委員 特別会計をつくることについてなかなか難しい諸点もあろうかと思いますけれども、やはり重点を置いてこの政策を推進していくためには、何かそういう特別の枠を設定しないと、全般的に大変財政不如意のときでございまして、それだけに、計画はあってもなかなか実現できないというようなことも想像されますので、ひとつその辺は両方の省庁において十分前向きの御検討を煩わしたいと思います。  今後、我が国が創造的自主技術を開発していくためには、どうしても産官学の有機的な連携を強化していくことが緊急の課題であると思います。現在、国立試験研究機関に所属する約一万人の研究公務員は、中立公正という立場と職務専念義務の枠があるために、特定の企業、団体との研究協力が制限されていると聞きますけれども、この点について政府はどのような理解認識を持っていらっしゃるか、お伺いいたします。
  121. 赤羽信久

    赤羽(信)政府委員 御指摘のように、国立の研究機関は、従来試験所と言うところもあったわけでございますが、だんだん研究機関として独創的な基礎研究に従事するという重要な任務を負ってきたわけでございまして、それに伴いまして、また産官学の連携というのも重要である。  そのときに当たりまして、確かに御指摘のように、研究公務員が国家公務員法のもとにありますので、民間企業で一緒に働くということはある制約がございます。しかし、その必要性が増してきたということでございまして、我々もいろいろ検討しておりまして、許可することができるわけでございますが、兼業の許可の条件というのを弾力的に実施する。その際、一つの歯どめとしまして、兼ねる相手先をある節度を持った範囲にとどめるということで運用を弾力化していくことができるのではないかという考えで、関係方面と折衝を進めておるところでございます。
  122. 吉田之久

    ○吉田委員 新聞の報道によりますと、「科学技術庁は国立試験研究機関と大学、企業との交流を促進するための法律を制定する方針を固め、総理府、人事院と折衝を始めた。」このように書かれております。特に「科技庁では国立試験研究機関をさん下に収める関係八省庁の担当官と交流の促進策について検討してきていた。その結果、現行制度のもとでは、いかに運用面で工夫しても交流のネックは打ち破れないので新たな立法措置が望ましいということになり、」関係省庁と折衝を始めた、こういうふうに書かれているのですが、そうなのかどうか。  それから、具体的な問題として、研究公務員に兼職を認める、その許可の条件などで今いろいろ御検討なさっているようでございますけれども、勤務時間中も一定の時間枠を設けて民間企業なり技術研究組合の研究に参加できるようにしようとなさるのかどうか。あるいはまた、私立大学の非常勤講師にも出られるようにするのかどうか。あるいは、国のプロジェクトを進めている企業とか国からの委託研究あるいは補助金などで研究しているプロジェクトなどの公益性の強いものにその対象は限られるのかどうか、もう少し御説明をいただきたいと思います。
  123. 赤羽信久

    赤羽(信)政府委員 まず第一点の立法措置でございますが、これは先ほど申し上げましたように、現在の公務員法のもとの運用の範囲で先生御指摘のような弾力性がとれるかどうかということを八省庁と検討してまいったことは事実でございます。その結論としまして、まだ必ずしも特別立法しなければならないということがはっきりしたわけではございませんで、むしろ立法に当たって、公務員法との関係あるいは研究者であっても公務員であるという身分との関係、そちらの方に難しい問題がございますので、それよりは運用の弾力化によってどれだけ対処できるか、いよいよ対処できない場合にはどういう扱いをするかという検討に現在力を注いでいる段階でございます。したがいまして、まだ立法の必要性というところまで結論が出たわけではございません。  次に、御指摘の兼職の許可条件でございますが、この条件を弾力的に実施するというのが一つの方向でございますけれども、やはり研究公務員として研究をするという一つの任務がございます。それにプラスになるという方向は結構ですし、あるいは自分の成果を、よそと共同でやるあるいはよそに指導してさらに高めていくという方向は望ましいわけでございますが、そうでない方向、抽象的にはいろいろ考えられるわけでございますけれども、そういうところにどこまで条件を絞っていくかというあたりが担当部局との運用上の検討の問題点でございます。  例えば、御指摘のような私大で講義をするというのがどうか、研究公務員は教育が本務ではございませんので教育までしていいかどうかという問題がございますが、しかし日本じゅうに専門家がそれしかいないという場合には、やはり一つの公共的な義務ではないかという考えもございます。それから、研究の指導をするという意味でしたら、指導をしながら自分の研究も進んでいくという面もある。この辺もまだ結論が出たわけではございませんけれども、その辺まで立ち入った検討をしているわけでございます。  それから、国のプロジェクトをやる場合どうかという御指摘でございましたけれども、これも研究組合のような公共的な形ができておりますと、そこで兼業をするあるいは場合によっては休職出向をするということまで検討しなければならない、これも現在がなり突っ込んだ検討を進めている段階でございます。
  124. 吉田之久

    ○吉田委員 国家公務員という立場でかなりデリケートな問題も多く生じてくるだろうとは思いますけれども、この際、我が国の科学技術の進展のためにあらゆる英知を結集するという大目的に向かって進んでいただきたいと思います。つきましては、いろいろ御検討なさっているようでございますが、さらに積極的に努力をしていただきたい。  次に、外国人の研究公務員の採用の問題についてでありますけれども、現在、外国人は室長以上のポストにはつけないことになっていると聞いておりますけれども科学技術の国際協力を進める上で、我が国の国立試験研究機関に国境を設けていることは是正さるべきであると思いますが、いかがでございますか。また、政府は研究公務員の交流を促進するための立法措置を何らか考えられる余地はございませんか。  さらに、科学技術協力の実効を上げるには、科学者の待遇を改善して海外から研究者を受け入れ、研究者の流動性を高める必要があると思いますけれども政府は今後どのような改善措置を講じようとなさっているのか、この辺の諸点についてお答えをいただきたいと思います。
  125. 赤羽信久

    赤羽(信)政府委員 まず、外国人の任用でございます。これは、現在の解釈では、国家公務員に対しまして、公権力の行使あるいは国家意思の形成に参画するような官職は日本人でなければならないというような考え方があるようでございます。研究官の場合でも、やはり公権力の行使になる場合が一部ございます。それから国家意思の形成、国家意思の中にも研究開発政策というようなこともございます。そういうものに関係する場合もございます。そういったことが、先生御指摘の室長以上に云々という具体的な表現となったのかもしれないわけでございます。これも、公務員法全体の体系としまして、研究公務員だけ別にするということになりますと、今度は研究公務員の政府の中での地位というものがまた変わってまいるという複雑な問題に出くわしまして、何とか現行の範囲内でしっかりやる方法がないかということも詰めておるところでございます。  いわゆるそういう行政面に影響のない形で外国人を研究官として採用する方法は、運用であり得るのではないか。特に、国家意思の形成に参画しませんでも、現在でも例えば主任研究官という制度がございます。これは決して地位を規定しているものではなくて、十分高い地位もあり得るわけでございます。そういった運用もできるのではないか。これはまだ難しい問題がございまして、検討をさらに進めなければいけないわけでございますが、そういった状況にございます。  そういうことでございますので、外国人の問題を含め、兼業とか休職とか突っ込んだ検討をしている段階でございまして、まだ立法の可否、特に立法に伴いますマイナス面というものはまたいろいろ検討しておかなければいけませんので、そういうことでもう少し、立法なりこの問題の改善については時間をちょうだいいたしたいと思います。  それから待遇改善の問題につきましては、現在も研究職俸給表という別の俸給表で、いわゆる行政官が管理面に重点を置いた待遇であるのに対して、別の体系でやや優遇しているわけでございますけれども、大学教官とのバランス等につきまして、科学技術庁はいつも一括してかなり詳細に人事院に改善方を要望しておるわけでございます。  ただ、先生御指摘のように、海外を含めて流動性を高めるということになりますと、アメリカの例に見られますような契約制度といいますか、我が国の公務員法ではむしろ禁止されているわけでございますが、そういうものをとる、そのかわり待遇も普通よりはよろしい、新しい体系を導入するということでございまして、これにはむしろ国立という形をとらない別の形、例えば現在理研等特殊法人があるわけでございます。そういったものとの制度的なメリットニアメリットを検討するという、次の段階になるんではないかという感じがいたしております。
  126. 吉田之久

    ○吉田委員 次に、科学技術の国際協力についてさらに御質問をいたしたいと思うのですが、昨年のウィリアムズバーグ・サミットで、十八部門にわたる先端技術開発の国際協力が確認されております。ところが、今度のロンドン・サミットにおいて、その経過についてどのような報告がなされたのかという問題が質問の第一点であります。  それから、各プロジェクトごとに幹事国が設けられまして、日本の場合には、太陽光発電それから光合成、先端ロボット、もう一つバイオテクノロジーも新聞報道によりますと日本分野に入っているはずなんでございますが、そうではないという話も聞きます。その辺の事情を御説明いただきたい。と同時に、こうした三ないし四部門にわたっての国際協力の進捗状況について御報告をいただきたいと思います。
  127. 村野啓一郎

    ○村野政府委員 お答え申し上げます。  まず、サミットにおきます十八プロジェクトの報告の問題でございますが、これは一昨年でございましたが、ベルサイユ・サミット以来、国際協調におきます科学技術の重要性というのが認識されまして、そこに技術、成長及び雇用に関する作業部会という名前の作業部会が置かれておるわけでございます。その傘下で十八のプロジェクトが各国の協力のもとにおいて進行しておりまして、まだ中間的なものでございますけれども成果を上げつつあるということでございます。  そこで、先般のロンドン・サミットにおきまして、この十八プロジェクトの現在の進展状況を中心といたしました報告書が提出されております。これは、まず十八プロジェクトそれぞれの現在の進行状況を説明いたしておりますが、その前に、総論といたしまして、一般的なこのプロジェクトにつきます評価が書いてございます。それを見ますと、まずこの報告書の総論部分の第一としまして、新しい科学技術というものが経済成長の主たる要因として非常に高い評価を与えられておるわけでございます。人類の福祉を向上するために必要な原動力だという評価をそこでしておるわけでございます。そして、新技術は産業の生産性の改善あるいは労働環境の改善、資源の有効利用といった面で非常に有効であるという評価を下しております。ただし、新技術導入につきましていろいろ問題がございまして、例えば高度の技術製品の国際貿易の自由流通を維持する必要があろう、それから新技術の一般社会へのアクセプタンスと申しますか受容を図る必要があろうという、いわば各国の政府努力を掲げておるわけでございます。それからさらに、環境保護という問題も今後科学技術の問題として十分に考えていく必要があろうということを言っておりまして、そして、最後に十八の協力分野の進行状況を報告してございます。  一般的に言いますと、この十八分野それぞれかなり各国の研究者、研究所間の連絡が緊密になって、国際的なネットワークができつつあるという評価を下してございます。さらに、研究活動をどの分野で協力していくかという、その焦点がはっきりしてきたというような一般的な評価を下してございます。  それから、先生お尋ねの日本の参加分野でございますが、これは先ほど先生お挙げになりましたような太陽光発電、光合成それから先端ロボット、この三つの分野日本がリードカントリーになっております。バイオテクノロジーは、実はリードカントリーではございません。以上三プロジェクトが、日本がリードカントリーになっておりますプロジェクトでございます。それ以外にも、十八のほとんどの分野につきまして、これはリードカントリーではございませんけれども、メンバーとして参加をしておりまして、かなり有力なメンバーとはなっておるわけでございます。  そこで、光合成につきましては、実は科学技術庁の方の担当で現在やっておるわけでございまして、これは御承知のように、生物の営んでおります光合成の機能あるいは光化学によります化学的な転換の問題といったことで、非常に基礎的な知見を探求しておるわけでございまして、科学技術庁は主として生物的な分野、それから文部省は物理的な分野を今担当しておるわけでございます。  当庁では、特に理化学研究所におきまして、植物の藻を使いました光合成機能の研究では相当高い水準でございますので、ここが中心となりまして、各国の専門家と今いろいろ連絡をとりつつございまして、もう既に専門家会合を一遍開いておりますけれども、そこで各国の専門家のリストアップを今しております。それによりまして、新しくどういう分野を中心に協力していくかということを今探求してございまして、近々また第二回の専門家会合を開くというような状況でございます。以上が光合成でございます。  それ以外に、太陽光発電それから先端ロボット、これにつきましては実は通産省が担当でございまして、あるいはそちらから報告があるかもしれませんけれども、これもかなりな成果で今進めております。  結局、こういった成果につきましては、先ほど申しましたロンドン・サミットの場におきまして、その宣言の中に入っておりますけれども、さらに今後研究をして、次回のサミットまでに報告をせよという条項が入ってございまして、サミットとしましては非常に高い評価はしていると思っているわけでございます。
  128. 佐々木宜彦

    ○佐々木説明員 御説明申し上げます。  太陽光発電及び先端ロボットの進捗状況でございます。太陽光発電につきましては、我が国及びイタリアが幹事国となっておりまして、サミット五カ国及びEC委員会が参加して協力を進めておるところでございます。昨年の十一月、イタリアのローマにおきまして第一回の合同調整委員会が行われております。これで各国の太陽光発電技術のレビューを行いまして、太陽電池の共通評価方法の開発を行おうということで合意がなされたわけでございます。この合意を受けまして、本年の一月に太陽電池の共通的評価方法の開発のための専門家会合がイタリアのイスプラにおいて開催されたわけでございます。この結果、近々太陽電池の共通的評価方法を開発するため、結晶型及びアモルファス型、両方式の標準太陽電池の各国持ち回りによります光変換の効率測定を開始しようということになっておりまして、さらにことしの十一月ごろには第二回の合同委員会を、恐らく東京になるかと思いますが開催する予定となっております。  次に、先端ロボットに係る進捗状況でございますが、これも我が国及びフランスが幹事国となりまして、サミット七カ国が参加して協力を進めておるところでございます。これまでに、昨年の九月に東京で、ことしの一月にフランスにおいて各国連絡会議が開催されておりまして、具体的な協力の進め方について検討がなされたところでございます。この結果、本年一月から詳細な情報交換あるいは研究者の交流を行うとともに、センサーあるいは制御等の要素技術、それから九つの応用分野でございますが、例えば原子力ロボット、海洋ロボット、防災ロボット、農業ロボットといったそれぞれの応用分野別に具体的な協力活動を進めていこうということになっております。なお、ことしの九月にイタリアで第三回の連絡会議が開催される予定になっておるところでございます。
  129. 吉田之久

    ○吉田委員 最後に、核融合の研究開発、これも極めて重要な、そして中長期的な巨大科学でありますけれども、とても一国の負担では耐え切れない研究課題が山積していると思います。国際協力の方向で具体的な検討に入るべき時期に来ているのではないか。特に、日米科学技術協力が政府間ベースでいろいろ検討されていると聞きます。その辺のところにつきまして御説明をいただきたいと思います。
  130. 中村守孝

    ○中村(守)政府委員 お答えいたします。  先生御指摘のように、核融合は将来とも人類エネルギー源として非常に嘱望されておるものでございます。何分にも人類未踏の分野でございまして、この技術開発には巨額の資金といわば多数の優秀な研究者、そういったものが必要でございまして、まさに国際協力の課題としてのいわば非常に典型的なものであろうかと考えております。既にこの点につきましては我が国も国際協力を積極的に進めておりまして、核融合の中でも一番進んでおりますのがトカマク方式によるものでございますが、これにつきましては二国間協力あるいは多国間協力という形で行ってございます。  具体的に申しますと、国際原子力機関のIAEAの場におきまして種々な協力を行っておりますが、その代表的なものといたしましては、現在各国で既に建設中ないしは建設を終わっておる臨界実験装置のその次の段階の次期トカマク炉の設計研究ということをしておりまして、INTOR計画と称しておりますが、これには日本側の研究者がいわば座長格となりましてこの取りまとめをしておるというようなことで、多大な貢献をいたしております。  さらにハードの面について申し上げますと、OECDのIEAの方でいろいろな協力もしてございますが、その中の一つといたしまして、トカマク方式の場合の大きな技術的ポイントになります超電導磁石、これを各国で製作いたしまして、米国のオークリッジ研究所に持ち寄って相互に比較し研究をする、こういうようなこともいたしております。  さらに、二国間協力ということでは、典型的なのが日米の協力でございまして、俗称でダブレットⅢ計画と呼んでおりますが、カリフォルニア州のサンジエゴにございます大型トカマク試験装置ダブレットⅢ、これを用いましてプラズマの安定的な封じ込め性能の試験を行っておりまして、原子力研究所の職員が現地に張りつきまして研究を進め、そこでも既に世界最高の値、閉じ込めの効率化の指標でございますベータ値として世界最高の値を達成するというような状況にございます。  このほか、先ほどのサミットの合意に基づく科学技術の国際協力におきましても、一つのグループがございまして、アメリカがリーダーシップをとっておりますが、ここでも各国で現在建設ないし建設を終わっている臨界実験装置のその次の段階の核融合実験炉、これに関する国際協力についての検討が行われております。  次期実験炉の構想ということになりますと、かなり大型の国際協力プロジェクトになるわけでございますが、その前にまず当面日本ではJT60が近く完成して運転が行われる。アメリカのTFTRという臨界実験装置も既に動き出している。それからヨーロッパにはJETと言われております臨界実験装置がございますので、これらの大型の臨界実験装置を使いまして、まずここの間でお互いに情報の交換あるいは研究者の交換というようなものも積極的に進められていかなければならないと思っておりまして、その方向で私どもも検討をいたしておるわけでございます。今後とも核融合につきましては、国際協力という線を有効に活用しながら研究を進めてまいりたいと考えておる次第でございます。
  131. 吉田之久

    ○吉田委員 時間が超過いたしましたので、これで終わります。ありがとうございました。
  132. 大野潔

    大野委員長 工藤晃君。
  133. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 私は、まず放送衛星ゆり二号の事故について伺いたいと思います。科学技術庁と、それから参考人としておいでいただきました宇宙開発事業団から伺いたいと思います。  打ち上げ成功というのが一月二十三日、それから三月二十日にモノパルスセンサーの故障ということが知らされ、三月二十三日にA系統の中継器の故障、それから五月三日にR系統の中継器の故障。A系統の中継器の故障が二カ月後、R系統の中継器の故障が四カ月十日後ということですから、ともかくだれが見ても余りにもお粗末な結果だと言わざるを得ないと思います。三つのうち二つまでこんなに簡単に故障してしまったから、残るB系統の中継器は一体大丈夫だろうか、当然みんな心配していると思いますが、ともかくこんなに簡単に故障を起こしたという原因について、今の段階でどうお考えでしょうか。
  134. 福島公夫

    ○福島政府委員 お答えいたします。  もう先生御指摘のとおり、三系統のうち二系統が百是らずで故障した。我々事態を大変厳粛に受けとめておりまして、従来ですと、宇宙開発委員会としますと、こういったような問題の評価は第四部会というところで検討してきたわけでございますが、今回の放送衛星ゆり二号につきましては、国民に与える影響も非常に大きいし、確かに今まで我が国の宇宙開発においても最大の出来事であるということでございまして、五月十四日に放送衛星対策特別委員会というものを宇宙開発委員会の中に設けております。そこで、そこの座長は宇宙開発委員長代理の吉識先生にやっていただいておりますけれども、この特別委員会の中には技術委員会というものもつくっておりまして、技術的な原因というものを徹底的に究明していこうということで、ここの座長は、宇宙開発委員の齋藤成文先生にやっていただいているわけでございます。  今日までその技術委員会というものを、きょうの午後もやりましたので、六回にわたってやっております。それで、そこでいろいろと検討した結果というものを、宇宙開発事業団を通じまして早急に対策を講ずるように指導しているところでございます。
  135. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 ちょっとまだ原因究明ということでのお答えになってないと思うのですが、もう少し具体的に伺いますと、今度二つの中継器が故障してしまった。一体この中継器はどのメーカーがつくって、どういう経過でつくられたのか。もちろん、高出力進行波管はフランスのトムソン社である。高圧電源の方はアメリカのGE社である。しかし、これを電源と回路を使って中継器としてまとめ、しかもそれがロケットで上げるいろいろな衝撃、予想されるものに耐えて、なおかつ宇宙空間の中で相当長期間もつ、そういう予想だったと思うのです。そういう品質が保証されてつくられたはずだと思うのですが、一体どのメーカーがその責任を負うのか、どういうふうにつくったのか、そこをもう少し具体的に伺いたいと思います。
  136. 園山重道

    ○園山参考人 お答えいたします。  先ほど福島局長からお話がございましたが、私ども宇宙開発事業団といたしましても、こういった故障が生じましたことを厳粛に受けとめておりまして、ただいま原因究明対策の検討等を鋭意やっておるところでございます。  ただいま先生から、この中継器等をどこでつくったかという御質問でございますけれども、御指摘のように、放送衛星全体の中で一番中心部をなします中継器、衛星全体は東芝が主契約者としてやっておりますけれども、実際の中継器を含みます本体の大部分というのはアメリカのGEがつくっております。この中継器の中のさらにTWT、進行波管と申します真空管は、フランスのトムソンCSFという会社がつくりましてGEに納入しておるところでございまして、それぞれ計画に基づきまして真空管段階での試験、それからその真空管を中継器に組み込みましての試験、それから中継器を衛星全体に組み込みましての試験。この真空管段階の試験というのは、トムソンCSF製作社それからGE、東芝等で行っておりますけれども、中継器に組み込みました試験はGEで行いまして、さらに全体の試験につきましてもGEで行ってきたところでございます。
  137. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 これは参考までに伺っておきたいのですが、日経の五月二十日を見ますと、フランスから進行波管が届いたのは予定より十カ月おくれた昨年の一月で、東芝が当初行った性能、品質試験で電源との整合がどうもうまくいかなかった場合も出たということが伝えられておりますが、最初の品質試験の段階で少し疑問を持たれたようなことが実際にあったのかどうか、そのとき東芝とか事業団はどう対応されたのか、参考までに伺いたいと思います。
  138. 園山重道

    ○園山参考人 先生御指摘の五月二十日付の日経の記事を私も見たわけでございますが、若干事実関係につきまして誤解しておられるところがあるように思います。  トムソンCSFでの百ワットの進行波管でございますけれども、これは新たに開発したものでございますので、開発の初期におきまして当然いろいろなトラブルというのはあるわけでございますけれども、先生御指摘の東芝における試験というのは、念のために東芝でも真空管について試験をやったわけでございまして、これは同じ型のものでございますけれども、現在積んでおります真空管ではないわけでございます。  現在積んでおります真空管TWT、一昨年、五十七年の十二月から昨年一月ごろにかけまして、トムソンからGEに納入されたわけでございまして、GEでは、先ほど申し上げましたように、これを中継器に組み込みましての試験をやりまして、それから全体の試験をやってきたわけでございます。その段階におきましては十分な性能が確認されましたので、これで打ち上げということになったわけでございます。
  139. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 トムソンからGEへ直接というのは、私も初めて知りました。  ところで、今原因究明のために対策特別委員会を設けられたと言いますが、しかし技術的な問題、中継器が一体どうなっているのかとかいうのはやはりGEのスペースセンターでやられているというふうに聞いておりますけれども、そうすると、このメーカーの側、故障に当然責任を負わなければいけない側がまたみずからテストをしてどうだこうだということだと、これで本当に十分な原因究明になるだろうか、当然疑問とされるわけなんですが、こういうGEのテストに対して、宇宙開発事業団はどうされているのですか、だれか専門家がついて一緒にやっているのですか、その辺伺いたいと思います。
  140. 園山重道

    ○園山参考人 原因究明のいろいろな作業というのはGEだけで行われているわけではございませんで、当然、最初打ち上げまして軌道上から送ってまいりましたいろいろなテレメーターのデータあるいは地上での試験でのデータについての解析とか、それからの原因の絞り込みといったようなことは、私ども事業団でも鋭意やっているところでございます。ただし、何分実際の全体のテストができるような施設設備というのがGEにございますので、実際に上げました衛星と同じような、BBMとかEMとか言っておりますけれども、開発段階につくりました装置を使っての試験とか、こういったものはGEで行っているわけでございます。  GEにつきましては、私どもの方からベテランを駐在員に出しておりますし、私自身も今月初めGEに参りまして、その試験状況、対策状況等把握してまいりましたけれども、これからもまだいろいろな試験が必要でございますので、今後行おうとしておりますテストにつきましてはさらに必要な技術者を送り込みたい、こう考えておるところでございます。
  141. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 宇宙開発事業団と東芝との間には当然契約があったと思いますが、今回の事故をめぐって瑕疵があった、そういうことについての補償あるいは損害賠償というものについてどういう態度で臨むのか。  これは事業団だけでなしに科学技術庁長官にも伺いたいわけですが、私が科学技術庁から事前に伺ったところでは、受け取ってから一年以内あるいは打ち上げまで、その短い期間に起きた瑕疵があるときは補償する責任があり、それ以後になりますと、故意または重大な瑕疵がある場合、発見してから一年。この発見してから一年という意味は、事故についての結論が出てから一年、そういうふうになっていると伺ったわけでありますが、この打ち上げ後三カ月とちょっとで三つのうち二つ、しかも一番放送衛星の心臓部分が簡単に故障を起こしてしまって、いまだにどうなるかわからないというのは、私はこれはまさに初期段階の事故として普通の簡単な事故じゃないと思います。ですからこれは、故意とは言えないとしても、重大な瑕疵に相当するような結論が出るようになるのではないかという考え方をしております。その場合、当然東芝、GEに補償させるということになると思いますが、その点どうでしょうか。
  142. 園山重道

    ○園山参考人 先生御指摘のように、瑕疵担保責任につきましては納入されてから一年間もしくは打ち上げのどちらか早いところまでということでございまして、さらにその後におきましても故意または重大な過失ということがございますれば、これはそれを発見してから一年間、この責任を追及することができるという契約でございます。  先生御指摘のように、打ち上げてから三カ月足らずで三系統のうち二系統が故障を生じたというのは、私どもといたしましてもまことに残念なことでございますけれども、一般的に宇宙ロケットで打ち上げます衛星というものにつきまして、打ち上げ後におきましても通常の瑕疵担保責任を持たせるということは世界的にも例がございませんで、宇宙環境に上がったものにつきましては、今日では原因究明等がなかなか困難でございますので、これは通常の瑕疵担保責任からは除いておるわけでございます。ただ、今申し上げましたように、故意または重大な過失というものがございますれば、これは追及しなければいけないことでございます。  したがいまして、現在、原因究明ということを一生懸命やっておるところでございますけれども、ただ、一般的に故意または重大な過失というものを軌道に上げられましたものについて立証するということも非常に困難でございますので、その例というのはないように聞いておりますけれども、私どもは、今の原因究明の結果を踏まえまして、必要あれば、あるいは明らかになってくればそれを追及いたしますが、とにかく現在におきましてはその原因究明が第一かと思って、鋭意そこに努力をしておるところでございます。
  143. 福島公夫

    ○福島政府委員 ちょっと補足して御答弁申し上げたいと思いますが、この瑕疵担保問題、もう一つは保険の問題もあるわけでございますけれども、今まで我が国の宇宙開発につきましては、大体アメリカのNASAが行ってきたもの、国際的に使われているものというのを踏襲してやってきておったわけでございますが、確かに今回のように余りにも大きな問題が起こったということと、それから宇宙開発がようやく実用の段階に突入してきたということもございまして、実は私ども科学技術庁の方で、この保険及び瑕疵担保についての検討の委員会を設けております。これは多少時間はかかるかとは思いますけれども、海外での実例、それから国際的な、例えば国際司法その他の専門家の御意見を聞きまして、今後どうあるべきなのかということを検討しておりますので、また結論が出次第御報告させていただきたいと思います。
  144. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 いずれにせよ、この問題は、国民の税金ないしは負担ということでかかってくる問題ですから、国民は厳しい目で見ていると思いますし、常識的に、上げて三カ月で二つも壊れてしまうというようなことは極めて事が重大なので、いわゆる立証ということができないとしても、しかるべき補償あるいは賠償ということをしなければならないと思います。  ついでにこのことを伺っておきますが、ゆり一号、BS1が実験放送衛星で、ゆり二号が実用衛星、こういう位置づけであったと思いますが、それぞれ中継器は何年ぐらいもつことを期待して製作されておりますか。
  145. 園山重道

    ○園山参考人 ゆり一号のときには衛星の全体の寿命は約三年ということを期待しておりまして、今度のゆり二号につきましては四年以上、五年目標ということで全体の設計をいたしております。ただ、これは中継器の寿命ということではございませんで、御承知のように、衛星に搭載しております姿勢制御、位置制御のための燃料がなくなりますと実用にならなくなりますので、燃料の搭載量がただいま申し上げましたような三年とか四年、五年というところを決める要素でございます。一般的に申し上げまして、中継器というような機械部分は、いわゆる今回起きましたような故障が起きなければ、これが自然に摩耗するとかいうような時期はもっと長くもつはずのものと思っているわけでございまして、今回のは、いわばそういった摩耗して故障したということではなくて、何らかの原因による一つの初期故障的なものであるかと思っているわけでございます。
  146. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 寿命が三年とか五年ならば、当然中継器の方はもっと長くもってくれなきゃ因るわけなので、これだけはもつぞという、そういうことを期待する以上、その品質が保証されるようにならなければまずいと思うわけですね。ゆり一号の方は実験用であった。しかし、これは科学技術庁に伺いますと、中継器がもった期間というのが一本が一年二カ月である。もう一つが二年二カ月、三つ目が二年三カ月、大体そういうことですね。  それで、私が言いたいのは、実験衛星の方がともかく三年期待のうち三分の二あるいは三分の一はもった。ところが、実用ということになったら途端に、五年のうちの五分の一ところか何十分の一しかもたない。せっかく実験から実用という、何か着実に足を踏んだように見えながら、極めて不確実なことをやっている。一体これはどういう原因か、私とても納得いかないし、何かここにあると思うのですね。ここに今のいろいろな問題があるように思うのです。これは気象衛星でも一号と二号との関係で似たようなことがありますね。  そういうことで、この衛星問題で最後に一つ伺いたいのは、アメリカではまだ放送衛星の実用衛星を上げてないですね。それで今度のゆり二号、これを見ますと、国産化率が三〇%で、事実上主な仕事はGEでやったと思うわけですが、そういう実際に製作とか技術ということはアメリカの企業に依存しなければならないほどこちらはまだ乏しい。しかも技術を持っているアメリカはまだ実用の放送衛星を上げてない。しかし、日本の方がぱっと割合簡単に上げてしまって、六百十億円ですか、これは二号のbも含んでいると思うのですが、こういう巨額の資金を使って割合気前よくやってしまってこういう事故が起きているというのは、これは私、何か一つ日本のこういう宇宙開発、さしあたって宇宙開発のやり方に無理があるし、ちょっとギャンブル的なところがあると思うのです。これではこの次の2bとかあるいはBS3を上げるということも、とても国民は安心して見ておれないのですが、それこそ五年もっと言ったら必ず五年もつ、あるいはもたなければどこかが責任を負って国民に被害がかからないようにする、そういうことをやらなければいけないと思いますが、これはちょっと長官お答え願いたいと思います。
  147. 福島公夫

    ○福島政府委員 お答えいたします。  先生おっしゃるとおり、大変多額のお金を投資するわけでございますから、我々としましてもというか宇宙開発委員会としましても、こんなに早くふぐあいが生ずると思ってやったわけでは決してございません。ただ、これは実用衛星ではございますけれども、完全な実用だけということではございません。研究開発を進めていく、言うならば四割開発というのでございますか、六割実用ということでございますか、一つのシリーズでaとbと二つの衛星を上げて、そこでの成果ということで開発が進められたわけでございますけれども、我々としましては、来年打ち上げます放送衛星2bにつきまして、今回のふぐあいの原因を徹底的に究明しまして、もちろん2aにつきましても回復ということについて今努力しているわけでございますし、原因が詰められましたら、その詰められました原因を全部2b用に生かして改修して、2bを打ち上げるときにはもう間違いがない形で打ち上げていくというふうな形でやっていきたいと考えております。  それから、先ほど、アメリカはまだやってないのに日本がやったのは早過ぎるのではないかということにつきましては、これは、ある意味では放送事情がアメリカ日本と違うということもあるのかと思いますし、確かに先頭を切って走るランナーというのは大変風当たりが強くて困難があることとは思います。今回の放送衛星につきましては、その困難にあえて向かって、しかしかなりの自信を持って、確信を持って宇宙開発委員会としては進めてきたわけでございますが、三万六千キロ先のことで、何が起こったかということは非常にわからないことがございまして、こんな結果になったわけでございますけれども、少なくとも次の衛星を打ち上げるまでにはこの原因を究明して、必ず間違いがないものに持っていけるというふうに考えておるわけでございます。
  148. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 私は、日本技術がさっき言ったように、衛星そのものが、まだ主要なところはみんなアメリカないし外国に依存しなければできないような段階で、もっともっといろいろ基礎的なことを研究しなければいけない。そういうときに、ともかく技術を持っているアメリカの方が実用化してないのを、日本の方が先に勇んでトップランナーに立ったというけれども、さっぱり体力のないランナーがトップに立とうとすればどういうことになるかわかり切っているわけで、心臓麻癖を起こされたら困るわけですし、これは国民が被害を負うわけですから、今のお話を聞いていると、いささか楽観過ぎます。そういうことで大臣、やはりこの問題の徹底的な究明と同時に、どこがどういう責任をこれから負ってやるんだということをはっきりさせ、そうして事故が起きても国民が損害を受けることがないようにしていく、その手だて、同時にまた、宇宙開発のあり方の反省というのをやっていただきたい。この点に限って大臣御答弁願いたいと思います。
  149. 岩動道行

    岩動国務大臣 ゆり二号が、打ち上げはまことに見事に成功して、しかも三万六千キロの定位置に静止をして、それからいよいよ放送という段階に至る途中でこのような故障が起こったことはまことに遺憾であり、また国民の皆様あるいはユーザーとしてのNHKあるいは郵政省等関係者にも多大な御迷惑をかけたことを心から私はおわびを申し上げたいと思います。  先ほど来の御論議の中で、瑕疵担保の問題につきましては、私は、この故障が起こった段階において、直ちに放送衛星対策特別委員会の設置をいたして、早急な原因究明を行うことにいたしました。あわせて瑕疵担保、保険のあり方、これが研究開発と実用と並行していくような段階になってまいっておりますので、もう少し工夫する必要がないのか、この点について至急に事務当局に検討を申しつけたところでございます。その結果、事務当局が先ほど御答弁申し上げたように、今鋭意検討いたしている。そしてこれは日本アメリカとの関係でもありますが、さらに国際的にもこれらの問題は検討を要する時代に入ってきているのではないか、かように考えて、真剣にこの問題に取り組むようにいたしているところでございます。  なお、私が大変遺憾に思っておりますのは、GEが責任を持ってこの商品を私どもに提供したわけでございます。その最高の責任者が日本の最高の責任者である私のところに何のあいさつもない、これはまことに私は遺憾に思っているわけでございます。それらのことはよくわかっているはずでありますが、いまだに私のところに来ておりません。こういうことでは今後の信頼関係、そしてまた、私どもが日米の関係で仲よくやっていくという立場からも、私は大変遺憾なことである。そういうGEの姿勢というものが原因究明に影響しなければいいなということも考えて、鋭意お互いのコミュニケーションを十分にして、そしてアメリカの現地でただいま原因究明を一生懸命やってもらっている、このことを申し上げておきたいと思います。
  150. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 GEのその態度というのは私も大変遺憾だと思いますし、それが原因究明を妨げることのないように、科学技術庁としても強い姿勢で臨んでいただきたい。  そこで私は、次に下北核燃料基地について伺いたいと思いますが、そのフレームについて、総合エネルギー調査会の原子力部会で目下検討中であり、七月二日に発表されるということですが、そのとおりでしょうか。
  151. 大塚和彦

    ○大塚説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生御指摘のとおり、通雄大臣の諮問機関でございます総合エネルギー調査会の原子力部会で本年の二月から、核燃料施設関係あるいは事業化関係のことを含む検討を行っておりまして、これまで五カ月ぐらい御審議いただきまして、そして来週月曜でございますが、七月二日に報告書をおまとめいただく、かような予定になっているわけでございます。
  152. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 最近、日刊工業新聞の六月二十一日、日経の六月二十五日にそのおおよそのフレームらしきものが、これはむしろ電力業界の概要として出ておりますが、再処理工場は年間八百トン、濃縮工場は年間千五百トンSWU、低レベル放射性廃棄物貯蔵施設、これはドラム缶百万本。これは日刊工業も日経も大体同じような内容になっています。  これは電気事業連合会の核燃料サイクル推進連絡会議というところがまとめた概要として伝えておりますが、大体こういうことになりそうか。と言ってもちょっとそれはお答えしにくいだろうと思いますから、一つのポイントとして非常に注目されるのは、前の原子力委員会原子力開発利用長期計画、これが五十七年六月三十日ですが、これを見ますと、一九九〇年ごろ年間再処理能力千二百トンの規模。ということで言いますと、これは明らかに今レベルダウンを少ししておりますし、恐らくそれは需給見通しの下方修正があったということとも関連があるんじゃないかと思います。それから、この原子力委員会長期計画によりますと、一九九〇年ごろ千二百トンということですが、どうもその後いろいろ伺っておりますと、これが一九九〇年から数年おくれるころで八百トンということだと思いますが、大体そういう方向になりそうかどうか、その点について伺いたいと思います。
  153. 大塚和彦

    ○大塚説明員 お答えを申し上げます。  まさしく先生御指摘のとおりでございまして、私が申しましたこの原子力部会での検討の一つのきっかけは、昨年の十一月に長期エネルギー需給見通しの改定がございまして、それに基づきますと、もちろんエネルギー全体の需給規模が将来において下方修正されるわけですが、その中で原子力発電の規模につきましてもやはり少し下の方に修正されておるわけでございます。  一、二の数字だけ申し上げますと、二〇〇〇年に、それまでの見通してございますと九千万キロワット程度の原子力発電を見込んでいたわけでございますが、それが昨年十一月の新しい見通しては六千二百万キロワットぐらいになっておるわけでございます。そういたしますと、当然発電所の運転のプロセスから出てまいります使用済み燃料の量というのも変わってまいります。それが、日本の中に商業再処理工場をつくる場合のファクターの変更となって明らかに響いてくる。こういう意味で、かつて、先ほど先生御指摘のように千二百トンという再処理の規模が出ておりましたころと違いまして、やはりそれは若干下方修正になってくるのではないか、こういうことは言えると思います。  それから事業化につきましても、かつて考えておりましたよりも、例えば立地の点なども当時考えておるよりはおくれがございますし、そういうことを考えますと、時間という点から考えましても、若干後ろ倒しになってくるのではないか。このような内容が、七月二日に私どもがいただけると思っております報告の中で数字を添えて出てくると思いますが、これはあくまでも政策的なフレームワークでございまして、詳細な計画というのは事業者の方で決めるべきもの、こういうふうに考えておるわけでございます。
  154. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 下北の再処理工場が仮に年間八百トンということでも、今の動燃の再処理工場の四倍ということになります。  それから、今度は民間の再処理工場ということになりますので、もしこの第二工場が今の動燃の再処理工場のように故障続きで、本格操業してからまたとまってしまったということになりますと、今度は民間の企業ですから、それこそ倒産してしまうということにもなるかと思います。  そういうことで、どこの技術を使うのか、動燃の再処理工場で蓄積してきたものを積み上げますという、これは一般論でそういうふうに答えられるかもしれませんけれども、また動燃の再処理工場のときのようにフランスから技術を入れてやるのか、その辺、どういう技術の選択を考えているのか。これは業界の責任だというふうに考えられているかもしれませんけれども、しかし再処理工場というのは、この後でも私いろいろ論議したいのですが、安全問題、環境問題がありますから、やはり技術問題は科学技術庁としても一定の責任があるだろう、このように考えますが、一体どういう技術的選択をされるのか、そのことについて伺いたいと思います。
  155. 中村守孝

    ○中村(守)政府委員 お答えいたします。  民間の再処理工場に採用される技術の問題でございますが、原燃サービスでは創立以来この技術的な面についての勉強をしてございまして、外国の技術についてのいろいろな調査、動燃からの情報、そういったものをいろいろと勉強してきておるわけでございますが、現在これをどのような技術を採用するかということは、まさにこれから計画を具体化するに当たっての重要な課題でございます。私どもの方にも御相談があると思いますし、原子力委員会の方にも相談がある。これは、一義的にはもちろん事業者が経営の責任において行うものですから、私どもの方からこういう技術をとるべきであるということで強制するというような性格のものではないわけで、一義的には業者が判断することになるわけでございます。しかし、これはやはり我が国のエネルギー政策上の重要な問題でございますので、事業者に任せっ放しということでは相ならないわけでございますので、専門家の意見も十分聞きながら、原燃サービスの技術の採用に反映していきたい、こういうぐあいに考えております。  もちろん、動燃事業団にこれまで蓄えられてきた技術、これのノーハウというものは非常に重要なものでございまして、我々が持っているノーハウが実際に今後の原燃サービスの建設の上に反映されていかないようなことになりますと、これは何のための今まで我々が積み上げてきた技術であるかということもさることながら、実際に運転に当たっていろいろな問題が出てくるわけでございますので、十分に動燃事業団の技術を反映させていきたいと考えておる次第でございます。
  156. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 時間がなくなりましたので、一問だけ具体的な問題について伺っておきたいと思いますが、これは動燃の再処理工場で五月十八日、放射性廃棄物のアスファルト固化施設で一つの事故があった。火災事故とみなされる事故があって、運転がとまった。東海村の消防署が調査班を送ったけれども、高い放射能の危険区域で原因究明が阻まれた。それで科学技術庁としては、この事故の性格とか原因を動燃の方で明らかにしたのかどうか、その点について今御存じのことを伺っておきたいと思います。
  157. 辻栄一

    ○辻政府委員 御指摘のトラブルでございますが、去る五月十八日二十時三十分ごろ、東海の再処理工場のアスファルト固化処理装置というところで、廃液の固化処理を行っておりましたところ、この装置が自動停止をいたしまして、アスファルトの排出管付近で発煙が認められた。そのために直ちに水噴霧設備を作動させまして冷却を行いました結果、発煙は消滅したということでございます。なお、このトラブルで運転員の被曝及び環境への影響は生じておらないということでございます。  原因につきましては、現在動燃事業団におきまして調査中でございます。廃棄物の処理施設でございますので当然管理区域内でございますので、諸般の調査を行うためには除染が必要でございます。そういった作業のために手間取っておりますけれども、原因調査中でございまして、判明次第適切な対策を講じるよう指導してまいりたい、かように考えております。
  158. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 これをもって終わります。また別の機会に再処理の技術の問題に立ち入って伺いたいと思っております。
  159. 大野潔

    大野委員長 辻一彦君。
  160. 辻一彦

    ○辻(一)委員 中曽根内閣はさきに発足したときに、がん対策に非常に力を入れる、こういう発言がありましたが、政府としてがん対策にどういう取り組みを重点的にやっているか、一言だけ伺っておきたい。
  161. 福島公夫

    ○福島政府委員 お答えいたします。  がん対策につきましては、科学技術会議あるいはがん対策関係閣僚会議等から、がん制圧のための研究開発を進めなさいという指示をいただきまして、政府全体挙げて対策を進めているわけでございます。  特に科学技術庁といたしましては、従来から放射線医学総合研究所における放射線を使ったがんの治療とか、あるいは理化学研究所における制がん剤の開発とか、また科学技術振興調整資金を用いましてがん関連の基盤的な技術研究開発を進めてきたわけでございます。特に今年度、五十九年度からは、放射線医学総合研究所におきまして重粒子線等の医学利用に関する調査研究、それから理化学研究所におきまして遺伝子組みかえ技術を用いたがん本態解明のためのプロジェクト研究というものが新たにスタートしております。  それから科学技術振興調整費におきましては、昨年度を上回る九億円というものを予定しまして、遺伝子たんぱく質関連技術等がん研究を支える共通基盤技術というものの開発に着手するようにやっております。
  162. 辻一彦

    ○辻(一)委員 科学技術庁でがん問題に取り組んでいる論議については、また別の機会に時間をかけたいと思いますが、きょう私は、食品添加物の中でBHA、これについていろいろな問題がありますので、しばらくの時間ですが、若干お伺いいたしたいと思います。  さきに発がん性があると告示をされて認定をされたブチルヒドロキシアニソール、BHAと言っておりますが、これは五十八年の二月一日の使用禁止の適用が延期をされて今日に及んでおりますが、これについての経過と状況について、まず伺いたいと思います。
  163. 市川和孝

    ○市川説明員 お答え申し上げます。  BHAの延期措置の経緯でございますけれども、BHAにつきましては動物実験で、ただいま先生御指摘のとおり、大量投与した場合ラットの前胃という部分にがんが出てきたということでございまして、これの報告をもとに、五十七年五月に食品衛生調査会におきまして御審議をいただいたわけでございます。それからさらに、五十七年の七月から五十八年の一月にかけまして、日米英加四カ国のがんの専門学者等によります専門家会議というものが開かれまして、その安全性が議論されたわけでございますが、この四カ国会議におきまして、その安全性の評価をめぐりまして国際的に意見がなかなか一致しないという状況がございました。このために、五十八年の二月一日から施行する予定であったものを一時延期いたしまして、昨年、五十八年の四月に開催が予定されておりましたFAOとWHOの食品添加物の専門家会議における多数国の学者による科学的論議というものを待とうということで、規制の施行を一時延期したものでございます。
  164. 辻一彦

    ○辻(一)委員 四カ国の専門家会議で学問上の評価が分かれたということで延期になったということですが、食品衛生調査会は日本の相当権威ある調査会であると私は思うのです。一定の結論を出して厚生省がそれを告示をして、それを四カ国会議において論議されたときにその各国の意見に反論するだけの内容というものをこちらの方として持ってなかったのかどうか、その点はどうなんですか。
  165. 市川和孝

    ○市川説明員 当時の食品衛生調査会での御審議におきましても、発がん問題というものをめぐる評価につきましては、次第にその評価のあり方というものが変わってきているということの御指摘があるわけでございまして、発がんしたかどうかということだけで評価を決定するのではなくて、その発がんの強さだとかいうようなものも当然考慮に入れて評価するという時代に、時代といいますかそういった状況になってきているということを、調査会御自身意見として述べておられるわけでございます。しかしながら、当時調査会においてはそれを直ちに取り入れてこのものを評価するかどうかという点については、あえて申し上げれば、そういう状況になりつつあることを認めつつも、まだその線を全面的に取り入れて評価を済ますというところにまでは至らなかったわけでございます。  それで、この点につきまして国際的な専門家会議、四カ国会議という場に至りまして御議論いただきますと、まさに今先生御指摘のように、そういう考え方というものが国際的にはかなり支配的になってきているという状況がございまして、それであるならばFAOとWHOの専門家会議で再度議論をしようということになったわけでございます。
  166. 辻一彦

    ○辻(一)委員 それではこの調査会として、外国の方から反論されていわば棚上げになったわけですが、棚上げになるような答申をしているということに非常に問題があるというふうに思います。十分な検討がこの過程においてなされたのかどうか、その点について疑問を持つのであるが、答申決定の過程で十分な検討がなされたかどうか、そのことについてもう一度お伺いしたい。
  167. 市川和孝

    ○市川説明員 調査会におきましては十分慎重に御審議いただいたものと考えております。  なお、実は昨年の四月に至りましてFAOとWHOの専門家会議が開かれたわけでございますが、その後昨年の五月に、私どもこの食品衛生調査会の毒性部会、添加物部会並びに常任委員会の合同委員会におきましてBHA問題の経過というものを御報告申し上げまして、御了承をいただいたところでございます。
  168. 辻一彦

    ○辻(一)委員 じゃ、国連の機関である食糧農業機構あるいは世界保健機構、FAOやWHOで合同の専門委員会をつくって、八カ月間ぐらいの短い期間を目途にして犬、猿、豚等々こういう前胃を持たない動物で実験をやってその結論をつける、こういう論議がされたはずでありますが、五十八年の四月、五月から言えばもう既に一年数カ月たっておるのですが、その間においてどういうようにこれが具体化をされておるのか、その経過はどうなっておるのか。
  169. 市川和孝

    ○市川説明員 昨年の四月にFAO、WHOの合同食品添加物専門家委員会が開催されたわけでございますが、そこでこのBHAの安全性問題が検討されまして、結果といたしまして、ただいま先生御指摘のように、動物実験の知見と人との関係というものを評価するためには、前胃というものを持たない犬、豚あるいは猿のような動物に対する影響を明らかにする必要があるという結論が出まして、私どもこの後昨年の八月に国立衛生試験所におきましてビーグル犬を用いました実験を開始したわけでございます。以来今日まで実験そのものとして継続しているわけでございますが、既に犬の飼育期間というものは終了しておるわけでございまして、現在各種の病理検索が続けられている段階でございます。なお、この実験は日本だけで行われているわけではございませんで、私どもが承知している限りでも、海外、アメリカだとかカナダ等におきましても同様な実験が進行中というふうに承知しております。
  170. 辻一彦

    ○辻(一)委員 一部終了したということですが、その結果というのはどういう結果が出ていますか。
  171. 市川和孝

    ○市川説明員 お答え申し上げます。  私が申し上げましたのは、動物の飼育そのものは既に終わりまして、現在各種臓器の病理検査が進められているということでございまして、近く中間的な結果はまとめられてくるものと思っております。
  172. 辻一彦

    ○辻(一)委員 この国際機関で大体八カ月をめどにして短期間でこの実験をやってめどをつける、こう言っているのですが、時間的に言えば以来もう既にその八カ月以上たっているわけですけれども、今のところは中間的なというのはどの程度のものが結果として出ているのですか。
  173. 市川和孝

    ○市川説明員 お答え申し上げます。  短期間でということは飼育期間が比較的短期間でという意味でございまして、日本での状況を若干御説明申し上げますと、ビーグル犬を約三十頭ほど使いました実験を行ったわけでございます。この三十頭という数は犬の実験としてかなり大がかりなものでございますので、これを全頭屠殺後それぞれの臓器について非常に事細かな病理検索というものが続けられているという状況でございます。
  174. 辻一彦

    ○辻(一)委員 その結果はいつごろわかりますか。  それから、アメリカやカナダ等でも国際的にいろいろ連携して実験をしているのですが、その実験の進行状況、それらがいつごろ判明するのか、それについてお伺いしたい。
  175. 市川和孝

    ○市川説明員 私どもの方の実験に関しましては、この夏ぐらいにはそれまでに見られた中間的な観察結果というものがまとめられるのではないかというふうに私考えております。  それから外国の状況でございますが、私どもの知る限りにおきまして、アメリカの実験は私どもよりややおくれてスタートしているのではないかというふうに理解しております。
  176. 辻一彦

    ○辻(一)委員 日本の方が夏に中間結果が出て、アメリカ、カナダ等がさらにそれよりもおくれているとすれば秋とか、こうなるのでありましょうが、これは実験をやっているのでありますから、実験の結果を見なければ結論はなかなか出ないと私は思うのですね。しかし、裁判では疑わしきは罰せずという原則がありますが、食品衛生の面では、安全上疑わしきものは使用せずということが人間生命を支える食品としてその安全上大変大事じゃないか、私はこう思うのです。問題はもう提起をされているのですから、やはり安全が確認をされるまで使用を禁止すべきではないか、こう思うのですが、これらについての見解等はいかがですか。
  177. 市川和孝

    ○市川説明員 お答え申し上げます。  このラットに対するBHAの発がん性というものは、強さから申しますと非常に弱いものでございまして、食品衛生調査会におきましても、そのような観点から当時一定の経過期間を置きながら使用を停止していくということを求められたものでございまして、この間の猶予によりまして人の健康を損ねるということはないものと私どもは考えております。なお同時に私どもは、結論が出るまでの間できるだけその食品に対して使用を自粛してほしいということで指導もしているところでございます。
  178. 辻一彦

    ○辻(一)委員 この問題は、国会請願にかかっているのを見ても案件が非常に多いのです。今度は何といっても健保問題が請願案件としては非常に多いわけですが、それでもそれに次いで食品添加物についての心配、これを禁止せよ、こういう請願が四百十九件出ている。言うならば、国会の社労関係にかかわる案件の一〇%、健保を除けば一八%に及んでいる。全国の消費団体の数字によると、国会請願は四百万名、それから地方議会の請願が三百五十万名というように非常にたくさんの人がこの問題を消費者、国民立場から心配して国会請願をやっている。私は、この声を十分聞き入れていくことが大事であると思うのです。  そこで、なるべく自粛するようにあるいは使わないようにという行政指導を行っているということですが、これはちょっと前のデータになりますが、五十九年の二月七日と言えばことしの冬ですが毎日に記載されております。「発がん性の疑い「BHA」 なお煮干しに使用」として東京都の消費者センターが調べた内容によると、煮干し用等にはまだかなりこれが使われている。それは二〇〇ppm以下でありますが、中には一九一ppmのものもある、こういうように報じられておるのですが、これを見ると、そういう行政指導が必ずしも十分徹底しているようには思えないのですが、この点はどういう見解でしょうか。
  179. 市川和孝

    ○市川説明員 BHAは、先生御案内のとおり油の酸化防止剤でございますので、かつてはかなり広い範囲の油を使いました食品に利用されてきたものでございます。この指導を始めまして以来、ほとんどのそういった油脂性の食品における使用というものは自粛されているわけでございまして、私どもといたしましては、指導の成果は相当に上がっているというふうに考えておるわけでございますが、なお御指摘のように、一部の煮干してはまだ使っている例があるという御指摘を受けておりまして、私ども特にその関係に対して現在では指導を行っているわけでございます。ごく最近でございますと、具体的にはことしの夏季の食品の一斉点検と申しましょうかそういう機会をとらえまして、煮干しの関係者に対する指導を強化してほしいということを各都道府県に指示いたしたところでございます。
  180. 辻一彦

    ○辻(一)委員 その厚生省の行政指導によって、実際として現場においてはBHAはほとんど使用していないという状況になっていますか、いかがですか。
  181. 市川和孝

    ○市川説明員 この点につきましては、私ども今後実情の把握ということで各都道府県からできる限りの報告などを求めまして、その成果をチェックしてまいりたいと考えております。
  182. 辻一彦

    ○辻(一)委員 もう一度お伺いしますが、それでは厚生省としては、各都道府県に報告を求めて行政指導が徹底しているかどうか、こういうことについて確認をすることはできますか。
  183. 市川和孝

    ○市川説明員 都道府県におきましては、年間を通じましてこのBHAにつきましてもかなりの分析を行っておりますので、こういった報告等を求めることによりまして、その成果が上がっているかどうかという点につきましてのチェックができるものと考えております。
  184. 辻一彦

    ○辻(一)委員 それはぜひ徹底していただいて、ひとつ疑わしきは使用せず、これは人間生命にかかわることですから、この点は十分徹底をしてやっていただきたいと思います。  そこで、食品衛生調査会は我が国では食品関係の大事な問題を論議する非常に権威のある調査会であろうと私は思いますが、そのあり方について、例えばBHAは先ほどお話ししたとおり五十七年五月に調査会が開かれて禁止を答申する、厚生大臣が五十七年八月に使用基準改正を告示して五十八年の二月一日に禁止をする、こういう予定が延期になった。ところが、その間に肝心の調査会が開かれたのかどうか、この点いかがですか。
  185. 市川和孝

    ○市川説明員 その間には食品衛生調査会は開催されておりませんが、私ども、先ほど御説明申し上げましたように、五十八年の五月に食品衛生調査会を開催いたしまして、それまでのBHA問題の経過というものを御報告し了承を得たところでございます。
  186. 辻一彦

    ○辻(一)委員 一遍厚生大臣が告示をして、それを延期するということは、いろんな理由があったにしても非常に重要な変更であると思う。そのときに、それを答申をした調査会がその期間中に何ら開かれることなしに、五月に事後承認というような、事後報告という形で行われている、この調査会のあり方に問題があると思いますが、これは十分な論議が調査会としてなされていない一つの裏づけになるんじゃないかと思います。この点の見解はいかがでしょう。
  187. 市川和孝

    ○市川説明員 五十七年に開かれました調査会におきましては、先ほど申し上げましたように、一定の経過期間を置きながら使用の停止を求めているということもございますので、私どもといたしましては、調査会のお考えの線に沿ったものであるという理解で、五十八年の五月に御報告を申し上げたわけでございます。
  188. 辻一彦

    ○辻(一)委員 五十七年の五月に調査会が禁止の答申を決定して、それが五十八年の二月一日に発動されるべきなのに、これが延期になった。その間調査会は開かずに、結果だけが先行したということになるので、時間の点から再度申し上げませんが、十分調査会で論議をされたとはどうも思えない点がある。  例えば十一品目について、五十八年の四月に合同部会、五月の常任委員会でこの指定を見ておるのですが、報道によれば、段ボール箱に二、三箱の資料を運んで、わずかの期間に委員が検討をしたというのですが、それらを十分に検討するだけの時間的余裕があったのかどうか、こういうことに疑問を持ちます。要は調査会に十分な検討する条件が整備されておったかどうか、このことについてお伺いしたいと思います。
  189. 市川和孝

    ○市川説明員 調査会におきましては、昨年の四月及び五月に新しい添加物について御審議をいただいたわけでございますが、資料は事前にお送りしてございましたので、それぞれの御専門の分野ごとにその資料をチェックしていただいたものと考えておりまして、調査会におきましては慎重な審議が行われたわけでございます。
  190. 辻一彦

    ○辻(一)委員 課長さんだけを呼んでなかなか無理なことを言ってもどうかと思いますから、それはそこでとどめますが、この四十七年の衆議院の附帯決議がありますね。この中に、調査会において国民の声を正しく反映するために、「委員に一般消費者の意見を代表する者を加える」べきである、こういう四十七年の衆議院の附帯決議が行われておりますが、これはどういうふうに具体化されているか。また、具体化されていないならば今後どうする考えであるか、この点を伺いたい。
  191. 玉木武

    ○玉木説明員 食品衛生調査会につきましては、食品衛生法第二十五条によりまして、食品衛生調査会の委員は学識経験者の中から厚生大臣が任命することになっております。しかしながら、従来から食品衛生に関する専門知識を有しましてかつ消費者活動に理解を示されている委員の任命についても配慮いたしております。今後ともこのような委員の任命にできるだけ配慮してまいりたい、このように考えております。
  192. 辻一彦

    ○辻(一)委員 具体的に、消費者の皆さんも随分今勉強していらっしゃいますから、学識経験者にふさわしい方が実践上いらっしゃると思うのですが、そういう方は現実に既に姿見の中に含まれておるのですか。
  193. 玉木武

    ○玉木説明員 お答えいたします。  現在消費者活動に理解を示されておると考えられます委員は二名任命いたしておりまして、一人は日本消費者協会に属されておりまして栄養学を専攻されている方、それから国民生活センターの理事をされておられまして医学博士の称号を持たれておられる方。それからこの七月に新たに、日本食生活協会会長をされておられる方で栄養学を専攻された方を任命したい、このように考えております。
  194. 辻一彦

    ○辻(一)委員 その方が本当の意味の消費者の立場に十分立たれる方かどうか、なお確認をしなくてはならないと思いますが、この附帯決議を生かして、これからも消費者の声が食品衛生の上に十分反映するように努力をいただきたいと思います。国会請願の四百数十万名、もっと今はふえておると思いますが、これらの声を十分に行政の面において反映して取り組んでいただくように最後に要望して、終わります。
  195. 大野潔

    大野委員長 次回は、来る二十八日木曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時二十八分散会