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岸参考人 ただいま御
紹介をいただきました
大阪府知事の岸でございます。
本日は、
地元の知事といたしまして
意見陳述の機会を与えられましたことを、まことに光栄に存じておる次第でございます。
関西国際空港計画及びその
事業主体設立の根拠となります
関西国際空港株式会社法案につきまして、
大阪府としての
意見、要望を申し述べさせていただきたいと存じます。
昭和五十九年度の
政府予算に
関西国際空港株式
会社に対する国の
出資金三十四億円を含む必要な予算が計上されるとともに、同株式
会社法案が今日
国会において
審議される運びとなりましたことは、長年の懸案がいよいよ実現に向けて大きく前進を始めたものといたしまして、心から喜びますとともに、関係各位のこれまでの御労苦に対し深く敬意を表するものであります。
さて、この
関西国際空港計画は、これまで
地域社会の
合意を得て、
地域と共存共栄する
公害のない
空港つくりを目指すことを大
原則といたしまして、従来の
ビッグプロジェクトには例を見ない入念な
調査、
地元協議などの手続、手順を尽くして進められてまいりました。
去る二月十日の関係閣僚
会議におきまして了承が得られた
空港計画につきましても、本府といたしましては、
大阪府議会を初め、
地元泉州八市五町、労働団体等の
意見、要望を踏まえ、四月三日にこれを基本的に了承するとともに、一日も早い
空港の開港を求める
意見書を
運輸大臣あてに
提出いたしたところでございます。その際、
昭和五十七年七月、本府が三点
セットによる
地元協議に対して、国に要望いたしました六項目の事項につきましても、さらに十分に留意されるよう重ねてお願いをいたしておるところでございます。
その六項目の留意事項と申しますのは、
事業主体でありますとか、土取りでありますとか、あるいは
連絡橋の
計画については、必ず
地元に
協議するということが
一つでございます。
それから三点
セットの前提となっております海上五キロとなっております
空港の位置、あるいは
航空機の離発着に当たっての飛行経路等は今後変更しない、それが
合意の前提になっておりますので、その前提を変えてもらっては困るということを第二に申し上げております。
環境問題につきましては、今後新しい
科学技術の
進展に応じてできるだけ
公害の少なくなるような対策をとっていただきたい。また、最終的には住民参加のもとに
環境監視体制を確立するということも条件に入れておるのでございます。漁業への
影響につきましても、何と申しましても面接の被害を受けるのは漁業でございますので、これを最小限に食いとめるよう
努力をしていただきたい。また、道路、鉄道、その他
地域整備につきまして、関係省庁の協力ということをお願いいたして拘るわけでございます。関係省庁の一体的な取り組みをお願いしておるところでございます。それから新
空港の
建設に伴いまして周辺
地域では人口の増加、その他
社会経済の大きな変動が予想されますので、関係のある市町あるいは
大阪府が先行的な対策を行うことができますように、行財政上の必要な措置を講じてもらいたいということを申し上げておるわけでございます。
現在御
審議をいただいております
関西国際空港株式会社法案につきましては、
関西国際空港が
空港整備法上の第
一種空港として位置づけられておりますこと、
会社に対して
公団と遜色のない援助措置、特例措置が講じられておりますことなどは、本府のかねてからの要望が取り入れられたものといたしまして、また、
地域の参加をうたった
昭和四十九年の
航空審議会の建議の精神に合致するものとして歓迎をするところであり、この
法案の今
国会での成立を強く要望いたすものであります。
関西国際空港は、二十四時間
世界に開かれた空の玄関といたしまして
我が国の将来の
発展にとって必要不可欠な
空港でございますが、同時に、
地域の
発展にとりましてもぜひとも必要な
空港でありますので、本府と。いたしましては、同株式
会社の設立、
運営に積極的に参画することにより、
地域の
活力、創意工夫を
空港つくりに生かしてまいりたいと考えております。
つきましては、今後、
法案の御
審議、政令等の制定、
会社の設立、
監督に当たりましては、次の諸点に十分留意していただくことが必要かと存じます。
まず、今回の株式
会社方式のねらいとする
効率的な
事業運営が行われるよう国の
監督措置は必要最小限にとどめ。
会社の自律性を最大限に尊重することであります。同時に、株式
会社という形態はとっておりますが、第
一種空港の
建設という公共
事業を進める
事業主体にふさわしく、公正な
会社運営や
環境面、安全面での
責任の確保など
公共性の確保が図られることが重要でございます。
次に、やはりこの
会社は、
大阪府域において
事業を行うわけでございますから、
会社の本店は当然
大阪に置かれるべきものと考えております。また、
会社の役員、職員の選任、採用に当たりましては、
地域の実情に明るい人材の確保が必要であります。
次に、
空港の
建設、管理に当たりましては、地価の抑制、
地元における中小
企業の育成、雇用創出等、
地域経済の振興に対する配慮も極めて重要でございます。さらに、
会社事業の
運営に当たり、
地元地方公共団体の長を初め
地域の代表者等で構成をする
協議組織を設けまして、できる限り
事業実施に伴う諸問題の円滑な解決と
地域から提起される
建設的な発想の活用に努めることが必要と存じます。
会社の設立、
運営に関する本府の考え方はおおむね以上のとおりでございますが、今後、
会社が設立されましてから
事業着手に至るまでには解決しなければならない課題が多々ございます。
関西国際空港は、
泉州沖五キロの海面を埋め立ててつくられるわけでございますから、公有水面埋立免許の取得が必要であり、そのためには
実施段階における
環境影響評価を
会社が
実施し、これを
監督官庁及び本府が
審査、
検討する必要がございます。本府におきましては、本年度から独自の
環境影響評価制度を発足させておりますが、この制度、手続にのっとりまして厳正な
審査を行い、速やかに結論に達するよう
努力をする考えでございますので、国におかれましてもできる限り円滑な
審査、
検討を行われますよう望みたいと存じます。
公有水面埋立免許に際しましては、漁業者の同意が必要であり、そのためには
漁業補償交渉が先行するわけでございます。大規模な海上工事による漁業への
影響は現代の最新、最高の技術によりまして最小限にとどめられるものと確信いたしますが、漁場、水産資源等がある程度喪失されることはこれまた否定できない事実でございまして、金銭による補償と並んで、国においても漁業振興策等に対する積極的な御協力をぜひともお願いいたしたいのであります。もとより、本府といたしましても、
会社の行う
漁業補償交渉が円滑に妥結するよう、あっせん、調整等の労は惜しまないつもりであり、本府独自の漁業振興策も、
関係者と相談しながら進めているところでございます。
また、現
空港の
状況あるいは
成田空港の現況にかんがみまして、
環境影響評価で前提とされた対策がそのとおりに行われるかどうか、また、予測された結果と現実がどう異なるか等についての有効な
環境監視体制の確立を、関係住民は同意の前提といたしておりますので、このことについて
事業主体及び国において有効な方策がとられますよう、御
努力をお願いしたいと存じます。
次に、
関西国際空港が十分に
機能を発揮するためには、道路、鉄道等のアクセス交通網の整備が十分に行われませんと、
成田の二の舞を演じかねないわけであります。東京におられます
方々は、
泉州沖というと非常に遠いという
感じを持たれるかもしれませんが、
成田が東京都心から直線距離で六十キロであるのに対しまして、
泉州沖は
大阪都心部から直線で三十五キロでございます。六十キロに対して三十五キロでございます。交通網さえ整備されれば極めて便利な
空港として
機能するのでございまして、しかも、既に基本的な交通体系の骨格はでき上がっていると言っても過言ではありません。
道路といたしましては、第二阪和国道が昨年十二月に阪南町まで完成いたしておりまして、これはすぐに使えるわけでありますが、それと並んで、やはり高速道路が必要でございまして、近畿自動車道和歌山線の
建設が進められております。これは、
日本道路
公団が
建設するものでございますが、府が委託を受けて約四〇%程度の用地買収を既に行っておりまして、昨年度から一部工事に着手されているところでございます。それから、
大阪湾岸道路、これは阪神高速道路
公団が
建設するものでございますが、一昨年九月に堺まで開通いたしましたので、これをさらに
空港まで延ばしていただきたいとお願いいたしておるところでございます。
それと同時に、近畿自動車道和歌山線から第二阪和国道及び
大阪湾岸道路を経まして、新
空港に至る
連絡道路が必要でございます。陸地と
空港島とを結びます
連絡橋の位置は、主たる
航空需要の発生地である
大阪都心に近い泉佐野市から架橋するということに決定されておりますが、この
連絡橋に接続する
連絡道路ができませんと、
空港の効用は発揮できないのであります。
次に、鉄道でございますが、私は、
増大する
航空輸送需要に対応した陸上輸送サービスといたしましては、大量性、高速性、定時性にすぐれた鉄道の果たす
役割が極めて重要であり、
環境問題からも、鉄道アクセスの整備は不可欠と考えております。
空港の立地する泉州
地域におきましては、海岸沿いを南海電車が走り、少し山手には国鉄阪和線が走っておりますので、この南海本線と阪和線から
空港への引き込み線が必要と考えております。その
事業主体としては第三
セクター方式ということも含めまして、現在
検討を進めているところでございます。今後、構想の
具体化につきまして、国の御協力をお願い申し上げる次第でございます。
この南海本線は難波、阪和線は天王寺と、いずれも
大阪市内の南部に位置するターミナルを起点といたしておりますので、
空港と全国幹線ネットワークの結節点であります新
大阪駅あるいは
大阪駅とどう結びつけるかということが将来の課題になってまいります。私どもは、
大阪外環状鉄道構想と呼んでおりまして、既設線であります城東貨物線及び阪和貨物線の一部を利用して、さらに泉州
地域の丘陵部に新線を
建設して新
空港に
連絡させようという構想を持っておりまして、新
大阪から
関西線の加美までの第一期工事につきましては、既に工事認可がおりておるのでありますが、国鉄の方の財政事情等によりまして、今のところ一向に進んでおりません。国鉄の再建という問題を解決しながらということで容易なことでない点は、十分に
理解いたしておりますが、
地元といたしましても最大限の協力を惜しまないつもりでございますので、格別の御配慮をよろしくお願い申し上げたいと存じます。
次に、
空港の対岸部における埋立
事業、いわゆる前島構想についてでございますが、泉州
地域の沿岸部は古くから紀州街道沿いに市街地が密集いたしておりまして、オープンスペースの少ない
地域でございますので、
空港の背後地として秩序ある
都市整備を行いますためには、どうしても埋め立てによる用地の確保が必要となってまいるのでございます。また、先ほど申しました
空港アクセスとなります道路、鉄道を合流させまして、
連絡橋につないでいくための合流点の用地が内陸部ではなかなか見出しにくい、こういう
状況もございます。また、
空港の
機能を活用いたしまして、
地域の活性化を図ってまいります上からも必要な
事業と考えまして、
空港と海岸線の間に埋め立て
事業を
計画いたしておりまして、ここに
空港に関連いたしますいろいろの
施設あるいは下水処理
施設といったようなものを立地させたいと考えているのでございます。
御
承知のように、
大阪湾は、瀬戸内海
環境保全特別措置法の規制対象となっておりまして、
空港島と前島の埋め立ての二つをこれから行うということにつきましては、何かと難しい問題もあろうかと存じますが、先ほど申しました理由からいたしまして、特に新
空港の
機能を増進するためににも、何としてでも実現させたいと念願しているところでございます。
このほか
空港設置に伴う人口増加等さまざまな
社会経済の
変化に対応いたしまして、広範な
地域整備が必要となってまいりますが、何分、泉州
地方の
地方団体は財政基盤の脆弱なところでございまして、行財政上のさまざまな措置が必要となってまいるかと存じます。
成田のような特別立法ということでなくても、現行法の範囲内で御配慮をぜひお願い申し上げたいと存じます。
最後に、いよいよこれからが
空港つくりの本番であるわけでございますので、従来にも増して、国と
地方が密接な連携を保って
事業に当たってまいる必要が生じてまいります。先ほど申しました漁業団体との関係、
地元市町村との折衝など、
地域との対応は、株式
会社ではなかなか困難なこととお察しをいたしております。そこで、
大阪府が
会社と
地元諸団体との間に立つで、
連絡調整を図る
機能が非常に重要になってまいると考えております。
会社の役職員には
大阪府から有能な職員を派遣する用意がございますので、よろしく御活用のほどお願い申し上げたいと存じます。
本府といたしましては、その総力を挙げて、
地域と共存共栄する新
空港の実現に全力を尽くしますとともに、
西日本の中核自治体として、新
空港が
国際空港にふさわしい広域的な
機能を発揮できますよう
努力してまいりたいと決意を改たにしておるところでございます。
御清聴どうもありがとうございました。