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1984-04-17 第101回国会 衆議院 運輸委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年四月十七日(火曜日)     午前十一時三十三分開議 出席委員   委員長 福家 俊一君    理事 鹿野 道彦君 理事 久間 章生君    理事 浜野  剛君 理事 三塚  博君    理事 小林 恒人君 理事 吉原 米治君    理事 近江巳記夫君       加藤 六月君    小山 長規君       田中 直紀君    近岡理一郎君       中馬 弘毅君    中山 正暉君       林  大幹君    増岡 博之君       箕輪  登君    若林 正俊君       兒玉 末男君    左近 正男君       関山 信之君    田並 胤明君       富塚 三夫君    森田 景一君       中野 寛成君    梅田  勝君       辻  第一君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 細田 吉藏君  出席政府委員         日本国有鉄道再         建監理委員会事         務局次長    林  淳司君         運輸政務次官  津島 雄二君         運輸大臣官房総         務審議官    西村 康雄君         運輸省鉄道監督         局長      永光 洋一君  委員外出席者         運輸省運輸審議         会首席審理官  金田  徹君         労働省労働基準         局安全衛生部安         全課長     加来 利一君         日本国有鉄道総         裁       仁杉  巖君         日本国有鉄道常         務理事     竹内 哲夫君         日本国有鉄道常         務理事     須田  寛君         日本国有鉄道常         務理事     太田 知行君         参  考  人         (関西空港調査         会理事長)   奥田  東君         参  考  人         (桃山学院大学         名誉教授)   佐藤  洋君         参  考  人         (大阪府知事) 岸   昌君         参  考  人         (泉州沖関西新         国際空港設置反         対連絡協議会事         務局長)    水脇 一夫君         運輸委員会調査         室長      荻生 敬一君     ――――――――――――― 委員の異動 四月十七日  辞任         補欠選任   河村  勝君     中野 寛成君 同日  辞任         補欠選任   中野 寛成君     河村  勝君     ――――――――――――― 四月十七日  港湾運送事業法の一部を改正する法律案内閣  提出第七〇号) 同月十六日  軽車両等運送事業者荷主添乗禁止立法化反  対に関する請願玉城栄一紹介)(第二九〇  九号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  関西国際空港株式会社法案内閣提出第三五号  )  陸運に関する件  日本国有鉄道経営に関する件      ――――◇―――――
  2. 福家俊一

    福家委員長 これより会議を開きます。  内閣提出関西国際空港株式会社法案を議題といたします。  本日は、本案審査のため、参考人から意見を聴取いたしたいと存じます。  本日御出席参考人は、関西空港調査会理事長奥田東君、桃山学院大学名誉教授佐藤洋君、大阪府知事岸目君、泉州沖関西新国際空港設置反対連絡協議会事務局長水脇一夫君、以上四名の方々でございます。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。本案につきまして、それぞれの立場から忌憚のない御意見を承りまして、審査参考にいたしたいと存じます。  次に、議事の順序について申し上げますが、奥田参考人佐藤参考人岸参考人水脇参考人順序で、御意見を順次お一人十五分以内に取りまとめてお述べいただき、次に、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。  なお、念のために申し上げますが、発言の際は委員長の許可を得ることになっております。また、参考人委員に対し質疑することはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきを願います。  それでは、奥田参考人にお願いいたします。
  3. 奥田東

    奥田参考人 御紹介をいただきました奥田でございます。  本日、このような席で意見を陳述する機会を与えられまして、ありがとうございます。  私は、関西在住研究者立場で、財団法人関西空港調査会理事長として、関西国際空港計画に係ります環境影響評価関連地域整備などの各種調査研究に携わってまいりました。したがいまして、そのような立場から意見を申し述べたいと思います。  そこでまず、主題関西国際空港株式会社法案に対する意見を申し述べる前に、関西国際空港計画そのものについて、私が係りましたいきさつ、体験に基づく感想並びに意見を御参考までに若干申し述べたいと存じます。  関西空港調査会が設立されました昭和五十一年ごろは、昭和四十九年の航空審議会答申に基づき、泉州沖候補地とする本格的な事前調査が始められようとしているときでありましたが、当時は、大阪府初め地元自治体の議会の多くに反対決議がなされており、調査の円滑な実施が危ぶまれる状態でありました。  京都大学学長時代学園紛争を経験し、その後、成田闘争、伊丹の公害訴訟などを見てきた私は、今後、環境影響調査を行い、可否決定合意に達するのは容易なことではないと心配しておりました。ちょうどそのころ、この計画調査研究のため中立の調査機関を設立しようという話が有志の間で起こりまして、理事長を引き受けるように要請がありました。私は、この計画我が国にとって、また関西にとって極めて重要と考えておりましたので、微力を尽くしたいと思い、引き受けることにいたしました。  環境問題の特色は、御承知のように、因果関係解明が大変困難であり、地道な調査を積み重ねていかねばならないという大変骨の折れる仕事であるということであります。また、影響評価の手法、ルールも確立されていないという状態にありましたので、どのような人々がどのような手順を経て調査し、評価したかということが極めて重要と考え、理事、顧問、委員会委員などの人選に当たって、幅広く各分野最高水準方々が集まるよう特に配慮いたしました。また、会の運営は当然資金が必要でありますので、資金の調達に当たりましては、地元自治体、銀行、会社なとできるだけ多数でフリーハンド資金を分担出捐願うこととし、外部からの干渉を受けないよう特に留意いたしました。  幸い、このような行き方に関係方面の御賛同が得られ、トップレベル学者専門家多数の積極的な御参加をいただくことができ、また人材派遣資金協力も順調に進み、さらに行政当局の御理解もあり、自由度の大きい立場で、広範かつ詳細な調査を行うことができました。もちろん、この計画に係る膨大な調査研究を当調査会のみが実施したものではなく、極めて多数の調査機関で分担実施されたのでありますが、恐らく一つプロジェクトについてこれほど多数の学者専門家を動員し、時間をかけ、広範多岐にわたり徹底的に事前調査を行った例は、我が国はもとより、世界にも珍らしいのではないかと思っております。  中でも、私にとって印象的なのは、調査会で担当いたしました騒音、大気汚染調査につきましては、いずれも気象影響が大きく、完全な解明が困難でありますが、事務局主導でなく、委員先生方のイニシアチブのもとに長時間の会合が幾度幾度も重ねられ、審議を尽くして判断を下されたことであります。私は、これらの方々の絶大な御努力に深く敬意を表するとともに、厚く感謝している次第であります。  このような努力を積み重ねてまとめられた環境影響評価書案をもとに、行政当局でさらに検討され、いわゆる三点セットとして地元協議がなされ、資料公開を含む慎重な手続を経て今日計画合意に至っているわけであります。このように、計画段階環境影響評価としては、かつてない最大の努力がなされた計画であり、また、航空時代進展する中で、この計画推進は焦眉の急を要する問題であることは、今さら私が申し上げるまでもないところでありますから、この計画関係行政機関の密接な連絡のもとに強力に推進されるよう、格段の御配慮を賜りたいと存じます。  次に、主題事業主体のあり方の問題でありますが、さきに述べましたように、この計画調査研究に携わってきた私としましては、当然事業主体問題にも多大の関心を持ち、調査会内部においても種々議論いたしました。特に、昭和五十七年当初から始まった運輸省と大蔵省との協議が採算性問題をめぐって難航している段階では、多少ともその打開にお役に立てばと思い、事業主体に関する試案提案させていただきました。  私の理解しておりますところでは、もともとこの計画泉州沖五キロメートルの水深の深いところに選定され、そのため多額建設費用の伴うこととなったのは、現大阪国際空港公害問題の反省から、無公害空港を目指す結果生じたものであって、多額費用負担公害対策費先行投資的性格を有するものであると考えております。また、別の角度から見れば、大阪湾に大きな人工島をつくることは、将来にわたって長く利用し得る貴重な国土造成する事業でもあります。  さらに、もう一つ角度から見れば、空港整備法において国際空港一種空港と規定され、一種空港は国が建設、管理するものとされているように、この国際空港建設は国全体にとって必要であり、国全体が利便を得ることになりますが、一面、大阪湾地域が最も大きな利便を得る地域性の大きい施設であるなど多面的な性格を持っております。したがって、その見方によって費用負担事業主体がさまざまに考えられるものであります。  しかし、国家財政窮迫の中で、また、行政改革が強力に推進されようとしている中でこのプロジェクト推進させるためには、これらの多面的性格を十分に考慮に入れた方式でスタートするほかないと考え、空港島の造成地元大阪中心土地造成公社が行い、その土地を国は購入または賃借して空港施設建設運営する。ターミナルビル等利便施設建設運営は、地元自治体民間が出資する第三セクターが行うといった試案を、論議の発端になればと考えて提案をいたしました。個人としての思いつきの提案でありましたが、幸い関係方面で真剣に御検討を賜り、恐縮いたしておる次第であります。  私の提案も御検討された上、二本立て案運輸省から御提案になり、さらに検討協議を重ねられて、一本立ての特殊会社方式に固まり、国会に御提出になったと承っておりますが、議論を重ねられたかいがあって、法案の中で国の責任利便を受ける地元自治体民間負担民間的経営合理性導入等の諸要素が巧みに組み合わされており、結局はいい線に落ちついたと思っておりまして、この法案に私は賛成でありますので、今国会において必ず可決成立するよう格段の御尽力を賜りますようにお願いいたしたいと存じます。  法案成立となれば、六十年度着工、六十七年度供用開始の予定と承っておりますが、私の見るところ、予定どおり推進するためには、なお幾多の困難が予想されます。この計画推進に情熱と責任を持つ方々が新会社に配置され、また、関係行政機関の体制も整い、関係者一致協力のもとにこの計画が円滑に推進されることを念願してやみません。  最後に三つばかり、今後のために要望意見をつけ加えたいと思います。  第一点は、さきに申しましたように、この計画の原点は、現国際空港環境問題であるわけでありますから、今後具体化に伴う実施アセスメントの過程におきましても、従来と変わらぬ姿勢で環境影響評価を徹底して行い、所期の無公害空港の実現を図っていただきたいと思います。  第二点は、関西国際空港は十年後に供用開始し、十年後、二十年後、つまり二十一世紀社会に有用な機能を果たすものでなければなりません。したがって、世界的な航空事情進展状態を絶えず十分調査、把握し、航空の将来発展に対応した空港建設努力していただきたいと思います。私は、アメリカ等航空事情を考えますと、空の時代は急速に進展すると予想しておりますので、それに対応し得る空港整備を考えておく必要があると考えております。  第三は、空港整備社会的、経済的な波及効果は、空の時代進展する中で極めて大きいと考えられますが、時代の流れに即応した産業政策など諸施策を並行して推進することにより、一層その効果を高めることになるものと考えられますので、そのような努力を期待いたしたいと存じます。特に、地元周辺地域におきましては関連地域整備を含め、国としても積極的に取り組んでいただく必要があることを申し添えまして、私の陳述を終わります。  どうもありがとうございました。
  4. 福家俊一

    福家委員長 大変ありがとう存じました。  次に、佐藤参考人にお願いいたします。
  5. 佐藤洋

    佐藤参考人 桃山学院大学佐藤でございます。  私の大学は堺市は南の方にありまして、大阪南部から多くの学生諸君が就学しております。私の住んでいるところは豊中でございまして、大阪国際空港から約三キロのところに住んでいるわけでございます。  なお、私は現在大阪市政調査会の会長、それから大阪にあります財団法人大阪問題総合研究所理事をやらされておりまして、この問題に関しましていささかの関心を持っておるものであります。  関西空港の問題は、大阪国際空港の欠陥に端を発しましてから十八年、泉州沖最適とされてから十年を経過しております。この間、世界の情勢は大きく変化いたしまして、国際関係相互浸透が深まり、国際交流が急速に増大してまいりました。政治経済分野のみならず、科学技術、芸術、スポーツ、海外協力、観光等さまざまのレベル航空需要増大が起こってまいりました。これは諸国民、諸民族相互理解世界平和維持のために極めて重要なことでございまして、このような観点から、私は、関西国際空港はぜひとも必要である、そう考えている次第でございます。  しかし、今回政府がやにわに事業主体を変更する特殊会社方式提案いたしましたことにつきましては、非常に深い疑問を持っておるものであります。  以下、順を追って意見を述べさせていただきます。  まず、関西国際空港必要性についてでございますが、周知のごとく現在我が国には二十四時間使用できる空港が存在しない。一九七〇年代以降世界第二の経済大国となった我が国が、世界各国、諸民族との経済的、文化的交流を果たすべき国際的責任にかんがみまして、二十四時間操業の空港建設は絶対に必要である、こう考えておる次第でございます。  さらに、現在の大阪国際空港環境問題で厳しい運航規制を受けております。我が国第二の大都市圏である大阪に諸外国からの新たな乗り入れができないために、航空交渉における大きな障害が解決できない状況になっております。我が国航空機が、日米航空協定上、相互主義観点からアメリカ東部都市への乗り入れに対して制限を受けている状況、これまた国際交流に対する支障でありまして、逆にまた、世界各国がこの航空機が時差にかかわらず我が国空港に離着できないようでは、今後の国際関係進展に対して我が国役割を果たすことができないのではないか。また、これとともに、航空業務のセキュリティーの観点から関西国際空港は必要である、こう考えております。  国内においても、各県にジェット機の就航が可能な地方空港が次々に整備されつつある現状であります。これは産業構造変化地方時代の到来による地域構造の変貌によって必然のものであり、これに対して、国内航空交通体系一つの重要な中心である大阪国際空港への増便が不可能になっている。これは経済発展及び国民生活向上のための航空需要に対する阻害要因となっております。この点からも、関西国際空港は必要であると考えます。  第二次石油危機以後の世界同時不況によって世界経済はさまざまな困難とあつれきを増大しておりますけれども、その中で一つ注目しなければならないことは、米国の対外貿易が、大西洋に向けられるものよりも、太平洋に向けられる金額が昨年あたりから凌駕してまいりました。世界経済における環太平洋圏地位向上、特に中国、ASEAN諸国東アジア新興工業諸国重要度増大している現状であります。これら諸国関西及び西日本のつながりは歴史的なものがございます。  今、関西では市民の間に古代史研究への関心がブームを呼んでおりますけれども、関西西日本東アジア諸国との交流の拡大は、我が国今後の経済的、文化的交流に重要な役割を演ずるものであります。二十一世紀に向けて、関西国際空港日本全体の発展のための地政学的に重要な地位を与えられることになると考えております。  古くから、文化経済の集積する大阪関西は、日米経済依存増大高度成長期以降、あらゆる高次機能の東京への一点集中によりまして相対的に地位が低下してまいりました。これは国土の均衡ある発展にそぐわない。しかも、ただいま申しましたように今後東アジア役割が大きく拡大してまいります。歴史的交流の深い関西の新空港役割を重視しなければならない時期が今後到来する。以上のような観点から、私は関西国際空港はぜひとも必要であるというふうに考えている次第でございます。  次に、特殊会社方式について申し述べたいと思います。  空港建設運営主体につきまして、運輸省公団と第三セクター二本立て案を出したのが昨年の七月。しかも半年もたたないうちに本年一月、突如として独断的に、地元との協議もなく特殊会社案に差しかえてまいりました。非常に不可解な感じがする次第でございます。  昭和四十九年の航空審議会泉州沖最適答申以来、地域社会との合意形成のために、従来のビッグプロジェクトに前例のない各界各層の甚大な努力が払われてきたことは周知の事実であります。環境の破壊と汚染漁業補償、土取り、アクセスをめぐる建設公害土地投機、これに対し、他方、おくれた大阪南部の開発と産業転換起爆剤を期待する向きもあり、空港建設メリットデメリット複雑多岐、利害錯綜いたしまして、紛糾紛糾を重ねてきたことは御承知のとおりであります。  その中で、五十六年五月の運輸省の三点セット提示大阪府の地域整備構想案公表を契機といたしまして、漸次国際化時代進展することに対応いたしまして、大局的な見地から次第にコンセンサスができ上がってきたというのが最近の状況であります。しかもなお、多くの疑問が残っておりまして、今日に至るまでさまざまの集会で激しい討論が続いているというのが地元現状でございます。  これに対し、今回の特殊会社案への唐突な変更は、十年間の地域社会における努力も水泡に帰するのではないか、そういう危険性をはらんでいるのではないか。何らかの政治的な圧力が加わってそういうようなことができたとするならば、これは大変な問題である、そう考えている次第でございます。  現在、我が国には幾つかの特殊会社がございます。その一つ一つと比べて、空港の持つ公共性は比較すべくもなく高度なものでございます。国際性安全性高度技術性、膨大な資金環境問題、長期にわたる地域社会への影響から見て、これは最高度公共性を持つものであります。将来は、外国人も含めて膨大な不特定多数の人々が往来し、航空貨物も大量となってまいる。そこには税関、航空管制、警備、危機管理等、現存する各種公団に比べましてもその公共性、また国の総合的安全保障政策の一環として極めて重要な空港である、そう思います。しかも広範、長期にわたる地域社会への影響を考えますとき、国が全面的責任を持って当たるべき性格のものである、そういうふうに思います。  臨調行革にはそれなりのメリットもありましょうが、新国際空港建設運営に関する限りその安易な適用は重大な誤りを犯すおそれがあると思うのであります。特殊会社法案趣旨説明臨調行革絡み文言がございますが、全体の文章の中でここだけ何となくそらぞらしく見える、そういう感じを私は持っております。公団は非能率で特殊会社は能率的、機動的であるという今回の法案第一条の文言がありますけれども、そう簡単に断定できるとは思われません。また、提案趣旨説明に「民間活力導入を提言した臨時行政調査会答申趣旨等にかんがみ、」という言葉がございます。しかし、ただいま申しましたような公共性社会性を持ったプロジェクトにそのまま妥当するかどうか、そぐわないのではないかと考えます。  今、我々に必要なのは社会的な効率であり、民主的な活力であり、狭隘な私的企業効率活力ではないのではないか。空港建設運営私的企業的利潤追求にそぐわない。もっと広範な社会的費用便益分析をやらなければならない、企業損益計算表ではなくて、もっと広範な社会的コスト・ベネフィット・アナリシスをちゃんとやらなければならない、そういう問題だと思うのであります。  空港建設にとって当面重要なことは、地域社会との合意を強化しそれを継続することであります。それには公共性国際性を明確に提示し、地域の福祉と公正の原則を貫く態度を明確にすることであります。現に、空港建設を見通して多くの企業グループ各種構想がメジロ押しになっておりまして、企業の暗躍が取りざたされております。三者混合特殊会社が果たして公正な利害の調整と先見的計画性を機動的に行い得るかどうか、はなはだ疑問であります。スプロール現象を起こして都市計画が崩壊する、三点セットが守れるかどうか、成田及び大阪国際空港の失敗を我々は絶対に忘れてはならない、こう思うのであります。  公団年度ごとに予算、事業計画国会提出し承認を得なければならないと聞いております。国会監督ができるわけであります。しかし、特殊会社では出資金についてはあるいは国会が承認しなければならないということがあるかもしれませんけれども、会社事業をチェックすることはできません。運輸大臣がどこまで指導監督するか、それも不確実であります。出資金の過半数を国が所有いたしましても、私的資本の独走とそのデメリット危険性というものを我々は今日十分考えておかなければならないと思います。第一種空港は国が責任を持って建設するという原則を曲げる事情変化は現在存在しないと言わなければなりません。  公団事業主体として三点セットを実行することは、共通の認識となってまいりました。現に昨年七月に運輸省はそのように発表しました。しかも、当時既に行政改革最終答申ができていた。しかるに一月の急変は何を意味するのか。とにかく航空機を早く飛ばせばよい、資金地方自治体と財界に分担させろ、問題が起こったら地方自治体に折衝させろということになりかねないのではないか。自治体財政を圧迫し、地域社会紛糾を巻き起こすおそれが多い、そう思います。  さらに、もし中央に今なお関西国際空港地元請願空港であるという潜在意識がありまして、起こるべき紛争地元自治体責任転嫁してもいいという観念が中央にあるとすれば、それはゆゆしき問題であります。関西空港は二十一世紀に向けての今後十年、二十年、三十年の国家的事業であることを明確にし、そのためにも公団方式を厳守してもらいたい、こう思うのであります。  もし公害問題あるいはその他で訴訟事件が起こった場合、特殊会社では民事裁判となって長引き、地域住民がこうむる苦難が大きいのではないか、そういう心配もあります。建設工事が長引いたり工事費が増高いたしまして当初予測が悪化した場合、さまざまの形態で大阪府その他地方公共団体へのしわ寄せが来るおそれがあります。海域の汚染、漁業問題も今後の大きな問題となって残っております。  事業主体は、環境問題や地域整備に関して直接の責任をとらなければなりません。それにはぜひとも地域各種機関や団体の参加する運営協議会、また監視機関の公的な設置が必要だと思います。事業主体にこの種の機関を設置することを法的に保証することが必要である、そう思います。今出ているのは、開港後五年で単年度黒字であるとか、九年で累積赤字を解消するというような問題が先に出ております。これは会社的発想の突出でございます。  三日前、政府成田並みのかさ上げ法律を拒否するという意向の新聞報道がございました。農地買収がないという理由のようでございますけれども、泉州には泉州の特殊事情があるかもしれません。ここは成田と違って都市空港であるという考えをはっきり持たなければならないと思います。複雑な社会変動が起こることを考慮しなければなりません。大阪南部社会資本が不足し、老齢者も多く、福祉補助を受ける家庭も多い地域です。政治的にも自、社、公、民、共、きびすを接しておりまして政治は流動的であります。堺市の倫理条例等に見られるごとく市民運動も盛んであります。このような地域の特殊事情を十分考慮する必要があるかと思います。  三点セットを確実、かつ先見的に実行し、空港整備法、瀬戸内海環境保全特別措置法を誠意を持って守ってもらいたい、私はそういうことを要望するものであります。そのためにも従来からのコンセンサスとなっている公団方式、第三セクターを放棄することは非常に大きな問題ではないかと思っております。社会的な効率性、民主的な活力、そういうものが当面空港建設にとって一番重要である、そう思います。この前、日向方齊さんなどは、少しくらいおくれても国の責任でやってもらいたいということを発言しておられます。しばらくの間にそれが変わったわけでございます。我々はどうしても当初め了解されている公団及び第三セクターで、公共性国際性の極めて大きい、そしてまた、国の安全保障政策の一環でもある空港建設をやってもらいたい、こう思っておるわけでございます。  時間が少のうございますので、簡単でございますけれども、私の発言を終わらしていただきます。どうもありがとうございました。
  6. 福家俊一

    福家委員長 どうもありがとうございました。  次に、岸参考人にお願いいたします。
  7. 岸昌

    岸参考人 ただいま御紹介をいただきました大阪府知事の岸でございます。  本日は、地元の知事といたしまして意見陳述の機会を与えられましたことを、まことに光栄に存じておる次第でございます。  関西国際空港計画及びその事業主体設立の根拠となります関西国際空港株式会社法案につきまして、大阪府としての意見、要望を申し述べさせていただきたいと存じます。  昭和五十九年度の政府予算に関西国際空港株式会社に対する国の出資金三十四億円を含む必要な予算が計上されるとともに、同株式会社法案が今日国会において審議される運びとなりましたことは、長年の懸案がいよいよ実現に向けて大きく前進を始めたものといたしまして、心から喜びますとともに、関係各位のこれまでの御労苦に対し深く敬意を表するものであります。  さて、この関西国際空港計画は、これまで地域社会合意を得て、地域と共存共栄する公害のない空港つくりを目指すことを大原則といたしまして、従来のビッグプロジェクトには例を見ない入念な調査地元協議などの手続、手順を尽くして進められてまいりました。  去る二月十日の関係閣僚会議におきまして了承が得られた空港計画につきましても、本府といたしましては、大阪府議会を初め、地元泉州八市五町、労働団体等の意見、要望を踏まえ、四月三日にこれを基本的に了承するとともに、一日も早い空港の開港を求める意見書を運輸大臣あてに提出いたしたところでございます。その際、昭和五十七年七月、本府が三点セットによる地元協議に対して、国に要望いたしました六項目の事項につきましても、さらに十分に留意されるよう重ねてお願いをいたしておるところでございます。  その六項目の留意事項と申しますのは、事業主体でありますとか、土取りでありますとか、あるいは連絡橋の計画については、必ず地元協議するということが一つでございます。  それから三点セットの前提となっております海上五キロとなっております空港の位置、あるいは航空機の離発着に当たっての飛行経路等は今後変更しない、それが合意の前提になっておりますので、その前提を変えてもらっては困るということを第二に申し上げております。  環境問題につきましては、今後新しい科学技術進展に応じてできるだけ公害の少なくなるような対策をとっていただきたい。また、最終的には住民参加のもとに環境監視体制を確立するということも条件に入れておるのでございます。漁業への影響につきましても、何と申しましても面接の被害を受けるのは漁業でございますので、これを最小限に食いとめるよう努力をしていただきたい。また、道路、鉄道、その他地域整備につきまして、関係省庁の協力ということをお願いいたして拘るわけでございます。関係省庁の一体的な取り組みをお願いしておるところでございます。それから新空港建設に伴いまして周辺地域では人口の増加、その他社会経済の大きな変動が予想されますので、関係のある市町あるいは大阪府が先行的な対策を行うことができますように、行財政上の必要な措置を講じてもらいたいということを申し上げておるわけでございます。  現在御審議をいただいております関西国際空港株式会社法案につきましては、関西国際空港空港整備法上の第一種空港として位置づけられておりますこと、会社に対して公団と遜色のない援助措置、特例措置が講じられておりますことなどは、本府のかねてからの要望が取り入れられたものといたしまして、また、地域の参加をうたった昭和四十九年の航空審議会の建議の精神に合致するものとして歓迎をするところであり、この法案の今国会での成立を強く要望いたすものであります。  関西国際空港は、二十四時間世界に開かれた空の玄関といたしまして我が国の将来の発展にとって必要不可欠な空港でございますが、同時に、地域発展にとりましてもぜひとも必要な空港でありますので、本府と。いたしましては、同株式会社の設立、運営に積極的に参画することにより、地域活力、創意工夫を空港つくりに生かしてまいりたいと考えております。  つきましては、今後、法案の御審議、政令等の制定、会社の設立、監督に当たりましては、次の諸点に十分留意していただくことが必要かと存じます。  まず、今回の株式会社方式のねらいとする効率的な事業運営が行われるよう国の監督措置は必要最小限にとどめ。会社の自律性を最大限に尊重することであります。同時に、株式会社という形態はとっておりますが、第一種空港建設という公共事業を進める事業主体にふさわしく、公正な会社運営環境面、安全面での責任の確保など公共性の確保が図られることが重要でございます。  次に、やはりこの会社は、大阪府域において事業を行うわけでございますから、会社の本店は当然大阪に置かれるべきものと考えております。また、会社の役員、職員の選任、採用に当たりましては、地域の実情に明るい人材の確保が必要であります。  次に、空港建設、管理に当たりましては、地価の抑制、地元における中小企業の育成、雇用創出等、地域経済の振興に対する配慮も極めて重要でございます。さらに、会社事業運営に当たり、地元地方公共団体の長を初め地域の代表者等で構成をする協議組織を設けまして、できる限り事業実施に伴う諸問題の円滑な解決と地域から提起される建設的な発想の活用に努めることが必要と存じます。  会社の設立、運営に関する本府の考え方はおおむね以上のとおりでございますが、今後、会社が設立されましてから事業着手に至るまでには解決しなければならない課題が多々ございます。  関西国際空港は、泉州沖五キロの海面を埋め立ててつくられるわけでございますから、公有水面埋立免許の取得が必要であり、そのためには実施段階における環境影響評価会社実施し、これを監督官庁及び本府が審査検討する必要がございます。本府におきましては、本年度から独自の環境影響評価制度を発足させておりますが、この制度、手続にのっとりまして厳正な審査を行い、速やかに結論に達するよう努力をする考えでございますので、国におかれましてもできる限り円滑な審査検討を行われますよう望みたいと存じます。  公有水面埋立免許に際しましては、漁業者の同意が必要であり、そのためには漁業補償交渉が先行するわけでございます。大規模な海上工事による漁業への影響は現代の最新、最高の技術によりまして最小限にとどめられるものと確信いたしますが、漁場、水産資源等がある程度喪失されることはこれまた否定できない事実でございまして、金銭による補償と並んで、国においても漁業振興策等に対する積極的な御協力をぜひともお願いいたしたいのであります。もとより、本府といたしましても、会社の行う漁業補償交渉が円滑に妥結するよう、あっせん、調整等の労は惜しまないつもりであり、本府独自の漁業振興策も、関係者と相談しながら進めているところでございます。  また、現空港状況あるいは成田空港の現況にかんがみまして、環境影響評価で前提とされた対策がそのとおりに行われるかどうか、また、予測された結果と現実がどう異なるか等についての有効な環境監視体制の確立を、関係住民は同意の前提といたしておりますので、このことについて事業主体及び国において有効な方策がとられますよう、御努力をお願いしたいと存じます。  次に、関西国際空港が十分に機能を発揮するためには、道路、鉄道等のアクセス交通網の整備が十分に行われませんと、成田の二の舞を演じかねないわけであります。東京におられます方々は、泉州沖というと非常に遠いという感じを持たれるかもしれませんが、成田が東京都心から直線距離で六十キロであるのに対しまして、泉州沖大阪都心部から直線で三十五キロでございます。六十キロに対して三十五キロでございます。交通網さえ整備されれば極めて便利な空港として機能するのでございまして、しかも、既に基本的な交通体系の骨格はでき上がっていると言っても過言ではありません。  道路といたしましては、第二阪和国道が昨年十二月に阪南町まで完成いたしておりまして、これはすぐに使えるわけでありますが、それと並んで、やはり高速道路が必要でございまして、近畿自動車道和歌山線の建設が進められております。これは、日本道路公団建設するものでございますが、府が委託を受けて約四〇%程度の用地買収を既に行っておりまして、昨年度から一部工事に着手されているところでございます。それから、大阪湾岸道路、これは阪神高速道路公団建設するものでございますが、一昨年九月に堺まで開通いたしましたので、これをさらに空港まで延ばしていただきたいとお願いいたしておるところでございます。  それと同時に、近畿自動車道和歌山線から第二阪和国道及び大阪湾岸道路を経まして、新空港に至る連絡道路が必要でございます。陸地と空港島とを結びます連絡橋の位置は、主たる航空需要の発生地である大阪都心に近い泉佐野市から架橋するということに決定されておりますが、この連絡橋に接続する連絡道路ができませんと、空港の効用は発揮できないのであります。  次に、鉄道でございますが、私は、増大する航空輸送需要に対応した陸上輸送サービスといたしましては、大量性、高速性、定時性にすぐれた鉄道の果たす役割が極めて重要であり、環境問題からも、鉄道アクセスの整備は不可欠と考えております。空港の立地する泉州地域におきましては、海岸沿いを南海電車が走り、少し山手には国鉄阪和線が走っておりますので、この南海本線と阪和線から空港への引き込み線が必要と考えております。その事業主体としては第三セクター方式ということも含めまして、現在検討を進めているところでございます。今後、構想の具体化につきまして、国の御協力をお願い申し上げる次第でございます。  この南海本線は難波、阪和線は天王寺と、いずれも大阪市内の南部に位置するターミナルを起点といたしておりますので、空港と全国幹線ネットワークの結節点であります新大阪駅あるいは大阪駅とどう結びつけるかということが将来の課題になってまいります。私どもは、大阪外環状鉄道構想と呼んでおりまして、既設線であります城東貨物線及び阪和貨物線の一部を利用して、さらに泉州地域の丘陵部に新線を建設して新空港連絡させようという構想を持っておりまして、新大阪から関西線の加美までの第一期工事につきましては、既に工事認可がおりておるのでありますが、国鉄の方の財政事情等によりまして、今のところ一向に進んでおりません。国鉄の再建という問題を解決しながらということで容易なことでない点は、十分に理解いたしておりますが、地元といたしましても最大限の協力を惜しまないつもりでございますので、格別の御配慮をよろしくお願い申し上げたいと存じます。  次に、空港の対岸部における埋立事業、いわゆる前島構想についてでございますが、泉州地域の沿岸部は古くから紀州街道沿いに市街地が密集いたしておりまして、オープンスペースの少ない地域でございますので、空港の背後地として秩序ある都市整備を行いますためには、どうしても埋め立てによる用地の確保が必要となってまいるのでございます。また、先ほど申しました空港アクセスとなります道路、鉄道を合流させまして、連絡橋につないでいくための合流点の用地が内陸部ではなかなか見出しにくい、こういう状況もございます。また、空港機能を活用いたしまして、地域の活性化を図ってまいります上からも必要な事業と考えまして、空港と海岸線の間に埋め立て事業計画いたしておりまして、ここに空港に関連いたしますいろいろの施設あるいは下水処理施設といったようなものを立地させたいと考えているのでございます。  御承知のように、大阪湾は、瀬戸内海環境保全特別措置法の規制対象となっておりまして、空港島と前島の埋め立ての二つをこれから行うということにつきましては、何かと難しい問題もあろうかと存じますが、先ほど申しました理由からいたしまして、特に新空港機能を増進するためににも、何としてでも実現させたいと念願しているところでございます。  このほか空港設置に伴う人口増加等さまざまな社会経済変化に対応いたしまして、広範な地域整備が必要となってまいりますが、何分、泉州地方地方団体は財政基盤の脆弱なところでございまして、行財政上のさまざまな措置が必要となってまいるかと存じます。成田のような特別立法ということでなくても、現行法の範囲内で御配慮をぜひお願い申し上げたいと存じます。  最後に、いよいよこれからが空港つくりの本番であるわけでございますので、従来にも増して、国と地方が密接な連携を保って事業に当たってまいる必要が生じてまいります。先ほど申しました漁業団体との関係、地元市町村との折衝など、地域との対応は、株式会社ではなかなか困難なこととお察しをいたしております。そこで、大阪府が会社地元諸団体との間に立つで、連絡調整を図る機能が非常に重要になってまいると考えております。会社の役職員には大阪府から有能な職員を派遣する用意がございますので、よろしく御活用のほどお願い申し上げたいと存じます。  本府といたしましては、その総力を挙げて、地域と共存共栄する新空港の実現に全力を尽くしますとともに、西日本の中核自治体として、新空港国際空港にふさわしい広域的な機能を発揮できますよう努力してまいりたいと決意を改たにしておるところでございます。  御清聴どうもありがとうございました。
  8. 福家俊一

    福家委員長 うんちくある御意見を開陳くだされ、まことにありがとうございました。  次に、水脇参考人にお願いいたします。
  9. 水脇一夫

    水脇参考人 本日の参考人の中でただ一人の泉州地元の住民として、関西空港株式会社法案に関連して、御意見を申し上げたいと思います。  私たち地元住民は、昭和四十三年、運輸省が神戸沖や播磨灘沖と並んで、泉州沖を新空港の予定地として調査を始めたときから、国の空港政策というのは、地元住民に対して犠牲を強いる政策の上に成り立っているということで、不安と疑問を示しましたし、反対もしてまいりました。それは、私たち大阪府民にとって、その具体的な姿を目の前に見て知っているからであります。  御承知のとおり、現大阪空港は、昭和三十六年と万国博覧会を控えた昭和四十五年に拡張され、昭和三十九年からジェット機が乗り入れられております。その結果、周辺地域百八十万人の住民が痛烈な騒音公害に悩まされ、ついに我慢の限界だと裁判になったわけであります。  問題なのは、この空港に対する国や財界などの住民に対する姿勢であります。これらの人々は、拡張やジェット機乗り入れのときには、プロペラ機よりもジェット機の方が騒音が低いと住民をだまし、関西発展のためにとかあるいは万国博の成功のためにとの美しい言葉を並べできましたが、実際に住民に被害があらわれてくると、住民の切実な声を全く置き去りにし続けてまいりました。せめて子供たちの学校だけでも騒音の被害からという住民の声が届いたのは、ジェット機が乗り入れた後四年もたった昭和四十三年度であります。  拡張、ジェット化の旗振り役をした財界は、公害問題は行政の仕事だとその責任を回避し続けてまいりました。せめて静かな夜をという、すべての国民合意を得られるような住民要求でさえ、国は公共性の名によって拒否し続け、長く裁判を行うなど、住民犠牲の空港つくりという点では、数え上げれば切りがありません。  さて、今回問題になっております関西空港計画でありますが、泉州地域の住民は、国の姿勢は住民無視と犠牲の空港つくりという従来の考え方を少しも変えていないという点で大きな不安を高めております。本来なら、一兆円の巨大プロジェクト、関連事業を含めるとこの数倍もの公共事業ともなりますと、地元でも熱烈な歓迎の姿が見られるのが本筋でありますが、地元では不安の方が大きくてこんな状態ではありません。全面的な賛同を示しているのは、関西財界と大阪府の幹部職員という極めて少数の人々だけであります。運輸大臣が泉州を訪れて歓迎のアーチと旗と花束で、あるいは握手攻めにされるというような姿など、到底地元では起こらないでありましょう。  ここに住民の不安を示すデータがありますので、数字を読み上げます。  地元自治体一つであります泉南市の総合計画の資料として、昭和五十七年十月に発表された数字によりますと、公害が予想されないと答えた人はわずか一一・四%、公害が予想されるという不安を答えた人は実に八〇・一%となっております。泉佐野市での昭和五十六年度の農業者に対する調査でも、将来発展や農地の価格が上がるなどのメリットを回答した人は四七・七%、農業の衰退、公害の心配、地場産業の破壊などデメリットを回答した人がその一・八倍の七八%。これは複数回答になっておりますので、一〇〇%を超える数字になります。  この数字に示されているように、泉州地域住民の圧倒的多数が、新空港はいやなどの態度を示しているのであります。国の空港つくりは地元住民無視と犠牲、泉州地域の住民は既にこのことを見抜いておりますし、その上、今回の特殊会社方式は住民にとってより一層悪い方向での空港つくりとなっていますので、反対するものであります。  この法案とその動きを見ますと、まず、財界には税や配当での優遇措置がとられ、財界にとっては、交際費程度の二百億円の出資で十年近くも一兆円から数兆円の仕事が保証されるという極めてよい話であります。  また、本来いかなる勢力からも住民の生活と環境を守るべき、住民にとって最も身近な組織であります自治体・大阪府も、財界とともに出資をするという建設の枠組みにはめ込まれているということも特徴的であります。こんなことでは、地元住民はたまったものではありません。  こんな住民の気持ちを抜きに、既に特殊会社の首脳人事までが準備されつつあると言われています。民間の人材と民間活力導入するのだという美しい言葉がありますが、民間と言えば、営利のみを追求する民間企業ほど今日までいろいろな企業活動の中で、安全問題や公害問題、環境問題など、まことに不誠実に行ってきた例は無数にあるというぐあいに思っております。  私は、地元住民無視と犠牲の空港つくり政策、その上に今回は、財界主導、利益誘導でより一層地元住民の悪い方向に進められているということを申し上げて、反対の第一の理由としたいと思います。  地元問題として、第二点目に、地域整備について申し上げます。  泉州沖答申段階で、このときには運輸省は、周辺地域空港建設とあわせて適切に整備するならば、両者の調和ある発展は可能だとか、あるいはまた、道路、上下水道、学校、病院などの社会資本は、これは空港がその原因者の一部であるという見方もできるので、費用の分担のあり方について慎重に検討する必要があると述べ、内陸部の開発に大きな幻想を振りまいてまいりました。  しかし今日の状況では、国が考えているのは、滑走路づくりと大都市へのアクセスだけの状況でありますし、調和のとれた地域発展など完全に消えうせているのであります。それだけではなしに、地元自治体の財政をも空港建設に吸い取ろうとまでしています。大阪府は、空港建設のために人も金も投入することを決め、一方では、府民生活に重要な福祉や教育行政の後退を始めました。  地元市町の場合は、財政力が貧弱なためにもっと深刻であります。例えば泉佐野市の場合、昭和五十八年度の一般会計予算は百八十六億円でありますが、赤字再建団体転落に近い累積赤字を抱えておりますし、起債も限度額ぎりぎりの財政状況であります。ところが、開港までに施工される鉄道の高架に伴う泉佐野市の負担額は四十億とも言われております。国は成田のときのようなかさ上げ法は考えていないと言っていますので、泉佐野市は、空港建設に伴う鉄道の負担だけで財政は完全に破綻してしまうということになります。空港からの税収などが入る前の段階地元市町の財政が破綻する、こういう状況になります。保守系が多数の地元首長でありますが、府からの新空港協議に対しての回答を渋っておりましたし、他のプロジェクトに示されるようにもろ手を挙げて賛意を示さないのはこのためであります。  新空港は、泉州地域発展とは逆に、府や市の財政まで食い込まれ、その結果住民にとっては、公共料金の引き上げ、生活関連施設への投資が削られる、住民サービスの低下など地域住民の生活の後退につながる、このような状況でありますので反対をするものであります。  第三番目に、財界にとっては巨額の仕事が保証されるメリットのある大プロジェクトでありましょうが、これほど不確定要素の多いプロジェクトも珍しいものでありますし、今日のように極めて厳しい国家財政の状況から、このプロジェクトに財政を投入してよいものでありましょうかという点であります。  候補地は水深二十メートルのところで、しかも、地盤は極めて軟弱であると調査されています。この上に五百ヘクタールもの大規模な人工島をつくるということは、世界的にも未経験の分野であります。また、常識的にこのような長期間の大プロジェクトは、資材あるいは利息などで経費が倍に膨れ上がっておりますし、幾つかの不測の事態が生じますと工期がおくれます。運輸省の言うように一兆円でおさまらないのは常識であります。そうなりますと第二の国鉄のようになり、結局のところ、そのツケは国民である私たちに回ってくることになります。  また、昭和五十五年の第二次答申のときに、京都大学の赤井教授などは、豆腐の上に金塊を載せるほどの難工事だという予測をされています。最近大阪府が、五十六年六月に造成を終えた堺・泉北工業地帯の理立地八十ヘクタールが不等に沈下し、今後三十年間建物が建設できないことが明らかにされています。この新空港埋立工事は難工事のために、まさに原子力船「むつ」のような使いものにならないという最悪の事態も考えられるというぐあいに思います。  さらに、滑走路が三千三百メートル一本だけに縮小される、これでは国際空港のていはなさないとの声が出ておりますし、現空港との併用では航路も重なり非常に危険という専門家の指摘もあります。また、前提条件であります航空需要が三点セットが発表されたときよりも五〇%も減っている予測が出されております。新空港の原点と言われる現空港が存続される方向である。こうなりますと、新空港計画を考える前提条件が大きく変化をしている。このような不確定要素の極めて多い新空港計画に対して、私はもっと専門家意見国会でも取り上げていただき、国民の前にもっと写し出されることを強く望むものであります。  第四番目に、自然環境という点から御意見を申し上げます。  このような大規模な埋め立て、その上に大阪府が独自に前島を埋め立てるという発表がなされていますが、瀬戸内海環境保全特別措置法の精神から明らかに違反するものであると考えます。泉州地域というのは、大阪府の中でただ一つ平野と海と山が残されている地域であり、府民の台所に新鮮な海産物と農作物を供給している地域であります。  運輸省公害がないとアセスメントで述べておりますが、例えばこのアセスメントを見ますと、昭和六十五年度には南大阪の下水道普及率は七〇%に達している、だから空港ができても大阪湾の水が汚れないし、逆にきれいになるんだとまで言っています。しかし、泉南地域の現在の下水道の普及率はゼロに等しい状況で、あと数年で七〇%も普及するということは、絶対にあり得ないことであります。  このようなまやかしのアセスメントで公害がないということは御免であります。新空港は大規模な埋め立てでありますし、大規模な山林の破壊が予測されます。しかもそれが経済ベースを優先させるという新株式会社法でつくられるということになりますと、公審や環境破壊については、住民にとっては最も厳しい結果を感じるものであります。  以上、主に四点を申し上げまして、財界本位と利益優先、そして住民生活と環境を破壊する新空港建設の強行を直ちに中止していただき、府民、国民に問題点をもっと明らかにしていただく、その再検討をしていただくことを申し上げまして、意見としたいと思います。
  10. 福家俊一

    福家委員長 ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の開陳は終わりました。  この際、休憩いたします。     午後零時四十三分休憩      ――――◇―――――     午後三時二十二分開議
  11. 福家俊一

    福家委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので順次これを許します。田中直紀君。
  12. 田中直紀

    ○田中(直)委員 本日は、お忙しいところ参考人として御出席をいただきまして本当にありがとうございます。午前中は貴重な御意見を拝聴できましたことをうれしく思っております。  私は福島県の出身でございまして、関西空港につきましては余り身近なことではございませんが、現在福島県も空港計画がございます。そういう意味で、国民の一人として一日も早く実現されることを望んでおりますし、また、新しい時代の中にありまして国とそして民間が知恵を出し合って立派な関西空港が完成をすることを期待しておる者でございます。  この法案により、空港建設、管理の事業主体が資本金千二百億円、国が八百億円、地方公共団体が二百億円、そして民間が二百億円の株式会社になっております。かつて奥田試案として事業主体に発想の転換を求められました奥田参考人に、新会社の今後のあり方について二、三お伺いをいたしたいと思っております。  民間活力導入によりまして設立されます新会社は、採算見通しということで先般政府委員の方もお答えになっておりましたが、開港後五年で黒字になろう、また、ほぼ九年後には利益配当ができるのではなかろうかというお答えがございましたけれども、民間の創意をどういうふうに生かしていくかということがこの民間の資本参加にもあらわれるという状況ではなかろうかと思っておりますし、二百億円の資本参加は現状可能であるかどうかという点をお聞きいたしたいと思っております。  また第二に、空港建設、管理は、第一種空港でございますし、公共性の強い事業であることはもちろんでございます。そういう意味で事業計画運輸大臣の認可ということになっておりますし、企業性よりも公共性の方が優位にあるのではなかろうかという会社内容になっておりますが、今後会社の構成そしてまた社長人事等も出てまいります。そういう意味で今後のあり方について、その辺もお聞きをいたしたいと思っております。  また、奥田参考人環境影響調査につきましても長年御専門でやってこられたわけでございまして、そういう意味で関西国際空港計画は時間と、そして費用と、そしてまた技術をかけて行っておるような状況でありますので、この環境調査につきましても十分世界に通用する、誇り得るものではなかろうかというふうな感じがいたすわけでございますが、その環境調査につきましての評価についてお聞きをいたしたいと思います。
  13. 奥田東

    奥田参考人 最初の質問でございますが、私は経済のことは十分よくわかりませんし、そういう採算性の問題については十分な知識を持っておりません。しかしいろいろと聞いたところでは十分採算性があるものと考えております。  それから、これを国家的見地から言いますと、飛行場をつくることは日本経済、特に関西経済に対する波及効果というのは非常に大きいわけでございまして、その飛行場の収入ということからだけで採算性を考えるのでなくて、日本経済全体の発展のためのことを考えればぜひ早く実現すべきであると思っております。  それから、これは常識的に考えられることですけれども、海上につくる飛行場というのは世界で初めてと言ってもいいのではないかと思うのです。したがって、この関西空港が完成をいたしますとそのノーハウというのは非常に大きいわけでして、恐らく外国から同じような飛行場をつくりたいという注文が出てくるのではないか。そうすれば、今度つくる会社の採算は現在のところ計算に入っておりませんけれども、そういう意味で将来、今は予想しないような大きな収益を上げるような事件が今後起こるのではないかということを考えております。  それから第二点でございますけれども、これは直接空港調査会としましていろいろたくさんの委員会をつくって環境影響評価をやってまいりました。これについては外国での事例も随分調査いたしましたけれども、これだけ真剣に中立の態度で調査をした例はございませんので、世界に誇り得る環境影響評価調査ができたものと自負しております。
  14. 田中直紀

    ○田中(直)委員 もう一つつけ加えてお聞きいたしたいのですが、企業性とそして公共性の問題があろうかと思います。そういう意味で、これからの会社運営というものが、運輸大臣は代表取締役、監査役というものを任命するということができる形になっておりますが、今後の機動性というものを考えながら、そしてまた資金調達等の内容におきましても弾力的に対応していくという内容から、いろいろ会社の構成につきまして何か御意見がございましたらお伺いいたしたいと思います。
  15. 奥田東

    奥田参考人 今度の新しい会社につきましては、国もこういう財政状態多額の出資をされるわけですから、当然国の監督権といいますか、そういうことはあるべきだと思いますけれども、できるだけその運営会社の自主性が発揮できるような形で運営されるような形になることが望ましいと思っております。  それから、先ほど一つお答えをしておりませんでしたけれども、関西で十分に資金が集まるかどうかということですが、これはもう私にはわかりません。ただ、経団連の日向さんあたりと個人的に話をする機会がございましたけれども、関西経済界としてはそれはある程度の自信を持っておられるように伺っております。
  16. 田中直紀

    ○田中(直)委員 ありがとうございました。  引き続きまして、岸参考人にお伺いをいたしたいと思います。  新空港建設に当たりましては、地方公共団体、そしてまた地域住民の皆さんの長年の御努力は大変なものであったと思っております。そういう中にありまして、いよいよこの法案によりまして新会社がスタートし空港建設が始まるわけでございますが、まず第一点といたしまして、新空港つくりと地域社会との共存共栄というものにつきまして先ほども御意見がございました。地域整備につきましては、やはり成田の問題もございまして、並行して対応していくべきであるというふうに私も考えております。したがいまして、空港。アクセス、そしてまた周辺の交通網につきまして改めて地域の実情とそして強い要望をお聞かせいただければありがたいと思います。  先般、これも政府説明員のお答えの中でその点につきまして御発言がございましたけれども、道路の整備につきましては、近畿自動車道については相当めどが立ってきておるということでございますが、湾岸道路につきましては、空港開設時までに完全にでき上がるかどうか危ぶまれておるというような実情もあったわけでございまして、そういう面で私自身も非常に心配をいたしております。公共事業関西地方に集中してというわけにはいかないという実情があろうかと思いますし、私の出身の福島県が全然なくなってしまうということでは困るわけですが、せっかくの国際的な空港をつくるということでございますので、国を挙げてバックアップしていかなければいけないというふうに感じておるわけでございます。その辺の要望について御発言をいただきたいというふうに思います。  それから、地方公共団体といたしましても新会社に二百億円の資本参加という新会社の内容になっております。周辺の関係の県といたしましては、御存じのとおり、兵庫県、和歌山県、そして大阪市等地方公共団体があるわけでございますし、近畿圏のいろいろな地域での地域の考え方もあろうかと思いますが、その辺の今後の対応につきまして御意見がございましたらお伺いをいたしたいというふうに思います。  また、昭和五十七年の七月六日に「三点セットに対する回答」として運輸省に御回答をされておる中に、事業進展状況に応じまして環境監視体制を確立するという要望の項目があったわけでございますが、その具体的な案というものがございましたらお聞かせをいただきたいと思います。
  17. 岸昌

    岸参考人 大変力強い御支援をいただきまして心から感謝をいたしたいと思います。  私どもといたしましては、長年の懸案が計画段階からいよいよ実施段階に入ったということにつきまして大変喜ばしく存じておるわけでございますが、初めから関西空港地域社会と共存共栄する空港でなければならない、こういう考え方を持ってまいっておりまして、この点につきましては今後とも貫いてまいりたいと考えております。そのため、地域の意向を十分に反映させる組織を設けるということが必要でございまして、この点政府の方にもお願いをいたしておりますと同時に、先ほども申し上げましたが、会社の役職員には地元の実情に明るい人材を確保する必要がある、このように存じておりまして、大阪府におきましても優秀な職員を派遣する用意がございますので、積極的に御活用をいただきたい、このように考えておる次第でございます。このようにいたしまして、会社の設立準備の段階からその運営段階を通じまして積極的な協力をしてまいりたい、このように考えております。  それから地域整備の問題でございますが、地域整備は基本的には町づくりということでございますので、それぞれの町をどのようにつくっていくかということは、やはりそこに住んでおる人たちの意向というものを尊重してまいらなければならないわけでございまして、地域主体的な創意工夫というものを生かして進めるべきものである、このように考えております。大阪府といたしましては、新空港建設から生まれてまいりますインパクトを最大限に生かしまして、総合的、広域的な見地から積極的に地域整備を進めてまいりたい、このように考えておるわけでございます。  このような考え方に立ちまして、運輸省の三点セットが示されました直後に、五十六年の六月でございますが、大阪府として地域整備の構想というものを公表いたしまして、それから翌年、五十七年の八月には大阪府総合計画を策定いたしましたが、この中におきまして関西空港の設置を前提とした大阪地域地域整備を取り入れておるわけでございます。また昨年九月とことしの二月に大阪府の施策計画を策定いたしまして、その総合計画の考え方をより具体化をいたしておるわけでございます。今後は国土庁で進めておられますいわゆる「すばるプラン」、すなわち新近畿創生計画の中に取り上げていただきまして、さらに広域的な整備の核として新空港を位置づけていただきたい、このように考えておる次第でございます。  先ほど申しましたが、道路といたしましては、第二阪和国道のほかに、近畿自動車道和歌山線の建設が進められておりまして、これにつきましては、日本道路公団事業でございますが、大阪府が委託を受けまして用地買収に当たっておりまして、いろいろ文化財はございますけれども、現在四〇%程度の用地買収を既に行っておりまして、工事の方も昨年度から一部着工を見ておるわけでございます。これは何とか開港までに間に合わせたい、このように考えておる次第でございます。  それから、大阪湾岸道路は、阪神高速道路公団建設をしておるものでございますが、堺から南に延ばしていただきまして、空港までこれを開通さしていただきたい、このように存じておりますが、これはさらに努力を要すると考えておりまして、建設省あるいは阪神高速道路公団に対しまして、今後、強くお願いをしてまいりたいと思っております。  それから、この近畿自動車道和歌山線と空港とを結ぶ連絡道路、これがなくてはこの近畿自動車道和歌山線も効用を発揮しないわけでございますが、これをぜひ空港開港時までに間に合わせたい、これには地元の市町村の協力あるいは土地所有者の協力、いろいろ必要でございますが、国におかれましても、財政事情の非常に厳しい中ではございますが、これに必要な予算の確保につきまして、何分の御配慮をお願い申し上げたいと存じておる次第でございます。  鉄道も、先ほど申し上げましたが、やはり大量輸送、しかも高速に輸送ができる、しかも定時的に運行ができるという意味におきまして、鉄道は非常に重要なアクセスでございまして、環境面からいたしましても、比較的公害の少ない輸送手段である、このように考えておりますので、先ほど申しました南海本線、それから阪和線から空港に引き込む引き込み線につきまして、これは単に国に任しておくというだけではなくて、大阪府といたしましても、第三セクター方式といったような事業主体をも含めましていろいろと調査検討をいたしておるところでございます。さらに、阪和線にいたしましても、南海本線にいたしましても、終点が大阪市の南部でございますので、これと新大阪あるいは大阪駅とを結ぶ最も有効な手段につきましても、いろいろ検討をし、また国鉄にもお願いをいたしておるところでございます。  それから、二百億の出資の問題でございますが、これは地方財政を最もよく承知しておられます自治省とよく相談をいたしまして、自治省のあっせん、調整によって決めてまいりたい、このように考えておる次第でございまして、できるだけ近畿各府県が御協力いただくことが望ましいと考えておりますが、また、指定都市までは出資をお願いしたい、お願いすべきではなかろうかと考えておりますが、市町村の出資は私どもといたしましては予定をいたしておらないわけでございます。  最後に、監視体制の問題でございますが、これは地元の住民からも非常に強い要望のある問題でございますので、ぜひとも有効な、効果的な監視体制というものをつくってまいらなくてはならない、このように考えておるわけでございますが、今どのような形、どのような方法でこの監視体制をつくるかということにつきましていろいろと調査検討を行っておるところでございますので、その調査検討の結果を待って何らかの方法でこれを具体化するように政府にお願いをしてまいりたい、このように存じております。
  18. 田中直紀

    ○田中(直)委員 ありがとうございました。  では、佐藤参考人にお伺いをいたしたいと思います。  関西空港は必要であるという御見解であろうかと思いますが、しかし事業主体公団方式でないと賛成をしかねるというような趣旨の御発言があったかと思います。公団方式でなければ特に安全面といいますか、公共性というものが損なわれるのではなかろうかという御心配ではなかろうかと思いますが、空港建設におきましては空港法の管理下にありますし、飛行といいますか、飛行機を飛ばすかどうかという問題につきましては国の安全基準があるわけでございますし、また滑走路の使用また閉鎖という問題におきましても国の管理下にあるのではなかろうか、こういう状況だと思います。  そういう意味で、建設、管理におきまして物足りなさを感じるということがどの辺から出てきておるのかなということでございますが、この事業主体におきまして国の管理体制というものに要請がございましたらお伺いをいたしたいと思います。
  19. 佐藤洋

    佐藤参考人 ただいまお話がございましたように、空港安全性それからまたその公共性によってさまざまの国の規制あるいは管理が行われるだろうと思います。だからこそ、これは公団という形でやった方がすっきりする。特殊会社ということになりますと、そこにはやはり三者の合同というようなものがございまして、特に空港運営の中で、もしいろいろな問題が起こった場合にどうなるか、そういう責任の所在というようなところで若干の不安を抱くわけです。  特に、この建設過程ということになってまいりますと、やはり空港本体だけではなくて、関西の場合には前島であるとか、あるいはその後背地における地域整備であるとか、あるいは海水の汚染問題であるとか、影響するところが非常に多うございまして、これに対しましてはやはり国が全面的に公共性観点に立って行っていくべきではないかと思うわけです。それは二十年、三十年の遠い将来ということになりますとまたいろいろ事情は変更してくるかもしれませんけれども、過去十年以上の経過等か石かんがみまして、公団責任を持ってやる、そのことが地域社会のコンセンサスを得て全体としてよりスムーズに進んでいくことができるのではないか、こう思っておるわけであります。
  20. 田中直紀

    ○田中(直)委員 どうもありがとうございました。  現在あります大阪国際空港の存廃問題につきまして、各参考人方々にお聞きをしたいと思います。  現在の大阪空港は、関西空港の開港時までに関係地方公共団体の意見を聴取した上でその結論を出すということになっておりますが、現在の状況大阪空港の存廃についていかが考えられておるか、各参考人の皆さんにお聞かせいただきたいと思います。
  21. 福家俊一

    福家委員長 全員一言ずつ御答弁願います。
  22. 奥田東

    奥田参考人 現在伊丹にあります大阪国際空港は、存続するのが望ましいと考えております。
  23. 佐藤洋

    佐藤参考人 これは、最初は伊丹空港の廃止を前提ということになっていたわけでございまするが、地域状況を見ますと現在若干流動的でございます。豊中市長さんなどは、あそこに六千人の人が働いておる、その家族を入れればかなり大きな雇用を確保しているというようなことでございまして、関西国際空港ができた場合に大阪国際空港国内航空網の一環として残存してもよいのではないかというような意見もあるように承っておるわけでございまして、私個人といたしましては、現在この問題に対しては必ずこうでなければならないという意見を持っておりません。
  24. 岸昌

    岸参考人 現空港の存廃についてのお尋ねでございますが、これは先生もよく御承知昭和五十五年六月の公害等調整委員会における調停条項がございまして、関西国際空港の開港時までに決定することとされておりまして、昭和五十九年度、すなわち本年度から国において調査が開始されるということになっておりますので、本府といたしましては、この調査に協力をいたしましてできるだけ早く結論が得られるように努めてまいりたいと思います。その際、地方団体の意見も求められることになるわけでありますが、現段階におきましては府としての意見は申し上げるべき段階ではない、このように考えておる次第でございます。しかし、新空港が開港されましても、規模が縮小されました結果年間十万回の離着陸能力しかございませんので、新空港の開港後も一定期間現空港の供用が必要と考えております。
  25. 水脇一夫

    水脇参考人 申し上げましたように、現空港の廃止が新空港の条件として答申されたわけです。廃止を前提として新空港候補地泉州沖だ、こういう答申であったわけですけれども、先ほどのお話にありますように開港時に存廃を検討する。またさらに、開港時には三千三百メートルの滑走路が一本ですから、実際には存廃問題は結論が出ないだろう、第二期工事、第三期工事というのは、もっと十年、二十年、三十年の先の話になりますから、結局私は現空港周辺住民も新空港周辺住民も苦しめられる、このように判断しておるところです。
  26. 田中直紀

    ○田中(直)委員 貴重な御意見どうもありがとうございました。時間になりましたので終わります。
  27. 福家俊一

    福家委員長 続いて、左近正男君。
  28. 左近正男

    ○左近委員 きょうは、参考人の各先生方大変御苦労さまでございます。貴重な御意見を出していただきまして、本当にありがとうございます。  それでは、岸参考人中心にいたしまして若干の事項について御質問をさせていただきますので、ひとつお許しいただきたいと思います。  私も最近まで地元にずっとおりまして、岸知事ともおつき合いをさせていただいておる仲でございます。したがって、岸知事が五十四年に知事になられてから以降今日まで、空港問題について周辺自治体との対話、地域住民との対話、また労働団体との対話と大変そういう努力を積み重ねられておる、こういう点については私もじかに接しておりまして、高く評価をしておるところでございます。そこで割と地元ではそういうコミュニケーションというか対話が図られつつ今日まで来たのではないか、このように思っておるわけですが、政府法案を決定してから以降、私は少しジグザグがあるのではないか、このように思っております。特に知事は、先ほどの御意見の中で本法案の成立を強く望んでおられますが、私は本心を聞かせていただきたいのです。  空港事業主体について公団と第三セクターの二本立てが株式会社方式になったことについて、知事としては率直にこれを歓迎されておるのか。私はそうではないのじゃないかと思うのです。その点について知事としての率直な考え方なり御意見を承りたいな、このように思いますので、岸参考人のお話を承りたいと思います。
  29. 岸昌

    岸参考人 地元におきまして、対話とコミュニケーションを進めてまいりました私の姿勢を高く評価していただきまして、感謝をいたしておるわけでございますが、私は運輸省が概算要求の際に提出をされました公団と第三セクターの二本立てによる新空港建設管理、こういう方式は今日の厳しい行財政事情のもとでいろいろの点に気を配ったまことに苦心の作である、こういうふうに評価をしてまいったのでございますが、行政改革を至上課題としておられます現内閣のもとで民間活力導入地域の創意工夫の活用によりまして、公共性を確保しながら弾力的、効率的に大規模プロジェクトをつくっていく、そういった一つのモデルケースにしようとする今回の方式はやむを得ないものというふうに考えておる次第でございまして、会社法案の中にできるだけ先ほどの二本立て方式の考え方を取り入れていただくように、政府に対して要望してまいったところでございます。  しかし、法律として成立いたしました以上は、国も地方団体もあるいはまた民間もこの方式の長所をできるだけ生かすように、創意工夫を発揮すべきものであろう、このように考えておる次第でございます。
  30. 左近正男

    ○左近委員 空港本体のこの建設にまで出資なり融資を求められるということについては、空港整備法観点から見ても筋違いではないか、私はこのように判断をいたします。大阪府としてこの空港本体の建設まで出資、融資を求められることによって、一般行政の面でかなりしわ寄せになるのではないか、こういう点が懸念をされているわけですが、岸参考人の御意見を承りたいと思います。
  31. 岸昌

    岸参考人 できもことならば、空港本体とそれから関連した利便施設あるいは機能施設とを会社の中でも区分けをしていただきたい、こういう希望を政府の方に申し上げてまいりましたけれども、それは技術的にいろいろ問題がございまして難しい、しかし、その新会社に対する出資の割合は二本立て案のときの地方団体の割合よりも低くなっておるわけでございますから、観念的には二本立て案の精神が貫かれておるもの、このように考えておる次第でございます。  空港本体へ、大阪府としてどれだけ出資をするかということについては、出資をすべき地方団体の範囲、それから出資の割合あるいは各年度別の出資額等についてまだ決まっておりませんので、それが決まりました上で検討いたしてまいりたいと存じますが、これは長期的なプロジェクトでございまして、将来の府民の資産として残るものでございますから、出資の財源といたしましては、地方債を主体にお願いをしたい、地方債の許可をお願いしたい、このように考えておる次第でございます。     〔委員長退席、浜野委員長代理着席〕  今般、その空港会計を扱う特別会計を設けまして、一般会計と遮断をいたすことといたしましたので、一般会計に対するしわ寄せ、例えば教育とか福祉に対するしわ寄せはできるだけ避けてまいりたい、このように考えておる次第でございます。将来、さらに前島など企業的な空港関連事業と一体的な会計処理を行うことも考えておりまして、そのようにいたしまして、できるだけ一般会計あるいは一般施策への影響を抑制してまいりたいと考えておる次第でございます。
  32. 左近正男

    ○左近委員 地域整備について、国は、成田のようなかさ上げ法は考えていないということを運輸大臣は明言をしておるわけですが、この点について、岸参考人はどういうような考えをお持ちか。  また、今の岸知事の前島建設など、地域整備の構想ではかなりの財源が必要だと思います。空港本体の出資なり融資も及ばざる何倍かのお金が必要になってくるだろう、こういうものについて、大阪府が主体的に行うことについては余りにも大きな財政負担になるのではないか、こういうことを私は大変心配をしておるわけであります。したがって、大阪府として、前島建設地域整備の構想について、財政面からどのような見通しを確実に持っておられるのか、その辺について、岸参考人の御意見を承りたいと思います。
  33. 岸昌

    岸参考人 新空港の設置に伴いまして、道路、鉄道等のアクセス施設の整備のほか、人口増加と、さまざまな社会経済変化が起こってまいりますので、これに対応した広範な地域整備が必要でございますが、財政基盤の脆弱な今日の地方団体では、国による行財政上の助成措置が必要と存じております。このため、成田のような特別立法が望ましいわけでございますが、成田の場合と大阪の場合と、海上空港であるということもございまして、事情が違いますので、特別立法は無理といたしましても、公共事業の優先採択、起債枠の拡充等、国による行財政上の助成措置がとられることを強く要望してまいりたいと存じております。  それから、前島構想に伴います財政負担でございますが、これにつきましては、一応企業会計的に処理をしてまいりたい。例えば起債をいたしまして、それによって造成いたしました土地を必要とするものに売却することによって、この起債を償還をしていく、こういうようなことを考えておるわけでございますので、これにつきましては、会計面におきましては、表面的には大きな事業費になりましても、府の一般施策への影響は極力防げるもの、このように考えておる次第でございます。  そのほか、道路、鉄道、住宅、上下水道等の都市基盤施設の整備も行わなければならないわけでございますが、これは空港がなくても本来、南大阪都市施設の整備はおくれておりますので、やらなければならなかったものも相当あるわけでございますから、すべてが空港関連として新たに増加する施設であるということは言えないわけでございますが、本府もそうでございますし、地元の市町もそうでございますように、非常に厳しい財政状況にございますので、今後、起債枠の拡充でありますとか、その他積極的な財政援助措置がとられるよう、強く要望してまいりたいと存じます。  なお、先ほどお話のございました泉佐野市の財政状況につきましては、大阪府といたしましても、慎重にこれを見詰めておるところでございまして、空港関連事業のために泉佐野市が必要とする新たなる財政支出につきましては、大阪府が立てかえてこれを行うという方法も、市長に約束をいたしておるところでございます。
  34. 左近正男

    ○左近委員 若干、くどいようで恐縮でございますが、これから、地域整備の問題については、国も各省庁、いろいろ協議をしながら地元と相談がされていくことだと思いますが、大阪府としては、大体どれくらいの事業規模を考えておられ、またどれぐらいの財政負担が伴っていくかということについて、今日まで大阪府の内部の段階でいろいろ協議をされているものがございましたら、概括的で結構ですから、考え方についてひとつ意見を聞かしていただきたいと思います。岸参考人、お願いします。
  35. 岸昌

    岸参考人 先ほども申し上げました大阪府の総合計画、それに基づきます施策計画をつくりまして、いろいろ必要な地域整備の考え方は立てておるわけでございますが、これを実施するに当たりまして、具体的に幾らかかるか、そしてこれを各年度にどのように振り当てていくかということにつきましての計画を今検討中でございまして、近く作成の上、これを発表したい、このように存じております。
  36. 左近正男

    ○左近委員 それでは、きょうはそれ以上はお聞きしないことにします。  次に、岸参考人にまたお聞きをいたしますが、まず空港をつくる場合、当面一番大きな問題は、土取りの問題であり、土取りの場所の問題だと思います。私どもは、かねてからこの点について大変心配をしておるわけですが、これは和歌山から取る、あるいは淡路島から取るというような意見も今ございますが、大阪府としては主体的に公有地に限定をしていく、土取り場所については、行政としては公有地に限定をするというような強い意思を持っておられるやに伺っておりますが、その点、間違いないものかどうか、岸参考人の御意見を承りたいと思います。
  37. 岸昌

    岸参考人 土取りの場所でございますが、これは大阪府が単独で決めるものではございませんで、現在、運輸省中心といたしまして、環境でありますとか、地質でありますとか等の調査実施いたしておるところでございまして、今後関西国際空港株式会社が設立されました後、このような運輸省調査を踏まえました上で株式会社が決めるか運輸省が決めるか、まだそれも決まっておりませんが、環境影響経済性、跡地利用の可能性等を総合的に勘案いたしまして決定されるものと承知をいたしております。  土取り地の選定に当たりましては、公有地が占める面積の割合がなるべく大きい地域候補地として選定するという考え方が昭和五十六年五月に運輸省から示されました「関西国際空港環境影響評価案」、いわゆる三点セットの中で述べられておるわけでございますが、これは土地投機などにより特定の者に不当な利益を独占させない、こういう趣旨のものであると理解をいたしております。現在におきましても、この考え方は変更されていないものと理解をいたしておる次第でございます。大阪府といたしましては、今行われております調査結果に基づきまして、今申し上げましたような考え方が生かされるよう最大限の努力を払い、土砂採取地の選定が適正に行われますよう関係方面に働きかけてまいる所存でございます。
  38. 左近正男

    ○左近委員 この土取り場所問題について、今岸参考人から知事としての立場というか見解として、極力最大限公有地に限定する、こういうような考え方を出していただいたのですが、私どもは国に対してもそういう立場を主張しておるところでございますので、地元の知事としてひとつ公有地に限定する、こういうような立場で行政を行っていただくことを強く期待をいたしております。  そこで、これらの公有地について、岸知事としては土取りの後どういうような考え方で活用をされていかれようとするのか、その辺の考え方ございましたらお聞かせを願いたいと思います。岸参考人、お願いします。
  39. 岸昌

    岸参考人 土取り跡地の活用につきましては、それぞれ地元の市あるいは町におきましていろいろ計画を立てておりますし、大阪府といたしましても、先ほどの総合計画におきまして一般的、概括的には計画を立てておりますが、何分とこから土を取るのかということがまだ決まっておりません段階でございますので、どういうふうにこれを跡地利用していくかということはまだ申し上げかねる段階にございます。     〔浜野委員長代理退席、委員長着席〕
  40. 左近正男

    ○左近委員 それでは、公有地問題に限定するということでひとつ知事の方でも努力をしていただきたいと思います。  そこで、本法律では、公害なり漁業補償などについては、先ほどの岸参考人の御意見では大阪府としても人も出しあるいはいろいろと対応を十分やっていきたいということを地元知事としての考えとして提議がされたわけですが、法律上は第一義的には株式会社責任になるわけでございます。したがって、こういう公害の問題なりあるいは膨大な漁業補償などの問題について第一義的に株式会社責任になる、そういうようなあり方でうまくいくかどうか、すべて株式会社責任を持たせてうまくいくかどうか、私は大変疑問でありますし、またこの点で地元とのかなり不安感もあるし、トラブルが起こるのではないか、こういうことを私は心配をしておるわけですが、岸参考人としてはどのような見解をお持ちでしょうか。
  41. 岸昌

    岸参考人 関西国際空港株式会社は、会社という形態はとっておりますが、第一種空港建設という極めて公共性の高い事業を行うものでございますので、空港の基本計画、毎年度の事業計画等の事業運営の基本的事項につきましては国が責任を持って監督するという法案の内容になっておると理解をいたしております。したがいまして、お尋ねのございました公害対策でありますとかあるいは漁業補償につきましても、会社はその公共的な使命にかんがみまして適切に対応していただけるものと考えておりますが、先ほども申し上げましたように、大阪府が会社地元市町村あるいは地元の漁業者、その他の団体との間に立ちまして積極的に連絡調整を図っていく、そういう大阪府の機能が非常に重要になってまいるもの、このように考えておるわけでありまして、そういう重要な機能大阪府といたしましては的確に精力的に果たしてまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  42. 左近正男

    ○左近委員 今の岸参考人の御意見立場を踏まえて、先ほどの午前中の御意見の中で協議組織というものを設けるべきである、こういうことを言っておられるわけですが、この会社事業運営に当たり地方公共団体の最初め地域の代表者などで構成する協議組織を設けるべきである。このことは私どもとしても賛成でございます。  そこで、この法案の中で出ておるそういう条項、これは協議組織なんかないわけでありまして、それと今岸参考人が言われました協議組織、これとは法的にはというかどういうような関係で位置づけるべきだというお考えをお持ちなのかどうか、その辺について参考人としてのお考えがございましたら、提議していただきたい、このように思っております。
  43. 岸昌

    岸参考人 地域社会と共存共栄する空港でなければならないというのが、私どもが初めから主張してまいった考え方でございます。したがいまして、それを現実にあらわす意味におきまして、人も出しますが、同時にお話しのような協議組織を設けまして関係住民、関係地方団体の首長が入りまして地元意見会社運営に反映してまいりたい、このように考えております。  御承知のように、阪神高速道路公団には管理委員会というのが法律で定められておりまして、この法律の中におきまして、これこれの事項は管理委員会の議を経なければならない、こういう仕組みに相なっておるわけでございます。私どもも今度の空港株式会社につきましても、このような組織を法律の中に響くべきである、こういう主張をいたしてまいったわけでございますが、運輸省におかれましては、法制局ともいろいろ協議調整をされました結果、株式会社性格上いろいろと問題があるということで現在の法案の中には入っておりませんけれども、定款で定めるなりあるいは大阪府の条例で定めるなり、今後研究をいたしまして十分実効の上がるような協議組織にしてまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  44. 左近正男

    ○左近委員 あと一点だけ岸参考人にお聞きします。  今の協議会問題については、地元知事の立場としては法的にも明確にしてもらいたいぐらいだ、こういうような強い意向を持っておられるということを十分承らしていただきました。  そこで、先ほど田中委員からも少し出ました環境監視体制の問題についても、効力ある有効なものに位置づけていくためにはこの法律の中に明確に位置づけをしていかなければならないんじゃないか、こういうような感じを強くするわけですが、岸参考人としてはどのような見解をお持ちですか。
  45. 岸昌

    岸参考人 環境アセスメントは、将来の環境に対する影響の予測をもとにいたしました評価でございますので、その評価に当たりまして、前提とされました対策がそのとおりに行われたかどうか、また、予測された結果と現実とが違っていないかどうか等につきましてこれを監視し、チェックをするシステムがぜひとも必要であると考えておりまして、有効な監視体制のあり方について、現在調査検討中でございます。  法案の中にこれを位置づけてはどうかという御意見でございますが、それも一案がとは存じますが、何分まだ調査検討中の段階でございますので、具体的な成案を得次第、事業主体及び国に対し有効な方策がとられるよう要望し、また働きかけてまいりたい、このように存じております。
  46. 左近正男

    ○左近委員 奥田参考人にお聞きをいたします。  先生の方では、特に長年にわたって環境影響調査の問題あるいは地域整備等の問題について御尽力をいただいた点について、高く評価をするものであります。  そこで、先ほど先生がおっしゃいましたように、この計画段階における環境影響評価については、客観的であり、中立的であり、かなり世界的にも名立たる環境影響調査だ、こういうことでお聞きをして、私どもも一定の判断をできるところでございますが、私は、空港建設に当たりまして一番大きな問題は土取りの問題だろうと思うのです。この土取りの環境影響については評価をされておらない、この中に入れておらないということを承っておりますが、その点について事実であるかどうか。また、この大きな土取りの環境影響について、先生としてはどのような問題点があるという判断をされておられるのかどうか、この点についてお教えをいただきたいと思います。よろしくお願いします。
  47. 奥田東

    奥田参考人 今、土取りの環境影響評価につきましては、第三港湾建設局の方からの委託で、我々の空港調査会としまして、場所がまだ決まっておりませんので、本当の調査はやっておらないわけです。  ただ、場所を決めたときにはどういう調査をすべきかということは、委託を受けて調査をいたしまして、そして一種のマニュアル的なものはつくってございます。決まったときにはこういう調査をすべきであるということは決めてあります。それで、現在場所が決まっていないので、正式といいますか、場所を決めての調査はやっていないという意味でございまして、その調査する準備はできております。
  48. 左近正男

    ○左近委員 そこで、奥田先生に重ねてお聞きをするわけですが、これから建設に入りますと、この土取りによる環境破壊というものが非常に大きな問題になるのではないかと思うのですね。これについて政府の見解は、株式会社主体的に環境影響調査をするということでございますが、先生がずっと手がけてこられた体験から見て、事業者が主体的にやることが果たしてできるのかどうか、もっと大がかりな、やはり国の調査として総合的に環境影響調査をやるべきではないか、こういう考え方を私は持っておるわけですが、先生の御見解はいかがでしょうか。
  49. 奥田東

    奥田参考人 制度的には、事業主体ができて、その事業主体環境影響評価をやるべきなんですけれども、今の先生のおっしゃるように、もっと広い立場でやることが本当は望ましいことだと考えております。  ただ、それに対しては、調査するとなれば相当な費用もかかることでございますししますので、やはり事業主体が決まってから事業主体がどうされるのか、その出方を我々としては見守りたいと思っておりまして、さっき申し上げた意味は、事業主体の方から依頼があれば調査会としては調査する用意があるという意味で申し上げた次第であります。
  50. 左近正男

    ○左近委員 それでは、時間が来ましたので、これで終わります。各参考人先生方、どうもありがとうございました。
  51. 福家俊一

    福家委員長 次に、近江巳記夫君。
  52. 近江巳記夫

    ○近江委員 きょうは参考人の皆さん方には、大変貴重な御意見、ありがとうございました。  それでは、参考人の皆さんから先ほどいろいろお聞かせをいただきましたが、公共性という点に関しまして非常に懸念されておられるわけでございます。まず公共性の確保ということ、これは本当にだれしもが心配する問題でございます。  この点につきまして先ほどからもいろいろと出ておるわけでございますが、佐藤先生の質疑が余りなかったようでございますので、公共性の確保という点につきまして、先生も非常に強い懸念を表明されたわけでございますが、もう一度その点につきましてお伺いをしたいと思います。
  53. 佐藤洋

    佐藤参考人 先ほども申しましたように、国際空港というのは、国内ばかりではなくて国際的に非常に重硬な施設だろうかと思うわけであります。しかも、膨大な資金長期建設が必要でございまして、そこには非常にたくさんの人、さまざまの人が往来するわけでございます。道路公団あるいは都市整備公団というようなものもございますけれども、そういうような公団に比較しても、その公共性、危機管理、それから、先ほど申しましたような総合的な安全保障、対外的な外交等々を考えまして、その質的な公共性というのは非常に大きいというふうに考えておるわけであります。  特殊会社というのがございますけれども、それは中小企業育成の会社であるとか東北開発であるとかあるいは日本航空とかそういうものが幾つかございますけれども、そういうものと一つ一つ比較いたしましても、私は、その公共性は比較にならないほど国家的な重要性を持っている施設である、こういうふうに考えておるわけであります。したがいまして、単なる経済的な観点だけではなくて、もっと大きくその社会性公共性国際性について国が全責任を持ってやるべき最高の施設ではないか、こういうふうに思っておるわけであります。
  54. 近江巳記夫

    ○近江委員 岸知事は先ほどから、監視体制の問題であるとか、具体的にかなりおっしゃっておるわけでございますが、この公共性の確保という点につきまして、本来は、第一種空港でございますから、国が全責任を持ってやっていくわけでございます。しかし、大阪府といたしましても、国に対する強い要望、また府としてのそうした努力、これは当然のことでございまして、公共性の確保という点におきまして、監視体制の話も出でおるわけでございますが、今後国に対する要望なりまた府としてのお考えなりをもう一度お伺いしたいと思います。
  55. 岸昌

    岸参考人 先ほどもお答え申し上げましたように、株式会社という形態はとっておりますものの、今回の関西国際空港株式会社は第一種空港という極めて公共性の高い事業実施する主体でございます。したがいまして、先ほどもお答え申し上げましたような法律上のいろいろな国の監督措置がございます。そのほかに、大阪府といたしましても役員にあるいは職員に人を派遣いたしまして大阪府の意向を反映してまいりたい、また協議組織を設けまして地方団体及び地元住民の意向を十分に反映してまいりたい、このように考えておるところでございますが、さらに会社地域社会地元市町村あるいは漁業団体等との間に立ちまして、大阪府が公共団体としての立場におきまして十分連絡調整を図り、公共性の確保に遺憾のないようにしてまいりたい、このように考えておる次第でございます。  なお、佐藤先生もお答えになりましたが、航空管制というような極めて高度の部分につきましては、公共性の高い部分につきましては、これは国の責任において政府の職員が管理運営に当たられるもの、このように理解をいたしております。
  56. 近江巳記夫

    ○近江委員 非常に長い、十年余りの歳月が今日まで経過しておるわけでございますが、地域社会合意のもとに新空港建設するということでございますが、これはもう当然プロジェクトの進め方の大原則であるわけでございますけれども、先ほど水脇参考人ですか、実際地元においては非常に反対がある、そういうお話があったわけでございます。  そこで、知事さんにお伺いしたいと思いますが、この地元合意を形成するためにどういう手続、手順というものを尽くしてこられたのか、その経過についてひとつお伺いしたいと思います。
  57. 岸昌

    岸参考人 先ほども地元との対話、特にコミュニケーションの形成につきまして努力をいたしてまいりましたことを評価していただいたわけでございますが、昭和五十六年五月に三点セット運輸省から示されまして以来、地元における説明会の開催でありますとか、一週間にわたりまして延べ百三十五人の意見発表者による公聴会の開催でございますとか、こういった長期にわたる公聴会はこれまでの大型プロジェクトにつきましては初めてである、こういうふうに考えておりますが、そういうことをいたしまして、運輸省から発表されました空港関係資料はこれを全住民に全面的に公開をいたしてまいりまして、だれでもこれを見れるような状態におきまして府民への情報提供を積極的に行ってまいったわけでございます。特に、地域を代表されます泉州八市五町の首長の御意見につきましても十分にこれを伺いまして、五十七年七月に六項目につきまして回答いたします前には、全首長と個別にひざを交えて話し合いをいたしましていろいろ御意見なり御要望を承った次第でございます。  さらに、このたび二月十日の関係閣僚会議で了承をされました空港計画につきましても、重ねて地元泉州の八市五町の意見を求めたわけでございます。これは一人一人ではございませんでしたが、泉南と泉北とに分けまして、二回にわたりやはりひざを交えてお話を伺いまして、地域整備計画をぜひつくってほしい、整備してほしい、国及び府による財政援助措置をぜひお願いしたい、あるいは先ほど来お話のあります環境監視体制をぜひ設けてほしい、あるいは連絡協議会を設けるべきである、こういったような御意見中心でございましたので、これを取りまとめまして四月三日に国に対して回答をいたした次第でございます。
  58. 近江巳記夫

    ○近江委員 住民の中にはいろいろと、先ほど水脇参考人ですか、おっしゃっておられたように根強いものがある、このように思うわけでございますが、一応そういう手続を踏んでこられた。そこで、次にお聞きしたいのは、この三点セット協議におきまして環境アセスメントにつきましておおむね妥当である、こういう結論を出されておるわけでございますが、この結論に至るまでどういう手続を踏んでこられたか、同じくひとつ環境アセスメントにつきまして知事さんと奥田先生にお伺いしたいと思います。
  59. 岸昌

    岸参考人 環境アセスメントにつきましては、まず大阪府庁の中に専門家をもって構成する委員会を設けまして、ここで各専門の立場から十分に検討をいたしました。それから、関西における環境問題の学識経験者をもって組織をいたします環境問題検討委員会を設けまして、そこにお諮りをいたしまして諸先生方の御意見も伺いました上で、おおむね環境基準として大阪府が定めました基準に合致をしている、府民の健康には心配がない、こういう結論に到達した次第でございます。
  60. 奥田東

    奥田参考人 空港調査会としましては、環境影響評価をいたしましてそれを運輸省に報告いたしました。運輸省の方は、それを材料とされましてさらに検討を加えられて三点セットをつくられて各府県に示されたということでありまして、その後のことには調査会としては関与しておりません。ただ、大阪府の方から依頼がございましたので、調査会一つの部屋を決めまして、そこにいろいろな調査資料を並べまして公開をいたしました。それで、これは最後にでき上がった調査書ではなくて、いろいろなそれまで調査書をつくるに必要な基本資料も含めて公開をいたしました。そして、そこでコピーサービスもいたしまして、希望者にはコピーをして差し上げるということをいたしたわけですが、予想以上に非常にたくさんの方が見に来られまして、かなり公開の実は上がったように私としては考えた次第でございます。
  61. 近江巳記夫

    ○近江委員 大きなプロジェクトの場合、影響というのは非常に大きいわけでございまして、かつて万博が開催されたときも地域におきましてはいろいろな影響というものが出てきたわけでございます。そこで、影響という点からいきますと、一つ地域の雇用であるとか、物価であるとか、地価であるとかあるいは地場産業の問題等につきまして今後はさまざまな影響が出てくるということが考えられるわけでございますが、これは何といいましても直接府がそうした影響に対して対応していかなければならないわけでございますけれども、これに対して今後どういうような影響なりまた対応があるか、こういう点については知事さんとしてはお考えになっていらっしゃいますか。
  62. 岸昌

    岸参考人 新空港のインパクトを活用いたしまして地域整備のおくれております泉州方面に活力を取り戻してまいりたい、こういう考え方を持っておりますが、お話しのように、雇用の問題あるいは地場産業との調整の問題あるいは農業との関係、漁業との関係等につきまして、いろいろと影響がございますことは御指摘のとおりでございます。  雇用の問題につきましては、雇用創出政策会議におきまして種々御検討をいただいておりまして、最初の計画、これは大分縮小されてまいりましたが、当初の計画に基づきますと、約七十万人の雇用創出効果がある、こういうような提言をいただいておるところでございます。  それから、地場産業との関係につきましては、地場産業振興センターをつくるなど、地場産業の御意見を伺いながら、将来の地場産業のあり方につきまして、いろいろと検討をいたしておるところでございます。  農業につきましては、先般農林水産業のあり方につきまして、消費者も含めた委員会におきまして、いろいろ検討をしていただきまして、空港影響と農業との関係につきまして、将来の農業振興をどのように進めていくかということにつきまして提言をいただいておりますので、この実現に努力をしてまいりたいと考えております。  漁業につきましては、漁業の関係者の皆さんと緊密な連絡のもとにお話し合いを進めておりますが、できるだけ公害の少ないような方法をとりますとともに、さらに、将来漁業振興につきまして、大阪府としても積極的に努力をしてまいりたいということで、これは漁業者の皆様方が参加をしていただいた形で、いろいろと将来の大阪湾の漁業振興策を今取りまとめ中でございます。漁業振興センターの設置でございますとか、あるいは魚礁の設置でございますとか、あるいは稚魚の放流の問題でございますとか、いろいろ漁業者御自身の御意見を十分に承りまして、積極的に府としても対応してまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  63. 近江巳記夫

    ○近江委員 アクセスの問題でございますが、先般本委員会におきまして、私もまた同僚の正木委員からも、特に湾岸道路の問題につきまして、非常に、何といいますか、開港までには間に合わないというような、こういう答弁があったものでございますから、その点を諦めたわけでございますけれども、いまだにそれは結論に至っておらないわけでございますが、先ほど知事さんもおっしゃっておられたわけでございますけれども、政府の考え方というのは、近畿自動車道でいけるだろう、したがって湾岸道路の問題についてはいろいろな諸問題が残っておるし、間に合わないけれども、しかし空港開港には支障がないこういう判断は政府はしているわけですね。しかし、実際、地元として一番その辺はシビアにお考えになっていらっしゃると思うのです。今のままでいけば開港時には間に合わないということは十分予想されるわけですが、知事さんとして湾岸道路の状況というものについて、そういう進捗状況でいいかどうか、もう一度ひとつお伺いしたいと思います。どうしても開通してもらわなきゃならないのか、政府が言うように近畿自動車道で当面いけるのか、いかがですか。
  64. 岸昌

    岸参考人 関西空港の開港に当たりましては、成田のようなアクセスの不便さというものは、ぜひこれは避けたいというのが私の基本的な姿勢でございまして、近畿自動車道和歌山線はぜひとも間に合うように開通をしていただきたい、このように願っておりますが、それにいたしましても、空港島とさらに連絡橋を経て近畿自動車道和歌山線を結ぶ連絡道路が必要でございまして、これにつきまして国の公共事業の予算をぜひとも確保していただきたい、このように要望をいたしておるところでございます。  しかし、やはりさらにベターな方法といたしましては、湾岸道路につきましても現在堺まで来ておりまして、泉大津まで調査ができ上っておるわけでございますので、もう少し延ばせばこれが空港まで届くわけでございますので、ぜひとも湾岸道路につきましても、空港開港時までに延長をしていただきたい、こういう強い要望を大阪府としては持っておる次第でございます。
  65. 近江巳記夫

    ○近江委員 我々もそれは強く政府に働きかけていきたいと思っておりますが、府としても強い要望、また同時に、やはりそういう働きかけといいますか、そういうことが非常に大事じゃないかと思うのですね。知事さんもこれは非常に必要であるということでございますし、ひとつ大阪府は大阪府の立場として努力を一層強めるべきではないか、このように考える次第でございます。  それから地域整備の問題でございますが、大阪府は総合計画というものをお立てになって、あの地域はたしか産業文化ゾーンというそういう地域設定をされていらっしゃるわけですね。これとこの地域整備の問題でございますが、これはどういう整合性といいますか、どういうお考えに立っていらっしゃるわけですか。この点をひとつ岸さんからお伺いします。     〔委員長退席、鹿野委員長代理着席〕
  66. 岸昌

    岸参考人 総合計画におきまして南大阪地域を産業文化ゾーンといたしておりますのは、これは泉州沖五キロに新しい国際空港が設けられるということを前提といたしまして、総合計画において定めたものでございます。  空港建設に伴う経済効果といたしましては、建設の投資によります産業雇用に対する波及効果は当然ございますが、空港機能を支える流通関係、ホテル、会議場、飲食関係等のサービス産業の立地による波及効果もかなり期待されるところと存じております。  さらに、空港開港後、国際空港機能を生かしました先端技術産業の立地でありますとか、地場産業の高度化が期待されるところでございますので、その基盤整備のための広域的、かつ計画的な地域整備が重要となっております。大阪府におきましては、総合計画の中で産業文化ゾーンと位置づけますほかに、「大阪産業ビジョン側」などにおきまして、特に南大阪地域の産業振興策について種々提言を受けておるところでございまして、先ほど来お話のありました交通体系の整備を図りながら、コスモポリス構想など丘陵部、臨海部、既成市街地それぞれの地域の実情に応じた地域整備を進めてまいりたい、このように考えておるところでございます。
  67. 近江巳記夫

    ○近江委員 地域整備の問題についていわゆるかさ上げがないわけですね。これは何回も出ておるわけですが、これはやはり私、非常に問題だと思うのですね。府としても政府とかなりの折衝をなさっていると思うのですけれども、今の段階では明確にがさ上げはしないと運輸大臣も答弁しておるわけですが、これは大蔵、自治、いろいろ関係各省協議を持たなければならないわけでございますけれども、こういう政府の姿勢でやむを得ないという感じですか、いかがなんですか。
  68. 岸昌

    岸参考人 かさ上げ立法ということになりますと、これは各地域にそれぞれ影響があるわけでございまして、プロジェクトがつくられるたびにかさ上げ立法をつくっていくかどうか、こういう政策の問題もあるわけでございますし、成田の場合と関西空港の場合と根本的に違いますのは、やはり公害問題でございます。公害のないということを前提にいたしまして、海上五キロに空港島をつくることといたしておりますので、そういった意味におきましても、成田と同じような形でのかさ上げ立法は困難ではなかろうか、このように考えておる次第でございます。
  69. 近江巳記夫

    ○近江委員 知事さんは政府委員みたいな感じで……。  いずれにしましても財政の厳しい状況というのは、私もまあまあそれなりに知っておるわけでございますので、今後ひとつ私たちも政府に言っていきたいと思いますし、大阪府としても、財源問題というのは非常に大きな問題ですから、実施団体として遠慮なさらずにとにかく困りますということで皆さんも応援してくださいよ、こういう答弁をしてもらうべきだと思うのです。  それで現空港の問題でございますけれども、現在いわゆる整備機構というのがあるわけでございますが、今回の空港の特殊法人設立ということも考えまして、いわゆるスクラップ・アンド・ビルドということで、今後どうなるかという結論はまだ出てないわけです。そういう点でそれは象徴的な一つのことでございまして、地元としては新空港ばかり目が奪われて、現空港のそういう騒音問題を初めとして周辺対策の整備ということが関心が薄れるのじゃないか、そういうことを非常に心配しているわけです。これは大阪府としても当然のことであると思いますけれども、そういう現地住民の声を反映して、今後この辺に絶対に手抜かりがあってはならぬと思うのですが、その辺は大阪府としても政府と一体となってやってもらわなければならぬわけでございます。その点につきまして、知事さんからお伺いしたいと思います。
  70. 岸昌

    岸参考人 今度の新空港大阪空港公害問題、環境問題を解決するというところから出発しているわけでございまして、大阪空港は言うなれば新空港の原点であると言っても決して言い過ぎではないと思うわけでございます。そういう意味におきまして、また先ほど来お話が出ておりますように、新空港開港後も相当期間現空港を使用しなければならない状況でございますので、環境整備、公害問題の解決につきましてはさらに努力をしてまいらなくてはならない。周辺整備機構の統廃合ということは現在の行政改革状況の中におきましてやむを得ないところかとも存じますが、私といたしましては、そのために大阪空港環境対策に、あるいは周辺整備対策にいささかも後退があってはならないということと、関係市町村の意見を十分に聞くことということを運輸省に申し入れておるところでございます。運輸省におきましても、この問題を検討する委員会を近く発足させるやに聞いておりますので、その中に大阪府の職員も参加することになっておりますので、大阪府もそこに参加をいたしまして、あるべき解決策を見出してまいりたい、このように存じておる次第でございます。
  71. 近江巳記夫

    ○近江委員 さっき佐藤先生は、請願空港であるという考えが中央にあれば問題であるということをおっしゃっておりました。今財政の非常に厳しい折でございますから、この関西空港も確かに非常に大きな問題になったわけでございまして、そういういろいろな背景を考えますと、私も先生がおっしゃるようなそういうニュアンスを感じるわけです。そういう点で、この法案もこのように出されて、国がそれだけの出資もする、責任を持ってやる、こういうことでございますし、そういう請願空港という考えは政府も払拭させなければならぬ。これは私も厳しく言っていきたい、このように思っておるわけです。  そういう点で、本体がいよいよ進もうとしておるわけでございますし、地元としては設置について知事さんも非常に努力されてきたわけですし、こういう請願空港的な考えということになってきますと遠慮の姿勢ということになってくるわけですから、もう少し厚かましいというか、厚かましいじゃなしに、当然という姿勢で一面は押してもらわないといけないと思うのですが、その点につきまして、今後言うべきことはどんどん言ってもらう、これは大事だと思うのです。その点を知事さんからお伺いして、もう時間がありませんので終わりたいと思います。
  72. 岸昌

    岸参考人 私は、関西空港は決して請願空港ではない、こういうふうに思っております。いろいろ応援をしていただきましてありがとうございますが、今後とも地域整備の問題あるいは環境の問題その他地元の意思の反映の問題等につきまして、言うべきことは知事として府民のためにどしどしと言ってまいりたい、こういう考えておりますので、よろしく御支援のほどを心からお願い申し上げます。
  73. 近江巳記夫

    ○近江委員 終わります。
  74. 鹿野道彦

    ○鹿野委員長代理 中野寛成君。
  75. 中野寛成

    中野(寛)委員 きょうは本当にありがとうございます。民社党の中野寛成でございます。時間がわずか三十分でございますので、私も岸知事を中心に質問させていただきたいと思います。  さて、予定されております関西国際空港、決して大阪のためのものというだけではもちろんないと思います。関西、ひいては広く西日本の将来計画の中で極めて大きな意味を持つものではないだろうか、このように思うわけであります。近隣府県等々との協力関係、連携、そういうことも含めまして、単に大阪府の知事としてだけではなくて、より一層広い視点からこの空港を位置づけて考えていかなければいけないのではないだろうか、こう思いますが、このことについて、基本的な位置づけについて岸知事はいかにお考えでございましょうか。
  76. 岸昌

    岸参考人 関西空港につきましては、日本で唯一の二十四時間運航のできるナショナルプロジェクトであるという一面を持っております反面、地域社会と共存共栄するという性格のもとに地域社会との関係も非常に濃厚でございますが、この地域社会と申しますのは、大阪だけにとどまらず。近畿各地あるいは西日本の全体に影響がある、このように考えておる次第でございまして、先ほども申しましたように、国土庁が今立案をしておられます「すばるプラン」、新近畿創生計画の中におきまして、広域交通体系の中核としてこの関西空港を位置づけられますように国土庁に対しましても要望いたしておるところでございます。西日本中心としての都市としてそういった広域的な観点から関係府県との協力、調整に十分力を尽くしてまいりたい、このように考えております。
  77. 中野寛成

    中野(寛)委員 それからもう一つ、この性格づけでございますが、単に人を運ぶということだけではなくて、現在の先端技術産業の発展その他から考えますと、ある意味では貨物輸送の占める比重も大変大きくなっていくのではないだろうか、こう考えます。そういたしますと、空港性格、その利用の形態、それに伴います空港のあり方、こういうことが十分配慮されなければいけないであろう、こう思っておりますが、現空港との使い分けも含めましてどういうふうにお考えでございましょうか。
  78. 岸昌

    岸参考人 新空港は人を運ぶだけのものではないということにつきましては同感でございまして、人、物、情報の拠点として関西空港を活用してまいらなくてはならない、このように考えております。特に物、貨物につきましては、現在の大阪空港は時間制限がございますので十分に利用できない。これが二十四時間運航ができるということになりますと、国内、国外の貨物が大量にここへ運ばれることになろうと思います。また、現在大阪で生産されました製品をわざわざ成田まで運んで海外へ輸出している、あるいはまた海外から輸入するものを成田から大阪まで運んでおるというものがございますが、そういったものがこの新空港に運ばれてくることが予想されるわけでございます。     〔鹿野委員長代理退席、委員長着席〕  さらに、情報の拠点としてこの空港は非常に重要性を帯びてくると思います。人が参るということは、それに伴って最新のまた高度の情報がやってまいる。あるいはまた世界のファッションといった問題についても、一番早くこの関西空港を通じて日本に入ってくることが予想されますので、従来、大阪並びに関西を含めて、情報の発進機能が非常におくれていたというふうに言われておるわけでございますが、関西空港一つの軸として、大阪並びに関西の情報発進機能もさらに高めてまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  79. 中野寛成

    中野(寛)委員 今日に至るまで岸知事が、地域住民の皆さんとの話し合いを含めまして新空港の持つ意味を積極的にとらえて努力された、そのことに私は心から敬意を表するものであります。  その過程の中にあって、当初この泉州の各市長は、公害問題に対する懸念から新空港の設置には反対であった、各市議会も反対の決議をするというふうなことがあったわけでありますが、現在、その形は全く変わってきたと私も思っております。ただ、やむを得ないという立場になっているのか、積極的に空港を活用したいという立場をとっているのか、地域の意思はどこにあるのかということをあわせて岸知事にお伺いをしたいと思うわけであります。  先ほど水脇参考人から、極論としておっしゃられたのであろうかと私は思ったわけでありますが、この空港に賛成しているのは財界と大阪府庁の幹部だけだというふうにおっしゃられましたけれども、私自身は決してそうではない、より一層大きな見地から多くの人たちに望まれている、私はこのようにも思います。知事はその地元意思について、格段努力をされましたけれども、現在どういうふうにその地元意思を把握しておられますか。
  80. 岸昌

    岸参考人 ただいま御指摘がございましたように、私が知事に就任いたしました当時は、大阪府議会もそうでございますが、泉州の八市五町のうち一市一町を除きまして全部反対決議がございました。それをこれまで五年間にわたりましていろいろ話し合いを進めてまいりました結果、反対決議はすべて要望決議に変わっておるのが実情でございます。また、先ほど申し上げましたように市町村の責任者であります首長ともひざを交えて懇談をいたしてまいりましたが、この首長のお考えも大きく変わっておりまして、地域整備がまだ不明確である、地域整備がさらに空港によって積極的に充実されるならば大いに歓迎をしたいというのが本音ではなかろうか、このように思っているわけでございますが、私がひざを交えて話し合った印象といたしましては、やむを得ないというよりはもっと積極的なお考え方のように思うわけでございます。ただ、地域整備について、今の政府計画には非常に不満がある、もっと地域整備に力を入れてもらいたいというのが偽らぬ市町村長の心境ではなかろうか、このように受けとめておる次第でございます。
  81. 中野寛成

    中野(寛)委員 その地域整備でございますが、どちらかといえば、大阪府を含めて近畿圏というのは今日までの開発は北に偏っていたというふうな声がよく聞かれるわけであります。泉州地域大阪の中でもそういう意味では整備開発がおくれた地域だと言われてまいりました。そういう意味では、新空港の設置を機会に期待も大変大きいと思うわけでありますが、先ほど来のるる質疑応答がなされておりました中でも、例えば、運輸省として地域のかさ上げを考えていない、また特別立法は考えていない、いろいろ言われております。しかし、泉州の各市町、自治体の財政事情は大変厳しい地域でもございます。そういう意味では、国及び大阪府に対する期待、要望というのは大変強いものがある、このように私も考えます。また、地域発展の核としてこの南大阪の湾岸整備事業、これがぜひとも進められなければならないわけでありますが、その進捗状況、今後の見通しについてもお聞かせをいただきたいと思います。
  82. 岸昌

    岸参考人 地域整備に対する期待が大きいということは御指摘のとおりでございまして、地域整備についての計画が非常に抽象的ではないか、絵にかいたもちではないか、こういうような御意見もあるわけでございますので、総合計画において、産業、文化ゾーンとして位置づけておりますが、これをさらに具体化してまいりたい、関係市町村の意見も伺いながら具体化を図らなければならないと考えており、今その作業を進めておるところでございます。この中におきましては、交通体系の整備を契機として都市基盤の整備を強力に進めてまいりまして、産業、生活、文化、レクリエーション機能などが調和した魅力のある都市環境を形成してまいりたい、このように考えておる次第でございます。  さらに、今までおくれておりました南北軸の強化を図ることに当たりましても、空港アクセスの果たす機能というものは非常に重要なものがある、このように考えております。また、先ほどもお答え申し上げましたが、産業面につきましては「大阪産業ビジョン側」でありますとか「農林漁業振興ビジョン」をいただいておりますので、その早期具体化を図ってまいりたいと考えております。  そういった場合に、市町村の財政力が脆弱でございますので、大阪府としても十分配慮をしてまいりたいと考えておりますが、さらに起債の優先的な配分でありますとかその他の公共事業の補助金の採択率のアップ、そういった国の財政的な援助につきましても、これはぜひとも強力にお願いをしてまいらなければならない、このように考えておる次第でございます。  前島構想、いわゆる南大阪湾岸整備事業でございますが、この進捗状況と見通しということでございます。ここ数年、島タイプを前提として調査を進めてまいったわけでございますが、昨年の秋になりまして、これは連絡橋との絡みがございましたが、沖出し案の提言をいただきました。そこで現在、島タイプの利害得失と沖出しタイプの利害得失とにつきまして、環境アセスメントを含めて調査検討をいたしておるところでございまして、五十九年度中にはその結論が得られるものと考えておりますので、その結論を得次第どちらかに決めて、これを事業として進めてまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  83. 中野寛成

    中野(寛)委員 次に、新会社への出資についてお聞きいたしたいと思いますが、先ほども御答弁で、府県及び指定都市については考えているが市町村については考えていないということでございました。しかし、地元の市によっては出資をしたいという希望を持っている市もあるというふうに聞いているわけであります。そういう希望を持っているところをわざわざ除外する必要もないのではないか、むしろそれは意欲のあらわれとして大いに歓迎してもいいのではないかという感じも持ちますし、また一方、この出資によって大阪府財政への影響というのはどうなるんだろうか。一般会計から持ち出すということではないようでございますけれども、これらのことにつきましてお伺いいたしたいと思います。
  84. 岸昌

    岸参考人 出資をいたします地方公共団体の範囲あるいは出資の割合につきましては、現在のところまだ決まっておりません。地方財政の事情に一番精通しておられます自治省のあっせんにより決めていただきたい、このように願っておるところでございます。したがいまして、市町村の出資につきまして希望しておるところまで断るというほどの考えはございませんが、それは自治省の調整にまつといたしまして、私といたしましては市町村までお願いしなくても何とか地方団体の間で話がつくのではなかろうか、こういうふうに考えておるという意味でございます。  それから、大阪府の財政への影響でございますが、出資につきましては、これは起債をお願いしたいと考えております。そうして起債、これは年度割で元利を償還してまいるわけでございますが、その間の償還につきましては、現在の企業局の特別会計の中で何とかやり繰りができる、したがって、一般会計へのしわ寄せは避けることができるのではなかろうか、こういう見通しを持っております。また、低利の資金をできるだけ導入することによりまして、将来配当が予想されるわけでございますので、その配当内の金利で起債なり借り入れを行うことができました場合には、これはむしろ黒字になってくるこういうふうに理解をいたしておるわけでございます。会社に対する出資あるいはその他の貸付金に関する限りは一般会計へのしわ寄せはない、このように考えておる次第でございます。
  85. 中野寛成

    中野(寛)委員 次に、いろいろな公害問題を初めといたしまして諸問題が起こってくる、そのときにこれを解決する手段として、やはり危惧の念を持ちますのは、どこが責任を持つのかということであります。岸氏もそうでありますが、私も現在の大阪空港のそばに住んでいるわけでありますが、その大阪空港の拡張いたしましたときのことをどうしても思い出します。六者協定、大阪府、大阪市、大阪商工会議所、兵庫県、神戸市、神戸商工会議所、そこが後の問題については、アフターケアについては責任を持つからという協定があったにもかかわらずそれが守られなかったということが、実は現空港公害対策について解決をおくらせるというふうなこともあったわけであります。今度の場合は明確に会社が設立されるわけでありますから、そういう一つの協定という抽象的なものではないわけで、責任所在はより明らかではあろうかと思いますけれども、しかし会社がやるのか、大阪府がやるのか、国がやるのかさっぱりわからぬ、何か持ち込んでも結局振られて空回りをさせられるというふうなことがないだろうかということはどうしても地域住民の皆さんは危惧の念をお持ちだろうと思います。そういう意味で地元の参加した協議組織を設けること等についての要望も出されておりますけれども、このことについて責任分担を明確にしておくということはどうしても必要であります。そのことについてどうお考えでしょうか。
  86. 岸昌

    岸参考人 ただいま大阪空港に関する六者協定のお話がございましたが、六者協定の推移につきましては私もまことに遺憾に存じております。これが今日の大阪空港環境問題の不信感というものをもたらしておる、このように考えております。  しかし今度の関西国際空港株式会社の場合は、特殊法人という事業主体でございますので、この事業主体が単一に責任を負う、これは明確でございます。ただ、公害問題につきまして会社が十分に対策を講じないというような場合には、先ほどの監視体制もございますが、国の監督責任に基づきまして国の監督権の発動のもとに会社をして十分な環境対策をやらせる、こういうことをいたしたいと思っております。そうして大阪府はその会社地元会社と国の間に立ちまして、そういった監督権の行使あるいは地元の意向の実現のためにあっせん調整の労をとってまいりたい、このように考えております。大阪府は直接の公害問題の責任者ということではなくて、その責任区分というものを明確にしてまいりたい、このように考えております。
  87. 中野寛成

    中野(寛)委員 それから地元の参加した協議組織なんですが、どういう構成メンバーを知事は想定をしておられるでしょうか。
  88. 岸昌

    岸参考人 ただいま検討中でございまして、まだメンバーまで考えるには至っておりません。
  89. 中野寛成

    中野(寛)委員 個人名ではなくて、どういう人たちが入るべきだとお考えでしょうか。
  90. 岸昌

    岸参考人 地方団体の代表者でありますとか、あるいは地元を代表する方々はぜひ入ってもらわなければならないと考えておりますが、そういう抽象的な構成につきましてもまだ検討中でございます。
  91. 中野寛成

    中野(寛)委員 次に、この新会社の人事でございますけれども、大阪府としても優秀な人材を派遣する用意がある、こういうふうに言われております。私は例えば社長につきましては、成田空港の場合、公団ですけれども、総裁がもう既に十年ほどの間に四人も五人もかわっておる。結局それでは継続した責任体制というものが持てない、こういうふうにも思うわけです。私は、この会社方式というのを新しい試みとしてやるからには、むしろそれを将来の一つのひな形として、モデルケースとして成功させなければならない、こう思うのです。そういう意味ではこの人事面でも、まだ飛行機が飛び立つまで計画でも九年あるのですから、その九年間できるだけ初代社長はちゃんと責任を持てるというくらいの能力のある若い人がなっていくということでなければならぬと思うわけでありますけれども、そのことについての御希望、そしてまた大阪府が人材を派遣する場合にはどういう分野を担当しようと想定されているのかをお聞かせいただきたいと思います。
  92. 岸昌

    岸参考人 新会社の大事につきましては、これは高度の政治問題でございまして、大阪府知事が答弁すべき筋合いのものではない、このように存じます。  大阪府といたしましては、大阪府の最優秀の職員を派遣いたしまして、特に会社地元との連絡調整につきまして府民を代表して遺憾のないようにいたしてまいりたい、このように考えております。
  93. 中野寛成

    中野(寛)委員 知事が発言する立場にないということでございますが、お立場はよくわかりますが、むしろ知事としての御希望をお持ちであっても当然ではないだろうか。今知事としての、また大阪府としての御希望をお聞きしたわけであります。
  94. 岸昌

    岸参考人 希望といたしましては、大阪の実情に明るい人、そうしてこの会社を設立いたしました――お話がございましたように、将来のモデルケースにしていく、こういうお話もございましたので、そういうモデルケースになし得るような新しいパイオニアとしての業績を上げることができるような人が望ましい、このように考えております。
  95. 中野寛成

    中野(寛)委員 時間がありませんから、最後に現在の大阪空港の存廃についてお聞きしたいと思いますが、先ほどの御答弁では、新空港が開港されてもまだしばらくは現在の空港が必要であろう、これは必然的な、現実論としてのお答えとしては全くそのとおりだと思います。  ただ、ここでお尋ねしたいのは、例えば現在の空港に関連して公害訴訟が行われましたが、あの訴訟団の皆さんもその過程において現在の空港を廃止しろという主張をなされたことはないわけであります。私も地元でいろいろ担当いたしましたけれども、最近の周辺都市例えば十一市協、そういう中でも存続してもらいたいという声が一層強くなっております。結論的なことを知事がおっしゃりにくいとすれば、そういう現在の周辺都市、周辺住民の雰囲気をどういうふうに認識されておられるかをお尋ねし、できれば知事の現在のお気持ちをお聞かせいただきたいと思います。
  96. 福家俊一

    福家委員長 お気持ちは遠慮なく言ってくださって結構です。
  97. 岸昌

    岸参考人 現空港の存廃問題につきましては、先ほど申しましたように公害等調整委員会の調停条項になっておりまして、これは地元の訴訟団も運輸省も国も、両方が原告、被告の立場で拘束されるわけでございますので、私どもといたしましてはこの拘束された公の手続を踏んで解決していただかなければならない、このように存じておるわけでございまして、現段階におきまして大阪府としての意見を申し上げることは差し控えさせていただきたい、このように存じております。  ただいまお話のございましたように十一市協に加盟しております市長さん方の御意向、兵庫県側は私は存じませんが大阪府側の市長さん方の御意向、それから公害訴訟もやりました周辺の住民のリーダー的なお立場にある方の御意向も私は十分に聞いて承知をいたしておるわけでございますが、この方々も私には率直に意見を言っていただいておりますけれども、私がこういった公の場において申し上げますとやはりいろいろと御迷惑がかかるのではないかと思いますので、それを申し上げることもこの際は差し控えさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いをいたします。
  98. 中野寛成

    中野(寛)委員 お願いされましたのでこれ以上お尋ねをいたしませんが、ここにいらっしゃる方々は、周辺の市長さんを含めて、知事のお気持ちは現空港の存続にあるということは暗にわかられたろうと思います。これ以上聞きません。  さてもう一つ、現在の空港の周辺整備につきましては周辺整備機構があるわけであります。これにつきましては、行革関連で他との統合等を図るということに合されておるわけであります。新会社の設立の見返りとしてそのようなことが考えられていると思いますが、まだまだ問題が山積している今日、この周辺整備機構、他との統合等を図るということになったとしたら果たしてその機能は十分果たされるだろうか、この心配が一つ残ります。このことについて知事としてのお考えはいかがでございましょうか。
  99. 岸昌

    岸参考人 周辺整備機構が行政改革の一環といたしまして統合されるということは今の政府の方針としてやむを得ないところと存じますが、先ほども申し上げましたようにこれには二つの条件を付しておるわけでございます。一つは現空港の周辺対策が現在よりも後退することがあってはならないということ、もう一つは周辺市町村の十一市協の意見を十分聞き、また大阪府の意見も十分聞いて適切に対処してもらいたいという二点につきまして運輸大臣に申し入れをいたしておるところでございます。その結果といたしまして、先ほどもお答えいたしましたようにこのあり方を検討する委員会を近く発足されるということでございますので、この委員会の中に大阪府といたしましても参加をいたしまして、適切、妥当な結論が得られるように努力してまいりたいと存じております。
  100. 中野寛成

    中野(寛)委員 奥田先生、最後に一点だけお聞かせいただきたいと思います。  先生は、関西文化学術研究都市、そしてこの関西空港、これを私のライフワークとするのだ、こう常々おっしゃっているようにお聞きしているわけでありますけれども、その中でのこの関西空港を取り巻く先生のお考えになっておられます夢といいますか希望につきまして最後にお聞かせいただければありがたいと思います。
  101. 奥田東

    奥田参考人 国際交流ということが今後ますます大切であり、また盛んになるものと思います。その一つの窓口として空港というものが大切だ。これは皆さん方よく御存じでございますが、この国際交流ということは学問の社会においても非常に大切でございまして、昔はいろいろな学会の機関誌に発表された論文を読むということで外国の業績を知ることができたわけですけれども、今は学問の進歩が非常に早くなりまして、機関誌に出たものを読んでいるのでは既に遅いわけでして、それでは過去の業績しかわからない。どうしても学者が一緒になって話し合うあるいは研究室を直接訪問して何をやっているかを見る、そういうことが大事なわけです。そういうことで学問の社会でも交流ということが非常に重要になってきているわけですが、そういう交流の拠点として今の関西文化学術研究都市というものを考えております。  そういうことで、近くにそういう交流の窓口になるような国際飛行場ができるということは相互に非常に役立つのではないかということで、私として大変うれしいことでありますし、そういう意味で私も努力をしている一人でございます。
  102. 中野寛成

    中野(寛)委員 どうもありがとうございました。終わります。
  103. 福家俊一

    福家委員長 梅田勝君。
  104. 梅田勝

    ○梅田委員 日本共産党・革新共同の梅田勝でございます。本日は、関西国際空港株式会社法案の問題につきまして遠路お越しをいただきまして、各参考人から重要な御意見を賜りましてありがとうございました。  この法案は非常に重要なものでありまして、第一種空港国際空港というものは本来国の責任において建設し管理運営をしていく、そういう国の責任が今回は放棄される、株式会社として運営されるという問題、あるいは全国的な鉄道網、それから航空路等々の総合的な公共輸送機関との関連におきましての問題、あるいは将来どのような需要があるか、それとの関連におきましての採算性、あるいは安全性の問題、現空港と併用して使用ということになりますと管制上の問題等々非常に安全上の問題も生まれてくるということで、議論すべき問題点が非常に多いわけであります。  したがって、私どもはこれは十分に慎重審議をしなくてはならないということで、当委員会におきましても委員審議を尽くすという立場で、一時間に限定しないで十分に議論をしようじゃないかと私どもは主張いたしておりますし、あるいは各関係委員会との連合審査環境委員会と一緒にやるとか、いろいろ問題がございます。あるいは、あしたは現地調査をやるわけでございますが、委員派遣で行くわけでありますけれども、できれば現地の公聴会も十分にやるべきではなかろうかと考えておりますし、最後には総理大臣に対しての質問もやりたい、かように私どもは考えまして、非常に重要なものでありますから、慎重審議が必要だというように考えているわけであります。  そこで、さらに先ほど来各参考人の御意見を承っておりますと、地域整備の問題あるいは環境保全の問題あるいは空港建設自体の問題、それぞれにおきましてかなり問題があるという御意見も賜ったわけでありますが、まず最初に私がお尋ねを申し上げたいのは、水脇参考人に、一番大事な住民合意の問題ですね。空港建設環境保全、地域整備、これは切っても切れないいわゆる三点セットだということが言われてきたわけでありますが、特別にがさ上げの法案もない、手当てはないということで、現地では非常に不安が強いということで、泉佐野市の例も聞かせてもらったわけでありますが、そちらの方におきましては起債の限度額もぎりぎりだ。その上鉄道建設負担四十億と言われますと、これはもう到底できない。こういうことになりますと、全部がセットであるわけでありますから、一つだけだとなるとこれは一体どうなるのかということで、私どももこれは重大だと思うわけでございますが、そのあたり実際に大阪ではどうなっているのか。先ほどの岸知事の御発言によりますと、公聴会も相当やっておるという話でございますが、私ども聞いておりますのには、かなりの方が反対の御意見を述べられておるというように承っておりますが、いかがでございましょうか。
  105. 水脇一夫

    水脇参考人 こういうプロジェクトは住民との合意が非常に大事だというぐあいに思います。当初運輸省などは百八十億円近くも調査費を使った。そういう意味では、三点セットが出るまでには地元の議会に対する運輸省からの直接の説明などがありましたけれども、昭和五十六年三点セットが出されて以降、この説明に運輸省地元を訪れるということがないという点で、現在、大阪府と地元の首長、議会がこの問題についての協議をしておりますが、肝心な点になりますと、運輸省計画でありますから大阪府としても地元に対して十分な資料説明もできない、こういう不十分さなんかが残っております。  先ほど知事も申し上げられましたが、公聴会、異例の百数十人の意見を伺った、こういうことは確かにやられました。このうち四〇%近くの人がこの空港計画は疑問だという発言をなされております。しかし、御存じのように、公聴会については聞きっ放しだ。その質問に対して住民に納得できるだけの材料が示されておらない、こういう点が現在の状況であります。これはかなり形式的な手続だけが先行しておる。住民と本当に生の対話というのがほとんどやられておらないというのが現状であります。  とりわけ、今日まで昭和四十三年以降新空港が論議されて、一定の情報などを私たちが手に入れながら府や国に対して疑問を投げかけてきましたけれども、最終的な段階事業主体となりますと、わずか三カ月で結論が出て法案になる、こういうことでは、今までの意見は違っても一定の対話の積み上げというのがこの三カ月間の事業主体で大きく破壊をされる。こういうような現状があって、先ほど来るる賛成の方々意見の中にもその点での不安というのが強調されておったというぐあいに思います。そういう点では、住民合意というのはかなり形式的に述べられた点はありましたけれども、本質的な対話というものがなされておらないということは明確に言えるのではないかというぐあいに思います。
  106. 梅田勝

    ○梅田委員 私ども見ておりましても、確かに事業主体が、当初運輸省が概算要求のときに出した二本立ての方式から急速変わっている。公聴会をやられた段階とは事情が大分変わってきているという点で、なぜこんなに急ぐのかという問題、あるいは法案提出の直前におきましても総理大臣から意見が出たということで、利益の配当につきましても変更が加えられたというようなことがありまして疑問に感じておるわけでありますが、この新しい特殊会社方式で果たして公共性が確保できるのかどうか一番心配だと思うのですが、その点はいかがでしょうか。水脇参考人にお願いします。
  107. 水脇一夫

    水脇参考人 空港問題については、公共性経済性、そして安全性公害問題も含めて安全性、この三つの柱というのはかなり大きな問題でありますけれども、今回の場合、国自身が国際空港をつくっていくという財政力の問題、これに大きな障害があって、大蔵省と運輸省の間ではかなり深い矛盾などがあったように伺っておりますが、結果として安全性公共性の部分に経済性が加わってきた、いわゆる営利を目的とする空港、ですから、非常に安上がりの空港つくりということでは、公害問題も含めまして安全性公共性に対する手抜きということを非常に心配をしているところなんです。  例えば土取りの問題で、今地元で土取りかどうかという点では、先ほどの答弁の中では、公共用地からの土取りということが当初運輸省からも非常に強調されておりました。しかし、経済性、安くつく空港ということで最近では地元でクローズアップされておるのは南海電鉄の資本が買い占めている土地ですが、ここから土取りをするのが非常に安くつくという形で、阪南町も含めまして、そういう民間資本のところから土取りをするという話が非常に先行しておる。南海電鉄にすれば、そうすれば土が売れるし、残った土地を開発して売ることができる。こういうような形で、非常に経済性が先行しまして、地元公共性安全性については非常に薄くなってきているという危惧を強く持っておるところであります。
  108. 梅田勝

    ○梅田委員 先ほど水脇参考人の御意見を伺っておりまして、今度の新しい空港は非常に不確定要素が多いということで不安なんだというように言われておりまして、大変だなと思うわけであります。何しろ広大な海面を埋め立てるわけであります。水深が二十メートルというふうに聞いておるわけでありまして、潮流もあることだし、相当土木技術は発達しておるやに聞いておりますが、さまざまな工法をもってしても果たして使用にたえ得る空港ができるのかどうか。もし不測の事態が起こって工期が予定どおりに上がらない、利子がかさんでくるといったような問題が出てきました場合には財政負担というものは非常に大きくなるというように予想されるわけであります。  先ほど小脇さんのお話の中に、大阪府が造成されました工業用地、これが八十ヘクタール、甲子園の五十倍分の工業用地が「不等沈下、使えず広場に」したということが十三日の朝日新聞の夕刊に大きく出ておりまして、私もこれを見ましてびっくりしたのでありますが、莫大なお金を投じまして、最高は一メートルほど沈んじゃって、でこぼこでどうにもならぬ、今後三十年間物が建てられない、地盤固定に三十年かかるというような記事が出ておりまして、先ほどもお話があったわけでありますが、もし新空港がそういう事態になれば大変だ。もっともこれは産業廃棄物なんかを投下して埋め立てたところで、そういう不等沈下が起こってもおかしくはないというような、そういう用地だと思うのでありますが、しかし、当初はこれは工業用団地にするつもりで造成をした、しかし、売れない、使えない、こういう問題が出ている。  私どもがいろいろの調査資料を拝見いたしました中でも、新しい空港で不等沈下が起こる可能性があるのかないのかという問題でありますが、ある資料によりますと、工事中の沈下でも八・四メートルある、開港後百年間に三・六メートル、合計十二メートルの沈下が予想されるというデータがあるのですね。そうなると、海面より相当高いものを建てて沈んでいく。滑走路のような非常に微妙な施設がでこぼこだとなると、一本ではいけないのじゃないか。しょっちゅう修理という問題が出てきたときにやはり二本の滑走路が必要だ、あるいは海上でありますから、横風があるというので、横風用の滑走路も必要だ、しかし、これはなかなかできない、とりあえず当面は一本だ、そういうことでありますから、当然現空港との併用ということも考え方としては出てきて、今議論になっておるのじゃないかと思うのでありますが、そうなると、これは欠陥空港じゃないかというような感じがするわけであります。  でき上がったものは欠陥があっても、請け負った大会社は、建設会社なりは、あるいは商品を納入をした業者はもうかるでしょう、これは。しかし、事業をやった新会社はどうなるのか。その場合、地方自治体も出資するわけでありますから、膨大な赤字が出た場合、事業が行き詰まった場合、だれが責任をとるかという点で不安も大きいのじゃないかと思いますが、地元ではどのような感じで受けとめておられますか、お伺いしたいと思います。水脇参考人にお願いします。
  109. 水脇一夫

    水脇参考人 先ほど御意見を申し上げたとおりでありますが、運輸省自身、当初私どもが運輸省との話し合いの中では、これほど大きな規模の空港は要らないのではないか、こういう話をしたときに、実は沈下の問題があって、二本の滑走路が要るんだ、こういうようなことを今まで言ってきたわけであります。そういう点から、現時点では大きく変わっておりますし、そういうことでは運輸省計画段階地元に説明をしたことと、現在の進めようとしている空港計画というのは物すごく大きく変化して地元住民を欺いてきたという一つの根拠にもなろうかと思います。  そういう点と、泉州沖というのは申し上げましたように、水深二十メートルですね。しかも、ヘドロが非常に多いところなんであります。また、これが逆に漁業、魚の卵を産んだり、漁業を発展させるという点では非常に有意義な層になっておるわけですけれども、こういうところに五百ヘクタール、さらには最終的には千二百ヘクタールの埋立工事というのは、短時間、わずか五年や七年の間でやるということになれば、大変な欠陥を招くのではないかということは私たちも絶えず考えておりますし、たしか第二次答申のときに、浮体工法か埋立工法かのときにこの論議がかなり行われたというように思っておりますし、国会の中でもその点が追求されたと思います。私は、そういう点ではもっと専門的にこの問題を煮詰めていただきたい、住民にもそのことを明らかにしていただきたいというのが率直な気持ちでございます。
  110. 梅田勝

    ○梅田委員 岸参考人にお伺いいたしますが、これからやるのは、もしこの法案が通ればもっと慎重な方法で空港建設がやられるのじゃないかと思いますけれども、大阪の先ほどの例ですね、八十ヘクタールの工業用団地が沈んでしまったという問題は、確かに産業廃棄物、均等のものでないものを投下したということがありましょうが、これは二十年もかかってやられた、岸知事の時代事業を始めたのではないと思うのでありますが、これは大阪としてどのようなことでこんなことになったということを、もしお考えがあれば、新しく空港建設をすることでもありますので参考にしたいと思いますので、ちょっと御意見をお伺いをしたいと思います。
  111. 岸昌

    岸参考人 御指摘の埋立地は泉北七―三区の問題だと思うのでございますが、これはただいま御指摘がございましたように、私が知事就任以前から行われておる問題でございまして、私の聞いておりますところでは、当初から工業団地にする考えではなくて産業廃棄物を捨てるという前提で、上に重いものを建てないという前提で、地盤工事、基礎工事等もしてない、こういうふうに承知をいたしております。
  112. 梅田勝

    ○梅田委員 実際は売りに出そうと思ったが売れないというのが実態だと思うのでありまして、海を埋め立てるわけでありますから大変な工事なんで、ポートアイランドにおきましても現在どんどん沈下しておりまして、階段を一つつけ加えないと上がれないというところも現に発生をしている。あそこの場合は建築物がちゃんと建つという前提でやったそうでありますが、そういった問題も出ている。空港ですから安全性というのが非常に大事でありますから、そういう点ではいいかげんなことでは困るわけであります。ですから、そういう点で住民の不安もあるわけでありますから、慎重にやる必要があるのじゃないかと思います。  これと関連をいたしまして、環境保全の問題で水脇参考人並びに奥田参考人にお伺いをしたいわけでありますが、瀬戸内海環境保全特別措置法にのっとればこれ以上の埋め立てはやめるべきではないかというのが私どもの考え方であり、また大方の意見もそういうことでありますが、なぜこれを強行しようとされるのかということで、法案提出の問題につきまして私ども疑問を持っておるわけであります。大変な環境破壊になるのではないかと思うわけであります。  今日まで確かに多額調査費を投入して環境影響調査をやられておりますけれども、例えば空港島なら空港島の調査、前島は前島の調査、それから湾岸道路は湾岸道路の調査ということで、それぞれ別々にやられておるわけでありますが、地域の住民にすれば、あっちはこうなり、こっちがこうなり、山はどんどん削られるということで、そこに住んでいる住民にしてみますと相当の環境の激変だというように感ずるわけであります。そういう点で総合的な環境影響調査というものは今日までやられていないのではないか、かように思うわけてありますが、その点で水脇参考人、また奥田参考人の御意見を承りたいと思います。
  113. 水脇一夫

    水脇参考人 先ほども申しましたが、大阪湾の南部というのは瀬戸内海の中で漁獲高、一平方キロにとれるお魚の量が一番多いよい漁場であります。それが都市部の大阪府民の台所に大きな影響を与えている、こういう地域でありますが、この地域を埋め立てるということについては、瀬戸内の例の環境保全法で強く規制をされている。内陸部から排出する下水道などの浄化のために島をつくるあるいは埋め立ててつくる、こういうのは公害の防止に役立つからということで認められているというのが実情であります。ですから、そういう点では現空港の廃止ということが既に後退いたしまして開港時に解決ということであります、そういうことは現空港公害対策にも全然ならない。あるいは新空港というのは内陸部の公害を減らすための事業でも全くないわけですから、もう明らかに瀬戸内環境法の精神から逸脱した全く新しいものをつくるという点で許せないというぐあいに思っております。  総合アセスメントですけれども、運輸省等との話の中では、アセスメントというのは事業主体がするものだからということで、総合的にするということについては今日までなかなか明確な回答をいただいておりません。私たち住民は空港からの排気ガスだけを吸うあるいは道路ができて道路からの排気ガスだけを吸うという状態でないわけですから、総合的なアセスメントというものが住民にとっては非常に大事でありますが、このことが今保障されておらないということであります。  さらに突っ込んで申し上げますれば、ああいうところは水深二十メートルを埋め立てする、しかもそれを十メートルまで高めるわけですから三十メートル近くの高さに土を積むわけです。土取りの候補地になっている和泉山脈というのは非常に岩盤の多いところなので、五百ヘクタールに匹敵するほどの広さの山を削らなければ新空港に埋め立てるだけの土が出てこない。こういう状態なので土取りの環境破壊というのも広大な面積にわたるという点で非常に深刻な問題なのですが、これがまだなされていない段階でゴーのサインが出ている。私の意見としては、アセスメントというのはやはりもっと根本的に調査をして、これだけの環境破壊がある、だからこれはだめだということも含めたアセスメント、これが純粋なアセスメントでありまして、つくるためのパスポートを取るようなアセスメント、これは全くの住民だましであります。  伺うところによりますと、アメリカのニューヨークのケネディ空港の拡張のアセスメントは、アメリカの科学アカデミーという第三者機関がやられて、これは大変な環境破壊だということで中止になっておるわけです。ところが新空港に関するアセスメントについては、つくるためのパスポートを取るためにアセスメントが使われているという点で極めて不満だ。また疑問の目で眺めているということも申し上げたいと思います。
  114. 奥田東

    奥田参考人 瀬戸内法との関係でございますけれども、私ども瀬戸内法があるということは承知しておりますが、空港をつくるということの国家的な重要性ということで、やはり判断の基準が変わってくるのではないかと私は思っております。ですから、法律があるから何もできないということでなくて、さらに重要な問題があれば、場合によれば法律の解釈も変えるべきじゃないかというのが私の基本的な考え方でございます。  それから今の総合ですけれども、本来アセスメントというのは可能な範囲で総合的にやるべきだ、調査会で今度の場合に大気汚染あるいは騒音、そういうものについてはこの空港だけでなくて、やはり交通量もある仮定は設けておりますけれども、これだけの交通量がふえるとかそのための騒音、自動車から排気ガスがどれだけ出るとか、そういうものは全部アセスメントの中に含めて計算をやっております。ただ、先ほど申し上げたように、土取りにつきましては土取りの場所が決まっておりませんものですから、土取り地を含めた総合のアセスメントはやっておりません。
  115. 梅田勝

    ○梅田委員 時間がありませんので、なお多く問題を聞きたいのでありますが、最後に一つだけお聞きしておきたいと思うのです。  総合的な環境アセスメントはやられていない、しかし事は進行する、これを非常に心配するわけであります。先ほど水脇参考人もおっしゃっておりましたが、泉南の地域の公共下水道の整備状況が非常に悪いということであります。それとの関連で一億五千万立米の土砂が採取される、その跡地に例えば宅地造成という問題が出された場合に、下は整備されてないのに上にまた家が建つということになりますと事は重大です。そこらあたりで不安があると思うのでありますが、最後にその点についての御意見。それから佐藤先生にはお聞きしておりませんので、こういった全体の環境問題につきましての不安につきまして、御意見がございましたら最後に一言おっしゃっていただきたいと思います。
  116. 佐藤洋

    佐藤参考人 私は環境に関する技術的な問題は余り明らかでない、むしろ奥田先生の方が詳しいと思うのでありますが、確かにこれから起こり得る環境問題というのは相当たくさんあるだろうと思っておるわけであります。現在いろいろ予想されていることだけではなくて、今後ともいろいろ出てくるだろうと思うのです。したがいまして、私といたしましては、そういう問題について多くの学者あるいは関係者がその都度できる限りの討議をやって、そしてその上で合意を得るという方法をやるべきであろう、そういうことがこれから非常に重要であろうと思っております。
  117. 梅田勝

    ○梅田委員 どうもありがとうございました。
  118. 福家俊一

    福家委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。  関西国際空港が一日も早く完成するよう祈念するとともに、地元選出の議員諸君は当然でありますが、私自身も大阪の旧制中学出身でありますので、大阪は第二の故郷であります。全面的に委員長、協力したいと存じます。委員会を代表して厚くお礼を申し上げます。  この際、暫時休憩いたします。     午後五時五十八分休憩      ――――◇―――――     午後七時九分開議
  119. 福家俊一

    福家委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  陸運、海運、航空及び日本国有鉄道経営に関する件等について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小林恒人君。
  120. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 大変遅くなってからの委員会でございまして、大臣におかれましてもまだ夕食もとっておらないという、こんなことでありますし、また関係の皆さん方におかれましても、大変遅い時間帯で恐縮だと思いますけれども、当面取り急ぐ課題が山積をいたしております折から、御容赦を賜って、若干の時間、質問をさせていただきたいと思います。  けさほどの読売新聞の一面トップ記事でも取り上げられておりますように、国鉄再建法に基づく第二次の特定地方交通線廃止問題、既に三十三線区が選定をされてそれぞれ知事の意見書が求められている段階だと思いますが、こうした一連の国鉄赤字解消策の中で、再建法の中では四本の大きな柱を立てて随分議論をいたしました。  私どもが当時、昭和五十五年政府提案をいたしました再建法に反対をしたそもそもの理由は、このまま四本の柱を実施していったとしても、国鉄の今日的な赤字の抜本的なところにまで到達をしていないところから、国鉄は黒字に転換をするということは全く考えられないということを訴え続けて反対をしたわけであります。しかし、五十五年秋に再建法が成立をし、翌年五十六年には法に基づいて経営改善計画が示されたわけですけれども、今日昭和五十九年、この三年間に法に基づいて進められてきた主として四本の主要課題がどのような進捗状況を示しているのか、運輸省の御見解をまず先にお伺いをしたいと思います。
  121. 永光洋一

    ○永光政府委員 経営改善計画につきましては、先生御案内のように、策定をいたしまして三年たっております。収入の方は、貨物輸送量の大幅減あるいは旅客輸送量の停滞によります収入の伸び悩みという問題が非常に大きな問題としてございまして、改善計画におきましては徹底的な合理化、三十五万人体制ということを基本にいたしまして、地方ローカル線対策の推進等減量化を推進して、国鉄が経営努力で改善ができる幹線の分野においては何とかめどを立て、ローカル線についてもいろいろ、完全に収支を好転させるわけにはまいりませんが、国の助成等も含めてローカル線対策を推進して、ローカル線部門についても収支の改善を図る。さらに特定人件費問題については、これは六十年まであるいはその時点において何とか国の措置等を含めながら別途処理をするということでいろいろ計画を進めておる段階でありまして、確かに収入の落ち込みというものを、合理化の一層の徹底によってこの計画が目指すところの目的なり目標を達成しようということで現在努力をいたしておるところでございます。
  122. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 それでは、もう少し具体的にお伺いをしたいと思いますけれども、例えば緊急十項目という課題がございます。この中で正確に遂行されたものは何々ですか、項目別にお答えをいただきたいと思います。
  123. 竹内哲夫

    ○竹内説明員 緊急十項目につきましては、御案内のとおり、職場規律の問題、それから新規採用の原則停止の問題、それから設備投資の抑制の問題、それから貨物営業の合理化の問題、それから地方交通線の整理の促進、乗車証制度、運賃の適正化、兼職議員の問題、それから資産処分の促進等による積極的増収、それから自動車、工場、病院の合理化等、これが十項目でございます。  この中で、職場規律につきましては、既にこの三月で第五回目の総点検を行ったところでございます。近々大臣にも御報告を申し上げます。それから、新規採用につきましては、原則停止を五十八年度、さらに五十九年度ということで続けておりまして、これは予定どおりということでございます。それから、設備投資につきましても、五十八年度、五十七年度に対しまして三千三百億円、それから五十九年度予算におきまして五十八年度に対しましてさらに千三百九十六億円抑制をいたしてございます。それから、貨物につきましては、五十七年十一月のダイヤ改正で六十年度までに予定をいたしました八百駅戸ヤード体制というものを繰り上げて実施したわけでございますけれども、その後の貨物営業の状況からさらにこれを深度化いたしまして、五十九年二月の一日に拠点間直行輸送体制への全面転換を行いまして、四百六十駅体制を図ったわけでございます。それから、地方交通線につきましては、現在五十八年度で第一次、五十九年度宋で第二次ということでそれぞれ転換計画を立てたわけでございますけれども、これはかなり予定よりおくれている部分でございます。それから、乗車証制度につきましては、五十七年の十二月一日から見直しを行ったところでございます。それから、運賃につきましては、安易な改定を行わないこととするとともに、他の輸送機関との競合関係、それから線区別原価等を考慮して十分それらを配慮しつつ定めるということでございましたけれども、五十八年度は運賃改定を見送り、五十九年度におきまして先ほど運輸大臣から御認可をいただきました全国一律運賃制の見直しということで、東京、大阪大都市圏におきます運賃については一部据え置きあるいは抑制をいたしましたが、地方交通線につきましては割り増し運賃制度を導入するということに踏み切ったところでございます。それから、兼職議員につきましては、五十七年十一月一日以降新たな承認は行わないということでまいってきております。それから、資産処分につきましては、五十八年度予算並びに五十九年度予算におきましてそれぞれ千六百億円という売却目標を立てて実施をいたしておるところでございます。それから、工場あるいは自動車、病院等の合理化につきましては、それぞれ具体的に合理化施策を推進している。  これが緊急十項員に対します国鉄側の対応でございます。
  124. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 緊急十項目だけをお伺いしましても、例えばローカル線の取り扱いなどについては必ずしも予定どおり作業が進んでいないということでありますし、あわせて機能分離の問題、工場、病院等の機能分離の問題についても手がついておらないという、こういった問題があります。     〔委員長退席、鹿野委員長代理着席〕  一方では、昭和五十九年度の予算定員を見ますると、三十四万五千人体制、こういう言い方がごく当たり前のように世の中を通用しているのでありますが、私の記憶に間違いかなければ、昨年五月の当委員会における私の質問の中で、仁杉総裁、あなたの前任者である高木総裁は、三十五万六十年度というのは法の枠内であり、その法の枠内を飛び越えて、いわゆる前倒しでもって要員を削減する考え方は持っておりませんという答弁を私にしているのです。そういう経過を踏まえるならば、総裁として今日五十九年度の予算定員三十四万五千という問題についてどのような御見解をお持ちなのか、明らかにしていただきたいと思います。
  125. 太田知行

    ○大田説明員 数字も出てまいりますので私からお答え申し上げますが、三十五万体制六十年度という当初計画でスタートしたのでございますけれども、その後、先ほど竹内常務がお話ししましたように、特に貨物部門における業務量の減が甚だしかったのと、旅客部門におきましても微減を余儀なくせられたという状況で、要員の配置についての見直しを行いました。いわゆるローリングを行いまして、実践面におきまして修正を施してきたわけでございます。  状況を申し上げますと、五十四年度は四千五百人、これは現計画どおりでございます。五十五年度一万一千人、これも同様でございます。それから五十六年も一万二千人、これも計画どおりでございますが、五十七年度におきまして、当初計画一万四千三百人に八千三百人の上積み二万二千六百人の要員縮減、それから五十八年度におきましては、当初予定しておりました一万五千五百人を一万三千四百人上回る二万八千九百名の要員縮減目標を掲げまして、五九・二ダイヤ改正を主眼といたしましてこれを実施し、数字はただいままだ完全には確定しておりませんが、確実に達成したものと確信している次第でございますが、特にこの五十八年度のかなり大幅な上積みにつきましては、既に五十八年に入りました当初から、いわゆる五九・二ダイヤ改正ということで種々の計画を固め関係方面に御説明を申し上げ、御協力を要請し、また組合側にも提示をいたしまして、ほぼ一年にわたる団体交渉を重ねた未に実施したものでございまして、基本的には業務量の縮減に対応した効率を維持せんがための合理化の前倒し実施をしたものでございます。
  126. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 数字が出てきたから太田常務がお答えになる、こういう言い方もあるのでしょうけれども、三十五万人体制昭和六十年度まで、この目標というのは再建法を審議してきた過程でも、その後昭和五十六年に至って経営改善計画が示された段階でも確認をされている。しかし、既に昭和五十九年度の段階で三十五万人体制を割ってくる。わからないのですよ、どこでそんなことが決められたのか、どのような考え方のもとにそのような施策が示されてきたのか。見解を示してください。
  127. 竹内哲夫

    ○竹内説明員 経営改善計画の目標でございますけれども、その中で経営収支の改善目標といたしまして、大きな柱といたしまして、一つは幹線におきます収支の均衡を達成しよう。それから二点目は、幹線並びに地交線を含めまして、営業外を除きましていわゆる一般営業損益におきまして益金を計上しよう。この二点が経営改善計画の中におきます特に収支改善の目標として定められておるものでございます。そこからいたしますと、御承知のとおり旅客の輸送量が当初見込みに対しまして若干の減少傾向にある。貨物におきましては、大変大きな減少を来したということから、この二つの目標は大変に難しくなってくるということが予測をされたわけでございます。  したがいまして、貨物の輸送体制を中心とした合理化の深度化を図ったわけでございますけれども、これによりまして何とか輸送量の減少によります収入の減少を経費の面でカバーしつつ、この二つの目標を何とかして達成したいということで、私ども取り組んでまいったところでございます。そのために、一つは三十五万人というこれまた経営改善計画の中の一つの柱であったと私どもも思っておりますけれども、しかし、これをあえてさらに切り込まざるを得ないという、全体の経営状況の中での判断から生まれたものであるというふうに思っております。
  128. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 お断りしておきますが、答弁簡単で結構ですから、わからないで質問しておりませんから、簡単に答えてください。  考え方についてはわかりました。ただ問題は、経営改善計画というものを法のもとに策定をしなくてはいけない。経営改善計画が国鉄の再建過程で、あなたたちが実際に作業されている過程で合わなくなってきた。速やかに新たなものを出さなくてはいけないんじゃないですか。これはやはり去年の段階で、経営改善計画の見直しをしなくてもよいのかという質問に対して、それなりのお答えをいただいているわけだけれども、今日段階で何ら音さたがない。何にも音さたがないままに、好き勝手にやってみたらこうなった。行き当たりばったりの作業をするのですか。総裁いかがです。
  129. 仁杉巖

    ○仁杉説明員 今度の三十四万五千人体制になったというのに対しましては、私が就任いたしました時点で、貨物の合理化を進めるという体制の中の数字として三十四万五千という数字が出ておりまして、これは昨年の当初から、団体交渉等で今のような数字の作業が進んでいたということでございまして、私が承知している範囲では、昨年の段階では、大体その方向で進んでいたというふうに考えておりまして、私が引き継ぎを受けたときも、大体そういう形で受けております。  私どもといたしましては、再建計画が今竹内常務から説明いたしましたように、収入の落ち込みということでなかなか難しい中で、人員の削減というようなことで幹線部門についてはつじつまが合うような形になってきているということでございますが、これらにつきましては、確かに先生御指摘のように修正をするという作業が必要になるということで、実は、ただいまその作業に一生懸命取り組んでいるということでございまして、近々その方向を運輸省その他と御相談いたしまして提示をするというような方向で努力をしているところでございます。
  130. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 近々に新しい経営改善計画をもう一度つくり直すということですね。しかし、これは本来国会という場で審議をされてきた経過からすると、指摘をされてから答えるべきものではなくて前広に示すべきだと思うのです。その点では非常にルーズだ、ある意味では国会軽視だと言っても過言ではない。こういうだらしないことは当委員会として認めるということには相ならぬのだと思いますから、特に私は注文をつけておきたいと思っているのです。  これと同じことが運賃改定の中でも出てきている。例えば地方交通線に対する割り増し運賃についても、これは少なくとも六十年度までに幹線に対する一・五倍の賃率に変えますぞという計画が出、具体的には昭和五十六年度、五十七年度、五十八年度、五十九年度、六十年度と順を追って引き上げていって、六十年度には一・五倍にするんだというお答えでありました。昭和五十九年度に至って、この数字からいうともう既に一・四倍になっていなくてはいけない。先ほどのお答えだと、特定地方交通線の中では、収支は、幹線に比較をして折り合っていってない、むしろ当初計画より赤字は多くなっていった。当たり前じゃないですか。やらなかったのでしょう。やらないで赤字が増大をしていくのは当たり前なんじゃないですか。特に責任感じていますか、総裁。
  131. 仁杉巖

    ○仁杉説明員 五十七年度までの運賃改定においていろいろ御指摘がございましたので、地方交通線の運賃引き上げということを考えるべきであったというふうに私も思いますが、いろいろな事情でそれがおくれまして、今回の値上げで初めて全国一律運賃を壊すと申しますか改革するというような方向になったわけでございます。これにはいろいろな事情があったというふうに私は考えております。
  132. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 国鉄の総裁では言えないのでしょうから私の方からあえて言いますけれども、第一次の特定地方交通線の協議会がスムーズにいかなくなる、こういったこともいろいろな事情があったと言われる理由の一つだと思うのです。四十線区七百キロそこそこの特定地方交通線廃止、バス転換という問題はそれくらい大変重い問題だったと思うのです。加えて、六十年度を一つの目標とするならば、もう既に第二次のローカル線の取り扱いについても協議に入っておらなくてはいけない時期がやってきている。しかし、一次の取り扱いすら、特に北海道、九州などでは大変大きな問題になっている。けさの新聞をのぞいても他の県からは同意書、意見書が出たとしても、北海道や九州からはなかなか意見書が出づらいような状況というのは単純な課題ではないわけです。単純な課題ではないということを、一次線を経過してきた中で二次線問題について運輸省として知事の意見をそれぞれ拝聴しながら、特に今日段階で考えられていることがあるのかどうなのか、運輸省にお伺いをしたいと思うのです。
  133. 永光洋一

    ○永光政府委員 先生おっしゃいましたように、二次につきましてはまだ完全に意見が出切っておりません。一応出そろいましたところで所定の手続でいろいろなヒアリングをしたり実態の調査をして、そして基準に適合しておるものにつきましては、これは運輸大臣として承認し、協議会の場でその鉄道のあり方についていろいろ多角的な御検討をお願いしたい、こう思っております。  確かに二次につきましては、当初改善計画で定めました予定に比べましておくれておりますので、我々としては、できるだけ知事さんの協力を得て全体の意見が出そろい、所定の手続を進めたい、このように考えている次第でございます。
  134. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 巷間伝えられるところによると、一次線に対する協議会の開催以降二年間を経過した箇所等に対する見切り発車論あるいは第二次線に対する知事の意見提出期日をめぐって同じく見切り発車論、待ってはいられない、こういう御議論があるのでありますが、ただいまの鉄監局長の御答弁だと、出そろった段階運輸省としては全国的な、総体的な判断をしたい、こういう御答弁ですから、見切り発車というのはないという確認をさせていただいて結構ですね。
  135. 永光洋一

    ○永光政府委員 今申しましたように、まだ未提出の県がある。我々としては、ほかの県が法律に基づいた形で出していただいているのでひとつ出していただけないかということでいろいろお願い申し上げておりますので、残された県につきましても早々に御意見が出ると思いましてそういう御答弁を申し上げたわけでございますが、我々としては現段階ではできるだけ御意見をいただいて処理したいということで、そういう前提で申し上げたわけでございます。
  136. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 最後に大臣に御見解を賜わっておきたいと思います。特に第二次線として選定をされた線区の中には長大路線と呼ばれる百キロを超える路線が何本があります。北海道だけを例にとっても百キロを超える線区が選定をされたものの中に五線区、一番長いものは百四十八キロという長大路線がございますけれども、加えて積雪寒冷地であるというようなことなど、これは大臣が承認をする段階で長大路線という問題については最も重要視しなければならない課題として御認識をされているのかどうなのか、この点についてお伺いをしておきたいと思います。
  137. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 お答え申し上げます。  第一次指定のもの、第二次指定のもの、いずれも国会で御審議をいただいて法律になりました再建措置法、それと附属の政令、それに基づいて選定をいたされたものでございます。そういうことでございます。  それから、先ほど見切り発車云々というお話がございましたが、法律によりますと、協議会を開いて相談をして、二年たったら国有鉄道がバスに転換するということになっております。法律をしゃくし定規に適用するかどうかということなんですが、頭からそれはどうでもいいですよ、適用しませんよというのじゃ、これは協議会が協議会になりませんよ。ただ実際の問題は、我々としては、地元の皆さん、特にその声を代表される市町村長の皆さんあるいは議会の皆さん、そういった方々の納得がいく方法でどういうふうにローカル線を扱うか、これはバスにかえようじゃないか、これは第三セクターにかえようじゃないか、そういうような納得をしていただいて処置いたしたい。何が何でもがむしゃらに、どんな意見であろうがどんどんやっていくという考え方は避けるべきである。しかし、初めからそういうふうにいたしておりますよということは、私としては申し上げかねるし、そういうことを申し上げていたら、これはもう話が進みませんから、率直なところ、そういうところだと私は思っておるのでございます。  先ほども長大路線云々のお話もございましたが、やはり法律、政令でちゃんと決まっておることでございますから、それは一応それに従わなければならぬという立場にあることは御了承をいただかなければならぬ、かように思います。
  138. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 終わります。
  139. 鹿野道彦

    ○鹿野委員長代理 富塚三夫君。
  140. 富塚三夫

    ○富塚委員 私は最初に、いわゆる福島交通小針社長を中心とする疑惑事件の問題について、この委員会では初めてだと思うのですが、大臣の見解をお尋ねをしておきたいというふうに思います。  私の手元に昭和四十年七月二十九日の、小針社長が当時の江商の桑原会長、今は亡くなられましたけれども、その電話のやりとり、脅迫したに等しいような電話のやりとりのテープのこれが一つ今あるのですけれども、きょうは詳しくは言いません。  小針社長という人は大変な人だなというふうに思います。つまり、一部新聞にも出ていますが、福島県の只見川の電源開発に伴う水没される木材の払い下げ、この権利を取得するために江商との取引を始めて、興国人絹パルプに納入するということで江商と取引をした。約束どおり木材の納入がない、担保として小針氏の工場及び土地を提供する、借入金がふくらんでしまって返済のめどが立たない、負債の食い逃げを図ろうということで那須の国有地の買収などをめぐり当時のいろいろな政治家がかかわったことが明らかになっているのですが、こういった小鉢社長の人間性というものを見ますと、果たして公共交通を預かるにふさわしい人なのかどうかという点で、私は非常に疑問を持つのです。私も福島県の生まれですから、非常に地元の問題で関心があるのですが、公共交通の機能を預かっている小針氏が、今新聞でもいろいろ報道されていますように、一部の政治家と癒着をして関連企業の肥大化をさせるために不正融資の疑いを持たれている、その事実を国民の前に徹底的に明らかにしていかなければいけないんじゃないかというふうに私は思います。  とりわけ大臣に質問したいのは、福島交通が、つまり丸森線の新たな経営ということで第三セクター、いわゆる阿武隈急行を発足させたということの中でいろいろな疑惑が持たれるということは大変問題があるのじゃないか。今、小林議員も質問をいたしましたように、これから地方交通線の転換が次々になされていかなければならないという方向が出てくるだろうということの中で、こういった問題が起きますと、国民の間で疑惑が生まれて、本当に信頼がされないということになりはしないかという心配をいたします。特に阿武隈急行問題の移管の際に、自民党の政治家の人や当時の仙鉄局長とか国鉄当局の首脳が小針社長と結託をして福島駅前の用地の取得に便宜を図ったとか、私は、地元の協力を得るためにはある程度話し合いが必要だ、協力を取りつけることは必要だと思いますが、そういったことの中で多額の工作費が動いたかのような疑いが持たれる事実、こういうことを考えてみると、この際、運輸委員会の中でも徹底的に問題を取り上げてみなければならないだろうと思います。  そこで、我が党といたしましては、疑惑解明のための調査委員会を既に設置をいたしまして、いずれその問題を取り上げることにいたしますが、まずお尋ねをいたしたいのは、この福島交通にどれだけの補助金を出しておられるのか、補助金の査定は一体どこがやっているのかということです。
  141. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 担当の自動車局長がいませんので私がお答えをいたしますが、バスの補助金と鉄道の補助金とございます。鉄道の補助金については今鉄監局長がおりますので後からお答えをいたします。  バスにつきましては近代化補助金というのと欠損補助金というのとございます。その金額は今調べておりますから申し上げますが、これについては福島県知事が第一次的に補助をいたすわけでございます。それの半額を運輸大臣が福島県に対して補給をする、こういう形の補助形式になっておるということでございます。したがって、調査については一応一次的には県がいたします。しかしながら、国費を出すわけでございますから、我々もそれについては十分監査をいたして、その上で福島県に交付するという形でございます。  鉄道に関しましては監督局長からお答えいたします。
  142. 富塚三夫

    ○富塚委員 我々社会党の調査でいくと、県では、陸運局で査定を全部するのだということを聞いているのですけれども、結局運輸省と県、県は陸運局と、何かめくら判を押してやっているみたいな感じをちょっと受けるのですが、どこが責任を持って査定をして交付をするのかお尋ねをいたします。
  143. 永光洋一

    ○永光政府委員 自動車の方は担当でございませんが、聞いておりますところを一応述べますと、先ほどお尋ねがありました補助金の方でございますが、バスの方が二億九千万、それから地方鉄道の方が五十七年度約二千八百万ということになっております。それでバスの方は、これは都道府県がこの過疎バスに補助をいたしまして、その半分を国が補助をするという形でありまして、実際の調査なりいろいろな査定を一応第一義的には県がやっておるというふうに聞いておりますので、今回のいろいろなことがありまして、疑惑を晴らすといいますか、その点では県に十分再度調査を本省の方から命じまして、そしてその相互のいろいろなやりとりの結果、この補助金の関係における経理については問題がないという形で五十八年度の助成もなされたと聞いております。  さらに、地方鉄道の方でございますが、これは近代化と踏切でございますが、これはいずれも物に対する補助でございまして、実際に二月にうちの職員が現場に行きましてそれぞれの伝票とそれぞれの施設とを見比べまして間違いないということを確認しまして助成をいたしておりますので、これは直接に二割国が補助をすることになっておりますので、これは国の方で責任を持ちまして調査をいたしておりますので間違いはないと思います。
  144. 富塚三夫

    ○富塚委員 はっきりしてもらいたいのですね。結局その査定をどこでして、どこで決めて、落とすのかという問題をやはり明確にする必要があるのではないか。県に聞きますと、陸運局が査定をする。これは我々社会党の入手した情報ですから、やはりそこのところは大臣ひとつ正確に調査していただきたい。
  145. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 県が一次的な補助をしまして、それに対して国が補給するという建前ですから、そして今度の問題が起こりました後も県に対してさらにもう一度確認をするという照会をしたぐらいでございますから。ただ、実際問題として、専門家である陸運局あたりと相談しているかどうかという点はちょっと調べてみませんとわかりませんが、これは形式的にはあくまでも県対福島交通の関係である、そういうふうにはっきりいたしております。ただ、県が査定するときに陸運局の意見を聞くとかなんとかということがあるかどうかということはちょっと調べてみないとわかりませんから、すぐ調べますから。
  146. 富塚三夫

    ○富塚委員 大臣それは調べていただきまして、交付金、補助金という問題は、私はそういう疑惑を持たれたらやはり当分見合わせるということがあっていいんじゃないか、もっとそこのところは大臣は厳格に判断をした方がいいんじゃないかと思いますが、その点どうでしょう。
  147. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 疑惑を持たれたといいましても、これは厳重に監査をいたしまして、このことについては間違いがないということで法規。に従い、予算に従って出しておることでございまして、これが間違うなら運輸省なり、運輸大臣なり、あるいは福島県なりが責任を負わなければならぬ問題だと思っております。
  148. 富塚三夫

    ○富塚委員 それからもう一つ、福島交通から阿武隈急行に移る従業員の退職金の問題について四月九日ですか、参議院の運輸委員会運輸大臣は、それは福交の退職金は福交が払うように厳重に監督をすると答弁されているのですが、翌日新しい社長であります山本宮城県知事はそうじゃないということを言われているのですが、参議院の運輸委員会で言われたことを確認していいのですね。お尋ねします。
  149. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 福島交通をやめるのに福島交通が退職金を払うというのは当たり前のことでございまして、しかし、続けて同じような仕事をやるのだから、それでは本人相対ずくで退職金はどうしようこうしようというようなお話があればこれはおのずから別なことである、かように私思います。
  150. 富塚三夫

    ○富塚委員 原則にかかわることを明確にしておく必要があるんじゃないかというふうに思うのです。当該、新しく社長になられた山本宮城県知事は、そうじゃないというふうに言われて、運輸大臣は、いや、福交で払うのが筋だ、こう言っておられるという関係は、やはり明確にしていただかなければいけないんじゃないかという点でその後注目しているのですけれども、問題点は明確にしていただきたいというふうに思います。
  151. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 さらに明確に調べますけれども、私はもう筋論での話をしておるわけでございまして、福島交通をやめるんだから福島交通の退職金は福島交通が払う。しかし働く人との相対ずくの話ですから、福島交通をやめて阿武隈急行に入る、その退職金は、それじゃ別途考えるなら考えるということで、その労働者の人も、ああ、それはそれでよろしいという話になるかどうか、その話は別な話になる、私はさように思っております。しかし、調べてみます。
  152. 富塚三夫

    ○富塚委員 いずれ福島交通問題は、私は運輸委員会として疑惑解明を十分しなければならぬと思っておる一人です。とりわけ地方交通線のこれからのバス路線とか第三セクターへの転換ということを意味する、その問題がこれから大事な問題になってくる時期ですから、この問題の解明は今後になおゆだねることにいたしまして、時間の関係がありますから、次は運賃の問題について御質問をさせていただきます。  運輸審議会が今回の運賃改定についての具体的な答申を出されました。今回の国鉄運賃の改定は東京、大阪の環状線の値上げなどについては抑制をする、現状でいきたい、しかし地方交通線、約百七十線ぐらいあるんでしょうか、余の割り増し運賃の設定などについて従来の国鉄運賃の改定に見られなかった制度の導入ということがなされ、その中で地方交通線の割り増し運賃導入は非常に関係地域の自治体や利用者から強い反対表明がなされ、我が党でも大臣や国鉄総裁あるいは運輸審議会の会長にも申し入れをいたしました。とりわけ運輸審議会に対しましては社会党といたしましては公開質問状も出しました。我々は、このいわゆる割り増し運賃制度の導入は憲法に違反をする、法のもとに平等であるべきその問題に違反をする、あるいは運賃法第一条の四原則に抵触する、あるいは公共料金という性格から逸脱をするんじゃないか、したがってこれらには問題があるから撤回をしていただきたいと訴えました。また、国鉄運賃の値上げは旅客の国鉄離れを一層促進するのではないか、あるいは過疎地の住民にさらに負担増を強いるのではないかという点で問題を提起したのですが、御案内のように運輸審議会の答申を見ますと、値上げの幅三〇%を超える部分は一部修正が行われたようですけれども、このような割り増し運賃制度の導入は割り増し率を上げれば上げるほど矛盾が拡大をするというふうに思うのですけれども、ひとつ運輸審議会の見解を求めたいということと、結局割り増し率をどんどん上げていく、この次もこういうことを採用したら大変なことになりはせぬかというふうに懸念をします。  そういった点で、運輸審議会としてはどういうふうに判断されたのか。同時に、大臣はこの制度を再検討する考え方はお持ちでないかどうかということについてお尋ねをいたします。
  153. 金田徹

    ○金田説明員 ただいまの御質問でございますが、運輸審議会といたしましては、地方交通線の割り増し運賃につきましては幹線の賃率と賃率的には一割高いということでございますが、これはやはり地方交通線と幹線とのいわゆる収支係数が非常に違うということ、それから地方交通線においてはその地域の私鉄であるとかバスであるとかの運賃との格差が相当にあるということ、一方、大都市においては国鉄の方が高過ぎる、私鉄の方が安いという逆な格差もあるというふうなことを総合的に考えまして、この程度の割り増し運賃を導入することはやむを得ないと判断したわけでございます。  それから、いわゆる矛盾でございますが、これは先生も御高承のことでございますけれども、賃率で一割高くするということと、地交線だけでなくて地方交通線と幹線とを乗り継いだときの運賃の問題と両方を考えますと、多少技術的にいろいろ難しい処理をしませんといわゆる矛盾が生ずるわけてございまして、その矛盾を解消するために国鉄、申請背側の方でいろいろ知恵を絞って今回のような制度を申請されたわけでございますが、そういうことでこのこともやむを得ないことではないか。ただ、それが余りにも大きくなるところがございますから、それは御指摘のように一部修正をさせていただいたわけでございます。  それから、将来矛盾がどんどん大きくなるかどうかということは、審議会としましては多少受け身的な感じでございまして、将来どういうものが出てくるか、それは出てきてから判断すべきことではないかと考えております。
  154. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 お答えいたします。  白紙で考えて、こういう差別運賃がいいのかあるいは総合原価主義による今までのやり方がいいかという議論は、果てしなく続くほど議論があります。これはこれまでも国会でも議論されておりますし、いろいろな場でいろいろ議論されておるところでございます。つまり、やや公共的な立場から見れば総合原価主義がいいということでございますし、企業的な見地を重く見れば、特に現在はそういう点が重く見られておりますが、差別があっていいということだと思います。  そこで、実は白紙の状態でないのでございまして、日本国有鉄道経営再建促進特別措置法の十二条で差を設けるということを認める、それから運賃法が十条の二の二項でこれを認めるということになっておる、臨調答申、そして国鉄再建監理委員会の勧告、これが差別をつけろ、こういう姿になっておるわけでございまして、今回は差別を設けることにいたしたわけでございます。私は個人的にはまたいろいろな意見を持っておりますけれども、現在のところはそういうことでずっとまいっておりまして、したがって、憲法違反であるとか法律違反であるとかいう見解はとることができません。また、これを今変更する考えはございません。  それから、今後の問題については、こういうことを運輸審議会が言ってきておるのでございます。「今回の地域別運賃制度の導入が、国鉄の運賃体系の大きな変更であることに鑑み、導入後の需要の動向、」今あなたがおっしゃった「増収効果等について検証を加えたうえ、今後の運賃及び料金のあり方を検討するよう、国鉄を指導監督することを、政府に対し要望いたしました。」こうなっておるわけでございます。したがって、今度の結果について我々は十分注日をいたさなければならないと思っております。撤回はいたす考えはありません、もう認可してしまいましたから。
  155. 富塚三夫

    ○富塚委員 その問題をちょっと質問をしようと思っておったのですが、運輸審議会の答申書につけられている要望事項の性格、我が党が公開質問状を出したことにも答えているということで運輸審議会からそういう答申、返事をいただきましたけれども、この答申書の性格についてどう考えるのか。同時に、大臣はこれを尊重する、そして実現する意思があるのかどうかということをまずお尋ねいたします。
  156. 金田徹

    ○金田説明員 答申書の性格でございますが、運輸省設置法の第六条によりまして「運輸大臣は、」この国鉄運賃というふうな基本的な事柄につきましては「運輸審議会にはかり、その決定を尊重して、これをしなければならない。」こういうことでございます。
  157. 富塚三夫

    ○富塚委員 大臣、あなた、興奮して言わぬでもいいと思うのですけれども、要望事項の三項の中に「地域別運賃制度の導入後の輸送需要の動向、増収効果等について検証を加えたうえ、今後の運賃及び料金のあり方について、増収効果、利用者の負担力、運賃制度の簡明化等に配慮して、十分に検討するよう、指導監督を行うべきである。」と明確にそのことを言ってあるわけです。今、審議会の側では、当然大臣に履行してもらわなければならないということでありますが、どのような検証をするつもりなのか、お尋ねいたします。
  158. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 今回のことは初めてのことでございます。御承知のとおりでございます。これを四月二十日から実施するわけでございますから、例えばこれによってローカル線が著しい客離れをするかどうかというようなことも、心配する向きでは非常に心配しておるわけでございます。  今ここにあるようなことは、今回はこれを認める、しかし今後の問題については今度やった結果をよく見るよ、よく検討して間違いがないように指導せよ、こういう御要望だと承っておりますので、この改正の後の運賃のあり方、動向、それから乗り継ぎの場合なんかの文句が出るとか出ないとかいうこともあるでしょう、いろいろなことが起こってくる可能性がございますから、そういう点については我々が十分見ておかなければならない、こういうことだと思います。
  159. 富塚三夫

    ○富塚委員 一年以内ぐらいに検証するということなんですか、いつごろまでにその実態を見て判断するということなんですか。
  160. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 幾らいつといって限られてもいかがかと思いますが、適当なしかるべき期間を見なければならぬと思っております。  しかし、これは初めてのことですから、私どもも国鉄自身も、どういうふうにこれがなるかということは、これは相当注日をすることは当然でございます。これを一年がいいか、六カ月がいいか、三カ月がいいか、一カ月がいいかということは、限定的に申し上げることはここでは避けたいと思います。わかる時期で調べなければならぬ。これは当然調べることになると思います。
  161. 富塚三夫

    ○富塚委員 やはり大臣なんだから、今運輸審議会が大臣にそういう要望を出したということは、当然そういう立場で大臣に努力をしていただく、あなたは運輸行政を預かる責任者なんだから、少なくとも初めて導入する割り増し運賃制度は大変問題ありと、あなたも個人的にはそう思っている。そうも言っておられるわけです。しかし、出てきた、十分なる検証をしてみるという点は、次の値上げまでの間に検証することにするのか、あるいはそういうことは考えないのか、明確に大臣の所信を言うのが私は責任ある立場の人が答えるべきことではないかと思います。
  162. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 私、さっきそういうことを申し上げたつもりでございまして、次の機会までにゆっくりやるなどということは申し上げておりません。ただ、どういう傾向があらわれるかということにはある程度の時間が要るだろう。  そこで、あなたのおっしゃるのにお答えすれば、なるべく早くどういう状況であるかということは検討する、こういうふうにお考えいただいて結構でございます。
  163. 富塚三夫

    ○富塚委員 ゆうべでしたか、ある新聞の夕刊に「またまた国鉄運賃値上げ知恵をしぼって安く乗ろう」というものが出たのです。何かまじめに切符を買って乗る人はばかを見るからもっと知恵を絞ってみようということですね。非常に矛盾に思いますのは、先ほど申し上げましたように運賃制度の簡明化ということをきちっと運輸審議会も問題提起しているわけです。しかし、現実には非常に複雑なものになっているというふうに思うのです。したがって、こういった実際上の矛盾点について一体どのようにこれから考えられていくのかということについて、国鉄総裁どうでしょうか。
  164. 仁杉巖

    ○仁杉説明員 今、先生御指摘のような点で非常に運賃制度がわかりにくくなっているということは事実でございます。これらに関しましては、今後の運賃値上げを行うような場合につきまして、もう少し簡明に皆様方にもわかりやすくしかも矛盾がなるべく起こらない、絶対に起こらないということは非常に難しいようでございますが、なるべく少なくなるような方向の制度について国鉄としても勉強してまいりたいと思っております。
  165. 富塚三夫

    ○富塚委員 地方交通線の利用者の数は年間大体どのくらいになるでしょうか。
  166. 須田寛

    ○須田説明員 年間約二億人程度というふうに考えております。
  167. 富塚三夫

    ○富塚委員 前回、予算委員会の分科会を通じて我が党の上西議員の方から鹿児島あるいは九州の一部の局で発売をしているS切符の販売を拡大をしてもらいたいということについて、運輸大臣も国鉄総裁も積極的にやりたいと言っているのですが、そのことはそういう方向で確認をしていいのですか。
  168. 須田寛

    ○須田説明員 現在、九州のみならず全国の各地域につきましてS切符、Q切符の見直しをいたしております。運賃改定をさせていただきます際に、現在約三百区間くらいあるのでございますけれども、これを二十区間くらい実はふやす計画をいたしておりますし、今先生から御指摘がございました各地域で片方向から発売いたしまして両方向発売でないということについても、これはちょっと準備がかかりますのであるいは六月くらいまでかかるものがあるかもわかりませんけれども、なるべく両発売をして、できるだけ多くのお客様に御利用をいただきやすいようにやってまいる、こういう方向でございます。
  169. 富塚三夫

    ○富塚委員 現行の運賃制度が対キロ区間制をとっていますから、今回のように、またこの次にも割り増し率を上げるということになると、三〇%以上も値上げされる区間も出てくるだろうと思いますし、一方では幹線並みのところもあって、矛盾がさらに拡大をするんじゃないかと私は心配をするのであります。問題は、歯どめの問題をどう考えていくのかということにもなりますし、国鉄の利用者の不公平感をなくしていかなければならない。  そこで大臣、この問題の最後に、不公平感をなくしていくという点で、運賃法などでは三条二項で各区間の中央の営業キロに賃率を乗じたものになっているわけですけれども、そういう今の運賃法からいうとかなり矛盾をしているわけですね。この運賃制度のあり方について根本的に所管の運輸省検討をしていくという姿勢に立つべきだ、これが次の国鉄の経営形態問題やさまざまな問題にぶつかってくると思うので、その点について大目の考え方をお尋ねをいたします。
  170. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 御案内のように、第二臨調は分割・民営化ということを答申にうたっております。それを受けて再建監理委員会がこの問題を検討中でございます。その場合に、運賃制度が一体どうなるかということは当然考えていかなければならぬ問題になるわけです。ですから、そういったような問題やら、今御指摘になったような問題やらあわせて、運賃についていかがあるべきかということについて検討する必要があるし、私どもも勉強いたさなければならぬと思っております。
  171. 富塚三夫

    ○富塚委員 運輸審議会の答申を得て、最終的に運輸大臣が決めた二十日から実施をするという恐らく段取りにしていくのでしょうけれども、運賃問題はやはり非常に重要な問題ですから、今私が申し上げましたように、あるいは大臣もそういう問題意識を持っておられると思いますが、今後国民の間で十分この不公平感をなくす、公共料金という建前を大事にしていくという観点から問題の検討をされることを望んでおきます。  次の問題は国鉄総裁にお尋ねいたしたいのですが、きのう何か記者会見をして、昭和六十五年になりますと国鉄の負債総額も三十兆円くらいになって大変なんだというふうに新聞にも書かれているのですが、これはいわば国鉄監理委員会の予定をされる答申、こういうものに向けて、分割・民営に反対をするという間接的な意思表示だというふうに、ある新聞は解説にも書いていますが、総裁のお気持ちをお聞かせいただきたいというふうに思います。
  172. 仁杉巖

    ○仁杉説明員 私は就任以来、先ほど小林先生からも御質問がございましたが、とりあえず昭和五十五年にできまして五十六年からやっております国鉄再建計画実施を、今までも国鉄は努力しているわけでございますが、それを六十年までの目標をきちっと達成するというまず第一の目標に向けて努力をするということを考えているわけでございますが、しかし、六十年と申しますともう来年になりますので、その後一体国鉄がどういうふうになっていくだろうかということ、これは決して評論家のような立場でなしに実務家としてどういうふうになるかということを勉強しておく必要があるということで事務当局に指示をいたしまして、今盛んに作業をしております。  その中で、ごく普通に考えまして、大体年間二兆円くらいの債務がふえていくという状況でございますが、今後六十年から六十五年までの六年くらいの間そのままであるかどうか、いろいろ合理化等をやった場合にもっと下がってくるのかというような問題につきまして中間報告を事務当局から聞きますと、輸送量の見通しが、飛行場の整備とか高速道路の整備、あるいは車の増加というようなことによりまして、なかなか輸送量がうまく伸びそうもないというような中で、六十五年になると、このままの体制でまいりますと棚上げ分を含めましてやはり三十兆を超えそうだというような計算が出てくるようでございます。ただ、中間報告として聞いただけでございまして、詳細についてはまだ運輸省にも監理委員会にも申し上げてございませんが、そういう結果が出てくるようでございます。これは今後の国鉄のあり方を含めましてなかなか重要な問題でございますので、そういうことになるということをきのう申したわけでございますが、これは決して私が分割・民営を阻止するという立場で申したわけではございませんので、経営を預かる実務家といたしまして、今のままで行くとそういうことになるので何らかの方法を講じないといけないということを示唆したという程度のことでございますので、御理解願いたいと思うわけでございます。
  173. 富塚三夫

    ○富塚委員 前回は運輸大臣に所見を伺ったのですけれども、国鉄総裁としては監理委員会に対して、具体的な再建のこれからのあるべき姿、経営形態論の変更問題、いろいろ議論されそうですが、そういうことについて国鉄の責任者として問題を提起される意思はあるのかどうか、お尋ねをいたします。
  174. 仁杉巖

    ○仁杉説明員 私は今申し上げましたように、経営をお預かりする実務者という立場で、いろいろな面につきまして、また国鉄自体にいろいろなデータあるいはそれを処理する機能もございますので、そういうものを十分活用いたしまして、今後のあり方についてもいろいろ模索をいたし、それを運輸省なり監理委員会に申し上げまして、将来のあり方に対する参考資料としていただきたいというふうなつもりで申し上げるつもりでおります。
  175. 富塚三夫

    ○富塚委員 いずれにしても、大変な時期を迎える来年の夏ぐらいまでの間に監理委員会答申検討される。これから検討していくということになると大変な議論をしていく必要が生じてくるだろうと思うのですが、私はここで総裁に、やはり国鉄の労使の信頼関係の回復の問題について、先日も総裁にお会いをしたときに、積極的に努力をするという旨の意思表示がありましたが、労使の協力関係をつくり上げていかなければならないと思うのですが、とりわけ今いわゆる過員問題、過剰人員問題の扱いをめぐって職場の中でかなり対立的な問題が生じているように見受けられます。我が党も実態調査を随所でしてみたのですけれども、この過員問題というか、働く人たちの雇用問題をどのように解決されようとしているのか。聞くところ、二万四千人ぐらいに及ぶ過員を抱えておるというふうに言われておるのですが、まず、労使の信頼関係回復の基本的な立場について、総裁、ひとつ明らかにしていただきたいことと、過員問題のこれからの対応について明確にしてもらいたい。
  176. 仁杉巖

    ○仁杉説明員 今お話し申し上げましたように、国鉄の現在の状態というものは非常に大変な時期にあるというふうに認識をいたしておりますし、これは先生もよく御承知のとおりでございますが、これらを打開していくために労使の関係というものをより円滑にしていって、これは労使というか、国鉄一丸となってと申しますか、そういう形の中でいろいろな施策を我々も申し上げ、また施策が進んでいくということが望ましいということは言うまでもないことでございます。これらにつきましては、私も、先日先生にお目にかかったときに、さらに努力をするということを申し上げておりますけれども、今までより以上にいろいろな国鉄の状況というものを労働側の方々にも御理解願うように努力をいたしますし、また労働側のいろいろなお気持ちも十分聞きましで、さらに相互に理解を深めまして、労使関係をスムーズにしてまいりたいというふうに考えるわけでございます。  過員の問題につきましては、担当の太田常務から答弁させます。
  177. 太田知行

    ○大田説明員 余剰人員の問題でございますが、まずその規模でございますが、この国会でも幾つかの委員会でお尋ねがございまして、その時点では、少なくとも一万以上というふうに申し上げているわけでございますが、ただいま年度が終わったばかりでございますので、それぞれの管理局でありますとか工場でありますとかというところの地方機関における合理化人員がまだ本社として正確に把握されておりません。それからまた、大体の数字は見当はつけておりますけれども、いわゆる年度末特退人員の正確な数字も掌握しておりません。それからまた、業務のあり方そのものを見詰め直すといったような個別の積み上げをやりました上で最終的な余剰人員の規模を我々把握する段取りになろうかと思いますので、本日の時点では、正確な数は把握していないと申し上げざるを得ないのでありますが、一応ある推定を施しますと、一万人以上ということが出てまいります。既にその個別のヒアリングも幾つかやっておりますが、全部はやっておりません、一部でございますが、その傾向から見ますと、かなりそれを上回るのではないかというふうに認識をしております。  それから、この余剰人員の措置についてでございますが、当面、各地方機関におきまして、それぞれの地域の実情、業務の実態を踏まえながら、知恵を出し工夫をしてその活用を図っているところでございます。例えば、この機会に教育を充実する。フロントサービス面での教育でございますとか、あるいは動力車乗務員に他車種を運転できるように、つまり電気機関車を運転している人が電車も運転できるようにとか、あるいはあわせてDLも運転できるようにとか、多能職種化でございますね、そういったような教育の充実でございますとか、あるいはまた増収活動、これもいろいろでございますが、特別改札をやったり、車内検札を強化したり、セールス活動に従事をしたりといったような形で、つまりは教育面と実践面という二つの分野でその活用を図っているところでございます。
  178. 富塚三夫

    ○富塚委員 そこにまた大変問題が出ておるのですけれども、門司、鹿児島などに行ってみますと、例えば東京の南局では、神棚を拝みなさい、拝まないとだめだといって大分おしかりを受けて、処分を受けたりしている。ところが門司の管理局に行くと、局長さんはクリスチャンであって、神棚は全部取っちまえ、こうやっているわけですね。こういう問題があったり、あるいは点呼のときの返事の仕方の問題で、私は国会に出て、自民党の議事運営委員の人が「ギチョーッ」なんて、こうやるけれども、あんなことをやったらすぐ処分されるみたいな感じになっている。とにかく常識なら考えられないようなことが労使関係の中で起きてきていることに私は非常に疑問を持つわけです。そういう中で、門鉄なんかも鳥栖の駅を見ますと、タコ部屋の中に全部入れておいて監視つきで、言うことを聞かなければそこから出さないとか、あるいはセールス教育をするんだとか、いろいろなことを言っていますけれども、もうちょっと労使がしっかりと話し合って対応してみる必要があるのではないか、そういうふうに思います。既に我が党の兒玉部会長からも当局に要請をしてありますけれども、そういったためにどういう努力をしていくべきなのかという点について、やはり国鉄当局自身がもっと積極的にそういう話し合いをしていく立場をとるべきではないか。  時間の関係がありますから、労働省基準局長にお尋ねしたいのですけれども、一つは、門司の国労地方本部が昨年十月二十三日に福岡の労働基準局長あてに、いわゆる労働安全衛生委員会の問題などを中心として申告書を出しました。三カ月半も回答を出されなかった。何か聞きますと、きょうあたり回答が出てきたということのようですけれども、いわゆる労働安全衛生委員会というのは法律十七条の定めによって設置を義務づけられておって、他にいかなる障害があろうが、どんな問題があろうが、これは一方から申し出があれば開くべきものである、そう思うのですが、その点についての見解。  それから年次有給休暇の問題なんですが、労働基準法三十九条に定められている年次有給休暇、使用者は事業の正常な運営を妨げる場合以外は請求があったら与えなければならない。ところが、四月六日の久留米の駅の事件、理由なくして既に承認済みの休暇を取り消して、助役さんが暴力を振るったとか、あるいは診断書を出さなければくれないとか、いろいろなことが起きているのですが、基本的な問題で労働省の見解を伺っておきたいと思うのです。
  179. 加来利一

    ○加来説明員 お答え申し上げます。  第一点でございますが、労使関係が対立しているからといって安全衛生委員会を開かないということは、労働安全衛生法に定めのある安全衛生委員会の開催は職場の安全衛生の確保にとって重要でありまして、労使は開催のために努力を十分行うべきである、そういう趣旨であると考えております。  それから第二点でございますが、年次有給休暇の件につきましては、労働基準法第三十九条の年次有給休暇は、同条所定の要件を満たすことによって利用目的いかんにかかわらず法律上当然に生ずる労働者の権利でありまして、同条第三項の規定によって使用者が時季変更権を行使しない限り年次有給休暇が成立することとなるわけでございます。したがいまして、時季変更権の行使が適法になされたかどうかについては、事業の正常な運営を妨げる場合に該当するかどうか、ここに係るわけでございますので、その点から判断されなければならない、こういうことになるかと思いますので、事業の正常な運営を妨げる場合に該当しない場合には診断書が提出されないといったようなこととは関係ないということになるわけでございます。
  180. 太田知行

    ○大田説明員 直接答えるようなお名指しはございませんでしたけれども、引用文の中に若干関連する事柄もございましたし、労使の話し合い問題についてのお話もございましたので、お許しを得て一、二お答え申し上げたいと思います。  神棚問題も引用なさいましたが、これは多分東京駅の問題をおっしゃっているのかと存じますが、これはただいま組合側から公労委に不当労働行為問題という形で提訴されておりまして、私ども準備書面を提出し、私どもの所信を述べているところでございます。詳しくは省略させていただきますが、決しておっしゃっているような状況ではございません。処分などはいたしておりません。  それから、返事しないから賃カツということをおっしゃいましたけれども、確かに返事をしないという事象が門鉄局で二カ所ほどございまして、そのことに端を発して賃カツをいたしたのは事実でございますが、その後その状況を門鉄当局が再調査し、把握をいたしまして、行われた事象と当方の措置、つまり返事をしないのなら就労の意思はないんだ、お帰りなさいと言ったのですが仕事をしていた。仕事があったという事実と私どもの方の貸カツという措置のアンバランスを認めましてカット分は返還をしております。  それから、鳥栖地区云々、タコ部屋というお話でございましたけれども、決してさようなことではなくて、それぞれしかるべく工夫をこらし措置をしているつもりでございます。何さま余剰人員が発生したというのは初めてのことでございますので、門司当局といわず各地方局におきましても戸惑いはありました。大急ぎで準備をしたので不備もございましたでしょう。それなりにその後時間が多少経過しておりますので、準備も整え、不備な点も補うというふうに努力をしているところでございます。  それから、最後に労使の話し合いということを引用なさいましたが、何かあたかも話し合いをしないかのごとき御趣旨に私は承りましたのですが、もしそうでなければお許しいただきたいと思いますが、事実は労使の話し合いを一生懸命やっているつもりでございます、この余剰人員に絡んで。ただ、同じ話し合いをするにしましてもルールがございましょうし、問題点を特定してその話し合いの効率をやはり図るべきだと思います。そういう観点からまいりまして、単に余剰人員が発生していること自体が労働条件だというような御主張に対しては、これは話し合いの対象ではない、余剰人員に絡む具体的な問題については話し合いをいたしましょう。現に門司局におきましてもたしか前後三回か四回でございますかにわたりましてかなり具体的な要望が出ているやに聞いておりますので、それぞれについて、これは労働条件話し合いになじむもの、これはしからざるものあるいは中間のものという仕分けをしながら、膨大でございますからまだ全部はカバーしてないようでございますが、話し合いをしております。本社におきましても、具体的な要求は出てきておりませんけれども、この余剰人員にかかわるいろいろな考え方あるいは法規の解釈、ルールの解釈といったようなもの、いわゆる解明要求が出ておりますので、それについての話し合いをしている。これもまた話し合いでございます。
  181. 富塚三夫

    ○富塚委員 最後に、太田常務はそう言いますけれども、福岡の労働基準監督署もきょう恐らく国鉄当局についていろいろな問題を指導している、私はそう思います。現実に特定の地域でそういった紛争が起きると、それは組合側も反省すべき点があればすべきだと私は思います。しかし、問題は、大きな流れに沿って労使の協力関係をどうつくっていくかという点に立つときに、もっとやはり経営者側はそういう観点に立っての判断をすべきである。  私が言っているのは、東京の管理局は神棚がなければだめだといって指導しているのです。門司の管理局長は神棚を取ってしまえといって指導している。そんな労務管理があるかということを私は言っているわけです。そんなこっけいなことが今の社会的な常識で通用するのか。だから、もうちょっと温かい目でみんなで話し合って、そして国鉄再建のために努力をしていくべきだと思うのです。  総裁、その点についてひとつ最後に見解を伺いたいと思いますが、いずれこの問題はあさって参議院の運輸委員会で小柳委員と引き継いでやらしてもらいますから、明確にひとつ今後の問題について整理をしていただきたい。  以上です。
  182. 仁杉巖

    ○仁杉説明員 いろいろ労使の問題でそれぞれの側からいろいろな主張があるように思っておりますが、私は、先ほども申し上げましたように、こういう国鉄の重大な時期には当局側といたしましても労働側に対して実態あるいは置かれている状態等を十分よく説明し、理解を深めていただくということが必要であると同時に、また、労働側のいろいろな主張についても謙虚に耳を傾け、それに対して処理をしていくということは必要であると思っております。それらについてはさらに努力を重ねてまいりたいと思っております。
  183. 富塚三夫

    ○富塚委員 ありがとうございました。
  184. 鹿野道彦

    ○鹿野委員長代理 森田景一君。
  185. 森田景一

    ○森田(景)委員 私は国鉄再建と監理委員会、そういう問題、もう一つは首都圏における交通網の整備、この大きな二つの問題について質問をいたしたいと思っております。  国鉄再建、非常に重大な問題でございますが、この問題につきましては国鉄再建監理委員会が今検討しているところでございます。この国鉄再建監理委員会が五十八年六月に発足しましてから現在に至るまで約五十回に及ぶ会議が行われているように聞いております。その内容については詳細にはわからない点がたくさんございます。どのような関係の方々から意見を聞いているのか、まず最初にお伺いしたいと思います。
  186. 林淳司

    ○林(淳)政府委員 お答え申し上げます。  監理委員会におきましては具体的で実効性のある結論をまとめなければならぬ、こういう立場にございますので、昨年の六月発足以来各方面からいろいろ御意見も承って審議を重ねておるということでございます。  具体的には国鉄当局あるいは国鉄の関係の労働組合あるいは運輸省とか大蔵省というふうな関係省庁、それから私鉄の経営者というふうな方々からいろいろな御意見を伺って、それを参考にしながら審議を進めておる、こういうことでございます。     〔鹿野委員長代理退席、浜野委員長代理     着席〕
  187. 森田景一

    ○森田(景)委員 監理委員会としては、現在基本的な経営形態の問題あるいは長期債務等の処理問題などの検討に入っているというように聞いております。これは国鉄の基本の問題であるだけに監理委員会では十分な審議が望まれているわけでございますけれども、それだけに各界の意見も十分に聞いてほしいと思うわけでございます。ある説によりますと、なるべくほかからいろいろな雑念は入れないように、こういう話もあるやに聞いておりますが、そうではなくして、各界の意見を十分に聞いてほしい、こう思っております。  ただいまも回答がございましたけれども、国鉄労使の意見も聞いている、こういうことでございます。この国鉄労使は当事者でございますから、その意見はどのように聞いているのかもひとつお答えいただきたいと思うわけです。
  188. 林淳司

    ○林(淳)政府委員 ただいま申し上げましたように、監理委員会社非常に具体的でかつ実効性のある結論をまとめなければならぬという立場にございますので、決して雑念を入れないためにとかいうことではなくて、幅広く各方面の御意見を伺う、こういう姿勢で現・在まで来ております。  国鉄労使からは具体的にどういうふうに意見を聞いたかということでございますけれども、昨年六月と九月に国鉄の当時の責任者である高木総裁から国鉄の問題全般にわたって御意見を伺っております。それから労働組合の方につきましては、昨年のやはり九月から十月にかけて三回にわたりまして関係の五つの組合の代表の方から御意見を伺っておる、こういうことでございます。
  189. 森田景一

    ○森田(景)委員 「仁杉国鉄総裁は十六日の定例記者会見で、国鉄再建監理委員会による「分割・民営化」審議に関連して、国鉄自身としても近く、将来の経営構想を策定するとの意向を明らかにした。」というふうに新聞に載っております。総裁も、先ほどお話ありましたが、就任して間もないわけでございますけれども、国鉄再建に非常に意欲的であると私は理解するわけでございますけれども、この仁杉総裁の発言の趣旨といいますか真意を承っておきたいと思うわけでございます。また、将来構想ということも考えていらっしゃるのならば、この機会に教えていただきたいと思うわけでございます。
  190. 仁杉巖

    ○仁杉説明員 私、昨日、このままの状態で参りますと国鉄の経営がなかなか難しくなってますます泥沼に入りそうであるというような意味で申したのでございますが、実は就任以来、先ほどもお答えいたしましたが、現在やっております再建計画は六十年まででございますが、これの深度化をし、これについては近々見直しをするというつもりでおりますが、さらにそれだけでなしに、六十五年程度のときに一体どうなっているであろうか、国鉄がどうなっていくであろうかということにつきまして就任以来いろいろ指示をいたしまして作業をいたしております。  それで、これはまだ実はいろいろな前提条件が入りますので一つに絞られた形で出てきているわけではございませんが、ごく概略の中間報告を聞いた範囲内におきましては、このままの姿で国鉄が参りますと、経営の国鉄なりの努力、要員の効率化であるとか投資の抑制であるとか物件費の縮減であるというようないろいろなことをやってまいりましても、なおかつどうも六十五年には三十兆円を超すことになりそうであるという報告が出てまいりました。  そうなりますと、その途中におきましても一体それだけの金融ができるのかどうかという問題も出てまいりまして、こうなってまいりますと、分割とか民営とか言いましても一つ企業体として成り立たないことにはなかなか物が進まないということになりますので、その点についてこのままでは困るので何らかの方策を考えないといけないということを申したわけでございます。決して民営・分割に反対であるとかそういう立場だけで申したわけではございません。  それで、私といたしましては、今申しましたようにまだその作業も本当に深度化しているわけではございませんので、その作業を深度化してまいりまして、それに対応いたしまして、今度は実務者として国鉄がこれにどういうふうに対応するかということをやらなければ意味がないわけでございますが、それにつきましてはそれなりにいろいろなことを今考えてはおりますけれども、まだとても作業そのものが十分でき上がってない段階で、構想みたいなものはございますけれども、まだ皆さんに申し上げるというところまで行ってないというので、もうしばらく時間をかしていただきたいと思っておるわけでございます。こういうことがまとまりましたら、もちろん、運輸省なり国鉄再建監理委員会なりに十分御意見として申し上げたいというふうに思っております。     〔浜野委員長代理退席、委員長着席〕
  191. 森田景一

    ○森田(景)委員 細田運輸大臣は、この仁杉国鉄総裁の発言に対してどう評価されますか。
  192. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 国鉄再建について当事者である国有鉄道がいろいろな角度から検討をし、私どもや監理委員会にいろいろ意見を述べられることは絶対必要なことである、かように思っております。今三十兆円云々という話は私も新聞で読んで初めて、どういう基礎で出た数字か私もよくわかりませんが、まあ見当がつかないわけではございませんけれども、これに対する評価は、私、ここでは差し控えさせていただきたいと思います。国有鉄道が考えていただくことは、これはもう絶対にしていただかなければならぬので、かねがね私から総裁にもお願いをしておるところでございます。
  193. 森田景一

    ○森田(景)委員 国鉄再建につきましては、ただいまのように国鉄当局また労組、それぞれ意見を持っているわけでございまして、両方の意見を聞くということは、先ほども答弁がありましたけれども、答弁によりますと、それぞれまだ一回ずつ持っただけだというふうに私理解するわけでございます。特に労組の方の御意見は、それは労組の一方的主張だからなどと言って無視してはならないと私は思いますし、これは当事者の国鉄当局の意見についても同じだと思うわけでございます。過去にそれぞれ一回ずつ意見を聞く機会を持ったということでございますけれども、これからもさらに意見を聞く考えがあるのかどうか、あるいはその必要はないと判断していらっしゃるのか、この辺について監理委員会の見解をお尋ねしておきたいと思います。
  194. 林淳司

    ○林(淳)政府委員 お答え申し上げます。  監理委員会は、現在、基礎的な勉強を続けておる段階でございますが、今後、審議段階に応じまして関係の労働組合あるいはその他関係方面かる御意見を聞くということについても十分検討してまいりたい、このように考えております。
  195. 森田景一

    ○森田(景)委員 特に組合の意見は働く立場方々意見でございますので、ひとつ十分に尊重されるように要望しておきたいと思います。  国鉄経営改善のため、昨年八月二日に緊急提言が監理委員会から出されております。この経営改善措置がどのような進捗状況にあるのか、運輸大臣、ひとつお答えいただきたいと思います。
  196. 永光洋一

    ○永光政府委員 昨年の八月に監理委員会から緊急提言が出されまして、緊急措置の基本的な実施方針というものが出たわけでございまして、三つ柱がございます。「経営管理の適正化」それから「事業分野の整理」「営業収支の改善及び、債務増大の抑制」、この三つの視点に立ちまして、それぞれ積極的な具体的な施策の推進方が提言されただけでございます。  かいつまんで、まず営業収支の改善あるいは債務増大の抑制という命題につきましては、御案内のように、五十八年、五十九年の予算におきましても新規採用原則停止ということで、五十八年度予算では二万二千六百、五十九年度予算では二万八千九百という要員を合理化いたしまして、改善計画によりますところの三十五万人体制を一年繰り上げて、五十九年度予算で三十四万五千人を達成する。あるいは経費削減につきましても、前年度予算に比べて人件費、物件費八百億を削減した形での五十九年度予算を編成いたした。運賃につきましても、地域別の運賃の導入等を図りまして、一応五十八年度は抑え、五十九年度につきましては必要最小限度の運賃の改定を行った。設備投資につきましても、前年度に比べまして千三百九十六億円の減で、五千六百六十四億円という形の抑制した、安全投資を主体とした投資内容になっておりますし、その他資産処分等の促進を行い、五十九年度予算において提言についての内容を大きく盛り込んでおるところでございます。  さらに、事業分野の整理につきましても、御案内のように、貨物につきましては、いわゆる拠点間直行輸送という形でのシステムチェンジを全面的に行いまして、いわゆるヤードなしの新しい貨物輸送体制へ転換をいたしましたし、さらに地方交通線につきましても、若干予定よりもおくれぎみではありますけれども、第一次選定並びに第二次選定路線につきましても提言の趣旨を踏まえまして鋭意努力をいたしているところでございます。  さらに、第三番目といたしまして、経営管理の適正化につきましても、職場規律の確立あるいは組織の統廃合等の御提言につきましても、積極的にその成果を上げつつあるところでございまして、今後ともその取り組みにつきまして強力に推進を図ってまいりたい、かように考えております。
  197. 森田景一

    ○森田(景)委員 監理委員会では、所掌事務について意見を具申し、その実施した施策についてその結果について評価をし、さらに意見を具申するということができる、こういうふうになっていると思いますけれども、ただいまの国鉄の経営改善措置の進捗状況について監理委員会はどのように評価しておられるのですか。
  198. 林淳司

    ○林(淳)政府委員 昨年の八月に提出いたしました緊急提言に基づいて、ただいま御答弁ございましたように、政府及び国鉄におきましてそれなりに取り組みをしていただいておるというふうに考えております。徐々にではありますけれども、その成果は上がりつつあるというふうに私どもは考えておりまして、ただ、残された課題もございますので、今後さらに徹底した努力をお願いしたい、このように考えておるわけでございます。
  199. 森田景一

    ○森田(景)委員 それでは次に、首都圏における交通網の整備について若干質問したいと思います。  まず最初に、首都圏におけるラッシュアワーの状況についてひとつ御報告いただきたいと思います。
  200. 須田寛

    ○須田説明員 国鉄の主要な線区の状況を簡単に御報告申し上げたいと存じますが、現在まだ非常に混雑しているということで問題が残っておると思われますのは、やはり何と申しましても常磐線でございます。常磐線につきましては、現在緩行それから快速、中距離電車と三系統の列車を運転いたしておりますけれども、平均乗車効率が約二六〇%、この二六〇%と申しますのは定員、定員といいますのは座席の数とつり革の数というふうにお考えいただければと思いますが、それに対しましてのお客様の数で、ラッシュ一時間のピークの時間のものでございますが、まだ二六〇程度という状況でございます。その他の各線はかなり緩和はされておりますが、やはり東海道線が二三〇、東北線が、これは大宮以北でございますが二七一、同じく高崎線が大宮以北で二七一、総武線が二四五といったような状況でございまして、まだかなりの混雑を呈しておりますが、この二月にいろいろダイヤ改正の際に輸送改善をいたしておりまして、その影響がございますので、東北線、高崎線、それから都心の山手線等につきましてはかなり改善を見ておりまして、約一〇%ぐらい今申し上げました効率よりも低まってきている、こういうような状況でございますが、依然常磐線につきましては問題を残している、このように考えております。
  201. 森田景一

    ○森田(景)委員 特に常磐線が非常に混雑がひどい、こういう状況でございます。この常磐線の混雑緩和対策はどういうことがあるか、お考えでしょうか。
  202. 須田寛

    ○須田説明員 当面着手をいたしております対策といたしましては、明年三月に土浦の付近におきまして科学博が開催されますので、その観客対策もあわせまして、現在土浦、水戸方面から乗り入れております中距離電車、これが大変込んでいるわけでありますが、これが十二両編成でありますものを十五両編成に編成がえをすることにいたしておりまして、現在準備に着手をいたしております。その後の対策につきましてはまだ長期的にお客様の流れ等を十分見きわめなければならないと思っております。快速電車の編成状況が課題になってまいると思っておりますが、この中距離電車の十五両化対策をいたしまして様子を見た上で、いつ実施をするか、諸般の情勢を勘案いたしまして決定をいたしたい、こんなふうに考えております。
  203. 森田景一

    ○森田(景)委員 運輸大臣、プライベートなことで大変恐縮でございますが、今どちらにお住まいで国会の方は朝どういう輸送手段でお通いでいらっしゃいましょうか。
  204. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 私は世田谷の方に住んでおりまして、今は役所の自動車、国会の自動車で通っております。
  205. 森田景一

    ○森田(景)委員 国鉄総裁はどうでございましょうか。
  206. 仁杉巖

    ○仁杉説明員 私は杉並の永福町に住んでおりまして、大体公用車で通っております。
  207. 森田景一

    ○森田(景)委員 先ほど報告がありました乗車率二六〇%、二七〇%、こういう混雑率はどういう状況か、余り身をもって体験はしていらっしゃいませんね、お二人とも。
  208. 仁杉巖

    ○仁杉説明員 私、私鉄にもおりましたし国鉄にもおりまして、大体通勤のラッシュにおきます平均一時間の乗車効率が二三〇ぐらいというところまでは我慢できるなどいう感じを持っておりますが、実は常磐線は一月に現地を朝七時半ごろから八時半ごろにかけて見ました。ちょうどたまたま学校が休みのときに当たっておりまして、ちょっとその込み方が少ないようでございましたが、それにいたしましても常磐線の柏付近におきます混雑率というのはひどいなという体験をいたしました。また、山手線につきましては新宿―池袋が非常にひどいということでございまして、新宿の駅からも見ましたし、また池袋にも参りまして見ました。このときに、やはり一番込んでいるなどいう感じで常磐線とほぼ同じかなと思いましたのが、池袋から新宿に至ります内回りの山手線が非常に混んでいるということでございます。事務当局の報告からそこいらが一番込んでいるということで参ったわけでございますが、これらに対しまして、今申しましたように常磐線につきましては市電の十五両化ということをいたしますので、とりあえず対応はできると思いますけれども、これが六十五年から七十年というようなときになりますと、今のままでふえるとなるとなかなか今の線路だけでは対応できないからということで、今事務当局に命じまして、新しい常磐線をどうするかということ、これも非常に金がかかりますのでいろいろ知恵を出さなければならないと思いますが、こういうことを考えております。  一方、山手線につきましては、幸い東北新幹線の建設に絡みまして大宮から赤羽まで通勤新線ができますが、これを赤羽から池袋に入れましてさらに池袋から新宿まで貨物線を通すというような形の運転をしたいということで、今急いで工事に今年度から着手しているというような状況で、それぞれ当面の手は打っているわけでございますが、将来につきましてはもう少し勉強いたしまして、万遺漏なきを期してまいりたいというふうに考えております。
  209. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 私は戦前から戦中、戦後にかけて、その方の専門の仕事をやっておった者でございます。大体客車や電車を見れば何%乗っているかという見当がつくような専門の者でございます。またそのころは、電車で相当窮屈な、相当ひどい状況も体験しております。もう今はとても二〇〇%以上の電車に乗って通う元気はございません。
  210. 森田景一

    ○森田(景)委員 今そういうひどい混雑状況が続いておりまして、通勤者は朝晩非常に困難な状況でございます。実は私ももまれて通っているわけでございますけれども、一時間ももまれて来ますと一日仕事をやる意欲が半減するような気持ちになります。この混雑緩和対策は早急にやってほしい、こう思うわけですが、先ほど常磐線の混雑緩和対策としては市電の車両増結というふうなお答えがありました。私はもっといろいろあるだろうと思います。車両の増結、これは市電ばかりではなくて、快速電車、それから緩行電車いわゆる千代田線、この三つの線を検討していかなければいけないのではないかというふうに考えているわけでございますし、車両増結のほかに増便ということも考えていかなければならないだろう、こう思うわけであります。  それからもう一つ、現在非常に混雑がひどいのは北総開発鉄道というのがございまして、これが本来東京に直接乗り入れ計画でありますが、なかなか工事が進まないために今松戸の駅に接続しております。ここで乗りかえがあるために松戸―金町間は非常にすごい混雑になっているわけであります。ですから、北総開発鉄道の早期東京乗り入れということが一つの課題だと思います。  もう一つは、先ほど総裁からも少し話がありましたが、第二常磐線の建設、こういう問題があるだろうと思うのですよ。私が申し上げているこういう常磐線の混雑緩和対策を、国鉄当局の方はお考えになっていらっしゃるのでしょうか。
  211. 仁杉巖

    ○仁杉説明員 今の北総鉄道に絡みましては、ちょっと私の方の担当でございませんが、それ以外の点につきましては今先生の御指摘のありましたような点、さらにちょっと前に触れましたが、第二常磐線というようなことについても努力をしてまいりたいというふうに思っております。
  212. 森田景一

    ○森田(景)委員 もう少し細かくお聞きしておきたいのですけれども、この中距離電車は現在十二両編成。これは筑波科学博に関連して十五両にする、来年の三月に十五両が実現する予定だというふうに聞いております。快速の十五両、現在十両編成ですけれども、十五両編成ということも万博に関係なしに進めていかなければ、常磐線の混雑緩和対策にはならないのだ、こういうふうに私ども理解しておりますけれども、快速の十五両編成、これは様子を見ながら、今だって様子は大変なわけですから、大臣、国鉄総裁から答弁があったような状況でございますから、この十両編成を快速十五両編成にする時期、見通し、こういう点についてもう少し細かく答えていただきたいと思います。
  213. 須田寛

    ○須田説明員 今ちょっと御説明申し上げましたように、快速の十五両化を実施いたします前には、若干のいろいろ問題点の解決が必要になってまいります。  それはなぜかと申しますと、都心の駅、特に三河島と南千住、それから我孫子の先の天王台という駅がございますが、この三駅のホームが全部十両分しかないわけでございます。これの延伸と申しますのが、都心の住宅密集地での非常な難工事でございます上に、相当な経費を要します。四十億ぐらいかかるのではないかというふうに見積もられておりますが、その問題の解決が必要だということと、それから十五両化をいたします際には約三十両の電車の増備を必要とするわけでございますが、この車両基地をどこに求めるかといったような問題もあるわけでございます。  いずれにいたしましても常磐線の通勤対策というのは緊急な問題でございますから、じんぜんと日を過ごすつもりはございませんけれども、今のような問題がやや難題としてかぶってきておりますので、その辺の工事の問題、もちろんこれは工事経費の問題にかかってくるわけでございますが、その辺の見きわめもつけ、また市電の十二両を十五両にいたします。その効果を見きわめて決断をしたいというふうなことでございますが、決して日を先に延ばすということではなしに、緊急の問題として十分勉強はしてまいりたい、こんなふうに思っておりますが、幾つかの課題があるということはひとつ御理解を賜りたいと思います。
  214. 森田景一

    ○森田(景)委員 また機会がありましたらこの問題は詳しくやりたいと思います。  先へ進みます。  昭和四十七年三月、都市交通審議会から答申された東京都市交通圏内の高速鉄道網整備計画、こういうものがあるわけでございます。これはどのように進められているのか、進捗状況を御報告いただきたいと思います。
  215. 西村康雄

    ○西村(康)政府委員 昭和四十七年に都市交通審議会から十五号答申をいただいたわけですが、この答申では路線の整備につきまして新線は三百六十八・五キロ、複々線化が六十一・六キロ、そして答申時におきましては既に既開業線がこの計画の中に取り込んでおりますのが百四十七キロ、全体で五百七十七・一キロの路線を整備する、こういうことが答申の骨子でございます。このうち新線につきましては、例えば北初富―千葉ニュータウン中央間等百一・八キロが既に開業しております。また京成高砂―新鎌ケ谷間等七六・五キロを現在工事中でございます。また複々線化につきましては、十・六キロメートルが開業しており、二十一・一キロの工事が行われております。このように路線整備をしておりますので、現在では二百五十九・四キロメートルが開業し、九十七・六キロメートルが工事中ということで、全体として六一・九%の進捗という状況でございます。
  216. 森田景一

    ○森田(景)委員 昭和七十五年を見通した東京圏における高速鉄道を中心とする交通網の整備について運輸政策審議会で審議されておるわけでございますけれども、この答申の時期、また答申の中に先ほどお話のありました第二常磐線が含まれる予定になっているかどうか、この辺のお答えをお願いしたいと思います。
  217. 西村康雄

    ○西村(康)政府委員 現在、運輸政策審議会では東京圏の都市交通網の検討を行っておりますが、この審議は私どもの希望しているところでは、ことしじゅうに御結論いただくということで事務的に進めさせていただいているところでございます。  そして今、先ほどからお話のありました第二常磐の問題につきましては、現在この方面の混雑状況あるいは人口の将来の増加状況というものを調査している一方、茨城県、千葉県等からヒアリングをし、あるいは関係の鉄道事業者からヒアリングをし、実際にどういう路線が必要だろうかということを鋭意検討しているわけでございますが、この審議会が開催するような背景にはこの方面の人口増というものに対する基本的認識があります。そういうことで全体としての路線網の検討をしているわけでございます。
  218. 森田景一

    ○森田(景)委員 この第二常磐線構想につきましては、当初といいますか、かなり前になりますけれども、当初は東京都内から千葉県の流山市、野田市、関宿を経過しまして筑波学園都市に通ずる路線、こういう構想であったというふうに私は聞いているわけでございます。ところが、千葉県の方におきましては、先ほど国鉄総裁も体験乗車をなさったというお話でございますけれども、千葉県知事も体験乗車をいたしました。そしていろいろと検討を進めて、現在の常磐線に並行して走る六ルートの案をつくったのです。私は、今の千葉県の考えているルートのうちのどれか一つと、それから特に茨城県の要望が強い流山、野田を通って筑波学園都市に行く路線、この二つの路線が必要だというように考えるわけでございますけれども、この運輸政策審議会にはどういう形で、一本で諮問しているのか、あるいは二本検討しているのか、その辺のところ、ルートはどういう方向で考えているのか、ちょっとお答えいただきたいと思います。
  219. 西村康雄

    ○西村(康)政府委員 第二常磐につきましては、千葉県、茨城県それぞれから御要望が出ているわけでございますが、先生おっしゃるとおり、千葉県は主として常磐線の混雑緩和という観点が前に出ておりますし、茨城県は筑波学園都市と結んで、ある面では開発的な考え方をベースにしているということで、ややルートが違うということでございます。運輸政策審議会では、現在はこれらの各県の要望を逐次聞いているということで具体的にまだどういう線を引こうかということにはなっておりません。したがって、いずれの線も一応検討の俎上にのせられるということになるわけでございます。ただ、この方面の要望にこたえて路線を整備するということになりました場合に、二つのルートをともに整備するということは非常に困難なことでございます。そういう点では今後の開発状況あるいは常磐線の混雑の状況等、総合的に勘案して最適のルートを選ぶということになろうかと思います。
  220. 森田景一

    ○森田(景)委員 先ほどの高速鉄道網構想の八号線、これを埼玉県では延伸させて千葉県の野田方面につなげる、これが第二常磐線なんだというふうに主張しているというふうにも聞いているわけでありますけれども、この辺の審議はいかがでしょうか。
  221. 西村康雄

    ○西村(康)政府委員 ただいまの八号線の整備につきましては緊急の整備の要望が出ているわけですが、実際にどれをどうつないで第二常磐をするというのは、まだ具体的な考え方というのは出されておりません。
  222. 森田景一

    ○森田(景)委員 答申が出るまではここでなかなか話しにくいのだろうと思いますけれども、この混雑緩和対策とそれから人口増、特に茨城県は今、筑波学園都市ができましてから非常に人口増加が大きいわけでございます。いずれにしてもこの辺の対策は早急にやらなければならないと思いますし、また恒久的に考えていただかなければならないと思いますので、ひとつ十分な配慮をお願いしたいと思います。  では、質問の最後になりますけれども、千葉県では県都であります千葉市、ここから北に向かいまして国道十六号が八千代市とか白井町とかあるいは相とか野田を通りまして埼玉県に抜けているわけでございます。この県都千葉に向かつてこういう県北からの鉄道網が全然ないわけでございます。みんな外をずっと回ってくる形になっております。千葉県知事から運輸政策審議会の方に、野田市から千葉市に通ずる直線の鉄道路線をぜひつくってほしいという要望が出ているはずでございますけれども、この点は御存じでございましょうか。
  223. 西村康雄

    ○西村(康)政府委員 運輸政策審議会で各県からヒアリングをしております際に、千葉県からは千葉市と野田方面を結ぶ鉄道につきまして整備の要望が出ているわけでございます。これは、千葉市の業務機能と千葉ニュータウン及び東葛飾地域を有機的に結合するということが非常に有効ではないかということでこの路線の要望が出ているわけでございます。
  224. 森田景一

    ○森田(景)委員 ただいまの答弁のほかに、柏市には米軍通信所基地の跡地が返還になりまして相当大きな構想で今検討されているわけでございますが、これも有機的に結ぶということになると思います。それで、時間の関係で簡単に申し上げますけれども、これは実現の可能性はどうでしょうか。
  225. 西村康雄

    ○西村(康)政府委員 この地域と千葉市とを結ぶというのはこの地域利便性が非常に高まるということでございます。しかし、現在、この地域と総武線との間では既に武蔵野線、野田線、新京成という三路線があります、千葉市とは結んでおりませんが。それから国道十六号線というのが走っているわけでございまして、こういったある程度の鉄道が総武線につながっているということでございますので、千葉市とさらに新しい線を引くということについてはいろいろ問題点も多い。実際にそういう鉄道をやった場合に採算性がどうだとかその他の諸問題が出てくるということでございますが、少なくともこういった問題も十分審議会でこれから議論していくということで、まだこの段階ではどうだということを私の方から申し上げるわけにはまいりません。
  226. 森田景一

    ○森田(景)委員 この混雑緩和対策あるいは新線建設、こういう非常に厳しい状況の中でやらなければならない問題も抱えるということは大変なことだと思いますが、この点について最後に国鉄総裁と運輸大臣、ひとつ決意のほどをお聞かせいただきたいと思います。
  227. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 今日のような時代になりますと、鉄道の特性というものが一番生きるのは大都市の交通です。こういう角度から、東京を初めとしまして大都市付近の、地下鉄も含めました高速鉄道綱というものは見直さなければならぬ。であればこそ、運政審にも今お願いしておるところでございますが、焦眉の急の問題だと思っております。鉄道が本当に一番役に立つのはこういう大都市の通勤交通線であると考えております。  そこで一番問題は、どういう金を使ってこれをやるか、だれがやるかということも問題でございますが、この金の裏づけをいたしませんと、相当膨大なものがかかります。これをどう考えていくかということが重大な問題だと思うのです。絵にかくことはできますけれども、なかなか簡単にはできない。住民の皆さんの御協力を得ると同時に、どういう形態でどういう財源でやるかということについてもっと日本の公共事業費を広く眺めて――鉄道がやる場合やなんかは公共事業費じゃないわけですけれども、広い意味での公共投資の中で大都市付近の鉄道というものはプライオリティーを相当高くしてこれに金を振り向けるということが絶対必要だと思います。したがって、今までのような鉄道建設方式では、百年河清を待つと言うと長過ぎますけれども、なかなか思うようにいかぬのじゃないか。そこに新しい計画を立てると同時に、新しい鉄道の建設の仕方、仕組みをつくらなければ、先ほど来あなたからお話のあったような殺人的混雑はなくならない、かように思っております。
  228. 仁杉巖

    ○仁杉説明員 今大臣からお話がございましたが、まことに同感でございます。先ほども私申しましたように、常磐線等につきましてはいろいろ輸送が逼迫しておりますので、大臣等の今お話を受けまして、そういうことを背景にしながら我々も実現に努力してまいりたいというふうに思う次第でございます。
  229. 森田景一

    ○森田(景)委員 終わります。
  230. 福家俊一

    福家委員長 辻第一君。
  231. 辻第一

    ○辻(第)委員 夜も大分更けてまいりまして、大臣も総裁初め皆さん方、大変お疲れだと思いますが、二十五分間質問いたします。  きょうの審議中心は国鉄運賃改定問題だということでございますので、国鉄運賃の問題について質問をしたいと思います。  昭和五十二年の国有鉄道運賃法の改正以来、国鉄運賃は大臣認可によって値上げが繰り返されてまいりました。五十三年、五十四年、五十五年、五十六年、五十七年、そして今回の五十九年ということであります。殊に今回の運賃改定は、単に値上げだけではなしに、明治以来八十年続いてきた全国一律運賃制を崩すなど、重大な問題を持っていることが一つの特徴であります。時間も短うございますので、何点かに絞って伺いたいと思います。  まず大臣にお伺いをするわけでありますが、今回の運賃の値上げについては国民の大きな怒りが広がっておるということだと思うわけであります。今日、国民生活は不況と賃金抑制のもとで大変な苦境にあります。しかし政府は、増税や、福祉、教育の切り捨てとともに、国鉄運賃を初めとする公共料金の値上げを押しつけ、家計をますます圧迫しておるということだと思います。  加えて、国鉄運賃の値上げには重大な疑問が出されているわけであります。言うまでもなく、国鉄の民主的再建や膨大な累積債務と赤字の解決は国民的な要求であり、課題でございます。ところが政府の国鉄改革は、国鉄の赤字対策や借金対策の肝心な部分は何一つ具体的に示さないまま、赤字のしわ寄せを国民と国鉄労働者に押しつけているということでございます。  政府は現在、八一年五月に策定した国鉄経営改善計画の繰り上げ実施、八三年九月二十四日に閣議決定した緊急措置十項目の推進を強めているわけでございますが、これによって縮減できる赤字額は、廃止対象ローカル線をすべて切り捨て、国鉄労働者を三十五万人にまで削減するなど、計画を全面的に実施したとしても数千億円の削減と試算されています。ところが一方で、この間に長期債務の激増に伴った支払い利子や共済年金負担などの特定人件費の急増、東北・上越新幹線の新たな赤字、減価償却費の増加や政府助成の削減などによって、年間一兆数千億の赤字が拡大しています。これに青函トンネル、本四架橋の建設費がもしも国鉄負担ということにでもなれば、合わせて約二兆円の赤字拡大となります。  地域住民にとっては欠かすことのできない足となっておりますローカル線を切り捨て、七万四千人にも上る国鉄労働者の削減をしても数千億円の赤字減らしをしている最中に、一方ではその何倍もの赤字がふえ続けております。まるで穴のあいたバケツに水を注ぐ、今度の運賃値上げはそのようなものではないか、国民からはこのような意見や批判が出ているわけでありますが、大臣はこれに対しどのようにお考えになっているのか、お答えをいただきたいと思います。
  232. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 今御質問の中にもございましたが、国有鉄道が持っております長期の累積債務というものが国鉄の最大の問題であることはお説のとおりでございます。これをほったらかしておいてほかのことをということでございますが、これはほったらかしておるわけではございません。既に五兆数千億は政府が棚上げをしておるわけでございますが、これに対して累積債務をどうするかということを監理委員会中心に真剣に検討をしておるわけでございます。このことは、単に検討をしてしっ放しというわけにはもうまいりません。必ず結論を出して、この始末をつけよう、こういう努力を今しておるところでございます。  したがって、今おっしゃったように、運賃改定等と前後するかもしれませんが、実は今せっかく一生懸命やっておるところでございます。簡単にこれが解決する道があるものならば、もうとっくに解決しておるはずでございますが、金額も大きいし、なかなか難しいということで、基本的な問題であるということについての認識はあなたと一緒でございます。これはもうできるだけ早く結末をつける、何らかの結末をつける、これが監理委員会の最大の任務だと私ども思っておりますし、運輸大臣としても非常に大きな任務だと心得ております。  しかしながら反面、年々の赤字を最小限度に食いとめる、でき得れば単年度の赤字が出ないようにするということが並行して行われなければならない、こういうことでございますので、経営の合理化で人件費、物件費を節約いたしましたりあるいは財産を千六百億も売りましたり、そういうことをいろいろやっておりますし、工事経費も減らす。こういうこととあわせて、苦しいところであろうけれども運賃改定も一部国民の皆さんに御辛抱いただく要するにそういうことを並行してやる。単年度の赤字を最小限度に食いとめながら一方で大きな問題を解決していく、こういうことで考えておる次第でございます。
  233. 辻第一

    ○辻(第)委員 基本的な問題にメスを入れないで今度の運賃の値上げということであります。これは家計を圧迫し、不況と賃金抑制のもとで苦しんでおる国民を顧みない政府の姿勢だと言わざるを得ないわけでございます。  次に移ります。  擬制キロ方式とはどのようなものか、お尋ねをいたします。
  234. 須田寛

    ○須田説明員 擬制キロ方式という言葉に必ずしも明確な定義はございませんただ、国鉄で実務を担当いたしております私どもが従来いわゆる擬制キロと申しておりましたものは、ある種のものがございますが、それは実はいろいろ異なった運賃をいただく場合に、運賃をちょうだいいたします際の計算方法といたしまして、実際のキロを割り増したりあるいは割り引いたりいたしましてキロに換算し直して運賃を出す、こういう方式を私どもは実務上擬制キロというふうに呼んだことがございますが、明確な定義の中で呼んだものではございません。
  235. 辻第一

    ○辻(第)委員 現行の国鉄運賃法は擬制キロ方式を認めていないというふうに思うのですが、いかがでしょうか。
  236. 須田寛

    ○須田説明員 運賃法に七条の二という規定がございまして、運賃を計算する場合は駅間のキロ、つまり実測キロを原則にするのだという規定がございます。したがいまして、いわゆる全面的な擬制キロを前提にしていない規定だということであろうかと存じますが、今回私どもがお願いしておりますまたがりの場合の特例が別途設けられておりますので、今回私どもが地交線と幹線系の運賃のまたがりの場合に計算をさせていただいております方法はその方法によっておりますけれども、全般としての擬制キロというものは、確かに今の運賃法ではあるいは前提としていないのではないか、こんなふうに考えております。
  237. 辻第一

    ○辻(第)委員 現行の国鉄運賃法では擬制キロは認めていないということだと思うわけでございます。擬制キロ方式を採用するということになりますと、運賃法の改正が必要だと考えます。一般的な問題としてお答えをいただきたいと思います。
  238. 永光洋一

    ○永光政府委員 今国鉄の方からお話がありましたように、全般的に擬制キロを行うという形を導入するとすれば、法改正の問題になると思います。
  239. 辻第一

    ○辻(第)委員 今回の改定により、幹線と地方交通線を連続して利用する場合の運賃はどのように計算をされておりますか。
  240. 須田寛

    ○須田説明員 今回、幹線と地交線、つまり異なった賃率をまたがってお乗りになります場合の計算の仕方といたしましては、地方交通線の運賃は基本賃率を幹線の一〇%増しに割り増したもので御認可をちょうだいしておりますので、その割り増し率、つまり地方交通線にお乗りになりますキロを一割増しいたしましたものを計算いたしまして、それと幹線にお乗りになります場合は実際のキロを足し算をする、そして計算をしたもので幹線系の賃率で運賃をちょうだいするという方法をとらしていただいております。
  241. 辻第一

    ○辻(第)委員 それでは、またがり運賃の場合は地方交通線の場合は擬制キロということですね。
  242. 須田寛

    ○須田説明員 確かに地方交通線の場合はキロを割り増しして一割増しで計算をしておりますので、あるいは擬制という言葉に当たるのかもわかりませんが、先ほど私が申し上げましたように、私どもが従来擬制キロと言いならわしてまいりましたものとは違った、全面的なキロに置きかえて運賃を計算するというルールでございますので、そこは定義によりましてどのようにもとれるかと思いますが、私どもは全面擬制キロ制度だとは実は考えておりません。
  243. 辻第一

    ○辻(第)委員 しかし、またがり運賃の場合は、地方交通線については擬制キロを適用されているということであります。擬制キロを適用しておられるということになるならば、国鉄運賃法第七条の二の項目に違反をするということではないのですか。
  244. 須田寛

    ○須田説明員 運賃法には十条の二という条項が設けられておりまして、異なる賃率をまたがってお乗りになります場合の運賃の計算方法につきましては特例を定めることができるという条文がございます。その特例を定めます場合には運輸大臣の御認可が条件になっております。私どもは先ほど申し上げましたような計算方式を考えまして、これを御申請申し上げて、先般御認可をいただいたような次第でございます。
  245. 辻第一

    ○辻(第)委員 今回のまたがり運賃の計算方式は国鉄運賃法第十条の二第一項に基づいて運輸大臣の認可を受けたもので法律上容認されるもの、このようにおっしゃったと思うのですが、運輸大臣の認可を受けて国鉄が定める計算方法が第十条の二以外の法律の規定、つまり国鉄運賃法第三条また第七条の二、こういう問題を超えて定めることができるということは私は納得できないのですが、いかがですか。
  246. 永光洋一

    ○永光政府委員 先ほどの国鉄の答弁と重複するかもしれませんが、またがり運賃の計算の方法は十条の二の二項によりまして「運輸大臣の認可を受けて日本国有鉄道が定める。」こういうふうに書いてございますので、一般的に三条なりあるいは三条の二項、七条の二の規定には抵触しない、計算方法についてはこの十条の二の二項で行うということが明らかになっておると思います。
  247. 辻第一

    ○辻(第)委員 国鉄運賃法の第三条、第七条の二というものがはっきりあるのに、それを超えて運輸大臣の認可を受けて国鉄が定める計算方法云々ということでこの擬制キロ制を適用することは、どう考えてみても法違反だというふうに考えるわけでございます。法改正の必要、不必要の分岐点はどこにあるのか、ちょっと尋ねてみたいと思います。
  248. 永光洋一

    ○永光政府委員 今度の制度におきましても、幹線は別としまして、地方交通線単独乗車の場合という一般的な場合は、これは三条なり七条の二でそれぞれの原則に従っておるわけでありますが、たまたま幹線と地方交通線の賃率を異にするということを十条の二の二項で予定をいたしておりますし、再建法でもそういう前提がありまして、その場合には運賃の計算について、その適用については運輸大臣の認可を受けてこれを行うという規定を入れてありますので、その面におきましていろいろな計算方法は考えられると思うのです。併算でやるとか、あるいは併算の上に若干の割り増しをするとかいうことはあると思いますけれども、その計算方法について、今回は地方交通線の部分について賃率の割り増しを乗じた形で計算をするということをとったわけでございます。
  249. 辻第一

    ○辻(第)委員 国鉄内部の検討資料でも、擬制キロ方式は運賃法等の改正を要するというふうに書いておるところであります。そういうことも含めてやはり私どもは、どのように答弁をされようと、法改正を免れるための言い逃れにすぎない、あくまでも法の違反だというふうに考えざるを得ないわけであります。  時間がありませんので次に移りますが、第三の問題はローカル線割り増し運賃の問題です。地域別運賃制の導入は、明治四十年の私鉄国有化から八十年近く続いた全国一律運賃制を根本から覆す大改革であります。この問題については、知事会など六団体の要望が出ております。また、各地で関係住民や自治体等総ぐるみで反対をしてきたところであります。この制度の導入というのは、言うならば、結局のところ割り増し運賃をやっても地方交通線はやっていけないというようなことで地方交通線を切り捨てていく、さらにはそのことで国鉄の民営・分割化を前進をさせる、こういうことを前提としたものではないかという意見、考え方があるわけであります。いかがでしょうか。
  250. 須田寛

    ○須田説明員 今回お願いいたしておりますのは、現に存在をしております、現に国鉄が経営をいたしております地方交通線の経営収支を幾らかでも改善をするということを一つの目的といたしましてお願いをしておるものでございますので、先生御指摘の地方交通線の分離・民営という問題とは少し次元の違った問題ではないか、こんなように理解をいたしております。
  251. 辻第一

    ○辻(第)委員 この地方線割り増し運賃制度というのは、地方交通線の切り捨てや、あるいは国鉄の民営・分割を前提としたのではないということを確認をして、次へ移っていきたいと思います。  運輸審議会が政府に五つの要望を出しておりますね。時間がありませんので、その三番目と四番目について政府はどのように措置をされるのか、具体的な内容を答弁をいただきたい。また、国鉄もこの要望事項の三と四の内容についてどのように対処されるのか、御答弁をいただきたいと思います。
  252. 永光洋一

    ○永光政府委員 お答えいたします。  三は、地域別の運賃制度を導入をする場合に今後のあり方について十分検討をすべきであるということが一つ。それから四番目が、改定率が大幅な区間についての適切な措置を求められておるわけであります。  第一点の導入後の問題につきましては、先ほど運輸大臣が御答弁になりましたように、要望にありますように導入後の需要の動向、増収効果等について検証を加えた上、今後の運賃及び料金のあり方を検討するようということで要望があります。我々も今後地域別運賃を導入して後、お客がどういうような形で流れたかとか、あるいは増収効果があったかどうかとか、いろいろな面で検討を加えて、今後の対応の糧にしたい、こういうふうに考えておりますし、十分この点国鉄にも指導をいたしたいと考えております。  さらに改定率の問題につきまして、大幅な区間につきましては、定期券あるいは回数券等によりまして、利用回数の多い乗客の負担増を緩和するための措置を講じる所存でございます。
  253. 須田寛

    ○須田説明員 ただいま鉄監局長から御答弁がございましたように、いろいろ国鉄に具体的な指示を運輸省からちょうだいしております。改定率が大幅な区間につきまして定期の値上げ率の抑制措置をとるようにという御指示がございましたので、そのように措置をいたしたいと思っております。  それから回数券につきましても同じように、値上げ率の大幅な区間につきまして割引の回数券を発売することといたしまして、現在準備に入っております。  それから地域別運賃の今後のあり方につきましても、先ほどお話がございましたように、今度の結果を十分トレースいたしまして、よりよい制度とするように、またより定着できる制度にするように今後いろいろ努力をしてまいりたい、このように考えておりますので、鋭意勉強してまいりたいと思います。
  254. 辻第一

    ○辻(第)委員 最後に、今回の運賃改定が、単に運賃の増額にとどまらず地域別運賃制度が採用される。しかもそれには擬制キロ制というものが取り入れられるにもかかわらず、運賃法の改正なしに行われるということは大変な問題だというふうに思うわけであります。  そして最後に、国鉄当局に、十分な旅客サービスの向上に努めることをお願いするわけでございます。国鉄総裁の決意のほどをお聞きしたいと思います。
  255. 仁杉巖

    ○仁杉説明員 運賃の値上げあるなしにかかわらず、こういう状態でございますのでお客様を大切にということが基本になければならないと思います。殊に、大変恐縮でございますが、運賃値上げというようなやむを得ざる処置をとりましたので、今後はより以上にお客様を大切にということで、いろいろな面で細かく配慮をしながら皆様の御期待に沿えるようなお客様に対するサービスを提供するよう努力してまいる覚悟でおります。どうぞよろしく御指導願いたいと思うわけでございます。
  256. 辻第一

    ○辻(第)委員 終わります。どうも御苦労さまでした。
  257. 福家俊一

    福家委員長 次回は、来る二十日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後九時四十七分散会