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1984-10-16 第101回国会 衆議院 安全保障特別委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年十月十六日(火曜日)     午前十一時十六分開議 出席委員   委員長 塩川正十郎君    理事 小渕 恵三君 理事 椎名 素夫君    理事 玉沢徳一郎君 理事 三原 朝雄君    理事 上田  哲君 理事 前川  旦君    理事 渡部 一郎君 理事 吉田 之久君       石原慎太郎君    海部 俊樹君       山崎  拓君    左近 正男君       関  晴正君    安井 吉典君       橋本 文彦君    藤原哲太郎君       東中 光雄君    三浦  久君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 栗原 祐幸君  委員外出席者         防衛庁参事官  古川  清君         防衛庁長官官房         長       西廣 整輝君         防衛庁防衛局長 矢崎 新二君         防衛庁教育訓練         局長      大高 時男君         防衛庁人事局長 友藤 一隆君         防衛庁経理局長 宍倉 宗夫君         防衛庁装備局長 山田 勝久君         防衛施設庁長官 佐々 淳行君         防衛施設庁総務         部長      梅岡  弘君         防衛施設庁施設         部長      千秋  健君         科学技術庁研究         調整局宇宙企画         課長      清水 眞金君         外務大臣官房審         議官      山下新太郎君         外務省アジア局         君       後藤 利雄君         外務省国際連合         局長      山田 中正君         外務省情報調査         局長      岡崎 久彦君         運輸省航空局管         制保安部管制課         長       小山 昌夫君         海上保安庁警備         救難部航行安全         課長      高橋 義典君         海上保安庁水路         部水路通報課長 金子 昭治君         特別委員会第三         調査室長    鎌田  昇君     ————————————— 委員の異動 十月十六日  辞任         補欠選任   東中 光雄君     三浦  久君 同日  辞任         補欠選任   三浦  久君     東中 光雄君     ————————————— 八月八日  一、国の安全保障に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国の安全保障に関する件      ————◇—————
  2. 塩川正十郎

    ○塩川委員長 これより会議を開きます。  国の安全保障に関する件について調査を進めます。  この際、防衛庁長官から発言を求められておりますので、これを許します。栗原防衛庁長官
  3. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 私の訪米訪欧について、御報告申し上げたいと思います。  今回ワインバーガー米国防長官の招待によりまして、九月二十一日から九月二十八日までの間米国を訪問し、同長官との定期協議を行うとともに、クラウ太平洋軍司令官ダム国務長官タワー上院軍事委員長及びマクファーレン大統領補佐官等会談をし、また米国軍事施設等を視察してまいりました。  ワインバーガー長官との協議概要は、次のとおりでございます。  まず、私から、世界平和のためには、米ソ間の対話が重要であり、この点、レーガン大統領国連における演説の中で、ソ連対話を呼びかけたことは、極めて意義深く、常に平和と軍縮の問題を念頭に置きながらへ防衛施策を進めることが、肝要であるとの考えを述べました。  ワインバーガー長官から、これに対し同意を表明するとともに、軍縮で一番大きな問題は、検証可能な措置をとることにあるとの発言があり、私は、検証可能なところから実施していくとの米側考え方は、十分理解できるものである旨申し述べました。  我が国防衛努力については、ワインバーガー長官から、我が国が厳しい財政事情の中で努力を続けていることを高く評価しているが、NATO諸国日本もより一層の努力が必要と考えている旨の発言があり、これに対し私から、みずからの国はみずからが守るという気持ちが大切であり、今後とも日米安保体制を堅持しつつ、憲法に基づき、できる限りの防衛努力を行う考えである旨申し述べました。また、これに関連して、「防衛計画大綱」に定める防衛力水準早期達成するとの従来の方針に基づき、五九中業において、大綱に定める防衛力水準達成を期するとの方針で作業するよう指示したこと、また、防衛力整備は計画的かつ継続的に行うべきであるとの考えから、厳しい財政事情のもとではあるが、七%増の六十年度概算要求を行ったことについて説明をいたしました。  継戦能力の問題については、ワインバーガー長官から、米側においてもその重要性に関する認識が高まっており、抑止力確保観点から、日米ともその能力向上に努める必要がある旨の発言がありました。  私からは、この問題の重要性はよく認識しており、五九中業作成に当たって、特にその能力向上に努めるよう指示するとともに、六十年度概算要求においても重点的に配意しているところである旨述べました。  さらに、空母艦載機着陸訓練の問題については、ワインバーガー長官から、これまでの日本側努力に感謝するとともに、早期解決を要請する発言がありました。  これに対し私から、本問題の重要性は十分理解しており、今、直ちに解決策を述べることはできないものの、総合的かつきめ細かい配慮をしつつ、今後とも誠意を持って対処したい旨述べました。  以上のほか、ワインバーガー長官から、日米間のインターオペラビリティー相互運用性在日米軍に対する提供施設整備問題、及びソ連への技術流出問題等についての発言がありました。  クラウ太平洋軍司令官からは、空母艦載機着陸訓練問題等について、我が国への期待が表明せられました。  また、ダム国務長官及びタワー上院軍事委員長との会談においては、米側から我が国防衛努力評価するとともに、今後一層の努力期待する旨の発言がなされました。  なお、予定外のことではありましたが、マクファーレン大統領補佐官会談を行うこととなり、同補佐官からは、防衛問題についての中曽根総理を初めとする日本側の尽力を評価するとともに、日本側防衛努力に対し米国はあらゆる支援を惜しまないこと及び駐留米軍に対する支援に感謝する旨のレーガン大統領のメッセージを中曽根総理に伝えてもらいたい旨の要請がありました。  今回の訪米を通じての所感を申し上げます。  ワインバーガー長官との定期協議においては、平和と軍縮の問題を初めとし、双方にとって関心のある防衛の諸問題について、忌憚のない意見交換を行うことができたことは、大変意義深いものであったと考えております。  防衛努力の問題に関しては、米側は、これまでの我が国努力評価しつつも、今日の厳しい国際情勢のもと、我が国が一層の努力を行うことを期待しております。我が国としては、これまでに築き上げられてきた日米信頼関係を踏まえつつ、今後とも我が国みずからの判断に基づき、各般の分野における努力を行っていく必要があるものと考えております。  米国訪問後、私は、ヨーロッパに渡り、九月二十九日から十月五日までの間、西独ベルギーフランスを相次いで訪れ、ベルナー西独国防大臣ロジャーズ欧州連合軍日取高司令官キャリントンNATO事務総長プレベンベルギー国防大臣及びエルニュ・フランス国防大臣会談を行うとともに、西独フランス軍事施設を視察してまいりました。これらの会談においては、欧州地域における軍事情勢NATO諸国防衛努力及び我が国防衛政策等について率直な意見交換を行い、相互理解を深めてまいりました。特に私は、これら諸国我が国防衛問題について深い関心を払っているとともに、我が国との間で忌憚のない意見交換を行うことを重視していることを強く感じてまいりました。  次に、有事法制研究について申し上げたいと思います。  有事法制研究は、昭和五十三年九月二十一日の見解で示しておりますように、有事に際しての自衛隊任務遂行の円滑を図るという観点から、法制上の問題点整理を目的とするものであり、昭和五十六年四月防衛庁所管法令を中心とした問題点について中間報告を行ったところであります。  その後、他省庁所管法令について、現行規定のもとで自衛隊行動の円滑を確保する上で支障がないかどうかを防衛庁立場から検討し、検討項目を拾い出した上、当該項目関係する条文の解釈、適用関係について関係省庁協議調整を行ってまいりましたが、今般、問題点整理ができましたので、ここに御報告いたします。  今回の検討作業においては、問題点整理する上で便宜的に自衛隊行動等の態様に応じて区分しておりますので、以下この区分に従ってその概要を御説明いたします。  部隊の移動、輸送については、損傷した道路等部隊が滞りなく通行するため、道路法との関係が、土地使用については、陣地の構築などに際し速やかに土地使用するため、海岸法河川法等との関係が、構築物建造については、航空機用掩体指揮所等を速やかに構築するため、建築基準法との関係が、火薬類取り扱いについては、所要の火薬類を速やかに運搬するため、保安技術上の観点から設けられている規定との関係が、衛生医療については、野戦病院等を速やかに設置し、医療を実施するため、医療法との関係が、戦死者取り扱いについては、戦死者埋葬等を適切に行うため、墓地、埋葬等に関する法律との関係が、会計経理については、工事資材等を円滑に調達するため、予算、決算及び会計令臨時特例との関係が、それぞれ問題になると考えられます。  なお、電気通信については、有線電気通信法電波法等について検討いたしましたが、現行法令上必要な措置がなされており、自衛隊任務遂行に当たり、問題がないと考えられます。  他省庁所管法令について問題点は以上のとおりであり、問題点整理はおおむね終了したと考えております。  また、これまでの検討を踏まえて整理いたしますと、有事における、住民の保護、避難または誘導を適切に行う措置民間船舶及び民間航空機航行の安全を確保するための措置電波の効果的な使用に関する措置など国民生命財産保護に直接関係し、かつ、自衛隊行動にも関連するため総合的な検討が必要と考えられる事項及び人道に関する国際条約に基づく捕虜収容所設置等捕虜取り扱い国内法制化など所管省庁が明確でない事項考えられ、これらについては、今後より広い立場において研究を進めることが必要であると考えております。  なお、申し上げた内容について整理したものをお配りしております。  以上、有事法制研究についての報告とさせていただきます。     —————————————
  4. 塩川正十郎

    ○塩川委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。椎名素夫君。
  5. 椎名素夫

    椎名委員 ただいま長官から、今回の訪米訪欧の御報告と、あわせて有事法制中間報告を承ったわけですが、時間も余りございませんし、専ら訪米訪欧に関連する質問をさせていただきたいと思います。  我々日本としては、日本防衛考える場合に、憲法の枠内、また専守防衛ということで着実な努力を続けていくというのが考え方でございますけれども、とにかく世界がきな臭くなければやる必要のないことである。我々日本国民のみならず、世界じゅうの国民が非常な危惧を抱いている一つの点は、やはり核兵器の存在ということが大変に大きな関心だと思っております。もちろん、核抑止力というものがある程度有効に働いているということは私どもとしては疑いのないことだと思いますけれども、しかし、どこまでも米ソ両大国が核軍拡ということをやるようなことになると、非常に心配な事態になる。  そこで、今回の御訪米で、我が国防衛担当者であります長官が特に平和と軍縮の問題を取り上げてワインバーガー長官と話をされたというのは今までは余りなかったことじゃないかと思います。その点については私としては大変に評価をいたしたいと存じております。たまたま、いらっしゃった時期に国連においてそういう論議も進んでおったということもあったわけでありますが、ワインバーガー長官その他とのお話の中で、平和と軍縮の問題、どういうようなお考えを述べられたか、この基本的なお考えを伺いたいと思います。また同時に、アメリカ側認識というものはどういうものであったか、この点につきましてもお聞かせを願いたいと思います。
  6. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 今御指摘のありましたとおり、ワインバーガー長官等と話をする場合、一番最初に議題にいたしましたのは、平和と軍縮でございます。防衛担当者同士でこういう問題を冒頭議題に供するということについては、従来の観点からすると、いささか似合わないという御批判もあろうかと思いますが、私は、今椎名さんからもお話がございましたとおり、やはり米ソの問題、関係というのは非常に重要だと思うのです。特に、アメリカ自由主義陣営の指導的な国でありますから、リーダーでありますから、アメリカ国防長官と話をする場合にも、アメリカが絶えず平和と軍縮、そういうものについて御留意をいただきたい。ソ連が、例えばアメリカ流に言うとかたくなであっても、ソ連に対して絶えず呼びかけてもらいたい、そういう観点から、実はこの話を持ち出したわけでございますが、たまたま御指摘がありましたとおり、ちょうど私がワインバーガー長官とお会いする前に、国連レーガン大統領の平和と軍縮に関する提言がございました。私は英語がよくできるわけじゃございませんが、これを生で聞きました。生で聞いて、なかなか迫力のある、説得力のある考え方だと思って、レーガン大統領のこの国連演説評価をいたしました。その上に立って、やはりアメリカ世界リーダーなんで、ひとつソ連に対して絶えず呼びかけをしてもらいたい、こういう話をいたしましたところ、ワインバーガー長官から、御評価をいただいてありがたいが、レーガンの本日の演説つけ焼き刃じゃないんだ、私はレーガンと二十年来の友人であるけれどもレーガンは平和と軍縮の問題について、絶えず関心を持ち、いろいろと考えてきておるんだ、そういう意味合いレーガンは平和と軍縮に非常に関心があるということを御留意をいただきたいと思う。同時に、現実防衛担当者として考えねばならぬことは、これはやはり抑止理論というものをとらざるを得ない、いろいろの今までの経過から見て、抑止理論をとらざるを得ない。それと同時に、軍縮とか、軍備管理という場合にはお互いに検証可能である、そういう措置をとりながら、逐次軍備管理軍縮を進めていくべきである、そういう考え方を申し述べられました。  私は、基本的に平和と軍縮の問題を考えながら、現実の問題として検証可能な措置をとっていくというアメリカ側考え方は十分に理解できる、こういうことを話をしたわけでございます。  その他、ダム国務長官のときでも、あるいはマクファーレン大統領補佐官等に対しましても、アメリカ世界自由主義諸国リーダーであるわけで、格別の御努力、御工夫を賜りたいということを申し述べておいたわけでございます。  この点につきましては、アメリカ側は私の考え方について賛意を表すると同時に、私の方に現実的な問題について説明をした。私の方はそれはそれなりに理解できる、こういうことでございました。
  7. 椎名素夫

    椎名委員 今回のワインバーガー長官との会談でありますが、一時相当アメリカ側がこれをやれ、あれをやれというようなことを言った時期も過去にはないわけではなかった。今回は報道その他で聞きましても、非常に静かな雰囲気の中で会談が行われたというふうに承知をしているわけであります。先ほどの御報告の中でも、アメリカ側が今回の六十年度予算概算要求基準というものについて、日本の政府としては七%という数、これに対して非常に高い評価をしたというお話もございましたけれども、まあ静かな雰囲気の中で、またそういうような発言もあった。これについて長官はどういうふうに受けとめられてお帰りになったか、この点を伺いたいと思います。
  8. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 今度のワインバーガー長官との会談というのは、お説のとおり大変静かでございました。それはどこに原因をするかというと、やはり我が国防衛政策、端的に言うと今の中曽根内閣防衛政策というものが日本防衛政策に基づいて着実にやられておる、そういうものに対する評価ではないかと思います。具体的には六十年度の概算要求枠七%等々、非常に経済情勢財政状態等の厳しい中でぎりぎりの線を確保された、その努力は大変なものであろうということで御評価をいただいたものと思います。  私は、アメリカワインバーガー長官の話の中で、アメリカ世界の自由と平和のために最大の努力をしているのだ、そのために莫大な国家予算を使っているのだ、世界の平和と安全のために、自由のために使っているのだ、だから日本日本防衛政策の枠の中で最大限努力をしてもらいたい、NATOの方もそうしてもらいたい、こういう話の中で我が国防衛費の点について、概算要求について評価をしたという観点から、先ほど申しましたとおり、着実な整備をしておるという評価だろうと思うのです。  これに対しまして、私は、御評価はありがたいけれども、これは我が国の独自の防衛政策、例えば、これは私はもうたびたび国会でも言っているのだけれども我が国防衛政策基本になる「防衛計画大綱水準達成を期する、そのためには継続的かつ計画的に防衛費というものを積み重ねていかなければならない。そういう観点からすると、財政事情が非常に厳しいけれども、そのぎりぎりのものとして、私どもはこの線を決めたのだ、これは我が国防衛政策で自主的に決めたのだ、したがって、さらに一層の防衛努力を望むというお話もございましたが、この概算要求で七%を我々は一応決めたのだけれども、本番は十二月だ、したがって、これは自主的に我々がそれの実現のために努力するのは当たり前である、こういうことを話したわけであります。  同時に、防衛費についての最終的な判断といいますか、最終的なサポートは何かというと、私は国民理解協力だと思います。ですから、最終的に防衛費をどのように決めるかということについては、国民理解協力が必要であるので、これは前々から言ってありまするが、しょえるものはしょいますけれども、しょえないものはしょいませんよということをつけ加えておいたわけでございます。  これに対しましても、向こうの方は静かにうなずいておったということでございまして、アメリカ側日本に対して強いといいますか、防衛力の着実な整備を求めていることは、これは静かであるからどうでもいいというものではなくて、やはりアメリカも頑張ります、しかし日本同盟国NATOも、それぞれひとつしっかりやってもらいたい、そういうふうに考えまして、これは非常に重く考えております。
  9. 椎名素夫

    椎名委員 今長官が言われましたように、我々の防衛というのは、もとより日本が自主的に考え、そして実行していかなければいかぬ。しかし同時に、日本だけで日本を守れるわけではないということで日米安保条約というものがあるわけであります。ですから、同盟国であるアメリカとの信頼関係がなければ日米安保というものもスムーズには機能しない。そういう意味で、向こうがこちらに信頼し、期待しという要素は、これは我々の防衛政策一種基本でございまして非常に大切なことだと思うのですが、今のお話向こう期待というようなものはよくわかったわけでありますが、これを踏まえまして、これから先長官はどのような方向で我が国防衛力整備を行っていかれるお考えであるか、これについてもう少し伺わせていただければ幸いであります。また、その点についてアメリカ側にどういう説明をなさったか、あわせてお聞かせを願いたいと思います。
  10. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 今御指摘のとおり、日本アメリカとの関係基軸でございます。我が国防衛考える場合に、みずからの国はみずからで守るという決意のもとに、自分でやらねばならぬことはやっていかなければいかぬ。しかし、自分だけでやれるものではございません。そういう意味で、アメリカ支援を得て日米安保でやっておりますから、この基軸というものは動かすことはできません。これは非常に大事に考えていくべきものと私も思っております。  それで、今後どのように進めていくかということでございますが、先ほど申し上げましたとおり「防衛計画大綱水準の早い達成を期する、そういう観点から五九中業でもそれをやっておりますし、六十年度の概算要求でも、ぎりぎりそれに見合う予算要求をしたわけでございます。したがいまして、そういう内容につきまして今後これを確実なものにしていかなければならぬ。ですから、六十年度の予算の中で、この概算要求実現のためにさらに一層の努力をしなければならぬと考えております。そのためには、国民皆さんにも我が国の置かれておる状況、我が国防衛基本的な考え方というものをさらにさらに理解をしていただく、そういう意味合いでは、この安保特で自民党のみならず各党の皆さん方でいろいろと御議論をしていただくことも大変結構なことではないかと思います。とにかく、国民我が国防衛のあり方というものについていろいろと理解をしていただくということが重要ではないかと思いますが、防衛庁といたしましては、みずからの責任において最大限努力をしてこの概算要求実現を期する、そういう覚悟でございます。
  11. 椎名素夫

    椎名委員 防衛力というのは、理想的に働いたときには抑止力として有効に働く。したがって、有事に備えて有事が起こらないというのが最終的なねらいだろうと私は思うのです。そこで、先の五九中業その他で何をそろえていくかというようなことのほかに、いつでも有事に即応できるということがあってこそこれが抑止力として働く。  そこで、御報告にもありましたが、今回の会談でも日米間のインターオペラビリティーとか有事の際の継戦能力というような点について話し合われたということでございますが、こういう問題について長官はどういうふうに対応していこうとされておられるのか、この点を伺います。
  12. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 ワインバーガー長官からいろいろと御意見がございましたが、その中でインターオペラビリティー相互運用といいますか相互互換といった問題についてのお話については、私はこのように話したのです。  インターオペラビリティーの定義をどうとるかということは別問題として、アメリカ日本との間で、いろいろと運用上あるいは装備協力し合うということは当然しなければならない、有事に備えていろいろなことをしなければならぬということは当然である。ただ、私の基本的な考え方は、このインターオペラビリティーというのは、我が国専守防衛の質を高めるということ、我が国専守防衛の質を高めるという意味でいろいろ検討をしていきたい、こういうふうに申し上げたわけであります。また国会でもそのことを申し上げておる。野党の皆さん方には、この専守防衛の質を高めるということについてまだ十分な御理解がいただけているかどうかは別として、私は、専守防衛の質を高めるという意味インターオペラビリティーというものは大いに用いていかなければならないと考えておるところであります。  それから、継戦能力の問題でございますが、有事の際に継戦能力がなければいけませんので、これはアメリカ側指摘があるまでもなく、我が国としても大変大事なことと考えておる。六十年度の概算要求の中では、例えば弾薬について言うと、前年比契約ベースで五七%、そういうようなことも考えておるということを披露しておきました。
  13. 椎名素夫

    椎名委員 それから、日米間でもう一つの非常な問題となっておりますのは、例の艦載機の夜間着陸訓練だと思います。  前から、何とかしてくれという要望が向こうから来ているということは伺っておりますし、また確かに、この第七艦隊の機動力がいつでも一〇〇%発揮されるためには大変に重要な要素である。しかしまた同時に、周辺の住民にしてみますと、これは大変な騒音でありますね。これは我々にとっても非常に大きな問題であります。今回の訪米で、この点について向こう側と具体的にお話が出たか、またどういうような話であったのか、その点を伺いたいと思います。
  14. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 俗に言うNLPの問題につきましては、今までも大変御努力をいただいておるけれどもアメリカ側にとっては極めて切実な問題であるので、ぜひこの上ともの努力をしていただきたい、こういう発言アメリカ側からございました。  これに対して私は、これはアメリカにとっても重要であるけれども我が国にとっても非常に頭の痛い問題だ。これはなぜ頭が痛いかというと、厚木を中心として周辺の市町村は騒音でたまらぬと言っておるのだ、そういう意味合いでは、アメリカにとっても重要であるけれども日本にとっても大変に重要な問題である。私は、この問題については誠意を持って努力をしなければならぬけれどもと言って、こういう表現で申し上げたのです。総合的かつきめ細かい配慮のもとに誠意を持って対処いたしたいということを申し上げた。  私がなぜこのことを申し上げたかといいますと、これは後のワシントンの記者会見でも申し上げたのですが、この言葉はワインバーガー長官と最初に使った言葉じゃないのです。国会でも申し上げましたし、また知事会等でも申し上げたのです。私は、艦載機の着陸訓練の問題はまさに総合的、きめ細かい配慮がなければならない。この間の全国知事会の際にも長洲神奈川県知事から御質問がございました。そのときに私はこう言ったのです。厚木の方がうるさいからよその方へ持っていけというようなことだとこれは困るのだ。日米安保というものが重要てある——日米安保なんかどうでもいいというなら別だけれども日米安保が重要であるというなら、厚木を中心として百五十キロとか百八十キロ、関東並びに関東周辺、そこで一つ訓練場を設けたいと私どもは思っているのだ。だから、厚木さえよければいいのだ、よそでよろしいというようなことではこれは困ります。もし日米安保は破棄しない、日米安保は重要であるという認識ならばそれなりに関係の都道府県でお考えをいただけるものはお考えをいただきたい、こういう話を一つした。もう一つは、この問題について何か防衛庁側で話をすると、話を聞く前から反対、反対と言われる。話を聞く前から反対、反対と言われたのでは困るから、どういうように考えておるかという考え方ぐらいは聞いた上で賛成とか反対というのを言ってもらえないか、こういう話をしたのです。また、東京都知事とも過般、宮中の晩さん会で会ったときに、神奈川県知事にもこういうことを言っている、とにかく総合的に考えてもらえませんか、これにはきめ細かい配慮も必要でしょう、私はとにかく総合的かつきめ細かい配慮でこの問題をやっていかないとなかなか解決できないということを申し上げてきておるのです。  それを踏まえまして、ワインバーガー長官との話しては、総合的かつきめ細かい配慮のもとに誠意を持って対処をいたしたい、こういう答弁をいたしました。それに対しましてはワインバーガー長官から、どうぞよろしくお願いします、こういう返答があったわけでございます。
  15. 椎名素夫

    椎名委員 ただいま伺いました御姿勢についてはまことにそのとおりであると思います。何にしてもこれはなるべく早い時期に解決をしなければならない問題である、引き続いてぜひこれには注力をいただいて、何とかめどをつける方向に持っていっていただくように要望をさせていただきます。  時間もございませんので、欧州にいらして、フランスそれからNATOあるいは西独に行かれてさまざまな方と会談をなさったその感じを伺いたいと思うのですが、私ども実は一九五五年からNATOの国会議員の集まりにオブザーバーとしてずっと出ております。三年前にはその会議がドイツでございましたけれども、当時ボンあたりで大変大きな反核デモがあったりして、そういうことにどう対応していくかがヨーロッパでの非常に大きな問題になっていた。またその後、例の二重決定というものを踏まえて、去年から配備が行われる。そういう中で、いわば我々以上に西欧の政治指導者というものは苦悩しているという印象をずっと持ってきたわけでありますが、今回の御訪欧フランスあるいはNATO、ドイツでのお話を通じて感じられたことについてお伺いをしたい。
  16. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 西ドイツ、フランスベルギーの国防大臣、それからキャリントン事務総長、ロジャーズNATO軍司令官等にお会いいたしました。ロジャーズさんは軍人ですから、軍人的な立場からいろいろとお話をされますので、これは一応おくといたしまして、ほかの方々、特にフランスベルギー、西ドイツの国防大臣と会った印象を申し上げますと、私が日本考えていたよりもソ連に対する脅威ということを非常に強調されましたね。私は今までソ連の脅威という場合に、日本の国内では、アメリカの受け売りだというようなムードが非常にあると思っていたんですよ。その点を非常に私は思っていたのですけれども、西ドイツ、フランスベルギーへ行きますと、やはり境を接しているせいですか、ソ連の脅威というものを非常に強調されましたね。これは私にとりましては予想外でございました。そしてそれと同時に、フランスNATO諸国とは一線を画しているのじゃないか、こういう感じもございましたが、言葉の上では一線を画しておりますけれども、実態的にはNATOフランスとは一体ですね。特に私が行きましたときに、FARという緊急特殊部隊をヨーロッパの前線に派遣する、そういうことについての説明がいろいろございました。アメリカから振り回されるのは嫌だという気持ちはありますけれども、そういう精神的なものがありますけれども、事対ソ連に関する限りはNATOと一体であるというのが私がフランスの国防大臣から受けた感触でございます。特にと言えばそこら辺が主なところでございました。  あと感想を申し述べると、日本に対して大変熱い期待がある。いわゆるNATOといいますか、西側の陣営の中に、日本の方も積極的に協力をしてもらいたいというようなニュアンスのお話がございました。しかし、私はこれに対しては、日本はそういうことはできないんだ、軍事的な意味でヨーロッパのあなた方とどうこうするということはできないんだ。日本憲法のもとに制約がある、だから日本のとるべき姿というのは、日米基軸として我が国防衛力整備を着実に進めていく、そのことが我が国の平和と自由を守るのみならず、ひいては世界の平和と自由を守ることになるのじゃないか。だから、お互いに平和と自由を守っていくという意味合いでは協力をし合わなければならぬが、軍事的な意味ではそれはできないのです。ただし、いろいろと情報の交換その他は必要なことでしょう。そういう意味合いからすると、できる情報交換等のことはいたしたいと思う、こういう話をしたのです。  総じて言えることは、ちょっとオーバーになるかもしれませんが、世界の中の日本ということを感じましたね。アメリカだけでなくて、ヨーロッパへ行ってみて、我々が考えている以上に向こうには日本というものに対する期待があるのですね。好むと好まざるとにかかわらずそういう期待が非常に強い。ですから、日本はそういう国々に対して、何といいますか、大きな期待を膨らませるようなことはもちろんできないわけでありますが、同時に、日本は利己的で孤立主義である、利己主義であるというような印象を持たしちゃいけない、それが私のヨーロッパへ回っての率直な感想でございます。
  17. 椎名素夫

    椎名委員 今おっしゃったことは全く同感でございまして、我々日米基軸ということでずっとやってきたわけですが、ますます、西側の一員と我々言っておりますけれども、その西側の安全保障というもの、これはグローバルであり不可分であるということだろうと思うのです。ですから、幾分遠いかもしれないけれども、そういう意味でいわば我々の仲間である西側諸国の生の感触をおつかみいただいたということは、大変今回のこのヨーロッパへの御旅行も意義があったという気がいたします。そういうことを踏まえて今後ますます防衛政策の遂行ということについてお力をいただくように、また今回の米欧の御旅行についてまことに御苦労さまでしたと申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  18. 塩川正十郎

    ○塩川委員長 前川旦君。
  19. 前川旦

    ○前川委員 時間が少のうございますので、簡潔に質問いたしますので簡潔に御答弁いただきたいと思います。  まず最初に朝鮮半島の問題でありますが、朝鮮半島の緊張が緩和するということは日本安全保障上大変大事なことであろうと思います。そこで外務省にお尋ねいたしますが、朝鮮半島の情勢について長期、短期に分けまして、まず長期的に見て対朝鮮民主主義人民共和国、長いですから私は省略しまして朝国、または朝鮮国と省略してはちょっといかぬかな、この関係改善を図る時期がもう来ている、こういうふうに思いますが、外務省、どのようにお考えでしょうか。
  20. 後藤利雄

    ○後藤説明員 お答えいたします。  最近韓国ではいわゆる緊張緩和というか、いろいろな動きがございます。短期的にも、韓国の水害に対しますところの北朝鮮の救援実施が九月の初めにございました。それから、その後に韓国側からもスポーツあるいは人道的、経済交流等の分野での種々の提案が行われております。さらに、先ほど入手いたしましたラジオプレスによりますと、北朝鮮党機関紙が韓国側が提案いたしましたところの南北経済対話に関する韓国側の提案を歓迎するというような論評を掲げているという報道もあります。もし右が事実でございますと大変歓迎すべきことであろうと思います。したがいまして、我が国としましてはこのような南北間の直接的な対話の進展というものの動きが一番大切であろうかと思っておりますので、それによって朝鮮半島の緊張の緩和あるいは南北間の信頼醸成に資するものである、私どもといたしましてはこう考えております。これは短期的にもそうでございますし、長期的に見ますと、私どもとしては朝鮮半島における緊張緩和が南北間の直接的対話を通じて実際に実現するということが一番望ましい、そういうことで日本政府も環境醸成に可能な協力をいたしたい。長期的に見ますとこのような緊張緩和ということを通じましてひとつ我が国としても現時点においては、もちろん政府間の交流を行う考えはございませんけれども、経済、文化交流等の分野における民間レベルの交流を通じまして、一歩一歩この問題が解決していくということをこいねがっておる次第でございます。
  21. 前川旦

    ○前川委員 安倍外務大臣はこの朝鮮国は変わったという認識をたびたび新聞であるいはテレビの録画撮り等でも言っておられますが、事務当局である皆さんも、あの国は変わってきている、大いに動いている、やはり同じようにこういうように判断されますか。
  22. 後藤利雄

    ○後藤説明員 先ほど若干例示さしていただきまして繰り返しになる部分がございまして恐縮でございますけれども、この五月にキム・イルソン、金日成主席がソ連に訪問されて以来朝鮮民主主義人民共和国、いわゆる北朝鮮が我が国米国、韓国等に言及する際の表現あるいは最近では韓国の水害に対する救援の実施、それから石橋委員長の訪朝等の際の金日成主席の発言等、現象面におきまして北朝鮮の態度に柔軟性が見られるということは事実として一つの変化として指摘することができると思います。
  23. 前川旦

    ○前川委員 今いろいろ御例示になった上で、変化をしている、こういうふうに認識する、こうはっきりおっしゃったのでしょうか。  ほかにも変化はたくさんあります。今指摘されただけじゃなくて、石橋訪朝団で一つ特徴的なのは南北対話の問題でありますけれども、韓国、南の方は二者会談と言い、北の方は三者会談と言う。食い違っていましたね。ところが、石橋訪朝団との議事録によりますと、金日成主席はやはり基本的には二国だ、ただアメリカがそこにいて、アメリカは軍事力をそこで持っているのですから、やはりアメリカの担保というか保障というか、それがないと本当の南北関係の平和はないんだ、基本的にはやはり二国間だというニュアンスが出ているわけです。南の方は、アメリカ対話するんだろう、つまり韓国をのけるのだろうということで反対をしていたわけですね。その辺も非常に微妙な変化であろうと思います。  それから、日朝漁業協定がうまくいきました。これもそうであります。  それから、これは小さい新聞記事でしたけれども、宇都宮徳馬参議院議員がやはり金日成主席と会談した後、十月十日に北京で記者会見をしてその結果を言っておられます。それを見ますと、朝鮮国は核武装はせず、外国からの核の応援も受けない、つまり核の傘否定、つまり非核三原則です。これを言っておられます。南進の否定、これも再び言っておられる。それから、核軍縮を呼びかけた二十二人委員会のメッセージに賛意を表した。この二十二人委員会には鈴木善幸前総理もおられます。さらに、三木元首相を会長とする軍縮議連の訪朝を打診したのに対して、いつでも迎え入れる。総理の経験者二人を喜んで迎え入れる、あるいは核の傘を否定する、南進をさらに否定する。これは私は、ドラスチックに変化をしているというふうに思うのですね。  たびたび繰り返すようですけれども、私はその辺、これは大きな変化だという認識をもう少しはっきりしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  24. 後藤利雄

    ○後藤説明員 昨日日朝漁業協定もピョンヤンで調印されたという報道がございます。この点に関連しましては、石橋委員長及び御一行、それから、ただいまピョンヤンにおられますところの谷日朝友好促進議員連盟会長代行、広瀬事務局長の御努力を我々としましても大変多とし、かつ高く評価する次第でございます。ただいま先生がいろいろ御指摘がございましたそういう動きというものは、我々としてはこれを大事にしなくちゃいけないということは御指摘のとおりでございます。そのような意味では、先ほども触れましたけれども、韓国の提案いたしましたところの貿易、経済協力の問題について、先ほどありましたラジオプレスのような報道が仮に事実であるとすれば、繰り返しでございますが、私どもとしては大変歓迎すべきことであろうということでございます。このようなことが実際に南北対話とかあるいは緊張緩和に具体的に進むということを我々としては衷心期待し、希望しておるわけでございますので、今後ともこれらの動きを十分慎重に、かつ前向きに期待を持って見ていきたい、こういうように考えております。
  25. 前川旦

    ○前川委員 それでは具体的にお尋ねいたしますが、今一番問題になっておりますのは、例のラングーン事件に対する制裁を解除する問題であります。  この問題についてはいろいろ外務省首脳の発言として、お名前はよくわかりません、アジア局長さんでしょうか、外務省首脳の発言としていろいろ新聞で報道されておりますが、タイミングをはかっているとか、もう少し北の出方を見てとか、いろいろな評論がされております。しかし、その中で私やはり今ラジオプレスのお話が出ましたけれども、このわずかの期間に、八日間に三種類の南北対話を南から提案している。申副首相の十二日の南北経済協力機構一それから南北体育会談、南北赤十字会談等といろいろありました。これに対して、北側の、つまり朝鮮国の反応を見てラングーン事件の解除を考えるというのが、報道されております中では明るみに出てきた問題だろうと思います。  あるいはそのほかに、今度外務事務次官が訪韓されるのですか、韓国の方の意向を打診してというような記事もありましたけれども、しかし、韓国のことばかり気にしておったのでは、これは日本の自主的な外交が失われます。日本日本の国益に立って外交をすればいいのでありますから、南の方からの対話の呼びかけがある、北の方からはね返ってきたという先ほどのお話であれば、その前の漁業協定の締結と相まって、これはもうタイミングとしては今絶好のタイミングが来た。もう何も来年の韓国の国会選挙とか気にしなくても、あるいは全斗煥大統領が帰ったばかりだからということを気にしないでも、今堂々とやってもいいのじゃないでしょうか。その御判断を伺いたいと思います。
  26. 後藤利雄

    ○後藤説明員 先生御案内のとおり、昨年十一月七日にとりましたところのいわゆる北朝鮮に対する措置でございますが、これはラングーン事件の後、いわゆるテロ行為は国際的にも断じて許されないという我が国の毅然たる態度、姿勢を示すという意味でとられたわけでございます。したがいまして、この措置が日朝漁業協定と直接関連する、直接関係があるというものではないことは御理解いただけるかと思います。  最近、いろいろなところで新聞に、私は首脳でございませんですけれども、いろいろ新聞に漁業協定がうまくいったらあれは外されるんじゃないだろうかとか、あるいは南北の交流が進んだら外されるんじゃないだろうかとか等々ございます。私どもといたしまして、私は、個人的にはやはり南北の対話が具体的に実質的に進むということが非常に大事であろうということは思っておりますけれども、この措置は、もともと御案内のとおり当分の間とるということになっておりますので、いずれは解除しなければならないということは当然でございます。  御指摘のとおり、政府にとってはそのタイミングは重要な検討課題でございますけれども、いろいろな今のような漁業協定のお話、あるいは南北の経済協力対話が何か進展しそうな現状等々いろいろな事実がございますので、そのような事実の積み重ねを総合的に判断いたしまして、日本政府としてはどう取り扱ったらいいか、タイミングを含めまして現在検討していきたいと考えております。  なお、松永次官の訪韓がございますけれども、これは実は半年ほど前に先方の次官から招待がございましたのをこの時期に行うということでございまして、特に交渉をするとかいうことではございません。したがいまして、今回の対北朝鮮措置をこの際討議する、そういうものではありませんので、一言つけ加えさせていただきます。
  27. 前川旦

    ○前川委員 それでは、具体的にもう一つ詰めて伺いますが、このラングーン事件に対する制裁措置ですが、これを解除するのに、ラングーン事件に対して何らかの言及をするということ、これが解除の条件であるというふうに伝えられたことがありますが、それはもうその条件はない、こういうふうに考えてよろしゅうございますか。そういうふうにしないと、これは解除するタイミングがなくなりますから、その点いかがでしょう。
  28. 後藤利雄

    ○後藤説明員 私どもといたしましては、先ほど申し上げましたように、あの措置がラングーン事件に関連してとられましたので、本来ならばラングーン事件の問題が公にどこが悪かったというようなことが明らかにされますと、率直に申し上げまして非常に措置の解除がしやすいわけでございます。韓国側も、ラングーン事件の一つの釈明というものが公にされることを言っておるわけでございますけれども、実際のところこういうことが公に釈明されるということを期待するのは現実的ではないだろうと思います。したがいまして、先ほど申し上げましたようないろいろな問題の進展の積み重ねを見た上で考えるということでございます。
  29. 前川旦

    ○前川委員 わかりました。今はっきりしたことは、何らかラングーン事件に言及をするということが前提で解除するのではない、もうそのような考えはなくなった、南北間の交流の実態を見て判断をする、こういうことでございますね。よろしゅうございますね。
  30. 後藤利雄

    ○後藤説明員 ラングーン事件に直接言及があるということが最も望ましいことは、申すまでもございません。しかし、そうでなくても、いろいろな間接的な対話の積み重ね、環境の変化、進展というものを見ました上で我々としては考えていいんだろう、こう思っております。
  31. 前川旦

    ○前川委員 それでは、先ほどのタイミングでありますが、早ければ今月中に、遅くとも来月中にという予測された報道もありますが、そういうふうに考えてもいいと思うのですがね。その辺ちょっと示唆をなさっていかがですか。
  32. 後藤利雄

    ○後藤説明員 いろいろな新聞にもサゼスチョンがむしろございますけれども、率直に申し上げまして、今の時点において、今先生が言及されましたようなタイミングでどうであるということは、現在の私の立場では申し上げることを差し控えさせていただきたいと思います。
  33. 前川旦

    ○前川委員 アジア局長、大臣を補佐されなければいけませんね。安倍大臣はかなり積極的でしょう。そしてこの間、総合安保閣僚会議、これは十月十二日の午前中首相官邸で開かれていますが、その後記者会見で「北朝鮮の動き等を見極めつつ今後の対応を考えていく」と初めて公式に解除の可能性に触れておられる。つまり、私は安倍大臣はかなり突っ込んだ考え方を持っておられるように思うのです。ですから、そういう立場にないとおっしゃったけれども、それはやはり補佐をして進めていく立場ですから、それはあなたも日本の外交を背負っていらっしゃるお一人ですから、もう少しはっきり、例えば来年の二月の韓国の選挙を見てからではないとか、あるいは年内にもその可能性はあるんです。今月でもいいんです。南北対話がどの程度まで進めば、もう一つ何かあれば解除するという具体的なお考えがあれば、この際はっきりおっしゃった方が私はいいと思います。いかがでしょう。
  34. 後藤利雄

    ○後藤説明員 私も安倍大臣の忠実な部下でございます。
  35. 前川旦

    ○前川委員 ということは、どういうことなんでしょうか、よくわからない。(「意を体してだ」と呼ぶ者あり)そうか、今の答弁は、十分意を体しているという意味でしょう。ですから、私が伺ったのは、来年二月ですか一月ですか、韓国の総選挙を待ってからというような報道もありますが、そういうのは関係がないのだということがまず一つ。それから、さっきちょっと触れられましたね。次官が行って打診して、その結果を見てというんじゃないのだ、これが二つ。この二つを確認してもらって、そうすれば可能性としては、ことし中にだって、来月中にだってあり得るのだということなんだろうと思いますが、いかがでしょう。
  36. 後藤利雄

    ○後藤説明員 松永次官はもちろん行かれますけれども、この問題はもちろん日本政府の独自の判断において行うことであることは当然でございます。  それからタイミングの問題につきましては、ただいま先生、来年の国会というようなことも言われましたし、そういうような新聞記事がございますけれども、率直に申し上げさせていただきまして、タイミングの問題は、これから外務大臣とも、あるいは総理とも十分御相談さしていただいた上で、今先生のような御示唆もよく踏まえた上で考えさしていただくということでございます。
  37. 前川旦

    ○前川委員 それでは早急な解除もあり得るということですね。
  38. 後藤利雄

    ○後藤説明員 真っすぐにお答えできないかもしれませんけれども、そもそもこの措置は当分の間でございますので、そういうことと、先ほどから私がお答えさしていただいたことを踏まえまして、ひとつ御理解はいただきたいということでございます。
  39. 前川旦

    ○前川委員 どうも局長、これ以上答えるの無理でしょうか、大臣でないと。  それじゃ、気持ちはわかったように思いますので、後で議事録を見てみたら何にもわかってないようなことになるかもしれませんが、雰囲気として何となくわかったような気持ちもいたします。  それでは、防衛庁長官、お尋ねしますが、アメリカとヨーロッパ、御苦労さまでございました。特に長官からのイニシアで平和と軍縮の問題を取り上げられましたことは、私は率直に敬意を表しておきます。しかし、問題は中身だと思いますが、まず七%の概算要求、これは約束されたんですか。それとも努力するということなんでしょうか。しかし、努力すると言って、向こうは約束と受け取ったんじゃないでしょうか、それは。そこのところ心配なんですが、どうですか。その辺の言葉のニュアンス、いかがでしょう。
  40. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 大変僭越でございますが、私は明確に物を言っているんですよ。ですから、七%はアメリカさんに対して約束しますなどということは絶対に言ってないです、そんなことは。私は、向こうが七%を評価したから、それはそれなりにありがたいが、我が国の実質的な防衛政策として、七%というのは財政とのぎりぎりの接点として一応決めたんだ、しかし、これで決まったわけじゃないんだ、したがいまして、本予算を組むときにこれに対してどうするかということであるけれども我が国が自主的に、私の方が自主的に決めたことであるので、それについてこれが実現を図るというのは当然のことであるということで、そういう話をしまして、アメリカ側に、あなた方が言うからこれは必ずやりますよなどということは一切言ってないです、これは。  それからもう一つは、最終的には防衛費というのは国民理解協力がなきゃいけない、たびたび申し上げているとおりですね。私は、しょえるものはしようけれども、しょえないものはしょわない、これをつけ加えておく、こういうことを言っているのです。したがいまして、御心配のように、七%についてアメリカ側に約束をしたというような事実は一切ございません。
  41. 前川旦

    ○前川委員 この概算要求の中には人件費は含まれていませんね。そこで、今までの経過を見ると、五十八年度は概算要求は七・三五%、しかし、決定は六・五%、五十九年度は概算要求が六・八八%、決定は六・五五%、概算要求のとおりいってませんね。そこで、この七%を、これは人件費を入れないと%ですから、これが最終決定の場合は人件費を入れての七%になるかもわからないし、あるいは切り込まれるかもわからない。それをアメリカで、もし向こうが約束というふうに受け取ったら、後非常に不信感を残すだけで、かつてそういう例がありましたから、私はそれを心配して申し上げているんで、約束した覚えはないとおっしゃいますけれども向こうがそういうふうに受け取るようなこともないように注意されましたか。その点いかがでしょう。
  42. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 私は向こうの方に、向こうがどういう印象を受けたか知りませんけれども我が国の自主的な防衛政策でやるんだ、そしてこれは、概算要求というのは本決まりじゃないんだということも言っておりますから、それをアメリカの方が、そうはいってもこれは約束したんだというふうに解釈するならこれは別ですが、そんなことはあり得ないと思います。もっと言うと、非常にストレートに物を言って、歯どめはちゃんとかけておる、そういう男だというふうに向こう認識しているんじゃないかと私は思っております。
  43. 前川旦

    ○前川委員 あいまいに物を言うとえらいことになりますということは、よく御存じのように、私もわかります。  そこで、それじゃ五九中業のことですが、これもこのけさの報告では「達成を期す」というふうに説明をされた。「期するとの方針で作業するよう指示したこと、」を説明した。「期す」というのは、長官、どういう意味で使っておられますか。これは努力目標として使っておられますか。それとも完了するというかたい決意で使われたのですか、この長官指示の中で。それはアメリカに対してどういう説明をされて、アメリカはどういうふうに受け取ったでしょうか。それも私心配なんです。五九中業で完全に「防衛計画大綱」を完成するんだというふうに受け取られたら、後また悶着が起きると思うのですね。不信感も起こると思いますが、その辺いかがでしたでしょう。
  44. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 アメリカが五九中業達成を期するという、そういうような字句の問題については触れておりません。アメリカとの間で五九中業を細かく話をして、一つ一つの言葉についてこれはこういう意味だなんという議論は一切ございません。ですから、その点については今おっしゃったような意味アメリカがとるようなことは一切ございません。  ただ、これは私が五九中業長官指示を出しましたときに言ったことは、決意表明だ、私の強い決意表明で、防衛計画というものは、財政事情とかいろいろなことはあるけれども、財政がいいからたくさんつけてやろうとか財政が悪いから削るんだ、そんなことでは防衛できない、だから継続的、計画的にやっていくんだ、「防衛計画大綱」というのは昭和五十一年にできている、必要最小限度のいわゆる限定かつ小規模の侵略に対応するものだ、これだけやらなければいかぬ、そういう決意でやる、強い決意表明ということを申し上げたのです。それには変わりございません。
  45. 前川旦

    ○前川委員 先ほどの長官が言われました報告の中に「大綱に定める防衛力水準達成を期するとの方針で作業するよう指示したこと、」を説明した。ですから、説明はされたというふうに先ほどのあれはありました。私の心配は、その説明というのが五九中業でこれは完成するんだというふうに受け取られるようなことはなかったでしょうか。その心配はないでしょうか。そうなるとまた五六中業のときみたいなことになりはせぬか。アメリカとの信頼感の問題ですから、その辺ちょっと念を押しておきます。いかがでしょう。
  46. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 ですから、その点について突っ込んだまた細かい質疑応答というのはなかったわけです、それは。ただ、私といたしましては、先ほど申し上げましたように強い決意でこういうことをやっているという意味で五九中業達成を期する、言葉として言っただけでございます。
  47. 前川旦

    ○前川委員 そうしますと、長官、これは読売新聞に投稿されておられますが、「゛背負えるものは背負うが、背負えぬものは背負わぬ"とも言って置いた。」「当方としても、言うべきことはキチンといったつもりである。」ここに投稿されているのは、変に迎合するようなことじゃなくて、ちゃんと日本立場、できる、できぬ、できぬものはできぬのだとはっきり言われたというふうに理解してよろしゅうございますか、長官の投稿の文章ですが。
  48. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 私はできることはできる、できないことはできない、そういうふうにはっきり物を言わなければいかぬと思っています。したがいまして、私は、向こうさんに対して自分の言葉を裏切るような、あるいは過大な期待を持たせるような、あるいはまた向こうさんが判断を間違えるようなことは言っていない、こういうように確信しております。
  49. 前川旦

    ○前川委員 了解いたしましょう。  それじゃ、その後ノーフォークで随行の日本の新聞記者団と会見の中で防衛費一%枠の見直しを長官が示唆した。「防衛費一%枠突破に意欲」とか、各新聞とも見出しはそういう見出しで日本へ記事を送ってきておられます。中を読んでみるとちょっとはっきりしないのですが、一%枠は踏み出すんだというようなことを、そういう決意をおっしゃったんですか、いかがなんですか、この記者会見ではいかがなんですか。
  50. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 今御指摘になりましたとおり、新聞の方が私の言葉をどのように受け取ってどのような見出しをつけたということは、これは内政干渉になりますから私の方ではとやかぐは申し上げない。  ただ、あのときにも私は申し上げましたことは、防衛費の一%の三木内閣のときの閣議決定の方針というのは、これは守っていかなければならない。しかし、今度の本予算のときには今の七%枠についていろいろ議論もあるだろう、それから人勧等の問題も出てくるだろう、GNP等の問題も出てくるだろう、そういう意味でいろいろの議論が出てくるだろう。そういうことは予想されるという意味で、最終的には六十年度の予算を本決まりにするときに決まるというような意味の話をしたわけでございますけれども、その間にいろいろの意見が出てくるだろう、その可能性は否定しないと言ったわけでございまして、私は冒頭、三木内閣の一%の閣議決定は守っていく、そういう前提で話をしておるということでございます。
  51. 前川旦

    ○前川委員 それでは長官のお考えを伺います。  中曽根総理は、この一%の枠内というのを「当内閣はこれ守っていくと皆さんに申し上げているとおりであります。」これは三月二十八日の参議院の予算委員会で言っておられます。当内閣では一%を守っていく。内閣改造がいつあるのかわかりませんが、この当内閣というのは中曽根内閣という意味なのでしょうか。今の内閣で内閣改造があれば、中曽根総理でも当内閣ではないというふうに——長官、どういうふうに受け取られますか、この当内閣という総理の答弁はいかがですか。当内閣は守る、改造があれば当内閣になりませんか。中曽根さんが総理である限りは守るという意味に受け取っておられますか。この議事録では総理はこういうふうに言っておられますが、どうでしょう。
  52. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 これは極めてデリケートな問題ですから、私からそれはこうだろうとかああだろうとか申し上げられませんね。しかし、中曽根総理がどういうことを考えて言われたか知りませんが、私どもは、三木内閣の一%の枠というのは厳然としてあるわけでございますから、これは守っていきますということでございます。
  53. 前川旦

    ○前川委員 それでは、一つ大きな問題は、人勧の問題とこれは関連をいたしますね。それでちょっと事務当局に伺いますが、人勧が三・四五%を超えたら、防衛予算がGNPの一%を超えるというふうに報道されておりますが、この数字は間違いありませんか。一%と現在の防衛予算との枠が、〇・九九一ですか、もうわずかの枠しかない。それは、この間GNPがわずかですが改定されましたから、総額で二百九十五億円ぐらいしか枠がない。一%百二十億円のベースアップ分は既に今の予算に組んでありますから、全部突っ込んで考えてみると、三・四五%を超えたらGNP一%を超える、この数字は間違いないでしょうか。
  54. 宍倉宗夫

    ○宍倉説明員 お答えいたします。  GNPの金額でございますが、当初予算のときは二百九十六兆円ということでございましたが、先般経済企画庁が、経済企画庁としてこのくらいになるだろうという見通しを出したのが二百九十六兆四千億ということで四千億ふえておるわけでございます。でございますから、その一%というのは当初予算のときは二兆九千六百億、今企画庁の数字でいいますと二兆九千六百四十億ということになります。予算が二兆九千三百四十六億でございますから、当初予算のときは差額が二百五十四億、今の段階でいうと、企画庁の数字をもとにしますと四十億ふえまして二百九十四億になる。  そこで、一%人勧をやったときに幾ら所要額が要るのかということでございますが、これはまだ作業をしておりませんものですから定かでございませんが、百二十億よりは少し上ではないだろうかという感じがいたしております。百三十億程度になる可能性もあると思います。百二十億で計算をいたしますと、今前川委員がおっしゃいましたように三・四五というような数字になります。百三十億ということで計算しますと三・一八ぐらいの数字になります。でありますから、そこのところ定かではない、今三・四五かというふうに確認されますと、そうは申し上げかねるというのが今の状況でございます。
  55. 前川旦

    ○前川委員 三・四五でなくて、百三十億であれば三・一八%が限度とおっしゃいました。長官、人勧は三年来抑制、凍結を繰り返しておるのは御存知のとおりでありまして、五十六年四月から二年間で物価が六・五%上がっておりますが、公務員賃金のベアは二・〇三%しか上がっていません。四十五歳の国家公務員で手取りで二十六、七万円でしょう。私は四国ですけれども、それで子供を東京や大阪の大学へ二人も出して、これはもう本当に食べずにおらないけませんね。まして住宅ローンなんか払っていれば大変なことです。このままいったら本当にモラール、士気を完全に喪失します。これは防衛庁関係の自衛官というか自衛隊員というか、全部同じだと思いますよ。制服の人も同じだと思うのです。ですから、人勧というものはちゃんと生活を守るだけ上げてやらないかぬのだというふうに思いますが、長官のそれについてのお考えをちょっと伺っておきたいと思います。  それと、ついでですからもう一つ。もしそれが今の三・一八あるいは三・四五%を超えるという事態になって、一%を超えるという事態になったら、これは仮定の問題で答えられないと言えばそれまでなんですけれども、仮定といいながらもう十月、今月中あるいは来月早々の話であります。そのときに私は突破してもやむを得ないということになるのか、それとも厳然として一%を守るためにはほかの防衛予算を削るのだ、そこまで強い決意であれば私はこれはシビリアンコントロールが完全に生きていると思いますけれども、その辺の決意も含めてお答えをいただきたいというふうに思います。
  56. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 私も労働大臣をやった経験もございます。また、労働大臣をやったやらないは別といたしまして、人勧というものは尊重されなければならぬと思っております。そういう意味で御指摘の点についてはよくわかります。  ただ、今お話がありましたとおり、仮定の問題とはいいながら、超えた場合に一%で防衛費を切っちゃう、それがシビリアンコントロールだということにつきましては意味がよくわかりません。シビリアンコントロールとは一体何か。防衛費防衛費として別の見地から考えなければならぬ。そして、財政その他の関係からどう調整をしなければならぬかという問題だろうと思うのです。ですから、シビリアンコントロールということについては私はちょっと意味がよく解せませんのでお答えをいたしませんけれども、いずれにいたしましても今後いろいろと、人勧をどの程度まで政府として実施をするのか、あるいはGNPがどうなるのか、そういう問題と絡めてこれは非常に大きな政治的な課題である、そういうふうに認識しております。
  57. 前川旦

    ○前川委員 そうしますと、人勧の数字によって防衛予算が一%を超えることがあってもそれはやむを得ないと、そういうふうにお考えなんでしょうか。そのように受け取ってよろしゅうございますか。
  58. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 ですから、今申しましたとおり、もしそういうことが起きた場合、そこら辺をどうするかということは大きな政治的な問題じゃないか。ただ私どもが言えることは、今一%の枠というのは閣議決定は厳然としてあるわけでございますから、それを守っていくというのが私ども立場でございます。
  59. 前川旦

    ○前川委員 しかし、人勧がかなり高いところで、特に三年間で区切って積み残しを解消するということになると三%をかなり上回るようになってくると思います。先ほどの三・一八%なんかはるかに超えるようになるのじゃないかというように思います。長官としては非常に苦しい立場に立たれるでしょうね。私だったとしたら非常に苦しいと思います。長官もそうだと思いますが、しかしもう既に一月以内ぐらいにこれは迫っている問題なんです。心構えとしてそのときはどういうふうにしたらいいのか、もう長官は腹構えはできていらっしゃるだろうというふうに思います。つまり、そのときはもう一%枠を超えるのはやむを得ぬのだ、それならそれで一つの見識です。一%を超えちゃいかぬという閣議決定があるのだから、そのときは超えないように何らかの形で工夫する、これも一つの見識です。どちらを選ばれますか。仮定の問題で悪いけれども、もう差し迫った問題だと思います。
  60. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 これはいつの事態でどういうように判断するかというのは、これは今もうすることが見識だとかなんとかというのじゃないと思うんですよ。見識というのは、その事態に即応してどうするかというのが見識だと思うのです。ただいまのところは、御案内のとおり、人勧がどのように実施されるか、GNPがどうなるか、まだわからないということでございますので、その問題についてこれ以上の答弁は差し控えさせていただきたい、こう思います。
  61. 前川旦

    ○前川委員 この問題でもう少し議論したいのですけれども、これ以上お答えが出ないということでございますので……。非常に残念です。  それでは次へまいりましょう。  また外務省に戻りますが、日米諮問委員会報告書を出しまして、国連の平和維持活動へ自衛隊の派遣を考えるべきだという意見書を出しまして、それに対して総理が九月二十五日の閣議で各省庁で討議し実現に向かって努力してもらいたいと指示をしたということが官房長官の新聞記者会見で出ております。そういうことがあったのかどうかちょっと私はわかりませんが、この問題についてさらに外務省首脳は、「「すぐに実現できそうなものからすでに検討を開始している」と述べるとともに、「いずれは、国連の平和維持活動への自衛隊派遣についても検討することになる」と述べ、近い将来、この問題に関する作業を開始する方針であることを明らかにした。」この外務省首脳はどなたかわかりませんが、きょうお見えになっていらっしゃると思いますので、私ですとおっしゃっていただいたらいいと思うのですが、こういう検討を、首相、総理の指示を受けて前向きに検討するということになったら、今度はニューヨークで安倍外務大臣がそういうことは実際いたしませんと取り消されました。その前に栗原防衛庁長官自衛隊法を変えなければいかぬのでそういうことはどうも難しいと言って非常に消極的な発言をされたというのもまた報道されておりますが、ちょっとこんがらがっているんですね。総理は検討せよ、外務省は検討する、これに対してそういうことはやらないと否定された。やらないという否定は、検討をやめるという意味なのか、派遣することをやめるという意味なのか、この辺がちょっとこんがらがってわからないのです。検討までもやめられるのか。いや検討は前向きに指示を受けて続けていかれるのか。その辺がちょっとあいまいでございますので、外務当局からお答えをいただきたいと思います。
  62. 山田中正

    山田(中)説明員 お答え申し上げます。  今先生御指摘ございましたように、九月二十五日の閣議におきまして総理大臣より日米諮問委員会報告を各閣僚に配付されまして検討の指示がございました。ただ総理の検討の御指示は、私どもが了解いたしておりますところは、総理は特に貿易の分野におきまして非常に重要な問題である、いろいろな措置検討するようにというお話がございましたが、この日米諮問委員会報告の中に含まれております多国間平和維持活動についての制服要員の派遣の問題、これを取り上げて検討するようにという指示をされた事実はございません。私どもといたしましては報告書全般につきまして実行の可否を含めて研究検討するようにという一般的な御指示はあったと了解いたしておりますが、先ほど申し上げましたように、この制服要員の派遣そのものを取り上げて具体的に検討するようにという指示はございません。  そこで、先生九月二十六日の各紙の報道の中で外務省がこの問題を考えておるという報道があったことを御指摘であろうと思いますが、これは外務省員が報道関係者との懇談の機会の発言が契機になっておると推察いたしますが、外務省と報道各社との申し合わせによりましてソースを明らかにしないという約束がございまして、報道各社もそれに基づいて特定の個人名を出さないで各報道機関の責任において報道をされたものでございますので、そのような事情がございますのでソースがだれであるかということを申し上げる立場にございませんので、事情御了解いただきたいと思います。  先生もう一つお話しございましたニューヨークの外務大臣の発言でございますが、これは九月二十六日に外務大臣が総会で一般演説を行われまして、その後邦人記者団との会見を行われました。そのときに記者団より、大臣演説の中で国連の平和維持活動に対する日本協力ということを述べられておるが具体的に何を考えておるのか、将来の問題として自衛隊の海外派兵があるのかという御質問がございましたので、それに対しまして公式の記者会見の場で外務省の公式立場といたしまして、国連の平和維持活動というものが平和維持に果たしておる大きな役割がある、したがって日本としては従来財政的に大きな寄与をしてきた、今後もその財政的寄与に加え現行法制の枠内で資材の供与、要員の派遣を検討していきたい、現在自衛隊の海外派遣は考えておらない、自衛隊法の改正についても考えておらない、これは自分がたびたび国会でも申し上げてあるとおりでその考えに変わりがないということを申された次第でございます。  したがいまして、先生の御質問の研究につきましては、諮問委員会報告というものの中に含まれておりますものを一般的な形で、これは必ずしも制服要員の派遣だけではございませんで、多国間の平和維持活動に対する我が国協力ぶり、財政面での協力ぶり、非制服要員の協力ぶり等も含まれておりますので、そういう面についての研究はもちろんいたします。ただ先ほど申しましたように、外務省の公式な立場といたしまして自衛隊の海外派遣ということを現在検討いたしておりませんし、自衛隊法の改正ということも考えておりません。
  63. 前川旦

    ○前川委員 ひとつ簡潔に一言お答えいただきたいと思いますが、総合的にいろいろなものを考える中には制服の海外派遣をも含めて研究する、今こういうふうにおっしゃいましたか。具体的に現在制服の自衛隊を派遣するということは考えてないが、しかし総合的な国連への協力の中で制服の派遣も含めて研究すると今おっしゃったのですか。簡潔にお答えいただきます。
  64. 山田中正

    山田(中)説明員 国連の平和維持活動に対する協力の問題、これは大臣も述べておりますように国民の間で広く議論されるべき問題であろうと考えております。そのような観点を踏まえつつ我が国として現行法制の枠内で何ができるかということを現在私どもとしては検討するつもりでございます。
  65. 前川旦

    ○前川委員 私が聞きたかったのは——じゃ制服を派遣することは研究の対象外だということでしょうか。含まっているということでしょうか。言そこだけを聞きたいわけです。
  66. 山田中正

    山田(中)説明員 非常に一般的な形で諮問委員会報告にございますもの、その部分を、先生御指摘のところは制服要員の派遣というところだと思いますが、そこを削除して検討するということではなくて、諮問委員会報告というものをそのまま受けて、これで協力の問題について何ができるかということを研究するつもりでございますが、ただ先ほどから述べておりますように、私どもが現在検討しようといたしておりますのは現行法制の枠内でできることのみでございます。
  67. 前川旦

    ○前川委員 わかりました。この諮問委員会報告を制服の派遣を含めまして研究の対象にするということは今よくわかりましたから、それは一つの事実として結構です、そのことに対する評論はまた次の機会にいたします。  時間がだんだんなくなってきます。そこで、今度はきょうのもう一つの眼目である有事の問題でありますが、先ほどいただきましただけではとても質問ができませんが、有事について、この間、みちのく84、日米共同実動演習が行われました。この場所は東北地方、みちのくでありますから、東北が舞台であります。陸上自衛隊アメリカの陸軍の第七師団から歩兵、砲兵一個大隊ずつ千四百人、陸上自衛隊は第九師団ですね、これはどういうシナリオで東北が舞台になって有事になるのだという演習が組み立てられたのでしょうか、そのシナリオについて教えていただきたいと思うのです。というのは、今までは例えば宗谷海峡を仮想敵甲、はっきり言ったらソ連のことを言っておるわけですが、いまは遠慮しておきましょう。仮想敵国が宗谷海峡を突破するために北海道の北部を保障占領するかもわからないというような話は、シナリオとしてよく聞いておりました。しかし、それなら北海道が戦場になるというシナリオでしょうが、東北、みちのくが戦場になって米陸軍と共同作戦をやるというのはどういう有事のシナリオなんでしょうか、簡潔にお答えいただきたいと思います。
  68. 大高時男

    ○大高説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生御指摘のように、九月の十八日から十月の一日まで岩手県及び宮城県において日米共同実動訓練が行われたわけでございますけれども日米共同実動訓練につきましては、従来から日本を共同で防衛する際に、日米双方の部隊の相互連携、これを実行動で演練する、こういう目的で現地の演習場、これは王城寺原と岩手山演習場その他ございますけれども、そういったところの実地形に合わせまして簡単な状況を付与して訓練を行っておるという状況でございます。特に中心になりましたのは王城寺原の演習場でございますが、ここにおきましては、展開いたしました対抗部隊に対しまして演習実施部隊が反復して攻撃を行う、この際、日米双方の火力の調整あるいは情報あるいは機動といった各案について訓練を行ったというものでございます。  なお、内容の戦法その他の詳細でございますけれども、これにつきましては我が手の内の公表ということになりますので差し控えさせていただきたいと思います。
  69. 前川旦

    ○前川委員 十月二十一日から陸上自衛隊は北海道でこれまた共同実動訓練を行いますね、この相手は海兵隊であります。米軍の海兵隊は言わずもがな、敵前上陸強襲専門の部隊であります。なぜ北海道でこの海兵隊と共同実動訓練をやらなければいけないのか、どういうシナリオなのか、東北では米陸軍と演習して北海道では米海兵隊と共同訓練する、これはどういうシナリオなのか、これが一つ。  その前に、この海兵隊の訓練では、沖縄の海兵隊がM198型の百五十五ミリ砲を持ち込みますか、これを先に伺っておきましょう、その予定でしょうか。
  70. 大高時男

    ○大高説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生お尋ねの北海道におきます海兵隊との日米共同実動訓練でございますが、この際に米軍、海兵隊でございますけれども、これが使用する火砲でございますが、御指摘の百五十五ミリ砲というふうに私どもの方では承知いたしております。  なお、北海道におきます十月二十一日からの訓練でございますが、これは訓練場が矢臼別の演習場でございまして、海兵隊と基礎的な機能別訓練というものでございまして、火力の調整訓練を行う、こういうことを考えております。御承知のように百五十五ミリあるいはこれに類する砲でございますけれども、内地の訓練場におきましては射程がどうしても狭いものですから、砲の完全な演練ができない。この矢臼別の演習場と申しますのは非常に大きい演習場でございまして、ここにおきましては長距離の射撃演練がお互いにできる、そういうことで北海道を選んだわけでございまして、特に理由というものはないわけでございます。
  71. 前川旦

    ○前川委員 このM198型百五十五ミリ砲、これは米軍は同型砲を限定核の局地戦用に開発したと言われており、米海兵隊は装備近代化計画に基づいて来年までにM198型砲を四十四門に増強する、核攻撃能力を高める計画であって、既に二十八門の沖縄配備が終わっているというふうに報道されております。要するに原子砲ですね。核砲弾を撃てる、そのために開発されたのがこのM198型百五十五ミリ砲です。これは東北にも持ち込みましたね、みちのく84の演習にも。北海道へ持ち込みますね。どうもこんな核の撃てるものを日本の本土でどんどん撃ち回って、これで一体有事でだれが一番最初に犠牲になるか、こんなようなことが私は成り立ち得ると思わないのです。  それから、もう時間がありませんから私の方で申し上げますが、皆さん昭和五十三年の「日米防衛協力のための指針」いわゆるガイドラインによっていろいろ研究しておられますが、中身は秘密でわかりません。演習を見ていたら、だんだんわかってくる。ということは、北海道は既に仮想敵国に占領されて、それを敵前上陸専門の海兵隊が敵前上陸していって奪還する。戦場は東北に移る。つまり津軽海峡と宗谷海峡、二つ押さえるために仮想敵国甲軍は、東北地方の北部まで占領するんだ、北海道はもう完全に占領されている、それを奪還するために海兵隊は行くんだ。それと一緒に共同訓練。東北の方は例のアメリカの陸軍とこれをやるんだ、こういうふうに北海道と東北が主戦場になるというふうなシナリオで日米共同の演習が行われているんじゃないだろうか。となると、私は、この狭い国土、一億二千万の人がいるこの国土で、防衛戦争なんか成り立たないと思いますよ。沖縄の例を挙げるまでもありません。これは、日本国民にとっては大変ゆゆしい問題です。しかもこの有事立法のきょうの報告を見ると、依然として、もし万一有事があった場合に、国民をどこへ逃がすのだ、どこへ避難さすのだ、一切そういうことに触れておりませんね。技術的なことばかりです。一億二千万の国民の命を守るのが安全保障じゃないでしょうか。その安全保障の本質から外れた議論が行われているということを、非常に私は憂うるものなんです。長官、本当に心配になってくるのです。  もう時間が終わりましたから私は言いっ放しになりますけれども長官、この有事などということがないようにするのが私たちの任務であろうと思います。有事立法の研究をするなとは言いません。おやりになるのですから言えませんけれども、余りにも国民を無視した状況の想定ではないだろうかと思いますが、最後にちょっと一言御感想を伺って終わりにいたします。
  72. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 防衛力整備というのは、国民の平和と自由と安全を守るためのものでございます。それは言うまでもないことであります。ただ問題は、今御指摘のありましたとおり、国民は我が自衛隊だけが守るのだ、国民をどうしてくれるのだというようなニュアンスに私、受け取れましたけれども、そうじゃなくて、日本の国は日本人全体が、自分の国は自分で守るのだ、その中で自衛隊はどのような機能を果たすのだ、そういうことで考えないといけないんじゃないか、こういうように思います。
  73. 前川旦

    ○前川委員 もう時間がありませんから……。
  74. 塩川正十郎

    ○塩川委員長 午後二時より委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時五十九分休憩      ————◇—————     午後二時十二分開議
  75. 塩川正十郎

    ○塩川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。左近正男君。
  76. 左近正男

    ○左近委員 私は防衛問題については全くの素人でございますし、また、本委員会で質問させていただくのも初めてでございます。そういう立場で、現在国民防衛問題についてどういうような認識なり、あるいはある面では危機感、そういうものを端的に長官初め関係者の皆さんに御質問をしたいと思うのです。  長官も午前中言っておられましたように、日本の安全と平和、これは日本人、国民だれもが強く望んでおるところであります。ところが、そのための防衛政策について今政府は軍備をどんどんと拡大をしておる、このことについて私は大変危惧をするわけであります。  今日の自衛隊のあり方について私は当然違憲であると思いますけれども昭和二十九年に自衛隊が創設され、三十年の経過をたどっております。自衛隊がそれなりに存在しておることも否定するものではございません。各種の世論調査を見ますと、自衛隊の支持率も国民の過半数を超えておるということも報じられております。しかし、それ以上に自衛隊は現状程度の規模でいいんではないかという世論が圧倒的でございます。軍備の増強については困る、こういう国民の強い声があると判断をしております。この点について長官はどのような見解をお持ちですか。
  77. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 今の御指摘の中で防衛庁が軍備の増強をしておる、こういう御発言があったかと思いますが、私どもはそう思いません。昭和五十一年の「防衛計画大綱」に基づきまして、その水準に早く達成するということを目途として着実な整備をしなければならぬ、そういうようには考えておりまするけれども、限定かつ小規模の侵略に対応する、それにまだいってない。ですから、これは軍備の増強じゃなくて防衛力整備をある一定のところまで計画的、継続的に行わなければならぬ、そういうことであるということを御理解をいただきたいと思います。  それから世論の問題でございますが、私は世論というのは非常に大事だと思います。国民理解協力のないところに防衛というものは進まない、そう思います。ですから、世論は大事にしなければならぬと思っておりますし、最近の新聞社の世論調査も承知をしております。ただ、私が申し上げたいことは、世論調査というのはある一定の期間における情報量の投射ですね、そういうものが非常に影響するわけです。私が言うまでもないことですが、選挙のときなどでもいろいろとありますね。あれは何かというと、一定の情報量が一定の期間に投射されるということがございますので、このことは非常に重要でございますけれども、同時に、投射される情報量、そういうものも考えなければならぬと思っております。ただ、全体といたしますると、国民が、今の防衛力を大幅に増強するということについては否定的である、そう思います。
  78. 左近正男

    ○左近委員 きょうは、「防衛計画大綱」、私はそのもの自体が大きな問題だと思いますが、時間も限られた時間ですので、触れませんが、端的に言いまして、今の自衛隊の量というか、これは金額的な面でございますが、世界百六十八カ国ですか、そのうち第八位に位置しておる、これぐらい大きなものになっておると私は思うのです。  国民自衛隊に対するある面での理解なり支持は、非核三原則、あるいは今大臣も言われた専守防衛の問題、あるいは防衛費のGNP一%の枠を必ず守る、あるいは集団自衛権の不行使、こういうものが私は国民のある面でのコンセンサスの前提ではないかと思っておりますが、これら今申し上げた四つの原則については大臣はかたい決意で守るという判断をしてもよろしいですか。
  79. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 これは前々から申し上げていることでございますが一我が国憲法の枠の中で専守防衛でいく、そのためには非核三原則と、集団的な自衛権の行使は憲法に違反する、そういう立場をとっていることは私が前々から申し上げているとおりでございます。  なお、GNPの一%の問題につきましては、前々から申し上げているとおり、三木内閣の五十一年の閣議決定の国防費に関する方針はこれを守っていくということでございます。
  80. 左近正男

    ○左近委員 九月十四日に発表されました防衛白書の問題ですが、特に目につきますのは、ソ連の軍事力強化とそれによるソビエトの脅威論の問題でございます。従来政府は、ソ連に対日攻撃力はあるが、対日攻撃の意図はなくしたがってソ連の脅威は潜在的なものであり、また、日本には仮想敵国はない、また、潜在的脅威であると判断したからといって決して敵視するものではないという意味のことを政府の統一見解として言われてきたと思うのですが、この認識は今日も変わりませんか、長官
  81. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 変わっておりません。
  82. 左近正男

    ○左近委員 それでは、アメリカのソビエトに対する認識日本のソビエトに対する認識とは同一だという判断ですか。どこか違うところがありますか、大臣。
  83. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 これは、この前五月にワインバーガーさんが見えられたときに私は申し上げたのです。アメリカソ連の脅威というのは、アメリカはベトナムその他のところでソ連の脅威ということを絶えず考えながら、血を流し、金を使っておる。そういう意味合いでは、アメリカ国民ソ連の脅威というものを身をもってといいますか、感覚的にわかるでしょう。しかし、我が国の場合には、現実ソ連が軍事力を極東に増強していることは事実である。したがって、我が方としては、自分のすぐ隣でそういう軍事力の強化があるということについては重大な関心を持っておるし、俗に言う潜在的脅威というものは感ずるけれども日本国民ソ連に対するところの感覚というのは、アメリカ国民のようではない。北方四島を占拠されておる、あるいはシベリアの抑留問題等あるけれどもソ連に対してアメリカ国民の感ずるような、そういう脅威論というのはない。恐ろしいとかなんとかというのはあるけれどもアメリカ国民との認識に差がある。その差があるということは事実であるし、私どもは正当な国民理解を得るように努力をしなきゃならぬ、こういうふうに申し上げたのです。したがって、日本国民のものとアメリカ国民のものとの間には、現実的に大きなギャップがあるということは事実であります。
  84. 左近正男

    ○左近委員 今、長官はそのギャップを埋めるために、国民に対してソビエトに対する脅威をもっと認識させなければならないというような考え方をお持ちなんですか。
  85. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 別にソ連の脅威云々じゃなくて、現実我が国の周辺にソ連が軍事力の増強をしておりますから、そういう点については正当に国民理解を願うということです。防衛白書の中でそういう点を取り上げているのはそのためであります。
  86. 左近正男

    ○左近委員 先ほど、ソビエトの脅威論の問題について、認識長官としては変わらないとおっしゃいましたが、何か最近の長官の言動は、かなり一歩踏み出したような感覚、アメリカと同じような意識の統一を図るような努力をされておるんじゃないかと、こういうことを大変私は危惧をするわけですが、そういう点がなければよろしいですが、その点もう一度お伺いしておきます。
  87. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 私が先ほど申したとおり、我が国の周辺でソ連が軍事力の増強をしておるということについて重大な関心を持たゃやならぬ、そういう意味合い国民によく理解してもらう、これは当然だと考えております。
  88. 左近正男

    ○左近委員 最近新聞で報道されておる、ソビエトが長距離巡航ミサイルを実戦配備した、このことによって、我が国としてどういうような認識をお持ちですか。
  89. 古川清

    ○古川説明員 お答え申し上げます。  これはことしの防衛白書にも明確に書いておるところでございますけれどもソ連は一貫した軍事力増強というものをやっておるわけでございまして、この極東地域におきましても、質、量両面にわたって軍事力を強化しておるということは、ただいま大臣から御答弁申し上げたとおりでございます。  最近新聞にも報じられました、タス通信が十月十三日の夜に発表いたしました、ソ連が戦略爆撃機と潜水艦への長距離巡航ミサイルの配備を開始したということを発表したということは私も新聞で承知をしておりますが、これは、今申し上げました、ソ連の一貫した軍事力強化の政策の継続というふうに私どもは見ているわけであります。
  90. 左近正男

    ○左近委員 私は、確かにソビエトの極東地域における軍事力、そういうものは強化されているわけですが、これはやはりアメリカとの関係も見なければならぬ、相対的な関係日本としてはしっかりと見詰めていく必要があるんじゃないか、また、そのための、緊張緩和のための、日本自体がソビエトに対してさまざまな施策を外交的にも行っていくべきではないか、こういうような判断をしておりますが、その点については答弁は結構です。  次に、リムパックの問題について、特に日米の合同演習の問題についてお聞きをしたいわけですが、五月十五日から六月二十九日まで、かなり長期にわたって大変大規模なこの合同演習が行われたわけであります。この演習に当たって、アメリカは原子力空母を参加させたということを伺っておりますが、この原子力空母を参加させたのは今回の演習が初めてですか。
  91. 大高時男

    ○大高説明員 お答えいたします。  ただいま先生がお話しのリムパック84でございますけれども、本年の五月十五日から六月二十九日まで、ハワイ、サンジエゴ及び中部太平洋等で行われたわけでございますが、ただいまお尋ねの原子力空母につきましては今回が初めてというわけではございません。
  92. 左近正男

    ○左近委員 この演習に当たって、海上自衛隊は善玉ですか、ブルー部隊に編成され、敵側のオレンジ部隊と対戦するというような形式で合同演習が行われたのですか。
  93. 大高時男

    ○大高説明員 我が海上自衛隊から派遣いたしました艦艇五隻それから航空機八機でございますけれども、ただいま御指摘のように、ブルーの部隊に属しまして対抗形式で演練を行ったということでございます。
  94. 左近正男

    ○左近委員 このブルー部隊日本アメリカ、カナダで編成されたと聞いておりますが、この三国が連合隊的なものを組んで演習したという理解ですか。
  95. 大高時男

    ○大高説明員 ブルーに属しましたのはアメリカそれから日本でございます。
  96. 左近正男

    ○左近委員 カナダは含んでないんですか。
  97. 大高時男

    ○大高説明員 含んでいないというふうに承知いたしております。
  98. 左近正男

    ○左近委員 それは私たち現地で見ていないわけですから……。  このリムパックの通信手順として、アメリカ軍がNATO軍との間で作成している教範ですか、俗に連合国通信、ACPが使用された、またこの連合国訓練というかATP、そういう教範も使われたというように伺っておりますが、これは事実ですか。
  99. 大高時男

    ○大高説明員 リムパックに際しまして、ただいま先生御指摘のACP、すなわちアライド・コミュニケーションズ・パブリケーションズあるいはATP、アライド・タクテイカル・パブリケーションズでございますが、こういった文書、すなわち米国の海軍が自由主義諸国の海軍と行動をともにする際に、相互の連携というのを円滑にいたしますために米国海軍が作成した文書でございまして、通称ACPにつきましては、標準的な通信要領、それからまたATPにつきましては標準的な戦術要領、これが定められておるわけでございます。これを使ってございます。  ただし、これにつきましては、一部及びその基本的な方針というものにのっとってやっておるわけでございまして、そのものというわけではございません。
  100. 左近正男

    ○左近委員 そういたしますと、このACP、ATPは、アメリカと軍事的または防衛的な条約を結んでいるすべての国の共通した教範ということで理解してよろしいですか。
  101. 大高時男

    ○大高説明員 先ほども申し上げましたように、自由主義国の海軍におきまして各国で広く用いられておる、海上自衛隊につきましては、必要に応じまして米国との共同訓練の際に文書の一部を使う、あるいは基本的な考え方にのっとりまして調整を行った上共同訓練を実施するということにいたしておりまして、既に海上自衛隊の方には昭和三十四年ぐらいからこういった文書の提供を受けております。
  102. 左近正男

    ○左近委員 この合同演習の形式が、日本アメリカだけの問題ではなしに、NATOの全軍にも共通する、通信手段なり、あるいは具体的な教習プログラムが全く世界じゅうに共通するような形の中で日本自衛隊が参加をしておる、これは何か大変意味のあることではないか、私はこのように思うのです。海上自衛隊アメリカ軍に次ぐ非常に大きな部隊を動員をいたしまして、そして演習の中で攻撃の主役を果たしておる。これは、今まで政府はこれらの演習については防衛庁設置法に基づく所掌事務の遂行に必要な教育訓練を行う、こういうことで今日の合同演習を行っておると思うのですが、私はその枠を大きくはみ出ておるのではないか、こういうことを非常に危惧をいたします。これは集団的な自衛権の行使を前提にした演習ではないか、こういうことを強く感じるんですが、その点についてはどうですか。
  103. 大高時男

    ○大高説明員 お答えいたします。  リムパックにつきましては米国の第三艦隊が計画をするわけでございますけれども、この訓練の目的と申しますのは、参加した艦艇の艦隊レベルでの能力評価、それからさらに練度の向上を図る、この過程におきまして各種の演練が行われるわけでございますけれども、この際に、目的はあくまで対潜戦、あるいは防空戦、あるいはまた水上打撃戦、電子戦、各種の戦闘場面におきます戦術の演練を目指すものでございまして、特定の国あるいは地域といったものを共同して防衛するといったような、ただいま先生御指摘のような集団的自衛権の行使、これ云々に絡むものではございません。  さらに具体的に申し上げますと、リムパックの主宰国でございます米国でございますが、この訓練が艦隊レベルにおきます戦術技量向上のための訓練である、特に他の参加国と共同して特定の国または地域を防衛するといった想定はないということをはっきり言明をいたしておりますし、我が国といたしましても、米国に対しまして、自衛隊は戦術技量の向上のためにこのリムパックに参加をするということをはっきりさせておりまして、参加国とともに集団的自衛権の行使といったようなものを意識に置いてやっておるものではないということをつとに言っておりまして、この点について米国側の明確な理解を得ておるというところでございます。  またさらに、リムパックにおきましては、参加各国が対等の立場で事前に十分に調整を行う、合意した手続に基づきまして訓練を行うものでございまして、特定の国の指揮を受けてやるものでないという旨、米国からの確認も得ております。  また、先ほど来るる申し上げておりますように、訓練の内容を見ましても、それぞれの戦術場面におきます、例えば対潜訓練では各種のソナー等を使いまして潜水艦の探知、識別、攻撃等の要領の演練、こういったものを行うわけでございまして、いろいろな戦闘技術を習得してくるということでございまして、以上の点から考えていただきましても、我が国がリムパックに参加して行います訓練は集団的自衛権の行使を前提としたものではないということは御理解いただけるというふうに考えるわけでございます。
  104. 左近正男

    ○左近委員 従来、これらの共同演習について、安保条約とは直接関係ない、ただ安保条約を締結していることによってアメリカが好意的にいろいろな便宜を与えてくれている、したがって、直接法的根拠はないというような解釈、これは五十年十一月十三日の衆議院決算委員会での御答弁での見解でございますが、私は、こういうような考え方と今現に大きく行われている共同実動演習が、性格がかなり違ってきておるというように判断をしております。共同演習における個別的自衛権と集団的自衛権の境目というのがあるのかないのか。今日、それはもう全くわからない、集団的なものへ大変のめり込んでおるというような判断を私はしておるわけです。中曽根首相が、五月十八日の衆議院外務委員会で、核弾頭つきトマホーク艦と自衛艦との共同行動ができるというようなことも言っておる。こういうような事態になれば、今、政府は専守防衛なりと言っておる。それでは個別的自衛権の範囲の演習とはどこまでなのか、あるいは集団的自衛権に組み込まれる演習はどこからなのか、私は、その境界を演習面においても明らかに線引きをすべきではないかということを考えておるわけですが、この点についてはどうですか。明確にできますか。
  105. 大高時男

    ○大高説明員 個々の訓練につきましては、ただいま私が申し上げましたように、戦術技量の向上のための訓練あるいは親善のための訓練、あるいはまた共同対処を念頭に置きます訓練等々あるわけでございますが、先ほど来先生お示しのように、個別的自衛権行使の範囲内におきまして各種の訓練を行います際には、当然、自衛隊の任務の遂行に必要であるかどうか、政策的に妥当であるかどうか、あるいは教育訓練上の効果があるかどうかという観点から個々に検討してやっておるわけでございまして、個別的自衛権の行使の範囲から外れておるということは考えておりません。
  106. 左近正男

    ○左近委員 私は、そういう抽象的な見解では困ると思うのですよね。現実にリムパック84、これは世界的な大合同実動演習ですわね。こういうものに日本が主役を果たしておって、これが集団的自衛権を前提にした演習でない、ただ単なる自衛隊の技量を向上さすための演習だ、これは非常におかしいと私は思うのです。その点をもっと明確に、専守防衛なら専守防衛、個別的自衛権なら個別的自衛権、その演習の範囲はここまでだというような、政府としての統一的、具体的見解を出すべきだと思いますが、この点どうですか。
  107. 大高時男

    ○大高説明員 御承知のように、自衛隊につきましては、防衛庁設置法の六条十二号の規定によりまして、所掌事務の遂行に必要な教育訓練を実施すること、この場合におきまして所掌事務の遂行というのは、もちろん、自衛隊法三条に規定されております「わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対しわが国を防衛する」、こういうことであります。したがいまして、我が国憲法上認められていない集団的自衛権の行使、これは所掌事務の遂行の範囲外でございまして、それを前提として訓練を行うことは所掌事務の遂行に必要な範囲を超えるものというふうに考えております。  また、個別的自衛権を行使する場合におきましても、それは我が国防衛するための必要最小限度のものでなければならないわけでございまして、その限度を超えるような武力の行使、例えば我が国がICBMでありますとか、あるいは長距離戦略爆撃機を使用して行うような訓練、これも範囲を超えるだろうというふうに考えます。  このほか条約上、また法律上、我が国が保有することを禁じられております核兵器を使用して行う訓練、これも所掌事務の遂行に必要な範囲を超えるというふうに考えます。
  108. 左近正男

    ○左近委員 実態を見れば、自衛隊のこれらの合同演習がアメリカの対ソ戦略にしっかりと組み込まれた中で行われておるということは客観的な事実として明らかじゃないかと私は思うのですね。その辺はどうですか。そうは思われませんか。
  109. 大高時男

    ○大高説明員 御承知のように、自衛隊につきましては、日ごろから国内において訓練に努めておるわけでございますけれども、精強な部隊となりますためには、最新の戦術技法を持っております米国から学ぶということも非常に大切でございますし、また一朝有事の際におきましては、日米は指揮系統を別にしながら相連携して行動するわけでございまして、そのために日ごろから連携要領を演練するということも非常に大事なことでございまして、将来の共同対処のために今後とも積極的に訓練を行うべきではないかというふうに考えております。
  110. 左近正男

    ○左近委員 またいずれこの問題は別な機会にやりたいと思います。  それでは、関連して上田議員の方からちょっと質問させていただきます。
  111. 塩川正十郎

    ○塩川委員長 上田哲君から関連質疑の申し出がありますので、この際、これを許します。上田哲君。
  112. 上田哲

    ○上田(哲)委員 防衛庁長官に伺います。  今回の訪米の中での栗原・ワインバーガー会談、その重要な課題の一つが空母ミッドウェーの艦載機夜間訓練飛行場設置の問題だったと伺っております。防衛庁長官、先ほどこれについては総合的かつきめ細かい配慮だ、こういう立場で対処するのだということを繰り返し御説明になったのでありますが、これがよくわからないのです。具体的に三点伺いますので、明快にひとつお答えをいただきたい。  ワインバーガー側からは早期の解決を要望されたとここに報告されております。お答えになった総合的かつきめ細かいということの中には、長官としては早期にということが含まれているのですか。また含まれているとすれば、早期というのはどの程度の期間をお考えになっておられますか。
  113. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 ワインバーガーさんの方からできるだけ早くということの話がございました。私の方も、できるだけ早くということは当然のことですから、最大の努力をするという意味で言っておりますけれども、しかし、いついつまでにやらなければ困るとか、いついつまでにやってもらいたいとか、そういう注文がましいことは一切ございませんでした。
  114. 上田哲

    ○上田(哲)委員 早期という言葉は入っているが、それはいつまでという期限を付したものではないということが確認できました。  もう一つ。そのワインバーガー会談において三宅島という地名は具体的に出たのでありましょうか、いかがでありましょうか。
  115. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 一切出ません。
  116. 上田哲

    ○上田(哲)委員 確認いたします。三点目ですが、実は三宅島ではつい最近村長選挙が行われることになっております。この村長選挙が、これまでの方針に絡んで飛行場反対なのか受け入れになるのかという大きなポイントであるというのが客観的な事実でありますが、これについて防衛庁側が、例の災害被災地の買い上げの値段を空港予定地として考えるならば法外な値段をまた出す、従来から言われていた問題をさらに強めて世論操作をしているんじゃないかというふうな話が伝わってきております。よもそういうことはないと思いますが、長官からそのようなことはないのだということをひとつ確認していただきたいのであります。
  117. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 私は、村長選挙に絡んで世論操作をするなどということを言った覚えはございませんし、こそくなことはやりたくないと思ってます。  事務当局の方から、もしありましたら答弁をさせます。
  118. 佐々淳行

    ○佐々説明員 お答えいたします。  十一月に村長選が行われると承知をいたしておりますが、私どもは、ただいま防衛庁長官御答弁のとおりそれに対して、今御指摘のような被災地の土地を大変高く買うというような工作とかそういうことは一切いたしておりません。私どもの希望といたしましては、有力な候補地の一つである三宅島の住民の意向を十分尊重いたしまして、その経緯は先生御承知のように昨年十二月に村議会決議で誘致の要望が出され、それがまた一月に反対に変わった、こういうことでいろいろ意見がございますようで、この世論の動向を見守りながら、私どもといたしましてはとにかく私どもの話を聞いていただきたい、その話を聞いた上でメリット、デメリットを御判断いただく、そういう考え方でおりますが、そういうこそくなことはやっておりません。
  119. 上田哲

    ○上田(哲)委員 じゃ最後に長官、今の施設庁長官方針を確認いたします。  村長選挙については絶対に介入するようなことはしない、これをひとつ長官から確認していただいて、これはもう村長選挙の大きな争点になりますから、仮にその村長選挙の中で、いろいろな意見もあるでしょうが、最大のポイントである空港誘致をしない、するということが問題の争点となったときに、空港誘致をしないということを公約にした村長候補が当選をした場合には、これを村民の民意として素直に受けとめる、こういうことは当然だと思うのですが、この点を確認しておきたいと思います。
  120. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 村長選挙がどういうふうになるのかよくわかりません。それからまた村長候補者がどのような公約を掲げるのかもわかりません。また今のように誘致云々の問題について包括的に、白紙一任的に村長候補が約束をとられるのかどうか、そこら辺もわかりません。したがいまして、今の時点でどうこうということは私の口からは申し上げられない。よく村長選挙の実態その他を見た上でいろいろと考えなきゃならぬ、こう考えております。
  121. 上田哲

    ○上田(哲)委員 それじゃ困る。それは民主主義の原則に反する。村長選挙でこのことを公約にして当選した村長の意思は村民の意思として尊重する、これは大原則ですから、これをそのときにならなきやわからぬというのじゃ、この発言は大変なことになりますよ。いいですか。
  122. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 ですから、先ほど来申し上げたとおり、村長選挙で村長候補者がどのようにされるかわかりませんから、そういう仮定の問題について今ここでお答えをするわけにはまいらない。ということは、村長選挙そのものに私の言葉がまた反映するかもしれないから。
  123. 上田哲

    ○上田(哲)委員 私は仮定の問題を聞いているのではない。原則の問題を聞いているのです。島民の意思を正確に反映する村長選挙で決定された方針というものは率直に素直に受けとめるでしょうねということで、仮定の問題ではありません。原則の問題として承っております。
  124. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 ですから、私が申し上げたとおり、村長になる人がどのような公約を掲げてやられるか、その公約の掲げ方その他、そういうものをよくわきまえた上でないとコメントすることはできない、そういうことを申し上げている。これも原則論です。
  125. 上田哲

    ○上田(哲)委員 これはとんでもない発言ですよ。じゃ質問をもう一遍整理して申し上げましょう。村長選挙は村民の意思を十分に発揮するために行われる。村長選挙がどういう形において行われるにせよ、その当選した村長の公約は村民の意思として素直に尊重されますね。これは当たり前のことです、民主主義の一番原則を言っているのですから。この点についてはっきり御確認をいただきたい。
  126. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 別にこだわるわけではございませんが、例えば総選挙のときに自民党の総裁がいろいろ公約されますね。それがそのまま実行に移されるかどうかということは皆さん方御承知のとおりでございます。ですから、そういうことを踏まえて私は検討したい。また、これは野党も同じだと思いますが、そういう意味です。
  127. 上田哲

    ○上田(哲)委員 時間がないから、原則を守れと言って終わります。
  128. 左近正男

    ○左近委員 きょうは外務省の方も来ておられますので、もう時間がありませんから簡潔に申し上げます。  新聞の世論調査で、日本アメリカとの間には日米安保条約があります、いざという場合アメリカは本気で日本を守ってくれると思いますか、そうは思いませんかというある有力な新聞社の世論調査で、守ってくれるというのは二九%、そうは思わないというのは五六%あるわけです。長官はこの安保条約というものを高く評価されておりますが、何か国民は、日米の安保は日本を守るのでなく、最近のいろいろな事情を見ていると、アメリカを守るためにあるというような感じが強く出てきておるのではないかと私は思うのです。安保安全論、核の傘安全論というようなことをしきりに言われますけれども、どうですか、アメリカは東京を守るためにワシントンを決して犠牲にしない、そういうような動向は国民の間でやはり心配になってきているのではないかというような感じを私は受けるのですが、長官、いかがですか。
  129. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 それは一体どこの世論調査をもととして言われているか……(左近委員「新聞社を言いましょうか」と呼ぶ)新聞社でありましても、新聞社は結構でございますが、先ほど申しましたとおり、世論調査というものは変わるのですね。それはなぜかといいますと、そのときそのときの時点における情報の投射量の反映でございますから、だからそういうものが一つあるということ、それからもう一つの問題点は、それが絶対的なものである、そういう見方は危険だと思いますよ、そういう行き方は。それはもう新聞社自体の世論調査をされる方が誤差その他を感じているわけですから、これは。したがって、ある意味において、どこを指して言われるのか知りませんが、例えばその新聞記事にあったとしても、それだからどうだというふうに断定的に言われることはいかがなものか、こう思います。
  130. 左近正男

    ○左近委員 別に変わった新聞の世論調査の結果を言っているのではないわけでして、ある有力な新聞社の結果であります。ただ、長官は先ほどの御答弁でも、世論調査は余り当てにならぬ、ある一時的なものだから。だけれども、これはやはり国民のかなりの動向を反映しているのじゃないかと私は思うのですね。その点はもう少し深刻にやはり私は受けとめていただきたい。  そこで、きょうは外務省から岡崎情報調査局長が来ておられますが、あなたは著書の中で言っておられるのかどうかは知りませんが、四月二十五日の参議院の外交・総合安保の特別委員会で、もし仮に米ソ世界戦争になれば、日本の意図とか政策と無関係日本の戦略的環境から戦争に巻き込まれるというようなことを言っておられるのですが、これはどういう意味ですか。
  131. 岡崎久彦

    ○岡崎説明員 この論点は、今御指摘の四月二十五日の参議院外交・総合安全保障に関する調査特別委員会議事録、和田静夫先生の御質問にも答えておりますけれども、それが二十一ページでございまして、三十ページに関嘉彦先生の御質問にも答えております。両方お読みいただければ、別に今さら御説明するまでもないと思うのでございますけれども、ごく簡単に要点だけ申し上げますと、第二次大戦の例を分析いたしますと、一つの国が戦争に巻き込まれるということの理由は、その国が平和外交をしているとかしていないとか、その国の国民が真に平和を欲していたとか欲していないとか、そういうことと関係がない。これはその国の置かれている戦略的環境、それからもう一つは、その国を取るのにどのくらいの抵抗が予想されるか、その二点によって決まるのであるということを申し上げたのでございます。
  132. 左近正男

    ○左近委員 余り難しくてわかりませんが、私は日米安保条約があるからそういう事態になるのであって、安保がなければ——今あなたは安保があろうとなかろうと日本は戦争に巻き込まれるということを言っておられるわけです。私は安保条約がなければそういう事態にならないという判断をしておりますが、簡潔にひとつ答弁してください。
  133. 岡崎久彦

    ○岡崎説明員 これはまさにもう議事録を読み上げるだけでございますけれども、和田静夫先生に対しまして、私は「いわゆる戦争巻き込まれ論に対しまして、日本は安保条約があるとか日本がどういう政策をとるとか、そういうことに関係なしにこれはどうしても戦争に巻き込まれる戦略的地位にある、」これは和田静夫先生に申し上げたわけであります。  それから関先生の方は、御質問が、そういう意味で、安保条約があるから日本が戦争に巻き込まれるという考え方は、私は間違いじゃないかと思う。恐らく岡崎さんも同じ意見じゃないかと思いますが、何かのコメントがあればおっしゃっていただきたい。私もまさに同じ答えをいたしました。
  134. 左近正男

    ○左近委員 これは政府全体の見解ですか。あなたの個人的な著書から来る見解なのか、政府全体の見解ですか。
  135. 岡崎久彦

    ○岡崎説明員 こういうものは情勢判断でございまして、これが政府の見解であるから必ずそうなるとかあるいは見解でないといって否定されるとか、そういう性質のものではないのでございますけれども、これは公式の見解であるかどうか、そういう御説明に対しましては、回答の経緯を申し上げますと……
  136. 左近正男

    ○左近委員 もうよろしい、時間がありませんから、上田先生に時間をとられたから。  それでは、私、いずれかの機会にまたあれするとして、トマホークの問題だけちょっと御質問をしておきます。  トマホークの日本への寄港で心配される艦艇が四十隻を超えると言われているのですね。非核三原則、政府の事前協議の問題も、ここでは繰り返しては申し上げませんが、やはり国民は大変心配しているのですよ。日本が独立国家であればアメリカの寄港に対して、これは核を持っているか、持っていないかということは、世界的な抑止力の問題との関係があるとかいろいろ言われますけれども国民が一番心配しておる核つきのトマホークの日本寄港の問題について、なぜ政府はアメリカにはっきり物が言えないのか。この艦艇は核持っていませんかということを何で確認できないのか、私はそれが率直な国民の不安だと思うのですよね。この点について政府は、トマホーク問題に関連して安倍外務大臣は、三原則問題についてさらにアメリカに念を押すということを言っておられたと思いますが、その後の最近の情勢の中でそういうことをやられたのかどうかお聞きをします。
  137. 山下新太郎

    ○山下説明員 お答え申し上げます。  新聞等に報道されておりますとおり、アメリカの海軍艦艇にトマホークが配備され出したということは事実でございます。ただ、従前来御答弁を申し上げていることの繰り返しになるわけでございますが、現実にトマホークを搭載する能力を艦艇が持ったということと、さらにまた実際にトマホークを装備するということとは別の問題であるというふうに私ども考えているわけでございます。それにトマホークは、申し上げるまでもございませんけれども、核、非核両用であることも御承知のとおりでございます。  いずれにいたしましても、持ち込もうとするときには御承知のとおり事前協議の対象になるということでございまして、そういう協議があれば私どもはノーと言うことは前から御説明している次第でございます。  なお、六月の半ばと思いますが、外務委員会でございますけれども、安倍大臣から、事前協議の対象事項以外の問題に関しまして、随時協議で取り扱うことは認められるか認められないかといったような議論があった経緯がございます。一般的な法的仕組みとして申し上げますと、確かに安保条約第四条で言う随時協議ということは条約の実施に関して行うということになっておりまして、その限りにおきましては、事前協議に関連する問題につきましても、取り上げることは何ら排除されていないということは言えると思うわけでございます。ただ、それと同時に、あの際大臣が申し上げましたとおりに、そもそも安全保障条約関係というものをアメリカとの間に結んでいるということは日米信頼関係を前提としている次第でございまして、そういう観点から考えます限りにおきましては、大臣があの際申しましたけれども、随時協議という形を通じまして核搭載の有無等について対米照会をやるといったようなことは不必要であるのみならず、不適当であるというふうに私ども考えている次第でございます。
  138. 左近正男

    ○左近委員 何言っているかさっぱりわかりませんね。だから、私は端的に今国民の不安を言っているわけです。私は、何か日本政府はアメリカに遠慮されていると思うのですね。だから、もっとはっきり物を言うべきだ。多くの国民はこの問題に対して、核つきトマホークの寄港を非常に心配しているわけです。その点について政府はもっと毅然たる態度をとっていただくことを特に強く要望しておきたいと思います。  次に、米軍に提供している飛行場の問題について少しお聞きをしますが、米軍に提供している飛行場については管制権は米軍が管理をしておるということは当然でございますが、米軍によって設定された空域のおかげで、純然たる民間空港がその指揮下に入るというか、そういうようなところは日本にはどこどこございますか。
  139. 小山昌夫

    ○小山説明員 お答え申し上げます。  那覇空港と久米島空港、粟国空港、さらに松山空港でございます。
  140. 左近正男

    ○左近委員 僕は沖縄の問題もやりたいのですけれども、特に言われた松山空港の問題ですね。これは純然たる民間空港でございまして、年間百五十万人から乗降客があるわけです。この出入管理権を岩国基地が握っておる。岩国エリアという範囲はかなり膨大な愛媛県、山口、広島、島根の一部も入るようなそれぐらいの広い地域の出入の権限を岩国基地が持っておる。私は、これは大変異常ではないかと思うのですが、この岩国基地の空域についてもっと狭めていくというような考え方はお持ちですか。
  141. 小山昌夫

    ○小山説明員 お答え申し上げます。  先生ただいまおっしゃいましたように、松山空港と岩国空港は同空域の中にございます。岩国の管制区につきましては、この空域は松山空港と岩国の飛行場との位置関係が非常に近接しております。さらには、地形の関係上または航空路の関係上、これを完全に分離して行うということは今のところ不可能でございます。したがいまして、岩国、松山両方の空港を一元的に管理せざるを得ない状態でございますが、現時点におきましては運輸省といたしましてはいろいろとこの問題につきまして検討をいたしております。しかしながら、まだ結論と申しますか、これが可能であるというようなことについては判明いたしておりません。
  142. 左近正男

    ○左近委員 この松山空港の出入管理権について、岩国の米軍が握っておる。こういうことによって、ことしに入りましてから、純然たる民間空港である松山空港で、米軍の飛行機がタッチ・アンド・ゴーを初め訓練をかなりの期間やられた。これは安保条約なり地位協定の完全なる違反ではないかと思うのですが、その点どうですか。
  143. 山下新太郎

    ○山下説明員 ただいま御指摘ございましたように、松山空港におきまして米軍が訓練行為をやったといったようなことは、これは実は報道にもあったわけでございますが、私ども事実関係関係省庁——具体的には運輸省航空局と防衛施設庁でございますが、と御相談いたしまして、関連の情報を手に入れた上で、八月の六日でございますけれどもアメリカ側のここにおります大使館に事実関係を照会すると同時に、かかる訓練がもし行われていれば遺憾である、要するに協定上問題があるということを申し入れた次第でございます。これに対しましてここの大使館より、二日後の八日でございますが口頭で、調査した結果やはりやっているということを言っております。大使館といたしましては、岩国基地所属の海兵隊機が松山空港で行った離着陸訓練が周辺住民に迷惑をかけたことに関しても遺憾であるということもあわせて言っている次第でございます。  なお、協定それ自体との関係でございますが、地位協定上軍事演習といったようなものを取り上げて特に規定はいたしておりません。ただし、当然のことながら、軍事演習を行う場合におきましては、本来そういうことを行うべく予想されております施設、区域、具体的には基地でございますけれども、そういうところで行うのが常識的なことではなかろうか。すなわち、施設、区域以外でやることは協定上予想されていないというふうに私ども理解している次第でございます。
  144. 左近正男

    ○左近委員 こういうような事態が起こるのも、やはり松山空港が岩国基地の管制下に置かれているというようなところに問題があると思うのですよ。  そこで、嘉手納のRAPCONの問題について、いろいろ経過は時間がありませんから省略しますが、今これはアメリカが管理をしているわけですね。この管理については暫定期間であるということをはっきり明文化されております。沖縄のそれはすべてアメリカに管理されているようなものでございます。この嘉手納のRAPCON問題について日本に返還を求められていますか。
  145. 山下新太郎

    ○山下説明員 今の御質問の御趣旨は、私どもが提供しております嘉手納の基地の管制自体を返還するように要求しているかという御質問かとお伺いした次第ですが、提供しております施設、区域、特に飛行場として提供しております施設、区域につきまして、その管制は米軍がやるのが協定上も予想されているところでございますし、したがいまして、嘉手納空港の管制につきましてその返還を要求するということは、現時点で私ども考えておりません。
  146. 左近正男

    ○左近委員 これはおかしいじゃないですか。一九七二年の五月十五日の沖縄施政権返還の日に行われた日米合同委員会の民間航空部会の分科会で、日本政府は、これら飛行場に対するレーダー出入管理業務を行うことができるまでの暫定期間、これら飛行場に対する出入管理業務を実施するということで、アメリカの嘉手納RAPCON問題については暫定期間という取り決めがあるのでしょう。この暫定期間も、沖縄返還からもう十数年たっているのに、これがそのままになっているのはおかしいじゃないですか。
  147. 山下新太郎

    ○山下説明員 実は、そこのそばにそのほか普天間という飛行場、さらに那覇という飛行場がございます。これは地理的近接性が理由でございますけれども、御質問の趣旨は、それが理由となって嘉手納においていわゆる嘉手納RAPCONという形で一元的に出入管制もやっている、それはおかしいではないか、合同委員会の合意の上では沖縄返還の際に暫定的にと書かれているはずだ、こういう御質問だといたしますと、まさにおっしゃるとおり、そういう形で書かれております。  この四月でございますが、内閣委員会におきまして同じ問題が討議されまして、実は運輸大臣からも御答弁いただいたわけでございますが、私どもそれを踏まえまして政府部内におきまして、すなわち、私どもと航空局との間で技術的な点を含めて検討しているという段階でございます。
  148. 左近正男

    ○左近委員 もう時間がありませんから、きょうお呼びした運輸省、海上保安庁、科学技術庁の方、質問できませんから、お許しをいただきまして、私は終わります。忙しいところを出てきていただいてどうも済みません。
  149. 塩川正十郎

    ○塩川委員長 橋本文彦君。
  150. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 前々から有事法制研究について、いわゆる第二分類の提出が秋ごろ行われると言われておりました。きょうの委員会のメーンはこの有事法制だと思うのですけれども、この件につきましては、資料請求は、要求しても一切受け入れられなかった。ところが、マスコミには一部流れておった。全く同じものが本日配付された。こういうことを聞きまして、甚だ国会軽視ではないか、こう思いますが、いかがでしょうか。     〔委員長退席、小渕(恵)委員長代理着席〕
  151. 西廣整輝

    西廣説明員 この有事法制報告につきましては、各省庁といろいろ調整する点がありまして、ごく最近まで調整が終わらなかったということで、事前にこの委員会の方に資料をお配りすることができなかったのは大変申しわけないと思っております。  なお、マスコミ関係に流れたということでございますが、たまたまそういうことがあったとすれば大変申しわけない次第でございますけれども、今後そういうことがないように気をつけてまいりたいと考えております。
  152. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 他省庁の所管にかかわる項目、十一法令あると書いてありますけれども、その関係で漏れてしまった、こういう御答弁なんですけれども、何ゆえに今回の有事法制の第二分類を秘密にする必要があったのか、その点をまずお伺いしたい。
  153. 西廣整輝

    西廣説明員 今回の第二分類と申しますのは、先生御案内のように、各省庁それぞれの行政目的に従いましてさまざまな法令整備されておるわけでございますが、それらの法制自衛隊行動する場合の関係自衛隊行動する際に、それらの法令のもろもろの規制等がどういう影響を与えるかということを検討いたすものでございますので、非常に検討範囲が広いといったようなことから大変時間がかかったということでございます。
  154. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 質問は、時間がかかったとかいうのじゃなくて、なぜきょうの委員会に先立って議員の方に配付しなかったのか。それほどこれを秘密にしなければならない理由があったのかと聞いたのですが、読んでみますと、そんなに問題ないと思いますけれども……。     〔小渕(恵)委員長代理退席、委員長着席〕
  155. 西廣整輝

    西廣説明員 有事法制の問題は、現行法制自衛隊行動との関連について研究するものでございますので、それ自体秘密というものではございません。ただ、先ほど申し上げたように、関係省庁が非常に多くて、それぞれについて調整が終わるのに時間がかかって本日の委員会に十分間に合わせるだけの余裕を持って調整が終わらなかったということで、事前に御審議の便に供することができなかったのは大変申しわけないと申し上げている次第でございます。
  156. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 しかし、マスコミに流れているものと本日配付ざれたものは全く同じでございます。十分時間はあったと思いますが……。
  157. 西廣整輝

    西廣説明員 各省庁なり政府部内の調整の状況を申し上げますと、私ども、最終的に官房長官あるいは官房副長官のところに御説明に上がって御了承を得られたのが土曜日ということでございまして、その間、昨日最終的な資料をそれに従って作成したということでございますので、時間的な余裕はなかったというように申し上げる次第でございます。
  158. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 今後国会を軽視しないようにひとつよろしくお願いいたします。  きょうもらいましてきょう質問するわけでございますので、大変雑駁な質問かもしれません。  まず、この有事法制研究は、あくまでも、総理大臣から防衛出動を命ぜられるという事態において、自衛隊がその任務を有効かつ円滑に遂行する上でということでできているわけでございますけれども、この円滑に遂行するということを考えた場合に、まず、有事とは一体何なのか。最大はやはり戦争だと思うのです。戦争を想定した場合には、あらゆるものが全部そこに集約されてしまう。あらゆる事態を想定して法制整備していかなければならなくなってくる、こういう事態が出てくると思います。したがって、ただ単に法律の改正というよりも、むしろ軍事目的が表面に出てくれば果てしなくその統制を進めていかなければならなくなる、こういうことになると思いますけれども、いかがでしょうか。
  159. 西廣整輝

    西廣説明員 私どもの今回の研究におきます有事法制有事というものの概念は、自衛隊法七十六条によります防衛出勤下令している事態というものを一応前提として考えております。  なお、有事でございましても、戦場であればともかくとしまして、一部の地域で戦闘が行われておっても、他の地域においては通常の法令がそのまま有効に作用しておるという地域もあるわけでございまして、そういうところでは既存の行政法がそれぞれの目的を果たしてそのまま有効に働いておる。その際に、自衛隊行動する際、何らかの問題点があるかないかという点を検討いたしたのが今回の第二分類に係る研究になるわけでございます。
  160. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 有事ということを考えますと、どうしても物資あるいは人力の調達あるいは人事等、あるいは都市等を利用しなければならない、それが十分にしかも適切に利用されなければならない、こういうことを考えてまいりますと、我々国民の生活全体そのものを統制しなければならなくなってくる、こう思うのです。さらには、生活全体を統制する以上は情報そのものを統制していかなければならなくなる。昔の国家総動員の体制が再びできるのではないか、こういう気がしてならないわけなんです。しかも現在の法律、他省庁の法令も全く有事を想定していない、全部が平時の法律でございます。この平時の法律に有事の概念を入れるということで、大変異質なものが存在するわけでございますが、いかがなものでしょうか。
  161. 西廣整輝

    西廣説明員 たびたび申し上げておるわけでございますが、今回の防衛庁で行っております有事法制研究と申しますのは、自衛隊法七十六条に基づきます防衛出動が下令された、そういう状況におきまして自衛隊が各種の行動をとる、その際に現行法制に何らかの問題があるかないかという問題点の摘出ということを目的にいたしております。  なお、これらの研究につきましては先般来中間報告等で申し上げましたが、大きく分けまして三つの分野があろうというふうに我々考えておるわけでございます。その一つは防衛庁が所管する法律でございまして、これは自衛隊法その他がございます。そこに有事の際に自衛隊行動するための必要な各種の定めがなされておるわけでございますが、それらについて制定当時にほとんど漏れなく整備されたとは考えておりますけれども、なおかつ不足するものはないかどうかという研究をいたし、その結果を御報告したのが五十六年の第一次の中間報告であります。そして今回御報告するものは、各省庁が所管されておる既存の法令、そういったものと自衛隊有事における行動との関連、そこに何らかの問題があるかないかということにつきましていろいろ作業をしておりまして、今回おおむね取りまとめが終わりましたので御報告をさしていただくというものであります。
  162. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 質問は、いわゆる平時を想定している現行の法令の中に有事という極めて緊急の事態を想定しなければならない、全く異なった考え方が法律の中に入ってくるということでどういう考え方を持っておられるかということを聞いたわけなんです。
  163. 西廣整輝

    西廣説明員 やや繰り返すようになりますが、自衛隊法には有事における状況も想定した条文が当然ございますし、さらに自衛隊法におきまして他の省庁の所管に係ります法律に関して、有事の際に自衛隊行動する場合も想定をして一部の適用除外なり、あるいは全部の適用除外あるいは特例等を設けた項目も多数ございまして、私ども承知している範囲では二十四件、条文にして千百六十条余りのものが現行法令について適用除外をするとか、あるいは特例を設けるというような措置も講じてありますので、必ずしも平時にあります法令にそういった有事防衛出動事態においての配慮がなされていないというわけではないというふうに考えております。
  164. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 今回の第二分類について第三の「今後の研究の進め方」の中に「陣地の構築のための土地使用、建築物の建築等の特例措置について、例えば、防衛出動待機命令下令時から適用する」という点も考慮したい、こういう趣旨があります。防衛出動じゃなくて待機命令の段階でもう既にこの特例を認めていこう、こうなりますと、全く国会の意向とは無関係に政府の一存で戦争状態に突入するということが考えられるわけです。さっきの資料じゃありませんけれども、極めて国会軽視につながるような問題がたくさんあるように思えてならないのですけれども、その辺はどのようにお考えですか。
  165. 西廣整輝

    西廣説明員 確かに昭和五十六年におきます報告、それから今回の報告においても防衛出動下令時以前の問題についても一、二敷衍をして述べております。それは例えば陣地の構築等かなり時間がかかるものについてできるだけ早くそういう必要な措置をとるために、物によっては防衛出動下令前、例えば防衛出動待機命令下令時から適用を考慮する必要があるのではないかといったことも今後の検討課題の一つであるという形で指摘はさせていただいておりますが、基本的には有事法制研究はあくまで自衛隊法七十六条によります防衛出動下令時における自衛隊行動法制上の諸問題というように御理解いただきたいと思います。  なお、いずれにいたしましてもこれらはいずれも法制上の諸問題でございますので、法律の制定あるいは政令というような形で所定の手続を経て、必要なものは当然のことながら国会の御審議を得てこれを成立させなければいけないということでございますので、決して国会等を軽視をして云々というものではないことを御理解いただきたいと思うわけであります。
  166. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 いずれにしましても、我が国憲法の中には衆議院が解散されている場合の参議院の緊急集会を除いてはいわゆる緊急事態に対処するものは全くございませんし、このような有事立法ということは憲法そのものは認めておらない、このように思うわけでございます。我が党の方針としては有事の際にしてはいけないこととしていいことの区別をするのであれば研究そのものは意味があるだろうという見解を持っておりますけれども、一連の第一分類あるいは第二分類にいたしましてもできる、できる、できるばかり書いてありまして、してはならないとどこにも書いていない、極めて不適当であろうと私は個人的に考えております。  いよいよ第二分類が終わりまして、先ごろから中西国務大臣も言っておりましたように有事立法化を急ごうとかあるいは第三分類に着手しようとかこういう動きがございます。いよいよ人権侵害の研究に着手するわけでございますけれども、先ほど栗原長官説明では幅広い立場において研究を進める、内閣全体の問題で取り上げていこうという発言があったようでございますが、いわゆる第三分類について有事立法、有事法制研究のイニシアチブ、主導権はだれがとるのですか。
  167. 西廣整輝

    西廣説明員 第三分類と申しますのは御案内のように所管省庁も決まっておらない分野でございますので、すべて今後の検討課題でございますが、いずれにいたしましてもこれは自衛隊行動そのものというよりも民間人の避難誘導に関する問題であるとか民間の航空機あるいは船舶の安全を図るための措置といったことでございますので、より広い立場で御検討いただくことになろうかと思います。例えば内閣レベルのようなところで御検討になって、それぞれまた比較的関係の深い省庁というものがおのずから決まってくるとは思いますが、そういった点も含めて今後の検討課題だろうと考えております。
  168. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 住民の保護、避難誘導あるいは船舶、航空機の安全あるいは電波の効果的使用あるいは捕虜の問題等々が一応この書面には出てきておりますけれども、そのほかに防衛庁としてはどのようなことを考えているのですか。
  169. 西廣整輝

    西廣説明員 実は正直申しましてまだ防衛庁としてはこの問題について研究をいたしておりませんので、どのようなものと申されましても具体的なものが浮かんでこないわけでございますが、思いつきのようで恐縮でございますが、例えば第二次大戦中には灯火管制といったものがございました。これも一種の被害を局限するための措置でございますが、そういうものが果たして最近のように装備がいろいろ近代化した状況の中においても必要なのかどうか、必要ならばどういった法制が必要なのかということもあるいは出てくるかと考えております。
  170. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 懐かしい言葉で灯火管制が出ましたけれども、そうなってまいりますと民間自衛軍、竹やり軍団なんかも、そういうような形を変えた規定が出てきて極めて国民の人権に影響するような分野まで踏み込んでいくのじゃなかろうかと危惧しております。いずれにいたしましても、有事という概念がはっきりしていない現在、この法制化の研究を余りに急ぐということは問題であろうと思います。防衛庁としては、この有事立法を急ぐのか急いでいないのか、あくまでも研究のためと言っておりますけれども、立法化を急ぐ気持ちがあるのかないのか、その点を端的にお答え願いたい。
  171. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 これは、政府委員から申し上げたとおり、今度は第二分類では問題点を列挙した。問題点を列挙して、その中で今お話のあったとおりいろいろと御議論を願う、それが非常に重要だと思います。私は、まず防衛庁から出したこの中間報告をもととして、国会並びに各方面で、有事の際にこういうことが必要であるのか必要でないのか、必要でないとするならば一体それはどういう意味だ、そういうことについて論議を重ねていただくことが非常に重要だと思うのです。そういう意味合いで、直ちに防衛庁としてこれが法制化に取りかかるということは考えておりません。
  172. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 しかし、内閣総理大臣も、春ごろから委員会におきまして第三分類に着手するような姿勢を示しておるように私の方は伺っております。
  173. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 別に御質問でないようでございますが、第三分類につきましては、これをどうするかというのは内閣全体として取りまとめをしなければならぬと考えております。防衛庁としては、今のところ第二分類まで、あとは知らぬというのじゃなくて。この問題につきましては、政府全体としてひとつ考えるべきである、こういうことを申し上げておきます。
  174. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 世間一般では、第一分類が終わり、第二分類が終わった、いよいよ第三分類の人権侵害にかかわるような問題の研究に取りかかっていくだろう、そういう危惧を持っております。そこで、あくまでも国民の合意が得られるような十分な研究のためだけであって、もう立法化に進むようなことだけはしてもらいたくない、このように申し上げておきます。防衛庁のスタンスとしては、あくまでも立法化は考えておらない、あくまでも研究の段階である、こういうふうに言っておりますので、私の方もそのように胸におさめておきたいと思います。  そこで本題に入りますが、栗原防衛庁長官にお伺いします。  先ほども訪米報告にございましたけれども、例のミッドウェーの艦載機の問題でございます。私のところは厚木基地がございまして、飛行機が飛ぶたびにいろいろと私の自宅に抗議の電話が入ってくる。ついせんだっても土曜日飛んできまして、今テレビが聞こえない、どうするんだというようなことで、どうしても私の体から厚木基地の騒音は外すわけにいかない、こう思っております。そこで、先ほども質問がありましたけれども、できるだけ早い時期にというだけで、本当にそんなに簡単なもので終わったのでしょうか。もう少し突っ込んだ議論はなかったのか、その点をもう少し親切に御答弁願いたいと思うのです。
  175. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 NLPの問題、特に厚木基地が大変周辺の皆さんに御迷惑をかけているということはよく承知をしております。ですから私は、これはアメリカ側の訓練の問題だけではなしに我が国の地域住民にとっても大変な問題なんだ、そういう意味合いで非常に自分としては痛みを感じておるということを申し述べたのです。  ただ、これが解決には、先ほど申しましたとおり、きょう言ってあしたできるというものじゃないのです。しかし、やり方というものが今まで果たして適当であったかどうかということをもう一回考え直す必要がある。やはり各方面の御協力をいただくという意味で、総合的に。それから、住民感情その他を考えるときめ細かくという原則を立てて誠意を持ってやらざるを得ない、こういうことで、私は自分の誠意を持って話をしたわけでございます。それに対しましては、文字どおり向こう我が国の国防努力評価しておるのじゃないでしょうか、長官ひとつ頼みますわと、こういうことで、向こうの方から善処を要望されたということでございます。ほかに何もございません。
  176. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 八月三日にこの委員会防衛施設庁の佐々長官に、厚木飛行場の音をぜひとも聞いてもらいたい、このように質問したわけですが、その後厚木基地に行かれていわゆる夜間訓練のあの音を聞いた、このように漏れ伺っておりますけれども、本当に行きましたでしょうか。
  177. 佐々淳行

    ○佐々説明員 お答えいたします。  八月の七日だったと記憶いたしておりますが、厚木の現場に参りましてその騒音の実態を聞いてまいりました。飛行場の周辺の比較的人家のない部分あるいは旋回半径の下、着陸コースの住宅密集地等、何カ所かで実際に聞かせていただきましたが、その騒音問題につきましては、やはり住民の間からそういう苦情が出るのはやむを得ない、相当、特に住宅密集地における騒音問題は何とかしなければいけない、そういうことを実感をもって感じました。
  178. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 施設庁の大きな役目はいわゆる防音工事にありますけれども、その防音工事が施工された建物に入って音を聞いたことはありますか。
  179. 佐々淳行

    ○佐々説明員 お答えいたします。  夜間でもございましたし、事前に十分準備をしてまいりませんでしたので、防音工事を施した家の中に入って聞いたということは経験いたしませんでした。
  180. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 では、ぜひそれも実行していただきたいと思っております。  前回ここで質問いたしまして、夜間連続離発着訓練の土曜日、日曜日の訓練につきましては中止をしていただきました。その点につきましては大変感謝しておるわけですけれども、七月、八月の土曜日、日曜日に訓練をしないというこのケースを今後の訓練時にも適用をしていただけるようにぜひともお願いしたいのですが、いかがなっているものでしょうか。
  181. 佐々淳行

    ○佐々説明員 お答えいたします。  アメリカ側に対しまして私どもは、例えばただいま御指摘の土曜、日曜日の市民が安息を求めておる時期は遠慮していただきたい、あるいはできればなるべく早く切り上げてもらいたい、午後九時ごろに終わるようにならぬかと。さらには、いろいろな機種がございます。ファントム、あるいはA6、A7、E2、こういうような機種によりまして、例えばE2、あれはBでございますか、これでございますとプロペラでございますので、その訓練の順番を変えて、なるべく早い段階に騒音の大きいファントム等を済ませ、プロペラ機は後にしてくれと、こういうようなことをいろいろ私どもも折衝しておるところでございます。アメリカ側も決して傍若無人にやっておるわけではございません。ミッドウェーの艦載機の離発着訓練は絶対に不可欠であると言いながらも、そういう日本側の事情を考慮して、三沢、岩国に家族と一緒に過ごす時間が短くなるという犠牲において振り向けてくれたり、いろいろな努力をしていただいております。その結果七月、八月御指摘のように土曜、日曜中止と、こういうことになったわけでございます。十月一日御承知のようにまた一部帰ってまいりまして十三日まで実施をしたわけでございますが、この際も、十月十日体育の日の休みの日は中止を申し入れましたところ、アメリカ側はこれを了承して中止をいたしました。ただし、ミッドウェーの出港との関係で最終の土曜日だけは行われた、こういうことでございますが、今回は、七、八月よりは日没が早くなりましたので、比較的早く始まって早く終わった、こういうことでございます。今後も、できる限り土曜、日曜は避けるよう、そういう基本方針で交渉をしてまいりたいと考えております。
  182. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 前回の委員会で、このタッチ・アンド・ゴーで事故が起きるのじゃないか、いや、起きますよという形で質問したわけでございますけれども、その後にミッドウェーの艦載機がフィリピン沖で墜落した。死亡したわけでございます。五十六年、神奈川県の渉外部が厚木基地周辺の実態調査をしました。その結果、八十WECPNL、この範囲の人では、墜落の危険というものを五一%が強く感じている。それから、少しは危険を感ずるというのが三四・八%。もうほとんどが墜落するのじゃないかというような危惧の念を持っておる。そういうデータがございます。したがいまして、このフィリピン沖の墜落事故の概要がわかれば、どうしてこういうことが起きたのかという原因、それと比較して厚木基地が安心なのか、安全なのか、その対策はどうなのか、その辺をお聞かせ願いたいと思います。
  183. 佐々淳行

    ○佐々説明員 お答えいたします。  まず、ミッドウェーの事故の問題でございますが、日本を出港いたしまして、フィリピン沖におきまして、これは日中の訓練だったようでございますが、着艦に失敗をし、艦の後尾に激突をし海没をした、このために乗員が殉職をした、こういう事件があったと承知をいたしております。  事故の防止という問題につきましては、実は私どもアメリカ側に対しまして、この事故防止について万全を期されたい、機体の整備の問題であるとか搭乗員の健康状態の管理の問題であるとか、こういう点にきめ細かい配慮をして事故を絶対に起こさないようにしてもらいたいということを再々申し入れをし、アメリカ側もこの点については細心の注意を払っておるところでございますが、ある意味ではそれだけ難しい訓練であるので、地上において、航空誘導灯であるとか高度だとか進入角度を判断するミラーであるとか、こういういろいろなものを整備したところで訓練をする必要があるのだという、逆にそういう問題も出てまいってきておりまして、私どもとしては、事故を防ぎながら、しかも安全にミッドウェーの艦載機パイロットたちの練度を落とさないための訓練をやるためには、現在の厚木は余り適当な場所でない、こういうことから、代替飛行場の問題を日米今真剣に取り組んでやっておる、こういうことでございます。事故防止につきましては、私どももそういう申し入れを繰り返しておりますし、アメリカ側も大変配慮をして事故防止の努力をしておるというふうに理解をいたしております。
  184. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 ひとつよろしくお願いいたします。  厚木基地に関しましては、いわゆる住宅防音工事助成区域、これが七十五Wに拡大されたわけです。拡大されましたので、この工事の進展状況、それから今後どういうような計画を持っているのか。特に六十年度の予算における防音工事の予算額、あるいはその厚木基地関係予算がもしわかりましたらお教え願いたいのですが。
  185. 千秋健

    ○千秋説明員 お答え申し上げます。  現在までの厚木周辺におきます住宅防音工事の進捗状況でございますが、既に五十四年九月及び五十六年十月に指定告示を行いました区域につきましては、五十九年度の計画が終わりました段階で二万四千五百六十四世帯につきましてこれが一〇〇%終わるという状況でございます。なお、追加しました、ことしの五十九年五月三十一日に告示しました区域につきましてはこれからの問題でございまして、現在まだ行われておりません。  なお、来年度でございますが、来年度につきましては、今年度、五十九年度約八千五百世帯を計画しておりますが、それを上回ります九千五百三十世帯、全国の住宅防音工事の約三三%になりますが、それを厚木に充当したいということで現在概算要求を行っておるところでございます。
  186. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 今お示しの全国の三三%というのは来年度だけですね。
  187. 千秋健

    ○千秋説明員 お答え申し上げます。  来年度、昭和六十年度の概算要求、全世帯が全国で二万八千八百五十一世帯、それの約三三%を厚木に充当したい、こういうふうに考えておるということでございます。
  188. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 厚木基地だけが受忍の限度をはるかに超えているというわけじゃございません。三沢もあれば岩国もあります。だけれども、住宅の密集地という点から見ればこの厚木基地が最悪の条件下に置かれている、こう思うわけでございます。  そこで、この厚木の防音工事、他の三沢、の防音工事に比べて、その達成率とか進捗率、これはどうなんでしょうかね。
  189. 千秋健

    ○千秋説明員 お答え申し上げます。  三沢飛行場、岩国飛行場は、ただいま先生御指摘のように、周辺におきます住宅の数というのは厚木飛行場に比べまして少のうございます。  そこで、三沢飛行場でございますが、先ほど申しました八十WECPNL以上の区域、これは厚木でも一〇〇%になるということでございますが、これにつきましては、三沢飛行場は同じく一〇〇%達成しております。それからさらに、その区域を広げました七十五WECPNL以上八十WECPNL未満の区域、ここにつきましては、まだ厚木は着手しておりませんが、三沢飛行場におきましては四百六十四世帯、約四四%の進捗率になるという状況でございます。  それから岩国飛行場でございますが、岩国飛行場の方の八十WECPNL以上の区域、これにつきましては同じく四千九百六十五世帯、これを一〇〇%達成するという状況でございます。それから七十五WECPNL以上八十WECPNL未満の区域、これにつきましては二千四百世帯、進捗率約四三%ということで、三沢飛行場、岩国飛行場につきましては全体の対象世帯が少のうございますので、音との関係におきましては工事が進んでおるという状況になろうかと思います。
  190. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 そうすると、七十五から八十未満ですか、その範囲で、三沢では四四%、岩国では四三%の工事達成率があるけれども、厚木においてはまだゼロである、こういうことなんですね。これはどういうことなんでしょうか。
  191. 千秋健

    ○千秋説明員 進捗率の状況はそのとおりでございますが、これは、厚木飛行場も防音工事を始めた時期におきましては現在のようなNLPの訓練は行われておりませんでした。そういう時期におきまして一斉に工事を始めたわけでございますが、その後、厚木におきましては夜間着陸訓練が行われ、そういう対象世帯が膨大にふえてまいったために七十五WECPNL以上八十WECPNL未満の区域につきまして、工事の着工がおくれておるという状況になったということでございます。
  192. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 現在七十五WECPNLに拡大されたわけでございますけれども、この区域内に約千五百戸の公営賃貸住宅が相模原市から藤沢市、海老名市、座間市等々六市にわたって分布しておるわけなんです。ところが、これらの多くの公営賃貸住宅が老朽化が激しい。したがって、建てかえを目的としている関係なのか、全然防音工事がなされていないらしいのですね。わずかになされたのは、千五百戸のうち三十八戸という極めて少ない数なんですけれども、老朽化が激しくなればなるほど騒音の被害は激しいという実情、これは地方自治体の問題なんでしょうけれども、施設庁の方で、何とかこういう住んでいる人のための騒音公害を救済する手段はないのかどうか、お尋ねしたいと思います。
  193. 千秋健

    ○千秋説明員 先生御指摘の厚木飛行場周辺におきます公営住宅でございますが、これは御指摘のとおり、大体昭和三十年代に建てられた木造住宅が主でございまして、関係地方公共団体の方では、現在これらを鉄筋構造化または高層化を目標として建てかえたいという住宅政策を進めております。そこで、私どもがこれらの木造住宅に防音化のための補助を行うということが、これらの建てかえ計画に支障を生じるのではないかということを地方公共団体の方は懸念しまして、従来、私どものこの住宅防音事業に直ちに応じられないというような感がございました。しかしながら、最近の厚木飛行場におきます騒音の状況、これは、そういうものを踏まえまして、関係地方公共団体も、現在の姿のままで住宅防音をやっていかなければならないのではないかというふうに、考えが変わってきつつあるやに受け取っております。その場合には、私どもとしては予算上いろいろ制約がございますが、十分それにこたえて対処してまいりたいというふうに考えております。
  194. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 そういう動きがあるのは、私の方は勉強不足でよくわからなかったわけですけれども、老朽化住宅を建てかえして高層化にするという計画の方が数としては多いと思うのです。その場合に、新築になるわけでございますね。そうすると、いわゆる指定告示後の新築工事ということで、その防音工事の対象外になってしまうわけですけれども、この辺はどういうように考えたらいいのでしょうか。
  195. 千秋健

    ○千秋説明員 ただいままさしく新たに建てかえた場合は、建てかえられる鉄筋高層住宅は指定告示後の建設される建物でございますが、従前そこに木造老朽化した公営住宅があった、それを建てかえるということでございますので、非常にいろいろ問題がございますが、私どもとしましては、現有面積の範囲内で、ついてはこれを助成していかなければならないのではないかということで、現在検討しておるところでございます。
  196. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 平家の木造住宅の現有面積と高層住宅の現有面積を比べますと、これはえらい差異があると思いますけれども、本当にちっぽけな助成金しか出ないと思いますけれども、何とかこれを全戸に波及するような御努力を願いたいと思います。  また、七十五W区域の問題がありますけれども、今回、新たに指定告示されまして、防音工事の対象区域内に入るわけですけれども、その前に指定された八十五あるいは八十Wの住宅が、指定告示後に移ってきた、適用がないという事態があります。今回、新たに五月に指定告示されたために、八十五あるいは八十の地域に住む人よりも、後から住んできた人の方が防音工事の助成対象になってしまったという、いわゆる逆転現象といいますかが起きているわけなんですね。ところが、実際には、七十五Wの人よりも、八十ないし八十五Wの人の方が被害が大きいという、こういう現実がございます。これはどのように考えたらいいのでしょうか。
  197. 千秋健

    ○千秋説明員 住宅防音工事は、この区域指定の際、現に所在する住宅を対象として助成の措置をとるということが、現在の法律の建前でございます。したがいまして、これらの区域指定後新たに建設される住宅、これは現在、助成の対象とはならないわけでございます。これらの住宅というのは、やはり区域指定後、そういう障害を承知で建てたものであるということで、区域指定されないさらにその外側におきます七十五WECPNL以上八十WECPNL未満の区域に該当するような場所、後から該当するわけですが、そこにそれより後建てた住宅があったとしても、その点で若干、差異があるのではないかというふうに我々は考えております。  ただ、これらのものにつきまして、今後どうするかという問題もございますが、私どもとしましては、現在、限られた財源のもとで、まだ本来、該当する住宅全部住宅防音が行き渡っておりません。これらのものについて、まず住宅助成措置をやるのが先決であるというふうに考えている次第でございます。
  198. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 騒音公害があることを承知で建てたのだから、やむを得ないのではないかという御答弁のようですが、問題は、ここからここまでが防音指定区域になっていますとかいうのは、全然見えない、また、どこの地域に行っても、そういうことをだれも言ってくれない、民間の人は民間の不動産業者から買うわけですけれども、もちろん業者はそれも言わない、また関係地方団体も、ここは騒音が激しいから大変ですよということも言わない。そんなところで、どんどん新住民が防音工事をする地域に入ってくるわけですね。そこで悲劇が生まれてくるわけですけれども、都市政策の失敗というか住宅政策の失敗というか、どんどん騒音のひどいところに移転してくる皆さん、だけど、そしてその悲劇が起きてくる。何とかこういうことが起きないように施設庁、手を打つ方法はないのでしょうか、これは私権の制限にも絡んでまいりますけれども
  199. 千秋健

    ○千秋説明員 現在のところ、法制的にはこれを阻止するという手段を持っておりません。  ただ、私どもとしましては、告示をするとともに各関係市町村にお願いしまして、関係市町村の広報紙等を通じまして、その指定の内容、その性質、性格について周知徹底をお願いする、そういうことで、これらの区域でそういう問題が起きないように心がけている次第でございます。
  200. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 いわゆる第二種区域の問題なんですけれども、騒音がひどくて建物等の移転補償が行われるときの問題です。しかし、この移転補償が、現在聞くところによりますと、全然話が進んでいかない、話がまとまらないというふうに伺っております。これはどうしてまとまっていかないのか、その点の調査をしておりますでしょうか。
  201. 千秋健

    ○千秋説明員 第二種区域におきます移転の問題でございますが、これは私どもは、あくまでそこに居住される方から移転したいという要望が出た場合にその補償を行う、また、跡地の買い入れを行うという形でやっておるわけでございまして、現在までのところ、約六百五十戸ほどになりますが、そういう移転希望者に対して補償をし、跡地買い上げを行っております。その後、希望があればそういうものを実施しておりまして、そこに、希望するけれども出ていけないとか、そういう話は現在のところ私どもは聞いておりません。
  202. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 移転補償が解決しまして、建物がなくなる、更地になった段階でその部分に基地が拡張するんじゃないかという懸念があるわけなんですけれども、これはどうなんでしょうかね。移転をさした、空になった、そこに基地がふえてくる、こういうことはございませんか。
  203. 千秋健

    ○千秋説明員 ちょっとお答えする前に、先ほどのお答えで失礼しました。六百数戸と申しましたが、二百二十二月でございます。土地の面積にしますと六十六万平米を購入しております。  そこで今の御質問でございますが、私どもはこれらの土地につきまして、周辺環境整備法の法律に従いましてその土地を緑化するとか、その他地方公共団体の利用規模に応じて貸し付ける、そういう形でやっておりまして、これを基地の拡張に使用するという計画はございません。
  204. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 前回の委員会でも、この厚木の騒音が人体にどのような影響を与えるかという質問をいたしました。その際、千秋政府委員よりも民間の医療機関に委託して調査をしているというようなお答えがあったように思いますけれども、その後どうなっておるのか、いつごろ結論が出るのかをお答えを願いたいと思います。
  205. 千秋健

    ○千秋説明員 先般八月三日のこの委員会で御質問がございまして、私どもこの航空機騒音が人体にどのような影響を与えるかという調査は、長期的に追跡調査を実施する、各種の事例について数多くのデータを収集していかなければならない、そういうことで継続して調査を実施してまいるというふうにお答え申し上げたところでございます。  これにつきましては、今年度も三百八十七万ほどの予算をいただきまして、同じく継続調査を実施しているところでございます。この調査の進捗状況等を見ましても、いつまでという結論が出るめどは現在のところちょっと立っておりません。
  206. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 これに関連いたしまして、昭和四十九年、五十年度の「大阪国際空港の航空機騒音等が市民の健康及び環境に及ぼす諸影響調査報告書」というのがございますけれども、その中では、被害の大きさもさることながら、航空機騒音は、新幹線や自動車等に比べて「上空からのもので、地上建造物にさえぎられることなく広域にわたって大規模な影響を与え、かつ発生源がほぼ一定しており、その騒音レベルの平均的分布が、比較的正確に測定することができる、などのことから、騒音の周辺への影響を明らかにするためには扱い易い対象である」、こういうふうな記事がございまして、比較的早い時期に結論が出るようなそういう調査報告書なんですけれども、いかがなものでしょうか。何か相当長期にわたるというような御答弁でがっかりしておるわけなんですけれども
  207. 千秋健

    ○千秋説明員 ただいま御指摘の「大阪国際空港の航空機騒音等が市民の健康及び環境に及ぼす諸影響調査報告書」という伊丹市が当時神戸大学に委託して四十九年、五十年度に調査をした報告書、これは私どもも承知しております。  ただ、ここにも書かれていることでございますが、航空機騒音をどうとらえるかという点におきましては、ただいま御指摘のような新幹線とか地上騒音に比べて比較的とらえやすいという点もございます。それがまた人体等に与える影響等につきましてもるる調査されておりますが、私どもは私どもで現在やはり調査を委託して実施しておりますので、この報告書どおり簡単にまいるかどうか、私どもはちょっと今判断しかねるところでございます。
  208. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 わかりました。  今月の十日に、北海道の陸上自衛隊然別演習場で野営訓練中に爆発事故があって、一人が死んで九人が重軽傷を負った、こういう問題がございました。新聞の記事等で拝見いたしますと、国鉄から信号雷管をただで譲り受けて、それを演習中に戦車に踏ませてあたかも機雷か何かを踏んだような形を想定するためのいわゆる雷管等を抜いているときの火薬爆発、こういうことなんです。  ところが、この新聞記事によりますと、自衛隊の幹部は全く知らない、本当に小隊長の独断でやったというように書かれておるわけなんですが、もしこういうことが本当とするならば、幹部の知らないところでもって小隊長クラス、ここでは二尉でございますけれども、二尉クラスの判断でもって何でもできるということを我々は考えてしまうわけでございまして、あちこちで極めてずさんなことがよく言われておりますけれども、また始まったかなという感じがいたします。実際に訓練状況でもってどの程度小隊長の自由裁量があるのか、してはいけない点としていい点はどこなのか、その点をまず明らかにしていただきたいと思います。
  209. 大高時男

    ○大高説明員 お答えいたします。  先生御指摘のように、去る十月十日の十九時四十分ごろ、北海道の陸上自衛隊然別演習場におきまして、第五師団の第六普通科連隊の第二中隊が中隊長以下十四名で国鉄から入手した信号雷管約八百個を処理中に暴発事故が発生したわけでございまして、死亡者一名、重軽傷者九名という被害を生じ、まことに残念な結果になっておるわけでございます。  事故の状況及び原因につきまして現在まだ調査中でございまして、この詳細な内容についてまだお答えする段階にございません。調査結果を踏まえまして今後対策を検討してまいりたいと考えております。特に今先生御指摘の二尉でございますけれども、この小隊長も重傷を負っておりまして、そういった負傷者が多い関係から、鋭意当時の状況について調査を行っておるところでございます。
  210. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 この問題は国鉄側の方の管理のずさんさも同じように指摘されております。今私の質問は、この二尉クラスの人がしていい範囲としてはならない範囲という形でもって聞いたわけなんですが、本件のような場合はこの二尉クラスの方がしていい裁量の範囲内なのかどうか、この点をお聞きしたいと思います。
  211. 山田勝久

    山田(勝)説明員 火薬類の譲り渡し、譲り受けにつきましては、火薬類取締法の第十七条で規定しております。本件の場合は譲り受けでございますけれども、この条文及び自衛隊法の百六条によりましてこの取締法の適用は除外されております。しかし、除外されているからといって自由にやれるわけではございませんで、自衛隊には防衛庁訓令で、火薬類の取扱いに関する訓令及び火薬類の取扱いに関する達というのがございまして、本件のような場合には原則的には幕僚長の承認が必要である、こういうことになっております。本件のそこら辺の手続、実態につきましては、ただいま教育訓練局長が申し上げましたように現在調査中でございますので、調査をいたしまして後対処をいたしていきたいと思っております。
  212. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 時間が参りましたので、質問を終わります。
  213. 塩川正十郎

    ○塩川委員長 吉田之久君。
  214. 吉田之久

    ○吉田委員 長官は、過日、米国を訪問されまして、ワインバーガー国防長官初めいろいろの方々とお会いになりました。かなり重要な会談を終えてこられたと思います。敬意を表する次第でございます。  先ほど、その訪米あるいは訪欧についての御報告の概略をいただいたわけでありますけれども、特にワインバーガー長官との協議概要についてでありますけれども、まず長官から「世界平和のためには、米ソ間の対話が重要」である、あるいは「常に平和と軍縮の問題を念頭に置きながら、防衛施策を進めることが、肝要である」というお考えをお述べになった。これに対してワインバーガー長官から、長官に対する同意を表明されるとともに、「軍縮で一番大きな問題は、検証可能な措置をとることにある」との発言があった。そこで長官は「検証可能なところから実施していくとの米側考え方は、十分理解できるものである」とお述べになった。このくだりはかなり重要な報告だと私ども認識いたしておるところでございます。しかし、軍縮と申しましても大変範囲が広いわけであります。通常兵器の軍縮も当然でありますけれども、何よりもなさるべきは核軍縮であります。  長官ワインバーガー長官初め米国の重要な指導者とお会いになりました感触からお伺いしたいわけでございますけれども、特に米国は、軍縮を進めるに当たってその核軍縮というものに最大の重点を置いておらなければならないと思うわけでございますが、そのとおりであるか。また、核軍縮と申しましても戦略核兵器から戦域核兵器、戦術核兵器、多面にわたるわけであります。今や世界人類の共通にして最大の脅威はこの核の問題でありますだけに、なおこの辺につきましての長官の所感を伺いたいと思います。
  215. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 軍縮あるいは軍備管理の問題につきまして、核とか非核とか具体的に細かく論議をしたわけじゃございませんが、しかし総体的に見ますと非常に軍備管理軍縮、当然のごとく核が中心でございますけれども、それについてアメリカは積極的である、そういう印象を受けました。私は、先ほども申しましたとおり、アメリカ側からするとソ連の態度がかたくな、こういうように思われるかもしれないけれども、やはりソ連に対して絶えず呼びかける、そういう御努力をいただきたい、また創意工夫を凝らしてもらいたいということを申し上げたのです。それについても非常に貴重な意見であるというようなことで応対をいただきました。  ただ、ワインバーガー長官の場合には、現実に国防というものを担当している者からするとやはり抑止理論というものは原点として守っていかなければならない、それと同時に検証可能な、そういう方策を講じなければならぬ、こういうお話がございまして、その点につきましては、私はそれなりに十分理解できる、こういうふうに答えたわけでございます。ただ、余談といいますか、アメリカ軍縮、平和の問題に対しましてヨーロッパがどういう受けとめ方をしたかということでちょっと私の感想を申し上げますと、ベルナー西ドイツの国防相は、自分の観測だがと申しまして、アメリカレーガン大統領が再選をされたら平和並びに軍備管理軍縮についてさらに積極的になるのではなかろうかということで、西ドイツの国防大臣はアメリカ軍縮等の問題についてそういう御所見を述べられたことを参考として申し上げておきます。
  216. 吉田之久

    ○吉田委員 軍備管理、アームズコントロールあるいは軍縮、ディスアーマメントは、我が国としても今後世界各国とともにかなりいろいろと具体的に対処していかなければならない重要なテーマであると私ども認識いたしておりますが、同時に今長官がおっしゃいましたとおり、現在の世界における防衛基本はやはり抑止理論でありまたバランス論であるということも私どもは否定いたしません。しかし、そういうものを踏まえつつ平和を求めていくためには、長官がいみじくも申されましたとおり、検証可能な措置をとりながらいかに軍縮を相互に段階的に進めていくかという問題に絞られてくると思うのです。  そこで、検証可能な措置あるいは相互査察の方法についてでありますけれども、衛星による探査もありますし、あるいは高高度から航空機による偵察もなされるでありましょうけれども、本当に確かな軍縮、そして検証というものは、米ソ両国がお互いにそれぞれの軍縮する箇所に踏み入って確かめ合うというのがまず当然の出発点であろうと思います。同時に、この際長官にお考えいただきたいことは、米ソ両国の二大大国が相互に査察、検証し合うだけではなしに、今もお話にありましたけれども、ヨーロッパの先進諸国、そして我が日本、これら力ある責任ある国々がともに米ソの検証の場に加わることも一つあり得るのではないか。そのことによってより世界軍縮が厳密な確かなものになりますし、またそれが本当に守られない場合には、また別な新しい対処の仕方、経済制裁とかあるいはバランスの維持であるとかそういうことも成り立つわけであります。そういう力と本当に平和を追求する理性というものをかみ合わせた軍縮というもの、その一角に日本も大いに寄与しなければならない時期に来ているのではないかと私ども考えるわけでございますけれども、今後この検証をめぐってのなすべき日本の役割ということについて、その辺までお考えいただけないものかどうか、お伺い申し上げます。
  217. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 これはむしろ防衛というよりも日本の外交政策といいますかそういうものにも関係をすると思いますので、私がここで私見を申し上げることは遠慮させていただきたいと思いますが、私がアメリカで申し上げたことは、アメリカはいろいろ工夫を凝らして平和と軍縮の問題について御努力をいただきたい、こう言っておいたわけでございます。今吉田さんから言われたようなことは、私としては参考に頭の中にしかと置きたいと思いますけれども、これ以上のことについては私が申し上げることが今の段階で必ずしも適当でないと思っております。
  218. 吉田之久

    ○吉田委員 大変総合的な、極めて政治的な問題になると思う問題でありますけれども、しかし、米ソ両当事国にだけ軍縮を任すのではなしに、この際西欧諸国あるいは責任ある日本、そこらが外交的にも大いにひとつ世界の世論を高め、また具体的な軍縮に乗り出していく一つのお手伝いを申し上げる、こういうことこそが世界に対して平和への保障を与える糸口になると思うわけでございまして、世界の平和と我が国防衛に対して責任を持たれる長官といたしまして、今後、いろいろと御検討を煩わしたいことだと思うわけでございます。  次に、先ほど御報告ありました有事法制研究について若干の質問をさせていただきたいと思います。  さきに報告をなされました昭和五十六年四月二十二日の中間報告と、今回御説明ありますこの報告と申しますか研究でございますけれども、この二つはどういう相互の位置づけを持っておるのか。言うならば、五十六年の報告中間報告であります。もちろん、第一分類に係る中間報告であることは承知いたしております。このたびの報告説明は第二分類に係る研究の一種の報告だと思うのですが、今度の報告は第二分類にわたる中間報告と受けとめていいのか、あるいはさきのものとはやや性格の違うものなのか、その辺のことを御説明いただきたいと思います。
  219. 西廣整輝

    西廣説明員 お答えいたします。  先般、昭和五十六年の四月に御報告申し上げたのは、防衛庁で行っております有事法制研究の中の第一分類と私ども分類いたしておりますが、防衛庁所管法令についての報告ということで、なお引き続いて自衛隊行動と他省庁所管法令との関連についての研究をするということで、中間報告という形で主として第一分類に関するものについて御報告させていただいたわけでございます。  なお、今回の報告内容は、いわゆる第二分類、他省庁の所管する法令自衛隊行動に関するものということで、これについての取りまとめがおおむね完了したということで御報告させていただくということで、報告の性格そのものについては違いはないと私は思いますが、いずれにいたしましても、五十六年と今回の報告をあわせまして、防衛庁が主体となってと申しますか、防衛庁自身が主体的に研究を進め得る分野については報告がおおむね完了いたしたと考えております。
  220. 吉田之久

    ○吉田委員 そういたしますと、今回の報告にあえて中間報告という表現をとっておられないということは、第一分類に対するさきの中間報告と今度の第二分類に対する研究報告と、それをまとめて、防衛庁としては所管のなし得る研究報告をここで完了したと受け取ってよいのかどうか。
  221. 西廣整輝

    西廣説明員 今回あるいは前回の御報告において問題点として取り上げました事項について今後研究することは進めていくわけでございますが、一応、問題点の洗い出しと申しますか摘出という点につきましてはおおむね終了いたしたと考えております。
  222. 吉田之久

    ○吉田委員 そうすると、第一分類、第二分類にわたる問題点の洗い出しは終わった、今後、この種の報告というのはこの時限ではないわけでございますね。だといたしましたら、ここから先、いわゆる第一分類に係る問題点あるいは第二分類に係る問題点の具体的な法制化の手段、方法等についてお伺いをせざるを得ないと思うのです。  まず初めに、この間の時間が大変かかり過ぎているということでございます。昭和五十三年九月二十一日、「防衛庁における有事法制研究について」という見解が最初に出されております。これは、ここにもいらっしゃいますけれども、三原前防衛庁長官の指示によって五十二年の八月に内閣総理大臣の承認のもとに研究を開始したものである、こうなっておるわけでございます。だといたしますと、この五十二年ないし五十三年から中間報告をなさる五十六年までに優に三年間の歳月がたっております。しかも、今度出てまいりました第二分類の研究報告、それの間にまた三年間の期限がたっておる。三年周期説と申しますか、この種の問題は三年かからないと答えらしきもの、答えとは言えないと思うのでありますけれども、何か形を整える報告さえもできないのかという、私たちにしては大変時間がかかり過ぎているという点を指摘せざるを得ないわけであります。  それと同時に、五十三年の九月二十一日の見解によりますと、いろいろな「問題点整理が今回の研究の目的であり、近い将来に国会提出を予定した立法の準備ではない。」こう明確に表現されているわけでございます。それから、それを受けて、「防衛庁以外の省庁等の所管にかかわる検討事項も多いので、相当長期に及ぶ広範かつ詳細な検討を必要とするものである。」こう述べておられるわけなんです。確かに、大変多元的な各省庁とのすり合わせが必要であることは認めます。しかし、こんなに長い歳月がかからなければこの程度の研究報告もできないものかという点が一つでありますし、それの一つの弁解と申すべきでありましょうか、「幸い、現在の我が国をめぐる国際情勢は、早急に有事の際の法制上の具体的措置を必要とするような緊迫した状況にはなく、」これは五十三年の見解でありますけれども、そういう表現をとっておられるわけでございます。だとするならば、前回になされた中間報告、今回の報告、それは問題点は出した、これから先は別に焦ってどうしようと考えるわけでもないという程度のものなのか。だとするならば、今までせっかく五十二、三年に指示されたもとになされるべき研究であるから、何もやっていないということではないという程度の一つの弁解の手段としてお出しになったような感じさえするわけでございます。  伺いたい点は、この間、大変時間が要したことを遺憾に思いますけれども、それはそれとして、ここから先に、具体的にどの法律はどうするとか、どういう特別措置をとろうとするのか、どういう政令だけは決めておこうとするのか、この辺の順序、プロセスがはっきりしませんと、報告された意味が全然出てこないと思うわけなんでございます。その辺を御答弁いただきたいと思います。
  223. 西廣整輝

    西廣説明員 お答えいたします。  現在、今先生が御指摘になりましたように、今回の作業、研究そのものは立法を目的としたものではなくて問題点の洗い出し、整理が目的でございまして、したがって、今後の立法についてどう考えるかという御質問のように受け取ったわけでございますが、私どもといたしましては、そういった問題点を洗い出しまして、あとは有事に際してしかるべき措置が遅滞なくとられることが望ましいという期待は当然持っております。  ただ、どういう形でそれを満たすかということになりますと、いろいろな方法もあろうと思いますし、また、それをどういう時期にどういう形でということになると、極めて高度な政治的な判断も要する問題もあろうかと思いますので、それらにつきましては、今後また国会の御審議なり、あるいは世論といったようなものも踏まえてそれらが満たされることを期待いたしておるわけでございます。
  224. 吉田之久

    ○吉田委員 先ほど橋本委員の質問に答えられて長官は、この報告問題点を列挙したものである、これを契機に各党あるいは各機関の論議を煩わしたい、こういう御説明をなさっております。それはそれで理解できる面もあるわけでございますけれども、しかし、我々の側から申しますと、やはり具体的な法律案が出てこないと、それに焦点を絞って論議するということは実際上は不可能でありまして、問題があったからついでに各党、党内でいろいろ研究しようかとか、学者の検討を煩わそうかというだけでは問題は結論を得ることができないと思うのですね。そういう点で、今後どうするか、これは長官の確たるお考え方が出てこないと何か中途半端なものに終わるのではないかというふうな気がしてならないわけでございます。  第二番目の質問といたしましては、今回の報告では、第二分類については道路法海岸法建築基準法火薬類の運搬に関する総理府令、医療法埋葬等に関する法律、会計法などに例外規定を設ければ自衛隊有事に際して十分に行動できることになる、こうおっしゃつているわけでございますけれども、例外規定さえ設ければいざ有事のときには完全に自衛隊行動に支障は来さないという万全の自信はあるのでございますか。
  225. 西廣整輝

    西廣説明員 たびたびお答えして恐縮でございますが、今回御報告したものは、現在各省庁がそれぞれの行政目的に従ってつくっておられる法令自衛隊行動に関連する部分について御報告申し上げたわけでございますが、それらの点につきましては、我々が鋭意作業した結果によりますと、今回の御報告で挙げました幾つかの点、それらについて特例措置なりそういったものが設けられれば、少なくとも他省庁の法令との関係自衛隊が円滑に有事行動する際に支障が起きないということを確認いたしたわけでございます。
  226. 吉田之久

    ○吉田委員 例えば、いろいろな点で例外規定も設けなければならないとおっしゃっておりますけれども道路法について具体的に例外規定はどのような点についてどういう内容の条文を盛ればいいのか、何かその辺のところくらいまではお考えになっていないのですか。
  227. 西廣整輝

    西廣説明員 先ほど来申し上げますように、この研究問題点整理ということを目的としておりますので、例外規定がどのような条文になるか、いわゆる条文そのものについての検討はいたしておらないわけでございますし、またそういった条文をおつくりになるのは所管省庁そのものでございますので、私どもがお答えする立場にないわけでございますが、いずれにいたしましても、自衛隊有事行動する際に、道路が損傷しておる、そういったものを応急的に修理といいますか、修築をして通行するといったような規定が従来のような非常に時間のかかる手続をとらずにでき得るような例外規定を設けたいというように考えておるわけであります。
  228. 吉田之久

    ○吉田委員 有事の際になればそれは国民の側からも最大限協力が自然に出てくるものだとは思いますけれども、しかし、法制考えますと、部隊が移動する場合には一々信号ごとにとまっているわけにはいかないし、右折れ不可だというから全然曲がらないで迂回するというわけにはまいらないと思うのでございます。これについてはもちろん天皇や皇室がお通りになる場合あるいは総理などがお通りになる場合にはいろいろ特別の措置をいたしておりますが、あるいは緊急自動車の場合もそうでありますけれども、それと同じような扱いで大部隊が通り得るというふうな解釈でございますか、まず一点。
  229. 西廣整輝

    西廣説明員 道路等を運行する場合の緊急性を要する場合には、緊急自動車なりそういった指定を受けることによって自衛隊部隊も同様の措置をとり得るということで、現行法令のまま、その運用で可能であるというふうに考えております。したがいまして、道路法上の問題点としましては、先ほど申したように、何らかの形で道路が損壊をしておるといったようなときに、現状でございますと道路管理者の許可なり責任ある者が直さなければいけないというものを自分で応急修理をして通るというようなことはなかなか困難であるので、その点についての特例措置が欲しいということでございます。
  230. 吉田之久

    ○吉田委員 そういう応急補修に対する特例措置が欲しいだけでは話にならぬわけでありまして、それを今後、どういう順序、段階を経てきちんと政令ならば政令で設けるとかあるいは特別な措置なら措置の中に含まれるものという了解をつけるとか、何かそういう詰めが行われないとどうにもならないんじゃないですか。
  231. 西廣整輝

    西廣説明員 どうも繰り返すようになって恐縮でございますが、現行法のままでございますとそういった応急的な措置ができないという点が問題であるということが今回の作業において私どもとそれからそういう道路法を所管しております省庁との間で合意ができた、したがって、仮に有事自衛隊の円滑な行動を確保するためには、その点について何らかの措置が必要であるという点についてまでは合意ができたということでございまして、これについて今後どういう形の措置をとるか、立法措置等をとるかどうかということについては今後の問題であるということでございます。
  232. 吉田之久

    ○吉田委員 長官にお伺いいたしますけれども、今お聞きのとおりでありまして、何らかの措置をとらなければならないという点では合意に達した、それはわかります。しかし、そこでとまったのでは何らかの措置はできないわけでございますね。この辺を今後いろいろと具体的に詰めて法制化したりあるいは政令をつくったりする、その作業の主体はやはり防衛庁がなられるわけでございますか、それが一点。  それから、私ども常識的に考えまして、部隊を移動する場合に道路だけを移動するとは思えません。私有地である田畑等を通過していかなければならない。この辺については現行法で一切問題はないのかどうか、あるとするならば、それが第一分類に入るのか第二分類に入るのか第三分類に入るのかは別として、やはりきちんとフォローしていかなければならない問題ではないかと思うのですが、いかがですか。
  233. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 私から基本的な考え方をまず申し述べさせていただきます。  今御指摘のありましたとおり、吉田さんから見ると、このようなまとめ方で何でこんなに時間がかかったのかというくらいなかなか防衛に関する問題は論議があるわけですね、外に出る出ないは別として。しかし、私は、この問題につきましては早くやらなければならぬ、問題点だけは早急にしなければならぬ、そういうふうなことから、国会でも問題点だけは洗い直そうということで指示をしたわけです。各省庁もどこに問題があるかという認識、これを持ってもらわなければならぬということだったのですが、各省庁ともその点についてはよく御理解をいただいてこういうふうになったと思うのです。  今後の段取りですが、先ほど来申し上げましたとおり、国民有事法制に対する今までの経過等もいろいろございまするので、この問題点をいろいろの場で論議してもらう。どこが問題だ、そういう機会を多くすることによって国民理解を得る、その上で、とるべき手段はとっていく、こういう格好でいくべきじゃないかと思うのです。今の段階では、これらの一応まとめ上げたものについて国会を初め、各方面で御論議をいただく、その手だてをどうすべきかというふうに考えております。
  234. 吉田之久

    ○吉田委員 大変慎重に取りかかろうとなさっている姿勢はよくわかるのですが、しかし、私どもから考えましたらちょっと悠長に考え過ぎていらっしゃるのじゃないか。それほど急ぐ問題がなければ有事法制などというのはこの際何もお考えにならなくてもいいと思うのです。考えなければならないというのは、それは差し迫って今すぐそういう有事が起こるとは思えないけれども、しかし、五年、十年の間に国際情勢がどんなに変化するかもしれない、万が一のときにはそれに対処しなければならない、そのときに間に合わないようなことであるならば、それはもうせっかくの今日までの長官を中心としての防衛に対する努力がことごとく水泡に帰してしまうということにもなると思うわけでございまして、どうもその辺は、問題を提起した、論議をしろと言ったって、政党も忙しいわけでありまして、議員も忙しいわけでありまして、別に法律案も出てこないようなものならば後ででも論議しようか、国民の側もそうだと思うのですね。何か避けて通ろうとしているのか、お茶を濁して通ろうとなさっておるのか。その辺の緊迫感というのは出てこないし、緊迫感が必要でないとおっしゃるならばそれでいいんでございますよ。その辺もう少し国民にわかるように、今の時点でこの報告をせざるを得ない実情は何なのか。
  235. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 何が問題点であるか、それを確かめ合っただけで相当な進歩だと私は思うのです。何が問題で、どういうふうにしなければならぬかという合意が国民の間にできるということになると、それだけでも非常に大きな前進だと思うのです。ですから、決してこれは悠長にしているのではなしに、要するに国民理解協力を得た形でつくるためにはどうしたらいいか、そういう方法論として今の段階では問題点を明らかにし、御勉強するのにいろいろ時間があるとかないとかあるでしょうけれども、ぜひ御勉強をいただくように、また我々は、新聞報道の方にもそれらについてはいろいろと御協力を依頼するつもりでございます。
  236. 吉田之久

    ○吉田委員 何らかの前進であることは私どもも認めます。しかしこの程度の結論を導き出すに三年も六年も必要だろうか、一体何人の方々がお考えになったのだろうか。多少法律に常識ある人たちが考えれば、三日でできるとは言いませんけれども、半年や一年あれば大体この程度のものは出す気ならば出せると思うのですね。問題はここから先が大事なのでございますね。私どもがなぜこのことをくどく申し上げるかと言いますと、仄聞しているわけでもありませんけれども、何となく伝わってまいります話では、防衛庁の内局には、有事法制研究だけにしておいて、いざとなったときに緊急に成立させればそれでよいのだという考え方があるやに聞くわけなんですね。また、そういう事態が起こらなければこんなものは一挙に法制化できるわけではないという判断がどこかにあるのじゃないだろうか。もしもそうだとすれば大変国会軽視だ、シビリアンコントロールを崩そうとする最大の元凶はそういう態度だと私は思うのです。治にいて乱を忘れずと申しますか、今すぐに差し迫った問題ではないけれども、万に一つそういう事態があるやもしれない。だとするならばこの平静なときに、いろいろと反論もあるだろうけれども、しかし条理を尽くして説明して、そして一つずつでも法律を整えていこう、こういう努力をなさらないと我が国防衛が最終的には大変危険なものになりはしないかという懸念を感ずるからなんでございます。その点長官はいかがでございますか。
  237. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 御指摘の点は防衛庁として持っておりません。ただ先ほど来申し上げたとおり、有事法制というものに対するこの国会で反応等をずっと見ておりますと、私どもとして、ある意味で本当に国民理解協力を得る、そういう手段を一歩一歩積み重ねていく必要があるという感じが非常にいたしますので、また、そういうことによって国民の人たちが理解協力をするという気持ちになってもらえれば、これはおのずからそこから道が開けてくる、こう思いますので、その努力を懸命にやろう、三年も四年も何をしておったという御指摘につきましては理由がいろいろあったわけでございますけれども、それはそれといたしまして、私は現在そう考えております。
  238. 吉田之久

    ○吉田委員 それから、これも先ほど橋本委員の御質問の中で御答弁がありましたけれども、問題の第三分類ですね。防衛庁としては、これは既にもう我々の権限の及ばないところだ、だから我々の仕事は第二分類までだ、こうおっしゃっているわけでございますけれども、しかし国民の側から見ましたら、この第三分類に係る広範な問題点、この辺もきちんとしないと防衛が完結しないと思うのですね。防衛の一番主たる責任をお持ちになるのは防衛庁長官でありますから、この第三分類については、いま直ちに防衛庁長官の権限ではないけれども、しかし閣議で決定してもらって新しい第三分類についての検討は急がなければならないとか、何かそういうものが伴ってこないと責任逃れに終わってしまっているというふうな感じがするわけなんでございます。  ちなみに、先ほども灯火管制の話が出ましたけれども、今日これほど高度に発達した社会において、果たして昔のような灯火管制というのはできるのかどうか。家やビルの灯は消したとしても高速道路の照明を消したのでは通行に渋滞を来しますし、消したとしても車自身が持っているライトを消すわけにいかないと思います。そういう全く条件が変わった近代都市を含むこれからの防衛というもの、それが第三分類に係る問題は何であるか、この辺はかなり真剣に考えていただかないといかぬと思うのでございますね。その辺の問題提起もしないで、いざというときにどうなさろうとするのですか。
  239. 西廣整輝

    西廣説明員 先生御指摘のとおり、この第三分類にかかわる部分というのは非常に重要な問題であると私ども認識をいたしております。したがいまして、五十六年の第一次の中間報告におきましてつとに御報告申し上げたように、この分野の仕事は防衛庁の権限を超えるような問題でございますので、より広い立場でこれについての御研究を願いたいということで御提案申し上げているわけでございまして、我々としてもそのような場が早くつくられてそういった作業が行われることを強く期待をしておるわけでございます。  なお、私どもといたしましても、当然のことながら、自衛隊行動等に関連し、あるいは有事のそういった非常事態の状況というものを想定しながら、できるだけ自衛隊側から見た問題点の提起なりそういったものについて積極的に参加をしてまいりたいというように考えておる次第でございます。
  240. 吉田之久

    ○吉田委員 ほとんど時間もなくなりましたので、白書を読ましていただいて気づいた点を一点だけ御質問申し上げたいと思うのでございますが、それはシーレーンの防衛についてでございます。  このシーレーン問題というのは、やはり我が国の今後の防衛問題の中での一つの新しい課題だと思うのですね。ところが、GNPの一%の枠内で我が国防衛費を賄っていこうとなさった三木内閣時代には、このシーレーン防衛という問題はまだクローズアップしてなかったと思うのでございます。あるいは五十一年、坂田長官時代に「防衛計画大綱」がつくられまして、いまそれを達成すべく努力をなさっているわけでございますけれども、この時点でも明確なシーレーン防衛という概念はなかったと思うわけでございます。だとするならば、その新しい課題を抱えてこれから進んでいく我が国防衛、それを一%以内でとどめようとするならば、どこか何かを削らなければ総合的につじつまが合わないのではないかと私ども考えるわけでございます。  先ほど来各委員指摘もありまして、この一%の問題はかなりぎりぎりのところまで来ておることは明白であります。政府が依然として一%を堅持するとおっしゃることは立派だと思いますし、私どももそれにこしたことはないと思うのでございますけれども、しかし実際問題を考えて、こういう新しい課題を抱えてどのようになさろうとするのか、それが五十一年当時につくられた「防衛計画大綱」の枠の中ではまり込んでいくものなのかどうか、この辺は国民は大変理解に苦しむと申しますか、一部懸念を持つ一つの問題の始まりだと思うわけでございます。長官の御見解をお伺いいたしたいと思います。
  241. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 シーレーンの問題につきましては、ことしの予算委員会等でも、また衆議院のみならず参議院でも特にシーレーンの問題が出まして、その際に、まずシーレーンの概念というもの、これを明確にさせて、そしてそのシーレーンの概念に基づいて議論をすることが適当ではないかということを申し上げ、ここにおられます上田さんもそれならそれでということで御論議を進めた経過がございます。そういうことからいきますと、シーレーン防衛というのは今までの「防衛計画大綱」をつくる前、あるいはつくってからもその思想はあるわけです。海上交通の安全を確保するということでございます。それと同時に、別表では艦船を幾ら、航空機を幾ら、そういうものができれば海上交通の安全確保、いわゆるシーレーン防衛は相当程度できるだろうという説明をしてきているわけでございます。したがいまして、シーレーン防衛ができたからGNPがどうのこうのというのは私ども立場からすると必ずしも直接的に関係はない。  ただ、防衛費というものにつきましては、先ほど来申し上げているとおり、我が国防衛政策に基づいて継続的にかつ計画的に、着実に行っていかなければならない、一つはそういう観点からいく。もう一つは、各委員皆さんからお話のあったとおり人勧とかいろいろ問題が出てくる、そこでどうなるのだという御議論があるわけでございます。これは先ほど来申し上げたとおり、人勧の実施がどの程度になるのか、GNPがどうなるのか、非常に苦しい選択を強いられることは事実だけれども、六十年度の本予算を決めるときにぎりぎり問題になることがあるかもしれぬということは申し上げてきておるわけでございますけれども、三木内閣の閣議決定は厳としてあるわけですから、これがある限りはこれを守っていく、そういう姿勢は変わらないということを申し上げているわけでございます。
  242. 吉田之久

    ○吉田委員 以上で私の質問は終わらせていただきます。
  243. 塩川正十郎

    ○塩川委員長 東中光雄君。
  244. 東中光雄

    東中委員 防衛庁長官訪米並びに訪欧報告に関しまして、NATO西独の軍関係者と軍事情勢やあるいはNATO防衛努力我が国防衛政策等について率直な意見交換を行ってきた、向こう側も日本防衛について非常に関心を払っておるし、我が国との間で忌憚のない意見交換を行うことを重視しているという御報告をいただきましたが、新聞報道によりますと、防衛庁長官は例えばNATOや西ドイツと今後対ソ情報等の交換ということについて合意をされたようにも報道されているわけですけれども、それはどういう方向で、どういう目的で、あるいはどういう取り決めに基づいてそういう合意をされたのか。交換向こうも非常に希望しておる、交換をしてきたと報告されておりますので、その点についてお伺いをしたいと思います。
  245. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 これは、向こうの方とこちらの方で情報交換について合意をしたなどという大げさなものではないのです。そういう話し合いをしたということですから、よくそこら辺は誤解のないようにお願いしたいと思います。  我が国立場は、先ほど申し上げましたとおり、日米安保基軸として憲法の枠の中で自分の国でできる最大限努力をしていく、「防衛計画大綱」の水準達成する、そのために継続的、計画的に事を進めていく、これ以外に我が国としてはやる道がないのだ、それが我が国の自由と平和を守るゆえんであると同時に、大きく言うとそのことが世界の平和と安全に寄与するものと思う、こういう私の所信を申し述べたのです。その前に西ドイツやフランスの国防大臣の方から、いわゆる自由主義陣営、西側の強力な一員としていろいろ話をしようじゃないかという期待感がありましたから、この期待感がいわゆる軍事的なものになってはいかぬということで、平和と自由と民主主義についていろいろ意見交換することは結構だ、だからそういうことは進めていきましょうという話をしたのであります。ですから、オーバーな言い方で何々と合意したという代物ではない、そういう話し合いを率直にした、こういうふうにお受け取りをいただきたいと思います。
  246. 東中光雄

    東中委員 昨年のウィリアムズバーグでの政治声明、中曽根さん自身が声明づくりに参画されたという例の「我々サミット参加国の安全は不可分であり、グローバルな観点から取り組まなければならない。」「いかなる攻撃をも抑止し、いかなる脅威にも対抗し、」「十分な軍事力を維持する。」というあの政治声明に日本も参加しているわけですね。だからそれに基づいて、サミット加盟国の安全は不可分であっていかなる脅威にも対抗する、そのためにいろいろな意見交換をする。防衛庁長官がこれは初めてだと思うのです、わざわざヨーロッパ各国の軍首脳部と会談された。だからその後もそういう意見交換はやっていくということになるような、合意ということではないまでもそういう感じがするのですけれども、そういう場合に、新聞報道によると、例えば西ドイツの国防大臣はソ連の政権のことについても情報なり意見をいろいろ言うたと報道されておりますが、今後そういう対ソ情報の交換というふうなことが意見交換という形でやられるとすれば、それは例えばこの間の大韓航空機事件なんかのときに情報を日本アメリカへ出しましたけれども、ああいう情報交換も含めてやられることになるのかならぬのか、どの程度の意見交換という方向を進めようとしておられるのかということについてお聞きしたのです。
  247. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 少なくとも確かに言えることは、ソ連の情報を主体として情報交換をしようなどという言葉は一つもございません。要するに、NATO諸国あるいはフランスがどういうふうな考え方を持っているか、平和と自由を守るためにお互いにためになると思われるようなことはグローバルに話をしようじゃないかということでございまして、特定の国を名指ししてそのための情報交換などということは言っておりません。また、そういうことを私が言うはずがございませんから、御信用いただきたいと思います。
  248. 東中光雄

    東中委員 先ほどのこの報告によりましても、軍事情勢について意見交換があったという報告がありましたね。軍事情勢ということになったら、NATO軍事情勢だったら、新聞に報道されているようなことが当然出てくるのだろうと私たちは思いますが、その点は全然ないとおっしゃったですけれども、そうなんですか。
  249. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 それは、私どもが話をしたときにソ連の脅威の問題が出たことは先ほど申し上げたとおり。ただし、情報交換というのはこれからの問題ですから、これからの問題の中にソ連と特定して物を言っている、そういうことはないということを申し上げている。
  250. 東中光雄

    東中委員 十月六日の毎日新聞ですが、キャリントンNATO事務総長日本NATOがペルシャ湾の有事対策で非公式に事務レベル協議を重ねてきたという趣旨のことを言うたという報道がされておるわけですが、そういう事実はあるのですか。
  251. 古川清

    ○古川説明員 お答え申し上げます。  その新聞報道は、私も確かに拝見したことはございますけれども、そのような事実は全く承知しておりません。
  252. 東中光雄

    東中委員 NATOの事務総長は、「米国がイラン・イラク戦争で(直接)介入を余儀なくされた場合、日本も政治的にこれを支持することが望まれている」という趣旨のことを長官に言ったというような報道もあるわけでありますが、これはどういう内容のことなんでしょうか。
  253. 古川清

    ○古川説明員 お答え申し上げます。  キャリントンNATO事務総長でございますけれども、この方が栗原長官お話しになったときに、こういうことをちょっと申されたわけでございます。ペルシャ湾で仮に何かの情勢が起こったとき、アメリカは恐らく何かの措置をとるであろう、そういうときに利益を受けるのは、アメリカというよりはむしろヨーロッパとか日本の方が結果的に利益を受けるのではないか、そういったことについて米国の中に若干のいら立ちがあることを自分は感じておるということをおっしゃった後に、今先生が申されたようなことを、正確に申し上げますと、そういうことを頭の中にやはり私どもは入れておかなければいけない、こういうことをキャリントン卿が長官におっしゃられたことはございます。
  254. 東中光雄

    東中委員 だから、それに対して栗原長官はどういうふうにお答えになったのか。私は、このことについて聞きたいのは、ペルシャ湾有事の場合に日本が三海峡封鎖等の防衛分担をやるということを要請するような、八〇年一月に発表されたブラウン国防報告ですね。友好国と協力して三海峡を封鎖するという国防報告の明確に書かれたものがありましたね。そういうこととの関係で聞いているわけなんです。そういうこととは全く関係ないということなのか。そういうことについて、あるいは日本にも大いに関係あるんだからという趣旨のことが出たのではないか、もしそうだとすれば、防衛庁長官としてはどういう対応をされたのかということを聞いておる次第であります。
  255. 古川清

    ○古川説明員 これは長官の方から詳しくお答えがあるかと存じますけれどもNATOの事務総長のキャリントン卿が申されたのは、全く問わず語りに向こうの方からこのことを申されたわけでありまして、その後長官の方からは、日本としては防衛問題についてはいろいろ最善を尽くしておるということを申されて、その会談は終わっておるわけでございます。
  256. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 私は、自分が筆記しておったわけではございませんし、また一々個々の問題について覚えているというほど頭がよくないものですからあれですが、感じといたしましてはこういうことをキャリントンさんが言ったと思うのですよ。アメリカにはアメリカのいら立ちがある、NATOの方にしても日本にしてもアメリカの苦労というものを承知してもらいたい、一つ例をとれば、ペルシャ湾等の問題についてもここの安全を確保するということはアメリカよりもむしろNATO、ヨーロッパ並びに日本の方に関係があるじゃないか、だからそういう意味合いで、アメリカの方からするとアメリカの方でいろいろ同盟国に対していら立ちがある、こういうことを考えて、自分としてはアメリカ同盟国との間をトラブルのないようにしていきたい、こういう意味発言の一環としてあったと思うのです。  それに対して私は、それは大変御苦労さまです、やはりアメリカNATO日本との間にいろいろトラブルが起きるのはよくないから、特に日本のことは日本でやりますけれどもNATOについてはあなたの方でいろいろやられることは結構じゃないでしょうか、こういうことで話をしたわけでございます。しかし、日本としては日本防衛力について憲法の枠の中で最大の努力をする、それ以外にできないのだ、だからこの点についてはよくアメリカ理解をしてもらうのだ、そういう趣旨の話をしたわけです。
  257. 東中光雄

    東中委員 時間がありませんので次に移りますが、ワインバーガー長官との話で、継戦能力の問題について、これを非常に重要だ、向上させようという発言があったようでございますけれども、きょう中間報告された有事立法体制といいますか、戦時体制というか、そういう体制をつくることも継戦能力を高めるということに含まれるのでしょうか、どうなんでしょう。防衛庁はどうお考えですか。
  258. 矢崎新二

    ○矢崎説明員 有事法制の問題は有事におきます自衛隊行動に関しますもろもろの問題点検討してきたという仕事でございます。したがいまして、私どもが言っております継戦能力ということとはちょっとまた別の分野の問題であるというふうに理解をしておるわけでございます。  継戦能力の問題と申しますのは、有事におきまして自衛隊が戦いを続ける能力がどのぐらいあるかということが中心の課題でございますから、そういう意味で申し上げますと、その中心になるのは何といっても弾薬の備蓄が多いことが必要でありますし、それからまた抗堪性を向上させることが必要だという問題でございますので、その辺はちょっと別の問題かと思っております。
  259. 東中光雄

    東中委員 有事体制、戦時体制確立というのも自衛隊の円滑なる行動を保障するのだから戦争を継続していく能力を高めるということのように思うのですけれども、そうでないというならそれは結構です。  今度の第二次中間報告ですけれども、先ほど来論議をされておりますが、検討した事項問題点概要を言っただけだ、こう言われるのですけれども、この中身を見ますと、そうではないと私は思うのです。例えば「部隊の移動、輸送について」、「陸上移動等」という条項では、「部隊自らが応急補修を行うことも含めて、損傷した道路等を滞りなく通行できるよう「道路法」に関して特例措置が必要である」。だから、今のままの道路法ではそれができないからぐあいが悪い、こう言っておるのでしょう。そして次の、例えば有事に際しての自衛隊による土地使用等については、海岸法、河川法、森林法、自然公園法等に関して特例措置が必要であると考えるというのは、それは必要があるということでしょう。このままの法律じゃぐあいが悪い、だから変えろ、こう言っておるのでしょう。だからそういう法律なり、後の方へ行くと総理府令やらいろいろなものが出てくるようですが、危険物船舶運送及び貯蔵規則、これは規則ですから法律ではありませんけれども、とにかくここで出されているのは法律、規則、総理府令、そういうものを有事立法としてはこのままでは困る、変えるべき点はここだというふうに提起をしているのではないんですか。これが政府見解だとは言っていませんよ、防衛庁有事研究の結果ですから。防衛庁としてはそういう見解になったということを報告したのではないんですか。
  260. 西廣整輝

    西廣説明員 たびたびお答え申し上げておると思いますが、今回の報告は、各省庁が所管されておる各種の法令につきましてそのまま適用した場合に、自衛隊有事行動する際に何らかの支障を及ぼすものがあるかないか、そういったような点を中心に検討したわけでございますが、今回特例措置が必要であるというように取り上げたものにつきましては、現行法のままでございますと自衛隊有事行動する際に何らかの形で障害になるということで、特例措置が必要であろうというような形で指摘をしておるものであります。例えば森林法とか自然公園法あるいは建築基準法といったようなものには、災害時に土地使用したりあるいは建築基準法とは別途の応急仮設物等ができるような特例措置がございますけれども、いわゆる有事、緊急時についてはないといったようなことがございますので、そういったものは特例措置が必要であろうという指摘をしておるわけでございます。
  261. 東中光雄

    東中委員 だから法律、命令、規則等、いわゆる法令関係でここで名前を具体的に挙げているものについてはそういう特例措置をとるようにすべきだというのが結論でしょう。だからそれは法を変えなければいけない、あるいは政令を変えなければいけない。どこを変えるかは別ですよ。防衛庁としてはそれは変えてもらわなければ困る、そういう意見を出したんじゃないんですか。どうなんですか。
  262. 西廣整輝

    西廣説明員 表現は違うかもしれませんが、問題がある、所要の特例措置を設ける必要があるということについては私どもが問題指摘をし、その法令を所管しておる省庁もそれについて合意をしておるということでございます。
  263. 東中光雄

    東中委員 それは法令の改正点を提起したということになるわけであって、それでそれを改正したとしたら、改正か改悪か、とんでもないことだと私たちは思っていますよ。思っていますけれども、それをやったらそれを適用する時期は防衛庁考えでいけばいつなんですか。
  264. 西廣整輝

    西廣説明員 この点につきましてもたびたび御答弁申し上げておりますが、基本的には今回の法制研究は、有事すなわち自衛隊法第七十六条によります防衛出動下令時において自衛隊行動する場合にどうかということを研究することを基本にいたしております。ただ、一部につきまして第一次の報告についてもございましたし、今回についても一部指摘している点がございますが、自衛隊の活動につきましてはその準備というものがかなり重要な要素を占めるという点で、ごく特別の部分について、例えば陣地の構築とかそういったものについては防衛出動下令時以前からそのようなことを考える必要があるのではないかというような指摘をいたしております。
  265. 東中光雄

    東中委員 第一次報告の場合は、例えば防衛出動待機命令下令のときからこれを行い得るようにする必要があるということを言っておるのが三点あります。それは土地収用、今度の問題の一つの重要な問題点になっておる。それからもう一つは部隊編成であります。部隊編成は今度は部隊の移動が入っていますからそれは当然入ってくるということになって、結局七十六条じゃなくて七十七条の防衛出動命令が出されることが予測できる段階ということになっているわけですね。その段階まで上げる。要するに有事でない平時における有事立法ということの適用も今考えておるということをおっしゃった。ところがその後ガイドラインが出されて、作戦準備行動に入るというのがその待機命令よりもまだ前だ、日米共同作戦準備段階がまだその前だということが既に答弁されておりますね。そうしたら、陣地構築とか移動とかいうふうなことについて言うならば、侵略があって初めて防衛出動命令が出るわけでしょう。侵略があるかどうかということについて、侵略が予測できるというのは随分主観的なことになるわけです。しかもまだそれの前の段階で準備に入るぞということになって、この有事立法がそういう形で適用されていくということを防衛庁は見解として持っているということになれば、私は非常に憲法体系で有事でもないのに平時における有事体制ということになっていって、これはもう大変なことになるというふうに思うんですが、その点防衛庁長官どうでしょうか。
  266. 西廣整輝

    西廣説明員 先ほども御答弁申し上げたように、今回の法制研究基本的には七十六条自体の場合について研究したものでありますし、大部分のものについて一般的には平時に適用する必要がないもの、七十六条自体にのみ適用するというものが主体になっておるわけでございますが、先ほども申したように準備の重要性といいますか、例えばそれの同じ趣旨でございますが、陣地の構築のための土地使用等につきましては、その特例措置の適用時期について防衛出動の下令前、例えば防衛出動待機命令下令時から適用するといった点も考えてみたらどうだろうかという問題点の提起をいたしております。
  267. 東中光雄

    東中委員 とりわけ非常に重要な問題だと思いますのは、自衛隊法百三条の適用時期を土地収用について早めるという考え方がこの前出されて、今度もまた陣地構築というふうな問題について、平時における有事立法という方向が出されてきておる。これはもう全くそのときの主観的な判断で、侵略のおそれということで逆に侵略戦争がやられていったわけですね。自存自衛のためといって対米宣戦布告をやったわけでしょう、太平洋戦争のとき。日本はこのままいったら、帝国は滅亡のほかなきなり、自存自衛のために決然立って戦うのほかなきなりといって、あれはいったわけですからね。そういう形で戦時体制を先につくっていくという方向がやはりこの中にも出てきている。しかも土地取り上げあるいは河川とか公園とかそういう国民の生活、安全にとって非常に重要な問題に対する強権的な自衛隊優先の体制が平時から出ていくような方向を持っているという点で、私たちはこれは非常に問題だと思っております。  それから同時に、この中で出されております例えば火葬の問題とか病院の問題ですね。日本が戦場になっておるということを前提にしておいて自衛隊だけは大量の死傷者が出るとかということで特別の扱いをするようにという発想なんですね。日本が戦場ということなんでしょう。そうしたら日本国民も大量にいろいろ被害を受けているわけですよ。ところが、それを別にするという考え方がこれに出てくるのですね。だから私は、こういう有事立法の研究体制というのは自衛隊最優先、結局軍事優先、軍国主義的な体制という方向に行く危険を持っていると思いますので、強く反対を申し上げて、時間ですので質問を終わります。
  268. 塩川正十郎

    ○塩川委員長  本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十分散会