運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1984-08-03 第101回国会 衆議院 安全保障特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年八月三日(金曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長代理理事 三原 朝雄君    理事 小渕 恵三君 理事 椎名 素夫君    理事 玉沢徳一郎君 理事 上田  哲君    理事 前川  旦君 理事 渡部 一郎君    理事 吉田 之久君       海部 俊樹君    田名部匡省君       丹羽 雄哉君    増岡 博之君       三塚  博君    天野  等君       左近 正男君    関  晴正君       中川 嘉美君    橋本 文彦君       東中 光雄君  出席国務大臣         外 務 大 臣 安倍晋太郎君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 栗原 祐幸君  出席政府委員         防衛庁参事官  古川  清君         防衛庁参事官  池田 久克君         防衛庁参事官  筒井 良三君         防衛庁長官官房         長       西廣 整輝君         防衛庁防衛局長 矢崎 新二君         防衛庁教育訓練         局長      大高 時男君         防衛庁経理局長 宍倉 宗夫君         防衛庁装備局長 山田 勝久君         防衛施設庁長官 佐々 淳行君         防衛施設庁総務         部長      梅岡  弘君         防衛施設庁施設         部長      千秋  健君         外務政務次官  北川 石松君         外務省北米局長 栗山 尚一君         外務省欧亜局長 西山 健彦君         外務省中近東ア         フリカ局長   波多野敬雄君         外務省条約局長 小和田 恒君         外務省国際連合         局長      山田 中正君         外務省情報調査         局長      岡崎 久彦君  委員外出席者         外務大臣官房外         務参事官    中村 昭一君         特別委員会第三         調査室長    桂  俊夫君     ――――――――――――― 委員の異動 八月三日  辞任         補欠選任   山崎  拓君     田名部匡省君 同日  辞任         補欠選任   田名部匡省君     山崎  拓君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国の安全保障に関する件      ――――◇―――――
  2. 三原朝雄

    三原委員長代理 これより会議を開きます。  塩川委員長病気治療中でございますので、当分の間、委員長の指名によりまして私が委員長の職務を行います。よろしくお願いいたします。  国の安全保障に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上田哲君。
  3. 上田哲

    上田(哲)委員 まず、外務大臣随時協議について伺いたいと思います。  これまでのところ、衆議院沖特とか外務委員会あるいは決算委員会政府事前協議に対する統一見解が示されております。それによると、事前協議発議権日本にはないのだ、これまでの答弁を訂正されたということになります。これは私どもは了承できないところでありますが、これについての議論そのものは水かけ論になることを省いて、もう少し具体的な側面から切り込んでみたいと思います。つまり、核トマホークについて六条による事前協議の申し入れの権限は日本にはない、しかし同時に、四条に基づく随時協議はやっているのだ、これからもやるんだ、さきに三回の随時協議例示を挙げられているわけであります。  そこで伺いたいのでありますが、この四条と六条の関係はどうなるんだ、この問題であります。四条と六条はどういうつながりにあるのか。当然列条でありますから関係があることは言うまでもないのでありますが、これも抽象論でなくて、これまでの政府答弁をひとつ手がかりにしてしっかりした見解を承りたいと思うのであります。具体的には、四十三年三月六日の衆議院外務委員会佐藤総理がこう言っておられる。これから読み上げるその政府答弁が今もそのとおりであるのか、訂正されるのかという点で具体的に伺いたいわけでありますが、佐藤総理は「日米間においては常時随時協議ができるのです。その協議が第六条の協議だ、第四条協議だ、かように分ける筋のものでないこと、これは密接なんです。」こう言っています。同じ日に三木外相は、大平外務大臣中川条約局長等答弁を踏まえて「おそらく大平君も中川条約局長でも、この六条、四条というものを分けて考えないで、」「アメリカだけが常に一方的にイニシアチブをとっているわけではないのです。」「この六条と四条一緒にしてお答えになっておると思いますよ。」こういうふうに答弁をされているのであります。この答弁のとおりでありますか、それとも訂正をされますか。
  4. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 条約上の厳格な解釈についてはまた局長からも答弁させますが、私の理解するところでは、もちろん四条随時協議と六条の事前協議との間に全く関連がないということは言えないと思います。これはやはり安保条約全体の問題として関連はある、こういうふうに理解しておりますが、しかし、六条の協議はいわゆる事前協議そのもの協議であって、四条随時協議というものは承前協議運用であるとか、安保条約運用であるとか、そういうものを含めた一般的な協議である、こういうふうに理解しておりまして、夢前協議対象になるそのもの協議というのは、これはもう六条協議ということに限定される、こういうふうに思います。
  5. 上田哲

    上田(哲)委員 条約局長からでもいいですから、私は抽象的じゃなくて、これまでの政府答弁の具体的な文言についてそのとおりなのかどうか、関連があるのは当たり前のことでありますけれども、こういう立場でこの答弁の字句において訂正されるところがあるのかどうかということを伺っておきます。
  6. 小和田恒

    小和田政府委員 お答えいたします。  今上田委員が御指摘になりました具体的な答弁でございますが、昭和四十三年三月六日の衆議院外務委員会における佐藤内閣総理大臣答弁というのは、委員承知のとおりこういうふうに述べておるわけです。「最近の外務省が言っているのは、非常に論理的で正しいと思います。」ここで「最近の外務省が言っているのは、」というのは従来私どもが今度の国会におきまして答弁している考え方でございますが、その考え方は「非常に論理的で正しいと思います。私は、第四条、第六条、こういうものをやはり区別して考えるべきだ。」日米間において区別して考えるべきだということを答弁いたしまして、その後今委員が御指摘になった表現がございます。それで最後のところで「いまの外務省解釈のほうがよほど論理的じゃございませんか。」云々と、こういうことで終わっているわけでございます。  これは当時の佐藤内閣総理大臣答弁でございますので、私自身がこれについていろいろ解釈を加えるべきではないかと思いますけれども総理大臣が申しておられることを全体として読みますると、要するにこの外務省が述べておる見解、私どもが今度の国会で申し上げておりますような見解が論理的で正しい、こういう判断を示されて、第四条、第六条、こういうものは区別して考えるべきだ、こういうことを言っているものというふうに理解しておりますし、同じ三月六日のこの後三木外務大臣それから当時の条約局長等答弁もございますけれども、いずれもそのラインで一貫しておる、最後高辻政府委員がこの問題を取りまとめて政府統一的な考え方を示しておるということは従来からお答えしているとおりでございます。
  7. 上田哲

    上田(哲)委員 そういう答弁は困るんだ。貴重な時間ですから、時間を延ばさないで、同じことを繰り返して読んでもらって困るのです。私が聞いていることにきちっと答えてもらいたいのは、佐藤さんが言っているのは論理矛盾なんですよ、頭の方を読むと。四条、六条を区別せよ、その次にそのまま続けて、これは分ける筋合いのものではない、これは密接なんですと言っているのです。これは言っていることは白黒一緒にしている話なんだから、これはわからぬ。あなたはどっちをとるのか。区別すべきだというのか、区別すべきでないととるのか。しかも三木さんは同じ日に、一緒に考えるべきだと条約局長大平さんもそう言っていると言っている。だから私が聞いているのは、別なんだというのか、一致していると言っているんだから、どっちなのか、そこのところをきちっと答えてもらいたい。外務省の言っていることが正しいかどうかなんてことを貴重な時間で言ってもらっては困る。
  8. 小和田恒

    小和田政府委員 私が御答弁申し上げました趣旨が十分明確でなかったといたしますと、もう一度繰り返して申し上げたいと思いますが、結論的に申し上げれば、佐藤総理大臣は第四条、第六条というものは法律的には二つの別なものであるということを答弁しておるというふうに理解しております。その後、委員が御指摘になった三木外務大臣答弁につきましては、ここで外務大臣答弁しておりますのは、従来の大平答弁あるいは中川答弁というものと今示された政府見解とはどういう関係にあるのかという質問に対して、これは六条の問題と四条の問題とを一緒にして答弁をしておるのでこういう答弁になっておるのだと思う、結論的に言えば六条は条約で認められた一つ制度であって、それは事前協議という厳格な制度運用の問題としては、制度そのものの問題としては六条によるのである、ただし四条によって日米安保条約実施に関しては随時日米両国協議をすることができる、そういうことによって日本側からアメリカに対して条約実施について協議ができるということを言っているというふうに考えております。
  9. 上田哲

    上田(哲)委員 はっきり答えてもらわぬと困るのですよ。じゃ佐藤さんの答弁だけきちっと言いますよ。そうすると分けて考えるべきだという方をとるのですか。では佐藤さんが同じ言葉の中で、六条だ四条だと分ける筋のものではない、これは密接なんだと言っているのは間違いなんですね。すかっと答えてください、ぐずぐず言わないで。
  10. 小和田恒

    小和田政府委員 先ほど来申し上げておりますように、佐藤総理大臣は冒頭において、四条、六条、こういうものはやはり区別して考えるべきだ、こういうことを言っておられるわけです。後のことが何を意味するのか必ずしも明確ではございませんが、結論としては政府が述べておることが正しい解釈である、こういう考え方でございますので、その結論趣旨を具体的に申し上げれれば、四条と六条を区別する考え方をとっておられるというふうに解釈しております。
  11. 上田哲

    上田(哲)委員 区別するのですね。そうすると、三木さんが言っている四条と六条は一緒だという考え方は間違いなんですね。これは間違いなんですね。それを今日の統一見解としてははっきりされるわけですね。外務省が正しいかなんということを言うのじゃなくて。
  12. 小和田恒

    小和田政府委員 この点についても先ほどお答えいたしましたが、三木外務大臣は、四条と六条と別なものであるという前提に立ちまして、大平答弁中川答弁はその二つ事態一緒にして議論をしておるという答弁をしておるわけでございまして、三木外相四条と六条とは別な事態であるということを述べておられると思います。
  13. 上田哲

    上田(哲)委員 質問の角度を変えましょう。外務省が言っていることがどんなに正しいかなんということを、貴重な時間で何度も言わないでください。何が正しいかということを議論しているのですから。つまり、四条、六条は別な条文であることはわかっているのですよ。  それでは、その四条、六条はお互いに相補完するものとして規定されると言っているのかどうか。
  14. 小和田恒

    小和田政府委員 制度として申し上げますと、委員が御承知のとおり、第六条というのは、第六条の実施に関する交換公文において、あそこに規定しているような三つの事態についてアメリカ側事前協議を申し込むということを制度上の問題として決めているわけでございます。  第四条は、従来から政府お答えしておりますように、非常に一般的な問題でございまして、条約実施に関する問題、それ以外もございますけれども条約実施に関する問題について締約国随時協議をすることができるという、非常に広い条約運用についての意見交換の場の可能性というものを規定しているわけでございます。  したがいまして、制度としては二つのものは別でございますし、相補完する関係という関係に立つようなものではございませんけれども、具体的な状況におきまして、事前協議という制度の一般的な運用の問題ということが第四条のもとにおいて行い得る問題であるということは、政府が従来申し上げているということでございます。
  15. 上田哲

    上田(哲)委員 抽象的な言い回しを聞いているのじゃありませんから、もう一遍整理しておきます。さまざまな委員会でずうっとこの問題を追及してきた一つの節として私は伺っているのですから、具体的に、自主的にお答えをいただきたいのです。  問題となっている政府のこれまでの事前協議答弁は、四十三年三月六日の高辻答弁から変わったのだという答弁が既にある。その同じ三月六日に総理大臣外務大臣が述べている言葉がそれでは今日訂正されるのか、そこから変わったのかということを具体的に聞いているのです。そこであなたの答弁を整理すると、そのときの佐藤総理大臣答弁は、四条、六条は区別すべきである、外務大臣一緒でなければならない、総理大臣もこれは密接なんだと言っている。そうすると、二つのニュアンスがあるわけだが、これは密接なんだ、一緒のものだというのじゃなくて、区別すべきものだというふうに政府は今日統一見解をとられる、こういうふうになるわけですね。  もう一つは、ではこれはお互いに相補完する条項であるのかと言えば、法文の建前はそうではないが、関連しないわけではない、こういう言い方になる。そういうことになりますが、それでいいですか。すきっとした答えでやってくださいよ。
  16. 小和田恒

    小和田政府委員 制度といたしまして、第四条に規定する随時協議と第六条に規定する事前協議とは別なものであるということは、現在の政府考え方であると同時に、今委員が御指摘になりました三月六日の外務委員会における総理大臣及び外務大臣答弁であるというふうに理解しております。  それから、その両者補完する関係にあるのかどうかということは、先ほどお答えしましたように、一般的に両者補完する関係に立って規定されているわけではございませんけれども、その両者事前協議運用の問題というような形で、一般的な形で議論され得ることが四条によって可能であるという意味において、両者関連している面はあると思います。
  17. 上田哲

    上田(哲)委員 そうしますと、外務大臣事前協議が、こっちに発議権は六条でないが、四条随時協議をやるのだということは、これはお互いに相補完する行為ではないのですか。
  18. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 補完という言葉の問題でしょうが、私は関連はあると思います。というのは、今の事前協議制度そのものについては六条でやるわけですから、その場合はアメリカ事前協議を申し入れる義務がある。こういうことで、これはもちろん、事前協議そのものについては第六条。しかし、事前協議の運営、一般的な問題については、事前協議も含めて四条随事協議ができる、こういうことになっておりますから、そういう意味での関連はある。ただ、これを補完ととるかどうかは解釈の問題であろうと思います。ある意味においては補完的な意味も私はあると思います。
  19. 上田哲

    上田(哲)委員 半分わかってきましたよ。したがって、これまでの政府見解がめろめろになっては困るわけだから、一部混乱があったと前に言われたが、これが混乱なのかそうでないのかということをきちっとしておきたいから伺うのだが、これについて三木外務大臣は、「この四条を活用して、常にこちらの方からやはりイニシアチブをとってやることによって、安保条約事前協議というものをこれをほんとうに空文化するということはしない。」こう言っているわけですね。この精神は、今言われた補完であるか関連であるかという言葉にはこだわりませんよ、政治行為として、外交努力として、今外務大臣がやるのだと言われたことの精神とこの精神は一致するのですか。
  20. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 確かに、外交努力として第四条というものを生かしていかなければならぬ、私はそう思います。
  21. 上田哲

    上田(哲)委員 わかりました。そうすると、この解釈は変わってない。つまり、四条、六条というのは、条項はもちろん別だけれども外交努力としては、三木さんのときも今も、私は意見は違いますけれども、六条については発議権はこちらからはないけれども、六条については向こうから言ってくる義務がある。したがって、四条を使って、こちらは向こう側に対して十分にそれを主張するということになる、こういう関係のものとして理解していいわけですね。
  22. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 精神は、もちろんそのとおりでありますが、四条でこちらが随時協議を申し入れる、その基本的な形は一般的な協議という形で申し入れるわけでございます。
  23. 上田哲

    上田(哲)委員 つまり、空文化したくないんだと。空文化したくないんだということの精神は生きているということですね。そうしますと、そういう立場からすると、こちらからは六条のことは今外して考えますが、随時協議四条について言えば、国民の間に不信があったり国会論議になるようなときにはと外務大臣はかつて言われたが、そういうときには随時協議で、アメリカに対してそうした国民不信国会論議にこたえるような回答をとるのだという努力が当然されるわけですね。
  24. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 基本的にはそうです。もちろん、その場合に六条にかかわる協議四条で行うということは、私はできない。これはあくまでも六条協議でございますから、四条協議というのは、一般的な協議として、しかし同時に、今お話がありましたような国民のいろいろな疑問等を解いて、日米安保条約信頼性というものを高めるためにやっていかなければならない筋合いのものだ、こういうふうに思っております。
  25. 上田哲

    上田(哲)委員 そうしますと、四条は、締約国条約実施に関し云々と、こういうことになっているわけですね。したがって、四条の当然な解釈として、こうした国民の不安や国会議論にこたえるということになれば、その状況に対して的確な答えを得るということは当然の努力ですね。
  26. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは日米間で、例えば安保条約についてお互いに遵守する、当然のことですが、そういうことの再確認、あるいはまた、両国の約束を遵守するという信頼性の確保、そういうものについては、四条協議の中できちっとしなければならぬ場合はする、こういうことです。
  27. 上田哲

    上田(哲)委員 そうすると、当然今日のように、例えば日本へ寄港可能なトマホーク配備予定艦が四十一隻ある。このうち既に寄港したものが二十三隻もある。原潜十七隻、水上艦六隻というようなことが公的に報道もされているような時期に、こうした問題についてその具体的な回答内容国民に開示されるための努力をされるということは当然なことですね。
  28. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはもちろん、そういう艦船日本への入港があるわけですが、これは安保条約に基づいて日本もそれを認めておるわけでありますし、もちろん、そういう中で核を持ち込むという場合には、これは事前協議対象ですから、事前協議なくして核を持ち込むことはあり得ないというのが政府基本的な考えです。それはやはり日米安保条約信頼性ということにもつながるわけでございますから、政府としましては核が持ち込まれるに当たっては事前協議なしに持ち込むことはあり得ない。そのときには六条の事前協議制度というものが生きてくるわけでございます。ただ、国民の間に、あるいは議会においてもそういう問題についていろいろと疑問があることは承知しておりますし、そういう疑問を政府はできるだけ解いて、国民理解安保条約に対する信頼を高めていかなければならぬ。そういう立場で、場合によっては四条協議というものでアメリカとの間で確認し合う、協議するということは大事なことだと私は思います。
  29. 上田哲

    上田(哲)委員 今も言われたように、そこが四条協議なんであります。協議なんですからこちら側から発議権はもちろんあるし、そして具体的な内容についてトマホークの核の存否について相手方をただすというのは当然協議内容ですね。
  30. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは事前協議制度運用とか、あるいは安保条約実施に関することですから、それは一般的な立場での協議ですから、それ以上に核そのものの持ち込みであるかどうかという個々の問題については六条の問題だと私は思います。ですから、一般的にこの問題、最近のトマホークアメリカ艦船に備えつけられている、それは非核の場合もあるし、核もあるでしょう。そういうことで日本の中でいろいろと問題が起こっている。トマホークを積んだ艦船日本に入ってくる、そういう場合の一般的なアメリカとの間の事前協議制度確認であるとか、あるいはまた安保条約の遵守についてのお互い確認であるとか、四条ではそういうことをやるべき筋合だと私は思っている。私は、去年そういう問題ではマンスフィールド大使との間でエンタープライズ入港あるいはまた三沢におけるF16の配備、そういうものに関連をして四条協議を行った、こういう経過もあるわけであります。
  31. 上田哲

    上田(哲)委員 その例示の中の一つ外相自身がおやりになったマンスフィールド大使との随時協議ですね、四条に基づく随時協議でその艦艇に核が載っているかどうかという具体的な質問をされましたか。
  32. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは具体的な質問といいますか、アメリカが核の有無について明らかにしないというのはアメリカ基本的な国策でありまして、我々はそこまで立ち入ることはできないわけです。そういうアメリカ基本政策というのはあります。しかし、同時に日本には非核原則というものもあるわけでございます。そういうものを踏まえた中で安保条約を遵守していこう、そして事前協議制度というものをやはり確認をしていかなければならぬ、あるいはまた日本非核原則についてはアメリカ理解を求める、こういう一般的な形でのお互い確認、そして日本の主張、そういうものを行ったわけでございます。
  33. 上田哲

    上田(哲)委員 つまり具体的な存否については聞かなかったのですか。
  34. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いわゆるエンタープライズで核を持っているか、持っていないかということについては、核を持っていればこれは当然六条の事前協議対象になるわけですから、事前協議制度を守ると言った以上はアメリカは当然事前協議にかけなければならぬ。そういうことについての、お互い事前協議制を守るという基本路線基本考え方についての信頼関係確認し合った、こういうことです。個々の問題は六条の問題だ、こういうふうに思います。
  35. 上田哲

    上田(哲)委員 四条と六条の関係は、六条の事前協議発議権日本にないということになっているが、それでは片手落ちになるから、四条において随時協議を発議することができる以上、今言われたように事前協議を始めようではないか。向こうから提議すべき義務を触発するということを四条によって言うべきだということですが、いかがですか。
  36. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはもちろん四条によって、事前協議制度というものがありますよ、これは安保条約で最も大事な制度ですよ、これはお互いにきちっと守らなければ、本当に日米信頼性というものは確保できませんよ、こういうことを協議しておるわけでございます。それに基づいて六条は運営される。ですから、具体的にはもし個々に核を持ち込もうという場合においては六条によって協議をしなければならぬ。しなければならないことはまさに今の四条の一般的な協議によって確認をされるということであります。
  37. 上田哲

    上田(哲)委員 もう一遍確認しますよ。六条と四条には関連がある、そして政府見解では六条の発議権向こうにしかない、それは向こう義務でもある。それでは片手落ちなんで、四条随時協議個々艦船についての核の存否を問うべきだと私は思っていますが、それはおやりにならない。それはできないという政府解釈に乗るとしても、政府もこれまで認められたように、三木さん以来の考え方は矛盾してないとおっしゃるんだから、そうであれば当然政府見解の中でも四条においてアメリカ義務である六条の事前協議を発議すべきではないか。国民にこれだけの不信があり、また国会にこれだけの議論があるんだから、その議論をすべきじゃないかということは当然発議することになるのが正しいと思いますが、いかがですか。
  38. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 その辺が私と違うところでして、要するに確かに六条の発議権はない、これはアメリカの発議する義務だ、それから四条安保条約あるいは事前協議制度実施とか運営に関する一般的な協議である、これはもちろん今おっしゃるとおりであるし、政府としてはそういう解釈を持っておるわけであります。しかし、六条の協議内容にわたることについては四条協議では行わない、四条協議はあくまでも一般的な協議であって、それは事前協議制度であるとかあるいはまた安保条約全体の運営、実施というものに関してお互い信頼性というものを確認し合うということがこの四条協議基本である、私はこういうふうに考えています。
  39. 上田哲

    上田(哲)委員 六条は向こうからの発議である、四条はこちらからの発議だ、ここまではいい。その四条の発議の中で、相手の義務である事前協議の発議を国民の不安や国会論議を踏まえてやろうではないか、そのことはできないというのが政府解釈なんですね。
  40. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 四条ではもちろん六条にわたる協議ができないわけです。できないわけですが、しかし六条の協議をきちっと行わせるためには四条という協議が非常に大事になってくる。四条協議によって原則確認し合うということが結局六条の事前協議をさらに明確に信頼性を持って行えるという姿に持っていける、私はそういうように思います。そういう意味では四条と六条は大変関係がある、関連があるということであります。
  41. 上田哲

    上田(哲)委員 それはちょっとわかってきました。これは根本的には一致しませんけれども四条と六条、そういう形で事前協議の相手の義務を触発するということが信頼関係なんだ、こう言われる。外交政治論として、一つ解釈として受け取ります。我々は基本的には違いますよ。  この基本的な解釈のポイントになるのが三十五年一月十九日の岸・ハーター交換公文でありまして「両政府は、同条約四条の規定に基づいて、条約実施に関して随時協議し、また、日本国の安全又は極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じたときはいつでも、いずれか一方の政府の要請により協議することになっています。」こうなっているわけですね。今私が申し上げた主張は、当然この交換公文から出てくることであって、政府の態度はまだそこまで行っていないと思いますが、この文書に照らして今の答弁というのは適合している、矛盾していないとお考えですか。
  42. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは条約解釈ですから条約局長から後で答弁させますが、私の解釈では、今私が申し上げた根拠というものは岸・ハーター交換公文にあるということであります。
  43. 上田哲

    上田(哲)委員 最後に、政府がこれまでずっととってこられた見解を今度「若干の混乱」という書架で訂正をされたが、その訂正の根拠となったのが四十三年三月六日の高辻答弁だ、こう言われる。高辻答弁をどんなに読んでも、六条の日本側発議権はないということは言っているけれども四条についての制約はしていないわけです。四条随時協議はもっとそのままの形で今まで生きている。ならば、そういう立場で一歩進めて、具体的な艦船の核の存否について当然間わるべきである、これが日本国民に対する政府努力でなければならないと思います。特に今日のようにアメリカの八五年会計年度の国防報告あるいはアメリカの下院歳出委員会軍事小委員会の公聴会記録、あるいは民間の政策研究協会のデータ等々からいって、核の脅威、三原則は侵されるという不安をみんなが持っているこの時期に、当然、例えば原水禁世界大会が開かれているこのときに、政府としては一歩進んで、私は、さっきの部分というのは、政府見解としては半歩、一歩進んだというふうに理解するのですけれども、具体的に核の在否についてなお明確に迫っていけるという立場を、解釈の上からも、実行の上からもとられることを希望しておきます。いかがですか。
  44. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 政府としましては、あくまでも個々艦船の装備に関しての問題は事前協議であるし、これはあくまでも六条によるべきものであるという解釈であります。そして四条というのは、こうした六条の事前協議制度というものを、より信頼を高めるために四条協議というものは行われなければならない、そういう建前で我が国としてもアメリカに対して協議を申し入れて、今日まで時宜に応じて協議を行っておる、こういうことであります。
  45. 上田哲

    上田(哲)委員 くどいようですが、今この情勢というのは、より一歩進んで非核原則についてアメリカ側に物を言うべきときであるという認識をお持ちですか。
  46. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 そういう状況がやはり国内において起こりつつあるし、この点については我々としても今後検討をしていかなければならないと私は考えております。
  47. 上田哲

    上田(哲)委員 合わせて一本というところでしょうか。不可分なのか可分なのかという問題として、私どもとは見解が違うし、非常に不満でありますけれども政府としては一歩、提案権がこちらにないとしてもアメリカ義務としての提案権を四条によって触発する、そしてまた、そういうことを進めなければならない今の情勢であるという認識を得られたので、その方向をさらに当然な解釈として実行に進まれることを希望して、次に移ります。さらにこれは次の機会に続けますから……。  さて、六十年度予算の中での概算要求基準、七月三十一日の閣議決定で防衛費七%。防衛庁、長官、これは突出というのが世上一般の表現であります。この感想を伺いたいのでありますが、具体的に、特に臨時行政改革推進審議会が七月二十五日に、「当面の行政改革推進方策に関する意見」を出しました。その中で、防御費は極力抑制を図る、それから総額を抑制する、こういうことがはっきり出ています。こういう意見に対して、総理は意見書を最大限に尊重すると言われた。こういう流れを踏まえて、七%突出というのはいかがなものか、どのような御感想ですか。
  48. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 概算要求について、いろいろの御感想、御批判のあることはよく承知をしております。しかし、私ども基本的な考え方は「防衛計画の大綱」水準を早く達成する、これが政府が一貫して言ってきたことでございます。そういう関係から五六中業、五九中業、五九中業についても達成を期すると、私の長官指示を出したところでございます。そういう観点からいたしますと、今度の概算要求は、厳しい財政事情の中ではありまするけれども、防衛力の整備を着実に行っていく、そういう観点からすれば、ぎりぎりの線ではないか、こういうふうに考えております。もちろん行革審の方からいろいろの御注文のついていることは承知しておりますけれども、従来からも防衛費につきましては、聖域ではございませんけれども、特別の枠としていろいろ認められておる、そういう関連から、私どもは、今回の場合はそういうことで御理解いただきたい、こう考えております。
  49. 上田哲

    上田(哲)委員 そうしますと、五九中業達成に向かってぎりぎりのところである。これは五九中業に対する長官指示も、五六中業は「達成することを基本として作成」から、今度は「達成を期するものとする。」と、ぐっと強くなっているわけですから、長官の意図はそこによくあらわれておりますが、そういう立場で今回の七%は五九中業達成のぎりぎりのところまできたんだというふうに理解していいわけですか。
  50. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 五九中業の作業は今やっているところでございますので、その内容が確定をいたしませんと何とも申し上げられませんが、気持ちといたしましては、五九中業を達成するのにぎりぎりの、まあ財政とぎりぎりの調和点だ、そういう考え方を持っているわけでございます。
  51. 上田哲

    上田(哲)委員 くどいようですが、達成の射程内に入ったということですね。
  52. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 達成をいたしたい、そう思っております。
  53. 上田哲

    上田(哲)委員 いや、希望じゃなくて、とにかくすれすれのところまで、ぎりぎりというお言葉を使われた、ぎりぎりだが、五九中業達成がとにかく見える、可能性が出てきた、こういうことだというふうに理解をいたします。  そこで、この五九中業が中心でいくわけですけれども、五九中業というのは一体どうなっていくのか、これはこれから一年かかるのだからということで、恐らく具体的な答弁はないでしょうから、今日における御判断をひとつぜひ伺っておきたいわけでありますが、これから日本の防衛努力といいましょうか、軍事プランといいましょうか、それは五九中業に集約されていくわけですから、そういう点で一つ注目しなければいけないのは、さきのハワイ会談で、実に奇異な感じを人々は受けるのですが、アメリカ側から大変評価された。中曽根さんや栗原さんの実名を挙げて、日本が防衛力増強に正面から取り組んでいるということを再三にわたって評価している。これは五十六年三月の伊東外務大臣が訪米した場合のワインバーガーの対応とか、五十七年一月の極東有事共同研究とか、これは夏ですが、シーレーン共同研究等々、そういう文脈から見ると、大変大きな違いだと思います。  私は、これは大統領選挙が近いとかなんとかという、そういう要素ではない。このハワイ会談というのは、純軍事的な、すぐれて軍事的な見解なんでありますから、そういう立場では、集約するところ、この変化というのは五九中業というものに対する客観的な評価として受け取るのが軍事論としては当然だと思うのです。いかがですか。
  54. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 五九中業は、先ほども申しましたとおり、まだこれから作業を始めるところでございますので、五九中業そのものについてアメリカが評価したとかしないとかということじゃないと思うのです。その思想、流れですね、五九中業というのは「防御計画の大綱」水準を達成する、その流れの中で、私の強い意思表示があった、そういう流れを評価したということはあると思いますが、五九中業そのものを評価する、まだそういう段階ではないと思っております。
  55. 上田哲

    上田(哲)委員 五九中業の流れを評価した、まあそうでありましょう。これはやはり、これまでアメリカの風圧、非常に防衛努力を強調してきた、ただ乗り批判してきたということから見ると、大きな変化ですね。
  56. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 その点は変わったようでございますね。しかし、それは何と申しますか、私はこの前ワインバーガー長官が来ましたときに、日本としては自分の国の防衛はみずからの責任でやっていく、安保条約でいろいろと御支援をいただくけれども基本的には、自分の国は自分で守る、そういう基本線でいくのです、できることは精いっぱい憲法の枠の中でやるのです、しょえるものはしょえるけれども、しょえないものはしょえませんとはっきり申し上げたのです。そういう私ども中曽根内閣の基本的な姿勢について、アメリカ側がそれなりの評価をしたんじゃないか、こう考えております。
  57. 上田哲

    上田(哲)委員 大和魂は結構ですけれども日米軍事同盟体制の中ですから、軍事同盟体制の中でどういう軍事的評価があったかということは大和魂の問題じゃないのです。五月十一日に中曽根・ワインバーガー会談が行われたときは、中曽根さんは、五九中業が継戦能力向上に重点を置いていることを説明して、日米間には同盟関係があり、今後とも協力体制に遺憾なきを期したい。これに対して、大変的確な努力であるとワインバーガーは言っている。私はこれが根底だと思いますね。だから、自主努力であるとかいろいろなことは大いに主張されたでありましょうけれども、同盟関係としてはやはり大変大きな変化が出てきた、これは言えると思うのですね。そういう立場で言うと、近く長官が訪米されるそうですが、七%というのはアメリカに対して胸を張る、説明のできる、同盟関係として十分に説明のいく数字であるというふうな御見解ですか。
  58. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 日本アメリカとの間で安保条約があるということは、これはもうひとしく認めるところでございますし、私はこれは大事にしなければならぬと思っていますが、今回のこの概算要求について、アメリカがこれで喜ぶだろうとか、あるいは私が胸を張ってワシントンを訪れられるだろうとか、そういうことではないので、先ほど来申し上げておりますとおり、「防衛計画の大綱」水準の達成を期する、そういう私の決意、あるいは歴代の内閣が言ってきたことに対しまして着実な防衛努力をしなければならぬ。経済がいい、財政がいいから余計つけてやれ、こういうこと、あるいは経済が悪い、財政が悪いからこれは削るんだ、そういうことは防衛力というふうなものにはなじまない。経済がいい、財政がいい、あるいは経済が悪い、財政が悪い場合でもコンスタントに計画的にやっていかなければならない、そういう意味で考えておりますので、地道な防衛努力をしていくという気持ちで概算要求したというふうに御理解をいただきたいと思います。
  59. 上田哲

    上田(哲)委員 私は、やはりこの七%というのは非常に突出であり、対米配慮というのが強いし、問題だと思っているのですが、まだこれからやるんだということはありますけれども、私の試算がありますからちょっと聞いていただきましょう。  五六中業の契約ベースで正面装備が五兆三千億円と作成された。これに対して五十八年、五十九年度の実績は約一兆四千億円、進捗率は二七%だ。あと残り三兆九千億円を五六中業期間中に達成するとすれば、単純に計算しても各年一兆三千億円を必要とすることになる。いいですね。支払いベースで見れば、五六中業は四兆四千億円から四兆六千億円、こう書いてあるわけですが、五十八年、五十九年の実績は一兆二千九百四十三億円、進捗率は二九・四二%となります。六十年度の予算が、ここで概算要求基準七%になりましたから、それで推算をいたしますと総額は三兆一千四百億円となります。正面装備費の割合を五十九年度と同じ率、二三・一%で推算すると七千二百五十三億円となる。専門家はわかるでしょうから。したがって、六十年度末の実績は二兆百九十六億円で進捗率は四五・九%、残り二兆三千八百四億円を五六中業期間中に達成するとすると、単純に計算しても六十一年と六十二年、各年度で一兆一千九百二億円。これは正面装備でありますから、逆算しますと、正面装備割合を昨年同率二三・一%で見ますと、各年の総額、六十一年、六十二年は約五兆一千五百二十四億円となります。これを五九中業の前三年で達成するとしてみますと、各年七千九百三十五億円、こういうことになりまして、正面装備割合を二三・一%とすると各年三兆四千三百五十一億円、こういうことになる。つまり、この計算の結論としては、これから六十一年度、六十二年度に、その五九中業に十兆三千四十八億円が五六中業から組み込まれるということになる。つまりこれが結論なんですがね。途中の積算は専門家が聞いてくれたらわかるでしょうが、こういう計算でいいですか。
  60. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 お答えいたします。  ただいま先生おっしゃいましたのは、ある前提を置かれますとそういう計算数もあるんじゃないだろうかと――じゃないだろうかと私申し上げますのは、早い今のお話でございますから直ちに私も計算できませんのでそう申し上げるわけでありますが、いずれにいたしましても予算は、各年度、各年度、そのときの財政、経済事情、そういったものを踏まえまして決めていくわけでございますので、直ちにそういう数字になるかどうかはわからない、こういうことだと思います。
  61. 上田哲

    上田(哲)委員 だから途中の計算のことはいいかげんに言ったんじゃないということをちゃんと見せなければいけないから言ったのであって、今言いましたこれまでの進捗率、そちらが発表している進捗率で計算をすると、二七%でとったり二三・一%でとったり、いろいろあるんだけれども、二三・一%でとると十兆三千四十八億円というのが六十一年、六十二年に五六中業から五九中業へはまり込んでいくよ、こういうふうに概算ができていないようじゃ、これは当局にならぬでしょう。おおむねそういうことでいいかどうか、これぐらい答えてください。わからない。わからなければ余り長々言わないでください。
  62. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 今の段階ではわからないというのが一番短いお答えであります。と申しますのは、ただいま概算要求基準額が決まったばかりでございまして、これから八月いっぱいにかけまして私ども作業をいたします。作業の結果を見ませんと今の段階ではわからない、こういうことであります。
  63. 上田哲

    上田(哲)委員 わからなければしようがないです。これは五九中業の話をしているのじゃないのだから、五六中業の話をしているのだから、それで七%の要求基準が決まったらこの計算が今できないというのは、これは怠慢ですよ。細かい数字をコンマ以下で言っているのじゃないのだから、兆だ、億だと言っているところでこれがつかめないようじゃ、これはやはり専門家じゃないと私は思いますよ。できないものは仕方がない。短い答弁しかできないならしようがないが、そういう計算からすると、もっと大づかみな話になるけれども、これまでのそちらの出した資料によるのですけれども、五六中業というのは五十七年度価格で十五兆六千億円から十六兆四千億円だと言っていた。そういう計算からすると、非常に大づかみなことを言うのだけれども防衛庁長官、五九中業というのは二十兆円の前半ではおさまらぬ、私は大体そういう計算をするのですが、つかみとしてそんなものでいいですか。
  64. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 中業期間中の所要経費という点につきましては、これは何回かお答えしたことでございますけれども、正面経費については詳細な積み上げをやっております。しかし、その他の経費はそういった積み上げがございませんで、一定の前提を置いた仮定の推定計算をしているにとどまるという性格のものであることは御承知のとおりだと思います。したがいまして、五六中業について申し上げました十五兆六千億ないし十六兆四千億という総体の数字もそのような性格のものでございます。五九中業の場合にどういったようなそういった推計をするかということ自体まだ決まっていないわけでございますけれども、具体的に例えば正面が一体どのくらいになるか、あるいはそれに伴う後方なり人種なりの推計をどのようにするか、そういうことは今の時点では具体的にはちょっと申し上げかねる状況でございます。
  65. 上田哲

    上田(哲)委員 わからないということをそんな長いこと言わないでくださいよ。七%の中で人件糧食費六百六十億円、後年度負担歳出化分というのは九百二十億円、合わせて千五百九十億円は全額認められているのです。これが認められているとなると、いいですか長官、概算要求基準というのはシーリングとどう違うのかということも議論したかったんだが、もう時間がないからやめるが、これから先こういうのがどんどんふえていくとなると、正面装備率というのはもっと下がらざるを得ないのですよ。それを五九中業としては下げるわけにいかないだろうということになると、これは七%どころかさらにぐっとふえていく、総額がもっとふえていく。つまり今年度分も年末にいったらもっと大きくしなければならない、七%を超えるということになるか、それともそれを削っていくといいますか、正面装備を削っていくということのどっちかになっていくのです。どっちを選ぶのですか。これは長官から答えてください。余計な時間で困るんだな。わからない人はだめだよ。
  66. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 概算要求基準額で決まりましたのは七%、二千五十五億円ということが決まっておりますが、その内訳として今先生おっしゃいました人糧費が幾ら、歳出化が幾らということが決まっているわけではございません。それで、私どもといたしましては、先ほども申し上げましたように基準額が決まりましたので今作業をいたしておりますが、大蔵省の方ともいろいろその過程において相談いたしましたように、いろいろ工夫ができないだろうかというようなことも含めまして検討をいたしておりますので、今先生のおっしゃいます前提につきまして若干違う結果になるように私ども努力をいたしております。
  67. 上田哲

    上田(哲)委員 それじゃちょっと一言だけ聞きます。  そうすると、これからのさまざまの努力ということの中には正面装備率を下げるということも含まれますか。
  68. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 そこのところは、正面装備と申しますのは「防衛計画の大綱」水準というものがあります。それで、それを基準にいたしますとある程度の物量というものはあり得るわけでありまして、その率が下がるということは論理的に言えば後方の率が上がる、こういうことになるわけでございます。でありますから、それは全体の予算額そのものの総量との関係がございますので、それは先ほど申し上げましたように各年度決まってくるものでございますから、今直ちに何とも言えない、こういうことであります。
  69. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 今事務局からいろいろ話がありまして、数字がなかなか詰まらない、そういう段階で、今のような御質問に対して私が確定的なお答えをすることはお許しをいただきたい、こう思います。
  70. 上田哲

    上田(哲)委員 どうしようもないですね。まあ下げるはずはないのでしょう。  長官、一%の問題です。これは長官とはっきり話をしましょう。そうすると、ここまでいけば、また年末で上積みをする以外にないだろうということは数字の上から出てくるのですが、GNP一%というのはどうするのか、これが問題になってきます。長官指示が出された五月八日の記者会見で、長官は直接一%を念頭に置いておるわけではない、こう言っておるわけですが、ここのところ、六十年度の名目成長率を六・五%以上に置かないと、これはもうそれだけで、十一月の六十年度GNPの確定時あるいは夏の人事院勧告の段階で出ちゃうわけです。そうですね。そうすると、そういう状態を踏み越えていくのですか。その場合には当然一%枠内に縮めるということを考えるのですか。
  71. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 概算要求のときに私どもが考えたのは、先ほど来申し上げているとおり、「防衛計画の大綱」水準の達成を期する、そのために計画的にいろいろやらなきゃいかぬ、そういう数字を出すのが概算要求だ。したがって、この一%の問題は、本予算を組むときに政治的に決定をする問題だ、そういうふうに分けております。それで、もちろん総理がおっしゃっているとおり、三木内閣のときの防衛に関する閣議決定の方針は守っていくということでございます。
  72. 上田哲

    上田(哲)委員 そうすると、六十年度GNP見通しが出る段階で、名目成長率が十分に伸びなかったとか、人事院勧告の数字が一%を超えてしまうような形になるというときには、一%におさまるように努力をするのですか、しないのですか。
  73. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 これからの問題でございますが、三木内閣のときの防衛に関する閣議方針は守っていく、そういうことでございます。
  74. 上田哲

    上田(哲)委員 ということは、一%より出たらそれを削るということにしかなりませんね。
  75. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 これは繰り返して申し上げるようでございますが、そのときにこの一%の問題が非常に重要な問題になってくる、こういうことでございます。
  76. 上田哲

    上田(哲)委員 五月八日には一%を念頭に置いてないと言ったのですが、その段階にいったら念頭に置くのですか。
  77. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 それは、六十年度の本予算を組むときには当然置かなければならないと思います。
  78. 上田哲

    上田(哲)委員 自民党の安全保障調査会の防衛力整備小委員会は、五月には一%撤廃論が大勢を占められましたが、伝えられるところでは、七月の初めにはこれを一%程度という言い方にし、上限を一・四%に抑えるというふうに決定をされたと漏れ聞きますけれども、長官としてはこれについてどういう感想をお持ちですか。
  79. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 党の方がいろいろ我が国の防衛力の整備について御心配をいただく、お考えいただく、それはそれとして私どもは傾聴しなければならぬ、こう考えておりますが、直接それによって私が行動するとか、動かされるということはございません。
  80. 上田哲

    上田(哲)委員 五九中業にどうしても大きなかせがかかっていると思うのは、日米関係、特にシーレーンの日米共同研究ですね。これが五十七年に合意されて、五十八年三月から開始されておりまして、正式報告は来年の春ということになっております。この中間報告がハワイ会談で出された。紙に書いてどうしたなんということを言ってませんよ。当然これはごらんにならなかったはずはない。  そこで、伝えられているところでは、そのシナリオは、第一にソ連のバックファイアなどに対して米艦機等によって洋上防空をする。そして第二に米空母、在日米空軍等がソ連基地を攻撃する。この場合には海上自衛隊が米艦の護衛、さらに通峡阻止、北海道の装備充実等をやる、こういうシナリオがある。これはいかがですか。
  81. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 ただいま御指摘のシーレーンの防衛に関します共同研究の報告を第十五回のSSCでやりましたのは、作業の進捗状況等の概要を説明をしたということでございまして、今御指摘のございましたような具体的な個々の作戦の細部にわたるお話をハワイでしたというものではございません。しからば一体実態はどうなっているのかということでございますが、この点は現在統幕事務局及び在日米軍司令部等の関係者によりましていろいろな作業を進めている段階でございますけれども、唄は日本の防衛に関する機微にわたる問題が非常に多うございますので、その内容をここで具体的に申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。
  82. 上田哲

    上田(哲)委員 少なくともこの種のシナリオが制服の中では進められている、そう理解していいですね。
  83. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 シーレーン防衛を実施していく場合に、日米で共同対処をすることが必要になるわけでございますが、その場合にいろいろな作戦の態様があると思います。しかしながら、個々の具体的な態様について個々にコメントして説明を申し上げることは、作戦の性格が日本の防衛のための非常に高度の秘匿を要する問題でございますし、これを申し上げることは手のうちを明かすことにもなりかねませんので、そういった個々の問題についてのコメントは差し控えさせていただきたいと思います。
  84. 上田哲

    上田(哲)委員 この種のものがあるかどうか、この種のシナリオが。
  85. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 申し上げられますことは、シーレーンの防衛のための共同作戦というものは、ガイドラインを作成したときの基本的な前提条件にございますように、日本の憲法上の制約の範囲内ということでやっておるわけでございまして、その範囲内におきますいろいろな具体的研究をやっているということは、御承知のとおりでございます。今御指摘のございましたような個々の作戦につきましては、申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。
  86. 上田哲

    上田(哲)委員 あるということですね。  じゃ、もう少し具体的に言いましょう。ハワイ会談の裏側で長いこと続けられていたリムパック84、ここではエンタープライズ、アーカンサス、こういうものと一緒に海上自衛隊の「くらま」「はつゆき」「しらゆき」「あさかぜ」「さわかぜ」、この五隻の護衛艦がK空母機動隊というものを編成をしている。そしてジョーンズ司令官は、日本人記者団との記者会見でも、洋上ではこの機動部隊の次席指揮官である小西海将補に護衛の責任を大変よくやってもらった、こういうことで、小西さんの方は、アメリカエンタープライズを無傷で守り抜いた、こういうふうに胸を張っているということがあるわけです。こういう実態が既に進んでいるのですから、今言ったシナリオというのがあって当然のことなんです。絞って聞きますから……。  米艦のこうしたバックファイアとの戦い、あるいはソ連基地を在日米軍なり海上艦隊がたたくという場合、そうした米軍を日本側が護衛することは憲法違反、集団自衛権ということになりませんか。
  87. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 日本が有事の場合に、海上自衛隊とアメリカの海軍を初めとする日米が共同で対処するということの中で、シーレーン防衛の一環といたしまして米艦艇の護衛ということが一体どういう位置づけになるかという問題につきましては、昨年の予算委員会におきまして、総理を初め政府側からしばしば御答弁を申し上げたところでございまして、日本が攻撃を受けたというとき、日本有事の場合におきまして、日本の防衛のために共同対処をするアメリカの艦艇、これを我が自衛隊の艦艇が守るということは、我が国の自衛のための必要最小限のものであると認められる限り、日本の個別的自衛権の発動として当然憲法上許されるということ、これは昨年来申し上げているとおりでございます。
  88. 上田哲

    上田(哲)委員 そうじゃなくて、自衛のためじゃなくて、アメリカ軍がソ連軍基地をたたく場合ですよ。その場合にも許されるのですか。
  89. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 この具体的なケースが果たしてそういったような形態の作戦、オペレーションというものがあり得るかどうかということにつきましては、私どもとしてもにわかに申し上げかねるところがございますけれども、理論的な問題といたしまして申し上げますならば、そういった米軍の機動部隊が行動をする場合に、そのことが日本の自衛のための必要最小限の行動であって、共同対処という範疇に入ってくるということでありますならば、それが日本の個別的自衛権の発動のために必要であると判断される限りにおいてそういったアメリカ艦艇の護衛をすることが日本の憲法に違反することではないということは、これも昨年お答えをした経緯がございます。
  90. 上田哲

    上田(哲)委員 昨年とは違うのですね。実際にそういう攻撃行動があり、その護衛行動をやったら、その後でこれを自衛のためであるという解釈をつけていくと変わってきました。これは非常に危険です。現実にこの護衛活動というのが守るためなのか攻めるためなのか全然区別のないリムパックの中で行われているわけなんでありますから、その実態の上で解釈を後からつけるというところで大変危険なところへ一歩踏み込んだ。これは質的に非常に違うと思います。  先に進みますけれども、ミッドウェーの夜間離着陸訓練飛行場、NLPですが、このミッドウェーというのがそもそも大変な航空母艦でありまして、コルセア、イントルーダー、そのほかとにかくたくさんな核搭載機があるわけであります。細かいデータを申し上げるまでもありませんが、向こうにグアムがあり硫黄島があり、そして三宅島ということになると、これは単に厚木基地の騒音対策などという問題ではなくて、今回の栗原・ワインバーガー会談でも中曽根・ワインバーガー会談でも、またハワイ会談でもこの問題が最優先課題であるということを日本側からも認識されているということを考えますと、これは大変なシーレーン海域防衛の東南軍事基地という性格として見ざるを得ないと思うのですが、いかがですか。
  91. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 ミッドウェーもアメリカの第七艦隊の一部でございますから、これは日本が有事の場合におきまして日米共同対処でシーレーン防衛を行います場合に、その一つの防衛力の構成要素としてこれが機能するということはあり得ることであろうというふうには思います。
  92. 上田哲

    上田(哲)委員 これはやはり大変なことが出てきたんですよ。これは単なる訓練飛行場ということじゃなくて、そういう問題だということが出てきた。そこで心配するのですが、極めて優先度の高いものとして早期解決をすると総理が言う。ワインバーガーがそれを極めて重視していると再三にわたって言う。早期というのはいつまでのことですか。
  93. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答えいたします。  御承知のように、ミッドウェーの艦載機のパイロットの練度を維持するということがアメリカにとって非常に重要なことになっており、また日本安全保障上も必要不可欠だと思います。と同時に、国益のために訓練をやっておるその付近の一部の住民の人たち、厚木の周辺の人たちにいろいろな障害が出ていることは事実でございます。現在既存の飛行場を何とか使って所要の訓練をやるという方法はないか、あるいは新設飛行場をどこかに適地を見つけられないか、あるいは浮体飛行場を研究してみるというようなことで現在鋭意この問題の解決に努力しておりますが、御承知のような状況で、なるべく早くこの問題は解決したいと思っておりますが、早期というのはいつまでかということは現時点では解決のめどは今のところ立っておらない……(上田(哲)委員「いや、つまり期限を持ってはいないのかということです」と呼ぶ)具体的な期限は持っておりません。なるべく早くということでございます。
  94. 上田哲

    上田(哲)委員 三宅島に絞ったということはありませんか。
  95. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 先ほどお答えいたしましたように、三本立てで同時並行的に検討をいたしております。三宅島もその立地条件、厚木から百五十キロ以内である、あるいはもし海岸部の平たんな地域に滑走路を設けることができますれば、洋上において旋回をして着艦訓練をやる、こういうことから騒音障害が少ないであろう、いろいろな諸条件から非常に有力な候補地でございますけれども、それだけに絞ったという状況ではございません。
  96. 上田哲

    上田(哲)委員 三宅島では大変な反対がある。全村挙げての反対だということをよく理解をしておいていただきたいと思うのです。ここにこういう地図もありますけれども、これは既存の飛行場のことじゃない、この黄色く見えるのはまさに新しい大飛行場ができるわけでありますから、そういう点では先ほど来のお話のようにシーレーン防衛の重要な拠点としての意味づけが出てくるのであります。  そこで、これは両大臣から一言ずつ、結論でいいですから、非常に村民が心配していることでもあるんですが、総理大臣防衛庁長官の再三の言明、会談の漏れ聞く内容からいっても、最終的には強制執行されるんじゃないかという心配があるわけです。そんなことは民主主義の世の中にあるわけがないわけでありまして、そのことはないということをひとつ両大臣からしっかりお答えをいただきたいと思います。
  97. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 この訓練はやはり安保条約の効果的運用という立場から必要であると思いますし、この問題が早く解決されることを心から望んでおりますが、あくまで法の手続を踏んでやるべきことであろう、こういうふうに思います。
  98. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 強制的なことをやるということは実効が上がらぬと思います。住民の皆さんの御理解を得ていくという方向でいきたいと思いますが、ただこれは私の方の希望を申し上げますと、反対反対というのが我々の方の説明を聞かないで反対というのは我々としては大変困ることでございまして、できるならばどういうものであるか説明はまず聞いて、その上で賛否を明らかにしていただければありがたい、そういう意味上田さんの格別の御尽力を賜りたいと思います。
  99. 上田哲

    上田(哲)委員 強制執行はないということを両大臣から確認ができた、よろしいですね。  時間が非常に迫っておりますから、簡単に二、三点だけお伺いいたしますから、ひとつ的確にお答えをいただきたいと思うのです。  三沢のF16の配備についてアメリカの下院本会議で八五年軍事建設歳出法案が可決されたわけですが、その条件に日本側が五十九年度を上回る基地建設費を出さなかったらこちらも出さぬぞ、こういうことになっておる、これは大変おかしな形なのであります。これが内政干渉であるかどうであるかということはこの際ちょっと別にして、伺っておきたいのはたった一つでありますが、向こうが言っている基地建設費というのはどの程度のことを言っているんですか。数字だけきちっと言ってください。
  100. 千秋健

    ○千秋政府委員 数字はちょっとあれでございますが、これは米側予算で建設することを先生御指摘だと思いますが……(上田(哲)委員「いや米側じゃない。日本予算ですよ」と呼ぶ)日本側の予算で五十九年度で三沢の施設整備費として計上しましたのは、約六十四億の歳出予算でございます。(上田(哲)委員「だから六十年度に」と呼ぶ)六十年度は目下概算要求として検討しておる段階でございますので、まだ数字は決まっておりません。
  101. 上田哲

    上田(哲)委員 アメリカとの約束はないんですね。
  102. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答えいたします。  アメリカが要望をしておることは事実でございますが、私どもといたしましてはその年々の財政状況その他を勘案して日本の防衛のために必要な経費を独自の主体的な判断で決めていく、こういうことでございます。
  103. 上田哲

    上田(哲)委員 三沢では七月二日に第四三二戦術戦闘航空団という名前の変更式までやったのですね。これは大変な戦歴のある核戦闘団ですから、そういう意味でもひとつしっかり、その辺のところは後にまた明らかにしたいと思います。  簡単に。自衛隊ではインマルサット、さくら二号a、ひまわりにかわって、六十二年打ち上げの海洋観測衛星、六十五年打ち上げの地球資源衛星、それから六十三年打ち上げのCS3通信衛星を使っていきたいというふうに計画を持っていますか。あるかないか、一言で。
  104. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 現在の時点ではそういった具体的な計画は持っておりません。
  105. 上田哲

    上田(哲)委員 ある場合には、これは宇宙開発事業団法に基づく宇宙の開発利用は平和目的に限る、あるいは平和とは非軍事的であるという四十四年の国会決議、この点を十分に議論しなきゃなりませんので、そうした議論を後に残しておきます。  最後に、八三年完成ということになっている防衛庁にあります中央指揮所、これは地上二階、地下三階、特に地下一階に防衛会議室、巨大なボードで、横田在日米軍司令部、第五空軍司令部、横須賀の第七艦隊とも全部ネットされて広いフロアができています。ずばり伺いたいのですが、この巨大ボードの真ん中にある防衛会議室の席にはだれが座るのですか。総理大臣ですか、防衛庁長官ですか、あるいは統幕議長ですか。
  106. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 中央指揮所の建設と申しますのは、防衛庁長官が行います指揮監督活動、あるいは情報の評価等々のために建設をしたものでございまして、したがって防衛会議室の中央に、防衛会議を開催する場合にお座りいただきますのは防衛庁の長官ということを予定をいたしております。
  107. 上田哲

    上田(哲)委員 総理大臣は座りませんか。また、アメリカ軍の関係者は入りませんか。
  108. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 総理大臣との関係は、中央指揮所から官邸に直通の電話を引いてございますので、それによって連絡をするという体制を考えております。  それから防衛会議室というのは先ほど申し上げましたように、我が自衛隊の指揮統制活動を円滑にするということのために行うわけでございますから、ここは我が自衛隊の長官以下のスタッフが集まる場所ということでございまして、米軍の将兵がそこに常時入って何かやるというふうなことは私どもは予定はいたしておりません。
  109. 上田哲

    上田(哲)委員 この防衛会議室に我々国会議員は入れてもらえますか。
  110. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 この中央指揮所の機能が自衛隊の指揮統制活動について非常に重要な役割を果たす秘匿度の高いものであるということは御理解いただけると思いますが、国会におきます御要請ということでございますれば、その時点におきまして、私どもといたしましては十分な御調整をさせていただきたいというふうに考えております。
  111. 上田哲

    上田(哲)委員 見せてくれるのですか。
  112. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 これはそのときの国会としての御要請でございますれば、私どもはそれを十分に踏まえまして考えたいと思います。
  113. 上田哲

    上田(哲)委員 これで終わりますが、どうもはっきりしません。国会議員がこれを見せていただくことがないならば、防衛庁長官は文民なんですから、文民がお座りになるところに、例えば安保特別委員会の我々が見せていただくことがすぐそのままオーケーということにならないとすれば一つの危険な兆候でありましょう。ぜひこれは委員長から、中央指揮所が完成したのですから、我々がそこを一遍見学できるようにお取り計らいをいただくことをお願いをいたします。いろいろ危険な情勢が迫っていることを特に強調して、私のその要望に対する委員長の御回答をいただいて、御快諾をいただいて終わりたいと思います。
  114. 三原朝雄

    三原委員長代理 ただいま上田君からの御要望につきましては、後日、理事会に諮って防衛当局に対して折衝をいたしたいと思います。
  115. 上田哲

    上田(哲)委員 入れるようにやってくれますね。
  116. 三原朝雄

    三原委員長代理 相談をいたします。
  117. 上田哲

    上田(哲)委員 終わります。
  118. 三原朝雄

    三原委員長代理 天野等君。
  119. 天野等

    ○天野(等)委員 ただいまの上田委員質問に続きまして、私もこの安保体制の情報通信具体運用というような面に焦点を絞ってひとつお脅ねをしてみたいというふうに考えております。  実はただいま問題になりました自衛隊の中央指揮所でございますが、これの逆用が始まったということでございますけれども、これはいわゆる常時継続的に運用されていくのか、あるいは有事の際というような形で運用が考えられているものなのか、この点はいかがですか。
  120. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 この中央指揮所の使い方といたしましては、基本的には有事におきます自衛隊の防衛行動あるいは海警行動その他いろんな行動がございますが、防衛待機をする場合もございますし、さらには大災害の場合に自衛隊として全庁的な対応を必要とするような場合もあろうかと思います。そういったような事態におきまして防衛庁長官としての指揮統制活動を円滑に迅速に実施するためにこれを使おうということでございます。したがいまして、具体的な運営の姿といたしましては、常時は、統合幕僚会議の管理運営室というのがございまして、そこで施設の管理をいたしております。で、何か事が起こった場合に中央指揮所に関係者が参集をして、そこで幕僚活動をいたしますと同時に、必要に応じて防衛庁長官以下が防衛会議室に参集して、そこで協議をする、そういったような運用になろうかと思います。
  121. 天野等

    ○天野(等)委員 その場合に、中央指揮所を運用するといいましても、これは必要になってからその運用のための準備をするというわけにはいかないだろうと思いますので、当然のことながら、その場所を使う、使わないはともかくとしまして、情報等のネットワークはその中央指揮所にはつながっているということになるわけでございますか。
  122. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 有事その他、ただいま申し上げましたような事態に際して必要な情報というものがそこで的確に利用できる体制になっていなければこれは意味がないというのは御指摘のとおりだろうと思います。  具体的に申し上げますと、この中央指揮所の中に諸データを平素から蓄積をして使える状態にしておくというのがまず基本としてございます。そのほかに、今度はそういう事態が起こった場合に刻々と必要とする情報が入ってくるような体制も常時必要でございます。その主要なものとして申し上げますと、例えば航空自衛隊のバッジシステムというのがございまして、そこの情報がありますし、それから海上自衛隊のSFシステムというものもございまして、海上自衛隊関係の諸情報がそこにございますが、それらもこの中央指揮所に集約しておく必要がございますから、この両システムと中央指揮システムとの連接を図ったということでございます。その他もろもろの情報というものはそれぞれの幕僚監部でさらに詳しいものをそのときどきにおいて集めますから、そういうものも直ちに中央指揮所の中に伝達できるというふうな体制をとっているわけでございます。
  123. 天野等

    ○天野(等)委員 ということは、自衛隊のさまざまなセンサーといいますか、そういうものから入ってくる情報については、中央指揮所が使う必要がある場合にはすべてそこでその情報を集めることができるような体制になっている、そういうことでございますか。
  124. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 各自衛隊が持っております情報というものは、程度の高いものから低いものまで千差万別だろうと思います。したがいまして、すべての情報を中央指揮所に集中する必要があるかというと、それは必ずしもそうではないと思いますが、中央指揮所におきまして防衛庁長官が判断をしていただくために必要なものはできる限り中央指揮所の中にそれが利用できる状態にするという考え方をとっておることは御指摘のとおりでございます。
  125. 天野等

    ○天野(等)委員 ということは、有事の際に、艦艇あるいは航空機あるいは目標等の状況というようなものをすべてリアルタイムでもって中央指揮所でそういう情報に接することができる、そういう形になっているものでございますか。
  126. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 御指摘のように、やはり一番基本になる情報と申しますのは我が国周辺におきますいろいろな艦艇なり航空機なりの動向ということになりましょうから、そういったものを把握できることが必要であることは当然でございます。そのために、先ほども申し上げましたように、航空自衛隊のバッジシステムそれから海上自衛隊のSFシステムとの連接はいたしております。したがって、バッジシステム及びSFシステムの情報は、中央指揮所の中でこれをリアルタイムで把握することは可能になっておるわけでございます。
  127. 天野等

    ○天野(等)委員 この中央指揮所の抗堪性といいますか、有事の際における抗堪性、それはどういうふうな程度のものですか。
  128. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 有事におきましてこういった建物がどういった被害を受け得るかというのは、千差万別な事態があると思いますので一概には言えないと思います。  ただ、中央指揮所の構造が地下主体の構造になっております。それから地上部分につきましても、窓はもう極端に少なくするというふうなことで配慮をしておりますので、通常の建物に比べれば非常に抗堪性は高いということが言えると思います。外部からの攻撃に対する抗堪性といたしましても、小銃とかライフル等の攻撃には十分耐え得るということは言えると私どもは思っておるわけでございます。
  129. 天野等

    ○天野(等)委員 小銃、ライフルの攻撃に耐え得るのはこれはもう当たり前でございまして、問題は、核攻撃に対してどういう抗堪性を持っているのか、その点をお尋ねしたいんです。
  130. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 この建物を設計するに当たりましては、核攻撃を受ける事態ということは想定はしていないわけでございまして、そういう意味ではいわゆる一般の建物を非常に補強したというような構造になっておるわけでございます。
  131. 天野等

    ○天野(等)委員 核攻撃を予想しないという今のお話ですけれども、そうなりますと、仮に核攻撃があった場合には自衛隊の指揮中枢については裸になってしまう、そういうことになりますか。
  132. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 核の問題は非常に難しい問題であろうと私は思いますが、私どもといたしましては、我が国に対する核の脅威に対しましてはアメリカの核抑止力に依存をいたしましてこれを抑止するという基本的な考え方に立っておりますから、私どもといたしましては、そういった核攻撃を受けた場合という事態を直接に想定をしてそういう建物の特殊な設計をするということはどの施設についても現在やっていないわけでございます。
  133. 天野等

    ○天野(等)委員 ですから、核攻撃を受けた場合には、今、アメリカの核の傘によって抑止力を働かせるのだとおっしゃるけれども、現実に核攻撃があった場合には自衛隊の指揮はどういうふうになるのか。  今のお話ですと、自衛隊の指揮中枢というのはこの中央指揮所でもって有事の際に行われるのだというお話でしたし、そこにすべて自衛隊の艦船、航空機その他の兵力の動向等もリアルタイムでもって出てくるのだ。そこが核攻撃については全く裸だとしますと、仮にそうだとしますと、結局日本の自衛隊は核攻撃については全く何の防備も考えていない、そういう場合には日本の自衛隊は指揮中枢さえなくなってしまう、そういう理解でございますか。
  134. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 御指摘の問題は、自衛隊の従来からの体制そのものも、そういった核攻撃に対する防護ということを考えて施設がされているということではございませんし、今回の中央指揮所についてもその点は同様だというふうに御理解をいただければいいかと思うわけでございます。  それはなぜかというと、先ほど申し上げましたように、私どもとしては、我が国に対する核の脅威というものはアメリカの核抑止力によって抑止されているということを基本的な前提として対処を考えているからであるというふうに御理解を賜りたいと思います。
  135. 天野等

    ○天野(等)委員 ということは、自衛隊のプログラムの中には我が国に対する核攻撃というものは全く含まれていない、そういうことでございますか。
  136. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 私ども日本基本的な防衛の考え方というものは、既に御承知のように「防衛計画の大綱」でありますとかあるいはガイドライン等でお示ししているところでございますけれども、そういう対処の中に基本としてございますのは、核の脅威に対してはアメリカの核抑止力に依存をしてその抑止が図られる、こういう考え方基本としていることは既に何回か申し上げているところでございます。
  137. 天野等

    ○天野(等)委員 それは同じ答えですから、結局自衛隊の防衛プログラムの中には日本に対する核攻撃はないんだというふうにお伺いするほかないんだと思いますが、一方でアメリカの核兵器、第七艦隊等におきましても、日本の領海にあるかないかはまた別の問題といたしまして、当然巨大な核兵器を持っているわけでございますが、これと対抗するソビエトの核兵器が現実に使用されることはないという前提の上に立って日本の自衛隊の防衛計画というのが立てられているものなのかどうか、この点をもう一度お伺いいたします。現実に、自衛隊として、ソビエトの核兵器が使われるということはないという前提の上に立って日本の防衛計画が立てられているのかどうか。
  138. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 繰り返しになるようでございますけれども、ただいま御指摘の点は、我が国に対する核の脅威に対しましては、アメリカの核抑止力に依存いたしましてそういうものからは守られているというふうに私どもは考えて防衛計画を立てているわけでございます。  なお、私どもとしては毎々申し上げますように、仮想敵国を持って防衛計画をやっているわけではございませんで、その意味におきましては特定の国を名指してのコメントは私どもは差し控えさせていただきたいと思います。
  139. 天野等

    ○天野(等)委員 先ほど中央指揮所とつながっているという形で海上自衛隊のSFシステムのお話がございましたけれども、その辺の問題からまたちょっとお尋ねしたいと思うのですが、五六中業によりますと、自衛艦隊指揮支援システムの近代化というような形で出ているかと思うのですが、これは現在の段階として、すべての自衛艦隊の指揮統合をコンピューター等による操作で指揮できるような形になっているものなのかどうか、これはいかがでございましょう。
  140. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 SFシステム、これは自衛艦隊指揮支援システムと呼んでおりますが、これは自衛艦隊司令官と、それから他の主要部隊の指揮官との間で的確かつ効率的な作戦指揮を支援するために必要な情報を処理あるいは提供するという機能を持ったものでございます。したがって、自衛艦隊司令部と、それから各司令部の端末機器で構成されておりまして、それをさらにいろいろな通信系でつなぐという機能を持っております。したがいまして、基本的な指揮、統制活動を的確に行い得る機能をそこで持っておるわけでございますが、極めて細部の戦術指揮等になりますと、これはまた各級司令部にそういった責任がおろされていくということもございますから、そこら辺は、大きな作戦についての指揮をそこで的確にやるというふうに御理解いただければいいのではないかと思います。
  141. 天野等

    ○天野(等)委員 この海上自衛隊のSFシステムと第七艦隊のやはり艦隊指揮支援システムというのがございますね。こういうようなものとは直接のつながりを持っているものでございましょうか。
  142. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 このSFシステム自体として、そういったアメリカの第七艦隊と直結するシステムをそこに内包しているというような仕組みのものではございません。
  143. 天野等

    ○天野(等)委員 しかし、自衛艦隊の指揮システムですから、第七艦隊からの情報等がそのシステムの中に情報として組み込まれていく、そういうことは当然あるわけでございますね。
  144. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 アメリカの第七艦隊との関係について申し上げますと、自衛艦隊司令部その他各レベルで必要に応じて電話その他で連絡をとるということは当然あり得ることでございます。しかしながら、そのSFシステムの仕組みといたしまして、常時そういう情報を流して統括をしていくという仕組みになっているものではございません。個別に、あくまでも必要に応じて連絡をとり合っていくという仕組みになっておるわけでございます。また、そういう連絡活動を通じまして必要に応じてアメリカ側からの情報提供があり得ることは、これは当然のことだと思います。
  145. 天野等

    ○天野(等)委員 ことしの六月の中旬ごろかと思いますが、海上自衛隊の自衛艦隊司令官とアメリカ第七艦隊の司令官とを含めて共同指揮所訓練というものが行われたというように聞いておりますけれども、この点はいかがでございますか。
  146. 大高時男

    ○大高政府委員 お答えいたします。  本年六月に海上自衛隊と米海軍との間で共同指揮所訓練を行っております。その目的でございますけれども、海上自衛隊と米海軍がそれぞれの指揮系統に従いまして、日本防衛のための共同作戦を行う。その際の指揮幕僚活動、特に相互の調整要領でございますが、これを演練するために行ったものでございます。期間は、先生ただいま御指摘のように六月の十一日から六月の十五日まで、場所は海上自衛隊の横須賀基地、それと在日米海軍の横須賀基地、これは隣接をいたしておりますが、ここで行っております。参加の部隊でございますけれども、海上自衛隊の自衛艦隊等約八十名、それから米海軍、これは第七艦隊及び在日米海軍でございますが、九十名が参加いたしております。訓練統制官については、先ほど先生お示しのとおり、自衛艦隊司令長官の海将長田博と、それから米海軍につきましては、第七艦隊の司令長官、これが当たっております。
  147. 天野等

    ○天野(等)委員 このような、自衛艦隊の司令長官とそれから第七艦隊の司令長官が相互に統制官として参加しているというような非常にハイレベルの指揮所訓練でございますけれども、こういう訓練は今まで行われたことがございますか。
  148. 大高時男

    ○大高政府委員 御案内のとおりに、陸、空につきましては、従来から指揮所訓練を行ってございますけれども、海上自衛隊につきましては、今回初めて行ったものでございます。
  149. 天野等

    ○天野(等)委員 これは、先ほど来私お尋ねしております海上自衛隊のSFシステムと、それから第七艦隊の指揮システム、この相互のシステムのつながりを確かめ合う、そういう訓練の性質を持っておるものでございましょうか。
  150. 大高時男

    ○大高政府委員 今回の訓練につきましては、先ほど申し上げましたように、指揮幕僚活動の演練でございまして、日米相互に作戦計画をつくりましたり、あるいは部隊に対する指示、命令等を作成いたしますが、この手順、手続、こういうものを演練する、それからあわせて日米の幕僚間で調整手続を演練したものでございまして、この間、当然連絡としていろいろな形があり得るわけでございますけれども、電話その他を用いて連絡をしておる、しかも両者隣接した場所にございますので、連絡についてはそれほど苦労はしていないという状況でございます。
  151. 天野等

    ○天野(等)委員 それぞれの司令部を主体にして、海上自衛隊は自衛艦隊の司令部、アメリカは第七艦隊の司令部、これをそれぞれ指揮所にして、そこで非常にハイレベルの指揮幕僚の訓練を行っているということは、これは相互の有事の際における指揮系統の一致といいますか、あるいはその整合性といいますか、そういうものについての訓練がやはり当然行われておったのではないかというふうに考えるわけでございます。この辺はいかがですか。
  152. 大高時男

    ○大高政府委員 日米双方の指揮幕僚でございますが、これは相互に初めてでございますし、どういう形でお互いに調整をやるかということでいろんな形で連絡をし合い、調整をやったということでございます。
  153. 天野等

    ○天野(等)委員 ここで訓練というものの性質なんですけれども、恐らく現在の自衛隊の訓練というようなものは一つの具体的な状況を想定した上で、それに対して自衛隊の幕僚部がどういうふうな対処をし、またアメリカ軍の方がどういう対処をしというような具体的なプログラムをつくりながら、それをコンピューターにインプットしながら整理をしていく、その訓練自体が一つの有事の際のモデルになってくる、そういう形で恐らく訓練の結果というものが情報として蓄積をされていくんじゃないかと思うのですが、そういう形で訓練がされていくんじゃないでしょうか。いかがでございますか。
  154. 大高時男

    ○大高政府委員 ただい玄先生御指摘のとおり、こういう共同訓練を行うことによりまして、将来、共同対処いたします際にどういう問題があるかということは、あわせていろいろ検討の対象になるということになろうかと思います。
  155. 天野等

    ○天野(等)委員 検討の対象になるというふうな言い方をすれば、確かに検討の対象かと思いますけれども、現実にはどういう訓練の姿そのもの一つのプログラムとして組み込まれて、そうしてそれが現実の緊急事態の場合、有事の際にも、一つの情報として生かされてくる。当然そうでなければ、近代戦争というものが戦えるものではないだろうと思うのですが、そういう具体的なプログラムづくりを非常にハイレベルで行ってきたというふうに言えるのではないでしょうか。
  156. 大高時男

    ○大高政府委員 お答えいたします。  共同指揮所研究につきましては、ただいま始まったばかりでございます。現実の場で実際に日米の両司令部がどういう形で相互にそれぞれの指揮系統を通じて指揮し、調整をしていくかという問題について、ただいま始めたばかりでございまして、その結果がガイドラインの検討等に役に立つということはあり得ようかと思います。
  157. 天野等

    ○天野(等)委員 これは日米の共同訓練というものとは少し違う、チームスピリット別の演習中に、本年の三月二十一日でしたか二十二日でしたか、島根県沖でアメリカの航空母艦キティーホークとソビエトの攻撃型の原子力潜水艦との接触事故というようなことがあったということで、国会でも問題になったことがあると思いますけれども、この事故の際に、キティーホークの艦長あるいはアメリカの司令官等の言葉の中で、ソビエトの原潜の方から何の連絡もなく、ソビエトの潜水艦が浮上していたにもかかわらず点灯をしていなかったというような言いわけめいた話が出てきたわけですけれども、重要なのは、当然情報として入ってこなければならないソビエトの原潜の姿が情報として入ってこなかったときには、極めて近代的な姿を持った戦争の中でも非常に不測の事態が起こり得るものなのではないか。逆に言いますと、そのくらい、あらかじめどういう情報がプログラムの中に組み込まれているかということが、これは、訓練ではもちろんですけれども、恐らく実戦の中でも非常に重要な問題なんじゃないだろうか。そのためにも、恐らく日本の自衛艦隊の動向あるいは潜水艦隊の動向というようなものは当然アメリカの艦隊指揮のプログラムの中に入っていなければならないだろう。それが入っていなければ、これは行動の中で不測の事態が起こってくるのじゃないか、そういうふうに考えるわけです。したがって、自衛隊の軍事情報それからアメリカ軍の軍事情報というものは当然密接につながり合っているものだろうというふうに考えるのでございますが、いかがでございましょうか。
  158. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 我が国有事の場合に、我が国防衛のための日米の共同対処行動を行うに当たりましては、御指摘のように日米両国間におきまして適切な調整活動が行われることは当然必要になるわけでございます。それを実際具体的にどういう形でやっていくかということがまさに五十三年につくられましたガイドラインで、今後、日米間で研究をすべき課題として定められているわけでございまして、逐次そういった問題についての検討も、日本の自衛隊それから在日米軍というものとの間で進められていっているわけでございます。  しかし、ただいま御指摘のありましたようないわゆるSFシステムと第七艦隊の情報システムというものを直結させてやるということは必ずしも必要ではないのでございまして、日米間の共同作戦の要領を調整するということはほかの方法によりまして十分可能であるというふうに私どもは考えておるわけでございます。
  159. 天野等

    ○天野(等)委員 相互の情報についての交換という形で自衛隊とアメリカ軍の間で行われている、そういう常時的な情報の交換というものがあるわけでございますか、あるいは日本側からの提供という形で情報の提供がなされているものでございましょうか、この点はいかがでございましょう。
  160. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 まず、共同対処をとる有事の場合を考えますと、これはやはり各級レベルにおきまして、各級の部隊のレベルで対応する米軍の部隊と自衛隊との間でいろいろな情報の交換が必要であることは、これは言うまでもないことでございますから、必要に応じまして所要の情報交換活動をやることになると思います。  また、平時におきましても、そういった有事に備えてのいろいろな、先ほども例がございました共同指揮所訓練のような例もございますし、あるいは共同訓練を別の形でやる場合もございますし、いろいろな場を通じまして戦術技量の交換等の活動もやっております。それから、そういった常時の研究活動というものも、これはやはり各部隊レベルにおきまして随時行われているものでございまして、そういった関係ができる限り緊密かつ円滑に実施されていく必要があるということは御指摘のとおりだろうと思います。
  161. 天野等

    ○天野(等)委員 そこで、シーレーン防衛と言われているものとの関連なんでございますけれども、今国会の予算委員会の中曽根総理の上田議員に対する答弁の中で、シーレーンというのは日本周辺の数百海里の哨戒、護送、沿岸防衛、港湾の防衛あるいは海峡防衛などその総合的、複合的な効果を目指すものだ。またもし航路帯を設ける場合には、これは千海里以内というようなものになるというような答弁があったと思うのでございますけれども、このもし航路帯を設ける場合はという場合のもしというのは、これはどういう状況を考えていることなんでございますか。
  162. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 いわゆるシーレーン防衛とはどういうものかということにつきまして、これは毎毎総理を初めお答え申し上げておりますが、におきまして国民の生存の維持あるいは継戦能力を確保するということのために、海上交通の安全の確保を図っていく必要があるということでございます。その方法といたしまして、ただいま御指摘のありましたようないろんな諸作戦、例えば哨戒でございますとか護衛でございますとか、あるのは港湾、海峡等の防備といったような諸作戦を組み合わせて、その累積効果によって海上交通の安全を確保するということを目的としたのが、シーレーン防衛ということでございます。  しからば、そのシーレーン防衛のためにどういった防衛力の整備をやっているかという点につきまして、従来からお答え申し上げておりますように、我が国周辺数百海里、あるいは航路帯を設ける場合にはおおむね千海里程度の海域において海上交通の安全を確保し得ることを目標として防衛力の整備をやっていくという考え方を申し上げておるわけでございます。そこで、もし設ける場合はということを航路帯について申し上げておりますのは、つまりただいま申し上げましたように、海上交通の安全を確保するための諸作戦というのは常に航路帯を設けるとは限らないわけでございまして、その他のいろいろな作戦によりまして海上交通の安全が確保されれば、それはそれで目的を達するわけでございます。したがって、航路帯を設けての作戦をやるというのは、必要があると判断された場合にこれを設けるということでございます。例えば南東航路あるいは南西航路というのが普通一般に考えられる航路帯であるわけでございますけれども、これはあくまでも事態の様相を見ながら、必要に応じて設けていこうという考え方に立っているということでございます。
  163. 天野等

    ○天野(等)委員 私がこういうことをお尋ねしたのは、もしというのは、有事の際という意味なのかどうかというふうに考えたわけですが、必ずしもそうではない。今、有事の際でも航路帯を設けない、そういう作戦活動もあり得るんだからというようなお答えですね。そうしますと、このシーレーン防衛というのは、有事の際における防衛の問題、哨戒、護送その他の作戦の問題であって、平時における問題ではない。平時における日本周辺数百海里における哨戒、護送というようなのとは違う概念でございますか。
  164. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 シーレーン防衛というこの活動は、日本が有明の場合に海上交通安全の確保を図るための諸作戦を総称してそういうふうに申し上げているわけでございます。  平時は一体どうなんだということになりますと、これはいわゆる監視、警戒の活動というものを海上自衛隊もやっておるわけでございまして、それはただいま申し上げましたような有事における作戦の概念とはまた別の活動というふうに御理解をいただければよろしいかと思います。
  165. 天野等

    ○天野(等)委員 それで、先ほど来のお話でいきますと、有事の際におけるシーレーン防衛というものについては、これはアメリカとの共同対処ということが前提でございますか、それとも日本の自衛隊の独力による対処ということが前提でございますか。
  166. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 我が国の防衛についての基本的な考え方は、「防衛計画の大綱」に示されているところでございます。それは限定的かつ小規模の侵略に対しては独力で対処をする。しかし、独力で対処しきれない場合は米軍の来援によって侵略を排除するというのが基本考え方でございます。したがいまして、そのシーレーン防衛といいますのも、有事におきます日本の防衛活動の一環でございますから、この大綱の考え方に即して申し上げますれば、極めて小規模のもので限定的なものであれば、海上自衛隊が独自で対処するというケースももちろんあり得るかと思います。しかしながら、独力で対処しきれないというような事態が起こりますれば、当然のことながらこれは米軍の支援を要するわけでございまして、そういう場合には、日米共同対処で作戦を展開をしていく、こういうことに相なるわけでございます。
  167. 天野等

    ○天野(等)委員 現実に今論議されているシーレーン防衛、その強化といいますか、その分担といいますか、そういうようなものについて言われているのは、いわゆる小規模侵略に対する独力での問題ということではなく、むしろ日米共同対処という形の戦術、そういうものがとられる場合のことではないか。なぜかといいますと、その主力部隊として海上白術隊が挙げておられますのがP3Cであったり、あるいはその他の対潜哨戒群であったりというような形で考えておられる。これは恐らく独自の防御力では、P3Cにしましても日本の海上白術隊だけの力でこれを有効に使い切ることができるかどうかということになれば、これはむしろ海上自衛隊とアメリカとの共同作戦ということを前提にした一つの武器なのではないかというふうに考えるのでございますが、この点いかがでございますか。
  168. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 我が国の防衛力整備の目標は、「防衛計画の大綱」において示されているわけでございます。この「防衛計画の大綱」で定められておりますものは、先ほども申し上げましたように、限定的かつ小規模の侵略に対しては、原則として独力で排除し得るものということでございますから、これは大綱で示されている防衛力が常にアメリカの支援というものを要するようなものというわけではございませんけれども、しかしながら、もし独力で対処し切れない場合は、やはりアメリカの支援が必要であるということで、安保体制というものの裏づけが常にあっての抑止力というふうに私どもも考えておりますので、そういった日米安保体制の円滑な運用というものの一環としての日米共同対処が円滑に実施し得る態勢を平素からつくっていくということが、有事を起こさないための抑止力としても重要である、そういう観点からのいろいろな共同研究もやっておりますし、あるいは共同訓練もやっておる、こういうふうに御理解をいただければいいかと思います。
  169. 天野等

    ○天野(等)委員 時間も迫ってますのでちょっと急ぎます。  今度は在日米軍の問題ですけれども、在日米軍は在日米軍、あるいは横須賀に主要な基地を持っております第七艦隊等は独自の指揮系統を持っていると思うわけですけれども、これは日本国内の通信施設その他を使用しながらの指揮系統という形になっていると思いますけれども、この点はいかがでございますか。
  170. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 自衛隊と米軍との間の通信回線というものは今設置されておりますが、という事柄の性格上、具体的にどことどこを結んでいるかということは公表を差し控えたいと思います。
  171. 天野等

    ○天野(等)委員 それは結んでいることはあるということですね。
  172. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 自衛隊と在日米軍の主要司令部との間に必要な通信回線は現在保有しております。
  173. 天野等

    ○天野(等)委員 在日米軍に対して、在日米軍の指揮系統についての通信施設を提供しているのかどうかということを尋ねているのですが。
  174. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 お答え申し上げます。  御質問趣旨を必ずしも私、理解いたしませんでしたが、御承知のように安保条約、地位協定に基づきまして各種の施設、区域を米軍に提供しておりまして、安保条約の目的のために必要な限りにおいて、そういう施設、区域の中には当然米軍の指揮通信系統の施設、区域が具体的に含まれているということは従来から明らかになっておるところでございます。
  175. 天野等

    ○天野(等)委員 自衛艦隊の指揮系統について集中的な指揮統制をしている、そういうシステムの上で自衛艦隊が動いているということは事実であろうと思いますし、また第七艦隊は第七艦隊で一つの中枢の指揮所を持って活動している。問題はそういう指揮所が核攻撃等の目標にされる危険性、これについて自衛隊は全く考えていないのか、あるいはそういう事態も予想しておられるのか、どういう攻撃をかけられるということを予想しておられるか、その辺はいかがでございましょう。
  176. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 先ほどもお答え申し上げたことでございますけれども、我が国の防衛につきましては、核の脅威に対してはアメリカの核抑止力にこれを依存していこうということで考えておるわけでございまして、ただいま御指摘のあったように直接私どもの施設が核攻撃にさらされるということはそういった抑止力によって防止されていくであろうということを基本として考えているわけであります。
  177. 天野等

    ○天野(等)委員 自衛隊の施設のことはもう先ほどお聞きしたのです。アメリカの在日施設が核攻撃というようなものを受ける、そういうことを予想していないのかどうか、そういう状況を考えておられないのかどうか、そのことです。
  178. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 米軍の個々の施設、区域につきまして、アメリカが抗堪性という意味からどのような対策を考えておるかということにつきましては私ども承知いたしておりませんが、先ほど防衛局長の方から御答弁ありましたように、これは米軍の基地といえども我が国の領域内の施設、区域でございますから、いずれにいたしましても、米軍に対するものであろうと我が自衛隊に対するものであろうと、これは我が国に対する核攻撃ということでございますので、核攻撃というものについては、これは核攻撃を含めまして我が国に対する攻撃というものをそもそも安保体制及び我が国の自衛力によって抑止するということでございますので、そういう核攻撃というものを前提とした考え方というのは私どもはとっておりません。
  179. 天野等

    ○天野(等)委員 先ほど防衛局長お答えになったのは、日本の自衛隊に対して、日本の自衛隊はアメリカの核抑止力に頼っているのだから、それで核攻撃がなされないだろうというのが前提だったので、私が今お尋ねしたのは、アメリカ軍の指揮中枢に対して核攻撃がなされた場合。これはなされないという前提でもって考えているのは私はおかしいと思うのです。それがなされた場合に自衛隊としてどうなのかということを私はお尋ねしているのです。このことをお尋ねして私は終わりにしたいと思います。
  180. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 ただいま外務省アメリカ局長からもお話がございましたように、日本にあるアメリカの施設に対する攻撃はすなわち日本の領域に対する攻撃になるわけでございますから、私が申し上げておりますことも、自衛隊の施設についての御質問でございましたからそういう表現はとったわけでございますけれども、要するに、日本に対する核攻撃というこの脅威につきましては、アメリカの核抑止力によって抑制されていくということを基本の考えとしてやっておるということを申し上げたいわけでございまして、その点においては、先ほどアメリカ局長からも申し上げたことと同様であると思います。
  181. 天野等

    ○天野(等)委員 それでは、結局在日アメリカ軍に対しても核攻撃はなされない、それを前提として考えていらっしゃるということのようでございますから、一応それはお聞きした上で、きょうは終わりにいたします。
  182. 三原朝雄

  183. 関晴正

    ○関委員 私は、先般陸奥湾で行われました日米合同訓練についてお尋ねをしたいと思います。  私ども社会党の方から、平地に波乱を起こすようなことはやめてくれ、こういう申し入れを防衛庁長官にいたしました。そのことが聞き入れられたのかどうかは知りませんけれども、この日米合同訓練なるものが七月二十日から七月三十一日までの十二日間、そのうち、アメリカの軍艦が訓練をしたという日数は二十二、二十三、二十四の三日間、こうなっておるようでありますが、これは当初からの予定であったのかどうか、伺っておきたいと思います。
  184. 大高時男

    ○大高政府委員 先生御指摘の、陸奥湾における日米共同訓練でございますが、これにおきまして、米側の艦艇でございますオキナワが二十二日から二十四日までここにおりましたことを、私どもの方も承知いたしております。
  185. 関晴正

    ○関委員 ですから、これは初めからの計画であったのかと聞いているのです。
  186. 大高時男

    ○大高政府委員 そのように承知いたしております。
  187. 関晴正

    ○関委員 それならば、どうしてあなた方の方で発表した訓練の中に、三日間はアメリカの訓練日数と書いてないのですか。特別訓練を実施しますといってあなた方の発表した、海幕広報室ですか、この中には、「海上自衛隊は、次により米海軍との掃海特別訓練を実施します。期間 五十九年七月二十日から三十一日まで」。この発表は誤まりですか。
  188. 大高時男

    ○大高政府委員 共同訓練でございますけれども、先生御案内のように、この双方が行います訓練につきましては、最初、訓練用の機雷を敷設し、これに対して掃海、掃討等の訓練を行う。さらに、この訓練が終わりました後に、訓練用機雷を確実に揚収する必要がございまして、この全体が訓練、こういう形になっております。またさらに、天候等の自然条件もございますので、こういうのを見まして、若干の余裕を見て訓練期間というものを想定いたしておるということでございます。
  189. 関晴正

    ○関委員 わずか三日間の訓練で、何の効果をここにもたらすのです。何を期待したのです。何のために合同訓練ということが必要であったのです。
  190. 大高時男

    ○大高政府委員 掃海訓練につきましては、それぞれ日米ともに特色を持っておるわけでございますけれども、やはり米軍のすぐれた戦術技量というのを習得しながら、お互いに意思疎通をやっていく、そういうことで、この共同訓練は非常に意味があるわけでございます。
  191. 関晴正

    ○関委員 私は、いいかげんな答えだと思うのですよ、今のような答えは。昭和四十五年までは、確かにアメリカとの合同訓練ということでやったでしょう。そこで、その後我が国独自でやってきたわけですよね。間に合ってやってきているわけです。アメリカの海軍がここに入ってこなければならないという必然性ですね、そして、今特殊な訓練と言いましたね、アメリカでなければならなかった特殊な訓練というのは何です。
  192. 大高時男

    ○大高政府委員 日米共同訓練、特に掃海訓練につきましては、本年の二月も周防灘において既に実施をいたしております。  それから日米両軍の戦術技量でございますけれども、それぞれ国が違いますれば当然掃海のやり方等につきましても特色が出るわけでございまして、お互いに相互の戦術技量というものを切礎琢磨できるいい機会であるという意味におきまして、先ほどの米側は米側の特色があるというふうに申し上げたわけでございます。
  193. 関晴正

    ○関委員 こうした、言うなれば津軽海峡封鎖の話まで出てきてお互い非常に神経をとがらせているときですよ。そういう中に入ってきて特別訓練をする。青森県内の漁業協同組合の諸君にお話をされたときに何という説明があったかといいますと、四十五年までは確かにアメリカの指導を受けたが、今ではアメリカの技術よりも日本の技術の方が高まっている、だからこっちが教えるためにやるようなものだとのお話もあった。そこで漁民は、そんなばかなことで我々の海をいいかげんにされても困るし、いつまたそのためにソ連の弾が飛んでくるかわからないような、災いを招くようなこともおもしろくない。その上このアメリカの軍艦がオキナワという名前ですよね。一体何です、アメリカの軍艦がオキナワという名前をつけてやってくるということについて、何とも感じませんか。沖縄というのは日本の領土ですよ。我が国の領土の名前を僣称してオキナワなんというものがやってくる。航空母艦だと言っておる。これは、上陸用舟艇として、沖縄を攻撃するときに役立ったからオキナワとつけたんだなどと言われておる。そういう名前のものを陸奥湾の中に入れて、あるいはこういう軍艦が他国を歩いて、日本の国のためにもならない、と私は思いますよ。そういう意味において、今度の陸奥湾における訓練というものは、何の意味もなかった。あったとすれば一つのデモンストレーション、大変よくないデモンストレーションです、これは。日米親善にも役立たないデモンストレーションをやっていったと、こう断定していいだろうと思うのです。しかも、何の技術を施したか極めてあいまい。P3Cというのが機雷を敷設していったでしょう。敷設した後機雷を片づけるのにそれぞれまた働いたでしょう。敷設訓練でやったというならば敷設訓練でやったかもしれない。あるいは掃海、掃討、水中処理の訓練であるといえばそうであったかもしれない。だが、ここで合同訓練でやらなければならない必然性というものは一つもない。周防灘でやったからやりました、こんなばかな理由がありますか。周防灘でやったこと自体だって何のいい意味もないのですよ。既成事実が一つあったから陸奥湾でやって何が悪いか、こんな論理がどこにありますか。そのときに、ことし一遍で勘弁してくれということだったから勘弁してやると漁民も答えて許したというのですが、こういうようなことはこの後二度と来ることのないよように十分ひとつ気をつけていただきたいし、そういう意味において対処していただきたいと、こう思います。  この話は、あとこれ以上何分もやれませんが、そういう意味においてひとつ反省をしておいてください。  二つ目の質問をいたします。  二つ目の質問は、あの青森県の上北郡六ケ所村に核燃料サイクル基地三点セットを置きたいとの要請が七月二十七日電事連の会長からなされました。この六ケ所村というのは、三沢市にある天ケ森射爆場に近いところでありますし、また利用するむつ小川原港からはわずか六キロも離れておりません。そういう意味において、これから射爆場の対地訓練あるいは制限海域、それから外れて誤射、誤投ということが十分に心配されます。今日まで、アメリカ軍のこれによるところの誤射、誤投の実例というものは百四十二件と出ているわけであります。そういうことを見ますときに、最も危険な核燃料の再処理あるいはフランスやイギリスで再処理した後の品物を送り届けられる受け入れ港としてのむつ小川原港、さらに廃棄物の貯蔵庫そうしてウランの濃縮工場、こういうことを見ますというと、これは天ケ森射爆場がそこから移転するしかないだろう、私はこう思うのです。移転してくれるならば、それはまた結構です。しかし、その計画があるとは今のところなかなか我々は推定できない。あるというならば、この際、長官から答えていただくし、ないとするならば、この問題についてはやっぱりそうした物騒なものをここに置けないじゃないか。水戸の射爆場が移転するときに、あそこに東海の再処理工場ができる、そのことと関連して水戸の射爆場もまた移転せざるを得なくて、しました。こういうところからいけば、当然あの地域にそうしたものを置くことは防衛庁としても許すわけにはいかない、こういう判断が一つ出てくるんではないだろうかと思いますので、この点については長官からお考えを伺いたいと思います。
  194. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答えいたします。(関委員「長官だよ」と呼ぶ)防衛施設庁長官でございます。  六ケ所村の対地射爆場の問題でございますが、これは地位協定に基づきまして米軍に提供しております、米軍の練度維持のための非常に重要な施設でございまして、これを移転させるということは考えておりません。  また、ただいま御指摘の核燃料サイクル基地につきましては、先般御質問がございました段階では、まだ関係省庁との協議ができておらない、私どもは新聞で承知しておる程度だという御答弁を申し上げましたが、その後、七月三十一日でございますか、関係十三省庁との会合がございまして、この内容についての説明を受けたという段階でございます。  私ども承知しておりますところでは、この射爆場よりは十キロないし十二キロ離れた地点ということで、今後御指摘のような誤爆、誤投下――誤投下と申しましても、これは訓練用の模擬弾でございますので……(関委員「いや、困るよ」と呼ぶ)その点、誤射、誤投下ということのないよう、米軍の訓練方法等についても十分今後協議せなければいかぬと思いますけれども、この点については、そういう御懸念のような危険がないよう関係省庁とも十分協議をして対応してまいりたいと考えております。
  195. 関晴正

    ○関委員 もう一つ外務大臣にお尋ねしたいと思います。  それは、この三沢にF16が来年早々配備される。そうなりますというと、訓練回数というものもまた多くなるわけです。そういう意味においては防衛庁長官の方に、先ほどの方は施設庁長官でありましたが、防衛庁長官の方からもひとつお考えをいただきたいし、もう一つ私は外務大臣に聞いておきたいことは、このF16というのは核搭載を専門とする飛行機なんですよね。しかし今日までしばしば外務大臣は、核搭載はさせない、我が国の非核原則に立ってそういうことはさせない、こうお答えはあったと思います。しかしお答えだけで、その取り決めがあったというふうには聞いておりません。そういう意味で、配備されるまでの間にきちんと、そういうようなことはアメリカにはさせない、我が国としてもそういうことについては認めない、こういう文書交換をした上で、きちんと整えることが私は必要ではないかと思うのですが、その点で外務大臣からお答えをいただきたいと思います。
  196. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは文書交換をする必要も何もありません。アメリカとの間で安保条約事前協議条項というのがありまして、アメリカが核を持ち込む場合は事前協議にかけなければならぬというこれは約束でありますから、義務でありますから、そういうことのない限りは、核の持ち込みは三沢といえどもあり得ないということです。
  197. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 施設庁長官からもその趣旨についてお話がありましたが、関さんのお考えはよくわかりますが、日米安保、これが我々としては非常に重要な問題でございますので、その趣旨にのっとっていろいろの施策を行わなければならぬ。ただ、住民の方々の不安あるいは危険、そういうもののないようにできるだけ努力をしてまいりたい、こう考えております。
  198. 三原朝雄

    三原委員長代理 午後一時より委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二十五分休憩      ――――◇―――――     午後一時開議
  199. 三原朝雄

    三原委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。橋本文彦君。
  200. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 私は、騒音で有名な厚木基地が選挙区でございまして、連日帰りましてその騒音のあらしを受けている、こういう状況でございます。  八月二日の読売新聞の冒頭には、「陳情無視騒音の猛爆」こういうタイトルで、「眠れぬ夜に怒り」、こう書いてあります。「蒸し暑い夏の夜に、鼓膜が破れそうな爆音のあらし――。」こういう表現で始まりまして、たまりかねた住民が連日、関係の市長に抗議をやっている。前回の秋の訓練では四十日間で苦情がありましたけれども、今回は、半月たった現在で苦情は倍になっている。その苦情の最たるものは、今回は低空飛行が多い、そういう状況で怒りが爆発する寸前だ、こういう状況にあります。  そこで、この厚木の騒音というものは現地にいなければわからないと思いますので、この現実の騒音を実際に外務大臣防衛庁長官あるいは施設庁長官が体験したことがあるのかないのか、もしあるとすればどう感じているか、もしないのであれば、今後どのようにこの騒音問題に取り組んでいただけるのか、その辺の御決意をまずお述べいただきたいと思うのですが、よろしくお願いいたします。
  201. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は直接騒音は聞いておりませんけれども、しかし、市長さん初め関係の住民の皆さんからは何回か承りました。住民の立場からすると本当に大変だろうと同情申し上げておるわけでございますが、しかしまた一面、これは日米安保条約日本アメリカとの間に結んでおって、これの効果的な運用を図るという意味におきましても、ミッドウェーの離着陸訓練ということはまた必要な訓練でもあるわけでございます。そうしたことも根底に踏まえながら、我々としてはこの問題の解決のために努力をしておるわけでございますし、とにかく、先ほどから防衛庁でも答弁されましたように、できるだけ早く厚木から他の地域へ移すということが必要であるということで防衛庁としても努力されておりますし、我々もそれを期待をいたしておるわけでございます。
  202. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 私も現地へ行って騒音を聞いたことはございません。しかし、外務大臣がお述べになったように、これは現地へ行かなくても、現地からの声というのは各方面から私の耳にも届いております。  私も、これは大変御迷惑なことでえらいことだろうということは重々承知をしております。また防衛施設庁といたしましても、米軍側にできるだけ住民の感情を配慮して善処できないかということも言っておるわけでございますが、いわゆるアメリカとの日米安保、しかもアメリカ側としては、訓練をしっかりやるということが日米安保に寄与するという立場でいろいろやっておりますので、こちらの方からの善処方の要望はいたしまするが、向こうとして最大の配慮を払いながら訓練を続けるというような状況になっておるわけでございまして、これは今外務大臣からもお話がありましたとおり、この訓練飛行をする飛行場の問題を抜本的に考え直さなければならぬ、そういうことで、先ほど来の話のありますようないろいろの施策を考えております。  この問題につきましては、私も防衛庁長官として大変責任を感じております。私も全力を傾注いたしまして、早くこの問題が解決できるように懸命の努力をいたしたい、これが私の今の心境でございます。
  203. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答えいたします。  まだ機会を得ておりませんで、私も現場でもって聞いておりません。しかしながら、この問題を実感を持って解決に取り組むために、なるべく早い機会に、実際の騒音を聞かせていただくべく、現地に赴く予定をいたしております。
  204. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 現地の声は、とにかく中曽根総理に来てもらいたい、こういう声もあります。そういう意味で、早急に外務大臣防衛庁長官、現地へ一回来てください。  これはこの間も話したのですけれども、この騒音はどんなものかなという形で現地に行っても、そうそう精神的には苦痛はない。何だこんなものかという感じを受けるかもしれませんけれども、やはり聞こうと思ったのと、聞かざるを得ない状況に置かれている住民とはえらい違うと思うのです。その辺も認識して聞いてくださいませんか。よろしくお願い申し上げます。  今回の騒音は、とにかく関係の市長そのものが言うことには、もう受忍の限界を超えておる、こういうことが一般的な集約されたその結論なんです。市民の中では、とにかく操縦士の顔が見える、これほど今回の訓練は低空飛行になっている、そして、いつ落ちるかわからぬ、この不安が大きい、こういうような形で、騒音というよりも事故の危険性をも心肥しておられる。その中で、お願いしてどうしてもだめならばもう飛ばさないようにするしかないというような、こういう過激な声まで出てきている始末です。具体的にどうするのだというと、花火を上げようとか石ころをぶつけようと。石をぶつければぶつかるんじゃないかというような、それほどの低い状況で飛んでいる、こういうような発言がございました。私の方も連日連夜怒りの電話をいただきまして、その気持ちを冒頭に述べさせていただきました。  ぜんだって、六月の末に、ハワイで第十五回の日米安全保障事務レベル協議が開かれました。この中で、アメリカの方では、ミッドウェー艦載機の夜間発着訓練に関して、厚木基地の代替施設問題の早期決着を要望しておる。これに対しまして小谷防衛施設庁次長は、解決のために最大限の努力を尽くす、このように述べられております。  そして、これに先立ちまして、外務大臣あるいは防衛庁長官に神奈川県の大和市から、厚木基地の米海軍空母ミッドウェー艦載機の夜間連続離発着訓練の中止を求める署名簿が手渡されたと思います。その際に安倍外務大臣は、単に防衛庁、外務省だけの問題ではなく、内閣全体で解決すべきことだ、このように述べられたというふうに新聞報道ではあるのですけれども、内閣全体で解決すべきことというのは一体どういう趣旨なのか。この問題に関しましては、もう以前から、レーガン大統領からもじきじきに政府に対して、厚木の問題は何とかせいと言われたと思います。それを今時点で、内閣全体で解決すべきことというのはどういう趣旨なのか。受け取りようによっては、まだ何もやっていない、手もつけていないというようにとられますけれども外務大臣、いかがでしょうか。
  205. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは今防衛庁長官も決意を述べられましたし、また、施設庁が中心になって懸命に努力をしておられるわけでありますが、しかし、ただ施設庁だけに任せてやるということではなくて、事はやはり、各省といいますか、内閣がこれに取り組んで解決しなければならぬほどの重要な問題だ、非常に重大性を私は強調したわけでありまして、これは日米関係ももちろんありますし、そしてまた日米安保条約というものをちゃんと運営していくという面からの問題もありますし、騒音の問題、住民のそうした非常な不満を持っておられるそういう気持ちというものもよくわかるわけであります。しかし、これは解決しなければならぬ、そしてこれはまさに内閣として全体的に取り組んでいくほどの重要性を持った大きな課題である、こういうことを言っておるわけでありまして、重要性を強調するという点から、内閣、こういう立場で言っているわけであります。
  206. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 今回アメリカ側から事前通告というのがありまして、期間は七月十七日から八月二十五日、まさに暑い夏の夜に騒音のあらしをまき散らすわけですけれども、その際に、七月に関しては土曜日、日曜日は飛ばない、しかし八月は、日曜日は飛ばないけれども、土曜日は飛ばしてもらいたい、時間は夜の六時から十時まで、こういう通告があったと思うのですが、こういう事前通告があった場合には、日本側としてはそれに対して条件をつけるとかあるいは内容を変更するとかということは一切できないものでしょうか。通告をそのまま一〇〇%額面どおりに受け取らざるを得ない、こういう状況に現在あるわけでしょうか、お聞かせをいただきます。
  207. 千秋健

    ○千秋政府委員 ただいま先生御指摘のとおり、米側からの通告はそのような通告が参っております。それで、私どもとしましては、やはり土曜日は皆さんがお休みになっている日でございますので、土曜日の夜の訓練はやめてほしいということで米側に申し入れておるわけでございますが、その回答が来ないうちに時間も参りましたので、そのままの通告を申し上げたという状況でございます。現在においては、まだ米側から八月の土曜日をどうするかということについての回答を待っておるという状況でございます。
  208. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 今のお答えですと、八月は初めから土曜日はする、こうなっておったのでしょうか。
  209. 千秋健

    ○千秋政府委員 米側の通知は、八月は土曜日を実施するという通知でございます。
  210. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 その際に日本側は、八月について土曜日もやめてほしいという申し入れをして駒るわけですな。その申し入れに先立ちまして、七月の段階では土曜日は飛ばないのに、なぜ八月は飛ぶのかというような理由はお聞きになっておりますでしょうか。
  211. 千秋健

    ○千秋政府委員 今回の通報は、米側から八月の二十五日までこの訓練をするという通知をいただいております。その場合、従来からもそうでございますが、訓練の始まりの方は割に疎な状況で訓練が行われる、それでだんだん密になっていくという例でございます。そういう意味で、米側の方も七月は土曜日を休んでやる。八月になりますと、やはり一定の量の訓練を消化しなければならないという観点から、八月は土曜日もせざるを得ないのだということは申しております。
  212. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 冒頭に申しましたように、短時間の間で相当怒りの抗議が殺到しておる。昨年の秋に比べるともう既に倍以上の苦情が来ておる。それもとてつもない雰囲気のもとでの抗議だ。今までのは何とかしてほしいというようなお願いだったけれども、今度は怒っておる、飛ばさないようにする、こういう抗議があるのです。言ってみれば住民の怒りは限界に達しつつある。何かのきっかけによってこれが怒りを抑えることができなくなるのではないか、こういう状況にあると私は考えております。これはオーバーではありませんよ。したがいまして、あしたが土曜日です。何とか土曜日もこの訓練だけはストップさせる、これをぜひともお願いしたいと思います。住民の願いはとにかくタッチ・アンド・ゴーだけはやめてもらいたい、こういう要望でございます。政府努力を切にお願いいたします。  現在安保条約のある限り訓練が中止できないというのであれば、何とか時間の問題あるいは航行の高さの問題、現在低いから苦情が来ておる、高度の問題あるいは時間短縮の問題、せめて土曜日、日曜日ぐらいは避けてもらいたい。また、二十五日まではお盆休みもあります。いろいろな方たちが安息の日でございますので、ぜひとも強力にこの申し入れをしてください、お願いいたします。  それから、タッチ・アンド・ゴーとは離れまして、今後における厚木飛行場のいわゆる米軍による飛行活動についてお尋ねいたします。  厚木飛行場における航空機騒音に関しましては、昭和三十八年九月十九日に日米合同委員会で厚木飛行場における航空機騒音の軽減に関する規制措置協定、これが取り決められました。これに基づいて現在飛行しているわけでございますけれども、このときの基地周辺の市の人口が三倍から四倍にふえておる。この協定ができてから二十一年たっている。したがって、現在のこの超過密化した市街地におきましては、昭和三十八年当時の基地周辺の現状とはもうえらい変わりようだ。こういう中でその規制措置協定が現在まで生きているということはおかしいと思うのです。早急にこれを、実情に合わせたような飛行の活動を考える気持ちはありませんかどうか、お尋ねいたします。
  213. 千秋健

    ○千秋政府委員 ただいま御指摘の厚木の騒音規制に関する合意でございますが、これは当時におきましても騒音問題をいろいろ考えまして、先生いろいろ御指摘のような飛行時間とか飛行高度、いろいろそういう内容につきまして米軍の訓練の運用に当時許される最大限の制約を決めたわけでございます。その中で現在も訓練が行われておるわけでございまして、さらにこれ以上の運用上の制約を課すというのは米軍の訓練にいろいろ支障があるということで、非常に困難ではないかというふうに考えております。
  214. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 今の御答弁ですと、基地周辺の実情というものは全く考慮されないとしか受け取れませんけれども、とにかくこの基地周辺の環境ということを十分に認識していただきたい、そしてこの協定を全面的に見直ししてもらうしかないと思うのです。特に、六時から翌朝の八時までの間すべての飛行活動あるいは地上整備のエンジンの作動というものも含んで、ぜひとも検討願いたいと思うのですが、これはもう不可能でしょうか。
  215. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答えいたします。  厚木におきまする訓練の内容は、御承知のように、NLPと呼ばれておりますようにナイト・ラソディング・プラクティス、夜間離着艦訓練でございます。航空母艦のパイロットにとってこれは死活の問題であるということで、米側も非常に強い希望がございますので、六時から翌朝までの訓練を全面的に中止するということは極めて困難であろうかと存じます。しかしながら、御指摘のように、三十八年度に比べますと人口急増地区でございまして、本当に三、四倍に伸びております。また、国の安全保障という国益のために、周辺住民の方には大変御迷惑をかけておるわけでございますから、騒音防止工事その他周辺対策を進めると同時に、厚木にかわる関東周辺もしくはそれに近い地域に代替飛行場を何とか確保して、厚木周辺の住民に対する騒音を何とか減らそう、こういうことでその抜本的な解決のため、既存のほかの飛行場で受け入れてくれないかどうか、あるいは新設の飛行場の適地はないか、あるいは浮体飛行場というものは可能性はないかと、現在鋭意努力をしておるところでございます。
  216. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 なかなか具体的な面に話が来ませんけれども、一日も早く実現するようにお願いいたします。  また、この飛行活動に関しまして、現在は日曜日は飛ばないというようになっておりますけれども、土曜日あるいは祝日あるいは年末年始あるいは市で行事を行うような場合には、飛行活動はしないというようなことを米軍の方と協議して、ぜひとも改定していただきたいと思うのですけれども、この点どうでしょうか、限定的に。
  217. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答えいたします。  私どもも周辺住民の皆様が非常に現在我慢できない状態になっておるという状態を深刻に受けとめておりまして、米側とも土曜、日曜日の問題、あるいはちょうど時期としてお盆でございますので、地元の大和市長さんその他からの陳情もございましたので、そういう交渉を続けておるところでございます。  しかしながら、米側の事情を見ますると、半年間厚木のNLPはなかった。ことしは、まことにぐあいが悪いことに、真夏の、皆さんが窓をあけておるような時期に集中して行われるという状況、それから米側としても三沢であるとか、であるとか、あるいは他の基地に散らばして訓練をやる等アメリカなりの努力をしておるようでございます、いろいろ聞いてみますると。ミッドウェーの極東における任務との関係でこの時期訓練が最盛期に入ってしまったんだろうと思います。御指摘の点につきましては、本日の御趣旨を十分念頭に置きまして、米側といろいろ交渉をしてみたいと思っております。
  218. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 私この厚木周辺を歩いてまいりますと、いろいろな苦情が出てきまして、例えば乳幼児がこの騒音で引きつけを起こす、あるいは妊婦が流産しやすい、あるいは耳がおかしくなったとかいうような声を聞くわけなんです。私思うには、これは飛行機の騒音の影響じゃないかと思うわけですけれども、こういう身体的な障害がたくさんあるという現況から、ひとつその実態を調査して、それにしかるべく対策を立てていただきたい、このように思いますが、いかがでしょうか。
  219. 千秋健

    ○千秋政府委員 航空機騒音が人体にどのような影響を与えるかということにつきましての調査は、長期にわたる追跡調査等を必要としますので、各種の事例につきまして数多くのデータを収集する必要がございます。現在、民間の医療機関に委託してこの調査実施しております。現在のところ、明確な結果を導き出すためのデータ等がまだ十分集まっていないという状況でございますが、今後ともこの調査を続行してまいりまして、この研究を実施してまいりたい、こういうふうに思っております。
  220. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 先ほど今回のタッチ・アンド・ゴーについては、極めて低空飛行だということを言いましたけれども、地元の市の要望から、決められたコース以外を飛んでいるんじゃないか、いわゆる場周経路、これが無視されている、ですから市内全域に騒音がまき散らされているという、こういう実情で、何とか場周経路をきちっとしてもらいたいという要望があります。  そこで、現在の場周経路はどこにあるのか、それから現実にこの場周経路が無視されている実情にかんがみて、今後見直しをする必要があるのか、こういう声がありますので、その点もひとつ御見解をお願いいたします。
  221. 千秋健

    ○千秋政府委員 この夜間着陸訓練につきましては、パイロットの有視界による訓練飛行でございますので、それで厚木飛行場の通常の場周経路の中で実施しております。今回この訓練につきまして、ただいま先生の御指摘のような声も私ども耳にしましたので、これについては米側にそういう従来の経路が変わったのか、また広がったのかということを照会しておりますが、現在のところ米側からこれについて従来と変わりがないというふうに聞いておりますが、なお詳細な点は米側に照会中ということでございます。
  222. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 米側に照会するのも結構なんですが、現実に飛行航路を見て、これは違っておるということで抗議するなりの体制をおつくりください。  いずれにしましても、この騒音に関する苦情というものが関係市長さんあるいは市の職員に来る、また我々にも来るわけですけれども、そうしますと、市の職員が言うことには、私だってこの問題解決したい、体を張って解決できるのだったら体を張るよ、だけれども国が動かぬことにはどうにもならないのだ、国の問題なんだということで、国の受けるべき怒りを大変その市の職員たちが受けておる。ここで何とか苦情処理を国が受けてくれないか、国が受けるべきでないかという声があります。何とかそういう手段方法はとれないものでしょうか。この問題についてはここに電話すれば早急に対応する、例えばそういう声があるのならば、すぐ米軍側に抗議を申し込みます、あるいは実情を調査しますというようなすぐに結びつくようないわゆる苦情処理機関、これが考えられませんでしょうか。
  223. 千秋健

    ○千秋政府委員 ただいま御指摘のように、訓練の間も市役所その他の方々に非常に苦情が行っておる、御迷惑をかけておるということは十分承知しております。私どもとしましても、あすこに座間の防衛施設事務所、また横浜防衛施設局等の出先がございます。こちらの方にお電話いただければ、具体的な問題については、即刻それに対応していくという体制はとっておりますので、またよく市町村を通じまして、そういう体制を御連絡申し上げたいと思います。
  224. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 時間が来ましたので終わりますが、安倍外務大臣も、内閣全体で取り組む重要な問題である、こういう声がありますので、ぜひとも中曽根総理自身が現地のここの音を聞いてもらいたい、そして本当に基地周辺の実情を把握して、しかるべく対策を一日も早く立てていただきたい、これは周辺住民の声でございますので、よろしくお願いをいたしまして、質問を終わります。
  225. 三原朝雄

    三原委員長代理 渡部一郎君。
  226. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それでは橋本議員の御質問と似た質問なので、先に質問させていただきますが、地元愛媛県の松山空港におきまして、米軍機の訓練の問題が問題化いたしております。ここ数日、新聞報道をめぐりまして地元で紛糾しており、県会等においても取り上げられた様子でございます。  実は昭和五十年十月の十五日、米海兵隊の岩国航空基地司令M・V・スタッツァー氏あてに、愛媛県知事白石春樹さんの名前で申し入れを行っている。当時、岩国から飛び上がった飛行機が松山空港で余りにもタッチ・アンド・ゴーの訓練を繰り返すのでうるさい、これは何もここでやらなくてもいいのではないかという大きな県民の要求があり、それが伝えられた。ところが、これに対してスタッツァー氏は、口頭で中止すると回答し、今日までその回答が守られてきた。なお、当時のうわさでありますけれども、もし再開する場合には改めて愛媛県側に対して打ち合わせしてから再開するというような口頭の補足があったといううわさがございます。これは余り正確ではありません。ところが、その後ビーチクラフト機その他を用いまして、タッチ・アンド・ゴーの訓練が年間六回程度行われていた様子でございます。  松山の空港長は本日記者会見をして、いつから訓練が再開されたかについては自分の権限では言えないというふうな回答をされた。地元民は激高しておりまして、アメリカ側がやめると回答したのに対してそれを断りもなく再開するのはどういうわけか、また、そういう申し合わせがあったことに対して空港長は知っていただろうに、それを黙認するというのはどういうわけか、また、いつから訓練が始まったかについて自分の権限で言えないと松山空港長が述べるというのはどういう意味か、その次に、こうした訓練は直ちにやめてもらいたい、こういう要望のようであります。  この問題につきまして十分御調査いただいているかどうかわかりませんから、ここでこれを取り上げまして、これは一つの県の問題あるいは地元で米軍海兵隊と交渉すべきテーマでもなかろうと思いますし、前後のいきさつ、事情を調査された上、これに対して処理していただきたい、こう思うわけであります。現在わかっているところがあったらここで述べていただきたい、お願いします。
  227. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 御指摘の松山空港での米軍機の行動につきましては、率直に申し上げまして、私どもごく最近まで全く承知いたしておりませんで、新聞報道によりましてそのような事実がどうもあるようであるということを知るに至りましたので、現在早速米側に照会中でございます。それで、事実確認を待ちまして適切な処置をとりたいというふうに考えておりますが、新聞報道のようなタッチ・アンド・ゴーと申しますか離着陸訓練を施設、区域として提供されていない松山空港で行っておるということでありますれば、これは地位協定との関係におきまして問題がございますので、そういうことであればアメリカ側に直ちに申し入れを行いたい、そういうふうに考えておりますが、現在のところではまだ事実関係調査中でございます。
  228. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 防衛施設庁の方はこれについてどういう情報を持ち、どういうふうに対処されておられたか承りたい。
  229. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答えいたします。  まことに申しわけございませんが、本件は防衛施設庁が提供をしておる施設ではございませんので、新聞で承知をした程度でございました。その結果、ただいま外務省北米局長より御答弁ございましたように、所管官庁である外務省の方で御調査をいただくように打ち合わせたところでございます。
  230. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 では、もう一回繰り返して確認しておきますが、これは安保六条に基づく提供施設ではないわけですね。
  231. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答えいたします。  防衛施設庁の所冒しております自衛隊または米軍に提供した施設ではございません。
  232. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうすると、もしそれが事実であるとするならば、これは協定違反行為であり、厳重にやめさす、抗議して中止していただく法的根拠がこちら側にある、こういう意味理解してよろしいですね。
  233. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 委員承知のように施設、区域として提供しておりません空港につきましても、通常の形での米軍機のアクセスというのは地位協定で認められておるところでございます。しかしながら、通常のアクセスという対応を離れて施設、区域として提供されておらないところで訓練を行うというのが実態でありますれば、これは地位協定上適切な行動ではなかろう。先ほど委員指摘昭和五十年のケースにつきましても、私どもはそういう認識のもとに米側に申し入れを行いまして、先方はそれを中止した、遺憾の意を表して中止をしたというのが先般の経緯であるというふうに私は承知しておりますが、今般そのようなことがもしまた再び行われたということでありますれば、同様に措置をいたしたいというふうに考えております。
  234. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 非常に正確な御答弁をいただきましてありがたいと存じますが、こういうのをかっきり監視してないとならない。少なくとも我が国の施設が一つの協定を外れて使われて何年も何カ月も知らないとか、この空港長は一体何を考えているのか知らぬけれども、私の権限として言えないなどという、記者会見の席上でそういう言い方をされたかどうか、それも調べなければならぬけれども、そういう責任逃れみたいな言い方はよろしくない。これは空港長の所管は運輸省であろうから、両大臣の質疑のところでこれを言うのは余り適切でないけれども関係大臣として十分御指導をいただくように関係省庁にも御連絡いただきたい、これは要望しておきます。では、これはこの辺にしておきましょうか。  私は、トマホークの問題につきまして同僚議員と視点を変えてお尋ねしたいと存じます。  それは、まずトマホーク問題を言う前にソビエトのこれに対するカウンターパートと申しますかSS20及びSSNX21の開発状況配備状況、またその性能、私はこうしたものについて議論する前提として調べてみたのですが、手元に何も資料がないのを発見いたしました。これでは当委員会としても議論ができにくい。そうしないと我が国の外交、防衛上の進路についてあるいは政策について論議するのに基礎的な資料がなさ過ぎるな、こういう感じがいたしておるわけであります。  私が申すまでもなく、核を運搬する爆撃機あるいはICBMあるいは核を発射する潜水艦、その三つの核兵器の運搬手段に加えまして巡航ミサイル群は第四の運搬手段として大変大きな防衛あるいは外交上のテーマであります。したがって、これについてソビエト側がどういうことをやっておられるのか、アメリカ側はどういうことをやっておられるのか、それを伺わなければ議論のしようがないというのが実情でございます。  そこでお尋ねしているわけでございますが、まずソビエト側の方から承りたい。また、それに連動してSS20前のSS4とか5とかその辺のクラスの旧型のものとの関係はどうなっているかもあわせてコメントしていただけるとありがたいと存じます。というのは、この質問をいたしますのは、委員長にも申し上げますが、ソビエトの持っている巡航、ミサイルに対する我が国側の評価の最初の答弁になるわけでありますから、正確にお願いしたいと思います。
  235. 古川清

    ○古川(清)政府委員 お答え申し上げます。  ただいまお尋ねのSS20からお答えをしたいと思いますけれども、SS20は御案内のとおりソ連が開発をし、既に配備をしておりますところの中距離の核ミサイルでございます。この特徴といいますものは、移動式であるということでございまして、トレーラーでいろいろなところに移動して発射ができる。これが大きな特徴であり、かつまた圧搾空気で中空まで発射をするために、一つの発射機、ランチャーから予備のミサイルをまた打てるという特徴もございます。  この性能でございますけれども、射程が約五千キロメートルあるわけでございまして、かなり命中精度がいいという話のようであります。  さらに弾頭でございますけれども、弾頭はMIRV化、多弾頭、三つの弾頭を持っておりまして、おのおのが百五十キロトン、広島に落ちたのが二十キロトンと言われておりますから、メガトンまではまいりませんけれどもかなり大型でございます。これを三つ載せておると言われております。  このSS20は、ソ連の中距離ミサイルとしましては大変よくできた兵器のようでございまして、一九七七年から配備されております。現在ソ連全土に三百七十八基が配備されておりまして、そのうちアジア方面には百三十五基が配備されておるというぐあいに承知をしております。  SSNX21についてのお尋ねでございますけれども、こちらは巡航ミサイルでございまして、SS20の方は当然のことでございますけれども超音速で飛んでいくわけであります。こちらは亜音速のようでありますが、現在開発中の巡航ミサイルで、恐らく海洋発射型、軍艦から撃つというミサイルのようでありまして、アメリカの一部の方々は、これは非常にトマホークに相似をしておるというふうなことも言っておるわけでありますけれども、性能は私ども詳細には承知しておりません。  しかしながら、射程が約三千キロメートルであるということ、さらには、攻撃型の潜水艦でありますソ連のビクター型とかあるいはヤンキー型というのがございますけれども、こういった攻撃型の潜水艦の魚雷発射管から打ち出せる、これもまたトマホークに非常に似ております。そういう形の新しい兵器であって、現在開発中である。SSNX21-Xがつくのはまだ実験段階であるというコードナンバーでありますけれども、このSSNX21が果たして実戦配備されたかどうかという点については、私どもはっきりと確認はいたしておりません。そういう状況でございます。
  236. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 これに対抗いたしますトマホークあるいはその類似のもの、パーシングⅡなんかも含めまして、これらについての開発状況配備状況、その配備計画あるいは性能について承りたいと思います。
  237. 古川清

    ○古川(清)政府委員 トマホークについてお答え申し上げます。  トマホークはもともとアメリカの海軍が指導力を持って開発してまいりました巡航ミサイルでございます。一九七二年に開発に着手されております。ゼネラル・ダイナミックスというアメリカの会社がございますが、トマホークというのはもともとこのゼネラル・ダイナミックス社のつくった巡航、ミサイルであります。一九七二年に開発が始まったときには、この会社以外に、例えばボーイングであるとかロッキードであるとかボートであるとかマクダネル・ダグラスであるとか五つの会社にアメリカの海軍が、いわば競争主義に基づきまして開発契約を結んだと言われます。その後一九七四年の段階におきましては、ゼネラル・ダイナミックスとボートの二つの会社の計画だけが生き残りまして、その上さらに一九七六年の二月にゼネラル・ダイナミックス社の巡航ミサイルをアメリカの海軍が制式採用するということになって、その段階においてトマホークという名前が実はつけられた経緯がございます。  その後順調に開発が進みまして、トマホークの名前がつけられました一九七六年には初飛行が行われ、その後八二年以降運用試験が実施されておるという次第でございます。  それで、核、非核トマホークそれぞれの開発状況というのは私ども詳しくは存じていないわけでありますが、内容的には、弾頭が核であるというものと非核であるというものと、大別いたしますと二つに分かれるわけでございます。  このトマホーク全体にBGM109というコードネームがついておりますけれども、核弾頭の方はBGM109のAというコードネームでございまして、射程が二千五百キロメートル、弾頭は単弾頭でございますけれども二百キロトン。それから、誘導方式が非常にすぐれておりまして、慣性誘導に加えて地形照合誘導という新しい技術を取り入れており、誤差が非常に少ない。一説によりますと数十メートルの誤差で着弾できるという可能性さえあるということのようでございます。  それから、非核弾頭のトマホークにつきましては、対艦攻撃に使うBGM109のBというのがございますが、これは射程が四百五十キロメートル以上ということでありまして、五寸キログラム程度の高性能の弾薬が積まれているのではないかと言われております。こちらの対艦攻撃の方は慣性誘導にアクチブ・レーダー・ホーミング、レーダーをみずから載せておりまして、それを映しながら目標物に当たっていくというシステムを取り入れております。  それから、対地攻撃用の方は109のCという方に当たるわけでありますが、射程が千百キロメートル以上。こちらも誘導装置は慣性誘導に加えて地形照合方式という、地形を読みながら進んでいく、そのために誤差が非常に少ない、この新しい技術を取り入れておるということでございます。いずれも亜音速でございまして、スピードは八百八十キロメートル程度と言われておるわけであります。  それで、対地攻撃の方は、核弾頭を持ったものは本年の六月ぐらいから配備が始められておるというぐあいの報道に接しております。それから対艦用の四百五十キロメートルのB型の方につきましては、昨年の暮れから配備が始まっておる。さらに通常弾頭の対地攻撃用のものにつきましては、まだ配備はされていないけれども、ニュージャージーという戦艦がございますが、あれには一部搭載されたということを聞いております。  これがアメリカトマホークの大体の現状ではないかと思います。
  238. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 トマホークの大きさが全長六・四メートルで直径五十三センチ、重さが一・二トンで、核、非核ともに両方とも外形から見るところでは区別のしようがないと聞いておりますが、これは正しいのでしょうか。  また、値段についても百二十四基発注で三億四千六百万ドル、一基当たり六億七千万円程度で大変安いというような売り込みがゼネラル・ダイナミックスから行われたと聞いておりますが、この辺の説は正確ですか。
  239. 古川清

    ○古川(清)政府委員 お答え申し上げますけれども、先ほど私がアメリカ海軍が指導権を持って開発をしたと申し上げた次第でございますが、それは最初魚雷発射管から撃ち出すということを考えておりましたために、実際また撃ち出すことに成功したわけでありますが、直径が五十三センチ、これは二十一インチでありまして、二十一インチの魚雷とぴったり口径が合うわけでございます。長さが六・四メートルという点も先生のお話のとおりでございます。  それから値段の方は私もどうも詳しくは承知しておりませんけれどもアメリカの予算年度におきますところの予算の振り分けから見ますると、例えばフィスカル八四会計年度におきましては百二十四個の発注が認められておりまして、これに与えられました金額が三億四千六百万ドルというふうに言われております。一個当たりの値段は私ちょっとはじき出しておりません。  それから核トマホークと非核トマホークとの外見上どのような差異があるかということにつきましては、これは外見上特段の差異はないものと私どもは了解をいたしております。
  240. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 外見上の差異にこだわって恐縮ですが、我が国にとっては大問題なんで伺いますけれども、外形上にマークとかあるいは特殊なシンボルマークとかそういうものが両者の間には外側から見てわかるような識別が行われるようになっているのですか、それともそういうものは一切わからないようになっているのでしょうか。
  241. 古川清

    ○古川(清)政府委員 その点につきましては私ども一切承知しておりません。
  242. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 日本における誘導弾あるいは巡航ミサイル等の、等と申し上げておきますのはかなり幅があるわけでありますが、日本における対艦、対地、対空等の誘導弾で今このテーマに上がったようなたぐいの兵器は開発されておるものでしょうか。また、その性能はどの程度のものであり、どの程度配備されておるのでしょうか。
  243. 筒井良三

    ○筒井政府委員 お答え申し上げます。  私どもが開発し、装備している兵器体系といいますものは、すべて在来兵器、しかもそのうち防衛を主としたものでございますので、トマホークに見合うようなものはございません。しかし、純技術的にいいまして、弾頭が核でなくてある秘度巡航的なフライトをし、そして船を攻撃するといういわゆる対艦ミサイルは飛行機から撃つものが既に装備化され、地上から撃ちますものをただいま開発中でございます。
  244. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 その話はまた後にいたしましょう、日本の方は。  それではいよいよ本題にかかるわけでございますが、こういう巡航ミサイルやあるいは誘導弾等につきまして、こうしたものの配備というものは明らかに我が国の防衛政策あるいは外交政策に深甚な影響を与えるものと思われますが、こうしたものについて基本的なことを承りたいと存じます。  まず我が国の防衛政策について最近のこうした応酬は、米ソ両国の開発あるいは配備状況というものはどういう影響を与えておられるのか、承りたいと存じます。
  245. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 SS20の極東地域への配備が逐次増強しているという事実がございます。これは近年におきますソ連の極東における軍事力増強のいろいろな努力の中の一環として行われていることと私ども理解をしておるわけでございまして、こういったソ連の軍事力の増強というものが我が国に対する潜在的脅威の増大と認識をしていることは従来から申し上げているとおりでございます。  他方アメリカの方も、これはグローバルな観点からの軍事力の均衡の回復、維持ということを現在努力を払っておるわけでございまして、そういう努力の一環といたしまして御指摘のようなトマホーク配備ということも計画されているというふうに私ども理解をしておるわけでございまして、そういったことによりましてアメリカの抑止力の向上が図られていくということは、我が国の安全保障にとりましてもプラスになるものであるというふうに理解をしている次第でございます。
  246. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 今のは新聞の社説みたいな答弁だな。といいますのは、余りにも概括的で何一つ答えないというやり方で、国会というところは委員質問に対してより適切に答えることによって共感を得るように答弁しなければならない。今の君のはガードばかりかたくて何もしっぽをつかまれまいという、ウナギのかば焼きをつくる場合、魚屋がウナギを捕まえようとしたら逃げられたときみたいな感じで、今のは時間つぶしというものだ。その程度の話を私が聞くと思うかどうか、ちょっとあなた考えてもらいたい。それは小学生に言うような言い方であって、当委員に対して言う言い方としては失敬だよ。もう少しちゃんと答えなさい。もう一回やり直しなさい。  私の言い方も悪かったかもしれないから、もうちょっと突っ込んで言うと、トマホークというものが配備されるに当たって、今SS20の方は性能からいって五千キロの性能があると先ほど言われた。またSSNX21の方は三千キロと言われた。またSS20の方はアジア地域において百三十五基と初めて明言されたわけですから、その百三十五基でやりますと、ソビエトのちょうど真ん中辺のところから射撃しても日本に悠々と到着するだけの距離を持っておるし、我が国に与える影響性というのは極めてでかいでしょう。ところが日本側の方でもしトマホーク日本のごく近海においてあるいは日本の港において配備するようなことがあったとしても、これを撃ち返す段になるとどういうことになるかというと、トマホークの、つまりBGM109のAで二千五百キロ、BGM109のBだと四百五十キロ、109のCだと今度は千百キロ、対艦だと四百五十キロ、対地で千百キロ、もちろん非核原則があるから我が方から撃ち返すのは千百キロでしかない。というと、ここから飛ばして沿海州の端が当たるぐらいがやっとでしょう。というと、こちら側は短いやり、向こうはものすごい長いやりを持っているということになる。そうすると、今核均衡の回復とか抑止力の向上などとあなたは簡単に言われたけれども、抑止力の向上も何も、これは核抜きでやるとすれば――私は今挑発型に質問しているわけですが、核抜き型でやると、トマホークを幾ら配備しても、ソビエト側がSS20を百三十五基、それを三倍して四百発のMIRVに対して対抗できるものというのは何もないわけでしょう。そうするとあなたの言われているのは、これはICBMか何かを使うところのアメリカが総力を上げてソビエトを攻撃するという抑止力に頼ってでしか対抗できない、こういうことを言おうとしておられるわけですか、そこが問題だと私は言っているわけなんです。つまり、ヨーロッパの地域と我々の地域とはひどく違っていて、この辺に幾らトマホークを並べたとしてもモスクワまでは届かない、シベリアの氷か何かを巻き上げることは可能だとしても、ウラル山脈も越えられない。位置的には非常に悪い。つまり、日本列島というのは向こうから簡単にノックアウトすることはできてもこちら側から押し返すことはできないエリアである、そういうわけでしょう。そういうところでどういう戦略を立てておられるのですかと私は聞こうとしているわけです。その辺は余り詳しく論じられていないように見えるから私は伺っているのですが、どうでしょうか。余り常識的なことはやめて答えてもらいたい。
  247. 古川清

    ○古川(清)政府委員 お答え申し上げます。  この問題は中距離核兵器のみだけを議論するとどうもポイントが少しぼけるのではないかという感じが若干するわけでございますが、基本的にはソ連の極東におきますところの非常に急速かつ非常に大きな速いテンポでの軍事力の増強というのが背景にあるわけでありまして、SS20の配備というのも実はその一環であるわけでございます。  例えば航空機について見ますと作戦機だけで既に二千百機配備しておりますし、海で見ますと大変な数の軍艦もそこに配備しておる。そういった状況においてアメリカの方は、米国の抑止力というものの信頼性が失われてはいけないということでいろいろな措置をとっておるわけでありますけれども、その中の一環として恐らくトマホーク配備等々もあるいは考慮しておるのかもしれません。したがいまして、向こうのやりが長い、こっちのやりが短いということではなくて、抑止力というのはこの全部の総合的な軍事力のバランスという問題でございますから、仮に将来トマホークが極東地域に配備される場合、核、非核両方ございますけれども、それを総合的に運用することによって十分ソ連の軍事力の増強に対抗する抑止力の軍事バランスということは貫徹でき得るもの、そういうふうに私は考えております。
  248. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 やっと少しペースにはまってきました。私は日本の防衛政策をトマホークとSS20のバランスだけで論じるというのは間違いだと思います。今の御指摘は正しいと思います。私も同じ立場です。ところが、最近のトマホーク日本に持ち込まれそうだという不安が起こっているときに、賛成する側と反対する側の両方でトマホークだけで議論するというやり方では、これは話にならぬだろうと私も思うのです。  そこで私が述べているのは、トマホークは単品ではいかに日本に効果的でないかということをまず議論しようとしたのです。まさに単品の非核のトマというのは明らかに長さが短過ぎて、しかもまずいことに核と非核が外見上ほとんど区別ができないために、先方には核つきだと思わせるにもかかわらず実質的には短くて、非核原則を守るというルールを貫徹しなければならない我が国としては配置するだけで刺激的効果があるだけで、しかも我が国防衛のためには役に立たない兵器だな、こう言わざるを得ないから論じたわけであります。  したがって、この核トマホーク配備の際に核トマホークを気取るトマホーク、つまり非核のくぜに核だと言わぬばかりの装いを凝らして我が国に登場しよう、入り込もうとする核トマホークというものは戦略、戦術上も余り賢明な選択でないな、私流の言い方をもってすれば百害あって一利ないのではないか、私はむしろこの問題はこうした観点から詰めるのが本当ではないかと思っているわけです。  さて、いよいよ大臣に御質問の時間になりましたが、この点はどうお考えになりますか。きょうは論争の最初の日です。これから長々と議論させていただきますが、まずどういう立場でおられますか。     〔三原委員長代理退席、椎名委員長代理     着席〕
  249. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今防衛政策のお話のように承ったのですが、外交の立場からいきますと、やはり日米安保条約という建前を貫いていかなければならない、こういうふうに思いますし、そういう中でアメリカの戦力というのは抑止力というものを確保する意味において非常に重要であります。トマホークはその一環としての役割をそれなりに果たすであろう、こういうふうに我々は理解しております。
  250. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 また総論でやっつけられましたから、今度はもう少し細かくいきます。  きょうは時間がなくなってきましたからもう後ほどんど言えませんが、私は日本の議員としてはまた野党の議員としては大変珍しいことでありますが、アメリカ軍の戦闘作戦司令部のかなり中枢まで見せてもらった一人であります。その信用にこたえて余りしゃべらないことも事実ですが、一つはっきり言っておかなければならぬことがあると思います。  それはNORAD、つまりアメリカ防衛軍総司令部でありますが、コロラドスプリングズのそばにある核攻撃に耐え得る総司令部はアメリカ及びカナダ両国軍をもって編成されており、あらゆる核攻撃に対してそれをはね返し戦闘する中心総司令部であります。そこを見せてもらいましたときに私が一番問題だなと思いましたのは、核攻撃をもし日本が受けるという時点になってミサイルが飛んでくるとか核爆撃機が侵入してくるときに、あそこでは全部情報がわかるようになっていますし、空に舞い浮かんでいるところの人工衛星その他のものは全部二十四時間キャッチしており、適正かどうかも判断しているところでありますから当然それはわかるわけであります。そのときにアメリカ大陸に撃たれたものでありますならば即時応戦態勢が整っておる。ところが同盟国ごとに対抗策が即時でいくのと即時でいかないのと段差がいろいろある。日本の場合はどうなっているかと言うと、あそこの総司令部はそれをキャッチすると大統領に報告して、大統領から国務省に報告している、国務省が日本の出先の大使館に報告して、それから日本外務省及び官邸に報告されるというルートであることをあの人たちは僕らに話してくれました。どれくらいの時間がかかるのだと言いましたら、恐らく一時間と答えたのが印象的でした。  この話をするのは十年ちょっと前の報告だから申し上げているわけであります。今どうなっているかわかりません。しかし、それが本当であるならば、核抑止力というふうな概念で日本の生存を期するということは非常に危険なのではないか、核抑止力に頼り過ぎるのは問題なのではないか、そうしたポイントはもう少し詳細に詰めておかなければいけないのではないか、現実の政治家として私はそう思うのです。これは今まで当委員会議論されておりません。したがって、核抑止力の問題については私は御研究をいただかなければならぬと思うのです。これに御答弁をきょう求めるのは無理だと思います。だからきょう御答弁は求めません。この次この続きを論戦させていただきたいと思います。  もう一つ、先月の米下院歳出委員会軍事小委員会の公聴会の記録によりますと、八三年にロサンゼルス級攻撃型原潜六隻が核トマホーク配備する能力を既に備えたとなっておるわけでございますが、その六隻の中にサンフランシスコが入っているようであります。ところが、政府答弁雷を拝見しておりましたところ、昭和五十九年七月二十日付「衆議院議員稲葉誠一君提出トマホーク実戦配備非核原則に関する質問に対する答弁書」によりますと、昭和五十八年一年間における米原子力潜水艦の本邦寄港回数は計二十五回。そのうち、トマホーク運用能力の付与が計画されているスタージョン級及びロサンゼルス級に関する寄港回数はそれぞれ十二回及び五回、そのロサンゼルス級の方はオマハが一回、サンフランシスコが二回、ロサンゼルスが一回、インディアナポリスが一回、まさにここのところにサンフランシスコという名前が登場するわけであります。  この公聴会の記録を拝見いたしますと、核配備の能力を持つようにしたと書いてありますけれども、核を配備したとは厳格には響いてありません。言葉上のレトリックでは、日本に来る途中で、核配備の能力は持っておるけれども、ハワイあたりで核兵器はちゃんと置いてきたとか、途中の黒潮のあたりで核兵器を水の上に浮かしてきたというようなユニークな御答弁は可能であります。私は今ちゃんと大臣に逃げ方を教えているわけであります。しかしながら、ごくまともに読めば、サンフランシスコが核トマホーク配備して寄港していたのではないか。この公聴会の方はこれから配備する計画なんですが、八三年の分については実施されている計画が述べられているわけであります。ですから伺うわけでありますが、この点をどうお考えであるか承りたいと存じます。
  251. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 委員が先ほどおっしゃったアメリカの議会の資料で、ロサンゼルス級潜水艦の中のサンフランシスコ云々ということを御指摘になりましたけれども、私、寡聞にしてアメリカの資料でサンフランシスコという特定の攻撃型潜水艦にトマホーク配備されたという資料があるというのは承知しておりません。
  252. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それは私の言い落としなんです。それは、その報道が行われたときに国防総省に質問をした新聞記者の記事によるわけでございまして、国防消息筋が、このロサンゼルス級攻撃型原潜は次のようなものであると、その可能性を述べているわけであります。そこにサンフランシスコが表示されております。したがって、これがもし本当とすればという前提を置いての質問であります。
  253. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 アメリカの、核弾頭搭載のトマホークの搭載能力を付与する計画につきましては、年次別、艦級別の表が議会に提示されておりまして、委員も御承知のとおりだろうと思いますが、これが八三年から以後九二年にわたる間に百四十八隻の水上艦艇及び潜水艦に核弾頭搭載トマホーク配備能力を付与する、こういうことでございまして、確かに攻撃型原潜につきまして八三年に六隻という数字が上がっております。したがいまして、おおむねこういう計画に従いましてアメリカ水上艦艇及び潜水艦へのトマホーク配備能力を付与していくということは、私どもも予想しております。他方におきまして、個々の艦艇に、具体的にどういう艦艇に核弾頭搭載トマホーク配備するかということにつきましてはアメリカが一切明らかにしておりませんので、私ども承知しておりません。
  254. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 きょうは時間がなくなりましたので、最後外務大臣にお尋ねいたします。両大臣どちらでも結構でございますが、この前、戦艦ニュージャージーが日本に得港するような場合、核弾頭を保持しているんじゃないかということで非常に大騒動になりました。そのとき大臣は、日本非核原則があり、核積載艦船の瀞港は許されない、また核積載艦船の寄港は日米安保条約による事前協議対象になると述べられて、これを米国側に確認する。それは国会での論議や世論の核つき疑惑の高まりがあるような場合にはという前提つきでおっしゃったように覚えております。原子力潜水艦あるいは核つきの巡航ミサイル等を配備された潜水艦や戦艦が日本に来るというので疑惑が大いに高まるような場合にはこの原則というか、先回の例のようなつもりでアメリカ側にただされるということはあり得るかどうか、最後にお尋ねいたします。
  255. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 アメリカでいろいろと計画を立てておると思いますが、核搭載能力を持っておるというのと、核を実際積んでおる、積載しておるのとこれまた違うと思うのです。また我が国としては、核を実際搭載しておる場合はもちろん事前協議対象になるわけですし、その場合、事前協議を受けた場合我が国はノーであるということははっきりしておるわけであります。こういう事前協議制度というのはきちっと守られておるわけでありますが、やはり国民とか国会でいろいろと問題になる。そうなってきますと、安保条約というものが国民理解を得て、信頼されて、守られなければならぬと我々は思います。したがって、そうしたいろいろな疑い等が出てきた場合には、安保条約並びにその関連規定というものをお互いに遵守するという立場から、この第四条随時協議というものを活用いたしまして日本から協議を申し入れまして、そうした信頼性を高めるための協議を行っていかなきゃならない、こういう時期が来ればそれはやらなければならない、こういうように思っております。
  256. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 じゃあ結構です。どうもありがとうございました。
  257. 椎名素夫

    ○椎名委員長代理 吉田之久君。
  258. 吉田之久

    ○吉田委員 私はまず初めに、岩国基地の沖合移設の問題につきまして、両大臣それから施設庁長官の御見解を伺いたいと思います。  この問題につきましては、既に両大臣初め関係者の皆さん方はもう余りにも熟知されております問題でありまして、もはや説明を要しないと思うのでございますけれども、一応問題点を整理する意味でその経過を若干申し述べたいと思います。  まず、この岩国基地は旧海軍の歴史的な航空基地であります。それから戦後、米海兵隊の岩国航空基地でもあります。また我が国の自衛隊のいろんな使用の経過を経まして、現在は海上自衛隊の三一航空群が開設されている。そういう点で極めて重要な施設であります。ところが岩国市街地の重要な部分を占める、しかも五百七十六ヘクタールに及ぶ基地でありまして、かねていろいろと住民からの要望はございました。とりわけ昭和四十三年六月二日、米軍の板付基地のF4Cファントムジェット戦闘機が九州大学構内に墜落したということに端を発しまして、岩国市議会が岩国基地移設に関する決議を議決いたして今日に及んでおります。その間、十六年の歳月を経ております。しかも、自民党初め、公明党、新自由クラブ、そして我々民社党の幹部あるいは調査団がきびすを接するようにして岩国基地を訪問いたしております。五十五年九月二十三日には、自由民主党の安倍晋太郎政務調査会長来県の際陳情というのも記録に載っております。  こういうことでございますので、まず初めに、山口県出身の大政治家である安倍外務大臣、特に重要な米軍基地の存在するこの基地の問題であります沖合移転の問題につきまして、どうお考えでありますか。
  259. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは地元の議員としても非常に関心を持っておりますし、またやはり日本の防衛力の確保という意味からも重要な意味を持つと私は思っております。  地元でも岩国基地の移設につきましては、大変長い間運動を続けておりまして、その運動の純果、私も地元の議員として、また当時、政調会長としても努力したわけでございますが、防御庁におきましても、調査費をつけるというふうなことでいろいろと調査が続けられておるというふうに承知をいたしておるわけでございます。しかし、これはなかなか膨大な資金を要する事業でございますから、今の財政の厳しい中で、なかなかこれを実現するということは困難な面もあるわけでございますけれども、しかし、この方針というものは我々は曲げずに努力を重ねてまいって、最終的にはやはり岩国の住民が非常に期待をしております、また防衛的にも必要である新しい基地が建設されるように心から念願をいたしております。その努力をこれからも続けていきたいと思っております。
  260. 吉田之久

    ○吉田委員 防衛庁長官は、防衛の責任者として、この重要な基地の沖合移設の問題にいろいろ取り組んできていただいていると思いますが、特に今、宏倍大臣からも御説明がありましたけれども、私どもが特にこの地域住民の願いに大きく共感いたします点は、この基地の前方に工場群が取り囲んでおる、しかも、七十メートル、八十メ――トルの高い煙突が林立しておる。したがって離陸一した飛行機は直ちに急旋回をしなければならない。速度の速い飛行機が急旋回をする場合によってきたる遠心力、それは相当なものになると思うのです。それかあらぬか、模擬爆弾やあるいはその他フラップ等、いろいろな部分が落下しておる。あるいは長官としてはなお心痛む問題でありましょうけれども、昨年にもPS1が基地で墜落をしておる。こういう戦後、五十九件に及ぶ大小さまざまの事故が発生しておるわけなんです。昭和五十九年だから五十九件というようなことでしゃれている問題ではないと思うのです。なお、いつどのような大惨事が起こるかもしれない。にもかかわらず、この岩国の人たちは、市民の大部分の方々は、そういう危険と騒音に悩みながら、なおかつ基地の重要性を確認しておる。したがって、基地を撤廃しろとかいう運動には今のところ一切転化いたしておりません。ともかく、多少の経費はかかるでしょうけれども、約手メートル沖合に移設してほしい、こういう計画を要望しておる時点でございます。責任ある長官として、この地域、市民の願いというものに今後積極的にどうこたえようとなさっているのか、お答えいただきたいと思います。
  261. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 今御指摘の点は私もよく承知をしております。この間岩国の方へ参りましたので、現地の方々からもよく聞いております。これは地元の方々からすると長年の懸案であって、何とか早くしなければならぬというふうに考えております。ただ、安倍大臣からもお話がありましたとおり、これはなかなか膨大な資金も要するわけです。この財政事情の非常に厳しい中で地元の要求と財政的な措置の問題とをどのように調和をとっていくか、前向きの方向でどのようなことが可能か、そこら辺を今、防御施設庁を中心として鋭意検討しておるというところでございます。
  262. 吉田之久

    ○吉田委員 施設庁長官にお伺いいたしますが、きょうまで施設庁としてはいろいろと調査を続けてこられました。その結果について現時点での御報告をいただきたいと思います。
  263. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答えいたします。  岩国基地の沖合移設につきましては、先生御指摘のとおり十数年来の懸案事項でございまして、近年この問題の重要性を認識を深めまして、防衛施設庁といたしましては五十八年度から調査費をちょうだいし、五十九年度、本年度はその二年度目に当たるわけでございまして、一億三千万ほど予算をちょうだいをいたしましていわゆる環境アセスメント、環境影響評価に係るその基礎資料、基礎データの収集のための調査を行っております。  当初の案では一・五キロ沖合にというのが原案のようでございますが、ボーリング等をいたしました結果、一キロ沖に出す、こういうことで、その可能性がかなり高いという認識を得るに至っております。しかしながら、何分広い海面を埋め立てをいたしまして滑走路を建設するという巨額の費用を要する工事でございますので、現時点では環境アセスメントに必要な基礎データの収集のための調査活動を行っておる段階でございまして、基本的な工事計画等の策定にはまだ至っておらない、こういう状況でございます。
  264. 吉田之久

    ○吉田委員 この間も私、現地へ行きまして防御施設事務所も訪問いたしました。その辺のところもいろいろと聞いてまいりました。環境アセスメントをなさっての現段階での一つ結論めいたものとしては、地象、海象、気象全面にわたってほぼ適当な移設であろう、また工法自身も可能な工法であること、それは現地の地形状況等から見てまずそう難しい問題ではない、要するに、先ほどお話がありましたように、この防衛関係費捻出の容易でない時期にかなり多額の経費を必要とする移転問題であるということで、皆さん方の悩みもかなりのものだろうと思います。  ただ、私どもが考えますのは、後でもいろいろ触れたいと思いますが、五六中業の達成、五九中業の策定あるいは「防衛計画の大綱」の達成、この問題と取り組んでいく政府としては正面装備の問題とか抗堪能力の向上の問題とかそういう問題にまず焦点を絞っていかれることはわかりますけれども、しかし我が国の防衛というものは、何よりもベースになりますのは基地そのものが整備されており、かつ極めて安全であり、国民に合意される存在であるということだと思うのです。したがって、大変財政多難の折ではございますけれども、このまじめな市民、住民の要求に対して早急に政府が決断して前向きの姿勢を示すこと、それは防衛に対する国民の協力を求める点でも、あるいは有事の際の防衛そのものの本質的な機能の発揮の点でも極めて重要な問題だと思うのです。つきましては、この間藤波官房長官に早急に閣議決定をなさってはいかがですかということを我が党としても文書で要請したわけでございますけれども、栗原防衛庁長官としてはその辺のお気持ちをどうお持ちであるか。  それからいま一つは、現地の人たちとしては、ともかく、苦しいだろうけれども政府が決断して沖合移設のゴーの姿勢をはっきりと打ち出されるという確認を得たい、ならば若干時間がかかってもそれはまた我々は耐えて我慢できる、こういう気持ちのようでございます。そういう意味で、基地沖合移設準備事務所とでもいいますか、何かそういう名称の一つの看板を早急にかけてもらえないだろうか、そういう切なる気持ちも聞いてまいりました。この辺につきまして長官の御見解をただしたいと思います。
  265. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答えいたします。  現地の皆様が政府の、特に防衛施設庁の熱意を占うと申しますか、それによって判断をする手がかりとしてその事務所に看板をかけたらどうだ、こういう御意見でございますが、せっかくの御意見でございますので前向きに検討させていただきたいと思います。  なお、先ほど調査費の関係で、予備調査費は四十八年から少額でございますがついておりまして、基礎調査の着手がようやく五十八年度であった。それから防衛施設庁の予算が五十九年度におきまして三千百六億、岩国沖合移設に要する経史はほぼそれの一年分に匹敵するものではなかろうか、こういうことを言われておりまして、防御施設庁だけではどうにもならない問題ではなかろうかと存じますが、せっかくの御意見でございますので、なお前向きの方向で基礎調査を進め、ただいま御提案の件も検討させていただきたいと存じます。
  266. 吉田之久

    ○吉田委員 施設庁長官から大変誠意ある御回答をいただきました。なお、最も重要な問題は、今お話がありましたとおり一年間の施設庁の総額の経費に伴うほどの金額を要する移設の大計画でありまして、だからやはり政治的決断しかないと思うのです。そういう点では、両大臣から特に強く政府自身の意思として早急に移設をする、こういう決定を促進していただきますように、この機会に特に強く要請いたしておく次第でございます。  次に、外務大臣にお尋ねをいたします。  きょうの新聞でございますけれども、「外務省は二日、日ソ両国間の二つの事務レベル協議の日程を発表した。イラン・イラク戦争を中心にした中東問題をめぐる初の協議は十六日にモスクワで、また国連に関する問題全般について話し合う協議は二十一、二十二の両日東京で、それぞれ開く。九月の国連総会の際、安倍外相とグロムイコ外相の会談が予定されており、外務省は外相会談を前に、こうした事務レベル協議の積み重ねを通じて対話の幅を広げたい、としている。」こういう報道がなされておりますけれども、大変結構なことだと思うのです。このイラン・イラク戦争を中心とした中東問題は世界の現状に大変深刻な影を落としているわけでございますけれども、この中東問題を平和解決するために日本がソ連との外交交渉を積極的に展開なさろうということは極めて意義深いと思います。しかし、最近のソ連とイランとの接触についてソ連の真意を探ることから始めようと考えていらっしゃるようでございますけれども、ただ状況を聞くだけではなかなか問題解決には役立ちそうにはないと思います。ソ連がこの和平のためにどう積極的に協力するか、そのことに対して我々はソ連にまた有形無形にどのような協力をするか、こういう現実的な交渉の丹念な積み重ねだけが問題を解決をしていくと思うのです。そういう点に関しまして外務大臣としては、今後のソ連との交渉、特に中東問題を解決する一つの糸口を見つけるためにどのような中身のある交渉を事務レベルでさせようとなさっているのか、まずお伺い申し上げたいと思います。
  267. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日ソ関係は全体に厳しいわけでありますが、そういう厳しいだけに対話は進めていかなければならない、こういうのが政府の、私の基本的な姿勢であります。そういう中で、ソ連と話し合いました結果、それでは中東問題あるいは国連問題等についてまず事務当局間で話をしようということになりました。特に中東の問題につきましては、ソ連も非常な関心を持っております。そして日本の、特にイラン、イラクに対する日本努力というものに対しましてもソ連は非常に注目をいたしておるわけでございまして、先般私がサミットから帰る途中でモスクワの空港に立ち寄りました際にカピッツァ次官が出てまいりまして、そしてイラン・イラク戦争に対しては日本とソ連とは同じ立場である、こういうことを言いました。これはなかなか含蓄のある言葉ではないかと私は思っております。そこで、ソ連としてもイラン・イラク戦争の拡大は決して好んでない、こういうふうにも思うわけでございます。そういう点で、日ソ間でいろいろと話し合いをする余地というものは相当あるのじゃないだろうか、こういうふうに思っております。これは十六日に局長を派遣をいたしまして事務的に突っ込んだ話をさせて、さらにまたその成果を上げることができるとするならば、また国連のグロムイコ外相との協議、話し合いの中でこれを進めてみたいこういうふうに今思っておるわけであります。
  268. 吉田之久

    ○吉田委員 そうしたお考えでの注意深い、しかも行き届いた外交交渉の積み重ね、そして最終的にはグロムイコ外相との頂上会談というところにつながっていくのだろうと思いまして大変期待いたしておりますが、どうか世界の平和のためにもソ連と日本がさらにいろいろと協力し合って、その力を発揮していくために御努力をいただきたいと思いますし、またソ連と日本自身のより一層の友好関係を回復すること、それは我が国の防衛のためにも世界の平和のためにも極めて重要な問題だと思うのです。  ところで、そうなってまいりますと、我々にとってどうしてもひっかかってまいります問題は北方領土の問題であります。既に八月に入りまして、昭和二十年の八月、終戦の後、やにわに我が国本来固有の領土である北方四島に侵入してきたソ連のあの忌まわしい過去の経過、そして現在これを軍事基地化しておる現状、それは私ども日本人の心にうずいてならない、また怒りを思い出さざるを得ない問題であると思うわけなのです。したがって、日ソの本当の外交の円満なる発展のためには、北方領土問題は入り口であるのか出口であるのかは別として、断じてひとつ外務大臣の責任において強力に要求してもらわなければならない問題だと思うのです。  実は、国会の中におきましても、近く過半数を超える国会議員が北方領土返還促進議員連盟を結成する動きにございます。こういう動きを背景に、我々はさらに政府とともに国民世論の喚起に努めてまいりたいと思いますが、外務大臣として、これを世界の世論にどう認識、徹底させていくかという問題は、極めて重要な責任を負っていらっしゃると思います。そうした北方領土の問題につきまして、日ソ外交を積極的に展開なさろうとする外務大臣の御決意を伺いたいと思います。
  269. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日ソ間にまだ平和条約ができておりません。これは領土問題が解決してないからでありまして、我が国はあくまでも北方四島は我が国固有の領土である、こういう立場に立って、今後ともソ連に対しまして毅然として交渉を進めてまいりたい、そういう決意であります。そして、それはやはり我が国政府だけではなく、国民全体の願いであろう、私はこういうふうに思うわけでございます。     〔椎名委員長代理退席、三原委員長代理     着席〕  残念ながら、今日では、ソ連は領土問題は既に決着済みである、こういうふうなことを言っておるわけでございます。まことに遺憾千万でございます。これまでの日ソ間の、例えば鳩山・フルシチョフ会談あるいは田中・ブレジネフ会談等を通じて見ましても、日ソ間には領土問題というのはいわば継続案件、留保案件として存在しているというのが両国間の確認であったわけでございますが、それが今日では解決済みだということは、到底これは認めるわけにはいかないわけでございます。こういう点も、今後日ソの会談をする場合においては常にソ連側に説明をし、ソ連の理解を求めてまいる考えでございます。  同時にまた、これは国民の皆さんに御理解を得るとともに、世界の理解を得ていくという必要もあるわけでございます。あらゆる機会を通じまして、日本の固有の領土の問題についての世界の関心とそして支持を得るように努力を続けていく、そういう外交努力はやっていきたい、こういうふうに思います。
  270. 吉田之久

    ○吉田委員 今大臣がお述べになりましたように、ソ連は既に決着済みとか最近申しておりますけれども、ソ連がいかに強弁しようとも、戦後のソ連と我が国との外交交渉の事実の中に、これがいかに懸案問題であるかということは、もう厳然として残っておるわけでございます。しかし、この種の問題、領土の問題は、挙げて主権そのものの問題でありますけれども、相手が強力な国であればあるほど、こちらが要求することをやめた途端にそれが既成事実化してしまうという悲しい歴史の現実があると思いますので、特に外務大臣は胸を張って、断じて本来固有の領土であるということを世界に向かって宣言し続けていただきたいし、また意を尽くしてソ連との交渉に当たっていただきたいということを、この機会に特に強く申し述べる次第でございます。  次に、防衛庁に対しまして若干の御質問をいたしたいと思います。  最近、ソ連の大型揚陸艦アレクセイ・コスイギンというのが極東に配備されたというニュースが流れておりますけれども、この揚陸艦の目的あるいは今後懸念される問題点、そういうことにつきまして御説明をいただきたいと思います。
  271. 古川清

    ○古川(清)政府委員 お答え申し上げます。  お尋ねのアレクセイ・コスイギンという船は、六万二千トンもある大きな船でございまして、ソ連の商船隊に属します民間のラッシュ船と申しますのは御案内のとおり、おなかの中にはしけをたくさん積んでおりまして、コスイギンの場合におきましては八十二隻のはしけが積まれておるというふうに言われております。  御質問の、この目的は何かということでございますけれども、私どもは必ずしもこの目的を明確に把握しているわけではございませんけれども、この船の所属、民間の商船隊であることから考えまして、極東地域に所在しておりますソ連の港湾設備の非常に悪い港がたくさんございますが、そういうところに輸送いたしまして、持ってまいりました貨物を揚陸する、このために極東に回ってきたのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  272. 吉田之久

    ○吉田委員 今の御答弁では、揚陸艦の輪郭については御説明を承ったように思いますけれども、現時点におけるこの艦の使用目的というものは、あくまでも民間のために働く商船にすぎないというように認識していらっしゃるようでございますが、それがそうあればそれにこしたことはないわけでございますけれども、我々が我が国の防衛問題について考えるときには、やはりいつでもそれが軍事用に転用され得る能力を持つものでありますし、またソ連の国家体制そのものが民事も軍事も時に応じてはまさに一体として押しかかってくることも十分想定されますので、その辺につきましては防衛庁としてもさらにいろいろと検討を深め、また、それが軍事用に使われる場合には、我が国の軍事バランス上どのような影響を与えるであろうかというようなこともいろいろ御検討を煩わしたいと思います。  次に、五九中業は「防衛計画の大綱」の達成を期する、これが特に長官の意思を強く入れてそういう表現をなさったようでございますけれども、その大綱の水準とは具体的には何を指すのか、別表そのものを指すのか、あるいは別表に付随する一連のいろいろな附属諸表と申しますか、そういうものの全部を指すのか、その辺のところを御説明いただきたいと思います。
  273. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 「防衛計画の大綱」におきましては、我が国が保有すべき防衛力のあり方といたしまして、幾つかのポイントを掲げておるわけでございます。第一に「防衛上必要な各種の機能を備え、後方支援体制を含めてその組織及び配備において均衡のとれた態勢を保有することを主眼」とする。第二に「これをもって平時において十分な警戒態勢をとり得る」ということ。第三に「限定的かつ小規模な侵略までの事態に有効に対処し得る」こと。第四にさらに「情勢に重要な変化が生じ、新たな防衛力の態勢が必要とされるに至ったときには、円滑にこれに移行し得るよう配意された基盤的なもの」であること。こういったような考え方が示されております。  その具体的な防衛力の水準としてはどういうことであろうかということでございますが、大綱の考え方はおよそ三つのポイントがあるように考えております。その一つは量的な問題でございまして、それはまさに先生御指摘のございました別表に示されている規模でございます。  それから、二番目には質的な問題がございまして、「諸外国の技術的水準の動向に対応し得る」ものである必要があるということでございまして、これは大綱の本文の方に書かれております。  それからまた第三には、教育訓練、指揮通信等の後方支援態勢等が整備されている必要があるということでございまして、この点も大綱の各所に記述をされていることでございます。  こういったようなものを総合して大綱水準というふうに理解すべきではないかというふうに私どもは考えております。
  274. 吉田之久

    ○吉田委員 大綱水準についての中身の説明、大体概念的にはわかりましたけれども、しかしその三つはそれぞれ極めて有機的に関連してくる問題だと思うのですね。そういう点を踏まえながら、なお若干の御質問をいたしたいと思うのです。  まず、量的に、別表はその水準の基準であるとするならば、この別表に書かれております数字はどういうふうに解釈すればいいのか。例えば陸上自衛隊の自衛官の定数でありますけれども、別表には五六中業完成時に十八万人と書いてあります。その限りにおいては、既にもうずっと今日までその数というか、規模には一応達したこととして、しかし実際は実定員は十八万人の八六%に抑えてある。じゃあそれはそのまま今後も九割くらいまでの数で押していってこれで水準に達しているものだと防衛庁自身解釈なさるのか。目標はそうだけれども、まだ一割は未達成なんだ、それをなるべく早い時点で一〇〇%にしなければならない、完全に一〇〇%にするというのは不可能だと思います。絶えず人は移動していくものでございますから。しかし、今の時点でこれでよしとなさっているのかどうか。それでよしとするならば、それは今お述べになりました自衛隊本来の使命からして、いろんな有事に即応できる、有事のときにもこの八六%で足りるとお考えになっているのか。だとするならば、十八万の定員というものは別表からももっと修正した形で書き改めるべきではないか、そういう大変素朴な疑問が出てくるわけなんです。  海、空の場合にはこの定数の九六%程度達成している。この辺をもってほぼ上限とみなしていいのかどうか。それがそうであるとするならば、やはり整合性の問題からいえば空、海がほぼ限度いっぱいまで満たされているとするならば、陸はやはり満たさなければならないのではないか。この辺の見解がそれぞれ国民にはまちまちに映っているのではないかというふうに思うのです。その辺御説明いただきたい。
  275. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 ただいま御指摘のございました陸上自衛隊の定数の問題でございますが、確かに法律上は十八万人の定数ということは達成した形になっておりますが、実際には実員としては予算上平均八六・三三%という充足率になっているわけでございますから、実際の兵力としては大綱の水準まで達していないということはもう御指摘のとおりでございます。この点は私どももかねてから、一つの改善を要する問題点として認識をいたしております。  この充足率につきましては、過去の長い経緯のある中で財政事情等の判断をしつつ全体の毎年度の予算措置の中でどういう面に重点を置いて資源配分をしていくか、財源配分をしていくかというふうな選択をした結果として現在八六・三三%になっているということでございます。私どもとしてはこの水準では有事即応という意味におきまして必ずしも十分でないと判断しておりますから、これをできるだけ高い水準にまで引き上げていきたいというふうに考えているわけでございます。具体的な数字として明確にこれというふうに決定しているわけでございませんが、かなり引き上げていくことが長期的には必要であろう、こう思っております。  海上自衛隊、航空自衛隊の場合の九六%という水準も、現段階において一応艦艇、航空機等の装備を運用するためにぎりぎりのものとして維持しておるわけでございますが、こちらの方はまた別に艦艇、航空機等の就役に伴う増員の問題というのがございますが、過去二年度にわたりましてこれを抑えているという事情がございまして、まずはこれの増員の所要を今後六十年度の予算の編成の過程において私どもは重点事項の一つとして取り上げていかなければいけない状況にあるということでございます。
  276. 吉田之久

    ○吉田委員 防衛庁長官にお伺いいたしますけれども、今御説明のとおりなんですが、でき得べくんば一〇〇%に近づけたい、そういう点では計画大綱としての達成水準としては十八万人というのは厳然として上せてある。そは言いながら、現実の予算要求の中ではそれは無理だろうとかいろいろ諸情勢を勘案して、とりわけGNPの一%内におさめなければならないというお互いに合意した一つの方針がありますので、そこで現状八割台で甘んじなければならない。この辺のところ、私は何も必ず一〇〇%達成しろと言っているわけではありません。あるいは早急にそのことによってGNPの一%を超えることやむなしと言っているわけではありません。少なければ少ない方が、そして極めて有機的に活動できる近代的な兵力であるならば、あるいはそれも時代の要請ではないかと思うわけなんですけれども、「防衛計画の大綱」を達成するんだと防衛庁長官初め国民に声を大にして協力を求めていらっしゃる割には、その基準となるべきものが極めてあいまいで玉虫色でどのようにでも解決できる、そういう感じを否めないと思うのですね。どうお考えになりますか。
  277. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 算術的といいますか幾何学的といいますか、びっしりしたというものはできるものではないと思うのです。これは我が国だけではなくて、どこでもそうだと思うのです。特にいわゆる技術その他いろいろ変化してきますから、それに対応する装備、編成等も考えていかなければならぬということもございますので、絶えず動いておる中での計画でございますから画一的にぴちっというものはしょせんできがたいと思います。ただ、政治的な判断としておおむねそこへ来ているじゃないかというようなことは言えるんじゃないか。また、そういうものにつきまして私どもは達成を期するということで頑張っていきたい。  GNP一%の問題が出ましたけれども、これは速度との関連において非常に大変な問題だ、そう認識しております。
  278. 吉田之久

    ○吉田委員 次にもう少し細部にわたって質問いたしたいと思いますが、別表では対潜水上艦艇約六十隻とかあるいは要撃戦闘機部隊は何個飛行隊、主要装備は作戦用航空機としては約四百三十機であるとか、かなり具体的に数字が書いてあるんですが、陸上の方に入りますと、何個機甲師団を置くとか空挺団をどれだけ配置するとか、そういう部隊の数だけになるわけなんですね。  ところが、国民の側から見ますと、問題の戦車など、「防衛計画の大綱」の水準を達成するためにはその上限、リミットといいますか、水準は幾らの七四式戦車を備えようとなさっているのか、その辺が明確でないように思うのですね。もっとも、「主要装備の整備数量」という表などでは八百五十という数字が出てまいりますけれども、五六中業完成時の勢力としては八百五十という数字は書いてありますけれども、この権威は別表と同じほどの権威があるのかどうか、その辺の御説明をお願いしたいと思います。
  279. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 御指摘のように、大綱上の別表の表現といたしましては、陸上自衛隊の場合は装備について書いていないというわけでございますが、それはなぜそうなっているかと申しますと、陸上自衛隊の場合と海、空自衛隊の場合とで防衛力の設計の考え方に違いがあるからだろうと思います。  それは、海上自衛隊あるいは航空自衛隊の場合でございますと、艦艇、航空機というものを基幹として防衛力の設計がなされていくということでございますので、そういったものを大綱におきまして目標規模として示しているわけでございます。これに対しまして、陸上自衛隊は、そういった艦艇とか航空機等に見合うような骨幹の装備というものが実はございませんで、むしろ人を基幹といたしまして、それに各種のいろんな装備を組み合わせて、複合体としての防衛力を設計していくというふうな性格のものでございます。したがって、人を基幹として防御力を表現するということから、ただいまの別表のような姿になっているわけでございます。  そこで、ただいまさらに御指摘ございました、五六中業で掲げております数字というものの性格でございますが、これは既に御承知のとおり、五六中業そのものが防衛庁の内部資料としてつくられているものでございまして、毎年度の業務計画ないしは概算要求の基礎にするという性格のものでございますから、これ自体は政府の決定した計画というものではございません。ただ、この中期業務見積もりというものは、防衛庁がそういうものを基礎として業計なり概算要求をやっていくという性格のものとして、国防会議に報告をし、了承を得ている、そういう経緯はあるわけでございますので、私どもとしては、この五六中業あるいは今後作成します五九中業というものができるだけ整々として実現されるように、関係各省にも協力を要請をし続けていきたいというふうに考えているものでございます。
  280. 吉田之久

    ○吉田委員 次に、内部資料としての一つのめどと申しますか、予定としての数量はわかりますけれども、それにしてもこの七四式戦車、五六中業で三百七十三両用意する段取りで二年間経過いたしておりますけれども、まだ百二十両しかできていない。このピッチでいけば五年では容易じゃないと思うのですね。六年ぐらいかかってでもまあまあぼつぼつやっていこうという考えなのか、それはそれとしても、今度はそれが大体そろったころには七四式戦車もそろそろもう旧型の戦車に属すると言われ始めておりますね、そうすると、次のまた新しい戦車を入れていかなければならない。そうすると際限なくイタチごっこのように中業というものが続いていくのか、そして、「防御計画の大綱」というものは達したかに見えては蜃気楼のごとくまた次の目標に向かって進んでいかなければならないのか、この辺の説明はどうなさいますか。
  281. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 陸上自衛隊の戦車定数は、現時点では約千百三十両ということでございまして、そのうち五十九年度予算の装備が取得されました時点の完成時で見ますと、七四式戦車が約六百両、六一式戦車、古いタイプの方が約五百十両ということでございますから、確かに新旧混合の状態になっておるわけでございます。  現在、これを七四式に逐次入れかえてきておるわけではございますけれども、今後の計画としましては、やはり七四式戦車自体も既に開発されてから相当年数たっております。諸外国の戦車も新しいタイプのものが開発されてきておりまして、八〇年代の性能のいいものが出てきておりますから、我が自衛隊におきましても、新しい戦車の開発を今着手して実施中でございます。したがって、その開発が完了いたしますれば、その時点では六一式戦車を入れかえるのはこの新しい戦車で取りかえていくということに移行していきたいというふうに現在考えておるわけでございます。  いずれにしましても、戦車そのものが使える間はやはり使っていくということも、他面、ある程度は考える必要もあるわけでございますから、大綱水準という場合でも、やはり新旧混合の状態がある程度入ってくることはあり得ることでございまして、そういう状況は、各国の装備もやはり同様の状況にあると思います。  そういった点も考えながら、総体としての技術水準が諸外国と常に、バランスをとった形で維持できるように配慮していこうというのが大綱の基本的な思想だろうと思っておりますので、そういう意味での努力は今後ともずっと続いていくべきものであろう、こういうふうに考えております。
  282. 吉田之久

    ○吉田委員 長官、お聞きのとおりです。また既に長官自身もお気づきだろうと思いますけれども、この「防衛計画の大綱」の水準に達するためにと、それを合い言葉のように政府努力され、また国民もこれに協力してきていると思うのです。しかし、水準そのものは部分的に極めてあいまいな要素を残しておる。それから数量的には決めてあったって、それに達したって、先ほど長官からお話しのとおり、質的には外国の水準もどんどん日進月歩変わってくるわけですから、またそれについていかなければならない。そうすると、我が国の防衛というものは、「防衛計画の大綱」を達成する、そのためにまず当面の最大の努力をしているのだ、こうは理屈では言えても、それだけでも、もう際限なく努力の限りを傾けて、なおかつ、いつまでたっても水準に達成しない、そういう宿命的なものではないか。これはやはり国民に説明が大変難解でございますね。  ですから、「防衛計画の大綱」自身が、五十一年のあのデタントの一番緩やかなころにつくられたもので、それ自身が現状に適しているかどうか、これは問題がありますし、問題がないとしても、それ自身が中身が変わってくる、世界とともに変わってくる問題でございますから、どこまでいったって、これはほぼ達成した満足感に達し得ない。そういう防衛というものが国民にわかるだろうかどうか。何かもっと、この時点ではここまで、この時点でここまできて、新しい「防衛計画の大綱」を立てます、また水準をつくります、別表も出します、内部資料もほぼ別表に準ずるものとして厳守いたしますと、何かその辺がもう少し明確でないと、これからの厳しい時代に向かって、国民の合意を求めていくことはなかなか大変なのではないかというふうな気がいたします。  それから、時間が参ったようでございますので、ついでにちょっと最後質問をいたしておきますけれども、古来、武士というものは名誉を最高に重んずる集団であると思います。そういう意味では、この自衛隊というのもそうあるべきだろうと思います。ところが、同じ大学を出て、国家公務員の内局に入った人たちとそれからいわゆる自衛隊の部隊に制服組として入った人たち、それが五十五歳、五十七、八歳、定年間際で水準を比較いたしますと、給与面でもかなりの差がある。それからまた、いわゆる官位等級でございますね、その辺でもかなり違う。あるいは位階勲等を受けるにしたって、かなりの差が生じておる。こういうことでは誇りを持って自衛隊に参加しょう、一朝有事の際はお国のために命を投げ出そうというような気分にはやはりなりにくいのじゃないかと思うのでございます。その辺の問題点も今後どのように対処なさろうとするのか、あわせてお答えいただければありがたいと思います。
  283. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 大綱の別表の問題は、確かにお説のとおり、いろいろと技術が変わってきますので、それとの関係でいつまでたってもなかなかその決めた数を超えることは難しいじゃないか、そういう御指摘はあろうかと思います。しかし、それは先ほど申し上げましたとおり、やはり動くものでございますから、その中での問題としてとらえないと、ただ数を伸ばせばいいという問題じゃない。  それからもう一つは、「防衛計画の大綱」というのは一体何かといいますと、限定的かつ小規模の侵略に対応する、これですが、大綱の見直しという場合にそこを見直すのかどうかという問題も非常にポイントなんですよ。ですから、これを見直すか見直さないかということは、なかなか軽々に論ぜられない、私はそう思います。それが一つ。  それからもう一つは、自衛官が誇りを持ってやれ、そういうような諸施策をとれ、これは同感であります。そのためには、私が常に言っていることは、国民の皆さんのコンセンサスを得られるようにまずもって我々みずからが努力をしよう、そういうことで頑張ろうということで指導しているところでございます。
  284. 吉田之久

    ○吉田委員 ありがとうございました。
  285. 三原朝雄

    三原委員長代理 東中光雄君。
  286. 東中光雄

    ○東中委員 核トマホーク配備関連をいたしまして外務大臣にまずお伺いしたいんですが、核武装と領海通過の関係についての政府統一見解昭和四十九年十二月二十五日に当時の富澤外務大臣が明らかにされております。「一般国際法上の外国軍艦の無害通航の問題に関して政府昭和四十三年領海条約加入の際明らかにした立場、すなわちポラリス潜水艦その他類似の常時核装備を有する外国軍艦によるわが領海の通航は、領海条約第十四条4にいう無害通航とは認めず、したがって、原則としてこれを許可しない権利を留保するとの立場には変更はない。」云々ということになっているんですが、「ポラリス潜水艦その他類似の常時核装備を有する外国軍艦によるわが領海の通航」は認めない、「原則としてこれを許可しない」こういうふうに言われておるわけでありますが、この立場は今も変わりはないわけでございますね。
  287. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 変わりはありません。
  288. 東中光雄

    ○東中委員 「ポラリス潜水艦その他類似の常時核装備を有する外国軍艦」こうなっているんですが、核トマホーク積載の原子力潜水艦は「その他類似の常町核装備を有する外国軍艦」の中に入ると思うんですが、いかがでございましょうか。
  289. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 御指摘昭和四十九年の宮澤外務大臣から申し上げました見解に出ております「ポラリス潜水艦その他類似の常時核装備を有する外国軍艦」というのは、ここで念頭にございますのは、当然のことながらポラリス潜水艦等の弾道核ミサイルを常時配備しておる潜水艦ということでございまして、トマホークにつきましては、従来から御説明申し上げておりますように核、非核両用のトマホークがあるということでございまして、その配備能力を有する軍艦というのは、ここで申し上げておる「常時核装備を有する」軍艦には該当しないというふうに理解しております。
  290. 東中光雄

    ○東中委員 核装備をし得るというふうにあなたは言いましたけれども、私はそういうことは聞いていないのでありまして、核巡航ミサイルを装備をしている潜水艦、それは「その他類似の常時核装備を有する外国軍艦」の概念の中へ入るのではないか。あなたはポラリスなりポセイドンなりというふうな戦略弾道ミサイル核原潜だというふうにこの文言から言われましたけれども、この文書にはそんなことは書いてないのであって、この文言には「その他類似の常時核装備を有する外国軍艦」、それから非核のことを言っているのじゃなくて、核トマホークを装備をしているアメリカの原子力潜水艦、それは「常時核装備を有する外国軍艦」の中に入るのじゃないですか、当然。非核のことを言っているのじゃないですよ。核巡航ミサイルを積んでいるとき、積んでいる軍艦、原子力潜水艦、こう言っているわけですから、ちょっと質問と違う答弁をしてもらったら困ります。
  291. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 御指摘昭和四十九年の見解につきましては、東中委員承知のとおりに、その前にさかのぼりまして、昭和四十三年の核兵器装備の軍艦の無害通航に関します政府見解というものとの関連で御理解いただければありがたいと思いますが、もともと核兵器を搭載しておる軍艦につきましては、我が国はそのような核兵器を現実に搭載している軍艦の我が国の領海への航行は非核原則との関連で認めないということが昭和四十九年の見解基本にあるわけでございまして、その点につきましては、これは常時核装備をしておる軍艦であろうとたまたまそのとき核兵器を搭載している軍艦であろうと、その間に本質的な区別はないわけでございます。ただ、ここで申し上げています「ポラリス潜水艦その他類似の常時核装備を有する外国軍艦」につきましては、こういうものは必ず核兵器を搭載しておるであろう、そういう前提に立ちまして、そういう潜水艦につきましては領海条約に言う無害通航とは認めない、こういうことを申し上げておるわけでござます。
  292. 東中光雄

    ○東中委員 そのとおりだから、だから核トマホークを巽戦配備し、既に装備をしている軍艦、米国防総省の発表によれば、この六月二十七日に原子力港水艦四隻に核つき艦対地巡航ミサイル、トマホークを実戦配備をしたということを公式に発表しているでしょう。その公式に発表している軍艦はどの軍艦か、私まだ見たことないけれども、その軍艦、抽象的にはあるわけですね。その軍艦はポラリス潜水艦と同じように無害通航とは認めない、原則としてこれを許可しない、こういうことになるのではございませんかということを聞いているのですから、どうですか。
  293. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 六月二十七日にアメリカの国防総省が一部の水上艦艇につきまして核弾頭搭載トマホーク配備能力が付与された、運用能力が付与されたということを発表していることは、私ども承知しております。ただ、今東中委員指摘になりました、具体的に四隻の個々の潜水艦について核弾頭搭載トマホーク配備されておるということをアメリカが公表したという点につきましては、私ども寡聞にして承知しておりません。
  294. 東中光雄

    ○東中委員 話をそらさぬでくださいよ。  まず、宮澤統一見解で言われておるのは、常時核装備を有する外国軍艦の領海通過は無害航行とは認めないという見解で、この見解のもとには、常時であろうと一時であろうと積んでおるものだったら認めないということがある、先ほどそういう見解を言われましたですね。それはそれでよろしい。だから、核トマホークを搭載した原子力潜水艦の無害航行権は認めないという立場になりますねということをまず一つ聞いているわけですね。そういうものはないと言われるから、ないとは言えない、四隻について核つきのトマホーク配備したということを――計画を開始したというのだから実際には配備したのでしょう、そういうふうに発表しているから、そういうものが日本へ仮に来たとしたら、それは無害通航はできないということになりますねということを聞いておるわけです。
  295. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 御質問のポイントを必ずしも私理解しないわけでございますが、御承知のとおりに、もともと核兵器を搭載した軍艦が我が国の領海内に入ろうとすれば、アメリカ側としては安保条約交換公文に基づきまして、事前協議をする義務があるわけでございます。それで、事前協議が行われればこれに対してノーと言うというのは、従来から政府が累次明確に申し上げておるとおりでございます。したがいまして、その限りにおいて、無害通航の問題は一切起こらないわけでございます。もともとこの昭和四十九年の見解、それから先ほど私が申し上げました無害通航の問題というのは、当初、委員御記憶のように、無害通航については事前協議の例外だという政府見解がございまして、領海条約国会承認をいただきます際に、従前の政府見解を改めまして、核常備艦については無害通航を認めないということを政府立場として申し上げた次第でございまして、そういう前提に立てば、核兵器を搭載した軍艦が日本の領海に入ってくる場合には、それが無害通航であろうとなかろうといずれにせよ事前協議対象になる、こういうことでございます。
  296. 東中光雄

    ○東中委員 ということは、核トマホークを積載した軍艦は無害通航とは認めないという宮澤見解の範囲内に入っておるということじゃないですか、表現の仕方が変わっておるだけで、もっとすらっと言ってもらったらいいのですよ。時間をとるのがばからしいみたいなものですから、次に進みます。  それで、先ほど六月二十七日の国防総省の声明について、その四隻の原子力潜水艦がどういう原子力潜水艦であるかということはどうも知らないと替われたように思うのですけれども、核つきトマホーク配備を開始した四隻の原子力潜水艦のクラス、ロサンゼルス級なのか、スタージョン級なのか、どっちにしてもその艦級はわかっておるのでしょうね。それもわかりませんか。
  297. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 具体的にどういう潜水艦に核弾頭つきトマホーク配備したかということにつきましては、私ども承知しておりません。艦級につきましては、従来からアメリカトマホーク配備する予定の艦級としては種々公表しておりまして、潜水艦につきましてはロサンゼルス級潜水艦それからスタージョン級潜水艦、これは公表されております。
  298. 東中光雄

    ○東中委員 この四隻はどっちかというのはわかりませんか。
  299. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 そもそも四隻という数字につきましては私ども承知しておりません。したがいまして、委員の御指摘の四隻の潜水艦がいかなるクラスに該当するものであるかということにつきましても、私ども承知しておりません。
  300. 東中光雄

    ○東中委員 しかし、あれだけ新聞で報道されているし、四隻というのは全部見出しにもなっておるのだけれども外務省は四隻であるということ自体も知らぬわけですか。
  301. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 正確を期すために補足させていただきたいと思いますが、私どもは核弾頭装備のトマホークが具体的にいかなる潜水艦か、あるいは隻数につきましても何隻に装備されておるかということについては承知しておりませんし、私どもの知る限り、アメリカ側がそういう数字を公表したことはないと承知しております。  ただ、補足申し上げますと、二月の段階で、一部新聞にアメリカの国防省筋が四隻の潜水艦の名前を挙げて、そういうものにトマホーク配備されたと話したということが新聞報道で流れたことは承知しております。ただ、私ども想像しますに、その他のアメリカの発表等からいたしますと、いずれにしましても、核弾頭搭載のトマホークはことしの六月以降そういう運用能力が付与されたということでございまして、先ほど委員指摘の新聞報道は、私の記憶ではたしか二月ごろの新聞報道だろうと思いますが、そういうことから想像いたしますと、これは恐らく通常弾頭のトマホークであろうと私どもは考えております。
  302. 東中光雄

    ○東中委員 北米局長、むちゃくちゃ言ってもらったら困るね。私の言っているのは二月だろうと言う。六月二十八日の新聞をずらっと持ってきておるのですよ。全部見出しにそう書いてある。日本の新聞ですよ。四隻というのは見出しに全部書いてあるじゃないですか。しかも核つきトマホーク。あなた、まるっきり私が二月の通常核弾頭の報道を六月の核つき報道と間違えて言っているみたいな、とんでもない答弁ですよ。不謹慎と言わざるを得ないですよ。じゃないかなんて、私、ここに持ってきているんだから。でたらめ答弁だと私は思いますね。何ということを言っているんですか。あなたみたいな無責任な答弁では答弁にならぬですよ。アメリカ時間で六月二十七日付の国防総省の声明でそういう趣旨のことがあったということを各紙が発表していることについて質問をしているのに、それは二月でございましょうとは何ですか。何が二月ですか。
  303. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 私は責任を持って御答弁申し上げている次第でございまして、六月二十七日の委員指摘の国防省の発表は、数日前に一部の米国海軍戦闘艦艇において核弾頭搭載のトマホーク運用が開始されたという発表でございまして、ここにはいかなる艦艇、さらには何隻の艦艇というものにそういう核弾頭搭載の運用能力が付与されたということは一切出ておりません。  それから、そのときに確かに四隻の潜水艦云々という新聞報道がございましたことは事実でありますが、これは委員指摘の、また私が御答弁申し上げております。そのときの国防省の発表と何ら関係がない、私の見る限り推測の記事でございまして、国防省がそのような発表をいたしたということは私どもは一切承知しておりません。
  304. 東中光雄

    ○東中委員 二月の問題ではなかったことだけは確かです。そういうふうな声明文の中に四隻ということが書いてなかったと言うんだったらそれはそれでいいですけれども、二月の新聞で言っているんでしょう、しかもそれは通常のものであって核つきではないんだ、そんな答弁というのはないということを私は言っているわけです。  それで、どっちにしましても、ロサンゼルス級あるいはスタージョン一級の原子力潜水艦に核つきトマホーク配備するということが発表されているということは今答弁されたとおりでありますけれども、こういったロサンゼルス級にしてもスタージョン級にしても、これは昨年来もう二十五回も我が国に寄港しておりますね。現実に装備されたかされないかはまだわからぬにしても、そういうものに装備をすると言っているその艦級の原潜は昨年来二十五回も日本へ入ってきている。これは積載されたら入ってくる可能性は非常に多くなってくるということだと思うのです。そういうスタージョン級にしろロサンゼルス級にしろ攻撃型原潜に核トマホーク配備された場合、これは八一年十月にレーガン大統領のあの戦略核戦力増強計画が発表されましたが、その中で、攻撃型原潜の一部に核トマホーク配備された場合、それは戦略予備戦力になるんだ、戦略予備戦力として配備をするんだということを言っていますね。外務省は、核トマホーク配備するのは戦略予備戦力としてだというその戦略的予備戦力というのはどういうふうに理解をされているのか、お伺いしたいと思います。
  305. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 核弾頭を搭載しましたトマホークアメリカの核戦略の中でいわゆる第二撃能力の一部の、今委員指摘の戦略核戦力の一種の予備戦力、リザーブとして認識されておるという側面があることは私ども承知しております。他方におきまして、通常弾頭のトマホークを含めまして全体のトマホーク配備計画というものは必ずしもそういう側面だけに限られませんで、一般的にソ連の海軍力との関連におきましてアメリカの海軍力の数的な劣勢を補うためのものというふうにアメリカの国防戦略上位置づけられておると承知しております。
  306. 東中光雄

    ○東中委員 レーガン大統領自身が戦略予備戦力というのはソ連の第二撃の抑止のために維持される戦力だというふうに説明をしています。ほかのことがあるかどうかということについては私は何も言ってないので、戦略予備戦力について聞いているんだ。あなたは必ずほかのことをつけ加えて少し薄めたことになるとお思いになるかもしれぬけれども、そうじゃなくて、レーガンの計画自体で戦略予備戦力だといい、戦略予備戦力というのは第二撃の抑止のために維持される戦力だ、ごう言っている以上は、原子力潜水艦に配備をされる核トマホークというのは常時配備されるポラリスやポセイドンやトライデントなどと同じような性格を持ってくる、非核の場合は別ですよ、核の場合はそういうものを持ってくるというふうに考えざるを得ないんです。その点はどうでしょうか。
  307. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 核弾頭搭載のトマホークというものが先ほど委員指摘のようにアメリカの戦略核戦力の予備戦力という位置づけをされておる側面があることは事実でございます。しかしながら、そうであるからといって、他方におきまして、これはアメリカ側も随時言っておるわけでございますが、核弾頭つきトマホークを積載する能力が付与されておるということと、現実に核弾頭つきトマホークを積載しておることとは別個の問題であるということはアメリカ側が言っておることでございまして、私どもとしましては、今委員指摘のように戦略核戦力の予備戦力であるからといって常時特定の艦艇に核弾頭つきトマホークが搭載されることになるかどうかということについては、私どもは何ら承知しておりません。
  308. 東中光雄

    ○東中委員 核を必ず積載することになっていると私たちは理解しているんです。それは一九八二年の三月五日、米上院の軍事委員会でのケルン提督、戦略潜水艦課長の証言あるいは一九八一年四月二十九日の下院軍事委員会での海軍作戦部のローン提督の証言、これらは、核と非核はいつもミックスして積載するんだ、だから非核もあれば核もあるけれども、ミックスしているから必ず核は積んでいる、非核も積んでいる、そういう関係になっている。そのことは一昨年の三月十八日に内閣委員会で当時の淺尾北米局長もこういう答弁をしております。ケルン証言は核と非核をどのような割合で積むかということは艦隊司令官に任されているということなんだという答弁をしています。言いかえれば当時の北米局長は、核と非核は割合をどれぐらいにするか、二対一にするのか、五対五にするのか、そういうことを決めるのは艦隊司令官に任せられているということが証言ですと淺尾さんは答弁したんですよ。だからミックスしているんです。一つでミックスするということはないんですね。二つあってこそ、ミックスするんでね。そういう点で言うならば、必ず核はある、非核もある、ミックスしている、割合は司令官が決める、こういうふうに証言と答弁から出てきているんですから、そういう点はどうでしょうか。
  309. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 私もケルンというアメリカの海軍作戦部の戦略潜水艦課長という人の御指摘の証言の記録を読ませていただきました。それから御指摘の淺尾政府委員答弁についても私も承知しておるところでございます。  しかしながら、ここのケルン証言なるものに出てきておるところは、御指摘のように、核弾頭対地攻撃トマホーク、通常弾頭対地攻撃トマホーク及び通常弾頭対艦攻撃トマホークを核攻撃型原子力潜水艦に具体的にいかなる組み合わせで配備するかは艦隊司令長官によって決められるということが書いてあるだけでございまして、委員の先ほどおっしゃいましたように、およそトマホークを積めばそこには必ず核が入っておるんだ、そういうことを前提とした組み合わせだということは、この証言からは特に出てはこないだろうというふうに私は理解いたした次第でございます。
  310. 東中光雄

    ○東中委員 ローン提督の証言では、ミックスという言葉も使っています。だから、何とかそうでないように、核は常に積んでいるんではないんだというふうに、そういうニュアンスに言いたいようですけれども、もっと素直に読むべきではないんでしょうか。その点を指摘をして、こういうポラリス潜水艦と同じような戦略予備戦力として配備する、それが就航する、そして今まで日本へ何回も来ているという、そういう原潜に積載をされる、こういう状態ですから、だから今国会の予算委員会で冒頭に言われましたニュージャージーの問題についての事前協議、こういう問題であるから、その前に確認をするという趣旨の――後で総理は言葉足らずだということで訂正されましたけれども、私はやはりこういう推定が働くような核積載艦、トマホーク核積載艦ということの推定が働く場合は、ポラリス潜水艦などと同じように厳格にチェックをする立場というものをはっきりと公表して、事前協議の場合も、それが随時協議であろうとあるいは事前協議であろうと、はっきりとアメリカ側に、そういう手続、どのルートに乗せるかじゃなしに、その態度をはっきりと示すことが必要じゃないか、こう思うのですが、最後外務大臣の御見解を聞いておきたいと思います。
  311. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 アメリカがどういう艦船に核を積むかということは、アメリカの例えば極東戦略、世界戦略でアメリカ自身が決めることであって、日本との関係においては、核を積んで日本に入ってくるときは、これは安保条約事前協議対象になるわけですから、アメリカ事前協議にかけなきゃならぬ義務があるわけです。ですから、これをかけられた場合においては日本はノーという大原則は明らかにしておるわけです。ですから、この間においては何ら疑問はないわけで、東中さんがいろいろ疑問を持っておられるというのは、やっぱりアメリカとのそういう条約の約束が信頼できないという立場に立っておられる。我我は信頼できるという立場に立っておるのですから、基本的に全然土台が違うと私は思っておるのですね。  しかし、そうは言ってもやはり国民の中にトマホークという問題が浮かび上がって、今のニュージャージーその他いろいろとまた艦船が入ってくる、そういうことで国会でいろいろと問題になる、あるいは国民の中でいろいろと議論になる。こういうときは、やはり安保条約というのは両国信頼の上に成り立っていかなきゃなりませんし、国民にも安保条約信頼性というものについての確認を得なきゃならぬわけですから、そういう安保条約信頼性を高めるために、土台が揺らいじゃいけませんから、第四条によって随時協議を行って安保条約を守りましょう、条約さらに関連規定は道守いたします、そしてまた日本非核原則についてはこれは十分理解をいたします、こういった形の日米間の合意といいますか、確認を第四条によってやって、そして安保条約信頼性を高めていこう、こういうことであります。
  312. 東中光雄

    ○東中委員 もう時間がなくなってしまったのですけれども、防御庁に一言も聞かないのはまことに申しわけございませんので、一点だけお伺いしておきたいのですが、リムパック84について、我が国から、エンタープライズ一緒に五隻の護衛艦が、これはブルー軍になったのですかね、ということで集団的な行動をやったということでありますが、それについて、これは艦隊演習であったのかどうかということが第一点であります。  それから、エンタープライズを取り巻くブルー軍側では、護衛艦五隻以外にはアメリカの巡洋艦が一隻あっただけで、護衛艦はタスクフォースを形成しているような、そういう形をとっているというふうに思うのですが、そうであったのか、なかったのか。  それから、そうでなかったと言われるなら、そういうことはできないという考えで番われておるのか、できるんだけれども、今度はそういう格好ではやらなかったんだというふうに言われるのか。  聞きたいことはたくさんあるのですけれども、時間ですので、その三点についてお伺いをしたいと思います。
  313. 大高時男

    ○大高政府委員 お答えいたします。  リムパック84につきましては、先生御指摘のように本年五月の十五日から六月の二十九日まで中部太平洋、それからハワイ、サンジエゴ、この周辺で行われたわけでございまして、我が国も艦艇五隻、それから航空機八機、人員千四百、これでもって参加をいたしたわけでございます。  ただいま御指摘の点は、この訓練の内容、第一フェーズから第四フェーズまで分かれておりまして、そのうち第二フェーズにおきまして対抗戦ということで、先ほど先生御指摘のようにブルーに属しまして米海軍とともに水上打撃戦訓練、それから対潜水艦戦闘訓練、あるいはまた防空戦訓練、それからまた電波管制下におきます移動訓練、こういった各種の汎用訓練を行ったわけでございまして、この過程におきまして当然米側には航空母艦がおります。御指摘のようにエンタープライズもおりますが、その他の艦艇もおったという状況でございまして、これら米国の艦艇とともにただいま私が申し上げましたような各種の戦術あるいは戦技といったようなものの錬成、訓練あるいはまた演練、こういうのを行ったというわけでございまして、ただいまお話しのように特に艦隊を構成するとか、そういうことではございませんで、申し上げたような汎用的な技術の習得訓練を広範囲にわたりまして米国の西海岸からハワイに至る間におきましていろいろな訓練想定、場合によりますと一つのこともあり、二つのこともあり、あるいはまた連関してと、いろいろな形はありますけれども、申し上げた各種の訓練を行った、こういうことでございます。
  314. 東中光雄

    ○東中委員 タスクフォースはやれるのですか、やれないのですか。エンプラを中心としてタスクフォースをつくって行動するというようなことの訓練はできるのですか、できないのですか。今、やらなかったというのはわかりましたけれども、できるのか、できないのか。
  315. 大高時男

    ○大高政府委員 ただいま申し上げましたように、そもそもリムパックと申しますのは、私が申し上げましたような対潜戦闘技術、あるいはまた対航空戦の技術、あるいはまた電波管制下における戦闘訓練といったような各種の技術を習得するのが中心でございますので、特にある特定の船を護衛するための隊形を組むとかなんとか、そういうことのために訓練をやっておるわけではない、今申し上げた各種の汎用技術を習得するために訓練をやっておる、こういうふうに御理解いただきたいと思います。
  316. 東中光雄

    ○東中委員 時間ですから終わります。
  317. 三原朝雄

  318. 田名部匡省

    ○田名部委員 最初に、我が国の防衛政策の基本的なことについてお伺いをしたいと思います。  今、世界の人々の中で、戦争を起こしたいとか、あるいは戦争したいと思っている人はおらぬと思うのであります。超軍事大国と言われるアメリカやソ連においても平和を主張しておる。しかし、平和を主張しておるこの超大国がなぜ軍備の拡大を図るのか、その原因についてまず御所見を伺っておきたいと思うのであります。
  319. 北川石松

    ○北川政府委員 ただいま田名部委員から、平和を望みながらなぜ米国、ソ連とも軍備を拡張するのかという御質問をちょうだいいたしました。  現下の国際社会の平和安定は、これは何人も望むところでございまして、こういう形の中で、ソ連は極東にSS20を初めとする軍備の増強を図っておるということを言われております。米国は、かかるソ連の一貫した軍事力の増強に抑止力をつけたい、強い抑止力こそ平和につながるという形の中で、望まないのでありますが、軍備が平衡を保つべくきておる、こういう見解を持っております。  以上でございます。
  320. 田名部匡省

    ○田名部委員 世界の常識はバランス・オブ・パワーと言われているわけですね。要するに、一方の力が衰えたときに非常に危険だ、こういうことで一般的に言われているわけでありますけれども、私どもの考えている理想、これと現実というものは必ずしも一致しない、大変難しい、こう思うわけであります。特に、世界じゅうに九十億トンの原爆があるという不安を持ちながら、これに対する対策を見出せない。恐らくいら立たしさを感じているだろうと思うのであります。  私は、そういう立場で、社会党の石橋委員長が就任間もない予算委員会において中曽根総理に質問されている中で、非武装中立、正しくは非同盟中立全方位外交、こう言うのだそうでありまして、内容はどういうことかよくわかりませんが、それなりの考え方でもあると思うんです。理想的ではあっても現実的にはいささか疑問がある。しかし、理想論を展開する反面、自衛隊は違憲だが合法であるという現実的な面もまたお持ちのようであります。  そこでお伺いしたいのは、世界の中でこの非武装中立といいますか非同盟中立全方位外交をやっている国がどのぐらいあるのか、ちょっとお伺いしたいと思うんです。
  321. 中村昭一

    ○中村説明員 お答え申し上げます。  非同盟中立と非武装中立とは若干異なる概念でございます。  非同盟中立というのは一つの政治的な立場でございまして、これは古くはナセル、スカルノといった指導者たちが唱道し、現在なおかなり多くの国がその立場を受け継いでいるところの政治活動でございます。  もう一つの非武装中立という言葉については、この定義は必ずしも明確ではございませんが、例えば軍隊を一切保持せず中立の立場をとる国としましては欧州のリヒテンシュタイン公国、あるいはまた軍隊を保持せず国の安全を米州機構という集団安全保障機構により維持する、そして国際紛争に関してはすべて中立の立場をとるという政策をとっているコスタリカの両国があると承知しております。
  322. 田名部匡省

    ○田名部委員 社会党の言う理想的な国が余りない。私の聞いておるところでは、インド洋にありますセイシェル共和国あるいは太平洋のナウル共和国もその中にあるのだそうでありますが、これはいずれも――人口一方に満たない、軍備を持てない、経済的にも人口的にもそういうところである、こう伺っているわけであります。  そこで、国の防御の方法には幾つかの方法が考えられるわけですが、例えば、米ソのように自国で十分な軍備を持つこと、あるいは世界が東西陣営に分かれて、いずれの国もアメリカと同盟を結ぶかソ連と同盟を結ぶという考え方に立つと、ソ連と同盟を結ぶということも一つ考え方かもしれません。あるいはさっき申し上げたような非武装中立、あるいは現状のように自衛力と日米安保体制による抑止を基本とするというこの考え方、現在日本がとっておる方法、大体この四つの方法が考えられるわけであります。しかし、今の我が国の憲法下ではこの第一の米ソのような軍備を持つということは不可能だと私は思うのです。それからソ連と同盟を結ぶというのも、自由経済の中で、貿易立国であります日本としては現実的な話にはならない。となりますと、今申し上げた二つの方法が考えられる。  そこで、非武装中立かあるいは現状維持かということなのでありますが、非武装中立によって国の安全が保たれるかどうか、これは検討したことはおありですか、ちょっとこの点をお伺いしたいと思います。
  323. 北川石松

    ○北川政府委員 ただいま四つの平和を保つための方法を御指摘を受けました。  外務省といたしましては、非武装中立という形よりも、ただいま安全保障条約によりまして戦後四十年、平和を保ってきておりますので、この線を堅持しながら世界の平和に貢献しなくちゃならないし、また、これによって西欧諸国圏の信頼を深めていかなくちゃならない、こんな考えでおります。  以上であります。
  324. 田名部匡省

    ○田名部委員 次に、政務次官にお尋ねをしたいのでありますが、我が国の安全保障政策についてであります。  歴史的にも、ソ連の今日までの行動を見ておりますと、それはまあ大変な飽くなき領土拡張への意欲あるいは侵略の歴史であった、こう言っても過言ではないと思うのであります。大東亜戦争が終局を迎えたときに、日ソ不可侵条約、これを無視して攻撃をした。あるいは「北方領土奪還への道」という水津少佐が書いた本の中にも北方四島を占領するときのことを詳しく書いておられるのですね。さらにチェコ、ハンガリー、ポーランド、これは占領ではありませんが、無抵抗の状態で弾圧されている。特徴的なことは、無防備なら侵略をするが、相当の被害をこうむるようだと入らないと見るのが一般的だ、こうよく言われるわけであります。  もう少しお話を申し上げてみたいと思うのでありますが、例えば一九六〇年以降のベトナム戦争に疲れてアメリカがソ連とデタントをした、このときはヨーロッパの国々は軍事費を削減して市民生活の向上に金が使えるということで安心したわけでありますね。ところが、ソ連だけは核凍結の範囲に入っていなかった。中距離核ミサイル、SS20を大量に生産しておった。一九七五年にはサイゴンが陥落をして、北ベトナムが南ベトナムを併合した後に、アメリカはこれでもう厭戦気分と申しますか戦争に嫌気が差してきた、そういうときに人道主義を前面に出したカーター大統領が選ばれたわけであります。その選ばれた翌年に東独軍とキューバ軍がアンゴラ、そしてその翌年がエチオピア、七八年が南イエメン、どんどんどんどん勢力を拡大していった。いよいよ七九年にはソ連自身がアフガニスタンに侵攻した。そこで、この年の十二月でありますが、NATO理事会でSS20に対抗するパーシングⅡなど中距離核ミサイルを配備することを決定した。さすがのカーターも、これは軍備増強政策に踏み切らざるを得なくなってきた。やがてタカ派と言われるレーガン大統領が就任をした。こういった一連の経緯を見ても、どうも無防備中立というのは非常に危険だ、やはり現状のように自補力と日米安保体制とによって抑止を基本とする我が国の防衛政策が、これは日本としてとり得るただ一つの道だ。しかも今お話にありましたように、戦後四十年、我が国がチェコやハンガリーやアフガニスタンのような目に遭わなかった、そして今日の繁栄を築いたということもまた明らかであるわけであります。  しかしながら、一部報道や国会での議論、本委員会での議論を伺っておって、依然として我が国の自衛力増強はソ連の反発を招くあるいは我が国が米軍の基地があるゆえに自国の関係ない戦争に巻き込まれる、こういった議論が出ているわけでありますが、我が国がみずから抑止力を確保するための努力を批判するこれらの方々、一体どうすれば――一切放棄すれは日本が今よりも安全だということは、今までの議論の中で私は思えない。特に、紛争巻き込まれ論を言われるわけでありますが、これはバランスが崩れたときに起こり得る現象だろうと私は思うのです。しかし、今の場合はバランスが保たれておる以上は、こういう施設があったからすぐ攻撃をされる、危険だということではない。むしろその危険をなくするためにお互いがこういうバランスをとりながら戦争抑止をしている、こういうふうに私は理解しているわけでありまして、この点について御見解を承りたい、こう思うのです。
  325. 北川石松

    ○北川政府委員 ただいま田名部委員から御指摘のとおりに、非武装中立の国が、その国の国民を苦しみに追いやるような状態になっていることの、あるいはアフガンとか南イエメン、全くそのとおりの形が現実に出ておりまして、日本の安全が保てるためには、日米安全保障条約に基礎を置いた米国との友好協力関係が今日の外交の基軸でございまして、我が国の自由主義経済を今日このように伸展させる、こういう状況のもとで、またソ連との同盟が日本の安全にどうかという御質問もございましたが、このソ連との同盟は考えることはできません。それは、第二次大戦におけるところの不可侵条約を踏みにじって侵攻し、いまだ北方領土も返還しないという形にある。こういう国と同盟を結ぶことはでき得ないと思っております。そういう点を考えまして、安全保障を確保するためには、大多数の国民の選択の中で今日現実的に可能性を持っているところの日米安全保障条約に基準を輝いてまいりたい、こう思っております。  以上であります。
  326. 田名部匡省

    ○田名部委員 以上のようなソ連の覇権主義には同じ共産圏の中国ですら信用できなくなったというのも、私は当然だろうと思うのです。言ってみればソ連の軍術拡張が世界に緊張を与えているわけでありまして、逆にソ連が率先して軍縮に応じてくれるならば、世界のどの国もこれに応ずると私は思うのです。日本もまたそのとおりだと私は思うのでありますが、長官、この点についてちょっと御見解を承りたいと思います。
  327. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 ただいままでいろいろと御見解を承りました。私は、本当に戦争というものは忌まわしいことであるし、平和を求めなければならぬ、そう思います。しかし、ただ戦争は嫌だとか平和でありたいと言うことだけで現実に平和が保障されるかというと、保障されない。一体それはどこに問題があるかというと、一つには体制の違いというものがあると思うのです。体制の違いとは、一つは自由主義体制、一つは社会主義、共産主義体制、全体主義ですね。自由主義の社会では物が自由に番える、行動が自由にできる、政府の批判もできる、何でもできる。ところが、全体主義、共産主義の国ではそれができない、何かやろうと思えばそれは抑止を受けてしまう。戦争をなくすとか平和ができるというためには、自由主義の国民だけでなくて共産主義、全体主義の国の国民一緒になって、戦争はやめようじゃないか、核を廃絶しようじゃないか、そういう叫びが出てこなければ本当の意味の平和はもたらされないと私は思っておるのです。ですから、それをどうしたらでかせるかということが大きな課題であって、今外務大臣はおられませんけれども、政治家としてはそういう外交的努力をしっかりやらねばならぬというふうに考えているのです。  そういうことが現実にできない間はどうするかというと、これはやはり自分の国は自分で守る、そういう気概を持っていなければいかぬと思いますね。世の中を見ますと、いわゆる弱い者のところに強い者が圧力をかけてくるわけですよ。その場合に、弱い者が裸でいて助けてもらえる、そういう議論は成り立たないと思うのです。ただ我が国の場合は、憲法の制約のもとに、憲法の枠の中で必要最小限度防衛努力をする、アメリカ日米安保でこれを保障する、こういうことが一番適切ではないか、そういうふうに考えております。
  328. 田名部匡省

    ○田名部委員 昨年安倍外務大臣のお供をしてイラン、イラクに行ってまいりました。帰国途中モスクワ空港でカピッツァ外務次官と四十五分お会いした。イラン、イラクでもそうでありましたが、非常に困難な中に外務大臣は何とか戦争拡大を防止しようというので必死の努力をいたしました。モスクワにおいても、カピッツァ外務次官と安倍外務大臣の話を私伺っておって、随分大臣もはっきりおっしゃるものだな、日本はソ連が攻撃すると思っているか、こういう話から始まりまして、いや、それはとても勝てませんから、戦やる気はありませんよという話をされておった。私は、安倍外務大臣は随分ソ連の悪口を言っているようだが、根室に行くそうだがまた言うのか、こういう話のときに、私はソ連という国は大嫌いであります、しかし、ソ連人は大好きであります、こういうお話で、まさに明言だなと。  私も戦争が好きなわけではない。昭和三十二年に初めてモスクワにアイスホッケーの世界選手権で日本代表選手で私は行ってまいりました。以来、チェコ、ユーゴ、ルーマニア、ブルガリアあるいは東西ベルリン、共産圏はほとんどオリンピックや世界選手権で回って、むしろ私の友人が非常に多いんです。札幌オリンピックのときには、ニコライ・カルポフというアメリカのスコーバレーのオリンピックのときに私と試合をやった選手でありますが、コンサルタントコーチとして私を札幌オリンピックのときは指導してくれた、そういうことで友人も非常に多い。行って驚いたのは、アジア局長ですか、ニコライさん、これは昭和三十二年、その当時の私どもの通訳をしてくれた方、そういう方がおって、個人的には非常にすばらしい方々がおるんで、何とか世界平和に向けて努力できぬだろうか。対話を通じて、何か米ソは対話といってもなかなか難しい。イラン、イラクと同じで、だれかが間に入っていろんなことをしてあげる、そういう国がないとこの種のものはなかなかまとめにくい。そういう努力を私たちはしていかなければならぬだろう、こう思うのです。  特に、軍備面ばかりが前面に出て強調されておりますけれども、潜在的脅威の中に、ソ連の生産性の向上が非常に期待できない。それから穀物は毎年五、六千万トン輸入をしておる。私ども韓国から十五万トン輸入すると言って国会日本国じゅうが大騒ぎをしたわけでありますが、それはもうけた外れの穀物をソ連が輸入をしなければならない。かつては石油の輸出国でありましたソ連が今や輸入国になっている。ドルの半分は油で稼いでおったわけでありますが、少なくとも輸出ができなくなってドルの半分は減っておる。経済的にも非常に苦しい。そういう中にあって、あと何が残っているかというと、あの巨大な軍備だけがソ連に残っておる。こういうことから私どもは潜在的な脅威を感じておるわけであります。  そこで、対話ということで先般もイランのベラヤチ外務大臣とハーディー外交委員長が参りました。向こうでも随分私はハーディー外交委員長議論したのでありますが、今回も、むだな戦争はやめたらどうか、食べることすらできない人たちがおるのにこんなことに金をかけるというのは私は賛成できない、こう言って随分説得いたしました。なかなか聞き入れていただけなかったわけでありますが、いずれにしても、こういう努力というものが少しは実ってきていると思うのであります。同じことでソ連についても対話をやはり続けて、何とか軍縮の方向を見出していかなければならぬ。そういうことで、この対話についてどんなお考えを持っておるか、この辺もお聞かせをいただきたいと思うのです。
  329. 北川石松

    ○北川政府委員 ただいま御指摘のとおりに、ソビエトとも対話を積極的に進めると同時に、その国民、皆さんはやはり平和を望み、生活の安定を望んでおられるんでありますから、先ほど御指摘のように安倍外務大臣が積極的にソビエトとも話を進め、その取り巻く環境の中でよりよいものを見出すことが外交姿勢であろうということをおっしゃっておられますし、外務省といたしましても、ソ連を決して敵視するものじゃなしに、ソ連との友好の中で、議員連盟もございますし、なお一層今よりもソビエトと話し合いを持ち、そして一番大事なのは、やはり軍縮であり、核の絶滅であろうという考えを持っております。前向きで、やはりいかなる国とも真心を持って接していくべきである、このように思っております。
  330. 田名部匡省

    ○田名部委員 同じ共産圏の中で、私が行きましたチェコやルーマニア、いろいろな国がありましたけれども、どこへ行ってもソ連に対する感情というものは余りいいものを持っておりません。ルーマニアのブカレストの世界選手権のときは、私どもについた通訳は、私はこの国に住みたくない、フランスかイタリーに行きたい、そういう話も聞かされてきましたし、随分、私と試合をした連中がカナダに亡命しているわけであります。  また、先般も新聞で拝見いたしますと、束ベルリンから西ベルリンにまたトンネルを掘って亡命している。私、あそこへ立ったとき、自分がここの国民だったら、見つかったら殺されるということがわかって逃げれるだろうか、私は東側に立ってそう思ったときに、私はなかなか逃げれないな、こう思ったのです。しかし、殺されても、やはり自由を求めて来る人たちというものを見ておると、本当に何ともむなしい気持ちで実はいつも帰ってくるわけであります。  どうぞ、何とか対話を通じて世界平和のために大いに努力をしていただきたい、こう希望いたしておきたいと思います。  そこで、今度は防衛庁に質問をいたしたいと思うのであります。  先般、ソ連が最新鋭の超大型揚陸艦というのですかを極東に配備したという報道がなされておりました。これは事実かどうか。新聞を通じて私ども見ておるわけであります。これがもし事実だとすれば、この船の極東配備の目的は一体何なのか、そして軍事的な影響はどのようなものが考えられるのか、防衛庁、お答えをいただきたいと思います。
  331. 古川清

    ○古川(清)政府委員 お尋ねの船は、恐らく七月の半ばに極東方面に回航されましたソ連の超大型の、ラッシュ船というのがございまして、これは六万一千九百五十トンというふうに我々承知しております。言ってみますと、これは大型のはしけを自分の船の中に八十二隻も載っけておりまして、船にはまた非常に大きなクレーンが一緒に据えつけられておりまして、おおむね港湾設備の非常に悪い港に、資料によりますと、わずか二十分ぐらいで八十二隻のはしけをおろすことができるようでありますが、これをタグボートで引っ張って、設備の悪い港に全部おろしてしまうということで、輸送力の大変大きい船でございます。このアレクセイ・コスイギンという船は、ソ連の商船隊に所属しております民間の船でございますけれども、この船が七月上旬に極東方面に回航されたということは我々承知しておるわけであります。  さて、御質問の、目的は何かということでございますけれども、恐らくこれは、極東地域に点在しておりますいろいろな港湾設備の悪い港がたくさんございまして、恐らくそういった港に物資を輸送あるいは物資を揚陸するために使用されるものと我々判断をしておるわけでございます。しかしながら、ソ連の場合におきましては、ちょうどアエロフロートがそうであると同じように、この商船隊もいつ軍用に転用される可能性がないと言い切れないわけでございまして、もし軍用に転用されるというふうなことがございますならば、我が国の周辺地域におけるソ連側の輸送能力並びに揚陸支援能力というものが著しく増強される可能性があるわけでございまして、今後この船の逆用がどういうふうに行われるかということにつきましては、十分注意深くこれを見守っていきたいと考えております。
  332. 田名部匡省

    ○田名部委員 ソ連は北方領土においても軍事力を増大させているというふうに承知しておるわけでありますが、最近の北方領土におけるソ連軍の動向、これについてひとつお話をいただきたいと思います。
  333. 古川清

    ○古川(清)政府委員 私どもも北方領土におきますところのソ連の軍事力の動向ということにつきましては、絶えず注意を払っておるわけでございますが、北方領土におきましては、一九七八年以来ソ連が地上部隊をここに配備をしております。戦後しばらくの間ここに地上部隊がおったわけでありますが、その後いわば撤退をいたしまして、かなりの期間空になっていたわけでございますが、七八年に再配備をしたわけでございまして、現在その規模は師団程度というふうに我々承知をしております。もっとも、これ以外に国境警備隊、これが約三千名ばかりと我々評価をしておりますけれども、この国境警備隊がここに常駐をいたしております。  この最近の動きでございますけれども、択捉島という島がございます。ここに天寧飛行場というかなり大きな飛行場があるわけでございますが、この飛行場に配備されております航空機、戦闘機でございますけれども、これが過去四年間の間に毎年のように新しいものに更新をしておるという点がまず最も大きな特徴点でございまして、一九八一年まではミグの17、今ではほとんどの国で使われておりません。北朝鮮などには若干残っておるという話は聞きますけれども、ほとんど実戦配備からもう引退をしております。この飛行機が八一年まではあそこにいたわけでありますが、八二年にはミグの21、これがやってまいります。それから昨年、八三年でございますけれども、昨年の八月にはミグの23、これは最新鋭の戦闘機でございますけれども、これが約二十数機飛来をしております。本年四月ごろにはこれがさらに倍加いたしまして、四十機程度になっておるということで、非常に短い間に世代の新しい戦闘機というものが配備され、その数もふえておるという点が特徴的でございます。  さらにもう一つ最近の動きで特徴的な点がございまして、これは根室の目と鼻の先にございます水晶島という島がございますけれども、ここの島に対しまして昨年の八月ごろ、ソ連の艦艇数隻が接岸をいたしまして、木材等の荷揚げを行ったということを私ども調査確認をいたしました。どういうことをするのかなということで注目をしておったわけでありますが、本年に至りまして、この五月にはクレーンなど機材が陸揚げをされまして、さらに天幕であるとかプレハブ施設の建設が認められたような次第でございます。さらにこの六月に新たな建物の建設も見られておるわけでありまして、こういった一連の建設というものが軍事施設である可能性が非常に強いのではないかということでございまして、この推移を注目をしておるということでございます。
  334. 田名部匡省

    ○田名部委員 日本がソ連を攻撃するなんということは、これは考えられぬ話であって、何を意図しているのか私はよくわからぬのですけれども、いずれにいたしましても潜在的脅威というものはだんだん増大してくる。そういう中でまたアメリカも極東地域において抑止力を高めていかなければならぬ、こんなことになっていくだろうと思うのでありまして、その一環として、先ほど来議論になっております核トマホーク配備、こういうことが出てきたのではないだろうか、そう思うのでありますが、このトマホーク配備の評価を一体どうしておるのか、この点についてお伺いしたいと思います。
  335. 古川清

    ○古川(清)政府委員 ただいままでの御議論にもございましたとおり、ソ連は最近に至りまして、一貫しまして核及び通常戦力の両面にわたりまして軍事力の増強を続けておるわけでございまして、そのうち特に中距離の核戦力の増強というものは顕著なものがあるわけでございます。こういった情勢のもとで、アメリカの方は抑止力の信頼性の維持向上ということを目指しまして、戦力の近代化を進めておるわけでございますが、恐らくトマホーク巡航ミサイルの配備というものも、この努力の一環であると私ども考えている次第でございます。  もっとも、核弾頭つきのトマホーク配備がどのような形になるか、太平洋における具体的な配備がどうなるかということはまだ明らかでは全くないわけでありまして、私ども具体的な内容というものを承知しておりませんけれども、しかし、核トマホークというものが太平洋に配備されるということになりますならば、この地域における戦力のバランスの改善、米国の抑止力の向上ということに当然つながるものとして評価しておる次第でございます。
  336. 田名部匡省

    ○田名部委員 防衛庁長官、「防衛計画の大綱」に基づいて逐年整備をしてきたわけでありますが、予算の概算要求等の参考とするために中期業務計画を作成しておるわけでありますが、既に五三中業、五六中業を作成し、今五六中業の推進に努めているわけであります。五月八日には、昭和六十一年度から六十五年度を対象とする中期業務見積もり、いわゆる五九中業策定の長官指示が出されたわけであります。どんな基本的認識に基づいてこの指示をお出しになったかということと、先ほど来議論になっておりますGNP一%の枠の問題でありますが、確かに三木内閣のときに、当面一%を限度としてと、こういうお話で一%が固定してしまったということを私ども承知をいたしておるわけであります。ただ、先ほど申し上げたように、世界が緊張の中で非常に苦労をしているわけですね。どこの国も苦労しておられる。ちょうど七八年の世界が緊張状態になかったときにこの中期業務見積もりがつくられた。七八年というと、先ほど申し上げたようにアフガンにソ連が入る前の年であります。その後緊張がずっと高まってきた。しかし一向に、世界がそんな緊張の中で目標を変えるわけでもなければ、また目標に到達もしないという状況で今日に至っておると思うのであります。このことが、世界の国々から見ると経済が大きくなればなるほど批判として出てくる。どうも自分の国を自分で守らぬで、もうける方にだけ金をかけているという印象を非常に私は外国に与えていると思うのであります。もちろん私は軍備をすることを好むものではない。ないのでありますけれども、経済大国日本と言われる我が国が一%を国会の中で議論しておる。大体ヨーロッパあたりでもGNPの五・五%ですね。少ないところでも三・五%と私は聞いておるのでありますが、そういう努力をしているときに、一%論がいつまでも続いておる。これはなかなか答弁しにくいことだろうと思う、先ほどももう伺っていますから。どうもそういう世界の中で孤立をしていくのじゃないのかなという気持ちがしてならぬわけであります。どうぞこの二点について、ちょっとお話をお聞かせいただきたいと思うのですが。
  337. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 五三中業、五六中業、五九中業といろいろ来たわけでございますが、昭和五十一年の「防衛計画の大綱」の水準に到達するということを図るとかいろいろ言ってきましたけれども、なかなかそれが来なかった。五九中業では達成を期するというので、私の強い決意表明をしたわけでございます。それに基づきまして概算要求もしたわけです。  先ほどもちょっと申し上げましたけれども、財政状態がいい、経済状態がいいから防衛費を余計つけてやろう、財政状態、経済状態が悪いから防衛費はつけない、そういうイレギュラーなものでは防衛というのはできないのです。やはり計画的に、コンスタントといいますか、そういうことで防衛計画を着実にやっていかなければならない。私は、少なくとも今回の五九中業の長官指示を出すに当たり、また今回の概算要求を求めるに当たって、そういうコンスタントな、着実な計画的なものをここで出さなければいかぬということで要望したわけでございます。財政事情が非常に厳しくていろいろな御評価があろうと思いまするけれども、これは今言ったように我が国の防衛というものはそのときそのときの経済情勢や財政状態に振り回されるという格好はよくない。もちろんそのことを考えなければならぬけれども、それに振り回されてやってはいかぬということでお願いをしてきておるわけでございます。  その観点から、GNP一%という問題がございますけれども、概算要求でございますからやはり防衛庁の姿勢というものをぴしりと出す。これを今の段階でGNP一%というものに拘束されて出さないということの方が、私は国民に対しまして非常に申しわけないと思う。むしろ本当のところはこうだということで出したのです。GNP一%は御案内のとおり予算を現実に決めるときの一つの大きな指標でございます。ですから、これは政治的な決断でございますから、それはそれとしてその時期にしかるべくする、こういうことではないかと考えております。
  338. 田名部匡省

    ○田名部委員 先般、昭和六十年度の概算要求基準、シーリングというのが変わりまして基準ということになりましたが、非常に厳しい財政事情だというのは私ども十分承知しているわけでありますが、最近我が国の継戦能力の現状に関して、これはアメリカ政府関係者もいろいろ言っているわけでありますが、それはともかくとして、航空機、艦艇、戦車といった装備の更新、近代化はもちろん必要でありますが、継戦能力の向上はこれらの装備を有効に機能させるために不可欠であるわけですね。そういう意味で我が国の防衛力整備に当たっていろいろと配慮すべきものである、こういう考えでおるわけでありますが、これはいかがですか。
  339. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 御指摘のとおり、有事におきまして真に有効な防衛力となるためには、正面の装備が数をそろえるということだけでは力にはならないわけでございまして、それが有効に機能するための弾薬等の継戦能力が十分になければいけないということがございますし、それからまた抗堪性もついていなければ、これはまた長続きしないわけでございますし、後方の支援態勢が整備されていなければ、これまた力にならない、こういうようなことでございますから、数をそろえるということだけではなくて、先生御指摘のとおり継戦能力等の面についてもこれを十分に配慮いたしましてバランスのとれた防衛力を構成するということが私どもに課せられた大きな課題であろうというふうに認識をいたしておるわけでございます。そういう観点から今回の五九中業につきましても、正面と後方のバランスに特に留意をして継戦能力等を充実するように配慮するということを長官指示の中でお示しをいただいておるということでございます
  340. 田名部匡省

    ○田名部委員 同じように厳しい財政事情下で、ややもすると正面装備の方に目が向けられて、後方、特に訓練環境の整備が非常に立ちおくれておる。私の青森県でありますけれども、陸海空自衛隊がおってしょっちゅう接する機会が多いわけです。一番言われるのが、後方関係の環境整備をしていただきたい、こういう希望が非常に多い。この辺についてちょっとお伺いをしたいと思うのです。
  341. 大高時男

    ○大高政府委員 お答えいたします。  先生御指摘のように、自衛隊の任務を遂行いたします際には、やはりすぐれた隊員を養成しなければいけない、また部隊の練度を維持向上させまして精強な部隊を育成することが必要でございます。そのためにはやはり訓練施設をきちんと整備をしておくということで、従来からいろいろ施策を講じてきておるところでございます。しかしながら、現状におきましては、演習場の周辺地域におきまして都市化が進む、あるいは一方自衛隊の武器でございます火砲については射程が延びてくるというようなこともございまして、演習場の使用あるいは実弾射撃につきまして制約がふえてきておるというような状況でございます。  また一方、訓練の海面でございますけれども、漁業とかあるいは一般船舶の航行、こういった関係から訓練場所や時期について制限が出る、あるいは訓練空域につきましてもかなり遠距離の洋上にございまして、広さも必ずしも十分でないということで、訓練の時間あるいは内容につきまして制約が出てくる。さらにまた飛行場周辺におきます航空機騒音の問題といったことでまだ十分な訓練が行えないというような状況にございます。したがいまして、防衛庁におきましてはシミュレーターの活用でございますとか、あるいは硫黄島での訓練を活用する、あるいは米国派遣訓練を実施しているというような、いろいろ創意工夫を凝らしまして、練度の維持向上に努めておるところでございます。今後とも、いろいろ創意工夫を凝らしまして、練度の向上に努めてまいりたい、かように考えております。
  342. 田名部匡省

    ○田名部委員 次に、施設、区域における提供施設整備について、今後どのように対処してまいるつもりか、施設庁の見解をお願いしたいと思います。
  343. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答えいたします。  先生先ほど御指摘のように、日本の防衛政策の基本は、国力、国情に応じた自衛力の整備と日米安保条約体制の堅持ということでございます。この日米安保条約が有効に機能するためには、条約に基づきました、当事国としての責務を果たしていくということが重要であろうかと存じます。施設、区域の提供、整備につきましては、この安保条約の目的に合致するような、緊急度あるいは優先順位を考えました判断に基づきまして、毎年度毎年度苦しい財政事情ではございますけれども、今後とも、この基本方針に従って整備、提供を続けていこう、かように考えております。なおこれらの整備につきましては、あくまで日本の防衛という観点から自主的に判断をして、提供、整備を行っていくべきであろう、かように考えております。
  344. 田名部匡省

    ○田名部委員 F16三沢配備に伴って、この施設整備に要する五十九年度予算の内容をちょっとお知らせいただきたいと思います。
  345. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答えいたします。  五十九年度のF16三沢配備関連は、まず、歳出ベースの方は六十四億五千四百万でございまして、その内容は、隊舎四棟、家族住宅二百四十八戸、消音装置、管理棟、倉庫等の建設でございます。さらに、その他家族住宅約五百戸、管理棟等の調査、設計も入っておりまして、それに要する総経費が、先ほど申し上げました六十四億五千四百万でございます。なお、国庫債務負担行為、二年の国庫債務負担行為でやっておりますので、契約ベース、これがこのほかに五十九年度では百八十二億四千四百万円計上されております。
  346. 田名部匡省

    ○田名部委員 先般沖縄に視察をしたときでありますが、沖縄は特別の地域であるということで、地元の業者をほとんど優先しておる。青森県は一体どうなっているかというと、特別の地域ではないということで、なかなか沖縄と同じようにいってないようであります。先ほども着艦訓練等の騒音問題のお話がありましたけれども、私も、どの程度の騒音か聞きました。これはもう想像以上のものすごい音であります。そうしたことで、国が平和で安全でなければならないと、これはだれしも思っているのです。しかしどうも、自分たちだけがこういう騒音に悩まされなければいかぬのかなという、これは最近特に日本はそうだと思うのですね。原子力発電所の設置の問題にしても防衛の問題にしても、平和は求め、あるいは電気は使いたい、しかしつくるもとと守るもとはここじゃないところにという、全部そういう話になっていくとなかなか難しい話になるわけですね。そういうことで、それぞれ今地域は協力をいろいろな形でしておるわけでありまして、そういうことでもまた経済的に非常に、沖縄にしても青森県にしてもそうでありますが、何とかこういう機会に地元の人たちをいろいろな意味で面倒を見てあげるという方法をぜひおとりいただきたい、こう思うのですが、これについてどうでしょうか。
  347. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答えいたします。  従来、建設工事の発注に当たりましては、なるべく地元の業者の受注機会をふやすように努力をしてきているところでございます。  青森県三沢の場合でございますけれども、三沢にかかわる施設整備工事を実施するに当たりましては、工事の規模、内容もございますけれども、本体と附帯工事を分離して発注をするとか、あるいは工区割りをいたしましてそれをなるべく細分化して発注をする、こういうようなことを検討するなどして地元業者の受注の機会をなるべくふやしたい、かように考えております。
  348. 田名部匡省

    ○田名部委員 時間のようでありますが、最後に。  先般の航空ショーのときに、私F16を拝見いたしまして、あれが大量に入ってくると相当の騒音だなという感じを実は持ったわけであります。そこで、防音住宅をやつばりしっかりとしてあげるということでなければならぬと思うのです。周辺もありましてなかなか一カ所に集中できないという難しさもあると思うのでありますが、特に急いで、もう本当に滑走路の延長線上、そして、三沢が中心になると思うのでありますが、この辺に重点的に早くやっていただきたい。多少離れた方もありますが、我慢できないほどでないところは多少後にしても、やつ。ばり優先的にこの周辺、これに対して防音工事をしてあげなければいかぬな、こう思っているのですが、最後にこれについてひとつお答えをいただきたいと思います。
  349. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答えいたします。  三沢の防音工事だけでなくて、基地周辺の騒音対策といたしましての住宅防音工事は、施設庁にとりましては、国民の御協力を得るために、これは義務的な仕事であると考えておりまして、最重要施策と考えております。  お尋ねの三沢周辺の防音工事の助成につきましては、環境基準の趣旨、それから地元の要望を踏まえまして、現時点では八十WECPNL以上の一室ないし二室の工事、これを五十八年度までにほぼ完了いたしました。七十五WECPNL以上八十WECPNL未満の区域の一、二室工事、これは新規工事でございますが、これは五十八年度までに約二百五十世帯実施をいたしました。五十九年以降でございますが、早い時期にこの二百五十世帯は完了をいたしたい。それから、一、防音工事からさらに進みまして、既に一、二室の防音工事は終わっておるけれども全室と、こういう全室防音化の追加工事をやる必要のある、騒音度の著しいところがございますので、これにつきましては順次実施をいたしてまいりますが、一番ひどいところ、八十五WECPNL以上の地区について早期に完了させる、こういう方針で、せっかく三沢周辺は、F16の配備につきましてもあるいはいろいろな訓練につきましても御協力をいただいている地区でございますので、こういうお尋ねの防音工辛につきましては、優先順位を鳥くしていきたい、かように考えております。
  350. 田名部匡省

    ○田名部委員 ありがとうございました。終わります。
  351. 三原朝雄

    三原委員長代理 この際、上田哲君から発言を求められておりますので、これを許します。上田哲君。
  352. 上田哲

    上田(哲)委員 委員各位を代表して発言いたします。  防衛庁の中央指揮所の視察につきまして、員会開催中、各党の総意となりましたので、ぜひ可及的速やかにその視察を実現していただくように委員長において御努力いただくようにお願いを申し上げます。
  353. 三原朝雄

    三原委員長代理 ただいまの上田君の要望につきましては、次回の理事会において協議をいたします。  次回は、来る七日火曜日午前十一時理事会、午前十一時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時五十一分散会