運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1983-09-20 第100回国会 衆議院 予算委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年九月二十日(火曜日)     午前九時開議 出席委員   委員長 久野 忠治君    理事 江藤 隆美君 理事 高鳥  修君    理事 堀内 光雄君 理事 三原 朝雄君    理事 村田敬次郎君 理事 川俣健二郎君    理事 藤田 高敏君 理事 坂井 弘一君    理事 大内 啓伍君       相沢 英之君    今井  勇君       上村千一郎君    小渕 恵三君       越智 伊平君    大村 襄治君       奥野 誠亮君    海部 俊樹君       金子 一平君    倉成  正君       近藤 元次君    澁谷 直藏君       正示啓次郎君    砂田 重民君       田中 龍夫君    谷  洋一君       渡海元三郎君    橋本龍太郎君       藤尾 正行君    藤田 義光君       藤本 孝雄君    武藤 嘉文君       村山 達雄君    岩垂寿喜男君       大出  俊君    岡田 利春君       木島喜兵衛君    小林  進君       佐藤 観樹君    沢田  広君       野坂 浩賢君    草川 昭三君       岡田 正勝君    木下敬之助君       瀬崎 博義君    中路 雅弘君       正森 成二君    松本 善明君       山口 敏夫君  出席国務大臣         内閣総理大臣  中曽根康弘君         法 務 大 臣 秦野  章君         外 務 大 臣 安倍晋太郎君         大 蔵 大 臣 竹下  登君         文 部 大 臣 瀬戸山三男君         厚 生 大 臣 林  義郎君         農林水産大臣  金子 岩三君         通商産業大臣  宇野 宗佑君         運 輸 大 臣 長谷川 峻君         郵 政 大 臣 桧垣徳太郎君         労 働 大 臣 大野  明君         建 設 大 臣 内海 英男君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     山本 幸雄君         国 務 大 臣         (内閣官房長官後藤田正晴君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖縄開発庁長         官)      丹羽 兵助君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      齋藤 邦吉君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (国土庁長官) 加藤 六月君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 谷川 和穗君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      塩崎  潤君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      安田 隆明君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 梶木 又三君  出席政府委員         内閣法制局長官 茂串  俊君         内閣法制局第一         部長      前田 正道君         人事院総裁   藤井 貞夫君         人事院事務総局         給与局長    斧 誠之助君         総理府人事局長 藤井 良二君         行政管理庁行政         管理局長    門田 英郎君         行政管理庁行政         監察局長    中  庄二君         防衛庁参事官  友藤 一隆君         防衛庁参事官  冨田  泉君         防衛庁長官官房         長       佐々 淳行君         防衛庁防衛局長 矢崎 新二君         防衛庁経理局長 宍倉 宗夫君         防衛施設庁長官 塩田  章君         防衛施設庁総務         部長      梅岡  弘君         防衛施設庁施設         部長      千秋  健君         防衛施設庁労務         部長      木梨 一雄君         経済企画庁調整         局長      谷村 昭一君         経済企画庁総合         計画局長    大竹 宏繁君         経済企画庁調査         局長      廣江 運弘君         科学技術庁原子         力局長     高岡 敬展君         環境庁水質保全         局長      佐竹 五六君         国土庁長官官房         長       石川  周君         国土庁長官官房         審議官     田中  暁君         法務省刑事局長 前田  宏君         外務大臣官房領         事移住部長   谷田 正躬君         外務省アジア局         長       橋本  恕君         外務省北米局長 北村  汎君         外務省欧亜局長 加藤 吉弥君         外務省経済局長 村田 良平君         外務省経済局次         長       妹尾 正毅君         外務省条約局長 栗山 尚一君         外務省国際連合         局長      山田 中正君         大蔵省主計局長 山口 光秀君         大蔵省主計局次         長         兼内閣審議官  保田  博君         大蔵省主税局長 梅澤 節男君         大蔵省理財局長 西垣  昭君         大蔵省銀行局長 宮本 保孝君         文部大臣官房長 西崎 清久君         文部大臣官房審         議官      齊藤 尚夫君         文部省初等中等         教育局長    高石 邦男君         文部省大学局長 宮地 貫一君         厚生省保険局長 吉村  仁君         厚生省年金局長 山口新一郎君         農林水産大臣官         房長      角道 謙一君         農林水産省経済         局長      佐野 宏哉君         農林水産省農蚕         園芸局長    小島 和義君         食糧庁長官   松浦  昭君         林野庁長官   秋山 智英君         通商産業省通商         政策局長    柴田 益男君         通商産業省貿易         局長      杉山  弘君         資源エネルギー         庁長官     豊島  格君         資源エネルギー         庁石油部長   松尾 邦彦君         資源エネルギー         庁石炭部長   村田 文男君         中小企業庁長官 中澤 忠義君         運輸省鉄道監督         局長      永光 洋一君         運輸省航空局長 山本  長君         労働省労政局長 谷口 隆志君         労働省労働基準         局長      望月 三郎君         労働省婦人少年         局長      赤松 良子君         労働省職業安定         局長      加藤  孝君         建設大臣官房長 豊蔵  一君         建設省計画局長 台   健君         建設省河川局長 井上 章平君         自治省行政局公         務員部長    坂  弘二君         自治省行政局選         挙部長     岩田  脩君         自治省財政局長 石原 信雄君         自治省税務局長 関根 則之君  委員外出席者         日本国有鉄道常         務理事     橋元 雅司君         予算委員会調査         室長      大内  宏君     ――――――――――――― 委員の異動 九月二十日 辞任          補欠選任   栗原 祐幸君     今井  勇君   砂田 重民君     谷  洋一君   根本龍太郎君     近藤 元次君   正木 良明君     矢野 絢也君   竹本 孫一君     岡田 正勝君   中路 雅弘君     松本 善明君   正森 成二君     金子 満広君 同月  辞任         補欠選任   今井  勇君     栗原 祐幸君   近藤 元次君     根本龍太郎君   谷  洋一君     砂田 重民君   岡田 正勝君     竹本 孫一君   松本 善明君     不破 哲三君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  予算実施状況に関する件      ――――◇―――――
  2. 久野忠治

    久野委員長 これより会議を開きます。  予算実施状況に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大内啓伍君。
  3. 大内啓伍

    大内委員 今度の臨時国会行革国会と言われておりますが、そのほかにも減税とか景気といったような重要な問題が山積しております。同時に、この臨時国会は、その途中に田中判決というものを控えているだけに、ある意味では歴史的な臨時国会だと思うのであります。そして国民は、やはりこの問題に国会政府政党がどのように決着をつけるかということについて見守っていると思うのであります。  私は、最近の新聞世論調査を見ておりましたら、この田中判決で有罪が下った場合には国民の八六%が引退もしくは議員辞職をすべきである、こういう世論調査が出ておりまして、これはまことに重要な国民の意向だと思って受けとめたのであります。民意によって国を建て、民意に送ろうて国を滅ぼす、これは孫文言葉でありますが、すべからく政治家政治もこの民意によってこそ初めて民主政治というものを遂行し得るのではないかと思っているのです。  これらの世論調査を見ながら、総理はどのような所見をお持ちでしょうか。
  4. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 民主政治は特に国民の信頼の上に成り立つものでございますから、前から申し上げますように、政治家たるもの道徳性を堅持し、また政党政治団体においても同様に澄明な清潔な政治を行うように心がけると同時に、単に消極的な部面のみならず積極的に民意を反映するという意味において平和や福祉の問題等について大きく国家に貢献していくということも、ある意味においては倫理性の問題でもあると思います。  そういうような考えに立ってわれわれは大いに自粛自戒し、責任を持って行うべきであると思っておりますが、先般来申し上げますように、日本三権分立のもとに憲法政治を施行しておるのでございまして、判決が近づけば近づくほど静かにこれを見守って、裁判官予断を与えるような環境をつくらないようにすることが、また一面、われわれの心がけではないかと思っております。
  5. 大内啓伍

    大内委員 総理のそのお言葉はかねがね聞いておりました。  そこで、裁判官予断を許さない問題といたしまして、いま野党から出されている田中総理に対する議員辞職勧告決議案、これについては判決後何らかの形で本会議で決着するということが民主政治のルールだと思いますが、いかがでしょう。
  6. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 この問題はすでに国会審議の事項に上がっておりまして、各党各派議院運営委員会等を通じて折衝しておる問題でございますので、その各党各派の交渉の経過を、立法府の動きを行政府としては見守ってまいりたいと思います。
  7. 大内啓伍

    大内委員 内閣総理大臣たる自民党総裁としてはいかがでしょう。
  8. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 自民党総裁といたしましては、各党各派の樽俎折衝をやるように進めております。
  9. 大内啓伍

    大内委員 本会議採決も受け入れる用意がある、こういうことですか。
  10. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その点もいま自民党の党内におきまして、幹事長中心にいろいろ意見をまとめつつある段階でございまして、いま私がここで先走った言明をするのは避けたいと思っております。自民党機関中心に動いておる政党でございますから、その機関内の意見調整を見守ってまいりたいと思っております。
  11. 大内啓伍

    大内委員 この判決結論いかんによりましては、同じ内閣総理大臣経験者として、田中総理に対して何らかのサゼスチョンを行う用意はございますか。
  12. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 元来、国会議員というものは自主独立の存在でございまして、自分意見を形成するというにつきましては、選挙民世論動向、あるいは国民代表として、国民全体の世論動向、それから自分の長い間の経験見識、そういうものに基づいて自分意見を固めていくものであるだろうと思います。  田中総理は、昭和二十二年以来三十六年にわたりまして、長い議員の経歴も有し、また、いわゆる保守政治中核体としていままで貢献もされてきた方であり、非常に素質に恵まれた大人物であると私は思っておるのでありまして、そういうあらゆる部面についてみずからの所信自分でお決めになるだろうと思っておりまして、おせっかいがましいことはやらない、それがいいと思っております。
  13. 大内啓伍

    大内委員 それも一つの方法かもしれません。しかし、中曽根総理自身も重要な問題を決せられるときに、最後は自分で断を下すにしても、多くの人々のサゼスチョンや好意的ないろいろな意見を聞くことでしょう。また、嫌な意見も聞くことでしょう。竹本孫一同僚議員が本会議で質問しましたように、やはり同じ一人の政治家として同じ悩みに立って意見を申し上げるということも当然あり得るのじゃないでしょうか。ただそれをほっておくということだけではなくて、少なくともこの問題は日本政治全体、しかも国民政治不信にかかわる問題であるだけに、そうした意味での意見を申し上げることはないのでしょうか。
  14. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 竹本さんの本会議における御発言は切々とした真心のこもった御発言でございまして、私も非常に感銘をいたし、また感謝も申し上げた次第でございます。しかし、私は、自分で物を決する場合には、いろいろな御意見も承りましたけれども、最終的には自分で決断をして進退をしてきたつもりでございます。  このような長い間いろいろ国会案件にもなり、あるいは世間的にもいろいろな反応も呼び起こしておる問題でもあり、また選挙民からは強い支持も受けてきておるという、そういうさまざまな情勢を、これはみずから判断さるべき問題でありまして、われわれがとやかくそばから言うほどのことはない、これくらいの大事というものは自分で決する、そういう問題ではないかと思っております。
  15. 大内啓伍

    大内委員 それにはいろいろ批判、批評もございましょう。  一つの例を申し上げたいと思うのでありますが、一九七四年四月二十四日に実は西ドイツブラント首相の周辺に事件が起こりました。ブラント首相と言えば、言うまでもなく、われわれとの間には友党関係にある政権でありまして、そのブラント首相の秘書がスパイ事件ということでこの日に逮捕をされました。ブラント首相は当時の政治責任、道義的な責任を深く感じまして、そして、その逮捕後二週間足らずを経ずして、五月の六日に大統領に対してこう述べたのであります。「連邦大統領閣下 私はギヨーム・スパイ事件に関する職務怠慢の責任をとり、連邦首相辞任いたします。もちろん田中総理の問題どこの問題は事件の性格は違いますが、国民に対して一つ不信の念を抱かせたというこのことだけで、西ドイツ首相責任をとっておやめになったのでございます。  政治家とかあるいは閣僚の厳しさというのは、前にも申し上げたと思うのでありますが、仮にみずからが潔白であっても、国民に対して政治不信の種をまいたということについて責任をとる、それが政治家政治的道義的責任ではないでしょうか。三権分立のたてまえから、司法にゆだねられた問題についてはその司法判決を待っていくということだけでこの問題の責任がとれましょうか。この間の免田事件を見てください。あれは最高裁判決が下ってから三十二年もたって無罪が下ったのです。一審で一つ結論が出る、二審で出る、そして最高裁で出ても、三権分立論を盾にとれば、再審の可能性を盾にとっていつまでも政治的道義的な責任をとる必要はない、こういうことになりましょう。その点はどうでしょう。
  16. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ブラント首相の場合にどういう内容があり、どういう状況であったかということは、私はつまびらかにはしておりません。その人その人によって皆特別の固有の条件、環境というものはあると思います。したがって、一概に論評することはできないと思いますが、いまお聞きした範囲内においては、ブラント首相ブラント首相としてりっぱな進退をなすったのではないかと思っております。  日本田中さんの場合、これは田中さん自体の信念もあり、あるいはまた民主政治に対する自分見識というものもおありではないかと思うのです。そういうすべての問題は、総理総裁もかつておやりになった方であり、高い見識と長い経験をお持ちの方でございますから、これはみずからお決めになることが適切である、このように考えております。
  17. 大内啓伍

    大内委員 この問題は、いずれにしてもすれ違いに終わりましょう。いろいろな見解もありましょう。十月十二日の判決を契機にして、恐らく国会全体もあるいは重大な局面を迎えるかもしれないという問題であるだけに、これからもわれわれは慎重にこの問題に対応してまいりたいということだけを申し上げておきたいと思います。  そこで、経済、特にその中の景気対策の問題から質問をいたします。これは大蔵大臣になりますかあるいは経企庁長官になりますか、どちらでも結構でございます。  いま国民の最大の関心事は、むしろ行革よりか景気問題です。これは世論調査でも出ております。言うまでもなく、それは国民の生活を揺るがす基盤であるからであります。  そこで、私は単刀直入にお伺いをいたしますが、政府としては、いまの日本景気底離れした、こういうふうにお考えなのでしょうか、いかがでしょうか。
  18. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 お答え申し上げます。  先般企画庁から例の景気動向指数の発表をいたしましたときに、そのようにとられたような節がございました。私どもは、先行指標一致指標、この二つが二月で五〇%を割りましたけれども、その以降すべて五〇%を超えるような状態であった。したがって、ことしの二月が一応景気の谷である、こういうふうに判断いたしましてそのような発表をいたしたわけでございます。それが底離れととられて、これが大変景気上昇しつつあるような印象を与えたようでございますが、いつも私どもが申しておりますように、また先般のQEが示しておりますように、内需は盛り上がりを欠く、こういった状態はいまのところ続いているような気がするところでございます。
  19. 大内啓伍

    大内委員 そうすると、景気底離れはしていない、端的にその辺だけひとつ結論をお願いします。
  20. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 なかなか表現がデリケートでございまして、谷は離れたということでございまして、底離れという意味が非常に景気上昇させるような意味を持つと誤解が起こりますので、私はそこは、谷をいま離れたけれども浅くはっているような状態ではないか、こんなような気がいたします。
  21. 大内啓伍

    大内委員 七月の二十七日にいわゆる景気底離れ宣言というのが経企庁から出された。しかし、これは経企庁当局に聞きますと、必ずしもそういうレクチュアをしたわけではないが、新聞でそう書かれたと言っておられました。明くる日には通産省がこれに対して真っ向から反論を出されました。そして、九月十日の中曽根総理所信表明におきましては、力強さを欠いている、こういう表現を使われたのであります。  私どもは世間を回っておりまして、庶民感覚から申しますと、まだまだ不況感というものは強い、また不況に苦しんでいる、これが庶民の偽らざる実態だと思うのです。そして、重要指標を見ましても、たとえば個人消費設備投資住宅建設雇用指数企業倒産件数法人税伸び率、ことごとくよくありません。  そこで、九月の国民所得統計速報を見ますと、この四―六月期で〇・九%成長、つまり年率で三・六%の上昇、こう言っているのでありますが、この〇・九%成長内訳は、外需が〇・五、内需が〇・四。ところが、この内需が問題なんですね。この内需の〇・四%というのはどうして伸びているかという内訳を見ますと、公共事業前倒し効果が〇・五%ですね。民需は〇・一%のマイナスで、計〇・四%の上昇なのです。つまり、これで明らかなように、〇・九%の上昇というのは、公共事業と輸出で当面の景気を支えている。民需マイナス中曽根総理が一生懸命力を入れております輸入もよくない、公的需要というものを見れば公共事業だけ、こういうデータがはっきり出ているわけであります。そして、政府が五十八年度で達成しようとしている三・四%成長を達成するためには、これからの毎期三期を一・二二%、つまり、年率で五%程度の速度で飛ばしていかなければ三・四%の経済成長率も達成できない。  私は、これらのごく最近の指標を見ましても、日本景気というものは経企庁底離れ新聞に書かせたようなそんな甘い状態ではない、こう思いますが、この統計の分析からいって私の判断は間違っておりましょうか。
  22. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 大内委員の御見解は、私は正しいものだと考えております。
  23. 大内啓伍

    大内委員 そういう厳しい認識を持っておられるということは非常に大事であります。しかも、中曽根総理も、たとえば公共事葉については追加の必要がないというようなことをいろいろなところでお話しになっておりますが、今後の懸念材料として三つの問題があります。  一つは、五十六年、五十七年に経験したと同じように、下期における公共事業前倒し反動が生まれる可能性が非常に強いということ。五十六年も五%台の経済成長を初め予想しました。五十七年もそうでありました。たとえば五十七年の場合は五・二%と予測して、夏には四・七%になり、暮れには四・一%になり、そして春になったら三・一%になって、最終の段階で三・三%に修正されました。なぜか。公共投資前倒しが終わった十月以降の指標は、みんな公共投資マイナスになったのです。これは政府が出した数字で全部出ている。十月、十一月、十二月、一月、二月、三月、みんなマイナスになった。この結果、四・一%という成長率予測も狂って、実は当時三・一%になったんです。五十七年度も同じなんであります。したがって、この五十八年度におきましても、そうした意味での実は下期における公共事業前倒し反動が予想される。これが一つ懸念材料であります。  もう一つは、内需拡大の好材料というものがほとんどいま見当たらないということなんです。総理がサミットで約束されて、内需中心経済を推進していくだけの具体的な政策というものが見当たらないということです。減税問題につきましては、政府がやるという決意を表明されました。これは一つ材料なんです。いまアメリカやヨーロッパは、ある意味での景気回復を実現しつつあります。しかし、この欧米の景気回復日本景気回復動向とは全然違うのです。  たとえばアメリカにおきましては、レーガン大統領が大変な減税をやりました。たとえば八二年度、個人所得税減税で二百六十九億ドルです。法人税を含めて三百七十七億ドルであります。これは九兆円を超す減税であります。また、八二年から八四年にかけまして企業減税は五百八十一億ドルであります。つまり、個人減税というものと法人減税というものを組み合わせながら、他方において増税をやりながら、しかし、それ以上の減税をやる、そして、それによって個人消費を刺激し、設備投資を刺激していくというこの方式をとることによって、いま景気回復過程にあるのです。  日本の場合のちょっとした景気の明るさというのは何でしょう。いま私が申し上げたとおり、輸出を伸ばす、そして公共事業前倒しというこの二つの組み合わせだけでやっとこさっとこいまの景気を支えている。これは本格的な景気回復のパターンじゃないです。私は一つ予断を持って申し上げているのではありません。冷静に、客観的にこれからの景気一つの問題点を探るときに、そうした問題がやはりある。  そして三つ目には、それではこれ以上輸出に頼っていけば、政府が出しておる九十億ドルの黒字予想というものがどんどんどんどんオーバーして、二百億ドルを突破してしまうという状況に目下あるということは御存じのとおり。そこから出てくるものはまた貿易摩擦ということになる。したがって、輸出という問題に対して、外需で景気回復を図るということにも限界がある。ということになれば、この問題はやはり内需の喚起という方向で幾つかの政策が組み合わされなければならぬ。すでに八月八日にはOECDは日本の黒字増について警告を発しまして、どうか内需を喚起してほしいという注文を出している。私はこれまでもこの委員会で論じてまいりましたけれども、五十六年、五十七年度の財政運営は、私は失敗だったと思うのです。渡辺大蔵大臣とも後で私的に話してみましたけれども、やはりわれわれの中に相当の理があるということも認めておられました。  そこで、景気という面から見て、つまり国民のいまの最大の関心事である景気回復を達成することが政治の使命だという観点に立って、次の四つのことについて総理大蔵大臣あるいは経企庁長官が真剣に検討していただきたいのは、第一は、一兆四千億程度の減税という問題です。これはすでに出しているのです。これは後で論じます。  もう一つは、二兆円程度の公共投資の追加です。この減税とそれからいま申し上げました公共投資の追加で、経済成長率は約一・一%上昇します。したがって、あの「一九八〇年代の展望と指針」、ここで示されている四%台の経済成長率は、この二つの政策を実施することによって達成の可能性が強まります。  三つ目は、中小企業に対する投資減税を拡充強化してもらいたい。投資減税というのは実需が先行いたしまして、それから減税が起こるわけでございますから、この減税というのは相当確実性がある。そうして、中小企業はそのことを待望している。それから、特に中小企業に対しては機械、設備等の法定耐用年数の短縮をやってもらいたい。それからもう一つ庶民にとっては住宅ローン減税の拡充及び住宅資金贈与に対する控除という問題が大きな問題になってきている。贈与については現在はたしか六十万円まで控除されておりますが、これをもっと大幅に控除したらどうか。つまり住宅減税という問題を実施したらどうか。  四つ目は、これは政府自体ができることではありませんが、公定歩合の引き下げ。  私は、この四つを日本景気回復を実現するために、つまり内需中心経済運営をやるために不可欠のものだ、こう思っているのですが、まず総理から見解を伺いたいと思うのです。
  24. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 いま大内さんがお述べになった四つの方法というものは、みんな理のある方法でありまして、私も前からそういう方向をいろいろ模索し、検討しているところでもあります。  ただ問題は、財源の問題があるのです。赤字公債に頼るということは、これは避けなければならない。赤字公債を減らすためにいままで努力し、その膨大な公債の利子償還の負担金を減らさなければ国家財政が破滅に陥る危険すらあるということで、営々と努力し、財政再建をやっておるわけであります。  しからば、いかなる財源があるであろうかという点について、いわゆる「増税なき財政再建」ということをわれわれは約束して、ともかくここで財政を整理し、簡素にして効率的な政府をつくって、そして国民の増税負担をできるだけ早く解消する方向で努力しようということでいま懸命の努力をしておるので、行財政改革というのは胸突き八丁の一番苦しいところをいま駆け上がりつつあるところでございます。したがいまして、その環境のもとにおいて何ができるか。もうしばらくのがまんだ、国民に当面がまんしていただく以外にないというこの胸突き八丁の仕上げをいま汗をかきかきやっているという状態のもとで、しかも、いまおっしゃるような効果をどういうふうにして上げ得るかという点について腐心をしておるというのが実情であります。  現在、政府の内部におきまして、円対策の問題、つまり円高を誘導するという非常に大事な政策、あるいは内需喚起についてどういう方法があり得るであろうか、国際経済摩擦の解消等も兼ねまして、いろいろいま調整をやらせておる最中でございまして、いま各省のその調整を督促しながら見守っておる、こういう状態であることを申し上げたいのであります。
  25. 大内啓伍

    大内委員 経企庁長官、あなたは三月十二日の参議院の予算委員会でこう言っているのですね。三・四%という政府の目標の達成は、これでは財政再建もできません、これではだめですということを言っておられますね。そして、最近の景気回復に対して、公共事業の追加の必要性を訴えられていますね。そして、いま総理がお話しになったその財源については、新税の創設ということを言われていますね。いかがですか。
  26. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 私が三・四%の成長率では財政再建もなかなかむずかしいと言ったことは事実でございます。それは、もう御案内のように、三・三%台になりましてからの租税の自然増収を見ますと、かつては四兆六千億もあった前年度に対する租税の増収額が、昭和五十五年から三兆一千億、翌年は二兆一千億、その翌年の五十七年度は一兆五千億というふうにだんだん減ってきて、財政再建を困難にしている。したがって、やはり自然増収を四兆六千億に戻すような政策が必要だ。  しかし、これは財源等の関連でなかなかむずかしいわけでございますけれども、とにかく貯蓄が過剰であって有効需要不足の日本だと言われる。六兆円も外国に流れておるような貯蓄があるならば、私は、これを活用してでも成長率を高めて、いま外国に比べて成長率が景気回復の程度から見ておくれているじゃないかと言われておるわけでございますから、そんなようなことができないかな、ひとつ工夫をこらして考えるべきである、こういうふうに申しました。その中に公共投資があることは事実でございます。
  27. 大内啓伍

    大内委員 経企庁長官公共投資をふやすべきだとお考えですか。
  28. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 先ほど中曽根総理も言われましたように、財政改革、行政改革の胸突き八丁の大変むずかしい段階でございます。財政再建という原則も内需拡大という原則に比べて重要な政策方向でございますので、財政再建を害さない範囲において私は公共投資はふやすべきだと思います。
  29. 大内啓伍

    大内委員 いま私の、公共投資は二兆円程度ふやすべきだという提案に対して、経企庁長官は、その額は別にしても、財政再建を害さない範囲で公共投資の追加を行え、それがいい、こう言っておられますね。  建設大臣はいかがですか。
  30. 内海英男

    ○内海国務大臣 お尋ねでございます公共事業につきましては、御案内のとおり、景気対策で大幅前倒しを七〇%以上やるということに決まりまして、その当時、同時に、今後の経済動向の推移を見ながら適時適切な措置を講ずるというような了解事項がございます。したがいまして、経済事情を踏まえてということでございますから、当然下期については相当、適時適切な御配慮がいただけるものと私は考えておるわけでございます。
  31. 大内啓伍

    大内委員 建設大臣は二兆五千億の追加を要求しておられるのじゃないですか。
  32. 内海英男

    ○内海国務大臣 党の建設部会等の先生方の間ではそういった数字が具体的に出ておると思います。私どもといたしましても、現実四年間横ばい状態公共事業でございますので、実質と名目との事業費が大部開いておる。したがいまして、そのくらいな追加ができれば結構だな、こう思っておるわけでございます。
  33. 大内啓伍

    大内委員 通産大臣はいかがです。
  34. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 景気浮揚のためには内需が活力に乏しい、私もそう思うのです。だから、この間の経済閣僚会議におきましても、そのことになお一層内閣は力を尽くそう、こういうふうに申し上げておりますが、なかんずく、民間活力の活用という新しいパターンをつくりたいというのが通産省でございます。  もう御承知のとおりに、本邦資本の流出が最近円安の引き金になっておる。あらゆる景気等々を考えました場合に、われわれはやはり着実な円高を志向すべきである、こう思いますと、本邦資本をやはり国内において投資をしてもらう、そういうふうな体制をとることも必要である。そういう体制をとれば当然中小企業も参画していただく機会が多い。だから、先ほどからいろいろと投資減税のお話、また耐用年数についても申していただきましたが、われわれとしましては、充実したそうしたことは十分に今後考えていきたい、こう思っております。
  35. 大内啓伍

    大内委員 通産大臣、考えていきたいじゃなくて、通産省そのものが中小企業の投資減税について拡充を要求しているのじゃないですか。考え段階を過ぎて、すでにある程度の政策をお持ちになって、いまの中小企業の投資減税じゃだめだ、これは政策効果が上がらぬ、したがって、これを拡充せよとおっしゃっているのでしょう。それから、法定耐用年数の短縮についても、これは中小企業対策にとって非常に有効である、こう思っておられるのでしょう。これは間違いないでしょう。どうですか。私、これ持っております。
  36. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 仰せのとおりで、ことしすでに設備投資に対する減税というものは税制改正のときにやりましたので、いまその効果をわれわれといたしましては見詰めております。しかし、やはり中小企業対策というのは多々ますます弁ずでございますから、われわれの案の中には、設備投資はなお一層拡充いたしたい、これは当然われわれの主張でございます。  そしてもう一つ、耐用年数も、最近のいろいろな実態を踏まえました場合に、短縮した方がいいのではないかという意見があることも私たちはよく存じておりますが、今日の景気を刺激するという立場に立った場合と中長期の場合と、そうした効果等々も勘案しなくちゃなりませんから、その点も十二分にわれわれといたしましては検討するということでございます。
  37. 大内啓伍

    大内委員 建設大臣、住宅ローンの控除の拡充はどうですか。
  38. 内海英男

    ○内海国務大臣 住宅ローンの控除の問題につきましては、建設省としていま大蔵省の方にお願いをしようということで、建設部会等にお諮りする予定にいたしております。
  39. 大内啓伍

    大内委員 大蔵大臣、お聞きのとおりであります。総理もお聞きのとおりであります。中曽根総理の率いる主要閣僚は、みんな公共投資の追加を要求しております。それを締めているのが大蔵大臣です。大蔵大臣だけがちょっと違う。これは財布のひもを握っているから。しかし、やはり財布はもう少し工夫しなければならぬ。お金がないからやるべき政策が打てないのでは、これは無能力内閣だ。  大蔵大臣、どうでしょう、私の提案した四つの問題。
  40. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いま大内さんの御指摘であります、額は別として、減税公共投資、またそれ中小企業の投資減税、実需先行による景気回復、住宅ローン、そして日銀専管事項とはいえ、金融の弾力的運用における公定歩合の引き下げということが、私は理論的に景気に役立つということを否定する考えはありません。  一方、考えてみますと、アメリカ減税のお話もございましたが、それによってまた一方二千億ドルという財政赤字が出てきたというところに、また高金利をもたらしたりして、これに対して諸外国からさまざまな批判を受けておるという段階でもございます。  したがって、おそろえになりましたメニュー一つ一つ、それなりの効果があることは承知しておりますが、それを総合して、調和して政策の上に実行していかなければならぬ、こういうことになりますと、確かに、財布を握っておるとおっしゃいましたが、中は空っぽであるならばそれを入れる工夫もしなければいかぬという指摘も私は正しい指摘だと思います。そういうことをかれこれ考えまして、対外経済対策というものを、いまは事務当局間でそれぞれ詰めておりますが、政府としてもそれなりの対応策をいずれ明らかにしなければならぬと思っております。  そこで減税問題、これは各党の話し合い、そして申し合わせに基づく議長見解等がありますから別といたしまして、公共投資の問題、二兆円とおっしゃっておりますのは、一つには、昨年の二兆七百億円というようなこともあるいは念頭におありになるかもしれません。また、建設部会の方からは二兆五千億というような声も承っておるところでございますが、これについてこれからいろいろ考えていかなければならぬ問題は、災害というものがまだその規模が明らかになっておりません。それから、一応数字の上で見ますと、きょう御指摘になりました国民所得統計の中にも公共事業が効いたとおっしゃっておりますが、確かに効いて、そして、それにはなお、物価が安定しております、デフレーターが効いておるということもございますので、そういう状況が続くと、今年度の下期は昨年の補正後の実力程度のものは維持できるのではないかという感じが率直にいたしております。そうしてまた、昨年の追加が今年の上期の一つの牽引力になったのではないか、契約繰り越してございますとか未契約繰り越しというようなものもたくさんございましたので。  そういうことを思うと、数字の上で私は、昨年同程度の実力を保持することに対しては、言ってみれば公共投資の追加というものを考えないでもそのものは確保できる、こういう考え方に立っておるわけでありますが、いずれにしても、内外の経済情勢を見て弾力的に対応するというのが経済運営あるいは財政政策のあり方でございますので、貴重な意見として承らしていただいて、今後の推移を見詰めていかなければならぬ。  ただ私は、もう一つ景気論争の中で大内委員おっしゃいました、いわば四%程度というようなものを念頭に描いていらっしゃるやの感を受けました。私どもとしては三・四%をより確実ならしめるという前提の上に立っておるところに若干の乖離があるのではなかろうかと、素直に申し述べます。
  41. 大内啓伍

    大内委員 たとえば、いま公共事業で昨年並みの公共事業ができると思うというようなお話がございましたけれども、昨年並みだと困っちゃうのです。ここにデータがございますけれども、昨年並みだとどういう現象が起こるかといいますと、十月は公共投資〇・四%マイナス、十一月が何と一一・三%のマイナス、十二月はマイナス五・二%、そして翌年に引き継いでいくのです。だから、成長率も三%台になってしまうのです。三%今じゃ不況なんです。それはさっき経済企画庁長官のあの言葉のとおり、これじゃ財政再建もできません。ですから、昨年並みの事業量を確保できるからいいんだなどという考え方自身が、本当の意味政府ができる政策を通じて景気浮揚をやろう、国民が本当に苦しんでいるこの景気回復に全力を尽くそうという姿勢ではない、こう言っているのです。   私は、総理ももちろんちまたの中に入っておられると思うのでありますが、特に中小企業の皆さんは深刻です。一部の、たとえば輸出産業とか電子産業とか、いいところはあります。しかし、おしなべて深刻であります。この人々の苦痛をできるだけ早く取り除くような政策を具体的に出していくということが私は政府の任務だと思うのです。  ですから、そういう意味で先ほど申し上げた四つ、五つの政策について、文字どおり機動的な政策運営をやっていただいて、これを実現するために全力を尽くしてほしいと思うのですが、いかがでしょう。
  42. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 大内さんは政府の手の内を全部勉強して、それで一つ一つ確かめているような気がいたします。建設省は建設省、通産省は通産省、大蔵省は大蔵省、みんな各省自分考えをいま出し合っておる状況です。いまの中小企業の投資減税は通産省が強く主張しておるところであり、また、住宅その他に対する公共事業費も内海君が非常に熱心に主張しておるところであり、大蔵大臣は財布のひもを締めようと思って懸命の努力をしておお。正直に申してそういう状況で、それをあなたは全部調べておっしゃっておるのだろうと思うのです。だから、シャッポを脱がざるを得ぬのであります。  だがしかし、私は行政改革と財政再建、「増税なき財政再建」という公約を実行しなければならぬ、そういう立場にありまして、全体を見ながら、いま政府間内部の調整作業を、事務的にどの程度積み上げていけるかというのを見守っておるところでありまして、私も私なりの考えは持っておりますけれども、いま各省がつばぜり合いで努力しているところへ官邸の方から横車を押すというようなことは、官庁の組織系統から見ていまのところ好ましくない、そう考えておる。しかし、全体でまとまっていくという段階になれば、党のお考えも聞かなければなりませんし、総合的判断をするにまだ少し時間がある。  いま大内さんが申されたことは、大体景気を回復するために必要な政策をみんなおっしゃっていると思うのです。公共事業もそうであるし、減税もそうであるし、中小企業の投資減税もそうであるし、あるいは公定歩合の問題もそうであります。みんな各省あるいは日本銀行、つかさつかさがあるもので、そういうもののコンセンサスの上に成り立って初めて有効な経済政策が協調して成り立つものでございますから、もう少し時間をいただきまして、適当なときに私は私なりの考えでまとめていきたいと考えております。
  43. 大内啓伍

    大内委員 きょうも対外経済政策というのが決められるというようなニュースが流れております。私は、あれの内容を拝見しておりまして、こんなものを総理が裁断するのだろうか、輸入拡大を叫び、貿易摩擦の解消を叫び、内需の振興を叫ぶ総理が、あんなことを裁断するのだろうかと思って拝見しておりました。  いま聞いておりまして、私の景気対策にほとんどの主要閣僚は賛成していますよ。反対しているのは大蔵大臣-反対はしていないな、だんだん心が変わりつつあるようだ。そして、それをコントロールしているのが山口主計局長でしょう。あなたが不況の元祖になってしまいますよ。本当、大蔵省が景気の足を引っ張っているといううわさがちまたに流れていますよ。そして、それに中曽根総理が屈しているというのですよ。そんな失礼なことを申し上げてはいかぬかと思いますが、しかし、そういう実感があるのですよ。  やはり政策的にこれは必要な政策だと思ったらやってみなければわかりませんよ。やりもしないでああだのこうだのと言ってきて、みんな三%台の経済成長率をこの三年間やってきたのじゃありませんか その結果、五十六年度は三兆三千億の税収欠陥、五十七年度は六兆一千億の税収欠陥、そして、にっちもさっちもいかないで国債発行、また増発する、そんな財政政策なんかあるものですか。ですから私どもは、与党、野党の問題ではない。政府政党の問題ではない。やはり国民経済国民的な立場に立ってやるべきことはやってくれ。まさに実事求是です。やってください。ぜひそのことをお願いしたいと思うのでありますが、公共投資については総理考え直したらどうですか。その一点だけ聞いておきましょう。
  44. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 税金をよけい取ったりあるいは赤字公債を発行したりしてやる、あるいはまた建設公債にしても、なるたけ公債依存体質から脱却するという大命令を私は受けておるのでありまして、そういうものを考慮に入れながらいかに調和をとっていくか、景気回復していくかということで考えなければならぬと思っております。  私は、景気は徐々に回復していると思っております。ただ、回復の力が弱い、そういう状態であると思うのです。もちろん、ばらつきがあります。ばらつきもありますが、しかし、最近の指数を見ますと、わりあいに消費需要も少しずつ出てきておりますし、景気の足取りが回復の方向へは進んでいると思うのです。  ただ、アメリカと違いますのは、アメリカ人と日本人の間では貯蓄性向がまるっきり違う。アメリカは大体ローンで、あるいはカードで生きている民族、国民でありますから、金がたまればすぐ消費へ向かう。大体五%ぐらいしか貯蓄性向がない。いや、節約するあれがない。日本人は二〇%ぐらい節約しちゃう。そういうわけで、減税すれば、アメリカの場合は乾き切っているところへ減税というわけで、アメリカも長い間不況でしたから、住宅、自動車にすぐ飛びつてくるわけです。しかし、日本の場合は、減税してもある程度、注意深い国民ですから、貯蓄に回ってしまう。しかし、いまの状態日本も乾き切ってきつつある状態でありますから昔とちょっと状況は違いますが、しかし、そういう体質の差はあるわけであります。そういう体質の差もよく考慮しながら、景気を着実に回復にしむけるようにしなければならぬ。  いまようやく足取りが回復の方向へ向かっているときですから、ここでハッパをかけるという手も一つはあるのです。その点についても、国民に負担をかけないで、赤字公債や増税をやらないでどういうやり方があるかという点で大蔵省は実は苦労しておるのでありまして、その点、私は大蔵省に対しても同情しておる。しかし、いまある段階において、えいっと気合いを入れるということも景気回復のために必要なこともあり得るので、そういう点もよく考慮してみたいと思っております。
  45. 大内啓伍

    大内委員 政府が逡巡している間に国民は苦しんでいるわけです。やはりその苦痛を考えながら早急に手を打ってほしい。  いまアメリカ減税のお話がありましたけれども日本がいま公債の累積残高が百兆ちょっとでしょう。アメリカは三百兆ですよ。そして、この八二年にかけて決定した減税の総額は百七十九兆ですよ。けた外れの減税をやって、そして景気回復に乗り出したのですよ。アメリカだって財政再建で苦しんでいるのです。日本以上の借金を抱えている。そういう中で、われわれの議論している減税は一兆ないしは一兆四千億ですよ。向こうは百億です。そのくらいの努力をして手を打っているということをぜひお考えをいただきたいのであります。  そこで、私は、減税の問題について具体的にお伺いをしたいのです。  今度の与野党の約束で、景気浮揚に役立つ減税、こういう一つ言葉が使われておりますが、景気浮揚に役立つ大幅減税というのは、これは大蔵大臣経済成長率を何%ぐらい引き上げる減税ということになりましょうか。きのうは大蔵大臣は三・四%というものを一つの基準にされておりましたが、私は、これは景気浮揚ではないと思うのです。三・四%では景気回復しないからです。ですから、三・四%に近づく、そのための減税というのは景気浮揚に役立つ減税ではありません。しかし、今度の「一九八〇年代経済社会の展望と指針」で掲げた四%台に接近するための減税をやりたいというのであれば、それは景気浮揚に役立つ減税ということになります。そういう意味でお伺いしておりますが、いかがでしょうか。
  46. 竹下登

    ○竹下国務大臣 私は、この三%台、ここ数年少なくとも三%台の成長を維持し続けてきた。これは世界で日本だけだ、こういうことをよく国際会議等で言われます。したがって、私どもがかって経験した高度経済成長時代、あるいはある意味におけるその惰性の時期、その体質になれておるというところからして、三%台はそれは景気回復じゃなく不況じゃないか、こういう議論が、私は、どこへ参りましてもその議論は存在する議論だと思っております。  そこで、私ども考えておりますのは、今年度の予算を通していただいて、そうして四月五日のいわゆる経済対策というもののやはり根底にある物の考え方というのは、三・四%をより確実にするというのが当面の経済運営の基本ではないか、こういう認識に私自身は立っておるわけであります。したがって、景気浮揚に役立つという表現については、これからこういう問答を重ねる中でみずからも判断しなければならぬ問題じゃないか。  私どもがあの予算を通して景気対策として打ち出したのは三・四%であって、これをより確実にする。大内さんは少なくともあの「展望と指針」の中に述べておる四%程度が念頭におありになるんじゃないかということを先ほども私申したのですが、その辺の議論というのは、あえて平行線とは申しませんが、出発点としては平行線としてこれから続いていく問題じゃないか。したがって、景気浮揚に役立つと、いわば政審の皆さん方の話し合い等を基本にして幹事長・書記長会談等で決まったというのは、ある意味においては非常に議論の残る問題であって、かつ高度な表現ではないかというふうに私は理解をいたしております。
  47. 大内啓伍

    大内委員 これは今後相当論争の焦点になるのですよ。というのは、いまの状況でまいりますと、三・四%の経済成長率は達成できるケースが多いのです。そうしますと、減税はそうやらなくとも三・四%にいくのだから、減税は大幅ではなくて、つまり相当規模ではなくて小幅でいいじゃないかという理論づけになっちゃうのです。ですから私は、三・四%というものを基準にして大蔵大臣が議論されるのは重大ですよと、こう申し上げているのです。どうでしょう。
  48. 竹下登

    ○竹下国務大臣 私は、そのおっしゃる意味は、先ほど来申し上げておりますように、大内さんの念頭にあるものは、恐らくは「展望と指針」等の四%程度というものがあると思うのです。そして、多数の各方面の方が、いまの三%台を維持し続けておるということそのもので満足をすべきでないという意見もございます。一方また、高度経済成長になれた体質を直して、いまこそ三%台が普通であるという意識転換を体力とともにしていかなければならぬじゃないか、こういう議論もあるわけです。そこが、いまいみじくも論争として続くであろうと、こうおっしゃいましたが、私もそんな感じがしております。  が、私どもは、議了していただきました予算の執行、そして諸般の経済情勢、経済対策等を含め、三・四%をより確実ならしめるというのが当面の経済運営の目標であるという認識の上に立っておるということだけは、これはきちっと申し上げておくべきであるというふうに考えます。
  49. 大内啓伍

    大内委員 もっと議論を深めたいところでありますが、たくさん問題が残っておりますから。  今度の減税については、年内に実施するという約束がありますね。大蔵大臣、この年内の幅はどういうふうにお考えですか。
  50. 竹下登

    ○竹下国務大臣 私は、年内の問題で、幹事長・書記長会談で、文章に与党の幹事長がサインをされたという事実は十分踏まえております。したがって、それらの問題につきましては、そのまま税制調査会の方へ御報告しておるところでございますが、いま税制調査会で、しかも国会なり各党の意向を受けてその審議を促進をしていただいておるさなかでございますので、その時期とか、いわば幅をどれぐらい考えるかということについては、いましばらく言及する立場にはないということを御理解をいただきたいと思います。
  51. 大内啓伍

    大内委員 それはおかしい。というのは、公党間で約束し、しかも、後藤田官房長官がそのことを尊重するとここでおっしゃったのです。そして、年内にやりますと、こう言ったわけですね。ですから、その年内ということについて、政府政府としての自主的な考えや、大蔵当局は大蔵当局としての考え方があっていいのですよ。そして、政府税調がどう出てくるか、それと調整すればいいのです。私が聞いているのは、政府として、その年内というものの幅をどういうふうに考えているかということを聞いているわけです。普通、税制は一月一日からですね。あるいは四月という手もあるのですよ。あるいは場合によって来年の一月なんという説もよく新聞で拝見するのです。これは財源の問題ですか。どうです。
  52. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いわば何月から実施するかとか、どういう形で実施するか、それは内容にもよることでございますが、もとより減税を実施するに当たりましては財源論争を避けて通るわけにはまいりませんので、財源等につきましても、どのような形で御答申をいただけるかは予断を持つわけにいきませんけれども、十分な御議論をいただいておるところであるというふうに考えております。  そこで、年内減税とはという定義論というものもやってみました。が、やはりいまけ最大限の努力をするということを官房長官もお答えいたしておる、それらも踏まえて税制調査会において御議論をいただいておるところでございますので、ここで断言することにはいましぱらくの猶予をいただきたいと思います。
  53. 大内啓伍

    大内委員 そのほかの問題で――本当はこれもちょっと詰めたいですけれども、これは残しておきましょう。  大蔵当局としては、五十三年以来減税を見送ってきた。その結果、所得の増加と税の増加との間に大きな乖離が生まれてきた。実質的な増税が起こってきたために、特に勤労階層というものが生活面で非常に困窮を来している。したがって、この問題を解決するための減税ということになれば、課税最低限の引き上げというものは必要だとお考えなのかどうか、これが一つ。二つ目は、それと組み合わせて税率の是正が必要かどうかということ。それから、その税率の中で最低税率と最高税率がございますが、この問題も手直しすることが必要かどうか。それからもう一つは、今度の減税は所得税だけではなくて住民税も言っておりますね、そして、これも実は公党の約束では年内というふうに育っておりますが、住民税の減税は年内可能であるかどうか。  この三つ、的確にお答えをいただきたいのです。私は、時間がたくさんあればいいのですが、余りないものですから、できるだけ結論的にお答えをいただきたいと思います。
  54. 竹下登

    ○竹下国務大臣 五十八年度税制についてという答申をいただいた際にも、課税最低限の問題と税率構造については、これは検討をすべきである、こう書かれてありますので、税制調査会においても、本院の議論等を踏まえてそういう議論がなされておるというふうに承知をしております。  それから、住民税の問題は、これは私、自治大臣だと思いますので、自治大臣からお答えをいたします。
  55. 山本幸雄

    山本国務大臣 いま住民税の実施についていろいろ伝えられておるようでございますが、住民税の徴税の仕組みというのは国税とやはり違う。これは市町村が、府県税の住民税も含めて税額の計算をしておるわけなんです。その点は私は国税と違うと思うのです。現在の徴税のやり方は、約四千二百万人に上る納税者の税額計算をするために四カ月ぐらいかかっております。これは大変な事務量でございまして、そのために市町村あるいは企業の御負担というのは相当なことでございます。したがいまして、税法ができ上がりましてからかかるにいたしましても、やはり相当時間的な経過を要することでございますので、その点は税制調査会でも、地方税の独自性をお考えになっていろいろ御審議をいただけるものであろう、こう存じておるところでございます。
  56. 大内啓伍

    大内委員 大蔵大臣、一言だけ。戻し税は検討の対象外がどうか。  それからもう一つは、田中政調会長が、何かこの問題を提唱されておったというようなニュースも出ておりましたが、それとともに、たとえば一兆円の減税をやる場合にはそれに見合う増税が必要だという考え方が、同じように田中政調会長から打ち出されております。というのは、これはやはり機関の人であるだけに非常に重要な発言だと思っておりますが、そういう考え方を大蔵大臣、お持ちですか。
  57. 竹下登

    ○竹下国務大臣 まず、最初の戻し税の問題でございますが、戻し税というものにもいろいろな定義がございますけれども、いわば従来の経緯からしますと、戻し税という問題は、どっちかといえば国会の中で話し合いができて、そして一つ政策を実行するための手段としてそういう方法が合意の中でとられたということであって、政府税調の中から本格税制の中で戻し税議論というのは出ないだろうというふうに思っております。  それから、田中政調会長の御発言でございますが、これは減税をする場合における財源ということは絶えず念頭にある、お考えになっておると思うわけでありまして、それが即増税という御議論をされたかどうかということについては、私詳しく承知しておりません。(大内委員大蔵大臣はどういう考えですか」と呼ぶ)大蔵大臣はどういう考えかということでございますが、減税するためには当然のこととして財源というものは検討しなければならない問題である、これは本院の減税に関する大蔵委員会の小委員会においても、その財源ということについてずいぶん御苦心をいただいたことと理解しております。
  58. 大内啓伍

    大内委員 それは後でも議論をしたいと思いましたが、そうすると、減税のために増税は不可欠ではない、こういうふうに受け取っていいわけですか。
  59. 竹下登

    ○竹下国務大臣 かわるべき財源というものは考えなければならない、それがいわゆる増税であれ、あるいは時により自然増収であれ、いろいろな場合が想定されますが、財源そのものは検討しなければならぬ。しかも、小委員会においては、その財源には赤字国債は充てるべきでないということを合意されて議長に御報告があっておるということを承知しております。
  60. 大内啓伍

    大内委員 輪郭がはっきりしてきた。そうすると、財源の中には増税は入る、こういうことですね。
  61. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは、いわゆる増収になるであろうものが念頭にある、こういうことでございまして、新たなる新税というものをいま念頭に置いておるわけではございません。
  62. 大内啓伍

    大内委員 そうすると、既定税制の増税はある、こういう考え方ですな。
  63. 竹下登

    ○竹下国務大臣 景気動向等によって増収は期待できる場合があり得る。それから、やはり減税委員会において議論されたもろもろの税、財源としての新税を含めた問題について、検討はしなければならぬ課題だと思っております。
  64. 大内啓伍

    大内委員 増税の問題は、私が後で数字を挙げてちょっと立証してみたいと思うのです。ですから、議論を後に譲りますが、その前に大蔵省当局に聞いておきたいのです。  大蔵省は、五十九年度の要調整額というのを年初の当委員会の審議に出しましたね。このときに、五十九年度の要調整額は四兆一千六百億、こういうふうに出しました。これは「財政の中期試算」ですね。すでに概算要求も五十九年度については出されている。こういう現状の中で当然、要調整額というものもほぼ見当がついているはずですね。どのくらいになりますか。
  65. 山口光秀

    山口(光)政府委員 大蔵省といたしましては、この二月にお出しいたしました「財政の試算」、あれを変えた数字は持っておりません。したがいまして、いま御指摘がありましたその試算のうちのケースCの要調整額は四兆一千六百億、小さい方の数字でございますが、でございましたが、そのときに前提にいたしました一般歳出、これは後年度負担推計でございますから、かなり大きな増を見ておりましたが、先月の末に概算要求を締め切りましたところでは、前年度に対しまして三千三百億余の増加にとどまっております。ですから、その要調整額と申しますか、それを加味いたしますれば、当時考えました要調整額よりは概算要求ベースでは小さくなる。ただ、たとえばベースアップということが今後どういうふうに取り扱われるかということのはね返りということも頭に入れておかなければいかぬと思いますので、数字的にこうこうと申し上げるものは持っておりません。
  66. 大内啓伍

    大内委員 まあ概算要求も出てきた、そして赤字国債からの脱却の年次も大体昭和六十五年ということになってきた、つまり輪郭が決まってきましたね。ですから、当然この要調整額もそれらの諸条件から大体推測はできる。後で数字は申し上げましょう。しかし、いま山口主計局長がおっしゃられたのは、ことしの二月に出した要調整額四兆一千六百億、つまり、それだけの財源が不足する、お金が不足する、これはもう少し圧縮するであろう、こういう見通しを述べられたわけですね。  そこで、具体的な数字を求めるのはまだ無理だと思いますが、今度の中期展望、つまり「展望と指針」におきましては、そうした要調整額を埋める一つの方法としまして、歳出の削減ですね、それから歳入増等々言っておりますね。六十年度以降は赤字国債の借りかえという問題が出てくるわけなんですが、歳出カット分だけでその要調整額は埋まる、これは大蔵大臣、歳出カットだけで来年度の要調整額は埋まるという確信をお持ちですか。
  67. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いま申し上げましたように、この歳出面で見ますと、利払いだけでも〇・九兆円、九千億円ふえていくとか、交付税が精算減額のはね返りもありまして一兆三千億円増加する、例年になく厳しい。したがって、マイナスシーリングをやりましたが、結果、概算要求では三千三百六十億円の増となっておりますが、これをさらにどれだけ圧縮できるかということは大変むずかしい問題でございます。したがって、これは容易ならざる決意でやっていかなければならぬ問題であるな、こう思っておるところでございますので、私は、とてもこれは要調整額をこの歳出削減だけでそれに見合うものを削減することはできませんということをいま申し上げるわけにはまいらない、やはり精いっぱいやってみなければいかぬというふうに考えております。
  68. 大内啓伍

    大内委員 要調整額というのはそんな小さいんですか。そんな小さいものじゃないでしょう。いま政府考えている圧縮幅は三千三百億でしょう。しかも、新聞に出ました医療費の補助金の削減六千二百億、いままでの十割給付を八割給付にしよう。これじゃ、政府の財政削減努力というものが福祉切り捨てによって行われると言われても、これはしょうがないですよ。こういうことはやっちゃいけませんよ。医療全体の構想も固まらないうちから、まずお金がないから、その圧縮は国民の医療費を削って、六千二百億ここで浮かそう、政府がやる圧縮分は三千億だ、こんなことで国民が納得しますか。  しかし、もし仮にこれをやったって要調整額が埋まるはずがないですよ、われわれの計算からいったって。こんなの、少し財政を知っている人ならすぐ計算できますよ。増税以外にないでしょう。あの資料を配ってください。――大蔵大臣、どうです。
  69. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは容易ならざることだと私どもも思っております。最終的には歳出削減か負担増か、あるいは言ってみれば公債の増発か、こういうようなことになりますが、目下のところ私どもとしては、五十九年度予算に対応する姿勢としては、少なくとも今日、いわば要調整額というものを増税とかという手段に直ちに頼るということが――これは確かに専門家の大内さんにしては、そういうことは、言ってみれば単なる姿勢を示すだけの発言ではないかと言われれば、私もその批判は甘んじて受けなければならぬ。しかし、いま直ちにこれが国民の負担増にという考え方が念頭にあった場合には、削減の、言ってみれば意気込みがそれによって失われてしまうんじゃないか。やはりこれは厳しい対応をまずしていかなければならぬのが、いまの私どもに与えられた財政当局の立場ではなかろうかというふうに私は考えております。
  70. 大内啓伍

    大内委員 私は常々思っておりますのは、政治の中に率直さを欠いているという点が国民不信を招く一つの大きな原因になっている。いまの大蔵大臣の御答弁はこの場限りに終わりますよ。それは政治姿勢としてはわからないことはないのですよ、その覚悟はね。しかし、そんなことはすぐ結果が出ることですよ。  それで、私はこの試算を少しやってみたんです。これはすでに大蔵省の主計当局にも渡してありますので、そんないいかげんな数字ではないと思うのでありますが、この「財政の中期見通し」という中で試みましたのは、いま政府が行おうとしている経済、財政運営の基本を前提としながら、一定の予見し得る仮定のもとに、要調整額というものが今後どういうふうになるだろうかということを検証したものなんですね。そしてその結果、いま中曽根総理国民に向かって公約されようとしている、またされつつある「増税なき財政再建」と「昭和六十五年度赤字国債脱却」というこの二つの公約は、いまの政府のやり方からすると両立不可能になってしまうということをちょっと数字的に立証したんです。  これをめくってちょっと見ていただきますと、主な前提といたしまして、たとえば一般歳出につきましては、これは過去昭和五十五年から五十九年度の平均の伸び率で伸びるものとして算出してみました。また、税収については、「展望と指針」において見込まれている名目GNP成長率、この中央値をとるとともに、弾性値については過去の平均弾性値、これは一・一でございます、これを使っておるわけなんです。赤字国債につきましては、すでに「展望と指針」で、六十五年で赤字国債脱却方針は出されておりますので、これを五十九年度から六十五年度まで毎年一兆円ずつ減額を行う。そして、さらには五十九年度は定率繰り入れ及び発行差の減額繰り入れは行わない。  恐らく政府はこの方針をとるに決まっているわけでありますから、そういう前提をもってやってみますと、赤字国債の借りかえを行わない場合、これはこの上の欄に出ておりますように、五十九年度の要調整額は一兆二千億に達します。あと六十年度が三兆七千九百億、どんどん上がってまいりまして、六十五年度には九兆四千六百億。つまり、いま政府がとろうとしている施策でやってまいりますと、要調整額はこういうふうにふえていく。  後で論議いたします。その赤字国債の借りかえの問題、仮に伝えられておるような赤字国債の借りかえを行う場合、その場合の赤字国債は三十年で全額返済する、こういう方針をとったといたしましても、要調整額は五十九年度で一兆二千億は出る。そして、六十五年度には五兆七千八百億までふくれていく。この数字はそう間違ったものじゃないと思います。  私は、この委員会でたびたびこの種の数字を出してまいりましたけれども、いままでそういいかげんな数字を申し上げたことはありません。かつて、五十九年度の赤字国債脱却、それは絶対無理だと私どもだけが申し上げました。しかし、そんなことはない、できるのだ、やってみたけれども案の定できなかった。そのときもそのことを数字で立証してみたのです。  今度も同じなんです。つまり、これから見てみますと、政府政策というのは増税以外になくなってきている。もし、政府がいまのような縮小均衡の財政運営をやっておれば必ずこういう状態になる、こういうことをあらわした試算なんでございます。これはすでに主計局を通じて大蔵大臣にも渡っておると思いますので、御所見を伺いたいと思うのです。
  71. 山口光秀

    山口(光)政府委員 最初に私から御答弁させていただきたいと思います。  財政の中期見通しにつきまして、歳入歳出両面において幾つかの前提を置いて試算すると一定の数字が結果として出てくる。いま大内委員の示された試算もそのようなものの一つであるということでございますが、いつもこのような御努力を払われていることに対しまして、私どもとしても大変参考にさせていただいているところでございます。  ただ、こういう試算は、特に七、八年にわたるような長期的な推計をいたします場合には、ちょっとした前提のとり方の違いによって七、八年後にはずっと拡大していくということでございまして、たとえば一般歳出なら一般歳出を毎年X億円ずつふやし方が違ってくるという前提をとりました場合には、たとえば七年後でございますと、そのX億円の七倍だけ違ってきてしまう。仮にそのX億円が五千億とすれば三兆五千億違ってしまう、こういうことなのでございまして、前提の置き方はかなりむずかしい議論を呼ぶ問題ではないかと思います。したがって、そういうことを前提に、やはり試算の制約というものがあるということを前提に御議論いただきたいと思うわけでございます。
  72. 竹下登

    ○竹下国務大臣 毎年ちょうだいしておりますが、きのう私の方にもちょうだいをいたしまして勉強させていただきました。  この「財政の中期見通し」というのは、いま大内委員のおっしゃられた前提を置いた場合はこのとおりになるというふうに私は判断をさせていただいております。
  73. 大内啓伍

    大内委員 問題は五十九年度なのです。この私の試算でいきますと、非常に小さく見積もっておりますが、一兆二千億ぐらいの要調整額が、いまの政府がとろうとしている、もう目先ですからな、出てくる。そして、それをできるだけ大蔵大臣は歳出の削減努力によってやろうとするけれども、いや、それはできないだろう、増税しかないでしょうと私が申し上げていることについて、不鮮明な答弁をされている。この一つとりましても、これは外れそうですか、どうです。一兆二千億のこの要調整額というのは、当たらずといえども遠からずでしょう。そして、一兆二千億のこの歳出削減はできますか。大蔵大臣、どうです。できないでしょう。増税しかないです。
  74. 山口光秀

    山口(光)政府委員 ことしの二月にお出しいたしました中期試算のケースCを前提にいたしまして一定の変更を加える、たとえば一般歳出につきましては概算要求額をとる、それから国債費につきましては定率繰り入れを五十九年も停止するという前提に立ちまして試算すればこういう数字になろうかと思うわけでございますが、たとえば税収につきましても、五十八年度の税収動向がどうなるかも、現在の税収の足取りを見ましては、はっきりまだ申し上げられないような段階でございます。いわんや五十九年につきましてもまだ未確定要素でございます。そのようにいろいろな面で未確定要素がございます。もちろんその三千三百数十億円という一般歳出の面での概算要求を圧縮する努力をわれわれも今後とも続けていくわけでございますが、なおそのほかに、先ほど申しましたようなたとえばベースアップ、これの取り扱い次第によっては来年度に、概算要求に織り込まれておりませんですから、乗っかる要素も出てまいるというような、いろいろな不確定要素があるということをつけ加えさせていただきたいと思うのでございます。
  75. 大内啓伍

    大内委員 あしたのことは全部わからない。不確定ですね。しかし、そういう中にも政策の基本というものをたどりながら一つの予測をするということが十分できるわけです。それが人間の英知というものですよ。まして目先のことです。確かに山口主計局長のおっしゃるような、たとえばベースアップをどうするかとか、あるいは五十九年度の定率繰り入れを本当にやるのかやらないのかとか、来年度の赤字国債の減額を一兆円にするのかしないのかという問題は、それはこれから決めることですから不確定要素がありましょうが、しかし大体やる手は決まってきているわけですよ。したがって、いまの歳出削減努力では当然、要調整額は埋まらないし、間違いなく減税の後には増税が出てくる、こういうことを私は断言しておきますよ。これが政府がやろうとしている手であるということを国民の皆さんにも知ってもらいたいと思ってこの試算を出したのです。  そこで問題は、「一九八〇年代経済社会の展望と指針」では、六十年度から始まる公債償還の財源として三つ挙げていますね。歳出の抑制、歳入の確保、借換債の発行。しかし、いま特例債は借換債の発行はできませんね、大蔵大臣。しかし、借換債の発行というものをやらなければ、恐らく無理でしょうね。法律の改正をやるのか、それとも一般会計の中から新たな実質的な借換債を出そうとするのか、当然その辺はもうすでに検討され、新聞では幾つかのアドバルーンが上がっているわけであります。大蔵大臣、これはどういうふうにお考えですか。
  76. 竹下登

    ○竹下国務大臣 借換債の議論、前国会からもいろいろ御議論をいただいたところでございますが、少なくとも現時点において特例公債の借りかえを当然の前提としてものを考えておるというわけではございません。確かに現在の財政が置かれておる極度に厳しい状況から判断いたしますならば、今後歳出歳入の構造の合理化、適正化に全力を挙げますと同時に、それをやったといたしましても、国債費が一段と大幅に増加することもありまして、引き続き厳しい財政事情が続くであろう、そういう状況の中で財政改革を図っていこう。したがって、「展望と指針」の中において、いわゆる特例公債依存体質からの脱却をするためには、具体的にはどのような方策をとっていくかはまさに今後の重要な検討課題である、そうしながら、特例公債の償還財源の確保の問題については慎重な検討が必要であって、「展望と指針」においても、「今後、財政改革を着実に進めていく過程で、国民的合意を得つつ、検討を進める。」というふうにされておるわけでございますので、経済情勢、財政状況等を見ながら、各方面の意見を伺いながら検討を進めていかなければならぬ課題だというふうに考えております。  さらに、具体的に申しますと、全体の問題については、財政審に先般小委員会をおつくりいただきましたので、幅広い観点から検討をこれにお願いをいたしたというところでございます。その議論が進んでいけば、当然のこととして借りかえ問題等についても議論が進んでいくであろうというふうに予測をいたしております。
  77. 大内啓伍

    大内委員 いまの大蔵大臣の前段のお言葉と後段のお言葉は全然違いますね。借換債は、初めは当然のこととして考えてないとおっしゃる、そして最後には、当然のこととしてそういうことになっていくであろうと。この辺はもう少しすっきりしてもらいたい。  というのは、「展望と指針」というのは閣議決定しているんでしょう。八月八日に閣議決定しているんでしょう。そして、その閣議決定の中で、借換債の発行ということを含めた国債発行の手段によって行わざるを得ないと言っているんでしょう。そしてその問題は、それを具体的にどういうふうにやるかという問題をこれから詰めましょうと言っているんでしょう。そして来月には、大蔵省の理財局長の諮問機関として、この国債の借換債の問題の懇談会を発足させて、この問題を具体的に検討するんでしょう。借換債の発行はやるんでしょう。いかがですか。
  78. 竹下登

    ○竹下国務大臣 整理して申し上げますと、理財局長の諮問機関でございます借換懇でございますか、これはいまも現存しておる私的諮問機関でございます。これは建設国債の今日までの借りかえの中身についての御議論をいただいて御結論をいただいて、今後の建設国債の借りかえの中身についての議論をいただくための懇談会であるというふうに承知をしております。幾らか休んでおりましたのを再発足をするということになるわけです。  それから、いまの御指摘になりました問題については、現時点で特例公債の借りかえを、当然の前提として考えておるというわけではございません。いま「基本的には歳出の抑制、歳入の確保又は借換債の発行ということも含めての公債発行の手段によって行わざるを得ない」、いままで国会でも再三申し上げておる三つの方法をお述べして、その具体的な方策は、今後国民の合意を得つつやっていく。その問題につきまして、財政制度審議会で、今後の公債の償還問題について、小委員会を設けて幅広い観点からこの検討を先日お願いをしたというところまでが今日の経過でございます。そうした場合に、いわゆる借りかえ問題は検討課題に上ってくるであろうというふうに理解をしております。
  79. 大内啓伍

    大内委員 私は何も自分言葉で物を言っているんじゃなくて、政府が決定した「展望と指針」というのがここにありますよ。この中で、「六十年代の特例公債を含む公債の大量償還に要する財源の確保については、」一つは「歳出の抑制、歳入の確保又は借換債の発行」云々の「手段によって行わざるを得ない」、政府の方針じゃありませんか。そうでしょう。  それじゃ、借換債はやらないこともあるんですか。
  80. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これはいま私も正確に「展望と指針」を読み上げたところでございまして、「借換債の発行ということも含めての公債発行の手段によって行わざるを得ない」、こう書いてあるわけでございまして、正確にお読みしたわけであります。そして、借換債につきましては、御指摘のとおり、建設国債は今日までもやってきておりますが、特例債につきましては、そういう議論の中で、私は各方面の意見を聞く一つの手段として、幅広く財政審に今後のあり方を諮問をしております。そこで小委員会をつくっていただいたとなれば、いわばそこの議論は当然その方向に行くではなかろうかというふうに思っておるわけであります。
  81. 大内啓伍

    大内委員 それでは、ちょっと裏から聞いてみます。  竹下大蔵大臣は、ことしの二月五日の当委員会における質疑でこう言っているのですよ。「私は借りかえというものを念頭に置いてこれに対応することは、私どもとしてもこれは不見識のそしりを免れないではないかというふうに思います。」そうすると、この「展望と指針」はまことに不見識ですな。「も含めての公債発行の手段」によらざるを得ない。不見識なことを決められたわけですか。まあ大蔵大臣は余り持って回ったような言い方をされますから。  というのは、これはこれからの政府政策手段を縛る問題なんですよ。借換債の発行というのは不可避的に起こってくるでしょう、さっき私が説明した要調整額の推移から言ったって。それでは大増税でもやるのですか。予算を半分ぐらい切って大蔵出削減をやるのですか。そんなことはできないでしょう。もう少し正直におっしゃったらどうですか。
  82. 竹下登

    ○竹下国務大臣 正直に申しまして、当時いわゆる特例債の法律を、本委員会ではございません、大蔵委員会でございますが、本院で審議していただいておる、その中には借りかえをしないと書いてある、その段階の質問に対して私が借りかえを念頭に置いておりますと言えば、これはやはり不見識ではないか、いまでもそう思っております。正直に言えということでございますが、きわめて正直に申します。
  83. 大内啓伍

    大内委員 これは本当はこれからの財政運営で非常に大事なポイントなんですよね。ですから、私はそういうところはもう少し率直なやりとり、国民にわかるような、そういうやりとりをしたいものだなと思ったのです。  もう一つの問題で、租税負担率という問題があるのですよ。たとえば増税論議をするのでも、租税負担率の基準をどこに置くかという問題がはっきりしなきゃ増税論議も減税論議もできませんよ。「展望と指針」ではどうしてこの租税負担率を明らかにしなかったのですか、大蔵大臣
  84. 竹下登

    ○竹下国務大臣 この議論も本委員会でもしたところでございますが、租税負担率というものは、言ってみれば、分母が国民所得であって、そして分子は国税プラス地方税、こういうことになります。そういうものによって決まっておりますので、言ってみれば、来年度の政府経済見通しもきちんと策定しておるわけではなく、また税制改正について何も決まっていないというところで五十九年度の租税負担率ということを言及するということはむずかしい問題ではなかろうか。やはり経済の情勢等によって、租税負担率というのは結果として分母そして分子で出てくるものでございますから、初めから固定的に租税負担率というものを考えていくというのはむずかしい問題じゃなかろうかなというふうに私は考えております。
  85. 大内啓伍

    大内委員 何をおっしゃっているのです。だって、いままでの経済社会七カ年計画ではちゃんと出してきたでしょう。「展望と指針」はそれにかわるものでしょう。経済企画庁長官はこの間の国会で、租税負担率は当然出さなければならぬ、出しますということを言っていますよ、国会の答弁の中で。少なくとも「展望と指針」の中で幾つかの答えを出すに当たって、租税負担率というものが決まらないで、いろいろな方針が出るはずがないですよ。だって、赤字国債の償還の問題についてだって三つの方針を出しているのでしょう、さっきから言いましたようにたとえば歳入の確保を図るというのは、租税負担率と密接不可分でしょう。こんな問題が国会の中に示されないでどうして財政論議ができるのです。それを出してください。
  86. 竹下登

    ○竹下国務大臣 経済社会七カ年計画に二六カ二分の一という問題が確かにございました。それから、いろいろな議論が行われましたが、この問題につきましては、租税負担率の設定のあり方ということについては、引き続きこれは検討してまいらなければならぬ。したがって、「展望と指針」の中におきましては、「将来の租税負担と社会保障負担とを合せた全体としての国民の負担率は、ヨーロッパ諸国の水準よりはかなり低い水準にとどめることが望ましい。」こうして言及されております。これは臨調の答申にも同じような言葉が使われておりましたが、いわば望ましい方向というものが示されたわけでありまして、租税負担率という問題プラスいわば社会保障負担というものは一つの望ましい方向として示されたものであって、租税負担率というものの問題につきましては、七カ年計画において基礎として示しました二六カニ分の一というようなものであらわすべきかどうかにつきましては、いま少し私は検討をしなければならぬじゃないかというふうな考え方であります。
  87. 大内啓伍

    大内委員 これから減税の実施という問題を控え、そして財政の動向を見ておりますと、増税という問題が必然的にクローズアップしてくる。そして、その増税に対して臨調の答申は、大蔵大臣もよく御存じのとおり、こう言っているのですね。「租税負担率の上昇をもたらすような税制上の新たな措置を基本的にはとらないこそうですね。そうすると、これからたとえぱ増税をどの範囲でやるかという問題は、この租税負担率というものが決まらなければ、その増税のよしあしの判定はできないでしょう。増税の増減の幅というものは租税負担率によって決まってくるのでしょう。どうしてそういう基準の数字がこの国会には示されないのです。そして、われわれ国会議員に対して財政の問題を審議せいとどうしておっしゃるのです。私の知る範囲では、この「展望と指針」の策定に当たっては租税負担率が経企庁から出されていますよ。経済企画庁は出して、しかも、それを公表することを迫っているのです。これは私の調べたところでほぼ間違いないと思う。「昭和六十五年度におけるわが国経済の姿(総括表)」、この中で租税負担率は二七%という数字が出ているはずですよ。公共投資、五十八年から六十五年度の累積は二百三十兆から二百五十兆円、社会保険移転一六・五%、社会保障負担一三%、租税負担率二七%、国民の負担率四〇%、こういうものがなくて「展望と指針」のあの作文は書けるはずがないですよ。あの結論は出るはずがないですよ。  経済企画庁、これを出していただけませんか。
  88. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 いま大内委員御指摘の租税負担率あるいは公共負担その他につきまして、私は、内部でいろいろ検討して、これまでの手法のとおりにするならば、このような姿があるであろうというような研究は十分なされた、こういうふうに思うわけでございます。  租税負担率は、もう言うまでもなく国民所得の伸び率、それを相乗積をいたしました六十五年度の国民所得を分母にいたしまして、適正なる弾性値を租税収入に掛けていけば出てくると考えられるわけでございますが、しかし、これまでの結果から見て、私はこのような租税負担率は出さない方がいいというような考え方も十分理解できると思うのでございます。それは、大平内閣のつくりました経済七カ年計画では、租税負担率が二六カニ分の一というところを目標にして、それに到達するために一般消費税という税収を考えていく、増税を考えていったところに大変な問題がある。御案内のように、経済の進展によって、弾性値も、GNPのあり方についても、趨勢についてもいろいろな変化がありましたために、自然に租税負担率も上がっていって二六カ二分の一に近くなってきた。  このような趨勢を考えてみますと、二六カニ分の一というただ一本の租税負担率を掲げていき、それに基づいて増税、減税考えていくようなことはやはりこの際いかがなものであろうか。したがって、もう少し現実的に、五十九年度の予算をつくる際に、果たして現在のGNPあるいは将来のGNP、そしてまた、とられ得るところの、国民が合意するところの租税政策、こういったものをもとにして、現実性を帯びた修正の可能性の少ない租税負担率を今度はひとつリボルビングプランというかっこうで示していきたい。出さないという意味じゃありません。予算編成の時期が私は絶好のチャンスだと思いますが、そのような機会にもう少し現実性を持った数字が出てくる。それもいろいろの変化のある、六十五年までの租税負担率でございますれば、当然いろいろの負担があろうかと思います。すでにもう大内先生は六十五年は二四・八%にみずからここに推算されておるわけでございます。これもしかし弾性値が一・一であるかどうか。私は弾性値が一・一であれば本当におっしゃるような大変な縮小均衡的なものだと思いますから、私はこのあたりからもう少し研究、検討して、現実性に富んだ租税負担率をこれから研究していかなければいかぬだろう、こういうふうに思うところでございます。
  89. 大内啓伍

    大内委員 政府のやっていることは一貫性がありませんよね。経済社会七カ年計画ではちゃんと出して、今度は都合が悪いから出さない。しかも、臨調答申を見れば、さっきからお話し申し上げているように、租税負担率の上昇をもたらすような新たな増税をやってはいけませんと言っているのに、その増税のよしあしを判定する基準を政府は出さない。しかし、その抽象的な方針は「展望と指針」で出す。その裏づけにはちゃんとその数字のはじきがなされていながら、そういうものを出さないで国会の中で審議しろというのは非常に不親切です。  委員長、こういう数字を出すように命じてください。出すべきです。そうじゃないと国会審議なんかできるものじゃありません。
  90. 久野忠治

    久野委員長 ただいまの大内君の御提案につきましては、追って理事会で協議をいたしたいと存じます。
  91. 大内啓伍

    大内委員 理事会ではなくて、租税負担率は増税の是非を論じる基準の数字です。これを出せるようにちゃんと指示してください。いま塩崎経企庁長官予算編成期になればというようなお話をされていました。少なくともいま出せないならどういう時期に出すかとかいうことを政府に確約させるのが予算委員長の使命じゃありませんか。
  92. 久野忠治

    久野委員長 ただいまの大内君の御提言につきましては、ただいま申し上げましたように、追って理事会で扱いについては協議をいたしたいと思います。
  93. 大内啓伍

    大内委員 予算審議はきょうで終わりです。ここで何らかの言質をちゃんと政府からとってください。でなければ、こういう審議はできません。詰められませんよ、増税問題をこれから議論しようと言ったって。政府に言ってください。でなければ、総理大臣、何らかの言質をここではっきりしてください。
  94. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いま大内委員からお話がありましたが、租税負担率というものについてはかねて、最初は二三・六、それから二三・七になりましたが、そのいわば結果として出たものを基準に置くべきか、あるいはかつての中期計画に基づく二六カニ分の一を基準に置くべきか、そういう議論も臨調の方と議論をいたしたことがございます。したがって、租税負担率というものは、申しましたように、やはり分母が変わってまいりますので、私は、あらかじめこれを固定して考えるべきものかどうかということに対して、本委員会においても何度か疑問を申し上げてきたところでございます。したがって、租税負担率の設定のあり方という問題については、いろいろな議論を踏まえながら引き続き検討をしてまいりたい、その検討の過程で御相談をさせていただきたいというふうに御理解をいただきたいと思います。
  95. 大内啓伍

    大内委員 一月には財政計画を出すというお話ですね。それじゃ、そのときは出しますか。
  96. 竹下登

    ○竹下国務大臣 財政計画と申しますか、予算審議の手がかりとして従来お示ししておるものにつきまして、さらに精査したものについてどのような形のものを出すかも相談しながら私は提出しなければならぬというふうに考えております。したがって、その際、租税負担率のあり方という問題をも含めて私は相談をしていきたいと思っております。部内のみならずこの理事会等で御相談をしていきたい、こういうふうに考えます。
  97. 大内啓伍

    大内委員 委員長、本当は政府をしてその程度の言質を予算委員長として求める、これが私は公平な委員審議だと思いますよ。後で理事会でというお話では問題が解決されないですよ。物事が終わってから物事を相談するなんというようなそういう提案を委員長はやるべきではありません。苦言を呈しておきます。  そこで増税問題、余り時間もないので、ほかにたくさんやりたい問題がございますので、簡単にお伺いをしたいと思うのです。  総理は、この十日の所信表明で「税外収入等歳入面においても見直しを行ってまいります。」というお話をされていますね。つまり、税外収入だけではなくてそれらと言っておりますね。これは増税を念頭に置いていますか。
  98. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 必ずしも増税を念頭に置いたものではございません。いまの租税負担率の問題の論争もお聞きしておりましたが、今回の「展望と指針」をつくる上についてそういう問題は大分議論したわけです。しかし、いままでのようないわゆる五カ年計画と違った「展望と指針」という新しい性格のものを内閣の性格として打ち出してきたわけで、非常に弾力性と機動性を持ちながら、しかもリボルビングシステムで見直しを行いつつ進もう、いままでややもすれば数字が固定してひとり歩きして、国民に増税の方向へ物を進めるような印象を与えたり、あるいは数字が非常に現実と乖離したりした、そういう弊害がありました。そういう面から毎年毎年見直しを行いながら着実にいこう、そういう私の発想に基づきまして「展望と指針」という、名前も変えて、できるだけ数字は出さない、定量的な性格よりも定性的な性格にしよう、つまり政策論議を中心にしよう、そういう性格で実はつくっていただいたという経緯もございます。  それで、租税負担率ということを考える場合には、当然、社会保障関係の負担率という問題も出てまいりまして非常に相関関係を持っているわけです。そういう意味におきまして、これは慎重にやる必要がある、しかし毎年度毎年度のものはこれは的確に出していかなければならぬ、そういうような考えで実はつくっていただいたもので、大蔵大臣としても非常に苦労しておるところでございます。しかし、正式の予算を提出するという場合には、予算編成のいろいろな手がかりになる資料をある程度大まかに出す必要もある、そういう考えに立ちまして大蔵大臣もいまのような御答弁をした次第なのでございます。  それで、増税の問題につきましては、「増税なき財政再建」という発想、この理念をあくまで堅持していきたいというのが私の考え方でございまして、先ほど来申し上げますように、行財政改革は胸突き八丁にたどってまいりまして、いまも御指摘になりましたように、厚生大臣の方においても社会保険関係の費用、医療費の関係等についてもいろいろ苦心惨たんしている面がある。したがいまして、それらは最終的に五十九年度予算編成の過程でどういうふうになっていくかという最終的な結論を出さなければならぬという段階になっておるのでございまして、その辺は御了承いただきたいと思うのでございます。
  99. 大内啓伍

    大内委員 必ずしも増税を念頭に置いていないというお言葉ですが、私は、五十九年度の予算編成がその総理発言の真偽を決定すると思うのです。ですから、総理自分の言動に対して十分責任を負う覚悟で御発言をいただければ結構なんです。さっきの租税負担率だって、普通の予算委員会ではあそこでストップですよ。しかし私は、あそこでストップをかけたのでは他の委員の方に御迷惑をかけるから、本当にがまんして物を言っているのです。しかし、いまの増税の論議も、本当はこの問題がはっきりしないと、この問題について実は正確な議論ができないのですよ。そのことだけは申し上げておきたいと思うのです。それが民社党の良識というものです。  八月二十九日に、小倉政府税調会長はある新聞のインタビューでこう言っているのです。歳出に占める税収の割合が六〇%、いまは六四・一%ですね、というのは低過ぎる、これを八〇%程度にまで高めるために、間接税の増税を言わざるを得ないだろう、こういうインタビューの談話を出しておられるのですが、大蔵大臣はこういう考え方と一緒のお考えをお持ちなのか。つまり、直間比率の見直しは、五十九年度予算編成でやる必要がある、こういうふうにお考えかどうかお聞きしたいのです。
  100. 竹下登

    ○竹下国務大臣 この問題もたびたび議論のあるところでございますが、直間比率というものも、私は結果として出てくるものであるというふうに思います。しかし、いま直間比率というものが、諸外国の税制等から見れば、確かに直接税に非常にウエートがかかっておる税体系になっておるという理解はしておりますが、いまの場合、私どもは大型間接税を導入するとかそういう考え方も持っておりませんので、いま念頭に、税制調査会に五十九年度税制のあり方として、直間比率の問題を限定して審議していただこうという考え方はございません。ただ、臨調等々の答申の中にも、直間比率を見直すべきであるというお考えをちょうだいしておることは承知しております。
  101. 大内啓伍

    大内委員 具体的にそれじゃ、税調の審議途上でありますからなかなか言えないかもしれないのですが、ただ、大蔵省としてこれはやはり検討の対象になるかどうか、その程度はお答えをいただきたいのです。というのは、われわれも相当来年度予算編成で苦労しているのです、われわれなりに、財源という問題がございましてね。  そこで、一つ一つ聞きますが、物品税、それから酒税、退職給与引当金、それから石油税、この辺は検討の対象になりましょうか。物品税、酒税、退職給与引当金、石油税、いかがでしょう。
  102. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いま御指摘になりました税目につきまして、これをやるべきではないというような陳情を受けたことはございますが、私は税制調査会に対して個別の税目でもって諮問しておるわけでもございませんし、税制調査会の審議の途中でございますので、今日個別の税目に対して私がここでコメントするという立場にはございません。ただ、この税制調査会でどのような議論が出ておるかということになりますならば、あるいは主税局長からお答えするのも一つかと思いますが、私から個別に申し上げるわけにはまいりません。
  103. 大内啓伍

    大内委員 では、一つだけ確認しておきましょう。  大型間接新税の創設はしない、これだけは言えますね。
  104. 竹下登

    ○竹下国務大臣 この問題については、この税調においても大型新税の問題が検討されるというふうには今日承っておりませんし、私どももその考えはございません。
  105. 大内啓伍

    大内委員 この予算編成と関連しまして、一つだけ、人事院勧告の問題で聞いておきたいのですが、八月勧告の六・四%は一つのものとしてこれを誠意を持って実施する、こういう方針を言うことができますか。私が申し上げた意味は非常に重要です。一つのものとしてですね。
  106. 竹下登

    ○竹下国務大臣 財政当局だけの立場なものですから、ちょっと私から答えるべき問題であるかどうか、これはやはり総理府かと思います。
  107. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 この問題は、いま給与担当閣僚協で検討していただいておる。いろいろ議論があります。総務長官や労働大臣は、ぜひこれを実施するようにという強い御要望もありますし、財政当局は、非常に厳しい財政状況からかなり困難なような様子も見せております。結局、どういうふうにこれを扱うかということは、これからさらに政府内部において調整を要する。一つのものとして扱うか、あるいはそうでないものにするか、そういうようなさまざまな問題についてこれからいろいろ論議していく、こういう段階であると申し上げます。
  108. 大内啓伍

    大内委員 昨年の凍結理由は、勧告が五%未満であったからということが一つと、それは今度だけの異例中の異例の措置である、こういうことを言ったのですね。しかも、今度の人事院勧告というのはことしの四月の官民の給与を比較して勧告を行っているわけです。これを守るか守らないかということは、法律を守るか守らないかという問題です。凍結などということは全く不当な措置でした。人事院制度を踏みにじる措置でした。ましてや、まじめに違法ストライキもやらないで働いている公務員の皆さんにとっては申しわけない措置でした。今度は完全実施してください、このことを強く要望しておきます。  本当は、私が一つのものとして申し上げたのは、昨年凍結した分については凍結という線を解除するのかどうか、そういうことを含めて完全実施を検討しているというのかどうかということを聞いたのです。この辺はいまちょっと正確でないのですが、総理、いかがでしょうか。
  109. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 恐らくそういう意味一つのものと言われたのだと私は思いました。しかし、この人事院勧告については、基本的な立場はやはり憲法あるいは国家公務員法等に基づく労働権の代償という意味から、基本的にこれを尊重するという態度は持っておるわけでございます。  しかし、財政上どの程度許せるかというのは、また政府としての立場がございます。また、与党の内部にもこれは非常に大きな議論がいま潜在的にあるわけなのでございまして、与党の内部の意見も無視するわけにはいきません。そういう意味におきまして、これを去年の分とことしの分とどういうふうに扱うかという点につきましては、もう少しいろいろ党内の調整やら内閣の意見調整をお待ち願いたいと思うのです。
  110. 大内啓伍

    大内委員 この問題もたくさんの問題を抱えておりますが、残された問題を、わずかな時間ではございますが、総理にお伺いをしたいと思うのです。  それは、大韓航空機の撃墜問題であります。  レーガン大統領は、九月五日、こういう演説をされているのですね。私はこの演説を非常に印象的に聞きました。「我々の娘がまた娘の夫が大韓航空機〇〇七便で死んだ、彼らが死んだのは、人権のあらゆる概念を侵害したソ連のせいだ。」「ソ連やキューバの軍用機は、幾度も高度の機密の米国の軍事施設上空を飛行している。しかし、これらの飛行機は、撃墜されていない。我が国や他の文明諸国は、海や空において途に迷い、困窮している船舶乗組員やパイロットに助けの手を差しのべるという伝統を守っている。」これはなかなか格調の高い演説をされておりました。  私は、今回の事件に対してソ連が終始言質を変え続けた、そしてミサイルによる迎撃を、撃墜を認めるまでに何と九日間も要した、このソ連の態度というものは、単に日本国民という立場じゃなくて、一人の人間としてもまことに許しがたい、遺憾なものであった、こう思うのでありますが、中曽根総理はどういうふうにお感じになっているかということが一つ。  それからもう一つ、これは外務大臣、時間がありませんので、まとめて聞いておきます。  ソ連は、大韓航空機の撃墜を正当化する理由として、当該機がスパイ機であったということを盛んに申し述べておられます。そして、その理由といたしまして、二時間以上もカムチャツカやサハリンを飛行し、しかも米軍当局はそれを監視し続けていた、計器の故障などというものはあり得るものではない、これは計画的なスパイ行為だ。二つ目には、米軍の偵察機RC135と行動をともにして、しかも十分間はランデブーをしていた。さらには、大韓航空機は地上からのソ連の攻撃を避けて飛行するルートを通っていた。四つ目には、百二十発の曳光弾による警告射撃等を行ったけれども、ことごとく無視した、アメリカ日本はそういう大韓航空機のスパイ行為というものを手助けしているんだ。これはわが国にとっても重大な問題でございます。  そして、私が特に具体的に確かめたいのは、アメリカのホワイトハウスのスピークス副報道官は、これは六日でございましたが、アメリカは、ソ連が民間航空機と知りながら撃ち落としたという動かぬ証拠を持っている、それは地上の指令基地と要撃機との交信テープを保有しているからである、こう言っています。この点についての事実関係、日本政府としての見解。  本当はこの問題は、個々の問題で一つ一つ確かめたいと思ったのでありますが、時間がありませんので、この問題に対する総理の御所見と、いま申し上げました問題についての日本政府の正式の見解、この二つを承りたいと思うのであります。
  111. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 大韓航空機撃墜事件は、すでに何回も申し上げているとおりでございまして、人道上からも国際法上からも許せぬ行為であり、政府といたしましては、この問題に対する事実の究明、これをソ連側に要求し、また責任を明らかにするようにし、そして謝罪とこれに対する損害賠償を正式に要求しておるところであります。また、国際協力をもちまして、安全保障理事会やあるいはICAOの会議、国際民間協力機構の会議等におきましても、世界の国々と一緒になって、以上のようなことを実行していくために懸命の努力をしているところであります。
  112. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 今回の撃墜事件におきましてソ連のとった態度というものは、まさに非人道的でありますし、許すべからざる行為であると存じます。ソ連の発表は、いまお話がございましたように、一口に撃墜をして以来小出しに情報を発表しておる、こういうことでありまして、初めには、私がパブロフ大使と会ったときは、サハリンの上空には存在はしない、国籍不明機は存在しないということを言っておりました。その後、三日になりましてタス通信では、領空外に去ったということを言っております。七日には、ようやく指揮所の命令を実行した、九日に撃墜の事実を認めておるわけでございますが、しかし依然として、責任は第三国に転嫁するという姿勢でございまして、いわばわが国から提供いたしましたソ連パイロットの交信記録、これが動かぬ証拠として提出をされた結果、渋々これを認めたと言わざるを得ないと思うわけでございますが、同時にまた、ソ連は、いまお話しのように、この大韓航空機はスパイ機である、こういうことを発表いたしまして、まさに責任を転嫁しようといたしております。大韓航空機がスパイ機であるというソ連の発表は、私から言わせればまさに荒唐無稽なことではないか、こういうふうに考えるわけでございまして、あれだけの多数の罪のない乗客を乗せた民間航空機をスパイ機に使うなどということはとうていあり得ないことであります。同時にまた、アメリカ自身も、宇宙の偵察あるいはまた偵察技術というものは非常にいますぐれたものを持っておるわけでありますから、こうした民間航空機によってスパイをするような必要は毛頭あり得ない、常識的に見てそういうことはあり得ないわけですから、スパイ機という認定は、これはまさに荒唐無稽と言わざるを得ないと思うわけでございます。  同時にまた、これまでの事実関係から明らかなように、大韓航空機は撃墜される瞬間までは既定の空路を走っておるということは交信記録からも明らかでございますし、ソ連機はこれに対していろいろと警告を発したということにつきましてもその実態は明らかでありません。二時間半にわたって飛行をしておる、それに対して警告をしなかったのではないかということを言っておるわけでありますが、これにつきましても、外務省の情報局長からその間の経緯はつまびらかに発表いたしておりますように、日本政府として何らこうしたことに対して知らなかった、関知していないという状況は、これは詳細に発表しておるわけでございまして、その点については明らかでございます。したがって、われわれとしては、ソ連機のこうした、特にソ連の、責任を第三国に転嫁しようというこの姿勢というものはまさに卑劣なやり方であって、許すことができない。われわれは、あくまでも真相を明らかにしてソ連の責任を追及しなければならない、そういう立場で今後とも最大の努力を傾けてまいりたいと考えております。(大内委員「スピークス報道官は、一連の動かぬ証拠を持っておる……」と呼ぶ)  この点につきましては、日米間でいま緊密な情報の交換はいたしておるわけでございますが、アメリカ側としてもそうした確信を持って、いずれ事実が明らかになれば、その事実については日本にも連絡もあると思いますけれども、私は、いまのアメリカの報道官の言っていることが事実であるならば、この点については日本にもこの連絡はあるもの、こういうふうに確信をいたしております。
  113. 大内啓伍

    大内委員 時間が参りましたので終わりますが、補償措置等については断固として日本の正義を貫いていただきますよう要望いたしまして、質問を終わります。  ありがとうございました。
  114. 久野忠治

    久野委員長 これにて大内君の質疑は終了いたしました。  次に、正森成二君。
  115. 正森成二

    ○正森委員 私は、日本共産党を代表して、中曽根総理並びに閣僚に若干の質問をさしていただきたいと思います。  昨日、社会党の石橋委員長の質問がございました。その真摯な討論には、この席で敬意を表明させていただきます。しかし、あえて申し上げますが、社会党の非武装中立政策は、世界でもほとんど日本社会党だけが採用している立場であって、いかなる意味でも今日の中立政策を代表し得るものではありません。日本共産党は、日本の平和と安全にとって主要な障害となっている日米安保条約を廃棄して、非同盟中立の日本を実現することを当面の中心課題として主張し、安保条約廃棄後の日本の安全保障政策としては、社会党のような非武装中立ではなく、中立自衛政策を掲げています。こうした方向は、国連加盟国の三分の二以上を結集した非同盟諸国首脳会議が進めている運動の基本方向とも完全に合致したものであります。  この非同盟運動は、非武装中立などという立場ではなく、みずからいかなる軍事同盟にも入らないことを基本とし、かつ世界の軍事ブロックと軍事同盟の解消を目指す運動です。それはいまや国連を動かし、世界史の方向を決定する潮流となっております。こうした方向こそが中立政策を代表し得るものであり、わが国でも中曽根内閣・自民党の軍事同盟強化、軍拡路線と正面から対決して、日本の平和と安全への展望を切り開くことのできる唯一の道であると私どもは確信しております。   以上の点を改めて指摘して、質問に移らしていただきたいと思います。  中曽根首相は、代表質問の答弁でも、戦後日本が戦争に巻き込まれなかった要素に日米安保条約があったと述べました。しかし、日米安保条約がアメリカの引き起こす戦争に巻き込まれるものであることはかつて椎名外相や、少なくもそのおそれのあることは佐藤総理も認めておられます。  総理に伺いますが、あなたもかつて、一九七〇年の五月に拓大総長の講演としてこう言われたことがあります。「日本本土に対して戦火がふりかかった場合には、事前協議なしにアメリカ軍が日本防衛のため緊急発進できますが、極東の平和および安全の維持ということでアメリカ軍が日本から出動していくことは、日本政府と事前協議が必要であるという歯止めはおいてあるのです。しかし、そういう一つの歯止めがおいてあるとはいえ、極東条項があるということは、これはある意味においては、いざという場合に、むこうの紛争が渡り廊下を通って、日本へはいってくる危険性がないとはいえないですね。こういうことは国際政治上のギブ・アンド・テイクということで割り切っていくしかないでしょう。」こう言っておられます。つまり、あなたも、安保条約第六条の極東条項で紛争が渡り廊下を通って日本に入ってくる、つまり戦争に巻き込まれるということを明白に認めておられるわけであります。だからこそ現在、わが国世論の七八%がアメリカの行う戦争にわが国が巻き込まれる可能性があるということを危惧しているわけであります。  この点について、あなたは戦争に巻き込まれる危険がないとお思いですか。御答弁を伺います。
  116. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 日本が日米安保条約を締結しておるということは、日本が自衛力を持ちつつ、自己の足らざる力を自覚してアメリカの自衛力、防衛力と提携して、その総合的な力によって抑止力をつくり、外国から侵略されるのを未然に防止しよう、そういう配慮でやっております。  私は、その結果が大きく貢献してこの三十数年間日本が戦争に巻き込まれなかった、そういうことがあると思います。それについてはやはりちゃんと安保条約上におきまして、条約あるいは交換公文その他の規定によって、諸先輩の御努力によって事前協議条項とかあるいは非核三原則とか、そういうようなしっかりとした歯どめをつくっております、それがかなり私はやはり有効である、そう思っておるわけであります。  それで、極東条項あるいはいま申し上げたような、アメリカがその条約の発動によって出るという場合に事前協議を必要とする、そういう場合には、われわれはわが国の防衛上本当に必要であるかどうか、わが国の国益を中心にしてそれは考えていくべき問題である。われわれが野方図にその条約というものを、自分の国益というものを考えないで言うがままにそれを適用したという場合には、それはそういう危険性が出ないとは言えない。言えないが、われわれは、安保条約をつくっているという趣旨は、日本の国を防衛して日本を戦争に巻き込まないという配慮でこれをやり、そのためにいろいろな歯どめをつくっておるわけでございますから、それを堅持していくという限り、われわれが戦争に巻き込まれる危険性というものは排除できる、そういう努力がなければ、それはそういう可能性が絶対ないとは言い切れない要素がある、そう思っておるので、問題は、どんな条約やどんな制度にいたしましても必ずこういう両面があるものであって、その両面に対してこちらの主体的意思によってどういうようなしっかりとした態度を堅持していくかということであります。  そのしっかりした態度を堅持していくということについては、政治家政党の決意も大事でありますが、国民世論とか国民の意思もまた大事である、こもごも相まってそういう努力をしていこうと考えております。
  117. 正森成二

    ○正森委員 総理のお考えの御開陳がありましたが、その中でもやはり戦争に巻き込まれる危険がないとは言えない、ただし、それは日本の安全をどう確保するかという見地から判断するのであるから、そういう危険性は少ないのだというようにお伺いいたしました。  しかし、この点については自民党委員の中にも非常に危惧があります。たとえば一九六六年六月一日の衆議院外務委員会で、ベトナム戦争が始まりましたときに、同僚委員である鯨岡委員環境庁長官もされた方でありますが、その方が、「アメリカがベトナム戦争に参加している、したがって、直接的ではないが、間接的な基地のような形になっている。だから、しいて言えば、アメリカの相手国である北ベトナム等から見れば、日本は直接の敵ではないけれども、敵性国のような形になっている。それによって起こる危険というものはやっぱり日本にある。」こういうぐあいに質問したのに対して、当時の椎名国務大臣は「ベトナム戦争がもう少し近いところで行なわれておるということになると、はっきりするわけであります。」「私は、危険がないとは言えないと思います。」こう言っておるのですね。つまり、ベトナム戦争のときに、わが国が事実上アメリカのベトナムに対する干渉戦争の基地になりましたが、これがベトナムが近くであり、そして一定の国力を持っておれば、わが国もまた戦場に巻き込まれる危険があったということを、鯨岡委員も、それに答弁した椎名外相も明白に認めているわけであります。  ところが、現在中曽根内閣がとろうとしている方針は、まさにわが国に最も近い国に対して敵意を示している、そして、わが国を戦争に巻き込む方向に一歩一歩持っていっているのではないかという危惧が国民の間にあるわけであります。  そこで、この点についてさらに進んで御所信を承りたいと思います。  あなたは、一月に訪米をされました。そこでいろいろなことを言われましたが、中曽根・レーガン会談についてワシントン・ポスト紙で総理がいろいろと発言をしておられます。その中であなたは、不沈空母だとか三海峡封鎖とかシーレーン防衛の対米誓約、こういうことを改めておっしゃった上で、こう述べておられます。「これまでの日本政府はこのことに関してどちらかというとあいまいだった。しかし、私の政権はきわめて明快だ。でもそのことを宣伝する必要はまったくないと思っている。」「私の政権はきわめて明快だ。」こう言っておられますが、どういうぐあいに明快なのか、明確に御説明を願います。
  118. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、レーガンさんとの会談で、不沈空母とか三海峡封鎖とは言わないのです。それは、あなたはよくちゃんと知っている上で御質問……(正森委員「ワシントン・ポスト」と呼ぶ)ワシントン・ポストとの朝飯会云々ということで、しかも不沈空母という言葉自体は、その後ワシントン・ポスト紙も報道されましたように、正確に訳されたのではない、そういうような言葉も向こうから出てきておるわけであります。私は、そういうことについてとやかく弁解はいたしません。ともかくワシントン・ポストのような世界的な新聞の上で一回出ている、そういう問題についてとやかく弁解がましいことは言わぬ方が男らしい、そう思っておるから私はそうしておるわけであります。  しかし、私がはっきりするという意味は何であるかと言えば、その後国会におきまして野党の皆さんがいろいろ質問してまいりました。米艦船が日本救援のために駆けつけたときどうするとか云云という一連の御質問をいたしました。それらに対しまして私は自分考えを述べて、また日本アメリカとの間の防衛技術の問題に関する問題についても所信を述べて、そして言いかえれば日本国憲法の範囲内において、個別的自衛権の範囲内において、そして非核三原則を堅持して軍事大国にならない、そういう範囲内においてどこまでやれるかというガードレールをはっきりした、そういうことを申し上げた。いままではそのガードレールのところが必ずしも明らかでない。野党の質問もなかったし、政府の答弁もなかった。しかし、野党の質問がありましたから、私は、そういう問題については憲法の範囲内でこれまではやれますということを幾つかはっきり申し上げた次第です。そういうようなことを意味しているわけです。
  119. 正森成二

    ○正森委員 いま総理は、ガードレールをはっきりしたと言われましたが、あなたの場合、問題はまさにそのガードレールを外へ外へ広げておるということにあるのではないですか。そのことを私は一、二の例を引いて申し上げたいと思います。  二月十九日の通常国会で、わが党の東中委員が、三海峡封鎖の問題について質問いたしました。そのときに、事務当局の答弁あるいは谷川防衛庁長官の答弁とあなたの答弁とは明確に食い違っているのですね。後で政府が統一見解を出しましたが、あなたは防衛庁長官や事務当局が説明しているのにわざわざ出てきて、そして、ガードレールはここまでだぞと言って大きく広げられたのですね。重大な発言でありました。その中であなたはこう言っておられる。いままで三海峡封鎖ということは、そのことの是非は別として、日本有事の場合だけであるというのは事務当局から防衛庁長官から常識だった。それをあなたは初めてこう言っているのですね。「ただし、そのときの情勢によりまして」、アメリカから海峡封鎖をしたいと言われたときですね。「日本に対する武力攻撃の発生が非常に緊迫性を持って出てきておるというふうに判断されるような場合とか、あるいは日本の船舶が国籍不明の船等によって非常に甚大な被害を受けてき始めているとか、そういう場合には考慮を要する場合もあり得る、それはそのときの状況による、そういうことであるだろうと思っております。」こう答えているのです。これは明確に、日本有事の場合ではなしに、日本有事のおそれのあるとき、そのときにすでに海峡を封鎖する、こういうことを言われたことにほかなりません。  防衛庁、本年度の防衛白書で、海峡封鎖を行った場合に、相手側はどういうことをやってくる可能性があるか明確に書いてあるはずであります。その部分だけを言ってください。
  120. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 お答え申し上げます。  五十八年の防衛白書の中にこういうふうに記載をいたしております。「主要な海峡を通過」して……(正森委員「そこはいい。その三行下から。通峡阻止」と呼ぶ)よろしいですか。――「また、航空自衛隊は、」云々とありまして、「通峡阻止の作戦は、敵艦艇の行動を制約し、その作戦効率を阻害する等の効果を持つことから、敵が通峡の自由を確保するため、海峡周辺地域に対する侵攻を企図するおそれもあり、これに対処するため陸・海・空各自衛隊の能力を有機的に連係することが必要である。」
  121. 正森成二

    ○正森委員 総理、お聞きのとおりであります。つまり、海峡封鎖をやるということになれば、相手側は当然それに対して反応をしてくる。その反応は、通峡の自由を確保するために、海峡周辺地域に対する侵攻を企図するおそれもある、こういうように言っておるのですね。しかも、これをわが国有事の場合にやるんじゃないのです。アメリカ有事の場合に、わが国に有事のおそれがあるとはいえ、まだ相手国が侵攻していないという場合にアメリカに認める。そうすると、アメリカはどうしますか。公海を封鎖するだけでなしに、わが国の領海にも機雷を敷設する。もちろんソ連の領海、宗谷海峡なら、こういう部分にも機雷を敷設する。そうすれば、相手国は、当然のこととして、通峡の自由を確保するためにはこういう機雷を除去する。除去するのを阻止するためにもし米軍の飛行機や艦艇が出動するということになれば、必ずそこで戦闘作戦行動が起こるはずであります。こういうことを認めるということにほかなりません。これこそ、ガードレールを広げて、わが国がまだ有事でないときに、専守防衛とか言いながら、そのおそれがあると勝手に認定したら、こういう危険なことをアメリカに認める。アメリカの戦争に、まさにわが国の安全を危険にして巻き込まれることではありませんか。これについて明確な答弁を求めます。
  122. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その点は、あのときの政府の統一見解で申し上げ、いまも朗読しましたように、国籍不明の潜水艦によってわが国が、船舶が撃沈されて被害甚大である、あるいはそのほかともかく緊迫した事態になって、日本が自存、自衛上相当考えなければならぬ、そういうときになれば、国民世論にしても国内の情勢にしても、かなりみんな心配をし、憂慮してくるという状態になるでしょう。そういうような場合においても何にもしないのかと言われれば、それはそのときの状態に応じて適切に処理し得る、処理し得るという可能性をわれわれは認めておくべきである。それは日本の自存、自衛上重要なことである、そう考えて申し上げたわけであります。  その場合に、個別的にどういう事態が起こるかというようなことは、防衛庁やそのほかの専門家がいろいろ考えていっていることでしょうが、しかし、ともかく日本民族の立場に立って、日本の生命財産を守っていく、また独立と主権を守っていく、そういう場合に、客観的に見てももう非常に危険な状態であるというような場合には、そのときにおいて適切な必要な措置を講ずる余地を残しておくということは大事なことではないかと思います。
  123. 正森成二

    ○正森委員 私は、総理のお考えは非常に危険だと思いますね。わが国の憲法第九条を持ち出すまでもありませんが、われわれはいかなる場合でも民族の独立と主権、自衛権を否定したことはありませんけれども、わが国に侵攻のおそれがあるだけでまだ侵攻がない場合に、仮にあなたの前提の国籍不明の艦船によってわが国の艦船が被害を受けるというようなことがあっても、なぜそれなら、自衛隊が一定の援護をするとかいうことならわかるけれどもアメリカに対してわが国の領海に機雷敷設することをも含む海峡封鎖を許可しなきゃならないのですか。そんなことをやれば、逆にわが国が真っ先に戦争に巻き込まれることになるじゃないですか。それはわが国の国民の平和と安全と財産を守る道ではない。それを逆に非常な危険に陥れて、わが国を戦争に、それこそ渡り廊下を回って戦争に引き入れる道にほかなりません。これがあなたがワシントンで言ってきた、中曽根内閣はこの点については明快だ、明確だということではありませんか。日本国民はそういう明確さは毛頭望んでいないということを私は改めて申し上げなければならないと思います。  それだけではありません。アメリカの太平洋軍司令官のロバート・ロング大将は、シーレーン防衛のための対馬海峡の封鎖に関して、米国と日本及び韓国との間に有事計画がすでに存在していることを明らかにしております。これは本年の六月の十四日にワシントンの外国人記者と会見して言っていることであります。  こういうことはあるのですか。防衛庁はどう考えておりますか。
  124. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 わが方が韓国と共同いたしまして日本と韓国との間の海域について行動することは毛頭ございません。そういうこと、事実は一切関知いたしません。
  125. 正森成二

    ○正森委員 そうすると、諸新聞に報道されましたが、ロング氏が言っていることに対して、防衛庁は毅然とした態度をとってやっぱり申し入れをしなきゃならぬと思いますが、申し入れをしましたか。
  126. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 わが国の自衛隊はわが国の防衛のために存在をいたしますが、これは行動におきましてあくまでもわが国の固有の自衛の権利に基づいて行動いたすことでございます。それ以外のことにつきまして、他国のいかなる方がどういうような発言をされておるのか、つまびらかでございませんが、一々これに対しましては反論その他をいたしてはおりません。
  127. 正森成二

    ○正森委員 それでは国民の不安は必ずしも静まらないと思います。私は中曽根総理にあえて申し上げたいのですが、国民は……(発言する者あり)質問しているときにはちゃんと聞きなさい、民主主義を心得ているなら。  総理、あなたは、本年一月訪米の際に、日本アメリカは運命共同体と言われました。帰国後、国会で、この言葉を説明して、一蓮托生ということだと言明しておられます。一蓮托生というのは生きるも死ぬも一緒ということにほかなりません。アメリカは、NATO十五カ国、そのほか韓国、フィリピン、オーストラリア、ニュージーランドなどANZUSの条約で攻守同盟を結んでおります。さらに、台湾とも同盟関係にあります。台湾は、言うまでもなく中華人民共和国の一省であり、アメリカと台湾との防衛条約が発動されるときは十億の中国人民を敵とするときにほかなりません。さらに、中米ではニカラグアやグアテマラに介入をしております。中東では、死活にかかわることであるから武力を行使すると公然と言明しております。世界で火種の一つと言われているイスラエルに武器、弾薬や資金を供給しているのは事実上アメリカだけであります。事実上アメリカは五大陸約六十の国と同盟条約を結んでおります。結局、アメリカは、こういうような状況の上に、相手が核を先に使用しなくても、必要なら核兵器を使用すると再三言明しております。  こういう国と、憲法第九条で全国民の約束事として、戦争はもうしない、こう言っているわが国とが、どうして一蓮托生で生きるも死ぬも一緒である、こういうことになるのか、これは国民がどうしても納得のいかないところであります。これでは、生きるか死ぬか、戦争か平和かをみずから決定する独立国とは言いがたいのではないですか。この点についてお答えを願います。
  128. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その質問はもう通常国会で何回も質問をされたことで、あなたもおやりになったのじゃないかと思います。(正森委員「私はやっていません」と呼ぶ)  つまり、運命共同体という意味は、シェア・ザ・デスティニーという表現を使ったのです。シェア・ザ・デスティニーという意味はどういう意味であるかと言えば、お互いが自由主義、民主主義の信条を持っておる国の間である、それから太平洋を隔てて膨大な経済取引関係を持っておる、そして両方の国が経済的にも相互依存関係が最も濃密であって、相手を離れては存在できないぐらいに経済関係が緊密化しておる、あるいは文化その他の面におきましても非常に強い交流関係を持っておる、そういうような意味においてシェア・ザ・デスティニー。また、日米安全保障条約という面もございましょう。安全保障条約上で緊密な提携をしておる、そういう全体を総合してシェア・ザ・デスティニー、そういう意味で言ったのであります。  石橋さんの本を読んでみるというと、社会党は総評と運命共同体であると書いてありますが、総評と生き死にを同じにするという意味じゃないでしょう。(「何で社会党が出てくるのか」と呼ぶ者あり)  われわれでもアメリカとの関係につきましては、われわれはわれわれ独自の見解に立って、安全保障の面については安全保障でちゃんと歯どめをかけて憲法の範囲内においてわれわれはそれを実行していく。そういうようなしっかりとした歯どめがちゃんとかけてあるわけでありますから、そういう点については御心配は要らないと思います。
  129. 正森成二

    ○正森委員 私があえて伺いますのは、総理がシェア・ザ・デスティニーと言って英語をお使いになりましたけれども、価値をともにするとか、しかし、その中には日米安保条約があるというように本会議でも各党の質問に対してたびたび答弁されたことはよく存じております、私も本会議におりましたから。しかしながら、あなたが日米運命共同体と言い、一蓮托生というような、日本語としては非常に刺激のきつい言葉をお使いになる。しかも、そのお使いになったときに、文化や芸術を論ぜられたときに使われたのではなしに、不沈空母だとか、バックファイアは絶対に阻止するとか、シーレーンの防衛とか、三海峡、四海峡の封鎖とか、いかにも海軍将校らしい発想の発言が次次に出たときに出てくるから、これはシェア・ザ・デスティニーと言うけれども、実際は軍事に、戦争、平和の問題について運命をともにするということではないかと国民は危惧しておりますし、それがアメリカの行う戦争に巻き込まれる可能性がある、七八%の国民がこういうぐあいに危惧しているわけであります。そして、それがまた二月の東中議員との討議の中で、海峡封鎖についてもこれまでの事務当局や防衛庁長官見解をさらに広げて、ガードレールを広げているということから、私があえて質問をしているわけであります。  石橋委員長といろいろ御論議がございました。私は社会党のことについてこれ以上この席で申し上げる立場にはございません。けれども、われわれ国民全体は、総理のこの方向に対しそ大きな危惧を抱いているということをあえて申し上げておきたいと思います。  さらに、防衛庁長官に伺います。  アメリカの国防総省が、安全保障に関する同盟国の貢献度報告というのを出しました。それは御存じのことだと思います。その中にいろいろなことが書いてありますが、たとえば「一九七六年の防衛計画大綱は、日本の防衛力の持久力という重大問題、シーレーン防衛の必要に対応しておらず、その他の点でもきわめて時代遅れのものになっている。中曽根首相は、増大するソ連の脅威に対する日本国民の強い関心をはっきり再確認した。また、中曽根首相は「ソ連の軍備増強に対し米国その他NATO諸国が行っている努力にかんがみ」、日本も「適切で必要な防衛努力を行う」必要について率直に発言した。」こう書かれております。  これは、結局アメリカ側が「防衛計画の大綱」や五六中業に対して、これは時代おくれである、こういうように見ておることであり、逆に総理の防衛努力を行うという点について非常に期待をかけ、この方向での防衛力増強を非常に励ましている報告と読まざるを得ませんが、防衛庁は五六中業や「防衛計画の大綱」についてどう思っていますか。
  130. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私の名前が出ましたから一言申し上げたいと思いますが、私は鈴木さんの後、内閣を引き受けましたが、鈴木さんのときにレーガン・鈴木共同コミュニケというのが出たのは御存じのとおりです。その点につきましては、自民党もこれを肯定し、承認して、これを支持していくという考えを持っておるわけでございます。あのレーガン・鈴木共同コミュニケにおきまして、国際情勢の検討あるいは日米間の防衛問題等について意見の交換をして一致した。その線を、私は鈴木さんの後継内閣を引き受けまして、その約束を守ります、そういうことを言って、その国家間の約束というものを守る、そういうことでやっておるわけです。  それで、じゃ防衛はどの程度やるかと言えば、われわれの方は「防衛計画の大綱」の水準に達するように努力をしていく、そういう水準でいままでのペースで物は大体進めておるわけでありまして、特に私が際立って大軍備増強を企てているというようなことはない。それは皆さんも御存じのとおりでございます。そういうような普通の、あの共同コミュニケに沿った線に従いまして「防衛計画の大綱」の水準に達するという努力を、ほかの経費とのバランスをとりながらやっているんだ、そういうことをぜひ御認識願いたいと思うのであります。  それから、シェア・ザ・デスティニーという点でございますが、一つの例を申し上げれば、日本アメリカに相当自動車を輸出していますね。百六十八万台とかなんとか言っていますが、これが百五十万台になり、百万台に減ってしまった場合にその自動車はどこへ行くのですか。太平洋へ捨てるわけにいかない。ほかの国で買ってくれますか、もし、買わないということになったら、日本には大不景気が来て、全国にある自動車産業の関連産業に大変な失業が出てまいります。そのこと一つだけを考えてみても、日本アメリカというものは経済的にも入り組んでおって、共存共栄で生きていかなければならぬ。また、アメリカが小麦を輸出しない、あるいは大豆を輸出しない。あの石油危機のときに、大豆が来なくなったというので豆腐が三倍ぐらいにはね上がってしまった。それだけでも上がってしまった。しょうゆも上がる。こういうわけで、経済的に見ましても、日本が繁栄しているという背景にはアメリカとの経済的交流というものが非常に大きくあるわけです。アメリカもまたそれによって非常に利益を得ているわけです。  このような経済一つを見ても、この関係がうまくいかなければ、日本に大失業が起こり、大不景気が襲来して、塗炭の苦しみに遭うということは、目の前にわかっていることです。そういう意味においてもこの関係を緊密にしていく、そして繁栄をお互いが分かち合っていく、そして運命を開拓していく、これがシェア・ザ・デスティニー、そういう意味なのであります。
  131. 正森成二

    ○正森委員 私の質問時間を使って、選挙演説まがいの見解をお述べになりました。私は、総理がお見解をお述べになることは大いに賛成ですけれども、時間の点については御配慮を願いたいと思います。  なお、経済摩擦の点について言えば、あなたは日本の利益だけ言われましたが、アメリカだって、たとえばトウモロコシは千六百万トンも日本に輸出して、日本の農業を事実上破壊しかねない農産物の自由化などを言ってきているじゃないですか。ですから、物の見方というのはいろいろあるのだということを申し上げまして、大韓航空機事件について松本善明議員からの関連質問をお許し願いたいと思います。
  132. 久野忠治

    久野委員長 この際、松本善明君より関連質疑の申し出があります。正森君の持ち時間の範囲内でこれを許します。松本善明君。
  133. 松本善明

    松本(善)委員 大韓航空機事件について質問をいたしますが、まず、この事件の犠牲になられた方々、御遺族の方々に心からの弔意を謹んで申し上げて、質問に入りたいと思います。  大韓航空機の領空侵犯が国際法上違法行為であることは言うまでもありませんが、民間機の撃墜は明らかに過剰防衛で、正当化できるものではもちろんありません。  わが党は、事件発生後直ちに書記局長談話を発表し、人道上も国際法上も全く許されない蛮行であるとして、どの党にも先駆けてソ連政府に対し、速やかにこの事件の真相を明らかにし、責任ある態度をとるよう申し入れを行いました。これに対してソ連側の回答が九月十二日に行われました。わが党は近くこれに反論を発表する予定であります。  わが党がソ連側の責任を問うておりますのは、領空侵犯機を発見した場合に、軍用機か民間機かを識別するためにあらゆる努力をし、対処すべきことは、国際的にも認められた当然の道理だと考えるからであります。ソ連側はいま、大韓航空機が警告に対して反応がなかったから撃墜した、こういうふうに言っていますが、それだけではもちろん十分な確認とは言えないと思います。当委員会において、大韓航空機がスパイ機であったかどうかということが昨日来論議になっております。きょうもなりました。私どもは、この領空侵犯をした大韓航空機が仮にスパイ機であったとしても、また、この飛行機の乗務員ないし一部の者がスパイ活動なるものに参加していたと仮定をしても、十数カ国二百数十人の乗客はそれとは全く無関係であり、警告に無反応だというだけでその生命を奪ってよいという理由はどうしても成立しないと考えるからであります。  この点について総理はどのようにお考えか、一言伺っておきたいと思います。
  134. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その点については共産党と意見が一致します。
  135. 松本善明

    松本(善)委員 わが党は、人間の生命を何よりもとうといものとするのが共産主義、科学的社会主義の精神であると考え、この立場からソ連の責任を問うておるのであります。(発言する者あり)不規則発言を聞いておりますと、この共産主義、科学的社会主義が人間の生命を最もとうといとする考えが気に入らないという方々がたくさんおいでのようでありますけれども、わが党の人間尊重の考え方の根本には、人間の人間による一切の搾取と抑圧を一掃する、あるいは一人が万人のために、万人が一人のためにというような原則がはっきりあるわけであります。また、綱領にも、真に自由な人間関係の社会を打ち立てる、そういう社会主義、共産主義の理念があるということを改めて申し上げたいと思いますが、具体的には、今回のソ連軍による撃墜行為に至る事態の全容を客観的記録をもって明らかにし、責任ある態度をとるとともに、現場における共同捜索など関係諸国から要請される人道上の措置について誠実に協力すべきであるという態度を明らかにしております。  いまソ連に対していろいろ要求することがありますけれども、緊急に必要なことは、人道的な要求である共同捜索にソ連を協力させるということであると考えますが、政府は現在どのような交渉をしているのか、外務大臣、明らかにしていただきたいと思います。
  136. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 ソ連もやはり共産主義の国でありますし、科学的社会主義の国だと思いますが、そのソ連がこうした非道な行為を行ったということは許すことはできないと思います。したがって、ソ連に対しましては陳謝も要求しておりますし、また賠償も要求しておりますが、現在のところ、一切これを拒否をいたしておるという状況であります。  同時にまた、捜索活動につきましては、事件発生後、わが国としましては、ソ連に対しまして、数度にわたりまして捜索についてのソ連側の協力を求めたわけでございます。特に、ソ連の領海内等についての立ち入り等も了解を求めたわけでございますが、ソ連はこれに対して何らの回答はありません。そして、この捜索活動は非常に難渋をきわめておる。積極的な妨害ということではないにしても、日本の捜索活動については非常に非協力的である。こういう実情のもとに難渋をきわめておるわけでございます。  しかし、捜索によって事態の真相をきわめていかなければなりませんので、わが国としても、その後、全力を挙げて付近の海面等について捜索を今日まで続けておるわけであります。
  137. 松本善明

    松本(善)委員 報道によりますと、ソ連側が、墜落前後の大韓航空機の状況がはっきりわかりますボイスレコーダーなどが入っているブラックボックスを収容したとか、あるいはそれを米ソで競争で収容しようとしているとかいうような報道もあります。  犠牲者の遺族の立場から見ますと、この問題が米ソの軍事対決に巻き込まれるというのは本当にやりきれない気持ちであろうと思いますけれども、この点についてソ連側に情報を求めているかどうか、これを伺いたいと思います。
  138. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 パブロフ大使から、ソ連が収集しておる破片あるいは文書等についてはこれを日本に提供する用意があるという回答があったわけでございますが、その後何らそうした破片あるいは書類等の日本に対する提供が引き続いて行われておらない。したがって、日本としては、ソ連に対してこれが提供をいまも求め続けておるわけであります。ソ連からは一切のそうした情報の提供であるとか、あるいはまた、この破片その他の捜索によってソ連が得たものの提供は行われておらない、こういうことであります。
  139. 松本善明

    松本(善)委員 いずれブラックボックスも収容されると思いますが、その内容を含めて事態の全容を、客観的記録をもって明らかにすべきだと私ども要求しておりますが、とうとい生命を失ったのは、日本人二十八名を含む二百六十九人であります。この犠牲者の遺族たちは、真相の解明あるいは遺体や遺片のわずかなものでも入手したいというのが本当に切実な要求であると思います。人道的立場からこれらが必ず実現するよう道理ある態度で交渉することを求めて、次の質問に入りたいと思います。(発言する者あり)共産党ももちろんやっております。  次に、大韓航空機の責任問題について伺いたいと思います。  わが党は、ソ連が民間航空機を撃墜した責任はきわめて重大であり、いまなおこのことを反省していないということを大変遺憾なことに思っております。しかし、同時に、事件の発端が、大韓航空機によるソ連領空の大規模侵犯にあったことは明白な事実であります。大韓航空機は、一九七八年にもソ連領空深く侵犯する事件を引き起こしております。乗客の生命と安全を損なう重大な領空侵犯事件を引き起こしながら責任ある対応をなさないならば、そのような企業や政府が、国際民間航空を経営する資格と能力を問われるということは当然のことであると私は思います。  大韓航空と韓国政府は、ソ連の領空侵犯の事実と責任を認めているのかいないのか、明らかにしていただきたいと思います。
  140. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 第一義的に、いかなる理由があっても非武装、無抵抗の民間航空機を撃墜するということは許されないわけでありますが、大韓航空機がどういうことでこの針路を大きく変更したかということにつきましては、いま調査が続いております。少なくとも大韓航空機自体が撃墜される寸前まで既定の路線を走っておったということは成田との交信等においても明らかでございますが、(発言する者あり)どういうことで大きく変更したかということについては、いま調査は行っております。日本政府といたしましても、韓国に対しましてもそうした情報等について韓国から提供してほしいということを申し入れておるわけであります。
  141. 松本善明

    松本(善)委員 ちょっと言い間違いじゃないかと思いますが、撃墜される直前まで既定の、正規のコースを走っていたという認識ですか。それはもうどこのだれも信用しないことですけれども、言い間違いではないかと思いますので、改めて聞いておきます。
  142. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 大韓航空機の機長と成田の管制塔との交信記録によれば、機長はそういうふうに確信しておった、そういうことであります。
  143. 松本善明

    松本(善)委員 それでは申し上げます。  十五日の国際民間航空機構、ICAOの特別会合で、韓国代表は、大韓航空機がソ連領空に入ったことは否定しないが、その理由はだれにもわかっていない、機械にも故障があるし、人間にも失敗がある、それを話として撃墜することは許されない、領空に入ったことは認めた、こう聞いておりますが、これが事実かどうかお答えをいただきたいと思います。運輸省ですかな。
  144. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 お答えします。  ルートを外れて撃墜された場所までどうして行ったか、その原因がわからないわけです。
  145. 松本善明

    松本(善)委員 私が政府から聞いていま紹介をいたしました韓国代表の発言を運輸大臣は否定されませんでしたが、そういうことが当然あったわけですし、それは否定されなかったので、肯定されたというふうに思います。うなずいておられますのでそのとおりと思いますけれども、領空に入ったことは明白なんですよ。私は、外務大臣がいまのような答弁をされるというのは全く遺憾きわまりない。そういうことでは真相の解明やその他はなかなか困難だというふうに思います。  私は、総理に伺いたいと思うのでありますが、事件の翌日、全斗煥大統領と電話で話し合われました。そのときに、全斗煥大統領は領空侵犯の事実と責任を認められたのだろうか、日本人二十八名が犠牲になっておりますので、あなたは韓国に領空侵犯の責任があるということは言われなかったのかどうか、その点を明らかにしていただきたいと思います。
  146. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 コースをどういうふうにしてずれたのか、逸脱したのか、これは非常なミステリーでございます。しかしながら、交信によると、パイロットは撃墜される瞬間まで平静に、機内は静かで飛んでおったというのが、安倍外務大臣の話と同じでございまして、真相については韓国政府もいろいろ真相究明をしているようでございますから、この真相究明を待ってわれわれも事件を知りたい、こう思っておるわけです。
  147. 松本善明

    松本(善)委員 私が聞いておりますのは、だれもおわかりのように、領空侵犯をしたかどうか、飛行士がどういうふうに考えていたかとか、あるいはその原因がどうかというようなことは聞いていないのです。そこのところをはっきりしながら、総理に先ほどの質問にお答えいただきたいと思います。
  148. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 結果的に見れば、領空侵犯をやっていたと思います。しかし、そのことと、無抵抗の民間航空機が知らないで領空に入って通っていったというものをやみくもに撃墜していいということとは、まるきり別のことであります。そういうようなことは野蛮な行為であるというふうに私は申し上げたい。  それから、韓国の全斗煥大統領に電話をかけましたのは、一つは、お見舞いの言葉を申し上げ、遭難者に対してお悔やみの言葉を申し上げると同時に、この問題については真相究明、責任の追求――何しろ無抵抗の民間航空機がやみくもに軍用機に撃墜されるなんということはいままでないことでもありますから、こういう問題については徹底的に真相究明をやろう、そうして、お互いに協力しましょう、そういうことを申し上げ、また向こうからは、日本の遭難者に対する深甚なるお見舞いの言葉がありまして、韓国としても大韓航空をして誠意のある処置をとらせるようにいたします、そういうようなお話があったわけです。
  149. 松本善明

    松本(善)委員 ソ連領空を侵犯したという事実は総理もお認めになったわけですが、それの責任がどうなるか。韓国代表がICAOで言っていることによれば、機械にも故障があるし、人間にも失敗がある、こういうことを言っておるので、この責任をどうとるのかということは明らかでありません。  ところが、シカゴ条約、国際民間航空条約の六条は、民間航空機が許可なく他国領空に入ることを無条件で禁止をしております。日本政府は、大韓航空側に全く責任がないという態度なのか、それとも責任は免れ得ないという態度なのか。国会決議も、大韓航空の補償について十分な措置をとることを明記をしております。また、犠牲者の遺族は、直接乗客を危険なところに運んだ大韓航空機について、乗客の立場から見れば、大韓航空こそ責任を感じてもらいたい、こう思っているのは当然だと思うのです。そういう点で、大韓航空の責任についてどのように政府考えているかということを総理に伺いたいと思います。外務大臣でも結構です。
  150. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 いまわが政府といたしましては、韓国政府に対しまして二点について要請をいたしております。  その第一点は、先ほどからお話しのように、大韓航空機がどういう理由でルートがそれでソ連の領空に入って撃墜されたか、この点について、韓国側としての調査も進められておるようですから、その調査結果を速やかに報告してほしいということが第一点であります。  それから第二点は、二十八人のわが国の国民が遭難をいたしたわけでございます。これと大韓航空との間でこれから補償についての折衝が始まるわけでございますが、韓国政府として誠意を持って大韓航空に対して側面的に、この交渉が円満に、日本の遺族の皆さんの要請も踏まえて処理されるように、韓国側の政府に対して対処方を求めておるわけであります。
  151. 松本善明

    松本(善)委員 補償問題は遺族の切実な要求でありますので、政府が一層の努力をされんことを要求して、次保の質問に移りたいと思います。  シュルツ・アメリカ国務長官が一日に、ソ連のレーダーが一日午前一時、撃墜の約二時間半前ですが、大韓航空機を捕捉したこと、それからソ連軍機による追跡をとらえたことを発表したり、あるいは公表された交信記録などからも明らかなように、大韓航空機のソ連領空侵犯とそれに伴う重大な事態の進行を、アメリカ日本の両国の軍事当局は早い時期から把握をしていたのではないかと思われます。そして、領空侵犯を是正することが可能だったのじゃないか、その適切な措置をとらなかったということは、やはりそのまま放置していい問題ではないと私どもは思うわけです。  国際民間航空条約に基づく取り決めでは、要撃に伴う危険を排除をするために、軍当局を含めて関係諸機関が連絡調整を保障する最大限の努力を払うことが明記をされております。これがやられていたかどうかという問題も究明をしなければならない点であります。  代表質問で、わが党の小笠原議員が参議院本会議でこの点について聞いたときに、総理は、わが国の航空管制当局も自衛隊も、大韓航空機が航路を逸脱して飛行していたことを知り得る状況にはなかったし、米国にも、撃墜されるまでの間、同機がコースを逸脱して樺太上空を飛行していた事実は知り得なかった、こういうふうに答弁された。覚えておられると思います。  私は、これはいろいろ分析がありますけれども、すべてに触れることはできませんけれども、一番わかりやすい例でお話をして質問をしたいと思うのであります。  レーガン大統領は五日の演説で、大韓航空機が、通常任務に当たる米国の偵察機の一つ、RC135にしばらくの間接近していた、大韓航空機は飛行し続けた、二機は大きく離れた、大韓航空機としばらくの間RC135が太平洋上を飛んでいたことを認めました。ソ連のオカルコフ参謀総長も同趣旨のことを九日の記者会見で明らかにしております。米ソによって明らかになったことは、RC135が、カムチャツカ北東空域と思われますが、大韓航空機としばらく一緒に飛んでいたということであります。これは私は、このことは非常に大事だと思います。偵察機でありますから、これはもういろいろ見て調べるというのが任務の軍用機です。それが一緒に飛んでおって、そして、それが大韓航空機であるということがわからないということは絶対にあり得ない、そんな偵察機は世界じゅうにないと思うのです。その時点でRC135は知ったならば、これは民間航空条約の義務に忠実に従って、そしてアンカレジなどに連絡をして、大韓航空機に連絡をするということをやれば、この事故を未然に防ぐことができたのではないか、こういうふうに思うわけですけれども、この点について総理は、知り得る状況になかったというふうに答弁をされましたけれども、その後のいろいろの発展もあります、いまどのようにお考えか、お答えいただきたいと思います。
  152. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 九月一日に行われました記者会見において、シュルツ国務長官が、日本時間で午前一時ごろから二時間半にわたって大韓航空機を追跡した旨を述べた事実は、これは私ども存じております。しかしながら、防衛庁といたしまして、シュルツ国務長官のこの発表がどのような材料で、根拠に基づいて行われたのか、これは知る由もございません。  それから、レーガン大統領が述べられました、RC135とランデブーという言葉を使っておりましたが、ランデブー飛行については、レーガン大統領が九日の日本時間午後九時の演説で、アンカレジを立った大韓航空機が、太平洋上の公海上において通常の任務に当たる米国の偵察機の一つであるRC135にしばらくの間接近していた旨述べられたことも、私ども存じております。しかし、これもいずれもアメリカの内部でのことでございまして、どういうようなことでどうなっているのかは、それはつまびらかにいたしておりません。  なお、わが方が、二時間半飛んでおる航空機に対して何らかのウォーニングを与えることはできなかったのかという意味の御発言ございましたが、実はこれにつきまして詳しく申し上げさしていただきたいと存じますが――いま私が九月九日と日にちを申し上げたかもしれませんが、大統領の御発言は九月六日でございますので、訂正さしていただきます。  実は、所沢にございます東京航空交通管制部から防衛庁の方へ、何らか異常があったのではなかろうかという照会がございましたのは、九月一日午前四時五十六分でございました。五時ちょっと前のことでございます。したがって、この後の調査によって、航空自衛隊を中心といたしまして、この照会を受けた直後から直ちに行動を開始いたしまして各種の記録を調べましたとこる、稚内のレーダーサイトがそれらしき航跡をとらえていることがわかったわけでございます。このときにはすでに航空機そのものは撃墜をされておったことになるわけでございます。  なお、もう一点申し上げさしていただきますが、わが方のレーダーは、わが国に対してどこからか飛来してくるであろう、かもしれない航空機に対してわが国を防衛する意味から、航空自衛隊、防衛庁がこのレーダーを動かしておりますが、民間航空機、時速九百キロ程度のスピードで飛んでおったのじゃなかろうかと言われております、そうしますと二時間半でちょっと二千数百キロ程度飛行するわけでございまして、わが国の防衛庁の航空レーダーの領域がどの程度かということは正確には申し上げられませんが、昨日の午前中の大出先生の御発言では四百キロ程度ということを触れておいでになられましたが、大体そのぐらいとお考えいただきますと、事件の推移について御説明さしていただくことになろうかと存じております。
  153. 松本善明

    松本(善)委員 国会の質疑というのは、国民に対して、国民を代表する者が、国民が聞きたいと思っていることを聞いておるわけですから、やはりそれにちゃんと合うような答弁をするのが一番大事なんじゃないかと思います。  私がいま聞いておりますのは、RC135と大韓航空機が並行して飛んだ、偵察機なんだからこれは大韓航空機ということがわからないはずないじゃないか、それが軍から航空当局に、アンカレジに伝わったら、これは惨事を未然に防ぐことができたんじゃないだろうか、その点についてはどうお考えかということを総理に伺ったのですけれども防衛庁長官は聞いておられなかったのかどうかわかりませんけれども、全くお答えいただけないのですね。いかがでしょう、総理大臣。
  154. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私の記憶では、RC135が大韓航空機と同行しておったか、それを認めたかどうか知りません。とにかく、おったというその距離がどの程度であったか、そんな強い接近度じゃない、ある程度間隔があったのではないかと思いますよ。それから、カムチャツカ上空に領空侵犯をしていたときにそういう状態であったのではないのじゃないか。太平洋上、アンカレジから下がってくるその太平洋上においてそういう事態があったのではないかと私は想像します。それから、現に撃墜されたときには、そのRC135はもうアラスカに帰投しておった、アラスカに帰っていた、そういうふうな情報も聞いております。  そういう状況全般を見ると、領空侵犯してぐうっと入っていって迷い込んでおったときに、わが方は、国籍不明機として稚内のレーダーはとらえておったでしょう。大韓航空機とは知らなかったと思いますよ。国籍不明機とはみんなわかるわけですね。しかし、それが運輸省の方から五時にそういう状態で、それじゃというのでいろいろ交信記録や何かを調べ、翻訳をしたり時間がかかって、そして判明してきた、そういう状態なので、私が参議院で申し上げたことは正しいと思います。
  155. 松本善明

    松本(善)委員 真相究明というのは、本当に犠牲者も全世界の人が真剣に望んでおることなんで、やはり総理も真剣に考えていただきたいのです。領空侵犯をしたときに一緒になんかいたら大変なことですからね。もちろん公空、公海上ですよ。ただ、コースが外れていたということは明白にわかるはずなんですよ。接近していたからどうかという、まあレーダーがありますから、わざわざ接近していると言えば相当至近距離ですよ。それを総理がそういうふうに言われるというのは、政府がその点について真剣にやっていないということではないかと私は思います。そのほか、きのうも当委員会で問題になりましたシェミアの米軍基地のレーダー、これはもう間違いなくそういうコースを外れた大韓航空機をとらえているはずであります。これも含めますと、これはもう米国が撃墜されるまで知らなかったということはとうてい通らないと思います。  私はそういう点で、レーダ情報だとかRC135の米軍基地への報告内容、そういうような全情報を世界に明らかにすべきではないか、軍事優先ということではなくて平和と人命尊重ということを最優先するという立場でこれをやるべきではないか。それから、自衛隊もそうだと思います。そういうことを軍事優先という立場ではなくてアメリカにも求める、それから日本の自衛隊もやる。世界にそういう方向で、軍事優先ではなくてこの問題は人命尊重でやろう、こういうふうに言われるお考えは、総理、ありませんか。
  156. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 いまのアメリカが、RC135が接近をして大韓航空機が大きくコースを外れておるのを知り得た状況じゃなかったかという御質問でございますが、この点につきましては、米側がすでに明らかにしておりますとおり、米国はソ連のSALT条約遵守を監視するためカムチャツカ半島の沖合いの公海上空において通常的にRC135機の飛行を実施している由でありますが、今回米国の航空機と大韓航空機が最も接近した際の距離は百三十五キロであり、また、大韓航空機がソ連により撃墜をされたのは、かかる時点から二時間半後であり、そのときには米国のRC135はすでにアラスカの基地に帰投をしていた、さらに、米国の航空機は撃墜地点から約二千二百キロ以内には一度も近づかなかった、こういうことがアメリカ政府によって明らかにされております。  なおまた、アメリカのイーグルバーガー国務次官の説明によりましても、RC135は民間航空機をモニターしておらず、この大韓航空機が航路を外れた危険な状況にあったということは知らなかったということを米国政府として発表いたしております。
  157. 松本善明

    松本(善)委員 帰投したかどうかということじゃないのです。やはり見たときがどうかということなんです。これにばかり時間をかけるわけにいきませんから言いませんけれども、RC135は一機がかわればまたかわっていくのですね。そういうようなことを、軍事優先じゃなくて全部明らかにするという立場に立つべきだということを私は要請をしたいと思います。  民間航空の安全を守る問題でありますけれども、九月十六日の国際民間航空機関の特別理事会で、シカゴ条約と附属書の再検討など決議をいたしました。フランス政府が、八日の臨時評議会で航空安全について四項目の提案を行っております。  その中で、民間航空機が危険な状況にある場合、軍事当局は民間当局に注意を喚起するよう義務づけることや、とりわけ緊張地帯では、軍用機、民間機双方に通じ得るラジオ装置を早急に取りつけることも提案をしておりますが、政府は採択された決議だけでもこういうことも強く推進しなければならぬと思いますが、そういう点についてはどういうふうにお考えでありましょうか。
  158. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 国際民間航空機の安全保障につきましては、この会議でいまのお話のように議論をされておるわけでございます。今後ともこの民間航空機が安全を確保されるように、条約の改正であるとかあるいはまたその他の措置を国際的に積極的にとっていくという措置が必要であろう、こういう立場に立って、日本も今後とも積極的努力を続けてまいりたいと思います。
  159. 松本善明

    松本(善)委員 私が具体的にお聞きをしたことについて十分お答えがない。昨日も運輸省には、このICAOの理事会の決議のことやその他聞くということを言っておいたのにやはりこういう答弁だということは、政府がその点については本当に熱意が足らないのではないかと私は本当に遺憾に思うのですけれども、平和と人命尊重を最優先する立場から、真相の解明、再発防止、遺族の補償要求の実現のために政府が一層努力をされたいということを要求して、私の関連質問を終わりたいと思います。
  160. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 いまICAOでやっていることに対するわが国の態度を、誤解のないように申し上げたいと思います。  わが国としては、ICAOのこの事実調査には積極的に協力しております。そして、ICAOの場においても、航空機の航行機器及び同機器の操作の面から航空機の航空路からの逸脱の防止、これを検討し、また航空機が航空路から逸脱した場合にも今回のような惨事が起こらないようにするために、要撃の規定の見直し、民間機、軍用機並びに管制機関の間の交信システムの改善の検討等を進めて、ICAOにおける今後の検討にわが国としては積極的に貢献するつもりであります。
  161. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 いま政府が、この大韓航空機事件について、真相の究明とかあるいは責任の追及等に積極的でないようなお話でございますが、とんでもない話でありまして、これまでの政府のやってきた措置を見ていただけば明らかなように、日本としては、全力を挙げまして真相の究明あるいはまたこの責任の追及、さらにまた遺族に対する措置等について努力を重ねておるわけであります。
  162. 松本善明

    松本(善)委員 いやいや、まだまだ不十分だということを一言申し上げて、終わりにしたいと思います。
  163. 正森成二

    ○正森委員 それでは、続いて私から質問させていただきます。  いま運輸大臣から答弁がありましたが、あるいは外務省答弁がありましたが、五年前のムルマンスク事件については菅野さんが亡くなられて、一億八千万円損害賠償請求しているのに外務省は何ら援助してないじゃないか。ほったらかしで、初めは全力を挙げて協力するなんて言いながら、全然援助しないで、今度の事件が起こったら、あわてて電話をかけて、いまどうなっていますかと聞いているじゃないですか。そういうことをやりながら、今度の事件について、政府は大韓航空に対し、あるいはソ連に対し、本当にやれるのですか。われわれは五年前のことを知っているから聞いているのです。  五年前のことについてどうなっているか、外務省、一遍答えてください。
  164. 加藤吉弥

    加藤(吉)政府委員 五年前のムルマンスク事件のときの死亡者につきましては、現在東京地裁において裁判が続行中であると承知しております。
  165. 正森成二

    ○正森委員 いまお聞きのとおりです。裁判が続行中であるということを知っているだけで、援助も何にもやっておりません。ムルマンスク事件については、あのときには不幸にも二人が亡くなられましたが、ほとんど大部分が生存しております。だから、状況は全部知っているのです。あのときには北極に向かうものが百八十度帰ってきてムルマンスク、一番重要な軍事基地の上を飛んだのです。そして、それに対してソ連の戦闘機がやってきて、規定で決まっている翼を何回も振った。緑の信号弾も撃った。それでもとんとことんとこ逃げておるのです。とうとう銃を撃たれて、そして穴があいて、三万フィート以上じゃ危険があるから五千フィートぐらいまで下がって、それでも一時間半逃げ回っているのですよ。それに対してどうです、当時の朴大統領はソ連に対して感謝の意を表明しているのですよ。それは自分が非を認めておったということにほかなりません。ところが、菅野さんの裁判に対しては、大韓航空は何と言っておるか。事故の原因については知らない、過失はない、こう言って、いまでも平然としているじゃないですか。  そういうことをやっているから、われわれは今度の遺族に対しても、遺族の心を持って、ソ連であれ大韓航空であれ、責任を認めて誠意を尽くすべきであるということを言っておるのです。そのことは私は改めて申し上げて、減税の問題について質問したいと思います。  次に、国民生活と財政経済・問題について……(発言する者あり)何を言っておるか。
  166. 久野忠治

    久野委員長 御静粛に願います。
  167. 正森成二

    ○正森委員 長期不況と軍拡最優先の政治のもとで、サラリーマン、中小企業、業者、農家、どこを見ても大変な状態になっていることはいまさら言うまでもありません。  日本共産党は、八月十九日、補正予算要求を発表し、軍拡と財界奉仕にメスを入れ、国民生活を守る緊急対策をとること、具体的には、一、国民の切実な要求である一兆四千億円の所得減税を断行すること、二、お年寄りの暮らしを守るため、凍結されている年金、恩給の物価スライドを実施すること、三、民間賃金にも影響の大きい人事院勧告を完全に実施すること、四、経営危機が続いている中小企業、業者に特別の援助を行うこと、五、秋田沖地震、山陰水害の復旧、冷害の対策に万全を尽くすことなどを要求し、そのための財源も明示しました。  ところが政府は、この当然の提案を拒否して、本会議に補正予算を提出せず、しかも来年度予算編成では健康保険の大改悪を計画するなど、国民生活の困難をさらに倍加させようとしております。  私は、いろいろございますが、減税問題について伺いたいと思います。  総理、あなたは六月の参議院選挙で、私もNHKの党首は語るという番組で拝見をいたしましたが、減税は断行する、私はこういう男だから、やると言ったら必ずやる、こう言われました。ところが、いまだに規模はどのくらいか、時期はとのくらいか、財源はどうなるか、全然明らかになっておりません。  総理、あなたにとっては、私はこういう男だからと言えば、自分のことだから自明のことかもしれませんが、国民にとってはわからないめです。世間ではあなたのことを風見鶏と言う人もおれば、あなた自身は、私は鳥類ではない、哺乳類で、万物の霊長である……(発言する者あり)こういうことを自分から言っているじゃないですか。―自分が言っているじゃないですか。
  168. 久野忠治

    久野委員長 御静粛に願います。
  169. 正森成二

    ○正森委員 あなたはそういうように本会議で言っているのです。(発言する者あり)何を言っておるか。委員長、とめてください。
  170. 久野忠治

    久野委員長 静かにしてください。静粛に願います。
  171. 正森成二

    ○正森委員 私は、中曽根総理が本会議で言われたとおりに言っているのです。そういうぐあいに評価が違うのです。(発言する者あり)
  172. 久野忠治

    久野委員長 不規則発言は御留意願いたいと存じます。
  173. 正森成二

    ○正森委員 ですから、あなたは、一体こういう男ということで、どういう男だということを言われようとしたのか、それを明確にしていただきたい。そして、なぜいまでも時期や規模や財源が明らかでないのか、それを言っていただきたい。
  174. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 先ほど大韓航空機の問題がありましたけれども、御遺族の皆様方にはまことにお気の毒であって、これは二つの面がある。  一つは、政府として、国家として、不法行為をやったソ連に対して陳謝、謝罪と損害賠償を要求しておる。これは不法行為に対するわれわれの不当な国際法上の権利を行使してやっておる。  もう一つは、遺族の皆様方が、乗っていた大韓航空機との約款やその他に基づいて補償、賠償といいますか、そういう問題を提起されておるわけです。この遺族の皆様方が、大韓航空機乗員、乗客としての約款に基づいてやるいろいろな問題につきましては、これは民事上の問題でありまして、これは裁判という形になるわけです。しかし、その間におきましても、こういう国際的な非常に聳動的な事件でもありますから、政府といたしましては間接的に側面から御遺族の皆様方をお助け申し上げて、できる限りの御協力を申し上げる、そういう態度でおるわけであります。  それから、減税の問題につきましては、私はこういう男ですから、やると言った以上やるというのは、あなたも旧制静高の僕の後輩だから、僕の性格はよく知っているはずだ。だから、そういうことでやる、しかし、減税というものをやるについては、手続が要ります。やはり国会でちゃんと通過し、認めていただいた政府の税制調査会というものがあって、それにかけてやる、そういう手続になっておるものですから、そういう一連の手続をいまとりつつある。しかも、非常に急いでいまとっていただいておる。中間報告まで出してもらって、約束どおり十月末までにはぜひ法案を国会に提出したい。幹事長も私といろいろ連携をとりましていろいろ言明もなすっておる。その幹事長の言明を私は履行しよう、尊重いたしますと、こう申し上げておるわけです。そういうふうに着着として手続を進めておるということ、そういう誠実にやっておりますから、御了承いただきたい。
  175. 正森成二

    ○正森委員 いま総理から、旧制静岡高校で一緒だから私のことを知っているはずだと言われました。確かに総理は、私の旧制静岡高校の十年先輩でございまして、先輩としては敬意を表しております。しかしながら、大義親を滅すという言葉もあって、政治家としては見解を全く異にする、そういうことを改めて明言しておきたいと思います。  そこで、あなたは二階堂幹事長の野党への回答を最大限尊重する、こういうように言われましたが、規模も財源も不明なままであります。  そこで、政府税調については後で伺いますが、少なくとも十月下旬に減税法案を提出する、実施時期は年内にする、この二点だけは間違いありませんね。最大限尊重という言葉でなしに、これついて明確にお答えください。
  176. 竹下登

    ○竹下国務大臣 従来とも長い国会のしきたりをみますと、国会でこのようにすべきである、最大限尊重して努力をいたします、これは定着した慣用語になっておる、私はこういうふうに思っております。
  177. 正森成二

    ○正森委員 いや、その慣用語になっておることが信用できない。たとえば五十七年のときは、私も減税問題についての特別小委員会に大蔵委員会で入っておりましたが、審議をした結果、結局政府責任においてなさらないというようなこともございました。また、五十八年度予算では、非常に失礼でございますが、参議院選挙での総理の御言明も聞きましたけれども国民は七月になって税収の状況が分かればすぐに決まるものだというように思っても不思議はないような言動が自民党の首脳などからありましたが、それが実際に行われていないから、最大限尊重という言葉も必ずしも信用できないわけであります。  たとえば、二階堂幹事長は、秋口ということを言われましても、秋には、北海道もあれば鹿児島もある、秋口には、入り口もあれば出口もある、こういうことを言うんです。そういうことで国民が言明を本当に信頼できると思われるでありましょうか。私どもは、だから聞いているわけであります。  そこで、総理から、あるいは大蔵大臣から、最大限尊重以上のお言葉がないようですから、私は、総理がその答申を待ってと言っておられる政府税制調査会長の小倉さんから直接伺いたいと思います。―小倉さんおられますか。
  178. 久野忠治

    久野委員長 小倉さんはお呼びをいたしておりません。
  179. 正森成二

    ○正森委員 なぜ呼んでおられないのでしょうか。私は、昨日から小倉税制調査会長をお呼びすることをお願いしております。なぜ小倉会長を呼ばれなかったのでしょうか。あるいは、なぜ出てこられないのでしょうか。小倉さんは普通の参考人ではありません。政府委員に準ずる人として、もっとも重要な予算委員会などには出てこられなかったとはありません。なぜ出てこられないか理由を明確にしていただきたいと思います。
  180. 久野忠治

    久野委員長 昨日の理事会におきまして、共産党の瀬崎さんからそのような御要請があったことは、委員長は認めます。しかし、各党間で話し合いをされました結果、本日の委員会には小倉さんをお呼びしないということに、申し合わせが決定をいたしております。  そこで私は、理事会の決定に基づきまして、本日の委員会には・・・・・・(瀬崎委員委員長、ちょっと話し中だけれども、それは事実と全然違うのですよ」と呼ぶ)違っておりません。(瀬崎委員「きのうの昼の理事会では、私の提案には皆さん異議はなかった。だから私は、それで認められているものと、当然これまでの事務手続からして理解しているわけです。委員長としての資格を問うよ。全然そんなないようなことを言ってはいかぬよ」と呼ぶ)それは瀬崎理事と私は、いま議論をする立場にないかもしれませんが・・・・・・(瀬崎委員「だって、事実に反することじゃないか」と呼ぶ)私の理解では、そのような要請があったことは認めます。しかし、各党間の理事で協議の結果、きょうはお呼びしない・・・・・・(瀬崎委員理事会で協議したって、理事会の協議は・・・・・・」と呼ぶ)各党の理事でございます。―各党の理事でございます。(瀬崎委員「それはいつの話」と呼ぶ)昨日の理事会でございます。(瀬崎委員「昨日の理事会というのは、昼しかないじゃないですか」と呼ぶ)理事会で協議の結果、さように決定をいたしましたので、私は、きょうはお呼びをいたしません。(瀬崎委員理事会でそんな話は全然ないよ。それは詭弁だ」と呼ぶ)それは瀬崎理事の一方的な御理解であろうと思います。
  181. 正森成二

    ○正森委員 委員長委員長発言を求めています。(瀬崎委員「じゃ、だれが異議を言ったのかということです。委員長、はっきりしなさいよ。だれが小倉参考人の出席を……」と呼ぶ)
  182. 久野忠治

    久野委員長 ただいま私が申し上げたとおりでございます。  正森成二君。
  183. 正森成二

    ○正森委員 瀬崎さん、私は、瀬崎理事がいま委員長に異議を言われましたが、それは当然であると思います。しかしながら、委員長が残念ながらお呼びいただけなかったということになりますと、ここでそういう論議をされましたら、私の貴重な時間がどんどん減るということでありますから、それを比較考量した結果……(瀬崎委員「後から個別に自民党理事が言ってきただけ、それだけのこと」と呼ぶ)私は、非常に残念ではございますけれども、小倉政府税調会長がここにお呼び願えなかった、それはきわめて異例のことであり、予算委員会ではほとんど前例のないことであるということで、遺憾の意を表明して、質問を続行させていただきたいと思います。  ただ、私は、ここで一言申し上げたい。  自民党総理は、やると言ったら必ずやるとかなんとか言いながら、結局は政府税調の御審議を得て、その答申を待ってと言われる、そこで政府税調に聞こうと思って、当然の国会議員の権利に基づいて呼べば、それは私が聞けないようにする。それでは、全く国民の前に減税問題を隠そうとしている、それに政府自民党が総力を挙げてそういう方向に持っていくと思われても、この状況を見ておられる国民はだれ一人異議を言われない、これこそ中曽根内閣の減税先送り、先細り、そして増税と引きかえという路線を国民の目の前から隠すことだ。(「そんなことない」と呼ぶ者あり)そういうようにそれがそうじゃないと言うなら、税調会長を出せばいいじゃないか。
  184. 久野忠治

    久野委員長 私が事実をはっきりと申し上げました。  正森君に申し上げます。私は事実をはっきり申し上げました。
  185. 正森成二

    ○正森委員 意見は違っても、私の意見に答えて、もし時期によって答えられないなら、答えられないと言えばいいじゃないか、それも言わないというのは民主主義のルールに反するじゃないか。(「自分でやれ」と呼ぶ者あり)私はそのことを申し上げておきたいと思います。いま後から自分でやればいいと言われましたから、それでは私は自分でやりましょう。
  186. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 小倉税調会長が出ようが出まいが、政府がやると言ったことはやるのです。
  187. 正森成二

    ○正森委員 総理、それはこの委員会の質問よりももっと重要なことですよ。一方では政府税調の答申を待って、答申を待ってと言う。出てこなければ、税調がどうあろうと、私はやることはやると言う。それじゃ、税調の答申を待たなくても、やることはやるといまここで言ったらいいじゃないですか。そういう意味でないと言うなら、税調をここへ出してくればいいじゃないですか。そういう自分がやったことはいいかげんにしておいて、言うことだけは大きなことを言う、もってのほかじゃないか……。
  188. 久野忠治

    久野委員長 中曽根内閣総理大臣。(発言する者あり)委員長は答弁を求めました。
  189. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 小倉税調会長がここへ出て、あなたの御質問にお答えするというのは、理事会あるいは委員会の内部の話です。しかし、政府はちゃんと与野党のお約束とか、あるいは国民の皆様方に正式に、本会議その他において言明しておるのであって、この委員会において小倉さんが出ようが出まいが、それは委員会内部の話であって、政府政府として約束したことは実行する。ただし、それには段取りがあります、ちゃんと法律で決められた政府の税制調査会というものがあるのだから、そういう手続を経なれけば、これはなかなかできない、これはすでに申し上げたとおりであります。
  190. 正森成二

    ○正森委員 私はいまの総理の答弁は、行政府の答弁としてはそれでいいと思うのです。しかし、行政府をチェックする立法府はそれではどうするのですか。立法府は、国民の信託を受けて、われわれは国民にかわって討議をするから代議士というのです。その代議士の立場で国民の皆様に明らかにしたいから、いろいろなことを政府政府委員から聞きたいというのに、それは要らない、それは委員会内部のことで、政府はやることはやると言ったら、国会は必要ないじゃないか、委員会も必要ないじゃないか。そういう危険な考え方をお述べになるということはよしていただきたい。そして、正規のルールに基づいて、正々堂々と政府税調会長が言うべきことを言い、いま議論が非常に微妙だから、この線から以上は答えられないというのであれば、それをおっしゃるのが筋であるということを私はあえて申し上げて、次の質問に移りたいと思います。  政府税調会長がおいでにならないということになれば、これは私ども政府税調会長がかつて新聞で言われていることを引用する以外には方法がないのですね。政府税調会長は、どういうぐあいに言われているかと言えば、先ほど同僚委員も一部お話しになりましたが、新聞に載っているところでは、減税のためには増税しなければならぬ、「酒税、物品税の引き上げとサービス課税の範囲拡大だ。」というようにはっきり言っているのです。そして「中期答申の中で、前回答申にあった「課税ベースの広い間接税導入」の取り扱いはどうなるのか。」という新聞社側の質問に対して、「この考えを後退させるわけにはいかない。」「間接税についてもう少し収入が期待できる体制をとる必要がある。表現が問題で、一般消費税や付加価値税と言った方がいいが、書けないかもしれない」、こう言っているのですね。こういうことを新聞には堂々と言いながら、国権の最高機関である国会には出てこない、答弁もしない。そういうことを委員長が率先してお決めになるということであれば、私は理事会に出ておりませんから、その点は、あればと言っておきますが、非常に遺憾であるということを再度申し上げて、次の質問に移りたいと思います。   経企庁長官、先ほど同僚委員からの「一九八〇年代の展望と指針」ですね、これについて答弁がありましたが、この問題は、私が最初にこの二月十四日の予算委員会で質問をして、あなたの答弁をちゃんと得ているのですね。あのときに私は、重要な数字を隠すのは今度が初めてじゃないか、なぜ明らかにしないということを言って、租税負担率に社会保障負担率あるいは公共投資の額、社会保障移転、この四つの重要な点が隠されておるということを言ったら、あなたはこう答えているのです。速記録。塩崎国務大臣、「より弾力的より長期的な観点から、いまのような問題につきましても、できる限りその中に織り込んでいただくようにお願いしたいと思っております。」これは私が数字を織り込みなさいということを言った質問に対して、経済審議会にそういうことを言います、こう言っているじゃないですか。   大蔵大臣、あなたも人ごとだと思っておられたらだめですよ。あなたもちゃんと答えておられるのですよ。別の委員の質問に対して、「経済審議会の将来の展望とか指針とかいうものの審議を見ながら、これはやはり私どもとしてかちっと、何テン何ぼと言えなくてもおよそのものは持っていなければならぬ」、そうぐあいにお願いするという意味のことを、全部引用しませんが、二月十九日の衆議院の予算委員会で言っているのです。  なぜそれをおやりにならないのか、お答えを願いたい。
  191. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 いまお読みになっていただきました私の答弁にありますように、より長期的より弾力的観点から、私どもは今回、先ほど大内委員との間のやりとりの中でおわかりのとおり、リボルブする形で、リボルビングプランというのですか、そういう形で、先ほど来申し上げましたように、現実に予算を編成する際、現実性を持った形でこのような数字を出すことにするということを申し上げました。そのとおりでございます。
  192. 正森成二

    ○正森委員 リボルビングと言われましたが、リボルビングとか見直しとかいうのは、もとの数字があってこそリボルビングになるのです。もとの数字がなければ大体リボルビングだとかなんとか言ったって、そんなことは通用しないじゃないですか。どうも経企庁長官には英語の使い方からして議論しなければならぬということになるのですね。  いいですか。七カ年計画のときにはフォローアップというのがあったけれども、あれはもとに数字があるからフォローアップして、こういう計画だったけれども無理だからこうだとなっているのです。もとのものがなくてリボルビングといって、どうやってリボルビングするのですか。いいかげんなことを言ったらいかぬですよ、あなた。
  193. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 去る八月十二日に決定いたしました「展望と指針」は、御案内のように、八年の長期にわたる計画でございます。  そこには四つばかりの基本的な数値が出されておりますが、これに基づいて今後私どもは、いま申されましたような租税負担率あるいは社会保障負担、これらについての数値が初めてつくられ、それをまた何回もリボルブするようになる、こういうふうに考えております。
  194. 正森成二

    ○正森委員 いろいろなことを言われるのですけれども政府税調会長は出さない、それで、あるべき数字は出さない、それで国会審議はわけのわからないうちにやって、国民の批判を受けないように総選挙をやって、総選挙が済んだらあと三年ぐらいは審判を仰がぬでいいからやりたいことをやろうというように疑われても仕方がないようなことはおやりにならない方がいいというように私は思うのですね。  「展望と指針」にはこうは書いてあります。「将来の租税負担と社会保障負担とを合せた全体としての国民の負担率(対国民所得比)は、ヨーロッパ諸国の水準よりはかなり低い水準にとどめることが望ましい。」こう書いてあります。ところが、ヨーロッパ諸国の水準というのは全部五〇%を超えているのです。ノルウェーに至っては六〇%を超えているのです。それよりもかなり低いと言ったって、四五%やら四〇%やらあるいは現在の三四%台なりやわからない。そんなでたらめなことがありますか。これで「展望と指針」と言えますか。  ところが、あなたがそういうことができないのにはわけがある。これは一部の新聞も載せましたけれども、いま同僚委員も言われましたが、参考資料としてでもそれは載せなきゃいけないんじゃないかということで数字をつくった。ところが、大蔵省から、あそこに主計局長もおるけれども、それをやられたら財政との関係でいろいろ手を縛られて困るから絶対に載せてはならぬということで載せなかった。いいですか、経企庁では長官と総合計画局長とごく少数の担当課長だけだ。あとは大蔵省のごく少数の官僚、そして建設省、そこら辺のごく少数の者だけしか知らない。私がつかんでおる情報によれば、経企庁の政務次官すら知らされていない。そういうことで国民をごまかして突き進んでいこうとする、もってのほかじゃないですか。しかも、その中で隠した数字は、私は確実な人から聞いているのです。いま大内委員が言われたように、国民全体の租税負担と社会保障負担を合わせたものは四〇%程度とする、租税負担は二七%程度、社会保障は一一%程度というぐあいになっているのでしょうが、正直に言ってください。
  195. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 先ほども大内委員にもお答えいたしましたように、いままでの手法によってこれをいろいろと計算しているということは私が承知しております。しかし、それはいろいろな変化があり、そしてまた、その後の検討の結果、リボルブする形で持っていく方が適当であるということでその数字は出さないということになった、私はこういうふうに聞いております。
  196. 正森成二

    ○正森委員 塩崎さんは根が正直な人ですからね、その数字は出さないということになったと言いましたね。あれはあるけれども出さないということになったということなんですね。それは、本日におけるあなたの答弁の中で一番りっぱな答弁であります。私は弁護士をしたことがありますが、反対尋問をしているときに、相手側の敵性証人がああいうような答弁をしてくれると一番うれしいのですわ。だから、ここであったということは認めた、しかし出さないで隠しておるということを経企庁長官が言われたということを全国民の皆さんは知っていただきたいと思うのですね。  そこで私は言いますが、こういうことを隠している上に着々と実行しておるということを言わなきゃなりません。このあなた方の隠した数字の特徴は、租税負担率は前の七カ年計画に比べて、二六・五から二七にしか上げておらないが、社会保障負担が前よりは一三%ということで著しく上がっておるのです。つまり、税の方も取るが、もっと臨調答申の自立自助によって社会保険料でうんと国民から取り上げるというのが内容なんです。そして、すでにそれは五十九年度の概算要求で実行されておるのです。林厚生大臣が何よりも御存じでしょう。大蔵省から七千億円くらいは削れと言われてあなたは苦心惨たん、概算要求では約六千二百億円のものを削られました。  その削るときにどういうことをやったかと言えば、健康保険について本人が二割負担しなきゃならない、退職者の医療制度を設けて、一挙に二千二百億円国が出さないかわりに、健康保険組合の使用者とそして保険料を払う従業員にそれをおっかぶせる、国民健康保険については、国庫負担が四五%だったのを一挙に三八%台に下げることによって、ここでまた膨大な国費の節約をする、そして六千二百億円予算を節約するというのが、あなた方が五十九年度予算で実行していることであります。つまり、数字は出さないが、やることだけは着々と国民に攻撃を加えているということにほかなりません。  また、租税負担についても、二七%程度ということで私は計算をしてみました。あなた方の計画では名目所得は六%ないし七%伸びるということになっておるから、平均の六・五%をとりました。国民所得は従来GNPの八割ですから、その数字をとりました。そうすると、どういうことになるかといえば、昭和六十五年度における国民所得は三百五十兆二千億円であります。それに対して二七%の租税負担率というのを掛けますと、六十五年は現在よりどれだけ増税になるかと言えば、実に九兆八千億円の増税であります。社会保障負担は十兆二千億円ふえます。つまり、二十兆円ふえるのです。しかしながら、六十五年はインフレもあって現在価格と違うというのなら、五十八年度ベースでそれを計算するなら、何と租税負担は、五十八年度の現在に比べて六兆三千億円ふえ、社会保障負担は六兆六千億円ふえるのです。これは現在の負担率が、租税負担については二四・二、そして社会保障負担は一〇・一ということですから、二七と二二との差から明白にこれが出てくるわけです。つまり、現在価格で租税負担と社会保障負担合わせれば、実に十二兆九千億円もの負担になるようなのが、あなた方の「一九八〇年代の展望と指針」の行き着くところじゃないですか。  それを言えば選挙に負ける、手を縛られるから、あるのだけれども、あなたがいま白状をされた、しかし出さない、そんなことがありますか。しかも、まさに国民の審判を仰ぐ総選挙が迫っていようというときにこういうことをやられるというのは、私は不誠実以外の何物でもないということを申し上げておきたいと思います。
  197. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 いま特に租税負担率を取り上げられて詳細に述べられましたが、これはもう私の長らくの、生涯の仕事ということでございまして、先ほど大内委員との間で申し上げましたが、大内委員の計算でもこの五十九年度の三十二兆六千億から五十兆一千九百億になる、十七兆円は何らの増税なくして税収はふえる、これはいかにも増税だというような御発言があったので、私も大変驚いたわけであります。これは自然増収という形であらわれる。この自然増収ですら少ないと言われるのが大内委員の御発言でございました。私はそのとおりだと思う。それはいろいろな仮定において計算していま恐らく六・五と成長率言われましたが、弾性値をどう見られたか私知りません。弾性値でもいろいろな形の弾性値がある。(正森委員「弾性値は関係ないのです」と呼ぶ)いや税収では関係あるのです。(正森委員「いやいや、あなた方の租税負担率というのが出ているのだから」と呼ぶ)それは外へ全然出してない勝手な数字で、恐らく大蔵省も企画庁もいろいろな形の変化に応じた計算をしておる。これは当然のことじゃありませんか。当然こういった計算は企画庁職員としてやるべきだ、私はこういうふうに思います。
  198. 正森成二

    ○正森委員 国民の前に真実を隠しているということは、ほぼ明らかになったと思いますから、時間の関係で、私はロッキード問題について質問したいと思います。  総理は、裁判の第一審判決が下される直前に来ている。これを静かに厳粛に見守ることが適当である。三権分立の原則に立って対処したい。本会議でこう言われました。現在でもそう思っておられるのでありましょうか。さらに、きのうの同僚委員の質問に対しては、結果は裁判所において明らかにされていく、日本の場合は三審制でございますから、最終的には裁判所でこれが確定するという趣旨の御発言もされておるようであります。あわせてお伺いできれば幸せです。
  199. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そのように思います。  やはり憲法の原則である三権分立というものは、民主政治の非常に根幹的な原則であると思います。立法は司法を侵さず、司法は立法を侵さず、行政は立法を侵さず、立法は行政を侵さず、三権の間がそのように分限を守りながら独立性を維持していく、これがやはり民主政治の要請で、モンテスキューがつとに指摘したところであります。
  200. 正森成二

    ○正森委員 さすが仏文の御出身だけあって、モンテスキューが出てまいりましたが、ただ私どもが言っておりますのは、刑事事件について言っているのではないのです。まさに政治的道義的責任について申しておるので、刑事事件についてどうしなさい、こうしなさいということを言っているんではないという当然の自明のことを申し上げたいと思います。  そこで、私は質問をしたいのですが、有田二郎衆議院議員国会開会中に逮捕状を請求されてその許諾を求められたときに、わが党の金子議員が本会議で質問いたしましたが、昭和二十九年の造船疑獄事件でございますが、そのときに総理は、三十年前でございますからいまよりはずっと若かったと思いますが、予算委員会で質問をされました。そのときに「司直の手が延びて、これが司直の手によって判断を受けるまでは、このまま政治が継続されるということをお考えになるその考えが、私は今日の国家の災いをなしている考えだと思うのであります。」いいことを言っておられます。「政治というものは、道義であるとか倫理であるとか、そういう線で動いておらなければ国民か指導するものにはならないはずであります。逮捕状の線で政治が常に動いておるというのであれば、これは検察庁にすべて政治をまかせればよいということになります。これでは政治の価値もなければ存立の意義もありません。」こう言っておられます。  さらに、「この議会政治の危機を議会みずからで切り抜けて、議会みずからが粛正してこれを解決しなければ、議会政治は没落するのであります。この危機をだれが乗り切るか、国民一般にやらせるわけには行きません、官僚にやらせるわけにも行きません。政治家が議会を中心にしてこの問題を解決する以外に、議会政治と民主主義を救う道はないと思うのであります。」こう述べている。非常にりっぱな言葉で、さすが静高の先輩であります。司法の一翼を担う検察任せでなく、政治国会みずからが粛正して解決しなければ議会政治は没落するとまで言っているんですね。  現在はどうですか。雲泥の差じゃないですか。お伺いしたいと思うのです。
  201. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 あのころのいまの文章を聞くと、まさに党は違うが、正森君をほうふつとさせるものがあったように思いますね。しかし、あの場合と今度の場合はケースが違うのです。あの場合は逮捕前、許諾の問題である。いまはすでに裁判に係属されて、そして長い間この問題が攻撃、防御が行われ、また国民の皆さんの前にも報道をされ、さまざまな反応やらあるいは試練を経てきている大きな問題である。国会におきましても、すでに調査委員会すら設けられて、いろんな過程を経て今日まで来ておる。そして、いま第一審の判決が行われようという間際まで来ている。そういうケースはまるきりあのときのケースと違うケ-スなのであります。  そういう面から見ますと、いよいよ裁判官が最後の断を下す、判決文を書く、あるいは判決文の内容を決定する、そういう間際の一番大事なときまで来ておりますから、こういう間際のときに当たっては、できるだけ裁判官に静かな環境を与えて、良心に従った公正な判断をおつくりくださるような環境整備が望ましい、そういう意味で申し上げておるわけです。
  202. 正森成二

    ○正森委員 それでは、私伺いますが、あなたは静かに厳粛に見守りたいと言われましたが、それでは判決があった後はどうなんですか。判決があった後は、判決が済んだからということで、国会政治的道義的責任をただすために行動し、それに伴って発言をするということはいいんですか。
  203. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 どういう判決が出るかわかりませんが、判決後のことは判決を見た上で考える、こういうことだと思います。
  204. 正森成二

    ○正森委員 あなたの手法は、これは政治家としてあり得ることではございましょうが、いつでも先送り、先送りですね。いまは判決がある前だから厳粛に見守りたい、判決があればそれがあってからだ。しかし、きのうの同僚委員とのやりとりでは、三審制というものがあるのだというように言っておられるところを見ると、判決があれば、控訴されるかどうか見守りたい、控訴すれば二審判決がどう出るか見守りたい、二審判決があれば、三審制だから上告されるかどうか見守りたい、上告すれば最高裁判決がどうなるか見守りたいということになるのではないでしょうか。私はそれでは立法府としての独自の政治的道義的責任を果たすことにはならないと思うのです。  そこで、自治省があるいは法制局かわかりませんが、議員の身分と判決の関係についてお答えを願いたいと思います。
  205. 岩田脩

    ○岩田政府委員 選挙権と被選挙権の問題についてお答えを申し上げます。  公職選挙法第十一条の規定によれば、禁固以上の刑に処せられた場合、被選挙権を失うという規定がございます。(正森委員「それで、その後」と呼ぶ)後は私どもの方ではないと思います。
  206. 正森成二

    ○正森委員 公選法十一条では議員の選挙権、被選挙権を失う場合が規定してありまして、いろいろ決めてありますが、関係ある部分を言いますと、言い渡しを受けて、禁固以上の刑に処せられてその執行を終わるまでは、選挙権も被選挙権もないようになっておるのです。  そこで、そういうものが決まったときに、国会法の百九条で国会議員の身分がどうなるか決められているはずです。それを答えてください。
  207. 茂串俊

    ○茂串政府委員 御質問が国会法に関するものでございますので、私どもからお答えするのはいかがかと思うのでございますが、特にお話がございましたので、一般的な解釈論として申し上げます。  国会法は、その第百九条で「各議院の議員が、法律に定めた被選の資格を失ったときは、退職者となる。」と定めております。したがって、議員が公職選挙法第十一条の規定に該当して被選挙権を有しないこととなった場合には、この百九条の規定によりまして退職者となるわけでございます。
  208. 正森成二

    ○正森委員 いまお聞きのとおりなんですね。最高裁まで行ってしまって確定して、私は刑はわかりませんが、少なくも検察の論告は懲役五年、追徴金五億円ということであります。そこで、執行猶予がつかないということになり、そういう判決最高裁で決まれば、国会はあるいは国民は何らの行為を要しないで当然に国会議員の身分を失うことになるのです。そのときまで国会は何もするなということなのでしょうか。それだったらわれわれは本件について、刑事事件に介入するものではありませんが、国会で決議をされ、あるいは五党首の合意に基づいて議長裁定も出ておりますように、わが国の民主主義を守るために政治的道義的責任をわれわれ立法府、国会議員は明らかにしなければならないと言っておるのに対して、結局は最高裁まで待つということになれば、われわれは何ら行為に出ることなくして、問題の方は当然に、議員の身分を失うということになるのですね。これはわれわれ政治家にとって結局判決があるまで待つということで、立法府がみずからの姿勢を正すために国民の目の前でやらなければならないことをやらなくしてしまうことではありませんか。  あなたは三十年前には、さきに引用した発言のほかにこう言っておられるのですね。「一番重要なことは、国民の目の前に政界が、特に保守陣営がうみを出し切って見せて、自分が健康体になるという決意を国民に見せることであります。」こう言っておられます。三十年たてばわれわれはずいぶん変わります。もちろん髪の毛も薄くなりますし、額も後退しますが、しかし総理、あなたはそうではなくて、政治的道義的な責任感と倫理観が当時よりも後退しているのではありませんか。こういうあなたの発言を知る限り、私はそう思わないわけにはいかないということを率直に申し上げたいと思うのです。  そして、あなたは所信表明で「政治倫理は、一面において、代表者たる個々の政治家が、公私において高い道徳性をもって、いかに誠実かつ効果的に活動するかの問題であり、他面において、政党その他の政治団体が、いかにして国民の納得のいく、清潔澄明な活動と機能を確保するかの問題であります。」「およそ政治にかかわる者すべてが、民意をくみ上げ、民権を拡充し、国民の繁栄と国際平和の確立、民主主義の高揚に営々として貢献しているかどうか、みずからの積極的な役割りを常に検討反省することにあります。」と、こう述べておられます。  国民はいまどう思っているでしょうか。ある新聞世論調査では、田中角榮元首相有罪の場合に、五六%が政界を引退すべきだ、三〇%がまず議員をやめるべきだと答えて、けじめを求める人は八六%に達しております。この国民の声に耳を傾けないで、どうして、あなたが所信表明で言われた「国民の納得のいく、清潔澄明な活動と機能」を政党その他の政治団体が確保することができるでありましょうか。田中角榮君の議員辞職を勧告する決議の採決すらしないことで、どうして、あなたが所信表明で言われた「民意をくみ上げ、」「民主主義の高揚に営々として貢献している」と言えるでしょうか。言っていることとやることとは全く逆ではないでしょうか。あなたについての御答弁をお願いしたいと思います。
  209. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 議員国民代表として国民の信をつないでいく、これが民主主義の基礎である、これはかねがね申し上げているとおりであります。そういう趣旨にのっとって議員個人個人が道徳性をもち、あるいは政党政治団体が澄明な機能を保持し、あるいはさらにそういう消極的な部面だけでなくして、民主政治、平和や繁栄のために積極的に民主政治の上で貢献していく、そういう積極面も私は政治倫理という面から見ても大事な点であると思っております。  それで、そういうような考えに立ってわれわれは行動すべきであると思いますし、今後もやっていくつもりでおりますけれども、本件、いわゆる田中さんのケースの問題というものは、いまや判決が下るという直前に来ているという、一般的な問題と違うケースになっておるわけであります。この一カ月というものは非常に重要な時期であると私は思うのです。裁判官が、どういうような判決を下そうかと思って良心に誓い、あるいは神仏に祈るような気持ちでおられる瞬間ではないかと思うのです。そういうような大事な瞬間ですから、裁判官にできるだけその十分の機能を発揮せしめるようにほかの二権、つまり行政やあるいは立法の側においても配意を示すということが三権の調和の上でも大事ではないか。いままでのいろいろなケースがありますけれども、ケースケースによってみんなわれわれの処す態度は違うと思うのです。いまのような場合は、特に判決直前でございますから、そういうような態度をとることが私は望ましい、三権分立を守るゆえんである、そういう意味で申し上げておるわけであります。
  210. 正森成二

    ○正森委員 私は、いまの御答弁では国民は納得しないと思うのですね。  そこで、さらにもう一つ申し上げたいと思いますが、旧虎の門公園払い下げについての恐喝、詐欺事件というのがあったのです。これは昭和四十一年のことですが、田中彰治衆議院議員が引き起こしたのですね。そのときに、自民党の国対委員長、佐々木秀世氏でございまして、くしくも灰色高官だというように言われた方でありますが、その方がこう言っているのです。「田中彰治代議士の事件は絶対に許されるべきでなく、常識的に考えれば、裁判所の判決を待つまでもなく国会議員辞職するに値すると思う」。さらに「私見ではあるが、」「各党一致して田中代議士に対する辞職勧告決議案を本会議に上程、議決し、もし田中代議士がそれに応じないときは懲罰委員会にかけて除名する」というやり方も一つの方法であると思う。」こう言っておられます。  また、そのときに、時の自民党幹事長は、次のような談話を九月十三日に発表しておられます。「議長が辞表を受理したことで、」辞表をお出しになったのですね、あの決議の直前に。「議長が辞表を受理したことで、同事件に関する自民党の公党としての道義的な責任問題がなくなったとは毛頭考えていない。わが党は今後党紀を厳正することに全力を傾け、さらに清潔な人を選ぶ公認選考基準を確立するなど、党風を正す具体的な措置を講ずる。」言うやよし、こう言っておられます。だが、このときの自民党幹事長は、だれあろう、いま辞職勧告を受けている田中角榮氏その人であります。いいですか。この虎の門事件は、恐喝を受けた被害者は、田中角榮氏の盟友の小佐野賢治氏でありました。  そういう場合にはこういうりっぱなことを言うが、自分が、日米間にまたがり、国会決議にもなっているような事件について有罪判決を受ける、あるいは受けようとするというときには責任をとろうとしないということであれば、所変われば品変わるというけれども、人間も変わるものだというように思わなければなりません。  一体自民党は公党としての政治的道義的責任をどうするおつもりなのか、自民党総裁たる総理の明確な答弁をお願いして、時間でございますから、私の質問を終わります。
  211. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 田中彰治君のケースがどういうケースであったか、いま初めて言われましたから、私はその状況を知悉しておりません。事件事件によってみんな対応は異なるものであると思います。  ただ、一般的に、先ほど申し上げましたように、政治家道徳性を高めて国民の信頼をつなぐような行為をしなければならぬということは当然であると思っております。しかし、この問題については、長い、もう数年にわたる経緯がございまして、そして、さまざまな社会的反応を呼び起こして、そしてまた、検察やあるいは裁判側におきましてもそれぞれ法規に基づく処置をおとりになってきておる。しかも、それがいま最終段階の一番大事なときに来ているというケースでありますから、これはいままでにないケースであります。いままでにないケースで、しかも元総理総裁という地位にあられた大人物のケースでもあります。そういうようなことを考えてみますと、これはみんな慎重に深刻に考えて、そして、おのおのが職分を尽くして公正な結論が出るというふうに皆、配慮し合うということがこの時間帯における大事な仕事である、私はそのように確信しておりますので、重ねてそのように申し上げる次第です。
  212. 正森成二

    ○正森委員 終わります。
  213. 久野忠治

    久野委員長 これにて正森君、松本君の質疑は終了いたしました。  午後四時三十分より再開することとし、休憩いたします。     午後一時十八分休憩      ――――◇―――――     午後四時三十分開議
  214. 久野忠治

    久野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。山口敏夫君
  215. 山口敏夫

    山口(敏)委員 私は、新自由クラブを代表して、総理並びに関係閣僚に若干の質問をしたいと思いますが、質問時間がきわめて制約されておりますので、予算委員会の同僚議員の質問と重複しない形で、また、きょうの質疑と次の予算委員会と連動するような形で何点か伺いたいと思いますので、ひとつ簡潔に、明快に御答弁をいただきたいと思います。  総理は、今日の日本状況は戦後の総決算の時期だ、二十一世紀の日本を創造するべく、ひとつ諸般の懸案をここで解決しなければならない、明治維新にもたとえて昭和維新だ、また行革の問題につきましても、マッカーサー改革以来の大改革を断行しなければならない、こういう決意をしばしば披瀝をされておるわけでありますが、私はその辺の総理見解を再度この場において御確認しておきたいと思います。
  216. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 日本も戦後三十八年目になりまして、諸般の面であるいは行き詰まりあるいは次の時代を見越した基礎固めをしなければならぬときに来ておると思います。  国際関係面においては、閉鎖状態や孤立状態を脱して、さらに幅広く積極的に世界的役割りも分担をし、そして責任を伴い、かつ名誉ある地位を占め得る日本に進むということ、単に経済的動物と言われるような日本であってはならないこと、それから内政的には、行政あるいは教育の改革、そのほか諸般の改革を強力に進めて、二十一世紀に対応できるような内政の基礎を固めること、これがやはり日本の現代の大きな仕事であると思っております。そういう意味におきまして、行革は内政改革の中心線でございますので、不退転の決意で持続的にこれを断行しなければならぬと思っております。
  217. 山口敏夫

    山口(敏)委員 私は、総理一つの基本的な見解、哲学を確認しておきたかったのは、総理のそういう所信を伺いますと、これは何かひとつやってくれるのではないかという期待感もある。私は、予算委員会におきましても、これは吉田元総理以来の外交力を持った久々の総理大臣が出てきた、こういう評価も外国にはある、こういうお話もしたわけです。  しかし、この半年間を振り返ってみますと、そうした総理の決意とはうらはらに、行政その他の問題につきましても、この決断と実行という成果が見られない。この間ある新聞の内閣支持率を見ましても、参議院選挙のときよりは九%も支持率が減っておる。これは、中曽根総理が、政治倫理の問題に対しましても、立法、行政、司法三権分立のたてまえの中で、政治の最高責任者としての指導力、見識を放棄しておる。また、行革国会行革国会と言いながらも、総務庁の設置法にいたしましても看板の塗りかえに終始しておる。これは、臨調答申よりも、自民党橋本さんの試案よりもさらに後退をしておる、私はこう指摘せざるを得ないわけです。  また、経済政策にいたしましても、二階堂幹事長と野党の書記長会談の合意の上で、この国会減税の問題を実行するということを、二階堂さんみずからも、総理の決意表明の中にぜひひとつ織り込んでもらおうじゃないか、こういうことで官邸とのやりとりをしたにもかかわらず、こういうことはかつて慣例になかった――かつて慣例にないことでも、やはり国民の願いや政策的要求を堂堂とくみ上げて実践していくところに、中曽根政治一つの評価、声価というものも高まると私は思うわけでありますが、意外に総理の決意、中曽根政治というものが政府の仕事の中に反映されておらない。そういう点については、現在総理はどういう責任といいますか、反省の上に立っておられるか、ひとつ伺っておきたいと思うのです。
  218. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私としては一生懸命やっているつもりでございますが、何せ無力のために御期待に沿い得ないことを大変恥ずかしく、申しわけなく思っております。今後とも党内外の皆さんの御協力をいただきまして、精いっぱいの努力をして御期待に沿いたいと思っております。
  219. 山口敏夫

    山口(敏)委員 この予算委員会におきましても、経済政策の問題にいたしましても、総理の認識は大分よくなりつつある、こういうことのようですけれども、実際問題としては、経企庁の底入れ宣言の割りには景気は一向によくなっておらない。この八月の調査によりましても、御承知のとおり千六百件以上の倒産件数を数えておる。それも一千万以上の負債勘定での倒産がふえておる。もう少し低い中小零細企業という立場から見ますれば、私は景気は非常に心配な状況だと思うのです。  経企庁が底入れ宣言する、通産省はまだまだ景気回復はなっていない、日銀は公定歩合はいじくりたくない、いじくれば円安にますます拍車がかかる、建設省は補正予算公共事業のてこ入れを、大蔵大臣はもう景気問題は見通しがついた、つかないまでも財政的にはもう措置がない、こういうことで、健康な人間の状況の内でそれぞれが、総理が言っているように、いま調整しておる、調整しておるというのは、健康な状態ならばいいわけですけれども、まだ床離れするかどうかの患者に対して、お医者さんが患者のまくら元で、カンフル注射が必要だ、いや注射は必要じゃない、おかゆが必要だ、いや手術をやらなければだめだ、そういう甲論乙駁でいろいろやっている。これも中曽根総理調整能力というものが後手後手に回っておるところに、そうした国民経済へのしわ寄せが来ている。また、総理がサミットで約束をしてきた内需の喚起という問題も依然として停滞をして、外需依存の経済状況になっておる。  その辺は、いままでの総理大臣の中で、財政再建ができなければ責任をとると言って、本当に責任をとってやめてしまった人もいますけれども、やはりこうした困難な問題に勇敢に取り組んでいただくということが中曽根内閣の責任ではないか、役割りではないかと私は思うわけですけれども、いまの半年間の状況を見ていますと、いままでの内閣とそう変わらずに、やはり官僚主導といいますか、行政主導の政府のあり方にくみしている、こういう印象をどうしても私はぬぐい去ることができない。そういう点についても、総理のリーダーシップというものをいま一度私は伺っておきたいと思うのです。
  220. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 内政の問題、特に経済関係の問題というものには、かなりの高度の専門知識を必要としていると思います。特に、国際経済関係については、かなり熟練した知識が必要であると思っております。そういう面から、各省庁におしてそれぞれすり合わせをいまやってもらっておりまして、私たち政治家の仕事としては、景気全体を見渡しておって、来年に至るまでの大体の見通しを持って、いつごろ何をやったらタイミシグが合うか、政治情勢から国際情勢まで見通した上で断を下す、そういうことだろうと思うのです。  そういう意味において、建設省は建設省、通産省は通産省あるいは大蔵省は大蔵省、みんな自分の職分を大小と心得て、それこそ自分たちの命がけで行政をやっていただいておるわけでございますから、それで余すところなくお互いが論争し合い、すり合わせをやって、そして、その結果を私のところへ持ってきてもらって断を下そう、余り長引くようだったら早く私のところへ持ってこい、こういうことになると思います。いま、そういうわけで各省のすり合わせを見守っておる。しかし、必要なことで政治的判断を要するという問題は、私個人が別個に、自分の施策や自分で勉強しながら自分なりの考えをまとめていく。それらと役所の考えとをすり合わせして、いかに総合的に断を下すか、そういうところを見ているという状態であります。
  221. 山口敏夫

    山口(敏)委員 経済問題につきましては後ほどもう少し掘り下げて伺いたいと思いますけれども、私は、政治倫理の問題にしてもあるいは行政改革の問題にしても、いまの時期は、総理昭和維新ではありませんけれども、やはり命をかけてやっていただくという決意がなければ、何一つ進まないと思うのです。  自民党総裁選挙のときに、われわれがうかがい知るところによると、総・総分離の話が出て、あなたは総理大臣だ、あなたは総裁だというときに、中曽根さんは、政党政治のたてまえからそういう総・総分離というものは受けられない。私は総理大臣にならなくても結構です、こう言って断ったということをわれわれ人から聞いたこともあります。けれども総理大臣にならなくて結構ですという一つ見識が、総理大臣になった途端に、何か最近の中曽根総理状況を見ていますと、長期政権をひとつもくろんで、総理大臣にならなくて結構ですというときの初心が早くも妥協の経過にあるのではないか、こういうことを、私はファンでありませんけれども国民の一人として心配をするわけです。  そういう意味で、政治倫理の問題にいたしましても、国家として国民の人権を守るということは大事なことでありますし、また田中さん自身も、田中さんみずからの人権を守るための闘いを継続していくのは、私は当然だと思うのです。しかし、幸か不幸か、田中さんは総理大臣まで務められた公人であります。そうした公人としての政治的な折り目、筋目というものが、国会の事情の中でどうしてこの問題が進展をしないのか。  それに対して総理が、あくまで予断を与えてはならない、こういう一つ考え方もあると私は思うのです。しかし、仮に十月十二日までは総理のおっしゃるとおりだといたしましても、その十月十二日に仮に不幸にも検察の論告求刑のような形の有罪が出た、田中さんは議員辞職をしなかった、そして、いずれにしても、年内解散があるか、来年の四月までは任期があるわけでありますから、解散、総選挙になった、そして田中さんは選挙に強いから当選するでしょう。しかし、自民党が仮に圧勝したとしても、社会党を初め野党が全員ゼロになっちゃうということはあり得ないわけでありますから、国会としてのけじめというものは、永遠に二審、三審にまでエンドレスで展開していくということになると、今世紀末の国会というのは、田中首相のロッキード問題、政治倫理の問題の中で、よかれあしかれ進んでいかなければならない。  これは総理、ロッキード事件が起きてからオギャーと生まれた赤ちゃんが、もう小学校に行っているわけですよ。この七年間に千四百万人の新しい国民が、もう誕生して育っているわけですね。もし、十月十二日に判決があるから予断を与えてはいけないんだ、そして日本の裁判制度からすれば、最終審までは有罪か無罪かということは干渉できないんだということで、十年政治論争みたいな形でやっていけば、二十年の間には四千万人の新国民が、もう日本の社会の構成要員になっているわけです。日本民主政治、議会政治という立場から考えて、総理がおっしゃっているような決断を御本人がする、それは当然です。私もそう思います。しかし、総理大臣として、自民党総裁として、この四千万人の新国民の中における民主政治、議会政治一つの理念というものをどうお考えになられるか、そういうお立場からこの問題をどう御認識し、また、その責任を果たされようとするのか、もう一度私は伺っておきたいと思うのです。
  222. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 政治家には二つの面があると思うのです。一つ政治倫理、道徳性という問題、もう一つは法治国家の原理を守る、あるいは憲法の基本原理を守る、こういう二つの部面があると思うのです。  法治国家の原理を守りあるいは憲法の三権分立を守るという、国会議員あるいは政治家としての大きな使命というものを考えますと、そこには人権の問題もありますし、あるいは法秩序という問題がございます。しかし、また一面において、今度は動態的政治という面から見ると、政治家道徳性、日常の行動、そういうものも出てくるわけであります。そちらの考え方の調和をどうするか。  法治国家、法ということを考えると、代表者と選挙民との結合、そこへ主権の一番大きな要素の国会の機能というものが形成されていく、その根源である、そういうような問題が出てきまして、これはある意味においては法理学の非常に重要な部面でもあるわけです。そういうものをいいかげんに処理することはできない。後世の歴史家が見ておると思います。また一面において、現代国民の持っておる倫理感情というものもあり、われわれ代表者はその国民の倫理感情の上にまた生きていかなければならぬという面もあるわけです。  そういうような静態的な法律的要請と、それから動態的な倫理的要請というものをどういうふうに判定していくかという点に、われわれの現在の悩みというものがあり、皆さんも苦悶しておる面もあると思うのです。そういうものはおのおのが、一人一人がよく冷静に考え、長考一番をして結論をつくり、そして国会としてそれが総合的に形成される、そういう形になるべきものであるだろうと思いまして、いまそういう点についていろいろ考えておるという状態であります。
  223. 山口敏夫

    山口(敏)委員 きのう、中曽根総理と石橋委員長の論争もありまして、東洋哲学は総理の御専門でしょうけれども、孔子の言葉の中にも、備えをかたくして外国の侮りを受けない、国民をしてひもじい思いをさせない、民をして信あらしめよ、これが政治の三つの大切な要素だ、その中で一番大事なのは「信なくば立たず、」そういう一つ言葉を教えておるわけでありますが、私は、福祉も大事だ、経済も大事だ、防衛も外交も大事だけれども、やはり政治家の信頼がなければ国は滅びる。四千万人の新国民がこの民主政治、議会政治をこれから発展させ、さらに定着させなければならない。その中で、今日の政治家田中さんの個人的な魅力に引かれるままに――われわれ自身もそうした一人であるかもしれないけれども、現在国会に議席を置く立場の責任というものは、やはりこれは真剣に、真摯に取り組んでいかなければならないというふうに思うのです。そういう意味で、自民党総裁としての総理が、十月十二日以降どういう政治的な決断、指導力、また友情を示されるのかということは、われわれの一つの希望として、期待として申し上げておきたいと思うのです。  時間がないものですからあれでございますけれども、新自由クラブとしては、行政改革、それから減税の問題、教育問題というものに今日まで真剣に取り組んでまいりました。減税の問題も、もう総理所信表則の中にもありましたし、それから幹事長・書記長会談でもすでに合意済みの問題でございますので、ここではあえて減税の問題は取り上げませんと言いたいところなんですけれども、どうもこの予算委員会の一連の経過を見ていますと、まだ依然として減税の中身が不透明である、やぶの中である、こういうことなんですね。大蔵大臣の話を聞いていると、どうも減税の財源は増税に依存することもあり得るような示唆も感じられるわけです。  私は、景気対策の立場だけじゃなくて、減税の問題は一つの不公平税制、税制の公平、公正化の問題だと思うのです。私たち新自由クラブは、医師優遇税制とか不公平税制の問題に取り組んできたわけです。政党としての力もまだ小さい、少ない、組織力もない、金もないけれども、いろいろな大きな力のある団体のタブーには各政党もなかなか触れたがらなかった、しかし、土地税制の問題、医師税制の問題、そうした問題に私どもなりの決意を持って取り組んできた。減税の問題も、私は大蔵大臣があえてここで見識を発揮してもらいたいと思うのです。景気対策に必要な減税というと、河本前企画庁長官は数兆円の減税が必要だということも言っておりますけれども、そうした規模は別としても、これは何としても一日も早く減税の具体的な時期、方法、内容についてひとつお示しいただかなければならない。  そこで、時間がありませんので、私は端的に申し上げます。減税の財源に踏み込むと、この間の大蔵の小委員会と同じようにまたうやむやになってしまうわけですが、大蔵大臣が言っているように、自然増収を期待するのか、また歳出カットに頼るのか、あるいは増税に財源を求めるのかということはありますけれども、五十八年度の予算の中に、国債整理基金から一般会計として借り受けた決算調整資金がありますね、大蔵大臣。その二兆三千億円ですか四千億円ですか、その決算調整資金、政府が戻さなければならない整理基金ですけれども、与野党の合意の中で、この財源を何らかの法律改正を伴いながら一時運用するというか、減税財源として見込むということは考えられるのかどうかということをひとつ伺っておきたいと思うのです。
  224. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いま山口さんから、いわば大蔵委員会の小委員会は財源に頭を突っ込み過ぎてうやむやになったという表現をなさいましたが、うやむやになったのではなく、まさに真剣な論議がなされた。これはある種の反省を込めておっしゃったかもしれませんが。したがって、いまの御提案は、決算調整資金繰り戻しについては、国債整理基金から決算調整資金に繰り入れた日の属する年度の翌年度、すなわち五十八年度までに繰り戻しを行わなければならぬ、こういう法律があるわけですね。それを一つの提案としては、法律改正してやれ、こういうことだと思うのですが、仮にこの繰り戻しの一部を減税財源に使えば、五十九年度予算でいわば特例公債を財源としてその分だけ返すことになりますので、結局特例公債を財源として減税を行うということと同じこととなって、一時的な財源を減税に使うということは適当でないと私は思います。やはり決算調整資金の一部を使うというのは、小委員会において合意された一点目、二点目の、いわば赤字国債によらないという合意ができておるわけですから、それと同じことになりますので、それは私は適当な財源であるというお答えはできないというふうに考えます。
  225. 山口敏夫

    山口(敏)委員 大蔵大臣が、適当な財源でないという私の考えだということですけれども、これはやはり大蔵大臣というよりも大蔵省の幹部のお考えだとも思うのです。いま政府税調の中で減税の問題を討議しているということでございますけれども、実際は政府税調を隠れみのとしているのではないか。むしろここは本当に税の公平、公正化、そして、これからの時代の財政のあり方のために、政党人としての指導力と見識を発揮する必要があるのではないかということを申し上げているのです。  ですから、たとえば国債を発行するのと同じだということですけれども、大蔵省はもうすでに六十年以降の建設国債――建設国債ということですけれども、実際は赤字国債の借りかえも含めて、借換債の問題を検討しているということですけれども、その点をひとつ大蔵大臣に伺っておきたいと思うのです。
  226. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いわゆる借換懇というものを理財局長の私的諮問機関としてつくってという新聞記事も出ておったことを私も承知しております。これは従来理財局で借換懇というもので審議した経験はございます。それは言ってみれば建設国債の満期が近づいたものに対してどういう方法で借りかえるか、いわば長期国債は長期国債あるいは中期国債、その国債の種類によってどういうふうにして返すか、こういうような議論をしたわけですね。それがいましばし休眠状態と申しますか、今度また建設国債、新たに一応検討の時期に参りましたので、そうしたものでいま検討しよう。したがって、特例公債の借りかえをこの借換懇で審議しようという考え方ではないように私は理解をしております。  したがって、この問題は、本格的な償還ということになりますと、まさに中長期的な視点で総合的、包括的に幅広く検討して、いわば財政改革を着実に進めていくという基本的な考え方に立って、国民の合意を得ながら検討を進めていく、こういうことで「展望と指針」にも御指摘をいただいておりますので、私どもは借換債、いわば特例債の借換債ということに限定することなく、中長期の財政展望を小委員会をつくって財政審の中で御審議いただくということで先般お願いした。そうすれば、恐らくいまの議論もその中で出ていくであろうというふうに思っておりますので、いま直ちに借換懇等で特例債の借りかえの方法を議論するという段階には至っていないということであります。
  227. 山口敏夫

    山口(敏)委員 これは日経新聞ですけれども、六十年度の償還額が、赤字国債が二兆二千八百億円、建設国債が八兆三千四百億円、合わせて十兆六千二百億円。それから、ピーク時の六十七年度の国債は、赤字国債、建設国債合わせると二十兆円を突破する。これはこれから検討するということじゃなくて、私は国会で、野党の立場で借換債を検討したらどうかと言うことは、立場上はまだ非常にむずかしい問題です。要するに、借金の穴埋めをまた借金でするということを肯定することにもつながりかねないわけですから。しかし、実際の問題としては、大蔵省や財務の専門家に伺ってみましても、赤字国債も含めて借換債をしなければ、実際はもう償還できないというのは私は現実だと思うのです。しからば、国民の合意――国債を買ったり売ったりする人たちだけが税金の利益を、協力しているのですから利益を得るのは当然ですけれども、受益者だというのではなくて、これからは、もし赤字国債においても借りかえをするということになれば、私は赤字国債に対する理念というものを基本的に変えていかなければならないのじゃないかということを申し上げているわけです。  要するに、借金の穴埋めをまた借金でするという発想ではなくて、またレーガン大統領がやっているように、ことしだけでも五十兆円の赤字国債だ、トータルすれば三百兆円の赤字国債をアメリカが発行している。その利息は、アメリカの場合には外国人も買っているわけですから外国にも流れていくわけですね。そうでしょう。日本の場合には、よかれあしかれ日本人がこれを買っていただいているわけですからね。ですから、いわば政府国家国民生活を運用するために、建設国債と同じように国民の財産になるのだ、あるいは国民の福祉や生活を運用するための、第三者割り当てじゃないけれども国債というものに協力をしていただく。ですから、総額はもうこれ以上ふやしてはならないけれども、借りかえという問題については、国債性悪説じゃなくて、新しい財政運用の立場で国債の問題というのもとらえる時期にもつ来ているのじゃないか。その発想の転換と国民の理解と、たとえば建設大臣にも伺いたかったのですけれども、建設問題、公共事業なんかをやっているような人たちが、建設国債その他国債の引受手が、ばば抜きのばばを抜くように、みんなおれは嫌だ、あれは嫌だと言って、閣僚がポケットマネーでささやかに国債を買ってキャンペーンをするということではなくて、もっと国債の位置づけを明朗、明快なものにしていかなければならないのじゃないか。  そのためには、いままで国債整理基金というのは償還のための積み立てであることは事実だけれども、しかし、減税の財源として一般会計が借り受けて、そして当然減税に伴う自然増収なり景気の拡大に伴う一つの増収分によってこれは償還だってできるわけでありますから、何も六十年から政府が借りかえを考えているのに、五十九年まではびた一文、べろも出せない、しかし六十年以降は借りかえだというのは、私は大蔵省の独断、独善であって、六十年以降の借りかえに対する国民の理解と協力は得られない。  だから、国債を発行するということと決算調整資金の金を減税財源にひとつ検討できないかという提案とは必ずしも一致しないのだ、これからの財政運用、財政経営のために必要なんじゃないですかという、私はむしろ助け舟の立場から申し上げているわけです。大蔵大臣、もう一回ちょっと答えてください。
  228. 竹下登

    ○竹下国務大臣 山口経済新理論と言うべきかもしれませんですね。確かに、いわば国債政策の中にはISバランス論というものもございます。したがって、国債というものの発想を転換して、位置づけをもう一度、再度見直しをした国債政策というものを打ち立てたらどうだ。私どもは、やはり財政百姓というものは国債依存度というものを終局的には下げていく、よかれあしかれその前に赤字国債から一時期も早く脱却していくということが、臨時行政調査会あるいは財政制度審議会で貫かれた一つの理論でございますから、にわかに山口経済新理論に賛成するわけにもまいりません。  そして、やはり借換債というものは、いまおっしゃったのは六十年にはだんだん国債整理基金の残高も少なくなって、だから借りかえが必要になるではないか、こういう御議論ですが、とはいえ、それまでは、されば赤字国債の増発につながるような施策を幾らやってもいいという理論にはならないじゃないかというふうに私は思いますので、その提案はせっかくでございますが、いわば国債整理基金の繰り戻し分を取り返して、それでもって減税財源に充てるという考えには同意できないということであります。
  229. 山口敏夫

    山口(敏)委員 私は竹下大蔵大臣に同情するだけで、大蔵大臣の場合はよかれあしかれこれから長く政権政党の幹部としておられるわけですから、六十年以降は赤字国債の借換債をしなければならないのですよ。そのときに国会の場であるいは国民的な立場で、相当大きな議論や財政不信というものが起こりますよ。そういう問題との絡みの中で、やはりもう六十年ですから、私は六十五年以降のことを論議しているのじゃないのですから。これから先四兆円も五兆円も、何も政府がいまのような、総理大臣が調整調整だといま調整していて、どんどん施策がおくれればおくれるだけ景気対策は後手後手に回るのですから、この一、二年に四兆円も六兆円も自然増収が突然ふくれ上がってくるということはないですよ、石油の問題にしても。  通産大臣、石油の値下がりで、大蔵省は七、八万実質減税になっていると言うけれども、必ずしもそういう状況に円安との問題でなっていないと私は思うのです。電力料金だって、どのぐらいもうかっているかあれですけれども、下がるのか下がらないのか、通産大臣、電力料金の問題はどうなりましたか、それだけちょっと伺っておきましょう。
  230. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 原油価格の引き下げ、バレル五ドル、一リッターで七円ぐらいのものでございますから、すぐにこれをじゃ電力料金の値下げに用いたらいいかどうか、私ははなはだ疑問だと思うのです。というのは、やはりエネルギーというものは長中期にわたりましてその供給は安定的でなくちゃならぬ、こう思いますと、まだ為替レートも残念ながら、円高基調にしたいのですが、米国の金利高のためにままならず、また中東等の情勢も不安な要素が多うございます。だから、私といたしましては、いませっかくのお尋ねでございますが、そういう気持ちでございます。
  231. 山口敏夫

    山口(敏)委員 電力料金の問題、あるいは石油の値下がりに伴う利幅をどう還元するかという問題は、後ほどまた別の委員会で論議したいと思います。  そこで総理、どうも少数党でございますので時間の制約がありますので、最後にまとめてお伺いしますけれども、補正予算の問題で建設大臣に伺いたかったのですが、去年は台風十号の影響で、三重とか奈良、長崎、熊本の災害に対して、含めて二兆七千億円の補正をやりましたね。ことしも日本海中部地震とか島根の山陰豪雨とかあるわけですね。これも五千五百億円ぐらいの災害復旧が必要だと言われているわけです。だから、去年の長崎、熊本の災害のときには補正を組んだけれども、ことしの山陰と秋田の災害復旧については補正の予算を組むかどうか。もちろん人事院勧告の問題もありましょうけれども、やはりそういうものは、もうわかり切っていることは早目に言っても、政府政策としてそうマイナスじゃないと私は思うのですよ。ですから、補正予算を組まれるのかどうか、あるいは解散の前に組もうとしているのかどうかという政治的判断は、これはまた別でございますが、その補正予算の問題に対して一点。  それから、新自由クラブは、御承知のとおり、立党以来教育問題に取り組んでまいりました。そして、教育問題の中で特にわれわれが提案をしてまいりましたのは、中学校の三年と高等学校の三年、これはもう高校の進学率が九四%、九五%、地域によっては九八%という状況ですね。子供たちの成長過程にとって一番大事な、総理がいつも言っている芸術、文化や豊かな心をはぐくむ時期に、受験、受験、受験に追いまくられておる。私は、古きをたずねてじゃありませんけれども、旧制高校、皆さん方閣僚の方々が経験されたように、結局教育の原点を六・五ですね、中学三年と高校三年と合わせて五年制に学制を改革する。その上に二年のカレッジをつくるか、四年制にするかという問題を、これはやはり教育専門家の方々だけで懇談するということではなくて、もちろん文教委員会がありますけれども、私は政治家とか政党人というのは、やはり国民の情報を一番集約しておる人たちだと思うのです。そういう人たちが政党政派を超えて、二十一世紀の日本の教育の学制の問題に対して真剣に討議する場所を、私はむしろいろいろ専門家を集めて総理が諮問機関をつくるだけじゃなくて、懇談会をつくるだけじゃなくて、そういうこともこれからは大事なんじゃないか。ですから、複数の政党がお互い問題点を共通の場所でまじめに真剣に、党利党略、派利派略を離れて論議する場所もやはり持つべき時期に来ておるのではないかということで、われわれの一つの提案に対して、総理、政権政党の立場からも含めて、ひとつ御見解を承りたいというふうに思います。
  232. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 補正予算の問題は、見渡したところ、いずれ検討すべきファクターは幾つもあると思います。しかし、またそれを言うべき段階ではないし、その条件自体も完全に熟しておるとは言えない。そういう意味において、この問題はともかく行革優先ということで考えさせていただきたいと思うのです。  それから、教育の問題については同感でして、恐らく山口さんのお考えとわれわれの考え、非常に合っているところがあるのではないかと思いますし、あるいは、公明党や民社党さんのお考えとわれわれの考えもかなり接近している部分があるのではないかと思います。社会党の皆さんのお考えとはどうなるか、話してみないとわからぬ。一回ゆっくり話してみたい。  教育の問題についてこれだけ国民が関心を持って、特に家庭の主婦の皆さん方が御関心を持っている問題ですから、でき得べくんば共通の広場をつくって、そして強力な政治力でこれを実行してみたい。いままで文部省で、いろいろな案があったり、文部省同体も検討しておったけれども、へっぴり腰でやっておったと思うのです。しかし、いまやそういう段階ではなくなってきた。そういう点について山口さんや皆さんのお考えをぜひ拝聴もするし、お力になっていただきたいとお願い申し上げる次第であります。
  233. 山口敏夫

    山口(敏)委員 どうもありがとうございました。
  234. 久野忠治

    久野委員長 これにて山口君の質疑は終了いたしました。  次に、川俣健二郎君。
  235. 川俣健二郎

    ○川俣委員 国会予算委員会の日程は終わるわけですが、減税問題は各党各委員終始これを取り上げてきた。しかも、景気浮揚に役立つ規模の減税、昨年のようなミニ減税ではなくて、五十八年度の予算委員会、すなわち春の通常国会予算委員会から減税に明けて減税に終始した感じを受けるのでございますが、委員長にこの辺でちょっと委員会の長として聞いてみたいと思うのです。  私は、中身に入ってもいままでと同じような論議が繰り返されるだけで終わってしまうのじゃないか。総理大臣は、十月下旬やります、やると言った以上はやります。ところが、具体的な問題になると、いろいろと出なければならない。しかも、やるやらないというのは、この予算委員会の主務官庁である大蔵省、したがって主管大臣は大蔵大臣なんですが、いまごろ税制調査会の意見を待ってという段階だろうかな、こう私は思うのであります。もう政治決断の時期ではないだろうか、どうしてもこういうように思われてしょうがないのでございます。  総理大臣、この問題は終始理事会の方でも並行的に論議してまいってきたのですが、春からの予算委員会の理事会を振り返ってみると、かつては国対委員長会談、書記長・幹事長会談、そして、ついには議長見解を煩わさなければならない、そして予算委員長のもとで官房長官政府見解を示して、三月の八日でしたか、ああいうことで予算が上がった。もうこの秋の段階で中身に入るとか財源はどうだの、こういうようなことを言う段階ではなくて、やはり政治決断をする時期だということを、私だけではなくて国民全体が思っているのじゃないかと思うのです。  そこで委員長委員長委員会も理事会も統括してきたわけですが、委員長はこの問題をどう思っているんだろうか。そこで、理事会で委員長考え方を一遍聞いてみようじゃないか、こういう意見も出まして、私はこれで終わるわけですから、いままで各党の理事の皆さん方からもそういう意見が出なかったので、ひとつ締めくくる意味において、私ら理事会で委員長に宿題を出したような経過もあったのですが、委員長はどう思われますか。
  236. 久野忠治

    久野委員長 ただいまの川俣委員の御発言に対しまして、私からお答えを申し上げたいと存じます。  ただいま川俣委員の御指摘のとおり、いわゆる所得減税の件に関しましては、前の通常国会から今回の臨時国会に至る間において、各党それぞれの立場で真摯な議論が続けられたことはすでに御案内のとおりでございます。しかも、国民の各界各層、あらゆる方々がこの減税問題に非常な関心をお持ちのことであろうと思うのでございます。関心を持たれているということは、要するにこの減税問題について何らかの決着が近く下されることであろうという期待感を持たれていると思うのでございます。そうした意味から、当予算委員会におきましてこのような真摯な論議が進められてきたゆえんのものもここにあるのではないかという感じが委員長としてはいたします。  しかるに、私から批判がましいことを申し上げましてまことに恐縮でございますが、国会運営の場において、国会対策の面でこれが論議された場面も間々あったのではないかという感なきにしもあらずでございます。そのように国会対策の面だけでこの問題を取り上げて論議をする時期はもう過ぎ去ったと思うのでございます。いかなる規模でいかなる時期に国民の期待される減税が実施されるか、私は、国民の皆さんがひとしく注目をしておられると思うのでございます。そうした意味をも含めて、川俣委員からもただいま委員長見解についてお尋ねになったことだと私は存じます。  さような意味から、私は、政府にこの際委員会を代表いたしまして申し上げたいと思うのでございますが、この減税問題の実施については、諸般の事情もあろうかと存じますが、この国民の切なる期待にこたえるために、速やかに、しかも具体的に、かつ適切な方途をお考えになって、でき得る限り国民の期待にこたえられるような減税を実施していただきたい、かように存ずるような次第でございまして、当委員会を代表いたしまして、私からも政府にこのことを、最大限の努力をされるよう強く要請をいたしておきたいと存じます。  それから、これは川俣委員の御質問ではございませんが、先ほど行われました大内委員からの御指摘の際に、租税負担率の問題について政府側の答弁等を拝聴いたしましたが、その中身等につきましても、委員各位の中には釈然とできないという御意見等もありました。この問題も、これはなおざりにすべき事柄ではございませんので、私は、その際、理事会においてその扱いについては御協議申し上げたい、かように申し上げましたが、これまた適当な時期に理事会を開きまして、この問題の処理についても万全の措置を講じたい、かように存ずるような次第でございます。  以上申し上げまして、委員長見解とさせていただきます。
  237. 川俣健二郎

    ○川俣委員 皆さん、このとおり委員長見解をみんなで伺ったのですが、総理大臣――やる人は大蔵大臣だから、何かを感じましたか。
  238. 竹下登

    ○竹下国務大臣 政府側の立場、そして、いま一つ国会議員の一人として、委員長見解はまさにそのとおりであるという認識をいたしました。
  239. 川俣健二郎

    ○川俣委員 やはり委員長見解の中にもあるように、国会対策の具になることもあろう、それは一環ですからね。しかし、それで終わっちゃいけない。しかも、景気浮揚にはどうしても必要だという、やはり皆さんの意見がここへ集約されたわけですから、したがって委員長は、諸般の事情があろうが、速やかに、具体的に、こういうことを言われておるということを、ぜひ、時間がもったいないから、総理大臣も大蔵大臣も篤と肝に銘じておいていただきたいと思います。  そこで、それに関連してもう一つ伺っておきたいのですが、正木委員でしたか、もういよいよになったら議員提案でというそういう気持ちにもなったと思います、これだけ論議されて税調の意見を求めてとかというようなことでは。ところが、何かそれに対して主計局長が、これは主計局長よりもむしろ法規的な法制局の方の答弁かなと思って聞いておったのですが、せっかく山口さんが答弁しておったのですけれども、どういうことか、私は衆議院規則は余り詳しくはないけれども、ちょっと……。
  240. 山口光秀

    山口(光)政府委員 昨日、正木委員の御質問に対しまして、私より、議員提案の場合は国会法によりまして、歳入法案、これは予算を伴う歳入法案でございます、減税法案でございます、あるいは歳出法案を議員提案でお出しになる場合には、政府、内閣の意見を求めなければいかぬ、かつ、その場合には財源についても示すというふうになっていますということを御答弁申し上げました。  実は、国会法そのものではございません、これを受けた衆議院規則第二十八条では、「その法律施行に関し必要とする経費を明らかにした文書を添えなければならない。」というふうに規定されております。ただ、歳入の話をしていたものでございますから、「必要とする経費」というこの法律の表現を申し上げるのもわかりにくいんじゃないかというふうに思いまして、幾ら金がかかるかを明らかにしなければならないという意味で財源という言葉を使ったものでございますが、法律の上では経費を明らかにしなければならない、法律と申しますか、衆議院規則の上では経費を明らかにしなければならないというふうになっておりますことをこの際申し上げたいと思います。(川俣委員「記録訂正ですか」と呼ぶ)御理解を賜りたいと思います。
  241. 川俣健二郎

    ○川俣委員 正確にこれは財源か経費かということが論議されている記録も私は見てきたから、「この場合において、予算を伴う法律案については、」これは典型的な減税案、「法律案については、その法律施行に関し必要とする経費を明らかにした文書を添えなければならない。」こういう衆議院規則の第二十八条ですから、これは経費か財源かという論議をしている記録も私は知っておるのですが、戦後非常に多かったようですね。戦後は、いまのように行政側が強いというか、立法府が弱いというか、そういう時代じゃなかったと思うので、非常に議員提案というのが多かったというのです。総理大臣方が若かりしころだと思うのですけれども。  その際に、もし議員提案で財源を全部ここに持ち出すということになると、これは政府は要らないということになる。政府は要らない。ただ、どの程度の経費が要るかということを文書を添付しなければならないという衆議院規則であるということは、これはぜひ事務当局も御承知おきください。  それから、大蔵大臣、これは週刊誌をちょっと借りてきたのですが、週刊現代です。これも、いままで減税論が出ていると思うと増税論が出て、冷房と暖房が両方出るものだからびっくりしたのですが、こういう見出しなのですね。「二兆円減税実現だ」と喜ぶのは大間違い。納税者一人当たりにすれば、スズメの涙の二万三千円。何もないよりはマシだが、同時に表裏一体となって、大増税の策謀が着々と進められているのだ。ほんの小さなアメ玉のあとに、強烈なムチが何発も待っている自民党と大蔵省が結託して目論んでいる詐欺まがいのヤリ口を黙って見ていられるか。これは私が言うのじゃなくて、雑誌が言うのであります。  そこで問題は、やはり大蔵大臣でも――各党に政審会長があるように、田中六助政調会長が、この夏季全国研修会において、「税は減税だけで増税はない、という考えでは、明日の日本の建設にはならない」、そして「減税の財源は増税しかない」と強調された。そして酒税、印紙税、電話利用税、貯蓄のマル優制度の廃止、それから通信サービスその他いろいろとありまして、さらに、うちの大出委員でしたか言っていましたが、スポーツ税、たとえばテニスとスキーだけにかける、どういうわけかわかりませんが。それから、VTRやライトバン、それから原付の自転車、こういったものを考えているということが出ておる。そして「最終的な狙いは大型間接税」と、こう書いておるが、こういうことを大蔵大臣は、内容を知っているかというのじゃなくて、これが掲載されているのを知っていますか。この本を読んだことがありますか。
  242. 竹下登

    ○竹下国務大臣 不敏にして、読んでおりません。
  243. 川俣健二郎

    ○川俣委員 週刊誌は読んでいないけれども、やはりこういう動きですか。
  244. 竹下登

    ○竹下国務大臣 重ねて申し上げるようでございますが、いま税調でいろいろ御論議をいただいております中で、私は、いまお読みになったようなトーンで物が議論されておるとは思っておりません。
  245. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうすると、政調会長は私見として述べたのだろうか。具体的に税の税目まで言っているところを見ると、私見的に言っているのだろうか、どうだろうか。
  246. 竹下登

    ○竹下国務大臣 その中の幾つかは、大蔵委員会における小委員会の中で財源として議論されたものも存在をしておると思いますが、別に私はその内容を突き詰めたわけでもございませんし、各人それぞれ意見はあるところであろうと思います。
  247. 川俣健二郎

    ○川俣委員 まあ、この問題に入るとまた蒸し返して終わってしまうので、権威ある委員長のお考えも聞いたので、次の通告しておる問題に入っていきたいと思います。  食糧問題、農業問題というのは余り今回出なかったので、ぜひ質問させてもらいたいと思うのですが、その前に、この間の大騒ぎをした米価闘争、その前に政治決戦の選挙闘争、農林大臣などはもう間違いなく上げる、上げる上げると、かなり上げるような雰囲気を出して選挙をやったのですが、米価闘争をやって、何とかかんとか言って、異例の、米価審議会の結論が出る前に結論が出た。そして一・七五%だ。それは財源で言うと二百四十五億。これは違っておったら言ってください。そうすると、この二百四十五億というのはどこから出すのですか。事務当局でいいです。
  248. 松浦昭

    ○松浦政府委員 お答えを申し上げます。  生産者米価の引き上げに伴います財源、これは二百四十五億でございますが、これにつきましては、先生御案内のように、流通促進奨励金を廃止するということによりまして経費の減百一億、これが一つございます。このほか、国内産米麦の買い入れ数量、あるいは自主流通米の出回り量、輸入食糧の買い入れ価格の推移等を見きわめまして、政府管理経費の節減合理化を図っていくということによりまして、食管特別会計全体の中で捻出するように考えておる次第であります。
  249. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうすると、さらに理解を深めたいのですが、まず二百四十五億のうち百一億というのは、いままで全国の農家に入っておったものをそっくり米価の方へ重ねる、あとの百四十四億はまだわからないが、農林省の財源の中でやる、こういうことでいいですかね。
  250. 松浦昭

    ○松浦政府委員 残りの部分でございますが、これはたとえば政府管理経費、たとえば旅費あるいは庁費等の節減、あるいは大型トラックの活用等によりますところの運送費の節減、資金運用の効率化による金員の節減といったようなことによりまして、食管の業務運営を全般的に合理化いたしまして、これによりまして対応いたしたいと考えている次第であります。
  251. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうすると、現地で働く農民、きわめて素朴な農民の感情としては、二百四十五億上げてもらったが、それは農林大臣のふところの中で、こっちのポケットからこっちへ持ってくるだけだ、こう理解せざるを得ないのですが。
  252. 松浦昭

    ○松浦政府委員 ただいま御説明申し上げましたように、食管の業務の運営の中で節減をしていくということを考えておるわけでございまして、ただいま委員おっしゃいましたような、農家あるいは農協に負担をさせるというような形で処理をするという意味ではなくて、まさに食管の運営の中で出していくという気持ちでございます。
  253. 川俣健二郎

    ○川俣委員 いろいろと説明はあるが、やはりどだい大蔵大臣が出さない金なのですから、一般会計から出ない金なのですから、そうすると、皮肉な質問かな。この一・七五%というのがなかりせば、ゼロであった場合は、農林省の財源はそれだけ余裕を持った、こういうことですかな。
  254. 松浦昭

    ○松浦政府委員 もちろん予算のたてまえといたしまして、当初いろいろと計上をいたして、それに対応する経費というものを執行してまいるわけでございますが、現実の問題といたしまして、ただいま先生がおっしゃいましたような方向で節減を図っていくということでございまして、最初から予定をしておいたわけではございません。そのような運用の方針によって初めて出てくる、そういうお金を充てていくというつもりでございます。
  255. 川俣健二郎

    ○川俣委員 長官、ちょっと聞いてくださいね。そこで聞いてください。  二百四十五億というものは、米価がゼロであれば、二百四十五億は浮かして大蔵省に返したのだろうかと言っている。その辺は行革との関係があるから。
  256. 松浦昭

    ○松浦政府委員 食糧管理特別会計の運用に当たりましては、先ほども御答弁申し上げましたように、総体の買い入れ量、また売り渡し量、それからまた麦の輸入の量あるいはその価格、それからまた売り渡しの価格、量、こういったものによって常に変動してまいるわけでございまして、ただいまおっしゃられました部分を直ちに大蔵省に返上するというような性格のものではございません。全体の中でこれは経理されているわけでございます。ただし、その中におきまして、私どものただいま申し上げましたような経費の節減の努力によりまして、残りの百四十五億というものは対処いたしてまいりたいということを申し上げている次第でございます。
  257. 川俣健二郎

    ○川俣委員 まあ大体そういうことだなということぐらいまではわかりました。結局一・七五%をひねり出すために農林省の中で苦労しておる、こういうことのようですね。  そこで、この食糧問題で、きのう、うちの方の委員長総理の党首討論の中で、食糧安保というか、もし一たん何かあったらということの話から、七〇%海外に依存しておるというようなことで論議もありましたのですが、自給率が一〇〇%というのは米だけなんですね。ところが、その水もちょっと危なくなったというのは、この前の予算委員会で、五十三年までの米、これは過剰米、余剰米、余り米ということで、それを一年間保管しておくために金倉で一億三千万かかる。それで、とっておけばとっておくほどだめになるしろものだ、こういうことで何とか処理すべきじゃないかということで、特別会計法を一部手直ししてもらって、五十四年から海外と工業製品と飼料、この三つに分けて処理してきた、これでいいですね。  それで、それが五十八年、この端境期、米穀年度の十月で全部終わるわけですが、それをこの前の予算委員会で資料を出してもらったら、六百五十万トンであったはずなのが六百二十四万トンになっておるので、あとの二十六万トンはどうしたか、ネズミに食われたかということから、いや、それは米が不足したから配給米に回したということから、それじゃ、もしそれがなかりせば米は足りなかったのじゃないかということから、第三期の再編対策の見直しということから始まり、そうして備蓄はどの程度考えておるのかということまで発展してきたのですが、その辺をここで確認したいと思います。  やはり米が不足しておる。さらに申し上げます。うちの方は、ほかの野党も、備蓄米は大体二百万トンぐらいということをいち早く出しているのですが、五十五年の十月は百七十八万トン残ですよ。五十六年は九十一万トン、五十七年は四十万トン、そして、この十月末は十万トン。十万トンは約二日ないし三日分の一億一千万の国民が食べる量でありますが、こういうように認識してよろしいでしょうか。それから、認識するだけじゃなくして、これから第三期再編対策、これはどう考えるのか、こういったところを少し話をしていただけませんか。
  258. 松浦昭

    ○松浦政府委員 先ほど川俣委員のおっしゃられました数字につきましては、先般の当委員会で御議論があったところでございまして、私もその議事録は読んでまいった次第であります。  確かに現在、五十八年度をもちまして過剰米は一応処理を終わるということで、その数量が六百二十四万トンということに相なっておるわけでございます。  そこで、そのような状態のもとにおきまして、本年の十月末、つまり五十八米穀年度におきますところの最終段階の在庫の水準というのがどうなるかということでございますが、これも前回御答弁を申し上げておりますとおり十万トンということでございまして、これにつきましては、当時の数字が、供給の面におきまして大体四十万トンの前年の在庫を含めまして一千七十五万トン、これに対しまして消費が一千六十五万トンということで、五十八米穀年度の末の在庫が十万トンという予測をいたしておったわけでございますが、実はその後の推移を見てまいりますと、大体この計画と申しますか、予測のとおりに推移をいたしまして、十月末十万トンの在庫を持ちまして越えられるという予測でございます。  このような状況で、確かに在庫の数値は現在少ないわけでございますが、しかしながら、すでにことしの収穫の予想も次第に立ってまいっておりまして、御案内のように、作況指数が一〇〇という状況で目下推移をいたしておるところでございまして、このような状況のもとにおきましては、かなり新米の出回りもよい状況でございまして、十月末までには政府米で二百万トン程度、自主流通米で百五十万トン以上の新米が出てまいるというふうに考えておりまして、需給には全く問題はないというふうに考えておる次第でございます。  また、政府としましては、集荷、売却等の米の管理には万全を期しまして、万が一にも国民の食糧に不安が出るようなことがないように対処してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。  なお、これに加えまして、最後にお尋ねの第三期の対策とどう関連があるかということででざいますが、問題は、恐らくお尋ねは備蓄の問題であろうというふうに考えておるわけでございます。  米の備蓄につきましては、農林水産省といたしまして、昭和五十年の総合食糧政策の転換におきまして二百万トンという備蓄の考え方を打ち出しまして、その後過剰が続く中で、実際これを上回る在庫を保有してまいったわけでございますが、ただいま申しましたように、五十五年以降の三年連続の不作ということによりまして、現実の前年産米の在庫水準が十万トンという状態で、非常に低下しているわけでございます。  他方、従来の備蓄のあり方につきましては、金利、保管料等のコストの問題も考えなければなりませんし、また消費者がどうしても最近は新米を食べるという傾向がございまして、余り在庫を多く持って古米をたくさんつくるということにつきましてもいろいろと問題が提起されておりまして、五十五年には農政審議会がこの点の見直しも私どもに要求をされておるところでございます。  そこで、今後の備蓄のあり方、つまり備蓄の規模、仕組み、在庫造成の方法等につきましては、このような問題がございますし、また同時に、在庫水準がこのような低下した状態をどうやって回復していくかということが非常に重要な点でございまして、さような問題は当然転作の面積と非常に関係が出てくるわけでございます。  さようなことで、目下第三期の水田利用再編対策の中で、この備蓄の問題も含めまして、在庫水準をいつまで、どの程度まで積み増しをするかということで目下検討をいたしておるというところでございます。
  259. 川俣健二郎

    ○川俣委員 棒読みにしないで、少し血の通った論議をしようじゃないですか。  結局、不安なことはなかった、主食であるけれども、十分間に合ったと言うけれども、間に合ったんじゃなくて、特別会計法で、日本国民の主食にたえられないという条件で六百五十万トンというものを特別会計で処理しようとしたが、足りなかったから二十六万トン借りて配給したから間に合ったのですよ。したがって、そうべらべらしゃべられると私もちょっと言いたくなる。  それじゃ、農政審議会で見直しと言うけれども、おたくの方は十月末でどの程度の在庫量が適正だと思っておりますか。うちの方は二百万トンですから。
  260. 松浦昭

    ○松浦政府委員 お答えを申し上げます。  まず第一点といたしまして、六百二十五万トンの在庫の処理でございますが、確かに、おっしゃられますように、一部五十三年の産米等を主食に回しまして、そのために需給の万全を期したということはあるわけでございますが、前回も御答弁いたしましたように、確かにこの過剰の米がなかった場合にはなかなか容易ではなかったということは事実であろうと思います。しかし、先ほどから申しておりますように、新米も非常によく出回っておりますし、現在の需給の操作には問題がないと考えておるわけでございます。  それからいま一つ、在庫の水準がことしの末でどの程度が正しいかということでございますが、これはいま、三期対策とも関連いたしまして、現実に積み増しをどこまでしていくかということを検討しておる段階でございますので、いましばらく検討を続けさしていただきたいと思う次第でございます。
  261. 川俣健二郎

    ○川俣委員 しばらく検討をするということであれば仕方がないのですが、私もはこう思うのですよ。やはりいい機会だからもう少し減反政策というのを見直したらいいんじゃないか。というのは、かつて、ちょうど竹下大蔵大臣が前の大蔵大臣のときにこの論議に入ってもらったんですが、いまのやり方では好ましいやり方ではないと思う。というのは、三千五百億ずつ転作奨励金に出すわけです。単純休耕からずっとやっていくと、約四兆円たんぽの中に入れたわけです。だから、大蔵当局から言わせれば、もう転作物が定着して――転作奨励金というそのものは、むしろ私らは価格補償、米を植えたと同じように、野菜を植えても転作物を植えても同じ所得が得られるように、価格補償に切りかえていくべきではないかというのがわが党の考え方です。ただ、おたくの方は、転作を、もっと極端に言えば、ほかのものを植えたふりをしたたんぽにもやるわけですから、とてもじゃないけれども、ここは代々米だ、それはソバを植えるとか、こっちに水をたっぷり入れてこっちに芋を植えると言ったって無理な話なんで、そういうもののむだが非常に多い。それをいつまでも続けていくよりは、むしろ転作物の価格補償政策に、そして海外に依存しないように、少しでも海外から買ってくるもののための転作物を日本の農民につくらせる農業政策がいいのではないかというのがわれわれの考え方です。  そこで、日米定期協議に入る前にちょっと伺いたいのだが、一部日本の農業というのは世界的に――国際的な視野で総理大臣は見ておられるが、一体過保護だろうか、日本の農業予算というのは過保護だろうか。よく聞くんですけれども、どうでしょう。総理、どうです。
  262. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ヨーロッパ、EC等から比べてみると、必ずしも過保護とは言えないと思います。
  263. 川俣健二郎

    ○川俣委員 私も過保護ではないと思います、いろいろ比較してみるとというのは、一億一千万人の人方が食べ切れないほどつくって、外に商売に行くというのに手をかすという助成金を出すのなら、これは過保護ですけれども、ところが、海の向こうの人方は、農産物が余っているから、向こうの農民が困っているから、農薬が困っているから日本が買い取れということの方がむしろ過保護なので、向こうの方が過保護だと思います。  したがって、私は、今回予算理事会をやっている盛りでございましたが、十四日から十五日、二日間がない熱心に協議をおやりになったようでしたが、少し模様を聞かしていただけませんか。
  264. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  九月の十四、十五の両日、牛肉及び柑橘につきまして米側と協議を行いました。米側は通商代表部の次席のスミス大使、農務省のアムスタッツ次官等が出席をいたしました。日本側から私、外務省の経済局の佐藤審議官等が出席をいたしました。  今回は、米側といたしまして、従来から繰り返して主張しておりました輸入制限の撤廃という基本原則を維持しつつも、米側提案を行ってまいりました。それで、米側のたっての希望でございますので、米側提案の内容についてここで御説明し得ない事情でございますが、ともかくそれをめぐって日米間で議論の応酬をしたということでございます。米側の提案の内容は御説明いたしかねますが、それは大変厳しいものであって、日米間の考え方には相当大幅な懸隔が認められたということだけ御報告させていただきます。
  265. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それはまあ佐野さんからすれば、これはお互いに交渉途中だから、労使交渉もそうだけれども、そういうようにまじめに、発表できないということはわかるのですが、ただ、一斉に新聞に出ているし。私から言いましょう。三つ。畜産振興事業団が一元的に行っている現在の牛肉の輸入制度を改め、民間業者が輸入できるようにすること。二、今後一定期間、毎年六〇%ないし七〇%高級牛肉の輸入枠を拡大すること。三、オレンジは毎年三〇ないし四〇%拡大していくこと。こういう三つの項目が出まして、だれがこれを出したのかというので大変に――まだ宇野さんの方に質問するわけじゃないが、そこで農林水産大臣、こういうのは確かにこのとおりだったと思いますのですが、違いますか。農林水産大臣、どうです。大臣ならいいでしょう。
  266. 久野忠治

    久野委員長 佐野経済局長。(「だめだ、だめだ」と呼ぶ者あり)
  267. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 委員長の御指名をいただいております。
  268. 久野忠治

    久野委員長 委員長が指名いたしました。
  269. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 スミス大使とのお約束がございまして、アメリカ側の提案の内容は御説明いたしかねることでございますので、したがいまして、新聞紙上の報道が米側提案と合致しているかどうかということについてもお答えいたしかねますので、お許しをいただきたいと存じます。
  270. 金子岩三

    金子国務大臣 ただいま川俣委員から読み上げられました数字は、私も新聞で拝見したわけでございます。
  271. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それじゃ、さらに言いましょう。ところが、不思議なんだな、大臣。これは九月の十四日と十五日の出来事の新聞であり、九月の十五日の新聞に一斉に出た内容です。ところが、一カ月前の八月の段階で、農林水産省の首脳表明、農産物で大幅譲歩せざるを得ない、こういうように言っておる。一生懸命に佐野さん方が防衛というか抵抗しておるのに、農林水産省の首脳表明というのはだれだろうかな、こういうように考えできますと、同じく八月の中旬において、全中の会長岩持さんが、どういうことですかということになったら、交渉合意に意欲的であり、積極的に取り組みたい、金子農林水産大臣。それからさらに、オレンジ、牛肉交渉は十月中には決着したい、農林水産大臣表明。それから、山場は十月後半であろう。いずれにしても十月十二日以降だ。山場は十月後半である。それで農林水産大臣、国際協調で決着図る。こういうようなことを一カ月前におっしゃっている新聞も、これも違いますか。
  272. 金子岩三

    金子国務大臣 ただいま川俣委員から読み上げられましたことは、私は存じません。
  273. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうしますと、これは日本経済、朝日、毎日等々持ってきておりますが、たまたまある新聞に岩持さんと、こう二人並んでいる写真は、これは別のことをやったんだろうな、これはどうです。
  274. 金子岩三

    金子国務大臣 その握手の写真は、岩持さんがたびたび見えておりますので、来るたびに写真を連れてきて、握手をしておるところを写真に撮っていきますから、いつ撮ったのか、私もよく記憶がございません。
  275. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうすると、昨年の十二月十七日の議事録を持ってきておりますが、これは横路委員の質問ですね。野坂委員も質問しておりますが、特に横路質問は、いまはあれになっていますけれども、「○金子国務大臣 農林水産省としては、私の責任においては、枠拡大、自由化については絶対反対」、「絶対」と書いている。「絶対反対の態度をとっております。」これは変わりありませんか。
  276. 金子岩三

    金子国務大臣 そのとおりでございます。
  277. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうしますと、うちの方の、ここに皆さん同僚来ておりますが、新聞はうそだと農林大臣は言うが、これは大変だ、めちゃくちゃになってしまう、実質的な自由化だ、七〇%毎年ふやす、オレンジの方は四〇%毎年ふやせということを、しかも十月末で決着する、レーガンが来る前に決めてしまう、こういうように報道されると、びっくりして、これは大変だということで、社会党の農水議員団の方が農林大臣にお会いしましたね。そのときの発言で、私は、農林大臣としては絶対反対だ、しかし国務大臣としては考えざるを得ない、この発言はどういう意味ですか。これは皆さん保証していますから。
  278. 金子岩三

    金子国務大臣 お答えいたします。  私は就任以来、自由化はもちろん枠の拡大も必要とは思わないということをずっと主張してまいっております。ただ、レーガンさんが訪日されるということが決定しました後、閣議後の記者会見でいろいろ質問がありましたので、中曽根総理が一月に訪米いたしまして、この農産物の市場開放問題は山門家で検討させるというお約束をしておりますので、そのレーガンさんが訪日するとするならば、国際儀礼上やはりこの問題に一応真剣に取り組んで、ひとつまあ合意ができたら合意をしていきたい、こういうことを申し上げておりますので、今日まで社会党の先生方が見えましても、農業団体が見えましても、そういう考え方で、まあアメリカが大変現時点でもやはりむちゃなことを言っておると私は考えますが、どこまでおりてくるのか、誠心誠意でこれからもひとつこの問題に取り組んでいきたい、こういう考え方でおります。  ただ、農林大臣であると同時に中曽根内閣の一員であるというようなことは、やはり日本のいわゆる貿易全体、わが国は貿易立国で今日をなしてきたわけでございますから、こういうこともやはり内閣の一員であれば考慮せざるを得ない立場にあるということを申し上げておるわけでございます。
  279. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうなると、農林大臣は非常にその辺を言っておるのだな、やっぱりおれは反対だ。そうなると、やっぱり中曽根内閣としては云々ということを答弁するようになったが、そうなると、やはりその当事者のロンとヤスの会談というのを御自分で言っておられたから、その辺のあれをもう少し聞きたいですね。  それを聞く前に、私はどうしても理解できないというか、貿易立国ということを言われたので、その辺を農林大臣は言おうとしておるのか知らぬか、九月の十四、十五の交渉、佐野さん方が一生懸命汗だくになってやっておるときに、ミッションを出しておるのですね、財界代表の。しかも、この新聞は間違いだ、こう農林大臣は否定するのだが、一カ月前に大幅譲歩せざるを得ないという新聞が出たころに、この「対日市場アクセス促進ミッションの米国への派遣」、通産大臣が出しております。  ちょっとこの趣旨を読んでみますと、「本ミッションは、輸入拡大対策の一環として派遣するものであり、我が国を代表する商社、流通関係企業のトップから成る。一行は、米国において、我が国の需要者ニーズの特性、我が国市場への具体的アプローチ方法等の紹介を通じて米国関係者と腹蔵なき対話を行い、その理解を促すとともに、併せて、我が国の市場、流通機構等に関し抱かれている誤解の解消をも図り、もって輸出側・輸入側双方における商品発掘努力と対日輸出努力を鼓舞することを目的とする。」云々で、それはジェトロやミプロや輸入促進懇談会等を十分に活用してやってこい、こういうことで宇野通産大臣が歓呼の声で送ってやった。団長は三井物産の社長。ダイエーの社長、伊藤忠の副社長、兼松江商の社長等等で行っているのですね。  これは貿易立国ですからやむを得ないと思うが、これはやはり中曽根さん、レーガンとの会談の一環の中の一つなんでしょうね。どうですか。
  280. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 一月にレーガンさんと会ったときの話はここでも御報告申し上げましたが、農産物の輸入問題については、できることとできないことがある。牛肉、オレンジについては自由化はできない。しかし、両国のこの農産物の問題については、いままでもいろいろ話し合ってきて、静かに話し合ってきて、両方の主張をよく調和させて解決してきたから、今後も専門家同士で両方でよく静かに話し合って解決するようにしたい、そういうことで専門家同士の話し合いになったということであります。
  281. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そこで私は、各省ごとにそれぞれ動いているのもいいが、やはり国は一つなんだ。そこで、この九月十四日に、わざわざ三井の社長が向こうで、ワシントンで記者会見をしておる。それによると、牛肉、オレンジ、たばこ輸入制限の不満は非常に強く、政治問題化している、日本が対応を誤ると大変なことになる、牛肉、オレンジ輸入に関しては時期を示しての自由化なと思い切った措置も必要だ、こういうことで総理大臣に報告をされたようでございますが、そうなると、どうなんですか、これ。やはり中曽根内閣としては貿易立国、貿易立国ということで、ある程度農林水産大臣も、おまえも国務大臣の一人なんだから、そういったところで協力してやれということなのか、それから、どうしても十一月に見えたレーガンにおみやげというか、結果が出るということの予測なのか、努力はするができなかったらしょうがないということなのか、事務当局を手放してしまったらそれは大変なことになろうと思いまして、私はあえてその辺を伺いたいのです。
  282. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は前から、農業は生命産業だ、そういうことを言って、工業製品をぽんぽんロボットでつくり上げていくような産業とは違う、手づくりで本当に生命を育てる愛情のこもったやり方でなければ育つものじゃない、そういうことを申し上げて、農業というものの特殊性、また農業を大事にしなくちゃいかぬということを考えている男であります。そういう考えは一貫していまでも変わっておりません。  そこで、しかしまた一方においては対米関係というものもあります。したがって、この両国の間の国交を円滑に持っていくために、日本の農業を守りながらどういうふうにして向こうと調和をとっていくか。わが国の農業政策の中には、やはり牛肉にしてもあるいはオレンジ、柑橘類、ミカンにいたしましても、それで生計を立ててそれのみに頼っていくという方もありますし、アメリカの企業に比べれば非常に零細経営であって、手間のかかる、非常に費用もかかるというものもあるわけであります。     〔委員長退席、村田委員長代理着席〕  アメリカとはまるっきり規模が違うのですから、条件が違うわけであります。だがしかし、アメリカと同じ対等の条件でやれといったって、急にできるものじゃない。世界のガットの情勢、貿易の情勢等見ましても、農業というものはみんな各国が大事にし合って、そうして、その国情の許す限り大事にし合って、ある程度保護をしているのが農業の実情であります。ECの状態、ヨーロッパの各国の状態を見れば、日本よりはるかにそういう保護政策をとっているように思うのであります。  そういう中にあって、しかし、一方においてこれだけ日本の輸出黒字がいま膨大になってきて、七月まででもうすでに八十一億ドルになっている。そういう情勢も考えてみると、よく話し合って、そして、こちらもある程度がまんできるところまではがまんをする、アメリカ側にも譲らせるところは譲らせる、そういう合理的調整をやってみる段階ではないかと私は正直に申して思っている。しかし、日本の農業を守り、そして牛肉やミカンをつくっている人たちを守っていくという基本線をわれわれは忘れてはならぬと思うのです。  金子農水大臣は、それらの農業関係の担当責任大臣として、そういう責任感を持っていままで一貫して努力してこられたと思うのです。これは農林大臣としての職責をある意味においては果たしておると思います。だがしかし、こういう段階になりますと、日米全体の、国交全体を考えてもらう国務大臣としての目も今度は開いてもらわなければいかぬ、そういう段階になってきていると思うのです。それにはやはり農林省内部においてよくいろいろな方法を検討してもらって、専門家もおりますし、また対外関係では佐野君のようなベテランもおりますから、こういう人たちが向こうの情勢もよく聞き、こっちの情勢もよく勘案して、そして、いま急にばたばたっとすべてのものを解決をしろと言ったってできるものじゃない、時間をかけて合理的に一つ一つ妥当な解決案をつくってもらうことが好ましい、そう私は考えておる次第なんです。金子農水大臣は日本農業を守るために一生懸命やってくれましたけれども、いまのそういう客観情勢について認識を新たにされて、私のそういう考え方について協力してくれているのだろうと思って、感謝しておる次第であります。
  283. 川俣健二郎

    ○川俣委員 どうも行ったり来たりの感じを受けて聞いておったのですけれども、やはりいみじくも総理がおっしゃるように、まるっきり規模が違うのですよ、日本の農業というのは。しかも、それだけで食っているというか、しかも減反奨励金がそこにまかれてでき上がった農産物、しかも日本国民は食い切れないのじゃなくて足りない農産物。ところが、向こうはそうじゃないでしょう。余っていてどうにもならない、腐るから引き取れ、工業製品のかわりに引き取れ、こういうことですから、その辺はそれは総理としては――いま通産大臣の御見解を聞きたいのですが、総理としては、同じ国務大臣であり、同じ官庁であるが、貿易立国であるけれども、やはり食糧政策、きのう食糧安保の話が出ただけに、食糧というものを、一億一千万の人力が食べる食糧はできるだけ日本の農業につくらせる、こういう観点に立つと、どっちかと言ったら、やはり農林水産省の方へ応援していくべきではないだろうかなと思うのですが、時間があれですから、通産大臣、いままでの話を聞いて、あなたは売りに行く方、ミッションを出す方、輸入どんどん送る方、それどうです。
  284. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 御承知のとおり、いま一番問題は黒字対策ということになっておりまして、資源に乏しい、そのほかいろいろと諸外国に頼らなくてはならない日本の立場を思いますと、余り日本ばかりがよいことをしておって、孤立無援になるというようなことがあってはならない、こういうことで輸入拡大あるいは市場開放、そうしたことが一つの大きな問題であることは事実でございます。だから、輸入促進ミッションも、実は、商品としての輸入促進は一過性のものではなくして、ひとつ向こうの立場から考えてどういうものが日本に対してあるのか、それを調べてきてくれ、私たちはそういうことで出発をしていただきました。  その中の団長が農業問題に関してしゃべったということは、私も新聞によって知らされたわけでございますが、帰ってきてからどういう話であったか、その点、私は十分確かめてみたいと思っております。しかし、通産省は通産省だけで、農林省は農林省だけでいいのだ、おれたちは農業の事情も何もかも無視して、ただひたすら何でもかんでもいいから輸入が促進できたらいいのだというような考え方では私はございません。やはり一つの内閣でございますから、農林省の立場、通産省の立場、それぞれございましょうけれども、十二分に両役所はそれぞれの立場を尊重すべきである、また十二分に連絡もすべきである、そういうことで私は今後臨みたいと思っております。
  285. 川俣健二郎

    ○川俣委員 農林省は農林省、通産省は通産省ということでお互いにあれということだけを私は言っているのじゃなくて、その食糧という問題が一つの視点、それからもう一つは、ブロック書簡がどっちから出たかという、なぞの手紙をいまごろほじくるつもりはないんだが、今回も代表の、新聞が一斉に発表していることは、しかも三つに区切って全く同じ項目が新聞に出ているのは、これは決して偶然でもなけれ信憑性のないものではないと思います。しかしながら、相手との、スミスとの約束でこれは一切出さないということですから、農林水産省、大臣も、事務当局はもちろんですが、言えないだろうけれども、この資料とて、それじゃ、これでこっちからがんばれがんばれと汗だくになっている農林水産省から出た資料なのか、あるいは通産省から出たものかとせんさくする気持ちはないが、やはり私はその辺はもう少し、貿易なんだから――そのときですよ、農林省は農林省、通産省は通産省で分かれない、ばらばらにならないで、やはり日本の国のためということでいかなければならぬじゃないかな、こう思っております。何かありますか。
  286. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 先ほど川俣さんから申されましたとおり、何か漏らしたのは通産省ではないかというような感じでございましたが、私たちもいろいろ重要な問題には、農林省から職員が一名通産省に出向しております。これがそうした重要な問題には必ず参画いたしておりまして、じゃ、漏れたのではないかというようなこともデマとして飛びましたから、私も責任上そういうことがあってはいけない、こう思いましたので、私は次官並びに官房長に命じまして、いわゆる犯人捜しをさせました。しかし、わが省にはそういうことはなかった、こういうことでございますし、決してわれわれは農林省のことは農林省、そうは思っておりません。貿易を担当する大臣といたしましては、当然農林省とは綿密な連絡もしなくちゃいけない、やはり同じ立場を尊重しながらやっていきたい、こういうふうに思っておりますから、どうぞ御安心賜りたいと思います。
  287. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうあってほしいと思います。  そこで、そういう実態でありますが、次は、病は気からという問題を、医療、健保の問題をちょっと……。  今回論議になりましたが、私は、本人が十割から八割という、うちの大出委員も言いましたけれども、そういう問題を質問しようとするのではなくて、林厚生大臣と少し医療問題の理念をひとつ。  私は、長年社労でやってきました。健保改正、健保改定というのは、何のことはない、料金を値上げするか、国庫補助を減らすか、それから患者負担をふやすか、この三つのパターンしかなかったのですね、いままで。やはりいまでもまたそういうパターンで出ているのですよね。  そこで、まず一応事務当局からちょっと伺うのですが、来年の予算に出ておるのですが、今度の健保改定、早くもちゃっかり、おら反対だという人が与党の中にもいるようですが、どういう考え方ですかね、これは。
  288. 吉村仁

    ○吉村政府委員 お答えをいたします。  私どもは、ゼロシーリングあるいはマイナスシーリングというものを踏まえながら、今後の医療保険のあるべき姿というようなものを模索いたしました結果、第一は、医療費の徹底的な適正化をいたしたい。第二は、給付内容をもう一度見直してみたい。それから第三は、負担の公平を図っていきたい。そのために退職者医療制度も設けたい、こう思っておりますし、また、国民健康保険に対する国庫補助のあり方も見直すということにしておるわけでございます。
  289. 川俣健二郎

    ○川俣委員 やはり吉村さん、いままでと同じなんだ。ちょっと違うところを見れば、退職者をどういうように保険制度にのせるかというところが、われわれ長年しゃべってきたことですから、これはのっていますけれども、さっき申し上げましたように、保険料を値上げするか、患者負担をふやすか、医療費、いわゆる国庫補助を抑えるか、こういうパターンだけなんですがね。  この辺のあれは、いま考え方は聞きましたが、どうです、厚生大臣、あなたは厚生省に籍を置かれて、最初は非常に、優生保護法はこれはやはりけしからぬという断を下したあたりはよかったと思うのですね。非常に前向きの姿勢でしたが、今回はちょっと厚生大臣としてはどうかなと思うようなことを考え出したのじゃないかと思うのですが、どうですか、これは。
  290. 林義郎

    ○林国務大臣 お答え申し上げますが、まだちょっと御質問の御趣旨が必ずしもよくわからないのですが、私は、これからの医療問題というのは、確かに先生御指摘のように、給付を削減するか、保険料を上げるか、あるいは国庫負担をどうするかという、結論はそういうことかもしれません。しかし、考えていかなければならないのは、医療費が毎年毎年一兆円ずつもふえてきているというこの事態であります。これはだれにもとめようがないことである。それをどういうふうな形でもって合理的に処理をしていったらいいかということをやはり考えていかなければならないのではないか。単にことしの財政状況でどうだということではない、やはり中長期的に考えてその給付と負担との関係をどう考えていくかというのが、私たちが中で議論をしたところでございまして、私自身もいろいろな角度から議論をしてみたわけでありますが、いま大体考えております、局長からも答弁申し上げたような方向しかないのではないか。むしろそれでやっていくのが、これからの方向としては最善の方法ではないだろうかなと、こう思って、いろいろな方面の御意見を聞きながらやっていこうということでございます。
  291. 川俣健二郎

    ○川俣委員 質問がどうもはっきりしないでごめんなさい。  毎年一兆円ずつの医療費を何とかしなければならぬというのは、当該委員会でもしばしば出る。それはわかっているわけなんです。問題は、それをどうするかなんですね。たとえば厚生省が出した八割給付のねらいということで、たとえば個人生活の水準が豊かになった、慢性病の時代になり、健康の自己管理や疾病予防に対する日常の配慮の有無が特に重視される。健康管理ですね。それから、ただの医療はえてして乱用を招くというようなことを書いてあるが、しかし、実態はどうです、皆さん。  これは全員考えなければならぬが、体のぐあいが悪くなった、ひどくならないうちに気軽に医者に診てもらいに行く、そのこと自体は医療費の高騰を招いているのじゃないでしょう。これはちょっとぐあいが悪いな、医者へ行ってみようかということじゃないのだ。それから、これはどうしてもぐあいが悪いからというので、医者に体を診てもらったら、もうその体は医者のものよ。薬はどういう薬をいただこうが、注射はどういう注射を打たれようが、いや先生、その薬はどういう薬ですか、その注射はどうしても必要なんでしょうかというような状態はないわけでしょう。そうなると、私は、一万円の治療より千円の予防という言葉がかってはやったけれども、むしろこれだ。ただの医療はえてして乱用を招く、こう言うけれども、医者は、おまえは何もぐあい悪くないよというのに、無理して注射打ったり薬やれば、高くなる。ただだから医者に打っちゃいけないのだということを言おうとしていると思うけれども、しかし、一点単価の医療費にはね返るのは、本人が医者をくぐるからじゃなくて、医者が投薬、注射で医療費が上がるわけでしょう。その辺はどうですか、大臣。
  292. 林義郎

    ○林国務大臣 川俣議員の御質問にお答え申し上げますが、おっしゃるとおり、体のぐあいが悪くなった、医者に診てもらおう、それで行って診察を受ける、こういうことでありますが、これにつきましては、現在、家族や国民健康保険など七割ということでありますし、組合保険は十割である。それから、政管健保も十割である。その間に、私は、かかるからとか自己負担があるから行かなくなるなどということはないと思うのです。これは余りないと思うのです。これは統計数値的にも出ておると思うのです。ただやはり、かかりました後のいわゆる薬代というものが、十割の場合には、七割なり八割の人よりは二割なり三割高い、たくさんかかっているということもまた数字的には現実であります。だから、そこを何とかしなければ、少しでもやっていかなければならないではないか。  先生、医者にかかったら後は全部医者任せだ、こうおっしゃるが、一方にはやはり医者の乱診乱療というような、濃厚治療だどうだという話があるわけでありまして、やはりその辺は何らかのルールづくりをしていかなければならないのじゃないか。そういったことで患者の方も、行って、患者が見て、何ぼかかったかな、これは幾らでもというのでは私は困るのだろうと思います。だから、その辺を少しでも改めて、患者の方もある程度、どのくらいかかったのですかとわかるようなことをやっていかないと、話が進んでいかないのじゃないかというふうに考えておるところでございます。
  293. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それは、私とあなたの論議ならそれでいいのだけれども、医者のところへ行って、秋田弁でだんなさんのことをだんつぁと言うのだが、だんつぁ、おれ、どこ悪くて、どのぐらいかかって、どのくらいの注射を打ったのですか、とてもじゃないが、それはいまの制度では無理。領収書をもらうといったって大変でしょうが。領収書をもらう運動をやるといったって大変でしょう。だから私は、この医療費を値上げしている大きな原因というのは、五十三年と五十六年の対比をしてみると、こんなに違うのだろうか。まず薬、五十三年の一に対して一・八五、それから注射は一に対して一・二、それからレントゲンは一に対して一・二、それから検査は一に対して一・三七六、こういうように三年間でこれだけ一件当たりの点数が上がっているわけですよ。そうすると、だんだん文明開化になって病気が減る、濃厚治療をしなければならないから点数を上げたと、こういうことに見ているのか。大臣じゃなくて事務当局でもいいけれども、この数字を認めますか。事務当局、どうですか。
  294. 吉村仁

    ○吉村政府委員 数字につきましては手元に持っておりませんが、大体いま先生がおっしゃったようなことではないかと思います。  ただ、これがどういう原因でこういうような上昇を続けたのか、こういうことでございますが、それはいろいろあるというように私は考えます。一つは医学、医術が進歩する。五十二年と五十六年を比べますと、やはり新薬にいたしましてもかなり開発をされておりますし、それから新しい検査方法というようなものの取り入れられておるというようなことからふえていくという要素もあると思います。また、いま先生御指摘のような乱診乱療というような要素、それもなきにしもあらずだというように思います。
  295. 川俣健二郎

    ○川俣委員 これはどうもひがんで見るわけじゃないが、ほとんどの地方に行くと、所得番付は上の方はお医者さんなんですね。代議士なんかずっと下だよ。千円に対して三年間で千三百七十六円、同じものをですよ。そういうことにメスをある程度入れなければということを何回も言ってきたが、これは本当に予算のあれに弁明的に書いてあるが、医師会の自浄活動という項目があるのだが、これは実際やるかい。相互にチェックするような自浄活動、どうだい、やるかい。
  296. 吉村仁

    ○吉村政府委員 医療費の適正化につきましてはいろいろな方法があるわけでございまして、診療報酬の合理化あるいは薬価基準の適正化、それから診療内容の適正化、こういうようなことがあると思います。それからまた、不正請求の排除というようなことももちろんやっていかなければならぬと思います。  その中で医療内容の適正化ということにつきましては、私はやはり医師の自主的な活動というようなものに任せる分野ではないか。役所が、これをやってはいかぬ、これをやってはいかぬというような、医療内容について統制を加えるというよりも、お医者さんの力で、自分だちの力でひとつこういう医療の浄化をやっていこうではないか、そういう自浄活動というようなものに期待をするのが筋ではないか。私ども、医師会に対して、そういう形でひとつ医療の正常化を図っていただきたい、こういうことにお願いをしておるわけでございます。
  297. 川俣健二郎

    ○川俣委員 何だ、その程度の自浄活動が。医者の方に自浄活動を促すわけね。そうですな。  やっぱり長年論議されているように、医療供給体制と、それから患者、レントゲンの利用者ですね、こっち側と、それから行政と三者がある一つ委員会制みたいなものをやらない限りにおいては無理だという考え方をいまだに私は持っておるのですよ。医療内容適正化委員会というか、この目的は、毎年一兆円の増を防ぐ方法でしょう。これはどうです、大臣。供給側と受ける側と行政側と、長年言われてきたでしょうが。
  298. 林義郎

    ○林国務大臣 確かに医療につきましては、供給側と需要側と両方あるということは、これは御指摘のとおりだと思うのです。両方でやっぱりいろいろなことを考えていかなければならないのではないか、行政はその間に入りましていろいろとジャッジメントみたいなことをやっていく、こういうことだろうと思いますし、両方の体制をつくり上げていくということが一番大切なことではないかと思うのです。  先ほど先生おっしゃいましたように、毎年一件当たりの医療費が上がってきている。私もなにはわかりませんが、やはり医療技術が非常に向上している、薬の値段が高くなってきていることもあるのでしょう。だから、その辺も含めて考えていかなければならない点があると私は思うのです。  それから、じゃ需要側に、患者の方に全然問題がないか。患者の方の状態も非常に変わってきている。やはり死因を見ましても、かつての時代には、お互い若いときには結核病だとかなんとか言っておった。あるいは大腸菌がどうだこうだというような話がありました。いまごろそんなものは非常に少なくなってきまして、むしろ心臓病である、あるいは脳の疾患であるというような病気になってきまして、そうしたこともいろいろ影響してきているのじゃないか。疾病構造も大体全般的に変わってきている。その状況は、高齢化社会、これから急速な老齢化社会へ入っていくとますますこれは続いていくので、その辺両面から考えていくということはどうしても必要です。両面から考えたので、いま申し上げたようなことでやろうということで考えておるところでございます。
  299. 川俣健二郎

    ○川俣委員 診療報酬の合理化を進めるというのが一つあるね。そこなんだな。診療報酬合理化というのは、言わんとするのは大体わかるのですけれども、今度は医者の方から言わせますと、夜中でも雪が降っているときでも出かけなければならない商売、医者というのは。その辺のあれが適正に見てないのよ、見ようとしないのだ、あなたの方は。  それから、盲腸を手術したって、どのくらいになると思います。そうすると、医者側から言わせれば、包帯の洗濯代、看護婦を抱える代、そういったものをやると、薬と注射にやっぱり求めるしかないと言っているのだ。それがやっぱり、あなた方だめだよ、それをやらなきゃ。やる気があるのですか、診療報酬を徹底的にやってみますか。そういうものをやってやらないと、お医者さんはやっぱりどこからか取らなきゃいかぬのですよ。それが薬漬け、注射漬けになってしまっている。そうでしょう。ここにもお医者さんいるようだけれども。それが医薬分業だったんだ。
  300. 吉村仁

    ○吉村政府委員 おっしゃるような面がございます。確かにある部分の診療報酬が低い。そのために薬だとかあるいは検査等に偏って医療経営を支えていくというような面は確かにあろうかと思います。したがって、私どもは、医療が今後適正に行われるように、いい医療が育つような方向で診療報酬の体系を組み直してみたい、合理化も進めてみたい、こういうように思っておるわけでございまして、現在、中医協でもってひとつその合理化を含めて診療報酬問題の検討を始めていただいたところでございます。
  301. 川俣健二郎

    ○川俣委員 だから、やっぱり諸外国は全然違うでしょう、各国のそれぞれ歴史も伝統もあるから。日本のやつは単純出来高払い制ですわな、点数で。ところが、場合によってはイギリスのようにホームドクター、登録して、見立ての悪いのははやらない、こういうあれで。それから、請負制もあるでしょう。家を建てるようなものだ。この体、治して何ぽというような。いろいろとあるわけです、その長短は。だけれども、単純出来高払い制で終始しているところに、日本の医療費がウナギ登りに上がるのだと私は思うのですよ。だけれども、老人保健に少し入れ出したですね。だから、こういうのを思い切って、単純出来高払いだけではなくて、諸外国のいいところはとろうという、こういうあれ、やっぱりあんたたち少し研究員を派遣すべきだよ。どうです。
  302. 林義郎

    ○林国務大臣 おっしゃるとおり、いろいろな諸外国で制度があって、イギリスはいまのお話のホームドクターみたいな形でやっているとか、ドイツみたいに請負式でやっているとか、フランスの償還制でやっているとか、いろいろありますね。確かにおっしゃるとおり。その辺もかつて社労委員会で御指摘があったので、ある程度までのお話は調査もできておるわけでございます。だから、私はいまの出来高払い、単純な出来高払いではいかぬのだろうと思います。正直言ってそれはそうだと思います。  それは単純な出来高払いというのは、まあ言うと、家建てるというお話が出ましたけれども、これだけ家建てくれ、どんな家建ててもいいからとにかく建ててくれ、あと何ぼかかってもおまえに払う、こういうようなことにも極端に言えばなるわけでありますから、ある程度まで医療の基本的なものとかなんとかというものについては、丸めてというか包括的なものを入れていかなければならない、私もこう思っておりまして、いまそういったことでいろいろなことを少し中医協なりあるいはいろんな学者にお願いするなり、やってもらうことがいいことではないか。ただ、そうしますと、またいろんな御意見もありますから、やっぱりこれは医学界で決めてもらう、あるいは医師会で決めてもらうということの方が私はいいのだろうと思うのです。  皆さん方の、いま盲腸の話が出ましたから言いますけれども、盲腸をやるときにはこういうのがいいのだということは、お医者の仲間ではガイドラインができるようなことだろうと思うのですね。盲腸だと思ってちょっとこんなものをやったらまたアレルギーが出たとか、何か別なものが出るというようなことがあるかもしれません。しかし、そういったような形の方向へいろいろと持っていかなければならない。それは私もぜひ進めてみたい、こう思っているところであります。
  303. 川俣健二郎

    ○川俣委員 もうこれだけおわかりになっていて、悪名高きと言っては悪いが、自民党の内部でも反対するというのろしの上がった二割負担の八割給付という、うちの大出委員も言っていましたけれども、やはり出す前に引っ込めと言うわけじゃないが、少し考え直す気持ちになったのじゃないか。ならないですか、どこまでも出すのですか。
  304. 林義郎

    ○林国務大臣 医療行政の責任者として申し上げますけれども、いまのお話のようなこともやらなければならない。不正な医者の監督もやらなければならない。もちろんそういったことも進めていかなければなりませんが、そこにあるのは役所だけが全部コントロールするということではなくて、やはり一般のルールとして何かコントロールをするという形での一部負担というものを私は考えてみたらどうかなということで御提案をしておるわけでございまして、そういった、先ほどお話がありましたように単純出来高払いなどというようなことでやっておったのでは、医療技術が上がる、薬の値段がだんだん上がっていくということになったら、もうとにかくしょうがないことになる、そこについての歯どめをかける一つのこれも方法ではないか。私は一つだけで問題が解決するとは思いません。そういったことでいろいろなことを考えて、本当に望ましい、また国民の信頼のおける医療体系に持っていきたいという努力をやっているところでございます。
  305. 川俣健二郎

    ○川俣委員 やはり今回の骨子は、働き手が負担するのだから、昔のお医者さんがよく言う手おくれ――働き手なんだよね、今度ねらわれるのは。一家の働き手が増になる。働き手が体をこじらせてから医者に行く。かえって高くつく。  そこで結局、大蔵大臣に聞こうとしないが、聞いておられるから質問はしませんけれどもマイナスシーリングから出てきた苦肉の策なんだ。六千二百億、先にありきよ。この六千二百億を何とか出さなければならないので、ここへねらわれたわけよ。恐らくそうじゃないかと思うのだけど、まあまあそうは言わないだろうから。だから、やはりマイナスシーリングというのは、一律もいいけれども、これはかえって手おくれ、こじらせて濃厚治療を後でやらなければならない、こういうことになるので、ぜひひとつその辺は考慮をする必要がある、こういうふうに思います。私たちとしては、何といったってこれは大変な法案だと思っております。そこで、ちょっと年金に入る前に、国鉄においでになっていただいております。運輸大臣もおられますけれども、ずっと質問並べますから、時間がありませんので。  一体国鉄をどうしようか。年金に入る前にやるのです。共済年金に入る前に、この国鉄をやるのです。どうしようとしているのだろうか。すでにダイヤ改正のためのいろいろな検討会議が行われているようですが、関係各省庁、自治体との合意が行われているのだろうか。特に海運、自動車産業、道路行政、こういったものが非常に整合性を必要とするわけですから、これが一点。  第二点は、関係各方面からの改善要求が非常に出ておる。住民闘争も出ております。これらに対する具体的な措置はどのように行われているのだろうか。たとえば自治体、荷主、通運業、こういったものは非常に関係があるわけですね、あなた方がいま考えておる国鉄合理化というものは。     〔村田委員長代理退席、委員長着席〕  それから三番目は、五十九年二月の例の国鉄貨物の大合理化計画が全国的に示されてやっておるのですが、これをやると赤字の解消というのは、予定で出ておると思いますが、どのぐらいのものでしょうか。これは行政管理庁長官も聞いておりますので。さらに、地方交通線の貨物扱いはどうなるのか、こういったところを中心に少し聞かしていただければありがたいと思います。
  306. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 お答えします。  国鉄貨物の合理化計画、どれくらい進んでいるか、どういうメリットがあるか、こういうお話でございますが、国鉄の赤字を一番出すところは貨物でございます。そこで、貨物の固有経費が、五十六年度では一千七百億円の赤字を出しています。そういうことからしまして、この貨物輸送を国鉄では五十九年度において三百億円程度まで赤字を縮める、そして、その後もう一遍合理化をやって、六十年度においては収支均衡にしよう、こういう計画を立てて進めている。この間に、いま川俣さんのおっしゃる輸送関係のいろんな問題というか、協議が行われているのですが、このことに対しましては、国鉄監理委員会も緊急措置として進めているところを、国鉄はその指導を待ってやっているということでございます。  そして、この問題に対して自治体、荷主、あるいは通運業者からどういうふうになっておるかという話でありますが、これは、いままで国鉄貨物のお得意さんがそういう方々ですから、この諸君にはよくよく説得し、説明申し上げるという姿勢をとっております。そうしたことからしまして、地方では徹底的にこういう指導を行いつつ話し合いを進めておる、こういうところが現在の状況です。
  307. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それでは、もう一点ですが、話し合いを進めているということであるようですが、実際どうなんですか。できますかね。いつごろまでにやるのですか。事務当局でいいです。
  308. 橋元雅司

    ○橋元説明員 先生おっしゃいましたように、今度の基本的な考え方は一月の三十一日に発表さしていただいたわけでございますが、その後、毎日のように本社あるいは地方管理局、さらには現場段階でもいろいろお話を進めておるところでございます。そういったものはダイヤ改正作業に取り組みまして、去る八月上旬でございましたか、最終的な本会議と私どもは申しておりますが、ダイヤを作成いたしました。  その間に、そういった御要請に沿いまして、停車駅を追加するとかあるいは新たな列車を増発するとかあるいは発着時刻を修正するといったようなことを、個別具体的にきめ細かくいたしたところでございます。現在、それを地区へ持ち帰りまして最終的な調整をいまやっておるところでございます。そういった形で、利用者、荷主、荷主団体、さらに地方公共団体にもいろいろ御説明を重ねておりまして、ぜひひとつ御納得の上で来年二月一日に円滑に新しいダイヤに移行したい、こう思っておるところでございます。
  309. 川俣健二郎

    ○川俣委員 これは専門委員会で篤とおやりになることでしょうから……。  ただ、私らとしては、大臣も東北ですけれども、国鉄にどうしても頼らなければならない地方、それから物、ルート等があるんですね。ところが、国民が国鉄離れするからしょうがないんだという、こういう机の上で悩んでいるだけじゃなくて、むしろ地方に住んでいる者から見れば、国鉄の方が離れていくような気がするんですよ。だから、お互いにそうですけれども、いま稲の刈り入れ始めでしょう、それからリンゴでしょう、そういったものは、あそこは貨物がなくなるな、そうなると今度は本格的にこれはほかの運送とかあるいは車を調達するとか、こういう気持ちにならざるを得ない、こういうのを発表されると。そういうこともひとつぜひ、国鉄離れということもあるが、国鉄の方がどうも国民離れ――まあ国鉄もいろいろとおやりになっておるようです。けさのニュースじゃないが、貨車を廃棄して、要らないかと言って売却を始めるそうだから、そこまでおやりになっておる御努力はわかるようですが、ひとつぜひそういったところの国民的なコンセンサスを得ると同時に、ニーズもあるし、そういうところをぜひ考慮の上で実施してもらいたいと思います。お願いします。  それから、国鉄が入ったところで年金に入るわけですが、やはり今回社会保障制度でこれからというのは、さっきの医療問題と並んで年金だと思うのですけれども、この年金はそれぞれの委員会でやっておりますが、現在は八つの法律で六つの官庁に分かれております。私もここで、どうだ、官庁を一つにして、年金庁か年金省というのを言うたこともあるのですけれども、この皆年金というものが現実化してきておりますから、問題は、そこに加入しておる年齢層と職業別の関係でいろいろとでこぼこがあるわけですね。  そこで、年金の一元化というのをわが党は早く提示して、これに皆さん方はどうですかということになりましたのですが、さてそうなったら、これは年金一元化じゃなくて、いま赤字のところといま黒字のところと、そこを一緒にしよう、こういう動きは余りにもこそく的というか、厚生省はこれから長年の長期計画の年金制度を考える上においていかがかと思っておったのですが、まず共済年金の方ですから、その方をいま申し上げておったのですが、これはちょっと問題だと思いますよ。  いまのおたくらの提案は、まず基礎年金というものを全部洗って、そして、その上で二階建ててそれぞれの年金を集めて統合一元化するということであればいいのですけれども、たとえ当座だとはいうけれども、黒字の団体がそこにあるから、こっちは赤字だからといっておまえら一緒になれと言っても、これは無理な話。なぜ黒字か、なぜ赤字か、こういうものをどう処理するかということを本当に検討しなければだめなんじゃないかと思いまして、共済年金の国鉄と電電を単純にくっつけようという発想が私は理解できないのです。どうですか。
  310. 林義郎

    ○林国務大臣 年金担当大臣としてお答えさせていただきます。  お話のようなお考えもあるかと思いますが、私が年金担当大臣に、厚生大臣になりましたときに任命され、長い間国会でいろいろな御議論がございました。そういった意味で、将来方向へ向かって全体の年金を統合化、一元化していこう、こういう方向で、その手始めに、まず国家公務員の共済と国鉄、専売、電電、こういったところの共済を統合していくのがまず手始めであろう。一方では地方公務員の共済の一元化をひとつやっていこう。その上で、その上でと申しますよりは、その次に国民年金と厚生年金との統合を、これも来年の国会にお願いをするということで考えておりますが、そうした形で一つずつまとめていく、その上で七十年を目途にいたしましてやっていこうというのが、いまわれわれの方で考えているところの大体のスケジュールでございます。
  311. 川俣健二郎

    ○川俣委員 これはかなりたくさんの資料があるのですが、どうですか、担当大臣だというからちょうどいいのですけれども国会に年金の特別委員会みたいなものをどうですか。年金を全部一元化を前提に、あなた年金大臣になるわけだから、それに適合する、立法側に特別委員会みたいなものを検討していただく余地はありませんか。
  312. 林義郎

    ○林国務大臣 国会にいかなる委員会をおつくりになるかというのは国会でお決めになることでございますから、行政府の私がとやかく申し上げる話ではない、御答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
  313. 川俣健二郎

    ○川俣委員 全くそのとおりでございます。ごめんなさい。  それで、私ちはこの年金制度を、やはり一元化の大綱が決まらないで、さっき話したように、こそく的にこっちのものとこっちのものを、黒と赤とを一緒にするということはいかがなものだろうと思いますが、その点は触れていませんね、答弁がね。これは大臣が答弁してもいいようだな。
  314. 林義郎

    ○林国務大臣 最初に御答弁をいたしたと思っておりましたのですが、私の方としては、年金を全部一本に統合するのにはいろいろな手順を踏んでいかなければならない。まず近いところからまとめていきましょう、こういうことで、国家公務員と電電と国鉄と専売とをまず一緒にしていきましょう、こういうことでございます。それから、地方公務員の方につきましても、地方公務員のいろいろな年金の問題につきまして、そこを一まとめにしていきましょう、それから、厚生年金と国民年金を一つにまとめてまいりましょう、こういう手順でやるのが現実的な話ではないかと思うのです。  川俣議員もう百も御承知だと思いますけれども、年金問題というのは、一つ一つの問題で非常な既得権がありましたり、いろいろな問題が複雑に絡むわけでございますから、全部を一遍でやれと言われたところで、これはなかなかできる話ではない。やはりまとまりやすい、まとまるところからまとめていかないと本当の一本化というものはできないのではないか。そういった意味で、長い時間はかかりますけれども、将来方向としては一元化の方向へ持っていかなければならない、こういうふうに考えているところでございます。
  315. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 私は国鉄が担当ですが、国鉄が一元化で大変皆さんに御迷惑をかける側です。それは、何さまいまの国鉄、みんな働く諸君が不安のところ、しかも共済ももらえないじゃないかという話でありますから、そこで国会あるいは政府の方でお出しいただいたのが、ほかの方々と統合の中に国鉄を、働く諸君を助けてやろう。私は、これは働く諸君の連帯の中に、景気のいい、財政のいいところの組合もようやくそれを考えていこうということでいま御審議いただいておる。これはぜひひとつ川俣さんごあっせんいただきまして、この法案の通過のためにお願いします。
  316. 川俣健二郎

    ○川俣委員 やはりそういうのはある程度財源を用意してかからないと、こっち側に向かってひとつ頼むと言われても……。  それは大蔵大臣、どうです。いまの問題はある程度大蔵省もこれに差し挟まないと、これはできないよ。黒字のグループと赤字のグループを、おまえら一緒になれ、こういう提案でしょう。赤字の方の大臣はよろしく頼むと、おら方を向いて言う。そんなのだめですよ。大蔵大臣、どうです。
  317. 竹下登

    ○竹下国務大臣 共済年金、今度の法律案は大蔵大臣である私が所管大臣、こういうことになっておるわけでありますので、目下大蔵委員会において、前国会において審議をいただいてそのまま継続審議になって今日に至っておる、こういう状態でございます。  ポイントは、言うまでもなく公企体共済年金の給付要件を国家公務員共済年金に合わせることと、いま一つは、長谷川大臣からもお話がありましたが、国鉄共済年金に対する財政上の措置を講ずること、この二つであります。  長期計画については年金担当大臣からお話がありましたが、その一環として、まずこの似ている者同士とでも申しますか、類似しておる共済の統合を図ろう。これが提案に至るまでに、私は、いわゆる使用者側あるいは労働側、また中立委員、二つの審議会で熱心な御議論をいただいて、公企体の関係者を含めて理解は得られるものではないか。そこへもってきて、また、きょうのような積極的な川俣委員の御発言等がさらにそれに力を倍加して、今国会において成立することを私は心から期待をしておる、こういうことであります。
  318. 川俣健二郎

    ○川俣委員 私の発言は応援している発言じゃないんだ。いずれにしても、問題は財源だからね。きょうはざっと質問しておくが、財源ですから、ぜひその点は、ある程度条件のようにつくだろうと思いますので、さらに検討を今後してください。  それから、きのう、ちょうど大蔵大臣がいま言われたので、パートタイマーの問題で大出議員が質問をした場合に、さっと電話がかかって、パートは好きでやっているような言い方に感じた、そういうことなんだろうかということを問い合わせてきたが、速記を起こしてみると、「いわば婦人の方で働きたいという意欲をお持ちになっている方は年々ふえております。」云々というのがあるのですが、ずっと見てみると、これはどういう気持ちでおっしゃったのですか。
  319. 竹下登

    ○竹下国務大臣 恐らく私が申しました発言の第一は、言ってみれば、パートタイマーというものがふえておるという一つの要因として、最近、失業率等いろいろな計算の方法がございますが、失業率のとり方を見ますと、いわゆる職業を失った人というよりも、アンエンプロイドピープルあるいはジョブレスピープル、こう呼んでおるようでございますが、それと、それから働いている人を含めたものを分母として、いわゆるそのジョブレスピープルとか保険給付を受けておる人を含めたものを分子として出しておる。それを見てみますと、分母、分子とも、女の方の働く意欲を持っておる人と、また、働く意欲を持っていながら今日職にない人の数が、分母も分子もふえておるということが、言ってみれば、現実問題としてパートタイマーがふえてきておるという一つの裏打ちのアークになるのではないかという意味で、まず第一にそれを申し上げたわけでありまして、決して子育てを離れて暇だから働いているという意味で申し上げたわけではございません。そして、この問題については、五十万円と二十九万円の問題ですが、長い間議論をされておった。しかし、これについては、言ってみれば、自分は今日まだ子育てに時間もかかるので働けないという人、あるいは子供さんの初めからいないという人、いろいろな新しい意味における不公平議論というものもなされてはおる。しかしながらいま税制調査会で審議されておるいわばそういう各種の控除制度の中でおのずからそれらの問題は今後結論が出ていく問題ではなかろうかという意味のことを申し上げたわけでありまして、言ってみれば、暇になったから働きたいというような意味でふえておるということではなく、全体に婦人の方のいわゆる職につきたいという意欲の方と、そしてまた職におつきになっておる方々の数、両万ともふえておるということを、パートタイマーの実態としての裏づけの一つのデータとして申し上げた、こういうことであります。
  320. 川俣健二郎

    ○川俣委員 きのう減税問題やら、うちの大出委員からいろいろと例を出されて、もういま住宅地を歩くと、横浜あたりは森閑としている、よく見ると全部パートだ。パートをやらざるを得ないという状態ですね、住宅ローンなどで。そこを説明しておるわけです。そういう考え方であれば、私も時間がないので納得するのですが、やむなくパートをやらざるを得ない、子供をかぎっ子にして、好きで行っているのじゃないのだということだけはわかったようですから、これ以上は言いません。  そこで、最後に労働大臣に伺いたいのですが、こういうように、非常に高齢者、それから婦人、婦人はなぜタクシーの運転手を深夜できないかということも出ておったのですけれども、それから十月一日は高卒、十一月一日は大卒、こういろいろとありますね。こういうように非常に構造的に変化してきたことに労働省はどう対処するつもりなのか。  ゆうべのテレビでしたか、マルシップですか、という名前で、いわゆる日本の船には外国人は直接労働者として乗り込むことは職安法で違反なんだが、それをトンネルにして、いま日本の賃金の四分の一のフィリピン、三分の一の韓国、これがだあっと瀬戸内海から横浜にかけて船員が乗り込んできていますね。こういったような問題に対してどう対処するかという問題。  それから、これももう少し時間があれば、北炭新炭鉱の再開発断念、これは通産大臣がかわった途端に断念せざるを得なかったのですが、失業者が約千人おりますが、この再就職の対策というのはどうなっているかということと、それから通産大臣に、地域経済、中小企業に対する対応をこの北炭新炭鉱の問題について伺って、私の質問は終わります。
  321. 大野明

    ○大野国務大臣 お答えいたします。  前段の件でございますが、いずれにしても、御承知のとおりわが国は世界に類を見ないような急速な高齢化社会に到達しつつある。また同時に、いまもちょっと議論がございましたが、女子の職場進出が大変に多くなってきたということ、それからまた、MEを中心としたいわゆる技術革新が非常に進展しつつある、このようなことで就業構造が大きく変化してきておるという中でございますので、しかも世界的に余り経済もよくない、まあ日本も余りよくないというようなむずかしい時代であって、雇用失業問題は非常に深刻な状態であります。  その中においてこういうような大きな変化、しかも、これは中長期的に続くのではないかということを考えましたので、私も労働大臣に就任いたしまして直後に、労働省の中に、いま申し上げたようなほかに、ワークシェアリングであるとか国際労働とか、いろいろなことで八つのプロジェクトチームをつくって、そのうちもう六つまでは新聞発表いたしましたから御承知だとは思いますが、これはもう大変な時代を迎えるのではないかということで、いまその対処に苦慮している面もありますし、また同時に、その勉強の成果をこれから生かしていこうということを考えております。  なお、外国人労働者につきましては、これはわが国のみならず、世界じゅうの国々がやはり同じような傾向をたどっておると同時に、特にアメリカにおいても移民法の問題もあるでしょうし、またイギリスにおいては雇用の問題について非常に多人種、多国籍の人が入っておりますから、いまそのことで非常に、先般も私イギリスヘ行って雇用大臣と話をしましたが、苦慮しておるというようなことでございまして、日本としても考えていかなければならない点も起こり得るということも思っておりますが、これは法務省、入国管理局との問題もあるのではないかというふうに思っております。  いずれにしても、この雇用問題については、いま言ったような三点を中心としてこれからやっていきたいと思っています。  また、夕張炭鉱の問題につきましては、私、八月の二十二、二十三と現地へ行ってまいりました。先ほど通産大臣がかわったらすぐ閉山したと言いますが、事実上昨年の十月から閉山したというような感覚で労働省としては対処してきたところであります。  今日までに、二千百二十五人の求職者がおって、そのうちすでに就職した人あるいは転職のための職業訓練を受けておる人を除くと九百人おる。その中で、どうしても地元志向というか、やはり同じ石炭産業の中で働きたいということなので、集中的にその求人を開拓して、百五十人の人の山での働き場所を見つけた。あとの方々、この方々はやはりいま申し上げたように地元志向が強いために非常にむずかしいのですが、そうばかりは言っておられないだろうし、また私どももそういうふうにいかないので、鋭意民間の訓練委託をしたり、いろいろな形で努力をいたしておりますし、と同時に、どこか転職して地方へ行った場合でも、これは住む家がなければ困るので、雇用促進の住宅の優先枠を取ったり、あるいはまた、いろいろな条件がございますが、それを緩和したりということで、働く人たちのために最大限の努力をいたしておりますので、近いうちにすべての皆さんが就職できて、本当に明るい家庭を築くことができることを願うと同時に、そういうふうにやっていく所存であります。
  322. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 夕張閉山は御承知のようなことで、私といたしましても全く遺憾なことでありましたが、万やむなきことであると思いまして、あのような措置をとった次第でございます。  当然、夕張市並びに北海道庁及び炭労からもいろいろその後のことに関しまして陳情を承っておりますし、また当然私たちといたしましては、地域問題、中小企業問題、離職者問題、こうしたことに最善を尽くさなければならないと思っております。このため、政府としましては、随時各省庁間の連絡会議を開いておりますが、現在、石炭業界による夕張離職者四百七十四名の優先雇用、こうしたことを中心といたしまして、そのほかに企業誘致、公共事業の推進、中小企業対策等、最大限の努力を傾注し、今月中にその検討結果を発表したい、そういうふうに思っております。
  323. 川俣健二郎

    ○川俣委員 どうも委員長、ありがとうございました。
  324. 久野忠治

    久野委員長 これにて川俣君の質疑は終了いたしました。  本日は、これにて散会いたします。     午後七時十九分散会