運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1983-10-11 第100回国会 衆議院 内閣委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年十月十一日(火曜日)     午前十時四十四分開議 出席委員   委員長 橋口  隆君    理事 愛野興一郎君 理事 佐藤 信二君    理事 田名部匡省君 理事 堀之内久男君    理事 市川 雄一君 理事 和田 一仁君       青木 正久君    有馬 元治君       池田 行彦君    石井  一君       上草 義輝君    小渡 三郎君       狩野 明男君    始関 伊平君       竹中 修一君    谷  洋一君       堀内 光雄君    宮崎 茂一君       鈴切 康雄君    木下敬之助君       中路 雅弘君    三浦  久君       中馬 弘毅君  出席国務大臣         内閣総理大臣  中曽根康弘君         国 務 大 臣 谷川 和穗君  出席政府委員         内閣法制局長官 茂串  俊君         国防会議事務局         長       伊藤 圭一君         防衛政務次官  林  大幹君         防衛庁参事官  新井 弘一君         防衛庁参事官  西廣 整輝君         防衛庁参事官  友藤 一隆君         防衛庁参事官  冨田  泉君         防衛庁長官官房         長       佐々 淳行君         防衛庁防衛局長 矢崎 新二君         防衛庁人事教育         局長      上野 隆史君         防衛庁衛生局長 島田  晋君         防衛庁経理局長 宍倉 宗夫君         防衛庁装備局長 木下 博生君         防衛施設庁長官 塩田  章君         防衛施設庁次長 小谷  久君         防衛施設庁総務         部長      梅岡  弘君         防衛施設庁施設         部長      千秋  健君         防衛施設庁労務         部長      木梨 一雄君         外務大臣官房外         務参事官    山下新太郎君         外務省北米局長 北村  汎君         外務省欧亜局長 加藤 吉弥君         外務省条約局長 栗山 尚一君         外務省国際連合         局長      山田 中正君  委員外出席者         建設省住宅局建         設指導課長   片山 正夫君         内閣委員会調査         室長      緒方 良光君     ――――――――――――― 委員の異動 十月十一日  辞任         補欠選任   小沢 一郎君     青木 正久君   吹田  愰君     竹中 修一君   山中 貞則君     谷  洋一君   河野 洋平君     中馬 弘毅君 同日  辞任         補欠選任   青木 正久君     小沢 一郎君   竹中 修一君     吹田  愰君   谷  洋一君     山中 貞則君   中馬 弘毅君     河野 洋平君     ――――――――――――― 十月七日  旧日本海軍債務未払いに関する請願長田武  士君紹介)(第一六三号)  傷病恩給の改善に関する請願中路雅弘紹介  )(第二一四号)  ミッドウェー艦載機下総基地使用反対に関す  る請願新村勝雄紹介)(第二一五号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法  律案内閣提出、第九十八回国会閣法第二〇号  )  防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案(内  閣提出、第九十八回国会閣法第二一号)      ――――◇―――――
  2. 橋口隆

    橋口委員長 これより会議を開きます。  都合により、この際、暫時休憩いたします。     午前十時四十五分休憩      ――――◇―――――     午後二時十八分開議
  3. 橋口隆

    橋口委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  日本社会党所属委員が出席できないとの連絡がありました。まことに遺憾ながらやむを得ず議事を進めます。  内閣提出、第九十八回国会閣法第二〇号、防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案及び第九十八回国会閣法第二一号、防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。三浦久君。
  4. 三浦久

    三浦(久)委員 防衛庁お尋ねをいたしたいと思います。  今回の法案自衛官を千九百七十八名増員する、こういう要求になっておりますが、その理由目的を明らかにしていただきたいと思います。
  5. 矢崎新二

    矢崎政府委員 ただいまお話ございましたように、今回の改正法案によります自衛官増員は、海上自衛官が千三百二人、航空自衛官が六百三十人、それから統合幕僚会議に所属する自衛官が四十六人、これらを合計いたしまして千九百七十八人でございます。  こういった定員増は、艦艇航空機就役、それから部隊の新改編、機材の運用、さらに統合運用体制強化等に伴います隊務運営上必要最小限度の要員の所要に対処するものでございます。
  6. 三浦久

    三浦(久)委員 護衛艦はどういう護衛艦を予定しておるのですか。また、P3C、E2C、こういう関係はどうですか。
  7. 矢崎新二

    矢崎政府委員 増員の内訳は、プラスの要素とマイナスの要素とがございます。そういたしまして、この年度も、五十六年度予算で対処いたしましたものと五十七年度予算で対処したものと二通りの中身があるわけでございまして、それぞれについて若干御説明をしたいと思います。  まず五十六年度増員の分といたしましては、計で九百九十六人ということになっておるわけでございますが、その中で艦艇航空機就役等に伴う増員が千六百十六人ございます。一方、艦艇航空機除籍等に伴う減員が千三十人、これが減に立つわけでございます。そのほかに装備品運用とか部隊の新改編等のために必要な増員が四百十人ということで、九百九十六人という増になるわけでございます。  それから五十七年度の分でございますと、総数で九百八十二名の増でございますが、これもまず増の要素といたしまして、艦艇航空機就役等に伴う増員が二千百五十三人ございます。それに対しまして、逆に艦艇航空機除籍等に伴う減員が千六百五十一人ございます。そのほかに装備品運用部隊の新改編等に伴う増として四百八十人というのがございまして、これらを差し引きして九百八十二名ということに相なっておるわけでございます。  この中で、艦艇就役等に伴う増員要素はどういうのがあるかと申しますと、五十六年度増員の分でございますが、まず五十二年度予算建造を決めましてそれが五十六年度に出てくるDDの分、それから五十三年度建造に着手しました潜水艦の分、それから五十四年度掃海艇等でございます。それから、航空機就役に伴う増の中に、御指摘のようなP3Cの就役の分が三機分とか、そのほかにも各種航空機の分が入っておるわけでございます。  それから、五十七年度につきましても同様でございまして、艦艇就役に伴う増の中には、五十三年度建造に着手いたしましたDDG、ミサイル護衛艦でございますが、その分とか、あるいは五十三年度通常DD護衛艦でございますが、それとか、五十四年度に着手しましたDE、五十四年度潜水艦、そういったようなものが入っております。それから航空機就役の中には、P3C等就役増に伴うものが入っておるということでございます。
  8. 三浦久

    三浦(久)委員 護衛艦の問題について言いますと、たとえば「さわがせ」だとか「しらゆき」だとか「はつゆき」だとか、それからまた潜水艦で言うと「せとしお」ですか、そういうようなもの、またP3C、E2C、そういうものの就役に必要な人員だということでいま要求されておるわけですね。  そうしますと、いまあなたが言われた護衛艦とか航空機というものは、いま現に就役しているのではないのですか、もう動いているのじゃありませんか、どうですか。
  9. 矢崎新二

    矢崎政府委員 ただいま御指摘のように、こういった航空機あるいは艦艇は、予算で認められました線表に従いまして所定年度に完成をいたしますから、それらはすでに就役をして稼動の状態に入っておるということは御指摘のとおりでございます。
  10. 三浦久

    三浦(久)委員 そうすると、そういう人員充足というのはどういうふうにやれるのですか。たとえば一部廃艦になったとか、そういう者を持っていくとかいろいろあるのでしょうけれども、しかし、それだけでは全部充足はできないと思うのですよ。だから皆さん増員要求をしていらっしゃるわけですから。現在、艦艇とか航空機はもう動いているわけですね。稼働しているわけでしょう。そうすると、皆さん方がいまそれを稼働させるために人員をふやしてほしいと言ってきているその理由が成り立たないのじゃないか。もっと別な理由定員をふやしてくれ、こういうように言っているように思うのですが、どうなんでしょうか。
  11. 矢崎新二

    矢崎政府委員 ただいま申し上げましたように、艦艇航空機就役をいたしできます以上は、こういった艦艇航空機を遊ばせておくというわけにはいかないわけでございまして、そのために所要人員は、本来ならば増員を各年度におきましてお認めいただきますれば円滑に運用状態に入れるということでございます。しかしながら、いろいろな事情がございまして今日まで延引をしている関係上、そこに私どもとしては大変つらいところがあるわけでございまして、結局、こういった船なり飛行機なりをともかく運用状態に置くためにはいろいろな苦しいやりくりをして賄わざるを得ないということでございます。  そういったことをやりますために結局どういうことになっているかといいますと、隊員に非常に過重な勤務を強いたり、あるいはいろいろ安全上も綱渡りみたいなことをしなければいけなかったり、あるいは通常の訓練なり部隊運用をやっていく場合に、そのレベルをあるところはがまんをするとか、あるいは業務の一部を一時見送ってがまんしてみるとか、非常に臨時的な工夫をして一時しのぎをやらざるを得ないというのが実情でございまして、こういった状態を長く放置いたしておきますと、結局は海上自衛隊あるいは航空自衛隊全体の練度の維持というものが非常にむずかしくなってくる、そのことによって日本防衛力というものが非常に低下をしてくるおそれもあるということから、こういった状態は一日も早く解消をしていただくようにぜひお願いをいたしたいと思っているわけでございます。
  12. 三浦久

    三浦(久)委員 そうしますと、私は増員要求理由が別のところにあると思うのですよね、現在、艦艇航空機は動いているわけですから。そうすると、どういう部隊から充足をした、そのためにどこどこの部隊に穴があいておる、だから現在千九百七十八名必要なんだ、そういうことが出てきませんと、ただ艦艇航空機就役に必要だと言われても、現在動いておるわけですから、それじゃ具体的に何のために増員するのかということをお聞きしたいのです。それは御答弁できますか。     〔委員長退席愛野委員長代理着席
  13. 矢崎新二

    矢崎政府委員 それはまさに、艦艇なり航空機なりの就役が出てまいりますれば、それぞれ対応いたしました人員配置所定の基準に従ってしていかなければいけないというのが基本の原則でございます。しかしながら、こういった定員増員お願いをいたしました年度にそのままお認め願えていないということの結果といたしまして、本来あるべき姿の水準にその充足が達していかないという問題が生じておるわけでございまして、そこが部隊運営上非常に問題を残して、一時しのぎをしておるということでございますから、そういった一時しのぎの問題のある状況は一日も早く解消をして、本来の姿に戻していかなければいけないということが基本でございまして、その辺はぜひ御理解賜りたいと思うわけでございます。
  14. 三浦久

    三浦(久)委員 それは理解できますよ、あなたの説明は。説明は理解できるんだけれども、しかし、いま動いているわけですから、そうすると、今度千九百七十八名増員になった場合に、その人たち護衛艦とか航空機就役させるんですか。そうじゃないでしょう。そうじゃないと思うのですよ。やはりどこか別のところに充足していく。そうすると国会説明した理由と実際の理由は違うということにならざるを得ないと思うのですよ。だから、どういう部隊にこの千九百七十八名を充足するのかということを私ははっきりしていただきたいと思うのです。これは後でもいいのですが、どうですか、きょう御答弁できなければ後で委員会外で……。委員会で報告してもらってもいいのですけれども
  15. 矢崎新二

    矢崎政府委員 ただいま申し上げましたように、これは全体として非常に本来あるべき配置に人がついていないという状況になっているわけでございまして、結局、予算国会の御承認を得ました艦艇なり航空機というものが一方にございますから、そういうものが就役をしてまいりますれば、それをできる限り効率的に運用していくということもこれまた国会の御意思でございますので、私どもは、そういう船なり飛行機をただ動かさないでほっておくわけにもいかない。したがって、それを動かすために全体としてやりくりをして一時しのぎをやっておるというのが実情でございますから、全体としてそういうつらい状態になっておるわけでございまして、これはそういうことでぜひ御理解をいただきたいと思います。
  16. 三浦久

    三浦(久)委員 同じ答弁を繰り返されているので、この問題だけに時間を費やすわけにいきませんからあれですが、どう見たって、いま皆さん説明している理由と今度の増員理由というのは違うわけですよ。  それから、いままで何年もこの定員増員要求が認められなかったということ、このことはいろいろな理由があると思うのですよね。たとえば、そんな護衛艦ふやす必要ないとか、また財政的にぐあい悪いとか、いろいろな要素があると思うのですよ。しかし、少なくとも定員は増にならないでいままで来ているわけですから、にもかかわらず予算装備が通ったんだからということで、そっちへどんどんそれを就役をさせて、そして実質的には定員増と同じような状態をつくり出すというのは、私はやはりこの国会を軽視していることじゃないかというふうに思います。私が何回同じ質問をしても同じ答えしか返ってこないと思いますから、次に進みたいと思います。  リンク11の問題についてお尋ねいたしたいと思います。  護衛艦の「しらね」とか「くらま」、それからP3C、E2C、ここにリンク11というディジタルデータリンク、これが装備されていると思いますけれども、そうですか。
  17. 矢崎新二

    矢崎政府委員 リンク11というのは、御承知のように、データ通信によりまして各種データの迅速な交換を行う機能でございまして、こういった機能海上自衛隊の場合に非常に重要であるということはすでに御承知のとおりかと思います。  それで、従来……(三浦(久)委員結論だけでいいですよ」と呼ぶ)P3Cとか「しらね」「くらま」のお話でございますか、これに装備しているのではないかということのお尋ねがございまして、これは、例示的にそういったものについてはこの装備をしておりますということをお答えをした経緯がございます。
  18. 三浦久

    三浦(久)委員 装備しているわけでしょう。結論だけ答えてください。  リンク11というのはどういうものですか。
  19. 矢崎新二

    矢崎政府委員 このリンク11という装備は、データ通信によりまして二つ以上の無線局相互間を結びます通信回線、それからその回線に接続されております通信装置、これを総体としてリンク11というふうに呼んでおるわけでございまして、各種データの迅速な交換を行う機能を持っているものでございます。
  20. 三浦久

    三浦(久)委員 私は防衛庁に聞いているのですよ。科学技術庁に聞いているのじゃないのですよ。そんな説明だったらリンク11の説明にならぬでしょう。ほかにもあなたが説明したようなものはいっぱいあるわけですから、ほかのものと区別してリンク11というのはどういうものか、特にここは内閣委員会防衛二法が審議されているのですから、防衛目的との関連でもってリンク11というものはどういうものかということを説明なさらないと、本当の説明にはならないと思うのですね。もう一度答えてください。
  21. 矢崎新二

    矢崎政府委員 ただいま申し上げましたように、このリンク11という装備品は、各種情報を迅速、正確に交換をするということを主たる機能としておるわけでございます。これは複雑、迅速化いたします現代の対潜作戦でありますとかあるいは防空作戦、こういったものを有効に実施するために、艦艇間あるいは航空機艦艇との間の情報交換のために使用をされる機器でございます。
  22. 三浦久

    三浦(久)委員 各種情報と言いますけれども、それは戦術上の情報ですよね。これはアメリカ海軍戦術データシステムとして開発をされたものだというふうに私ども承知しておりますけれども、そうでしょうか。
  23. 木下敬之助

    木下政府委員 データリンクにつきましては、いま先生おっしゃいましたようにアメリカ使用されているのと同種のものでございますが、それをわが国でも使用しておるわけでございます。
  24. 三浦久

    三浦(久)委員 そうすると、第七艦隊、これはいろいろ艦船がありますけれども巡洋艦駆逐艦、こういうものはこのリンク11を装備しておりますか。
  25. 矢崎新二

    矢崎政府委員 米軍の各艦艇がどういった装備品個々に搭載をしておるかということについては、私どもとして申し上げ得る立場にないと思います。
  26. 三浦久

    三浦(久)委員 いや、そんなことはないでしょう。あなた、リンク11だから、リンクしているんだから。リンクしたそのリンクを、どういうところとリンクしているかというようなことを言う立場にないということはおかしいじゃないですか。これは装備しているんですよ。あなた、それを否定できないでしょう。じゃあ、自衛隊だけでリンク11でリンクしているのですか。そんなことないでしょう。だから私は、アメリカ海軍戦術データシステムとして開発されたのかと聞いているのです。それはそのとおりじゃないですか。  アメリカ海軍のこのディジタルデータリンクというのは三種類ありますでしょう。リンク11だけじゃありませんね。リンク4A、リンク14、こういうのがあります。この三つはそれぞれどういう性能なのか、それぞれの特徴、違い、こういうものをちょっと教えてください。
  27. 木下敬之助

    木下政府委員 アメリカデータリンク、どういう種類のものを持っているか、つぶさには存じませんが、一般に公刊されている雑誌等には、いまおっしゃったようなリンク11とかリンク14とかというものがあるというふうに書かれておりますが、具体的にどういうふうに違いがあるかという点は、技術的な中身に入りますので、答弁を差し。控えさせていただきたいと思います。
  28. 三浦久

    三浦(久)委員 それはおかしいですよ。リンク14があるというように聞いておるみたいな話をしているけれどもリンク14というのは、あなたたちがこれから最新の護衛艦じゃない護衛艦につけようとしているのでしょう。だから、あなたたち自身はその性能とかそういうものについては熟知しているはずですよ。そして、リンク11、リンク4A、リンク14、これはアメリカ海軍戦術データシステムなんだから、これについてあなたたちがそれぞれ検討してないなんということはないじゃありませんか。どういうものか、そんな詳しい性能は要らない、それぞれを区別する特徴だけ言ってください。
  29. 木下敬之助

    木下政府委員 リンク11あるいはリンク14等については、それぞれのシステムについての違いがあるわけでございますが、技術的な中身に立ち入りますので、答弁を差し控えさせていただきたいと申し上げておるわけでございます。
  30. 三浦久

    三浦(久)委員 委員長、ああいうことで答弁いいのですか。なぜ技術的なことが言えないのですか。それはおかしいじゃないでしょうか、委員長。  どういうものを装備しているのか。税金で買っているんでしょう、あなたたち。たとえばリンク11、リンク4A、リンク14、それぞれを検討して、リンク4Aというのは対航空機用なのですよね。そういうことぐらい言ったっていいじゃないですか、あなた。そしてまた、リンク11、リンク14の性能の違い、そういうふうなものを言ったっていいじゃないですか。  委員長、ちょっと誠実に答弁するように言っていただけませんか、秘密でも何でもないことですから。
  31. 愛野興一郎

    愛野委員長代理 委員長として申し上げます。  的確に、誠実に御答弁を願います。
  32. 木下敬之助

    木下政府委員 リンク11、リンク14の性能につきましては、作戦運用問題等にかかわる問題でございますので、技術的な内容についてはお答えを差し控えさせていただきたいと思いますが、リンク11は双方的なものであるけれどもリンク14は受けるだけというようなことをアメリカ雑誌等には書いてございます。
  33. 三浦久

    三浦(久)委員 なかなか口がかたいですね。雑誌に書いてあるということじゃなくて、あなたたち自身が持っているものじゃありませんか。リンク11というのは、一つ機動部隊を構成しますよね、それが戦艦であるとか航空母艦であるとか巡洋艦であるとか、P3C、E2C、そういうもので一つ機動部隊を構成するでしょう。そういう場合に、相手目標位置とか動きとか識別、そういうものが正確に把握できたとしても、それを艦と船との間、艦と航空機との間、こういうものを音声でやっておったのじゃなかなか手間がかかって即時性がない、正確性もないというのでコンピューター化しているものなのでしょう、そういうものでしょう。ですから、これは艦船防御上必要だということで、アメリカ海軍戦術データシステムとして開発をされたものじゃありませんか。そういうものをあなたたちがいまおつけになっていらっしゃるわけですけれども、なかなか口がかたくて言われませんので、ちょっと先に進みましょう。  このリンク11の情報というのは、あなた先ほど各種情報と言われましたけれども、大ざっぱに言うと、目標位置情報から成っているというふうに言っていいのじゃありませんか。たとえばソ連原子力潜水艦ソ連艦隊、またソ連航空機、特にバックファイアかもしれませんね、またソ連ミサイル、こういうものの位置、さらに識別、敵か味方か、進路、速度、高度、深度、さらに未来位置、こういう情報ではありませんか。
  34. 矢崎新二

    矢崎政府委員 要するに、艦艇なり航空機なりが持っておりますいろいろなデータ相互交換をするということを機能とする装備品であるということは御説明をしたとおりでございますが、実際にいま御指摘のございましたような個別のどういった情報を持っているのかという点になりますと、これは自衛隊作戦上の問題に密接に絡む要素でもございまして、私どもとしては、具体的にどういった個々情報を持って交換をしておるかということにつきましては答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
  35. 三浦久

    三浦(久)委員 P3Cというのは対潜哨戒機でしょう。そうすれば、原子力潜水艦の行動というものをずっとキャッチしているのじゃないですか、そういう情報を。どうなのですか。そんなことを言えないということはないでしょう、あなた。常識じゃないですか。
  36. 矢崎新二

    矢崎政府委員 P3Cの場合は、現在、常時警戒監視の任務についておるわけでございまして、常時何機かが飛行しておるわけでございますが、そのプロセスにおきましてどういったような情報をキャッチしてそれを処理しておるかということにつきましては、これは情報に関することでございますので、事柄の性質上具体的にお答え申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。
  37. 三浦久

    三浦(久)委員 質問をよく聞いてから答えてください。  私は、ある特定のソ連潜水艦がどう動いたかとか、そんなことを聞いておるわけじゃないでしょう。P3Cというのはそういうソ連原子力潜水艦の行動を哨戒活動によって監視しているのじゃないか、そういうことですよね。それからまたE2C、これは何も対潜だけじゃないわけですからね。それは、バックファイアが来たとか敵の艦隊が来たとかミサイルが飛んできたとか、そういう情報をさっとキャッチして、それでコンピューター化して、ディジタル化してすっと送るわけでしょう。そういうことぐらいは言えるでしょう。一般論として私は言っているので、具体的にソ連潜水艦の行動がどうだとかバックファイアの行動がどうだなんて、そんなことを聞いているのじゃないのですよ。そういうことでは時間ばかり食ってしまってしょうがないですね。  それでは、P3C、E2C、P2J、これはどういうような場所をどのような頻度で哨戒活動を行っておりますか。
  38. 矢崎新二

    矢崎政府委員 現在、大型対潜機によります日本周辺海域の哨戒といたしましては、日本海におきまして一日一機の割り、それから東シナ海及び北海道周辺では二日に一機というふうな割合で哨戒活動をやっております。
  39. 三浦久

    三浦(久)委員 P2Jはリンク11を積んでおりますか。
  40. 矢崎新二

    矢崎政府委員 先ほど申し上げましたように、かつて具体例としてたとえばということで申し上げたことがございますが、さらに詳しく個々飛行機がどういった装備品を持っているかということにつきましては、お答え申し上げるのは差し控えさせていただきたいと思います。
  41. 三浦久

    三浦(久)委員 P3CやE2Cについては言って、P2Jは言わないというのはどういうことなのですか。答弁に全然整合性がないですね。短い時間で質問しているのですから、もうちょっと誠実に答えていただきたいと思うのです。  じゃ、ちょっとしぼりましょう。  P3Cの情報というのは戦術上の情報、いわゆるタクティカルな情報だということは、それはいいわけでしょう。どうですか。
  42. 矢崎新二

    矢崎政府委員 この問題はかつて何回か御議論が出た経緯もございますが、タクティカルな情報と申しますのは、まさに対潜攻撃を行うような場合のその当該潜水艦についての情報ということでございますから、現在、平時におきましてそういった対潜攻撃の情報をとっているというようなことはございません。
  43. 三浦久

    三浦(久)委員 しかし、いますぐその情報に基づいてアメリカ軍が攻撃するか自衛隊が攻撃するか、それは別としても、そういうソ連の原潜の行動が哨戒活動によって監視され、その動き等々が全部伝送されているということははっきりしている事実じゃありませんか。P3Cの情報というのはリンク11を通じて送られるわけでしょう。その送り先は厚木の対潜作戦センター、それでございますか。
  44. 矢崎新二

    矢崎政府委員 P3Cが哨戒監視活動等をやりまして収集いたしましたデータの分析方法は二様ございまして、一つは、P3C自身が搭載しております電子機器による分析がございます。それからもう一つは、詳細な分析につきましては地上にある施設、厚木にあります音響業務支援隊等、そういうところで分析活動もやるということでございます。
  45. 三浦久

    三浦(久)委員 リンク11というのはアメリカ海軍リンクされているわけですね。そして、第七艦隊もこれを積んでいるということになりますと、日本海上自衛隊日本のP3Cが送ったその情報は、自動的に、たとえば第七艦隊のフラッグシップであるブルーリッジとか、また神奈川県の上瀬谷にあります。アメリカ海軍西太平洋艦隊航空部隊司令部、こういうところでも受信ができるのではございませんか。
  46. 矢崎新二

    矢崎政府委員 日米間におきましては、日米安保体制の円滑な運用という見地から、平素から必要な情報交換を行っているということは一般的に繰り返し申し上げているとおりでございますが、いま御指摘のP3Cが収集しました情報につきまして、これをアメリカ交換をしているかどうかというような問題につきましては、具体的な活動にかかわることでございますので申し上げるのは差し控えさせていただきたいと思います。
  47. 三浦久

    三浦(久)委員 そんな答弁ばかりじゃ困るのですよ。これはリンク11なんだから、みんなリンクしているんですから。あなたも先ほど交換ということを言われましたけれども、これは短波でやっているわけでしょう。ですから、送ればアメリカの第七艦隊のブルーリッジだってそれをとれるのですよ。交換をしているとか、していないという問題じゃないでしょう。自動的に入ってしまうのじゃないですか。そういうことを言えないとかなんとかといったって、全く事実に反することを言っているわけです。機械が自動的に受信してしまうわけですよ、リンクされているわけですから。  防衛庁長官、これはなかなか答弁できないというから私ちょっと話を進めますけれども、これは戦略的な情報でも何でもないのです。戦術上の情報ですよ。そういうものが常時アメリカ軍に流されている。日米安保条約上必要な情報交換するとなっていますけれども、この戦術上の情報を全部、のべつ幕なし平常のときにアメリカ軍に提供している、これがリンク11の本質なんですよ。こういうことは集団的自衛権の行使が禁止されている日本の憲法に違反しているのではないかと私は思うのでございますが、いかがでございましょう。
  48. 矢崎新二

    矢崎政府委員 日米間の情報交換と申しますのは、日本側から渡します情報については日本側の自主的な判断に基づいて処理をするという原則で対処しておりますので、いまおっしゃいましたような自動的に流れるというふうなものではないということは、ぜひ御理解いただきたいと思います。
  49. 三浦久

    三浦(久)委員 違いますよ。あなたがいまおっしゃったような情報交換のやり方もあるでしょう。しかし、リンク11で、コンピューターで制御されたそういうディジタルデータがぱっと行くわけでしょう。それはいろいろな記号を使ったり暗号を使ったりしているのでしょうけれども、非常に圧縮されたそういうものがコンピューターでちゃんと制御されて行くわけですよ。  それじゃ、それは厚木の対潜作戦センターにだけしか行かないのですか。そんなことないじゃないですか。リンク11があるのだから、第七艦隊の旗艦にだってそれはちゃんと受信できますし、さっき言った上瀬谷の航空部隊司令部、ここでも受信できるじゃありませんか。だから、情報交換というのは、あなたが言ったようなやり方のもあるし、自動的に機械を通じてぱっと入ってしまうのもあるのですよ。どうですか。
  50. 矢崎新二

    矢崎政府委員 何回も申し上げるようでございますが、私どもといたしましては、日米間の情報交換と申しますのは、日本側は日本側の自主的な判断に基づいてこれを実施するということでやっておるわけでございます。ただ、具体的にいかなる場合にいかなる情報をいかなる方法で交換をしているかということにつきましては、事柄の性質上御説明は差し控えさせていただきたいということでございます。
  51. 三浦久

    三浦(久)委員 壊れた蓄音器みたいなことを何回も言ってもらっても困るのですよ。だから、そういうやり方もあるが、P3Cの情報というのは、いわゆるリンク11を通じて発信されるものは全部アメリカの第七艦隊リンク11にだって受信できるわけでしょう。アメリカのだけには受信できないようになっているのですか。そんなことないじゃありませんか。それはもっと誠実に答えてくださいよ。どうですか。
  52. 矢崎新二

    矢崎政府委員 繰り返し御答弁申し上げておりますように、情報交換の、いかなる場合にいかなる情報をいかなる方法で交換をしておるかということにわたりますような点は、御答弁は差し控えさせていただきたいと思います。
  53. 三浦久

    三浦(久)委員 それはだめですよ。私も、情報というのは日本の国の判断でもってこれは出した方がいい、これは出さない方がいい、主権国家だとあなたたちが言うのだから、そうするのが正しいと思う。ところが実際には、こういうリンク11を取りつけることによってそういう判断はあなたたちができなくなっちゃっているわけです。もう自動的にすっとアメリカ海軍情報が提供されているわけです。ですから私はこれを問題にしているのですよ。それを答弁できませんと言うたって、機械は正直ですから、いつもアメリカ軍に情報が筒抜けになっているわけですよ。そういうことをあなたたちはやはり悪いことだと思っているから答弁ができないのじゃないですか。  それじゃ私、もうちょっと聞きましょう。  たとえば、いまは日本平時のときのことを言いましたけれども日本が平時でアメリカソ連が有事の場合、そういう場合想定されますね。たとえばベーリング海だとかオホーツク海でもってアメリカソ連が戦争をしたという場合に、日本のP3Cが、またE2Cが、ソ連原子力潜水艦であるとか艦隊であるとかミサイルであるとか、そういうようなものを絶えず哨戒監視をする、そしてそれがアメリカのやはりリンク11にキャッチされて、そしてどんとアメリカが攻撃をする、そういうようなことは許されるのですか。それは集団的自衛権の行使になるんじゃありませんか。  先ほどあなたは、平時の場合には捕捉して攻撃するに至らない情報の提供だからいいんだと言われましたけれども、じゃ米ソが有事、日本平時、こういう場合に、こういうような哨戒活動をやって絶えず米軍情報を送り続ける、このことは戦闘行動に参加をしたにも等しいことですよ。こういうことは集団的自衛権の行使を許さないとした憲法上の原則に違反すると思いますけれども、いかがですか。これは大臣、答えてください。
  54. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 まず原則のことから答弁させていただきますが、平時におきましても日米は緊密に情報交換をいたしております。もちろん、対等の立場に立ってこの交換が行われております。  それから、さっきタクティカルインテリジェンス、作戦情報という言葉をお使いになられましたが、わが方の作戦情報という概念は、あくまでも七十六条の自衛隊防衛出動下今後の情報ということになろうかと存じます。いま御指摘のような日米安保条約の第五条が働いていない時点で自衛隊法七十六条状態が起こるということは考えられないわけでございまして、当然、七十六条防衛出動の場合には日米安保条約第五条が発動している、こう考えられると思います。  したがって、いま御指摘のような状態の場合にどういう情報をわが方がアメリカに出すかということは、全く日本の側の独自の判断において行われることでございまして、いま先生の御指摘のような仮説に基づいてわが方の情報が自動的に動いていくというものではないというふうに御判断をいただきたいと思います。
  55. 三浦久

    三浦(久)委員 だから、それは私はうそだと言っているのですよ。リンク11というのは、アメリカの第七艦隊とかそういうものとリンクをされているということなんですよ。それは詭弁ですよ。P3Cを飛ばしてもその情報アメリカに行かない、そんなことは絶対にあり得ませんよ。
  56. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 先ほど政府委員から答弁させていただきましたように、リンク11というのはデータリンクの呼称でございますが、平時において私どもがどういうようなデータを集めておるかということが一つの問題でございまして、いま先生はタクティカルインテリジェンス、七十六条が働いた後の情報交換のことにちょっと触れられたと思うものですから、それについてお答えをしたわけでございます。  平時においてわれわれが、わが国に攻撃が行われていないような状態においてわざわざ、作戦行動が起こるであろう、相手を攻撃することに必要な情報を直ちに懸命になって集める、そのために作業をしているものではございません。その点は、そこを明確にしておいていただきたいと思うのでございます。
  57. 三浦久

    三浦(久)委員 それはあなた、頭の上でそう言っているだけで、実際は情報が打っちゃっているんだから。機械でもって、コンピューターでもって打っちゃっているんですから。それは行かないということを前提にして答弁しているわけですからね、それはもうだめです。  では、もう一つ論を進めましょう。日米が有事のとき、こういうデータリンクでもってアメリカ海軍と直結をしていればどういうことになるか。これは指揮の一元化という問題が当然起きてくるんじゃありませんか、どうですか。
  58. 矢崎新二

    矢崎政府委員 日本有事の場合に、安保条約第五条が発動されますと、日米共同対処、これによりまして日本防衛をやっていくということになるわけでございますが、その場合のやり方は、あくまでも指揮系統はそれぞれ別個に動くわけでございます。それはガイドラインにも示されているとおりでございまして、日米間の作戦の調整は、それぞれの自主的な立場で密接な協議を行いながら調整をされていく、こういう形になるのは御承知のとおりでございます。
  59. 三浦久

    三浦(久)委員 緊急のときにそんなことをやっている暇はないはずなんですよ。それは、大きな立場日本海上自衛隊が全部アメリカ軍の指揮下に入るとか、そういうことは考えられないかもしれない。しかし局部的にはアメリカの指揮下に入ることは可能なんですよ。  たとえば、あなたたちは、日本有事のときにはアメリカ航空母艦自衛隊が護衛するということは憲法違反ではない、やってもいいことだ、こうおっしゃっておられますね。そうすると空母を輪形陣でもってずっと護衛していきますね。いろいろな船があるでしょう。P3CもE2Cもそれに参加するでしょう。そしてそれは、艦と艦、艦と航空機、この間はお互いにリンク11でもって情報交換し合いながら行くわけですよ。そのときにどういう状態になるかというと、リンク11を積んだ船がいっぱいおりますわね、何隻かおる、そのときには一つの艦がネット管制局になるわけです。それでなければ、リンク11を積んだのがそれぞれ勝手に指揮したら大変なことでしょう、戦闘行動をやる場合に。ですから、その一つ機動部隊の中で、たとえば航空母艦がなるかまたはブルーリッジがなるかわかりません、しかし、それは一つだけネット管制局を決めなければいけないのです。そして、それを中心にして情報交換が行われていく、そういうことになるわけですね。  そうすると、あなたの言い方であれば、アメリカ軍と一緒に行動する場合に、アメリカアメリカ日本日本で行動する、指揮、命令は別だ、こんなことはあり得ない。そんなことをやったら、あなた、航空母艦を守れなくなっちゃうでしょう。だから、リンク11をつけたことによって局部的な戦闘行動の場合には指揮が一元化されざるを得ないのですよ。ですから私はこのリンク11というのはきわめて危険だというふうに言っているのですけれども、その点どうですか。     〔愛野委員長代理退席、委員長着席〕
  60. 矢崎新二

    矢崎政府委員 ただいまのお話は、わが国の艦艇が米国の艦艇を護衛する場合を例にとられまして、それが結果的にアメリカの指揮下に入らなければそういう行動はできないのではないか、こういう御指摘のようでございますが、私どもが考えておりますのはちょっと逆でございまして、私どもは、まずそれぞれが指揮権を別個に持っておる、それが日米が共同で作戦を行う、これが原則でございます。したがって、そういう原則を保ちながらどういった具体的な作戦活動が可能であるかというふうに考えていくわけでございまして、両方の指揮権が別々に、しかも調整されながら協力していけるという限度での作戦行動をやるわけでございますから、そこの辺は誤解のないようにぜひお願いしたいと思います。
  61. 三浦久

    三浦(久)委員 だって、本当にそんなことをやったら戦争にならぬでしょう。あなたたち、戦争できないでしょう。私、戦争やれと勧めているわけじゃないですよ。  ここに、安全保障制度調査会、これはあなた、どういう性格のものか知っておりますでしょう。ここで第一回研究会の報告書がある。これは自民党の先生方がたくさん出席されております。ここで元統幕の事務局長だった左近允さんが発言されていますよ。何と書いてありますか。これは四十六ページに「たしかに共同作戦を調整でやるのは今おっしゃったように、なかなか難しいと私は思います。ただ指揮系統と言いましてもですねこというようなことをずっと言って、こういうことを言われている。「例えばアメリカのP3Cが潜水艦を見つけた、そして近くにいたのが日本護衛艦であって、その現場にかけつけたといった場合ですが、そのアメリカのP3Cの機長と日本護衛艦の指揮官が並列でやっているのでは何もできませんので、その場合には手続的にこれはもう護衛艦の艦長が飛行機をですね、コントロールしていいというふうになっております。」こう言われているのですよ。  ですから、たった艦艇とP3Cが一緒に共同行動をするという場合だって、それぞれが別々の指揮系統でやっておったんじゃできませんよ。ですから、どっちがが、まさか飛行機の方が指揮するわけにいかないから、護衛艦の方があっち探せこっち探せと指揮をする、こういうふうになっていると言うのです。そうすれば、これはP3CがアメリカのP3Cなんだけれども、逆に日本のP3Cで、そしてアメリカ艦艇だったら逆のこと、アメリカの指揮に基づいてP3Cがやる、それでなければ実際の戦闘行動はできないんですということを左近允さん自身が言っているじゃありませんか。そんなことは常識です。  ですから、私は戦争やれと言うんじゃない。こういうリンク11というものを装備することによって、日本は戦争をやった場合には指揮の一元化になってしまうし、また、日本がまだ平時で米ソが有事のときには、それに積極的に情報を提供して、これはまさに戦術上の情報ですよ、それを提供するんですから、そうすると日本は、完全にアメリカと同じと見られて相手の国から攻撃を受けるでしょう。そうすればわれわれは、アメリカソ連が戦争した場合に自動的に戦争に巻き込まれてしまう。まさに安保条約の危険性というのは、このリンク11というものを装備したことによってきわめて大きくなってきているというふうに思うのですよね。ですから私は、このリンク11の装備を撤回するように要求したいというふうに思います。どうですか。
  62. 矢崎新二

    矢崎政府委員 ただいまのお話の中に、P3Cと護衛艦との調整の問題をお触れになりましたが、これはまさに私が最初から申し上げておりますように、そういった共同行動をどうやってうまくやっていくかということを、方法論を研究することがガイドラインに決めてあるわけでございまして、そういった方法論が開発されていけば、具体的な場面におきましては、艦艇航空機が国籍を異にする者同士で協力をしていくということは可能になるわけでございます。  それからもう一つリンク11を装備することによって米ソの戦争に自動的に巻き込まれる云々というお話がございましたが、私ども海上自衛隊戦術、タクティカル情報というものを潜水艦攻撃のために集めていくという場合は、これはあくまでも大臣が申し上げましたように日本有事、七十六条発動の場合ということでございまして、そしてまた、安保条約五条が発動されますればそこに日米共同対処ということになっていくわけでございますから、それはあくまでも日本はすでに攻撃をされておるという土俵の中の話でございまして、あとはわれわれがいかに日本を守るかという方法論の問題にすぎないというふうに私は理解をしておるわけでございます。したがいまして、いま御指摘のような、リンク11を撤回しろというような御要請には応じかねる次第でございます。
  63. 三浦久

    三浦(久)委員 結局、事態はここまで来ているということなんですよ。あなたたちは自分の取捨選択に基づいて情報を提供すると言っているけれども、そうじゃない。リンク11を装備したことによって自動的に行っているんですよ。それを故意にあなたたちは隠している。これはきわめて国民に対する背信行為だと私は思いますよ。何でそういうことを堂々と言って、そうして国民の判断を仰ごうとしないのですか。われわれは、この日本の民族が米ソ戦争に巻き添えを食って、そして限定核戦争の犠牲になるというようなことは絶対に許されないことだという立場質問しているのです。あなたも、また防衛庁長官の答弁も、アメリカには絶対に情報が行ってないんだということを前提にしているわけで、それは私は納得できない。しかし、またちょっと時間の関係がありますから先に進みます。  さくら2号の自衛隊利用についてでございますが、これはもう前置きはやめます。  五十九年度、このさくら2号に関する概算要求はどのくらいされておりますか。
  64. 木下敬之助

    木下政府委員 防衛庁として大蔵省に予算要求しておりますのは、電電公社に支払う回線料、それから端末機器経費等合わせまして約二億二千万円でございます。
  65. 三浦久

    三浦(久)委員 その内訳ですが、一億六千六百万円は使用料。その使用料の内訳ですが、加入電話が四、専用回線が十四回線。端末装置、これの予算が五千四百万。そういうふうに承ってよろしいですか。
  66. 木下敬之助

    木下政府委員 大体おっしゃったとおりでございます。
  67. 三浦久

    三浦(久)委員 これは大変問題があると私は思うのです。硫黄島には自衛隊がおって、硫黄島の隊員の皆さんと家族となかなか連絡もできない、通話もできないと、何かまるで人道上の理由でさくら2号を利用するみたいなことを言っておりますけれども、そういうことであれば公衆電話でもつくればいいんじゃないですか。加入電話が四、これだけでもいいじゃないですか。それをいま専用回線を十四回線も取っておる。そして端末装置までつける。これはコンピューターの端末装置です。そうすると、これは自衛隊が専用で使うということですよ、硫黄島に地上局をつくって。そうするとどこと回線を結ぶのですか、十四回線を取っていますけれども。どうですか。
  68. 木下敬之助

    木下政府委員 防衛庁は現在、電電公社との間で電電公社の回線をいろいろ利用させていただいておりまして、全体として約千回線ぐらい使っているわけでございます。その中では、もちろん専用回線等もたくさんございまして、ファクシミリとかテレックスとか、そういう端末機器を置きまして情報の連絡をやっておるわけでございます。それと同じようなことを硫黄島の機器についても行いたいということで、予算要求しているわけでございます。公衆電話につきましても、隊員等のことを考えまして三つぐらい置いてほしいというような希望を私どもとしては持っております。
  69. 三浦久

    三浦(久)委員 ちょっと質問に答えていませんね。どことこの硫黄島の十四回線はつなぐのですか。
  70. 木下敬之助

    木下政府委員 電電公社の通信網を利用させていただくわけでございますから、電電公社の地上局を介して使わせでいただくわけでございます。
  71. 三浦久

    三浦(久)委員 答弁ありませんね。この専用線というのは家族の連絡用じゃないでしょう。これは、ある部隊部隊間の、いわゆる硫黄島の部隊と他の自衛隊部隊、どこか知りませんけれども、そういうところとの間の連絡、それから指揮、そういうものに使うものではないのですか。
  72. 木下敬之助

    木下政府委員 いま防衛庁としては、予算要求といたしまして加入電話四回線、専用回線十四回線、それから公衆電話等を三回線ぐらい置いてほしいということで電電公社にお願いしようとしておりますが、個人的な家族との連絡は当然公衆電話を通じて行ってもらうわけでございます。(三浦(久)委員「専用線は……」と呼ぶ)  それで、あと自衛隊として使いますものは、自衛隊の任務遂行のため、それから自衛隊の任務遂行の中には隊員の福祉厚生に関する業務も入っておりますが、そういうものを含めての全般的な事務連絡に使わせていただきたいと考えておるわけでございます。
  73. 三浦久

    三浦(久)委員 そうしますと、あなたたちが専用回線を契約するということ、このことはやはり衛星の軍事利用を禁止した国会の決議に反していると私は思うんですよ。これはもう私が詳しく申すまでもなく、ことしの四月二十七日、衆議院の外務委員会で安田科学技術庁長官が、この国会決議の平和目的に限るというのは軍事的な利用は禁止されているというふうに解釈している、こういうふうに言われている。  軍事的な利用というのは何かといえば、それは戦時、いわゆる有事に軍隊を指揮運用したり、または軍事力を行使して自分の国を防御する、そういうことだけではなくて、平時にあっても、たとえば自衛隊を募集するとか、また部隊の編成、維持管理、こういうようなもの、これもやはり軍事だということはもう常識ですね。そうすると平時の場合はもとより、有事の場合だったらこの専用回線を使っていろいろな部隊を指揮したり何かするでしょう。そうすると、これは軍事目的の利用というふうに言えると私は思うのですが、どうでしょうか。
  74. 木下敬之助

    木下政府委員 硫黄島に電電公社の地上局を置いていただくことを電電公社にお願いしますにつきましては、科学技術庁、それから郵政省とも十分御相談いたしまして、宇宙開発事業団法の「目的」にある「平和の目的に限りこということ、あるいは四十四年の国会決議の中にあります「平和の目的に限りこという条項についてどう考えるかということで検討いたしました結果、電電公社の地上局を硫黄島に置いていただくという点については問題ないということで政府としては結論が出まして、今回の予算要求等の措置をとらせていただいたわけでございます。
  75. 三浦久

    三浦(久)委員 だから、あなたがそれは国会決議に違反しないとかそういうことを言われるのは結構です。ただ私は、それじゃ自衛隊が戦時に、有事のときにこれを使うとか、それから平時においてもまた、部隊の維持管理また編成、そういうものにこれを使うということは軍事利用ではありませんかと聞いているのです。それが国会決議に違反しているか、していないかはまた次の段階。軍事利用ではありませんかと聞いているのです。
  76. 木下敬之助

    木下政府委員 軍事がどのようなことを言うかについては明確な概念また定義があるわけでないと承知しておりまして、したがいまして、自衛隊の利用に軍事利用があるかどうかという点については明確にお答えできないということでございますが、ただ私どもとしては、自衛隊の任務遂行のために使わしていただきたいと考えておるわけでございます。
  77. 三浦久

    三浦(久)委員 軍事というのは明確な概念がないなんて、そんなことはないですよ。軍事用語辞典でも引っ張ってごらんなさい、あなた。ちゃんと書いてあるでしょう。部隊の編成とか自衛隊の募集とかは軍事かどうかわからない、そう言われるから、それじゃ日本有事の際にその専用回線を使って部隊を指揮して戦闘行動をさせるということは、軍事利用じゃないのですか。
  78. 木下敬之助

    木下政府委員 軍事という言葉についてはいろいろな事象等で定義があるかもしれませんが、私どもとしては、憲法に基づいて認められております自衛隊の行動を行うということでございまして、その任務のために使うことは、この電電公社の回線という形で使わしていただくことは特に問題がないというふうに考えております。
  79. 三浦久

    三浦(久)委員 軍事利用かどうかということを聞いているのです。問題があるかないか聞いているのじゃありません。政府の答弁でも、軍事利用は禁止されているということが言われているんですよね。先ほど御紹介したとおりであります。ですから、日本有事の際にこの専用回線、さくら2号を使った専用回線、これを使って部隊を指揮し戦闘行動に当たらせるということは、これは軍事利用ではないかと私は聞いているのです。構わないかどうかということを聞いているのじゃないのです。答弁させてください。
  80. 木下敬之助

    木下政府委員 政府の過去における答弁でいろいろと御答弁があったかと思いますが、軍事利用に使わせないというような形での御答弁があったとは必ずしも私どもは理解しておりません。
  81. 三浦久

    三浦(久)委員 それならそれで結構ですよ。だけれども、いま私が言ったことは軍事利用ですかどうですか。これだけちょっと答えてくださいよ。
  82. 木下敬之助

    木下政府委員 再三同じことを申し上げてまことに恐縮でございますが、軍事ということの定義は、たとえば軍隊ということの定義と同じようにいろいろと使われているわけでございますので、その定義がはっきりしない段階で、それが軍事か、軍事でないかということを申し上げるのはなかなかむずかしいということでございます。
  83. 三浦久

    三浦(久)委員 ちょっとふざけた答弁じゃないですか、いまのは。ふざけていますよ。自衛隊が戦闘行動をする、それを指揮するということは軍事かどうか、それは軍事問題でしょう。何なんですか、それは。軍事かどうかということですよ。自衛隊が鉄砲を撃つ、ある指揮官が指揮をしてミサイルを撃たせるとか大砲を撃たせるとかいうことは軍事じゃないのですか。軍事でしょう。(「そんなことはしないよ」と呼ぶ者あり)そんなことしなきゃ要らないじゃないですか、あなた。ドンパチやるために置いてあるんじゃないの。だめですよそんなふざけた答弁は。防衛庁まじめじゃないよ。(「まじめにやったらみんな筒抜けになっちゃうよ」と呼ぶ者あり)何言ってるんだよ、あなた。アメリカに筒抜けになっているんだよ。  委員長、それが軍事かどうかということをおっしゃらないというのは、私は答弁拒否だと思うのですよ。けしからぬ。
  84. 木下敬之助

    木下政府委員 再三同じような答弁でまことに申しわけございませんが、私どもは「平和の目的に限りこという点についての国会決議あるいは事業団法の目的の条項について十分検討させていただいた結果、このような結論を出したわけでございます。
  85. 三浦久

    三浦(久)委員 もう時間ですからやめますけれども、しかし実際ふざけていますよ。自衛隊は平和を守るためにあるんだから、自衛隊が戦争するのに使ったって平和利用なんだ、平和目的なんだ、そういう考えでしょう。それだったら何のためにこういう国会決議をしたのですか。あなたたちの考え方は、結局は自衛隊というのは憲法に認められておる、日本の平和を守るためにある、だから自衛隊がいろいろ戦闘行動するのも平和目的なんだ、そういうことでしょう。それなら平和と戦時との区別はつかないじゃないですか、軍事との区別もつかないんじゃないですか。そんなでたらめなことを言ってもらっちゃ困ります。  時間が来たようですから、私はもう押し問答してもしようがありませんからこれでやめます。
  86. 橋口隆

    橋口委員長 これより内閣総理大臣に対する質疑を行います。市川雄一君。
  87. 市川雄一

    ○市川委員 総理に、防衛、外交について当面する諸問題をお伺いしたいと思います。  その前に、せっかく総理がお見えですから、一昨日ビルマのラングーン市内で起きた韓国の閣僚に対する爆弾テロ事件、各国に衝撃を与えて非常に遺憾な事件だと思います。今回の事件に対し韓国の全斗煥大統領は、犯人は北朝鮮であるとして厳しく非難しており、またビルマに対しては北朝鮮に断交を求める動きも伝えられておりまして、北朝鮮への対決を一段と厳しくしておるわけでございます。また、韓国のこれまでの北方政策も恐らく再検討されるのではないかということで、非常に憂慮される事態になっておりますが、今回の事件について韓国の対応あるいは今回の事件についての情報、朝鮮半島並びにアジアの情勢への影響などについて、総理のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  88. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 今回のラングーンにおきまする事件はきわめて不幸な事件でございまして、韓国の有力閣僚が大きな遭難事件に遣われましてお亡くなりになりましたことにつきましては、心から哀悼の意を表し、お見舞いを申し上げる次第でございます。私も、昨日全斗煥大統領閣下にお見舞いの電話をいたしまして、速やかに真相が究明され、事態が収拾されることをお祈りいたしておりますということを申し上げておきました。  真相はどういうことであるか、いまだわかりません。いずれにせよ、このようなテロ行為はまことに憎むべきひきょうな行為でございまして、このようなひきょうな行為が地球から永久に姿を消すように、私たちは今後とも国際的にも国内的にも協力してまいらなければならないと考えております。  なお、この真相につきましては、外務省等も懸命に情報の収集を行っておるところでございますが、まだわれわれが確信をもって申し上げるような真相究明の情報には接しておらない状況でございます。
  89. 市川雄一

    ○市川委員 次に、いよいよあすロッキード裁判の丸紅ルートの判決が下るわけでございますが、私たちは、もしあすの裁判の判決で田中元首相が有罪であるという判決が下った場合、これは議員を辞職すべきである、こういうふうに考えております。総理は、いままで国会答弁をされてきましたその中で、田中元首相は非常に見識のある方である、したがって恐らく田中元首相個人が判断されるであろうというふうに答弁をされてきましたが、田中元首相が有罪の判決を受けながらなおかつ辞職しないという事態が起きた場合、それでも総理はその辞職しないという立場を支持されるお立場がどうか、これを伺いたいと思います。
  90. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 この問題につきましては、私は国会におきまして私の所信を申し上げておりますように、まず第一に、三権分立の原理をわれわれは遵守していくべきものであると思います。司法府は立法府を侵さず、立法府は司法府を侵さず、また行政は立法を侵さず、立法は行政を侵かさず、三権がおのおの適切なる分限を守りながらチェック・アンド・バランスをしていくのが民主政治を有効に運用するゆえんである、そのように考えておりまして、この問題につきましても、そのような基本立場を持っておる次第でございます。  なお、日本は法治国家でございますから、法の支配という点も、私たちは長い日本の運命を考えますと、これを厳格に守っていかなければならぬと思うところでございます。しかし、政治倫理という部面もまた国会あるいは国会議員につきましては存在すると思います。これらの問題につきましては、事態がいかに展開してくるか、静かに見守ってまいりたいと思っておる次第でございます。
  91. 市川雄一

    ○市川委員 有罪の判決が下って田中元首相が辞職しない、こういう場合に総理はどうお考えかというふうにお尋ねしているのですが、いま三権分立というお話がございましたけれども、私たち個々に、衆議院議員として今回の事件についてどう思うかということは当然問われていると思うのです。  そこでお伺いしますが、院として、衆議院として一つの政治的道義的責任を明らかにする上においても、われわれ野党は辞職勧告決議案を提案し、これを上程すべきだ、こういう立場に立っているわけですが、自民党の総裁として、この問題について総理はどういうふうにお考えですか。もし田中元首相に有罪の判決があり、なおかつ辞職しない場合という条件ですが、どうですか。
  92. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 国会議員の身分に関する問題につきまして、仮定の状況のもとで問答を繰り返すことは適当でないと私は考えておりまして、いまの御質問につきましては差し控えさせていただきたいと思う次第でございます。
  93. 市川雄一

    ○市川委員 仮定といっても、あしたはっきりするわけでございます。その場合、この事件についてどう思うのか、また判決についてあるいは田中元首相の進退についてどう思うのかということは、当然政治家として意見を求められると思うのですね。総理はいま、田中元首相、現首相、こういう関係にあるわけですが、総理の権威を守るという意味において、もし有罪の判決が下った場合、話し合うとかアドバイスするとか、そういうお考えは全くありませんか、どうですか。
  94. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 先ほど来申し上げておりますように、本院に所属する議員の身分に関する問題につきましては、仮定の問題についてお答えすることは不適当であると思いますので、差し控えさせていただきたいと思います。
  95. 市川雄一

    ○市川委員 次に、解散の問題について伺いたいと思います。  テレビ、新聞でいま解散がうわさされております。総理は、いま国民に信を問わなければならない必要性があるとお考えですか、あるいは国民に信を問わなければならない、そういう差し迫った課題がいまある、こういうお考えですか、どうですか。
  96. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 前から申し上げておりますように、中曽根内閣ができました一つの大きな理由は行革断行にある、そのように考えておりまして、行革を推進していくこと以外については何も考えておりません。  解散の問題につきましては、その行革というものをすべて中心に考えておるのでありまして、そういう面からも、前から申し上げておりますように任期満了をもってよしとするという考えは変わっておりません。
  97. 市川雄一

    ○市川委員 解散権は総理の専決事項だとも言われ、歴代の総理はこれを伝家の宝刀という表現でも言われているわけです。総理になった以上はこの伝家の宝刀を抜きたい、抜かないで終わりたくないというのが総理であるというふうに言われておりますが、中曽根首相はどうですか、伝家の宝刀を一回抜いてみたい、こういうお気持ちになられたことはありませんか。どうでしょう。
  98. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 前から申し上げているように、解散というようなものは、国会議員定員五百十一名、この首を切るという大それたことでございまして、そのような大それたことというものは挑んでやるものではない。でありますから、私は議員任期満了をもってよしとすると一貫して申し上げてあるので、この考えは変わっておりません。
  99. 市川雄一

    ○市川委員 この秋、西独のコール首相、アメリカのレーガン大統領、また中国共産党の胡耀邦総書記が国賓、公賓でお見えになるわけですね。政府が招待されている。一般に、こういう公賓とか国賓がお見えになっているときにちょうどたまたまそれが解散、総選挙とぶつかる、こういうことは外交儀礼上好ましくないのではないかという意見がございます。一般論として、総理はどういうふうにお考えですか。
  100. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 私は任期満了をもってよしとするということを一貫して言っているのでございまして、別に関係ございません。
  101. 市川雄一

    ○市川委員 もうちょっとお伺いしたいのですが、本題へ戻ります。  レーガン大統領の訪日が予定されておりますが、今回の日米首脳会談の主要議題、いま総理のお考えになっているのはどういうものでございますか、お聞かせいただきたいと思います。
  102. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 まだ議題が両国間で正式に詰まったわけではございません。しかし、アメリカ大統領が公式に日本を訪問するという大きな場合でございますから、それにふさわしいような話し合いをしなければならぬと思っております。  現在の世界情勢の問題、特にINFの問題は日本にとって非常に緊切な問題でございまして、これらに対する考え方、すでにわれわれは合意を見ておりますけれども、今後の展開やら、そのほかの問題等につきましても話し合ってみたいと思っておりますし、また南北問題等につきましても、世界的にこの問題はますます重大化しつつある状況でございまして、これらの問題についてもよく腹を割って話し合ってみたいと思いますし、両国関係の問題につきましても、政治、経済、安全保障、そういうあらゆる場面におきましてさらに緊密に協力関係を充実さしていくという観点から話し合いを進めてみたいと思っております。  大統領と総理大臣との話し合いでありますから、基本的な性格を持っている問題を話し合いまして、わりあいに日ごろの問題という類のものは、事務レベルあるいは外務大臣、関係省、関係大臣レベルでできるだけ解決するように努力してまいりたいと思っております。
  103. 市川雄一

    ○市川委員 いまINFの削減交渉が行われておるわけですが、アメリカの欧州への中距離核兵器の第一次配備予定は三カ月以内というふうに、期間は非常に差し迫っているわけです。最終ラウンドを迎えて米ソでいま交渉が行われておりますが、非常に難航している様子がうかがえるわけでございます。  いま総理は、日米首脳会談で、一つの議題としてINFの問題ということをおっしゃられましたが、総理はこの交渉にどんな見通しをお持ちでございますか。
  104. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 INFにつきましては、アメリカ側は三月にまず一応の考えを最近出しました。それから五月のウィリアムズバーグのサミットにおきまして、われわれの合意を声明書で出したわけでございます。この基本立場は、自由世界は分裂しない、一丸となってこの問題に相対処する、そして軍縮あるいは核兵器の削減、撤廃を目指して努力していく、そういう趣旨の構えで声明をつくって、それをいま推進しておる次第でございます。  最近アメリカがまた中間提案を出しましたが、これらはいずれも、ソ連を交渉の場所に引き入れよう、そしてわれわれが経済サミットで話し合った線を実現しようというアメリカの善意のあらわれであり、努力の表現でございまして、ソ連側がこのアメリカの話し合いに応じてテーブルに着いて話を進行させるように希望してやまないところでございます。
  105. 市川雄一

    ○市川委員 いまもお話が出ましたが、ウィリアムズバーグのサミットの声明において、総理は政治声明に参加されたわけですね。これは、欧州への核配備を予定どおり今年中にやるべきだ、こういうことだと思うのです。そうしますと、先日アメリカの国防省で、核ではありません、非核でありますが、巡航ミサイルトマホークを日本に地上配備したらどうかという、非常にそれが望ましいというような意見が提言として出てきている。総理は、欧州では核配備をやるべきだ、ソ連をテーブルに引き出すためとかあるいは削減交渉に応じさせるためとかという理由は仮にあるにせよ、欧州への米国の核兵器の持ち込み、配備、これは支持した。総理は、よく西側の一員とおっしゃっておりますが、そういう中で、それでは、世界情勢は変わってきた、SS20とかバックファイアとかソ連の極東の情勢に対応して日本にも核兵器を配備したらどうだ、こういうふうにもし言われた場合に、日本は非核三原則でございますからということは非常に言いづらくなるのではないか、こういうふうに思うのですね。  ですから私たちは、SS20のヨーロッパでの妥結、それがアジアにSS20が来るということについて、これはもちろん反対であります、反対でありますが、だからといってヨーロッパヘの米国の核兵器の持ち込みは結構でございます、やりなさい、しかし日本への持ち込みは困ります、こういう論理が通用するのかしないのか。そういう意味において、総理がサミットにおいてあのNATOの政策決定に関与したような態度の表明は、日本の将来、非核三原則の国是を危うくするのではないか、このように思うのですが、総理の見解はどうですか。
  106. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 日本は非核三原則を守ってまいるつもりでおります。  ヨーロッパの局面におけるNATOとワルシャワ条約体系の対立の構造とアジアにおけるこの構造とはまるっきり条件も違うのであり、国柄もまた違うわけであります。わが国は非核三原則を堅持してきておるのでございまして、この国是は、われわれはこれを守っていくとかねてから申し上げているのでありまして、それはまたアメリカも理解しているところであり、またアジアやそのほかの周辺諸国家もこれを了解し、理解しているところでありますので、この原則を崩す理由はないとわれわれは考えております。
  107. 市川雄一

    ○市川委員 要するに、ヨーロッパへの核配備はいい、日本は困るというのは、いいと言った以上、日本立場を非常に弱めたのじゃないかと思うのです。  ヨーロッパとアジアと別だ、こうおっしゃいますが、別じゃないと思うのですね。ヨーロッパでもSS20という戦域核ミサイルの問題から起きている。まさにアジアでもこれから起きようとしている。したがって、戦艦ニュージャージーの核巡航ミサイルの搭載という問題が起きてきておるわけです。ですから、決してアジアとヨーロッパは違うということじゃないと思う。近い将来ヨーロッパと同じ問題が、ヨーロッパでは地上と地上の対抗ですが、極東では海と海の問題で必ず起きてくるというふうに私は思っております。  そこでお伺いしますが、いわゆる日米安保条約に関連した事前協議、その中に、核持ち込みは事前協議の対象になる、しかし、総理も御承知のようにライシャワー発言では、持ち込みの中に一時寄港とか領海通過が含まれるのかどうか、アメリカ側はそれが含まれていないという見解だということをライシャワー元大使はおっしゃったわけでございます。これが絶えず日米間で、日米間というか国民の、核持ち込み事前協議と言うけれどもどうも核を搭載した米艦船日本に寄港しているのではないか、核は持ち込まれているのではないのか、こういう疑惑を呼んでいるわけですが、もし総理がそこまで胸を張って非核三原則を堅持するとおっしゃるなら、レーガン大統領がお見えになったときに、これは非常に重要な問題ですから、レーガン大統領との間で、日本で言う事前協議の核持ち込み、この核持ち込みの中には一時寄港、領海通過、これは含まれているんだということで確認をなさったらどうか、確認をしたということを国民に発表したらどうか、そして国民の疑念を晴らすということをおやりになるお考えはないかどうか、お聞きしたいと思います。
  108. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 この問題は長い間国会でも御論議があり、そして政府も非核三原則を国是として守ると言ってまいりまして、もし万一核兵器持ち込みを言われた場合には断る、国会でも何回も答弁しておるのでございまして、すでに確立されておるわが国の基本方針でございます。先方もこれをよく了解しているところでありますので、そのように御理解をしていただきたいと思っております。
  109. 市川雄一

    ○市川委員 しかし、ラロック証言とか元ライシャワー発言とか、あるいは先日のカーター元大統領の要するに日本近辺での米艦船は全部核を搭載しているという発言など、絶えずそういう問題が起きてくるわけです。ですから、そういうふうにはっきりしているとおっしゃるなら、もう一度確認して、発表したらどうですか。せっかくレーガン大統領がお見えになるのですから、日本で言う事前協議の核持ち込みの中には一時寄港も領海通過も入っている、米側もそれは了解したということを確認するということは、そんなに時間のかからないことだと思うのですが、それはどうですか。
  110. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 先般も安倍外務大臣がアメリカ大使にこの問題について話もしておるところでございまして、もう何十遍となく国会で正式に答弁もしておるところでございまして、特別にそういうような話し合いをこちらから提議してやるのもどうかと思いますが、御意見として承っておきます。
  111. 市川雄一

    ○市川委員 先日、安倍外務大臣がなさったというお話ですが、安倍外務大臣はこのトランジットの問題は触れていないのですよ。ですから申し上げているということを申し上げておきます。  次に、防衛費の対GNP比一%枠の問題についてお伺いしたいのですが、先日、参議院の決算委員会で、この対GNP比一%というのは決算ベースか予算ベースかという議論がありました。大蔵省も、またいまいらっしゃる防衛庁長官も、当然決算ベースでもその趣旨は守られるべきであるという趣旨の答弁をなさったというふうに聞いております。総理も、決算ベースでも対GNP比一%は反映されるべきである、守られるべきである、こういう考えにお変わりはないかどうか、お聞きしたいと思います。
  112. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 予算ベースでも決算ベースでも守るように努力してまいりたいと思っております。
  113. 市川雄一

    ○市川委員 総理は、ことし一月に訪米されたとき、アメリカの記者の質問に答えて、「防衛計画の大綱の水準を達成してから、次のシナリオづくりにかかることになる」、こういうふうにおっしゃったということがかなり大きく報道されました。この「次のシナリオ」というのはどういう意味でおっしゃったのか、お伺いしたいと思います。
  114. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 「防衛計画の大綱」を達成しないうちに次の問題にかかるということはあり得ない、そういう意味であり、ともかく「防衛計画の大綱」を達成するということが当面私たちが一生懸命やる仕事でありますという意味のことを申し上げたのであります。
  115. 市川雄一

    ○市川委員 次のシナリオというふうにいろんな新聞に出ておるのですが、次にお伺いいたします。  いま総理、厚木で離着陸訓練による騒音が大きな問題となっております。御承知かと思います。それから神奈川県の逗子市では、池子弾薬庫の跡地に米軍住宅をつくるということで、住民が、緑の破壊、環境破壊ということで緑を守りたいという気持ちから、非常に強い反対をしております。また厚木におきましては、日米安保条約に対する賛成、反対の立場を超えて、自民党の方々も含めて、人道上この空の暴力はもう限界を超えている、こういうところまで来ております。  国の防衛政策を進める上で国民のコンセンサスというものは非常に重要だと思うのですが、特にこうした問題、その地域の住民あるいは地方自治体の意向というものをかなり尊重しなければならないと思うのですが、まず基本的に総理どうですか、地方自治体も六市、あるいは神奈川県も、厚木の問題もあるいは池子弾薬庫跡地の米軍住宅も含めて、かなり強い反対の意思表明をしております。これを全く無視して進めるということは困難かと思います。そういう点でまず、総理は、地方自治体や周辺住民の意思は十分に尊重する、こうお約束できますか。
  116. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 もとより住民の皆さんの御意思を尊重していくのが適切であると思っております。  池子弾薬庫の問題につきましては、相当広大な地域の一部を住宅地域に使わしていただき、しかもその住宅地域と称する分野もかなり緑を残して、住宅そのものを建てるのはその中のまた一部分に限局するようにして、できるだけ緑を残すという配慮をして建てようとしておるのでございまして、この点につきましては住民の皆様方にも御協力と御理解をいただきたいと念願しておるところでございます。  厚木の飛行場の問題につきましては、周辺の皆さんに大変御迷惑をおかけしておりましてまことに恐縮に存じておる次第で、できるだけ早くこのような状態から脱却するように私たちも努力してまいらなければならぬと思っております。私も、先般施設庁長官を呼びまして、いまいかなる努力をしているか自分でいろいろチェックしてみました。こちらの方でできるだけ早く代替施設等を手当てしてやろうと思って努力をしておるのでございますが、なかなか条件を満たすところは、受ける方でもあるいは行う方でもまだ十分なものができておりません。はなはだ残念な状態が続いておりますが、できるだけ米軍側とも話し合いまして、両方が納得できる代替施設を可及的速やかに手当てできるように今後とも努力してまいりたいと思っておるところでございます。
  117. 市川雄一

    ○市川委員 厚木の問題ですが、総理、施設庁長官をお呼びになって聞いたというお話ですが、これはもう防衛庁とか一施設庁では解決できない問題じゃないかと思うのです。内閣を挙げてと言うとちょっと大げさかもしれませんが、もう施設庁に任せる段階は過ぎた。もっと高いレベルで解決に腰を入れなければできないのじゃないか、こういうふうに考えておりますが、総理も全くそういうお立場でこの問題の解決に当たるということですか。
  118. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 まさにそのような考えに立脚しておるわけでございます。私が施設庁長官を呼びましたのは、もう一防衛庁の問題としてはむずかし過ぎる問題になってきているし、時間を早く行う必要のある問題になってきております。したがいまして、内閣全体の力をかりてこの問題を解決する方向に努力しなければならぬ、そう思いまして、私は特に施設庁長官を呼んで現状及び今後のやり方等一つ一つチェックしてみて激励してきたところなのでございまして、今後とも努力を続けていくつもりでおります。
  119. 市川雄一

    ○市川委員 大韓航空機の撃墜事件以来、地方議会で、保守系の議員から自衛隊法を改正すべきだという意見書が活発に提出されております。中身を拝見しますと、領海、領土への侵犯行為に対しては領空と同様に自衛隊に対処させるよう自衛隊法を改正せよという内容でございます。  総理は、この領海、領土への侵犯行為に対する対処問題に関連して自衛隊法を改正する必要がある、こうお考えですか、どうですか。
  120. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 自衛隊法に関連の御質問でございますので、私からまず答弁をさせていただきたいと存じますが、現行自衛隊法の外部からの武力攻撃に対しての防衛出動の規定は、各種事態に備えていろいろとすでに整備されておりまして、いま御指摘の領海、領土の保全について私どもは現行自衛隊法で不備があるというふうには考えていないわけでございます。ただし、一般の議論として御指摘のような御意見が一部にあるということは、われわれは存じております。  しかし、この問題は実は自衛隊法の骨格にかかわるきわめて重要な問題でありますので、私どもは一部の方々の御議論は御議論として謙虚にこれは伺いますけれども、先ほど申し上げましたように現行法を直ちにどうかしなければならないというように考えておりません。したがって、今後、国会初め各界の論議その他世論の動向を十分に踏まえて、慎重に対処すべき問題であろうかと考えておる次第でございます。
  121. 市川雄一

    ○市川委員 防衛庁長官はこの問題について、自衛隊法をいま改正する必要はない、こういうふうに考えておる。総理も同じお考えですか。
  122. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 同じ考えてあります。
  123. 市川雄一

    ○市川委員 時間が来ておりますが、総理、ヨーロッパには全欧安保会議というような、東西の代表がいろいろな問題を話し合う場がありますね。しかし残念ながらアジアには、ASEAN、朝鮮半島、ベトナム、カンボジア、中国、ソ連日本、そういうヨーロッパに匹敵するような東西の代表が集まって意見を交換するあるいは議論する、こういう場所がないわけでございます。総理は、これからの日本を考えた場合に、防衛努力だけではなくて、非軍事的な手段による世界平和あるいはアジアの平和に日本が貢献する、こういう努力が非常に必要ではないかというふうに思うわけです。したがって、これは非常にむずかしい問題でいますぐできるという性質のものではないことはわかっておりますが、少なくとも日本外交の一つの大きな目標として、アジアにも東西の首脳が集まって議論するような機構をつくろう、あるいはつくりたい、こういうことに日本がもっと積極的なイニシアチブをふるって活躍していいのではないか、こう思います。これについて総理はどうお考えですか。
  124. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 それは、ある将来、かなり遠い将来になるかもしれませんが、将来における一つの理想としては成立するかもしれませんが、現在のアジアの情勢等を見ますと、そういう条件は残念ながらまだ存在しないと考えております。  ヨーロッパにおきましては、その歴史と現実というものがわりあいに、数量それから性格、そういう両方の面で、大根を切るような、数学計算のもとにある運用がなされておるというところがある。しかし、アジアの場合にはかなり流動的要素があります。これは歴史と伝統及び現在の状況というものがヨーロッパとまるっきり違うところでありますし、また、日本といたしましては独自の憲法を持っておりまして、日本の軍事的な役割りというものは憲法の範囲内に限局さるべきものであります。したがいまして、政治的、社会的、あるいは文化的な問題等につきましては、ある意味におきましてはそういう積極性というものも考えられますが、安全保障面というものを見ますと、それはよほど慎重にならざるを得ぬという面もあるわけであります。  われわれは、日米安保条約及び自衛隊による日本防衛、あるいは環境を整備するための平和的外交政策、あるいは経済協力等々、あらゆる面の手段を使いまして日本の平和と安全を守り、またアジア全体の平和と安全を守るために貢献していこう、そういう考えに立って、憲法の枠内において行動しつつあるものでございまして、そういう意味におきましてはヨーロッパと状況を異にしておるわけでございます。そういう意味におきまして、ヨーロッパと同じようにこれを扱うということは適当でないと考えております。
  125. 市川雄一

    ○市川委員 終わります。
  126. 橋口隆

    橋口委員長 和田一仁君。
  127. 和田一仁

    ○和田(一)委員 冒頭に、韓国の全大統領夫妻外閣僚一行がビルマのラングーンにおきまして大変悲惨な爆弾テロに遭遇されて死傷されたという、こういう痛ましい事件につきまして、私どもも深い哀悼の意を表する次第でございます。総理におきましても、ただいまの御答弁の中で、大変憎むべき行為であると、こういうふうにおっしゃられましたし、深い哀悼の意をお伝えになっておられると伺っております。  私がお伺いしたいのは、こうした事件、さらに先般の大韓航空の撃墜事件、こういったわが国周辺においての事件とあわせて、今回のこういう事件の極東情勢への影響等についてどういうふうにとらえておられるか、このことをまずお聞きしたいと思います。
  128. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 韓国はさきの大韓航空機事件に遭遇され、また今回はラングーンにおきまして非常に痛ましい不幸な遭難事件にお遭いになりまして、われわれ日本国民といたしまして、隣人といたしましても心から哀悼の意を表し、お見舞いを申し上げるものでございます。  日本といたしましては、こういう状況を見ますにつけましても、いかに平和が大事であり社会の安定が大事であるかということをますます痛感する次第でございまして、わが国自体の内政等につきましても、そのように社会の調和というものについて最大限の努力をする必要はございますし、国際環境等につきましてもよく目を配りまして、平和と安定の方向にできるだけアジアが向かうように、われわれが憲法の許す範囲内において協力もしていかなければならないと考えておる次第でございます。
  129. 和田一仁

    ○和田(一)委員 少なくもアジアの平和と安定に対して大変好ましくない事件が続発しておる、こういう認識であろうと思います。わが国の周辺が大変好ましくない環境になってきているな、こんなふうに感ずるわけでございます。  そこで、これは決していい情勢だとはとらえられる材料ではないと思うわけですが、防衛二法の中で定員の増加等が審議されておるわけです。私は、正面装備を整備したり、それに対する人員も確保したりすることは防衛力整備に努める国の一番基本的な姿勢だ、このように考えます。国の独立てあるとか国民の生命、財産を不当な侵略から守るということは、これはもう国事の大本である、こういうふうに理解をしておるわけでございます。  しかし同時に、私は、整備された防衛力というものが一たん有事のときにどのように有効にかつ迅速に機能されるかどうか、これがきわめて大事である、こう思うわけでございます。どんなに近代化されたりっぱな装備を持っており、また訓練された優秀な隊員がおりましても、その部隊が一たん緩急あるときに、その運用の面においていろいろな法的な不備のために十分な活用がおくれるあるいはできないというようなことになったのでは、これは何にもならないと思うわけでございます。そうなった場合にはまさにこれは宝の持ちぐされてあり、そのような状態に気づいていながらもし放置しておくとすれば世界の笑い物になってしまう、このようにすら思うわけでございまして、こういう急迫不正の侵略に対して有事の際に私どもは十分な法体制があるとは考えておりませんが、まず私は、こういった基本的な問題に対しての総理の基本的なお考えからお伺いしたいと思います。
  130. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 われわれは憲法の条章に従いまして、侵略あるいは侵略が急迫してきているという状態のもとにおける諸般の体制を法的にも整え、また物理的にも整えておるわけでございますが、それらを充実して、万一の際にも侵略されることがないように備えておかなければならない、これは基本原則でございます。そのために、自衛隊を整備するあるいは国民の安全保障に関する精神的な和合、統一を期していく等々、あるいは社会的安定、国民的コンセンサスの醸成等々につきましても今後努めて努力してまいらなければならぬと考えておる次第でございます。いままでわれわれが展開してきた考え方や政策、この政策を充実していけば、当面われわれがやるべきことはやれる、そう考えておる次第でございます。
  131. 和田一仁

    ○和田(一)委員 私どもの認識では、そういった有事の際にはいまのわが国の法制度の中ではまだ大変不十分なものである、こういう理解をいたしておるわけなんです。国の安全を確保していくということ、安全を守るということは、いま総理もおっしゃっておりましたけれども防衛庁あるいは自衛隊の当然の任務ではございますけれども、それだけの問題では決してない。これは国全体、国民全体の問題である、こういうふうに理解をしております。しかし、だからといって、一番その衝に当たるべき自衛隊がその法的な整備がないというために十分な働きができないということは、これはあってはならない、こう考えるわけでございます。  自衛隊が動きやすいようにというだけではなくて、私は、この有事法制の意義というものは、一つには国や国民のあり方の上で大変大きな意味合いがあるものだ、こう思うわけです。研究をしているというだけでなく、その問題点を指摘して国民にも理解をしてもらうということにつながっていかなければならないと思いますし、また、それを国民が知った上で、たとえば何かいよいよというときには、国民の権利は当然守っていかなければなりませんけれども、しかしながら、国家非常の場合には国民が持つ権利の一部を放棄してでも国を守るという重大な意思を確認していく、そういうこともあわせ含まれている大変大事な問題である、私はこういうふうに理解をしておるわけでございます。  いま周辺が大変騒がしい中で、国民の防衛意識は向上していると私は思います。大変意識が高まってきていると思いますけれども、そういう意味で、こういう国民の防衛意識との不可分の関係において有事法制についてもっと真剣に取り組んで、また、国民の理解と協力をもらうように努力をしなければならないものだ、私はこう思いますが、総理はいまの政策あるいは方針を推進していけば大丈夫だというような御答弁でしたが、そうでしょうか。これは総理にお聞きしたいのですが……
  132. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 総理の御答弁の前に、経過について簡略に御報告させていただきたいと存じます。  この有事法制の研究についての質疑の中でも、戦争を始める準備ではないのであって、有事の場合の国民の権利義務を明らかにする面があるんだぞという御指摘もございました。  まず第一に、五十六年四月に、防衛庁所管の第一分類につきましては中間報告を行ったところでございます。そして現在、他省庁との関連の第二分類について細部の検討を問題点を拾い上げながら行っているところでございます。そして、仰せこの問題につきましては、関係する省庁の数、それから関係いたします法令の数、いずれも非常に大きなものでございますから少し時間がかかっておる状態でございますが、鋭意、研究検討に努力をいたしておりまして、防衛庁といたしましても、各省庁に審議官を派遣して協力方をこの更改めて行ったところでございます。  それから、一番大きな問題は、いずれの省庁にも属さない俗に第三分類と言われる分類の分野につきましては、これは防衛庁としてどうにもならぬ問題でございまして、総理の指揮のもと、内閣全体で取り組んでいただかざるを得ない問題ではなかろうか、こう考えながら、私どもは鋭意、目下検討努力中というところでございます。
  133. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 いま防衛庁長官が御答弁申し上げたとおりでございます。いわゆる第一分類という防衛庁が中心になって行うべきこと、それから第二分類、他省庁との関連している部分、それから第三分類、それ以外の事項等について、おのおの検討を進めておるわけでございます。いずれも私は大事だろうと思っております。  自衛隊法の中でも、侵略された場合、侵略に直面した場合の防衛庁自衛隊がやる防衛行為以外に、府県知事あるいは市町村長等に協力を求め国民に協力を求める手段が明記されております。これらの自衛隊法に決められたことを充実させていくということ、それから、民社党の皆さんが日ごろ御主張になっておりますように、侵略に直面した場合の国全体としてのこれに対する対処の仕方を平生から明らかにしておけという御議論は、まことに傾聴に値する御議論でございまして、現在の自衛隊法の上に立脚しつつ、そういう展開がいかなる方向にどのように行わるべきであるかという点について専門的に法制的にいま検討しているところでございまして、これらを逐次われわれとしては解明し、充実していくように努力してまいりたいと思っております。
  134. 和田一仁

    ○和田(一)委員 いま有事法制についてそういう問題点を拾い上げて検討研究が行われているということは、私、先般のこの内閣委員会で御質問した御答弁でもわかったわけでございますが、しかし、その答弁を踏まえて、さらに私はいろいろの問題点を指摘せざるを得ないわけなんです。  先般の私の質問に対して、第二分類に属する法令、つまり他省庁との関連のある問題は八項目に分けていま整理をしている、こういう御答弁がございました。これは総理の方にも御報告が行っていると思いますが、一つ部隊の移動、輸送に関連する法令、二つ目には土地の使用に関連する法令、三つ目には構築物建造に関連する法令、四つ目には電波、通信に関連する法令、五つ目には火薬類の輸送、貯蔵に関連する法令、六つ目には衛生、医療に関連する法令、七つ目には戦死者の取り扱いに関連する法令、八つ目には経理、会計に関連する法令、こういう八項目で整理をして、そして他省庁との関連の中で研究を進めているというお話でございました。項目ごとに非常に関連の深いものやら、たくさんあるものやら、いろいろあるようでございますけれども、私考えまして、いろいろこれだけの項目、約七十近くあるそうでございますけれども、結局問題点としてこれだけ挙がってまいりました。これだけの問題があるということは、それが一つ一つこのままではいよいよというときには障害になるのだ、だから実際にこういう障害を残したまま有事になった場合には、部隊が動くときにはこういう問題が解決されないと迅速果敢な行動がとれない、こういうことになってくると思うのです。  それで、大変これは総理を前に釈迦に説法かもしれませんけれども、具体的に防衛出動が下令されて部隊が急速に移動する場合に、まずこれだけの関連が指摘されておりますと、たとえば七四戦車のような重量物が高速道路を使っていまのままでは迅速に移動できるかどうか、また大量の部隊が交通信号を一々守りながら現場まで行くのか、そういうようなことを含めて行ったとしまして、さてそこで、今度は現場の指揮官が必要とする陣地を構築するとか指揮所をそこに設ける、司令部を設けるというときに、自衛隊の関連の百三条を検討して整備していくだけでなく、これはよその省庁との関連が非常に深い、こういうことでございます。  たとえば陣地を構築する、トーチカをつくるにしても、これは建築のいろいろな基準に適合しないとそういう建築物の許可がおりないかもしれない。あるいは指揮所をつくるにしても、これは地下のようなところにつくるか、採光も通風も普通の建築物の基準にはとうてい合わないものだと思うのですが、しかし、さらにそういうものを一々従来の手続を踏まなければできないとなると、これは大変なことになってしまう。たとえば建蔽率一つをとりましても、時と場合によってはそれが障害になってスムーズに建てられない。こういうような点が想起されるのではないかと私は思うのです。  きょうは建設省の方も来ていただいているのですけれども、こういうことはどうなんですかとお聞きすれば、恐らく現行法規のとおりやっていただかないとできないたてまえになっておるという御答弁だと私は思うのです。そういうことを考えますと、こういう問題について、これだけの関連している法令があるとすれば、これを防衛庁だけに任じておくというのではなくて、やはり各省庁がみずからのところで有事法制の研究をすべきだと私は思うわけですが、そういう御指示をされておりますかどうか、されていないとしても、これから総理はそういう御指示をされる意思があるかどうか、お聞かせいただきたいと思います。
  135. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 いま防衛庁を中心に研究を進めておるわけでございますが、その作業の進展状況をもう少し見守ってまいりたいと思う次第であります。
  136. 和田一仁

    ○和田(一)委員 防衛庁の白書の中にも「この種の研究は、今日のような平穏な時期においてこそ、冷静かつ慎重に進められるべきものであると考える。」こう書かれております。私はまさにそのとおりだと思うわけです。いま騒然としつつあるようなこういうときに、本当に冷静にかつ慎重に、しかしやはり進めていくべきものは急いで進めていくべきときだ、私はこういうふうに感じておるわけです。  これはほかにもたくさんの関連のあれがあるわけでございますけれども、総理はいまこういうものを、中間報告が出ましたけれどもこの報告を見て、さらに第三分類のような省庁を超えたものに対して、これはやはり総理の指示の中でやらないと防衛庁の責任範囲を超えております、したがってこういう第三分類に対しては総理が指揮をとられる、そういうお考えはございませんか。そして、それをやるためには、防衛庁以外に何か新しい機関をつくってでもやるべきだというお考えはないでしょうか。
  137. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 いま防衛庁を中心に検討していることは大事なことであると思っております。ただ、かなり専門的分野にわたることでもありますので、防衛庁は最終的にどういう考え方でまとめるか、それらを見守っていきたいと思いますし、また将来必要がある場合には、国防会議等もございまして、国防会議は総理大臣に意見を言うということはできることになっております。これは単に一防衛庁だけでなくして内閣のもとにできておる会議でございますから、これらを活用しつつ将来は考えられるかもしれません、そのように思っております。
  138. 和田一仁

    ○和田(一)委員 総理の国防会議活用、私はいまの国防会議にはそういう能力があるというふうには考えませんが、しかし、それをさらに改めて、そういう機関を活用するというのであればそれはそれで一つの方法だと思うのです。  私は実を言うと、もっとはっきり総理にいつごろまでにこれを考えるか、時期もお聞きしたいのです。というのは、これは指示が出てから、研究がされてからもう大分時間がたちまして、そして中間報告が出ましたのが五十六年でございますか、それ以後一向に進んでいるような気配は見えません。治にいて乱を忘れずというのはまことに言い古されな言葉ですけれども、この言葉の持つ意味というのは非常に大事だ、為政者として最も必要な心構えではないか、私はこういうふうに思うわけです。防衛に対する大変高い見識をお持ちの総理ですから、そういうことを万般お考えの中でいま国防会議等を活用されるようなお話になったと私は思うのです。  まず総理、中間報告が出たのですから、これをまとめるというのは大体いつごろを目安にお考えでしょうか。どういうふうに御指示されますか。
  139. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 中間報告は、第一分類、防衛庁の所管のもののみ五十六年の春、四月に出させていただきました。  それから第二分類につきましては、先ほど御報告させていただきましたように、ことしの夏にさらに防衛庁の内部から各関係する省庁に協力をお願いをいたしておりますが、先ほども申し上げさせていただきましたが、何せ関係する省庁は十に余りまするし、関係する法律が五十、項目でも七十程度あるわけでございまして、目下懸命にその中の拾い上げ、さらに検討を加えて各省庁と協議をしているさなかでございまして、いつごろ、どういうようなめどがつき得るかという問題につきましては、もう少し時間をちょうだいいたしたい、こう考えておる次第でございます。
  140. 和田一仁

    ○和田(一)委員 五十三年九月の防衛庁見解によりますと、「防衛庁における有事法制の研究について」という項の中で、法制上の「問題点の整理が今回の研究の目的であり、近い将来に国会提出を予定した立法の準備ではない。」こういうふうになっております。私は、これは課題を拾い上げて研究しただけでは何にもならないと思うのです。問題点を指摘する、それは国民は大変だという理解をします。大変そういう意味での防衛的な意識の向上にはつながるかもしれませんけれども、しかし、やはりその障害を取り除くための法制化が図られなければ何にもならないと思うのです。  ところが、慎重に検討してという答弁がいつまで続くかわからない。しかし一方、いっその有事は来るか、これはもう保証されておりません。来ないという保証はないわけです。そうなりますと、私たちにとりましては、いよいよとなったときには何かの方途を考えているのかな、時と場合によっては、これだけ各省庁に散らばっているたくさんの関連する法令を一括して網をかけるような、そういう戦時特例法のようなものをひょっとすれば心ひそかに考えているのではないかとか、あるいは超法規的な措置でもそういうときにはしょうがないんだというような曲解というか誤解をされても仕方がないと思うのです。それぐらい、心ある人はこういう問題についての政府の毅然たる姿勢がやはりいま欲しいのです。総理、いかがですか。
  141. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 何しろ、法技術的にも専門的なことが多々あるわけでございますから、一つ一つ法的にも詰めていただいて、それらの報告を見た上で全般的にどうするかということを判断してまいりたいと考えております。
  142. 和田一仁

    ○和田(一)委員 大変私どもは気にはいたしておりますけれども、これは当面、国の政治を預かっておられる総理、その辺にすべての責任が課せられている大変大事な問題である、私はこういうふうに認識をいたしますので、一層この問題について総理が具体的な指示をされて、一日も早く整備されるようにひとつ御努力を願いたい、私はこう思うわけでございます。  有事法制というのは、防衛庁における有事法制というのだけがありまして、各省庁における有事法制の研究というものは果たしてあるのかどうか。防衛庁が各省庁に向かって、有事の場合の関連法令についてわれわれはこう考えているがと言って問い合わせをすれば、それに対しては、こうですね、ああですねという協力はあると思うのです。しかし、各省庁自体が、いよいよ何かのときにはおれたちの関連する法令についてはこういう問題点があるという積極的な姿勢がまだない、私はこう思いますので、そういう点についても、やはり防衛庁に任せるのでなくて、総理自身が指揮をとられるということが何よりも肝要だと思います。  有事のみならず、実は前の防衛白書には奇襲についての対応についてもきちっとした項目がございましたが、この奇襲について五十三年七月当時、栗栖統幕議長はこの問題に触れまして、現在の自衛隊法ではその対処の方策が万全ではない、奇襲攻撃などの緊急事態が発生した際には自衛隊は超法規的行為に出ることがあり得るというような旨の発言をして大変物議を醸したわけでございますけれども、しかしその指摘は、国の防衛上の欠陥を指摘した非常に大事な、貴重な発言であった、私はこう思うのです。  奇襲は起こり得ない、そんなことはないのだと言うならまた話は別ですが、起こり得る可能性があるといたしますと、この奇襲対処の問題について、五十三年九月に防衛庁はこう言っております。「いわゆる奇襲攻撃を受けた場合を想定した上で、防衛出動命令の下命前における自衛隊としての任務遂行のための応急的な対処行動のあり方につき、文民統制の原則と組織行動を本旨とする自衛隊の特性等を踏まえて、法的側面を含め、慎重に検討することとしたい。」という文言がうたわれておるのです。ところが最近の、五十八年の白書の中を私はずっと見たのですが、こういうことは全然うたわれなくなってしまっているんですね。これをどうしてネグってしまったのか、これもありますけれども、やはりこの対処要綱、こういうものを早急に決めておかなければいけない、私はこう思うわけでございます。  この問題は先般も防衛庁長官にこの委員会において私質問いたしまして、長官は、少なくも法制度の整備をしなくてはいけないと思う、懸命に努力している、こういう趣旨の御答弁をいただいたと思うのですけれども、この奇襲対処について、総理、有事より以上さらにこういう問題が重要な問題ですけれども、こういう奇襲対処についての研究をやはり指示されますでしょうか。
  143. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 この問題は栗栖さんが提起いたしまして、自栄一防衛庁におきましても党におきましてもいろいろ研究を進めておるところでございますが、私は、現在の国際情勢や武器技術、戦略体系というものを見ますと、組織的な明確な意思に基づく奇襲というようなものほかなり予見できるものではないかと思うのです。これは、散発的なあるいは局部的なものであるという場合は多少漏れる点があるかもしれませんが、わが領土、領域が侵略されるというような性格を持ったものにつきましては、人工衛星がこれだけ発達もし、また、組織的に日本の侵略を企てるという場合には兵員やら糧食やら弾薬の蓄積というものもかなり要るし、船も要るわけでありまして、そういうようなものは現在の人工衛星そのほかで大体ある程度予知が可能な状態になってきているので、昔、太平洋戦争前後に考えられたような奇襲というようなものは、可能性は今日は非常に少なくなってきている。もっとも、ミサイル攻撃で遠隔の地からばっちりやられるという場合は、これはなかなかむずかしい。しかし、これらの問題は平和維持の総合戦略の中でわれわれは努力していかなければならぬ、そう考えておる次第でございます。
  144. 和田一仁

    ○和田(一)委員 総理は、いろいろな観点から奇襲は事前に予知されるだろうし、またそういう意味での本当の奇襲というものは非常に少なくなっている、こういうふうな御理解のようです。私も、そういうものがあれば早く予見され、きちっと対応できるようなことが必要であるし、また、ないのが一番大事だ、しかしながら、そういう奇襲を受けないためにも、日本は有事の際にはこれだけのものに対応していくという意味で、やはり法制化についていろいろな、ある意味では国民の犠牲を求めながらも、しかしそれが国民的なコンセンサスができて対応しているのだということは防衛力の大きなプラスにつながっていく、こう考えるわけなので、ぜひひとつこの有事法制については積極的な指揮をとっていただきたい、こう思います。  時間が来ましたけれども、最後に一つだけ。  この臨時国会の冒頭の代表質問でわが党の竹本孫一議員が、十一月のレーガン米大統領の訪日に際しては広島を訪問していただいてはどうか、こういう提言をいたしました。総理の御答弁は、訪日スケジュールはアメリカ側が決めることであって、わが国が、あそこへ行け、ここへ行けというものとは違うというような御答弁でございましたけれども、しかし、国会の中においてこういう提言が出されたということは、これは一応日程を組む中において、米国側にこういう国会での提言があったということはお伝えいただいてもいいんだと思うのですが、いかがなものでしょう。これはそういうお伝えをしていただいておるかどうか。そして、もし可能ならば、やはり世界で大変大きな人類の汚点になった広島、長崎、こういうところの現場を来日の際に訪ねていただくということは大変意義があることだ、こう考えますが、いかがでしょうか。
  145. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 過般の竹本議員の代表質問につきましては、あらゆる部分につきまして非常に傾聴に値する御見解がございまして、私も非常に参考になり、かつまた傾聴いたした次第でございます。  いまの広島の問題につきましては、これは先方との関係もありまして、われわれの方だけでいろいろひとり芝居を打っても効果のないことでもあります。ただ、言わんとするところはよく理解できますから、その言わんとするところをよく理解した上で、その場の相手との話し合い等を見まして適切に処理したいと考えております。
  146. 和田一仁

    ○和田(一)委員 終わります。
  147. 橋口隆

  148. 中路雅弘

    中路委員 レーガン大統領と中曽根総理との首脳会談について日程も決まったようですけれども、先ほども質問の中でこのテーマ等について、INFとか南北問題あるいは安全保障を含めた日米関係等の問題について触れられました。  改めてお聞きしたいのですが、この日米首脳会談で話し合いをされる主要なテーマ、特に何か新しく取り決めがあるのかどうか、この点について最初に総理にお聞きしたいと思います。
  149. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 会談の日程及び対象、そういうものはまだ決まったわけではございません。いずれ外交当局同士で話し合って、下請をするんだろうと思います。  ただ、わざわざアメリカ大統領が日本を公式訪問されるわけでございますから、現在世界で関心を持っておる重大問題あるいは特に日本関係している問題等につきましてはやはり隔意なき懇談をいたしまして、お互いがお互いの立場をよく理解し、提携すべきものは提携し、またお互いが考うべきものは考え合う、そういうフランクな態度で大所高所からの話し合いをいたしたいと考えておる次第でございます。  特にINFの問題は、いま当面の大きな問題になってきておりまして、これがアジアや日本の犠牲において解決されてはならないのでありまして、その点についてはやはりばっらりと日本立場を貫くように友好的な会談をしていきたいと思っております。
  150. 中路雅弘

    中路委員 新聞の報道によりますと、外務省首脳が語ったということで出ていますが、日米間の防衛問題の焦点となっている対米武器技術供与の枠組みづくりと、厚木基地にかわる米空母の艦載機の夜間の離発着訓練基地、代替基地ですね、これについてレーガン大統領の訪日までに決着すると思うということが述べられています。  対米武器技術の供与の問題からお聞きしますが、これはレーガン大統領の訪日の前に結論を出されるのか。いまどういう実施方法、枠組みで検討されているのか、最初にお聞きしたいと思います。
  151. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 そういう諸般の問題は、できるだけ米大統領来日の前に事務的に詰められるものは詰めていきたい、そう一般的に考えております。いま御指摘の問題がどの程度詰められるかどうか、私まだ報告を受けておりません。しかし、一般的にはそういう努力をして、私とレーガン大統領との会談は大所高所に立った話をしたい、そのように考えております。
  152. 中路雅弘

    中路委員 いまどういう検討がされているのか、外務省からでもお聞きしたいと思います。
  153. 北村汎

    ○北村政府委員 ただいま武器技術の供与の実際の方式、供与方式というものにつきましては、米側とも一般的な意見交換を行い、かつ政府部内でいろいろ考えを詰めておる段階でございます。
  154. 中路雅弘

    中路委員 先日、行革の特別委員会木下装備局長が、アメリカの方は事務簡素化ということでいわゆる包括方式にしてほしいという要望が出されているという答弁がありましたが、アメリカ側からはどういう要求が出ているのか、改めてお聞きしておきたい。
  155. 北村汎

    ○北村政府委員 まだアメリカとの間でも一般的な意見交換の段階でございまして、アメリカから固まった提案が出ておるというわけではございません。ただ、アメリカ側は従来から、武器技術の供与の問題につきましては、継続性の問題であるとかあるいはその他相互性の問題であるとかということと同時に事務の簡素化ということを言っておりますから、そういう希望がアメリカ側にあるということは私ども承知しております。
  156. 中路雅弘

    中路委員 いま枠組みについて検討中というお話ですけれども、総理にお聞きしておきたいのですが、いわゆる包括取り決めですね、これがアメリカから要求されてきているという中身ですけれども、こういう方向で話を詰められるのか。総理自身のこの問題についての見解をお聞きしておきたいと思います。
  157. 北村汎

    ○北村政府委員 技術的な問題がございますので私の方から答えさしていただきますが、先ほども申し上げましたように、まだ具体的な提案がアメリカ側から出されておるわけではございません。また、ただいま委員指摘の包括方式という意義も必ずしも定かではないのでございますけれども、いずれにしても政府といたしましては、この武器技術供与の問題を国会で御説明しました当初から、個別の具体的な事案に即してわが方が総合的な国益を踏まえて自主的に判断する、この供与の決定を行うという基本的な方針には変わりはございませんわけで、この基本的な方針に立って実施の方式を考えておる段階でございます。
  158. 中路雅弘

    中路委員 私がお聞きしているのは、いわゆる包括取り決めと言われていますが、こういう方向について総理の御見解をお聞きしておきたい。
  159. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 何をもって包括といい、何をもって個別というか、その定義すらまだはっきりしていない。包括と個別の中間地帯もあるかもしれません。私は概念的にそう思うのであります。交渉というものは、お互いでお互いの立場を披瀝し合いながら、そして妥協点を見つけていく、そういうのが交渉でございますから、いま北米局長が申し上げたような基本立場を踏まえつつ、相手の考えも聞いて話をこれからまとめていく、そういう過程にあると私は理解しております。総合的に最終的に見解を聞いて、その上で外務大臣や防衛庁長官や通産大臣と相談をして判定を下す、そういうことであろうと思います。
  160. 中路雅弘

    中路委員 米側から日本向けの供与は、御存じのように一品ごとにMDA、相互防衛援助協定に基づく細目取り決めがあっていくということ、これは定着しているわけですが、今後もアメリカからの問題についてはこういう方式をとるとすれば、この方式と違う方式がとられるとなると相互主義にも反するわけですね。いま日本アメリカ側から日本向けの供与でとっておられる方式、基本的にはこの方式をもとにして進められるのかどうか、もう一度お聞きしておきたい。
  161. 北村汎

    ○北村政府委員 先ほどからも御説明いたしておりますように、まだ実際の実施方式につきましては政府部内でも考えがまとまっておるわけでもございませんし、なおかつ、アメリカ側との間で意見の交換を行っておる段階でございます。したがいまして、仮定に立ったお答えをいたすのは差し控えたいと思います。  いずれにしましても、いままでアメリカ側から私どもが技術を受けるときの方式も念頭には置いて検討いたしておることはもちろんでございます。
  162. 中路雅弘

    中路委員 先日の行革の特別委員会木下さんは、アメリカ側は事務簡素化ということでいわゆる包括方式、こういうふうにしてほしいということを要望しているのだという答弁がありましたね。間違いないですか。
  163. 木下敬之助

    木下政府委員 先日行革特で私が御説明申し上げましたのは、日本アメリカから具体的な完成された武器システムを入れるときには、個々の取り決めを結んでやっているという事実だけ申し上げたと私は了解しております。
  164. 中路雅弘

    中路委員 アメリカの方は事務簡素化ということでそういう方式を言ってきているということを、あなたは稲葉委員質問について答弁されているのですよ。アメリカ要求してきているいわゆる包括取り決めが実現されますと、米軍当局と防衛庁自衛隊あるいは民間企業との間の直接折衝になって、いわゆる三原則の第三の原則、第三国へ移転されるとかあるいは第三国の紛争に直接日本の技術が使われても外務省や通産省は個別にチェックできなくなるという問題も起きてきます。先ほどお話ししましたように相互主義にも反することになります。私はここで、日本側の立場として包括取り決めはとらない、このことだけははっきりさしておいていただきたいと思うのですが、総理、いかがですか。
  165. 北村汎

    ○北村政府委員 先ほども答弁いたしましたが、包括取り決めということの意味するところ、必ずしも定かではございませんが、もしその包括取り決めというものが締結されれば、その取り決めのもとで政府が野方図に対米武器技術供与を処理し得ることになるのではないか、そういうような御懸念がおありのことでございますと、そういう御懸念は当たらないということは答弁さしていただけると思います。政府といたしましては、繁雑な供与手続を避けたいというアメリカ側の意向というものは理解するところでございますけれども、同時に、先ほども説明いたしましたように、個別の具体的事案に即してわが方が総合的な国益の観点から自主的に判断して供与の決定を行う、こういう基本方針に立っております以上、こういう方針に合致した実施方式によるという考え方には変わりはないわけでございます。
  166. 中路雅弘

    中路委員 さきに国会決議にも反して武器技術供与のハードルを越えられたわけですが、今度はまたさらに包括取り決めという新しいハードルも越える、こういうことは絶対に許せないことだと私は思うのです。このことを強く指摘をしておきたいと思います。  もう一点出ていますミッドウェーの代替施設の問題ですけれども、これはいまどこまで検討が進んでいるわけですか、防衛庁長官に伺いたい。
  167. 塩田章

    ○塩田政府委員 現在、五十八年度といたしまして調査費を計上いたしまして、既存の自衛隊基地、関東及びその周辺地区でございますが、既存の自衛隊基地で代替機能を求められないかという点、あるいは新設飛行場がどこかに求められないかという点、及び海上浮体構造物を考えられないかという三つの点につきまして、目下鋭意調査中でございます。
  168. 中路雅弘

    中路委員 自衛隊の関東周辺の代替基地をもし使うということになりますと、これは二4(b)の使用になるわけですか。
  169. 塩田章

    ○塩田政府委員 現在まだ自衛隊の基地が使えるという見通しがございませんけれども、もし使えるといたしますとそういうことになろうかと思います。
  170. 中路雅弘

    中路委員 中曽根総理が防衛庁長官をやっておられた時代だと思いますけれども、この第二条四項(b)ですね、二4(b)の問題について、統一的な見解といいますかお考えを述べておられます。昭和四十六年二月二十七日の予算委員会ですけれども、二4(b)に該当するのは、要するにわが方が管理権を持ってわが方の責任において管理する、一定期間を限って臨時に米軍使用を認めるということで、その中で幾つか述べておられます。使用する期間が何らかの形で限定されるものということで、年間何日以内とか、あるいは使用の都度期間を区切って認めるとか、幾つがこの中で述べておられますけれども、二4(b)の使用解釈については、いまも中曽根総理が防衛庁長官のときに述べられたこの国会での発言ですね、これはこれからもこの考えで進められていくというお考えですか。
  171. 塩田章

    ○塩田政府委員 いま御指摘の考え方で進めていきたいと思っております。
  172. 中路雅弘

    中路委員 この中で、防衛庁長官だった中曽根さんが「期間を限って使用させるので、常に、常時開放的にいつでも認めると、いうものではない」ということを述べて、「一応時間的にいえば一年のうち半数以上向こうが使うというのでは主客転倒」になってしまうということも述べておられるわけですね。この考え方も、二4(b)の使用についてはいまお話しのように、当然いまもこういう考えで進めておられるわけですね。
  173. 塩田章

    ○塩田政府委員 先ほども申し上げましたように、まだ自衛隊の基地を使えるという見通しがあるわけではございませんので、その時点で具体的な詰めをしなければいけないと思います。  いまの御指摘の、たとえば期間を区切ってあるいは時間を区切ってという場合に、どのくらいの割合だったらどうだといったようなことをいまここで申し上げられる段階ではございませんが、趣旨は先ほど申し上げましたように、あくまでもあの当時の中曽根防衛庁長官がお答えになった考え方でやっていきたいと思っております。
  174. 中路雅弘

    中路委員 この中では、たとえば一年のうち半数以上使うというのはこの趣旨に反するという答弁もされていますが、ちょうどいまミッドウェーが横須賀を母港にしてから十年たちます。この十年間のうち、ミッドウェーが横須賀に常駐している期間というのは全部合計しますと約四年余り。しかし、最初のあたりは非常に回数も少なかったわけですね、現在まで八十回入港していますけれども。この数年、アメリカの方が柔軟戦略、特に日本海を中心にして空母を投入した、こうした新しい作戦に変わってきていますから、ミッドウェーの入港、横須賀を母港にした事実上の常駐の期間は大変ふえてきています。そういう点でミッドウェー艦載機だけをとってみましても、この二4(b)、ここで言われているのが生きているとすれば、これは年間言われている期間をはるかに超える可能性も十分あるわけですね。こうした点もお考えになっていま検討されているのですか。
  175. 塩田章

    ○塩田政府委員 何度も申し上げますように、自衛隊基地をとこか使えるめどがまだございませんので詰めておりませんが、いま御指摘のミッドウェーの入港期間に関連して申し上げますと、実際現在厚木でやっておりますのは、五十七年一年間の実績によれば、ミッドウェーが横須賀に六回入港いたしまして、一回につき平均二週間前後の訓練をいたしております。したがいまして、五十七年について言いますと、約九十日ぐらいを訓練に充てておるということでございます。  先ほど、一年の半数以上を使えば性格が変わるではないかという御指摘がございましたが、その半数といいますのも、いわゆる艦載機の訓練について申し上げますと、一日の時間は六時ごろから十時ごろまででございますから、そういった使用する時間帯も考えますと、何をもって一年の半数と言うかといったようなこともございますわけでございます。そういった点は今後具体的に、もし自衛隊の基地が使えるということになりました場合には、その場所における使い方の実態を米側とよく詰めまして判断をしてまいりたいと思っております。
  176. 中路雅弘

    中路委員 私が言っていますように、特にことしになってから常時使っているというような状態にいまなってきています。そして、いま時間でおっしゃったのですが、これもこのときの解釈の不当な拡大解釈につながると思いますが、私は、こうした使用が行われるということになれば、これまでの二4(b)の使用の形態、こういう性格も変わってしまうということを強く指摘しておきたいと思うわけです。  特に最近、いままでたびたび要請が関係の地方自治体から来ていますが、一番新しいのは、七日に県知事、周辺の六市の市長から、夜間訓練の即時中止の強い要請が政府に出されています。この中でも出ていますが、いまミッドウェー艦載機の夜間訓練の激化はもう忍耐の限度を超えておる。市民の怒りも頂点に達している。たとえば十月三日の夜は最高ホン百十七ホン。七十ホン以上の爆音が夜六時から十時くらいの間に百六十二回。四日は百五十三回。七十ホン以上が月間四千五十六回という数字も出ています。全くこれは耐えがたい状態なんですね。  いま代替地の問題が出ていますけれども、この地元の、特に影響する百万の住民の皆さんは、いまの夜間訓練を即時中止してくれということが直接の要求なんです。切実な要求なんです。これについて総理、どのようにお答えになりますか。
  177. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 厚木の周辺の皆様方の御苦労は私もよく承知しているところでございまして、確かに御陳情の趣旨ももっともな点があるわけでございます。したがいまして、施設庁長官をして全力をふるっていま代替地を探すことに努力をさせておるところでございまして、できるだけ早く御期待にこたえるように努力してまいりたいと思う次第でございます。
  178. 中路雅弘

    中路委員 この周辺の自治体挙げて知事や市長が要望しているのは、私が言っていますように、いまの訓練を即時中止してほしいという要望なんです。ひとつこの点を踏まえた根本的な解決を強く要求しておきたいと思います。  時間が限られていますから、もう一点、総理にお聞きしたいのですが、総理は、日本防衛というのは政治の責任で、自主的判断で防衛力整備を進めるということをいつも言っておられます。最近の自由民主党の機関紙「自由新報」の九月六日号で日米首脳会談等の特集がありますが、その中で、「日本防衛政策がアメリカの対ソ戦略に明確に位置づけられ、大きな曲がり角に立っている点を見逃すわけにはいかない。」と述べていますけれども、自民党総裁として総理も同様の見解ですか。
  179. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 日本防衛日本の独自の戦略構想に基づきまして、そして憲法の範囲内におき、また、いままでの国是のもとに実行しようとしております。それに際しましては、自衛隊が分担する部分あるいは日米安保条約が有効に機能して防衛を行う部分、あるいはそのような自衛隊のハードで処理する以外に、外交とかあるいは経済協力とかあるいは軍縮とか、そういういろいろなソフトの面におきまして日本防衛力を全うし得る環境をつくっていく、そういう幾つかの面がございまして、それらを総合的に動かしながら有効な方法を講じていくという考えに立脚しておるわけであります。
  180. 中路雅弘

    中路委員 あなたの党の「自由新報」が、日本防衛政策がアメリカの対ソ戦略にいま明確に位置づけられた、ここに特徴があるんだということを述べています。また、六月のアメリカの国務省の報告を見ましても、日本は対ソ戦列に加わったということを明確に述べています。これは、日本防衛力増強が対ソ戦略上から行われているということを、自由民主党の機関紙も、またアメリカの国務省の報告もそう述べているわけですね。アメリカが対ソ戦略から、もし軍事力の増強をしてくれと言ってきたら断れなくなるのではないかと思うわけです。ウィリアムズバーグ・サミットでも、参加されましたこの声明の中で、参加国の安全は不可分として十分の軍事力の維持ということが述べられていますし、たとえばシーレーン防衛ですね、この問題研究でも、私たちに出しました政府の答弁書で、このシーレーンの共同研究では「脅威の対処、日米投入兵力の見積もり」を協議するということを答弁書でいただいております。  対ソ戦略上日本の投入兵力をふやしてくれと言ってきた場合には、一体どうされますか。お断りになりますか。
  181. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 先ほど来申し上げておりますように、自由民主党の総裁であり、内閣総理大臣であり、かつ自衛隊の最高指揮権者である私が申していることが一番の根拠であり、正しいことであり、それを援用していただきたいと思うのであります。  いままでいろいろ御質問いただきましたことも、日本日本の憲法の範囲内で独自の防衛戦略のもとに、また安保条約との結合によりましていろいろ努力をしておるということでございまして、その範囲内において自主的に行っているものであります。
  182. 中路雅弘

    中路委員 時間が来ましたので、もう一点だけ最後にお聞きしますけれども、ことしの一月に首脳会談をやられました後出されているのですが、一九八三年の一月二十五日にアメリカのヘリテージ財団が出しました「末日パートナーシップの再活性化」というアジア研究センターの作業グループによる膨大な報告書が出ています。これを読みますと、シーレーンを口実にしてアメリカは繰り返し「防衛計画の大綱」の見直しを迫ってきているわけですけれども、この文書の中では、中曽根総理が必ずいまの第二中期業務見積もりの大幅な修正、さらに重要なのは、一九七六年の「防衛計画の大綱」の大幅な見直しをやるだろうという期待と見通しを述べていますけれども、日米首脳会談でも、「防衛計画の大綱」やさらに軍備の増強、いまの概算要求の上乗せを含めたこうした点について、こういう見直しをやらないということを明言できますか。
  183. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 われわれはあくまで「防衛計画の大綱」を完遂することを現在のわれわれの目標としておるのでありまして、これをいじろうという考えは目下のところありません。
  184. 中路雅弘

    中路委員 時間ですので終わります。
  185. 橋口隆

  186. 中馬弘毅

    中馬委員 与えられた時間が十分しかございませんので、基本的なことを二点ほどお伺いを申し上げます。  本日、衆議院を行政改革の法案が通過いたしました。中曽根さんは、それこそ昭和維新を目指して行管庁長官時代からずっと行政改革には非常に真剣に取り組んできておられます。しかし、きょう通りました法案にいたしましても、これは少なくとも防衛庁については何ら触れているところではないわけです。また臨調も、防衛庁のあり方あるいは防衛費については非常に抽象的な文言でしか触れておりません。しかし、やはり防衛というものもそれぞれの時代的な背景があり、それぞれの役割りがまた違ってこようかと思います。そういう中にあって、防衛庁というのは一つの聖域なのか、やはり時代に合って行政改革の対象にもなり得るのか、その点の総理の御認識をお伺いいたします。
  187. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 前から申し上げておりますように、防衛庁も聖域ではございません。しかし、予算その他の面におきましては、予算編成に際しまして対外国際経済協力等々二、三の重要視する点の中に、防衛というものが入っております。これはアメリカとの鈴木・レーガン会談、あるいは私もレーガンさんとも話し合った、そういうような結果に基づいて行っておるものであります。
  188. 中馬弘毅

    中馬委員 日本自衛隊というのは、御案内のように戦後治安維持を一つの主目的として、警察予備隊、こういう形で発足し、そしてずっと、それが自衛隊になり現在に至っているわけでございます。ですから、当時の治安維持のための備えということでの目的でもあったのでしょう、陸上がかなり多いことも事実でございます。また、旧軍隊の指導者がそれぞれ幹部になっておられるということもあって、一つの昔の陸のプライドもございましょう。私どもが見ますならば、十八万人という陸上自衛隊、現在のいろいろな兵器が発達した状況の中で、あるいは日本がよそには攻めていかずに守りだけをする場合において、果たしてそれだけのものが必要なのか。逆に、非常に少ない防衛費とまあ立場を変えればおっしゃいますけれども、その二兆七、八千億、場合によっては二兆九千億という中にあって、人件費、糧食費が四五%を占めているといういまのあり方が、果たしてそれで本当の日本の国防になるのかどうか、もう少し効率的な使われ方ができるのではなかろうか。そういう意味では行政改革の対象にも十分になり得ると思いますが、総理はいかがでございますか。
  189. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 最近の防衛思想、防衛戦略というものを見ますと、やはり相当の物量を用意しないといけない。昔は三八式歩兵銃で一人一人ねらい撃ちしておったから弾薬の消費量も非常に少なかったのですけれども、いまはまるでじょうろで水をかけるみたいにだあっと出しているわけです。そういうのが大体の水準になってきているようでありますから、弾薬の消費量も非常に多い。そうなると、補給、ロジスティックであるとかあるいは操作する要員であるとか、やはり人間もふえてきている。というのは、その正確を期するために弾着やら観測やら事前のいろいろなそういう準備やら、やはり非常に精巧なものになりつつある。そういう面から、昔の鉄砲担いで歩いていた兵隊さんの時代と思想が変わってきておる。  そういう意味において、いまの自衛隊の人間の数が多いとは私、思いません。しかしながら、その範囲内においても効率的に人間を使ってもらう必要はあるだろう。そういう点では自衛隊も、陸上自衛隊の場合は定員を抑えられて十八万で大体くぎづけにされておるものですから、その内部の改革というものほかなりスピードアップされて進められつつあるものであると私は思います。  それから、空、海につきましては、艦艇航空機はだんだんふえてくるわけでありますから、したがいまして人間も必要になってくる。そういう面で、最近ふえているのは、主として空、海でございます。これは近代化のために必要なところでございまして、以上のような点はぜひ御理解をいただきたいと思う次第でございます。
  190. 中馬弘毅

    中馬委員 陸上が十八万人に抑えられているとおっしゃいましたけれども、現実を余り御認識になっていないのじゃないでしょうか。十八万人あるけれども、実際には十五万人ぐらいしか集まらないのですよ。その点をひとつ踏まえまして、先ほど言いましたように、自衛隊のあり方を現在の形に合ったように少し直していく必要があるのじゃなかろうか。  いま兵員の問題も出ましたけれども、七四戦車が七百台も八百台もなぜ要るのだろうか、どういうときの戦争を想定できるのだろうか。私たち素人としても、そのような戦争がいまの時代に起こるとはとうてい考えられないのですね。むしろ、それであれば、四面を海に囲まれている日本としては水際で撃ち落とすことの方が大事ではなかろうか、それなりの正面装備の方に向けた方が。戦車や鉄砲を担いだ兵隊さんを使う場面というのはこの島国の日本においては皆無と言っていいのではないかと私たちは思っております。  その点についてひとつ自衛隊も今後見直してほしいということをあわせお願いすると同時に、またもう一歩進めるならば、陸上自衛隊海上自衛隊あるいは航空自衛隊、それぞれがやはり官庁になり果てているのじゃなかろうか。それぞれが、自分のところにもう少し、陸がこれだけなら海の方もこれだけ予算をといったようなセクショナリズムになって、総合的に本当に日本の国土を防衛する上に必要なものをという観点ではなくて、予算獲得に走っているのではなかろうか。そういう点をわれわれは散見するのですが、総理の御認識をお伺いしたいと思います。
  191. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 中馬さんのいまのお考えは、部分的に当たっていると思います。全面的に採用することはできませんが、やはり一つの鋭い御批判でありまして、われわれはそういう点についてもよく戒心していかなければならぬと思っております。
  192. 中馬弘毅

    中馬委員 時代に合わなくなったものを切らずして、そしてまた時代の要請に合ったものをふやしていくならば、これはいままでの官庁の膨張と同じように自衛隊の膨張になっていくわけですね。ですから、やはりもう時代にそぐわなくなったもの、時代的な役割りを終わった部署は切っていってしかるべきではなかろうか。そして必要な部面に必要な近代的な装備を配備することこそ、本当の日本防衛につながるのではなかろうか。  と同時に、先ほど言いました三軍というものをこの狭い国土で分けておく必要はない、それぞれの役割りを機能的に考えるならば、これはやはり三軍が統合されて、国家防衛軍になってしかるべきだと思いますけれども、これはカナダなどでもやっているわけですね。その点、総理はどうお考えでございますか。
  193. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 戦争前に行われた宇垣軍縮というのも、四個師団の歩兵をやめて、そのかわり飛行連隊をつくるとか、あるいは騎兵のかわりに戦車を採用するとか、そういうような機械化をやったのですね。また、山本五十六さんが航空本部長になって、大艦巨砲主義をがらっと変えて、機動部隊航空母艦重視主義に変わった。ああいうような、やはり非常に弾力性に富んだ、活眼を持った変革が防衛については必要であります。そういう点について防衛庁の方も心がけていると思いますが、中馬さんがおっしゃったようなことは、防衛庁もよく検討して考えてみる必要があると思っております。
  194. 中馬弘毅

    中馬委員 前向きの発言をいただきましたので、ぜひともその線で御検討願いたいと思います。  と同時に、今度は、軍備による防衛の一方で、やはり国民の生命、財産、基本的人権、領土といったものをどう守っていくかということがまずは基本なわけですね。そうしますと、ともすればいま軍備だけで国を守る形が防衛という問題の議論の中に出てまいります。しかし、これはこの問防衛庁にも御質問したのですけれども防衛庁の範囲を超えた話になってきますので、ぜひとも総理としての御見解を伺っておきたいと思うのです。  先ほど有事法制の問題が出ましたが、私たちは有事法制のことじゃないのです。ここは少し誤解しないでほしいのですが、何か事が起こってからというのではなくて、もう少し別の観点――先ほど言いました日本人の生命、財産、こういったものを守っていく上において、いま防衛庁だけがその任務を負わされているような気がするわけですね。たとえば、町づくりのあり方、あるいは韓国みたいに全部高速道路が飛行場になるだとか、あるいはスウェーデンのようにあちこちの岩盤の中に防空壕があるだどか、あるいは西ドイツのようにシェルターが、完全にとは言いませんが、そろっているとか、そういったところまでの大げさな話ではないにしても、少なくとも兵員を輸送するときにどうしたらいいだろうか、何か災害が起こったときに、災害と同じと考えてもいいのですが、そういったときに飲み水はどう確保されるのだろうか、備蓄はどうなっているのだろうか、こういったような観点は、いわゆる幅広い国防の問題になってくるわけですね。ところが、先ほどお話のありました国防会議にしたところで、ここの中には建設省も国土庁も入っておりません。国防会議に何か検討させるといったようなお話もございましたけれども、少なくともそういう観点ではなくなってくるわけです。  そうしますと、もう一つ幅広くいろいろなところが、本当に日本の民族と領土を守るということでの何か効率的にバランスがとれた形で、しかもそれを防衛庁だけに兵器でということではなくて、行えることがたくさんある。また、しなければならない。それをせずして防衛費だけをふやしたところで、国民は決してそれが自分たちを守ってもらっているものだとは思わないはずですね。その辺のところの今後のあり方について、総理はどのような今後の御判断をお持ちかお伺いしたいと思います。
  195. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 おっしゃるように、防衛の基礎には国民のコンセンサス、国民の強力な支援というものが必要でございまして、それがまず基本になければ防衛は成立しないと思います。それから、自衛隊だけでやる問題ではなくして、各省庁の全面的な協力がなければ、これまたできるものではありません。そういう意味におきまして、防衛はあくまで総合的でなければならぬと思っております。  しかし、いざというときの相手を駆逐するとかあるいは寄せつけないとかという場合の力は、主として自衛隊から発せられる。そういう意味において自衛隊も非常に重視すべきものでありまして、その性能を向上させておくということは総合的に見ても必要であると考えております。
  196. 中馬弘毅

    中馬委員 自衛隊が大事だとおっしゃる。私たちはそれを否定しようと思っておりません。しかし自衛隊だけでは、またきのうの話の続きのようになってしまいますけれども、たとえば一つ水道管を破裂されただけで、あるいは停電されただけで、もう国民の方はパニック状態になって、戦争継続どころではないわけですね、いまの町づくりのあり方、いまのシステム化された日本の社会ということであるならば。そうするならば、それに備えたことがあわせて行われていなかったら、これは決して本当に国が守れるものでもないし、自衛隊が幾ら前に進んでいったところで、後ろはもうそういう状態ではなくて、パニックになっている、そういうことになってしまうわけですから、その辺のところをあわせてやっていただきたいというのがこちらの願いなわけで、その点についての総理の御見解をお伺いしたいと思います。
  197. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 おっしゃるように防衛は総合的なものでございますがら、自衛隊だけでやれるものではございません。人体のようにきわめて有機的な関連を持っておるもので、一つの器官が故障してもすぐほかの器官がストップする、そういう連鎖反応を起こすような状態防衛の本質にあると思います。そういう点については、よくふだんから見きわめて用意をしておく必要があると考える次第でございます。
  198. 中馬弘毅

    中馬委員 具体的にいまの国防会議でも私は不十分だと思いますが、有事法制の話ではないのですよ、いま言った一つの災害を想定した危機対応能力の非常に強い日本の国土にしたいという願いも含めて、そのような各省庁にわたったものを総合的にまとめる委員会なり部署なり、あるいは国防会議にそのような機能を持たすなり、そのようなことは具体的には何もお考えではないのですか。
  199. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 その問題は、防衛庁あるいは各省あるいは国防会議、そういうものによって逐次まとめていき、そうして非常に重要な段階になった場合には閣議全体で当たる、そういう形にならざるを得ぬであろうと思います。
  200. 中馬弘毅

    中馬委員 もう時間が参りましたので、最後に、あした十月十二日、いわゆる歴史的な、一つの国民が注視しております判決が出てまいります。これについて予言をするわけではございませんが、極右の人は場合によっては、この問のテロ事件ではないですけれども、国民のいら立ちの余り、そういうことにすらなってくる可能性だってゼロとは申せません。そういう中にあって日本の国を預かる総理大臣としての中曽根さんは、田中さんに対しての何らかの示唆をされるのか、あるいはまたいろいろな意味での対策をお打ちになるのか、現在の御心境をお伺いして、質問を終わりたいと思います。
  201. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 厳粛に、平常心を持って見守るということであります。
  202. 中馬弘毅

    中馬委員 どうもありがとうございました。
  203. 橋口隆

    橋口委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。     ―――――――――――――
  204. 橋口隆

    橋口委員長 これより両案を一括して討論に付します。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。堀之内久男君。
  205. 堀之内久男

    ○堀之内委員 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となっております両法律案に対し、賛成の討論を行うものであります。  国の独立を維持し、国の平和と安全を守ることは、独立国家として最も重要な責務であります。  わが国は、国際連合の平和維持活動を積極的に支持し、その理想とする世界平和の実現を期しているところでありますが、現実の国際社会においては、INF交渉など軍縮への努力は続けられておりますが、いまだその理想を実現するまでには至っておらないのであります。  むしろ、最近の国際情勢は、ソ連の質量両面にわたる増強により東西の軍事バランスに変化を生じており、また、世界の経済に重大な影響を持つ中束産油地帯の情勢も依然混迷を続けております。このような国際情勢の中にあって、各国はそれぞれ防衛力の整備に格段の努力を払っているのであります。  わが国の周辺におきましても、北方領土の軍事基地強化を初めとする極東ソ連軍の増強、朝鮮半島の緊張など、わが国として重大な関心を持たざるを得ないところであります。  このような状況のもと、わが国は、日米安保体制を引き続き堅持して、日米間の信頼関係を一層強固なものとするとともに、わが国みずからも、憲法の許容する範囲内で、自衛のために必要な防衛力の整備を図ることがきわめて緊要であると確信するものであります。  今回の両改正案は、海・空自衛官及び予備自衛官増員並びに任期制自衛官の退職手当の支給方法を改善することなどを内容とするものでありますが、いずれも妥当な措置であると考えるものであります。  もとより、わが国の平和と安全は、防衛力整備のみで全うされるものではありません。政府は、今後とも、国民の防衛問題に対する理解と支持のもとに自衛のための国内体制を整備するとともに、積極的な外交、経済等の面の努力を通じて、アジアひいては世界の平和と安定に大きく貢献されることを要望して、私の賛成討論といたします。(拍手)
  206. 橋口隆

    橋口委員長 次に、市川雄一君。
  207. 市川雄一

    ○市川委員 私は、公明党・国民会議を代表して、防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案に反対の討論を行うものであります。  わが党は、現憲法のもとにおいて、わが国の平和的存立を守るための自衛権、そしてその自衛権の具体的裏づけとしての自衛能力の保持は許されるものと考えております。その自衛能力の具体的なあり方については、領土、領海、領空の領域保全に任務を限定した領域保全能力であるべきだと考えております。  つまり、端的に申し上げれば、四方海に囲まれているわが国の防衛のあり方としては、平和国家にふさわしく、周辺諸国の動きを早く知る力、いわばウサギの耳に当たる早期警戒の能力、そして、わが国にもし手を出す国があるとすれば手痛い目に遭う、手痛いしっぺ返しに遭うといういわばハリネズミの針に相当するもの、基本的にはこの二つの力をあわせ持つものであるべきだと考えております。  このようなわが党が合憲とする自衛隊構想を踏まえ現在の自衛隊を見ますと、公明党の領域保全能力と共通する要素もありますが、同時に、領域保全能力の観点から見てふさわしくない要素、すなわち、憲法の枠を超えているのではないかという疑念を持たざるを得ないものがあります。  そのふさわしくない要素の端的な例がシーレーン防衛の構想であり、その強化であります。さらに指摘しなければならないのは、防衛予算の突出であります。  シーレーン防衛については、何の脅威から何を、いかなる手段で守るのか、そしてどの程度の効果が期待できるのかという基本的な考えが一向に明確にされていない状況であります。政府は、シーレーン防衛は通商路の確保にあると言いますが、実体は、北西太平洋の面の防衛、つまり海域分担の役割りを強く要求している米側の要請にこたえ、北西太平洋海域で極東米軍の補完としての防衛力を強化しようとしているのではないか、米ソ両核大国の極東海域での核のせめぎ合いの中で、わが国は積極的に米国の極東核戦略に一定の役割り分担を果たそうとしているのではないかとの疑問を強くするものであります。  平和憲法を有するわが国は、世界平和への貢献として、核兵器の全面撤廃と軍縮の推進に努力すべき立場にあります。ところが、シーレーン防衛の強化は、これに逆行するものであります。  また、最近の防衛予算の突出ぶりはきわめて異常と言わざるを得ません。今年度の一般会計歳出予算の対前年度伸び率は一・四%であります。ところが防衛予算は六・五%の伸び率を示しているのであります。昭和五十九年度の概算要求では、一般会計が三・八%の伸び率であります。一方、防衛予算は六・八八%という顕著な伸びを示しているのであります。  一国の平和と安全に深い関係を持っている防衛予算については、国民の理解と支持が不可欠と考えるところであります。いまや昭和五十一年十一月の閣議決定である防衛予算はGNPの一%以内という歯どめすら突破しかねない状況であります。わが党は、日本が米ソ軍拡の一方に加担し、軍事力拡大の道を歩むことには強く反対するところであります。  わが党は、以上の基本立場から、防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案に反対するものであります。  なお、防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案につきましては賛成であります。(拍手)
  208. 橋口隆

    橋口委員長 和田一仁君。
  209. 和田一仁

    ○和田(一)委員 私は、民社党・国民連合を代表して、ただいま議題となりました防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案並びに防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案に対し、一括して賛成の討論を行うものであります。(拍手)  さきの大韓航空機事件に見られるごとく、わが国を取り巻く極東の軍事情勢はきわめて厳しいものがあります。とりわけ百八基のSS20を初め、陸、海、空すべての分野にわたって増強を続ける極東ソ連軍の存在は、わが国にとって重大な脅威を形成しつつあります。しかもソ連は、単に極東のみならず全世界的規模で軍事力の増強を進め、西側諸国全体に対する大きな脅威ともなっているのであります。  こうした情勢に対し、わが国が憲法と国民合意を踏まえ専守防御に徹した適正な防衛力を整備することは、独立国としての当然の責務であります。それは同時に、自由と民主主義を共通の価値とする西側諸国の一員としての日本の国際的責任でもあります。  もとよりわれわれは、米ソのデタント回復や相互主義に立った核軍縮の促進等、世界平和実現に向けてのあらゆる努力を尽くすよう主張しております。また対ソ関係においても、真の日ソ友好の実現を強く希求しているものであります。  しかし、残念ながら現在の国際情勢は、こうした平和への努力とあわせて日本としての自主的な防衛努力が不可欠であることを明確に示しているのであります。  なお、私は、防衛力整備を進めるに際しては、単に多額の予算をもって正面装備を充実するだけでは不十分であると考えるものです。正面装備の充実とあわせて、三自衛隊の統合運用の強化、指揮・通信・情報システムの整備、基地等の抗堪性の向上等を初め、有事法制や奇襲対処方針の確立等の法的整備を図ることがぜひとも必要であります。こうした総合的な努力を通じてこそ、わが国の国情にふさわしい質の高い防衛力が整備されるものと確信するものであります。  政府が今後、かかる努力を傾注し、わが国の防衛力整備に遺漏なきを期されることを強く要望し、私の賛成討論といたします。(拍手)
  210. 橋口隆

    橋口委員長 次に、中路雅弘君。
  211. 中路雅弘

    中路委員 私は、日本共産党を代表して、防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案に対し、反対の討論を行います。  現在、多くの国民は、アメリカが行う戦争に日本が巻き込まれる危険を感じている者が七八%いるという世論調査結果に見られるように、自民党の軍拡政治のもとで戦争に巻き込まれる不安を強く抱いています。  ところが中曽根内閣は、一月の日米首脳会談の際の日米運命共同体、不沈空母、四海峡封鎖発言、五月の先進国首脳会議の際のヨーロッパへのアメリカ新型核兵器配備断行発言、日米安保条約とNATOの一体化などによって、日本の核戦場化、アメリカ有事の際の自衛隊参戦の危険を一段と強めています。  加えて今法案は、自衛隊員を約二千名増員し、予備自衛官も二千名増員する新たな軍拡法保案であります。政府は、対米従属、憲法違反の自衛隊を、国民世論や予算人員などいずれの面でも聖域にし、ひたすら増強しようとしていると言わざるを得ません。  とりわけ今回の自衛隊増員中身は重大です。今回の増員は、ミサイル護衛艦潜水艦、対潜哨戒機P3C、制空戦闘機F15、早期警戒機E2Cなどの就役に伴うものとされています。特にP3Cについては、対潜情報の収集、分析に直接携わる音響業務隊とプログラム業務隊の要員が初めて計上されています。次いで日米共同作戦の指針、ガイドラインの研究スタッフの増員であり、さらには陸、海、空三自衛隊の実動態勢を強化する中央指揮所の開設準備要員です。  これらがいずれもレーガン米政権の対日軍事分担要求に沿ったものであり、中でもその対ソ戦略上のシーレーン防衛、海峡封鎖という対潜、対空能力強化に積極的に協力、加担した増員であることは言うまでもありません。  中曽根首相は、春の通常国会で、日本が直接武力攻撃を受けていない状況下でも米軍による単独の海峡封鎖を認め、今国会のわが党の議員の質問に対してもこの見地を繰り返しました。これは、P3Cによる対潜情報の米側への提供や、ことしの防衛白書が海峡封鎖を排除するために敵が日本に進攻するおそれがあると認めていることなどとあわせて、日本の安全に直接関係のないアメリカ有事の場合にも日本がいやおうなく戦争に巻き込まれる危険があることをはっきりと物語るものです。改めて、今回の自衛隊増員は、日本の真の平和と安全にとって見逃すことのできない重大問題と指摘しなければなりません。  対米従属軍隊自衛隊の増強が、アメリカの核戦略を一層補完、強化することは明白です。たとえば政府は、首相の日米運命共同体発言が示すように、アメリカ有事の際、運命をともに分かつ共同作戦の展開を避けがたいものと考え、アメリカの核戦力の有力部隊との日米共同演習を日常化し、参加艦艇航空機人員、演習区域の拡大を初め、内容の高度化、実戦化をとめどもなくエスカレートさせています。  加えて、レーガン米大統領が、有事の際、核兵器を先に使用すると核の先制使用を公言しているのに対して、中曽根首相は今国会でも、核兵器を使わないとは言っていないことが大きな抑止力などと、抑止力を口実に核の先制使用を容認し、同時に、原子力空母カール・ビンソンの日本寄港を初め、核攻撃機F16の三沢配備、日本を母港とする第七艦隊所属艦船への核巡航ミサイル装備などを肯定、日本への公然たる核兵器持ち込みや民族死滅の破滅的な惨禍につながる危機を激化させていることはきわめてゆゆしい問題であると断ぜざるを得ません。  さらに、自衛隊増強による防衛費が国民生活予算を切り捨て、四年連続で突出していることも重大な問題であります。これは、日米軍事同盟下の対日軍事圧力が国民生活をも圧迫しているものであることを端的に示すものであります。  最後に、現在何よりもわが国に求められているのは、こうした自衛隊増強、軍拡競争による軍事大国への道をきっぱりと断ち切って、国民をアメリカの戦争に巻き込む根源、日米軍事同盟を廃棄し、非核、非同盟、中立の道を歩むことであることを重ねて強調し、防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案に対する反対討論を終わります。
  212. 橋口隆

    橋口委員長 これにて討論は終局いたしました。     ―――――――――――――
  213. 橋口隆

    橋口委員長 これより採決に入ります。  まず、防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  214. 橋口隆

    橋口委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。(拍手)  次に、防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  215. 橋口隆

    橋口委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。(拍手)  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました両案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  216. 橋口隆

    橋口委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  217. 橋口隆

    橋口委員長 この際、防衛庁長官より発言を求められておりますので、これを許します。谷川防衛庁長官。
  218. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 二言ごあいさつ申し上げます。  ただいま防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案及び防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案につきまして、慎重な御審議の結果、御可決をいただきまして、まことに感謝申し上げる次第でございます。  本委員会における審議の内客を十分に尊重いたしまして、防衛庁に与えられました任務の遂行に全力を尽くす所存でございます。  どうもありがとうございました。(拍手)
  219. 橋口隆

    橋口委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十八分散会